「ユニクロ」はドイツでどう受け止められている? ドイツ事業COOに聞く、売れ筋やリペアサービス、ローカルとの取り組み

 2014年4月、ドイツ・ベルリンの通称クーダム(西べルリンを代表する目抜き通り、クーアフュルステンダムを指す)エリアに、ドイツ初となる「ユニクロ(UNIQLO)」の店舗「ユニクロ タウエンツィーン店」がオープンした。広大な売り場面積(約2640平方メートル)と、階段に設置されたLED掲示板に世界の都市名が赤く光って流れる演出に圧倒されたことを覚えている。それから8年、ベルリン市内に6店舗、ハンブルク、ケルン、デュッセルドルフ、シュトゥットガルトとドイツ国内で10店舗展開を果たし、その勢いは今も続いている。ドイツで「ユニクロ」がここまで支持されるようになった理由は何なのだろうか。ユニクロドイツの桑原大和COO(最高執行責任者)を取材し、マーケット拡大の背景、エコ先進国といわれるドイツでのサステナビリティへの取り組み、今後の展望などを語ってもらった。

――ドイツにおける「ユニクロ」の売れ筋の傾向を教えてください。

桑原大和ユニクロドイツCOO(以下、桑原):グローバルで品ぞろえは同じなので、売れるものはどこの国でも売れています。ただ、その中でもドイツでは、商品のベネフィットを最重要視して購入されるお客さまが多い傾向があります。そのため、必然的に機能性の高いアイテムや高品質なものが売れます。分かりやすい事例をあげると、夏は“エアリズム”、冬は“ヒートテック”、ダウンジャケットです。特に、“ブロックテック”(ユニクロ独自の透湿・防風・はっ水・防風機能を備えた素材) のアウターは、軽量で、雨風を防ぐ機能性を兼ね備えているため非常に好評で、季節を問わず代表商品として認知されています。

 接客をしながら最も感じるのは、ドイツのお客さまはとにかくたくさん質問をするという点です。アイテム自体の価値や自分のライフスタイルにフィットするかなどを吟味し、納得するとファンになってくれます。また、見た目のデザイン性だけでなく、着たときに快適であるか、メンテナンスが楽かなども気にする人が多いです。“エアリズム”はインナーから始まり、現在はTシャツやレギンスなど幅広く展開していますが、汗をかいてもすぐに乾くといった機能性からスポーツやワークアウトに適したアイテムとして人気で、他のヨーロッパよりも売れています。

――売れ筋をもとにしたローカルMDの取り組みをしていますか。

桑原:基本的に、ドイツだけ、ヨーロッパだけといった商品展開は行っていません。「Made for All」という「ユニクロ」のコンセプトのもと、どんな人にでも着てもらえるモノ作りを目指しています。

真夏でもウールセーターが売れるドイツ

――日本とのニーズに違いはありますか。5月にローンチした「マルニ(MARNI)」との協業をはじめとする、デザイナーズブランドとのコラボレーションについても教えてください。

桑原:何年も事業を続けている中で、ニーズに違いがないことは、私自身も驚いています。日本で人気のアイテムはドイツでも同じように人気が高く、グローバルで見ても同様です。ただ、その中でもドイツでは、アウターとニットのニーズが最も高いです。夏でも寒い時にはダウンを着ますし、季節に関係なく、そのときに必要なアイテムを着ることがドイツ人にとっては普通のことです。日本やアジア諸国では、メリノウールのニットは冬の商品というイメージが定着していますが、ドイツでは年中通して需要があり、気温が40℃近くなった夏でも売れるため、トップセラーに入るほどです。洗濯ができるのでTシャツ感覚で着る人も多く、デザイン性から仕事にも着ていけるなどのベネフィットがあることもニーズの高さに繋がっています。

 コラボレーション商品に関しても基本的に変わりません。「ユニクロ アンド マルニ(UNIQLO AND MARNI)」に関しては、やはり本国のイタリアではかなり反響がありましたが、イタリアだけに限らず、他のヨーロッパ諸国や日本でも同じ反響があり、ニーズも同様です。「LifeWear」や「Made for All」といった弊社のコンセプトに共感してもらえるデザイナーや、同じような志を持っているブランドとタッグを組み、軸を崩さないことで世界共通のニーズを保てるのだと思います。

――真夏でもニットが売れるというのはドイツやヨーロッパならではですが、年中通して購入することが可能なのでしょうか。

桑原:可能です。季節に関係なく、そのときに必要なアイテムが購入できるように品ぞろえを考えています。「ユニクロ」は、そもそも毎シーズンデザインを変えて、そのシーズンが終わったら着なくなると言ったモノ作りはしていません。タイムレスであり、シーズンレスであることが基本理念です。

――ドイツの顧客の声やニーズは日本のヘッドクオーターにどのように伝えているのでしょうか。企画への反映などはありますか。

桑原:毎日毎週お客さまや売り場からの声、売れ筋、数字などについてグローバルで報告し合っています。ドイツで売れるからと言って直接企画に反映されるということはありませんが、アイデアは多数出ます。アウターの需要が高い欧米からのアイデアで、ロング丈のシームレスダウンが誕生しました。それまでショート丈が主流でしたが、やはり寒さが厳しい地域ではお尻の下まで隠れるロング丈のダウンコートが好まれます。“ウルトラライトダウン”のジャケットもインナーダウンとして活用されるのはヨーロッパの寒い地域ならではですよね。このように、アウターの深掘りやニーズの対応を行い、企画に反映させていますが、結果的にヨーロッパだけでなく他国でも売れるといった実績を残せています。

店頭で地元のイラストレーターと協業

――ドイツ、もしくは、ベルリン店舗のそれぞれの特徴を教えてください。単なるチェーン運営ではなく、各店舗それぞれで違った打ち出しをし、各店の個性を出していますよね。

桑原:ドイツ国内であっても都市によって街の雰囲気が全然違いますし、客層も需要も変わってきます。そのため地域に合った販売戦略を打ち出すことが重要になってきます。ベルリンの旗艦店(タウエンツィーン店)では、ローカルのアーティストとコラボレーションを行い、文化や考え方が分かるように伝えています。現在は、ベルリン拠点のイラストレーターLaura Breilingを起用し、階段の踊り場とフィッティングルームに彼女のイラストを展示しています。さまざまな年代、人種、スタイルを表現した彼女の作品は、「Made for All」の考えにもとてもよくフィットしています。他にも、「ユニクロ」は日本から来たブランドであるということを分かりやすく伝えるために浮世絵を用いたディスプレーを設置しています。

 ベルリンの壁の跡地に近いイーストサイドモール店では、フィッティングルームにベルリンの壁をイメージしたグラフィックアートを描いています。東ベルリンの中心地であり、若い客層が多いことも影響しています。ハッケシャマルクト店は規模こそ小さいですが、感度の高いお客さまが多く、ファッション性の高いアイテムの動きは早いです。そのため新作を早めに導入するなど、充実した品ぞろえに力を入れています。

――ベルリンではすでに6店舗展開しており、ドイツ全土において今後も広がりを見せていくと予想されますが、ここまで認知された理由は何だと思いますか。

桑原:ドイツ国内では現在10店運営していますが、ドイツ人の物の見方やベネフィットを重視する点、合理的な部分などが、ユニクロのやりたいことと合致していることが理由の一つだと思います。自分の持っている予算をどこで何に使うかを慎重に選ぶ国民性です。もちろん違う面もたくさんありますが、日本人と似ている部分も多数あると感じています。また、大きく宣伝すれば売れるということでは決してありませんし、店舗を増やせば良いということでもありません。接客時には、単に英語をドイツ語に直してマニュアル的に説明するのではなく、より丁寧に分かりやすく、求められているベネフィットをうまく伝える努力をしています。

ベルリンから広がったリペア&アップサイクリングサービス

――サステナビリティの一環として、タウエンツィーン店では独自のアップサイクリングサービスを実施しています。

桑原:リペアとアップサイクリングサービスはベルリン発信となりますが、もともとは不良箇所のある商品を直して、ホームレスの方たちに提供する活動をNGO団体とともに行っていたことがきっかけとなっています。その活動を実際に見てもらうためにタウエンツィーン店の一角に、ミシンや作業台を設置したリペアサービスのコーナーを設けたのが最初です。お客さまが着ていた衣類を店舗に持参し、お客さまご自身がミシンや作業台を使って無料で修理ができるサービスになりますが、この活動を通して、ドイツではいかに物を大事する人が多いかということに気づかされました。例えば、お母さんが着ていたお気に入りの服をサイズを直して娘さんに譲りたいという方がいました。「ユニクロ」は生地の良さや長持ちする縫製に誇りを持っています。そのため、破れたりサイズが合わなくなったりしても、少し手を加えることで捨てることなく、また着られるようになるのです。

 現在は、ダウンの穴開き、ジーンズの穴開き、シャツのボタンつけ、ニットのほころびのお直しがメリペアのインとなっていますが、臨機応変に対応しています。さらに、週末に限り、通常のサービスに加えてNGO団体とのコラボでワークショップを開催しています。店頭に陳列している中で汚れてしまい、販売できなくなった商品はバッグなどにリメークし、リセールすることも行っています。それが廃棄処分を減らすことにもつながっています。リペア&アップサイクリングサービスは今年の6月に本格スタートしたばかりなので、まだ認知は浅いですが、確実に手応えを感じています。リペア&アップサイクリングは、9月にオープンした英ロンドン・リージェントストリートの旗艦店にも広がっています。

――ユニクロは企業として難民支援活動にも長らく取り組んでいます。日本に比べ、難民問題がより身近と言ってもいいドイツでは、どのような活動をしていますか。

桑原:ドイツは国をあげて難民問題への取り組みに積極的です。ユニクロも同様の考えを持っており、重要な社会問題の一つだと捉えています。8年前のドイツ1号店オープン当初から難民の方をスタッフとして採用するシステムを行っていますが、難民としてドイツへやって来て、ビザを取得し、旗艦店で働きながら現在はスーパーバイザーにまで昇格したスタッフもいます。また、ベルリンは他都市に比べてパーソナルな部分を大事にする文化が強いですし、難民だけでなく、LGBTQ+に対する考え方もベルリンは進んでいます。そういった多様性にフィットした販促を行っていくことが大切だと考えています。

――ドイツでの今後の展望を教えてください。

桑原:売り上げを増やすことだけに専念するのではなく、お客様に尊敬される企業になることが大切だと思っています。なぜなら、それが結果的にビジネスが長く続く秘けつだからです。日本からやって来たブランドとして、商品が良いことは前提にありつつも、どんな背景で作られているのか、ユニクロとは一体どんな企業なのか、そういったことをもっと伝えていきたいです。特にヨーロッパでは、サステナビリティ、気候変動、人種、障がい者、貧困などの問題に対する社会活動に積極的に取り組むことがとても大切です。個店レベルでさまざまな活動や努力をしていますが、まだまだ足りないと感じています。商品だけでなく、店舗やソーシャルメディアから発信してお客さまに理解してもらう。そこでファンになってもらい、こういう企業が作った服だから大切に着たいと思ってもらえることを目指していきます。

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「ユニクロ」はドイツでどう受け止められている? ドイツ事業COOに聞く、売れ筋やリペアサービス、ローカルとの取り組み

 2014年4月、ドイツ・ベルリンの通称クーダム(西べルリンを代表する目抜き通り、クーアフュルステンダムを指す)エリアに、ドイツ初となる「ユニクロ(UNIQLO)」の店舗「ユニクロ タウエンツィーン店」がオープンした。広大な売り場面積(約2640平方メートル)と、階段に設置されたLED掲示板に世界の都市名が赤く光って流れる演出に圧倒されたことを覚えている。それから8年、ベルリン市内に6店舗、ハンブルク、ケルン、デュッセルドルフ、シュトゥットガルトとドイツ国内で10店舗展開を果たし、その勢いは今も続いている。ドイツで「ユニクロ」がここまで支持されるようになった理由は何なのだろうか。ユニクロドイツの桑原大和COO(最高執行責任者)を取材し、マーケット拡大の背景、エコ先進国といわれるドイツでのサステナビリティへの取り組み、今後の展望などを語ってもらった。

――ドイツにおける「ユニクロ」の売れ筋の傾向を教えてください。

桑原大和ユニクロドイツCOO(以下、桑原):グローバルで品ぞろえは同じなので、売れるものはどこの国でも売れています。ただ、その中でもドイツでは、商品のベネフィットを最重要視して購入されるお客さまが多い傾向があります。そのため、必然的に機能性の高いアイテムや高品質なものが売れます。分かりやすい事例をあげると、夏は“エアリズム”、冬は“ヒートテック”、ダウンジャケットです。特に、“ブロックテック”(ユニクロ独自の透湿・防風・はっ水・防風機能を備えた素材) のアウターは、軽量で、雨風を防ぐ機能性を兼ね備えているため非常に好評で、季節を問わず代表商品として認知されています。

 接客をしながら最も感じるのは、ドイツのお客さまはとにかくたくさん質問をするという点です。アイテム自体の価値や自分のライフスタイルにフィットするかなどを吟味し、納得するとファンになってくれます。また、見た目のデザイン性だけでなく、着たときに快適であるか、メンテナンスが楽かなども気にする人が多いです。“エアリズム”はインナーから始まり、現在はTシャツやレギンスなど幅広く展開していますが、汗をかいてもすぐに乾くといった機能性からスポーツやワークアウトに適したアイテムとして人気で、他のヨーロッパよりも売れています。

――売れ筋をもとにしたローカルMDの取り組みをしていますか。

桑原:基本的に、ドイツだけ、ヨーロッパだけといった商品展開は行っていません。「Made for All」という「ユニクロ」のコンセプトのもと、どんな人にでも着てもらえるモノ作りを目指しています。

真夏でもウールセーターが売れるドイツ

――日本とのニーズに違いはありますか。5月にローンチした「マルニ(MARNI)」との協業をはじめとする、デザイナーズブランドとのコラボレーションについても教えてください。

桑原:何年も事業を続けている中で、ニーズに違いがないことは、私自身も驚いています。日本で人気のアイテムはドイツでも同じように人気が高く、グローバルで見ても同様です。ただ、その中でもドイツでは、アウターとニットのニーズが最も高いです。夏でも寒い時にはダウンを着ますし、季節に関係なく、そのときに必要なアイテムを着ることがドイツ人にとっては普通のことです。日本やアジア諸国では、メリノウールのニットは冬の商品というイメージが定着していますが、ドイツでは年中通して需要があり、気温が40℃近くなった夏でも売れるため、トップセラーに入るほどです。洗濯ができるのでTシャツ感覚で着る人も多く、デザイン性から仕事にも着ていけるなどのベネフィットがあることもニーズの高さに繋がっています。

 コラボレーション商品に関しても基本的に変わりません。「ユニクロ アンド マルニ(UNIQLO AND MARNI)」に関しては、やはり本国のイタリアではかなり反響がありましたが、イタリアだけに限らず、他のヨーロッパ諸国や日本でも同じ反響があり、ニーズも同様です。「LifeWear」や「Made for All」といった弊社のコンセプトに共感してもらえるデザイナーや、同じような志を持っているブランドとタッグを組み、軸を崩さないことで世界共通のニーズを保てるのだと思います。

――真夏でもニットが売れるというのはドイツやヨーロッパならではですが、年中通して購入することが可能なのでしょうか。

桑原:可能です。季節に関係なく、そのときに必要なアイテムが購入できるように品ぞろえを考えています。「ユニクロ」は、そもそも毎シーズンデザインを変えて、そのシーズンが終わったら着なくなると言ったモノ作りはしていません。タイムレスであり、シーズンレスであることが基本理念です。

――ドイツの顧客の声やニーズは日本のヘッドクオーターにどのように伝えているのでしょうか。企画への反映などはありますか。

桑原:毎日毎週お客さまや売り場からの声、売れ筋、数字などについてグローバルで報告し合っています。ドイツで売れるからと言って直接企画に反映されるということはありませんが、アイデアは多数出ます。アウターの需要が高い欧米からのアイデアで、ロング丈のシームレスダウンが誕生しました。それまでショート丈が主流でしたが、やはり寒さが厳しい地域ではお尻の下まで隠れるロング丈のダウンコートが好まれます。“ウルトラライトダウン”のジャケットもインナーダウンとして活用されるのはヨーロッパの寒い地域ならではですよね。このように、アウターの深掘りやニーズの対応を行い、企画に反映させていますが、結果的にヨーロッパだけでなく他国でも売れるといった実績を残せています。

店頭で地元のイラストレーターと協業

――ドイツ、もしくは、ベルリン店舗のそれぞれの特徴を教えてください。単なるチェーン運営ではなく、各店舗それぞれで違った打ち出しをし、各店の個性を出していますよね。

桑原:ドイツ国内であっても都市によって街の雰囲気が全然違いますし、客層も需要も変わってきます。そのため地域に合った販売戦略を打ち出すことが重要になってきます。ベルリンの旗艦店(タウエンツィーン店)では、ローカルのアーティストとコラボレーションを行い、文化や考え方が分かるように伝えています。現在は、ベルリン拠点のイラストレーターLaura Breilingを起用し、階段の踊り場とフィッティングルームに彼女のイラストを展示しています。さまざまな年代、人種、スタイルを表現した彼女の作品は、「Made for All」の考えにもとてもよくフィットしています。他にも、「ユニクロ」は日本から来たブランドであるということを分かりやすく伝えるために浮世絵を用いたディスプレーを設置しています。

 ベルリンの壁の跡地に近いイーストサイドモール店では、フィッティングルームにベルリンの壁をイメージしたグラフィックアートを描いています。東ベルリンの中心地であり、若い客層が多いことも影響しています。ハッケシャマルクト店は規模こそ小さいですが、感度の高いお客さまが多く、ファッション性の高いアイテムの動きは早いです。そのため新作を早めに導入するなど、充実した品ぞろえに力を入れています。

――ベルリンではすでに6店舗展開しており、ドイツ全土において今後も広がりを見せていくと予想されますが、ここまで認知された理由は何だと思いますか。

桑原:ドイツ国内では現在10店運営していますが、ドイツ人の物の見方やベネフィットを重視する点、合理的な部分などが、ユニクロのやりたいことと合致していることが理由の一つだと思います。自分の持っている予算をどこで何に使うかを慎重に選ぶ国民性です。もちろん違う面もたくさんありますが、日本人と似ている部分も多数あると感じています。また、大きく宣伝すれば売れるということでは決してありませんし、店舗を増やせば良いということでもありません。接客時には、単に英語をドイツ語に直してマニュアル的に説明するのではなく、より丁寧に分かりやすく、求められているベネフィットをうまく伝える努力をしています。

ベルリンから広がったリペア&アップサイクリングサービス

――サステナビリティの一環として、タウエンツィーン店では独自のアップサイクリングサービスを実施しています。

桑原:リペアとアップサイクリングサービスはベルリン発信となりますが、もともとは不良箇所のある商品を直して、ホームレスの方たちに提供する活動をNGO団体とともに行っていたことがきっかけとなっています。その活動を実際に見てもらうためにタウエンツィーン店の一角に、ミシンや作業台を設置したリペアサービスのコーナーを設けたのが最初です。お客さまが着ていた衣類を店舗に持参し、お客さまご自身がミシンや作業台を使って無料で修理ができるサービスになりますが、この活動を通して、ドイツではいかに物を大事する人が多いかということに気づかされました。例えば、お母さんが着ていたお気に入りの服をサイズを直して娘さんに譲りたいという方がいました。「ユニクロ」は生地の良さや長持ちする縫製に誇りを持っています。そのため、破れたりサイズが合わなくなったりしても、少し手を加えることで捨てることなく、また着られるようになるのです。

 現在は、ダウンの穴開き、ジーンズの穴開き、シャツのボタンつけ、ニットのほころびのお直しがメリペアのインとなっていますが、臨機応変に対応しています。さらに、週末に限り、通常のサービスに加えてNGO団体とのコラボでワークショップを開催しています。店頭に陳列している中で汚れてしまい、販売できなくなった商品はバッグなどにリメークし、リセールすることも行っています。それが廃棄処分を減らすことにもつながっています。リペア&アップサイクリングサービスは今年の6月に本格スタートしたばかりなので、まだ認知は浅いですが、確実に手応えを感じています。リペア&アップサイクリングは、9月にオープンした英ロンドン・リージェントストリートの旗艦店にも広がっています。

――ユニクロは企業として難民支援活動にも長らく取り組んでいます。日本に比べ、難民問題がより身近と言ってもいいドイツでは、どのような活動をしていますか。

桑原:ドイツは国をあげて難民問題への取り組みに積極的です。ユニクロも同様の考えを持っており、重要な社会問題の一つだと捉えています。8年前のドイツ1号店オープン当初から難民の方をスタッフとして採用するシステムを行っていますが、難民としてドイツへやって来て、ビザを取得し、旗艦店で働きながら現在はスーパーバイザーにまで昇格したスタッフもいます。また、ベルリンは他都市に比べてパーソナルな部分を大事にする文化が強いですし、難民だけでなく、LGBTQ+に対する考え方もベルリンは進んでいます。そういった多様性にフィットした販促を行っていくことが大切だと考えています。

――ドイツでの今後の展望を教えてください。

桑原:売り上げを増やすことだけに専念するのではなく、お客様に尊敬される企業になることが大切だと思っています。なぜなら、それが結果的にビジネスが長く続く秘けつだからです。日本からやって来たブランドとして、商品が良いことは前提にありつつも、どんな背景で作られているのか、ユニクロとは一体どんな企業なのか、そういったことをもっと伝えていきたいです。特にヨーロッパでは、サステナビリティ、気候変動、人種、障がい者、貧困などの問題に対する社会活動に積極的に取り組むことがとても大切です。個店レベルでさまざまな活動や努力をしていますが、まだまだ足りないと感じています。商品だけでなく、店舗やソーシャルメディアから発信してお客さまに理解してもらう。そこでファンになってもらい、こういう企業が作った服だから大切に着たいと思ってもらえることを目指していきます。

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「エンフォルド」が新世界百貨店と組みソウル出店 アジア開拓に本腰

 バロックジャパンリミテッドの「エンフォルド(ENFOLD)」は9月14日、海外で初となる単独店を韓国・江南の新世界百貨店4階に出店した。ブランドの世界観を凝縮した“コレクションライン”を中心にデザイン性の高いアイテムが好評で、好調な滑り出しという。新世界百貨店とフランチャイズ契約しており、今後韓国では同社を通じて8〜9店の出店を進める。

 植田みずきディレクターは「(江南の店舗は)まだ開いて間もないが、非常に手応えを感じている」と話す。来期(23年3月〜)以降は韓国と並行して中国本土への出店に向けても動き出す。

 国内百貨店では、コンテンポラリーゾーンでの地位を確立した「エンフォルド」。今後はアジア販路開拓に本腰を入れ、ブランドを新たなステージへと引き上げる。

WWD:「エンフォルド」の海外事業の現状は。

植田みずき「エンフォルド」ディレクター(以下、植田):海外事業の売上高は全体の14%で、そのうち約6割が韓国。海外事業単体で黒字化している。海外店舗への卸はショールームの「トゥモロー(英字)」を通じ、セレクトショップを中心に卸販売してきた。そこで順調に顧客が育っていたことが単独店の好調な滑り出しにつながっている。今後は新世界百貨店によるフランチャイズで韓国での出店を進め、セレクトショップへの卸は徐々に絞って単独店にシフトする。今後数年で8〜9店舗を出店する計画だ。

WWD:江南の新世界百貨店は、どのような商環境か。

植田:日本で例えるのであれば伊勢丹新宿本店に近い雰囲気を感じる。江南は韓国有数の富裕なエリアで、新世界百貨店のお客さまも買い物のモチベーションが非常に高い。日本の百貨店は、下層のラグジュアリーブランドや化粧品、食品フロアはにぎわっているが、上層の衣料品はまばらにということも多い。だが江南の新世界百貨店はどのフロアにもにぎわいがあり、どのお客さまも手に買い物袋をぶら下げている。

 フロアの並びのブランドは「ルメール(LEMAIRE)」「ガニー(GANNI)」「メゾン キツネ(MAISON KITSUNE)」「アー・ペー・セー(A.P.C.)」など。韓国での小売価格は日本の1.7倍ほど。セレクトショップでの卸販売では2倍以上になっていたが、それでも通用してきた。新世界の店舗では、エッジーなデザインやギミックを加えた攻めたものが売れ筋。比較的シンプルで、着まわしのしやすさや機能性を重視した、実用的なものが売れる日本とは明確に異なる。

WWD:江南の店舗の好調要因をどのように分析するか。

植田:一つは、もともと韓国国内で一定の認知が育っていたこと。とはいえ現地ではまだまだ無名だと感じるが、ファッションコンシャスな方の間には広がってきた手応えがある。「日本のブランド」という切り口で見られているとは特に感じず、純粋に他にないデザインが支持されている。ブランドのインスタグラムのフォロワー(約15万)のうち、日本に次いで多いのが韓国。最近ではBLACKPINKのジェニー(JENNIE)が「エンフォルド」の服を着用した画像をインスタにアップしてくれたことも、認知拡大につながっている。

 韓国のセレクトショップへの卸販売を7年間行っていたことで、韓国と日本との商習慣の違いにある程度慣れていたのも大きい。毎週新商品の投入が求められる日本の百貨店と違い、韓国ではワンシーズンの商品を一度に納入する。初めは苦労したが、今では随分慣れてきた。新世界の店舗でも、“コレクションライン”はシーズン始めに全ての商品が一堂にそろうことで店頭でインパクトのあるフェイスを作れている。ブランドの世界観を伝える上では、むしろ好都合だ。

 現地の女性は、インパクトがある色柄やデザインも、抵抗なく受け入れている。今、世界は音楽を中心に韓国カルチャーが席巻している。「自分たちが最先端である」という自負が、ファッションに前のめりにさせているのかもしれない。

WWD:来期以降の海外戦略の展望は。

植田:海外を成長のエンジンにする上で、中国の開拓が重要になる。バロックには中国現地企業との合弁であるバロックチャイナがあり、「マウジー(MOUSSY)」などで中国出店の戦略やノウハウの蓄積があるものの、ブランドの規模やターゲットなどが「エンフォルド」とはかなり異なるため、そのまま当てはめることはできない。どういう形がベストか慎重に探り、来年には緒につけられるようにしたい。

 ゆくゆくは世界中に店舗を構え、たくさんの人に「エンフォルド」の服を届けられるようにしたいという夢がある。コロナ前に実施した世界3都市(ロンドン、ロサンゼルス、香港)でのポップアップでは、さまざまな学びを得た。香港では非常に好感触だった一方、欧州ではシンプルなデザインが求められ、攻略には商品戦略の軌道修正が必要だと感じた。米国では、さらに商品の納期を前倒しできなければついていけない。

 ポップアップは当初韓国での実施も計画していたが、新型コロナが拡大したことで開催を見送った。従来のように世界中に足を運び、インスピレーションを得ることは難しくなった。だがその分、限られた視野の中で、ブランドのクリエイティブがより「濃く」「深く」なったと感じる。まだまだ「エンフォルド」は進化できるという手応えがある。

WWD:国内事業に目を向けると?

植田:今年7月以降は、19年の水準を上回るまで回復している。すでに主要都市を中心に13店舗あり、出店余地があるとしたら神戸ぐらい。これ以上店舗数を広げることは考えていない。店の面積を広げたり、内装を作り込んだりと、より世界観を深化させる方向になるだろう。

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ITベンチャーからファッション業界へ 「OAO」が提示する新たなシューズの選択肢

 「OAO」は、“CREATIVE FOOTWEAR”をコンセプトに、都市生活で求められる機能性と、アートや建築などに着想した未来的なデザインを特徴とするシューズブランドだ。同ブランドは板垣孝明と高橋悠介が直営ECをメインに2020年3月に立ち上げ、フォトグラファーやスタイリストといったクリエイターを中心にファンを徐々に増やしている。昨年から卸売も始め、東京・渋谷の「キス トウキョウ(KITH TOKYO)」や中目黒の「ベスト パッキング ストア(Best Packing Store)」、エディションなど5アカウントで扱われている。

 板垣と高橋は、かつて大手IT企業でウェブサービスなどの新規事業を担っており、事業責任者や関連会社の取締役を務めた経歴もある。そんな二人がなぜ、ファッションの世界に入ったのか?ブランド立ち上げの経緯と今後の展望を聞いた。

WWD:二人の出会いは?

板垣:僕らは元々ITベンチャーで働いていました。17年に新卒で入社した同期です。共通の趣味も多く、自然と仲良くなりました。互いに部署は別でしたが、どちらも新しいサービスや事業を作ることが主なミッションで、今の社会にはこういうことが求められているから、こんなサービスが必要なのでは?という視点で業務に取り組んでいました。

高橋:実際にコードを書くということはなかったものの、こういうデザインや機能性を持たせたいとか、どんなマーケティングを行うかなどを考え、チームとして実行していました。

WWD:デジタルではあるが、“何かを作る”という点ではファッションとも通ずるものがある。

高橋:そうなんです。エンジニアやデザイナー、グラフィックなどさまざまなクリエイターと一緒に仕事していて、サービスを作り、それを活用してもらう喜びはいつも感じていました。

板垣:ただ、ずっとデジタルの領域で、「いつかリアルに関わるものを作りたいよね」と話していて。それと、toBではなくtoCで、自分たちの作ったものがどこまで広がるか試してみたい気持ちもありました。そして、二人で会社をやろうと、入社して2年弱で退社し、19年3月に自分たちの会社を始めました。

WWD:スニーカーを事業に選んだ理由は?

板垣:前職でさまざまな職種のクリエイターと関わる中で、「しっくりくるスニーカーがない」という話がたびたび上がっていたんです。例えばバッグはPCが入るサイズで耐久性があるものを使い、服はシンプルだけど気心地が良くて、イージーケアなものを選ぶ。身に着けるものにはこだわりがあるけど、靴は選択肢が少ないから、無難にスポーツブランドを買う、という人が多かった。これはチャンスというか、そのニーズに応えるプロダクトを作なくてはと思い、シューズブランドを構想しました。

高橋:ランニングシューズを日常で履かない人も多いし、ラグジュアリーブランドのシューズは耐久性や履き心地などで納得がいかないこともある。デザインから履き心地、機能性まで、100%満足のいく唯一無二のシューズを自分たちで作ろうと、“ONE and ONLY”の意味を込めて「OAO」を始めました。

WWD:会社登記は19年3月で、ブランド立ち上げは20年3月。ローンチまで1年近くかけている。

高橋:プロダクト開発にかなり時間がかかりました。ファッションが好きだったとはいえ、ものづくりは素人。最初は、さまざまなクリエイターにヒアリングしまくって、どんなデザインと機能性が求められているかをリサーチするところから始めました。

板垣:その後、友人に手伝ってもらいながらデザイン案を考えていくのですが、納得のいくものがなかなか作れなかった。そこで、途中からアートディレクターやデザイナーとして活動する串野真也さんにプロダクトデザインをお願いしました。

高橋:串野さんは僕らよりも10歳以上年上で、プロダクトのデザイン経験も豊富。僕らのやりたいことを汲みつつ、素材や色、パーツ、設計などを細かく調整しながら仕上げていきました。プロトタイプだけでも20足は作ったかな?そうして完成したのが1作目の“ザ・カーブ ワン(THE CURVE 1)”です。

WWD:生産も国内で行っている?

高橋:はい、革靴やブーツを手掛けている老舗工場で作っています。革靴とスニーカーは勝手が全然違うため、一から相談しています。どんな素材がコンクリートで快適に歩けるか、靴擦れなどのストレスを避けられるのか。木型、ソール、中底、インソールと何千通りもあるパーツの組み合わせから、最適なものを一緒に考えています。

WWD:その機能性は具体的にどんな点に表れている?

板垣:例えば1作目の“ザ・カーブ ワン”は、前足部のソールの傾斜を強くして、スムーズな蹴り出しを目指しています。ほかにも、中敷の土踏まずの膨らみを絶妙に出して足当たりをよくし、通常厚紙を使う底の部分にコルクを使って吸湿性を高めています。

高橋:コルクの方が柔らかいから、履き心地も良くなるんです。あと、スポーツメーカーは履き口と内側で別々のライニングを組み合わせることが多いのですが、踏み込む力が外に逃げて疲れの原因になるため、僕らはライニングを一体化させています。

板垣:大手メーカーの靴はかなりコストを切り詰めて作っているんですよね。質が低いわけじゃないけど、価格帯を大きく動かせない。僕たちはコストや価格帯を意識しすぎず、こだわりを徹底的に詰め込めるのは、インディペンデントなブランドの強みです。

WWD:ビジネスは好調?

高橋:最初はECだけでしたが、ポップアップや予約制のショールームなど、直営ビジネスを多角化しているほか、昨年から卸も本格的に始めました。個人的にも好きな高感度なショップに評価されているのがうれしいですね。

WWD:今年2月にはロゴやサイトデザインを一新したが、その意図は?

板垣:より多くのユーザーに届けることが一番の狙いです。ローンチ時の抽象的で直感的なサイトデザインは、ブランドに興味を持って流入してきたユーザーにはウケても、フラッと立ち寄った人には優しくない。プロダクトを気に入ってもらえるかもしれないポテンシャル層を、サイトデザインやUXで損失しているのはもったいないなと思いました。今は「高い推進力」「強いグリップ「厚いソール」など、分かりやすい特徴から検索できるようにし、どんな人でも回遊しやすい設計を目指しています。

高橋:プロダクトもストイックなデザインがメインでしたが、オフホワイトを基調とした柔らかなカラーリングや曲線的なステッチワークなど、優しいテイストを取り入れたモデルも積極的に開発しています。“オース(AUTH)”や“サンライト(SUNLIGHT)”はその一つで、これまでのモード好きなファンに加えて、主婦などの女性ユーザーの反響もあり、間口の広がりを感じています。

WWD:既存ファンの反応は?

板垣:ポジティブな反響がほとんどです。ブランドの軸はブラさず、見せ方をアップデートできた証拠だと思います。リピート率は3割を占め、数足を所有する人も多い。

高橋:定番モデルも素材やサイジングを絶妙にアップデートしているので、新しくなるたびに買ってくれる熱心なファンもいますね。

WWD:現在の課題は?

板垣:ブランドの世界観を体験できる場所がまだまだ少ないこと。試着はもちろん、プロダクトのクオリティーやこだわりをワンバイワンで伝えていきたい。今はポップアップが中心ですが、フラックシップのようにブランドのコアを伝える空間が必要だと思います。

高橋:物販だけでなく、ブランドの姿勢を伝える新しい企画にも挑戦したいよね。少し前に、ポップアップと連動したウオーキング企画を行いました。街の歴史を知りながら「OAO」を履いてもらう内容で、少数の参加者ながらユーザーと深くつながることができ、手応えを感じました。建築やグラフィック、アートなど、ブランドと親和性のある物を組み合わせながら、世界観を総合的に訴求する企画を実施していきます。

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化粧ポーチを持たないZ世代「究極のモバイルコスメ」とは?

 女性誌やウェブの美容特集で「ポーチの中身を見せてください」は、人気企画の1つだ。美容識者や一般の方が愛用する化粧ポーチを広げ、持ち歩くコスメを全て拝見する企画である。ひと昔前に「囲み目メイク」が流行した時代は、重ねづけ用としてマスカラを複数本、ビューラー、アイライン、パレットアイシャドウなど、目元アイテムをぎっしり詰め込んだポーチはなかなかに見応えがあった。

 おそらく、今後(もしくは現在進行系で)このような化粧ポーチは減少するのではないだろうか。試しに検索すると、同様の企画タイトルには「ミニマリスト」「厳選」「最低限」といったワードが散見している。生活様式の変化とともに、Z世代の間ではすでに「物を持ち歩かない」意識が定着し、大人の女性の間でも同様の意識が広がっているからだ。

 

Z世代の間で「化粧ポーチ」が消滅した理由 

 今回もZ世代のリアルな声を聞くために、都内の大学に通う学生さんに協力いただいた。葵さん(21歳・三重県出身)、はるさん(22歳・佐賀県出身)、さやかさん(23歳・山口県出身)の3人に、まずは化粧ポーチを持っているか聞いてみた。

はる:持っていません。持っている子は、クラスで1人か2人くらい……?

さやか:私も持っていません。友達も消毒液とかハンドクリームとか、他のものと一緒に入れている感じ。

葵:家が遠くて“学校でイチからメイクする子”がいて、化粧品がぎっしり詰まったポーチを持っているのは彼女くらい?コスメ専用のポーチはほぼ見ないです。

 彼女たちが化粧ポーチを持たなくなった理由は、バッグが小型化したこと。その背景には、スマホ1つで何でも事足りてしまうライフスタイルが関係している。

葵:食事とかコンビニはスマホで決済するし、移動もモバイルスイカを使うので、友達と遊ぶ時は“スマホが入る小さなポシェット”で出かけます。

はる:私は財布も現金も持ち歩く派ですけど、電子決済とかカードで払う子が半々くらいかな。友達もみんなバッグは小さめですね。

さやか:スケジュール帳や鏡も、たいていスマホがあれば間に合ってしまう。私も友達と遊ぶ時のバッグは、スマホさえ入ればいいかなと。

 実際に、彼女達に財布と、友人と遊ぶ時用のバッグを見せてもらうと、あまりにコンパクトで驚いてしまった。財布はパスケースと見間違うような薄さ、バッグもスマホよりひとまわり大きいサイズで、確かに化粧ポーチが入る余地はなさそうだ。今回取材したのは交通網が発達し、電子決済が可能な店舗が多い首都圏の学生であって、全国的には事情も違うと思う。その一方で、過去に携帯が必須だった、手帳や鏡、財布などを「やろうと思えばスマホ1つで代用できる」のも事実である。

さやか:学校がある時は、パソコンや教科書、水筒を持ち歩くので、大きめのバッグを使います。ただ“なるべく物を持ち歩きたくない”というのは、皆共通して感じていることだと思う。大きいバッグはつい色々入れたくなっちゃうから、学校用もなるべくコンパクトなものを選びます。

外出先のメイク直しは「リップ+“棒もの”」?

 荷物の軽量化が可能になったからこそ「なるべく物を持ちたくない」「持ち歩く必要もない」という感覚は理解できる。では、コスメに関してはどうだろう?あれこれ所有したくならないのだろうか?

葵:外出する時、絶対に持っているのはリップですね。

はる:写真を撮る時に塗り直すもんね。

葵:リップ以外は、人それぞれな感じ……?アイラインやマスカラを1~2品とか。

さやか:片側がペンシルで、片側がマスカラになってるアイブロウは一時期すごく流行っていました。

 持ち歩くコスメとしてあがるのは「棒もの」中心、それも1つか2つのみだ。彼女たちにコスメに対する所有欲がないかというと、決してそんなことはなく、新作や話題のコスメはSNSで頻繁にチェックしているという。それを「外出先に携帯するか」というと、また別の問題のようだ。ちなみに「写真を撮る時に、テカリを抑えたい(ファンデを使いたい)」と思わないのか聞いてみた。

葵:肌は(カメラアプリの)フィルターがあるからいいかなと。

さやか:結局加工しちゃうので、肌はあまり気にしないですね。

はる:友達でパウダーファンデを持ってる子、見たことないです。小型のルースパウダーはいるかな。

 パウダーファンデを持ち歩かなくていいなら、ますます化粧ポーチは必要なさそうだ。もちろん、Z世代の中には鏡やパレットタイプのアイシャドウ、そしてコスメ専用のポーチを持ち歩く人もいると思う。ただし、冒頭で述べたような「フルアイテムがぎっしり詰まったポーチ」は、この世代には響かないのではと感じた。理由は、葵さんのこのコメントだ。「必要なものはドラッグストアに大抵揃ってますし、コスメの場合、ECもあればフリマサイトもある。そもそも子供の頃から物も情報もあふれているので、普段から“自分に必要なものや情報だけ削ぎ落としていく”作業のほうが多い気がします」。

 

理想のモバイルコスメはコンパクトで多機能なこと

 あれこれ持ち歩くのではなく、厳選したコスメを携帯するZ世代。「理想のモバイルコスメ」とはどんなものだろう?

はる:さっき話していたアイブロウみたいに、1品で多機能だと便利ですね。

さやか:小さくて色々な用途があるとつい買っちゃう(笑)

葵:スティック状で片方がアイライン、片方がマスカラとか便利だよね。

さやか:あと、リップで“スマートに塗り直せる”ものが欲しい。スマホを見ながら直すの、あまり好きじゃなくて。

はる:分かる。人前でリップを直す時いつも思う。

葵:ケースをスライドして、シュッと鏡が出てくるとかね(笑)。リップは大きめの鏡がついていると便利だし、塗る動作がキレイに見えるといいなと思う。

 彼女たちのコメントを総合すると①形状がコンパクト ②1品で多機能 ③リップは大きめの鏡つき、あたりだろうか。最近発売した製品の中から、注目アイテムを選んでみたい。

唇にも頬にも目元にも使えるマルチカラー

 「ローラメルシエ(LAURA MERCIER)」から登場した“ティンティド モイスチャライザー ブラッシュ”は、肌に溶け込むようになじみ、自然な血色感やツヤを添えるマルチカラー。美容成分を配合したなめらかなテクスチャーで、チークを中心に、アイカラーやリップとしても活躍する。チューブタイプのグロスよりひとまわり大きいサイズで、持ち歩きにも便利。

コンパスみたいに折りたためる極細アイブロウ

 「フジコ(FUJIKO)」の“美眉アレンジャー”は、 コンパスのように折りたためるユニークなアイブロウだ。片方に直径1.5mmのパウダーペンシル、もう片方に直径2.0mmの柔らかなコンシーラーをセットし、ペンシルで眉を描いたら輪郭をコンシーラーでなぞり、軽くぼかすだけで立体感の際立つ眉に。折りたたむと全長約9.5cm、幅約1.4cm、厚さ約8mmとコンパクトな点も魅力。

立体感を叶える韓国発・影色×ハイライト

 Z世代に人気の韓国コスメ、「アイムミミ(I’m meme)」の“アイムマルチスティックデュアル”は、シェーディングとハイライトを1本で叶えるスティックだ。シェーディングは、太すぎず細すぎない適度な影を演出し、ハイライトは上品なシャンパンピンクで、肌に自然なツヤ感をプラス。顔はもちろん、鎖骨の周囲にぼかすことでデコルテを美しく見せる裏技も。

大きめミラーが魅力、モダンでラグジュアリーなリップ

 リップを引き抜くと、ケースがパタンと開いて両面にミラーが登場する「ゲラン(GUERLAIN)」の“ルージュ ジェ”シリーズ。全44色のリップカラーと、全21種の“ルージュ ジェ ケース”を自在に組み合わせ、カスタマイズできる。誕生時からそのモダンなデザインが注目され、7月には、蝶の羽をモチーフにした“ルージュ ジェ ケース”の限定デザイン(全3種)が登場した。リップをつける動作の美しさにまでこだわり抜いたケースは、シーズンごとに新作や限定デザインが登場している。

大人の女性にも「モバイルコスメ」のニーズは存在する

 実は最近仕事で会う30代以上の女性に、Z世代のような「小型バッグ」愛用者が増えた印象だ。スマホとカード(社員証や交通カード)が数枚入るサイズ感のポシェットで、通勤時には別のバッグも携帯するけれど、社内移動はこのポシェットとパソコンのみ。ランチの時は、ポシェットだけ持って外出するという。

 このあたりは、スマホ中心の生活様式が、大人の女性にも浸透しているように思う。確かにこのポシェットに、マルチで使えるコスメが1つあれば、昼間の用事は案外事足りるかもしれない。そういう意味で、大人の女性にも「多機能でコンパクトなモバイルコスメ」のニーズが、一定数存在するのではないか。

 さらにもう一歩進んで「なるべく物を持ちたくない」Z世代が、年齢を重ねた時に、どんなコスメが注目されるだろう? 現時点では夢物語ではあるけれど、印象的だったのが下記のエピソードだ。

はる:たとえば、唇にちょんとのせたら、そのまま自分の唇に反応して、キレイに色が広がるリップがあったらいい。

葵:すごい、近未来っぽい(笑)。でもそれ、肌で出来たら超便利かも。

さやか:究極的には本当にそれ。テクニックがいらなくて、本当に似合うものがあったらすごく欲しいと思う。

 心の中で「そうだよなあ~」と深く頷いてしまった。目下、美容の世界において「人工皮膚」や「パーソナライズコスメ」は重要な研究テーマではあるけれど、進化の途上にある面は否めない。遠い未来に、彼女たちがいうようなコスメは実現するだろうか。少なくともZ世代の話しを総合すると、ごく近い未来において「多機能でコンパクト」「誰でも簡単に似合う」モバイルコスメの注目度は高まる気がしている。

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NBA随一のファッショニスタ、カイル・クーズマが初来日 次世代スターの好きなブランドは?

 NBAの次世代スター、カイル・クーズマ(Kyle Kuzma)が、9月30日〜10月2日に埼玉スーパーアリーナで行われた「NBAジャパンゲームズ」のため初来日した。クーズマ選手はユタ大学在学中の2017年にNBAドラフトにアーリーエントリーしてロサンゼルス・レイカーズ(Los Angeles Lakers)に入団。身長205cmの長身ながら、ドライブと3ポイントも得意とするオールラウンダーで、1年目にオールルーキー1stチームに選出され、19-20年にはブロン・ジェームス(LeBron James)やアンソニー・デイビス(Anthony Davis)らとともにNBAチャンピオンを獲得。21年からワシントン・ウィザーズ(Washington Wizards)に所属し、八村塁選手らとともにプレーしている。

 クーズマ選手はバスケの実力だけでなく、個性的なファッションスタイルでも注目を浴びており、12月には「プーマ(PUMA)」とのコラボコレクションも発売する。スラリとしたスタイルと端正な顔立ちで、私服では「ラフ シモンズ(RAF SIMONS)」「リック・オウエンス(RICK OWENS)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「アミリ(AMIRI)」など数々のデザイナーズブランドを着こなす。会場入りでスナップされる彼のファッションは、今やNBAの名物だ。「東京は世界有数のファッションの街。来れてとてもうれしいよ」と語る彼に、バスケや私服のこだわりについて聞いた。

WWD:日本の印象は?

カイル・クーズマ(以下、クーズマ):素晴らしいね。独自のファッションや食べ物がある街で、来日を心待ちにしていた。日本のファンの前でプレーできることがうれしいよ。

WWD:今季でウィザーズに移籍して2シーズン目。現在キャンプの真っ只中でもあるが、コンディションは?

クーズマ:とてもいいよ。僕個人の力もみなぎっているし、チームの雰囲気もいい。メインシーズンに向けてエンジンがかかり始めている。

WWD:あなたはNBA選手の中でも、感度の高いブランド選びでファッショニスタとしても知られる。特に好きなブランドは?

クーズマ:「アミリ」「ルード(RHUDE)」「マルニ(MARNI)」「ブルーマーブル(BLUE MARBLE)」……全てあげるとキリがないね(笑)。本当にいろんなブランドを着るけど、プライベートでも交流のあるデザイナーの服は特にお気に入りさ。彼らは素晴らしいクリエイターで、心から信頼している。それに、僕の体にフィットする服もたくさんあるんだ。

WWD:毎日のコーディネートで意識していることは?

クーズマ:気分によってファッションを楽しむこと。上機嫌なときはカラフルなものを着るし、少し暗い気持ちだとオールブラックを着たくなる。そこに、気分以外の要素をミックスして、スタイルを完成させるんだ。ワードローブには汎用性のあるアイテムを入れるようにしているよ。奇抜だと言われることもあるけど(笑)。

WWD:今日のコーディネートのこだわりは?

クーズマ:今日のキーポイントはシューズ。ジャパンゲームでも着用した「プーマ」の“ティーアールシーブレイズ コート トウキョウ ハラジュク(TRC BLAZE COURT TOKYO HARAJUKU)”で、レオパードとピンクの大胆な組み合わせが気に入っているよ。足もとを引き立たせるために、上はシンプルな白いTシャツ、下は黒いパンツを合わせてみた。時計は「ロレックス(ROLEX)」で、ネックレスは「ティファニー(TIFFANY)」だよ。

WWD:9月にNYで行われた「プーマ」のファッションショーにはモデルとして登場した。ランウエイを歩いた感想は?

クーズマ:素晴らしい経験だった。とても楽しくて、スリルもあった。過去にもファッション雑誌主催のショーに出演したことがあって、ランウエイは自分のクリエイティビティーを表現する場所。そして何より、普段は着られないアメイジングなアートピースが着られるのがうれしい。

WWD:12月には「プーマ」とのコラボコレクション“チャイルドフッドドリームス(CHILDFOOD DREAMS)”を発売する。アイテムのこだわりは?

クーズマ:サステナビリティにこだわった。水の使用量の少ない染色方法や、再利用素材を積極的に使って、地球へのダメージをなるべく軽減した。僕ら一人一人の行動が環境に影響を及ぼすから、その意識を持ってもらうようなコレクションを目指したんだ。

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ロックシーンの“先導者”であり“扇動者”マネスキン 音楽性、自己の解放、「グッチ」との蜜月関係を私服で語る

 長らく停滞を見せていたイタリアン・ロックの“先導者”であり、世界のロックシーンの“扇動者”でもあるのがマネスキン(Maneskin)だ。結成から7年で名実共にイタリアを代表するロックバンドとしてその名を響かせた、今最も注目すべき存在である。

 マネスキンは、ボーカルのダミアーノ・ディヴィッド(Damiano David)とギターのトーマス・ラッジ(Thomas Raggi)、ベースのヴィクトリア・デ・アンジェリス(Victoria De Angelis)、ドラムのイーサン・トルキオ(Ethan Torchio)から成るベーシックな4人編成で、平均年齢は約22歳という若さだ。10代前半の2015年にバンドを結成し、地元ローマでのストリートライブをはじめとする草の根活動で徐々に人気を集め、18年に1stアルバム「Il ballo della vita」をリリース。ロックを下地に、ファンクやヒップホップなど多ジャンルの要素を広く感じることができる自由な音楽性と共に、往年のロックスター然としたスタイルでイタリア国内を中心にファンを獲得していった。そして、パンデミックを経て制作した2ndアルバム「Teatro d'ira: Vol. I」が世界中で高く評価され、同年に開催されたヨーロッパ最大の音楽の祭典「ユーロビジョン・ソング・コンテスト(Eurovision Song Contest)」では見事優勝するという、駆け足ながら着実に成功の階段を一歩一歩登ってきたバンドだ。

 バンドは、音楽フェス「サマーソニック(SUMMER SONIC)」への出演のため8月に初来日。対面インタビューでは、彼らについての基本的な質問から、バンド内でのそれぞれの立ち位置や、過激とも捉えられるパフォーマンスとその背景、衣装提供も受ける「グッチ(GUCCI)」との蜜月関係などを聞いた。さらに、わざわざ私服に着替えてもらってメンバー同士のファッションチェックも敢行。クールに淡々と話すダミアーノ、時に真面目に時に無邪気なトーマス、率先して受け答えしてくれるヴィクトリア、聞きに徹するイーサンと、4人の人間味が伝わるリアルなインタビューとなった。

ーーまずは、バンドメンバーの出会いと結成の経緯から教えてください。

ヴィクトリア・デ・アンジェリス(以下、ヴィクトリア):ミドルスクールの時にトーマスと出会って、その時はいろいろなドラマーやボーカルを迎えてさまざまなフォーメーションを試してみたけど、どれもうまくいかなかったの。その後、ダミアーノをほかのバンドから引き抜いて、イーサンはローマにあるミュージシャンを探すサイトから見つけてきた(笑)。

ーーそれぞれバンド内ではどのような立ち位置ですか?

ヴィクトリア:私とトーマスがクレイジーなパリピタイプで、トーマスはお笑い担当かな。いい意味でね。ダミアーノは、時間に正確だし仕事は集中してきっちりこなすタイプで、イーサンはかわいらしくて周りを常に気遣ってる感じ。

ーーその関係性は、楽曲制作にも影響していますか?

ダミアーノ・デイヴィッド(以下、ダミアーノ):そりゃもちろん。

ヴィクトリア:そういう場合も多いけど、基本的に曲作りは各パートの領域を互いに守るような感じで進めるから、誰かがリードして作ることがないの。ただ、イーサンは普段シャイだからこそ、彼が発言した時はみんなが意見を聞いてリードされるようなことはあるかな。

ーーデビュー前は頻繁にローマでストリートライブを行っていたそうですが、そこで地力をつけたことは数万人規模のアリーナクラスでのパフォーマンスにも役立っていますか?ライブを観ていると、盛り上げるスキルが非常に高いと感じます。

ダミアーノ:全くもってその通り。ストリートで演奏しているとき、道行く人たちは僕らのライブを観に来ているワケではないから、どうにかして目を向けさせて引き留めなければならない。これは音楽フェスも同様で、全員が僕たちのファンではなくて、時間が被っているほかのアーティストのライブを観たい人や、僕たちのことを知らない人も大勢いる。そんな人々のハートをつかんで盛り上げることができたら、そのフェスを独占しているような気分になるよね。

ーーそれでは、単独公演の盛り上げ方はまた違うと。

ダミアーノ:語弊を恐れずに言うならば、単独公演の方がやりやすさはあるよ。だって僕らの顔も名前も知っているようなファンしかいないからね。例えば、観客に向かって話しかける場合、フェスは誰もが共感できる一般的な内容じゃないといけないけど、単独公演はバンドの歴史や楽曲のストーリーを話しても飽きられることなく盛り上がる。まあ、観客との対話の仕方が違ってくる感じかな。

トーマス・ラッジ(以下、トーマス):フェスには大スターたちも出演するから、僕らのパフォーマンスでどれだけの人々を惹きつけることができるかチャレンジングな部分もあるよ。フェスとは違うんだけど、ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)の前座は本当に挑戦的な舞台だったね。彼らのファンは熱狂的だから、僕らが出ていったら「なんだこのイタリアのバンドは?」みたいな雰囲気だったんだけど、最終的には「こいつらクレイジーだな!」って認められたような気がして、最高に気持ちよかったよ。

ーーとあるインタビューで、「マネスキンがやっているような音楽がイタリアのシーンにはない」とおっしゃっていましたが、そのような状況で活動するのは率直にどうですか?

ダミアーノ:その隙間を僕らが埋めればよかったから、実はその方が楽だったんだ。1990~2000年代初期にイタリア国内でブレイクしたバンドもいたけど、海外進出までには至らなかった。だからバンドという存在感がイタリア国内では薄くなっていたけど、今はポップミュージックの中でもバックに生バンドを入れたり、スタジオでアコースティック楽器を取り入れたりしているし、なにより僕らが活動することで若い人たちにバンドの存在意義が伝わっているはず。バンドで活動することは時間の無駄じゃない、ってことを証明できていると思う。

ーー少し気が早いかもしれませんが、マネスキンに影響を受けているようなバンドは現れていますか?

ヴィクトリア:まだ音楽シーンに変化は見られないけど、10代前半くらいのファンたちが楽器を習うことが増えているみたいだから、彼らが大人になったタイミングで分かるんじゃないかな。

ダミアーノ:21年に僕らが「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」で優勝した時、国内の楽器屋でギターの売り上げが6割も伸びたらしいんだ。“プロを目指すわけではなく自己表現のために楽器を弾きたい”“真剣にボーカル・トレーニングに取り組みたい”って人たちが僕らの活動によって増えたのだとしたら、それだけでも大ごとだよ。音楽は、自分の気持ちを人々に伝える手段としての自己表現の一つだから、少しでもその手助けができているのならば、このうえなくハッピーだ。

トーマス:僕らの世代はエレクトロ系が流行していたから個人的に好きだし、新しいビートもよく聴くけど、アナログ楽器は本当にいいもの。若い世代がギターやベース、ドラム、ボーカルを学ぼうという気持ちになってくれるだけでうれしくなっちゃうね。

ーー18年に1stアルバム「Il ballo della vita」をリリースし、国内外にその存在を知らしめて活動を本格化させる矢先にパンデミックが世界を襲いましたが、2ndアルバム「Teatro d'ira: Vol. I」への影響はありましたか?

トーマス:パンデミックは決していいものではない。でも、制作する時間をしっかり取ることができたし、メンバー同士の意見も聞くことができたから、バンドとしてはタイミングが良かったよ。

ヴィクトリア:ある意味、アルバムを作るには絶好の時間だったのかもしれない。「ユーロビジョン」で優勝して、「これからツアーだ!」って時に回ることができなかったのは悲しかったけど、振り返ると制作的にはいい時間だったかな。

ーー最新シングル「SUPERMODEL」は、タイトルだけを見ると華やかな印象を受けますが、リリックには強いメッセージが込められているように感じました。

ヴィクトリア:ロサンゼルスに滞在していた時、とてもいい人たちばかりだった一方で、とにかくセレブや有名人になりたい人や、“誰々と知り合いでなくてはならない”や“どこどこに行ったことがなければならない”って外面に囚われている人が大勢いて、私たちの価値観と全く合わずにバカらしく思っていたの。それを少し揶揄っているような曲ね。

ーーライブ中は衣装を脱ぐことが多いですが、あれは感情の高ぶりから無意識的にやってしまうと同時に、昨今問われるジェンダーの価値観への問い掛けや、自己の解放といった意味も込めているのでしょうか?

ダミアーノ:シンプルにライブ中はめちゃくちゃ汗をかくから、衣装を着ていると重くなるし気持ち悪いんだよね。ただ、ヴィクトリアがライブ中に脱ぐことに関してはいろいろな意見が届いていて、「ヴィクトリアの乳首を見てトラウマになった」という投稿も見たけど、それなら「男性の乳首も見れないだろ」って。体の違いはあるけれど、捉えられ方は一緒であるべき。女性の体と選択肢に制限をかけようとしたり、そんなことを大問題だという考え方も古臭い。まあ、僕よりもヴィクトリアの乳首の方がかわいいと思うけど(笑)。

ヴィクトリア:ダミアーノやイーサンが脱いでることに関しては誰も何も言わないのに、女性の私が脱ぐと「注目されたいからやっているんだろ」「見せびらかすためだろ」「すごいって思われたいんだろ」って余計なことを言う人たちが出てくるの。私は幸い何を言われても全く気にしない人だけど、そこに違いがあるべきではないし、女性を過剰なまでに性的対象にしているのがバカらしいと思う。暑かったら脱ぎたくなることは当然だから演奏中は脱ぐし、開放的な気分を味わいたいなら脱げばいい。問題視されること自体がおかしいから、そんな考え方の人たちは「怒りを内面に溜めてしまっているお気の毒な人」って捉えてるの。とにかく、「サマーソニック(SUMMER SONIC)」はマジで暑かったわ(笑)!

ーー現在、衣装は「グッチ」がサポートすることが多いですが、どんなものが好みですか?

ダミアーノ:ベストな衣装は、ステージ上で動きやすくて着心地のいいもの。だけど、同時に僕らをステージで輝かせて観客の目を引き付けることも必要だから、カッコいいスーツやボディスーツが一番クールかな。あと、脱ぎやすさも重要だね。

ヴィクトリア:私たちは、10分もパフォーマンスすれば裸になってしまうからね。でも、いつもトーマスだけはファッションのために脱がずに汗だくになりながらギターを弾いてるの(笑)。着ていて熱くなるような衣装だけは絶対にダメかな。

ーー「グッチ」がステージ衣装を手掛けていることに関してはどう思いますか?

ヴィクトリア:「グッチ」がマネスキンのような若いバンドとコラボするなんてめったにないだろうから、本当に幸運だわ。「グッチ」チームの人たちは本当に優しくて、理想の衣装を提案すると、私たちの趣味まで考量した想像以上のデザインに仕上げて、なおかつ着心地の良さも追及してくれる。それに、アイデンティティーに共感して情熱を持って取り組んでくれていることが伝わってくるの。

イーサン・トルキオ(以下、イーサン):「グッチ」の誰と会ってもいい人たちばかりだから、一緒に何かを進めるのは気持ちがいいよね。

ヴィクトリア:あと、打ち上げのパーティーも毎回最高!

ーー音楽シーンにおけるファッションは、どう捉えていますか?

ヴィクトリア:ファッションと音楽は世界の常識に革命を起こすもの。レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)やデヴィッド・ボウイ(David Bowie)、プリンス(Prince)、マドンナ(Madonna)のような、どちらのシーンでもアイコニックな瞬間を生み出してきたアーティストには感銘を受けているわ。

ーー今回、みなさんのリアルを届けるために特別に私服に着替えていただきました。メンバーだからこそ分かるそれぞれの私服の特徴を教えてください。

ヴィクトリア:じゃあ私がイーサンを担当するね。移動中でもスーツとシャツでバシっとキメるエレガントな時と、腕や胸の筋肉を強調させる1990年代のビッチのような時と、気分によって2種類あるかな。

イーサン:僕はトーマスで。いい意味でおもしろいスタイルで、いろいろなテイストを趣味良くミックスさせていて、ファッションのルールや常識に縛られていないかな。あとは、大きなハットやサングラスが好きで、僕的にはオアシス(Oasis)のリアム・ギャラガー(Liam Gallagher)っぽいんだよね。

トーマス:どこがだよ(笑)!ダミアーノは、スニーカーを履いていた次の日にはブーツだったり、スーツがお気に入りかと思えばカジュアルなストリートウエアを着てきたり、日によって変化が大きい。それが僕は好きで、最高にクールだ。

ダミアーノ:最後はヴィクトリアか。半年でスタイルを変えるからなんとも言えないけど、最近はスカートがお気に入りみたいで、今まで見せてこなかった脚をしっかり出しているのがいいね。

ヴィクトリア:脚とおっぱいね。

ダミアーノ:そうそう。あと、4人の中では最も趣味がいいというか、ファッションをちゃんとリサーチしているから、みんなで一緒にお店へ行ってもヴィクトリアが一番良いいものを見つけてくるんだ。

ーー最後に、初来日はどうでしたか?SNSを見ていると、非常に楽しんでいるようでした。

ヴィクトリア:カラオケが最高だったね。

トーマス:来る前から興奮していたし、来ていると実感するだけで常にワクワクしていたよ。

イーサン:桜の花を見たかったんだけど、今は時期じゃないから木だけを見に行ったんだ。それでも、春になったら咲く様子を想像して豊かな気持ちになれたよ。

ダミアーノ:見るもの全てに興奮した初来日だった。もっと時間があれば良かったんだけど、ニューヨークに行かないといけないから1週間くらいの滞在だったかな。

ーーダミアーノは、日本でタトゥーを掘るのが夢だったんですよね?

ダミアーノ:入れるタトゥーは龍、キツネ、日の出で迷っていたんだけど、タトゥー・アーティストに「君からは龍のパワーを感じる」って言われたから龍に決めたんだ。

ーータトゥーといえば、メンバー全員で同じデザインを入れていると聞きました。

ヴィクトリア:一つは全く一緒のデザインで、もう一つは似たようなデザインを入れているの。ただ、場所は首の後ろや背中、足首などでそれぞれ違うよ。

トーマス:ちょっと待って。インタビューを終える前に誰が今日のベストドレッサーかを答えてもらえる?

ーートーマスのスタイルが好きですね。

トーマス:おおおおおっ!ほらみろ!

ダミアーノ:嘘だろ(笑)?

ヴィクトリア:本当に?シャツがシワシワじゃない!?

トーマス:今日はいいインタビューだったよ!ありがとう!

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自動車部品メーカーのアイシンが美容業界に本格参入 “水”の力で髪と地肌をいたわる「ハイドレイド」の魅力を「レコ」の内田聡一郎代表に聞く

 大手自動車部品メーカーのアイシンが髪の内部と地肌に水分を届ける装置“ハイドレイド”を開発し、美容業界に参入した。“ハイドレイド”は空気中の水分子を髪の毛のキューティクルの隙間に入り込むほど小さな水粒子に変換。美容室でのカラーやトリートメントなどの薬剤浸透時間に使うことで、髪に含まれる水分と同じ性質の水を内側まで補給して、地肌をいたわり、髪の毛の柔らかさと艶を持続させる。開発の中心を担うアイシン イノベーションセンター AIRビジネス推進室の井上慎介室長と、いち早く“ハイドレイド”を導入した東京・渋谷にあるヘアサロン「レコ(LECO)」の内田聡一郎代表が、開発秘話やサロンワークでの活躍ぶりを語り合う。

睡眠の研究と自動車部品開発の
知見を生かして美容業界に参入

WWDJAPAN(以下、WWD):主に自動車部品の開発・製造を手がけるアイシンが美容業界に参入したのはなぜ。

井上慎介室長(以下、井上):当社は自動車部品のほかに長年ベッド事業を手がけ、私はこれまで睡眠の研究をしてきました。研究の中で睡眠時により快適な寝室空間を作るために、湿度に注目。効果を検証する中で、水分が増加する特殊な現象に気づき、技術解明すべく研究を重ねてきました。製品化を目指す中で、この技術を人に適応させることが一番の価値だと考え、さまざまな分野の中でも美容業界に目を向けました。

WWD:「水」に着目した理由は。

井上:睡眠は体がエネルギーを回復させるためのとても大切な時間です。極力体に負荷を与えずに、自然で良い環境を作りたかった。暑すぎても、光が強すぎてもいけないのです。人間の体は70%が水分で作られているといわれ、人にとって水は必要不可欠なものなので、水の活用を考えました。

ボタン1つで素早く起動
シンプルな動作設計が高評価

WWD:「レコ」ではいち早く“ハイドレイド”を導入した。実際にサロンで使ってみてどうか。

内田聡一郎「レコ」代表」(以下、内田):美容業界には数多くの機器がありますが、“ハイドレイド”はボタン1つで起動して、使いたいと思った時にすぐに使えます。何かをこまめに交換することや、給水も不要なので、とても扱いやすいです。さらに美容室に置くものはスタイリッシュであるべきだと考えているので、長年自動車部品を手がけてきたからこそのスタイリッシュなデザインも良いですね。

井上:電源を入れてボタン一つで動作するシンプルな設計は、まさに自動車部品開発の知見が生きています。空気中の水分を吸着して粒子化、適度な温度で吐き出す仕組みは、自動車の排ガス技術を応用しています。地球上どこにでも空気中に水分は存在しているので、電源さえあれば湿度の高低に関わらず給水不要で使えるんです。

WWD:「レコ」ではどのように“ハイドレイド”をメニューに取り入れている?

内田:ヘアカラー施術の放置時間に使用しています。当サロンはカラーユーザーが多いのでダメージに対するアプローチを大切にしています。ハイドレイドを用いた施術では薬剤の浸透を促進しますし、いわば水分補給をしながら施術できるので、カラー後乾かしたときの艶も実感しています。“ハイドレイドカラー”という形で通常のカラーにプラスの料金をいただいていて、付加価値の提供にもつながっています。“ハイドレイド”を当てている時はほかの機器とは異なり、蒸気や熱による“施術されている感”は正直薄いのですが、本質的に効果があるものは今後の美容業界で当たり前になっていくのではないでしょうか。

異業種ならではの
ブレイクスルーに期待

WWD:施術を受けたお客さまの反応はどうか。

内田:施術直後にその場でなかなか分かるものではないですが、色持ちや髪の触り心地など、後から実感されるお客さまも。導入してから日は浅いものの、必ず“ハイドレイド”でケアすると決めているお客さまもいらっしゃいます。

WWD:異業種から参入したアイシンに内田さんが期待することは。

内田:ほかの業界からの参入ならではのブレイクスルーをぜひお願いします!「その発想は無かった」という新しい視点がほしいですね。これまでの知見を生かしたドライヤーやヘアアイロンなどの機器を作っていただきたいです。

井上:技術開発を推し進めているので、今後の参考にさせていただきます。まずはデビューしたばかりの“ハイドレイド”において、美容師=プロの信頼を勝ち取っていきたいですね。

世界初のテクノロジー搭載
水分を補給して
柔らかさと艶が持続

 “ハイドレイド”は、水の力で髪と頭皮をいたわる世界初のテクノロジー搭載する美容室向けの機器。空気中の水分子を、キューティクルの隙間より小さい水粒子に変換し、髪へと届ける。カラーやトリートメントなどの薬剤塗布後の浸透時間を活用し、髪に含まれる水分と同じ性質の水を内側まで補給する。目に見えない極小の水粒子が髪の内部にまでしっかりと入りこむことで、キューティクルは柔らかくなり自然に閉じて、入りこんだ水分が定着。髪の毛の柔らかさや艶が持続する。空気中の水分を水粒子に変換するため給水不要で、シンプルな操作も魅力。現在は首都圏でのみ営業展開しており、今後は営業エリアを順次拡大していく。

※国内外論文及び特許のアイシンによる調査結果(2022年9月15日時点)
TEXT:NATSUMI YONEYAMA
問い合わせ先
アイシン
0566-62-8130

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古着買い取りは“信頼”の仕事 「ラグタグ」渋谷店バイヤーが大切にしていること

 ワールド傘下ティンパンアレイが運営するブランド古着の買取・販売チェーン「ラグタグ(RAGTAG)」の一番店である渋谷店は、2021年、22年3月期の売上高が前期比2ケタ増と業績好調だ。ファッションフリークが足しげく通い、流行最先端のトレンドアイテムや貴重なビンテージなどが流れ込む同店で、買い取り窓口となるのがバイヤー。ただ一般的なアパレル小売でいう買い付け担当とは違い、その役割は「鑑定士」に近い。

 正確な真贋判定と金額査定のために、最新のファッション情報には常にアンテナを張る。さらに重要なのは、「お客さまのとの対話」であると望月貴弘バイヤー。「僕らの一番大事な仕事は、単にいいものを目利きして買い取ることではない。服を託してもらうための信頼を作ることです」と語る望月バイヤーに、普段の仕事で心掛けていることや醍醐味を聞いた。

WWD:これまでのキャリアと仕事内容を教えてください。

望月貴弘「ラグタグ」渋谷店バイヤー(以下、望月):大手紳士服店を経てティンパンアレイに入社し、販売員として6年、バイヤーとしてのキャリアが10年ほどです。普段は店舗3階にある買い取りブースにこもり、持ち込んでいただいた服とにらめっこの毎日です。渋谷店では、あまりお目にかかれないレアなビンテージや「もう手放してしまうの?」というような最新のコレクションに出合うこともあり、飽きることはありません。服離れが言われる昨今ですが、このお店にいると、世の中にはまだまだ服が大好きな方がたくさんいらっしゃることを実感します。

WWD:バイヤーとして必要なスキルは?

