ユニクロ「UT」河村康輔とスケーター上野伸平が語る巨大スケートパーク誕生秘話

 手のひらをパンッと合わせた後、拳と拳を軽くぶつけるスケーター流の挨拶があちこちで行われている。ここは、どこかの公園でも街中でもない、原宿のど真ん中にあるビル(屋内)の一角だ。1月27〜29日、ユニクロのグラフィックTシャツブランド「UT」でクリエイティブ・ディレクターを務める河村康輔と、スケートボーダーの上野伸平によって開催されたポップアップイベント「UT SKATE PARK」の会場に、30m程の巨大なスケートパークが作られた。それに引き寄せられるかのように、多くのスケートボーダーがフリースケートを楽しんでいる。太いボトムスに色違いのコラボTシャツを着て、キャップを深く被ったスケーターたちは、みんな個性的でかっこいい。時折、わき立つ歓声の中には、一般客の姿も多く、スケーターたちが着ているTシャツを憧れの眼差しで手に取っている。オーバーグラウンドな「UT」とアンダーグラウンドなスケートボードは、ひと昔前であれば交わることはなかったかもしれない。2つは、どのように出合ったか?河村と上野に話を聞いた。

――お二人の出会いは?

上野伸平(以下、上野):コロナ前の2019年だったと思うんですけど、共通の友人であるKILLER-BONG(アーティスト)が、彼と河村君のエキシビションに呼んでくれたのがきっかけです。そこで河村君を紹介してくれました。

河村康輔(以下、河村):そうだ、そうだ。その前から伸平君を紹介したいって言われていたんですけどなかなかタイミングが合わず、1年ぐらい経ってそこでやっと会えたんです。その場で仲良くなって「何か一緒にやりたいね」って、すぐに話が進んでいきました。

上野:こういうのって誰に紹介されるかで、入り方が全然違うんです。KILLER-BONGもすごいアバンギャルドな人で、彼が誰かを紹介したいってあまりないので、それはすごい印象的でしたね。俺は気に入った人とはすぐ「(コラボを一緒に)やりましょう」っていうタイプなんで、河村君ともすぐに意気投合した。それで、俺は河村君っぽいシュレッダーの作品を使いたかったんで、ネタは「USのエロ本にしましょう」ってお願いして、スケートボードとTシャツを作りました。それが最初のコラボですね。

――アーティストやスケーター、デザイナーとそれぞれ活躍の場が違いますが、ウマが合うなと感じた理由は?

上野:河村君はバンドカルチャーとかハードコア周りでしょ?だから、古い言い方かもしれないけど、アンダーグラウンドなシーンは一緒なので、波長はもともと合ったんだと思います。

河村:その感覚は、会って話せばわかるよね。

「スペシャリストに任せた方が絶対いい」(河村)

――今回の「UT」とのコラボで、河村さんから上野さんにリクエストしたことは?

河村:僕は、その分野のスペシャリストに任せた方が100%いいと思っているので、僕からは特に何もリクエストしていません。何かを見たりしてカルチャー的になんとなく分かっていても、自分がそこにいるわけじゃないから現場にいる人たちの方がリアルに決まっている。どれだけ情報を集めて武装しても現場には勝てないんです。だからそのまま好きなものをやってもらった方が一番かっこいいものが出来上がるし、信頼しているからこそお願いしている。普段から伸平君が手がける「タイトブース(TIGHTBOOTH)」の服作りを見せてもらっていて、こだわりが強いのも、細部まで手を抜かないのも分かっていましたし。

上野:ほんとに河村君からは「伸平君の好きにやってくれたらいい」って言われただけでしたね。自分も信頼されているからこそ、「任せてください。いい感じにしますから」って。信頼関係があるとあんまり打ち合わせしなくてもいいんですよ。こうすれば河村君が喜ぶだろうなっていうのはなんとなく分かるし、お互いいいものを作るっていう気持ちは同じだから、波長や感覚が合っているとざっくり話すだけで成立するんです。

――やりとりは河村さんの作品に上野さんがアレンジして進めるんですか?

上野:そうです。河村君のものを俺がいじって、俺のものにするっていう手法ですね。

河村:ほかのプロジェクトは、逆にネタを投げてもらってこちらで手を入れて戻すパターンが多いので、伸平君とのやりとりは新鮮ですね。僕のインスタとかから絵を選んでくれて、そこから絵型をとってアレンジして、「こんな感じでどうですか?」みたいに送ってきてくれます。それでお互いに「いいね」ってなったら「じゃあ大きい元データを送るね」って感じで、それでだいたい終わります。

上野:俺は描き下ろしとか撮り下ろしにあんまりこだわっていないんです。一見そっちの方が付加価値があるように見えるけど、既に世の中にあるものの価値も揺るがないと思っています。それを自分のフィルターを通して全く違うものに見せられるのであれば、それもありかなって。

「コラボは必ずスケートボーダーに還元」(上野)

――スケートパークを屋内に作るアイデアは上野さんが提案したんですか?

上野:そうですね。自分の中でルールがあって、スケートブランド以外の企業やブランドとコラボするときは、必ずスケートボーダーに還元してほしいというのを条件にしています。それ以外はやらない。河村君からオファーをもらったときも、「絶対にスケートでみんなが楽しめるような場所を作りたい」と伝えていました。だから今回作ったセクションは、イベント後にどこかのスケートパークに寄贈して、スケートボードの発展に繋げていく。みんなが豊かになるような方法で動きたいと思っています。「上野伸平って『ユニクロ』とコラボしたんだ……へぇ」みたいに言う奴らはいっぱいいるんですよ。自分もどっちかっていうとそういうサイドにいるんで、そういう奴らも黙らせる行動をとりたいと思っています。だからどんなことを言われても、結果的にそのセクションでみんながグラインドすればかっこいいっていうのが自分の中にはある。それで、最初に「スケートパークを作らせてください」ってお願いしました。

河村:フィールドが違ってもお互いアンダーグラウンドの世界にいるからこそ、そこにどう還元するかがこのカルチャーで一番肝心なのは、自分でもよく分かっています。だから、それ込みじゃないと成立しないのは当たり前のことなんですよね。

上野:ただ実際、こういう話をするとスケートパークを作ってスケートさせることにあまりポジティブじゃない人もいるんですよね。予算もあるし、そもそも作るのが大変でもあるし……。でも河村君にこの話をしたとき、「いいね!」「絶対やろう」って言ってくれた。そういう人が「UT」のクリエイティブ・ディレクターを務めていることがうれしいですね。

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暗い時代も「ロジェ ヴィヴィエ」が放ち続ける光 デザイナーが語る”カワイイ”を追求する原動力

 フランス発のシューズ&バッグブランド「ロジェ ヴィヴィエ(ROGER VIVIER)」は1937年の設立当初から、キラキラとワクワクを詰め込んだ幻想的なモノ作りを追求する。2018年にイタリア・トスカーナ出身のゲラルド・フェローニ(Gherardo Felloni)=クリエイティブ・ディレクターが就任し、ヘリテージブランドの伝統を継承しながら女性に寄り添い、現代の空気もつかむ。23年春夏コレクションとともに、ブランドの世界観を体現するような明るさと茶目っ気を持つ同氏のクリエイションの源を探った。

WWD:「ロジェ ヴィヴィエ」がイメージする女性像は?

ゲラルド・フェローニ=クリエイティブ・ディレクター(以下、ゲラルド):実際「みんな」に向けて作っている。多様な女性がいるのに女性像を定めることも難しいし、カテゴリー分けするのもフェアじゃない気がする。ようやく社会の期待から自由になってシューズやバッグを選べるようになった。女性が自由を謳歌できるようになったことは、本当に美しい。それでもイメージするなら、少なくとも自信のある女性かな。このシューズを履きこなすには、自分自身に対する心地よさと、自信があるといい。そんなアティチュードを見るのが大好き。

WWD:自信をくれるようなアイテムでもある。

ゲラルド:モノ作りで一番大切にしている部分。全てのアイテムを手掛けるとき、女性のために作っていることを思い出す。だからヒール一つをとっても、ジーンズからスカート、パンツスタイル、ショートパンツまで、なんでも合わせられるように考える。履き心地ももちろん大事。(着方やふるまいに対して)上から偉そうに押し付けたくもないし、してきたことはない。自分が美しいと感じて、意味があるもの、愛するものを追求しているんだ。

WWD:その原動力は?

ゲラルド:いつだって最後に“勝つ”のは楽しさだと思う。シンプルで暗いトーンを着たい気分の日もあれば、明るくいきたい日もある。それは当たり前のこと。ただ、デザイナーとしては最低限、「ワクワクするもの」を提案し続けないといけないと思う。現実世界の悲しいことやつまらないことから少し離れられるよう、うれしさや楽しさ、ワクワクする気持ちを引き出すことが自分の役割だと思っているし、ファッションにとっても大切なこと。

WWD:ここ数年、社会も変化して暗い気持ちになることも多い。それでも「ワクワク」を保つことに難しさは感じない?

ゲラルド:ファッションは、世の中で起こっていることの“マニフェスト”なんだ。意見を持つことも大事だし、発信も必要。ただ、ファッションで世界は変わらない。ある一日はなんでもうまくいく!と思ったら、次の日には大きな不安に襲われるような日々が続く中でも、どうにか楽しみを見つけて生きることはできる。(創業者の)ロジェ・ヴィヴィエ自身も、ブランドもずっとそうしてきた。歴史的に見ても、暗い時代が続いたときほど、クリエイティブな人、特にデザイナーはハッと輝くものを世に生む。

WWD:そのアティチュードは2023年春夏コレクションでどのように表現した?

ゲラルド: 自分のアプローチは、ロジェそのものなんじゃないかな。彼はファッションや人生に対して、ほどよく“不真面目”だった。いつだって遊び心が溢れている。今シーズンは「フラワー・インベージョン(花の侵略)」をテーマに、カラフルさを全面に出したコレクションを手掛けた。シルクを使ったふわふわのカバンや、やりすぎ!ってくらいカワイイシューズがたくさん登場する。いつだって少し笑顔になるようなものを手掛けたいと思っている。

WWD:それも品質があってのこと。

ゲラルド:間違いない。こんなに真面目に“おふざけ”ができるのも、モノ作りの基礎が備わっているから。サヴォアフェール(受け継がれる職人技術)とその歴史があってこそ、「ロジェ ヴィヴィエ」の個性が輝く。創業者のロジェは、初めてオートクチュールの技法をシューズ作りに持ち込んだ人物と言っても過言ではない。リボンや帽子に使われるような花飾りをシューズにつけるなど、今では当たり前の刺しゅうや装飾づかいをロジェは真っ先に取り入れた。このコレクションではそういったディテールを現代風に再解釈した。サテンを使ったハンドメードの伝統的なシューズも、ビビッドな色使いで目をひくよう仕上げた。派手な色使いや装飾は(繊細な技術を要する)“クチュール”っぽくないと思われやすいが、職人技を追求している。

WWD:日本市場に期待することは?

ゲラルド:日本は特に大好きだが、届けたいメッセージは世界どこに対しても同じ。ただ日本市場は最も難しいマーケットの1つで、洗練されているイメージがある。文化にはストーリーがあり、ファッションには素晴らしいセンスがある。この市場で支持されるのは簡単ではない。それもあって日本市場に最初に受け入れられたときのことは、すごく印象に残っている。日本の市場に改めて届けたいのは「ロジェ ヴィヴィエ」の歴史と、ブランドの魅力、本質。ロジェが生んだ技術は今や当たり前に目にするようになったが、その中でも“本物”を極めるなら「ロジェ ヴィヴィエ」だろう。僕自身もこれまでロジェの手掛けるものにインスピレーションをたくさん受けてきた。(もう就任5年なので)“正式に”ブランドコードを追求できているんだ。

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暗い時代も「ロジェ ヴィヴィエ」が放ち続ける光 デザイナーが語る”カワイイ”を追求する原動力

 フランス発のシューズ&バッグブランド「ロジェ ヴィヴィエ(ROGER VIVIER)」は1937年の設立当初から、キラキラとワクワクを詰め込んだ幻想的なモノ作りを追求する。2018年にイタリア・トスカーナ出身のゲラルド・フェローニ(Gherardo Felloni)=クリエイティブ・ディレクターが就任し、ヘリテージブランドの伝統を継承しながら女性に寄り添い、現代の空気もつかむ。23年春夏コレクションとともに、ブランドの世界観を体現するような明るさと茶目っ気を持つ同氏のクリエイションの源を探った。

WWD:「ロジェ ヴィヴィエ」がイメージする女性像は?

ゲラルド・フェローニ=クリエイティブ・ディレクター(以下、ゲラルド):実際「みんな」に向けて作っている。多様な女性がいるのに女性像を定めることも難しいし、カテゴリー分けするのもフェアじゃない気がする。ようやく社会の期待から自由になってシューズやバッグを選べるようになった。女性が自由を謳歌できるようになったことは、本当に美しい。それでもイメージするなら、少なくとも自信のある女性かな。このシューズを履きこなすには、自分自身に対する心地よさと、自信があるといい。そんなアティチュードを見るのが大好き。

WWD:自信をくれるようなアイテムでもある。

ゲラルド:モノ作りで一番大切にしている部分。全てのアイテムを手掛けるとき、女性のために作っていることを思い出す。だからヒール一つをとっても、ジーンズからスカート、パンツスタイル、ショートパンツまで、なんでも合わせられるように考える。履き心地ももちろん大事。(着方やふるまいに対して)上から偉そうに押し付けたくもないし、してきたことはない。自分が美しいと感じて、意味があるもの、愛するものを追求しているんだ。

WWD:その原動力は?

ゲラルド:いつだって最後に“勝つ”のは楽しさだと思う。シンプルで暗いトーンを着たい気分の日もあれば、明るくいきたい日もある。それは当たり前のこと。ただ、デザイナーとしては最低限、「ワクワクするもの」を提案し続けないといけないと思う。現実世界の悲しいことやつまらないことから少し離れられるよう、うれしさや楽しさ、ワクワクする気持ちを引き出すことが自分の役割だと思っているし、ファッションにとっても大切なこと。

WWD:ここ数年、社会も変化して暗い気持ちになることも多い。それでも「ワクワク」を保つことに難しさは感じない?

ゲラルド:ファッションは、世の中で起こっていることの“マニフェスト”なんだ。意見を持つことも大事だし、発信も必要。ただ、ファッションで世界は変わらない。ある一日はなんでもうまくいく!と思ったら、次の日には大きな不安に襲われるような日々が続く中でも、どうにか楽しみを見つけて生きることはできる。(創業者の)ロジェ・ヴィヴィエ自身も、ブランドもずっとそうしてきた。歴史的に見ても、暗い時代が続いたときほど、クリエイティブな人、特にデザイナーはハッと輝くものを世に生む。

WWD:そのアティチュードは2023年春夏コレクションでどのように表現した?

ゲラルド: 自分のアプローチは、ロジェそのものなんじゃないかな。彼はファッションや人生に対して、ほどよく“不真面目”だった。いつだって遊び心が溢れている。今シーズンは「フラワー・インベージョン(花の侵略)」をテーマに、カラフルさを全面に出したコレクションを手掛けた。シルクを使ったふわふわのカバンや、やりすぎ!ってくらいカワイイシューズがたくさん登場する。いつだって少し笑顔になるようなものを手掛けたいと思っている。

WWD:それも品質があってのこと。

ゲラルド:間違いない。こんなに真面目に“おふざけ”ができるのも、モノ作りの基礎が備わっているから。サヴォアフェール(受け継がれる職人技術)とその歴史があってこそ、「ロジェ ヴィヴィエ」の個性が輝く。創業者のロジェは、初めてオートクチュールの技法をシューズ作りに持ち込んだ人物と言っても過言ではない。リボンや帽子に使われるような花飾りをシューズにつけるなど、今では当たり前の刺しゅうや装飾づかいをロジェは真っ先に取り入れた。このコレクションではそういったディテールを現代風に再解釈した。サテンを使ったハンドメードの伝統的なシューズも、ビビッドな色使いで目をひくよう仕上げた。派手な色使いや装飾は(繊細な技術を要する)“クチュール”っぽくないと思われやすいが、職人技を追求している。

WWD:日本市場に期待することは?

ゲラルド:日本は特に大好きだが、届けたいメッセージは世界どこに対しても同じ。ただ日本市場は最も難しいマーケットの1つで、洗練されているイメージがある。文化にはストーリーがあり、ファッションには素晴らしいセンスがある。この市場で支持されるのは簡単ではない。それもあって日本市場に最初に受け入れられたときのことは、すごく印象に残っている。日本の市場に改めて届けたいのは「ロジェ ヴィヴィエ」の歴史と、ブランドの魅力、本質。ロジェが生んだ技術は今や当たり前に目にするようになったが、その中でも“本物”を極めるなら「ロジェ ヴィヴィエ」だろう。僕自身もこれまでロジェの手掛けるものにインスピレーションをたくさん受けてきた。(もう就任5年なので)“正式に”ブランドコードを追求できているんだ。

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服作りの“五輪”で金・銅メダル うら若き縫製士2人のやりがい、涙、夢

 大手アパレルのTSIホールディングスは、国内に縫製工場2拠点を有する。その一つが宮崎・都城のTSIソーイング宮崎だ。アパレルの生産現場の高齢化や人材不足がいわれる中、若い芽が着実に育っている。

 縫製士として働く田代まどかさん(24)は、モノ作りなどに携わる23歳以下で競う「技能五輪全国大会」(中央職業能力開発協会主催)の2021年大会に出場し、最高賞の金賞を受賞した。同工場の縫製士としては初めての快挙だ。後輩の大良彩華さん(21)も、22年大会で銅賞と健闘。2人に仕事のやりがいや夢を聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」1月16日号からの抜粋です)

WWDJAPAN(以下、WWD):金賞を取るまでは大変でしたか。

田代:4回目の出場で、ようやく取れました。銅、銀、銀とあと一歩のところで逃してきたので、喜びも大きかったですね。

大良:私は銅賞には全然満足出来ていなくて。今は次の技能五輪に向けた課題でもある(パンツやジャケットなどの)ポケットがうまく縫えるよう、毎日特訓しています。

WWD:仕事の面白みは?

田代:「新人はまずアイロンがけから」という下積みが長い工場もあると聞きますが、私はジャケットやパンツを1人で丸縫いさせてもらっています。最近は仕様書を見ただけで、完成品が頭の中でパズルのようにシミュレーションできるようになってきました。私、プロじゃん!みたいな(笑)。

大良:毎日ひたすら服と向き合う仕事ですが、パターンとか見て縫い方を研究するのが不思議と楽しくて。ただ私はまだ丸縫いはできなくて、3人で一着を縫う分業ラインにいます。早くひとり立ちしたいです。

WWD:大変なことも多い?

大良:失敗してやり直しすることは、今でもしょっちゅう。いまだに合皮が苦手なんですよね。冷や汗をかきながら縫います。

田代:私も、入社してすぐの時は、泣いて縫った服があったよ。ベルト付きのパンツの上から、巻きスカートをドッキングするという特殊な依頼でした。パンツの素材に合わせて太い糸を使ってほしいと言われたけれど、それでスカートのシフォン素材をきれいに縫いつけるのがどうしてもできなくて。結局、ブランド側にお願いして細い糸に変えてもらいました。あの時は本当に悔しくて、流した涙が忘れられないな。

自分が縫った服を見て、
またミシンを踏みたくなる

WWD:毎日のモチベーションは?

田代:やっぱり自分が縫った商品を見ることです。技能五輪のための勉強会で都内に行ったとき、アパレルショップをのぞいてみたら「私が縫った服だ!」って。それを見て、また泣きそうになりました(笑)。

大良:その気持ち、分かります。私もプチプラショップで買うことはあります。でも現場の働いている身としては、置いてある服を見ると、「もうちょっと高くせんと職人さんがかわいそう」って複雑な気持ち。

WWD:百貨店ブランドなどの高価な服も縫っている。プレッシャーは?

田代:自分が縫った服のタグを見たら「10万円」でびっくりしたこともあります。かといって、(売価が)2、3万円だから手を抜くかと言われたら、そんなこともなくて。

大良:「ユニクロ」とかの服を眺めると、外国製で安いのに、縫製がきれいでびっくりします。だから自分たちはそれ以上の仕事をしなきゃ、と気が引き締まります。

WWD:今後の目標は。

大良:私はまず、技能五輪で金賞を取る。知識や技術がついてきたら、パターンとかデザインとか、服作りに関わる色々なことを学んでみたいです。

田代:私は舞台衣装がきっかけで縫製に興味を持ったので、いつかはハンドメイドの服を売る店を持ちたいです。

WWD:後輩の職場に縫製現場を薦める?

大良:私は入社する前、「職人さん怖そうだな」「ついていけるかな」という不安もありました。でもやる気がある若手がいることは、先輩方もやっぱりうれしいみたいで。

田代:正直、大変な現場だと思います。同期も私以外はみんなやめてしまいました。でも自分の力で1着が縫えたときの達成感、感動はひとしおです。単純作業で、つまらなそう。そんなイメージなら、「とりあえず見にきて!」って言いたいです。

モノ作りのスキルを競う全国大会
「技能五輪」

 「技能五輪全国大会」は、国内のモノ作りなどに携わる青年技能者(原則23歳以下)が技量を競う全国大会。田代さん、大良さんが出場した「縫製」種目は10時間の時間内に、支給されたウール地やポリエステル裏地を使い、1着のスーツジャケットを縫い上げるのが課題。シルエットや身頃の芯の張り方、襟全体のバランスや袖口の手まつりまで細かく採点項目が定められる。全42の種目は電気溶接、日本料理、ウェブデザインなど領域は多岐にわたる。

■TSIソーイング宮崎
最新設備を導入 スキルが高い人材を育む土壌に

 TSI宮崎工場には若い人材が育つ理由、また育てる理由がある。

 同工場は1987年、大手アパレルのワールドの直営工場として稼働し、2015年にTSIグループに譲渡された。主な生産品はパンツ、ジャケット、ブラウス、ワンピースで、自社ブランドでは「マーガレット・ハウエル」「パーリーゲイツ」などの生産を担う。ただ近年はグループの事業整理に伴い自社ブランド生産の割合が減少。あいた縫製ラインの活用として他社OEMを強化している。「エストネーション」「ユナイテッドアローズ」といった国内ミドルアッパークラスのセレクトショップ・百貨店ブランドのOEMが、生産数・取引金額で大部分を占める。

 ワールド時代から工場の変遷を知る西内渉TSIソーイング社長は、「今や当工場の生産枚数は全盛期(90年代、年間約200万枚)の半分以下。1000〜2000枚だったロット単位での平均生産枚数は、130〜140枚に減った。量のある発注は全て海外に流れる。クオリティーとQR(クイックレスポンス)のスピード感で勝負するしかない」と語る。

 取引先のニーズに応えるべく、少量・高付加価値なモノ作りができる生産体制へシフトしてきた。それに伴い、縫製士に求められるスキルも変化している。「大量生産であれば、縫製ラインに多くの人材を投入し、パーツごとに縫う単能工で生産性を上げるのが正解。ただロット数が絞られてきた今は、1人でクオリティーの高い一着を縫い上げることができる多能工の必要性が増している」。

 そのような理由から、田代さん、大良さんのように、若手のうちから丸縫いができるまでの高いスキルを持つ人材育成に力を入れる。同工場は近年、新卒社員を毎年十数人規模で採用。現在は従業員約120人のうち約3割が20〜30代となっている。

 ただ、これまで通りの工場の仕組みでは、育成に人材を割く余裕がない。そこで活用するのがデジタルの力。最新機器の導入で生産ラインを効率化し、若い縫製士の負担を減らすとともに、経験のある職人が人材指導にあたれるようになった。島精機製作所の最新自動裁断機P-CAMの導入(2020年)でパターンカットの効率が向上しリードタイムの短縮につながっている。縫製ラインにおいても順次導入しているブラザー社の新型ミシンは、糸調子などの設定を保存しワンタッチで呼び出すことができる。これにより縫う素材や仕様ごとに複雑なセッティングをし直す必要がなくなるため、経験の浅い縫製士の負担を減らしている。

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ジュンが取り組むOMO「チャット接客」満足度85%を実現した接客術とは?

 近年アパレルのEC化が進み、オンライン上の競争が激化している。その中でチャットを用いたオンライン接客が注目を受け、大手アパレルやストリート系ECなどでチャットサービス「チャネルトーク」の導入が進んでいる。中でもジュン(JUN)はOMO(Online Merges with Offline)戦略の一環としてオンライン接客に注力しており、チャットを活用。満足度85%、コンバージョン率40%と成果をあげている。

 このような結果に結びつく、チャット接客の“感動体験”とはどんなものか。ジュンの中嶋賢治取締役執行役員と、チャネルトークの玉川葉チャネルコーポレーション本国取締役兼日本CEOに聞いた。

ジュンが目指すOMOは
「店舗のような体験」が鍵

WWD:EC化率35%と高い成果を挙げているが、OMO戦略の中でECをどのように位置付けている?

中嶋賢治ジュン 取締役執行役員(以下、中嶋):EC化率は重要ではない。われわれはこの時代を乗り越える利益志向の筋肉質経営とそれを支える顧客基盤作りを目標としている。買い手と一期一会の関係ではなく、顧客基盤を厚くするため「顧客」を第一に考える中で、その顧客行動がオムニチャネル化しているため、OMO戦略を強化している。

実際、昨年のゴールデンウイークは人の流れが回復し、各店舗にも客足が戻った。ECは売り上げこそ微減となったが、アクセス数は通常の1.5倍に増えた。店舗を訪れる前にオンラインショップで情報をチェックするというチャネルをまたいだ行動が一般化している。

WWD:OMOで最も注力するべきは?

中嶋:オンラインとオフラインのサービス水準をイコールにすることを目指している。情報のクオリティーを高めること、在庫をオフラインと合わせて管理することに加え、差別化のために“接客のOMO”に力を入れている。

玉川葉チャネルコーポレーション本国取締役兼日本CEO(以下、玉川):お客さまは店舗かECかというよりも「ブランドから買う」という感覚なので、なぜオンラインとオフラインでサービスの質が違うのかと考える。昨年は、このことに気がついた実店舗を持つ大手アパレルECのチャット接客導入が目立った。特にジュンは、店舗とオンラインで同レベルの接客体験を徹底的に追求していることが成功している理由だと思う。

WWD:接客を通した顧客作りがEC成長の鍵?

玉川:日本市場は人口も減少しており、新規顧客獲得は難しい。そのため“お得意さま”とも言えるVIP顧客をどれだけ作れるかが戦略の肝になる。実際、チャネルトークを導入している大手アパレルECは、チャット接客を通して実店舗のように売り上げを作ったり、感動体験を届けることでお得意さまを作るのが当然という風潮になっている。ジュンに関してはさらに一歩進み、接客で得た顧客の声を収集してサイトやコンテンツの改善まで行っている。

中嶋:日本のアパレルは今まで商品を作りすぎて、値引きしてでも販売せざるを得ない状況だった。われわれもシーズンエンドにセールで在庫を売り切ることを前提に生産をしてきたが、そのやり方から方向転換しつつある。企業が筋肉質な体質になって正規価格で売り切っていくことで、商品価値を毀損せず、利益体質もよくなる。そのためにはECでも店舗でも同じサービスを受けられるようにすること、チャネルを超えてお客さまとの接点を作り、接客を通して一人一人にお得意さまになっていただくことが大事だ。

チャット接客で得た
「顧客の声」でECを改善

WWD:どのようにECの接客体験を設計している?

中嶋:ECでは画像と動画、テキストでしかコミュニケーションできないので、それらが不便でない質で保たれ、自分で商品が選べるレベルであることが大前提。その次に自分で選べないお客さまへのアドバイスが必要だ。EC側にもチャット接客の販売員を配置したことでお客さまの悩みを聞けるようになり、お客さまからも「言葉だけでなく画像での接客が実店舗に近く感じた」「ブランドイメージもさらに好印象になり、今後もさらに購入したい!」と感動のお声をいただいている。

玉川:日本の接客レベルは世界一で、オフラインの体験が良すぎることも日本全体のEC化率が低い理由だと思う。「ECでも接客してもらえる」ということはお客さまが感動するポイントになるはずだ。

中嶋:現在ECではもともと店頭で働いていた15人の販売員がチャット接客をしている。メンバーはチャネルトークのシステム上で他の販売員の上手な対応方法を見たり、互いに情報共有したりしながら日々良いチャット接客ができるように学んでいる。販売員からの提案でできた機能もあり、それがコーディネートのコラージュ画像を活用した接客だ。

WWD:顧客からの要望はどのように上がってくる?

中嶋:日報が役立っている。ECの改善案も出ていて、販売員が指摘したEC上の情報抜けや画像の変更点などは翌日にはサイトに反映するのがルールになっており、圧倒的なスピードでPDCAを回せている。お客さまに最適なUI/UXを聞くことはできないが、日々お客さまと向き合う販売員が教えてくれる。

商品にもお客さまの声を反映している。これまでも店舗の販売員に商品の反応をヒアリングしてきたが、ECでは顧客がどういう機会に、何と何を比較して選んだかといった経緯もニーズも分からない。そういった情報をチャット販売員が伝えてくれるのも日報の役割だ。チャットを活用し始めた当初は、ここまで情報を活用するとは考えられなかった。

チャット接客で悩みを解決し
“お得意さま”を生む

WWD:チャット接客は満足度85%と好評だ。満足度につながるポイントは?

中嶋:チャネルトークはチャットツールでありCRM(Customer Relationship Management)なので、リピート客の情報が分かり、能動的にお客さまに商品提案できている。チャネルトーク以外のサービスでは顧客と一期一会の関係だったので、大きな変化だ。またチャネルトークを導入してからは、決済や配送といったお問い合わせの一次対応に関してはボットが返信している。

玉川:多くの場合、ボットはお客さまの話を聞く時間を減らすために導入されるが、ボットは早く返事をすることでお客さまの利便性を上げる使い方が正しい。ジュンはボットの活用と販売員による対応を出し分けていることが、お客さまの満足度にもつながっているのではないか。

中嶋:オンライン接客の目的は売ることではなく、お客さまの悩みを解決してお得意さまになっていただくこと。チャットで見る指標はコンバージョン率(Conversion Rate、CVR)ではなく、何件相談を受けたか、接客後アンケートでどれだけグッドコメントをもらえたか、お客さまをお待たせしなかったかという満足度につながるものだ。

玉川:CVRを上げるためにたくさんポップアップを表示して商品を勧めるECもあるが、そのせいで離れてしまう人のことはトラッキングできない。CVRだけにこだわるとライフタイムバリュー(LTV)は下がってしまう。顧客との関係を作ること、そのためにCRMを使うことが利益につながると考えている。

外商のような
手厚いVIPサービスも
チャット接客で

WWD:今後はチャット接客をどう進化させる?

中嶋:今後は百貨店の外商のように、顧客にパーソナルに寄り添うサービスをやりたいと考えている。弊社だけで購入してもらうためには“ここでしか得られない”という体験価値がないといけない。そういった質の高いサービスを非対面で提供するには、データによるアシストが必要なので、どう取り組むか考えていきたい。

玉川:チャネルトークとしてもお得意さまを分析して増やすための機能を準備している。また、チャットだけが重要だとは考えておらず、メールやLINE、インスタグラム(Instagram)のダイレクトメッセージ(DM)の会話も一元化できる。お客さまが好きなコミュニケーション方法を選べるといい。そのため、今後は電話接客機能も提供予定だ。

INTERVIEW & TEXT : ANNA USUI

問い合わせ先
チャネルトーク
info-jp@channel.io

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ジュンが取り組むOMO「チャット接客」満足度85%を実現した接客術とは?

 近年アパレルのEC化が進み、オンライン上の競争が激化している。その中でチャットを用いたオンライン接客が注目を受け、大手アパレルやストリート系ECなどでチャットサービス「チャネルトーク」の導入が進んでいる。中でもジュン(JUN)はOMO(Online Merges with Offline)戦略の一環としてオンライン接客に注力しており、チャットを活用。満足度85%、コンバージョン率40%と成果をあげている。

 このような結果に結びつく、チャット接客の“感動体験”とはどんなものか。ジュンの中嶋賢治取締役執行役員と、チャネルトークの玉川葉チャネルコーポレーション本国取締役兼日本CEOに聞いた。

ジュンが目指すOMOは
「店舗のような体験」が鍵

WWD:EC化率35%と高い成果を挙げているが、OMO戦略の中でECをどのように位置付けている?

中嶋賢治ジュン 取締役執行役員(以下、中嶋):EC化率は重要ではない。われわれはこの時代を乗り越える利益志向の筋肉質経営とそれを支える顧客基盤作りを目標としている。買い手と一期一会の関係ではなく、顧客基盤を厚くするため「顧客」を第一に考える中で、その顧客行動がオムニチャネル化しているため、OMO戦略を強化している。

実際、昨年のゴールデンウイークは人の流れが回復し、各店舗にも客足が戻った。ECは売り上げこそ微減となったが、アクセス数は通常の1.5倍に増えた。店舗を訪れる前にオンラインショップで情報をチェックするというチャネルをまたいだ行動が一般化している。

WWD:OMOで最も注力するべきは?

中嶋:オンラインとオフラインのサービス水準をイコールにすることを目指している。情報のクオリティーを高めること、在庫をオフラインと合わせて管理することに加え、差別化のために“接客のOMO”に力を入れている。

玉川葉チャネルコーポレーション本国取締役兼日本CEO(以下、玉川):お客さまは店舗かECかというよりも「ブランドから買う」という感覚なので、なぜオンラインとオフラインでサービスの質が違うのかと考える。昨年は、このことに気がついた実店舗を持つ大手アパレルECのチャット接客導入が目立った。特にジュンは、店舗とオンラインで同レベルの接客体験を徹底的に追求していることが成功している理由だと思う。

WWD:接客を通した顧客作りがEC成長の鍵?

玉川:日本市場は人口も減少しており、新規顧客獲得は難しい。そのため“お得意さま”とも言えるVIP顧客をどれだけ作れるかが戦略の肝になる。実際、チャネルトークを導入している大手アパレルECは、チャット接客を通して実店舗のように売り上げを作ったり、感動体験を届けることでお得意さまを作るのが当然という風潮になっている。ジュンに関してはさらに一歩進み、接客で得た顧客の声を収集してサイトやコンテンツの改善まで行っている。

中嶋:日本のアパレルは今まで商品を作りすぎて、値引きしてでも販売せざるを得ない状況だった。われわれもシーズンエンドにセールで在庫を売り切ることを前提に生産をしてきたが、そのやり方から方向転換しつつある。企業が筋肉質な体質になって正規価格で売り切っていくことで、商品価値を毀損せず、利益体質もよくなる。そのためにはECでも店舗でも同じサービスを受けられるようにすること、チャネルを超えてお客さまとの接点を作り、接客を通して一人一人にお得意さまになっていただくことが大事だ。

チャット接客で得た
「顧客の声」でECを改善

WWD:どのようにECの接客体験を設計している?

中嶋:ECでは画像と動画、テキストでしかコミュニケーションできないので、それらが不便でない質で保たれ、自分で商品が選べるレベルであることが大前提。その次に自分で選べないお客さまへのアドバイスが必要だ。EC側にもチャット接客の販売員を配置したことでお客さまの悩みを聞けるようになり、お客さまからも「言葉だけでなく画像での接客が実店舗に近く感じた」「ブランドイメージもさらに好印象になり、今後もさらに購入したい!」と感動のお声をいただいている。

玉川:日本の接客レベルは世界一で、オフラインの体験が良すぎることも日本全体のEC化率が低い理由だと思う。「ECでも接客してもらえる」ということはお客さまが感動するポイントになるはずだ。

中嶋:現在ECではもともと店頭で働いていた15人の販売員がチャット接客をしている。メンバーはチャネルトークのシステム上で他の販売員の上手な対応方法を見たり、互いに情報共有したりしながら日々良いチャット接客ができるように学んでいる。販売員からの提案でできた機能もあり、それがコーディネートのコラージュ画像を活用した接客だ。

WWD:顧客からの要望はどのように上がってくる?

中嶋:日報が役立っている。ECの改善案も出ていて、販売員が指摘したEC上の情報抜けや画像の変更点などは翌日にはサイトに反映するのがルールになっており、圧倒的なスピードでPDCAを回せている。お客さまに最適なUI/UXを聞くことはできないが、日々お客さまと向き合う販売員が教えてくれる。

商品にもお客さまの声を反映している。これまでも店舗の販売員に商品の反応をヒアリングしてきたが、ECでは顧客がどういう機会に、何と何を比較して選んだかといった経緯もニーズも分からない。そういった情報をチャット販売員が伝えてくれるのも日報の役割だ。チャットを活用し始めた当初は、ここまで情報を活用するとは考えられなかった。

チャット接客で悩みを解決し
“お得意さま”を生む

WWD:チャット接客は満足度85%と好評だ。満足度につながるポイントは?

中嶋:チャネルトークはチャットツールでありCRM(Customer Relationship Management)なので、リピート客の情報が分かり、能動的にお客さまに商品提案できている。チャネルトーク以外のサービスでは顧客と一期一会の関係だったので、大きな変化だ。またチャネルトークを導入してからは、決済や配送といったお問い合わせの一次対応に関してはボットが返信している。

玉川:多くの場合、ボットはお客さまの話を聞く時間を減らすために導入されるが、ボットは早く返事をすることでお客さまの利便性を上げる使い方が正しい。ジュンはボットの活用と販売員による対応を出し分けていることが、お客さまの満足度にもつながっているのではないか。

中嶋:オンライン接客の目的は売ることではなく、お客さまの悩みを解決してお得意さまになっていただくこと。チャットで見る指標はコンバージョン率(Conversion Rate、CVR)ではなく、何件相談を受けたか、接客後アンケートでどれだけグッドコメントをもらえたか、お客さまをお待たせしなかったかという満足度につながるものだ。

玉川:CVRを上げるためにたくさんポップアップを表示して商品を勧めるECもあるが、そのせいで離れてしまう人のことはトラッキングできない。CVRだけにこだわるとライフタイムバリュー(LTV)は下がってしまう。顧客との関係を作ること、そのためにCRMを使うことが利益につながると考えている。

外商のような
手厚いVIPサービスも
チャット接客で

WWD:今後はチャット接客をどう進化させる?

中嶋:今後は百貨店の外商のように、顧客にパーソナルに寄り添うサービスをやりたいと考えている。弊社だけで購入してもらうためには“ここでしか得られない”という体験価値がないといけない。そういった質の高いサービスを非対面で提供するには、データによるアシストが必要なので、どう取り組むか考えていきたい。

玉川:チャネルトークとしてもお得意さまを分析して増やすための機能を準備している。また、チャットだけが重要だとは考えておらず、メールやLINE、インスタグラム(Instagram)のダイレクトメッセージ(DM)の会話も一元化できる。お客さまが好きなコミュニケーション方法を選べるといい。そのため、今後は電話接客機能も提供予定だ。

INTERVIEW & TEXT : ANNA USUI

問い合わせ先
チャネルトーク
info-jp@channel.io

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データ活用による「理想の顧客体験」の裏側 デイトナ・インターナショナル×プレイド

 2022年11月に主力ブランドEC「フリークス ストア オンライン」を、複数ブランドを扱うモール型EC「デイトナパーク」としてリニューアルしたデイトナ・インターナショナル。その背景には、業態の変更のみならず、全社を挙げたDX戦略がある。それを支えるのが、CX(顧客体験)プラットフォーム「カルテ」を提供するプレイドだ。デイトナは何を目指してどこへ向かうのか。デイトナでDXを推進する目黒希望担当とプレイドの長谷川亮担当に話を聞いた。

デジタル接客の強化と
リアルタイムパーソナライゼーションを実現

 
WWD JAPAN(以下、WWD):デイトナ・インターナショナルが抱えていた課題は?

目黒希望デイトナ・インターナショナルDX本部ウェブディレクター(以下、目黒):経営が刷新しDXを強化するという経営方針に共感して入社した。当時はデジタルの分野が弱く、体制やリソース、データの整理といった内部的なものからEC自体のサービスレベルまで、やらなければいけないことがたくさんあった。オフラインとオンラインを行き来しやすい環境を整え、お客さまにはシーンに合わせて便利なチャネルで情報に触れて商品を購入してもらいたい。理想は買い物に限らず、イベントやユーチューブなどさまざまなコンテンツでブランド体験を楽しんでもらい、コミュニティーを作ること。実際のデータでも、店舗とECどちらかでのみ購入しているお客さまと比較して、併用しているお客さまの購入金額の年間の合計は約4倍程度多くなることが分かっている。

WWD:なぜ「カルテ」を導入したのか?

目黒:デジタル接客の強化とリアルタイムパーソナライゼーションの実現の一環として導入した。長期的なサイトの改修と並行して、足元の売り上げも確保する必要があったため、導入後すぐにデータを可視化、活用してお客さまに最適な情報を出し分けられる接客ツールが必須だった。類似ツールをクオリティー・スピード・コストの3つの軸で比較して一番優れていた「カルテ」に決めた。サイト上でのユーザーの行動をリアルタイムで判別して接客できるのは、「カルテ」だけだった。加えて無償で丁寧なサポート体制があることも魅力的だった。現在は専任を設けて年間150本以上のシナリオを運用中だ。

長谷川亮プレイドカスタマーサクセス(以下、長谷川):「カルテ」は、正しいコミュニケーションを取るためにはリアル店舗で接客するようにユーザーを捉えるべきという設計思想を持つ。そのためには、ウェブサイトやアプリに来訪中のユーザーの属性や行動を把握する必要があるが、「カルテ」は独自のリアルタイム解析エンジンでユーザー単位で行動データを保有できるため実現できた。

リアルタイム解析だからできる「鉄板施策」

WWD:EC売り上げを最大化するために手応えのあった施策は?

目黒:たとえば、「くじ引き施策」だ。特定の行動をしたお客さまを「購入を迷っている方」と判断し、その人だけに当日のみ使える割引クーポンが当たるくじを引けるポップアップを掲出する。売り上げにインパクトを出しつつ、オープンクーポンのように安売りイメージを与えないメリットがある。サイトに訪問中のお客さまの行動を捉えて施策を打てるのはリアルタイム解析ができる「カルテ」ならでは。その他にも自社EC閲覧後の店舗購入や、広告経由での店舗売り上げなど、データ分析や効果の可視化が包括的にできている。

WWD:現在進行中のOMO施策は?

目黒:さまざまあるが、直近では自社ECサイトをリニューアルした。新サイト「デイトナパーク」は、他社も商品を出品してECと実店舗のどちらでも販売できる仕組みで、店舗でもECでも“売る”という当社の強みを活かしたOMOプラットフォームだ。店舗では、自社で企画・開発した「+プラス ミラー」を導入した。全身鏡をデバイス化したもので、内蔵カメラで全身撮影を行ったりさまざまな診断コンテンツを提供したりして、商品のリコメンドができる。特許を出願中だ。「+プラス ミラー」にも「カルテ」を導入し、UIUXの改善につなげている。

シームレスな顧客体験目指す

長谷川:オンライン上での顧客データの取得ノウハウはあるが、リアル店舗からお客さまの行動データを取得することは当社としてもトライアルの領域だ。お客さまの許諾を得た上で今後は店舗での行動データを集めて、ビーコンを使った来店データの取得や、非接触でICタグの情報を読み取れるRFIDを使った試着データの取得など解像度をより上げていきたい。そして、これらのオフラインデータをオンライン上の詳細な行動データと組み合わせることで、オンオフを横断したデータ活用を実現したい。

目黒:それらを活用すればECサイトと連動してお客さまにあった情報を配信することはもちろん、サイトの閲覧が実店舗の来店にどう影響しているかを分析したり、試着されても購入されない商品の分析などを社内の企画にフィードバックしたりもできる。長谷川さんはアパレル企業で働いた経験があり、知識と経験が豊富。長谷川さんに「こんなことはできないか」と相談すると、「カルテ」では対応しきれないことも、パートナー企業を探してきてくれるなど、実現に向かって並走してくれるので、安心して進められる。

両者が目指す次のステージは?

WWD:次に目指すステージは?

目黒:目指すはライフスタイルテック企業だ。ブラッシュアップ中の「+プラス ミラー」をはじめ、自社で開発したOMO施策を、他社に提供する事業を視野に入れている。デバイスの提供から運用のコンサルティングまで、自分たちの知見は他社にも有益なはず。今まさに実現に向けて動いている。

長谷川:CX(顧客体験)プラットフォームをうたい、ユーザー一人一人のデータ解析に取り組んできたプレイドだからこそ、よりきめ細やかなユーザー体験の実現ができると信じている。今後も目黒さんのビジョンを全力でサポートし、業界をリードする取り組みを推進しつつ、他社にも役立つソリューションとなるよう質を高めていく。

TEXT:MIWAKO ANNEN
PHOTO:SHUNGO TANAKA(MAETTICO)
問い合わせ先
プレイド
https://karte.io/enterprise/

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データ活用による「理想の顧客体験」の裏側 デイトナ・インターナショナル×プレイド

 2022年11月に主力ブランドEC「フリークス ストア オンライン」を、複数ブランドを扱うモール型EC「デイトナパーク」としてリニューアルしたデイトナ・インターナショナル。その背景には、業態の変更のみならず、全社を挙げたDX戦略がある。それを支えるのが、CX(顧客体験)プラットフォーム「カルテ」を提供するプレイドだ。デイトナは何を目指してどこへ向かうのか。デイトナでDXを推進する目黒希望担当とプレイドの長谷川亮担当に話を聞いた。

デジタル接客の強化と
リアルタイムパーソナライゼーションを実現

 
WWD JAPAN(以下、WWD):デイトナ・インターナショナルが抱えていた課題は?

目黒希望デイトナ・インターナショナルDX本部ウェブディレクター(以下、目黒):経営が刷新しDXを強化するという経営方針に共感して入社した。当時はデジタルの分野が弱く、体制やリソース、データの整理といった内部的なものからEC自体のサービスレベルまで、やらなければいけないことがたくさんあった。オフラインとオンラインを行き来しやすい環境を整え、お客さまにはシーンに合わせて便利なチャネルで情報に触れて商品を購入してもらいたい。理想は買い物に限らず、イベントやユーチューブなどさまざまなコンテンツでブランド体験を楽しんでもらい、コミュニティーを作ること。実際のデータでも、店舗とECどちらかでのみ購入しているお客さまと比較して、併用しているお客さまの購入金額の年間の合計は約4倍程度多くなることが分かっている。

WWD:なぜ「カルテ」を導入したのか?

目黒:デジタル接客の強化とリアルタイムパーソナライゼーションの実現の一環として導入した。長期的なサイトの改修と並行して、足元の売り上げも確保する必要があったため、導入後すぐにデータを可視化、活用してお客さまに最適な情報を出し分けられる接客ツールが必須だった。類似ツールをクオリティー・スピード・コストの3つの軸で比較して一番優れていた「カルテ」に決めた。サイト上でのユーザーの行動をリアルタイムで判別して接客できるのは、「カルテ」だけだった。加えて無償で丁寧なサポート体制があることも魅力的だった。現在は専任を設けて年間150本以上のシナリオを運用中だ。

長谷川亮プレイドカスタマーサクセス(以下、長谷川):「カルテ」は、正しいコミュニケーションを取るためにはリアル店舗で接客するようにユーザーを捉えるべきという設計思想を持つ。そのためには、ウェブサイトやアプリに来訪中のユーザーの属性や行動を把握する必要があるが、「カルテ」は独自のリアルタイム解析エンジンでユーザー単位で行動データを保有できるため実現できた。

リアルタイム解析だからできる「鉄板施策」

WWD:EC売り上げを最大化するために手応えのあった施策は?

目黒:たとえば、「くじ引き施策」だ。特定の行動をしたお客さまを「購入を迷っている方」と判断し、その人だけに当日のみ使える割引クーポンが当たるくじを引けるポップアップを掲出する。売り上げにインパクトを出しつつ、オープンクーポンのように安売りイメージを与えないメリットがある。サイトに訪問中のお客さまの行動を捉えて施策を打てるのはリアルタイム解析ができる「カルテ」ならでは。その他にも自社EC閲覧後の店舗購入や、広告経由での店舗売り上げなど、データ分析や効果の可視化が包括的にできている。

WWD:現在進行中のOMO施策は?

目黒:さまざまあるが、直近では自社ECサイトをリニューアルした。新サイト「デイトナパーク」は、他社も商品を出品してECと実店舗のどちらでも販売できる仕組みで、店舗でもECでも“売る”という当社の強みを活かしたOMOプラットフォームだ。店舗では、自社で企画・開発した「+プラス ミラー」を導入した。全身鏡をデバイス化したもので、内蔵カメラで全身撮影を行ったりさまざまな診断コンテンツを提供したりして、商品のリコメンドができる。特許を出願中だ。「+プラス ミラー」にも「カルテ」を導入し、UIUXの改善につなげている。

シームレスな顧客体験目指す

長谷川:オンライン上での顧客データの取得ノウハウはあるが、リアル店舗からお客さまの行動データを取得することは当社としてもトライアルの領域だ。お客さまの許諾を得た上で今後は店舗での行動データを集めて、ビーコンを使った来店データの取得や、非接触でICタグの情報を読み取れるRFIDを使った試着データの取得など解像度をより上げていきたい。そして、これらのオフラインデータをオンライン上の詳細な行動データと組み合わせることで、オンオフを横断したデータ活用を実現したい。

目黒:それらを活用すればECサイトと連動してお客さまにあった情報を配信することはもちろん、サイトの閲覧が実店舗の来店にどう影響しているかを分析したり、試着されても購入されない商品の分析などを社内の企画にフィードバックしたりもできる。長谷川さんはアパレル企業で働いた経験があり、知識と経験が豊富。長谷川さんに「こんなことはできないか」と相談すると、「カルテ」では対応しきれないことも、パートナー企業を探してきてくれるなど、実現に向かって並走してくれるので、安心して進められる。

両者が目指す次のステージは?

WWD:次に目指すステージは?

目黒:目指すはライフスタイルテック企業だ。ブラッシュアップ中の「+プラス ミラー」をはじめ、自社で開発したOMO施策を、他社に提供する事業を視野に入れている。デバイスの提供から運用のコンサルティングまで、自分たちの知見は他社にも有益なはず。今まさに実現に向けて動いている。

長谷川:CX(顧客体験)プラットフォームをうたい、ユーザー一人一人のデータ解析に取り組んできたプレイドだからこそ、よりきめ細やかなユーザー体験の実現ができると信じている。今後も目黒さんのビジョンを全力でサポートし、業界をリードする取り組みを推進しつつ、他社にも役立つソリューションとなるよう質を高めていく。

TEXT:MIWAKO ANNEN
PHOTO:SHUNGO TANAKA(MAETTICO)
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プレイド
https://karte.io/enterprise/

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会員数約50万人の香水サブスク「カラリア」 独自のデータで顧客とブランドの架け橋に

 High Link(ハイリンク)が運営するフレグランスのサブスクリプションサービス「カラリア」は、2019年1月のサービス開始から着実にファンを増やしている。同サービスの継続率は98%で、会員数は約50万人に達する。“香り”という目に見えず、オンライン上での表現が難しい商品特性に可能性を見いだし、これまでになかったフレグランスの定期購入というビジネスモデルを構築。購買行動データや口コミを活用し精度の高い商品レコメンドを行うなど、顧客に新たな購買体験を提供している。1月でサービス開始から丸4年となったカラリアは、発展途上にある日本のフレグランス市場にどのような変化をもたらすのか。同社の南木将宏・最高経営責任者(CEO)と岡本大輝・最高執行責任者(COO)に話を聞いた。

新たな香りとの出合いを
創出する「カラリア」とは

 「カラリア」の事業は、フレグランスのサブスクリプションサービス「カラリア 香りの定期便」、香りに関する情報を紹介する専門メディア「カラリアマガジン」からなる。そして事業の中核となる「カラリア 香りの定期便」には、自分の好みの香りやおすすめのフレグランスが分かる「香水診断」、公式LINEで専属フレグランスアドバイザーがぴったりのフレグランスを提案する「コンシェルジュサービス」がある。「カラリア 香りの定期便」は現在、約130ブランド1000アイテムを取り扱い、月額税込1980円〜、1カ月程度で使い切れる4mLサイズのアトマイザーが届く。「無数にあるフレグランスからどれを選べばいいか悩む」「自分の好みの香りが分からない」といった香り選びの課題を解決すべく、独自開発のアルゴリズムによる好みの香りの分析やおすすめアイテムのレコメンドを提供することで、これまで難しかったオンライン上での香り選びのハードルを下げることに成功している。レコメンドに対するユーザーの満足度は高く、「香水診断」の利用は100万回を超え、「コンシェルジュサービス」の相談数も120万件を突破。「香りの定期便」の継続率98%につながっている。

ユーザーの購買データを蓄積し
香りとの出合いを最適化

WWD:“香りのサブスク”を始めた理由は? 

南木将宏High Link CEO(以下、南木):ファッションやコスメの領域はECでの購買体験が少しずつアップデートされていますよね。これだけ技術が進化している中で、フレグランスは目に見えないという特性上今までオフラインでの購入がメインとなっており、ブランドは購買に関するデータや、お客さまのその後の行動、趣味嗜好などを知ることが困難な状況にありました。五感の一つである嗅覚は、感情や本能にも直接関わる人間にとって重要な感覚でありながら購買体験がアップデートされていない。そこでフレグランスの購買行動データの蓄積と学習を活用したサービスにニーズと勝ち筋があると考え「香りの定期便」を立ち上げました。

WWD:サービス開始から5年目を迎え、現在会員数は約50万人。ユーザーを多く抱えるプラットフォームに成長できた理由は?

南木:成長の理由は大きく2つ。1つ目は、SNSやウェブメディア「カラリアマガジン」で香りの楽しさを伝えられていること。SNSフォロワー数は40万人(22年12月時点)を超えています。また、フレグランスに特化しているメディアを運営しているからこそ、20~30代を中心としたフレグランスへの熱量が高いお客さまに香りの魅力を伝えることができています。ウェブマガジンとInstagram、Twitter、TikTokではそれぞれの媒体特性やユーザーの違いを考慮したコンテンツ作りを行っており、ユーザーニーズに合致した情報を各方面で提供できています。こうした工夫により、サブスクを利用するお客様の約30%がカラリアで人生初めてのフレグランスを買っているという事実もあります。その結果、これまでブランドが接点を持つことのできなかった層にまでリーチできていると考えられます。「フレグランスを試したいけどなかなか一歩を踏み出せない」という人が使用するきっかけにもなっています。ECの香りの領域ではずば抜けたシェアを取れていると自負していますし、結果としてフレグランス市場の裾野を広げられているのではないかと思います。

2つ目は、データを活用して香りとの最適な出合いを提供できていることです。閲覧データや購買データなどを活用しユーザーのニーズに合うフレグランスを提案していますが、中でも質の高い口コミデータを集めることに注力しています。「カラリア」には、お客さまの香りの評価(商品レビュー)を基に好みの香りを分析する「フレグランスプロフィール」機能があります。「香りの評価に基づくおすすめのアイテム」をはじめ、「まだ使っていないけれど好きかもしれない香り」という潜在的なニーズに対する提案も行っています。「フレグランスプロフィール」機能はAIを活用し、口コミを書けば書くほどレコメンドの精度が上がります。そのため、お客さまも自然と口コミを多く書いてくれて、レコメンドの満足度も高くなる。金銭的なインセンティブではなく、“体験”で質の高いデータを集める仕掛けを作ったのが「カラリア」の強みです。

ブランドに購買データと
香りの趣味嗜好の分析を
フィードバック

WWD:ブランドにとって「カラリア」のプラットフォームに参加するメリットは?

岡本大輝High Link COO(以下、岡本):メリットは3つあります。1つ目は、ユーザーの購買行動データと口コミによる香りの趣味嗜好の分析をフィードバックし、可視化できていなかった定量的なデータを得られる点です。購入した商品に対してどう感じたかや、他ブランドで何を買っているかといった情報を把握・分析し、販促支援や商品開発に活用していただけます。

2つ目は、毎月香水にお金を支払うフレグランスに対する熱量が高いユーザーに対してブランドの認知獲得が期待できる点。フレグランスに特化したメディアを活用することで、定期便ユーザー以外にも認知獲得が可能になります。

3つ目は、香りとの出合いを通じてブランドのファン育成が実現できることです。「カラリア」を通じて香水に興味を持ち、お気に入りの香りに出合い、結果としてサブスクユーザーの約40%が「カラリア」利用後にブランド正規店(または公式サイト)で香水を購入しています。さらに、好みの香水を見つけたからサービス利用を止めることはほとんどなく、次の新しい香りとの出合いを探し、見つけたら買い、また探す。そのような流れができていることから、「カラリア」はブランドと共存できるサービスであると信じています。

WWD:成長を続ける中で「カラリア」の課題は?

岡本:ブランドの世界観をオンライン上でどのように実現するかが、今の一番の課題です。ユーザーのいないプラットフォームはブランドにとっても価値がないため、これまではユーザーに支持されるプラットフォーム作りを重視して集客に注力していました。会員数が約50万人のこのタイミングで、ユーザーだけでなくブランドにとっても価値提供できるプラットフォームを目指していきます。私達はさまざまなブランドの製品を多く取り扱っていますが、そのブランドの歴史、パッケージやボトルのデザインなどに込めた思いを表現しきれず、まだまだブランドの魅力を伝えきれていない部分があると自覚しています。今の私たちのやり方に全くこだわりはないため、今後はブランドと共に世界観をどのように作っていくかを熟考しながら、ユーザーには“香り”という価値のある豊かな体験を提供し、ユーザーとブランド、そして「カラリア」の三方よしのプラットフォームの成長を推進していきます。

WWD:今後「カラリア」で注力していくことは。

南木:ブランドへの価値提供に注力する1年にしたいです。保有している大量のデータを活かし、ブランドのマーケティングや商品開発の支援などにも取り組む実績が出てきており、いかに目に見えない香りをデータ化することにニーズがあるのかを日々感じています。「カラリア」だからこそ提供できる価値を最大限提供し、メーカーやブランドと密にコミュニケーションをとりながら日本のフレグランス市場を盛り上げていきたいですね。ユーザーに対しては引き続き、香りという目に見えないものをオンラインでしっかりと伝えていきたいと思います。「香りを楽しむ」という点では、ルームフレグランスやボディーケアなどの要望も多い。将来的には扱うカテゴリーを広げることも検討しています。また、オフラインで実際に香りを手に取ることの重要性は今後も暫く続くと思います。ブランドが伝えたい世界観やこだわりもオフラインの方が肌で感じられるので、オンラインだけでは完結できない点があると思います。メディアを持っている私たちだからこそのオンラインのタッチポイントの強さを活かして、オフラインのショッピング体験とシームレスに連携していくことなどの構想もあります。オンライン上のデータのみならず、小売のデータとの融合やそれを踏まえた香りのDXを実現していきたいです。

ブランドの声を紹介

 サブスク「カラリア 香りの定期便」のローンチ時は30アイテムからスタートし、現在は1000アイテムまで拡大している。新客との出合いやブランドの認知拡大に寄与できることから、メーカーやブランドからの声掛けも増加。今後も顧客体験の向上やブランドへの価値提供など、さらなる成長が見込まれる。ここでは、「カラリア」の魅力や今後への期待など、「香りの定期便」で取り扱う「サウザンドカラーズ(THOUSAND COLOURS)」「ヴァシリーサ(VASILISA)」「シーファー(SHEFAR)」からのコメントを紹介する。

PHOTOS:SHUNICHI ODA
EDIT & TEXT:WAKANA NAKADE
問い合わせ先
High Link
https://high-link.co.jp/contact-partnership

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「バーニーズ ニューヨーク ビューティ」を手掛ける韓国企業CEOに聞くラグジュアリースキンケア誕生秘話 「フレグランスやヘアケアも発売予定」

 バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK以下、バーニーズ)の親会社である米ブランド管理会社のオーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)は2022年9月、韓国を拠点とするライフスタイル企業グロエントグループ(GLOENT GROUP)と提携し、ビューティブランド「バーニーズ ニューヨーク ビューティ」を立ち上げた。同ブランドはクレンザー、エッセンス、セラム、クリームからなるスキンケアコレクションとスペシャルケアのフェイシャルマスクをそろえ、日本には22年12月に上陸。「バーニーズ」の店舗とオンラインストアで販売する。ビューティブランドを手掛けるグロエントグループのジャスティン・ソン(Justin Song)CEOに、立ち上げの経緯と今後の計画を聞いた。

WWD:グロエントグループの事業内容は?

ジャスティン・ソン=グロエントグループCEO(以下、ソン):当社はビューティやヘルスケア、プレミアム飲料を扱うライフスタイル関連のプラットフォーム企業と考えてもらえると分かりやすい。「バーニーズ」はライセンスの形態を取っているが自社ブランドも持っている。化粧品の製造についてはOEMメーカーに委託している。今後、海外のブランドを輸入したり、韓国のブランドを輸出したりということも考えている。

WWD:「バーニーズ ニューヨーク ビューティ」を手掛けた経緯は?

ソン:私はファッションのリテール産業に20年以上携わってきた。ABGのジェイミー・ソルター(Jamie Salter)会長兼最高経営責任者(CEO)と懇意にしており、「もし『バーニーズ』を買い取ったら何をしたいか」とミッションを与えられていた。ABGは、私たちはもちろんファッションの分野で何かをするだろうと思っていた。しかし予想に反して私たちはウエルネスカテゴリーでビジネスをしたいと提案した。ただし、「バーニーズ」ですぐにウエルネスの商品を展開するのは難しいと思ったので、ビューティ商品を考えた。

WWD:ファッションからビューティに参入した理由は?

ソン:私はファッションスクールを卒業しファッションマーケティングで修士号も取得しており、今もファッションが大好きだ。私たちの世代は「バーニーズ」のショップウインドーが教科書のようなものだった。今一番のトレンドは何か、次に来るトレンドは何か、そうしたことを「バーニーズ」で勉強した。しかし最近はそうしたラグジュアリーへのニーズが今後もずっと続くだろうか、ほかにニーズはないだろうかと考えるようになった。そんな考えを巡らすうちにコロナ禍となり、人々が健康に気を使うようになった。もちろん、ファッションはこの先もずっと人々を幸せにすると思うが、私たちはそこに何か一つを足して、よく食べて健康に幸せに暮らすニュー・ラグジュアリー・ライフを示したかった。ファッションの商品を売ったときに消費者が楽しんでくれる喜びはあったが、さらにもう一歩進み少し健康になってもう少し幸せになるものがあるのではないかという考えから「バーニーズ ニューヨーク ビューティ」を考えた。

ブランドが提案するヘルシーライフの要はノルウェーの水

WWD:ビューティラインの提案に対してABGの反応は?

ソン:そのころアイドルグループのBTSやドラマ「イカゲーム」など、韓国のコンテンツへの関心が高かったこともあり、はじめはKビューティをイメージしたようだった。ところが私たちの「バーニーズ ニューヨーク ビューティ」の構想は、「ビューティ」「ウエルネス」「ウオーター」の3つをコアバリューに掲げるライフスタイルブランドで、ただ外面だけを美しくするのではなく、体の内側から健康でいることから生まれる美を目指すものだ。悩んだ末に水にフォーカスした。著名な水の博士の言葉から体や肌のさまざまな不調が水分不足から起こることを知った。地球上で最もきれいな水である南極と北極の水に近い水がノルウェーにあると分かり、ノルウェーのさまざまな水源地と交渉を始めた。そして飲料水として商品化できるようになった。さらに体の内面的なエネルギーを保つためのウエルネスプロダクトも作ることになった。その上でスキンケアをすることで美しくなるというのが私たちが提案した真のラグジュアリービューティだ。これをABGのジェイミーに説明したところ、大変驚くとともに共感してくれて「バーニーズ ニューヨーク ビューティ」を進めることになった。ある程度長期的なビジョンを持ってブランドを育てていけることになっている。

WWD:たくさんの化粧品がある中で、どう差別化し成長戦略を描くか。

ソン:韓国の多くのファッションやビューティブランドは、品質がいいのに価格の競争力がある点を売りにする。しかし私はブランディングの視点からそのように設計していない。それがブランドの持つ力だと思うからだ。だからと言って、商品にただラベルを付けて売っているわけではなく、商品の一つ一つにストーリーがある。それぞれの開発過程ではたくさんのエネルギーと時間を使った。消費者はブランドと商品だけを見て買うのではなく、共感ができるかが決め手になる。だから共感し一緒に育てるブランドを作りたいと思っている。もしかしたらそれがファッション的なアプローチかもしれない。

WWD:スキンケア商品の具体的な開発過程は。

ソン:企画の段階も含めるとローンチまでに2年、実務的な開発期間は1年半ほどだった。ABGはわれわれの提案をほぼ100%賛成してくれて商品開発はスムーズに進んだ。スキンケア商品には北欧で1年に2カ月しか採集できない希少なクラウドベリーを使っている。ビタミンがオレンジの約300倍と優れた成分だ。このクラウドベリーを含めて北欧でしか採れない8つの原料を独自配合し、1年以上を掛けて独自成分GLOCELAコンプレックスを開発した。パッケージもこだわり、世界的なプロダクトデザイナーに依頼しステンレスのパッケージを採用した。環境への配慮や持続可能性の観点から先端を行くことができると思っている。シンプルで未来的なデザインでジェンダーレス、エイジレスも表現している。ABGやバーニーズも大変気に入ってくれた。

韓国・ソウルに旗艦店をオープン

WWD:昨年10月に、韓国・ソウルに「バーニーズ ニューヨーク ビューティ」の旗艦店をオープンしたが反響は?

ソン:韓国ではビューティ・ファッションビジネスは百貨店のインストアを先にオープンするのが一般的だ。その方が早期にビジネスを成立させるのに効率的だからだ。ただし、ブランドのストーリーを見せるのが難しい。だから私たちは百貨店のインショップ約40店舗分の高い費用を投資して旗艦店を先にオープンした。江南区の高級ショップが並ぶエリアにある3階建ての建物だ。ブランドのストーリーや、既存のビューティブランドと何が違うのか、その価値を見せたかった。オープニングイベントではスポーツ選手やインフルエンサー、ソーシャルメディアに多く来店してもらった。その後もたくさんの人が訪れており、SNSでも自発的なレビュー投稿が多く見られる。

WWD:韓国以外の国に同様のショップを作る予定はある?

ソン:当初はニューヨークに1号店を出したかった。その後日本と韓国で同時出店をと考えていたが、予想よりコロナ禍が長引きソウル店を先にオープンした。日本は「バーニーズ」のショップが既にあり、バーニーズ ジャパンとの協業を最も大切に考えているのでビューティ単独店の出店については十分に議論を重ねていきたい。アメリカに関しては百貨店サックス・フィフス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)とのビジネスが最もプライオリティーが高い。今はブランドが何をしたいか、どういう価値があるかを伝えて、理解が得られるパートナーと取り組んでいきたいと思っている。

WWD:今後の商品展開は?

ソン:フランスでフレグランスの製作を進めており、日本では2月ごろに発売できるのではないか。香りはセラピーの要素があると思っているので、キャンドルやディフューザーなどホームフレグランスカテゴリーに関しては構想がある。またヘアケアも5月ごろに発売する予定だ。20〜30代にも増えている抜け毛の悩みに応える商品だ。ヘアケアも香りにフォーカスし、ストレスから解放される意味を込めている。ブランドとしてウエルネスをテーマにしているので、ヘアケア商品と食品を一緒にパッケージすることも考えている。カラーコスメに関しては、現状では考えていない。「バーニーズニューヨーク ビューティ」がビューティとウエルネスを全て包括するものだと消費者が十分に理解した後に着手する。

WWD:3年後、5年後の中長期的な目標は?

ソン:5年以内に売上高2000億ウォン(約211億円)を目指す。市場はアメリカ、韓国、日本、中国がベースになる。セールスのための拡大やホールセールでの展開は考えておらず、ブランドの基盤を作ることを重視し拡大していく。

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「バーニーズ ニューヨーク ビューティ」を手掛ける韓国企業CEOに聞くラグジュアリースキンケア誕生秘話 「フレグランスやヘアケアも発売予定」

 バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK以下、バーニーズ)の親会社である米ブランド管理会社のオーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)は2022年9月、韓国を拠点とするライフスタイル企業グロエントグループ(GLOENT GROUP)と提携し、ビューティブランド「バーニーズ ニューヨーク ビューティ」を立ち上げた。同ブランドはクレンザー、エッセンス、セラム、クリームからなるスキンケアコレクションとスペシャルケアのフェイシャルマスクをそろえ、日本には22年12月に上陸。「バーニーズ」の店舗とオンラインストアで販売する。ビューティブランドを手掛けるグロエントグループのジャスティン・ソン(Justin Song)CEOに、立ち上げの経緯と今後の計画を聞いた。

WWD:グロエントグループの事業内容は?

ジャスティン・ソン=グロエントグループCEO(以下、ソン):当社はビューティやヘルスケア、プレミアム飲料を扱うライフスタイル関連のプラットフォーム企業と考えてもらえると分かりやすい。「バーニーズ」はライセンスの形態を取っているが自社ブランドも持っている。化粧品の製造についてはOEMメーカーに委託している。今後、海外のブランドを輸入したり、韓国のブランドを輸出したりということも考えている。

WWD:「バーニーズ ニューヨーク ビューティ」を手掛けた経緯は?

ソン:私はファッションのリテール産業に20年以上携わってきた。ABGのジェイミー・ソルター(Jamie Salter)会長兼最高経営責任者(CEO)と懇意にしており、「もし『バーニーズ』を買い取ったら何をしたいか」とミッションを与えられていた。ABGは、私たちはもちろんファッションの分野で何かをするだろうと思っていた。しかし予想に反して私たちはウエルネスカテゴリーでビジネスをしたいと提案した。ただし、「バーニーズ」ですぐにウエルネスの商品を展開するのは難しいと思ったので、ビューティ商品を考えた。

WWD:ファッションからビューティに参入した理由は?

ソン:私はファッションスクールを卒業しファッションマーケティングで修士号も取得しており、今もファッションが大好きだ。私たちの世代は「バーニーズ」のショップウインドーが教科書のようなものだった。今一番のトレンドは何か、次に来るトレンドは何か、そうしたことを「バーニーズ」で勉強した。しかし最近はそうしたラグジュアリーへのニーズが今後もずっと続くだろうか、ほかにニーズはないだろうかと考えるようになった。そんな考えを巡らすうちにコロナ禍となり、人々が健康に気を使うようになった。もちろん、ファッションはこの先もずっと人々を幸せにすると思うが、私たちはそこに何か一つを足して、よく食べて健康に幸せに暮らすニュー・ラグジュアリー・ライフを示したかった。ファッションの商品を売ったときに消費者が楽しんでくれる喜びはあったが、さらにもう一歩進み少し健康になってもう少し幸せになるものがあるのではないかという考えから「バーニーズ ニューヨーク ビューティ」を考えた。

ブランドが提案するヘルシーライフの要はノルウェーの水

WWD:ビューティラインの提案に対してABGの反応は?

ソン:そのころアイドルグループのBTSやドラマ「イカゲーム」など、韓国のコンテンツへの関心が高かったこともあり、はじめはKビューティをイメージしたようだった。ところが私たちの「バーニーズ ニューヨーク ビューティ」の構想は、「ビューティ」「ウエルネス」「ウオーター」の3つをコアバリューに掲げるライフスタイルブランドで、ただ外面だけを美しくするのではなく、体の内側から健康でいることから生まれる美を目指すものだ。悩んだ末に水にフォーカスした。著名な水の博士の言葉から体や肌のさまざまな不調が水分不足から起こることを知った。地球上で最もきれいな水である南極と北極の水に近い水がノルウェーにあると分かり、ノルウェーのさまざまな水源地と交渉を始めた。そして飲料水として商品化できるようになった。さらに体の内面的なエネルギーを保つためのウエルネスプロダクトも作ることになった。その上でスキンケアをすることで美しくなるというのが私たちが提案した真のラグジュアリービューティだ。これをABGのジェイミーに説明したところ、大変驚くとともに共感してくれて「バーニーズ ニューヨーク ビューティ」を進めることになった。ある程度長期的なビジョンを持ってブランドを育てていけることになっている。

WWD:たくさんの化粧品がある中で、どう差別化し成長戦略を描くか。

ソン:韓国の多くのファッションやビューティブランドは、品質がいいのに価格の競争力がある点を売りにする。しかし私はブランディングの視点からそのように設計していない。それがブランドの持つ力だと思うからだ。だからと言って、商品にただラベルを付けて売っているわけではなく、商品の一つ一つにストーリーがある。それぞれの開発過程ではたくさんのエネルギーと時間を使った。消費者はブランドと商品だけを見て買うのではなく、共感ができるかが決め手になる。だから共感し一緒に育てるブランドを作りたいと思っている。もしかしたらそれがファッション的なアプローチかもしれない。

WWD:スキンケア商品の具体的な開発過程は。

ソン:企画の段階も含めるとローンチまでに2年、実務的な開発期間は1年半ほどだった。ABGはわれわれの提案をほぼ100%賛成してくれて商品開発はスムーズに進んだ。スキンケア商品には北欧で1年に2カ月しか採集できない希少なクラウドベリーを使っている。ビタミンがオレンジの約300倍と優れた成分だ。このクラウドベリーを含めて北欧でしか採れない8つの原料を独自配合し、1年以上を掛けて独自成分GLOCELAコンプレックスを開発した。パッケージもこだわり、世界的なプロダクトデザイナーに依頼しステンレスのパッケージを採用した。環境への配慮や持続可能性の観点から先端を行くことができると思っている。シンプルで未来的なデザインでジェンダーレス、エイジレスも表現している。ABGやバーニーズも大変気に入ってくれた。

韓国・ソウルに旗艦店をオープン

WWD:昨年10月に、韓国・ソウルに「バーニーズ ニューヨーク ビューティ」の旗艦店をオープンしたが反響は?

ソン:韓国ではビューティ・ファッションビジネスは百貨店のインストアを先にオープンするのが一般的だ。その方が早期にビジネスを成立させるのに効率的だからだ。ただし、ブランドのストーリーを見せるのが難しい。だから私たちは百貨店のインショップ約40店舗分の高い費用を投資して旗艦店を先にオープンした。江南区の高級ショップが並ぶエリアにある3階建ての建物だ。ブランドのストーリーや、既存のビューティブランドと何が違うのか、その価値を見せたかった。オープニングイベントではスポーツ選手やインフルエンサー、ソーシャルメディアに多く来店してもらった。その後もたくさんの人が訪れており、SNSでも自発的なレビュー投稿が多く見られる。

WWD:韓国以外の国に同様のショップを作る予定はある?

ソン:当初はニューヨークに1号店を出したかった。その後日本と韓国で同時出店をと考えていたが、予想よりコロナ禍が長引きソウル店を先にオープンした。日本は「バーニーズ」のショップが既にあり、バーニーズ ジャパンとの協業を最も大切に考えているのでビューティ単独店の出店については十分に議論を重ねていきたい。アメリカに関しては百貨店サックス・フィフス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)とのビジネスが最もプライオリティーが高い。今はブランドが何をしたいか、どういう価値があるかを伝えて、理解が得られるパートナーと取り組んでいきたいと思っている。

WWD:今後の商品展開は?

ソン:フランスでフレグランスの製作を進めており、日本では2月ごろに発売できるのではないか。香りはセラピーの要素があると思っているので、キャンドルやディフューザーなどホームフレグランスカテゴリーに関しては構想がある。またヘアケアも5月ごろに発売する予定だ。20〜30代にも増えている抜け毛の悩みに応える商品だ。ヘアケアも香りにフォーカスし、ストレスから解放される意味を込めている。ブランドとしてウエルネスをテーマにしているので、ヘアケア商品と食品を一緒にパッケージすることも考えている。カラーコスメに関しては、現状では考えていない。「バーニーズニューヨーク ビューティ」がビューティとウエルネスを全て包括するものだと消費者が十分に理解した後に着手する。

WWD:3年後、5年後の中長期的な目標は?

ソン:5年以内に売上高2000億ウォン(約211億円)を目指す。市場はアメリカ、韓国、日本、中国がベースになる。セールスのための拡大やホールセールでの展開は考えておらず、ブランドの基盤を作ることを重視し拡大していく。

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百貨店からもポップアップのラブコール ダイヤモンドと耐久性が同じモアサナイトの可能性

 ダイヤモンドの代わりにラボグロウンダイヤモンド(以下、ラボグロウン)を使用したジュエリーブランドが増えつつある。ラボグロウンとはダイヤモンドと同じ組成を持つ工業製品。ダイヤモンドよりエシカルかつ安価ということで、手に取りやすくファッション感覚で日常使いできるジュエリーを中心に存在感が高くなっている。ダイヤモンドの代替品はラボグロウンだけではない。組成は違うが、ダイヤモンドより光の屈折率が高く、耐熱性も高い。そして、1カラット10万円程度と、ラボグロウンよりさらに安価だ。モアサナイト専門ジュエリーのパイオニアである「ブリジャール(BRILLAR)」の小原亦聡社長に商況について聞いた。

WWD:ブランド立ち上げ以降の売上高の推移は?

小原亦聡ブリジャール社長(以下、小原):2017年1月に創業して、売上高は毎年前年比2割増だった。ブランド設立5周年だった昨年の売上高は同10%増で、伸長率が落ち着いた。伊勢丹新宿本店(以下、伊勢丹)のバイヤーから声がかかり昨年9月、伊勢丹2階で5周年記念のポップアップショップを開催した所、過去最高の単月売上高を記録。半分以上が新規顧客で、初めて見るモアサナイトを即日オーダーする人もいた。地方の百貨店でもポップアップを開催し、認知度アップを図りたい。モアサナイトを見てみたいという消費者には、オフラインアプローチが大切だ。

WWD:ブランドのコンセプトは?

小原:耐久性はダイヤモンドと変わらない、後世に引き継げるジュエリー。多彩なデザインがあるので、実際に使って楽しめる。

WWD:現在の型数や売れ筋は?

小原:デザインは900以上で、在庫があるのは100型。他は受注生産だ。全てのデザインを公式ECで見ることができる。売れ筋は、リング、ネックレス、ピアス、ブレスレットの順。モアサナイトの認知度がアップして、高額品の動きが良い。ダイヤモンドに憧れはあるが、買えない層に響いている。ブライダルでは、エンゲージとマリッジを同じ所で購入したいという要望が多く、マリッジとして、鍛造(金属を叩いて強度を高め目的の形状に成形すること)とモアサナイトを組み合わせた商材を導入したところヒット。中心価格帯はエンゲージが10万〜20万円台前半、マリッジは、10万円程度だ。日常使い用にエンゲージ風リングを購入するキャリア層もいる。ネックレスは11万程度、ピアスはペアで14万円程度、ブレスレットはステーションタイプが9万円程度、テニスブレスレットで22万程度のものが好評だ。

WWD:顧客の年齢層は?

小原:ブライダルは20〜30代のカップルで、自家需要は30〜40代の女性が中心。親子で購入するケースもある。

原材料の製造特許も取得し、環境に優しく低コストで

WWD:他のモアサナイトのブランドとの差別化は?

小原:モアサナイトを取り扱うブランドが増えるのは、認知度がアップするので嬉しい。パイオニアのブランドとして、品質やデザイン、サービス、提案力の高さで差別化を図る。一生使えるジュエリーとしてアフターサービスにも力を入れていく。

 また、原材料のモアサナイトの製造方法について、国内および中国で特許を取得した。モアサナイトは炭化ケイ素の結晶で化学式ではSiCと表記される。通常琥珀色をしている結晶体を無色透明化する方法だ。それにより、低コスト、環境負荷が少なくモアサナイトを製造できる。現在、米国でも、日本貿易振興機構(JETRO)の助成をうけ、取得手続き中だ。

WWD:ブランドとモアサナイトの認知度アップに行っていることは?

小原:SNS発信の強化はもちろんだが、今後は「インスタグラム」に頼りすぎず、LINEなどさまざまな方法で情報発信する。オフラインでは、百貨店のポップアップを行う。また、チャリティー活動がブランドに共感を持ってもらえる場になればと思う。

WWD:今後のモアサナイト市場の見通しと、戦略は?

小原:天然ダイヤモンドにこだわらない層が増えるはずだ。コスパ、耐久性、エシカルという点でモアサナイトを“ハレの日”のジュエリーとしてアピールしたい。長く使えるジュエリーとしてのメンテナンス強化を図るとともに、チャリティーなど、ワクワクすることをしていきたい。

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米国発、日本の伝統美容から生まれたスキンケアブランド「タッチャ」 Jビューティ人気に火を付けた手法とは?  

 2009年にサンフランシスコで誕生した日本オリジンのラグジュアリースキンケアブランド「タッチャ(TATCHA)」は、アメリカではセフォラ(SEPHORA)のスキンケアカテゴリーでトップセラーになるほど知名度があり、“Jビューティ”人気の火付け役として知られる。19年にユニリーバ傘下となり現在世界11カ国で展開する。ブランドの起源である日本へはコロナ禍の21年9月に上陸を果たした。「タッチャ」は、椿や米など日本の原料を用いたスキンケアアイテムを展開し、パッケージは着物の帯や茶道のなつめ(茶器)などから着想している。創設者のヴィッキー・ツァイ(Vicky Tsai)がブランドに込めた思いとは。

WWD:スキンケアブランドを立ち上げたきっかけは?

ヴィッキー・ツァイ「タッチャ」創設者(以下、ツァイ):元々はウォール街のビジネストレーダーとして働き、それが天職だと思っていたので起業する予定はなかった。9.11を経験して人生観が変わり、自分や家族をもっと大事にしようと思うようになった。そこからハーバードビジネススクールに入学し、ある化粧品会社に携わることに。ところがいろいろな商品を試し顔の肌がボロボロになってしまった。そのとき、美容商品を売るためには、消費者に「何かが足りない」と思い込ませる必要があると知った。マーケティングで架空の世界を作り出してモノを売る産業構造、その実情を知ってそれは私がやりたいことではないと思った。

WWD:「タッチャ」は日本にインスパイアされたというが日本との出合いは?

ツァイ:スターバックスに転職し、中国に出店するため現地と行き来する生活になり、その際に通過するのが日本だった。ボロボロになった肌はワセリンしか受け付けず、ベトついた肌を抑えるのにあぶらとり紙を使っていたのが日本の美容習慣との出合い。その後、パーソナルケアとして流通している商品が環境や社会、健康に与える影響を調査し、サステナビリティについてランキングする会社のマーケティング部門を担当。そのとき初めてアメリカの化粧品業界には人の体や環境を守る規制がないことに問題意識を抱くように。その頃子どもを授かり健康が非常に気になりだしたのと同じタイミングであぶらとり紙のストックを切らしてしまった。日本人の友人にどこで買えるか聞いたときに、それが金沢で作られており元々は金箔ののし紙であることを知った。これがスキンケアブランド「タッチャ」の始まりだ。

WWD:日本のあぶらとり紙からどのようにスキンケアが生まれた?

ツァイ:金箔製造の残り紙を美容に使い始めたのが芸妓だと聞いて、化学薬品が生まれるずっと前、18世紀から続く美容の作法や文化に感銘を受けた。金沢のほかにも京都を訪ねたくさんの芸妓の方に会って美しい肌の秘密やお手入れの方法を聞き、椿油や海藻、温泉、炭の粉、米ぬかなど、昔から脈々と伝えられてきた日本の美容素材について知った。日本のおもてなしの精神にも大変癒された。持ち帰った自然素材でスキンケアをしたところ、荒れていた肌がすっかり落ち着いた。そこで、同じ悩みを持つ人に私の発見をシェアしたいと考えた。

WWD:「タッチャ」で使用している原料にもこだわりが?

ツァイ:体の中に入るものに気を使うようになりさまざまな素材を調べたが、良い素材を追求すると行き着くのはお茶や米、海藻など日本のものだった。処方を作るにあたり、世界でも指折りのフォーミュレーターである田川正人氏との出会いがあり、彼を中心とする「タッチャインスティテュート」を東京に設立した。また、資生堂で37年以上の経験を持つ田中修氏にも参画いただいた。素材や日本文化の研究を担当するオノデラ奈美を含むこのチームは、「タッチャ」の基盤を作ってきた大切な柱だ。

WWD:アメリカで支持されている理由をどう分析するか。

ツァイ:「タッチャ」ではお茶と米と海藻の抽出物を二度発酵させた成分を全商品に配合している。初期は私財を全てR&D(研究・開発)に投入し苦労したが、ブランドが大きくなるにつれなぜ効くのか科学的根拠を深くリサーチできるようになり、発酵させることでアミノ酸や乳酸菌が豊かになり素晴らしい力を発揮することが分かっている。このように改良を重ねた商品力が支持されている。また当初、おもてなしの精神の表現方法として、オーダーをくれたお客さまに必ず手書きの手紙を添えて商品を送っていた。お客さまから返事が返ってくることも多く、次第に雑誌にも掲載されるようになった。ローンチ時は借家の一角に商品を置き、商品をベビーカーに積んで郵便局まで発送しに行っていた。そこから考えると夢のような話だが、15年には米ビジネス誌「インク(Inc.)」で“アメリカで最も成長が早い女性主導の株式非公開企業”の2位に選ばれるまでになった。マーケティングには一切資金を使わず、当時は主流ではなかったソーシャルメディアを通じて商品に込めたわれわれの思いを伝えていった。

WWD:今後の目標は?

ツァイ:「タッチャ」が日本の人たちに心から愛してもらえるブランドになるのが一番の目標だ。忙しい毎日に朝晩2分でもいいから自分のためだけの時間を持っていただき、「タッチャ」が豊かな暮らしに寄り添えたらと願っている。肌のトラブルやコンプレックスから始まるスキンケアを変えたい。アンチエイジングではなくヘルシーエイジングというように、物事を前向きに捉えて自分の心と体を大切にする手伝いができたらと思う。もう一つの目標は、美容業界の常識を変えていくこと。米「WWD」が発行する「ビューティ インク(BEAUTY INC)」の21年のレポートによると、世界のトップ20のビューティ企業では女性でCEOクラスに就いている者はたった3人で、そのうち有色人種は1人もいなかった。さらにその前年はたった1人だったという現状がある。女性が起業してもある程度の規模になると必ず女性には統率能力がないという偏見で男性経営者に変わっていく。そんな業界の常識や偏見を打ち破っていきたい。

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「レスポートサック」COOに聞く2024年のビジネス戦略 クリエイティブ強化や販路の見直しに着手

 ニューヨーク生まれのバッグブランド「レスポ―トサック(LESPORTSAC)」は2024年以降、ブランドイメージの刷新に取り組む。「忙しく動く回るニューヨーカーのために生まれた持ち運びやすい洗練されたアイテムとともに、原点回帰しながら未来を見ていく。ブランドの誕生50周年を迎える2024年に向けて、戦略的な道筋を立てている初期段階にある」と語るのは、金融業界出身で、これまで数々のブランドのコンサルティングに携わってきたトーマス・ベッカー(Thomas Becker)最高執行責任者(COO)。2019年1月から同ブランドを率いる同氏にブランドのこれからを聞いた。

WWD:ブランドのビジネス戦略とは?

