巨匠エリック・ヘイズが「サカイ」限定店でライブペインティング ショートインタビューを敢行

 「サカイ(SACAI)」は、世界の主要都市を巡回するストアツアー「ハロー サカイ(Hello sacai)」を東京・神宮前で2023年2月末まで開催中だ。同店のファサードには“Hello”や“こんにちは”など世界各地のあいさつをプリントした建築工事用シートを張り、店内の什器にも工事現場などで使用される工具を採用。さらに、「サカイ」青山店で使用していた什器をリプロダクトした一点モノのピースや、原宿のビンテージショップ「ベルベルジン(BERBERJIN)」のビンテージアイテムを再構築したアパレルを取り扱うなど、随所でアップサイクルな取り組みが感じられる空間に仕上げた。

 同店では限定アイテムや新作の2023年春夏コレクションなどももちろん販売しているのだが、それらの中でも注目したいのがエリック・ヘイズ(Eric Haze)とのコラボアイテムだろう。ヘイズは、1961年にニューヨークで生まれた現在61歳のアーティスト&デザイナー。1980年代にジャン・ミシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat)やキース・ヘリング(Keith Haring)らと共にニューヨークのグラフィティシーンをけん引した伝説的なグラフィティライターの1人だ。その後、グラフィックデザイナーとしてビースティ・ボーイズ(Beastie Boys)やパブリック・エナミー(Public Enemy)ら、USヒップホップシーンで活躍するアーティストのロゴやジャケットなどを数多く手掛けてきたリビング・レジェンドである。その骨太でストリートのアイデンティティーが宿る作風は数々のブランドをも虜にし、「Gショック(G-SHOCK)」や「ナイキ(NIKE)」「ニューバランス(NEW BALANCE)」「ステューシー(STUSSY)」「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」などとコラボを実現。「サカイ」とは21-22年秋冬コレクションで1度コラボしており、今回は2度目のタッグとなった。

 「ハロー サカイ」のオープンを祝して行われたヘイズのライブペインティングの直前、彼のショートインタビューに成功。コラボの経緯や、グラフィティライターからの転身、現在の状況などについて語ってもらった。

エリック・ヘイズ/アーティスト兼デザイナー

PROFILE:1961年生まれ、アメリカ・ニューヨーク出身。1970 年代にSE3の名でグラフィティアーティストとしてのキャリアをスタート。グラフィティ集団ザ・ソウル・アーティスト創設メンバーとしてフューチュラやリー・キュノネス、ドンディらと共に過ごした。その後はグラフィックアートも手掛け、特徴的な手書きのレタリングで数々のロゴや音楽アルバムのカバーなどを制作。91年には自身のアパレルブランドを立ち上げたり、2000年代からはアート作品の制作に本格的に取り組んだりと、今なお活動の幅を広げている

ーーまずは、「サカイ」とのコラボの経緯を教えてください。

エリック・ヘイズ(以下、ヘイズ):(『サカイ』のクリエイティブ・ディレクションを手掛ける)源馬大輔を介してコンタクトを取るようになった。ファーストコラボの21-22年秋冬コレクションは、シンプルなグラフィックをベースとしたアイテムをそろえたが、23年春夏シーズンはアート寄りなアイテムに仕上げている。ロゴやグラフィックを乗せるだけではなく、初めてブランドの理念に添いながらコラボすることができたよ。ストリートシーンに属するもの同士のコラボとは異なり、よりファッショナブルなレベルに達しているはずだ。

 40年以上前にグラフィティライターとしてストリートで活動を始めてから、ストリートとファッションの交わり方は時代と共に変化している。60歳を超えてから洗練されたファッションシーンの中で自分をリプレゼンテーションすることが一つの夢だったので、今回のコラボは記憶に残るものになったよ。

ーー抽象的なグラフィックと共に“AS ONE(一体となって)”などのワードも落とし込んでいますが、チョイスした意図は?

ヘイズ:ワードの中には、グラフィティにした際にデザインとしてハマるものがある。だが、今回はデザイン性だけでなく、今の世界情勢や歴史も踏まえて私と「サカイ」で擦り合わせてチョイスした。

ーー今回のライブペインティングをはじめ、ペインティング作品を手掛けるようになった理由を教えてください。

ヘイズ:ニューヨークで生まれ育ち、グラフィティライターとして活動した後に、一度ロサンゼルスへ移住してパソコンを中心にグラフィックのデザインを行っていた。十数年後(2005年頃)に再びニューヨークに帰ってくると、バスキアやキースら旧友たちと過ごした時のようなライブ感を街から感じてね。それを機に、ペインティングを中心としたアーティスト活動にシフトしていった。私にとってのゴールは、場所やサイズを問わず、1本の筆と1つの色でペインティングすること。5年ほど前から自分の中で感覚が研ぎ澄まされているんだ。現在、渋谷の宮下パークで開催している個展「インサイド アウト(INSIDE OUT)」でも、グラフィティライター時代に関係のあった人々などを同様の手法で描いていて、過去と現在の自己表現になっている。

ーーファッションシーンとの関わりはどう考えていますか?

ヘイズ:ずっとアートシーンだけにいるよりも、ファッションシーンとも関わった方がアーティストとしての感覚が洗練される気がしていて、今はどちらにも偏りすぎずバランスがちょうどいいね。昔はアートも手掛けるグラフィックアーティストだったけど、現在はグラフィックも手掛けるアーティストのような、より自由に広い解釈で作品に取り組むことができるようになっているよ。

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【動画】パタンナーとデザイナー、2つの顔を持つ「ノリエノモト」デザイナーに密着

 「ファッション業界人辞典」は、ファッション業界で働く人にフォーカスし、その仕事に密着リポートします。業界のさまざまな職業を紹介しながら、「実際、どんな仕事をしているの?」「どうしたらその職に就けるのか?」などの疑問を解決。これからの若者たちの指針になるような情報や、業界人が気になるあの人の素顔や過去を、日々の仕事姿や過去の映像・写真を通して発信します。

 第7弾は、「アール(RRR)」や「ポピー(POPPY)」のパタンナーであり、自身のブランド「ノリエノモト(NORI ENOMOTO)」も手掛ける榎本紀子デザイナーに密着しました。曲線が特徴のアイコンバッグ“マルディマタン(mardi matin)”は、「洋服を縫う際に出る曲がったまち針をインスピレーションに製作した」と語ります。一見すると個性が強いデザインでも、日常のものから着想することが多いためコーディネートに取り入れやすく、若者の間でも人気を徐々に広げているといいます。パタンナーの時は“寄り添う”ことを、デザイナーの時は“寄り添わない”ことを大切にしているという榎本デザイナーの2つの顔を紹介します。「アール」のサンプルチェックやパターンを引く様子、「ノリエノモト」のビジュアル撮影などの仕事内容に迫りました。また、将来の夢やファッション業界で働きたい人へのメッセージについても聞きました。

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125周年を迎えた「グローブ・トロッター」 多彩なコラボで見せる広がり

 1897年創業の英国発ラゲージブランド「グローブ・トロッター(GLOBE TROTTER)」は、今年125周年を迎えた。大英帝国が繁栄したヴィクトリア朝時代に、軽く丈夫なヴァルカン・ファイバーボードを使ったスーツケースを発表。125年経った今も、受け継がれた、変わらぬスタイルで世界中に支持されている。

125周年を記念した企画展が開催
「グッチ」や「コム デ ギャルソン」とのコラボも展示

  12月18日までグローブ・トロッター銀座店で125周年を記念した企画展が開催中。初期の貴重なアーカイブをはじめ、これまでコラボレーションを行ってきた「グッチ(GUCCI)」や「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER MCQUEEN)」「ポール・スミス(PAUL SMITH)」「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」「ティファニー(TIFFANY & CO)」とのスーツケースを展示。同展はロンドンで幕を開け、東京のあとはロサンゼルスを巡回する予定だ。

 グローブ・トロッターのビセンテ・カステラーノ(Vicente Castellano)エグゼクティブ・チェアマンは、自社商品の魅力を「125年の伝統を受け継ぎながら、品質と美しさを追求するラゲージブランドだ。卓越した職人技と、確かな実用性で唯一無二のプロダクトを生み出し続けている」と語る。「しかし、これほど長い歴史を持つブランドであるということは、実は多くの方々には知られていない。この125周年を祝うタイミングで、これまでご愛顧いただいているお客さま、そして新しいお客さまにブランドの歴史や魅力をお伝えしたい」。

日本で人気の2輪のキャリーケース
国内旅行の需要もカバー

 この3年間は新型コロナウィルス感染症の影響により、旅行業界やラゲージメーカーは大きなダメージを受けたが、今年に入り、復調の兆しが見えてきたという。「今年、ヨーロッパとアメリカでは、コロナ以前のような売り上げに近づいてきた。ベストセラーの4輪のスーツケースが引き続き、根強い人気を誇っている。長く規制が敷かれている日本でも、売り上げは85%まで回復。特に日本では2輪のキャリーケースが好調で、昨今は国内旅行の需要も高まっているようだ。中国もわれわれにとって大きな市場であるが、まだ厳しい旅行制限があるため、施策のタイミングを見計らっている」とカステラーノ=エグゼクティブ・チェアマン。

 今後については、「ブランド認知度はまだ向上の余地がある。21、22年はコロナからの回復に集中してきたが、来年は新たな戦略を立てて、アジア、ヨーロッパそしてアメリカでの露出を増やしていく計画だ。ブランドアンバサダーを通して商品を紹介し、マスにも広げていくことで、もっと多くの方に身近な存在にしていきたい」。

強みにする多彩なコラボレーション
現代芸術家の加賀美健との協業も

 ブランドやアーティストとのコラボレーションは、ブランドが継続して強化している戦略の一つ。11月にはスヌーピーでお馴染みの「ピーナッツ(PEANUTS)」とのラゲージが発売。またサッカー日本代表チームのオフィシャルトラベルケースとして、「サムライブルー リミテッド コレクション」が登場したほか、日本代表の応援キャンペーンの一環として、現代芸術家の加賀美健による限定ケースも発表した。「これまで手掛けてきたコラボレーションは全てとても良い評判をいただいてきた。『グッチ』のようなトップブランドから、『カサブランカ(CASABLANCA)』のような気鋭の若手まで、取り組みの幅も広げている。来年もいくつかエキサイティングなコラボレーションの企画を進行中。ぜひ楽しみにしていてほしい」とカステラーノ=エグゼクティブ・チェアマンと明かした。

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世界的調香師ジャン=クロード・エレナが語る、香水市場(後編)「ビーガンでも理想の香りは作れる」【香水ジャーナリスト連載 Vol.5】

 「エルメス(HERMES)」の初代専属調香師として知られるジャン=クロード・エレナ(Jean-Claude Ellena)は現在、ビーガンフレグランスブランド「ル クヴォン メゾン ド パルファム(LE COUVENT MAISON DE PARFUMERIE 以下、ル クヴォン)」でオルファクティブディレクターを努める。数々の有名ブランドの香水を手掛けてきた彼に、「ル クヴォン」でビーガンフレグランスというジャンルに挑戦していること、そして今後の展望を聞いた。

──昨今、スキンケアやメイクアップだけでなく香水業界でも動物由来の香料を使わない傾向がある。「ル クヴォン」のようなビーガンフレグランスが香りを作る難しさはあるか?

ジャン=クロード・エレナ調香師(以下、エレナ):香水のクリエーションにおいて、ビーガンであることは全く問題にならない。野菜や植物に動物的な匂いのするものはたくさんあるからだ。例えばヤギの匂いがする植物の根やウード、たぬきの匂いがする白樺などがそうだ。中近東や北アフリカの人はウードがとても好きだが、砂漠を行く商人たちの一団であるキャラバンはヤギの匂いがするといわれているので、自分たちのルーツを感じるから好きなのかもしれない。天然の香料でなくても動物の香りがする合成香料もある。動物の匂いは糞尿の臭いの一種とも言えるが、そうした臭いがする成分はジャスミンの花にも含まれる。

──ジャスミンにも野性的な香りやアニマリックな香りを感じることは確かにある。

エレナ:そうだろう?よくいわれることだが、くさいと思われる香料が少量加わることで素晴らしい香水になることがある。

──香りを色で表現することがあるが、色を意識して調香することはあるか?また、「ル クヴォン」らしさを言葉で表すと?

エレナ:私は仕事上の経験からすると、香りと色彩は一致しないし組み合わせることはできないと思っている。それは科学的にも証明されている。100人ほどを対象とした「香りを嗅いで何を思い浮かべるか」という実験では、色に関する回答が1%も出なかった。全体の50%が物質や花で、30%が触覚に関するもの、そのほかは音などだった。そこで私は、当時担当していたブランドで実験してみた。色彩に関わる仕事をしている12人を集めて、10種の香りを閉じ込めた無表記の小瓶を用意し、それぞれどんな色を思い浮かべるか聞いた。すると1つの香りに対して同じ色を答えた人は一人もいなかったんだ。色の専門家たちですらこの結果なのだから、香りと色は一致しないと思う。「ル クヴォン」らしさを言葉にするとしたら、「香りに対する深い愛」だ。われわれのチームと顧客は香りへの深い愛を分かち合える存在だからだ。

──あなたの作る香水は“卓越されたミニマリズム”や“至高のシンプル”を感じる。

エレナ:“至高のシンプル”という言葉は詩的で日本的なニュアンスを感じる。私は自身をミニマリストではないと思っている。なぜならミニマリストはどこか感情を入れない印象があるからだ。私は香りには多くの感情を込めているのでミニマリストではないが、“至高のシンプル”は合っていると思う。

──著書「調香師日記」に「モレスキンのノートに香水のアイデアや構想、旅や出会い、自分の生きる時代について書き込んでいる」とあったが、それは今も続けているか。

エレナ:今はノートではなくスマホにメモしているよ。私も近代化しているからね(笑)

──非常に多くの経験とキャリアを持っているが、今後作りたい香りやチャレンジしたいことはあるか?

エレナ:もちろん!私にとって香水作りは喜びでしかない。どう香りを組み合わせるか、それを考えるのが私の幸せだ。


YUKIRIN
美容・香水ジャーナリスト
香水・香り関連商品と、ナチュラル&オーガニック美容分野に特化した記事を執筆。女性誌などのメディアで発信する。化粧品や香り製品のコンサルティングやイベントプロデュースなど幅広く活躍。「日本フレグランス大賞」エキスパート審査員、「イセタン フレグランス アワード2019」審査員などを務める

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韓国コスメ「ヒンス」の若者の心をつかむブランディング リアル店舗は「ライブ会場でアーティストに会う体験」

 韓国コスメ「ヒンス(HINCE)」は東京・青山に日本初の旗艦店を11月26日にオープンした。国内ではルミネエスト新宿店に続き、直営2店舗目となる。2階建ての路面店にはメイクアップからフレグランスまで全製品が並び、パーソナルタッチアップカウンセリングやフレグランスのムエットサービスなど直営店ならではのサービスも展開する。

 日本旗艦店はブランドが誕生した2019年から考えてきたといい、コロナ禍を経て実現した。SNS上で注目を集め、日本のオフラインチャネルも拡大する中、旗艦店はどういった役割を担うのか。「ヒンス」を展開するビバウェーブ(VIVAWAVE)のホ・ジェソク(Heo Jaeseok)社長にブランディングと今後の展開を聞いた。

──青山に旗艦店を構えた理由は?

ホ・ジェソク=ビバウェーブ社長(以下、ホ):「ヒンス」の旗艦店は最初から青山だと思っていた。青山は僕が高校生の頃から、東京に旅行に来ると立ち寄る大好きな空間。アートやファッショントレンドに対する感性が高く、この地域が持つ余裕のある雰囲気や店の並び、花屋、カフェなどは、「ヒンス」が追求する美学や感性に似ていると思う。またメーンターゲットの20〜30代を意識した。

──旗艦店のこだわりは?

ホ:旗艦店は色味や質感、構造的な美しさを表現した空間で、最もブランドを肌で感じることができる場所だ。これまでオンラインと流通チャネルを通じてブランドのイメージやメッセージ、製品を試す機会を提供してきたが、さらにブランドが考えるイメージを物理的に実現しようと考えた。ライブ会場でアーティストに直接会う体験とも似ていると思う。

売り上げの7割はオンライン
ブランドのコアはリアルな場での交流

──これまでもポップアップストアなどリアルの場で展開してきたが、オフラインの位置付けは?

ホ:「ヒンス」は前年比100%以上の成長を記録しており、時期によって差はあるが売り上げのおよそ7割がオンラインだ。それでも「ヒンス」はリアルの場を重視している。20年からブランドが重視する高級感を持った百貨店、伊勢丹新宿本店や阪急うめだ本店、渋谷パルコなどで継続的にポップストアを開いてきた。われわれはリアルの場で出会ったお客さまとの交流がブランドのコアを形成すると考えている。店舗では空間が与える記憶や思い出をたくさんの人に感じていただき、「ヒンス」のファンになることを望んでいる。

──ブランドの成長要因をどう捉えている?

ホ:ブランドの“新しさ”を見せられたことだと思う。この“新しさ”は感度がよく完成度の高い新製品、立体的な物語、そして「ヒンス」らしい演出と表現力によって伝えている。当社はコスメブランドとして満足いただけるクオリティーの高い製品を発表することを最も重視しており、単なる消費財を超えたメッセージを伝えるためにキャンペーンを打っている。

──ブランドはどういったメッセージや物語を伝えている?

ホ:「ヒンス」が追求する美しさは、生まれつきの肌やカラー、髪などとメイクが調和し、魅力が倍増するもの。このブランド哲学は製品開発やクオリティー、マーケティングコミュニケーションで最も重視する部分だ。歌手が音楽で、映画監督が映像で物語を伝えるように、「ヒンス」も顧客との全ての接点でメッセージを伝えている。さまざまなメディアが発達した今、ブランドの直接的なコミュニケーションは必須だ。

SNS上の声をブランド計画に反映

──特にSNSを通じたコミュニケーションが得意なブランドだが、SNSでは何を重視する?

ホ:1つはビジュアルイメージと消費者が知りたい情報とのバランス。ブランドがプレゼンテーションしたいデジタルコンテンツと、カラーコスメの発色やテクスチャーなど消費者が求める情報との両立が必要だ。2つ目は交流だ。SNSはお客さまの意見を見聞きできる窓口なので、メッセージや「いいね」、シェア、フォローなどに耳を傾け、ブランドの計画に反映している。このような戦略は国に関係なく共通しており、コンテンツのトーンも統一性を持っている。

──こうしたメッセージが日本の消費者にも届いている?

ホ:日本の消費者は自分の顔に調和する中彩度のカラーとポイントカラーのバランスが取れたメイクアップを好み、肌がきれいに見えるようベースメイクを行い、自分だけの雰囲気を演出することが得意だと思う。「ヒンス」が提案する美の哲学と日本のお客さまの美的感覚がいいシナジー効果を生み、日本の人たちにアピールできるポイントになったのではないか。また日本の消費者は他国に比べ、より繊細だと感じる。そのためコレクションのストーリー性やメッセージは、より詳しくテキストで伝えるように心がけている。

──日本国内では今後どのような計画をしている?

ホ:ブランドを体験できる空間の拡大と、美的感覚で共感できる作家やブランドとのコラボレーション、新製品に合わせた限定アイテムの展開などを行う予定だ。「ヒンス」にとって日本は韓国を含めトップ3の国、今後も積極的な投資を進める。

ユニークな方法や意外性のある場所で
ポップアップを計画

──空間の拡張はどのような形で行う?

ホ:まずは青山に旗艦店ができたので、旗艦店を中心にブランドを発信したいと考えているが、日本国内、海外においても店舗を増やしたい。韓国では来年上半期に出店する予定だ。日本では直営店を大阪や京都にも出せたらいいし、流通チャネルではお客さまが自由に試せる場を増やしたい。ポップアップも百貨店だけでなく、ユニークな方法や意外性のある場所で展開したいと検討している。

──ブランドとして今後の展望は?

ホ:「ヒンス」は初めからグローバルブランドを夢見て生まれた。現在は中国と東南アジア市場でもブランドを少しずつアピールし始め、アジア諸国を中心にポップアップストアや旗艦店を継続的に計画している。一方で、公式販売国やチャネルは非常に慎重に検討している。アジア市場での成長を基盤に、究極のゴールは世界中に顧客とのコミュニティーを作っていくことだ。これも実用的な製品と、完成度の高い「ヒンス」らしいブランディングによって可能になることで、不可能な夢ではないと思っている。

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高級磁器「ベルナルド」が東京・表参道に旗艦店をオープン フランス発ラグジュアリーブランドとして文化を発信

 フランス・リモージュ発高級磁器ブランド「ベルナルド(BERNARDAUD)」は12月、東京・青山に旗艦店をオープンした。同ブランドは2023年、創業160周年。フランスを代表する磁器ブランドだ。家族経営でありながらも、革新的な技術により、ジェフ・クーンズ(Jeff Koons)をはじめとするアーティストとコラボレーションしている。旗艦店オープンについて、アーサー・ベルナルド(Arthur Bernardaud)=ベルナルド ジャパン社長に話を聞いた。

 ベルナルド社長は、「日本における旗艦店オープンは、親日家で本国社長である叔父の夢だった。『バカラ(BACCARAT)』や『クリストフル(CHRISTOFLE)』などのフランス発ブランドと協業しながらテーブルセッティングをはじめ、フランス文化を発信する遊び心ある旗艦店にしたい」と語る。「バカラ」と「ベルナルド」は約40年前に合同で日本支社を立ち上げたが、数年後に終了。2つのブランドは別々の道を歩み、「ベルナルド」は約5年前に日本支社を設立し、一族であるベルナルド社長が指揮を取っている。「フランスの磁器は長年日本で知られていなかった。市場としてのポテンシャルはあるが、ビジネスチャンスがなかった。日本で本格的に展開するのに支社を設立するには一族が携わるべき。支社設立以来、旗艦店出店を視野に入れて活動をしてきた」とベルナルド社長。「クリストフル」とは、今年8月から業務提携を結び、ベルナルド社長がクリストフル社長を兼任している。

フランス・ラグジュアリーの包括的な発信

 「『ベルナルド』は、単なる磁器ブランドではない。フランスのラグジュアリー・ブランドとして旗艦店から発信をしていきたい。近くには、『クリストフル』をはじめ、高級革靴の「ジェイエムウエストン(J.M. WESTON)」やフレグランスの「ディプティック(DIPTYQUE)」などの旗艦店がある。業界の枠を超えて、それらのラグジュアリー・ブランドとコラボしたい」。「ベルナルド」は、フランスの生活美学やラグジュアリー文化を世界に広めるコルベール委員会(COMITE COLBERT)に加盟している。ベルナルド社長の叔父は6年間協会の会長を務めたという、同ブランドは、磁器メーカーとしてBtoBのビジネスも展開。「ゲラン(GUERLAIN)」の高級化粧品のパッケージや高級ブランデーのボトルから、インテリア関連のファサードなども手掛けている。ベルナルド社長は、「世界的にビジネスは好調。本国の工場では、約200人増員し、現在では約500人がさまざまなプロジェクトに関わっている」と話す。

 日本におけるビジネスは、支社設立以来、売り上げは3倍になった。コロナで旗艦店出店に時間がかかったという。「フランスのライフスタイルを発信する場合として、イベントを開催したい。本国で行っているフランスの歴史や文化のワークショップ“アンスティテュート ベルナルド”を来年から日本でも開催予定だ」。

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高級磁器「ベルナルド」が東京・表参道に旗艦店をオープン フランス発ラグジュアリーブランドとして文化を発信

 フランス・リモージュ発高級磁器ブランド「ベルナルド(BERNARDAUD)」は12月、東京・青山に旗艦店をオープンした。同ブランドは2023年、創業160周年。フランスを代表する磁器ブランドだ。家族経営でありながらも、革新的な技術により、ジェフ・クーンズ(Jeff Koons)をはじめとするアーティストとコラボレーションしている。旗艦店オープンについて、アーサー・ベルナルド(Arthur Bernardaud)=ベルナルド ジャパン社長に話を聞いた。

 ベルナルド社長は、「日本における旗艦店オープンは、親日家で本国社長である叔父の夢だった。『バカラ(BACCARAT)』や『クリストフル(CHRISTOFLE)』などのフランス発ブランドと協業しながらテーブルセッティングをはじめ、フランス文化を発信する遊び心ある旗艦店にしたい」と語る。「バカラ」と「ベルナルド」は約40年前に合同で日本支社を立ち上げたが、数年後に終了。2つのブランドは別々の道を歩み、「ベルナルド」は約5年前に日本支社を設立し、一族であるベルナルド社長が指揮を取っている。「フランスの磁器は長年日本で知られていなかった。市場としてのポテンシャルはあるが、ビジネスチャンスがなかった。日本で本格的に展開するのに支社を設立するには一族が携わるべき。支社設立以来、旗艦店出店を視野に入れて活動をしてきた」とベルナルド社長。「クリストフル」とは、今年8月から業務提携を結び、ベルナルド社長がクリストフル社長を兼任している。

フランス・ラグジュアリーの包括的な発信

 「『ベルナルド』は、単なる磁器ブランドではない。フランスのラグジュアリー・ブランドとして旗艦店から発信をしていきたい。近くには、『クリストフル』をはじめ、高級革靴の「ジェイエムウエストン(J.M. WESTON)」やフレグランスの「ディプティック(DIPTYQUE)」などの旗艦店がある。業界の枠を超えて、それらのラグジュアリー・ブランドとコラボしたい」。「ベルナルド」は、フランスの生活美学やラグジュアリー文化を世界に広めるコルベール委員会(COMITE COLBERT)に加盟している。ベルナルド社長の叔父は6年間協会の会長を務めたという、同ブランドは、磁器メーカーとしてBtoBのビジネスも展開。「ゲラン(GUERLAIN)」の高級化粧品のパッケージや高級ブランデーのボトルから、インテリア関連のファサードなども手掛けている。ベルナルド社長は、「世界的にビジネスは好調。本国の工場では、約200人増員し、現在では約500人がさまざまなプロジェクトに関わっている」と話す。

 日本におけるビジネスは、支社設立以来、売り上げは3倍になった。コロナで旗艦店出店に時間がかかったという。「フランスのライフスタイルを発信する場合として、イベントを開催したい。本国で行っているフランスの歴史や文化のワークショップ“アンスティテュート ベルナルド”を来年から日本でも開催予定だ」。

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1位は、起業から5年で年商10億円 高級ブランドも信頼する元双子タレント広海の「仕事の流儀」| 週間アクセスランキング TOP10(12月1〜7日)

 週間アクセスランキング TOP10(12月1〜7日)

「WWDJAPAN」 ウイークリートップ10

 1週間でアクセス数の多かった「WWDJAPAN」の記事をランキング形式で毎週金曜日にお届け。
今回は、12月1(木)〜7日(水)に配信した記事のトップ10を紹介します。

 「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントでも、毎週土曜日に【週間アクセスランキング】を配信開始。ファッション&ビューティ業界のニュースはもちろん、コレクションのルック、パーティーやストリートのスナップ、ライフスタイル情報など、幅広いジャンルの注目トピックを週3回お届けします。今すぐ「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントを[友だち追加]して、最新トレンドやファッション&ビューティ業界で注目されているトピックをチェックしよう。
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- 1位 -
起業から5年で年商10億円 高級ブランドも信頼する元双子タレント広海の「仕事の流儀」

 双子のオネエ系タレントとしてテレビや舞台に出る一方、イベントのMCとしても活動していたHIROMI・FUKAMI(広海・深海)。彼らは今、ファッション&ビューティ業界のプロフェッショナルとして活躍している。FUKAMIがスタイリストとして活動の幅を広げ、ブランドのクリエイティブディレクションなども手がける一方で、HIROMIは2018年にデジタルマーケティング企業の株式会社Hiを設立して代表取締役に就任。

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- 2位 -
ユニクロが13代目市川團十郎の襲名、市川新之助の初舞台を記念した祝幕を贈呈 Tシャツ4型を発売

12月05日公開 / 文・福永千裕

 ユニクロは、歌舞伎俳優の市川海老蔵改め13代目市川團十郎白猿の襲名と、その長男である8代目市川新之助の初舞台を記念して制作した祝幕を歌舞伎座に贈呈した。さらに、これを祝ったTシャツコレクションを発売した。デザインは4種類で、価格は1990円(税込、以下同)〜2490円。一部店舗とオリジナルTシャツが作れるUTme! オンラインサイトで取り扱っている。

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- 3位 -
デムナと「バレンシアガ」のCEOが謝罪 炎上したホリデーキャンペーンへの批判が止まず

12月05日公開 / 文・MILES SOCHA

 「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のデムナ(Demna)=アーティスティック・ディレクターは12月2日、児童虐待に当たるとして批判を受けて取り下げたホリデーキャンペーンについて、自身の公式インスタグラムで謝罪した。また、セドリック・シャルビ(Cedric Charbit)社長兼最高経営責任者(CEO)もブランドの公式インスタグラムに再発防止策などを含む謝罪文を投稿した。

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- 4位 -
チャンネル登録者数141万のユーチューバー「かの/カノックスター」がファッションにも本気宣言!

12月06日公開 / 文・三澤 和也

 フード系ユーチューバーの「かの/カノックスター」をご存じだろうか?モッパン(大食い)動画が人気を博し、今やチャンネル登録者数は141万。TikTokのフォロワー数は、その上をいく200万だ。ソフトバンクのCMに出演したり、ザ・スーツカンパニー(青山商事)のイメージキャラクターを務めたり、写真集「アイアム カノックスター」(トランスワールドジャパン)を出版したりとその活動は“食”だけにとどまらない。そんな、かの/カノックスターの原動力はファッションだという。本人に聞いた。

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- 5位 -
「ハフ」と「ナイキ SB」からコラボ“ダンク ロー”が登場 カラーはランダムに決定

12月02日公開 / 文・WWD STAFF

 「ハフ(HUF)」は、ナイキ(NIKE)のスケートボードライン「ナイキ SB」とコラボレーションしたスニーカー“ダンク ロー(DUNK LOW)”を発表した。価格は税込1万2100円で、ホワイト&グレー&ネイビーとブラック&グレー&ホワイト2カラーを用意。12月4日まで「ハフ」の原宿店と大阪店、公式オンラインストアで抽選販売を受け付け中だが、中身が見えないブランドバッグに梱包されるためカラーは選択できない。

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- 6位 -
ファミリーマートからオリジナルアパレルの新作 150万枚を販売した“ボクサーパンツ”の新色や“アーガイルソックス”など

12月05日公開 / 文・三澤 和也

 ファミリーマートは12月6日、「ファセッタズム(FACETASM)」の落合宏理デザイナーと共同開発するオリジナルアパレルブランド「コンビニエンスウェア(CONVENIENCE WEAR)」の12月の新商品を発売する。

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- 7位 -
JO1が「YSL」のブランドアンバサダーを2023年も継続 グローバルでの活動も見据える

 「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT 以下、YSL)」は12月1日、2022年から“YSL BEAUTY ジャパン アンバサダー”を務めているJO1を23年も引き続き契約更新することを発表した。JO1は21年からオフィシャル ビューティ パートナー、22年からブランド初の男性アンバサダーとして活動していた。23年はさらなるパートナーシップの強化を⽬指し、グローバルでの活動も視野に⼊れる。

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- 8位 -
「ニューバランス」とボストンのセレクトショップ「ボデガ」がコラボ スニーカーを含む全6型を発売

12月06日公開 / 文・WWD STAFF

 「ニューバランス(NEW BALANCE)」は、アメリカ・ボストンのセレクトショップ「ボデガ(BODEGA)」とコラボレーションしたカプセルコレクションを12月15日に発売する。スニーカーは「ニューバランス」の公式オンラインストアと東京・日本橋浜町のティーハウス ニューバランス(T-HOUSE New Balance)、ニューバランス 六本木 19:06で、アパレルは公式オンラインストアのみで取り扱う。

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- 9位 -
「ニューバランス」と「オーラリー」のコラボスニーカー“XC72”から日本限定カラーが登場

12月02日公開 / 文・WWD STAFF

 「ニューバランス(NEW BALANCE)」は、「オーラリー(AURALEE)」とコラボレーションしたスニーカー“XC72”の日本限定カラーを12月9日に発売する。価格は税込1万9800円で、キャメルとホワイトの2色を用意。両ブランドの公式オンラインストアをはじめ、東京・日本橋浜町のティーハウス ニューバランス(T-HOUSE New Balance)とニューバランス 六本木 19:06、ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)で取り扱う。

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- 10位 -
「ヴァンズ」や「シュプリーム」親会社のCEOが退任

12月06日公開 / 文・EVAN CLARK

 「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」「ヴァンズ(VANS)」「ティンバーランド(TIMBERLAND)」「シュプリーム(SUPREME)」などを擁するVFコーポレーション(VF CORPORATION以下、VFC)は12月5日、スティーブ・レンドル(Steve Rendle)会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)の退任を発表した。後任は未定で、当面はベンノ・ドーレ(Benno Dorer)筆頭独立社外取締役が暫定社長兼CEOを、リチャード・カルッチ(Richard Carucci)取締役が暫定会長を務める。

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ゲラン一族によるフランス発香水「ニコライ」 家族経営で昔ながらの製法でつくられる“着替える”香り

 フランス発香水「ニコライ(NICOLAI)」は、家族経営のフレグランスブランドだ。同ブランドの創業者兼マスターパフューマーであるパトリシア・ド・ニコライ(Patricia de Nicolai)は、ゲラン一族で香水に囲まれて育ったが、「ゲラン(GUERLAIN)」を継ぐことはなかった。その代わりに、自己表現として1989年に夫と「ニコライ」を創業。自由につくりたい香りを制作して世界中で販売している。

 日本では、ノーズショップが販売を担当。11月に来日したパトリシアの息子であるアクセル・ド・ニコライ(Axel de Nicolai)=ニコライ最高経営責任者に話を聞いた。

WWD:今回の来日の目的は?

アクセル・ド・ニコライ=ニコライCEO(以下、ニコライ):4年間ノーズショップとコラボレーションしているが、コロナで来日できなかった。今回が初来日だ。

 日本は、最も訪れたいと思っていた国。知れば知るほど豊かな文化があり、フランスに近いと感じる。

WWD:「ニコライ」のブランド哲学は?一番の強みは?

ニコライ:家族経営である点。母がゲラン一族だったため、調香師になり父母がブランドを始めた。彼らはアーティスティックで、好きなものをつくって提供するという点。私は香水の勉強を始め、マーケティングが主導の商材だと知った。この小売価格にするために、コストはこの程度といったような制限がある。だが、「ニコライ」はそれらの制限なく自由に香水がつくれる。それがいいビジネスになっている。多くのブランドは外注しているが、われわれは、素材に関してはグラースの最高の素材を直接仕入れている点も強みだ。

WWD:ゲラン一族であることが「ニコライ」にどのような影響を与えているか?

ニコライ:祖母は今でも「ゲラン」の香水を付けているし、一族から受け継いでいることもあり、それが影響しているのは間違いない。ただ、母親は一族として「ゲラン」を継がず、自分自身の表現として「ニコライ」を創業した。

WWD:調香師の母の元でどのように育ったか?印象に残っている香りの思い出は?

ニコライ:香水に囲まれて育つのが当たり前のことだった。母がアトリエで調香する姿を見ながら育った。それは日常的なことで、7〜8歳頃から香りに興味を持ち始めた。子どもの頃はバニラのおいしそうな匂いが好きだった。小さく切ってあるハーブの香りも気になった。いろいろな思い出がある。

WWD:素材の調達と生産はどこで行うか?生産は自社工場か?

ニコライ:素材はグラースを中心に調達するが、他の国から購入することもある。素材はナチュラルなものにこだわっている。生産は全て自社で。パリのアトリエで調香して、パリ南部の自社工場で生産している。昔ながらの製法で生産し、ボトル詰めまで全て手作業で行う。

WWD:現在何カ国で販売しているか?好調な市場は?

ニコライ:ほぼ世界中で販売している。パリには8店舗、ロンドンに2店舗直営店がある。他、各地のパートナーを通して販売している。自社ECもある。好調な市場はフランス・パリはもちろん、サウジアラビアや韓国なども好調だ。

WWD:日本での販売戦略は?

ニコライ:ノーズショップといういいパートナーがいる。彼らの選りすぐった香水のラインアップや販売方法はとてもいいと思う。日本人はデリケートな香りが分かると思うので、伸び代がある市場だと期待している。

WWD:香りという感覚的なものをどのように消費者に手に取ってもらうか?

ニコライ:難しいが、選択肢を多く提供することにより、好きな香りを見つけてもらいたい。まずは、好きな香りを見つけて、楽しみ方を覚えてほしい。例えば、今日はこの香り、この時間にはこの香りというようにその時の気分にあう香りを、好奇心を持って楽しんでもらいたい。日本人は繊細な感覚を持っているので、それが可能だと思う。

WWD:あなたにとって香りとは?

ニコライ:ファッションのように自分を表現するもの。季節やオケージョンに合わせて着替えるように、香水も着替えてもらえれば。

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米アーティストのエルボーが「リップンディップ トウキョウ」でポップアップ開催 ダイナソーモチーフの作品が人気

 米カリフォルニアの「コンプレックスコン」に参加したアーティストのエルボー(Elbo)が、東京・原宿の「リップンディップ トウキョウ(RIPNDIP TOKYO)」で12月10日限定でポップアップショップを開催する。限定店にはエルボーのほかに、ジーズィーワン(GZ1)やアバター(Avatar)、スロープ(SLOP)に加え、自身が所属する日本のアートクルーのメンバーも参加する。 販売アイテムはガラスペンダントやアート(約5万円)、新作のデザイナーズトイ(約4000円)、限定Tシャツ(約6000円)、ジーズィーワンとの新作コラボトイ(約2万5000円)など。

 「コンプレックスコン(Complex Con)」は世界最大級のストリートファッションの祭典で、米・ロサンゼルスのロングビーチにあるコンベンションセンターで毎年秋に開催している。今年は「ガールズドントクライ(GIRL’S DON’T CRY)」を手掛けるVERDY(ヴェルディ)がホストを務めたことでも話題となり、エルボーは友人であるデザイナー兼グラフィティアーティスト、ジーズィーワンと参加した。

 エルボーは米・コロラド出身のガラスアーティストで、ダイナソーモチーフの作品で知られる。最近ではファッションアイテムやデザイナーズトイまで幅広いアイテムを手掛けており、セレブやファッションデザイナーにもファンが多い。これまでに「フェルト(FELT)」や「スコロクト(SKOLOCT)」とコラボレーションしている。日本でのポップアップに先駆け、本人に作風や今後について聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):ダイナソーをメインモチーフとし始めたきっかけとは?

エルボー:きっかけは、吹きガラスを始めた当時に好きだった女性が小さなダイナソーを作ってくれたこと。自分がガラスの仕事に専念するようになった頃に彼女とは別れてしまったが、彼女を思っていることを伝えるためにダイナソーを作り続けた。しばらくして彼女にインスパイアされたデザインはやめたが、今でもダイナソーのモチーフを追求し続けている。経験や人など、全ての関わりが私の作品や活動にインスピレーションを与えてくれる。

WWD:ガラス作品に始まり、デザイナーズトイやファッションアイテムを製作し始めた理由とは?

エルボー:自分の作品を一般的な人たちにとってより身近なものにするために、最初はぬいぐるみやフィギュアなどを作り始めた。ファッションとデザインが好きだから、最近ではファッションアイテムの制作も行っている。ファッションで自身のテーマを再構築するのはとても楽しくて刺激的だ。

WWD:今回のポップアップについての意気込みを教えてください。

エルボー:今回のミッションとして、デザイナーズトイやハイエンドなガラス作品を紹介し、日本限定のアイテムも発表する。そして、さらに多くの日本人に自分のアートを知ってもらうこと。「リップンディップ」とは来年正式にコラボレーションを行う予定で、それに先駆けて今回このスペースでポップアップを開くことになった。コラボに向け、自分たちの活動がより加速できることに感謝している。

■ELBO POP UP SHOP
日程:12月10日
場所:リップンディップ トウキョウ
住所:東京都渋谷区神宮前3丁目24-5 NIXビル
時間:12:00~20:00

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米アーティストのエルボーが「リップンディップ トウキョウ」でポップアップ開催 ダイナソーモチーフの作品が人気

 米カリフォルニアの「コンプレックスコン」に参加したアーティストのエルボー(Elbo)が、東京・原宿の「リップンディップ トウキョウ(RIPNDIP TOKYO)」で12月10日限定でポップアップショップを開催する。限定店にはエルボーのほかに、ジーズィーワン(GZ1)やアバター(Avatar)、スロープ(SLOP)に加え、自身が所属する日本のアートクルーのメンバーも参加する。 販売アイテムはガラスペンダントやアート(約5万円)、新作のデザイナーズトイ(約4000円)、限定Tシャツ(約6000円)、ジーズィーワンとの新作コラボトイ(約2万5000円)など。

 「コンプレックスコン(Complex Con)」は世界最大級のストリートファッションの祭典で、米・ロサンゼルスのロングビーチにあるコンベンションセンターで毎年秋に開催している。今年は「ガールズドントクライ(GIRL’S DON’T CRY)」を手掛けるVERDY(ヴェルディ)がホストを務めたことでも話題となり、エルボーは友人であるデザイナー兼グラフィティアーティスト、ジーズィーワンと参加した。

 エルボーは米・コロラド出身のガラスアーティストで、ダイナソーモチーフの作品で知られる。最近ではファッションアイテムやデザイナーズトイまで幅広いアイテムを手掛けており、セレブやファッションデザイナーにもファンが多い。これまでに「フェルト(FELT)」や「スコロクト(SKOLOCT)」とコラボレーションしている。日本でのポップアップに先駆け、本人に作風や今後について聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):ダイナソーをメインモチーフとし始めたきっかけとは?

エルボー:きっかけは、吹きガラスを始めた当時に好きだった女性が小さなダイナソーを作ってくれたこと。自分がガラスの仕事に専念するようになった頃に彼女とは別れてしまったが、彼女を思っていることを伝えるためにダイナソーを作り続けた。しばらくして彼女にインスパイアされたデザインはやめたが、今でもダイナソーのモチーフを追求し続けている。経験や人など、全ての関わりが私の作品や活動にインスピレーションを与えてくれる。

WWD:ガラス作品に始まり、デザイナーズトイやファッションアイテムを製作し始めた理由とは?

エルボー:自分の作品を一般的な人たちにとってより身近なものにするために、最初はぬいぐるみやフィギュアなどを作り始めた。ファッションとデザインが好きだから、最近ではファッションアイテムの制作も行っている。ファッションで自身のテーマを再構築するのはとても楽しくて刺激的だ。

WWD:今回のポップアップについての意気込みを教えてください。

エルボー:今回のミッションとして、デザイナーズトイやハイエンドなガラス作品を紹介し、日本限定のアイテムも発表する。そして、さらに多くの日本人に自分のアートを知ってもらうこと。「リップンディップ」とは来年正式にコラボレーションを行う予定で、それに先駆けて今回このスペースでポップアップを開くことになった。コラボに向け、自分たちの活動がより加速できることに感謝している。

■ELBO POP UP SHOP
日程:12月10日
場所:リップンディップ トウキョウ
住所:東京都渋谷区神宮前3丁目24-5 NIXビル
時間:12:00~20:00

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チャンネル登録者数141万のユーチューバー「かの/カノックスター」がファッションにも本気宣言!

 フード系ユーチューバーの「かの/カノックスター」をご存じだろうか?モッパン(大食い)動画が人気を博し、今やチャンネル登録者数は141万。TikTokのフォロワー数は、その上をいく200万だ。ソフトバンクのCMに出演したり、ザ・スーツカンパニー(青山商事)のイメージキャラクターを務めたり、写真集「アイアム カノックスター」(トランスワールドジャパン)を出版したりとその活動は“食”だけにとどまらない。そんな、かの/カノックスターの原動力はファッションだという。本人に聞いた。

WWD:動画の中ではTシャツ姿が多い。

かの/カノックスター:僕の動画は“食べる”がテーマなので、動きやすさや汚れてもいいことを重視しています。画角も、テーブルの上の料理と僕というふうに決まっているので上半身しか見えません(笑)。だから“制服”として割り切っているところがありますね。

WWD:一方で、インスタグラム(フォロワー数20万)ではファッションに特化した投稿が目立つ。

かの/カノックスター:ユーチューブでの活動を始める前からファッションは好きで、投資額もなかなかでした。最近、コメント欄に「稼げるようになってファッションに目覚めた」と書かれちゃうことがあるんですが、「それは違う!」と言いたいですね。

WWD:動画内で、「起きている時間は、ほぼユーチューブに費やしている」と話していた。

かの/カノックスター:はい。だから、ファッションは自分へのご褒美なんです。動画製作のモチベーションですね。オフラインを充実させることで、オンラインも充実できると信じています。

WWD:好きなブランドは?

かの/カノックスター:パンツは、ほぼ「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」です。今日もはいてます。先日店舗で、僕のインスタを見せながら「このジーンズありますか?」と訪ねてくれたお客さん(視聴者)がいたそうです。動画にいいね!をもらうより、うれしかったですね。あとは、他人とかぶりたくないこともあり、新進デザイナーものを買うことが多いです。

WWD:ジャケットは「アーネスト ダブル ベイカー(ERNEST W. BAKER)」?

かの/カノックスター:そうです。今、一番気に入っているブランドの一つです。ほかに「ウェールズ ボナー(WALES BONNER)」や「ルメール(LEMAIRE)」もよく着ます。

WWD:服はどこで買う?

かの/カノックスター:海外ECが多いですね。「エッセンス(SSENSE)」とか「ファーフェッチ(FARFETCH)」とか「マッチズファッション ドットコム(MATCHESFASHION.COM)」とか。

WWD:やはり時間がないから?

かの/カノックスター:それもありますが、サイズが合わなかったとか、色が思っていたのと違ったとかで、簡単に返品・交換できる点にも魅力を感じています。

WWD:実店舗での買い物は少ない?

かの/カノックスター:そんなこともないです。「アクネ ストゥディオズ」はパンツ目的ということもあって、やはりフィッティング命なので、店舗で買うことが多いですね。伊勢丹新宿本店メンズ館の2階にも行きますし、「マルニ(MARNI)」にも行きます。

WWD:ファッションのこだわりは?

かの/カノックスター:シルエット重視で、体がきれいに見える服を選んでいます。デザインが気に入っても、スタイルが悪く見えてしまう服は買わないですね。

WWD:それは、やはり多くの人に見られる立場になったから?

かの/カノックスター:はい。活動開始前からメイクもしていたんですが、いっそう気兼ねなくできるようになりました。世の中のメンズメイクに対する考え方も、ここ数年で大きく変わりましたし。

WWD:ファッションの参考にしているヒト・コト・モノはある?

かの/カノックスター:BTSのV(ヴィ)が憧れです。ファッションもメイクもヘアも彼に影響を受けていますね。あとは「Kのファッション部屋」というユーチューブチャンネルも見ています。

WWD:先日、動画内で下半期の最高月収を567万円と発表した。ひと月でファッションに掛ける額はどれくらい?

かの/カノックスター:11月は「ルメール」のダウンコート(約17万円)を買ったこともあって、80万〜100万円です。「リック・オウエンス(RICK OWENS)」のバラクラバ(目出し帽風のヘッドピース)も買いました。

WWD:2022年に購入した最も高額なファッションアイテムは?

かの/カノックスター:「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」のジャケットです。4月に銀座店で50万〜60万円で購入しました。うれしくて着て帰ったんですが、素材がやや厚くて、そのころはもう初夏の気候だったので汗だくになっちゃいました(笑)。大満足だったから良かったんですが。

WWD:23年に狙っている商品は?

かの/カノックスター:コートがもう1着ほしいですね。“攻めた”デザインのものが。「バレンシアガ(BALENCIAGA)」か「ジル サンダー(JIL SANDER)」あたりで物色しています。

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起業から5年で年商10億円 高級ブランドも信頼する元双子タレント広海の「仕事の流儀」

広海:HIROMI/Hi Inc. CEO、マーケティングディレクター

PROFILE:本名は長谷川堅二。1989年11月29日生まれ、三重県出身。深海(FUKAMI)とは一卵性双生児。10代半ばに家出して自活。調理師免許を取得。「笑っていいとも!」の素人参加コーナー「花より双子」への出演がキッカケでスカウトされ、2008年にドラマデビュー。ファッション・ビューティに精通する双子タレントとして「次世代のおすぎとピーコ」として注目を集める。2016年からリデルでインターンをし、後に社員に。2018年デジタルマーケティング会社Hi Inc.を設立。東京服飾専門学校講師も務める

 双子のオネエ系タレントとしてテレビや舞台に出る一方、イベントのMCとしても活動していたHIROMI・FUKAMI(広海・深海)。彼らは今、ファッション&ビューティ業界のプロフェッショナルとして活躍している。FUKAMIがスタイリストとして活動の幅を広げ、ブランドのクリエイティブディレクションなども手がける一方で、HIROMIは2018年にデジタルマーケティング企業の株式会社Hiを設立して代表取締役に就任。国内外のビューティやラグジュアリーブランドなどの企画ディレクションやクリエイティブ、キャスティングなどを担い、設立5年で年商10億円を超えるほど手腕を発揮している。また、2人の“ぶっちゃける”インスタライブやYouTubeも人気で、彼らが「友の会」と呼ぶファンたちは20~50代まで幅広く、バリキャリ女子も多い。エンゲージメントが高く評価も高まっている。今回はビジネスパーソンとしてのHIROMIにスポットを当て、彼のキャリアや仕事に対峙する姿勢、さらには、今の時代に求められるマーケティング考察について聞いた。


――Hiの企業サイトを見ると、クライアントにはビューティ系でロレアルグループ(L'OREAL)、P&Gグループ、資生堂グループエスティロダー(ESTEE LAUDER)グループ、ファッション系ではLVMHグループ、ギャップ(GAP)、変わり種では味の素(AJINOMOTO)など大手がずらりと並んでいる。ズバリ、Hiが頼られ、仕事の依頼が来るのはなぜか?

HIROMI:「僕らの強みはこれです!」といえるものは実はあまりなくて……。

 でも、しいて言えば「忖度しないこと」と「着地力」かもしれません。忖度は昔からしないタイプでしたが、仕事はより、シビアに。クライアントさんに寄り添うことも重要ですがイエスマンになってはいけないと思っています。しっくりこなければ、こういう案もあるんじゃないか、と時間があれば再提案も繰り返し、一緒に最善策を模索します。

 たとえ予算が3万円でも30万円でも、300万円でも3000万円でも、同じように一緒に費用対効果を考えてみます。もちろん、結果は絶対に出さなきゃダメ!をモットーに、違うと思ったら「本当にそれでいいの?」と疑問を投げかけ、一緒に悩みますよ。正直『もうこれでいいかな』って思うこともあると思うのです。でもそこは奮い立たせて最後まで本当にこれが最善か、もうできることはないかを一緒に最後の最後まで粘って担当者の人と一緒に考え、施策を最大化し着地まで持っていくことを意識しています。

信頼のミルフィーユを積み重ねる

HIROMI:社員にも、「寄り添うことは重要だけどイエスマンになる必要はない」「クライアント様と真摯に向き合い結果を出す」と伝えています。予算が高いとか低いとか、工数で考えるのではなく、一つひとつのお仕事で結果を出す。それが次のお仕事につながると僕らは考えています。そういった“信頼と結果のミルフィーユ”でお仕事をいただけているんだと思います。

 だから、僕たちは営業したことがないんですけど、クライアントさんからの仕事がキャスティングだけだったものが広告枠の買い付け以外ほぼ全部、とか、既存のクライアントは引き続きお仕事させていただきつつ、担当者さんが部署や会社が変わって転職した先からも新しいお仕事をいただいたり、大手企業と並んでコンペに参加してほしいと言われたりして、仕事が増えていったという感じですね。

 真摯にクライアントと付き合いきちんと結果を出すことによって、ミルフィーユのように信頼が重なり、次の仕事に繋がりっていく、デジタル化が進んでる世の中ですが、この方針というか考え方は今も昔も未来も同じでずっと大切にしていくモノだと感じてます。

――マーケティングやコンサルティングでの新しいリーダーシップの形なのかもしれませんね。ではあらためて、Hi.incとは何屋さんなんのか?

HIROMI:基本的には何でも屋ですね(笑)。だけど私たちに期待されるのは、「今」へのマッチングなんじゃないでしょうか。最も重要にしていることはトレンドになりすぎたものは落ちていくだけ、なので、その一歩手前をつかむ、そんなことじゃないでしょうか。

 やっぱり僕もそうですが女性は情緒的なものが好きだから。数字に強い人々だと優秀だけど、数字やデータを信じすぎてしまってこれからくるトレンドやセンスみたいなものは無視しがち。女性って移ろいやすいモノだと思うんですよね。だから情緒と数字のバランスを取ることはとても難しいけれど、自分達の知見と数字をバランスよくみることが必要考でそこが僕たちが得意なところかなとも思っています。

 そして田舎出身っていうのも引き合いになってる要素かも。都心からの企画・発信が常なので、エクスクルーシブでとがった企画が多々ですが、エッセンスとして実は全国に住む人々が喜んでくれるようなマスに刺さるプロモーションも意識する必要があります。その視点が持てるかが重要かと思っています。花火みたいな華やかで刹那的なプロモーションも楽しいですが、これからは本質的なものしか残っていない気がします。歴史あるブランドが展覧会でレガシーやヒストリーしっかりと伝えたり、現代アートとコラボレーションしたりと根がしっかりしたものは普遍的ですよね。

 あとは代理店さんに近い領域もやってますね。大手の代理店と同じコンペにも入るし、一喜一憂しています。具体的にはイベントや広告、CMのキャスティングや、企業やブランド、プロジェクトのコミュニケーション・プランのディレクションや実施などがメインになります。ただし、クライアントのブランドや企業の看板を活用して仕事をさせていただいているので、僕たちだけがすごいことなんてぜんぜんなくて。全部お相手のふんどしをお借りしないとできないような仕事ばかりなので、そのブランドの価値を少しでも高められるように、サービスや製品が欲しいと思う人が増えるように、真摯に頑張ってます(笑)。

 何でも屋の僕らが特に大切にしてることは、先ほどもお話しした通り、新しいサービスやビジネスや製品を世に出していくときに、どうやったらお客さまに響くか、ちゃんと伝わるかをクライアントの方々と一緒に考えて実践していくことです。

――なるほど。では、マーケティングの仕事の魅力は何か?

HIROMI:マーケティングとは、究極、「人の心に響かせること」だと思っています。統計学の素養も必要だし、時代の流れを読まなければならないし、未来を見る力が重要ですよね。直感と、経験も必要です。マーケの仕事にはデモグラ(デモグラフィック。人口統計学的属性)などのデータマーケティングもありますが、僕はインサイトマーケティングのほうが得意です。ターゲットとする女子が「こう思う」「こうは思わない」とか、どうだったら響くのか、動くのかなどを想定するのが好きで。その反復で精度を上げながら、ターゲットを深掘りしたり、その子たちに流行っているものは何なのかを探ったり、目指している女性像や刺さるコンテンツを考えるのが好きですね。しかも、それらはみんな流動的だからこそ面白い。今仕込んでいるものは数カ月後や1年後といった未来のものですし、その時期だったらこんなことを考えているのだろうなとか想像することにワクワクします。そして、僕自身が、見たことのないもの、既視感のないものを見てみたい、やってみたい、新しいコトや表現を体験してみたい、実現したいという想いが一番強くて、それを楽しめているのかなとも思っています。

ゲイでADHDの僕。インフルエンサーマーケティングのリデル社での経験で感覚・直感にロジックを融合

――タレント業からビジネスの道に転身したきっかけは?

HIROMI:25歳のとき、気づかず溜まったリボ払いがMAXになり、借金が500万円まで膨らんでしまったんですよ(苦笑)。「稼がなきゃ!働かなきゃ!」と焦って、東京ガールズコレクション(TGC)初代チーフプロデューサーで今も弊社の顧問をお願いしている、マーケティングやPRのコンサルをされている永谷亜矢子さんに相談したところ、「あなたはユーザーを読み解くセンスが良くて勘がいいから、マーケティングの仕事に向いている。だからインフルエンサーマーケティングのリデルという会社でインターンしてみたら」とアドバイスと紹介をしてくださり、リデルの福田晃一社長を紹介してくれたんです。ただの双子のオカマのタレントでしかなかった僕に、マーケティングの道を開いてくれた永谷さんと、ちゃんと勉強させたら少しは使い物になるかもと期待して拾ってくれた福田社長にはとても感謝をしています。

――リデルで学んだこと、教えてもらったことは何か?

HIROMI:インターンから始めて、会社で働くことのイロハ、デジタルマーケティングのこと、お金の稼ぎ方のノウハウや、説得力を高めるロジカルな組み立て方をしっかり教えてもらいました。僕はADHDでLGBTQなので、とても感情的で感覚的で、「キモイ」か「キモくない」「素敵」というのが判断基準だったんです(笑)。でも、福田さんはとてもセンスもロジックも忍耐力もある方で、「えーっと、それってどうキモイの?もっと掘り下げて教えて?」と言語化してロジカルに説明するトレーニングをしてくれたんです。

 それから自分の思いや考えを対外的にお伝えしやすくなりましたし、仕事の幅もすごく広がりました。3年間働いて、チャレンジするつもりで独立しました。

――会社の現状と、できれば稼ぎの内訳まで聞いてみたい。

HIROMI:(笑)。2018年に設立し、ありがたいことに、5期目で一つの目標にしていた年商10億円に到達しました。スタッフは6人(業務提携含めると10名)で、企画、マーケティング、キャスティング、撮影やイベントなどの制作、が大半を占めており、FUKAMIちゃんがブランドディレクターを務める年2回の完全受注型のファッションブランド「ウィークエンド(WEEKEND)」を中心とした物販、FUKAMIちゃん含めたクリエイターのエージェント業務が残りの収益となります。FUKAMIちゃんは今までTGC等で培ったMCの経験をもとにライブ配信の分野でとても活躍しています。

――インスタライブやYouTubeが好調だが、フォロワーや視聴者が増えたきっかけは?

HIROMI:インスタライブで「友の会」(フォロワーや視聴者などのファン)の方々が爆発的に増えたのは、コロナ禍になってFUKAMIちゃんと一緒に住んだことがきっかけです。会社設立2年目で借金も返し終え、少し蓄えもできるようになったタイミングで、コロナで仕事も減り、最初はどうしよう!!という気持ちもあったのですが、在宅時間が長くなり自分のあり方を見つめ直したとき、「そのままでいっか!」と思えたんです。それで、時間もあったし、FUKAMIちゃんと「インスタライブでもやってみる?」ってなんとなく軽い気持ちで始めたんです。

 ただし、一つだけ決めたルールが「そのままでやること」でした。普段の生活とまるっきり同じテンションで毎日夜ごはんや寝るまでのリラックスタイムなどに合わせてリアルな私たちのそのままをさらけ出していきました。お金の話もするし、だらだらもするし、最近のお気に入りや買ったものも紹介する。超フラットに「あれキモイ」「それ嫌い」など完全なる個人の主観でバッサリダメ出しもする。ちょっとしたガチャガチャした世間をお騒がせはしないリアリティーショーみたいな感じです(笑)。

 でも、それが逆にウケたのか、「友の会」の方が急に増えたんです。コロナで時間を持て余したり、悩みやストレスを抱える方々などが見てくれて、応援してくれるようになったんです。お金の話や買い物の話も赤裸々にするし、バッサリ切るのも痛快だったのかも。意外かもしれませんが、バリキャリのお姉さんが多いのも特徴かもしれませんね。タレント時代には「こういうものが求められているのでは?」と、ちょっとオカマのキャラを強めてみたり、期待に応えるつもりで試行錯誤してみたのですが、芸能界ではあんまりうまくいかなくて。それが、今、ありのままでやったらウケたという。時代の変化もあるんでしょうね。それを見てくれていた出版社のワニブックスの方がウェブ連載のお話をくださって。それをまとめた書籍「むすんでひらいて」を今年5月に出版させていただき、3回も重版しました。これも「友の会」のおかげです。

 そして本業の方もコロナになって、最初は暇だったのですが、各社がコロナをきっかけにデジタルにフォーカスし始めて、インフルエンサービジネスや、インスタライブやTikTok、ユーチューブ等のSNSにより注目が集まるようになって、お仕事も増えて。気付けばコロナ前に比べて売り上げが3倍以上になったので、コロナ禍は試練でもあり追い風にもなりました。

――「ありのままで」がなぜ受けたのだと思う?

HIROMI:嘘じゃなく全部本当のことだから。みんな嘘のコンテンツが嫌になったり作り込んだコンテンツに飽きてしまったんだと思うんです。だから、自分たちの仕事でマーケやプランニングをするときにも、「もうそんなに作り込んだものは求められていない」ことを理解したうえで企画するように心がけています。20年前なら情報も少なくてカスタマーのデジタルリテラシーも低かったけれども、今はなんでもすぐに検索できるし、もう嘘なんかつけない。何よりも、期待や理想を高くし過ぎると、そうでもないことに気付いたときの落胆が激しくなってしまいますよね。楽しんでもらいたいとか喜んでもらいたいという気持ちはありつつも、期待させすぎないこと、嘘はつかないリアルさが大切な時代なんだと思います。

もう嘘はいらない。「ありのままで」「リアル」が受けるワケ

――なるほど。他にも今、マーケティングで感じている時代の潮流とは?

HIROMI:グローバルブランドとのお付き合いが多いのですが、グローバルのレギュレーションと今の日本との状況が全然違いすぎて驚きます。海外はまだインフルエンサーやセレブリティが強くて、彼らが持てば簡単に売れる状況にあります。それはトップ・オブ・トップの絶対的人気のセレブリティがいるから。でも、日本はタレントもモデルも俳優もアスリートもアーティストも、YouTuberもTikTokerもインスタグラマーもいてそれぞれに人気があるけれど、細分化してトレンドが薄く広がってしまっている状態なんです。だから、勘のいい会社はローカライズの重要性に気付いて、かなり日本独自のマーケや広告などを打ち出すようになっています。それに、イベントなどだと、テレビ向けのインパクトも、ソーシャルのインパクトも獲得できるハイブリットなキャスティングが求められるので、難易度が高まっていると感じます。

 そして特に強く思うのは、ありのまま(リアル)、にもつながるのですが、リアリティのあるものをみんなが求めだしているということ。これは真剣にとらえたほうがいいですね。とくに、ジェンダーZ(Z世代)の人々の中には、ビッグネームやビッグブランドはあまり好まないという人が増えている気がします。これとても僕ら世代からみるとびっくりですよね。

 ただ、誰もが知るメゾンブランドなどのレガシーがあるトップブランドや、本質的な圧倒的付加価値のあるブランドは好きという一面もありますよね。

 なので小さいブランドが頑張ってSDGsやサステナブルな貢献をしていることに対して好感を持って購入する傾向にあります。10年前から言われてきましたが、「ミドル層がなくなる」ことにもつながっているとも思います。たとえば、すごいセレブリティを呼んできて、その時の売上げにつながったとしても、ブランディングはできなかった、というブランドもありますよね。そのブランドのエクイティというか、持っているレガシーをみんな見るし、本当にブランドにマッチしているかどうか、生真面目さ?みたいなものが買う意味になる。日本の消費者行動はとくにこちらに重きが置かれている気がします。

 そして、広告でもインスタライブでも、エンゲージメントが測れてしまう時代。有名なタレントの方でもぜんぜんビュー数が出ない方もいますし、逆に知名度はそれほどなくてもファンがついていたり、コメント欄にも活気があったり温かかったり。実際にモノが売れるかどうかも一目瞭然です。何もかも見えてしまう時代の今、「認知」よりも「人気」がある人を探すことが重要ですね。

――最近手がけた仕事でとくに面白かったものやバズったものなどは?

HIROMI:たくさんありますが、「ギャップ」は面白いですね。担当者さんがいい意味でクレイジーなんです。最初はFUKAMIのスタイリングのお仕事から始まって、最近では、あんなに大きい会社なのにうちに制作、キャスティング、クリエイティブ、OOH(屋外広告)など、広告のバイイング以外のほとんどのお仕事を任せてくれています。キャンペーンに窪塚洋介さんファミリーや、山田優さんやSHIHOさんの母娘、富永愛さんと息子さんなど、人気のある著名人のリアルなファミリーや親子を起用したところ、すごく反響がありました。本物の家族起用は賛否を巻き起こすものなのですが、話題にもなり、売上げにもつながりました。

 またビューティーでは「ケラスターゼ」の広告が大きな話題になり、とても売り上げに貢献できたかと思います。宮脇咲良さんは、絶大な人気だけでなく、モノを動かす力があると直感し、IZ*ONE(アイズワン)を辞めた瞬間に、問い合わせて最初に広告に起用しケラスターゼの「ブロンド アブソリュ」でお仕事をご一緒させていただいていました。コロナ禍中で、韓国と日本と連携を取りながら、リモート撮影を敢行でしたので色々と苦労はありましたが結果、すご~く売れました。

 他にも、注目ブランドのビューティの上陸や、旗艦店のオープンなど、多角的にお手伝いしています。

著書「むすんでひらいて」の印税をお世話になった児童相談所に寄付

――今年、著書「むすんでひらいて」(ワニブックス刊)を出版して、3重版になりました。印税はすべて、自身がお世話になった児童相談所に寄付したと?

HIROMI:はい。連載をまとめていただいたものなので、僕たちとしては書籍にしていただいてありがとうという気持ちだったので、印税はあんまり気にしていなくて。でもそれが誰かの役に立てるならと、お世話になった児童相談所に寄付することを決めました。僕たち、もともと両親の育児放棄で、祖父母に育ててもらいました。世の中的には極貧といわれるような状況だったんです。ただ、お金はなくても僕たちは僕たちなりに幸せでした。でも、施設に入れられて可哀想な子ってレッテルを貼られることに対して、僕は感情がコントロールできずに怒りまくっていて、深海ちゃんは失語症になって一言もしゃべらなくなって……。扱いづらかったと思います。

 今回、先生たちがみんなお帰りと温かく歓迎してくれて、感謝状をいただき、講演までさせていただきました。送り出した子が戻ってきたのは初めてなんですって。子どもが大きくなると管轄部署が変わってしまうし、児相にお世話になっていたことを隠したい人も多いからだそうです。東京の港区に児相ができるときにも相当話題になりましたが、児相のイメージを払拭したり、独り立ちする子たちを支援するようなこともライフワークで取り組んでいきたいなと思っています。ちなみに「ギャップ」さんが、講演を聞きにいらしてくれた児童相談所、児童養護施設等の子どもたち全員に服をプレゼントしてくれました。当時欲しくても高くて買えなかった「ギャップ」さんとお仕事が実現できていることも幸せですし、僕たちの訪問は忘れても、「ギャップ」の服をもらって嬉しかったなという記憶が残ってくれたらよいなと思っています。

――今後、挑戦したいことや、力を入れていきたい分野は?

HIROMI:いまターゲットにしているのは、25~45歳という案件が多いので、自分と同じ世代の方々なので気持ちがわかります。でも、僕がキャッチできる年齢って、45歳ぐらいまでかなと。そう思うと、プランナーって薄命ですよね。仕事の精度を上げていくとか、喜んでもらえる人を増やしていくということには興味があるのですが、この先どうするか、本気で考えなくちゃいけないと思っています。5年間で実績やクレジットできる仕事はたくさん蓄積してきました。その経験や実績を活かして、そして、そんな僕らなりの、僕らならではの、地方の産業を盛り上げていくことであったり、ひいては日本を盛り上げていけるように、大袈裟で無謀かもしれませんがそんな分野にも挑戦していきたいです。

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「『サンローラン』に対する私のビジョンは、何よりもアティチュードにある」 アンソニー・ヴァカレロが美学を語る

 アンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vacarello)=クリエイティブ・ディレクターの手掛ける「サンローラン(SAINT LAURENT)」が、勢いに乗っている。就任から6年以上が経ち、クリエイションへの評価が高まっているだけでなく、ビジネスも好調だ。そんな中、東京では創業者イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)の“片割れ”とも言われた盟友ベティ・カトルー(Betty Catroux)に焦点を当てた巡回展「BETTY CATROUX YVES SAINT LAURENT 唯一無二の女性展」が開催されている(会期は12月11日まで)。ヴァカレロ自身が監修した同展は、メゾンの歴史に対する彼の視点や美学が感じられるもの。その展示からは、カトルーが今なお、「サンローラン」のスタイルに影響を与え続ける存在であることが分かる。ヴァカレロに、彼女との関係や創業者との共通点からコレクションやショーへの考え方までを聞いた。

WWD:パリ、上海、東京と巡ってきたこの展覧会を監修するにあたり、こだわった点は?

アンソニー・ヴァカレロ(以下、ヴァカレロ):重要だったのは、ベティが持つ両義性、多才さ、現代性のすべてを見せること。作品探しは、現在の彼女を思い浮かべつつ、過去においても常に現代的だった彼女の魅力をピックアップしていった。それは冒険であり、誰かのパーソナリティーを探求する旅。また、自分らしくあることや(周りの)予想から自分を解放することを学ぶ時間でもある。根底にあるのは、「目立つこと、人と違うことを恐れるな」ということ。あなたが身につけるものの中で人々が最も嫌うものこそが、実はあなたの最も興味深い部分なのだから。

WWD:2018年には広告キャンペーンにもベティ・カトルーを起用したが、初めて会ったのはいつ頃?

ヴァカレロ:初めて会ったのは、(17年に)モロッコ・マラケシュにできたイヴ・サンローラン美術館のオープニング。どうなるか予想もつかなかったが、気楽でとても自然だった。親密なディナーを楽しみ、最後には二人とも本当に素でいられたと思う。お互い居心地悪く感じるであろうパパラッチされるような場面とは違い、落ち着いた雰囲気に包まれていたのが良かった。

WWD:カトルーは、イヴ・サンローラン、そしてブランドにとって欠かすことのできない永遠のミューズと言える。あなた自身もモデルやセレブリティーと親交が深いように見受けられるが。

ヴァカレロ:彼らは友人なので、「サンローラン」の友人。それぞれが持っている個性とアティチュードは、私やブランドと共鳴するものだ。それこそが、実は一番エキサイティングなこと。パーソナリティーが複雑であればあるほど、その個性を反映したワードローブに飛び込むのが面白い。幾重にも重なっている層を知ることは、際限のない魅力に溢れている。

WWD:クリエイティブ・ディレクター就任から6年以上が経った今、創業者への理解はどのくらいまで深まったと感じているか?また、「サンローラン」のクリエイションを率いる上で常に心掛けていることは?

ヴァカレロ:私は、常にイヴが興味を持ったり取り組んだりしていたことに関心を抱いていた。だから、「サンローラン」に加わった当初から、ずっと同じようなことに引かれ続けてきたのだと思う。「サンローラン」に対する私のビジョンは、何よりもその身のこなし、雰囲気、生き方といったアティチュードにあると考えている。そして、私はベティのようなイヴ自身に近い存在や、過去に「サンローラン」で働いていた人たちに囲まれているのが好きだ。(イヴの生涯のパートナーであった)ピエール・ベルジェ(Pierre Berge)に会った時、イヴの真似をしないように言われたが、実際、私はイヴ本人になるというよりも、あるいは全く別の人物になるというよりも、“通訳”のようだと感じている。歴史と戯れたいのは確かだが、過去に囚われたくはない。私が取り組んでいるのは、私自身のビジョン、そして「サンローラン」に対する私自身の考え方を反映することだ。

WWD:メンズウエアの要素をクリエイションに生かすのは、創業者にも通じる部分だと感じる。

ヴァカレロ:イヴは、マスキュリンな服とフェミニンな服の境界線を曖昧にすることを好んでいた。そして、彼はメンズウエアから多くの要素を借りることで、力強い女性のキャラクターを作り上げた。危うさがあり、極めてエレガントで信じられないほどモダン。そんなキャラクターは、私らしいウィメンズウエアをデザインする手法の一部でもあるので、守り続けたいと思っている。シャープなメンズテーラリングほど、シルエットにエッジと魅力をもたらすものはない。

WWD:「サンローラン」のショーは毎回、壮大なロケーションやドラマチックな演出に驚かされる。そこにはどんな想いが込められているのか?

ヴァカレロ:私にとってはストーリーを作り上げることであり、それぞれのコレクションはストーリーの一章のようなもの。コレクションそのものからロケーションや音楽、セット、イメージ、景色まで、ショーにまつわるあらゆる要素は夢を生み出すために構想されているし、そうされなければいけない。

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英音楽レーベル主宰のスティーブン・ジュリアン 音楽とファッションをつなげるクリエイティブ秘話

 ロンドン拠点の音楽レーベル「エープロン・レコーズ(Apron Records)」の中心人物、スティーブン・ジュリアン(Steven Julien)が来日した。ジュリアンは、ファンキンイーブン (FunkinEven)の名義でアーティストとしても活動しており、宇多田ヒカルの共同プロデューサーとしても知られるフローティング・ポインツ(Floating Points)が主宰するレーベル「エグロ・レコーズ(Eglo Records)」から過去に作品を発表。ヒップホップをルーツに持ち、ひとつのジャンルに縛られないエレクトロニックサウンドを得意とし、着々とファンを獲得してきた。最近では、「ロエベ(LOEWE)」2022年秋冬コレクションのティーザームービーで楽曲が使用され、「ナイキ(NIKE)」と「パタ(PATTA)」によるキャンペーンではオリジナル曲を提供している。

 音楽のみならず、彼が手掛ける「エープロン・レコーズ」のマーチャンダイズは、公式サイトにアップされると即完するアイテムがあるほど人気を博している。昨年には、「パレス スケートボード(PALACE SKATEBOARDS)」所属のプロスケーターであるルシアン・クラーク(Lucien Clarke)と、また今年には刺しゅうを展開する葵産業ともコラボレーションした。日本でも知名度をじわじわと広げており、今年10月には同レーベルのポップアップショップを渋谷パルコに期間限定でオープン。同時にジャパンツアーも敢行し、ジュリアンを筆頭に、ベネデク(Benedek)やジェイエムエス・コーサー(JMS Khosah)などのクルーは東京、大阪、福岡、沖縄にて公演を行った。

 ロンドンに戻ってからは、「シーイー(C.E)」とも親交の深い、ニューヨークのダンスミュージックレーベル「ライズ・レコーズ(L.I.E.S Records)」とイベントを共催している。

 日本を訪れたジュリアンに自身の音楽活動の軌跡からレーベルの今後の展望についてまで話を聞いた。

――まずは、音楽をスタートさせたきっかけを教えてください。

スティーブン・ジュリアン(以下、ジュリアン):子どものときに、ヒップホップのダンスクルーに所属していて、同じ仲間たちとラップクルーを結成したんだ。彼らは演奏することに興味があったけど、俺はトラック制作をしたいと思っていた。それで、ドラムマシーンやシンセサイザーを使って曲作りをするようになったよ。

――ということは、音楽的ルーツはヒップホップですか?

ジュリアン:初恋はそうだね。好きなアーティストはたくさんいる、例えばウータン・クラン(Wu-Tang Clan)かな。だからファッションもヒップホップのスタイル。今日しているネックレスは、ウータン・クランが実際にしていたものを手掛けたマンハッタンのトミー・ジュエルズ(Tommy Jewels)にオーダーしたんだ。

――そこから聴く音楽は変化していきましたか?

ジュリアン:そうだね。後々いろんなジャンルを聴いたことで、作る音楽のテイストもミックス感のあるものになっていった。今はエレクトロニックミュージックをやっているけど、ヒップホップのDIY精神を大切にしているよ。ヒップホップのサンプリングカルチャーと同じ感覚で、俺の作る音楽には、ソウルやジャズのエッセンスを自由に取り込んでいる。それは、俺のレーベル「エープロン・レコーズ」にも言えることだね。

――ジャンルに縛られないのが、あなたのレーベルの魅力ですよね。

ジュリアン:エレクトロニックミュージックのくくりだけど、これっていうタグはつけられないから、ジャンルを聞かれたら、“エープロン”って答えているね。今回のイベントに来ていた女の子たちが「普段はテクノもハウスも聴かないけど、今日のイベントは超クールだった」って言ってくれて。うれしかったけど、俺たちの音楽はテクノでもハウスでもないと思っているから、今日のイベントは“エープロン”だよって返答したよね(笑)。

音楽にも通じる「誠実さ」

――レーベルのコンセプトはありますか?

ジュリアン:スローガンは「Honest(誠実、正直であること)」。自分自身に正直であることとも言えるね。その基準は人それぞれだから、個性を賛美したいという点にもつながっていく。リリースしているアーティストは、みんな俺と似たようなものに興味や関心を寄せている仲間なんだ。音楽面で言うとしたら、アナログの機材にこだわっていることかな。

――「エープロン・レコーズ」は、あなたにとってどんな存在として捉えていますか?

ジュリアン:うーん、なんだろうね。俺自身だけど、それより大きなもので、自分がいなくなっても残ってほしいし、続いていってほしい。

――今回の来日では、渋谷パルコでポップアップショップを行いましたね。これはどんな経緯で企画したのでしょうか?

ジュリアン:日本限定のグッズを作りたいと思ったのが、最初のアイデアだよ。もともと葵産業とのコラボレーションは決まっていて、刺しゅうのフーディーを作ったり、限定のTシャツをデザインしたりしたよ。今回有名な商業施設でやることになったけど、それはどうでもいいこと。なんだろうな、偶然そうなったって感じかな。「エープロン」は、いつも流れに身を任せているんだ。あえて、そんなに計画しすぎないようにしている。風向きはいつも変わるから。

――マーチャンダイズのデザインはどのように手掛けているのですか?

ジュリアン:ほとんど俺のアイデアが中心だね。1990年代がベースになっているけど、未来的な感じ。アールデコの要素をミックスしたこともあるよ。今回の日本限定のTシャツは、50年代のマリファナの広告からインスピレーションを受けているんだ。ロゴは40〜50年代のデトロイトにあったクラシックカーの工場のフォントがイメージ。例えば、キャデラックとか。最近は、マーチャンダイズ部門を担当するメンバーが加わったから、ウェブサイトが立派になったし、メーリングリストも始めて、買いたい人がサインアップしたら購入できるような仕組みにしたんだ。「エープロン」のメインロゴは、ボイラー・ルーム(BOILER ROOM)とNTSレディオ(NTS Radio)のロゴをデザインした、アダム・ティックル(Adam Tickle)に依頼したよ。

――コラボレーションも精力的に行っていますね。ルシアン・クラークとタッグを組むことになったのはどのようにして?

ジュリアン:彼とは15年くらい前から友だちなんだ。パンデミック中にもっと仲良くなって、一緒にマーチャンダイズをつくることにしたよ。ロンドンのブランドやカルチャーに携わっている人はみんなどこかでつながっているんだ。

――「ロエベ」のキャンペーンでは、あなたの曲「Begins」が使用されましたね。

ジュリアン:キャンペーンのディレクターが、NTSで毎月やっている俺のラジオショーを聞いて連絡をくれたんだ。とある回で最初に流していた曲を使えないかと依頼があって、3カ月のライセンス契約を交わすことになった。今回のポップアップを行ったパルコの1階に「ロエベ」が入っていたのも、なんだか不思議な縁を感じたよ。「ナイキ」と「パタ」のキャンペーンでは、オリジナルの曲を作ったんだ。それがきっかけでキャンペーンやCMに俺の曲が使われる機会が増えた気がするね。

――そういったオファーが来たときは、どんな気持ちでしたか?