望月:渋谷店の1日の買い取り点数はおよそ300点です。それらを数人のスタッフで査定・買い取り対応するため、お客さまを長い時間お待たせすることのないよう、真贋や状態をすばやく判別し値付けをしなくてはなりません。ブランドやトレンドに関する豊富な知識は、やはり必要です。紙媒体やランウエイ、SNSなどのファッション情報を通じて常にアップデートするようにしています。それを根気よく続けるには、もちろん「服が好き」であることも大事。僕自身もファッションラバーですし、学生のころから裏原系、アルチザン系、アメカジといろいろ着てきました。

WWD:バイヤーになるには?

望月:今の人事制度については詳しく知らないのですが、僕がバイヤーになったころは社内試験に合格する必要がありました。当時の試験は、「ラグタグ」の取り扱いブランドから無作為に選ばれた10点の商品について、「店頭での適切な販売価格を設定する」というものでした。膨大な数あるブランドを名前だけ知っているばかりではなく、商品の定価や中古品の取引相場まで頭の中にインプットできていないと導き出すことができません。合格のボーダーラインは正答率8〜9割。この試験に通るために、ファッション雑誌の発売日には本屋に足を運び、目を皿のようにして読み込んでいました。

 今は社内のデータベースを叩けば、ブランド情報や買取相場などある程度の情報は出てきます。ただこの仕事で最終的に大事になるのは、データだけでは判断ができないものや、僕ら人でしか作り出せない付加価値だと感じています。

WWD:データで判断できないもの、作れない価値とは。

望月:話は15年以上前にさかのぼるのですが、当時大学生だった僕が渋谷店を訪れたとき、若い店員さんに僕の着用していた服のブランドとシーズンをピタリと当てられたのです。着ていたのは「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」のコートでした。しかも聞けば、その店員さんはまだ入って日の浅いアルバイトとのこと。「なんだこの店は」とびっくりして、以来すっかりファンになってしまいました。振り返れば、この出来事が入社のきっかけでしたね。

 服についての知識は、単に買い取り金額を弾き出すためのそろばんではなく、お客さまと心を通わせるための武器になります。僕も年齢は40近いのですが、「(見た目は)若いのにすごく服に詳しいんですね」と驚かれます。そのギャップが印象に残るのか、次の指名につながることもありますね。インスタでのコーディネート投稿もできるだけ毎日するよう心掛けていて、それをきっかけに査定・買い取りの指名をして下さるようになったお客さまも多くいらっしゃいます。

 当店の買い取りでは新品同様なもの、比較的きれいなもの、一般的な古着……と状態によってランクを分けていますが、この仕事を続けていると、状態によらず大切にされてきた服は見れば何となく分かります。「服が本当に好きな方なんだな」「たくさん袖を通してきたんだな」ということが伝わってくるんですね。たくさんの服と向き合う仕事ですが、その先にいるお客さまの姿を見失わないようにすることが大切です。この仕事はつくづく「信頼」の仕事であると実感します。買い取りの個室ブースでは服との出合いや思い出話などに花が咲き、われわれに託す決心をしていただく方も多くいらっしゃいます。

WWD:消費者が不要な服を換金する手段として、フリマアプリも浸透している。

望月:フリマアプリは家にいながら手軽に、しかも中間マージンを抑えて服を売れる。僕たちはそれ以上の「来店する理由」を作っていかなくてはなりません。わざわざ店に足を運んでくださるお客さまの「潜在的なニーズ」を汲み取れるかが勝負だと思っています。

 僕も若い頃はたくさんの失敗をしてきました。お客さまに「あのスタッフには二度と対応してほしくない」と言われたこともあります。そういった経験を通して気づいたのは、「まだ着るかもしれない」「安く買い叩かれるかも」と迷いや不安を抱えて来店されるお客さまが想像以上に多いということです。査定が早くて正確ならいい、買い取り金額が高ければいいというわけではないのです。

 これは後輩を指導する際に伝えていることでもあるのですが、「すんなりと(買い取りが)成約してしまったときの方が、むしろ不安に思ったほうがいい」ということ。口先のテクニックで買い取りに至ったとしても、お客さまが100%納得していなかったとしたら、二度と来店いただけないこともありえます。

WWD:売り場作りには今でも関わっている?

望月:買い取った服を価値ある物として届けるのも僕らの仕事です。大事にされてきた服を、また次のオーナーにいい形でつないでいく。そういう素敵なサイクルの中にいられるのも、この仕事の他にない魅力です。せっかく託していただいた服なのだから、ぎちぎちのラックに並べるわけにはいかない。そんな思いで、ときどき売り場に出ては現場のスタッフにちょこちょこ口出ししています(笑)。

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【週間アクセスランキング 】最新の注目トピック TOP10(9月15〜21日)

「WWDJAPAN」 ウイークリートップ10

 1週間でアクセス数の多かった「WWDJAPAN」の記事をランキング形式で毎週金曜日にお届け。
今回は、9月15(木)〜21日(水)に配信した記事のトップ10を紹介します。

 「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントでも、毎週土曜日に【週間アクセスランキング】を配信開始。ファッション&ビューティ業界のニュースはもちろん、コレクションのルック、パーティーやストリートのスナップ、ライフスタイル情報など、幅広いジャンルの注目トピックを週3回お届けします。今すぐ「WWDJAPAN」のLINE公式アカウントを[友だち追加]して、最新トレンドやファッション&ビューティ業界で注目されているトピックをチェックしよう。
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- 1位 -
スノーピーク山井梨沙社長が辞任 「既婚男性との交際および妊娠」を理由に

9月21日公開 / 文・林 芳樹


 スノーピークは21日、山井梨沙社長が同日付で辞任し、山井太会長が社長職を兼任すると発表した。辞任理由について同社は、山井梨沙氏から「既婚男性との交際および妊娠を理由として、当社およびグループ会社の取締役の職務を辞任したいとの申し出」があったとしている。事態を重く見て、山井太氏は役員報酬3カ月分の20%を、副社長の高井文寛氏から役員報酬3カ月文の10%を自主返上したいとの申し出があり、同社はこれを受理した。
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- 2位 -
スターバックスとスヌーピーが初コラボ Tシャツやタンブラー、スタバカードなど全23アイテムを発売

9月15日公開 / 文・WWD STAFF


 スターバックス コーヒー ジャパンは「ピーナッツ(PEANUTS)」の登場キャラクター、スヌーピーとの初のコラボコレクションを発売する。第1弾は9月28日から、第2弾は10月5日からスターバックス公式オンラインストアで販売する。同コレクションは、“HAPPINESS IS CONNECTING TOGETHER”〜しあわせはきみとのつながり〜をテーマに、スターバックスのパートナー(従業員)として過ごしながら気づいていく“日常のしあわせ”を描いた全23アイテムを用意する。
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- 3位 -
【2022年クリスマスコフレ】「ジルスチュアート」からヴィンテージ調のコフレが登場 テーマはチェリー溢れる“真夜中のティーパーティ”

9月20日公開 / 文・WWD STAFF


 「ジルスチュアート(JILL STUART)」は2022年ホリデー限定の”ミッドナイトチェリ-コレクション”を10月28日から順次発売する。チェリーが溢れる真夜中のティーパーティをイメージした限定のコフレや製品をラインアップする。なお、10月14日から予約を開始する。 10月28日発売のコフレ“ミッドナイトチェリー コレクション”(税込8250円)は、アイカラーパレット、プレストパウダー、リップ&チークといった人気アイテムの限定色をヴィンテージ調のポーチに詰め込んだ特別なコフレだ。
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- 4位 -
キャサリン皇太子妃とメーガン妃、エリザベス女王の国葬は英ブランドで参列


 9月8日(現地時間、以下同)に亡くなった英国のエリザベス女王(Queen Elizabeth II)の国葬が、19日にロンドンのウェストミンスター寺院(Westminster Abbey)で行われた。葬儀には王室メンバーや政府関係者、各国の元首や首脳が参列した。キャサリン皇太子妃(Catherine, Princess of Wales)は、英国ブランドの「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」の黒いコートドレスを着用。
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- 5位 -
「フォーエバー21」が2023年春に再上陸へ

9月21日公開 / 文・五十君 花実


 2019年に日本から撤退したかつてのファストファッションブームのけん引役、「フォーエバー21(FOREVER 21)」が、アダストリアとのタッグで23年春に再上陸する。同ブランドは19年の経営破綻後、ブランド管理会社の米オーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)傘下にある。伊藤忠商事がABGと日本での独占販売契約を結び、アダストリアは伊藤忠とサブライセンス契約を締結。10代〜30代前半を主対象に、まずはウィメンズのウエアと雑貨を販売する。
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- 6位 -
「オメガ」の“スピードマスター '57”新キャンペーンにジョージ・クルーニーとヒョンビンが登場


 世界最大の時計企業であるスウォッチ グループ(SWATCH GROUP)傘下のスイスブランド「オメガ(OMEGA)」は、アイコニックな“スピードマスター '57(Speedmaster '57)”コレクションの新たなキャンペーンに、長年アンバサダーを務めている米俳優ジョージ・クルーニー(George Clooney)と、2020年にアンバサダーに就任した韓国の俳優ヒョンビン(Hyun Bin)を起用した。
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- 7位 -
【スナップ】「ウルトラジャパン 2022」1日目 強烈個性なフェスコーデの達人たち

9月17日公開 / 文・福永千裕


 国内最大級の都市型ダンスミュージックフェス「ウルトラ ジャパン2022(ULTRA JAPAN以下、ウルトラジャパン)」が、東京・台場の特設会場で9月17日、18日の2日間開催している。今年は2014年の第1回以降7回目、コロナ禍を経て3年ぶりの開催となり、2日間で総勢46組のアーティストがステージに立つ。
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- 8位 -
小嶋陽菜によるランジェリーブランドがデビューイベントを開催 一部の商品が試着可能

9月16日公開 / 文・福永千裕


 小嶋陽菜が代表を務めるハート リレーションは、ランジェリーブランド「ロジア バイ ハーリップトゥ(ROSIER BY HER LIP TO)」のデビューに際したイベントを、ハウス オブ エルメ(HOUSE OF HERME)で9月22日から開催する。イベントでは、26日から販売を開始するデビューコレクションのうち“エブリデイ エッセンシャル ブラ”と“エブリデイ エッセンシャル ナイト ブラ”の試着が可能。さらに、イベント特設ページから購入ができる。
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- 9位 -
アンダーウエアがアウターの時代 「トム フォード」は光り輝くセンシュアルボディを飾る

9月20日公開 / 文・八木橋恵


 夜空にライトアップされたワールドトレードセンターが映えるロウワー・マンマンハッタンで、「トム フォード(TOM FORD)」がランウエイショーを開催した。ブルックリン・ベッカム(Brooklyn Beckham)や女優のニコラ・ぺルツ(Nicola Peltz)、モデルのエヴァン・モック(Evan Mock)らセレブが集い、フォトグラファーたちが歩道にごった返して誕生したファッショナブルなカオスは、「トム フォード」ならではだ。
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- 10位 -
エリザベス女王の最後のポートレートに仏ジュエラー「ブシュロン」のブローチ 両親から18歳の誕生日に贈られたジュエリーを着用

9月21日公開 / 文・益成 恭子


 英国のエリザベス女王(Queen ElizabethⅡ)といえば、ワントーンでまとめたファッションに3連のパールネックレスとブローチがトレードマークだった。エリザベス女王が最後のポートレートで着用しているブローチは、「ブシュロン(BOUCHERON)」のもの。オーバル、バゲット、ラウンドカットのダイヤモンドとアクアマリンがセットされた2つのピースから構成されるアールデコスタイルのブローチは、女王の叔父であるケント公爵が1937年にロンドンで購入し、英国王室のロイヤルコレクションの一部になった。
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10代に美の多様性をレクチャー 資生堂SABFAとインスタグラムがサポートする理由

 渋谷パルコを会場に、10代の若者がクリエイションの原点に出合える学びを提供するGAKU(ディレクターは、「リトゥンアフターワーズ(WRITTENAFTERWARDS)の山縣良和)は10月、美が持つ多様性を学ぶ「我美と作美(わびとさび)」を開講する。好評だった前回同様、資生堂のヘアメイクスクールSABFAの計良宏文校長がメーン講師を務め、インスタグラムも協力する。

 講師陣は、山縣デザイナーのほか、アーティストの下田昌克、写真家のKarinNoguchiら。美しさの多様性を学んだ後、メイクの技術を身につけ、撮影、それをSNSで発信するまでの一連を学ぶ全11回の講座だ。計良校長、フェイスブック ジャパン インスタグラム広報の市村怜子担当、そしてGAKUの武田悠太ファウンダーに、講座と、若い世代に学んでほしいことなどを聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):「我美と作美」が始まるまでの経緯は?

武田悠太GAKUファウンダー(以下、武田):GAKUは、10代が中心のクリエイションの学び舎。建築から音楽、ファッション、演劇、伝統工芸まで、幅広い領域のクリエイティブを一流、最前線で活躍しているクリエイターが直接教えている。いずれも、少数でリアル。講師陣のオーラや考え方、発する言葉などを直接感じてもらいたい。受講生は小学生じゃないから、自分たちが作るモノが、どんな評価やインパクトを生み出すのか?までを経験する場を設けている。ファッションの中でメイクがやりたいと、計良さんの力を借りることになった。

計良宏文SABFA校長(以下、計良):SAFBAのようなプロの学校ではないので、もう少しユルく、自由度の高い授業を考えた。例えば資生堂も加担しているのかもしれないが、唇には「上が1に対して、下は1.3が理想的」という黄金律が存在するが、そういうルールにとらわれない多様な美を考えたい。SAFBAの校長をしていて、プロになるには、プロに必要な感性の教育が重要と考えるようになった。将来に明るい希望を持っている人たちに対して、メイクに興味を持ってもらい、美について学ぶ機会を提供したい。自己表現の手法としてモノづくりする楽しさを伝えながら、「プロになるために、何をしたらいいのかわからない」子どもたちに基礎までを伝えられたらと思う。

WWDJAPAN:インスタグラムも「我美と作美」に協力するのは、なぜ?

武田:ちょうど前回は、インスタグラムをはじめとするSNSがアメリカのティーンエイジャーに良くない影響を与えているのでは?という懸念が生まれた頃だった。

市村怜子フェイスブック ジャパン インスタグラム広報担当(以下、市村):インスタグラムは、若い世代にたくさん使っていただくため、安全に使ってもらうため、例えばいじめに対するコメントにフィルター機能をかけたり、保護者に向けての啓発活動に取り組んだりしている。それでも、若い世代はSNSからの情報で価値観が作られたり、影響を強く受けたりする。実際、SNSで画一的な美しさにとらわれる懸念があることは認識しており、「何かできないだろうか?」と考えていた。

武田:本来インスタグラムは、周りにいろんな友達ができるポジティブなコミュニケーションのプラットフォーム。ただポジティブな側面が当たり前になりすぎて、当時はネガティブな一面が注目され始めたときだったと思う。

市村:ネガティブな一面は、あらゆるツールに存在する。ただインスタグラムがあったからこそ、新しいものに出合えたり、周囲に認めてもらいながら全然違う国の人と繋がれたりする。多様性や多様な美しさに、もっといい影響を与え、貢献したい。おかげさまで、インスタグラムはクリエイティブな人たちが使っている。発信することでビジネスにつながるというクリエイター支援の側面は、ここ数年で顕在化し、会社としてもフォーカスしている。GAKUのようにかなり特殊でクリエイティブな学校を見つけて、参加するほどの情熱がある人は、今後クリエイターになるかもしれない人。今後の活動に役立ててもらえるのでは?と考えた。

WWD:実際、どんな授業を行ない、前回はどんな子どもたちが参加した?

武田:前回はメイクが大好きですでにプロ級のモデルから、未経験の男の子まで、本当にいろんなタイプが集まった。日本の教育は、同じ部類、同じ年齢、同程度の技量の人が集まりがちだが、GAKUにはバラバラな子が集まる。現実の世の中は、そんなもの。本当の勝負になれば、ビューティの世界でもメイクアップアーティストだけと争うワケじゃない。さまざまな人と学ぶことは、今後の自身につながると考えている。

計良:前回、初日は「美」について語り合ったが、そこからすでに多様で面白かった。例えば14歳の子は「カルティエ(CARTIER)」のイベントでもらったカードのコピーの美しさに惹かれ、一方福祉施設で働く19歳は「人と人の心が通じ合った時の感覚、喜び、笑顔、時間に美しさを感じる」という。

武田:彼は福祉施設に住み込み、障がいがある人と一緒に生活している。なかなかコミュニケーションできなかった人とできるようになった時が「美しい」と思うのは、外見や内面、物事すべてに美しさを見出しているということ。衝撃とともに、嬉しさを覚えた。

計良:メイクは外見だけじゃなく、「らしさ」を表現することと常々伝えているが、外見を変えることで内面、内面が変わることで相手の印象が変わり、最終的には美意識までは変容する。前回は実技の授業が少なかったので、今回はもう少し幅広いテクニックを見せ、化粧品に触れられる時間を設けたい。

市村:インスタグラムが担うのは、ポートフォリオ的な作品集を作ること。完成度が高い写真を投稿するのは当たり前だが、それだけはSNSでもファンは生まれず、応援には繋がらない。駆け出しの時は、自分の発信が正しいか不安に思うこともあるだろう。それでも一生懸命投稿し続けると、ファンが生まれ、応援され、DMなどのコミュニケーションで支えてもらっていることを実感できるから、前向きになれる。インスタグラムは、そんな拠り所のような存在になれる。

計良:ありふれたものを発信するのではなく、新しい美を投げかけるようなチャレンジをしてほしい。自分が思う「美」については授業の中でもルーツを考え、突き詰めてもらう。その上で生み出した新しい「美」は、これまでの価値観を覆すものであるべき。そうじゃないと、新しい美は生まれない。そんな勇気まで、話し合いながら育んでいけたらと思う。

武田:前回参加した学生の中には、最終回でいきなり金髪になって現れた受講生がいた。本人の中で、既成概念が覆ったんだと思う。

計良:当初は、「カラーコンタクトに挑戦したいのにできない」くらい、周りから見れば些細だけれど、本人に取っては大きな問題で悩んでいたが、今インスタグラムを見るととっても楽しそう(笑)。

武田:計良さんが今なお覚えているなんて、本当にスゴいこと(笑)。今回も少人数で、一流の人と直接触れ合える機会を創出したい。

「我美と作美」開催概要
日時:2022年10月上旬~2023年3月上旬/全11回/原則水曜 17:00~19:00
会場:GAKU(渋谷区宇田川町15-1渋谷PARCO 9階)/SABFA(渋谷区神宮1-14-30 WITH HARAJUKU 2F)/Meta Tokyo office(港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズビジネスタワー)
対象:10代 、10人程度(先着順)
受講料:3万8500円

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ファッション・ディレクターの三好良が語る、「ナッシング」初のスマートフォン“Phone (1)”の魅力

 英ロンドンを拠点とする新鋭デジタルプロダクトブランド「ナッシング(NOTHING)」が、初のAndroid版スマートフォン“Phone (1)”を発売した。ホワイトとブラックの2カラー展開で、価格はRAM 8GB/ROM 128GBのモデルが税込6万3800円、RAM 8GB/ROM 256GBのモデルが同6万9800円、RAM 8GB/ROM 256GBのモデルが同7万9800円。現在、「ナッシング」の公式サイトをはじめ、東京・渋谷のセレクトショップ「キス トウキョウ(KITH TOKYO)」や「蔦屋家電+」、その他家電量販店などで取り扱い中だ。

 このたび発売にあわせ、東京を代表するセレクトショップ1LDKで長らくディレクターを務め、現在はファッション・ディレクターとして活躍する三好良氏に“Phone (1)”を使用してもらい、その使い心地やデザインの魅力について語ってもらった。プロフェッショナルの視点から見る“Phone (1)”とは?

「スケルトンに惹かれる男性は多いですよね」

ーーまずは、“Phone (1)”の第一印象を教えてください。

三好:やはり、特徴でもあるスケルトンの背面が目を引きましたね。僕自身、1LDKで働いている時にスケルトンの腕時計をデザインしたり、アトリエに置いてあるチェアがプラスチック製の“プリア(Plia)”だったり、なぜか透明で光ったりするものが好きで、同じようにスケルトンに惹かれる男性は多いですよね。どこか無機質でインダストリアルだけど柔らかい雰囲気は、アトリエのテンションにも合うなと思いました。

ーー実際に使用してみた感想は?

三好:一般的なスマートフォンは、机に置いたときにディスプレイを上にしなければ通知が来たかどうかが分かりませんが、“Phone (1)”は背面に搭載された974個のミニLED“グリフ・インターフェイス”で光り方を設定すれば、ディスプレイを下にしていてもメールや着信、充電状況などを簡単に識別できるのが便利です。それに、“グリフ・インターフェイス”は写真や動画を撮影する時にも使用できるので、光量を調節して自然な光を再現できるのも嬉しいですね。ディスプレイはノッチがないので気持ち良く映像を見ることができるし、6.55インチとサイズが大きいので車の運転時にはナビ画面として重宝しています。あとは、独自のフォントや機械的な操作音も新鮮ですし、Androidのスマートフォンなので仕事でよく使う「グーグル(GOOGLE)」のアプリが立ち上げた時点で入っていながら、デフォルトのアプリ数が必要最低限でスッキリしているのは好印象でした。

「デザインの完成度は純粋にすごいと」

ーー1人のユーザーとしてではなく、1人のディレクターとして気になった点はありますか?

三好:洋服の場合は、使用できる生地の素材が豊富でサイズも自由ですが、スマートフォンは実用性を第一に操作性や機能性、耐久性などを考慮しつつ、数少ない素材でデザイン性も高めなければいけない。その中で、“Phone (1)”はリサイクル素材を使用しているので制約がより多かっただろうし、それでこのデザインの完成度は純粋にすごいと感じましたね。

ーー“Phone (1)”は、どういう方におすすめですか?

三好:デザインを重視したい人、例えるなら“ブラックベリー(BlackBerry)”を使っていた人みたいな(笑)。昔はデザイン性と機能性を両立させるのが難しかったですが、“Phone (1)”はどちらも兼ね備えているので、他人と違うものがほしい人には良いと思います。スマートフォンをシンプルにデザインで選ぶ時代が来るのかもしれませんね。実は9月末にショップをオープンするんですが、ショップの電話に“Phone (1)”を採用しようと考えていて、企業が受付の電話や社用携帯として取り入れるのもアリではないでしょうか。

ーー今後、「ナッシング」で見てみたいプロダクトはありますか?

三好:レコードプレイヤーやカセットデッキなど、“全員が必要としていないけど、こだわりが持ててスケルトンで存在しないもの”ですかね。

What is “Nothing”?

 そもそも「ナッシング」とは、スウェーデン出身の起業家カール・ペイ(Carl Pei)が、“iPodの父”として知られるトニー・ファデル(Tony Fadell)や、ライブストリーミングサービス「ツイッチ(Twitch)」の共同設立者であるケビン・リン(Kevin Lin)ら著名投資家の支援を受けて2020年10月に設立。社名は、“人間とデジタル製品の間の障壁がまるで何もない(nothing)ような状態を追求する”から名付け、デザイン性と使いやすさを重視した“型にハマらない”プロダクトを手掛ける注目のブランドだ。

“神は細部に宿る”、
デザイン性の高さから世界中で
注目を集める“Phone (1)”

 そして、今回三好氏にも使用してもらった“Phone (1)”は、「ナッシング」が21年7月に発表した第1弾プロダクトのワイヤレスイヤホン“ear (1)”に続く待望の第2弾プロダクト。スマートフォンが普及して早十数年、各社・各メーカーが毎年のように新型を発表するもデザインの画一化は否めない。そこに一石を投じるべく開発された“Phone (1)”は、発売前に全世界で20万台以上が先行予約され、世界最大のオンライン市場「ストックX(STOCKX)」で行われた100台限定(シリアルナンバー付き)のオークションでは最高で3000ドル(約40万5000円)の価格で落札されるなど、その細部まで作り込まれたデザインで早くから熱い眼差しが向けられていた。

 ハードウェアは、「ナッシング」の名を世界に広めた“ear (1)”同様、背面がスケルトン仕様になっているだけでなく、974個のミニLEDから構成された“グリフ・インターフェイス(Glyph Interface)”も備えている。これは、研究チームが“ユーザーの生活までをも明るく照らす”ために開発したもので、メインカメラでの撮影時にライトとは別の照明として利用できるほか、通話やメールの通知、充電状況などを音と共に光でアナウンスしてくれる機能だ。また、“グリフ・インターフェイス”とあわせて透けて見える内部の近未来的な基板配置は、イタリア出身デザイナーのマッシモ・ヴィネッリ(Massimo Vignelli)がデザインしたニューヨークの地下鉄路線図に着想しており、これまでスマートフォンの背面デザインや通知の在り方とは全く異なるアプローチを見せている。さらに、フレームに100%再生アルミニウムを使用し、プラスチック部品の50%以上をバイオベースとリサイクル由来で制作するなど、環境にも配慮したプロダクトである点も魅力的なポイントだろう。

 プラットフォームは、Android 12をベースとした「ナッシング」のオリジナルとなる“Nothing OS”を搭載。ドット風のフォントやメニュー構成など、“かゆいところに手が届く”ディテール部分のカスタマイズが加えられている。また、画面内指紋認証と顔認証の両方に対応しているほか、カメラは広角と超広角のデュアル構成でどちらも5000万画素のセンサーを内蔵し、ディスプレイはノッチを廃止しベゼルの太さを均一とすることでスマートな印象に。そのうえ、リバースチャージと呼ばれる機能により、“Phone (1)”本体で“ear (1)”をはじめとするワイヤレスイヤフォンの充電ケースを充電することができる優れものだ。

PHOTO:TAKU MATSUDA
TEXT:RIKU OGAWA
問い合わせ先
ナッシング カスタマーサポート
0120-789-830

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ファッション界からアーティストへ 橋爪悠也が問いかける“本当のオリジナル”

 橋爪悠也は、目から涙がこぼれる瞬間を描いた“eyewater”シリーズなどで知られるアーティストだ。8月から9月にかけて、同シリーズにフォーカスした過去最大規模の個展を東京の二カ所で同時開催した。橋爪はファッション業界からアーティストに転身した異色の経歴で、これまで架空の植物を調査するシリーズ“変植物調査団”や似顔絵を描いてくれる自動販売機“ヘンナーベンダー”などを発表してきた。そして2017年頃に“eyewater”を披露。さまざまなバックグラウンドを持つ人物が、涙を流してこちらを見つめる同シリーズで、広く知られる存在になった。しかしシリーズのタッチが藤子不二雄の作品を想起させることから、インターネットを中心に「コピーだ」と物議を醸した過去もある。それでも、“オリジナルとは何か?”という問いを追いながら創作を続けており、アジアでも徐々に人気を集めている。ファッション界での経験や、炎上騒動からの復活、そして将来についてを本人に聞いた。

地方の“オラオラ系”から
東京の「ザ・ノース・フェイス」へ

WWD:上京前は何をしていた?

橋爪悠也(以下、橋爪):高校卒業後、地元の岡山を離れて大阪のバンタンキャリアカレッジでファッションビジネスの勉強をしていたんです。その後、ゴールドウインの「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」でアルバイトを始め、上司に恵まれて上京するチャンスをもらい、原宿の旗艦店で4年ほど販売スタッフをしていました。

 上京した頃の僕は“おしゃれピープル”のつもりでオラオラしていましたけど、東京の空気とは温度差があり「声がでかい」だとか、何をするにもいじられましたね。2010年にオープンしたザ・ノース・フェイス スタンダードの1号店では初代店長を任せてもらいました。

WWD:当時学んだことは?

橋爪:僕がいたころの「ザ・ノース・フェイス」はブランドがまだ大きくなる前で、ストリートとの融合でアウトドアブランドの先頭に立とうという時期。今振り返ると、“本当にいいものなら、寝る間も惜しんで作っていこうぜ!”という昭和っぽい熱気がありましたね。そのころに出会った、PRの小口大介さんや当時は事業本部長だった現社長の渡辺貴生さん、あとは「ザ・ノース・フェイス・パープルレーベル」とナナミカを手掛けている本間永一郎さんらの“かっこいいと思うことを突き詰める精神”には感化されました。

WWD:イラストを始めたのはどのタイミングで?

橋爪:昔から絵を描くのが好きだったことを思い出して、店舗スタッフ時代からパソコンでイラストを描き始めました。その延長で、店頭のポップのデザインを自分でやるようになったらプレスのチームから声がかかり、2年ほどプレスをやっていました。

WWD:独立したきっけかは?

橋爪:外注したデザイナーの請求書を見たときに衝撃を受けて、自分も稼ぎたいと思ったからです。知名度のあるブランドでPRをやってきたおかげでつながりもたくさんあり、どうにかなるだろうという何となくの自信でフリーのデザイナーになりました。

WWD:実際に何とかなった?

橋爪:最初の1〜2年は持っていた漫画本を売って生活するくらいお金がなかったですね。カフェでバイトをしながら、人の紹介でモデルを少しやったり、イラストの仕事ももらったりして食いつないでいました。

 そんな時、知り合いに「依頼されたものだけを作っていると辛くなる時が来るから、表現したいことを形にしてみたら?」と言われ、自分の作品を作るようになったんです。最初の展示は、地元岡山で同級生が運営している服屋カサノヴァ&コー(CASANOVA&CO)で、架空の植物をテーマにした“変植物調査団”のインスタレーションでした。

“オリジナルは存在する?”
問いかけて議論したかった

WWD:現在の作風にはどのようにたどり着いた?

橋爪:出発点は、ファッション界でよくある話だったんです。例えば、あるブランドが他社の商品を真似して作ったものが爆発的にヒットして、世間には後発のものがオリジナルと認識される事例は多々あります。既視感のあるものでも、作った本人たちは自分たちのオリジナルという体でやっているし、周囲もそれを指摘しない。それがファッション界で当たり前に行われていることに対して、すごくもやもやしていました。その頃から「本当のオリジナルって存在するのか?」「全て何かに影響を受けて生まれたものじゃないのか?」と考えるようになりました。

 その答えはきっと簡単に出ないだろうけど、みんなに問いかけて議論できれば楽しいなと思って、子供の頃から大好きな藤子不二雄先生のタッチを当時の作品に引用しました。さらに、僕が今のような作品を作り始めた当時、女性のバストアップの構図が注目され始めていたので、女性のモチーフを採用しました。でも、結果的に批判が多く、暴言やきつい言葉を一方的に浴びせられて、当時はきつかったですね。

WWD:作品のこだわりは?

橋爪:僕は作品そのものより、最初の“オリジナルとは?”というテーマをずっと引きずっているので、こだわりは正直ないんです。“eyewater”シリーズは個人的にはそろそろやり尽くした感覚がある一方で、多くの人が求めるものをまだ作れるかもしれないとも考えています。その辺の感覚は、PRの仕事をしていた経験が生きています。

 今後の代表作の一つになりそうな“猫シリーズ”も、ビジネス的な感覚がスタートでした。コロナ禍で犬や猫のかわいい映像を集めたテレビ番組を頻繁に見て、これはビジネスになるんだと気づいて始めました。でも友だちに「お前が描く猫はかわいくない」と言われたのをきっかけに自分でも猫を飼い始めて、今ではすっかり溺愛しています。

アートバブルに見る“ファッション的な軽さ”

WWD:一部で“アートバブル”とも言われる国内の市場をどう思う?

橋爪:ストリートからの流れですよね。自分はその二番煎じですが、国内の市場は今あまり意識していなくて、できれば海外で活動して逆輸入的な存在になりたい。日本では東京のイケてる人たちにムーブメントを引っ張っていってもらって、おこぼれをもらえたらいいぐらいの感覚です(笑)。

 作品では日本の漫画のカルチャーを扱っているので、国内での評価は直接的だけど、海外の人は素直に褒めてくれます。今は中国や台湾、韓国とアジア圏を中心にファンがついてきているし、もしかしたらアメリカやヨーロッパにも挑戦できるかもしれない。特に中国はアート界にも元気があるので、海外のムーブメントに入り込むのを目指す選択肢もあります。

WWD:近年、アートなどのカルチャーとファッションがコラボすることも増えている。この傾向はポジティブなこと?

橋爪:いいことだとは思います。「ビームス(BEAMS)」が少年ジャンプ作品とコラボし始めた頃、スタイリストやプレスが堂々と漫画好きをアピールするようになったんですよ。それまでオタクっぽいと言われてきたカルチャーの潮目が変わった時に、ファッション的な“軽さ”を感じたんですよね。でもその後も盛り上がり続けているから、きっかけは“軽さ”でもいいですよね。

WWD:自身の作品をアパレルやグッズにしたい?

橋爪:コラボレーションしたいんですが、実際はお断りすることが多いです。今は“アーティスト橋爪悠也”をどれだけアピールしても、作品の“eyewater”に負けています。だから依頼も“eyewater”をプリントしたいという内容が多いんです。僕も売る側の人間だったので、ビジネス的な観点では仕方ないことだと理解はしているのですが、長くは付き合っていけない“軽さ”は、時代に消費されてしまいかねない。僕は作家として長年やっていきたいので。

WWD:今後の目標は?

橋爪:人間として愛されるアーティストになりたいですね。ゴールドウイン時代、「ザ・ノース・フェイス」ほどの大きなブランドを背負っていると、人と接していても多くの人はブランドの方を向いていた。強烈な個人にならない限りは、僕個人を見てくれないのだと分かりました。

 それに僕は今年39歳で、「リラックス(RELAX)」や「スタジオ・ボイス(STUDIO VOICE)」などの紙媒体を読んでいた世代です。だからアーティストのインタビューで制作の裏側を知るとグッとくる。だから個をもっと押し出して、自分のカルチャーや好きなものが反映されている作品を作っていきたい。顔を出して、自分のバックグラウンドも積極的に語っていきたいですね。

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ジーユー柚木治社長に聞く「ニューヨーク出店」「中国でのローカル化」「vs.シーイン」

 出店再強化を打ち出すジーユーは今秋冬、移店リニューアルを含め国内に25店を出店すると共に、ニューヨーク・ソーホーにも1年間の長期ポップアップストアをオープンする。オープン日はまだ非公表だが、アジア圏以外への出店は「ジーユー(GU)」として初めて。ノウハウを蓄積し、来秋以降の常設店出店を目指すという。「ジーユー」がよりグローバルなブランドになるために必要なことを柚木治社長に聞いた。

WWD:ニューヨークへの出店はどんな狙いからか。

柚木治ジーユー社長(以下、柚木):2つの意図がある。1つ目は、世界の最先端かつ最大の市場である北米にいずれ進出するなら、なるべく早くチャレンジすることで成長していきたい。兎にも角にもグローバル化が至上命題だと考えたとき、最先端の市場に出ていった方が学ぶことは多いし、それがグローバル化への一番の近道だ。出店すれば、このままのやり方ではダメだという点にも直面するだろうし、一方で「ジーユー」のよさも再認識できるかもしれない。成功のための勝算がしっかりあって、準備万端で出ていくわけではない。売り場面積は約270平方メートルととても小さい店で、品ぞろえもかなり絞る。

WWD:北米はECが日本以上に発達し、OMOも進んでいる。どう仕掛けるのか。

柚木:今回のニューヨークのポップアップストアではECは立ち上げない。ポップアップストアを運営しながら、OMO事例を市場に学んでいく。ポップアップの後に常設店を出店するかはまだ未定だが、出店する際はその知見を生かしていく。ECは立ち上げないが、SNSを活用して情報発信をすることで、現地のお客さまとつながっていく。

WWD:ニューヨークの中でも、ソーホーは商業一等地だ。兄弟ブランドの「ユニクロ(UNIQLO)」が2005年に北米に初進出した際は、ニューヨークの隣、ニュージャージー州の郊外モールからだった。

柚木:当時は郊外から出店した方がコストが抑えられ、リスクが少ないのではないかという仮説に基づいていたが、結論としては、都心から出店してブランドポジションを築かないと、いつまでたっても誰にも知られないブランドのままだ。(「ジーユー」は都心一等地に出店するが)だからといって成功する保証があるわけではない。売り場も狭いため、売り上げが規模としてしっかり取れるかどうかは分からないが、「北米ではこういった商品なら売れる」「ここを伸ばせばもっと支持される」といった傾向をつかむことがこの店の目標だ。

WWD:サイズ展開や北米市場に合わせたローカライズはどのように行うのか。

柚木:23年秋冬は特にローカライズはしない。北米のお客さまに多い体形や好まれるテーストの仮説はあるが、決めつけてMDに変更を加えることはせず、まずは「ジーユー」そのままを持っていく。サイズ表記も日本表記のままにし、その旨をお客さまに案内しながら販売する。

国ごとに異なる「ジーユー」は作らない

WWD:既に進出しているアジアでは、中国本土に9店、香港に8店、台湾に18店がある。近年、特に中国では地元ブランドへの支持が高まっており、外資ブランドにとっては逆風となっている。

柚木:中国で地元ブランドが人気となっていることは感じる。しかし、他の(外資)ブランドが全てダメというわけではなく、支持されるブランドもそうでないブランドもある。「ジーユー」は中国では、(日本よりも)アイテム数を絞り込んでキュレーションして見せている。マストレンドをコーディネートしやすく打ち出し、品質も安定していて、スマートにファッションを楽しめるブランドだとお客さまには見られている。それは狙い通りではあるが、そうしたイメージがまだ(幅広くは)伝わっていない。だから黒字化していない。なぜ伝わっていないかというと、ファッションに対する好みが違うから。(中国が日本と違うというよりも)日本が世界的に見ても非常にコンサバで、例えば体形や肌を隠すことを好む。中国ではよりメリハリのある、見せるところは見せるようなファッションが好まれる傾向にある。

WWD:そうした市場の違いに対応するため、中国向け商品を作っているのか。

柚木:これはまさに(グローバル化のための)真髄の部分だが、中国向けとして日本とは全く別の商品は作っていない。中国のお客さまのニーズは取り入れながら、「ジーユー」のアイデンティティーを失わない商品をワンコレクションとして作っているというのが答えだ。中国のお客さまを意識した商品もあるが、それが日本でも売れることを目指している。中国の地元ブランドや欧米ブランドの真似をしてもかっこ悪いし、それでは勝てない。展開する国ごとに違う「ジーユー」を作る実力も必然性もない。「ジーユー」は展開先各国のニーズを取り入れたワンコレクションを、品番絞り込み型でやろうとしているわけだから、非常にチャレンジは多い。そこを乗り越えるからこそ、とても分かりやすくて鮮度もあるという服ができる。(中国と日本で肌見せに対して感覚が違うなら)アイテムが同じでもスタイリングで幅を見せていくといったことで対応する。

WWD:オンラインSPAの「シーイン(SHEIN)」が影響力を強めている。買いやすい価格でトレンドを打ち出しており、「ジーユー」と真正面から競合している印象だ。

柚木:「シーイン」とは提供価値が大きく異なる。「ジーユー」は品番絞り込みを(価格低減や選ぶべきアイテムの分かりやすさといった)お客さまの価値につなげているが、「シーイン」はECのみの展開であることを生かして、なんでも選べるという商品バリエーションを打ち出している。「ジーユー」の方がよりマスな商品なので、実店舗とは相性がいい。ファッションは接客によって喜びが増えるというのが本質だと私は信じているが、時代の移り変わりと共に、実店舗で求められるあり方は接客からセルフ式に移行してきている。スマホでアプリを見ながらセルフで買い物をするお客さまも多く、スタイリングなどをどんどん提案できるアプリはもはや接客しているのと等しい。セルフ式、ないしはアプリで接客というのが今の時代の基本ではある。一方で、リアルな接客価値もなくならない。だからこそ、(実店舗とアプリ接客などのデジタルとを)ハイブリッドすることが勝ち筋だと思っており、出店を再強化する。

WWD:22年8月期は減収、大幅減益だった。23年8月期の滑り出しは。

柚木:商品自体は支持されているが、このところ気温が高く、ここからという感じだ。

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来場者が語る「クードス」の魅力 2023年春夏コレクションに潜入

 工藤司が手掛ける「クードス(KUDOS)」と「スドーク(SODUK)」は、2023年春夏コレクションを「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で披露した。今季のテーマは、デザイナーの故郷である「okinawa」や「lonely」「gay marriage」など30以上のキーワードで構成。準備期間が実質わずか2カ月だったにもかかわらず、通常行われるショーのルック数の2倍にあたる60ルックを用意し、壮大なショーが作れる実力を見せつけた。

 「WWDJAPAN」映像チームはバックステージやショーの様子を捉え、アーティストの向井太一やファッションジャーナリストのマスイユウら来場者にブランドの魅力を聞いた。

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「OAMC」ルーク・メイヤーがアップサイクルに挑む理由 新ラインに込めた願い

 「OAMC」は、新たなプロジェクト“リワーク(RE:WORK)”を2022年に立ち上げた。同プロジェクトは、捨てられたり、着古されたりした服に、新しいデザインアイデアを組む込むというアップサイクルの試みだ。服を再利用すると同時に、ビンテージの服や生地を新しく生まれ変わらせるための技術開発を目的に掲げている。2022-23年秋冬シーズンの価格帯はアウターが20万円前後で、シャツ11万台円〜、パンツ8万円台〜とメインコレクションと同等だ。日本ではロンハーマン(RON HERMAN)のほか、エディション(EDITION)、ビオトープ(BIOTOP)、パブリック(PUBLIC)、トラリ(TLALLI)で販売している。

 ブランドを率いるルーク・メイヤー(Luke Meier)は、これまでもミリタリーアイテムをアップサイクルする“ピースメーカー(PEACEMAKER)”などでビンテージの再解釈に挑んできた。“リワーク”を新たなプロジェクトとして始動させた狙いとは――メイヤーに聞いた。

ファッションの発信力を信じて

WWD:“リワーク”を立ち上げた理由は?

ルーク・メイヤー(以下、メイヤー):“リワーク”は、さまざまなデザインアイデアをリスペクトし、使われなくなった服や素材を用いた新しい服作りだ。このプロジェクトを通じて生まれ変わったアイテムが人々に着用され、新たな価値を感じる機会を生み出せるはず。同じく、リメイクの手法を取り入れてきた“ピースメーカー”が服を使ってメッセージを伝える方法だとすると、“リワーク”はコレクション全体でのアプローチである。

WWD:“ピースメーカー”は「OAMC」の中では価格帯を抑えたエントリーとしての役割も担ってきたが、“リワーク”はインラインと近い価格帯だ。

メイヤー:私たちが服作りで大切にしているのは価格よりも価値であり、適正だと考えた価値で服の価格を決めている。「OAMC」にとって“ピースメーカー”はメッセージであり、“服”という感覚ではない。これまでさまざまな作品に“PEACEMAKER”という言葉を使ってきたし、これからも使い続けると思う。

WWD:では“リワーク”で「OAMC」らしさをどう表現している?

メイヤー:まず、メインラインと同じクオリティであること。「OAMC」はもの作りに一切妥協しないので、その点はとても大切だ。また、作品の文脈の中で新しいかたちやアイデアに取り組むことも同じぐらい重要であり、それが“リワーク”の醍醐味でもある。

WWD:“リワーク”でまずミリタリーアイテムを扱った理由は?

メイヤー:「OAMC」でミリタリーアイテムを数シーズンにわたって扱ってきたため、構造や形、染色、仕上げなどの面で、どのように手を加えればいいかを理解していたからだ。最初の2022年春夏コレクションでは、主にビンテージやデッドストックのミリタリーピースを使った。 事前にリサーチを念入りに行い、原料の調達や服の選定をしている。これからはミリタリーウエアだけでなく、探求の幅をさらに広げていきたい。

WWD:製品を作り続けるファッション産業が、サステナビリティを掲げるには矛盾があるという意見もある。

メイヤー:確かに、非常に強い矛盾がある。“リワーク”は服や生地をアップサイクルしているため、サステナビリティの要素を含んではいるが、完全な持続可能性にはほど遠いのが現状だ。サステナビリティを実現するためには、業界自体で仕組みを変えないといけない。 私たちはサプライチェーンを理解し、それに応じてできる限りの調整を試みている。例えば、全てのサプライヤーに、材料の改善と新しいソリューション提供を働きかけたり、輸送のより良い方法を模索したり、害の少ない素材や技術を使う方法を理解しようと努めている。 私たちは日々、改善に向けて取り組んでいる。

WWD:“ピースメーカー”で平和への願いをもの作りに込めてきた作り手として、ファッションが人々に貢献できることは何だと考える?

メイヤー:ファッションデザインはコミュニケーションの一つだ。 もちろん、私たちが作るものは必需品ではなく、ぜいたく品であることを理解しないといけない。 しかし、私たちにはオーディエンスがいて、発信力がある。だからポジティブなメッセージを届けられるのであれば、これからも積極的に発信していきたい。 ただ私自身も、世の中がもっとポジティブに変わることを願う一人の人間である。 私たちがもの作りを通じて発信したメッセージをたくさんの人が受け取り、前向きなアクションを起こすきっかけになればうれしい。

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奈良裕也×内田聡一郎×みやちのりよしが集結 秋冬のヘアトレンドからヤーマン“ヴェーダシャイン プロ BS for Salon”の魅力を語る

 ヘアサロン業界のトレンドセッターと言っても過言ではない奈良裕也「シマ(SHIMA)」アートディレクター、内田聡一郎「レコ(LECO)」代表、みやちのりよし「シャチュー(SHACHU)」代表が、ヤーマン(YA-MAN)の超音波トリートメント機器“ヴェーダシャインプロ BS for Salon”(税込3万4100円)の発売にあたり集結。これからの季節にぴったりなヘアスタイルやヘアケア事情、“ヴェーダシャインプロ BS for Salon” について語り合う。

3人が提案する
秋冬イチオシのヘアデザイン

WWDBEAUTY(以下、WWD):今年の秋冬に提案したいスタイルは?

みやちのりよし「シャチュー」代表(以下、みやち):この秋冬は全頭を暗くするよりもローライトや、内側にシャドーのような暗いを入れたカラーデザインを打ち出してきたいし、流行るのでは。ハイトーンやインナーカラーなどカラーデザインが多種多様になっている一方で、一通り楽んで飽きを感じている人もいる。黒やダークカラーを取りを入れることで引締まるし、新鮮さも感じてもらえる。

内田聡一郎「レコ」代表(以下、内田):たしかに、ダークトーンとハイトーンを組み合せるのがスタンダードになりつつあるよね。1色はもちろん、2色、3色使いが行っている。色みで個人的に注目してるのは茶色。くすんでいない温かみのある茶色や、ベージュが可愛い。日本人に絶対に似合うし、ダメージレベルが低く済むのがいいところ。根元のリタッチでブリーチするのではなく、あえて茶色でつなぐルーツブラウンも今の気分。

奈良裕也「シマ」アートディレクター(以下、奈良):まさに、僕もそれを感じているところ。「シマ」はブリーチするお客さまがとても多いんだけれど、ブリーチをしないで14レベルの明るさに仕上げたり、アルカリカラーできれいな茶色に仕上げたりすることが増えている。なので、ワンタッチできれいに染められる茶色は僕もいいと思う。上質なお客さまこそ、それを求める傾向がある。

WWD:そういったお客さまはヘアケアにも熱心か。

奈良:プロダクトがとっても売れている。髪の毛を乾かす前に使うもの、巻く前に付けるもの、仕上げに付けるもの。使うシーンごとに分けていてこだわる人が多く、おすすめすると購入されるお客さまがすごく増えた。そうやって美容にお金を使う時代。メンズでもメイクをしっかりしているお客さまが多くて、男女問わず本当に美意識が高まっている。

みやち:ブリーチの前処理やトリートメントもどんどん増えていて、顧客単価は上がり続けている。

内田:価格が高くても気持ちよく支払って、満足して帰ってくれる。製品や技術はどんどんアップデートされるし、美容師の知識量はもちろん、お客さまでもかなり詳しい人がたくさんいる。

奈良:本当に美意識が上がっていると思う。かつてよりもたくさんの情報が入ってくるから、若い子の方がヘアケアにも熱心だよね。

美意識が高まっている
今こそおすすめしたい
スペシャルケア製品

WWD:みなさんがおすすめしている髪を美しく保つコツは?

奈良:やっぱりホームケアがすごく大事。いかに僕たち美容師が見ていないところで、自分を磨く=ケアをするか。サボらないでやることが一番。楽して美人にはなれないから。

内田:美容師とお客さま、まさに二人三脚だよね。

奈良:今は全てを提案するのではなく、一緒に作っていく時代。美意識が高くて、自分のことをよく理解していて、こだわりがあるのはすごくいいことだと思う。

みやち:昔はあり得なかったけど、顔まわりにこだわりがあって仕上げを自分で巻きたいというお客さまもいるほど。確かにすごく似合っていて、すごいなって思う。高価格帯のアイロンやドライヤーも人気で、3万円のアイロンに対して高いというイメージは無くなっている。

内田:“ヴェーダシャインプロ BS for Salon”は、ホームケアでも使えるよね。

みやち:「これで髪の毛がツヤツヤになるなら」と、即決すると思う。

奈良:同感。お客さまに使ってみて、すごくよかった。

内田:美容師目線だと、コードレスなのが嬉しい。お店によっては配線が難しいこともあるから、これだと充電すればシンプルに使える。もちろん、仕上がりも抜群。お客さまの実感値も高いし、今お店で使っているシステムトリートメントと組み合わせてみたら、すごく相性がよかった。他店との差別化にも繋がりそう。あとは、トリートメントの揉み込みって施術する人によって個人差があるけれど、これを使うと均一に浸透させてくれるから、一定の効果が出やすい。

みやち:そうそう。仕上がりが全然違う。「これを使ったからいつもと違うんだ」ってお客さまにも分かりやすい。僕はホームケアでも使ってもらいたい。美容室は来店周期が短い人でも月に1回だから、毎日自宅でケアをしてほしい。美意識が高まっている今にぴったりなアイテム。

トリートメントの浸透をサポートする
美顔器発想の超音波トリートメント機器

 “ヴェーダシャインプロ BS for Salon”は、超音波と温熱によって、美容成分の浸透をサポートする超音波トリートメント機器。トリートメント塗布後の毛束を挟み込むと1MHz(1秒間に100万回振動)の超音波でトリートメント剤を毛髪内部に浸透をサポートする。超音波の出力は自社従来品比約1.7倍*。じんわりと温まるヒーターの熱でキューティクルを開き、美容成分の浸透をさらにアシストしてくれるのが特徴。そのほか、赤・青2色のLEDを搭載し、お風呂で使える防滴仕様かつコードレスで場所を選ばずにインバス・アウトバスどちらのトリートメントにも使用できる。髪を挟んだまま20秒経過すると超音波とLEDが停止するオーバートリートメント防止機能も搭載し、安心して使用できる設計だ。

* 単位面積当たりの超音波出力

10分間の使用で
髪色に関わらず艶髪に

 シャンプー後の髪にトリートメント剤を塗布し、“ヴェーダシャインプロ BS for Salon”を10分ほど使用すると、あっという間にクセやパサつきをおさえることができる。浸透サポートコームがついているので、セルフケアでも髪全体にトリートメント剤を届けてくれる。さらに洗い流さないトリートメント剤やヘアオイルにも使用が可能。タオルドライ後の濡れた髪にアウトバストリートメントを塗布して使用する。インバス・アウトバストリートメントとの併用がおすすめ。

TEXT:NATSUMI YONEYAMA
問い合わせ先
ヤーマン
0120-776-282

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ヘアメイク河嶋希が指南 「ラ ロッシュ ポゼ」角質ケア美容液でかなえる毛穴レス印象肌

 「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE-POSAY)」が3月に発売した“エファクラ ピールケア セラム”※1(30mL、税込4950円、編集部調べ)は、敏感肌※2にも 使える、心地よい角質ケアの製品だ。

 同製品は、日本人女性の20〜40代の肌悩みに多く見られる毛穴トラブルやニキビトラブルの原因になる古い角質に着目。皮膚科学に基づき、敏感肌※2にも使える角質ケア美容液として開発された。角質の表面だけでなく、内部にまでアプローチして触りたくなるような毛穴レス印象肌へ導く。

 ここでは、スキンケアのエキスパートである河嶋希ヘア&メイクアップアーティストとモデルの甲斐まりかが、“エファクラ ピールケア セラム”※1を使ったスキンケアについて語る。

※1 販売名:ラ ロッシュ ポゼ エファクラ セラム
※2 全ての人に肌トラブルが起きないわけではありません

話題の角質ケア美容液
“エファクラ ピールケア セラム”とは?

※1「ラ ロッシュ ポゼ」において
※2 サリチル酸・フィチン酸・乳酸(共に角質柔軟成分)
※3 整肌成分
※4 水:整肌成分
※5 全ての人に肌トラブルが起きないわけではありません
※6 全ての人に肌刺激が起きないわけではありません
※7 全ての人にアレルギーが起きないわけではありません
※8 全ての人にニキビのもとができないわけではありません

注目しているのは
「落とす」のではなく「塗る」角質ケア

 毎日のスキンケア習慣としての角質ケアが重要だと話すのは、自身も敏感肌で「ラ ロッシュ ポゼ」の製品をよく使うという河嶋希ヘア&メイクアップアーティストだ。

 河嶋アーティストは、「肌表面の角質層は、本来は正常に機能していても、ホルモンバランスの乱れなどが原因で古い角質が蓄積すると、結果的に肌トラブルの原因になります。肌の揺らぎを抑えるのが角質ケア。角質ケアにもスクラブや洗顔などいろいろなアイテムがありますが、最近注目しているのは『落とす』のではなく『塗る』角質ケアです」と話す。

 角質ケアには「週に1度のスペシャルケア」といったイメージもあるが、毎日のスキンケアルーティンに取り入れるのもおすすめだという。「肌トラブルや悩みができる前に朝晩のスキンケアのラインアップに組み込むだけだから、ズボラな人でも続きます。『ラ ロッシュ ポゼ』の“エファクラ ピールケア セラム”は、毎日使える心地よいテクスチャーや保湿感にも注目しています。低刺激設計※1なので、敏感肌※2にも使えるのがいいですよね」と話す。一方、モデルとして活躍する甲斐まりかも「角質ケアと言えばプロにケアしてもらうイメージが強かったですが、最近SNSやユーチューブの美容動画などを見ているとセルフできちんとケアしている人が多くて一般的になってきてるんだなと思いました。使いやすいアイテムが増え、誰でもアプローチできるようになったからかもしれないですね」と角質ケア美容液が気になっているという。

※1 全ての人に皮膚刺激が起きないわけではありません
※2 全ての人に肌トラブルが起きないわけではありません

夏の後の毛穴やゴワつきなどの
肌トラブルに角質ケア習慣

 最近は肌のザラつきが気になるという彼女は、普段はシンプルなスキンケアが好み。「夜はメイクを落として洗顔、導入美容液、化粧水、乳液かオイル。朝はもっとシンプルで、拭き取り用化粧水の後に化粧水、下地兼乳液をつけて終わりです。今の時期は、夏に紫外線をたくさん浴びたので、肌のゴワつきや毛穴の開きが気になります。普段のスキンケアのラインアップに加えるだけの角質ケア美容液なら、気軽に取り入れられそうですね」。

モデルという仕事ならではの悩みもある。「美容液などは刺激が強いものもあるので、撮影前は 気を使います。撮影のたびにメイクを落とすので肌には負担をかけたくない。『ラ ロッシュ ポゼ』は敏感肌※1向けのブランドなので 普段使いしやすく、デイリーに取り入れたいですね」。

 “角質ケア+保湿ケア”ができるのが“エファクラ ピールケア セラム”の特徴の1つだ。「これからの寒い季節は、乾燥による肌のゴワつきは特に気になります。そんなときにも“エファクラ ピールケア セラム”は保湿ケアもできるのでうれしい。塗った瞬間の心地よさも続けるモチベーションになるのでは」と河嶋ヘア&メイクアップアーティスト。「肌トラブルの原因となる角質をケアすることで、毛穴やゴワつきなどの肌トラブルをケアして肌を整えるのは、実はスキンケアの基本となる考え方。ぜひ毎日のスキンケアに取り入れてほしい」と話す。

※1 全ての人に肌トラブルが起きないわけではありません

使い方をヘアメイク河嶋希がレクチャー!

STEP1
2〜3滴手に取る

「化粧水の後、スポイト状のキャップで美容液を吸い取り、2〜3滴手に取ります。1滴でもとても伸びがいいので、加減しながら適量を取ります」。

STEP2
肌になじませる

「目の周りを避け、両手で顔全体を包み込むように肌になじませます。個人的には、首までしっかりなじませるのがおすすめ」。

STEP3
気になる部分に重ねづけ

「顔全体になじませたら、ざらつきの気になる部分に重ねづけ。小鼻や毛穴の気になる部分にも重ねます」。

STEP4
ハンドプレス

「最後に手のひら全体で軽くハンドプレス。スッと吸収されるような心地よさを感じてください。毎日、朝晩の使用がおすすめです」。

PHOTOS:HIRONOBU MUKOYAMA
STYLING:AKANE KOIZUMI
HAIR & MAKEUP:NOZOMI KAWASHIMA
問い合わせ先
ラ ロッシュ ポゼ
03-6911-8572

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新生「ヴォーグ ジャパン」の全容 デジタル強化で目指すは業界の「ベストフレンド」

 コンデナスト(CONDENAST)の「ヴォーグ ジャパン(VOGUE JAPAN)」には2022年1月、ヘッド・オブ・エディトリアル・コンテントにティファニー・ゴドイ(Tiffany Godoy)が就任した。ティファニー・ヘッドは、同メディアの全てのコンテンツを監修する。ゲームやバーチャルの世界、メタバースの分野にも造詣が深く、日本のファッションカルチャーにパッションを捧げる同氏を迎えて、9月1日にはリニューアルした「ヴォーグ ジャパン」10月号を発売したほか、ウェブサイトやSNSのアップデートに着手する。17日には表参道ヒルズで、入場無料のリアルイベント「ヴォーグ・アライブ」を開催。「ヴォーグ ジャパン」の新しいデザインとコンテンツを360度で体験できるイベントを通して、“ヴォーグ ジャパン ピンク”に一新されたニュー・ウェーブをお披露目する。「変わるのは怖いし勇気のいることだけれど、ビジネスやメディアとして変化がないことの方が怖い。一緒に成長を続けることが大切」とティファニー・ヘッド。本誌とウェブの連携や、デジタルの活用を通して、ユーザーの「ベストフレンド」を目指す「ヴォーグ ジャパン」はどう変わっていくのか聞いた。

リニューアルをけん引する
ティファニー・ヘッド

WWDJAPAN(以下、WWD):ヘッド・オブ・エディトリアル・コンテント就任を聞いて、率直に「面白そう!挑戦してみたい!」と思えた?

ティファニー・ゴドイ=ヘッド・オブ・エディトリアル・コンテント(以下、ティファニー・ヘッド):現職就任の話が上がった当初は、新型コロナウイルスのパンデミックでパリにいた。来日して20年、こんなに日本を長く離れたのは初めてで、非日常的な時期だった。私はゲームとファッションの融合や、メタバースなどに興味があって、正直に言うと、当初は少し遠くの話に感じた。その後ファッション・ウイーク期間中にアナ・ウィンター(Anna Wintour)米「ヴォーグ」編集長兼コンデナスト アーティスティック・ディレクターらと会う時間があった。それは夢のような時間で、私のビジョンやパッション、私が感じている課題を伝えた。その上で日本で何が起こっているのか、ブランドをどのように見ているのかを考えるという“宿題”を課された。「ヴォーグ」を擁するコンデナスト全体が変わろうと舵取りを行っているのが分かったし、クールで面白く、大胆で勇敢、かつその変革は本当に必要なものに感じられた。過去と未来の間に自分が立っていることにワクワクした。日本のファッション文化に長きにわたって興味を持っているし、コンデナスト・ジャパンのスタートから何年も関わってきたのでチームのほとんどを知っていて心地よさがあった。思い切って挑戦しようと決意した。

WWD:リニューアルにあたっての思いは?

ティファニー・ヘッド:日本は、私たちみんながそうであるように、急速に変化する予測不能な世界への転換期にある。今メディアの仕事として大切なのは、元気を取り戻して、読者の“鏡”になること。ブランドの方向性を考える上で、1960〜70年代のメディア文化が盛り上がっていた時期の資料を見た。当時西洋と東洋の境界は薄れ、写真、デザイン、書籍や雑誌など、さまざまな文化が入り交じって進化していた。技術革新の影響でゲームや携帯電話の文化、その中でも独自のデジタルアイデンティティーを形成した絵文字やミクシィなどが日本から生まれた。デジタル・ネイティブの国として生まれた価値観の多くや、日本のメディアがけん引した革新性を、リニューアルしていく「ヴォーグ ジャパン」に反映しようと思っている。日本が生んだ美的価値観や“生きた”アートに焦点を当てたい。

WWD:一方、「ヴォーグ」の変えたくないところは?

ティファニー・ヘッド:誰もがメディアであり、ブランドもメディアであるこの時代、「ヴォーグ」にあるのは、時代を反映した豊富なアーカイブや資料。私たちが持っているのは、そのレガシーだ。ジャーナリズムやビジュアル作りという財産を通して、どのように読者をワクワクさせ続けられるかを常に考えている。瞬間を“切り取る”のではなく、いかに“創造”できるか。いつだって変わるのは怖いし勇気のいることだけれど、ビジネスやメディアとして変化がないことの方が怖い。みんなで一緒に成長を続けることが大切だと思う。読者やファンと「ヴォーグ」の関係性は一方的なものではなく、お互いに影響し合う存在であるべき。コミュニケートするだけでなく、新しい驚きと発見を提供して、時には導く必要もあるはず。読者の考えを尊重して交流し、ニーズや好きなものを理解するのは素晴らしいことだけれど、慣れ親しんだことをただ続けるだけではメディアとして意味がないのではないだろうか。

QRコード掲載で本誌とウェブは
よりシームレスに

WWD:どのようなリニューアルを実施する?

ティファニー・ヘッド:今回のリニューアルは、「ヴォーグ ジャパン」の変化の第一段階。まずは誌面やイベント、ソーシャルメディア、ウェブサイトといったタッチポイントを維持しながら、デジタルシフトを行う。リニューアルはクリエイティブ・ディレクターの米津智之と一緒に編集部を始め社内の各部署と進めてきたのだが、それぞれのプラットフォームに適した方法で情報を発信して、お互いを行き来して、体験を広げていくようなビジョンだ。一番大事なのは、誌面をアップデートすること。日本が生んだQRコードを取り入れ、ウェブ記事や動画などのコンテンツにアクセスできるようにしている。次のフェーズは、もっと存在感を出してアクティブでいること。ソーシャルメディアでのイベントを開いたり、ゲーム業界の要素を取り入れたり、タイポグラフィーといった新しいツールを駆使していく。本誌やウェブ、動画などが連動する、コンテンツの新しい“エコシステム”を築きたい。

WWD:SNSやウェブサイトは?

ティファニー・ヘッド:まずインスタグラム(Instagram)のリニューアルを行う。それからティックトック(Tiktok)などの短尺動画にも力を入れる。ソーシャルプラットフォームのための新しい動画シリーズを作成している。SNSを見る人はそのプラットフォームにとどまる傾向があるので、私たちがそこに参入することが鍵となる。新しい道となって新たな読者層にリーチしていくきっかけになってほしい。ウェブサイトは9月1日から徐々にアップデートしている。より多くの動画やウェブ限定コンテンツを掲載していく。例えば、本誌には載せきれなかったコンテンツをウェブでは全文公開して、QRコードで誘導する。

WWD:本誌、ウェブ、SNSのそれぞれの役割とは?

ティファニー・ヘッド:本誌はアーカイブとして機能するよう、SNSおよびウェブサイトに掲載しているコンテンツをまとめるページなども盛り込んでいる。最新号では若手デザイナーを特集したページも設け、カタログとして彼らの活躍をひとまとめで見られるようにした。「ヴォーグ ジャパン」の人気動画連載「In The Bag」など、国内外のセレブリティが出演する動画コンテンツをリストアップする連載もスタート。ビューティでは、ネイルにフォーカスしたティックトック連載を開始し、本誌でも取り上げていく。

WWD:日本から生まれるコンテンツに変化は?

ティファニー・ヘッド:これまでも、表紙やカバーストーリー、モデルセレブ、日本やアジアの著名人を扱う上で、日本独自のコンテンツは多く手掛けてきたが、これからはもっと文脈を伝えて、対話を促すようなものが増えるはず。ファッションはメッセージを持つことが大切で、時代や社会に対して意見を持っているべき。これまでもそうだったが、もっと強化したい。これからの時代を担うクリエイターたちと働き、グローバルブランドとしてビデオコンテンツやデジタルコンテンツの増加に取り組んでいる。感情を揺さぶるような表紙やコンテンツ作りに注力する。

デジタル・ネイティブな日本を
ビジュアルで表現

WWD:リニューアル号の表紙に込めた想いは?

ティファニー・ヘッド:最新号は、ファッションの転換期を表現する重要な号だ。バーチャルファッションや斬新なスタイルを披露するデザイナーらが出てくるのに着目した、ファッションの新しい世界の私なりの解釈だ。この号で決めたのは、日本のアイデンティティーを表現すること。例えば、これからは日本語ファーストを掲げる。リニューアル号の表紙に使われている英語は、“VOGUE”の文字だけだ。表紙を飾ったのは、イブ・ジョブズ(Eve Jobs)。アップルを設立したスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)の娘で、テクノロジーとファッションの象徴のような存在だ。中面のインタビューを読むと、ファッションとテクノロジーの結びつきについての理解も深まるだろうし、イブがそのような役割を担っていることも伝わるだろう。また表紙にもQRコードを掲載している。このコードはブランドアバターである、S六S(シックス)のAR(拡張機能)につながる。

WWD:アバターはどのように誕生した?

ティファニー・ヘッド:ブランドのアバターやアイコンを持つのを日本独自の文化と捉え、日本らしさの表現と、テクノロジーとファッションの交差への挑戦として生まれた。“広告塔”のようなポジションでイベントにも登場するし、SNSでも活躍していく予定だ。シックスという名前は、6次元の概念から取った。読者モデル的存在で、漫画カルチャーとJ-POPやK-POPのエンタメの分野からの要素を取り入れてデザインしている。かわいいアクセサリーとメイクアップが特徴で、ジェンダーの流動性を楽しむ側面も見られるだろう。日本の「カワイイ」要素や好奇心旺盛な「ヴォーグ」らしさ、エネルギッシュなところを体現するアバターだ。

デジタル化で生まれる
読者に寄り添う新しい方法

WWD:リニューアルに伴う反響は?

ティファニー・ヘッド:業界がプラットフォームを横断して新しいコンテンツ作りに乗り出しているのは明らか。それがゲームであろうと、NFTの作成だろうと、新しいパートナーシップの構築だろうと、「ヴォーグ」は今、ファッションビジネスが向かう未来に向かって業界と伴走していると自負している。未知の分野であるからこそ、私たちが挑戦することに共鳴してくれるのではないか。

WWD:それでもデジタル化やメタバース、ゲームとの融合に心の距離を感じる人も多いのではないか。どうアプローチする?

ティファニー・ヘッド:デジタルの要素は、「ヴォーグ ジャパン」の初期の号や、日本のポップカルチャーに既に存在している要素から引き抜いて再構築している。唐突に生まれたアイデアではない。「ヴォーグ」は130年以上、読者と対話を続け、素晴らしい才能や新しいリーダーの紹介を通して、読者らと手を取り合ってきた。既にある取り組みを拡大して、継続していくことに尽きる。「ヴォーグ」を通して、全く違った規模感で動くリーダーを紹介していく、業界の「ベストフレンド」でありたい。それが3秒の動画なのか、または300ページのコンテンツなのか、イベントやディナーの機会なのか、形式は問わず、寄り添うことが大事なのではないか。電車の中で記事を読んでいるときや、夜にSNSをスクロールしているとき、あらゆる人生の瞬間に立ち会って、新しい才能や考えに触れる場所を作っていきたい。それらを提供することで、「ヴォーグ」は信頼できる媒体だと示していけるはず。

WWD:編集者含め、業界に携わる人に大切にしてほしいことは?

ティファニー・ヘッド:物事はすごく早く変わっているし、今回のリニューアルは明らかに大きな変化をもたらすので、たくさんコミュニケーションを取る必要がある。「ヴォーグ」が発信するときのトーンがどうであるべきか、どのようにビジュアルのクオリティーを管理するか、みんなで考え問い続けていくことが大事だ。世界の「ヴォーグ」を見ても、表紙作りやコンテンツの内容はものすごく変わってきている。日本でもそれを反映し、日本の読者に寄り添うトピックスを作っていかなければいけない。物事の“線引き”が年々曖昧になっていて、ファッションやジェンダー、人種、ジャーナリズムといったアイデンティティーを形成するさまざまな要因は複雑に絡み合っている。今はファッション業界で活躍しながら、他の分野のアドボケイトにもなれる。私たちが今生きる世界では、多くのアイデンティティーを持てることを体感してほしい。また自分も含めて、編集者には文化的な生活を送ってほしいと願っている。何にときめくかを大切にして、どうやって自分も作っていけるかを考える時間は大事。編集者として初めて日本で仕事をしたとき、仕事が生活の中心になる労働文化を知った。素晴らしい側面があるが、大きな圧力になることもある。時に体にムチを打って働くようになってしまうこともある。コンテンツを作りながら最適なアウトプットの方法を模索し、コンテンツのデジタル化に伴う作業の効率化も生かして、チームワークとコミュニケーションを増やしていきたい。

問い合わせ先
コンデナスト広報部
mrk@condenast.jp

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セルフケアブランド「レイ」が総額1億4000万円の資金調達 今後のビジョンとは?

 女性向けセルフケアブランド「レイ(WRAY)」を運営するレイはこのほど、第三者割当増資および金融機関からの融資により、総額1億4000万円の資金調達を実施した。引受先は、キリンホールディングスとグローバル・ブレインが共同運営する「キリン ヘルス イノベーションファンド(KIRIN HEALTH INNOVATION FUND)」と、マネーフォワードベンチャーパートナーズが運営する「ヒラクファンド(HIRAC FUND)」。

 ゴールドマン・サックスやメリルリンチ日本証券といった外資金融企業やマーケティング会社でキャリアを積んだ谷内侑希子レイ代表は、自身もキャリアを形成する時期に生理不順や妊活、PMSなどを経験し、「女性が体の変化に振り回されずパフォーマンスを発揮できるよう、女性特有の悩みに対するケアを身近なものにしたい」という思いの下、2020年に同ブランドをスタートした。日本のフェムテック分野におけるパイオニア企業の一社としての使命感を持ち女性のニーズに寄り添う谷内代表に、今後のビジョンを聞いた。

WWD:ブランド立ち上げから2年をどう振り返る?