トーマス・ベッカーCOO(以下、ベッカーCOO):アメリカ市場で卸売を再開する予定だ。それも、ノードストローム(NORDSTROM)、サックス・フィフス・アヴェニュー(SAKS FIFTH AVENUE)、ブルーミングデールズ(BLOOMINGDALE'S)といった大手百貨店レベルでの取引を目標にしている。ヨーロッパ市場の再強化や、クリエイティブの側面を強化して“文化的価値観”創造のために動いていく。

WWD:卸売に力を入れていく理由とは。

ベッカーCOO:過去に一度は撤退した卸売を再開することで、私たちは“未来に戻っている”。これまでは小売りに集中したことで、ヨーロッパ市場の開拓など自由に動くことができ、ブランドの発展につながる部分も多くあった。アメリカ市場は小売業が発展していて、ブランドも「誰に向けて販売をしているか」というプラットフォームの性格を理解しながら進化をしてきた。ただアメリカで卸売業は露出の機会としてやはり重要なビジネス。多くのブランドはブランドを支える柱となる消費者向けの独自のビジネスを持っているが、卸売にも力を入れてオーディエンスの拡大を補完する必要があると考える。

WWD:製品の魅力はどのように伝えていく予定か。

ベッカーCOO:他ブランドと差別化できる強みは、製品にある。「レスポートサック」が持つ定番品や“エッセンシャルライン”などが卸売では重要な鍵となるだろう。エッセンシャルラインは日々活発な人々に寄り添い、多様な選択肢を持つ。色使いもまた、ユニークだ。市場での再活性化や再出発する際に、重要な役割を持つはずだ。

WWD:新しい顧客層にはどのようにリーチしていく?

ベッカーCOO:オーディエンスの拡大に際して決めたのは、特定の消費者像を細かく見てコミュニケーションをとっていくということ。幅広く“みんな”に向けて発信をすると、誰にも届かないと考えるからだ。実際データでは、若年層が一番少ない予算を持ちながら、積極的にラグジュアリーアイテムを購入しているのが見られる。然るべき製品をそろえれば、それだけの情熱を生めるはずだ。ブランドのプレイフルな側面を発信しながら、歴史や思いを届ける動画キャンペーンなども作成した。製品の広告だけでなく、いかにアイデアや感情を伝搬できるか、に重きを置いていく。

WWD:ブランドはどのような局地を迎える?

ベッカーCOO:コロナ禍にいたことで、戦略的な準備をする時間が生まれた。「レスポートサック」は世界的に混乱の時代の中でも、うまくブランドの舵を切ってきた。具体的な数字の公表は控えるが、業績は多くの地域で昨年比でプラスに転じている。この状況から生まれた日米コラボやクリエイターらとのつながりは、「レスポートサック」が達成したいレベルを迎えるための深い関係の構築に生かされているはず。今は“はじまりの終わり”を過ぎた段階だ。24年はわれわれにとって多くのことが動く重要な年。この一年で取り組む事柄の成果が24〜25年にかけて見えてくるだろう。

コンサル経験を生かしてクリエイティブとビジネスを両立

WWD:これまでのキャリアは現職にどう生きている?

ベッカーCOO:両親が商品販売やサービス提供を行うビジネスに30年以上携わっていたので、幼い頃からそういったものに触れる環境で育ってきた。アメリカン・エキスプレス(American Express)では、ブランド構築の基礎を学んだ。「トム ブラウン(THOM BROWNE)」では「大事なのは、何を伝えようとしているかが明確であること」を学んだ。「意見が異なること」より大変なのは、「意見が何か分からないこと」。この経験は、この10年間、私自身のコンサルタント業の一つとして、メディアであれ広告であれ、幅広い業務の助けとなった。「レスポートサック」でもブランドの真髄とは何かを自問し、考えを統一していくことからはじめた。それができれば、自然にどう行動すべきかが見えてくる。一番難しいのは、ビジネスで「何にノーと言えばいいのか」「何をすべきではないのか」「デザインで注力すべきところ」「時間をかけて何にイエスと言えばいいのか」を知ること。舵を切る上で、これまでの経験を生かして、ビジネスの面で何をすべきか、どうすべきかという現実を理解している。そして、私たちが取り組んでいる計画を誰もが理解できるように、そしてなぜそれに価値があるのかをわかりやすく、関係者らとコミュニケーションをとっていくことができる。クリエイティブにもビジネスの視点は必須で、その両立が大事と考える。

WWD:2019年に就任して見えたブランドのDNAは?

ベッカーCOO:“ライトネス(=軽さ)”は、ブランドを構成する大事な要素。ニューヨーク生まれのDNAを軸に、ヨーロッパ的で洗練された感性も取り込みながら進化をしてきた。「トム ブラウン」での経験でも感じたが、アメリカのテイラーやクラフトマンシップはアメリカブランドの重要なアイデンティティーにつながっている。「レスポートサック」の製品はアメリカのニーズ、ヨーロッパの感性、スポーティーさを融合させて、グローバルブランドに成長した背景がある。軽量でありながら、耐久性にも優れている。“アメリカのブランド”ということが強く意識されていなくても目まぐるしく変わるニューヨークで約50年間存在感を保ち続けたのは、この都市が持つ魅力にも根ざしているからだろう。活動的で移動の多いニューヨーク市民のエネルギーに触発されて、ブランドの哲学も発展してきた。

WWD:“ライトネス”のコンセプトとは。

ベッカーCOO:改めて“ライトネス”というのは、ただ製品が軽量であることにとどまらない価値観を持っている。19年にブランドにジョインしたときに再考した部分で、製品の色使いから使用シーンまで、ブランドの発するデザイン的言語に幅広く影響を持っているコンセプトだ。(22年11月にニューヨークのソーホーエリアにオープンした)新店舗でも、“ライトネス”のコンセプトを取り入れ、自然光が入る窓やクリエイティブスタジオを兼ねた空間作りを徹底し、“心が軽くなる”ような場所となっている。

WWD:アメリカでのブランドの立ち位置・顧客層は?

ベッカーCOO:「レスポートサック」と同じ1974年に生まれたので、人生を通してブランドの歴史を感じてきた。スポーティーなブランドアティチュードが、アメリカで多くのポジティブな連鎖を生んでいると思う。長い間ブランドベースでキャリアを築いてきたが、これほどポジティブでノスタルジーを持ったブランドに出合ったことはない。人生の多くの場面で選ばれ、影響を与えてきたと思う。顧客層は20代後半や30代前半がメインで、やや女性の方が多くを占めている。ただ、創業当初からジェンダーニュートラルな製品を手掛けてきた。日々の活動や動き、旅行時に活躍するバッグ、という大きな括りのもとで、ここ数年は年齢や性別を超えて愛されてきたユニークな側面がある。

日本市場とも密に連携 50年後をどう見据える?

WWD:日米コラボアイテムも好調だ。

ベッカーCOO:日本チームは素晴らしいパートナー。クリエイティブチームがブランドアイデンティティーをよく理解し、今回日米共同開発の“レスポートサック アトリエ”ラインが誕生した。同ラインをスタートさせたとき、いかにクリエイティビティーを刺激するプラットフォームを築けるか、を考えた。デザインに制約もないし、ブランドの性質的に価格帯も柔軟に設定ができる。アイデアを持って冒険するための基盤となっていくだろう。使用するカラーから素材、届けたいオーディエンスまで、自由に遊べる企画となっている。

WWD:他国とコラボの予定は?

ベッカーCOO:きっともっと生まれるだろう。ただ、重要なのは「そのコラボに意味があるかどうか」。日米の関係性を参考に、他国とも交流が増えるかもしれない。

WWD:日本市場に期待することは?

ベッカーCOO:日本市場は消費者がデザインや品質、クラフトマンシップ、ヘリテージをよく理解している唯一無二の存在だ。クリエイティブなブランドとしての立ち位置を強化していく上で、鍵を握る。日本チームとはコロナ禍で深い関係性とコミュニケーションが多く生まれた。クリエイティブにもコミットして、ビジョンを共有しながらやってきた。

WWD:50周年を迎えるが、この先50年のビジョンは?

ベッカーCOO:われわれはこの50年間、時間をかけて着実に進化してきたと思う。今後50年間は、前の50年と同じくらい、“面白い”ブランドであり続けることが願いだ。さまざまなカテゴリーに進出するのを見てきたが、これからの課題は、どのカテゴリーが適切かを吟味していくこと。そして、どのようにして正しい方法で届けられるか。クリエイティブなデザインハウスという原点を意識して、ビジネスを展開していくことが大事だ。その余白はたくさんある。

WWD:バッグ以外も手掛ける可能性がある?

ベッカーCOO:もちろん。大事なのは、いつ・どのようなカテゴリーを、どのように拡大するか。消費者にとって予想外かもしれないけど、生活に馴染むような視点と共に手掛けていきたい。ブランドのルーツに通じていることが重要だ。クリエイティブに面白いことを手掛けるには、ビジネスの視点も必須。新たに開拓するのはアパレルかもしれないし、他のカテゴリーかもしれない。挑戦するスペースはたくさんあるので、試行錯誤していくつもりだ。

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リアル店舗は不定期開催のポップアップだけ ベルリンのパンクな古着店「アウトオブユーズベルリン」

 ベルリンの街を歩いていると、私なら到底思い付かない、常軌を逸した(!?)独創的なスタイルの人と遭遇することがある。ほとんどはビンテージを駆使し、自分に似合うものを熟知したスタイルだ。ベルリンには昔から、オールブラックに身を包んだミニマルなクラブファッションが存在するが、ビンテージにおいても世界的なファッションシティーとは異なる独自の文化がある。

 「アウトオブユーズベルリン(outofuseberlin)」は、良質でハイエンドなビンテージを扱うだけでなく、毎回テーマを設定し、それに合わせた架空の空間をポップアップという形で作り出し、その世界観は期間限定でしか体感できない希少価値を生み出している。実店舗は持たない。洋服やアクセサリーだけでなく、インテリアやアート、食器、菓子など、全てのアイテムで完璧な架空の空間を作り出している。さらには買い付けたアイテム全てをリメイク・手入れし、その価値を上げ、ずっと大事にしたくなる特別な一点モノとして提供している。ベルリンにおける、新しいポップアップのあり方を表現している。

 テーマは、世界各地を旅しながら蚤の市で買い付ける時のインスピレーションから浮かぶという。その着眼点は、どう培われたのだろうか?創設者のシシー・ポール(SISSI POHLE)とパット・シェルツァー(PATRICK SCHERZER)をインタビューした。

WWDJAPAN:「アウトオブユーズベルリン」をスタートしたきっかけは?

シシー・ポール&パット・シェルツァー(以下、シシー&パット):私たちは、クローゼットにオリジナリティーを取り入れるため、さまざまな蚤の市でビンテージのお宝を探すことが好きでした。大量に生産されているものでは満足できなかったのです。ストーリー性のある特別なものを常に探し求めていましたが、そういった考えを持っているのは自分たちだけではないことに気付きました。そこでオンラインストアをスタートしました。オープン当初から大成功で、ビンテージコレクションを中心としたクリエイティブなプロジェクトに取り組む機会に恵まれました。

WWD:「サンローラン(SAINT LAURENT)」「バーバリー(BURBERRY)」「プラダ(PRADA)」「マルニ(MARNI)」などのラグジュアリーやデザイナーズブランドのコンディションの良い洋服は、どこでどう買い付ける?

シシー&パット:ヨーロッパ各地のビンテージホールや蚤の市に行き、何時間もかけて、隅から隅まで見て回ります。とても根気のいる作業だし、毎回期待通りの出合いがあるわけではありません。しかし、ここまでして特別なアイテムを探し出すことは、私たちにとっては醍醐味。雑多に積まれた混沌とした商品の中から、宝物を見つけ出すことを楽しんでいます。買い付けで重要なのは、ラグジュアリーやデザイナーズブランドを見つけることではなく、そのアイテムが私たちや顧客にフィットするかどうかです。自分たち自身が着たいもの、家に置きたいものだけを買うようにしています。そこに細かい修理を施し、丁寧に洗濯することで新たな価値を与えるのです。購入したいアイテムが「直接私たちに語りかけてくるかどうか?」「私たちを感動させてくれるかどうか?」を重要視しています。

WWD:ハイエンドとパンクのミックスは、どう生まれた?

シシー&パット:私たちは、音楽やアート、ファッションに興味を持ち、それらとともに成長してきました。「アウトオブユーズベルリン」で表現している世界観は、私たちそのものです。明確なコンセプトはなく、常にインスピレーションを受けながらアーティスティックな一面を全面に打ち出しています。特に、ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)やセックス・ピストルズ(Sex Pistols)などのファッションや美学に大きな影響を受けています。色を使うことは大好きで、日々のルックにも自宅にも必ず色を取り入れています。柄の組み合わせも自由です。チェックのパンツにストライプのシャツを合わせるのは、私たちにとってはごく当たり前です。そういった自由な発想は、育ってきた厳しい規範から自らを解放していると言えます。そして私たちは、どんなことに対しても「イエス!」とは言わない反抗的な子どもたちのスピリットを持っています。それが私たちのパンクの思想に近いのかもしれません。

WWDJAPAN:不定期開催のポップアップストアにした理由は?

シシー&パット:私たちのアイデアやストーリーから生まれた空間で、型破りな体験をしてもらいたいと思っています。短期的で、何も感じない無感動なショッピングは避けたい。だからポップアップは毎回違ったテーマで、品揃えやディスプレイを変えています。昨年11月のポップアップは、パリでフランスのビストロを思わせる素敵なアイテムを見つけたので、架空のビストロに作り上げました。私たちは作業着のエプロンを身に付けてゲストを迎え入れ、フランスのワイングラスや食器、パリ近郊の田園風景を彷彿させるファッションや街そのもののシックさを提供しました。こうして生まれるシチュエーションに深い愛情を持っているし、それを「アウトオブユーズベルリン」でも伝えたいんです。

WWDJAPAN:ベルリンのファッションシーンは?

シシー&パット:私たちの顧客は世界各地にいますが、ベルリンにはとてもクールな顧客が集結しています。ポップアップにはローカルのベルリナーだけでなく、ベルリンに遊びに来た人たちも訪れてくれます。ニューヨークやシドニーから、インスタグラムのフォロワーが尋ねてくれたこともありました。世界中から人が訪れるのは、ベルリンがアートとファッションにおいて重要な街であるということ。エキサイティングな人たちに巡り合える街だと思います。

WWDJAPAN:今後の予定は?

シシー&パット:2022年には夢のひとつが実現しました。自然と静寂がある場所を求め、ベルリンを離れてパットの故郷に戻ったんです。自然があって、静かで、クリエイティブな仕事にも最適な場所を見つけました。今後は、これまで以上に複雑なプロジェクトを実現できるよう、新たにチームを組むなど、多くのプランを考えています。

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コロナ禍の学生生活を経てアパレル企業やデベロッパーに巣立つが大学生が「EverWonderな働き方」を語る

 人々の心に火を灯す機会を提供することを目的に、クリエイティブディレクターにGReeeeNのHIDEを迎えた一般財団法人渡辺記念育成財団は、EverWonderプロジェクトを発足した。構想中のプロジェクトは、同財団が次世代の芸能プロデューサーを支援する「みらい塾」の奨励生が企画進行している。今回は、第5期奨励生の百田優(法政大学 経済学部 国際経済学科)が同じ大学に通う友人と「コロナ禍の学生生活を経て社会に出る就活生たちが理想とする働き方」をディスカッションした。

百田優・法政大学 経済学部 国際経済学科4年 (以下、百田):本来であればさまざまな人と出会い、多様な価値観に触れながら成長できた大学生活がコロナ禍で多くの制約を受けてしまいました。もうすぐ社会人になるけれど、正直に言うと精神的には高校生のときからあまり変化していない実感があり、このまま社会に出ることがとても不安です。

田中航・法政大学 経済学部 経済学科4年 (以下、田中):自分の将来設計をする上でお金の流れを学ぶことは必要不可欠だと思い経済学部に進学したのですが、授業や就職活動を通して単にお金を稼ぐためではなく、やりがいや楽しさを感じながら仕事をすることが大事だと思うようになりました。私は、幼少期から好きだったショッピングモールに携わる商業デベロッパーという仕事に就く予定です。

小磯啓ニ・法政大学 経済学部 国際経済学科4年 (以下、小磯):私はアパレル業界に進む予定です。アパレル業界で働いている従兄弟の影響で洋服が大好きになり、魅力を感じるようになりました。スーツを着なくてよい職場というのも魅力的です。

百田:スーツを着る職場が嫌なのはなぜですか?大卒という資格を生かすためには、スーツを着るような有名企業に就職することがある種の最適解のようにも思えるのですが。

小磯:社会をあまり知らないという側面はありますが、スーツを着る職場というのは、昔ながらの慣習やルールに縛られている印象が強いです。従兄弟は毎日好きな服を着て出社し、休みも柔軟に取っています。自分らしく自由なライフスタイルが、自分には合っていると思います。

田中:仕事にやりがいや楽しさが感じられるのは大事ですが、自由なライフスタイルや充実したプライベートも大事ですね。私は音楽フェスに行くのが趣味なので、最低限稼げて好きなタイミングで休みを取れるのが理想です。逆に、大きなプロジェクトを任されるなどで仕事三昧になることは望んでいません。

百田:僕も小磯くんと同じで、好きなことを仕事にしたいと思っています。やはり仕事で結果を出すためには、没頭できることが大事なので。親が仕事の愚痴を度々言っていたり、公務員の兄たちが退屈そうにしているのを見てきたりしたのも大きいです。

小磯:いわゆるレールの上を歩いているような人生は嫌ですね。大学までは、親の意見を聞いて進路を決めてきましたが、就職活動で価値観が変わり、自分らしく働ける職場を選択しました。両親は有名企業への就職を望んでいたのですが。好きなことを仕事にして、自分らしく働けることが大事だと思います。

田中:好きなことを仕事にできるのは魅力的だけれど、一方で結果が伴わないと嫌いになってしまいそうです。僕はギターをやっているけれど、絶対に仕事にはしたくないと思っています。そういう怖さはありませんか?

小磯:たしかにその怖さはありますね。それでも仕事と趣味を割り切って働くことが難しい性格なので、怖くても好きなことを仕事にせざるを得ないなと。仮に結果が伴わなかったとしても、おそらく後悔しないと思います。

田中:正直、お金に困らない環境で育ったので、貪欲に稼いで良い家や車を買いたいみたいな夢はありません。それよりも、これからの長い人生の大半を仕事に費やすことになるだろうから、最低限稼ぎながら自分らしく働ければと思います。

小磯:自分も特に夢はなく、ある程度の暮らしができれば満足です。私たちの周りで「お金持ちになりたい」とか「有名になりたい」という野心がある人はあまり聞かないですね。強いて言えば、百田くらいかな(笑)。

百田:僕は、仕事で結果を出してモテたいです(笑)。好きなことを仕事にできれば、その目標に近づくと思っています。もっとも、その好きなことを見つけるのが難しいのですが。

田中:良くも悪くもコロナ禍で、計画を立てて自律できる人とそうでない人との差が浮き彫りになってしまったと思います。例えば、オンライン授業はいつでも受けられるけれど、なかなか受けずに怠けてしまう人をよく見かけます。もちろん、自分も含めてですが。明確な目標を持ち、それを達成するために計画を立てながら、常にモチベーションを保ち続けていくことが大事だと思います。

小磯:一度これだと決めたことに対して没頭できることが大事だと思います。もっとも、もしそれが失敗したらという怖さはあるので、リスクとどう向き合っていくのかは重要な課題です。今まで心に火が灯ったことがあまりないので、アパレル業界の仕事に没頭し、心に火が灯ればと思います。

百田:失敗したときの怖さはありますが、僕は仮に失敗したとしても、希望が残っていればどうにかなると思えます。僕も含めて、先行きの見えない将来への不安や失敗する怖さを抱えている人たちに希望と思えるような体験を、みらい塾の課題を通して実現したいと思います。一つには、文化祭や街のお祭りのように、仕事ではないけれど同じ目的を持った人たちと一緒にオフラインで作業ができるような場所かなと思います。

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オンワードの敏腕マーケッターが語る「アパレルのデジタルマーケティングに必要なステップ」

 世の中全体でデジタル化が進む中で、どの企業にとってもデジタルマーケティングの知識や実行力の必要性が高まりつつある。ただ、デジタルマーケティングと一口に言っても、必要なノウハウやKPIは業種やポジションによっても異なる。アパレル業界にとってのデジタルマーケティングとは、何が必要でどんな手法を取るべきなのか?オンワードグループの自社ECサイト「オンワード・クローゼット」の急成長を支えてきた、オンワードデジタルラボの小泉雄也氏と、アパレルECでのMDやマーケティングなどの経歴を持ち、現在新プロダクトのバーチャサイズ アナリティクスの開発を牽引するバーチャサイズの中村智幸氏に話を聞いた。


「オンワード・クローゼット」を
ブーストさせたデジタル
マーケティングの基本戦略

WWDJAPAN(以下、WWD):今、アパレル業界でもデジタルマーケティングが必要な理由をどう考えているか。

オンワードデジタルラボ小泉雄也氏(以下、小泉):社会全体がデジタルシフトする中、消費者の購買行動も変化しています。特にBtoCの小売業は、お客さまが認知から購入に至るまでのプロセスと、流通経路や販売チャネルもかつてないほど複雑に多様化しているため、デジタルマーケティングが必須になっています。

WWD:オンワードは早くから自社EC「オンワード・クローゼット」を重視し、実際に大手アパレルの中でも自社EC比率の高さが抜きん出ている。デジタルマーケティングは何を重視してきたのか?

小泉:自社ECを重要視する中で注力しているのは、お客さま理解の解像度を上げることです。お客さまが何を見て、いつ何を買ったなど、定量的なデータを、お客さま単位でしっかりと見て理解することを心掛けてきました。現在、会員プログラムであるオンワードメンバーズの会員数は約400万人。400万人全員を1人ずつ見ることはできないので、ロイヤリティに応じていくつかのセグメントに分類しています。重要なのは、自分たちにとっての「理想の状態のお客さま」がどういった状態なのかを、アクセス数や購入回数、購入金額などの数字に落とし込んで定義すること。その上で、どのようにして理想的な状態のお客さまを最大化するか、そのための戦略や施策を作っていく。これがオンワードのデジタルマーケティングの基本的なやり方です。

効果的なアパレルのデジマ施策とは?

WWD:では、施策はどう決めて実行していく?

小泉:例えば新規顧客の獲得では、むやみにアプローチするような施策はせず、最終的に「理想の状態のお客さま」になっていただける可能性の高い人(LTVが高いユーザー)を獲得することに注力しています。きちんと「質の良い新規ユーザー」を定義さえできていれば、そうしたユーザーの多くは初回購入から半年、1年という時間軸で見ると、きちんと2回、3回と購入いただいています。つまり、新規獲得のCPA(顧客獲得単価)をいかにして下げるか、ではなく、継続購入しやすい新規顧客の獲得に注力する方が長い目で見ればROI(費用対効果)は高い、ということです。このように中長期的に見てLTV向上に寄与する手法を把握して、そこに投資を優先することで費用対効果の最大化を図っています。

WWD:ちなみにこれまで効果があった施策は?

小泉:ブランドや企業のポジションや状態によって効果の高い施策は異なる、ということは大前提ですが、当社でパフォーマンスが高かった施策の一例として、「Lサイズブランド」を活用した事例があります。オンワードの場合、主力ブランドの「23区」や「自由区」には、百貨店の売り場などで大きめサイズの展開を行ってきました。これをフックにウェブ広告を運用すると非常にLTVが高い。これはサイズの幅を広く取れるネット通販とそもそも相性が良かったとも言えるし、そもそも当社が持っていた強みや優位性をデジタルマーケティングにうまく落とし込めたとも言えます。

中村智幸バーチャサイズ プロダクトマネージャー(以下、中村):バーチャサイズの場合、独自の共通IDを持っていて、お客さまは自分の身長や体重、年齢のほかに、自分の身体のサイズで気になる部位を書けるのですが、ユーザーの約4割が記入しています。実はこのバーチャサイズのユーザーデータとオンワードの購入データをかけ合わせたところ、体に気になるパーツがあると感じている方が、オンワード・クローゼットでの年間の購入金額が高い。つまり、自分の体形に合う服がなかなか見つからないが、オンワード・クローゼットに行けばあると認識している、と分析できます。その意味でも「Lサイズ」をフックにしたマーケティングは、理にかなっています。


アパレルのデジマで
抑えておくべきポイントとは?

WWD:アパレル企業にとって、デジタルマーケティングで抑えておくべきポイントは?

小泉:冒頭でも申し上げましたが、やはり「お客さまを知り、その状態を数値で定義すること」だと思います。数十万、数百万人いる会員全員を知るというのは難しいと思いますが、顧客に関するデータを収集、分析していく過程で「理想とすべき顧客像」が見えてきます。あとは、その状態にもっていくために、どういった施策を打っていくかを考えることだと思います。

WWD:しかし、そもそもそれをできる人材をどう育成、あるいは獲得すべきなのか?

中村:当社のクライアントでも、データをどう扱っていいか分からないというご意見は昔から多くありました。そこで開発したのが、アパレルに関わる購買/マーケティングデータを一元管理できる「バーチャサイズ アナリティクス」です。ユーザーが商品ページをいつ閲覧し、購入せずに離脱したのか、どの商品を比較したのかなどが分かったり、サイズに関してだと、弊社ではMサイズをリコメンドしたが実際に購入されたのはXLみたいなことも分かるので、この場合はもしかするとオーバーサイズで着たかったのでは、といった見方が可能になります。


ありそうでなかった
「バーチャサイズ アナリティクス」は
どう使う?

WWD:小泉さんから見て「バーチャサイズ アナリティクス」はどうか?

小泉:まだ少し触ってみた感じですが、UI/UXが優れていて、使いやすそうに見えます。実はこれ、結構重要です。まずは触ってみたくなるかどうか、みたいなところは新ツールや、アパレルのデジタルマーケティングの現場のように他から異動してきた人が多い部署には重要だと思います。そして実際に大変使いやすい(笑)。シンプルでわかりやすいデザインで、ポチポチとクリックしてサクサクとデータが見れるし、「バーチャサイズ」らしく、サイズにひも付く情報が非常に分かりやすく構成されているのもいい。実際にこの「バーチャサイズ アナリティクス」を見て気付いたのですが、アパレルに特化したデジタルマーケティング分析の専用ツールって意外になかったんじゃないでしょうか?少なくとも私は初めて見ました。

中村:ありがとうございます。なかったと自負しています。「ポチポチとクリック」という意味で言えば、例えば過去18カ月分のデータは、デフォルトで「アーリーアダプター」「セールハンター」など9つほどのカテゴリにセグメントされていて、数回のクリックだけで「過去18ヶ月間に1回だけ購入したユーザー数」なども簡単に確認できます。もちろん、そのセグメントの中で男女比や年齢分布、身長体重の分布、購入したものなどドリルダウンして分析することも可能です。

小泉:ECを行う上で、分かっていた方がいいことがあらかじめ項目になっているのは、とてもいいと思います。

WWD:バーチャサイズアナリティクスの導入金額は。

中村:アパレルのデジタルマーケティング初心者向けプランは無料です。小泉さんのようなエキスパート向けのハイグレードプランでも月額10万円台でご利用いただけます。

WWD:最後に、バーチャサイズを使ったデータ活用のアイデアを教えて下さい。

小泉:まだ企画段階ではありますが、「こういうのが見たかった」と思われる情報をコンテンツ化して伝えていきたいと考えています。服選びの際には、仮に同じ身長と体重の二人がいたとしても、体形に関する悩みや、実現したいスタイルはそれぞれ異なると思います。そういった個々の悩みを持つ方に刺さるコンテンツを見せれば、アクセス数もコンバージョンも上がるだろうな、と思います。バーチャサイズのデータがあればどんなコンテンツを作成すべきか考えるヒントになるし、然るべき人に最適なコンテンツをレコメンドすることもできる。これはかなり効果があるだろうな、と思っています。

TEXT:MIWAKO ANNEN

問い合わせ先
バーチャサイズ
japan@virtusize.com

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一度は挫折したけれど、やっぱり学生時代の夢が今につながっている 経営者たちが語る「EverWonderの実現方法」

 人々の心に火を灯す機会を提供することを目的に、クリエイティブディレクターにGReeeeNのHIDEを迎えた一般財団法人渡辺記念育成財団は、EverWonderプロジェクトを発足した。構想中のプロジェクトは、同財団が次世代の芸能プロデューサーを支援する「みらい塾」の奨励生が企画進行している。今回は、第5期奨励生の下西竜二(OTAGROUP代表)が中心となり、学生時代の夢が現在につながっていると考える経営者たちと共に「EverWonderを実現する方法」についてディスカッションする。

下西竜二OTAGROUP代表(以下、下西):私はアイドルやVTuber、最近だとメタバースなど、さまざまなエンタメをプロデュースしていますが、そのきっかけは高校生のとき、アイドルオタクに目覚めたことです。同じように、学生時代に熱中していたことが今の仕事に生きている方たちとお話できればと思います。皆さん、学生時代に熱中していたことは?

長坂剛エーテンラボCEO(以下、長坂):私は中学2年生のときにテレビで「エヴァンゲリオン」を観たのがきっかけで、SF系のアニメや漫画にのめり込みました。この時、自分のオタク心が開花したように思います。高校に進学してからは、学校をサボってはゲームセンターに入り浸り、アーケードゲームに夢中でした。「鉄拳」や「電脳戦機バーチャロン」をやり込んでいて、全国大会にも出場しました。

下西:以前、起業家向けイベントの帰りの電車で一緒になった際、長坂さんが事業の話そっちのけでアニメの話をされていて、「この人は本物のオタクだな」と思いました(笑)。噂によると、これまでに300万円ほどをアーケードゲームに使われたとのことですが、本当ですか?

長坂:そうなんです。事業資金として貯めていればよかったと思います(笑)。ただ、300万円使うほどのめり込んだおかげで、「作り手になりたい」という想いが芽生えました。高校卒業後は、ゲームクリエイターかアニメーターになるために当時新設された東京工科大学のメディア学部に進学し、映像制作やCG制作を学びました。映画の自主制作や映像制作のアルバイト、趣味のアーケードゲームに大半の時間を割いた大学生活でした。ちなみに、当時は「三国志大戦」というアーケードゲームで全国ランカーになりました(笑)。

水野和寛Minto社長(以下、水野):私にも似たような経験があります。高校進学で愛知から上京すると、古本屋やCDショップをめぐるようになりました。当時流行っていたテクノから音楽にハマり、ひたすら遡って昔の音楽を聞きました。そんな高校生活を経て、大学に入ると「自分も音楽を作りたい」と思うようになり、コンピューターで音楽を作るようになりました。

下西:自分は勉強だけが取り柄で、やりたいことが見つからないまま偏差値の高い高校に進学。同級生の頭の良さを目の当たりにして、勉強でも自信を失いました。そんなときに出会ったのがAKB48でした。友達に誘われて初めて握手会に行き、アイドルと握手をしたときに衝撃を受けて、帰り道は電車のつり革をつかめませんでした。広島からほぼ毎月握手会に参加するほど夢中になり、母親はデートと勘違いしていましたが、女の子と手を繋ぐのである意味デートだろうと思っていました(笑)。

大久保 勝仁・銭湯「電気湯」4代目主人(以下、大久保):大学生のとき、私はボランティアに熱中していました。住居がなく最低限の暮らしすらままならない人たちが住み着くスラム街の土地を買い取って、資産運用などを行いながら持続的に支援するというものです。また、PPバンドプロジェクトにも注力しました。段ボールを束ねるときに使うプラスチック製のPPバンドをメッシュにして住居を支える骨組みに使うと、スラムの人々が自ら建てた簡易的な家の耐震性が上がります。このような支援を行うのがPPバンドプロジェクトです。

下西:学生時代の夢と、それが叶ったかどうか教えてください。

大久保:私の夢は最小不幸社会を作りたいというものです。企業は利益を追求して多くの人に最大の幸せをもたらして社会を豊かにする役割を担っている一方、政府や行政は不幸な人を救い、最低限の幸せを保障する役割があります。後者が目指すものが、最小不幸社会の実現です。そのためには制度や法律を変えないといけないので、私は国連への参画を保障するような部署に入りました。当然、まだまだ救わなければならない人たちが存在するので、最小不幸社会は実現できていませんが。

下西:どのようなきっかけで、そんな想いを持ったんですか?

大久保:自分にはビジネスセンスが全くなく、企業では働けないと思っています。そんな自分が社会で暮らし続けるためには、社会の役に立たなければ。そんな危機感から公的な働きを意識し始めました。現在は国連をやめ、家業の銭湯を継いで最小不幸社会の実現を目指しています。銭湯ブームで色々注目を集めていますが、単に銭湯をファッションやコミュニティーとして消費されるものにとどめたくはなく、社会に本当に必要不可欠な存在として残していきたい。例えば、誰もがお風呂に入れることや、共同空間で人々と生活の一部をともにできることだと思っていますが、引き続き論文などを読みながら銭湯のあるべき姿を追求したいと思っています。

夢は「ある意味で叶った」
昔の志は「無駄ではなかった」

長坂:私は、大学卒業後は映画監督かゲームクリエイターになるつもりでした。でも高校生のときに持っていた「“メイドロボ”を作りたい」という夢を忘れられず、新卒でソニーに入社しました。ロボティクスや先端テクノロジーだけでなく、映画やゲームにも関われると思ったからです。メイドロボという夢は叶っていませんが、先端テクノロジーに関わることができたので、夢に近づいたと思います。一方、ゲーム部門で新規事業も担当できたので、ある意味夢が叶ったともいえるかもしれません。

下西:現在はソニーを退社されて起業されています。

長坂:ソニーに勤めていた時も、大好きなゲームに関わる仕事で非常に充実していました。しかし、自分がゲームオタクだからこそゲームに対してある違和感を覚えるようになり、起業を考えました。それは、楽しいときはプレイしている間だけで、ゲームをクリアして終わる瞬間は非常に虚しいことです。ゲームはユーザーの人生自体を楽しませているわけではないというモヤモヤが溜まり、その人たちの幸せにはどうすべきかを論文などを漁りながら考えました。その結果、人は自ら積極的に行動しているときに幸せを感じるので、ゲーミフィケーションを現実世界に実装すれば、人はゲームのように自分の人生を楽しめるのではないかという仮説を持ち、「みんチャレ」という行動変容と習慣化のアプリで起業をしました。

下西:ご自身が大好きなゲームを突き詰めた先に、人生自体を豊かにするゲームを作るという本当にやりたいことが見つかったのですね。水野さんはどうですか?

水野:大学に入ってから3〜4年ほどダンスミュージックやテクノなどの音楽を作っていました。ところが、自分にはセンスがない。手の届かない天才がいるんです。そこでこの先どうすればいいか迷い、留年して、いよいよ追い込まれたとき当時読んでいた音楽機材の雑誌の編集部に「なんでもするから働かせてくれ」とお願いして、裏方の世界で生きていくことを決意しました。今はクリエイターを支援したりプロデューサーをしたりしながらコンテンツ制作に携わっていますが、クリエイターの人には頭が上がりません。

下西:音楽で勝負する夢は叶わなかったわけですが、そのような過去を経て今の仕事をやられている心境は?

水野:もちろん音楽で生きていけたらそれに越したことはなかったでしょうが、一度はクリエイターの世界を志したからこそ、クリエイターの気持ちを理解できたりクリエイティブ思考でサービスを設計できたりするようなところがあります。そういう意味で無駄ではなかったと思います。また、当社で公開したメッセージアプリ用のスタンプは世界中で約50億ダウンロードされました。コンテンツを世界中に届けるという意味では、夢見ていたことに近いと思います。学生の時の夢や熱中していたことが今の仕事につながっているのは、後から振り返ってみて初めて分かったことです。将来を合理的に設計することも大事かもしれませんが、やはり自分の根底にある想いと、自分の場合はクリエイター的な思考に立ち返ることが重要だと思います。

下西:学生時代に熱中していたことが現在につながっているんですね。学生時代の夢は叶わずとも、そこで感じたことが今の仕事の哲学になっていることは共通しています。長い人生には一見将来のキャリアにつながらない回り道こそ必要なのかもしれません。

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コスメの余剰品問題に向き合いながら経済的困難な女性支援 柏市でシングルマザーにメイクセミナー

 「アットコスメ」を共同創業した山田メユミと有志はこのほど、「コスメバンクプロジェクト」をスタートした。シングルマザーら経済的困難を抱える女性の世帯に、化粧品メーカーが抱える余剰在庫となったコスメを詰め合わせ、支援団体などを通じて無償提供。今後も「女性と地球にスマイルを」を合言葉に、行き先が決まっていない化粧品を、必要とする人の元に届けることで、余剰品問題に向き合いながらコスメが消費者に提供できる自分への自信や高揚感を届けたい考えだ。今回は、千葉県柏市でシングルマザーを対象に開催した「仕事に役立つメイクセミナー」の様子と、このプロジェクトの理事と柏市長の対談をリポートする。

 「コスメを手にできない人たちがいる。一方でどう工夫しても、行き場を失うコスメがある。それを必要としている人に届けられないか、絶対にそうした方がいいと思ったことがコスメバンクプロジェクトの始まりです」と、一般社団法人バンクフォースマイルズの林久美子理事は話した。

 今回の千葉県柏市との取り組みについては、「さまざまなNPOを通じて必要としている人に関わろうと試みてきたが、なかなかきめ細かくは対応できなかった。『誰が、どういうことに困っているのか?』を、一番具体的に分かっているのは自治体と考え、太田和美・柏市長に相談を持ちかけたところ、今回の化粧品詰め合わせの配布とセミナーにつながった」と続ける。

 最初は柏市に住む児童扶養手当の受給世帯に対して、「美容セット引換券」を配布した。コスメバンクプロジェクトは化粧品9点の詰め合わせ全2000セットを用意。「メイク品は後回しなので、ギフトでいただけてうれしかった」など、喜びの声は続々寄せられた。また2カ月前から参加者を募り、10月の日曜日の午前と午後に1回ずつ開催したメイクセミナーには、合計20人の定員を超える応募があったという。

 「仕事に役立つメイクセミナー」とした理由は、対象者には非正規雇用者が多いため。正規雇用を目指す採用面接に役立てばという思いがあった。実際、コスメバンクプロジェクトの林理事は、「自立的に安心して、人生設計できるスタートラインに立って欲しいという思いがあった」という。そして、こう力を込めた。「『コスメなんてドラッグストアでは安価に売っているし、買えないことはないのでは?』と思う人もいるかもしれない。でも子どもの成長は早く、洋服は毎シーズンの買い替えが必要。習い事をさせてやりたいという親心もあるだろう。自分の化粧品を買う余裕があるなら、子どもを優先したいというお母さんがほとんど。でも、メイクは自己肯定感を高める。気持ちが晴れやかになって、自然と前を向ける。子どもにもいい影響がある」。

 実際のセミナーでは、1人1人の前に鏡がセットされ、使用後はお土産となるいくつもの化粧品がそろった。2時間のセミナーは、メイクアップアーティストのレクチャーに続き、それにならったメイクを複数のアーティストがサポート。失敗しないアイライナーの描き方や、印象を変えるヘアアレンジといった毎日の役に立つものから、オンライン面接でのメイクのポイントなどコロナ禍ならではの内容も盛り込まれた。

 30代の参加者は開口一番「シングル家庭向けの無料セミナーやイベントは、大抵都内での開催。参加してみたい内容でも電車賃がかかるし、子どもを預けるとさらにお金がかかるので、『無理だな』と思っていた。でも今日は、託児もできて安心して参加できた」と話した。また「これまでは美容系の仕事をしていたが、子どもが体調不良でも休みはなかなか取れない。思い切って事務職に転職したものの、オフィスでのお化粧の基本は全然分からなかったので、とても助かった。新品の化粧品なんていつ以来だろう?とてもありがたい。大事に使いたい」という声もあった。

 コスメを提供しながらメイクアップ講座を開催したコーセーの持田卓也経営企画部副部長兼サステナビリティ戦略室室長は協賛の理由を「一人ひとりが望む『きれい』に向き合うことを使命としている私たちは、コスメバンクプロジェクトの取り組みに共感している。昨年は化粧品3万点を寄贈し、今年も同様に商品をお届けした。私たちは、お母さんが輝くことで家族も笑顔になるまでを見据えている。化粧品をお届けして反響を聞くだけでも嬉しいが、皆さんの顔が明るくなっていく様子を直接見ることができた。化粧品を扱い、化粧品の力を信じている私たちの励みになる」と話す。

支えるだけではない。
地方自治体だからこそのサポートを

太田和美・柏市長(以下、太田):コスメバンクプロジェクトとの取り組みは、児童扶養手当を受給している方を対象にしたが、この手当は子どもが18歳になるまで。永久的なものではない。だから最終目標は、「1人親家庭の方々が、自立して就労する」にしなければ。就職の面接はメイク一つで雰囲気が大きく変わるから、今回は「仕事に役立つメイクセミナー」がいいと思った。自分の化粧品は後回しという方が多いので、化粧品の詰め合わせプレゼントはとてもありがたい。ハンドクリームや入浴剤は家族みんなで楽しめて、お母さんだけでなく家族みんなを笑顔にできる。

林久美子コスメバンクプロジェクト理事(以下、林):メイクをすると前向きになり、逆にそれらがないと“やる気”は損なわれる。このプロジェクトでは、それをきちんと検証したい。さらに衣食住に対してプラスαのコスメではなく、自尊心に対して影響を及ぼす大切な存在であることも、この活動を通じて探っていければ。

太田:行政側としては、プレゼントをするだけではいけない。住民の方々に喜んでいただくことはもちろんうれしいが、行政は、支えるだけでなく社会に送り出していく役割を担っている。そこでコスメのプレゼントだけではなくメイクセミナー、特に仕事に役立つという目的でのセミナーになった。今日の参加者の共通点は1人親だが、事情はそれぞれ違う。けれど、1人1人を後押ししたい。最終目標は、いろいろな経緯とともにいろいろな人生があって、さまざまな悩みを抱えていても全ての女性が、自分の人生を生き生きと生きてほしいということ。

林:セミナーでの太田市長の「何かあったら、これを機に市役所に相談して」をいい呼びかけだなぁと思った。「相談していい」「声を上げていい」と感じてもらえたら。今日で帰結するのではなくて、今日を一つのきっかけにしてプラスの影響が波及していくことを願っている。

太田:皆さん少し緊張の面持ちだったが、徐々にリラックスして笑顔が見えた。まずは良かったと思う。

林:気が早いが、次回のことも考えている。求めてくださる方がたくさんいることが分かったので、来年度はもう少し規模を拡大したい。

TEXT:MAHO ISE
PHOTOS:TSUKASA NAKAGAWA

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「膨大なエネルギーを費やした商品を世の中に渡しきりたい」 化粧品業界が余剰品を無償提供の理由

 「アットコスメ」を共同創業した山田メユミと有志はこのほど、「コスメバンクプロジェクト」をスタートした。シングルマザーら経済的困難を抱える女性の世帯に、化粧品メーカーが抱える余剰在庫となったコスメを詰め合わせ、支援団体などを通じて無償提供。今後も「女性と地球にスマイルを」を合言葉に、行き先が決まっていない化粧品を、必要とする人の元に届けることで、余剰品問題に向き合いながらコスメが消費者に提供できる自分への自信や高揚感を届けたい考えだ。今回は、このプロジェクトに参画する化粧品メーカーの理事たちに話を聞いた(この記事は「WWDJAPAN」2022年6月27日号の記事の抜粋です)。

WWDJAPAN(以下、WWD):3人は、どんな経緯や想いで理事に就任した?

北澤恒夫VAHI付加価値人間研究所代表(以下、北澤):私は提供する付加価値の高さから化粧品業界を志し、コーセーに入社しました。一通りを経験し、「化粧品は人の心を明るく、元気に、前向きにするもの」と実感してきました。「コスメバンクプロジェクト」の話を伺い、「素晴らしいですね」と参画を決めました。業界同士を繋げるモデルにして、化粧品を通じて皆さんを元気にしたい。それが、お世話になっている業界への恩返しだと思っています。

檜山敦ロート製薬取締役COO(以下、檜山):「人を幸せにする平和産業」と考えて資生堂に入りました。現在のロート製薬に至るまで一通りを経験しましたが常々、「化粧品は華やかな夢を売る仕事」にも関わらず、一方で「人知れず」「こっそり」廃棄していることが気になっていました。供給方法を考えたり、返品制度を再考したりしてきましたが、廃棄はどうしてもゼロにはならない。大きな矛盾を感じていたんです。この悩みは、あらゆるメーカーにとって共通だと思います。「本当なら廃棄していたものが感動につながれば」と考え、コロナになってすぐに皆さんとのディスカッションを始めました。

山名群ハリウッド取締役(以下、山名):山田メユミさんの志と「コスメバンクプロジェクト」の理念に非常に賛同し、山田さん同様、私も“ワーママ(ワーキングママ)”なので、何かお力になれたらと考えました。

WWD:メーカーとして、やはり廃棄には「やりきれない想い」がある?

檜山:めちゃくちゃあります。良い製品を作っている自負があるからこそ、本当ならまだ使える製品がうず高く積まれ、焼却処分を待っている光景には大きなショックを受けました。「みんながものすごいエネルギーを費やして世の中に送り出しているのに、このまま消えていく現実は、本当に良いのだろうか?」。そんな考えが、日々の仕事から離れることはありません。アウトレットを始めようとすると必ず「ブランド価値の毀損」が心配事として挙がります。でも、そうでもしないと売りさばけないという矛盾を私たちは皆抱えている。「コスメバンクプロジェクト」は、「世の中に渡しきる」システムになり得ると思うんです。

北澤:コーセーの新入社員は入社すると、商品が生まれてから役割を終えるまでの一連を見学します。最初に返品庫を訪れた時は、私も本当にショックでした。業界には、製品を「この子」と呼ぶくらい愛情を注いでいる人が多いですよね?だからこそ役割を全うできて、それが喜ばれるなら素晴らしいことです。

山名:前職の金融とビューティが大きく異なるのは、モノを作っていることです。日本には職人がたくさんいるのに、一方で作っているものを大量に廃棄している。ビューティ業界に飛び込み、最初はその事実に驚きました。ただ海外の人は、「日本人は、物を大事にする」「日本では、物に魂が宿っていると考えられている」と信じています。だからこそ、こんなプロジェクトが日本から生まれたと思うんです。

檜山:(廃棄は)ブランド価値を守るためにはある意味「仕方ない」ことと思っていました。ブランド価値を守るためのトレードオフというか、諦めだったんです。でも隣の業界、例えば食品業界はフードロスに向かって動いています。

北澤:ブランド価値を守ることが「憧れ」や「夢」「元気」につながると思ってきました。でも今は「憧れ」よりも、地に足のついた生活の中で「より良い」を志向する時代に進んでいる気がします。

檜山:デジタルやSNSで、コミュニケーションの環境が変わりました。あらゆる活動と消費者の距離が近づいています。ファッションやビューティは、昔のアイドルのようにバックヤードの姿を見せず今に至りました。でも今は、ドジでかっこ悪いところまで見せられるアイドル、リアルに会えるアイドルが支持されています。社会・経済活動全般が、そんな価値観に応じてシフトしていますよね?

社会課題への解決意識が
強い会社は「2つ返事」

WWD:そんな課題を抱えている企業にとって「コスメバンクプロジェクト」は、ありがたい存在だった?

檜山:廃棄に関して、課題や問題を抱えていると認識していない企業はありません。ロート製薬は社会課題への解決意識が強いので2つ返事でした。ただ他社でも「ウチは、チョット……」というケースは、ほとんどなかったのではないでしょうか?

北澤:メーカーからすると、現在の在庫が生活者に喜んでもらえるなら、尚良しです。

山名:SPAモデルではない限り、「コスメバンクプロジェクト」はありがたい存在です。加えてさまざまなプロボノと連携・連帯できる面白さもあります。恵まれたコラボレーションで進行するプロジェクトに、私自身楽しさややりがいを感じています。

檜山:狭い業界なのに、知らないことがたくさんあることに気づきました。資源には限りがあり、右肩上がりの成長神話なんて崩れている中、一人でも多くの生活者のライフ・タイム・バリューに貢献するには、業界が横に手を広げるべきと感じています。

北澤:私は今、「化粧品のライバルは?」と聞かれたら「携帯電話とディズニーランド」と答えます。いずれも1万円あれば、高い満足度を提供できるでしょう。でも化粧品は一生モノで、元気になれると思っていますけれどね(笑)。こんな考え方含め、ブランドの在り方が大きく変わろうとしています。パーパスの旗の下で、組織がプロジェクトごとに繋がっていく。そして、その過程をコミュニケーションしていく。そんな時代に突入するのではないでしょうか?

山名:私は「女性と地球にスマイルを」という言葉が大好きなんです。より良い世界のためには、やっぱり女性と地球がキーだと思うんです。ハリウッド化粧品の牛山メイ創業者は、「女性が美しい国は、戦争をしない」と説いています。外見だけじゃなくマインドまで、お母さんが美しくなって笑顔になれば、家庭やコミュニティー、会社にポジティブな影響を与えます。

檜山:活動内容をまとめるとき、メーカーに「依存する」関係性にはならないよう配慮しました。廃棄するものでも、商品は商品。そして、ギフトを受け取る女性も消費者であることは変わりません。使ってもらい、いろんな意見を吸収し、フィードバックすることで相互の協力関係を目指しました。今後は、化粧品を受け取った人の自立支援にも取り組みたいですね。

北澤:偏在を是正する、全体最適のプラットフォームとして機能するよう、協力を続けます。

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パリコレデザイナー「ロク」が語るモノづくりの変化 メンズウエア挑戦や「コンバース」コラボなど

ロク・ファン/「ロク」デザイナー

PROFILE:韓国・ソウル生まれ、米テキサス・オースティン育ち。ロンドンのセント・マーチン美術大学でメンズウエアとウィメンズウエアを学ぶ。2010年にフィービー・ファイロによる「セリーヌ」で3年間アシスタントデザイナーを経験後、フリーランスデザイナーとして「ルイ・ヴィトン」や「クロエ」のデザインを手掛ける。16年に自身のブランド「ロク」を立ち上げ、18年度の「LVMHプライズ」で特別賞を受賞。19-20年秋冬に初のランウエイショーをパリで発表。19年に「ビジネス・オブ・ファッション(The Business of Fashion)」の“世界を代表するファッション業界人500人”「BoF500」に選ばれる。PHOTO : KO TSUCHIYA

 「ロク(ROKH)」は、ファッション好きに定評のあるブランドだ。エレガントでありながら、エッジの効いたデザインを強みに、BLACKPINK(ブラックピンク)やハリウッドセレブにも愛されている。デザイナーのロク・ファン(Rok Hwang)は、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)が手掛ける「セリーヌ(CELINE)」で経験を積み、2016年に自身のブランドを設立。18年度「LVMHプライズ」特別賞を受賞し、同年からパリ・ファッション・ウイークでコレクションを発表し続けている。

 12月には「コンバース(CONVERSE)」のトップライン“コンバース アディクト(CONVERSE ADDICT)”との初のコラボレーションを発表し、ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA以下、DSMG)限定のカプセルコレクションを披露。同コレクションはユニセックスで、メンズウエアをローンチする構想の布石となった。3年ぶりに来日を果たしたロク・ファン(Rok Hwang)が、モノづくりやパリへのアトリエ移転計画などを語った。

「コンバース」は憧れ
1990年代のバッシュにように

――「コンバース」とのコラボレーションについて教えてください。

ロク・ファン(以下、ロク):「コンバース」は子どもの頃から好きなシューズブランドだ。特に“チャックテイラー”はアイコニックなので、「ロク」のモデルで作ってみたいと思っていた。「コンバース」がバスケットボールシューズの製造から始まったという歴史もあり、今回のインスピレーションは、僕が子どものときに触れていた1990年代のバッシュだ。さらにアメリカのビンテージへと着想を広げて、レゴや積み木などアメリカの古き良きおもちゃをイメージし、ダブルソールのデザインにした。

――白を基調とした理由は?

ロク:ビンテージから着想を得ながらも、フレッシュな印象を与えたかったので、アイボリーやベージュ、グレーなどを合わせている。特にベージュは「ロク」で多用している色でもあり、ブランドらしさをこのコラボレーションで表現するのにぴったりでした。

――DSMG限定アイテムとして、ユニセックスのウエアも登場しました。

ロク:ウエアは、「コンバース」コラボレーションで用いた90年代のアメリカンビンテージのアイデアを拡張させた。レトロなグラフィックやパッチを付けて、遊び心を加えている。ユニセックスにしたことで、僕自身も着用できるようになった。90年代にアメリカで過ごした、僕のパーソナルでノスタルジックな記憶に結びついるん。

――過去のインタビューで「メンズウエアにも挑戦したい」と語っていました。実現の予定は?

ロク:今、実現に向けて動いているところ。正確な時期は教えられないが、もうすぐだ。

――コラボレーションの相手を選ぶときの基準は?

ロク:「ロク」は派手ではなく、控えめなブランド。だからその世界観にマッチして、お互いにとって有意義な協業にしたい。過去には「アシックス(ASICS)」ともシューズを作ったし、京都の川島織物セルコンというテキスタイルメーカーとチェアを製作した。今も他社とのコラボレーションを企画中なので、楽しみにしていて。

――「ダブレット(DOUBLET)」ともTシャツを共同制作していましたね。

ロク:そう!「ダブレット」の井野(将之)さんとは、「LVMHプライズ」で出会ってから仲良くしてもらっている。彼はクリエイティブで、職人技を深く理解していて、ユーモアをうまく取り入れたスタイルにいつも刺激を受けている。また面白いことを一緒にできたらうれしい。

“アメリカンビューティ”を象徴
テイラー・ヒルをモデルに起用

――23年春夏コレクションのショーについて教えてください。

ロク:僕はいつも現代女性に向けて、美しくエレガントでありながら、エッジの効いた遊び心のある服を提案したいと思っている。23年春夏は“The Irrational View(不合理な見識)”をテーマに、エレガンスと遊び心の対比を楽しんでもらえるようなコレクションだ。例えば、シルエットはマーメードのように華やかでも、部分的にカットアウトしていたり、破けたようなディテールが施されていたり。ちょっとだけひねりを加えている。

――テイラー・ヒル(Taylor Hill)が登場して驚きました。彼女を起用したのはなぜですか?

ロク:テイラーはアメリカを代表するアイコニックなモデルであり、ナチュラルな美しさを象徴しているから。僕がアメリカ育ちというバックグラウンドもあり、“アメリカンビューティ”を表現できるモデルを起用したかった。

――最近はBLACK PINKをはじめとするK-POPアイドルなどの着用も多いですね。反響は?

ロク:素敵な女性たちが着こなしてくれて本当に幸せ。最近はハリウッドスターの着用も増え、ブランドに新しいストーリーが作られていくような感覚。でも、街で「ロク」を着ている人を見かけたときの感動はとても大きく、アイドルやスターたちの着用と同等にうれしい!

ビジネスは好調
パリへのアトリエ移転計画も

――ファンを世界中に拡大していますね。ビジネスも好調でしょうか。

ロク:ありがたいことに好成長を続けている。強力なファンベースが築けているため、コロナ禍でも卸先は減ることがなく、ビジネスを順調に続けることができている。チームメンバーも20人に増えた。

――どの国での人気が高いのでしょうか?

ロク: 特にイギリス・ロンドンと日本が大きな市場だ。

――現在はロンドンを拠点に置いていますが、今後も変わらずロンドンで制作を続けますか?

ロク:実はパリへ拠点を移そうと準備を進めているところ。19年からパリ・ファッション・ウイークでショーを発表しているので、今後はパリにアトリエを構える方が効率的だと考えている。場所は今探しているところだが、順調に進めば23年中にはパリに移りたい。

――パンデミックを経験して、ブランドに変化はありましたか?

ロク:特に変わったのは、働き方ですね。生産チームがポルトガルにいたり、PRオフィスを韓国にオープンさせたりと、他国からでも一緒に働くメンバーが増え、ビジネス基盤も少しずつ固めている。今までは出張が多かったのに、Zoomミーティングで済ませることも増えた。でも、結局最後は直接会って、現物を見ながら話し合うことが大切だ。

ファッション業界を志す人へ
“我慢強くあること”

――「LVMHプライズ」特別賞を獲得してから4年が経ちましたね。同プライズでは毎年、世界中から新しい才能が発掘されています。若い世代のデザイナーたちやファッション業界を志す学生たちにアドバイスを与えるとしたら、どんなことを伝えたいですか?

ロク:僕はまだアドバイスできるようなポジションにはいないと思うけれど……(笑)。ファッションが好きならば、とことん突き進んでほしい。必要なのは我慢強さ。辛いことがあってもすぐに諦めず、根気強くできることを続けるのが成功の秘訣だ。ファッション業界は常に新さが求められているので、僕自身も次世代の新しいクリエイションを見るのが楽しみ。

――23年の抱負は?

ロク:パリで発表した23年春夏コレクションはとても好評だったので、ブランドの世界観により深みを出していきたい。芯の強さを持つ「ロク」の女性像、そのアティチュードもっと表現できるように努めていく。ビジネスでは、自社ECも強化したいので、コミュニケーションの方法を工夫したい。

――ひさしぶりの来日はいかがですか?

ロク:3年ぶりに戻ってくることができてうれしい。今回は4日間と短い滞在だが、週末には箱根へ行く予定だ。

――最近ハマっていること、関心があることは?

ロク:最近はフランスでアウトドアの楽しさを知ってしまった。ドライブをして、山でキャンプをして、自然の中で過ごすことにハマっています。日本でもキャンプが流行していると聞いたので、いつか日本でも体験したい。

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責任者が語るRTFKT​​のコミュニティー構築とクリエイター、Web3.0

 近未来のテクノロジーとファッションを掛け合わせ、瞬く間に世界を席巻した新進気鋭のベンチャー企業、RTFKT(アーティファクト)。一昨年ナイキによる買収を受け、その勢いはさらに増している。

 2022年12月20日に、RTFKTのプロジェクト「クローン X(CLONE X)」のホルダー向けイベントについての記事を公開した。ツイッターの「クローン X」コミュニティーからは想像以上の反響が見られ、驚くことにRTFKTのコミュニティー責任者、YC(ワイシー)とつながり、直接話を聞くことができた。多くの人がまだ知らないRTFKTやNFTの魅力、そして親会社であるナイキとの関係性について話を聞いた。

■NFTの概念について

WWD:NFTの魅力について、どのように考えますか?

YC:まだまだ初期段階ですが、私たちがWeb3.0を信じる大きな理由の一つはデジタルアセットの所有権という考え方があるからです。Web2.0では、私たちはデータや資産を所有せず、所有権はすべて中央集権的な企業のサーバーに置かれています。インターネット上のソーシャルメディアであなたがすることは、すべて誰かのもので、自分でコントロールすることはできません。

 ブロックチェーンを使えば、インターネット上で所有しているものを調べ、伝達することができます。例えば私が「クローン X」を持っていて、ブロックチェーンが私が所有していることを示せば、誰も異論することはありません。平たく言えば、現実の世界で家を所有するとき、その家を所有していることを示す紙の証明書があるのと同じ考え方です。これらの証明書が、Web3.0ではブロックチェーン上にあります。このように、デジタル資産をオンラインで所有することが、Web3.0の大きなビジョンであり、コンセプトです。

 では、このデジタル資産とはどのようなものなのか、というのが問題です。デジタル資産には、現実世界と同じようにさまざまな種類があります。現実の世界と同じで、お金を持っている人が集めることができるという点や、人によっては投資を目的に所有する人もいるでしょう。

 でも、NFTは“実用性”“経験”のために所有する側面もあります。「クローン X」の場合は“デジタル・アイデンティティー““経験”のほか、“コミュニティーへの入り口”と考えていたり、“グローバル・ネットワーク・コミュニティーの構築”を目的にする人もいます。

WWD:NFT所有者が得られる具体的な経験について教えてください

YC:NFTを購入したり、所有したりすることで、私が強調したい経験は3つあります。1つ目は「フォージング(Forging)」。この言葉はゲームからインスピレーションを受けており、RTFKTに関しては、NFTのオーナーがデジタルアイテムをフィジカルアイテムに変換し、両方のバージョンを持つことを意味します。例えば、“RTFKT x ナイキ スペースドリップ エア フォース 1”では、NFT所有者がフィジカルなシューズを手に入れました。

 これらはいわゆる“ワールド・マージング NFC”で、フィジカルスニーカーにもNFC(=Near Field Communication)タグが搭載されているため、アイテムを受け取った後、フィジカルとデジタルの世界をつなげることができます。NFCタグとは、アプリの起動やWebページのURLなどの情報を登録しておくことで、スマートフォンをかざすだけで通信や動作を実行できます。

 そして、私たちが常に心がけているのが「AR体験」です。これは、私たちの「ARパーカ」のフィジカルで示されています。パーカの表と裏の両方にARコードがあり、誰かがスナップチャットでコードをスキャンすると、ARの羽が出現する仕組みです。

 最後に挙げられる例として「3Dファイルの所有」があります。「クローン X」のNFTを所有することで、完全な3Dファイルをダウンロードすることができます。そして、それをスナップチャットにインポートしたり、ブレンダーなどの3Dソフトウェアで使用して、独自の画像やアニメーションを作成することができます。

WWD:NFT超初心者の私におすすめするNFTは?

YC:Web3.0やNFTの世界には、「NFA=Not Financial Advice」という言葉があります。いち従業員として人々の経済的な生活に影響を与えることはできないため、金銭的な意味でのアドバイスはできません。ただ経済的な側面以外で楽しむことを考えるなら「クローンX」の NFTはおすすめです。最もユニークかつRTFKTへの入り口でもあり、コミュニティーの中であなたのデジタル・アイデンティティーを形成できると思います。私たちのコミュニティーでは、誰もが自分のクローンでお互いを認識し、自分のブランドやコンテンツを構築するようになりました。

WWD:先日開催した「クローン X トーキョー(Clone X Tokyo)」の盛り上がりをどう受け止めていますか?

YC:とても刺激だったと思う。この数ヶ月で知り合った日本のコミュニティーに感謝しています。まずクリエイターとして、彼らは非常に芸術的で、美意識が高い作品を制作しています。またコレクターとしては、長期的に作品を所有し、さまざまな方法でプロジェクトをサポートすることに非常に熱心です。そういった理由から、日本のコミュニティーは素晴らしいと心から感じています。

 実は、多くのアーティストがNFTの世界に参入している点で、日本は他の多くの国よりもかなり進んでいます。日本のアーティストたちはプロジェクトに文化をもたらしてくれるのです。だから、RTFKTの創業者たちは早い段階で村上隆とコラボしました。彼らにとって、日本のアーティストとコラボして、日本のアートや文化の大きな部分をPFPコレクション(Profile Picture=SNSのアイコンなどに使われるNFTアート)に取り入れることはとても重要なことなのです。技術やIT系の仕事をする人は「アバター」という言葉を知っていると思いますが、最近はほぼPFPに追い越される形で使用されています。

■RTFKTの取り組みや所有者の特徴

WWD:RTFKTがこれほどまでに大きな存在に成長している理由とは?

YC:さまざまな理由で人気があるのだと思います。一つは、多くの人が芸術を好きだから。2Dのプロジェクトが多い中、RTFKTは数少ない3DネイティブのPFPプロジェクトです。2Dももちろん素晴らしいですが、3次元ではより多角的なアイデアを実現してくれるため、アート好きの人々の注目を集めているのでしょう。そしてさまざまな特徴を持つコレクションがあるのも彼らにとって魅力なのだと思います。

WWD:RTFKTとして、これまでに最も成功した取り組みは何だと思いますか?

YC:創業者たちは違う視点を持っているかもしれないですが、もし私が選ぶとしたら、私たちがナイキに買収されたのと同じ時期に生まれた「クローン X」ですね。私たちが行った唯一のPFPコレクションで、最も成功したものであり、PFPコレクションの原型とも言えるでしょう。

 「クローン X」がパワフルである理由は2つあると思います。第一に、2万体もののコレクションを持っていて、1万人のホルダーがいます。それらのホルダーがコミュニティーを形成するのはとても強力で、継続力があります。

 2つ目は、デジタルアイデンティティーの表現です。「クローン X」のNFTを所有すると、3Dファイルをダウンロードすることができ、3Dファイルをダウンロードして3Dのスキルを学び、自分自身のブランドを構築することができます。

WWD:「クローン X」の始まりについて教えてください。どのように配布されたのでしょうか?

YC:2021年11月時点でのRTFKT保有者に向け、優先的に「ミントバイアル(Mintvial)」を低価格で配布し、一部は一般販売も行いました。それぞれの「ミントバイアル」はその後、ランダム化されたクローンとして生まれます。その後、ホルダーには3Dファイルやクローンの使い方をまとめたユーティリティーも納品しています。

 村上隆をはじめとするアーティストとのコラボレーションもあり、「クローン X」に素晴らしいアートとカルチャーを吹き込んでくれました。3Dアートのクオリティーの高さと、3Dアバターの可能性に感動していただけたようで、とても好評でした。

WWD:国籍、世代など、RTFKTのNFTホルダーの特徴は?

YC:アメリカではロサンゼルスやニューヨーク、そのほかドイツやフランス、イギリスのほか、日本、中国、韓国、台湾、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドなどの国や都市は、強力なホルダーやコミュニティーが存在する主要都市です。共通するのは、経済先進国であるということ。察する通り、NFTは安い買い物ではないので、金銭的に余裕があり、経済システムに参加できるのは、概して先進国の人たちになってしまいます。

 パーソナリティーとしては、テクノロジーに熱心な人たちが多いですが、音楽を好む人やファッションに情熱を傾ける人などさまざまで、10代から定年退職した人まで年齢層は幅広いです。

■RTFKTの人員構成について

WWD:RTFKTにおけるあなたの役割とは?

YC:私は、コミュニケーション&エクスペリエンスの責任者として、3つのことを担当しています。1つ目は「コミュニケーション」。Web3.0は、多くの人にとってまだ少し分かりにくいところがあり、簡単に理解できることではありません。私は創業者たちと一緒に、人々が知るべきことを確実に伝えます。

 2つ目は「コミュニティーの活性化」。私は「クローン X トーキョー」のオーガナイザーではありませんが、コミュニティーのオーガナイザーとして、資金やコンテンツなど、彼らが必要とするものを全て提供し、サポートしました。ツイッターでバーチャル・コミュニティーを運営したりなど、オンライン上でコミュニティーを形成することも可能ですが、デジタルな関係だけでなく、フィジカルな関係も必要だと私たちは考えています。バーチャルとフィジカルが組み合わさることで、より強力な結束が生まれるのです。それぞれの地域文化、コミュニティーのリーダーやオーガナイザーによって、多様な取り組みが行われています。

 最後に「コレクターズ・エクスペリエンス」と言われる、私たちの経験を集約した戦略についての役割があります。「クローン X」だけでなく、RTFKTにはさまざまなNFTプロジェクトがあり、参加している人は誰でもコレクターとみなされます。その上で、私の仕事は「ホルダーの経験とは何か」を考えるサポートをすることです。つまり「クローン X」を所有していることで、単に所有するだけではなくどんな実体験ができるのか、ということです。バーチャルなデジタル体験だけではなく、フィジカルにおける体験でもあります。

WWD:RTFKTのチームはどのような人員構成になっているのでしょうか?

YC:私たちはみんな、Web3.0の精神を強く持っているので、フリーランスや契約人材が多くを占めます。おそらく正社員は35〜40人程度になるでしょう。嘘っぽく聞こえるかもしれませんが、チーム全員が非常に活躍していると思います。皆さんが魅力を感じるようなビジュアルやコンテンツ制作、クリエイティブディレクションを管理しているのはRTFKTの創業者たちです。

 私たちの活動はテクノロジー、ファッション、そしてアートの組み合わせなので、それぞれのエキスパートが必要です。そして当然ながら、NFTのデジタル資産はブロックチェーンに大きく依存しているので、技術チームも非常に重要。また、デザインチーム、ビジュアルデザイナー、コンテンツチームと呼ばれる人たちもいます。彼らはビジュアルデザインから、3D、アニメーション、そしてコンテンツに関わるものまで、すべての制作を担います。ファッションを担当するチームは素材やデザイン、制作、配送のことを考えなければなりません。また、Web3.0ではコミュニティー形成が非常に大切なポイントとなるので、私が属するコミュニティーチームも重要だと思いたいですね。

WWD:さまざまなクリエイターが所属したり、コラボしたりしていますが、どのように彼らを選抜しているのでしょうか?

YC:私たちのクリエイティブ・チームはクレイジーなほど、才能に溢れています。その多くは創業メンバーたちが見つけた才能で、非常に厳選されていると思います。そして私たちが人材を見つける方法は手作業で選ぶことが多く、履歴書をチェックすることはあまりありません。

 私たちスタッフの何人かは、元々はNFTコミュニティーのメンバーとして活動していました。時間が経つにつれて、私たちがコミュニティーのために多くのことを行っていることをRTFKTチームが知り、採用に至ったケースもあります。面白いことをやっている人、チームのビジョンに合っている人など、ほとんどは創業者によって、過去の関係やこれまでの実績に基づいて選ばれていると思われます。

 さまざまなコレクションを作るのは、創業者が選んだ19人のアーティストです。有名なアーティストばかりではありませんが、信じられないほどの才能があふれています。中には16歳や18歳の若者もおり、その若さですでに「ナイキ(NIKE)」の“エア フォース 1”をデザインしています。NFTにはロイヤリティーという概念があるので、アーティストと印税を共有しています。だからこそまだ若い彼らも収入を獲得することができるのです。若くて有望なアーティストに力を与え、才能を発揮してもらいたいという私たちRTFKTの信念と情熱を示す、良い例と言えるでしょう。

■ナイキとの関わりについて

WWD:ナイキによる買収を受け入れた理由とは?

YC:具体的な理由は創業者たちにしかわかり得ませんが、少なくとも私が言えることは、ナイキとRTFKTのパートナーシップはWin-Winの関係で、とても健康的であるということです。私たちにとって、ナイキのブランド力を活用できるのは明らかです。例えばスニーカーにおいて、彼らの象徴的なアイコンスニーカーである“エア フォース 1”を一緒に作ることができるし、製造や生産から配送までの大きなサプライチェーンも活用できる。これらはナイキが得意とする分野で、彼らが何十年も構築してきた財産です。

 逆に私たちがナイキにもたらすものは、Web3.0での概念や具体的なやり方です。RTFKTは、Web3.0を通じたクリエイターコミュニティの運営や構築の手本となることができます。

 また、RTFKTにとって本当にありがたい部分は、ナイキがWeb3.0の空間そのものが全く新しいものであることを理解し、RTFKTに多くの自主性を与えてくれたということ。私たちが効率的に動き結果を出すには、活動するための余白が必要です。タッグを組むことで、彼らは自分たちの目標を実現すると同時に、私たちの活動を支援し、スペースを提供してくれます。

■RTFKTの今後について

WWD:RTFKTの今後のビジョンについて教えてください

YC:今年は“ストーリーテリング”に焦点を当て、ホルダーの経験を強化したいと思っています。コミュニティーのために、私たちが行うすべてにおいてストーリーを構築することで、デジタルでもフィジカルでも最高の体験を提供したいです。人々は製品をただ買うだけではなく、製品に付随する経験を得たいと思うようになってきたように感じます。“ストーリーテリング”における例として、「リモワ(RIMOWA)」とのコラボレーションが挙げられます。ブランドの象徴的なスーツケースを作るまでの仮想ストーリーと冒険が、まるで映画のようにダイナミックな動画作品で公開されています。人々が背景を知ることで、自分もそのストーリーの一部であると実感できるのです。

 そしてクリエイターを目指す人たちを一層支援し、彼らの作品にスポットライトを当て続けたいと考えています。正直なところ、この2つに尽きます。

 来年以降に関しては、正直予測がつきません。なぜならWeb3.0はとても新しい空間で、未来にどのような技術やアイデア、コンセプトが生まれるかを予測することは不可能なんです。来年度の計画を持ちながら広い視野で動いていきたいと考えていますが、長期にわたる厳格な計画を持つことは、イノベーションを止めてしまう可能性があるので避けています。この分野はとても新しいので、常にオープンである必要があると考えています。

WWD:RTFKTの次なる注目ニュースは?

YC:最近公開したものであれば、「アニマスエッグ(ANIMUS EGG)」と呼ばれる新たなNFTで、「クローン X」のクローン保有者に1つずつ与えられるエアドロップ(無料の配布)です。

 卵の中に何が入っているのかはもうすぐ知ることになりますが、実は卵の中に何が入っているのか、すでにビジュアル上でヒントを出しているんです。クローンが2万体あるので、2万個の卵を用意しています。すべてのクローンがアニマスと呼ばれる小さなペットを飼っているとします。サトシとピカチュウのように、クローンはアニマスと一緒にさまざまな冒険に行き、クエストに参加することができるのです。それぞれが保有しているクローンがどこから来たのか、そしてどんな生活をしているのかをホルダーが実際に体験し、知ることができます。つまりこれらは、私たちが掲げる2023年の目標“ストーリーテリング”の模範的な例になると言えるでしょう。
 

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責任者が語るRTFKT​​のコミュニティー構築とクリエイター、Web3.0

 近未来のテクノロジーとファッションを掛け合わせ、瞬く間に世界を席巻した新進気鋭のベンチャー企業、RTFKT(アーティファクト)。一昨年ナイキによる買収を受け、その勢いはさらに増している。

 2022年12月20日に、RTFKTのプロジェクト「クローン X(CLONE X)」のホルダー向けイベントについての記事を公開した。ツイッターの「クローン X」コミュニティーからは想像以上の反響が見られ、驚くことにRTFKTのコミュニティー責任者、YC(ワイシー)とつながり、直接話を聞くことができた。多くの人がまだ知らないRTFKTやNFTの魅力、そして親会社であるナイキとの関係性について話を聞いた。

■NFTの概念について

WWD:NFTの魅力について、どのように考えますか?

YC:まだまだ初期段階ですが、私たちがWeb3.0を信じる大きな理由の一つはデジタルアセットの所有権という考え方があるからです。Web2.0では、私たちはデータや資産を所有せず、所有権はすべて中央集権的な企業のサーバーに置かれています。インターネット上のソーシャルメディアであなたがすることは、すべて誰かのもので、自分でコントロールすることはできません。

 ブロックチェーンを使えば、インターネット上で所有しているものを調べ、伝達することができます。例えば私が「クローン X」を持っていて、ブロックチェーンが私が所有していることを示せば、誰も異論することはありません。平たく言えば、現実の世界で家を所有するとき、その家を所有していることを示す紙の証明書があるのと同じ考え方です。これらの証明書が、Web3.0ではブロックチェーン上にあります。このように、デジタル資産をオンラインで所有することが、Web3.0の大きなビジョンであり、コンセプトです。

 では、このデジタル資産とはどのようなものなのか、というのが問題です。デジタル資産には、現実世界と同じようにさまざまな種類があります。現実の世界と同じで、お金を持っている人が集めることができるという点や、人によっては投資を目的に所有する人もいるでしょう。

 でも、NFTは“実用性”“経験”のために所有する側面もあります。「クローン X」の場合は“デジタル・アイデンティティー““経験”のほか、“コミュニティーへの入り口”と考えていたり、“グローバル・ネットワーク・コミュニティーの構築”を目的にする人もいます。

WWD:NFT所有者が得られる具体的な経験について教えてください

YC:NFTを購入したり、所有したりすることで、私が強調したい経験は3つあります。1つ目は「フォージング(Forging)」。この言葉はゲームからインスピレーションを受けており、RTFKTに関しては、NFTのオーナーがデジタルアイテムをフィジカルアイテムに変換し、両方のバージョンを持つことを意味します。例えば、“RTFKT x ナイキ スペースドリップ エア フォース 1”では、NFT所有者がフィジカルなシューズを手に入れました。

 これらはいわゆる“ワールド・マージング NFC”で、フィジカルスニーカーにもNFC(=Near Field Communication)タグが搭載されているため、アイテムを受け取った後、フィジカルとデジタルの世界をつなげることができます。NFCタグとは、アプリの起動やWebページのURLなどの情報を登録しておくことで、スマートフォンをかざすだけで通信や動作を実行できます。

 そして、私たちが常に心がけているのが「AR体験」です。これは、私たちの「ARパーカ」のフィジカルで示されています。パーカの表と裏の両方にARコードがあり、誰かがスナップチャットでコードをスキャンすると、ARの羽が出現する仕組みです。

 最後に挙げられる例として「3Dファイルの所有」があります。「クローン X」のNFTを所有することで、完全な3Dファイルをダウンロードすることができます。そして、それをスナップチャットにインポートしたり、ブレンダーなどの3Dソフトウェアで使用して、独自の画像やアニメーションを作成することができます。

WWD:NFT超初心者の私におすすめするNFTは?

YC:Web3.0やNFTの世界には、「NFA=Not Financial Advice」という言葉があります。いち従業員として人々の経済的な生活に影響を与えることはできないため、金銭的な意味でのアドバイスはできません。ただ経済的な側面以外で楽しむことを考えるなら「クローンX」の NFTはおすすめです。最もユニークかつRTFKTへの入り口でもあり、コミュニティーの中であなたのデジタル・アイデンティティーを形成できると思います。私たちのコミュニティーでは、誰もが自分のクローンでお互いを認識し、自分のブランドやコンテンツを構築するようになりました。

WWD:先日開催した「クローン X トーキョー(Clone X Tokyo)」の盛り上がりをどう受け止めていますか?

YC:とても刺激だったと思う。この数ヶ月で知り合った日本のコミュニティーに感謝しています。まずクリエイターとして、彼らは非常に芸術的で、美意識が高い作品を制作しています。またコレクターとしては、長期的に作品を所有し、さまざまな方法でプロジェクトをサポートすることに非常に熱心です。そういった理由から、日本のコミュニティーは素晴らしいと心から感じています。

 実は、多くのアーティストがNFTの世界に参入している点で、日本は他の多くの国よりもかなり進んでいます。日本のアーティストたちはプロジェクトに文化をもたらしてくれるのです。だから、RTFKTの創業者たちは早い段階で村上隆とコラボしました。彼らにとって、日本のアーティストとコラボして、日本のアートや文化の大きな部分をPFPコレクション(Profile Picture=SNSのアイコンなどに使われるNFTアート)に取り入れることはとても重要なことなのです。技術やIT系の仕事をする人は「アバター」という言葉を知っていると思いますが、最近はほぼPFPに追い越される形で使用されています。

■RTFKTの取り組みや所有者の特徴

WWD:RTFKTがこれほどまでに大きな存在に成長している理由とは?

YC:さまざまな理由で人気があるのだと思います。一つは、多くの人が芸術を好きだから。2Dのプロジェクトが多い中、RTFKTは数少ない3DネイティブのPFPプロジェクトです。2Dももちろん素晴らしいですが、3次元ではより多角的なアイデアを実現してくれるため、アート好きの人々の注目を集めているのでしょう。そしてさまざまな特徴を持つコレクションがあるのも彼らにとって魅力なのだと思います。

WWD:RTFKTとして、これまでに最も成功した取り組みは何だと思いますか?

YC:創業者たちは違う視点を持っているかもしれないですが、もし私が選ぶとしたら、私たちがナイキに買収されたのと同じ時期に生まれた「クローン X」ですね。私たちが行った唯一のPFPコレクションで、最も成功したものであり、PFPコレクションの原型とも言えるでしょう。

 「クローン X」がパワフルである理由は2つあると思います。第一に、2万体もののコレクションを持っていて、1万人のホルダーがいます。それらのホルダーがコミュニティーを形成するのはとても強力で、継続力があります。

 2つ目は、デジタルアイデンティティーの表現です。「クローン X」のNFTを所有すると、3Dファイルをダウンロードすることができ、3Dファイルをダウンロードして3Dのスキルを学び、自分自身のブランドを構築することができます。

WWD:「クローン X」の始まりについて教えてください。どのように配布されたのでしょうか?

YC:2021年11月時点でのRTFKT保有者に向け、優先的に「ミントバイアル(Mintvial)」を低価格で配布し、一部は一般販売も行いました。それぞれの「ミントバイアル」はその後、ランダム化されたクローンとして生まれます。その後、ホルダーには3Dファイルやクローンの使い方をまとめたユーティリティーも納品しています。

 村上隆をはじめとするアーティストとのコラボレーションもあり、「クローン X」に素晴らしいアートとカルチャーを吹き込んでくれました。3Dアートのクオリティーの高さと、3Dアバターの可能性に感動していただけたようで、とても好評でした。

WWD:国籍、世代など、RTFKTのNFTホルダーの特徴は?

YC:アメリカではロサンゼルスやニューヨーク、そのほかドイツやフランス、イギリスのほか、日本、中国、韓国、台湾、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドなどの国や都市は、強力なホルダーやコミュニティーが存在する主要都市です。共通するのは、経済先進国であるということ。察する通り、NFTは安い買い物ではないので、金銭的に余裕があり、経済システムに参加できるのは、概して先進国の人たちになってしまいます。

 パーソナリティーとしては、テクノロジーに熱心な人たちが多いですが、音楽を好む人やファッションに情熱を傾ける人などさまざまで、10代から定年退職した人まで年齢層は幅広いです。

■RTFKTの人員構成について

WWD:RTFKTにおけるあなたの役割とは?

YC:私は、コミュニケーション&エクスペリエンスの責任者として、3つのことを担当しています。1つ目は「コミュニケーション」。Web3.0は、多くの人にとってまだ少し分かりにくいところがあり、簡単に理解できることではありません。私は創業者たちと一緒に、人々が知るべきことを確実に伝えます。

 2つ目は「コミュニティーの活性化」。私は「クローン X トーキョー」のオーガナイザーではありませんが、コミュニティーのオーガナイザーとして、資金やコンテンツなど、彼らが必要とするものを全て提供し、サポートしました。ツイッターでバーチャル・コミュニティーを運営したりなど、オンライン上でコミュニティーを形成することも可能ですが、デジタルな関係だけでなく、フィジカルな関係も必要だと私たちは考えています。バーチャルとフィジカルが組み合わさることで、より強力な結束が生まれるのです。それぞれの地域文化、コミュニティーのリーダーやオーガナイザーによって、多様な取り組みが行われています。

 最後に「コレクターズ・エクスペリエンス」と言われる、私たちの経験を集約した戦略についての役割があります。「クローン X」だけでなく、RTFKTにはさまざまなNFTプロジェクトがあり、参加している人は誰でもコレクターとみなされます。その上で、私の仕事は「ホルダーの経験とは何か」を考えるサポートをすることです。つまり「クローン X」を所有していることで、単に所有するだけではなくどんな実体験ができるのか、ということです。バーチャルなデジタル体験だけではなく、フィジカルにおける体験でもあります。

WWD:RTFKTのチームはどのような人員構成になっているのでしょうか?

YC:私たちはみんな、Web3.0の精神を強く持っているので、フリーランスや契約人材が多くを占めます。おそらく正社員は35〜40人程度になるでしょう。嘘っぽく聞こえるかもしれませんが、チーム全員が非常に活躍していると思います。皆さんが魅力を感じるようなビジュアルやコンテンツ制作、クリエイティブディレクションを管理しているのはRTFKTの創業者たちです。

 私たちの活動はテクノロジー、ファッション、そしてアートの組み合わせなので、それぞれのエキスパートが必要です。そして当然ながら、NFTのデジタル資産はブロックチェーンに大きく依存しているので、技術チームも非常に重要。また、デザインチーム、ビジュアルデザイナー、コンテンツチームと呼ばれる人たちもいます。彼らはビジュアルデザインから、3D、アニメーション、そしてコンテンツに関わるものまで、すべての制作を担います。ファッションを担当するチームは素材やデザイン、制作、配送のことを考えなければなりません。また、Web3.0ではコミュニティー形成が非常に大切なポイントとなるので、私が属するコミュニティーチームも重要だと思いたいですね。

WWD:さまざまなクリエイターが所属したり、コラボしたりしていますが、どのように彼らを選抜しているのでしょうか?

YC:私たちのクリエイティブ・チームはクレイジーなほど、才能に溢れています。その多くは創業メンバーたちが見つけた才能で、非常に厳選されていると思います。そして私たちが人材を見つける方法は手作業で選ぶことが多く、履歴書をチェックすることはあまりありません。

 私たちスタッフの何人かは、元々はNFTコミュニティーのメンバーとして活動していました。時間が経つにつれて、私たちがコミュニティーのために多くのことを行っていることをRTFKTチームが知り、採用に至ったケースもあります。面白いことをやっている人、チームのビジョンに合っている人など、ほとんどは創業者によって、過去の関係やこれまでの実績に基づいて選ばれていると思われます。

 さまざまなコレクションを作るのは、創業者が選んだ19人のアーティストです。有名なアーティストばかりではありませんが、信じられないほどの才能があふれています。中には16歳や18歳の若者もおり、その若さですでに「ナイキ(NIKE)」の“エア フォース 1”をデザインしています。NFTにはロイヤリティーという概念があるので、アーティストと印税を共有しています。だからこそまだ若い彼らも収入を獲得することができるのです。若くて有望なアーティストに力を与え、才能を発揮してもらいたいという私たちRTFKTの信念と情熱を示す、良い例と言えるでしょう。

■ナイキとの関わりについて

WWD:ナイキによる買収を受け入れた理由とは?

YC:具体的な理由は創業者たちにしかわかり得ませんが、少なくとも私が言えることは、ナイキとRTFKTのパートナーシップはWin-Winの関係で、とても健康的であるということです。私たちにとって、ナイキのブランド力を活用できるのは明らかです。例えばスニーカーにおいて、彼らの象徴的なアイコンスニーカーである“エア フォース 1”を一緒に作ることができるし、製造や生産から配送までの大きなサプライチェーンも活用できる。これらはナイキが得意とする分野で、彼らが何十年も構築してきた財産です。

 逆に私たちがナイキにもたらすものは、Web3.0での概念や具体的なやり方です。RTFKTは、Web3.0を通じたクリエイターコミュニティの運営や構築の手本となることができます。

 また、RTFKTにとって本当にありがたい部分は、ナイキがWeb3.0の空間そのものが全く新しいものであることを理解し、RTFKTに多くの自主性を与えてくれたということ。私たちが効率的に動き結果を出すには、活動するための余白が必要です。タッグを組むことで、彼らは自分たちの目標を実現すると同時に、私たちの活動を支援し、スペースを提供してくれます。

■RTFKTの今後について

WWD:RTFKTの今後のビジョンについて教えてください

YC:今年は“ストーリーテリング”に焦点を当て、ホルダーの経験を強化したいと思っています。コミュニティーのために、私たちが行うすべてにおいてストーリーを構築することで、デジタルでもフィジカルでも最高の体験を提供したいです。人々は製品をただ買うだけではなく、製品に付随する経験を得たいと思うようになってきたように感じます。“ストーリーテリング”における例として、「リモワ(RIMOWA)」とのコラボレーションが挙げられます。ブランドの象徴的なスーツケースを作るまでの仮想ストーリーと冒険が、まるで映画のようにダイナミックな動画作品で公開されています。人々が背景を知ることで、自分もそのストーリーの一部であると実感できるのです。

 そしてクリエイターを目指す人たちを一層支援し、彼らの作品にスポットライトを当て続けたいと考えています。正直なところ、この2つに尽きます。

 来年以降に関しては、正直予測がつきません。なぜならWeb3.0はとても新しい空間で、未来にどのような技術やアイデア、コンセプトが生まれるかを予測することは不可能なんです。来年度の計画を持ちながら広い視野で動いていきたいと考えていますが、長期にわたる厳格な計画を持つことは、イノベーションを止めてしまう可能性があるので避けています。この分野はとても新しいので、常にオープンである必要があると考えています。

WWD:RTFKTの次なる注目ニュースは?