ジュリアン:キャペーンやCMにもっと使ってほしいと思っていたから純粋にうれしかったよ。そういう活動の方が、DJをするより今はやりたいことなんだ。とはいえ、今回の日本のショーはかなり楽しかった。実は過去に東京でDJをやったことがあるんだけど、あんまり観客とのつながりを感じられなかったんだ。けど、今回はロンドンにいるみたいな一体感があって、ショーはこうあるべきだ!と思ったね。

――では、最後に今後のリリースを教えてください。

ジュリアン:2つリリースがあるかな。1つは今年中にEPが出る予定、あとは来年にアルバムも出すつもり。今までで一番いい出来だと思っているよ。あと2024年にビッグなコラボレーションが決まっている。なんたって、2024年はレーベルの10周年アニバーサリーだからね。大々的なパーティーを予定しているよ!

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世界的調香師ジャン=クロード・エレナが語る、香水市場(前編)「コピーはすぐに消えてしまう」 【香水ジャーナリスト連載 Vol.4】

 「エルメス (HERMES)」の初代専属調香師として知られるジャン=クロード・エレナ(Jean-Claude Ellena)は現在、ビーガンフレグランスブランド「ル クヴォン メゾン ド パルファム(LE COUVENT MAISON DE PARFUMERIE 以下、ル クヴォン)」でオルファクティブディレクターを努める。若手調香師を監修する傍ら、2021年には自らが調香を手掛ける“シグネチャーコレクション”を発表し、売れ行きは好調だという。長年第一線で活躍し数々のブランドから名香を世に送り出してきたエレナ氏に、若手調香師たちとの仕事と、新作フレグランス “シグネチャー ベチバー”(100mL、税込2万3760円)に込めた思いについて聞いた。

――「ル クヴォン」では若手調香師を監修する立場でフレグランスの創作に携わっている。その思いは?

ジャン=クロード・エレナ調香師(以下、エレナ):若い調香師には開かれた未来があるにも関わらず、ブランドからのリクエストを厳守し、ビジネス的な条件を多く課され、マーケティングに基づいた香水を作る癖がついている。彼らと関わってそのことを強く感じ非常に悔しく思った。もっと自由にクリエーションしてほしい。大きな香水メーカーが発表するような類似性のある香水にはクリエーションを感じない。彼らには「僕と一緒に仕事をするときは自由だ。自由に創作して驚かせてほしい。僕の仕事は、君たちが自由に創作できるよう解放してあげることなんだから」と伝えている。

――メゾンやニッチブランドが増えて、自由なクリエーションがしやすくなったのでは?

エレナ:先日、フィレンツェで行われたニッチフレグランスの展示会に参加したが、創造的な香りはとても少なかった。約50%はどこかのブランドを想起するものだった。オリジナリティーが少ない香りを販売すれば、自分で自分の首を絞めることになる。そうしたブランドは大抵、2~3年で消えてしまう。そしてまた、同じような安易な考えで新たなブランドが作られているのが現状だ。

――これまで「ル クヴォン」では若手調香師を監修していたが、“シグネチャー コレクション”は自ら調香を手掛けた。どのような経緯と思いがあるか?

エレナ:「ル クヴォン」というメゾンは、香水に対して非常に情熱があり、香りに恋している人たちだ。彼らに「さらにクオリティーの高いものを作りなさい。そうすればファンはついてくる」と言ったら、「好きなようにやっていいからクオリティーの高いものをあなたが作ってくれませんか?」と言ってもらえたので、自分で作ることにした。「ル クヴォン」はすでにラグジュアリーなメゾンといえるが、香りにこだわることでもう1段階良いブランドにブラッシュアップできると思った。

「単一の香りの香水を初めてつくった」

――“シグネチャー コレクション”では昨年、“シグネチャー チュベローザ”、”シグネチャー ミモザ”、”シグネチャー アンブラ”を発売し、今年は“シグネチャー ベチバー”が加わった。テーマはどのように選んだ?

エレナ:現在の香水市場で「ル クヴォン」は、初めて単一の香りの香水“チュベローザ”や“ミモザ”をつくったブランドだ。香水の本来の姿、原点に戻ることで新しい出発をしようと考えて創作した。“ミモザ”は、私の住む家の前にある丘から、開花の頃のミモザが風に乗って香りを届けてくれた美しい光景を香りにした。“チュベローザ”は、私が自宅の庭に植えたのだが、8月の開花のときの午後8時から午前1時までの芳香の変化を表現している。“アンブラ”は、樹木の香りと不死の花といわれるイモーテルの香りを組み合わせた香水をつくりたいという思いから生まれた。私は常に香りの詩的な世界を表現している。自然の香りを再現しようとしたら、使う香料も自然のものがいいに決まっている。

――以前のインタビューで、若手調香師たちに「その香りで伝えたいことは何か」を質問すると言っていたが、“シグネチャー ベチバー”で伝えたいことは?

エレナ:私が香水をつくるときにいつも考えているのは、この香りがどんなストーリーを伝えているのか、香った人がすぐ分かるように明確に、シンプルであること。ストーリーが分かりにくい、ごちゃごちゃしているものはダメだ。“ベチバー”は、ブルターニュで三ツ星レストランのシェフをしている友人が、木の船に乗せてくれたときに、海の香りと木や縄の香りが女性向けベチバーに感じられたのがきっかけで生まれた。ベチバーという香料は男性向けのイメージがあるが、私は香水に関してジェンダーの差はないと思っている。マリ共和国の女性たちは、愛を交わす前にベチバーの根を煎じて飲む。すると汗からベチバーの香りが放たれるため、媚薬とされているという話もあるくらいだ。

――香料としてのベチバーはジャワ産やマダガスカル産などもあるが、ハイチ産にこだわりが?

エレナ:ジャワ産ベチバーは、レンズ豆のスープのような香りがするから使えない。マダガスカル産は、濡れた土の匂いがする。インド洋のレユニオン島でもベチバーが少し採れ、バラの香りがして良いものだが、少量しか採れず香料としては使いにくい。それに比べ、ハイチ産ベチバーはとてもウッディーで、自分の子供の頃を思い出す。マッチ棒の軸の匂いがするからだ。私はマッチをすったときの硫黄の香りが好きだった。特別にオーダーして作ってもらったバージョンの香料でハイチ産のベチバーを起用した。ベチバーから最初に香るトップノートは土の香りがするのでそれを10%削り、ウッディーな香りが残る香料にしてもらった。試作で5%、10%、15%と削ったものを作成してもらい、最も過不足ない数値を起用することにした。もしも男性向けの香水ならばこのように取り除くべきところはなかっただろう。


YUKIRIN
美容・香水ジャーナリスト
香水・香り関連商品と、ナチュラル&オーガニック美容分野に特化した記事を執筆。女性誌などのメディアで発信する。化粧品や香り製品のコンサルティングやイベントプロデュースなど幅広く活躍。「日本フレグランス大賞」エキスパート審査員、「イセタン フレグランス アワード2019」審査員などを務める

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馬場ふみかや江野沢愛美も愛用 20代デュオによるアクセサリーブランド「クリティカルラボ」 Youth in focus Vol.10

 U30の若者たちにフォーカスした連載「ユース イン フォーカス(Youth in focus)」10回目は、アクセサリーブランド「クリティカルラボ(CLITICAL:LAB)」にフォーカスする。

 「クリティカルラボ(CLITICAL:LAB)」は、とがった形状や複数のパールなど、近未来的な雰囲気を備えたイヤーアクセサリーを主軸とするブランドだ。2019年のブランド設立以降、年に1回のペースでコレクションをリリースし、自社ECや百貨店などでのポップアップで販売している。中心価格は1万〜2万5000円で、ポップアップには2日で300人以上が来場することもあり、過去のコレクション全てを購入する熱狂的なファンもいる。さらに、「ヴォーグ ジャパン(VOGUE JAPAN)」「シュプール(SPUR)」「エル・ジャポン(ELLE JAPON)」といった媒体でも掲載され、若年層のファッションアイコンである馬場ふみかや江野沢愛美らもプライベートで愛用する。

 ブランドを手掛けるのは、1998年生まれの森りこデザイナーと、97年生まれの坂本悠生ディレクターだ。森デザイナーはもともとコレクションブランドで服作りを学んでおり、「アクセサリーに関しては全くの素人だった」という。そんな彼女たちがなぜアクセサリーブランドを始め、どのように支持を広げていったのか。東京・中野のアトリエで話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):まずはブランドを始めた経緯を教えてください。

森りこ(以下、森):2018年、高校卒業のタイミングで、コレクションブランド設立を目標に上京してきました。最初は「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」「アンダーカバー(UNDERCOVER)」でインターンとして、服作りとブランド運営を勉強していました。すごくタメになる一方で、自分のアウトプットができていないなと坂本に相談してみたら、「何か作っちゃえばいいじゃん」とアドバイスをくれて。そこで思いついたのがアクセサリーブランドだったんです。

坂本悠生(以下、坂本):僕らはバンタンデザイン研究所大阪校で出会いました。僕は当時専門学校生で、森は高校生。彼女は学校全体のコンテストで最優秀賞を獲得するなど、校内では知られた存在でした。学校にこもってずっと作り続けていたタイプだったから、インターンをやりながらも手は動かし続けた方がいいなと思いました。

森:服作りのリファレンスとしてアクセサリーの素材は集めていて、尖った形状の近未来的なアクセサリーが好きでした。とはいえ、アクセサリー自体は作ったことがなく、完全に独学でのスタート。材料屋を調べて浅草橋に行って、気になるパーツを買い込んで、ユーチューブでパーツのつなぎ方を真似しながら作っていく、みたいな(笑)。どんどん好きなイメージを具現化していったら、「あ、やっぱりかわいい」って手応えを感じて。そこで、ファーストコレクションとして全16型を、BASEで販売し始めました。

坂本:18年の秋口にサイトを開設しました。大阪時代からかわいがってもらっていたスタイリストやフォトグラファーの先輩、同世代の友達が面白がってくれて、初月から売れました。当時はアイテムの単価が低かったし、利益は月5万円程度なんですけど。それでも、自分たちでものを作って、それが売れるのは、とてもうれしかったです。

WWD:当時は完全にハンドメードだった?

森:そうです。在庫はもたず、オーダーが入ったら材料を買って、自宅で黙々と生産する毎日。最初はインターンとブランドを掛け持ちながら、徐々に売り上げが安定して、ブランドで食べていけるようになったので、「クリティカルラボ」のみににシフトしました。

坂本:ハンドメードから量産に切り替えたのは20年から。手作りだと、どうしても品質がばらつくし、生産の数も限られる。ブランドの成長を見越して、思い切って工場と契約しました。

WWD:工場との契約は成長のきっかけになっている?

森:量産を外注したおかげで品質が安定し、まとまった売り上げも入るようになりました。その予算で、シルバー925で重厚感あるアイテムをはじめ、単価が高めのアイテムにも挑戦できるようになったのも良かった。洗練されたアイテムが増えたからか、当初は10〜20代のファンがメインでしたが、今では30〜40代、50代の女性まで広まりつつあります。

坂本:実はコロナも追い風になりました。イヤーカフって10代には認知されていたけど、30代以上には浸透していないアイテムだった。でも、コロナでマスクを着けるようになると、ピアスやイアリングはひもに引っ掛かるから、新しい選択としてイヤーカフに注目が集まるようになりました。

WWD:ブランディングで意識していることは?

森:SNS運用をかなり重視しています。一つ一つの投稿やストーリーズはもちろん、文章の一言一句まで2人で相談して作っています。最近はアートディレクターにも入ってもらって、ブランドの世界観を統一するよう最大限の投資をしています。

坂本:今、ブランド認知のきっかけはほとんどがSNSだと思う。それぞれがファッションアイコンをフォローして、その人の投稿で新しいブランドを見つけたり、好きなブランドに近いブランドをSNSで探したり。実際「クリティカルラボ」も、感度の高いユーザーが見つけてくれて、ポップアップの様子や着用画像を発信してくれるおかげで、広告費をかけなくてもオーガニックなファンを獲得できています。

WWD:コレクションは年に1回。物作りに集中できる一方で、お客さんに新鮮な情報を届けられないというデメリットはない?

森:コレクションとしてのリリースは年に1度ですが、不定期で新作を小出ししています。ストーリーズを使って数時間限定で販売したり、ポップアップで数量限定で扱ったり。

坂本:ストーリーズを使った販売って、インフルエンサーブランドではよくある手法で、顧客との距離も近く感じるいいアイデア。デザイナーズブランドではあまりやらないし、インフルエンサーブランドと同じやり方をしたくない人もいるけど、どちらも同じビジネスなので、参考になる点はある。僕は個人でキャスティングの仕事もしていて、インフルエンサーとの付き合いがあるから、そこで吸収したものを「クリティカルラボ」に還元しています。

WWD:ファッション媒体でも目にするようになった。

森:ブランド設立当初からファッションアイテムとして提案しているので、シューティングで使ってもらうのはすごくうれしいです。本来であればより多くの媒体で発信してほしいところですが、ブランドイメージもあるので、掲載先はかなり厳選しています。

坂本:モデルをこちらから指定する場合もあります。マスでの人気よりも、ファッションとして認知されているかどうかや、本人の感度の高さが大事。生意気かもしれないけど、それだけ影響力も大きいから、僕たちも妥協したくなくて。

森:卸先も厳選しているよね。通販のほかに卸もやっていて、新規の問い合わせを多くいただくのですが、売り上げがとれそうでも、ブランドの世界観が崩れそうなお店はお断りします。他ブランドのラインアップに共感できたり、店舗空間まで洗練されていたりして、親和性を感じるお店に絞っています。現在6アカウントで取り扱っています。

WWD:今後、アパレルも手掛けていく?

森:徐々に準備を進めています。やっぱりファッションに憧れて業界に入ってきたので、服は1つのゴールです。ただ、「クリティカルラボ」というブランドとは別のやり方を考えています。私自身の名前を公表するかも未定です。でも、絶対に服は届けたい。ゆくゆくは海外にも挑戦したいです。

坂本:きっと面白いブランドになるし、その実力もある。気長に待ってもらえるとうれしいです。

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伊スパークリングワイン、フランチャコルタが3年ぶりにイベントを開催 協会副会長に聞くその希少性

 イタリア発スパークリングワインのフランチャコルタ(FRANCIACORTA)は11月14日、3年ぶりに、「アンダーズ東京(ANDAZ TOKYO)」でイベントを開催した。“フランチャコルタ”とは、イタリアのコモ湖とガルダ湖の間の地域で生産される発泡ワインのこと。フランチャコルタ協会は、それら生産者による認知度アップ・販売促進目的の協会だ。同イベントを機に来日した、フランチャコルタ協会マウリツィオ・ザネッラ(Maurizio Zanella)=フランチャコルタ協会副会長兼「カ・デル・ボスコ(CA’ DEL BOSCO)」会長へ話を聞いた。

WWD:今回の来日の目的は?

マウリツィオ・ザネッラ=フランチャコルタ協会副会長兼「カ・デル・ボスコ」会長:以下、ザネッラ):日本におけるフランチャコルタのさらなる発展のために開催されるイベントに参加するためだ。

WWD:イベント開催の目的は?

ザネッラ:3年ぶりのリアルイベント開催だ。日本では、フランチャコタは約35年前から販促をしているが、協会では10年前に販促をスタートした。日本市場における、さらなるフランチャコルタの認知度アップが目的だ。

WWD:フランチャコルタの定義は?

ザネッラ:イタリア語で男性形の“イル・フランチャコルタ”はワインのこと、女性形の“ラ・フランチャコルタ”は、イタリアの地域のことを指す。コモ湖とガルダ湖の間の地域が“フランチャコルタ”でそこで生産されたブドウから作られる発泡酒がフランチャコルタだ。

WWD:シャンパーニュとの違いは?

ザネッラ:まず、ブドウの産地が異なる。使用するブドウの種類は似ていて、製法も瓶内の二次発酵で同じ。だが、ブドウが育つ緯度が、フランチャコルタとシャンパーニュでは違う。フランチャコルタは、シャンパーニュが製造されるランスよりもずっと南に位置している。だから、ブドウのポリフェノールをはじめとするフェノール類が成熟しており、よりボディーがありふくよかなワインができるし、シャンパーニュよりもシャープな味わいも期待できる。

WWD :フランチャコルタ協会の会員になるためにするべきことは?

ザネッラ:フランチャコルタという地域の名称は、行政のものではなく、明確な定義はない。その地域内でブドウを栽培する畑を持ち、ワイナリーがあることを申請すること。フランチャコルタという地域自体がシャンパーニュのランスの11分の1と小さい。当然、フランチャコルタの希少性はシャンパーニュより高い。生産量のほとんどが、イタリア国内で消費されるので、国外へ輸出できるのは15%以下と少ない。

WWD:現在、フランチャコルタの生産社数は?

ザネッラ:121社だ。日本に輸入されているのは約40社。今回のイベントには3社が参加している。

WWD:フランチャコルタのトップ市場は?

ザネッラ:1位は本国のイタリア。2位はスイス。イタリアに近いということもあり、フランチャコルタはよく知られており、シャンパーニュの代わりに飲まれる。イタリア国内でほぼ消費され、輸出量ナンバーワンはスイス、2位がアメリカ、3位が日本だ。日本市場でワイン消費量が少なかった約40年前にシャンパーニュと同時に販売され始めた。“食”と“酒”への要求が高い市場だから支持されているのだと思う。

WWD:今後の戦略は?

ザネッラ:フランチャコルタの品質をさらに高めること。そして、高いポジショニングをキープすることだ。ワイン作りは伝統、そして経験が大切。ワイン作りのための醸造所は買えるが、伝統は買えない。もともと、イタリアにおけるワインの製造は自家需要のためだった。瓶詰めされて販売されるようになったのは最近のことなんだ。

WWD:フランチャコルタとスプマンテやプロセッコの違いは?

ザネッラ:スプマンテはイタリアにおける発泡ワインの総称だが、フランチャコルタはそれには入らない。プロセッコは、ベローナ以外のベネト州などで広い産地で生産され、タンク内で2次発酵を行う発泡酒だ。

WWD:フランチャコルタにおけるサステナビリティの取り組みは?

ザネッラ:現在、畑の62%で有機栽培されている。二酸化炭素排出量の減少をフランチャコルタ協会主導で行っているが、特に目標は定めていない。プラスチックの使用に関しても、より持続可能なパッケージへの変更などについて各社が取り組んでいる。

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同じ年齢でも老化スピードが異なる⁉ その鍵を握る成分「プロテオグリカン」ってなに?

 同じ年齢でも、若々しく見える人もいれば年齢より上に見える人もいる。それは、老化の速度「ペース・オブ・エイジング(以下、POA)」が異なるから。このPOAがゆっくりの人は体も見た目も若さを維持でき、速い人は老化の進行が速い。ニュージランドの同じ町で生まれた同じ年齢の住民約1000人を26〜45歳まで追求してPOAを算出※1した研究※2によると、同じ1年でも速い人は2.44年分も老化が進み、遅い人は0.4年分しか老化が進んでいないことが判明。さらに、POAには遺伝要因が2〜3割、環境要因が7〜8割ほど関わっているという。つまり環境を整えることでいつまでも若く見える状態をつくることができるということ。POAがスローな人の大きな特徴に、見た目の若々しさや滑らかで弾力のある“艶肌”があるが、この“艶肌”づくりに注目したいのが「プロテオグリカン」という成分だ。

※1 : 免疫系、代謝系、歯科系など19種類の生体データを収集し、POAを算出
※2 : Maxwell L. Elliott et al., Nat Aging. 2021

美容成分を生み出す
線維芽細胞の数を維持することが
“艶肌”に重要

  “艶肌”は、表皮とその内側に存在する真皮がともに健康な状態であることで初めてかなう。表皮はキメを細かく整えることで肌を滑らかに見せる一方、真皮は肌にハリを生み出すからだ。真皮は、線維芽細胞とそこから生み出される美肌に欠かせないコラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチン、「プロテオグカン」などの成分から成り立っており、“艶肌”のベースとなる弾力やハリをつくる土台となっている。ただ、いずれの成分も加齢によって減少し、弾力やハリが失われていく。その根本的な対策が4つの美肌成分を生み出している線維芽細胞の数を維持して美肌成分を産出し続けること。それが外見の若々しさにもつながる。

ヒアルロン酸に匹敵する
保水能力を有する
「プロテオグリカン」

 その線維芽細胞から生み出される美容成分の中でも、美肌につながる成分として期待されているのが「プロテオグリカン」だ。「プロテオグリカン」は人間を含む全ての動物の体内に広く存在しており、細胞の増殖や軟骨再生の促進、保湿や抗炎症に作用する。皮膚においては弾力や潤いを生み出し、関節の軟骨ではクッションのような働きをする。その「プロテオグリカン」の注目すべき機能の一つが保水効果だ。「プロテオグリカン」の特徴的な構造が、スポンジのように水分を抱えるため、保水性に非常に優れており、その能力はヒアルロン酸に匹敵するほど。その肌への保水性・弾力性・潤滑性の高さを活かし、化粧品などへの「プロテオグリカン」応用が進んでおり、細胞の増殖や分化、免疫機構の調整にも深く関わっていることから、健康食品や医療分野などへの応用も進行している。

「プロテオグリカン」が、
“艶肌”の要である線維芽細胞の
増殖を促進

 線維芽細胞が美容成分を生み出していることは先に述べたが、「プロテオグリカン」は、線維芽細胞そのものの増加を促進する働きがあることが細胞試験によって認められている。細胞試験では、ヒトの正常な真皮線維芽細胞に、濃度50・100 μg/mLの「プロテオグリカン」を添加したところ、非添加の細胞に比べて、線維芽細胞の数が有意に増加した。「プロテオグリカン」が線維芽細胞に働きかけ増殖させたことで、コラーゲンとヒアルロン酸の産出も促進され、皮膚の潤い向上や弾力低下に効果的だと考えられる。

 体の内側から真皮に働きかけて、“艶肌”へと導く「プロテオグリカン」は多くの化粧品に活用されているが、より手軽に取り入れられる食品も続々と開発。青森では鮭頭部の鼻軟骨から「プロテオグリカン」の量産化を実現するなど、安定供給の体制も確立した。インナーケアでの「プロテオグリカン」を毎日の美容習慣にする動きが本格化している。

奈部川貴子美容アナリストに
聞く、
「プロテオグリカン」の活用法 

WWDJAPAN(以下、WWD):美容アナリストから見て、「プロテオグリカン」の魅力とは?

奈部川貴子美容アナリスト(以下、奈部川):「プロテオグリカン」は縁の下の力持ち的存在。美容成分としてのコラーゲンの役割は広く知られていると思うが、「プロテオグリカン」はその活躍を陰で支える敏腕マネージャーといったところ。実は以前から化粧品には多く採用されているが、細分化された名称が使われていることもあり、実力はしっかりあるのに存在が地味で脚光を浴びることがなかった。昨今はインナーケア商品も数多く開発されていることから、今後はネクストコラーゲンとして、その分野で注目されるのではないだろうか。

WWD:「プロテオグリカン」をインナーケアで取り入れることのメリットとは?

奈部川:肌のハリやたるみのケアに化粧品を用いるわけだが、基本、化粧品が働きかけるのは表皮のみ。真皮にまでアプローチするために、インナーケアで取り入れるのは賢い方法だと思う。今、美容医療ではハリやたるみの改善にフィラーを行うが、美容医療までは踏み込めない、でも化粧品のスキンケアだけでは不安という人がとても多い。プロテオグリカンをインナーケアで取り入れることで“飲むフィラー”になると思う。実際、私の施術サロン「KAOYOMIサロン」にも3年くらい愛飲されているお客様がいらして、施術していても確かなハリを感じる。

WWD:今後、「プロテオグリカン」に期待することは?

奈部川:さらに気軽にインナーケアに活用するために、サプリというよりグミやビーンズになっていたり、チョコレートに含まれていたりなどフードライクなものが登場するといい。最近は、 “スキンテレクチャルズ” “成分党”などと呼ばれている成分に強い関心を持つ若い世代が増えている。そういう人達にもヒットすることを期待したい。

TEXT:YOSHIE KAWAHARA

問い合わせ先
一丸ファルコス
contact@ichimaru.co.jp

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同じ年齢でも老化スピードが異なる⁉ その鍵を握る成分「プロテオグリカン」ってなに?

 同じ年齢でも、若々しく見える人もいれば年齢より上に見える人もいる。それは、老化の速度「ペース・オブ・エイジング(以下、POA)」が異なるから。このPOAがゆっくりの人は体も見た目も若さを維持でき、速い人は老化の進行が速い。ニュージランドの同じ町で生まれた同じ年齢の住民約1000人を26〜45歳まで追求してPOAを算出※1した研究※2によると、同じ1年でも速い人は2.44年分も老化が進み、遅い人は0.4年分しか老化が進んでいないことが判明。さらに、POAには遺伝要因が2〜3割、環境要因が7〜8割ほど関わっているという。つまり環境を整えることでいつまでも若く見える状態をつくることができるということ。POAがスローな人の大きな特徴に、見た目の若々しさや滑らかで弾力のある“艶肌”があるが、この“艶肌”づくりに注目したいのが「プロテオグリカン」という成分だ。

※1 : 免疫系、代謝系、歯科系など19種類の生体データを収集し、POAを算出
※2 : Maxwell L. Elliott et al., Nat Aging. 2021

美容成分を生み出す
線維芽細胞の数を維持することが
“艶肌”に重要

  “艶肌”は、表皮とその内側に存在する真皮がともに健康な状態であることで初めてかなう。表皮はキメを細かく整えることで肌を滑らかに見せる一方、真皮は肌にハリを生み出すからだ。真皮は、線維芽細胞とそこから生み出される美肌に欠かせないコラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチン、「プロテオグカン」などの成分から成り立っており、“艶肌”のベースとなる弾力やハリをつくる土台となっている。ただ、いずれの成分も加齢によって減少し、弾力やハリが失われていく。その根本的な対策が4つの美肌成分を生み出している線維芽細胞の数を維持して美肌成分を産出し続けること。それが外見の若々しさにもつながる。

ヒアルロン酸に匹敵する
保水能力を有する
「プロテオグリカン」

 その線維芽細胞から生み出される美容成分の中でも、美肌につながる成分として期待されているのが「プロテオグリカン」だ。「プロテオグリカン」は人間を含む全ての動物の体内に広く存在しており、細胞の増殖や軟骨再生の促進、保湿や抗炎症に作用する。皮膚においては弾力や潤いを生み出し、関節の軟骨ではクッションのような働きをする。その「プロテオグリカン」の注目すべき機能の一つが保水効果だ。「プロテオグリカン」の特徴的な構造が、スポンジのように水分を抱えるため、保水性に非常に優れており、その能力はヒアルロン酸に匹敵するほど。その肌への保水性・弾力性・潤滑性の高さを活かし、化粧品などへの「プロテオグリカン」応用が進んでおり、細胞の増殖や分化、免疫機構の調整にも深く関わっていることから、健康食品や医療分野などへの応用も進行している。

「プロテオグリカン」が、
“艶肌”の要である線維芽細胞の
増殖を促進

 線維芽細胞が美容成分を生み出していることは先に述べたが、「プロテオグリカン」は、線維芽細胞そのものの増加を促進する働きがあることが細胞試験によって認められている。細胞試験では、ヒトの正常な真皮線維芽細胞に、濃度50・100 μg/mLの「プロテオグリカン」を添加したところ、非添加の細胞に比べて、線維芽細胞の数が有意に増加した。「プロテオグリカン」が線維芽細胞に働きかけ増殖させたことで、コラーゲンとヒアルロン酸の産出も促進され、皮膚の潤い向上や弾力低下に効果的だと考えられる。

 体の内側から真皮に働きかけて、“艶肌”へと導く「プロテオグリカン」は多くの化粧品に活用されているが、より手軽に取り入れられる食品も続々と開発。青森では鮭頭部の鼻軟骨から「プロテオグリカン」の量産化を実現するなど、安定供給の体制も確立した。インナーケアでの「プロテオグリカン」を毎日の美容習慣にする動きが本格化している。

奈部川貴子美容アナリストに
聞く、
「プロテオグリカン」の活用法 

WWDJAPAN(以下、WWD):美容アナリストから見て、「プロテオグリカン」の魅力とは?

奈部川貴子美容アナリスト(以下、奈部川):「プロテオグリカン」は縁の下の力持ち的存在。美容成分としてのコラーゲンの役割は広く知られていると思うが、「プロテオグリカン」はその活躍を陰で支える敏腕マネージャーといったところ。実は以前から化粧品には多く採用されているが、細分化された名称が使われていることもあり、実力はしっかりあるのに存在が地味で脚光を浴びることがなかった。昨今はインナーケア商品も数多く開発されていることから、今後はネクストコラーゲンとして、その分野で注目されるのではないだろうか。

WWD:「プロテオグリカン」をインナーケアで取り入れることのメリットとは?

奈部川:肌のハリやたるみのケアに化粧品を用いるわけだが、基本、化粧品が働きかけるのは表皮のみ。真皮にまでアプローチするために、インナーケアで取り入れるのは賢い方法だと思う。今、美容医療ではハリやたるみの改善にフィラーを行うが、美容医療までは踏み込めない、でも化粧品のスキンケアだけでは不安という人がとても多い。プロテオグリカンをインナーケアで取り入れることで“飲むフィラー”になると思う。実際、私の施術サロン「KAOYOMIサロン」にも3年くらい愛飲されているお客様がいらして、施術していても確かなハリを感じる。

WWD:今後、「プロテオグリカン」に期待することは?

奈部川:さらに気軽にインナーケアに活用するために、サプリというよりグミやビーンズになっていたり、チョコレートに含まれていたりなどフードライクなものが登場するといい。最近は、 “スキンテレクチャルズ” “成分党”などと呼ばれている成分に強い関心を持つ若い世代が増えている。そういう人達にもヒットすることを期待したい。

TEXT:YOSHIE KAWAHARA

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一丸ファルコス
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ウィメンズを復活 進化する創業150周年のフレンチラグジュアリー「エス・テー・デュポン」

 創業150周年を迎えた「エス・テー・デュポン(S.T. DUPONT)」は、今でこそライターやペンを扱うラグジュアリーブランドとして名をはせているが、その原点はトランクやバッグなどのレザーアイテムだった。ナポレオン3世に始まりジャクリーン・ケネディやレオナルド・ディカプリオなどそうそうたるセレブリティーに愛されてきた「エス・テー・デュポン」は、その長い歴史からヒントを得て、さらに進化する。

「誰でも手に入れられるようでは
ラグジュアリーとは言えない」

WWD:創業者のシモン・ティソ・デュポンは、ナポレオン3世のカメラマンから転身して「エス・テー・デュポン」を立ち上げた。創業当初はレザーグッズブランドだったが、どういった経緯で現在の主力アイテムであるライターやペンを扱うようになったのか。

アラン・クルヴェ=エス・テー・デュポン社長(Alain Crevet以下、クルヴェ):シモンは、1870年に勃発した普仏戦争でスタジオが燃え、仕事を失うも、村でレザーを生産していたことからレザーケースやトランクをデザインするようになった。彼のトランクは、皇帝や皇后をはじめとする上流階級に気に入られて成功した。ライターを取り扱うようになったのは、1941年にパリを訪れたパティアラのマハラジャから、100人の妻のために100個のクラッチバッグと、バッグに合うゴールド製のライター100個の製作を依頼されたことがきっかけだった。また、73年には、ジャクリーン・ケネディからの依頼で彼女が愛用している特注ライターに合うペンを製作した。ライターもペンもそれまで扱ったことはなかったが、顧客の要望に応えた結果、現在の主力アイテムが生まれ、ビジネスが拡大した。

WWD:「エス・テー・デュポン」が大切にしていることは。

クルヴェ:皇帝や皇后のためにレザーグッズを作り始めたのがこのブランドの原点であり、その後もオードリー・ヘップバーンやパブロ・ピカソ、アンディ・ウォーホル、レオナルド・ディカプリオなど、特別な才能とチャレンジングな精神を持つ多くのセレブリティーの期待に応えてきた。だからこそ、“特別な人のために特別なものを”というのがわが社のモットーだ。

WWD:クルヴェ社長の考える“ラグジュアリー”とは。

クルヴェ:1シーズンで消費してしまうようなものは真のラグジュアリーではないと考えている。私にとってのラグジュアリーとは、“永続性”であり、“万人が手にできないもの”だ。例えば「エス・テー・デュポン」のペンは、金やプラチナなどの貴金属を使用し、ラッカー塗装を施している。60時間かけて全て手作業で作っているこのペンは、少々火であぶっても燃えないし、少しの高さから落としても壊れず、50年100年と使い続けることができる。「エス・テー・デュポン」こそ、真のラグジュアリーだ。

WWD:昨今は“インクルーシブ”であることがブランドに求められがちだが、“エクスクルーシブ”であることがラグジュアリーの条件だと考える?

クルヴェ:私は人が好きだし、インクルーシブという考え方も重要だと思う。しかし、ラグジュアリーとは、他人とは異なるものを求める人のためにある。ラグジュアリーブランドがインクルーシブであるかのように振る舞うのは必ずしも正解ではないし、高級ライターは万人のためのものではないと恐れずに言うべきだ。

原点からヒントを得た
「ウィメンズの復活」

 
WWD:150周年を迎えて、記念アイテムやイベントが目白押しだ。

クルヴェ:創業150周年を記念したアイテムは、喜びにあふれた150年の歴史をその色や形で表現している。「エス・テー・デュポン」のライターの特徴である点火するときの“クリングサウンド”も、幸せや喜びを体現する音色だ。アニバーサリーイヤーの締めくくりとして、フランスの工房に眠っていたアーカイブの展示と販売を行う。東京では2023年2月に同イベントを開催する予定だ。展示・販売するビンテージライターの中には80年以上昔に作られたものもあるが、その全てが今でも使用できる状態のものだ。

WWD:今後の戦略や目標は。

クルヴェ:これまでの歴史に立ち返り、ヘリテージを守っていくことも大切だが、未来について考えることも重要だ。これらを両立すべく、ウィメンズカテゴリーの復活と新規出店を行う。さらに、売上高を5年以内に倍増させるつもりだ。

WWD:ウィメンズカテゴリーの復活とは。

クルヴェ:皇后のトランクを作ったのがブランドの原点であり、1950年代にはオードリー・ヘプバーン、70年代にはジャクリーン・ケネディが顧客だったように、かつての「エス・テー・デュポン」には女性の顧客が多くいたが、現在のメインの顧客層は男性だ。今後は原点に立ち返り、ウィメンズカテゴリーを復活させ、女性が欲しいと思うアイテムも展開していく。ヒントはアーカイブに残されているから、そのエッセンスを入れながらも新しい「エス・テー・デュポン」のウィメンズを作りたい。ウィメンズカテゴリーは女性だけのものではなく、男性も使えるようにユニセックスなデザインを目指している。23年秋にはお披露目したい。

WWD:誰がデザインを担当している?

クルヴェ:少人数の特別チームを作り、女性が使用することを念頭に置いてレザーグッズやクラッチバッグのデザインを練っているところだ。チームのメンバーはほぼ全員が女性で、インハウスの若いデザイナーに加え、外部からもデザイナーを招聘した。中には複数のラグジュアリーブランドで経験を積んだ者もいる。

WWD:ウィメンズの展開に合わせて新規出店を行う?

クルヴェ:現在は男性の顧客が多いため、必然的にメンズセクションに出店しているが、このプロジェクトを効果的に展開できるよう、女性客が多く集まる場所にも出店したいと考えている。「エス・テー・デュポン」にとって、日本はフランスに次いで2番目に大きいマーケット。メンズもウィメンズも展開できる規模の店舗を出店することを目指し、日本への投資を継続する。

HOTEL PARTICULIER Collection

 創業150周年を記念し、パリの本店をモチーフにしたボールペンとライターのコレクション“ホテル パルティキュリエ”を発売する。かつては皮革から貴金属、エナメル、彫刻まで、18種類もの職人がここで商品を作っていた。ライターはおよそ70個ものパーツで構成し、600におよぶ工程を経て製作。美しいクリング音が特徴の“ライン2 クリング”タイプ。プラチナとゴールドプレートシルバー製。ライターは税込58万4100円。万年筆・ボールペンセットは税込44万9900円。

MONTECRISTO Collection

 創業150周年記念の“モンテクリスト”コレクションは、ハバナ・シガーの有名ブランド「モンテクリスト」とのコラボーションだ。「モンテクリスト」のロゴが描かれたライターとシガーカッター、万年筆をそろえる。夕焼け空を思わせるグラデーションラッカーは、アレクサンドル・デュマ作「モンテ・クリスト伯」がインスピレーション源。ライターは税込21万2300円、シガーカッターは税込3万800円、万年筆は税込23万3200円。

TEXT : YU HIRAKAWA
問い合わせ先
エス・テー・デュポン ジャポン
03-5549-7420

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1位は、「ルイ・ヴィトン」が一粒万倍日に向けて日本限定カラーの新作財布を発売| 週間アクセスランキング TOP10(11月10〜16日)

週間アクセスランキング TOP10(11月10〜16日)

「WWDJAPAN」 ウイークリートップ10

 1週間でアクセス数の多かった「WWDJAPAN」の記事をランキング形式で毎週金曜日にお届け。
今回は、11月10(木)〜 16日(水)に配信した記事のトップ10を紹介します。

 「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントでも、毎週土曜日に【週間アクセスランキング】を配信開始。ファッション&ビューティ業界のニュースはもちろん、コレクションのルック、パーティーやストリートのスナップ、ライフスタイル情報など、幅広いジャンルの注目トピックを週3回お届けします。今すぐ「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントを[友だち追加]して、最新トレンドやファッション&ビューティ業界で注目されているトピックをチェックしよう。
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- 1位 -
「ルイ・ヴィトン」が11月16、17日の一粒万倍日に向けて日本限定カラーの新作財布を発売

11月15日公開 / 文・三澤 和也

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は11月16、17日の一粒万倍日(“ひと粒の籾[もみ]が万倍にもなって実る”といわれる開運日)に向けて、日本限定カラーの新作財布を発売した。

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- 2位 -
「アンダーカバー」と「リーバイス」がコラボ ビンテージのデニムを再構築した6型を発売

11月10日公開 / 文・福永千裕

 「アンダーカバー(UNDERCOVER)」と「リーバイス(LEVI’S)」は、コラボコレクションを11月11日に発売する。ラインアップするのは、アメリカ製の「リーバイス」のデニムと日本製の「アンダーカバー」のパーツを組み合わせたジャケットやコート、パンツの6型。同コレクションは「アンダーカバー」の一部店舗と公式オンラインストア、「リーバイス」の原宿フラッグシップストアで取り扱う。

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- 3位 -
「口だけ出されるのは嫌だった」 マッシュ近藤社長が株式の過半を手放す理由

11月15日公開 / 文・五十君 花実

 マッシュホールディングス(近藤広幸社長、以下マッシュHD)は12月末までに、米投資ファンドのベインキャピタルに株式を譲渡すると発表した。近藤社長は再出資し、株式保有比率はベインキャピタルが約6割、近藤社長が約4割となる。「3〜5年以内に上場を目指す」(近藤社長)ためのパートナーシップだが、創業社長が株の過半を手放すことには驚きも大きい。ファンド側も当初は過半を保有することまでは考えていなかったという。真意は何なのか、近藤社長に聞いた。

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- 4位 -
マッシュがベインキャピタルに2000億円で株式売却 「3〜5年後の上場目指す」

11月15日公開 / 文・五十君 花実

 マッシュホールディングス(近藤広幸社長、以下マッシュグループ)は株式上場を視野に、投資ファンドのベインキャピタルに株式の過半数を譲渡する。「パートナーシップによって海外事業の成長を加速させ、管理部門などのサポートも受ける。3〜5年後に上場を目指す」と近藤社長は話す。12月末までに、近藤社長が保有している株式をベインキャピタルに売却する。

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- 5位 -
マッシュHD22年8月期は売上高1000億円の大台突破 主力ファッションブランドが軒並み2ケタ増収

11月15日公開 / 文・本橋 涼介

 マッシュホールディングス(HD)の2022年8月期は、売上高が前期比14%増の1023億円で、同社としては初めて1000億円を突破した。営業利益は98億円だった。売上高の約8割を占めるファッション事業の主力ブランドが軒並み2ケタ増収と好調で、業績を大きくけん引した。事業子会社マッシュスタイルラボが運営するファッション事業の売上高は前期比18%増の795億円。基幹ブランドの「ジェラート ピケ(GELATO PIQUE)」は同15%増の276億円で、コロナ前の19年8月期との比較でも72%増と伸ばした。

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- 6位 -
「ナイキ」の人気スニーカー“エア ジョーダン 1 シカゴ”が7年ぶり4度目の復刻

11月11日公開 / 文・WWD STAFF

 「ナイキ(NIKE)」は、1985年に発表したスニーカー“エア ジョーダン 1(AIR JORDAN 1)”の人気カラー“シカゴ(CHICAGO)”を復刻し、11月19日に「ナイキ」の公式アプリ「SNKRS」などで発売する。価格は2万900円(税込、以下同)。

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- 7位 -
ユニクロが1500人のスタッフに調査した人気商品ランキングを発表 この冬ヒットするアウターは?

11月16日公開 / 文・福永千裕

 ユニクロは、全国のスタッフ約1500人が選んだ2022年秋冬の人気商品ランキングを発表した。ランキングではウィメンズ部門とメンズ部門でそれぞれトップ5を決定した。さらに、この冬おすすめのアウターや隠れた名品も調査し、スタッフに支持される商品を公開した。

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- 8位 -
「マルニ」が三越伊勢丹オンラインストアで“マルニ マーケット” 人気バッグの新色を先行販売

11月14日公開 / 文・三澤 和也

 「マルニ(MARNI)」は11月17日12時30分から20日23時59分まで、三越伊勢丹オンラインストアにポップアップストア“マルニ マーケット”をオープンする。

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- 9位 -
115周年を迎える「コンバース」がロゴを一新

11月16日公開 / 文・三澤 和也

 「コンバース(CONVERSE)」は2023年に115周年を迎えるにあたり、ロゴをリニューアルする。

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- 10位 -
売らない店「シーイン トーキョー」、静かなオープン 行列は100人

11月13日公開 / 文・横山 泰明

 グローバルSPAブランド「シーイン(SHEIN)」の常設のショールーミング店舗「シーイン トーキョー(SHEIN TOKYO)」が東京・原宿に本日13日、オープンした。11時の開店時にはテレビや新聞などの多くのメディアが詰めかける一方で、行列は約100人で用意していた整理券配布も行わなかった。当日には4000人が、翌日にも6000人が行列を作った大阪店とは対照的に静かなオープンとなった。関係者は「ショールーミング型ということが認知されたことが大きい。ゆっくり商品を見てほしい」という。

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1%の残在庫をアートに昇華 マッシュが韓国の現代アーティストと作品制作

 マッシュホールディングス(HD)はこのほど、売れ残りの在庫商品をアートとして昇華する取り組み「サステナブルアートプロジェクト」を始動した。その第一弾として、韓国の現代アーティストのチェ・ジョンファ氏とアパレル、靴などを再利用したモニュメントを制作した。同社の顧客向けチャリティーセールイベント「マッシュパークプロジェクト」の開催期間中(11月18〜19日)、会場の東京・麹町のマッシュHD本社2階で展示している。

 「スナイデル(SNIDEL)」「フレイ アイディー(FRAY I.D)」などのワンピースやスカート、バッグを塔のように積み上げたり、パンプスやサンダルを吊るして環状に巻き上げたりと、静と動の抑揚を効かせたアートが並ぶ。チェ氏は「(マッシュの倉庫にある)材料を自由に使ってアート作品を作れることは刺激的だった」と振り返り、作品のコンセプトを問うと「100年先も残る作品には、説明はいらないものだ」と自信をのぞかせた。

 チェ氏は1961年、ソウル生まれ。ダイナミックな色使いと造形による作風が特徴でサステナブル素材による作品にも取り組んでおり、2005年ヴェネツィア・ビエンナーレ韓国代表作家、18年平昌パラリンピックのアートディレクターを務めた。

 プロジェクトの構想期間はおよそ3年。近藤広幸社長がタイ・バンコクの美術館で、不要な日用雑貨を使い壮大なアートに仕上げるチェ氏の作品を目にし、「サステナビリティという概念を、美しく、楽しいものとして伝えるとはこういうことかと、感銘を受けた」ことが協業のきっかけになった。

 作品は一部をマッシュHD本社に残し、それ以外は各地のアウトレット店舗などに設置・巡回する。「アートは従業員にはもちろん、目に触れた人たち、特に子供たちの感性に訴え、記憶に残るものになればうれしい」と話した。

 同社のファッション事業において、セール販売やアウトレットでも最終消化できない商品は全体の約1%。これを廃棄せず新しい価値を吹き込む手段として、今後もプロジェクトの継続実施を視野に入れる。

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ケリングのキーマンが語る循環 永遠の価値の創出・技術革新・土壌

 サステナビリティ先進企業として知られるケリング(Kering)。傘下ブランド「グッチ(GUCCI)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「アレキサンダー マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」などからは続々と、着実で、時にユニークなサステナビリティ施策が発表されている。その支援を行っているキーマンの一人、ジェラルディン・ヴァレジョ(Geraldine Vallejo)=サステナビリティ・プログラム・ディレクターにケリングが目指すサーキュラリティについてオンラインで話を聞いた。

WWD:ケリングが考えるサーキュラリティとは?

ジェラルディン・ヴァレジョ=サステナビリティ・プログラム・ディレクター(以下、ヴァレジョ):われわれのアプローチは、価値があり、長持ちする製品を作り、その価値をライフサイクルを通じて維持し続けること。それは、耐久性があり、修理ができ、再利用できるようにデザインされ、永遠に価値を保ち、第2、第3の人生でもずっと使用してもらえる製品を意味します。また、適正量を生産することは、循環のループを低速化することにもつながります。AIを用いて販売量を予測し、過剰在庫を回避しています。生産に関しては、再生型の資源を用い、生産工程で危険な化学物質を使わないことを重視しています。

 サーキュラリティは、私たちに革新をもたらす機会だと考えています。そもそもサーキュラリティは、私たちにとって新しい考え方で、新しいクリエイティビティでもあり、ノウハウでもあり、高品質なモノを作るということでもあります。

WWD:サーキュラリティ実現に向けた具体的な実践例は?

ヴァレジョ:ケリングのブランドにはリセールプログラムがあり、「アレキサンダー・マックイーン」や「バレンシアガ」は二次流通のプラットフォーマーであるヴェスティエール・コレクティブ(Vestiaire Collective)やリーフラント(REFLAUNT)をパートナーとして、同プログラムを展開しています。また、「グッチ」ではヴィンテージアイテムを丹念に修繕し、「グッチ」の実験的なオンラインスペース“ヴォールト(Vault)”内で再販しています。クリエティブ・ディレクターとグッチの専任アーキビストによって厳選されたヴィンテージアイテムのコレクションで、職人たちによって復元され新たな命が与えられたアイテムたちです。

 商品を(サーキュラリティの)ループ内にとどめ、サーキュラリティへのアプローチに顧客にも加わってもらおうというアイデアであり、同時に新しい顧客にも届く方法でもあります。

 大切なのは、われわれが環境に与えるネガティブな影響を減らし、天然資源を枯渇させることなく、会社にとっても顧客にとっても価値を生み出し続けることなのです。

WWD:「バレンシアガ」や「グッチ」ではデジタルファッションやメタバースなど非物質化へのアプローチも始めている。

ヴァレジョ:メタバースやデジタルは探求しているところです。デジタルユニバースの実際の影響やデジタルファッションの(負荷の)計測に関してもより多くの方法や研究を探っています。また、サンプル制作においては、素材が節約できる方法を確立しています。

WWD:「土壌を枯渇させたらサーキュラリティが実現しない」という考えから、環境再生型農業にも力を入れているとか。

ヴァレジョ:われわれラグジュアリーブランドは、コットン、シルク、ウール、レザー、カシミヤなど天然素材を多く使います。もし正しい方法で生産されれば自然にとっても土にとっても有益になり得ます。そのために、サプライチェーンの初期段階である農場や地域で適切に実践されていることを確実にしなければなりません。環境NGOであるコンサーベーションインターナショナル(Conservation International)とパートナーシップを組み、自然再生基金を立ち上げました。ファッションやラグジュアリーファッションの鍵となる材料のサプライチェーンで100万ヘクタールを再生するというものです。具体的には農家や牧場主を支援し、自然、人、動物と調和した農業へアプローチしています。有機物や生物多様性を回復できれば、その過程で炭素を土壌に閉じ込めることができます。また、土地や水域を回復し、動物福祉を改善させる地域密着型の農業を推進しています。農家自身もよりよい生活を送ることができるようにもサポートしています。この方法を確実にし、さらに規模を拡大していきたい。

WWD:ケリングはスタートアップ企業とのパートナーシップも重視している。

ヴァレジョ:彼らの力がなければサステナビリティは達成できないと考えています。このまま同じようにビジネスを続けると、目標は達成できません。スタートアップ企業には、他の産業の技術を応用してファッション産業に活用する力もあります。今、われわれが焦点を当てているのは、新素材、サーキュラリティとアップサイクリング、染色、プリンティング、フィニッシングなどの加工とトレーサビリティ(追跡可能性)です。

 もっとも将来有望なイノベーションのひとつが、代替素材です。例えば、ラボで育ち、レザーの特性に似ている材料を開発するビトロラボ(VitroLabs)に投資しましたし、マイセリウム(キノコの菌糸体)にも注目しています。

WWD:「バレンシアガ」が2022-23年秋冬に“エッファ(EPHEA)”という菌糸体ベースの材料を用いたコートを発表した。

ヴァレジョ:イタリアのSQIMというスタートアップと開発しました。量や厚みなど均質性を実現し、ここまでハイクオリティなものはファッション分野では初めてではないでしょうか。彼らは素材を、われわれはなめし技術を提供しました。イノベーションと受け継がれてきた技術を組み合わせ、そして「バレンシアガ」との幾度とないやりとりで実現しました。開発には1年以上かかり、素材のコアな部分にはプラスチックも合成物質も使っていません。それこそがわれわれや「バレンシアガ」にとって重要なポイントでした。ただ、一つだけ透明性という意味でお伝えすると、通常レザーには1mm以下の薄いコーティングがされていますが、そこには合成物質を使っています。

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ガレがボトルに描いたシャンパーニュ「ペリエ ジュエ」のアネモネが120周年 第8代目最高醸造責任者に聞くアートと自然、ワインの共生

 フランス発シャンパーニュメゾン「ペリエ ジュエ(PERRIER JOUET)」といえば、ボトルに描かれたジャパニーズ・アネモネがトレードマークだ。そのアネモネは、アール・ヌーヴォーを代表するガラス作家のエミール・ガレ(Emile Galle)によるものだ。それが描かれてから、今年は120周年を迎えた。周年を記念し「ペリエ ジュエ」“ベル エポック 2013 アニバーサリー エディション”が登場。7代目最高醸造責任者のエルヴェ・デシャン(Herve Dechamp)と8代目最高醸造責任者のセブリーヌ・フレルソン(Severine Frerson)の4本の手でつくられた貴重なものだ。ボトルのデザインは、オーストリア・ウィーンを拠点にするデザインデュオのミシャー‘トラクスラーが担当。ブドウ畑の70種類もの生き物が鮮やかに共生している姿が描かれている。イベントのために来日した8代目最高醸造責任者であるフレルソンに、「ペリエ ジュエ」のアイデンティティーやDNAについて聞いた。

WWD:来日の目的は?

セブリーヌ・フレルソン=ペリエ ジュエ8代目最高醸造責任者(以下、フレルソン):ガレがボトルに描いたアネモネの120周年を祝うイベントに参加するため。クライアントと会う目的もある。だが、イベントによる新しい出会いを大切にしたい。

WWD:「ペリエ ジュエ」が他のシャンパーニュメゾンと違う点は?

フレルソン:まず、アーティスティックであること。アートと自然、ワイン造りの共生に尽きる。「ペリエ ジュエ」はピエール・ジュエ(Pierre Jouet)により1811年に創業し、妻がアンバサダー的な存在だった。彼女は、芸術に情熱を注ぎ館に多くの人を招いていた。ピエールも息子のシャルルも植物学者で、温室でオレンジなどを栽培して植物の病気の研究をしていた。そこで、天候が良くなくても、ブドウの栽培に影響しない畑をつくれるように尽力した。また、世代から世代へ受け継がれるシャンパーニュで、1825年のキュベが最も古いものだ。われわれならではの、シャルドネのフローラルな香りが特徴だ。

WWD:ガレにボトルのデザインを依頼した経緯は?

フレルソン:創業者の息子の甥であるオクターブ・ガリスがガレに「ペリエ ジュエ」の印象で描いてほしいと依頼したのが発端だ。ガレは、「ペリエ ジュエ」のシャンパーニュのエレガントな繊細さ、フローラルな点をアネモネで表現した。

WWD :アネモネのボトルがシグニチャーになった理由は?

フレルソン:1902年にガレによりデザインされたボトルは、大戦を経て一時忘れられていたが、大戦後に復活した。

WWD:「ペリエ ジュエ」がアートとのコラボレーションに積極的な理由は?

フレルソン:アートを通してジャンパーニュを再解釈するのがわれわれのDNA。自然との共生をテーマにした活動を行なっている。

WWD:「ペリエ ジュエ」で行なっているサステナビリティの活動は?

フレルソン:ブドウ畑の生物多様性を大切にしており、ブドウ栽培の列の間にクローバーやシリアルなどを栽培している。それにより、ブドウに自然に栄養が行き渡るようにしている。麦などの穀物系もテロワールには植えている。ブドウの収穫後の9月には、さまざまな種を蒔いて、翌年の5月ごろに育ったものを土に倒し、栄養を与えるようにしている。また、バイオマスの観点から養蜂も行なっている。

WWD:シャンパーニュの楽しみ方は?

フレルソン:保管方法が大切。日光を避けて、温度差の少ないところで保管するのが重要だ。アペリティフでは8~10℃、食事は10~12℃が適する。グラスは「ベル エポック」のアロマが楽しめるようなものが理想だ。グラスは、洗剤を使わずに熱湯で洗い、布でよく拭くべき。そうすれば。シャンパーニュの泡立ちを倒しめる。シャンパーニュは、アペロでは、ホタテのカルパッチョやパルメザンチーズなどと合う。ワインとしてなら、寿司が最適。魚料理にも合うし、ロゼは和牛と合うはずだ。

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「カルティエ」とスペイン王室、アンバサダーの親密な関係 幹部が語るハイジュエリー戦略

 多くのジュエラーは7月のオートクチュール・コレクション中に新作ハイジュエリーの発表を行うが、「カルティエ(CARTIER)」は、世界各地で6月に新作発表を行っている。今年はスペイン・マドリードでイベントを開催。王のジュエラーと呼ばれる「カルティエ」というだけあり、各国の王室と深いつながりがある。また、最近では積極的にアンバサダーを起用。王室やアンバサダーとの関係や戦略について、アルノー・カレズ(Arnaud Carrez)=カルティエ シニア バイスプレジデント&チーフ マーケティングオフィサーに聞いた。

WWD:ハイジュエリーの発表を例年6月に行う理由は?

アルノー・カレズ=カルティエ シニア バイスプレジデント&チーフ マーケティング オフィサー(以下、カレズ):顧客やパートナー企業、プレスの方々に特別な時間を提供したいと考えて6月の早い時期に、新作コレクションにふさわしい国と都市で発表している。「カルティエ」のクリエイションと共鳴し、特別な体験ができるような美しい場所を選んでいる。また、「カルティエ」とゆかりのある場所というのもポイントだ。

WWD:今年、発表の場をスペイン・マドリードに選んだ理由は?

カレズ:スペイン王室と「カルティエ」は長い友好と忠誠の歴史で結ばれている。1904年に、当時の国王であったアルフォンソ13世(Alfonso XIII)が「カルティエ」を王室御用達ジュエラーにしたのがスペイン王室とわれわれの絆の始まりだ。メゾンのアーカイブには20年に王室のために作られたティアラの写真がある。27年にスペインの宮廷人が購入したミステリークロックは、現在「カルティエ」のコレクションの一つとなっている。それ以来、「カルティエ」はスペイン全土で支持されている。2012年、マドリードのティッセン ボルネミッサ美術館で開催された「アート オブ カルティエ(EL ARTE DE CARTIER)」展では、カルティエ コレクションから400点を超える作品を展示。同年にはマドリードのレティーロ公園にあるカサ・デ・バカスセンターに“パビリオン オブ デザイン”をオープンし、3週間にわたりデザインをテーマとしたポップアップイベントを開催した。このような背景があるので、新作コレクションを発表する場所をマドリードにした。

アンバサダーはキャンペーンの枠を超えた存在

WWD:「カルティエ」はメゾンのアンバサダーではなく、コレクションのアンバサダーを起用しているが、その理由は?

カレズ:アンバサダーやフレンズ オブ メゾンとはメゾンの歴史に寄り添う継続的な関係を築きたい。“サントス ドゥ カルティエ”と米俳優のジェイク・ジレンホール(Jake Gyllenhaal)をはじめ、“パシャ ドゥ カルティエ”のキャンペーンでは、米俳優のラミ・マレック(Rami Malek)やメイジー・ウィリアムズ(Maisie Williams)、香港出身のK POPスターのジャクソン・ワン(Jackson Wang)、豪シンガーソングライターのトロイ・シヴァン(Troye Sivan)、米シンガーのウィロー・スミス(Willow Smith)などが集結。「カルティエ」とこれら、フレンズ オブ メゾンとの関係は、キャンペーンの垣根を超えてさまざまな取り組みにつながっている。ジレンホールとマレックは、「ドバイ エキスポ 2020」とのコラボのプロジェクトにも参加。彼らは、さまざまなプロジェクトを通して、メゾンの革新に携わっている。

WWD:イラン出身女優のゴルシフテ・ファラハニ(Golshifteh Farahani)をハイジュエリーのアンバサダーに起用した理由は?

カレズ:ファラハニは、誰もが認める素晴らしい女優であり、歌手、ミュージシャンだ。アート系の映画からハリウッド映画に出演し、レッドカーペットでは、そのスタイルとエレガンスで注目を集める存在だ。彼女は、既にフレンズ オブ メゾンとして活動しており、昨年もハイジュエリーのアンバサダーを務めた。彼女の多面的な個性は、多様で多文化なヘリテージをインスピレーションにする「カルティエ」のハイジュエリーを完璧に体現している。

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「試着室から出てきたお客さまのキラキラの笑顔が最大のやりがい」ソブダブルスタンダードクロージング 藤井麻依

 地方専門店の取材で「この店で人気のあるブランドは?」と尋ねると、必ずと言っていいほど上がってくるのが「ダブルスタンダードクロージング(DOUBLE STANDARD CLOTHING)」だ。デザイナー兼代表取締役の滝野雅久氏が1999年にスタートしたブランドである。黒とゴールドを基調とした空間に赤いマネキンが印象的な、モダンとクラシック、カジュアルとフェミニンなど対になる要素がリミックスされたアイテムを展開している。ファン層も幅広く20代から50、60代の方からも支持されている。そんな「ダブルスタンダードクロージング』の魅力にハマり、現在は六本木店のショップマネージャーを務めている藤井麻依さんにその魅力を語ってもらった。

藤井麻依/ソブ ダブルスタンダードクロージング六本木店ショップマネージャーCCO

PROFILE:(ふじい・まい)1981年生まれ、鹿児島県出身。理美容専門学校を卒業後、2001年に福岡の販売代行会社に入り、販売員としてのキャリアをスタート。幅広いジャンルの店頭に立つ中で『ダブルスタンダードクロ―ジング』期間限定店舗のスタッフとして働く。その後、飲食店勤務を経て、福岡のベンチャー企業が運営するセレクトショップに勤務。再び「ダブルスタンダードクロ―ジング」の販売に携わる。2012年に「ダブルスタンダードクロージング」を運営するフィルムに入社し、現在に至る

―販売員の仕事を始めたきっかけは?

藤井麻依さん(以下、藤井):友人に勧められたからです。美容専門学校に通っていたのですが、あの頃は“カリスマ美容師ブーム”で卒業しても就職できないくらい生徒が溢れていました。結局、卒業しても就職できず半年ほどフリーターをしていたところ、友人の紹介で販売代行会社で働くことになりました。この会社は服だけでなく、いろいろな物を売っていて、いい経験になりました。

―いろんなものとは?

藤井:主に国内の個性派ブランドを販売していましたが、他にもミセス、インポート、時計、水着なども扱っていましたし、水も売っていたこともありました。最初の1年間はミセスブランドにいましたが、その後は「今日はあの店に行って」「明日からはこのブランドを手伝ってきて」という感じで働いていました。

―服だけでなく、水まで売るとは(笑)。ですが、それだけ幅広いジャンルやテイストで販売をしていたら、接客スキルが磨かれそうですね。

藤井:そうかもしれませんね(笑)。

―その中で一番勉強になったことはなんでしょう。

藤井:はじめて働いたミセスブランドです。客層は60、70、80代のマダムな雰囲気の方がいらっしゃるような店でした。それまで販売職をしたことがなかったので、お客さまからいろんなことを教えていただきました。特に店長がカリスマ的な接客力の持ち主で、店長の接客をよく観察し、店長が休憩中に実践しようとすると、そういう時に限って1時間の休憩を45分で切り上げてくるような方なんです。折角の接客チャンスタイムが短くて(笑)。ほかの先輩方もとても接客が上手でしたので真似をして自分に取り込みつつ、自分の強みは何かを模索しながら接客していました。当時、強みになったのは専門学校で学んだ色彩のこと。例えば、接客で「お客様の髪色や肌色でしたら、こんな色が似合いますよ」とお伝えして喜んでもらえることが多々あり、勉強してきたことが強みとして生かせたのは嬉しかったですね。逆に失敗から学ぶことも多くて、例えば丈詰めする際に骨格に合わせたベストな丈をお伝えしようとしても、上手く伝えることができなくて、もっと勉強しなくては……とよく思っていました。

出会ってから10年を経て、念願のブランドの販売員に

―「ダブルスタンダードクロージング』にはどういう経緯で働き始めたのですか?

藤井:その後、マダムからヤングOL向けのブランドの担当になり、その頃から代行会社の営業スタッフが「今度、このブランドを扱うんだ」といって毎日のように「ダブルスタンダードクロージング」のカタログを見せられていました。福岡三越で3か月の期間限定店を出店することになり、会社から「一人で東京の本社に挨拶して来い」とまるで修行のようなことを言いつけられて、デザイナー兼代表取締役だった滝野さんに会いに行きました。そのときは、アパレル経験も少ない小娘にも丁寧に接してくださり、「今シーズン一押しのスタイリングはコレで、店頭に立つ時はこの服を着てね」と説明しながら、服を選んでいただけたことに衝撃を受けました。この時、選んでいただいた服は今でも大切に持っていて、ジャケットはとても綺麗な状態で今でも着ています。今でも展示会ではスタッフたちにシーズン説明してくれるのですが、そういう姿を見て「このブランドをもっと広めたい!」というスイッチが入りました。

―社長でありデザイナーでもある方から直々に説明をしてもらい、しかも服まで選んでもらえたのは貴重な経験でしたね。

藤井:そうなんです。その後も衝撃的なことが続いて、期間限定店の営業が開始すると同業の販売員がたくさん買い物に来ることに驚いたんです。自分の店でも買えるのにどうしてなんだろうと。でも、それだけファッションが好きな人に支持されているブランドなんだ、とあらためて実感しました。ほかにも専門学校時代の友人から地元の女子アナ、美容部員まで買いに来たり、客層も幅広くて若い方からマダムまで来店したり。お客さまがダブスタの服を着ると魔法をかけられたように洗練されていく姿を見ていて、私も楽しくなってどっぷりハマってしまいました。この店の結果次第で今後の福岡出店の可能性があると聞いていたので、福岡出店を信じて待っていました。

―それから入社に至るまでは?

藤井:結局、その代行会社には5年くらい勤め、退社後は飲食業界にも興味があったので個人経営の飲食店で働きました。でも友人から「働いている姿が似合わない」と笑われ、自分でも飲食業は合わないかもと思ったので、再びアパレルに戻りました。福岡にダブスタをメインに扱う店ができるということでフィルムの営業の方から「今、何してるの?」と連絡をもらって、再びダブスタを販売することになりました。その店は東京のベンチャー企業が運営する福岡のセレクトショップで、ITをメイン事業に他には不動産や飲食、ワイン、野球選手のマネジメントなど幅広い事業展開をしていて、その中で私がアパレル担当になったのです。しかも、入社するときに滝野さんの後押しもあり、研修のために都内の直営店で働かせてもらったんです。

―ダブスタを販売するとはいえ、他社の社員に手厚いですね。今まで聞いたことがありません。

藤井:本当に当時のことを思い出すと、よく受け入れてくれたと思います。その会社は風変わりというかトップがファッション好きだったので、そのセレクトショップの他にも東京でメンズのオーダーメイド店も出していたことがありました。最終的には香港出店という話も浮上してきて、私に「香港へ行くか、滝野さんの下で働くか」と選択肢が与えられたのですが、海外移住はしたくなかったので後者を選びました。

―それで、正式にフィルムに入社するんですね!ブランドには長く携わっているのに、入社までは時間がかかりましたね。

藤井:ダブスタと出会って、約10年くらいですね。

「入りにくいお客さま」には、丁寧な接客で対応

―地方専門店で取材をしていると人気の高さを実感するのですが、個人的には店がかっこよすぎて入りにくいと思ってしまうのですが……

藤井:実際、カッコいいが先行して店に入りにくいというお客様は多いですね(笑)。でも、一回着てみたら大丈夫です!

―入りにくいと感じているお客様に対し、どうやって入店を促していますか?

藤井:私が入社した頃にはすでにブランドが確立されていたのですが、立ち上げの頃からいるスタッフから話を聞くと「とにかくブランドを認知させたい」という気持ちを強く持っています。私もそれを第一に考えて、お会いする方にはブランドのことはあまり知らないお客さまだと思いながら、丁寧にブランドを発信するようにしています。入店していただけたら、服のカッコよさとスタッフの接客のギャップに気が付いていただけると思います。

―では、接客で心がけていることは?

藤井:来店したこの時間をこの店に使って良かったと思っていただけるような接客を心がけています。私自身は、お客さまがうれしそうに試着室から出てきて、キラキラしているのを見るのがただ楽しいんです。そういう表情を引き出すのが好きで、例えばその日は朝から気分が乗らなくても、この店に来たことで「今日はすごくいい事があった」と思えるようなことが提供できればと思います。そして、この気持ちはお客さまだけでなく、スタッフに味わってもらいたいんです。私たちもお客様と出会えてよかった、という気持ちで仕事できればいいなと思います。よく「お客さま第一主義」とたとえる店もありますが、それが逆にスタッフの気持ちに重くのしかかって、疲弊しているようにも思うのです。

―それは大いに感じます。スタッフが疲弊していては良い接客もできないと思います。

藤井:お客さまが大切なことは大前提なので今さら言うことではないと思っていて、これからはスタッフ自身の気持ちが楽しい、嬉しい、充実していると感じられるように、メンバーの働き方やチームワークも大切にしています。

―特に今はお客さまが来店しにくいからこそ、余計に販売員のメンタル維持が大変だと思います。これは現場だけでなく、会社も何とかしないといけないですね。そこで最後に今後の目標は?

藤井:これからもダブスタをたくさんの人に伝えていきたいです。ファッションは人を元気にさせるものなので、もっと服を着る楽しみやおしゃれすることを考える時間を増やしていければ、生活も豊かになるのかなと思っています。

―最低限の服でも生活できるけど着飾ることで心が豊かになることってありますね。反対に心を豊かにする方法はいろいろあるけれど、一番手軽にできるのはファッションだと思います。

藤井:ファッションの楽しさって私にとってはなくてはならないものですし、そのことをもっともっと多くの人に知ってほしい。販売員という仕事も、だから成り立っていると思います。以前、滝野さんが「販売は資格がなくても仕事を通じで学べて、スキルを上げていけば一生働ける素晴らしい仕事だよ」と言ってくだって。そんな考えを持ち、素敵な服を作る方の下で働くことができて私も幸せです。

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「アディクション」退任から3年半 ネクストステージに向かうAYAKOメイクアップアーティストが考える次世代のカラーコスメとは?

 AYAKOメイクアップアーティストは、「アディクション(ADDICTION)」の前クリエイティブディレクターとして、当時国産メーカーでは類を見なかったモードな世界観をコンセプトにしたメイクアップブランドを生み出し、日本のコスメ業界に革命を起こしてきた。2019年3月末に退任してから早3年半が経過した今もなお、米ニューヨークを拠点にするAYAKO氏はどのような活動をしているのだろうか。マルチな広がりを見せているという現在の活動や心境について聞いた。

WWD: 「アディクション」を離れてからの活動は?

AYAKOメイクアップアーティスト(以下、AYAKO): 「アディクション」時代はブランドのクリエイティブに全力投球していたこともあり、メイクアップアーティストとしての現場仕事からは離れていたのですが、パンデミックが明けてからはアリシア・キーズ(Alicia Keys)やアナスイ(Anna Sui)といった以前からのクライアントや、新たなメイクアップの仕事が多方面で復活しつつあります。アリシアは20年前の彼女のデビュー時に多くの仕事をしていましたが、今年のメットガラでのメイクアップをきっかけに、コンサートやアルバム、MVなども手掛けています。彼女のビューティブランドである「キーズ ソウルケア(KEYS SOULCARE)」のPRにも携わっていますね。

 他にも2020年11月に手掛けた「ヌメロ ヴェントゥーノ(Nº21)」とのコスメコラボレーションライン第2弾の提案など、多種多様なコラボプロジェクトが同時に進行中です。これまでの時代は、集中したら一つのことに深く関わり達成することが常でしたが、今や世の中の働き方が変化しているように、私自身もマルチプルな働き方にシフトしてきています。

WWD:まさにこれまでの集大成となるフェーズに向かっている。

AYAKO:そうです。ただ正直言えば、コスメを「使う側」だった私にとって初めて開発に携わることになった「アディクション」が集大成のつもりでした。結果的には全身全霊をかけて育て上げたブランドを手放すことになり、それはまさに「生み育てた子供をお嫁に出す」感覚に近いものだったと言えます。ですが、自分が本当に届けたいプロダクトを製造・PR・販売するまでの一連の流れを学んだことは今の活動にとても生きているし、これからが本当の集大成、次なるステージにつながっていると感じています。

WWD: 2020年にパンデミックが起こった時、ニューヨークは特に被害が甚大だったが、どのように過ごしていた?

AYAKO:ロックダウンの期間はじっくりと自分と向き合う時間でもありました。美しい夕日が眺められるハドソンリバーに面したマンハッタンのお気に入りのアトリエにこもり、「ヌメロ ヴェントゥーノ」とのコラボ商品を仕上げたり、一人きりで「アディクション」のアーカイブを一つずつ整理する作業をしたりしていました。前年に親友との突然の死別や、急性盲腸炎での緊急入院、その後8年ぶりに犬を飼い始めるといった私にとっての大きな出来事もあり、生きていくことや自分の健康と向き合うことを考えさせられる大切な時期となりましたね。また世の中のソーシャルメディアに改めてきちんと触れて、素早く時代を学ぶこと、また同時に休む時間の大切さなどを感じる良い時間でした。

WWD:また自分のブランドを作ることは考えている?

AYAKO:作りたいと考えています。とはいっても今や、ジェンダーを問わずセレブリティがプロデュースするコスメブランドが続々誕生しているので、ここで別のメイクアップブランドを立ち上げても意味はないのかなと思っています。これだけの選択肢がある中で、自分が本当に共鳴できるものでないと消費者の心も動かない時代。ある程度年を重ねていくにつれて、「何を使ったらいいかわからない」「何色を選べばいいのかわからない」なんて声も聞こえますし、YouTuber が発信するコントゥアーやベーキングメイクに対して、「Should I do that?(これ、本当にやらないといけないの?)」なんて思ってる人も実は多い。だからこそ難しいテクニック要らずで、1つのプロダクトでシンプルにプロが施したかのようなメイクができる、そんなブランド作りを考えています。

WWD:新ブランドはどんなコンセプトになる?

AYAKO:インナーケアをテーマにしたヘルシーなメイクアップブランドになると思います。外側にのせるものだけに頼らず、内側からグロウ(glow)する。本当の美しさって内から滲み出てくるものですよね。今一番注目しているのが、発酵や菌です。実は私は金属アレルギーを持っていて、パール剤を肌にのせるとかゆくなってしまうのですが、皮膚常在菌を育てることでかゆみや不快感を軽減したという研究結果もある。菌の力で肌のバリアを強くしながら、メタリックな加工物を使わずに輝きを与えられるプロダクトがあったらいいですよね。作るのはものすごく大変そうですが(笑)。世の中にはまだ見当たらないので、やってみる価値は大いにあります。

WWD: サステナブルな視点もポイントになってくる?

AYAKO:もちろん環境に配慮することは今の時代は必須。今まで捨てていたものを再利用するということでいえば、例えば豚、羊、馬などの胎盤から抽出されるプラセンタや、ダチョウの卵の抗体エキスなどの自然界にある栄養を再利用したスキンケア製品は多く出ていますが、カラーコスメに活用している製品はまだない。そういったことも取り入れながら、でもサステナブルやビーガンをうたっているからといってなにもかもが良いわけではないとも思っています。例えば化粧品をバクテリアから守ってくれる防腐剤は長期使用の観点では必要な場合もあるし、ミツバチから分泌される蜜蝋もすごく肌にいいのに配合するとそれはビーガンではなくなってしまう。時代にのったそれらしい“言葉”に惑わされず、自分のライフスタイル、信念を持って商品を選ぶことが今の消費者にとっては大切なのかもしれません。そして吟味して良い商品を選び、長く愛用することこそが素晴らしいサステナブル。化粧品は気分を大いに上げてくれる「小さなぜいたく品」ですから。

WWD: 世間の常識や当たり前に捉われず、視点を変えてみることが大事だ。

AYAKO:2009年の「アディクション」立ち上げ当時のエピソードがあるのですが、私が「究極の赤い口紅とネイルポリッシュもラインに加えたい」と伝えたら、企業側からは「今の時代、赤い口紅は日本では売れないし、セルフネイルはもはや古いですよ」と猛反対されたんです(笑)。でもその後レッドリップは大きなトレンドになり、今ではどのブランドでも販売されるほど日本人に浸透しましたよね。そして無理を押して開発したモードなカラーのネイルポリッシュはブランドのアイコンにもなったほどです。自分の信念を貫けばきっとそれは実現するし、世の中にも伝わると思います。時間はかかりますけど自分が納得のいくものを作っていきたいし、今までトライしてこなかったことにもっとチャレンジしていきたいです。

PHOTOS:REIKO YANAGI
撮影協力:Mika Bushwick

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アパレル物流トップのセンコーが廃棄ゼロを目指すEC事業を始めるワケ

 センコーグループホールディングス(HD)傘下で、ファッション物流最大手のセンコーが、アパレルの在庫ロス削減と廃棄ゼロを支援する循環型のファッション・サステナブル・プラットフォーム「ゼロブランズ(ZEROBRANs)」を構築する。子会社ゼロブランズを8月に設立し、まずは11月15日に余剰在庫品を中心に新価格で再販する社内向けのクローズドECサイト「ZEROBRANDs」をオープンする。廃棄予定品は買い取ってリメイクしたり、再資源化するなどまとめて効率的にリサイクルさせる。中古品を扱う2次流通が増える中で、物流のノウハウを生かして、余剰在庫品や返品商品などを回収・再販する「1.5次流通」とも呼べる静脈物流を確立。来年には一般向け販売や古着回収も予定する。センコー執行役員ロジスティクス営業本部副本部長であり、ゼロブランズ社長を兼任する小林治彦氏に、新事業に賭ける思いやビジネス構想を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):センコーグループHDの概要と、ファッション物流業界トップという根拠を知りたい。

小林治彦ゼロブランズ社長(以下、小林):センコークループHDは東証プライムに上場する総合物流企業だ。年間売上高は6231億円 ( 2022年3月期 )で、中核企業のセンコーに加え、東京納品代行、M&Aによりグループ入りしたアクロストランスポート(元オンワード物流)や江坂運輸(元阪急百貨店系)など、国内外にグループ161社を有している。ファッション物流の年間売上高は495億円で、小売価格換算で約1兆円分の商品を取扱っている。国内アパレルの小売市場規模は7兆5000億円前後と推計されるが、物流費は概ね5%と言われているので、金額ベースで日本のファッション商材の13%ぐらいを扱っている計算になる。

WWD:ファッション系の主な取引先は?

小林:百貨店やショッピングモール、路面店、ECなどの販売網を持つ大手アパレルやセレクトショップ、ラグジュアリーブランド、インポートブランド、そしてスポーツブランドなどを物流面で支えさせていただいている。それらの企業の倉庫や商業施設、店舗に常時配送をしている状態で、帰りの便に載せる静脈物流を活用することや、データ連携をすることで、環境負荷を低減して効率的に循環型事業ができることになる。

WWD:センコーのファッション物流サービスの特徴とは?

小林:ファッションの生産物流から販売物流まで、一貫物流サービスを提供している点だ。「海外生産地からのフォワーディングサービス」「ファッションロジスティクスセンターの運営」「商品の集荷・全国店舗への配送」などを提供している。特に「ファッションロジスティクスセンターの運営」では、商品やハンガーの保管、繊維製品品質管理士(TES)や衣料管理士たちによる商品の検品、補修、洗濯タグの発行・取付、店舗納品のための流通加工、たとえば値札の発行・取付なども行っている。EC出荷の梱包・ささげ・コールセンター等のECフルフィルメントサービスや、「ゼロブランズ」にもつながるが、静脈物流として店舗やECの返品、社員セールや催事への出荷なども手がけている。またWMS(倉庫管理システム)についてパッケージソフトを使うところが多いが、我々はいろいろな経験を生かしてセンコーグループ独自のファッションクラウドWMSを構築して共通利用しているのも特徴だ。

WWD:「ゼロブランズ」では物流×サステナビリティによる新たな循環型事業を展開するというが、センコーではこれまでどのようなサステナブル物流に取り組んできたのか?

小林:3つ挙げるとしたら、1つ目はEVトラック(電子トラック)による配送で、2019年7月に「ルイ・ヴィトン」の都内配送を開始して以来、ラグジュアリーブランドを中心に取り組みが広がっている。2つ目はオンワードHDと三陽商会と共同して、洋服を包装しているビニール袋を回収してプラスチック容器にリサイクルするなど、資源循環を推進している。参画企業が増えつつある。3つ目は循環型経済の構築を支援する静脈物流サービスの提供だ。三菱商事によるレンタル商品・EC商品の返却・返品サービス「スマリ(SMARI)」の物流業務を昨年11月から開始。ローソンへの通常配送車両が「スマリボックス」から回収した返品・返却品を帰りに載せて運んで物流センターに集約し、各EC事業者に配送する。既存物流網を活用することで物流コストの抑制と、低・脱炭素につながるグリーン物流化を図っている。

WWD:新会社ゼロブランズに込めた思いとは?