谷内侑希子レイ代表(以下、谷内):コロナ禍でスタートしたこともあり、楽な立ち上げではなかったが、ちょうど「フェムテック」というキーワードが世間的に注目され始めた時期と重なり、良い波に乗れたと思う。コロナ禍で健康意識が高まり、自宅で過ごす時間が増えたことも相まって、幅広い年代の女性の間で自分の体やケア方法についての知識欲が高まっていると感じる。ブランドとして発信を続け、フェムテック関連の話題をオープンに語れる風潮を作ってきた一員としての自負もある。お客さまの中には、「SNSで見たから」「パッケージがかわいいから」といった理由で「レイ」の商品を手に取ってくれる人も多い。セルフケアにトライしてみたいと思う人たちの心理的なハードルを下げ、効果を感じた方が顧客として定着してくれている。ユーザーと一緒に成長できた2年間だった。

WWD:新たなプレーヤーが続々と増える中で、あらためて「レイ」のポジションは?

谷内:カテゴリーを絞らずに商品展開してきたことが差別化につながった。サプリメントと美容液、100%シルク製の腹巻の3点でデビューしたが、現在はインナーケア、セルフケア、ライフスタイル、スキンケアのカテゴリーで13点に増やした。何か一つに効果を感じた人が、「これも買ってみようかな」と複数商品を購入してくださるケースも多く、ライフスタイルブランドとしてのポジションが確立できていると思う。

WWD:商品開発の軸は?

谷内:お客さまの中から立候補してくださった人と商品開発をしたり、「こんな商品があったらどうですか?」とヒアリングをしたりして、全てお客さまと共に作る姿勢を大切にしている。お客さまとの距離がとても近いことが強みとなり、結果として確度の高い商品開発ができている。経済合理性だけを優先させず、ブランドの世界観に貢献するものやお客さまが求めるものに丁寧に答えるようにしている。

WWD:これまで特にヒットした商品は?

谷内:去年秋に発売した5本指ソックスが、1万足以上売れた。5本指が外から見えないようになっていて、セルフケアとして5本指ソックスを履きたいけど、おしゃれも妥協したくないというお客さまのニーズを酌み取って開発した事例だ。

WWD:ヒアリングする中で、意外なニーズもあった?

谷内:今後のビジョンにつながる話だが、お客さまからは商品情報だけでなくウエルネスやキャリアに関する情報発信も求められていることが分かった。女性のキャリアとウエルネスは切り離せない。ブランド立ち上げ当初から重視していた点だが、今後は自社ECサイトを通じてさらにキャリアとウエルネスを掛け合わせたコンテンツを増やしていく。

女性同士が悩みを共有できるコミュニティーを設計

WWD:今回の資金調達の具体的な使途は?

谷内:キリンホールディングスは、特に顧客とのつながりが強い点を評価してくれており、そこを生かしてお客さま同士が情報共有をできるコミュニティーを作る予定だ。例えばお客さまからは、同僚やパートナーには話せないが、誰か近い境遇の人に転職の相談をしたいといった声が多い。すでに小さいコミュニティーでテストしてみたら、生理や妊活、不妊治療、夫婦関係、教育、働くママの効率的な時間の使い方までいろいろな話題が出てきて、すごく盛り上がった。現在コミュニティーサイトを設計中で、年内にはオープン予定だ。有料コンテンツにし、ユーザー同士がチャットできる機能を持たせたり、オフ会、セミナー、ヨガ教室などのウエルネスイベントを実施したりしていく計画だ。そのほかの使い道としては、ポップアップイベントの開催や生理トラッキングアプリのアップデートも予定している。また、キリンホールディングスからは企業向けの福利厚生事業やサービスなどに対してもアドバイスをもらっていく。

WWD:現在は、自社ECのほかユナイテッドアローズなどのセレクトショップなどに商品を卸しているが、販路をどのように広げる?

谷内:フェムテックの専門コーナーを設けている店も増えてきたので、専門店を中心に販路を拡大する。

WWD:今後、フェムテック市場がさらに盛り上がっていくためには何が必要だと考える?

谷内:「レイ」はこれまで自分の体について考えるための入り口を作ってきた。自分の体についての話題をオープンに話せるようなフェーズに社会が変わってきた今だからこそ、さらに踏み込んだ会話ができる場が必要だと思う。生理の話をし始めると、妊活や転職といったパーソナルな話題にもつながっていく。フェムテックの黎明期のメンバーを筆頭に、もっと踏み込んでニーズを探り次のステージを作ることが重要。フェムテックの分野は特に小さなスタートアップから始まったムーブメントで、今後もメディアやほかのスタートアップと連携して、一歩踏み込んだ会話ができる日本の空気感を醸成していきたい。

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セルフケアブランド「レイ」が総額1億4000万円の資金調達 今後のビジョンとは?

 女性向けセルフケアブランド「レイ(WRAY)」を運営するレイはこのほど、第三者割当増資および金融機関からの融資により、総額1億4000万円の資金調達を実施した。引受先は、キリンホールディングスとグローバル・ブレインが共同運営する「キリン ヘルス イノベーションファンド(KIRIN HEALTH INNOVATION FUND)」と、マネーフォワードベンチャーパートナーズが運営する「ヒラクファンド(HIRAC FUND)」。

 ゴールドマン・サックスやメリルリンチ日本証券といった外資金融企業やマーケティング会社でキャリアを積んだ谷内侑希子レイ代表は、自身もキャリアを形成する時期に生理不順や妊活、PMSなどを経験し、「女性が体の変化に振り回されずパフォーマンスを発揮できるよう、女性特有の悩みに対するケアを身近なものにしたい」という思いの下、2020年に同ブランドをスタートした。日本のフェムテック分野におけるパイオニア企業の一社としての使命感を持ち女性のニーズに寄り添う谷内代表に、今後のビジョンを聞いた。

WWD:ブランド立ち上げから2年をどう振り返る?

谷内侑希子レイ代表(以下、谷内):コロナ禍でスタートしたこともあり、楽な立ち上げではなかったが、ちょうど「フェムテック」というキーワードが世間的に注目され始めた時期と重なり、良い波に乗れたと思う。コロナ禍で健康意識が高まり、自宅で過ごす時間が増えたことも相まって、幅広い年代の女性の間で自分の体やケア方法についての知識欲が高まっていると感じる。ブランドとして発信を続け、フェムテック関連の話題をオープンに語れる風潮を作ってきた一員としての自負もある。お客さまの中には、「SNSで見たから」「パッケージがかわいいから」といった理由で「レイ」の商品を手に取ってくれる人も多い。セルフケアにトライしてみたいと思う人たちの心理的なハードルを下げ、効果を感じた方が顧客として定着してくれている。ユーザーと一緒に成長できた2年間だった。

WWD:新たなプレーヤーが続々と増える中で、あらためて「レイ」のポジションは?

谷内:カテゴリーを絞らずに商品展開してきたことが差別化につながった。サプリメントと美容液、100%シルク製の腹巻の3点でデビューしたが、現在はインナーケア、セルフケア、ライフスタイル、スキンケアのカテゴリーで13点に増やした。何か一つに効果を感じた人が、「これも買ってみようかな」と複数商品を購入してくださるケースも多く、ライフスタイルブランドとしてのポジションが確立できていると思う。

WWD:商品開発の軸は?

谷内:お客さまの中から立候補してくださった人と商品開発をしたり、「こんな商品があったらどうですか?」とヒアリングをしたりして、全てお客さまと共に作る姿勢を大切にしている。お客さまとの距離がとても近いことが強みとなり、結果として確度の高い商品開発ができている。経済合理性だけを優先させず、ブランドの世界観に貢献するものやお客さまが求めるものに丁寧に答えるようにしている。

WWD:これまで特にヒットした商品は?

谷内:去年秋に発売した5本指ソックスが、1万足以上売れた。5本指が外から見えないようになっていて、セルフケアとして5本指ソックスを履きたいけど、おしゃれも妥協したくないというお客さまのニーズを酌み取って開発した事例だ。

WWD:ヒアリングする中で、意外なニーズもあった?

谷内:今後のビジョンにつながる話だが、お客さまからは商品情報だけでなくウエルネスやキャリアに関する情報発信も求められていることが分かった。女性のキャリアとウエルネスは切り離せない。ブランド立ち上げ当初から重視していた点だが、今後は自社ECサイトを通じてさらにキャリアとウエルネスを掛け合わせたコンテンツを増やしていく。

女性同士が悩みを共有できるコミュニティーを設計

WWD:今回の資金調達の具体的な使途は?

谷内:キリンホールディングスは、特に顧客とのつながりが強い点を評価してくれており、そこを生かしてお客さま同士が情報共有をできるコミュニティーを作る予定だ。例えばお客さまからは、同僚やパートナーには話せないが、誰か近い境遇の人に転職の相談をしたいといった声が多い。すでに小さいコミュニティーでテストしてみたら、生理や妊活、不妊治療、夫婦関係、教育、働くママの効率的な時間の使い方までいろいろな話題が出てきて、すごく盛り上がった。現在コミュニティーサイトを設計中で、年内にはオープン予定だ。有料コンテンツにし、ユーザー同士がチャットできる機能を持たせたり、オフ会、セミナー、ヨガ教室などのウエルネスイベントを実施したりしていく計画だ。そのほかの使い道としては、ポップアップイベントの開催や生理トラッキングアプリのアップデートも予定している。また、キリンホールディングスからは企業向けの福利厚生事業やサービスなどに対してもアドバイスをもらっていく。

WWD:現在は、自社ECのほかユナイテッドアローズなどのセレクトショップなどに商品を卸しているが、販路をどのように広げる?

谷内:フェムテックの専門コーナーを設けている店も増えてきたので、専門店を中心に販路を拡大する。

WWD:今後、フェムテック市場がさらに盛り上がっていくためには何が必要だと考える?

谷内:「レイ」はこれまで自分の体について考えるための入り口を作ってきた。自分の体についての話題をオープンに話せるようなフェーズに社会が変わってきた今だからこそ、さらに踏み込んだ会話ができる場が必要だと思う。生理の話をし始めると、妊活や転職といったパーソナルな話題にもつながっていく。フェムテックの黎明期のメンバーを筆頭に、もっと踏み込んでニーズを探り次のステージを作ることが重要。フェムテックの分野は特に小さなスタートアップから始まったムーブメントで、今後もメディアやほかのスタートアップと連携して、一歩踏み込んだ会話ができる日本の空気感を醸成していきたい。

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ビームスとメタバースでコラボした「リアクロ集会」主催者に聞く バーチャルファッションの魅力とは?

 ビームス(BEAMS)は8月13〜28日に開催された世界最大級のバーチャルイベント「バーチャルマーケット2022年サマー」に出展し、バーチャルショップを開いた。4度目の出展となった同店では、リアルアパレル商品の3Dモデルを販売。試着ギミックも用意した。さらに20日夜には、アバターファッションの中でもリアル寄りのスタイルを楽しむユーザーによるVR交流イベント「Real Clothes Rally」(通称「リアクロ集会」)を誘致し、初めてバーチャルショップでイベントを開催。3つの会場インスタンスがオシャレなアバターで満員になる盛り上がりをみせた。「リアクロ集会」を主催するジョネ(Joner)に、バーチャルファッションの魅力を聞いた。

WWD:ビームスとコラボのきっかけは?

ジョネ:後から知ったのですが、3月の「リアクロ集会」初開催の時にビームスのVR担当者が遊びに来てくれていたんです。その後、僕にツイッターのDMが来たのがきっかけです。「クリエイターとコラボをしたい」「一緒に何かしたい」という内容でした。いきなりだったし、すごくよく知っているショップだったので、正直「うそかな、本当に?」と思いましたが、やれるなら絶対に面白いと、即OKしました。

WWD:それぞれに服やヘアを改変したり、アクセサリーに凝ったアバターが多数来場し、互いのコーディネートや改変をほめあったり、写真を撮ったりして楽しんでいたが、通常の「リアクロ集会」と内容は変わらず?

ジョネ:そうしたほうがいいと考えました。「リアクロ集会」をいつもと違う雰囲気で、ビームスも交えて一緒にやろう、みんなで交流しようという趣旨です。通常はテーマを設定しますが、今回は特に設けず、「ビームス」のアパレル3Dモデルも楽しんでもらえればいいなと。

WWD:3インスタンスが満員だったから、100人くらいが来場していたことになる。実際にやってみての感想は?

ジョネ:みんながお互いのファッションを見て刺激を受けたり、ビームスのスタッフさんたちともすごい近い距離感で楽しく話してるのが、すごくいいと思いました。リアルとバーチャルがクロスすることで、新しい距離感というか空気というか、僕自身、今までなかったような体験ができました。来場者が直接ビームスのスタッフさんに「こんなものが欲しい」とか、「あるといいよね」ということを談笑していて。同じ空間で交わって初めて分かるユーザーの温度感やニーズを、ビームスのスタッフさんたちも一ユーザーとして楽しみながらつかめたのではないでしょうか。ユーザーと企業の人たち双方にとっていい体験ができたんじゃないかと思います。

WWD:バーチャルファッションの魅力とは?

ジョネ:身長や顔の形など、リアルだと骨格が決まっていて、簡単に変えられないと思いますが、まずそこから解放されます。例えばリアルで、このパンツ、すらっとしててきれいだなと思っても、自分の体形では理想のきれいなラインが出せないといった、好きなのにそこを追求できないもどかしさみたいなものです。それが解消され、目の形や脚の長さなどを自在に変化させて楽しめるのが、バーチャルファッションの最大の魅力です。

WWD:リアルでもファッションは好き?

ジョネ:好きですね。いろんなブランドの公式LINEアカウントを登録していて、メンズと一緒にウィメンズも見ています。「これ可愛いな、自分が女だったら買うかな」とか、「こういうの合わせたらいいだろうな」とを考えたりします。

WWD:オシャレなアバターとはどういうアバターだと考える?

ジョネ:僕自身はリアルの感覚とさほど変わりません。強いて言うなら、その人が好きなものだったり、その世界観が視覚的に見て取れ、キャラクターのコンセプトや雰囲気が伝わってくるものがおしゃれだと感じます。その場その場の雰囲気にうまく合わせているというのも大事な要素です。

WWD:そもそもプラットフォームであるVRChatを最大限に楽しむにはハイスペックなPCが必要で、今回初めてBOOTHでアバターを買い、ユニティ(ゲームエンジン)をダウンロードして、VRChatにアバターをアップロードしたが、素人にはなかなかハードルが高かった。ここからさらに着替えたり、改変したりしてオリジナリティーを発揮するのは、センスも大事だが、同じくらい技術が必要だ。リアルのファッションとは似て非なるものだと感じた。

ジョネ:そこもバーチャルファッションの魅力だと思います。そのための技術力もどんどん求められてますが、そこも含めて楽しいです。普段なかなかユニティなんて触ることがないですが、楽しむ過程ですんなり技術が覚えられます。もちろん最初はいろいろな失敗もしましたが、それもいい思い出になっていますし、もっといろいろできるようになりたいです。

WWD:確かに達成感は高いし、改変上手なアバターは一目置かれそうだ。リアルなブランドはバーチャルの世界でも需要があると思うか?

ジョネ:バーチャルならではの奇抜なデザインや露出度の高いものも好きだけれど、もっと現実でも着られるような衣装が増えてほしいという声が少なくないので、リアルブランド商品のニーズは確実にあると思います。僕も「ファセッタズム」のMA-1には、「ナイキ」の“エア フォース1”を合わせてはきたいです!自分たちが楽しいと思える世界が世に広がってほしいですし、いろいろなブランドが参入して、コーディネートの選択肢やイベントなど、楽しいことが増えれば興味を持つ人も増えて、ビジネスチャンスも増えます。現状ではユーザー数がまだまだ少ないので、ブランドが収益を上げるのは難しいかもしれませんが、今後技術革新や、バーチャルでの出来事の露出が増えていくことで、人口が大幅に増える見込みはあります。バーチャル世界特有の文化がありますし、増えてから急に参入するのは大変だと思います。早い段階からのリサーチが必要で、「リアクロ集会」に参加するなど、ぜひ自分たちの目で実際を確かめてほしいです。

WWD:今後の活動計画や将来の目標は?

ジョネ:「リアクロ集会」としては、バーチャルでリアルクローズに近いファッションが好きな人が盛り上がれるように、なるべく新しい動きをして興味を持ってもらい、楽しんでくれる人を増やしていきたいです。また、今回のように、リアルなブランドとバーチャルの世界の橋渡し的なこと、ショーなどもやっていきたいです。僕個人としては、バーチャルスタイリスト。これからVRに入ってくる芸能人や著名人に対して、スタイリストをしてみたいです。盛り上がるという観点で言えば、ユーザーと同じ立場でやるのが一番親近感があります。既存のアバターを使って、今、売っているものの中からスタイリングしてという動きがあれば、ぜひお手伝いしたいです。同時にアパレル3Dモデル制作の腕も磨いて、将来的には一点モノの制作も受注できるようになりたいです。

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高橋くみCEOに聞く 吸水ショーツ戦国時代に「ベア」が打つ次の一手とは 

 2020年6月、クラウドファンディングで9062人から1億円以上の支援金を集めて、デビューした吸水ショーツブランド「ベア(BE-A)」。この2年のあいだにアップデートを重ねながらラインアップを増やし、高機能吸水ショーツブランドとして、独自の地位を確立してきた。

 今年6月には、ベア ジャパン(BE-A JAPAN)とMNC New Yorkのグループ体制への移行を発表し、ホールディングスカンパニー・V Holdingsを設立。これまで二人三脚でビジネスを展開してきた高橋くみベア ジャパン代表取締役CEOと山本未奈子MNC New York代表取締役CEOが、両社が展開するブランドにそれぞれ注力し、シナジーを産む。

 ベア ジャパンは先進的なウエアラブルIoT技術を開発するミツフジと業務提携し、経血を計測できるショーツの開発に着手する。吸水ショーツの新たな展開を切り開くベア ジャパンの高橋くみCEOは、現在の吸水ショーツ市場を「吸水ショーツ戦国時代」と表現。「ベア」がデビューしてから2年の間の市場の変化と、今後の展開を聞いた。

WWD:「ベア」の立ち上げから、2年が経った。吸水ショーツ市場はどのように変化しているのか。

高橋くみCEO(以下、高橋):実は私たちが吸水ショーツを作ろうと思ってから4年半が経ちます。吸水ショーツは欧米を中心に流行っていたもので、当初は輸入を考えていました。ですが、実際に使ってみると履き心地や耐久性に納得できず、自分たちで作ろうと決意。当時吸水ショーツは国内では目新しい製品ですし、工場探しは難航しました。2年半前にやっとの思いで形になり、クラウドファンディングに至りました。たくさんの人に支援をいただいて良い形でスタートできましたが、この2年ほどで大手下着メーカーやアパレル企業からも新ブランドが続々と登場しています。消費者にとっては、それぞれがどのように違うのか、そして吸水ショーツの良さをまだ知らないという人も多いのが現状だと考えています。

WWD:吸水ショーツを試したことがないという人も多い。

高橋:一度履いてもらえたら、生活自体が変わるほどの商品だと思っています。それを普及させるためには、便益が分かるように市場を広げていかなければなりません。正直に言えば、中には機能性や履き心地がいまいちなものもありますし、われわれのこだわりや良さを伝えていかなければなりません。

WWD:最新作“ベア エアライト ショーツ”の発表会で、現在の市場を「吸水ショーツ戦国時代」と表現していたのが印象的だった。ブランドや製品が豊富になる中で「ベア」の立ち位置は。

高橋:「ベア」は高価格帯吸水ショーツカテゴリーに位置し、吸水量はもちろん、漏れにくさやにおい対策など機能性の高さで支持をいただいています。生理は年間12回とすると、開発する私たちも年間で12回しか試作品を試すことができません。そこで、約7000人もの実際に使ってくださっている人の声を毎週のようにオンラインでヒアリング。加えて「ベアサークル」と称して、“サニタリーライフをよくしよう”というミーティングも頻繁に行っています。また購入者には、アンケートに答えていただけるような動線を作っています。ポジティブな声だけでなく、1つ1つを拾い上げるようにしています。

WWD:「ベア」の取扱店舗はECやドラッグストアから百貨店まで、幅広いのも特徴だ。どのような考え方、戦略で販路を拡大しているのか。

高橋:吸水ショーツ自体の認知度をあげていきたいので、ECだけでなく百貨店やドラッグストアなど、いろいろな場所で「こんな選択肢があるんだ」と認識してもらうことが大切だと考えています。時代的にも吸水ショーツに興味を持っている人も多く、低価格帯の製品がたくさんある中でも、「ベア」がうたう高機能とはどんなことだろうと実際に手に取ってくれる人も多いです。昨年は“フェムテック”が新語・流行語大賞にノミネートし、リテールのバイヤーさんからの理解や共感が深まっています。一緒に時代を作っていこうという思いでいてくださる取引先も多いですね。

フェムテックを超えてヘルスケアに挑む
「ベア」のネクストステージ

WWWD:今年6月、ミツフジと提携し「経血量を測定できる吸水ショーツ」の開発へ着手することを発表した。

高橋:これまで生理について語られてこなかったからこそ、より快適にしようという動きがありませんでした。女性にとって生理は40年にもわたって付き合うものにも関わらず、改善されてきませんでした。そんな生理について考えるきっかけとしても吸水ショーツは機能しています。さらに、自身の経血量が分かるようになれば、生理や健康に対する意識は変わるのではないでしょうか。生理の不調が内膜症や子宮筋腫などの病気に気づくきっかけになることもありますし、生理だから体調が悪いと思いがちですが、実は貧血だということもあります。今、生理による労働損失は4960億円にのぼるとも言われています。自分の経血量を知り、どういった理由で不調なのか。生理が可視化されて、一人一人が向き合うことで、労働損失も減っていくのではないでしょうか。

WWD:どのようにして実用化に踏み切るのか。

高橋:実用化に向けた実証実験を来年早々には始めていきたいですね。そのために、ミツフジとベアジャパン、福島県川俣町で3社協定を結びました。

WWD:フェムテック企業が自治体と手を結ぶということも新鮮だ。

高橋:川俣町は東日本大震災のときに、多くの避難者を受け入れました。着の身着のまま避難する中で、生理用品を持って避難した人はいませんでした。防災用品としても生理用品の備蓄がなく、民家を1軒1軒回って、町全体で協力して生理用品を集めたというエピソードがあります。そのときに、女性にとってどれほど生理用品が必要なものなのか、男性を含めて役場での理解が高まったのです。そんな経験があるからこそ、川俣町は生理へのリテラシーが非常に高いのです。

WWD:MNC NewYorkとベア ジャパンをホールディングス化して、V Holdingsを設立した狙いは?

高橋:「シンプリス」は美容ウエルネスブランドとして14年前に立ち上げ、「ベア」は吸水ショーツブランドとして2年前にスタートしました。どちらも山本と二人三脚で、女性で構成される同じチームでやってきました。これからさらに両方を成長させていきたいと考えた時に、体制を変える決断をしました。どちらも女性向けの商材で、「シンプリス」も「ベア」も成長させていきたいし、女性のライフスタイルそのものを変えていきたいという思いは一緒です。生理だけでなく、更年期にも目を向け、ライフステージによって起きるペインに向き合う商品を提案していきたいですね。

WWD:組織体制にも変化が生じたのか?

高橋:われわれの強さは、3人の執行役員が14年もの時間をともに全てを分かち合ってきた仲だということ。それに加えてこの体制変更を経て、ミドルマネージャーの育成にも力を入れていきます。リーダーを増やしていきたいですね。実は社員を募集すると、900人ほどの応募をいただくこともあるんです。当社はフルフレックスを取り入れているので、豊富な経験を持っていたり、仕事と子育てを両立させていたり、いろいろな環境に身を置くメンバーでチームが成り立っています。企業の成長には人の成長が欠かせません。長い時間を共にしているメンバーと作っていることも楽しみですし、さまざまなステージを経て女性のみの会社としてチャレンジしています。そんな思いもあるので、人材育成にも注力していきたいですね。

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【動画】「M A S U」はなぜ尖りながら幅広い層に刺さる? 2023年春夏のショーで理由を探る

 後藤愼平デザイナーが手掛ける「M A S U」は、2023年春夏コレクションを「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で発表した。今回が3度目のランウエイショーで、東コレへの参加は初。今季のテーマは“ready”で、マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)から着想し、同氏が舞台に立つ表の部分と、パパラッチに追われるなど裏の部分の2面性を表現した。

 「WWDJAPAN」映像チームはバックステージやショーの様子を捉え、デザイナーへのインタビューを行った。さらに、フォトグラファーのシトウレイやビームスプレスチーフの安武俊宏らファッション業界人から後藤デザイナーの友人まで、幅広い来場者にブランドの魅力を聞いた。

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「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」が注目のサステナブル素材“ナイア・レニュー”を日本で初採用

 イーストマンケミカルが手掛ける循環型ジアセテート繊維“ナイア・レニュー(Naia Renew)”は、木材パルプに廃棄物由来の再生プラスチックを組み合わせた注目のサステナブル素材だ。同社は「持続可能なテキスタイルをすべての人に利用可能にすること」をビジョンに掲げ、日本市場での販売数拡大を目指す。その最初のパートナー企業として「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング(UNITED ARROWS GREEN LABEL RELAXING、以下GLR)」が、2022-23年秋冬の主力商品に同素材を採用した。田中安由美ウィメンズ商品本部GLR部副部長兼クリエイション課課長ブランドディレクターは、“ナイア・レニュー”を「作り手が選びたくなるファッション性兼ね備えた信頼のおけるサステナブル素材だ」と評価する。

作り手が選びたくなる
ファッション性が魅力

 「GLR」は、かねてよりリサイクルポリエステルやオーガニックコットンなどサステナブル素材への切り替えを積極的に進めてきた。ユナイテッドアローズ全体では、31年3月期までに環境配慮商品の割合を50%まで引き上げることを目指しており、今後もサステナブル素材の選択肢が必須となる。

 田中ディレクターは「これまでサステナブルを優先すると、ファッション性とトレードオフになることが多かった。しかし、“ナイア・レニュー”は素材選びの段階で自然と手が伸びた生地だった。なおかつ原料は100%サステナブル。リサイクル原料を活用しながら、私たちが手の届く価格帯だったことも採用の決め手だった」と話す。

上品な落ち感と高級感のある
光沢感を生かした通勤服

 アイテムは、通勤時に活躍するセットアップやワンピースなど7型。「GLR」が大切にする「きちんと見えしながらも、着ていてストレスのない着心地」を追求しながら、上品な落ち感と高級感のある光沢感を生かしたシルエットに落とし込んだ。シーズンレスで着られるようジャケットは背抜きで仕立て、パンツは裏地を省いて素材の心地よさを肌で感じてもらう。“ナイア・レニュー”は、従来のアセテートが持つ高い染色性も妥協しない。「GLR」では、それを生かして「ベリーショコラカラー」と呼ぶフェミニンで優しい印象のピンクのほか、ネイビーとホワイトを企画した。また、リサイクルポリエステルと混紡することでイージケアも叶える仕様だ。

 「お客さまが素敵だと思った商品が、サステナブルな選択であることが一番だ。“ナイア・レニュー”はそれを叶えてくれる素敵な素材。生地バリエーションも豊富で、商品群の2軸である通勤服とカジュアル服のどちらにも対応できる。次のシーズンに向けても継続的に採用していく予定だ。」(田中ディレクター)

木材パルプとリサイクル
廃棄物由来の生分解性素材

 “ナイア・レニュー”は、木材パルプが主原料の“ナイア“の次世代版として2020年秋に販売を開始した。原料は60%が木材パルプ、40%がリサイクル廃棄物で構成する。木材パルプは、FSC認証やPEF認証を取得し持続可能な方法で調達されたことが立証されている。通常のアセテートは木材パルプに石油由来の原料を加えるが、イーストマンケミカルは独自の技術でこれをリサイクル廃棄物に置き換えた点が特徴だ。廃棄物はカーペットなど、埋め立てゴミにされるような再生難易度の高い素材を活用する。製造プロセスにおいても環境負荷を抑えることを徹底し、安全かつ環境に配慮した化学薬品を使用し、二酸化炭素排出量や水の使用量を削減したクローズドループを構築している。加えて、生分解性と堆肥化可能性も第三者機関の基準で認められている。

「持続可能な繊維の
重要性を業界に伝え、教育したい」

 イーストマンケミカルのルース・ファレル(Ruth Farrell)=ジェネラル・マネジャーは、「“ナイア・レニュー”の開発にあたり、持続可能なファッションを実現する上で測定可能な影響を与えることを目指した。当社は、品質や美しさを損なわない持続可能な糸を市場に提供するために、生産量の拡大とイノベーションへの投資に真剣に取り組んできた。日本のパートナーと協力して、より持続可能な繊維産業を共に構築することにワクワクしている」と話す。

 特に同素材はウィメンズウエアに適しており、世界的なブランドのニーズに応えるため、組織横断的な開発チームで「ビジョンを共有する」紡績業者や工場と協力して差別化できるトレンドを抑えた生地開発に注力してきた。「私たちの目的は、最初の重要なデザインの段階で、持続可能な繊維の重要性を繊維業界に継続的に伝え、教育し、サステナブルな繊維で作られた生地が妥協を意味しないことを示すことだ。ユナイテッドアローズは持続可能性に対する情熱を共有しており、今回のコレクションは、それを示してくれた。同社のような主力ブランドと協力できることを非常にうれしく思う」。

PHOTOS:SUNGO TANAKA(MAETTICO)
問い合わせ先
イーストマンケミカル
03-5469-7624

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「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」が注目のサステナブル素材“ナイア・レニュー”を日本で初採用

 イーストマンケミカルが手掛ける循環型ジアセテート繊維“ナイア・レニュー(Naia Renew)”は、木材パルプに廃棄物由来の再生プラスチックを組み合わせた注目のサステナブル素材だ。同社は「持続可能なテキスタイルをすべての人に利用可能にすること」をビジョンに掲げ、日本市場での販売数拡大を目指す。その最初のパートナー企業として「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング(UNITED ARROWS GREEN LABEL RELAXING、以下GLR)」が、2022-23年秋冬の主力商品に同素材を採用した。田中安由美ウィメンズ商品本部GLR部副部長兼クリエイション課課長ブランドディレクターは、“ナイア・レニュー”を「作り手が選びたくなるファッション性兼ね備えた信頼のおけるサステナブル素材だ」と評価する。

作り手が選びたくなる
ファッション性が魅力

 「GLR」は、かねてよりリサイクルポリエステルやオーガニックコットンなどサステナブル素材への切り替えを積極的に進めてきた。ユナイテッドアローズ全体では、31年3月期までに環境配慮商品の割合を50%まで引き上げることを目指しており、今後もサステナブル素材の選択肢が必須となる。

 田中ディレクターは「これまでサステナブルを優先すると、ファッション性とトレードオフになることが多かった。しかし、“ナイア・レニュー”は素材選びの段階で自然と手が伸びた生地だった。なおかつ原料は100%サステナブル。リサイクル原料を活用しながら、私たちが手の届く価格帯だったことも採用の決め手だった」と話す。

上品な落ち感と高級感のある
光沢感を生かした通勤服

 アイテムは、通勤時に活躍するセットアップやワンピースなど7型。「GLR」が大切にする「きちんと見えしながらも、着ていてストレスのない着心地」を追求しながら、上品な落ち感と高級感のある光沢感を生かしたシルエットに落とし込んだ。シーズンレスで着られるようジャケットは背抜きで仕立て、パンツは裏地を省いて素材の心地よさを肌で感じてもらう。“ナイア・レニュー”は、従来のアセテートが持つ高い染色性も妥協しない。「GLR」では、それを生かして「ベリーショコラカラー」と呼ぶフェミニンで優しい印象のピンクのほか、ネイビーとホワイトを企画した。また、リサイクルポリエステルと混紡することでイージケアも叶える仕様だ。

 「お客さまが素敵だと思った商品が、サステナブルな選択であることが一番だ。“ナイア・レニュー”はそれを叶えてくれる素敵な素材。生地バリエーションも豊富で、商品群の2軸である通勤服とカジュアル服のどちらにも対応できる。次のシーズンに向けても継続的に採用していく予定だ。」(田中ディレクター)

木材パルプとリサイクル
廃棄物由来の生分解性素材

 “ナイア・レニュー”は、木材パルプが主原料の“ナイア“の次世代版として2020年秋に販売を開始した。原料は60%が木材パルプ、40%がリサイクル廃棄物で構成する。木材パルプは、FSC認証やPEF認証を取得し持続可能な方法で調達されたことが立証されている。通常のアセテートは木材パルプに石油由来の原料を加えるが、イーストマンケミカルは独自の技術でこれをリサイクル廃棄物に置き換えた点が特徴だ。廃棄物はカーペットなど、埋め立てゴミにされるような再生難易度の高い素材を活用する。製造プロセスにおいても環境負荷を抑えることを徹底し、安全かつ環境に配慮した化学薬品を使用し、二酸化炭素排出量や水の使用量を削減したクローズドループを構築している。加えて、生分解性と堆肥化可能性も第三者機関の基準で認められている。

「持続可能な繊維の
重要性を業界に伝え、教育したい」

 イーストマンケミカルのルース・ファレル(Ruth Farrell)=ジェネラル・マネジャーは、「“ナイア・レニュー”の開発にあたり、持続可能なファッションを実現する上で測定可能な影響を与えることを目指した。当社は、品質や美しさを損なわない持続可能な糸を市場に提供するために、生産量の拡大とイノベーションへの投資に真剣に取り組んできた。日本のパートナーと協力して、より持続可能な繊維産業を共に構築することにワクワクしている」と話す。

 特に同素材はウィメンズウエアに適しており、世界的なブランドのニーズに応えるため、組織横断的な開発チームで「ビジョンを共有する」紡績業者や工場と協力して差別化できるトレンドを抑えた生地開発に注力してきた。「私たちの目的は、最初の重要なデザインの段階で、持続可能な繊維の重要性を繊維業界に継続的に伝え、教育し、サステナブルな繊維で作られた生地が妥協を意味しないことを示すことだ。ユナイテッドアローズは持続可能性に対する情熱を共有しており、今回のコレクションは、それを示してくれた。同社のような主力ブランドと協力できることを非常にうれしく思う」。

PHOTOS:SUNGO TANAKA(MAETTICO)
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イーストマンケミカル
03-5469-7624

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“デザイナー不在”の異色ブランド「カルネボレンテ」 セックスポジティブな世の中を目指して

 パリ発の「カルネボレンテ(CARNE BOLLENTE)」は、セックスをモチーフにした刺しゅうTシャツがソーシャルメディアを中心に話題になっているブランドだ。「アンダーカバー(UNDERCOVER)」「アニエスベー(AGNES B.)」とのコラボレーションも行い、東京の街で見かけることも増えた。

 同ブランドは、セックスやセクシュアリティーは恥ずかしいものではなく、健康で楽しいものだというマインド“セックスポジティブ”を体現している。ブランドにはデザイナーがおらず、パリを拠点にした多国籍の3人で構成する。創業から廃棄ゼロを継続するなど、異色ブランドの全貌を、チームの1人である日本人の遠藤聖に聞いた。

WWD:チーム3人の出会いとバックグラウンドは?

遠藤聖(以下、遠藤):ハンガリー出身フランス国籍のイラストレーターのアゴストン・パリンコ(Agoston Palinko)と、フランス出身のアートディレクターのテオドール・ファメリ(Theodore Famery)の2人はフランスの国立の美術大学に一緒に通っていた友人でした。そして、アゴストンは日本に交換留学していて、僕はグラインダー(Grindr、デートアプリ)で彼と知り合い、友達になったんです(笑)。自分は財閥系商社のサラリーマンを辞めた後、セレクトショップのバイヤーを経て、もっとファッションをやりたいと思い、フランスに飛んでブランドをローンチしたんです。

WWD:それぞれの役割は?コレクション発表まで3人でどうこなしているのか?

遠藤:役割を明確に決めてはいませんが、コンセプト作りや、ビジネス面、PRは自分が主に担当しています。商社マンとバイヤーの経験が生きているのかもしれませんね。ただ、コレクションのテーマは3人で決めます。イラストはアゴストンが担当し、自分がファッションのディレクションをします。それらをテオドールが取りまとめるといった流れで進めています。

WWD:なぜデザイナーがいないのか?

遠藤:いわゆるファッションデザイナーと呼べる人はこの中にいません。自分以外の2人もイラストやグラフィックデザインを学んでいましたし、誰もパターンを引けません。服作りにはもちろん真剣に向き合ってはいますが、これでデザイナーを名乗るのはファッションデザイナーさんに申し訳ないというか(笑)。

 「カルネボレンテ」がデザインしているのは、コンセプトだと考えています。たまたま表現のアウトプットがファッションなだけで、日本の文化祭のクラスTシャツを作るカルチャーに近いかもしれません。

WWD:なぜ“セックスポジティブ”を刺しゅうで表現しているのか?

遠藤:タブーとされているからこそ、性にオープンなことが当たり前になる社会にしたい。その考えにメンバー全員が一致しました。まずはそういった会話のきっかけになるアイテムを作りたかったんです。

 そこで、セックスをモチーフにし、ワンポイント刺しゅうのTシャツが最初に作ったアイテムでした。イラストではなく、刺しゅうを使うことで、他ブランドとの差別化ができるかなと考えたので。ブランドをローンチした2015年当時は、セルフィーブーム最盛期。インスタグラムで自撮りをアップした際に、胸元のワンポイントに見えるという効果を狙ったんです。自分たちの周りの人に着てもらうことからスタートし、今もPRはギフティングが中心です。

WWD:現在の販路や展開している国と地域は?

遠藤:卸売りがメインで、25~30カ国のショップに卸しています。卸先の約6割はヨーロッパで、最近は日本でも取り扱いがどんどんと増えています。オンラインでは、「エッセンス(SSENSE)」などでも取り扱っています。ヨーロッパと北米での知名度は高くなる一方で、日本を含むアジア地域ではまだ“フランスのセックスの刺しゅうのブランド”と知られているかどうかで、これからもっと頑張りたいです。

WWD:セクシュアルなデザインで販路に困ることは?

遠藤:ありますね。ヨーロッパと比べ、日本はセクシュアルすぎるかどうかを基準ににアイテムを選別するショップも多いです。一昔前に、女性蔑視的なセクシュアルなモチーフのアイテムを販売して批判されたセレクトショップもあるので、セクシュアルなもの全てをNGにしているケースもあります。

 日本と比べてもっと厳しいのはアメリカです。中絶禁止の議論など保守的な考えがまた強まっているのもあるんでしょうね。特に全国展開しているようなストアだと、ニューヨークやロサンゼルスなどに加え、さらに保守的な地域も考慮しなければいけないので。また中東など、国によっては通関もできないので、輸出が難しい場合もあります。

WWD:工場への発注の際にトラブルはなかった?

遠藤:アイテムは主にポルトガルで製造しているのですが、保守的なカトリックが多い国なので、最初に発注するときは緊張しました。嫌な思いさせたくないなと。でも実際に刺しゅうの工場を訪れてみると、みんなちょっとニコニコ、クスクスしながらこっちを見ていたんです。工場長に聞いたら、「次はどんな変なのが来るかな」とみんな楽しそうに仕事をしているって言われました。半分茶化されてるのかもしれないけど、うれしそうで良かったです(笑)。

WWD:サステナビリティにも取り組んでいる?

遠藤:2015年の創業から廃棄はゼロで、1枚も捨てたことがありません。自分が意外とデータが得意で、販売計画や在庫の持ち方などはすごく気にしています。チャリティーイベントで安く販売や寄付するなどして、無駄にならないようにしています。デザインから販売へのリードタイムが長いため、追加で発注などはせず、基本は1回のみ。

 また、サプライチェーンもほとんどヨーロッパに集約していて、ポルトガルのテキスタイル産業が盛んな地域ギマランイスで主に製造しています。現地のサプライヤーから素材を調達し、工場で生産した後に直接輸送しています。

WWD:ブランドとしてこれから挑戦したいことは?

遠藤:ファッションという枠組みから飛び出してみたい。例えば、オフラインでリアルなコミュニケーションが取れるイベントやスペースとか。クィアコミュニティーやセックスポジティビティーに関連するセーフスペースを作りたいです。

 それと、フェムテックブランドとのコラボにも興味がすごくあるし、次世代の若いアーティストを支援したいという気持ちもあります。自分たちも、ブランドとのコラボなど周りの人に支援してもらったので、それを還元したいんです。

 この先、世界にセックスポジティビティが広がれば「カルネボレンテ」の“特別感”もなくなり、アイテムが売れなくなるかもしれません。でも、それがブランドのゴールでもあるんです。

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識者3人で考える「ファッション産業の未来とは?」 バーチャサイズと考える服とテクノロジーの行方

 経済産業省は4月、「ファッションの未来に関する報告書」を公開した。2021年11〜12月に気鋭のファッションデザイン研究者の水野大二郎・京都工芸繊維大学教授を座長に、ローランド・ベルガーの福田稔パートナーとファッションクリエイティブディレクターの軍司彩弓氏を副座長に、編集者やジャーナリスト、スタートアップ起業家、ファッションデザイナー、若い研究者など多彩な34人の有識者を集めて議論し、その内容をまとめたものだ。雑誌のようにデザインされた報告書は97ページにまとめられ、ビジネスモデルやSDGs、環境問題など多岐にわたるテーマを議論した。副座長を務めた福田氏とともに有識者メンバーの藤嶋陽子・明治大学特任講師、そして最有力ファッションテックスタートアップ企業の一つであるバーチャサイズの高橋君成・最高ビジネス責任者(CBO)を交え、「ファッションの未来」をテーマにした対談をお届けする。

「ファッションの未来」を
考える上で、重要だったこと

WWDJAPAN(以下、WWD):経産省の「ファッションの未来に関する報告書」はたいへん読み応えがあった。印象的だったことは?

福田稔ローランド・ベルガー パートナー(以下、福田):「ファッション未来研究会」の目的の一つは、一人でも多くの人に大きな変革にあるファッション産業の課題や未来を伝えることだった。議論にはBASE創業者である鶴岡裕太氏のような起業家から、ラグジュアリーブランドのトップ、バイオテクノロジーの専門家、弁護士、投資家など、海外やファッション領域以外の人も参加した。これまでの経産省の報告書であれば、小売業や大手アパレルのトップやキーマンが多くの割合を占めていた。しかし多種多様なメンバーが議論に参加したこと自体が、「ファッション」そのものの可能性や広がりを象徴していたと思う。

藤嶋陽子・明治大学特任講師(以下、藤嶋):ファッションと一括りに言っても、それぞれ捉えているものや大切にしているもの、価値観には随分と差異があると再認識しました。多彩な人たちが集まって、そうした違いや感覚を共有し、これからを考える。これまでにはなかった、貴重な機会だと思いました。

WWD:ファッション産業の課題として感じたことは?

藤嶋:大学で授業をしていると、ファッションに興味がある人は業界全体での環境問題の取り組みを認知し、「大量廃棄をして環境に負荷の大きい産業ですよね」と理解している人もいますが、一方でSNS、例えばTikTokやYouTubeではプチプライス商品の爆買いみたいなことも定番で身近なコンテンツになっています。ファッション産業の関係者では当たり前だと認識されている取り組みや価値観がまだまだ浸透しておらず、期待している消費者像とも解離があると感じています。「ファッション」という言葉の持つ広がりや大きさが、ある種のすれ違いのようなものを生み出して、極端な場合はそれが情報の分断にもつながってしまっていると感じています。

福田:同感です。実際、多くの企業はもうほとんど大量廃棄をしていない。ただ家庭に回った衣服は、7割はリサイクルされずゴミになり、その多くは焼却されている。これは程度は違えど日本でもグローバルでも同じだ。大量にモノを作る以上は、どうしてもゴミが出てしまう。ファッション産業の根本的な課題は大量生産、大量廃棄問題のサイクルから抜ける道筋がまだ見えていないことだ。

大量生産・大量廃棄からの
脱却に必要なこととは?

WWD:大量生産、大量破棄という産業構造から脱する道はあるか。

福田:産業構造は日本を含め、グローバルでラグジュアリーブランドと、大手SPA&ファストファッションという二極化が進み、SPA&ファストファッションはモノの消費と生産のボリュームが大きく、しかもサイクルが早い。この前提を踏まえたときに、環境への負荷を減らすためには回収の仕組みを確立するとともに、リサイクル技術を革新していく必要がある。

藤嶋:私は、製造過程や素材に配慮されたものは価格が高く、その価格を受け入れる=価値観に賛同する、あるいは受け入れない=拒否するの2択として消費者に委ねている点に違和感を抱いています。「この商品は買ってもいいモノです」といった考え方を押し付けてしまっているようにも見える。新しいモノを生み続けるモデルが前提になっている。

WWD:解決策は?

藤嶋:簡単な問題ではないのですが、ただ、全ての指標が、「売る」ことを前提になっていることにヒントがあると思っています。今は服を売り上げた枚数は分かっても、その後、その服が何回着られたか、どういう組み合わせで着られたかのかは分からない。授業やワークショップで聞いてみると、消費者側も服をどのくらい持っていて、実際それぞれどのくらい着ているかを正確に把握している人はほとんどいません。情報を埋め込んだICタグの情報を読み取りできるRFIDなどの導入や多様なデータ取得、活用の取り組みも進んでいるので、そういった情報をトラッキングして、「売上とは違う指標」としてモデル化できないかな、と。新しいものを作ることを続けていくためにも、消費者と「売る」「買う」以外の関係性もつくれたら面白いと思います。

福田:面白いですね。確かに私も服を何着持っているのかなんて全然分からないです(笑)。家庭のクローゼットがデジタル化して、持っている服が何回着られたかなどの情報が可視化されたら、こんなに服があったのかとか、あまり使われていない服があったりして、消費者の意識も変わるかもしれない。オンライン試着サービスの「バーチャサイズ(Virtusize)」が、そこに近づける可能性も?

高橋君成バーチャサイズ最高ビジネス責任者(以下、高橋):現時点での「バーチャサイズ」のクローゼット機能は、過去に自分が購入したものや気になったアイテムと、現在購入を検討したいアイテムのサイズを比較できるものですが、自分と同じアイテムを持っている他のユーザーが、1年間に平均100回着ているのに、自分は半分しか着ていないみたいなデータが取れれば、リコメンドの精度を高めたり、新しいサービスの開発につながったりする可能性はあると思います。

産業の縮小を超えた、
その先にある「勝ち筋」とは?

藤嶋:売り手や消費者の意識も変わることで、ビジネスモデルも変わる。新品を買うより、長く着られる服で何か収益を上げられるようになれば、「売る」だけで展開しなければならないビジネスから逃れられるかもしれないですよね。

WWD:サプライチェーンをより進化させたり、必要なものだけを売るデマンドチェーンとリサイクル技術を組み合わせたら総量が減る。つまり産業の衰退にもつながるのでは?

福田:総量を減らすと一時的に事業規模はおそらく減る。現在でもファストファッション企業が生産量を絞ったことで、バングラデシュの縫製産業で雇用が減っているという事実も、残念ながら起きている。だが、産業全体が生き残り、進化するためには必要なことだと。このままで行けば、もっと大きな損失や衰退につながりかねないからだ。実際にグローバル市場に受け入れられるような高付加価値の商品を作りつつ、環境負荷を抑えたサステナブルなビジネスモデルで成功している企業もある。その代表がパタゴニアだ。パタゴニアは2025年にカーボンニュートラルの目標を立てている。服を作っている限り、CO2の排出は避けられないが、ゼロにすると言っている。つまり相当生産量を絞り、真面目にリユースやリサイクル、リメイクにシフトしていって、本当に適量だけを売って、企業責任としてカーボンニュートラルにすると宣言している。日本でもグローバルに受け入れられる価値観とブランドの構築すれば、日本のアパレル産業の活性化にもつながるはずだ。日本のアパレル産業は国内市場のみに限定されており、衣服の完成品輸出を比較すると日本の輸出規模はフランスの40分の1ほどしかないのだから。

WWD:ビジネスを再定義するという視点で、ファッションにまつわる気になる事例や現象は?

福田:アパレル産業は、その時の世の中を端的に反映する業界だと思う。例えばZ世代はサステナブルみたいな話もあるが、実際にはサステナビリティに関心がないZ世代もたくさんいる。快楽主義的に服を買い続ける人は日本にも世界にもたくさんいて、例えば「シーイン(SHEIN)」の急成長は、そうした事実を裏付けている。先ほどパタゴニアの話をしたが、人々の間である種の分断が起きていて、解決の道筋をつけるのは難しいと感じる。逆に面白いと感じているのは、メタバースだ。メタバースというと、一般的には完全なバーチャルの中のアバターのようなVR(バーチャル・リアリティ=仮想現実)を思い浮かべると思うが、私はVRよりもAR(オーグメンテッド・リアリティ=拡張現実)に可能性を感じている。グーグルグラスのようなAR機器は今後、ますます進化し、普及するだろうし、そうなると日常生活の中にARが入り込んでくる。こうしたARは、コミュニケーションインフラとしてのSNSの進化やゲーム・チェンジなども後押しするはずだ。

現在のテクノロジーでも、
リアル店舗の進化にはまだ足りない!?

高橋:すごく面白いと思います。「バーチャサイズ」のクライアントのある有力アパレルから、リアル店舗の「試着体験」をもっとリッチにしたいという相談を受けたことがある。アパレル企業には有力な店舗であるほど、試着室が混み合ってしまうという悩みがあるからだ。相談を受けて、AR機器で試着体験ができたら最高にリッチだと思って調べたのだが、実際にはテクノロジーとのギャップが大きすぎて実現が難しい。実は服の試着をリアルタイムにARで見せるためには、最先端のAIで処理をしても能力がまだ追いつかない。

福田:かなり話題になっているアマゾンのアパレル店舗「アマゾン・スタイル」も、実際にはVRやARではなくたくさんの試着室を並べている。それがまだ最先端という現実もある。

高橋:でも逆に言えば、この5〜10年で技術さえ追いつけば、リアル店舗ががらりと変わる。当社も、そこを見据えて常に既存技術のアップデートや新サービスの開発のアイデアは常に磨いています。逆に10年前と比較すると、店頭在庫とオンライン在庫の連動は当たり前になっているし、売り方の面でも大きいサイズはオンラインのみで展開するなど、実は見えない部分のアップデートはだいぶ進んでいる。実は当社も水面下では、アパレルや小売企業に加え、繊維商社やデザイン企業とも連携し、弊社で取得できる消費者の身体情報や趣味・トレンドなどをもとに企画や生産の段階からサイズデータを生かして需給ギャップを解消する取り組みを始めています。

TEXT:MIWAKO ANNEN
PHOTO:KAZUO YOSHIDA
問い合わせ先
バーチャサイズ

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三越伊勢丹 店頭販促などで“サステナブルな服”や“地球に優しい化粧品”などの表現見直し その意図とは

 今年の春頃から、三越伊勢丹に出店するブランドの関係者から「店頭ポップなどで“サステナブルな服”や“地球に優しい化粧品”などの表現を使用できず、言葉の使い方を見直している」という話を聞くようになった。同社にその理由を聞けば、エビデンスを示さないまま“サステナブル”“地球に優しい”といった言葉だけが先行すると、顧客に誤解を与える可能性があるから、だという。言わずもがな、同社の方針は業界に大きな影響を与える。田口裕基三越伊勢丹ホールディングス執行役常務CAO兼CRO兼CHROにその意図や背景、サステナビリティの方針を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):三越伊勢丹ではサステナビリティをどう定義しているか?

田口裕基三越伊勢丹ホールディングス執行役常務CAO兼CRO兼CHRO(以下、田口):商品を仕入れて販売するのが我々の商売の基本的な形態であり、その中で社会にちゃんと還元できるか、豊かで平和な社会が続くことに貢献できるかの企業責任が問われる。そして企業責任はボランティアではなく経済活動として成立すること。1万7000人の社員にしっかり給料を支払い、お客さまとお取組先さま、地域の方々、株主のすべてが豊かになることが大前提だ。

WWD:それはこれまでも行ってきたことでもある。

田口:来年は三越創業350周年で、百貨店事業そのものも100年超える。戦中、戦後も百貨店をやめず長い歴史がある。今言われるところのサステナビリティは企業の理念として当たり前のようにやってきたことではある。

WWD:同時にファッションビジネス全体がこれまで社会や地球に与えてきたネガティブなインパクトがあると思う。その視点では改善してゆく点はあるか。

田口:あると思う。弊社としては「人・地域をつなぐ」「持続可能な社会・時代をつなぐ」「従業員満足度の向上」の3つを重点にこれまでの商売を見返しており、時代の変化に応じて見直す必要があると考えている。

顧客は「商品の品質・安全の確保・正確な表示」を求めている

WWD:消費者にはサステナビリティの価値観は浸透していると思うか?

田口:2月に三越伊勢丹ウエブ・アプリ会員の方を対象に10回目となるサステナビリティに関するアンケートを実施し5900名から回答を得た。「さまざまな社会課題のうち、今後、三越伊勢丹グループが特に重点的に取り組むべき活動」の問いに対する回答の第1位は突出して、「商品の品質・安全の確保・正確な表示」だった。続くのが「食品廃棄物・食品ロスの削減」、「プラスチック、紙容器などのすべての包装材の削減」となり、お客さまがサステナブルに対して強く考えを持っていることがうかがえた。これは毎年高まる傾向にある。

WWD:以下は主にファッション業界関係者に向けて話してほしい。環境と社会の両面に関して、取引先とは現在のサステナビリティ方針をどう共有しているのか。

田口:三越伊勢丹には12項目の調達方針がある。それは取引先と私たちの約束とも言えるもので、2018年にはホームページに掲出し2021年に見直した。内容は、法令順守・公正取式、品質管理、生物多様性対応、環境負荷軽減と汚染防止などであり、実は8項目は今で言うところのサステナビリティに関連することである。取り引きを始める前には必ず共有し、年に一度は説明会を開催。常にここを順守しましょう、と約束しながら進めている。

WWD:方針を決めるにあたって2018年に「サステナビリティ調達に関する」アンケートを対取引先に実施し、51%の292社が回答したと聞く。

田口:環境や人権に関しても、まずまずは我々が現状を知ることが大切だから実施した。センシティブな内容であり、丁寧に進めた。お取組先に「間違ったことを書いたらペナルティーがある」などと受け取られてはいけない。進んでいる企業では、サプライチェーンマネジメントの観点から、お取組先に足を延ばし、事件事故がなくても普段から現地調査をしているところもあると聞いているが、弊社はまだそには達していない。方針を配り、アンケートを回収し、これからその次のステップへ進んでいく段階だ。

WWD:アンケート結果は「品質管理への対応が積極的に取り組まれている一方で、環境や人権のサプライチェーン全体のマネージメントは難易度高い」とある。

田口:後者の、環境・人権問題については業界全体での取り組みが必要。官公庁や業界団体への提案・働きかけを進めていくとともに人権デューデリジェンスについても検討を進めたい。

“サステナブル”を商品の形容詞としては使わない

WWD:消費者はサステナビリティという言葉の使われ方、同時にグリーンウォッシュという言葉に対しても敏感だ。店頭ポップや販促物での言葉の使いに取り決めはあるか。

田口:表示マニュアルを作り、バイヤー、お取組先と共有している。元からある、景品表示法ガイドライに乗っ取った適正な販売表現マニュアルの中に、サステナビリティの項目を加えたもの。最新は昨年末に改正した。

 内容は、「根拠が不明確なことは言わない」が基本。たとえば“サステナブルな〇〇”のように商品に対して、サステナブルを形容詞としては使わない。考え方の前提として、お客さまにわかりやすく伝える訴求表現を目指している。「サステナビリティ」や「サステナブル」は一般的に、持続可能な繁栄をめざすための取り組み全体を指す表現であるため、 個々の商品の特徴を説明する場合の使用には適さないと考える。優良誤認を招く可能性もあるため、商品やサービスなど訴求物には形容詞としてこれらの表現を使用しないことを原則としている。

WWD:同じ理由から「地球に優しい〇〇」といった商品説明も控えるとしている。これは独自のルール?

田口:環境省による「環境表示ガイドライン」の内容であり、当社独自ルールではない。たとえば、環境保全効果を示す表示を行う場合、対象が商品の一部なのか全体なのかその範囲を表示すること。また、「環境保全に配慮した素材の使用 」と表示する場合は「リサイクルポリエステル〇%使用」など、その使用割合を表示する。

WWD:確かにサステナビリティを語る際には具体的に、エビデンスをもって、が重要になっている。

田口:商品の成分が環境保全に何らかの効果を持っていることを表示する場合は、効果があることを示す専門機関等による公正な方法による調査・検査結果の証拠を用意する。また、リサイクル、リユース、アップサイクルなどの表現は、表示内容と事実に相違がないことを示す根拠資料を用意すること、などを原則としている。

WWD:なぜここまで定義・言葉の整理をしているのか。

田口:サステナビリティに関連する言葉との出会いを通じて、理解ある方を一人でも多く増やし、よりよい社会づくりに貢献したい。お客さまは、われわれに高い「信頼」をお持ちいただいており、さらに信頼されるよう、しっかりと裏付けがあることはもちろん、理解・共感を得られるよう、誰もがわかりやすい表現が大切だ。

WWD: 言葉が、商売にこれほど重きを置いたことは過去にないのでは。サステナビリティ推進担当だけではなく、仕入れに関わるすべての社員がそれをすると。

田口:心配だとこちらに相談が来る。なんでも聞いてくれ、と言っている。お取組先は大切なパートナー。そしてサステナビリティは1社で取り組むものではなく、地球全体で取り組んでこそ効果のある取り組みだから、ともに推進していく観点も含まれている。また、従業員も言葉の意味をきちんと把握しておく必要がある。

まだ“正”を模索している段階。輪の拡大を目指す

WWD:接客を仕事にする人にとって、今まで知らなかった、接客で使ってこなかったサステナビリティ関連の言葉がたくさんある。業界全体でブラッシュアップするときだ。

田口:私たちもパーフェクトではなく、極めて謙虚にありたい。物事、すべて、100%が“正”なのかと言えばそうじゃない。まだ当社も“正”を模索している段階。“正”と言えない部分も、まずはそれを認識して、その上で持続可能な社会の寄与するものなのか、を考えてゆきたい。

 例えば9月から始まる“think good”キャンペーンは、企画段階で担当者が「これは本当に“think good”なのか自主チェックをしてきた。4回目の開催となる同キャンペーンでは、昨年までの新宿、日本橋、銀座に立川、浦和も加えて5店舗で展開し、企画の数は数百にのぼる。そのひとつひとつを確認するから大変だし、バイヤーもお取組先も苦労していると思うがここは切磋琢磨し進めたい。お客さまにサステナビリティを考えていただく機会をご提供するだけでなく、そのために、お取組先と当社グループが互いに考え方を伝え合うことで、ともに改善を図り、理解を深める機会になっている。今後も継続していくことで、サステナビリティを推進する人の輪の拡大を目指す。


【WWDJAPAN Educations】

【第2期】サステナビリティ・ディレクター養成講座
2022年9月30日(金)開講

 昨年初めて開催し好評を得た「サステナビリティ・ディレクター養成講座」を今年も開講。サステナビリティはこれからの企業経営の支柱や根底となるものであり、実践が急がれる事業の課題である。この課題についてのビジョンを描くリーダーの育成を目的に、必要な思考力・牽引力を身につける全7回のワークショップとなる。前半は各回テーマに沿った第一線で活躍する講師を迎え、講義後にはディスカッションやワークショップを通して課題を明確化し、実践に向けたアクションプランに繋げていく。

 また、受講者だけが参加できるオンライン・コミュニティーでは、「WWDJAPAN」が取り上げるサステナビリティに関する最新ニュースや知っておくべき注目記事をチェックでき、更に講義内容をより深く理解するための情報を「WWDJAPAN」編集部が届ける、まさに“サステナ漬け”の3カ月となる。
講義のみが受講できるオンラインコースも同時に受け付けています。


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8月に破たんした三崎商事のスポンサーに名乗り、「アパレルReSTARTファンド」って何者なの?

 名門インポーターの三崎商事は8月1日、民事再生法の適用を受けた。再建を後押しするスポンサーとして現れたのが、アパレルReSTARTファンドだ。同社は、監査法人やM&Aコンサルティング企業で企業再生やM&Aなどを手がけた倉本大樹氏が2020年に立ち上げたReSTARTグループ傘下の企業で、20年6月からは神戸の中堅アパレルであるハヴァナイストリップの再建を手がけている。キーマンであるアパレルReSTARTファンドの高橋浩二社長CEOと、ReSTARTグループ代表で、アパレルReSTARTファンドの倉本大樹CIOの2人を直撃した。

WWDJAPAN:アパレルReSTARTファンドの概要は?

倉本大樹(以下、倉本):監査法人やM&Aコンサルティング会社などを経て、2020年にM&Aのコンサルティングやファイナンス支援などを行うReSTARTグループを立ち上げた。その事業の一つとして、アパレルのハンズオン型の再生ファンドとしてスタートしたのが、アパレルReSTARTファンドだ。アパレルReSTARTファンドは、ハヴァナイストリップを軸にファブリックブランドの「レ・トワール・デュ・ソレイユ(LES TOILES DU SOLEIL) 」、ファクトリーエクスプレスジャパンなどを展開しており、グループの年商は合計で10億円ほど。全体の従業員数は70〜80人になる。

WWD:三崎商事の支援スポンサーに名乗りを上げた。その理由は?

高橋:三崎商事のスポンサー支援に関しては基本合意書を締結した段階であり、今後について詳細を話すことはできない。現時点で言えるのは、三崎商事がこれまでと変わりなく事業を継続し店舗の営業も継続していく、ということだけ。ただ、三崎商事は「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」を筆頭に数々の有力ブランドを取り扱ってきた名門企業で、現在も「ゲラルディーニ」という優良ブランドを展開している。会計上の数字以上の資産を持ち合わせており、非常にポテンシャルが高い。日本のアパレル産業全体を考えても、再生には重要な意義がある。

倉本:これは三崎商事に限定した話ではなく、あくまで一般論だが、戦略や見方を変えるだけでも、再生や再成長できるアパレル企業は多い。日本市場に限定していたビジネスを、アジアやグローバル市場に再設定すれば、新しい展開が見えてくる。

WWD:20年6月から再生に取り組んでいるハヴァナイストリップの現状は?

高橋:再建前に50店舗ほどあった店舗は、不採算店舗の閉鎖と出店をあわせて行い、現在は18店舗。生産の仕組みなどを整えたことで、利益率も改善しており、すでに黒字になっている。

WWD:再生のポイントは?

高橋:実際にはそう難しいことをやっているわけではない。改革は現在進行系だが、市場調査や競合調査をやった上で、これまで前年踏襲型だったやり方を改め、精度の高いMDを組むような仕組みに変えていくなど、無理・無駄を徹底的に減らしていった。全くのゼロではないが、人員削減などもわれわれがスポンサーになってからはほとんど行っていない。今年の秋冬に向けては、外部ディレクターにセタイチロウ氏を起用し、生産面では一部を工場との直接取引に移行するなど、利益率の向上も見えてきた。私自身が長く企画や生産畑を歩んできたこともあり、この部分は最初の組み立てはまさにハンズオンだが、いちど構築することで、引き継ぐようなやり方を取っている。これらに加えて、ECを本格的にスタートした。これは大きい。当社は、グループ内企業のECを垂直的に立ち上げて、その後は実際の運営を移行するチームを作っており、ハヴァナイストリップでもこのチームの下、かなりスピーディーにECを立ち上げられている。今後はさらに黒字体質になっていくはずだ。

WWD:多くのアパレルが赤字や不採算事業に苦しんでいると言われるが、課題をどう見る?

高橋:MD不在ということが一番大きいのではないか。アパレル企業の多くは年商数十億円規模の企業が多く、実際には競合分析や商品構成、商品発注、売り上げ分析などをきちんと行って、かつ実施している企業がかなり少ない。その一方で実は数字のデータはエクセルであれ、クラウド上であれ、意外と揃っている。勘や属人的なやり方、あるいは前年踏襲でなんとなく毎年商品を発注して、在庫になってしまっている。余力がないから、ECのような新規分野にも経営資源を投じられず、負のスパイラルに陥っている。

倉本:これまでアパレルに限らず、多くの業種・業界の再生に関わってきた。アパレルは市場が縮小しており、一部の機関投資家からは魅力がない業界とも思われている。だが、私からすると逆に伸びしろが大きいとも思っている。データドリブンなMD管理や計数管理、EC関連のリソースの提供などで、見違えるような業績回復を行う事例も少なくない。その上で、アジアを筆頭にしたグローバル市場を視野に入れることで新しいビジネスの形も見えてくる。

WWD:具体的には?

倉本:現在は水面下で大型プロジェクトを進めており、現時点では公表できない。一昨年にReSTARTファンドアパレルを立ち上げてから、かなり多くの問い合わせをいただいており、それだけ悩んでいる企業が多いことは確かだ。日本のアパレル産業の活性化には、中小・中堅企業の再生が不可欠だ。これからも全力で取り組んでいく。

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来場者に聞く「フェティコ」の魅力 2023年春夏のショーに潜入

 「フェティコ(FETICO)」は、2023年春夏コレクションを「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で、ブランド初のランウエイショー形式で発表した。同ブランドは女性の体の美しさや、強さを引き出すフェティッシュなスタイルが人気のブランドだ。今季の着想源は、1970年代に作家や女優、モデルとして活動した鈴木いづみ。彼女の写真から女性の体の曲線美や、自信を持って肌を見せるという自己愛を表現した。

 「WWDJAPAN」映像チームは、バックステージやショーの様子を捉えるとともに、来場した歌手の中島美嘉やモデルのモトーラ世理奈、萬波ユカらにファッションやブランドの魅力について聞いた。

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来場者に聞く「フェティコ」の魅力 2023年春夏のショーに潜入

 「フェティコ(FETICO)」は、2023年春夏コレクションを「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で、ブランド初のランウエイショー形式で発表した。同ブランドは女性の体の美しさや、強さを引き出すフェティッシュなスタイルが人気のブランドだ。今季の着想源は、1970年代に作家や女優、モデルとして活動した鈴木いづみ。彼女の写真から女性の体の曲線美や、自信を持って肌を見せるという自己愛を表現した。

 「WWDJAPAN」映像チームは、バックステージやショーの様子を捉えるとともに、来場した歌手の中島美嘉やモデルのモトーラ世理奈、萬波ユカらにファッションやブランドの魅力について聞いた。

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ブルガリCEOが「時計&ジュエリー業界の好況は続く」 顧客が望むゴールド素材を拡充

 ジュネーブでは8月29日~9月1日までの3日間、30を超えるブランドが参加した新作時計の合同展示会「ジュネーブ ウォッチ デイズ 2022」が開かれた。主催した「ブルガリ(BVLGARI)」も今年の新作ウオッチを発表。この新作やブランドについて、ジャン・クリストフ・ババン(Jean Christophe Babin)=ブルガリ・グループ最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。

ーーメンズからレディスの複雑機構搭載モデルまで揃えたが、特に力を入れた注目は?

ジャン・クリストフ・ババン=ブルガリ・グループ最高経営責任者(以下、ババンCEO):まず注目してほしいのは、今年コレクションが誕生して10周年を迎えたアイコン “オクト”の新作。なかでも超薄型“オクト フィニッシモ”の新作、“オクト フィニッシモ スケルトン エイトデイズ”だ。幾何学的な美を追求した8角形のケースに、新開発の超薄型なのに8日間のパワーリザーブを有するスケルトンムーブメントを搭載した手巻きモデルだ。ローマのコロッセオからインスピレーションを得た“オクト”のアニバーサリーイヤーにふさわしいエレガントな一本だ。

ーー “オクト フィニッシモ”からは、2010年に建築界のノーベル賞「ブリツカー賞」を受賞した日本を代表する建築家のひとり、妹島和世とのコラボレーション限定モデルも登場した。ミラーポリッシュのケースやブレスレットの中で、やはり鏡のように仕上げられ、見る角度次第で神秘的な輝きを見せる。

ババンCEO:ローマのコロッセオを筆頭に、私たちはクリエーションにおいて建築から多大なインスピレーションを受けている。“オクト”ではこれまで、安藤忠雄氏など日本人建築家とのコラボレーションモデルも発売した。このモデルは「見えるもの、見えないもの」という妹島氏のクリエイティビティに着想を得たもので、特別なミラー加工を施したダイヤルの上に妹島氏がデザインしたドットパターンを加えたサファイアクリスタルの風防を重ね、独自の輝き、きらめきを実現している。世界で360本だけの限定モデルなので、すぐにコレクターズモデルになることは間違いない。

ーーメンズ&レディスどちらにも、ブラックを基調にした新作、ゴールド素材のモデルが数多く登場したが、その狙いと理由は?

ババンCEO:ブラックは、今年の新作のテーマカラー。またゴールド素材は、ラグジュアリーなモデルを望む顧客の声に応えたもの。“オクト”では文字盤がゴールドケースの新モデルを、またスネークをモチーフにしたレディスのアイコン“セルペンティ”コレクションからもブラックセラミックとピンクゴールドの“セルペンティ スピガ セラミック”をリリースした。また“ブルガリ・ブルガリ”でも、ブラックの文字盤にブラックDLC加工を施したケース&ブレスレットのモデルを発売した。

ーー時計&ジュエリー業界の今後をこの先をどのように予測する?

ババンCEO:現職に就任以来、ウオッチでもジュエリーでも、最高峰のデザインと卓越した技術力、さらに最高峰の職人技を結集して「エレガントでコンテンポラリー」という「ブルガリ」の魅力を高めることができた。また新型コロナ禍でも、従業員をひとりもレイオフ(解雇)することなく事業を発展させてきた。ラグジュアリーアイテムの需要は今後世界的にさらに高まり、時計&ジュエリー業界の好況も続くと考えている。ブルガリはその中の「ベスト・オブ・ベスト」を目指したい。

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ブルガリCEOが「時計&ジュエリー業界の好況は続く」 顧客が望むゴールド素材を拡充

 ジュネーブでは8月29日~9月1日までの3日間、30を超えるブランドが参加した新作時計の合同展示会「ジュネーブ ウォッチ デイズ 2022」が開かれた。主催した「ブルガリ(BVLGARI)」も今年の新作ウオッチを発表。この新作やブランドについて、ジャン・クリストフ・ババン(Jean Christophe Babin)=ブルガリ・グループ最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。

ーーメンズからレディスの複雑機構搭載モデルまで揃えたが、特に力を入れた注目は?