YC:最近公開したものであれば、「アニマスエッグ(ANIMUS EGG)」と呼ばれる新たなNFTで、「クローン X」のクローン保有者に1つずつ与えられるエアドロップ(無料の配布)です。

 卵の中に何が入っているのかはもうすぐ知ることになりますが、実は卵の中に何が入っているのか、すでにビジュアル上でヒントを出しているんです。クローンが2万体あるので、2万個の卵を用意しています。すべてのクローンがアニマスと呼ばれる小さなペットを飼っているとします。サトシとピカチュウのように、クローンはアニマスと一緒にさまざまな冒険に行き、クエストに参加することができるのです。それぞれが保有しているクローンがどこから来たのか、そしてどんな生活をしているのかをホルダーが実際に体験し、知ることができます。つまりこれらは、私たちが掲げる2023年の目標“ストーリーテリング”の模範的な例になると言えるでしょう。
 

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プレタ依存からアクセサリーも柱に ジャパン社社長が語る「ランバン」改革の進ちょく

 「ランバン(LANVIN)」は昨冬、東京・銀座に新たな旗艦店をオープンした。ブランドを手掛けるのは現在、中国のフォースン ファッション グループ(FOSUN FASHION GROUP)改めランバン グループ。銀座店の運営は、本国出資100%のランバン ジャパンが手掛け、コロネットは卸とPRを担当している。相次ぐデザイナー交代で迷走していた「ランバン」は現在、どのような状況なのか?グレイス・ジャオ(Grace Zhao)社長に話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):「ランバン」が銀座にカムバックした。

グレース・ジャオ=ランバン ジャパン社長(以下、ジャオ社長):ゴールドのリーフ飾りなどでパリの店舗から得たインスピレーションを表現しながら、オープン当初は河村康輔さんとのコラボレーションで日本らしさを加えることもできた。ソフトでフェミニン、ラグジュアリーなのに居心地が良い「ランバン」らしい空間に仕上がったと思う。

WWD:そもそも、現在の「ランバン」の店舗網は?

ジャオ社長:パリの他、北京や上海など中国では10店舗程度を営業している。中国本土以外のアジアでは、香港や台湾にも店舗を持っている。

WWD:その中で、日本はどんな位置付け?

ジャオ社長:とても重要。日本人は流行に敏感で、賢く消費し、確固たるスタイルを持っている。アジアでのコロナの影響は今なお小さくないが、それでも東京の街には活気が戻り、もう一度外に出て、楽しみたいというムードが盛り上がってきた。イヴニングドレスも有名な「ランバン」にとって、銀座店のオープンは絶好のタイミングだ。

WWD:とはいえ、日本でイヴニングはなかなか難しい。

ジャオ社長:「ランバン」ウーマンは、“コケット(フランス語で、可愛らしい色っぽさの意味)”。ブランドの本質と、日本人女性の精神性は近いと思う。加えて今の若い世代は、ドレスをオケージョンウエアとは捉えていない。日常生活やビーチでさえ楽しむほどのアティチュードを持っている。「ランバン」のドレスは、ハイヒールにもビーチサンダルにもピッタリ。エレガントな洋服を自分らしく、楽しく、コケットにまとう価値観も訴えたい。

WWD:アルベール・エルバス(Alber Elbaz)の退任以降しばらくはクリエイティブ・ディレクターも定着せず、そもそもオーナーが変わり、混乱していた。現状は?

ジャオ社長:この2年で状況は安定・好転した。私たちは今の「ランバン」の可能性を強く信じ、経済的にもクリエイティブな環境整備においても、パリをサポートしてきた。幸い、この2年でアイコニックな商品がいくつも誕生した。スニーカーの“カーブ”、バッグの“ペンシル”“ペンシル キャット”は代表例だ。以前は、プレタポルテとイヴニングで支持されていたが、今はバッグやシューズのビジネスも大きい。おかげで中国では百貨店での存在感もアップした。望まれるブランドに成長を遂げつつある。加えて、オンラインのビジネスも成長している。中国ではすでに、全体の3割を担っている。

WWD:その成功体験を日本でも実現したい?

ジャオ社長:同じことができるとも、少し違うとも思っている。同じアジアでも、日本人と中国人のライフスタイルは違う。たとえば日本人は、色彩において中国よりもコンサバ。明るい色の商品には慎重になるだろう。ローカルなアプローチが必要だ。贈り物文化の中国では、パリのクリエイティブチームが主導する形でギフトアイテムを提案した。日本にも同じような文化があるが、贈り合うギフトは異なるだろう。日本のパートナーの伊藤忠商事やコロネットと一緒に、どんなローカル戦略がふさわしいのか考えたい。パリや中国のように日本でもエモーショナルにつながるには、日本の価値を知るパートナーの存在が大事。一方、パリのクリエイティブチームの価値を毀損することもしない。デザインの主導権は、あくまでもパリだ。

WWD:「ランバン」は、日本ではライセンスブランドも手掛けている。

ジャオ社長:ランバン グループの前身のフォースン ファッション グループ(FOSUN FASHION GROUP)の頃から、私たちはライセンスビジネスに強い。ブランドの一貫性については気を遣うが、今の消費者は賢い。ジャケットのライニングまでシルクの「ランバン」は、ライセンスブランドとは違う。消費者も、その違いは認識できるだろう。

WWD:銀座を皮切りに、日本でも出店戦略を加速させる?

ジャオ社長:2023年春夏は、伊勢丹新宿本店メンズ館に出店する。ただ、まずは銀座店の成功が大事。さまざまな可能性は模索しているが、具体的な数字は設けていない。

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高校生のときからコロナ禍 理学療法士を目指す大学生が思い描く「EverWonderな未来」とは?

 人々の心に火を灯す機会を提供することを目的に、クリエイティブディレクターにGReeeeNのHIDEを迎えた一般財団法人渡辺記念育成財団は、EverWonderプロジェクトを発足した。構想中のプロジェクトは、同財団が次世代の芸能プロデューサーを支援する「みらい塾」の奨励生が企画進行している。今回は、第5期奨励生で京都橘大学健康科学部理学療法学科の栗原みなみが、同じ大学で共に理学療法士を目指す友人とともに「コロナ禍の学生生活を過ごしてきた彼女たちが思い描く未来」についてのディスカッションする。

栗原みなみ京都橘大学健康科学部理学療法学科2年(以下、栗原):私はずっと子どもに関わる仕事につきたいと思い、病気や怪我をしている子どもの役に立ちたいと理学療法士を志ました。適切な理学療法も大事ですが、それ以上に患者さんの精神面のケアも重要だなと。そこで私は、「みらい塾」で理学療法の世界にエンタメを取り入れたいと思っています。

永江帆乃嘉同2年(以下、永江):初めて知った(笑)。たしかに、理学療法士のメンタルケアはとても大事です。私は中高バスケ部に所属していましたが、高校2年生の時に膝の前十字靱帯を損傷してしまいました。その際お世話になった理学療法士さんが精神面で支えてくれました。過去に自分と同じ怪我をしており、「ちゃんとリハビリしないと、日常生活にも支障をきたす」と丁寧に説明してくださって、リハビリを前向きに頑張れるようになりました。その時、理学療法士に憧れました。

奥村文花同2年(以下、奥村):私も高校生のときに部活で怪我をして。お世話になった理学療法士さんの影響で今の大学に進学しました。

辻岡萌同2年(以下、辻岡):私は進学できそうなところを探していたら、今の大学を見つけました(笑)。もちろん理学療法士の仕事は、祖母のリハビリに同行して興味も持っていましたが。

奥村:学生生活は、意外と普通の大学生と同じかもしれません。私は古着が大好きなので、よく古着屋さん巡りをしています。テスト勉強とかが辛くても、それがモチベーションの維持に繋がっています。

永江:私は彼氏かな(笑)。

栗原&奥村、辻岡:ですよね(笑)。

辻岡:私はNetflixとかYouTubeばかり見ています。コロナのせいで新しい出会いも特になく、彼氏もできなさそうなので。

栗原:普段から恋バナばかりしているから、質問から脱線してしまいました(笑)。理学療法士学科らしいところと言えば、実習で患者さんと接する機会があることですかね。実習で感じたことはありますか?

辻岡:患者さんに元気になってもらうためには、コミュニケーションを通して知ったり、メンタルケアをしたりが一番大事です。一方、ご年配の患者さんが多かったので、共通の話題を見つけるのに苦労しました。

栗原:私もそれは痛感しました。毎日ニュースを見るようにして、ご年配の患者さんとの会話のネタにしていました。日頃から積極的に色々な人と交流を持ったり、様々な経験を積んだりしてコミュニケーション力を高めることが大事だと思いました。

奥村:新しい出会いは大事ですが、やはりコロナの影響で難しくなったと思います。ただで忙しく、サークルには入れないので。

永江:マスクで第一印象が分からないのも大きいと思います。やはり顔と顔を合わせて話をしないと相手のことは深く理解できず、新しく出会った人と親密になることも難しいです。

辻岡:私たちは、今までの人たちとはかなり異なる学生生活を送っていると思います。修学旅行や文化祭、ライブや旅行も思うようにできなかったので。

栗原:体育祭のリレーでは、ソーシャル・ディスタンスを保つためバトンの代わりに畳を使いました(笑)。本当は真剣勝負のリレーをしたかったけれど、結果的にそれはそれで盛り上がったのでよかったです。工夫をして楽しめることはありますが、それでも憂鬱になってしまうことはありますよね。

奥村:コロナの影響でインターハイがなくなってしまったのが本当に悔しかったです。大半の時間を遊びや学業よりも部活に割いて頑張っていたので。大会がなくなったときはとても落ち込み、何に対してもやる気が起きませんでした。頑張っても意味がないと半ば自暴自棄になり、そのまま引退してしまおうとも思いました。しかし、顧問の先生から励ましの電話をもらったり、親に何度も相談に乗ってもらったりして、なんとか引退せずに部活を続けようと気持ちを切り替えることができました。

栗原:私も目標にしていた試合がなくなったので、同じような気持ちになりました。それでも、コロナ禍にしかできないこともあるし、考え方次第で辛いことも乗り越えられると思えるようになりました。

辻岡:コロナ禍は一人で過ごす時間がとても増えたので、何をするにしても自分の意思をしっかりと持つことが求められるようになったと思います。オンライン授業のおかげで自由な時間が増えたからこそ、その時間をどれだけ有意義に過ごせるかで人との差が生まれます。私は、ぼーっとしていると、あっという間になんとなく理学療法士になってしまうのでは?という焦りがあります。最近は理学療法士の枠に収まらずさまざまなキャリアを築く方法もあるようなので、自分なりの道を探したいと思います。

永江:私も含めみんな理学療法士になるとは思いますが、やはり単にリハビリをサポートするだけではなく、心のケアもしっかりとできるようになりたいと思います。私自身も部活で怪我をしたとき、当時の理学療法士が励まそうとしてくれたり、リハビリに立ち向かう勇気をくれたりしたので。

奥村:「理学療法士になることは、決してゴールじゃない」とよく聞きます。なってからが大事だと思うのですが、ただでさえ勉強やテストに苦労している現状を考えると、将来が不安になることがあります。今は4人で支え合いながら頑張れているので、理学療法士になってからも人との繋がりを大事にしていきたいです。

栗原:私も時々、勉強が辛くて学校を辞めたいと思うことがあります。それでも、みんなと一緒にいるから頑張れている。コロナ禍でさまざまな制約を受けた私たちにとって、将来は大変かもしれないけれど、お互いに連絡を取り合い、辛いことがあっても励まし合ったり、誰かが活躍したらそれを褒め合えたりするような関係が続けばと思います。

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1位は、2023年の開業&閉店まとめ 新しいヒルズ開業から老舗百貨店閉店まで| 週間アクセスランキング TOP10(12月29日〜1月4日)

1位は、2023年の開業&閉店まとめ 新しいヒルズ開業から老舗百貨店閉店まで| 週間アクセスランキング TOP10(12月29日〜1月4日)

「WWDJAPAN」 ウイークリートップ10

 1週間でアクセス数の多かった「WWDJAPAN」の記事をランキング形式で毎週金曜日にお届け。
今回は、12月29日(木)〜1月4日(水)に配信した記事のトップ10を紹介します。

 「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントでも、毎週土曜日に【週間アクセスランキング】を配信開始。ファッション&ビューティ業界のニュースはもちろん、コレクションのルック、パーティーやストリートのスナップ、ライフスタイル情報など、幅広いジャンルの注目トピックを週3回お届けします。今すぐ「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントを[友だち追加]して、最新トレンドやファッション&ビューティ業界で注目されているトピックをチェックしよう。
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- 1位 -
2023年の開業&閉店まとめ 新しいヒルズ開業から老舗百貨店閉店まで

01月04日公開 / 文・林 芳樹

 2023年に開業する主な商業施設と閉店する主な開業施設を下記にまとめる。1月には東京・渋谷区で長年親しまれてきた東急百貨店本店が56年の歴史に幕を閉じ、27年の複合施設開業に向けた再開発に入る。東京・港区では六本木ヒルズに続くようなスケールの大きな街づくりが進行する。三井不動産は1999年に神戸市郊外に開業したアウトレットモールを一時閉館する。隣接地も含めた施設の一体的な建替え計画に伴うもの。店舗面積2万8000平方メートルに約130店舗が営業している。2月から解体工事が始まり、その後、隣接地とともに再開発されて24年に新しい商業施設としてオープンする。

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- 2位 -
百貨店初売りは「ルイ・ヴィトン」×草間彌生に客殺到 「プロパーより新作」の傾向は継続

01月04日公開 / 文・本橋 涼介

 百貨店主要5社の2022年12月度業績は、おしなべて1割程度の増収だった。新型コロナ感染者は増加傾向も、年末商戦は全体的に活況。クリスマスケーキやおせちなど、季節商品へのニーズが他フロアへの波及効果を生んだ。衣料品フロアでは買っていますぐ使える秋冬アウター、ラグジュアリーでは早くも春夏の新作が売れた。また23年の初売りは、各社元日から1月2日にかけてスタート。元日は「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」と草間彌生のコラボレーションアイテム第一弾の発売日だったこともあり、同ブランドが売り場を構える百貨店には目当ての客が殺到した。

> 記事の続きはこちら

- 3位 -
箱根駅伝で注目の「ナイキ」「アディダス」など 記者2人の“俺のランニングシューズ自慢”

01月02日公開 / 文・美濃島 匡

 お正月の風物詩である箱根駅伝は、昨今選手が履くランニングシューズも話題を集めています。「WWDJAPAN」スタッフの、ごくたまに走る程度なのにシューズの知識は豊富なスポーツ担当の美濃島匡記者と、ランニング・コミュニティーに所属し、ロードから山道までを走る津田一馬ソーシャルエディターの二人も、ランニングシューズは常に注目するアイテム。そこで、今回は若手記者に最近手に入れたランニングシューズを持ち寄ってもらいました。スペック重視の美濃島記者と、デザインの良さは譲れない津田ソーシャルエディターの観点の違いにも注目

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- 4位 -
アラフォーには懐かしの「ビューティビースト」が国内外で若年層も巻き込んで人気再燃

12月29日公開 / 文・村上 要

 東京のデザイナーズブランド「ビューティビースト(BEAUTY:BEAST)」は、1990年代に東京やパリでコレクションを発表して、熱狂的なファンを獲得。ところがデザイナーの山下隆生は2000年にブランドを休止すると、その後はさまざまなファッション企業でメンズやウィメンズ、子ども服、スポーツウエアなどのディレクションを担当。19年の「ビューティビースト」再始動まで、表舞台から遠ざかっていた。

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- 5位 -
英国のファッション・デザイナー、ヴィヴィアン・ウエストウッドが死去 81歳

12月30日公開 / 文・向 千鶴

 英国のファッション・デザイナー、ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)が死去した。81歳だった。 ブランド「ヴィヴィアン・ウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD)」はインスタグラムでウエストウッドの訃報を発表。南ロンドンのクラパムで、家族に囲まれて安らかに息を引き取ったことを明らかにした。

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- 6位 -
「リリー ブラウン」が「ケイタ マルヤマ」と協業 異色のコラボはファッションへの“情熱”で結びついた

01月03日公開 / 文・本橋 涼介

 マッシュスタイルラボの「リリー ブラウン(LILY BROWN)」は、丸山敬太デザイナー手掛ける「ケイタ マルヤマ(KEITA MARUYAMA)」とのコラボ商品を2023年春夏と23-24年秋冬に発売する。4月に阪急うめだ本店でのポップアップストアを実施するほか、都内での実施も検討する。

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- 7位 -
「ドクターマーチン」の卯年を祝福した新作シューズはレッドとゴールドでカラーリング

01月04日公開 / 文・竹内 菜奈

 「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」は、卯年を祝したシューズを1月7日に数量限定で発売する。全国のドクターマーチンショップと公式オンラインストアで取り扱う。

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- 8位 -
【2023年版】百貨店やSCの初売りセール&福袋情報 三越伊勢丹やルミネ、パルコなど 独自イベントも続々登場

12月29日公開 / 文・福永千裕

 新年は、初売りや福袋などショッピングにまつわるイベントが満載。注目していたアイテムがお得に手に入るかもしれないこの機会を活用してみてはいかがでしょう。この記事では、首都圏の主要な百貨店やショッピングセンター(SC)のセールや福袋、新年限定イベントの情報を紹介します。

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- 9位 -
「スウォッチ」が2023年の干支、ウサギをモチーフにした時計を発売

01月04日公開 / 文・三澤 和也

 「スウォッチ(SWATCH)」は、卯年に合わせてウサギをモチーフにした時計を発売した。カラーは鮮やかな赤と金の組み合わせで、時針と分針、さらに遊環(ストラップループ)がウサギの耳になっている。価格は1万3530円(税込)だ。

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- 10位 -
「コンバース」×日清食品“カップヌードル” パッケージを模したデザインが特徴

01月01日公開 / 文・三澤 和也

 「コンバース(CONVERSE)」は2023年1月、日清食品の“カップヌードル”とコラボした“オールスター”を発売する。“カップヌードル”と“カップヌードル シーフードヌードル”の2色展開で、価格は各1万3200円(税込、以下同)。

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「下着は可愛さだけじゃない」 体形&仕事&悩みに寄り添う ピーチ・ジョン・ザ・ストア 榎本有希

 コロナ禍もあって家で過ごすことが多くなり、ファッションも楽なものを選ぶ消費者が増えている。外出をしないからこそ、自分へのケアや見えないところにこだわるようになったという声も聞かれる。例えば、毎日必ず身に付ける下着や、おうち時間を楽しくするルームウェアにお金をかけているようだ。また最近はお笑い芸人フォーリンラブのバービーとこコラボや、いろんな体型の女性をモデルに起用した取り組みでも注目。下着ブランド「ピーチ・ジョン(PEACH JOHN)」の榎本有希マネージャーは自身の経験を踏まえて、多くの女性に勇気とパワーを下着に込めて接客してきたと話す。

榎本有希/ピーチ・ジョン エリアマネージャー

PROFILE:(えのもと・ゆき)1983年生まれ、埼玉県出身。高校生の頃にカリスマ店員ブームを経験し、高校卒業後、販売員に。シューズブランド、ファッション雑貨ブランドを経て、2010年にピーチ・ジョンに入社。渋谷店、大宮店を経て、新宿店では店長を経験し、21年4月よりエリアマネージャーに昇進。現在は新宿、有楽町、立川、名古屋エリアを担当。時折、店頭に立ちつつ、各店のマネジメントしている。

―販売員の仕事を始めたきっかけは?

榎本有希さん(以下、榎本):ちょうど高校生の頃が“カリスマ店員”ブームや“カリスマ美容師”ブームで、それに憧れて周囲のみんなが美容師か販売員になりたいと思っていた時代です。私も高校生時代はギャルだったので、地元の大宮アルシェでよくお買い物していました。でも、その頃からスタイルには自信がなくて、ファッションブランドでは働けないなと思っていたのです。

―確かに、当時は渋谷109でスタッフ取材をすると必ず体型維持の話題がでました。それで?

榎本:まずは、よく買い物に行っていたアルシェの「ボニータ」で働き始めました。それから、キラキラのお財布で一世を風靡した「アッシュ&ダイヤモンド」でも販売をしていました。

―それは懐かしい!本当に強い影響を受けてきたのですね。榎本さんから見て、当時のカリスマ販売員はどこが凄いと思いましたか?

榎本:とにかく、“動くマネキン”みたいで、ショップスタッフが服を着て店内を歩いているだけでカッコいいし、スタッフの着ている服を買いたくなるところがすごかった。各スタッフがカリスマ性を持っていて、それにも憧れましたが“勢い”や“パワー”のようなものがあって、とにかくカッコよかったですね。店頭にそういうショップスタッフがいるだけで、その店が活気づく。今でもそういう存在になれたらいいなと思っています。

―私も取材で圧倒されっぱなしでした。憧れだった販売員として働き始めて、どうでした?

榎本:販売する商品は変化していきましたが、一貫して思ったのは、自分がおススメした靴やバッグ、下着でお客様がライフスタイルやおしゃれを楽しんでいるお客様を見るのが嬉しいということです。身に付けるもので自信がついたという方もいて、お客様が喜んでいることに販売の醍醐味を感じています。

「ピーチ・ジョン」に転職した理由

―2010年にピーチ・ジョンに転職した経緯は?

榎本:アルシェで働いていた時はお店が近くにあったので、例えば「来週は○○に行く予定があるから新しい下着を買おう」とか、付けてきた下着が仕事中にだんだん苦しくなってきて楽なのはないかな……と何かにつけてピーチ・ジョンに寄っていたことがありました。店内を見ているだけでワクワクもするので、「いつか、ここで働けたら楽しいだろうな」と思うようになって、思い切って転職しました。下着も、靴やバックと同じで、丁寧な提案が必要な商品なので、そういった点でも楽しいではないかと思ったのです。

―個人的に靴も下着も、服以上に丁寧に選ばないといけないアイテムだなと思います。そうなると接客も大変だと思うのですが。

榎本:そうなんです。靴の場合は、お客様の足の形、サイズも様々、そこに靴の形、デザイン、お客様の好みと組み合わせて提案することが大変でした。それは、今の下着の提案にもつながっていて、お客様の体型に合わせることはもちろん、日々のスタイリング、バストに関するお悩み、ライフスタイルなど、総合して提案していくことが重要です。難しい接客ではあるかもしれませんが、気に入った一点を見つけてお買い上げされることが嬉しいです。

―服は自分の好みをある程度、重視して選べますが、下着や靴はそれだけでは選びきれないですもんね。

榎本:靴もバッグも下着も、とても提案が繊細なんですよね。私はお客さまの身周りのものを提案することが好きというが、合っていたんだと思います。丸一日は身に付けるものなので、自分が身に付けてみたら、こういうところが良かった、悪かったと自分の感想を伝えた上で、歩くことが多いのか、立ち仕事なのかとお客様のライフスタイルを聞き出し、それに合わせて提案しています。それに、体やバストの悩みは一人ひとり違うので、そこに即した提案を考えることにやりがいがあります。

自分の経験を伝えることで、お客さまからの共感を引き出す

―そういったデリケートな質問をすることに心がけていることはありますか?

榎本:私自身もコンプレックスが多かったので、この下着をつけることで前向きになれたとか、生活や仕事での動きが楽になったとか、自分だからこそ分かるという経験があります。それをお客さまに伝えて共感しながら提案することを心がけています。自分の体験を話すことで、「実は私……」と心を開いてくれることもあります。元々、人と話すことが好きで人見知りしない性格なので、そんなに接客が難しいとか、どうやってお客さまと会話をすればいいとか、そういった大変さは感じたことがないですね(笑)。

―そうなると、スタッフが「お客様に声が掛けられません」といった相談にはアドバイスされていますか?

榎本:そういう時は「お客さまを見て、想像すること」と伝えています。お客さまの動きや持っているものをよく観察して「どういったものを探しているのかな?」「こういうモノに興味持っているのかな?」「あの商品、可愛いと思ってくれているかな?」と想像しながら声をかけています。それから声をかけてみると、その後の会話が広がると思います。どうしても「接客しなきゃ」「声を掛けないと……」と焦ってしまうことがある人もいるかもしれませんが、まずはお客さまをよく見てから。店長時代も声掛けが苦手なスタッフと一緒にお客さまを観察して、「今、あの商品を手に取ったけど、興味を持っていそうかしら?」と一緒に考えながら教えました。

可愛さも大事。けどそれだけじゃない。
敏腕販売員が薦める「ピーチ・ジョン」下着3選

―では普段の接客で心がけていることは?

榎本:お客さまのライフスタイルや悩みを聞き出して、それに合わせて提案するです。私もそうですが、「この下着を付けていると一日楽だな」とか「体調があまりよくないからこの下着にしておこう」「今日は仕事が忙しそうだから楽なものにしよう」とか、デザインの可愛さだけでなく、その日の仕事や不調な時でも心身に寄り添える下着を選んで欲しいと思って接客しています。

―榎本さんのおススメはありますか?

榎本:私は自分の身体にフィットしてくれる「いつでもジャストブラ」か、フォーリンラブのバービーさんとのコラボ商品の「クイーンブラ」がおススメです。「クイーンブラ」は背中を補正しつつ、胸の高さを出してくれます。あと、本当に忙しいときは「ピージィ」です。被りタイプのブラですが、これだと本当に一日楽に仕事をこなせます。

―以前、洋服をきれいに見せるためにも下着選びは重要だと聞いたことがあります。洋服の販売員にも、仕事のときや補正したいときといった用途で選ぶのを知って欲しいですね。

榎本:そうなんです!自分に寄り添ってくれる商品なので、全ておススメです。世間一般的には“キラキラ”“可愛い”“セクシー”と思われているところもありますが、そうでないのが「ピーチ・ジョン」ならではなのです。様々な女性の体型や悩みを解決しながら、でも可愛い下着を身に付けたいといった女性の想いを叶えてくれる商品がたくさんあります。機能や着け心地が楽な素材などを使い、目に見えないデザイン部分で女性をサポートしてくれます。その見えない部分を丁寧に伝えて、お客様のライフスタイルに合った提案を心がけています。

―昨年の4月からエリアマネージャーになりましたが、今後の目標は?

榎本:目標というか、いま 目指していること、自分が仕事で意識していることになりますが、コミュニケーションを一番に大切にすることです。それは、お客様はもちろん、店長たち、各店のスタッフたちとのコミュニケーションも含めて、大切にしています。特にスタッフたちと笑顔で関わっていくことが、モチベーションやいい接客につながると感じています。マネージャーとして、スタッフが楽しく働けて、いろんなことに挑戦できる環境をつくれるように店長たちをサポートしていきたいと思います。

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「トッズ」がイタリアの美しさを通して調和の必要性を説く書籍発売 会長が思いをのせる

 「トッズ(TOD’S)」は2023年2月、現代のイタリアン・ライフスタイルとその価値観を讃える書籍「アリア・ディタリア(Aria d'Italia)」のインターナショナル版を発売する。食卓から芸術にいたるまで、 あらゆる場面でクオリティ・オブ・ライフを追求するイタリアの才能と情熱、陽気な雰囲気と伝統に対する思いを閉じ込めた。本書は「喜び」や「タイムレス」「想像」「クラフトマンシップ」「情熱」「伝承」「大胆さ」などの8つのキーワードで、イタリアの文化やアイデンティティの本質に情熱を燃やし、それを象徴する若きアーティストやビジネスピープル、職人たちのプライベートや職業の物語を伝える。昨年日本で開催したイベントで、ディエゴ・デッラ・ヴァッレ(Diego Della Valle)会長に「アリア・ディタリア」への思いを聞いた。

「WWDJAPAN」(以下、「WWD」):「アリア・ディタリア」の発売に至った経緯は?

ディエゴ・デッラ・ヴァッレ=トッズグループ会長(以下、ディエゴ会長):世界中の、若い世代に「美しいイタリア」を知ってほしかった。特にイタリアを知らない人、行ったことがない人たちに向けて、発信したかった。世界的なコロナ禍や高まるばかりの緊張関係などで、海外渡航はまだまだ制限されている。だからこそ、イタリアの美しさを直接感じてもらいたい。もちろんコンテンツはウェブでも見られるが、紙媒体にこだわった理由だ。

「WWD」:一般的にブランドが発売する書籍と言えば、主役は洋服やバッグ、そしてシューズだ。だが「アリア・ディタリア」は、あくまでも人が主役。商品を全面に押し出していない。

ディエゴ会長:イタリアのライフスタイルや品質、気品、美しさにかける思いは、「トッズ」も体現している。つまりイタリアの美しさを表現することは、「トッズ」の美しさを表現することだから、商品は主役じゃなくても良い。麗(うるわ)しきイタリアを世界に伝えることで、「トッズ」の精神は自ずと伝わる。

「WWD」:この書籍を読んで、若い世代にどんなふうに感じてほしい?

ディエゴ会長:一番嬉しいのは、「イタリアに行きたい」「イタリアで、何ができるか考えたい」と思ってもらうこと。でも家族や同僚と共に生きるイタリア人の美しさを知ってもらうことで、コロナ後の世界に必要な価値観である「調和」の必要性を感じ取ってほしい。

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キンモクセイや紅茶の香りが大ヒット 「シロ」人気の香りが誕生する背景に“日常”と“想い”

 コロナ禍を経て消費者のニーズは一変した。ビューティ業界でも例に漏れず、在宅時間が増えたことから“香り”の重要性が高まった。リモートワークのオンオフの切り替え時に、気持ちをリラックスさせたい時に、また好きな香りでケアしたいとフレグランス以外にもボディーケア、バスケア、ディフューザーなど香り系アイテムの需要が拡大した。そこから香りのトレンドも多く生まれ、ここ数年は金木犀の香りや紅茶の香りが人気となっているのは記憶に新しい。

 今や各社から出ている金木犀や紅茶の香りだが、話題となったきっかけはコスメティックブランド「シロ(SHIRO)」だろう。どちらの香りもいち早く2018年に限定で登場し、オードパルファンやフレグランスディフューザー リキッド、ハンド美容液など拡充して人気シリーズに育成した。そんなトレンドの香りを生み出す「シロ」のフレグランス開発についてシロ・マーケティング部門企画Gの田﨑菜月マネジャーに話を聞いた。

WWD:人気の香りのアイデアはどうやって生まれている?

田﨑菜月マーケティング部門企画Gマネジャー(以下、田﨑):フレグランスに限らずブランド全製品に共通して言えることですが、モノ作りにおけるマーケティングを一切行っていません。一般的に製品を開発するにあたっては、競合の調査やコンセプト作り、ターゲット設定、価格設定などを行いますよね。われわれは他社を調べることもしていません。では、なにをきっかけに製品を誕生させているのかというと、“日常”や“想い”から生まれることが多いです。スキンケアの場合は、良質な素材との出合いも大きく関係しています。

WWD:「シロ」のフレグランスは細かい設定を行わない、真逆の考えで開発する。

田﨑:1つ目の“日常”ですが、沈丁花の香りをイメージした「パウダーリリー」(限定)や「キンモクセイ」、「アールグレイ」の香りはまさに企画内スタッフの日常から生まれた香りです。私は普段散歩している時に、心が少しでも動いたことはiPhoneのメモ機能に書き込んでいます。香りに限らず、「わっ!ステキ!」と思ったことなどなんでもメモ。金木犀も、みなさんきっと心が動く香りですよね。「作りたい」「欲しい」と気持ちが動くきっかけとなり、誕生した香りです。

 2つ目の、誰かのためにという“想い”は、例えば毎年春先に限定発売する桜の香り「さくら219」は、一人の受験生との出会いから始まりました。「シロ」が大好きな彼女の受験を応援するために、「桜が咲きますように」という願いを込め、219回の試作を重ねて香りが誕生しました。また、ブランドの限定フレグランスの原点となる香り「ハッピーヴァーベナ」は、11年の東日本大震災でなにか応援できることがないかと開発。もともと定番で発売していた「ヴァーベナ」の香りを心が元気になるようにと改良してボディーシートなど全製品を被災地へ届け、製品の利益を寄付しました。

WWD:コロナ禍でアルコール製品をいち早く発売していたのも誰かのためにという“想い”から。

田﨑:コロナの感染拡大後すぐに何か役立つことはできないかと、企画から1カ月以内でアルコール65vol%配合の「チャクラーサナ スプレー65」を発売し、その後もアルコール濃度80vol%のスプレーとジェルも発売。消毒時も気持ちが上がるようにとオレンジやゼラニウムが香る「チャクラーサナ」と、ブランド人気ナンバーワンの「サボン」の2種を用意しました。

WWD:香りのきっかけは“想い”。そこからどのように製品に落とし込む?

田﨑:想いが先にあると、そこからのアイデアはどんどん広がっていきます。例えば「さくら219」の場合は、受験生が使用するシーンを想像し、「受験勉強をしながらだと香りの強さはこうだよね」「ハンドクリームが1番使いやすそうだな」など、具体的な香りのイメージが仕上がっていきます。23年発売の「さくら219」には、ファブリックソフナーも登場しますが、これは家族から受験をがんばる我が子へのエールとして開発しました。受験は本人が頑張るのはもちろんですが、衣類をいつも「さくら219」の香りにしてもらいたいという想いでアイテムが決まっていきます。

WWD:人気の香りは狙ったものではなく、自然とトレンドになっていた。

田﨑:「キンモクセイ」「アールグレイ」の人気は、まさかここまで!と驚きです。皆さまから支持されて気付いたことですが、香りの名前付けは重要だと実感しましたね。「キンモクセイ」という名前ではなく、もっと異なるネーミングにしていたら伝わっていなかったと思います。単純に金木犀がいい香りだったから、「キンモクセイ」を作ろうとストレートに決めたのが、お客さまには分かりやすかったようです。あとは、ブランドスタート時から地道に店舗でムエット(試香紙)を配り続けていたので、いい香りだねと少しずつ輪が広がって着実にファンを増やしたのだと思います。

WWD:「シロ」の売り上げの過半数はフレグランス。香りに注力するようになったのはいつから?

田﨑:スキンケアのイメージが強い人もいるかもしれませんが、実は「シロ」はずっとフレグランスカテゴリーの売り上げが1番高い。定番品に加え、16年からは毎月限定フレグランスを出しているほどです。なぜここまで新しい香りを誕生させているかというと、お客さまがふらっと店舗に立ち寄った時に常に新しい香りを感じて欲しいからです。「シロ」に来店するたびに、新しい香りに出合えるかもしれないというワクワク感を持って欲しいですね。

WWD:思い出深い香りの製品は?

田﨑:2019年に登場したパフュームシリーズ「SHIRO PERFUME」ですね。フレグランスも毎日自分の洋服を選ぶようにアイデンティティを表すように使ったら楽しいのではないかと考え誕生しました。同シリーズは、日本やフランス、スペインなど各国のパフューマーが、自身のアイデンティティや香りに目覚めたキッカケを込めた12種の香りをラインアップ。例えば、「インセンス クリア」の香りはお寺の息子でもあったパフューマーの慣れ親しんだお香がベースに、「パリジャン シャツ」の香りはパフューマーの父が白いシャツにウッディコロンをまとっていた思い出から生まれています。香りが個性を表すものになったらいいですね。

WWD:ブランドでのフレグランスの立ち位置やあり方は。

田﨑:フレグランスを通して「シロ」を知ってもらうことが多く、新規のお客さまはブランド人気の香り「サボン」「ホワイトリリー」の香りをきっかけにする場合が多いです。製品も4カテゴリー18種類と間口が広いので、まずはオードパルファン、ハンド美容液などから入る人も多いですね。そのため、ファーストタッチとなるフレグランスの限定品は、引き続き毎月発売していきます。もちろん企業理念にある「世の中を幸せにする」を念頭に置きながら、誰かへの想いや日常での素敵なことを形にしていきます。お客さまが笑顔になり、そして世の中が幸せになることがブランドの目指していくことですね。

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コールドプレイのガイ・ベリーマンによるファッションブランド「アプライド アート フォームズ」 20年以上忘れられなかった情熱の先

ガイ・ベリーマン/「アプライド アート フォームズ」クリエイティブ・ディレクター

PROFILE:1978年生まれスコットランド出身。ロンドン大学で機械工学と建築学を学ぶ中で、クリス・マーティンらと出会いロックバンド、コールドプレイを97年に結成。ベーシストとしてデビューからバンドに在籍している。バンドは2000年のデビューアルバム「パラシューツ」が世界的にヒットし、これまで発表した全7枚のアルバム総セールスは8000万枚以上を記録。ベリーマンは多忙な音楽活動の傍ら、自身のファッションブランド「アプライド アート フォームズ」を20年に立ち上げた

 四半世紀近くロックシーンをけん引してきた世界的人気バンドの一つ、コールドプレイ(Coldplay)。ガイ・ベリーマン(Guy Berryman)は、同バンドを1998年のデビューから支えてきたベーシストであり、ビンテージ収集家であり、自動車専門誌「ロードラット(THE ROAD RAT)」の創刊者であり、アパレルブランド「アプライド アート フォームズ(APPLIED ART FORMS、以下AAF)」のクリエイティブ・ディレクターだ。

 ベリーマンはもともとプロダクトデザインの道に進もうとしていたが、ミュージシャンとして成功を納めてからもその情熱は消えることはなく、2020年に自ら「AAF」を設立。幼い頃から魅了されてきたミリタリーウエアの要素を軸に、どれも長く愛用することを考えたたビンテージ収集家ならではのアイテムをそろえる。

 「AAF」がドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)での取り扱いがスタートすることを記念し、2022年11月にベリーマンが来日。本人の口から「AAF」の成り立ちやこだわりなどを語ってもらった。

ーー小さい頃からファッションに興味があったのでしょうか?

ガイ・ベリーマン(以下、ベリーマン):特定のブランドが好きというわけではなくて、10代の頃からビンテージアイテムが好きで、買い漁って自分なりのアーカイブコレクションを作っていたね。ただ、何かをクリエイションすることが一番好きだったから、当時は車や建築、インテリア関連のプロダクトデザインや手を使ってモノを作る仕事に就くために、ロンドン大学で機械工学と建築学を学んだよ。

ーーミュージシャンとして成功した後、2020年に「AAF」を立ち上げた経緯を教えてください。

ベリーマン:ミュージシャンとして20年以上走り続けてきたけど、やはり大学でデザインを学んだことを生かして何かを作りたい、という強い思いを抱き続けていた。そして、2年前のパンデミックのタイミングで、この思いを過去のものとして捨てるか、それともものづくりにチャレンジするかを考え、エネルギーを注ぐを決心をしたんだ。あとは、妻がオランダ出身だからよくアムステルダムに行くんだけど、今のチームスタッフと出会ったのも大きいね。

ーー構想は以前からあったのでしょうか?

ベリーマン:そうだね。実は正式に立ち上げる前に、ファッションのバックグラウンドを持っていないのにどうしても作ってみたくて、誰かに見せるわけではなく、自分が着るためだけにフルラインアップのアイテムを自作したことがあるんだ。でも、とにかくその出来が悪くてね(笑)。そんな経験があったからこそ、当初の構想をいったん白紙にして、クオリティーが何よりも重要だと再認識したよ。世界には数え切れないほどのブランドがある中で、僕がブランドを世に出すならば、クオリティーにこだわる必要がある。みんなに振り向いてもらうためには、いい生地やいい職人をそろえ、ベストクオリティーを常に保たないといけないんだ。

ーーアイテムの多くはミリタリーウエアに着想しているそうですが、デザインソースは自分が集めてきたアーカイブが中心ですか?

ベリーマン:ほぼ全て、昔から自分で集めてきたビンテージのアーカイブだね。例えば、3つのアーカイブジャケットを用意して、実際に裁断して解体し、1つのアイテムに再構築する場合もあるよ。

ーーアーカイブの量はどれくらいあるんでしょうか?また、収集する際はイギリス陸軍やアメリカ空軍などのこだわりはありますか?

ベリーマン:イングランドとオランダにそれぞれ保管場所があって、ジャケットもパンツも100以上あるから……自分でもどれくらいあるか分からないくらい(笑)。収集する時は、1940年代~60年代という年代以外は特に気にせず、デザインや生地が気に入れば関係なく集めているよ。あとは、ミリタリーウエアのビンテージだけじゃなくて、90年代の「ヘルムート ラング(HELMUT LANG)」や「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」も相当の量を持っている。彼らもビンテージを再構築して新しいアイテムを作り出していたから、それらを集めることでアプローチの仕方も学べるんだ。

ーー大学で学んだことは生かされていますか?

ベリーマン:建築から学んだ空間の利用や光の当たり方など、技術や考え方は生かせることが多いかな。ラフ・シモンズ(Raf SImons)も工業デザイン学校で建築を学んでいたしね。

ーーコレクションしているクラシックカーや、ツアーで訪れる海外の土地からインスピレーションを得ることは?

ベリーマン:1950~60年代のクラシックカーや建築、ミッドセンチュリー家具など、一般的に“デザイン”と呼ばれるものが好きなんだけど、クラシックカーからはさすがに難しいかな(笑)。国外に行くことはすごく刺激を受けるね。それに、絶対に見つけられないようなものを見つけるのが好きだから、どこに行っても絶対に古着屋やチャリティーショップには必ず足を運ぶ。トレジャーハンターのつもりで世界各地を訪れているよ。

ーー素材へのこだわりが特に強いそうですね。

ベリーマン:第二次世界大戦時にイギリス空軍のために作られた高機能素材のベンタイル(Ventile)をよく使用しているね。高密度で編んでいるから、コーティング加工していないのに水を弾いてくれるし、何よりも耐久性が高いから時間をかけて着込んでいくと、次第に色が変わっていく経年変化が楽しめるんだ。僕は、環境によって色が変化していく過程が好きで、「AAF」は全てのアイテムがロウデニムのように自分色に仕上げていく感覚に近いかもしれない。

ーー最新素材を使わないのも一種のこだわりですか?

ベリーマン:長年着ること、経年変化を楽しむことを考えると、ちょっと難しいからね。

ーーその着方・考え方は、今の時代にも合っていますよね。

ベリーマン:多くのブランドは、リサイクル素材を使うといったアプローチでサステナビリティを目指しているけど、僕は“いいデザインといい素材のアイテムを長く着ること”が一番のサステナビリティだと考えているよ。

ーーということは、シーズンごとの発表は考えていないのでしょうか?

ベリーマン:通常のファッションサイクルと合わせることは考えていない。半年後の新しいアイテムを発表し、半年前のものをセールするというサイクルは、僕にとっては理想的じゃないから。コレクションの変化は少しづつで、気に入ったアイテムは常に用意し必要に応じて色やディテールを変えるくらいだよ。

ーーコールドプレイのベーシストと「AAF」のクリエティブ・ディレクターは、それぞれどれぐらいの活動比率ですか?

ベリーマン:「AAF」での仕事はフルタイムのように感じる。ライブで世界中を回っていても、演奏中以外の時間は自由だから、アムステルダムにいるデザインチームと常にコミュニケーションを取っているように、どれだけ忙しくても情熱のあることへの時間は作れるんだ。コールドプレイと「AAF」のクリエイティブは、相互作用しながらバランス良くできているよ。

ーー今回の来日で、ミリタリーウエアを探す予定はありますか?

ベリーマン:(取材したタイミングは)来日したばかりだから、原宿で古着を見たり、「キャピタル(KAPITAL)」と「ビズビム(VISVIM)」のお店に行っただけだね。「ビズビム」はブランドの成り立ちや考え方、素材使いなどから親近感を覚えたよ。

ーー今後の展望は?

ベリーマン:次から次へとアイデアが浮かんでいるから、次のレベルへいけるように自分を駆り立てている最中だ。あるブランドとのコラボを考えているから楽しみにしていて。

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「さらけ出す」ことを恐れるな ヒップホップアーティストTKda黒ぶちが“炎上”をいとわない理由

 2022年も、ファッション&ビューティ業界では多くの“炎上”ニュースが飛び交った。配慮を欠いた広告や発言は瞬く間に拡散され、ブランドイメージの大きな毀損に繋がってしまう時代だ。

 だがそれでも「不謹慎」や「タブー」を恐れずにメッセージを発し続ける人もいる。「フェイクでないなら、素直に語ればいい。言葉はその人の本質なんだから」。そう語るのは、ヒップホップアーティストのTKda黒ぶち。その名の通り黒ぶちメガネがトレードマークの彼は、国内ヒップホップシーンの第一線にいるアーティストの一人。日本最高峰のヒップホップアーティストが集うMCバトル番組「フリースタイルダンジョン」(テレビ朝日系列、現在は終了)では3代目モンスターに上り詰めた人物だ。

 小手先のテクニックに頼らず、自分の生い立ちまで赤裸々なリリックが多くの共感を呼ぶ。「本当に語るべき人が口を開くことを恐れ、SNS上には薄っぺらなフェイクが溢れている。そんな世の中だからこそ、ヒップホップのリアリティーが必要なんじゃないか」とTKda黒ぶちは語る。社会がコロナ禍から前を向こうとしているとする中、「ヒップホップを聞いてパワーをもらう。そんな光景が当たり前の日本にしたい」との思いで、アーティストの枠組みを超え活動の場を広げている。そんな彼が考えるヒップホップの本質、黒ぶちメガネのスタイルを貫く理由を聞いた。

TKda黒ぶち/ヒップホップアーティスト

(てぃーけー・だ・くろぶち)1988年、埼玉県生まれ。高校生だった2005年からMCとしての活動を始め、10年からフリースタイルバトルへ本格的に参加。「戦極 MC BATTLE」での優勝など実績を重ね、「フリースタイルダンジョン」では3代目モンスターに就任 PHOTO:SHUNICHI ODA

WWD:黒ぶちさんにとってヒップホップとは。

TKda黒ぶち(以下、黒ぶち):音楽ジャンルでいう「ポップス」に対して、ヒップホップは「ポピュリズム」だと思っています。楽器を買うお金も、楽譜を勉強する時間もない人でも、マイク一本で始めることができる。良くも悪くも誰でもできて、解る音楽です。美しいメロディーでお茶を濁すことがないから、その分リアリティーが増す。使い方によってはざっくり人を傷つけたり、怒らせたりすることもあります。トラビス・スコットが21年に主催したフェスでは半狂乱のファンによる悲しい事故も起こってしまいましたが、それだけヒップホップがマインドに訴えるパワーはすごい。

 カッコつけずに言えば、僕にとっては「普通じゃないことを誇れる音楽」でしょうか。ヒップホップは悪ぶってると思われることは多いけれど、それは自分を素直にさらけ出すから悪い部分も目立ってしまうだけ。

WWD:TKさんの「普通じゃないこと」とは?

黒ぶち:詳しくは僕のnoteにつづっていますが、僕は割と悲惨な生い立ちで。例えば、僕の父親は中学の時に蒸発したので、母の手一つで育てられてきました。クラスのカーストも底辺で、とにかくどうしようもなかった。その時の記憶は、全部歌詞に込めています。

 当時は音楽にも興味がほとんどなくて、聞いていたのはミスチルくらいでした。灰色の生活を送っていた僕にとって、芸能の世界とか耳障りのいいJ-POPは嘘くさかった。だからヒップホップを初めて聞いた時、飾り気のない言葉のリアリティーが直接ぶっ刺さってくる感じに衝撃を受けて、それからのめり込んでいきましたね。

 高校生の時、勇気を出して地元のハコでMCバトルに参加しました。黒縁メガネの自分がラップをしていると、「何やってんだ根暗」ってヤジを飛ばされたり、観客席の1番前で中指立てられたりもしました。今となっては、その時ビビってコンタクトレンズにしなかった自分をほめたいですけどね(笑)。

WWD:なぜ黒ぶちメガネにこだわった?

黒ぶち:「どうしようもない自分」の象徴みたいなものだったのかもしれません。ありのままでいて何が悪いんだっていう意地、反骨精神みたいなものが奥底にあって、それを馬鹿にした奴らに認めさせることが、ヒップホップをする原動力の一つになっていきました。そういう承認欲求に、これ(ヒップホップ)を失ったら自分はもう終わりだ、という一種の恐怖心がないまぜになり、自分を駆り立てていました。

WWD:自己肯定感が低いまま、ステージに立つことは怖くなかったのか。

WWD:逃げてばかりの自分から、また逃げることの方が怖かったですから。学校では野球部も、少林寺拳法も、学習塾もすぐ投げ出した。歯列矯正すら、痛くてすぐにやめてしまった(笑)。そんなどうしようもない自分を救ってくれたヒップホップを失うことの方が、よっぽど恐ろしかった。それに自分が曲を出したり、バトルで勝ったりと結果を出し続けるにつれて、僕をバカにしていた人たちも認めてくれるようになって。「これしかない」と思うようになりました。

WWD:今のヒップホップアーティストとしてのモチベーションは。

黒ぶち:駆け出しの時、自分の弱い部分を全てさらけ出した“負け犬”って曲を書きました。高2だったと思います。今はもうお蔵入りにしているんですが。ライブで初めて披露するときは、「こんな弱いところ見せて大丈夫か」「(聴衆に)引かれるんじゃないか」とひどく緊張もしていました。ただ終わってみたら、すごくいい反応だったんです。僕も、聞いてくれた人と心の底からつながった感覚があって。いまだに「あれはよかったね」と言ってくれる友達もいます。

 それ以来、自分がヒップホップアーティストをしている上で1番の“報酬”は、誰かの生きる活力やモチベーションになること。バトルで自分と相手、どちらが勝ったとしても「=実力」ではない世界。ハートを相手とぶつけ合ったり、それを見ていた人から「感動した」って言ってもらえたりを繰り返して、自分のアーティストとしての“芯”が厚みを増している感覚があります。

炎上は人生の延長
「そういう生き方をしているから」

WWD:批判や中傷は怖くない?

黒ぶち:僕のスタイルは、赤裸々なまでに自分をさらけ出すこと。だから口から吐く言葉は「人生の延長」だし、仮に炎上したとしたら僕の行動、人間性、生き方が燃えうるものだったということ。受け入れるしかないとも思います。

 もちろん、常に粗探しをしている人はいるし、鬱憤ばらしの“サンドバッグ”を探している人もいるでしょう。ただ僕はそれを恐れること以上に、誰しもが僕のように “地獄”を持っていて、ヒップホップでその救いになりたいという思いが強いです。

WWD:ファッションにこだわりはある?

黒ぶち:自分のアーティスト活動を通じて、ヒップホップをもっと多くの人に興味を持っていただくためにも、(ファッションは)必要だなと感じています。僕の地元・春日部発の「ルーディーズ」には、僕とコラボした黒ぶちサングラスを製作いただいています。アーティストとして活動する中で、僕の見た目のスタイルにも共感してくださる方もいらっしゃるでしょうし、もっとこういった事例にチャレンジしていきたいですね。

 正直、以前は「着たいもの着ればいいじゃん」だったんですが(笑)。カニエ・ウエストに感銘を受けて考えを変えました。ファーストアルバムでグラミー賞をとった彼は「ルイ・ヴィトン」のバッグを携えてパリコレに乗り込むも、ファッションの業界人からは全く相手にされなった。それで彼はパリのオートクチュールの源流から真摯に学び、名だたるブランドとコラボしてファッションシーンの最前線に上り詰めた。結果、彼のファッションを通じてアメリカのヒップホップカルチャーを世界に広めました。この功績はすごいですよね。

WWD:ヒップホップカルチャーは日本ではまだまだニッチだ。

黒ぶち:以前、ニューヨークに住んでいたときのことなんですが。電車の中で、ジェイ・Z(JAY-Z)の曲にある「あのスニーカーが欲しいなら 努力して成り上がるんだ」っていう一節を何度も繰り返して、気持ちを高ぶらせている人がいました。

 これを日本でも再現したいと思っているんですね。ヒップホップ好きの兄ちゃんだけでなく、普通に働いてるサラリーマンがこれから仕事へ向かう電車の中で選ぶ曲。疲れた時、顔を上げたい時に選ぶ曲がヒップホップであってほしい。

 僕はヒップホップを、日本の音楽シーンのメインストリームに押し上げていきたいと真剣に思っています。そのために、地道ではありますがお笑い芸人にラップを教えたり、企業のコーポレートソングを書いたりとライブハウスの外でも活動を続けてきました。“ヨー、チェケラッチョ”ではない、僕らが思うヒップホップの本質が徐々に理解されてきたと感じています。

 今日本には、コロナへ愚策を続けてきた政府への不信感、頑張って働いても賃金が上がらない虚無感が漂っています。ヒップホップはそういう“敵”に立ち向かう勇気を与えるファイトミュージックです。日本は無宗教と言われます。しかし人間は本来「信じる力」を持っているし、よりどころがわからないだけ。それがヒップホップであっていい。僕はこれからも、皆のサバイバルツールになる曲を書き、歌っていくつもりです。

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「リリー ブラウン」が「ケイタ マルヤマ」と協業 異色のコラボはファッションへの“情熱”で結びついた

 マッシュスタイルラボの「リリー ブラウン(LILY BROWN)」は、丸山敬太デザイナー手掛ける「ケイタ マルヤマ(KEITA MARUYAMA)」とのコラボ商品を2023年春夏と23-24年秋冬に発売する。4月に阪急うめだ本店でのポップアップストアを実施するほか、都内での実施も検討する。

 20〜30代の今どきの女性に支持を受ける「リリー ブラウン」と、1990年代から長年、国内デザイナーズブランドの一角として人気を博す「ケイタ マルヤマ」。意外ともとれる組合わせだが、近藤広幸マッシュホールディングス社長は、「(丸山)敬太さんが作るのは一つ一つが独自性にあふれた、いつまでも“捨てられない”服。タイムレスな服の価値を大事にする『リリー ブラウン』にとって、(コラボの)学びは大きい」と語る。丸山デザイナーも「今の時代の真ん中で活躍する人たちと一緒に服を作れることに、純粋にワクワクする。(新型コロナ禍からの)時代の変わり目に、新しいムーブメントを作りたい」と応じる。

 型数は15型程度、Tシャツ、ワンピース、ボトムス、雑貨などをラインアップし、中心価格は4000〜2万円を予定。4万円程度のスペシャルなドレスも制作を進めている。企画はまだ構想段階だが、2人にコラボの意図や展望を聞いた。

WWD:どんなコラボ商品ができそうか。

丸山敬太デザイナー(以下、丸山):「リリー ブラウン」とうちとでは、“オリエンタル”“ビンテージ”といった共通項があります。それらを生かして「ケイタ マルヤマ」らしいチャイナ的要素や刺しゅうを足し算していきたいと考えています。ただデザイン面では僕がリードするわけではなく、あくまでリリーの企画チームが主体です。

近藤広幸社長(以下、近藤):企画室を覗くと、丸山さんが先生、うちの企画チームが生徒、というような光景がよくあります(笑)。今回のコラボでは敬太さんの力を借りながら、自分たちのファンになってくれた人たちに向けて、一点一点、ものの作り方や表現の仕方を考え直す機会にしてほしいと考えています。

WWDJAPAN(以下、WWD):協業の経緯は。

近藤:「リリー ブラウン」は3.11で日本中が元気がなかった時に、花のような素敵な女性が世の中に広がって、彩(いろどり)のある国に戻ってほしいという思いを込めて作ったブランドです。“ヴィンテージフューチャードレス”をコンセプトに、普遍的なデザインを今の女性が着たいと思えるムードに昇華し、ビンテージの買い付けなどを含めて提案してきました。新型コロナが明けようとしている23年に、モノ作りや歴史といったストーリーで服の“深さ”を感じていただけるブランドとして、再び世の中にメッセージを出していきたいと考えています。

 そのための然るべきコラボ相手を探っていたところ、ぱっと頭に浮かんだのが敬太さん。当社の展示会にいらっしゃったときも、直接お話はできなかったけれど、ときどき遠巻きにお姿を見ていました。(『ケイタ マルヤマ』がスタートした)90年代から僕自身ファンで、周りにもチャレンジする人は多かったんです。唯一無二の世界観ながら独りよがりではなく、「気分が変わったから」と簡単には捨てられないような服を作っている。

WWD:「ケイタ マルヤマ」では、顧客から集めた古着をリメイクして売るプロジェクト「リマリッジ」もスタートしている。

丸山:僕、実は「ケイタ マルヤマ」の古着をフリマサイトで集める趣味がありまして(笑)。すると、昔のコレクションがいい状態で出品されていることもよくあって、「こんなに長い間持っててくれたんだ」「大切にしてくれていたんだ」と驚きます。サイズアウトしても捨てずにとっておいて、「どうにかできないか」と店に持ち込んでくださる方も多く、このプロジェクトの立ち上げにつながりました。

近藤: ブランドの服を本当に欲しいと思ってくださるお客さまに向け、敬太さんのように一つ一つ“お手紙”のような服を届けていくことが、再び大切な時代になると考えています。インターネットなかった時代と今では、服を購入するまでのプロセスがガラッと変わりました。かつて洋服の買い物は、リアルの場で商品に触れ、作り手のメッセージを感じて家に連れて帰るものでした。しかしインターネットが普及した今は、携帯の中の「情報」として洋服を知る。だから服の売り方も、新作やトレンドの情報合戦になってきてしまった面があります。

丸山:なるほど。僕から見たマッシュさんは、大きな会社ではあるけれど、昔からある「大手アパレル」とは全く異なる存在。SNS上で生まれる共感からファンをどんどん増やし、その方々に向けて服を作っています。だから、僕にとっても「リリー ブラウン」の服作りは新鮮なんです。なんせ僕がブランドを始めた28年前はインターネットもなかったころ(笑)。そういう意味で、僕は自分のことを今のファッション業界の中心にいる人間とは思っていません。コラボを通じて学ばせていただくことは多いと思っています。
 
 それに、「リリー」とは根底でつながれる部分があるなとも思っていて。それを一言で表すなら、服への“熱量”かな。僕は、会社にコレクションブランドのショーのルックをそのまま会社に着てくるような、異常な時代も経験してきました。でもこの会社(マッシュ)に来ると、それに近い雰囲気も感じることができるんです。社員が皆かわいくおしゃれをして、何より自分のブランドを好きで着ている。すごく当たり前のことだけれど、それができる作り手は今やすごく少ないし、その情熱は、きっとお客さまにも伝わるんじゃないでしょうか。

「感性」を刺激するコラボに

WWD: 23年は新型コロナ禍から、社会がいよいよ前へ向かって進み出す年になりそうだ。

近藤: そんなときだからこそ、ファッションには女性たちを後押しできるパワーがあるはずです。今回のコラボは単に服が売れるかどうかではなく、お客さまの「感性」をいかに刺激できるかの方がよっぽど大事だと思っています。今回のコラボ商品と合わせて、「ケイタ マルヤマ」の古着に「リリー」らしいプリントや刺しゅうを乗せて売っても面白いかもしれません。あと、個人的にはローンチに合わせて、若い子が華やかな服を着て集まるナイトパーティーをやってみたい。これは敬太さんにも、この場で初めてお伝えするアイデアなんですが。

丸山: コロナ禍はムーブメントが起きにくい時代でした。ファッションが作り出す高揚感や空気感を、そろそろ世の中に取り戻していきたいですね。僕らの3年と若い子の3年では、失った時間の重さは全然違うでしょう。ファッション=洋服ではないし、本来は音楽とかアートとか、さまざまなカルチャーをつなげる役割がある。女の子がすてきな服を着て集まる場作りなど、まず僕らが率先して面白い仕掛けができたらいいですね。

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ジャスティン・ビーバーと共に「ドリューハウス」を手掛けるライアン・グッド “愛・平和・喜び”を求めて

 2010~20年を代表するポップアイコン、ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)を、デビュー当時から裏方として支えてきた人物がいるーーそれがライアン・グッド(Ryan Good)だ。

 現在38歳のグッドは、20代の頃にとある有名歌手を介してジャスティンの専属スタイリストになり、ビジュアル面を長年にわたってサポートしてきた。その実力を買われ、クリエイティブ・ディレクターとしてジャスティンと共にアパレルブランド「ドリューハウス(DREW HOUSE)」を18年に立ち上げると、わずか数年で“世界で最も成功しているインフルエンサーブランド”と称されるまでに成長させた。

 11月には、東京・原宿でポップアップ開催のためにグッドとジャスティンが来日。ジャスティンへのインタビューは残念ながら叶わなかったが、グッドが2人の出会いからブランド名の由来、アイコニックなスマイリーロゴが生まれた経緯などを語ってくれた。

ーーまずは、「ドリューハウス」を設立するまでのあなたの経歴を教えてください。

ライアン・グッド(以下、グッド):全ての始まりは、歌手のアッシャー(Usher)との出会いだね。20代の頃、フロリダのミュージックレーベルでインターンをしていたんだけど、上司がアッシャーと知り合いで彼がアシスタントを探している時に僕を推薦してくれたんだ。それを聞いた瞬間、トラックに荷物を積み込んでフロリダからジョージアまで(約600km)すぐに運転して行ったよ。アシスタント時代は、彼が飼っている犬の面倒を見たり、家を片付けたり、車を運転させてもらって事故ったり(笑)。

 その後、しばらくしてアッシャーが僕のファッションセンスを見抜き、「スタイリストになってみれば?」と提案してくれたんだ。何をすればいいか全く分からなかったけど、結果としてスタイリストになったことがジャスティンとの出会いのきっかけにもなったし、彼は今でも僕の大事な人でメンターだね。もともとファンだったし、未だに自分があのアッシャーと知り合いだなんて信じられないよ。

ーー“ジャスティンとの出会いのきっかけ”ということは、アッシャーから紹介があったんでしょうか?

グッド:2008年にアッシャーから、「ある若いアーティストがいるから、スタイリストとしてビジュアル面をサポートしてほしい」と言われて会ったのが、彼のレーベルと契約したばかりのジャスティンだったんだ。それから専属スタイリストとしてチームに加わり、ツアーから旅行まで全てに帯同していたね。

ーーそこからどのような流れで「ドリューハウス」が誕生したのか教えてください。

グッド:18年の1月、ジャスティンから「相談したいことがある」と連絡があって彼の自宅に行ったら、「一緒にアパレルブランドを始めたいから、クリエイティブ・ディレクターを担当してほしい」と言われてね。それまでもいろいろな人から「一緒にブランドをやらないか」と誘われることがあったんだけど、タイミングが合わなかったり、気分が乗らなかったり、明確な将来のゴールが見えるアイデアじゃないと参加したくない気持ちが強くて断り続けていた。でも、ジャスティンから話を聞くと、以前から僕がやりたかったアイデアを口にしてくれて、感覚がハマると確信したから一緒にブランドを手掛けることにしたんだ。

 誰にも言ったことがないんだけど、08年にアッシャーからも「一緒にアパレルブランドを立ち上げたい」と相談されたんだよ。当時、僕はストリートブランドやスケートブランドをラグジュアリーとミックスして着るスタイルが好きで、それをベースとしたブランドにしたかったみたい。彼は、10年以上前に今で言う“ラグジュアリー・ストリート”のトレンドを見抜いていたんだ。ブランド名も決まっていたし、今勝手にやっちゃおうかなと思っているよ(笑)。

ーー18年というと、ジャスティンは音楽活動を控えていた時期であり、同時にファッションシーンではストリートとラグジュアリーが急接近した年ですね。

グッド:18年はジャスティンにとって大変だった1年で、音楽とは別のクリエイティブなアウトプットを考えていたんだと思う。僕はジャスティンではないから正確なことは言えないけど、彼が誰か1人に強く影響されることはないはずだし、音楽もファッションも影響し合うものだから、トレンドはくんでいたかもしれない。

ーーブランド名の由来は?

グッド:“ドリュー”は、ジャスティンのミドルネームだね。“ハウス”は、ちょっと皮肉を込めてラグジュアリーブランドの“ファッションハウス”を目指す意味でふざけて付けたんだ。そのうち、普段みんなで過ごす家のような意味合いが強くなり、今はいろいろな人が集まって楽しく平和な時間を過ごせるコミュニティーが集まる場所に進化した。ロサンゼルスには、“リアルなドリューハウス”もあるよ。

ーー口元を“drew”の文字に置き換えたアイコニックなスマイリーロゴは、どう生まれたんでしょうか?

グッド:もともとのアイデアは僕がメモ帳に書き込んだ単なる落書きで、イラストレーターに整えてもらったんだ。スマイリーは世界共通で、誰とでも喜びを共感できるグラフィックだよ。

ーーベアをはじめとする動物のキャラクターの印象も強いです。

グッド:これには何層にもなる深い話がある。動物たちは実際にロサンゼルスのバレーエリアに住む動物たちで、ベアの名前はセオドア。以前ドリューハウスに住んでいた人たちが引っ越しの際に彼を置いていってしまったのか、セオドアは1人だったんだ。友情を求めていたセオドアは、近所のリスのシャーマンと出会い友達になる。ウサギのジャッキーは、コヨーテのフェルナンドを見かけるけど、ウサギにとってコヨーテは恐怖でしかない。でも、フェルナンドには家族がおらず、群れからも省かれてしまった存在で、ジャッキーも1人ぼっちで行き場と友情を求めていたから、意外なことに彼らは親友になったんだ。このように、僕たちも身体的な固定観念や人間として理解し切っていると思っていることを乗り越え、心の奥底を見つめ直して自分の欠点を洗い出せたら、他人を違った目線で見ることができて、互いにもっと大きな必要性とつながりを見出すことができるかもしれない。ウサギとコヨーテが親友になれたように、“人間は内心みんな同じである”という考えが背景にあるんだ。

ーーキャラクター設定が細かいように、どういったアイテムを展開していくか、明確なビジョンやコンセプトはありましたか?それとも、“ジャスティンが着ていそうなアイテムを作る”という舵取りでしょうか?

グッド:最初からはっきりとしたコンセプトがあったわけではなくて、ジャスティンの直感とセンスがすごくいいから、その波に乗るように自由にクリエイティブな会話をしながら進めていった。「ドリューハウス」は、僕とジャスティンのクリエイティブ・アイデアのコラボレーションから生まれた、“進化し続ける個人のテイスト”を基に誕生したんだ。

ーーということは、現在のストリートの要素は、5年後にはまた違った雰囲気になる可能性もあると。

グッド:いい質問だ。ファッションのコンセプトというよりは、生き方のコンセプトとして“愛・平和・喜び”を表現しているアイテムを作るから、変わるかもしれないし、変わらないかもしれないね。スマイリーロゴも、もともとは僕の単なる落書きだし、全てをミーティングして決めるというよりは、クリエイティブな輪の中で自然にアイデアが発露する感じ。だから、シーズンに合わせてアイテムを制作する必要もないと思っていて、人々が求めるようなタイミングにリリースする。

ーーメインターゲットは設けていますか?

グッド:全ての人を受け入れる感じだね(笑)。

ーー今回、東京でポップアップを開催した意図は?

グッド:「ドリューハウス」は直営店を持っていないし、多くの人が“ジャスティン・ビーバーのマーチャンダイズ”だと勘違いしている。だから、直接アイテムを触ってクオリティーを実感できる場を設けることで、改めてファッションブランドだと認知してもらう機会を作りたくてね。ブランドとしては4回目のポップアップで、本当はもっと早く東京でやりたかったけど、パンデミックの影響があったからこのタイミングになってしまったんだよ。

ーー気分を害するつもりはありませんが、良くも悪くも「ドリューハウス」は“世界で最も成功しているインフルエンサーブランド”の一つだと思っています。

グッド:君の言う通り、誰もジャスティンのことを知らなかったとして、ただ単に僕たちがガレージから「ドリューハウス」を始めていたとしたら注目度は全く違っただろうね。でも同時に、僕たちが本当にやりたいストーリーを世の中に発信することに変わりはなかった、とも思う。このストーリーというのは、最も重要なのは人々にどう感じてもらうか、どうすれば誰もが愛され、この世にとって一人一人の存在が重要であるという考えをどう広めることができるかだから。

 「ドリューハウス」は、トレンドやスタイルに影響を与えるために洋服を作っているわけではなく、ブランドの目的として“愛・平和・喜び”を広げることを常に大事にしている。その中で、たまたまジャスティンが影響力のあるトレンドセッターだっただけ。そう考えると気が楽になる。僕たちは、服作りのコツをつかんでいるしセンスもあるから「ドリューハウス」は軌道に乗っているけど、それだけではなくて、自分たちが語るストーリーを心から信じているから、自信を持って続けられているんだ。

ーー今後の展望や控えているプロジェクトがあれば教えてください。

グッド:具体的なプランはなくて、今は流れに乗るようにゆるくやっている。「ドリューハウス」というブランドが何なのか、それを世の中に広めている道中だよ。

ーー今回の来日は久しぶりだと思いますが、日本の気になる人物やブランドはありますか?

グッド:「キャピタル(KAPITAL)」と「ネイバーフッド(NEIGHBORHOOD)」がすごく好きだね。でも特定のブランドというよりも、日本のファッション文化全般と洗練されたコンシューマーたちの大ファンという方が正しいかな。東京の街を行く人たちは、みんな着こなしもカラーコーディネートも上手くて、自分をとても美しく表現することに長けているように見える。それに、世界的に見てストリートウエアは日本から大きな影響を受けているよ。東京はストリートカルチャーを語る上で欠かせない街だし、ストリートウエアという概念の一つだと思っている。そういえば、フィル・ナイト(Phil Knight、ナイキ創業者)が初めて作ったランニングシューズも「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」から影響を受けているから、「ナイキ(NIKE)」の原点は日本にあると言ってもいいね。

ーー最後に、2022年11月現在、毎日見ている注目のSNSアカウントなどがあれば教えてください。

グッド:昔の「ディズニー(DISNEY)」のイラストレーターやアニメーターが投稿している、クラシックなイラストや動画を見るのにハマってるよ。

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「デザインだけでなく、価格帯や多様性、環境に対してもフレンドリーでありたい」 ギョーム・アンリが語る「パトゥ」でのクリエイション

ギョーム・アンリ(Guillaume Henry)=アーティスティック・ディレクターが手掛ける「パトゥ(PATOU)」にとって、2022年は大きく前進した1年だった。20年春夏シーズンのデビューから高い完成度で打ち出された「パトゥ」スタイルはシーズンごとに少しずつバリエーションが広がり、2月には世界初となる旗艦店を東京・表参道ヒルズにオープン。7月には、それまではプレゼンテーションで発表していたコレクションを初めてショー形式で披露した。ブランドの世界観を体現する旗艦店で、6年ぶりに来日したギョームにブランド再生の歩みやコレクションへのアプローチについて聞いた。

 

WWD:久しぶりに東京に来て感じたことや変化は?

ギョーム・アンリ(以下、ギョーム):「パトゥ」に入ってから東京に来るのは、これが初めて。日本は「パトゥ」への支持が厚いマーケットでずっと来たかったのに、新型コロナウィルスの影響でずっと来日できなかったからね。まだいろんなところを訪れることはできていないけれど、街中で見かける人は皆オシャレを自由に楽しんでいて、ファッションのエネルギーを感じる。

WWD:ここは「パトゥ」初の旗艦店だが、ようやく実際に見られた感想は?

ギョーム:本当にエキサイティング!「パトゥ」にとって初めての旗艦店だったし、ずっとFaceTimeを通して進めてきたから、店舗をデザインするのはチャレンジでもあった。だから、ここに来るまでは正直ナーバスだった。でも、ブランドのファンタジーや価値観、アトリエのような雰囲気が表現されていることを実感できて、とても気持ちが高まったよ。

WWD:「パトゥ」(かつての「ジャン・パトゥ」)は歴史あるフレンチメゾンだが、そのアイデンティティーや“らしさ”をどのように捉えている?

ギョーム:「ジャン・パトゥ」は100年以上も前に設立されたブランドだが、1996年からずっと休眠状態だった。そんなブランドを復活させるということは興味深く、 “再生”であると同時に“創造”でもあったと言える。オフィスや既存のビジネスも、きちんとしたアーカイブもない状態からのスタートだったからね。それに、「ジャン・パトゥ」があまり知られていなかったマーケットにとっては、「パトゥ」はまったく新しいブランド。だからブランドがもつ価値にフォーカスしつつ、現代のためのブランドを作り上げることに取り組んだ。重きを置いたのは、ジャン同様のクチュールの精神やアトリエでの仕事を大切にしながらも、今を生きる女性たちが日常生活の中で着られる服を提案すること。それはジャンの価値観にも通じる部分で、彼の最初のミューズは実の姉だったし、彼は当時からクチュールだけでなく街中で着るためのスポーツウエアを提案していた。そして、パーティーが好きだったジャンのようにフレンドリーなブランドであることも、大事な要素。「パトゥ」っていう響き自体にも、ニックネームみたいな親しみやすさがあると思う。デザインだけでなく、価格帯や多様性、環境に対してもフレンドリーでありたいと考えている。
 デザインとしては、ジャンだけでなく、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)やミシェル・ゴマ(Michael Goma)、クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)が手掛けていた時代もある。アーカイブそのものから着想を得ることはあまりないけど、その根底にあるスポーティーさやシンプルさ、ドラマチックなボリュームを「パトゥ」らしさと捉えている。マインドとしてはジャン・パトゥと常に共にあるけれど、彼が提案したモノをアレンジして再現する“リクリエイション”というより、新しいモノを生み出す“クリエイション”という感覚だね。

WWD:「パトゥ」でコレクションをデザインするときに常に心掛けていることは?

ギョーム:着る人の魅力を引き立てるモノでありながらも、毎日の生活のニーズに応えるモノであること。ファッションは時に夢やファンタジーであり、尊重はするけれど、それだけになってしまうのは「パトゥ」の価値観にはそぐわないと思う。その一方で、ベーシックな白シャツのようにリアルなだけになってしまうのも違う。日常生活で着られるリアリティーと、ファッションが生み出すファンタジーのバランスが重要なんだ。ドローストリングによってシルエットやボリュームを自由に変えられるアイテムは、まさにそれを象徴するもの。着こなし方や組み合わせ方によって、控えめからエッジーまで自分らしさを表現してほしい。

WWD:自分らしさを表現するという点でいうと、2023年春夏コレクションは「WHO IS YOUR MUSE?(あなたのミューズは誰?)」をタイトルに掲げていた。提案したスタイルも、「パトゥ」らしさを感じるラッフルやバルーンスリーブが特徴的なルックやソフトなテーラリングから、スポーティーなスタイル、ミニマルなドレスまでが提案され、より幅広い女性像が描かれているようだった。

ギョーム:コレクションが同じようなアイテムの繰り返しではいけないと思っている。ファッションは夢の空間なだけではなくプロダクトでもあるから、他のアイテムを台無しにするモノは作りたくない。小規模なコレクションの中でも、同じフィロソフィーと価値観をもった多様なアイテムを提案したいんだ。メニューに適切な数の選択肢が用意されたレストランのようにね。そして、着用者に僕自身が思い描いたイメージを強いることは決してしたくない。それぞれのコレクションはストーリーをベースにしているけれど、それは僕自身のストーリー。僕のストーリーを着用者に押し付ける必要はない。だから、店に並んだ時点で、コレクションは僕のモノではなく、それぞれの人生を歩んでくれればいいと思っている。「パトゥ」を着用している人が僕のことを知らなくてもいいし、僕がデザインした服を着ている姿を見るだけでハッピーなんだ。

WWD:23年春夏のショーにはメンズも一人登場したが、その意図は?

ギョーム:昔は自分のことを“ウィメンズ・ファッションデザイナー”と言っていたけど、今はシンプルに“ファッションデザイナー”と表現している。もはやファッションにジェンダーは関係ないし、ショーでは「パトゥ」は誰でもウェルカムということを伝えたかった。男性が「パト
ゥ」を着てくれているのを見るととてもうれしいし、日本人の男性にはぴったりフィットする人も多い。昨日イベントを開いた時にも「パトゥ」の服を着こなしてくれている男性がいて、「うらやましい!」と思ったよ(笑)。

WWD:メンズコレクションを作りたい気持ちはある?

ギョーム:もちろん!「カルヴェン(CARVEN)」ではメンズも手掛けていたから懐かしいし、とても楽しんでやっていたからね。でも始めるには、市場があるかをきちんと見極める必要があると思う。

WWD:「パトゥ」でショーを開くのは23年春夏が初めてだった。今後もショー発表を続けるのか?

ギョーム:次回は、来年1月27日の朝にパリでショーを開く予定だよ。(以前のように)プレゼンテーションでコレクションを話しながら見せるのもよかったけれど、デビューシーズンから3年がたち、服を動きの中で見せる必要性を感じている。シルエットからキャスティングまでを通して、「パトゥ」の全体像を表現したい。

WWD:今後、「パトゥ」で取り組みたいことは?

ギョーム:セラミックなどのホームコレクションは興味深いけど、「パトゥ」は小さなチームだからね。ただ、22-23年秋冬にコラボしたラバーブーツブランド「ル シャモー(LE CHAMEAU)」のような専門ブランドと一緒にモノ作りに取り組むのも面白いと思う。来年1月に披露する23-24年秋冬コレクションでは、また別のエキサイティングなコラボがあるから、楽しみにしていてほしい。

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117万フォロワーのユーチューバー北の打ち師達が「ハルキの古着」をスタートした理由

はるくん

1995年9月13日生まれ、北海道出身。2人組ユーチューバー、北の打ち師達のメンバー。2010年にユーチューブで活動を開始した。「君の名は。」などの人気楽曲でパフォーマンスする“ヲタ芸”動画や、さまざまな“しばり”を設けた24時間・1週間生活企画が人気だ。現在のチャンネル登録者数は117万人。20年に、フジテレビアナウンサー(当時)の久代萌美と結婚した

 117万フォロワーを持つユーチューバー「北の打ち師達」の“はるくん”が、2021年に個人チャンネル「ハルキの古着」をスタートした。22年12月には、東京ビッグサイトで行われた国内最大級の古着イベント「フルギフェス」にも参加。23年も盛り上がりが継続するであろう“古着”をけん引する若き旗手に話を聞いた。

北海道での小学生時代、父の影響でビンテージに目覚める

WWD:2021年に個人チャンネル「ハルキの古着」をスタートし、現在の登録者数は3.3万人だ。古着との出合いを教えてほしい。

はるくん:父がビンテージジーンズ好きで、小学生のころから“ダメージ=味であり、ただの汚れではないこと”や、“501”“赤ミミ”といったワードを聞かされていました。また、東京に一緒に買い物に来ることもあって、裏原宿にあった「ノーウェア」(NIGO®と高橋盾「アンダーカバー(UNDERCOVER)」デザイナーが1993年に開店)で買ってもらった“エイプヘッド”のキーホルダーをニンテンドーDSに付けていました。

WWD:自分で買った初めての古着は?

はるくん:中3か高1のとき、セカンドストリートで購入した「リーバイス(LEVI’S)」の“501”です。父から、「とにかく“501”はすごい!」と聞かされていたので(笑)。小遣いで買ったので1000円くらいだったと思います。古着について“予習”してから買うようになるのは、大学入学で上京してからですね。

WWD:好きなブランドは?

はるくん:古着の場合、ブランドは関係なくて、デザイン優先で決めています。僕は古着好きの前に、服が好きなので、ゴリゴリのアメカジルックというより、いわゆる古着ミックスな着こなしが多いです。古着を使ったコーディネートを楽しみたいというか。

WWD:古着以外も着る?

はるくん:はい。「アンユーズド(UNUSED)」や「エムエーエスユー(M A S U)」「ダブレット(DOUBLET)」が好きです。

WWD:よく行くショップは?

はるくん:中目黒の「ロク」にお邪魔することが多いです。“マルジェラ期”の「マルタン マルジェラ(MARTIN MARGIELA)」があったり、新品があったり、自由なセレクトに共感しています。最近、モックネックのニットを買いました。90年代くらいのもので、ハードめなダメージが特徴です。価格は1万7000円くらいでした。下北沢の「ベルベット」にもよく行きます。こちらは“トゥルービンテージ”中心の品ぞろえで、ほかで見たことがないものが多いです。僕は60年代のつなぎを3万5000円ほどで購入しました。

WWD:妻である久代萌美アナウンサーは古着に理解がある?

はるくん:「いつも誰かのお下がりを預かって(着て)“お人好し”ね」って、よく言われます(笑)。でも、それって今風に言えばサステナブルでしょうし、“好き”を継承していく=好きがつながるのって、すてきですよね。

WWD:久代アナウンサーも古着を着る?

はるくん:僕の影響で着るようになりました(笑)。一緒に、古着店に買い物に行くこともあります。僕はユーチューブを通じて古着の魅力を伝えようとしていて、一番身近な人に影響を与えられているのはうれしいですね。

「ユーチューブを通じて、視聴者と古着の架け橋になりたくて」

WWD:ファッションのこだわりについて聞きたい。

はるくん:僕はマニアではないので、年代とかどこの工場で作られたとかにはこだわらないです。むしろ古着チャンネルを始めて、いっそうコーディネートを意識するようになりました。ありがたいことに、「ハルキの古着」を通じて古着と初めて接する視聴者も多く、彼らの多くは古着の着こなしに不慣れです。だから少しでも彼らの学び、古着への架け橋になれればと考えています。僕は古着を知って人生が楽しくなったので、それをぜひ視聴者にも感じてほしいです。

WWD:今年12月、東京ビッグサイトで行われた国内最大級の古着イベント「フルギフェス」に出店した。

はるくん:僕にとって初めてのリアル販売イベントで、大学生のころから買いためた私物を出品しました。僕のことを知らない人も含めて、想像以上の古着ファンが来店してくれて、1日限りのイベントでしたが、持参した150点を完売しました。僕にはいつか古着店をオープンしたいという夢があるんですが、その思いがより強くなりました!

WWD:来店者の顔ぶれは?

はるくん:男性が多かったですね。実は、「ハルキの古着」の視聴者も95%が男性なんです。ただ、世代は幅広かったです。僕(27歳)より下の世代から40〜50代まで。こんなふうに年齢を問わない点も、古着の魅力だと思います。

WWD:2023年もリアルイベント開催の予定はある?

はるくん:古着店でポップアップなんかできたらいいですね。ほかの古着系ユーチューバーとレンタルスペースを借りて実施してもいいでしょうし。ただ、具体はまだありません。まずは年末年始用に動画を編集しなくては、で……。

WWD:ファッションにおいて参考にしているものはある?

はるくん:自分の発想にない着こなしを見られるので、スタイリストさんのインスタグラムは参考にしています。よく見るのは山田陵太さん、TEPPEI(テッペイ)さん、高橋ラムダさんです。

WWD:ひと月のファッション費はどれくらい?

はるくん:15万〜20万円ほどです。「ハルキの古着」を始めてから、今まで着なかったジャンルの服も“動画用に買ってみよう”となって増加傾向です(笑)。

WWD:現在、注目している古着は?

はるくん:トラックジャケットにはまっていて、1970年代の“ゴツナイキ”を探しています。

WWD:2022年、最も買って良かった古着は?

はるくん:高円寺の「セブンデイズ」で買った1950年代のスカジャンです。10万円弱でした。身長180cmと体の大きな僕に合うスカジャンってあんまりなくて、かつオレンジの発色にほれました!

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アラフォーには懐かしの「ビューティビースト」が国内外で若年層も巻き込んで人気再燃

 東京のデザイナーズブランド「ビューティビースト(BEAUTY:BEAST)」は、1990年代に東京やパリでコレクションを発表して、熱狂的なファンを獲得。ところがデザイナーの山下隆生は2000年にブランドを休止すると、その後はさまざまなファッション企業でメンズやウィメンズ、子ども服、スポーツウエアなどのディレクションを担当。20年の「ビューティビースト」再始動まで、表舞台から遠ざかっていた。

 最初のブレイクから30年、現在は人気が再燃するどころか海外のファンも多く、「#beautybeast」でインスタグラムを検索すると世界各地からの投稿が見つかるほか、メルカリなどの2次流通では高値で取引されている。新作の売り上げも順調だ。カムバックの理由は、なんだったのか?90年代と現在でモノ作りにかける思いは違うのか?山下デザイナーに聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):そもそも2019年の再始動のきっかけは?

山下隆生「ビューティビースト」デザイナー(以下、山下):3年前、「Your Fashion Archive」というウェブメディアのオリバー・レオーネ(Oliver Leone)からインタビューのオファーがあった。オリバーはファッションが大好きで「ヘルムート ラング(HELMUT LANG)」などの90年代に造詣が深く、彼自身が当時の日本のファッションに興味を持っていた。アメリカには、彼のような若い世代が多いという。そこで「これだけアメリカの若者が日本の90年代ファッションを好きなのに、なぜ、あなたは洋服作りを再開しないのか?」と聞かれた。それが、インタビューの最後の質問だった。その時は「タイミングが合えば」と答えたが、確かにインスタグラムでは90年代の「ビューティービースト」(注:再始動前は「ビューティービースト」)が、当時の「アンダーカバー(UNDERCOVER)」や「リック オウエンス(RICK OWENS)」のように話題になっていた。僕は20年間、ネス湖に潜って頭を上げていなかったが、日本の90年代のファッションを求めている世界の熱量に動かされた。

WWD:なぜ、アメリカでは日本の90年代が盛り上がっているのか?

山下:彼らの手元に、僕の洋服がどう届いていたのか?流通の全容は今もわからない。ロサンゼルスのセレクトショップがアーカイブを集めてコーナー展開してからという話もある。90年代はインターネットが整う直前で、僕の手元の資料は全て紙。若い世代にとっては、謎に包まれている印象があるのかもしれない。僕にとっての70年代のような感覚を、今の若い世代は90年代に抱いているのかもしれない。(日本のブランド古着や「ビューティビースト」との新作コラボなどを販売する米ECの)「エンプティー ルーム(EMPTY R__M)には20代のファンが多いそうだ。

 考えてみれば、今の世の中には90年代のメンタリティがあるのかもしれない。湾岸戦争(1990年〜)とウクライナの侵攻が重なる人もいるだろう。コロナの影響で国内ブランドへの注目が集まったのも、90年代に似ている。振り返れば90年代の前半には「シュプリーム(SUPREME)」や「ステューシー(STUSSY)」がブレイクしたが、半ばくらいからは「ビューティービースト」のほか、「20471120」や「ケイタ マルヤマ(KEITA MARUYAMA)」などのインディペンデントなブランドが売れるようになった。最近までは「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」などが強かったけれど、世界的な物価高や円安でインポートが買いづらくなって、日本のブランドが注目されるようになった現代と重なる。

 ただ日本でも今、90年代は盛り上がっていると思う。「エモい」は、90年代ならオタクだけが楽しんでいた、斬新ながらどこかノスタルジックなものに使われる言葉だと思う。「ビューティービースト」の洋服をインスタグラムでアップする若い世代は、90年代のファッション誌を買い漁っている。90年代の映像を欲している若者も多いから、当時の空気感を伝えられるイベントが開けたら、と思っている。

WWD:そこで「ビューティビースト」を再始動した。

山下:たくさん商品を作って、アパレル・マーケティングをするつもりはない。ただネス湖に潜っていたときでも、追いかけ続けてくれた40代の熱心なファンは多い。彼らが洋服を着てくれるなら、と思っている。若い世代も着られるけれど、40代はどこかにノスタルジーも感じてしまう。そんなブランドを目指している。「新しいものを」と思って作り続けた90年代のアーカイブを全部ひっくり返して、「どこか懐かしく、でも今着られるものは何か?」を考えている。今の40代は、当時よりお金を持っている。でも「当時より派手じゃなく」、一方で「持っていないものが欲しい」という。そのバランスを探りたい。明らかに変わったのは、ドクロのように今の社会では「死」を意味するような悲観的なモチーフ使いはやめている。昔より色は多いのかもしれない。社会の”どんより”した雰囲気を払拭したい。僕は、自分に思いを言語化する能力がないから、メッセージやメンタリティをぶつけて洋服を作っている。そこに今は、思いを言語化できるパートナーが現れ、SNSという伝えるツールも整った。40年くらいずっと探していた言語化できる人と環境を手にした。

WWD:と同時に、若い世代も興味を持っている。

山下:今の世代はコーディネイトが上手なのに、提案するスタイルを丸ごと買ってくれたりする。そんな時は、発信できるようになった言語というより、そんな言語を連ねた文章に共感してくれたのかな?と思っている。僕がラッキーだったのは、SNSで拡散しやすいヒストリーがあったこと。SNSでの反響は、昔の口コミに似ている。外出自粛の影響でスマホをいじる時間が増えたことで、皆細かく、深く掘り下げるようになっている。

 昔「トム ブラウン(THOM BROWNE)」のコレクションを見た時、大きなショックを受けたことがある。彼の定番には、デザインが存在しない。「普通がかっこいい」「それが新しい」なんて、自分の発想にはなかった。ブランドを休止した2000年ごろ、世の中に広がり始めていたのは「ユニクロ(UNIQLO)」。営業担当と次の方向性について話をしていたとき、こだわりの寿司屋より、回転寿司の方が好かれる時代が到来したように感じた。ネット時代が到来して、洋服の代わりにハードウエアに数十万円を費やす時代にもなった。だからコレクションピースを作ることをやめ、テクノロジーの勉強をして「タイガリオナ(TAIGALIONA)」(編集部注:山下が2020-21年秋冬にスタート。日本古来のワークウエアをベースに、テクニカル素材とモード由来のシルエットの融合を試みている)をスタートした。ただドナルド・トランプ(Donald Trump)が大統領に就任してからは、あれだけハッキリした物言いに反発する若者も現れるだろうと感じていた。ファッションはメンタリティーのPRツールでもある。世間とは違うメッセージを発信したい人に届けば嬉しい。

WWD:海外の人に売れている理由は?