小林:新会社ゼロブランズの社名の“ゼロ”は、廃棄ゼロの実現、ゼロからのスタート、また循環という意味を持つサーキュラーの輪を表しており、“ブランズ”には信頼ある、価値ある商品・企業という意味を込めた。すでにわれわれは生産地から日本の物流倉庫、さらに店舗網をカバーする輸送網を世界規模、全国規模で構築し、日本国内のファッション物流の約10~15%を担う1次流通の基幹ハブとなっている。これまで培ってきたプラットフォームやネットワーク、人材、財力、中立性、信用力を生かして、主旨に賛同いただいた企業との協働で、商品廃棄ゼロの循環型のファッション・サステナブル・プラットフォームを構築する。「シン物流」とも言える「1.5次流通」を実現し、日本のファッション産業全体のサステナビリティ推進を目指したい。物流会社なのに、なるべく動かさない、Don’t Moveの精神で、服の状態でトコトン売り切り、全量循環させていく。ECサイトに加え、サステナブル関連のニュースなどを集めたオウンドメディアから情報発信も行っていく。

WWD:新たにファッション・サステナブル・プラットフォームを創るというが、そのきっかけと狙いは?

小林:自社の倉庫で大切な商品をお預かりしたり運んだりしたりする中で、たびたび商品が廃棄されるシーンを見て、ずっともったいないという声が挙がっていた。サステナビリティのニーズの高まりはもちろんのこと、コロナ禍や原材料や物流費などのコスト上昇などで、在庫の適正化に取り組む企業も増えているが、セールやアウトレットを行っても残ってしまう商品はどうしても発生する。また、ECが台頭する中で返品が増え、滞留してしまって売り時を逃してしまうものもある。そんな中で、余剰在庫費や不良在庫、返品商品などを集めて新価格で販売するECを作って、極力モノを動かさずにデータをつないでユーザーに販売することができれば、CO2排出も削減でき、取引先の方々の課題解決にもつなげられると考えた。

 洋服として生まれてきた以上はそのまま販売するのが一番のサステナブルだと思っている。なるべくもとの形のまま販売したい。ただし、店頭で販売したり、店舗やECで販売して返品された際に、キズや汚れ、焼けなどが発生して、そのままでは売れない不良品はどうしても発生してしまうもの。それをわれわれが買い取って、回収して、すでに機能を有している品質チェックや修理、リメイク・リフォーメーションを施して、再び販売できる状況に生き返らせることができる。

 どうしても修復不可能なものは、リサイクル会社とネットワークを構築し、まとめてリサイクルしていく。個別ではかさみがちな費用の負担軽減や、量が足りなくてリサイクルできないという状況を解決して、循環型を推進し、CO2削減にも寄与させたい。

WWD:11月15日にスタートするECサイト「ZEROBRANDs」の詳細は?

小林:スタート時には、有名セレクトショップや大手アパレルなど5社・21ブランドに協力いただき、1000~1500アイテムを販売していく。平均の元値は2万円で、質の高さも特徴だ。まずはセンコーグループ161社のグループの社員に向けてクローズドサイトで販売する。これだけで約10万人いるので、廃棄ゼロに向けた購買力にも期待したいし、UI/UXなども検証し改善していきたい。クローズドサイトの中でも、社員だけが限定して買えるものと、パートやアルバイトで働いてくださってる方々まで購入できるものなど、閲覧、購入ができる範囲を各企業と各々設定したり、購入者には登録時に誓約書へのチェックを求め、ネームバリューやブランド価値を守っていく。どれを買っても廃棄から服を救うサステナブルな行動につながるし、今まで定価やセールでも手が出なかったブランドのアイテムを購入して身に着けることで、そのブランドや商品の良さに気付き、ファンになるきっかけにもしていきたい。来年9月には一般向け販売を開始する予定だ。その際にも、クローズドで販売したり、その取引先の社員や関係者に限定したファミリーセールサイト的な販売にするなど、公開範囲(購入可能対象者)を自由に設定できるオプションを設けていく。

WWD:取引先からの調達条件は?

小林:データ連携して委託販売していただくケースや、買い取らせていただくケース、そのままの形状で販売するケースやネームタグを外すケースなどいろいろ選んでいただける。テキスタイルやB品、不良品などについては無料で回収することも。今まで廃棄にかかっていた費用の削減と環境負荷の削減とを。とくに商談を通じてわかったのが、外資系ブランドからもニーズが高いということだ。ラグジュアリーブランドやライセンスブランドなどでは、本国のアプルーバルが必要になるので交渉に時間がかかるが、ブランドを毀損せず、しかも日本のローカル内で消化・解決することが求められる中で、今回の「ZEROBRANDs」のECサイトや循環型モデルなどに高い関心や期待を寄せていただいていると感じている。

WWD:リメイク・リフォーメーションや、リサイクルの部分の構想は?

小林:社内にいる繊維製品品質管理士(TES)の資格保有者や服飾系専門学校卒業生などでリメイク・リフォーメーションを行ったり、クリエイターの方々と協業することも構想中だ。ブランドと協力してテキスタイルなどを専門学校に寄付することも検討していく。リサイクル分野ではBPラボや「パネコ」を手がけるワークスタジオなど外部と連携していく。カシミヤやウールの再生素材化や、什器やボード化などから着手し、再資源化を図り、単純廃棄をゼロにしていく。環境やサステナブルに対して同じ思いや技術を持つ企業と手を組んでいきたい。

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大人ニキビの予防方法を皮膚科専門医が指南 肌トラブルのおすすめアイテム4選も【WWDJAPAN ビューティお悩み相談室Vol.2】

 連載企画「WWDJAPAN ビューティ」お悩み相談室」では、SNSのアンケート機能を用いて「WWDJAPAN」フォロワーに現在のビューティに関する悩みをヒアリング。読者のリアルな疑問や悩みをビューティストたちに解決してもらいます。2回目は、何度も繰り返すしつこい“大人ニキビ”について。相澤皮フ科クリニックの相澤浩院長に、大人ニキビの原因や対策、治療法について話を聞いた。

――大人ニキビと思春期ニキビの違いはありますか?

相澤浩・相澤皮フ科クリニック院長(以下、相澤):ニキビの種類は「大人ニキビ」と「思春期ニキビ」に大きく分かれます。個人差はありますが、大人ニキビは20歳以上(欧米では25歳以上)で発症するニキビ、思春期ニキビは9~10歳くらいから発症するニキビを指します。また、両方とも発症原因も異なり、大人ニキビは精神的ストレスによって男性ホルモンが増加し毛穴詰まりが起こります。一方、思春期ニキビは女性ホルモンや男性ホルモンにより皮脂が増えて毛穴が詰まり、ニキビになります。発症する部位も異なり、大人ニキビは皮脂が少ないUゾーン(フェイスライン)に表れる人が多く、思春期ニキビは皮脂の多いTゾーン(おでこ~鼻)が中心です。原因が全く異なるので、思春期ニキビができやすい人は大人ニキビもできやすいということはありません。

――大人ニキビの男女比は?

相澤:男性ホルモンの増加が関係しているため、大人ニキビに悩むのは女性が圧倒的に多いです。以前は当院に来院する95%は女性でしたね。ただ、近年は睡眠不足やストレスの増加により男性の来院も増えて全体の30%ほどを占めています。髭脱毛など男性の美容意識向上から、大人ニキビ診療へのハードルが低くなっていることも影響していますね。余談ですが、思春期ニキビ治療のために母親が高校生の息子を連れて来院するケースも増えています。ニキビ跡が残ると、就職時の面接で不利になるのではないかなど気がかりだそうです。

――大人ニキビの一般的な治療法は?

相澤:オーソドックスな治療法は、以前は低用量ピルを中心として抗男性ホルモン治療を行っていました。あとは漢方薬、血圧を下げる効果のあるスピロラクトン錠、弱い女性ホルモンの薬を使用するなど。美容外科によってはビタミンAの一種であるイソトレチノインやビタミンA誘導体の経口薬・アキュテインを処方される場合もありますが、重大な健康被害のおそれがあるため、おすすめはできません。大人ニキビは体に負担をかけずに治療できることが分かってきたため、当院では漢方薬にプラスして男性ホルモン受容体拮抗作用を持つスピロノラクトンなど擬似ホルモン療法を組み合わせた、体に優しい治療を行っています。効果はゆっくりではありますが、体質改善も促せます。

保湿成分の入っているスキンケアが大事

――忙しくてクリニックに行けないときの応急処置はありますか?

相澤:大事なのは日々のスキンケアです。大人ニキビのケアで心掛けてほしいのは保湿成分の入っているスキンケアを使うこと。通常はしっとり感のある保湿系ローションに乳液、クリームなどの合わせ使いで良いでしょう。「クリームなどの油分はニキビに良くないのでは」と思っている人もいますが、それは誤解。ぜひ積極的に組み合わせてください。 バーム状の保湿剤は水分蒸発を防ぐという目的で最後に使用するのは良いですが、水をほぼ含まないので保湿目的には向かないと思います。赤ニキビやニキビ痕の色素沈着にはビタミンC誘導体やナイアシンアミドのスキンケアが有効です。ただし、ビタミンC誘導体やナイアシンアミドは一時的な乾燥を引き起こすためTゾーンにはしっかりと、Uゾーンには薄く塗布して上から乳液やクリームで蓋をしてあげるといいですね。また、スキンケアを一切しない「肌断食」という言葉もありますが、それは逆効果です。フェイスパックは、剥がすタイプのものは肌に刺激を与えるので避けてください。ニキビパッチは密閉療法で肌の水分を逃さない役割があり、おすすめします。「ニキビパッチはニキビ菌が繁殖する」というイメージを持たれている人もいるようですが、そのようなことはありません。

――大人ニキビの予防法、また避けてほしいケアや生活習慣を教えてください。

相澤:大人ニキビの一番の原因は「乾燥」です。保湿ケアをしっかりと行うことが一番の予防法です。乾燥の原因として男性ホルモンが増加し、角層を乾燥させることが挙げられます。 ストレスを溜めると男性ホルモンも増加しますので、睡眠やお風呂でのリラックスタイムを大切にしましょう。 まずは1時間でも多く睡眠をとること。質の良い睡眠をとることは成長ホルモンが出て肌の修復力を高めます。食事に関しては、甘い物や炭水化物をそこまで気にする必要はなく、個人差はありますが、食べ過ぎなければ影響はほとんどありません。ただし、遅い時間の夕食やおやつはおすすめしません。 血糖が上昇すると、血糖を下げるためインスリンが分泌されます。インスリンは男性ホルモン作用を強くする働きがあるためニキビができてしまいます。 また、インスリン分泌は夜遅くなると多くなり、高血糖になると皮膚のバリア機能を上げる成長ホルモン分泌を減らします。

――大人ニキビができたときは早めにクリニックで受診するのが望ましいですね。

相澤:その通りです。ただし、日本皮膚科学会から認定された皮膚科専門医を受診するのがおすすめです。よく目にする皮膚科や皮膚専門などは、皮膚科専門の先生ではなく、例えば内科の先生が皮膚科研修を受けないで標榜されているケースがあります。大人ニキビと一言でいっても、人によって赤みの色の違いや範囲、ぶつぶつがある人とない人、大きさの違い、跡だけが残る人などさまざまです。私は1987年からニキビ治療一本で約50万人のデータを見ていますが、治療は単純じゃないと日々実感しています。大人ニキビにも数種類あることが分かってきたため、顔面のパーツごとにフォーカスした治療を日々進行中です。

「WWDJAPAN」編集部がおすすめするスキンケア

「アクネスラボ」の“ベーシックライン”

 弱酸性のアミノ酸系洗浄成分を使用している、大人ニキビに対応したスキンケアシリーズ。いずれも合成香料・着色料・鉱物油・パラベン不使用で、皮脂のバランスを整えて繰り返すニキビやトラブル肌をケアして健やかに導く。集中ケアアイテムとしてスポッツクリームや夜用ポイントパッチもラインアップする。

「エトヴォス」の“バランシングVCクリアスポッツ”

 石油系界面活性剤、鉱物油、シリコン、タール系色素、合成香料、パラベン不使用のジェル状美容液。アゼライン酸誘導体や保湿系ビタミンCなどを配合し、保湿しながらキメの整った肌に導く。オイルフリーで透明ジェルのため朝晩のスキンケアはもちろん、メイクの上からも使用できる。

「ノブ」の“モイスチュアクリーム”

 ニキビ肌をやさしくケアするスキンケアシリーズ“ACシリーズ”の保湿クリーム。保湿成分を配合し、乾燥を防いで潤いのバランスを整える。クレンジングジェル、ウォッシングフォーム、フェイスローション、モイスチュアジェルもそろえ、シリーズ全品が無香料、無着色、低刺激性の仕上がり。

「ファンケル」の“アクネケアライン”

 肌の不調や繰り返しできる大人ニキビに関与している“ゆさぶり因子”に着目したスキンケアライン。全アイテムに有効成分として「甘草成分誘導体」を配合したほか、“エッセンス”にはトラネキサム酸を含んで肌荒れや肌のゆらぎを防いで大人ニキビを予防する。また、セージエキスやウメ果実エキス保湿成分が健やかな肌に導く。

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古川優香や宇野実彩子監修の深度のあるD2Cコスメブランド開発で相次ぎヒットを飛ばすダイレクトテック “売れる”D2Cコスメブランドの立ち上げ支援を開始した狙いとは?

 D2C(Direct to Consumer)事業を得意とするダイレクトテックは、モデルやアーティスト、動画クリエーターなどを起用したD2Cコスメブランドなどを相次いで立ち上げ、ヒットを飛ばしている。7月には成功実績をもとにした独自メソッドを提供し“売れる”D2Cコスメブランドの立ち上げを支援するサービス「ディーツーシーギャラリー(D2C GALLERY)」を開始。同ギャラリーを活用したブランド開発も進み、同社の動向に注目が集まっている。堀ノ内丈史ダイレクトテック取締役にD2Cブランドの可能性を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):D2CやP2C(Person to Consumer)のコスメブランドがZ世代を中心に話題となり実績を積んでいる。

堀ノ内丈史ダイレクトテック取締役(以下、堀ノ内):当社はD2C事業を中心に手掛ける企業として2018年11月に立ち上がりました。最初に手掛けたのはファッションモデルの古川優香さんが監修したカラーコスメブランド「リカフロッシュ(RICAFROSH)」です。古川さんはコスメブランドを手掛けたいと協業先を探していて、当社を含め4社によるコンペティションがありました。当社はベクトルの子会社であるため、PR業務も含め対応できるとして選ばれました。

WWD:「リカフロッシュ」は初年度から好調だったがその要因は。

堀ノ内:他社でも同様のビジネスモデルはありますが、一過性で終わるケースが少なくありません。古川さんは最初からプロダクトへの熱量が高かったんです。“落ちにくい”をキーワードに、リップの開発に1年以上かかりました。ティント効果を強めると唇が荒れてしまうのでそのバランスに苦労しましたね。「リカフロッシュ」は20年2月にデビューし、第1弾アイテムの“ジューシーリブティント”は塗った瞬間の美しさが持続し、得意とするニュアンスカラーが絶妙でマスクにも色移りしにくいと高い支持を得ました。製品力の高さに加え、古川さんはフォロワーとの相互コミュニケーションも大切にするので、深度のあるブランド体験を提供できたことも奏功しました。初回の生産量は4色で1万を超える個数でしたが、EC、店舗とも3カ月後には品薄に。生産が追いつかないうれしい悲鳴をあげました。初年度は想定の5倍の売り上げを達成。2年目も順調に推移しています。ブランドを代表する製品になったリップティントのほか、マルチパレットやマスカラ、グリッターなどアイテムを拡大し、シリーズ累計販売数120万個(22年9月時点)を突破しました。

WWD:2番目のブランドはアパレルで、その後コスメブランドが続いた。それぞれの狙いと反応は。

堀ノ内:人気ユーチューバーのかすがプロデュースしたアパレルブランド「ボカニー(BOKA NII)」を21年3月に立ち上げました。1万円以内で購入できるレトロカジュアルなウエアをそろえ、初日に6000万円以上売り上げました。ユーチューバープロデュースのアパレルブランドの初日売り上げ記録も更新しました。今年1月にはデザインコンサルティングファームのアナイスカンパニーとタッグを組み、AAA(トリプル・エー)メンバーの宇野実彩子がプロデュースするコスメブランド「ユーチュー(U/CHOO)」をスタート。彼女のマネージャーと親交があり、コスメをプロデュースしたいと本人が希望していると聞きブランド作りが始まりました。彼女はアーティストなので、ライブ中でも“超絶落ちにくい”をコンセプトにアイシャドウやリップティントなどを展開。目元用のグリッターも用意し、初月に15万個を販売。5カ月で40万個を突破しました。スタートは公式ECサイトで販売しましたが、多くの人に手に取ってほしいとバラエティーショップやドラッグストアなど販売網を広げ、現在は店舗売り上げが70%以上を占めています。

発売初日に1万個が完売

WWD:1月には美容系ユーチューバーのマリリンによる「ヴィム ビューティー(VIM BEAUTY)」も発売した。自身のユーチューブでもハウツー動画などを配信し大きな反響を得た。

堀ノ内:「ヴィム ビューティー」は当社初のベースメイクアイテムでした。クッションファンデーションとコンシーラーがセットになった2in1の“エフェクト ライク フィニッシュ ファンデーション キット”は公式ECサイトのみで販売し、初回生産分の1万個が即日完売しました。「高いキープ力・プロ級の仕上がり・使いやすさ」にこだわり、そばかすやほくろ、肌トラブルをカバーするためこれまでたくさんのファンデーションを試してきたマリリンが、誰でも簡単に使える、崩れにくいクッションファンデーションを作りたいという思いから開発したものでした。

WWD:手掛ける全ブランドが想定を上回る実績を残している。

堀ノ内:D2Cブランドを手掛ける中で大切なのは、誰に届けるかということです。ただ単に話題のインフルエンサーと組めばいいわけではなく、その人が発信する上で最適なアイテムであるか、価格設定は適正かなどさまざな検証が必要です。インフルエンサーやクリエーターはブランド作りのプロではないため、ブランディングやコミュニケーション設計をサポートするのが重要。コンシューマーから納得感が得られることが大切なんです。愛され続けるブランドを育成する指標として、当社では年間購入回数のKPIを立てています。リピート率が重要で「リカフロッシュ」はEC売り上げの70%がリピート客によるものです。

D2Cのプラットフォームを構築

WWD:こうした成功事例をものに、D2Cコスメブランドの立ち上げを支援するサービス「ディーツーシーギャラリー」が始まっている。同サービスは自らライバル会社を作り出すことになるのでは?

堀之内:当社にはこれまでの成功や失敗のナレッジや事例が数多くあります。コンサルタントするのではなくロジックなども伝えていて、非常に問い合わせが多いですね。現在、2つのコスメブランドのプロジェクトが進んでいます。D2CやP2C市場は注目を集めていますが、市場規模は小さい。市場全体を拡大するには1社だけでは難しいため、参入企業を増やす狙いもあります。

WWD:今後さらに成長するため必要なことは。

堀之内:D2Cブランドからコンシューマーブランドへのスイッチングが課題です。それには販路の拡大は必須です。また、インフルエンサーなどがプロデュースするブランドは、その人が年齢を重ねると、当初のコンセプトに見合う商品作りが難しくなります。ブランドも成長し息の長いブランド作りをともに手掛ける必要がありますね。今期(23年2月期)の売上高は前年の3倍の20億円を見込んでいます。2年後には取り扱いブランドを8に、「ディーツーシーギャラリー」で25ブランド程度を扱い、売上高50億円を目指します。将来的にはD2C、P2Cブランドのプラットフォームを構築し、世界に通用するブランドを育成して日本のクリエーターで経済圏を広げたいですね。

PHOTOS:SHUHEI SHINE

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伊発ジュエラー「ブチェラッティ」3代目が来日 代々引き継がれるルネサンスのクラフツマンシップによる唯一無二のジュエリーを提案

 イタリア発ジュエラー「ブチェラッティ(BUCCELLATI)」の3代目、アンドレア・ブチェラッティ(Andrea Buccellati)=ブチェラッティ名誉会長兼クリエイティブ・ディレクターが、ハイジュエリー発表のために来日した。コロナが落ち着いて、久々の来日になった。ブチェラッティ会長に、ブランドの強みや戦略などについて聞いた。

WWD:今回の来日の目的は?

アンドレア・ブチェラッティ=ブチェラッティ名誉会長兼クリエイティブ・ディレクター(以下、ブチェラッティ):毎年1回は来日していたが、コロナ禍でしばらく来日できなかった。今回は、フランス・パリ・オートクチュールで発表した新作ハイジュエリー“ジャルディーノ”の発表のために来日した。

WWD:「ブチェラッティ」が他のジュエラーと違う点は?

ブチェラッティ:家族経営で、祖父、父、私と3代に渡り、スタイル、デザイン、クラフツマンシップにおいてユニークであることを守り続けてきた。だから、ジュエリーを見ると「ブチェラッティ」だとすぐわかるはずだ。クラフツマンシップについては、特に、ルネサンス時代からのエングレービング技術を駆使したジュエリーを提供している。それは他のジュエラーとは一線を画する技術だ。自然やルネサンスなど、歴史や文化とつながりの深いスタイルというのもブランドの特徴だ。また、独特のテイストは、ファッショントレンドに左右することなく、タイムレスで何十年先でも着用できる。

WWD:コロナ禍ではどのような戦略をとったか?

ブチェラッティ:コロナ禍1年目は売り上げが落ちたが、2年目は売り上げがアップした。その理由は、ECに力を入れたことと商品力を強めたこと。ロックダウンが終了して、消費者による外出して買い物したいという気持ちが強まった。

エントリーからハイジュエリーまで強化

WWD:世界何ヵ国で販売しているか?好調な市場は?

ブチェラッティ:14〜15ヵ国で販売している。好調な市場は、中国、アメリカ、ヨーロッパだ。アジア全体が強くなってきている。

WWD:主要顧客の年齢層やタイプは?

ブチェラッティ:30〜50代が中心で、違いがわかるエレガントな女性が多い。20代の若い世代にも、着けやすいジュエリーが人気だ。

WWD:日本市場の戦略は?

ブチェラッティ:日本では約45年間販売している。現在、約5店舗あるが、店舗を拡大したり増やしたりしたい。また、日本人が好むデザインを提供する。

WWD:どのように他のジュエラーと戦っていくか?

ブチェラッティ:培ってきたスタイルやノウハウ、クラフツマンシップを大切にしていくことで差別化を図る。「ブチェラッティ」の唯一無二のテイストを理解してくれる消費者が増えつつある。そういう人々に着けてほしい。

WWD:今後、強化したいカテゴリーは?

ブチェラッティ:全てのカテゴリーを強化する。ハイジュエリーの強化も図りたいし、将来の顧客である若い人向けのラインも増やしていきたい。

WWD:メゾンとして取り組んでいるサステナビリティは?

ブチェラッティ:コンパニー フィナンシエール リシュモンの傘下なので、グループと足並みをそろえ、素材やもの作りの過程、二酸化炭素削減などについて関連機関の認証をとるようにしている。

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「マーティン ローズ」と「ヤン ヤン ヴァン エシュ」が「ピッティ」でショー開催 2023年1月

 イタリア・フィレンツェで2023年1月10〜13日に開催するメンズ最大の見本市「第103回ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO以下、ピッティ)」に、英国メンズブランド「マーティン ローズ(MARTINE ROSE)」がゲストデザイナーで、アントワープ発の「ヤン ヤン ヴァン エシュ(JAN JAN VAN ESSCHE)」がデザイナープロジェクトで参加する。「マーティン ローズ」は2023-24年秋冬コレクションをイベント形式で、「ヤン ヤン ヴァン エシュ」は新作コレクションを初のランウエイショーで1月11日に発表する。

 「マーティン ローズ」のファウンダー兼クリエイティブ・ディレクターのマーティン・ローズは、「『ピッティ』はメンズファッションイベントの先駆的存在で、私が尊敬するデザイナーの多くがその一翼を担ってきました。新作コレクションを携えて大好きなフィレンツェに行けることにスタッフ一同感激しています」とコメントした。

 デザイナーのヤン=ヤン・ヴァン・エシュは「最初のショーをフィレンツェの独特な雰囲気の中で開催できるなんて、私にとっては夢見ることしかできなかった特別なことです。プレゼンテーション制作においても非常にサポートされていると感じており、この機会を忘れられない瞬間にするために、一丸となって意欲的に取り組んでいます」と喜びを語った。

 ラポ・チャンキ (Lapo Cianchi)=ピッティ コミュニケーション&イベントディレクターは、「ヤン=ヤン・ヴァン・エシュは控えめながら現代のメンズファッションを象徴する存在であり、おそらく彼は、性差の主張が不要であることを最初に考え、それを裏付け、あるいはそれを超越したと判断するような人なのではないでしょうか。(中略)彼の人柄や、コレクションの内容と表現方法の適正なバランスを保つことに注力していることを知るにつれ、彼が私たちの招待を受けてくれるかどうか、確信は持てませんでした。しかし彼は快諾してくれました。われわれはこのことを非常にうれしく思っており、彼への関心度がさらに高まることを期待しています」と語った。

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「ベアミネラル」新社長が語るブランド復調へのプラン 「やるべきことを積み上げれば来年度40%増は可能」

 元レブロン社長の菅野沙織氏は、2月に同職を退職後、8月3日付でクリーンビューティブランド「ベアミネラル(BAREMINEARALS)」を輸入販売するベアエッセンシャルの社長兼オルヴェオングローバル(Orveon Gloval)日本地区担当ゼネラル・マネージャーに就いた。「ベアミネラル」のほか、「ローラ メルシエ(LAURA MERCIER)」「バクサム(BUXOM)」のブランド統括も務める。

 3ブランドは、前保有者の資生堂が不採算事業の整理の一環で、21年に米国の投資ファンドのアドベント・インターナショナル(ADVENT INTERNATIONAL)」に売却。同ファンドは3ブランドを擁する新会社、オルヴェオンを設立していた。菅野新社長に、就任までの経緯と今後の戦略を聞いた。

WWD:前職のレブロンを辞めてベアエッセンシャル社長に就任するまでの経緯は?

菅野沙織ベアエッセンシャル社長兼オルヴェオン グローバル日本地区担当ゼネラル・マネージャー(以下、菅野):レブロンで社長を10年以上勤めて、コロナ前までは売り上げも好調でリップクリームをヒットさせたり “V字回復”と言っていただくことも多かったり、いろいろな努力の結果が出てやりきった感がありました。レブロンはマスマーケットで展開していましたが、その前は「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」でプレステージやエステティックにも携わり、幅広いチャネルを経験して全部やりきったな、と。年齢も考えてそろそろ引退しようと決めたのが昨年6月で、諸々の調整がついて2月末に社長の職を離れました。

WWD:引退後に何かプランが?

菅野:実は2年前に結婚して、夫とお互いが元気なうちに旅行したり、たまには料理をしてあげたり、そろそろスローライフを送りたいと思って。レブロンの社長を辞めた後も上級顧問として週に何度かはお手伝いをしていて、そんな矢先にオルヴェオンから声が掛かりました。引退と決めて、若い頃からの上司がたくさんいますからお礼のメッセージを送ったら、オルヴェオンのナンバー2のポジションにいる昔の上司から「日本を強化するからちょっと待て」と言われて。そこから「ベアミネラル」や「ローラメルシエ」の店舗を見て回りました。

WWD:最終的にベアエッセンシャルの社長を引き受けた決め手は?

菅野:2017年から輸入化粧品協会の理事長を務めているのですが、クリーンビューティは化粧品業界としてこれから考えていかないといけない方向性だと感じていたところに届いた話だったので、「これは使命かしら」と思って。そこから何回かオルヴェオンの面接を受けて非常に話が合ったので、化粧品人生の最後にやるべきことと思って決めました。「ベアミネラル」は何十年も前からミネラルを使った地球と肌に優しい化粧品、クリーンビューティを発信してきましたが、コロナをきっかけに消費者の意識が地球や体に安全なものに向かっている今がやっとスタートポイントではないかと。新しいカテゴリーをつくりたいというわけではなく、「ベアミネラル」が元々持っている考え方や理念を広めたいと思ったんです。きっちりやれば大きな波になるし、それは地球にとっても人にとってもいいことなので、ささやかながら尽力したいと。

いかに早くブランド認知度を改善するかが使命

WWD:ベアエッセンシャルでのご自身のミッションについてどう考えているか?

菅野:「ベアミネラル」は、かつてQVCで販売していた頃はテレビの力もあって高い認知度がありました。最近は新製品の開発が少なく、いいアイデアも寝かされていた面があります。それを掘り起こすのが私の仕事なので、本国と共に新製品の開発や投資も考えていくし、ブランディングももう一度考え直そうと。「ベアミネラル」は40カ国近くで展開していますが、日本はアジアの重要マーケットで、もう一度マーケットシェアを上げるのが最大のミッション。それからブランドの素晴らしい製品や理念を伝え、お客さまとのタッチポイントを増やし、認知度を取り戻して売り上げを上げることです。「ローラメルシエ」に関しては、全体的な売り上げの管理や承認事項は当社の管轄ですが、マーケティングや営業活動などはディストリビューター契約を結んでいる資生堂が行います。

WWD:改めて「ベアミネラル」の特徴は?

菅野:クリーンビューティの元祖とも言えるサンフランシスコ発のミネラルコスメブランドで、日本では売り上げの50%弱をファンデーションが占めています。次いでスキンケアが約25%、カラーコスメが約15%、残りがブラシなどのツール。90%以上の製品がビーガンである点も特徴です。ミネラルで肌に優しいだけでなく、パッケージにおける環境配慮、残布を使ってポーチを作ったり、寄付をしたり、SDGsが重要視されるずっと前からさまざまな取り組みをしてきました。ですが、売っているものはビューティなので、発色の良さやアーティストがおすすめできる仕上がりの良さ、感触やテクスチャーの良さ、メイクアップとしての美しさが最大の特徴です。

WWD:ブランディングを練り直しているとの話があったが、新たなターゲットは?

菅野:クリーンビューティに共感する人はもちろんですが、アクティブな人という顧客像が見えてきています。ビーガンやナチュラル、オーガニックって地味にしてしまいがちなんですが、そういうマインドの人ってヨガやピラティスをしたり健康に気をつけて食べ物に気を使ったり、すごくおしゃれなウェアを着て沖縄にリトリートに行ったりしますよね。そうした素敵なライフスタイルの中でメイクを楽しむ人がターゲットなんじゃないかと。肌に優しい製品だから「敏感肌の人のための」とか考えてしまいがちですが、香りがないから男性も使いやすいとか肌に優しいから子どもも使えるとか、ターゲットは広がるんですよね。ヘルシーにアクティブに暮らす人全てがターゲットだと思うので、狭いアプローチはもうしません。

本国チームにカラーコスメの開発でリクエスト

WWD:現状、ファンデーションの売り上げシェアが最も高いとのことだが、商品構成は今後変えるか?

菅野:本国ではファンデーションが中心になっていますが、日本で直近で売れているのはハイライターやチークです。こうした商品は遊び心がありますよね。ファンデーションだけではどうしても地味。ファンデーションと色ものの役割をきっちり考えてほしいと本国に伝えています。新客を獲得できる面白い商品を作ってほしいという話もしました。商品がただあるだけではダメで、使いたい理由をはっきりさせなければいけない。色がいいのか、質がいいのか。色ものに関してはストーリーをきちんと作ってほしいというリクエストを開発チームにしています。そうした商品をバスらせるのは私たちの仕事です。

WWD:チャネル別の売り上げシェアは?

菅野:「ベアミネラル」は自社ECがとても強く、売り上げの45%程度を占めています。55%が実店舗で、百貨店が13店、高級セルフ・セミセルフが65店です。ここ数カ月は新製品が当たっているのもあり、百貨店の売り上げが伸びてきています。

WWD:ECが圧倒的に強い中、新規出店は考えているか?

菅野:ブランドの認知度をいかに早く改善するかを考えたとき、ある程度の投資や取り組みが必要です。百貨店に関しては店舗数を広げるのは簡単ではないため、店舗ごとの売り上げをいかに早く上げるかに集中しようと思っています。それは販売や接客力という話ではなく、マーケティングやPRがブランドの認知度を上げていかに新客を店頭に誘引できるかになります。来年は新製品も増えるのでそこに注力します。高級セルフ・セミセルフショップに関しても既存店の売り上げを上げるのがまず1番にやること。販売員が常駐できない分、ディスプレーだけで魅力を伝えなくてはいけません。新規出店でいうと、来年はまず大型都市のトラフィックが多いところを狙って最大10店舗を目指して増やしていきたいと考えています。

WWD:ECについて、自社サイト以外の戦略は?

菅野:一部百貨店のECや「アットコスメショッピング(@COSME SHOPPING)」などもありますが、ほぼ自社サイトの売り上げというのが現状です。先日、アマゾンとアイスタイルの協業の話もありましたが、アマゾンもZOZOもビューティ志向になっているので、そうした大型の適切なプラトフォームにきちっと入って、ブランドの認知度を上げていくことが非常に重要だと考えています。バナー広告なども目にする機会が増える仕組みにしないとスピード感を持って認知度を上げられないので、それは来年実行します。

WWD:来年度の売り上げ目標は?

菅野:今年に対して40%増で考えています。ここ数年低迷気味でしたが、来年は新製品も多く、百貨店、セミセルフ、ECとそれぞれの戦略がはっきりしているので、それを積み上げたら可能だと思っています。まだまだ取り組みたいことがあるので、24年末には今年に対して2倍の売上高を目指します。

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20代女性が立ち上げた古着屋「スタジオラボ404ドットコム」 NYで培った審美眼で選ぶデッドストックと新ブランド

 「スタジオラボ404ドットコム(studiolab404.com以下、404)」は、目黒区・祐天寺の住宅街にひっそりとたたずむ古着と新品が並ぶスペースだ。ラインアップはデッドストック(流通在庫品)と海外の新進ブランドが中心で、トレンドをキャッチしたアイテムを扱っている。同店を立ち上げたモネ(Monet)=ディレクターに、ブランディングや古着のおすすめコーディネートを提案してもらった。

 「404」は、目黒区・祐天寺に2021年12月にオープンした。7年間にわたりニューヨークでMDとバイイングの経験を積んだモネディレクターが、帰国後に「自分の経験を生かして新しいことを始めたい」と思ったことがきっかけで、友人のグラフィックデザイナーのマリコ(Mariko)と商品企画のレイ(Lei)と共に立ち上げた。現在は店舗とオンラインストアを運営しており、ショップ名の“404”はエラーコードの意味。「『グーグル検索しても出てこない』『全貌が見えづらい』という固定概念や、価値観にとらわれないという思いを込めています。駅から離れたちょっとへんぴな立地を選んだのもその理由ですね」とモネディレクター。そんな自由な発想は、商品のラインアップにも表れている。新旧のウィメンズアイテムを混ぜた品ぞろえで、ニューヨークで買い付けてきたクオリティの高いデッドストックと海外の新進ブランドを販売している。

百貨店のようなミックス感あるセレクト

 ショップは1〜3階の3フロアで構成。1階はデッドストックの商品を中心に、シルクシャツやニット、ミリタリージャケットなどデイリーに使えるウエアをそろえる。シンプルなデザインのものは、ワッペンを付けたり、シャツの裾や袖をカットしたりして、新しい着方を提案しているという。

 2階は、「404」のテイストの一つであるユニホームのデッドストックとジュエリーがメイン。モネディレクターはもともとジュエリーのバイイングをしており、販売商品と合わせやすいチャームのネックレスやリングなども仕入れている。さらにアメリカのディストリビューターから買い付けたキャンドルやハンドソープ、カトラリーなどのホームウエアも並ぶ。百貨店のように幅広いジャンルのアイテムを1つの空間で購入できるように工夫している。

 展示会スペースを併設した3階では、「ローハン(ROUHAN)」や「ネイータ(NAEITA)」など、モネディレクターがニューヨーク時代に親交を深めてきたという若手デザイナーのブランドを扱う。「日本に販路を広げたいという彼らのために、『404』をそのプラットフォームの一つとして提供していきたい。より多くのお客さまに知ってもらえるように、今後は展示会なども積極的に行っていきたいですね」。

スタッフがおすすめするコーディネート

 「404」のインスタグラムでは、モネディレクターとグラフィックデザイナーのマリコ、商品企画のレイが販売アイテムを取り入れたコーディネートを発信している。3人の異なる体型を生かし、常に消費者目線でスタイリング提案することを心掛けているという。

 「『404』のテイストがユニホームなので、セーラートップスをセレクト。ビンテージのスカートとデッドストックのソックス、ローファーを組み合わせて、スチューデントスタイルにまとめました。華奢なアクセサリーを重ねづけして、モダンな印象にしています」

「USAのシャンブレーシャツは、トレンド感を出すために裾を切ってクロップド丈にアレンジ。『ローハン』のバギーパンツを合わせて、めりはりの効いたスタイリングにしてみました」

 「とろみのあるシアーシャツは『404』オリジナルのもの。流れるようなラインを際立たせるために、『ラングラー(WRANGLER)』のスリムなドレスジーンズを選びました。フレアなので脚長効果も狙えるんです」

■スタジオラボ404ドットコム
住所:東京都目黒区祐天寺1ー31−12 LS
営業日:月、土、日
時間:14:00〜20:00
定休日:火、水、木、金

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ウオッチ部門ディレクター、ジャン・アルノーが語る 「ルイ・ヴィトン」時計事業20年の情熱

 2022年は、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」がメゾンとして時計作りにも傾倒して、最初の本格時計コレクション“タンブール(TAMBOUR)”を発表してからちょうど20年のアニバーサリーイヤーだ。これを記念してルイ・ヴィトン渋谷メンズ店で開催された“タンブール”のエキシビションに合わせて、世界200本の限定モデル“タンブール トゥエンティ(TAMBOUR TWENTY)”の開発責任者でもあるウオッチ部門ディレクターのジャン・アルノー(Jean Arnault)が来日した。アルノー=ディレクターは、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)のベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長兼最高経営責任者(CEO)の四男。自身が初めて心引かれた時計についての思い出や、限定モデル開発の経緯、「ルイ・ヴィトン」の今後の時計事業について話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):メゾンの時計作りを率いているが、そもそも時計には興味があった?最初に心引かれた時計、時計作りに興味を持ったきっかけは?

ジャン・アルノー「ルイ・ヴィトン」ウオッチ部門ディレクター(以下、アルノー=ディレクター):心引かれた最初の時計は、ありがちな「父の時計」ではなくて、11歳の頃に父と一緒に見た時計。時計専門店で見た「ブルガリ(BVLGARI)」の“ダニエル・ロート(DANIEL ROTH)”のミニッツリピーター&オートマタモデル「イル・ジョカトーレ・ヴェネツィアーノ(ヴェネチアの勝負師)」です。

WWD:その頃の「ブルガリ」は、父親がトップを務めるLVMHの傘下になる前。加えて子どもには理解しづらい複雑機械式モデルだ。当時からこうしたハイウオッチメイキングに興味があった?

アルノー=ディレクター:「機械がどんな仕組みで『音で時刻を知らせる』『勝負師の人形の手を動かしたり、サイコロの目をランダムに変えたり、ろうそくの火をきらめかせたりできる』のだろう?」と不思議に思いました。その後、この種の時計を目にすることはありませんでしたが、こうした興味をずっと心の中に抱き続けていました。

WWD:その時は時計作りに関わるなんて思っていなかった?

アルノー=ディレクター:もちろん、まったく考えてはいませんでした。でも今は「ルイ・ヴィトン」で時計作りに関わっています。子どもの頃に「夢のよう」と思っていた時計作りに関われて、とてもうれしく思っています。

WWD:「ルイ・ヴィトン」の時計にはどんな魅力がある?

アルノー=ディレクター:逆説的な表現になりますが、歴史が20年間しかないことです。つまり時計作りにおいて、「伝統が何よりも尊重されるブランドではない」ことが最大の魅力だと考えています。だから時計作りにおいては本当にクリエイティブで冒険することができる。本当にラッキーなことだと思っています。

WWD:今回の「タンブール」誕生20周年記念モデル」“タンブール トゥエンティ”は、初めて全面的に企画・開発に関わったモデルだ。

アルノー=ディレクター:このモデルは、20年前にこの場所(ルイ・ヴィトン 表参道店)で発売したオリジナルモデルをお持ちの方や、コレクターの方に敬意を込めたものです。この製品の企画に当たって、私は20年間という時間を人間に置き換えて考えてみました。人間にとって20歳までは「学ぶ」期間。学習し、自分が必要な知識を得る期間だと思います。と同時に20歳というのは、高等教育を受けるのか?仕事をするのか?どんなキャリアを築いていくのか?を決める大きな意思決定の時期。人生のターニングポイントです。そして“タンブール”は、メゾンの時計作りの原点となった時計です。この時計の大きな節目には、どんな記念モデルがふさわしいのか?を、開発スタッフと数カ月にわたって議論を重ねました。

WWD:このモデルを節目に“タンブール”コレクションをどう進化させたい?

アルノー=ディレクター:このコレクションは、本当に目を引くデザインです。好き嫌いははっきり分かれますが、良いデザインというのはそういうもの。02年以降製品化し続けているのは素晴らしいことです。この20年間でトゥールビヨンからミニッツリピーターまで、さまざまなモデルを開発、発売できました。これから先も、さらに素晴らしい時計作りを進めるつもりです。

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次世代の感性でシカゴのストリートシーンをリードするジョー・フレッシュグッズ 「愛こそが一番のパフォーマンス」

 アメリカ・シカゴ出身のデザイナー、ジョー・フレッシュグッズ(Joe Freshgoods)は、「ニューバランス(NEW BALANCE)」とコラボレーションした新作“993”(3万9600円税込)発売に合わせて、インスタレーションを東京・日本橋浜町のティーハウス ニューバランス(T-HOUSE New Balance)で11月8日まで開催している。

 フレッシュグッズは現在36歳。26歳で自身のセレクトショップ「ファットタイガー ワークショップ(Fat Tiger Workshop)」をオープンすると、そのクールで自由度の高いマインドのセレクトとオリジナルアイテムを武器に、たちまちシカゴのストリートシーンのランドマーク的ショップへと成長させた。しかし、2021年に「別の夢を追いかける時が来た」と突然の実店舗の閉店を発表。すると翌年、「ニューバランス」の新プロジェクト“コンバセーションズ アモングスト アス(CONVERSATIONS AMONGST US、以下CAU)”のクリエイティブ・ディレクターに就任した。

 “CAU”とは、年間を通してブラックコミュニティーに敬意を表しながら、あらゆる人種間での新たな対話を促進することを目指した新プロジェクト。「ニューバランス」は、フレッシュグッズのトレンドを作り上げる次世代の感性と、アフリカン・アメリカンを中心とするコミュニティーへの影響力を信じる形で、彼を“CAU”のクリエイティブ・ディレクターに抜擢したのだ。

 インスタレーションために来日したフレッシュグッズに、基本的な経歴から「ニューバランス」との出合いやコラボ“993”、シカゴのお気に入りのレストランまでを聞いた。

「アフリカン・アメリカンは、本来の目的とは違った新たな視点を加えることが得意なんだ」

ーーまずは、ファッションシーンに足を踏み入れたきっかけを教えてください。

ジョー・フレッシュグッズ(以下、フレッシュグッズ):中学2年生の時、キャメロン(Cam'ron、マンハッタン・ハーレム出身のラッパー)がピンク色の服を着ているのを見て憧れたことがすごく印象に残っているんだ。彼を見てから俺もピンク色のアイテムを着たいと思ったんだけど、その当時は“ピンクは男性が着る色ではない”って風潮があったから、メンズのアイテムでピンクのものはなかなか無くてね。自分が好きなピンクのアイテムを着たいという“色”への強い思いが、俺とファッションとの最初の関係だった。それに、俺が一番得意なのは何かをクリエイトすることで、13~14歳からTシャツを作ったし、創作という行為が好きだった。それがどんどんうまくなって、今に至った感じだね。

ーー日本では、ブランドを立ち上げたり、自分のショップをオープンしたりするために専門学校や大学へ通う人が多いです。

フレッシュグッズ:何かを始めるとき、大学や専門学校に通って勉強する人たちのことはとても尊敬するけども、俺は金銭的に余裕がなかったから行っていないんだ。“Real life is my college”で、日々の生活が教育の場だったよ。

ーー自身のセレクトショップ「ファットタイガー ワークショップ」をオープンするまでを教えてください。

フレッシュグッズ:「ファットタイガー ワークショップ」の前に、アフリカン・アメリカンがオーナーを務めるシカゴのショップ「リーダーズ 1354(Leaders 1354)」で働いていた。客としてドアを初めて開けた時、俺と同じ肌の色をした人たちがショップスタッフとしてクールなアイテムを売っている光景が広がっていて、すぐに「働きたい!」と思ったんだ。働くうちに、同じようにセレクトショップをオープンしたり、ブランドを立ち上げたりしたいという思いが強くなって、2013年に26歳で「ファットタイガー ワークショップ」をオープンした。

ーー「ニューバランス」との関係がスタートしたきっかけは?また、それ以前はどのようなイメージを抱いていましたか?

フレッシュグッズ:19年の夏に「ニューバランス」の担当者がシカゴに来て、そこで話し合ってから関係が始まったね。両者にとっていいタイミングだったと思うよ。俺はもともと地域的なことに注意を払う人間なんだけど、アメリカ中北部のシカゴに住む人間としてイーストコースト(ボルチモア地区に代表されるワシントンD.C.やフィラデルフィア、ニューヨーク)のブランド、特に「ニューバランス」にリスペクトを感じていたんだ。コラボを機に、ブランドは地域に根差したものであるということをより理解できたし、違った階層にアクセスできていると感じている。

ーー今回、“993”をベースに採用した理由や、“パフォーマンス アート”の具体的な着想源はありましたか?

フレッシュグッズ:以前からステイプル・アイテムとして“900”シリーズが好きだったのもあるけど、コラボレーション時にはパートナーからの提案にも常に耳を傾けるべきだと思っていて、「ニューバランス」との話し合いの末に“993”を選んだんだ。“パフォーマンス アート”のコンセプトやデザインを考えるにあたっては、「ニューバランス」のアーカイブ広告を参考にしながら「この部分をこう変えた方がいい」や「こうしたら面白くなるかもしれない」といった方法でデザインを進めた。その中で、アフリカン・アメリカンは何でもない鉄をアートに仕立てることができたり、ハイキング用のアイテムをファッショナブルなアイテムに変えたり、本来の目的とは違った新たな視点を加えることが得意なんだけど、アーカイブ広告の中に“Made To Wear Well(着用することでパフォーマンスが向上する)”というコピーを見つけてね。「ニューバランス」の“993”はランニングシューズとして作られたけれど、現在はファッショナブルなアイテムとして着用されているし、これこそが着想源だと思ったんだ。1つのスニーカーを見ている4人の人物がいて、全員が同じスニーカーに対して違う意見を持つことーーこれが“パフォーマンス アートだ”。

ーーピンクをはじめとする淡いカラーリングを落とし込んだ意図は?

フレッシュグッズ:「ニューバランス」との協業では、さまざまな部分を“Blighten-Up(明るくする)”ことが俺の役割だ。彼らが歴史的に使用してきたグレーやネイビーではなく、俺が好きなピンクも含めた明るいパステルカラーを提案することで、これまで抱かれてきたイメージや印象を変えることができると思ったのさ。

ーーイメージビジュアルでは、世界的なアーティストと共にシカゴになじみのある“フッドスター”たちも起用していますよね。

フレッシュグッズ:「ニューバランス」との関係を続ける中で別分野の人たちと働き、いろいろな学びがあった。今回は、「ジョーの頼みなら」って思ってくれるような友人関係をベースに、俺がやりたいことをシカゴのヒーローたちに叶えてもらった。

ーーこれまでの「ニューバランス」とのコラボを振り返ると、どれもストーリーテリングへのこだわりを強く感じました。

フレッシュグッズ:自分がビジネスを始める前も後も、さまざまなブランドが発信するベーシックな広告を見ていつも飽き飽きしていたんだ。正しいパートナーと正しい予算があれば、的確かつ今まで見たことのないような広告は展開できるのにってね。「ニューバランス」とはスニーカーを通して、他の人では見せることができない俺だけのストーリーで世界を一つに結びつけることができているはず。

「“Love is the biggest performance(愛こそが一番のパフォーマンス)”だからね」

ーー東京で11月8日まで開催しているインスタレーションのテーマを教えてください。

フレッシュグッズ:俺の魂や経験を具現化したような空間としてティーハウスへ招待する気持ちと、俺がアフリカン・アメリカンを代表してティーハウスに招待されたという気持ちを表現している。俺は違う文化の間に共通点を見出しながら育ってきたんだけど、例えば日本の茶道がアフリカン・アメリカンにとっては何かを考えたときに、それがサザン・スウィートティーだと気付いた。シカゴという遠く離れた場所から日本に来たけど、俺たちはどこかでつながっているということを表現できているんじゃないかな。

ーー設置されているさまざまなオブジェクトは、どのようなチョイスでしょうか?

フレッシュグッズ:俺はヒップホップのアーティスト全般に影響を受けていて、このCDブックは今でいうインスタグラムのプロフィール画面のようなものさ。当時CDを集めることは、インスタグラムのポストを更新するようなものだった。ウォークマンは普通のグレーじゃなくクリアなものが好きで、モトローラ(MOTOROLA)やブラックベリー(BlackBerry)は本当に当時使っていた携帯だよ。ノトーリアス・B.I.G.(The Notorious B.I.G.)が表紙の雑誌は、色使いの主張も良くて一番好きな一冊だね。あと、モブ・ディープ(Mobb Deep、ヒップホップデュオ)のプロディジー(Prodigy)が大好きで、彼がキッチンでバイクに跨っている写真がお気に入りだから同じような一台を置いている。彼も「ニューバランス」と同じく、イーストコースト出身だね。壁から垂れている巨大なフラッグは、友人でエアブラシ・アーティストのPJが描いてくれた。シカゴのモールやプロム(高校生が卒業前に集まる伝統的なダンスパーティー)では似たようなものを作ることが多くて、それを写真に収めるのが好きなんだ。

ーーインスタレーションを記念したアパレルも製作していますね。

フレッシュグッズ:全10型で、そのうち4型がティーハウスのエクスクルーシブだ。このボタンシャツは、背面に両親が台所で踊っていた思い出をそのまま刺しゅうしているーー“Love is the biggest performance(愛こそが一番のパフォーマンス)”だからね。Tシャツには俺の趣味をそのまま落とし込んでいて、1970~80年代のアイテムを「イーベイ(eBay)」で探すのが好きだから、ビンテージのジョー・フレッシュグッズと「ニューバランス」のコラボTシャツをイメージした。アスレチックな感じもいいでしょ?あとは、俺らしいピンクのヴァーシティージャケットもあって、招待してくれたティーハウスや日本へのリスペクトに応えて背中に日本地図を刺しゅうしているんだ。

ーー日本でこのようなイベントを開催するのは何度目ですか?

フレッシュグッズ:友人のVERDYとのポップアップを4年前に一度したから、今回が二度目だね。俺は彼をバックアップしただけだけど(笑)、今じゃ彼はスーパースターだ。

ーー東京とシカゴでファッションの相違性は感じますか?

フレッシュグッズ:とても画一的に感じる一方で、ファッションを自由に楽しんでいるようにも思う面白い街かな。

ーーシカゴは4大スポーツ(NBA・NFL・NHL・MLB)のチームが本拠地を構えている関係で、世界的に見てもスポーツとファッションが近い距離にある街だと考えています。

フレッシュグッズ:確かにNBAのシカゴ・ブルズも、NFLのシカゴ・ベアーズも、NHLのシカゴ・ブラックホークスもあるし、MLBはシカゴ・カブスとシカゴ・ホワイトソックスの2チームが存在するから親和性は高いね。ホワイトソックスのキャップがヒップホップの定番アイテムであるように、シカゴの人々にはスポーツ・カルチャーがDNAレベルで染み付いているから、それがファッションに自然と現れるんだと思うよ。

ーー東京で気になるブランドやショップ、人物は?

フレッシュグッズ:特定なものは無いけれど、歩いていて気になるショップはたくさんあった。ステーキが好きだからステーキの店に行きたいね。

ーーでは、シカゴでお気に入りのレストランはありますか?

フレッシュグッズシカゴはアメリカの中でも2大フードシティだから、この話をし出すと2時間はかかるな……(笑)。肉が大好きだからステーキハウス「バベッツ(Bavette’s)」と、フィリーチーズステーキ・サンドイッチがある店によく行くよ。

ーー最後に、毎日見ている注目のSNSアカウントなどがあれば教えてください。

フレッシュグッズ:ステーキのアカウントかな(笑)。

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スパイバーのキーマンに聞く、「究極のアパレル型循環エコシステム」

 人工タンパク質素材「ブリュードプロテイン(Brewed Protein)」の開発で世界から注目を集めるスタートアップ企業スパイバー。近年「ブリュードプロテイン」の開発・生産だけではなく、農業残渣や廃棄衣類のセルロースを資源として活用するための研究もスタートした。スパイバーが目指す“循環”とは?キーマンの一人である東憲児スパイバー経営企画室ヘッド・オブ・ビジネス・ディベロップメント&サステナビリティ兼執行役員にオンラインで話を聞いた。
 
WWD:スパイバーが考える循環とは?

東憲児スパイバー執行役員(以下、東):一言で表現するなら、資源を最大限活用すること。無駄になるものを極限まで減らすことが重要だ。何かを新しく作るときに出る副産物や役割を終えた製品などを、「ゴミ」として捉えるのではなく、資源として捉えることができるようなシステムのことを「循環」と考えている。当社も現在の「ブリュードプロテイン」の原料はサトウキビを絞って作った砂糖やトウモロコシのでんぷんといった食料にもなり得るものだが、サトウキビの搾りかす(バガス)やトウモロコシの茎や葉といった農業残渣を活用することが重要だと捉え、1~2年前から研究を始めている。

 また、現在はゴミとなっている古着の活用法も研究している。バガスなどのセルロースでできたもの、言い方を変えればコットンやレーヨンを糖に分解する技術は以前から研究されており、こうした既存技術を活用しつつ、自社でも研究を行っており、プロセスによってはすぐに応用できるものもある。農業残渣は規模を拡大するのに時間がかかりそうだが、技術はできた。古着は一部の開発は残っているが、原理的にできることは分かっている。ただ、古着を活用する場合、原料が天然由来100%なら分解して使えるが、混合素材をどうするか、染料や仕上げに用いる化学物質の影響をクリアにする必要がある。

WWD:確かに現在の「ブリュードプロテイン」の原料は食糧生産とバッテングしているし、バージン素材ともいえる。

東:天然のカシミヤやウールと比べればメリットはあるが、「ブリュードプロテイン」の生産のためだけにサトウキビやトウモロコシを育てるのは、土地も必要だし、肥料や殺虫剤なども使う。

WWD:古着を活用する場合、製品情報の把握はもちろん製品設計時から循環を意識する必要があるのでは?

東:循環を可能にするためには枠組みが必要だ。素材の選定はもちろん、使用後に回収する仕組み、再活用するインフラなどサーキュラーなエコシステムが必要になる。ゴミの分別ルールと似ている。それをパートナー企業や業界団体、政府やNPOと協力して最速のスピードで進めていきたい。

 来年中にはバイオプロセスでの再資源化(発酵原料としてなど)したものであったり、再活用できる素材のみで作られ、かつリサイクル方法などもあらかじめ想定した製品企画を公開したいと考えており、いくつかのアパレルブランドと内容を詰めているところだ。製品設計段階でどうすれば再資源化できるか――われわれが今後提供する循環プロセスにのるための素材や製品規格はどういうものかを公開したい。長期的には、循環する社会を作るパズルの1ピースになればと考えている。循環性に取り組む団体と連携して、大きな枠組みを作ることに貢献したい。

WWD:そうした循環型エコシステムを作るにあたり、注目している技術や企業は?スパイバーで今後さらに必要になる技術や人材は?

東:サーキュラーなエコシステムを作るためのプロジェクトを進行しており、それをドライブする人材はウエルカム。ISOなどの国際規格や国際機関と連携して世の中を巻き込んでドライブするチームだ。引き続き、技術開発やプロセスの効率を上げる研究者や技術力を持った人材も必要だ。タイの工場が稼働して量産化をスタートしたので営業も強化もしている。

WWD:LCAの算定を行っているとか。

東:算定は終わり、現在は第三者によるクリティカルレビューを行っている。

WWD:ウールやカシミヤと比べてどのくらい環境負荷が低いのか?

東:素材の比較はグリーンウオッシュに使われたりもするのでハードルが高い。具体的な数字はまだいえないが――カシミアと“ブリュードプロテイン”を比べると温室効果ガスの排出量はカシミヤの半分にはなる。タイ工場の稼働前に試算しており、実際どうかというアップデートが必要ではある。現在タイ工場の電力は石炭火力だが、再生可能エネルギーを用いれば、タイ工場のフル稼働時にはその排出量比は4分の1~6分の1になる。

WWD:カシミヤは土地利用も課題だ。

東:土地利用に関してはカシミヤの約38分1。カシミヤは動物繊維の中でも環境負荷が大きく、温室効果ガス排出量でも「ブリュードプロテイン」と比べて差が大きく出ているが、ウールと比べると土地利用は約7分の1に抑えられるものの、温室効果ガス排出量は現段階ではドラスティックな違いはない。しかしさまざまな点において改善の余地もあり、今後環境負荷削減に向けて取り組む。中長期的にみるとウールと比べても環境負荷が低くなる想定だ。

WWD:計測することで工程ごとのインパクトが分かるので、優先的に削減に向けて取り組む工程が分かる。

東:まさに今検討しているところだ。一番大きいのは電力。石炭火力かクリーンエネルギーか大きいファクターになる。主な原料が農作物に由来したサトウキビとトウモロコシで、非可食のものや農業残渣を資源に活用するなど、より環境への負荷を減らす取り組みも重要だ。アメリカでの量産設備で提携しているADMとは、アイオワ州クリントン周辺でトウモロコシを生産・供給するADMのサプライヤー間における環境再生型農業の導入を共同で支援することを目的とした契約も締結している。

冨田勝研究室で関山社長とともに学ぶ

WWD:スパイバー入社の経緯は?

東:関山(和秀スパイバー取締役兼代表執行役)に誘われた。関山や菅原(潤一スパイバー取締役兼執行役)とは、慶應義塾大学先端生命科学研究所冨田勝研究室でともに学び、何度か声をかけてもらっていた。

WWD:そもそもバイオテクノロジーに興味を持ったきっかけは?

東:大学に入学した2000年に冨田先生の授業を受ける機会があり、衝撃を受けた。バイオテクノロジーが石油の代替になる本命のソリューションになるというメッセージを受け取り、やってみたいと思った。01年の先端生命科学研究所開設と同時に鶴岡で学び始めた。そこには関山や菅原もいて、関山は人工クモの糸を、私はエネルギーの研究に取り組んでいた。

WWD:さまざまな可能性がある中で、アパレル繊維だった理由は?

東:われわれの素材は規模を拡大するにつれてコストが下がる。繊維の中でも安価なコットンやポリエステルとわれわれの素材とを比べるのはチャレンジではあるが、カシミヤやシルク、ウールはそれなりに高額で、市場規模もある貢献しやすい素材だ。カシミヤやウールの柔らかさは繊維の細さによるが、われわれはカシミヤよりも細く柔らかい繊維を作ることができる。

WWD:スパイバーでの東さんの役割は?

東:企業とパートナーシップ提携や素材の販売を行う事業開発とサステナビリティ関連の取り組みの推進、両方を担当している。

WWD:仕事を通じて感じる面白さや難しさは?

東:世の中のサステナビリティの意識や優先度の変化が面白くもあり、難しい。何年か前までは、今までの素材よりも高いなら使えないというリアクションがほとんどだったが、そこが変わってきている。特にヨーロッパの変化は著しい。一気に変わった感覚があったのは2019年。日本はまだそこまでの変化はないが、変わるときは変わるとヨーロッパの変化を見ていて感じるので、楽観的かもしれないが日本も変わるのではないかとみている。

WWD:東さんが実生活で実践しているサステナブルなことは?

東:消費を抑えることが圧倒的にサステナブルであることに気付き、17年7月を最後に服を買っていない。肌着も買っていない。同じものを作るのにベターは大切だが、その前にできることへの追求も必要だ。

WWD:ちなみに最後に買った服は?

東:「ザ・ノース・フェイス」のズボンだった。たくさん服を買うタイプではないが、無駄に服も下着もたくさんあった。ほとんどの人は意図せずとも大量の服を持っているのではないか。時々補修もするが、買わなくなって5年がたつがそんなに困らない。あとは肉をなるべく食べない。ときどき食べるが環境負荷が大きいので避けるようにしている。

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満を持して旗艦店が登場 「シャネル」の時計・宝飾部門トップに聞く継続成長の鍵

 「シャネル(CHANEL)」のウオッチ&ジュエリーの旗艦店が10月、東京・銀座並木通りにオープンした。同旗艦店は3層、約227平方メートル。そのオープンに伴い、フレデリック・グランジェ(Frederic Grangie)シャネル パリ 時計・宝飾部門社長 が来日した。同社長に旗艦店について、コロナ禍・後の戦略や取り組みについて聞いた。

WWD:ウオッチ&ジュエリー専門の旗艦店をオープンした経緯と目的は?

フレデリック・グランジェ=シャネル パリ 時計・宝飾部門社長(以下、グランジェ):「シャネル」は何事もじっくり時間をかけて長期視点で行う。だから人々から渇望されるブランドなのだ。あらゆる商品を見てもらえる旗艦店という場所はとても大切。ファイジュエリーからハイジュエリー、高級時計などをそろえるだけでなく、日本独自の試みとしてブライダルサロンを設置。世界初のメンズコーナーもつくった。ここで、「シャネル」の歴史やクリエイションに裏打ちされた世界観を体験してもらえるはずだ。

WWD:旗艦店で提供する商品やサービスは?

グランジェ:パリ・ヴァンドーム広場の旗艦店が改装し、新たな次元へ向いつつある。

 銀座の旗艦店は、その姉妹店で、建築家のピーター・マリノ(Peter Marino)がデザイン。「シャネル」メゾンのコードを完璧に理解し、持ち前の才能とひらめきで“ぜいたく”な旗艦店にしてくれた。顧客に最高の体験を提供できる環境だ。夢が叶ったと言ってもいい。新たな取り組みとしては、VIPサロンにスクリーンがあるので、東京の顧客とパリ・ヴァンドームのアトリエをつないで、オンラインだが顔を合わせて接客ができる。ラグジュアリーかつプライベートな空間でゆったりとコミュニケーションを取れるようになっている。コロナ禍でいろいろなテクノロジーが出てきたが、人と人との触れ合いが大切だ。

継続投資で過去最高の売上高を記録

WWD:コロナ禍における戦略は?結果が出た施策は?

グランジェ:まずは、家族ともいえるスタッフをしっかり支えるのが大切だった。国によっては、長期間店舗をクローズしなくてはならなかったが、「心配ない」と言い聞かせた。2つ目は投資をし続けてきたという点。だから、コロナ後に最高の売り上げを記録することができた。今年5月にはヴァンドーム、10月には銀座の旗艦店をオープン。来年春には、米ロサンゼルスのロデオドライブ、秋にはニューヨークの5番街に出店する。コロナのような苦境があっても、ビジョンを持って、投資を続けながら運営するのが重要だ。

WWD:富裕層市場の活況について、どう分析するか?

グランジェ:「シャネル」はクリエイティブなメゾン。高額品の要望の高まりは持続しているので、それに対応していく。「シャネル」のメゾンのコードを取り入れた高級時計は、見た目もムーブメントも素晴らしく、他に比類するものはない。ハイジュエリーも同じだ。「シャネル No.5」にオマージュを寄せた55.5カラットのダイヤモンドネックレスは、“最高峰”を具現化したもの。世界最高の石と技術を用いた「シャネル」だからできるネックレスだ。

WWD:今後の日本戦略は?

グランジェ:日本は、とても洗練された市場。日本とフランスには共通するものがある。日本人は品質の高いものや工芸の大切さを理解している。日本人は「シャネル」のクリエイションを理解してくれていると確信している。コロナ禍ではできなかった旗艦店でイベントの開催やクリエイターの来日などで、秀逸したクリエイションをアピールできる。「シャネル」はファッションや化粧品などいろいろな分野があり、最もすばらしいクリエイションやサプライズを提供する。日本市場には限りがなく上り詰めていけると思う。

WWD:今後のウオッチ&ジュエリービジネスにおける展望は?

グランジェ:勢いのある成長で、ウオッチは世界的に絶好調。1987年にデザインされたウオッチ“プルミエール”を再び販売する。時代の先端を行っていたそのウオッチの成功を支えたのは日本人だ。きっと、納品のウェイティングリストの管理が課題になってくるだろう。

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リアーナも注目する26歳の新星 米デザイナーのコーナー・アイブスがつかむアメリカン・ドリーム

 アメリカ出身でロンドンを拠点に活動するコーナー・アイブス(Conner Ives)は、アメリカン・ドリームを体現するデザイナーだ。ニューヨーク・ベッドフォードで歯科医の母と牧師兼心理療法士の父の間に生まれ、18歳でロンドンの名門セント・マーチン美術大学(Central Saint Martins)でウィメンズウエアデザインを学ぶために単身渡英する。在学中の2017年には、モデルのアジョワ・アボアー(Adwoa Aboah)の「メットガラ(MET GALA)」の衣装を制作し、21歳の若さでデザイナーとしてレッドカーペットデビューを果たした。翌年には、リアーナ(Rihanna)からのオファーを受けて、彼女が当時手掛けていたブランド「フェンティ(FENTY)」のデザイナーを務めた。卒業作品の2021-22年秋冬コレクション“アメリカン・ドリーム”で、21年「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE)」のファイナリストに選出。今年2月に開催されたロンドン・ファッション・ウイークで自身の名を冠したブランドのデビューショーを行った。

 「コーナー アイブス」のクリエイションの源は常に故郷アメリカの田舎町にある。古き良きアメリカに思いを馳せながら、デッドストックとビンテージピースを使ったアップサイクルの手法で、現代的なスタイルへと落とし込む。アイテムは古着のTシャツを使った約1万5000円のウエアから、デッドストックのシルクに手作業でスパンコールの装飾を施した約38万円のイブニングドレスまで幅広く、主にデザイナーと同じZ世代から支持を集めている。アメリカン・ドリームの道を着実に歩むアイブスに、「フェンティ」での経験や、デザイナーとしての信念について聞いた。

――デザイナーを目指したきっかけは?

コーナー・アイブス(以下、アイブス):昔からファッションが好きだったので、物心ついた頃には他人のために洋服を作りたいと思っていました。例えこの世界に大量の洋服が生産されているとはいえ、デザイナーの道に進もうという気持ちが芽生えていたのです。他人に洋服を作ることで世界とつながり、その関係性の中で自己を築き上げたい。自己満足ではなく、責任を持っていい服を作りたいという思いは今も変わりません。

――これまで影響を受けたデザイナーは?

アイブス:私は大のファッションオタクで、本当に多くのデザイナーを尊敬しています。名前を挙げるとしたら、アイザック・ミズラヒ(Isaac Mizrahi)、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)、トッド・オールダム(Todd Oldham)、ホルストン・フローウィック(Halston Frowick)らでしょうか。特にアメリカ出身のデザイナーが大好きで、彼らのライフスタイルに関する神話を研究します。自身のライフスタイルを切り売りして人物像を作るというのが、彼らの称賛すべき特徴です。起業家的な精神でもあり、とてもアメリカらしいと思います。

古着やデッドストックに宿るエネルギー

――古着を用いたハンドメイド製品を主に提案している。既存のアイテムを再構築する魅力とは?

アイブス:私は人間として、何かしらのかたちで物からエネルギーを受け取っていると感じます。洋服が持つ、心情を投影する力に引かれてきたのです。お気に入りのTシャツやセーターを持っていると、ワードローブにある普通のアイテムよりもはるかに価値があると思い、ポジティブな感情が生まれてきますよね。そういう“熱気を帯びた”ような洋服から、エネルギーが伝わる気がするんです。既存のアイテムから再構築した私たちの作品が、誰かのお気に入りになってほしいですね。

――アップサイクルの制作で苦労したことは?

アイブス:使用できる古布に制限があるため、数量しか生産できないという点で苦労することはあります。でも最初からアップサイクルの手法でデザインしてきたので、クリエイションにおいて障害になることはありません。

――リメイクを取り入れるブランドが増えている印象だが、差別化を図るために意識していることは?

アイブス:私はセント・マーチン美術大学の学生だった2016年から、この方法で洋服を作ってきました。だからほかとの差別化を意識するよりも、自分の価値観に忠実であり続けることが重要だと考えています。アップサイクルを取り入れている理由は、大量生産や大量消費で犠牲となった実存する“死者(デッドストックや古着)”のためです。私は業界に変化をもたらすために既存アイテムのリメイクに取り組んでいるので、同じアイデアを持つブランドが増えているのはすばらしい兆候です。

――Z世代は「自分が共感するもの、価値を感じるもの」に投資する傾向があるといわれている。同世代の心をつかむために工夫している点は?
アイブス:私が作る洋服は、自分にとって個人的なもの。損得感情ではない、心の通ったパーソナルな作品です。自分の行いに違和感を覚える時は、いつもこのことを思い出しています。製品が市場に広く流通するようになって最も衝撃的だったのは、人々が洋服に“情熱”を感じると言ってくれたこと。これ以上にうれしいことはありません。だから、仕事に対して誠実で、真摯に向き合うことが何よりも大切だと思うのです。ファッションは時に頭で考えすぎることがありますが、感情よりも思考が有利になることはない。私たちは誠実に働き、正直にコミュニケーションを取り、受け手がこれを理解してくれるのを願っています。

26歳でかなえたロンドン・コレクションデビュー

――デビューとなる2021-22年秋冬コレクションに“アメリカン・ドリーム”と名付けた理由は?

アイブス:やや神話的でもあるアメリカン・ドリームの概念の探求が目的でした。このコレクションを制作した時、私はロンドンでの生活が6年目を迎えており、自分自身のアイデンティティについて深く考える時期でもありました。6年間に起こったいくつもの出来事が、私自身のアメリカン・ドリームと捉えていたのです。実際に私がロンドンの地で自己を確立したとしても、アメリカ人である限り、それはアメリカン・ドリームであるという結論に達しました。空想と妄想を描きながら、私の周りにいる女性たちにも影響を受け、各ルックは個々に異なる夢を持った女性を表しています。

――自身のコレクションを通じて、世の中に何を伝えたい?

アイブス:情熱。それ以外にはありません。

――出身地のニューヨークからロンドンを拠点に選んだ理由は?

アイブス:セント・マーチン美術大学で学ぶことが長年の夢で、そのためにロンドンに来ました。学生時代は制作に夢中で、外国で自分の人生を築いていることにさえ気づかなかったくらいです。イギリスのファッション業界と友人らの助けもあって、いつの間にかロンドンが拠点になっていました。何よりこの街が大好きで、制作やクリエイションにおいての条件も全て満たしています。卒業したのが2020年半ばのコロナ禍ということもあり、アメリカに戻るという選択肢が消えました。

――リアーナの依頼で、22歳の時に「フェンティ」でデザイナーを務めた。世界的ディーバのもとで働いた経験でどんな刺激を受けた?

アイブス:リアーナは、いいボスとしての完璧なお手本です。彼女が会議で全員に平等に耳を傾けていた姿を鮮明に覚えています。大きなチームでしたが、彼女は全員の名前を知っていました。私は親と同世代の人々に囲まれ、キャリアのない若者として弱者の立場にありましたが、リアーナと彼女のチームは私の意見を必ず聞いてくれました。会社を経営するうえで重要なことを学んだこの経験を、決して忘れません。

――現在の卸先件数と地域は?今後どれぐらいの売上げ規模を目指したい?

アイブス:現在の卸先は、「マッチズファッション(MATCHESFASHION)」や「ファーフェッチ(FARFETCH)」「ネッタポルテ(NET-A-PORTER)」などのラグジュアリーECを中心に16アカウントを持っています。ブランドにとってアメリカとイギリスが最大の市場です。目標を設定したことは一度もなく、現状の結果はうれしいサプライズです。このままいい波に乗りたいですね。

――日本市場についての印象は?

アイブス:東京の店ならではの独自性が大好きです。日本のサブカルチャーがファッション業界全体に多大な影響を与えているだけでなく、日本市場も信じられないほどの勢力があります。日本のエネルギーは私にとって刺激的で、市場を開拓していきたいです。

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「イソップ」フレグランスが人気の理由、創業メンバーに聞く

 「イソップ(AESOP)」は、新製品が登場するたびに話題になる今勢いに乗っているブランドの一つだ。「イソップ」を導入する百貨店からは、「モードが好きなお客さまからの支持が高い。生活のワンシーンに溶け込むデザインも人気」「香りアイテムが今のお客さまのニーズにマッチしている」との声があがり、SNSでも製品を購入した客による投稿が絶えない。

 この秋には、オードパルファムコレクション“アザートピアス(Othertopias)”に“イーディシス オードパルファム”が新たに仲間入りし、注目を集めた。ブランド立ち上げから店舗運営や顧客対応に携わるスザーン・サントス(Suzanne Santos)=チーフ カスタマー オフィサーに、「イソップ」のフレグランスの魅力や人気の理由を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):日本のフレグランス市場をどのように捉えているか。

スザーン・サントス=イソップ チーフ カスタマー オフィサー(以下、サントス):日本はいまフレグランス市場が成長しており、フレグランスが好きな人にとって素晴らしい時期を迎えている。特に日本の歴史と成分は、“ヒュイル オードパルファム”や“ローズ オードパルファム”など「イソップ」のフレグランスに大きなインスピレーションを与えてくれた。

WWD:世界でフレグランス市場が盛り上がりを見せつつあるが、フレグランスの魅力とは。

サントス:フレグランスは、他のどの製品よりも人の好奇心をそそり、多次元的な魅力を備えている、と私は考えている。フレグランスが持つ最も羨望すべき特性は、香りを身にまとうことで何かを問いかけることができることだ。香りの複雑さは、私たちに何かを思い出させ、思いがけない場所や、望んでいた場所など、新たな場所へと誘う。インスピレーションを得るのが難しいと思うとき、香りは「アドバイザー」や「ミューズ」のような役割を果たしてくれる。私たちが忘れてしまった、あるいは訪れたことのない場所や才能、感情を思い出させてくれる、そんな存在である。

WWD:「イソップ」のフレグランスの特徴は。

サントス:「イソップ」にとってフレグランスは、意識するしないに関わらず、身につける人の気分を高めてくれるものであり、“嗅覚的な第2の皮膚”として捉えている。私たちは、香りの創造は、叙情的でありながら科学に根ざした作業であると考える。多面的なインスピレーションから始まり、それを表現する成分にこだわり、複雑でニュアンスのある調合に仕上げている。

WWD:新たに仲間入りした“イーディシス オードパルファム”について。

サントス:“イーディシス オードパルファム”は、泉に映る自分の姿を見て恋に落ちた男、ナルキッソス神話から着想を得た香りだ。このテーマに沿って、“イーディシス オードパルファム”は、鏡の向こう側にある想像の世界、豊かで魅惑的な森、温かみのある寛大な場所へと続く架空の世界をイメージしている。

 ナルキッソス神話と、身にまとう人が自らを見つめる中で自分自身を見失うというアイディアに沿って、“イーディシス オードパルファム”の香りは、個々の人によって全く異なる表現になる。肌の生化学的な性質により、その人だけの「変化」を生みだすのだ。

 私たちのフレグランスは、いずれも複雑で繊細なニュアンスがあり、従来の別の境界線にとらわれるものではない。示唆に富んだ香りを好む全ての人をターゲットとする。ただ、香りの特徴というところでは、ウッディ、スパイシー、アンバーが中心なので、温かく華やかな香りを好む人に気に入ってもらえるだろう。

WWD:調香師のバーナベ・フィリオン(Barnabe Fillion)が作り出す香りの魅力とは。

サントス:オードパルファムコレクション“アザートピアス(Othertopias)”は、私たちの長年のフレグランスコラボレーターであるバーナベとのパートナーシップによって生まれた。私たちとバーナベの関係は、大きな信頼と相互尊重の上に成り立つ、真のコラボレーションだ。私たちは、フレグランスのさまざまな側面における彼の専門知識と、革新と伝統を融合させる彼の才能に心から感服している。

 私たちのフレグランスの共同開発は、常に高度な過程をたどっており、“イーディシス オードパルファム”も例外ではなかった。長年にわたる共同開発を通じて、「イソップ」独自のアプローチを熟知しているバーナベは、彼の自由な発想力でこのパルファムをどのような形でどのように表現できるかを模索した。この香水のために私たちが共有した多くのインスピレーションは、全て知覚の概念と、ナルキッソス神話に出てくる泉と風景など自己と空間のつながりに基づいている。透明であるが故の無限のテクスチャー、回折や屈折の概念などもその一部だ。

 “イーディシス”は“アザートピアス”シリーズの1つとして、「ここではないどこか」つまり、私たちが普段見過ごしがちな、いわゆるリミナル・スペースからインスピレーションを得ている。「あなた」と周囲の環境との関係に疑問を投げかけ、身につける人を現実と想像の両方の世界へと誘うようにデザインされている。その香りの特徴は、独創的かつ意外性がありながら、同時に親しみやすいところだ。

WWD:音楽やデザイン面など“五感”の領域でアプローチしているが、フレグランスとアートはどう関わりあっているのか。

サントス:「イソップ」の香りのインスピレーションは多方面にわたる。現実と空想の両方の風景からインスピレーションを得たもの、人物からインスピレーションを得たもの、そして伝統的なコロン遊び心を加えたものなど、さまざま。そして何より、「イソップ」のフレグランスはジェンダーやパーソナリティを問わず、好奇心旺盛で香りの力を享受したいすべての方のために創られている。

 フレグランス(嗅覚)と他の感覚との間には、時に共通の言語が存在する。例えば聴覚は、Radiomatique Mixtapes (香りと音の出合いからインスピレーションを得た、「イソップ」の60分間のミックステープシリーズ)で、嗅覚と同様に、ヘッドノート、ミドルノート、ベースノートを体感できる方法を探ってきた。私たちの経験では、香りの力は音や視覚、味覚、触覚と組み合わされることで、さらに伝達力を高めることができる。

WWD:現在8種の香りを展開しているが、それぞれが多くの人を魅了している。

サントス:私たちのフレグランスがお客さまの心に響く理由はさまざまだ。ある人は、ニュアンスや複雑なインスピレーションを、またある人は、ドライ、ウッディー、クリーン、フレッシュといった香調を独自のバランスで調合したジェンダーにとらわれない香りに魅力を感じている。「イソップ」は常に香りの役割と重要性を理解している。

WWD:店頭では香りの体験を広げている。

サントス:「イソップ」のフレグランスは、香りとストーリーを融合させながら進化し続ける、ブランドの象徴だ。この進化は、フレグランスカテゴリーにおける「イソップ」独自の地位を確立するために、魅力的な香りの創造という伝統のもとに一部の店舗で実施されている、さまざまな香りの体験からもうかがえる。そうした試みの1つが、フレグランス専用戸棚「フレグランス アルモワール」の導入だ。一部店舗に設置しており、遊び心と発見のあるフレグランス体験を提案している。

 フレグランス アルモワールは、それぞれの直営店の素材使いに合わせてさまざまな外観を持つ。曲線を多用したシンプルな外観とは裏腹に、重い扉を開けるとアンバーボトルが並んだ神秘的な雰囲気を放つ。フレグランス アルモワ―ルが音、視覚、触覚の3つの媒介を駆使して、「イソップ」の香りに新たな生命を吹き込む様は、まさに百聞は一見に如かずと言えるだろう。

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1位は、「良品計画」、不振の衣料品に大ナタ| 週間アクセスランキング TOP10(10月13〜19日)

【週間アクセスランキング 】最新の注目トピック TOP10(10月6〜12日)

「WWDJAPAN」 ウイークリートップ10

 1週間でアクセス数の多かった「WWDJAPAN」の記事をランキング形式で毎週金曜日にお届け。
今回は、10月13(木)〜19日(水)に配信した記事のトップ10を紹介します。

 「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントでも、毎週土曜日に【週間アクセスランキング】を配信開始。ファッション&ビューティ業界のニュースはもちろん、コレクションのルック、パーティーやストリートのスナップ、ライフスタイル情報など、幅広いジャンルの注目トピックを週3回お届けします。今すぐ「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントを[友だち追加]して、最新トレンドやファッション&ビューティ業界で注目されているトピックをチェックしよう。
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- 1位 -
「無印っぽい」は禁句 良品計画、不振の衣料品に大ナタ

10月19日 / 林 芳樹
「無印良品」を運営する良品計画が、衣料品改革に取り組んでいる。コロナ以降の不振から抜け出せない衣料品は、全体の業績の足を引っ張り、テコ入れは待ったなしの状況だ。「シンプルなデザイン」「天然素材」といった“ブランドイメージ”が広く浸透する「無印良品」はどう変わるのか。(この記事はWWDジャパン2022年10月17日号からの抜粋です)
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- 2位 -
ユニクロ×「マメ クロゴウチ」2022秋冬の新作が11月11日に発売 カーキを加えた全21アイテムを公開

10月14日 / 福永千裕
ユニクロは「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」とのコラボコレクション「Uniqlo and Mame Kurogouchi」の2022年秋冬コレクションを11月11日に発売する。ラインアップするのはワイヤレスブラ(1990円税込、以下同)やショーツ(790円〜)、ヒートテックウールブレンドのTシャツ(1990円)、レギンス(1990円)など全21アイテム。フルラインアップを限定106店舗とオンラインで取り扱い、一部商品を国内全店舗で販売する。
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- 3位 -
「セイコー アストロン」から104年ぶりの偉業を達成したMLB大谷翔平の限定モデルが発売

10月18日 / WWD STAFF
「セイコー アストロン(SEIKO ASTRON)」は11月11日、“ネクスター(NEXTER)”シリーズからブランドのイメージキャラクターを務め、米MLB「ロサンゼルス・エンゼルス(LosAngels Angels)」で104年振りの偉業を達成した、メジャーリーガーの大谷翔平の限定モデルを発売する。販売数は1700本で、価格は税込30万8000円。
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- 4位 -
ユニクロ「UT」×アニメ「スパイファミリー」のコラボ第2弾 キッズサイズも加えた7柄

10月17日 / 福永千裕
ユニクロの「UT」は、11月11日にTVアニメ「スパイファミリー(SPY×FAMILY)」とのコラボアイテムの新作を発売する。ラインアップはメンズTシャツ4柄(各1500円税込、以下同)とキッズ3柄(各990円)。全国の店舗とオンラインストアで取り扱う。
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- 5位 -
「プーマ」のABCマート限定キャンペーンにSnow Man 厚底スニーカーをおすすめ

10月14日 / 三澤 和也
「プーマ(PUMA)」は、エービーシー・マート(ABCマート)限定で販売するスニーカーのキャンペーンに、アイドルグループのスノーマン(Snow Man)を起用した。
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- 6位 -
「ザ・ノース・フェイス」が仏「パラブーツ」とコラボ 世界に1足だけのスリッポンを発表

10月13日 / 三澤 和也
「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」は、フランスの靴ブランド「パラブーツ(PARABOOT)」との特別な協業モデルを発表した。
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- 7位 -
慶大医学部教授・宮田裕章が「ギリギリを攻める」自身のスタイルとファッション業界について大いに語る

10月19日 / ライター本田圭佑
慶應義塾大学教授であり、データサイエンティストの宮田裕章は、自宅の部屋を埋め尽くすほどに洋服を蓄える生粋のファッションアディクトだ。そのホワイトヘアとモードをまとう出立ちで報道番組やニュースメディアに出演し、その名前とビジュアルは瞬く間に世間へと広まった。宮田自身が人類のプリミティブな文明と位置づける“まとうこと”への哲学は、「枕草子」や「モナ・リザ」の話へと広がり、医療ビッグデータ活用のアカデミアでいながらアーティスト然とした感受性を併せ持つ彼の脳内の一角を占めるファッションについての話は興味深い。
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- 8位 -
ビームスがプロデュースする“時計じゃない”「G-SHOCK」の最新作はミリタリーにフォーカス

10月17日 / 三澤 和也
カシオ計算機の「G-SHOCK」は、ビームスがプロデュースする“G-SHOCK プロダクツ”の最新作を発売した。
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- 9位 -
「ゾゾタウン」が青学・中央・法政・立教大学のカレッジロゴスエットを期間限定で受注販売

10月19日 / WWD STAFF
ファッション通販サイト「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」は、青山学院大学、中央大学、法政大学、立教大学の私立4大学とコラボレーションしたカレッジロゴスエットを、10月21日正午〜11月4日11:59にゾゾタウンで受注販売する。
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- 10位 -
女優ののんが“渋谷ランウェイ”に登場 「無敵の気分で歩けた」

10月17日 / 美濃島 匡
渋谷ファッションウイーク実行員会は、渋谷・文化村通りを舞台とした路上のファッションショー“渋谷ランウェイ(SHIBUYA RUNWAY)”を16日に開催した。一般公開での実施は3年ぶりだ。周辺の商業施設に入る全16ブランドの2022-23年秋冬コレクションと、文化服装学院の学生による作品29点を披露した。フィナーレには女優ののんがモデルとして登場し、観客から歓声が上がった。
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Y2Kを知らない25歳記者が識者に聞く“リアルY2K” 復活した厚底シューズ、消えたサンバイザー

 2022年を象徴するファッションのトレンドとなったY2Kは、“2000年”の略語で“Y”は年(year)、“K”はキロの意味。もともとは、1990年代から2000年に切り替わる際にコンピューターが誤作動すると言われた“2000年問題”を指す言葉だったものの、昨年ごろから「ミュウミュウ(MIU MIU)」を筆頭に、2000年前後のファッションやビューティトレンドのリバイバル文化を意味する言葉として知られるようになった。

 Y2Kがトレンドに浮上したとはいえ、現在のY2Kファッションは当時のスタイルと全く同じではない。現代風に進化してリバイバルを果たしものもあれば、逆に忘れ去られていったアイテムもあるはずだ。そこで、自身が青春時代を過ごした平成の若者文化を考察・発信するライターのタジマックス(Tajimax)に当時のスタイルを振り返ってもらい、今のY2Kしか知らない1997年生まれの記者が、“リアルY2K”との違いを聞いた。

Tajimax/ライター、コレクター

PROFILE:(タジマックス)東京出身。1990年〜2018年頃の女性誌を中心に、200冊以上の膨大なバックナンバーを所有している。18年頃からそれらを資料に、自身が青春時代を過ごした平成の若者文化を伝える活動を開始。これまでに「オリコンニュース(ORICON NEWS)」「現代ビジネス」「ビジネスジャーナル(Business Journal)」「クイックジャパン(Quick Japan)」などさまざまなメディアで若者文化について発信している。現在は「東洋経済オンライン」で平成の若者文化を振り返るコラムを連載中。

定番の厚底シューズ
最盛期は1999年

WWD:私は1997年に生まれたので、当時のY2Kスタイルは昔の雑誌などでしか見たことがありません。ギャルや肌見せなどいろいろなスタイルがミックスしている印象なのですが、そもそもY2Kとはどういったスタイルを指すのですか?