ジャン・クリストフ・ババン=ブルガリ・グループ最高経営責任者(以下、ババンCEO):まず注目してほしいのは、今年コレクションが誕生して10周年を迎えたアイコン “オクト”の新作。なかでも超薄型“オクト フィニッシモ”の新作、“オクト フィニッシモ スケルトン エイトデイズ”だ。幾何学的な美を追求した8角形のケースに、新開発の超薄型なのに8日間のパワーリザーブを有するスケルトンムーブメントを搭載した手巻きモデルだ。ローマのコロッセオからインスピレーションを得た“オクト”のアニバーサリーイヤーにふさわしいエレガントな一本だ。

ーー “オクト フィニッシモ”からは、2010年に建築界のノーベル賞「ブリツカー賞」を受賞した日本を代表する建築家のひとり、妹島和世とのコラボレーション限定モデルも登場した。ミラーポリッシュのケースやブレスレットの中で、やはり鏡のように仕上げられ、見る角度次第で神秘的な輝きを見せる。

ババンCEO:ローマのコロッセオを筆頭に、私たちはクリエーションにおいて建築から多大なインスピレーションを受けている。“オクト”ではこれまで、安藤忠雄氏など日本人建築家とのコラボレーションモデルも発売した。このモデルは「見えるもの、見えないもの」という妹島氏のクリエイティビティに着想を得たもので、特別なミラー加工を施したダイヤルの上に妹島氏がデザインしたドットパターンを加えたサファイアクリスタルの風防を重ね、独自の輝き、きらめきを実現している。世界で360本だけの限定モデルなので、すぐにコレクターズモデルになることは間違いない。

ーーメンズ&レディスどちらにも、ブラックを基調にした新作、ゴールド素材のモデルが数多く登場したが、その狙いと理由は?

ババンCEO:ブラックは、今年の新作のテーマカラー。またゴールド素材は、ラグジュアリーなモデルを望む顧客の声に応えたもの。“オクト”では文字盤がゴールドケースの新モデルを、またスネークをモチーフにしたレディスのアイコン“セルペンティ”コレクションからもブラックセラミックとピンクゴールドの“セルペンティ スピガ セラミック”をリリースした。また“ブルガリ・ブルガリ”でも、ブラックの文字盤にブラックDLC加工を施したケース&ブレスレットのモデルを発売した。

ーー時計&ジュエリー業界の今後をこの先をどのように予測する?

ババンCEO:現職に就任以来、ウオッチでもジュエリーでも、最高峰のデザインと卓越した技術力、さらに最高峰の職人技を結集して「エレガントでコンテンポラリー」という「ブルガリ」の魅力を高めることができた。また新型コロナ禍でも、従業員をひとりもレイオフ(解雇)することなく事業を発展させてきた。ラグジュアリーアイテムの需要は今後世界的にさらに高まり、時計&ジュエリー業界の好況も続くと考えている。ブルガリはその中の「ベスト・オブ・ベスト」を目指したい。

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テンガが本気のアパレル事業で年商1億円目指す 「プラスチックトーキョー」元デザイナーの再起

 テンガ(TENGA)は、2021年に立ち上げた、アーティストと共にアパレルや雑貨などを製作するプロジェクト「ティーエックスエー テンガ バイ アーティスト(TXA -TENGA by Artist- 以下、TXA) 」のインラインを拡充し、23年春夏シーズンから卸販売を開始する。プロジェクト マネジャーを務める今崎契助は、16年に「毎日ファッション大賞」新人賞を獲得し、東京のファッション・ウイークにも参加していたブランド「プラスチックトーキョー(PLASTICTOKYO)」の元デザイナーだ。同氏はブランドを19年春に終了させた後、現在はテンガの社員として4人の「TXA」チームを率いており、初のインライン14型とアーティストとのコラボレーションアイテムをデザインしている。

 インラインアイテムは、春夏と秋冬のシーズンサイクルに合わせて発表していく。ファーストシーズンはデニムジャケット(3万7800〜3万9800円税込、以下同)とジーンズ(2万7800〜2万9800円)、トラックジャケット(3万2800円)とトラックパンツ(2万5800円)、コーチジャケット(3万8000円)と共地のパンツ(2万9800円)とセットアップ提案が多い。さらにスエット(1万9800円)やフーディー(2万3800円)、半袖ニット(2万6000円)などのベーシックなアイテムもそろえる。アパレルでは一番安いTシャツが9300円という強気の価格帯だが、「国内のメーカーと生地を作ったり、独特な色味に染めたりと、どのアイテムも妥協は一切していない。適正な工賃を払ってものを作り、それを長く着てもらいたいからこの価格帯になった」と今崎マネジャー。

 Tシャツにはさらっとした質感のオーガニックコットンを、コーチジャケットにはシリコンコーディングしたタイプライター地を、トラックジャケットには品のいいコットンベースの高密度ポンチを使うなど、ただのファングッズではないことが素材使いだけで伝わってくる。今崎マネジャーは「テンガの全てのプロダクトは、肌に当たったときの心地良さを大事にしている。アパレルでもそこは大切にしたかった」と語る。

 ほとんどが男女共に着用できる2サイズで、丸みにこだわったシェイプが特徴だ。「プロジェクトの目的の一つは、多様な性愛を伝えること。その表現として、男女の体形のちょうど中間をとるようなシェイプを作りたかった」。Tシャツの襟にはダーツを入れ、肩線を通常よりも下げて立体感をもたせた。ラグランスリーブのスエットは、襟のダーツと袖口のカッティングで全体がふっくらとした曲線を描く。表に出る縫い目を極力減らしてクリーンな印象を保ちながら、人の体について熟考を重ねたディテールは、ファッションデザイナーらしいアプローチである。奇抜で無機質な服に見えて、実は着る人のことをとことん考え抜いた「プラスチックトーキョー」時代の“今崎デザイナー”をほうふつとさせる。卸先や消費者には、価格帯に見合った製品のクオリティーや、プロジェクトの価値をどう伝えていくかが成否を分けるポイントになるだろう。

“あのテンガ”がアパレルを?
世間の先入観をどう変えるか

 テンガは、19年3月に阪急メンズ東京への常設店出店に合わせてアパレル制作を開始。当時はコミュニケーションツールとしてのファングッズ扱いで、年間売上高は全体の1%にも満たなかった。同年7月に、テンガが掲げる“性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく”というビジョンに共感した今崎マネジャーが入社。ビジョンをさらに幅広い層に伝えていくため、アパレル強化に本腰を入れ始めた。しかし、急に本気のファッションアイテムを作っても「クラスのお調子者が、急に真面目なことを言い出したように受け取られる。テンガは世間でやはりセルフプレジャーのイメージが強い。ファッションをやるなんて、冗談なんじゃないかと思われる。ファングッズとファッションのバランス感を模索していた」。

 試行錯誤を重ねた結果、21年初頭に「テンガの“性を表通りに”という理念と、アーティストの自身の内面を発信したいという“自発性”には通じるものがあるんじゃないか」というアイデアが浮かび、アーティストと協業してメッセージを発信する「TXA」の構想がスタート。同年11月には第1弾のアイテムとしてTシャツやフーディー、雑貨を自社ECで発売した。発売後2カ月間の売り上げは約100万円で、「想定していた予算には届かなかった」という。売れたアイテムは「テンガっぽいものよりも、そうじゃない商品」だったため、インラインではグラフィックを排してデザインに振り切り、多様な性愛をディテールで、企業のアイデンティティーをカラーリングや着心地で表現している。

 初年度の年間売上高の目標は5000万円で、3〜5年以内に1億円規模を目指す。「TXA」の売り上げの一部は、性犯罪・性暴力被害者ワンストップ支援団体に寄付する。今後はインラインとアーティストとの協業を継続させながら、本の出版やイベントの協賛などプロジェクトを広げていき、「“性を表通りに”という会社のメッセージを伝える土壌作りをしていきたい。最終的には社会問題を解決するプロジェクトにしたいし、デザイナー経験があるからこそ、ファッションやアートにはその力があると信じている」。そう堂々と言い切る今崎マネジャーに、デザイナー時代の控えめな雰囲気はない。

 「プラスチックトーキョー」時代は、東コレへの参加や「毎日ファッション大賞」効果で取引先は増えたものの、一人で全ての仕事を抱えてパンク状態になり、事業を継続するのが難しくなった。しかし現在は支え合えるチームがあり、今シーズンのルックは「プラスチックトーキョー」時代の撮影チームを再び集めた。今崎マネジャーに、ひさしぶりに思い切りクリエイションができて楽しいのではないかと聞くと「楽しいし、感慨深い。でも社長が応援してくれているとはいえ、会社員なのにこんなに好きにやっていいのだろうかとたまに思う……」と、急にかつての遠慮がちな小声に戻った。

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テンガが本気のアパレル事業で年商1億円目指す 「プラスチックトーキョー」元デザイナーの再起

 テンガ(TENGA)は、2021年に立ち上げた、アーティストと共にアパレルや雑貨などを製作するプロジェクト「ティーエックスエー テンガ バイ アーティスト(TXA -TENGA by Artist- 以下、TXA) 」のインラインを拡充し、23年春夏シーズンから卸販売を開始する。プロジェクト マネジャーを務める今崎契助は、16年に「毎日ファッション大賞」新人賞を獲得し、東京のファッション・ウイークにも参加していたブランド「プラスチックトーキョー(PLASTICTOKYO)」の元デザイナーだ。同氏はブランドを19年春に終了させた後、現在はテンガの社員として4人の「TXA」チームを率いており、初のインライン14型とアーティストとのコラボレーションアイテムをデザインしている。

 インラインアイテムは、春夏と秋冬のシーズンサイクルに合わせて発表していく。ファーストシーズンはデニムジャケット(3万7800〜3万9800円税込、以下同)とジーンズ(2万7800〜2万9800円)、トラックジャケット(3万2800円)とトラックパンツ(2万5800円)、コーチジャケット(3万8000円)と共地のパンツ(2万9800円)とセットアップ提案が多い。さらにスエット(1万9800円)やフーディー(2万3800円)、半袖ニット(2万6000円)などのベーシックなアイテムもそろえる。アパレルでは一番安いTシャツが9300円という強気の価格帯だが、「国内のメーカーと生地を作ったり、独特な色味に染めたりと、どのアイテムも妥協は一切していない。適正な工賃を払ってものを作り、それを長く着てもらいたいからこの価格帯になった」と今崎マネジャー。

 Tシャツにはさらっとした質感のオーガニックコットンを、コーチジャケットにはシリコンコーディングしたタイプライター地を、トラックジャケットには品のいいコットンベースの高密度ポンチを使うなど、ただのファングッズではないことが素材使いだけで伝わってくる。今崎マネジャーは「テンガの全てのプロダクトは、肌に当たったときの心地良さを大事にしている。アパレルでもそこは大切にしたかった」と語る。

 ほとんどが男女共に着用できる2サイズで、丸みにこだわったシェイプが特徴だ。「プロジェクトの目的の一つは、多様な性愛を伝えること。その表現として、男女の体形のちょうど中間をとるようなシェイプを作りたかった」。Tシャツの襟にはダーツを入れ、肩線を通常よりも下げて立体感をもたせた。ラグランスリーブのスエットは、襟のダーツと袖口のカッティングで全体がふっくらとした曲線を描く。表に出る縫い目を極力減らしてクリーンな印象を保ちながら、人の体について熟考を重ねたディテールは、ファッションデザイナーらしいアプローチである。奇抜で無機質な服に見えて、実は着る人のことをとことん考え抜いた「プラスチックトーキョー」時代の“今崎デザイナー”をほうふつとさせる。卸先や消費者には、価格帯に見合った製品のクオリティーや、プロジェクトの価値をどう伝えていくかが成否を分けるポイントになるだろう。

“あのテンガ”がアパレルを?
世間の先入観をどう変えるか

 テンガは、19年3月に阪急メンズ東京への常設店出店に合わせてアパレル制作を開始。当時はコミュニケーションツールとしてのファングッズ扱いで、年間売上高は全体の1%にも満たなかった。同年7月に、テンガが掲げる“性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく”というビジョンに共感した今崎マネジャーが入社。ビジョンをさらに幅広い層に伝えていくため、アパレル強化に本腰を入れ始めた。しかし、急に本気のファッションアイテムを作っても「クラスのお調子者が、急に真面目なことを言い出したように受け取られる。テンガは世間でやはりセルフプレジャーのイメージが強い。ファッションをやるなんて、冗談なんじゃないかと思われる。ファングッズとファッションのバランス感を模索していた」。

 試行錯誤を重ねた結果、21年初頭に「テンガの“性を表通りに”という理念と、アーティストの自身の内面を発信したいという“自発性”には通じるものがあるんじゃないか」というアイデアが浮かび、アーティストと協業してメッセージを発信する「TXA」の構想がスタート。同年11月には第1弾のアイテムとしてTシャツやフーディー、雑貨を自社ECで発売した。発売後2カ月間の売り上げは約100万円で、「想定していた予算には届かなかった」という。売れたアイテムは「テンガっぽいものよりも、そうじゃない商品」だったため、インラインではグラフィックを排してデザインに振り切り、多様な性愛をディテールで、企業のアイデンティティーをカラーリングや着心地で表現している。

 初年度の年間売上高の目標は5000万円で、3〜5年以内に1億円規模を目指す。「TXA」の売り上げの一部は、性犯罪・性暴力被害者ワンストップ支援団体に寄付する。今後はインラインとアーティストとの協業を継続させながら、本の出版やイベントの協賛などプロジェクトを広げていき、「“性を表通りに”という会社のメッセージを伝える土壌作りをしていきたい。最終的には社会問題を解決するプロジェクトにしたいし、デザイナー経験があるからこそ、ファッションやアートにはその力があると信じている」。そう堂々と言い切る今崎マネジャーに、デザイナー時代の控えめな雰囲気はない。

 「プラスチックトーキョー」時代は、東コレへの参加や「毎日ファッション大賞」効果で取引先は増えたものの、一人で全ての仕事を抱えてパンク状態になり、事業を継続するのが難しくなった。しかし現在は支え合えるチームがあり、今シーズンのルックは「プラスチックトーキョー」時代の撮影チームを再び集めた。今崎マネジャーに、ひさしぶりに思い切りクリエイションができて楽しいのではないかと聞くと「楽しいし、感慨深い。でも社長が応援してくれているとはいえ、会社員なのにこんなに好きにやっていいのだろうかとたまに思う……」と、急にかつての遠慮がちな小声に戻った。

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【動画】未来を担う日本の若手デザイナーたちに聞いた今とこれから

 「WWDJAPAN」8月29日号は次世代の日本人デザイナー特集だ。表紙を飾ったのは「M A S U」「ダイリク(DAIRIKU)」「ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)」「カナコ サカイ(KANAKO SAKAI)」「オマール アフリディ(OMAR AFRIDI)」という未来を担う日本の若手デザイナーたち。「WWDJAPAN」映像チームは、表紙撮影の現場でデザイナーたちに「ブランドを立ち上げたきっかけ」や「今後の展望」などの質問を投げかけた。

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【動画】未来を担う日本の若手デザイナーたちに聞いた今とこれから

 「WWDJAPAN」8月29日号は次世代の日本人デザイナー特集だ。表紙を飾ったのは「M A S U」「ダイリク(DAIRIKU)」「ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)」「カナコ サカイ(KANAKO SAKAI)」「オマール アフリディ(OMAR AFRIDI)」という未来を担う日本の若手デザイナーたち。「WWDJAPAN」映像チームは、表紙撮影の現場でデザイナーたちに「ブランドを立ち上げたきっかけ」や「今後の展望」などの質問を投げかけた。

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“ネットフリックスの息子”、俳優・ソン・ガンが「ボビイ ブラウン」がブランドアンバサダーに就任

 「ボビイ ブラウン(BOBBI BROWN)」は8月31日、アジア・パシフィック(APAC)ブランドアンバサダーに韓国の人気俳優、ソン・ガン(SongKang)を起用すると発表した。ソン・ガンは2017年、TVシリーズ「カノジョは嘘を愛しすぎてる」でデビュー。スクリーン上でのダイナミックな存在感と高い演技力により、過去数年の間に瞬く間に人気を博し、海外でも注目を浴びている。ネットフリックス作品に多く出演していることから“ネットフリックスの息子”との異名を持つことで知られる。スクリーン内外で輝きを放つソン・ガンは今後、「ボビイ ブラウン」が展開するキャンペーンなどでブランドの顔を務める。

 ソン・ガンは、「『ボビイ ブラウン』の“自らの自然な美しさを受け入れ、自信を称賛する”という価値観に大変共感しています。今回のパートナーシップは非常にエキサイティングな挑戦であり、僕の新しい姿をお見せできるのが待ちきれません。ぜひ楽しみにしていただきたいです」とコメント。

 ソン・ガンのブランドアンバサダー就任を記念し、ファンデーションなどの愛用アイテムを含む限定キットを 9月2日に発売する。百貨店限定で“インテンシブ セラム ファンデーション”(※または“インテンシブ スキン セラム クッション ファンデーション”をはじめとした4点の “インテンシブ セラム セット”(税込1万4520円〜1万4960円)を、公式オンラインショップ限定で“インテンシブ セラム ファンデーション”のミニサイズなど3点のキット“インテンシブ セラム ミニ スターター キット”(税込7150円)を販売する。

 また、ソン・ガンのスペシャルインタビューも公開された。

――「ボビイ ブラウン」のフィロソフィーは、ソン・ガンさん自身とどのような親和性があると思いますか?

ソン:僕を含めるほとんどの人たちは、さまざまなコミュニティで定義される美の定義に簡単に影響を受けやす く、自分自身の本来の美しさを忘れがちになると思うんです。「ボビイ ブラウン」のフィロソフィーは、ありのままの自分と、自身が持つ個性が本当の美しさなんだ、ということを思い出させてくれます。 この気持ちが自信につながり、自然と自己表現の源になってくれるんです。

――新しいキャンペーンでは、最高に輝いているソン・ガンさんを見せてくれます。ソン・ ガンさんの今までの人生で最も輝かしい瞬間は?そしてその理由は?

ソン:今、この瞬間。「ボビイ ブラウン」とです(笑)!それはさておき、初めてのドラマの撮影でスタジオに足を踏み入れた瞬間は一生忘れないと言わざるを得ません。あれは間違いなく、僕の最も輝かしい瞬間の一つであり、今の僕を形成してくれたと確信しています。

――ファンの皆さんにおすすめしたい「ボビイ ブラウン」のお気に入り製品は?

ソン:“インテンシブ セラム ファンデーション”と“エクストラ リップ ティント”です。僕は比較的ナチュラルなメイクを好むので、この2つの製品は僕自身の肌を自然に美しくしてくれるところが大好きです。 コンパクトな“エクストラ リップ ティントはいつも持ち歩いていますし、軽いテクスチャーで簡単にメイクが落とせる“スージング クレンジング オイル”も気に入りました。すっと肌に溶け込んでくれて、 撮影の後にいつも使用しています。

――誰も知らない隠れた才能などはありしますか?

ソン:才能ではないけれど、これはあまり知られていないんじゃないかな?僕は左利きなんです。なのでリップなどは左手で塗るんですよ。

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故ヴァージル・アブローを魅了した新鋭アーティストのベイビー・ブラッシュとは?

 ストリートアーティストのベイビー・ブラッシュ(BABY BRUSH)が、バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)の六本木店で行ったイベントに合わせて来日した。ベイビー・ブラッシュはスイス・チューリッヒで生まれで、現在はイタリアを拠点に活動。主にエアブラシを用いて作品を制作し、ネオンカラーを基調とした鮮やかな色彩とその細やかで大胆な筆使いで故ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)を魅了し、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH以下、オフ-ホワイト)」とのコラボレーションを実現している。

 来日したベイビー・ブラッシュに、アーティストになった経緯から「オフ-ホワイト」とのコラボの経緯までを語ってもらった。

ーー幼い頃からアートやデザインに興味があったのでしょうか?

ベイビー・ブラッシュ:4~5歳頃から街中の道路標識や看板が好きで、母親いわく周りの子どもたちが絵を描いている中で僕だけは文字を描いていたらしい(笑)。そして、1970年代にニューヨークでグラフィティ文化が発展したタイミングとほぼ同時期に、スイスはタイポグラフィ文化が根付いているからグラフィティが流行し(注:スイスはタイポグラフィやグラフィックデザインが最も発展している国の一つ)、今でも街中にグラフィティが数多くあるんだ。その影響もあって13歳頃からストリートスタイルに傾倒し、15歳でエアブラシを持っていたね。エアブラシは、日本でいうお祭りや遊園地みたいな場所で、塗装する人たちが使っているのを見て存在を知ったんだ。

 それから、芸術系の大学に進学してタイポグラフィを専攻した。両親がイタリア人だから、イタリアを拠点にヨーロッパを転々としつつ、アートや映画、音楽、コミックなどアメリカのカルチャーに大きな影響を受けていたので、現地で勉強もした。どれくらい好きかっていうと、スイスの音楽を一切聴いて育っていないくらいね(笑)。スイスは小さい国だから(注:九州地方より小さい)、ディープなカルチャーを感じることは難しかったんだ。

ーー大学に進学した理由は、職に就くことを考えていたからですか?それとも、あくまでアーティストを目指すための通過点?

ベイビー・ブラッシュ:両親の顔を立てるために学校を卒業しないといけなかったのもあるけど、一番はアーティストになるための経験だね。誰かの下で働くために学ぶ、という考えはなかったよ。

ーーアーティスト活動を始めたのは具体的にいつ頃ですか?

ベイビー・ブラッシュ:今の時代、インターネットやSNSを通じて自分の作品を世に発信するアーティストが多いと思うけど、その多くが“未成熟な状態”で発表しているように感じる。それが僕は嫌で、2014年からプロフェッショナルレベルのクオリティになるまでじっくりと準備し、2019年にようやく自信を持って作品を発表できるようになったんだ。

ーーそれでは、アーティスト名の由来を教えてください。

ベイビー・ブラッシュ:僕の顔が幼かったからずっとニックネームが“ベイビーフェイス”で、インスタグラムのアカウント名の一部も“babyface”にしてたんだ。作品を描くときに“エアブラシ(airbrush)”を使っていたから、シンプルに“baby”と“brush”を組み合わせただけだよ。

ーー今のようなどこかネオンを彷ふつとさせる作風が確立したタイミングは?

ベイビー・ブラッシュ:エアブラシで作品を描いた洋服を友達によくプレゼントしていたんだけど、いろいろな人から「オリジナリティが高いね」って言われて、その時に作風が確立していることに気付いたんだ。だから試行錯誤した末にというよりも、いつの間にかだね。

ーー洋服にエアブラシで作品を落とし込むようになったきっかけは?“自分の作品を着たい”という衝動があったんでしょうか?

ベイビー・ブラッシュ:20歳頃から洋服をキャンパスにエアブラシで作品を描いていたんだけど、自分の作品が動いているのを見てみたかったんだ。それに、人々がギャラリーに足を運ばなくても街中で僕の作品を見ることができるからね。

ーー「オフ-ホワイト」とのコラボは、アーティスト人生を語るうえでのハイライトの1つだと思いますが、この経緯は?

ベイビー・ブラッシュ:まず、いろいろなブランドからコラボの依頼が届いていたけど、僕がアーティスト活動をスタートするまでに時間を要したように、一つ一つの関係性を大事にしたかった。それに、最初にコラボするブランドだけは本当に納得した相手が良かったから、全て断っていたんだ。でもある日、ヴァージルから突然DMが届いたんだ。というのも、昔からの親友のブロディンスキ(Brodinski、フレンチ・エレクトロ・シーンを代表するプロデューサー/DJ)がヴァージルと知り合いでね。僕はブロディンスキの作品のアートワークや洋服のカスタムを担当していたから、ヴァージルがインスタグラム経由で僕の作品を見てくれたみたい。パンデミックのタイミングだったから全てをリモートで進めて、発売するタイミングで初めて会う予定だったけど、亡くなってしまった。ヴァージルはグラフィティに造詣が深かったから、親和性を感じてくれたんだろうね。

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AMIAYAと学ぶサステナビリティvol.5 衣と食をつなげ、ゴミを出さない循環モデルとは

 私たちAMIAYAがリアルな目線でサステナビリティを学ぶ本連載。自由にファッションを表現する楽しさや、ファッションが持つポジティブなエネルギーを届けたいという思いは、今も昔も変わりません。ファッション業界の負の側面が問題になっている近年、私たちは大好きなファッションを通して責任ある発信をしていきたい。モノづくりに関わる人間としてこれからの未来のためにできるより良い選択をしていきます。

 今回は、“衣”から“食”をつなぎ、ゴミを出さない新しい循環モデルを実践している「アルーフ ホーム(ALOOF HOME)」に伺いました。東京・南青山に店舗を構える同ブランドは、和紙やコットン、シルクなどの天然繊維を用いた衣類を中心に、カーテンや寝具などの衣食住に関わるプロダクトを販売しています。合成繊維を使わずに、天然繊維を使用しているのには理由があります。それは、回収した古着を京都・美山の自社農場で肥料に活用して野菜を育てているからです。南青山の店舗に併設されたカフェスペースでは、それらの野菜を使ったフードやカフェメニューを楽しめます。

 ファッション業界が抱える問題のひとつでもある大量の在庫廃棄から生じる汚染水や温室効果ガスは、環境問題を語る上で避けては通れません。「アルーフ ホーム」の循環モデルは、これからのファッションの未来を担う新しいプラットフォームになっていくはずです。園部皓志代表は、「ゴミを出さない」とシンプルだけど、やるべきことをきちんと見据えていました。ファッションの未来は明るい!と希望が持てる取材でした。

「かっこいい」より「おいしい」で理解するサステナビリティ

AMI:衣から食をつなげるというコンセプトを思いついたきっかけは?

園部皓志代表(以下、園部):すごく簡単に言うと、人には「かっこいい」より「おいしい」の方が伝わりやすいんです。かっこいい服を着てサステナビリティを考えるよりも、食を通じた方が理解が早い。僕は以前ファストファッションブランドに勤めていましたが、日本の消費者は世界と比べるとサステナビリティへの意識がまだまだ低い。「サステナブルだから」よりも「安くて高品質」だからの方が購買につながります。そんな消費者をどう教育すべきかを2年間かけて考え、服を肥料にして土壌を活性化して、その土壌で育てた素材を活用した食を販売するモデルに行き着きました。

AYA:その壮大なスキームをたった2年で形にできたのってすごいですね。

園部:僕はトレンド予報士の資格を取得していて、世の中の兆候を捉え仮説を組み立てるのが得意なんです。2017年ころには、20年までには環境や健康系の市場が活性化することを見据えていました。でもサステナブルな服を購入してもらう方法を考えるのはすごく難しくて。ファッション業界にはさまざまな問題がありますが、僕はまず使った後の責任に焦点を当て「ゴミを出さないこと」を軸にしました。

AMI:天然繊維が畑の肥料になるんですね。

園部:もともと麻などは肥料として活用されていたので、天然繊維も肥料になるのではないかと思い、検証したら微生物を活性化させることができました。最初は日本を代表する繊維の和紙で商品開発を進め、今はコットンやシルクも使用しています。

AYA:古着の回収ボックスは街でよく見かけますが、その服がその後どこに行っているかは正直分からない。でも「アルーフ ホーム」は、自分の着た服が肥料になって野菜になって戻ってくるので、意識が変わるきっかけになりそうですね。こちらのお店では食事を楽しめるだけでなく、価値観を共有するコミュニティーの一員になれるのもうれしいです。

園部:お客さまの意識を変化させるためには、五感で感じられる場所が必須だと思いました。サステナブルブランドである以上、伝えるべきメッセージがたくさんあるので、この空間を発信拠点にしていきます。

ファッション好きの“矛盾”を解消する購入方法

AMI:商品の購入方法には、“Long Buy(定額購入)”と“Time Buy(期間型購入180日)”の2種類があります。サステナビリティの観点から考えると1着を長く大切に着ることが大事だけど、ファッション好きのいろんな服を楽しみたい気持ちと矛盾してしまうんです。このシステムは、どちらの欲求も満たしてくれるので良いですね。

園部:僕の軸は、ゴミを出さないことです。周りからも「長く着た方がサステナブルなんじゃないですか」と指摘を受けたことがありますが、その根拠はないですよね。

AMI:このスキームを実践する上で難しかったことは?

園部:本当にいろいろ難しかったですよ(笑)。最初は土に戻るスピードが速い和紙に着目しましたが、僕たちの最終目標は服を戻した土壌で野菜を作ることです。それには微生物をどれだけ活性化できるかが重要でした。周りには時間ではなく質の大切さを理解してもらうことに苦労しました。

AMI:京都の自社農園もいちから作ったんですか?

園部:はい、知り合いの土地の一部を購入しました。このスキームを実現するには、自分が見える範囲でスピード感を持ってトライ&エラーを繰り返すことが鍵になります。デザインするときに、自由がないと嫌じゃないですか。それと一緒です。

AYA:すごい。その熱量はどこから来るんですか?

園部:やっぱりファッションが好きなので。服には人の気持ちを変える力があります。今は、そのファッションの本質が忘れられている気がします。僕はスーパーファッションデザイナーではないので、サステナブルの分野で「ゴミを出さない」ビジネスモデルを構築して資本を集め、人の意識を変えることに挑戦したい。

AMI:私たちもモノづくりに携わる人間としていろんな矛盾を感じています。でも、その中でどう責任を持って生み出していくかが重要だと思います。服を販売した後の仕組みを構築するのも責任を持つ1つの方法で、ファッションに対しての夢が広がるブランドだなと思いました。

園部:将来的には、皆さんが生み出したものは私が全部回収して、ゴミを出さない国作りを目指します。

■Aloof hom
場所:東京都港区南青山3-2-9
電話:03-6812-9401
営業時間:11:00〜19:00
定休日:月曜日・金曜日

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担当21年目のファストリ社員に聞く社会貢献の現場と現実 「被災地でユニクロはインフラなんだと震えた」

 サステナビリティは地球環境問題だけでなく、「社会」もまた重要な要素である。企業は世界の社会課題とどう向き合い、貢献するかが問われる時代だ。とは言え「社会」という漠然として言葉が何を指すのか理解は難しい。そこで、ファーストリテイリングで社会貢献分野に長年携わるシェルバ英子コーポレート広報部部長に、これまでの歩みと同社が社会貢献を行う意味について聞いた。世界進出をしたことで見えた「社会」とは?そして社会貢献とビジネスの関係とは?

WWDJAPAN(以下、WWD):ファーストリテイリングは、地域社会やNGO・NPOと連携して各国や地域における社会的課題を解決するための支援を行っている。シェルバさん自身のこれまでの歩み、今の仕事を選び続けている理由は?

シェルバ英子ファーストリテイリング コーポレート広報部部長(以下、シェルバ):自然の流れであり、あまりたいそうなことは言えないが、入社は2001年。それ以前は「ギャップ(GAP)」の当時の原宿旗艦店でアシスタント・ストアマネジャーとして働いていた。あるとき「ギャップ」の2900円のフリースが売れなくなり、競合調査をしたら原宿にオープンした「ユニクロ(UNIQLO)」では1900円で売っていた。何度か視察をする中で、“この会社、勢いがあって面白いな”と思ったのが出会いになる。ちょうど人材募集をしていたので入社をし、最初は社員研修のプランニングなどの担当部署にいたが、社長直轄の社会貢献室を立ち上げるタイミングで“新しいこと好きそうだから”と声がかかった。

 柳井(正ファーストリテイリング会長兼社長)は当時から「世の中、もうけっぱなしではダメ。社会に還元する企業でなきゃいけない」と明確に言っており強く印象に残っている。人事や総務、広報なども細分化されていない、まだベンチャー気質があった頃のこと。「ウチにしかできないことをやろう」と思った。地域と結びついて、従業員が参加できること、服を通じてできる取り組みを探そうとした。この軸は今も変わらない。

WWD:社会貢献室は2004年にCSR部となる。

シェルバ:会社がどんどん大きくなっていった時期で、同時に一部のグローバルSPA企業が“スエットショップ”と批判されるなど、アパレルの労働環境が問題視されていた頃でもある。グローバルを意識する中、労働集約型の産業の課題に着手せねばと、CSR部では04年の設立当時から労働環境のモニタリングを始めている。日本企業の中でも早い方だったと思う。2017年からはサステナビリティ部が設立され、自然環境の取り組みが進んでいるが、私は引き続き社会貢献活動を担当している。

WWD:今の所属が広報部である理由は?

シェルバ:「情報発信は取り組みと同じくらい大切」という考えから、2年前にサステナビリティ部のマーケティングチームを広報部に移管。これまでは定期刊行物を作るような活動しかしてこなかったものを、「ユニクロ」のブランディングの根幹のひとつを担う役割としてサステナビリティの位置づけが変わってきた。

WWD:「ユニクロ」の根幹と言えば、地域、小売店、服だと思うが、社会貢献活動もそれらがベースにあるのか。

シェルバ:社長の柳井はよく「平和な社会でないとビジネスが成り立たない。だから地域社会が持続可能な状況を作ることに目を向けるべきだ」と言っているが、その考え方がベースにある。

従業員間の合意形成を測ることは簡単ではない

WWD:シェルバさんのキャリアはファーストリテイリングの変遷と重なりとてもユニークだ。モチベーションはどこにあるのか?

シェルバ:さかのぼると、“人”となる。最初に担当した仕事が瀬戸内オリーブ基金だった。瀬戸内オリーブ基金は、当時日本最大と言われた有害産業廃棄物の不法投棄事件「豊島(てしま)事件」をきっかけに建築家の安藤忠雄氏と豊島事件弁護団長の中坊公平氏が呼びかけ設立されたNPO法人。当時は知名度がなく、2000年に調整が成立していたものの跡地や緑化の問題は深刻で、企業が入り込むにはディープな世界だったが、社長は現場を視察してこの状況を変えることが市民社会として必要だと思ったという。事業との関連性はなかったが、全国展開している店舗でできること、として募金と寄付の活動を始めた。

 募金を寄付するだけではなく、従業員がボランティアに参加し、それがどのように使われているかを知る仕組みが必要なんじゃないか?となり、2003年に仕組みを作ったものの、従業員からの関心が低く。どうしたら関心を持ってくれるかな、と考えることは自分のモチベーションになった。

WWD:日々売り上げに追われている一人一人の意識を変える、まさにサステナビリティの肝で難所だ。ほかにこれまでの仕事で印象的だったものは?

シェルバ:難民支援はずっと関わらせていただいている。もうひとつ、06年に服の店頭回収を開始した。そしてこれまた従業員がその気にならないと進まないプロジェクトだ。お客様の服を店でお預かりして役立てる取り組みだから、丁寧な対応が大切。同時に全従業員が納得する取り組みでないと意味がない。当初はアンケートをとったところ半数くらいの従業員しかやりたがらなかった。

WWD:店頭としては成績にもつながる“売る”ことに集中したいと思うのが自然だ。

シェルバ:そこでまずは北海道でトライアルを行い、「毎月これくらい回収があった」といった情報や具体的なオペレーション方法をシェアすることで、「それなら店舗のオペレーションの中でやっていける」といった納得感を得られるようにした。従業員が自分ごと化し、合意形成を測ることはとても大切。簡単ではない。

WWD:衣料の寄贈は2021年8月末までの累計で79カ国、4619万点と膨大だ。難民支援も服の回収と同じく2006年スタートである。つながりはあるのか?

シェルバ:「回収した服をどういう使い方をするのか、誰が着るのか。中古市場に流すことが多いようだが、うちは最後までどうなったのか追いたい」そんな声が社員からあがるなか、服は服として活用したいという思いもあり、実際に服が必要なところはどこなのかを探して、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に引き継ぐことに決めた。

 そこで初めて地球上の難民の課題を知った。UNHCRの予算は医療などが優先で衣料にはまわりづらい。ならば「これは私たちがやる意味ある」と思った。店頭回収から支援までの一連のスキームを作ったことは意義ある経験となった。社内でよく使われる好きな言葉が「現場、現実、現物」。現場に行って現実を見て、課題を知って何ができるかを見つけるという意味で、店舗運営や商売を語るときに使われるが、サステナビリティも同じだと思う。現場で課題を発見して課題を解決する。

WWD:2025年度までに、100億円規模で社会貢献活動に投資することを発表している。その中身はあくまで「服屋として何ができるのか」という視点だと。

シェルバ:アパレル企業としては筋が通っていると思う。それとやはり、平和な社会なくしてビジネスは成り立たない。世の中の不均衡といった問題の解決策を服を通じて探っている。

記憶に残る東日本大震災でのできごと

WWD:多くの人と接する中で記憶に残ることは?

シェルバ:東日本大震災のとき。3月11日の金曜日から24時間以内に「ユニクロ」への支援要請がカスタマーセンターや店舗スタッフに届き、その多くが「早く!」と怒りにも近いテンションだった。私たちはもう社会インフラなっているのだ、頼られているのだと震え上がった。社長個人が10億円を出すことを決めて、現場も週末中に声を集めて数百万枚レベルの衣料支援が必要であると決定。以降、半年間は木曜日の夜から月曜日の朝まで毎週服を届けに行ったが、今でもあの時のことを思い出すと、社会からの期待に背筋が伸びる。

WWD:まさに「現場、現実、現物」だ。

シェルバ:当初は自治体も被災者であり機能をしていなかった。そこで仙台で倉庫を借りて、そこに備蓄されていた日用品もまとめて、借りた車で被災地へワーっと届ける。そういったことを繰り返ししていた。あれから10年が経ち、ヨーロッパのスタッフがウクライナで同じことをしている。ロシアによるウクライナ侵攻が始まって5日目くらいには、ヨーロッパにある衣料をポーランドなどに届けるなど同じスキームで支援を行っていて、そういう教育があったわけではないけど同じことを実践していることは印象的だ。

WWD:地球上のさまざまな課題と接する中、ファッションにはどんな力があると思うか?

シェルバ:「ユニクロ」にはライフウエアというコンセプトがあり、あらゆる人のための普段着を作っている。私たちは「救援物資」という言葉を使ってしまうが、もらった人たちに取っては1枚の服。人間としての尊厳を表すものが服。受け取った服を「あなたにはこれが似合う」と交換するなど、自己表現にもなっている。有事の際には、もちろん生命を維持する水や食べ物の方が必要だが、着替えることでリフレッシュしたり気持ちを高揚させたりするパワーが服にはあると、現場を見てきて強く思う。

 「UT」の平和を願うチャリティーTシャツプロジェクト「ピース・フォー・オール(PEACE FOR ALL)」もそうだが、お客さまとサステナビリティのタッチポイントのような存在、社会課題に結びつく商品の伝え方は小売業ならではと思う。

グローバルビジネスで企業姿勢を表すCSRを推進は不可欠

WWD:「支援」は企業にとってどんなメリットがあるのか?もしくは「支援」はメリットを求めることではないのか?

シェルバ:海外進出を進めた頃、社長の柳井は各国の要人と会う際に「あなたの会社はうちの国にどう貢献しますか?」と問われることが多く、「良い服を手ごろな価格で提供します」というだけでは話にならないと感じたと聞いている。それもありグローバルビジネスで企業姿勢を表す際にCSRを推進することが不可欠であるという考えから05年に社会貢献室をCSR部に改組するとともに、CSR委員会を立ち上げた。「支援」、「難民問題」という表現は上から目線に聞こえるかもしれないが、やはりそこは地球市民の責務であり、社会課題を解決することが企業の役割のひとつだと思う。

WWD:世界でさまざまな立場の人と接する仕事だが、コミュニケーションをする際に意識していることは?

シェルバ:話す以上に、聞く方が大事だとは思う。相手が国連の人でも難民の人でも従業員でもそう。何を考え、何を必要としているかを聞く。そして全部聞いた上で「これはできるけど、これはできない」とロジカルに伝える。人間だから、つい当たり障りのない返答をしそうになるが、中途半端な期待を残さないことも大事で相手がどんな立場でもそこはぶらさない。

WWD:依頼を受けることは多いだろう。

シェルバ:難民キャンプで「しかるべき人に届けてほしい」と嘆願書を渡されたことがあったが、私たちにはできないことだからお断りをした。本当に悲しいこと。難民の方たちは自分の意志とは関係なく難民という立場に置かれている。「自分にはパスポートがない、帰る家がない」と聞いて、何も答えられなかったこともある。

 東日本大震災のときの経験も胸をえぐられた。津波の被害があったエリアとなかったエリアの境に避難所があったため、被災していない人も服を持っていったため、大ごとに。間に入ってくれる機関もなかったから、自分たちで即座に優先順位を決めて「波をかぶった人から配ります」と伝えたのだが、公平の中にも優先順位が必要なわけで、学びが大きかった。

WWD:みんなに、は難しい。

シェルバ:平等でないから、全員に渡せないからやらない、ではなく、必要な人にはやはり渡したいのが私たちの思いだ。

WWD:これから関わりたいことは?

シェルバ:リサイクル素材などの採用、責任ある調達など商品に紐づいた情報発信をより積極的に実施していくことで、透明性の向上やお客様によりわかりやすく伝えることを心掛けていきたい。その際に、自社がやっていることを一方的に伝えるのではなく、お客様にも参加いただける機会を増やしながら、活動の輪を広げていきたいと思う。 ユニクロは現在、25の国と地域で店舗を展開しており、商品、店舗、従業員がサステナビリティのタッチポイントとなって、サステナビリティがお客様にとって身近なものとなるよう取り組んでいきたい。

WWD:多彩な情報に触れる仕事だが、日々の情報収集方法は?

シェルバ:歴史が好きで、司馬遼太郎が好き。組織論や普遍的な人間の立ち振る舞い、愚かさは彼が先生だ。時事ニュースは流しっぱなし。ソーシャルはあまり見ない。一喜一憂したくないから。


【WWDJAPAN Educations】

【第2期】サステナビリティ・ディレクター養成講座
2022年9月30日(金)開講

 昨年初めて開催し好評を得た「サステナビリティ・ディレクター養成講座」を今年も開講。サステナビリティはこれからの企業経営の支柱や根底となるものであり、実践が急がれる事業の課題である。この課題についてのビジョンを描くリーダーの育成を目的に、必要な思考力・牽引力を身につける全7回のワークショップとなる。前半は各回テーマに沿った第一線で活躍する講師を迎え、講義後にはディスカッションやワークショップを通して課題を明確化し、実践に向けたアクションプランに繋げていく。

 また、受講者だけが参加できるオンライン・コミュニティーでは、「WWDJAPAN」が取り上げるサステナビリティに関する最新ニュースや知っておくべき注目記事をチェックでき、更に講義内容をより深く理解するための情報を「WWDJAPAN」編集部が届ける、まさに“サステナ漬け”の3カ月となる。
講義のみが受講できるオンラインコースも同時に受け付けています。


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「アミリ トーキョー」誕生 新天地で描く次世代のラグジュアリー

 米ロサンゼルスを拠点とする「アミリ(AMIRI)」が、東京・南青山に旗艦店をオープンした。直営店は世界6店舗目で、アジアでは中国・上海に次ぐ2店舗目だ。マイク・アミリ(Mike Amiri)CEO兼クリエイティブ・ディレクターは、同店を「真のラグジュアリーへのステップアップには欠かせない」と位置づける。メゾンが愛するLAのムードを保ちながら、日本の伝統技術を各所に取り入れて、誰もまねできないクリエイティビティーを探求する「アミリ」の世界観を体現する。

“僕らは新たなステージへと
駆け上がる”

WWD:東京への出店を決めた理由は?

マイク・アミリ(以下、アミリ):東京はファッションの多様性を代表する街で、個性とクリエイティビティーに溢れている。メゾン設立当初からとても重要なマーケットで、出店は念願だった。ここに来れば、われわれがどんなメッセージを込めてものづくりを行っているかを理解できるはずだ。より多くのユーザーに、メゾンを知ってもらうきっかけになってほしい。

WWD:「アミリ」が掲げる“次世代のラグジュアリー”とは?

アミリ:従来のメゾンが大切にしてきた伝統やヘリテージを持ち合わせながら、新しいカルチャーと密接につながり、社会を代弁するような存在だ。現代社会では新たなシーンが次々に登場し、刺激が生まれ続けている。若い世代にもラグジュアリーのストーリーを伝えるには、彼らとの対話を持ち続けなければいけない。「アミリ」はものづくりへのピュアな欲求から始まったが、クリエイションと向き合い、メゾンの世界観を築いていくうちに、“次世代のラグジュアリー”へと変わっていった。

WWD:間もなく立ち上げる2022-23年秋冬コレクションのこだわりは?

アミリ:店舗のアートも手掛けてくれたウェス・ラング(Wes Lang)との協業だ。あらゆる画材とテクニックを思いつくままに操る彼の姿を見て、アートワークを単にグラフィックとして採用するのではなく、服をキャンバスに見立てて、刺しゅうやジャカード、ペイント、色落ち加工など、さまざまな技法で表現していった。ぜひ店舗で重層的なクリエイションを目の当たりにしてほしい。

WWD:6月に発表した23年春夏コレクションでは、テーラードを強く打ち出した。

アミリ:次世代のラグジュアリーに大切なのは、いろんな側面を常に取り入れること。だから、「アミリ」が持つカジュアルなムードと着心地の良さをテーラードにミックスした。ブレザーだったら、ライニングやつなぎの部分を外して軽くしてみたり、ウール素材にビンテージ加工をして古いTシャツのような質感にしたり。コアなファンのほか、新たなユーザーからの手応えも大きい。

WWD:メゾン設立から8年がたった。今後の展望は?

アミリ:短期間でこれだけ成長できたのは、自分たちがどんなメゾンかを明確にして、メッセージを届けてきたから。誰もまねできないオリジナルなインスピレーションとオーセンティックなイメージをそのままに、メゾンの間口を広げて、大きな夢を描き続けたい。「アミリ トーキョー」とともに、新たなステージへと駆け上がっていく。

ガラス張りの心地よい空間に
自然の豊かさをプラス

 「アミリ トーキョー」は、店舗面積204㎡で2フロア構成だ。1階は自然光がたっぷりと注ぐ全面ガラス張りの空間で、コンクリートをベースにしたシンプルな設計。つり下ろし式のハンガーラックなどで要素を削ぎ落としながら、大理石の什器やオーク材の台、観葉植物をミックスして、自然の豊かさを表現した。シルクシャツやデニムといった定番アイテムをはじめ、バスケットボールをモチーフにしたバッグやレザーグッズ、フットウエアなどのメンズコレクションを集積する。店内各所には、アミリの友人であり、2022-23年秋冬コレクションで協業したアーティスト、ウェス・ラングによる描き下ろしのアートワークを設置。LAから世界に名を広めた同氏の作品が、同じくLAから次世代のラグジュアリーを伝える「アミリ」と共鳴する。

盟友による大型アートワークがお出迎え
常設店初のウィメンズコーナーも

 2階は、ローソファーや彫刻のようなテーブルなど、洗練された家具をゆったりと配置し、リラックスした空間を演出した。中央に敷いた市松模様のラグが、日本の伝統と温もりを感じさせる。ウェス・ラングが東京店のために制作した大型のアートワークが目を引く中央のコーナーには、メゾンの最新アイテムやカプセルコレクションをラインアップ。ウィメンズコーナーも充実し、ブラウスやコートといったウィメンズアパレルと、スニーカーやレザーグッズなどを用意する。上層階の外装は、黒漆喰を日本伝統の左官工法で仕上げ、ガラス張りの下層とのコントラストを生み出している。

東京店限定のアイテムたち

 「アミリ トーキョー」限定のカプセルコレクションも販売。メゾンの象徴的なデザイン“ボーンスタック”を、日の丸に着想した赤と白でアレンジして、フーディーやTシャツ、スエット、トランクス、ハットに落とし込んだ。

INFORMATION

住所:東京都港区南青山5-3-27
時間:11:00~20:00
不定休

PHOTOS:AMIRI, SHUHEI SHINE
問い合わせ先
アミリ/スタッフ インターナショナル ジャパン
クライアントサービス
0120-106-067

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「ナチュラルビューティーベーシック」復調に道筋 アルページュ野口社長の再生術

 TSIの主力婦人服ブランド「ナチュラルビューティーベーシック(NATURAL BEAUTY BASIC以下、NBB)」が復調へ手応えをつかんでいる。コロナ禍による働く女性の服装の変化で、値ごろなオフィスカジュアル服を提案してきた「NBB」は大きなダメージを受けた。22年3〜5月期の売上高はコロナ前(20年同期)の水準には及ばないもの、21年2月期との比較では9.5%増と上向いている。

 昨年9月、コロナの禍中で「NBB」の再建をミッションとして託されたのが、同じグループ会社のアルページュ社長でTSI第1ディビジョン長の野口麻衣子氏だ。同社の「アプワイザー リッシェ(APPWEISER RICHE)」「リランドリュール(RIRANDTURE)」などではセールを廃止するなど適量・適価の販売を推進している。「NBB」では、どのように浮上への道筋をつけたのか。

WWD:「NBB」の再建を任され、何から着手したか。

野口麻衣子・TSI第1ディビジョン長兼アルページュ社長(以下、野口):アルページュの5ブランドがそれぞれ数店舗から十数店舗の規模であるのに対して、「NBB」は約80店舗。初めは(売り上げなどの)数字のケタの違いに戸惑い、プレッシャーを感じた。ただ今では、ビジネスとしての規模の違いはあっても、アパレルビジネスとしてのキモになる部分は変わらないと思っている。

 就任してから、まず事業部メンバー全員と面談をした。分かったことは、同じ婦人服ブランドだから、ある程度の共通言語はあるということ。何より、メンバーの仕事への情熱や頭の中にあるアイデアは、アルページュで働く社員と何ら変わらないということだ。

 30年以上の歴史があるブランドで、いきなり入ってきた人間が「全部この通りにやれ」と頭ごなしに指示しても、うまくいくわけがない。だからアルページュのやり方をそっくりそのまま移植することはしなかった。80店舗を抱えるブランドの知名度、根強い顧客は、他にない強み。今までやってきたビジネスを否定せず、いかに今の時代に合わせたバランスや方向に修正するか。これが私のミッションだと捉えた。

WWD:「NBB」の不調の原因をどう分析したか。

野口:経営資料を見て、膨大な商品在庫量に驚いた。「NBB」はアルページュのブランドの競合としてベンチマークしてきたブランドだったが、近年は商品ラインナップがいまいち変わり映えせず、値引きをよくしている印象があった。時代の変化に対応した商品が作れずに、結果として余ってしまっている。余剰在庫が、ブランドの現在を象徴していると感じた。

WWD:商品企画をどのように修正した?

野口:商品企画の土台となる、着丈や身幅といった寸法のレギュレーションを見直した。どんな婦人服ブランドにおいても、ワンピースやスカートなど商品ジャンルごと、日本人女性の標準的な体形に合わせた寸法の目安があるはずだ。だが「NBB」では、この基準がずいぶん長い間アップデートされていなかった。「今の時代の空気感に合っているか」「自分たちが本当に着たいと思うか」を基に、全ての数字を細かく見直した。

 画一化・固定化していた商品ラインナップもテコ入れした。3月から都心の10店舗限定で “リミテッドエディション”を新規導入した。「NBB」は働く女性に向けた機能的で安心感のあるデザインが武器だ。洗ってもしわにならないブラウスとスカートのセットアップなどは、お客さまから根強い支持を得てきた。だが、商品バリエーションがこういった売れ線に偏るあまり、店頭から彩りが失われていたのも事実だった。 “リミテッドエディション”はジレやリラックスフィットのTシャツ、彩度の高いグリーンのパンツなど、これまでの「NBB」になかったトレンド性や新鮮なカラーパレットを加えている。ブランドの主要顧客層は40〜50代だが、“リミテッドエディション”を導入した店舗の3〜5月期業績は前年同期比36%増と好調で、特に20〜30代の購買の伸びが大きい。この秋には、展開店舗をさらに5店舗ほど拡大する。

WWD:アルページュのノウハウが生きた部分もあるか。

野口:主にデジタル活用の面だ。これからのアパレルは、デジタルを駆使してお客さまとの接点を増やし、同時にモノ作りから発信、販売までを連動させるビジネスモデルに変えていかないと生き残れない。アルページュはECサイトを起点とした店舗との相互送客がうまくいっており、この成功事例は「NBB」でも生かした。これまで全く取り組んでこなかったインスタライブを、まずはルミネ池袋店で最低でも週1回配信するようにした。ライティングやカメラの撮影手法などは、アルページュでやってきた方法を実践してもらっている。ライブ配信では新商品や売れ筋などを紹介して、店舗やECにお客さまに呼び込んでいる。インスタの公式アカウントには12万人のフォロワーがついた。これまでメルマガなどに限られていたお客さまとのデジタル上でのタッチポイントは、着実に広がっている。物撮り写真ばかりで単調だったECも、全ての商品ページにモデルカットを使うようにした。ECの3〜5月の売上高は前年同期比で86%増加した。

WWD:社員の働き方もデジタル中心に変わるか。

野口:デザイナーはECサイトでどのように写真で表現されるかまでイメージして服を作る必要がある。本社のPRスタッフも、店頭とコミュニケーションを取り、そのとき打ち出すべきアイテムをきちんと把握しておく。それぞれのメンバーが、自分の役割だけに捉われず、他のポジションとどうつながっているかを意識して仕事をしなくてはならない。そのような働き方ができる環境や組織作りを進めていく。

 この春にはブランドとして数年ぶりに外部向けの展示会を開催し、インフルエンサーやメディア関係者に商品を披露した。“リミテッドエディション”をはじめ、「着てみたい」「(雑誌撮影用に)商品を借りたい」など反応は上々だった。展示会は今後も定期開催する。新しいチャレンジへの評価や緊張感をプラスの刺激に変える、いい循環を作っていきたい。

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「ザ・ノース・フェイス」立役者の新展開 「ニュートラルワークス.」のサステナブルな服作り

 サステナビリティに配慮したモノづくりとは具体的にはどういうこと?正解がない話とはいえ、指針はほしい。そこでサステナビリティ先進企業であるゴールドウインの大坪岳人「ニュートラルワークス.(NEUTRALWORKS.)」事業部長にその定義とリサイクル素材使いや古着回収などの実践内容について聞いた。同事業部長は「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」に18年間所属し、同ブランドを育てた立役者の一人でもある。

WWDJAPAN(以下、WWD):2021年4月から事業部長に就任した「ニュートラルワークス.」ではサステナビリティをどう定義しているか?

大坪岳人ゴールドウイン ニュートラルワークス事業部長(以下、大坪):僕の定義は、自分の子どもに継承できるか、だ。入社後、2006年に初めてサステナビリティという言葉を聞いたときはピンとこなかった。考えを深めたきっかけは、「ザ・ノース・フェイス」に所属時代、アウトドアの展示会に参加した後にアメリカの雪山でスノーボードをしていたときに、「娘は大人になったときにこの素晴らしい景色を見ることができるのだろうか」と思ったこと。実際、30年前と比べると日本のスキー場も雪が減り、ゲレンデがガリガリになっている。自分が感動している景色を子供たちにも見せるためには、どうしたらいいか、と考え始めた。

 サステナビリティやエコの話は、“小さいこと”と“大きいこと”が同じ意味を持つ。例えば、明日気温が上がる話と、いつか地球が滅びる話の2つは自分との距離感が全く違うが、話している内容は実は同じ。100年先のことはわからないし、自分が生きてこの仕事をしていることは難しいだろう。だけど自分が生きている間に知り合う人たち、祖父母から両親、子供、孫をつなげると話は100年スパンとなる。サステナビリティには矛盾も多く、「だったら何も作らない方がいい」とゼロヒャクで考えがちだが、それよりもシンプルに「子どもにちゃんと渡せるか」が判断基準としてはいいのかな、と思う。

WWD:2006年からゴールドウイン社内でサステナビリティという言葉が使われていたことに驚く。誰がリーダーシップをとったのか。

大坪:当時「ザ・ノース・フェイス」の事業部長だった、現社長の渡辺(貴生ゴールドウイン社長)だ。「ザ・ノース・フェイス」は、カタログの冒頭に循環につながるメッセージを掲げていた。大きな流れではなかったが社内の他ブランドも「ノースがやるから自分たちも」という広がりがあったと記憶している。

 また素材調達は富山本店の調達部門がブランドを横断して行っており、同部門が中心となり帝人や旭化成の国内回収事業に参加したり、ダウンの羽毛回収「グリーン ダウン プロジェクト(Green Down Project)」の前身と組んだりと、店頭回収を始めていた。

WWD:回収を始めたきっかけは?

大坪:当時は“サイクル”という言葉を使っていた。持続可能のためには何より長く大切に使うことが重要だから、リペアは昔から行っていた。でもどうしても捨てなければならないものも出てくる。ペットボトルや缶や紙は回収・再生しているのに衣類はできていない。ならば、ポリエステルだけでも循環できるようにしよう、とか、ダウンは食用水鳥の副産物の羽を使っているが量が採れなくなってきた、ならば上質なダウンを再利用しよう、という流れだった。

WWD:これも取り組むのが早かった。

大坪:「パタゴニア(PATAGONIA)」も早い段階から回収やリペアを行っていたし、アウトドアをメーンにする企業は早かったのでは。2008年から社内では“グリーン・イズ・グッド(GREEN IS GOOD)”という標語を掲げ、“グリーンサイクル、グリーンマテリアル、グリーンマインド”の三つの基準でモノづくりから回収・再生の取り組みをしている。グリーンマテリアルはリサイクルなど環境負荷が低い素材を、グリーンマインドは修理しやすい設計などを指す。

WWD:確かにアウトドアやスポーツブランドの多くはサステナビリティへの取り組みが速く、その他のアパレルとの間に大きな差異がある。

大坪:アパレルの中で、特にどのジャンルが石油を多く使っているかと言えば、ポリエステルやナイロンを多く使う僕らでもある。渡辺社長がスパイバー(Spiber)に投資を決めたのも、材料から変えないと根本的に変えられない、という考えもある。

モノづくりのシフトは素材の置き換えからスタート

WWD:サステナビリティなモノづくりへのシフトをどこから着手したのか。

大坪:まずはバージン素材からリサイクル素材への置き換えから始めた。同時にアウトドアウエアが求める機能性やより細くて軽い素材使いを目指すから置き換えへのハードルは高い。置き換えたことで物性が弱まり長く使えなくなっては、本末転倒だ。“置き換えることに意味があるのか?”といったジレンマは結構長い期間あった。今でもその葛藤はあるが、最近は素材展に行ってもエコに配慮した素材が8割を占めるなど、業界でもそれが標準になりつつあると思う。

WWD:どんなアイテムから置き換えを始めたのか。

大坪:量、スケールを非常に意識している。カプセルコレクションなど一部の商品への採用だけではインパクトがないからだ。ボリュームゾーンの価格帯のTシャツなどで取り入れたいがすると今度はコストが難しい。

WWD:原料メーカーと目標を共有して変えていく関係が欠かせない。置き換えはどのくらい進んでいるのか。

大坪:ポリエステルはペットボトル由来のリサイクル素材が出回っているからかなり進んでいて、「ニュートラルワークス.」については100%。ナイロンはまだ再生素材が開発段階だ。

WWD:リサイクル素材の使用比率の目標は?

大坪:全社的に30年までに製品の90%以上を環境負荷低減素材にする目標を掲げている。以前は、年2回展示会を開き、それに合わせたモノづくりを行っていたが、サステナブルな素材開発は3年、5年とスパンが長い。今すぐは変えられないけれど3年後には実現しようなど、長期的な目標を掲げるケースも多い。

WWD:古着回収量の目標は?

大坪:数値では定めておらず、回収対象の品目を増やし、できるだけ多くの量を回収することを目指している。古着屋で売れるから、という理由もあるが認知もまだ不十分。その中で、ダウンジャケットの回収は増えている。

 2021年は全ブランドの直営157店舗で9429キログラムの古着を回収した。20年が127店舗3655キロだから1年で3倍弱には増えているまた、マラソン大会などスポーツイベントの会場ではかなりの量が集まり、レースの出場者の数より多く戻ってきたりする

WWD:目標や結果を対外的に発表することも重要だ。

大坪:以前は「誰に知られていなくても粛々とやる」「売りにしない」文化が社内にあった。「無染色で作りました」と言ってところで、大多数は染めているし、「リサイクル素材に置き換えた」といっても全部じゃないから。でも今はその空気も変わってきた。

大事なのは「人の気持ちを変える」取り組み

WWD:2021年までは「ザ・ノース・フェイス」のディレクターとして全体統括をしていた。影響力のあるブランドは責任も大きい。

大坪:何百億円と売り上げるブランドでも、世界でのインパクトはほんの少し。だけどそれを通じて人の意識を変えたら、その先の大きなアクションにつながると思う。たばこは体に悪い、と昔から言われていた。その物質的な事実は変わらないのに意識が変わったことで今では他人がいるところでは控える人がほとんど。これってまさに人の意識の変化だと思う。ごみも同じ、今では当たり前のように分別をしている。我々が打ち出す施策も意味があるなし、ではなく、人の気持ちや空気感を変えられるものであるか否かで判断をしている。

WWD:人気ブランドだから正しい影響力の使い方をしよう、みたいな意識はあるか?

大坪:それはない。ないというか、使命を背負っているわけではない。もちろん、自分たちの行動が多くの人に良い影響があれば嬉しいし、率先してチャレンジしようとは思ってきた。でも環境問題は、自分たちだけでは絶対にクリアできない課題だから。

 1968年に「ザ・ノース・フェイス」の社長に就任したケネス・ハップ・クロップ(Kenneth Hap Klopp)が最初に社員に伝えた「ジャケットを売るのが君たちの仕事じゃない。世界を変える仕事、それが君らの仕事だ」という有名な言葉がある。僕も4年前に、ハップ・クロップと会って仕事の悩みを話したら、「君の仕事はダウンジャケットを売る仕事じゃないんだよ。お客さんに愛される仕事をしようと考えたら迷わない」と言われて納得した。

 結局、何のために仕事をするのかが大事。売り上げを作るためじゃなく、お客さんに必要だと思われる商品、明日も存在してほしいと思われるブランドを考えるのがブランディングだと思う。そうありたいと強く思っている。

「ニュートラルワークス.」のこと。

WWD:それを今体現しているのが、「ニュートラルワークス.」だ。

大坪:5年前に「ザ・ノース・フェイス」を扱うセレクトショップとして立ち上げたものをブランド事業として新しく生まれ変わらせるタスクをもらった。手前みそだが、“準備ができた状態をつくる”とか、“体と心を整える”といったことを手掛けているアパレルブランドはほかにないと思う。例えばコーヒーや音楽のように仕事の前後に欠かせないもの、今はそういったものがすごく必要だと思うからチャレンジをスタートした。ゴールドウインのオリジナルブランドとして、世界の人たちに“いい”と思ってもらえるものにしたい

WWD:インタビューの冒頭でサステナビリティの定義にあげた「子供に残せるか」に通じるものがある。

大坪:“準備できている状態”は利己的ではありえなくて、自分以外の他者、スケールを広げれば地域や地球が良くないと成立しない。持続可能は「こうしなくちゃ」「こうあるべき」より、「あれいいよね、大切にしたい」という置き換えの効かない存在として続いてゆくことだと思う。ちょっと“イイやつ”強めな表現だけど、 “Good is Cool”、いいことがかっこいいと受け取られるといいな、と思う。

WWD:これから挑戦したいことは?

大坪:未利用資源の活用。使われていないものってたくさんある。漁網やバナナの茎の再利用は始めている。使われていないスペースや時間、なんかも含まれるかもしれない。“Too Good to Waste”なものやコトを廃棄するのではなく、再利用したい。


【WWDJAPAN Educations】

【第2期】サステナビリティ・ディレクター養成講座
2022年9月30日(金)開講

 昨年初めて開催し好評を得た「サステナビリティ・ディレクター養成講座」を今年も開講。サステナビリティはこれからの企業経営の支柱や根底となるものであり、実践が急がれる事業の課題である。この課題についてのビジョンを描くリーダーの育成を目的に、必要な思考力・牽引力を身につける全7回のワークショップとなる。前半は各回テーマに沿った第一線で活躍する講師を迎え、講義後にはディスカッションやワークショップを通して課題を明確化し、実践に向けたアクションプランに繋げていく。

 また、受講者だけが参加できるオンライン・コミュニティーでは、「WWDJAPAN」が取り上げるサステナビリティに関する最新ニュースや知っておくべき注目記事をチェックでき、更に講義内容をより深く理解するための情報を「WWDJAPAN」編集部が届ける、まさに“サステナ漬け”の3カ月となる。
講義のみが受講できるオンラインコースも同時に受け付けています。


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静かに広がる「シュタイン」 浅川デザイナーの挑戦と原動力

 東京・神宮前の小さなセレクトショップ「キャロル(CAROL)」のオーナー・浅川喜一朗が2016年にスタートした「シュタイン(STEIN)」。現在の卸先は国内外で約50アカウントに広がり、昨年春には「キャロル」を表参道に移して増床オープンした。今年春には楽天ファッション・ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFW)にも映像作品を出展するなど、新しい挑戦に踏み出している。浅川デザイナーにブランドの今後を聞いた。

WWD:RFWで映像作品を発表した経緯は?

浅川喜一朗「シュタイン」デザイナー(以下、浅川):21年の秋ごろ、RFWの運営担当の方からお声がけをいただいたのがきっかけでした。これまで自分はヘルムート・ニュートン(HELMUT NEWTON)の作品など主に写真をインスピレーション源にすることが多く、「シュタイン」の服も自然とルックを意識した、どこか静的なデザインになっていたように思います。今回の作品発表にあたり、「映像」を前提として動きのあるクリエイションを考えることは自分の引き出しにはなかったことでしたし、ブランドの可能性を広げる新しいチャレンジだと捉えました。

WWD:映像制作においてこだわったことは?

浅川:ブランドのミニマルで静謐(ひつ)な空気感を、映像を通して伝えることです。何か真新しいことを表現するよりも、映像表現を通じてブランドの“らしさ”を掘り下げられないかと考えました。無機質な空間をモデルが歩くシンプルな構成ですが、空間設計、ライティング、何台も設定した定点カメラで撮影する距離や角度をとにかく試行錯誤し、服のドレープや生地の陰影、奥行きの表現にはかなりこだわりました。映像の制作期間中は、自分の歩調が映像のBGMのリズムと無意識に同調してしまうくらい、とにかく夢中になっていました。

「シュタイン」2022-23秋冬東京コレクション

WWD:生地を幾重にも重ねたコート、色彩のグラデーションが目をひくニットなど、ブランドとして新しい挑戦も感じられた。

浅川:中には、パーツを30くらい別々に作ってから縫製する、とにかく手間をかけたスエットもあります。生地の表面、裏面を使用することで色の濃淡を表現し、ミシンの叩き方や手縫いの方法、加工方法なども細かく打ち合わせを重ねて作り上げた1着です。この仕様書と、自分で古着を縫い合わせて作ったサンプルを工場に持ち込んだときは、「これは……難しいかもね」と工場の皆さんも困惑していました。ただ、僕も自分の頭の中のイメージにできる限り近づけたいと思っていたので、「どうやったらできますか?」と何度も相談、調整を重ね、実現にこぎつけていただきました。スケジュールギリギリに、夜通しかけてパターンデータ、縫製を仕上げてくださった職人の皆さんには頭が上がりません。

WWD:今後の展望は。

浅川:欧州を中心に、海外販路を広げていけたらと思っています。ショーを終えた後、ありがたいことに何人かの海外のセレクトショップのバイヤーさんからアプローチをいただいていて。今回の映像発表は大きな刺激になりましたが、リアルショーであればまた違った表現ができるかもしれませんし、ゆくゆくは海外でも(ショーが)できたら。まずは来春、これまでコロナで難しかったパリでの展示会を実施しようと考えています。

 ただ、僕はいろいろなことに手を広げて器用にこなせるタイプではありません。僕の無茶な服作りが形になっているのも、こうやってお店に立つことができるのも、志を共にできる仲間がいるからです。3年前からブランドのデザインチームを抱えるようになり、今ではお店のスタッフと合わせて9人のメンバーがいます。時間を忘れてヘトヘトになるまで仕事をして家に帰り、いつも迷惑をかけている妻にもとても感謝しています。

WWD:昨年3月、「キャロル」を神宮前から表参道に移転した。

浅川:オープン当初は、おじいさんになるまであのお店(旧店舗)でやっていきたいと思っていたくらい、お気に入りの場所でした。ただありがたいことに、取り扱わせていただいているブランドさんや、「シュタイン」のシーズンごとの商品型数も増え、服にとっても、お客さまにとっても窮屈になっていたこともあり、移転を決意しました。窓から射すおだやかな自然光と、人通りがそこまで多くもなく、そこにたたずんでいるような雰囲気がとても気に入っています。面積は旧店舗の3倍に、客数も約2倍に増えました。

WWD:デザイナーの仕事が増える中でも、店頭に立ち続けている。

浅川:僕の服作りには2つの軸があると思っています。生地や縫製といった、プロダクトとしての完成度を高めること。もう一つが、日々の生活で触れる写真や音楽などから感じたことを自分のフィルターを通じ、デザインとして表現することです。どちらかに偏りすぎても「シュタイン」の服ではないし、袖を通してくれるお客さまの姿を重ねることで、初めてその着地点が見えることもあります。

 「キャロル」のオープン当初は1人のお客さまのご来店もなかった日もあり、そういった日々を忘れたことはありません。だからこそ、お客さまにお立ち寄りいただけるありがたさを心の底から感じられます。自分が作った服に袖に通してくれるお客さまの姿を見るたび、幸せな気持ちが何度でも湧き上がってきます。店頭に立てる時間は以前よりも少なくなってしまっていますが、やはりお店は僕の原点です。信頼できる仲間と一緒に、お客さまに誠実に、いい服を届けていく。そんな矛盾のない仕事を、愚直に続けていけたらと考えています。

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静かに広がる「シュタイン」 浅川デザイナーの挑戦と原動力

 東京・神宮前の小さなセレクトショップ「キャロル(CAROL)」のオーナー・浅川喜一朗が2016年にスタートした「シュタイン(STEIN)」。現在の卸先は国内外で約50アカウントに広がり、昨年春には「キャロル」を表参道に移して増床オープンした。今年春には楽天ファッション・ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFW)にも映像作品を出展するなど、新しい挑戦に踏み出している。浅川デザイナーにブランドの今後を聞いた。

WWD:RFWで映像作品を発表した経緯は?

浅川喜一朗「シュタイン」デザイナー(以下、浅川):21年の秋ごろ、RFWの運営担当の方からお声がけをいただいたのがきっかけでした。これまで自分はヘルムート・ニュートン(HELMUT NEWTON)の作品など主に写真をインスピレーション源にすることが多く、「シュタイン」の服も自然とルックを意識した、どこか静的なデザインになっていたように思います。今回の作品発表にあたり、「映像」を前提として動きのあるクリエイションを考えることは自分の引き出しにはなかったことでしたし、ブランドの可能性を広げる新しいチャレンジだと捉えました。

WWD:映像制作においてこだわったことは?