山下:海外の人は今、そのヒストリーにリスペクトの思いを込めてくれる。この思いは、フィジカルな店舗に絞った方が共有しやすいのではないか?もちろん、最終的には直営のウェブショップが必要だと思うが、販路については良きパートナーと、深く掘り下げるような関係性を築いていきたい。僕にとって、洋服は単語。その単語を「今の時代、こんなふうに組み合わせると、今までにない文章になるでしょう?」と提案しているつもりで、それは今も昔も変わらない。だからメンタリティを表現する修飾語まで、きちんと取り扱ってくれるパートナーとタッグを組みたい。

WWD:新作には、当時の復刻も多い。

山下:トラックスーツは当時の色を復刻しながら新色を発売し、ラビットのバックパックは270個限定で作ったりした。もちろん商習慣と合わせないといけないが、消費者のニーズはシーズンレスになっている。「今、ここで着たいパーカー」が提供できたら、それでいい。コンサートで求められるのは、新曲だけじゃない。大事なのは、オールタイムベスト(デビュー時から最新まで発表した全時代の全楽曲から選曲され、キャリアが総括されたベストアルバムを指す)だ。

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新たなフロンティアを求めて KING -MASAと考えるサウジアラビアのファッション市場

 2019年に個人観光ビザの発給が解禁されるまで、“世界一訪れることが難しい国”といわれていたサウジアラビア。イスラム教やアラブ王国、石油、サッカーなど想像に難くないが、今なおベールに包まれているのがファッションだ。数年前に服装の規制は撤廃されているものの、全身を白や黒で覆う民族衣装のイメージはまだ強い。そんな謎多き国でこのほど行われたスニーカーイベント「スニークミー(SNEAK ME)」に、スニーカーコレクターであり「オールウェイズ アウト オブ ストック(ALWAYS OUT OF STOCK、以下A .O .O.S)」のディレクター、キングマサ(KING -MASA)が参加した。KING-MASAが見たサウジアラビアの現状を聞きながら、中東のファッションの未来を考察する。

――「スニークミー」へはなぜ参加することに?

KING -MASA:友人のティー(ロンドンのクリエイティブ集団「ビジョナリズム(VISIONARISM)」を主宰)がこのイベントのディレクションに関わっていて、彼から連絡が来たんです。「数年前まで渡航がオープンになっていなかったけど(2011〜19年まで観光ビザの発給が停止されていた)、今は逆に国がファッションを盛り上げようとしている。国のバックアップで旅費や宿泊費、輸送費などの経費、ビザの手配などをサポートしてくれるから『A.O.O.S』として出展してくれないか?」というものでした。ただ、会期が2週間と長かったので出展は厳しいと伝えたら、数日間、インフルエンサー枠としてだけでもいいから来て欲しいと。だから僕は今回インフルエンサーとして参加したんです。

――なるほど。サウジアラビアってどんな雰囲気なんですか?

KING -MASA:街はラスベガスかと思うぐらい煌びやかで、めちゃくちゃイケてる。でもファッションを見ても「シュプリーム(SUPREME)」や「ナイキ(NIKE)」のようなブランドを着ている人はいなくて、買う場所もほとんどなかったですね。実際、「ストックX(STOCK X)」のようなリセールサイトでもサウジアラビアへの配送はしていないみたいです。

――買う手段がないんですね。イベント自体はどんなところで開催されたのですか?

KING -MASA:会場は屋外で、砂漠のど真ん中でした。昼間は暑過ぎて無理だから、夕方の16時から深夜0時までやるナイトマーケットみたいな感じです。そんな遅い時間にわざわざ人が来るのかなと思っていたら、20時ぐらいまではほとんど人がいないんですけど、逆に21時とか22時とかになったら人がバンバン来て。そういえば、フライトも夜の便で着いたんですけど、そのときも空港に人がたくさんいたし、夜型なんです。

――出展ブースは海外のスニーカーショップですか?

KING -MASA:イベントのメインは、海外のリセールショップでした。リテールは「アシックス(ASICS)」や「ビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)」が出ていて、残りはワークショップ。50店以上出ていて、どこも巨大なブースを構えていましたね。イメージとしては、「スニーカーコン」と「コンプレックスコン(COMPLEXCON)」の間みたいな感じです。ちなみに、アジア人で参加していたのは僕だけでした。

――リセールプライスで売られているんですよね?やっぱり高いんですか?

KING -MASA:値付けはまあまあ高かったですけど、それでも売れるんだと思います。“イージー(YEEZY)”や「ディオール(DIOR)」דジョーダン”みたいな分かりやすいものが売れていた印象です。白い民族衣装を着ている人も多いんですけど、足元はスニーカーを履いているんですよね。民族衣装は強制ではないらしく、友人はファッションが好きだから特別なとき以外は着ないと言っていました。興味深かったのは、会場の中央のブースに中東で有名なインフルエンサー2人のスニーカーが数足展示してあったんですけど、中にはフェイクもあって、それも一眼で分かるようなもの。でも、正規店がないからそもそも比べようがないんですよ。海外旅行に行ったときとかにリセールで買うしか手に入れる手段がないので。

――確かに情報がないから、コアなビンテージなんかより、分かりやすいものがいいのかも。

KING -MASA:そうですね。実際、多少は古いスニーカー(数年前に出たもの)もあったんですけど、あんまり反応は良さそうではなかったです。それと、古いスニーカーを持ってきたら急激な温度変化で、突然“エア”(クッショニング性能を持つ踵のソールユニット)の部分が割れたという人もいました。本当に暑いので、そういう環境的な課題はあります。

――四季があるような国でもないからこれからファッションやスニーカーが発達していけば、そこでしか生まれないイノベーションが開発されるかもしれませんよね。

KING -MASA:それはあるかもしれないですね。思ったよりもネガティブなイメージもないし、何より安全。出展ブースのスニーカーを2週間もどうするの?と聞いたら、一応ロッカーはあるけど、そのまま置いて帰っても大丈夫、と。もし盗難にあっても、そこら中にカメラが付いているから犯人はすぐに捕まるとか。サウジアラビアやドバイは今世界で1番安全な国だと言っていました。

――確かに、アメリカやヨーロッパだとそうはいかないですもんね。

KING -MASA:ファッションやスニーカーは欧米の主要都市では飽和状態ですけど、サウジアラビアも含めて中東はまだまだ進化していくだろうし、自分のブランドにも可能性を感じています。興味深いし、かなり面白かったですね。実際、「ハイプビースト(HYPEBEAST)」がミドルイースト(中東)版を運営していたり、ラスベガスにあるリセールショップ「アーバンネセシティーズ(URBAN NECESSITIES)」がサウジアラビアに近々店をオープンしたり、これからどんどん盛り上がっていくと思います。

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「WWDJAPAN」年間アクセスランキング2022

「WWDJAPAN」 年間アクセスランキング2022

 2022年でアクセス数の多かった「WWDJAPAN」の記事をランキング形式で発表。
今年最も読まれた「WWDJAPAN」の記事は・・・?多くの関心を獲得した記事や、注目度の高い見逃していた記事を振り返ってみよう。

 「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントは、毎週土曜日に【週間アクセスランキング】を配信。
今すぐ「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントを[友だち追加]して、最新トレンドやファッション&ビューティ業界で注目されているトピックをチェックしよう。
※12月31日(木)、1月3日(火)は定時配信をお休みさせて頂きます。
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- 1位 -
篠原ともえの革の着物作品が世界的広告賞、ADC賞で2冠を達成 

05月20日公開 / 文・福永千裕

 篠原ともえがデザインを手掛けた革の着物の作品“ザ レザー スクラップ キモノ(THE LEATHER SCRAP KIMONO)”が第101回ニューヨークADC賞(THE ADC ANNUAL AWARDS)でシルバーキューブとブロンズキューブの2冠を達成した。

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- 2位 -
「ディオール」が中国ネット界で炎上 「制服に着想した」スカートが中国の伝統衣装に酷似と批判

07月20日公開 / 文・DENNI HU

 「ディオール(DIOR)」が2022年ウィメンズ・フォール・コレクションで披露したミドル丈のスカートが、中国の明時代の伝統的な衣服に似ていると中国のネットユーザーの間で物議を醸している。 漢服愛好家の間で「ディオール」のスカートが明時代に流行したマミアンスカートに酷似していると話題になり、ウェイボー(微博、WEIBO)では、“Dior plagiarism(ディオールが盗作)”というハッシュタグが一時ホットサーチリストに入り、1370万回クリックされたという。

> 記事の続きはこちら

- 3位 -
「ディオール」のスカート炎上問題 パリの店舗前で中国人学生50人が謝罪を求め抗議活動

07月29日公開 / 文・DENNI HU

 「ディオール(DIOR)」が2022年ウィメンズ・フォール・コレクションで披露したミドル丈のスカートが、中国の明時代の伝統的な衣服であるマミアンスカートに似ていると中国のネットユーザーの間で物議を醸している問題について、約50人の中国人の学生がパリのシャンゼリゼ通りにある「ディオール」の店舗前に集結し、抗議を行った。

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- 4位 -
「スウォッチ」が「オメガ」とのコラボ時計の販売方法をあらためて発表 12時間以内にエントリーが必要!

03月29日公開 / 文・三澤 和也

 スウォッチ グループ ジャパンは3月29日21時に、「オメガ(OMEGA)」と「スウォッチ(SWATCH)」のコラボ時計の発売方法を公式SNSなどで発表した。

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- 5位 -
起業から5年で年商10億円 高級ブランドも信頼する元双子タレント広海の「仕事の流儀」

 双子のオネエ系タレントとしてテレビや舞台に出る一方、イベントのMCとしても活動していたHIROMI・FUKAMI(広海・深海)。彼らは今、ファッション&ビューティ業界のプロフェッショナルとして活躍している。FUKAMIがスタイリストとして活動の幅を広げ、ブランドのクリエイティブディレクションなども手がける一方で、HIROMIは2018年にデジタルマーケティング企業の株式会社Hiを設立して代表取締役に就任。

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- 6位 -
女性の裸のバスト写真をSNSに投稿した「アディダス」に賛否両論 新作スポーツブラのプロモーションで

02月21日公開 / 文・ROSEMARY FEITELBERG

 「アディダス(ADIDAS)」が新作のスポーツブラコレクションのプロモーションとして25人の裸の女性の胸の写真を公式ツイッターに投稿したことが物議を醸している。投稿には「私たちはいかなる形、サイズの女性の胸もサポートと快適さを得る権利があると信じています。この考えに基づき新しいスポーツブラのコレクションは43型をそろえ、誰しもにぴったり合うものが見つかります」とコメントを添えている。

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- 7位 -
「オメガ」 × 「スウォッチ」のコラボ時計がリセールサイトで記録的な取引数に 最も人気のモデルは?

03月31日公開 / 文・WWD STAFF

 リセールサイト「ストックX(STOCK X)」は、「オメガ(OMEGA)」と「スウォッチ(SWATCH)」による初のコラボレーション“ムーンスウォッチ”が、数々の記録を樹立していることを発表した。

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- 8位 -
ヘアメイクアップアーティストの藤原美智子が42年のヘアメイク人生に終止符 

 ヘアメイクアップアーティストの藤原美智子氏はこのほど、自身のインスタグラムで4月19日付でヘアメイクの活動を終了すると発表した。また同日に自身が経営する事務所のラ・ドンナを解散することも発表した。インスタグラムの投稿では「ヘアメイクアップアーティストを始めてから42年。長い間、多くの方に支えられここまで仕事を続けられてきたことに心より感謝申し上げます」と綴っている。

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- 9位 -
「エディー・バウアー」が日本再上陸 2023年春夏シーズンから

08月22日公開 / 文・WWD STAFF

 伊藤忠商事は、米アウトドアブランド「エディー・バウアー(EDDIE BAUER)」の日本市場における販売権とライセンス権を取得した。

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- 10位 -
スノーピーク山井梨沙社長が辞任 「既婚男性との交際および妊娠」を理由に

09月21日公開 / 文・林 芳樹

 スノーピークは21日、山井梨沙社長が同日付で辞任し、山井太会長が社長職を兼任すると発表した。辞任理由について同社は、山井梨沙氏から「既婚男性との交際および妊娠を理由として、当社およびグループ会社の取締役の職務を辞任したいとの申し出」があったとしている。事態を重く見て、山井太氏は役員報酬3カ月分の20%を、副社長の高井文寛氏から役員報酬3カ月文の10%を自主返上したいとの申し出があり、同社はこれを受理した。

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「大ちゃん」の愛称で親しまれる三上大進が届けるスキンケアブランド「dr365」にのせた思い

 NHKでパラリンピックのレポーターや、「あさイチ」の美容にまつわるコーナーでレポーターを担当し、「大ちゃん」の愛称で親しまれる三上大進さん。「生まれつきの左手の障がいが、美容に興味をもつきっかけになり、ビューティを好きになれた。美容を好きな私が個性」と語る三上さんは、実は日本ロレアル、ロクシタン ジャポンでキャリアを積んだ美容業界人だ。そんな自身のバックグラウンドを生かし、2021年11月には自身のスキンケアブランド「dr365(ドクター365)」を立ち上げた。たくさんの人の肌悩みに寄り添いながら活躍の場を広げる三上さんに、これまでのキャリアや「dr365」の立ち上げ秘話を聞いた。

「美容を好きな私」が個性

WWDJAPAN(以下、WWD):まず、三上さんの経歴を教えてください。

三上大進(以下、三上さん):新卒で日本ロレアルに入社して、「ランコム(LANCOME)」と「キールズ(KIEHL'S SINCE 1851)」のマーケティングを担当しました。その後、ロクシタンジャポンに転職。製品開発とマーケティングに携わりました。そこから、2018年にNHKに入局。パラリンピックや、「あさイチ」の美容コーナーで4年ほどレポーターを担当しました。

WWD:三上さんといえば、パラリンピックのレポーターというイメージがある人も多いのでは。そもそも化粧品業界に携わるようになったきっかけは?

三上:生まれたときから左手に障がいがあり、中高生ぐらいの二次成長が始まり多感なときは、周りとは違う自分の体の特徴にすごく目がいって……。私の指はいつまで経っても生えてこなくて、一生この姿だと思うと、ほかの人と同じスタートラインに立てていないような気持ちで日々を過ごしていました。私の場合は左手を簡単に隠すこともできちゃうけれども、左手の指が足りないのなら、それ以外のところをかんぺきにきれいにすれば、もしかしたら人はそっちを見てくれるんじゃないかと思ったんです。そんなきっかけでスキンケアにお金をかけ始めました。お小遣いやお年玉は全てスキンケアやヘアケアに費やしましたね。今振り返ると、「左手のコンプレックスのせいでかわいそう」って思われるかもしれないけれど、全然そんなことはないんですよ。「左手の障がいがあることが個性」なのではなくて、左手の障がいがあったからこそ、自分が美容に興味をもって、ビューティを好きになれたんです。「美容を好きな自分」が個性であり、その個性に出合わせてくれたのが左手だと思っています。

WWD:化粧品会社のマーケターから、レポーターへと大きな転身を遂げた背景は?

三上:パラリンピックのレポーター・キャスターを募集していて、友人に応募してみてはと言われたんです。当時は会社員だったのでレポーターではなく、ボランティアスタッフとしてやりたいと思っていた通訳スタッフに応募しました。なのに、なぜかメインキャスターに選ばれちゃって。ちょうどロクシタンジャポンでは、フランス本国に1年間の留学、もしくは赴任する話が上がっていたこともあり、日本に残るならパラリンピックの道かなと思いましたね。ロクシタンジャポンの上司から「“2020”は人生に1度しかないもの。マーケティングに携わっているなら、1度しかない“2020”というプロダクトは絶対に逃しちゃダメ」と素敵なアドバイスをいただいて、背中を押してもらいました。左手のコンプレックスは残ったままだし、向き合える機会は2度と来ないかもしれないという思いとも重なって、NHKのレポーターになったんです。

WWD:「あさイチ」では、美容コーナーのレポーターも担当していたんですね。

三上:そうなんです。実はこの経験が「dr365」の立ち上げの理由の一つです。化粧品会社でマーケティングに携わってきましたが、みなさんがどんな肌悩みを持っていて、何に困っていて、どのように解決したいのか、生の声を初めて聞いたのはこのときが初めてでした。

WWD:もう1つの理由は?

三上:もう1つの理由は、インスタグラムでのライブ配信です。コロナ禍でライブ配信が盛り上がったときに、お肌に関するお悩み相談コーナーをやりました。初めは300人程度の視聴者だったのが、最近は5000人以上が見てくれることもあるんです。コロナ禍のマスク荒れや、生活リズムの乱れからお肌に悩んでいる人が多いということを改めて実感しました。みんなに「私がスキンケアをプロデュースしたらどうかしら」って聞いたところ、「今までたくさんのお肌のお悩み相談にのってくれた大ちゃんが作ってくれるなら使ってみたい!」と言ってくれたので思い立ちました。

原料調達から取り組むほど
徹底的に中身にこだわった「dr365」

WWD:「dr365」でこだわったのはどんなところ?

三上:ビューティに携わってきたバックグラウンドがあり、たくさんの悩みに触れてきたからこそ、とにかく中身にこだわりたいという思いが強かったです。皮膚科医の先生に監修してもらい、処方にはとにかくこだわりました。まず8つのフリー処方(1.アルコールフリー、2.合成香料フリー、3.合成着色料フリー、4.石油由来界面活性剤フリー、5.動物由来成分フリー、6.鉱物油フリー、7.光毒性フリー、8.パラベンフリー)は必ず実現させたかったところ。さらに、より多くの人に使ってもらえるように、敏感肌テストやアレルギーテスト、ノンコメドジェニックステスト、スティングングテスト、4週間の連用試験もクリアしています。原料1つ1つに関しても、日本国内に入ってきていないものは海外の原料会社に直談判して、OEM会社と二人三脚で原料調達から試行錯誤しました。安全性が高くて、エビデンスがしっかりと取れていて、かつ皮膚刺激が少ない原材料で効果のある商品を作りたいと思ってできたのが、「dr365」です。

WWD:特に毛穴ケアに重きを置いたのは?

三上:どんな肌悩みに対応しようか考えたときに、「あさイチ」の特集で視聴者に聞いたところ10〜50代のいずれの世代でも毛穴の悩みが多かったことを思い出しました。若いときは皮脂による毛穴の開き、年齢を重ねると黒ずみやたるみ、年齢を問わずさまざまな毛穴の悩みがあることに気づきました。そして、これほど毛穴の悩みが顕在化していて世の中には毛穴ケア商品がたくさんあるのに、悩みがなくならないのはなぜかと考えたときに、やはり価格がハードルだと思いました。「あさイチ」のレポーターを通して、みなさんが1カ月に化粧品にかけられる金額は5000〜1万円ほどということも知りました。けれども、美容液を見てみると市場で一番厚い層は1万円以上からで、5000円台で購入できるものはほとんどありません。だから、自分が作るときには高機能でも手が届く価格帯に納めたいという思いがありました。

WWD:ブランドを立ち上げて、一番苦労したことは?

三上:自分で立ち上げた会社で、初めてのモノ作り。最初に用意できる数量はかなり限られていました。発売直後アクセスが集中して、ECサイトがサーバーダウンしてしまったんです。できる限り手を尽くしてサーバーを修復しましたが、2週間連続でサーバーダウン。大炎上でした。ようやく作り上げたのに、反響が多すぎて。出すたびに完売を重ねて、在庫が安定するまで4カ月ほどかかりました。

WWD:購入者は、三上さんのファンがほとんど?

三上:発売時から継続して購入してくれているお客さまが90%を占めています。多くのECサイトでは継続率50%を目指すと言われている中で、この継続率の高さはありがたいですよね。10%の新規購入の中でも、およそ7割がリピーターになってくれています。発売当初は私を知ってくれている人が多かったと思うのですが、現在はアットコスメの口コミや、購入者がSNSで拡散してくれて、意外と私のことを知らないお客さまもいるんです。広告宣伝費をかけずキャンペーンもやっていないので、完全にオーガニックで拡散されています。「dr365」のインスタグラムアカウントも立ち上げて、翌朝には1万5000人になり、今では3万5000人ほどにフォローしてもらっています。

WWD:好調の要因をどのように分析する?

三上:ポジティブな部分だけでなく、ネガティブな部分も包み隠さず全部言っちゃうところかな。化粧水の発売前にインスタグラムのストーリーでQ&Aを募ったときに、「よくない意見も教えてほしい」と言われたので、包み隠さずに話してみたんです。全員が全員好きなはずはないし、悪い意見も尊重すべきだと思ったからこそ伝えました。実はそれを見て購入してくれた人が多かったんです。人それぞれ合う合わないはあるし、肌悩みは毎日増えていくもの。けれども毎日皮膚科には通えません。「dr365」は毎日使ってもらえる処方箋みたいな存在でありたくて、きれいな部分だけでは毎日寄り添えるブランドにはなれないと思ったから、生の部分も出していこうと思っています。

WWD:今後の計画は?

三上:国際情勢で原材料の確保が非常に厳しい状況もありましたが、もっと良い成分にアップグレードした上で安定して調達ができるようになりました。これによって在庫の安定もかなっています。目標を達成できた分、売上金の一部をウクライナに寄付しました。必要としているところに還元するというスタイルをとっています。1カ月のスキンケアが毎月カルテのように「dr365」から届くというようなブランドを目指しています。現在は化粧水“V.C. セラムインローション”と美容液“V.C. プレスエッセンス”の2アイテムなので、洗顔や乳液はそろえていきたいですね。洗顔して、導入して、化粧水をして、ふたをするという基本的な4つのステップが処方箋のように届くようにしていきたいですね。実は洗顔も乳液も1年以上開発を続けているので、2023年中には届けられるかなと思います。

WWD:最後に三上さんご自身の目標を教えて。

三上:10代はとにかくビューティに救われ続けてきました。肌や爪、髪をきれいにすると褒めてもらえて本当に救われたんです。だから20代はビューティを知ろうと思いました。30代になってビューティを広める一翼を担えるようになれたのがとにかくうれしいんです。なので30代後半に向かっては広めていく中心になれたらと思っています。ビューティを自分なりの音符に乗せて届けたいですね。40代は自分の中では考えているのですが、まだ秘密です!!!

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なぜ丸井は「正月三が日休業」を決断したのか 青野社長に聞く

 丸井グループ(東京、青井浩社長)は、商業施設「マルイ」「モディ」で一部を除き2023年1月1〜3日を休館日とし、初売りを4日にすると発表した。百貨店やショッピングセンター(SC)のほとんどは2日が初売り(郊外型SCは元日の初売りが多い)のため、丸井の三が日休業・4日初売りは異例といえる。同社は22年1月も大半の店舗の初売りを3日に後ろ倒しして話題を集めた。その結果を検証した上で、さらに休館日を1日増やす。三が日休業に至った理由を、中核会社である丸井の青野真博社長に聞いた。

WWD:丸井が三が日を休館日にするのは1988年以来35年ぶり。なぜ踏み切ったのか。

青野真博社長(以下、青野):まずお客さんの変化。かつては初売りのセールや福袋を目当てに、徹夜して何千人も並ぶのが当たり前だった。しかし、コロナ前からそこまでお客さんが集中する状況はなくなっていた。

 もう一つは働く側の変化。取引先(テナント)のスタッフは、休日や祝日に働くことに慣れている。小売業にとっては、人様が休んでいるときが稼ぎ時。大晦日や正月の元日・2日に働くことを覚悟していないスタッフはいない。でもコロナを経て家族との時間を大切にしたいと考える人が増えた。販売員は女性が多い。家庭を持っていれば、「お正月なのにママはなんでおうちにいないの?」と子供が疑問に思ったりもする。小売業の従事者は正月を家族と過ごせないのが当たり前なのか。立ち止まって考えるようになった。

WWD:今回(23年)の三が日休業の前に、今年(22年)1月の元日・2日の2日間を休館日にした。2000年の規制緩和後、商業施設は元日または2日から営業することが当たり前になっていたため、これだけでも珍しいケースだった。

青野:不安がなかったわけではないが、実施してみたら取引先とそのスタッフにものすごく感謝された。お父さんやお母さんが元日・2日を子供とゆっくり過ごす幸せ、単身者が実家に帰省して両親や兄弟姉妹と会える大切さを再認識できた。リフレッシュして仕事のモチベーションが高まったという声も寄せられた。一般的な会社員であれば、12月28日くらいから1月3日くらいまで1週間前後の正月休みがある。でも商業施設で働くスタッフは大晦日まで働き、元日だけ休んで、2日から初売りで出勤する。たった1日間の休みでは疲れ切って、遠方に住む両親に会うこともできない。今回のように三が日を休めるのであれば、帰省も可能になる。アパレルも飲食店も深刻な人手不足に頭を痛めている。働く人にとって魅力的な職場にしなければ存続すら厳しくなってしまう。背景にはそんな危機感がある。

売り上げとウェルビーイングはトレードオフではない

WWD:それだけの反響と期待を感じたから、さらに23年は22店舗中17店舗での三が日休業を決めたと?

青野:いけると確信した。実際、今回も約1000社の取引先にアンケートを実施したところ、8割以上は三が日休業に賛成してくれた。スタッフが賛同するのは予想通りだったけど、意外だったのは取引先(の本部)も後押ししてくれたことだ。取引先から届いた声としては「三が日を休めるのであれば、スタッフも年末商戦を全力で頑張れる」「自分たちテナントとしては休館日がないと休めないため、非常にありがたい」「初売りで昔ほど突出した売り上げを稼げないので、影響は少ない」「ゴールデンウイークもお盆もシフト上3連休はほぼ取れないので、せめて正月くらいはスタッフを休ませたい」――。そんな肯定的な意見が多かった。

WWD:そうはいっても他の商業施設が元日や2日から営業する中、4日に遅らせて売り上げに響くことを懸念する声はないのか。

青野:いきなり三が日休業にすれば、反対する取引先も多かったかもしれない。しかし、22年に元日・2日の2日間を休業にするプロセスを一旦挟んだことで、心配するほど売り上げに影響がないことが実績で示された。当社の場合、かつては1月(1カ月間)の売り上げに占める1月2日(初売り)の割合が15%くらいだった。今は7%程度で、月の後半の売り上げ水準が上がる傾向にある。22年1月の基調は、21年12月に比べて1%増だった。

WWD:休館日を増やしても売り上げは維持できると?

青野:売り上げとワークライフバランスをトレードオフでは考えていない。スタッフの働きやすさのために減収に目をつむるなら、結局は長続きしないだろう。スタッフのウェルビーイングが向上しても、取引先や株主の利益を損なうことになる。稼ぐことのできない商業施設に、家賃を払って出店するテナントなんていない。全てのステークホルダーの幸せの総和を追求してくのが丸井グループの考え方だ。丸井グループの「ビジョン2050」では、「ビジネスを通じてあらゆる二項対立を乗り越える世界を創る」と宣言した。相反する課題を第三の知恵で乗り越える。私たちは難しいけどワクワクするテーマに挑んでいる。

WWD:売り上げ確保のためにどんな手を打つのか。

青野:例年以上の販促策で店舗とEC(ネット通販)に集客する。目玉は自社EC「マルイウェブチャンネル」への誘導だ。前年の2倍の売り上げを見込んでいる。1月1〜3日までエポスカード会員の優待キャンペーン「お正月 マルコとマルオの3日間」を実施し、会員のお客さんは10%オフで買い物できるよう企画した。ずっと店舗を利用してくださったお客さんにもECを勧める。正月はご自宅でゆっくりECでの買い物を楽しんでください、とアナウンスしている。

 また12月22日からは2000円以上お買い上げのお客さんにスクラッチカードを配っている。エポスカード会員のお客さんは最大2000円、ハズレはないので最低でも200円分のクーポンが付与され、1月の買い物で使うことができる。1月いっぱいの集客と売り上げに効果を発揮してくれるだろう。

他の商業施設だって三が日休業はできるはず

WWD:丸井グループはエポスカードに代表される金融業で稼いでいるから小売業であくせくしなくてよい、という人もいる。

青野:金融事業が好調で丸井グループの利益の大半を稼いでいるのは事実だ。しかし、だからといって小売事業で損をしてもいいとは全く考えていない。先ほども言ったように売り上げとウェルビーイングは、トレードオフの関係ではない。働き手の満足を高めるだけでなく、お客さんがもっと快適に買い物や食事を楽しみ、取引先にはしっかり稼いでもらい、そして株主に利益を還元する。長い目で見て、持続可能なビジネスにするために知恵を絞る。

 今回、三が日休業を実施するにあたり、取引先に対して1月の1日分の家賃を減免することした。三が日休業のサポートであり、12月と1月の商戦を一緒に頑張りましょうという丸井の不退転のメッセージでもある。丸井グループには「信用の共創」という言葉がある。家具の月賦販売会社として創業した当社は、先に商品をお渡してから12回払い、24回払いなど信用を前提にお客さまと長い関係を築いてきた。支払いが遅れなければ利用可能金額が増え、利用期間が長くなるほどお客さんの信用はだんだんと上がる。長い時間をかけて、お客さんと双方向で信用を共に作る。パートナーである取引先との関係も同じように考えている。

 お客さんからも三が日休業に対して好意的な声が届いた。小売業やサービス業の長時間労働については、一般の方々も疑問を感じるようだ。消費市場は成熟し、お客さんは品ぞろえや価格だけでなく、企業姿勢も見ている。そして評価できる企業には、消費を通じて応援する。営業時間で他を出し抜き稼ぐ時代ではない。

WWD:他社の商業施設も丸井のような三が日休業は可能なのか。

青野:やれるはずだ。ただ、当社は取引先とのコミュニケーションを長年にわたって綿密に築いてきた。大家と店子という関係以上に、互いに知恵を出し合うパートナーとして関係を作ってきた自負がある。全国のマルイとモディでは、月に一度、当社の店長とテナントの店長が集まって議論を交わしている。さらにテナントだけが集まって施設への改善要望などを出し合う場も設けている。17年からはテナントが施設に対し、パートごとに細かく点数をつけて評価する制度を作った。テナントの声を聞くことを単なるお題目にしないため、施設の運営者の人事評価にも反映させている。だから取引先のスタッフの満足のために本気で取り組む文化が根付いている。

WWD:正月以外の営業時間も変化しているのか。

青野:コロナ前には半数以上の店舗が20時半閉店と21時閉店だった。これを段階的に前倒して現在はほとんどの店舗が20時閉店になった。開店時間は変わらず10時半か11時。これもお客さんの行動変化を受けての実施だった。コロナ以降、帰宅時間が早まっているからだ。1時間短縮することで、スタッフのシフトもだいぶ回しやすくなる。これも取引先と話し合いを重ねる中で合意形成していった。

 営業時間を減らせば、売り上げが減ると捉えられるかもしれない。私は丸井の11店舗の現場で働いてきたが、小売業は“際の商売”が大切。つまり開店直後、閉店間際に訪れるお客さんは、明確な理由があって商品を探しにくる。ここでの接客の積み重ねが売り上げに効いてくる。しかし長時間労働が毎日重なると疲れ切ってしまい、販売員は本来の力を発揮できない。ホスピタリティが低下してしまう。お客さんに密度の濃いサービスを提供できれば、1時間の短縮くらいは取り戻せる。従業員満足を高めることは、顧客満足につながる。

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経済予測名人のニトリ会長が語った「2023年の経済」「日経平均予想」「ニトリの逆張り戦略」

 今年も残すところあとわずか。そんな中、ニトリホールディングスの2023年3月期第3四半期の決算説明会が開催された。世界経済や為替、株価など、“経済予測の達人”と呼ばれる似鳥昭雄・代表取締役会長兼最高経営責任者はそこで何を語ったのか。海外での出店要請の増加要因について、白井俊之・同社長兼最高執行責任者と、グローバルを担当する武田政則・取締役兼ニトリ社長の説明も交えて、レポートする。

為替147円で予約は失敗。為替は得意だったが見誤った

――為替予約については今期分まで予約だと思うが、予約方針等で、長期の予約を検討する等の方針変更はあるのか、検討されているのか。海外事業の状況についてもより詳しく伺いたい。というのも、中長期で考えていくと、海外での小売り事業が広がっていけば為替がオフセットできる分があると思うので、そういった視点を踏まえて考えると、今後、海外事業の展開加速は可能なのか?今、中国、東南アジアの積極展開の話があったが、もう少し詳細に、直近の状況等アップデートいただければ。

似鳥昭雄ニトリ会長兼CEO(以下、似鳥):では、為替のことは私の方から。今期の決算末(2023年3月)まで147円で予約したが、結果的にちょっと失敗したなと。まあ、みなさんご存知のように134円と。一時151円までいったものだから。再度下がってきたときに買わないと、今度は150円から155円とか、もしくわ160円に行くのではという話もあったので。また、一度(政府が)為替介入して効果がなかった。日本政府は為替介入しても効果は少ないんだなと。もしあったとしても、あんまり影響ないかもしれないということがあって、みなさんと協議して147円で決算まで買おうかと。我慢して我慢し続けたんですけどね。

 私の予想では、アメリカの景気が悪くなって、年末近くになって、為替よりも景気が悪い方が強くなって円高になるということをずっと言ってきたが、それがなかなかならなかった。かなり時期がずれていたというか、住宅も夏以降、10%ずつ注文住宅が前年比で減ってきて、そういう状況もあるから、間違いなくアメリカから不景気になっていくと。そちらのほうが強くなると思っていたが、なんといっても0.75%ずつ毎月毎月金利を上げるということで、その時点では0.7%上げるということがはっきり決まったので、まあ、まずいなと思って、かなり迷ったが予約してしまった。あの時にあそこまで我慢したのでもう少し我慢したら、132円か130円切るぐらいのところでできたかなと。失敗したなと。大変みなさんに対しては申し訳ない。為替は得意な方だったが、ちょっと見誤ってしまったなと。みなさんにお詫び申し上げます。

来年は円高に、110~120円予想

似鳥:(為替は)来年で言うと、僕は110円ぐらいまで、110円から悪くても120円ぐらい、もしかしたら118円ぐらいでいくのかなと。理由は後から申し上げるが、アメリカが予想以上に景気が悪くなる。衣料も含めて世界的に景気が悪くなって、インフレも関税も下がると。ひょっとしたら日本型のデフレ経済になるきっかけになるかも。その前のインフレというのは、あだ花になるかもしれない。パッと咲いてですね。これは勘ですけどね。これだけ戦後に類例がなかったので。日本の失われた30年という、長期的なデフレで。これがこのインフレというものを機会にひょっとしたら、という気がするが、これは何の科学的根拠も何もないが。まあ、来年からは間違いなく世界的に不況で。その中でもアジア圏はいいんじゃないかと。

 今年は(ニトリの為替平均レートが)トータル132円で、去年が111円だから、21円の差。21円で20億円だから、21円×20億円で420億円前年より損をした。210円(おそらく、110円の言い間違い)に来たら、400億円がポンと為替(差益)に乗っかると。今の状況は間違いなく円高になるから、基本的には下がるまで待ち続けると。私の考えは、為替はドル高がドル安、円安が円高、下がるまで待つ。その後、次の段階でまた上がっていく。今度は今度は長期的に3年ぐらい、2~3年長期的に予約したいなと考えている。今度は失敗しないように。みなさんに大変ご迷惑をおかけしました。だけど、まあ、これから何十年も続いていきますからね。こういう10年か20年に1回、リーマンショックとかオイルショックがある。逆境を今まで乗り切ってきた。まあ戦後、僕は創業して55年だが、初めてのコロナ、それから円安、原材料高、輸送費が倍以上という。こういうのは創業して初めてだ。これもいい経験。失敗を経験として、今後の10年の糧にしていきたい。

海外中心に出店加速、10年間でグループ3000店舗へ

似鳥:出店はとくにシンガポールやマレーシアが軌道に乗ったので、タイやフィリピン、インドネシア、韓国、できたらインドといったところに、なるべく早く、来年調査して、少なくとも再来年、1店でもまずは(店を)出してみたい。海外は早く(年間)100店舗出店できる(ようになりたい)。来年に100店はどうかと思うが、再来年は間違いなく100店舗以上出して、日本より海外の方が多くなると思う。(グループの店舗純増数は)今年が約110店舗だが、来年は184店舗、再来年からは最低200店舗、それが3年ぐらい続いて、次は250店の時代と。(来年には総店舗数が)海外を含めて1000店舗(を超える)。異業種も含めて10年間で3000店舗という計画を立てている。だいたい全部(計画は)できたが、細かくは再度検証した結果、みなさんにお知らせすることができると思う。

――(衣料品の)「N+(エヌプラス)」と「デコホーム」について、通期の出店の見通しを変えている背景と、今、海外の出店については力強い言葉をいただいたが、今後の国内の出店戦略について考え方を教えてほしい。

似鳥:「Nプラス」は今年(期末店舗数が)30店舗、来年20店舗(を出店計画しており)、合わせて50店舗になる。3年目以降も最低20店舗ずつ、できたら毎年30店舗(出店)して、どんどん増やしていきたい。「デコホーム」は今160店舗。来年50店舗をオープンする。だいたい24年度が50店舗、25年度からは60~70店舗と増えていく。「ニトリ」は23年度が29店舗。(その後は)15~20店舗ぐらいがずっと続くと思う。

武田政則・ニトリHD取締役兼ニトリ社長(以下、武田):海外は今目標で来年77店舗オープンしようとしている。1店舗ずつ、地域、ショッピングセンター(SC)にメドをつけながら進めている。その中で、実はマレーシアはおかげさまで9店舗まで決まった。タイがバンコクで2店舗決定している。シンガポールも1店舗決まりそう。最終合意まで至っていないが、大変多くのお店がベトナム依頼がきていて、今、10店舗来ていて条件を調整している。インドネシアが今8店舗お声がけいただいていて、この中から条件がいいものを選んでいこうと考えている。フィリピンは大手の方たちと商談がスタートしていて、具体的に面積のすり合わせなどを行っている。あとは韓国が8物件提示をいただいていて、そのうち数店舗決められるのではないか。香港は9物件いただいていて、条件のすり合わせをしている。あまりよくない場所には出したくないので、しっかりと詳細を確認しながら進めたい。

 (出店した)シンガポールとマレーシアのお店を見ていただいて、具体的な物件など本当に多くのお声がけをいただいている。それに向けて新しい海外の法人の立ち上げを急ピッチで社内で動いている。あとはサプライチェーンだ。週かの方法や、どこに大型物流センターを作ってどういう風に運ぶかということも、かなり急激にお店が増えてくるので、今しっかりとそのサプライチェーンマネジメント・チームをつくって対策を打っているところだ。

 中国は(ゼロコロナ政策からの方針転換という)こういう状況で、街にはほとんど人がいない中で営業している。私たちの従業員も大勢(コロナに)かかっているが、そんな中で、実はテナントが空きつつある。多く空いてきているので、逆にチャンスだと思っていて、私たちの理想の面積がしっかりと提案いただけるようになってきている。みなが(お店を)やめていくところに、しっかりとニトリの店にしていきたい。スピードを上げていくうえで、店舗開発担当の人数まで増やして対応している。

世界展開する大型家具・インテリア業態は「IKEA」と「ニトリ」だけ
SC内に競合がなく、客層拡大・集客に期待かかる

――これだけアジア各国で強いラブコールが来ているのは、どういうところが各国で評価されていると考えているか?

武田:家具からホームファッションまで(の商品群や)、コーディネートで色がつながっているという商品構成を、ずっと何十年もかけて作り上げてきたが、実はそういう店舗・商品がインターナショナルで展開できているのが、今までIKEAさんだけだ。IKEAはものすごい大きな店を100万~150万人に1店舗ということで出店されているが、私たちはもっと商圏に入り込んで、10万~15万人の中に店舗をつくっていける。もっともっと近所になっていけるということと、SCにはIKEAは(店舗が大きすぎて)入れられないので、そういう意味では、今ニトリは日本では平均1100~1200坪が平均だが、今中国・ASEANは500坪型、700坪型で標準化を進めている。同じ売り場を複数増やしていけるということで、ローコストオペレーションも進めさせていただいている。

白井俊之・社長兼COO(以下、白井):先週、東南アジアを回ってマレーシア、シンガポールの店に行ってきた。マレーシアのジョホールバルというところに先週木曜日(12月15日)に新店がオープンして非常に好調だ。同じジョホールバルの2店舗目が来年1月にオープンするが、実はIKEAさんと同じSCに入る。まったく同じSCで、ニトリとIKEAのカンバンが一つの写真に納まるようなめずらしいSCになる。

 それで現地でいろいろ話を聞いてきて、ニトリがSCからお声がかかる理由として、大きく2つある。一つはSCの中で住まいでうちのようなフォーマットの店がほとんどない状態だ。SC側から見ると、今までそのSCに来ていなかったお客さまをうちが呼び込むということを相当期待されている。SCからすると、客層が拡大できると。また、大きなスペースを取る割には、他のテナントへの影響も少ない。アパレル同士だったらどうしてもカニバリ(食い合い)になるが、(しないので)ウェルカムのようで、比較的、おそらく他社よりもいい条件で入らせていただけるんじゃないかなという手応えを感じている。今、武田からも話が合ったように、我々が出店の用意があるということを十分理解したうえで、各国・地域で国を超えてデベロッパーさんが東南アジアのお店などにもどんどん視察に来られていて、いろいろな話をいただいている。

50年に1回の大災害を1年で乗り切る。筋肉質に体質改善

――似鳥会長はこれまでずっと、ピンチはチャンスだと言い続け、不透明な時、厳しい時こそニトリは伸びる、厳しい環境が社員を伸ばす、とずっと言われ続けてきた。先ほどの為替の話のように、 半世紀以上経営されてきて、予測が外れるといったような状況が起きてきている。そういった中で、今は何を社員に呼びかけているのか?

似鳥:今こういう状況で、社員もモチベーションが非常に上がりにくい。もうマイナス、マイナス、未達成の状況が続いてるので、なんぼ努力しても進んでいかなくて、士気が上がらないという状況なのは間違いない。私からのメッセージとしては社内報などを毎月出しているが、最近は私とか幹部とか、現在こういう状況だけど、来年以降はこうなりますよ、とか、何十年の中のたった今年1年だから、まあどんな会社だってそんなことはあり得るし、いちいち深刻がって「もううちの会社、このままマイナスになっていくのかな」とか、全然そういう心配はいらないというね。理由もちゃんと説明して、やはり円安っていう状況が1番ですけど。これはもう来年は間違いなく円高になるんですね。たった1年だから我慢してくださいと。それによって今年、筋肉質に(改善した)。今まではもう進め、進めで、商品とか出店とかに力を入れていたが、見直しして、社内の業務改革で、100億円、200億円という数字はコストダウンした。だから、「ピンチはチャンス」というのは、ピンチでどうしても数字が(目標に)行かない場合には、社内のコストダウンに力を入れて、しかるべき、ピンチから1、2年後(チャンスに変わるタイミングで)攻めて行ける。

 逆に、そうは言っても国内ではわりかし長く景気がよく続いている。まだ土地も下がらない。建物(費)も下がらない状態も続いているが、来年から潮目が変わると思う。もう、アメリカも戦後1番長い景気だから、この景気が落ちるのはっきりしている。下だれば坂も長いし、谷も深いと。世界的に、アメリカがくしゃみすれば、世界中が風邪をひいてしまう。日本も同じような状態だと思う。日本は金利が、黒田総裁が変わっていく頃にはプラスなってくるだろうから、余計、円高になってくる。それを社内に発信して、だから今、体を鍛える、筋肉質に鍛える時なんだと。

 私も筋トレを月曜から木曜までやっていて、ボクササイズも週1回やっている。土日はゴルフという。本当に体を鍛えるのをやっている。つい最近、階段から転げ落ちて、一本背負いみたいになっちゃって全員打撲のむち打ちになり、寝たきりになってしまったが、1日1日回復して、皆さんに顔を見せるのに間に合ってよかった。このようにピンピンしている。やっぱり筋トレをしていてよかった。今年は我が社で言うと、筋トレをやって鍛えて、しかるべき来年からどんどん攻める。今年はそういう時期じゃないかなと思っている。株価も大変みなさんに迷惑をかけているが、間違いなく元に戻るし、利益もどれだけ行くとはまだ言えないが、順調に来年から回復すると思う。まあ、10年、20年に1回ぐらいはね……。うちの30何年か増収増益というのは出来すぎだ。運が良すぎた。50年に1回の大災害と思えば、それもたった1年で乗り切るんだから、うちの社員にはみんなに我慢してと。早く辞めたりしないでと。若手の人は目先で動くから、入社して2年3年はね。もう30歳過ぎると辞め過ぎないが。やっぱり動揺するんですよね。入社員3年、4年は。そういう風なメッセージを毎月社内には送っている。早まらないでちょうだいね、と。会社を信頼してと。そういう話をしているところだ。

ユニクロのファストリは株式分割。ニトリの投資単位の引き下げは?

――似鳥会長に質問。「ユニクロ」のファーストリテイリングが株式分割を久しぶりにされた。ニトリは現状、株価が1万6400円前後で、投資には164万円ぐらい必要だ。東証はできれば投資単位を50万円以内が望ましいと明言している。投資単位の引き下げの考えは?

似鳥:私の一存でそうしますとは言えないが、事実、証券協会から強制ではないけれどできるだけ買いやすくしてほしいという要望はある。今回のユニクロさんは3分の1にした。3分の1にしたって、まだ2万円台で、300万円ぐらい必要。まだまだ高い。うちなんかまだ100万円台。ユニクロがまた下げたら、うちも下げます(笑)。10分の1ぐらいにするのかなと思ったけど、3分の1。ちょっと様子見ということかなと。今すぐ下げることはないけど、投資家のためには買いやすい価格にするべきだと思う。

――そもそも、10分の1ぐらいにするのかなと思ったということだが、ファストリが今下げたことに対しては驚いたか?

似鳥:ああ、やっぱりなという。高すぎるので、よく買う人いるなと(笑)。今、800万円とかね。大企業・機関や、個人投資家でもお金持ち中心でやっているんだなと。それであそこまで上がっていくなら大したものだと思っているが。私もああいう企業になりたいなと思っているんですけどね。今年も柳井(正ファーストリテイリング会長兼社長)さんとゴルフを今年もしたけれど、僕が尊敬する一人です、柳井さんは。お互いに会話しながら、株のことは話ししないけれども、ゴルフしながら歩きながら、私が教えてもらっているところがある。

――御社は様子見ということか?

似鳥:もう少し様子を見てだと思う。あと、株価が今、1万6000円ぐらいでしょ?それが何千円ぐらいに下がると目立たないというか、親戚とか周りから見て、評判がね……。たとえば3000円とか4000円になると、もうまったく(評価が)なくなってしまうと。そういう面で、社員からはそのまま維持してほしいという要望が多い。本当にどうしたらいいかと、今のところ思考中だ。

来春ベースアップ4%を予定。転勤制度改正、希望者への土日休み拡充も

――家計が苦しくなる中で、従業員の暮らしにも影響が出る。来春闘に向けて賃上げは?

白井:ベースアップに関しては、ニトリは19年連続でベースアップを続けていて、来年度の見込みとして最低でも4%は確保したい。ただ、今一番従業員から要望が多いのは、転勤についての制度について。会長の似鳥からも、20代でいろいろな仕事をというところで、転勤が非常に多いが、来年度から思い切って、だいたい入社4年目以降から、関東圏、関西圏を選択して、転勤のない制度を導入することを決定して、これから社内に発表するところだ。むしろそちらの方が、働き方というところで言うと、非常に社内においてインパクトがあるんじゃないかなと。それと、賃上げについては、最低でも定期昇給ベア4%を予定している。

似鳥:流通業は全国に店がある。どうしても転勤の問題や、土日休みじゃないということもあり、優秀な人材が退職するということもある。今、白井社長が言ったように、転勤は希望があれば親元からも通えるようにしようと。それから、今年6月から月3回、パートさんも含めて希望者が土日に休みを取得できるようにしている。来年から月4回、毎週1回、土日希望があればと。アンケートをとって実行しているが、若い人が土日、恋人がとか、お付き合いが、と(いうことで取得希望者が多いかと)思ったら、そういう人たちは平日の休みのほうが自由で人が少なくていいという。意外と、子どもさんを持っている30代の方などが、土日の運動会や参観日などで、30%、1/3ぐらい(希望している)。意外と土日(休み希望は)少なかった。そういうこともアンケートをとってわかった。ありとあらゆることで働き方を改革していこうとずっとやっている。まだまだいろいろあるが、きょうはこのくらいで。

逆境のピンチ後に成長。デフレ時に土地・建物を取得
「無借金なのでいつでも十分に投資可能」

――似鳥会長は「ピンチはチャンス」、収益が厳しいときにこそ一気に他社を差をつけるとおっしゃっているが、他社を引き離すために、どんなストーリーを考えているのか?また、値下げは「季節のお買い得商品」という値下げキャンペーンはわかるが、「生活応援キャンペーン」をやって、「冬の期間限定価格」をやって、「ぽかぽかNウォームお試しキャンペーン」などをやって、など、少なくても昨年に比べて値下げというか、価格戦略のキャンペーンを打っているのは、これも今のうちに他社が値上げしなければならない前に一気に差をつける戦略の一つと見てよいのか?

似鳥:創業してから過去55年、結論から言うと、伸びてきたなと思うのは、逆境のピンチがあって、その後、伸びてきた。景気がいいときは他の企業も伸ばしてくる。出店もするし。だけど、不況のときとか、逆境のときは、みんな控えめに抑える。今まで日本もまだずっとよかったが、来年から金利も多少上がるだろうし、土地は下がってくるとは思う。東京の土地で入札して負けたことなかったが、今年とか去年は買えない。土地(の価格)が倍になって。マンションメーカーだ。マンションが非常に高くなっている。マンションメーカーが3年ぐらいたった時には暴落しているでしょうから、そのマンションメーカーは危ない。馬鹿だなと思う。そういうことやっちゃダメだと思う。今年は池袋の土地と建物は買った(筆者注:東急ハンズ池袋店跡地をヒューリックから土地・建物を取得。11月18日に「ニトリ 池袋サンシャイン60通り店」をオープン。売り場面積約1810坪)が、ああいう物件はめったに出ない。多少高めでも、それでも十分売れているので、買ってよかったなと思う。基本的には高値の時には投資はしないと。建物も坪当たり建築費が50万円(と高騰している)。うちで40万円ちょっと。エスカレーター、エレベーターなどすべてを完備して。でも、一番安い時には20万円ちょっと。半分だった。そういう時代が何十年も続いて、高くなったのはつい6~7年前から。それは僕はまた元に戻ると思う。土地も建物も。そういう意味では来年から徐々にありとあらゆるものがデフレに戻る。土地も建物も。だからチャンスだ。10年か15年に1回そういうときがあって、そのときに土地と建物をどんどん買う。仕込む時期だ。そして、景気がよくなってきたなというときには、うちがばーっと、出店も増やしているし、今、テナントで借りているのが90%ぐらいになっているが、土地と建物が下がったときに買って自前で建てていく。その繰り返しをこの10年~15年ごとにやってきたのが今現在あるのではないかと。投資の仕方だが。今は最悪のとき。ここ2~3年は。来年から下がってくると思う。

 それから、政府も5年間、賃金(向け)を金利ナシで貸し付けてきたが、期限切れで来年から返していかなければならない。僕は中小企業は何万社、何十万社も厳しい時期になっていくと思う。そのときのためにみんな準備はしていると思うが。来年以降、大企業にとっても中小企業にとっても厳しい時代入ると思う。相対的に景気はあまり変わらないかもしれないと思うが、土地建物、金利が上がって、潮目が変わってくる。値上げどころが逆にありとあらゆるところが下がってくる。そういう時代に入ってくるんじゃないかなあと私はそう思っている。その繰り返しで、10年か15年に1回は繰り返して、ずっとうまくいって、ニトリが大きくなってきた原因の一つだと思う。

 お金は今年も1000億円投資したので、来年も純利益と、減価償却がプラス150億円ぐらいあるので、無借金だし、十分投資はしていける準備はいつでもしている。

武田:価格政策、値下げ政策は、他社うんぬんもそうだが、お客さまに使っていただけるチャンスなので、そこで私たちがお安くできるものは頑張ってお安くするということを一番考えている。あとは、工場を回すということも非常に重要な要素で、それぞれの時期にそれぞれの工場の商品をしっかりと生産する人を雇用し続けられるようにすることが大切だ。私たち、直接工場とやっている。そこに対しては意識をもってやっていく。そういうところで商品の売価を検討している。

ベトナム、タイで糸から製品まで一貫工場も稼働
製造、商社、物流まですべて自社で賄ってコストダウン、競争力向上へ

似鳥:最後に私のほうから、一言。海外は私、ベトナムもアメリカも行ってきた。アメリカは今年5月、11月にベトナムの(自社)工場。2万5000坪の世界最大規模のカーテン工場。コロナの間、素人で機械を組み立てて1年(操業開始が)遅れたが、ようやく軌道に乗ってきた。大量生産が始まってきている。今は無地だけ。普通の会社は糸を作ったり、染めたり、専門の会社があり、うちの会社が普通に発注する場合には、縫製会社に頼み、縫製会社が生地屋さんに頼んで、紡績工場に頼んで、そこから、染め、糸の会社に頼んでと。そういう会社が6つ7つ(中間取引先が)あるのを、うち1社でやっている。糸から完成品まで(一気通貫で)。これは世界で初めてで、しかも、坪数の大きさや量産も世界最大規模。壮観です。アナリストの方もベトナム工場を視察していただいた。自分の会社のことだけど、すごいなと思う。やっぱり、こういうものがあれば、いくら海外に毎年何百店出しても供給し続けられるなと。

 タイ工場も、40年ぐらい取引をしてきたところが、赤字で困っているから工場を引き受けてくれないかと。カーペット工場で、(以前は)日本のペットボトルを集めて、今は(ペットボトルなど廃材の輸出入が)禁止されているので、日本で精製してビーズ状にしたものを、タイで溶かして綿(ワタ)にして糸に紡績して、染めて、裁断して、カーペットにして日本全国に持ってきている。これも進化していて、安いカーペットから厚みのあるカーペットに、柄が入ったもの(もできるようになっていて)、ラグがすごく売れる。1畳、2畳サイズの。今度はタイルカーペットを作る。別にバンコクに1万坪ぐらいの新工場を建設する。来年建築が始まり、再来年稼働する。ぜひアナリストの方もご希望があれば案内させていただく。ベトナムも行ける。来年夏か秋に募集させていただく。わが社が出すのではなく、みなさんの経費で参加していただければ。そういう工場も着々と(整備している)。ベトナムのハノイも12月に買って、新しく製造をやる。

 モノを作ってから完成品まで、そして、商社からなにから、物流の仕組みも進めている。カーゴ会社も去年作った(筆者注:物流機能子会社ホームロジスティクスを通じて、一般貨物自動車運送事業の新会社ホームカーゴを設立。コンテナ陸上輸送=ドレージ輸送を開始)。コンテナを引っ張るドレー車の会社で、(国内ディストリビューションセンターが)10カ所ぐらいあるが、今は3カ所か4カ所(で輸送を開始した)。1台3000万円ぐらいするものを導入した。それを全国でできるように。海外でもできるように。すべてのことを自社で賄うと、だいたい3割、4割下がるので、コストダウンを図っていくことをやっていきたい。

2023年の年末株価予想は3万1000円
世界経済失速でも、日本の株価は「割安」

――最後に株価予想をお願いします。

似鳥:株価予想ね。正月番組を見てください(笑)。私が当たりました。2万9000円予想だったので、2万8500円ということで、ダントツの第1位だった。「来年は?」と言うので、3万1000円にした。え、言っちゃだめ?ま、いいんじゃないですか。なぜならば、世界的に不況になると思う。(実質GDP予想が)アメリカも1%。もっと下がるかもしれない。EUは0.5%とか。日本だけは1.何%とか。おそらくいかないんじゃないかと思う。世界的にも成長がアメリカはじめ中国も(失速する)。じゃあ、なんで日本の株価が上がるんだ?と。今まで、アメリカはじめ、金利が高い、景気がいいときにお金が流れているが、今度は逆にそこからお金が逃げていく。日本はもともと株が安く、かなり外国企業が売って違うところに投資したので。また、日本の株価は安いと、みなさん世界の投資家が思っている。来年は底堅いというか、日本の方にお金が戻ってくるんじゃないかなと私は思う。で、3万1000~3万2000円ぐらいと思ったが、3万1000円に。今よりも高くなると。今が2万7000円前後。今年の予測としては、2万4000円までいって、夏前後までいって、秋ぐらいから上がって2万9000円になると予想した。来年もそのような状態で上がっていくんじゃないかなと考えている。どうなりますでしょうか。当たるも八卦、当たらぬも八卦。もうこれは勘ですから、ハズレた場合にはすいません、ごめんなさいと謝ります。あくまでも私の意見で、うちの社員の話は聞いてませんので(笑)。

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経済予測名人のニトリ会長が語った「2023年の経済」「日経平均予想」「ニトリの逆張り戦略」

 今年も残すところあとわずか。そんな中、ニトリホールディングスの2023年3月期第3四半期の決算説明会が開催された。世界経済や為替、株価など、“経済予測の達人”と呼ばれる似鳥昭雄・代表取締役会長兼最高経営責任者はそこで何を語ったのか。海外での出店要請の増加要因について、白井俊之・同社長兼最高執行責任者と、グローバルを担当する武田政則・取締役兼ニトリ社長の説明も交えて、レポートする。

為替147円で予約は失敗。為替は得意だったが見誤った

――為替予約については今期分まで予約だと思うが、予約方針等で、長期の予約を検討する等の方針変更はあるのか、検討されているのか。海外事業の状況についてもより詳しく伺いたい。というのも、中長期で考えていくと、海外での小売り事業が広がっていけば為替がオフセットできる分があると思うので、そういった視点を踏まえて考えると、今後、海外事業の展開加速は可能なのか?今、中国、東南アジアの積極展開の話があったが、もう少し詳細に、直近の状況等アップデートいただければ。

似鳥昭雄ニトリ会長兼CEO(以下、似鳥):では、為替のことは私の方から。今期の決算末(2023年3月)まで147円で予約したが、結果的にちょっと失敗したなと。まあ、みなさんご存知のように134円と。一時151円までいったものだから。再度下がってきたときに買わないと、今度は150円から155円とか、もしくわ160円に行くのではという話もあったので。また、一度(政府が)為替介入して効果がなかった。日本政府は為替介入しても効果は少ないんだなと。もしあったとしても、あんまり影響ないかもしれないということがあって、みなさんと協議して147円で決算まで買おうかと。我慢して我慢し続けたんですけどね。

 私の予想では、アメリカの景気が悪くなって、年末近くになって、為替よりも景気が悪い方が強くなって円高になるということをずっと言ってきたが、それがなかなかならなかった。かなり時期がずれていたというか、住宅も夏以降、10%ずつ注文住宅が前年比で減ってきて、そういう状況もあるから、間違いなくアメリカから不景気になっていくと。そちらのほうが強くなると思っていたが、なんといっても0.75%ずつ毎月毎月金利を上げるということで、その時点では0.7%上げるということがはっきり決まったので、まあ、まずいなと思って、かなり迷ったが予約してしまった。あの時にあそこまで我慢したのでもう少し我慢したら、132円か130円切るぐらいのところでできたかなと。失敗したなと。大変みなさんに対しては申し訳ない。為替は得意な方だったが、ちょっと見誤ってしまったなと。みなさんにお詫び申し上げます。

来年は円高に、110~120円予想

似鳥:(為替は)来年で言うと、僕は110円ぐらいまで、110円から悪くても120円ぐらい、もしかしたら118円ぐらいでいくのかなと。理由は後から申し上げるが、アメリカが予想以上に景気が悪くなる。衣料も含めて世界的に景気が悪くなって、インフレも関税も下がると。ひょっとしたら日本型のデフレ経済になるきっかけになるかも。その前のインフレというのは、あだ花になるかもしれない。パッと咲いてですね。これは勘ですけどね。これだけ戦後に類例がなかったので。日本の失われた30年という、長期的なデフレで。これがこのインフレというものを機会にひょっとしたら、という気がするが、これは何の科学的根拠も何もないが。まあ、来年からは間違いなく世界的に不況で。その中でもアジア圏はいいんじゃないかと。

 今年は(ニトリの為替平均レートが)トータル132円で、去年が111円だから、21円の差。21円で20億円だから、21円×20億円で420億円前年より損をした。210円(おそらく、110円の言い間違い)に来たら、400億円がポンと為替(差益)に乗っかると。今の状況は間違いなく円高になるから、基本的には下がるまで待ち続けると。私の考えは、為替はドル高がドル安、円安が円高、下がるまで待つ。その後、次の段階でまた上がっていく。今度は今度は長期的に3年ぐらい、2~3年長期的に予約したいなと考えている。今度は失敗しないように。みなさんに大変ご迷惑をおかけしました。だけど、まあ、これから何十年も続いていきますからね。こういう10年か20年に1回、リーマンショックとかオイルショックがある。逆境を今まで乗り切ってきた。まあ戦後、僕は創業して55年だが、初めてのコロナ、それから円安、原材料高、輸送費が倍以上という。こういうのは創業して初めてだ。これもいい経験。失敗を経験として、今後の10年の糧にしていきたい。

海外中心に出店加速、10年間でグループ3000店舗へ

似鳥:出店はとくにシンガポールやマレーシアが軌道に乗ったので、タイやフィリピン、インドネシア、韓国、できたらインドといったところに、なるべく早く、来年調査して、少なくとも再来年、1店でもまずは(店を)出してみたい。海外は早く(年間)100店舗出店できる(ようになりたい)。来年に100店はどうかと思うが、再来年は間違いなく100店舗以上出して、日本より海外の方が多くなると思う。(グループの店舗純増数は)今年が約110店舗だが、来年は184店舗、再来年からは最低200店舗、それが3年ぐらい続いて、次は250店の時代と。(来年には総店舗数が)海外を含めて1000店舗(を超える)。異業種も含めて10年間で3000店舗という計画を立てている。だいたい全部(計画は)できたが、細かくは再度検証した結果、みなさんにお知らせすることができると思う。

――(衣料品の)「N+(エヌプラス)」と「デコホーム」について、通期の出店の見通しを変えている背景と、今、海外の出店については力強い言葉をいただいたが、今後の国内の出店戦略について考え方を教えてほしい。

似鳥:「Nプラス」は今年(期末店舗数が)30店舗、来年20店舗(を出店計画しており)、合わせて50店舗になる。3年目以降も最低20店舗ずつ、できたら毎年30店舗(出店)して、どんどん増やしていきたい。「デコホーム」は今160店舗。来年50店舗をオープンする。だいたい24年度が50店舗、25年度からは60~70店舗と増えていく。「ニトリ」は23年度が29店舗。(その後は)15~20店舗ぐらいがずっと続くと思う。

武田政則・ニトリHD取締役兼ニトリ社長(以下、武田):海外は今目標で来年77店舗オープンしようとしている。1店舗ずつ、地域、ショッピングセンター(SC)にメドをつけながら進めている。その中で、実はマレーシアはおかげさまで9店舗まで決まった。タイがバンコクで2店舗決定している。シンガポールも1店舗決まりそう。最終合意まで至っていないが、大変多くのお店がベトナム依頼がきていて、今、10店舗来ていて条件を調整している。インドネシアが今8店舗お声がけいただいていて、この中から条件がいいものを選んでいこうと考えている。フィリピンは大手の方たちと商談がスタートしていて、具体的に面積のすり合わせなどを行っている。あとは韓国が8物件提示をいただいていて、そのうち数店舗決められるのではないか。香港は9物件いただいていて、条件のすり合わせをしている。あまりよくない場所には出したくないので、しっかりと詳細を確認しながら進めたい。

 (出店した)シンガポールとマレーシアのお店を見ていただいて、具体的な物件など本当に多くのお声がけをいただいている。それに向けて新しい海外の法人の立ち上げを急ピッチで社内で動いている。あとはサプライチェーンだ。週かの方法や、どこに大型物流センターを作ってどういう風に運ぶかということも、かなり急激にお店が増えてくるので、今しっかりとそのサプライチェーンマネジメント・チームをつくって対策を打っているところだ。

 中国は(ゼロコロナ政策からの方針転換という)こういう状況で、街にはほとんど人がいない中で営業している。私たちの従業員も大勢(コロナに)かかっているが、そんな中で、実はテナントが空きつつある。多く空いてきているので、逆にチャンスだと思っていて、私たちの理想の面積がしっかりと提案いただけるようになってきている。みなが(お店を)やめていくところに、しっかりとニトリの店にしていきたい。スピードを上げていくうえで、店舗開発担当の人数まで増やして対応している。

世界展開する大型家具・インテリア業態は「IKEA」と「ニトリ」だけ
SC内に競合がなく、客層拡大・集客に期待かかる

――これだけアジア各国で強いラブコールが来ているのは、どういうところが各国で評価されていると考えているか?

武田:家具からホームファッションまで(の商品群や)、コーディネートで色がつながっているという商品構成を、ずっと何十年もかけて作り上げてきたが、実はそういう店舗・商品がインターナショナルで展開できているのが、今までIKEAさんだけだ。IKEAはものすごい大きな店を100万~150万人に1店舗ということで出店されているが、私たちはもっと商圏に入り込んで、10万~15万人の中に店舗をつくっていける。もっともっと近所になっていけるということと、SCにはIKEAは(店舗が大きすぎて)入れられないので、そういう意味では、今ニトリは日本では平均1100~1200坪が平均だが、今中国・ASEANは500坪型、700坪型で標準化を進めている。同じ売り場を複数増やしていけるということで、ローコストオペレーションも進めさせていただいている。

白井俊之・社長兼COO(以下、白井):先週、東南アジアを回ってマレーシア、シンガポールの店に行ってきた。マレーシアのジョホールバルというところに先週木曜日(12月15日)に新店がオープンして非常に好調だ。同じジョホールバルの2店舗目が来年1月にオープンするが、実はIKEAさんと同じSCに入る。まったく同じSCで、ニトリとIKEAのカンバンが一つの写真に納まるようなめずらしいSCになる。

 それで現地でいろいろ話を聞いてきて、ニトリがSCからお声がかかる理由として、大きく2つある。一つはSCの中で住まいでうちのようなフォーマットの店がほとんどない状態だ。SC側から見ると、今までそのSCに来ていなかったお客さまをうちが呼び込むということを相当期待されている。SCからすると、客層が拡大できると。また、大きなスペースを取る割には、他のテナントへの影響も少ない。アパレル同士だったらどうしてもカニバリ(食い合い)になるが、(しないので)ウェルカムのようで、比較的、おそらく他社よりもいい条件で入らせていただけるんじゃないかなという手応えを感じている。今、武田からも話が合ったように、我々が出店の用意があるということを十分理解したうえで、各国・地域で国を超えてデベロッパーさんが東南アジアのお店などにもどんどん視察に来られていて、いろいろな話をいただいている。

50年に1回の大災害を1年で乗り切る。筋肉質に体質改善

――似鳥会長はこれまでずっと、ピンチはチャンスだと言い続け、不透明な時、厳しい時こそニトリは伸びる、厳しい環境が社員を伸ばす、とずっと言われ続けてきた。先ほどの為替の話のように、 半世紀以上経営されてきて、予測が外れるといったような状況が起きてきている。そういった中で、今は何を社員に呼びかけているのか?

似鳥:今こういう状況で、社員もモチベーションが非常に上がりにくい。もうマイナス、マイナス、未達成の状況が続いてるので、なんぼ努力しても進んでいかなくて、士気が上がらないという状況なのは間違いない。私からのメッセージとしては社内報などを毎月出しているが、最近は私とか幹部とか、現在こういう状況だけど、来年以降はこうなりますよ、とか、何十年の中のたった今年1年だから、まあどんな会社だってそんなことはあり得るし、いちいち深刻がって「もううちの会社、このままマイナスになっていくのかな」とか、全然そういう心配はいらないというね。理由もちゃんと説明して、やはり円安っていう状況が1番ですけど。これはもう来年は間違いなく円高になるんですね。たった1年だから我慢してくださいと。それによって今年、筋肉質に(改善した)。今まではもう進め、進めで、商品とか出店とかに力を入れていたが、見直しして、社内の業務改革で、100億円、200億円という数字はコストダウンした。だから、「ピンチはチャンス」というのは、ピンチでどうしても数字が(目標に)行かない場合には、社内のコストダウンに力を入れて、しかるべき、ピンチから1、2年後(チャンスに変わるタイミングで)攻めて行ける。

 逆に、そうは言っても国内ではわりかし長く景気がよく続いている。まだ土地も下がらない。建物(費)も下がらない状態も続いているが、来年から潮目が変わると思う。もう、アメリカも戦後1番長い景気だから、この景気が落ちるのはっきりしている。下だれば坂も長いし、谷も深いと。世界的に、アメリカがくしゃみすれば、世界中が風邪をひいてしまう。日本も同じような状態だと思う。日本は金利が、黒田総裁が変わっていく頃にはプラスなってくるだろうから、余計、円高になってくる。それを社内に発信して、だから今、体を鍛える、筋肉質に鍛える時なんだと。

 私も筋トレを月曜から木曜までやっていて、ボクササイズも週1回やっている。土日はゴルフという。本当に体を鍛えるのをやっている。つい最近、階段から転げ落ちて、一本背負いみたいになっちゃって全員打撲のむち打ちになり、寝たきりになってしまったが、1日1日回復して、皆さんに顔を見せるのに間に合ってよかった。このようにピンピンしている。やっぱり筋トレをしていてよかった。今年は我が社で言うと、筋トレをやって鍛えて、しかるべき来年からどんどん攻める。今年はそういう時期じゃないかなと思っている。株価も大変みなさんに迷惑をかけているが、間違いなく元に戻るし、利益もどれだけ行くとはまだ言えないが、順調に来年から回復すると思う。まあ、10年、20年に1回ぐらいはね……。うちの30何年か増収増益というのは出来すぎだ。運が良すぎた。50年に1回の大災害と思えば、それもたった1年で乗り切るんだから、うちの社員にはみんなに我慢してと。早く辞めたりしないでと。若手の人は目先で動くから、入社して2年3年はね。もう30歳過ぎると辞め過ぎないが。やっぱり動揺するんですよね。入社員3年、4年は。そういう風なメッセージを毎月社内には送っている。早まらないでちょうだいね、と。会社を信頼してと。そういう話をしているところだ。

ユニクロのファストリは株式分割。ニトリの投資単位の引き下げは?

――似鳥会長に質問。「ユニクロ」のファーストリテイリングが株式分割を久しぶりにされた。ニトリは現状、株価が1万6400円前後で、投資には164万円ぐらい必要だ。東証はできれば投資単位を50万円以内が望ましいと明言している。投資単位の引き下げの考えは?

似鳥:私の一存でそうしますとは言えないが、事実、証券協会から強制ではないけれどできるだけ買いやすくしてほしいという要望はある。今回のユニクロさんは3分の1にした。3分の1にしたって、まだ2万円台で、300万円ぐらい必要。まだまだ高い。うちなんかまだ100万円台。ユニクロがまた下げたら、うちも下げます(笑)。10分の1ぐらいにするのかなと思ったけど、3分の1。ちょっと様子見ということかなと。今すぐ下げることはないけど、投資家のためには買いやすい価格にするべきだと思う。

――そもそも、10分の1ぐらいにするのかなと思ったということだが、ファストリが今下げたことに対しては驚いたか?

似鳥:ああ、やっぱりなという。高すぎるので、よく買う人いるなと(笑)。今、800万円とかね。大企業・機関や、個人投資家でもお金持ち中心でやっているんだなと。それであそこまで上がっていくなら大したものだと思っているが。私もああいう企業になりたいなと思っているんですけどね。今年も柳井(正ファーストリテイリング会長兼社長)さんとゴルフを今年もしたけれど、僕が尊敬する一人です、柳井さんは。お互いに会話しながら、株のことは話ししないけれども、ゴルフしながら歩きながら、私が教えてもらっているところがある。

――御社は様子見ということか?

似鳥:もう少し様子を見てだと思う。あと、株価が今、1万6000円ぐらいでしょ?それが何千円ぐらいに下がると目立たないというか、親戚とか周りから見て、評判がね……。たとえば3000円とか4000円になると、もうまったく(評価が)なくなってしまうと。そういう面で、社員からはそのまま維持してほしいという要望が多い。本当にどうしたらいいかと、今のところ思考中だ。

来春ベースアップ4%を予定。転勤制度改正、希望者への土日休み拡充も

――家計が苦しくなる中で、従業員の暮らしにも影響が出る。来春闘に向けて賃上げは?

白井:ベースアップに関しては、ニトリは19年連続でベースアップを続けていて、来年度の見込みとして最低でも4%は確保したい。ただ、今一番従業員から要望が多いのは、転勤についての制度について。会長の似鳥からも、20代でいろいろな仕事をというところで、転勤が非常に多いが、来年度から思い切って、だいたい入社4年目以降から、関東圏、関西圏を選択して、転勤のない制度を導入することを決定して、これから社内に発表するところだ。むしろそちらの方が、働き方というところで言うと、非常に社内においてインパクトがあるんじゃないかなと。それと、賃上げについては、最低でも定期昇給ベア4%を予定している。

似鳥:流通業は全国に店がある。どうしても転勤の問題や、土日休みじゃないということもあり、優秀な人材が退職するということもある。今、白井社長が言ったように、転勤は希望があれば親元からも通えるようにしようと。それから、今年6月から月3回、パートさんも含めて希望者が土日に休みを取得できるようにしている。来年から月4回、毎週1回、土日希望があればと。アンケートをとって実行しているが、若い人が土日、恋人がとか、お付き合いが、と(いうことで取得希望者が多いかと)思ったら、そういう人たちは平日の休みのほうが自由で人が少なくていいという。意外と、子どもさんを持っている30代の方などが、土日の運動会や参観日などで、30%、1/3ぐらい(希望している)。意外と土日(休み希望は)少なかった。そういうこともアンケートをとってわかった。ありとあらゆることで働き方を改革していこうとずっとやっている。まだまだいろいろあるが、きょうはこのくらいで。

逆境のピンチ後に成長。デフレ時に土地・建物を取得
「無借金なのでいつでも十分に投資可能」

――似鳥会長は「ピンチはチャンス」、収益が厳しいときにこそ一気に他社を差をつけるとおっしゃっているが、他社を引き離すために、どんなストーリーを考えているのか?また、値下げは「季節のお買い得商品」という値下げキャンペーンはわかるが、「生活応援キャンペーン」をやって、「冬の期間限定価格」をやって、「ぽかぽかNウォームお試しキャンペーン」などをやって、など、少なくても昨年に比べて値下げというか、価格戦略のキャンペーンを打っているのは、これも今のうちに他社が値上げしなければならない前に一気に差をつける戦略の一つと見てよいのか?

似鳥:創業してから過去55年、結論から言うと、伸びてきたなと思うのは、逆境のピンチがあって、その後、伸びてきた。景気がいいときは他の企業も伸ばしてくる。出店もするし。だけど、不況のときとか、逆境のときは、みんな控えめに抑える。今まで日本もまだずっとよかったが、来年から金利も多少上がるだろうし、土地は下がってくるとは思う。東京の土地で入札して負けたことなかったが、今年とか去年は買えない。土地(の価格)が倍になって。マンションメーカーだ。マンションが非常に高くなっている。マンションメーカーが3年ぐらいたった時には暴落しているでしょうから、そのマンションメーカーは危ない。馬鹿だなと思う。そういうことやっちゃダメだと思う。今年は池袋の土地と建物は買った(筆者注:東急ハンズ池袋店跡地をヒューリックから土地・建物を取得。11月18日に「ニトリ 池袋サンシャイン60通り店」をオープン。売り場面積約1810坪)が、ああいう物件はめったに出ない。多少高めでも、それでも十分売れているので、買ってよかったなと思う。基本的には高値の時には投資はしないと。建物も坪当たり建築費が50万円(と高騰している)。うちで40万円ちょっと。エスカレーター、エレベーターなどすべてを完備して。でも、一番安い時には20万円ちょっと。半分だった。そういう時代が何十年も続いて、高くなったのはつい6~7年前から。それは僕はまた元に戻ると思う。土地も建物も。そういう意味では来年から徐々にありとあらゆるものがデフレに戻る。土地も建物も。だからチャンスだ。10年か15年に1回そういうときがあって、そのときに土地と建物をどんどん買う。仕込む時期だ。そして、景気がよくなってきたなというときには、うちがばーっと、出店も増やしているし、今、テナントで借りているのが90%ぐらいになっているが、土地と建物が下がったときに買って自前で建てていく。その繰り返しをこの10年~15年ごとにやってきたのが今現在あるのではないかと。投資の仕方だが。今は最悪のとき。ここ2~3年は。来年から下がってくると思う。

 それから、政府も5年間、賃金(向け)を金利ナシで貸し付けてきたが、期限切れで来年から返していかなければならない。僕は中小企業は何万社、何十万社も厳しい時期になっていくと思う。そのときのためにみんな準備はしていると思うが。来年以降、大企業にとっても中小企業にとっても厳しい時代入ると思う。相対的に景気はあまり変わらないかもしれないと思うが、土地建物、金利が上がって、潮目が変わってくる。値上げどころが逆にありとあらゆるところが下がってくる。そういう時代に入ってくるんじゃないかなあと私はそう思っている。その繰り返しで、10年か15年に1回は繰り返して、ずっとうまくいって、ニトリが大きくなってきた原因の一つだと思う。

 お金は今年も1000億円投資したので、来年も純利益と、減価償却がプラス150億円ぐらいあるので、無借金だし、十分投資はしていける準備はいつでもしている。

武田:価格政策、値下げ政策は、他社うんぬんもそうだが、お客さまに使っていただけるチャンスなので、そこで私たちがお安くできるものは頑張ってお安くするということを一番考えている。あとは、工場を回すということも非常に重要な要素で、それぞれの時期にそれぞれの工場の商品をしっかりと生産する人を雇用し続けられるようにすることが大切だ。私たち、直接工場とやっている。そこに対しては意識をもってやっていく。そういうところで商品の売価を検討している。

ベトナム、タイで糸から製品まで一貫工場も稼働
製造、商社、物流まですべて自社で賄ってコストダウン、競争力向上へ

似鳥:最後に私のほうから、一言。海外は私、ベトナムもアメリカも行ってきた。アメリカは今年5月、11月にベトナムの(自社)工場。2万5000坪の世界最大規模のカーテン工場。コロナの間、素人で機械を組み立てて1年(操業開始が)遅れたが、ようやく軌道に乗ってきた。大量生産が始まってきている。今は無地だけ。普通の会社は糸を作ったり、染めたり、専門の会社があり、うちの会社が普通に発注する場合には、縫製会社に頼み、縫製会社が生地屋さんに頼んで、紡績工場に頼んで、そこから、染め、糸の会社に頼んでと。そういう会社が6つ7つ(中間取引先が)あるのを、うち1社でやっている。糸から完成品まで(一気通貫で)。これは世界で初めてで、しかも、坪数の大きさや量産も世界最大規模。壮観です。アナリストの方もベトナム工場を視察していただいた。自分の会社のことだけど、すごいなと思う。やっぱり、こういうものがあれば、いくら海外に毎年何百店出しても供給し続けられるなと。

 タイ工場も、40年ぐらい取引をしてきたところが、赤字で困っているから工場を引き受けてくれないかと。カーペット工場で、(以前は)日本のペットボトルを集めて、今は(ペットボトルなど廃材の輸出入が)禁止されているので、日本で精製してビーズ状にしたものを、タイで溶かして綿(ワタ)にして糸に紡績して、染めて、裁断して、カーペットにして日本全国に持ってきている。これも進化していて、安いカーペットから厚みのあるカーペットに、柄が入ったもの(もできるようになっていて)、ラグがすごく売れる。1畳、2畳サイズの。今度はタイルカーペットを作る。別にバンコクに1万坪ぐらいの新工場を建設する。来年建築が始まり、再来年稼働する。ぜひアナリストの方もご希望があれば案内させていただく。ベトナムも行ける。来年夏か秋に募集させていただく。わが社が出すのではなく、みなさんの経費で参加していただければ。そういう工場も着々と(整備している)。ベトナムのハノイも12月に買って、新しく製造をやる。

 モノを作ってから完成品まで、そして、商社からなにから、物流の仕組みも進めている。カーゴ会社も去年作った(筆者注:物流機能子会社ホームロジスティクスを通じて、一般貨物自動車運送事業の新会社ホームカーゴを設立。コンテナ陸上輸送=ドレージ輸送を開始)。コンテナを引っ張るドレー車の会社で、(国内ディストリビューションセンターが)10カ所ぐらいあるが、今は3カ所か4カ所(で輸送を開始した)。1台3000万円ぐらいするものを導入した。それを全国でできるように。海外でもできるように。すべてのことを自社で賄うと、だいたい3割、4割下がるので、コストダウンを図っていくことをやっていきたい。

2023年の年末株価予想は3万1000円
世界経済失速でも、日本の株価は「割安」

――最後に株価予想をお願いします。

似鳥:株価予想ね。正月番組を見てください(笑)。私が当たりました。2万9000円予想だったので、2万8500円ということで、ダントツの第1位だった。「来年は?」と言うので、3万1000円にした。え、言っちゃだめ?ま、いいんじゃないですか。なぜならば、世界的に不況になると思う。(実質GDP予想が)アメリカも1%。もっと下がるかもしれない。EUは0.5%とか。日本だけは1.何%とか。おそらくいかないんじゃないかと思う。世界的にも成長がアメリカはじめ中国も(失速する)。じゃあ、なんで日本の株価が上がるんだ?と。今まで、アメリカはじめ、金利が高い、景気がいいときにお金が流れているが、今度は逆にそこからお金が逃げていく。日本はもともと株が安く、かなり外国企業が売って違うところに投資したので。また、日本の株価は安いと、みなさん世界の投資家が思っている。来年は底堅いというか、日本の方にお金が戻ってくるんじゃないかなと私は思う。で、3万1000~3万2000円ぐらいと思ったが、3万1000円に。今よりも高くなると。今が2万7000円前後。今年の予測としては、2万4000円までいって、夏前後までいって、秋ぐらいから上がって2万9000円になると予想した。来年もそのような状態で上がっていくんじゃないかなと考えている。どうなりますでしょうか。当たるも八卦、当たらぬも八卦。もうこれは勘ですから、ハズレた場合にはすいません、ごめんなさいと謝ります。あくまでも私の意見で、うちの社員の話は聞いてませんので(笑)。

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「サカイ」とカフェを仕掛けたシェフ集団ゲットー ガストロ 「ヒップホップのような」食のクリエイション

 「サカイ(SACAI)」は、ニューヨーク・ブロンクスを拠点に活動するシェフ集団ゲットー ガストロ(Ghetto Gastro)とコラボレーションした期間限定カフェ「サカイ ガストロ」を東京・原宿のトウキョウ バーンサイド(Tokyo Burnside)で12月30日まで開催中だ。同店は、「ナイキ」とブルーボトルコーヒー(BLUE BOTTLE COFFEE)、ロッキーズ・マッチャ(Rocky’s Matcha)がサポートし、「ナイキ」のスウッシュロゴをあしらったソール型のワッフルをゲットー ガストロがアレンジした独自のレシピで提供する。メニューは4種類で、抹茶のワッフルとフライドチキンのセット“チキン クープ”(税込1980円、以下同)、神戸と広尾に店舗を構えるハーロウ(HARLOW)のアイスクリームを添えたチョコレートワッフル“ブラック パワー ワッフル”(1870円)とストロベリーワッフル “ストロベリー ヘイズ”(1870円)、コーンワッフルにクラブサラダとキャビアを添えた“トリプルC’s”(5280円)をラインアップする。

 メニューを担当したゲットー ガストロは、リーダーのジョン・グレイ(Jon Gray)、ピエール・セラオ(Pierre Serrao)、レスター・ウォーカー(Lester Walker)の3人で、2012年に活動をスタート。“地域をつなぐ食文化とコミュニティー力”をコンセプトに掲げ、料理とカルチャーをベースに、ファッションや音楽、アートなどを融合させたイベントやフードのプロデュースを行っている。これまでには、オーディオブランド「ビーツ・バイ・ドクタードレ(BEATS BY DR. DRE)」や「アンブッシュ(AMBUSH)」「アウェイク ニューヨーク(AWAKE NY)」と協業したほか、16-17年秋冬のパリ・ ファッション・ウイークでは「リック・オウエンス(RICK OWENS)」のディナーイベントでメニューを担当。「サカイ ガストロ」のために来日した彼らに、コラボした経緯やメニュー作りで意識したことなどを聞いた。

WWD:「サカイ」とコラボレーションした経緯は?

ジョン・グレイ(以下、グレイ):21年にロサンゼルスで行われた「ファミリー スタイル フード フェスティバル(Family Style Food Festival)」で、僕らのワッフルブランド「ウェイビー(WAVY)」と「ナイキ」が初めてコラボし、同ブランドのアイコンモデル“ワッフルレーサー”のソールに見立てたワッフルを作ったんだ。以来「ナイキ」を通して、「サカイ」とつながり、今回のプロジェクトを実現することができたのさ。

WWD:ファッションブランドである「サカイ」とタッグを組むことで意識したことは?