タジマックス:現在日本で人気のY2Kは、さまざまな国や時代の文化が入り混じっています。Y2Kはもともと、2000年前後に海外セレブの間で流行したファッションのリバイバルを指す言葉として使われ始めました。それがSNSで世界に広がっていった結果、現在のような混沌としたトレンドになったのでしょう。インスタグラムで“Y2Kファッション”を検索すると、日本のギャルを思わせるルーズソックスを取り入れたスタイルや、アメリカンな雰囲気の肌見せスタイル、さらにK-POPアイドルが着用したことでトレンドとなったチェック柄のスカートを取り入れたスタイルもヒットします。今回はその前提のうえで、令和のY2Kと国内の2000年当時のトレンドを比較します。

WWD:Y2Kファッションに欠かせないのはやっぱり厚底シューズ?

タジマックス:厚底のブーツやスニーカーの人気はいまだに根強いです。当時も、厚底シューズは定番中の定番でした。2000年前後は厚底シューズのブームが最高潮で、ユニークなデザインのものも多く登場していました。2004年頃からは「キャンキャン(CanCam)」が象徴とする“赤文字系”ブームが起こり、シューズのトレンドもコンサバなものにシフトしていきましたね。

WWD:タジマックスさんにとって、特に印象に残っているシューズは何ですか?

タジマックス:1999年に大ヒットした「バッファロー(BUFFALO)」の厚底シューズです。もともとクラブシーンで人気だった「バッファロー」が、雑誌「ポップティーン(Popteen)」の人気読者モデルが愛用していたことで、街にも浸透していきました。篠原ともえさんに影響を受けた“シノラー”や、原宿系ファッションを好む子も履いていました。現在はあまり注目されていませんが、ウエッジソールをくり抜いたデザインのサンダルや、クリアソールも存在感がありましたよ。

WWD:今の厚底シューズはどう進化していると感じますか?

タジマックス:若者を中心に人気の「グラウンズ(GROUNDS)」のシューズからは、新しさと懐かしさを感じますね。有機的なクリアソールから感じる近未来感が、当時“サイバー系”と言われたファッションを思い起こさせます。

華やかなジーンズも復活
当時はリメイクも人気

WWD:ジーンズが流行しているのもY2Kの流れだと思いますか?

タジマックス:Y2Kファッションのブームの流れだと思います。今トレンドになっているジーンズは、ローライズデニムやバギーパンツなどで、シルエットはワイドなものが多い印象です。でも当時日本で流行していたデニムはもっとタイトなシルエットでした。今、主流のシルエットは海外からの影響が大きいかもしれませんね。

 日本で2000年というと、ちょうど「マウジー(MOUSSY)」がデビューし美脚に見えるジーンズを打ち出し始めた時期なので、ギャルはみんな足を長く見せることにこだわっていました。細めのパンツをブーツインして履くスタイルも多かったですね。

WWD:今のY2Kファッションでは、デニムのアイテムに刺しゅうやペイントを施したものもよく見かけます。

タジマックス:クラッシュデニムや、デニムのオールインワンも再注目されていますね。2000年ごろは、デザイン性の高いデニムが流行したことがありました。古着のリメイクが同じタイミングで注目されたのもあり、この時期は華やかなデニムアイテムが豊富でした。本格的なリメイクを特集した「ジッパー(Zipper)」のムック本も出ていたし、ギャル向けの雑誌でも簡単なリメイクのアイデアを紹介していましたね。ただ実際に率先してリメイクしていたのは服飾学生など、感度が高くて手先が器用な一部の若い人。多くはブランドから出ている“リメイク風”ジーンズを履いていました。

WWD:エスニックなテイストも流行していたんですよね?

タジマックス:そうですね。当時はボヘミアンやヒッピーのスタイルを好む人も一定数いましたが、今にはリバイバルしていない印象です。でもラブ&ピースの精神や、自由な思想は今の時代にもマッチしそうなので、若者の間で流行する未来もありえるかも。

WWD:ジーンズにエッジの効いたベルト使いも街で徐々に見かけるようになりました。

タジマックス:ベルトをアクセサリーの一つとして盛り込むのは、当時も人気のスタイルでした。太さのあるものやデザイン性に富んだものを取り入れて、しっかり主張させていましたね。

ルーズソックスは
ファッション的な文脈で

WWD:昨年からアームウォーマーも街でよく見かけます。

タジマックス:アームウォーマーも1990年代後半にプチブームになったアイテムでした。街では“シノラー”“デコラ”“サイバー系”と言われるような、原宿系の人たちが取り入れていましたね。また、この頃は手作り文化も盛り上がっていたので、アームウォーマーを手作りしている若者もいました。

 さらにモーニング娘。や浜崎あゆみさんらアーティストの衣装としても多かったです。ただ、当時のアームウォーマーは個性派アイテムという位置付けで、原宿系ファッションや衣装としては人気がある一方で、マスではなかった。今では、カジュアルに合わせるだけでなく、ふわふわのニットトップスと組み合わせて、うさぎのようにかわいく着るスタイルもあるなど、ブームとして盛り上がっている印象です。

WWD:レッグウォーマーも当時は流行していたんですか?

タジマックス:レッグウォーマーやブーツカバーなど、足元にボリュームを持たせるアイテムも確かにありました。でも、普段着に取り入れるにはハードルが高く、ショップ店員など一部の感度が高い人たちが着けていたぐらい。流行していた、とまでは言えませんね。

WWD:リバイバルしているルーズソックスと同じ感覚ではないんですね。

タジマックス:はい。ルーズソックスは私たちの世代にとって、制服スタイルのデフォルトだったんです。「どんな靴下を履けばいいか分からないし、もうこれでよくない?」という感覚で、意識的に履いていたわけではない。ルーズソックスも今リバイバルしていますが、当時と決定的に違うのが、制服以外の普段着の足元にも積極的に取り入れられていること。Z世代に人気のあのちゃんの着こなしが象徴的で、当時よりもファッション的な文脈で取り入れているのでしょう。

バッグのY2Kは?
デザイン性重視だった当時

WWD:Y2Kの流れで語られるバッグといえば、ワンハンドルバッグです。

タジマックス:人気が再燃しているワンハンドルバッグは現在、カジュアルなスタイルに取り入れられることも多いですよね。当時はどちらかというとコンサバなファッションを好む人が愛用していました。最近はPVCやラバー、エナメルなど素材の質感を生かしたバッグを見かけますが、当時も同じようなバッグは人気でした。

WWD:当時で特に印象的だったバッグは何ですか?

タジマックス:「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の“グラフィティ”バッグは、サッカー選手の中田英寿さんが愛用していたことで認知されて、一気に知名度が広がった印象です。ほかにも「ルイ・ヴィトン」のエナメル素材の“ヴェルニ”や「シャネル(CHANEL)」の“ラバートート”も、珍しい素材感で注目されていました。でもこれらはあくまで憧れの存在。実際にみんなが持っていたのは、安価なブランドからリリースされているバッグでしたね。

WWD:ほかに流行していたバッグはどんなものがありましたか?

タジマックス:記憶にあるのは、スポーティーなデザインのバッグです。エナメル素材のものやボストンバッグ、ショルダーバッグが人気で、カジュアルなスタイルに取り入れられていました。今年の1月に「ディオール(DIOR)」が発表したボウリングバッグには、私は懐かしさを覚えましたね。

個性派アクセがリバイバル
素材で盛るスタイルは健在

WWD:今のY2Kに取り入れるアクセサリーは、シルバーの重厚な質感のものや、クリアな素材感を生かした個性的なものが多い気がします。これらも当時のリバイバルだと思いますか?

タジマックス:2000年当時もこのようなアクセサリーは人気でした。シーズンごとに流行も違いましたが、「ココルル(COCOLULU)」のウッドアクセサリーや「クロムハーツ(CHROME HEARTS)」「カパルア(KAPALUA)」のシルバーアクセサリーなど、インパクトのあるアクセサリーが流行していましたね。夏にはクリア素材のアクセサリーがトレンドで、今のY2Kとも素材感を楽しむという意味では近いムードがあります。バタフライモチーフも多かったかな。

 一方で、当時は人気だったのにリバイバルされていないものも多いです。例えば、キラキラのラインストーンのアクセサリー。特に「プレイボーイ(PLAYBOY)」のネックレスは人気でした。さらに「ルイ・ヴィトン」のキューブ型のモチーフがついたヘアゴムや、hitomiさんがつけていたポンポンアクセサリー、ほかにもサンバイザーや缶バッチも流行しましたが、現在には復活していません。

WWD:アイウエアに注目していると、レンズが細長のタイプや大胆なカラーのサングラスをよく見かけます。

タジマックス:私もKing Gnu(キングヌー)の井口理さんがそのようなサングラスをかけているのを見ました。おそらく、それは当時のメンズファッションか海外での流行の一つではないしょうか。ウィメンズでは、浜崎あゆみさんの影響で大き目なティアドロップのサングラスが圧倒的に多かったです。ルーツが違うアイテムが混ざり合ってリバイバルしているのも、現代のY2Kらしいですね。

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アダストリアがアバター販売でメタバース事業に参入 担当者が語る勝算とは?

 アダストリアは10月3日、ECサイト「ドットエスティ」のオリジナルアバター枡花蒼(ますはなあお)を発売した。VRソーシャルプラットフォーム、VRChatに対応し、「レイジブルー(RAGEBLUE)」の商品を着用。1体5000円。クリエイターによる創作の総合マーケットBOOTHで販売し、ウエアやアクセサリーの単品売りもそろえる。この先に一体どんな計画があるのか。島田淳史広告宣伝部メタバースプロジェクトマネージャー(以下、島田)に聞いた。

WWD:幅広い層に向けてアパレル等を展開するアダストリアが、非常にコアなユーザーが多いVRChat対応美少女アバターを扱ったのは意外だった。そもそもなぜメタバース事業に参入するのか。

島田:3月にアダストリアに入社し、翌月、上司に「メタバースに興味ない?」と聞かれて、「あります!」と答えたところからプロジェクトが始まった。経営陣の間では参入の話をしていたようだ。実は私自身、メタバースについてほぼ何も知らなかったが、そこからリサーチし、いろいろな人に会い、知見を増やした。飲み会もカラオケも演劇も麻雀もすでにメタバースで日常的に行われている。まだ一般的には“非日常”と捉えられているが、そこにはすでに“日常”があり、国籍も性別も超えて個人が自由に表現できる世界が広がっている。SNSやユーチューブも最初の頃は同じで、一般の人がやるものと認識されていなかった。それと同じことがこの先メタバースでも起こるだろうと。顧客接点と新たな認知、そして収益も得られると考えた。

WWD:メタバースにどのような商機を感じる?

島田:非常に可能性を感じている。性別や年齢、国籍、見た目に関係なく個人が自由に表現できるのが、メタバースの素晴らしいところ。VRゴーグルがスマートグラスになったり、XR技術の発展や、5Gや6Gといった環境が整うことが必要だが、それは遅かれ早かれ実現するだろう。新しいコミュニケーションメディアであり、人々がそこで時間を過ごすのが当たり前になる日は来ると思う。

 アダストリアはマルチブランド、マルチカテゴリーで、ターゲットが広く、衣食住のさまざまなサービスが提供できる強みがある。それらをメタバースでも展開できるし、店舗も3D化し、リアルとメタバースの両方向の行き来を可能にすることで、よりブランドの世界観を体験してもらえるようになる。メタバースなら、地方に住む人気のインフルエンサースタッフも全国のお客さまとバーチャルにコミュニケーションを取ることができる。店舗やスタッフだけでなく、商品も3D化したいし、社内にデザイナーやパタンナーを抱えているので、商品を作る過程でのデジタルデータの活用もしたい。互換性のハードルの高さは承知しているが、そういうことが簡単にできる世界もそう遠くないだろう。1400万ユーザーを抱える「ドットエスティ」を活用できるのもアダトリアの強みだ。

WWD:なるほど。アバター販売を始めた理由は?

島田:販売収益を狙いつつ、まずは3DCG制作とマーケティングのノウハウを得たいと思った。メタバースは個人が活躍できる場だし、われわれとしても個人の人が活躍できる場を作っていきたい。メタバースのことはメタバースの中で活躍している人と一緒に仕事をするのが一番だと考えて、人気アバター作家のひゅうがなつさんにお願いし、5人のクリエイターにもサポート参加してもらった。「好きなものを作ってほしい」と一任し、チームによる協働で、より良いものができたと思う。プラットフォームのセオリーに合わせて、9月に「試着会」も開催し、その効果も検証できた。発売から順調に売り上げているが、それ以上に自分たちが直接関わることで3DCG制作やマーケティングのノウハウを身につけられたというメリットが大きい。

WWD:ファンの多いひゅうがなつディレクションのアバターということもあり、試着会も大いに盛り上がっていた。発売後もアバター向けのメイク等の装飾がBOOTHに出品されるなど、VRChatユーザーの間での浸透が見られる。しかし、VRChatを楽しむには、VRゴーグルやハイスペックPCが必要で、アカウントの取得なども煩雑だ。さまざまなプラットフォームがある中で、VRChatを選んだ理由は?

島田:今回いろんなプラットフォームやクリエイターと話をしたが、ひゅうがなつさんに出会えたことが非常に大きかった。クリエイターとしても優秀だし、ディレクションやマネジメントもできる人で、出来あがった作品も素晴らしかったが、ネガティブなリアクションがなかったことも、彼女のファンを大事にするコミュニケーションに負うところが大きかったと思う。また、メタバースはPCやスマホでも楽しめるが、個人的にはVRゴーグルを推している。私自身、今回のためにWindowsのPCやVRゴーグルを入手し、初めてVRChatのアカウントを取り、ハードルの高さを体験したが、やはり体験価値が全然違う。しかし、VRChat以外のプラットフォームにも出ていく計画だし、いろんなクリエイターともコラボレーションしていきたい。

WWD:この先の計画は?

島田:11月に第2弾のアバターも公開予定だ。来年はファッションショーなどのイベントをして、体験の提供にトライしたい。3Dモデルの内製化もできるようにして、3年後にはわれわれが培ったノウハウを他社にも提供していけるようになりたい。

 魅力的なコンテンツがないと人は集まってこない。今、イベントはメタバースで行われ始めているが、日常的なアクセスにはつながらない。メタバースファッションを展開することはもちろんだが、音楽やスポーツなど異業種とも協業し、それらに興味がある人たちが日常的に来たいと思うコンテンツを提供することが重要だ。将来的にはそういった企業同士でのアライアンスで盛り上げるメタバースを、最適なプラットフォームを使って実現したい。

 目下一番の問題は、3Dモデルを制作するクリエイターが少ないこと。ここについても手を打ち始めている。

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熊本の秘境に伝わる紙細工“山鹿灯籠”とは? ファッションデザイナー高谷健太と巡る“ときめき、ニッポン。”第8回

 山本寛斎事務所のクリエイティブ・ディレクター高谷健太とともに、日本全国の名品や産地を巡る連載“ときめき、ニッポン。”。8回目となる今回は、熊本県山鹿(やまが)市の伝統工芸品、“山鹿灯籠(とうろう)”について。

 熊本県の北部に、山鹿という人口5万人ほどの市がある。同市には、電車の駅がない。いわゆる“陸の孤島”だ。しかし、1000年以上もの歴史ある山鹿温泉をはじめ、江戸時代の様式を今に伝える芝居小屋や、麹屋や造り酒屋が並ぶ石畳の街道など、素晴らしい景観に溢れ、訪れるたびに地域の魅力に触れることができる。

 ここでは毎年8月、2日間にわたって“山鹿灯籠まつり”が開催される。和紙と糊だけで作られる伝統工芸品“山鹿灯籠”によって、町全体が幻想的な光に灯される、九州屈指の祭りだ。2016〜19年に山本寛斎がこの祭りのアドバイザーを務めていたことから、僕も山鹿には数えきれないほど通っており、今や第二の故郷のように思っている。

 この山鹿灯籠まつりにおいて、とりわけ僕が心揺さぶられる行事が“千人灯籠踊り”と“奉納燈籠(上がり燈籠)”だ。千人灯籠踊りでは、日没後の黄昏時に、頭に金灯籠を掲げた約1000人の女性たちが、民謡の調べに乗せてゆったりと舞いを披露する。その姿がとても艶やかで、この世のものとは思えぬほど幽玄なのだ。その踊りが終わるころ、「ハーイトウロウ、ハーイトウロウ」という掛け声とともに、灯籠を乗せた約30基の神輿を大宮神社へと担ぎ込むのが、上がり灯籠だ。参道の向こうから掛け声が徐々に近づき、やがて神社へと遠のいていく様は、無常観というか、先祖の霊をあの世へと送り出す送り火のようにも感じられる。

 山鹿灯籠の起源は、第十二代天皇の景行天皇が深い霧に遭遇した際に、山鹿の里人がたいまつをかかげて現在の大宮神社まで導いたという伝説に由来する。以降、毎年この神社に灯火を献上するようになり、室町時代に灯火から和紙で作られた金灯籠へと代わったそうだ。

 そんな逸話のある山鹿灯籠は近年、より多くの人にその価値を届けるため、アロマディフューザーや縁起飾りといったインテリアにも活用されている。2016年には、われわれも「日本元気プロジェクト」のステージで、舞台衣装の小物として使用した。現在8人の“灯籠師”によって受け継がれており、ここでは最も若い中村潤弥さんに、その歴史とこれからを聞く。

高谷健太(以下、高谷):中村さんにとって山鹿灯籠まつりとはどのような祭りなのでしょうか?

灯籠師の中村潤弥(以下、中村):多くの人には千人灯籠踊りでなじみ深いと思いますが、歴史的には室町時代から続く上がり燈籠の方がずっと古いものになります。江戸時代になると、商工業で成り上がった富豪たちがより豪華な灯籠を灯籠師に作らせようと、現在のような創意工夫に富んだ灯籠が奉納されるようになったそうです。その後、昭和30年代頃になって、地域の人々が山鹿灯籠の復興を願い、祭りをさらに盛り上げるために千人灯籠踊りが生まれました。

高谷:豪商たちが町内ごとに競い合うようにして灯籠の技術も発展していったんですね。

中村:はい、そうです。江戸時代から昭和初期にかけては80ほどの団体・町内から、100基以上の灯籠が奉納されていたとも言われています。個人的には工芸品としての美しさはもちろん、街の文化として今も山鹿の人々に根付いていることが一番の魅力だと思います。

金属にも見みえる繊細な灯籠
重さはわずか卵1個分

高谷:中村さんはどのようなきっかけで、灯籠師になろうと思ったのですか?

中村:工作がもともと好きで、中学校の授業で山鹿灯籠づくりを体験したことがきっかけで興味を持ちました。生まれも育ちも山鹿ですが、大宮神社周辺の中心部ではなく、山鹿灯籠に親しんでいたわけではないんです。

高谷:そうだったのですね。僕も初めて金灯籠を見て、触れたときの衝撃は忘れません。繊細で美しい造形はもちろん、金属にしか見えないのに、あまりの軽さに驚きました。紙のわずかな厚みを貼り合わせて作られているんですよね?

中村:金灯籠でいえば、手すき和紙だけで作られています。中は空洞のため、重さは卵1個分くらいです。曲線部分に糊しろを作らないことで、ひずみのない美しい形に仕上がります。

高谷:卵1個分!?まさに熟練の技術ですね。

山鹿の「今」と「未来」

高谷:僕は2020年に逝去された中島清灯籠師とも交流があり、生前は「匠の技術とか言われても、使ってもらわないと意味がない。山鹿灯籠の技術を使って、ランプシェードをつくるのが、私の夢だ」と語っていました。いつも寡黙な中島灯籠師が、「売れるかな?」と笑みを浮かべていたことが今でも忘れられません。

中村:昔は市場向けに金灯籠しか作っていませんでしたが、7年ほど前からインテリアとしてモビールを販売し始めました。今はアロマディフューザーや縁起飾りなど、普段の生活に取り入れられるアイテムにまで拡大しています。工芸品に機能を持たせたことで、セレクトショップやアパレルブランドとの取引も増えているんです。

高谷:いい流れが生まれていますね。

中村:伝統工芸品としてではなく、純粋に「欲しい」と思い手に取ってもらえる商品ができたことは、山鹿灯籠にとって大きな進歩です。地元でも、20〜30代の同世代が、結納品や新築祝いとして縁起飾りを選んでくれることも多くなりました。人生の節目に、地元の伝統技術を取り入れた商品を選んでもらえるのは、とてもうれしいです。

高谷:先日、知人のバイヤーさんに山鹿のアロマディフューザーをご紹介したところ、目の前で全種類購入されておりました(笑)。中村さん自身も、人気漫画「ワンピース(ONE PIECE)」の“ゴーイング・メリー号”や、スタジオジブリの映画「天空の城ラピュタ」のラピュタ城を山鹿灯籠で制作するなど、作品の幅を広げていますね。

中村:「ワンピース」とジブリのファンなので、いつか作ってみたいと思っていて。夢がかなってうれしかったです。そもそも、山鹿灯籠を神社に奉納するのも、皆さんに見物してもらうことが目的だから、面白いと思ってもらう物作りは、山鹿灯籠の根幹にもあるんです。

高谷:なるほど。以前、青山の「スパイラルビル」で商品を拝見したときにも、山鹿灯籠の技術を生かしたさまざまなプロダクト開発をされていました。今後挑戦したいことはありますか?

中村:まずは灯籠師としての仕事を確立させていきたいです。きちんと商売を成り立たせないことには、伝統も技術も残していくことは難しい。いくら後継者を育てても、仕事がなければ後に続きませんから。何百年も続いてきた文化を、僕の代で終わらせないためにも、“残すだけ”ではなく時代に合った作品や商品を作っていきたいです。


山鹿に見る真の「豊かさ」とは

 国内外の都市から秘境の地まで、さまざまな場所に足を運んできたが、こんなにも魅力に富んだ場所を知らない。“山鹿灯籠まつり”はもちろん、僕にとっては残りの時期もときめきでいっぱいだ。目が合うと大きな声で挨拶をしてくれる子供たちがいて、古墳を訪れたら、1500年前の先祖と現代に生きる人々が地脈で繋がっていることを確かに感じる。生前寛斎も、「山鹿にある豊かさは、目に見える華美さではなく、日々の営みの中にある」と言っていた。それは、山鹿の市民にとっては当たり前の日常かもしれないが、今の時代において本当に貴重で、特別なものだと思う。

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慶大医学部教授・宮田裕章が「ギリギリを攻める」自身のスタイルとファッション業界について大いに語る

宮田裕章/慶應義塾大学医学部教授、データサイエンティスト

PROFILE:(みやた・ひろあき)1978年生まれ。2003年東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻修士課程修了。同分野保健学博士(論文)。早稲田大学人間科学学術院助手、東京大学大学院医学系研究科 医療品質評価学講座助教を経て、09年4月東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座 准教授、14年4月に同教授に就任(15年5月から非常勤) 。15年5月から慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室 教授、20年12月から大阪大学医学部 招へい教授に就任。著書に「共鳴する未来 データ革命で生み出すこれからの世界」)河出新書、「データ立国論」(PHP新書)などがある

 慶應義塾大学医学部教授であり、データサイエンティストの宮田裕章は、自宅の部屋を埋め尽くすほどに洋服を蓄える生粋のファッションアディクトだ。そのホワイトヘアとモードをまとう出立ちで報道番組やニュースメディアに出演し、その名前とビジュアルは瞬く間に世間へと広まった。

 宮田自身が人類のプリミティブな文明と位置づける“まとうこと”への哲学は、「枕草子」や「モナ・リザ」の話へと広がり、医療ビッグデータ活用のアカデミアでいながらアーティスト然とした感受性を併せ持つ彼の脳内の一角を占めるファッションについての話は興味深い。自身のファッション論に加え、データサイエンティストとしてファッション業界をどのように見ているのか。そしてその課題とは何か。理路整然と語る中にもファッションへの熱量が伝わってくるロングインタビュー。

世界をどう感じて、何をするのかは自分次第

WWDJAPAN(以下、WWD):テレビ番組出演時などの“攻めた”ファッションの印象が強いが、今のスタイルにたどり着くまでのきっかけは?

宮田裕章・慶應義塾大学医学部教授(以下、宮田):呉服屋を営んでいた祖母からの影響があります。祖母のスタイルは和服でも洋服でもとにかく強烈なものだったと記憶しており、それは「派手」というより「尖っていた」と言い表すほうがしっくりきます。そんな祖母の姿を幼少期から目にしてきた私もまた、“まとうこと”への意識が早い段階から芽生えていたように思います。

 そもそも、現代社会を生きていく上で“まとう”ことからは逃れられません。であれば、「好むと好まざるとにかかわらずなんらかの意味を持つものであり、それに対して自分はどういったスタイルを持つべきなのか」ということを10代半ばごろから考えてきました。また同時期には、「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」のデザイナー、川久保玲さんの“自分と社会、または世界が向き合うための一つの考え方であり鎧である”や、“自らを奮い立たせるためのもの”といったコンセプトにとても共感していました。日頃制服を着用する高校生ながら私はそこから徐々にモードの世界へと入り込み、大学進学後、着る服に制限がかからなくなったことで本格的にワードローブとして取り入れるようになりました。

WWD:当時よく着ていたのは?

宮田:「コム デ ギャルソン」のパッチワークのアイテムや、エディ・スリマン(Hedi Slimane)が手掛けていた「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」(現「サンローラン」)。「ヘルムート ラング(HELMUT LANG)」や「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」などです。エディ・スリマンの「イヴ・サンローラン」のファーストコレクションで登場したワイドパンツは今でも穿いています。あとは初期の「メゾン マルタン マルジェラ(MAISON MARTIN MARGIELA)」(現「メゾン マルジェラ」)。ファッションの刹那的な側面ではなく、100年の歴史を見通すなかでのスタンダードを考えるというアイデアに斬新さを覚えました。2010年前後にはフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)の「セリーヌ(CELINE)」や、リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)の「ジバンシィ(GIVENCHY)」など、ウィメンズ展開の服も着ていました。

WWD:番組出演でもテーマに合わせてファッションを決めることもあるがファッションの重要性は?

宮田:高校生の頃から、自分が何者でもないにもかかわらず「世界をどう感じて、何をするのか」などと意気込んでいました。10代の多感な時期というのはさまざまな物事とつながることができる時期でもあって。私が学生時代にもネット環境はありましたが今ほどのものではなく、書籍など直接アーカイブに触れるほうが主流でした。それらをもとに時間軸をさかのぼり、いろいろな物事とつながって、何が大切なのかというのを掘り下げていましたが、その中でもファッションはとても大切な存在だったと当時も今も感じます。ファッションには言葉を介さずとも、こうした志やアティテュードを奮い立たせたり、同じ意識を持つもの同士を共鳴させたりする性質があるように思います。そういった面で、私がマスメディアに登場した際のスタイルに共感できる何かを感じ取ってくれる方がいることは大変光栄なことです。

WWD:今日のスタイリングについて教えてほしい。

宮田:あえてブランドをミックスして着てきました。白のアウターはラフ・シモンズが手掛ける「プラダ(PRADA)」で、ピーター・デ・ポッター(Peter De Potter)のアートワークが使用されています。花柄のインナーはヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)期の「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」。彼の提案するファッションスタイルの中でも、ダイバーシティー&インクルージョンの打ち出しや考え方にとても共感していました。スニーカーはデムナ(Demna)が手掛ける「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のランナー。個人的にですが、デムナはファッションが似たようなものであふれた時代に新たな動きをもたらした功労者だと思っています。また、美醜を超えたチャレンジングな表現を一貫している点も素晴らしいですね。パンツは古着で「マリテ + フランソワ ジルボー(MARITHE + FRANCOIS GIRBAUD)。これは渋谷の古着屋「シーン(SCENE)」で購入しました。オーナーの伊藤さんは原宿にあった古着屋「ゴーゲッター(GO-GETTER)」でバイイングをされていた方で、私は伊藤さんのことをリスペクトしています。ピアスは「クロムハーツ(CHROME HEARTS)」のペンダントトップをフェイクピアスとして使っています。フェイクピアスは自分の中でファッションの密やかな楽しみ方の一つですね。バングルは代官山の「リフト(LIFT)」で購入したもので、自然をモチーフにしたデザインになっています。

今の世界と美しさの基準を知るためのパリコレ

WWD:服を選ぶときのこだわりやポイントは?

宮田:自分に備わる属性や伝えたいインスピレーションと、洋服が響き合うことを大切にしています。私の中には自分のパーソナリティーがいくつかの“キーワード”として存在していて、基本はそれに沿いながら服を選んでいます。そのキーワードに合わないものを取り入れると事故が起こりますし(笑)、かといって同じものばかりではマンネリズムを起こすので、属性に合わせつつうまく崩すことで調整しています。ちなみにこのキーワードをお教えすることはできません(笑)。それは広告などで、“さわやか”をキーワードにする表現において「さわやか」と口に出して説明してしまうような、元も子もないものになるからです。ただ、絶対キーワードにならないものはあります。それは“愉快”。面白い系の服は自分に似合わないんです。「ウォルター ヴァン ベイレンドンク(WALTER VAN BEIRENDONCK)」の服がすごく好きで今までに何度も買っているんですが、そのたびに大事故を起こしてきました……(笑)。同様に、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)の「グッチ(GUCCI)」も好きですが彼のユーモラスな感性が自分に似合わず、着るとけんかしてしまいます。定期的な事故は大事な経験だと思う一方で、さすがに20年以上いろいろな洋服を着てきたことで、愉快は似合わないと理解しました。

WWD:ファッションの情報はどのように入手している?

宮田:メゾンブランドのショー開始を待ち構えてリアルタイムで視聴、なんていうこともしていましたが、最近はリアルタイムにこだわらずアーカイブとして上がってきたショーをチェックして、その中から関心を持ったブランドを探ることが多いです。コロナウイルスの影響でブランド側もオンラインを前提に映像を作ったりと、さまざまな変化が見られます。私としても、コレクション発表の現地にいることや情報をリアルタイムで入手することより、「みんなは今世界をどう見ているのか」や、「何を美しいとしているのか」など、インスピレーションをどう受け取るかを大切にするようにしています。そういった意味では、パリのウィメンズコレクションが見ていて一番楽しいです。ファッションの流れは基本的にウィメンズから作られていて、実際にも多くのメゾンがウィメンズに力を入れていますよね。そこに新しい時代や息吹きが込められているのだと感じます。コレクション時期には、いろいろなファッションメディアにも目を通します。例えば「WWDJAPAN」ならこのコレクションをどう捉えているのかと、答え合わせのように確かめていく作業も好きなんです。それもまた、ファッションの楽しみ方の一つの側面だと思っています。

WWD:現在、好きなブランドは?

宮田:決まったブランドは特にありませんが、ここ最近だと現代美術家のスターリング・ルビー(Sterling Ruby)の服をよく着ています。彼の作品、そして洋服から、異なるもの同士の出合いや相反する存在を組み合わせることで生まれる強烈なエネルギーを感じ取っています。この感覚というのは、現在進めている飛騨での大学作り「Co-Innovation University」(仮称)をはじめ、人と人、人と世界、人と社会をどうつなぐかという私自身のクリエイションともつながる部分があるように思えるんです。

WWD:会ってみたいデザイナーは?

宮田:まず、川久保玲さん。ですが過去に一度対談をオファーさせていただいたことがありますが断られてしまったので難しいでしょうね。あとはデムナ・ヴァザリア。彼が見ているファッションの未来は知りたいです。まぁどちらも、向こうからしたら「誰だお前は」って感じでしょう(笑)。会ってみたい、からは少し離れますが「ユイマ ナカザト(YUIMA NAKAZATO)」のデザイナー中里くん。「ファッションフロンティアプログラム(FFP)」というプロジェクトの発起人で、私も一緒に審査員をやらせてもらっていますが、彼は若手の中で期待値がとても高く、面白いデザイナーだと思います。

「変化する状況を踏まえて、ギリギリを攻めています」

WWD:ファッションスタイル以外に髪型も注目を集めたが、今のヘアスタイルはいつごろから?

宮田:ホワイトブリーチにしたのは5年ほど前からです。その前は黒髪の長髪、さらにその前はアシンメトリーと、もともとエッジが立ったヘアスタイルを好んできました。おそらく日本の多くの皆さんが私を認識してくれたのは、NHK「クローズアップ現代」や日本テレビ「真相報道 バンキシャ!」などの番組出演あたりからだと思います。マスメディアというのは大衆に対しての発信を意図している性質上、少しはみ出したようなことをするとすぐに「それはどうかと思うよ」と言われる空気が強かったりします。私はそれをある程度読みながらも、ある部分では覚悟のもと傾(かぶ)く、という姿勢で続けています。ファッションでもヘアスタイルでも、自分の中のスタンダードを変えるとき、大きく踏み出すと狂気じみた存在になりますよね。私は既に故人となったアレキサンダー・マックイーン(Lee Alexander McQueen)が放っていた狂気も好きですが、スタンダードを考える場合だとある程度のバランスが必要になります。そこで、「WWDJAPAN」や「VOGUE RUNWAY」、あとは当時だと「STYLE.COM」など、モードの過去10年分ほどのアーカイブに目を通し、狂気まではいかず、しかし多すぎて陳腐化しないものは何かとリサーチしました。その中から特に直近3年間で、時折登場してくるものの流行までに及んでいないのがホワイトブリーチだったんです。

 もう一つ別の理由として、私が教授として勤めている慶應大学病院にはTPOがあります。それは接客業としての身だしなみのようなもので、肩以上の長さになったら束ねる、攻撃的な色は禁止などです。そこでも白系のカラーならTPOを守れているな、と思いました。なぜなら、カラードヘアの中でもホワイトブリーチはエクストリームなわけですが、いわゆる攻撃的な色ではないからです。これを攻撃的だとすると、シニアの方のシルバーヘアを否定することにつながる可能性があります。様々な状況下でギリギリを攻めている、といえるかもしれません(笑)。しかもこのホワイトブリーチはものすごくブリーチ時間が長くて、人によってはこの色になるまでに髪が溶けてしまう可能性もあるので、そもそもやる人が少ないです。万人向きではないので、流行する心配もありません。

 ただ、私自身が今後もこの髪型でい続けるかどうかは分かりません。これはファッションの面白さともつながる話になりますが、つい1週間前まで「こんなダサい格好するものか」と思っていたことが急にカッコよく見えたりする瞬間ってありますよね。私も学生時代、友だちに対して「あのときはあんなふうに言ってしまって悪かった。やっぱりこれは最高だよ」と、自分の言動や考えを180度覆した経験が何度もあります。その逆で、一生着続けると思っていた存在が急にどうでもよくなってしまう瞬間もある。その変化がファッションの醍醐味でもあると思っています。もちろん、その波を意図的に作り、使えるものを廃棄させる業界のビジネスモデルはサステナビリティという観点から変えなければなりませんが、移り変わる人の心の中で美しいものを探していく行為はとても大切なことです。これに関しては僕ら世代より、インターネットを通して世界中とつながるアルファ世代の子どもたちのほうが「サステナビリティとは何か」や、「ウェルビーイングとは何か」などといった本質的な部分をキャッチできるような気がします。むしろ、彼らがつながったことによって磨き上げてきた倫理観が今の世界をドライブしているとも言えます。

千年前の刹那の美、五百年前の普遍の美

WWD:自分の価値観に影響を与えた存在は?

宮田:清少納言の「枕草子」と、レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)が描いた「モナ・リザ」です。まず「枕草子」ですが、これは私にとってファッションのバイブルです。私のような研究者や新たに事業を興す人物たちは、今後世界でどれが普遍的でスタンダードな存在になるのかを探り、揺るがないものに価値を置きます。それこそマルタン・マルジェラの“100年の歴史を見通す中でのスタンダード”や、メンズならば時計やビンテージデニムをはき続けることにも近く、私も一人の研究者として普遍的な美を大事に思っています。しかしその一方で、変わりゆく一瞬の中にある美しさというのも大切にしたいものになります。

 「枕草子」は冒頭を飾るフレーズ「春はあけぼの」から幕を開けます。当時の価値観においても「春=桜(花)」ですが、しかしそのあとも「やうやう白くなりゆく山ぎは……」と続きます。清少納言は、冬が終わって訪れる命の芽吹きを夜明けに例え、周辺が次第に明るくなっていく様子や命そのものが灯っていくさまを「春」としています。清少納言と、彼女が仕えていた中宮定子のサロンが有していたエッジの効いたセンスが際立つ表現ですが、私はこの瞬間の美しさを捉えた「枕草子」とファッションに覚える刹那的な感覚は共通するように感じました。現代では刹那的なファッションの存在は軽視されがちでもありますが、移ろいゆく美しさはファッションの素晴らしい部分ですし、どの産業と比べてもそこを明確に表現しているのがファッションだと私は思っています。

 次に「モナ・リザ」ですが、これは私のキャリア開始時に何をしたいか考えていた際、「モナ・リザ」を見る機会がありました。そのことが自分にとってかなり大切な体験になっています。この作品には諸説あるため、ここでお話しするのは私の考えになりますが、ダ・ヴィンチが「モナ・リザ」を通して伝えたかったことは普遍的な美であり、微笑みで人と人とがポジティブに共鳴し合うことこそが美しさなのではないか、と考えています。

 後世の学者たちが検証した結果、ダ・ヴィンチはいろいろな作品を残していたことから万能の天才なんていわれてもいますが、それらは全部「モナ・リザ」を描くための手段であったと考えます。死体を解剖していたというのも表情筋を研究するためで、「笑顔とは何か」を知ることでスフマート画法にたどり着いたのではないでしょうか。また、物理学も学ぶことでダ・ヴィンチは超遠近画法による無二の空間を作品内に表現しています。

 そして、作品に描かれた人物。女神でも偉人でもなければ、かつての美意識からも美しい存在ではない「モナ・リザ」は今見ても微妙で、ただただ一人の女性が微笑んでいる絵画なのに、作品を目の前にするとなぜか時間が滞留しているように感じるのです。おそらく、鑑賞者と「モナ・リザ」の視点が結ばれたときに作品は完成するのだと思います。人類が誕生したときからこの先千年、一万年……ダ・ヴィンチは「モナ・リザ」の微笑みによって普遍的に大切なことを表現しているのか、とまぁ私の勝手な解釈ですが(笑)。とにかく感銘を受けて、自分もこんな仕事をしたいと思いました。もちろん私はダ・ヴィンチのようにはなれないし、彼も今の時代を生きていたらきっと油彩画家ではないだろうとも思いつつ、そのとき感じたイメージに近づけるように意識しているので「モナ・リザ」からの影響は大きいものでした。

“まとう”ことでコミュニティーが形成される未来

WWD:著書「データ立国論」の中で、社会はデータ活用による「個別最適」へと移行し「最大“多様”の最大幸福」の実現が重要と述べているが、今後、個人に最適化されたファッションは提供される?

宮田:データ活用による「個別最適」はファッション業界を発展させていく一つの契機だと思っています。これまでの歴史上、ファッションの個別化にはオートクチュールがありますが、お金と時間を有する人だけを対象にしたもので現実的とはいえず、多くの人にとってファッションは作られた歯車の中に存在しているわけです。この個別化の考えはこれからの十数年で変わっていくだろうといわれています。

 映画や音楽など、エンターテインメント業界はすでに「個別最適」にシフトしていて、全員が同じものを見たり聴いたりするのではなく、一人一人の個性を捉えた上でもの作りをしていく流れがクリエイターたちにも備わってきていますよね。幅広い層の集客や購買のための“みんなの人気もの”は、みんなという不特定多数の存在によって牙を落とされ、分かりやすく、非常に典型的なブランディングによって拡散していくことになります。しかし今は、例えば映像の世界であれば映画館の集客を見込む方法よりも早く世界中とつながることができ、魅力的な作品を生み出せば経済を回せるようになっています。データの活用によってクリエイションの時代は間違いなく変わり始めていて、それがファッションにもやってくるのではないかなと。

WWD:さらに「データ立国論」の中での将来の話として、ファッションが好きで環境問題に興味がある人が、エシカル素材の商品を購入することでその行動履歴がアプリのポイントとして蓄積され、ポイントが高い人たちは「ソーシャルグッド・ファッショニスタ」に認定されることで、お金では買えない体験をすることができる時代が来るという話が興味深い。

宮田:例として中国ではユーザーが環境にいい行動をするとバーチャルで植物が育っていくアプリケーションが実際に開発、運用されています。その植物を一定以上育てていくと、今度は本当に植樹されるというシステムで、植樹された自分の植物を見に行くツアーを開催している会社もあったりします。

 つまり、以前なら見えづらかった行動がデータ活用によって個別に可視化されるようになってきているということなんです。環境は一つの切り口になりますが、ファッションは今後服を着ることや瞬間的な映えだけではなく、多様なコミュニティーの中で何を大事にして、どういうふうに人や社会とつながっていくかという役割を担う可能性を大いに秘めていると思います。なぜならファッションは元来から、言葉で説明せずとも“まとうこと”でつながりを形成していける性質を備えているからです。

 そして、服を着る意味も変わってくるだろうと予想されます。多様性の中からいかに未来を作れるかは、日本のビジネスにとっても非常に重要なところで、その面でもファッションが果たせる役目は大きいように感じます。さらにこれからの時代、メタバースになれば、いよいよファッションの振り幅は広がります。男性の私がバーチャル空間で女性の体をしたアバターによってファッションを楽しむこともできるかもしれません。現実空間における自分の体形の限界と向き合いながら選択するファッションだけではなく、制限のかからないところでファッションにまつわるさまざまなことを楽しみながら、リアル空間でそれをバックアップしていくファッションのあり方が生まれていいと思っています。これからは、今までのファッション産業が変わるだけではなく、ほかのビジネス分野や社会と結びつきながらどう成長していくかがポイントなのではないでしょうか。

WWD:同書にはフューチャータグを例にした「この洋服を買うことは、生地の生産国の労働者を支援する基金の支援につながる。さらに洋服のタグにスマートフォンをかざせば、生産者それぞれの情報がすぐに出てきて、どんな人々の支援につながるのかといった情報も得られる」とあるが、洋服を買う際の付加価値についてどう考える?

宮田:まずは自分がまとうものより先に、人への贈りものとして広がっていくのではないでしょうか。いろいろな企業と話をしていると「自分のものは安くて便利なもの」という風潮はいまだ強く、人へ何かを贈るときに気を配る人が大半です。そうなると、「これは良いものです」や、「おいしい」、服ならば「似合う」など、それらをフルチューニングするのは難しいですよね。けれども、善意の中で「未来に貢献するものです」というものであれば、より贈りやすく、受け取りやすくもなるはすなので。

「データはあくまでも手段です」

WWD:ファッション業界への提言は?

宮田:一つ言えるのは、モノを売るだけの時代はどの産業においても終わります。今はモノを売るという感覚の時代ではないので。それこそ医療の現場は今、だれが、どういう薬を、どのタイミングで提供して、それを飲んだ人が元気になったのかまでのデータを回すことで初めて価値が発生する時代になっています。薬を売り、多剤投薬で何かしらの害や副作用が出たけど知らん顔、なんて企業は絶対に生き残れません。

 音楽にしても、もはやCDだけを頑張って売る時代ではないですよね。それに、CDを買って1年間で2、3回しか聴かない人もいれば、何十回と繰り返して聴く人もいるかもしれないのに、同じ価格というのもよくよく考えてみればおかしな話なのかもしれません。音楽は、聴くという体験を売るビジネスへと変わり、さらにどういうシチュエーションでどう聴くかまでになっています。スマートフォンを通じて聴くかや、ライブで聴くのかなど、それぞれに付加価値をつけながら体験を作っています。

 服もまた、売るだけのビジネスからその服を着てどういう生活を送るのかにシフトするのだろうと思います。ファッション産業においてはそこを捉えるようなビジネスが次のスタンダードをつかむのでしょう。今までアナログで分かり合ってきたものが、今ならデータによって具体的に理解することができます。そうすると余剰在庫を出さずに、生産、受注管理を行うことも現実的になってきます。もちろんそのためにはエンゲージメントの高いコミュニティーをしっかり形成しなければ成立しませんし、ファストファッションのような超大量生産では人のニーズをつかみきれない部分が出てくるという点で、全てのブランドで同じことができるかは課題になってくるのだと思います。

 この先の時代はNFTや新しいデジタルマネーなど、さらに多様なコミュニティーが生まれていきます。WEB3.0以降においては、トップダウンで大きなものを作ることより、ボトムアップで生まれてくる多様な価値でありコミュニティーをいかに多層的につなげるかがカギを握っていくことになるのだと思います。そうなると、人々のライフスタイルを彩る美しい体験や楽しさ、さまざまな文化の架け橋として大きな可能性があるのがファッションです。

 これまでの日本だとドレスコードは個性を刈り取るものとして存在してきました。いかに無難なのかが重要視され、私自身そこと向き合ってきましたが、本来のドレスコードというのはルールの中で個性を表現することです。そのことからスーツや制服、着物なども、オンラインが大きなウエイトを占めつつある現代で、いかに人と人との対話に寄り添う存在になり得るのかを創造した先に次の姿があるように感じます。私自身としても、個別化や多様化に対応するビジネスモデルを作るというのは職務上の鉄板ですが、データはあくまでも手段です。多様なコミュニティーを作ることと“まとう”ことを含めたファッションがつながっていくことも踏まえながら、その先に作るべき未来に向けて楔(くさび)をさしていきたいと考えています。

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「ザボディショップ」本国CEOが語る 「環境配慮型店舗拡大と商品ポートフォリオ再構築で2023年を飛躍の1年に」

 イギリス発の自然派化粧品ブランド「ザボディショップ(THE BODY SHOP)」は1976年の創業以来、社会と環境の変革を追求する事業を行い、チェンジメーカーとしてビューティ業界に革新をもたらしてきた。2017年9月にブラジル最大規模のビューティ企業、ナチュラ & コー(NATURA & CO.)の傘下に入り、原点回帰して再び存在感を強めている。17年12月からザボディショップインターナショナル(THE BODY SHOP INTERNATIONAL)を率いるデイビッド・ボイントン(David Boynton)CEOにブランドの目指す道を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):日本市場へは1990年に参入し、20年10月にイオンの子会社であるイオンフォレストから本国のザボディショップ・インターナショナル・リミテッドが株式を取得。10月からザボディショップジャパンが事業を引き継いだ。日本の業績、日本市場の変化はどのように捉えている?

デイビッド・ボイントン=ザボディショップインターナショナルCEO(以下、ボイントンCEO):今のところとても好調だ。ただ新型コロナの影響で市場が混乱し、チャネルにも変化があった。ボディショップジャパンにとってよかったのは、オムニチャネルがあること。これによって物理的な店舗のトラフィックが減ったもののeコマースの売り上げが増えた。もちろんコロナ禍前の計画に及んでいないが、進捗度は良いし、今後の展望に関してもハッピーな目で見ている。

WWD:創業時から手掛けるリフィルステーションや、サステナブルとエシカルにフォーカスした店舗であるアクティビストワークショップは世界中で展開する。その中でも日本の進捗は、世界と比べても進んでいるのか。

ボイントンCEO:現在、全世界でアクティビストワークショップは200店舗ある。日本は今年度末までに20店舗を実現させる。リフィルステーションは日本では18カ所ある。世界のほかの市場と比べても日本の進捗のペースは同等、あるいはほかの地域より少し早いペースで進んでいる。

東海道新幹線の再生アルミを店内什器などに活用

WWD:日本独自のアクティビストワークショップの取り組みとしては、東海道新幹線の再生アルミを店内什器やスキンケアツールに利用しているが、その話があったときにどう感じたのか。

ボイントンCEO:とても素晴らしいアイディアだ。グローバルブランドのため、世界のどこでも「ザボディショップ」と認識される一貫性は重要。その一方で、それぞれでその国らしさを打ち出すことも大切だ。東海道新幹線の再生アルミの利用は、ビューティ産業におけるサステナビリティをリードする立場にあることをとても表し、素晴らしいと思う。そしてリサイクル、リユースという考え方、店舗のデザインといった細かいところまでとても丁寧に行われているので、日本を象徴している。日本のチームが世界のどこのチームより最もクリエイティブだ。リサイクルの観点でも今後ますますアルミニウムは重要性が高まっていくので、このコンセプトは素晴らしい。

WWD:来年、日本市場に期待することとは?

ボイントンCEO:当社が推進するアクティビストワークショップが4店舗増え、日本の全店舗に対し28%のシェアになる。17年にナチュラ & コーの傘下になり、新商品が出続けているがビーガン的な商品や、パッケージもサステナビリティの高いものばかりになっている。8月に主軸のベーシックスキンケアライン“DOY”を刷新し、“エーデルワイス”ラインとして発売したが、今後もフェイシャルスキンケアにはもっと力を入れていく方針だ。もともとユニセックスな商品であるため、男性客が増えているが、さらに男性の使用率を高めたい。そのほか、アクティビズムキャンペーン「BE SEEN. BE HEARD」の取り組みをグローバルに行う中で、日本では若者の政治参画を促す団体NO YOUTH NO JAPANとコラボレーションを進めている。店舗の環境もどんどん良くなってアップグレードが進んでいること、商品のポートフォリオに大きな期待ができること、そして社会的な課題に対しての取り組みが進む。そういう意味で、23年はとてもよい年になると思っている。

コロナ禍で全世界の93%の店舗が休業

WWD: 20、21年と各社厳しい状態にあったが、ザボディショップインターナショナル全体の状況は。

ボイントンCEO:グルーブ全体も大変な時期だった。20年は全世界の店舗の93%が休業する経験をした。各社がその時期にeコマースへの転換・増加が顕著にみられたが、当グループもEC売り上げが3〜4倍に増えた。それからイギリスで20年以上前から展開するダイレクトセリングのビジネスモデルがある。「ザボディショップ アットホーム」という訪問販売的な直接販売の一つの形態で、これらを展開するイギリスとオーストラリアの一部では店舗休業による売り上げ減をかなり埋めてくれる役割を果たした。

WWD:22年はかつてないほど難しい年になりそう?

ボイントンCEO:多くの国でコロナ禍が収束できていない。さらにヨーロッパでは戦争が勃発し、インフレが激しくなり生活費が非常に高くなった。そうはいうものの、22年は4半期ごとに回復している。22年第4四半期は最もいい業績になる予定で、それを跳躍台に23年に入っていけるだろう。アクティビストワークショップのパフォーマンスは、従来型の店舗と比べても強い業績・パフォーマンスをすでに発揮しているし、新しい商品も従来のものより結果を出している。

ビューティ業界のゲームチェンジャー

WWD:創業時からゲームチェンジャーとしてビューティ業界に影響を与えてきた。

ボイントンCEO:創業者のアニータ・ロディック(Anita Roddick)自身が初期の店舗でリフィルをはじめていたし、フォーミュラも自然な原料を使って作っていた。当時のビューティ業界でこれは非常に珍しいこと。まさに業界を変えるゲームチェンジャーの取り組みだった。彼女は女性のエンパワーメント・社会進出・リーダーシップを取ることについてもリードしてきた。それに関してアニータが言ったのは「世界にはスーパーモデルの女性は7人しかいないけど、なんでほかの女性を称えないのか」と(※当時の美容業界は外見の美を追求していた。外見至上主義にアニータは違和感を覚えていた。今でこそ「ありのままの美」がうたわれるが、それを創業時から訴えていた)。業界の動物実験禁止にも貢献した。これはブランドの中核的なDNAだ。

 しかし07年にアニータが亡くなった後、「自分たちは他とは違う存在である」という方向性を失っていた時期が10年ほどあった。17年にナチュラ& コーが親会社になり新しい経営陣が入り、もう一度アニータの考えに立ち戻り、アニータのレガシィを生かすためにはどうすればいいのかを真剣に考えるようになった。再びゲームチェンジャーになるために、リサイクルの分野でリーダーになることを決心した。さらに処方も自然原料を使いながら有効性も高める。そして社会的な課題である物事にも取り組もうということで「BE SEEN. BE HEARD」も行う。アニータがゲームチェンジャーであるべきと考えたミッションに立ち戻ると決めた。

サステナブルで倫理的な企業の証明でBコープ認証取得

WWD:リサイクル分野や自然原料を用いた処方などは、Bコープ(B Corp/「Benefit Corporation」の略)認証の取得につながっている。

ボイントンCEO:私がザボディショップインターナショナルに入社した際、「サステナブルで倫理的。とても優れた企業だ」とスタッフから口をそろえて言われた。しかし、具体的に証明できないためBコープの認証を取得した。これは80以上の国と地域でビジネスを展開しているわれわれのような企業にとっては複雑で、容易ではなかった。Bコープ側から受けた監査はかつてないほど細かく厳しいものだったので取得でき誇りに感じている。

WWD:日本はBコープ認証が浸透していないが、イギリスでは購入する際の選択の一つにBコープ認証取得が入っているのか。

ボイントンCEO:その傾向が高まりつつある。全体的に社会問題への意識、環境問題への意識が高まっている。23年はBコープの更新が控えており、厳しいチャレンジだが再取得できると確信している。

WWD:23年はグローバルでもポジティブな状況になりそうだ。

ボイントンCEO:コロナ禍前のビジネスに戻す時期と捉えている。今年はコロナ禍や戦争下で対応するべきことを必死に務めてきた。それを全て見直しリセットする。世界中の消費者に「ザボディショップ」が創業時からの倫理的でサステナブルなビューティ業界のパイオニアであることのストーリーが語れるような年にする。それが全スタッフのモチベーションにもなっている。日本の消費者にも語りきれていない部分も多いが、優秀な日本のチームがいるので期待して欲しい。

PHOTOS:SHUHEI SHINE

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「ガルプラ」出身スー・ルイチー あのヘアカラーの秘話やお気にりの日本アニメを語る

スー・ルイチー/アーティスト

PROFILE:2000年8月20生まれ、中国・四川省出身。身長164cm。2017年と18年にガールズグループのメンバーとして2度デビューし、2度のオーディション番組出演も経験後、21年に「Girls Planet 999:少女祭典」へエントリー。9位までがデビューを勝ち取れる中、13位で惜しくも敗退。その後、同年12月に楽曲「《燎》(The Phoenix)」で本格的なソロ活動をスタートさせた

 中国・四川省出身のスー・ルイチー(Sury Su)は、韓国の音楽専門チャンネル「エムネット(Mnet)」による2021年放送の日本・中国・韓国の合同ガールズグループオーディション番組「ガルプラ」こと、「Girls Planet 999:少女祭典」に出演していたアーティストだ。番組では約1万3000人の応募者から選ばれた3カ国33人の合計99人がエントリーし、数々の試練やファン投票を通して18人のファイナリストを選出。最終的に勝ち残った9人がガールズグループのケプラー(Kep1er)としてデビューした。ファイナリスト18人でファンからの人気は高かったものの、ケプラー入りを惜しくも逃してしまったのがルイチーである。

 歌、ラップ、ダンスの三拍子がそろったオールラウンダーのルイチーは、21年12月から自国でソロ活動をスタートし、わずか半年後の22年4月には楽曲「≪燎≫ The Phoenix」で日本デビュー。勢いそのままに、10月にはアーティストの一発撮りのライブを発信する人気ユーチューブチャンネル「ザ・ファースト・テイク(THE FIRT TAKE)」に、史上初の中国人ソロ・アーティストとして出演した。今回、これを記念して彼女の素顔に迫るインタビューを実施。「ガルプラ」へエントリーしたきっかけや、ソロデビューの経緯、好きな日本のアニメについてまで、赤裸々に語った。

日本デビュー曲の「≪燎≫ The Phoenix」。「ザ・ファースト・テイク」の特別バーションとして、日本語と中国語、そしてラップパートでは英語を駆使するオリジナルアレンジを披露した

「Girls Planet 999:少女祭典」出演前にリリースした「≪摘星≫ Seize The Light」

ーーまずは、簡単なプロフィールから教えてください。

スー・ルイチー(以下、ルイチー):中国の四川省という、パンダや火鍋など辛い食べ物が有名な街で生まれました。家族構成は姉が1人いて、2人とも小さい頃から“興味があることや楽しいと思うことは何でもやっていい”という考えを持つ両親に育てられたので、今の仕事も応援してくれています。

ーーというと、両親の職業はエンタメ系でしょうか?

ルイチー:お父さんは税務局で働く公務員で、お母さんは主婦です。でも、お父さんは堅い職業ですが歌ったり踊ったりすることが好きな人で、小さい頃はお父さんの同僚の方とよくカラオケに行っていましたね。

ーー幼い頃の夢や影響を受けた憧れの人物は?

ルイチー:小さい頃は、テレビに出るのが夢でした。中国には有名なオーディション番組があり、両親と一緒にそれを見てモノマネをしていました。影響を受けたアーティストは、台湾の女性アイドルユニットのエスエイチイー(S.H.E)と、韓国の男性アイドルグループのスーパージュニア(SUPER JUNIOR)ですね。どちらもボーカルダンスグループで、世の中には彼らのようなグループがいるのかと驚き、ステージ上で輝く姿を見て心を打たれ、同じような仕事をしてみたかったんです。

ーーグループの一員としてステージに立ちたかったんでしょうか?

ルイチー:当時はそこまで考えていなくて、きっかけがグループだったので練習生になる必要があるとは思っていました。その先に何が待っているのかや、何をすればいいのかは分かりませんでしたし、考えてもいませんでしたね。

ーー中国は、ルイチーさんのように歌って踊る女性ソロアーティストのイメージが薄いです。

ルイチー:その通りで、ソロシンガーはたくさんいますが、私のように歌って踊るアーティストは少ないです。

ーー2017年と18年に2度デビューを経験していますが、その頃を振り返るといかがですか?

ルイチー:何もせず、何も考えずに出演していたなと思います。映る時の魅せ方や出方など、ブランディングをもっと考えれば良かったのに、日々ぼーっとしすぎていましたね。でも、その経験があったからこそ今に生かせているし、経験が糧にはなっています。

ーーそれでは、「ガルプラ」にエントリーしたきっかけを教えてください。

ルイチー:友人から日中韓の3カ国のオーディションがあると聞き、興味を持ちつつも最初は葛藤がありました。というのも、中国で受けた2回のオーディションがどちらもいい結果ではなかったし、プレッシャーも大きかったからです。ただ、国際的なカラーがすごく魅力的だったし、スーパージュニアが好きだったので、韓国に関わりがあるなら受けてみようと、体験したい気持ちが勝りました。

 「ガルプラ」では、みなさんが思うほど順調に物ごとは進まず、夜眠れない日があったり、初めて半年以上も海外に滞在したり、とにかく大変なことばかりでした。それでも、過去に中国で受けた2回のオーディションとは違い、最初から最後まで見せたい姿を見せることができたので悔いはないです。

ーー日中韓の文化の違いを感じるようなことはありましたか?

ルイチー:ざっくりですが、やっぱり国ごとに性格が違うなと思いましたね。中国は男の子っぽくて、日本はかわいらしくて、韓国はこだわりが強い。あと座り方一つとっても、中国は脚を開いて座るけど、日本は絶対に膝を付けて閉じているなど、常に新鮮でした。

ーー「ガルプラ」後、ソロデビューに至った経緯を教えてください。

ルイチー:グループを組む機会がいただけると思い「ガルプラ」に参加したのですが、実はその前からソロ活動のことを考えていました。結果として「ガルプラ」でグループを組むことができなかったので、ソロとしての活動を決めたんです。

ーー自らが考える強みと弱みは?

ルイチー:ステージ上での安定したパフォーマンス力が強みだと思っています。

ーー楽曲「≪燎≫ The Phoenix」は、「ガルプラ」での思いを込めた楽曲だそうですね。

ルイチー:歌詞を書いた時はパンデミックの隔離期間で、ゲームが好きなので、当時はオンラインの試合を観戦していました。誰にもどこにも期待されていなかったチームが優勝し、それが「ガルプラ」でいい結果を得られずに挫折しかけていた私の心に刺さって、その感情を歌詞に落とし込んだのが「≪燎≫ The Phoenix」なんです。ちなみに「リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)」を観戦していました(笑)。

ーー「≪燎≫ The Phoenix」は日本語版もありますが、母国語である中国語と歌い分ける難しさはありましたか?

ルイチー:日本語版は、発音がとにかく苦労しましたね。日本語と中国語の発音は全く違うので、レコーディングしている時に間違いを指摘されても、どこが間違っているのかすら分からず、直しようがない状態でした。言語によって歌い方を変えていて、中国版では屈しない気持ちを表現するため物語を語るように、日本語版では燃えたぎるような力強いイメージで歌っています。

ーーソロ楽曲とグループ楽曲を経験して思う、それぞれの違いは?

ルイチー:ソロになると全てを自分で表現しなければいけないので、実力も魅力も表現力も問われますよね。でも、裏を返せば全て自分でコントロールできるし、ほかの人との兼ね合いも気にせずにいられるので、自らが思い描く世界観を自由に表現できます。グループは、高音やダンスが苦手だったらほかのメンバーが補ってくれるし、長所を伸ばし短所を分散できるのが素晴らしいです。

ーー好きなファッションのスタイルはありますか?

ルイチー:ファッションはいろいろなスタイルに挑戦したいタイプで、カジュアルやヒップホップ、ロック、シンプル、デコラティブなど、ジャンルにとらわれずその時の気分で決めますね。とても好きなアイテムがあれば、それをベースにスタイリングを決めることが多いです。

ーーお気に入りのアイテムはありますか?

ルイチー:帽子とメガネが好きです。帽子を被るか被らないかでコーディネート全体のイメージが変わってくるし、メガネはアクセントになるので重宝します。

ーー「ガルプラ」では、ヘアカラーもアイデンティティーの一つでしたね。

ルイチー:ヘアカラーは、少し変わるだけで全体の雰囲気が一変するので気を遣っています。「ガルプラ」に出演していた時のグリーンっぽいブルーが印象的だとよく言われるんですが、実は本当はパープルだったのに、カラーシャンプーをして色が落ちてしまった状態なんです(笑)。近いうちにヘアカラーを変えようと思っているので、楽しみにしていてください!

ーー先ほど「リーグ・オブ・レジェンド」の名前が挙がりましたが、趣味はゲームで、日本のアニメも好きなんですよね?

ルイチー:アニメを観るようになったきっかけが、小学5年生の時に友だちに勧められた「フェアリーテイル(FAIRY TAIL)」で、日本の作品を観ることも多いです。「呪術廻戦」や「進撃の巨人」「鬼滅の刃」「東京喰種トーキョーグール」などもお気に入り。「リーグ・オブ・レジェンド」はバトルゲームだし、私はとにかく戦闘シーンが好きなんだと思います(笑)。

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「ガルプラ」出身スー・ルイチー あのヘアカラーの秘話やお気にりの日本アニメを語る

スー・ルイチー/アーティスト

PROFILE:2000年8月20生まれ、中国・四川省出身。身長164cm。2017年と18年にガールズグループのメンバーとして2度デビューし、2度のオーディション番組出演も経験後、21年に「Girls Planet 999:少女祭典」へエントリー。9位までがデビューを勝ち取れる中、13位で惜しくも敗退。その後、同年12月に楽曲「《燎》(The Phoenix)」で本格的なソロ活動をスタートさせた

 中国・四川省出身のスー・ルイチー(Sury Su)は、韓国の音楽専門チャンネル「エムネット(Mnet)」による2021年放送の日本・中国・韓国の合同ガールズグループオーディション番組「ガルプラ」こと、「Girls Planet 999:少女祭典」に出演していたアーティストだ。番組では約1万3000人の応募者から選ばれた3カ国33人の合計99人がエントリーし、数々の試練やファン投票を通して18人のファイナリストを選出。最終的に勝ち残った9人がガールズグループのケプラー(Kep1er)としてデビューした。ファイナリスト18人でファンからの人気は高かったものの、ケプラー入りを惜しくも逃してしまったのがルイチーである。

 歌、ラップ、ダンスの三拍子がそろったオールラウンダーのルイチーは、21年12月から自国でソロ活動をスタートし、わずか半年後の22年4月には楽曲「≪燎≫ The Phoenix」で日本デビュー。勢いそのままに、10月にはアーティストの一発撮りのライブを発信する人気ユーチューブチャンネル「ザ・ファースト・テイク(THE FIRT TAKE)」に、史上初の中国人ソロ・アーティストとして出演した。今回、これを記念して彼女の素顔に迫るインタビューを実施。「ガルプラ」へエントリーしたきっかけや、ソロデビューの経緯、好きな日本のアニメについてまで、赤裸々に語った。

日本デビュー曲の「≪燎≫ The Phoenix」。「ザ・ファースト・テイク」の特別バーションとして、日本語と中国語、そしてラップパートでは英語を駆使するオリジナルアレンジを披露した

「Girls Planet 999:少女祭典」出演前にリリースした「≪摘星≫ Seize The Light」

ーーまずは、簡単なプロフィールから教えてください。

スー・ルイチー(以下、ルイチー):中国の四川省という、パンダや火鍋など辛い食べ物が有名な街で生まれました。家族構成は姉が1人いて、2人とも小さい頃から“興味があることや楽しいと思うことは何でもやっていい”という考えを持つ両親に育てられたので、今の仕事も応援してくれています。

ーーというと、両親の職業はエンタメ系でしょうか?

ルイチー:お父さんは税務局で働く公務員で、お母さんは主婦です。でも、お父さんは堅い職業ですが歌ったり踊ったりすることが好きな人で、小さい頃はお父さんの同僚の方とよくカラオケに行っていましたね。

ーー幼い頃の夢や影響を受けた憧れの人物は?

ルイチー:小さい頃は、テレビに出るのが夢でした。中国には有名なオーディション番組があり、両親と一緒にそれを見てモノマネをしていました。影響を受けたアーティストは、台湾の女性アイドルユニットのエスエイチイー(S.H.E)と、韓国の男性アイドルグループのスーパージュニア(SUPER JUNIOR)ですね。どちらもボーカルダンスグループで、世の中には彼らのようなグループがいるのかと驚き、ステージ上で輝く姿を見て心を打たれ、同じような仕事をしてみたかったんです。

ーーグループの一員としてステージに立ちたかったんでしょうか?

ルイチー:当時はそこまで考えていなくて、きっかけがグループだったので練習生になる必要があるとは思っていました。その先に何が待っているのかや、何をすればいいのかは分かりませんでしたし、考えてもいませんでしたね。

ーー中国は、ルイチーさんのように歌って踊る女性ソロアーティストのイメージが薄いです。

ルイチー:その通りで、ソロシンガーはたくさんいますが、私のように歌って踊るアーティストは少ないです。

ーー2017年と18年に2度デビューを経験していますが、その頃を振り返るといかがですか?

ルイチー:何もせず、何も考えずに出演していたなと思います。映る時の魅せ方や出方など、ブランディングをもっと考えれば良かったのに、日々ぼーっとしすぎていましたね。でも、その経験があったからこそ今に生かせているし、経験が糧にはなっています。

ーーそれでは、「ガルプラ」にエントリーしたきっかけを教えてください。

ルイチー:友人から日中韓の3カ国のオーディションがあると聞き、興味を持ちつつも最初は葛藤がありました。というのも、中国で受けた2回のオーディションがどちらもいい結果ではなかったし、プレッシャーも大きかったからです。ただ、国際的なカラーがすごく魅力的だったし、スーパージュニアが好きだったので、韓国に関わりがあるなら受けてみようと、体験したい気持ちが勝りました。

 「ガルプラ」では、みなさんが思うほど順調に物ごとは進まず、夜眠れない日があったり、初めて半年以上も海外に滞在したり、とにかく大変なことばかりでした。それでも、過去に中国で受けた2回のオーディションとは違い、最初から最後まで見せたい姿を見せることができたので悔いはないです。

ーー日中韓の文化の違いを感じるようなことはありましたか?

ルイチー:ざっくりですが、やっぱり国ごとに性格が違うなと思いましたね。中国は男の子っぽくて、日本はかわいらしくて、韓国はこだわりが強い。あと座り方一つとっても、中国は脚を開いて座るけど、日本は絶対に膝を付けて閉じているなど、常に新鮮でした。

ーー「ガルプラ」後、ソロデビューに至った経緯を教えてください。

ルイチー:グループを組む機会がいただけると思い「ガルプラ」に参加したのですが、実はその前からソロ活動のことを考えていました。結果として「ガルプラ」でグループを組むことができなかったので、ソロとしての活動を決めたんです。

ーー自らが考える強みと弱みは?

ルイチー:ステージ上での安定したパフォーマンス力が強みだと思っています。

ーー楽曲「≪燎≫ The Phoenix」は、「ガルプラ」での思いを込めた楽曲だそうですね。

ルイチー:歌詞を書いた時はパンデミックの隔離期間で、ゲームが好きなので、当時はオンラインの試合を観戦していました。誰にもどこにも期待されていなかったチームが優勝し、それが「ガルプラ」でいい結果を得られずに挫折しかけていた私の心に刺さって、その感情を歌詞に落とし込んだのが「≪燎≫ The Phoenix」なんです。ちなみに「リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)」を観戦していました(笑)。

ーー「≪燎≫ The Phoenix」は日本語版もありますが、母国語である中国語と歌い分ける難しさはありましたか?

ルイチー:日本語版は、発音がとにかく苦労しましたね。日本語と中国語の発音は全く違うので、レコーディングしている時に間違いを指摘されても、どこが間違っているのかすら分からず、直しようがない状態でした。言語によって歌い方を変えていて、中国版では屈しない気持ちを表現するため物語を語るように、日本語版では燃えたぎるような力強いイメージで歌っています。

ーーソロ楽曲とグループ楽曲を経験して思う、それぞれの違いは?

ルイチー:ソロになると全てを自分で表現しなければいけないので、実力も魅力も表現力も問われますよね。でも、裏を返せば全て自分でコントロールできるし、ほかの人との兼ね合いも気にせずにいられるので、自らが思い描く世界観を自由に表現できます。グループは、高音やダンスが苦手だったらほかのメンバーが補ってくれるし、長所を伸ばし短所を分散できるのが素晴らしいです。

ーー好きなファッションのスタイルはありますか?

ルイチー:ファッションはいろいろなスタイルに挑戦したいタイプで、カジュアルやヒップホップ、ロック、シンプル、デコラティブなど、ジャンルにとらわれずその時の気分で決めますね。とても好きなアイテムがあれば、それをベースにスタイリングを決めることが多いです。

ーーお気に入りのアイテムはありますか?

ルイチー:帽子とメガネが好きです。帽子を被るか被らないかでコーディネート全体のイメージが変わってくるし、メガネはアクセントになるので重宝します。

ーー「ガルプラ」では、ヘアカラーもアイデンティティーの一つでしたね。

ルイチー:ヘアカラーは、少し変わるだけで全体の雰囲気が一変するので気を遣っています。「ガルプラ」に出演していた時のグリーンっぽいブルーが印象的だとよく言われるんですが、実は本当はパープルだったのに、カラーシャンプーをして色が落ちてしまった状態なんです(笑)。近いうちにヘアカラーを変えようと思っているので、楽しみにしていてください!

ーー先ほど「リーグ・オブ・レジェンド」の名前が挙がりましたが、趣味はゲームで、日本のアニメも好きなんですよね?

ルイチー:アニメを観るようになったきっかけが、小学5年生の時に友だちに勧められた「フェアリーテイル(FAIRY TAIL)」で、日本の作品を観ることも多いです。「呪術廻戦」や「進撃の巨人」「鬼滅の刃」「東京喰種トーキョーグール」などもお気に入り。「リーグ・オブ・レジェンド」はバトルゲームだし、私はとにかく戦闘シーンが好きなんだと思います(笑)。

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テックでビューティとファッションが融合すれば、人はもっと幸せになれる アイスタイル新社長&「WWDJAPAN」編集長の想い

 アイスタイルと「WWDJAPAN」は共同で、ファッションとビューティをイノベーションの面からリードした企業・プロジェクトを表彰する「ジャパン ビューティ&ファッションテックアワード 2022(Japan Beauty and Fashion Tech Awards 2022)」を開催する。これは、アイスタイルが開催してきた「ジャパン ビューティテックアワード」に、「WWDJAPAN」も参画することで対象領域をファッションにも拡大する取り組みだ。アイスタイルの遠藤宗新社長と、「WWDJAPAN」編集長の村上要が、ビューティテックの隆盛や、テクノロジーから融合するファッション×ビューティの可能性、そして、アワードに自薦・他薦で応募する企業への期待を語り合った。

ファッションテックへの期待

遠藤宗アイスタイル社長(以下、遠藤):ビューティでもファッションでも、消費者は「自分に合ったものを探したい、似合っているのか・そうでないのかを知りたい」と思っている。その欲求は、同じ。ビューティやヘルスケア、ファッションという広い領域のデータから、生活者をより深く総合的に理解できる時代がきている。だからこそ、それぞれのノウハウや技術がさらに融合すれば、それこそ「人を幸せにするイノベーション」が生まれるのではないか?