浅川:ブランドのミニマルで静謐(ひつ)な空気感を、映像を通して伝えることです。何か真新しいことを表現するよりも、映像表現を通じてブランドの“らしさ”を掘り下げられないかと考えました。無機質な空間をモデルが歩くシンプルな構成ですが、空間設計、ライティング、何台も設定した定点カメラで撮影する距離や角度をとにかく試行錯誤し、服のドレープや生地の陰影、奥行きの表現にはかなりこだわりました。映像の制作期間中は、自分の歩調が映像のBGMのリズムと無意識に同調してしまうくらい、とにかく夢中になっていました。

「シュタイン」2022-23秋冬東京コレクション

WWD:生地を幾重にも重ねたコート、色彩のグラデーションが目をひくニットなど、ブランドとして新しい挑戦も感じられた。

浅川:中には、パーツを30くらい別々に作ってから縫製する、とにかく手間をかけたスエットもあります。生地の表面、裏面を使用することで色の濃淡を表現し、ミシンの叩き方や手縫いの方法、加工方法なども細かく打ち合わせを重ねて作り上げた1着です。この仕様書と、自分で古着を縫い合わせて作ったサンプルを工場に持ち込んだときは、「これは……難しいかもね」と工場の皆さんも困惑していました。ただ、僕も自分の頭の中のイメージにできる限り近づけたいと思っていたので、「どうやったらできますか?」と何度も相談、調整を重ね、実現にこぎつけていただきました。スケジュールギリギリに、夜通しかけてパターンデータ、縫製を仕上げてくださった職人の皆さんには頭が上がりません。

WWD:今後の展望は。

浅川:欧州を中心に、海外販路を広げていけたらと思っています。ショーを終えた後、ありがたいことに何人かの海外のセレクトショップのバイヤーさんからアプローチをいただいていて。今回の映像発表は大きな刺激になりましたが、リアルショーであればまた違った表現ができるかもしれませんし、ゆくゆくは海外でも(ショーが)できたら。まずは来春、これまでコロナで難しかったパリでの展示会を実施しようと考えています。

 ただ、僕はいろいろなことに手を広げて器用にこなせるタイプではありません。僕の無茶な服作りが形になっているのも、こうやってお店に立つことができるのも、志を共にできる仲間がいるからです。3年前からブランドのデザインチームを抱えるようになり、今ではお店のスタッフと合わせて9人のメンバーがいます。時間を忘れてヘトヘトになるまで仕事をして家に帰り、いつも迷惑をかけている妻にもとても感謝しています。

WWD:昨年3月、「キャロル」を神宮前から表参道に移転した。

浅川:オープン当初は、おじいさんになるまであのお店(旧店舗)でやっていきたいと思っていたくらい、お気に入りの場所でした。ただありがたいことに、取り扱わせていただいているブランドさんや、「シュタイン」のシーズンごとの商品型数も増え、服にとっても、お客さまにとっても窮屈になっていたこともあり、移転を決意しました。窓から射すおだやかな自然光と、人通りがそこまで多くもなく、そこにたたずんでいるような雰囲気がとても気に入っています。面積は旧店舗の3倍に、客数も約2倍に増えました。

WWD:デザイナーの仕事が増える中でも、店頭に立ち続けている。

浅川:僕の服作りには2つの軸があると思っています。生地や縫製といった、プロダクトとしての完成度を高めること。もう一つが、日々の生活で触れる写真や音楽などから感じたことを自分のフィルターを通じ、デザインとして表現することです。どちらかに偏りすぎても「シュタイン」の服ではないし、袖を通してくれるお客さまの姿を重ねることで、初めてその着地点が見えることもあります。

 「キャロル」のオープン当初は1人のお客さまのご来店もなかった日もあり、そういった日々を忘れたことはありません。だからこそ、お客さまにお立ち寄りいただけるありがたさを心の底から感じられます。自分が作った服に袖に通してくれるお客さまの姿を見るたび、幸せな気持ちが何度でも湧き上がってきます。店頭に立てる時間は以前よりも少なくなってしまっていますが、やはりお店は僕の原点です。信頼できる仲間と一緒に、お客さまに誠実に、いい服を届けていく。そんな矛盾のない仕事を、愚直に続けていけたらと考えています。

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生けるレジェンド、キングカズ「サッカーもファッションも常に“現役”でいるために」

 “全員、超人”のキャッチコピーを掲げて7月に来日したスター軍団、パリ・サンジェルマンFC(以下、PSG)。そのジャパンツアーで、アンバサダーを務めたのがサッカー選手の三浦知良(JFL鈴鹿)だ。55歳で今なお、“生涯、現役”を貫くキングカズだが、ピッチ外でもゴールを決める選手はそういない。特にファッションでいえば、「スーツ専用のマンション」や「寝るときもスーツ」「スーツに着替えてコンビニ」など、“数々”の伝説を残している。キングカズがキングと呼ばれるゆえんは?(この記事はWWDジャパン2022年8月8・15日合併号からの抜粋です)

――「PSGジャパンツアー」で世界のトップ選手が来日しました。15歳でブラジルに渡ったカズさんも世界を見てきた一人ですが、世界と戦う上で必要なことはなんですか?

三浦知良(以下、三浦):難しい質問ですけど、根本的には情熱かな。夢を追いかける気持ちも情熱が一番大切ですね。それは海外とか日本とか関係なく、何かを成し遂げたいときには、情熱がなければ成し遂げられないと思います。僕はブラジルで育ちましたが、ブラジルの選手は子どもの頃からサッカーで生活していきたいというハングリー精神がものすごく強いんです。日本の選手のサッカーが好きという気持ちも当然大事ですが、特にブラジルの選手は生活との距離感が全然違うんですね。それに負けない情熱を持って取り組むのは、すごく大切だと思います。

――PSGにはクリエイティブな選手が多いと感じます。カズさんにとってのクリエイティブな選手の条件とは?

三浦:サッカーでもテクノロジーを取り入れた戦略が本当に発達しているんですが、その戦略を打ち破るには、個人のクリエイティブな発想だったり、人が思い付かないようなプレーが必要ですね。みんなが右に行くと思っても左に行くような選択ができるかが、一番必要だと思います。

――クリエイティブというのは内面だけでなく、外見にも滲み出るものだと思います。ピッチ外でも常にスーツをまとってファッションを愛しているカズさん。うわさだとコンビニに行くときや寝ているときもスーツを着ているとか?

三浦:寝ているときも(笑)!?だいぶ話が飛躍していますけど……、スーツは好きですね。自分の気持ちもビシッとしますから。見た目も内面の一部だと思います。

――いつもイタリアのトレンドを上手に取り入れられていると感じます。

三浦:何かのコラムで読んだんですが、「カズの格好はイタリアンスタイルって言われるけど、イタリアにあんなスタイルしている人はいない」って書いてありました(笑)。だから“カズスタイル”ということで。まぁでも、イタリア系のスーツや色味は好きで、どうしてもイタリア寄りになってしまいます。自分のスーツの着方を俯瞰するとフランスっぽくもないし、イギリスっぽくもない。やっぱりイタリアファッションに影響されていると思いますね。

――スーツを選ぶときの基準やこだわりはありますか?

三浦:サイズ感ですね。いくら良い生地のスーツを用意しても、自分に合っていないサイズだと台無しになってしまう。だからサイズ感は、すごく大事にしています。サッカー選手ならではのヒップの大きさや筋肉の張りがあるので、既製服だと特にパンツは合わないんです。その辺はやっぱりできるだけ綺麗に見えるように、任せる部分はプロに任せながら自分の意見も伝えて、こだわって作っていると思います。

――ファッションでも常に“現役”でいるために大切なことを教えてください。

三浦:自分のコンディションを常に整えておかないといけないので、自分の理想を追い求めると太れないですね。現役でいるためには、サッカーもファッションも、体のメンテナンスをしっかりやっていかないと、と思っています。あとは色気をずっと忘れないこと。女性は色気に弱いですから。僕も弱いですけど(笑)。

カズカズの伝説を生み出した
キング流コーデベスト3

 カズのファッションといえば、やはりスーツだろう。「ジャージーかスーツ、その中間はない」とも言い放ったというカズのスーツへのこだわりは、50歳を超えたころから、大人の色気ともマッチして、より多彩に、より遊び心が満載だ。というわけで、カズのここ5年のスーツスタイルを振り返り、サッカー的なベスト11ならぬ、ベスト3を勝手に番付け。

NO.3
虎のように牙を剥くストライカー
攻守で圧倒する伝統の着こなし

 腹巻を一瞬スヌードに見間違えるほど、思わず「寅さんってこんなにイケおじだったっけ!?」と心の声が漏れてしまいそうなこちら。カズが愛してやまないという「ボルサリーノ」のハットを被ってキマリだ!

NO.2
華麗なドリブルで流行を抜き去る
真っ白を極めたレギュラーポジション

 実は、「WWD JAPAN」の村上要編集長と同郷のカズ。正月の帰省のタイミングで、新幹線で出くわしたプライベートのカズは、なんと真っ白のスーツをまとっていたらしい。それくらいのカズ的定番“白スーツ”をあっさりと着こなすセンスはさすがだ。赤のネクタイと胸の薔薇のカラーリングの妙が光る

NO.1
桃色に輝く右足を振り抜き
情熱のゴールネットを揺らす

 かつて赤よりも情熱的なピンクを見たことがあるか。一見難しく思えるピンクのスーツも、カズの手にかかれば、ご覧の通り。黒のシャツとベストで、いとも簡単に着こなすアイデアはさすが!

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おかえり、ルカ・オッセンドライバー! 「ランバン」退任から4年で「セオリー」でカムバックの心境は?

 ファーストリテイリング傘下の「セオリー(THEORY)」は9月7日、かつて「ランバン(LANVIN)」でメンズのアーティスティック・ディレクターを務めたルカ・オッセンドライバー(Lucas Ossendrijver)が手掛ける、メンズ&ウィメンズのカプセル・コレクション「セオリー プロジェクト(THEORY PROJECT)」を発売する。ルカは、13年に渡りメンズを統括してアルベール・エルバス(Alber Elbaz)と共に「ランバン」の黄金期を築いたが、メゾンはその後、エルバスの退任(2015年に発表)や後任のウィメンズデザイナーによる迷走、身売り(18年)などで低迷。ビジネスのあり方も、組織も、環境も、周囲の視線も変わる中、ルカはメンズだけはと数年間「ランバン」を守り続けたが、ついに18年に退任を発表して、4年ほどファッション業界の第一線から退いた。果たして彼は、この間何をして、どんなことを考え、そして今、ファッション業界の最先端にカムバックするのか?

「WWDJAPAN」(以下、「WWD」):「ランバン」を去ってからの4年間、一体、何をしていたのか?

ルカ・オッセンドライバー(以下、ルカ):「ランバン」で働き始めてから、時間がなくてできなかったことを楽しんだ。旅行に出かけ、友人とゆっくりした時間を過ごし、ガーデニングに夢中になって、教壇にも立った。ただ、ファッションへの愛は変わらなかった。寂しかったのは、「ランバン」で働いていた頃の仲間に会えなくなったこと。デザインチームやパタンナー、生産の担当者はもちろん、パリメンズの度にコミュニケーションを深めた演出家やプレス、スタイリストやフォトグラファーとも疎遠になった。改めてファッション業界は、情熱と才能に溢れる人たちと自由にクリエイションできる、とても特別な仕事だと感じたんだ。そんな中で「セオリー」から声をかけてもらった。柳井(正ファーストリテイリング会長兼社長)さんともお会いした。また同じような仕事、そして人々との結びつきを感じられるんじゃないか?と考えたら嬉しくなって、およそ1年前、今回のオファーを受け入れたんだ。

「WWD」:アルベールと築いた「ランバン」の黄金期を考えると、いろんなブランドから声がかかったはず。どうして「セオリー」からのオファーを受け入れた?

ルカ:「セオリー」、そして、この仕事が“今っぽい”と思ったんだ。「ランバン」と比べ、「セオリー」のスケールはずっと大きく、インパクトは絶大。多くの店に、たくさんの人に、そして「セオリー」に、「ランバン」で培ったラグジュアリーの経験を持ち込めると思った。魅力的なプライスポイント(コレクションのほとんどは、1万~12万円)で、ランウエイのためでもエディトリアルのためでもない、リアルな人々のために洋服を作るのは、とってもエキサイティングなことだ。

「WWD」:「セオリー」には、どんなイメージを持っていた?

ルカ:機能的で、目的があって、洗練されたデザインの洋服を提案している、魅力的なブランドだ。特定のコミュニティーのことを考えるのではなく、それぞれ異なるパーソナリティーを持つ多くの人のことを考えている。それは「セオリー プロジェクト」も同じだ。機能的で、信頼できて、シルエットは美しく、賞味期限もなく、自由にミックスできる、人々のワードローブ。同じシーズンのコレクションとコンバインしてもいいし、「セオリー」以外の手持ちの洋服と合わせても構わない。そして、そのコーディネイトが“自分らしさ”を表現する。そんな洋服を、「ランバン」時代の工場と一緒に作った。

「WWD」:「機能的」「信頼性」「自由にミックス」「リアルな人々の」「ワードローブ」……。「ランバン」時代のインタビューを彷彿とさせるようなキーワードだ。「ランバン」で働いていた頃も、今も、ルカのデザイン哲学は変わっていない?

ルカ:全く変わっていない。ただ今回は、より多くの人々に届くかもしれない可能性を持っている。違うのは、それくらいだ。勘のようなものを取り戻したり、4年前までの当たり前だった仕組みに慣れるのは簡単だった。一番大変だったのは、(コロナの影響で)最初はパリの自宅で、たった一人で仕事をしなくちゃならなかったこと。また「人々と結びつきたい」と考えて仕事を始めたのに、最初はたった一人で孤軍奮闘しなくちゃならなかった。幸い、しばらくしてニューヨークを訪れる機会があって、「セオリー」のチームが暖かく出迎えてくれた。以降、パリとニューヨークの行き来を楽しんでいる。ニューヨークを訪れ、カジュアルウエアについて考えることが増えた。パリはやっぱり、どこかでスーツやジャケットの国だから。

「WWD」:ウィメンズウエアは初挑戦だったが?

ルカ:自然な成り行きで、メンズとクロスオーバーするウィメンズになった。もう「ウィメンズだからイヴニング」なんて時代じゃない。人々は同じスタイルでオンとオフを楽しんでいるし、それがNYや「セオリー」っぽい。

「WWD」:「セオリー」とのカプセル・コレクションというと、オリヴィエ・ティスケンス(2011年春夏シーズンにカプセル・コレクションとして「ティスケンス・セオリー」を発表、翌11-12年秋冬シーズンから「セオリー」を監修した。14年に退任)を思い出す。ルカも、カプセル・コレクションではなく、「セオリー」全体を監修したい?

ルカ:まだスタートに立ったばかり(笑)、今はこれで十分だ。まずは「セオリー プロジェクト」をもっと極めたい。

「WWD」:特にメンズでは、ルカの「ランバン」退任後、「着たい洋服がない!」と悲しむ人も多かった。彼らにメッセージを。

ルカ:僕も寂しかったよ。まずはみんなが「セオリー プロジェクト」の洋服を着ているシーンが見たい。それがデザイナーにとって、一番の喜びだから。最新作だけじゃなくて良い。僕の洋服を自分らしく着ている人が見られたら、とても幸せだ。

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パタゴニアが出資 マイクロプラ流出を防ぐ洗濯バッグ開発の背景

 ドイツ発ラングブレット(LANGBRETT)のマイクロプラスチック流出を防ぐ洗濯バッグ“グッピーフレンド・ウォッシング・バッグ(以下、グッピー)”は、2017年に発売され、今では50カ国以上で販売されるヒット商品だ。“グッピー”なしで洗濯した場合と比較して、洗濯で剥がれる合成繊維が平均79~86%が少なくなり、また、“グッピー”は繊維のはがれ落ちを防ぐため、どんな繊維の衣類でも劣化を防ぐことができ、長持ちにつながるという。パタゴニア(PATAGONIA)の投資部門ティン シェット ヴェンチャーズ(Tin Shed Ventures)の出資を受け開発にこぎつけた、開発者のアレキサンダー・ノルティ(Alexander Nolte)ラングブレット共同創設者兼ストップ マイクロ ウエイスト(STOP! MICRO WASTE)創設者にオンラインで話を聞いた。

WWD:なぜ洗濯バッグの開発を?

アレキサンダー・ノルティ=ラングブレッド創業者(以下、アレックス):“クローズドループ”をコンセプトにサステナブルなテキスタイルやアパレル、シューズを生産・販売するブランド「ラングブレッド」を運営する中で、顧客や取引先との間でたびたびマイクロプラスチック汚染問題が話題になり、「解決策」や「自分たちにできること」を尋ねられることが多かった。しかし、その都度気まずい思いをしていた。そんな体験をきっかけに、海洋環境活動家や大学と対話を始めると、マイクロプラスチック問題についてもっと理解を深め、話合う必要があると感じるようになった。そして、洗濯バッグはその有効なツールになると考えた。初めは商業化することを考えてはいなかったが、いくつかの大企業から特許を買いたいという申し出があり、特許を売るよりも収益を使って教育に充てたいと考えた。マイクロプラスチック問題に対する認知度を高めるため、ストップ マイクロ ウエイストを立ち上げ、子どもたちがマイクロプラスチックとは何か、それがどう気候危機に影響を与えるのか、最終的にどうすれば防ぐことができるのかといった教育活動を行っている。

WWD:話合うことや伝えることを重視して“洗濯バッグをそのツールにした点がユニークだ。

アレックス:この課題は伝えることが課題だと感じたから。「あなたは気にしなくていい」という解決策ではなく、重要なのは「マイクロプラスチックとは何か」「どこから来るのか」「実際に自分たちができることは何か」といった情報を持つこと。私たちは洗濯ガイドも発信しているが、“グッピー”を通じて、洗濯バッグを売ること以上のことができる。例えば固いジーンズと柔らかいフリースを一緒に洗うと洗濯中に擦れ合い、多くの繊維が壊れる。分けて洗えば洗濯で流出するプラスチックはかなり減るといったことを伝えている。

WWD:直接発信するだけではなく50カ国以上にある“グッピー”の販売店を通じて伝えている。

アレックス:私たちは大型店と同様に、顧客に1対1で説明できるようなエコでプラスチック製品を扱わない小さな店も需要だと考えている。もともとたくさん売ることを目的にしておらず、大手企業がマーケティング予算を使い「フリースを2枚買うと“グッピー”を1つプレゼント」なんてこともしたくなかった。グリーンウオッシングのために使うのではなく、マイクロプラスチック問題を伝えることに関心のあるパートナーを見つけたいと考えている。

WWD:“グッピー”開発で苦労した点は?

アレックス:まずはマテリアル選びだ。どのマテリアルがベストで、繊維がはがれるのを防ぐことができるのかーーそして、技術的な挑戦もあった。水と洗濯洗剤がバッグの中に入り、剥がれ落ちた繊維はバッグにとどまらなくてはならない。

WWD:結果どのようなマテリアルに?

アレックス:サーモフィクセーション(熱凝固)という方法を用いたとてもなめらかなマテリアルだ。どんな衣類でも“グッピー”に入れて洗うと摩擦は減り、壊れる繊維をより少なくなし、壊れた繊維もバッグの中に留まる。

WWD:“グッピー”に入れて洗う場合、どの程度マイクロプラスチックの流出を防げるのか。

アレックス:ドイツのフラウンホーファー研究機構(UMSICHT)の試験によると、合成繊維の衣類では、“グッピー”なしで洗濯した場合と比較して、繊維の脱落が平均79~86%が少なくなる結果が出た。合成繊維だけではなく、どんな繊維でも“グッピー”に入れて洗うと長持ちする。

WWD:洗濯バッグは糸くずフィルター以上の効果があると。

アレックス:(日本では一般的だが欧米では少ない)洗濯機付属の糸くずフィルターは、水圧が一方向から来るので、いずれかの段階で繊維を押しつぶし、フィルターを通り抜けてしまう。それに比べて洗濯バッグは水の中にあり、渦を巻いて水が入ってくるので、繊維がバッグの中に留まる。


【WWDJAPAN Educations】

【第2期】サステナビリティ・ディレクター養成講座
2022年9月30日(金)開講

 昨年初めて開催し好評を得た「サステナビリティ・ディレクター養成講座」を今年も開講。サステナビリティはこれからの企業経営の支柱や根底となるものであり、実践が急がれる事業の課題である。この課題についてのビジョンを描くリーダーの育成を目的に、必要な思考力・牽引力を身につける全7回のワークショップとなる。前半は各回テーマに沿った第一線で活躍する講師を迎え、講義後にはディスカッションやワークショップを通して課題を明確化し、実践に向けたアクションプランに繋げていく。

 また、受講者だけが参加できるオンライン・コミュニティーでは、「WWDJAPAN」が取り上げるサステナビリティに関する最新ニュースや知っておくべき注目記事をチェックでき、更に講義内容をより深く理解するための情報を「WWDJAPAN」編集部が届ける、まさに“サステナ漬け”の3カ月となる。
講義のみが受講できるオンラインコースも同時に受け付けています。


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パタゴニアが出資 マイクロプラ流出を防ぐ洗濯バッグ開発の背景

 ドイツ発ラングブレット(LANGBRETT)のマイクロプラスチック流出を防ぐ洗濯バッグ“グッピーフレンド・ウォッシング・バッグ(以下、グッピー)”は、2017年に発売され、今では50カ国以上で販売されるヒット商品だ。“グッピー”なしで洗濯した場合と比較して、洗濯で剥がれる合成繊維が平均79~86%が少なくなり、また、“グッピー”は繊維のはがれ落ちを防ぐため、どんな繊維の衣類でも劣化を防ぐことができ、長持ちにつながるという。パタゴニア(PATAGONIA)の投資部門ティン シェット ヴェンチャーズ(Tin Shed Ventures)の出資を受け開発にこぎつけた、開発者のアレキサンダー・ノルティ(Alexander Nolte)ラングブレット共同創設者兼ストップ マイクロ ウエイスト(STOP! MICRO WASTE)創設者にオンラインで話を聞いた。

WWD:なぜ洗濯バッグの開発を?

アレキサンダー・ノルティ=ラングブレッド創業者(以下、アレックス):“クローズドループ”をコンセプトにサステナブルなテキスタイルやアパレル、シューズを生産・販売するブランド「ラングブレッド」を運営する中で、顧客や取引先との間でたびたびマイクロプラスチック汚染問題が話題になり、「解決策」や「自分たちにできること」を尋ねられることが多かった。しかし、その都度気まずい思いをしていた。そんな体験をきっかけに、海洋環境活動家や大学と対話を始めると、マイクロプラスチック問題についてもっと理解を深め、話合う必要があると感じるようになった。そして、洗濯バッグはその有効なツールになると考えた。初めは商業化することを考えてはいなかったが、いくつかの大企業から特許を買いたいという申し出があり、特許を売るよりも収益を使って教育に充てたいと考えた。マイクロプラスチック問題に対する認知度を高めるため、ストップ マイクロ ウエイストを立ち上げ、子どもたちがマイクロプラスチックとは何か、それがどう気候危機に影響を与えるのか、最終的にどうすれば防ぐことができるのかといった教育活動を行っている。

WWD:話合うことや伝えることを重視して“洗濯バッグをそのツールにした点がユニークだ。

アレックス:この課題は伝えることが課題だと感じたから。「あなたは気にしなくていい」という解決策ではなく、重要なのは「マイクロプラスチックとは何か」「どこから来るのか」「実際に自分たちができることは何か」といった情報を持つこと。私たちは洗濯ガイドも発信しているが、“グッピー”を通じて、洗濯バッグを売ること以上のことができる。例えば固いジーンズと柔らかいフリースを一緒に洗うと洗濯中に擦れ合い、多くの繊維が壊れる。分けて洗えば洗濯で流出するプラスチックはかなり減るといったことを伝えている。

WWD:直接発信するだけではなく50カ国以上にある“グッピー”の販売店を通じて伝えている。

アレックス:私たちは大型店と同様に、顧客に1対1で説明できるようなエコでプラスチック製品を扱わない小さな店も需要だと考えている。もともとたくさん売ることを目的にしておらず、大手企業がマーケティング予算を使い「フリースを2枚買うと“グッピー”を1つプレゼント」なんてこともしたくなかった。グリーンウオッシングのために使うのではなく、マイクロプラスチック問題を伝えることに関心のあるパートナーを見つけたいと考えている。

WWD:“グッピー”開発で苦労した点は?

アレックス:まずはマテリアル選びだ。どのマテリアルがベストで、繊維がはがれるのを防ぐことができるのかーーそして、技術的な挑戦もあった。水と洗濯洗剤がバッグの中に入り、剥がれ落ちた繊維はバッグにとどまらなくてはならない。

WWD:結果どのようなマテリアルに?

アレックス:サーモフィクセーション(熱凝固)という方法を用いたとてもなめらかなマテリアルだ。どんな衣類でも“グッピー”に入れて洗うと摩擦は減り、壊れる繊維をより少なくなし、壊れた繊維もバッグの中に留まる。

WWD:“グッピー”に入れて洗う場合、どの程度マイクロプラスチックの流出を防げるのか。

アレックス:ドイツのフラウンホーファー研究機構(UMSICHT)の試験によると、合成繊維の衣類では、“グッピー”なしで洗濯した場合と比較して、繊維の脱落が平均79~86%が少なくなる結果が出た。合成繊維だけではなく、どんな繊維でも“グッピー”に入れて洗うと長持ちする。

WWD:洗濯バッグは糸くずフィルター以上の効果があると。

アレックス:(日本では一般的だが欧米では少ない)洗濯機付属の糸くずフィルターは、水圧が一方向から来るので、いずれかの段階で繊維を押しつぶし、フィルターを通り抜けてしまう。それに比べて洗濯バッグは水の中にあり、渦を巻いて水が入ってくるので、繊維がバッグの中に留まる。


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【第2期】サステナビリティ・ディレクター養成講座
2022年9月30日(金)開講

 昨年初めて開催し好評を得た「サステナビリティ・ディレクター養成講座」を今年も開講。サステナビリティはこれからの企業経営の支柱や根底となるものであり、実践が急がれる事業の課題である。この課題についてのビジョンを描くリーダーの育成を目的に、必要な思考力・牽引力を身につける全7回のワークショップとなる。前半は各回テーマに沿った第一線で活躍する講師を迎え、講義後にはディスカッションやワークショップを通して課題を明確化し、実践に向けたアクションプランに繋げていく。

 また、受講者だけが参加できるオンライン・コミュニティーでは、「WWDJAPAN」が取り上げるサステナビリティに関する最新ニュースや知っておくべき注目記事をチェックでき、更に講義内容をより深く理解するための情報を「WWDJAPAN」編集部が届ける、まさに“サステナ漬け”の3カ月となる。
講義のみが受講できるオンラインコースも同時に受け付けています。


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アートをまとうようなハイジュエリー 「ブシュロン」の新作“アイユール”の魅惑

 フランス・パリ発ジュエラー「ブシュロン(BOUCHERON)」の新作ハイジュエリー“アイユール”が登場した。“アイユール”(ここではないどこか)をテーマとし、砂漠や海、山、熱帯雨林などのそのままの自然への旅をいざなうコレクションだ。毎年7月のハイジュエリーコレクションは革新的な素材やアプローチで完成する「ブシュロン」独自のオリジナリティ溢れるクリエイション。クリエイティブ・ディレクターのクレール・ショワンヌ(Claire Choisne)は今回のコレクションで、宝石や貴金属と小石や木、藤、隕石といった一見矛盾する世界と素材を融合させることにより、ポエティックな自然の美しさを表現した。誰もが自身を投影できる5つの世界が描かれている。

“リーフ ウーマン” 
南国ジャングルの自然を
ダイナミックに表現

 “リーフウーマン(LEAF WOMAN)”は熱帯雨林の鮮やかな木々や花々の色彩やそこに生息す動物などを生き生きと自然の鼓動が伝わってくるようにジュエリーで表現した。約38カラットのグリーントルマリンが主役のカフブレスレットには、分子生物学などで使用される分子を分離する電気泳動の技術を用いて植物のテクスチャーを鮮やかに描いたアルミニウムを使用している。今にも羽ばたきそうなチョウのブローチにはブルガリスアサギマダラの羽をスキャンしたものを採用。ジャングルの熱気を感じさせるトロピカルフラワーのブローチ兼ヘアクリップには、ファイヤーオパールなどの宝石と共に、チタニウムが用いられている。また、ラッカー加工を施して、南国の花が持つシルクのような質感に仕上げている。リアルな自然をまとう喜びが凝縮されたセットだ。

モノトーンで描く
“ヴォルケーノ マン”

 地球の奥深い極限の世界を支配するマグマの力についてモノトーンを軸に探ったのが“ヴォルケーノ マン(VOLCANO MAN)”だ。X線を通してしか見ることのない貝の内側のらせん構造をエアブラシでマザーオブパールに描いたネックレスは、まさに芸術品。それとは対照的なミニマルなデザインのネックレスには、樹齢3000年のオーク材を日本の焼杉の伝統技術で炭化させてダイヤモンドと組み合わせている。178石の円形のマザーオブパールとダイヤモンドでタコの足をアラベスクのように表現したイヤリングは、リアルかつ大胆で一度見たら忘れられないインパクトを放っている。このようにジェンダーレスなハイジュエリーを提案するのも「ブシュロン」らしい。

砂丘や地層、
小石が奏でるハーモニー

 “サンド ウーマン(SAND WOMAN)”は夢幻の砂漠が着想源。なだらかな砂丘の曲線、希少動物、鉱石と植物などから着想を得たグラフィカルで神秘的なセットだ。天然の籐に複雑な加工を施したネックレスや天然の貝殻をスキャンして再現したイヤリングなどユニークなアプローチが光る。原始からの地質層を有機的なフォルムで表現したのが、“アーザン ウーマン(EARTHAN WOMAN)”。このセットでも、革新的な素材や技術が用いられている。耳の上にチョウが止まったような叙情的なイヤリングは、軽やかに揺れるデザイン。チタンのおしべが揺れ、躍動感のある花のブローチは、スキャンした花びらをローズウッドで再現した想像上の花だ。浜辺や海をイメージしたのは“ペブル ウーマン(PEBBLE WOMAN)”。小石を削ってダイヤモンドと組み合わせたり、ウニをスキャンしてフォームを再現したネックレス、海辺から運ばれてきたかのようなサンゴ礁をモチーフにしたブローチがある。

ハイジュエリーの
境界線を広げる革新性
クレール・ショワンヌ/ブシュロン
クリエイティブ・ディレクター

 2020年コロナ禍でイマジネーションの旅を通じて生まれたのがこのコレクション。「ブシュロン」のクリエイティブ・ディレクターであるショワンヌに話を聞くと、コレクションを制作するにあたり、クリエイションの制限を設けなかったという。「ネックレスやブレスレット、イヤリングを組み合わせた“パリュール”という概念も超えてみたいと思った」と続ける。このコレクションの各作品を結びつけるのは、色と感覚、そして感情だ。彼女は自然に対する敬意を表現するために、天然素材を使用しようと思い、試行錯誤を繰り返して加工や技術を見つけた。「地球上で最も美しい造形は自然が作り出したものだと思う。だから、“プレシャス”の定義を問い直し、感情を動かす美を追求し続けている」。革新性は、「ブシュロン」のヘリテージであり、ハイジュエリーの境界線を広げる上で不可欠な要素だ。「革新性および、私が思い描く夢を実現するために適切な素材を用いている。なぜなら、美しいもの全てが尊く、価値あるものだと考えるからだ」。

問い合わせ先
ブシュロン クライアントサービス
0120-230-441

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“プリキュアネックレス”作家の22世紀ジェダイが本名でドローイングを本格化 パリコレブランドでの経験を通じてたどり着いた“脅かし役”

 22世紀ジェダイこと門倉太久斗は、アニメ「プリキュア」シリーズのフィギュアをモチーフにしたネックレスや、自身が住むマンションの掲示板へのドローイングをSNSで発信し、アート界を中心に徐々に注目を集めている。門倉は「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」でパタンナーと勤務しながら創作活動を行い、今年1月に独立。アクリルによる新作のペインティングや、これまでの立体ネックレスを展示する個展「どれもそれぞれに可愛くて一番は決められない」を東京・田端のウィッシュレス ギャラリー(WISH LESS gallery)で8月21日まで開催中だ。門倉に、会社員時代の学びや作品のルーツなどについて聞いた。

高校3年生まではファッションに無頓着だった

WWD:活動名を22世紀ジェダイ/門倉太久斗と二つの名前を続けているのはなぜ?

門倉太久斗(以下、門倉):“プリキュアネックレス”の名義が22世紀ジェダイで、絵の場合は本名を使っているんです。以前は企業に勤めていたので本名が使いづらく、展示をするようになるとも想像していなかったので、Twitterのアカウント名をそのまま名乗るようになりました。

WWD:ファッションに興味を持ったきっかけは?

門倉:今は服が大好きですけど、高校3年生までは自分で服を買ったことがなかったくらい無頓着だったんです。興味を持ったきっかけは、武蔵野美術大学の空間演出デザイン学科で受けたウエアラブルという授業でした。ファッションの課題ではあるものの、おしゃれなものを作るのではなく、着ることによって起こる変化を考えるという授業だったんです。僕は神社をそのまま着るという作品を作って面白さに気づき、その後ファッションを専攻しました。

WWD:学生時代にはほかにどんな作品を作った?

門倉:例えば、飛行機の骨組みをそのまま着てみる作品です。プロペラもちゃんと回るんです。僕の師匠である野老朝雄さんは、東京2020オリンピック・パラリンピックのエンブレムをデザインしたことで知られているのですが、もともとは建築の世界にいたので、当時は彼の影響をすごく受けていましたね。

WWD:大学卒業後の進路に「コム デ ギャルソン」を選んだのはなぜ?

門倉:卒業後はアーティストになるつもりでしたが、「コム デ ギャルソン」がすごく好きだったので、一社だけ受けてみようとパタンナー職に応募したんです。

WWD:当時学んだことのなかで特に印象的だったことや、今に生きていることは?

門倉:やはり、新しいものを作るのがいかに大切かということです。僕は美術の大学を卒業し、世の中にあるかっこいいものや美しいものを自分でも作れるようになりたいと思っていました。でも、それだけではダメだったんです。誰も見たことがなくて、どう解釈していいか分からないものを作るのが目指す場所だと気づきました。川久保さん(川久保玲『コム デ ギャルソン』デザイナー)も、新しさと強さの2点はすごく大切にしているようでした。

WWD:会社員として働く傍らで、作品作りをするようになったきっかけは?

門倉:僕はバリバリの技術系で入ったわけではなかったので、テキスタイルの柄を描いたり、アクセサリーやヘッドピースを作ったりもしていたんです。その経験を通じて、徐々に自分でも作品を作ってみるようになりました。

WWD:独立したのは、創作に専念するため?

門倉:そうですね。なんとか両立できないかと試行錯誤してきたのですが、作品を作り始めて3年くらい経った頃に、やっぱり難しいなと独立を決めました。「コム デ ギャルソン」の仕事も本当に好きだったので、今でも服を作りたい気持ちはあります。

プリキュアたちをかわいく飾ってあげたい

WWD:“プリキュアネックレス”はどのように誕生した?

門倉:「コム デ ギャルソン」のコレクションでおもちゃを取り入れることになり、候補をピックアップしていく中で僕が興味を持ったのが「プリキュア」シリーズでした。その時、勉強のつもりで見始めたら虜になってしまったんです。

 僕は以前、人のことをほとんど考えていなかったんです。全て自分の世界で完結していたから、ありがとうを言おうとか、他人の気持ちを考えようとか、知識としては知っていたけど、その意味まで理解していなかった。でも「プリキュア」シリーズを見て、他者にも感情があるということに初めて気がついたんです。その気づきを忘れないために、ネックレスを作り始めました。“プリキュアネックレス”は「コム デ ギャルソン」での仕事と、自分の気持ちが混ざり合ってできています。

WWD:そんな“プリキュアネックレス”には、どんなこだわりを盛り込んでいる?

門倉:どこの国にも、背負える祭壇や頭に乗せられる祭壇と、ウエアラブルな宗教モチーフはたくさんあるんですよ。そういうものを参考に、装飾を盛り込んでシンメトリーに配置しています。

 ただ、僕はあくまでもプリキュアたちをかわいく装飾してあげたいという気持ちで作っているので、パーツはそれに相応しいものを選ぶようにしていますね。あと、全て結束バンドで固定しています。接着剤を使うとただの塊のように見えてグロさが際立ってしまうんですよね。手間がかかるので、作れても年に1つか2つが限界ですね。

自分が担っているのは“脅かし役”かもしれない

WWD:独立以降はドローイング作品も多く発表している。

門倉:“プリキュアネックレス”は自分のために作っているのに対して、絵は他者に向けた作品として描くこともあります。絵は美術大学を受験するために予備校でデッサンを勉強したくらいだし、僕はそんなに上手くなかった。描いた絵を人に見せるのは未だに恥ずかしいけど、描くのは好きです。

WWD:絵で表現したいことは?

門倉:われわれがいる世界に穴が開いていたとして、その向こうの知らない世界から美しいものとはまた違う、びっくりするようなものが出てきてほしいんです。以前、創作を続ける目的について考えていたら、来訪神の存在意義を通して少し分かった気がしたんです。広く知られている来訪神の一つがナマハゲで、冬至のお祭りに合わせて異界からやってきて、年に一度僕たちの日常をかき乱して帰っていきますよね。

 その感覚はファッションショーにも通ずるなと気付きました。年に2回だけ幕が開いて、その日だけあの世とこの世の境目がなくなる。そしてモデルたちが美しいのかもよく分からない異様な服をまとって歩き、観客はびっくりしたり、混乱したり。もしかしたら自分が担っているのは、この“脅かし役”かもしれないと気付いて、それから迷いがなくなっていきました。服から離れて絵を描いている今も、その精神は大切にしています。

WWD:個展名「どれもそれぞれに可愛くて一番は決められない」の意味は?

門倉:絵と“プリキュアネックレス”を並べることはこれまであまりなかったので、一緒に出す意味を考えた結果「どれもそれぞれに可愛くて一番は決められない」というタイトルをつけました。

WWD:今後の目標は?

門倉:「プリキュア」シリーズが放映され続ける限り新しいキャラクターがどんどん出てきます。全員分のネックレスを作り、最終的には自分の棺桶に入れたい。“プリキュアネックレス”は大きければ大きいほど、重ければ重いほどいいから、既存のものもボリュームアップしていきたいですね。あと、もっといい絵が描けるようになりたいです。

■どれもそれぞれに可愛くて一番は決められない
会期:〜8月21日(日)
場所:WISH LESS gallery
所在地:東京都北区田端5-12-10

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“プリキュアネックレス”作家の22世紀ジェダイが本名でドローイングを本格化 パリコレブランドでの経験を通じてたどり着いた“脅かし役”

 22世紀ジェダイこと門倉太久斗は、アニメ「プリキュア」シリーズのフィギュアをモチーフにしたネックレスや、自身が住むマンションの掲示板へのドローイングをSNSで発信し、アート界を中心に徐々に注目を集めている。門倉は「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」でパタンナーと勤務しながら創作活動を行い、今年1月に独立。アクリルによる新作のペインティングや、これまでの立体ネックレスを展示する個展「どれもそれぞれに可愛くて一番は決められない」を東京・田端のウィッシュレス ギャラリー(WISH LESS gallery)で8月21日まで開催中だ。門倉に、会社員時代の学びや作品のルーツなどについて聞いた。

高校3年生まではファッションに無頓着だった

WWD:活動名を22世紀ジェダイ/門倉太久斗と二つの名前を続けているのはなぜ?

門倉太久斗(以下、門倉):“プリキュアネックレス”の名義が22世紀ジェダイで、絵の場合は本名を使っているんです。以前は企業に勤めていたので本名が使いづらく、展示をするようになるとも想像していなかったので、Twitterのアカウント名をそのまま名乗るようになりました。

WWD:ファッションに興味を持ったきっかけは?

門倉:今は服が大好きですけど、高校3年生までは自分で服を買ったことがなかったくらい無頓着だったんです。興味を持ったきっかけは、武蔵野美術大学の空間演出デザイン学科で受けたウエアラブルという授業でした。ファッションの課題ではあるものの、おしゃれなものを作るのではなく、着ることによって起こる変化を考えるという授業だったんです。僕は神社をそのまま着るという作品を作って面白さに気づき、その後ファッションを専攻しました。

WWD:学生時代にはほかにどんな作品を作った?

門倉:例えば、飛行機の骨組みをそのまま着てみる作品です。プロペラもちゃんと回るんです。僕の師匠である野老朝雄さんは、東京2020オリンピック・パラリンピックのエンブレムをデザインしたことで知られているのですが、もともとは建築の世界にいたので、当時は彼の影響をすごく受けていましたね。

WWD:大学卒業後の進路に「コム デ ギャルソン」を選んだのはなぜ?

門倉:卒業後はアーティストになるつもりでしたが、「コム デ ギャルソン」がすごく好きだったので、一社だけ受けてみようとパタンナー職に応募したんです。

WWD:当時学んだことのなかで特に印象的だったことや、今に生きていることは?

門倉:やはり、新しいものを作るのがいかに大切かということです。僕は美術の大学を卒業し、世の中にあるかっこいいものや美しいものを自分でも作れるようになりたいと思っていました。でも、それだけではダメだったんです。誰も見たことがなくて、どう解釈していいか分からないものを作るのが目指す場所だと気づきました。川久保さん(川久保玲『コム デ ギャルソン』デザイナー)も、新しさと強さの2点はすごく大切にしているようでした。

WWD:会社員として働く傍らで、作品作りをするようになったきっかけは?

門倉:僕はバリバリの技術系で入ったわけではなかったので、テキスタイルの柄を描いたり、アクセサリーやヘッドピースを作ったりもしていたんです。その経験を通じて、徐々に自分でも作品を作ってみるようになりました。

WWD:独立したのは、創作に専念するため?

門倉:そうですね。なんとか両立できないかと試行錯誤してきたのですが、作品を作り始めて3年くらい経った頃に、やっぱり難しいなと独立を決めました。「コム デ ギャルソン」の仕事も本当に好きだったので、今でも服を作りたい気持ちはあります。

プリキュアたちをかわいく飾ってあげたい

WWD:“プリキュアネックレス”はどのように誕生した?

門倉:「コム デ ギャルソン」のコレクションでおもちゃを取り入れることになり、候補をピックアップしていく中で僕が興味を持ったのが「プリキュア」シリーズでした。その時、勉強のつもりで見始めたら虜になってしまったんです。

 僕は以前、人のことをほとんど考えていなかったんです。全て自分の世界で完結していたから、ありがとうを言おうとか、他人の気持ちを考えようとか、知識としては知っていたけど、その意味まで理解していなかった。でも「プリキュア」シリーズを見て、他者にも感情があるということに初めて気がついたんです。その気づきを忘れないために、ネックレスを作り始めました。“プリキュアネックレス”は「コム デ ギャルソン」での仕事と、自分の気持ちが混ざり合ってできています。

WWD:そんな“プリキュアネックレス”には、どんなこだわりを盛り込んでいる?

門倉:どこの国にも、背負える祭壇や頭に乗せられる祭壇と、ウエアラブルな宗教モチーフはたくさんあるんですよ。そういうものを参考に、装飾を盛り込んでシンメトリーに配置しています。

 ただ、僕はあくまでもプリキュアたちをかわいく装飾してあげたいという気持ちで作っているので、パーツはそれに相応しいものを選ぶようにしていますね。あと、全て結束バンドで固定しています。接着剤を使うとただの塊のように見えてグロさが際立ってしまうんですよね。手間がかかるので、作れても年に1つか2つが限界ですね。

自分が担っているのは“脅かし役”かもしれない

WWD:独立以降はドローイング作品も多く発表している。

門倉:“プリキュアネックレス”は自分のために作っているのに対して、絵は他者に向けた作品として描くこともあります。絵は美術大学を受験するために予備校でデッサンを勉強したくらいだし、僕はそんなに上手くなかった。描いた絵を人に見せるのは未だに恥ずかしいけど、描くのは好きです。

WWD:絵で表現したいことは?

門倉:われわれがいる世界に穴が開いていたとして、その向こうの知らない世界から美しいものとはまた違う、びっくりするようなものが出てきてほしいんです。以前、創作を続ける目的について考えていたら、来訪神の存在意義を通して少し分かった気がしたんです。広く知られている来訪神の一つがナマハゲで、冬至のお祭りに合わせて異界からやってきて、年に一度僕たちの日常をかき乱して帰っていきますよね。

 その感覚はファッションショーにも通ずるなと気付きました。年に2回だけ幕が開いて、その日だけあの世とこの世の境目がなくなる。そしてモデルたちが美しいのかもよく分からない異様な服をまとって歩き、観客はびっくりしたり、混乱したり。もしかしたら自分が担っているのは、この“脅かし役”かもしれないと気付いて、それから迷いがなくなっていきました。服から離れて絵を描いている今も、その精神は大切にしています。

WWD:個展名「どれもそれぞれに可愛くて一番は決められない」の意味は?

門倉:絵と“プリキュアネックレス”を並べることはこれまであまりなかったので、一緒に出す意味を考えた結果「どれもそれぞれに可愛くて一番は決められない」というタイトルをつけました。

WWD:今後の目標は?

門倉:「プリキュア」シリーズが放映され続ける限り新しいキャラクターがどんどん出てきます。全員分のネックレスを作り、最終的には自分の棺桶に入れたい。“プリキュアネックレス”は大きければ大きいほど、重ければ重いほどいいから、既存のものもボリュームアップしていきたいですね。あと、もっといい絵が描けるようになりたいです。

■どれもそれぞれに可愛くて一番は決められない
会期:〜8月21日(日)
場所:WISH LESS gallery
所在地:東京都北区田端5-12-10

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“プリキュアネックレス”作家の22世紀ジェダイが本名でドローイングを本格化 パリコレブランドでの経験を通じてたどり着いた“脅かし役”

 22世紀ジェダイこと門倉太久斗は、アニメ「プリキュア」シリーズのフィギュアをモチーフにしたネックレスや、自身が住むマンションの掲示板へのドローイングをSNSで発信し、アート界を中心に徐々に注目を集めている。門倉は「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」でパタンナーと勤務しながら創作活動を行い、今年1月に独立。アクリルによる新作のペインティングや、これまでの立体ネックレスを展示する個展「どれもそれぞれに可愛くて一番は決められない」を東京・田端のウィッシュレス ギャラリー(WISH LESS gallery)で8月21日まで開催中だ。門倉に、会社員時代の学びや作品のルーツなどについて聞いた。

高校3年生まではファッションに無頓着だった

WWD:活動名を22世紀ジェダイ/門倉太久斗と二つの名前を続けているのはなぜ?

門倉太久斗(以下、門倉):“プリキュアネックレス”の名義が22世紀ジェダイで、絵の場合は本名を使っているんです。以前は企業に勤めていたので本名が使いづらく、展示をするようになるとも想像していなかったので、Twitterのアカウント名をそのまま名乗るようになりました。

WWD:ファッションに興味を持ったきっかけは?

門倉:今は服が大好きですけど、高校3年生までは自分で服を買ったことがなかったくらい無頓着だったんです。興味を持ったきっかけは、武蔵野美術大学の空間演出デザイン学科で受けたウエアラブルという授業でした。ファッションの課題ではあるものの、おしゃれなものを作るのではなく、着ることによって起こる変化を考えるという授業だったんです。僕は神社をそのまま着るという作品を作って面白さに気づき、その後ファッションを専攻しました。

WWD:学生時代にはほかにどんな作品を作った?

門倉:例えば、飛行機の骨組みをそのまま着てみる作品です。プロペラもちゃんと回るんです。僕の師匠である野老朝雄さんは、東京2020オリンピック・パラリンピックのエンブレムをデザインしたことで知られているのですが、もともとは建築の世界にいたので、当時は彼の影響をすごく受けていましたね。

WWD:大学卒業後の進路に「コム デ ギャルソン」を選んだのはなぜ?

門倉:卒業後はアーティストになるつもりでしたが、「コム デ ギャルソン」がすごく好きだったので、一社だけ受けてみようとパタンナー職に応募したんです。

WWD:当時学んだことのなかで特に印象的だったことや、今に生きていることは?

門倉:やはり、新しいものを作るのがいかに大切かということです。僕は美術の大学を卒業し、世の中にあるかっこいいものや美しいものを自分でも作れるようになりたいと思っていました。でも、それだけではダメだったんです。誰も見たことがなくて、どう解釈していいか分からないものを作るのが目指す場所だと気づきました。川久保さん(川久保玲『コム デ ギャルソン』デザイナー)も、新しさと強さの2点はすごく大切にしているようでした。

WWD:会社員として働く傍らで、作品作りをするようになったきっかけは?

門倉:僕はバリバリの技術系で入ったわけではなかったので、テキスタイルの柄を描いたり、アクセサリーやヘッドピースを作ったりもしていたんです。その経験を通じて、徐々に自分でも作品を作ってみるようになりました。

WWD:独立したのは、創作に専念するため?

門倉:そうですね。なんとか両立できないかと試行錯誤してきたのですが、作品を作り始めて3年くらい経った頃に、やっぱり難しいなと独立を決めました。「コム デ ギャルソン」の仕事も本当に好きだったので、今でも服を作りたい気持ちはあります。

プリキュアたちをかわいく飾ってあげたい

WWD:“プリキュアネックレス”はどのように誕生した?

門倉:「コム デ ギャルソン」のコレクションでおもちゃを取り入れることになり、候補をピックアップしていく中で僕が興味を持ったのが「プリキュア」シリーズでした。その時、勉強のつもりで見始めたら虜になってしまったんです。

 僕は以前、人のことをほとんど考えていなかったんです。全て自分の世界で完結していたから、ありがとうを言おうとか、他人の気持ちを考えようとか、知識としては知っていたけど、その意味まで理解していなかった。でも「プリキュア」シリーズを見て、他者にも感情があるということに初めて気がついたんです。その気づきを忘れないために、ネックレスを作り始めました。“プリキュアネックレス”は「コム デ ギャルソン」での仕事と、自分の気持ちが混ざり合ってできています。

WWD:そんな“プリキュアネックレス”には、どんなこだわりを盛り込んでいる?

門倉:どこの国にも、背負える祭壇や頭に乗せられる祭壇と、ウエアラブルな宗教モチーフはたくさんあるんですよ。そういうものを参考に、装飾を盛り込んでシンメトリーに配置しています。

 ただ、僕はあくまでもプリキュアたちをかわいく装飾してあげたいという気持ちで作っているので、パーツはそれに相応しいものを選ぶようにしていますね。あと、全て結束バンドで固定しています。接着剤を使うとただの塊のように見えてグロさが際立ってしまうんですよね。手間がかかるので、作れても年に1つか2つが限界ですね。

自分が担っているのは“脅かし役”かもしれない

WWD:独立以降はドローイング作品も多く発表している。

門倉:“プリキュアネックレス”は自分のために作っているのに対して、絵は他者に向けた作品として描くこともあります。絵は美術大学を受験するために予備校でデッサンを勉強したくらいだし、僕はそんなに上手くなかった。描いた絵を人に見せるのは未だに恥ずかしいけど、描くのは好きです。

WWD:絵で表現したいことは?

門倉:われわれがいる世界に穴が開いていたとして、その向こうの知らない世界から美しいものとはまた違う、びっくりするようなものが出てきてほしいんです。以前、創作を続ける目的について考えていたら、来訪神の存在意義を通して少し分かった気がしたんです。広く知られている来訪神の一つがナマハゲで、冬至のお祭りに合わせて異界からやってきて、年に一度僕たちの日常をかき乱して帰っていきますよね。

 その感覚はファッションショーにも通ずるなと気付きました。年に2回だけ幕が開いて、その日だけあの世とこの世の境目がなくなる。そしてモデルたちが美しいのかもよく分からない異様な服をまとって歩き、観客はびっくりしたり、混乱したり。もしかしたら自分が担っているのは、この“脅かし役”かもしれないと気付いて、それから迷いがなくなっていきました。服から離れて絵を描いている今も、その精神は大切にしています。

WWD:個展名「どれもそれぞれに可愛くて一番は決められない」の意味は?

門倉:絵と“プリキュアネックレス”を並べることはこれまであまりなかったので、一緒に出す意味を考えた結果「どれもそれぞれに可愛くて一番は決められない」というタイトルをつけました。

WWD:今後の目標は?

門倉:「プリキュア」シリーズが放映され続ける限り新しいキャラクターがどんどん出てきます。全員分のネックレスを作り、最終的には自分の棺桶に入れたい。“プリキュアネックレス”は大きければ大きいほど、重ければ重いほどいいから、既存のものもボリュームアップしていきたいですね。あと、もっといい絵が描けるようになりたいです。

■どれもそれぞれに可愛くて一番は決められない
会期:〜8月21日(日)
場所:WISH LESS gallery
所在地:東京都北区田端5-12-10

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“プリキュアネックレス”作家の22世紀ジェダイが本名でドローイングを本格化 パリコレブランドでの経験を通じてたどり着いた“脅かし役”

 22世紀ジェダイこと門倉太久斗は、アニメ「プリキュア」シリーズのフィギュアをモチーフにしたネックレスや、自身が住むマンションの掲示板へのドローイングをSNSで発信し、アート界を中心に徐々に注目を集めている。門倉は「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」でパタンナーと勤務しながら創作活動を行い、今年1月に独立。アクリルによる新作のペインティングや、これまでの立体ネックレスを展示する個展「どれもそれぞれに可愛くて一番は決められない」を東京・田端のウィッシュレス ギャラリー(WISH LESS gallery)で8月21日まで開催中だ。門倉に、会社員時代の学びや作品のルーツなどについて聞いた。

高校3年生まではファッションに無頓着だった

WWD:活動名を22世紀ジェダイ/門倉太久斗と二つの名前を続けているのはなぜ?

門倉太久斗(以下、門倉):“プリキュアネックレス”の名義が22世紀ジェダイで、絵の場合は本名を使っているんです。以前は企業に勤めていたので本名が使いづらく、展示をするようになるとも想像していなかったので、Twitterのアカウント名をそのまま名乗るようになりました。

WWD:ファッションに興味を持ったきっかけは?

門倉:今は服が大好きですけど、高校3年生までは自分で服を買ったことがなかったくらい無頓着だったんです。興味を持ったきっかけは、武蔵野美術大学の空間演出デザイン学科で受けたウエアラブルという授業でした。ファッションの課題ではあるものの、おしゃれなものを作るのではなく、着ることによって起こる変化を考えるという授業だったんです。僕は神社をそのまま着るという作品を作って面白さに気づき、その後ファッションを専攻しました。

WWD:学生時代にはほかにどんな作品を作った?

門倉:例えば、飛行機の骨組みをそのまま着てみる作品です。プロペラもちゃんと回るんです。僕の師匠である野老朝雄さんは、東京2020オリンピック・パラリンピックのエンブレムをデザインしたことで知られているのですが、もともとは建築の世界にいたので、当時は彼の影響をすごく受けていましたね。

WWD:大学卒業後の進路に「コム デ ギャルソン」を選んだのはなぜ?

門倉:卒業後はアーティストになるつもりでしたが、「コム デ ギャルソン」がすごく好きだったので、一社だけ受けてみようとパタンナー職に応募したんです。

WWD:当時学んだことのなかで特に印象的だったことや、今に生きていることは?

門倉:やはり、新しいものを作るのがいかに大切かということです。僕は美術の大学を卒業し、世の中にあるかっこいいものや美しいものを自分でも作れるようになりたいと思っていました。でも、それだけではダメだったんです。誰も見たことがなくて、どう解釈していいか分からないものを作るのが目指す場所だと気づきました。川久保さん(川久保玲『コム デ ギャルソン』デザイナー)も、新しさと強さの2点はすごく大切にしているようでした。

WWD:会社員として働く傍らで、作品作りをするようになったきっかけは?

門倉:僕はバリバリの技術系で入ったわけではなかったので、テキスタイルの柄を描いたり、アクセサリーやヘッドピースを作ったりもしていたんです。その経験を通じて、徐々に自分でも作品を作ってみるようになりました。

WWD:独立したのは、創作に専念するため?

門倉:そうですね。なんとか両立できないかと試行錯誤してきたのですが、作品を作り始めて3年くらい経った頃に、やっぱり難しいなと独立を決めました。「コム デ ギャルソン」の仕事も本当に好きだったので、今でも服を作りたい気持ちはあります。

プリキュアたちをかわいく飾ってあげたい

WWD:“プリキュアネックレス”はどのように誕生した?

門倉:「コム デ ギャルソン」のコレクションでおもちゃを取り入れることになり、候補をピックアップしていく中で僕が興味を持ったのが「プリキュア」シリーズでした。その時、勉強のつもりで見始めたら虜になってしまったんです。

 僕は以前、人のことをほとんど考えていなかったんです。全て自分の世界で完結していたから、ありがとうを言おうとか、他人の気持ちを考えようとか、知識としては知っていたけど、その意味まで理解していなかった。でも「プリキュア」シリーズを見て、他者にも感情があるということに初めて気がついたんです。その気づきを忘れないために、ネックレスを作り始めました。“プリキュアネックレス”は「コム デ ギャルソン」での仕事と、自分の気持ちが混ざり合ってできています。

WWD:そんな“プリキュアネックレス”には、どんなこだわりを盛り込んでいる?

門倉:どこの国にも、背負える祭壇や頭に乗せられる祭壇と、ウエアラブルな宗教モチーフはたくさんあるんですよ。そういうものを参考に、装飾を盛り込んでシンメトリーに配置しています。

 ただ、僕はあくまでもプリキュアたちをかわいく装飾してあげたいという気持ちで作っているので、パーツはそれに相応しいものを選ぶようにしていますね。あと、全て結束バンドで固定しています。接着剤を使うとただの塊のように見えてグロさが際立ってしまうんですよね。手間がかかるので、作れても年に1つか2つが限界ですね。

自分が担っているのは“脅かし役”かもしれない

WWD:独立以降はドローイング作品も多く発表している。

門倉:“プリキュアネックレス”は自分のために作っているのに対して、絵は他者に向けた作品として描くこともあります。絵は美術大学を受験するために予備校でデッサンを勉強したくらいだし、僕はそんなに上手くなかった。描いた絵を人に見せるのは未だに恥ずかしいけど、描くのは好きです。

WWD:絵で表現したいことは?

門倉:われわれがいる世界に穴が開いていたとして、その向こうの知らない世界から美しいものとはまた違う、びっくりするようなものが出てきてほしいんです。以前、創作を続ける目的について考えていたら、来訪神の存在意義を通して少し分かった気がしたんです。広く知られている来訪神の一つがナマハゲで、冬至のお祭りに合わせて異界からやってきて、年に一度僕たちの日常をかき乱して帰っていきますよね。

 その感覚はファッションショーにも通ずるなと気付きました。年に2回だけ幕が開いて、その日だけあの世とこの世の境目がなくなる。そしてモデルたちが美しいのかもよく分からない異様な服をまとって歩き、観客はびっくりしたり、混乱したり。もしかしたら自分が担っているのは、この“脅かし役”かもしれないと気付いて、それから迷いがなくなっていきました。服から離れて絵を描いている今も、その精神は大切にしています。

WWD:個展名「どれもそれぞれに可愛くて一番は決められない」の意味は?

門倉:絵と“プリキュアネックレス”を並べることはこれまであまりなかったので、一緒に出す意味を考えた結果「どれもそれぞれに可愛くて一番は決められない」というタイトルをつけました。

WWD:今後の目標は?

門倉:「プリキュア」シリーズが放映され続ける限り新しいキャラクターがどんどん出てきます。全員分のネックレスを作り、最終的には自分の棺桶に入れたい。“プリキュアネックレス”は大きければ大きいほど、重ければ重いほどいいから、既存のものもボリュームアップしていきたいですね。あと、もっといい絵が描けるようになりたいです。

■どれもそれぞれに可愛くて一番は決められない
会期:〜8月21日(日)
場所:WISH LESS gallery
所在地:東京都北区田端5-12-10

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P&Gコリア出身の「SK-II」グローバルCEOが語る、コロナ下で変わるスキンケアニーズ

WWD:2月にグローバルCEOに就任した。期待されているミッションは?

スーキョン・リー SK-IIグローバルCEO(以下、リー):天然の酵母から生まれた保湿成分“ピテラ”の奇跡を世界中の人に知ってもらうことだ。40年以上前に生まれた“ピテラ”は、成分自体は変化していないが、継続的な研究と科学の進歩により今なお新しい発見が生まれている非常に貴重なものだ。これだけの歴史がある成分やブランドはなかなかないだろう。その価値や背景となる科学を広めることに情熱を燃やしている。結果的に市場が広がり、私のミッションとしてもいい方向に行くだろう。これまでのキャリアで得たマーケティングの知見や、韓国のほか中国やシンガポール、アメリカでの経験から得た知見を「SK-II」に注ぎたい。

WWD:現在「SK-II」は13の国と地域で展開している。今後マーケットを広げる計画はあるか。

リー:地理的に拡大することにはもちろん関心がある。同時に、世界中のどこにいても“ピテラ”のベネフィットを感じてもらえるように、消費者のアクセシビリティも考えていきたい。さらに強調したいのは、日本市場の強化がとても大切だということだ。現在はグローバルなプレステージブランドになったと言えるかもしれないが、そうしたブランドにとってヘリテージが大切で、ブランドの原点、生まれ故郷である日本市場を引き続き成長させていくことが重要だ。ポテンシャルはまだまだある。

WWD:足元の商況は良好で、コロナ前の水準に戻っていると聞く。一方で、中国市場の減速やトラベルリテールの成長鈍化といった懸念もある。どう捉えているか。

リー:中国の状況や世界で勃発しているさまざまな厳しい環境がある中で、逆に消費者のスキンケアに対する関心がますます上がっていることが分かった。コロナ下の2年半に観察してみて、より健康や自分を労わること、そしてスキンケアに意識が向いていることは非常に大きな機会だ。そうした消費者の関心やニーズに対応していきたい。

WWD:スキンケアの最新の知見は?

リー:最近分かったことは、肌の状態はとても不安定で1日の中でも大きく変化するということだ。若い人であっても、1日で9年分老いることもあるという。“ピテラ”で継続的にスキンケアすることで、1日の振れ幅を小さくし、エイジングのスピードにアプローチできることが分かってきた。

WWD:高まるスキンケアニーズに対する施策は?

リー:2018年に導入した肌測定機器「マジックリング」に続いて、コロナ下で開発を進め非接触での測定を可能にした「ミニマジックスキャン」を導入した。最新のAI技術と数十年の肌研究を基に、肌の状態を可視化しまだ目に見えないトラブルもキャッチする。コロナ下でも来店して肌測定をしたいという声が非常に多く、自分の肌のことを知りたいという欲求の高さを感じる。設置カウンターを継続して増やしていきたい。

WWD:「ミニマジックスキャン」への反響は?

リー:このマシンにはユニークな機能が2点ある。1点目は、そのお客さまだけが持っている肌の美しさや、肌のポテンシャルの引き出し方など、非常にポジティブな側面から測定結果が示されることだ。一般的な肌測定はここにシミがあるとかシワがあるとかネガティブなところを突いて落ち込ませるものが多い。「ミニマジックスキャン」はもっと肌のことを知りたいとオープンなマインドになってもらえる。2点目は、われわれは幅広い製品を持っているが、それらをどのように使ったらいいかを紹介できる点だ。例えばもっとハリが出る肌であるということであればクリームを紹介するという具合にさまざまな組み合わせを提案できるのは独自のものだ。

女性たちに人生を自由に選択できることを伝えたい

WWD:P&Gはイクオリティ&インクルージョン(E&I)に注力している。自身もP&Gコリア初の女性CEOであり、キャリアの中でもジェンダー平等達成に向けて取り組んできた。「SK-II」では何を目指すか。

リー:ジェンダー平等に関しては非常に情熱を持ってやってきた。「SK-II」はブランドのパーパスとして「#CHANGEDESTENY」を掲げキャンペーンを展開している。肌も人生も地球も、運命は変えられるということだが、特に女性の人生において、社会的な抑圧や、自分自身がかけてしまっている呪いやプレッシャーから自由になり人生を選択できるというメッセージを伝えていきたい。私の仕事の中で、ミッションとパーパスが融合している状態だ。

WWD:具体的な施策は?

リー:日本では、コロナ下で影響を受けた中小ビジネスを経営する女性起業家・女性事業主向けの支援として「#CHANGEDESTENY資金」プログラムを実施した。これは、映像作品を発信するコンテンツハブ「SK-II Studio TM 」の映像1再生につき1ドルを支援活動に拠出する取り組みだ。「学ぶ」「つながる」「発信する」という3つのアプローチで女性起業家の課題に取り組んでいる。これまでのメッセージを一歩前進させ、社会を変える行動につなげていきたい。

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P&Gコリア出身の「SK-II」グローバルCEOが語る、コロナ下で変わるスキンケアニーズ

WWD:2月にグローバルCEOに就任した。期待されているミッションは?

スーキョン・リー SK-IIグローバルCEO(以下、リー):天然の酵母から生まれた保湿成分“ピテラ”の奇跡を世界中の人に知ってもらうことだ。40年以上前に生まれた“ピテラ”は、成分自体は変化していないが、継続的な研究と科学の進歩により今なお新しい発見が生まれている非常に貴重なものだ。これだけの歴史がある成分やブランドはなかなかないだろう。その価値や背景となる科学を広めることに情熱を燃やしている。結果的に市場が広がり、私のミッションとしてもいい方向に行くだろう。これまでのキャリアで得たマーケティングの知見や、韓国のほか中国やシンガポール、アメリカでの経験から得た知見を「SK-II」に注ぎたい。

WWD:現在「SK-II」は13の国と地域で展開している。今後マーケットを広げる計画はあるか。

リー:地理的に拡大することにはもちろん関心がある。同時に、世界中のどこにいても“ピテラ”のベネフィットを感じてもらえるように、消費者のアクセシビリティも考えていきたい。さらに強調したいのは、日本市場の強化がとても大切だということだ。現在はグローバルなプレステージブランドになったと言えるかもしれないが、そうしたブランドにとってヘリテージが大切で、ブランドの原点、生まれ故郷である日本市場を引き続き成長させていくことが重要だ。ポテンシャルはまだまだある。

WWD:足元の商況は良好で、コロナ前の水準に戻っていると聞く。一方で、中国市場の減速やトラベルリテールの成長鈍化といった懸念もある。どう捉えているか。

リー:中国の状況や世界で勃発しているさまざまな厳しい環境がある中で、逆に消費者のスキンケアに対する関心がますます上がっていることが分かった。コロナ下の2年半に観察してみて、より健康や自分を労わること、そしてスキンケアに意識が向いていることは非常に大きな機会だ。そうした消費者の関心やニーズに対応していきたい。

WWD:スキンケアの最新の知見は?

リー:最近分かったことは、肌の状態はとても不安定で1日の中でも大きく変化するということだ。若い人であっても、1日で9年分老いることもあるという。“ピテラ”で継続的にスキンケアすることで、1日の振れ幅を小さくし、エイジングのスピードにアプローチできることが分かってきた。

WWD:高まるスキンケアニーズに対する施策は?

リー:2018年に導入した肌測定機器「マジックリング」に続いて、コロナ下で開発を進め非接触での測定を可能にした「ミニマジックスキャン」を導入した。最新のAI技術と数十年の肌研究を基に、肌の状態を可視化しまだ目に見えないトラブルもキャッチする。コロナ下でも来店して肌測定をしたいという声が非常に多く、自分の肌のことを知りたいという欲求の高さを感じる。設置カウンターを継続して増やしていきたい。

WWD:「ミニマジックスキャン」への反響は?

リー:このマシンにはユニークな機能が2点ある。1点目は、そのお客さまだけが持っている肌の美しさや、肌のポテンシャルの引き出し方など、非常にポジティブな側面から測定結果が示されることだ。一般的な肌測定はここにシミがあるとかシワがあるとかネガティブなところを突いて落ち込ませるものが多い。「ミニマジックスキャン」はもっと肌のことを知りたいとオープンなマインドになってもらえる。2点目は、われわれは幅広い製品を持っているが、それらをどのように使ったらいいかを紹介できる点だ。例えばもっとハリが出る肌であるということであればクリームを紹介するという具合にさまざまな組み合わせを提案できるのは独自のものだ。

女性たちに人生を自由に選択できることを伝えたい

WWD:P&Gはイクオリティ&インクルージョン(E&I)に注力している。自身もP&Gコリア初の女性CEOであり、キャリアの中でもジェンダー平等達成に向けて取り組んできた。「SK-II」では何を目指すか。

リー:ジェンダー平等に関しては非常に情熱を持ってやってきた。「SK-II」はブランドのパーパスとして「#CHANGEDESTENY」を掲げキャンペーンを展開している。肌も人生も地球も、運命は変えられるということだが、特に女性の人生において、社会的な抑圧や、自分自身がかけてしまっている呪いやプレッシャーから自由になり人生を選択できるというメッセージを伝えていきたい。私の仕事の中で、ミッションとパーパスが融合している状態だ。

WWD:具体的な施策は?

リー:日本では、コロナ下で影響を受けた中小ビジネスを経営する女性起業家・女性事業主向けの支援として「#CHANGEDESTENY資金」プログラムを実施した。これは、映像作品を発信するコンテンツハブ「SK-II Studio TM 」の映像1再生につき1ドルを支援活動に拠出する取り組みだ。「学ぶ」「つながる」「発信する」という3つのアプローチで女性起業家の課題に取り組んでいる。これまでのメッセージを一歩前進させ、社会を変える行動につなげていきたい。

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P&Gコリア出身の「SK-II」グローバルCEOが語る、コロナ下で変わるスキンケアニーズ

WWD:2月にグローバルCEOに就任した。期待されているミッションは?