グレイ:僕らが言う“コミュニティー”とは、どこかの地域というよりも、ビジョンやクリエイションの一部であることを意味している。高級な素材を世界中から集めて料理に使い、普段そういうものを食べる機会がない人たちも気軽に味わえるようにしているんだ。「サカイ」も僕らの料理と同じように、いろいろな素材やパターンを服に取り入れているよね。今回のメニューでは、ワッフルに抹茶やフライドチキン、キャビアなど意外性のあるものを組み合わせて、彼らのクリエイションと共鳴するように作ったんだ。

WWD:メニューの中で、特にフライドチキンと抹茶のワッフルのセットがアメリカと日本の文化の融合を感じる。

ピエール・セラオ:日本とアメリカの食文化の共通点を表現したかったんだ。フライドチキンとワッフルを一緒に食べるのは、日本人にとってあまりなじみがないかもしれない。でも、抹茶でワッフルを作ることで、より親近感を持って食べてほしかった。それに、僕らのルーツであるアフリカを象徴する赤と黒、緑、黄色もイメージしているんだ。今回は日本でカフェを開くから、緑と赤を連想させる抹茶といちごを使ったメニューを取り入れたかった。

WWD:今後レストランを開く予定はありますか?

グレイ:食は一つのところにとどまる必要はないから、レストランを開くつもりは今のところないんだ。ここでカフェをオープンしたのは、さまざまな国籍や人種の人たちが訪れ、異なる文化が交差する空間で食を提供したかったから。僕らのクリエイションは、あらゆる要素から成り立っている、ヒップホップみたいな感じかな。実は、このトウキョウ バーンサイドはクリエイティブ・エージェンシーのエン ワン トウキョウ(en one tokyo)と共同企画した場所でもあるんだ。

WWD:これまでにさまざまなファッションブランドともコラボし、学んだことは?

レスター・ウォーカー:僕らはシェフであり、クラフツマンシップをすごく大切にしている。過去に協業してきたファッションブランドからはものづくりの精神をとても感じたよ。異素材を組みせるという「サカイ」のブランドコンセプトを理解するように、ブランドの歴史やどんな素材を使っているのかをちゃんと調べて、自分たちの食のフィールドでもどう表現できるのかを学んでいるんだ。

■sacai GASTRO
会期:12月30日まで
場所:トウキョウ バーンサイド
住所:東京都渋谷区神宮前5-12-14 2F Tokyo Burnside

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Z世代に人気の「メルト ザ レディ」 24年7月でブランド終了を掲げる「終わるからこそ尊い」の美学

 新宿ルミネエストの地下1階といえば、ヤング向けファッションの殿堂的フロアの1つだ。バロックジャパンリミテッドやマークスタイラーなどのブランドが並ぶ中に、少し毛色が異なるショップ「メルト ザ レディ(MELT THE LADY)」がある。大きな長テーブルが置かれた店頭の内装も販売員のスタイリングも個性的。売れ筋を追求した結果、似た商品が並ぶこともあるフロアの中で異質な雰囲気を放っている。それなのに、ルミネに取材すると好調ブランドとして名前が上がることがよくあり、商品入荷日には実際に女の子たちの行列ができている。

 同ブランドを手掛けるのは、宮内敦社長率いるメソニックデザインオフィス。宮内社長は以前、ギルドコーポレーションを運営していたヒットメーカーだといえば、ヤングファッションに詳しい業界人ならピンとくるはず。「メルト ザ レディ」に取材を申し込むと、ディレクターのAyaさんが対応してくれるという。キャットストリート近くにあるショップ兼アトリエを訪ねて彼女に話を聞いていたら、「あと2年でブランドを終了します」というコメントも飛び出した。

「少女が溶けて大人になるイメージ」

WWD:ルミネで売れているという話をよく聞くし、現役大学生の「WWDJAPAN」インターンに聞いても「『メルト ザ レディ』が今周りで人気」といった声が出る。でも、ブランドとしてはあまり情報が出ておらず謎も多い。改めて、どんなブランドなのか。

Aya:私自身、こういった取材を受けるのは初めてです。ブランドを立ち上げたのは2017年の7月、自分が20歳のときでした。私は広島県出身なんですが、ブランド立ち上げ前は地元で服飾・美容の専門学校に通いつつ、ときどき上京してモデルの仕事もしていました。(メソニックデザインオフィスが手がけるブランド)「バブルス(BUBBLES)」のECサイトのモデルなどをしていて、その縁で、知人を通してメソニックデザインオフィスに「将来自分のブランドがやりたい」と相談しました。それで、「バブルス」の原宿店(当時)でコーナー展開するという形で、「メルト ザ レディ」をスタートしました。

WWD:ブランドのコンセプトは?

Aya:ブランド名自体がコンセプトです。少女から女性へと成長していくその抜け殻や、少女が溶けて大人へと変わっていくといったイメージ。成長過程そのものをブランドとして掲げています。元々私は服がすごく好きで、ロリータや原宿系といった周りの目を気にしないファッションが中学生のころから好きだった。そんな自分が、世間の目を気にせず等身大で着たいものを作るブランドです。お客さまはファッションに敏感な20代が中心。太もも部分にホックがついていて、それを外すと肌がのぞくスラックス“ホックスリットパンツ”(1万2000〜1万4000円前後)などが人気商品になっていて、それはふらりと入った古着店で店員さんが着ていたこともあります。Y2Kのブームもあって、肌見せのデザインがジャンルを問わず幅広い層に支持されたという面もあると思います。

WWD:立ち上げの際に、宮内社長からブランドの方向性などについて指示があったのか。

Aya:特になく、まずは自分が作りたいものを作ろうという感じでした。最初の2年間は、私とMD担当、生産管理の3人で模索する日々。広島で服飾の専門学校に通ってはいましたが、ファッションビジネスの知識はほとんどなくて赤ちゃんみたいな状態だったので、何度もトライ&エラーを重ねて今があります。OEMメーカーさんに対し、言葉でうまく指示を伝えることもできませんでしたが、絵は習っていたので絵で伝えることはできた。それでも、上がってきたサンプルを見て驚愕するといったことが何度もありました。

 転機は立ち上げから3年目。宮内とブランドのあり方や今後をしっかり話し、もっと本格化させようとなりました。それで19年3月にここ(キャットストリートそばのアトリエ兼ショップ)をオープンしました。普通の路面店にするのではなく、コンセプトや内装をそのときどきでガラッと変えて、毎回期間限定で開けていくポップアップ形式の運営方法を考えていたんです。ただ、19年9月にルミネエストにもお店を出したので、まずはルミネエストに注力しようとなり、そのままコロナ禍になってしまった。このアトリエ兼ショップを店として開けられた期間は、これまでほんの数週間だと思います。

「自分の中で区切りをつけたい」

WWD:具体的に、どのように商品を企画し、売っているのか。

Aya:毎月店頭やECで発売するのは計30〜40型。1カ月分が1つエピソードになっていて、2回に分けて投入するので、それぞれがエピソードのボリューム1、ボリューム2という位置づけです。エピソードはシーズン1からシーズン3までの3部構成になっていて、実はブランドの最初から最後までの流れをもう決めています。そこから逆算して、リアルな時間軸とともにストーリーが進んでいくようになっています。

WWD:ブランド終了が既に決まっているという意味か。

Aya:はい。今はシーズン2の途中ですが、シーズン3が23年3月に始まって、24年の7月で終了する予定です。自分自身、(モデル業を含め)10代のころから服の仕事に関わってきて、今年で26歳になります。この期間はすごく尊い時間だったと思う。流行はどんどん変わっていきますし、“成長型”のブランドでやっているからこそ、自分の中で区切りをつけたい。SNSやECサイトで動画や写真でエピソードを発信していますが、お客さまは「このエピソードって一体何のこと?」と思っているかもしれません。シーズン1の終了時である22年の3月に発信した動画に、時計の針が24で重なる、終了を匂わせるシーンを入れました。シンデレラの話ではないですが、24時間で魔法が解けるといったイメージです。お客さまには、エンターテインメントとして、こうしたエピソードも楽しんでほしい。

WWD:ブランドが終了してしまうと知ったら、驚くファンは多そうだ。自身も寂しくないのか。

Aya:大切にしているブランドなので、もちろんすごく寂しいですよ。でもそれも尊いなと思う。終わりがあるから今も一生懸命にそこに向かって頑張ることができています。ダラダラ続けるのではなく、そこからまた新しいスタートが切れたらいいなと思っています。24年7月を迎えたらどうするかはいろいろと考えています。大人になった自分とともに、また成長していくブランドができたらいいなという思いもあります。

WWD:先ほどからよく“成長型ブランド”という言葉が出る。“成長型ブランド”という言葉をどういう意味で使っているのか。

Aya:私がそのときに着たい、等身大の服を作るという意味です。だから、立ち上げ当初とはテイストも結構異なっています。以前のような、もっとガーリーなテイストの服が好きだとお客さまに言われることもありますよ。ただ、自分と向き合って、そのときの自分が作りたいものが何なのかを突き詰めていますし、自分の成長と共に質も上げていきたい。年齢を重ねていく自分自身が違和感を感じないように、生地や縫製などの質も徐々に高めています。自分が常に納得して、自信をもって伝えられるブランドという意味で“成長型ブランド”と表現しています。シーズン1のころは私自身が商品ビジュアルのモデルも務めていましたが、それに対しても段々違和感を覚えるようになったので、シーズン2からは海外のモデルさんを起用しています。

期間限定ブランドはポップアップの進化系?

WWD:ビジネスの規模は今どれくらいなのか。

Aya:20年の春以降、売上高は特に増減なく10億円弱で安定しています。ブランドの終了を決めているので、商品の供給量も変えていません。ルミネエスト以外からも出店オファーはいただきますが、規模感は抑えている。もっと多くの人に着てもらいたいという気持ちがないわけではないですが、発売日に並んで商品を買ってくださるお客さまの気持ちを大事にしたい。せっかく並んで買ったのにみんなが着ていたら、きっとがっかりしてしまうから。1着1着に愛情を込めて作っているので、本当にこれが着たいと思うお客さまに届けたい。この規模では(生産ロットなどの問題で)難しいこともありますが、反対にこの規模だからできることもある。ブランドを大きくするよりも、この規模で作るべきものをしっかりお届けしたいと考えています。

WWD:世の中全体を見ても、期間限定のポップアップショップやポップアップイベントがますます増えている。そこからさらに一歩進んで、期間限定のブランドとして出てきたのが「メルトザレディ」というわけだ。こういう、ある種の話題性が今の時代はブランド作りに欠かせないと考えているか。

Aya:マーケティングなどは本当に得意でないので、なぜ「メルト ザ レディ」が売れたかなどについて私から言えることはないです。一生懸命作りたいものを作ってきただけで、命をかけてブランドをやっていると言ってもいいくらい。それがたまたま、お客さまの心に刺さったんだと思います。そういう熱量はお客さまに伝わると思う。

 ただ、今の時代は単にいい商品を作るだけではダメです。作ったものをしっかり伝えないといけない。いいものを作っても、それを発信しないと日の目を見ずに流れていってしまいます。今は(あらゆるコンテンツで)時間の奪い合いだから、お客さまも新作発売日だからってわざわざECサイトを見るということはありません。だからこそ、パッと目に入るように写真や動画をSNSで発信することの重要性は大きい。しっかり売るはずで仕込んでいたアイテムが、私がほかの業務でバタバタしてしまってSNSの打ち出しが弱まってしまったという失敗はあります。

WWD:あと2年間、どのようにブランドを育てていきたいか。

Aya:自分の作りたいものに向き合って作っていますが、店頭スタッフとの月一回のミーティングでお客さまの声もしっかり聞くようにしています。ブランドはお遊びではないので、(自分自身の世界と)お客さまのニーズとの融合が「メルト ザ レディ」だと思う。エピソードも単なる自己満足で出していたら意味がありません。(エピソードやそこに込めた思いを)お客さまにしっかり伝えていって、楽しんでいただきたい。実際、SNSのDMなどで「このエピソードって、もしかしてこういう意味ですか?」といったことを送ってきてくださるファンの方もいますよ。“成長型ブランド”として、「もうこのブランドからは卒業」と思われないように、今のお客さまと一緒に成長したいです。

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「ジバンシイ」新クリエイティブ ディレクター、トム・ウォーカーが思い描く“現代的な女性”のイメージとは?

 「ジバンシイ(GIVENCHY)」のメイクアップ クリエイティブ ディレクターに就任した英国出身のメイクアップアーティスト、トム・ウォーカー(Thom Walker)が来日した。彼はメイクアップコレクションを手掛けるとともに、広告の監修も務める。フリーランスとして「エルメス(HERMES)」や「アレキサンダー・マックイーン(ALXANDER MCQUEEN)」「オフ-ホワイトc/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」などのファッションブランドでファッションショーやキャンペーンを手掛けるなど豊富な経験と実績を持つ彼に、就任までの経緯や「ジバンシイ」での仕事について聞いた。

WWD:「ジバンシイ」のディレクターに就任した率直な感想は?

トム・ウォーカー「ジバンシイ」メイクアップ クリエイティブ ディレクター(以下、ウォーカー):とても興奮しているし光栄なことで、今までの仕事の成果を評価してもらったことをうれしく思う。「ジバンシイ」と私は、現代女性の美に対して非常に似た哲学を持っており、それを分かち合えたことが今回の就任につながった。

WWD:「ジバンシイ」やあなたが共有する現代女性のイメージとは?

ウォーカー:エレガンスでありながら時代を超越した感覚を持ち合わせ、大胆でリスクを恐れない。新しいことに挑戦する、シンプルであることを恐れない人。ブラックドレスや赤い口紅のように、シンプルにはパワーが潜んでいる。

WWD:クリエイティブ・ディレクターとしてブランドに関わりたい思いは以前からあった?

ウォーカー:もちろん。夢のような話だ。最初は実現しない夢のように感じていたが、経験を重ねると「いつか現実になるかもしれない」と実感できるようになった。百貨店のカウンターで働いていた時から、広告ビジュアルやファッションにインスパイアされ、ファッションの世界で働いてからはクリエイティブ・ディレクションに強い興味が生まれた。メイクアップアーティストとして商品を作るのは究極の目標だった。

WWD:ブランドにそのまま残したいもの、逆に変えたいものは?

ウォーカー:必ずしも「変えたい」とは思っていない。「変える」というより今あるものや必要なものを時代に適応・昇華させるような感じ。例えば、ルースパウダー“プリズム・リーブル”は長い歴史のある象徴的な製品で、発売当初から今なお革新的。革新的なマインドを持ち続けて全ての製品を進化させたいし、一方でメイクアップが気持ち良く感じられるよう感覚的な体験も大切にしたい。今は2024年に発売する製品を考えている。多くは語れないが、目にフォーカスした製品だ。巧妙でユーザーフレンドリーでありながら、革新的なものを作りたい。

WWD:「ジバンシイ」のメイクはテクノロジーの力で進化することで、より自然な仕上がりがかなうように思う。

ウォーカー:テクノロジーは、商品開発にとって重要な要素。肌に合わないファンデーションは興味を持てないし、ベネフィットも求められる。反対に肌がきれいに見せられれば、もっとつけたくなるだろう。テクノロジーとマインド、さらにクリエイティブを全製品に注入できれば間違うことはないだろう。ベースメイクに関しては、メイクだと分からないぐらいの領域を目指したい。

WWD:商品開発はどう進めているか。

ウォーカー:チームには10人くらいのメンバーがいて、大きなテーブルを囲んで意見を出し合っている。みんながどう考えているかを知りたい。自分と異なる意見を知るのはとても楽しいプロセスだ。

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200年の歴史を持つ仏フレグランスメゾン「ドルセー」、アメリー・フインCEOのリブランディングへの思いをひも解く【香水ジャーナリスト連載 Vol.6】

 200年の歴史を持つフランスのフレグランスメゾン「ドルセー(D’ORSAY)」は、2020年12月に日本に再上陸し東京・青山に路面店をオープンした。コロナ禍を経て来日したアメリー・フイン(Amelie Huynh)「ドルセー」CEOに、リブランディングの経緯や今後のビジネスの展望について聞いた。

−−2015年に「ドルセー」をリローンチする前は、ジュエリー業界に従事していた。フランスの歴史ある香水ブランドの中から「ドルセー」を手掛けた理由は?

アメリー・フイン 「ドルセー」CEO(以下、フイン):フランスには古きも新しきも数多のフレグランスブランドが存在するが、「ドルセー」はオーナーが変わりながらもずっと続いてきた点に興味を持った。「ドルセー」は、フランスでは誰しも知っているブランドだが、1980年ごろには小規模になっていた。だから私はまるで“眠れる森の美女”を見つけたような気分だった。このまま眠らせておくのはもったいない。そして何より、「ドルセー」の創設者であるアルフレッド・ドルセー(Alfred d’Orsay)伯爵と、マルグリッド・ブレシントン(Marguerite de Blessington)との禁断の愛の物語が、事実に基づいたストーリーであることにも感銘を受け、買収を決意した。

−−「ドルセー」のリブランディングにあたり、どんなコンセプトを考えたか?

フイン:「ドルセー」には200年の歴史があり、歴史が持つメッセージ性と美意識を残したいと考えた。ドルセー伯爵が現代に生きていたら、間違いなくトップインフルエンサーの一人になっていたと思うほど、オシャレの先駆者であり、飽くなき美意識の持ち主で、アーティスト、クリエイターでもあり、絵を描いたり、彫刻やペイントも行ったり才能にあふれた人物だった。それらをブランドに反映させたいと思った。それぞれの香りではさまざまな愛の形を表現している。ボトルに愛のメッセージを添えたのも、ブランドアイデンティティーの一つ。例えば“06:20”というホームフレグランスには、「あなたが知っている所」というメッセージを添えているのだけど、”恋人同士だけが知りうる、いつもの場所”という意味を込めている。

−−香りを想像できる香水名をつけるブランドもあるが、イニシャルやフレーズをボトルに記す打ち出し方をした理由は?

フイン:ほかのブランドと差をつけるユニークなアイデアで、副題から香りにまつわるラブストーリーを感じてもらえるよう、あえて含みを持たせた。また、”秘密の愛”がブランドストーリーの根底にあるので、全てのイニシャルにも秘密を感じるようにした。当時は通信方法が手紙しかなかったため、イニシャルでメッセージを送り合っていた。恋文の中に出てくるであろうフレーズを香りの副題に選んでいるのも、その発想だ。

−−全てに愛のテーマが含まれているか?例えば“C.G.”という香りは牧歌的で、あまり恋愛的な要素は感じないが?

フイン:“C.G.”の愛のテーマは、”tender love”つまり優しく思いやりのある愛な。朝露を思わせるような香りは、まさに早朝の散歩へのインビテーション。副題の「どこか他の場所へ行きたい」というメッセージは、誰かを思ってどこかへ行きたい愛が込められていて、菩提樹の花の優しい香りになっている。

−−1912年に発表した香り“ティユル(Tilleul)”は、調香師のオリヴィア・ジャコベッティ(Olivia Giacobetti)により2008年に再解釈され、現「ドルセーで」は ”どこか他の場所へ行きたい C.G.” として香りを現代的に作り変えている。

フイン:”ティユル”に関しては、ブランドを代表するアイコニックな香りだから、リブランディングしても残したいと思った。2008年に一度再解釈されているけれど、リブランディング後も引き続き、オリヴィア・ジャコベッティにバージョンアップしてもらった。当時と比べ、現在は使用できない香料を取り除き、”どこか他の場所へ行きたい C.G.”という香りに生まれ変わった。フランスでは、”ティユル”に馴染みのある世代の人もいて、70歳代の顧客に“どこか他の場所へ行きたい C.G.”をお求めいただくことがあるほど、「ドルセー」にとって大切な香りの1つだ

−−過去のドルセーの香りの中で ”Tilleul” 以外で人気のあった香り、例えば、”ル ダンディ(Le Dandy)”、”エチケット ブルー(Etiquette Bleue)”などは、現ドルセーでカムバックしているか?

フイン:”エチケット ブルー”は、現在の「ドルセー」では ”心を込めて L.B.”というタイトルになっている。オレンジブロッサムをミドルノートにたっぷり使用しネロリやアイリスが清潔感を与えているが、ラストノートはモスやアンブロクサン、ムスクの少しダーティーな雰囲気をまとっているのが、ドルセー伯爵とマルグリットの道ならぬ恋を彷彿させる。この香りは女性調香師に作ってほしいと思い、ファニー・バル(Fanny Bal)に依頼した。彼女の師匠は、著名な調香師ドミニク・ロピオン(Dominique Ropion)だ。“ル ダンディ””は1925年の発売当時、 “ダンディな男性をゲットするならこの香りをまとおう”というテーマで女性向けの香りとして登場した。その後99年に発売した “ル ダンディ” は、男性向けにウイスキーやラム、イエローフルーツ、スパイスなどが使われている。現在は”ダンディ オア ノット G.A.” というタイトルで、シンプルでユニセックスな香りへと進化させた。どちらの“ル ダンディ”にも含まれていたパチュリやカルダモンも使用し、ジェンダー問わず使っていただけるダンディな香り”ができあがった。

−−リブランディング後、オリヴィア・ジャコベッティ以外で新たに起用した調香師はどう選んだ?

フイン:調香師には個性や得意な分野があるため、作りたい香りにマッチする人を選んでいる。例えば、“恋人同士 M.D.”はパロサントがメインの香りだが、旅好きで気さくなベルトラン・ドゥショフール(Bertrand Duchaufour)なら、愛と旅とパロサントを融合した香りを作れると考え依頼した。“ダンディ オア ノット G.A.”を作ったシドニー・ランセッサー(Sidonie Lancesseur)は、パチュリを扱う香りが得意な調香師。シンプルなショートフォーミュラで素晴らしい香りを作る。”心を込めて L.B.”を作ったファニー・バルは、砂糖とは違う甘い香りを作るのが得意で、甘いフローラルに生かされた。

−−2020年末、コロナ禍で世界的に厳しい状況の中、パリのサンジェルマン・デ・プレの旗艦店に続く2号店を青山にオープンした。

フイン:コロナ禍でのオープンはチャレンジングだったが、その先の未来への準備として覚悟を決めた。19年6月にフランスで旗艦店をオープンし、その年の後半には新型コロナウイルスの影響が出始めていた。ビジネスにはリスクがつきものだと覚悟していた。日本は個人的にも大好きで何度も来日していたので、日本とフランスで共通する美意識の高さや細部にわたるこだわり、モチベーションの高さ、センスの良さを共有できるのはとてもエキサイティングだ。

−−今後のビジネスの展望は?

フイン:これまでイギリスの有名百貨店ハロッズや、パリのギャラリー・ラファイエットのほか、5月には韓国のコンセプトショップの一部でコーナー展開がスタートし、現在世界19カ国で展開している。現在は、これまでより製造に時間やコストがかかる問題があるが積極的に販路を拡大していく。2年間で、独立店舗も含め全世界で120~140くらいの販売スポットを目指す。独立店舗として、すでにあるパリと東京以外に、ロンドン、ミラノなどにオープンできたら理想的だ。

−−フランスと日本で人気の香りに違いはあるか?

フイン:日本で圧倒的人気が “最高の自分 M.A.”。バイオレットやアイリス、ホワイトムスクを使った香りで、繊細に香るため日本人に支持されているのかもしれない。フランスで人気なのは “どこかほかの場所へ行きたい C.G.”。ブランドのシグネチャーフレグランスであり、オリヴィア・ジャコベッティ作という点が人気の理由。ベルトラン・ドゥショフールが手掛けた “恋人同士 M.D.”も好調。香水業界の専門家評価が高いのは、新作の ”あなたにイエスと言う V.H.”だ。”永遠の愛・無条件な愛” をテーマにした香りで、サフラン、ブラックペッパー、ローズ、ベンゾインなどを使った、スパイシーでウッディなノート。パンデミックで弱った人々も、パワフルさを感じていただける力強い存在感のある香りだ。日本ではこの秋に発売した。

■ドルセー青山本店
住所:東京都港区南青山3-18-7 1F
営業時間:12:00~20:00
電話番号:03-6804-6017


YUKIRIN
美容・香水ジャーナリスト
香水・香り関連商品と、ナチュラル&オーガニック美容分野に特化した記事を執筆。女性誌などのメディアで発信する。化粧品や香り製品のコンサルティングやイベントプロデュースなど幅広く活躍。「日本フレグランス大賞」エキスパート審査員、「イセタン フレグランス アワード2019」審査員などを務める

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200年の歴史を持つ仏フレグランスメゾン「ドルセー」、アメリー・フインCEOのリブランディングへの思いをひも解く【香水ジャーナリスト連載 Vol.6】

 200年の歴史を持つフランスのフレグランスメゾン「ドルセー(D’ORSAY)」は、2020年12月に日本に再上陸し東京・青山に路面店をオープンした。コロナ禍を経て来日したアメリー・フイン(Amelie Huynh)「ドルセー」CEOに、リブランディングの経緯や今後のビジネスの展望について聞いた。

−−2015年に「ドルセー」をリローンチする前は、ジュエリー業界に従事していた。フランスの歴史ある香水ブランドの中から「ドルセー」を手掛けた理由は?

アメリー・フイン 「ドルセー」CEO(以下、フイン):フランスには古きも新しきも数多のフレグランスブランドが存在するが、「ドルセー」はオーナーが変わりながらもずっと続いてきた点に興味を持った。「ドルセー」は、フランスでは誰しも知っているブランドだが、1980年ごろには小規模になっていた。だから私はまるで“眠れる森の美女”を見つけたような気分だった。このまま眠らせておくのはもったいない。そして何より、「ドルセー」の創設者であるアルフレッド・ドルセー(Alfred d’Orsay)伯爵と、マルグリッド・ブレシントン(Marguerite de Blessington)との禁断の愛の物語が、事実に基づいたストーリーであることにも感銘を受け、買収を決意した。

−−「ドルセー」のリブランディングにあたり、どんなコンセプトを考えたか?

フイン:「ドルセー」には200年の歴史があり、歴史が持つメッセージ性と美意識を残したいと考えた。ドルセー伯爵が現代に生きていたら、間違いなくトップインフルエンサーの一人になっていたと思うほど、オシャレの先駆者であり、飽くなき美意識の持ち主で、アーティスト、クリエイターでもあり、絵を描いたり、彫刻やペイントも行ったり才能にあふれた人物だった。それらをブランドに反映させたいと思った。それぞれの香りではさまざまな愛の形を表現している。ボトルに愛のメッセージを添えたのも、ブランドアイデンティティーの一つ。例えば“06:20”というホームフレグランスには、「あなたが知っている所」というメッセージを添えているのだけど、”恋人同士だけが知りうる、いつもの場所”という意味を込めている。

−−香りを想像できる香水名をつけるブランドもあるが、イニシャルやフレーズをボトルに記す打ち出し方をした理由は?

フイン:ほかのブランドと差をつけるユニークなアイデアで、副題から香りにまつわるラブストーリーを感じてもらえるよう、あえて含みを持たせた。また、”秘密の愛”がブランドストーリーの根底にあるので、全てのイニシャルにも秘密を感じるようにした。当時は通信方法が手紙しかなかったため、イニシャルでメッセージを送り合っていた。恋文の中に出てくるであろうフレーズを香りの副題に選んでいるのも、その発想だ。

−−全てに愛のテーマが含まれているか?例えば“C.G.”という香りは牧歌的で、あまり恋愛的な要素は感じないが?

フイン:“C.G.”の愛のテーマは、”tender love”つまり優しく思いやりのある愛な。朝露を思わせるような香りは、まさに早朝の散歩へのインビテーション。副題の「どこか他の場所へ行きたい」というメッセージは、誰かを思ってどこかへ行きたい愛が込められていて、菩提樹の花の優しい香りになっている。

−−1912年に発表した香り“ティユル(Tilleul)”は、調香師のオリヴィア・ジャコベッティ(Olivia Giacobetti)により2008年に再解釈され、現「ドルセーで」は ”どこか他の場所へ行きたい C.G.” として香りを現代的に作り変えている。

フイン:”ティユル”に関しては、ブランドを代表するアイコニックな香りだから、リブランディングしても残したいと思った。2008年に一度再解釈されているけれど、リブランディング後も引き続き、オリヴィア・ジャコベッティにバージョンアップしてもらった。当時と比べ、現在は使用できない香料を取り除き、”どこか他の場所へ行きたい C.G.”という香りに生まれ変わった。フランスでは、”ティユル”に馴染みのある世代の人もいて、70歳代の顧客に“どこか他の場所へ行きたい C.G.”をお求めいただくことがあるほど、「ドルセー」にとって大切な香りの1つだ

−−過去のドルセーの香りの中で ”Tilleul” 以外で人気のあった香り、例えば、”ル ダンディ(Le Dandy)”、”エチケット ブルー(Etiquette Bleue)”などは、現ドルセーでカムバックしているか?

フイン:”エチケット ブルー”は、現在の「ドルセー」では ”心を込めて L.B.”というタイトルになっている。オレンジブロッサムをミドルノートにたっぷり使用しネロリやアイリスが清潔感を与えているが、ラストノートはモスやアンブロクサン、ムスクの少しダーティーな雰囲気をまとっているのが、ドルセー伯爵とマルグリットの道ならぬ恋を彷彿させる。この香りは女性調香師に作ってほしいと思い、ファニー・バル(Fanny Bal)に依頼した。彼女の師匠は、著名な調香師ドミニク・ロピオン(Dominique Ropion)だ。“ル ダンディ””は1925年の発売当時、 “ダンディな男性をゲットするならこの香りをまとおう”というテーマで女性向けの香りとして登場した。その後99年に発売した “ル ダンディ” は、男性向けにウイスキーやラム、イエローフルーツ、スパイスなどが使われている。現在は”ダンディ オア ノット G.A.” というタイトルで、シンプルでユニセックスな香りへと進化させた。どちらの“ル ダンディ”にも含まれていたパチュリやカルダモンも使用し、ジェンダー問わず使っていただけるダンディな香り”ができあがった。

−−リブランディング後、オリヴィア・ジャコベッティ以外で新たに起用した調香師はどう選んだ?

フイン:調香師には個性や得意な分野があるため、作りたい香りにマッチする人を選んでいる。例えば、“恋人同士 M.D.”はパロサントがメインの香りだが、旅好きで気さくなベルトラン・ドゥショフール(Bertrand Duchaufour)なら、愛と旅とパロサントを融合した香りを作れると考え依頼した。“ダンディ オア ノット G.A.”を作ったシドニー・ランセッサー(Sidonie Lancesseur)は、パチュリを扱う香りが得意な調香師。シンプルなショートフォーミュラで素晴らしい香りを作る。”心を込めて L.B.”を作ったファニー・バルは、砂糖とは違う甘い香りを作るのが得意で、甘いフローラルに生かされた。

−−2020年末、コロナ禍で世界的に厳しい状況の中、パリのサンジェルマン・デ・プレの旗艦店に続く2号店を青山にオープンした。

フイン:コロナ禍でのオープンはチャレンジングだったが、その先の未来への準備として覚悟を決めた。19年6月にフランスで旗艦店をオープンし、その年の後半には新型コロナウイルスの影響が出始めていた。ビジネスにはリスクがつきものだと覚悟していた。日本は個人的にも大好きで何度も来日していたので、日本とフランスで共通する美意識の高さや細部にわたるこだわり、モチベーションの高さ、センスの良さを共有できるのはとてもエキサイティングだ。

−−今後のビジネスの展望は?

フイン:これまでイギリスの有名百貨店ハロッズや、パリのギャラリー・ラファイエットのほか、5月には韓国のコンセプトショップの一部でコーナー展開がスタートし、現在世界19カ国で展開している。現在は、これまでより製造に時間やコストがかかる問題があるが積極的に販路を拡大していく。2年間で、独立店舗も含め全世界で120~140くらいの販売スポットを目指す。独立店舗として、すでにあるパリと東京以外に、ロンドン、ミラノなどにオープンできたら理想的だ。

−−フランスと日本で人気の香りに違いはあるか?

フイン:日本で圧倒的人気が “最高の自分 M.A.”。バイオレットやアイリス、ホワイトムスクを使った香りで、繊細に香るため日本人に支持されているのかもしれない。フランスで人気なのは “どこかほかの場所へ行きたい C.G.”。ブランドのシグネチャーフレグランスであり、オリヴィア・ジャコベッティ作という点が人気の理由。ベルトラン・ドゥショフールが手掛けた “恋人同士 M.D.”も好調。香水業界の専門家評価が高いのは、新作の ”あなたにイエスと言う V.H.”だ。”永遠の愛・無条件な愛” をテーマにした香りで、サフラン、ブラックペッパー、ローズ、ベンゾインなどを使った、スパイシーでウッディなノート。パンデミックで弱った人々も、パワフルさを感じていただける力強い存在感のある香りだ。日本ではこの秋に発売した。

■ドルセー青山本店
住所:東京都港区南青山3-18-7 1F
営業時間:12:00~20:00
電話番号:03-6804-6017


YUKIRIN
美容・香水ジャーナリスト
香水・香り関連商品と、ナチュラル&オーガニック美容分野に特化した記事を執筆。女性誌などのメディアで発信する。化粧品や香り製品のコンサルティングやイベントプロデュースなど幅広く活躍。「日本フレグランス大賞」エキスパート審査員、「イセタン フレグランス アワード2019」審査員などを務める

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生産者・ロースター・生活者をつなぐ 「ティピカ」が目指すコーヒーの循環コミュニティー

 コーヒー生豆のダイレクトトレードを行うオンラインプラットフォーム「ティピカ(TYPICA)」が注目を集めている。2019年に創業以降急成長を遂げ、現在32カ国2000以上の生産者と、日本や韓国、台湾、ヨーロッパなど39カ国3500以上のロースターがサービスを利用。生産者の経済基盤を守りながら、“透明性の高いサステナブルなコーヒー”の世界規模での流通を目指す。山田彩音「ティピカ」共同創業者が、コーヒーを通じて実現したい社会とは。

頑張っておいしく作ったものが
正当に評価される社会へ

WWDJAPAN(以下、WWD):「ティピカ」を立ち上げた経緯は?

山田彩音「ティピカ」共同創業者(以下、山田):大学卒業後にロースターとして働いていた頃、豆の品質から入れ方まで全工程にこだわる“サードウェーブコーヒー”が流行していた。でも日本では地理的な条件や取引量などを理由に、生産者と直接関係性を築くのが難しい現状を目の当たりにした。“〇〇さんが作ったコーヒー”として販売しつつも、ロースター側は実際には生産者のことを何も知らない。さらに、ダイレクトトレードは基本的に約18tの海上コンテナ単位で行われており、スタートアップのロースターが1カ月に消費できる生豆はせいぜい500kgのため、生産者から直接購入するには費用対効果が合わない。もっと気軽にダイレクトトレードできるプラットフォームを作りたいと、「ティピカ」を創業した。

WWD:オランダ・アムステルダムで創業した理由は?

山田:まずは、コーヒー生豆の主な原産地であるアフリカへのアクセスが良いこと。そして、グローバル展開を視野に入れていたので、コーヒーの流通量が多いヨーロッパで創業したかった。

WWD:海外と日本でコーヒーに対する価値観の違いは感じる?

山田:日本のロースターは職人かたぎで技術が高く、自身の手が届く小規模な範囲で、自分の世界観を表現している焙煎所が多い。コーヒー生豆を選ぶポイントも、品質にフォーカスしている傾向だ。一方で、ヨーロッパは事業の規模が大きくビジネス的。品質も重要だが、自分がそのコーヒー生豆を取り扱うことへのソーシャルインパクトを意識しているロースターが多い。背景にあるストーリーや生産者の考え方が好きという理由で選んでいるように見受けられる。

小規模生産者の品質と価値を守る

WWD:「ティピカ」は麻袋1袋(60kg)から生豆をダイレクトトレードできる。生産者へのメリットは?

山田:コーヒー生産量の67%は、小規模生産者によるものといわれている。小規模でこれまで輸出が難しく、地元のマーケットに安く売るしかなかった生産者もダイレクトトレードが可能になった。また、生産者は自ら価格を決定でき、ロースターは購入前に価格の内訳を確認できる。価格の透明性を確保しながら、誰にどの生豆が届いたかが分かる点が喜ばれている。

WWD:どのような生産者にオファーしている?

山田:高品質でおいしいことはもちろん、コーヒーを通じてサステナビリティや社会貢献を目指している生産者には、積極的にオファーしている。例えば、CO2排出量や水の使用量を抑えた、栽培方法を取り入れているなど。また、小規模農家は貧しく、子どもが学校に通えない家庭も多い。「ティピカ」の最初のキュレーターであるエチオピアのモプラコ社は、農園近くの学校に教科書や学用品を供給して、産地のコミュニティーに貢献している。

生産者と生活者をつなぐ取り組み


WWD:来年には世界各地のコーヒーが毎月届くサブスク「ティピカ クラブ」を立ち上げる。

山田:「ティピカ」はコーヒー焙煎業者だけでなく、一般生活者にもメッセージを発信している。生活者からも「コーヒー生産者に興味はあるが、彼らにどうアプローチしたらいいか分からない」という声が多く届くようになり、それなら今「ティピカ」に登録しているロースターとパートナーシップを結びながら、生産者の顔が見える旬のコーヒーが毎月届くサービスを作ろうと立ち上げた。

WWD:生産者にチップを送ることができるアイデアが斬新だ。

山田:「ティピカ」の目的は「おいしいコーヒーのサステナビリティを高めること」。そのために、生産者・ロースター・生活者が循環するコミュニティーとなってこれを実現できたらと考えた。チップがコーヒーの乾燥棚や、エチオピアの山奥の子どもたちの教科書のために使われ、直接インパクトを与えられる取り組みは業界としても新しい。

WWD:ほかにはどのような取り組みを?

山田:世界中のロースターが、コーヒー生産者を訪ねる様子を映像に収めたドキュメンタリー「ティピカ ラボ(TYPICA LAB)」や、日本の優れたロースターを紹介する「ティピカ ガイド(TYPICA GUIDE)」など。さらに、年明けにはコーヒー生産地にシェードツリーを植樹する「オカゲサマ(OKAGESAMA)」もスタートする。緑が増えることで地球温暖化防止につながるし、コーヒーチェリーを摘むピッカーを暑さから守ることもできる。ほかにも地盤が頑丈になり、水害からコーヒーの木を守ることができるなど、多くのメリットがある。これも、ロースターと生活者が一丸となったプロジェクトだ。

WWD:今後の目標は?

山田:来春ニューヨークでサービスをローンチする。マンハッタンの中心で、ダイレクトトレードされた新鮮な豆を適正価格で販売するシーンを作れば、「ティピカ」が次のウェーブを起こすきっかけになることができるかもしれない。また、高品質なものへの需要が高まり、超高額なコーヒーが取引され始めている中国にも進出予定だ。世界中に拠点を持って流通量を増やし、生産者に貢献し、頑張っておいしく作ったものが正当に評価される社会を目指したい。

高品質なコーヒーが毎月届き、
社会貢献もできる「ティピカ クラブ」

 「ティピカ クラブ」は、生産者の顔が見えるコーヒーが毎月届く、焙煎豆のサブスクリプションサービスだ。ダイレクトトレードによって輸入されたコーヒー生豆を日本各地のロースターが焙煎する。豆と粉は100〜1000gの4種類で価格は月額2400〜8000円、ドリップバッグは8、15、30袋で価格は月額1600〜4800円。会員は生産者にメッセージを送ったり、チップを払ったりすることも可能だ。チップは、コーヒーを通じたサステナビリティの取り組みに使用される。2023年1月31日まで会員を募集中で、4月始動予定。

問い合わせ先
ティピカ
https://typica.jp/contact/

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ソニーで心に火を灯しながら活躍する若手社員たちが語る「EverWonderなキャリア」とは?

 人々の心に火を灯す機会を提供することを目的に、クリエイティブディレクターにGReeeeNのHIDEを迎えた一般財団法人渡辺記念育成財団は、EverWonderプロジェクトを発足した。構想中のプロジェクトは、同財団が次世代の芸能プロデューサーを支援する「みらい塾」の奨励生が企画進行している。今回は、ソニーで事業開発を担当する第5期奨励生の中村祐介が中心となり、ソニーグループで活躍する若手社員たちと「会社員として自分のやりたいことを見つけ、心に火を灯す方法」についてディスカッションする。

中村祐介ソニー事業開発担当(以下、中村):今日は、みなさんと「会社員として自分のやりたいことを見つけ、心に火を灯す方法」について語りたいと思います。みなさんは、比較的自分の好きなことややりたいことを仕事で実現できている印象です。好きなことを仕事やキャリアに落とし込むにはどうしたらいいのか?そもそも好きなことが見つからない人はどうすればいいのか?を伺えたらと思います。まずはみなさんの好きなことと、仕事内容を教えてください。

對馬哲平ソニー モバイルコミュニケーションズ事業本部 wena事業室 統括課長(以下、對馬):私はスマートウオッチ「ウェナ(WENA)」の開発を担当しています。もともと電化製品に限らず、あらゆるプロダクトへの興味・関心が非常に強く、今の仕事に繋がったように思います。「このプロダクトは、どのような想いで作られたのか?」「どういう意図で、このような設計になったのか?」を自分なりに考えることは趣味にもなっています。「このプロダクトは、もっとこうするべきだ」という自分の仮説が他人に共感される瞬間はたまりません。実際にプロダクトの開発に携わり、今まで培ってきた自分の価値観がお客さまに評価されたときの嬉しさは、仕事のモチベーションになっています。

中村:對馬さんは、好きを仕事にできている方の典型的な事例ですね。私の場合は、中学生のときに観た「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に心を奪われて、映画が大好きになりました。アメリカの自由さや寛大さがとても印象的で、大学生のときには留学するなど、その後の人生に大きな影響を与えてくれました。人生に大きな影響を与える映画に携わりたいと思い、ソニー・ピクチャーズのあるソニーに入社したほどです。現在は、ソニー・ピクチャーズとの協業で、動画配信サービス「ブラビア コア(BRAVIA CORE)」を担当しています。

八木泉ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ事業本部 モバイルプロダクト事業部 事業開発部 サービス企画課(以下、八木):私はお二人のように何か好きなものがあるわけではありませんが、モノ作りを通してチームやお客さまと心が通う瞬間は日々の活力になっています。学生時代はオーケストラでマンドリンを演奏。チームで目標に向かって努力し、一つの音楽を作り上げること自体がとても好きでした。そういった経験が、チーム一丸となってプロダクトを開発する、今の仕事の楽しさややりがいにも繋がっていると思います。また、私も自分たちの商品が誰かのためになっていることを知ったときの喜びが仕事のモチベーションになっています。特に印象深いのは、周囲の音を拾いながら音楽を楽しめるヒアラブルデバイスの開発チームに配属されたとき、視覚障害を持っている方から「初めて、ウォークマン体験ができた」と喜びの声が聞けたことです。現在は、サウンド AR サービス「ロケトーン(LOCATONE)」のビジネスプロデューサーとして、ムーミンバレーパークでのサウンドアトラクション、サウンドエンタテインメント「ヨアソビ・サウンドウオーク(YOASOBI SOUND WALK)」などをプロデュースしています。

廣瀬太一ソニー・ミュージックレーベルズ 第1レーベルグループMASTERSIX FOUNDATION制作部兼MCR制作部 A&R(以下、廣瀬):みなさん好きなことに携わっているから、心に火が灯っているんですね。正直な話、自分の強みは心に火が灯っていなくても、割となんでも頑張れることなので、場違いかもしれません(笑)。逆に、一般的には感動するであろう体験をしても、全く心に火が灯らなかった話ならできます。自分は中学生のときに、音楽好きな同級生の兄の影響でなんとなく音楽を始めて、大学生のときには1500人くらいの観客の前で演奏する機会がありました。でも、全く感動せずに終わってしまって……。周りとの温度差を感じ、「このまま音楽を仕事にするのは辛い」と思い、就職を考えました。ソニーは「一生潰れないだろう」と思い、内定を受けたんです。現在は、A&Rというアーティストの売り出し方を統括するポジションで仕事をして、これまでにMAISONdesなどを輩出してきました。

中村:好きを仕事にするためには?

對馬:好きには段階があると思っています。僕の場合、はじめはなんとなくプロダクトが好きだったのが、そのうち自分でカスタマイズしたくなりました。さらに好きな気持ちが高まると、「プロダクトをもっとこうしたい」というアイデアが出てくるようになりました。その積み重ねがプロダクトに対する価値観の形成に繋がり、仕事にも生きるようになったんです。

中村:映画も似ているかもしれませんね。最初は純粋に好きだったけれど、次第に「自分だったら」という考えが芽生え、実際に作品を撮ってみるというプロセスだと思います。好きを追求するから仕事になる、という考え方もあるかもしれませんね。

廣瀬:僕は、ちょっと違うかなと思います。世間の風潮として「好きなことを仕事にする」がとても美化されていますが、これは“呪い”に近いように感じます。一方、「好きなことより、得意なことを仕事にした方がいい」という考えもありますが、人間にスペックの差なんてそこまでないと思うので、それも少し違うかなと思うんです。一番大事なのは、「人に喜んでもらえること」「ニーズのあること」を選ぶことかなと。自分の場合、ミュージシャンを諦めて今の仕事に就きましたが、ずっと一緒に音楽をやってきた人に初めてお願いした曲で日本一を取ることができました。自分の仕事が世の中から評価され、これまで反対していた周囲の反応が見事にひっくり返る瞬間には快感を覚えました。

中村:廣瀬さんのような発想で、ニーズがあるところで仕事を極めた結果、それがやりがいと気づくパターンもありますよね。

八木:私が漫画家の友達に好きなことを仕事にして結果を出していることを褒めると、その人は「自分はこれしかできないから、極めただけ」と答えました。その人が歩んできた人生で、考え方はだいぶ異なるんでしょうね。

廣瀬:アーティストの育成においても同じことが言えます。「どんなアーティストになりたいか?」と問うと、多くの人は「東京ドームのような大きな会場でライブをしたい」と答えますが、それは手段でしかないんです。「東京ドームでライブがしたい」と答える人の裏には、「とにかく人にチヤホヤされたい」って気持ちが隠れていることが多いです。これ自体は悪くないことですが、単純にチヤホヤされたいなら、他にも選択肢があるかもしれません。逆に自分の好きな曲を作り続けたいなら、レーベルに所属せず自己資本でやり続けた方がいいかもしれません。大事なのは、「どういう状態になりたいか?」を明確にした上で、そのために必要な正しい選択をするだと思います。

對馬:漫画を好きで描いていたのに、プロになると描くのが嫌いになってしまったという話はよく聞きますよね。

廣瀬:それもやはり、自分の理想の状態を見誤っていることが原因だと思うんですよね。自分が好きな漫画を描くことと、描いた漫画が評価されることは異なります。音楽も同じです。

八木:好きを仕事にすることが幸せな人もいれば、仕事は仕事で好きなことは趣味にする方が幸せな人もいますよね。

中村:みなさんは、会社に所属しながら自分が思うように好きを仕事にできている側の人たち、あるいは仕事の中でやりがいを見つけられた人たちです。一方、多くの人は好きなことを仕事にできているわけではなく、やりがいも見失っています。その人たちは、どうすればいいと思いますか?

對馬:好きなことを追求し続けたら、いつのまにか仕事にするために必要なスキルや考えが身についていることはあると思うんですよね。例えばGoProというカメラは、もともとサーフィンをしている自分の姿をかっこよく撮りたいという想いから生まれたものですから、当初はサーフィンに興味のない人には理解されませんでした。しかしスノボやサイクリングなど、同じような嗜好を持った人たちがたくさんいたからこそ、GoProは人気商品になったわけです。好きだからこそ生まれるアイデアがある。これは、好きなことを仕事にする上で必要かなと思います。

八木:本当に好きなことがある人は、既にそれを仕事にするための何かを得ていたり、何かしらアクションを起こせたりしていると思います。好きなことを仕事にしたいと悩んでいる人たちは、本当に自分が好きなことに出合えていないのかなと。まずは自分の理想の状態を考えたり、今の環境を変えて新しいことに触れてみたりすることが大事かなと思います。自分が本当にやりたいことや好きなことを再発見して、アクションに繋げられるかもしれません。

中村:デパ地下の試食みたいに、色々なキャリアをかいつまんで経験できる機会があればと思います。仮に自分に好きなことがあっても、その好きをキャリアに落とし込むには実際色々な仕事を経験してみないと。

八木:悩んでいる人がアクションを起こして、色々な仕事を経験できる環境を作ることは大事かもしれませんね。

中村:「好きなことを仕事にしたいのに」と焦っている人には、本当に好きなことが見つかっていないケースもあるのかもしれませんね。本当に好きなことを見つけるためにも、新しいものに触れられる機会が増えるといいですね。一方好きなことを仕事にすることが必ずしもいいわけではなく、むしろ自分がなりたい状態を思い描いて逆算して正しい選択を取ることも心に火を灯して生きるために必要な考え方かもしれません。みなさん、貴重なお話をありがとうございました。

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ソニーで心に火を灯しながら活躍する若手社員たちが語る「EverWonderなキャリア」とは?

 人々の心に火を灯す機会を提供することを目的に、クリエイティブディレクターにGReeeeNのHIDEを迎えた一般財団法人渡辺記念育成財団は、EverWonderプロジェクトを発足した。構想中のプロジェクトは、同財団が次世代の芸能プロデューサーを支援する「みらい塾」の奨励生が企画進行している。今回は、ソニーで事業開発を担当する第5期奨励生の中村祐介が中心となり、ソニーグループで活躍する若手社員たちと「会社員として自分のやりたいことを見つけ、心に火を灯す方法」についてディスカッションする。

中村祐介ソニー事業開発担当(以下、中村):今日は、みなさんと「会社員として自分のやりたいことを見つけ、心に火を灯す方法」について語りたいと思います。みなさんは、比較的自分の好きなことややりたいことを仕事で実現できている印象です。好きなことを仕事やキャリアに落とし込むにはどうしたらいいのか?そもそも好きなことが見つからない人はどうすればいいのか?を伺えたらと思います。まずはみなさんの好きなことと、仕事内容を教えてください。

對馬哲平ソニー モバイルコミュニケーションズ事業本部 wena事業室 統括課長(以下、對馬):私はスマートウオッチ「ウェナ(WENA)」の開発を担当しています。もともと電化製品に限らず、あらゆるプロダクトへの興味・関心が非常に強く、今の仕事に繋がったように思います。「このプロダクトは、どのような想いで作られたのか?」「どういう意図で、このような設計になったのか?」を自分なりに考えることは趣味にもなっています。「このプロダクトは、もっとこうするべきだ」という自分の仮説が他人に共感される瞬間はたまりません。実際にプロダクトの開発に携わり、今まで培ってきた自分の価値観がお客さまに評価されたときの嬉しさは、仕事のモチベーションになっています。

中村:對馬さんは、好きを仕事にできている方の典型的な事例ですね。私の場合は、中学生のときに観た「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に心を奪われて、映画が大好きになりました。アメリカの自由さや寛大さがとても印象的で、大学生のときには留学するなど、その後の人生に大きな影響を与えてくれました。人生に大きな影響を与える映画に携わりたいと思い、ソニー・ピクチャーズのあるソニーに入社したほどです。現在は、ソニー・ピクチャーズとの協業で、動画配信サービス「ブラビア コア(BRAVIA CORE)」を担当しています。

八木泉ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ事業本部 モバイルプロダクト事業部 事業開発部 サービス企画課(以下、八木):私はお二人のように何か好きなものがあるわけではありませんが、モノ作りを通してチームやお客さまと心が通う瞬間は日々の活力になっています。学生時代はオーケストラでマンドリンを演奏。チームで目標に向かって努力し、一つの音楽を作り上げること自体がとても好きでした。そういった経験が、チーム一丸となってプロダクトを開発する、今の仕事の楽しさややりがいにも繋がっていると思います。また、私も自分たちの商品が誰かのためになっていることを知ったときの喜びが仕事のモチベーションになっています。特に印象深いのは、周囲の音を拾いながら音楽を楽しめるヒアラブルデバイスの開発チームに配属されたとき、視覚障害を持っている方から「初めて、ウォークマン体験ができた」と喜びの声が聞けたことです。現在は、サウンド AR サービス「ロケトーン(LOCATONE)」のビジネスプロデューサーとして、ムーミンバレーパークでのサウンドアトラクション、サウンドエンタテインメント「ヨアソビ・サウンドウオーク(YOASOBI SOUND WALK)」などをプロデュースしています。

廣瀬太一ソニー・ミュージックレーベルズ 第1レーベルグループMASTERSIX FOUNDATION制作部兼MCR制作部 A&R(以下、廣瀬):みなさん好きなことに携わっているから、心に火が灯っているんですね。正直な話、自分の強みは心に火が灯っていなくても、割となんでも頑張れることなので、場違いかもしれません(笑)。逆に、一般的には感動するであろう体験をしても、全く心に火が灯らなかった話ならできます。自分は中学生のときに、音楽好きな同級生の兄の影響でなんとなく音楽を始めて、大学生のときには1500人くらいの観客の前で演奏する機会がありました。でも、全く感動せずに終わってしまって……。周りとの温度差を感じ、「このまま音楽を仕事にするのは辛い」と思い、就職を考えました。ソニーは「一生潰れないだろう」と思い、内定を受けたんです。現在は、A&Rというアーティストの売り出し方を統括するポジションで仕事をして、これまでにMAISONdesなどを輩出してきました。

中村:好きを仕事にするためには?

對馬:好きには段階があると思っています。僕の場合、はじめはなんとなくプロダクトが好きだったのが、そのうち自分でカスタマイズしたくなりました。さらに好きな気持ちが高まると、「プロダクトをもっとこうしたい」というアイデアが出てくるようになりました。その積み重ねがプロダクトに対する価値観の形成に繋がり、仕事にも生きるようになったんです。

中村:映画も似ているかもしれませんね。最初は純粋に好きだったけれど、次第に「自分だったら」という考えが芽生え、実際に作品を撮ってみるというプロセスだと思います。好きを追求するから仕事になる、という考え方もあるかもしれませんね。

廣瀬:僕は、ちょっと違うかなと思います。世間の風潮として「好きなことを仕事にする」がとても美化されていますが、これは“呪い”に近いように感じます。一方、「好きなことより、得意なことを仕事にした方がいい」という考えもありますが、人間にスペックの差なんてそこまでないと思うので、それも少し違うかなと思うんです。一番大事なのは、「人に喜んでもらえること」「ニーズのあること」を選ぶことかなと。自分の場合、ミュージシャンを諦めて今の仕事に就きましたが、ずっと一緒に音楽をやってきた人に初めてお願いした曲で日本一を取ることができました。自分の仕事が世の中から評価され、これまで反対していた周囲の反応が見事にひっくり返る瞬間には快感を覚えました。

中村:廣瀬さんのような発想で、ニーズがあるところで仕事を極めた結果、それがやりがいと気づくパターンもありますよね。

八木:私が漫画家の友達に好きなことを仕事にして結果を出していることを褒めると、その人は「自分はこれしかできないから、極めただけ」と答えました。その人が歩んできた人生で、考え方はだいぶ異なるんでしょうね。

廣瀬:アーティストの育成においても同じことが言えます。「どんなアーティストになりたいか?」と問うと、多くの人は「東京ドームのような大きな会場でライブをしたい」と答えますが、それは手段でしかないんです。「東京ドームでライブがしたい」と答える人の裏には、「とにかく人にチヤホヤされたい」って気持ちが隠れていることが多いです。これ自体は悪くないことですが、単純にチヤホヤされたいなら、他にも選択肢があるかもしれません。逆に自分の好きな曲を作り続けたいなら、レーベルに所属せず自己資本でやり続けた方がいいかもしれません。大事なのは、「どういう状態になりたいか?」を明確にした上で、そのために必要な正しい選択をするだと思います。

對馬:漫画を好きで描いていたのに、プロになると描くのが嫌いになってしまったという話はよく聞きますよね。

廣瀬:それもやはり、自分の理想の状態を見誤っていることが原因だと思うんですよね。自分が好きな漫画を描くことと、描いた漫画が評価されることは異なります。音楽も同じです。

八木:好きを仕事にすることが幸せな人もいれば、仕事は仕事で好きなことは趣味にする方が幸せな人もいますよね。

中村:みなさんは、会社に所属しながら自分が思うように好きを仕事にできている側の人たち、あるいは仕事の中でやりがいを見つけられた人たちです。一方、多くの人は好きなことを仕事にできているわけではなく、やりがいも見失っています。その人たちは、どうすればいいと思いますか?

對馬:好きなことを追求し続けたら、いつのまにか仕事にするために必要なスキルや考えが身についていることはあると思うんですよね。例えばGoProというカメラは、もともとサーフィンをしている自分の姿をかっこよく撮りたいという想いから生まれたものですから、当初はサーフィンに興味のない人には理解されませんでした。しかしスノボやサイクリングなど、同じような嗜好を持った人たちがたくさんいたからこそ、GoProは人気商品になったわけです。好きだからこそ生まれるアイデアがある。これは、好きなことを仕事にする上で必要かなと思います。

八木:本当に好きなことがある人は、既にそれを仕事にするための何かを得ていたり、何かしらアクションを起こせたりしていると思います。好きなことを仕事にしたいと悩んでいる人たちは、本当に自分が好きなことに出合えていないのかなと。まずは自分の理想の状態を考えたり、今の環境を変えて新しいことに触れてみたりすることが大事かなと思います。自分が本当にやりたいことや好きなことを再発見して、アクションに繋げられるかもしれません。

中村:デパ地下の試食みたいに、色々なキャリアをかいつまんで経験できる機会があればと思います。仮に自分に好きなことがあっても、その好きをキャリアに落とし込むには実際色々な仕事を経験してみないと。

八木:悩んでいる人がアクションを起こして、色々な仕事を経験できる環境を作ることは大事かもしれませんね。

中村:「好きなことを仕事にしたいのに」と焦っている人には、本当に好きなことが見つかっていないケースもあるのかもしれませんね。本当に好きなことを見つけるためにも、新しいものに触れられる機会が増えるといいですね。一方好きなことを仕事にすることが必ずしもいいわけではなく、むしろ自分がなりたい状態を思い描いて逆算して正しい選択を取ることも心に火を灯して生きるために必要な考え方かもしれません。みなさん、貴重なお話をありがとうございました。

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「ベドウィン」とコラボも ロサンゼルス発のサステナブルスニーカー「クレイ」のこだわりのモノづくり

 ロサンゼルス発のシューズブランド「クレイ(CLAE)」は、快適な履き心地と洗練されたビジュアルで認知を拡大中だ。リサイクル素材やビーガンレザーを使用し、再生可能エネルギーのみで工場を操業するなど、サステナビリティへの配慮が前提となったものづくりを実施する。その取り組みが共感を呼び、フランスのジュエリーブランドが販売員のユニフォームとして「クレイ」のシューズ採用したケースも。日本では2022現在、百貨店やオンラインなどで約30店舗を展開する。「コロナ禍以前から業績の年間成長率は20〜30%を維持している」と語る「クレイ」を率いるジェローム・トゥイリエ(Jerome Thuillier)=ブランド・グローバル・ディレクターにブランドが伝えたいメッセージやものづくりのこだわりなどを聞いた。

ブランドのコアバリューの
更なる強化を進める

WWD:ブランドのDNAは?

ジェローム・トゥイリエ=ブランド・グローバル・ディレクター(以下、トゥイリエ):「クレイ」は2001年にロサンゼルスで生まれたブランド。履き心地が良く、清潔感があり、洗練された素材を使ったスニーカーが、クラシックシューズとスポーツスニーカーの中間的ポジションとして人気を集めた。特にスケーター界隈では、スケート後にそのまま出かけられる、“アフタースケート”のシューズとして注目を浴びた。色使いや形、ロゴの使い方などがシンプルな見た目で、スニーカーとしては挑戦的なデザインだったと思うが、そのミニマルなところが愛される一因だろう。良い“テイスト”を持ったお客さまに支持されてここまできた。

WWD:ブランド・グローバル・ディレクターとしてどこまでブランドを統括する?

トゥイリエ:スケート業界に何年もいたので、「クレイ」というブランド自体は、ユーザーとして初期のころから気になっていた。正式に現職に就いたのは15年だが、数年前からコンタクトは取っていた。ヨーロッパに拠点を設け、マーケティングを担当するオフィスを作るというアイデアを掲げてディレクターに。フランスとロサンゼルスをつなげながら、デザインなども見ている。「DCシューズ(DC SHOES)」や「ヴェジャ(VEJA)」で得た経験は市場の理解に役立ち、今日に生きているだろう。最高の“カクテル”を作るためのレシピを作っている気分だ。

生産エネルギーや使用素材にこだわり
環境問題に対する確かな理念

WWD:「クレイ」のサステナビリティへの取り組みはどのようなものがある?

トゥイリエ:立ち上げ当初はオーガニック・コットンなどの素材を取り入れつつ、常にビーガン素材を使ったスニーカーをそろえていた。15年に入社したとき、製品の素材調達から改善したいと考えた。まずはビーガン素材の取り入れを増やし、そのほかの合成樹脂(プラスチックやポリ塩化ビニール)で作られていたパーツは全て、プラスチックごみのリサイクル素材などに変更している。これまでリサイクル素材で作られていなかったシューズの設計を見直している。メイン商材のレザーシューズはレザー・ワーキング・グループ認証のレザーを使用。ベトナムに拠点を置くパートナーは再生可能エネルギーのみで運転しながらレザーを生産している。太陽光や風力発電で生まれたエネルギーを使用し、生産に使用する水は工場内で循環させる。時間をかけて改善してきたところだ。早い段階からさまざまな素材の仕様に乗り出していたので、多くの試行錯誤がある。われわれがまずは道をかき分け、多くの人がその道に続くよう整えるのが使命だと思っている。

WWD:スニーカーはどのくらいの割合でリサイクル素材を使用している?

トゥイリエ:スニーカー単位では、完成品の数値を示すのは難しい。インソールは100%リサイクル素材を使用しているが、他の部分は22年現在、50〜70%となっている。ほぼ全ての製品に異なる割合でリサイクル素材を用いている。動物性レザーの丈夫さも理解して使用しているが、ビーガンレザーを使ったスニーカーは10%程度だったものが22年現在は50%を超えている。

WWD:ビーガンレザーへの完璧な置き換えを目指す?

トゥイリエ:動物性レザーは耐久性に優れていることは間違いない。ただそこだけにフォーカスすると動物の福祉などが考慮されなくなってしまう。現段階では、バランスを見つけることが鍵だと思う「クレイ」は動物性レザーの代替となる植物由来の素材を積極的に取り入れており、レザーの質感や見た目の美しさには自信がある。

WWD:サステナビリティのゴールは?

トゥイリエ:5年前、私の目標は現在とは大きく異なっていた。今までやってきたことをすごく誇りに思っている。これからの目標は、100%リサイクル素材を使ったスニーカーを、生産コストを抑えて作ること。材料がリサイクルされていたとしても生産にエネルギーを使うので、完璧とは言えない。いつか、中古でシューズが出回る代わりに、スニーカーを庭に植えるとそこから植物が生えるようになるかもしれない。そんな未来を信じている。

「クレイ」のストーリーを
日本のフットウエアファンに

WWD:ブランドのメイン市場は?

トゥイリエ:フランスやイギリス、ドイツを中心とする西ヨーロッパ。“ロサンゼルスらしさ”がヨーロッパやアジアで良い反応を生んでいると実感する。ロサンゼルスといえばサーフィンや西海岸の雰囲気をイメージする人が多いと思うが、実際はかなり複雑な都市だ。海岸を外れると、周りはより広い自然に囲まれていて、砂漠もある。セレブリティーも多く暮らし、多くの産業が生まれている。とてもユニークなエリアだ。

WWD:日本ではリーガルコーポレーションが販売しているが、日本市場は今どのフェーズにあると思う?

トゥイリエ:まだまだ初期段階だ。シンプルなもの作りというのは、実際すごく難しいことで、最高の品質と快適さを追求しなければ成立しない。だから、時間をかけて、そのストーリーを伝えていきたいと思っている。だからこそ「ベドウィン & ザ ハートブレイカーズ(BEDWIN & THE HEARTBREAKERS)」(以下、ベドウィン)とコラボレーションもした。

コラボを通して
多面的な魅力を創造

WWD:これまで「アニエスベー(AGNES B.)」などともコラボをしてきた。11月19日に発売した「ベドウィン」とのコラボレーションアイテムのこだわりは?

トゥイリエ:コラボレーションをしたアイテムは一生残るので、コラボ相手はブランドや調達方法、パッションなど、細かいところまで見て決定している。「ベドウィン」を立ち上げ、ディレクションする渡辺真史とはコラボについてだけでなく、スケートボードや旅行、ロサンゼルスについてなど、同じバックボーンを共有するから生まれるニッチな対話ができた。話すうちに、どのように「ベドウィン」のビジョンと、「クレイ」の環境問題への理念を融合できるかを考えていった。コラボスニーカーには「ベドウィン」のアパレル製作時の残布を使って、パッチワーク風にアレンジしている。

WWD:フランスではポップアップも開催している。日本での出店計画は?

トゥイリエ:フランスの百貨店ル・ボン・マルシェ(LE BON MARCHE)でのポップアップは売れ行きも良く、好調だ。ブランドのストーリーや背景をじっくりお客さまとコミュニケーションできる良い機会となった。来店して初めてブランドについて知った人、ロサンゼルスから観光で来ていたフランスで「クレイ」に出合った人など、さまざまな来店客とつながれた。日本でももっとブランドについて伝えていきたい。

問い合わせ先
リーガルコーポレーション
047-304-7261

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フランス発フレグランス「メゾン クリヴェリ」 創始者が自らワークショップで伝える誰も体験したことのない香り

 フランス発フレグランス「メゾン クリヴェリ(MAISON CRIVELLI以下、クリヴェリ)」は、12月28日〜2023年1月31日、伊勢丹新宿本店2階でポップアップイベントを開催する。同ブランドは、創始者のティボー・クリヴェリ(Thibaut Crivelli)の実体験を投影した香水を提供。香りをはじめ、色、テクスチャーを織り交ぜて共鳴させることで、コントラストの効いたフレグランスを生み出している。体験したことのない香を届けるのが「クリヴェリ」だ。イベント会場でフレグランスを税込3万4650円以上購入するとブランドのアイコニックな香り“イビスキュス マハジャ エキストレ ド パルファム”のミニサイズ(5mL)のプレゼントがある(数量限定)。また、“イビスキュス マハラジャ エキスト レ ド パルファム”(50mL)、または、各オードパルファム(100mL)を購入した先着10人に、クリヴェリのサイン入りグリーティングカードが提供される。

 「クリヴェリ」は10月、伊勢丹新宿本店で開催された香水の祭典「サロン ド パルファン」で日本に初上陸した。「サロン ド パルファン」のイベント期間中には完売品が出るほど反響があったという。イベントのために来日したクリヴェリ創業者にメゾンの哲学や香りについて聞いた。

WWD:来日の目的は?

ティボー・クリヴェリ=メゾン クリヴェリ創始者(以下、クリヴェリ):個人的に日本は大好きだ。イベントのための来日だが、友人にも会えてよかった。

WWD:フレグランスブランドを立ち上げようと思ったきっかけは?

クリヴェリ:温泉で有名なフランスのラ・ロッシュ=ポゼはコスメ産業が盛んで、薬学を学んだ父親がコスメの会社を立ち上げた。その影響もあるし、自然に香りとの出合いと結びついている。

WWD:ブランド哲学は?

クリヴェリ:一度も体験したことのない香りを届けること。私の個人的な体験を生かした香水を作りたいと思った。原材料との出合いをはじめ、驚いたことや意外な体験、冒険など。調香師には、それらの体験を独創的でコントラストを浮き上がらせるような香りになるように説明し、五感を研ぎ澄ませた体験を香りで表現している。ボトルは、ピュアでシンプル、香水自体も無色透明だ。

WWD:他のニッチフレグランスとの違いは?

クリヴェリ:1つ1つ個性的な香りで似たようなものはない。クリエイションプロセスが違う。われわれの出発点は五感や驚きだ。それを調香師にムードボードや写真、音などを交えて体感してもらい、抽象的ではなく、衝撃の瞬間を分かち合えるような香りを制作。私が実際体験したことに独自の解釈を加えて表現している。

WWD:調香と生産はどこで行っているか?

クリヴェリ:原料はグラースから調達、調香はパリで調香師と2人三脚で行う。パリの北の工場で生産する。

WWD:現在何カ国で販売しているか?トップ3の市場は?

クリヴェリ:37カ国のエクスクルーシブなチャネルで販売している。国によっては1店舗だけで販売している所も。好調な市場は、フランス、イギリス、アメリカ、中東など。日本も好調な市場になってほしいと期待している。

WWD :「メゾン クリヴェリ」を消費者に手に取ってもらうためには?

クリヴェリ:まず、他のフレグランスと違うということが大切。また、消費者と近い関係を築けるかが重要だ。だから、店頭の販売スタッフは大切。ブランドの哲学などを伝える役目があるから。SNSも活用している。大変だが、消費者と近い関係を築くために、自分で返答するなど、直接交流することを心がけている。先週、3年前のワークショップに参加した顧客からメールがあった。複数購入したいというものだったが、ワークショップを豊かな体験として覚えていてくれたからだと思う。

 そのような顧客との誠実な関係性が重要だ。

WWD:日本における戦略は?

クリヴェリ:「サロン ド パルファム」では好評だった。ブルーベル・ジャパンというすばらしいパートナーと出合えたので、少しずつ焦らずに、適切なルートで販売していくつもりだ。

WWD:フレグランス業界におけるサステナビリティの現状は?

クリヴェリ:われわれは着色料を使わないし、ヴィーガンの原料を使用したフレグランスもある。また、3点香水が売れるたびに自然保護団体へ寄付している。それらはパチュリの農家をはじめ、香料の農家の支援に使われている。

WWD:あなたにとって香りとは?

クリヴェリ:香り=喜びの瞬間。自分の内面やスタイル、個性のシグニチャーでもある。私が調香師と話すときに、いつも言うのが、“香りが微笑みを与えるものであってほしい”ということ。大きな感動や体験を思い出したり、心地よい気分になったりするものであってほしい。コロナ禍では、香りがより大切なものになっている。日々の生活の中でリラックスしたり、セラピー効果を持つものだと思う。

【メゾン クリヴェリ ポップアップイベント】

会期:2022年12月28日(水)〜23年1月31日(火)
会場:伊勢丹新宿本店2階プロモーション
※フレグランスを税込3万4650円以上購入すると “イビスキュス マハジャ エキストレ ド パルファム”のミニサイズ(5mL)のプレゼントがある(数量限定)。また、“イビスキュス マハラジャ エキスト レ ド パルファム”(50mL)、または、各オードパルファム(100mL)を購入した先着10人に、ティボー・クリヴェリのサイン入りグリーティングカードを提供

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ロンハーマンがワイキキに新店 ストーリーが生まれる“ライフスタイルショップ”を世界へ

 ロンハーマンは来春、ハワイ州オアフ島のワイキキビーチ沿いに新店舗を開く。アメリカ本国ではメルローズ本店、ブレントウッド、マリブの3店舗を運営するが、サザビーリーグが商標・事業を譲受してからは初の海外出店となる。

 同店はワイキキのメインストリートであるカラカウア通りに面したワイキキ最古のホテル「モアナ サーフライダー ウェスティン リゾート&スパ」の敷地内に位置し、店舗面積は約297平方メートル。店内は白を基調とした開放的な空間で、メンズとウィメンズのアパレルやファインジュエリー、雑貨などを取り扱う。海をキーワードに、サーフボードの廃材や海岸沿いで拾った貝などを用いたグリーンアートも配置し、ブランドの世界観を演出する。サザビーリーグの三根弘毅取締役上級執行役員兼リトルリーグカンパニー•プレジデントに出店の狙いや実店舗の意義を聞いた。

WWD:出店の狙いは?

三根弘毅サザビーリーグ取締役上級執行役員兼リトルリーグカンパニー・プレジデント(以下、三根):いつも自分が出張に行きたいところや“気”のいいところに出店している。もともとハワイは、2015年頃から物件を探していたが、家賃が高くて手が出せなかった。カラカウア通りは、パリのシャンゼリゼ通りよりも人通りが多く、カップルから子ども連れの家族までが集まり朝から夜遅くまで賑わっているような場所だ。僕自身もよくサーフィンをしに行ったり、子どもと旅行したりする。こんなところに店を構えられたらいいなとずっと思っていた。海から100メートルもないような場所で、デザイナーズのウエアやアクセサリーに出合える意外性も面白い。家族がディナーをした後の帰りに寄って、ワンピースを買ってくれるような店になったらうれしい。気持ちの良い場所に出したかったというのが大きな理由だが、戦略的な部分では、世界中の人々が集まるこの場所に店を構えることで、ロンハーマンの知名度向上にもつなげたい。

WWD:今の時代における実店舗の役割をどう考える?

三根:僕たちは、服やアクセサリーを売っているだけではなく、体験を提供している。ストーリーが生まれる場であることが店舗の意義だと思う。ロンハーマンとしては今後よほど面白い場所がない限り、出店しない。例えば船でしか行けない場所とか干潮の時にしか行けない場所とか。とにかく、不便なところがいい。今の時代モノが欲しければECでクリックすれば次の日には手に入る。でもそれはロマンチックではない。僕は昔おもちゃ屋に行って、たくさんの商品の中から何日もかけて悩んで選んだ記憶がある。そういうストーリーがあると、モノを大事にする。ハワイの店も「2人で飛行機で行ったね。ロンハーマンでジュエリー買った日から10年だね」みたいなストーリーが生まれる場所。儲かることだけを狙って出店しても、目指す方向性から離れてしまう。自分たちが行きたい土地や僕たちのビジネスが求められているかどうかで出店場所は選んでいく。

ロンハーマン的“ライフスタイルショップ”とは?

WWD:業績はコロナ禍でも好調と聞く。

三根:絶好調だ。むしろコロナの最中が、1番業績が良かったくらい。SDGsの観点から売り上げを伸ばすよりも絶対に在庫を廃棄しないと考え方を変えたことで、利益が前より残るようになった。すごくいい勉強になったと思う。今も売り上げをどう取るかよりも、何をどう売るか、ロンハーマンがどうあるべきかをみんなで考え動いている。

WWD:ロンハーマンは国内アパレルのなかでも、いち早くサステナビリティに取り組んだ企業だった。

三根:究極はビジネスをやめた方が、地球のためになる。でも、僕たちがやめても洋服屋は残る。であれば、自分たちがアクションを起こすことで業界に少しでも刺激を与えたいと思った。事業を始めた当初から「一生着られる服を提供しよう」と言い続けてきたが、利益を出すために作り過ぎてしまうこともあったので、そこを見直した。加えて「強く、優しくあること」は以前からずっとテーマだった。僕は採用面接で「電車でちゃんと席譲っていますか?」と聞く。社会や身の回りに感謝し配慮できる心根の良い人たちにチームに入ってほしいから。結果的に今一人一人が、サステナビリティを当たり前のこととして捉え、新しい取り組みを自発的に考えてくれている。

WWD:ロンハーマンは“ライフスタイルショップ”の先駆けだが、これからの時代もその提案は顧客に響く?

三根:“ライフスタイルショップ”の定義は、単純に洋服と雑貨とアクセサリーを一緒に売る店ではない。店に足を踏み入れてから退店するまでに「明日も頑張ろうかな」と気持ちが変わるきっかけをくれるのが、“ライフスタイルショップ”だと僕は思う。お客さんをそう言う気持ちにさせたかどうかだから、それに飽きはこないだろう。ロンハーマンカフェのスタッフは、僕が驚くぐらいお客さんをもてなす。この前もお客さんが足をひきずっていることに気付いたスタッフが、絆創膏を差し出して感謝状をいただいた。しかも、スタッフは何人にも同じようにおもてなしをしているから、感謝状が届いてもどの人からかわからないくらいだ。お客さんからは、スタッフの接客がいいから過ごし易いと言ってもらえる。ハワイもそう言う店になってほしい。親が試着している間に、子どもはスタッフと自由に遊んでいるような空間を目指したい。

■ロンハーマンワイキキ店
オープン日:来春予定
時間:8:30〜22:00
定休日:無休
住所:Moana Surfrider Hotel, A Westin Resort & Spa, Waikiki Beach 2365 Kalakaua Ave.Tower Wing Shop #1 Honolulu, HI 96815

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「ヴァレクストラ」2023年春夏はミラノのクリエイティブに原点帰り CEOが語る信念、工学美

 ミラノ発のラグジュアリーレザーグッズブランド、「ヴァレクストラ(VALEXTRA)」。ブランドの原点であるミラノのクリエイティブが集結するエリア、ノーロ地区にインスパイアされたバッグ“ノーロ(NOLO)”や、Z世代にも人気のアクセサリーケースなど、タイムレスな美しさはそのままに、変わりゆく生活習慣にもマッチするアイテムを手掛けている。グザヴィエ・ルジュー(Xavier Rougeaux)最高経営責任者(CEO)は2021年2月に新たにCEOに就任。PR出身だからこそストーリーテリングを自身の持ち味とする同氏が、情緒的にブランドの未来について語った。

WWD:2022年現在、「ヴァレクストラ」はどのような時期にある?

グザヴィエ・ルジューCEO(以下、ルジューCEO):ブランドには本のようにいくつかの章があり、物語がある。一つのチャプターは年単位かもしれないし、月単位かもしれない。今世の中はパンデミックの反動で、再びつながりを求め、外に出るムードが高まっている。われわれも新しく生まれる願望やニーズを汲み取っているところだ。

WWD:23年春夏コレクションでは改めてエンジニアリング・ビューティ(工学的な美)を打ち出した。

ルジューCEO:エンジニアリング・ビューティはブランドのレガシーであり、基本的なDNAだ。創業者から根付く価値観で、曲線美やシルエットを建築のように表現してきたブランドらしさを体現する。留め具一つをとっても、全てがバッグのためにデザインされていて、ピッタリとはまる。バッグのサイドには肩掛け用のストラップが付けられるようあらかじめデザインされているなど、美しさと機能性がモノ作りの基本だ。

WWD:新コレクションで注力していることは?

ルジュー CEO:改めて、商品にフォーカスしている。機能性が高く、用途が明確で、新しいライフスタイルになじむデザインを取り入れる。アイコンバッグ“ノーロ”は、新サイズのスモールと新たなカラーで登場する。クロスボディバッグなので、日々活発に動く女性の生活に寄り添う。バッグを「手に持たねば」という価値観や行動範囲の制限から解放する、エフォートレスなアティチュードが魅力のバッグだ。

WWD:日本の消費者に伝えたいブランドの魅力は?

ルジューCEO:日本で生活をする消費者は、ディテールまで細かく物の本質を見る傾向がある。「ヴァレクストラ」 のバッグはロゴも表に出ていないし、ミニマルでシンプルなバッグ。それを魅力的に仕上げるには、実は一番クラフトマンシップが鍵を握る。品質に自信があるからこそ、使い勝手や機能性を細かく見る日本の消費者に共感してもらえるだろう。

WWD:日本市場に期待することは?

ルジューCEO:「ヴァレクストラ」にとって日本市場はキーマーケット。地域というより、日本人が重要な存在だ。日本で生活するお客様は例えば、旅行の際に欧米でわれわれのバッグを求めることも多い。だからこそ、どこにいてもあらゆるお客様に満足してもらえる商品をそろえていることが重要だ。旅行がプライベートか仕事かにかかわらず、ワクワクしながらショッピングをしてほしい。

WWD:デジタル化にも力を入れているというが、22年現在のECの利用者数は?

ルジューCEO:就任してからオンライン上でのシームレスな体験の構築に努めてきた。ECは劇的に成長した分野だ。オンライン上でアイテムを探して配達するまでのショッピング体験に加えて、ウェブでブランドのストーリーを伝えていく方法も開拓してきた。オンラインでも店舗でも客足は伸びている。オンラインでも「モノだけでなく、体験を売っているのだ」という初心を胸に、洗練されたサービスを提供していきたい。

WWD:30万円代のバッグといったラグジュアリーアイテムもオンラインで買うことに抵抗がない消費者が多い?

ルジューCEO:オンラインで買う人にもさまざまなパーソナリティーを持ったお客様がいると考えている。リラックスした環境で製品の情報を細かく分析しながら、一人で買い物をするのが心地いいお客様もいるだろう。一方で、オンラインやソーシャルメディア上でセレブリティーやインフルエンサーを通してブランドをはじめて知り、店舗で触ってみてから購入するタイプもいるだろう。

 また、「ヴァレクストラ」でものを買うということは、必ずしも価格の高いものを買うこととイコールではない。長く使えるカードケースなどは、比較的手に取りやすい価格設定(約4〜8万円)。シンプルで飽きにくいデザインなので、自己投資にもってこいだ。確かにフルサイズのトラベルバッグを買うと、それは別のレベルの“投資”にはなるが、多くの人に開けているブランドであるように意識しているし、製品のラインナップもその精神を反映している。店舗ではどんな製品を買うお客様も平等に接するよう徹底しており、誇りに思う。

WWD:世界的なインフレの影響は?

ルジューCEO:生産パートナーらとは長きにわたって協業をしてきたが、これからもお互いが平等でウィンウィンな関係を築くためにより慎重なコミュニケーションや交渉が必要な時期だ。原材料のコストは確かに上昇している。今は慎重に検討している段階だが、価格を上げるほかない状況になってしまったら、それも選択肢に入れていく。

WWD:経済状況悪化のインパクトは、若い世代により重くのしかかっているのではないだろうか。この世代にはどのようにコミュニケーションをとっていく予定?

ルジューCEO:そうは思わない。ラグジュアリーアイテムを買えるかどうかは年齢によるものではなく、どのようなライフスタイルを選び、生活のどこに重きをおくか次第だと思う。電子機器は価格設定も高いが、若い世代を含む特定のライフスタイルを好む人は購入を惜しまない。お客様にとって替えのきかない、または“譲れない”存在であり続けることが鍵だと思う。そういう意味では、世代ごとに異なるアプローチが必要になってくるだろう。「ヴァレクストラ」のより小さいサイズのアイテムは若い世代から高い人気を集めている。例えば首から下げたりバッグに装着したりして使えるストラップ付きのサングラスケースやエアポッズケース、カードケースなどは若い世代にささって売れ筋商品となった。人々の生活様式を理解することで、広い世代から支持を集めていけるはずだ。

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「パックは毎日、朝晩欠かさず!」ドラマ「#カリスマ壱子」を手掛けるMEGUMIが本気でセレクトした美容アイテムは?

 女優MEGUMIが、企画、プロデュースを手掛け、出演もする、現在放映中のドラマ『完全に詰んだ壱子はもうカリスマになるしかないの(テレビ東京)』が、いよいよ昨日、最終回を迎えた。

 作中では、自他共に認める美容マニアとして知られるMEGUMIが実際に愛用しているスキンケアアイテムやクリニックなどが多数登場し注目を集めた。今回はドラマ制作の背景から裏話、そしてMEGUMIが特におすすめする美容アイテムを紹介する。

 深川麻衣演じる完全に詰んだアナウンサー・有加里壱子が、MEGUMI演じるカリスマ社長・不美のサポートにより自己肯定感を取り戻していく全8話のストーリーで、キャストには野村周平やラランドのサーヤ、ゆうたろうらがラインアップ。さらに元谷芙美子アパホテル社長や「エステプロ・ラボ」インストラクター近藤寛子、村津大地むらつ歯科クリニック理事長など、ビューティ業界を中心にさまざまな業界のトップが出演した。

「日本人女性は世界で一番自己肯定感が低い、ということを知って」

WWDJAPAN(以下、WWD):本作を制作するきっかけは?

MEGUMI:以前私が出演したニュース番組でたまたま、世界中で日本人女性の自己肯定感が最下位だということを知り、今回の作品づくりのきっかけになりました。女性の人たちにもっと自信を持って、やりたいことや言いたいことを解放してほしい。そこから社会から抹殺されるほど詰んだ主人公が這い上がっていくストーリーが浮かびました。「どれだけ詰んでもチャンスはあるし楽しく生きていける」とエールを送っている作品です。

 私自身、美容が大好きで飽きることもないし、ケアをすることで自己肯定感が高められる。「うれしい、きれいになった」って、ほっこりするような感じ。だからこそ、さまざまなシーンで美容についても触れています。

WWD:制作を行う中で最も大変だったことは?

MEGUMI:“演技を本業としていない、企業の人たちを巻き込んでドラマに落とし込む”という試みを行うのはこのドラマが初めてだったので、企業の人だけではなくプロデューサーやマネージャー含め、関わる人全員に理解してもらうのが最初は大変でしたね。

WWD:それぞれの役作りのヒントになったのは?

MEGUMI:インパクトがありながらリアリティーのある作品にしたいと思ったので、登場する全員が実在している人からインスピレーションを受けたキャラクターです。とはいえ、一人の人を当て込んでいるのではなく、「ビジュアルはこの人」「セリフはこの人」など、さまざまな要素を色々な人から吸収して一人のキャラクターが生まれました。

WWD:個性豊かな出演者たちはどのように決めた?

MEGUMI:みんな、出たいと言ってくれた人たちです。タレントだけではなく、社長なども登場するので、私自身「どうなってしまうんだろう?」と思っていましたが、みなさんセリフを覚え、時にはアドリブを入れてくれたり。全員すごくすてきで「演技が本業ではない人と共演するのも意外にいいのかも!」という新たな発見が得られました。コラボレーションの極みが良いエッセンスになってくれたと感じます。

【美容マニア・MEGUMIが本気でセレクトするビューティアイテム&クリニック】

スキンケアで結果を出すには、継続がカギ

 「もう5年くらい愛用しています。私は白と緑を使っていますが、人それぞれ合うものは違うので、いろいろ色々試して自分に合うものを探す旅をしてみてほしいです!

 結果を出すためには、何より続けることが大切。コンビニやドラッグストアでいつでも買えて、リーズナブルなのもおすすめしたい理由です」。

たっぷり保湿したあとは、質の良い美容液を

 「シートパックをした後に使っている、ヒト⾻髄幹細胞培養液エキスが配合された美容液。内側からもっちりとした肌になります。シートパックをすることでまず、水を上げて土壌を整えるイメージ。ベースを整えた直後に塗るものはとても重要なので、ぜひ良い美容液を使用してほしいです」

使うことで髪がふっくらする新感覚!

 「ヘアアイロン=髪を傷めるもの、と思いながら泣く泣く使っているところがあったのですが、『クレイツ』のヘアアイロンは伸ばしながらキューティクルを整えてくれます。使えば使うほど艶々になり、どこか髪が内側から水分が出てきてふっくらしたような感覚は初めてでした」。

手では行き届かないケアを美顔器で

 「毎日仕事の前に必ず美顔器を使っています。肌の汚れが取れたり、引き上げになったり、スキンケア成分の導入をサポートしたりなど、自分の手ではできないことを美顔器ですることで、5年後、10年後の自分の顔を確実に変えてくれるものだと思います。手間がかかるから、といって使わない人も多いですが、ぜひ生活に取り入れてほしいです」。

注目のNMN点滴で若返り効果に期待

 「私が実際に通っている美容クリニックで、さまざまな美容点滴があります。個人的にすごくおすすめなのは“NMN点滴”。NMN成分は今までも良いといわれていましたが、コロナ禍でより詳細のエビデンスが取れ、最近やっと点滴として認証されました。細胞へ直接アプローチしてくれ、肌は明るく、体は柔らかくなるといわれています。個人的には頭がスッキリする感じも気に入っていて、とてもおすすめです」。

 ドラマ『完全に詰んだ壱子はもうカリスマになるしかないの』最終回はテレビ東京公式サイトで視聴可能だ。作中の冒頭シーン「BE AT フミ カリスマさんいらっしゃい」のコーナーはユーチューブでも配信している。

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「1枚のTシャツから世界を良くしていく」、服地卸の最大手スタイレムの丸編みオタク2人が挑むサステナビリティへの挑戦

 サステナブルファッションの重要性が高まる中、多くの企業やブランドが従来のビジネスモデルを変えようとしている。最もグローバル化の進んだ産業の一つであるアパレル産業で、世界をより良くするために何をすべきか、また、服の品質やこだわりとどう両立させるべきなのか。服地卸の最大手であるスタイレム瀧定大阪が推進するオーガニックコットンのプロジェクト「オーガニックフィールド」と、究極の着心地を掲げるカットソーブランド「リフィル」、2つの事業のディレクターであり、カットソーオタクの2人でもある、小和田哲弘「リフィル」ディレクターと太田雅之スタイレム インターナショナル インディア取締役の対談をお届けする。

いいカットソー素材ってどんな生地?