村上要「WWDJAPAN」編集長:アイスタイルが開催した「ジャパン ビューティテックアワード」には前回、審査員として参加した。例えば特別賞に輝いたオルビスの「通販向け出荷ラインに無人搬送ロボットを導入し、自動化促進」は、物流の迅速化で消費者を幸せにするのみならず、あえて手作業を残すことで、働く人のやりがいや、そこから伝わる温もりにもフォーカスしている。「ビューティ産業らしい」「誰も傷つけず、みんなを幸せにできる」と感動した。同じようなエモーションへの配慮は、むしろファッションの方がまさっているかもしれない。このアワードにファッションが加わり、双方がインスパイアし合うことで、テクノロジーとの融合のみならず、ファッションとビューティの融合さえ進んだら嬉しい。

遠藤:メタバースの世界になれば、アバターをメイクアップからファッションまで自在に創造できる。その意味でも、テクノロジーは2つの領域をつなげる。またビューティの世界では、たとえば花王はすごいテクノロジーでユーザーの利便性を一気に向上する研究開発に取り組んでいるが、みんながその存在や努力を知っているわけではない。そういった取り組みは、ファッションにも数多くあるのではないか?そこにスポットライトをあてたい。

村上:メタバースは、ファッション業界でもホットなキーワード。すでにラグジュアリーはマネタイズにも挑戦しているし、新たなコミュニティとしての利用を見据えているアパレル企業は数多い。そんなアパレル企業のメタバース・プロジェクトにビューティ企業が参画できれば、ユーザーのアバターがもっと可愛くなるのみならず、百貨店で言うところの「アパレルとビューティの買い周り」みたいな購買行動が生まれるかもしれない。

そもそもビューティとファッションは、
もっと融合すべき?できると思う?

遠藤:僕自身が化粧品業界に長くいるからかもしれないが、化粧品は、特にメイクにおいては製品選びもさることながら、使いこなす技術も必要。その意味で、化粧品は少しハードルが高く、ファッションのほうが多くの人たちが気軽にコーディネートを楽しめる世界なんじゃないかと思っている。また、服は毎日着替えても、メイクを毎日変える人はそこまで多くない。そういった違いをしっかり理解しながらファッションとビューティがどこでつながり融合するのか考えると、また楽しくて新しい世界が開くのではないか。ファッションもコスメも持つ「ブランド」という視点で考えてみると、メゾンの化粧品は「服は買えないけれど、化粧品なら買える」という存在だった。どちらも手に届く価格で、両方楽しめるブランドは少ない。「スナイデル(SNIDEL)」や、先日ローンチイベントをやらせていただいた「リエンダ(RIENDA)」などは、新しい例だろう。

村上:ファッションとビューティのニュースメディアを標榜し、双方の融合を説いているからこそ、「まだまだ近くて遠い存在だなぁ」という忸怩たる思いを抱くこともある。でも、消費者にとって「シャネル(CHANEL)」のバッグと「シャネル」のリップは、同じ「シャネル」。「ディオール(DIOR)」のドレスと「ディオール」のスキンケアは、同じ「ディオール」。そこに「ファッションだから」「ビューティだから」という線引きは存在せず、消費者は双方を自己実現や自己肯定、自己高揚のツールと捉えている。だからこそ、融合できるハズ。

遠藤:これからは、ブランドのアイデンティティがより大事になる。たとえば「パタゴニア(PATAGONIA)」が化粧品を出したら、「パタゴニア」というブランドを信頼している人たちが欲しいものをつくるはずで、ヒットするのではないか?

村上:すでに「グッチ(GUCCI)」がそんなカンジ。だから、このアワードにはファッション企業も挑戦して、ビューティの最前線を体感してほしい。実際、昨年の「ジャパン ビューティテックアワード」で殿堂入りしたパーフェクトのAR(拡張現実)技術やAI(人工知能)技術を活用した美容業界におけるソリューションサービス「YouCamメイク」は、メイクのみならずアイウエアやジュエリー、ヘアアクセサリーなどもバーチャル試着できる機能を搭載した。アパレル業界でも実装できるかもしれないテックが、ビューティの世界には詰まっている。

遠藤:今後、ファッションもビューティも持つブランドの融合においては、プロセス・エコノミー(商品を生み出すまでのプロセスを発信し、収益につなげる考え方)がすごく大事になってくるだろう。アイデンティティがしっかりしているブランドの化粧品への参入のポテンシャルは、とても大きい。逆に、しっかりした世界観をもつコスメブランドがアパレルをスタートするのも新鮮かもしれない。テクノロジーの発達でデータが可視化され、ビジネスが効率的になれば、本来のこういったアイデンティティやクリエイティブに集中する時間が生まれる。

村上:前回大賞を受賞したメナードの「刺激に敏感な肌を再現した新たな皮膚モデルの開発」は、もはやバイオテクノロジーのレベルだが、ファッションの世界にもスパイバーを筆頭に、川上にはバイオテクノロジーを応用・活用したテックが存在する。こういった企業やブランドは、もはや生活や地球環境を根本的に変えちゃうかもしれない存在。だからこそ、サイエンスな企業にも応募してほしい。

遠藤:アイスタイルも、人を幸せにするテックばかり考えてきた(笑)。生活者側からすれば「こんな化粧品と出合えてよかった」、ブランド側からすれば「こんなユーザーさんと出会えた」「使って喜んでもらえた」という世界をつくりたくて、クチコミプラットフォームやEC、リアル店舗を運営している。テクノロジーは、それをドライブするための大事な要素。だが最終的に大事なのは、ビューティやファッションでいかに多くの人たちを幸せにできるのか?それが原点と考えている。


 エントリーは現在絶賛受付中で、12月13日に受賞者を発表する。ファッションとビューティ、それぞれの分野で大賞と準大賞を選出し、大賞には賞金25万円、準大賞には15万円を授与する。

 対象となるのは、ファッション関連(衣服、雑貨、シューズなど)と美容(コスメ、ヘアケアなど)、ヘルスケア分野の、日本国内で企業活動を行っている外資も含む企業やプロジェクト。複数の団体や企業が参加する、業界横断型のジョイントプロジェクトなども含む。

 審査委員長には、梅澤高明A.T.カーニー日本法人会長兼CIC JAPAN会長が就任。審査員には七丈直弘・一橋大学ソーシャル・データサイエンス教育研究推進センター・副センター長/教授、「ヌメロ・トウキョウ(NUNERO TOKYO)」の田中杏子編集長、渡邉康太郎Takram コンテクストデザイナー/慶應義塾大学SFC特別招聘教授、皆川朋子一般社団法人フェムテック・コミュニティジャパン代表理事の就任が決まっている。

 審査基準やスケジュールなどの応募要項は以下の通り。


【ジャパン ビューティ&ファッションテックアワード 2022】
 審査基準・応募要項

【審査基準】
革新性:新しい体験や価値をもたらすコンセプトの革新性があるか
事業性:収益性のある事業として成立させるビジネスモデルがあるか
技術性:研究開発や技術面において優位性はあるか
社会性:事業を通じた社会への貢献が十分か

【開催スケジュール】
応募期間:2022年9月30日~10月21日23:59
一次審査通過者結果通知:2022年11月11日まで
二次審査実施・プレゼンテーション開催:2022年11月22日
発表・授賞式:2022年12月13日

【応募条件】
・自薦他薦を問いません
・指定の様式に必要事項をご記入の上、指定の方法でご提出ください
・期日までに事務局が受信したものが審査対象となります

応募規約はこちら

【主催】
株式会社アイスタイル 
株式会社INFASパブリケーションズ
Japan Beauty and Fashion Tech Awards 2022事務局

問い合わせ先
Japan Beauty and Fashion Tech Awards 2022事務局
jbfta@istyle.co.jp

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パタゴニアが自社古着を原料に循環Tシャツ製造へ 日本独自スキーム確立

 パタゴニア(PATAGONIA)は7月、無限にリサイクル可能な繊維“インフィナ(Infinna)”を用いたTシャツを発売した。“インフィナ”はフィンランドのスタートアップ企業インフィニテッドファイバー(INFINITED FIBER)がコットンなどのセルロース系繊維の使用済み繊維を原料に再生した新しいリサイクル繊維で、柔らかく丈夫で肌触りはコットンの風合いを持つ。

 日本支社はインフィナを用いた製品発売に合わせて独自の回収スキームを確立した。店頭で回収した使い古したコットンなどのセルロース繊維の衣料を集めて、インフィニテッドファイバーに送り、新たなパタゴニア製品の原料として活用するというもの。不要になった社製品を回収して自社サプライチェーンに戻す新しい試みでもある。日本支社の責任者である篠健司環境社会部ブランド・レスポンシビリティ・マネージャーに聞く。

WWD:コットン古着から新たにセルロース繊維を作る技術を持つインフィニテッドファイバーと複数年契約を結んだ。その目的は?

篠健司環境社会部ブランド・レスポンシビリティ・マネージャー(以下、篠):パタゴニアもインフィニテッドファイバーも循環性を追求している。アパレル産業の大部分が「テイク・メイク・ウェイスト(取って、作って、捨てる)」というモデルに基づいていて、不要となった衣類がどうなるかについては責任を負っていない。世界中で廃棄される繊維は毎年60%ずつ増加し、2030年には年間1億4800万トンに上ると予測されている。素材自体がリサイクル繊維だったとしても、回収されて再利用される繊維はわずかしかない。インフィニテッドファイバーはポストコンシューマー(使い古された)コットンなどのセルロース繊維を素材に戻すことができる技術を持っている。同社は現在、工場を新設しておりパイロットレベルから商業レベルになる。今後、パタゴニアでは“インフィナ”を用いた製品が増える予定だ。

WWD:コットン(セルロース系繊維)古着から新しい繊維を作る技術を持つ企業は他にもあるが、なぜインフィニテッドファイバーだったのか?

:ビスコースの生産に使われる有毒な二硫化炭素の代わりに、動物飼料グレードの尿素を使用しているので、有機溶媒は必要ない。また、再生する際にパウダーにまで戻すので、(コットン古着を原料にセルロース繊維を作ると短繊維になり強度に問題がある場合が多い)100%“インフィナ”で衣類を作ることも可能だ。セルロース系廃棄物から柔らかく丈夫で肌触りもコットンに近い繊維ができる。

WWD:当面の日本の回収目標は300kgだとか。パートナー企業やスキームについて教えてほしい。

:豊田通商が自社ネットワークとリサイクル事業基盤を生かし、子会社であるナカノが分別した繊維をインフィニテッドファイバーに輸出する。豊田通商は長年パタゴニアのサプライヤーでもあり、当社の循環型の仕組みを理解していただいている。ナカノは故繊維をリサイクルした再生繊維原料やウエス、軍手の製造販売、良質の中古衣料を海外に輸出することを通じて日本の繊維循環を支えている企業。“インフィナ”の原料になるのはコットン90%以上の製品でその分別を担当する。

WWD:移動の環境負荷を考慮した場合、理想は日本に再生工場があることだが、今はない。日本から本国を経由せずに直接送ることは、無駄が少なく効率がいい。同じような取り組みをする場合、本国経由で物事を進めていく企業が多いのが現状だ。

:トータルのプロセス自体をシンプルにすることが重要だと考えた。インフィニテッドファイバーとは、米国の担当者につないでもらいつつ、直接交渉してプログラムを作った。どのような条件の古着が適しているか、ミニマムの量、送る頻度などを検討して300kgを割り出した。国によって使える技術やパートナー、そして法律も異なる。移動に伴う環境負荷を考慮して、各国が適切なスキームを作ることが重要だ。

WWD:繊維のリサイクルについてパタゴニアが今重視していることは?

:販売した自社製品を自社のサプライチェーンに戻すスキームをどう作るか、だ。自分たちが生産した製品を引き取りリサイクルするだけではなく、回収したものを自分たちが使うモデルがないと循環性を追求したとは言えないのではないか。

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パリコレのショー音楽ができるまで 「服を聴かせる」黒瀧節也の仕事

 音楽家や選曲家、イベントのサウンドプロデュースなど、主に音楽に関わるフィールドで幅広く活動する黒瀧節也が、初となる著書「みえないものをデザインする」をアチーブメント出版から10月17日に発売する。同氏はこれまで数々のファッションショーの音楽も手掛けており、2023年春夏シーズンのパリ・ファッション・ウイークでは「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」と「ノワール ケイ ニノミヤ(NOIR KEI NINOMIYA)」のサウンドも手掛けた。現在は1シーズンに5、6ブランドの作曲を行う。ランウエイショーの現場は、コレクションを目で見る場所であると同時に、音や雰囲気、人の熱気を五感で感じる場でもある。特に音楽は、使う曲一つでコレクションの印象を左右するといっても過言ではないほど重要な役割を占める。コム デ ギャルソン(COMME DES GARCON)を率いる川久保玲も信頼を置く、黒瀧の“音”とは。見えないもののデザインには「自分が作曲するというより、デザイナーが作っている感覚。デザイナーへのリスペクトが深いから」という、どこまでも謙虚な姿勢があった。

デザイナーを志した過去

WWD:音楽に興味を持ち始めたのはいつごろ?

黒瀧節也(以下、黒瀧):母親がレコードコレクターで家にレコードがたくさんある環境で育ち、子どもの頃からアートワークを見たり、一日中レコードをかけて遊んだりしていた。だから、自然と目覚めていたという感覚。母親がディスコでよく踊っていたそうで、ファンクやソウルから、プログレッシブ、クラシックまでいろいろ聴いていた。ただ音楽はあくまで好きな趣味の一つで、仕事にしたいとは考えていなかった。

WWD:ファッションデザイナーを目指していた時期があるのだとか?

黒瀧:テレビ番組の「ファッション通信」が好きで、高校生時代に「コム デ ギャルソン」のショーを見て「なんて素敵なんだ」と衝撃を受けた。川久保さんのデザインで洋服が持つ力を感じ、自分でもそんな服が作りたくてデザイナーを目指そうと決めた。自分で着る服も、それまではオアシス(Oasis)やブラー(Blur)といったブリットポップに影響を受けた古着メインのスタイルだったのが、衝撃以降は全身黒い服を着るようになり、「コム デ ギャルソン」も頑張って買っていた。

WWD:当時からショーの音楽には注目していた?

黒瀧:服に集中していたので、最初はほぼ気にしていなかった。でもいろいろな縁で恵比寿のクラブ「みるく」でDJをすることになり、ショーの音楽にも徐々に興味を持つようになっていった。クラブでの出会いがきっかけで、DJと音楽制作のために渡英し、帰国後にファッションに関わる音楽の仕事をやり始めてからは、音楽的な観点から服を見ることを意識し始めた。菊地成孔さんの著書「服は何故音楽を必要とするのか?」にも感銘を受けた。

WWD:初めてファッションショーの音楽に携わった仕事は?

黒瀧:「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」が「メゾン マルタン マルジェラ」だったころ、店で買い物をしていたら店長から「VIP向けトランクショーの音楽に挑戦してみない?」と誘ってもらった。約1時間のショーの選曲をしたら顧客からの評判が良かったらしく、2シーズン任せてもらえた。

WWD:当時から意識していたことは?

黒瀧:あくまで服のための音楽であって、音楽が邪魔をしないようにすること。音楽に意識が向くと、服を見る視覚がおろそかになってしまう。視覚に神経を集中させるために音楽は主張しすぎず、同時に世界観を作り出すバランス感を大切だ。テンポや音量を調整し、何体目にどんなルックがくるのか、素材は何なのか、軽いのか、重いのかなどを考えて音で表現していくと、ゲストは服を聴いている感覚になれる。私にとって素晴らしいショーとは、音楽が思い出せないショー。デザイナーの思いと、目に見える服の間をつなぐ空気の震えを作り上げることが私の役割だ。言葉や音を超越して、デザイナーが表現したい服をショーで感じてほしいから。

パリコレ「マメ」の作曲の裏側

WWD:これまで作曲したショーで印象に残っているブランドは?

黒瀧:「ノワール ケイ ニノミヤ」との初めての仕事で、ブランドがパリコレに本格デビューする18-19年秋冬シーズン。「どんな曲があるのか分からないので、いくつか提案してほしい」と依頼されたので、先入観を与えないためにタイトルやアーティスト名を伏せて10数曲を用意した。まだ服が完成する前だったので、素材感やルック数、ショーの長さなど最低限の情報を聞き、3部構成にしたいというリクエストに合わせて選曲や作曲をした。返事が届くと、二宮さんが選んだ曲は全て私が作曲したものだった。そのときは本当にうれしかった。

WWD:そのショーは現地で見た?

黒瀧:最初は音源の提供だけでいいと言われていたけれど、ブランド初のパリコレだったし、自腹でもいいからと現地に飛んだ。会場に行き、リハーサルを見て、ルックの順番が変われば音楽も変えたかったから。すると案の定、私が到着する前のリハーサルで音が膨張し、どうしようもない状態だったのを、ギリギリに到着した私が間に合わせた。ショーが終わると、特に海外のゲストから「音楽良かったよ」と声をかけてもらえたし、普段は掲載されない雑誌のコレクション紹介のページに、音楽担当としてクレジットもしてもらえた。現場で音楽を完成させる大切さを改めて感じたショーだった。

WWD:23年春夏のパリコレでは「マメ クロゴウチ」の音楽も作曲していた。

黒瀧:「マメ クロゴウチ」とは今シーズンが初めて仕事で、デザイナーの黒河内(真衣子)さんが何を考えながらデザインで表現しているのかをインタビューし、デモをどんどん作っていった。最初は繊細でエレガントなイメージが浮かび、そのような音楽を提案したが「もっと激しくしてほしい」というリクエストがあり、徐々に完成に近づけていった。今シーズンは竹や⽵かごに着想した“バンブー グルーブ(Bamboo Groove)”がテーマだったので、音楽のキーをBにしたり、⽵かごをイメージした網み目に合わせてリズムを不均衡にしたり――楽曲を解き明かしていくと、実は服の模様と同じパターンになっているなどの工夫もしている。

WWD:ショーの作曲をする上で大切にしていることは?

黒瀧:デザイナーとの対話だ。コレクションについてのインタビューや、サンプル曲をたくさん作って生まれる会話を大切にしている。私が話すというよりほぼ聞くことに徹して、質問攻めはせず、会話の中で私が感じたピュアな部分と相手の考えとの差異をコミュニケーションで埋めていく。だから失敗することもたくさんあるけれど、そこから生まれる会話が大事。一度でOKをもらう方が逆に不安になる。音楽は目に見えないものなので、デザイナーにどう質問すればイメージが湧き出て答えやすいかを常に考えている。あとは、きれいな言葉遣い。声で空気を震わせている以上、私の声も一つの音だから、自分から発する音は美しいものでありたいし、その方がデザイナーにも伝わりやすい。

運命に身を委ねながら向かう先

WWD:修正のリクエストは具体的な方がやりやすい?

黒瀧:どちらかというと、感覚的な方がうれしい。ただ「これは好きじゃない」「もっとこうしてほしい」と引き出す音楽を作るのも私の仕事。だから自分が作曲するというより、デザイナーが作っている感覚だ。全ては服から生まれた曲なので、デザイナーが作曲したサウンドだと思ってほしい。ブランドが半年かけて作り上げたクリエイションをショーのたった10数分で表現するわけだから、そのためには何度でも作り直したいし、作り手の思いに応えるために中途半端なことは絶対にできない。

WWD:そこまでデザイナーに寄り添えるのはなぜ?

黒瀧:私自身もデザイナーを目指した時期があったので、ファッションデザイナーに対して深いリスペクトがあるから。この仕事をしていて一番やりがいを感じるのは、ショーが終わった後でも、作曲し終えた後でもなく、最初の打ち合わせのとき。デザイナーの頭の中を知れただけでもうれしいし、そのクリエイションが広がっていくのを一緒に想像するときが興奮のピークだ。

WWD:今後挑戦したいことは?

黒瀧:一つが、海外ブランドのショー音楽。パリにはフレデリック・サンチェス(Frederic Sanchez)や、ミシェル・ゴベール(Michel Gaubert)という有名なサウンドデザイナーがいる。だから「東京には黒瀧がいる」と言われるぐらい認知度を高めたい。そのために自分で限界を決めず、さまざまな表現に挑んでいきたい。思い返せば、ファッションデザイナーを目指していた頃から、周りに流されるがまま音楽がいつの間にか仕事になっていた。その音楽のおかげでパリに行くことができ、気が付いたら憧れだった川久保さんがそばにいる運命をたどっていた。さらに、シーズンの変わり目の時期だけ「コム デ ギャルソン」のショップで流す音楽も任せてくれるようになった。もしファッションデザイナーを目指し続けていたら、川久保さんはずっと遠い存在のままだったかもしれない。だから運命的な何かを感じたら、これからも逆らわず流されようと思う。

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1位は、「スタバ」がハロウィンをテーマにした新作グッズを発売| 週間アクセスランキング TOP10(10月6〜12日)

【週間アクセスランキング 】最新の注目トピック TOP10(10月6日〜12日)

「WWDJAPAN」 ウイークリートップ10

 1週間でアクセス数の多かった「WWDJAPAN」の記事をランキング形式で毎週金曜日にお届け。
今回は、10月6(木)〜12日(水)に配信した記事のトップ10を紹介します。

 「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントでも、毎週土曜日に【週間アクセスランキング】を配信開始。ファッション&ビューティ業界のニュースはもちろん、コレクションのルック、パーティーやストリートのスナップ、ライフスタイル情報など、幅広いジャンルの注目トピックを週3回お届けします。今すぐ「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントを[友だち追加]して、最新トレンドやファッション&ビューティ業界で注目されているトピックをチェックしよう。
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- 1位 -
「スタバ」がハロウィンをテーマにした新作グッズを発売 黒猫やゴーストがモチーフに

10月11日 / WWD STAFF
スターバックス コーヒー ジャパンは、“BLACK CATS GET MAGIC”をテーマに、ハロウィンをイメージした新作グッズを全国の店舗およびオンラインストアで10月12日に発売する。 左右の目の色が異なる「オッドアイ」の猫を描いたステンレスタンブラー(355mL、税込3650円)、紫色のアイマスクをした黒猫が特徴のマグカップ(355mL、同2150円)、温かいドリンクを入れるとブラックからオレンジに色が変化するリザーブルカップ(473mL、同500円)、オンラインストア限定のゴーストの仮装をしたベアリスタ(同4000円)など、全15アイテムを用意する。
> 記事の続きはこちら

- 2位 -
「エンジニアド ガーメンツ」の鈴木大器が語る「NYで一番いい店、売れている店になりたい」  最新コラボの裏話も

10月12日 / 前田佳奈子(STUDIO HANDSOME)
アメリカで日本人の視点から作るこだわり満載のアメリカンワークウエアを提供し続けている鈴木大器「エンジニアド ガーメンツ(ENGINEERED GARMENTS)」デザイナーは、米国に渡ってから今年で33年目を迎える。商品のバイイングからスタートし、服を作る側へと当時としては異例のキャリアを進み、アメリカのどのブランドよりもアメリカン・メイドにこだわり、その伝統を守りながら挑戦し続けてきた。 
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- 3位 -
【2022年クリスマスコフレ】「ディオール」のコフレ発売日や購入方法について ※随時更新

10月12日 / 福永千裕
2022年も各ブランドからクリスマスコフレのニュースが続々と届いている。毎年注目が集まる「ディオール(DIOR)」は、パリ・モンテーニュ通り30番地のメゾンのアトリエと、星がテーマのコレクションを展開。アイシャドウパレットやリップなどクリスマスコフレの中でも人気のアイテムをそろえる。この記事では「ディオール」のクリスマスコフレの内容や予約方法、発売日、値段を一挙にまとめて紹介する。
> 記事の続きはこちら

- 4位 -
BTSの「Butter」に着想したスーツケースやバックパック 「サムソナイト・レッド」とのコラボコレクションが発売

10月12日 / 福永千裕
バッグブランドの「サムソナイト・レッド(SAMSONITE RED)」は、BTSとのコラボコレクションを発売した。ラインアップするのは、BTSのヒット曲「Butter」に着想したスーツケース(3万8500円〜税込、以下同)3サイズとバックパック(2万6400円)、トートバッグ(1万4300円)の5型。一部店舗と公式オンラインサイトで取り扱う。スーツケースで最も大きなサイズの“スピナー トランク エキスパンダブル”(5万5000円)はオンライン限定で、購入したユーザーには「Butter」の500ピースのジグソーパズルをプレゼントする。
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- 5位 -
ユニクロが“ヒートテック極暖”をアウターとしても着られるようアップデート 値上げによる離反防ぐ

10月06日 / 五十君 花実
「ユニクロ(UNIQLO)」は2022-23年秋冬、吸湿発熱の機能性インナー“ヒートテック”を98型販売する。通常の“ヒートテック”の価格は昨年から据え置きの990円(税込)だが、1500円から1990円への値上げを発表している“ヒートテック極暖(以下、極暖)”では、「見せる極暖」としてインナーとしてだけでなくアウターウエアとしても着こなせるアイテムを導入。値上げする分、付加価値も高めて客にアピールする。
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- 6位 -
「ダイワ」が新アパレルライン始動 アウトドアに特化

10月07日 / WWD STAFF
フィッシングブランドの「ダイワ(DAIWA)」は、アパレルライン「ダイワ ピア39(DAIWA PIER39)」に続く新ラインを11月中旬に立ち上げる。新ラインはアウトドアでの活用を想定したもので、名称は今後発表するという。
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- 7位 -
業界人が愛用する「サカイ」 リアルな装いが目立つショー来場者スナップ

10月06日 / ライターELIE INOUE
「サカイ(SACAI)」が10月3日(現地時間)、2023年春夏コレクションをパリで発表した。インフルエンサーやセレブリティが全身同ブランドに身を包んでいたのに加え、業界人も私物を自己流にアレンジしているのが印象的だ。「サカイ」らしいハイブリッドの手法によるMA-1やオープンスカートの着用率が高い。足元は、「ナイキ(NIKE)」とのコラボレーションによる“ナイキ×サカイ ズーム コルテッツ”が圧倒的人気のようだった。
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- 8位 -
「ニューバランス」がテディ・サンティスによる“メード・イン・USA”コレクションの新作を発売 “990”シリーズやアパレルを用意

10月11日 / 三澤 和也
「ニューバランス(NEW BALANCE)」は10月27日、テディ・サンティス(Teddy Santis)クリエイティブ・ディレクターによる“メード・イン・USA”コレクションの新作を発売する。サンティス クリエイティブ・ディレクターによる同コレクションの発売は2シーズン目。
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- 9位 -
「シュプリーム」と「ザ・ノース・フェイス」が2022-23年秋冬シーズンのコラボを発表 スキーウエアラインにフォーカス

10月12日 / WWD STAFF
 「シュプリーム(SUPREME)」は、「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」とコラボレーションしたコレクションを10月15日に発売する。「シュプリーム」の公式オンラインストアと渋谷や原宿などにある旗艦店で販売し、「ザ・ノース・フェイス」では取り扱わない。
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- 10位 -
「ポーター」×「となりのトトロ」再び 伊勢丹新宿で発売、「トーガ」とのコラボ商品も

10月12日 / 三澤 和也
伊勢丹新宿本店は10月19〜25日の期間、「ポーター(PORTER)」が全国13店舗を巡るイベント「PORTER TRUNK SHOW "We go,where you go"」のファイナルを本館2階センターパーク ザ・ステージ#2で開催する。
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豊島の営業利益は46.6%減、原料高・輸送費高騰が直撃 豊島社長「円安に懸念」 22年6月期

 大手繊維商社の豊島(未上場)はこのほど、2022年6月期決算を発表した。売上高が前期比9.6%増の1920億円、営業利益が同46.6%減の41億円、経常利益が同36.7%減の57億円、純利益が38.2%増の53億円だった。減益の主な要因は、輸入時のコンテナ便価格の高騰や円安を売価に転嫁できなかったため。売上高総利益(粗利)率は11.9%で、前期に比べ2.3ポイント悪化した。

 増収の理由は、綿花相場の上昇によるもの。期初(昨年7月)に1ポンド85セントだった綿花価格は期中のピークには155セントに、期末には88セントへと乱高下した。綿花・綿糸取引が大半を占める素材事業では151億円の増収要因となったものの、相場の乱高下で価格転嫁が進められず、減益だった。

 主力の製品事業は前期までの医療用ガウンなどのコロナ特需がなくなったことが減収要因となり、売上高は42億円減の1217億円だった。

 23年6月期の目標は売上高が1800億円、経常利益が60億円。豊島半七社長は「足元では受注残高が増加するなど、衣料品市況には明るさが見られる」とした上で、「これ以上の円安は衣料品サプライヤーにとってはかなり厳しい」との見方を示した。

 決算発表での豊島社長とメディアの主な一問一答は以下の通り。

−22年6月期を振り返ると?

豊島半七社長(以下、豊島):上期(21年7〜12月)は大変厳しく、原料高やコンテナ輸送費の高騰など、日を追うごとに業績が悪化するような有様だった。かなり早い段階、昨年秋ごろから私を筆頭に役員などが売り先のアパレルや小売りなどに状況を説明しに行っていたが、その時期にはまだ原料高や輸送費高騰の状況の深刻さが伝わらず、なかなか理解を得られなかった。潮目が変わったのは、大手SPAが値上げを表明した春以降で、下期に若干(業績の落ち込みを)戻せたという印象だ。

-足元の状況は?

豊島:もともと思っていたよりはいい。素材は低調だが。主力のOEM・ODM事業に関しては受注残も増えており、7月以降の店頭の回復が追い風になっているようだ。前期に苦しめられたロックダウンに伴う生産地や輸送の混乱も、今はだいぶ落ち着いており、そういった影響もほとんどない。前期に、ロックダウンの影響などで中国からASEANに生産をシフトしていたが、中国の工場でも再び日本のオーダーを求めるようになっている。生産の面ではだいぶ安定している。

-懸念点は?

豊島:それを言ったら、たくさんありますよ(笑)。綿花を筆頭に素材の価格はまだ落ち着いてないし、コロナの第8波への懸念もある。大きいのは為替だろう。これ以上の円安は、日本のアパレル産業にとってかなり厳しいのではないか。

-6年目を迎えたCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の状況は?

豊島:投資関連では前期(21年7月〜22年6月)に、ライトオン(21年10月)やブロックチェーンを活用した貿易情報連携プラットフォームのトレードワルツ(22年8月)、AIを使った画像解析のアイキュー(AIQ)に出資した。このうちアイキューはCVCによるものだ。CVCはすでに第二期を迎えており、累計で24億円ほどを投じている。常に20社ほどをリストに上げており、検討をしている。もともとキャピタルゲインを狙った投資ではなく、マイノリティー出資がメーンであり、既存の事業をアップデートしたり、ブラッシュアップしたりが目的で、投資会社とは違う。ただ、営業先を開拓したり、取引先を紹介したり、ということを一緒になってやっており、それなりの成果も上がってきた。最終的に出資まで至らなかったケースも含めると、CVC関連の企業との取引額は、今期で10億円に届きそうだ。これは一つの成果といっていいだろう。

-今期の重要テーマは?

豊島:やはりDX(デジタル・トランスフォーメーション)だ。3DCADを使ったサンプル提案に関してはすでに全部の課で行っており、提案数ベースではかなりの割合が3Dに置き換わっている。ただ、これはあくまで取引先のアパレル・小売り側の要望や考え方ありき。望んでいない取引先に3Dで提案しても意味はない。アイテムによっても実際に物を見て決めるということもあるだろう。こうした3D型のサンプル提案以外にも、サプライチェーンや、課題解決型のOSM(オリジナル・ソリューション・マニュファクチュアリング)なども推進していく。

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ジュエリー業界50年、デザイナーのホアキン・べラオが生み出すタイムレスなデザインの秘密 

 1970年に創作活動をスタートし、ジュエリー業界歴50年超というキャリアを持つのがデザイナーのホアキン・べラオ(Joaquin Berao)だ。82年に自身の名を冠したブランド「ホアキン べラオ(JOAQUIN BERAO)」を設立。彫刻作品、建築、音楽、自然を彷ふつとさせる洗練された造形美とタイムレスなデザインが特徴で、高品質なスターリングシルバーを用いたリングやイヤリング、バングル、ネックレスなどを手掛けている。デザインから製作、最後の磨き上げまで、マドリッドにある自社工房の熟練職人が手作業で行い、スペイン王室も顧客に抱えているという。

 日本には90年に上陸し、一時はエフ・ディ・シィ・プロダクツ傘下で運営されていたが、2014年に完全撤退。4年のブランクを経て、18年に商品企画、ブランディングなどを手掛けるセスタンテが運営する形で再上陸を果たした。現在は西麻布の直営店と公式オンラインストアで販売している。このたび、3年ぶりに来日したというベラオに話を聞いた。

WWD:デザイナー人生を振り返って。短命で終わるブランドが多い中で、50年続けてこられた理由は?

ホアキン・ベラオ(以下、ベラオ):どのブランドにも共通することですが、「ホアキン べラオ」のジュエリーだというのが一目で分かることが重要だと思います。常にタイムレスなデザインであること、若い人から年齢を経た人まで、幅広い層の人が身に着けられるジュエリーであるということも理由ですね。

WWD:タイムレスなデザインを生み出す秘けつは?

ベラオ:制作を重ねていく中で、デザインの余計な飾りを取り除いていきます。そうすることでより本質的な部分が現れてくるんです。“シンプルさ”とは複雑さを解き明かしたもの。身に着ける人の心を動かすような、長きにわたる道のりや進化などがデザインに表現されているのではないでしょうか。

記憶の断片がクリエイションにつながる

WWD:デザインはどのように思いつく?

ベラオ:文化や建築、旅行、生きること、人々との会話など、さまざまな物事をよく観察することで導き出されることが多いですね。自分が見たり聞いたりした記憶の断片が積み重なって、創作に結び付いているのかもしれません。また、自然からインスピレーションを得ることもあります。花に宿るエネルギーや大地が持つ生命力など、自然はデザインをする上で欠かせない要素を持っているんです。人々が気がつかないであろうそれらの要素を、自分なりに解釈してデザインに落とし込んでいます。

WWD:「イセタンサローネ」で行ったポップアップではセミカスタマイズサービスを導入した。セミカスタマイズでジュエリーを製作する際に大事にしていることは?

ベラオ:お客さんの中には、家族から受け継いだジュエリーを持ってくる人がいます。時代を経たアイテムはクラシックなデザインのものが多く、彼らの「受け継いだ」という思いを大切にしています。そんな家族の思いをジュエリーで表現しながらブランドの世界観を加えて、今の時代に合うように蘇らせたいですね。

WWD:実際に客とどのようにデザインの相談をする?

ベラオ:家族の思い出を身に着けて感じることが大事なので、どんな風に身に着けたいのかなど具体的なイメージを聞きます。クラシックなジュエリーは、ダイヤやアクアマリンなどの宝石をあしらったデザインが多いので、宝石だけを取ってリフォームすることもありますね。より彫刻的で洗練されたデザインにすることで、今ならではのジュエリーに仕上がると思います。

WWD:2年ぶりとなる新作コレクション“リネア”のテーマは?

ベラオ:“リネア(LINEA)”はスペイン語で“線(ライン)”という意味。輪郭線や地平線など、私たちの周りにはさまざまな“リネア”が存在しているということを表現しています。また、50年のデザイナー人生の中で経験したことが点と点でつながった線になり、その線が私の「これから」を体現しているとも言えるでしょう。

生きている時代を作品で表現

WWD:“リネア”の立体的なフォームからは、力強いエネルギーを感じる。

ベラオ:今回のコレクションから感じられるように、私が70年代から手掛けてきたジュエリーの数々には、その時代のエネルギーが宿っています。私は自分が生きている時代を作品で表現することを心掛けているので、身に着ける人にもそれを感じてもらえたらいいですね。

WWD:SNSやECが発達し、世界中の情報量が膨大に溢れている。その中で支持されるブランドであり続けるために必要なことは?

ベラオ:50年前と比べて、世の中にはたくさんの情報が溢れていますが、私はポジティブに考えています。そんな時代においても、「ホアキン べラオ」のジュエリーだと認識してもらえることが大切です。ジュエリーは装飾品であることから、社会的地位を象徴するものと捉えられることがありますが、身につける人の個性とセンスの良さを表現していくためのものでありたいです。

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「エンジニアド ガーメンツ」の鈴木大器が語る「NYで一番いい店、売れている店になりたい」  最新コラボの裏話も

 アメリカで日本人の視点から作るこだわり満載のアメリカンワークウエアを提供し続けている鈴木大器「エンジニアド ガーメンツ(ENGINEERED GARMENTS)」デザイナーは、米国に渡ってから今年で33年目を迎える。商品のバイイングからスタートし、服を作る側へと当時としては異例のキャリアを進み、アメリカのどのブランドよりもアメリカン・メイドにこだわり、その伝統を守りながら挑戦し続けてきた。
  
 「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」と継続しているコラボに加え、最近では「パレス スケートボード(PALACE SKATEBOARDS)」とのコラボもほぼ完売し人気となっている。「服のことばかり考え続けてきた」という鈴木が手にしたもの、長いニューヨーク生活で感じることとは?そして変わりゆくニューヨークでなぜ生き残ってこられたのか。ロングアイランドシティにあるオフィスで語った。

WWDJAPAN(以下、WWD):9月上旬に発売された「ドクターマーチン」とのコラボについて教えてください。

鈴木大器ネペンテス アメリカ代表兼「エンジニアド ガーメンツ」デザイナー(以下、鈴木):「ドクターマーチン」とのコラボも今回が確か5回目。最初にやった1461がベースで定番の3ホールシリーズにアレンジを加えたデザイン。こっち(右)から見ると普通になっていて、逆から見るとスリッポンになっている(イラストを描きながら)。反対側はウイングが立つ感じ。それも面白いと思うな。昔「アディダス(ADIDAS)」のスーパスターを紐なしで履いていて、ぴょんと上がっている、あの感じがインスピレーション源。

WWD:長くコラボが継続しているが、そもそもコラボのきっかけは?

鈴木:最初のきっかけは「ドクターマーチン」にいた連中が、うちの服を好きで着てくれていたということ。でも「ドクターマーチン」に限らず、どこのブランドもコラボレーションのきっかけはそういうことかな。これも後から気付いたことだけど、2003年くらいから卸を始めて、その頃に服を買ってくれていた人がたとえば20歳だったとして、10年経ったくらいからもう(会社の中では)中堅になっている。そういう人たちが声をかけてくれる。ブランドを長くやった甲斐があるというか、年の功というか。改めて長くやっているなと実感するとき。

WWD:「パレス スケートボード」とのコラボは、どうやって実現したのですか?

鈴木:あれに関してはデザインのベースを全部あげて、「パレス スケートボード」が生産した。向こうが「何年のこれが好き」とリストアップしてきて、それでパターンを提供して。「パレス」の店だけで売っている。プラスうちの店にちょっと置いているけど、もうほとんど売れてしまった。ゴアテックスを使ったジャケットとパンツとか。「パレス」は若い子にすごい人気だね。自分も一応スケーターなんで(自分のスケートボードを指して)。

WWD:どこでスケボーしているんですか?

鈴木:サーフェースがきれいなところが好きだから、ここで(オフィス)やってる。ほかのフロアとか。

WWD:サーフィンも定期的に行かれている。

鈴木:普段はサーフィンに行ってるんだけど、ビーチのゴミ拾いのボランティアをやっているときに腰を痛めてしまって今は休憩中。基本的に週末は行くし、いい波のときは平日でも行っている。夏場は週3日くらい。寒くなってきたら減る。以前はロングビーチに行っていたんだけど、砂を入れたら地形が変わってしまったので、今はロカウェイ。サーファーはロカウェイに行くから、ほぼみんな顔見知りだね。5時半くらいに起きて向こうに6時半に着くって感じ。この時期だと2時間半から3時間やるけど、寒くなるとどんどん短くなってくる。ウエットスーツを着ているからやっているときは平気なんだけど、着替えるのは本当に痺れるくらい寒い。風がピューピュー吹いているときはめっちゃ寒い。手がすぐ凍っちゃうみたいな。ウエットスーツもなかなか脱げない。死ぬ思いでやってるよ。

WWD:コロナウイルスが蔓延していたパンデミックの間はどうしていましたか?

鈴木:2年半くらいどこにも行かなかった。ガーメントディストリクト(ニューヨーク・マンハッタンの34~42丁目、5~9番街の周辺)からこのロングアイランドシティのオフィスに引っ越したのは5年前くらい。コロナになってオフィスもシャットダウンになって誰も出社しなくなって。でも仕事道具はぜんぶここにあるから、オフィスには毎日来ていた。道も空いてるし、車で来ていたからいつもよりもスムーズでもあった。誰も周りにいなくて自分だけの時間を持てた。改めて自分がやってきたこと、やっていること、やりたいことを考えるいい機会だった。振り返ると貴重な時間だった。

「ニューヨークで一番いい店、売れている店になりたい」

WWD:コロナウイルスの影響でしまった店舗も多い。今の時代においての店舗を持つ意味とは?

鈴木:もともと店で働いていた人間だから、店がすごく好き。お店の基盤を作っていくのが今は大事。コロナもあって実際つぶれた店もたくさんあるけど、逆に伸びているところもある。共通しているのは、強いビジョンがあって、オリジナリティーを持っていること。自分が持っているビジョンをシェアして、それを若い世代なりに消化して新しいビジョンにしていってほしい。最初は洋服なんてオンラインでは売れないと思っていたんだけど、自分自身もオンラインでしか服を買わなくなってきて(笑)。うちの店(ネペンテス ニューヨーク307 West 38th St. New York, NY)は面積を約2倍(約500㎡)にして2年前にリニューアルオープンした。コロナの最初の頃に工事をして家賃は2倍になったけど、人は来るんだよ。今は両極化しているから。うちの店はマニアックだし、本当に洋服が好きな人たちって、お店に行ってしゃべるのが楽しいのよ。そういう場を作るのが大事と思った。うちの商品というのは、そういうのが合っている。いっぱいしゃべって、これかっこいいよね、とかってしゃべって最後に買うみたいな。それって昔のスタイルなんだけどね。それを認識した。

WWD:今後、店舗を通して目指しているものは?

鈴木:売り場も2倍になったから、売り上げも2倍になった。でももっと売りたい。自分たちがいいなと思うものを売っているので、ニューヨークで一番いい店、売れている店になりたい。「シュープリーム(SUPREME)」の当時の勢いとかあるじゃない?だったらそれを抜きたい。今人気なのは、ダントツ「エイメ レオン ドレ(AIMÉ LEON DORE)」じゃない?デザイナーのテディ・サンティス(Teddy Santis)はこのオフィスの裏に住んでるよ。ほんと服が好きなんだよ。すごい勉強熱心だし。メンズの場合は流行りとかじゃなく、本人のビジョンとオリジナリティーがあると人はついてくる。そして丁寧にモノ作りに取り組むのが大事。もちろんそれでもダメなときもあると思うけど。あとはちょっとラッキーであること。

自分はなぜニューヨークで残ってこられたのか

WWD:そのラッキーについてもう少し詳しく教えてください。

鈴木:古い時代からすごく仲良くしていた人たちは、ほんと全員日本に帰ってしまった。死ぬほど才能ある人たちもいたのに、本当に残念ながら力尽きて帰ってしまった。自分と何が違ったんだろうといろいろ考えたんだけど、こうやって残ってこられたのは、単純にラッキーだったからと最近分かった。運がよかったんだな。買い付けしていた頃、値段を叩かれてやばいなと思ってきたとき、自分たちで作ろうと思い立って。それまで自分で作ろうなんて思ったことはなかったのに。自分たちで作ったから、自分たちの値段でコントロールできるようになったし、追われるようにやっていたらこうなっていた、というのはラッキーだった。いい人に恵まれたというのもラッキー。どちらかというと好き勝手にやっていた感じだけど。

WWD :「エンジニアド ガーメンツ」を立ち上げたのが1999年。そこに至る経緯は?

鈴木:アメリカに来たのは、89年。まずボストンに行って、90年の4月にニューヨークに引っ越してきた。最初は買い付けをやっていた。いろんな洋服のメーカーに行って、自分で買って日本に送っていた。89年にネペンテスに入社したわけだけど、1時間も日本の会社では働かずにアメリカに来た(笑)。自分としてはサンフランシスコを希望していたんだけど、当時は靴が大事だったので、メイン州の工場まで車で3時間くらいで行けるボストンに滞在することに。「申し訳ないんだけど、ボストンへ行ってくれ」と清水さん(ネペンテスのオーナーの清水慶三氏)に言われて。土地勘も全くなかったし、英語も本当に分からなかったから大変だった。ボストン時代は、バークリー(音楽大学)の学生たちがたくさん住んでいるエリアに居住していた。ロスとニューヨークしか知らなかったから、ある意味新鮮だったとも言えるかな。97年にニューヨークにオフィスを構え、その後「エンジニアド ガーメンツ」をスタートした。

WWD:当時の方がよかったと思うことはありますか?

鈴木:それ言っちゃうとね。当時来たときも、すでに15年くらいニューヨークにいた日本人が「昔はよかったよね」みたいなこと言っていたから。確かに時代は変わった。当時は日本食もあんまりなかったし。インターネットもなかったし。携帯も一部の人しか持ってなかった。インターネットが普及し始めたのが94、95年くらい。コンピューター自体は早かった。90年代初頭から付き合いのあるデザイナーたちがいて、彼らはサンフランシスコだったからパソコンの着手も早かった。その人の妹がアップル(APPLE)で働いていて、社販で買ったものが思っていたものじゃなかったらしく、いらないかって聞かれて。使い方教えてくれるならって購入したんだけど、まだ使えるんだよ。板を壊していく単純なゲームとかでまだ使っている。

WWD:ニューヨーク生活で印象に残っていることは?

鈴木:自分の話だけど、最初に洋服を買う側でアメリカに来ていて、作る側になるという、立場が逆転したっていうのが面白かった。ほぼ30年を費やしてきて、自分の人生の27歳からの30年で、これが自分の人生だったんだなと最近思うようになった。

会社に帰属しないフリーランスとしてのスタンス

WWD:次の世代に受け継ぐこと、期待していることは?

鈴木:いろんなことをパンデミック中に考えてみたんだけど、昔のやり方、自分が育てられてきたやり方はまったく今の世代には通用しないってことは分かる。今からは会社に帰属しないスタイルがいいんじゃないかな。一人ひとりがフリーランスみたいなスタンスがこれからの形ではないかというところに行き着いた。フリーランスは自分で成果を出さないと収益が出ない。昔みたいに、とりあえずトイレ掃除からみたいなのはダメだし、最初は安い給料でがんばるんだっていうのもダメ。やったことをちゃんと評価していかなくちゃいけない。引き出していかないといけない。最初のきっかけは作ってあげて、あとは自分たちでやっていくみたいな。

WWD:若い世代もニューヨークに集まってきているのですか?

鈴木:若い世代は興味の対象が違うと思うこともあるけど、自分が知らないだけで、人もモノもちゃんと動いているなと思う。そういう部分に関してはニューヨークってタフなところもある。とにかく人材が豊富。いくらふるいにかけてもいい人がちゃんと残っているとつくづく思う。なによりも、ニューヨークというブランド力が強い。それはいつも思う。ここで、ただ息をして生活しているだけで、自分が大したことなくても、ニューヨークブランドになっちゃう。たとえば「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のステッカーでも「ルイ・ヴィトン」であるみたいな。それが面白いなと。自分の人生の中で911とかコロナとか、滅多にないことをニューヨークで経験できたってことも、ニューヨークブランドの一つになっているのかも。笑うところじゃないけど。

今も商品はほぼアメリカで生産

WWD:生産は引き続き全てニューヨークですか?

鈴木:今も生産はほぼアメリカ。8割はニューヨーク。ニットとかは一部イタリア産だけど。これを続けていくのが一番大変なところ。うちのようなやり方をやっているところは、実際にうちしかないと思う。ニューヨークで考えて、ニューヨークに工場もあって、検品もして、それを自分たちがピックアップして分けて出荷する。最初から最後まで自分たちでやっているのは我々しかいないなと。

WWD:ファッションブランドに今求められることは?

鈴木:コロナの前と後ではSNSの力が強くなったと痛感している。コロナでみんな家にこもって情報源がないからSNSに頼って、そんな中インフルエンサーの影響が大きくなっていった。ファッションビジネスのモデルが随分変わってきた。今じゃSNSを使って戦略を打ち出しているところが強い。あとはファッションビジネスも、サステナブル、リセール、レンタル、サブスクにシフトしている。これらをキーワードに新しいビジネスをうまく仕掛けているところが成功している。そういうところに疎かったところがどんどん沈んで消えてなくなっている。

WWD:「エンジニアド ガーメンツ」でも何か取り組まれていますか?

鈴木:余った在庫をいろんなアーティストやメーカーにプリントしてもらったり刺しゅうしてもらったりしたリメイク、それを“REENGINNERED”と呼んでいるんだけど、そのポップアップをやろうとしたり。次に考えているのは、自社製品の中古を売り始めようと思っている。やっぱり時代についていかないとね。とりあえずは内輪でスタッフが持っている商品をきれいにして店で売ろうかと。それがうまくいったら、買い取りもしていきたいと考えている。以前は「あの人も『ヴィトン』持ってるから私も」みたいな感じだったとしたら、いまは大して高くない有名でないものをかっこよく着ているのが、一番かっこいいらしいよ。

WWD:スタイルについてどう考えていますか?

鈴木:ついつい買っちゃうから、ここに置いているものもほとんど私物(ショールームの一角)。買っていること自体はいいことだと思う。これくらいまだ自分は服が好きなんだなと。靴も100足以上持っているけど、結局サンダル(ビルケンシュトック)しか履いてない。同じものをいっぱい持っている。このサンダルは年に2回は履きつぶすから、いつも新品を用意してあるよ。これは自分個人のスタイルで、同じようにブランドでも店でも、自分のスタイルをちゃんと作れる人が必要。そのスタイルを説明できるビジョンを持っている。その良さを自分で理解できている人。これをちゃんとできる人が次のステップに進める。そういう人材を集めたいし、育てたい。全て人ありき。そういうかっこいいやつがいると、あとは全てうまくいく。見た目の話ではなく、考え方の話。ブレない人。

WWD:ブレない秘訣を教えてください。

鈴木:ブレない人っていうのは、時代に沿って実は微調整しているから、ブレないように見える。ブレてないように見せることが大事。あとは時代を読み過ぎないこと。そのバランス感覚が大事。

WWD:ほかにも今後やってみたいことは?

鈴木:絵を描きたい。いつか時間ができたら習ってみたいと思っている。うちの親父が画家だったんだ。油絵がいっぱいあって。2歳くらいだったと思うんだけど、親父の膝に乗って油絵具の匂いを嗅いで、その匂いが嫌だなと思った強烈な記憶がある。暗い絵があって、お化け屋敷かなと思って親父に聞いたら、ガソリンスタンドだって言われた(笑)。そのときの体験からなのか、絵を描きたいと思うようになったんだよ。

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「アークテリクス」丸の内店は世界で5番目のリペアセンターを併設 日本では25〜30店規模目指す

 アメアスポーツ傘下のカナダ発アウトドアブランド「アークテリクス(ARC'TERYX)」は10月7日に、東京・丸の内通りに国内13店舗目となる直営店をオープンした。売場面積は300平方メートルで首都圏最大規模となる。注目は、店内に併設した自社製品のリペアサービスを提供する「リバード サービスカウンター」だ。同社の循環型経済に向けた「リバード プログラム」の一環で、専門スタッフが在籍し製品のケアや手入れ方法について啓蒙していく。北米をはじめ主要都市では導入が進んでおり、丸の内店は世界で5番目。ディレイニー・シュバイツァー(Delaney Schweitzer)=チーフ・コマーシャル・オフィサーに、「リバード プログラム」の狙いや今後の戦略について聞いた。

WWD:丸の内店の印象は?

ディレイニー・シュバイツァー=チーフ・コマーシャル・オフィサー(以下、シュバイツァー):とても美しい店舗でチームメンバーが素晴らしい仕事をしてくれたと思う。カナダの旗艦店でも導入している新たなストアコンセプト「リバード プログラム」を持ち込み、ブランドのコンセプトをうまく体現している店舗になった。

WWD:直近のビジネスの状況は?

シュバイツァー:顧客と直接コミュニケーションが取れる店舗数の拡大に力を入れているところだ。しかし、コロナ禍で世界的に来客数が減り大きな打撃を受けた。計画していたグローバルでの出店ペースを減速せざるを得ない状況も続いた。一方でECは非常に好調で、北米の売り上げは50〜75%増で推移した。コロナが収束し始めている今でもECは昨対比50%増と堅調だ。全体の売り上げはECの伸びもあり、完全ではないもののある程度カバーされた。

WWD:グローバルの売上における、日本市場の割合は?また、日本市場のポテンシャルをどう見ているか?

シュバイツァー:日本は、中国と北米に次ぎ売り上げが3番目に大きい。特に日本の消費者は、パフォーマンスや品質、デザイン性を求め、アウトドアが好きな人が多い。私たちの提案が響く市場だと見ている。実際に他のマーケットよりも業績が伸びている部分もある。今後も年間3~4店舗のペースで出店を考えており、最終的には日本で25〜30店舗を目指す。

WWD:温室効果ガス排出量を18年度比で65%まで削減することを目標にしているが、温室効果ガス削減の観点からは出店がリスクになりかねない。出店計画とはどのようにバランスをとっていくのか?

シュバイツァー:出店がサステナビリティと矛盾するとは考えていない。なぜなら、実店舗での成功がサステナビリティの取り組みを推進するための資金につながるからだ。循環型経済を推進する「リバード プロジェクト」を実践すると同時に、ビジネスを伸ばしていくことで環境により良い行動を起こすことができるはずだ。

WWD:一つの商品を長く使ってもらうことは、新しい商品の購入の妨げにはならないのか?リペアサービスを提供することのビジネスメリットは?

シュバイツァー:例えばニューヨークのブロードウェイ店は、サービスセンターをオープンする前と後で比較すると来客数が20%増えた。すべてがリペアを目的とした来店ではないにせよ、サービスセンターを見にきたり、サービスセンターがある店舗でショッピングを楽しんだりする人が増えた。「リバード プロジェクト」のもう一つの柱である「リ・ギア」プロジェクトでは、顧客のいらなくなった商品を買い取り、修繕を加えて自社ECで再販につなげている。もちろん、新しい商品を求める顧客はたくさんいるが、そうした人たちは「リ・ギア」を利用して、すでに持っている商品を売り、代わりに受け取ったクーポンを活用して新しい商品を購入するという流れができている。再販の商品に対するニーズも一定数あるので、バランスは取れていると思う。「リ・ギア」は特にサステナビリティの意識の高い若年層に人気で、出品後即完売するものもある。新規顧客開拓にもつながっている。

WWD:「リバード プロジェクト」はグローバルでも拡大していく計画か?そのためにリペアの専門スタッフを増員するのか?

シュバイツァー:サービスカウンターは今後、主要都市には順次導入していく計画だ。特に循環型経済に関心の高い若年層にアプローチできると考えている。ジャケットの機能性を理解して販売するのとリペアをすることは全く違ったレベルの難しさがある。包括的なトレーニングプログラムを通して、リペアに対応できるスタッフを増やす。

WWD:今後の日本市場での注力課題および戦略は?

シュバイツァー:私たちの目的は、バンクーバーの「コーストマウンテン」と呼ばれる山岳地帯での体験を世界に広げていくことだ。グローバルでは山にまつわるアクティビティーを通したコミュニティー形成に力を入れており、今後日本でも実施する。引き続き持続可能なかたちで出店を続けていくつもりで、都市部だけでなく、コミュニティーベースの店舗や山の近くのロケーションなども検討しており、さまざまな顧客のニーズをカバーする。また、東京にデザインセンターを設けて日本の美しさを今後の私たちの商品に反映していく。

■アークテリクス 東京 丸の内ブランドストア
オープン:10月7日
住所:東京都千代田区丸の内2-2-3
営業時間:11:00〜20:00

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「ロエベ」で北野武をスタイリング マルチな才能を発揮する歌代ニーナ Youth in focus Vol.8

 U30の若者たちにフォーカスした連載「ユース イン フォーカス(Youth in focus)」8回目は、北野武らが登場し話題となった「ロエベ(LOEWE)」のメンズキャンペーンでスタイリングを手掛け、音楽やファッション、アートなど垣根を越えてマルチな才能を発揮する歌代ニーナにフォーカスする。

 歌代は、「コモンズ アンド センス(commons&sense)」や「i-D Japan」で編集者としてキャリアをスタートさせた後に独立。2018年にクリエイティブ集団ペトリコール(PETRICHOR)を立ち上げ、世の中に対する鬱憤を表現したインディペンデントマガジン「ペトリコール」を出版した。同誌に自らつづった詩が音楽プロデューサーの目に留まり、同年ラッパーとしてもデビューを果たした。今年7月にはデビューEP「オペレッタ・ ヒステリア(OPERETTA HYSTERIA)」を発表。アートディレクションやミュージックビデオのクリエイティブ・ディレクションも自ら手掛け、独自の世界観を作り上げている。「私にしかできないことを提供する」ことを徹底し、さまざまなフィールドで存在感を増す歌代に話を聞いた。

WWD:「ロエベ」のビジュアル制作に加わった感想は?

歌代ニーナ(以下、歌代):もともと「ペリメトロン(PERIMETRON)」のプロデューサーで、私のミュージックビデオの映像も作ってくれている西岡将太郎さん経由でオファーをいただきました。私の中で「ロエベ」は、洋服で本当に遊んでいるブランド。いわゆるトラディショナルなパンクではないけど、色や素材がどこかおかしくて、着やすさ重視ではなさそうな感じがすごくパンクで好きなんです。北野さんはそんな「ロエベ」の服を着ても、それを超えるオーラを持っているので、両者の個性で遊びたかった。前提として、私は常に自分にしかできないモノを提供したい。実は私は北野さんの映画をちゃんと見たことがなくて、ギャグのコマネチも今回初めて知りました(笑)。それぐらいの距離感でフラットに見て、何ができるかにフォーカスしました。よくある悪そうな感じにはしたくなくて、「ブレイキング・バッド」のガスみたいな、エレガントだからこそ怖い役柄をイメージしました。過去にあまりないようなアングルの撮影を、全員で楽しめればと考えていました。

WWD:もともとファッションの道を目指していた?

歌代:小さいころはバレリーナになりたかった。その後は弁護士。昔から口げんかが好きなので。でも、1960年代にパリの「ジバンシィ(GIVENCHY)」で働いていた祖父から「何かクリエイティブなことに挑戦してほしい」と、亡くなる前に言われたことが心に残っていて、高校卒業後はコロンビア大学で美術史を専攻しました。「ラブ(LOVE)」マガジン元編集長のケイティ・グランド(Katie Grand)のような、スタイリングができて、記事も書けて、編集もできるファッション・ディレクターになりたかったんです。美術史は、ビジュアルイメージを文字にしたり、構図を理解したりといった言語と視覚の勉強だったので、編集に必要なスキルはそこで養いました。

WWD:アートやファッションのジャンルを超えて、2018年にラッパーとしてもデビューする。

歌代:ストレス発散のために自費で作った雑誌「ペトリコール」を見たプロデューサーが、「ラップしてみない?」と声をかけてくれたんです。今の時代、音楽であればイメージメーキングもできるし、言いたいことがあり、音感がある程度あれば練習で何とかなるというので。私は新しいものを拒めない性格だし、面白そうだなと感じたので、遊び半分で始めたのがきっかけです。最初はThirteen13という名前でデビューしました。数字は匿名感がとか囚人感があっていいなと思って。本当は「11」が一番好きな数字なんですけど、そのとき「ストレンジャー・シングス」のイレブンがいて、かぶりたくないという超適当な感じですね(笑)。

デビューEPはヒステリアがテーマ

WWD:先日発表したデビューEP「OPERETTA HYSTERIA」では、なぜヒステリアをテーマに?

歌代:EPを1冊の書籍のように捉え、まず大枠テーマから考えました。デビューEPだから、アイデンティティーに近く、クラシカルな要素を入れたかった。テーマを探していた時期に、ちょうど私生活でヒステリアという感情と向き合う瞬間がありました。基本的に自分の制作物は、誰かに向けたメッセージというよりも、新しい世界を発見したいという思いがベースにあります。ヒステリアは私の今の課題かもしれないと選びました。それに単語がかわいいし、哲学的な解釈もできる。もともと女性特有の狂乱とされていたから、どうやらフェミニストたちの間で話題になっていたこともある。さまざまな解釈があり広げやすいテーマだと思いました。あとコロナ禍で、メンタルヘルスを保ってクオリティー・オブ・ライフを向上させましょうといった、メディアのプレッシャーが正直すごくうっとうしかったんです。絶対みんな不安だったり、いらいらしていたりするはずなのに、そういう言葉で押さえ込もうとしているように感じました。ではなくて、きっと今みんな誰か刺したいみたいな感情抱えているでしょ、というある意味時事性も意識しました。

WWD:歌詞は生死やセックスなど、人が直視する耐性がないものをあえて直球で投げかけている印象だ。

歌代:いや、本当に興味があるのがお金とセックスと服なだけです。ティーンエージャーのような欲求ですよね。お金で一番買えるのは時間だと思っていて、いろいろなことをするための時間が欲しい、いろいろなもので気持ちよくなりたい、美しくなりたい。以上、って感じです。

WWD:EPに合わせて刊行した「ペトリコール」には、写真家の森山大道さんや岡部桃さんらも参加している。特に、岡部さんの流産した胎児の写真が衝撃的だった。

歌代:桃さんは、以前からヒステリックな写真を撮る方だなと思っていて、オファーしに行くと、体外受精に挑戦している話を伺いました。1人は生まれたけど、2人目が最近流産してしまったと、本人の口から説明してくれました。流れた子どもをタッパーに入れて保存し、アマゾンで買った顕微鏡で撮影していたと聞いて、アーティストとして、女として、母として、一種のヒステリアを感じたんです。これは絶対参加してほしいとお願いしたら、桃さんも「載せられるんですか?」という反応でした。

WWD:その写真を採用するセンスにも逸脱したものを感じる。ニーナさんが心を動かされるものの共通点は?

歌代:強さです。「かわいいは正義」とか、「抜け感」とかは嫌いです。「ださかっこいい」とか意味が分からない。

WWD:ニーナさんのその独特な強さを持つ世界観の着想源はどこから?

歌代:2〜16歳まで没頭していたバレエが根底にあり、あとはいろいろなものの融合です。サイコロジカルホラー映画も好きですし、スポーツも好き。ケンドリック・ラマー (Kendrick Lamar)のミュージックビデオのような、男性性の強い映像作品も好きです。乗馬も趣味で、力強くて単純ですごく真っすぐなものにも惹かれます。マリリン・マンソン(Marilyn Manson)には顔が似ているとよく言われるので愛着は沸いていますが、トップ5に入るほどではないですね(笑)。

WWD:たくさんの才能があるが、自分の一番の強みは?

歌代:努力できること。向上心を一番大事にしています。振り返れば、家族がみんな共通して向上心が高かった。母は、超実力主義で現実主義。「敵がたくさんいなかったら、つまり普通。あんたは普通でいいの?」という感じで、とにかく一番と思えるぐらい努力しなさいと常に言われていました。

WWD:次のゴールは?

歌代:まずは次のEPです。次作でもミュージックビデオと冊子、マーチャンダイズも含めて一つの大きなプロジェクトにしていきます。

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「ユニクロ」はドイツでどう受け止められている? ドイツ事業COOに聞く、売れ筋やリペアサービス、ローカルとの取り組み

 2014年4月、ドイツ・ベルリンの通称クーダム(西べルリンを代表する目抜き通り、クーアフュルステンダムを指す)エリアに、ドイツ初となる「ユニクロ(UNIQLO)」の店舗「ユニクロ タウエンツィーン店」がオープンした。広大な売り場面積(約2640平方メートル)と、階段に設置されたLED掲示板に世界の都市名が赤く光って流れる演出に圧倒されたことを覚えている。それから8年、ベルリン市内に6店舗、ハンブルク、ケルン、デュッセルドルフ、シュトゥットガルトとドイツ国内で10店舗展開を果たし、その勢いは今も続いている。ドイツで「ユニクロ」がここまで支持されるようになった理由は何なのだろうか。ユニクロドイツの桑原大和COO(最高執行責任者)を取材し、マーケット拡大の背景、エコ先進国といわれるドイツでのサステナビリティへの取り組み、今後の展望などを語ってもらった。

――ドイツにおける「ユニクロ」の売れ筋の傾向を教えてください。

桑原大和ユニクロドイツCOO(以下、桑原):グローバルで品ぞろえは同じなので、売れるものはどこの国でも売れています。ただ、その中でもドイツでは、商品のベネフィットを最重要視して購入されるお客さまが多い傾向があります。そのため、必然的に機能性の高いアイテムや高品質なものが売れます。分かりやすい事例をあげると、夏は“エアリズム”、冬は“ヒートテック”、ダウンジャケットです。特に、“ブロックテック”(ユニクロ独自の透湿・防風・はっ水・防風機能を備えた素材) のアウターは、軽量で、雨風を防ぐ機能性を兼ね備えているため非常に好評で、季節を問わず代表商品として認知されています。

 接客をしながら最も感じるのは、ドイツのお客さまはとにかくたくさん質問をするという点です。アイテム自体の価値や自分のライフスタイルにフィットするかなどを吟味し、納得するとファンになってくれます。また、見た目のデザイン性だけでなく、着たときに快適であるか、メンテナンスが楽かなども気にする人が多いです。“エアリズム”はインナーから始まり、現在はTシャツやレギンスなど幅広く展開していますが、汗をかいてもすぐに乾くといった機能性からスポーツやワークアウトに適したアイテムとして人気で、他のヨーロッパよりも売れています。

――売れ筋をもとにしたローカルMDの取り組みをしていますか。

桑原:基本的に、ドイツだけ、ヨーロッパだけといった商品展開は行っていません。「Made for All」という「ユニクロ」のコンセプトのもと、どんな人にでも着てもらえるモノ作りを目指しています。

真夏でもウールセーターが売れるドイツ

――日本とのニーズに違いはありますか。5月にローンチした「マルニ(MARNI)」との協業をはじめとする、デザイナーズブランドとのコラボレーションについても教えてください。

桑原:何年も事業を続けている中で、ニーズに違いがないことは、私自身も驚いています。日本で人気のアイテムはドイツでも同じように人気が高く、グローバルで見ても同様です。ただ、その中でもドイツでは、アウターとニットのニーズが最も高いです。夏でも寒い時にはダウンを着ますし、季節に関係なく、そのときに必要なアイテムを着ることがドイツ人にとっては普通のことです。日本やアジア諸国では、メリノウールのニットは冬の商品というイメージが定着していますが、ドイツでは年中通して需要があり、気温が40℃近くなった夏でも売れるため、トップセラーに入るほどです。洗濯ができるのでTシャツ感覚で着る人も多く、デザイン性から仕事にも着ていけるなどのベネフィットがあることもニーズの高さに繋がっています。

 コラボレーション商品に関しても基本的に変わりません。「ユニクロ アンド マルニ(UNIQLO AND MARNI)」に関しては、やはり本国のイタリアではかなり反響がありましたが、イタリアだけに限らず、他のヨーロッパ諸国や日本でも同じ反響があり、ニーズも同様です。「LifeWear」や「Made for All」といった弊社のコンセプトに共感してもらえるデザイナーや、同じような志を持っているブランドとタッグを組み、軸を崩さないことで世界共通のニーズを保てるのだと思います。

――真夏でもニットが売れるというのはドイツやヨーロッパならではですが、年中通して購入することが可能なのでしょうか。

桑原:可能です。季節に関係なく、そのときに必要なアイテムが購入できるように品ぞろえを考えています。「ユニクロ」は、そもそも毎シーズンデザインを変えて、そのシーズンが終わったら着なくなると言ったモノ作りはしていません。タイムレスであり、シーズンレスであることが基本理念です。

――ドイツの顧客の声やニーズは日本のヘッドクオーターにどのように伝えているのでしょうか。企画への反映などはありますか。

桑原:毎日毎週お客さまや売り場からの声、売れ筋、数字などについてグローバルで報告し合っています。ドイツで売れるからと言って直接企画に反映されるということはありませんが、アイデアは多数出ます。アウターの需要が高い欧米からのアイデアで、ロング丈のシームレスダウンが誕生しました。それまでショート丈が主流でしたが、やはり寒さが厳しい地域ではお尻の下まで隠れるロング丈のダウンコートが好まれます。“ウルトラライトダウン”のジャケットもインナーダウンとして活用されるのはヨーロッパの寒い地域ならではですよね。このように、アウターの深掘りやニーズの対応を行い、企画に反映させていますが、結果的にヨーロッパだけでなく他国でも売れるといった実績を残せています。

店頭で地元のイラストレーターと協業

――ドイツ、もしくは、ベルリン店舗のそれぞれの特徴を教えてください。単なるチェーン運営ではなく、各店舗それぞれで違った打ち出しをし、各店の個性を出していますよね。

桑原:ドイツ国内であっても都市によって街の雰囲気が全然違いますし、客層も需要も変わってきます。そのため地域に合った販売戦略を打ち出すことが重要になってきます。ベルリンの旗艦店(タウエンツィーン店)では、ローカルのアーティストとコラボレーションを行い、文化や考え方が分かるように伝えています。現在は、ベルリン拠点のイラストレーターLaura Breilingを起用し、階段の踊り場とフィッティングルームに彼女のイラストを展示しています。さまざまな年代、人種、スタイルを表現した彼女の作品は、「Made for All」の考えにもとてもよくフィットしています。他にも、「ユニクロ」は日本から来たブランドであるということを分かりやすく伝えるために浮世絵を用いたディスプレーを設置しています。

 ベルリンの壁の跡地に近いイーストサイドモール店では、フィッティングルームにベルリンの壁をイメージしたグラフィックアートを描いています。東ベルリンの中心地であり、若い客層が多いことも影響しています。ハッケシャマルクト店は規模こそ小さいですが、感度の高いお客さまが多く、ファッション性の高いアイテムの動きは早いです。そのため新作を早めに導入するなど、充実した品ぞろえに力を入れています。

――ベルリンではすでに6店舗展開しており、ドイツ全土において今後も広がりを見せていくと予想されますが、ここまで認知された理由は何だと思いますか。

桑原:ドイツ国内では現在10店運営していますが、ドイツ人の物の見方やベネフィットを重視する点、合理的な部分などが、ユニクロのやりたいことと合致していることが理由の一つだと思います。自分の持っている予算をどこで何に使うかを慎重に選ぶ国民性です。もちろん違う面もたくさんありますが、日本人と似ている部分も多数あると感じています。また、大きく宣伝すれば売れるということでは決してありませんし、店舗を増やせば良いということでもありません。接客時には、単に英語をドイツ語に直してマニュアル的に説明するのではなく、より丁寧に分かりやすく、求められているベネフィットをうまく伝える努力をしています。

ベルリンから広がったリペア&アップサイクリングサービス

――サステナビリティの一環として、タウエンツィーン店では独自のアップサイクリングサービスを実施しています。

桑原:リペアとアップサイクリングサービスはベルリン発信となりますが、もともとは不良箇所のある商品を直して、ホームレスの方たちに提供する活動をNGO団体とともに行っていたことがきっかけとなっています。その活動を実際に見てもらうためにタウエンツィーン店の一角に、ミシンや作業台を設置したリペアサービスのコーナーを設けたのが最初です。お客さまが着ていた衣類を店舗に持参し、お客さまご自身がミシンや作業台を使って無料で修理ができるサービスになりますが、この活動を通して、ドイツではいかに物を大事する人が多いかということに気づかされました。例えば、お母さんが着ていたお気に入りの服をサイズを直して娘さんに譲りたいという方がいました。「ユニクロ」は生地の良さや長持ちする縫製に誇りを持っています。そのため、破れたりサイズが合わなくなったりしても、少し手を加えることで捨てることなく、また着られるようになるのです。

 現在は、ダウンの穴開き、ジーンズの穴開き、シャツのボタンつけ、ニットのほころびのお直しがメリペアのインとなっていますが、臨機応変に対応しています。さらに、週末に限り、通常のサービスに加えてNGO団体とのコラボでワークショップを開催しています。店頭に陳列している中で汚れてしまい、販売できなくなった商品はバッグなどにリメークし、リセールすることも行っています。それが廃棄処分を減らすことにもつながっています。リペア&アップサイクリングサービスは今年の6月に本格スタートしたばかりなので、まだ認知は浅いですが、確実に手応えを感じています。リペア&アップサイクリングは、9月にオープンした英ロンドン・リージェントストリートの旗艦店にも広がっています。

――ユニクロは企業として難民支援活動にも長らく取り組んでいます。日本に比べ、難民問題がより身近と言ってもいいドイツでは、どのような活動をしていますか。

桑原:ドイツは国をあげて難民問題への取り組みに積極的です。ユニクロも同様の考えを持っており、重要な社会問題の一つだと捉えています。8年前のドイツ1号店オープン当初から難民の方をスタッフとして採用するシステムを行っていますが、難民としてドイツへやって来て、ビザを取得し、旗艦店で働きながら現在はスーパーバイザーにまで昇格したスタッフもいます。また、ベルリンは他都市に比べてパーソナルな部分を大事にする文化が強いですし、難民だけでなく、LGBTQ+に対する考え方もベルリンは進んでいます。そういった多様性にフィットした販促を行っていくことが大切だと考えています。

――ドイツでの今後の展望を教えてください。

桑原:売り上げを増やすことだけに専念するのではなく、お客様に尊敬される企業になることが大切だと思っています。なぜなら、それが結果的にビジネスが長く続く秘けつだからです。日本からやって来たブランドとして、商品が良いことは前提にありつつも、どんな背景で作られているのか、ユニクロとは一体どんな企業なのか、そういったことをもっと伝えていきたいです。特にヨーロッパでは、サステナビリティ、気候変動、人種、障がい者、貧困などの問題に対する社会活動に積極的に取り組むことがとても大切です。個店レベルでさまざまな活動や努力をしていますが、まだまだ足りないと感じています。商品だけでなく、店舗やソーシャルメディアから発信してお客さまに理解してもらう。そこでファンになってもらい、こういう企業が作った服だから大切に着たいと思ってもらえることを目指していきます。

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「ユニクロ」はドイツでどう受け止められている? ドイツ事業COOに聞く、売れ筋やリペアサービス、ローカルとの取り組み

 2014年4月、ドイツ・ベルリンの通称クーダム(西べルリンを代表する目抜き通り、クーアフュルステンダムを指す)エリアに、ドイツ初となる「ユニクロ(UNIQLO)」の店舗「ユニクロ タウエンツィーン店」がオープンした。広大な売り場面積(約2640平方メートル)と、階段に設置されたLED掲示板に世界の都市名が赤く光って流れる演出に圧倒されたことを覚えている。それから8年、ベルリン市内に6店舗、ハンブルク、ケルン、デュッセルドルフ、シュトゥットガルトとドイツ国内で10店舗展開を果たし、その勢いは今も続いている。ドイツで「ユニクロ」がここまで支持されるようになった理由は何なのだろうか。ユニクロドイツの桑原大和COO(最高執行責任者)を取材し、マーケット拡大の背景、エコ先進国といわれるドイツでのサステナビリティへの取り組み、今後の展望などを語ってもらった。

――ドイツにおける「ユニクロ」の売れ筋の傾向を教えてください。

桑原大和ユニクロドイツCOO(以下、桑原):グローバルで品ぞろえは同じなので、売れるものはどこの国でも売れています。ただ、その中でもドイツでは、商品のベネフィットを最重要視して購入されるお客さまが多い傾向があります。そのため、必然的に機能性の高いアイテムや高品質なものが売れます。分かりやすい事例をあげると、夏は“エアリズム”、冬は“ヒートテック”、ダウンジャケットです。特に、“ブロックテック”(ユニクロ独自の透湿・防風・はっ水・防風機能を備えた素材) のアウターは、軽量で、雨風を防ぐ機能性を兼ね備えているため非常に好評で、季節を問わず代表商品として認知されています。

 接客をしながら最も感じるのは、ドイツのお客さまはとにかくたくさん質問をするという点です。アイテム自体の価値や自分のライフスタイルにフィットするかなどを吟味し、納得するとファンになってくれます。また、見た目のデザイン性だけでなく、着たときに快適であるか、メンテナンスが楽かなども気にする人が多いです。“エアリズム”はインナーから始まり、現在はTシャツやレギンスなど幅広く展開していますが、汗をかいてもすぐに乾くといった機能性からスポーツやワークアウトに適したアイテムとして人気で、他のヨーロッパよりも売れています。

――売れ筋をもとにしたローカルMDの取り組みをしていますか。

桑原:基本的に、ドイツだけ、ヨーロッパだけといった商品展開は行っていません。「Made for All」という「ユニクロ」のコンセプトのもと、どんな人にでも着てもらえるモノ作りを目指しています。

真夏でもウールセーターが売れるドイツ

――日本とのニーズに違いはありますか。5月にローンチした「マルニ(MARNI)」との協業をはじめとする、デザイナーズブランドとのコラボレーションについても教えてください。

桑原:何年も事業を続けている中で、ニーズに違いがないことは、私自身も驚いています。日本で人気のアイテムはドイツでも同じように人気が高く、グローバルで見ても同様です。ただ、その中でもドイツでは、アウターとニットのニーズが最も高いです。夏でも寒い時にはダウンを着ますし、季節に関係なく、そのときに必要なアイテムを着ることがドイツ人にとっては普通のことです。日本やアジア諸国では、メリノウールのニットは冬の商品というイメージが定着していますが、ドイツでは年中通して需要があり、気温が40℃近くなった夏でも売れるため、トップセラーに入るほどです。洗濯ができるのでTシャツ感覚で着る人も多く、デザイン性から仕事にも着ていけるなどのベネフィットがあることもニーズの高さに繋がっています。

 コラボレーション商品に関しても基本的に変わりません。「ユニクロ アンド マルニ(UNIQLO AND MARNI)」に関しては、やはり本国のイタリアではかなり反響がありましたが、イタリアだけに限らず、他のヨーロッパ諸国や日本でも同じ反響があり、ニーズも同様です。「LifeWear」や「Made for All」といった弊社のコンセプトに共感してもらえるデザイナーや、同じような志を持っているブランドとタッグを組み、軸を崩さないことで世界共通のニーズを保てるのだと思います。

――真夏でもニットが売れるというのはドイツやヨーロッパならではですが、年中通して購入することが可能なのでしょうか。

桑原:可能です。季節に関係なく、そのときに必要なアイテムが購入できるように品ぞろえを考えています。「ユニクロ」は、そもそも毎シーズンデザインを変えて、そのシーズンが終わったら着なくなると言ったモノ作りはしていません。タイムレスであり、シーズンレスであることが基本理念です。

――ドイツの顧客の声やニーズは日本のヘッドクオーターにどのように伝えているのでしょうか。企画への反映などはありますか。

桑原:毎日毎週お客さまや売り場からの声、売れ筋、数字などについてグローバルで報告し合っています。ドイツで売れるからと言って直接企画に反映されるということはありませんが、アイデアは多数出ます。アウターの需要が高い欧米からのアイデアで、ロング丈のシームレスダウンが誕生しました。それまでショート丈が主流でしたが、やはり寒さが厳しい地域ではお尻の下まで隠れるロング丈のダウンコートが好まれます。“ウルトラライトダウン”のジャケットもインナーダウンとして活用されるのはヨーロッパの寒い地域ならではですよね。このように、アウターの深掘りやニーズの対応を行い、企画に反映させていますが、結果的にヨーロッパだけでなく他国でも売れるといった実績を残せています。

店頭で地元のイラストレーターと協業

――ドイツ、もしくは、ベルリン店舗のそれぞれの特徴を教えてください。単なるチェーン運営ではなく、各店舗それぞれで違った打ち出しをし、各店の個性を出していますよね。

桑原:ドイツ国内であっても都市によって街の雰囲気が全然違いますし、客層も需要も変わってきます。そのため地域に合った販売戦略を打ち出すことが重要になってきます。ベルリンの旗艦店(タウエンツィーン店)では、ローカルのアーティストとコラボレーションを行い、文化や考え方が分かるように伝えています。現在は、ベルリン拠点のイラストレーターLaura Breilingを起用し、階段の踊り場とフィッティングルームに彼女のイラストを展示しています。さまざまな年代、人種、スタイルを表現した彼女の作品は、「Made for All」の考えにもとてもよくフィットしています。他にも、「ユニクロ」は日本から来たブランドであるということを分かりやすく伝えるために浮世絵を用いたディスプレーを設置しています。

 ベルリンの壁の跡地に近いイーストサイドモール店では、フィッティングルームにベルリンの壁をイメージしたグラフィックアートを描いています。東ベルリンの中心地であり、若い客層が多いことも影響しています。ハッケシャマルクト店は規模こそ小さいですが、感度の高いお客さまが多く、ファッション性の高いアイテムの動きは早いです。そのため新作を早めに導入するなど、充実した品ぞろえに力を入れています。

――ベルリンではすでに6店舗展開しており、ドイツ全土において今後も広がりを見せていくと予想されますが、ここまで認知された理由は何だと思いますか。

桑原:ドイツ国内では現在10店運営していますが、ドイツ人の物の見方やベネフィットを重視する点、合理的な部分などが、ユニクロのやりたいことと合致していることが理由の一つだと思います。自分の持っている予算をどこで何に使うかを慎重に選ぶ国民性です。もちろん違う面もたくさんありますが、日本人と似ている部分も多数あると感じています。また、大きく宣伝すれば売れるということでは決してありませんし、店舗を増やせば良いということでもありません。接客時には、単に英語をドイツ語に直してマニュアル的に説明するのではなく、より丁寧に分かりやすく、求められているベネフィットをうまく伝える努力をしています。

ベルリンから広がったリペア&アップサイクリングサービス

――サステナビリティの一環として、タウエンツィーン店では独自のアップサイクリングサービスを実施しています。

桑原:リペアとアップサイクリングサービスはベルリン発信となりますが、もともとは不良箇所のある商品を直して、ホームレスの方たちに提供する活動をNGO団体とともに行っていたことがきっかけとなっています。その活動を実際に見てもらうためにタウエンツィーン店の一角に、ミシンや作業台を設置したリペアサービスのコーナーを設けたのが最初です。お客さまが着ていた衣類を店舗に持参し、お客さまご自身がミシンや作業台を使って無料で修理ができるサービスになりますが、この活動を通して、ドイツではいかに物を大事する人が多いかということに気づかされました。例えば、お母さんが着ていたお気に入りの服をサイズを直して娘さんに譲りたいという方がいました。「ユニクロ」は生地の良さや長持ちする縫製に誇りを持っています。そのため、破れたりサイズが合わなくなったりしても、少し手を加えることで捨てることなく、また着られるようになるのです。

 現在は、ダウンの穴開き、ジーンズの穴開き、シャツのボタンつけ、ニットのほころびのお直しがメリペアのインとなっていますが、臨機応変に対応しています。さらに、週末に限り、通常のサービスに加えてNGO団体とのコラボでワークショップを開催しています。店頭に陳列している中で汚れてしまい、販売できなくなった商品はバッグなどにリメークし、リセールすることも行っています。それが廃棄処分を減らすことにもつながっています。リペア&アップサイクリングサービスは今年の6月に本格スタートしたばかりなので、まだ認知は浅いですが、確実に手応えを感じています。リペア&アップサイクリングは、9月にオープンした英ロンドン・リージェントストリートの旗艦店にも広がっています。

――ユニクロは企業として難民支援活動にも長らく取り組んでいます。日本に比べ、難民問題がより身近と言ってもいいドイツでは、どのような活動をしていますか。

桑原:ドイツは国をあげて難民問題への取り組みに積極的です。ユニクロも同様の考えを持っており、重要な社会問題の一つだと捉えています。8年前のドイツ1号店オープン当初から難民の方をスタッフとして採用するシステムを行っていますが、難民としてドイツへやって来て、ビザを取得し、旗艦店で働きながら現在はスーパーバイザーにまで昇格したスタッフもいます。また、ベルリンは他都市に比べてパーソナルな部分を大事にする文化が強いですし、難民だけでなく、LGBTQ+に対する考え方もベルリンは進んでいます。そういった多様性にフィットした販促を行っていくことが大切だと考えています。

――ドイツでの今後の展望を教えてください。

桑原:売り上げを増やすことだけに専念するのではなく、お客様に尊敬される企業になることが大切だと思っています。なぜなら、それが結果的にビジネスが長く続く秘けつだからです。日本からやって来たブランドとして、商品が良いことは前提にありつつも、どんな背景で作られているのか、ユニクロとは一体どんな企業なのか、そういったことをもっと伝えていきたいです。特にヨーロッパでは、サステナビリティ、気候変動、人種、障がい者、貧困などの問題に対する社会活動に積極的に取り組むことがとても大切です。個店レベルでさまざまな活動や努力をしていますが、まだまだ足りないと感じています。商品だけでなく、店舗やソーシャルメディアから発信してお客さまに理解してもらう。そこでファンになってもらい、こういう企業が作った服だから大切に着たいと思ってもらえることを目指していきます。

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「エンフォルド」が新世界百貨店と組みソウル出店 アジア開拓に本腰

 バロックジャパンリミテッドの「エンフォルド(ENFOLD)」は9月14日、海外で初となる単独店を韓国・江南の新世界百貨店4階に出店した。ブランドの世界観を凝縮した“コレクションライン”を中心にデザイン性の高いアイテムが好評で、好調な滑り出しという。新世界百貨店とフランチャイズ契約しており、今後韓国では同社を通じて8〜9店の出店を進める。

 植田みずきディレクターは「(江南の店舗は)まだ開いて間もないが、非常に手応えを感じている」と話す。来期(23年3月〜)以降は韓国と並行して中国本土への出店に向けても動き出す。

 国内百貨店では、コンテンポラリーゾーンでの地位を確立した「エンフォルド」。今後はアジア販路開拓に本腰を入れ、ブランドを新たなステージへと引き上げる。

WWD:「エンフォルド」の海外事業の現状は。

植田みずき「エンフォルド」ディレクター(以下、植田):海外事業の売上高は全体の14%で、そのうち約6割が韓国。海外事業単体で黒字化している。海外店舗への卸はショールームの「トゥモロー(英字)」を通じ、セレクトショップを中心に卸販売してきた。そこで順調に顧客が育っていたことが単独店の好調な滑り出しにつながっている。今後は新世界百貨店によるフランチャイズで韓国での出店を進め、セレクトショップへの卸は徐々に絞って単独店にシフトする。今後数年で8〜9店舗を出店する計画だ。

WWD:江南の新世界百貨店は、どのような商環境か。

植田:日本で例えるのであれば伊勢丹新宿本店に近い雰囲気を感じる。江南は韓国有数の富裕なエリアで、新世界百貨店のお客さまも買い物のモチベーションが非常に高い。日本の百貨店は、下層のラグジュアリーブランドや化粧品、食品フロアはにぎわっているが、上層の衣料品はまばらにということも多い。だが江南の新世界百貨店はどのフロアにもにぎわいがあり、どのお客さまも手に買い物袋をぶら下げている。

 フロアの並びのブランドは「ルメール(LEMAIRE)」「ガニー(GANNI)」「メゾン キツネ(MAISON KITSUNE)」「アー・ペー・セー(A.P.C.)」など。韓国での小売価格は日本の1.7倍ほど。セレクトショップでの卸販売では2倍以上になっていたが、それでも通用してきた。新世界の店舗では、エッジーなデザインやギミックを加えた攻めたものが売れ筋。比較的シンプルで、着まわしのしやすさや機能性を重視した、実用的なものが売れる日本とは明確に異なる。

WWD:江南の店舗の好調要因をどのように分析するか。

植田:一つは、もともと韓国国内で一定の認知が育っていたこと。とはいえ現地ではまだまだ無名だと感じるが、ファッションコンシャスな方の間には広がってきた手応えがある。「日本のブランド」という切り口で見られているとは特に感じず、純粋に他にないデザインが支持されている。ブランドのインスタグラムのフォロワー(約15万)のうち、日本に次いで多いのが韓国。最近ではBLACKPINKのジェニー(JENNIE)が「エンフォルド」の服を着用した画像をインスタにアップしてくれたことも、認知拡大につながっている。

 韓国のセレクトショップへの卸販売を7年間行っていたことで、韓国と日本との商習慣の違いにある程度慣れていたのも大きい。毎週新商品の投入が求められる日本の百貨店と違い、韓国ではワンシーズンの商品を一度に納入する。初めは苦労したが、今では随分慣れてきた。新世界の店舗でも、“コレクションライン”はシーズン始めに全ての商品が一堂にそろうことで店頭でインパクトのあるフェイスを作れている。ブランドの世界観を伝える上では、むしろ好都合だ。

 現地の女性は、インパクトがある色柄やデザインも、抵抗なく受け入れている。今、世界は音楽を中心に韓国カルチャーが席巻している。「自分たちが最先端である」という自負が、ファッションに前のめりにさせているのかもしれない。

WWD:来期以降の海外戦略の展望は。

植田:海外を成長のエンジンにする上で、中国の開拓が重要になる。バロックには中国現地企業との合弁であるバロックチャイナがあり、「マウジー(MOUSSY)」などで中国出店の戦略やノウハウの蓄積があるものの、ブランドの規模やターゲットなどが「エンフォルド」とはかなり異なるため、そのまま当てはめることはできない。どういう形がベストか慎重に探り、来年には緒につけられるようにしたい。

 ゆくゆくは世界中に店舗を構え、たくさんの人に「エンフォルド」の服を届けられるようにしたいという夢がある。コロナ前に実施した世界3都市(ロンドン、ロサンゼルス、香港)でのポップアップでは、さまざまな学びを得た。香港では非常に好感触だった一方、欧州ではシンプルなデザインが求められ、攻略には商品戦略の軌道修正が必要だと感じた。米国では、さらに商品の納期を前倒しできなければついていけない。

 ポップアップは当初韓国での実施も計画していたが、新型コロナが拡大したことで開催を見送った。従来のように世界中に足を運び、インスピレーションを得ることは難しくなった。だがその分、限られた視野の中で、ブランドのクリエイティブがより「濃く」「深く」なったと感じる。まだまだ「エンフォルド」は進化できるという手応えがある。

WWD:国内事業に目を向けると?