スーキョン・リー SK-IIグローバルCEO(以下、リー):天然の酵母から生まれた保湿成分“ピテラ”の奇跡を世界中の人に知ってもらうことだ。40年以上前に生まれた“ピテラ”は、成分自体は変化していないが、継続的な研究と科学の進歩により今なお新しい発見が生まれている非常に貴重なものだ。これだけの歴史がある成分やブランドはなかなかないだろう。その価値や背景となる科学を広めることに情熱を燃やしている。結果的に市場が広がり、私のミッションとしてもいい方向に行くだろう。これまでのキャリアで得たマーケティングの知見や、韓国のほか中国やシンガポール、アメリカでの経験から得た知見を「SK-II」に注ぎたい。

WWD:現在「SK-II」は13の国と地域で展開している。今後マーケットを広げる計画はあるか。

リー:地理的に拡大することにはもちろん関心がある。同時に、世界中のどこにいても“ピテラ”のベネフィットを感じてもらえるように、消費者のアクセシビリティも考えていきたい。さらに強調したいのは、日本市場の強化がとても大切だということだ。現在はグローバルなプレステージブランドになったと言えるかもしれないが、そうしたブランドにとってヘリテージが大切で、ブランドの原点、生まれ故郷である日本市場を引き続き成長させていくことが重要だ。ポテンシャルはまだまだある。

WWD:足元の商況は良好で、コロナ前の水準に戻っていると聞く。一方で、中国市場の減速やトラベルリテールの成長鈍化といった懸念もある。どう捉えているか。

リー:中国の状況や世界で勃発しているさまざまな厳しい環境がある中で、逆に消費者のスキンケアに対する関心がますます上がっていることが分かった。コロナ下の2年半に観察してみて、より健康や自分を労わること、そしてスキンケアに意識が向いていることは非常に大きな機会だ。そうした消費者の関心やニーズに対応していきたい。

WWD:スキンケアの最新の知見は?

リー:最近分かったことは、肌の状態はとても不安定で1日の中でも大きく変化するということだ。若い人であっても、1日で9年分老いることもあるという。“ピテラ”で継続的にスキンケアすることで、1日の振れ幅を小さくし、エイジングのスピードにアプローチできることが分かってきた。

WWD:高まるスキンケアニーズに対する施策は?

リー:2018年に導入した肌測定機器「マジックリング」に続いて、コロナ下で開発を進め非接触での測定を可能にした「ミニマジックスキャン」を導入した。最新のAI技術と数十年の肌研究を基に、肌の状態を可視化しまだ目に見えないトラブルもキャッチする。コロナ下でも来店して肌測定をしたいという声が非常に多く、自分の肌のことを知りたいという欲求の高さを感じる。設置カウンターを継続して増やしていきたい。

WWD:「ミニマジックスキャン」への反響は?

リー:このマシンにはユニークな機能が2点ある。1点目は、そのお客さまだけが持っている肌の美しさや、肌のポテンシャルの引き出し方など、非常にポジティブな側面から測定結果が示されることだ。一般的な肌測定はここにシミがあるとかシワがあるとかネガティブなところを突いて落ち込ませるものが多い。「ミニマジックスキャン」はもっと肌のことを知りたいとオープンなマインドになってもらえる。2点目は、われわれは幅広い製品を持っているが、それらをどのように使ったらいいかを紹介できる点だ。例えばもっとハリが出る肌であるということであればクリームを紹介するという具合にさまざまな組み合わせを提案できるのは独自のものだ。

女性たちに人生を自由に選択できることを伝えたい

WWD:P&Gはイクオリティ&インクルージョン(E&I)に注力している。自身もP&Gコリア初の女性CEOであり、キャリアの中でもジェンダー平等達成に向けて取り組んできた。「SK-II」では何を目指すか。

リー:ジェンダー平等に関しては非常に情熱を持ってやってきた。「SK-II」はブランドのパーパスとして「#CHANGEDESTENY」を掲げキャンペーンを展開している。肌も人生も地球も、運命は変えられるということだが、特に女性の人生において、社会的な抑圧や、自分自身がかけてしまっている呪いやプレッシャーから自由になり人生を選択できるというメッセージを伝えていきたい。私の仕事の中で、ミッションとパーパスが融合している状態だ。

WWD:具体的な施策は?

リー:日本では、コロナ下で影響を受けた中小ビジネスを経営する女性起業家・女性事業主向けの支援として「#CHANGEDESTENY資金」プログラムを実施した。これは、映像作品を発信するコンテンツハブ「SK-II Studio TM 」の映像1再生につき1ドルを支援活動に拠出する取り組みだ。「学ぶ」「つながる」「発信する」という3つのアプローチで女性起業家の課題に取り組んでいる。これまでのメッセージを一歩前進させ、社会を変える行動につなげていきたい。

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真鍋未央が“ハイブリッドランニング”を体験 欠かせない存在となった“パワースーツ コアベルト”の魅力とは

 MTGのトレーニングブランド「シックスパッド(SIXPAD)」の最新トレーニングギア“パワースーツ コアベルト”は、腹筋、脇腹、背筋下部を同時に鍛える革新的なEMSスーツだ。有酸素運動や筋肉トレーニングと組み合わせることで、効率的でハイブリッドなトレーニングを実現する。今回はランニングアドバイザーとして活躍する真鍋未央が“パワースーツ コアベルト”を着用し、皇居ランに挑戦。“ハイブリッドランニング”を体験して気づいた製品の魅力を語る。

「シックスパッド」“パワースーツ
コアベルト”とは

 “パワースーツ コアベルト”は、「シックスパッド」の取り扱い商品・サービスにおいて家庭用初の腹筋、脇腹、そして背筋下部まで鍛えるトレーニングギアだ。EMSの周波数は、ウォーミングアップやストレッチと併用することで身体をととのえる4Hz、筋肉を効率的にトレーニングするのに適した20Hzのモード設定があり、目的に合わせたトレーニングを実現する。さらに水で通電できる独自の布製電極“エレダイン”を採用し、使用後は家庭用洗濯機での手入れも可能だ。身体の動きに合わせてしなやかに伸縮する素材を採用することで、運動時にも電極部がずれることなく、快適なパフォーマンスをサポートする。

まさに“ハイブリッド”な
EMSとランニングの組み合わせ
今ではなくてはならない存在に

 「そもそもEMSとランニングを組み合わせても良いということを知らなかったので、初めて“パワースーツ コアベルト”を使用した時にはとても違和感を感じましたが、使っているうちに慣れてきて心地よさを感じるようになりました。すでに1カ月ほど使い続けていますが、最近ではランニングに欠かせない存在です。

 ランナーから多く寄せられるのは『疲れにくいランニングフォームが知りたい』、そして『トレーニングの時間が確保できない』という悩み。“パワースーツ コアベルト”を使えば、短時間で効率良く筋肉トレーニングができるし、筋肉を刺激してくれることで正しいフォームを保ちやすくなるため、ぜひこのような悩みを持っている人に使用していただきたいです。無理に姿勢を直そうとすると、力んで無駄なところに力が入ってしまう人もいるかと思いますが、普段のトレーニングにこのコアベルトをプラスするだけで自然にフォーム改善へと導いてくれると思います」。

ランナーに欠かせない
筋肉トレーニングのサポートにも

 「“パワースーツ コアベルト”はモードの選択ができ、朝と夕方でそれぞれのモードをバランス良く使い分けるようにしています。

 ランナーにとっては、走るだけではなく筋力トレーニングも重要です。私は腸腰筋を鍛えるトレーニングをおすすめしていて、今回撮影したようなトレーニングのほか、“マウンテンクライマー”を皆さんに紹介することが多いです。両手を地面につけて膝を胸の方へ引きつけながら、足を交互に切り替える動きで足踏みをするようなトレーニングなのですが、ランニング時に大切な腹筋や腸腰筋が鍛えられます。腸腰筋をしなやかな状態に保つことで、股関節周りの動きも良くなり、膝やふくらはぎなどの負担を軽減できます。

 また、美しいランニングフォームを保つためには体幹も欠かせないため、日頃からプランクのトレーニングも積極的に取り入れています。体幹がないと、疲れた時に無駄な動きが増えたり、フォームが後傾してしまう人が多いです。“パワースーツ コアベルト”を着用することで、筋力トレーニングの効率化にもつながるためおすすめです」。

選手としての経験を経て、
今感じているランニングの魅力とは?

 「ランニングは自分自身が無になれる一方、ひらめきを与えてくれるのが魅力だと思います。頭や心が整理できるから、新しいアイデアの隙間が生まれるような感覚ですね。

 私は中学生、高校生の時に陸上部に入り、その後実業団でも陸上を続けていましたが、だんだんと気持ちが追いつかなくなってしまい引退しました。そこから1年間走らない時期が続いたのですが、少しずつ体形が変わり、メンタルも落ち込みやすくなってしまうなど、不調が続きました。走ることで身体も心も整うことを改めて実感し、今度は競技ではなく、ゆったりとランニングを楽しんでみたいという気持ちになりました。

 今はランニングアドバイザーとして活動させてもらっていますが、指導をするようになって気づくことがたくさんあって、とても勉強になります。走るのをやめた時期があったり、出産を経験したり、同じ境遇の人の悩みや小さな疑問を解決する場を提供できるのがうれしいです。皆さんが楽しく走るためのお手伝いを今後もしていきたいと思っています」。

※価格は全て税込です
MODEL:MIO MANABE
PHOTOS:RYOHEI HASHIMOTO
STYLING:ERIKA MIMURA
HAIR & MAKEUP:MAYUKO SHIROUZU
問い合わせ先
MTG
0120‐467‐222

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国内最大級のメタバースプラットフォームに聞く、メタバース×ファッションでの成功法

 ファッション業界のメタバースへの参入が加速している。2022年3月にはメタバース空間内では世界最大級のファッションショー「メタバース・ファッション・ウイーク(METAVERSE FASHION WEEK)」が開催。今やさまざまな企業・ブランドがメタバース領域の取り組みを行っている。しかし、国内でのファッション×メタバースの事例は、海外と比べるとやや数が少ない。一体なぜなのか。国内最大級のメタバースプラットフォーム「クラスター(CLUSTER)」の成田暁彦・取締役COOに話を聞いた。

WWD:「クラスター」では、どのようなことができるのか?

成田暁彦クラスター取締役COO(以下、成田):スマホやPC、VRなどの好きなデバイスからアクセスすることで、バーチャル上でさまざまなワールドを行き来したり、ゲームをしたり、音楽ライブなどのイベントに参加したりすることができます。ワールドは渋谷区公認の「バーチャル渋谷」やポケモンのバーチャル遊園地「ポケモンバーチャルフェスト」といったクラスター が依頼を受けて制作したものもあれば、ユーザーが制作したものもあり、合計で4万以上存在しています。スマホで簡単につくる事ができるワールド(バーチャル空間)から、リテラシーが高いユーザーはゲームやアバターなども自由に制作し、投稿できる形になっています。

WWD:クラスターとしては、メタバースをどのようなものだと考えているのか?

成田:端的に言うと、3DCGの中にアバターという身体性を持ち込んで生活をする、ということだと思っています。よく「フォートナイト(FORTNITE)」などのゲームから拡張していったものがメタバースの事例として挙げられますが、厳密にはゲームはメタバースの中の1コンテンツでしかなく、僕らのリアルの生活と同様に、他にもさまざまなイベントが存在するはずです。

WWD:国外ではメタバースのさまざまな事例があるが、国内では少ないような印象を受ける。何か違いがあるのか?

成田:国内にもメタバース関連のサービスは複数存在しますが、アバターでライブができるサービスであったり、ゲームであったりと、コンテンツサービスが多いと思います。一方、海外のサービスはプラットフォーム型が多い。特にUGC(User Generated Content)をベースにしたものが強いと思っています。ユーザーがプラットフォーム上でゲームなどのコンテンツを制作・投稿して、他のユーザーが遊ぶ、といった形ですね。21年3月に上場もしたアメリカのロブロックス(Roblox)が代表例です。

WWD:「クラスター」としても、UGC型のメタバースプラットフォームを目指している?

成田:そうです。僕らはよく「”3DCG版のユーチューブ”を目指す」と言っています。携帯1台でも手軽にコンテンツを作ることができ、そして作られたコンテンツに簡単に参加できる。もちろん、それなりの機材を用意してコンテンツを制作する、プロのような人々も出てくる。僕らとしてはそういった世界を目指し、ユーザーがワールドやアバターを簡単に制作できるよう、毎月さまざまなワールドのパーツやアバター用のアパレルなどをリリースしています。「メタバースが気軽かつ、日常の延長線上にある」といった認識を作ろうとしているんです。今後は徐々に、ユーザーが自分で作ったコンテンツでマネタイズができるようなフェーズに入っていくつもりです。

メタバース×ファッションの可能性とは?

WWD:メタバース×ファッションには、どのような可能性があるのか?

成田:3DCGの世界であるメタバースでは、表現できないものがほぼなく、体験の拡張を行うことができます。例えば店舗でも商品数の制約がなかったり、商品に近づいたら服が大きくなってディテールを確認できたり、といったことが可能です。さらには、メタバースにはアバターという身体性もあるため、”着飾る”といったモチベーションを作りやすい。そのためには、「人からよりよく見られたい」という承認欲求や、「自分はこうありたい」という自己表現欲求をメタバース空間内に生む必要があると思います。

WWD:”着飾る”モチベーションを作るのは現時点ではややハードルが高そうだが、メタバース×ファッションのユースケースはあるのか?

成田:確かに、現時点では事例は少ないです。ただ、「クラスター」内では可能性を示唆する事例がいくつか出てきています。例えばユーザーがアバターを作り、販売する見本市のようなものを毎週末実施しているのですが、約1カ月で8000体弱が売買されていて、数百万円稼ぐようなユーザーも出ています。このことから、アバターを買う、という行為は徐々に浸透し始めていると思います。個人的には、アバターがよりリアルになり、身長や体重、体型などがアバターと同期できるようになれば、メタバース空間内で試着して、リアルの服を買ったり、その服をアバターも着たりする体験も可能になり、面白くなるかもなと思っています。

WWD:「クラスター」内でのファッションの売り上げなどのボリュームはどの程度なのか?

成田:現状、日本での規模はまだまだ小さいですが、海外では「フォートナイト」のアバタースキンの販売が年間で4,000億円程にのぼるなど、既に大きい市場があると言えます。「クラスター」としても今後伸ばしていきたい領域ではありますが、まだまだ単発の施策で儲かるとは思っていないので、さまざまなトライを重ねていきたいなと考えています。パートナーとなってくれるブランドさんのパワーを借りつつ、僕らはクリエイティブを提供することで、新しい事例を作っていきたいですね。

WWD:既にパートナーとなるブランドは決まっているのか?

成田:何社かとは水面下で話していますが、なかなか話が実現していないのが現状です。単純にアバター関連でコラボレーションする手法もありますが、海外では複数の先行事例もあるため、「海外の事例を上回るような、もう一手が何か欲しい」ということはどの企業さんも言っていますし、他にもアパレルは比較的リアルの側面が強い業界であることや、デジタルキャンペーンの予算がそこまで多くないことなども要因にはなっているかと思います。特に予算が少ないと、どうしてもPRとして一発の施策でそれなりの費用対効果を狙う形がメインになりますが、「クラスター」は緩く長くコミュニケーションをする場を目指していることもあって、中長期的なプロジェクトにしないと採算が取りづらい。ここに関しては当社からも歩み寄らせてもらって、クラスター側が制作やコストを負担することでいろいろなテストをしたいというブランドさんがいたらぜひご一緒させてもらいたいなと考えています。

WWD:現状、メタバース×ファッションで成功させるためには、どのような手法があると考えているか?

成田:恐らく、メタバース×ファッションの好事例を作るにはいくつかのステップを踏む必要があるんだと思います。例えば、メタバース×音楽ライブの領域にも複数のステップが存在しました。まず、米津玄師さんの「フォートナイト」でのバーチャルライブの様にバーチャル空間内のモニターにライブ映像を流すだけのライブビューイングの形がありました。次に、グリーンバック合成のような形でリアルな自分をメタバース空間に投影して実施するライブが増えていきました。そして最終形として、アーティスト自身がアニメーションアバターとなってライブを実施するといった手法があり、この3段階のステップが流行するまでに必要だったと考えています。ファッション領域でもこうした段階があって、メタバース空間内でリアルな服を販売するというのが実は最終ステップなのかもしれないな、と。僕らとしては、どういうステップがあるのか、パートナーさんと一緒に考え、実現していければと思っています。

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“ミーハー気質” で人をつなぐ 美容ライターがスナックママとの“二刀流”を始めたワケ

 光文社が発行する「ヴェリィ(VERY)」や「ストーリー(STORY)」など女性誌の美容ページを数多く担当する美容ライターの立花あゆが、東京・赤坂に期間限定のスナックを開業している。ライター業とスナックのママ。一見、異なって見える“世界”の中で、自然体にママをこなす立花氏に、やりがいや今の心境を聞いた。

WWD:まずはキャリアから教えてください。どのようにしてライターに?

立花あゆ(以下、立花):大学卒業後に出版社に就職するも、そこは教科書など作るいわゆる“堅い”会社で。元来ミーハーな私は半年で辞めてしまい、フラフラとしていました。日中は暇だったので女性ファッション誌の読者モデルとして、コスメを試させていただくことに。そこで「雑誌が好きなんです」と言っていたら「そんなに好きなら、企画を出してライターをやってみれば?」と。企画案を出したところ、めでたくページを任せてもらえたことがきっかけです。20代向け雑誌を経て、現在は数誌の美容ページを担当しています。

WWD:ライターとしてキャリアを重ねるなかで、なぜスナックのママに?

立花: 美容ページに携わったり、パーソナルコスメスタイリングサービスである「コスメトロ(COSMETRO)」を進めるなかで、美容や人生のことを本音でカジュアルに話せる場がほしいと感じていました。それはどんなところだろうと考えた時に、カフェではなく、お酒があってカラオケがあってリラックスできて、自分を解放できる場所=スナックだ!と思ったのがきっかけです。

 「スナックをやりたい」という漠然とした気持ちが募るなか、「じゃあ、ママをやってみたら?」と友人が企画してくれて、2年半前の誕生日に1日限定で実際のスナックでイベントをしました。友人や、美容情報を発信する私のインスタグラムを見ていた“初めまして”な人たちも一緒に楽しんでいたことがうれしくて。とはいえ、現実にお店を持つとなると、予算にハマらなかったり、なかなか物件が出てこなくて。諦めかけていたなか、ここ赤坂エリアのスナックと縁があり、まずは3カ月限定でオープンしました。私自身が比較的、寂しがり屋なのもあり、人が集まってくれたら楽しいし、将来は老人ホームのような場所になれたら、と“妄想”しています。

WWD:開業のための準備は?

立花:まずは食品衛生法の資格を取り、一緒に働いてくれる女性を集めました。ナチュラルワインを入れたかったので仕入れ先を探して……。やらなきゃいけないことは盛り沢山だったけれど、価格設定やどんなお酒を入れるかは時間をかけて悩みました。実はお酒がほとんど飲めないので、同エリアのスナックに行ってみたり、スナックに詳しい人に聞いたり。当たり前ですが、どのくらい売り上げたらちゃんとプラスになるのかを考えるのは難しかったですね。間借りのため、初期投資はそこまでかからなかったんです。あとは協賛いただく企業を募ったり、ですね。

WWD:コンセプトとして大切にしていることは?

立花:“私のスナック”ではなく、“お客さまが作るスナック”にしたかった。店名の「ツナギヤ(TSUNAGIYA)」の通り、人と人がつながって、その輪が広がってほしいと思っています。あの人とのあの人が繋がったら面白そう!と感じたら当人同士が知り合いではなくても間に入って、即コミュニケーションの機会を設けちゃう。個人情報だだ漏れかもです(笑)。お節介で、ミーハー気質が満載なスナックですね。

WWD:客層や反応は?

立花:年齢は男女20代後半から50代くらい。私個人のインスタのフォロワーさんや「コスメトロ」ユーザーの方、女性2人組や5、6人グループ、男女の大人数、男性おひとりもいます。女性のおひとりさまデーを設けていて、こちらも盛況です。おひとりさまデーからつながったメンバー同士で朝活をしたり、私も一緒にランチをしたり……。お客さまが、今まで関わったことのない人ともおしゃべりをしてお酒を飲んだり、新たな交友関係が生まれる様子を見ていると、「スナックを始めてよかった!」としみじみ感じます。ストレス発散をして、いきいきした気持ちになることは美容にもつながりますしね。人間関係や美容にポジティブになったと言ってくださるお客さまも多いです。産後初めての夜のお出かけに選んでくれたママさんがいて、「久しぶりの最高の夜だった」と笑顔で帰っていく姿も印象的でした。

 モデルやヘア&メイクアップアーティスト、美眉アドバイザー、はたまたタロット占い師など、ライター業を通じて出会った素敵な仲間をゲストとしてお呼びしてイベントも行っています。飲んで歌って、だけではなくて、美容のプロたちの力を借りて女性がキレイになるお手伝いができたら、と考えています。

WWD:実際のママ業の印象は?

立花:準備や片付けは一人なので、意外と孤独なんだなというのが率直な気持ち。毎日数字と向き合うプレッシャーもあります。「(お酒を)飲めないのに、スナックをやるなんて」と言われたこともありますが、レジ締めやお会計もありますし、飲めなくてよかったかもしれません(笑)。

WWD:スナック「ツナギヤ」のアピールポイントは?

立花:コスメ情報はもちろん、新しい出会いが生まれる場所です。店内にはワンコーナーを作って、美顔器やドライヤー、脱毛器など美容機器も自由に試せます。韓国ドラマに出てくるLEDの仮面(美顔器)は、お客さま同士で写真を撮り合ったりして盛り上がりますね。また、20社近くの企業に協賛いただき、コスメやサプリのギフティングもしています。男性には肝臓ケアのサプリなど、その人に合うものをお帰りの際にお渡ししています。

WWD:十八番はある?

立花:スナックといえばカラオケだ!と、事前にカラオケ教室まで行ったのですが、実際はあまり歌わず聞いて盛り上げる側になっています。座っている暇がないので、お客さまが歌っている間はお酒を作ったり、洗い物ができるチャンスです(笑)。

WWD :スナックは今後も続ける予定?夜型の生活の中で美肌を保つ秘訣は?

立花:やはり格段に睡眠時間が減ってしまい、帰宅後はスキンケアも落とすのに必死なくらい。サプリやお茶を飲んで免疫力を下げないようにしたり、週末にサウナにいって汗をかいたり、週1トレーニングをしています。もうダメだ!という日は、クリームを塗るだけで寝たり。夜は諦めて、そのぶん朝にパックをしたりしてトントンになるようにしています。スナックは8月末までの期間限定ですが、今後はママを数名募って、コンセプトはそのままにお店を続けたいですね。

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“ミーハー気質” で人をつなぐ 美容ライターがスナックママとの“二刀流”を始めたワケ

 光文社が発行する「ヴェリィ(VERY)」や「ストーリー(STORY)」など女性誌の美容ページを数多く担当する美容ライターの立花あゆが、東京・赤坂に期間限定のスナックを開業している。ライター業とスナックのママ。一見、異なって見える“世界”の中で、自然体にママをこなす立花氏に、やりがいや今の心境を聞いた。

WWD:まずはキャリアから教えてください。どのようにしてライターに?

立花あゆ(以下、立花):大学卒業後に出版社に就職するも、そこは教科書など作るいわゆる“堅い”会社で。元来ミーハーな私は半年で辞めてしまい、フラフラとしていました。日中は暇だったので女性ファッション誌の読者モデルとして、コスメを試させていただくことに。そこで「雑誌が好きなんです」と言っていたら「そんなに好きなら、企画を出してライターをやってみれば?」と。企画案を出したところ、めでたくページを任せてもらえたことがきっかけです。20代向け雑誌を経て、現在は数誌の美容ページを担当しています。

WWD:ライターとしてキャリアを重ねるなかで、なぜスナックのママに?

立花: 美容ページに携わったり、パーソナルコスメスタイリングサービスである「コスメトロ(COSMETRO)」を進めるなかで、美容や人生のことを本音でカジュアルに話せる場がほしいと感じていました。それはどんなところだろうと考えた時に、カフェではなく、お酒があってカラオケがあってリラックスできて、自分を解放できる場所=スナックだ!と思ったのがきっかけです。

 「スナックをやりたい」という漠然とした気持ちが募るなか、「じゃあ、ママをやってみたら?」と友人が企画してくれて、2年半前の誕生日に1日限定で実際のスナックでイベントをしました。友人や、美容情報を発信する私のインスタグラムを見ていた“初めまして”な人たちも一緒に楽しんでいたことがうれしくて。とはいえ、現実にお店を持つとなると、予算にハマらなかったり、なかなか物件が出てこなくて。諦めかけていたなか、ここ赤坂エリアのスナックと縁があり、まずは3カ月限定でオープンしました。私自身が比較的、寂しがり屋なのもあり、人が集まってくれたら楽しいし、将来は老人ホームのような場所になれたら、と“妄想”しています。

WWD:開業のための準備は?

立花:まずは食品衛生法の資格を取り、一緒に働いてくれる女性を集めました。ナチュラルワインを入れたかったので仕入れ先を探して……。やらなきゃいけないことは盛り沢山だったけれど、価格設定やどんなお酒を入れるかは時間をかけて悩みました。実はお酒がほとんど飲めないので、同エリアのスナックに行ってみたり、スナックに詳しい人に聞いたり。当たり前ですが、どのくらい売り上げたらちゃんとプラスになるのかを考えるのは難しかったですね。間借りのため、初期投資はそこまでかからなかったんです。あとは協賛いただく企業を募ったり、ですね。

WWD:コンセプトとして大切にしていることは?

立花:“私のスナック”ではなく、“お客さまが作るスナック”にしたかった。店名の「ツナギヤ(TSUNAGIYA)」の通り、人と人がつながって、その輪が広がってほしいと思っています。あの人とのあの人が繋がったら面白そう!と感じたら当人同士が知り合いではなくても間に入って、即コミュニケーションの機会を設けちゃう。個人情報だだ漏れかもです(笑)。お節介で、ミーハー気質が満載なスナックですね。

WWD:客層や反応は?

立花:年齢は男女20代後半から50代くらい。私個人のインスタのフォロワーさんや「コスメトロ」ユーザーの方、女性2人組や5、6人グループ、男女の大人数、男性おひとりもいます。女性のおひとりさまデーを設けていて、こちらも盛況です。おひとりさまデーからつながったメンバー同士で朝活をしたり、私も一緒にランチをしたり……。お客さまが、今まで関わったことのない人ともおしゃべりをしてお酒を飲んだり、新たな交友関係が生まれる様子を見ていると、「スナックを始めてよかった!」としみじみ感じます。ストレス発散をして、いきいきした気持ちになることは美容にもつながりますしね。人間関係や美容にポジティブになったと言ってくださるお客さまも多いです。産後初めての夜のお出かけに選んでくれたママさんがいて、「久しぶりの最高の夜だった」と笑顔で帰っていく姿も印象的でした。

 モデルやヘア&メイクアップアーティスト、美眉アドバイザー、はたまたタロット占い師など、ライター業を通じて出会った素敵な仲間をゲストとしてお呼びしてイベントも行っています。飲んで歌って、だけではなくて、美容のプロたちの力を借りて女性がキレイになるお手伝いができたら、と考えています。

WWD:実際のママ業の印象は?

立花:準備や片付けは一人なので、意外と孤独なんだなというのが率直な気持ち。毎日数字と向き合うプレッシャーもあります。「(お酒を)飲めないのに、スナックをやるなんて」と言われたこともありますが、レジ締めやお会計もありますし、飲めなくてよかったかもしれません(笑)。

WWD:スナック「ツナギヤ」のアピールポイントは?

立花:コスメ情報はもちろん、新しい出会いが生まれる場所です。店内にはワンコーナーを作って、美顔器やドライヤー、脱毛器など美容機器も自由に試せます。韓国ドラマに出てくるLEDの仮面(美顔器)は、お客さま同士で写真を撮り合ったりして盛り上がりますね。また、20社近くの企業に協賛いただき、コスメやサプリのギフティングもしています。男性には肝臓ケアのサプリなど、その人に合うものをお帰りの際にお渡ししています。

WWD:十八番はある?

立花:スナックといえばカラオケだ!と、事前にカラオケ教室まで行ったのですが、実際はあまり歌わず聞いて盛り上げる側になっています。座っている暇がないので、お客さまが歌っている間はお酒を作ったり、洗い物ができるチャンスです(笑)。

WWD :スナックは今後も続ける予定?夜型の生活の中で美肌を保つ秘訣は?

立花:やはり格段に睡眠時間が減ってしまい、帰宅後はスキンケアも落とすのに必死なくらい。サプリやお茶を飲んで免疫力を下げないようにしたり、週末にサウナにいって汗をかいたり、週1トレーニングをしています。もうダメだ!という日は、クリームを塗るだけで寝たり。夜は諦めて、そのぶん朝にパックをしたりしてトントンになるようにしています。スナックは8月末までの期間限定ですが、今後はママを数名募って、コンセプトはそのままにお店を続けたいですね。

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フィンランド発プレミアムオーガニックスキンケア「へヌア」上陸 シンプル処方で肌実感にこだわる5品展開

 フィンランド発のオーガニックスキンケアブランド「へヌア(HENUA)」が8月23日に日本市場に初上陸する。肌に必要な成分のみを配合するシンプル処方でプレミアムなアイテムをそろえる(全5品、税込1万2200〜1万7600円)。自身の肌トラブルをきっかけに高品質の原料だけを使用しナチュラルでありながら結果をもたらす「へヌア」を立ち上げたアヌ・コフタマキ&イェンニ・トゥオミネン姉妹。製品開発を担当する妹のイェンニ・トゥオミネン「へヌア」創始者にブランド立ち上げの思いや今後の展望を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):このタイミングで日本展開をスタートする狙いは?

イェンニ・トゥオミネン「へヌア」創始者 製品開発ディレクター(以下、イェンニ):1年前に香港のスキンケアのプレミアムラインを得意とする企業とタッグを組み、香港市場に進出した。製品力と再生紙、木材、ガラスを使った北欧らしいデザインのパッケージが支持され、好調な滑り出しをきっている。日本では「マリメッコ(MARIMEKKO)」「イッタラ(IITTALA)」などが支持されフィンランドのシンプルだが豊かなライフスタイルが受け入れられている。プレミアムラインのオーガニックスキンケアブランドは希少であるため、日本市場に参入を決めた。

WWD:スタート時はクレンジングや化粧水など全5品を扱う。

イェンニ:「へヌア」は2018年にスタートし、魅力的な成分や原材料に巡り合えたときに製品開発するため多品種展開をしていない。一般的に化粧品は水が原料の大半を占めるが、「へヌア」では精製水を一切使わず、ビタミンやミネラル豊富な白樺樹液を使用する。フィラーもシリコーン、人工香料、染料も使わず、全ての製品は北欧で肌に良いとされている成分をベースに構成。フィンランド産のベリー類や植物エキスなど最高品質の天然成分、森のスーパーフードのパワーを生かし処方する。各製品は全製品がコスモスオーガニック認証とリーピングバニー認証を取得。自然由来成分は、98〜100%で、うちオーガニック成分が85〜98%。100%ヴィーガン処方でもある。

WWD:グローバル展開もブランド立ち上げ時から意識している。

イェンニ:フィンランドの市場規模は大きくないため海外市場をみすえた製品開発を行ってきた。日本を含めると18カ国で展開。売り上げシェアが高いのは香港で、次いでスイスとイタリアだ。各国でもオーガニックでラグジュアリーなスキンケアブランドは多くない。百貨店や化粧品のセレクトショップなどに販売網を広げている。売上高は創業時から右肩上がりで成長を遂げている。

WWD:日本ではエステネーション六本木店で8月23日〜、ギンザ シックスで8月24日〜ポップアップをオープンする。

イェンニ:公式ECサイトも立ち上げるほか、百貨店やセレクトショップなどで展開する。高品質で自然、シンプルだがよいものは日本に受け入れられると予測し、日本市場に期待を寄せている。PR業務のエキスパートであるキャンドルウィックが日本の代理店となって拡販に務めてくれているのも心強い。今後はアジア地域を拡大し、北米地域でもポジションを確立したい。

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30〜40代の関心高まるグレイヘアの売れ筋&トレンド

 30代、40代の女性を中心に、白髪を暗く染めるのではなく、白髪の周りの髪をブリーチで明るくして白髪と同化させる「脱白髪染め(白髪ぼかし)」が人気を集めている。また、セルフカラーリングをできるカラートリートメント、ヘアマニキュアの売れ筋も好調のようだ。「サイオス(SYOSS)」を展開するヘンケルジャパン、「ルプルプ(LPLP)」を展開するスタ―ジュ、「綺和美(KIWABI)」を展開するスリーエムに商況を聞いた。

―――6月のカラートリートメントカテゴリーの売れ行きは?

ヘンケルジャパン:「サイオス」“カラートリートメント”(180g、税込877円※編集部調べ)は、今年春レディースの新色追加、並びにフォーメンシリーズの新発売も功を奏し、前年比を上回る売り上げとなっている。(PR緒方亜希氏回答、以下同)

スタージュ:6月は、弊社の定めた目標値に対して約120%を達成した。(PR植田佳代子氏回答、以下同)

スリーエム:2022年上半期の売り上げは、昨対比91%増と好調に推移している。(田村尚久スリーエム代表取締役回答、以下同)

――― いちばん人気のカラーは?

スタージュ:“ルプルプ エッセンス カラートリートメント アッシュブラウン”(170g、税込3630円)が販売と同時に、カラー別売り上げ構成比1位となった。

スリーエム:“ROOT VANISH 白髪染めカラートリートメント ダークブラウン”(150g、税込5478円)は、22種類の天然植物由来エキスを使用し、ヘアケアしながら白髪染めができると好評だ。ダークブラウンは肌に馴染みがよく、失敗しにくいと言える。また、白髪染め初心者にオススメのカラーだ。

ヘンケルジャパン:「サイオス」“カラートリートメント ダークブラウン”(180g、税込877円※編集部調べ)だ。女性の約7割の方がヘアカラーをしているというデータもあり、根元のリタッチとして使用する場合、最もなじみやすい色。全体的にカラーリングする場合でも、少しブラウンがかった色味の方が、自然な仕上がりになるところも人気の要因だ。

――― グレイヘアへの関心の高まりから、30〜40代のカラートリートメント購入者も増えていると聞く。顧客は、世代別ではどのような分布になっている?

ヘンケルジャパン:2021年12月末 SOO ID POSデータによれば、“サイオス カラートリートメント”購入者のうち、30代、40代が約40%を占めている。ちなみに50代は約37%だ。30代、40代は白髪染めとファッションカラーのはざまで悩む年代だと思う。また、白髪悩みは顕在化しているものの、「美容室で白髪染めするほどでもない」「美容室で白髪染めするのは恥ずかしい」「美容室の次回来店までに、白髪に対応処置しなければ」という気持ちも持ち合わせており、ホームケアで何とかしようという心理が働いているのも一因だと考えている。

スタージュ:30代は5.4%、40代は32.3%だ。

スリーエム:“白髪染めカラートリートメント”の購入者は、20代は2.5%、30代が22%、40代が42%、50代は25%、60代は8.5%だ。また、男女比は男性27%、女性73%となっている。

――― グレイヘアにまつわるトレンドの兆候は?

ヘンケルジャパン:男性の美容意識の向上から、白髪ケアに対する意識も上がっている。3月にブランド初となる男性向けの「サイオス」“カラートリートメントFORMEN”(180g、税込935円※編集部調べ)を発売し、発売から3か月で年間の配荷目標を達成し売り上げも順調に伸びている。“FORMEN”はもともと高めの目標設定だったにも関わらず、6月時点で前年比12.7%増の達成率、「サイオス」全体では前年同月比24.9%増となっている。

スタージュ: “ルプルプ エッセンス カラートリートメント アッシュブラウン”(170g、税込3630円)の特徴は、従来の白髪染め=暗いという概念を覆す、白髪を活かす抜け感のある色合いだ。この人気ぶりから、ただ白髪を染めるのではなく、染めると同時にグレイヘアを前向きに楽しむものへと変化しているのではないかと思う。

スリーエム:日本でも、頭皮・髪の毛の痛みを気にしてナチュラルなケアに移行する人、「白髪=老い」という固定概念に縛られることなく、自分らしさの一つとして受け入れる人が増えている印象だ。ただし、ナチュラル=グレイヘア=ほったからし、と誤解している顧客もいるので、美しいグレイヘアを保つには適切なケアが必要だと伝えたい。

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30〜40代の関心高まるグレイヘアの売れ筋&トレンド

 30代、40代の女性を中心に、白髪を暗く染めるのではなく、白髪の周りの髪をブリーチで明るくして白髪と同化させる「脱白髪染め(白髪ぼかし)」が人気を集めている。また、セルフカラーリングをできるカラートリートメント、ヘアマニキュアの売れ筋も好調のようだ。「サイオス(SYOSS)」を展開するヘンケルジャパン、「ルプルプ(LPLP)」を展開するスタ―ジュ、「綺和美(KIWABI)」を展開するスリーエムに商況を聞いた。

―――6月のカラートリートメントカテゴリーの売れ行きは?

ヘンケルジャパン:「サイオス」“カラートリートメント”(180g、税込877円※編集部調べ)は、今年春レディースの新色追加、並びにフォーメンシリーズの新発売も功を奏し、前年比を上回る売り上げとなっている。(PR緒方亜希氏回答、以下同)

スタージュ:6月は、弊社の定めた目標値に対して約120%を達成した。(PR植田佳代子氏回答、以下同)

スリーエム:2022年上半期の売り上げは、昨対比91%増と好調に推移している。(田村尚久スリーエム代表取締役回答、以下同)

――― いちばん人気のカラーは?

スタージュ:“ルプルプ エッセンス カラートリートメント アッシュブラウン”(170g、税込3630円)が販売と同時に、カラー別売り上げ構成比1位となった。

スリーエム:“ROOT VANISH 白髪染めカラートリートメント ダークブラウン”(150g、税込5478円)は、22種類の天然植物由来エキスを使用し、ヘアケアしながら白髪染めができると好評だ。ダークブラウンは肌に馴染みがよく、失敗しにくいと言える。また、白髪染め初心者にオススメのカラーだ。

ヘンケルジャパン:「サイオス」“カラートリートメント ダークブラウン”(180g、税込877円※編集部調べ)だ。女性の約7割の方がヘアカラーをしているというデータもあり、根元のリタッチとして使用する場合、最もなじみやすい色。全体的にカラーリングする場合でも、少しブラウンがかった色味の方が、自然な仕上がりになるところも人気の要因だ。

――― グレイヘアへの関心の高まりから、30〜40代のカラートリートメント購入者も増えていると聞く。顧客は、世代別ではどのような分布になっている?

ヘンケルジャパン:2021年12月末 SOO ID POSデータによれば、“サイオス カラートリートメント”購入者のうち、30代、40代が約40%を占めている。ちなみに50代は約37%だ。30代、40代は白髪染めとファッションカラーのはざまで悩む年代だと思う。また、白髪悩みは顕在化しているものの、「美容室で白髪染めするほどでもない」「美容室で白髪染めするのは恥ずかしい」「美容室の次回来店までに、白髪に対応処置しなければ」という気持ちも持ち合わせており、ホームケアで何とかしようという心理が働いているのも一因だと考えている。

スタージュ:30代は5.4%、40代は32.3%だ。

スリーエム:“白髪染めカラートリートメント”の購入者は、20代は2.5%、30代が22%、40代が42%、50代は25%、60代は8.5%だ。また、男女比は男性27%、女性73%となっている。

――― グレイヘアにまつわるトレンドの兆候は?

ヘンケルジャパン:男性の美容意識の向上から、白髪ケアに対する意識も上がっている。3月にブランド初となる男性向けの「サイオス」“カラートリートメントFORMEN”(180g、税込935円※編集部調べ)を発売し、発売から3か月で年間の配荷目標を達成し売り上げも順調に伸びている。“FORMEN”はもともと高めの目標設定だったにも関わらず、6月時点で前年比12.7%増の達成率、「サイオス」全体では前年同月比24.9%増となっている。

スタージュ: “ルプルプ エッセンス カラートリートメント アッシュブラウン”(170g、税込3630円)の特徴は、従来の白髪染め=暗いという概念を覆す、白髪を活かす抜け感のある色合いだ。この人気ぶりから、ただ白髪を染めるのではなく、染めると同時にグレイヘアを前向きに楽しむものへと変化しているのではないかと思う。

スリーエム:日本でも、頭皮・髪の毛の痛みを気にしてナチュラルなケアに移行する人、「白髪=老い」という固定概念に縛られることなく、自分らしさの一つとして受け入れる人が増えている印象だ。ただし、ナチュラル=グレイヘア=ほったからし、と誤解している顧客もいるので、美しいグレイヘアを保つには適切なケアが必要だと伝えたい。

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AAA宇野実彩子のコスメブランド「ユーチュー」 アーティスト経験を生かした商品づくり

宇野実彩子

宇野実彩子は1986年生まれ、東京都出身。男女混合パフォーマンスグループ、AAAのメインボーカルとして2005年にデビュー、2018年にソロデビュー。現在はソロ活動と並行してアパレルブランド「ラバンダ(LAVANDA)」やフレグランスブランド「ブリングミー(BRING ME)」のディレクションも務めている。

 インフルエンサーとの協業による商品開発やブランディング、プロデュースを手掛けるダイレクトテック(DIRECT TECH)は、パフォーマンスグループ・AAAの宇野実彩子と、デザインコンサルティングファームのアナイスカンパニー(ANICECOMPANY)と協業したコスメブランド「ユーチュー(U /CHOO)」の新作を8月19日の12時から公式サイトで販売する。新たにラインアップするのは、アイシャドウとリップティントの新色各2色だ。

 「ユーチュー」は、宇野の「トレンド感と自分らしさを両立させたコスメを作りたい」という思いで、2022年1月に誕生した。デビュー時に発売したリップティントとアイシャドウ、グリッター各4種は、現在までに累計40万個を販売している。ブランド立ち上げ時に描いたイメージや新作について、宇野本人に話を聞いた。

誰にでも共通する願いを叶える

WWD:「ユーチュー」立ち上げの際にこだわっていたことは?

宇野実彩子(以下、宇野):私はこれまでの活動で、たくさんメイクをしてもらい、質のいいアイテムに出合ってきました。なので、私が作るからにはトレンド感やクオリティー、発色、ビジュアルの良さなど、全てをいいとこ取りした商品を作っていきたいという思いがありました。

WWD:自身のライブ中でも落ちにくいコスメを作りたいともコメントしていた。

宇野:ダンスをしながら歌っていると汗をかくので、どうしてもメイクが崩れてしまいます。リップはマイクに触れても落ちないもの、肌につけるものは長時間の表情の変化にもついてこられるものを探してきました。

 メイクをキープしたいという思いはみなさん同じはずです。特にマスクを手放せない今は、落ちにくいことが重要ですよね。わがままなメイクを追求する自分や、ユーザーの願いを叶えるアイテムを作ることを大切にしています。

WWD:トレンドをどのように取り入れている?

宇野:トレンドはメイクさんとの会話の中でリサーチしています。でも、最先端のトレンドが全て日常に溶け込みやすいわけではなく、自分のメイクにすぐ取り入れられるのはごくわずか。最終的にみなさんが愛用するのは使いやすい色であることが多いので、「ユーチュー」ではトレンドは取り入れつつも、あくまで生活に寄り添うように意識していますね。

WWD:新商品のおすすめポイントは?

宇野:どれを取っても捨て色がないです。くすんだ色味なので、秋冬のムードも演出できます。最近は全身をホワイトやベージュで統一した引き算のおしゃれをしている方も多く、そんなファッションにもマッチするカラーがそろったと思います。

 今回は商品もキービジュアルも大人っぽくすることを意識しました。第1弾はキャッチーでポップなイメージを押し出したのですが、今回はもっと幅広い世代に使ってもらえるコスメであることを伝えるために、落ち着いた印象に仕上げました。

WWD:おすすめの使い方は?

宇野:一番分かりやすいのは、アイシャドウとリップをピンク同士やラテカラー同士でそろえる使い方。でも、新色はどれも肌なじみのいい色をそろえているので、前回のラインアップと組み合わせても、失敗しないはずです。プロのメイクさんでも「ユーチュー」のアイシャドウパレットを二つ使って、8色の中から組み合わせて使ってくれる方がいます。

 前回出したグリッターは入れる場所によっても印象が変わってくるので、気分によって目頭、目尻、黒目の下と気分に合わせて使い分けてみてほしいです。私は最近、目頭から黒目までポイントで使うことが多いです。

WWD:「ユーチュー」を今後、どんなブランドにしていきたい?

宇野:コンセプトは変わらず、今後もみなさんの日常に寄り添いつつ、同じ歩幅で歩くブランドでありたいですね。トレンドも時代も目まぐるしく変化していく中で、その変化を一緒に楽しめたらうれしいです。

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バイヤーからコミュニケーターへと進化する「ファーストバンド」コンセプター 「面白さは信頼の循環から生まれる」

 デイトナ・インターナショナルが運営するセレクトショップ、ファーストハンド(FIRSTHAND)の立ち上げや、ツージー トーキョー(2G TOKYO)でビジネスディレクターを務める福留聖樹は、服を扱うバイヤーから業界の垣根を越えたコミュニケーターへとキャリアの幅を広げている。

 ブロックチェーン技術で社会課題の解決を目指すUPDATER(旧みんな電力)にサステナブル領域事業のプロデューサーとして参画するほか、データサイエンス事業を手掛ける企業ではマーケターとして、カーボンニュートラルに向けた生活者個人の行動変容を支援するサービスに従事する。「信頼の循環」をキーワードに新たな価値創造に挑戦する福留に話を聞いた。

WWD:キャリアのスタートは?

福留聖樹(以下、福留):もともとファッションの勉強はしておらず、新卒で航空会社に入った。プライベートで斎藤久夫さんの「チューブ(TUBE)」によく遊びに行っていたら、スタッフを募集していて周りの先輩たちに勧められ、転職した。入って3カ月後には、新潟のニット工場へ行ったり、企画や営業、アシスタント的なことも含めていろいろ経験させてもらった。その後「チューブ」に勤めていた何人かと起業してライフスタイル型のコンセプトショップを始めた。当時はメゾン系のブランドが、日本製の商品を作り始めた時期で、海外ブランドの日本生産に携わる仕事を並行して行った。その後も日本の産地の人たちを海外に紹介したり、国内ブランドを海外に持っていったりといった仕事を続け今に至る。

WWD:現在はファッション以外の領域にも活動の場を広げている。

福留:良いと思った服を仕入れる感覚の延長で、この人たちと組んだら新しいライフスタイルや価値が生まれるだろうと思った提案を続けた結果だ。今は業界をまたぐコミュニケーター的なポジションを目指している。

WWD:具体的にこれまでにどんな掛け合わせが生まれた?

福留:例えばファーストハンドではバレンタインの時期に、UPDATERのブロックチェーン技術を使ってフェアトレードチョコレートを販売した。ブロックチェーン技術を使うことで消費者が支援先を選べる仕組みができ、最終的に支援先の生活がどう変わるかまで可視化できる。フリークスストアもUPDATERと協業して再エネプロジェクト「フリークス電気」を開始した。自治体やNPO、学生と連携して耕作放棄地の問題や地域の資源循環につながるスキームになっており、再エネの販売を通して複合的な課題にアプローチできるようプロデュースした。

WWD:面白い掛け合わせを生み出すコツは?

福留:今ファーストハンドのバイイングを任せているスタッフにも伝えているが、何かを面白くするためには、関わる人たちとの信頼関係がすごく大事。お互いがこの人のためだったら、新しいことに挑戦したいと思える「信頼の循環」を大切にしている。

値札ではなく、価値札を

WWD:2019年に立ち上げたファーストハンドは、「クリエイティブを重視したサステナブルなコンセプトストア」を掲げているが、サステナビリティを意識し始めたきっかけは?

福留:たどれば、無駄にしないモノづくりを実践していた斎藤さんの影響は大きかっただろう。特に生産現場を訪れ、業界の課題に気付くようになった。工場内に大量に放置された商品や報道されているような外国人技能実習生の問題、海外の児童労働の現場も目にした。特にラナ・プラザの事故は、見聞きしてきた過酷な生産現場に慣れてしまっていた自分にとって、あらためて課題の深刻さを認識させられた出来事だった。何とかそうした課題を解決し、産地を巻き込んだクリエイティブでサステナブルなモノづくりができないかと考えて生まれたのがファーストハンドだ。いろいろなところに事業提案していた中で、デイトナの鹿島研前社長が「では、やってみなさい」と言ってくれた。

WWD:当時はまだサステナビリティのアイデア自体浸透していなかったのでは?

福留:そう、なのであくまでファッションやライフスタイルの中でわくわくするようなことをしっかり提案した。ただ僕が出合った本当にかっこいいブランドやアーティストは、昔からサステナブルな意識を持っている人たちが多かった。だから尖った商品や作品でも、結果的にサステナブル文脈をちゃんと伝えられる確信があった。

WWD:スタートして約3年、手応えは?

福留:最初に骨董通りに店を出したときは正直、自分が伝えたいことがなかなか広がらなかった。たくさんの人が訪れるミヤシタパークに場所を変えてから、内装も含めて伝わりやすいプレゼンテーションを意識している。まだ自分が期待していたスピード感ではないものの、サステナブル文脈に興味を持ってくれるお客さまは増えているし、気付きのきっかけが提供できている。これからさらにブランドやアーティスト、お客さまと一緒に学ぶ場に成長させていく。

WWD:これからの時代、セレクトショップの面白さとは?

福留:お客さまにとっても今面白いと感じる店は、ブランドの熱量を伝えてくれる場所のはず。特に実店舗ではより古典的な接客やサービスを徹底できるところが強いだろう。ファーストハンドでも、スタッフへの教育に力を入れてより濃く商品価値を伝え「信頼の循環」を、お客さまを含めて回していく。今後はUPDATERのブロックチェーン技術を他の商品やサービスにも組み込み、社会課題解決や新しい「価値札」の提供手段として活用する予定だ。

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10年かけ全国300カ所のショッピングモールを撮影、小野啓が見た「新しい日本の原風景」

 小野啓は、最も忍耐強くストイックな写真家の一人だ。今年1月に出版した「モール」(赤々舎、2022)は、約10年をかけて累計で全国300カ所近くの大型ショッピングモールを回って撮影した。同書には中判のブローニーフィルムで撮影されたほぼトリミングなしの6×7比の約100枚の写真が収められ、巨大なモールをすっぽり収めた遠景から、住宅が重なりの中に顔を出すモールの外観、館内の中を行き交う人たち、無味乾燥にも見える画一的なモール外観まで、ショッピングモールを軸にさまざまな風景が映し出されている。小野啓はなぜ「モール」を撮り始めたのか。10年以上撮り続けた小野は、その目で何を見たのか。全国のモール300カ所を回った小野啓が一番最初に撮影に訪れた場所という、日本最大の大型ショッピングモール「レイクタウン」(埼玉県越谷市)で聞いた。

WWDJAPAN:「モール」のあとがきの中で、ショッピングモールを撮影するきっかけは「青い光」や「NEW TEXT」で撮影している高校生たちから撮影場所に指定されることが増えたからだと書いてある。本格的に撮影を始めたのは?

小野啓(以下、小野):2012年からです。基本的には10万㎡以上の敷地面積のある大型モールをネットで検索して、北は青森から、南は鹿児島まで、10年くらいかけて合計で200〜300カ所くらいのモールを撮影しました。中には複数回訪れているところもあるので、正確に何カ所かと言われると答えづらいですが、北海道と沖縄を除く大半の大型モールは行ったと思います。

WWD:撮影するモールはどう決めた?

小野:ショッピングモールをテーマに撮影をしようと思い、最初にこのレイクタウンを訪れたときに、あまりの大きさに圧倒されました。同時に巨大な箱のような得体の知れない建築物でありながら、無個性などこにでもある外観が面白くて、まずは日本全国のいろんな大型ショッピングモールに行って撮影してみよう、と。

WWD:モールの大きな特徴の一つが、その無個性さ。撮影する中で、途中で「飽きる」ということはなかったのか。

小野:むしろ、それは逆です。僕も最初は外観だけを見れば無個性だと感じましたが、実際に訪れてみればモールのある場所も人も、全部が違う。厳密に言えば中に入っているショップもそれぞれ微妙に異なる。大抵のモールは自動車じゃないと行きづらい場所にあるので、シャトルバスなんかに乗っていくのですが、車窓から見える風景もそれぞれに全然違うんです。もちろん幹線道路からのアクセスがいいとか、外観とか、テナント構成とか、共通点も多いかもしれませんが、すべてのモールにはそれぞれの存在意義や理由みたいなものがあると感じました。あと僕は基本的に、トリミングや過度な色調整をしません。それは写真家の態度だと思っているからです。この「モール」の写真は共通点も差異も、あえて強調したりはせず、あるがままそのままを写し取りったつもりです。

WWD:撮影のやり方は?

小野:誰かにお願いされて撮影するわけではないので、当たり前ですが、基本的には自腹で、月に2〜3回、時間を見つけて回っていました。最初の頃は何かのついでに、ということもやりましたが、カメラをリュックに詰め、三脚も持ち運ぶとなると10kg以上の機材を抱えて、モールの周辺も含めて歩き回るのでかなり体力を消耗しました。とてもじゃないけど複数のモールを回ったり、他のプロジェクトや仕事と一緒にもできなかったですね。だから、とにかく撮影に全力を注ぎたかったものの、お金も節約しなければならなかったので、行きは特急に乗って、帰りは深夜バスでみたいな旅程です。撮影の後はいつもクタクタでした。モールは全国に点在しているので、色んな場所を巡ったことは巡ったものの、正直観光などはまったくできなかったですね。

WWD:撮影のときに苦労した点は?

小野:撮影時、大半の時間はポイントを見つけるために歩き回っていました。先ほども言ったように、モールにも立地や場所など、それぞれの個性がある。それを見つけ出すためには、周辺も館内も含め、とにかく歩き回るしかない。その上で広大なモールの無数にある撮影ポイントを見つけなければならない。例えば外観を撮るときには住宅街が周りにあったり、季節によっては樹木で隠れてしまったり。それに基本的に大型モールは高さに比べて横幅が大きいので引きで撮ると画角がアンバランスになってしまう。館内に行けば、時間によって人が多かったり少なかったりもする。だから長時間歩き回っているけどシャッターを押す瞬間やポイントは、ある意味一瞬しかない。なので心身ともに疲れました。どうでもいいかもしれませんが、モールならではの設備、例えば荷物を入れたカートごと保管できる「カートロッカー」はとても重宝しました(笑)。

WWD:機材は?

小野:メーンが「マミヤ7-Ⅱ」で、館内用のサブ機として「コンタックス645」を使いました。できるだけ画質の高いカメラであるのと同時に、周囲数kmにも及ぶ大型モールの周辺を持ち運びながら歩き回って撮影できる、ということも重要でした。

WWD:印象的だったモールは?

小野:一番はやはり、「モール」を作ることを決めるきっかけにもなった、この「レイクタウン」です。もう何回も来ていますが、訪れるたびに発見がある。もう一つは「ピエリ守山」です。ここには1度訪れた後にかなり異質な状態になっているという噂を聞いて再訪したのですが、行ってみて驚きました。人がおらず、多くのテナントが閉店状態だった時期があり、綺麗な廃墟という印象でした。モールの光と影のようなものを感じました。

WWD:10年をかけたモール撮影プロジェクトの区切りはどうつけたのか?

小野:毎年のように新しいモールができる一方で、「ピエリ守山」のように廃墟化するモールも出てきた。その一方で撮影を続けていると、モールの中には福祉施設や公共機関が入るようにもなっていて、モール自体がコミュニティーを生み出したり、その核になり、かつてのように異質なものではなくなってきた。例えば僕は今年で44歳で滋賀県の出身なのですが、僕が中学生・高校生くらいのときは地元で時間を潰したり、遊んだり、溜まったりする場所って駅前のゲーセンだったり、商店街だったりしたんですよね。でも今の高校生くらいの世代にとって、そうした場所がモールになっている。もうファーストプレイスであって、青春時代の思い出の中には常にモールがあると思うんです。この10年は、モールがそうやって原風景へと移り変わるタイミングで、その変化を撮影してきた。撮影の区切りが何かと言われれば、モールが僕らの生活の中に深く根ざすようになったと感じたから。ここでいったん区切れると感じたんです。あと、細かいことかもしれませんが、2020年3月以降に撮影した写真に映るひとたちは全員マスクをしている。むしろモールのような場所でマスクをしていないコト自体が今見ると違和感がありますよね。

WWD:写真の並びやセレクトは?

小野:ベタ焼きから100枚くらいセレクトした写真を基準に、編集者と何度も話し合いながら、これまでに撮ったものを振り返ったり、新たに撮り足したり、を何度も繰り返しました。実は編集作業は2年くらいかかっていて、途中で本当にできあがるのか、とも思ったり(笑)。ただ、そのおかげでコロナ禍のモールも入れられた。写真の構成は遠景から始まって徐々に近づいていって、館内の風景と行き来する人、そしてまた引いて周辺などへと広がっていくイメージにしています。解説には著書「都市と消費とディズニーの夢 ショッピングモーライゼーションの時代」(角川書店)で知られる速水健朗さんに、デザインはグルーヴィジョンズにお願いしました。

WWD:この「モール」も10年をかけているが、ライフワークのように続けている全国の高校性を撮影する「NEW TEXT」も今年で20年になる。写真集になるのかわからない中で撮り始めて、長く続ける中で途中で不安になることは?

小野:それはなりますよ。最終的に納得できる作品になるのか、果たして出版できるのか、モールに向かう途中の電車の中で、何やってるんだろうとふと思ったり。そんな不安は常にあります。でもモールが近づいてくれば、撮影のことしか考えられなくなります。いずれにしろ、こればっかりは自分で自分を信じてやりきるしかない。だからこそ、納得できるまでやりきる、という感じです。

WWD:この10年を振り返って、日本は何が変わり、何が変わらなかったのでしょう?

小野:うーん。僕の個人の制作に関して言えば「NEW TEXT」は、明らかにコミュニケーションツールが変わりました。「NEW TEXT」は場所を問わず、リクエストをもらって全国どこへでも高校生を撮影しに行くプロジェクトなのですが、以前はウェブサイトで募集をかけてメールでやり取りしていたのが、いまはほとんどインスタグラム経由です。メールだと文章でのやり取りですが、インスタグラムだと文字のやり取りみたいになって、以前に比べて熱量というか、感情が見えにくくなった実感があります。ただ実際に会うと、人間性や内面にある若いからこそのほとばしるような感情そのものはあまり変わらない。つまり、ネットを介したコミュニケーションは前よりも難しくなったなあと。あと、高校生に関して言えば今はやっぱりコロナの影響が大きいと思います。外出もままらなず、イベントも軒並み制限されるか、あるいは中止になった。かけがえのない貴重な時間を奪われた、という感覚は強いと思います。

WWD:最後に全国のショッピングモールの関係者にメッセージを。

小野:モールはあまりにも当たり前の存在になりすぎているせいもあるのかもしれませんが、意外とモール社会的に捉えて語る機会や文章って実は少ないように思います。写真集にしても僕のこの「モール」以外に、モールそのものを主体に捉えたものはほとんどないんじゃないかな。単なる希望ではありますが、この写真集の巡回展を、僕が全国のモールで撮影したように、全国のモールでやってみたいし、実際の関係者ほどではないかもしれませんが、僕もモールについては写真家としては誰よりも考えたつもりです。ぜひそのときにはその関係者と一緒にトークイベントなどもやってみたいですね。

■小野啓 写真集「モール」
発行:赤々舎
ISBN:978-4-86541-139-3
定価:3000円+税

■小野啓 「モール」写真展
日程:2022年9月27日〜10月9日
時間:12:00〜19:00
定休日:月曜日
場所: TOTEM POLE PHOTO GALLERY
住所:〒160-0004 東京都新宿区四谷四丁目22 第二富士川ビル1F
入場料:無料

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千原徹也が「原宿・神宮前」から新プロジェクト 街とクリエイターとの新しい関係

 アートディレクターの千原徹也(れもんらいふ代表)が、原宿・神宮前を拠点にした新しいプロジェクトに取り組む。神宮前交差点で建設中の「神宮前六丁目地区第一種市街地再開発事業」(神六再開発、東急不動産)は、さまざまな分野のクリエイターとの連携を進めており、千原氏もその一人だ。広告から企業ブランディング、映像作品まで幅広いジャンルで活躍する千原氏は、原宿・神宮前で何を仕掛けようとしているのか。

原宿は若い才能を刺激し続ける街

WWD:東急不動産と連携したきっかけは?

千原徹也れもんらいふ代表(以下、千原):4~5年前に東急不動産から話をいただいたのがきっかけだった。神宮前交差点にはかつて原宿セントラルアパートがあり、クリエイターの聖地でもあった。その背景を引き継ぎ、「原宿の文化を残せるようなビルにしたい」と相談を受けた。

WWD:その時は率直にどう思った?

千原:文化を作るには時間がかかる。商業施設やオフィスのように「坪単価いくら」という話ではないので、果たしてそんなことが成立するのか?という感覚だった。一方で、大阪・ミナミの味園ユニバースのように、そこにクリエイターたちが集まって、自発的に何かが生まれるようなビルは面白いなとワクワクした。

 僕は京都出身で、原宿や渋谷に憧れて上京した人間だ。表参道に同潤会アパートがあったり、裏原宿でNIGO®さんが色々な仕掛けをしたり。セントラルアパートの歴史も雑誌を読んで知っていて、川久保玲さんや山本耀司さんがここで打ち合わせをしたのか、糸井重里さんの事務所はここにあったのか、と訪れるたびに想像した。実は2011年にれもんらいふを設立した際、事務所を置いたのは、今まさに再開発されている神宮前六丁目地区にあったマンションの一角だった。原宿がクリエイターの街であってほしいという願いは個人的にも強い。若い人に刺激を与える街であってほしい。僕が携わるならそこを主張したいとも思った。

WWD:千原さんにとって、原宿はどんな街?

千原:僕のカルチャーを作ってくれた街といえる。青春時代を過ごした1990年代は、半年に1度お金を貯めて、京都から深夜バスで上京していた。雑誌「オリーブ」の切り抜き片手に原宿のおすすめの店に行ったり、青山のロケットギャラリーにグルーヴィジョンズ展を観に行ったり、六本木のウェーブでレコードを買ったりするカルチャー少年だった。当時は、音楽も渋谷系が流行っていて、ファッションデザイナーでいうと丸山敬太さんや三原康裕さん、高橋盾さんなどが出始めてきた頃。自分もいつか原宿界隈に住むか、働けるような人間になりたいと考えていた。

WWD:当時の経験は、自身にどのような影響を与えている?

千原:雑誌を見て、話題の店を探すようなことは、東京の人はやらない。僕は東京の人よりも原宿に詳しかったと思う。あのとき培ったものが、僕の血と骨になったという実感がある。

 社会人になって最初に入った地元のデザイン事務所は、名刺の肩書こそグラフィックデザイナーだったけど、やっていることは飲食店のクーポン制作だった。有名な美大やデザイン事務所出身の人たちが東京でクリエイティブやマスを作っていたので、僕なんかが入り込める隙はない。憧れと現実の距離も、渋谷・原宿という街の物理的な距離も遠く、半ばあきらめの趣味レベルで雑多な情報を吸収していた。でも、いざ東京で仕事に就くとそれが強みになった。今アートディレクターとして他の人と違う部分があると言ってもらえるのは、僕の中にある1990年代カルチャーの“わちゃわちゃ感”が生かされているから。切り抜き片手に街を歩き回った経験があればこそだと思う。

WWD:今の原宿はどう映る?

千原:かつてはファッションやカルチャーが好きな人が遊びに来る街というイメージが強かったが、今は「みんなの原宿」になってしまった。街が多様化する半面、個性がどんどん薄まっている。東京は何でも移り変わりが早い。そこが“らしさ”でもあるけれど、「やっぱり、この場所いいよね」となっていくには、リアルの魅力、この場でしか感じられない価値を磨いてくべきだ。東急不動産との協業を通じて、原宿に来る意味や意義を再構築したい。

リアルに集うことが価値になる
偶然性のあるクリエイション

WWD:消費ではなく、文化を作るために大切なことは?

千原:おしゃれな店をオープンしたり、イベントを開いたりといった一時的な話題作りだけでは行き詰まる。この場所からクリエイティブを発信し続ける、意思を持った人がたくさん必要だ。山本宇一さんがプロデュースしたカフェ「モントーク」も、かつてあの場所と彼の周りにクリエイターが集うことで、新たな文化やコラボレーションが生まれた。クリエイターがそこに「居続ける」ことが価値となる。人と人が交わることで偶然性のあるクリエイティブが生まれる。東急不動産との連携で、クリエイターやタレントによるオープンなサロンなどを定期的に開催できれば、お客さんをリアルに引きつける要素の一つになるかもしれない。

WWD:東急不動産との連携を通じて千原さんが目指したいことは?

千原:買い物に訪れた人が、クリエイターが仕事する現場を見ることができる。ミュージシャンとCDジャケットについて打ち合わせするところを一般公開したりするのも面白い。デザイン事務所が仕事場を開放すると何が起きるのか?実験的にやっていきたい。

 僕が若い頃、有名な本屋に行くと、雑誌で見たことのある店主と編集者が店先で話をしていて、憧れを抱きながらも「いつかあの輪に入りたい」という気持ちになった。ここもクリエイティブの裏方の人たちの仕事が垣間見れて、デザインに興味を持ってもらえるような場所になってほしい。

新しいことを生み出そうとしている
人がクリエイター

WWD:千原さんが考える「クリエイター」の定義とは?

千原:面白いことを思いつく人が、仕事を生み出していく時代になった。何かを変えたいとか、新しいことを生み出したいと思う気持ちがあれば、普通のサラリーマンでもクリエイターだと僕は思う。そういう人をたくさん巻き込めれば、原宿はもっと面白くなる。

WWD:千原さんが東急不動産と協業するメリットは?

千原:10年間、れもんらいふでデザインをやってきたが、それだけでは物足りなくなってきた。せっかく、れもんらいふが一つのジャンルとして認知され始めたなら、企業と組むことが僕の資源を生かす次なるフェーズになる。自分たちがやりたいこともできるし、企業がやってこなかったような企画も実現できるので、いいタイミングでこの話をいただけた。

WWD:デジタル化が進む時代に、リアルにこだわる理由とは?

千原:オンラインで事足りるケースが増えているが、実はいろいろなコミュニケーションがぽっかり抜け落ちている状態だということに気付いてもらいたい。オンライン会議は「何かを生み出そう」と思ってからの行動なので、偶然性は生まれにくい。メールだと仰々しいこともリアルだと「一緒にやろう!」のハードルが低くなる。人と人がリアルに介することで生まれるクリエイションがあることを原宿から発信したい。ジャンルや立場という「壁」を全て取り払って、買い物客も働く人も巻き込む新しいクリエイションの形を作りたい。

PHOTO:SHUHEI SHINE
TEXT:ANRI MURAKAMI
問い合わせ先
東急不動産

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アディダスが革新的な”ループ”戦略の先に見るもの ドイツ本社のキーマンが語る

 アディダス(ADIDAS)は、“END PLASTIC WASTE プラスチックゼロの未来へ。”を掲げ、本格的なサプライチェーンの変革に取り組み始めている。製品を単一素材で作ることで回収・粉砕・再資源化・再利用する“フューチャークラフト.ループ”やマッシュルームレザーを用いた“スタンスミス マイロ(STAN SMITH Mylo)”など、先進的な取り組みは何を目指し、どこへ向かうのか。マルヴィン・ホフマン(Marwin Hoffman)=ヴァイスプレジデント・アウトドアマーケティングに聞く。

WWD:サステナビリティ戦略では“END PLASTIC WASTE”を掲げ、その最初のステップとして“ループ”戦略を定義した。

マルヴィン・ホフマン=ヴァイスプレジデント・アウトドアマーケティング(以下、ホフマン):ループ戦略は、プラスチックごみをなくすために策定し、これは製品を作る素材を見直す上での明確なロードマップになっている。私たちの目標のひとつは、25年までに製造品目の90%にサステナブルな技術、素材、デザインもしくは製造方法を採用すること。製品がサステナブルかどうかという基準の多くは素材に関連している。従来の製品と比較して環境上の利点を持っているかどうか、環境に配慮した素材で製造されているかどうか、で判断している。24年までに、可能な限りバージンポリエステルをリサイクル素材に置き換える計画だ。

WWD:海洋ごみを再資源化し、さまざまな商品に使用しているのは素晴らしいことだが、環境配慮型素材への置き換えだけでは解決できないことも多いのでは?

ホフマン:私たちの次の目標は、アディダスという企業を一方向的なリニアモデルからサーキュラー(循環型)モデルのビジネスに移行することだ。使用後に回収し、粉砕して、新製品にリメイクすることを前提に、製品作りを再設計しなければならない。これは19年に“フューチャークラフト.ループ”から始まったプロジェクトで、その後3世代のプロトタイプを経て、“メイド・トゥ・ビィ・リメイド(Made To Be Remade以下、MTBR)”ラインとして展開している(日本未発売)。22年には、人気商品にもこのコンセプトを拡大する。

 同時に掲げているのが「メイド・ウィズ・ネイチャー(Made with Nature)」で、自然由来の繊維や天然由来の生体高分子、天然素材のミッドソールなどの可能性も追求している。フィンランド発のスタートアップ企業スピノバ(Spinnova)とのパートナーシップによる“テレックスHS1(TERREX HS1)パーカーもその一つ。生地の約30%は、有害な化学物質の使用を避けるため、木材を機械的に粉砕した繊維を使用している。また直近のシーズンでは、素材の約50%に天然素材と再生可能な材料を採用した“ウルトラブースト22(Ultraboost 22)”を発売した。

WWD:スピノバの繊維のどういう点を評価しているか。今後の展開は?

ホフマン:テレックス(Terrex)では、プラスチックごみゼロの未来を目指し、高機能ウエアの持続可能性を高められる点だ。“テレックス HS1”は、スピノバとの協業した最初の製品だ。染色や漂白のための化学薬品を使用せず、素材の自然な色を尊重したため、標準の染色プロセスよりも使用する水量が少ない。7月から、数量限定で公式サイトおよび一部の小売店で販売している。

WWD:サーキュラー型へのビジネス移行には、サブスク型やレンタル、リペアなどのサービスが考えられるが、今後の展望は?

ホフマン:現在、それぞれの製品のライフサイクルを延長し、埋め立て地に捨てられないようにするための新しい方法に挑戦している。例えば“MTBR”では、消費者は商品のQRコードをスキャンし、アディダスアプリにアクセスすると、使い終わったMTBR製品を返品することができるようになる。今後はMTBRプログラム全体の強化に向け、「製品の返品」に対する消費者行動をよりよく理解するために、一部のマーケットで返品サービスも実験的に行っている。

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ポイ捨てがピアスに  “ハイヒールたば子”誕生のきっかけは地元のごみ拾いだった【海の危機、私たちはどう動く?】

 ポイ捨てタバコに人形の靴を履かせたピアス、その名も“ハイヒールたば子”。ウィットにとんだこのアクセサリーを制作したのは、アーティスト、カナコネヅ(KanakoNezzz)だ。地元の川で拾ったプラスチック片やポイ捨てたばこなどを素材にアクセサリーを制作・販売している。きっかけはコロナ下で仲間と始めたごみ拾いだという。

WWDJAPAN(以下、WWD):ブランド名の「境ジュエル(SAKAI JEWEL)」は、東京と神奈川の境を流れる境川に由来しているそうですが、活動のきっかけは?