WWDJAPAN(以下、WWD):お二人とも、もともとはカットソー生地の営業だったとか?

小和田哲弘(以下、小和田):太田くんも私も所属する課は違いましたが、もともとはカットソー生地の営業です。当社の場合、営業と言っても企画チームと連携しながら、糸の選定、生機(きばた)の生産、染色管理、販売までを一貫して担当する。私は10年ほどやりましたが、営業は結果が全てで、言い訳の利かない世界。でも実はいいものを作っても高すぎると売れない、というジレンマを感じることも少なくなかった。

太田雅之(以下、太田):今は変わりましたが、僕らが現場にいたころは、同じ会社と言えども課が違えば競合のようなもので、特に同じ丸編み生地を扱っている07課の小和田さんのことは結構意識していました。小和田さんはめちゃくちゃこだわりが強くて、「そこまで考えて、掘り下げるんか」って横目で見てました。いつも出来上がった生地はめちゃくちゃいい。でも営業目線だと「これだとオーバースペックじゃないか」とも思ってました(笑)。

小和田:まあでも、そんな考えが募ってスタートしたのが、この「リフィル(LIFiLL)」です。まだ市場に出ていない、とことんこだわって作ったいい素材を世に出したいという思いがベースにあります。

WWD:どんなこだわりが?

小和田:丸編みの場合、重要なのは原料です。主力アイテムは、超長綿のスーピマを100%使い、甘撚りの糸を天竺で編み上げています。

太田:このぬめりと落ち感がすごくいいんですよ。超長綿ならではの、業界的でいうところの油分がよく出ている。いいカットソー生地の条件の一つに肌離れの良さ、が挙げられるのですが、これは油分が関係していると言われています。あまり良くない生地だとパサパサに乾いていて、肌に直接当たると不快感にもつながる。「リフィル」のTシャツは真逆です。

小和田:できるだけスーピマ綿の長所を引き出すため、生産の際に細かな手間を掛けています。その一つが、生地を編み上げたときのまま、筒状のまま仕上げを行っていること。通常、丸編み地は、機械から上がったときに効率を上げるために、カットして平面状にして仕上げたり、縫製したりする。筒状だと効率が悪いので。縫製工場も、筒で持っていくと、カットする手間が余分にかかるし、当然そのための設備も必要になるので嫌がられるんですが、古い付き合いのある工場にお願いして作ってもらってます。

「使えば使うほど地球を良くする」
素材とは?

WWD:太田さんはなぜ「オーガニックフィールド」を?

太田:僕は本物を追求していたら、種と畑まで行ってしまったという感じです。

小和田:分かる!カットソーって基本は原料だもんなあ。

WWD:すみません、よく分からないのでもう少し詳しく。

太田:小和田さんも先ほど言っていましたが、カットソーの品質を大きく左右するのは原料の綿花なんです。オーガニックコットンプロジェクトを立ち上げる前、インドではオーガニックコットンの偽装が問題になっていて、これをきっかけにきちんと畑まで管理しないとダメだなと思ったんです。その一方で、オーガニックコットンの栽培も含め綿花栽培には多くの問題があった。例えばオーガニックコットンの認証を受けるためには、3年間以上無農薬で栽培する実績が必要なのですが、農薬を使わないと虫の駆除などで多くの手間がかかるものの、その間はオーガニックコットンとは認められないので、農家にとってとても厳しい。そこで行き着いたのが、現地のNGOや現地の大手紡績会社NSLと組んで小規模な農家の綿花栽培や労働環境の向上を支援しつつ、移行期間の綿花も含めて買い取っていくという仕組み作りです。一緒にタッグを組む紡績メーカーのNSLは綿花の種苗メーカーでもあり、綿花栽培も行っていた。インドと日本市場とつなぐ僕らがハブになり、綿花を適正な価格で買い取り続けることで、小規模の綿花農家がオーガニックコットンを作りやすくなり、地球環境もよくなる良い循環が生まれる。その仕組みから生まれたコットンが「オーガニックフィールド」なんです。

実は小規模農家だからこそ
上げられた「綿花の品質」

WWD:小和田さんから見て「オーガニックフィールド」の生地はいかがでしょう?

小和田:ひと目見て触ったときに「おっ」と思いました。現在の「オーガニックフィールド」の原料の綿花は長綿。「リフィル」で使っている超長綿と比べると繊維長が短く、それが光沢感の差にもなる。でも「オーガニックフィールド」は光沢も出てるし、油分が多く含まれていることで、さらっとしたタッチで肌触りもいい。これはいい素材だと思いました。

太田:それは手摘みだからなんですよ。大規模農家の場合は、効率化のために綿花の収穫から出荷までの間に、枯れ葉やゴミなどを取るために工業的なクレンジングを行っています。でも「オーガニックフィールド」の場合は、落ち葉などは手で取り除いているので、そうした工業的な工程を減らしている。その分、綿花が傷みにくく、それが結果として綿花自体の品質アップにもつながっている。

WWD:小和田さんのリアクションはやっぱり気になりますか?

太田:実は小和田さんに最初に「オーガニックフィールド」を見せるときは内心ドキドキしていました。こーゆう職人肌のタイプなんで、遠慮がないし、お世辞を言うような人でもない(笑)。小和田さんの表情を見たときに「この人がこの顔するんならガンガン売れる、売っていける」って思ったんです。だからうれしかったですね。

服を通じて世界を良くするための
考え方とは?

WWD:アパレル産業は、さまざまな課題を抱えていると言われています。素材の良さやこだわりと、そうした課題をどう両立させ、解決すべきでしょうか?

小和田:実際にブランドを始めて、適正な量を作って適正な価格で売っていくことの重要性を痛いほど感じています。大量に生産すればコストを下げられる一方で、当然残ってしまうものも出てくる。原料、糸、生地、縫製、そして販売までアパレル産業は縦に長く、かつグローバルなので、生産者の顔が見えづらい。そのせいもあって価格や生産性といったビジネスの効率ばかりを追求しがちです。「オーガニックフィールド」のように、農地まで見えていて、かつ生産者の労働環境を守れるというのは、服を作る側としては心強い。

太田:サステナビリティに関してはいろいろな考え方があると思うのですが、私はやるなら「ビジネスとして成立し、規模も狙う」という考え方です。「オーガニックフィールド」は広がれば広がるほど、地球環境にも人にも優しい。けど、それと同じかそれ以上にストーリーを伝えることにも意味があると思っています。実際にこちらにいて農家の方に日本の消費者のリアクションを伝えると、すごく喜んで、仕事のモチベーションにつながっている。「オーガニックフィールド」のストーリーを伝えるのは結局、消費者とものづくりの側の間にいるブランドにしかできません。綿花の品種も、超長綿のスビン種も地域によっては栽培可能なので、新しい栽培エリアと農家の探索も始めています。現在のエリアでやり方を確立できれば、さらに高品質な糸の生産にもつなげられる。そうなればもっと多くの服を通して、世界をより良く変えられる。今は毎日がワクワクの連続です。

ILLUSTRATION:hagie K
問い合わせ先
スタイレム瀧定大阪
06-4396-6534

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奄美大島出身が語る、地方から飛び出して自分らしく生きる「EverWonderなライフ設計」

 人々の心に火を灯す機会を提供することを目的に、クリエイティブディレクターにGReeeeNのHIDEを迎えた一般財団法人渡辺記念育成財団は、EverWonderプロジェクトを発足した。構想中のプロジェクトは、同財団による「みらい塾」の奨励生が企画進行している。今回は、「みらい塾」奨励生で看護師の木田美智子が同郷の奄美大島出身者たちと「地方を飛び出して自分らしく生きる」をテーマにディスカッションした。

木田美智子「みらい塾」奨励生(以下、木田):今日は奄美大島出身で、現在は東京で自分らしく活動している方々にお集まりいただきました。故郷を離れて都会に出てきたきっかけや理由を教えてください。

若師孝之アンテナショップ「奄美」店主兼パーカッション奏者(以下、若師):大学のときに上京してパーカッションをはじめますが、それだけで食べていくことは難しく、色々な職を転々としました。現在は、居酒屋で奄美の料理を振る舞っています。本格的に飲食店で料理を提供し始めたのは10年前です。当時は、祖父が亡くなったときに故郷の奄美のことをもっと知りたいと思い、奄美料理に挑戦しました。最初は適当に作っていたんですが、次第に有名な店のインタビュー記事を読んで勉強して、パパイヤの漬物なども自分で一からちゃんと作るようになりました。たぶん、奄美の代表的な家庭料理「油素麺」は、東京なら僕のが一番美味しいです(笑)。

池田むつみ歌手(以下、池田):私は幼少期から歌手になりたいと思っていたので、18歳のときに音楽の専門学校に進学するため上京しました。進学先には八王子校と蒲田校があったのですが、都会での暮らしは不安だったので、八王子校に通いました。でも初めて八王子を訪れたとき、街頭ビジョンや人の多さに圧倒されて、間違えて「渋谷に来てしまった」と思ったんです(笑)。現在は、奄美の料理やお酒を提供するバーで働きながら、歌手活動をしています。

木田:私も18歳のときには芸能に携わる仕事に憧れていましたが、奄美の人は手に職をつけることを重要視するので、自分の想いをなかなか素直に伝えられませんでした。兄弟も多く芸能を学ぶための学校に進学することは経済的にも難しく、看護の専門学校に進んだんです。池田さんは両親の反対とかなかったんですか?

池田:もちろん大反対されました。高校生の頃から芸能の専門学校に進みたいと思っていたけれど、看護師や歯科衛生士、調理師など手堅い職につくべきと言われ、とても揉めました。

若師:奄美の人には歌が身近な存在だからこそ、音楽が仕事になるという発想があまりないですよね。

池田:そうなんです。どうしても芸能がやりたいなら、手に職をつけられる学校に進学し、放課後や休日に活動をしなさいと言われました。しかし、私は中学生のときから芸能への思いが強く、最終的には応援してくれました。

木田:お二人のように地方を飛び出して自分のやりたいことを実現するにはどうしたらいいと思いますか?また、そのモチベーションはなんですか?

若師:自分は特に何かをやりたかったわけではないし、今も夢があるわけではないのですが、色々なことを経験するなかで「おもしろい」と感じたことをやってみようという思いは強いかもしれません。パーカッションも、大学生のときに留学生の友人とダンスパーティーに行ったのに踊れなかったから、近くにあった打楽器をノリで演奏してハマったのがきっかけです。奄美の料理も好奇心によるところが大きいです。

池田:私は祖父の応援です。歌が好きになったのも祖父の影響。彼は「自腹で孫のCDを出す」と言って家族から猛反対されるほど、私を応援してくれています。一方で地元の友人をみていると、「仕事の選択肢が少ない」と思い込んでいる人や、一度島を離れても都会に馴染めずすぐに戻ってしまう人が多いなとも思います。

木田:私も手に職をつければ、島に戻っても仕事に困らないという周囲の考えに影響されて看護師になりました。もっとも看護師の大変さに何度も挫けそうになりましたが、逆に中途半端に島に戻れば後ろ指を刺されて恥ずかしいと思っていたので、頑張れました。

若師:今は奄美にLCCが飛ぶようになって、気軽に行き来できるようになりましたし、スマホで色んな情報に触れられる。島と都会の垣根はどんどんなくなっていますよね。

池田:いつでも帰れる場所がある安心感や、会いやすくなった地元の友達は、外に出て何か挑戦したい人にとって後押しになりますよね。

木田:いつでも帰れるという安心感があるので、自分の価値観を広めるためにも、みんな一度は島を離れて自分のやってみたいことに挑戦するのは大事ですね。島にずっといると、視野が狭くなってしまって勿体ないと思います。最後に、今後みなさんがやっていきたいことなどがあれば教えてください。

若師:自分は既にやりたいことを自由にやれているので、これからも変わらずにエンターテイナーであり続けられればなと思います。

池田:私は歌を通じて、奄美のことを多くの人に伝えられればと思います。歌い方が「島の人っぽい」と言われることが多いので、そこから興味を持ってもらえたら。また、黒糖焼酎という奄美のお酒がとても美味しいのでコラボイベントを開いて、奄美の人たちや奄美に興味を持ってくれる人が集まる機会を作りたいと思います。

木田:いいですね!私は仕事でメンタルヘルスの相談を受けることが多いのですが、原因の多くは孤独や無趣味なので、「みらい塾」で新しいエンタメやコミュニティーを作って、そういった課題を解決したいなと思っています。せっかくのご縁ですので、是非そのイベントを一緒に開いて、奄美の良さを伝えましょう!

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巨匠エリック・ヘイズが「サカイ」限定店でライブペインティング ショートインタビューを敢行

 「サカイ(SACAI)」は、世界の主要都市を巡回するストアツアー「ハロー サカイ(Hello sacai)」を東京・神宮前で2023年2月末まで開催中だ。同店のファサードには“Hello”や“こんにちは”など世界各地のあいさつをプリントした建築工事用シートを張り、店内の什器にも工事現場などで使用される工具を採用。さらに、「サカイ」青山店で使用していた什器をリプロダクトした一点モノのピースや、原宿のビンテージショップ「ベルベルジン(BERBERJIN)」のビンテージアイテムを再構築したアパレルを取り扱うなど、随所でアップサイクルな取り組みが感じられる空間に仕上げた。

 同店では限定アイテムや新作の2023年春夏コレクションなどももちろん販売しているのだが、それらの中でも注目したいのがエリック・ヘイズ(Eric Haze)とのコラボアイテムだろう。ヘイズは、1961年にニューヨークで生まれた現在61歳のアーティスト&デザイナー。1980年代にジャン・ミシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat)やキース・ヘリング(Keith Haring)らと共にニューヨークのグラフィティシーンをけん引した伝説的なグラフィティライターの1人だ。その後、グラフィックデザイナーとしてビースティ・ボーイズ(Beastie Boys)やパブリック・エナミー(Public Enemy)ら、USヒップホップシーンで活躍するアーティストのロゴやジャケットなどを数多く手掛けてきたリビング・レジェンドである。その骨太でストリートのアイデンティティーが宿る作風は数々のブランドをも虜にし、「Gショック(G-SHOCK)」や「ナイキ(NIKE)」「ニューバランス(NEW BALANCE)」「ステューシー(STUSSY)」「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」などとコラボを実現。「サカイ」とは21-22年秋冬コレクションで1度コラボしており、今回は2度目のタッグとなった。

 「ハロー サカイ」のオープンを祝して行われたヘイズのライブペインティングの直前、彼のショートインタビューに成功。コラボの経緯や、グラフィティライターからの転身、現在の状況などについて語ってもらった。

エリック・ヘイズ/アーティスト兼デザイナー

PROFILE:1961年生まれ、アメリカ・ニューヨーク出身。1970 年代にSE3の名でグラフィティアーティストとしてのキャリアをスタート。グラフィティ集団ザ・ソウル・アーティスト創設メンバーとしてフューチュラやリー・キュノネス、ドンディらと共に過ごした。その後はグラフィックアートも手掛け、特徴的な手書きのレタリングで数々のロゴや音楽アルバムのカバーなどを制作。91年には自身のアパレルブランドを立ち上げたり、2000年代からはアート作品の制作に本格的に取り組んだりと、今なお活動の幅を広げている

ーーまずは、「サカイ」とのコラボの経緯を教えてください。

エリック・ヘイズ(以下、ヘイズ):(『サカイ』のクリエイティブ・ディレクションを手掛ける)源馬大輔を介してコンタクトを取るようになった。ファーストコラボの21-22年秋冬コレクションは、シンプルなグラフィックをベースとしたアイテムをそろえたが、23年春夏シーズンはアート寄りなアイテムに仕上げている。ロゴやグラフィックを乗せるだけではなく、初めてブランドの理念に添いながらコラボすることができたよ。ストリートシーンに属するもの同士のコラボとは異なり、よりファッショナブルなレベルに達しているはずだ。

 40年以上前にグラフィティライターとしてストリートで活動を始めてから、ストリートとファッションの交わり方は時代と共に変化している。60歳を超えてから洗練されたファッションシーンの中で自分をリプレゼンテーションすることが一つの夢だったので、今回のコラボは記憶に残るものになったよ。

ーー抽象的なグラフィックと共に“AS ONE(一体となって)”などのワードも落とし込んでいますが、チョイスした意図は?

ヘイズ:ワードの中には、グラフィティにした際にデザインとしてハマるものがある。だが、今回はデザイン性だけでなく、今の世界情勢や歴史も踏まえて私と「サカイ」で擦り合わせてチョイスした。

ーー今回のライブペインティングをはじめ、ペインティング作品を手掛けるようになった理由を教えてください。

ヘイズ:ニューヨークで生まれ育ち、グラフィティライターとして活動した後に、一度ロサンゼルスへ移住してパソコンを中心にグラフィックのデザインを行っていた。十数年後(2005年頃)に再びニューヨークに帰ってくると、バスキアやキースら旧友たちと過ごした時のようなライブ感を街から感じてね。それを機に、ペインティングを中心としたアーティスト活動にシフトしていった。私にとってのゴールは、場所やサイズを問わず、1本の筆と1つの色でペインティングすること。5年ほど前から自分の中で感覚が研ぎ澄まされているんだ。現在、渋谷の宮下パークで開催している個展「インサイド アウト(INSIDE OUT)」でも、グラフィティライター時代に関係のあった人々などを同様の手法で描いていて、過去と現在の自己表現になっている。

ーーファッションシーンとの関わりはどう考えていますか?

ヘイズ:ずっとアートシーンだけにいるよりも、ファッションシーンとも関わった方がアーティストとしての感覚が洗練される気がしていて、今はどちらにも偏りすぎずバランスがちょうどいいね。昔はアートも手掛けるグラフィックアーティストだったけど、現在はグラフィックも手掛けるアーティストのような、より自由に広い解釈で作品に取り組むことができるようになっているよ。

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巨匠エリック・ヘイズが「サカイ」限定店でライブペインティング ショートインタビューを敢行

 「サカイ(SACAI)」は、世界の主要都市を巡回するストアツアー「ハロー サカイ(Hello sacai)」を東京・神宮前で2023年2月末まで開催中だ。同店のファサードには“Hello”や“こんにちは”など世界各地のあいさつをプリントした建築工事用シートを張り、店内の什器にも工事現場などで使用される工具を採用。さらに、「サカイ」青山店で使用していた什器をリプロダクトした一点モノのピースや、原宿のビンテージショップ「ベルベルジン(BERBERJIN)」のビンテージアイテムを再構築したアパレルを取り扱うなど、随所でアップサイクルな取り組みが感じられる空間に仕上げた。

 同店では限定アイテムや新作の2023年春夏コレクションなどももちろん販売しているのだが、それらの中でも注目したいのがエリック・ヘイズ(Eric Haze)とのコラボアイテムだろう。ヘイズは、1961年にニューヨークで生まれた現在61歳のアーティスト&デザイナー。1980年代にジャン・ミシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat)やキース・ヘリング(Keith Haring)らと共にニューヨークのグラフィティシーンをけん引した伝説的なグラフィティライターの1人だ。その後、グラフィックデザイナーとしてビースティ・ボーイズ(Beastie Boys)やパブリック・エナミー(Public Enemy)ら、USヒップホップシーンで活躍するアーティストのロゴやジャケットなどを数多く手掛けてきたリビング・レジェンドである。その骨太でストリートのアイデンティティーが宿る作風は数々のブランドをも虜にし、「Gショック(G-SHOCK)」や「ナイキ(NIKE)」「ニューバランス(NEW BALANCE)」「ステューシー(STUSSY)」「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」などとコラボを実現。「サカイ」とは21-22年秋冬コレクションで1度コラボしており、今回は2度目のタッグとなった。

 「ハロー サカイ」のオープンを祝して行われたヘイズのライブペインティングの直前、彼のショートインタビューに成功。コラボの経緯や、グラフィティライターからの転身、現在の状況などについて語ってもらった。

エリック・ヘイズ/アーティスト兼デザイナー

PROFILE:1961年生まれ、アメリカ・ニューヨーク出身。1970 年代にSE3の名でグラフィティアーティストとしてのキャリアをスタート。グラフィティ集団ザ・ソウル・アーティスト創設メンバーとしてフューチュラやリー・キュノネス、ドンディらと共に過ごした。その後はグラフィックアートも手掛け、特徴的な手書きのレタリングで数々のロゴや音楽アルバムのカバーなどを制作。91年には自身のアパレルブランドを立ち上げたり、2000年代からはアート作品の制作に本格的に取り組んだりと、今なお活動の幅を広げている

ーーまずは、「サカイ」とのコラボの経緯を教えてください。

エリック・ヘイズ(以下、ヘイズ):(『サカイ』のクリエイティブ・ディレクションを手掛ける)源馬大輔を介してコンタクトを取るようになった。ファーストコラボの21-22年秋冬コレクションは、シンプルなグラフィックをベースとしたアイテムをそろえたが、23年春夏シーズンはアート寄りなアイテムに仕上げている。ロゴやグラフィックを乗せるだけではなく、初めてブランドの理念に添いながらコラボすることができたよ。ストリートシーンに属するもの同士のコラボとは異なり、よりファッショナブルなレベルに達しているはずだ。

 40年以上前にグラフィティライターとしてストリートで活動を始めてから、ストリートとファッションの交わり方は時代と共に変化している。60歳を超えてから洗練されたファッションシーンの中で自分をリプレゼンテーションすることが一つの夢だったので、今回のコラボは記憶に残るものになったよ。

ーー抽象的なグラフィックと共に“AS ONE(一体となって)”などのワードも落とし込んでいますが、チョイスした意図は?

ヘイズ:ワードの中には、グラフィティにした際にデザインとしてハマるものがある。だが、今回はデザイン性だけでなく、今の世界情勢や歴史も踏まえて私と「サカイ」で擦り合わせてチョイスした。

ーー今回のライブペインティングをはじめ、ペインティング作品を手掛けるようになった理由を教えてください。

ヘイズ:ニューヨークで生まれ育ち、グラフィティライターとして活動した後に、一度ロサンゼルスへ移住してパソコンを中心にグラフィックのデザインを行っていた。十数年後(2005年頃)に再びニューヨークに帰ってくると、バスキアやキースら旧友たちと過ごした時のようなライブ感を街から感じてね。それを機に、ペインティングを中心としたアーティスト活動にシフトしていった。私にとってのゴールは、場所やサイズを問わず、1本の筆と1つの色でペインティングすること。5年ほど前から自分の中で感覚が研ぎ澄まされているんだ。現在、渋谷の宮下パークで開催している個展「インサイド アウト(INSIDE OUT)」でも、グラフィティライター時代に関係のあった人々などを同様の手法で描いていて、過去と現在の自己表現になっている。

ーーファッションシーンとの関わりはどう考えていますか?

ヘイズ:ずっとアートシーンだけにいるよりも、ファッションシーンとも関わった方がアーティストとしての感覚が洗練される気がしていて、今はどちらにも偏りすぎずバランスがちょうどいいね。昔はアートも手掛けるグラフィックアーティストだったけど、現在はグラフィックも手掛けるアーティストのような、より自由に広い解釈で作品に取り組むことができるようになっているよ。

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【動画】パタンナーとデザイナー、2つの顔を持つ「ノリエノモト」デザイナーに密着

 「ファッション業界人辞典」は、ファッション業界で働く人にフォーカスし、その仕事に密着リポートします。業界のさまざまな職業を紹介しながら、「実際、どんな仕事をしているの?」「どうしたらその職に就けるのか?」などの疑問を解決。これからの若者たちの指針になるような情報や、業界人が気になるあの人の素顔や過去を、日々の仕事姿や過去の映像・写真を通して発信します。

 第7弾は、「アール(RRR)」や「ポピー(POPPY)」のパタンナーであり、自身のブランド「ノリエノモト(NORI ENOMOTO)」も手掛ける榎本紀子デザイナーに密着しました。曲線が特徴のアイコンバッグ“マルディマタン(mardi matin)”は、「洋服を縫う際に出る曲がったまち針をインスピレーションに製作した」と語ります。一見すると個性が強いデザインでも、日常のものから着想することが多いためコーディネートに取り入れやすく、若者の間でも人気を徐々に広げているといいます。パタンナーの時は“寄り添う”ことを、デザイナーの時は“寄り添わない”ことを大切にしているという榎本デザイナーの2つの顔を紹介します。「アール」のサンプルチェックやパターンを引く様子、「ノリエノモト」のビジュアル撮影などの仕事内容に迫りました。また、将来の夢やファッション業界で働きたい人へのメッセージについても聞きました。

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125周年を迎えた「グローブ・トロッター」 多彩なコラボで見せる広がり

 1897年創業の英国発ラゲージブランド「グローブ・トロッター(GLOBE TROTTER)」は、今年125周年を迎えた。大英帝国が繁栄したヴィクトリア朝時代に、軽く丈夫なヴァルカン・ファイバーボードを使ったスーツケースを発表。125年経った今も、受け継がれた、変わらぬスタイルで世界中に支持されている。

125周年を記念した企画展が開催
「グッチ」や「コム デ ギャルソン」とのコラボも展示

  12月18日までグローブ・トロッター銀座店で125周年を記念した企画展が開催中。初期の貴重なアーカイブをはじめ、これまでコラボレーションを行ってきた「グッチ(GUCCI)」や「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER MCQUEEN)」「ポール・スミス(PAUL SMITH)」「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」「ティファニー(TIFFANY & CO)」とのスーツケースを展示。同展はロンドンで幕を開け、東京のあとはロサンゼルスを巡回する予定だ。

 グローブ・トロッターのビセンテ・カステラーノ(Vicente Castellano)エグゼクティブ・チェアマンは、自社商品の魅力を「125年の伝統を受け継ぎながら、品質と美しさを追求するラゲージブランドだ。卓越した職人技と、確かな実用性で唯一無二のプロダクトを生み出し続けている」と語る。「しかし、これほど長い歴史を持つブランドであるということは、実は多くの方々には知られていない。この125周年を祝うタイミングで、これまでご愛顧いただいているお客さま、そして新しいお客さまにブランドの歴史や魅力をお伝えしたい」。

日本で人気の2輪のキャリーケース
国内旅行の需要もカバー

 この3年間は新型コロナウィルス感染症の影響により、旅行業界やラゲージメーカーは大きなダメージを受けたが、今年に入り、復調の兆しが見えてきたという。「今年、ヨーロッパとアメリカでは、コロナ以前のような売り上げに近づいてきた。ベストセラーの4輪のスーツケースが引き続き、根強い人気を誇っている。長く規制が敷かれている日本でも、売り上げは85%まで回復。特に日本では2輪のキャリーケースが好調で、昨今は国内旅行の需要も高まっているようだ。中国もわれわれにとって大きな市場であるが、まだ厳しい旅行制限があるため、施策のタイミングを見計らっている」とカステラーノ=エグゼクティブ・チェアマン。

 今後については、「ブランド認知度はまだ向上の余地がある。21、22年はコロナからの回復に集中してきたが、来年は新たな戦略を立てて、アジア、ヨーロッパそしてアメリカでの露出を増やしていく計画だ。ブランドアンバサダーを通して商品を紹介し、マスにも広げていくことで、もっと多くの方に身近な存在にしていきたい」。

強みにする多彩なコラボレーション
現代芸術家の加賀美健との協業も

 ブランドやアーティストとのコラボレーションは、ブランドが継続して強化している戦略の一つ。11月にはスヌーピーでお馴染みの「ピーナッツ(PEANUTS)」とのラゲージが発売。またサッカー日本代表チームのオフィシャルトラベルケースとして、「サムライブルー リミテッド コレクション」が登場したほか、日本代表の応援キャンペーンの一環として、現代芸術家の加賀美健による限定ケースも発表した。「これまで手掛けてきたコラボレーションは全てとても良い評判をいただいてきた。『グッチ』のようなトップブランドから、『カサブランカ(CASABLANCA)』のような気鋭の若手まで、取り組みの幅も広げている。来年もいくつかエキサイティングなコラボレーションの企画を進行中。ぜひ楽しみにしていてほしい」とカステラーノ=エグゼクティブ・チェアマンと明かした。

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世界的調香師ジャン=クロード・エレナが語る、香水市場(後編)「ビーガンでも理想の香りは作れる」【香水ジャーナリスト連載 Vol.5】

 「エルメス(HERMES)」の初代専属調香師として知られるジャン=クロード・エレナ(Jean-Claude Ellena)は現在、ビーガンフレグランスブランド「ル クヴォン メゾン ド パルファム(LE COUVENT MAISON DE PARFUMERIE 以下、ル クヴォン)」でオルファクティブディレクターを努める。数々の有名ブランドの香水を手掛けてきた彼に、「ル クヴォン」でビーガンフレグランスというジャンルに挑戦していること、そして今後の展望を聞いた。

──昨今、スキンケアやメイクアップだけでなく香水業界でも動物由来の香料を使わない傾向がある。「ル クヴォン」のようなビーガンフレグランスが香りを作る難しさはあるか?

ジャン=クロード・エレナ調香師(以下、エレナ):香水のクリエーションにおいて、ビーガンであることは全く問題にならない。野菜や植物に動物的な匂いのするものはたくさんあるからだ。例えばヤギの匂いがする植物の根やウード、たぬきの匂いがする白樺などがそうだ。中近東や北アフリカの人はウードがとても好きだが、砂漠を行く商人たちの一団であるキャラバンはヤギの匂いがするといわれているので、自分たちのルーツを感じるから好きなのかもしれない。天然の香料でなくても動物の香りがする合成香料もある。動物の匂いは糞尿の臭いの一種とも言えるが、そうした臭いがする成分はジャスミンの花にも含まれる。

──ジャスミンにも野性的な香りやアニマリックな香りを感じることは確かにある。

エレナ:そうだろう?よくいわれることだが、くさいと思われる香料が少量加わることで素晴らしい香水になることがある。

──香りを色で表現することがあるが、色を意識して調香することはあるか?また、「ル クヴォン」らしさを言葉で表すと?

エレナ:私は仕事上の経験からすると、香りと色彩は一致しないし組み合わせることはできないと思っている。それは科学的にも証明されている。100人ほどを対象とした「香りを嗅いで何を思い浮かべるか」という実験では、色に関する回答が1%も出なかった。全体の50%が物質や花で、30%が触覚に関するもの、そのほかは音などだった。そこで私は、当時担当していたブランドで実験してみた。色彩に関わる仕事をしている12人を集めて、10種の香りを閉じ込めた無表記の小瓶を用意し、それぞれどんな色を思い浮かべるか聞いた。すると1つの香りに対して同じ色を答えた人は一人もいなかったんだ。色の専門家たちですらこの結果なのだから、香りと色は一致しないと思う。「ル クヴォン」らしさを言葉にするとしたら、「香りに対する深い愛」だ。われわれのチームと顧客は香りへの深い愛を分かち合える存在だからだ。

──あなたの作る香水は“卓越されたミニマリズム”や“至高のシンプル”を感じる。

エレナ:“至高のシンプル”という言葉は詩的で日本的なニュアンスを感じる。私は自身をミニマリストではないと思っている。なぜならミニマリストはどこか感情を入れない印象があるからだ。私は香りには多くの感情を込めているのでミニマリストではないが、“至高のシンプル”は合っていると思う。

──著書「調香師日記」に「モレスキンのノートに香水のアイデアや構想、旅や出会い、自分の生きる時代について書き込んでいる」とあったが、それは今も続けているか。

エレナ:今はノートではなくスマホにメモしているよ。私も近代化しているからね(笑)

──非常に多くの経験とキャリアを持っているが、今後作りたい香りやチャレンジしたいことはあるか?

エレナ:もちろん!私にとって香水作りは喜びでしかない。どう香りを組み合わせるか、それを考えるのが私の幸せだ。


YUKIRIN
美容・香水ジャーナリスト
香水・香り関連商品と、ナチュラル&オーガニック美容分野に特化した記事を執筆。女性誌などのメディアで発信する。化粧品や香り製品のコンサルティングやイベントプロデュースなど幅広く活躍。「日本フレグランス大賞」エキスパート審査員、「イセタン フレグランス アワード2019」審査員などを務める

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韓国コスメ「ヒンス」の若者の心をつかむブランディング リアル店舗は「ライブ会場でアーティストに会う体験」

 韓国コスメ「ヒンス(HINCE)」は東京・青山に日本初の旗艦店を11月26日にオープンした。国内ではルミネエスト新宿店に続き、直営2店舗目となる。2階建ての路面店にはメイクアップからフレグランスまで全製品が並び、パーソナルタッチアップカウンセリングやフレグランスのムエットサービスなど直営店ならではのサービスも展開する。

 日本旗艦店はブランドが誕生した2019年から考えてきたといい、コロナ禍を経て実現した。SNS上で注目を集め、日本のオフラインチャネルも拡大する中、旗艦店はどういった役割を担うのか。「ヒンス」を展開するビバウェーブ(VIVAWAVE)のホ・ジェソク(Heo Jaeseok)社長にブランディングと今後の展開を聞いた。

──青山に旗艦店を構えた理由は?

ホ・ジェソク=ビバウェーブ社長(以下、ホ):「ヒンス」の旗艦店は最初から青山だと思っていた。青山は僕が高校生の頃から、東京に旅行に来ると立ち寄る大好きな空間。アートやファッショントレンドに対する感性が高く、この地域が持つ余裕のある雰囲気や店の並び、花屋、カフェなどは、「ヒンス」が追求する美学や感性に似ていると思う。またメーンターゲットの20〜30代を意識した。

──旗艦店のこだわりは?

ホ:旗艦店は色味や質感、構造的な美しさを表現した空間で、最もブランドを肌で感じることができる場所だ。これまでオンラインと流通チャネルを通じてブランドのイメージやメッセージ、製品を試す機会を提供してきたが、さらにブランドが考えるイメージを物理的に実現しようと考えた。ライブ会場でアーティストに直接会う体験とも似ていると思う。

売り上げの7割はオンライン
ブランドのコアはリアルな場での交流

──これまでもポップアップストアなどリアルの場で展開してきたが、オフラインの位置付けは?

ホ:「ヒンス」は前年比100%以上の成長を記録しており、時期によって差はあるが売り上げのおよそ7割がオンラインだ。それでも「ヒンス」はリアルの場を重視している。20年からブランドが重視する高級感を持った百貨店、伊勢丹新宿本店や阪急うめだ本店、渋谷パルコなどで継続的にポップストアを開いてきた。われわれはリアルの場で出会ったお客さまとの交流がブランドのコアを形成すると考えている。店舗では空間が与える記憶や思い出をたくさんの人に感じていただき、「ヒンス」のファンになることを望んでいる。

──ブランドの成長要因をどう捉えている?

ホ:ブランドの“新しさ”を見せられたことだと思う。この“新しさ”は感度がよく完成度の高い新製品、立体的な物語、そして「ヒンス」らしい演出と表現力によって伝えている。当社はコスメブランドとして満足いただけるクオリティーの高い製品を発表することを最も重視しており、単なる消費財を超えたメッセージを伝えるためにキャンペーンを打っている。

──ブランドはどういったメッセージや物語を伝えている?

ホ:「ヒンス」が追求する美しさは、生まれつきの肌やカラー、髪などとメイクが調和し、魅力が倍増するもの。このブランド哲学は製品開発やクオリティー、マーケティングコミュニケーションで最も重視する部分だ。歌手が音楽で、映画監督が映像で物語を伝えるように、「ヒンス」も顧客との全ての接点でメッセージを伝えている。さまざまなメディアが発達した今、ブランドの直接的なコミュニケーションは必須だ。

SNS上の声をブランド計画に反映

──特にSNSを通じたコミュニケーションが得意なブランドだが、SNSでは何を重視する?

ホ:1つはビジュアルイメージと消費者が知りたい情報とのバランス。ブランドがプレゼンテーションしたいデジタルコンテンツと、カラーコスメの発色やテクスチャーなど消費者が求める情報との両立が必要だ。2つ目は交流だ。SNSはお客さまの意見を見聞きできる窓口なので、メッセージや「いいね」、シェア、フォローなどに耳を傾け、ブランドの計画に反映している。このような戦略は国に関係なく共通しており、コンテンツのトーンも統一性を持っている。

──こうしたメッセージが日本の消費者にも届いている?

ホ:日本の消費者は自分の顔に調和する中彩度のカラーとポイントカラーのバランスが取れたメイクアップを好み、肌がきれいに見えるようベースメイクを行い、自分だけの雰囲気を演出することが得意だと思う。「ヒンス」が提案する美の哲学と日本のお客さまの美的感覚がいいシナジー効果を生み、日本の人たちにアピールできるポイントになったのではないか。また日本の消費者は他国に比べ、より繊細だと感じる。そのためコレクションのストーリー性やメッセージは、より詳しくテキストで伝えるように心がけている。

──日本国内では今後どのような計画をしている?

ホ:ブランドを体験できる空間の拡大と、美的感覚で共感できる作家やブランドとのコラボレーション、新製品に合わせた限定アイテムの展開などを行う予定だ。「ヒンス」にとって日本は韓国を含めトップ3の国、今後も積極的な投資を進める。

ユニークな方法や意外性のある場所で
ポップアップを計画

──空間の拡張はどのような形で行う?

ホ:まずは青山に旗艦店ができたので、旗艦店を中心にブランドを発信したいと考えているが、日本国内、海外においても店舗を増やしたい。韓国では来年上半期に出店する予定だ。日本では直営店を大阪や京都にも出せたらいいし、流通チャネルではお客さまが自由に試せる場を増やしたい。ポップアップも百貨店だけでなく、ユニークな方法や意外性のある場所で展開したいと検討している。

──ブランドとして今後の展望は?

ホ:「ヒンス」は初めからグローバルブランドを夢見て生まれた。現在は中国と東南アジア市場でもブランドを少しずつアピールし始め、アジア諸国を中心にポップアップストアや旗艦店を継続的に計画している。一方で、公式販売国やチャネルは非常に慎重に検討している。アジア市場での成長を基盤に、究極のゴールは世界中に顧客とのコミュニティーを作っていくことだ。これも実用的な製品と、完成度の高い「ヒンス」らしいブランディングによって可能になることで、不可能な夢ではないと思っている。

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高級磁器「ベルナルド」が東京・表参道に旗艦店をオープン フランス発ラグジュアリーブランドとして文化を発信

 フランス・リモージュ発高級磁器ブランド「ベルナルド(BERNARDAUD)」は12月、東京・青山に旗艦店をオープンした。同ブランドは2023年、創業160周年。フランスを代表する磁器ブランドだ。家族経営でありながらも、革新的な技術により、ジェフ・クーンズ(Jeff Koons)をはじめとするアーティストとコラボレーションしている。旗艦店オープンについて、アーサー・ベルナルド(Arthur Bernardaud)=ベルナルド ジャパン社長に話を聞いた。

 ベルナルド社長は、「日本における旗艦店オープンは、親日家で本国社長である叔父の夢だった。『バカラ(BACCARAT)』や『クリストフル(CHRISTOFLE)』などのフランス発ブランドと協業しながらテーブルセッティングをはじめ、フランス文化を発信する遊び心ある旗艦店にしたい」と語る。「バカラ」と「ベルナルド」は約40年前に合同で日本支社を立ち上げたが、数年後に終了。2つのブランドは別々の道を歩み、「ベルナルド」は約5年前に日本支社を設立し、一族であるベルナルド社長が指揮を取っている。「フランスの磁器は長年日本で知られていなかった。市場としてのポテンシャルはあるが、ビジネスチャンスがなかった。日本で本格的に展開するのに支社を設立するには一族が携わるべき。支社設立以来、旗艦店出店を視野に入れて活動をしてきた」とベルナルド社長。「クリストフル」とは、今年8月から業務提携を結び、ベルナルド社長がクリストフル社長を兼任している。

フランス・ラグジュアリーの包括的な発信

 「『ベルナルド』は、単なる磁器ブランドではない。フランスのラグジュアリー・ブランドとして旗艦店から発信をしていきたい。近くには、『クリストフル』をはじめ、高級革靴の「ジェイエムウエストン(J.M. WESTON)」やフレグランスの「ディプティック(DIPTYQUE)」などの旗艦店がある。業界の枠を超えて、それらのラグジュアリー・ブランドとコラボしたい」。「ベルナルド」は、フランスの生活美学やラグジュアリー文化を世界に広めるコルベール委員会(COMITE COLBERT)に加盟している。ベルナルド社長の叔父は6年間協会の会長を務めたという、同ブランドは、磁器メーカーとしてBtoBのビジネスも展開。「ゲラン(GUERLAIN)」の高級化粧品のパッケージや高級ブランデーのボトルから、インテリア関連のファサードなども手掛けている。ベルナルド社長は、「世界的にビジネスは好調。本国の工場では、約200人増員し、現在では約500人がさまざまなプロジェクトに関わっている」と話す。

 日本におけるビジネスは、支社設立以来、売り上げは3倍になった。コロナで旗艦店出店に時間がかかったという。「フランスのライフスタイルを発信する場合として、イベントを開催したい。本国で行っているフランスの歴史や文化のワークショップ“アンスティテュート ベルナルド”を来年から日本でも開催予定だ」。

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高級磁器「ベルナルド」が東京・表参道に旗艦店をオープン フランス発ラグジュアリーブランドとして文化を発信

 フランス・リモージュ発高級磁器ブランド「ベルナルド(BERNARDAUD)」は12月、東京・青山に旗艦店をオープンした。同ブランドは2023年、創業160周年。フランスを代表する磁器ブランドだ。家族経営でありながらも、革新的な技術により、ジェフ・クーンズ(Jeff Koons)をはじめとするアーティストとコラボレーションしている。旗艦店オープンについて、アーサー・ベルナルド(Arthur Bernardaud)=ベルナルド ジャパン社長に話を聞いた。

 ベルナルド社長は、「日本における旗艦店オープンは、親日家で本国社長である叔父の夢だった。『バカラ(BACCARAT)』や『クリストフル(CHRISTOFLE)』などのフランス発ブランドと協業しながらテーブルセッティングをはじめ、フランス文化を発信する遊び心ある旗艦店にしたい」と語る。「バカラ」と「ベルナルド」は約40年前に合同で日本支社を立ち上げたが、数年後に終了。2つのブランドは別々の道を歩み、「ベルナルド」は約5年前に日本支社を設立し、一族であるベルナルド社長が指揮を取っている。「フランスの磁器は長年日本で知られていなかった。市場としてのポテンシャルはあるが、ビジネスチャンスがなかった。日本で本格的に展開するのに支社を設立するには一族が携わるべき。支社設立以来、旗艦店出店を視野に入れて活動をしてきた」とベルナルド社長。「クリストフル」とは、今年8月から業務提携を結び、ベルナルド社長がクリストフル社長を兼任している。

フランス・ラグジュアリーの包括的な発信

 「『ベルナルド』は、単なる磁器ブランドではない。フランスのラグジュアリー・ブランドとして旗艦店から発信をしていきたい。近くには、『クリストフル』をはじめ、高級革靴の「ジェイエムウエストン(J.M. WESTON)」やフレグランスの「ディプティック(DIPTYQUE)」などの旗艦店がある。業界の枠を超えて、それらのラグジュアリー・ブランドとコラボしたい」。「ベルナルド」は、フランスの生活美学やラグジュアリー文化を世界に広めるコルベール委員会(COMITE COLBERT)に加盟している。ベルナルド社長の叔父は6年間協会の会長を務めたという、同ブランドは、磁器メーカーとしてBtoBのビジネスも展開。「ゲラン(GUERLAIN)」の高級化粧品のパッケージや高級ブランデーのボトルから、インテリア関連のファサードなども手掛けている。ベルナルド社長は、「世界的にビジネスは好調。本国の工場では、約200人増員し、現在では約500人がさまざまなプロジェクトに関わっている」と話す。

 日本におけるビジネスは、支社設立以来、売り上げは3倍になった。コロナで旗艦店出店に時間がかかったという。「フランスのライフスタイルを発信する場合として、イベントを開催したい。本国で行っているフランスの歴史や文化のワークショップ“アンスティテュート ベルナルド”を来年から日本でも開催予定だ」。

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1位は、起業から5年で年商10億円 高級ブランドも信頼する元双子タレント広海の「仕事の流儀」| 週間アクセスランキング TOP10(12月1〜7日)

 週間アクセスランキング TOP10(12月1〜7日)

「WWDJAPAN」 ウイークリートップ10

 1週間でアクセス数の多かった「WWDJAPAN」の記事をランキング形式で毎週金曜日にお届け。
今回は、12月1(木)〜7日(水)に配信した記事のトップ10を紹介します。

 「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントでも、毎週土曜日に【週間アクセスランキング】を配信開始。ファッション&ビューティ業界のニュースはもちろん、コレクションのルック、パーティーやストリートのスナップ、ライフスタイル情報など、幅広いジャンルの注目トピックを週3回お届けします。今すぐ「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントを[友だち追加]して、最新トレンドやファッション&ビューティ業界で注目されているトピックをチェックしよう。
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- 1位 -
起業から5年で年商10億円 高級ブランドも信頼する元双子タレント広海の「仕事の流儀」

 双子のオネエ系タレントとしてテレビや舞台に出る一方、イベントのMCとしても活動していたHIROMI・FUKAMI(広海・深海)。彼らは今、ファッション&ビューティ業界のプロフェッショナルとして活躍している。FUKAMIがスタイリストとして活動の幅を広げ、ブランドのクリエイティブディレクションなども手がける一方で、HIROMIは2018年にデジタルマーケティング企業の株式会社Hiを設立して代表取締役に就任。

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- 2位 -
ユニクロが13代目市川團十郎の襲名、市川新之助の初舞台を記念した祝幕を贈呈 Tシャツ4型を発売

12月05日公開 / 文・福永千裕

 ユニクロは、歌舞伎俳優の市川海老蔵改め13代目市川團十郎白猿の襲名と、その長男である8代目市川新之助の初舞台を記念して制作した祝幕を歌舞伎座に贈呈した。さらに、これを祝ったTシャツコレクションを発売した。デザインは4種類で、価格は1990円(税込、以下同)〜2490円。一部店舗とオリジナルTシャツが作れるUTme! オンラインサイトで取り扱っている。

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- 3位 -
デムナと「バレンシアガ」のCEOが謝罪 炎上したホリデーキャンペーンへの批判が止まず

12月05日公開 / 文・MILES SOCHA

 「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のデムナ(Demna)=アーティスティック・ディレクターは12月2日、児童虐待に当たるとして批判を受けて取り下げたホリデーキャンペーンについて、自身の公式インスタグラムで謝罪した。また、セドリック・シャルビ(Cedric Charbit)社長兼最高経営責任者(CEO)もブランドの公式インスタグラムに再発防止策などを含む謝罪文を投稿した。

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- 4位 -
チャンネル登録者数141万のユーチューバー「かの/カノックスター」がファッションにも本気宣言!

12月06日公開 / 文・三澤 和也

 フード系ユーチューバーの「かの/カノックスター」をご存じだろうか?モッパン(大食い)動画が人気を博し、今やチャンネル登録者数は141万。TikTokのフォロワー数は、その上をいく200万だ。ソフトバンクのCMに出演したり、ザ・スーツカンパニー(青山商事)のイメージキャラクターを務めたり、写真集「アイアム カノックスター」(トランスワールドジャパン)を出版したりとその活動は“食”だけにとどまらない。そんな、かの/カノックスターの原動力はファッションだという。本人に聞いた。

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- 5位 -
「ハフ」と「ナイキ SB」からコラボ“ダンク ロー”が登場 カラーはランダムに決定

12月02日公開 / 文・WWD STAFF

 「ハフ(HUF)」は、ナイキ(NIKE)のスケートボードライン「ナイキ SB」とコラボレーションしたスニーカー“ダンク ロー(DUNK LOW)”を発表した。価格は税込1万2100円で、ホワイト&グレー&ネイビーとブラック&グレー&ホワイト2カラーを用意。12月4日まで「ハフ」の原宿店と大阪店、公式オンラインストアで抽選販売を受け付け中だが、中身が見えないブランドバッグに梱包されるためカラーは選択できない。

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- 6位 -
ファミリーマートからオリジナルアパレルの新作 150万枚を販売した“ボクサーパンツ”の新色や“アーガイルソックス”など

12月05日公開 / 文・三澤 和也

 ファミリーマートは12月6日、「ファセッタズム(FACETASM)」の落合宏理デザイナーと共同開発するオリジナルアパレルブランド「コンビニエンスウェア(CONVENIENCE WEAR)」の12月の新商品を発売する。

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- 7位 -
JO1が「YSL」のブランドアンバサダーを2023年も継続 グローバルでの活動も見据える

 「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT 以下、YSL)」は12月1日、2022年から“YSL BEAUTY ジャパン アンバサダー”を務めているJO1を23年も引き続き契約更新することを発表した。JO1は21年からオフィシャル ビューティ パートナー、22年からブランド初の男性アンバサダーとして活動していた。23年はさらなるパートナーシップの強化を⽬指し、グローバルでの活動も視野に⼊れる。

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- 8位 -
「ニューバランス」とボストンのセレクトショップ「ボデガ」がコラボ スニーカーを含む全6型を発売

12月06日公開 / 文・WWD STAFF

 「ニューバランス(NEW BALANCE)」は、アメリカ・ボストンのセレクトショップ「ボデガ(BODEGA)」とコラボレーションしたカプセルコレクションを12月15日に発売する。スニーカーは「ニューバランス」の公式オンラインストアと東京・日本橋浜町のティーハウス ニューバランス(T-HOUSE New Balance)、ニューバランス 六本木 19:06で、アパレルは公式オンラインストアのみで取り扱う。

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- 9位 -
「ニューバランス」と「オーラリー」のコラボスニーカー“XC72”から日本限定カラーが登場

12月02日公開 / 文・WWD STAFF

 「ニューバランス(NEW BALANCE)」は、「オーラリー(AURALEE)」とコラボレーションしたスニーカー“XC72”の日本限定カラーを12月9日に発売する。価格は税込1万9800円で、キャメルとホワイトの2色を用意。両ブランドの公式オンラインストアをはじめ、東京・日本橋浜町のティーハウス ニューバランス(T-HOUSE New Balance)とニューバランス 六本木 19:06、ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)で取り扱う。

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- 10位 -
「ヴァンズ」や「シュプリーム」親会社のCEOが退任

12月06日公開 / 文・EVAN CLARK

 「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」「ヴァンズ(VANS)」「ティンバーランド(TIMBERLAND)」「シュプリーム(SUPREME)」などを擁するVFコーポレーション(VF CORPORATION以下、VFC)は12月5日、スティーブ・レンドル(Steve Rendle)会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)の退任を発表した。後任は未定で、当面はベンノ・ドーレ(Benno Dorer)筆頭独立社外取締役が暫定社長兼CEOを、リチャード・カルッチ(Richard Carucci)取締役が暫定会長を務める。

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ゲラン一族によるフランス発香水「ニコライ」 家族経営で昔ながらの製法でつくられる“着替える”香り

 フランス発香水「ニコライ(NICOLAI)」は、家族経営のフレグランスブランドだ。同ブランドの創業者兼マスターパフューマーであるパトリシア・ド・ニコライ(Patricia de Nicolai)は、ゲラン一族で香水に囲まれて育ったが、「ゲラン(GUERLAIN)」を継ぐことはなかった。その代わりに、自己表現として1989年に夫と「ニコライ」を創業。自由につくりたい香りを制作して世界中で販売している。

 日本では、ノーズショップが販売を担当。11月に来日したパトリシアの息子であるアクセル・ド・ニコライ(Axel de Nicolai)=ニコライ最高経営責任者に話を聞いた。

WWD:今回の来日の目的は?

アクセル・ド・ニコライ=ニコライCEO(以下、ニコライ):4年間ノーズショップとコラボレーションしているが、コロナで来日できなかった。今回が初来日だ。

 日本は、最も訪れたいと思っていた国。知れば知るほど豊かな文化があり、フランスに近いと感じる。

WWD:「ニコライ」のブランド哲学は?一番の強みは?

ニコライ:家族経営である点。母がゲラン一族だったため、調香師になり父母がブランドを始めた。彼らはアーティスティックで、好きなものをつくって提供するという点。私は香水の勉強を始め、マーケティングが主導の商材だと知った。この小売価格にするために、コストはこの程度といったような制限がある。だが、「ニコライ」はそれらの制限なく自由に香水がつくれる。それがいいビジネスになっている。多くのブランドは外注しているが、われわれは、素材に関してはグラースの最高の素材を直接仕入れている点も強みだ。

WWD:ゲラン一族であることが「ニコライ」にどのような影響を与えているか?

ニコライ:祖母は今でも「ゲラン」の香水を付けているし、一族から受け継いでいることもあり、それが影響しているのは間違いない。ただ、母親は一族として「ゲラン」を継がず、自分自身の表現として「ニコライ」を創業した。

WWD:調香師の母の元でどのように育ったか?印象に残っている香りの思い出は?

ニコライ:香水に囲まれて育つのが当たり前のことだった。母がアトリエで調香する姿を見ながら育った。それは日常的なことで、7〜8歳頃から香りに興味を持ち始めた。子どもの頃はバニラのおいしそうな匂いが好きだった。小さく切ってあるハーブの香りも気になった。いろいろな思い出がある。

WWD:素材の調達と生産はどこで行うか?生産は自社工場か?

ニコライ:素材はグラースを中心に調達するが、他の国から購入することもある。素材はナチュラルなものにこだわっている。生産は全て自社で。パリのアトリエで調香して、パリ南部の自社工場で生産している。昔ながらの製法で生産し、ボトル詰めまで全て手作業で行う。

WWD:現在何カ国で販売しているか?好調な市場は?

ニコライ:ほぼ世界中で販売している。パリには8店舗、ロンドンに2店舗直営店がある。他、各地のパートナーを通して販売している。自社ECもある。好調な市場はフランス・パリはもちろん、サウジアラビアや韓国なども好調だ。

WWD:日本での販売戦略は?

ニコライ:ノーズショップといういいパートナーがいる。彼らの選りすぐった香水のラインアップや販売方法はとてもいいと思う。日本人はデリケートな香りが分かると思うので、伸び代がある市場だと期待している。

WWD:香りという感覚的なものをどのように消費者に手に取ってもらうか?

ニコライ:難しいが、選択肢を多く提供することにより、好きな香りを見つけてもらいたい。まずは、好きな香りを見つけて、楽しみ方を覚えてほしい。例えば、今日はこの香り、この時間にはこの香りというようにその時の気分にあう香りを、好奇心を持って楽しんでもらいたい。日本人は繊細な感覚を持っているので、それが可能だと思う。

WWD:あなたにとって香りとは?

ニコライ:ファッションのように自分を表現するもの。季節やオケージョンに合わせて着替えるように、香水も着替えてもらえれば。

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米アーティストのエルボーが「リップンディップ トウキョウ」でポップアップ開催 ダイナソーモチーフの作品が人気

 米カリフォルニアの「コンプレックスコン」に参加したアーティストのエルボー(Elbo)が、東京・原宿の「リップンディップ トウキョウ(RIPNDIP TOKYO)」で12月10日限定でポップアップショップを開催する。限定店にはエルボーのほかに、ジーズィーワン(GZ1)やアバター(Avatar)、スロープ(SLOP)に加え、自身が所属する日本のアートクルーのメンバーも参加する。 販売アイテムはガラスペンダントやアート(約5万円)、新作のデザイナーズトイ(約4000円)、限定Tシャツ(約6000円)、ジーズィーワンとの新作コラボトイ(約2万5000円)など。

 「コンプレックスコン(Complex Con)」は世界最大級のストリートファッションの祭典で、米・ロサンゼルスのロングビーチにあるコンベンションセンターで毎年秋に開催している。今年は「ガールズドントクライ(GIRL’S DON’T CRY)」を手掛けるVERDY(ヴェルディ)がホストを務めたことでも話題となり、エルボーは友人であるデザイナー兼グラフィティアーティスト、ジーズィーワンと参加した。

 エルボーは米・コロラド出身のガラスアーティストで、ダイナソーモチーフの作品で知られる。最近ではファッションアイテムやデザイナーズトイまで幅広いアイテムを手掛けており、セレブやファッションデザイナーにもファンが多い。これまでに「フェルト(FELT)」や「スコロクト(SKOLOCT)」とコラボレーションしている。日本でのポップアップに先駆け、本人に作風や今後について聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):ダイナソーをメインモチーフとし始めたきっかけとは?

エルボー:きっかけは、吹きガラスを始めた当時に好きだった女性が小さなダイナソーを作ってくれたこと。自分がガラスの仕事に専念するようになった頃に彼女とは別れてしまったが、彼女を思っていることを伝えるためにダイナソーを作り続けた。しばらくして彼女にインスパイアされたデザインはやめたが、今でもダイナソーのモチーフを追求し続けている。経験や人など、全ての関わりが私の作品や活動にインスピレーションを与えてくれる。

WWD:ガラス作品に始まり、デザイナーズトイやファッションアイテムを製作し始めた理由とは?

エルボー:自分の作品を一般的な人たちにとってより身近なものにするために、最初はぬいぐるみやフィギュアなどを作り始めた。ファッションとデザインが好きだから、最近ではファッションアイテムの制作も行っている。ファッションで自身のテーマを再構築するのはとても楽しくて刺激的だ。

WWD:今回のポップアップについての意気込みを教えてください。

エルボー:今回のミッションとして、デザイナーズトイやハイエンドなガラス作品を紹介し、日本限定のアイテムも発表する。そして、さらに多くの日本人に自分のアートを知ってもらうこと。「リップンディップ」とは来年正式にコラボレーションを行う予定で、それに先駆けて今回このスペースでポップアップを開くことになった。コラボに向け、自分たちの活動がより加速できることに感謝している。

■ELBO POP UP SHOP
日程:12月10日
場所:リップンディップ トウキョウ
住所:東京都渋谷区神宮前3丁目24-5 NIXビル
時間:12:00~20:00

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米アーティストのエルボーが「リップンディップ トウキョウ」でポップアップ開催 ダイナソーモチーフの作品が人気

 米カリフォルニアの「コンプレックスコン」に参加したアーティストのエルボー(Elbo)が、東京・原宿の「リップンディップ トウキョウ(RIPNDIP TOKYO)」で12月10日限定でポップアップショップを開催する。限定店にはエルボーのほかに、ジーズィーワン(GZ1)やアバター(Avatar)、スロープ(SLOP)に加え、自身が所属する日本のアートクルーのメンバーも参加する。 販売アイテムはガラスペンダントやアート(約5万円)、新作のデザイナーズトイ(約4000円)、限定Tシャツ(約6000円)、ジーズィーワンとの新作コラボトイ(約2万5000円)など。

 「コンプレックスコン(Complex Con)」は世界最大級のストリートファッションの祭典で、米・ロサンゼルスのロングビーチにあるコンベンションセンターで毎年秋に開催している。今年は「ガールズドントクライ(GIRL’S DON’T CRY)」を手掛けるVERDY(ヴェルディ)がホストを務めたことでも話題となり、エルボーは友人であるデザイナー兼グラフィティアーティスト、ジーズィーワンと参加した。

 エルボーは米・コロラド出身のガラスアーティストで、ダイナソーモチーフの作品で知られる。最近ではファッションアイテムやデザイナーズトイまで幅広いアイテムを手掛けており、セレブやファッションデザイナーにもファンが多い。これまでに「フェルト(FELT)」や「スコロクト(SKOLOCT)」とコラボレーションしている。日本でのポップアップに先駆け、本人に作風や今後について聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):ダイナソーをメインモチーフとし始めたきっかけとは?

エルボー:きっかけは、吹きガラスを始めた当時に好きだった女性が小さなダイナソーを作ってくれたこと。自分がガラスの仕事に専念するようになった頃に彼女とは別れてしまったが、彼女を思っていることを伝えるためにダイナソーを作り続けた。しばらくして彼女にインスパイアされたデザインはやめたが、今でもダイナソーのモチーフを追求し続けている。経験や人など、全ての関わりが私の作品や活動にインスピレーションを与えてくれる。

WWD:ガラス作品に始まり、デザイナーズトイやファッションアイテムを製作し始めた理由とは?

エルボー:自分の作品を一般的な人たちにとってより身近なものにするために、最初はぬいぐるみやフィギュアなどを作り始めた。ファッションとデザインが好きだから、最近ではファッションアイテムの制作も行っている。ファッションで自身のテーマを再構築するのはとても楽しくて刺激的だ。

WWD:今回のポップアップについての意気込みを教えてください。

エルボー:今回のミッションとして、デザイナーズトイやハイエンドなガラス作品を紹介し、日本限定のアイテムも発表する。そして、さらに多くの日本人に自分のアートを知ってもらうこと。「リップンディップ」とは来年正式にコラボレーションを行う予定で、それに先駆けて今回このスペースでポップアップを開くことになった。コラボに向け、自分たちの活動がより加速できることに感謝している。

■ELBO POP UP SHOP
日程:12月10日
場所:リップンディップ トウキョウ
住所:東京都渋谷区神宮前3丁目24-5 NIXビル
時間:12:00~20:00

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チャンネル登録者数141万のユーチューバー「かの/カノックスター」がファッションにも本気宣言!

 フード系ユーチューバーの「かの/カノックスター」をご存じだろうか?モッパン(大食い)動画が人気を博し、今やチャンネル登録者数は141万。TikTokのフォロワー数は、その上をいく200万だ。ソフトバンクのCMに出演したり、ザ・スーツカンパニー(青山商事)のイメージキャラクターを務めたり、写真集「アイアム カノックスター」(トランスワールドジャパン)を出版したりとその活動は“食”だけにとどまらない。そんな、かの/カノックスターの原動力はファッションだという。本人に聞いた。

WWD:動画の中ではTシャツ姿が多い。

かの/カノックスター:僕の動画は“食べる”がテーマなので、動きやすさや汚れてもいいことを重視しています。画角も、テーブルの上の料理と僕というふうに決まっているので上半身しか見えません(笑)。だから“制服”として割り切っているところがありますね。

WWD:一方で、インスタグラム(フォロワー数20万)ではファッションに特化した投稿が目立つ。

かの/カノックスター:ユーチューブでの活動を始める前からファッションは好きで、投資額もなかなかでした。最近、コメント欄に「稼げるようになってファッションに目覚めた」と書かれちゃうことがあるんですが、「それは違う!」と言いたいですね。

WWD:動画内で、「起きている時間は、ほぼユーチューブに費やしている」と話していた。

かの/カノックスター:はい。だから、ファッションは自分へのご褒美なんです。動画製作のモチベーションですね。オフラインを充実させることで、オンラインも充実できると信じています。

WWD:好きなブランドは?

かの/カノックスター:パンツは、ほぼ「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」です。今日もはいてます。先日店舗で、僕のインスタを見せながら「このジーンズありますか?」と訪ねてくれたお客さん(視聴者)がいたそうです。動画にいいね!をもらうより、うれしかったですね。あとは、他人とかぶりたくないこともあり、新進デザイナーものを買うことが多いです。

WWD:ジャケットは「アーネスト ダブル ベイカー(ERNEST W. BAKER)」?

かの/カノックスター:そうです。今、一番気に入っているブランドの一つです。ほかに「ウェールズ ボナー(WALES BONNER)」や「ルメール(LEMAIRE)」もよく着ます。

WWD:服はどこで買う?

かの/カノックスター:海外ECが多いですね。「エッセンス(SSENSE)」とか「ファーフェッチ(FARFETCH)」とか「マッチズファッション ドットコム(MATCHESFASHION.COM)」とか。

WWD:やはり時間がないから?

かの/カノックスター:それもありますが、サイズが合わなかったとか、色が思っていたのと違ったとかで、簡単に返品・交換できる点にも魅力を感じています。

WWD:実店舗での買い物は少ない?

かの/カノックスター:そんなこともないです。「アクネ ストゥディオズ」はパンツ目的ということもあって、やはりフィッティング命なので、店舗で買うことが多いですね。伊勢丹新宿本店メンズ館の2階にも行きますし、「マルニ(MARNI)」にも行きます。

WWD:ファッションのこだわりは?

かの/カノックスター:シルエット重視で、体がきれいに見える服を選んでいます。デザインが気に入っても、スタイルが悪く見えてしまう服は買わないですね。

WWD:それは、やはり多くの人に見られる立場になったから?

かの/カノックスター:はい。活動開始前からメイクもしていたんですが、いっそう気兼ねなくできるようになりました。世の中のメンズメイクに対する考え方も、ここ数年で大きく変わりましたし。

WWD:ファッションの参考にしているヒト・コト・モノはある?

かの/カノックスター:BTSのV(ヴィ)が憧れです。ファッションもメイクもヘアも彼に影響を受けていますね。あとは「Kのファッション部屋」というユーチューブチャンネルも見ています。

WWD:先日、動画内で下半期の最高月収を567万円と発表した。ひと月でファッションに掛ける額はどれくらい?

かの/カノックスター:11月は「ルメール」のダウンコート(約17万円)を買ったこともあって、80万〜100万円です。「リック・オウエンス(RICK OWENS)」のバラクラバ(目出し帽風のヘッドピース)も買いました。

WWD:2022年に購入した最も高額なファッションアイテムは?

かの/カノックスター:「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」のジャケットです。4月に銀座店で50万〜60万円で購入しました。うれしくて着て帰ったんですが、素材がやや厚くて、そのころはもう初夏の気候だったので汗だくになっちゃいました(笑)。大満足だったから良かったんですが。

WWD:23年に狙っている商品は?

かの/カノックスター:コートがもう1着ほしいですね。“攻めた”デザインのものが。「バレンシアガ(BALENCIAGA)」か「ジル サンダー(JIL SANDER)」あたりで物色しています。

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起業から5年で年商10億円 高級ブランドも信頼する元双子タレント広海の「仕事の流儀」

広海:HIROMI/Hi Inc. CEO、マーケティングディレクター

PROFILE:本名は長谷川堅二。1989年11月29日生まれ、三重県出身。深海(FUKAMI)とは一卵性双生児。10代半ばに家出して自活。調理師免許を取得。「笑っていいとも!」の素人参加コーナー「花より双子」への出演がキッカケでスカウトされ、2008年にドラマデビュー。ファッション・ビューティに精通する双子タレントとして「次世代のおすぎとピーコ」として注目を集める。2016年からリデルでインターンをし、後に社員に。2018年デジタルマーケティング会社Hi Inc.を設立。東京服飾専門学校講師も務める

 双子のオネエ系タレントとしてテレビや舞台に出る一方、イベントのMCとしても活動していたHIROMI・FUKAMI(広海・深海)。彼らは今、ファッション&ビューティ業界のプロフェッショナルとして活躍している。FUKAMIがスタイリストとして活動の幅を広げ、ブランドのクリエイティブディレクションなども手がける一方で、HIROMIは2018年にデジタルマーケティング企業の株式会社Hiを設立して代表取締役に就任。国内外のビューティやラグジュアリーブランドなどの企画ディレクションやクリエイティブ、キャスティングなどを担い、設立5年で年商10億円を超えるほど手腕を発揮している。また、2人の“ぶっちゃける”インスタライブやYouTubeも人気で、彼らが「友の会」と呼ぶファンたちは20~50代まで幅広く、バリキャリ女子も多い。エンゲージメントが高く評価も高まっている。今回はビジネスパーソンとしてのHIROMIにスポットを当て、彼のキャリアや仕事に対峙する姿勢、さらには、今の時代に求められるマーケティング考察について聞いた。


――Hiの企業サイトを見ると、クライアントにはビューティ系でロレアルグループ(L'OREAL)、P&Gグループ、資生堂グループエスティロダー(ESTEE LAUDER)グループ、ファッション系ではLVMHグループ、ギャップ(GAP)、変わり種では味の素(AJINOMOTO)など大手がずらりと並んでいる。ズバリ、Hiが頼られ、仕事の依頼が来るのはなぜか?

HIROMI:「僕らの強みはこれです!」といえるものは実はあまりなくて……。

 でも、しいて言えば「忖度しないこと」と「着地力」かもしれません。忖度は昔からしないタイプでしたが、仕事はより、シビアに。クライアントさんに寄り添うことも重要ですがイエスマンになってはいけないと思っています。しっくりこなければ、こういう案もあるんじゃないか、と時間があれば再提案も繰り返し、一緒に最善策を模索します。

 たとえ予算が3万円でも30万円でも、300万円でも3000万円でも、同じように一緒に費用対効果を考えてみます。もちろん、結果は絶対に出さなきゃダメ!をモットーに、違うと思ったら「本当にそれでいいの?」と疑問を投げかけ、一緒に悩みますよ。正直『もうこれでいいかな』って思うこともあると思うのです。でもそこは奮い立たせて最後まで本当にこれが最善か、もうできることはないかを一緒に最後の最後まで粘って担当者の人と一緒に考え、施策を最大化し着地まで持っていくことを意識しています。

信頼のミルフィーユを積み重ねる

HIROMI:社員にも、「寄り添うことは重要だけどイエスマンになる必要はない」「クライアント様と真摯に向き合い結果を出す」と伝えています。予算が高いとか低いとか、工数で考えるのではなく、一つひとつのお仕事で結果を出す。それが次のお仕事につながると僕らは考えています。そういった“信頼と結果のミルフィーユ”でお仕事をいただけているんだと思います。

 だから、僕たちは営業したことがないんですけど、クライアントさんからの仕事がキャスティングだけだったものが広告枠の買い付け以外ほぼ全部、とか、既存のクライアントは引き続きお仕事させていただきつつ、担当者さんが部署や会社が変わって転職した先からも新しいお仕事をいただいたり、大手企業と並んでコンペに参加してほしいと言われたりして、仕事が増えていったという感じですね。

 真摯にクライアントと付き合いきちんと結果を出すことによって、ミルフィーユのように信頼が重なり、次の仕事に繋がりっていく、デジタル化が進んでる世の中ですが、この方針というか考え方は今も昔も未来も同じでずっと大切にしていくモノだと感じてます。

――マーケティングやコンサルティングでの新しいリーダーシップの形なのかもしれませんね。ではあらためて、Hi.incとは何屋さんなんのか?

HIROMI:基本的には何でも屋ですね(笑)。だけど私たちに期待されるのは、「今」へのマッチングなんじゃないでしょうか。最も重要にしていることはトレンドになりすぎたものは落ちていくだけ、なので、その一歩手前をつかむ、そんなことじゃないでしょうか。

 やっぱり僕もそうですが女性は情緒的なものが好きだから。数字に強い人々だと優秀だけど、数字やデータを信じすぎてしまってこれからくるトレンドやセンスみたいなものは無視しがち。女性って移ろいやすいモノだと思うんですよね。だから情緒と数字のバランスを取ることはとても難しいけれど、自分達の知見と数字をバランスよくみることが必要考でそこが僕たちが得意なところかなとも思っています。

 そして田舎出身っていうのも引き合いになってる要素かも。都心からの企画・発信が常なので、エクスクルーシブでとがった企画が多々ですが、エッセンスとして実は全国に住む人々が喜んでくれるようなマスに刺さるプロモーションも意識する必要があります。その視点が持てるかが重要かと思っています。花火みたいな華やかで刹那的なプロモーションも楽しいですが、これからは本質的なものしか残っていない気がします。歴史あるブランドが展覧会でレガシーやヒストリーしっかりと伝えたり、現代アートとコラボレーションしたりと根がしっかりしたものは普遍的ですよね。

 あとは代理店さんに近い領域もやってますね。大手の代理店と同じコンペにも入るし、一喜一憂しています。具体的にはイベントや広告、CMのキャスティングや、企業やブランド、プロジェクトのコミュニケーション・プランのディレクションや実施などがメインになります。ただし、クライアントのブランドや企業の看板を活用して仕事をさせていただいているので、僕たちだけがすごいことなんてぜんぜんなくて。全部お相手のふんどしをお借りしないとできないような仕事ばかりなので、そのブランドの価値を少しでも高められるように、サービスや製品が欲しいと思う人が増えるように、真摯に頑張ってます(笑)。

 何でも屋の僕らが特に大切にしてることは、先ほどもお話しした通り、新しいサービスやビジネスや製品を世に出していくときに、どうやったらお客さまに響くか、ちゃんと伝わるかをクライアントの方々と一緒に考えて実践していくことです。

――なるほど。では、マーケティングの仕事の魅力は何か?

HIROMI:マーケティングとは、究極、「人の心に響かせること」だと思っています。統計学の素養も必要だし、時代の流れを読まなければならないし、未来を見る力が重要ですよね。直感と、経験も必要です。マーケの仕事にはデモグラ(デモグラフィック。人口統計学的属性)などのデータマーケティングもありますが、僕はインサイトマーケティングのほうが得意です。ターゲットとする女子が「こう思う」「こうは思わない」とか、どうだったら響くのか、動くのかなどを想定するのが好きで。その反復で精度を上げながら、ターゲットを深掘りしたり、その子たちに流行っているものは何なのかを探ったり、目指している女性像や刺さるコンテンツを考えるのが好きですね。しかも、それらはみんな流動的だからこそ面白い。今仕込んでいるものは数カ月後や1年後といった未来のものですし、その時期だったらこんなことを考えているのだろうなとか想像することにワクワクします。そして、僕自身が、見たことのないもの、既視感のないものを見てみたい、やってみたい、新しいコトや表現を体験してみたい、実現したいという想いが一番強くて、それを楽しめているのかなとも思っています。

ゲイでADHDの僕。インフルエンサーマーケティングのリデル社での経験で感覚・直感にロジックを融合

――タレント業からビジネスの道に転身したきっかけは?

HIROMI:25歳のとき、気づかず溜まったリボ払いがMAXになり、借金が500万円まで膨らんでしまったんですよ(苦笑)。「稼がなきゃ!働かなきゃ!」と焦って、東京ガールズコレクション(TGC)初代チーフプロデューサーで今も弊社の顧問をお願いしている、マーケティングやPRのコンサルをされている永谷亜矢子さんに相談したところ、「あなたはユーザーを読み解くセンスが良くて勘がいいから、マーケティングの仕事に向いている。だからインフルエンサーマーケティングのリデルという会社でインターンしてみたら」とアドバイスと紹介をしてくださり、リデルの福田晃一社長を紹介してくれたんです。ただの双子のオカマのタレントでしかなかった僕に、マーケティングの道を開いてくれた永谷さんと、ちゃんと勉強させたら少しは使い物になるかもと期待して拾ってくれた福田社長にはとても感謝をしています。

――リデルで学んだこと、教えてもらったことは何か?

HIROMI:インターンから始めて、会社で働くことのイロハ、デジタルマーケティングのこと、お金の稼ぎ方のノウハウや、説得力を高めるロジカルな組み立て方をしっかり教えてもらいました。僕はADHDでLGBTQなので、とても感情的で感覚的で、「キモイ」か「キモくない」「素敵」というのが判断基準だったんです(笑)。でも、福田さんはとてもセンスもロジックも忍耐力もある方で、「えーっと、それってどうキモイの?もっと掘り下げて教えて?」と言語化してロジカルに説明するトレーニングをしてくれたんです。

 それから自分の思いや考えを対外的にお伝えしやすくなりましたし、仕事の幅もすごく広がりました。3年間働いて、チャレンジするつもりで独立しました。

――会社の現状と、できれば稼ぎの内訳まで聞いてみたい。

HIROMI:(笑)。2018年に設立し、ありがたいことに、5期目で一つの目標にしていた年商10億円に到達しました。スタッフは6人(業務提携含めると10名)で、企画、マーケティング、キャスティング、撮影やイベントなどの制作、が大半を占めており、FUKAMIちゃんがブランドディレクターを務める年2回の完全受注型のファッションブランド「ウィークエンド(WEEKEND)」を中心とした物販、FUKAMIちゃん含めたクリエイターのエージェント業務が残りの収益となります。FUKAMIちゃんは今までTGC等で培ったMCの経験をもとにライブ配信の分野でとても活躍しています。

――インスタライブやYouTubeが好調だが、フォロワーや視聴者が増えたきっかけは?

HIROMI:インスタライブで「友の会」(フォロワーや視聴者などのファン)の方々が爆発的に増えたのは、コロナ禍になってFUKAMIちゃんと一緒に住んだことがきっかけです。会社設立2年目で借金も返し終え、少し蓄えもできるようになったタイミングで、コロナで仕事も減り、最初はどうしよう!!という気持ちもあったのですが、在宅時間が長くなり自分のあり方を見つめ直したとき、「そのままでいっか!」と思えたんです。それで、時間もあったし、FUKAMIちゃんと「インスタライブでもやってみる?」ってなんとなく軽い気持ちで始めたんです。

 ただし、一つだけ決めたルールが「そのままでやること」でした。普段の生活とまるっきり同じテンションで毎日夜ごはんや寝るまでのリラックスタイムなどに合わせてリアルな私たちのそのままをさらけ出していきました。お金の話もするし、だらだらもするし、最近のお気に入りや買ったものも紹介する。超フラットに「あれキモイ」「それ嫌い」など完全なる個人の主観でバッサリダメ出しもする。ちょっとしたガチャガチャした世間をお騒がせはしないリアリティーショーみたいな感じです(笑)。

 でも、それが逆にウケたのか、「友の会」の方が急に増えたんです。コロナで時間を持て余したり、悩みやストレスを抱える方々などが見てくれて、応援してくれるようになったんです。お金の話や買い物の話も赤裸々にするし、バッサリ切るのも痛快だったのかも。意外かもしれませんが、バリキャリのお姉さんが多いのも特徴かもしれませんね。タレント時代には「こういうものが求められているのでは?」と、ちょっとオカマのキャラを強めてみたり、期待に応えるつもりで試行錯誤してみたのですが、芸能界ではあんまりうまくいかなくて。それが、今、ありのままでやったらウケたという。時代の変化もあるんでしょうね。それを見てくれていた出版社のワニブックスの方がウェブ連載のお話をくださって。それをまとめた書籍「むすんでひらいて」を今年5月に出版させていただき、3回も重版しました。これも「友の会」のおかげです。

 そして本業の方もコロナになって、最初は暇だったのですが、各社がコロナをきっかけにデジタルにフォーカスし始めて、インフルエンサービジネスや、インスタライブやTikTok、ユーチューブ等のSNSにより注目が集まるようになって、お仕事も増えて。気付けばコロナ前に比べて売り上げが3倍以上になったので、コロナ禍は試練でもあり追い風にもなりました。

――「ありのままで」がなぜ受けたのだと思う?

HIROMI:嘘じゃなく全部本当のことだから。みんな嘘のコンテンツが嫌になったり作り込んだコンテンツに飽きてしまったんだと思うんです。だから、自分たちの仕事でマーケやプランニングをするときにも、「もうそんなに作り込んだものは求められていない」ことを理解したうえで企画するように心がけています。20年前なら情報も少なくてカスタマーのデジタルリテラシーも低かったけれども、今はなんでもすぐに検索できるし、もう嘘なんかつけない。何よりも、期待や理想を高くし過ぎると、そうでもないことに気付いたときの落胆が激しくなってしまいますよね。楽しんでもらいたいとか喜んでもらいたいという気持ちはありつつも、期待させすぎないこと、嘘はつかないリアルさが大切な時代なんだと思います。

もう嘘はいらない。「ありのままで」「リアル」が受けるワケ

――なるほど。他にも今、マーケティングで感じている時代の潮流とは?

HIROMI:グローバルブランドとのお付き合いが多いのですが、グローバルのレギュレーションと今の日本との状況が全然違いすぎて驚きます。海外はまだインフルエンサーやセレブリティが強くて、彼らが持てば簡単に売れる状況にあります。それはトップ・オブ・トップの絶対的人気のセレブリティがいるから。でも、日本はタレントもモデルも俳優もアスリートもアーティストも、YouTuberもTikTokerもインスタグラマーもいてそれぞれに人気があるけれど、細分化してトレンドが薄く広がってしまっている状態なんです。だから、勘のいい会社はローカライズの重要性に気付いて、かなり日本独自のマーケや広告などを打ち出すようになっています。それに、イベントなどだと、テレビ向けのインパクトも、ソーシャルのインパクトも獲得できるハイブリットなキャスティングが求められるので、難易度が高まっていると感じます。

 そして特に強く思うのは、ありのまま(リアル)、にもつながるのですが、リアリティのあるものをみんなが求めだしているということ。これは真剣にとらえたほうがいいですね。とくに、ジェンダーZ(Z世代)の人々の中には、ビッグネームやビッグブランドはあまり好まないという人が増えている気がします。これとても僕ら世代からみるとびっくりですよね。

 ただ、誰もが知るメゾンブランドなどのレガシーがあるトップブランドや、本質的な圧倒的付加価値のあるブランドは好きという一面もありますよね。

 なので小さいブランドが頑張ってSDGsやサステナブルな貢献をしていることに対して好感を持って購入する傾向にあります。10年前から言われてきましたが、「ミドル層がなくなる」ことにもつながっているとも思います。たとえば、すごいセレブリティを呼んできて、その時の売上げにつながったとしても、ブランディングはできなかった、というブランドもありますよね。そのブランドのエクイティというか、持っているレガシーをみんな見るし、本当にブランドにマッチしているかどうか、生真面目さ?みたいなものが買う意味になる。日本の消費者行動はとくにこちらに重きが置かれている気がします。

 そして、広告でもインスタライブでも、エンゲージメントが測れてしまう時代。有名なタレントの方でもぜんぜんビュー数が出ない方もいますし、逆に知名度はそれほどなくてもファンがついていたり、コメント欄にも活気があったり温かかったり。実際にモノが売れるかどうかも一目瞭然です。何もかも見えてしまう時代の今、「認知」よりも「人気」がある人を探すことが重要ですね。

――最近手がけた仕事でとくに面白かったものやバズったものなどは?

HIROMI:たくさんありますが、「ギャップ」は面白いですね。担当者さんがいい意味でクレイジーなんです。最初はFUKAMIのスタイリングのお仕事から始まって、最近では、あんなに大きい会社なのにうちに制作、キャスティング、クリエイティブ、OOH(屋外広告)など、広告のバイイング以外のほとんどのお仕事を任せてくれています。キャンペーンに窪塚洋介さんファミリーや、山田優さんやSHIHOさんの母娘、富永愛さんと息子さんなど、人気のある著名人のリアルなファミリーや親子を起用したところ、すごく反響がありました。本物の家族起用は賛否を巻き起こすものなのですが、話題にもなり、売上げにもつながりました。

 またビューティーでは「ケラスターゼ」の広告が大きな話題になり、とても売り上げに貢献できたかと思います。宮脇咲良さんは、絶大な人気だけでなく、モノを動かす力があると直感し、IZ*ONE(アイズワン)を辞めた瞬間に、問い合わせて最初に広告に起用しケラスターゼの「ブロンド アブソリュ」でお仕事をご一緒させていただいていました。コロナ禍中で、韓国と日本と連携を取りながら、リモート撮影を敢行でしたので色々と苦労はありましたが結果、すご~く売れました。

 他にも、注目ブランドのビューティの上陸や、旗艦店のオープンなど、多角的にお手伝いしています。

著書「むすんでひらいて」の印税をお世話になった児童相談所に寄付

――今年、著書「むすんでひらいて」(ワニブックス刊)を出版して、3重版になりました。印税はすべて、自身がお世話になった児童相談所に寄付したと?

HIROMI:はい。連載をまとめていただいたものなので、僕たちとしては書籍にしていただいてありがとうという気持ちだったので、印税はあんまり気にしていなくて。でもそれが誰かの役に立てるならと、お世話になった児童相談所に寄付することを決めました。僕たち、もともと両親の育児放棄で、祖父母に育ててもらいました。世の中的には極貧といわれるような状況だったんです。ただ、お金はなくても僕たちは僕たちなりに幸せでした。でも、施設に入れられて可哀想な子ってレッテルを貼られることに対して、僕は感情がコントロールできずに怒りまくっていて、深海ちゃんは失語症になって一言もしゃべらなくなって……。扱いづらかったと思います。

 今回、先生たちがみんなお帰りと温かく歓迎してくれて、感謝状をいただき、講演までさせていただきました。送り出した子が戻ってきたのは初めてなんですって。子どもが大きくなると管轄部署が変わってしまうし、児相にお世話になっていたことを隠したい人も多いからだそうです。東京の港区に児相ができるときにも相当話題になりましたが、児相のイメージを払拭したり、独り立ちする子たちを支援するようなこともライフワークで取り組んでいきたいなと思っています。ちなみに「ギャップ」さんが、講演を聞きにいらしてくれた児童相談所、児童養護施設等の子どもたち全員に服をプレゼントしてくれました。当時欲しくても高くて買えなかった「ギャップ」さんとお仕事が実現できていることも幸せですし、僕たちの訪問は忘れても、「ギャップ」の服をもらって嬉しかったなという記憶が残ってくれたらよいなと思っています。

――今後、挑戦したいことや、力を入れていきたい分野は?

HIROMI:いまターゲットにしているのは、25~45歳という案件が多いので、自分と同じ世代の方々なので気持ちがわかります。でも、僕がキャッチできる年齢って、45歳ぐらいまでかなと。そう思うと、プランナーって薄命ですよね。仕事の精度を上げていくとか、喜んでもらえる人を増やしていくということには興味があるのですが、この先どうするか、本気で考えなくちゃいけないと思っています。5年間で実績やクレジットできる仕事はたくさん蓄積してきました。その経験や実績を活かして、そして、そんな僕らなりの、僕らならではの、地方の産業を盛り上げていくことであったり、ひいては日本を盛り上げていけるように、大袈裟で無謀かもしれませんがそんな分野にも挑戦していきたいです。

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「『サンローラン』に対する私のビジョンは、何よりもアティチュードにある」 アンソニー・ヴァカレロが美学を語る

 アンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vacarello)=クリエイティブ・ディレクターの手掛ける「サンローラン(SAINT LAURENT)」が、勢いに乗っている。就任から6年以上が経ち、クリエイションへの評価が高まっているだけでなく、ビジネスも好調だ。そんな中、東京では創業者イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)の“片割れ”とも言われた盟友ベティ・カトルー(Betty Catroux)に焦点を当てた巡回展「BETTY CATROUX YVES SAINT LAURENT 唯一無二の女性展」が開催されている(会期は12月11日まで)。ヴァカレロ自身が監修した同展は、メゾンの歴史に対する彼の視点や美学が感じられるもの。その展示からは、カトルーが今なお、「サンローラン」のスタイルに影響を与え続ける存在であることが分かる。ヴァカレロに、彼女との関係や創業者との共通点からコレクションやショーへの考え方までを聞いた。

WWD:パリ、上海、東京と巡ってきたこの展覧会を監修するにあたり、こだわった点は?

アンソニー・ヴァカレロ(以下、ヴァカレロ):重要だったのは、ベティが持つ両義性、多才さ、現代性のすべてを見せること。作品探しは、現在の彼女を思い浮かべつつ、過去においても常に現代的だった彼女の魅力をピックアップしていった。それは冒険であり、誰かのパーソナリティーを探求する旅。また、自分らしくあることや(周りの)予想から自分を解放することを学ぶ時間でもある。根底にあるのは、「目立つこと、人と違うことを恐れるな」ということ。あなたが身につけるものの中で人々が最も嫌うものこそが、実はあなたの最も興味深い部分なのだから。

WWD:2018年には広告キャンペーンにもベティ・カトルーを起用したが、初めて会ったのはいつ頃?