植田:今年7月以降は、19年の水準を上回るまで回復している。すでに主要都市を中心に13店舗あり、出店余地があるとしたら神戸ぐらい。これ以上店舗数を広げることは考えていない。店の面積を広げたり、内装を作り込んだりと、より世界観を深化させる方向になるだろう。

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ITベンチャーからファッション業界へ 「OAO」が提示する新たなシューズの選択肢

 「OAO」は、“CREATIVE FOOTWEAR”をコンセプトに、都市生活で求められる機能性と、アートや建築などに着想した未来的なデザインを特徴とするシューズブランドだ。同ブランドは板垣孝明と高橋悠介が直営ECをメインに2020年3月に立ち上げ、フォトグラファーやスタイリストといったクリエイターを中心にファンを徐々に増やしている。昨年から卸売も始め、東京・渋谷の「キス トウキョウ(KITH TOKYO)」や中目黒の「ベスト パッキング ストア(Best Packing Store)」、エディションなど5アカウントで扱われている。

 板垣と高橋は、かつて大手IT企業でウェブサービスなどの新規事業を担っており、事業責任者や関連会社の取締役を務めた経歴もある。そんな二人がなぜ、ファッションの世界に入ったのか?ブランド立ち上げの経緯と今後の展望を聞いた。

WWD:二人の出会いは?

板垣:僕らは元々ITベンチャーで働いていました。17年に新卒で入社した同期です。共通の趣味も多く、自然と仲良くなりました。互いに部署は別でしたが、どちらも新しいサービスや事業を作ることが主なミッションで、今の社会にはこういうことが求められているから、こんなサービスが必要なのでは?という視点で業務に取り組んでいました。

高橋:実際にコードを書くということはなかったものの、こういうデザインや機能性を持たせたいとか、どんなマーケティングを行うかなどを考え、チームとして実行していました。

WWD:デジタルではあるが、“何かを作る”という点ではファッションとも通ずるものがある。

高橋:そうなんです。エンジニアやデザイナー、グラフィックなどさまざまなクリエイターと一緒に仕事していて、サービスを作り、それを活用してもらう喜びはいつも感じていました。

板垣:ただ、ずっとデジタルの領域で、「いつかリアルに関わるものを作りたいよね」と話していて。それと、toBではなくtoCで、自分たちの作ったものがどこまで広がるか試してみたい気持ちもありました。そして、二人で会社をやろうと、入社して2年弱で退社し、19年3月に自分たちの会社を始めました。

WWD:スニーカーを事業に選んだ理由は?

板垣:前職でさまざまな職種のクリエイターと関わる中で、「しっくりくるスニーカーがない」という話がたびたび上がっていたんです。例えばバッグはPCが入るサイズで耐久性があるものを使い、服はシンプルだけど気心地が良くて、イージーケアなものを選ぶ。身に着けるものにはこだわりがあるけど、靴は選択肢が少ないから、無難にスポーツブランドを買う、という人が多かった。これはチャンスというか、そのニーズに応えるプロダクトを作なくてはと思い、シューズブランドを構想しました。

高橋:ランニングシューズを日常で履かない人も多いし、ラグジュアリーブランドのシューズは耐久性や履き心地などで納得がいかないこともある。デザインから履き心地、機能性まで、100%満足のいく唯一無二のシューズを自分たちで作ろうと、“ONE and ONLY”の意味を込めて「OAO」を始めました。

WWD:会社登記は19年3月で、ブランド立ち上げは20年3月。ローンチまで1年近くかけている。

高橋:プロダクト開発にかなり時間がかかりました。ファッションが好きだったとはいえ、ものづくりは素人。最初は、さまざまなクリエイターにヒアリングしまくって、どんなデザインと機能性が求められているかをリサーチするところから始めました。

板垣:その後、友人に手伝ってもらいながらデザイン案を考えていくのですが、納得のいくものがなかなか作れなかった。そこで、途中からアートディレクターやデザイナーとして活動する串野真也さんにプロダクトデザインをお願いしました。

高橋:串野さんは僕らよりも10歳以上年上で、プロダクトのデザイン経験も豊富。僕らのやりたいことを汲みつつ、素材や色、パーツ、設計などを細かく調整しながら仕上げていきました。プロトタイプだけでも20足は作ったかな?そうして完成したのが1作目の“ザ・カーブ ワン(THE CURVE 1)”です。

WWD:生産も国内で行っている?

高橋:はい、革靴やブーツを手掛けている老舗工場で作っています。革靴とスニーカーは勝手が全然違うため、一から相談しています。どんな素材がコンクリートで快適に歩けるか、靴擦れなどのストレスを避けられるのか。木型、ソール、中底、インソールと何千通りもあるパーツの組み合わせから、最適なものを一緒に考えています。

WWD:その機能性は具体的にどんな点に表れている?

板垣:例えば1作目の“ザ・カーブ ワン”は、前足部のソールの傾斜を強くして、スムーズな蹴り出しを目指しています。ほかにも、中敷の土踏まずの膨らみを絶妙に出して足当たりをよくし、通常厚紙を使う底の部分にコルクを使って吸湿性を高めています。

高橋:コルクの方が柔らかいから、履き心地も良くなるんです。あと、スポーツメーカーは履き口と内側で別々のライニングを組み合わせることが多いのですが、踏み込む力が外に逃げて疲れの原因になるため、僕らはライニングを一体化させています。

板垣:大手メーカーの靴はかなりコストを切り詰めて作っているんですよね。質が低いわけじゃないけど、価格帯を大きく動かせない。僕たちはコストや価格帯を意識しすぎず、こだわりを徹底的に詰め込めるのは、インディペンデントなブランドの強みです。

WWD:ビジネスは好調?

高橋:最初はECだけでしたが、ポップアップや予約制のショールームなど、直営ビジネスを多角化しているほか、昨年から卸も本格的に始めました。個人的にも好きな高感度なショップに評価されているのがうれしいですね。

WWD:今年2月にはロゴやサイトデザインを一新したが、その意図は?

板垣:より多くのユーザーに届けることが一番の狙いです。ローンチ時の抽象的で直感的なサイトデザインは、ブランドに興味を持って流入してきたユーザーにはウケても、フラッと立ち寄った人には優しくない。プロダクトを気に入ってもらえるかもしれないポテンシャル層を、サイトデザインやUXで損失しているのはもったいないなと思いました。今は「高い推進力」「強いグリップ「厚いソール」など、分かりやすい特徴から検索できるようにし、どんな人でも回遊しやすい設計を目指しています。

高橋:プロダクトもストイックなデザインがメインでしたが、オフホワイトを基調とした柔らかなカラーリングや曲線的なステッチワークなど、優しいテイストを取り入れたモデルも積極的に開発しています。“オース(AUTH)”や“サンライト(SUNLIGHT)”はその一つで、これまでのモード好きなファンに加えて、主婦などの女性ユーザーの反響もあり、間口の広がりを感じています。

WWD:既存ファンの反応は?

板垣:ポジティブな反響がほとんどです。ブランドの軸はブラさず、見せ方をアップデートできた証拠だと思います。リピート率は3割を占め、数足を所有する人も多い。

高橋:定番モデルも素材やサイジングを絶妙にアップデートしているので、新しくなるたびに買ってくれる熱心なファンもいますね。

WWD:現在の課題は?

板垣:ブランドの世界観を体験できる場所がまだまだ少ないこと。試着はもちろん、プロダクトのクオリティーやこだわりをワンバイワンで伝えていきたい。今はポップアップが中心ですが、フラックシップのようにブランドのコアを伝える空間が必要だと思います。

高橋:物販だけでなく、ブランドの姿勢を伝える新しい企画にも挑戦したいよね。少し前に、ポップアップと連動したウオーキング企画を行いました。街の歴史を知りながら「OAO」を履いてもらう内容で、少数の参加者ながらユーザーと深くつながることができ、手応えを感じました。建築やグラフィック、アートなど、ブランドと親和性のある物を組み合わせながら、世界観を総合的に訴求する企画を実施していきます。

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化粧ポーチを持たないZ世代「究極のモバイルコスメ」とは?

 女性誌やウェブの美容特集で「ポーチの中身を見せてください」は、人気企画の1つだ。美容識者や一般の方が愛用する化粧ポーチを広げ、持ち歩くコスメを全て拝見する企画である。ひと昔前に「囲み目メイク」が流行した時代は、重ねづけ用としてマスカラを複数本、ビューラー、アイライン、パレットアイシャドウなど、目元アイテムをぎっしり詰め込んだポーチはなかなかに見応えがあった。

 おそらく、今後(もしくは現在進行系で)このような化粧ポーチは減少するのではないだろうか。試しに検索すると、同様の企画タイトルには「ミニマリスト」「厳選」「最低限」といったワードが散見している。生活様式の変化とともに、Z世代の間ではすでに「物を持ち歩かない」意識が定着し、大人の女性の間でも同様の意識が広がっているからだ。

 

Z世代の間で「化粧ポーチ」が消滅した理由 

 今回もZ世代のリアルな声を聞くために、都内の大学に通う学生さんに協力いただいた。葵さん(21歳・三重県出身)、はるさん(22歳・佐賀県出身)、さやかさん(23歳・山口県出身)の3人に、まずは化粧ポーチを持っているか聞いてみた。

はる:持っていません。持っている子は、クラスで1人か2人くらい……?

さやか:私も持っていません。友達も消毒液とかハンドクリームとか、他のものと一緒に入れている感じ。

葵:家が遠くて“学校でイチからメイクする子”がいて、化粧品がぎっしり詰まったポーチを持っているのは彼女くらい?コスメ専用のポーチはほぼ見ないです。

 彼女たちが化粧ポーチを持たなくなった理由は、バッグが小型化したこと。その背景には、スマホ1つで何でも事足りてしまうライフスタイルが関係している。

葵:食事とかコンビニはスマホで決済するし、移動もモバイルスイカを使うので、友達と遊ぶ時は“スマホが入る小さなポシェット”で出かけます。

はる:私は財布も現金も持ち歩く派ですけど、電子決済とかカードで払う子が半々くらいかな。友達もみんなバッグは小さめですね。

さやか:スケジュール帳や鏡も、たいていスマホがあれば間に合ってしまう。私も友達と遊ぶ時のバッグは、スマホさえ入ればいいかなと。

 実際に、彼女達に財布と、友人と遊ぶ時用のバッグを見せてもらうと、あまりにコンパクトで驚いてしまった。財布はパスケースと見間違うような薄さ、バッグもスマホよりひとまわり大きいサイズで、確かに化粧ポーチが入る余地はなさそうだ。今回取材したのは交通網が発達し、電子決済が可能な店舗が多い首都圏の学生であって、全国的には事情も違うと思う。その一方で、過去に携帯が必須だった、手帳や鏡、財布などを「やろうと思えばスマホ1つで代用できる」のも事実である。

さやか:学校がある時は、パソコンや教科書、水筒を持ち歩くので、大きめのバッグを使います。ただ“なるべく物を持ち歩きたくない”というのは、皆共通して感じていることだと思う。大きいバッグはつい色々入れたくなっちゃうから、学校用もなるべくコンパクトなものを選びます。

外出先のメイク直しは「リップ+“棒もの”」?

 荷物の軽量化が可能になったからこそ「なるべく物を持ちたくない」「持ち歩く必要もない」という感覚は理解できる。では、コスメに関してはどうだろう?あれこれ所有したくならないのだろうか?

葵:外出する時、絶対に持っているのはリップですね。

はる:写真を撮る時に塗り直すもんね。

葵:リップ以外は、人それぞれな感じ……?アイラインやマスカラを1~2品とか。

さやか:片側がペンシルで、片側がマスカラになってるアイブロウは一時期すごく流行っていました。

 持ち歩くコスメとしてあがるのは「棒もの」中心、それも1つか2つのみだ。彼女たちにコスメに対する所有欲がないかというと、決してそんなことはなく、新作や話題のコスメはSNSで頻繁にチェックしているという。それを「外出先に携帯するか」というと、また別の問題のようだ。ちなみに「写真を撮る時に、テカリを抑えたい(ファンデを使いたい)」と思わないのか聞いてみた。

葵:肌は(カメラアプリの)フィルターがあるからいいかなと。

さやか:結局加工しちゃうので、肌はあまり気にしないですね。

はる:友達でパウダーファンデを持ってる子、見たことないです。小型のルースパウダーはいるかな。

 パウダーファンデを持ち歩かなくていいなら、ますます化粧ポーチは必要なさそうだ。もちろん、Z世代の中には鏡やパレットタイプのアイシャドウ、そしてコスメ専用のポーチを持ち歩く人もいると思う。ただし、冒頭で述べたような「フルアイテムがぎっしり詰まったポーチ」は、この世代には響かないのではと感じた。理由は、葵さんのこのコメントだ。「必要なものはドラッグストアに大抵揃ってますし、コスメの場合、ECもあればフリマサイトもある。そもそも子供の頃から物も情報もあふれているので、普段から“自分に必要なものや情報だけ削ぎ落としていく”作業のほうが多い気がします」。

 

理想のモバイルコスメはコンパクトで多機能なこと

 あれこれ持ち歩くのではなく、厳選したコスメを携帯するZ世代。「理想のモバイルコスメ」とはどんなものだろう?

はる:さっき話していたアイブロウみたいに、1品で多機能だと便利ですね。

さやか:小さくて色々な用途があるとつい買っちゃう(笑)

葵:スティック状で片方がアイライン、片方がマスカラとか便利だよね。

さやか:あと、リップで“スマートに塗り直せる”ものが欲しい。スマホを見ながら直すの、あまり好きじゃなくて。

はる:分かる。人前でリップを直す時いつも思う。

葵:ケースをスライドして、シュッと鏡が出てくるとかね(笑)。リップは大きめの鏡がついていると便利だし、塗る動作がキレイに見えるといいなと思う。

 彼女たちのコメントを総合すると①形状がコンパクト ②1品で多機能 ③リップは大きめの鏡つき、あたりだろうか。最近発売した製品の中から、注目アイテムを選んでみたい。

唇にも頬にも目元にも使えるマルチカラー

 「ローラメルシエ(LAURA MERCIER)」から登場した“ティンティド モイスチャライザー ブラッシュ”は、肌に溶け込むようになじみ、自然な血色感やツヤを添えるマルチカラー。美容成分を配合したなめらかなテクスチャーで、チークを中心に、アイカラーやリップとしても活躍する。チューブタイプのグロスよりひとまわり大きいサイズで、持ち歩きにも便利。

コンパスみたいに折りたためる極細アイブロウ

 「フジコ(FUJIKO)」の“美眉アレンジャー”は、 コンパスのように折りたためるユニークなアイブロウだ。片方に直径1.5mmのパウダーペンシル、もう片方に直径2.0mmの柔らかなコンシーラーをセットし、ペンシルで眉を描いたら輪郭をコンシーラーでなぞり、軽くぼかすだけで立体感の際立つ眉に。折りたたむと全長約9.5cm、幅約1.4cm、厚さ約8mmとコンパクトな点も魅力。

立体感を叶える韓国発・影色×ハイライト

 Z世代に人気の韓国コスメ、「アイムミミ(I’m meme)」の“アイムマルチスティックデュアル”は、シェーディングとハイライトを1本で叶えるスティックだ。シェーディングは、太すぎず細すぎない適度な影を演出し、ハイライトは上品なシャンパンピンクで、肌に自然なツヤ感をプラス。顔はもちろん、鎖骨の周囲にぼかすことでデコルテを美しく見せる裏技も。

大きめミラーが魅力、モダンでラグジュアリーなリップ

 リップを引き抜くと、ケースがパタンと開いて両面にミラーが登場する「ゲラン(GUERLAIN)」の“ルージュ ジェ”シリーズ。全44色のリップカラーと、全21種の“ルージュ ジェ ケース”を自在に組み合わせ、カスタマイズできる。誕生時からそのモダンなデザインが注目され、7月には、蝶の羽をモチーフにした“ルージュ ジェ ケース”の限定デザイン(全3種)が登場した。リップをつける動作の美しさにまでこだわり抜いたケースは、シーズンごとに新作や限定デザインが登場している。

大人の女性にも「モバイルコスメ」のニーズは存在する

 実は最近仕事で会う30代以上の女性に、Z世代のような「小型バッグ」愛用者が増えた印象だ。スマホとカード(社員証や交通カード)が数枚入るサイズ感のポシェットで、通勤時には別のバッグも携帯するけれど、社内移動はこのポシェットとパソコンのみ。ランチの時は、ポシェットだけ持って外出するという。

 このあたりは、スマホ中心の生活様式が、大人の女性にも浸透しているように思う。確かにこのポシェットに、マルチで使えるコスメが1つあれば、昼間の用事は案外事足りるかもしれない。そういう意味で、大人の女性にも「多機能でコンパクトなモバイルコスメ」のニーズが、一定数存在するのではないか。

 さらにもう一歩進んで「なるべく物を持ちたくない」Z世代が、年齢を重ねた時に、どんなコスメが注目されるだろう? 現時点では夢物語ではあるけれど、印象的だったのが下記のエピソードだ。

はる:たとえば、唇にちょんとのせたら、そのまま自分の唇に反応して、キレイに色が広がるリップがあったらいい。

葵:すごい、近未来っぽい(笑)。でもそれ、肌で出来たら超便利かも。

さやか:究極的には本当にそれ。テクニックがいらなくて、本当に似合うものがあったらすごく欲しいと思う。

 心の中で「そうだよなあ~」と深く頷いてしまった。目下、美容の世界において「人工皮膚」や「パーソナライズコスメ」は重要な研究テーマではあるけれど、進化の途上にある面は否めない。遠い未来に、彼女たちがいうようなコスメは実現するだろうか。少なくともZ世代の話しを総合すると、ごく近い未来において「多機能でコンパクト」「誰でも簡単に似合う」モバイルコスメの注目度は高まる気がしている。

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NBA随一のファッショニスタ、カイル・クーズマが初来日 次世代スターの好きなブランドは?

 NBAの次世代スター、カイル・クーズマ(Kyle Kuzma)が、9月30日〜10月2日に埼玉スーパーアリーナで行われた「NBAジャパンゲームズ」のため初来日した。クーズマ選手はユタ大学在学中の2017年にNBAドラフトにアーリーエントリーしてロサンゼルス・レイカーズ(Los Angeles Lakers)に入団。身長205cmの長身ながら、ドライブと3ポイントも得意とするオールラウンダーで、1年目にオールルーキー1stチームに選出され、19-20年にはブロン・ジェームス(LeBron James)やアンソニー・デイビス(Anthony Davis)らとともにNBAチャンピオンを獲得。21年からワシントン・ウィザーズ(Washington Wizards)に所属し、八村塁選手らとともにプレーしている。

 クーズマ選手はバスケの実力だけでなく、個性的なファッションスタイルでも注目を浴びており、12月には「プーマ(PUMA)」とのコラボコレクションも発売する。スラリとしたスタイルと端正な顔立ちで、私服では「ラフ シモンズ(RAF SIMONS)」「リック・オウエンス(RICK OWENS)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「アミリ(AMIRI)」など数々のデザイナーズブランドを着こなす。会場入りでスナップされる彼のファッションは、今やNBAの名物だ。「東京は世界有数のファッションの街。来れてとてもうれしいよ」と語る彼に、バスケや私服のこだわりについて聞いた。

WWD:日本の印象は?

カイル・クーズマ(以下、クーズマ):素晴らしいね。独自のファッションや食べ物がある街で、来日を心待ちにしていた。日本のファンの前でプレーできることがうれしいよ。

WWD:今季でウィザーズに移籍して2シーズン目。現在キャンプの真っ只中でもあるが、コンディションは?

クーズマ:とてもいいよ。僕個人の力もみなぎっているし、チームの雰囲気もいい。メインシーズンに向けてエンジンがかかり始めている。

WWD:あなたはNBA選手の中でも、感度の高いブランド選びでファッショニスタとしても知られる。特に好きなブランドは?

クーズマ:「アミリ」「ルード(RHUDE)」「マルニ(MARNI)」「ブルーマーブル(BLUE MARBLE)」……全てあげるとキリがないね(笑)。本当にいろんなブランドを着るけど、プライベートでも交流のあるデザイナーの服は特にお気に入りさ。彼らは素晴らしいクリエイターで、心から信頼している。それに、僕の体にフィットする服もたくさんあるんだ。

WWD:毎日のコーディネートで意識していることは?

クーズマ:気分によってファッションを楽しむこと。上機嫌なときはカラフルなものを着るし、少し暗い気持ちだとオールブラックを着たくなる。そこに、気分以外の要素をミックスして、スタイルを完成させるんだ。ワードローブには汎用性のあるアイテムを入れるようにしているよ。奇抜だと言われることもあるけど(笑)。

WWD:今日のコーディネートのこだわりは?

クーズマ:今日のキーポイントはシューズ。ジャパンゲームでも着用した「プーマ」の“ティーアールシーブレイズ コート トウキョウ ハラジュク(TRC BLAZE COURT TOKYO HARAJUKU)”で、レオパードとピンクの大胆な組み合わせが気に入っているよ。足もとを引き立たせるために、上はシンプルな白いTシャツ、下は黒いパンツを合わせてみた。時計は「ロレックス(ROLEX)」で、ネックレスは「ティファニー(TIFFANY)」だよ。

WWD:9月にNYで行われた「プーマ」のファッションショーにはモデルとして登場した。ランウエイを歩いた感想は?

クーズマ:素晴らしい経験だった。とても楽しくて、スリルもあった。過去にもファッション雑誌主催のショーに出演したことがあって、ランウエイは自分のクリエイティビティーを表現する場所。そして何より、普段は着られないアメイジングなアートピースが着られるのがうれしい。

WWD:12月には「プーマ」とのコラボコレクション“チャイルドフッドドリームス(CHILDFOOD DREAMS)”を発売する。アイテムのこだわりは?

クーズマ:サステナビリティにこだわった。水の使用量の少ない染色方法や、再利用素材を積極的に使って、地球へのダメージをなるべく軽減した。僕ら一人一人の行動が環境に影響を及ぼすから、その意識を持ってもらうようなコレクションを目指したんだ。

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ロックシーンの“先導者”であり“扇動者”マネスキン 音楽性、自己の解放、「グッチ」との蜜月関係を私服で語る

 長らく停滞を見せていたイタリアン・ロックの“先導者”であり、世界のロックシーンの“扇動者”でもあるのがマネスキン(Maneskin)だ。結成から7年で名実共にイタリアを代表するロックバンドとしてその名を響かせた、今最も注目すべき存在である。

 マネスキンは、ボーカルのダミアーノ・ディヴィッド(Damiano David)とギターのトーマス・ラッジ(Thomas Raggi)、ベースのヴィクトリア・デ・アンジェリス(Victoria De Angelis)、ドラムのイーサン・トルキオ(Ethan Torchio)から成るベーシックな4人編成で、平均年齢は約22歳という若さだ。10代前半の2015年にバンドを結成し、地元ローマでのストリートライブをはじめとする草の根活動で徐々に人気を集め、18年に1stアルバム「Il ballo della vita」をリリース。ロックを下地に、ファンクやヒップホップなど多ジャンルの要素を広く感じることができる自由な音楽性と共に、往年のロックスター然としたスタイルでイタリア国内を中心にファンを獲得していった。そして、パンデミックを経て制作した2ndアルバム「Teatro d'ira: Vol. I」が世界中で高く評価され、同年に開催されたヨーロッパ最大の音楽の祭典「ユーロビジョン・ソング・コンテスト(Eurovision Song Contest)」では見事優勝するという、駆け足ながら着実に成功の階段を一歩一歩登ってきたバンドだ。

 バンドは、音楽フェス「サマーソニック(SUMMER SONIC)」への出演のため8月に初来日。対面インタビューでは、彼らについての基本的な質問から、バンド内でのそれぞれの立ち位置や、過激とも捉えられるパフォーマンスとその背景、衣装提供も受ける「グッチ(GUCCI)」との蜜月関係などを聞いた。さらに、わざわざ私服に着替えてもらってメンバー同士のファッションチェックも敢行。クールに淡々と話すダミアーノ、時に真面目に時に無邪気なトーマス、率先して受け答えしてくれるヴィクトリア、聞きに徹するイーサンと、4人の人間味が伝わるリアルなインタビューとなった。

ーーまずは、バンドメンバーの出会いと結成の経緯から教えてください。

ヴィクトリア・デ・アンジェリス(以下、ヴィクトリア):ミドルスクールの時にトーマスと出会って、その時はいろいろなドラマーやボーカルを迎えてさまざまなフォーメーションを試してみたけど、どれもうまくいかなかったの。その後、ダミアーノをほかのバンドから引き抜いて、イーサンはローマにあるミュージシャンを探すサイトから見つけてきた(笑)。

ーーそれぞれバンド内ではどのような立ち位置ですか?

ヴィクトリア:私とトーマスがクレイジーなパリピタイプで、トーマスはお笑い担当かな。いい意味でね。ダミアーノは、時間に正確だし仕事は集中してきっちりこなすタイプで、イーサンはかわいらしくて周りを常に気遣ってる感じ。

ーーその関係性は、楽曲制作にも影響していますか?

ダミアーノ・デイヴィッド(以下、ダミアーノ):そりゃもちろん。

ヴィクトリア:そういう場合も多いけど、基本的に曲作りは各パートの領域を互いに守るような感じで進めるから、誰かがリードして作ることがないの。ただ、イーサンは普段シャイだからこそ、彼が発言した時はみんなが意見を聞いてリードされるようなことはあるかな。

ーーデビュー前は頻繁にローマでストリートライブを行っていたそうですが、そこで地力をつけたことは数万人規模のアリーナクラスでのパフォーマンスにも役立っていますか?ライブを観ていると、盛り上げるスキルが非常に高いと感じます。

ダミアーノ:全くもってその通り。ストリートで演奏しているとき、道行く人たちは僕らのライブを観に来ているワケではないから、どうにかして目を向けさせて引き留めなければならない。これは音楽フェスも同様で、全員が僕たちのファンではなくて、時間が被っているほかのアーティストのライブを観たい人や、僕たちのことを知らない人も大勢いる。そんな人々のハートをつかんで盛り上げることができたら、そのフェスを独占しているような気分になるよね。

ーーそれでは、単独公演の盛り上げ方はまた違うと。

ダミアーノ:語弊を恐れずに言うならば、単独公演の方がやりやすさはあるよ。だって僕らの顔も名前も知っているようなファンしかいないからね。例えば、観客に向かって話しかける場合、フェスは誰もが共感できる一般的な内容じゃないといけないけど、単独公演はバンドの歴史や楽曲のストーリーを話しても飽きられることなく盛り上がる。まあ、観客との対話の仕方が違ってくる感じかな。

トーマス・ラッジ(以下、トーマス):フェスには大スターたちも出演するから、僕らのパフォーマンスでどれだけの人々を惹きつけることができるかチャレンジングな部分もあるよ。フェスとは違うんだけど、ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)の前座は本当に挑戦的な舞台だったね。彼らのファンは熱狂的だから、僕らが出ていったら「なんだこのイタリアのバンドは?」みたいな雰囲気だったんだけど、最終的には「こいつらクレイジーだな!」って認められたような気がして、最高に気持ちよかったよ。

ーーとあるインタビューで、「マネスキンがやっているような音楽がイタリアのシーンにはない」とおっしゃっていましたが、そのような状況で活動するのは率直にどうですか?

ダミアーノ:その隙間を僕らが埋めればよかったから、実はその方が楽だったんだ。1990~2000年代初期にイタリア国内でブレイクしたバンドもいたけど、海外進出までには至らなかった。だからバンドという存在感がイタリア国内では薄くなっていたけど、今はポップミュージックの中でもバックに生バンドを入れたり、スタジオでアコースティック楽器を取り入れたりしているし、なにより僕らが活動することで若い人たちにバンドの存在意義が伝わっているはず。バンドで活動することは時間の無駄じゃない、ってことを証明できていると思う。

ーー少し気が早いかもしれませんが、マネスキンに影響を受けているようなバンドは現れていますか?

ヴィクトリア:まだ音楽シーンに変化は見られないけど、10代前半くらいのファンたちが楽器を習うことが増えているみたいだから、彼らが大人になったタイミングで分かるんじゃないかな。

ダミアーノ:21年に僕らが「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」で優勝した時、国内の楽器屋でギターの売り上げが6割も伸びたらしいんだ。“プロを目指すわけではなく自己表現のために楽器を弾きたい”“真剣にボーカル・トレーニングに取り組みたい”って人たちが僕らの活動によって増えたのだとしたら、それだけでも大ごとだよ。音楽は、自分の気持ちを人々に伝える手段としての自己表現の一つだから、少しでもその手助けができているのならば、このうえなくハッピーだ。

トーマス:僕らの世代はエレクトロ系が流行していたから個人的に好きだし、新しいビートもよく聴くけど、アナログ楽器は本当にいいもの。若い世代がギターやベース、ドラム、ボーカルを学ぼうという気持ちになってくれるだけでうれしくなっちゃうね。

ーー18年に1stアルバム「Il ballo della vita」をリリースし、国内外にその存在を知らしめて活動を本格化させる矢先にパンデミックが世界を襲いましたが、2ndアルバム「Teatro d'ira: Vol. I」への影響はありましたか?

トーマス:パンデミックは決していいものではない。でも、制作する時間をしっかり取ることができたし、メンバー同士の意見も聞くことができたから、バンドとしてはタイミングが良かったよ。

ヴィクトリア:ある意味、アルバムを作るには絶好の時間だったのかもしれない。「ユーロビジョン」で優勝して、「これからツアーだ!」って時に回ることができなかったのは悲しかったけど、振り返ると制作的にはいい時間だったかな。

ーー最新シングル「SUPERMODEL」は、タイトルだけを見ると華やかな印象を受けますが、リリックには強いメッセージが込められているように感じました。

ヴィクトリア:ロサンゼルスに滞在していた時、とてもいい人たちばかりだった一方で、とにかくセレブや有名人になりたい人や、“誰々と知り合いでなくてはならない”や“どこどこに行ったことがなければならない”って外面に囚われている人が大勢いて、私たちの価値観と全く合わずにバカらしく思っていたの。それを少し揶揄っているような曲ね。

ーーライブ中は衣装を脱ぐことが多いですが、あれは感情の高ぶりから無意識的にやってしまうと同時に、昨今問われるジェンダーの価値観への問い掛けや、自己の解放といった意味も込めているのでしょうか?

ダミアーノ:シンプルにライブ中はめちゃくちゃ汗をかくから、衣装を着ていると重くなるし気持ち悪いんだよね。ただ、ヴィクトリアがライブ中に脱ぐことに関してはいろいろな意見が届いていて、「ヴィクトリアの乳首を見てトラウマになった」という投稿も見たけど、それなら「男性の乳首も見れないだろ」って。体の違いはあるけれど、捉えられ方は一緒であるべき。女性の体と選択肢に制限をかけようとしたり、そんなことを大問題だという考え方も古臭い。まあ、僕よりもヴィクトリアの乳首の方がかわいいと思うけど(笑)。

ヴィクトリア:ダミアーノやイーサンが脱いでることに関しては誰も何も言わないのに、女性の私が脱ぐと「注目されたいからやっているんだろ」「見せびらかすためだろ」「すごいって思われたいんだろ」って余計なことを言う人たちが出てくるの。私は幸い何を言われても全く気にしない人だけど、そこに違いがあるべきではないし、女性を過剰なまでに性的対象にしているのがバカらしいと思う。暑かったら脱ぎたくなることは当然だから演奏中は脱ぐし、開放的な気分を味わいたいなら脱げばいい。問題視されること自体がおかしいから、そんな考え方の人たちは「怒りを内面に溜めてしまっているお気の毒な人」って捉えてるの。とにかく、「サマーソニック(SUMMER SONIC)」はマジで暑かったわ(笑)!

ーー現在、衣装は「グッチ」がサポートすることが多いですが、どんなものが好みですか?

ダミアーノ:ベストな衣装は、ステージ上で動きやすくて着心地のいいもの。だけど、同時に僕らをステージで輝かせて観客の目を引き付けることも必要だから、カッコいいスーツやボディスーツが一番クールかな。あと、脱ぎやすさも重要だね。

ヴィクトリア:私たちは、10分もパフォーマンスすれば裸になってしまうからね。でも、いつもトーマスだけはファッションのために脱がずに汗だくになりながらギターを弾いてるの(笑)。着ていて熱くなるような衣装だけは絶対にダメかな。

ーー「グッチ」がステージ衣装を手掛けていることに関してはどう思いますか?

ヴィクトリア:「グッチ」がマネスキンのような若いバンドとコラボするなんてめったにないだろうから、本当に幸運だわ。「グッチ」チームの人たちは本当に優しくて、理想の衣装を提案すると、私たちの趣味まで考量した想像以上のデザインに仕上げて、なおかつ着心地の良さも追及してくれる。それに、アイデンティティーに共感して情熱を持って取り組んでくれていることが伝わってくるの。

イーサン・トルキオ(以下、イーサン):「グッチ」の誰と会ってもいい人たちばかりだから、一緒に何かを進めるのは気持ちがいいよね。

ヴィクトリア:あと、打ち上げのパーティーも毎回最高!

ーー音楽シーンにおけるファッションは、どう捉えていますか?

ヴィクトリア:ファッションと音楽は世界の常識に革命を起こすもの。レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)やデヴィッド・ボウイ(David Bowie)、プリンス(Prince)、マドンナ(Madonna)のような、どちらのシーンでもアイコニックな瞬間を生み出してきたアーティストには感銘を受けているわ。

ーー今回、みなさんのリアルを届けるために特別に私服に着替えていただきました。メンバーだからこそ分かるそれぞれの私服の特徴を教えてください。

ヴィクトリア:じゃあ私がイーサンを担当するね。移動中でもスーツとシャツでバシっとキメるエレガントな時と、腕や胸の筋肉を強調させる1990年代のビッチのような時と、気分によって2種類あるかな。

イーサン:僕はトーマスで。いい意味でおもしろいスタイルで、いろいろなテイストを趣味良くミックスさせていて、ファッションのルールや常識に縛られていないかな。あとは、大きなハットやサングラスが好きで、僕的にはオアシス(Oasis)のリアム・ギャラガー(Liam Gallagher)っぽいんだよね。

トーマス:どこがだよ(笑)!ダミアーノは、スニーカーを履いていた次の日にはブーツだったり、スーツがお気に入りかと思えばカジュアルなストリートウエアを着てきたり、日によって変化が大きい。それが僕は好きで、最高にクールだ。

ダミアーノ:最後はヴィクトリアか。半年でスタイルを変えるからなんとも言えないけど、最近はスカートがお気に入りみたいで、今まで見せてこなかった脚をしっかり出しているのがいいね。

ヴィクトリア:脚とおっぱいね。

ダミアーノ:そうそう。あと、4人の中では最も趣味がいいというか、ファッションをちゃんとリサーチしているから、みんなで一緒にお店へ行ってもヴィクトリアが一番良いいものを見つけてくるんだ。

ーー最後に、初来日はどうでしたか?SNSを見ていると、非常に楽しんでいるようでした。

ヴィクトリア:カラオケが最高だったね。

トーマス:来る前から興奮していたし、来ていると実感するだけで常にワクワクしていたよ。

イーサン:桜の花を見たかったんだけど、今は時期じゃないから木だけを見に行ったんだ。それでも、春になったら咲く様子を想像して豊かな気持ちになれたよ。

ダミアーノ:見るもの全てに興奮した初来日だった。もっと時間があれば良かったんだけど、ニューヨークに行かないといけないから1週間くらいの滞在だったかな。

ーーダミアーノは、日本でタトゥーを掘るのが夢だったんですよね?

ダミアーノ:入れるタトゥーは龍、キツネ、日の出で迷っていたんだけど、タトゥー・アーティストに「君からは龍のパワーを感じる」って言われたから龍に決めたんだ。

ーータトゥーといえば、メンバー全員で同じデザインを入れていると聞きました。

ヴィクトリア:一つは全く一緒のデザインで、もう一つは似たようなデザインを入れているの。ただ、場所は首の後ろや背中、足首などでそれぞれ違うよ。

トーマス:ちょっと待って。インタビューを終える前に誰が今日のベストドレッサーかを答えてもらえる?

ーートーマスのスタイルが好きですね。

トーマス:おおおおおっ!ほらみろ!

ダミアーノ:嘘だろ(笑)?

ヴィクトリア:本当に?シャツがシワシワじゃない!?

トーマス:今日はいいインタビューだったよ!ありがとう!

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自動車部品メーカーのアイシンが美容業界に本格参入 “水”の力で髪と地肌をいたわる「ハイドレイド」の魅力を「レコ」の内田聡一郎代表に聞く

 大手自動車部品メーカーのアイシンが髪の内部と地肌に水分を届ける装置“ハイドレイド”を開発し、美容業界に参入した。“ハイドレイド”は空気中の水分子を髪の毛のキューティクルの隙間に入り込むほど小さな水粒子に変換。美容室でのカラーやトリートメントなどの薬剤浸透時間に使うことで、髪に含まれる水分と同じ性質の水を内側まで補給して、地肌をいたわり、髪の毛の柔らかさと艶を持続させる。開発の中心を担うアイシン イノベーションセンター AIRビジネス推進室の井上慎介室長と、いち早く“ハイドレイド”を導入した東京・渋谷にあるヘアサロン「レコ(LECO)」の内田聡一郎代表が、開発秘話やサロンワークでの活躍ぶりを語り合う。

睡眠の研究と自動車部品開発の
知見を生かして美容業界に参入

WWDJAPAN(以下、WWD):主に自動車部品の開発・製造を手がけるアイシンが美容業界に参入したのはなぜ。

井上慎介室長(以下、井上):当社は自動車部品のほかに長年ベッド事業を手がけ、私はこれまで睡眠の研究をしてきました。研究の中で睡眠時により快適な寝室空間を作るために、湿度に注目。効果を検証する中で、水分が増加する特殊な現象に気づき、技術解明すべく研究を重ねてきました。製品化を目指す中で、この技術を人に適応させることが一番の価値だと考え、さまざまな分野の中でも美容業界に目を向けました。

WWD:「水」に着目した理由は。

井上:睡眠は体がエネルギーを回復させるためのとても大切な時間です。極力体に負荷を与えずに、自然で良い環境を作りたかった。暑すぎても、光が強すぎてもいけないのです。人間の体は70%が水分で作られているといわれ、人にとって水は必要不可欠なものなので、水の活用を考えました。

ボタン1つで素早く起動
シンプルな動作設計が高評価

WWD:「レコ」ではいち早く“ハイドレイド”を導入した。実際にサロンで使ってみてどうか。

内田聡一郎「レコ」代表」(以下、内田):美容業界には数多くの機器がありますが、“ハイドレイド”はボタン1つで起動して、使いたいと思った時にすぐに使えます。何かをこまめに交換することや、給水も不要なので、とても扱いやすいです。さらに美容室に置くものはスタイリッシュであるべきだと考えているので、長年自動車部品を手がけてきたからこそのスタイリッシュなデザインも良いですね。

井上:電源を入れてボタン一つで動作するシンプルな設計は、まさに自動車部品開発の知見が生きています。空気中の水分を吸着して粒子化、適度な温度で吐き出す仕組みは、自動車の排ガス技術を応用しています。地球上どこにでも空気中に水分は存在しているので、電源さえあれば湿度の高低に関わらず給水不要で使えるんです。

WWD:「レコ」ではどのように“ハイドレイド”をメニューに取り入れている?

内田:ヘアカラー施術の放置時間に使用しています。当サロンはカラーユーザーが多いのでダメージに対するアプローチを大切にしています。ハイドレイドを用いた施術では薬剤の浸透を促進しますし、いわば水分補給をしながら施術できるので、カラー後乾かしたときの艶も実感しています。“ハイドレイドカラー”という形で通常のカラーにプラスの料金をいただいていて、付加価値の提供にもつながっています。“ハイドレイド”を当てている時はほかの機器とは異なり、蒸気や熱による“施術されている感”は正直薄いのですが、本質的に効果があるものは今後の美容業界で当たり前になっていくのではないでしょうか。

異業種ならではの
ブレイクスルーに期待

WWD:施術を受けたお客さまの反応はどうか。

内田:施術直後にその場でなかなか分かるものではないですが、色持ちや髪の触り心地など、後から実感されるお客さまも。導入してから日は浅いものの、必ず“ハイドレイド”でケアすると決めているお客さまもいらっしゃいます。

WWD:異業種から参入したアイシンに内田さんが期待することは。

内田:ほかの業界からの参入ならではのブレイクスルーをぜひお願いします!「その発想は無かった」という新しい視点がほしいですね。これまでの知見を生かしたドライヤーやヘアアイロンなどの機器を作っていただきたいです。

井上:技術開発を推し進めているので、今後の参考にさせていただきます。まずはデビューしたばかりの“ハイドレイド”において、美容師=プロの信頼を勝ち取っていきたいですね。

世界初のテクノロジー搭載
水分を補給して
柔らかさと艶が持続

 “ハイドレイド”は、水の力で髪と頭皮をいたわる世界初のテクノロジー搭載する美容室向けの機器。空気中の水分子を、キューティクルの隙間より小さい水粒子に変換し、髪へと届ける。カラーやトリートメントなどの薬剤塗布後の浸透時間を活用し、髪に含まれる水分と同じ性質の水を内側まで補給する。目に見えない極小の水粒子が髪の内部にまでしっかりと入りこむことで、キューティクルは柔らかくなり自然に閉じて、入りこんだ水分が定着。髪の毛の柔らかさや艶が持続する。空気中の水分を水粒子に変換するため給水不要で、シンプルな操作も魅力。現在は首都圏でのみ営業展開しており、今後は営業エリアを順次拡大していく。

※国内外論文及び特許のアイシンによる調査結果(2022年9月15日時点)
TEXT:NATSUMI YONEYAMA
問い合わせ先
アイシン
0566-62-8130

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古着買い取りは“信頼”の仕事 「ラグタグ」渋谷店バイヤーが大切にしていること

 ワールド傘下ティンパンアレイが運営するブランド古着の買取・販売チェーン「ラグタグ(RAGTAG)」の一番店である渋谷店は、2021年、22年3月期の売上高が前期比2ケタ増と業績好調だ。ファッションフリークが足しげく通い、流行最先端のトレンドアイテムや貴重なビンテージなどが流れ込む同店で、買い取り窓口となるのがバイヤー。ただ一般的なアパレル小売でいう買い付け担当とは違い、その役割は「鑑定士」に近い。

 正確な真贋判定と金額査定のために、最新のファッション情報には常にアンテナを張る。さらに重要なのは、「お客さまのとの対話」であると望月貴弘バイヤー。「僕らの一番大事な仕事は、単にいいものを目利きして買い取ることではない。服を託してもらうための信頼を作ることです」と語る望月バイヤーに、普段の仕事で心掛けていることや醍醐味を聞いた。

WWD:これまでのキャリアと仕事内容を教えてください。

望月貴弘「ラグタグ」渋谷店バイヤー(以下、望月):大手紳士服店を経てティンパンアレイに入社し、販売員として6年、バイヤーとしてのキャリアが10年ほどです。普段は店舗3階にある買い取りブースにこもり、持ち込んでいただいた服とにらめっこの毎日です。渋谷店では、あまりお目にかかれないレアなビンテージや「もう手放してしまうの?」というような最新のコレクションに出合うこともあり、飽きることはありません。服離れが言われる昨今ですが、このお店にいると、世の中にはまだまだ服が大好きな方がたくさんいらっしゃることを実感します。

WWD:バイヤーとして必要なスキルは?

望月:渋谷店の1日の買い取り点数はおよそ300点です。それらを数人のスタッフで査定・買い取り対応するため、お客さまを長い時間お待たせすることのないよう、真贋や状態をすばやく判別し値付けをしなくてはなりません。ブランドやトレンドに関する豊富な知識は、やはり必要です。紙媒体やランウエイ、SNSなどのファッション情報を通じて常にアップデートするようにしています。それを根気よく続けるには、もちろん「服が好き」であることも大事。僕自身もファッションラバーですし、学生のころから裏原系、アルチザン系、アメカジといろいろ着てきました。

WWD:バイヤーになるには?

望月:今の人事制度については詳しく知らないのですが、僕がバイヤーになったころは社内試験に合格する必要がありました。当時の試験は、「ラグタグ」の取り扱いブランドから無作為に選ばれた10点の商品について、「店頭での適切な販売価格を設定する」というものでした。膨大な数あるブランドを名前だけ知っているばかりではなく、商品の定価や中古品の取引相場まで頭の中にインプットできていないと導き出すことができません。合格のボーダーラインは正答率8〜9割。この試験に通るために、ファッション雑誌の発売日には本屋に足を運び、目を皿のようにして読み込んでいました。

 今は社内のデータベースを叩けば、ブランド情報や買取相場などある程度の情報は出てきます。ただこの仕事で最終的に大事になるのは、データだけでは判断ができないものや、僕ら人でしか作り出せない付加価値だと感じています。

WWD:データで判断できないもの、作れない価値とは。

望月:話は15年以上前にさかのぼるのですが、当時大学生だった僕が渋谷店を訪れたとき、若い店員さんに僕の着用していた服のブランドとシーズンをピタリと当てられたのです。着ていたのは「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」のコートでした。しかも聞けば、その店員さんはまだ入って日の浅いアルバイトとのこと。「なんだこの店は」とびっくりして、以来すっかりファンになってしまいました。振り返れば、この出来事が入社のきっかけでしたね。

 服についての知識は、単に買い取り金額を弾き出すためのそろばんではなく、お客さまと心を通わせるための武器になります。僕も年齢は40近いのですが、「(見た目は)若いのにすごく服に詳しいんですね」と驚かれます。そのギャップが印象に残るのか、次の指名につながることもありますね。インスタでのコーディネート投稿もできるだけ毎日するよう心掛けていて、それをきっかけに査定・買い取りの指名をして下さるようになったお客さまも多くいらっしゃいます。

 当店の買い取りでは新品同様なもの、比較的きれいなもの、一般的な古着……と状態によってランクを分けていますが、この仕事を続けていると、状態によらず大切にされてきた服は見れば何となく分かります。「服が本当に好きな方なんだな」「たくさん袖を通してきたんだな」ということが伝わってくるんですね。たくさんの服と向き合う仕事ですが、その先にいるお客さまの姿を見失わないようにすることが大切です。この仕事はつくづく「信頼」の仕事であると実感します。買い取りの個室ブースでは服との出合いや思い出話などに花が咲き、われわれに託す決心をしていただく方も多くいらっしゃいます。

WWD:消費者が不要な服を換金する手段として、フリマアプリも浸透している。

望月:フリマアプリは家にいながら手軽に、しかも中間マージンを抑えて服を売れる。僕たちはそれ以上の「来店する理由」を作っていかなくてはなりません。わざわざ店に足を運んでくださるお客さまの「潜在的なニーズ」を汲み取れるかが勝負だと思っています。

 僕も若い頃はたくさんの失敗をしてきました。お客さまに「あのスタッフには二度と対応してほしくない」と言われたこともあります。そういった経験を通して気づいたのは、「まだ着るかもしれない」「安く買い叩かれるかも」と迷いや不安を抱えて来店されるお客さまが想像以上に多いということです。査定が早くて正確ならいい、買い取り金額が高ければいいというわけではないのです。

 これは後輩を指導する際に伝えていることでもあるのですが、「すんなりと(買い取りが)成約してしまったときの方が、むしろ不安に思ったほうがいい」ということ。口先のテクニックで買い取りに至ったとしても、お客さまが100%納得していなかったとしたら、二度と来店いただけないこともありえます。

WWD:売り場作りには今でも関わっている?

望月:買い取った服を価値ある物として届けるのも僕らの仕事です。大事にされてきた服を、また次のオーナーにいい形でつないでいく。そういう素敵なサイクルの中にいられるのも、この仕事の他にない魅力です。せっかく託していただいた服なのだから、ぎちぎちのラックに並べるわけにはいかない。そんな思いで、ときどき売り場に出ては現場のスタッフにちょこちょこ口出ししています(笑)。

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【週間アクセスランキング 】最新の注目トピック TOP10(9月15〜21日)

「WWDJAPAN」 ウイークリートップ10

 1週間でアクセス数の多かった「WWDJAPAN」の記事をランキング形式で毎週金曜日にお届け。
今回は、9月15(木)〜21日(水)に配信した記事のトップ10を紹介します。

 「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントでも、毎週土曜日に【週間アクセスランキング】を配信開始。ファッション&ビューティ業界のニュースはもちろん、コレクションのルック、パーティーやストリートのスナップ、ライフスタイル情報など、幅広いジャンルの注目トピックを週3回お届けします。今すぐ「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントを[友だち追加]して、最新トレンドやファッション&ビューティ業界で注目されているトピックをチェックしよう。
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- 1位 -
スノーピーク山井梨沙社長が辞任 「既婚男性との交際および妊娠」を理由に

9月21日公開 / 文・林 芳樹


 スノーピークは21日、山井梨沙社長が同日付で辞任し、山井太会長が社長職を兼任すると発表した。辞任理由について同社は、山井梨沙氏から「既婚男性との交際および妊娠を理由として、当社およびグループ会社の取締役の職務を辞任したいとの申し出」があったとしている。事態を重く見て、山井太氏は役員報酬3カ月分の20%を、副社長の高井文寛氏から役員報酬3カ月文の10%を自主返上したいとの申し出があり、同社はこれを受理した。
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- 2位 -
スターバックスとスヌーピーが初コラボ Tシャツやタンブラー、スタバカードなど全23アイテムを発売

9月15日公開 / 文・WWD STAFF


 スターバックス コーヒー ジャパンは「ピーナッツ(PEANUTS)」の登場キャラクター、スヌーピーとの初のコラボコレクションを発売する。第1弾は9月28日から、第2弾は10月5日からスターバックス公式オンラインストアで販売する。同コレクションは、“HAPPINESS IS CONNECTING TOGETHER”〜しあわせはきみとのつながり〜をテーマに、スターバックスのパートナー(従業員)として過ごしながら気づいていく“日常のしあわせ”を描いた全23アイテムを用意する。
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- 3位 -
【2022年クリスマスコフレ】「ジルスチュアート」からヴィンテージ調のコフレが登場 テーマはチェリー溢れる“真夜中のティーパーティ”

9月20日公開 / 文・WWD STAFF


 「ジルスチュアート(JILL STUART)」は2022年ホリデー限定の”ミッドナイトチェリ-コレクション”を10月28日から順次発売する。チェリーが溢れる真夜中のティーパーティをイメージした限定のコフレや製品をラインアップする。なお、10月14日から予約を開始する。 10月28日発売のコフレ“ミッドナイトチェリー コレクション”(税込8250円)は、アイカラーパレット、プレストパウダー、リップ&チークといった人気アイテムの限定色をヴィンテージ調のポーチに詰め込んだ特別なコフレだ。
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- 4位 -
キャサリン皇太子妃とメーガン妃、エリザベス女王の国葬は英ブランドで参列


 9月8日(現地時間、以下同)に亡くなった英国のエリザベス女王(Queen Elizabeth II)の国葬が、19日にロンドンのウェストミンスター寺院(Westminster Abbey)で行われた。葬儀には王室メンバーや政府関係者、各国の元首や首脳が参列した。キャサリン皇太子妃(Catherine, Princess of Wales)は、英国ブランドの「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」の黒いコートドレスを着用。
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- 5位 -
「フォーエバー21」が2023年春に再上陸へ

9月21日公開 / 文・五十君 花実


 2019年に日本から撤退したかつてのファストファッションブームのけん引役、「フォーエバー21(FOREVER 21)」が、アダストリアとのタッグで23年春に再上陸する。同ブランドは19年の経営破綻後、ブランド管理会社の米オーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)傘下にある。伊藤忠商事がABGと日本での独占販売契約を結び、アダストリアは伊藤忠とサブライセンス契約を締結。10代〜30代前半を主対象に、まずはウィメンズのウエアと雑貨を販売する。
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- 6位 -
「オメガ」の“スピードマスター '57”新キャンペーンにジョージ・クルーニーとヒョンビンが登場


 世界最大の時計企業であるスウォッチ グループ(SWATCH GROUP)傘下のスイスブランド「オメガ(OMEGA)」は、アイコニックな“スピードマスター '57(Speedmaster '57)”コレクションの新たなキャンペーンに、長年アンバサダーを務めている米俳優ジョージ・クルーニー(George Clooney)と、2020年にアンバサダーに就任した韓国の俳優ヒョンビン(Hyun Bin)を起用した。
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- 7位 -
【スナップ】「ウルトラジャパン 2022」1日目 強烈個性なフェスコーデの達人たち

9月17日公開 / 文・福永千裕


 国内最大級の都市型ダンスミュージックフェス「ウルトラ ジャパン2022(ULTRA JAPAN以下、ウルトラジャパン)」が、東京・台場の特設会場で9月17日、18日の2日間開催している。今年は2014年の第1回以降7回目、コロナ禍を経て3年ぶりの開催となり、2日間で総勢46組のアーティストがステージに立つ。
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- 8位 -
小嶋陽菜によるランジェリーブランドがデビューイベントを開催 一部の商品が試着可能

9月16日公開 / 文・福永千裕


 小嶋陽菜が代表を務めるハート リレーションは、ランジェリーブランド「ロジア バイ ハーリップトゥ(ROSIER BY HER LIP TO)」のデビューに際したイベントを、ハウス オブ エルメ(HOUSE OF HERME)で9月22日から開催する。イベントでは、26日から販売を開始するデビューコレクションのうち“エブリデイ エッセンシャル ブラ”と“エブリデイ エッセンシャル ナイト ブラ”の試着が可能。さらに、イベント特設ページから購入ができる。
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- 9位 -
アンダーウエアがアウターの時代 「トム フォード」は光り輝くセンシュアルボディを飾る

9月20日公開 / 文・八木橋恵


 夜空にライトアップされたワールドトレードセンターが映えるロウワー・マンマンハッタンで、「トム フォード(TOM FORD)」がランウエイショーを開催した。ブルックリン・ベッカム(Brooklyn Beckham)や女優のニコラ・ぺルツ(Nicola Peltz)、モデルのエヴァン・モック(Evan Mock)らセレブが集い、フォトグラファーたちが歩道にごった返して誕生したファッショナブルなカオスは、「トム フォード」ならではだ。
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- 10位 -
エリザベス女王の最後のポートレートに仏ジュエラー「ブシュロン」のブローチ 両親から18歳の誕生日に贈られたジュエリーを着用

9月21日公開 / 文・益成 恭子


 英国のエリザベス女王(Queen ElizabethⅡ)といえば、ワントーンでまとめたファッションに3連のパールネックレスとブローチがトレードマークだった。エリザベス女王が最後のポートレートで着用しているブローチは、「ブシュロン(BOUCHERON)」のもの。オーバル、バゲット、ラウンドカットのダイヤモンドとアクアマリンがセットされた2つのピースから構成されるアールデコスタイルのブローチは、女王の叔父であるケント公爵が1937年にロンドンで購入し、英国王室のロイヤルコレクションの一部になった。
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10代に美の多様性をレクチャー 資生堂SABFAとインスタグラムがサポートする理由

 渋谷パルコを会場に、10代の若者がクリエイションの原点に出合える学びを提供するGAKU(ディレクターは、「リトゥンアフターワーズ(WRITTENAFTERWARDS)の山縣良和)は10月、美が持つ多様性を学ぶ「我美と作美(わびとさび)」を開講する。好評だった前回同様、資生堂のヘアメイクスクールSABFAの計良宏文校長がメーン講師を務め、インスタグラムも協力する。

 講師陣は、山縣デザイナーのほか、アーティストの下田昌克、写真家のKarinNoguchiら。美しさの多様性を学んだ後、メイクの技術を身につけ、撮影、それをSNSで発信するまでの一連を学ぶ全11回の講座だ。計良校長、フェイスブック ジャパン インスタグラム広報の市村怜子担当、そしてGAKUの武田悠太ファウンダーに、講座と、若い世代に学んでほしいことなどを聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):「我美と作美」が始まるまでの経緯は?

武田悠太GAKUファウンダー(以下、武田):GAKUは、10代が中心のクリエイションの学び舎。建築から音楽、ファッション、演劇、伝統工芸まで、幅広い領域のクリエイティブを一流、最前線で活躍しているクリエイターが直接教えている。いずれも、少数でリアル。講師陣のオーラや考え方、発する言葉などを直接感じてもらいたい。受講生は小学生じゃないから、自分たちが作るモノが、どんな評価やインパクトを生み出すのか?までを経験する場を設けている。ファッションの中でメイクがやりたいと、計良さんの力を借りることになった。

計良宏文SABFA校長(以下、計良):SAFBAのようなプロの学校ではないので、もう少しユルく、自由度の高い授業を考えた。例えば資生堂も加担しているのかもしれないが、唇には「上が1に対して、下は1.3が理想的」という黄金律が存在するが、そういうルールにとらわれない多様な美を考えたい。SAFBAの校長をしていて、プロになるには、プロに必要な感性の教育が重要と考えるようになった。将来に明るい希望を持っている人たちに対して、メイクに興味を持ってもらい、美について学ぶ機会を提供したい。自己表現の手法としてモノづくりする楽しさを伝えながら、「プロになるために、何をしたらいいのかわからない」子どもたちに基礎までを伝えられたらと思う。

WWDJAPAN:インスタグラムも「我美と作美」に協力するのは、なぜ?

武田:ちょうど前回は、インスタグラムをはじめとするSNSがアメリカのティーンエイジャーに良くない影響を与えているのでは?という懸念が生まれた頃だった。

市村怜子フェイスブック ジャパン インスタグラム広報担当(以下、市村):インスタグラムは、若い世代にたくさん使っていただくため、安全に使ってもらうため、例えばいじめに対するコメントにフィルター機能をかけたり、保護者に向けての啓発活動に取り組んだりしている。それでも、若い世代はSNSからの情報で価値観が作られたり、影響を強く受けたりする。実際、SNSで画一的な美しさにとらわれる懸念があることは認識しており、「何かできないだろうか?」と考えていた。

武田:本来インスタグラムは、周りにいろんな友達ができるポジティブなコミュニケーションのプラットフォーム。ただポジティブな側面が当たり前になりすぎて、当時はネガティブな一面が注目され始めたときだったと思う。

市村:ネガティブな一面は、あらゆるツールに存在する。ただインスタグラムがあったからこそ、新しいものに出合えたり、周囲に認めてもらいながら全然違う国の人と繋がれたりする。多様性や多様な美しさに、もっといい影響を与え、貢献したい。おかげさまで、インスタグラムはクリエイティブな人たちが使っている。発信することでビジネスにつながるというクリエイター支援の側面は、ここ数年で顕在化し、会社としてもフォーカスしている。GAKUのようにかなり特殊でクリエイティブな学校を見つけて、参加するほどの情熱がある人は、今後クリエイターになるかもしれない人。今後の活動に役立ててもらえるのでは?と考えた。

WWD:実際、どんな授業を行ない、前回はどんな子どもたちが参加した?

武田:前回はメイクが大好きですでにプロ級のモデルから、未経験の男の子まで、本当にいろんなタイプが集まった。日本の教育は、同じ部類、同じ年齢、同程度の技量の人が集まりがちだが、GAKUにはバラバラな子が集まる。現実の世の中は、そんなもの。本当の勝負になれば、ビューティの世界でもメイクアップアーティストだけと争うワケじゃない。さまざまな人と学ぶことは、今後の自身につながると考えている。

計良:前回、初日は「美」について語り合ったが、そこからすでに多様で面白かった。例えば14歳の子は「カルティエ(CARTIER)」のイベントでもらったカードのコピーの美しさに惹かれ、一方福祉施設で働く19歳は「人と人の心が通じ合った時の感覚、喜び、笑顔、時間に美しさを感じる」という。

武田:彼は福祉施設に住み込み、障がいがある人と一緒に生活している。なかなかコミュニケーションできなかった人とできるようになった時が「美しい」と思うのは、外見や内面、物事すべてに美しさを見出しているということ。衝撃とともに、嬉しさを覚えた。

計良:メイクは外見だけじゃなく、「らしさ」を表現することと常々伝えているが、外見を変えることで内面、内面が変わることで相手の印象が変わり、最終的には美意識までは変容する。前回は実技の授業が少なかったので、今回はもう少し幅広いテクニックを見せ、化粧品に触れられる時間を設けたい。

市村:インスタグラムが担うのは、ポートフォリオ的な作品集を作ること。完成度が高い写真を投稿するのは当たり前だが、それだけはSNSでもファンは生まれず、応援には繋がらない。駆け出しの時は、自分の発信が正しいか不安に思うこともあるだろう。それでも一生懸命投稿し続けると、ファンが生まれ、応援され、DMなどのコミュニケーションで支えてもらっていることを実感できるから、前向きになれる。インスタグラムは、そんな拠り所のような存在になれる。

計良:ありふれたものを発信するのではなく、新しい美を投げかけるようなチャレンジをしてほしい。自分が思う「美」については授業の中でもルーツを考え、突き詰めてもらう。その上で生み出した新しい「美」は、これまでの価値観を覆すものであるべき。そうじゃないと、新しい美は生まれない。そんな勇気まで、話し合いながら育んでいけたらと思う。

武田:前回参加した学生の中には、最終回でいきなり金髪になって現れた受講生がいた。本人の中で、既成概念が覆ったんだと思う。

計良:当初は、「カラーコンタクトに挑戦したいのにできない」くらい、周りから見れば些細だけれど、本人に取っては大きな問題で悩んでいたが、今インスタグラムを見るととっても楽しそう(笑)。

武田:計良さんが今なお覚えているなんて、本当にスゴいこと(笑)。今回も少人数で、一流の人と直接触れ合える機会を創出したい。

「我美と作美」開催概要
日時:2022年10月上旬~2023年3月上旬/全11回/原則水曜 17:00~19:00
会場:GAKU(渋谷区宇田川町15-1渋谷PARCO 9階)/SABFA(渋谷区神宮1-14-30 WITH HARAJUKU 2F)/Meta Tokyo office(港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー)
対象:10代 、10人程度(先着順)
受講料:3万8500円

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ファッション・ディレクターの三好良が語る、「ナッシング」初のスマートフォン“Phone (1)”の魅力

 英ロンドンを拠点とする新鋭デジタルプロダクトブランド「ナッシング(NOTHING)」が、初のAndroid版スマートフォン“Phone (1)”を発売した。ホワイトとブラックの2カラー展開で、価格はRAM 8GB/ROM 128GBのモデルが税込6万3800円、RAM 8GB/ROM 256GBのモデルが同6万9800円、RAM 8GB/ROM 256GBのモデルが同7万9800円。現在、「ナッシング」の公式サイトをはじめ、東京・渋谷のセレクトショップ「キス トウキョウ(KITH TOKYO)」や「蔦屋家電+」、その他家電量販店などで取り扱い中だ。

 このたび発売にあわせ、東京を代表するセレクトショップ1LDKで長らくディレクターを務め、現在はファッション・ディレクターとして活躍する三好良氏に“Phone (1)”を使用してもらい、その使い心地やデザインの魅力について語ってもらった。プロフェッショナルの視点から見る“Phone (1)”とは?

「スケルトンに惹かれる男性は多いですよね」

ーーまずは、“Phone (1)”の第一印象を教えてください。

三好:やはり、特徴でもあるスケルトンの背面が目を引きましたね。僕自身、1LDKで働いている時にスケルトンの腕時計をデザインしたり、アトリエに置いてあるチェアがプラスチック製の“プリア(Plia)”だったり、なぜか透明で光ったりするものが好きで、同じようにスケルトンに惹かれる男性は多いですよね。どこか無機質でインダストリアルだけど柔らかい雰囲気は、アトリエのテンションにも合うなと思いました。

ーー実際に使用してみた感想は?

三好:一般的なスマートフォンは、机に置いたときにディスプレイを上にしなければ通知が来たかどうかが分かりませんが、“Phone (1)”は背面に搭載された974個のミニLED“グリフ・インターフェイス”で光り方を設定すれば、ディスプレイを下にしていてもメールや着信、充電状況などを簡単に識別できるのが便利です。それに、“グリフ・インターフェイス”は写真や動画を撮影する時にも使用できるので、光量を調節して自然な光を再現できるのも嬉しいですね。ディスプレイはノッチがないので気持ち良く映像を見ることができるし、6.55インチとサイズが大きいので車の運転時にはナビ画面として重宝しています。あとは、独自のフォントや機械的な操作音も新鮮ですし、Androidのスマートフォンなので仕事でよく使う「グーグル(GOOGLE)」のアプリが立ち上げた時点で入っていながら、デフォルトのアプリ数が必要最低限でスッキリしているのは好印象でした。

「デザインの完成度は純粋にすごいと」

ーー1人のユーザーとしてではなく、1人のディレクターとして気になった点はありますか?

三好:洋服の場合は、使用できる生地の素材が豊富でサイズも自由ですが、スマートフォンは実用性を第一に操作性や機能性、耐久性などを考慮しつつ、数少ない素材でデザイン性も高めなければいけない。その中で、“Phone (1)”はリサイクル素材を使用しているので制約がより多かっただろうし、それでこのデザインの完成度は純粋にすごいと感じましたね。

ーー“Phone (1)”は、どういう方におすすめですか?

三好:デザインを重視したい人、例えるなら“ブラックベリー(BlackBerry)”を使っていた人みたいな(笑)。昔はデザイン性と機能性を両立させるのが難しかったですが、“Phone (1)”はどちらも兼ね備えているので、他人と違うものがほしい人には良いと思います。スマートフォンをシンプルにデザインで選ぶ時代が来るのかもしれませんね。実は9月末にショップをオープンするんですが、ショップの電話に“Phone (1)”を採用しようと考えていて、企業が受付の電話や社用携帯として取り入れるのもアリではないでしょうか。

ーー今後、「ナッシング」で見てみたいプロダクトはありますか?

三好:レコードプレイヤーやカセットデッキなど、“全員が必要としていないけど、こだわりが持ててスケルトンで存在しないもの”ですかね。

What is “Nothing”?