カナコネヅ(以下、カナコ):近所の境川にゴミが落ちていることはずっと気になっていたけどなかなか一歩が踏み出せなかった。コロナが広がり始めた2020年3月に仲間と飲みながら環境問題を話すなかで「やろうか」となりました。タップダンスを教えていた私はコロナで仕事がなくなり、お金に余裕はないけど時間はあったから。毎朝6時から1時間、川の中でもソーシャルディスタンスをとって拾い始めたらせせらぎの音が気持ち良くて。しかもごみを拾っていると周囲から感謝されて「これは仕事になる」と思いました。

WWD:仕事になるとは?

カナコ:なるというか、する、でしょうか。私たちが拾っていることに気がついて応援してくれる人が増えました。中には「終わったら休憩してね」と、「コメダ珈琲」の回数券くれる方もいてこれは“投げ銭”だな、と。ボランディア精神だけでは続きにくい、でも、ごみ拾いをお金に換えられるなら継続できると考え「アースクロスオーバー」というチームを3人で作り、アクセサリー制作などの活動を始めました。

WWD:デザインは独学?

カナコ:「ユーチューブ」や「ピンタレスト」を見ながらの独学です。学生の頃から古着を材料にミシンを使ってリメイクするのが好きでした。3人兄弟で小遣いが少ないから欲しいものを見つけると「どうやって買おう」ではなく「どうやって作ろう」と考える習慣がついていて。古着という材料は無限にあり、発想次第で欲しいものが作れるから楽しいです。

WWD:それでアクセサリーのパーツとして、境川で拾ったごみを使い始めたと。

カナコ:そうです。川には陶器やガラスの破片が多いですね。雨で増水しているときは町田駅周辺など街でも拾いますが、街にはたばこのポイ捨てが多い。ポイ捨てシリーズのアクセサリーは、タバコの周囲に樹脂を少し塗っては乾かすことを繰り返し固め、人形の靴を履かせました。捨てた人の元へ帰ってね、という意味も込めて。

“2050”リングに込めた海への思い

WWD:どんな反響を得られた?

カナコ:ポイ捨てに関しては「おもしろい」と言ってもらったり、「人が吸っていたものは嫌」だったりとさまざまです。

WWD:リングの「2050」が意味することとは。

カナコ:境川は江ノ島辺りで相模湾へ流れ込みます。茅ヶ崎へビーチクリーンに行ったとき「2050年には海中のプラスチックの量が魚の量を超えるかもしれない」と聞き、そうなる前にアクションを起こそう、とういメッセージを込めました。

WWD:リングの中では男性カップルがキスをしていますね。

カナコ:そうですね。境川の名前でもある“ボーダー”はいろいろな意味があります。LGBTQ、世代、障がい、人種、信仰、人間と人間以外の動物など身近なボーダーを考え、差別をなくすきっかけになったら嬉しいです。

WWD:ごみ拾いは今も続いている?

カナコ:タップダンスの先生、グラフィックデザイナー、そして夜はスナックで働きながら続けています。ただ、最近ごみ拾いに参加する人が増えて、ごみが減ってきました。

WWD:それはすごい。飲み会から始まった輪が広がっている。

カナコ:はい、最近は「アースクロスオーバー」の活動が広がり、企業さんから「廃棄花を活用できないか?」といった相談を受けたりしています。

WWD:オンラインストアのほか、「エシカルコンビニ」などへの卸販売も始めている。アクセサリーを通じて伝えたいことは?

カナコ:この先も美しい地球であってほしい、そのために今を大切に生きる。それがボーダーレスという行動につながってゆくと思う。「境ジュエル」をきっかけに地球で起こっていることに関心が集まったら嬉しいです。


【WWDJAPAN Educations】

【第2期】サステナビリティ・ディレクター養成講座
2022年9月30日(金)開講

 昨年初めて開催し好評を得た「サステナビリティ・ディレクター養成講座」を今年も開講。サステナビリティはこれからの企業経営の支柱や根底となるものであり、実践が急がれる事業の課題である。この課題についてのビジョンを描くリーダーの育成を目的に、必要な思考力・牽引力を身につける全7回のワークショップとなる。前半は各回テーマに沿った第一線で活躍する講師を迎え、講義後にはディスカッションやワークショップを通して課題を明確化し、実践に向けたアクションプランに繋げていく。

 また、受講者だけが参加できるオンライン・コミュニティーでは、「WWDJAPAN」が取り上げるサステナビリティに関する最新ニュースや知っておくべき注目記事をチェックでき、更に講義内容をより深く理解するための情報を「WWDJAPAN」編集部が届ける、まさに“サステナ漬け”の3カ月となる。
講義のみが受講できるオンラインコースも同時に受け付けています。


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ポイ捨てがピアスに  “ハイヒールたば子”誕生のきっかけは地元のごみ拾いだった【海の危機、私たちはどう動く?】

 ポイ捨てタバコに人形の靴を履かせたピアス、その名も“ハイヒールたば子”。ウィットにとんだこのアクセサリーを制作したのは、アーティスト、カナコネヅ(KanakoNezzz)だ。地元の川で拾ったプラスチック片やポイ捨てたばこなどを素材にアクセサリーを制作・販売している。きっかけはコロナ下で仲間と始めたごみ拾いだという。

WWDJAPAN(以下、WWD):ブランド名の「境ジュエル(SAKAI JEWEL)」は、東京と神奈川の境を流れる境川に由来しているそうですが、活動のきっかけは?

カナコネヅ(以下、カナコ):近所の境川にゴミが落ちていることはずっと気になっていたけどなかなか一歩が踏み出せなかった。コロナが広がり始めた2020年3月に仲間と飲みながら環境問題を話すなかで「やろうか」となりました。タップダンスを教えていた私はコロナで仕事がなくなり、お金に余裕はないけど時間はあったから。毎朝6時から1時間、川の中でもソーシャルディスタンスをとって拾い始めたらせせらぎの音が気持ち良くて。しかもごみを拾っていると周囲から感謝されて「これは仕事になる」と思いました。

WWD:仕事になるとは?

カナコ:なるというか、する、でしょうか。私たちが拾っていることに気がついて応援してくれる人が増えました。中には「終わったら休憩してね」と、「コメダ珈琲」の回数券くれる方もいてこれは“投げ銭”だな、と。ボランディア精神だけでは続きにくい、でも、ごみ拾いをお金に換えられるなら継続できると考え「アースクロスオーバー」というチームを3人で作り、アクセサリー制作などの活動を始めました。

WWD:デザインは独学?

カナコ:「ユーチューブ」や「ピンタレスト」を見ながらの独学です。学生の頃から古着を材料にミシンを使ってリメイクするのが好きでした。3人兄弟で小遣いが少ないから欲しいものを見つけると「どうやって買おう」ではなく「どうやって作ろう」と考える習慣がついていて。古着という材料は無限にあり、発想次第で欲しいものが作れるから楽しいです。

WWD:それでアクセサリーのパーツとして、境川で拾ったごみを使い始めたと。

カナコ:そうです。川には陶器やガラスの破片が多いですね。雨で増水しているときは町田駅周辺など街でも拾いますが、街にはたばこのポイ捨てが多い。ポイ捨てシリーズのアクセサリーは、タバコの周囲に樹脂を少し塗っては乾かすことを繰り返し固め、人形の靴を履かせました。捨てた人の元へ帰ってね、という意味も込めて。

“2050”リングに込めた海への思い

WWD:どんな反響を得られた?

カナコ:ポイ捨てに関しては「おもしろい」と言ってもらったり、「人が吸っていたものは嫌」だったりとさまざまです。

WWD:リングの「2050」が意味することとは。

カナコ:境川は江ノ島辺りで相模湾へ流れ込みます。茅ヶ崎へビーチクリーンに行ったとき「2050年には海中のプラスチックの量が魚の量を超えるかもしれない」と聞き、そうなる前にアクションを起こそう、とういメッセージを込めました。

WWD:リングの中では男性カップルがキスをしていますね。

カナコ:そうですね。境川の名前でもある“ボーダー”はいろいろな意味があります。LGBTQ、世代、障がい、人種、信仰、人間と人間以外の動物など身近なボーダーを考え、差別をなくすきっかけになったら嬉しいです。

WWD:ごみ拾いは今も続いている?

カナコ:タップダンスの先生、グラフィックデザイナー、そして夜はスナックで働きながら続けています。ただ、最近ごみ拾いに参加する人が増えて、ごみが減ってきました。

WWD:それはすごい。飲み会から始まった輪が広がっている。

カナコ:はい、最近は「アースクロスオーバー」の活動が広がり、企業さんから「廃棄花を活用できないか?」といった相談を受けたりしています。

WWD:オンラインストアのほか、「エシカルコンビニ」などへの卸販売も始めている。アクセサリーを通じて伝えたいことは?

カナコ:この先も美しい地球であってほしい、そのために今を大切に生きる。それがボーダーレスという行動につながってゆくと思う。「境ジュエル」をきっかけに地球で起こっていることに関心が集まったら嬉しいです。


【WWDJAPAN Educations】

【第2期】サステナビリティ・ディレクター養成講座
2022年9月30日(金)開講

 昨年初めて開催し好評を得た「サステナビリティ・ディレクター養成講座」を今年も開講。サステナビリティはこれからの企業経営の支柱や根底となるものであり、実践が急がれる事業の課題である。この課題についてのビジョンを描くリーダーの育成を目的に、必要な思考力・牽引力を身につける全7回のワークショップとなる。前半は各回テーマに沿った第一線で活躍する講師を迎え、講義後にはディスカッションやワークショップを通して課題を明確化し、実践に向けたアクションプランに繋げていく。

 また、受講者だけが参加できるオンライン・コミュニティーでは、「WWDJAPAN」が取り上げるサステナビリティに関する最新ニュースや知っておくべき注目記事をチェックでき、更に講義内容をより深く理解するための情報を「WWDJAPAN」編集部が届ける、まさに“サステナ漬け”の3カ月となる。
講義のみが受講できるオンラインコースも同時に受け付けています。


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「CFCL」がBコープ認証を取得 日本のアパレル初 「世界規模のコミュニティーの中で挑戦してゆく」

 CFCLは日本のアパレルブランドとして初めて、「Bコーポレーション(以下、Bコープ)認証」を取得した。Bコープは、社会や環境への配慮、透明性、説明責任、持続可能性において企業のパフォーマンスを評価した国際的な認証制度で、84カ国の5391社が取得(22年8月3日時点)している。申請する企業が増えている注目の認証だが、取得のハードルが高いことでも知られる。CFCLは、1年以上の審査・評価期間を経て、認証取得の条件となる80点(200点満点)を大きく上回る128点を取得した。自らに高いハードルを課す認証取得の意義はどこにあるのか?同社の高橋悠介代表兼クリエイティブ・ディレクターと、岡田康介チーフ・ストラテジー&サステナビリティ・オフィサーに聞いた。

WWDJAPAN:Bコープ取得に向けて動き始めた決め手は?

岡田康介チーフ・ストラテジー&サステナビリティ・オフィサー(以下、岡田):私は2010年頃、欧州で再生エネルギーの仕事に携わっていた時にBコープの存在やその評価が高まっていることは知ったが、自分事化したのは高橋と出会ってから。CFCLに大きな可能性を見たのでBコープ取得を提案した。

高橋悠CFCL代表兼クリエイティブ・ディレクター(以下、高橋):CFCLの創業を構想していた頃、例えば“石油由来のフェイクファーは果たして本当に地球や動物に優しいのか?”といった正解のない議論を見る中で、自ら“サステナビリティに配慮したブランドです、エコです”と言うのはいかがなものか、というのが感覚的にあった。ただCFCLの事業プランでは再生ポリエステルをメインに使い、ホールガーメントにより生産過程で極力ごみを出さない、といった方針は決めていた。ブランドのフィロソフィーをどう伝えるか、悩んでいた時に岡田からBコープの話を聞き、第3者機関による認証が取得できれば一つの形として表現できると考えた。

岡田:素材や品質、エネルギーなど個別の認証は色々存在するが、企業活動全体を網羅するのは、SDGsの観点においてもBコープだけ。会社が成長し人や資金のリソースが充実した上で取得に取り組むのではなく、創業時からチャレンジする姿勢を取引先などすべてのステークホルダーに見せることで信用を構築してゆけると考えた。

WWD:高橋代表は2020年の創業当時に「でき上がった組織を変えるのは大変。最初からBコープ前提で会社を作ることはチャンスでもある」と話していた。

高橋:就業規則やカンパニーポリシーを作る段階からBコープの評価をベースにすることは理想への近道になる。もちろんBコープが正解ではなく、地域やコミュニティー、事業規模にフィットしない部分もある。

WWD:Bコープは「絶対正解」ではなく、一つのきっかけである?

岡田:Bコープの審査は“マルバツ”ではない。今回、認証を受けるまでにBコープから受けた質問数は約300。選択肢が用意されている質問もあるが、自分たちで自由記述するケースが非常に多い。さらにそれを「数値的に証明せよ」とも問われる。問われることで自分たちになかった視座に気がつくことも多い。Bコープのもう一つの大きなメリットは、指標や視点を無数に提供してくれること。創業間もない我々にはリソースがないのは事実だから、回答をしながら成長していくようなところがある。

WWD:企業が成長するためのガイドラインみたいなものだと。自分たちから“バツ”を選択することもある?

高橋:分かりやすい例を2つあげると、一つは社員の評価制度。Bコープ的には規定が整っている方がもちろん良いけれど、スタートアップ企業における働くモチベーションは熱量だったりするから、物差しを作るのはまだ早い。そういった判断に至ることもあった。物作りについては、Bコープ的には当然、再生素材の使用率が高いほうが評価されるが我々は再生素材を使うこと以前に、「洗練された現代の服を作る」ことに重きを置いており、それに満たなければ再生素材を選ばないこともある。

岡田:質問が300ある中で、人事評価制度に関する点数は数点。それを獲得できなくても、自分たちで勉強会を開いて、学ぶ場を作ることもできる。実際、毎月勉強会を開いて高橋のクリエーションについて、再生エネルギーについて、社会保障についてなど学ぶ機会を設けることで従業員とのエンゲージメントを高めている。それは点数には繋がらないが、最終的に128という点数を獲得することができた。

128点の高得点の理由は「インパクトビジネスモデル」

WWD:200点満点で、認証取得の条件が80点。それを大きく上回る128点を獲得できた理由は?

高橋:既存のアパレルとは違う事業形態により社会へ良い影響を与える “インパクトビジネスモデル”として認められた点は大きい。弊社が採用しているコンピュータープログラミングニットに集約したものづくりがステークホルダーにインパクトを与えた、と。ただそれを証明するのが大変だった。自由記述で提出したものに対して、「布帛の生産ではどのくらいごみが出ているのか証明を」とか「横編ニットはマイノリティーなのかマジョリティーなのか説明を」などと返ってくる。さまざまな人たちに協力してもらいデーターを集めたり、実際に同じ形をニットと布帛で作って比較したりしてラリーを繰り返し証明をした。

岡田:我々の“ポッタリー”シリーズは、デザインを基本的にほとんど変えない。これにより、生産工場は失敗が減り、ロス率が下がる。それらを一つ一つ数字を取り証明してゆく。

高橋:“ポッタリー”を主軸とすることで、毎シーズン発注量が増え、原料であるペットボトルの再利用率も確実に上がる。あと意外だったのが、“ポッタリー”を東京都で作っていることが評価された点。本社との距離が近いことがポイントだった。BコープはSDGsの1番、貧困の問題に対して非常に強い危機感を持っていて、人件費が安い国で生産した商品を先進国で販売するビジネスモデルは、賃金格差や貧富の差を利用したビジネスであるからSDGsにふさわしくない、と判断している。

WWD:それらの判断は、Bコープを目指す以前から高橋代表が持っていた感覚からくるのか。

高橋:言語化は難しいが、前職から日本で日本人と作るビジネスだったから自然に行き着いた答えだとは思う。

300の質問に答える中で国際的な視点を得た

WWD:ビジネス形態は企業の成長とともに変化する。CFCLがニットではなく布帛に力を入れたくなる日がくるかもしれない。

高橋::Bコープは3年に1度、アップデートが必要だ。ビジネスモデルが変われば評価を失う可能性はあるが、ニットのブランドとしてスタートした「CFCL」ブランドのコアは変わらないと思う。

WWD:企業の財務的な成長とBコープの関係をどう捉えているか。

岡田::設問の多くは財務的な数値と合わせた回答が求められるから切っても切り離せない。例えば“ポッタリー”ドレスがどれくらいの再生繊維を使っているかは、商品がどれだけ売れたかに直結する。ちなみにBコープの対象はあくまで営利団体で、NPOなどは対象外。それだけ財務と密接というわけだ。

WWD:取得を通じて企業として得たことは他にあるか。

岡田::2つある。300の質問に答える中で国際的な視点を得たこと。これは非常に大きい。もう一つは。Bコープのコミュニティーに参画すること。現時点で業界も国境も超えた5000社以上の認証Bコープがある。彼らとのコミュニケーションを通じてビジネスをどうやってSDGsで実現するのか、具体的なケーススタディを得てわれわれなりにトランスフォームすることもできるだろう。SDGsは1社では成し得ないパートナーシップの世界なので、世界的なスケールのコミュニティーの中でチャレンジすることで企業の成長にもつながることは間違いない。

WWD:従来なら国外に出て経験して得るほかなかった国際的視点を日本にいながら得られるのは大きい。

高橋::世界的な信頼を獲得していることは間違いない。6月にパリでプレゼンテーションを行ったが、特にラグユアリー関係者はBコープを知っており、認証申請中の話をすれば「弊社はSDGsに関してこういった取り組みをしています」といった説明も不要で、話が早い。

WWD:パスポートみたいだ。

高橋::洋服は結局、社会との接点だから、トレーサビリティーが取れている服なのか、は今後特にラグジュアリーにおいては非常に重要だと思う。

“信用”は漢字2文字だけど、それを構築するのは非常に難しい

WWD:CFCLがBコープを取得したというニュースはある意味、CFCLに関わるサプライチェーンの評価にもつながる。

岡田::アパレルビジネスのサプライチェーンは長い。その中でアパレルブランドはデザインを決めるディシジョンファクターでもある。認証は糸、ニット工場、染色工場、物流との細かなやりとりの結晶であり、128という数字はCFCLに関する全ての企業の集大成だと思う。

WWD:関連企業へはどのように共有したのか。

高橋::岡田が作った資料「パフォーマンスインデックス」を持って説明してまわった。外資と仕事をしている工場は労働条件や廃棄問題に対してすでに取り組んでいるところが多い。一方、全くノータッチの工場もあるが「ならば取り引きをしない」ではなく、先方の社員向けに勉強会を開くなど伝えることに尽力した。

岡田::300の設問の中で、我々のオフィスに関することについて考えるのは比較的容易だが、サプライチェーンのコミュニティーの中のことを調べて実践することは莫大な時間と胆力が必要だ。「パフォーマンスインデックス」は環境省が策定した環境マネジメントシステム「エコアクション21」をベースに、Bコープの設問を加え、中小企業が取り組める内容とした。151の項目からなる。いきなりその量を送りつけられたら相当面食らうから、まずは信用を構築し、時間をかけて説明をした。 “信用”は漢字2文字だけど、それを構築するのは非常に難しい。その構築に一番集中し気を配ったとは思う。

高橋::岡田がグイグイ行くから焦ったこともあるけれど、「サステナビリティーに取り組みたいが、何から手をつけていいかわからなかった」という工場も多いことがわかったりした。岡田の熱量が共感を呼んだところもあると思う。

WWD:日本のアパレルで初の取得となり、今思うことは?

高橋::Bコープは取って当たり前の世界がこれから来るだろう。仕掛ける側か仕掛けられる側かに分かれなら、仕掛ける側に回らない限り、その企業自体の存続が危うくなってくるとも思う。同時に生活者のリテラシーも確実に上がっているから改めて襟を正したい。「ニット以外の方が儲かる」「他国で作った方が断然安い」といったことに直面したとき、どうするか。カフェで「今日はタンブラー忘れたからプラカップください」と同じで、時にはそれもいいけど、小さいことの積み重ねで気がつけば「あれ、この会社こんな風だったけ?」となる。全社員の意識が低下していないかは常に自覚してゆきたい。

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「CFCL」がBコープ認証を取得 日本のアパレル初 「世界規模のコミュニティーの中で挑戦してゆく」

 CFCLは日本のアパレルブランドとして初めて、「Bコーポレーション(以下、Bコープ)認証」を取得した。Bコープは、社会や環境への配慮、透明性、説明責任、持続可能性において企業のパフォーマンスを評価した国際的な認証制度で、84カ国の5391社が取得(22年8月3日時点)している。申請する企業が増えている注目の認証だが、取得のハードルが高いことでも知られる。CFCLは、1年以上の審査・評価期間を経て、認証取得の条件となる80点(200点満点)を大きく上回る128点を取得した。自らに高いハードルを課す認証取得の意義はどこにあるのか?同社の高橋悠介代表兼クリエイティブ・ディレクターと、岡田康介チーフ・ストラテジー&サステナビリティ・オフィサーに聞いた。

WWDJAPAN:Bコープ取得に向けて動き始めた決め手は?

岡田康介チーフ・ストラテジー&サステナビリティ・オフィサー(以下、岡田):私は2010年頃、欧州で再生エネルギーの仕事に携わっていた時にBコープの存在やその評価が高まっていることは知ったが、自分事化したのは高橋と出会ってから。CFCLに大きな可能性を見たのでBコープ取得を提案した。

高橋悠CFCL代表兼クリエイティブ・ディレクター(以下、高橋):CFCLの創業を構想していた頃、例えば“石油由来のフェイクファーは果たして本当に地球や動物に優しいのか?”といった正解のない議論を見る中で、自ら“サステナビリティに配慮したブランドです、エコです”と言うのはいかがなものか、というのが感覚的にあった。ただCFCLの事業プランでは再生ポリエステルをメインに使い、ホールガーメントにより生産過程で極力ごみを出さない、といった方針は決めていた。ブランドのフィロソフィーをどう伝えるか、悩んでいた時に岡田からBコープの話を聞き、第3者機関による認証が取得できれば一つの形として表現できると考えた。

岡田:素材や品質、エネルギーなど個別の認証は色々存在するが、企業活動全体を網羅するのは、SDGsの観点においてもBコープだけ。会社が成長し人や資金のリソースが充実した上で取得に取り組むのではなく、創業時からチャレンジする姿勢を取引先などすべてのステークホルダーに見せることで信用を構築してゆけると考えた。

WWD:高橋代表は2020年の創業当時に「でき上がった組織を変えるのは大変。最初からBコープ前提で会社を作ることはチャンスでもある」と話していた。

高橋:就業規則やカンパニーポリシーを作る段階からBコープの評価をベースにすることは理想への近道になる。もちろんBコープが正解ではなく、地域やコミュニティー、事業規模にフィットしない部分もある。

WWD:Bコープは「絶対正解」ではなく、一つのきっかけである?

岡田:Bコープの審査は“マルバツ”ではない。今回、認証を受けるまでにBコープから受けた質問数は約300。選択肢が用意されている質問もあるが、自分たちで自由記述するケースが非常に多い。さらにそれを「数値的に証明せよ」とも問われる。問われることで自分たちになかった視座に気がつくことも多い。Bコープのもう一つの大きなメリットは、指標や視点を無数に提供してくれること。創業間もない我々にはリソースがないのは事実だから、回答をしながら成長していくようなところがある。

WWD:企業が成長するためのガイドラインみたいなものだと。自分たちから“バツ”を選択することもある?

高橋:分かりやすい例を2つあげると、一つは社員の評価制度。Bコープ的には規定が整っている方がもちろん良いけれど、スタートアップ企業における働くモチベーションは熱量だったりするから、物差しを作るのはまだ早い。そういった判断に至ることもあった。物作りについては、Bコープ的には当然、再生素材の使用率が高いほうが評価されるが我々は再生素材を使うこと以前に、「洗練された現代の服を作る」ことに重きを置いており、それに満たなければ再生素材を選ばないこともある。

岡田:質問が300ある中で、人事評価制度に関する点数は数点。それを獲得できなくても、自分たちで勉強会を開いて、学ぶ場を作ることもできる。実際、毎月勉強会を開いて高橋のクリエーションについて、再生エネルギーについて、社会保障についてなど学ぶ機会を設けることで従業員とのエンゲージメントを高めている。それは点数には繋がらないが、最終的に128という点数を獲得することができた。

128点の高得点の理由は「インパクトビジネスモデル」

WWD:200点満点で、認証取得の条件が80点。それを大きく上回る128点を獲得できた理由は?

高橋:既存のアパレルとは違う事業形態により社会へ良い影響を与える “インパクトビジネスモデル”として認められた点は大きい。弊社が採用しているコンピュータープログラミングニットに集約したものづくりがステークホルダーにインパクトを与えた、と。ただそれを証明するのが大変だった。自由記述で提出したものに対して、「布帛の生産ではどのくらいごみが出ているのか証明を」とか「横編ニットはマイノリティーなのかマジョリティーなのか説明を」などと返ってくる。さまざまな人たちに協力してもらいデーターを集めたり、実際に同じ形をニットと布帛で作って比較したりしてラリーを繰り返し証明をした。

岡田:我々の“ポッタリー”シリーズは、デザインを基本的にほとんど変えない。これにより、生産工場は失敗が減り、ロス率が下がる。それらを一つ一つ数字を取り証明してゆく。

高橋:“ポッタリー”を主軸とすることで、毎シーズン発注量が増え、原料であるペットボトルの再利用率も確実に上がる。あと意外だったのが、“ポッタリー”を東京都で作っていることが評価された点。本社との距離が近いことがポイントだった。BコープはSDGsの1番、貧困の問題に対して非常に強い危機感を持っていて、人件費が安い国で生産した商品を先進国で販売するビジネスモデルは、賃金格差や貧富の差を利用したビジネスであるからSDGsにふさわしくない、と判断している。

WWD:それらの判断は、Bコープを目指す以前から高橋代表が持っていた感覚からくるのか。

高橋:言語化は難しいが、前職から日本で日本人と作るビジネスだったから自然に行き着いた答えだとは思う。

300の質問に答える中で国際的な視点を得た

WWD:ビジネス形態は企業の成長とともに変化する。CFCLがニットではなく布帛に力を入れたくなる日がくるかもしれない。

高橋::Bコープは3年に1度、アップデートが必要だ。ビジネスモデルが変われば評価を失う可能性はあるが、ニットのブランドとしてスタートした「CFCL」ブランドのコアは変わらないと思う。

WWD:企業の財務的な成長とBコープの関係をどう捉えているか。

岡田::設問の多くは財務的な数値と合わせた回答が求められるから切っても切り離せない。例えば“ポッタリー”ドレスがどれくらいの再生繊維を使っているかは、商品がどれだけ売れたかに直結する。ちなみにBコープの対象はあくまで営利団体で、NPOなどは対象外。それだけ財務と密接というわけだ。

WWD:取得を通じて企業として得たことは他にあるか。

岡田::2つある。300の質問に答える中で国際的な視点を得たこと。これは非常に大きい。もう一つは。Bコープのコミュニティーに参画すること。現時点で業界も国境も超えた5000社以上の認証Bコープがある。彼らとのコミュニケーションを通じてビジネスをどうやってSDGsで実現するのか、具体的なケーススタディを得てわれわれなりにトランスフォームすることもできるだろう。SDGsは1社では成し得ないパートナーシップの世界なので、世界的なスケールのコミュニティーの中でチャレンジすることで企業の成長にもつながることは間違いない。

WWD:従来なら国外に出て経験して得るほかなかった国際的視点を日本にいながら得られるのは大きい。

高橋::世界的な信頼を獲得していることは間違いない。6月にパリでプレゼンテーションを行ったが、特にラグユアリー関係者はBコープを知っており、認証申請中の話をすれば「弊社はSDGsに関してこういった取り組みをしています」といった説明も不要で、話が早い。

WWD:パスポートみたいだ。

高橋::洋服は結局、社会との接点だから、トレーサビリティーが取れている服なのか、は今後特にラグジュアリーにおいては非常に重要だと思う。

“信用”は漢字2文字だけど、それを構築するのは非常に難しい

WWD:CFCLがBコープを取得したというニュースはある意味、CFCLに関わるサプライチェーンの評価にもつながる。

岡田::アパレルビジネスのサプライチェーンは長い。その中でアパレルブランドはデザインを決めるディシジョンファクターでもある。認証は糸、ニット工場、染色工場、物流との細かなやりとりの結晶であり、128という数字はCFCLに関する全ての企業の集大成だと思う。

WWD:関連企業へはどのように共有したのか。

高橋::岡田が作った資料「パフォーマンスインデックス」を持って説明してまわった。外資と仕事をしている工場は労働条件や廃棄問題に対してすでに取り組んでいるところが多い。一方、全くノータッチの工場もあるが「ならば取り引きをしない」ではなく、先方の社員向けに勉強会を開くなど伝えることに尽力した。

岡田::300の設問の中で、我々のオフィスに関することについて考えるのは比較的容易だが、サプライチェーンのコミュニティーの中のことを調べて実践することは莫大な時間と胆力が必要だ。「パフォーマンスインデックス」は環境省が策定した環境マネジメントシステム「エコアクション21」をベースに、Bコープの設問を加え、中小企業が取り組める内容とした。151の項目からなる。いきなりその量を送りつけられたら相当面食らうから、まずは信用を構築し、時間をかけて説明をした。 “信用”は漢字2文字だけど、それを構築するのは非常に難しい。その構築に一番集中し気を配ったとは思う。

高橋::岡田がグイグイ行くから焦ったこともあるけれど、「サステナビリティーに取り組みたいが、何から手をつけていいかわからなかった」という工場も多いことがわかったりした。岡田の熱量が共感を呼んだところもあると思う。

WWD:日本のアパレルで初の取得となり、今思うことは?

高橋::Bコープは取って当たり前の世界がこれから来るだろう。仕掛ける側か仕掛けられる側かに分かれなら、仕掛ける側に回らない限り、その企業自体の存続が危うくなってくるとも思う。同時に生活者のリテラシーも確実に上がっているから改めて襟を正したい。「ニット以外の方が儲かる」「他国で作った方が断然安い」といったことに直面したとき、どうするか。カフェで「今日はタンブラー忘れたからプラカップください」と同じで、時にはそれもいいけど、小さいことの積み重ねで気がつけば「あれ、この会社こんな風だったけ?」となる。全社員の意識が低下していないかは常に自覚してゆきたい。

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「大喜利みたいな人事」と本人もビックリ 伊勢丹本館からメンズ館に異動したコスメバイヤーの半年

 伊勢丹新宿本店メンズ館1階の化粧品売り場を担当する宮下美彩子コスメティクス バイヤーは今春、隣接する同店本館から異動した。「WWDJAPAN」で働き始めて15年、その間、多くのバイヤーを取材してきたが、本館からメンズ館、逆にメンズ館から本館に異動した人の話は、正直ほとんど聞いたことがない。本人も「大喜利みたいな人事」と語る宮下バイヤーに、今の仕事のやりがいについて聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):これまでのキャリアを教えて。

宮下美彩子・伊勢丹新宿店 メンズ館 コスメティクス バイヤー(以下、宮下バイヤー):入社1年目は、伊勢丹新宿本店本館のランジェリー売り場に立ちました。その後、まずはビューティアポセカリーのアシスタントバイヤーに。次は台湾の新光三越で、「イセタン ミラー メイク&コスメティクス(ISETAN MIRROR MAKE & COSMETICS)」のような、セミセルフのセレクトショップの業態開発に携わりました。台湾には当時、存在しなかった業態です。帰国してからは、本館の化粧品フロアのアシスタントバイヤーに。ビューティ歴は5年になります。

WWD:そこから、同じコスメとは言え、メンズ館のバイヤーになった。

宮下バイヤー:本当にびっくりしました。会社には、「どんな関わり方でも良いから、化粧品事業に携わりたい」と言ってたんです。想像もしなかったけれど、今の仕事は確かに「化粧品事業」。「大喜利みたいな人事だな」って思いました(笑)。上司からは「本館とメンズ館の架け橋になれ!」と励まされました。

WWD:「どんな関わり方でも良いから、化粧品事業に携わりたい」と言う程、コスメに魅了されるのは、なぜ?

宮下バイヤー:もちろん商材自体が大好きです。でももう一つの理由は、ビジネスモデル。コスメはアパレル以上に販促費や人件費のウェイトが重く、独特な原価構造の仕組みの上に成り立っています。それだけモノにこだわりつつも、人による影響が大きいビジネスだと思うんです。同じ商品を売っていても、PRの仕方や届け方で売り上げは大きく異なります。特にメンズ館やビューティアポセカリーは、新商品や限定品の比重が少ないんです。一年中、同じ化粧品やフレグランスを売っていますが、誰に、何を届けるかは毎回違う。「切り口次第」のビジネスが、面白いんです。

WWD:「大喜利みたいな人事」は、正直不安だった?

宮下バイヤー:心配半分、「頑張ろう」という気持ちが半分でした。「頑張ろう」と思えたのは、「男性美容」や「メンズコスメ」「メンズメイク」という言葉をメディアで見る機会が増えていたから。すごくアップトレンドで、「可能性しかないな」と思えました。一方心配の理由は、私自身メンズ館の理解が浅く、メンズコスメに関わりがなかったから。同じビューティ業界に身を置いているのに、日々の業務ではメンズ館のコスメフロアチームとの関わりさえ、ほとんどなかったんです。どんなお客さまに支えられていて、今はどんな商品が売れているのか?も知りませんでした。

WWD:実際、働き始めてから印象の変化は?

宮下バイヤー:感度の高い人の一部や、自分への意識が高い人には当たり前になりつつありますが、盛り上がりはメディアが先行しています。もちろん「コスメはジェンダーに関係なく、誰でも使えるもの」という感覚のお客さまもいらっしゃいますが、一方で敷居の高さを感じたり、「関係ない」と思っていらっしゃったりの方は、想像以上に多良い印象です。

WWD:そんな人たちには、どう寄り添いたい?

宮下バイヤー:感度の高い人にとってもフレッシュな売り場でありつつ、まずは「身だしなみは“自分ごと”じゃなかったけれど、一度見てみたい」や「大多数が女性の化粧品売り場は恥ずかしい」という方にとって、メンズ館という館だからこそ、安心して見て、試して、買っていただきたいです。まずはスキンケアの啓蒙です。お試しいただき、見て、実感できる環境を整備したいと思います。メンズ館には、洋服や美意識について、強い“こだわり”を持っているお客さまが大勢います。だからこそ、男性の趣味に寄り添った切り口で提案し、試していただき、「良いじゃん」って思ってもらいたいです。

WWD:具体的には?

宮下バイヤー:サウナやキャンプ、サーフィンなどのシーンで使えるボディーソープや虫除け、リフレッシュスプレーなどを提案しています。サウナで使える商材を提案したときは、館内の他のフロアとも連動しました。また、メンズ館には「香り」に強みを持つブランドが多いんです。お客さまのニーズも拡大しているので、ちょっとステキなハンドソープなども拡充したいですね。

WWD:新規導入したブランドには、どんなものが?

宮下バイヤー:エントリーアイテムとして「イロイク(IROIKU)」を導入しました。“色付きの美容液”という感覚で、「ファンデーションは、ちょっと無理」という男性にも寄り添えると思います。

WWD:「イロイク」は、1個2200円。エントリー商材とは言え、“坪効率”が求められる百貨店への導入には葛藤もありそう。

宮下バイヤー:アシスタントバイヤーの青木さんと「毎週、何個売ったら良いんだ?」なんて話をすることもあります(笑)。ただ、今回は単価ではなく、商品の背景やタッチポイントとしての価値を重視しました。

WWD:「本館とメンズ館の架け橋」には、どうやってなるつもり?

宮下バイヤー:4月から、本館にしかないけれど男性にも提案したいブランドのプロモーションに取り組んでいます。「ヤーマン(YA-MAN)」や「ダイソン(DYSON)」などの美容機器だけでなく、今後は「イプサ(IPSA)」など、スキンケアブランドも紹介する予定です。特に(プレステージのスキンケアブランドが並んでいる)本館2階は、「用がない」「知らない」男性も多いんです。まずは知っていただき、気に入ったら次回以降は本館に行っていただければ良いと思っています。

WWD:本館とメンズ館に「架け橋」がなかったのは、館ごとに課せられる予算も影響しているのでは?「2回目以降は本館で」で、本当に良い?

宮下バイヤー:「お客さまにとって一番プラスになれば」とシンプルに考えています。「本館ORメンズ館」は、こちらの事情です。お客さまにとっては知らないブランドに出合うきっかけになって、ブランドにとっては男性中心のお客さまとの新しいご縁になって、接客のハード面を整えている本館2階にとってはお客さまとして定着し、メンズ館にとっては52週常に新しいショップという付加価値につながれば、4者が全員ハッピーになれると思うんです。

WWD:実際、「架け橋」としての活動もスタートした?

宮下バイヤー:本館1、2階のバイヤーは、昨年度まで同僚でした。年度始めのミーティング以降、「お客さまと、ブランドにとって良い形を考えてましょう」と目線を合わせています。メンズ館でプロモーションするブランドについても、本館のバイヤーに紹介してもらうことがあります。ビューティは、ますますジェンダーレスになるでしょう。お客さまは、どっちで買っても良いし、どっちで出会っても良い。それは、オンラインでもオフラインでも変わりません。縦割りの視点でいろんなことを決めるのではなく、お客さまの視点に立った時の買いやすさを考え、それぞれの役割を全うし、一緒に進んでいければと思っています。

WWD:寂しくなることはない?

宮下バイヤー:個人的には、アイシャドウやリップが、今の仕事には圧倒的に足りていません(笑)!本館のプロモーションを見ると、毎回ワクワクします。

WWD:メンズ館のバイヤーになって、「良いブランドだなぁ」と改めて痛感したブランドはある?

宮下バイヤー:肌の性差は大きいので、男性に寄り添っているブランドのスゴさを改めて感じました。「シセイドウ メン(SHISEIDO MEN)」「ファイブイズム バイ スリー(FIVEISM × THREE)」「アスタリフト メン(ASTALIFT MEN)」などですね。「アスレティア(ATHLETIA)は、使う人をブランドから定義しない姿勢が「これからのブランドなんだなぁ」と感じさせます。


 ビューティ業界には、魅力的なバイヤーが多数存在している。「WWDJAPAN」は、普段は売り上げや人気ブランド、成功したプロモーションばっかり聞いているバイヤーのストーリーにも注目。これまでのキャリアやビューティにかける情熱、消費者への想いを聞く。

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“ライ・ウイスキー”ってどんな味? 「ホイッスルピッグ」ブレンダーが夏にぴったりの飲み方を伝授

 世界的にウイスキーブームが到来している昨今、2021年に日本に上陸したのが日本ではMHD モエ ヘネシー ディアジオ(MHD MOET HENNESSY DIAGEO)が輸入販売するライ・ウイスキーの「ホイッスルピッグ(WHISTLEPIG)」だ。「ホイッスルピッグ」の特徴は、原料にほぼ100%ライ麦を使用しているという点だ。

 来日した「ホイッスルピッグ」のブレンダー、ミッチ・マハール(Mitch Mahar)氏によると、かつてアメリカではウイスキーといえばライ・ウイスキーが王道だったという。しかし、1920~33年に施行された禁酒法が撤廃された後は、そのお株をバーボンやモルトウイスキーなどに奪われていったという。しかし2007年に「ホイッスルピッグ」の創業者デイブ・ピッカレル(Dave Pickerell)が同ブランド立ち上げ、研究を重ねた結果、17年にはアメリカ最大の出品数を誇る「サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション」で最優秀ウイスキーの称号を獲得するなど、注目を集めている。

 とはいっても日本ではまだ認知度が低いライ・ウイスキー。マハール氏にその魅力や暑い日本の夏にぴったりの飲み方を聞いた。

WWD:ライ・ウイスキーの特徴は?

ミッチ・マハール「ホイッスルピッグ」ブレンダー(以下、マハール):ライはすごく存在感があって表情豊かです。クラッシュしたブラックペッパーのようなノートにクローブやシナモンの風味も感じることができます。シングルモルトウイスキーは、シェリーやバニラ、キャラメルが強いものもありますが、ライ・ウイスキーはライ麦が持つスパイシーさが前面に出ます。

WWD:アメリカにはほかにもライ・ウイスキーのブランドはある?

マハール:ライを扱っている蒸留所はありますが、ライ麦は作業過程ですごく粘着性が強くなって扱いが難しいので、われわれのようにライ麦をメインで使うところは少なくなっています。われわれはライ麦の風味や特性にほれ込んでいるので、ライ麦を使わないという選択肢は考えたことがありません。

WWD:マハールさんが新興の「ホイッスルピッグ」に参画したきっかけや理由は?

マハール:私はワイン業界でキャリアをスタートさせたんですが、友人からバーモント州のブリュワリーで働かないかと誘われ、ビールの世界に飛び込みました。その後、「ホイッスルピッグ」からオファーが来たので即座に参画を決めました。というのも、蒸留所は部外者が非常に入り込みづらいタイトなコミュニティなので、そのチャンスが目の前に来たら絶対に逃がしてはいけないと思ったんです。

WWD:ワインとビール、ウイスキーではそれぞれ製造方法も異なるので未経験者には難しい世界だった?また、“ブレンダー”という仕事で難しい点は?

マハール:ウイスキーとビールの製造工程は途中まで似ているから、私の場合、完全にゼロからのスタートということにはならず、これまでの経験が非常に役に立ちました。ウイスキー作りで最も難しいのは蒸留の部分で、狙い通りのフレーバーを作るのが非常に難しいと感じます。

WWD:狙いどおりのフレーバーにするコツは?

マハール:第一に考えることは、ライ特有のフローラルでスパイシーなフレーバーをどうやったら引き立てられるかということ。初めのころは、原酒を味わってそれが樽の中で熟成された10年後にどんな味に変わるのかを想像することに苦戦しました。原酒はアルコール度数が高いので、ワインのように舌の上で味わうなんてこともできません。1滴でものすごいインパクトとアルコールがやってくるので、そこから10年後の完成形を想像することは非常に難しいんです。

WWD:ブレンダーとしての使命は?

マハール:私の仕事は消費者が体験したことのないフレーバーを届けることです。仕事の多くがイノベーションとも言えますね。常に新しいことを考え、これまでになかったものを生み出すことが難しくもありやりがいでもあります。

ブレンダー直伝!「ホイッスルピッグ」のオススメの飲み方

WWD:日本でも「ホイッスルピッグ」は愛される存在になれると思う?

マハール:気に入ってもらえるはずです。日本のバーテンダーは、常に新しいことに挑戦し続けていて、新しいフレーバーにも臆さない。シングルモルトやバーボンの一部はカクテルに使うとほかの素材が勝ってしまいますが、ライ・ウイスキーはそれ自体の存在感が強いから、何と組み合わせても他の素材を引き立てつつ自己主張もして、非常に良いバランス生み出してくれると思います。

WWD:カクテルでもストレートでも楽しめるということだが、オススメの飲み方は?

マハール:アメリカではハイボールはあまりメジャーではありませんが、「ホイッスルピッグ10年 スモールバッチ・ライ(以下、10年)」を使ったハイボールを試してみたらとても美味しかったです。10年は、ハイボール以外のカクテルとも非常に相性がいいと思います。

 「ホイッスルピッグ 12年 オールドワールド・ライ(以下、12年)」は、それ自体でいろんなフレーバーを楽しめるので個人的にはストレートで飲むことが多いですね。でも12年を使ってカクテルの“オールドファッションド”を作るのはオススメです。12年はポートワインのような甘さがあり、カクテルに甘みをたくさん足す必要がありません。

 日本の夏は暑くて湿度も高いですが、「ホイッスルピッグ 15年 エステートオーク・ライ(以下、15年)」はストレートかロックで飲むといいと思います。15年は使用する樽のおかげでハイランドスコッチのような軽いスモーキーさをかすかに感じ取ることができるので、それを楽しんでほしいですね。あと、かすかなバニラのノートも感じます。マシュマロのような感じともいえますね。

 こんな感じで私のオススメをお伝えしましたが、これはあくまで1つの提案にすぎなくて、「ホイッスルピッグ」の飲み方に正解はないですし、私自身イノベーションを追求する身としても、ぜひいろんなものと合わせて楽しんでほしいと思います。

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フジロック出演のスーパーオーガニズム 最新アルバムに込めた思いやメンバーのファッション的特徴を聞く

 最近は誰もがどこでも自由に音楽を生み出せる時代だからこそ、よりオリジナリティが求められるようになった。そんな中で、どの音楽的先人たちにも似ても似つかないサウンドを奏でるのが、多国籍バンドのスーパーオーガニズム(Superorganism)だ。日本、韓国、イングランド、ニュージーランドのバックグラウンドを持つ彼らは、インターネットで交友を深める中で2017年に誕生した楽曲「Something for Your M.I.N.D.」を発表すると、R&B歌手のフランク・オーシャン(Frank Ocean)が自身のラジオ「ブロンデッド(blonded)」でピックアップしたこともあり一気にブレイク。わずか“2分45秒”で世界中の音楽好きを虜にしたのである。

 18年にリリースしたデビューアルバム「Superorganism」から、コロナ禍を経て制作した2ndアルバム「World Wide Pop」のリリースに合わせ、メンバーのハリー(Harry)とオロノ(Orono)が来日。7月31日には「フジロックフェスティバル '22(FUJI ROCK FESTIVAL '22)」のホワイトステージに登場する2人に、まだまだ謎の多いバンドについてや、結成の経緯からお互いの第一印象、「World Wide Pop」の秘話、そして各メンバーのファッション的特徴までを聞いた。

ーーまずは初歩的な質問として、バンドメンバーの出会いと結成の経緯を教えてください。

ハリー:オロノとは、僕がエヴァーソンズ(The Eversons)というバンドのメンバーとして来日した2015年に、東京で出会ったんだ。彼女はユーチューブ(YouTube)を通じて僕らのことを知ってライブを見に来たから、ユーチューブが縁をつないでくれたことになるね。その後、17年にちょっと違う形式でただ音楽を発表するプロジェクトを思い付いて、インターネットでメンバーを少しずつ集めていたんだけど、その時に声を掛けた1人がオロノなんだ。1990年代はバンドを組もうと思ったら実際に会う必要があったから、同じ地域に住むメンバーばかりだったけど、今の時代はオンラインで誰かと出会うことは普通だし、世界中の人と一緒に音楽が作れるよね。オロノは当時アメリカに、ソウルはオーストラリアに、僕ら他のメンバーはロンドンに住んでいたし。それで、彼女と初めて作った楽曲「Something for Your M.I.N.D.」が世界的に評価を得ることができたからスーパーオーガニズムを結成して、レコード会社として契約し、アルバムを制作し、ツアーをするようになったんだよ。

ーーお互いの第一印象は?

オロノ:彼のバンドのインタビューを全部読むくらい大ファンだったから、来日ライブを観た時は本当に手足が震えるくらい「彼だ!どうしよう!」って感じだった(笑)。

ハリー:当時の彼女はまだティーンエイジャーだったんだけど、まず英語力の高さと頭の回転の速さにびっくりしたね。それからフェイスブック(Facebook)で友達になったら、彼女が自分で作ったアート作品や音楽をアップしていて、それらが僕のツボにハマったんだ。特に彼女の声を素晴らしいと感じたから一緒に曲を作ろうって話になったんだけど、特に期待しないでいたのに盛り上がって「Something for Your M.I.N.D.」ができたんだよ。

ーー自分たちが思う、多国籍バンドだからこそのポジティブな面とネガティブな面は?

ハリー:自分の視野を広く持つことができている、かな。例えば、日本には数日前から滞在していてオロノの実家に泊まっているんだけど、一緒に自転車に乗って彼女の地元を探索したり、今まで出合ったことのないトンカツを食べたりと、新しい経験ばかり。もし、スーパーオーガニズムが全員がイングランド出身のメンバーだったら絶対に経験できなかったことだから、すごくポジティブに感じているよ。ただ、個人としてはアウトサイダーだと感じることが時折ある。というのも、僕はイングランドで生まれてニュージーランドで育っているから、自分のことを完全なイングランド人だともニュージーランド人だとも思わないんだ。でもこのバックグラウンドがあるからこそ、いろいろな文化や人種に対してオープンマインドでいられるんだろうね。

オロノ:最初はどちらの面においても価値基準を置いてしまいがちだったけど、そういう考え方をしないようになったかな。

ーー多くの楽曲で“足し算的要素”を感じるのですが、制作過程を教えてください。誰か一人が舵を取ることが多いのか、それともその時々によって違うのでしょうか?

ハリー:僕たちの楽曲は、5コードのものもあるけど大体が3コードで、それを土台にしつつ核になるものがあって、それに肉付けしていくことが多いね。核となるものはいつも変わらなくて、キャッチーなメロディやいいコーラス、いい歌詞。それにサウンドエフェクトやシンセサイザー、ギターサウンドをかけ算したり割り算したりしていく感じで、楽曲をプレゼンテーションする感覚に近いかもしれない。

オロノ:でも肉付けしすぎると逆に楽曲がバラバラな感じになってしまうから、そこのさじ加減が重要。今回のアルバム「World Wide Pop」に参加してくれた音楽プロデューサーのスチュアート・プライス (Stuart Price)は、その点ですごく波長が合ってやりやすかった。

ーー2ndアルバム「World Wide Pop」を制作するに至った理由は?

オロノ:実は、2018年に1stアルバム「Superorganism」を制作し終えた瞬間から「World Wide Pop」の制作はスタートしていて、収録曲のいくつかのリリックは17年の時点には書き始めていたわ。

ハリー:そういった楽曲は少しずつ変化させているんだけど、ミュージシャンというのはある意味で“頭の病気”を患っていて、“楽曲を制作することが幸福である”という強迫観念に捉われている節があるんだよ。あとは“クリエイティブであり続けたい”病にかかっている人もいるし、自分の頭の中のアイデアを外の世界に出すことで、自分自身を保つことができるんだ。

オロノ:ある意味では、楽曲は常に書き続けているからすでに3rd、4th、5thアルバムを制作していることになるだろうし、ずっとつながっているものなんだよね。

ーーアルバムから先行配信していた「It’s Raining」や「On & On」などのシングルは、どれもアートワークが動物をモチーフにしていますね。

オロノ:今回の「World Wide Pop」のアートワークは自分が描いたんだけど、ちょっとした仕掛けとしてCDジャケットを開けたらシングルのアートワークがパズルのように組み合わさるようにしているの。動物を選んだ理由は、メンバー全員が好きだから。それで一人一人にスピリットアニマルを聞いて、ハリーだったらキツネで、私だったらナマケモノみたいな。今後、このプリントは売ろうと思っている。

ーー「World Wide Pop」の中で、特にエピソードのある楽曲があれば教えてください。

ハリー:「Don’t Let The Colony Collapse」という楽曲は、19年のある夏の日のロンドンが記録的な暑さで、信じられないくらいオレンジ色だった空を見てメロディーとコードを思い付いたんだ。自分のベッドルームでアコースティックギターを片手に、スマホにボーカルパートを録音したのはいいけど、その後それを忘れていた。しばらくして、ツアーの最終日にジャカルタのホテルのプールでお酒を飲んでいる時に思い出して、オロノにアイデアを話したらとても気に入ってくれたんだ。それからロンドンに戻って、オロノとアイデアを送り合いながらアコースティックギターでさらに書き進めて、ニュージーランドに帰省した時にも母親のピアノを弾きながら少しづつ構成を考えた。それと同時に、オロノはリリックを考えていてくれたんだ。

オロノ:最初に聴かせてくれたのはアコースティックバージョンだったけど、その時からダンスヒットになることを感じていて、実際に制作の時にスチュアートがドラムをたくさん足してくれたんだよね。

ハリー:スチュアートはその道のエキスパートだから、最終的にクラブアンセムのような感じに仕上げてくれたのさ。

ーー先ほどスピリットアニマルの話が挙がりましたが、2人から見て各メンバーのファッション的特徴は?

オロノ:私はダサい(笑)。

ハリー:オロノは表現するのが難しいな……。Tシャツにジーンズ、時々カーゴパンツって感じ。

オロノ:お父さんぽいよね。

ハリー:それだ、“ダッド”だね。トゥーカン(Tucan)は、ソフトでエキセントリックなオタクって感じ?

オロノ:そんな感じで、ちょっと「ブルー・アルバム」感があるよね(編集者注:“泣き虫ロック”と評されるバンドのウィーザーが1994年に発表したデビューアルバム『Weezer』のこと)。

ハリー:そうそう。それと1970年代ぽい感じがして、口ひげがぴったりなファッションをよくしているね。ソウル(Soul)は、ちょっとサイケデリックな宇宙人ぽさがあるかな。

オロノ:彼はとてもオシャレだと思う。

ハリー:ビー(B)はドレスとかを着ていて、ガーリーな感じ。それに、カラフルなものをよく身に着けているよ。僕自身は……分からないけど、フットボールシャツにジーンズかショーツが多いかな。今日着ているのは、僕のホームタウンを拠点にするフットボールチーム、バーンリーFCの1992-93シーズンのユニホームだね。昨シーズンまではプレミアリーグに所属してたんだけど、今シーズンは降格してEFLチャンピオンシップ(2部相当)で戦うんだ。残念だよ……。

ーー昨今の音楽とファッションシーンの関わり方についてはどう思いますか?

オロノ:昔からあったことではあるけど、最近はブランドがミュージシャンをモデルに起用することがトレンドすぎる。私は、オシャレな衣装を着てポーズを取るのも、撮影されることも好きじゃない。正直なところ、ニューヨークでファッションシューティングで今まで着たことがないようなきらびやかな衣装をまとい、おかしなポーズで撮影するのは非常に居心地が悪いと思っちゃう(笑)。“ファッショナブルである”というのが音楽をやる理由の一つではないから、ファッションにはあまり興味がないかな。洋服は自分で着るものであって、着られるものではないから。

ハリー:自分の好きな洋服を着ていて、オリジナリティを持って着こなしているミュージシャンのファッションは気になるし、本当のパーソナリティを反映している場合は興味があるね。でも、僕自身はファッションに対して全く気を遣っていなくて、Tシャツとかジーンズとか、とにかく自分が着心地が良いと感じたものを選んでいるよ。というのも1stアルバムを作った後に、自分の本当の姿やパーソナリティーを反映する、自分が着たいものを着ること、そして決してお仕着せのファッション撮影はやらないことは、みんなで話し合ったルールの一つでもあるんだ。洋服を着せる行為は、アーティストの“個性的な声”を潰してしまっているような気がするんだよね。ただ、ある意味ミュージシャンはその時のトレンドを取り入れて自分なりに消化することに長けているから、そういう意味で自分らしくトレンドを着ることは問題はないとは思っているよ。

オロノ:自分が着たいもの、着ていて居心地の良いものを着るのが一番なのは当然。だけど、最近は着ているものが自分自身を表現する手段でもあることに気が付いたの。何を着ているかで自分を表現できたらいいんじゃないかって。私は着心地がいいこと、リラックスできることを最も大切にしているから、Tシャツやジーンズ、カーゴショーツ、ピアスで自分の個性を表現している。だからこそ、今まで着たことのないようなものを着せられて撮影することは、自分自身ではないから好きじゃないの。

ーーそれと同時並行的に、マーチャンダイズを重要視するアーティストも増えています。

ハリー:2人ともマーチャンダイズのデザインには深く関わっていて、最近ではアメリカ人アーティストのケル・ローレン(​​Kel Lauren)とコラボしたよ。日本では、数年前に「アンダーカバー(UNDERCOVER)」とのコラボTシャツを制作したように、好きなブラントやアーティストとのコラボはやっていきたい。いかにもマーチャンダイズというものではなくて、クオリティーもデザインも良くて、自分がそのバンドのファンだったら絶対に買いたいと思うようなものをこれからも作っていきたい。

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【9月23日まで無料公開】海洋危機に立ち上がるZ世代 日本版パーレイ目指す【海の危機、私たちはどう動く?】

 Z世代を中心とするNPO法人ウミナリ(UMINARI)は、生活者や企業、研究機関などさまざまなセクターと共に海洋環境問題の解決に取り組む。ウミナリ代表理事を務める伊達ルークは、大学在学中の2018年に同団体を立ち上げた。「アディダス(ADIDAS)」や「ディオール(DIOR)」などとも取り組む海洋保護団体パーレイ・フォー・ジ・オーシャンズ(PARLEY FOT THE OCEANS、以下パーレイ)に着想を得て、中立的なサードセクターを立ち上げてムーブメントを最大化することを目指す。彼のビジョンは国連関係者らからも共感を得て、2019年には国連環境計画(UNEP)が主催するUNEPフォーラムにも登壇した。伊達代表に話を聞いた。

WWD:ウミナリを立ち上げた経緯は?

伊達ルーク=ウミナリ代表理事(以下、伊達):「アディダス」とパーレイのコラボスニーカーが、海洋問題を知るきっかけだった。カッコ良いなと思って手に取ったその商品が実は海のごみから作られているという。調べていくうちに、問題の深刻さに衝撃を受けた。何か自分もしなければと思い、最初は一人で浜辺のごみをひたすら拾った。たばこやペットボトルのような生活から出るごみもあれば、レジンペレットのような産業系のごみ、海外からの漂着ごみもある。この問題は消費者だけが悪いわけでも、企業だけが悪いわけでもない。これだけ多岐にわたっているのだから、みんなで解決を目指さなければと思った。パーレイの在り方がインスピレーションになり、中立的な歯車になってさまざまなセクターと手を組める団体を作ろうと思った。

WWD:海洋環境問題はすぐに自分ごと化できた?

伊達:ネットで調べているうちは年間で800万トンのごみが流れているといったスケールの大きい数字を知っても正直SFを見ている感覚だった。僕は千葉の海辺出身で、実際にそんなにごみが落ちていた記憶もない。でも一連の問題を認識してからあらためて地元の海を見ると確かにごみが落ちていた。知らないとこんなにも目に入ってこないのだと反省の気持ちが生まれたときに、火が付いたと思う。

WWD:ウミナリの活動内容は?

伊達:大きな柱は教育活動だ。特に未来の当事者になる世代とコミュニケーションを取り、共にビジョンを構築することが大切だと考えている。最初は小学校での授業の枠をもらって講義をした。中学校、高校、大学と徐々に対象を広げ、今は企業でのセミナーなども行っている。昨年は学生から社会人まで誰でも参加できるゼミ形式のイベントも実施した。一番多いときには、約150人が参加した。一方的な講演だけではなく、さまざまな世代が対話し共創が生まれる場の提供にも力を入れている。そのほかにもビーチクリーン活動や大手飲食メーカーの包装材の開発に加わったり、スポーツブランドのマーケティングをアドバイスしたりといった企業へのアドバイザリーも行っている。

WWD:専門的な知見はどこで得た?

伊達:学生時代に、国連の環境部門に勤める職員に送った1通のメールが人生の転機になった。ブラジルオフィスに勤めていたその人に「自分は日本でNPOを立ち上げて、こんなムーブメントを起こしたい」と熱いメッセージをコンタクトフォームから送ったら、国連のシニアディレクターと直接会う機会をくれた。そこから一気に人脈が広がり、各界の識者に会ったり、カンファレンスに参加したりして知識を詰め込んだ。

WWD:ウミナリのメンバーはどのような人たち?

伊達:学生や社会人まで約30人のメンバーが在籍していて、年齢は僕が最年長だ。海の豊かさを守るというパーパスに共感してくれている部分は共通するが、それ以外の参加理由は人それぞれだ。例えば海の生き物が好きな人もいれば、ムーブメントの作り方に興味を持ってくれる人もいる。メンバーはやみくもに増やすのではなく、僕自身がきちんとコミュニケーションを取れて一人一人がきちんとコミットできる規模に気を付けている。

海とのつながりを考え、ストーリーを紡ぐことが大事

WWD:海洋環境問題に対するアクションを模索する企業へのアドバイスは?

伊達:環境や社会課題への取り組みを特定の部署が担っている事例をよく見かけるが、企業が本来のパフォーマンスを出し切るためには、コアとして取り組む態勢を整えることが不可欠だ。課題解決を企業活動のコアに結び付け、ストーリーを構築していく作業を私たちは手伝いたい。全ての経済・社会活動のベースが海である以上、海と関係ない企業はない。では、自分たちはどう海とつながっているかというコンテクストを考えることが大事だ。

 先日コミュニケーションファームのエデルマン・ジャパンとビーチクリーンを行った。ビーチクリーンをきっかけに、エデルマンだからこそできる海洋問題に対するコミュニケーションについて社員とディスカッションした。単発のアクティビティーで終わらせず、本業の中でどう取り組めるか、クライアントにどう働きかけるかといったことにまで広げていくことが大事だ。社会課題に対していろんなセクターをつなげるコミュニケーション方法を考えることは本質的に同社だからできることだし、そこから生まれるアクションは同社のブランドバリューをきちんと持ち上げてくれるものになる。

WWD:特にファッションやビューティ企業の取り組みを見て思うことは?

伊達:例えば、漁網をまた糸にして服にした場合、洗濯すればマイクロファイバーが出てしまうといった批判も聞くが、それを僕はグリーンウォッシュみたいな言い方はしない。何か問題を解決しようとするときに、ゼロ・100で判断してしまうと進まない。インパクトだけで見ずに、企業として問題自体を知らせていくある意味メディアとしての役割、責任もあるはずだからだ。

WWD:今後のビジョンは?

伊達:今年から調査活動に注力する。海洋環境問題はまだ分からないことも多い。未来の当事者の世代が熱量を持って、周りを巻き込みながら取り組むことが理想だ。僕らが発信力のある調査研究をし、その結果だけでなく、過程もオープンにしていきたい。例えばデータベースに強い企業や、水中をきれいに撮影できるプロダクトを持っている企業なども巻き込みたい。同時に、業界の垣根を越えたアライアンスの構築も大切だ。海洋問題に対して、いろんなセクターが共同して取り組む枠組みを作る。そこにファッションやビューティ業界も入ってきてほしい。


【WWDJAPAN Educations】

【第2期】サステナビリティ・ディレクター養成講座
2022年9月30日(金)開講

 昨年初めて開催し好評を得た「サステナビリティ・ディレクター養成講座」を今年も開講。サステナビリティはこれからの企業経営の支柱や根底となるものであり、実践が急がれる事業の課題である。この課題についてのビジョンを描くリーダーの育成を目的に、必要な思考力・牽引力を身につける全7回のワークショップとなる。前半は各回テーマに沿った第一線で活躍する講師を迎え、講義後にはディスカッションやワークショップを通して課題を明確化し、実践に向けたアクションプランに繋げていく。

 また、受講者だけが参加できるオンライン・コミュニティーでは、「WWDJAPAN」が取り上げるサステナビリティに関する最新ニュースや知っておくべき注目記事をチェックでき、更に講義内容をより深く理解するための情報を「WWDJAPAN」編集部が届ける、まさに“サステナ漬け”の3カ月となる。
講義のみが受講できるオンラインコースも同時に受け付けています。


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【9月23日まで無料公開】海洋危機に立ち上がるZ世代 日本版パーレイ目指す【海の危機、私たちはどう動く?】

 Z世代を中心とするNPO法人ウミナリ(UMINARI)は、生活者や企業、研究機関などさまざまなセクターと共に海洋環境問題の解決に取り組む。ウミナリ代表理事を務める伊達ルークは、大学在学中の2018年に同団体を立ち上げた。「アディダス(ADIDAS)」や「ディオール(DIOR)」などとも取り組む海洋保護団体パーレイ・フォー・ジ・オーシャンズ(PARLEY FOT THE OCEANS、以下パーレイ)に着想を得て、中立的なサードセクターを立ち上げてムーブメントを最大化することを目指す。彼のビジョンは国連関係者らからも共感を得て、2019年には国連環境計画(UNEP)が主催するUNEPフォーラムにも登壇した。伊達代表に話を聞いた。

WWD:ウミナリを立ち上げた経緯は?

伊達ルーク=ウミナリ代表理事(以下、伊達):「アディダス」とパーレイのコラボスニーカーが、海洋問題を知るきっかけだった。カッコ良いなと思って手に取ったその商品が実は海のごみから作られているという。調べていくうちに、問題の深刻さに衝撃を受けた。何か自分もしなければと思い、最初は一人で浜辺のごみをひたすら拾った。たばこやペットボトルのような生活から出るごみもあれば、レジンペレットのような産業系のごみ、海外からの漂着ごみもある。この問題は消費者だけが悪いわけでも、企業だけが悪いわけでもない。これだけ多岐にわたっているのだから、みんなで解決を目指さなければと思った。パーレイの在り方がインスピレーションになり、中立的な歯車になってさまざまなセクターと手を組める団体を作ろうと思った。

WWD:海洋環境問題はすぐに自分ごと化できた?

伊達:ネットで調べているうちは年間で800万トンのごみが流れているといったスケールの大きい数字を知っても正直SFを見ている感覚だった。僕は千葉の海辺出身で、実際にそんなにごみが落ちていた記憶もない。でも一連の問題を認識してからあらためて地元の海を見ると確かにごみが落ちていた。知らないとこんなにも目に入ってこないのだと反省の気持ちが生まれたときに、火が付いたと思う。

WWD:ウミナリの活動内容は?

伊達:大きな柱は教育活動だ。特に未来の当事者になる世代とコミュニケーションを取り、共にビジョンを構築することが大切だと考えている。最初は小学校での授業の枠をもらって講義をした。中学校、高校、大学と徐々に対象を広げ、今は企業でのセミナーなども行っている。昨年は学生から社会人まで誰でも参加できるゼミ形式のイベントも実施した。一番多いときには、約150人が参加した。一方的な講演だけではなく、さまざまな世代が対話し共創が生まれる場の提供にも力を入れている。そのほかにもビーチクリーン活動や大手飲食メーカーの包装材の開発に加わったり、スポーツブランドのマーケティングをアドバイスしたりといった企業へのアドバイザリーも行っている。

WWD:専門的な知見はどこで得た?

伊達:学生時代に、国連の環境部門に勤める職員に送った1通のメールが人生の転機になった。ブラジルオフィスに勤めていたその人に「自分は日本でNPOを立ち上げて、こんなムーブメントを起こしたい」と熱いメッセージをコンタクトフォームから送ったら、国連のシニアディレクターと直接会う機会をくれた。そこから一気に人脈が広がり、各界の識者に会ったり、カンファレンスに参加したりして知識を詰め込んだ。

WWD:ウミナリのメンバーはどのような人たち?

伊達:学生や社会人まで約30人のメンバーが在籍していて、年齢は僕が最年長だ。海の豊かさを守るというパーパスに共感してくれている部分は共通するが、それ以外の参加理由は人それぞれだ。例えば海の生き物が好きな人もいれば、ムーブメントの作り方に興味を持ってくれる人もいる。メンバーはやみくもに増やすのではなく、僕自身がきちんとコミュニケーションを取れて一人一人がきちんとコミットできる規模に気を付けている。

海とのつながりを考え、ストーリーを紡ぐことが大事

WWD:海洋環境問題に対するアクションを模索する企業へのアドバイスは?

伊達:環境や社会課題への取り組みを特定の部署が担っている事例をよく見かけるが、企業が本来のパフォーマンスを出し切るためには、コアとして取り組む態勢を整えることが不可欠だ。課題解決を企業活動のコアに結び付け、ストーリーを構築していく作業を私たちは手伝いたい。全ての経済・社会活動のベースが海である以上、海と関係ない企業はない。では、自分たちはどう海とつながっているかというコンテクストを考えることが大事だ。

 先日コミュニケーションファームのエデルマン・ジャパンとビーチクリーンを行った。ビーチクリーンをきっかけに、エデルマンだからこそできる海洋問題に対するコミュニケーションについて社員とディスカッションした。単発のアクティビティーで終わらせず、本業の中でどう取り組めるか、クライアントにどう働きかけるかといったことにまで広げていくことが大事だ。社会課題に対していろんなセクターをつなげるコミュニケーション方法を考えることは本質的に同社だからできることだし、そこから生まれるアクションは同社のブランドバリューをきちんと持ち上げてくれるものになる。

WWD:特にファッションやビューティ企業の取り組みを見て思うことは?

伊達:例えば、漁網をまた糸にして服にした場合、洗濯すればマイクロファイバーが出てしまうといった批判も聞くが、それを僕はグリーンウォッシュみたいな言い方はしない。何か問題を解決しようとするときに、ゼロ・100で判断してしまうと進まない。インパクトだけで見ずに、企業として問題自体を知らせていくある意味メディアとしての役割、責任もあるはずだからだ。

WWD:今後のビジョンは?

伊達:今年から調査活動に注力する。海洋環境問題はまだ分からないことも多い。未来の当事者の世代が熱量を持って、周りを巻き込みながら取り組むことが理想だ。僕らが発信力のある調査研究をし、その結果だけでなく、過程もオープンにしていきたい。例えばデータベースに強い企業や、水中をきれいに撮影できるプロダクトを持っている企業なども巻き込みたい。同時に、業界の垣根を越えたアライアンスの構築も大切だ。海洋問題に対して、いろんなセクターが共同して取り組む枠組みを作る。そこにファッションやビューティ業界も入ってきてほしい。


【WWDJAPAN Educations】

【第2期】サステナビリティ・ディレクター養成講座
2022年9月30日(金)開講

 昨年初めて開催し好評を得た「サステナビリティ・ディレクター養成講座」を今年も開講。サステナビリティはこれからの企業経営の支柱や根底となるものであり、実践が急がれる事業の課題である。この課題についてのビジョンを描くリーダーの育成を目的に、必要な思考力・牽引力を身につける全7回のワークショップとなる。前半は各回テーマに沿った第一線で活躍する講師を迎え、講義後にはディスカッションやワークショップを通して課題を明確化し、実践に向けたアクションプランに繋げていく。

 また、受講者だけが参加できるオンライン・コミュニティーでは、「WWDJAPAN」が取り上げるサステナビリティに関する最新ニュースや知っておくべき注目記事をチェックでき、更に講義内容をより深く理解するための情報を「WWDJAPAN」編集部が届ける、まさに“サステナ漬け”の3カ月となる。
講義のみが受講できるオンラインコースも同時に受け付けています。


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最高級紳士靴「ジョンロブ 」の最重要マーケットが日本である理由

 エルメス傘下の高級紳士靴「ジョンロブ (JOHN LOBB)」において、日本市場は売上高の25%以上のシェアを占める最重要マーケットだ。

 原料の選定から製造工程まで最高峰にこだわり、商品価格は20万円前後。そんな高級靴が日本で支持を得たのは、「古くから職人を“匠”と呼び、その技術や姿勢をリスペクトする土壌があったからだ」と松田智沖ジョンロブジャパン社長は語る。2005年着任以降、15年余りで国内ビジネスの売上高を約5倍の規模に成長させ、21年度の業績はコロナ禍前の19年度業績を超えた。ビジネススタイルのカジュアル化が進む中でも変わらぬ「ジョンロブ」の強さの理由を聞いた。

WWD:日本でのビジネスの進捗は?