ヴァカレロ:初めて会ったのは、(17年に)モロッコ・マラケシュにできたイヴ・サンローラン美術館のオープニング。どうなるか予想もつかなかったが、気楽でとても自然だった。親密なディナーを楽しみ、最後には二人とも本当に素でいられたと思う。お互い居心地悪く感じるであろうパパラッチされるような場面とは違い、落ち着いた雰囲気に包まれていたのが良かった。

WWD:カトルーは、イヴ・サンローラン、そしてブランドにとって欠かすことのできない永遠のミューズと言える。あなた自身もモデルやセレブリティーと親交が深いように見受けられるが。

ヴァカレロ:彼らは友人なので、「サンローラン」の友人。それぞれが持っている個性とアティチュードは、私やブランドと共鳴するものだ。それこそが、実は一番エキサイティングなこと。パーソナリティーが複雑であればあるほど、その個性を反映したワードローブに飛び込むのが面白い。幾重にも重なっている層を知ることは、際限のない魅力に溢れている。

WWD:クリエイティブ・ディレクター就任から6年以上が経った今、創業者への理解はどのくらいまで深まったと感じているか?また、「サンローラン」のクリエイションを率いる上で常に心掛けていることは?

ヴァカレロ:私は、常にイヴが興味を持ったり取り組んだりしていたことに関心を抱いていた。だから、「サンローラン」に加わった当初から、ずっと同じようなことに引かれ続けてきたのだと思う。「サンローラン」に対する私のビジョンは、何よりもその身のこなし、雰囲気、生き方といったアティチュードにあると考えている。そして、私はベティのようなイヴ自身に近い存在や、過去に「サンローラン」で働いていた人たちに囲まれているのが好きだ。(イヴの生涯のパートナーであった)ピエール・ベルジェ(Pierre Berge)に会った時、イヴの真似をしないように言われたが、実際、私はイヴ本人になるというよりも、あるいは全く別の人物になるというよりも、“通訳”のようだと感じている。歴史と戯れたいのは確かだが、過去に囚われたくはない。私が取り組んでいるのは、私自身のビジョン、そして「サンローラン」に対する私自身の考え方を反映することだ。

WWD:メンズウエアの要素をクリエイションに生かすのは、創業者にも通じる部分だと感じる。

ヴァカレロ:イヴは、マスキュリンな服とフェミニンな服の境界線を曖昧にすることを好んでいた。そして、彼はメンズウエアから多くの要素を借りることで、力強い女性のキャラクターを作り上げた。危うさがあり、極めてエレガントで信じられないほどモダン。そんなキャラクターは、私らしいウィメンズウエアをデザインする手法の一部でもあるので、守り続けたいと思っている。シャープなメンズテーラリングほど、シルエットにエッジと魅力をもたらすものはない。

WWD:「サンローラン」のショーは毎回、壮大なロケーションやドラマチックな演出に驚かされる。そこにはどんな想いが込められているのか?

ヴァカレロ:私にとってはストーリーを作り上げることであり、それぞれのコレクションはストーリーの一章のようなもの。コレクションそのものからロケーションや音楽、セット、イメージ、景色まで、ショーにまつわるあらゆる要素は夢を生み出すために構想されているし、そうされなければいけない。

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英音楽レーベル主宰のスティーブン・ジュリアン 音楽とファッションをつなげるクリエイティブ秘話

 ロンドン拠点の音楽レーベル「エープロン・レコーズ(Apron Records)」の中心人物、スティーブン・ジュリアン(Steven Julien)が来日した。ジュリアンは、ファンキンイーブン (FunkinEven)の名義でアーティストとしても活動しており、宇多田ヒカルの共同プロデューサーとしても知られるフローティング・ポインツ(Floating Points)が主宰するレーベル「エグロ・レコーズ(Eglo Records)」から過去に作品を発表。ヒップホップをルーツに持ち、ひとつのジャンルに縛られないエレクトロニックサウンドを得意とし、着々とファンを獲得してきた。最近では、「ロエベ(LOEWE)」2022年秋冬コレクションのティーザームービーで楽曲が使用され、「ナイキ(NIKE)」と「パタ(PATTA)」によるキャンペーンではオリジナル曲を提供している。

 音楽のみならず、彼が手掛ける「エープロン・レコーズ」のマーチャンダイズは、公式サイトにアップされると即完するアイテムがあるほど人気を博している。昨年には、「パレス スケートボード(PALACE SKATEBOARDS)」所属のプロスケーターであるルシアン・クラーク(Lucien Clarke)と、また今年には刺しゅうを展開する葵産業ともコラボレーションした。日本でも知名度をじわじわと広げており、今年10月には同レーベルのポップアップショップを渋谷パルコに期間限定でオープン。同時にジャパンツアーも敢行し、ジュリアンを筆頭に、ベネデク(Benedek)やジェイエムエス・コーサー(JMS Khosah)などのクルーは東京、大阪、福岡、沖縄にて公演を行った。

 ロンドンに戻ってからは、「シーイー(C.E)」とも親交の深い、ニューヨークのダンスミュージックレーベル「ライズ・レコーズ(L.I.E.S Records)」とイベントを共催している。

 日本を訪れたジュリアンに自身の音楽活動の軌跡からレーベルの今後の展望についてまで話を聞いた。

――まずは、音楽をスタートさせたきっかけを教えてください。

スティーブン・ジュリアン(以下、ジュリアン):子どものときに、ヒップホップのダンスクルーに所属していて、同じ仲間たちとラップクルーを結成したんだ。彼らは演奏することに興味があったけど、俺はトラック制作をしたいと思っていた。それで、ドラムマシーンやシンセサイザーを使って曲作りをするようになったよ。

――ということは、音楽的ルーツはヒップホップですか?

ジュリアン:初恋はそうだね。好きなアーティストはたくさんいる、例えばウータン・クラン(Wu-Tang Clan)かな。だからファッションもヒップホップのスタイル。今日しているネックレスは、ウータン・クランが実際にしていたものを手掛けたマンハッタンのトミー・ジュエルズ(Tommy Jewels)にオーダーしたんだ。

――そこから聴く音楽は変化していきましたか?

ジュリアン:そうだね。後々いろんなジャンルを聴いたことで、作る音楽のテイストもミックス感のあるものになっていった。今はエレクトロニックミュージックをやっているけど、ヒップホップのDIY精神を大切にしているよ。ヒップホップのサンプリングカルチャーと同じ感覚で、俺の作る音楽には、ソウルやジャズのエッセンスを自由に取り込んでいる。それは、俺のレーベル「エープロン・レコーズ」にも言えることだね。

――ジャンルに縛られないのが、あなたのレーベルの魅力ですよね。

ジュリアン:エレクトロニックミュージックのくくりだけど、これっていうタグはつけられないから、ジャンルを聞かれたら、“エープロン”って答えているね。今回のイベントに来ていた女の子たちが「普段はテクノもハウスも聴かないけど、今日のイベントは超クールだった」って言ってくれて。うれしかったけど、俺たちの音楽はテクノでもハウスでもないと思っているから、今日のイベントは“エープロン”だよって返答したよね(笑)。

音楽にも通じる「誠実さ」

――レーベルのコンセプトはありますか?

ジュリアン:スローガンは「Honest(誠実、正直であること)」。自分自身に正直であることとも言えるね。その基準は人それぞれだから、個性を賛美したいという点にもつながっていく。リリースしているアーティストは、みんな俺と似たようなものに興味や関心を寄せている仲間なんだ。音楽面で言うとしたら、アナログの機材にこだわっていることかな。

――「エープロン・レコーズ」は、あなたにとってどんな存在として捉えていますか?

ジュリアン:うーん、なんだろうね。俺自身だけど、それより大きなもので、自分がいなくなっても残ってほしいし、続いていってほしい。

――今回の来日では、渋谷パルコでポップアップショップを行いましたね。これはどんな経緯で企画したのでしょうか?

ジュリアン:日本限定のグッズを作りたいと思ったのが、最初のアイデアだよ。もともと葵産業とのコラボレーションは決まっていて、刺しゅうのフーディーを作ったり、限定のTシャツをデザインしたりしたよ。今回有名な商業施設でやることになったけど、それはどうでもいいこと。なんだろうな、偶然そうなったって感じかな。「エープロン」は、いつも流れに身を任せているんだ。あえて、そんなに計画しすぎないようにしている。風向きはいつも変わるから。

――マーチャンダイズのデザインはどのように手掛けているのですか?

ジュリアン:ほとんど俺のアイデアが中心だね。1990年代がベースになっているけど、未来的な感じ。アールデコの要素をミックスしたこともあるよ。今回の日本限定のTシャツは、50年代のマリファナの広告からインスピレーションを受けているんだ。ロゴは40〜50年代のデトロイトにあったクラシックカーの工場のフォントがイメージ。例えば、キャデラックとか。最近は、マーチャンダイズ部門を担当するメンバーが加わったから、ウェブサイトが立派になったし、メーリングリストも始めて、買いたい人がサインアップしたら購入できるような仕組みにしたんだ。「エープロン」のメインロゴは、ボイラー・ルーム(BOILER ROOM)とNTSレディオ(NTS Radio)のロゴをデザインした、アダム・ティックル(Adam Tickle)に依頼したよ。

――コラボレーションも精力的に行っていますね。ルシアン・クラークとタッグを組むことになったのはどのようにして?

ジュリアン:彼とは15年くらい前から友だちなんだ。パンデミック中にもっと仲良くなって、一緒にマーチャンダイズをつくることにしたよ。ロンドンのブランドやカルチャーに携わっている人はみんなどこかでつながっているんだ。

――「ロエベ」のキャンペーンでは、あなたの曲「Begins」が使用されましたね。

ジュリアン:キャンペーンのディレクターが、NTSで毎月やっている俺のラジオショーを聞いて連絡をくれたんだ。とある回で最初に流していた曲を使えないかと依頼があって、3カ月のライセンス契約を交わすことになった。今回のポップアップを行ったパルコの1階に「ロエベ」が入っていたのも、なんだか不思議な縁を感じたよ。「ナイキ」と「パタ」のキャンペーンでは、オリジナルの曲を作ったんだ。それがきっかけでキャンペーンやCMに俺の曲が使われる機会が増えた気がするね。

――そういったオファーが来たときは、どんな気持ちでしたか?

ジュリアン:キャペーンやCMにもっと使ってほしいと思っていたから純粋にうれしかったよ。そういう活動の方が、DJをするより今はやりたいことなんだ。とはいえ、今回の日本のショーはかなり楽しかった。実は過去に東京でDJをやったことがあるんだけど、あんまり観客とのつながりを感じられなかったんだ。けど、今回はロンドンにいるみたいな一体感があって、ショーはこうあるべきだ!と思ったね。

――では、最後に今後のリリースを教えてください。

ジュリアン:2つリリースがあるかな。1つは今年中にEPが出る予定、あとは来年にアルバムも出すつもり。今までで一番いい出来だと思っているよ。あと2024年にビッグなコラボレーションが決まっている。なんたって、2024年はレーベルの10周年アニバーサリーだからね。大々的なパーティーを予定しているよ!

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世界的調香師ジャン=クロード・エレナが語る、香水市場(前編)「コピーはすぐに消えてしまう」 【香水ジャーナリスト連載 Vol.4】

 「エルメス (HERMES)」の初代専属調香師として知られるジャン=クロード・エレナ(Jean-Claude Ellena)は現在、ビーガンフレグランスブランド「ル クヴォン メゾン ド パルファム(LE COUVENT MAISON DE PARFUMERIE 以下、ル クヴォン)」でオルファクティブディレクターを努める。若手調香師を監修する傍ら、2021年には自らが調香を手掛ける“シグネチャーコレクション”を発表し、売れ行きは好調だという。長年第一線で活躍し数々のブランドから名香を世に送り出してきたエレナ氏に、若手調香師たちとの仕事と、新作フレグランス “シグネチャー ベチバー”(100mL、税込2万3760円)に込めた思いについて聞いた。

――「ル クヴォン」では若手調香師を監修する立場でフレグランスの創作に携わっている。その思いは?

ジャン=クロード・エレナ調香師(以下、エレナ):若い調香師には開かれた未来があるにも関わらず、ブランドからのリクエストを厳守し、ビジネス的な条件を多く課され、マーケティングに基づいた香水を作る癖がついている。彼らと関わってそのことを強く感じ非常に悔しく思った。もっと自由にクリエーションしてほしい。大きな香水メーカーが発表するような類似性のある香水にはクリエーションを感じない。彼らには「僕と一緒に仕事をするときは自由だ。自由に創作して驚かせてほしい。僕の仕事は、君たちが自由に創作できるよう解放してあげることなんだから」と伝えている。

――メゾンやニッチブランドが増えて、自由なクリエーションがしやすくなったのでは?

エレナ:先日、フィレンツェで行われたニッチフレグランスの展示会に参加したが、創造的な香りはとても少なかった。約50%はどこかのブランドを想起するものだった。オリジナリティーが少ない香りを販売すれば、自分で自分の首を絞めることになる。そうしたブランドは大抵、2~3年で消えてしまう。そしてまた、同じような安易な考えで新たなブランドが作られているのが現状だ。

――これまで「ル クヴォン」では若手調香師を監修していたが、“シグネチャー コレクション”は自ら調香を手掛けた。どのような経緯と思いがあるか?

エレナ:「ル クヴォン」というメゾンは、香水に対して非常に情熱があり、香りに恋している人たちだ。彼らに「さらにクオリティーの高いものを作りなさい。そうすればファンはついてくる」と言ったら、「好きなようにやっていいからクオリティーの高いものをあなたが作ってくれませんか?」と言ってもらえたので、自分で作ることにした。「ル クヴォン」はすでにラグジュアリーなメゾンといえるが、香りにこだわることでもう1段階良いブランドにブラッシュアップできると思った。

「単一の香りの香水を初めてつくった」

――“シグネチャー コレクション”では昨年、“シグネチャー チュベローザ”、”シグネチャー ミモザ”、”シグネチャー アンブラ”を発売し、今年は“シグネチャー ベチバー”が加わった。テーマはどのように選んだ?

エレナ:現在の香水市場で「ル クヴォン」は、初めて単一の香りの香水“チュベローザ”や“ミモザ”をつくったブランドだ。香水の本来の姿、原点に戻ることで新しい出発をしようと考えて創作した。“ミモザ”は、私の住む家の前にある丘から、開花の頃のミモザが風に乗って香りを届けてくれた美しい光景を香りにした。“チュベローザ”は、私が自宅の庭に植えたのだが、8月の開花のときの午後8時から午前1時までの芳香の変化を表現している。“アンブラ”は、樹木の香りと不死の花といわれるイモーテルの香りを組み合わせた香水をつくりたいという思いから生まれた。私は常に香りの詩的な世界を表現している。自然の香りを再現しようとしたら、使う香料も自然のものがいいに決まっている。

――以前のインタビューで、若手調香師たちに「その香りで伝えたいことは何か」を質問すると言っていたが、“シグネチャー ベチバー”で伝えたいことは?

エレナ:私が香水をつくるときにいつも考えているのは、この香りがどんなストーリーを伝えているのか、香った人がすぐ分かるように明確に、シンプルであること。ストーリーが分かりにくい、ごちゃごちゃしているものはダメだ。“ベチバー”は、ブルターニュで三ツ星レストランのシェフをしている友人が、木の船に乗せてくれたときに、海の香りと木や縄の香りが女性向けベチバーに感じられたのがきっかけで生まれた。ベチバーという香料は男性向けのイメージがあるが、私は香水に関してジェンダーの差はないと思っている。マリ共和国の女性たちは、愛を交わす前にベチバーの根を煎じて飲む。すると汗からベチバーの香りが放たれるため、媚薬とされているという話もあるくらいだ。

――香料としてのベチバーはジャワ産やマダガスカル産などもあるが、ハイチ産にこだわりが?

エレナ:ジャワ産ベチバーは、レンズ豆のスープのような香りがするから使えない。マダガスカル産は、濡れた土の匂いがする。インド洋のレユニオン島でもベチバーが少し採れ、バラの香りがして良いものだが、少量しか採れず香料としては使いにくい。それに比べ、ハイチ産ベチバーはとてもウッディーで、自分の子供の頃を思い出す。マッチ棒の軸の匂いがするからだ。私はマッチをすったときの硫黄の香りが好きだった。特別にオーダーして作ってもらったバージョンの香料でハイチ産のベチバーを起用した。ベチバーから最初に香るトップノートは土の香りがするのでそれを10%削り、ウッディーな香りが残る香料にしてもらった。試作で5%、10%、15%と削ったものを作成してもらい、最も過不足ない数値を起用することにした。もしも男性向けの香水ならばこのように取り除くべきところはなかっただろう。


YUKIRIN
美容・香水ジャーナリスト
香水・香り関連商品と、ナチュラル&オーガニック美容分野に特化した記事を執筆。女性誌などのメディアで発信する。化粧品や香り製品のコンサルティングやイベントプロデュースなど幅広く活躍。「日本フレグランス大賞」エキスパート審査員、「イセタン フレグランス アワード2019」審査員などを務める

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馬場ふみかや江野沢愛美も愛用 20代デュオによるアクセサリーブランド「クリティカルラボ」 Youth in focus Vol.10

 U30の若者たちにフォーカスした連載「ユース イン フォーカス(Youth in focus)」10回目は、アクセサリーブランド「クリティカルラボ(CLITICAL:LAB)」にフォーカスする。

 「クリティカルラボ(CLITICAL:LAB)」は、とがった形状や複数のパールなど、近未来的な雰囲気を備えたイヤーアクセサリーを主軸とするブランドだ。2019年のブランド設立以降、年に1回のペースでコレクションをリリースし、自社ECや百貨店などでのポップアップで販売している。中心価格は1万〜2万5000円で、ポップアップには2日で300人以上が来場することもあり、過去のコレクション全てを購入する熱狂的なファンもいる。さらに、「ヴォーグ ジャパン(VOGUE JAPAN)」「シュプール(SPUR)」「エル・ジャポン(ELLE JAPON)」といった媒体でも掲載され、若年層のファッションアイコンである馬場ふみかや江野沢愛美らもプライベートで愛用する。

 ブランドを手掛けるのは、1998年生まれの森りこデザイナーと、97年生まれの坂本悠生ディレクターだ。森デザイナーはもともとコレクションブランドで服作りを学んでおり、「アクセサリーに関しては全くの素人だった」という。そんな彼女たちがなぜアクセサリーブランドを始め、どのように支持を広げていったのか。東京・中野のアトリエで話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):まずはブランドを始めた経緯を教えてください。

森りこ(以下、森):2018年、高校卒業のタイミングで、コレクションブランド設立を目標に上京してきました。最初は「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」「アンダーカバー(UNDERCOVER)」でインターンとして、服作りとブランド運営を勉強していました。すごくタメになる一方で、自分のアウトプットができていないなと坂本に相談してみたら、「何か作っちゃえばいいじゃん」とアドバイスをくれて。そこで思いついたのがアクセサリーブランドだったんです。

坂本悠生(以下、坂本):僕らはバンタンデザイン研究所大阪校で出会いました。僕は当時専門学校生で、森は高校生。彼女は学校全体のコンテストで最優秀賞を獲得するなど、校内では知られた存在でした。学校にこもってずっと作り続けていたタイプだったから、インターンをやりながらも手は動かし続けた方がいいなと思いました。

森:服作りのリファレンスとしてアクセサリーの素材は集めていて、尖った形状の近未来的なアクセサリーが好きでした。とはいえ、アクセサリー自体は作ったことがなく、完全に独学でのスタート。材料屋を調べて浅草橋に行って、気になるパーツを買い込んで、ユーチューブでパーツのつなぎ方を真似しながら作っていく、みたいな(笑)。どんどん好きなイメージを具現化していったら、「あ、やっぱりかわいい」って手応えを感じて。そこで、ファーストコレクションとして全16型を、BASEで販売し始めました。

坂本:18年の秋口にサイトを開設しました。大阪時代からかわいがってもらっていたスタイリストやフォトグラファーの先輩、同世代の友達が面白がってくれて、初月から売れました。当時はアイテムの単価が低かったし、利益は月5万円程度なんですけど。それでも、自分たちでものを作って、それが売れるのは、とてもうれしかったです。

WWD:当時は完全にハンドメードだった?

森:そうです。在庫はもたず、オーダーが入ったら材料を買って、自宅で黙々と生産する毎日。最初はインターンとブランドを掛け持ちながら、徐々に売り上げが安定して、ブランドで食べていけるようになったので、「クリティカルラボ」のみににシフトしました。

坂本:ハンドメードから量産に切り替えたのは20年から。手作りだと、どうしても品質がばらつくし、生産の数も限られる。ブランドの成長を見越して、思い切って工場と契約しました。

WWD:工場との契約は成長のきっかけになっている?

森:量産を外注したおかげで品質が安定し、まとまった売り上げも入るようになりました。その予算で、シルバー925で重厚感あるアイテムをはじめ、単価が高めのアイテムにも挑戦できるようになったのも良かった。洗練されたアイテムが増えたからか、当初は10〜20代のファンがメインでしたが、今では30〜40代、50代の女性まで広まりつつあります。

坂本:実はコロナも追い風になりました。イヤーカフって10代には認知されていたけど、30代以上には浸透していないアイテムだった。でも、コロナでマスクを着けるようになると、ピアスやイアリングはひもに引っ掛かるから、新しい選択としてイヤーカフに注目が集まるようになりました。

WWD:ブランディングで意識していることは?

森:SNS運用をかなり重視しています。一つ一つの投稿やストーリーズはもちろん、文章の一言一句まで2人で相談して作っています。最近はアートディレクターにも入ってもらって、ブランドの世界観を統一するよう最大限の投資をしています。

坂本:今、ブランド認知のきっかけはほとんどがSNSだと思う。それぞれがファッションアイコンをフォローして、その人の投稿で新しいブランドを見つけたり、好きなブランドに近いブランドをSNSで探したり。実際「クリティカルラボ」も、感度の高いユーザーが見つけてくれて、ポップアップの様子や着用画像を発信してくれるおかげで、広告費をかけなくてもオーガニックなファンを獲得できています。

WWD:コレクションは年に1回。物作りに集中できる一方で、お客さんに新鮮な情報を届けられないというデメリットはない?

森:コレクションとしてのリリースは年に1度ですが、不定期で新作を小出ししています。ストーリーズを使って数時間限定で販売したり、ポップアップで数量限定で扱ったり。

坂本:ストーリーズを使った販売って、インフルエンサーブランドではよくある手法で、顧客との距離も近く感じるいいアイデア。デザイナーズブランドではあまりやらないし、インフルエンサーブランドと同じやり方をしたくない人もいるけど、どちらも同じビジネスなので、参考になる点はある。僕は個人でキャスティングの仕事もしていて、インフルエンサーとの付き合いがあるから、そこで吸収したものを「クリティカルラボ」に還元しています。

WWD:ファッション媒体でも目にするようになった。

森:ブランド設立当初からファッションアイテムとして提案しているので、シューティングで使ってもらうのはすごくうれしいです。本来であればより多くの媒体で発信してほしいところですが、ブランドイメージもあるので、掲載先はかなり厳選しています。

坂本:モデルをこちらから指定する場合もあります。マスでの人気よりも、ファッションとして認知されているかどうかや、本人の感度の高さが大事。生意気かもしれないけど、それだけ影響力も大きいから、僕たちも妥協したくなくて。

森:卸先も厳選しているよね。通販のほかに卸もやっていて、新規の問い合わせを多くいただくのですが、売り上げがとれそうでも、ブランドの世界観が崩れそうなお店はお断りします。他ブランドのラインアップに共感できたり、店舗空間まで洗練されていたりして、親和性を感じるお店に絞っています。現在6アカウントで取り扱っています。

WWD:今後、アパレルも手掛けていく?

森:徐々に準備を進めています。やっぱりファッションに憧れて業界に入ってきたので、服は1つのゴールです。ただ、「クリティカルラボ」というブランドとは別のやり方を考えています。私自身の名前を公表するかも未定です。でも、絶対に服は届けたい。ゆくゆくは海外にも挑戦したいです。

坂本:きっと面白いブランドになるし、その実力もある。気長に待ってもらえるとうれしいです。

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伊スパークリングワイン、フランチャコルタが3年ぶりにイベントを開催 協会副会長に聞くその希少性

 イタリア発スパークリングワインのフランチャコルタ(FRANCIACORTA)は11月14日、3年ぶりに、「アンダーズ東京(ANDAZ TOKYO)」でイベントを開催した。“フランチャコルタ”とは、イタリアのコモ湖とガルダ湖の間の地域で生産される発泡ワインのこと。フランチャコルタ協会は、それら生産者による認知度アップ・販売促進目的の協会だ。同イベントを機に来日した、フランチャコルタ協会マウリツィオ・ザネッラ(Maurizio Zanella)=フランチャコルタ協会副会長兼「カ・デル・ボスコ(CA’ DEL BOSCO)」会長へ話を聞いた。

WWD:今回の来日の目的は?

マウリツィオ・ザネッラ=フランチャコルタ協会副会長兼「カ・デル・ボスコ」会長:以下、ザネッラ):日本におけるフランチャコルタのさらなる発展のために開催されるイベントに参加するためだ。

WWD:イベント開催の目的は?

ザネッラ:3年ぶりのリアルイベント開催だ。日本では、フランチャコタは約35年前から販促をしているが、協会では10年前に販促をスタートした。日本市場における、さらなるフランチャコルタの認知度アップが目的だ。

WWD:フランチャコルタの定義は?

ザネッラ:イタリア語で男性形の“イル・フランチャコルタ”はワインのこと、女性形の“ラ・フランチャコルタ”は、イタリアの地域のことを指す。コモ湖とガルダ湖の間の地域が“フランチャコルタ”でそこで生産されたブドウから作られる発泡酒がフランチャコルタだ。

WWD:シャンパーニュとの違いは?

ザネッラ:まず、ブドウの産地が異なる。使用するブドウの種類は似ていて、製法も瓶内の二次発酵で同じ。だが、ブドウが育つ緯度が、フランチャコルタとシャンパーニュでは違う。フランチャコルタは、シャンパーニュが製造されるランスよりもずっと南に位置している。だから、ブドウのポリフェノールをはじめとするフェノール類が成熟しており、よりボディーがありふくよかなワインができるし、シャンパーニュよりもシャープな味わいも期待できる。

WWD :フランチャコルタ協会の会員になるためにするべきことは?

ザネッラ:フランチャコルタという地域の名称は、行政のものではなく、明確な定義はない。その地域内でブドウを栽培する畑を持ち、ワイナリーがあることを申請すること。フランチャコルタという地域自体がシャンパーニュのランスの11分の1と小さい。当然、フランチャコルタの希少性はシャンパーニュより高い。生産量のほとんどが、イタリア国内で消費されるので、国外へ輸出できるのは15%以下と少ない。

WWD:現在、フランチャコルタの生産社数は?

ザネッラ:121社だ。日本に輸入されているのは約40社。今回のイベントには3社が参加している。

WWD:フランチャコルタのトップ市場は?

ザネッラ:1位は本国のイタリア。2位はスイス。イタリアに近いということもあり、フランチャコルタはよく知られており、シャンパーニュの代わりに飲まれる。イタリア国内でほぼ消費され、輸出量ナンバーワンはスイス、2位がアメリカ、3位が日本だ。日本市場でワイン消費量が少なかった約40年前にシャンパーニュと同時に販売され始めた。“食”と“酒”への要求が高い市場だから支持されているのだと思う。

WWD:今後の戦略は?

ザネッラ:フランチャコルタの品質をさらに高めること。そして、高いポジショニングをキープすることだ。ワイン作りは伝統、そして経験が大切。ワイン作りのための醸造所は買えるが、伝統は買えない。もともと、イタリアにおけるワインの製造は自家需要のためだった。瓶詰めされて販売されるようになったのは最近のことなんだ。

WWD:フランチャコルタとスプマンテやプロセッコの違いは?

ザネッラ:スプマンテはイタリアにおける発泡ワインの総称だが、フランチャコルタはそれには入らない。プロセッコは、ベローナ以外のベネト州などで広い産地で生産され、タンク内で2次発酵を行う発泡酒だ。

WWD:フランチャコルタにおけるサステナビリティの取り組みは?

ザネッラ:現在、畑の62%で有機栽培されている。二酸化炭素排出量の減少をフランチャコルタ協会主導で行っているが、特に目標は定めていない。プラスチックの使用に関しても、より持続可能なパッケージへの変更などについて各社が取り組んでいる。

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同じ年齢でも老化スピードが異なる⁉ その鍵を握る成分「プロテオグリカン」ってなに?

 同じ年齢でも、若々しく見える人もいれば年齢より上に見える人もいる。それは、老化の速度「ペース・オブ・エイジング(以下、POA)」が異なるから。このPOAがゆっくりの人は体も見た目も若さを維持でき、速い人は老化の進行が速い。ニュージランドの同じ町で生まれた同じ年齢の住民約1000人を26〜45歳まで追求してPOAを算出※1した研究※2によると、同じ1年でも速い人は2.44年分も老化が進み、遅い人は0.4年分しか老化が進んでいないことが判明。さらに、POAには遺伝要因が2〜3割、環境要因が7〜8割ほど関わっているという。つまり環境を整えることでいつまでも若く見える状態をつくることができるということ。POAがスローな人の大きな特徴に、見た目の若々しさや滑らかで弾力のある“艶肌”があるが、この“艶肌”づくりに注目したいのが「プロテオグリカン」という成分だ。

※1 : 免疫系、代謝系、歯科系など19種類の生体データを収集し、POAを算出
※2 : Maxwell L. Elliott et al., Nat Aging. 2021

美容成分を生み出す
線維芽細胞の数を維持することが
“艶肌”に重要

  “艶肌”は、表皮とその内側に存在する真皮がともに健康な状態であることで初めてかなう。表皮はキメを細かく整えることで肌を滑らかに見せる一方、真皮は肌にハリを生み出すからだ。真皮は、線維芽細胞とそこから生み出される美肌に欠かせないコラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチン、「プロテオグカン」などの成分から成り立っており、“艶肌”のベースとなる弾力やハリをつくる土台となっている。ただ、いずれの成分も加齢によって減少し、弾力やハリが失われていく。その根本的な対策が4つの美肌成分を生み出している線維芽細胞の数を維持して美肌成分を産出し続けること。それが外見の若々しさにもつながる。

ヒアルロン酸に匹敵する
保水能力を有する
「プロテオグリカン」

 その線維芽細胞から生み出される美容成分の中でも、美肌につながる成分として期待されているのが「プロテオグリカン」だ。「プロテオグリカン」は人間を含む全ての動物の体内に広く存在しており、細胞の増殖や軟骨再生の促進、保湿や抗炎症に作用する。皮膚においては弾力や潤いを生み出し、関節の軟骨ではクッションのような働きをする。その「プロテオグリカン」の注目すべき機能の一つが保水効果だ。「プロテオグリカン」の特徴的な構造が、スポンジのように水分を抱えるため、保水性に非常に優れており、その能力はヒアルロン酸に匹敵するほど。その肌への保水性・弾力性・潤滑性の高さを活かし、化粧品などへの「プロテオグリカン」応用が進んでおり、細胞の増殖や分化、免疫機構の調整にも深く関わっていることから、健康食品や医療分野などへの応用も進行している。

「プロテオグリカン」が、
“艶肌”の要である線維芽細胞の
増殖を促進

 線維芽細胞が美容成分を生み出していることは先に述べたが、「プロテオグリカン」は、線維芽細胞そのものの増加を促進する働きがあることが細胞試験によって認められている。細胞試験では、ヒトの正常な真皮線維芽細胞に、濃度50・100 μg/mLの「プロテオグリカン」を添加したところ、非添加の細胞に比べて、線維芽細胞の数が有意に増加した。「プロテオグリカン」が線維芽細胞に働きかけ増殖させたことで、コラーゲンとヒアルロン酸の産出も促進され、皮膚の潤い向上や弾力低下に効果的だと考えられる。

 体の内側から真皮に働きかけて、“艶肌”へと導く「プロテオグリカン」は多くの化粧品に活用されているが、より手軽に取り入れられる食品も続々と開発。青森では鮭頭部の鼻軟骨から「プロテオグリカン」の量産化を実現するなど、安定供給の体制も確立した。インナーケアでの「プロテオグリカン」を毎日の美容習慣にする動きが本格化している。

奈部川貴子美容アナリストに
聞く、
「プロテオグリカン」の活用法 

WWDJAPAN(以下、WWD):美容アナリストから見て、「プロテオグリカン」の魅力とは?

奈部川貴子美容アナリスト(以下、奈部川):「プロテオグリカン」は縁の下の力持ち的存在。美容成分としてのコラーゲンの役割は広く知られていると思うが、「プロテオグリカン」はその活躍を陰で支える敏腕マネージャーといったところ。実は以前から化粧品には多く採用されているが、細分化された名称が使われていることもあり、実力はしっかりあるのに存在が地味で脚光を浴びることがなかった。昨今はインナーケア商品も数多く開発されていることから、今後はネクストコラーゲンとして、その分野で注目されるのではないだろうか。

WWD:「プロテオグリカン」をインナーケアで取り入れることのメリットとは?

奈部川:肌のハリやたるみのケアに化粧品を用いるわけだが、基本、化粧品が働きかけるのは表皮のみ。真皮にまでアプローチするために、インナーケアで取り入れるのは賢い方法だと思う。今、美容医療ではハリやたるみの改善にフィラーを行うが、美容医療までは踏み込めない、でも化粧品のスキンケアだけでは不安という人がとても多い。プロテオグリカンをインナーケアで取り入れることで“飲むフィラー”になると思う。実際、私の施術サロン「KAOYOMIサロン」にも3年くらい愛飲されているお客様がいらして、施術していても確かなハリを感じる。

WWD:今後、「プロテオグリカン」に期待することは?

奈部川:さらに気軽にインナーケアに活用するために、サプリというよりグミやビーンズになっていたり、チョコレートに含まれていたりなどフードライクなものが登場するといい。最近は、 “スキンテレクチャルズ” “成分党”などと呼ばれている成分に強い関心を持つ若い世代が増えている。そういう人達にもヒットすることを期待したい。

TEXT:YOSHIE KAWAHARA

問い合わせ先
一丸ファルコス
contact@ichimaru.co.jp

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同じ年齢でも老化スピードが異なる⁉ その鍵を握る成分「プロテオグリカン」ってなに?

 同じ年齢でも、若々しく見える人もいれば年齢より上に見える人もいる。それは、老化の速度「ペース・オブ・エイジング(以下、POA)」が異なるから。このPOAがゆっくりの人は体も見た目も若さを維持でき、速い人は老化の進行が速い。ニュージランドの同じ町で生まれた同じ年齢の住民約1000人を26〜45歳まで追求してPOAを算出※1した研究※2によると、同じ1年でも速い人は2.44年分も老化が進み、遅い人は0.4年分しか老化が進んでいないことが判明。さらに、POAには遺伝要因が2〜3割、環境要因が7〜8割ほど関わっているという。つまり環境を整えることでいつまでも若く見える状態をつくることができるということ。POAがスローな人の大きな特徴に、見た目の若々しさや滑らかで弾力のある“艶肌”があるが、この“艶肌”づくりに注目したいのが「プロテオグリカン」という成分だ。

※1 : 免疫系、代謝系、歯科系など19種類の生体データを収集し、POAを算出
※2 : Maxwell L. Elliott et al., Nat Aging. 2021

美容成分を生み出す
線維芽細胞の数を維持することが
“艶肌”に重要

  “艶肌”は、表皮とその内側に存在する真皮がともに健康な状態であることで初めてかなう。表皮はキメを細かく整えることで肌を滑らかに見せる一方、真皮は肌にハリを生み出すからだ。真皮は、線維芽細胞とそこから生み出される美肌に欠かせないコラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチン、「プロテオグカン」などの成分から成り立っており、“艶肌”のベースとなる弾力やハリをつくる土台となっている。ただ、いずれの成分も加齢によって減少し、弾力やハリが失われていく。その根本的な対策が4つの美肌成分を生み出している線維芽細胞の数を維持して美肌成分を産出し続けること。それが外見の若々しさにもつながる。

ヒアルロン酸に匹敵する
保水能力を有する
「プロテオグリカン」

 その線維芽細胞から生み出される美容成分の中でも、美肌につながる成分として期待されているのが「プロテオグリカン」だ。「プロテオグリカン」は人間を含む全ての動物の体内に広く存在しており、細胞の増殖や軟骨再生の促進、保湿や抗炎症に作用する。皮膚においては弾力や潤いを生み出し、関節の軟骨ではクッションのような働きをする。その「プロテオグリカン」の注目すべき機能の一つが保水効果だ。「プロテオグリカン」の特徴的な構造が、スポンジのように水分を抱えるため、保水性に非常に優れており、その能力はヒアルロン酸に匹敵するほど。その肌への保水性・弾力性・潤滑性の高さを活かし、化粧品などへの「プロテオグリカン」応用が進んでおり、細胞の増殖や分化、免疫機構の調整にも深く関わっていることから、健康食品や医療分野などへの応用も進行している。

「プロテオグリカン」が、
“艶肌”の要である線維芽細胞の
増殖を促進

 線維芽細胞が美容成分を生み出していることは先に述べたが、「プロテオグリカン」は、線維芽細胞そのものの増加を促進する働きがあることが細胞試験によって認められている。細胞試験では、ヒトの正常な真皮線維芽細胞に、濃度50・100 μg/mLの「プロテオグリカン」を添加したところ、非添加の細胞に比べて、線維芽細胞の数が有意に増加した。「プロテオグリカン」が線維芽細胞に働きかけ増殖させたことで、コラーゲンとヒアルロン酸の産出も促進され、皮膚の潤い向上や弾力低下に効果的だと考えられる。

 体の内側から真皮に働きかけて、“艶肌”へと導く「プロテオグリカン」は多くの化粧品に活用されているが、より手軽に取り入れられる食品も続々と開発。青森では鮭頭部の鼻軟骨から「プロテオグリカン」の量産化を実現するなど、安定供給の体制も確立した。インナーケアでの「プロテオグリカン」を毎日の美容習慣にする動きが本格化している。

奈部川貴子美容アナリストに
聞く、
「プロテオグリカン」の活用法 

WWDJAPAN(以下、WWD):美容アナリストから見て、「プロテオグリカン」の魅力とは?

奈部川貴子美容アナリスト(以下、奈部川):「プロテオグリカン」は縁の下の力持ち的存在。美容成分としてのコラーゲンの役割は広く知られていると思うが、「プロテオグリカン」はその活躍を陰で支える敏腕マネージャーといったところ。実は以前から化粧品には多く採用されているが、細分化された名称が使われていることもあり、実力はしっかりあるのに存在が地味で脚光を浴びることがなかった。昨今はインナーケア商品も数多く開発されていることから、今後はネクストコラーゲンとして、その分野で注目されるのではないだろうか。

WWD:「プロテオグリカン」をインナーケアで取り入れることのメリットとは?

奈部川:肌のハリやたるみのケアに化粧品を用いるわけだが、基本、化粧品が働きかけるのは表皮のみ。真皮にまでアプローチするために、インナーケアで取り入れるのは賢い方法だと思う。今、美容医療ではハリやたるみの改善にフィラーを行うが、美容医療までは踏み込めない、でも化粧品のスキンケアだけでは不安という人がとても多い。プロテオグリカンをインナーケアで取り入れることで“飲むフィラー”になると思う。実際、私の施術サロン「KAOYOMIサロン」にも3年くらい愛飲されているお客様がいらして、施術していても確かなハリを感じる。

WWD:今後、「プロテオグリカン」に期待することは?

奈部川:さらに気軽にインナーケアに活用するために、サプリというよりグミやビーンズになっていたり、チョコレートに含まれていたりなどフードライクなものが登場するといい。最近は、 “スキンテレクチャルズ” “成分党”などと呼ばれている成分に強い関心を持つ若い世代が増えている。そういう人達にもヒットすることを期待したい。

TEXT:YOSHIE KAWAHARA

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ウィメンズを復活 進化する創業150周年のフレンチラグジュアリー「エス・テー・デュポン」

 創業150周年を迎えた「エス・テー・デュポン(S.T. DUPONT)」は、今でこそライターやペンを扱うラグジュアリーブランドとして名をはせているが、その原点はトランクやバッグなどのレザーアイテムだった。ナポレオン3世に始まりジャクリーン・ケネディやレオナルド・ディカプリオなどそうそうたるセレブリティーに愛されてきた「エス・テー・デュポン」は、その長い歴史からヒントを得て、さらに進化する。

「誰でも手に入れられるようでは
ラグジュアリーとは言えない」

WWD:創業者のシモン・ティソ・デュポンは、ナポレオン3世のカメラマンから転身して「エス・テー・デュポン」を立ち上げた。創業当初はレザーグッズブランドだったが、どういった経緯で現在の主力アイテムであるライターやペンを扱うようになったのか。

アラン・クルヴェ=エス・テー・デュポン社長(Alain Crevet以下、クルヴェ):シモンは、1870年に勃発した普仏戦争でスタジオが燃え、仕事を失うも、村でレザーを生産していたことからレザーケースやトランクをデザインするようになった。彼のトランクは、皇帝や皇后をはじめとする上流階級に気に入られて成功した。ライターを取り扱うようになったのは、1941年にパリを訪れたパティアラのマハラジャから、100人の妻のために100個のクラッチバッグと、バッグに合うゴールド製のライター100個の製作を依頼されたことがきっかけだった。また、73年には、ジャクリーン・ケネディからの依頼で彼女が愛用している特注ライターに合うペンを製作した。ライターもペンもそれまで扱ったことはなかったが、顧客の要望に応えた結果、現在の主力アイテムが生まれ、ビジネスが拡大した。

WWD:「エス・テー・デュポン」が大切にしていることは。

クルヴェ:皇帝や皇后のためにレザーグッズを作り始めたのがこのブランドの原点であり、その後もオードリー・ヘップバーンやパブロ・ピカソ、アンディ・ウォーホル、レオナルド・ディカプリオなど、特別な才能とチャレンジングな精神を持つ多くのセレブリティーの期待に応えてきた。だからこそ、“特別な人のために特別なものを”というのがわが社のモットーだ。

WWD:クルヴェ社長の考える“ラグジュアリー”とは。

クルヴェ:1シーズンで消費してしまうようなものは真のラグジュアリーではないと考えている。私にとってのラグジュアリーとは、“永続性”であり、“万人が手にできないもの”だ。例えば「エス・テー・デュポン」のペンは、金やプラチナなどの貴金属を使用し、ラッカー塗装を施している。60時間かけて全て手作業で作っているこのペンは、少々火であぶっても燃えないし、少しの高さから落としても壊れず、50年100年と使い続けることができる。「エス・テー・デュポン」こそ、真のラグジュアリーだ。

WWD:昨今は“インクルーシブ”であることがブランドに求められがちだが、“エクスクルーシブ”であることがラグジュアリーの条件だと考える?

クルヴェ:私は人が好きだし、インクルーシブという考え方も重要だと思う。しかし、ラグジュアリーとは、他人とは異なるものを求める人のためにある。ラグジュアリーブランドがインクルーシブであるかのように振る舞うのは必ずしも正解ではないし、高級ライターは万人のためのものではないと恐れずに言うべきだ。

原点からヒントを得た
「ウィメンズの復活」

 
WWD:150周年を迎えて、記念アイテムやイベントが目白押しだ。

クルヴェ:創業150周年を記念したアイテムは、喜びにあふれた150年の歴史をその色や形で表現している。「エス・テー・デュポン」のライターの特徴である点火するときの“クリングサウンド”も、幸せや喜びを体現する音色だ。アニバーサリーイヤーの締めくくりとして、フランスの工房に眠っていたアーカイブの展示と販売を行う。東京では2023年2月に同イベントを開催する予定だ。展示・販売するビンテージライターの中には80年以上昔に作られたものもあるが、その全てが今でも使用できる状態のものだ。

WWD:今後の戦略や目標は。

クルヴェ:これまでの歴史に立ち返り、ヘリテージを守っていくことも大切だが、未来について考えることも重要だ。これらを両立すべく、ウィメンズカテゴリーの復活と新規出店を行う。さらに、売上高を5年以内に倍増させるつもりだ。

WWD:ウィメンズカテゴリーの復活とは。

クルヴェ:皇后のトランクを作ったのがブランドの原点であり、1950年代にはオードリー・ヘプバーン、70年代にはジャクリーン・ケネディが顧客だったように、かつての「エス・テー・デュポン」には女性の顧客が多くいたが、現在のメインの顧客層は男性だ。今後は原点に立ち返り、ウィメンズカテゴリーを復活させ、女性が欲しいと思うアイテムも展開していく。ヒントはアーカイブに残されているから、そのエッセンスを入れながらも新しい「エス・テー・デュポン」のウィメンズを作りたい。ウィメンズカテゴリーは女性だけのものではなく、男性も使えるようにユニセックスなデザインを目指している。23年秋にはお披露目したい。

WWD:誰がデザインを担当している?

クルヴェ:少人数の特別チームを作り、女性が使用することを念頭に置いてレザーグッズやクラッチバッグのデザインを練っているところだ。チームのメンバーはほぼ全員が女性で、インハウスの若いデザイナーに加え、外部からもデザイナーを招聘した。中には複数のラグジュアリーブランドで経験を積んだ者もいる。

WWD:ウィメンズの展開に合わせて新規出店を行う?

クルヴェ:現在は男性の顧客が多いため、必然的にメンズセクションに出店しているが、このプロジェクトを効果的に展開できるよう、女性客が多く集まる場所にも出店したいと考えている。「エス・テー・デュポン」にとって、日本はフランスに次いで2番目に大きいマーケット。メンズもウィメンズも展開できる規模の店舗を出店することを目指し、日本への投資を継続する。

HOTEL PARTICULIER Collection

 創業150周年を記念し、パリの本店をモチーフにしたボールペンとライターのコレクション“ホテル パルティキュリエ”を発売する。かつては皮革から貴金属、エナメル、彫刻まで、18種類もの職人がここで商品を作っていた。ライターはおよそ70個ものパーツで構成し、600におよぶ工程を経て製作。美しいクリング音が特徴の“ライン2 クリング”タイプ。プラチナとゴールドプレートシルバー製。ライターは税込58万4100円。万年筆・ボールペンセットは税込44万9900円。

MONTECRISTO Collection

 創業150周年記念の“モンテクリスト”コレクションは、ハバナ・シガーの有名ブランド「モンテクリスト」とのコラボーションだ。「モンテクリスト」のロゴが描かれたライターとシガーカッター、万年筆をそろえる。夕焼け空を思わせるグラデーションラッカーは、アレクサンドル・デュマ作「モンテ・クリスト伯」がインスピレーション源。ライターは税込21万2300円、シガーカッターは税込3万800円、万年筆は税込23万3200円。

TEXT : YU HIRAKAWA
問い合わせ先
エス・テー・デュポン ジャポン
03-5549-7420

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1位は、「ルイ・ヴィトン」が一粒万倍日に向けて日本限定カラーの新作財布を発売| 週間アクセスランキング TOP10(11月10〜16日)

週間アクセスランキング TOP10(11月10〜16日)

「WWDJAPAN」 ウイークリートップ10

 1週間でアクセス数の多かった「WWDJAPAN」の記事をランキング形式で毎週金曜日にお届け。
今回は、11月10(木)〜 16日(水)に配信した記事のトップ10を紹介します。

 「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントでも、毎週土曜日に【週間アクセスランキング】を配信開始。ファッション&ビューティ業界のニュースはもちろん、コレクションのルック、パーティーやストリートのスナップ、ライフスタイル情報など、幅広いジャンルの注目トピックを週3回お届けします。今すぐ「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントを[友だち追加]して、最新トレンドやファッション&ビューティ業界で注目されているトピックをチェックしよう。
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- 1位 -
「ルイ・ヴィトン」が11月16、17日の一粒万倍日に向けて日本限定カラーの新作財布を発売

11月15日公開 / 文・三澤 和也

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は11月16、17日の一粒万倍日(“ひと粒の籾[もみ]が万倍にもなって実る”といわれる開運日)に向けて、日本限定カラーの新作財布を発売した。

> 記事の続きはこちら

- 2位 -
「アンダーカバー」と「リーバイス」がコラボ ビンテージのデニムを再構築した6型を発売

11月10日公開 / 文・福永千裕

 「アンダーカバー(UNDERCOVER)」と「リーバイス(LEVI’S)」は、コラボコレクションを11月11日に発売する。ラインアップするのは、アメリカ製の「リーバイス」のデニムと日本製の「アンダーカバー」のパーツを組み合わせたジャケットやコート、パンツの6型。同コレクションは「アンダーカバー」の一部店舗と公式オンラインストア、「リーバイス」の原宿フラッグシップストアで取り扱う。

> 記事の続きはこちら

- 3位 -
「口だけ出されるのは嫌だった」 マッシュ近藤社長が株式の過半を手放す理由

11月15日公開 / 文・五十君 花実

 マッシュホールディングス(近藤広幸社長、以下マッシュHD)は12月末までに、米投資ファンドのベインキャピタルに株式を譲渡すると発表した。近藤社長は再出資し、株式保有比率はベインキャピタルが約6割、近藤社長が約4割となる。「3〜5年以内に上場を目指す」(近藤社長)ためのパートナーシップだが、創業社長が株の過半を手放すことには驚きも大きい。ファンド側も当初は過半を保有することまでは考えていなかったという。真意は何なのか、近藤社長に聞いた。

> 記事の続きはこちら

- 4位 -
マッシュがベインキャピタルに2000億円で株式売却 「3〜5年後の上場目指す」

11月15日公開 / 文・五十君 花実

 マッシュホールディングス(近藤広幸社長、以下マッシュグループ)は株式上場を視野に、投資ファンドのベインキャピタルに株式の過半数を譲渡する。「パートナーシップによって海外事業の成長を加速させ、管理部門などのサポートも受ける。3〜5年後に上場を目指す」と近藤社長は話す。12月末までに、近藤社長が保有している株式をベインキャピタルに売却する。

> 記事の続きはこちら

- 5位 -
マッシュHD22年8月期は売上高1000億円の大台突破 主力ファッションブランドが軒並み2ケタ増収

11月15日公開 / 文・本橋 涼介

 マッシュホールディングス(HD)の2022年8月期は、売上高が前期比14%増の1023億円で、同社としては初めて1000億円を突破した。営業利益は98億円だった。売上高の約8割を占めるファッション事業の主力ブランドが軒並み2ケタ増収と好調で、業績を大きくけん引した。事業子会社マッシュスタイルラボが運営するファッション事業の売上高は前期比18%増の795億円。基幹ブランドの「ジェラート ピケ(GELATO PIQUE)」は同15%増の276億円で、コロナ前の19年8月期との比較でも72%増と伸ばした。

> 記事の続きはこちら

- 6位 -
「ナイキ」の人気スニーカー“エア ジョーダン 1 シカゴ”が7年ぶり4度目の復刻

11月11日公開 / 文・WWD STAFF

 「ナイキ(NIKE)」は、1985年に発表したスニーカー“エア ジョーダン 1(AIR JORDAN 1)”の人気カラー“シカゴ(CHICAGO)”を復刻し、11月19日に「ナイキ」の公式アプリ「SNKRS」などで発売する。価格は2万900円(税込、以下同)。

> 記事の続きはこちら

- 7位 -
ユニクロが1500人のスタッフに調査した人気商品ランキングを発表 この冬ヒットするアウターは?

11月16日公開 / 文・福永千裕

 ユニクロは、全国のスタッフ約1500人が選んだ2022年秋冬の人気商品ランキングを発表した。ランキングではウィメンズ部門とメンズ部門でそれぞれトップ5を決定した。さらに、この冬おすすめのアウターや隠れた名品も調査し、スタッフに支持される商品を公開した。

> 記事の続きはこちら

- 8位 -
「マルニ」が三越伊勢丹オンラインストアで“マルニ マーケット” 人気バッグの新色を先行販売

11月14日公開 / 文・三澤 和也

 「マルニ(MARNI)」は11月17日12時30分から20日23時59分まで、三越伊勢丹オンラインストアにポップアップストア“マルニ マーケット”をオープンする。

> 記事の続きはこちら

- 9位 -
115周年を迎える「コンバース」がロゴを一新

11月16日公開 / 文・三澤 和也

 「コンバース(CONVERSE)」は2023年に115周年を迎えるにあたり、ロゴをリニューアルする。

> 記事の続きはこちら

- 10位 -
売らない店「シーイン トーキョー」、静かなオープン 行列は100人

11月13日公開 / 文・横山 泰明

 グローバルSPAブランド「シーイン(SHEIN)」の常設のショールーミング店舗「シーイン トーキョー(SHEIN TOKYO)」が東京・原宿に本日13日、オープンした。11時の開店時にはテレビや新聞などの多くのメディアが詰めかける一方で、行列は約100人で用意していた整理券配布も行わなかった。当日には4000人が、翌日にも6000人が行列を作った大阪店とは対照的に静かなオープンとなった。関係者は「ショールーミング型ということが認知されたことが大きい。ゆっくり商品を見てほしい」という。

> 記事の続きはこちら

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1%の残在庫をアートに昇華 マッシュが韓国の現代アーティストと作品制作

 マッシュホールディングス(HD)はこのほど、売れ残りの在庫商品をアートとして昇華する取り組み「サステナブルアートプロジェクト」を始動した。その第一弾として、韓国の現代アーティストのチェ・ジョンファ氏とアパレル、靴などを再利用したモニュメントを制作した。同社の顧客向けチャリティーセールイベント「マッシュパークプロジェクト」の開催期間中(11月18〜19日)、会場の東京・麹町のマッシュHD本社2階で展示している。

 「スナイデル(SNIDEL)」「フレイ アイディー(FRAY I.D)」などのワンピースやスカート、バッグを塔のように積み上げたり、パンプスやサンダルを吊るして環状に巻き上げたりと、静と動の抑揚を効かせたアートが並ぶ。チェ氏は「(マッシュの倉庫にある)材料を自由に使ってアート作品を作れることは刺激的だった」と振り返り、作品のコンセプトを問うと「100年先も残る作品には、説明はいらないものだ」と自信をのぞかせた。

 チェ氏は1961年、ソウル生まれ。ダイナミックな色使いと造形による作風が特徴でサステナブル素材による作品にも取り組んでおり、2005年ヴェネツィア・ビエンナーレ韓国代表作家、18年平昌パラリンピックのアートディレクターを務めた。

 プロジェクトの構想期間はおよそ3年。近藤広幸社長がタイ・バンコクの美術館で、不要な日用雑貨を使い壮大なアートに仕上げるチェ氏の作品を目にし、「サステナビリティという概念を、美しく、楽しいものとして伝えるとはこういうことかと、感銘を受けた」ことが協業のきっかけになった。

 作品は一部をマッシュHD本社に残し、それ以外は各地のアウトレット店舗などに設置・巡回する。「アートは従業員にはもちろん、目に触れた人たち、特に子供たちの感性に訴え、記憶に残るものになればうれしい」と話した。

 同社のファッション事業において、セール販売やアウトレットでも最終消化できない商品は全体の約1%。これを廃棄せず新しい価値を吹き込む手段として、今後もプロジェクトの継続実施を視野に入れる。

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ケリングのキーマンが語る循環 永遠の価値の創出・技術革新・土壌

 サステナビリティ先進企業として知られるケリング(Kering)。傘下ブランド「グッチ(GUCCI)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「アレキサンダー マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」などからは続々と、着実で、時にユニークなサステナビリティ施策が発表されている。その支援を行っているキーマンの一人、ジェラルディン・ヴァレジョ(Geraldine Vallejo)=サステナビリティ・プログラム・ディレクターにケリングが目指すサーキュラリティについてオンラインで話を聞いた。

WWD:ケリングが考えるサーキュラリティとは?

ジェラルディン・ヴァレジョ=サステナビリティ・プログラム・ディレクター(以下、ヴァレジョ):われわれのアプローチは、価値があり、長持ちする製品を作り、その価値をライフサイクルを通じて維持し続けること。それは、耐久性があり、修理ができ、再利用できるようにデザインされ、永遠に価値を保ち、第2、第3の人生でもずっと使用してもらえる製品を意味します。また、適正量を生産することは、循環のループを低速化することにもつながります。AIを用いて販売量を予測し、過剰在庫を回避しています。生産に関しては、再生型の資源を用い、生産工程で危険な化学物質を使わないことを重視しています。

 サーキュラリティは、私たちに革新をもたらす機会だと考えています。そもそもサーキュラリティは、私たちにとって新しい考え方で、新しいクリエイティビティでもあり、ノウハウでもあり、高品質なモノを作るということでもあります。

WWD:サーキュラリティ実現に向けた具体的な実践例は?

ヴァレジョ:ケリングのブランドにはリセールプログラムがあり、「アレキサンダー・マックイーン」や「バレンシアガ」は二次流通のプラットフォーマーであるヴェスティエール・コレクティブ(Vestiaire Collective)やリーフラント(REFLAUNT)をパートナーとして、同プログラムを展開しています。また、「グッチ」ではヴィンテージアイテムを丹念に修繕し、「グッチ」の実験的なオンラインスペース“ヴォールト(Vault)”内で再販しています。クリエティブ・ディレクターとグッチの専任アーキビストによって厳選されたヴィンテージアイテムのコレクションで、職人たちによって復元され新たな命が与えられたアイテムたちです。

 商品を(サーキュラリティの)ループ内にとどめ、サーキュラリティへのアプローチに顧客にも加わってもらおうというアイデアであり、同時に新しい顧客にも届く方法でもあります。

 大切なのは、われわれが環境に与えるネガティブな影響を減らし、天然資源を枯渇させることなく、会社にとっても顧客にとっても価値を生み出し続けることなのです。

WWD:「バレンシアガ」や「グッチ」ではデジタルファッションやメタバースなど非物質化へのアプローチも始めている。

ヴァレジョ:メタバースやデジタルは探求しているところです。デジタルユニバースの実際の影響やデジタルファッションの(負荷の)計測に関してもより多くの方法や研究を探っています。また、サンプル制作においては、素材が節約できる方法を確立しています。

WWD:「土壌を枯渇させたらサーキュラリティが実現しない」という考えから、環境再生型農業にも力を入れているとか。

ヴァレジョ:われわれラグジュアリーブランドは、コットン、シルク、ウール、レザー、カシミヤなど天然素材を多く使います。もし正しい方法で生産されれば自然にとっても土にとっても有益になり得ます。そのために、サプライチェーンの初期段階である農場や地域で適切に実践されていることを確実にしなければなりません。環境NGOであるコンサーベーションインターナショナル(Conservation International)とパートナーシップを組み、自然再生基金を立ち上げました。ファッションやラグジュアリーファッションの鍵となる材料のサプライチェーンで100万ヘクタールを再生するというものです。具体的には農家や牧場主を支援し、自然、人、動物と調和した農業へアプローチしています。有機物や生物多様性を回復できれば、その過程で炭素を土壌に閉じ込めることができます。また、土地や水域を回復し、動物福祉を改善させる地域密着型の農業を推進しています。農家自身もよりよい生活を送ることができるようにもサポートしています。この方法を確実にし、さらに規模を拡大していきたい。

WWD:ケリングはスタートアップ企業とのパートナーシップも重視している。

ヴァレジョ:彼らの力がなければサステナビリティは達成できないと考えています。このまま同じようにビジネスを続けると、目標は達成できません。スタートアップ企業には、他の産業の技術を応用してファッション産業に活用する力もあります。今、われわれが焦点を当てているのは、新素材、サーキュラリティとアップサイクリング、染色、プリンティング、フィニッシングなどの加工とトレーサビリティ(追跡可能性)です。

 もっとも将来有望なイノベーションのひとつが、代替素材です。例えば、ラボで育ち、レザーの特性に似ている材料を開発するビトロラボ(VitroLabs)に投資しましたし、マイセリウム(キノコの菌糸体)にも注目しています。

WWD:「バレンシアガ」が2022-23年秋冬に“エッファ(EPHEA)”という菌糸体ベースの材料を用いたコートを発表した。

ヴァレジョ:イタリアのSQIMというスタートアップと開発しました。量や厚みなど均質性を実現し、ここまでハイクオリティなものはファッション分野では初めてではないでしょうか。彼らは素材を、われわれはなめし技術を提供しました。イノベーションと受け継がれてきた技術を組み合わせ、そして「バレンシアガ」との幾度とないやりとりで実現しました。開発には1年以上かかり、素材のコアな部分にはプラスチックも合成物質も使っていません。それこそがわれわれや「バレンシアガ」にとって重要なポイントでした。ただ、一つだけ透明性という意味でお伝えすると、通常レザーには1mm以下の薄いコーティングがされていますが、そこには合成物質を使っています。

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ガレがボトルに描いたシャンパーニュ「ペリエ ジュエ」のアネモネが120周年 第8代目最高醸造責任者に聞くアートと自然、ワインの共生

 フランス発シャンパーニュメゾン「ペリエ ジュエ(PERRIER JOUET)」といえば、ボトルに描かれたジャパニーズ・アネモネがトレードマークだ。そのアネモネは、アール・ヌーヴォーを代表するガラス作家のエミール・ガレ(Emile Galle)によるものだ。それが描かれてから、今年は120周年を迎えた。周年を記念し「ペリエ ジュエ」“ベル エポック 2013 アニバーサリー エディション”が登場。7代目最高醸造責任者のエルヴェ・デシャン(Herve Dechamp)と8代目最高醸造責任者のセブリーヌ・フレルソン(Severine Frerson)の4本の手でつくられた貴重なものだ。ボトルのデザインは、オーストリア・ウィーンを拠点にするデザインデュオのミシャー‘トラクスラーが担当。ブドウ畑の70種類もの生き物が鮮やかに共生している姿が描かれている。イベントのために来日した8代目最高醸造責任者であるフレルソンに、「ペリエ ジュエ」のアイデンティティーやDNAについて聞いた。

WWD:来日の目的は?

セブリーヌ・フレルソン=ペリエ ジュエ8代目最高醸造責任者(以下、フレルソン):ガレがボトルに描いたアネモネの120周年を祝うイベントに参加するため。クライアントと会う目的もある。だが、イベントによる新しい出会いを大切にしたい。

WWD:「ペリエ ジュエ」が他のシャンパーニュメゾンと違う点は?

フレルソン:まず、アーティスティックであること。アートと自然、ワイン造りの共生に尽きる。「ペリエ ジュエ」はピエール・ジュエ(Pierre Jouet)により1811年に創業し、妻がアンバサダー的な存在だった。彼女は、芸術に情熱を注ぎ館に多くの人を招いていた。ピエールも息子のシャルルも植物学者で、温室でオレンジなどを栽培して植物の病気の研究をしていた。そこで、天候が良くなくても、ブドウの栽培に影響しない畑をつくれるように尽力した。また、世代から世代へ受け継がれるシャンパーニュで、1825年のキュベが最も古いものだ。われわれならではの、シャルドネのフローラルな香りが特徴だ。

WWD:ガレにボトルのデザインを依頼した経緯は?

フレルソン:創業者の息子の甥であるオクターブ・ガリスがガレに「ペリエ ジュエ」の印象で描いてほしいと依頼したのが発端だ。ガレは、「ペリエ ジュエ」のシャンパーニュのエレガントな繊細さ、フローラルな点をアネモネで表現した。

WWD :アネモネのボトルがシグニチャーになった理由は?

フレルソン:1902年にガレによりデザインされたボトルは、大戦を経て一時忘れられていたが、大戦後に復活した。

WWD:「ペリエ ジュエ」がアートとのコラボレーションに積極的な理由は?

フレルソン:アートを通してジャンパーニュを再解釈するのがわれわれのDNA。自然との共生をテーマにした活動を行なっている。

WWD:「ペリエ ジュエ」で行なっているサステナビリティの活動は?

フレルソン:ブドウ畑の生物多様性を大切にしており、ブドウ栽培の列の間にクローバーやシリアルなどを栽培している。それにより、ブドウに自然に栄養が行き渡るようにしている。麦などの穀物系もテロワールには植えている。ブドウの収穫後の9月には、さまざまな種を蒔いて、翌年の5月ごろに育ったものを土に倒し、栄養を与えるようにしている。また、バイオマスの観点から養蜂も行なっている。

WWD:シャンパーニュの楽しみ方は?

フレルソン:保管方法が大切。日光を避けて、温度差の少ないところで保管するのが重要だ。アペリティフでは8~10℃、食事は10~12℃が適する。グラスは「ベル エポック」のアロマが楽しめるようなものが理想だ。グラスは、洗剤を使わずに熱湯で洗い、布でよく拭くべき。そうすれば。シャンパーニュの泡立ちを倒しめる。シャンパーニュは、アペロでは、ホタテのカルパッチョやパルメザンチーズなどと合う。ワインとしてなら、寿司が最適。魚料理にも合うし、ロゼは和牛と合うはずだ。

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「カルティエ」とスペイン王室、アンバサダーの親密な関係 幹部が語るハイジュエリー戦略

 多くのジュエラーは7月のオートクチュール・コレクション中に新作ハイジュエリーの発表を行うが、「カルティエ(CARTIER)」は、世界各地で6月に新作発表を行っている。今年はスペイン・マドリードでイベントを開催。王のジュエラーと呼ばれる「カルティエ」というだけあり、各国の王室と深いつながりがある。また、最近では積極的にアンバサダーを起用。王室やアンバサダーとの関係や戦略について、アルノー・カレズ(Arnaud Carrez)=カルティエ シニア バイスプレジデント&チーフ マーケティングオフィサーに聞いた。

WWD:ハイジュエリーの発表を例年6月に行う理由は?

アルノー・カレズ=カルティエ シニア バイスプレジデント&チーフ マーケティング オフィサー(以下、カレズ):顧客やパートナー企業、プレスの方々に特別な時間を提供したいと考えて6月の早い時期に、新作コレクションにふさわしい国と都市で発表している。「カルティエ」のクリエイションと共鳴し、特別な体験ができるような美しい場所を選んでいる。また、「カルティエ」とゆかりのある場所というのもポイントだ。

WWD:今年、発表の場をスペイン・マドリードに選んだ理由は?

カレズ:スペイン王室と「カルティエ」は長い友好と忠誠の歴史で結ばれている。1904年に、当時の国王であったアルフォンソ13世(Alfonso XIII)が「カルティエ」を王室御用達ジュエラーにしたのがスペイン王室とわれわれの絆の始まりだ。メゾンのアーカイブには20年に王室のために作られたティアラの写真がある。27年にスペインの宮廷人が購入したミステリークロックは、現在「カルティエ」のコレクションの一つとなっている。それ以来、「カルティエ」はスペイン全土で支持されている。2012年、マドリードのティッセン ボルネミッサ美術館で開催された「アート オブ カルティエ(EL ARTE DE CARTIER)」展では、カルティエ コレクションから400点を超える作品を展示。同年にはマドリードのレティーロ公園にあるカサ・デ・バカスセンターに“パビリオン オブ デザイン”をオープンし、3週間にわたりデザインをテーマとしたポップアップイベントを開催した。このような背景があるので、新作コレクションを発表する場所をマドリードにした。

アンバサダーはキャンペーンの枠を超えた存在

WWD:「カルティエ」はメゾンのアンバサダーではなく、コレクションのアンバサダーを起用しているが、その理由は?

カレズ:アンバサダーやフレンズ オブ メゾンとはメゾンの歴史に寄り添う継続的な関係を築きたい。“サントス ドゥ カルティエ”と米俳優のジェイク・ジレンホール(Jake Gyllenhaal)をはじめ、“パシャ ドゥ カルティエ”のキャンペーンでは、米俳優のラミ・マレック(Rami Malek)やメイジー・ウィリアムズ(Maisie Williams)、香港出身のK POPスターのジャクソン・ワン(Jackson Wang)、豪シンガーソングライターのトロイ・シヴァン(Troye Sivan)、米シンガーのウィロー・スミス(Willow Smith)などが集結。「カルティエ」とこれら、フレンズ オブ メゾンとの関係は、キャンペーンの垣根を超えてさまざまな取り組みにつながっている。ジレンホールとマレックは、「ドバイ エキスポ 2020」とのコラボのプロジェクトにも参加。彼らは、さまざまなプロジェクトを通して、メゾンの革新に携わっている。

WWD:イラン出身女優のゴルシフテ・ファラハニ(Golshifteh Farahani)をハイジュエリーのアンバサダーに起用した理由は?

カレズ:ファラハニは、誰もが認める素晴らしい女優であり、歌手、ミュージシャンだ。アート系の映画からハリウッド映画に出演し、レッドカーペットでは、そのスタイルとエレガンスで注目を集める存在だ。彼女は、既にフレンズ オブ メゾンとして活動しており、昨年もハイジュエリーのアンバサダーを務めた。彼女の多面的な個性は、多様で多文化なヘリテージをインスピレーションにする「カルティエ」のハイジュエリーを完璧に体現している。

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「試着室から出てきたお客さまのキラキラの笑顔が最大のやりがい」ソブダブルスタンダードクロージング 藤井麻依

 地方専門店の取材で「この店で人気のあるブランドは?」と尋ねると、必ずと言っていいほど上がってくるのが「ダブルスタンダードクロージング(DOUBLE STANDARD CLOTHING)」だ。デザイナー兼代表取締役の滝野雅久氏が1999年にスタートしたブランドである。黒とゴールドを基調とした空間に赤いマネキンが印象的な、モダンとクラシック、カジュアルとフェミニンなど対になる要素がリミックスされたアイテムを展開している。ファン層も幅広く20代から50、60代の方からも支持されている。そんな「ダブルスタンダードクロージング』の魅力にハマり、現在は六本木店のショップマネージャーを務めている藤井麻依さんにその魅力を語ってもらった。

藤井麻依/ソブ ダブルスタンダードクロージング六本木店ショップマネージャーCCO

PROFILE:(ふじい・まい)1981年生まれ、鹿児島県出身。理美容専門学校を卒業後、2001年に福岡の販売代行会社に入り、販売員としてのキャリアをスタート。幅広いジャンルの店頭に立つ中で『ダブルスタンダードクロ―ジング』期間限定店舗のスタッフとして働く。その後、飲食店勤務を経て、福岡のベンチャー企業が運営するセレクトショップに勤務。再び「ダブルスタンダードクロ―ジング」の販売に携わる。2012年に「ダブルスタンダードクロージング」を運営するフィルムに入社し、現在に至る

―販売員の仕事を始めたきっかけは?

藤井麻依さん(以下、藤井):友人に勧められたからです。美容専門学校に通っていたのですが、あの頃は“カリスマ美容師ブーム”で卒業しても就職できないくらい生徒が溢れていました。結局、卒業しても就職できず半年ほどフリーターをしていたところ、友人の紹介で販売代行会社で働くことになりました。この会社は服だけでなく、いろいろな物を売っていて、いい経験になりました。

―いろんなものとは?

藤井:主に国内の個性派ブランドを販売していましたが、他にもミセス、インポート、時計、水着なども扱っていましたし、水も売っていたこともありました。最初の1年間はミセスブランドにいましたが、その後は「今日はあの店に行って」「明日からはこのブランドを手伝ってきて」という感じで働いていました。

―服だけでなく、水まで売るとは(笑)。ですが、それだけ幅広いジャンルやテイストで販売をしていたら、接客スキルが磨かれそうですね。

藤井:そうかもしれませんね(笑)。

―その中で一番勉強になったことはなんでしょう。

藤井:はじめて働いたミセスブランドです。客層は60、70、80代のマダムな雰囲気の方がいらっしゃるような店でした。それまで販売職をしたことがなかったので、お客さまからいろんなことを教えていただきました。特に店長がカリスマ的な接客力の持ち主で、店長の接客をよく観察し、店長が休憩中に実践しようとすると、そういう時に限って1時間の休憩を45分で切り上げてくるような方なんです。折角の接客チャンスタイムが短くて(笑)。ほかの先輩方もとても接客が上手でしたので真似をして自分に取り込みつつ、自分の強みは何かを模索しながら接客していました。当時、強みになったのは専門学校で学んだ色彩のこと。例えば、接客で「お客様の髪色や肌色でしたら、こんな色が似合いますよ」とお伝えして喜んでもらえることが多々あり、勉強してきたことが強みとして生かせたのは嬉しかったですね。逆に失敗から学ぶことも多くて、例えば丈詰めする際に骨格に合わせたベストな丈をお伝えしようとしても、上手く伝えることができなくて、もっと勉強しなくては……とよく思っていました。

出会ってから10年を経て、念願のブランドの販売員に

―「ダブルスタンダードクロージング』にはどういう経緯で働き始めたのですか?

藤井:その後、マダムからヤングOL向けのブランドの担当になり、その頃から代行会社の営業スタッフが「今度、このブランドを扱うんだ」といって毎日のように「ダブルスタンダードクロージング」のカタログを見せられていました。福岡三越で3か月の期間限定店を出店することになり、会社から「一人で東京の本社に挨拶して来い」とまるで修行のようなことを言いつけられて、デザイナー兼代表取締役だった滝野さんに会いに行きました。そのときは、アパレル経験も少ない小娘にも丁寧に接してくださり、「今シーズン一押しのスタイリングはコレで、店頭に立つ時はこの服を着てね」と説明しながら、服を選んでいただけたことに衝撃を受けました。この時、選んでいただいた服は今でも大切に持っていて、ジャケットはとても綺麗な状態で今でも着ています。今でも展示会ではスタッフたちにシーズン説明してくれるのですが、そういう姿を見て「このブランドをもっと広めたい!」というスイッチが入りました。

―社長でありデザイナーでもある方から直々に説明をしてもらい、しかも服まで選んでもらえたのは貴重な経験でしたね。

藤井:そうなんです。その後も衝撃的なことが続いて、期間限定店の営業が開始すると同業の販売員がたくさん買い物に来ることに驚いたんです。自分の店でも買えるのにどうしてなんだろうと。でも、それだけファッションが好きな人に支持されているブランドなんだ、とあらためて実感しました。ほかにも専門学校時代の友人から地元の女子アナ、美容部員まで買いに来たり、客層も幅広くて若い方からマダムまで来店したり。お客さまがダブスタの服を着ると魔法をかけられたように洗練されていく姿を見ていて、私も楽しくなってどっぷりハマってしまいました。この店の結果次第で今後の福岡出店の可能性があると聞いていたので、福岡出店を信じて待っていました。

―それから入社に至るまでは?

藤井:結局、その代行会社には5年くらい勤め、退社後は飲食業界にも興味があったので個人経営の飲食店で働きました。でも友人から「働いている姿が似合わない」と笑われ、自分でも飲食業は合わないかもと思ったので、再びアパレルに戻りました。福岡にダブスタをメインに扱う店ができるということでフィルムの営業の方から「今、何してるの?」と連絡をもらって、再びダブスタを販売することになりました。その店は東京のベンチャー企業が運営する福岡のセレクトショップで、ITをメイン事業に他には不動産や飲食、ワイン、野球選手のマネジメントなど幅広い事業展開をしていて、その中で私がアパレル担当になったのです。しかも、入社するときに滝野さんの後押しもあり、研修のために都内の直営店で働かせてもらったんです。

―ダブスタを販売するとはいえ、他社の社員に手厚いですね。今まで聞いたことがありません。

藤井:本当に当時のことを思い出すと、よく受け入れてくれたと思います。その会社は風変わりというかトップがファッション好きだったので、そのセレクトショップの他にも東京でメンズのオーダーメイド店も出していたことがありました。最終的には香港出店という話も浮上してきて、私に「香港へ行くか、滝野さんの下で働くか」と選択肢が与えられたのですが、海外移住はしたくなかったので後者を選びました。

―それで、正式にフィルムに入社するんですね!ブランドには長く携わっているのに、入社までは時間がかかりましたね。

藤井:ダブスタと出会って、約10年くらいですね。

「入りにくいお客さま」には、丁寧な接客で対応

―地方専門店で取材をしていると人気の高さを実感するのですが、個人的には店がかっこよすぎて入りにくいと思ってしまうのですが……

藤井:実際、カッコいいが先行して店に入りにくいというお客様は多いですね(笑)。でも、一回着てみたら大丈夫です!

―入りにくいと感じているお客様に対し、どうやって入店を促していますか?

藤井:私が入社した頃にはすでにブランドが確立されていたのですが、立ち上げの頃からいるスタッフから話を聞くと「とにかくブランドを認知させたい」という気持ちを強く持っています。私もそれを第一に考えて、お会いする方にはブランドのことはあまり知らないお客さまだと思いながら、丁寧にブランドを発信するようにしています。入店していただけたら、服のカッコよさとスタッフの接客のギャップに気が付いていただけると思います。

―では、接客で心がけていることは?

藤井:来店したこの時間をこの店に使って良かったと思っていただけるような接客を心がけています。私自身は、お客さまがうれしそうに試着室から出てきて、キラキラしているのを見るのがただ楽しいんです。そういう表情を引き出すのが好きで、例えばその日は朝から気分が乗らなくても、この店に来たことで「今日はすごくいい事があった」と思えるようなことが提供できればと思います。そして、この気持ちはお客さまだけでなく、スタッフに味わってもらいたいんです。私たちもお客様と出会えてよかった、という気持ちで仕事できればいいなと思います。よく「お客さま第一主義」とたとえる店もありますが、それが逆にスタッフの気持ちに重くのしかかって、疲弊しているようにも思うのです。

―それは大いに感じます。スタッフが疲弊していては良い接客もできないと思います。

藤井:お客さまが大切なことは大前提なので今さら言うことではないと思っていて、これからはスタッフ自身の気持ちが楽しい、嬉しい、充実していると感じられるように、メンバーの働き方やチームワークも大切にしています。

―特に今はお客さまが来店しにくいからこそ、余計に販売員のメンタル維持が大変だと思います。これは現場だけでなく、会社も何とかしないといけないですね。そこで最後に今後の目標は?

藤井:これからもダブスタをたくさんの人に伝えていきたいです。ファッションは人を元気にさせるものなので、もっと服を着る楽しみやおしゃれすることを考える時間を増やしていければ、生活も豊かになるのかなと思っています。

―最低限の服でも生活できるけど着飾ることで心が豊かになることってありますね。反対に心を豊かにする方法はいろいろあるけれど、一番手軽にできるのはファッションだと思います。

藤井:ファッションの楽しさって私にとってはなくてはならないものですし、そのことをもっともっと多くの人に知ってほしい。販売員という仕事も、だから成り立っていると思います。以前、滝野さんが「販売は資格がなくても仕事を通じで学べて、スキルを上げていけば一生働ける素晴らしい仕事だよ」と言ってくだって。そんな考えを持ち、素敵な服を作る方の下で働くことができて私も幸せです。

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「アディクション」退任から3年半 ネクストステージに向かうAYAKOメイクアップアーティストが考える次世代のカラーコスメとは?

 AYAKOメイクアップアーティストは、「アディクション(ADDICTION)」の前クリエイティブディレクターとして、当時国産メーカーでは類を見なかったモードな世界観をコンセプトにしたメイクアップブランドを生み出し、日本のコスメ業界に革命を起こしてきた。2019年3月末に退任してから早3年半が経過した今もなお、米ニューヨークを拠点にするAYAKO氏はどのような活動をしているのだろうか。マルチな広がりを見せているという現在の活動や心境について聞いた。

WWD: 「アディクション」を離れてからの活動は?

AYAKOメイクアップアーティスト(以下、AYAKO): 「アディクション」時代はブランドのクリエイティブに全力投球していたこともあり、メイクアップアーティストとしての現場仕事からは離れていたのですが、パンデミックが明けてからはアリシア・キーズ(Alicia Keys)やアナスイ(Anna Sui)といった以前からのクライアントや、新たなメイクアップの仕事が多方面で復活しつつあります。アリシアは20年前の彼女のデビュー時に多くの仕事をしていましたが、今年のメットガラでのメイクアップをきっかけに、コンサートやアルバム、MVなども手掛けています。彼女のビューティブランドである「キーズ ソウルケア(KEYS SOULCARE)」のPRにも携わっていますね。

 他にも2020年11月に手掛けた「ヌメロ ヴェントゥーノ(Nº21)」とのコスメコラボレーションライン第2弾の提案など、多種多様なコラボプロジェクトが同時に進行中です。これまでの時代は、集中したら一つのことに深く関わり達成することが常でしたが、今や世の中の働き方が変化しているように、私自身もマルチプルな働き方にシフトしてきています。

WWD:まさにこれまでの集大成となるフェーズに向かっている。

AYAKO:そうです。ただ正直言えば、コスメを「使う側」だった私にとって初めて開発に携わることになった「アディクション」が集大成のつもりでした。結果的には全身全霊をかけて育て上げたブランドを手放すことになり、それはまさに「生み育てた子供をお嫁に出す」感覚に近いものだったと言えます。ですが、自分が本当に届けたいプロダクトを製造・PR・販売するまでの一連の流れを学んだことは今の活動にとても生きているし、これからが本当の集大成、次なるステージにつながっていると感じています。

WWD: 2020年にパンデミックが起こった時、ニューヨークは特に被害が甚大だったが、どのように過ごしていた?

AYAKO:ロックダウンの期間はじっくりと自分と向き合う時間でもありました。美しい夕日が眺められるハドソンリバーに面したマンハッタンのお気に入りのアトリエにこもり、「ヌメロ ヴェントゥーノ」とのコラボ商品を仕上げたり、一人きりで「アディクション」のアーカイブを一つずつ整理する作業をしたりしていました。前年に親友との突然の死別や、急性盲腸炎での緊急入院、その後8年ぶりに犬を飼い始めるといった私にとっての大きな出来事もあり、生きていくことや自分の健康と向き合うことを考えさせられる大切な時期となりましたね。また世の中のソーシャルメディアに改めてきちんと触れて、素早く時代を学ぶこと、また同時に休む時間の大切さなどを感じる良い時間でした。

WWD:また自分のブランドを作ることは考えている?

AYAKO:作りたいと考えています。とはいっても今や、ジェンダーを問わずセレブリティがプロデュースするコスメブランドが続々誕生しているので、ここで別のメイクアップブランドを立ち上げても意味はないのかなと思っています。これだけの選択肢がある中で、自分が本当に共鳴できるものでないと消費者の心も動かない時代。ある程度年を重ねていくにつれて、「何を使ったらいいかわからない」「何色を選べばいいのかわからない」なんて声も聞こえますし、YouTuber が発信するコントゥアーやベーキングメイクに対して、「Should I do that?(これ、本当にやらないといけないの?)」なんて思ってる人も実は多い。だからこそ難しいテクニック要らずで、1つのプロダクトでシンプルにプロが施したかのようなメイクができる、そんなブランド作りを考えています。

WWD:新ブランドはどんなコンセプトになる?

AYAKO:インナーケアをテーマにしたヘルシーなメイクアップブランドになると思います。外側にのせるものだけに頼らず、内側からグロウ(glow)する。本当の美しさって内から滲み出てくるものですよね。今一番注目しているのが、発酵や菌です。実は私は金属アレルギーを持っていて、パール剤を肌にのせるとかゆくなってしまうのですが、皮膚常在菌を育てることでかゆみや不快感を軽減したという研究結果もある。菌の力で肌のバリアを強くしながら、メタリックな加工物を使わずに輝きを与えられるプロダクトがあったらいいですよね。作るのはものすごく大変そうですが(笑)。世の中にはまだ見当たらないので、やってみる価値は大いにあります。

WWD: サステナブルな視点もポイントになってくる?

AYAKO:もちろん環境に配慮することは今の時代は必須。今まで捨てていたものを再利用するということでいえば、例えば豚、羊、馬などの胎盤から抽出されるプラセンタや、ダチョウの卵の抗体エキスなどの自然界にある栄養を再利用したスキンケア製品は多く出ていますが、カラーコスメに活用している製品はまだない。そういったことも取り入れながら、でもサステナブルやビーガンをうたっているからといってなにもかもが良いわけではないとも思っています。例えば化粧品をバクテリアから守ってくれる防腐剤は長期使用の観点では必要な場合もあるし、ミツバチから分泌される蜜蝋もすごく肌にいいのに配合するとそれはビーガンではなくなってしまう。時代にのったそれらしい“言葉”に惑わされず、自分のライフスタイル、信念を持って商品を選ぶことが今の消費者にとっては大切なのかもしれません。そして吟味して良い商品を選び、長く愛用することこそが素晴らしいサステナブル。化粧品は気分を大いに上げてくれる「小さなぜいたく品」ですから。

WWD: 世間の常識や当たり前に捉われず、視点を変えてみることが大事だ。

AYAKO:2009年の「アディクション」立ち上げ当時のエピソードがあるのですが、私が「究極の赤い口紅とネイルポリッシュもラインに加えたい」と伝えたら、企業側からは「今の時代、赤い口紅は日本では売れないし、セルフネイルはもはや古いですよ」と猛反対されたんです(笑)。でもその後レッドリップは大きなトレンドになり、今ではどのブランドでも販売されるほど日本人に浸透しましたよね。そして無理を押して開発したモードなカラーのネイルポリッシュはブランドのアイコンにもなったほどです。自分の信念を貫けばきっとそれは実現するし、世の中にも伝わると思います。時間はかかりますけど自分が納得のいくものを作っていきたいし、今までトライしてこなかったことにもっとチャレンジしていきたいです。

PHOTOS:REIKO YANAGI
撮影協力:Mika Bushwick

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アパレル物流トップのセンコーが廃棄ゼロを目指すEC事業を始めるワケ

 センコーグループホールディングス(HD)傘下で、ファッション物流最大手のセンコーが、アパレルの在庫ロス削減と廃棄ゼロを支援する循環型のファッション・サステナブル・プラットフォーム「ゼロブランズ(ZEROBRANs)」を構築する。子会社ゼロブランズを8月に設立し、まずは11月15日に余剰在庫品を中心に新価格で再販する社内向けのクローズドECサイト「ZEROBRANDs」をオープンする。廃棄予定品は買い取ってリメイクしたり、再資源化するなどまとめて効率的にリサイクルさせる。中古品を扱う2次流通が増える中で、物流のノウハウを生かして、余剰在庫品や返品商品などを回収・再販する「1.5次流通」とも呼べる静脈物流を確立。来年には一般向け販売や古着回収も予定する。センコー執行役員ロジスティクス営業本部副本部長であり、ゼロブランズ社長を兼任する小林治彦氏に、新事業に賭ける思いやビジネス構想を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):センコーグループHDの概要と、ファッション物流業界トップという根拠を知りたい。

小林治彦ゼロブランズ社長(以下、小林):センコークループHDは東証プライムに上場する総合物流企業だ。年間売上高は6231億円 ( 2022年3月期 )で、中核企業のセンコーに加え、東京納品代行、M&Aによりグループ入りしたアクロストランスポート(元オンワード物流)や江坂運輸(元阪急百貨店系)など、国内外にグループ161社を有している。ファッション物流の年間売上高は495億円で、小売価格換算で約1兆円分の商品を取扱っている。国内アパレルの小売市場規模は7兆5000億円前後と推計されるが、物流費は概ね5%と言われているので、金額ベースで日本のファッション商材の13%ぐらいを扱っている計算になる。

WWD:ファッション系の主な取引先は?