 そもそも「ナッシング」とは、スウェーデン出身の起業家カール・ペイ(Carl Pei)が、“iPodの父”として知られるトニー・ファデル(Tony Fadell)や、ライブストリーミングサービス「ツイッチ(Twitch)」の共同設立者であるケビン・リン(Kevin Lin)ら著名投資家の支援を受けて2020年10月に設立。社名は、“人間とデジタル製品の間の障壁がまるで何もない(nothing)ような状態を追求する”から名付け、デザイン性と使いやすさを重視した“型にハマらない”プロダクトを手掛ける注目のブランドだ。

“神は細部に宿る”、
デザイン性の高さから世界中で
注目を集める“Phone (1)”

 そして、今回三好氏にも使用してもらった“Phone (1)”は、「ナッシング」が21年7月に発表した第1弾プロダクトのワイヤレスイヤホン“ear (1)”に続く待望の第2弾プロダクト。スマートフォンが普及して早十数年、各社・各メーカーが毎年のように新型を発表するもデザインの画一化は否めない。そこに一石を投じるべく開発された“Phone (1)”は、発売前に全世界で20万台以上が先行予約され、世界最大のオンライン市場「ストックX(STOCKX)」で行われた100台限定(シリアルナンバー付き)のオークションでは最高で3000ドル(約40万5000円)の価格で落札されるなど、その細部まで作り込まれたデザインで早くから熱い眼差しが向けられていた。

 ハードウェアは、「ナッシング」の名を世界に広めた“ear (1)”同様、背面がスケルトン仕様になっているだけでなく、974個のミニLEDから構成された“グリフ・インターフェイス(Glyph Interface)”も備えている。これは、研究チームが“ユーザーの生活までをも明るく照らす”ために開発したもので、メインカメラでの撮影時にライトとは別の照明として利用できるほか、通話やメールの通知、充電状況などを音と共に光でアナウンスしてくれる機能だ。また、“グリフ・インターフェイス”とあわせて透けて見える内部の近未来的な基板配置は、イタリア出身デザイナーのマッシモ・ヴィネッリ(Massimo Vignelli)がデザインしたニューヨークの地下鉄路線図に着想しており、これまでスマートフォンの背面デザインや通知の在り方とは全く異なるアプローチを見せている。さらに、フレームに100%再生アルミニウムを使用し、プラスチック部品の50%以上をバイオベースとリサイクル由来で制作するなど、環境にも配慮したプロダクトである点も魅力的なポイントだろう。

 プラットフォームは、Android 12をベースとした「ナッシング」のオリジナルとなる“Nothing OS”を搭載。ドット風のフォントやメニュー構成など、“かゆいところに手が届く”ディテール部分のカスタマイズが加えられている。また、画面内指紋認証と顔認証の両方に対応しているほか、カメラは広角と超広角のデュアル構成でどちらも5000万画素のセンサーを内蔵し、ディスプレイはノッチを廃止しベゼルの太さを均一とすることでスマートな印象に。そのうえ、リバースチャージと呼ばれる機能により、“Phone (1)”本体で“ear (1)”をはじめとするワイヤレスイヤフォンの充電ケースを充電することができる優れものだ。

PHOTO:TAKU MATSUDA
TEXT:RIKU OGAWA
問い合わせ先
ナッシング カスタマーサポート
0120-789-830

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ファッション界からアーティストへ 橋爪悠也が問いかける“本当のオリジナル”

 橋爪悠也は、目から涙がこぼれる瞬間を描いた“eyewater”シリーズなどで知られるアーティストだ。8月から9月にかけて、同シリーズにフォーカスした過去最大規模の個展を東京の二カ所で同時開催した。橋爪はファッション業界からアーティストに転身した異色の経歴で、これまで架空の植物を調査するシリーズ“変植物調査団”や似顔絵を描いてくれる自動販売機“ヘンナーベンダー”などを発表してきた。そして2017年頃に“eyewater”を披露。さまざまなバックグラウンドを持つ人物が、涙を流してこちらを見つめる同シリーズで、広く知られる存在になった。しかしシリーズのタッチが藤子不二雄の作品を想起させることから、インターネットを中心に「コピーだ」と物議を醸した過去もある。それでも、“オリジナルとは何か?”という問いを追いながら創作を続けており、アジアでも徐々に人気を集めている。ファッション界での経験や、炎上騒動からの復活、そして将来についてを本人に聞いた。

地方の“オラオラ系”から
東京の「ザ・ノース・フェイス」へ

WWD:上京前は何をしていた?

橋爪悠也(以下、橋爪):高校卒業後、地元の岡山を離れて大阪のバンタンキャリアカレッジでファッションビジネスの勉強をしていたんです。その後、ゴールドウインの「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」でアルバイトを始め、上司に恵まれて上京するチャンスをもらい、原宿の旗艦店で4年ほど販売スタッフをしていました。

 上京した頃の僕は“おしゃれピープル”のつもりでオラオラしていましたけど、東京の空気とは温度差があり「声がでかい」だとか、何をするにもいじられましたね。2010年にオープンしたザ・ノース・フェイス スタンダードの1号店では初代店長を任せてもらいました。

WWD:当時学んだことは?

橋爪:僕がいたころの「ザ・ノース・フェイス」はブランドがまだ大きくなる前で、ストリートとの融合でアウトドアブランドの先頭に立とうという時期。今振り返ると、“本当にいいものなら、寝る間も惜しんで作っていこうぜ!”という昭和っぽい熱気がありましたね。そのころに出会った、PRの小口大介さんや当時は事業本部長だった現社長の渡辺貴生さん、あとは「ザ・ノース・フェイス・パープルレーベル」とナナミカを手掛けている本間永一郎さんらの“かっこいいと思うことを突き詰める精神”には感化されました。

WWD:イラストを始めたのはどのタイミングで?

橋爪:昔から絵を描くのが好きだったことを思い出して、店舗スタッフ時代からパソコンでイラストを描き始めました。その延長で、店頭のポップのデザインを自分でやるようになったらプレスのチームから声がかかり、2年ほどプレスをやっていました。

WWD:独立したきっけかは?

橋爪:外注したデザイナーの請求書を見たときに衝撃を受けて、自分も稼ぎたいと思ったからです。知名度のあるブランドでPRをやってきたおかげでつながりもたくさんあり、どうにかなるだろうという何となくの自信でフリーのデザイナーになりました。

WWD:実際に何とかなった?

橋爪:最初の1〜2年は持っていた漫画本を売って生活するくらいお金がなかったですね。カフェでバイトをしながら、人の紹介でモデルを少しやったり、イラストの仕事ももらったりして食いつないでいました。

 そんな時、知り合いに「依頼されたものだけを作っていると辛くなる時が来るから、表現したいことを形にしてみたら?」と言われ、自分の作品を作るようになったんです。最初の展示は、地元岡山で同級生が運営している服屋カサノヴァ&コー(CASANOVA&CO)で、架空の植物をテーマにした“変植物調査団”のインスタレーションでした。

“オリジナルは存在する?”
問いかけて議論したかった

WWD:現在の作風にはどのようにたどり着いた?

橋爪:出発点は、ファッション界でよくある話だったんです。例えば、あるブランドが他社の商品を真似して作ったものが爆発的にヒットして、世間には後発のものがオリジナルと認識される事例は多々あります。既視感のあるものでも、作った本人たちは自分たちのオリジナルという体でやっているし、周囲もそれを指摘しない。それがファッション界で当たり前に行われていることに対して、すごくもやもやしていました。その頃から「本当のオリジナルって存在するのか?」「全て何かに影響を受けて生まれたものじゃないのか?」と考えるようになりました。

 その答えはきっと簡単に出ないだろうけど、みんなに問いかけて議論できれば楽しいなと思って、子供の頃から大好きな藤子不二雄先生のタッチを当時の作品に引用しました。さらに、僕が今のような作品を作り始めた当時、女性のバストアップの構図が注目され始めていたので、女性のモチーフを採用しました。でも、結果的に批判が多く、暴言やきつい言葉を一方的に浴びせられて、当時はきつかったですね。

WWD:作品のこだわりは?

橋爪:僕は作品そのものより、最初の“オリジナルとは?”というテーマをずっと引きずっているので、こだわりは正直ないんです。“eyewater”シリーズは個人的にはそろそろやり尽くした感覚がある一方で、多くの人が求めるものをまだ作れるかもしれないとも考えています。その辺の感覚は、PRの仕事をしていた経験が生きています。

 今後の代表作の一つになりそうな“猫シリーズ”も、ビジネス的な感覚がスタートでした。コロナ禍で犬や猫のかわいい映像を集めたテレビ番組を頻繁に見て、これはビジネスになるんだと気づいて始めました。でも友だちに「お前が描く猫はかわいくない」と言われたのをきっかけに自分でも猫を飼い始めて、今ではすっかり溺愛しています。

アートバブルに見る“ファッション的な軽さ”

WWD:一部で“アートバブル”とも言われる国内の市場をどう思う?

橋爪:ストリートからの流れですよね。自分はその二番煎じですが、国内の市場は今あまり意識していなくて、できれば海外で活動して逆輸入的な存在になりたい。日本では東京のイケてる人たちにムーブメントを引っ張っていってもらって、おこぼれをもらえたらいいぐらいの感覚です(笑)。

 作品では日本の漫画のカルチャーを扱っているので、国内での評価は直接的だけど、海外の人は素直に褒めてくれます。今は中国や台湾、韓国とアジア圏を中心にファンがついてきているし、もしかしたらアメリカやヨーロッパにも挑戦できるかもしれない。特に中国はアート界にも元気があるので、海外のムーブメントに入り込むのを目指す選択肢もあります。

WWD:近年、アートなどのカルチャーとファッションがコラボすることも増えている。この傾向はポジティブなこと?

橋爪:いいことだとは思います。「ビームス(BEAMS)」が少年ジャンプ作品とコラボし始めた頃、スタイリストやプレスが堂々と漫画好きをアピールするようになったんですよ。それまでオタクっぽいと言われてきたカルチャーの潮目が変わった時に、ファッション的な“軽さ”を感じたんですよね。でもその後も盛り上がり続けているから、きっかけは“軽さ”でもいいですよね。

WWD:自身の作品をアパレルやグッズにしたい?

橋爪:コラボレーションしたいんですが、実際はお断りすることが多いです。今は“アーティスト橋爪悠也”をどれだけアピールしても、作品の“eyewater”に負けています。だから依頼も“eyewater”をプリントしたいという内容が多いんです。僕も売る側の人間だったので、ビジネス的な観点では仕方ないことだと理解はしているのですが、長くは付き合っていけない“軽さ”は、時代に消費されてしまいかねない。僕は作家として長年やっていきたいので。

WWD:今後の目標は?

橋爪:人間として愛されるアーティストになりたいですね。ゴールドウイン時代、「ザ・ノース・フェイス」ほどの大きなブランドを背負っていると、人と接していても多くの人はブランドの方を向いていた。強烈な個人にならない限りは、僕個人を見てくれないのだと分かりました。

 それに僕は今年39歳で、「リラックス(RELAX)」や「スタジオ・ボイス(STUDIO VOICE)」などの紙媒体を読んでいた世代です。だからアーティストのインタビューで制作の裏側を知るとグッとくる。だから個をもっと押し出して、自分のカルチャーや好きなものが反映されている作品を作っていきたい。顔を出して、自分のバックグラウンドも積極的に語っていきたいですね。

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ジーユー柚木治社長に聞く「ニューヨーク出店」「中国でのローカル化」「vs.シーイン」

 出店再強化を打ち出すジーユーは今秋冬、移店リニューアルを含め国内に25店を出店すると共に、ニューヨーク・ソーホーにも1年間の長期ポップアップストアをオープンする。オープン日はまだ非公表だが、アジア圏以外への出店は「ジーユー(GU)」として初めて。ノウハウを蓄積し、来秋以降の常設店出店を目指すという。「ジーユー」がよりグローバルなブランドになるために必要なことを柚木治社長に聞いた。

WWD:ニューヨークへの出店はどんな狙いからか。

柚木治ジーユー社長(以下、柚木):2つの意図がある。1つ目は、世界の最先端かつ最大の市場である北米にいずれ進出するなら、なるべく早くチャレンジすることで成長していきたい。兎にも角にもグローバル化が至上命題だと考えたとき、最先端の市場に出ていった方が学ぶことは多いし、それがグローバル化への一番の近道だ。出店すれば、このままのやり方ではダメだという点にも直面するだろうし、一方で「ジーユー」のよさも再認識できるかもしれない。成功のための勝算がしっかりあって、準備万端で出ていくわけではない。売り場面積は約270平方メートルととても小さい店で、品ぞろえもかなり絞る。

WWD:北米はECが日本以上に発達し、OMOも進んでいる。どう仕掛けるのか。

柚木:今回のニューヨークのポップアップストアではECは立ち上げない。ポップアップストアを運営しながら、OMO事例を市場に学んでいく。ポップアップの後に常設店を出店するかはまだ未定だが、出店する際はその知見を生かしていく。ECは立ち上げないが、SNSを活用して情報発信をすることで、現地のお客さまとつながっていく。

WWD:ニューヨークの中でも、ソーホーは商業一等地だ。兄弟ブランドの「ユニクロ(UNIQLO)」が2005年に北米に初進出した際は、ニューヨークの隣、ニュージャージー州の郊外モールからだった。

柚木:当時は郊外から出店した方がコストが抑えられ、リスクが少ないのではないかという仮説に基づいていたが、結論としては、都心から出店してブランドポジションを築かないと、いつまでたっても誰にも知られないブランドのままだ。(「ジーユー」は都心一等地に出店するが)だからといって成功する保証があるわけではない。売り場も狭いため、売り上げが規模としてしっかり取れるかどうかは分からないが、「北米ではこういった商品なら売れる」「ここを伸ばせばもっと支持される」といった傾向をつかむことがこの店の目標だ。

WWD:サイズ展開や北米市場に合わせたローカライズはどのように行うのか。

柚木:23年秋冬は特にローカライズはしない。北米のお客さまに多い体形や好まれるテーストの仮説はあるが、決めつけてMDに変更を加えることはせず、まずは「ジーユー」そのままを持っていく。サイズ表記も日本表記のままにし、その旨をお客さまに案内しながら販売する。

国ごとに異なる「ジーユー」は作らない

WWD:既に進出しているアジアでは、中国本土に9店、香港に8店、台湾に18店がある。近年、特に中国では地元ブランドへの支持が高まっており、外資ブランドにとっては逆風となっている。

柚木:中国で地元ブランドが人気となっていることは感じる。しかし、他の(外資)ブランドが全てダメというわけではなく、支持されるブランドもそうでないブランドもある。「ジーユー」は中国では、(日本よりも)アイテム数を絞り込んでキュレーションして見せている。マストレンドをコーディネートしやすく打ち出し、品質も安定していて、スマートにファッションを楽しめるブランドだとお客さまには見られている。それは狙い通りではあるが、そうしたイメージがまだ(幅広くは)伝わっていない。だから黒字化していない。なぜ伝わっていないかというと、ファッションに対する好みが違うから。(中国が日本と違うというよりも)日本が世界的に見ても非常にコンサバで、例えば体形や肌を隠すことを好む。中国ではよりメリハリのある、見せるところは見せるようなファッションが好まれる傾向にある。

WWD:そうした市場の違いに対応するため、中国向け商品を作っているのか。

柚木:これはまさに(グローバル化のための)真髄の部分だが、中国向けとして日本とは全く別の商品は作っていない。中国のお客さまのニーズは取り入れながら、「ジーユー」のアイデンティティーを失わない商品をワンコレクションとして作っているというのが答えだ。中国のお客さまを意識した商品もあるが、それが日本でも売れることを目指している。中国の地元ブランドや欧米ブランドの真似をしてもかっこ悪いし、それでは勝てない。展開する国ごとに違う「ジーユー」を作る実力も必然性もない。「ジーユー」は展開先各国のニーズを取り入れたワンコレクションを、品番絞り込み型でやろうとしているわけだから、非常にチャレンジは多い。そこを乗り越えるからこそ、とても分かりやすくて鮮度もあるという服ができる。(中国と日本で肌見せに対して感覚が違うなら)アイテムが同じでもスタイリングで幅を見せていくといったことで対応する。

WWD:オンラインSPAの「シーイン(SHEIN)」が影響力を強めている。買いやすい価格でトレンドを打ち出しており、「ジーユー」と真正面から競合している印象だ。

柚木:「シーイン」とは提供価値が大きく異なる。「ジーユー」は品番絞り込みを(価格低減や選ぶべきアイテムの分かりやすさといった)お客さまの価値につなげているが、「シーイン」はECのみの展開であることを生かして、なんでも選べるという商品バリエーションを打ち出している。「ジーユー」の方がよりマスな商品なので、実店舗とは相性がいい。ファッションは接客によって喜びが増えるというのが本質だと私は信じているが、時代の移り変わりと共に、実店舗で求められるあり方は接客からセルフ式に移行してきている。スマホでアプリを見ながらセルフで買い物をするお客さまも多く、スタイリングなどをどんどん提案できるアプリはもはや接客しているのと等しい。セルフ式、ないしはアプリで接客というのが今の時代の基本ではある。一方で、リアルな接客価値もなくならない。だからこそ、(実店舗とアプリ接客などのデジタルとを)ハイブリッドすることが勝ち筋だと思っており、出店を再強化する。

WWD:22年8月期は減収、大幅減益だった。23年8月期の滑り出しは。

柚木:商品自体は支持されているが、このところ気温が高く、ここからという感じだ。

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来場者が語る「クードス」の魅力 2023年春夏コレクションに潜入

 工藤司が手掛ける「クードス(KUDOS)」と「スドーク(SODUK)」は、2023年春夏コレクションを「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で披露した。今季のテーマは、デザイナーの故郷である「okinawa」や「lonely」「gay marriage」など30以上のキーワードで構成。準備期間が実質わずか2カ月だったにもかかわらず、通常行われるショーのルック数の2倍にあたる60ルックを用意し、壮大なショーが作れる実力を見せつけた。

 「WWDJAPAN」映像チームはバックステージやショーの様子を捉え、アーティストの向井太一やファッションジャーナリストのマスイユウら来場者にブランドの魅力を聞いた。

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「OAMC」ルーク・メイヤーがアップサイクルに挑む理由 新ラインに込めた願い

 「OAMC」は、新たなプロジェクト“リワーク(RE:WORK)”を2022年に立ち上げた。同プロジェクトは、捨てられたり、着古されたりした服に、新しいデザインアイデアを組む込むというアップサイクルの試みだ。服を再利用すると同時に、ビンテージの服や生地を新しく生まれ変わらせるための技術開発を目的に掲げている。2022-23年秋冬シーズンの価格帯はアウターが20万円前後で、シャツ11万台円〜、パンツ8万円台〜とメインコレクションと同等だ。日本ではロンハーマン(RON HERMAN)のほか、エディション(EDITION)、ビオトープ(BIOTOP)、パブリック(PUBLIC)、トラリ(TLALLI)で販売している。

 ブランドを率いるルーク・メイヤー(Luke Meier)は、これまでもミリタリーアイテムをアップサイクルする“ピースメーカー(PEACEMAKER)”などでビンテージの再解釈に挑んできた。“リワーク”を新たなプロジェクトとして始動させた狙いとは――メイヤーに聞いた。

ファッションの発信力を信じて

WWD:“リワーク”を立ち上げた理由は?

ルーク・メイヤー(以下、メイヤー):“リワーク”は、さまざまなデザインアイデアをリスペクトし、使われなくなった服や素材を用いた新しい服作りだ。このプロジェクトを通じて生まれ変わったアイテムが人々に着用され、新たな価値を感じる機会を生み出せるはず。同じく、リメイクの手法を取り入れてきた“ピースメーカー”が服を使ってメッセージを伝える方法だとすると、“リワーク”はコレクション全体でのアプローチである。

WWD:“ピースメーカー”は「OAMC」の中では価格帯を抑えたエントリーとしての役割も担ってきたが、“リワーク”はインラインと近い価格帯だ。

メイヤー:私たちが服作りで大切にしているのは価格よりも価値であり、適正だと考えた価値で服の価格を決めている。「OAMC」にとって“ピースメーカー”はメッセージであり、“服”という感覚ではない。これまでさまざまな作品に“PEACEMAKER”という言葉を使ってきたし、これからも使い続けると思う。

WWD:では“リワーク”で「OAMC」らしさをどう表現している?

メイヤー:まず、メインラインと同じクオリティであること。「OAMC」はもの作りに一切妥協しないので、その点はとても大切だ。また、作品の文脈の中で新しいかたちやアイデアに取り組むことも同じぐらい重要であり、それが“リワーク”の醍醐味でもある。

WWD:“リワーク”でまずミリタリーアイテムを扱った理由は?

メイヤー:「OAMC」でミリタリーアイテムを数シーズンにわたって扱ってきたため、構造や形、染色、仕上げなどの面で、どのように手を加えればいいかを理解していたからだ。最初の2022年春夏コレクションでは、主にビンテージやデッドストックのミリタリーピースを使った。 事前にリサーチを念入りに行い、原料の調達や服の選定をしている。これからはミリタリーウエアだけでなく、探求の幅をさらに広げていきたい。

WWD:製品を作り続けるファッション産業が、サステナビリティを掲げるには矛盾があるという意見もある。

メイヤー:確かに、非常に強い矛盾がある。“リワーク”は服や生地をアップサイクルしているため、サステナビリティの要素を含んではいるが、完全な持続可能性にはほど遠いのが現状だ。サステナビリティを実現するためには、業界自体で仕組みを変えないといけない。 私たちはサプライチェーンを理解し、それに応じてできる限りの調整を試みている。例えば、全てのサプライヤーに、材料の改善と新しいソリューション提供を働きかけたり、輸送のより良い方法を模索したり、害の少ない素材や技術を使う方法を理解しようと努めている。 私たちは日々、改善に向けて取り組んでいる。

WWD:“ピースメーカー”で平和への願いをもの作りに込めてきた作り手として、ファッションが人々に貢献できることは何だと考える?

メイヤー:ファッションデザインはコミュニケーションの一つだ。 もちろん、私たちが作るものは必需品ではなく、ぜいたく品であることを理解しないといけない。 しかし、私たちにはオーディエンスがいて、発信力がある。だからポジティブなメッセージを届けられるのであれば、これからも積極的に発信していきたい。 ただ私自身も、世の中がもっとポジティブに変わることを願う一人の人間である。 私たちがもの作りを通じて発信したメッセージをたくさんの人が受け取り、前向きなアクションを起こすきっかけになればうれしい。

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奈良裕也×内田聡一郎×みやちのりよしが集結 秋冬のヘアトレンドからヤーマン“ヴェーダシャイン プロ BS for Salon”の魅力を語る

 ヘアサロン業界のトレンドセッターと言っても過言ではない奈良裕也「シマ(SHIMA)」アートディレクター、内田聡一郎「レコ(LECO)」代表、みやちのりよし「シャチュー(SHACHU)」代表が、ヤーマン(YA-MAN)の超音波トリートメント機器“ヴェーダシャインプロ BS for Salon”(税込3万4100円)の発売にあたり集結。これからの季節にぴったりなヘアスタイルやヘアケア事情、“ヴェーダシャインプロ BS for Salon” について語り合う。

3人が提案する
秋冬イチオシのヘアデザイン

WWDBEAUTY(以下、WWD):今年の秋冬に提案したいスタイルは?

みやちのりよし「シャチュー」代表(以下、みやち):この秋冬は全頭を暗くするよりもローライトや、内側にシャドーのような暗いを入れたカラーデザインを打ち出してきたいし、流行るのでは。ハイトーンやインナーカラーなどカラーデザインが多種多様になっている一方で、一通り楽んで飽きを感じている人もいる。黒やダークカラーを取りを入れることで引締まるし、新鮮さも感じてもらえる。

内田聡一郎「レコ」代表(以下、内田):たしかに、ダークトーンとハイトーンを組み合せるのがスタンダードになりつつあるよね。1色はもちろん、2色、3色使いが行っている。色みで個人的に注目してるのは茶色。くすんでいない温かみのある茶色や、ベージュが可愛い。日本人に絶対に似合うし、ダメージレベルが低く済むのがいいところ。根元のリタッチでブリーチするのではなく、あえて茶色でつなぐルーツブラウンも今の気分。

奈良裕也「シマ」アートディレクター(以下、奈良):まさに、僕もそれを感じているところ。「シマ」はブリーチするお客さまがとても多いんだけれど、ブリーチをしないで14レベルの明るさに仕上げたり、アルカリカラーできれいな茶色に仕上げたりすることが増えている。なので、ワンタッチできれいに染められる茶色は僕もいいと思う。上質なお客さまこそ、それを求める傾向がある。

WWD:そういったお客さまはヘアケアにも熱心か。

奈良:プロダクトがとっても売れている。髪の毛を乾かす前に使うもの、巻く前に付けるもの、仕上げに付けるもの。使うシーンごとに分けていてこだわる人が多く、おすすめすると購入されるお客さまがすごく増えた。そうやって美容にお金を使う時代。メンズでもメイクをしっかりしているお客さまが多くて、男女問わず本当に美意識が高まっている。

みやち:ブリーチの前処理やトリートメントもどんどん増えていて、顧客単価は上がり続けている。

内田:価格が高くても気持ちよく支払って、満足して帰ってくれる。製品や技術はどんどんアップデートされるし、美容師の知識量はもちろん、お客さまでもかなり詳しい人がたくさんいる。

奈良:本当に美意識が上がっていると思う。かつてよりもたくさんの情報が入ってくるから、若い子の方がヘアケアにも熱心だよね。

美意識が高まっている
今こそおすすめしたい
スペシャルケア製品

WWD:みなさんがおすすめしている髪を美しく保つコツは?

奈良:やっぱりホームケアがすごく大事。いかに僕たち美容師が見ていないところで、自分を磨く=ケアをするか。サボらないでやることが一番。楽して美人にはなれないから。

内田:美容師とお客さま、まさに二人三脚だよね。

奈良:今は全てを提案するのではなく、一緒に作っていく時代。美意識が高くて、自分のことをよく理解していて、こだわりがあるのはすごくいいことだと思う。

みやち:昔はあり得なかったけど、顔まわりにこだわりがあって仕上げを自分で巻きたいというお客さまもいるほど。確かにすごく似合っていて、すごいなって思う。高価格帯のアイロンやドライヤーも人気で、3万円のアイロンに対して高いというイメージは無くなっている。

内田:“ヴェーダシャインプロ BS for Salon”は、ホームケアでも使えるよね。

みやち:「これで髪の毛がツヤツヤになるなら」と、即決すると思う。

奈良:同感。お客さまに使ってみて、すごくよかった。

内田:美容師目線だと、コードレスなのが嬉しい。お店によっては配線が難しいこともあるから、これだと充電すればシンプルに使える。もちろん、仕上がりも抜群。お客さまの実感値も高いし、今お店で使っているシステムトリートメントと組み合わせてみたら、すごく相性がよかった。他店との差別化にも繋がりそう。あとは、トリートメントの揉み込みって施術する人によって個人差があるけれど、これを使うと均一に浸透させてくれるから、一定の効果が出やすい。

みやち:そうそう。仕上がりが全然違う。「これを使ったからいつもと違うんだ」ってお客さまにも分かりやすい。僕はホームケアでも使ってもらいたい。美容室は来店周期が短い人でも月に1回だから、毎日自宅でケアをしてほしい。美意識が高まっている今にぴったりなアイテム。

トリートメントの浸透をサポートする
美顔器発想の超音波トリートメント機器

 “ヴェーダシャインプロ BS for Salon”は、超音波と温熱によって、美容成分の浸透をサポートする超音波トリートメント機器。トリートメント塗布後の毛束を挟み込むと1MHz(1秒間に100万回振動)の超音波でトリートメント剤を毛髪内部に浸透をサポートする。超音波の出力は自社従来品比約1.7倍*。じんわりと温まるヒーターの熱でキューティクルを開き、美容成分の浸透をさらにアシストしてくれるのが特徴。そのほか、赤・青2色のLEDを搭載し、お風呂で使える防滴仕様かつコードレスで場所を選ばずにインバス・アウトバスどちらのトリートメントにも使用できる。髪を挟んだまま20秒経過すると超音波とLEDが停止するオーバートリートメント防止機能も搭載し、安心して使用できる設計だ。

* 単位面積当たりの超音波出力

10分間の使用で
髪色に関わらず艶髪に

 シャンプー後の髪にトリートメント剤を塗布し、“ヴェーダシャインプロ BS for Salon”を10分ほど使用すると、あっという間にクセやパサつきをおさえることができる。浸透サポートコームがついているので、セルフケアでも髪全体にトリートメント剤を届けてくれる。さらに洗い流さないトリートメント剤やヘアオイルにも使用が可能。タオルドライ後の濡れた髪にアウトバストリートメントを塗布して使用する。インバス・アウトバストリートメントとの併用がおすすめ。

TEXT:NATSUMI YONEYAMA
問い合わせ先
ヤーマン
0120-776-282

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ヘアメイク河嶋希が指南 「ラ ロッシュ ポゼ」角質ケア美容液でかなえる毛穴レス印象肌

 「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE-POSAY)」が3月に発売した“エファクラ ピールケア セラム”※1(30mL、税込4950円、編集部調べ)は、敏感肌※2にも 使える、心地よい角質ケアの製品だ。

 同製品は、日本人女性の20〜40代の肌悩みに多く見られる毛穴トラブルやニキビトラブルの原因になる古い角質に着目。皮膚科学に基づき、敏感肌※2にも使える角質ケア美容液として開発された。角質の表面だけでなく、内部にまでアプローチして触りたくなるような毛穴レス印象肌へ導く。

 ここでは、スキンケアのエキスパートである河嶋希ヘア&メイクアップアーティストとモデルの甲斐まりかが、“エファクラ ピールケア セラム”※1を使ったスキンケアについて語る。

※1 販売名:ラ ロッシュ ポゼ エファクラ セラム
※2 全ての人に肌トラブルが起きないわけではありません

話題の角質ケア美容液
“エファクラ ピールケア セラム”とは?

※1「ラ ロッシュ ポゼ」において
※2 サリチル酸・フィチン酸・乳酸(共に角質柔軟成分)
※3 整肌成分
※4 水:整肌成分
※5 全ての人に肌トラブルが起きないわけではありません
※6 全ての人に肌刺激が起きないわけではありません
※7 全ての人にアレルギーが起きないわけではありません
※8 全ての人にニキビのもとができないわけではありません

注目しているのは
「落とす」のではなく「塗る」角質ケア

 毎日のスキンケア習慣としての角質ケアが重要だと話すのは、自身も敏感肌で「ラ ロッシュ ポゼ」の製品をよく使うという河嶋希ヘア&メイクアップアーティストだ。

 河嶋アーティストは、「肌表面の角質層は、本来は正常に機能していても、ホルモンバランスの乱れなどが原因で古い角質が蓄積すると、結果的に肌トラブルの原因になります。肌の揺らぎを抑えるのが角質ケア。角質ケアにもスクラブや洗顔などいろいろなアイテムがありますが、最近注目しているのは『落とす』のではなく『塗る』角質ケアです」と話す。

 角質ケアには「週に1度のスペシャルケア」といったイメージもあるが、毎日のスキンケアルーティンに取り入れるのもおすすめだという。「肌トラブルや悩みができる前に朝晩のスキンケアのラインアップに組み込むだけだから、ズボラな人でも続きます。『ラ ロッシュ ポゼ』の“エファクラ ピールケア セラム”は、毎日使える心地よいテクスチャーや保湿感にも注目しています。低刺激設計※1なので、敏感肌※2にも使えるのがいいですよね」と話す。一方、モデルとして活躍する甲斐まりかも「角質ケアと言えばプロにケアしてもらうイメージが強かったですが、最近SNSやユーチューブの美容動画などを見ているとセルフできちんとケアしている人が多くて一般的になってきてるんだなと思いました。使いやすいアイテムが増え、誰でもアプローチできるようになったからかもしれないですね」と角質ケア美容液が気になっているという。

※1 全ての人に皮膚刺激が起きないわけではありません
※2 全ての人に肌トラブルが起きないわけではありません

夏の後の毛穴やゴワつきなどの
肌トラブルに角質ケア習慣

 最近は肌のザラつきが気になるという彼女は、普段はシンプルなスキンケアが好み。「夜はメイクを落として洗顔、導入美容液、化粧水、乳液かオイル。朝はもっとシンプルで、拭き取り用化粧水の後に化粧水、下地兼乳液をつけて終わりです。今の時期は、夏に紫外線をたくさん浴びたので、肌のゴワつきや毛穴の開きが気になります。普段のスキンケアのラインアップに加えるだけの角質ケア美容液なら、気軽に取り入れられそうですね」。

モデルという仕事ならではの悩みもある。「美容液などは刺激が強いものもあるので、撮影前は 気を使います。撮影のたびにメイクを落とすので肌には負担をかけたくない。『ラ ロッシュ ポゼ』は敏感肌※1向けのブランドなので 普段使いしやすく、デイリーに取り入れたいですね」。

 “角質ケア+保湿ケア”ができるのが“エファクラ ピールケア セラム”の特徴の1つだ。「これからの寒い季節は、乾燥による肌のゴワつきは特に気になります。そんなときにも“エファクラ ピールケア セラム”は保湿ケアもできるのでうれしい。塗った瞬間の心地よさも続けるモチベーションになるのでは」と河嶋ヘア&メイクアップアーティスト。「肌トラブルの原因となる角質をケアすることで、毛穴やゴワつきなどの肌トラブルをケアして肌を整えるのは、実はスキンケアの基本となる考え方。ぜひ毎日のスキンケアに取り入れてほしい」と話す。

※1 全ての人に肌トラブルが起きないわけではありません

使い方をヘアメイク河嶋希がレクチャー!

STEP1
2〜3滴手に取る

「化粧水の後、スポイト状のキャップで美容液を吸い取り、2〜3滴手に取ります。1滴でもとても伸びがいいので、加減しながら適量を取ります」。

STEP2
肌になじませる

「目の周りを避け、両手で顔全体を包み込むように肌になじませます。個人的には、首までしっかりなじませるのがおすすめ」。

STEP3
気になる部分に重ねづけ

「顔全体になじませたら、ざらつきの気になる部分に重ねづけ。小鼻や毛穴の気になる部分にも重ねます」。

STEP4
ハンドプレス

「最後に手のひら全体で軽くハンドプレス。スッと吸収されるような心地よさを感じてください。毎日、朝晩の使用がおすすめです」。

PHOTOS:HIRONOBU MUKOYAMA
STYLING:AKANE KOIZUMI
HAIR & MAKEUP:NOZOMI KAWASHIMA
問い合わせ先
ラ ロッシュ ポゼ
03-6911-8572

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新生「ヴォーグ ジャパン」の全容 デジタル強化で目指すは業界の「ベストフレンド」

 コンデナスト(CONDENAST)の「ヴォーグ ジャパン(VOGUE JAPAN)」には2022年1月、ヘッド・オブ・エディトリアル・コンテントにティファニー・ゴドイ(Tiffany Godoy)が就任した。ティファニー・ヘッドは、同メディアの全てのコンテンツを監修する。ゲームやバーチャルの世界、メタバースの分野にも造詣が深く、日本のファッションカルチャーにパッションを捧げる同氏を迎えて、9月1日にはリニューアルした「ヴォーグ ジャパン」10月号を発売したほか、ウェブサイトやSNSのアップデートに着手する。17日には表参道ヒルズで、入場無料のリアルイベント「ヴォーグ・アライブ」を開催。「ヴォーグ ジャパン」の新しいデザインとコンテンツを360度で体験できるイベントを通して、“ヴォーグ ジャパン ピンク”に一新されたニュー・ウェーブをお披露目する。「変わるのは怖いし勇気のいることだけれど、ビジネスやメディアとして変化がないことの方が怖い。一緒に成長を続けることが大切」とティファニー・ヘッド。本誌とウェブの連携や、デジタルの活用を通して、ユーザーの「ベストフレンド」を目指す「ヴォーグ ジャパン」はどう変わっていくのか聞いた。

リニューアルをけん引する
ティファニー・ヘッド

WWDJAPAN(以下、WWD):ヘッド・オブ・エディトリアル・コンテント就任を聞いて、率直に「面白そう!挑戦してみたい!」と思えた?

ティファニー・ゴドイ=ヘッド・オブ・エディトリアル・コンテント(以下、ティファニー・ヘッド):現職就任の話が上がった当初は、新型コロナウイルスのパンデミックでパリにいた。来日して20年、こんなに日本を長く離れたのは初めてで、非日常的な時期だった。私はゲームとファッションの融合や、メタバースなどに興味があって、正直に言うと、当初は少し遠くの話に感じた。その後ファッション・ウイーク期間中にアナ・ウィンター(Anna Wintour)米「ヴォーグ」編集長兼コンデナスト アーティスティック・ディレクターらと会う時間があった。それは夢のような時間で、私のビジョンやパッション、私が感じている課題を伝えた。その上で日本で何が起こっているのか、ブランドをどのように見ているのかを考えるという“宿題”を課された。「ヴォーグ」を擁するコンデナスト全体が変わろうと舵取りを行っているのが分かったし、クールで面白く、大胆で勇敢、かつその変革は本当に必要なものに感じられた。過去と未来の間に自分が立っていることにワクワクした。日本のファッション文化に長きにわたって興味を持っているし、コンデナスト・ジャパンのスタートから何年も関わってきたのでチームのほとんどを知っていて心地よさがあった。思い切って挑戦しようと決意した。

WWD:リニューアルにあたっての思いは?

ティファニー・ヘッド:日本は、私たちみんながそうであるように、急速に変化する予測不能な世界への転換期にある。今メディアの仕事として大切なのは、元気を取り戻して、読者の“鏡”になること。ブランドの方向性を考える上で、1960〜70年代のメディア文化が盛り上がっていた時期の資料を見た。当時西洋と東洋の境界は薄れ、写真、デザイン、書籍や雑誌など、さまざまな文化が入り交じって進化していた。技術革新の影響でゲームや携帯電話の文化、その中でも独自のデジタルアイデンティティーを形成した絵文字やミクシィなどが日本から生まれた。デジタル・ネイティブの国として生まれた価値観の多くや、日本のメディアがけん引した革新性を、リニューアルしていく「ヴォーグ ジャパン」に反映しようと思っている。日本が生んだ美的価値観や“生きた”アートに焦点を当てたい。

WWD:一方、「ヴォーグ」の変えたくないところは?

ティファニー・ヘッド:誰もがメディアであり、ブランドもメディアであるこの時代、「ヴォーグ」にあるのは、時代を反映した豊富なアーカイブや資料。私たちが持っているのは、そのレガシーだ。ジャーナリズムやビジュアル作りという財産を通して、どのように読者をワクワクさせ続けられるかを常に考えている。瞬間を“切り取る”のではなく、いかに“創造”できるか。いつだって変わるのは怖いし勇気のいることだけれど、ビジネスやメディアとして変化がないことの方が怖い。みんなで一緒に成長を続けることが大切だと思う。読者やファンと「ヴォーグ」の関係性は一方的なものではなく、お互いに影響し合う存在であるべき。コミュニケートするだけでなく、新しい驚きと発見を提供して、時には導く必要もあるはず。読者の考えを尊重して交流し、ニーズや好きなものを理解するのは素晴らしいことだけれど、慣れ親しんだことをただ続けるだけではメディアとして意味がないのではないだろうか。

QRコード掲載で本誌とウェブは
よりシームレスに

WWD:どのようなリニューアルを実施する?

ティファニー・ヘッド:今回のリニューアルは、「ヴォーグ ジャパン」の変化の第一段階。まずは誌面やイベント、ソーシャルメディア、ウェブサイトといったタッチポイントを維持しながら、デジタルシフトを行う。リニューアルはクリエイティブ・ディレクターの米津智之と一緒に編集部を始め社内の各部署と進めてきたのだが、それぞれのプラットフォームに適した方法で情報を発信して、お互いを行き来して、体験を広げていくようなビジョンだ。一番大事なのは、誌面をアップデートすること。日本が生んだQRコードを取り入れ、ウェブ記事や動画などのコンテンツにアクセスできるようにしている。次のフェーズは、もっと存在感を出してアクティブでいること。ソーシャルメディアでのイベントを開いたり、ゲーム業界の要素を取り入れたり、タイポグラフィーといった新しいツールを駆使していく。本誌やウェブ、動画などが連動する、コンテンツの新しい“エコシステム”を築きたい。

WWD:SNSやウェブサイトは?

ティファニー・ヘッド:まずインスタグラム(Instagram)のリニューアルを行う。それからティックトック(Tiktok)などの短尺動画にも力を入れる。ソーシャルプラットフォームのための新しい動画シリーズを作成している。SNSを見る人はそのプラットフォームにとどまる傾向があるので、私たちがそこに参入することが鍵となる。新しい道となって新たな読者層にリーチしていくきっかけになってほしい。ウェブサイトは9月1日から徐々にアップデートしている。より多くの動画やウェブ限定コンテンツを掲載していく。例えば、本誌には載せきれなかったコンテンツをウェブでは全文公開して、QRコードで誘導する。

WWD:本誌、ウェブ、SNSのそれぞれの役割とは?

ティファニー・ヘッド:本誌はアーカイブとして機能するよう、SNSおよびウェブサイトに掲載しているコンテンツをまとめるページなども盛り込んでいる。最新号では若手デザイナーを特集したページも設け、カタログとして彼らの活躍をひとまとめで見られるようにした。「ヴォーグ ジャパン」の人気動画連載「In The Bag」など、国内外のセレブリティが出演する動画コンテンツをリストアップする連載もスタート。ビューティでは、ネイルにフォーカスしたティックトック連載を開始し、本誌でも取り上げていく。

WWD:日本から生まれるコンテンツに変化は?

ティファニー・ヘッド:これまでも、表紙やカバーストーリー、モデルセレブ、日本やアジアの著名人を扱う上で、日本独自のコンテンツは多く手掛けてきたが、これからはもっと文脈を伝えて、対話を促すようなものが増えるはず。ファッションはメッセージを持つことが大切で、時代や社会に対して意見を持っているべき。これまでもそうだったが、もっと強化したい。これからの時代を担うクリエイターたちと働き、グローバルブランドとしてビデオコンテンツやデジタルコンテンツの増加に取り組んでいる。感情を揺さぶるような表紙やコンテンツ作りに注力する。

デジタル・ネイティブな日本を
ビジュアルで表現

WWD:リニューアル号の表紙に込めた想いは?

ティファニー・ヘッド:最新号は、ファッションの転換期を表現する重要な号だ。バーチャルファッションや斬新なスタイルを披露するデザイナーらが出てくるのに着目した、ファッションの新しい世界の私なりの解釈だ。この号で決めたのは、日本のアイデンティティーを表現すること。例えば、これからは日本語ファーストを掲げる。リニューアル号の表紙に使われている英語は、“VOGUE”の文字だけだ。表紙を飾ったのは、イブ・ジョブズ(Eve Jobs)。アップルを設立したスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)の娘で、テクノロジーとファッションの象徴のような存在だ。中面のインタビューを読むと、ファッションとテクノロジーの結びつきについての理解も深まるだろうし、イブがそのような役割を担っていることも伝わるだろう。また表紙にもQRコードを掲載している。このコードはブランドアバターである、S六S(シックス)のAR(拡張機能)につながる。

WWD:アバターはどのように誕生した?

ティファニー・ヘッド:ブランドのアバターやアイコンを持つのを日本独自の文化と捉え、日本らしさの表現と、テクノロジーとファッションの交差への挑戦として生まれた。“広告塔”のようなポジションでイベントにも登場するし、SNSでも活躍していく予定だ。シックスという名前は、6次元の概念から取った。読者モデル的存在で、漫画カルチャーとJ-POPやK-POPのエンタメの分野からの要素を取り入れてデザインしている。かわいいアクセサリーとメイクアップが特徴で、ジェンダーの流動性を楽しむ側面も見られるだろう。日本の「カワイイ」要素や好奇心旺盛な「ヴォーグ」らしさ、エネルギッシュなところを体現するアバターだ。

デジタル化で生まれる
読者に寄り添う新しい方法

WWD:リニューアルに伴う反響は?

ティファニー・ヘッド:業界がプラットフォームを横断して新しいコンテンツ作りに乗り出しているのは明らか。それがゲームであろうと、NFTの作成だろうと、新しいパートナーシップの構築だろうと、「ヴォーグ」は今、ファッションビジネスが向かう未来に向かって業界と伴走していると自負している。未知の分野であるからこそ、私たちが挑戦することに共鳴してくれるのではないか。

WWD:それでもデジタル化やメタバース、ゲームとの融合に心の距離を感じる人も多いのではないか。どうアプローチする?

ティファニー・ヘッド:デジタルの要素は、「ヴォーグ ジャパン」の初期の号や、日本のポップカルチャーに既に存在している要素から引き抜いて再構築している。唐突に生まれたアイデアではない。「ヴォーグ」は130年以上、読者と対話を続け、素晴らしい才能や新しいリーダーの紹介を通して、読者らと手を取り合ってきた。既にある取り組みを拡大して、継続していくことに尽きる。「ヴォーグ」を通して、全く違った規模感で動くリーダーを紹介していく、業界の「ベストフレンド」でありたい。それが3秒の動画なのか、または300ページのコンテンツなのか、イベントやディナーの機会なのか、形式は問わず、寄り添うことが大事なのではないか。電車の中で記事を読んでいるときや、夜にSNSをスクロールしているとき、あらゆる人生の瞬間に立ち会って、新しい才能や考えに触れる場所を作っていきたい。それらを提供することで、「ヴォーグ」は信頼できる媒体だと示していけるはず。

WWD:編集者含め、業界に携わる人に大切にしてほしいことは?

ティファニー・ヘッド:物事はすごく早く変わっているし、今回のリニューアルは明らかに大きな変化をもたらすので、たくさんコミュニケーションを取る必要がある。「ヴォーグ」が発信するときのトーンがどうであるべきか、どのようにビジュアルのクオリティーを管理するか、みんなで考え問い続けていくことが大事だ。世界の「ヴォーグ」を見ても、表紙作りやコンテンツの内容はものすごく変わってきている。日本でもそれを反映し、日本の読者に寄り添うトピックスを作っていかなければいけない。物事の“線引き”が年々曖昧になっていて、ファッションやジェンダー、人種、ジャーナリズムといったアイデンティティーを形成するさまざまな要因は複雑に絡み合っている。今はファッション業界で活躍しながら、他の分野のアドボケイトにもなれる。私たちが今生きる世界では、多くのアイデンティティーを持てることを体感してほしい。また自分も含めて、編集者には文化的な生活を送ってほしいと願っている。何にときめくかを大切にして、どうやって自分も作っていけるかを考える時間は大事。編集者として初めて日本で仕事をしたとき、仕事が生活の中心になる労働文化を知った。素晴らしい側面があるが、大きな圧力になることもある。時に体にムチを打って働くようになってしまうこともある。コンテンツを作りながら最適なアウトプットの方法を模索し、コンテンツのデジタル化に伴う作業の効率化も生かして、チームワークとコミュニケーションを増やしていきたい。

問い合わせ先
コンデナスト広報部
mrk@condenast.jp

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セルフケアブランド「レイ」が総額1億4000万円の資金調達 今後のビジョンとは?

 女性向けセルフケアブランド「レイ(WRAY)」を運営するレイはこのほど、第三者割当増資および金融機関からの融資により、総額1億4000万円の資金調達を実施した。引受先は、キリンホールディングスとグローバル・ブレインが共同運営する「キリン ヘルス イノベーションファンド(KIRIN HEALTH INNOVATION FUND)」と、マネーフォワードベンチャーパートナーズが運営する「ヒラクファンド(HIRAC FUND)」。

 ゴールドマン・サックスやメリルリンチ日本証券といった外資金融企業やマーケティング会社でキャリアを積んだ谷内侑希子レイ代表は、自身もキャリアを形成する時期に生理不順や妊活、PMSなどを経験し、「女性が体の変化に振り回されずパフォーマンスを発揮できるよう、女性特有の悩みに対するケアを身近なものにしたい」という思いの下、2020年に同ブランドをスタートした。日本のフェムテック分野におけるパイオニア企業の一社としての使命感を持ち女性のニーズに寄り添う谷内代表に、今後のビジョンを聞いた。

WWD:ブランド立ち上げから2年をどう振り返る?

谷内侑希子レイ代表(以下、谷内):コロナ禍でスタートしたこともあり、楽な立ち上げではなかったが、ちょうど「フェムテック」というキーワードが世間的に注目され始めた時期と重なり、良い波に乗れたと思う。コロナ禍で健康意識が高まり、自宅で過ごす時間が増えたことも相まって、幅広い年代の女性の間で自分の体やケア方法についての知識欲が高まっていると感じる。ブランドとして発信を続け、フェムテック関連の話題をオープンに語れる風潮を作ってきた一員としての自負もある。お客さまの中には、「SNSで見たから」「パッケージがかわいいから」といった理由で「レイ」の商品を手に取ってくれる人も多い。セルフケアにトライしてみたいと思う人たちの心理的なハードルを下げ、効果を感じた方が顧客として定着してくれている。ユーザーと一緒に成長できた2年間だった。

WWD:新たなプレーヤーが続々と増える中で、あらためて「レイ」のポジションは?

谷内:カテゴリーを絞らずに商品展開してきたことが差別化につながった。サプリメントと美容液、100%シルク製の腹巻の3点でデビューしたが、現在はインナーケア、セルフケア、ライフスタイル、スキンケアのカテゴリーで13点に増やした。何か一つに効果を感じた人が、「これも買ってみようかな」と複数商品を購入してくださるケースも多く、ライフスタイルブランドとしてのポジションが確立できていると思う。

WWD:商品開発の軸は?

谷内:お客さまの中から立候補してくださった人と商品開発をしたり、「こんな商品があったらどうですか?」とヒアリングをしたりして、全てお客さまと共に作る姿勢を大切にしている。お客さまとの距離がとても近いことが強みとなり、結果として確度の高い商品開発ができている。経済合理性だけを優先させず、ブランドの世界観に貢献するものやお客さまが求めるものに丁寧に答えるようにしている。

WWD:これまで特にヒットした商品は?

谷内:去年秋に発売した5本指ソックスが、1万足以上売れた。5本指が外から見えないようになっていて、セルフケアとして5本指ソックスを履きたいけど、おしゃれも妥協したくないというお客さまのニーズを酌み取って開発した事例だ。

WWD:ヒアリングする中で、意外なニーズもあった?

谷内:今後のビジョンにつながる話だが、お客さまからは商品情報だけでなくウエルネスやキャリアに関する情報発信も求められていることが分かった。女性のキャリアとウエルネスは切り離せない。ブランド立ち上げ当初から重視していた点だが、今後は自社ECサイトを通じてさらにキャリアとウエルネスを掛け合わせたコンテンツを増やしていく。

女性同士が悩みを共有できるコミュニティーを設計

WWD:今回の資金調達の具体的な使途は?

谷内:キリンホールディングスは、特に顧客とのつながりが強い点を評価してくれており、そこを生かしてお客さま同士が情報共有をできるコミュニティーを作る予定だ。例えばお客さまからは、同僚やパートナーには話せないが、誰か近い境遇の人に転職の相談をしたいといった声が多い。すでに小さいコミュニティーでテストしてみたら、生理や妊活、不妊治療、夫婦関係、教育、働くママの効率的な時間の使い方までいろいろな話題が出てきて、すごく盛り上がった。現在コミュニティーサイトを設計中で、年内にはオープン予定だ。有料コンテンツにし、ユーザー同士がチャットできる機能を持たせたり、オフ会、セミナー、ヨガ教室などのウエルネスイベントを実施したりしていく計画だ。そのほかの使い道としては、ポップアップイベントの開催や生理トラッキングアプリのアップデートも予定している。また、キリンホールディングスからは企業向けの福利厚生事業やサービスなどに対してもアドバイスをもらっていく。

WWD:現在は、自社ECのほかユナイテッドアローズなどのセレクトショップなどに商品を卸しているが、販路をどのように広げる?

谷内:フェムテックの専門コーナーを設けている店も増えてきたので、専門店を中心に販路を拡大する。

WWD:今後、フェムテック市場がさらに盛り上がっていくためには何が必要だと考える?

谷内:「レイ」はこれまで自分の体について考えるための入り口を作ってきた。自分の体についての話題をオープンに話せるようなフェーズに社会が変わってきた今だからこそ、さらに踏み込んだ会話ができる場が必要だと思う。生理の話をし始めると、妊活や転職といったパーソナルな話題にもつながっていく。フェムテックの黎明期のメンバーを筆頭に、もっと踏み込んでニーズを探り次のステージを作ることが重要。フェムテックの分野は特に小さなスタートアップから始まったムーブメントで、今後もメディアやほかのスタートアップと連携して、一歩踏み込んだ会話ができる日本の空気感を醸成していきたい。

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セルフケアブランド「レイ」が総額1億4000万円の資金調達 今後のビジョンとは?

 女性向けセルフケアブランド「レイ(WRAY)」を運営するレイはこのほど、第三者割当増資および金融機関からの融資により、総額1億4000万円の資金調達を実施した。引受先は、キリンホールディングスとグローバル・ブレインが共同運営する「キリン ヘルス イノベーションファンド(KIRIN HEALTH INNOVATION FUND)」と、マネーフォワードベンチャーパートナーズが運営する「ヒラクファンド(HIRAC FUND)」。

 ゴールドマン・サックスやメリルリンチ日本証券といった外資金融企業やマーケティング会社でキャリアを積んだ谷内侑希子レイ代表は、自身もキャリアを形成する時期に生理不順や妊活、PMSなどを経験し、「女性が体の変化に振り回されずパフォーマンスを発揮できるよう、女性特有の悩みに対するケアを身近なものにしたい」という思いの下、2020年に同ブランドをスタートした。日本のフェムテック分野におけるパイオニア企業の一社としての使命感を持ち女性のニーズに寄り添う谷内代表に、今後のビジョンを聞いた。

WWD:ブランド立ち上げから2年をどう振り返る?

谷内侑希子レイ代表(以下、谷内):コロナ禍でスタートしたこともあり、楽な立ち上げではなかったが、ちょうど「フェムテック」というキーワードが世間的に注目され始めた時期と重なり、良い波に乗れたと思う。コロナ禍で健康意識が高まり、自宅で過ごす時間が増えたことも相まって、幅広い年代の女性の間で自分の体やケア方法についての知識欲が高まっていると感じる。ブランドとして発信を続け、フェムテック関連の話題をオープンに語れる風潮を作ってきた一員としての自負もある。お客さまの中には、「SNSで見たから」「パッケージがかわいいから」といった理由で「レイ」の商品を手に取ってくれる人も多い。セルフケアにトライしてみたいと思う人たちの心理的なハードルを下げ、効果を感じた方が顧客として定着してくれている。ユーザーと一緒に成長できた2年間だった。

WWD:新たなプレーヤーが続々と増える中で、あらためて「レイ」のポジションは?

谷内:カテゴリーを絞らずに商品展開してきたことが差別化につながった。サプリメントと美容液、100%シルク製の腹巻の3点でデビューしたが、現在はインナーケア、セルフケア、ライフスタイル、スキンケアのカテゴリーで13点に増やした。何か一つに効果を感じた人が、「これも買ってみようかな」と複数商品を購入してくださるケースも多く、ライフスタイルブランドとしてのポジションが確立できていると思う。

WWD:商品開発の軸は?

谷内:お客さまの中から立候補してくださった人と商品開発をしたり、「こんな商品があったらどうですか?」とヒアリングをしたりして、全てお客さまと共に作る姿勢を大切にしている。お客さまとの距離がとても近いことが強みとなり、結果として確度の高い商品開発ができている。経済合理性だけを優先させず、ブランドの世界観に貢献するものやお客さまが求めるものに丁寧に答えるようにしている。

WWD:これまで特にヒットした商品は?

谷内:去年秋に発売した5本指ソックスが、1万足以上売れた。5本指が外から見えないようになっていて、セルフケアとして5本指ソックスを履きたいけど、おしゃれも妥協したくないというお客さまのニーズを酌み取って開発した事例だ。

WWD:ヒアリングする中で、意外なニーズもあった?

谷内:今後のビジョンにつながる話だが、お客さまからは商品情報だけでなくウエルネスやキャリアに関する情報発信も求められていることが分かった。女性のキャリアとウエルネスは切り離せない。ブランド立ち上げ当初から重視していた点だが、今後は自社ECサイトを通じてさらにキャリアとウエルネスを掛け合わせたコンテンツを増やしていく。

女性同士が悩みを共有できるコミュニティーを設計

WWD:今回の資金調達の具体的な使途は?

谷内:キリンホールディングスは、特に顧客とのつながりが強い点を評価してくれており、そこを生かしてお客さま同士が情報共有をできるコミュニティーを作る予定だ。例えばお客さまからは、同僚やパートナーには話せないが、誰か近い境遇の人に転職の相談をしたいといった声が多い。すでに小さいコミュニティーでテストしてみたら、生理や妊活、不妊治療、夫婦関係、教育、働くママの効率的な時間の使い方までいろいろな話題が出てきて、すごく盛り上がった。現在コミュニティーサイトを設計中で、年内にはオープン予定だ。有料コンテンツにし、ユーザー同士がチャットできる機能を持たせたり、オフ会、セミナー、ヨガ教室などのウエルネスイベントを実施したりしていく計画だ。そのほかの使い道としては、ポップアップイベントの開催や生理トラッキングアプリのアップデートも予定している。また、キリンホールディングスからは企業向けの福利厚生事業やサービスなどに対してもアドバイスをもらっていく。

WWD:現在は、自社ECのほかユナイテッドアローズなどのセレクトショップなどに商品を卸しているが、販路をどのように広げる?

谷内:フェムテックの専門コーナーを設けている店も増えてきたので、専門店を中心に販路を拡大する。

WWD:今後、フェムテック市場がさらに盛り上がっていくためには何が必要だと考える?

谷内:「レイ」はこれまで自分の体について考えるための入り口を作ってきた。自分の体についての話題をオープンに話せるようなフェーズに社会が変わってきた今だからこそ、さらに踏み込んだ会話ができる場が必要だと思う。生理の話をし始めると、妊活や転職といったパーソナルな話題にもつながっていく。フェムテックの黎明期のメンバーを筆頭に、もっと踏み込んでニーズを探り次のステージを作ることが重要。フェムテックの分野は特に小さなスタートアップから始まったムーブメントで、今後もメディアやほかのスタートアップと連携して、一歩踏み込んだ会話ができる日本の空気感を醸成していきたい。

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ビームスとメタバースでコラボした「リアクロ集会」主催者に聞く バーチャルファッションの魅力とは?

 ビームス(BEAMS)は8月13〜28日に開催された世界最大級のバーチャルイベント「バーチャルマーケット2022年サマー」に出展し、バーチャルショップを開いた。4度目の出展となった同店では、リアルアパレル商品の3Dモデルを販売。試着ギミックも用意した。さらに20日夜には、アバターファッションの中でもリアル寄りのスタイルを楽しむユーザーによるVR交流イベント「Real Clothes Rally」(通称「リアクロ集会」)を誘致し、初めてバーチャルショップでイベントを開催。3つの会場インスタンスがオシャレなアバターで満員になる盛り上がりをみせた。「リアクロ集会」を主催するジョネ(Joner)に、バーチャルファッションの魅力を聞いた。

WWD:ビームスとコラボのきっかけは?

ジョネ:後から知ったのですが、3月の「リアクロ集会」初開催の時にビームスのVR担当者が遊びに来てくれていたんです。その後、僕にツイッターのDMが来たのがきっかけです。「クリエイターとコラボをしたい」「一緒に何かしたい」という内容でした。いきなりだったし、すごくよく知っているショップだったので、正直「うそかな、本当に?」と思いましたが、やれるなら絶対に面白いと、即OKしました。

WWD:それぞれに服やヘアを改変したり、アクセサリーに凝ったアバターが多数来場し、互いのコーディネートや改変をほめあったり、写真を撮ったりして楽しんでいたが、通常の「リアクロ集会」と内容は変わらず?

ジョネ:そうしたほうがいいと考えました。「リアクロ集会」をいつもと違う雰囲気で、ビームスも交えて一緒にやろう、みんなで交流しようという趣旨です。通常はテーマを設定しますが、今回は特に設けず、「ビームス」のアパレル3Dモデルも楽しんでもらえればいいなと。

WWD:3インスタンスが満員だったから、100人くらいが来場していたことになる。実際にやってみての感想は?

ジョネ:みんながお互いのファッションを見て刺激を受けたり、ビームスのスタッフさんたちともすごい近い距離感で楽しく話してるのが、すごくいいと思いました。リアルとバーチャルがクロスすることで、新しい距離感というか空気というか、僕自身、今までなかったような体験ができました。来場者が直接ビームスのスタッフさんに「こんなものが欲しい」とか、「あるといいよね」ということを談笑していて。同じ空間で交わって初めて分かるユーザーの温度感やニーズを、ビームスのスタッフさんたちも一ユーザーとして楽しみながらつかめたのではないでしょうか。ユーザーと企業の人たち双方にとっていい体験ができたんじゃないかと思います。

WWD:バーチャルファッションの魅力とは?

ジョネ:身長や顔の形など、リアルだと骨格が決まっていて、簡単に変えられないと思いますが、まずそこから解放されます。例えばリアルで、このパンツ、すらっとしててきれいだなと思っても、自分の体形では理想のきれいなラインが出せないといった、好きなのにそこを追求できないもどかしさみたいなものです。それが解消され、目の形や脚の長さなどを自在に変化させて楽しめるのが、バーチャルファッションの最大の魅力です。

WWD:リアルでもファッションは好き?

ジョネ:好きですね。いろんなブランドの公式LINEアカウントを登録していて、メンズと一緒にウィメンズも見ています。「これ可愛いな、自分が女だったら買うかな」とか、「こういうの合わせたらいいだろうな」とを考えたりします。

WWD:オシャレなアバターとはどういうアバターだと考える?

ジョネ:僕自身はリアルの感覚とさほど変わりません。強いて言うなら、その人が好きなものだったり、その世界観が視覚的に見て取れ、キャラクターのコンセプトや雰囲気が伝わってくるものがおしゃれだと感じます。その場その場の雰囲気にうまく合わせているというのも大事な要素です。

WWD:そもそもプラットフォームであるVRChatを最大限に楽しむにはハイスペックなPCが必要で、今回初めてBOOTHでアバターを買い、ユニティ(ゲームエンジン)をダウンロードして、VRChatにアバターをアップロードしたが、素人にはなかなかハードルが高かった。ここからさらに着替えたり、改変したりしてオリジナリティーを発揮するのは、センスも大事だが、同じくらい技術が必要だ。リアルのファッションとは似て非なるものだと感じた。

ジョネ:そこもバーチャルファッションの魅力だと思います。そのための技術力もどんどん求められてますが、そこも含めて楽しいです。普段なかなかユニティなんて触ることがないですが、楽しむ過程ですんなり技術が覚えられます。もちろん最初はいろいろな失敗もしましたが、それもいい思い出になっていますし、もっといろいろできるようになりたいです。

WWD:確かに達成感は高いし、改変上手なアバターは一目置かれそうだ。リアルなブランドはバーチャルの世界でも需要があると思うか?

ジョネ:バーチャルならではの奇抜なデザインや露出度の高いものも好きだけれど、もっと現実でも着られるような衣装が増えてほしいという声が少なくないので、リアルブランド商品のニーズは確実にあると思います。僕も「ファセッタズム」のMA-1には、「ナイキ」の“エア フォース1”を合わせてはきたいです!自分たちが楽しいと思える世界が世に広がってほしいですし、いろいろなブランドが参入して、コーディネートの選択肢やイベントなど、楽しいことが増えれば興味を持つ人も増えて、ビジネスチャンスも増えます。現状ではユーザー数がまだまだ少ないので、ブランドが収益を上げるのは難しいかもしれませんが、今後技術革新や、バーチャルでの出来事の露出が増えていくことで、人口が大幅に増える見込みはあります。バーチャル世界特有の文化がありますし、増えてから急に参入するのは大変だと思います。早い段階からのリサーチが必要で、「リアクロ集会」に参加するなど、ぜひ自分たちの目で実際を確かめてほしいです。

WWD:今後の活動計画や将来の目標は?

ジョネ:「リアクロ集会」としては、バーチャルでリアルクローズに近いファッションが好きな人が盛り上がれるように、なるべく新しい動きをして興味を持ってもらい、楽しんでくれる人を増やしていきたいです。また、今回のように、リアルなブランドとバーチャルの世界の橋渡し的なこと、ショーなどもやっていきたいです。僕個人としては、バーチャルスタイリスト。これからVRに入ってくる芸能人や著名人に対して、スタイリストをしてみたいです。盛り上がるという観点で言えば、ユーザーと同じ立場でやるのが一番親近感があります。既存のアバターを使って、今、売っているものの中からスタイリングしてという動きがあれば、ぜひお手伝いしたいです。同時にアパレル3Dモデル制作の腕も磨いて、将来的には一点モノの制作も受注できるようになりたいです。

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高橋くみCEOに聞く 吸水ショーツ戦国時代に「ベア」が打つ次の一手とは 

 2020年6月、クラウドファンディングで9062人から1億円以上の支援金を集めて、デビューした吸水ショーツブランド「ベア(BE-A)」。この2年のあいだにアップデートを重ねながらラインアップを増やし、高機能吸水ショーツブランドとして、独自の地位を確立してきた。

 今年6月には、ベア ジャパン(BE-A JAPAN)とMNC New Yorkのグループ体制への移行を発表し、ホールディングスカンパニー・V Holdingsを設立。これまで二人三脚でビジネスを展開してきた高橋くみベア ジャパン代表取締役CEOと山本未奈子MNC New York代表取締役CEOが、両社が展開するブランドにそれぞれ注力し、シナジーを産む。

 ベア ジャパンは先進的なウエアラブルIoT技術を開発するミツフジと業務提携し、経血を計測できるショーツの開発に着手する。吸水ショーツの新たな展開を切り開くベア ジャパンの高橋くみCEOは、現在の吸水ショーツ市場を「吸水ショーツ戦国時代」と表現。「ベア」がデビューしてから2年の間の市場の変化と、今後の展開を聞いた。

WWD:「ベア」の立ち上げから、2年が経った。吸水ショーツ市場はどのように変化しているのか。

高橋くみCEO(以下、高橋):実は私たちが吸水ショーツを作ろうと思ってから4年半が経ちます。吸水ショーツは欧米を中心に流行っていたもので、当初は輸入を考えていました。ですが、実際に使ってみると履き心地や耐久性に納得できず、自分たちで作ろうと決意。当時吸水ショーツは国内では目新しい製品ですし、工場探しは難航しました。2年半前にやっとの思いで形になり、クラウドファンディングに至りました。たくさんの人に支援をいただいて良い形でスタートできましたが、この2年ほどで大手下着メーカーやアパレル企業からも新ブランドが続々と登場しています。消費者にとっては、それぞれがどのように違うのか、そして吸水ショーツの良さをまだ知らないという人も多いのが現状だと考えています。

WWD:吸水ショーツを試したことがないという人も多い。

高橋:一度履いてもらえたら、生活自体が変わるほどの商品だと思っています。それを普及させるためには、便益が分かるように市場を広げていかなければなりません。正直に言えば、中には機能性や履き心地がいまいちなものもありますし、われわれのこだわりや良さを伝えていかなければなりません。

WWD:最新作“ベア エアライト ショーツ”の発表会で、現在の市場を「吸水ショーツ戦国時代」と表現していたのが印象的だった。ブランドや製品が豊富になる中で「ベア」の立ち位置は。

高橋:「ベア」は高価格帯吸水ショーツカテゴリーに位置し、吸水量はもちろん、漏れにくさやにおい対策など機能性の高さで支持をいただいています。生理は年間12回とすると、開発する私たちも年間で12回しか試作品を試すことができません。そこで、約7000人もの実際に使ってくださっている人の声を毎週のようにオンラインでヒアリング。加えて「ベアサークル」と称して、“サニタリーライフをよくしよう”というミーティングも頻繁に行っています。また購入者には、アンケートに答えていただけるような動線を作っています。ポジティブな声だけでなく、1つ1つを拾い上げるようにしています。

WWD:「ベア」の取扱店舗はECやドラッグストアから百貨店まで、幅広いのも特徴だ。どのような考え方、戦略で販路を拡大しているのか。

高橋:吸水ショーツ自体の認知度をあげていきたいので、ECだけでなく百貨店やドラッグストアなど、いろいろな場所で「こんな選択肢があるんだ」と認識してもらうことが大切だと考えています。時代的にも吸水ショーツに興味を持っている人も多く、低価格帯の製品がたくさんある中でも、「ベア」がうたう高機能とはどんなことだろうと実際に手に取ってくれる人も多いです。昨年は“フェムテック”が新語・流行語大賞にノミネートし、リテールのバイヤーさんからの理解や共感が深まっています。一緒に時代を作っていこうという思いでいてくださる取引先も多いですね。

フェムテックを超えてヘルスケアに挑む
「ベア」のネクストステージ

WWWD:今年6月、ミツフジと提携し「経血量を測定できる吸水ショーツ」の開発へ着手することを発表した。

高橋:これまで生理について語られてこなかったからこそ、より快適にしようという動きがありませんでした。女性にとって生理は40年にもわたって付き合うものにも関わらず、改善されてきませんでした。そんな生理について考えるきっかけとしても吸水ショーツは機能しています。さらに、自身の経血量が分かるようになれば、生理や健康に対する意識は変わるのではないでしょうか。生理の不調が内膜症や子宮筋腫などの病気に気づくきっかけになることもありますし、生理だから体調が悪いと思いがちですが、実は貧血だということもあります。今、生理による労働損失は4960億円にのぼるとも言われています。自分の経血量を知り、どういった理由で不調なのか。生理が可視化されて、一人一人が向き合うことで、労働損失も減っていくのではないでしょうか。

WWD:どのようにして実用化に踏み切るのか。

高橋:実用化に向けた実証実験を来年早々には始めていきたいですね。そのために、ミツフジとベアジャパン、福島県川俣町で3社協定を結びました。

WWD:フェムテック企業が自治体と手を結ぶということも新鮮だ。

高橋:川俣町は東日本大震災のときに、多くの避難者を受け入れました。着の身着のまま避難する中で、生理用品を持って避難した人はいませんでした。防災用品としても生理用品の備蓄がなく、民家を1軒1軒回って、町全体で協力して生理用品を集めたというエピソードがあります。そのときに、女性にとってどれほど生理用品が必要なものなのか、男性を含めて役場での理解が高まったのです。そんな経験があるからこそ、川俣町は生理へのリテラシーが非常に高いのです。

WWD:MNC NewYorkとベア ジャパンをホールディングス化して、V Holdingsを設立した狙いは?

高橋:「シンプリス」は美容ウエルネスブランドとして14年前に立ち上げ、「ベア」は吸水ショーツブランドとして2年前にスタートしました。どちらも山本と二人三脚で、女性で構成される同じチームでやってきました。これからさらに両方を成長させていきたいと考えた時に、体制を変える決断をしました。どちらも女性向けの商材で、「シンプリス」も「ベア」も成長させていきたいし、女性のライフスタイルそのものを変えていきたいという思いは一緒です。生理だけでなく、更年期にも目を向け、ライフステージによって起きるペインに向き合う商品を提案していきたいですね。

WWD:組織体制にも変化が生じたのか?

高橋:われわれの強さは、3人の執行役員が14年もの時間をともに全てを分かち合ってきた仲だということ。それに加えてこの体制変更を経て、ミドルマネージャーの育成にも力を入れていきます。リーダーを増やしていきたいですね。実は社員を募集すると、900人ほどの応募をいただくこともあるんです。当社はフルフレックスを取り入れているので、豊富な経験を持っていたり、仕事と子育てを両立させていたり、いろいろな環境に身を置くメンバーでチームが成り立っています。企業の成長には人の成長が欠かせません。長い時間を共にしているメンバーと作っていることも楽しみですし、さまざまなステージを経て女性のみの会社としてチャレンジしています。そんな思いもあるので、人材育成にも注力していきたいですね。

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【動画】「M A S U」はなぜ尖りながら幅広い層に刺さる? 2023年春夏のショーで理由を探る

 後藤愼平デザイナーが手掛ける「M A S U」は、2023年春夏コレクションを「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で発表した。今回が3度目のランウエイショーで、東コレへの参加は初。今季のテーマは“ready”で、マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)から着想し、同氏が舞台に立つ表の部分と、パパラッチに追われるなど裏の部分の2面性を表現した。

 「WWDJAPAN」映像チームはバックステージやショーの様子を捉え、デザイナーへのインタビューを行った。さらに、フォトグラファーのシトウレイやビームスプレスチーフの安武俊宏らファッション業界人から後藤デザイナーの友人まで、幅広い来場者にブランドの魅力を聞いた。

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「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」が注目のサステナブル素材“ナイア・レニュー”を日本で初採用

 イーストマンケミカルが手掛ける循環型ジアセテート繊維“ナイア・レニュー(Naia Renew)”は、木材パルプに廃棄物由来の再生プラスチックを組み合わせた注目のサステナブル素材だ。同社は「持続可能なテキスタイルをすべての人に利用可能にすること」をビジョンに掲げ、日本市場での販売数拡大を目指す。その最初のパートナー企業として「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング(UNITED ARROWS GREEN LABEL RELAXING、以下GLR)」が、2022-23年秋冬の主力商品に同素材を採用した。田中安由美ウィメンズ商品本部GLR部副部長兼クリエイション課課長ブランドディレクターは、“ナイア・レニュー”を「作り手が選びたくなるファッション性兼ね備えた信頼のおけるサステナブル素材だ」と評価する。

作り手が選びたくなる
ファッション性が魅力

 「GLR」は、かねてよりリサイクルポリエステルやオーガニックコットンなどサステナブル素材への切り替えを積極的に進めてきた。ユナイテッドアローズ全体では、31年3月期までに環境配慮商品の割合を50%まで引き上げることを目指しており、今後もサステナブル素材の選択肢が必須となる。

 田中ディレクターは「これまでサステナブルを優先すると、ファッション性とトレードオフになることが多かった。しかし、“ナイア・レニュー”は素材選びの段階で自然と手が伸びた生地だった。なおかつ原料は100%サステナブル。リサイクル原料を活用しながら、私たちが手の届く価格帯だったことも採用の決め手だった」と話す。

上品な落ち感と高級感のある
光沢感を生かした通勤服

 アイテムは、通勤時に活躍するセットアップやワンピースなど7型。「GLR」が大切にする「きちんと見えしながらも、着ていてストレスのない着心地」を追求しながら、上品な落ち感と高級感のある光沢感を生かしたシルエットに落とし込んだ。シーズンレスで着られるようジャケットは背抜きで仕立て、パンツは裏地を省いて素材の心地よさを肌で感じてもらう。“ナイア・レニュー”は、従来のアセテートが持つ高い染色性も妥協しない。「GLR」では、それを生かして「ベリーショコラカラー」と呼ぶフェミニンで優しい印象のピンクのほか、ネイビーとホワイトを企画した。また、リサイクルポリエステルと混紡することでイージケアも叶える仕様だ。

 「お客さまが素敵だと思った商品が、サステナブルな選択であることが一番だ。“ナイア・レニュー”はそれを叶えてくれる素敵な素材。生地バリエーションも豊富で、商品群の2軸である通勤服とカジュアル服のどちらにも対応できる。次のシーズンに向けても継続的に採用していく予定だ。」(田中ディレクター)

木材パルプとリサイクル
廃棄物由来の生分解性素材

 “ナイア・レニュー”は、木材パルプが主原料の“ナイア“の次世代版として2020年秋に販売を開始した。原料は60%が木材パルプ、40%がリサイクル廃棄物で構成する。木材パルプは、FSC認証やPEF認証を取得し持続可能な方法で調達されたことが立証されている。通常のアセテートは木材パルプに石油由来の原料を加えるが、イーストマンケミカルは独自の技術でこれをリサイクル廃棄物に置き換えた点が特徴だ。廃棄物はカーペットなど、埋め立てゴミにされるような再生難易度の高い素材を活用する。製造プロセスにおいても環境負荷を抑えることを徹底し、安全かつ環境に配慮した化学薬品を使用し、二酸化炭素排出量や水の使用量を削減したクローズドループを構築している。加えて、生分解性と堆肥化可能性も第三者機関の基準で認められている。

「持続可能な繊維の
重要性を業界に伝え、教育したい」

 イーストマンケミカルのルース・ファレル(Ruth Farrell)=ジェネラル・マネジャーは、「“ナイア・レニュー”の開発にあたり、持続可能なファッションを実現する上で測定可能な影響を与えることを目指した。当社は、品質や美しさを損なわない持続可能な糸を市場に提供するために、生産量の拡大とイノベーションへの投資に真剣に取り組んできた。日本のパートナーと協力して、より持続可能な繊維産業を共に構築することにワクワクしている」と話す。

 特に同素材はウィメンズウエアに適しており、世界的なブランドのニーズに応えるため、組織横断的な開発チームで「ビジョンを共有する」紡績業者や工場と協力して差別化できるトレンドを抑えた生地開発に注力してきた。「私たちの目的は、最初の重要なデザインの段階で、持続可能な繊維の重要性を繊維業界に継続的に伝え、教育し、サステナブルな繊維で作られた生地が妥協を意味しないことを示すことだ。ユナイテッドアローズは持続可能性に対する情熱を共有しており、今回のコレクションは、それを示してくれた。同社のような主力ブランドと協力できることを非常にうれしく思う」。

PHOTOS:SUNGO TANAKA(MAETTICO)
問い合わせ先
イーストマンケミカル
03-5469-7624

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「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」が注目のサステナブル素材“ナイア・レニュー”を日本で初採用

 イーストマンケミカルが手掛ける循環型ジアセテート繊維“ナイア・レニュー(Naia Renew)”は、木材パルプに廃棄物由来の再生プラスチックを組み合わせた注目のサステナブル素材だ。同社は「持続可能なテキスタイルをすべての人に利用可能にすること」をビジョンに掲げ、日本市場での販売数拡大を目指す。その最初のパートナー企業として「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング(UNITED ARROWS GREEN LABEL RELAXING、以下GLR)」が、2022-23年秋冬の主力商品に同素材を採用した。田中安由美ウィメンズ商品本部GLR部副部長兼クリエイション課課長ブランドディレクターは、“ナイア・レニュー”を「作り手が選びたくなるファッション性兼ね備えた信頼のおけるサステナブル素材だ」と評価する。

作り手が選びたくなる
ファッション性が魅力

 「GLR」は、かねてよりリサイクルポリエステルやオーガニックコットンなどサステナブル素材への切り替えを積極的に進めてきた。ユナイテッドアローズ全体では、31年3月期までに環境配慮商品の割合を50%まで引き上げることを目指しており、今後もサステナブル素材の選択肢が必須となる。

 田中ディレクターは「これまでサステナブルを優先すると、ファッション性とトレードオフになることが多かった。しかし、“ナイア・レニュー”は素材選びの段階で自然と手が伸びた生地だった。なおかつ原料は100%サステナブル。リサイクル原料を活用しながら、私たちが手の届く価格帯だったことも採用の決め手だった」と話す。

上品な落ち感と高級感のある
光沢感を生かした通勤服

 アイテムは、通勤時に活躍するセットアップやワンピースなど7型。「GLR」が大切にする「きちんと見えしながらも、着ていてストレスのない着心地」を追求しながら、上品な落ち感と高級感のある光沢感を生かしたシルエットに落とし込んだ。シーズンレスで着られるようジャケットは背抜きで仕立て、パンツは裏地を省いて素材の心地よさを肌で感じてもらう。“ナイア・レニュー”は、従来のアセテートが持つ高い染色性も妥協しない。「GLR」では、それを生かして「ベリーショコラカラー」と呼ぶフェミニンで優しい印象のピンクのほか、ネイビーとホワイトを企画した。また、リサイクルポリエステルと混紡することでイージケアも叶える仕様だ。

 「お客さまが素敵だと思った商品が、サステナブルな選択であることが一番だ。“ナイア・レニュー”はそれを叶えてくれる素敵な素材。生地バリエーションも豊富で、商品群の2軸である通勤服とカジュアル服のどちらにも対応できる。次のシーズンに向けても継続的に採用していく予定だ。」(田中ディレクター)

木材パルプとリサイクル
廃棄物由来の生分解性素材

 “ナイア・レニュー”は、木材パルプが主原料の“ナイア“の次世代版として2020年秋に販売を開始した。原料は60%が木材パルプ、40%がリサイクル廃棄物で構成する。木材パルプは、FSC認証やPEF認証を取得し持続可能な方法で調達されたことが立証されている。通常のアセテートは木材パルプに石油由来の原料を加えるが、イーストマンケミカルは独自の技術でこれをリサイクル廃棄物に置き換えた点が特徴だ。廃棄物はカーペットなど、埋め立てゴミにされるような再生難易度の高い素材を活用する。製造プロセスにおいても環境負荷を抑えることを徹底し、安全かつ環境に配慮した化学薬品を使用し、二酸化炭素排出量や水の使用量を削減したクローズドループを構築している。加えて、生分解性と堆肥化可能性も第三者機関の基準で認められている。

「持続可能な繊維の
重要性を業界に伝え、教育したい」

 イーストマンケミカルのルース・ファレル(Ruth Farrell)=ジェネラル・マネジャーは、「“ナイア・レニュー”の開発にあたり、持続可能なファッションを実現する上で測定可能な影響を与えることを目指した。当社は、品質や美しさを損なわない持続可能な糸を市場に提供するために、生産量の拡大とイノベーションへの投資に真剣に取り組んできた。日本のパートナーと協力して、より持続可能な繊維産業を共に構築することにワクワクしている」と話す。

 特に同素材はウィメンズウエアに適しており、世界的なブランドのニーズに応えるため、組織横断的な開発チームで「ビジョンを共有する」紡績業者や工場と協力して差別化できるトレンドを抑えた生地開発に注力してきた。「私たちの目的は、最初の重要なデザインの段階で、持続可能な繊維の重要性を繊維業界に継続的に伝え、教育し、サステナブルな繊維で作られた生地が妥協を意味しないことを示すことだ。ユナイテッドアローズは持続可能性に対する情熱を共有しており、今回のコレクションは、それを示してくれた。同社のような主力ブランドと協力できることを非常にうれしく思う」。

PHOTOS:SUNGO TANAKA(MAETTICO)
問い合わせ先
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“デザイナー不在”の異色ブランド「カルネボレンテ」 セックスポジティブな世の中を目指して

 パリ発の「カルネボレンテ(CARNE BOLLENTE)」は、セックスをモチーフにした刺しゅうTシャツがソーシャルメディアを中心に話題になっているブランドだ。「アンダーカバー(UNDERCOVER)」「アニエスベー(AGNES B.)」とのコラボレーションも行い、東京の街で見かけることも増えた。

 同ブランドは、セックスやセクシュアリティーは恥ずかしいものではなく、健康で楽しいものだというマインド“セックスポジティブ”を体現している。ブランドにはデザイナーがおらず、パリを拠点にした多国籍の3人で構成する。創業から廃棄ゼロを継続するなど、異色ブランドの全貌を、チームの1人である日本人の遠藤聖に聞いた。

WWD:チーム3人の出会いとバックグラウンドは?