小林:百貨店やショッピングモール、路面店、ECなどの販売網を持つ大手アパレルやセレクトショップ、ラグジュアリーブランド、インポートブランド、そしてスポーツブランドなどを物流面で支えさせていただいている。それらの企業の倉庫や商業施設、店舗に常時配送をしている状態で、帰りの便に載せる静脈物流を活用することや、データ連携をすることで、環境負荷を低減して効率的に循環型事業ができることになる。

WWD:センコーのファッション物流サービスの特徴とは?

小林:ファッションの生産物流から販売物流まで、一貫物流サービスを提供している点だ。「海外生産地からのフォワーディングサービス」「ファッションロジスティクスセンターの運営」「商品の集荷・全国店舗への配送」などを提供している。特に「ファッションロジスティクスセンターの運営」では、商品やハンガーの保管、繊維製品品質管理士(TES)や衣料管理士たちによる商品の検品、補修、洗濯タグの発行・取付、店舗納品のための流通加工、たとえば値札の発行・取付なども行っている。EC出荷の梱包・ささげ・コールセンター等のECフルフィルメントサービスや、「ゼロブランズ」にもつながるが、静脈物流として店舗やECの返品、社員セールや催事への出荷なども手がけている。またWMS(倉庫管理システム)についてパッケージソフトを使うところが多いが、我々はいろいろな経験を生かしてセンコーグループ独自のファッションクラウドWMSを構築して共通利用しているのも特徴だ。

WWD:「ゼロブランズ」では物流×サステナビリティによる新たな循環型事業を展開するというが、センコーではこれまでどのようなサステナブル物流に取り組んできたのか?

小林:3つ挙げるとしたら、1つ目はEVトラック(電子トラック)による配送で、2019年7月に「ルイ・ヴィトン」の都内配送を開始して以来、ラグジュアリーブランドを中心に取り組みが広がっている。2つ目はオンワードHDと三陽商会と共同して、洋服を包装しているビニール袋を回収してプラスチック容器にリサイクルするなど、資源循環を推進している。参画企業が増えつつある。3つ目は循環型経済の構築を支援する静脈物流サービスの提供だ。三菱商事によるレンタル商品・EC商品の返却・返品サービス「スマリ(SMARI)」の物流業務を昨年11月から開始。ローソンへの通常配送車両が「スマリボックス」から回収した返品・返却品を帰りに載せて運んで物流センターに集約し、各EC事業者に配送する。既存物流網を活用することで物流コストの抑制と、低・脱炭素につながるグリーン物流化を図っている。

WWD:新会社ゼロブランズに込めた思いとは?

小林:新会社ゼロブランズの社名の“ゼロ”は、廃棄ゼロの実現、ゼロからのスタート、また循環という意味を持つサーキュラーの輪を表しており、“ブランズ”には信頼ある、価値ある商品・企業という意味を込めた。すでにわれわれは生産地から日本の物流倉庫、さらに店舗網をカバーする輸送網を世界規模、全国規模で構築し、日本国内のファッション物流の約10~15%を担う1次流通の基幹ハブとなっている。これまで培ってきたプラットフォームやネットワーク、人材、財力、中立性、信用力を生かして、主旨に賛同いただいた企業との協働で、商品廃棄ゼロの循環型のファッション・サステナブル・プラットフォームを構築する。「シン物流」とも言える「1.5次流通」を実現し、日本のファッション産業全体のサステナビリティ推進を目指したい。物流会社なのに、なるべく動かさない、Don’t Moveの精神で、服の状態でトコトン売り切り、全量循環させていく。ECサイトに加え、サステナブル関連のニュースなどを集めたオウンドメディアから情報発信も行っていく。

WWD:新たにファッション・サステナブル・プラットフォームを創るというが、そのきっかけと狙いは?

小林:自社の倉庫で大切な商品をお預かりしたり運んだりしたりする中で、たびたび商品が廃棄されるシーンを見て、ずっともったいないという声が挙がっていた。サステナビリティのニーズの高まりはもちろんのこと、コロナ禍や原材料や物流費などのコスト上昇などで、在庫の適正化に取り組む企業も増えているが、セールやアウトレットを行っても残ってしまう商品はどうしても発生する。また、ECが台頭する中で返品が増え、滞留してしまって売り時を逃してしまうものもある。そんな中で、余剰在庫費や不良在庫、返品商品などを集めて新価格で販売するECを作って、極力モノを動かさずにデータをつないでユーザーに販売することができれば、CO2排出も削減でき、取引先の方々の課題解決にもつなげられると考えた。

 洋服として生まれてきた以上はそのまま販売するのが一番のサステナブルだと思っている。なるべくもとの形のまま販売したい。ただし、店頭で販売したり、店舗やECで販売して返品された際に、キズや汚れ、焼けなどが発生して、そのままでは売れない不良品はどうしても発生してしまうもの。それをわれわれが買い取って、回収して、すでに機能を有している品質チェックや修理、リメイク・リフォーメーションを施して、再び販売できる状況に生き返らせることができる。

 どうしても修復不可能なものは、リサイクル会社とネットワークを構築し、まとめてリサイクルしていく。個別ではかさみがちな費用の負担軽減や、量が足りなくてリサイクルできないという状況を解決して、循環型を推進し、CO2削減にも寄与させたい。

WWD:11月15日にスタートするECサイト「ZEROBRANDs」の詳細は?

小林:スタート時には、有名セレクトショップや大手アパレルなど5社・21ブランドに協力いただき、1000~1500アイテムを販売していく。平均の元値は2万円で、質の高さも特徴だ。まずはセンコーグループ161社のグループの社員に向けてクローズドサイトで販売する。これだけで約10万人いるので、廃棄ゼロに向けた購買力にも期待したいし、UI/UXなども検証し改善していきたい。クローズドサイトの中でも、社員だけが限定して買えるものと、パートやアルバイトで働いてくださってる方々まで購入できるものなど、閲覧、購入ができる範囲を各企業と各々設定したり、購入者には登録時に誓約書へのチェックを求め、ネームバリューやブランド価値を守っていく。どれを買っても廃棄から服を救うサステナブルな行動につながるし、今まで定価やセールでも手が出なかったブランドのアイテムを購入して身に着けることで、そのブランドや商品の良さに気付き、ファンになるきっかけにもしていきたい。来年9月には一般向け販売を開始する予定だ。その際にも、クローズドで販売したり、その取引先の社員や関係者に限定したファミリーセールサイト的な販売にするなど、公開範囲(購入可能対象者)を自由に設定できるオプションを設けていく。

WWD:取引先からの調達条件は?

小林:データ連携して委託販売していただくケースや、買い取らせていただくケース、そのままの形状で販売するケースやネームタグを外すケースなどいろいろ選んでいただける。テキスタイルやB品、不良品などについては無料で回収することも。今まで廃棄にかかっていた費用の削減と環境負荷の削減とを。とくに商談を通じてわかったのが、外資系ブランドからもニーズが高いということだ。ラグジュアリーブランドやライセンスブランドなどでは、本国のアプルーバルが必要になるので交渉に時間がかかるが、ブランドを毀損せず、しかも日本のローカル内で消化・解決することが求められる中で、今回の「ZEROBRANDs」のECサイトや循環型モデルなどに高い関心や期待を寄せていただいていると感じている。

WWD:リメイク・リフォーメーションや、リサイクルの部分の構想は?

小林:社内にいる繊維製品品質管理士(TES)の資格保有者や服飾系専門学校卒業生などでリメイク・リフォーメーションを行ったり、クリエイターの方々と協業することも構想中だ。ブランドと協力してテキスタイルなどを専門学校に寄付することも検討していく。リサイクル分野ではBPラボや「パネコ」を手がけるワークスタジオなど外部と連携していく。カシミヤやウールの再生素材化や、什器やボード化などから着手し、再資源化を図り、単純廃棄をゼロにしていく。環境やサステナブルに対して同じ思いや技術を持つ企業と手を組んでいきたい。

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大人ニキビの予防方法を皮膚科専門医が指南 肌トラブルのおすすめアイテム4選も【WWDJAPAN ビューティお悩み相談室Vol.2】

 連載企画「WWDJAPAN ビューティ」お悩み相談室」では、SNSのアンケート機能を用いて「WWDJAPAN」フォロワーに現在のビューティに関する悩みをヒアリング。読者のリアルな疑問や悩みをビューティストたちに解決してもらいます。2回目は、何度も繰り返すしつこい“大人ニキビ”について。相澤皮フ科クリニックの相澤浩院長に、大人ニキビの原因や対策、治療法について話を聞いた。

――大人ニキビと思春期ニキビの違いはありますか?

相澤浩・相澤皮フ科クリニック院長(以下、相澤):ニキビの種類は「大人ニキビ」と「思春期ニキビ」に大きく分かれます。個人差はありますが、大人ニキビは20歳以上(欧米では25歳以上)で発症するニキビ、思春期ニキビは9~10歳くらいから発症するニキビを指します。また、両方とも発症原因も異なり、大人ニキビは精神的ストレスによって男性ホルモンが増加し毛穴詰まりが起こります。一方、思春期ニキビは女性ホルモンや男性ホルモンにより皮脂が増えて毛穴が詰まり、ニキビになります。発症する部位も異なり、大人ニキビは皮脂が少ないUゾーン(フェイスライン)に表れる人が多く、思春期ニキビは皮脂の多いTゾーン(おでこ~鼻)が中心です。原因が全く異なるので、思春期ニキビができやすい人は大人ニキビもできやすいということはありません。

――大人ニキビの男女比は?

相澤:男性ホルモンの増加が関係しているため、大人ニキビに悩むのは女性が圧倒的に多いです。以前は当院に来院する95%は女性でしたね。ただ、近年は睡眠不足やストレスの増加により男性の来院も増えて全体の30%ほどを占めています。髭脱毛など男性の美容意識向上から、大人ニキビ診療へのハードルが低くなっていることも影響していますね。余談ですが、思春期ニキビ治療のために母親が高校生の息子を連れて来院するケースも増えています。ニキビ跡が残ると、就職時の面接で不利になるのではないかなど気がかりだそうです。

――大人ニキビの一般的な治療法は?

相澤:オーソドックスな治療法は、以前は低用量ピルを中心として抗男性ホルモン治療を行っていました。あとは漢方薬、血圧を下げる効果のあるスピロラクトン錠、弱い女性ホルモンの薬を使用するなど。美容外科によってはビタミンAの一種であるイソトレチノインやビタミンA誘導体の経口薬・アキュテインを処方される場合もありますが、重大な健康被害のおそれがあるため、おすすめはできません。大人ニキビは体に負担をかけずに治療できることが分かってきたため、当院では漢方薬にプラスして男性ホルモン受容体拮抗作用を持つスピロノラクトンなど擬似ホルモン療法を組み合わせた、体に優しい治療を行っています。効果はゆっくりではありますが、体質改善も促せます。

保湿成分の入っているスキンケアが大事

――忙しくてクリニックに行けないときの応急処置はありますか?

相澤:大事なのは日々のスキンケアです。大人ニキビのケアで心掛けてほしいのは保湿成分の入っているスキンケアを使うこと。通常はしっとり感のある保湿系ローションに乳液、クリームなどの合わせ使いで良いでしょう。「クリームなどの油分はニキビに良くないのでは」と思っている人もいますが、それは誤解。ぜひ積極的に組み合わせてください。 バーム状の保湿剤は水分蒸発を防ぐという目的で最後に使用するのは良いですが、水をほぼ含まないので保湿目的には向かないと思います。赤ニキビやニキビ痕の色素沈着にはビタミンC誘導体やナイアシンアミドのスキンケアが有効です。ただし、ビタミンC誘導体やナイアシンアミドは一時的な乾燥を引き起こすためTゾーンにはしっかりと、Uゾーンには薄く塗布して上から乳液やクリームで蓋をしてあげるといいですね。また、スキンケアを一切しない「肌断食」という言葉もありますが、それは逆効果です。フェイスパックは、剥がすタイプのものは肌に刺激を与えるので避けてください。ニキビパッチは密閉療法で肌の水分を逃さない役割があり、おすすめします。「ニキビパッチはニキビ菌が繁殖する」というイメージを持たれている人もいるようですが、そのようなことはありません。

――大人ニキビの予防法、また避けてほしいケアや生活習慣を教えてください。

相澤:大人ニキビの一番の原因は「乾燥」です。保湿ケアをしっかりと行うことが一番の予防法です。乾燥の原因として男性ホルモンが増加し、角層を乾燥させることが挙げられます。 ストレスを溜めると男性ホルモンも増加しますので、睡眠やお風呂でのリラックスタイムを大切にしましょう。 まずは1時間でも多く睡眠をとること。質の良い睡眠をとることは成長ホルモンが出て肌の修復力を高めます。食事に関しては、甘い物や炭水化物をそこまで気にする必要はなく、個人差はありますが、食べ過ぎなければ影響はほとんどありません。ただし、遅い時間の夕食やおやつはおすすめしません。 血糖が上昇すると、血糖を下げるためインスリンが分泌されます。インスリンは男性ホルモン作用を強くする働きがあるためニキビができてしまいます。 また、インスリン分泌は夜遅くなると多くなり、高血糖になると皮膚のバリア機能を上げる成長ホルモン分泌を減らします。

――大人ニキビができたときは早めにクリニックで受診するのが望ましいですね。

相澤:その通りです。ただし、日本皮膚科学会から認定された皮膚科専門医を受診するのがおすすめです。よく目にする皮膚科や皮膚専門などは、皮膚科専門の先生ではなく、例えば内科の先生が皮膚科研修を受けないで標榜されているケースがあります。大人ニキビと一言でいっても、人によって赤みの色の違いや範囲、ぶつぶつがある人とない人、大きさの違い、跡だけが残る人などさまざまです。私は1987年からニキビ治療一本で約50万人のデータを見ていますが、治療は単純じゃないと日々実感しています。大人ニキビにも数種類あることが分かってきたため、顔面のパーツごとにフォーカスした治療を日々進行中です。

「WWDJAPAN」編集部がおすすめするスキンケア

「アクネスラボ」の“ベーシックライン”

 弱酸性のアミノ酸系洗浄成分を使用している、大人ニキビに対応したスキンケアシリーズ。いずれも合成香料・着色料・鉱物油・パラベン不使用で、皮脂のバランスを整えて繰り返すニキビやトラブル肌をケアして健やかに導く。集中ケアアイテムとしてスポッツクリームや夜用ポイントパッチもラインアップする。

「エトヴォス」の“バランシングVCクリアスポッツ”

 石油系界面活性剤、鉱物油、シリコン、タール系色素、合成香料、パラベン不使用のジェル状美容液。アゼライン酸誘導体や保湿系ビタミンCなどを配合し、保湿しながらキメの整った肌に導く。オイルフリーで透明ジェルのため朝晩のスキンケアはもちろん、メイクの上からも使用できる。

「ノブ」の“モイスチュアクリーム”

 ニキビ肌をやさしくケアするスキンケアシリーズ“ACシリーズ”の保湿クリーム。保湿成分を配合し、乾燥を防いで潤いのバランスを整える。クレンジングジェル、ウォッシングフォーム、フェイスローション、モイスチュアジェルもそろえ、シリーズ全品が無香料、無着色、低刺激性の仕上がり。

「ファンケル」の“アクネケアライン”

 肌の不調や繰り返しできる大人ニキビに関与している“ゆさぶり因子”に着目したスキンケアライン。全アイテムに有効成分として「甘草成分誘導体」を配合したほか、“エッセンス”にはトラネキサム酸を含んで肌荒れや肌のゆらぎを防いで大人ニキビを予防する。また、セージエキスやウメ果実エキス保湿成分が健やかな肌に導く。

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古川優香や宇野実彩子監修の深度のあるD2Cコスメブランド開発で相次ぎヒットを飛ばすダイレクトテック “売れる”D2Cコスメブランドの立ち上げ支援を開始した狙いとは?

 D2C(Direct to Consumer)事業を得意とするダイレクトテックは、モデルやアーティスト、動画クリエーターなどを起用したD2Cコスメブランドなどを相次いで立ち上げ、ヒットを飛ばしている。7月には成功実績をもとにした独自メソッドを提供し“売れる”D2Cコスメブランドの立ち上げを支援するサービス「ディーツーシーギャラリー(D2C GALLERY)」を開始。同ギャラリーを活用したブランド開発も進み、同社の動向に注目が集まっている。堀ノ内丈史ダイレクトテック取締役にD2Cブランドの可能性を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):D2CやP2C(Person to Consumer)のコスメブランドがZ世代を中心に話題となり実績を積んでいる。

堀ノ内丈史ダイレクトテック取締役(以下、堀ノ内):当社はD2C事業を中心に手掛ける企業として2018年11月に立ち上がりました。最初に手掛けたのはファッションモデルの古川優香さんが監修したカラーコスメブランド「リカフロッシュ(RICAFROSH)」です。古川さんはコスメブランドを手掛けたいと協業先を探していて、当社を含め4社によるコンペティションがありました。当社はベクトルの子会社であるため、PR業務も含め対応できるとして選ばれました。

WWD:「リカフロッシュ」は初年度から好調だったがその要因は。

堀ノ内:他社でも同様のビジネスモデルはありますが、一過性で終わるケースが少なくありません。古川さんは最初からプロダクトへの熱量が高かったんです。“落ちにくい”をキーワードに、リップの開発に1年以上かかりました。ティント効果を強めると唇が荒れてしまうのでそのバランスに苦労しましたね。「リカフロッシュ」は20年2月にデビューし、第1弾アイテムの“ジューシーリブティント”は塗った瞬間の美しさが持続し、得意とするニュアンスカラーが絶妙でマスクにも色移りしにくいと高い支持を得ました。製品力の高さに加え、古川さんはフォロワーとの相互コミュニケーションも大切にするので、深度のあるブランド体験を提供できたことも奏功しました。初回の生産量は4色で1万を超える個数でしたが、EC、店舗とも3カ月後には品薄に。生産が追いつかないうれしい悲鳴をあげました。初年度は想定の5倍の売り上げを達成。2年目も順調に推移しています。ブランドを代表する製品になったリップティントのほか、マルチパレットやマスカラ、グリッターなどアイテムを拡大し、シリーズ累計販売数120万個(22年9月時点)を突破しました。

WWD:2番目のブランドはアパレルで、その後コスメブランドが続いた。それぞれの狙いと反応は。

堀ノ内:人気ユーチューバーのかすがプロデュースしたアパレルブランド「ボカニー(BOKA NII)」を21年3月に立ち上げました。1万円以内で購入できるレトロカジュアルなウエアをそろえ、初日に6000万円以上売り上げました。ユーチューバープロデュースのアパレルブランドの初日売り上げ記録も更新しました。今年1月にはデザインコンサルティングファームのアナイスカンパニーとタッグを組み、AAA(トリプル・エー)メンバーの宇野実彩子がプロデュースするコスメブランド「ユーチュー(U/CHOO)」をスタート。彼女のマネージャーと親交があり、コスメをプロデュースしたいと本人が希望していると聞きブランド作りが始まりました。彼女はアーティストなので、ライブ中でも“超絶落ちにくい”をコンセプトにアイシャドウやリップティントなどを展開。目元用のグリッターも用意し、初月に15万個を販売。5カ月で40万個を突破しました。スタートは公式ECサイトで販売しましたが、多くの人に手に取ってほしいとバラエティーショップやドラッグストアなど販売網を広げ、現在は店舗売り上げが70%以上を占めています。

発売初日に1万個が完売

WWD:1月には美容系ユーチューバーのマリリンによる「ヴィム ビューティー(VIM BEAUTY)」も発売した。自身のユーチューブでもハウツー動画などを配信し大きな反響を得た。

堀ノ内:「ヴィム ビューティー」は当社初のベースメイクアイテムでした。クッションファンデーションとコンシーラーがセットになった2in1の“エフェクト ライク フィニッシュ ファンデーション キット”は公式ECサイトのみで販売し、初回生産分の1万個が即日完売しました。「高いキープ力・プロ級の仕上がり・使いやすさ」にこだわり、そばかすやほくろ、肌トラブルをカバーするためこれまでたくさんのファンデーションを試してきたマリリンが、誰でも簡単に使える、崩れにくいクッションファンデーションを作りたいという思いから開発したものでした。

WWD:手掛ける全ブランドが想定を上回る実績を残している。

堀ノ内:D2Cブランドを手掛ける中で大切なのは、誰に届けるかということです。ただ単に話題のインフルエンサーと組めばいいわけではなく、その人が発信する上で最適なアイテムであるか、価格設定は適正かなどさまざな検証が必要です。インフルエンサーやクリエーターはブランド作りのプロではないため、ブランディングやコミュニケーション設計をサポートするのが重要。コンシューマーから納得感が得られることが大切なんです。愛され続けるブランドを育成する指標として、当社では年間購入回数のKPIを立てています。リピート率が重要で「リカフロッシュ」はEC売り上げの70%がリピート客によるものです。

D2Cのプラットフォームを構築

WWD:こうした成功事例をものに、D2Cコスメブランドの立ち上げを支援するサービス「ディーツーシーギャラリー」が始まっている。同サービスは自らライバル会社を作り出すことになるのでは?

堀之内:当社にはこれまでの成功や失敗のナレッジや事例が数多くあります。コンサルタントするのではなくロジックなども伝えていて、非常に問い合わせが多いですね。現在、2つのコスメブランドのプロジェクトが進んでいます。D2CやP2C市場は注目を集めていますが、市場規模は小さい。市場全体を拡大するには1社だけでは難しいため、参入企業を増やす狙いもあります。

WWD:今後さらに成長するため必要なことは。

堀之内:D2Cブランドからコンシューマーブランドへのスイッチングが課題です。それには販路の拡大は必須です。また、インフルエンサーなどがプロデュースするブランドは、その人が年齢を重ねると、当初のコンセプトに見合う商品作りが難しくなります。ブランドも成長し息の長いブランド作りをともに手掛ける必要がありますね。今期(23年2月期)の売上高は前年の3倍の20億円を見込んでいます。2年後には取り扱いブランドを8に、「ディーツーシーギャラリー」で25ブランド程度を扱い、売上高50億円を目指します。将来的にはD2C、P2Cブランドのプラットフォームを構築し、世界に通用するブランドを育成して日本のクリエーターで経済圏を広げたいですね。

PHOTOS:SHUHEI SHINE

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伊発ジュエラー「ブチェラッティ」3代目が来日 代々引き継がれるルネサンスのクラフツマンシップによる唯一無二のジュエリーを提案

 イタリア発ジュエラー「ブチェラッティ(BUCCELLATI)」の3代目、アンドレア・ブチェラッティ(Andrea Buccellati)=ブチェラッティ名誉会長兼クリエイティブ・ディレクターが、ハイジュエリー発表のために来日した。コロナが落ち着いて、久々の来日になった。ブチェラッティ会長に、ブランドの強みや戦略などについて聞いた。

WWD:今回の来日の目的は?

アンドレア・ブチェラッティ=ブチェラッティ名誉会長兼クリエイティブ・ディレクター(以下、ブチェラッティ):毎年1回は来日していたが、コロナ禍でしばらく来日できなかった。今回は、フランス・パリ・オートクチュールで発表した新作ハイジュエリー“ジャルディーノ”の発表のために来日した。

WWD:「ブチェラッティ」が他のジュエラーと違う点は?

ブチェラッティ:家族経営で、祖父、父、私と3代に渡り、スタイル、デザイン、クラフツマンシップにおいてユニークであることを守り続けてきた。だから、ジュエリーを見ると「ブチェラッティ」だとすぐわかるはずだ。クラフツマンシップについては、特に、ルネサンス時代からのエングレービング技術を駆使したジュエリーを提供している。それは他のジュエラーとは一線を画する技術だ。自然やルネサンスなど、歴史や文化とつながりの深いスタイルというのもブランドの特徴だ。また、独特のテイストは、ファッショントレンドに左右することなく、タイムレスで何十年先でも着用できる。

WWD:コロナ禍ではどのような戦略をとったか?

ブチェラッティ:コロナ禍1年目は売り上げが落ちたが、2年目は売り上げがアップした。その理由は、ECに力を入れたことと商品力を強めたこと。ロックダウンが終了して、消費者による外出して買い物したいという気持ちが強まった。

エントリーからハイジュエリーまで強化

WWD:世界何ヵ国で販売しているか?好調な市場は?

ブチェラッティ:14〜15ヵ国で販売している。好調な市場は、中国、アメリカ、ヨーロッパだ。アジア全体が強くなってきている。

WWD:主要顧客の年齢層やタイプは?

ブチェラッティ:30〜50代が中心で、違いがわかるエレガントな女性が多い。20代の若い世代にも、着けやすいジュエリーが人気だ。

WWD:日本市場の戦略は?

ブチェラッティ:日本では約45年間販売している。現在、約5店舗あるが、店舗を拡大したり増やしたりしたい。また、日本人が好むデザインを提供する。

WWD:どのように他のジュエラーと戦っていくか?

ブチェラッティ:培ってきたスタイルやノウハウ、クラフツマンシップを大切にしていくことで差別化を図る。「ブチェラッティ」の唯一無二のテイストを理解してくれる消費者が増えつつある。そういう人々に着けてほしい。

WWD:今後、強化したいカテゴリーは?

ブチェラッティ:全てのカテゴリーを強化する。ハイジュエリーの強化も図りたいし、将来の顧客である若い人向けのラインも増やしていきたい。

WWD:メゾンとして取り組んでいるサステナビリティは?

ブチェラッティ:コンパニー フィナンシエール リシュモンの傘下なので、グループと足並みをそろえ、素材やもの作りの過程、二酸化炭素削減などについて関連機関の認証をとるようにしている。

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「マーティン ローズ」と「ヤン ヤン ヴァン エシュ」が「ピッティ」でショー開催 2023年1月

 イタリア・フィレンツェで2023年1月10〜13日に開催するメンズ最大の見本市「第103回ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO以下、ピッティ)」に、英国メンズブランド「マーティン ローズ(MARTINE ROSE)」がゲストデザイナーで、アントワープ発の「ヤン ヤン ヴァン エシュ(JAN JAN VAN ESSCHE)」がデザイナープロジェクトで参加する。「マーティン ローズ」は2023-24年秋冬コレクションをイベント形式で、「ヤン ヤン ヴァン エシュ」は新作コレクションを初のランウエイショーで1月11日に発表する。

 「マーティン ローズ」のファウンダー兼クリエイティブ・ディレクターのマーティン・ローズは、「『ピッティ』はメンズファッションイベントの先駆的存在で、私が尊敬するデザイナーの多くがその一翼を担ってきました。新作コレクションを携えて大好きなフィレンツェに行けることにスタッフ一同感激しています」とコメントした。

 デザイナーのヤン=ヤン・ヴァン・エシュは「最初のショーをフィレンツェの独特な雰囲気の中で開催できるなんて、私にとっては夢見ることしかできなかった特別なことです。プレゼンテーション制作においても非常にサポートされていると感じており、この機会を忘れられない瞬間にするために、一丸となって意欲的に取り組んでいます」と喜びを語った。

 ラポ・チャンキ (Lapo Cianchi)=ピッティ コミュニケーション&イベントディレクターは、「ヤン=ヤン・ヴァン・エシュは控えめながら現代のメンズファッションを象徴する存在であり、おそらく彼は、性差の主張が不要であることを最初に考え、それを裏付け、あるいはそれを超越したと判断するような人なのではないでしょうか。(中略)彼の人柄や、コレクションの内容と表現方法の適正なバランスを保つことに注力していることを知るにつれ、彼が私たちの招待を受けてくれるかどうか、確信は持てませんでした。しかし彼は快諾してくれました。われわれはこのことを非常にうれしく思っており、彼への関心度がさらに高まることを期待しています」と語った。

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「ベアミネラル」新社長が語るブランド復調へのプラン 「やるべきことを積み上げれば来年度40%増は可能」

 元レブロン社長の菅野沙織氏は、2月に同職を退職後、8月3日付でクリーンビューティブランド「ベアミネラル(BAREMINEARALS)」を輸入販売するベアエッセンシャルの社長兼オルヴェオングローバル(Orveon Gloval)日本地区担当ゼネラル・マネージャーに就いた。「ベアミネラル」のほか、「ローラ メルシエ(LAURA MERCIER)」「バクサム(BUXOM)」のブランド統括も務める。

 3ブランドは、前保有者の資生堂が不採算事業の整理の一環で、21年に米国の投資ファンドのアドベント・インターナショナル(ADVENT INTERNATIONAL)」に売却。同ファンドは3ブランドを擁する新会社、オルヴェオンを設立していた。菅野新社長に、就任までの経緯と今後の戦略を聞いた。

WWD:前職のレブロンを辞めてベアエッセンシャル社長に就任するまでの経緯は?

菅野沙織ベアエッセンシャル社長兼オルヴェオン グローバル日本地区担当ゼネラル・マネージャー(以下、菅野):レブロンで社長を10年以上勤めて、コロナ前までは売り上げも好調でリップクリームをヒットさせたり “V字回復”と言っていただくことも多かったり、いろいろな努力の結果が出てやりきった感がありました。レブロンはマスマーケットで展開していましたが、その前は「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」でプレステージやエステティックにも携わり、幅広いチャネルを経験して全部やりきったな、と。年齢も考えてそろそろ引退しようと決めたのが昨年6月で、諸々の調整がついて2月末に社長の職を離れました。

WWD:引退後に何かプランが?

菅野:実は2年前に結婚して、夫とお互いが元気なうちに旅行したり、たまには料理をしてあげたり、そろそろスローライフを送りたいと思って。レブロンの社長を辞めた後も上級顧問として週に何度かはお手伝いをしていて、そんな矢先にオルヴェオンから声が掛かりました。引退と決めて、若い頃からの上司がたくさんいますからお礼のメッセージを送ったら、オルヴェオンのナンバー2のポジションにいる昔の上司から「日本を強化するからちょっと待て」と言われて。そこから「ベアミネラル」や「ローラメルシエ」の店舗を見て回りました。

WWD:最終的にベアエッセンシャルの社長を引き受けた決め手は?

菅野:2017年から輸入化粧品協会の理事長を務めているのですが、クリーンビューティは化粧品業界としてこれから考えていかないといけない方向性だと感じていたところに届いた話だったので、「これは使命かしら」と思って。そこから何回かオルヴェオンの面接を受けて非常に話が合ったので、化粧品人生の最後にやるべきことと思って決めました。「ベアミネラル」は何十年も前からミネラルを使った地球と肌に優しい化粧品、クリーンビューティを発信してきましたが、コロナをきっかけに消費者の意識が地球や体に安全なものに向かっている今がやっとスタートポイントではないかと。新しいカテゴリーをつくりたいというわけではなく、「ベアミネラル」が元々持っている考え方や理念を広めたいと思ったんです。きっちりやれば大きな波になるし、それは地球にとっても人にとってもいいことなので、ささやかながら尽力したいと。

いかに早くブランド認知度を改善するかが使命

WWD:ベアエッセンシャルでのご自身のミッションについてどう考えているか?

菅野:「ベアミネラル」は、かつてQVCで販売していた頃はテレビの力もあって高い認知度がありました。最近は新製品の開発が少なく、いいアイデアも寝かされていた面があります。それを掘り起こすのが私の仕事なので、本国と共に新製品の開発や投資も考えていくし、ブランディングももう一度考え直そうと。「ベアミネラル」は40カ国近くで展開していますが、日本はアジアの重要マーケットで、もう一度マーケットシェアを上げるのが最大のミッション。それからブランドの素晴らしい製品や理念を伝え、お客さまとのタッチポイントを増やし、認知度を取り戻して売り上げを上げることです。「ローラメルシエ」に関しては、全体的な売り上げの管理や承認事項は当社の管轄ですが、マーケティングや営業活動などはディストリビューター契約を結んでいる資生堂が行います。

WWD:改めて「ベアミネラル」の特徴は?

菅野:クリーンビューティの元祖とも言えるサンフランシスコ発のミネラルコスメブランドで、日本では売り上げの50%弱をファンデーションが占めています。次いでスキンケアが約25%、カラーコスメが約15%、残りがブラシなどのツール。90%以上の製品がビーガンである点も特徴です。ミネラルで肌に優しいだけでなく、パッケージにおける環境配慮、残布を使ってポーチを作ったり、寄付をしたり、SDGsが重要視されるずっと前からさまざまな取り組みをしてきました。ですが、売っているものはビューティなので、発色の良さやアーティストがおすすめできる仕上がりの良さ、感触やテクスチャーの良さ、メイクアップとしての美しさが最大の特徴です。

WWD:ブランディングを練り直しているとの話があったが、新たなターゲットは?

菅野:クリーンビューティに共感する人はもちろんですが、アクティブな人という顧客像が見えてきています。ビーガンやナチュラル、オーガニックって地味にしてしまいがちなんですが、そういうマインドの人ってヨガやピラティスをしたり健康に気をつけて食べ物に気を使ったり、すごくおしゃれなウェアを着て沖縄にリトリートに行ったりしますよね。そうした素敵なライフスタイルの中でメイクを楽しむ人がターゲットなんじゃないかと。肌に優しい製品だから「敏感肌の人のための」とか考えてしまいがちですが、香りがないから男性も使いやすいとか肌に優しいから子どもも使えるとか、ターゲットは広がるんですよね。ヘルシーにアクティブに暮らす人全てがターゲットだと思うので、狭いアプローチはもうしません。

本国チームにカラーコスメの開発でリクエスト

WWD:現状、ファンデーションの売り上げシェアが最も高いとのことだが、商品構成は今後変えるか?

菅野:本国ではファンデーションが中心になっていますが、日本で直近で売れているのはハイライターやチークです。こうした商品は遊び心がありますよね。ファンデーションだけではどうしても地味。ファンデーションと色ものの役割をきっちり考えてほしいと本国に伝えています。新客を獲得できる面白い商品を作ってほしいという話もしました。商品がただあるだけではダメで、使いたい理由をはっきりさせなければいけない。色がいいのか、質がいいのか。色ものに関してはストーリーをきちんと作ってほしいというリクエストを開発チームにしています。そうした商品をバスらせるのは私たちの仕事です。

WWD:チャネル別の売り上げシェアは?

菅野:「ベアミネラル」は自社ECがとても強く、売り上げの45%程度を占めています。55%が実店舗で、百貨店が13店、高級セルフ・セミセルフが65店です。ここ数カ月は新製品が当たっているのもあり、百貨店の売り上げが伸びてきています。

WWD:ECが圧倒的に強い中、新規出店は考えているか?

菅野:ブランドの認知度をいかに早く改善するかを考えたとき、ある程度の投資や取り組みが必要です。百貨店に関しては店舗数を広げるのは簡単ではないため、店舗ごとの売り上げをいかに早く上げるかに集中しようと思っています。それは販売や接客力という話ではなく、マーケティングやPRがブランドの認知度を上げていかに新客を店頭に誘引できるかになります。来年は新製品も増えるのでそこに注力します。高級セルフ・セミセルフショップに関しても既存店の売り上げを上げるのがまず1番にやること。販売員が常駐できない分、ディスプレーだけで魅力を伝えなくてはいけません。新規出店でいうと、来年はまず大型都市のトラフィックが多いところを狙って最大10店舗を目指して増やしていきたいと考えています。

WWD:ECについて、自社サイト以外の戦略は?

菅野:一部百貨店のECや「アットコスメショッピング(@COSME SHOPPING)」などもありますが、ほぼ自社サイトの売り上げというのが現状です。先日、アマゾンとアイスタイルの協業の話もありましたが、アマゾンもZOZOもビューティ志向になっているので、そうした大型の適切なプラトフォームにきちっと入って、ブランドの認知度を上げていくことが非常に重要だと考えています。バナー広告なども目にする機会が増える仕組みにしないとスピード感を持って認知度を上げられないので、それは来年実行します。

WWD:来年度の売り上げ目標は?

菅野:今年に対して40%増で考えています。ここ数年低迷気味でしたが、来年は新製品も多く、百貨店、セミセルフ、ECとそれぞれの戦略がはっきりしているので、それを積み上げたら可能だと思っています。まだまだ取り組みたいことがあるので、24年末には今年に対して2倍の売上高を目指します。

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20代女性が立ち上げた古着屋「スタジオラボ404ドットコム」 NYで培った審美眼で選ぶデッドストックと新ブランド

 「スタジオラボ404ドットコム(studiolab404.com以下、404)」は、目黒区・祐天寺の住宅街にひっそりとたたずむ古着と新品が並ぶスペースだ。ラインアップはデッドストック(流通在庫品)と海外の新進ブランドが中心で、トレンドをキャッチしたアイテムを扱っている。同店を立ち上げたモネ(Monet)=ディレクターに、ブランディングや古着のおすすめコーディネートを提案してもらった。

 「404」は、目黒区・祐天寺に2021年12月にオープンした。7年間にわたりニューヨークでMDとバイイングの経験を積んだモネディレクターが、帰国後に「自分の経験を生かして新しいことを始めたい」と思ったことがきっかけで、友人のグラフィックデザイナーのマリコ(Mariko)と商品企画のレイ(Lei)と共に立ち上げた。現在は店舗とオンラインストアを運営しており、ショップ名の“404”はエラーコードの意味。「『グーグル検索しても出てこない』『全貌が見えづらい』という固定概念や、価値観にとらわれないという思いを込めています。駅から離れたちょっとへんぴな立地を選んだのもその理由ですね」とモネディレクター。そんな自由な発想は、商品のラインアップにも表れている。新旧のウィメンズアイテムを混ぜた品ぞろえで、ニューヨークで買い付けてきたクオリティの高いデッドストックと海外の新進ブランドを販売している。

百貨店のようなミックス感あるセレクト

 ショップは1〜3階の3フロアで構成。1階はデッドストックの商品を中心に、シルクシャツやニット、ミリタリージャケットなどデイリーに使えるウエアをそろえる。シンプルなデザインのものは、ワッペンを付けたり、シャツの裾や袖をカットしたりして、新しい着方を提案しているという。

 2階は、「404」のテイストの一つであるユニホームのデッドストックとジュエリーがメイン。モネディレクターはもともとジュエリーのバイイングをしており、販売商品と合わせやすいチャームのネックレスやリングなども仕入れている。さらにアメリカのディストリビューターから買い付けたキャンドルやハンドソープ、カトラリーなどのホームウエアも並ぶ。百貨店のように幅広いジャンルのアイテムを1つの空間で購入できるように工夫している。

 展示会スペースを併設した3階では、「ローハン(ROUHAN)」や「ネイータ(NAEITA)」など、モネディレクターがニューヨーク時代に親交を深めてきたという若手デザイナーのブランドを扱う。「日本に販路を広げたいという彼らのために、『404』をそのプラットフォームの一つとして提供していきたい。より多くのお客さまに知ってもらえるように、今後は展示会なども積極的に行っていきたいですね」。

スタッフがおすすめするコーディネート

 「404」のインスタグラムでは、モネディレクターとグラフィックデザイナーのマリコ、商品企画のレイが販売アイテムを取り入れたコーディネートを発信している。3人の異なる体型を生かし、常に消費者目線でスタイリング提案することを心掛けているという。

 「『404』のテイストがユニホームなので、セーラートップスをセレクト。ビンテージのスカートとデッドストックのソックス、ローファーを組み合わせて、スチューデントスタイルにまとめました。華奢なアクセサリーを重ねづけして、モダンな印象にしています」

「USAのシャンブレーシャツは、トレンド感を出すために裾を切ってクロップド丈にアレンジ。『ローハン』のバギーパンツを合わせて、めりはりの効いたスタイリングにしてみました」

 「とろみのあるシアーシャツは『404』オリジナルのもの。流れるようなラインを際立たせるために、『ラングラー(WRANGLER)』のスリムなドレスジーンズを選びました。フレアなので脚長効果も狙えるんです」

■スタジオラボ404ドットコム
住所:東京都目黒区祐天寺1ー31−12 LS
営業日:月、土、日
時間:14:00〜20:00
定休日:火、水、木、金

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ウオッチ部門ディレクター、ジャン・アルノーが語る 「ルイ・ヴィトン」時計事業20年の情熱

 2022年は、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」がメゾンとして時計作りにも傾倒して、最初の本格時計コレクション“タンブール(TAMBOUR)”を発表してからちょうど20年のアニバーサリーイヤーだ。これを記念してルイ・ヴィトン渋谷メンズ店で開催された“タンブール”のエキシビションに合わせて、世界200本の限定モデル“タンブール トゥエンティ(TAMBOUR TWENTY)”の開発責任者でもあるウオッチ部門ディレクターのジャン・アルノー(Jean Arnault)が来日した。アルノー=ディレクターは、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)のベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長兼最高経営責任者(CEO)の四男。自身が初めて心引かれた時計についての思い出や、限定モデル開発の経緯、「ルイ・ヴィトン」の今後の時計事業について話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):メゾンの時計作りを率いているが、そもそも時計には興味があった?最初に心引かれた時計、時計作りに興味を持ったきっかけは?

ジャン・アルノー「ルイ・ヴィトン」ウオッチ部門ディレクター(以下、アルノー=ディレクター):心引かれた最初の時計は、ありがちな「父の時計」ではなくて、11歳の頃に父と一緒に見た時計。時計専門店で見た「ブルガリ(BVLGARI)」の“ダニエル・ロート(DANIEL ROTH)”のミニッツリピーター&オートマタモデル「イル・ジョカトーレ・ヴェネツィアーノ(ヴェネチアの勝負師)」です。

WWD:その頃の「ブルガリ」は、父親がトップを務めるLVMHの傘下になる前。加えて子どもには理解しづらい複雑機械式モデルだ。当時からこうしたハイウオッチメイキングに興味があった?

アルノー=ディレクター:「機械がどんな仕組みで『音で時刻を知らせる』『勝負師の人形の手を動かしたり、サイコロの目をランダムに変えたり、ろうそくの火をきらめかせたりできる』のだろう?」と不思議に思いました。その後、この種の時計を目にすることはありませんでしたが、こうした興味をずっと心の中に抱き続けていました。

WWD:その時は時計作りに関わるなんて思っていなかった?

アルノー=ディレクター:もちろん、まったく考えてはいませんでした。でも今は「ルイ・ヴィトン」で時計作りに関わっています。子どもの頃に「夢のよう」と思っていた時計作りに関われて、とてもうれしく思っています。

WWD:「ルイ・ヴィトン」の時計にはどんな魅力がある?

アルノー=ディレクター:逆説的な表現になりますが、歴史が20年間しかないことです。つまり時計作りにおいて、「伝統が何よりも尊重されるブランドではない」ことが最大の魅力だと考えています。だから時計作りにおいては本当にクリエイティブで冒険することができる。本当にラッキーなことだと思っています。

WWD:今回の「タンブール」誕生20周年記念モデル」“タンブール トゥエンティ”は、初めて全面的に企画・開発に関わったモデルだ。

アルノー=ディレクター:このモデルは、20年前にこの場所(ルイ・ヴィトン 表参道店)で発売したオリジナルモデルをお持ちの方や、コレクターの方に敬意を込めたものです。この製品の企画に当たって、私は20年間という時間を人間に置き換えて考えてみました。人間にとって20歳までは「学ぶ」期間。学習し、自分が必要な知識を得る期間だと思います。と同時に20歳というのは、高等教育を受けるのか?仕事をするのか?どんなキャリアを築いていくのか?を決める大きな意思決定の時期。人生のターニングポイントです。そして“タンブール”は、メゾンの時計作りの原点となった時計です。この時計の大きな節目には、どんな記念モデルがふさわしいのか?を、開発スタッフと数カ月にわたって議論を重ねました。

WWD:このモデルを節目に“タンブール”コレクションをどう進化させたい?

アルノー=ディレクター:このコレクションは、本当に目を引くデザインです。好き嫌いははっきり分かれますが、良いデザインというのはそういうもの。02年以降製品化し続けているのは素晴らしいことです。この20年間でトゥールビヨンからミニッツリピーターまで、さまざまなモデルを開発、発売できました。これから先も、さらに素晴らしい時計作りを進めるつもりです。

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次世代の感性でシカゴのストリートシーンをリードするジョー・フレッシュグッズ 「愛こそが一番のパフォーマンス」

 アメリカ・シカゴ出身のデザイナー、ジョー・フレッシュグッズ(Joe Freshgoods)は、「ニューバランス(NEW BALANCE)」とコラボレーションした新作“993”(3万9600円税込)発売に合わせて、インスタレーションを東京・日本橋浜町のティーハウス ニューバランス(T-HOUSE New Balance)で11月8日まで開催している。

 フレッシュグッズは現在36歳。26歳で自身のセレクトショップ「ファットタイガー ワークショップ(Fat Tiger Workshop)」をオープンすると、そのクールで自由度の高いマインドのセレクトとオリジナルアイテムを武器に、たちまちシカゴのストリートシーンのランドマーク的ショップへと成長させた。しかし、2021年に「別の夢を追いかける時が来た」と突然の実店舗の閉店を発表。すると翌年、「ニューバランス」の新プロジェクト“コンバセーションズ アモングスト アス(CONVERSATIONS AMONGST US、以下CAU)”のクリエイティブ・ディレクターに就任した。

 “CAU”とは、年間を通してブラックコミュニティーに敬意を表しながら、あらゆる人種間での新たな対話を促進することを目指した新プロジェクト。「ニューバランス」は、フレッシュグッズのトレンドを作り上げる次世代の感性と、アフリカン・アメリカンを中心とするコミュニティーへの影響力を信じる形で、彼を“CAU”のクリエイティブ・ディレクターに抜擢したのだ。

 インスタレーションために来日したフレッシュグッズに、基本的な経歴から「ニューバランス」との出合いやコラボ“993”、シカゴのお気に入りのレストランまでを聞いた。

「アフリカン・アメリカンは、本来の目的とは違った新たな視点を加えることが得意なんだ」

ーーまずは、ファッションシーンに足を踏み入れたきっかけを教えてください。

ジョー・フレッシュグッズ(以下、フレッシュグッズ):中学2年生の時、キャメロン(Cam'ron、マンハッタン・ハーレム出身のラッパー)がピンク色の服を着ているのを見て憧れたことがすごく印象に残っているんだ。彼を見てから俺もピンク色のアイテムを着たいと思ったんだけど、その当時は“ピンクは男性が着る色ではない”って風潮があったから、メンズのアイテムでピンクのものはなかなか無くてね。自分が好きなピンクのアイテムを着たいという“色”への強い思いが、俺とファッションとの最初の関係だった。それに、俺が一番得意なのは何かをクリエイトすることで、13~14歳からTシャツを作ったし、創作という行為が好きだった。それがどんどんうまくなって、今に至った感じだね。

ーー日本では、ブランドを立ち上げたり、自分のショップをオープンしたりするために専門学校や大学へ通う人が多いです。

フレッシュグッズ:何かを始めるとき、大学や専門学校に通って勉強する人たちのことはとても尊敬するけども、俺は金銭的に余裕がなかったから行っていないんだ。“Real life is my college”で、日々の生活が教育の場だったよ。

ーー自身のセレクトショップ「ファットタイガー ワークショップ」をオープンするまでを教えてください。

フレッシュグッズ:「ファットタイガー ワークショップ」の前に、アフリカン・アメリカンがオーナーを務めるシカゴのショップ「リーダーズ 1354(Leaders 1354)」で働いていた。客としてドアを初めて開けた時、俺と同じ肌の色をした人たちがショップスタッフとしてクールなアイテムを売っている光景が広がっていて、すぐに「働きたい!」と思ったんだ。働くうちに、同じようにセレクトショップをオープンしたり、ブランドを立ち上げたりしたいという思いが強くなって、2013年に26歳で「ファットタイガー ワークショップ」をオープンした。

ーー「ニューバランス」との関係がスタートしたきっかけは?また、それ以前はどのようなイメージを抱いていましたか?

フレッシュグッズ:19年の夏に「ニューバランス」の担当者がシカゴに来て、そこで話し合ってから関係が始まったね。両者にとっていいタイミングだったと思うよ。俺はもともと地域的なことに注意を払う人間なんだけど、アメリカ中北部のシカゴに住む人間としてイーストコースト(ボルチモア地区に代表されるワシントンD.C.やフィラデルフィア、ニューヨーク)のブランド、特に「ニューバランス」にリスペクトを感じていたんだ。コラボを機に、ブランドは地域に根差したものであるということをより理解できたし、違った階層にアクセスできていると感じている。

ーー今回、“993”をベースに採用した理由や、“パフォーマンス アート”の具体的な着想源はありましたか?

フレッシュグッズ:以前からステイプル・アイテムとして“900”シリーズが好きだったのもあるけど、コラボレーション時にはパートナーからの提案にも常に耳を傾けるべきだと思っていて、「ニューバランス」との話し合いの末に“993”を選んだんだ。“パフォーマンス アート”のコンセプトやデザインを考えるにあたっては、「ニューバランス」のアーカイブ広告を参考にしながら「この部分をこう変えた方がいい」や「こうしたら面白くなるかもしれない」といった方法でデザインを進めた。その中で、アフリカン・アメリカンは何でもない鉄をアートに仕立てることができたり、ハイキング用のアイテムをファッショナブルなアイテムに変えたり、本来の目的とは違った新たな視点を加えることが得意なんだけど、アーカイブ広告の中に“Made To Wear Well(着用することでパフォーマンスが向上する)”というコピーを見つけてね。「ニューバランス」の“993”はランニングシューズとして作られたけれど、現在はファッショナブルなアイテムとして着用されているし、これこそが着想源だと思ったんだ。1つのスニーカーを見ている4人の人物がいて、全員が同じスニーカーに対して違う意見を持つことーーこれが“パフォーマンス アートだ”。

ーーピンクをはじめとする淡いカラーリングを落とし込んだ意図は?

フレッシュグッズ:「ニューバランス」との協業では、さまざまな部分を“Blighten-Up(明るくする)”ことが俺の役割だ。彼らが歴史的に使用してきたグレーやネイビーではなく、俺が好きなピンクも含めた明るいパステルカラーを提案することで、これまで抱かれてきたイメージや印象を変えることができると思ったのさ。

ーーイメージビジュアルでは、世界的なアーティストと共にシカゴになじみのある“フッドスター”たちも起用していますよね。

フレッシュグッズ:「ニューバランス」との関係を続ける中で別分野の人たちと働き、いろいろな学びがあった。今回は、「ジョーの頼みなら」って思ってくれるような友人関係をベースに、俺がやりたいことをシカゴのヒーローたちに叶えてもらった。

ーーこれまでの「ニューバランス」とのコラボを振り返ると、どれもストーリーテリングへのこだわりを強く感じました。

フレッシュグッズ:自分がビジネスを始める前も後も、さまざまなブランドが発信するベーシックな広告を見ていつも飽き飽きしていたんだ。正しいパートナーと正しい予算があれば、的確かつ今まで見たことのないような広告は展開できるのにってね。「ニューバランス」とはスニーカーを通して、他の人では見せることができない俺だけのストーリーで世界を一つに結びつけることができているはず。

「“Love is the biggest performance(愛こそが一番のパフォーマンス)”だからね」

ーー東京で11月8日まで開催しているインスタレーションのテーマを教えてください。

フレッシュグッズ:俺の魂や経験を具現化したような空間としてティーハウスへ招待する気持ちと、俺がアフリカン・アメリカンを代表してティーハウスに招待されたという気持ちを表現している。俺は違う文化の間に共通点を見出しながら育ってきたんだけど、例えば日本の茶道がアフリカン・アメリカンにとっては何かを考えたときに、それがサザン・スウィートティーだと気付いた。シカゴという遠く離れた場所から日本に来たけど、俺たちはどこかでつながっているということを表現できているんじゃないかな。

ーー設置されているさまざまなオブジェクトは、どのようなチョイスでしょうか?

フレッシュグッズ:俺はヒップホップのアーティスト全般に影響を受けていて、このCDブックは今でいうインスタグラムのプロフィール画面のようなものさ。当時CDを集めることは、インスタグラムのポストを更新するようなものだった。ウォークマンは普通のグレーじゃなくクリアなものが好きで、モトローラ(MOTOROLA)やブラックベリー(BlackBerry)は本当に当時使っていた携帯だよ。ノトーリアス・B.I.G.(The Notorious B.I.G.)が表紙の雑誌は、色使いの主張も良くて一番好きな一冊だね。あと、モブ・ディープ(Mobb Deep、ヒップホップデュオ)のプロディジー(Prodigy)が大好きで、彼がキッチンでバイクに跨っている写真がお気に入りだから同じような一台を置いている。彼も「ニューバランス」と同じく、イーストコースト出身だね。壁から垂れている巨大なフラッグは、友人でエアブラシ・アーティストのPJが描いてくれた。シカゴのモールやプロム(高校生が卒業前に集まる伝統的なダンスパーティー)では似たようなものを作ることが多くて、それを写真に収めるのが好きなんだ。

ーーインスタレーションを記念したアパレルも製作していますね。

フレッシュグッズ:全10型で、そのうち4型がティーハウスのエクスクルーシブだ。このボタンシャツは、背面に両親が台所で踊っていた思い出をそのまま刺しゅうしているーー“Love is the biggest performance(愛こそが一番のパフォーマンス)”だからね。Tシャツには俺の趣味をそのまま落とし込んでいて、1970~80年代のアイテムを「イーベイ(eBay)」で探すのが好きだから、ビンテージのジョー・フレッシュグッズと「ニューバランス」のコラボTシャツをイメージした。アスレチックな感じもいいでしょ?あとは、俺らしいピンクのヴァーシティージャケットもあって、招待してくれたティーハウスや日本へのリスペクトに応えて背中に日本地図を刺しゅうしているんだ。

ーー日本でこのようなイベントを開催するのは何度目ですか?

フレッシュグッズ:友人のVERDYとのポップアップを4年前に一度したから、今回が二度目だね。俺は彼をバックアップしただけだけど(笑)、今じゃ彼はスーパースターだ。

ーー東京とシカゴでファッションの相違性は感じますか?

フレッシュグッズ:とても画一的に感じる一方で、ファッションを自由に楽しんでいるようにも思う面白い街かな。

ーーシカゴは4大スポーツ(NBA・NFL・NHL・MLB)のチームが本拠地を構えている関係で、世界的に見てもスポーツとファッションが近い距離にある街だと考えています。

フレッシュグッズ:確かにNBAのシカゴ・ブルズも、NFLのシカゴ・ベアーズも、NHLのシカゴ・ブラックホークスもあるし、MLBはシカゴ・カブスとシカゴ・ホワイトソックスの2チームが存在するから親和性は高いね。ホワイトソックスのキャップがヒップホップの定番アイテムであるように、シカゴの人々にはスポーツ・カルチャーがDNAレベルで染み付いているから、それがファッションに自然と現れるんだと思うよ。

ーー東京で気になるブランドやショップ、人物は?

フレッシュグッズ:特定なものは無いけれど、歩いていて気になるショップはたくさんあった。ステーキが好きだからステーキの店に行きたいね。

ーーでは、シカゴでお気に入りのレストランはありますか?

フレッシュグッズシカゴはアメリカの中でも2大フードシティだから、この話をし出すと2時間はかかるな……(笑)。肉が大好きだからステーキハウス「バベッツ(Bavette’s)」と、フィリーチーズステーキ・サンドイッチがある店によく行くよ。

ーー最後に、毎日見ている注目のSNSアカウントなどがあれば教えてください。

フレッシュグッズ:ステーキのアカウントかな(笑)。

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スパイバーのキーマンに聞く、「究極のアパレル型循環エコシステム」

 人工タンパク質素材「ブリュードプロテイン(Brewed Protein)」の開発で世界から注目を集めるスタートアップ企業スパイバー。近年「ブリュードプロテイン」の開発・生産だけではなく、農業残渣や廃棄衣類のセルロースを資源として活用するための研究もスタートした。スパイバーが目指す“循環”とは?キーマンの一人である東憲児スパイバー経営企画室ヘッド・オブ・ビジネス・ディベロップメント&サステナビリティ兼執行役員にオンラインで話を聞いた。
 
WWD:スパイバーが考える循環とは?

東憲児スパイバー執行役員(以下、東):一言で表現するなら、資源を最大限活用すること。無駄になるものを極限まで減らすことが重要だ。何かを新しく作るときに出る副産物や役割を終えた製品などを、「ゴミ」として捉えるのではなく、資源として捉えることができるようなシステムのことを「循環」と考えている。当社も現在の「ブリュードプロテイン」の原料はサトウキビを絞って作った砂糖やトウモロコシのでんぷんといった食料にもなり得るものだが、サトウキビの搾りかす(バガス)やトウモロコシの茎や葉といった農業残渣を活用することが重要だと捉え、1~2年前から研究を始めている。

 また、現在はゴミとなっている古着の活用法も研究している。バガスなどのセルロースでできたもの、言い方を変えればコットンやレーヨンを糖に分解する技術は以前から研究されており、こうした既存技術を活用しつつ、自社でも研究を行っており、プロセスによってはすぐに応用できるものもある。農業残渣は規模を拡大するのに時間がかかりそうだが、技術はできた。古着は一部の開発は残っているが、原理的にできることは分かっている。ただ、古着を活用する場合、原料が天然由来100%なら分解して使えるが、混合素材をどうするか、染料や仕上げに用いる化学物質の影響をクリアにする必要がある。

WWD:確かに現在の「ブリュードプロテイン」の原料は食糧生産とバッテングしているし、バージン素材ともいえる。

東:天然のカシミヤやウールと比べればメリットはあるが、「ブリュードプロテイン」の生産のためだけにサトウキビやトウモロコシを育てるのは、土地も必要だし、肥料や殺虫剤なども使う。

WWD:古着を活用する場合、製品情報の把握はもちろん製品設計時から循環を意識する必要があるのでは?

東:循環を可能にするためには枠組みが必要だ。素材の選定はもちろん、使用後に回収する仕組み、再活用するインフラなどサーキュラーなエコシステムが必要になる。ゴミの分別ルールと似ている。それをパートナー企業や業界団体、政府やNPOと協力して最速のスピードで進めていきたい。

 来年中にはバイオプロセスでの再資源化(発酵原料としてなど)したものであったり、再活用できる素材のみで作られ、かつリサイクル方法などもあらかじめ想定した製品企画を公開したいと考えており、いくつかのアパレルブランドと内容を詰めているところだ。製品設計段階でどうすれば再資源化できるか――われわれが今後提供する循環プロセスにのるための素材や製品規格はどういうものかを公開したい。長期的には、循環する社会を作るパズルの1ピースになればと考えている。循環性に取り組む団体と連携して、大きな枠組みを作ることに貢献したい。

WWD:そうした循環型エコシステムを作るにあたり、注目している技術や企業は?スパイバーで今後さらに必要になる技術や人材は?

東:サーキュラーなエコシステムを作るためのプロジェクトを進行しており、それをドライブする人材はウエルカム。ISOなどの国際規格や国際機関と連携して世の中を巻き込んでドライブするチームだ。引き続き、技術開発やプロセスの効率を上げる研究者や技術力を持った人材も必要だ。タイの工場が稼働して量産化をスタートしたので営業も強化もしている。

WWD:LCAの算定を行っているとか。

東:算定は終わり、現在は第三者によるクリティカルレビューを行っている。

WWD:ウールやカシミヤと比べてどのくらい環境負荷が低いのか?

東:素材の比較はグリーンウオッシュに使われたりもするのでハードルが高い。具体的な数字はまだいえないが――カシミアと“ブリュードプロテイン”を比べると温室効果ガスの排出量はカシミヤの半分にはなる。タイ工場の稼働前に試算しており、実際どうかというアップデートが必要ではある。現在タイ工場の電力は石炭火力だが、再生可能エネルギーを用いれば、タイ工場のフル稼働時にはその排出量比は4分の1~6分の1になる。

WWD:カシミヤは土地利用も課題だ。

東:土地利用に関してはカシミヤの約38分1。カシミヤは動物繊維の中でも環境負荷が大きく、温室効果ガス排出量でも「ブリュードプロテイン」と比べて差が大きく出ているが、ウールと比べると土地利用は約7分の1に抑えられるものの、温室効果ガス排出量は現段階ではドラスティックな違いはない。しかしさまざまな点において改善の余地もあり、今後環境負荷削減に向けて取り組む。中長期的にみるとウールと比べても環境負荷が低くなる想定だ。

WWD:計測することで工程ごとのインパクトが分かるので、優先的に削減に向けて取り組む工程が分かる。

東:まさに今検討しているところだ。一番大きいのは電力。石炭火力かクリーンエネルギーか大きいファクターになる。主な原料が農作物に由来したサトウキビとトウモロコシで、非可食のものや農業残渣を資源に活用するなど、より環境への負荷を減らす取り組みも重要だ。アメリカでの量産設備で提携しているADMとは、アイオワ州クリントン周辺でトウモロコシを生産・供給するADMのサプライヤー間における環境再生型農業の導入を共同で支援することを目的とした契約も締結している。

冨田勝研究室で関山社長とともに学ぶ

WWD:スパイバー入社の経緯は?

東:関山(和秀スパイバー取締役兼代表執行役)に誘われた。関山や菅原(潤一スパイバー取締役兼執行役)とは、慶應義塾大学先端生命科学研究所冨田勝研究室でともに学び、何度か声をかけてもらっていた。

WWD:そもそもバイオテクノロジーに興味を持ったきっかけは?

東:大学に入学した2000年に冨田先生の授業を受ける機会があり、衝撃を受けた。バイオテクノロジーが石油の代替になる本命のソリューションになるというメッセージを受け取り、やってみたいと思った。01年の先端生命科学研究所開設と同時に鶴岡で学び始めた。そこには関山や菅原もいて、関山は人工クモの糸を、私はエネルギーの研究に取り組んでいた。

WWD:さまざまな可能性がある中で、アパレル繊維だった理由は?

東:われわれの素材は規模を拡大するにつれてコストが下がる。繊維の中でも安価なコットンやポリエステルとわれわれの素材とを比べるのはチャレンジではあるが、カシミヤやシルク、ウールはそれなりに高額で、市場規模もある貢献しやすい素材だ。カシミヤやウールの柔らかさは繊維の細さによるが、われわれはカシミヤよりも細く柔らかい繊維を作ることができる。

WWD:スパイバーでの東さんの役割は?

東:企業とパートナーシップ提携や素材の販売を行う事業開発とサステナビリティ関連の取り組みの推進、両方を担当している。

WWD:仕事を通じて感じる面白さや難しさは?

東:世の中のサステナビリティの意識や優先度の変化が面白くもあり、難しい。何年か前までは、今までの素材よりも高いなら使えないというリアクションがほとんどだったが、そこが変わってきている。特にヨーロッパの変化は著しい。一気に変わった感覚があったのは2019年。日本はまだそこまでの変化はないが、変わるときは変わるとヨーロッパの変化を見ていて感じるので、楽観的かもしれないが日本も変わるのではないかとみている。

WWD:東さんが実生活で実践しているサステナブルなことは?

東:消費を抑えることが圧倒的にサステナブルであることに気付き、17年7月を最後に服を買っていない。肌着も買っていない。同じものを作るのにベターは大切だが、その前にできることへの追求も必要だ。

WWD:ちなみに最後に買った服は?

東:「ザ・ノース・フェイス」のズボンだった。たくさん服を買うタイプではないが、無駄に服も下着もたくさんあった。ほとんどの人は意図せずとも大量の服を持っているのではないか。時々補修もするが、買わなくなって5年がたつがそんなに困らない。あとは肉をなるべく食べない。ときどき食べるが環境負荷が大きいので避けるようにしている。

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満を持して旗艦店が登場 「シャネル」の時計・宝飾部門トップに聞く継続成長の鍵

 「シャネル(CHANEL)」のウオッチ&ジュエリーの旗艦店が10月、東京・銀座並木通りにオープンした。同旗艦店は3層、約227平方メートル。そのオープンに伴い、フレデリック・グランジェ(Frederic Grangie)シャネル パリ 時計・宝飾部門社長 が来日した。同社長に旗艦店について、コロナ禍・後の戦略や取り組みについて聞いた。

WWD:ウオッチ&ジュエリー専門の旗艦店をオープンした経緯と目的は?

フレデリック・グランジェ=シャネル パリ 時計・宝飾部門社長(以下、グランジェ):「シャネル」は何事もじっくり時間をかけて長期視点で行う。だから人々から渇望されるブランドなのだ。あらゆる商品を見てもらえる旗艦店という場所はとても大切。ファイジュエリーからハイジュエリー、高級時計などをそろえるだけでなく、日本独自の試みとしてブライダルサロンを設置。世界初のメンズコーナーもつくった。ここで、「シャネル」の歴史やクリエイションに裏打ちされた世界観を体験してもらえるはずだ。

WWD:旗艦店で提供する商品やサービスは?

グランジェ:パリ・ヴァンドーム広場の旗艦店が改装し、新たな次元へ向いつつある。

 銀座の旗艦店は、その姉妹店で、建築家のピーター・マリノ(Peter Marino)がデザイン。「シャネル」メゾンのコードを完璧に理解し、持ち前の才能とひらめきで“ぜいたく”な旗艦店にしてくれた。顧客に最高の体験を提供できる環境だ。夢が叶ったと言ってもいい。新たな取り組みとしては、VIPサロンにスクリーンがあるので、東京の顧客とパリ・ヴァンドームのアトリエをつないで、オンラインだが顔を合わせて接客ができる。ラグジュアリーかつプライベートな空間でゆったりとコミュニケーションを取れるようになっている。コロナ禍でいろいろなテクノロジーが出てきたが、人と人との触れ合いが大切だ。

継続投資で過去最高の売上高を記録

WWD:コロナ禍における戦略は?結果が出た施策は?

グランジェ:まずは、家族ともいえるスタッフをしっかり支えるのが大切だった。国によっては、長期間店舗をクローズしなくてはならなかったが、「心配ない」と言い聞かせた。2つ目は投資をし続けてきたという点。だから、コロナ後に最高の売り上げを記録することができた。今年5月にはヴァンドーム、10月には銀座の旗艦店をオープン。来年春には、米ロサンゼルスのロデオドライブ、秋にはニューヨークの5番街に出店する。コロナのような苦境があっても、ビジョンを持って、投資を続けながら運営するのが重要だ。

WWD:富裕層市場の活況について、どう分析するか?

グランジェ:「シャネル」はクリエイティブなメゾン。高額品の要望の高まりは持続しているので、それに対応していく。「シャネル」のメゾンのコードを取り入れた高級時計は、見た目もムーブメントも素晴らしく、他に比類するものはない。ハイジュエリーも同じだ。「シャネル No.5」にオマージュを寄せた55.5カラットのダイヤモンドネックレスは、“最高峰”を具現化したもの。世界最高の石と技術を用いた「シャネル」だからできるネックレスだ。

WWD:今後の日本戦略は?

グランジェ:日本は、とても洗練された市場。日本とフランスには共通するものがある。日本人は品質の高いものや工芸の大切さを理解している。日本人は「シャネル」のクリエイションを理解してくれていると確信している。コロナ禍ではできなかった旗艦店でイベントの開催やクリエイターの来日などで、秀逸したクリエイションをアピールできる。「シャネル」はファッションや化粧品などいろいろな分野があり、最もすばらしいクリエイションやサプライズを提供する。日本市場には限りがなく上り詰めていけると思う。

WWD:今後のウオッチ&ジュエリービジネスにおける展望は?

グランジェ:勢いのある成長で、ウオッチは世界的に絶好調。1987年にデザインされたウオッチ“プルミエール”を再び販売する。時代の先端を行っていたそのウオッチの成功を支えたのは日本人だ。きっと、納品のウェイティングリストの管理が課題になってくるだろう。

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リアーナも注目する26歳の新星 米デザイナーのコーナー・アイブスがつかむアメリカン・ドリーム

 アメリカ出身でロンドンを拠点に活動するコーナー・アイブス(Conner Ives)は、アメリカン・ドリームを体現するデザイナーだ。ニューヨーク・ベッドフォードで歯科医の母と牧師兼心理療法士の父の間に生まれ、18歳でロンドンの名門セント・マーチン美術大学(Central Saint Martins)でウィメンズウエアデザインを学ぶために単身渡英する。在学中の2017年には、モデルのアジョワ・アボアー(Adwoa Aboah)の「メットガラ(MET GALA)」の衣装を制作し、21歳の若さでデザイナーとしてレッドカーペットデビューを果たした。翌年には、リアーナ(Rihanna)からのオファーを受けて、彼女が当時手掛けていたブランド「フェンティ(FENTY)」のデザイナーを務めた。卒業作品の2021-22年秋冬コレクション“アメリカン・ドリーム”で、21年「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE)」のファイナリストに選出。今年2月に開催されたロンドン・ファッション・ウイークで自身の名を冠したブランドのデビューショーを行った。

 「コーナー アイブス」のクリエイションの源は常に故郷アメリカの田舎町にある。古き良きアメリカに思いを馳せながら、デッドストックとビンテージピースを使ったアップサイクルの手法で、現代的なスタイルへと落とし込む。アイテムは古着のTシャツを使った約1万5000円のウエアから、デッドストックのシルクに手作業でスパンコールの装飾を施した約38万円のイブニングドレスまで幅広く、主にデザイナーと同じZ世代から支持を集めている。アメリカン・ドリームの道を着実に歩むアイブスに、「フェンティ」での経験や、デザイナーとしての信念について聞いた。

――デザイナーを目指したきっかけは?

コーナー・アイブス(以下、アイブス):昔からファッションが好きだったので、物心ついた頃には他人のために洋服を作りたいと思っていました。例えこの世界に大量の洋服が生産されているとはいえ、デザイナーの道に進もうという気持ちが芽生えていたのです。他人に洋服を作ることで世界とつながり、その関係性の中で自己を築き上げたい。自己満足ではなく、責任を持っていい服を作りたいという思いは今も変わりません。

――これまで影響を受けたデザイナーは?

アイブス:私は大のファッションオタクで、本当に多くのデザイナーを尊敬しています。名前を挙げるとしたら、アイザック・ミズラヒ(Isaac Mizrahi)、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)、トッド・オールダム(Todd Oldham)、ホルストン・フローウィック(Halston Frowick)らでしょうか。特にアメリカ出身のデザイナーが大好きで、彼らのライフスタイルに関する神話を研究します。自身のライフスタイルを切り売りして人物像を作るというのが、彼らの称賛すべき特徴です。起業家的な精神でもあり、とてもアメリカらしいと思います。

古着やデッドストックに宿るエネルギー

――古着を用いたハンドメイド製品を主に提案している。既存のアイテムを再構築する魅力とは?

アイブス:私は人間として、何かしらのかたちで物からエネルギーを受け取っていると感じます。洋服が持つ、心情を投影する力に引かれてきたのです。お気に入りのTシャツやセーターを持っていると、ワードローブにある普通のアイテムよりもはるかに価値があると思い、ポジティブな感情が生まれてきますよね。そういう“熱気を帯びた”ような洋服から、エネルギーが伝わる気がするんです。既存のアイテムから再構築した私たちの作品が、誰かのお気に入りになってほしいですね。

――アップサイクルの制作で苦労したことは?

アイブス:使用できる古布に制限があるため、数量しか生産できないという点で苦労することはあります。でも最初からアップサイクルの手法でデザインしてきたので、クリエイションにおいて障害になることはありません。

――リメイクを取り入れるブランドが増えている印象だが、差別化を図るために意識していることは?

アイブス:私はセント・マーチン美術大学の学生だった2016年から、この方法で洋服を作ってきました。だからほかとの差別化を意識するよりも、自分の価値観に忠実であり続けることが重要だと考えています。アップサイクルを取り入れている理由は、大量生産や大量消費で犠牲となった実存する“死者(デッドストックや古着)”のためです。私は業界に変化をもたらすために既存アイテムのリメイクに取り組んでいるので、同じアイデアを持つブランドが増えているのはすばらしい兆候です。

――Z世代は「自分が共感するもの、価値を感じるもの」に投資する傾向があるといわれている。同世代の心をつかむために工夫している点は?
アイブス:私が作る洋服は、自分にとって個人的なもの。損得感情ではない、心の通ったパーソナルな作品です。自分の行いに違和感を覚える時は、いつもこのことを思い出しています。製品が市場に広く流通するようになって最も衝撃的だったのは、人々が洋服に“情熱”を感じると言ってくれたこと。これ以上にうれしいことはありません。だから、仕事に対して誠実で、真摯に向き合うことが何よりも大切だと思うのです。ファッションは時に頭で考えすぎることがありますが、感情よりも思考が有利になることはない。私たちは誠実に働き、正直にコミュニケーションを取り、受け手がこれを理解してくれるのを願っています。

26歳でかなえたロンドン・コレクションデビュー

――デビューとなる2021-22年秋冬コレクションに“アメリカン・ドリーム”と名付けた理由は?

アイブス:やや神話的でもあるアメリカン・ドリームの概念の探求が目的でした。このコレクションを制作した時、私はロンドンでの生活が6年目を迎えており、自分自身のアイデンティティについて深く考える時期でもありました。6年間に起こったいくつもの出来事が、私自身のアメリカン・ドリームと捉えていたのです。実際に私がロンドンの地で自己を確立したとしても、アメリカ人である限り、それはアメリカン・ドリームであるという結論に達しました。空想と妄想を描きながら、私の周りにいる女性たちにも影響を受け、各ルックは個々に異なる夢を持った女性を表しています。

――自身のコレクションを通じて、世の中に何を伝えたい?

アイブス:情熱。それ以外にはありません。

――出身地のニューヨークからロンドンを拠点に選んだ理由は?

アイブス:セント・マーチン美術大学で学ぶことが長年の夢で、そのためにロンドンに来ました。学生時代は制作に夢中で、外国で自分の人生を築いていることにさえ気づかなかったくらいです。イギリスのファッション業界と友人らの助けもあって、いつの間にかロンドンが拠点になっていました。何よりこの街が大好きで、制作やクリエイションにおいての条件も全て満たしています。卒業したのが2020年半ばのコロナ禍ということもあり、アメリカに戻るという選択肢が消えました。

――リアーナの依頼で、22歳の時に「フェンティ」でデザイナーを務めた。世界的ディーバのもとで働いた経験でどんな刺激を受けた?

アイブス:リアーナは、いいボスとしての完璧なお手本です。彼女が会議で全員に平等に耳を傾けていた姿を鮮明に覚えています。大きなチームでしたが、彼女は全員の名前を知っていました。私は親と同世代の人々に囲まれ、キャリアのない若者として弱者の立場にありましたが、リアーナと彼女のチームは私の意見を必ず聞いてくれました。会社を経営するうえで重要なことを学んだこの経験を、決して忘れません。

――現在の卸先件数と地域は?今後どれぐらいの売上げ規模を目指したい?

アイブス:現在の卸先は、「マッチズファッション(MATCHESFASHION)」や「ファーフェッチ(FARFETCH)」「ネッタポルテ(NET-A-PORTER)」などのラグジュアリーECを中心に16アカウントを持っています。ブランドにとってアメリカとイギリスが最大の市場です。目標を設定したことは一度もなく、現状の結果はうれしいサプライズです。このままいい波に乗りたいですね。

――日本市場についての印象は?

アイブス:東京の店ならではの独自性が大好きです。日本のサブカルチャーがファッション業界全体に多大な影響を与えているだけでなく、日本市場も信じられないほどの勢力があります。日本のエネルギーは私にとって刺激的で、市場を開拓していきたいです。

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「イソップ」フレグランスが人気の理由、創業メンバーに聞く

 「イソップ(AESOP)」は、新製品が登場するたびに話題になる今勢いに乗っているブランドの一つだ。「イソップ」を導入する百貨店からは、「モードが好きなお客さまからの支持が高い。生活のワンシーンに溶け込むデザインも人気」「香りアイテムが今のお客さまのニーズにマッチしている」との声があがり、SNSでも製品を購入した客による投稿が絶えない。

 この秋には、オードパルファムコレクション“アザートピアス(Othertopias)”に“イーディシス オードパルファム”が新たに仲間入りし、注目を集めた。ブランド立ち上げから店舗運営や顧客対応に携わるスザーン・サントス(Suzanne Santos)=チーフ カスタマー オフィサーに、「イソップ」のフレグランスの魅力や人気の理由を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):日本のフレグランス市場をどのように捉えているか。

スザーン・サントス=イソップ チーフ カスタマー オフィサー(以下、サントス):日本はいまフレグランス市場が成長しており、フレグランスが好きな人にとって素晴らしい時期を迎えている。特に日本の歴史と成分は、“ヒュイル オードパルファム”や“ローズ オードパルファム”など「イソップ」のフレグランスに大きなインスピレーションを与えてくれた。

WWD:世界でフレグランス市場が盛り上がりを見せつつあるが、フレグランスの魅力とは。

サントス:フレグランスは、他のどの製品よりも人の好奇心をそそり、多次元的な魅力を備えている、と私は考えている。フレグランスが持つ最も羨望すべき特性は、香りを身にまとうことで何かを問いかけることができることだ。香りの複雑さは、私たちに何かを思い出させ、思いがけない場所や、望んでいた場所など、新たな場所へと誘う。インスピレーションを得るのが難しいと思うとき、香りは「アドバイザー」や「ミューズ」のような役割を果たしてくれる。私たちが忘れてしまった、あるいは訪れたことのない場所や才能、感情を思い出させてくれる、そんな存在である。

WWD:「イソップ」のフレグランスの特徴は。

サントス:「イソップ」にとってフレグランスは、意識するしないに関わらず、身につける人の気分を高めてくれるものであり、“嗅覚的な第2の皮膚”として捉えている。私たちは、香りの創造は、叙情的でありながら科学に根ざした作業であると考える。多面的なインスピレーションから始まり、それを表現する成分にこだわり、複雑でニュアンスのある調合に仕上げている。

WWD:新たに仲間入りした“イーディシス オードパルファム”について。

サントス:“イーディシス オードパルファム”は、泉に映る自分の姿を見て恋に落ちた男、ナルキッソス神話から着想を得た香りだ。このテーマに沿って、“イーディシス オードパルファム”は、鏡の向こう側にある想像の世界、豊かで魅惑的な森、温かみのある寛大な場所へと続く架空の世界をイメージしている。

 ナルキッソス神話と、身にまとう人が自らを見つめる中で自分自身を見失うというアイディアに沿って、“イーディシス オードパルファム”の香りは、個々の人によって全く異なる表現になる。肌の生化学的な性質により、その人だけの「変化」を生みだすのだ。

 私たちのフレグランスは、いずれも複雑で繊細なニュアンスがあり、従来の別の境界線にとらわれるものではない。示唆に富んだ香りを好む全ての人をターゲットとする。ただ、香りの特徴というところでは、ウッディ、スパイシー、アンバーが中心なので、温かく華やかな香りを好む人に気に入ってもらえるだろう。

WWD:調香師のバーナベ・フィリオン(Barnabe Fillion)が作り出す香りの魅力とは。

サントス:オードパルファムコレクション“アザートピアス(Othertopias)”は、私たちの長年のフレグランスコラボレーターであるバーナベとのパートナーシップによって生まれた。私たちとバーナベの関係は、大きな信頼と相互尊重の上に成り立つ、真のコラボレーションだ。私たちは、フレグランスのさまざまな側面における彼の専門知識と、革新と伝統を融合させる彼の才能に心から感服している。

 私たちのフレグランスの共同開発は、常に高度な過程をたどっており、“イーディシス オードパルファム”も例外ではなかった。長年にわたる共同開発を通じて、「イソップ」独自のアプローチを熟知しているバーナベは、彼の自由な発想力でこのパルファムをどのような形でどのように表現できるかを模索した。この香水のために私たちが共有した多くのインスピレーションは、全て知覚の概念と、ナルキッソス神話に出てくる泉と風景など自己と空間のつながりに基づいている。透明であるが故の無限のテクスチャー、回折や屈折の概念などもその一部だ。

 “イーディシス”は“アザートピアス”シリーズの1つとして、「ここではないどこか」つまり、私たちが普段見過ごしがちな、いわゆるリミナル・スペースからインスピレーションを得ている。「あなた」と周囲の環境との関係に疑問を投げかけ、身につける人を現実と想像の両方の世界へと誘うようにデザインされている。その香りの特徴は、独創的かつ意外性がありながら、同時に親しみやすいところだ。

WWD:音楽やデザイン面など“五感”の領域でアプローチしているが、フレグランスとアートはどう関わりあっているのか。

サントス:「イソップ」の香りのインスピレーションは多方面にわたる。現実と空想の両方の風景からインスピレーションを得たもの、人物からインスピレーションを得たもの、そして伝統的なコロン遊び心を加えたものなど、さまざま。そして何より、「イソップ」のフレグランスはジェンダーやパーソナリティを問わず、好奇心旺盛で香りの力を享受したいすべての方のために創られている。

 フレグランス(嗅覚)と他の感覚との間には、時に共通の言語が存在する。例えば聴覚は、Radiomatique Mixtapes (香りと音の出合いからインスピレーションを得た、「イソップ」の60分間のミックステープシリーズ)で、嗅覚と同様に、ヘッドノート、ミドルノート、ベースノートを体感できる方法を探ってきた。私たちの経験では、香りの力は音や視覚、味覚、触覚と組み合わされることで、さらに伝達力を高めることができる。

WWD:現在8種の香りを展開しているが、それぞれが多くの人を魅了している。

サントス:私たちのフレグランスがお客さまの心に響く理由はさまざまだ。ある人は、ニュアンスや複雑なインスピレーションを、またある人は、ドライ、ウッディー、クリーン、フレッシュといった香調を独自のバランスで調合したジェンダーにとらわれない香りに魅力を感じている。「イソップ」は常に香りの役割と重要性を理解している。

WWD:店頭では香りの体験を広げている。

サントス:「イソップ」のフレグランスは、香りとストーリーを融合させながら進化し続ける、ブランドの象徴だ。この進化は、フレグランスカテゴリーにおける「イソップ」独自の地位を確立するために、魅力的な香りの創造という伝統のもとに一部の店舗で実施されている、さまざまな香りの体験からもうかがえる。そうした試みの1つが、フレグランス専用戸棚「フレグランス アルモワール」の導入だ。一部店舗に設置しており、遊び心と発見のあるフレグランス体験を提案している。

 フレグランス アルモワールは、それぞれの直営店の素材使いに合わせてさまざまな外観を持つ。曲線を多用したシンプルな外観とは裏腹に、重い扉を開けるとアンバーボトルが並んだ神秘的な雰囲気を放つ。フレグランス アルモワ―ルが音、視覚、触覚の3つの媒介を駆使して、「イソップ」の香りに新たな生命を吹き込む様は、まさに百聞は一見に如かずと言えるだろう。

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1位は、「良品計画」、不振の衣料品に大ナタ| 週間アクセスランキング TOP10(10月13〜19日)

【週間アクセスランキング 】最新の注目トピック TOP10(10月6〜12日)

「WWDJAPAN」 ウイークリートップ10

 1週間でアクセス数の多かった「WWDJAPAN」の記事をランキング形式で毎週金曜日にお届け。
今回は、10月13(木)〜19日(水)に配信した記事のトップ10を紹介します。

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- 1位 -
「無印っぽい」は禁句 良品計画、不振の衣料品に大ナタ

10月19日 / 林 芳樹
「無印良品」を運営する良品計画が、衣料品改革に取り組んでいる。コロナ以降の不振から抜け出せない衣料品は、全体の業績の足を引っ張り、テコ入れは待ったなしの状況だ。「シンプルなデザイン」「天然素材」といった“ブランドイメージ”が広く浸透する「無印良品」はどう変わるのか。(この記事はWWDジャパン2022年10月17日号からの抜粋です)
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- 2位 -
ユニクロ×「マメ クロゴウチ」2022秋冬の新作が11月11日に発売 カーキを加えた全21アイテムを公開

10月14日 / 福永千裕
ユニクロは「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」とのコラボコレクション「Uniqlo and Mame Kurogouchi」の2022年秋冬コレクションを11月11日に発売する。ラインアップするのはワイヤレスブラ(1990円税込、以下同)やショーツ(790円〜)、ヒートテックウールブレンドのTシャツ(1990円)、レギンス(1990円)など全21アイテム。フルラインアップを限定106店舗とオンラインで取り扱い、一部商品を国内全店舗で販売する。
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- 3位 -
「セイコー アストロン」から104年ぶりの偉業を達成したMLB大谷翔平の限定モデルが発売

10月18日 / WWD STAFF
「セイコー アストロン(SEIKO ASTRON)」は11月11日、“ネクスター(NEXTER)”シリーズからブランドのイメージキャラクターを務め、米MLB「ロサンゼルス・エンゼルス(LosAngels Angels)」で104年振りの偉業を達成した、メジャーリーガーの大谷翔平の限定モデルを発売する。販売数は1700本で、価格は税込30万8000円。
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- 4位 -
ユニクロ「UT」×アニメ「スパイファミリー」のコラボ第2弾 キッズサイズも加えた7柄

10月17日 / 福永千裕
ユニクロの「UT」は、11月11日にTVアニメ「スパイファミリー(SPY×FAMILY)」とのコラボアイテムの新作を発売する。ラインアップはメンズTシャツ4柄(各1500円税込、以下同)とキッズ3柄(各990円)。全国の店舗とオンラインストアで取り扱う。
> 記事の続きはこちら

- 5位 -
「プーマ」のABCマート限定キャンペーンにSnow Man 厚底スニーカーをおすすめ

10月14日 / 三澤 和也
「プーマ(PUMA)」は、エービーシー・マート(ABCマート)限定で販売するスニーカーのキャンペーンに、アイドルグループのスノーマン(Snow Man)を起用した。
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- 6位 -
「ザ・ノース・フェイス」が仏「パラブーツ」とコラボ 世界に1足だけのスリッポンを発表

10月13日 / 三澤 和也
「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」は、フランスの靴ブランド「パラブーツ(PARABOOT)」との特別な協業モデルを発表した。
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- 7位 -
慶大医学部教授・宮田裕章が「ギリギリを攻める」自身のスタイルとファッション業界について大いに語る

10月19日 / ライター本田圭佑
慶應義塾大学教授であり、データサイエンティストの宮田裕章は、自宅の部屋を埋め尽くすほどに洋服を蓄える生粋のファッションアディクトだ。そのホワイトヘアとモードをまとう出立ちで報道番組やニュースメディアに出演し、その名前とビジュアルは瞬く間に世間へと広まった。宮田自身が人類のプリミティブな文明と位置づける“まとうこと”への哲学は、「枕草子」や「モナ・リザ」の話へと広がり、医療ビッグデータ活用のアカデミアでいながらアーティスト然とした感受性を併せ持つ彼の脳内の一角を占めるファッションについての話は興味深い。
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- 8位 -
ビームスがプロデュースする“時計じゃない”「G-SHOCK」の最新作はミリタリーにフォーカス

10月17日 / 三澤 和也
カシオ計算機の「G-SHOCK」は、ビームスがプロデュースする“G-SHOCK プロダクツ”の最新作を発売した。
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- 9位 -
「ゾゾタウン」が青学・中央・法政・立教大学のカレッジロゴスエットを期間限定で受注販売

10月19日 / WWD STAFF
ファッション通販サイト「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」は、青山学院大学、中央大学、法政大学、立教大学の私立4大学とコラボレーションしたカレッジロゴスエットを、10月21日正午〜11月4日11:59にゾゾタウンで受注販売する。
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- 10位 -
女優ののんが“渋谷ランウェイ”に登場 「無敵の気分で歩けた」

10月17日 / 美濃島 匡
渋谷ファッションウイーク実行員会は、渋谷・文化村通りを舞台とした路上のファッションショー“渋谷ランウェイ(SHIBUYA RUNWAY)”を16日に開催した。一般公開での実施は3年ぶりだ。周辺の商業施設に入る全16ブランドの2022-23年秋冬コレクションと、文化服装学院の学生による作品29点を披露した。フィナーレには女優ののんがモデルとして登場し、観客から歓声が上がった。
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