遠藤聖(以下、遠藤):ハンガリー出身フランス国籍のイラストレーターのアゴストン・パリンコ(Agoston Palinko)と、フランス出身のアートディレクターのテオドール・ファメリ(Theodore Famery)の2人はフランスの国立の美術大学に一緒に通っていた友人でした。そして、アゴストンは日本に交換留学していて、僕はグラインダー(Grindr、デートアプリ)で彼と知り合い、友達になったんです(笑)。自分は財閥系商社のサラリーマンを辞めた後、セレクトショップのバイヤーを経て、もっとファッションをやりたいと思い、フランスに飛んでブランドをローンチしたんです。

WWD:それぞれの役割は?コレクション発表まで3人でどうこなしているのか?

遠藤:役割を明確に決めてはいませんが、コンセプト作りや、ビジネス面、PRは自分が主に担当しています。商社マンとバイヤーの経験が生きているのかもしれませんね。ただ、コレクションのテーマは3人で決めます。イラストはアゴストンが担当し、自分がファッションのディレクションをします。それらをテオドールが取りまとめるといった流れで進めています。

WWD:なぜデザイナーがいないのか?

遠藤:いわゆるファッションデザイナーと呼べる人はこの中にいません。自分以外の2人もイラストやグラフィックデザインを学んでいましたし、誰もパターンを引けません。服作りにはもちろん真剣に向き合ってはいますが、これでデザイナーを名乗るのはファッションデザイナーさんに申し訳ないというか(笑)。

 「カルネボレンテ」がデザインしているのは、コンセプトだと考えています。たまたま表現のアウトプットがファッションなだけで、日本の文化祭のクラスTシャツを作るカルチャーに近いかもしれません。

WWD:なぜ“セックスポジティブ”を刺しゅうで表現しているのか?

遠藤:タブーとされているからこそ、性にオープンなことが当たり前になる社会にしたい。その考えにメンバー全員が一致しました。まずはそういった会話のきっかけになるアイテムを作りたかったんです。

 そこで、セックスをモチーフにし、ワンポイント刺しゅうのTシャツが最初に作ったアイテムでした。イラストではなく、刺しゅうを使うことで、他ブランドとの差別化ができるかなと考えたので。ブランドをローンチした2015年当時は、セルフィーブーム最盛期。インスタグラムで自撮りをアップした際に、胸元のワンポイントに見えるという効果を狙ったんです。自分たちの周りの人に着てもらうことからスタートし、今もPRはギフティングが中心です。

WWD:現在の販路や展開している国と地域は?

遠藤:卸売りがメインで、25~30カ国のショップに卸しています。卸先の約6割はヨーロッパで、最近は日本でも取り扱いがどんどんと増えています。オンラインでは、「エッセンス(SSENSE)」などでも取り扱っています。ヨーロッパと北米での知名度は高くなる一方で、日本を含むアジア地域ではまだ“フランスのセックスの刺しゅうのブランド”と知られているかどうかで、これからもっと頑張りたいです。

WWD:セクシュアルなデザインで販路に困ることは?

遠藤:ありますね。ヨーロッパと比べ、日本はセクシュアルすぎるかどうかを基準ににアイテムを選別するショップも多いです。一昔前に、女性蔑視的なセクシュアルなモチーフのアイテムを販売して批判されたセレクトショップもあるので、セクシュアルなもの全てをNGにしているケースもあります。

 日本と比べてもっと厳しいのはアメリカです。中絶禁止の議論など保守的な考えがまた強まっているのもあるんでしょうね。特に全国展開しているようなストアだと、ニューヨークやロサンゼルスなどに加え、さらに保守的な地域も考慮しなければいけないので。また中東など、国によっては通関もできないので、輸出が難しい場合もあります。

WWD:工場への発注の際にトラブルはなかった?

遠藤:アイテムは主にポルトガルで製造しているのですが、保守的なカトリックが多い国なので、最初に発注するときは緊張しました。嫌な思いさせたくないなと。でも実際に刺しゅうの工場を訪れてみると、みんなちょっとニコニコ、クスクスしながらこっちを見ていたんです。工場長に聞いたら、「次はどんな変なのが来るかな」とみんな楽しそうに仕事をしているって言われました。半分茶化されてるのかもしれないけど、うれしそうで良かったです(笑)。

WWD:サステナビリティにも取り組んでいる?

遠藤:2015年の創業から廃棄はゼロで、1枚も捨てたことがありません。自分が意外とデータが得意で、販売計画や在庫の持ち方などはすごく気にしています。チャリティーイベントで安く販売や寄付するなどして、無駄にならないようにしています。デザインから販売へのリードタイムが長いため、追加で発注などはせず、基本は1回のみ。

 また、サプライチェーンもほとんどヨーロッパに集約していて、ポルトガルのテキスタイル産業が盛んな地域ギマランイスで主に製造しています。現地のサプライヤーから素材を調達し、工場で生産した後に直接輸送しています。

WWD:ブランドとしてこれから挑戦したいことは?

遠藤:ファッションという枠組みから飛び出してみたい。例えば、オフラインでリアルなコミュニケーションが取れるイベントやスペースとか。クィアコミュニティーやセックスポジティビティーに関連するセーフスペースを作りたいです。

 それと、フェムテックブランドとのコラボにも興味がすごくあるし、次世代の若いアーティストを支援したいという気持ちもあります。自分たちも、ブランドとのコラボなど周りの人に支援してもらったので、それを還元したいんです。

 この先、世界にセックスポジティビティが広がれば「カルネボレンテ」の“特別感”もなくなり、アイテムが売れなくなるかもしれません。でも、それがブランドのゴールでもあるんです。

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識者3人で考える「ファッション産業の未来とは?」 バーチャサイズと考える服とテクノロジーの行方

 経済産業省は4月、「ファッションの未来に関する報告書」を公開した。2021年11〜12月に気鋭のファッションデザイン研究者の水野大二郎・京都工芸繊維大学教授を座長に、ローランド・ベルガーの福田稔パートナーとファッションクリエイティブディレクターの軍司彩弓氏を副座長に、編集者やジャーナリスト、スタートアップ起業家、ファッションデザイナー、若い研究者など多彩な34人の有識者を集めて議論し、その内容をまとめたものだ。雑誌のようにデザインされた報告書は97ページにまとめられ、ビジネスモデルやSDGs、環境問題など多岐にわたるテーマを議論した。副座長を務めた福田氏とともに有識者メンバーの藤嶋陽子・明治大学特任講師、そして最有力ファッションテックスタートアップ企業の一つであるバーチャサイズの高橋君成・最高ビジネス責任者(CBO)を交え、「ファッションの未来」をテーマにした対談をお届けする。

「ファッションの未来」を
考える上で、重要だったこと

WWDJAPAN(以下、WWD):経産省の「ファッションの未来に関する報告書」はたいへん読み応えがあった。印象的だったことは?

福田稔ローランド・ベルガー パートナー(以下、福田):「ファッション未来研究会」の目的の一つは、一人でも多くの人に大きな変革にあるファッション産業の課題や未来を伝えることだった。議論にはBASE創業者である鶴岡裕太氏のような起業家から、ラグジュアリーブランドのトップ、バイオテクノロジーの専門家、弁護士、投資家など、海外やファッション領域以外の人も参加した。これまでの経産省の報告書であれば、小売業や大手アパレルのトップやキーマンが多くの割合を占めていた。しかし多種多様なメンバーが議論に参加したこと自体が、「ファッション」そのものの可能性や広がりを象徴していたと思う。

藤嶋陽子・明治大学特任講師(以下、藤嶋):ファッションと一括りに言っても、それぞれ捉えているものや大切にしているもの、価値観には随分と差異があると再認識しました。多彩な人たちが集まって、そうした違いや感覚を共有し、これからを考える。これまでにはなかった、貴重な機会だと思いました。

WWD:ファッション産業の課題として感じたことは?

藤嶋:大学で授業をしていると、ファッションに興味がある人は業界全体での環境問題の取り組みを認知し、「大量廃棄をして環境に負荷の大きい産業ですよね」と理解している人もいますが、一方でSNS、例えばTikTokやYouTubeではプチプライス商品の爆買いみたいなことも定番で身近なコンテンツになっています。ファッション産業の関係者では当たり前だと認識されている取り組みや価値観がまだまだ浸透しておらず、期待している消費者像とも解離があると感じています。「ファッション」という言葉の持つ広がりや大きさが、ある種のすれ違いのようなものを生み出して、極端な場合はそれが情報の分断にもつながってしまっていると感じています。

福田:同感です。実際、多くの企業はもうほとんど大量廃棄をしていない。ただ家庭に回った衣服は、7割はリサイクルされずゴミになり、その多くは焼却されている。これは程度は違えど日本でもグローバルでも同じだ。大量にモノを作る以上は、どうしてもゴミが出てしまう。ファッション産業の根本的な課題は大量生産、大量廃棄問題のサイクルから抜ける道筋がまだ見えていないことだ。

大量生産・大量廃棄からの
脱却に必要なこととは?

WWD:大量生産、大量破棄という産業構造から脱する道はあるか。

福田:産業構造は日本を含め、グローバルでラグジュアリーブランドと、大手SPA&ファストファッションという二極化が進み、SPA&ファストファッションはモノの消費と生産のボリュームが大きく、しかもサイクルが早い。この前提を踏まえたときに、環境への負荷を減らすためには回収の仕組みを確立するとともに、リサイクル技術を革新していく必要がある。

藤嶋:私は、製造過程や素材に配慮されたものは価格が高く、その価格を受け入れる=価値観に賛同する、あるいは受け入れない=拒否するの2択として消費者に委ねている点に違和感を抱いています。「この商品は買ってもいいモノです」といった考え方を押し付けてしまっているようにも見える。新しいモノを生み続けるモデルが前提になっている。

WWD:解決策は?

藤嶋:簡単な問題ではないのですが、ただ、全ての指標が、「売る」ことを前提になっていることにヒントがあると思っています。今は服を売り上げた枚数は分かっても、その後、その服が何回着られたか、どういう組み合わせで着られたかのかは分からない。授業やワークショップで聞いてみると、消費者側も服をどのくらい持っていて、実際それぞれどのくらい着ているかを正確に把握している人はほとんどいません。情報を埋め込んだICタグの情報を読み取りできるRFIDなどの導入や多様なデータ取得、活用の取り組みも進んでいるので、そういった情報をトラッキングして、「売上とは違う指標」としてモデル化できないかな、と。新しいものを作ることを続けていくためにも、消費者と「売る」「買う」以外の関係性もつくれたら面白いと思います。

福田:面白いですね。確かに私も服を何着持っているのかなんて全然分からないです(笑)。家庭のクローゼットがデジタル化して、持っている服が何回着られたかなどの情報が可視化されたら、こんなに服があったのかとか、あまり使われていない服があったりして、消費者の意識も変わるかもしれない。オンライン試着サービスの「バーチャサイズ(Virtusize)」が、そこに近づける可能性も?

高橋君成バーチャサイズ最高ビジネス責任者(以下、高橋):現時点での「バーチャサイズ」のクローゼット機能は、過去に自分が購入したものや気になったアイテムと、現在購入を検討したいアイテムのサイズを比較できるものですが、自分と同じアイテムを持っている他のユーザーが、1年間に平均100回着ているのに、自分は半分しか着ていないみたいなデータが取れれば、リコメンドの精度を高めたり、新しいサービスの開発につながったりする可能性はあると思います。

産業の縮小を超えた、
その先にある「勝ち筋」とは?

藤嶋:売り手や消費者の意識も変わることで、ビジネスモデルも変わる。新品を買うより、長く着られる服で何か収益を上げられるようになれば、「売る」だけで展開しなければならないビジネスから逃れられるかもしれないですよね。

WWD:サプライチェーンをより進化させたり、必要なものだけを売るデマンドチェーンとリサイクル技術を組み合わせたら総量が減る。つまり産業の衰退にもつながるのでは?

福田:総量を減らすと一時的に事業規模はおそらく減る。現在でもファストファッション企業が生産量を絞ったことで、バングラデシュの縫製産業で雇用が減っているという事実も、残念ながら起きている。だが、産業全体が生き残り、進化するためには必要なことだと。このままで行けば、もっと大きな損失や衰退につながりかねないからだ。実際にグローバル市場に受け入れられるような高付加価値の商品を作りつつ、環境負荷を抑えたサステナブルなビジネスモデルで成功している企業もある。その代表がパタゴニアだ。パタゴニアは2025年にカーボンニュートラルの目標を立てている。服を作っている限り、CO2の排出は避けられないが、ゼロにすると言っている。つまり相当生産量を絞り、真面目にリユースやリサイクル、リメイクにシフトしていって、本当に適量だけを売って、企業責任としてカーボンニュートラルにすると宣言している。日本でもグローバルに受け入れられる価値観とブランドの構築すれば、日本のアパレル産業の活性化にもつながるはずだ。日本のアパレル産業は国内市場のみに限定されており、衣服の完成品輸出を比較すると日本の輸出規模はフランスの40分の1ほどしかないのだから。

WWD:ビジネスを再定義するという視点で、ファッションにまつわる気になる事例や現象は?

福田:アパレル産業は、その時の世の中を端的に反映する業界だと思う。例えばZ世代はサステナブルみたいな話もあるが、実際にはサステナビリティに関心がないZ世代もたくさんいる。快楽主義的に服を買い続ける人は日本にも世界にもたくさんいて、例えば「シーイン(SHEIN)」の急成長は、そうした事実を裏付けている。先ほどパタゴニアの話をしたが、人々の間である種の分断が起きていて、解決の道筋をつけるのは難しいと感じる。逆に面白いと感じているのは、メタバースだ。メタバースというと、一般的には完全なバーチャルの中のアバターのようなVR(バーチャル・リアリティ=仮想現実)を思い浮かべると思うが、私はVRよりもAR(オーグメンテッド・リアリティ=拡張現実)に可能性を感じている。グーグルグラスのようなAR機器は今後、ますます進化し、普及するだろうし、そうなると日常生活の中にARが入り込んでくる。こうしたARは、コミュニケーションインフラとしてのSNSの進化やゲーム・チェンジなども後押しするはずだ。

現在のテクノロジーでも、
リアル店舗の進化にはまだ足りない!?

高橋:すごく面白いと思います。「バーチャサイズ」のクライアントのある有力アパレルから、リアル店舗の「試着体験」をもっとリッチにしたいという相談を受けたことがある。アパレル企業には有力な店舗であるほど、試着室が混み合ってしまうという悩みがあるからだ。相談を受けて、AR機器で試着体験ができたら最高にリッチだと思って調べたのだが、実際にはテクノロジーとのギャップが大きすぎて実現が難しい。実は服の試着をリアルタイムにARで見せるためには、最先端のAIで処理をしても能力がまだ追いつかない。

福田:かなり話題になっているアマゾンのアパレル店舗「アマゾン・スタイル」も、実際にはVRやARではなくたくさんの試着室を並べている。それがまだ最先端という現実もある。

高橋:でも逆に言えば、この5〜10年で技術さえ追いつけば、リアル店舗ががらりと変わる。当社も、そこを見据えて常に既存技術のアップデートや新サービスの開発のアイデアは常に磨いています。逆に10年前と比較すると、店頭在庫とオンライン在庫の連動は当たり前になっているし、売り方の面でも大きいサイズはオンラインのみで展開するなど、実は見えない部分のアップデートはだいぶ進んでいる。実は当社も水面下では、アパレルや小売企業に加え、繊維商社やデザイン企業とも連携し、弊社で取得できる消費者の身体情報や趣味・トレンドなどをもとに企画や生産の段階からサイズデータを生かして需給ギャップを解消する取り組みを始めています。

TEXT:MIWAKO ANNEN
PHOTO:KAZUO YOSHIDA
問い合わせ先
バーチャサイズ

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三越伊勢丹 店頭販促などで“サステナブルな服”や“地球に優しい化粧品”などの表現見直し その意図とは

 今年の春頃から、三越伊勢丹に出店するブランドの関係者から「店頭ポップなどで“サステナブルな服”や“地球に優しい化粧品”などの表現を使用できず、言葉の使い方を見直している」という話を聞くようになった。同社にその理由を聞けば、エビデンスを示さないまま“サステナブル”“地球に優しい”といった言葉だけが先行すると、顧客に誤解を与える可能性があるから、だという。言わずもがな、同社の方針は業界に大きな影響を与える。田口裕基三越伊勢丹ホールディングス執行役常務CAO兼CRO兼CHROにその意図や背景、サステナビリティの方針を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):三越伊勢丹ではサステナビリティをどう定義しているか?

田口裕基三越伊勢丹ホールディングス執行役常務CAO兼CRO兼CHRO(以下、田口):商品を仕入れて販売するのが我々の商売の基本的な形態であり、その中で社会にちゃんと還元できるか、豊かで平和な社会が続くことに貢献できるかの企業責任が問われる。そして企業責任はボランティアではなく経済活動として成立すること。1万7000人の社員にしっかり給料を支払い、お客さまとお取組先さま、地域の方々、株主のすべてが豊かになることが大前提だ。

WWD:それはこれまでも行ってきたことでもある。

田口:来年は三越創業350周年で、百貨店事業そのものも100年超える。戦中、戦後も百貨店をやめず長い歴史がある。今言われるところのサステナビリティは企業の理念として当たり前のようにやってきたことではある。

WWD:同時にファッションビジネス全体がこれまで社会や地球に与えてきたネガティブなインパクトがあると思う。その視点では改善してゆく点はあるか。

田口:あると思う。弊社としては「人・地域をつなぐ」「持続可能な社会・時代をつなぐ」「従業員満足度の向上」の3つを重点にこれまでの商売を見返しており、時代の変化に応じて見直す必要があると考えている。

顧客は「商品の品質・安全の確保・正確な表示」を求めている

WWD:消費者にはサステナビリティの価値観は浸透していると思うか?

田口:2月に三越伊勢丹ウエブ・アプリ会員の方を対象に10回目となるサステナビリティに関するアンケートを実施し5900名から回答を得た。「さまざまな社会課題のうち、今後、三越伊勢丹グループが特に重点的に取り組むべき活動」の問いに対する回答の第1位は突出して、「商品の品質・安全の確保・正確な表示」だった。続くのが「食品廃棄物・食品ロスの削減」、「プラスチック、紙容器などのすべての包装材の削減」となり、お客さまがサステナブルに対して強く考えを持っていることがうかがえた。これは毎年高まる傾向にある。

WWD:以下は主にファッション業界関係者に向けて話してほしい。環境と社会の両面に関して、取引先とは現在のサステナビリティ方針をどう共有しているのか。

田口:三越伊勢丹には12項目の調達方針がある。それは取引先と私たちの約束とも言えるもので、2018年にはホームページに掲出し2021年に見直した。内容は、法令順守・公正取式、品質管理、生物多様性対応、環境負荷軽減と汚染防止などであり、実は8項目は今で言うところのサステナビリティに関連することである。取り引きを始める前には必ず共有し、年に一度は説明会を開催。常にここを順守しましょう、と約束しながら進めている。

WWD:方針を決めるにあたって2018年に「サステナビリティ調達に関する」アンケートを対取引先に実施し、51%の292社が回答したと聞く。

田口:環境や人権に関しても、まずまずは我々が現状を知ることが大切だから実施した。センシティブな内容であり、丁寧に進めた。お取組先に「間違ったことを書いたらペナルティーがある」などと受け取られてはいけない。進んでいる企業では、サプライチェーンマネジメントの観点から、お取組先に足を延ばし、事件事故がなくても普段から現地調査をしているところもあると聞いているが、弊社はまだそには達していない。方針を配り、アンケートを回収し、これからその次のステップへ進んでいく段階だ。

WWD:アンケート結果は「品質管理への対応が積極的に取り組まれている一方で、環境や人権のサプライチェーン全体のマネージメントは難易度高い」とある。

田口:後者の、環境・人権問題については業界全体での取り組みが必要。官公庁や業界団体への提案・働きかけを進めていくとともに人権デューデリジェンスについても検討を進めたい。

“サステナブル”を商品の形容詞としては使わない

WWD:消費者はサステナビリティという言葉の使われ方、同時にグリーンウォッシュという言葉に対しても敏感だ。店頭ポップや販促物での言葉の使いに取り決めはあるか。

田口:表示マニュアルを作り、バイヤー、お取組先と共有している。元からある、景品表示法ガイドライに乗っ取った適正な販売表現マニュアルの中に、サステナビリティの項目を加えたもの。最新は昨年末に改正した。

 内容は、「根拠が不明確なことは言わない」が基本。たとえば“サステナブルな〇〇”のように商品に対して、サステナブルを形容詞としては使わない。考え方の前提として、お客さまにわかりやすく伝える訴求表現を目指している。「サステナビリティ」や「サステナブル」は一般的に、持続可能な繁栄をめざすための取り組み全体を指す表現であるため、 個々の商品の特徴を説明する場合の使用には適さないと考える。優良誤認を招く可能性もあるため、商品やサービスなど訴求物には形容詞としてこれらの表現を使用しないことを原則としている。

WWD:同じ理由から「地球に優しい〇〇」といった商品説明も控えるとしている。これは独自のルール?

田口:環境省による「環境表示ガイドライン」の内容であり、当社独自ルールではない。たとえば、環境保全効果を示す表示を行う場合、対象が商品の一部なのか全体なのかその範囲を表示すること。また、「環境保全に配慮した素材の使用 」と表示する場合は「リサイクルポリエステル〇%使用」など、その使用割合を表示する。

WWD:確かにサステナビリティを語る際には具体的に、エビデンスをもって、が重要になっている。

田口:商品の成分が環境保全に何らかの効果を持っていることを表示する場合は、効果があることを示す専門機関等による公正な方法による調査・検査結果の証拠を用意する。また、リサイクル、リユース、アップサイクルなどの表現は、表示内容と事実に相違がないことを示す根拠資料を用意すること、などを原則としている。

WWD:なぜここまで定義・言葉の整理をしているのか。

田口:サステナビリティに関連する言葉との出会いを通じて、理解ある方を一人でも多く増やし、よりよい社会づくりに貢献したい。お客さまは、われわれに高い「信頼」をお持ちいただいており、さらに信頼されるよう、しっかりと裏付けがあることはもちろん、理解・共感を得られるよう、誰もがわかりやすい表現が大切だ。

WWD: 言葉が、商売にこれほど重きを置いたことは過去にないのでは。サステナビリティ推進担当だけではなく、仕入れに関わるすべての社員がそれをすると。

田口:心配だとこちらに相談が来る。なんでも聞いてくれ、と言っている。お取組先は大切なパートナー。そしてサステナビリティは1社で取り組むものではなく、地球全体で取り組んでこそ効果のある取り組みだから、ともに推進していく観点も含まれている。また、従業員も言葉の意味をきちんと把握しておく必要がある。

まだ“正”を模索している段階。輪の拡大を目指す

WWD:接客を仕事にする人にとって、今まで知らなかった、接客で使ってこなかったサステナビリティ関連の言葉がたくさんある。業界全体でブラッシュアップするときだ。

田口:私たちもパーフェクトではなく、極めて謙虚にありたい。物事、すべて、100%が“正”なのかと言えばそうじゃない。まだ当社も“正”を模索している段階。“正”と言えない部分も、まずはそれを認識して、その上で持続可能な社会の寄与するものなのか、を考えてゆきたい。

 例えば9月から始まる“think good”キャンペーンは、企画段階で担当者が「これは本当に“think good”なのか自主チェックをしてきた。4回目の開催となる同キャンペーンでは、昨年までの新宿、日本橋、銀座に立川、浦和も加えて5店舗で展開し、企画の数は数百にのぼる。そのひとつひとつを確認するから大変だし、バイヤーもお取組先も苦労していると思うがここは切磋琢磨し進めたい。お客さまにサステナビリティを考えていただく機会をご提供するだけでなく、そのために、お取組先と当社グループが互いに考え方を伝え合うことで、ともに改善を図り、理解を深める機会になっている。今後も継続していくことで、サステナビリティを推進する人の輪の拡大を目指す。


【WWDJAPAN Educations】

【第2期】サステナビリティ・ディレクター養成講座
2022年9月30日(金)開講

 昨年初めて開催し好評を得た「サステナビリティ・ディレクター養成講座」を今年も開講。サステナビリティはこれからの企業経営の支柱や根底となるものであり、実践が急がれる事業の課題である。この課題についてのビジョンを描くリーダーの育成を目的に、必要な思考力・牽引力を身につける全7回のワークショップとなる。前半は各回テーマに沿った第一線で活躍する講師を迎え、講義後にはディスカッションやワークショップを通して課題を明確化し、実践に向けたアクションプランに繋げていく。

 また、受講者だけが参加できるオンライン・コミュニティーでは、「WWDJAPAN」が取り上げるサステナビリティに関する最新ニュースや知っておくべき注目記事をチェックでき、更に講義内容をより深く理解するための情報を「WWDJAPAN」編集部が届ける、まさに“サステナ漬け”の3カ月となる。
講義のみが受講できるオンラインコースも同時に受け付けています。


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8月に破たんした三崎商事のスポンサーに名乗り、「アパレルReSTARTファンド」って何者なの?

 名門インポーターの三崎商事は8月1日、民事再生法の適用を受けた。再建を後押しするスポンサーとして現れたのが、アパレルReSTARTファンドだ。同社は、監査法人やM&Aコンサルティング企業で企業再生やM&Aなどを手がけた倉本大樹氏が2020年に立ち上げたReSTARTグループ傘下の企業で、20年6月からは神戸の中堅アパレルであるハヴァナイストリップの再建を手がけている。キーマンであるアパレルReSTARTファンドの高橋浩二社長CEOと、ReSTARTグループ代表で、アパレルReSTARTファンドの倉本大樹CIOの2人を直撃した。

WWDJAPAN:アパレルReSTARTファンドの概要は?

倉本大樹(以下、倉本):監査法人やM&Aコンサルティング会社などを経て、2020年にM&Aのコンサルティングやファイナンス支援などを行うReSTARTグループを立ち上げた。その事業の一つとして、アパレルのハンズオン型の再生ファンドとしてスタートしたのが、アパレルReSTARTファンドだ。アパレルReSTARTファンドは、ハヴァナイストリップを軸にファブリックブランドの「レ・トワール・デュ・ソレイユ(LES TOILES DU SOLEIL) 」、ファクトリーエクスプレスジャパンなどを展開しており、グループの年商は合計で10億円ほど。全体の従業員数は70〜80人になる。

WWD:三崎商事の支援スポンサーに名乗りを上げた。その理由は?

高橋:三崎商事のスポンサー支援に関しては基本合意書を締結した段階であり、今後について詳細を話すことはできない。現時点で言えるのは、三崎商事がこれまでと変わりなく事業を継続し店舗の営業も継続していく、ということだけ。ただ、三崎商事は「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」を筆頭に数々の有力ブランドを取り扱ってきた名門企業で、現在も「ゲラルディーニ」という優良ブランドを展開している。会計上の数字以上の資産を持ち合わせており、非常にポテンシャルが高い。日本のアパレル産業全体を考えても、再生には重要な意義がある。

倉本:これは三崎商事に限定した話ではなく、あくまで一般論だが、戦略や見方を変えるだけでも、再生や再成長できるアパレル企業は多い。日本市場に限定していたビジネスを、アジアやグローバル市場に再設定すれば、新しい展開が見えてくる。

WWD:20年6月から再生に取り組んでいるハヴァナイストリップの現状は?

高橋:再建前に50店舗ほどあった店舗は、不採算店舗の閉鎖と出店をあわせて行い、現在は18店舗。生産の仕組みなどを整えたことで、利益率も改善しており、すでに黒字になっている。

WWD:再生のポイントは?

高橋:実際にはそう難しいことをやっているわけではない。改革は現在進行系だが、市場調査や競合調査をやった上で、これまで前年踏襲型だったやり方を改め、精度の高いMDを組むような仕組みに変えていくなど、無理・無駄を徹底的に減らしていった。全くのゼロではないが、人員削減などもわれわれがスポンサーになってからはほとんど行っていない。今年の秋冬に向けては、外部ディレクターにセタイチロウ氏を起用し、生産面では一部を工場との直接取引に移行するなど、利益率の向上も見えてきた。私自身が長く企画や生産畑を歩んできたこともあり、この部分は最初の組み立てはまさにハンズオンだが、いちど構築することで、引き継ぐようなやり方を取っている。これらに加えて、ECを本格的にスタートした。これは大きい。当社は、グループ内企業のECを垂直的に立ち上げて、その後は実際の運営を移行するチームを作っており、ハヴァナイストリップでもこのチームの下、かなりスピーディーにECを立ち上げられている。今後はさらに黒字体質になっていくはずだ。

WWD:多くのアパレルが赤字や不採算事業に苦しんでいると言われるが、課題をどう見る?

高橋:MD不在ということが一番大きいのではないか。アパレル企業の多くは年商数十億円規模の企業が多く、実際には競合分析や商品構成、商品発注、売り上げ分析などをきちんと行って、かつ実施している企業がかなり少ない。その一方で実は数字のデータはエクセルであれ、クラウド上であれ、意外と揃っている。勘や属人的なやり方、あるいは前年踏襲でなんとなく毎年商品を発注して、在庫になってしまっている。余力がないから、ECのような新規分野にも経営資源を投じられず、負のスパイラルに陥っている。

倉本:これまでアパレルに限らず、多くの業種・業界の再生に関わってきた。アパレルは市場が縮小しており、一部の機関投資家からは魅力がない業界とも思われている。だが、私からすると逆に伸びしろが大きいとも思っている。データドリブンなMD管理や計数管理、EC関連のリソースの提供などで、見違えるような業績回復を行う事例も少なくない。その上で、アジアを筆頭にしたグローバル市場を視野に入れることで新しいビジネスの形も見えてくる。

WWD:具体的には?

倉本:現在は水面下で大型プロジェクトを進めており、現時点では公表できない。一昨年にReSTARTファンドアパレルを立ち上げてから、かなり多くの問い合わせをいただいており、それだけ悩んでいる企業が多いことは確かだ。日本のアパレル産業の活性化には、中小・中堅企業の再生が不可欠だ。これからも全力で取り組んでいく。

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来場者に聞く「フェティコ」の魅力 2023年春夏のショーに潜入

 「フェティコ(FETICO)」は、2023年春夏コレクションを「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で、ブランド初のランウエイショー形式で発表した。同ブランドは女性の体の美しさや、強さを引き出すフェティッシュなスタイルが人気のブランドだ。今季の着想源は、1970年代に作家や女優、モデルとして活動した鈴木いづみ。彼女の写真から女性の体の曲線美や、自信を持って肌を見せるという自己愛を表現した。

 「WWDJAPAN」映像チームは、バックステージやショーの様子を捉えるとともに、来場した歌手の中島美嘉やモデルのモトーラ世理奈、萬波ユカらにファッションやブランドの魅力について聞いた。

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来場者に聞く「フェティコ」の魅力 2023年春夏のショーに潜入

 「フェティコ(FETICO)」は、2023年春夏コレクションを「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で、ブランド初のランウエイショー形式で発表した。同ブランドは女性の体の美しさや、強さを引き出すフェティッシュなスタイルが人気のブランドだ。今季の着想源は、1970年代に作家や女優、モデルとして活動した鈴木いづみ。彼女の写真から女性の体の曲線美や、自信を持って肌を見せるという自己愛を表現した。

 「WWDJAPAN」映像チームは、バックステージやショーの様子を捉えるとともに、来場した歌手の中島美嘉やモデルのモトーラ世理奈、萬波ユカらにファッションやブランドの魅力について聞いた。

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ブルガリCEOが「時計&ジュエリー業界の好況は続く」 顧客が望むゴールド素材を拡充

 ジュネーブでは8月29日~9月1日までの3日間、30を超えるブランドが参加した新作時計の合同展示会「ジュネーブ ウォッチ デイズ 2022」が開かれた。主催した「ブルガリ(BVLGARI)」も今年の新作ウオッチを発表。この新作やブランドについて、ジャン・クリストフ・ババン(Jean Christophe Babin)=ブルガリ・グループ最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。

ーーメンズからレディスの複雑機構搭載モデルまで揃えたが、特に力を入れた注目は?

ジャン・クリストフ・ババン=ブルガリ・グループ最高経営責任者(以下、ババンCEO):まず注目してほしいのは、今年コレクションが誕生して10周年を迎えたアイコン “オクト”の新作。なかでも超薄型“オクト フィニッシモ”の新作、“オクト フィニッシモ スケルトン エイトデイズ”だ。幾何学的な美を追求した8角形のケースに、新開発の超薄型なのに8日間のパワーリザーブを有するスケルトンムーブメントを搭載した手巻きモデルだ。ローマのコロッセオからインスピレーションを得た“オクト”のアニバーサリーイヤーにふさわしいエレガントな一本だ。

ーー “オクト フィニッシモ”からは、2010年に建築界のノーベル賞「ブリツカー賞」を受賞した日本を代表する建築家のひとり、妹島和世とのコラボレーション限定モデルも登場した。ミラーポリッシュのケースやブレスレットの中で、やはり鏡のように仕上げられ、見る角度次第で神秘的な輝きを見せる。

ババンCEO:ローマのコロッセオを筆頭に、私たちはクリエーションにおいて建築から多大なインスピレーションを受けている。“オクト”ではこれまで、安藤忠雄氏など日本人建築家とのコラボレーションモデルも発売した。このモデルは「見えるもの、見えないもの」という妹島氏のクリエイティビティに着想を得たもので、特別なミラー加工を施したダイヤルの上に妹島氏がデザインしたドットパターンを加えたサファイアクリスタルの風防を重ね、独自の輝き、きらめきを実現している。世界で360本だけの限定モデルなので、すぐにコレクターズモデルになることは間違いない。

ーーメンズ&レディスどちらにも、ブラックを基調にした新作、ゴールド素材のモデルが数多く登場したが、その狙いと理由は?

ババンCEO:ブラックは、今年の新作のテーマカラー。またゴールド素材は、ラグジュアリーなモデルを望む顧客の声に応えたもの。“オクト”では文字盤がゴールドケースの新モデルを、またスネークをモチーフにしたレディスのアイコン“セルペンティ”コレクションからもブラックセラミックとピンクゴールドの“セルペンティ スピガ セラミック”をリリースした。また“ブルガリ・ブルガリ”でも、ブラックの文字盤にブラックDLC加工を施したケース&ブレスレットのモデルを発売した。

ーー時計&ジュエリー業界の今後をこの先をどのように予測する?

ババンCEO:現職に就任以来、ウオッチでもジュエリーでも、最高峰のデザインと卓越した技術力、さらに最高峰の職人技を結集して「エレガントでコンテンポラリー」という「ブルガリ」の魅力を高めることができた。また新型コロナ禍でも、従業員をひとりもレイオフ(解雇)することなく事業を発展させてきた。ラグジュアリーアイテムの需要は今後世界的にさらに高まり、時計&ジュエリー業界の好況も続くと考えている。ブルガリはその中の「ベスト・オブ・ベスト」を目指したい。

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ブルガリCEOが「時計&ジュエリー業界の好況は続く」 顧客が望むゴールド素材を拡充

 ジュネーブでは8月29日~9月1日までの3日間、30を超えるブランドが参加した新作時計の合同展示会「ジュネーブ ウォッチ デイズ 2022」が開かれた。主催した「ブルガリ(BVLGARI)」も今年の新作ウオッチを発表。この新作やブランドについて、ジャン・クリストフ・ババン(Jean Christophe Babin)=ブルガリ・グループ最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。

ーーメンズからレディスの複雑機構搭載モデルまで揃えたが、特に力を入れた注目は?

ジャン・クリストフ・ババン=ブルガリ・グループ最高経営責任者(以下、ババンCEO):まず注目してほしいのは、今年コレクションが誕生して10周年を迎えたアイコン “オクト”の新作。なかでも超薄型“オクト フィニッシモ”の新作、“オクト フィニッシモ スケルトン エイトデイズ”だ。幾何学的な美を追求した8角形のケースに、新開発の超薄型なのに8日間のパワーリザーブを有するスケルトンムーブメントを搭載した手巻きモデルだ。ローマのコロッセオからインスピレーションを得た“オクト”のアニバーサリーイヤーにふさわしいエレガントな一本だ。

ーー “オクト フィニッシモ”からは、2010年に建築界のノーベル賞「ブリツカー賞」を受賞した日本を代表する建築家のひとり、妹島和世とのコラボレーション限定モデルも登場した。ミラーポリッシュのケースやブレスレットの中で、やはり鏡のように仕上げられ、見る角度次第で神秘的な輝きを見せる。

ババンCEO:ローマのコロッセオを筆頭に、私たちはクリエーションにおいて建築から多大なインスピレーションを受けている。“オクト”ではこれまで、安藤忠雄氏など日本人建築家とのコラボレーションモデルも発売した。このモデルは「見えるもの、見えないもの」という妹島氏のクリエイティビティに着想を得たもので、特別なミラー加工を施したダイヤルの上に妹島氏がデザインしたドットパターンを加えたサファイアクリスタルの風防を重ね、独自の輝き、きらめきを実現している。世界で360本だけの限定モデルなので、すぐにコレクターズモデルになることは間違いない。

ーーメンズ&レディスどちらにも、ブラックを基調にした新作、ゴールド素材のモデルが数多く登場したが、その狙いと理由は?

ババンCEO:ブラックは、今年の新作のテーマカラー。またゴールド素材は、ラグジュアリーなモデルを望む顧客の声に応えたもの。“オクト”では文字盤がゴールドケースの新モデルを、またスネークをモチーフにしたレディスのアイコン“セルペンティ”コレクションからもブラックセラミックとピンクゴールドの“セルペンティ スピガ セラミック”をリリースした。また“ブルガリ・ブルガリ”でも、ブラックの文字盤にブラックDLC加工を施したケース&ブレスレットのモデルを発売した。

ーー時計&ジュエリー業界の今後をこの先をどのように予測する?

ババンCEO:現職に就任以来、ウオッチでもジュエリーでも、最高峰のデザインと卓越した技術力、さらに最高峰の職人技を結集して「エレガントでコンテンポラリー」という「ブルガリ」の魅力を高めることができた。また新型コロナ禍でも、従業員をひとりもレイオフ(解雇)することなく事業を発展させてきた。ラグジュアリーアイテムの需要は今後世界的にさらに高まり、時計&ジュエリー業界の好況も続くと考えている。ブルガリはその中の「ベスト・オブ・ベスト」を目指したい。

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テンガが本気のアパレル事業で年商1億円目指す 「プラスチックトーキョー」元デザイナーの再起

 テンガ(TENGA)は、2021年に立ち上げた、アーティストと共にアパレルや雑貨などを製作するプロジェクト「ティーエックスエー テンガ バイ アーティスト(TXA -TENGA by Artist- 以下、TXA) 」のインラインを拡充し、23年春夏シーズンから卸販売を開始する。プロジェクト マネジャーを務める今崎契助は、16年に「毎日ファッション大賞」新人賞を獲得し、東京のファッション・ウイークにも参加していたブランド「プラスチックトーキョー(PLASTICTOKYO)」の元デザイナーだ。同氏はブランドを19年春に終了させた後、現在はテンガの社員として4人の「TXA」チームを率いており、初のインライン14型とアーティストとのコラボレーションアイテムをデザインしている。

 インラインアイテムは、春夏と秋冬のシーズンサイクルに合わせて発表していく。ファーストシーズンはデニムジャケット(3万7800〜3万9800円税込、以下同)とジーンズ(2万7800〜2万9800円)、トラックジャケット(3万2800円)とトラックパンツ(2万5800円)、コーチジャケット(3万8000円)と共地のパンツ(2万9800円)とセットアップ提案が多い。さらにスエット(1万9800円)やフーディー(2万3800円)、半袖ニット(2万6000円)などのベーシックなアイテムもそろえる。アパレルでは一番安いTシャツが9300円という強気の価格帯だが、「国内のメーカーと生地を作ったり、独特な色味に染めたりと、どのアイテムも妥協は一切していない。適正な工賃を払ってものを作り、それを長く着てもらいたいからこの価格帯になった」と今崎マネジャー。

 Tシャツにはさらっとした質感のオーガニックコットンを、コーチジャケットにはシリコンコーディングしたタイプライター地を、トラックジャケットには品のいいコットンベースの高密度ポンチを使うなど、ただのファングッズではないことが素材使いだけで伝わってくる。今崎マネジャーは「テンガの全てのプロダクトは、肌に当たったときの心地良さを大事にしている。アパレルでもそこは大切にしたかった」と語る。

 ほとんどが男女共に着用できる2サイズで、丸みにこだわったシェイプが特徴だ。「プロジェクトの目的の一つは、多様な性愛を伝えること。その表現として、男女の体形のちょうど中間をとるようなシェイプを作りたかった」。Tシャツの襟にはダーツを入れ、肩線を通常よりも下げて立体感をもたせた。ラグランスリーブのスエットは、襟のダーツと袖口のカッティングで全体がふっくらとした曲線を描く。表に出る縫い目を極力減らしてクリーンな印象を保ちながら、人の体について熟考を重ねたディテールは、ファッションデザイナーらしいアプローチである。奇抜で無機質な服に見えて、実は着る人のことをとことん考え抜いた「プラスチックトーキョー」時代の“今崎デザイナー”をほうふつとさせる。卸先や消費者には、価格帯に見合った製品のクオリティーや、プロジェクトの価値をどう伝えていくかが成否を分けるポイントになるだろう。

“あのテンガ”がアパレルを?
世間の先入観をどう変えるか

 テンガは、19年3月に阪急メンズ東京への常設店出店に合わせてアパレル制作を開始。当時はコミュニケーションツールとしてのファングッズ扱いで、年間売上高は全体の1%にも満たなかった。同年7月に、テンガが掲げる“性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく”というビジョンに共感した今崎マネジャーが入社。ビジョンをさらに幅広い層に伝えていくため、アパレル強化に本腰を入れ始めた。しかし、急に本気のファッションアイテムを作っても「クラスのお調子者が、急に真面目なことを言い出したように受け取られる。テンガは世間でやはりセルフプレジャーのイメージが強い。ファッションをやるなんて、冗談なんじゃないかと思われる。ファングッズとファッションのバランス感を模索していた」。

 試行錯誤を重ねた結果、21年初頭に「テンガの“性を表通りに”という理念と、アーティストの自身の内面を発信したいという“自発性”には通じるものがあるんじゃないか」というアイデアが浮かび、アーティストと協業してメッセージを発信する「TXA」の構想がスタート。同年11月には第1弾のアイテムとしてTシャツやフーディー、雑貨を自社ECで発売した。発売後2カ月間の売り上げは約100万円で、「想定していた予算には届かなかった」という。売れたアイテムは「テンガっぽいものよりも、そうじゃない商品」だったため、インラインではグラフィックを排してデザインに振り切り、多様な性愛をディテールで、企業のアイデンティティーをカラーリングや着心地で表現している。

 初年度の年間売上高の目標は5000万円で、3〜5年以内に1億円規模を目指す。「TXA」の売り上げの一部は、性犯罪・性暴力被害者ワンストップ支援団体に寄付する。今後はインラインとアーティストとの協業を継続させながら、本の出版やイベントの協賛などプロジェクトを広げていき、「“性を表通りに”という会社のメッセージを伝える土壌作りをしていきたい。最終的には社会問題を解決するプロジェクトにしたいし、デザイナー経験があるからこそ、ファッションやアートにはその力があると信じている」。そう堂々と言い切る今崎マネジャーに、デザイナー時代の控えめな雰囲気はない。

 「プラスチックトーキョー」時代は、東コレへの参加や「毎日ファッション大賞」効果で取引先は増えたものの、一人で全ての仕事を抱えてパンク状態になり、事業を継続するのが難しくなった。しかし現在は支え合えるチームがあり、今シーズンのルックは「プラスチックトーキョー」時代の撮影チームを再び集めた。今崎マネジャーに、ひさしぶりに思い切りクリエイションができて楽しいのではないかと聞くと「楽しいし、感慨深い。でも社長が応援してくれているとはいえ、会社員なのにこんなに好きにやっていいのだろうかとたまに思う……」と、急にかつての遠慮がちな小声に戻った。

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テンガが本気のアパレル事業で年商1億円目指す 「プラスチックトーキョー」元デザイナーの再起

 テンガ(TENGA)は、2021年に立ち上げた、アーティストと共にアパレルや雑貨などを製作するプロジェクト「ティーエックスエー テンガ バイ アーティスト(TXA -TENGA by Artist- 以下、TXA) 」のインラインを拡充し、23年春夏シーズンから卸販売を開始する。プロジェクト マネジャーを務める今崎契助は、16年に「毎日ファッション大賞」新人賞を獲得し、東京のファッション・ウイークにも参加していたブランド「プラスチックトーキョー(PLASTICTOKYO)」の元デザイナーだ。同氏はブランドを19年春に終了させた後、現在はテンガの社員として4人の「TXA」チームを率いており、初のインライン14型とアーティストとのコラボレーションアイテムをデザインしている。

 インラインアイテムは、春夏と秋冬のシーズンサイクルに合わせて発表していく。ファーストシーズンはデニムジャケット(3万7800〜3万9800円税込、以下同)とジーンズ(2万7800〜2万9800円)、トラックジャケット(3万2800円)とトラックパンツ(2万5800円)、コーチジャケット(3万8000円)と共地のパンツ(2万9800円)とセットアップ提案が多い。さらにスエット(1万9800円)やフーディー(2万3800円)、半袖ニット(2万6000円)などのベーシックなアイテムもそろえる。アパレルでは一番安いTシャツが9300円という強気の価格帯だが、「国内のメーカーと生地を作ったり、独特な色味に染めたりと、どのアイテムも妥協は一切していない。適正な工賃を払ってものを作り、それを長く着てもらいたいからこの価格帯になった」と今崎マネジャー。

 Tシャツにはさらっとした質感のオーガニックコットンを、コーチジャケットにはシリコンコーディングしたタイプライター地を、トラックジャケットには品のいいコットンベースの高密度ポンチを使うなど、ただのファングッズではないことが素材使いだけで伝わってくる。今崎マネジャーは「テンガの全てのプロダクトは、肌に当たったときの心地良さを大事にしている。アパレルでもそこは大切にしたかった」と語る。

 ほとんどが男女共に着用できる2サイズで、丸みにこだわったシェイプが特徴だ。「プロジェクトの目的の一つは、多様な性愛を伝えること。その表現として、男女の体形のちょうど中間をとるようなシェイプを作りたかった」。Tシャツの襟にはダーツを入れ、肩線を通常よりも下げて立体感をもたせた。ラグランスリーブのスエットは、襟のダーツと袖口のカッティングで全体がふっくらとした曲線を描く。表に出る縫い目を極力減らしてクリーンな印象を保ちながら、人の体について熟考を重ねたディテールは、ファッションデザイナーらしいアプローチである。奇抜で無機質な服に見えて、実は着る人のことをとことん考え抜いた「プラスチックトーキョー」時代の“今崎デザイナー”をほうふつとさせる。卸先や消費者には、価格帯に見合った製品のクオリティーや、プロジェクトの価値をどう伝えていくかが成否を分けるポイントになるだろう。

“あのテンガ”がアパレルを?
世間の先入観をどう変えるか

 テンガは、19年3月に阪急メンズ東京への常設店出店に合わせてアパレル制作を開始。当時はコミュニケーションツールとしてのファングッズ扱いで、年間売上高は全体の1%にも満たなかった。同年7月に、テンガが掲げる“性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく”というビジョンに共感した今崎マネジャーが入社。ビジョンをさらに幅広い層に伝えていくため、アパレル強化に本腰を入れ始めた。しかし、急に本気のファッションアイテムを作っても「クラスのお調子者が、急に真面目なことを言い出したように受け取られる。テンガは世間でやはりセルフプレジャーのイメージが強い。ファッションをやるなんて、冗談なんじゃないかと思われる。ファングッズとファッションのバランス感を模索していた」。

 試行錯誤を重ねた結果、21年初頭に「テンガの“性を表通りに”という理念と、アーティストの自身の内面を発信したいという“自発性”には通じるものがあるんじゃないか」というアイデアが浮かび、アーティストと協業してメッセージを発信する「TXA」の構想がスタート。同年11月には第1弾のアイテムとしてTシャツやフーディー、雑貨を自社ECで発売した。発売後2カ月間の売り上げは約100万円で、「想定していた予算には届かなかった」という。売れたアイテムは「テンガっぽいものよりも、そうじゃない商品」だったため、インラインではグラフィックを排してデザインに振り切り、多様な性愛をディテールで、企業のアイデンティティーをカラーリングや着心地で表現している。

 初年度の年間売上高の目標は5000万円で、3〜5年以内に1億円規模を目指す。「TXA」の売り上げの一部は、性犯罪・性暴力被害者ワンストップ支援団体に寄付する。今後はインラインとアーティストとの協業を継続させながら、本の出版やイベントの協賛などプロジェクトを広げていき、「“性を表通りに”という会社のメッセージを伝える土壌作りをしていきたい。最終的には社会問題を解決するプロジェクトにしたいし、デザイナー経験があるからこそ、ファッションやアートにはその力があると信じている」。そう堂々と言い切る今崎マネジャーに、デザイナー時代の控えめな雰囲気はない。

 「プラスチックトーキョー」時代は、東コレへの参加や「毎日ファッション大賞」効果で取引先は増えたものの、一人で全ての仕事を抱えてパンク状態になり、事業を継続するのが難しくなった。しかし現在は支え合えるチームがあり、今シーズンのルックは「プラスチックトーキョー」時代の撮影チームを再び集めた。今崎マネジャーに、ひさしぶりに思い切りクリエイションができて楽しいのではないかと聞くと「楽しいし、感慨深い。でも社長が応援してくれているとはいえ、会社員なのにこんなに好きにやっていいのだろうかとたまに思う……」と、急にかつての遠慮がちな小声に戻った。

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【動画】未来を担う日本の若手デザイナーたちに聞いた今とこれから

 「WWDJAPAN」8月29日号は次世代の日本人デザイナー特集だ。表紙を飾ったのは「M A S U」「ダイリク(DAIRIKU)」「ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)」「カナコ サカイ(KANAKO SAKAI)」「オマール アフリディ(OMAR AFRIDI)」という未来を担う日本の若手デザイナーたち。「WWDJAPAN」映像チームは、表紙撮影の現場でデザイナーたちに「ブランドを立ち上げたきっかけ」や「今後の展望」などの質問を投げかけた。

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 「WWDJAPAN」8月29日号は次世代の日本人デザイナー特集だ。表紙を飾ったのは「M A S U」「ダイリク(DAIRIKU)」「ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)」「カナコ サカイ(KANAKO SAKAI)」「オマール アフリディ(OMAR AFRIDI)」という未来を担う日本の若手デザイナーたち。「WWDJAPAN」映像チームは、表紙撮影の現場でデザイナーたちに「ブランドを立ち上げたきっかけ」や「今後の展望」などの質問を投げかけた。

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“ネットフリックスの息子”、俳優・ソン・ガンが「ボビイ ブラウン」がブランドアンバサダーに就任

 「ボビイ ブラウン(BOBBI BROWN)」は8月31日、アジア・パシフィック(APAC)ブランドアンバサダーに韓国の人気俳優、ソン・ガン(SongKang)を起用すると発表した。ソン・ガンは2017年、TVシリーズ「カノジョは嘘を愛しすぎてる」でデビュー。スクリーン上でのダイナミックな存在感と高い演技力により、過去数年の間に瞬く間に人気を博し、海外でも注目を浴びている。ネットフリックス作品に多く出演していることから“ネットフリックスの息子”との異名を持つことで知られる。スクリーン内外で輝きを放つソン・ガンは今後、「ボビイ ブラウン」が展開するキャンペーンなどでブランドの顔を務める。

 ソン・ガンは、「『ボビイ ブラウン』の“自らの自然な美しさを受け入れ、自信を称賛する”という価値観に大変共感しています。今回のパートナーシップは非常にエキサイティングな挑戦であり、僕の新しい姿をお見せできるのが待ちきれません。ぜひ楽しみにしていただきたいです」とコメント。

 ソン・ガンのブランドアンバサダー就任を記念し、ファンデーションなどの愛用アイテムを含む限定キットを 9月2日に発売する。百貨店限定で“インテンシブ セラム ファンデーション”(※または“インテンシブ スキン セラム クッション ファンデーション”をはじめとした4点の “インテンシブ セラム セット”(税込1万4520円〜1万4960円)を、公式オンラインショップ限定で“インテンシブ セラム ファンデーション”のミニサイズなど3点のキット“インテンシブ セラム ミニ スターター キット”(税込7150円)を販売する。

 また、ソン・ガンのスペシャルインタビューも公開された。

――「ボビイ ブラウン」のフィロソフィーは、ソン・ガンさん自身とどのような親和性があると思いますか?

ソン:僕を含めるほとんどの人たちは、さまざまなコミュニティで定義される美の定義に簡単に影響を受けやす く、自分自身の本来の美しさを忘れがちになると思うんです。「ボビイ ブラウン」のフィロソフィーは、ありのままの自分と、自身が持つ個性が本当の美しさなんだ、ということを思い出させてくれます。 この気持ちが自信につながり、自然と自己表現の源になってくれるんです。

――新しいキャンペーンでは、最高に輝いているソン・ガンさんを見せてくれます。ソン・ ガンさんの今までの人生で最も輝かしい瞬間は?そしてその理由は?

ソン:今、この瞬間。「ボビイ ブラウン」とです(笑)!それはさておき、初めてのドラマの撮影でスタジオに足を踏み入れた瞬間は一生忘れないと言わざるを得ません。あれは間違いなく、僕の最も輝かしい瞬間の一つであり、今の僕を形成してくれたと確信しています。

――ファンの皆さんにおすすめしたい「ボビイ ブラウン」のお気に入り製品は?

ソン:“インテンシブ セラム ファンデーション”と“エクストラ リップ ティント”です。僕は比較的ナチュラルなメイクを好むので、この2つの製品は僕自身の肌を自然に美しくしてくれるところが大好きです。 コンパクトな“エクストラ リップ ティントはいつも持ち歩いていますし、軽いテクスチャーで簡単にメイクが落とせる“スージング クレンジング オイル”も気に入りました。すっと肌に溶け込んでくれて、 撮影の後にいつも使用しています。

――誰も知らない隠れた才能などはありしますか?

ソン:才能ではないけれど、これはあまり知られていないんじゃないかな?僕は左利きなんです。なのでリップなどは左手で塗るんですよ。

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故ヴァージル・アブローを魅了した新鋭アーティストのベイビー・ブラッシュとは?

 ストリートアーティストのベイビー・ブラッシュ(BABY BRUSH)が、バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)の六本木店で行ったイベントに合わせて来日した。ベイビー・ブラッシュはスイス・チューリッヒで生まれで、現在はイタリアを拠点に活動。主にエアブラシを用いて作品を制作し、ネオンカラーを基調とした鮮やかな色彩とその細やかで大胆な筆使いで故ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)を魅了し、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH以下、オフ-ホワイト)」とのコラボレーションを実現している。

 来日したベイビー・ブラッシュに、アーティストになった経緯から「オフ-ホワイト」とのコラボの経緯までを語ってもらった。

ーー幼い頃からアートやデザインに興味があったのでしょうか?

ベイビー・ブラッシュ:4~5歳頃から街中の道路標識や看板が好きで、母親いわく周りの子どもたちが絵を描いている中で僕だけは文字を描いていたらしい(笑)。そして、1970年代にニューヨークでグラフィティ文化が発展したタイミングとほぼ同時期に、スイスはタイポグラフィ文化が根付いているからグラフィティが流行し(注:スイスはタイポグラフィやグラフィックデザインが最も発展している国の一つ)、今でも街中にグラフィティが数多くあるんだ。その影響もあって13歳頃からストリートスタイルに傾倒し、15歳でエアブラシを持っていたね。エアブラシは、日本でいうお祭りや遊園地みたいな場所で、塗装する人たちが使っているのを見て存在を知ったんだ。

 それから、芸術系の大学に進学してタイポグラフィを専攻した。両親がイタリア人だから、イタリアを拠点にヨーロッパを転々としつつ、アートや映画、音楽、コミックなどアメリカのカルチャーに大きな影響を受けていたので、現地で勉強もした。どれくらい好きかっていうと、スイスの音楽を一切聴いて育っていないくらいね(笑)。スイスは小さい国だから(注:九州地方より小さい)、ディープなカルチャーを感じることは難しかったんだ。

ーー大学に進学した理由は、職に就くことを考えていたからですか?それとも、あくまでアーティストを目指すための通過点?

ベイビー・ブラッシュ:両親の顔を立てるために学校を卒業しないといけなかったのもあるけど、一番はアーティストになるための経験だね。誰かの下で働くために学ぶ、という考えはなかったよ。

ーーアーティスト活動を始めたのは具体的にいつ頃ですか?

ベイビー・ブラッシュ:今の時代、インターネットやSNSを通じて自分の作品を世に発信するアーティストが多いと思うけど、その多くが“未成熟な状態”で発表しているように感じる。それが僕は嫌で、2014年からプロフェッショナルレベルのクオリティになるまでじっくりと準備し、2019年にようやく自信を持って作品を発表できるようになったんだ。

ーーそれでは、アーティスト名の由来を教えてください。

ベイビー・ブラッシュ:僕の顔が幼かったからずっとニックネームが“ベイビーフェイス”で、インスタグラムのアカウント名の一部も“babyface”にしてたんだ。作品を描くときに“エアブラシ(airbrush)”を使っていたから、シンプルに“baby”と“brush”を組み合わせただけだよ。

ーー今のようなどこかネオンを彷ふつとさせる作風が確立したタイミングは?

ベイビー・ブラッシュ:エアブラシで作品を描いた洋服を友達によくプレゼントしていたんだけど、いろいろな人から「オリジナリティが高いね」って言われて、その時に作風が確立していることに気付いたんだ。だから試行錯誤した末にというよりも、いつの間にかだね。

ーー洋服にエアブラシで作品を落とし込むようになったきっかけは?“自分の作品を着たい”という衝動があったんでしょうか?

ベイビー・ブラッシュ:20歳頃から洋服をキャンパスにエアブラシで作品を描いていたんだけど、自分の作品が動いているのを見てみたかったんだ。それに、人々がギャラリーに足を運ばなくても街中で僕の作品を見ることができるからね。

ーー「オフ-ホワイト」とのコラボは、アーティスト人生を語るうえでのハイライトの1つだと思いますが、この経緯は?

ベイビー・ブラッシュ:まず、いろいろなブランドからコラボの依頼が届いていたけど、僕がアーティスト活動をスタートするまでに時間を要したように、一つ一つの関係性を大事にしたかった。それに、最初にコラボするブランドだけは本当に納得した相手が良かったから、全て断っていたんだ。でもある日、ヴァージルから突然DMが届いたんだ。というのも、昔からの親友のブロディンスキ(Brodinski、フレンチ・エレクトロ・シーンを代表するプロデューサー/DJ)がヴァージルと知り合いでね。僕はブロディンスキの作品のアートワークや洋服のカスタムを担当していたから、ヴァージルがインスタグラム経由で僕の作品を見てくれたみたい。パンデミックのタイミングだったから全てをリモートで進めて、発売するタイミングで初めて会う予定だったけど、亡くなってしまった。ヴァージルはグラフィティに造詣が深かったから、親和性を感じてくれたんだろうね。

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AMIAYAと学ぶサステナビリティvol.5 衣と食をつなげ、ゴミを出さない循環モデルとは

 私たちAMIAYAがリアルな目線でサステナビリティを学ぶ本連載。自由にファッションを表現する楽しさや、ファッションが持つポジティブなエネルギーを届けたいという思いは、今も昔も変わりません。ファッション業界の負の側面が問題になっている近年、私たちは大好きなファッションを通して責任ある発信をしていきたい。モノづくりに関わる人間としてこれからの未来のためにできるより良い選択をしていきます。

 今回は、“衣”から“食”をつなぎ、ゴミを出さない新しい循環モデルを実践している「アルーフ ホーム(ALOOF HOME)」に伺いました。東京・南青山に店舗を構える同ブランドは、和紙やコットン、シルクなどの天然繊維を用いた衣類を中心に、カーテンや寝具などの衣食住に関わるプロダクトを販売しています。合成繊維を使わずに、天然繊維を使用しているのには理由があります。それは、回収した古着を京都・美山の自社農場で肥料に活用して野菜を育てているからです。南青山の店舗に併設されたカフェスペースでは、それらの野菜を使ったフードやカフェメニューを楽しめます。

 ファッション業界が抱える問題のひとつでもある大量の在庫廃棄から生じる汚染水や温室効果ガスは、環境問題を語る上で避けては通れません。「アルーフ ホーム」の循環モデルは、これからのファッションの未来を担う新しいプラットフォームになっていくはずです。園部皓志代表は、「ゴミを出さない」とシンプルだけど、やるべきことをきちんと見据えていました。ファッションの未来は明るい!と希望が持てる取材でした。

「かっこいい」より「おいしい」で理解するサステナビリティ

AMI:衣から食をつなげるというコンセプトを思いついたきっかけは?

園部皓志代表(以下、園部):すごく簡単に言うと、人には「かっこいい」より「おいしい」の方が伝わりやすいんです。かっこいい服を着てサステナビリティを考えるよりも、食を通じた方が理解が早い。僕は以前ファストファッションブランドに勤めていましたが、日本の消費者は世界と比べるとサステナビリティへの意識がまだまだ低い。「サステナブルだから」よりも「安くて高品質」だからの方が購買につながります。そんな消費者をどう教育すべきかを2年間かけて考え、服を肥料にして土壌を活性化して、その土壌で育てた素材を活用した食を販売するモデルに行き着きました。

AYA:その壮大なスキームをたった2年で形にできたのってすごいですね。

園部:僕はトレンド予報士の資格を取得していて、世の中の兆候を捉え仮説を組み立てるのが得意なんです。2017年ころには、20年までには環境や健康系の市場が活性化することを見据えていました。でもサステナブルな服を購入してもらう方法を考えるのはすごく難しくて。ファッション業界にはさまざまな問題がありますが、僕はまず使った後の責任に焦点を当て「ゴミを出さないこと」を軸にしました。

AMI:天然繊維が畑の肥料になるんですね。

園部:もともと麻などは肥料として活用されていたので、天然繊維も肥料になるのではないかと思い、検証したら微生物を活性化させることができました。最初は日本を代表する繊維の和紙で商品開発を進め、今はコットンやシルクも使用しています。

AYA:古着の回収ボックスは街でよく見かけますが、その服がその後どこに行っているかは正直分からない。でも「アルーフ ホーム」は、自分の着た服が肥料になって野菜になって戻ってくるので、意識が変わるきっかけになりそうですね。こちらのお店では食事を楽しめるだけでなく、価値観を共有するコミュニティーの一員になれるのもうれしいです。

園部:お客さまの意識を変化させるためには、五感で感じられる場所が必須だと思いました。サステナブルブランドである以上、伝えるべきメッセージがたくさんあるので、この空間を発信拠点にしていきます。

ファッション好きの“矛盾”を解消する購入方法

AMI:商品の購入方法には、“Long Buy(定額購入)”と“Time Buy(期間型購入180日)”の2種類があります。サステナビリティの観点から考えると1着を長く大切に着ることが大事だけど、ファッション好きのいろんな服を楽しみたい気持ちと矛盾してしまうんです。このシステムは、どちらの欲求も満たしてくれるので良いですね。

園部:僕の軸は、ゴミを出さないことです。周りからも「長く着た方がサステナブルなんじゃないですか」と指摘を受けたことがありますが、その根拠はないですよね。

AMI:このスキームを実践する上で難しかったことは?

園部:本当にいろいろ難しかったですよ(笑)。最初は土に戻るスピードが速い和紙に着目しましたが、僕たちの最終目標は服を戻した土壌で野菜を作ることです。それには微生物をどれだけ活性化できるかが重要でした。周りには時間ではなく質の大切さを理解してもらうことに苦労しました。

AMI:京都の自社農園もいちから作ったんですか?

園部:はい、知り合いの土地の一部を購入しました。このスキームを実現するには、自分が見える範囲でスピード感を持ってトライ&エラーを繰り返すことが鍵になります。デザインするときに、自由がないと嫌じゃないですか。それと一緒です。

AYA:すごい。その熱量はどこから来るんですか?

園部:やっぱりファッションが好きなので。服には人の気持ちを変える力があります。今は、そのファッションの本質が忘れられている気がします。僕はスーパーファッションデザイナーではないので、サステナブルの分野で「ゴミを出さない」ビジネスモデルを構築して資本を集め、人の意識を変えることに挑戦したい。

AMI:私たちもモノづくりに携わる人間としていろんな矛盾を感じています。でも、その中でどう責任を持って生み出していくかが重要だと思います。服を販売した後の仕組みを構築するのも責任を持つ1つの方法で、ファッションに対しての夢が広がるブランドだなと思いました。

園部:将来的には、皆さんが生み出したものは私が全部回収して、ゴミを出さない国作りを目指します。

■Aloof hom
場所:東京都港区南青山3-2-9
電話:03-6812-9401
営業時間:11:00〜19:00
定休日:月曜日・金曜日

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担当21年目のファストリ社員に聞く社会貢献の現場と現実 「被災地でユニクロはインフラなんだと震えた」

 サステナビリティは地球環境問題だけでなく、「社会」もまた重要な要素である。企業は世界の社会課題とどう向き合い、貢献するかが問われる時代だ。とは言え「社会」という漠然として言葉が何を指すのか理解は難しい。そこで、ファーストリテイリングで社会貢献分野に長年携わるシェルバ英子コーポレート広報部部長に、これまでの歩みと同社が社会貢献を行う意味について聞いた。世界進出をしたことで見えた「社会」とは?そして社会貢献とビジネスの関係とは?

WWDJAPAN(以下、WWD):ファーストリテイリングは、地域社会やNGO・NPOと連携して各国や地域における社会的課題を解決するための支援を行っている。シェルバさん自身のこれまでの歩み、今の仕事を選び続けている理由は?

シェルバ英子ファーストリテイリング コーポレート広報部部長(以下、シェルバ):自然の流れであり、あまりたいそうなことは言えないが、入社は2001年。それ以前は「ギャップ(GAP)」の当時の原宿旗艦店でアシスタント・ストアマネジャーとして働いていた。あるとき「ギャップ」の2900円のフリースが売れなくなり、競合調査をしたら原宿にオープンした「ユニクロ(UNIQLO)」では1900円で売っていた。何度か視察をする中で、“この会社、勢いがあって面白いな”と思ったのが出会いになる。ちょうど人材募集をしていたので入社をし、最初は社員研修のプランニングなどの担当部署にいたが、社長直轄の社会貢献室を立ち上げるタイミングで“新しいこと好きそうだから”と声がかかった。

 柳井(正ファーストリテイリング会長兼社長)は当時から「世の中、もうけっぱなしではダメ。社会に還元する企業でなきゃいけない」と明確に言っており強く印象に残っている。人事や総務、広報なども細分化されていない、まだベンチャー気質があった頃のこと。「ウチにしかできないことをやろう」と思った。地域と結びついて、従業員が参加できること、服を通じてできる取り組みを探そうとした。この軸は今も変わらない。

WWD:社会貢献室は2004年にCSR部となる。

シェルバ:会社がどんどん大きくなっていった時期で、同時に一部のグローバルSPA企業が“スエットショップ”と批判されるなど、アパレルの労働環境が問題視されていた頃でもある。グローバルを意識する中、労働集約型の産業の課題に着手せねばと、CSR部では04年の設立当時から労働環境のモニタリングを始めている。日本企業の中でも早い方だったと思う。2017年からはサステナビリティ部が設立され、自然環境の取り組みが進んでいるが、私は引き続き社会貢献活動を担当している。

WWD:今の所属が広報部である理由は?

シェルバ:「情報発信は取り組みと同じくらい大切」という考えから、2年前にサステナビリティ部のマーケティングチームを広報部に移管。これまでは定期刊行物を作るような活動しかしてこなかったものを、「ユニクロ」のブランディングの根幹のひとつを担う役割としてサステナビリティの位置づけが変わってきた。

WWD:「ユニクロ」の根幹と言えば、地域、小売店、服だと思うが、社会貢献活動もそれらがベースにあるのか。

シェルバ:社長の柳井はよく「平和な社会でないとビジネスが成り立たない。だから地域社会が持続可能な状況を作ることに目を向けるべきだ」と言っているが、その考え方がベースにある。

従業員間の合意形成を測ることは簡単ではない

WWD:シェルバさんのキャリアはファーストリテイリングの変遷と重なりとてもユニークだ。モチベーションはどこにあるのか?

シェルバ:さかのぼると、“人”となる。最初に担当した仕事が瀬戸内オリーブ基金だった。瀬戸内オリーブ基金は、当時日本最大と言われた有害産業廃棄物の不法投棄事件「豊島(てしま)事件」をきっかけに建築家の安藤忠雄氏と豊島事件弁護団長の中坊公平氏が呼びかけ設立されたNPO法人。当時は知名度がなく、2000年に調整が成立していたものの跡地や緑化の問題は深刻で、企業が入り込むにはディープな世界だったが、社長は現場を視察してこの状況を変えることが市民社会として必要だと思ったという。事業との関連性はなかったが、全国展開している店舗でできること、として募金と寄付の活動を始めた。

 募金を寄付するだけではなく、従業員がボランティアに参加し、それがどのように使われているかを知る仕組みが必要なんじゃないか?となり、2003年に仕組みを作ったものの、従業員からの関心が低く。どうしたら関心を持ってくれるかな、と考えることは自分のモチベーションになった。

WWD:日々売り上げに追われている一人一人の意識を変える、まさにサステナビリティの肝で難所だ。ほかにこれまでの仕事で印象的だったものは?

シェルバ:難民支援はずっと関わらせていただいている。もうひとつ、06年に服の店頭回収を開始した。そしてこれまた従業員がその気にならないと進まないプロジェクトだ。お客様の服を店でお預かりして役立てる取り組みだから、丁寧な対応が大切。同時に全従業員が納得する取り組みでないと意味がない。当初はアンケートをとったところ半数くらいの従業員しかやりたがらなかった。

WWD:店頭としては成績にもつながる“売る”ことに集中したいと思うのが自然だ。

シェルバ:そこでまずは北海道でトライアルを行い、「毎月これくらい回収があった」といった情報や具体的なオペレーション方法をシェアすることで、「それなら店舗のオペレーションの中でやっていける」といった納得感を得られるようにした。従業員が自分ごと化し、合意形成を測ることはとても大切。簡単ではない。

WWD:衣料の寄贈は2021年8月末までの累計で79カ国、4619万点と膨大だ。難民支援も服の回収と同じく2006年スタートである。つながりはあるのか?

シェルバ:「回収した服をどういう使い方をするのか、誰が着るのか。中古市場に流すことが多いようだが、うちは最後までどうなったのか追いたい」そんな声が社員からあがるなか、服は服として活用したいという思いもあり、実際に服が必要なところはどこなのかを探して、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に引き継ぐことに決めた。

 そこで初めて地球上の難民の課題を知った。UNHCRの予算は医療などが優先で衣料にはまわりづらい。ならば「これは私たちがやる意味ある」と思った。店頭回収から支援までの一連のスキームを作ったことは意義ある経験となった。社内でよく使われる好きな言葉が「現場、現実、現物」。現場に行って現実を見て、課題を知って何ができるかを見つけるという意味で、店舗運営や商売を語るときに使われるが、サステナビリティも同じだと思う。現場で課題を発見して課題を解決する。

WWD:2025年度までに、100億円規模で社会貢献活動に投資することを発表している。その中身はあくまで「服屋として何ができるのか」という視点だと。

シェルバ:アパレル企業としては筋が通っていると思う。それとやはり、平和な社会なくしてビジネスは成り立たない。世の中の不均衡といった問題の解決策を服を通じて探っている。

記憶に残る東日本大震災でのできごと

WWD:多くの人と接する中で記憶に残ることは?

シェルバ:東日本大震災のとき。3月11日の金曜日から24時間以内に「ユニクロ」への支援要請がカスタマーセンターや店舗スタッフに届き、その多くが「早く!」と怒りにも近いテンションだった。私たちはもう社会インフラなっているのだ、頼られているのだと震え上がった。社長個人が10億円を出すことを決めて、現場も週末中に声を集めて数百万枚レベルの衣料支援が必要であると決定。以降、半年間は木曜日の夜から月曜日の朝まで毎週服を届けに行ったが、今でもあの時のことを思い出すと、社会からの期待に背筋が伸びる。

WWD:まさに「現場、現実、現物」だ。

シェルバ:当初は自治体も被災者であり機能をしていなかった。そこで仙台で倉庫を借りて、そこに備蓄されていた日用品もまとめて、借りた車で被災地へワーっと届ける。そういったことを繰り返ししていた。あれから10年が経ち、ヨーロッパのスタッフがウクライナで同じことをしている。ロシアによるウクライナ侵攻が始まって5日目くらいには、ヨーロッパにある衣料をポーランドなどに届けるなど同じスキームで支援を行っていて、そういう教育があったわけではないけど同じことを実践していることは印象的だ。

WWD:地球上のさまざまな課題と接する中、ファッションにはどんな力があると思うか?

シェルバ:「ユニクロ」にはライフウエアというコンセプトがあり、あらゆる人のための普段着を作っている。私たちは「救援物資」という言葉を使ってしまうが、もらった人たちに取っては1枚の服。人間としての尊厳を表すものが服。受け取った服を「あなたにはこれが似合う」と交換するなど、自己表現にもなっている。有事の際には、もちろん生命を維持する水や食べ物の方が必要だが、着替えることでリフレッシュしたり気持ちを高揚させたりするパワーが服にはあると、現場を見てきて強く思う。

 「UT」の平和を願うチャリティーTシャツプロジェクト「ピース・フォー・オール(PEACE FOR ALL)」もそうだが、お客さまとサステナビリティのタッチポイントのような存在、社会課題に結びつく商品の伝え方は小売業ならではと思う。

グローバルビジネスで企業姿勢を表すCSRを推進は不可欠

WWD:「支援」は企業にとってどんなメリットがあるのか?もしくは「支援」はメリットを求めることではないのか?

シェルバ:海外進出を進めた頃、社長の柳井は各国の要人と会う際に「あなたの会社はうちの国にどう貢献しますか?」と問われることが多く、「良い服を手ごろな価格で提供します」というだけでは話にならないと感じたと聞いている。それもありグローバルビジネスで企業姿勢を表す際にCSRを推進することが不可欠であるという考えから05年に社会貢献室をCSR部に改組するとともに、CSR委員会を立ち上げた。「支援」、「難民問題」という表現は上から目線に聞こえるかもしれないが、やはりそこは地球市民の責務であり、社会課題を解決することが企業の役割のひとつだと思う。

WWD:世界でさまざまな立場の人と接する仕事だが、コミュニケーションをする際に意識していることは?

シェルバ:話す以上に、聞く方が大事だとは思う。相手が国連の人でも難民の人でも従業員でもそう。何を考え、何を必要としているかを聞く。そして全部聞いた上で「これはできるけど、これはできない」とロジカルに伝える。人間だから、つい当たり障りのない返答をしそうになるが、中途半端な期待を残さないことも大事で相手がどんな立場でもそこはぶらさない。

WWD:依頼を受けることは多いだろう。

シェルバ:難民キャンプで「しかるべき人に届けてほしい」と嘆願書を渡されたことがあったが、私たちにはできないことだからお断りをした。本当に悲しいこと。難民の方たちは自分の意志とは関係なく難民という立場に置かれている。「自分にはパスポートがない、帰る家がない」と聞いて、何も答えられなかったこともある。

 東日本大震災のときの経験も胸をえぐられた。津波の被害があったエリアとなかったエリアの境に避難所があったため、被災していない人も服を持っていったため、大ごとに。間に入ってくれる機関もなかったから、自分たちで即座に優先順位を決めて「波をかぶった人から配ります」と伝えたのだが、公平の中にも優先順位が必要なわけで、学びが大きかった。

WWD:みんなに、は難しい。

シェルバ:平等でないから、全員に渡せないからやらない、ではなく、必要な人にはやはり渡したいのが私たちの思いだ。

WWD:これから関わりたいことは?

シェルバ:リサイクル素材などの採用、責任ある調達など商品に紐づいた情報発信をより積極的に実施していくことで、透明性の向上やお客様によりわかりやすく伝えることを心掛けていきたい。その際に、自社がやっていることを一方的に伝えるのではなく、お客様にも参加いただける機会を増やしながら、活動の輪を広げていきたいと思う。 ユニクロは現在、25の国と地域で店舗を展開しており、商品、店舗、従業員がサステナビリティのタッチポイントとなって、サステナビリティがお客様にとって身近なものとなるよう取り組んでいきたい。

WWD:多彩な情報に触れる仕事だが、日々の情報収集方法は?

シェルバ:歴史が好きで、司馬遼太郎が好き。組織論や普遍的な人間の立ち振る舞い、愚かさは彼が先生だ。時事ニュースは流しっぱなし。ソーシャルはあまり見ない。一喜一憂したくないから。


【WWDJAPAN Educations】

【第2期】サステナビリティ・ディレクター養成講座
2022年9月30日(金)開講

 昨年初めて開催し好評を得た「サステナビリティ・ディレクター養成講座」を今年も開講。サステナビリティはこれからの企業経営の支柱や根底となるものであり、実践が急がれる事業の課題である。この課題についてのビジョンを描くリーダーの育成を目的に、必要な思考力・牽引力を身につける全7回のワークショップとなる。前半は各回テーマに沿った第一線で活躍する講師を迎え、講義後にはディスカッションやワークショップを通して課題を明確化し、実践に向けたアクションプランに繋げていく。

 また、受講者だけが参加できるオンライン・コミュニティーでは、「WWDJAPAN」が取り上げるサステナビリティに関する最新ニュースや知っておくべき注目記事をチェックでき、更に講義内容をより深く理解するための情報を「WWDJAPAN」編集部が届ける、まさに“サステナ漬け”の3カ月となる。
講義のみが受講できるオンラインコースも同時に受け付けています。


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