松田智沖社長(以下、松田):約30年前 の日本上陸から堅調に伸びている。「ジョンロブ」がここまでビジネスを続けてこられた最も大きな理由は、これまで日本人が伝統工芸を守ってきたように、私たちのクラフツマンシップに対しても深い理解をいただけたからだと考えている。ストレートチップの“シティⅡ(CITY Ⅱ)”や“フィリップⅡ(PHILIPⅡ)”、コインローファーの“ロペス(LOPEZ)”、ダブルモンクの“ウィリアム(WILLIAM)”といった定番モデルへの需要は根強いが、自分だけの一点物を手に入れたいというニーズも大きい。毎年10月に世界同時販売する限定モデルは日本では特に反響がある。細部へのこだわりも強く、定番モデルのステッチの色を変えたり、アッパーを質感の違う素材に変えたりといった国内限定商品もよく売れる。一見、微々たる差と思われるようなディテールが、日本のお客さまの繊細なこだわりに刺さっている。

WWD:メインの客層は?

松田:40〜50代の自ら事業をされている方や企業のエグゼグティブが多い。近年は20代後半〜30代の若いお客さまも増えている。僕が若いころは、靴に限らず時計や車などの大きな買い物は、「階段を上る」感覚に近かった。職位が上がったり独立したりと、キャリアの転機になるタイミングで少し高いブランドを身につけ、ステップアップしていくという具合だ。それが今はインターネットやSNSが普及し、若い人にはわれわれを含め全てのブランドがフラットに見えるようになった。年功序列で時間とともに地位や年収が上がっていくという、キャリアや人生に対する見方も変わった。だからこそ今の若いお客さまは、一足飛びに「一番いいもの」を求めるし、手前味噌ながら紳士靴の頂点である当社の商品を選んでいただけているのだと捉えている。

若い顧客も増加傾向
パーソナルオーダーをより身近に

WWD:若年層に向けた施策は。

松田:ブランドの魅力をより手軽に、より多くの方に知っていただけるよう、好みの仕様にカスタマイズできるパーソナルオーダーの間口を広げている。オーダーは2種類。一つは本国の職人が足のサイズ測定からご希望の仕様のヒアリング、製作、納品まで全てフルオーダーで行う「ビスポーク」。もう一つが、既製品をベースにアッパーやソールの素材・色を選べるイージーオーダーの「バイリクエスト」だ。後者は通常、ベースとなる商品の定価に2割を上乗せした代金をいただい ているが、閑散期生産を活用し、期間限定(2〜5月)でこの追加料金を無料とする「バイリクエストフェア」を2006年から継続実施している。例えば1足目に定番モデルを選ばれたお客さまが、次はアッパー素材をスエードに変えたり、ソールをラバーソールに変えたり。そんな風に2足目、3足目をリピートされるお客さまが増えた。

WWD:コロナ禍で服装のカジュアル化が加速している。

松田:お客さまが「ジョンロブ」に感じてくださっている価値は、社会の表層の流れでは揺らがない。「高揚感」や「自信」といった、お客さま一人一人のもっと深いところに根ざす精神的なものだと考えている。その証左として、当社の2021年度の国内販売足数は、コロナ前(19年度)と比較しても大きく伸びている。

 今後、人々の足元が全てスニーカーになってしまうかといえばそんなことはないだろう。コロナ禍以降も顧客さまのビジネススタイルは、スーツに革靴という方がほとんど。話を聞くと、「これまで愛用していたブランドでもかっちりとしたスーツのバリエーションが減った」「大事な商談や会議などに着ていける服がない」と嘆かれている。昨今オーダースーツの需要が伸びているのも、ひょっとしたらお客さまが満足できる既製品がそろえられていないことの裏返しなのかもしれない。

 ブランドには変えるべきものと、変えてはならないものがある。目の前のお客さまの声に耳を傾ければ、それはおのずと見えてくる。商品のデザインや仕様は、時流に合わせてアップデートすべきだ。われわれも定番モデルの一部は、軽量なソールでスニーカーに近い柔らかなはき心地を実現した新ライン“ニュースタンダード”を2020年春から販売し、新客のフックになっている。ただそれらも使っている革はフルグレインと呼ばれる最高峰のものであるし、製造工程は一切妥協していない。一見姿形は違うどの製品にも、ブランドのクラフツマンシップを通底させている。自分たちの抱えているお客さまを見失わないこと。その上で、やるべきことをはき違えないよう舵取りをすること。これが私の最も大事なミッションだ。

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ラグジュアリー領域で博報堂D Yグループ4社が協働 LINE公式アカウント支援サービス「Q」を選ぶべき理由とは?

 日本国内でのSNSマーケティングに欠かせないツールである「LINE」。博報堂Gravityは、博報堂DYグループ4社の知見を集約させ、ラグジュアリー/プレミアムブランドに特化した、ワンストップLINE公式アカウント支援サービス「Q」をリリースした。博報堂DYグループならではの、特徴や強みはどこにあるのか。

 もともとラグジュアリー/プレミアムブランドのマーケティングを得意としてきた博報堂Gravity。数あるSNSの中で、LINEに特化した理由について、同社の小長谷有紀チーフ・プロデューサーは「LINEの圧倒的な普及率の高さに加え、個人情報保護の観点から、サードパーティーCookie規制の流れが本格化しています。LINEはユニークIDという形でファーストパーティーIDデータを持つため、CRMと統合すれば、より強力なプラットフォームになるはずと、約3年かけて地道に準備を進めてきました」と話す。

4社の強みをいかしたLINEの
ワンストップ支援

 「Q」は、ブランドのLINE公式アカウントを診断・分析し、現状と課題をレポーティングする。それをベースに、必要とあればアカウントの運用代行からデータ活用までワンストップで任せることもできるサービスだ。

 博報堂DYグループの中で、全体の統括やコンテンツ制作を博報堂Gravity、アカウント運用をpeak、戦略立案、プランニングおよびメディアバイイングと各アカウントのデータ集計を博報堂DYメディアパートナーズ、API開発をデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)というように、各社の得意分野を集約させているため、ワンストップながら最先端を提供できる点にも胸を張る。「LINE公式アカウント内の単発のコンテンツではなく、他プラットフォームの反響も含めて、広くユーザーに届けていくことができるのが強みです」。

 外資系のラグジュアリー/プレミアムブランドを担当する上で複雑なのが、“本国”の意向との兼ね合いだ。「使える素材が限定されていたり、日本独自でキャンペーンを行う際も確認や承認のステップが膨大にあるので、そこに丁寧に寄り添う必要があるのが、ドメスティックブランドと大きく違うところ」と語る。

 peakの土田史華SNS Div.マネージャーは「一般消費財と、ラグジュアリー/プレミアムブランドのLINE公式アカウントでは目的やユーザーが期待していることが異なるので、単純には比較がしづらい。同じラグジュアリー/プレミアムブランドの公式アカウントの運用実績をすでに多数持っているため、真の競合他社との比較分析が可能と考えています」と説明する。

ラグジュアリーブランドの
信頼を得る運用実績

 実際にこのチームでLINE公式アカウントを運用してきた例が、「カルティエ(CARTIER)」だ。3、4年前にすでにあったアカウント運用を引き継ぐところからスタート。ラグジュアリーブランドのLINE運用が活発になってきた時期で、要望を受けた。

 他社の運用を見ると、施策によって「友だち」の数を一時的に伸ばしても、その後にブロックされてしまい、本当に届けたいメッセージやキャンペーンの情報を届けられていないことが、課題として浮かび上がった。

 「なにか解決方法はないかと考え、ある時計のキャンペーンにおいて、グローバル展開のコミュニケーションとの相乗効果に加えて、LINE公式アカウント活性化も目的としたローカルコンテンツ制作のご提案を実施しました」と小長谷チーフ・プロデューサー。パワーのあるアーティストを起用した魅力的なコンテンツを作ることでブランドターゲットにより近しい「友だち」を獲得することを考えた。常田大希や野田洋次郎、池田エライザといった人気アーティストをキャスティングし、LINE内限定ライブ配信などを行った。その結果、「友だち」の数は大幅に伸長した。キャスティングや運用も含め、まさに4社の強みがいかされた事例といえよう。

競合の成果等を含めた独自の
データベースが強み

 「さらに、キャンペーンで獲得したユーザーを実際の売り上げにどうつなげていくかというのが次のフェーズ。ユーザーの反応データを集計・分析し、運用効率を高めていくのは、データが膨大であったり、アカウントによっては手作業で行う必要があったりと地道な作業です。一方で、そのような作業を積み重ねていくことでノウハウを蓄積していけることが運用のやりがいでもあります」と土田マネージャー。

 このように、ラグジュアリー/プレミアムブランドのLINE公式アカウントの運用を手作業も交え地道に続けてきたことが、大きな強みだ。「LINEでは競合他社がいつ、どんな投稿をしてどんな成果を上げたのかなどのデータを取得する機能やサービスを提供していません。しかし、博報堂DYグループはデイリーでそれらのデータを手動でキャッチアップし、独自のデータベースを構築してきました。その蓄積があるので、お客さまにも競合他社の成功例として数字を交えて示すことができますし、『Q』のアカウント診断・分析にもその博報堂DYグループのデータが生かされています」と小長谷チーフ・プロデューサーは自信を見せる。

まずは「Q」で診断・分析から!
課題と改善点を洗い出す

 「Q」でLINEアカウントの診断を依頼すると、約100項目について評価、分析のレポートを受け取ることができる。さらに全体のまとめとして「アカウント」「エンゲージメント」「集客施策」「データ収集」と4つの項目でスコアリングした、分かりやすい図も提供される。

 「Q」の診断・分析の特徴は、独自のスコアリング基準にある。ラグジュアリー/プレミアムブランドのLINE投稿やその回数は、一般消費財とはアプローチが異なるため、単純には比較しづらい。「Q」にはコツコツと蓄積してきたデータがあるため、競合となるラグジュアリー/プレミアムブランドと比較して初めて、自身のアカウントの現状を俯瞰して知ることができるのだ。新たな視点からの分析を受けることで、より良いアプローチが見つかる可能性も大いにある。

 また、診断後にその改善案の策定から実施まで、望む範囲で任せられるのも「Q」の特徴。LINE公式アカウントの投稿は有料のため、漫然と運用しているとコストパフォーマンスが悪いツールとなってしまいがちだ。「Q」では費用対効果の視点も重視する。現状で公式アカウントの運用がうまくいっていない、その原因がわからないと感じている場合は、診断・分析を受けてみるだけでも、それまで気付くことができなかった改善ポイントが得られること間違いなしだ。

TEXT : MIWAKO ANNEN
問い合わせ先
博報堂Gravity

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ラグジュアリー領域で博報堂D Yグループ4社が協働 LINE公式アカウント支援サービス「Q」を選ぶべき理由とは?

 日本国内でのSNSマーケティングに欠かせないツールである「LINE」。博報堂Gravityは、博報堂DYグループ4社の知見を集約させ、ラグジュアリー/プレミアムブランドに特化した、ワンストップLINE公式アカウント支援サービス「Q」をリリースした。博報堂DYグループならではの、特徴や強みはどこにあるのか。

 もともとラグジュアリー/プレミアムブランドのマーケティングを得意としてきた博報堂Gravity。数あるSNSの中で、LINEに特化した理由について、同社の小長谷有紀チーフ・プロデューサーは「LINEの圧倒的な普及率の高さに加え、個人情報保護の観点から、サードパーティーCookie規制の流れが本格化しています。LINEはユニークIDという形でファーストパーティーIDデータを持つため、CRMと統合すれば、より強力なプラットフォームになるはずと、約3年かけて地道に準備を進めてきました」と話す。

4社の強みをいかしたLINEの
ワンストップ支援

 「Q」は、ブランドのLINE公式アカウントを診断・分析し、現状と課題をレポーティングする。それをベースに、必要とあればアカウントの運用代行からデータ活用までワンストップで任せることもできるサービスだ。

 博報堂DYグループの中で、全体の統括やコンテンツ制作を博報堂Gravity、アカウント運用をpeak、戦略立案、プランニングおよびメディアバイイングと各アカウントのデータ集計を博報堂DYメディアパートナーズ、API開発をデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)というように、各社の得意分野を集約させているため、ワンストップながら最先端を提供できる点にも胸を張る。「LINE公式アカウント内の単発のコンテンツではなく、他プラットフォームの反響も含めて、広くユーザーに届けていくことができるのが強みです」。

 外資系のラグジュアリー/プレミアムブランドを担当する上で複雑なのが、“本国”の意向との兼ね合いだ。「使える素材が限定されていたり、日本独自でキャンペーンを行う際も確認や承認のステップが膨大にあるので、そこに丁寧に寄り添う必要があるのが、ドメスティックブランドと大きく違うところ」と語る。

 peakの土田史華SNS Div.マネージャーは「一般消費財と、ラグジュアリー/プレミアムブランドのLINE公式アカウントでは目的やユーザーが期待していることが異なるので、単純には比較がしづらい。同じラグジュアリー/プレミアムブランドの公式アカウントの運用実績をすでに多数持っているため、真の競合他社との比較分析が可能と考えています」と説明する。

ラグジュアリーブランドの
信頼を得る運用実績

 実際にこのチームでLINE公式アカウントを運用してきた例が、「カルティエ(CARTIER)」だ。3、4年前にすでにあったアカウント運用を引き継ぐところからスタート。ラグジュアリーブランドのLINE運用が活発になってきた時期で、要望を受けた。

 他社の運用を見ると、施策によって「友だち」の数を一時的に伸ばしても、その後にブロックされてしまい、本当に届けたいメッセージやキャンペーンの情報を届けられていないことが、課題として浮かび上がった。

 「なにか解決方法はないかと考え、ある時計のキャンペーンにおいて、グローバル展開のコミュニケーションとの相乗効果に加えて、LINE公式アカウント活性化も目的としたローカルコンテンツ制作のご提案を実施しました」と小長谷チーフ・プロデューサー。パワーのあるアーティストを起用した魅力的なコンテンツを作ることでブランドターゲットにより近しい「友だち」を獲得することを考えた。常田大希や野田洋次郎、池田エライザといった人気アーティストをキャスティングし、LINE内限定ライブ配信などを行った。その結果、「友だち」の数は大幅に伸長した。キャスティングや運用も含め、まさに4社の強みがいかされた事例といえよう。

競合の成果等を含めた独自の
データベースが強み

 「さらに、キャンペーンで獲得したユーザーを実際の売り上げにどうつなげていくかというのが次のフェーズ。ユーザーの反応データを集計・分析し、運用効率を高めていくのは、データが膨大であったり、アカウントによっては手作業で行う必要があったりと地道な作業です。一方で、そのような作業を積み重ねていくことでノウハウを蓄積していけることが運用のやりがいでもあります」と土田マネージャー。

 このように、ラグジュアリー/プレミアムブランドのLINE公式アカウントの運用を手作業も交え地道に続けてきたことが、大きな強みだ。「LINEでは競合他社がいつ、どんな投稿をしてどんな成果を上げたのかなどのデータを取得する機能やサービスを提供していません。しかし、博報堂DYグループはデイリーでそれらのデータを手動でキャッチアップし、独自のデータベースを構築してきました。その蓄積があるので、お客さまにも競合他社の成功例として数字を交えて示すことができますし、『Q』のアカウント診断・分析にもその博報堂DYグループのデータが生かされています」と小長谷チーフ・プロデューサーは自信を見せる。

まずは「Q」で診断・分析から!
課題と改善点を洗い出す

 「Q」でLINEアカウントの診断を依頼すると、約100項目について評価、分析のレポートを受け取ることができる。さらに全体のまとめとして「アカウント」「エンゲージメント」「集客施策」「データ収集」と4つの項目でスコアリングした、分かりやすい図も提供される。

 「Q」の診断・分析の特徴は、独自のスコアリング基準にある。ラグジュアリー/プレミアムブランドのLINE投稿やその回数は、一般消費財とはアプローチが異なるため、単純には比較しづらい。「Q」にはコツコツと蓄積してきたデータがあるため、競合となるラグジュアリー/プレミアムブランドと比較して初めて、自身のアカウントの現状を俯瞰して知ることができるのだ。新たな視点からの分析を受けることで、より良いアプローチが見つかる可能性も大いにある。

 また、診断後にその改善案の策定から実施まで、望む範囲で任せられるのも「Q」の特徴。LINE公式アカウントの投稿は有料のため、漫然と運用しているとコストパフォーマンスが悪いツールとなってしまいがちだ。「Q」では費用対効果の視点も重視する。現状で公式アカウントの運用がうまくいっていない、その原因がわからないと感じている場合は、診断・分析を受けてみるだけでも、それまで気付くことができなかった改善ポイントが得られること間違いなしだ。

TEXT : MIWAKO ANNEN
問い合わせ先
博報堂Gravity

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写真プリントショップの運営会社がアパレル参入、商機は「アパレルもオンデマンドプリントへの変革」

 写真プリントショップ「パレットプラザ(PALETTE PLAZA)」やスマホショップを運営するプラザクリエイトがアパレル事業に参入する。テキスタイルやTシャツプリント機の最大手企業のコーニットデジタル(KORNIT DIGITAL)と提携し、原宿に最新鋭のインクジェットプリント機を併設したカフェ型のスペース「クリエイティブプラザ・ハット(CREATIVE PLAZA HATTO)」」を9月にオープンする。東証スタンダード上場のプラザクリエイトは写真プリントの「パレットプラザ」を239店舗、「ソフトバンクショップ」「ワイモバイルショップ」を軸にしたスマホ販売店を109店舗、全国で運営している。なぜ写真プリントとスマホショップ販売の同社がアパレルに参入するのか。今年7月1日に社長に就任したばかりの新谷隼人・社長に聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):なぜアパレルに参入を?

新谷隼人(以下、新谷):大量生産・大量廃棄などの問題を抱えるアパレル産業は大きな転換期にある。大量に作ってから売って、多くの在庫を残してしまうビジネスモデルは転換期にある。当社の祖業である写真現像やプリント事業はそれとは全く逆で、全国に展開する店舗でプリントしてお客に渡すというビジネスモデル。コーニット社の最新鋭のインクジェットプリント機を含めた生産プラットフォームを使えば、アパレル産業も受注してから作って販売するサステナブルなビジネスモデルに変革できる。そうなると我々がこれまで展開してきたビジネスモデルに近くなる。

WWD:全くの新規参入だ。勝算は?

新谷:機械さえあればうまくいくみたいなことは全く考えていない。アパレル事業は、toC(最終消費者向け)ではなく、toB(法人向け)のビジネスからスタートする。ただ基本的に本気でアパレルをサステナブルに変えて行きたいと考えている。コーニットの最新鋭プリント機「アトラスマックス(ATLAS MAX)」とカフェを併設した「クリエイティブプラザ・ハット」は約70坪。同機は、日本初導入となる最新鋭のインクジェットプリント機で、これまで必要だった前処理工程が不要で、文字通りワンステップで多種多彩でかつ非常に高精度なテキスタイルプリントが可能で、1時間で最速100枚のTシャツをプリントできる。

 「クリエイティブプラザ・ハット」のコンセプトは、「カフェ・コミュニティ・プリント」をかけ合わせ、新しくサステナブルなアパレル産業に変革する事業者たちが集う拠点。カフェも、グアテマラ発のサステナブルコーヒーとして知られる「グッド・カフェ・ファームズ(GOOD COFFEE FARMS)」と組む。サステナブルで美味しいコーヒー楽しみつつ、最新鋭の繊維機械を実際に見てもらうことで、変革の機運を高めたい。

新谷:当社は環境の変化に応じて、新たな小売り業態、しかもリアル店舗をベースにした新業態を作ってきた。コーニットの機械を初めて見たとき、大きな衝撃を受けた。私は当社で「ソウゾウ事業」を担当し、新規事業の立ち上げに携わってきたが、まさに何か新しいことが始まる」ということを直感した。スマホショップは30〜50坪で月1000万円の売り上げを持つものの、写真プリントの「パレットプラザ」は10〜15坪の店舗で月間200〜300万円。1枚20〜30円のプリントを積み上げて売り上げを作っている当社にとって、数億円の機械と神宮前に60坪という店舗は、かなり大掛かりな新規投資だ。

 ただ正直、現時点ではあえて今後の事業プランはほぼ白紙の状態だ。「クリエイティブプラザ・ハット」を運営しながら、今後については決めていく。「パレットプラザ」など既存の300店舗をこの新規事業に切り替えていく可能性もあるし、まったく別のやり方もするかもしれない。一つ決まっているのは3年で10億円の数字を作ること。当社の財産は既存の店舗で日々、お客さまと接点を持っていること。白紙とは言ったが、「パレットプラザ」で紙にプリントしているものを布に置き換えようと思っただけでも、かなり多くの潜在需要がある。紙と布では全然違うと思われるかもしれないが、イメージをなにかに残したいという本質的なニーズは実はそう変わらない。「アトラスマックス」は積層型のプリントで刺繍のように表現できるプリントもあり、アパレルに限定せず、グッズや日用雑貨、ノベルティグッズなどの用途にも広げられる。そうしたアイテムを「パレットプラザ」で販売することも考えられる。

WWD:パートナーはどういった企業やブランドを?

新谷:すでに有力なセレクトショップなどに声をかけている。パートナーとして重要なのは「既存のマインドを変えられるか」だと実感している。少し気になっていることがある。私がアパレル関係者を訪ね歩き、「既存のアパレル産業のやり方には大きな問題がある。なぜ変えられないのか?」と指摘すると、誰もが一様に悲しげな表情をすること。ロクにアパレルビジネスのことなど知らない新参者にこんなことを言われたら、憤慨する人がいてもおかしくない。にもかかわらず悲しい表情になってしまうのはなぜなのか。いずれにしろ当社は、アパレル産業は今こそサステナブルに変われると信じているし、そうした志を同じくする人を探し求めている。響くことがあれば、ぜひ我々と一緒に変革に取り組んでほしい。

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アルゼンチン発フレグランス「フエギア1833」創業者が来日 自然の変化や楽器の演奏者までも想起させる香りとは

 アルゼンチン発フレグランスブランド「フエギア1833(FUEGUIA 1833以下、フエギア)」の創業者であるジュリアン・ペデル(Julian Bedel)が来日した。「フエギア」は2010年に誕生。ベデルが愛するポエムやタンゴ、アルゼンチンのパタゴニアに広がる大自然や歴史、文化、人物などをインスピレーション源にしたフレグランスを提案している。日本では、六本木の「グランドハイアット東京」と「ギンザ シックス」内にブティックがあり、約100種類ものフレグランスを販売。香りのリサーチも兼ねて来日したべデルに、ブランドに込めた思いや調香のプロセス、こだわりなどについて聞いた。

WWD:学術的なアプローチでブランドをスタートしたが、どのような思いでフレグランスを制作しているか?

ジュリアン・べデル=フエギア 1833 創業者(以下、ベデル):香りのインスピレーションはあらゆるものから。アートや文学、植物、動物など何でもインスピレーションになる。私はアルゼンチンの都市と農村の間で育った。アルゼンチンの伝統的な文化であるタンゴやダンスはエリアにより異なり、それが文化の中心になっている。タンゴはアルゼンチンの文化を凝縮しているといってもいい。そういった文化的な思いが私のクリエイションの根底にある。

WWD:多くのオリジナルのフレグランスブランドがあるが、「フエギア」が他のフレグランスと違う点は?

ベデル:香りのアイデアが生まれたとき、イメージだけでなく、技術的にその香りを分析して香りの要素を化学的に分析する。それにより、香りを構成する分子を元に構成していくという点。例えば、世界最高峰の弦楽器である「ストラディヴァリウス(STRADIVARIUS)」の香りを表現するために、バイオリンに使用されている木の香りだけでなく、それを演奏してきた優れた音楽家の演奏時の空気感も忠実に再現するんだ。夏を感じさせる新作“アルマ”は、スペイン・メノルカ島に咲く花のサントリナやカモミール、ローズマリー、ジャスミンなどを採集して蒸留した香りだ。島で原材料を採集することにより、メノルカ島の夏の太陽を純粋に再現できた。このように、さまざまな場所の自然の香りを捉えて届けている。私は、植物のメッセージを伝えるパフュームクリエイターだ。調香師は、会社の香りのパレットから美しい香りを予算内で制作するが、私は、納得のいく自然素材を使用して予算に関係なく香りを作り出している。

フレグランスはある意味透明であるべき

WWD:フレグランスの原料=自然原料へのこだわりの理由は?それらは、全てオリジナルか?

ベデル:「フエギア」では植物の香りを、元来の美しさと同じレベルで再現できるかというのがポイント。色々な場所の自然の香りを捕まえて届ける香りのメッセンジャーだ。フレグランスとは、自分の中の美を覚醒させるものであるべき。フレグランスは化粧品ではない。植物のエッセンスを取り込むことで気分を高めるものであるべきだと思う。だから、南米の薬効成分を持つ植物の香りを使うこともある。

WWD:調香にかかる期間は?香りが完成したと感じる決め手は?

べデル:アイデアが浮かんで、それに命を吹き込むための原料を考えるのに時間がかかる。ラボに原料があれば、あまり時間はかからない。香りにもよるが、木に菌を埋め込み樹脂が出るのを待ってから制作した“ウード”には約10年を費やした。樹脂とは、木が自分を菌から守るために発酵してできる化合物のようなもの。それは、バニラやタバコ、コーヒー、チョコレートの制作過程に起こるメイラード反応(食品の加工や貯蔵の際に生じる、製品の着色、香気成分の生成、抗酸化性成分の生成などに関わる反応)と同じ。自然変化には時間がかかり、結果が出ないこともある。フレグランスが完成したと感じる瞬間は、絵画と一緒で、一番難しい。香りの説明はせず、他の人に感想を聞いてみて、手直しを加えて完成させることも。なぜなら、フレグランスは付ける人の肌と影響し合うから。付ける人の香りと相まっていい香りかというのが大切だ。フレグランスは、付ける人が本来持つ香りを消してはならないある意味、透明であるべきものだと考える。

自然の美しさ、演奏などの擬似体験を可能にする香りを提供

WWD:さまざまな香りを調香する際に意識するものやことは?何をイメージして調香するか?

べデル:フレグランスの調合は作曲するのと同じように本能的なもの。理屈ではなく、頭に浮かんだものを直感的に感じ取り、香りに反映している。ラボには約3000種類の香料の原料があり、技術もある。だから、直感を信じて、自分の周波数で調香するんだ。

WWD:調香師はザ・ノーズと言われ、嗅覚の鋭さや特殊な感覚が必要とされるが、調香師になろうと思ったきっかけは?

べデル:私は、自分を調香師とは思っていない。植物のメッセージを伝えるパフュームクリエイターだ。調香師は、会社の香りのパレットから美しい香りを予算内で制作するが、私は、納得のいく自然素材を使用して予算に関係なく香りを作り出している。芸術家一家の1人として育ち、画家や彫刻家として活動してきた。工房で素材と向き合う作業が好きだったが、自分に向いていなかった。植物が好きだったということもあり、絵の具の色素を植物の香りの分子に置き換えてみようと思った。絵の具のパレットを香りのパレットに置き換えたといってもいい。絵の具も香りも、何かを表現する“媒体=言語”だと考える。私自身、香水はつけない。だが、自然の香りは大好きで、素晴らしい植物の美しさをフレグランスで届けられればと思った。「フエギア」は、植物学者が持つ植物へのこだわり、化学者の香りを分子の状態まで分析するアプローチ、芸術家の直感が融合して生まれる。植物学者、化学者、芸術家の各アプローチは切り離せない。自然の香りもそうだが、演奏などを擬似体験できるようなさまざまな香りを提供している。

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世界に誇る日本の絞り染め”有松絞り”の魅力 ファッションデザイナー高谷健太と巡る“ときめき、ニッポン。”第7回

 昨年、山梨県西桂町にある機織り企業、武藤を訪問した際に、面白い出来事があった。約束の時間に同社の代表をたずねると、同じ時間に客人がもう一人訪れたのだ。明らかにダブルブッキングである。「あれ?」という空気が漂った後、代表がにこりと笑って「せっかくの機会なので、お二人を会わせたかったんです」と言った。これが、有松絞りの若手作家、藤井祥二さんとの出会いだった。

 藤井さんが手掛ける“有松絞り”とは、愛知県名古屋市の有松・鳴海地域で作られる絞り染めの織物のこと。江戸時代の初め、徳川家康が江戸に幕府を開いて間もない頃に東海道のこの地域に竹田庄九郎らが新しい町を開き、街道を行き交う旅人のために絞り染めの手ぬぐいを作って売り出したことが、有松絞りの始まりとされている。100種以上の絞りや染色の技法から生み出される複雑で繊細な文様は、世界に誇る日本の伝統産業のひとつだ。

 この有松絞りには、寛斎も僕も思い入れがある。2004年、日本武道館の床全面に水を張った「KANSAI SUPER SHOW(寛斎スーパーショー) アボルダージュ」において、有松絞りを施した浴衣姿の女性陣の舞いによって、幽玄で情緒溢れる情景を演出したのだ。ダークブルーの照明と、深い藍の中に艶やかに白地が散った浴衣のコントラストがとても美しかった。

 このシーンに使った浴衣は、有松絞りの研究に一生を捧げた、故・竹田耕三さんに製作してもらったもの。竹田さんは、先述の竹田庄九郎の流れをくむ竹田嘉兵衛商店の旧家に生まれ、有松絞りの可能性を幅広い分野で広げた人物だ。

 そんなことを思い出しながら、藤井さんの作品を見るために有松に赴くと、「竹田嘉兵衛商店の日本間をお借りしているので、是非そこで作品を見て欲しい」と提案を受けた。実に不思議な巡り合わせだ。同商店の日本間は、藤井さんの作品によって、完璧な芸術空間になっていた。昼下がりの日の光をまとった羽衣のようなストールに、竹田嘉兵衛商店の美しい庭園が浮かび上がる。絞り染めが施された生地は、すべて武藤で織られた超極薄のシルクやカシミヤ、麻だ。有松絞りとともに歩んだ同商店の歴史と、先人たちの知恵が、今日の職人の中に息づいていること。そしてその伝統技術が、今なお進化し続けていることを深く感じた。同時に、藤井さんの強いこだわりと美意識、心血を注いだ作品への愛がひしひしと伝わってきた。

 今回は、そんな若き染色家、藤井さんへのインタビューをお届けする。

高谷:藤井さんとお会いするたびに、有松絞りはもちろん、日本の伝統産業の未来に対する考えを聞いてワクワクしています。そもそも、藤井さんはどういった経緯で染色家になったのでしょうか?

藤井祥二カゴノトリ代表(以下、藤井):もともと学生時代に名古屋の大学でプロダクトデザインを学んでいて、地場産業を学ぶ授業で、鳴海の会社と絞り染めの風呂敷を作る機会があったんです。絞りや染めの基礎や歴史を学ぶ中で、「将来は伝統産業やそこで働く人々にフィーチャーをしたものづくりをしたい」と思うようになりました。そこで、まずは実際に全国の現場を見て回る必要があると思い、大学を1年間休学して日本全国の伝統産業を巡る旅を始めました。各地の工房に赴いて、時には半年ほどキャンプ場にテントを張って生活することもありましたね。最終的にどこに根を張って仕事をしようかと考えたときに、何の所縁もない若者を温かく迎え入れてくれた有松という産地の懐の広さに引かれて、ここで仕事を続けています。

高谷:有松との出会いは、藤井さんの運命だったようですね。

藤井:はい。有松絞りの仕事をゼロから始めた当初は、住む家も、作業する場所もなくてとても苦労しましたが、学生時代から交流のあった有松の人々が応援してくれました。その一人が、竹田耕三さんでした。

高谷:そうだったのですか。藤井さんの人柄とバイタリティーが、有松の方々にとっても大きな刺激になったんでしょう。

藤井:そうだとうれしいです。作家を目指した理由は、単純にものづくりに興味があったからではありません。社会との柔軟な関わり方を模索して、作家という道を選んだのです。

高谷:というと?

藤井:社会で生きていくためには、大学や専門学校を出て会社に就職することが一般的ですが、そういった現状に対して違和感がありました。社会ともっと柔軟に関わる方法はないかを考えたとき、有松のような“産地”がその答えになるのではないかと思うようになったんです。

高谷:なるほど。作品はもちろん、 人生の選択肢として“作家としての生き方”を世の中に発信しているのですね。そんな藤井さんが考える、有松絞りの魅力とは?

藤井:布を通して光の陰影を感じられるところでしょうか。どれだけ作品を作っても、毎回新しい発見があります。ほかには、人々の暮らしの中で自然に生まれた民芸品とは異なり、“東海道を行き交う人々のお土産”として生み出されたという点も面白い。売れるためには、時流にあわせて人々の心に刺さるもの作り続けなくていけないから、柔軟な発想で技術が多様化してきたんだと思います。

高谷:絞り染めは、アフリカをはじめインドや東南アジア、紀元前の古代アンデス文明でも行われていたようで、その歴史に比べると、有松絞りの歴史は400年ほどなのに、世界に類を見ない100種以上の技法が編み出されている。それには、“お土産”としてのルーツが大いに関係していそうですね。一方で、技法ひとつひとつが芸術性の高さも備えているし、一人の職人が一生をかけてひとつの技術を極めて受け継いでいく“一人一芸”の考えも素晴らしい。この商売と伝統の2面性が、有松染めの魅力かもしれません。

 そんな藤井さんは、有松絞りをはじめとした伝統産業の未来についてどんなことを考えていますか?

藤井:伝統産業には、技術やものの価値だけでなく、目に見えない価値があります。職人がものづくりにどう向き合うか、どうやって商売を成り立たせるかはもちろん、その地域に根付いた歴史や文化、教育的な価値も含めて、もっと多面的に考えて、いろんな立場の人々が関わるようにしなくてはいけないと思います。

高谷:今、挑戦していることはなんですか?

藤井:10月に開催する個展に向けて、“紙と布のあいだ”をテーマに素材や繊維について研究を重ねています。最近は「参九染太郎(さんきゅうそめたろう)」という事業名で、持ち込まれた古着を絞り染めの技術で好きな色に染め替えるプロジェクトも始めました。 “伝統”という重厚なイメージは置いておいて、気軽に絞り染めを楽しんでもらうために考えたもので、価格は1着あたり3900円。参加者の中には「絞り染めを勉強したい」という人もいるので、こうした取り組みを通して作り手としての第一歩を踏み出してもらえたらうれしいですね。7月30日にスタートする国際芸術祭「あいち2022(有松地区)」では、有松の次世代メンバーを中心に「有松ゆかたまつり」という催しを企画します。会場に、寛斎さんと竹田耕三さんがコラボした有松絞りの浴衣を展示できることも、とても楽しみにしています。


 昨今の有松では、藤井さんや竹田嘉兵衛商店の竹田昌弘さんなど次なる世代の方々が、職人と絞り屋という見えない分断の溝を埋めるべく、積極的に連携事業を重ねている。伝統と革新が互いに刺激し合うことで、今、町そのものが熱気を帯びているのだ。

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世界に誇る日本の絞り染め”有松絞り”の魅力 ファッションデザイナー高谷健太と巡る“ときめき、ニッポン。”第7回

 昨年、山梨県西桂町にある機織り企業、武藤を訪問した際に、面白い出来事があった。約束の時間に同社の代表をたずねると、同じ時間に客人がもう一人訪れたのだ。明らかにダブルブッキングである。「あれ?」という空気が漂った後、代表がにこりと笑って「せっかくの機会なので、お二人を会わせたかったんです」と言った。これが、有松絞りの若手作家、藤井祥二さんとの出会いだった。

 藤井さんが手掛ける“有松絞り”とは、愛知県名古屋市の有松・鳴海地域で作られる絞り染めの織物のこと。江戸時代の初め、徳川家康が江戸に幕府を開いて間もない頃に東海道のこの地域に竹田庄九郎らが新しい町を開き、街道を行き交う旅人のために絞り染めの手ぬぐいを作って売り出したことが、有松絞りの始まりとされている。100種以上の絞りや染色の技法から生み出される複雑で繊細な文様は、世界に誇る日本の伝統産業のひとつだ。

 この有松絞りには、寛斎も僕も思い入れがある。2004年、日本武道館の床全面に水を張った「KANSAI SUPER SHOW(寛斎スーパーショー) アボルダージュ」において、有松絞りを施した浴衣姿の女性陣の舞いによって、幽玄で情緒溢れる情景を演出したのだ。ダークブルーの照明と、深い藍の中に艶やかに白地が散った浴衣のコントラストがとても美しかった。

 このシーンに使った浴衣は、有松絞りの研究に一生を捧げた、故・竹田耕三さんに製作してもらったもの。竹田さんは、先述の竹田庄九郎の流れをくむ竹田嘉兵衛商店の旧家に生まれ、有松絞りの可能性を幅広い分野で広げた人物だ。

 そんなことを思い出しながら、藤井さんの作品を見るために有松に赴くと、「竹田嘉兵衛商店の日本間をお借りしているので、是非そこで作品を見て欲しい」と提案を受けた。実に不思議な巡り合わせだ。同商店の日本間は、藤井さんの作品によって、完璧な芸術空間になっていた。昼下がりの日の光をまとった羽衣のようなストールに、竹田嘉兵衛商店の美しい庭園が浮かび上がる。絞り染めが施された生地は、すべて武藤で織られた超極薄のシルクやカシミヤ、麻だ。有松絞りとともに歩んだ同商店の歴史と、先人たちの知恵が、今日の職人の中に息づいていること。そしてその伝統技術が、今なお進化し続けていることを深く感じた。同時に、藤井さんの強いこだわりと美意識、心血を注いだ作品への愛がひしひしと伝わってきた。

 今回は、そんな若き染色家、藤井さんへのインタビューをお届けする。

高谷:藤井さんとお会いするたびに、有松絞りはもちろん、日本の伝統産業の未来に対する考えを聞いてワクワクしています。そもそも、藤井さんはどういった経緯で染色家になったのでしょうか?

藤井祥二カゴノトリ代表(以下、藤井):もともと学生時代に名古屋の大学でプロダクトデザインを学んでいて、地場産業を学ぶ授業で、鳴海の会社と絞り染めの風呂敷を作る機会があったんです。絞りや染めの基礎や歴史を学ぶ中で、「将来は伝統産業やそこで働く人々にフィーチャーをしたものづくりをしたい」と思うようになりました。そこで、まずは実際に全国の現場を見て回る必要があると思い、大学を1年間休学して日本全国の伝統産業を巡る旅を始めました。各地の工房に赴いて、時には半年ほどキャンプ場にテントを張って生活することもありましたね。最終的にどこに根を張って仕事をしようかと考えたときに、何の所縁もない若者を温かく迎え入れてくれた有松という産地の懐の広さに引かれて、ここで仕事を続けています。

高谷:有松との出会いは、藤井さんの運命だったようですね。

藤井:はい。有松絞りの仕事をゼロから始めた当初は、住む家も、作業する場所もなくてとても苦労しましたが、学生時代から交流のあった有松の人々が応援してくれました。その一人が、竹田耕三さんでした。

高谷:そうだったのですか。藤井さんの人柄とバイタリティーが、有松の方々にとっても大きな刺激になったんでしょう。

藤井:そうだとうれしいです。作家を目指した理由は、単純にものづくりに興味があったからではありません。社会との柔軟な関わり方を模索して、作家という道を選んだのです。

高谷:というと?

藤井:社会で生きていくためには、大学や専門学校を出て会社に就職することが一般的ですが、そういった現状に対して違和感がありました。社会ともっと柔軟に関わる方法はないかを考えたとき、有松のような“産地”がその答えになるのではないかと思うようになったんです。

高谷:なるほど。作品はもちろん、 人生の選択肢として“作家としての生き方”を世の中に発信しているのですね。そんな藤井さんが考える、有松絞りの魅力とは?

藤井:布を通して光の陰影を感じられるところでしょうか。どれだけ作品を作っても、毎回新しい発見があります。ほかには、人々の暮らしの中で自然に生まれた民芸品とは異なり、“東海道を行き交う人々のお土産”として生み出されたという点も面白い。売れるためには、時流にあわせて人々の心に刺さるもの作り続けなくていけないから、柔軟な発想で技術が多様化してきたんだと思います。

高谷:絞り染めは、アフリカをはじめインドや東南アジア、紀元前の古代アンデス文明でも行われていたようで、その歴史に比べると、有松絞りの歴史は400年ほどなのに、世界に類を見ない100種以上の技法が編み出されている。それには、“お土産”としてのルーツが大いに関係していそうですね。一方で、技法ひとつひとつが芸術性の高さも備えているし、一人の職人が一生をかけてひとつの技術を極めて受け継いでいく“一人一芸”の考えも素晴らしい。この商売と伝統の2面性が、有松染めの魅力かもしれません。

 そんな藤井さんは、有松絞りをはじめとした伝統産業の未来についてどんなことを考えていますか?

藤井:伝統産業には、技術やものの価値だけでなく、目に見えない価値があります。職人がものづくりにどう向き合うか、どうやって商売を成り立たせるかはもちろん、その地域に根付いた歴史や文化、教育的な価値も含めて、もっと多面的に考えて、いろんな立場の人々が関わるようにしなくてはいけないと思います。

高谷:今、挑戦していることはなんですか?

藤井:10月に開催する個展に向けて、“紙と布のあいだ”をテーマに素材や繊維について研究を重ねています。最近は「参九染太郎(さんきゅうそめたろう)」という事業名で、持ち込まれた古着を絞り染めの技術で好きな色に染め替えるプロジェクトも始めました。 “伝統”という重厚なイメージは置いておいて、気軽に絞り染めを楽しんでもらうために考えたもので、価格は1着あたり3900円。参加者の中には「絞り染めを勉強したい」という人もいるので、こうした取り組みを通して作り手としての第一歩を踏み出してもらえたらうれしいですね。7月30日にスタートする国際芸術祭「あいち2022(有松地区)」では、有松の次世代メンバーを中心に「有松ゆかたまつり」という催しを企画します。会場に、寛斎さんと竹田耕三さんがコラボした有松絞りの浴衣を展示できることも、とても楽しみにしています。


 昨今の有松では、藤井さんや竹田嘉兵衛商店の竹田昌弘さんなど次なる世代の方々が、職人と絞り屋という見えない分断の溝を埋めるべく、積極的に連携事業を重ねている。伝統と革新が互いに刺激し合うことで、今、町そのものが熱気を帯びているのだ。

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【9月23日まで無料公開】アニエスが立ち上げた海洋調査団に聞く海の今【海の危機、私たちはどう動く?】

 デザイナーのアニエスべー(agnes b.)は、海洋探査を目的とした「タラ オセアン(Tara Ocean)」プロジェクトを2003年に立ち上げた。アニエスとその息子で現アニエスベーフランス本社最高経営責任者のエティエンヌ・ブルゴワ(Etienne Bourgois)にとって、海は常に身近な存在だったのだという。海を守ることに情熱を持っていたアニエスとブルゴワは、極地探検などにも用いられたスクーナー船を購入し「タラ号」と名付けた。映画「風と共に去りぬ」の主人公が住んでいた農場の名前からとったもので、アニエスにとっていつでも戻りたくなる故郷を意味する。

 科学調査船「タラ号」は、地球温暖化が海に与える影響や生物多様性、マイクロプラスチック汚染の現状などについて調査を進めている。これまでに世界中で12の海洋科学探査プロジェクトを遂行した。「タラ号」を運営する公益財団法人タラオセアン財団のパトゥイエ由美子日本支部事務局長に、海洋汚染の現状について聞いた。

WWD:海洋汚染の主な原因は?

パトゥイエ由美子(以下、パトゥイエ):大きく言えば人間活動だ。生活および工業廃水やプラスチックごみも汚染の要因だが、特に影響が大きいのは温暖化だ。人間が排出する温室効果ガスが温暖化を進め、海水の温度が上がることで生物多様性が減少し、生態系のバランスが崩れたりしている。海はこれまで大量の温室効果ガスを吸収してくれていたが、余分な二酸化炭素を吸収したことで海洋酸性化が進んでいる。酸性化によっても、海洋の生物多様性が脅かされている。

WWD:海洋プラスチックごみとは具体的にどんなものが流れている?

パトゥイエ:8割が陸からくると言われている。残りの2割は漁網など船舶から発生する。陸のどこから来るかというと、主に川から。タラ号では19年にヨーロッパの大きな9本の河川を調査したところ、川でもすでに大量のマイクロプラスチックが含まれていることがわかった。中には、化学繊維から派生するマイクロファイバーも多く含まれていた。

WWD:マイクロプラスチックによる汚染が特に深刻な地域は?

パトゥイエ:タラ号が14年に調査した地中海は深刻な地域の1つだが、特に日本や東南アジアがホットスポットだ。日本沿岸海域は、マイクロプラスチックの濃度が世界平均よりも27倍高いと言われている。そこでタラ オセアン ジャパンでは、20年に日本のローカルプロジェクトとして「タラ ジャンビオ マイクロプラスチック共同調査」を立ち上げ、調査を進めている。北海道から沖縄までを対象領域とし、海の表層水と海底の堆積物、砂浜の状況を同時に調べる、国内最大規模の調査だ。

WWD:日本の沿岸地域でマイクロプラスチックの濃度が高い原因は?

パトゥイエ:明確な原因はわかっていないが、世界の川由来のプラスチックごみのうち8割以上はアジアから流れている。諸外国が自国で発生したプラスチックごみを輸出した結果、処理しきれなかったものが海に流出しているとも考えられる。日本も輸出する側だったが、海に流れ出たものが海流にのってまた戻ってきているケースも多い。日本沿岸地域で外国語のラベルがついたプラスチックごみが見つかることもあるが、一方で日本からでたごみもどこかの海を汚染している。つまり、海洋プラスチックの問題は、自分たちは被害者でもあり、加害者でもあるということだ。

WWD:日本沿岸の生物多様性の状況は?

パトゥイエ:生物種の約20%が生息すると言われるサンゴ礁は、海の生態系において重要な役割を果たしている。しかし、日本近海でも、沖縄のサンゴ礁の7割近くが温暖化による白化現象で破壊されている。タラ号では16~18年に太平洋のサンゴ礁の調査を行い、サンゴの耐性と適応に関する研究を進めている。また、海面温度の上昇で北上しているサンゴもいるが、このまま温暖化が進み、地球の平均気温が産業革命時と比較し、2℃以上上昇したら、99%のサンゴ礁が喪失すると推計されており、その後の生態系への影響は計り知れない。

WWD:プラスチックごみは実際に海にどんな影響を与えている?

パトゥイエ:海亀の鼻にストローがささっている衝撃的な映像は世界的にも有名だろう。魚がごみを間違えて食べてしまったり、プラスチックでお腹がいっぱいになった生き物たちが餓死してしまったりといった生物への被害は大きい。プラスチックを製造するときに添加する有害物質が海に流れて、魚の体内に蓄積されているとも言われている。人体への影響はまだわからないことも多く、影響がないとも、絶対にあるとも言えないが、科学者たちは警鐘をならしていることは事実だ。

WWD:タラ号にアーティストが乗船する理由は?

パトゥイエ:創設者であるアニエスべーは、アートを愛するデザイナーで長年若手アーティストのサポートにも積極的だ。そんなアニエスの意思をきっかけに、科学やデータだけではリーチできない層に、アートを通すことで問題の大切さを伝えられることがブランドらしいアプローチとして根付いたのである。アーティストにとってインスピレーションがあるだけでなく、タラ号に乗船する科学者にとっても新たな視点を得るきっかけになっている。

言葉だけでなく本気のアクションを

 現在「アニエスべー」は、タラオセアン財団のメインパートナーとしてサポートを続けている。海洋問題の認知を広げるべく、子どもたちを対象としたビーチクリーン活動ビーチクリーンやワークショップ、「タラ号」を題材にしたポスターコンクールなどを定期的に開催する。ローラン パトゥイエ(Laurent Patouillet)=アニエスベー ジャパン代表は、「私たちはサステブルという言葉を一人歩きさせるのではなく、自分たちが率先して行動を起こすことを大切にしている。マイクロファイバー汚染や大量廃棄の問題など、ファッション企業にとってもこの問題は大きく関係している。私たちはそれを自覚し、完璧ではないかもしれないが、大量生産から脱却し、サステナビリティに配慮した商品を少なく作って長く使ってもらうようなビジネスを実践している。業界全体で、言葉だけでなく本気のアクションをトレンドにしていきたい」と話す。


【WWDJAPAN Educations】

【第2期】サステナビリティ・ディレクター養成講座
2022年9月30日(金)開講

 昨年初めて開催し好評を得た「サステナビリティ・ディレクター養成講座」を今年も開講。サステナビリティはこれからの企業経営の支柱や根底となるものであり、実践が急がれる事業の課題である。この課題についてのビジョンを描くリーダーの育成を目的に、必要な思考力・牽引力を身につける全7回のワークショップとなる。前半は各回テーマに沿った第一線で活躍する講師を迎え、講義後にはディスカッションやワークショップを通して課題を明確化し、実践に向けたアクションプランに繋げていく。

 また、受講者だけが参加できるオンライン・コミュニティーでは、「WWDJAPAN」が取り上げるサステナビリティに関する最新ニュースや知っておくべき注目記事をチェックでき、更に講義内容をより深く理解するための情報を「WWDJAPAN」編集部が届ける、まさに“サステナ漬け”の3カ月となる。
講義のみが受講できるオンラインコースも同時に受け付けています。


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【9月23日まで無料公開】アニエスが立ち上げた海洋調査団に聞く海の今【海の危機、私たちはどう動く?】

 デザイナーのアニエスべー(agnes b.)は、海洋探査を目的とした「タラ オセアン(Tara Ocean)」プロジェクトを2003年に立ち上げた。アニエスとその息子で現アニエスベーフランス本社最高経営責任者のエティエンヌ・ブルゴワ(Etienne Bourgois)にとって、海は常に身近な存在だったのだという。海を守ることに情熱を持っていたアニエスとブルゴワは、極地探検などにも用いられたスクーナー船を購入し「タラ号」と名付けた。映画「風と共に去りぬ」の主人公が住んでいた農場の名前からとったもので、アニエスにとっていつでも戻りたくなる故郷を意味する。

 科学調査船「タラ号」は、地球温暖化が海に与える影響や生物多様性、マイクロプラスチック汚染の現状などについて調査を進めている。これまでに世界中で12の海洋科学探査プロジェクトを遂行した。「タラ号」を運営する公益財団法人タラオセアン財団のパトゥイエ由美子日本支部事務局長に、海洋汚染の現状について聞いた。

WWD:海洋汚染の主な原因は?

パトゥイエ由美子(以下、パトゥイエ):大きく言えば人間活動だ。生活および工業廃水やプラスチックごみも汚染の要因だが、特に影響が大きいのは温暖化だ。人間が排出する温室効果ガスが温暖化を進め、海水の温度が上がることで生物多様性が減少し、生態系のバランスが崩れたりしている。海はこれまで大量の温室効果ガスを吸収してくれていたが、余分な二酸化炭素を吸収したことで海洋酸性化が進んでいる。酸性化によっても、海洋の生物多様性が脅かされている。

WWD:海洋プラスチックごみとは具体的にどんなものが流れている?

パトゥイエ:8割が陸からくると言われている。残りの2割は漁網など船舶から発生する。陸のどこから来るかというと、主に川から。タラ号では19年にヨーロッパの大きな9本の河川を調査したところ、川でもすでに大量のマイクロプラスチックが含まれていることがわかった。中には、化学繊維から派生するマイクロファイバーも多く含まれていた。

WWD:マイクロプラスチックによる汚染が特に深刻な地域は?

パトゥイエ:タラ号が14年に調査した地中海は深刻な地域の1つだが、特に日本や東南アジアがホットスポットだ。日本沿岸海域は、マイクロプラスチックの濃度が世界平均よりも27倍高いと言われている。そこでタラ オセアン ジャパンでは、20年に日本のローカルプロジェクトとして「タラ ジャンビオ マイクロプラスチック共同調査」を立ち上げ、調査を進めている。北海道から沖縄までを対象領域とし、海の表層水と海底の堆積物、砂浜の状況を同時に調べる、国内最大規模の調査だ。

WWD:日本の沿岸地域でマイクロプラスチックの濃度が高い原因は?

パトゥイエ:明確な原因はわかっていないが、世界の川由来のプラスチックごみのうち8割以上はアジアから流れている。諸外国が自国で発生したプラスチックごみを輸出した結果、処理しきれなかったものが海に流出しているとも考えられる。日本も輸出する側だったが、海に流れ出たものが海流にのってまた戻ってきているケースも多い。日本沿岸地域で外国語のラベルがついたプラスチックごみが見つかることもあるが、一方で日本からでたごみもどこかの海を汚染している。つまり、海洋プラスチックの問題は、自分たちは被害者でもあり、加害者でもあるということだ。

WWD:日本沿岸の生物多様性の状況は?

パトゥイエ:生物種の約20%が生息すると言われるサンゴ礁は、海の生態系において重要な役割を果たしている。しかし、日本近海でも、沖縄のサンゴ礁の7割近くが温暖化による白化現象で破壊されている。タラ号では16~18年に太平洋のサンゴ礁の調査を行い、サンゴの耐性と適応に関する研究を進めている。また、海面温度の上昇で北上しているサンゴもいるが、このまま温暖化が進み、地球の平均気温が産業革命時と比較し、2℃以上上昇したら、99%のサンゴ礁が喪失すると推計されており、その後の生態系への影響は計り知れない。

WWD:プラスチックごみは実際に海にどんな影響を与えている?

パトゥイエ:海亀の鼻にストローがささっている衝撃的な映像は世界的にも有名だろう。魚がごみを間違えて食べてしまったり、プラスチックでお腹がいっぱいになった生き物たちが餓死してしまったりといった生物への被害は大きい。プラスチックを製造するときに添加する有害物質が海に流れて、魚の体内に蓄積されているとも言われている。人体への影響はまだわからないことも多く、影響がないとも、絶対にあるとも言えないが、科学者たちは警鐘をならしていることは事実だ。

WWD:タラ号にアーティストが乗船する理由は?

パトゥイエ:創設者であるアニエスべーは、アートを愛するデザイナーで長年若手アーティストのサポートにも積極的だ。そんなアニエスの意思をきっかけに、科学やデータだけではリーチできない層に、アートを通すことで問題の大切さを伝えられることがブランドらしいアプローチとして根付いたのである。アーティストにとってインスピレーションがあるだけでなく、タラ号に乗船する科学者にとっても新たな視点を得るきっかけになっている。

言葉だけでなく本気のアクションを

 現在「アニエスべー」は、タラオセアン財団のメインパートナーとしてサポートを続けている。海洋問題の認知を広げるべく、子どもたちを対象としたビーチクリーン活動ビーチクリーンやワークショップ、「タラ号」を題材にしたポスターコンクールなどを定期的に開催する。ローラン パトゥイエ(Laurent Patouillet)=アニエスベー ジャパン代表は、「私たちはサステブルという言葉を一人歩きさせるのではなく、自分たちが率先して行動を起こすことを大切にしている。マイクロファイバー汚染や大量廃棄の問題など、ファッション企業にとってもこの問題は大きく関係している。私たちはそれを自覚し、完璧ではないかもしれないが、大量生産から脱却し、サステナビリティに配慮した商品を少なく作って長く使ってもらうようなビジネスを実践している。業界全体で、言葉だけでなく本気のアクションをトレンドにしていきたい」と話す。


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【第2期】サステナビリティ・ディレクター養成講座
2022年9月30日(金)開講

 昨年初めて開催し好評を得た「サステナビリティ・ディレクター養成講座」を今年も開講。サステナビリティはこれからの企業経営の支柱や根底となるものであり、実践が急がれる事業の課題である。この課題についてのビジョンを描くリーダーの育成を目的に、必要な思考力・牽引力を身につける全7回のワークショップとなる。前半は各回テーマに沿った第一線で活躍する講師を迎え、講義後にはディスカッションやワークショップを通して課題を明確化し、実践に向けたアクションプランに繋げていく。

 また、受講者だけが参加できるオンライン・コミュニティーでは、「WWDJAPAN」が取り上げるサステナビリティに関する最新ニュースや知っておくべき注目記事をチェックでき、更に講義内容をより深く理解するための情報を「WWDJAPAN」編集部が届ける、まさに“サステナ漬け”の3カ月となる。
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元AKBこじはるが語る「ECで成功していても実店舗を出す理由」 7月30日に「ハーリップトゥ」初の直営店をオープン

 小嶋陽菜が代表取締役CCO(チーフクリエイティブオフィサー)を務めるheart relationは7月30日、小嶋がプロデュースするブランド「ハーリップトゥ(HER LIP TO)」初の直営店「ハウス オブ エルメ(HOUSE OF HERME)」を、東京・神宮前にオープンする。店は表参道から1本入った通りにある2階建てビルの2階で、面積約213平方メートル。“ブティックホテル”がテーマの店内は、大理石の壁に組み木細工やモザイクタイルの床、小嶋自らが世界各国から取り寄せたという什器や照明を組み合わせており、非常に豪華で凝った空間だ。週末の入店はしばらく抽選による予約制で、オープン初日の入店には約3000人の応募があったという。「プロダクトを提案するだけでなく、その先の経験を届けたい」と語る小嶋に、ECで既に影響力を持つブランドが実店舗を持つ狙いや、ブランドの今後について聞いた。

WWD:2018年にブランドを立ち上げて以来、ECを主販路にしつつ、ポップアップストアを定期的に開催する形で成長してきた。常設店出店を決めた背景は。

小嶋陽菜heart relation代表取締役CCO(以下、小嶋):コロナ禍以降、出掛けることや誰かに会うことがすごく特別なものになったと感じています。これまで、ポップアップストアを行う際も妥協することなくブランドの世界観を作り込んできましたが、従来以上に非日常感というか、「せっかくお出掛けするからこその特別感」みたいなものが求められるようになっています。それを感じられる場所を作りたいと思いました。

 今はわざわざ実店舗を持たなくても、ソーシャルで何でもできる時代です。「ハーリップトゥ」もSNS上のクリエイティブが好評だし、ECで買った商品が届いた時の梱包の紙がかわいいって支持されています。そんなふうにオンラインでの体験がどんどん進化している中で実店舗を持つからこそ、オンラインではできないことをやらないと意味がない。オンラインで支持されてきたから、それでも店をやる意味は何かとすごく考えました。「これくらいならオンラインでいい」とは思われないような、わざわざ時間を作って来てもらったからこその意味を感じてもらえる空間を目指しています。

WWD:店内は確かに非日常を感じさせる凝った作り。どこを撮っても“映える”ようになっている。

小嶋:コロナ禍で海外旅行にもなかなか行けなくなって、気分が上がる瞬間が少なくなっています。私の好きなものを詰め込んで、世界中を旅しているような気分になれるようにコーナーごとに作り込みました。例えば今私が座っているコーナーは、イギリスの壁紙とイタリアから取り寄せたビンテージのランプを組み合わせています。ランプは以前からかわいいなと思っていたけど、自宅のインテリアにはちょっと合わなくて購入していなかったもの。でも、お店にはちょうどいいなと思って取り寄せました。他にも、フィンランドのアーティストや家具デザイナーなどにインスタのDMで私が直接連絡して、店内に置きたいものを集めました。内装はやりたいことがたくさんあったので、(特に建築デザイナーなどとは組まず)それをリストに全て書き出して施工の会社に渡しています。

 ドレスルーム(試着室)は5つあって、壁紙や床の組み木模様を1つ1つ変えています。以前パリで泊まったホテルが、部屋ごとに内装イメージが全く違ってワクワクしました。そんなときめきを感じてもらいたくて。スイートルームと呼ぶコーナーでは、ロイヤリティーの高いお客さまに何か特別なプログラムを提供していきたい。コーヒースタンドのコーナーは、私が好きな神宮前のカフェ「ラテスト」と組んでメニュー開発をしています。ブランドのモチーフであるチェリーを使ったオリジナルドリンクも作りました。アパレルの在庫を置くとストックルームのスペースが大きくなってしまうので、服はここでは試着のみにして、ECで購入するショールーミング形式にしています。

購入した“その先”が見えるブランドに

WWD:「気分が上がる体験をデザインする」ことは、今あらゆるブランドが目指しているものだ。

小嶋:お客さまのSNSを見ると、特別な場所に「ハーリップトゥ」を着て行っていただいていることが多いです。服やビューティアイテムを販売するだけでなく、(購入した)その先の自分を想像できるブランドでありたいし、この店もまさにそんな提案をしていくための場所です。立ち上げから最初の2年はリゾートで着るワンピースのブランドというイメージでしたが、コロナ禍以降は「ハーリップトゥ」を着てアフタヌーンティーに行くという声が広がっています。それで期間限定で代官山にカフェをオープンしたり、大阪でホテルと組んだアフタヌーンティーのイベントを行ったりしてきました。そんなふうにお客さまの動向を見ていて気づくことは多いです。

 「ハウス オブ エルメ」のエルメは、herとmeを組み合わせた造語。あなたと私がつながる場所といった意味です。私自身買い物が好きで、これまでさまざまな店で高いホスピタリティーのサービスを受けてきました。その中で、こういう気遣いはすてきだな、粋だなと感じてきたものがあるから、そう感じていただけるようなサービスをこの店からも提供していきたい。

WWD:店ができたことで、イベントもこれまで以上に実施しやすくなった。例えば27日には、一般オープンに先駆けて店を体験できるプレビューイベントも3000円のチケット制で企画しており、抽選で当たった客が入店できる仕組みになっている。

小嶋:27日のストアプレビューパーティーは、一番近いファンの方にいち早く店を見ていただきたいと思って企画しました。どういう形がいいか、考えに考えてこの形にしています。ケータリングを用意し、一部商品は一足早く購入が可能。ブランドのことがより好きな方に来ていただいて、楽しんでいただくために絶妙な金額だと判断して、チケットは3000円としました。お店を完成させることでいっぱいいっぱいだったので、それ以降のイベントなどの計画はこれから。熱量の高いお客さまに、よりエクスクルーシブな体験を提供できるようにしていきたいと思っています。

ブランドはスケールさせればいいわけじゃない

WWD:会社組織の話に移ると、安倉知弘CEOなどIT系企業出身の経営層メンバーが増え、2月に新体制となってパワーアップしている。

小嶋:お店を出し、さまざまな事業を行っていくとなると、人が足りない、私1人では実行できない。それで仲間を増やしてきました。今、社員は約40人です。やりたいことをやり切る力のある、いいチームになってきたと思います。今は毎日が文化祭の前日みたいな感じ。6月は月間売り上げとしても過去最高を記録しました。

 IT系出身メンバーは、それまで「事業をいかにスケールさせるか」という世界で生きてきた人たち。でも、ブランド運営は単にスケールさせればいいわけじゃない。余白とか、アート的感覚みたいなものがブランドを作る上では重要だから、発想としては真逆です。そこの考え方のすり合わせにはものすごく時間をかけました。IT系出身のメンバーは増えましたが、グラフィックデザイナーや動画制作者などクリエイターの方はもっと社内に必要で、クリエイターが働きやすい環境や仕組み作りが大事だなと思っています。

WWD:新事業ではどんなことを考えているか。例えば今は、NFTに大きな注目が集まっている。

小嶋:サプライズを届けることを会社のテーマにしているので、次に何をやるかは秘密です。NFTは2年ほど前に社内で“アメリカのマーケットトレンド共有会”みたいな勉強会を開いたときに知って、何かに取り入れられたら面白いなとは思ってきました。でも、「ハーリップトゥ」のお客さま世代に浸透するにはまだまだハードルがあると感じています。NFTが世の中にどうなじんでいくのかは、個人的な興味としても追っていきたいと思っています。

 “アメリカのマーケットトレンド勉強会”は常にやっているわけではないですが、今は新卒採用で入社したニューヨーク出身の社員もいて、海外のビューティトレンドなどをどんどんシェアしてくれる。そんなふうに、どんどんいろんな情報が出てくるカオスみたいな状態が好きだし、会社としてすごくいい雰囲気だと思います。「自分たちの事業はこれ」って、決めつけないことが大事。アパレルだけ、ビューティだけって決めつけない。私はエンタメ界出身というのもあって、何と何を組み合わせて、どうすれば面白くなるかを常に考えています。

ここから経営として新しいフェーズに

WWD:常設店舗は今後増やしていくのか。

小嶋:まずはこのお店でお客さまとより深いコミュニケーションを取っていきます。それ以降のことはまだ考えていません。ポップアップショップも、いろんな地域のファンの方から「うちのエリアにも来て」と多くの声をいただきます。でも、求められるクオリティーのものを出していくのはものすごく難しい。やりたいけど、まずその体制を作らないといけない。お客さまの熱量が非常に高い分、販売員はそれをさらに超える商品知識やホスピタリティーがないといけません。そういう方を採用するのは非常に大変ですが、それでも一緒にやっていきたいという仲間をぜひ採用したい。

 実店舗を持って、お店と本社というようにロケーションが離れたことで、ここからはまた(経営の)見え方やフェーズが変わってくると思う。そういう中で「みんなで頑張ろう!」という形をどう作るのか。それは私にとっても課題だし、会社としてこれからのチャレンジだなと思います。

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元AKBこじはるが語る「ECで成功していても実店舗を出す理由」 7月30日に「ハーリップトゥ」初の直営店をオープン

 小嶋陽菜が代表取締役CCO(チーフクリエイティブオフィサー)を務めるheart relationは7月30日、小嶋がプロデュースするブランド「ハーリップトゥ(HER LIP TO)」初の直営店「ハウス オブ エルメ(HOUSE OF HERME)」を、東京・神宮前にオープンする。店は表参道から1本入った通りにある2階建てビルの2階で、面積約213平方メートル。“ブティックホテル”がテーマの店内は、大理石の壁に組み木細工やモザイクタイルの床、小嶋自らが世界各国から取り寄せたという什器や照明を組み合わせており、非常に豪華で凝った空間だ。週末の入店はしばらく抽選による予約制で、オープン初日の入店には約3000人の応募があったという。「プロダクトを提案するだけでなく、その先の経験を届けたい」と語る小嶋に、ECで既に影響力を持つブランドが実店舗を持つ狙いや、ブランドの今後について聞いた。

WWD:2018年にブランドを立ち上げて以来、ECを主販路にしつつ、ポップアップストアを定期的に開催する形で成長してきた。常設店出店を決めた背景は。

小嶋陽菜heart relation代表取締役CCO(以下、小嶋):コロナ禍以降、出掛けることや誰かに会うことがすごく特別なものになったと感じています。これまで、ポップアップストアを行う際も妥協することなくブランドの世界観を作り込んできましたが、従来以上に非日常感というか、「せっかくお出掛けするからこその特別感」みたいなものが求められるようになっています。それを感じられる場所を作りたいと思いました。

 今はわざわざ実店舗を持たなくても、ソーシャルで何でもできる時代です。「ハーリップトゥ」もSNS上のクリエイティブが好評だし、ECで買った商品が届いた時の梱包の紙がかわいいって支持されています。そんなふうにオンラインでの体験がどんどん進化している中で実店舗を持つからこそ、オンラインではできないことをやらないと意味がない。オンラインで支持されてきたから、それでも店をやる意味は何かとすごく考えました。「これくらいならオンラインでいい」とは思われないような、わざわざ時間を作って来てもらったからこその意味を感じてもらえる空間を目指しています。

WWD:店内は確かに非日常を感じさせる凝った作り。どこを撮っても“映える”ようになっている。

小嶋:コロナ禍で海外旅行にもなかなか行けなくなって、気分が上がる瞬間が少なくなっています。私の好きなものを詰め込んで、世界中を旅しているような気分になれるようにコーナーごとに作り込みました。例えば今私が座っているコーナーは、イギリスの壁紙とイタリアから取り寄せたビンテージのランプを組み合わせています。ランプは以前からかわいいなと思っていたけど、自宅のインテリアにはちょっと合わなくて購入していなかったもの。でも、お店にはちょうどいいなと思って取り寄せました。他にも、フィンランドのアーティストや家具デザイナーなどにインスタのDMで私が直接連絡して、店内に置きたいものを集めました。内装はやりたいことがたくさんあったので、(特に建築デザイナーなどとは組まず)それをリストに全て書き出して施工の会社に渡しています。

 ドレスルーム(試着室)は5つあって、壁紙や床の組み木模様を1つ1つ変えています。以前パリで泊まったホテルが、部屋ごとに内装イメージが全く違ってワクワクしました。そんなときめきを感じてもらいたくて。スイートルームと呼ぶコーナーでは、ロイヤリティーの高いお客さまに何か特別なプログラムを提供していきたい。コーヒースタンドのコーナーは、私が好きな神宮前のカフェ「ラテスト」と組んでメニュー開発をしています。ブランドのモチーフであるチェリーを使ったオリジナルドリンクも作りました。アパレルの在庫を置くとストックルームのスペースが大きくなってしまうので、服はここでは試着のみにして、ECで購入するショールーミング形式にしています。

購入した“その先”が見えるブランドに

WWD:「気分が上がる体験をデザインする」ことは、今あらゆるブランドが目指しているものだ。

小嶋:お客さまのSNSを見ると、特別な場所に「ハーリップトゥ」を着て行っていただいていることが多いです。服やビューティアイテムを販売するだけでなく、(購入した)その先の自分を想像できるブランドでありたいし、この店もまさにそんな提案をしていくための場所です。立ち上げから最初の2年はリゾートで着るワンピースのブランドというイメージでしたが、コロナ禍以降は「ハーリップトゥ」を着てアフタヌーンティーに行くという声が広がっています。それで期間限定で代官山にカフェをオープンしたり、大阪でホテルと組んだアフタヌーンティーのイベントを行ったりしてきました。そんなふうにお客さまの動向を見ていて気づくことは多いです。

 「ハウス オブ エルメ」のエルメは、herとmeを組み合わせた造語。あなたと私がつながる場所といった意味です。私自身買い物が好きで、これまでさまざまな店で高いホスピタリティーのサービスを受けてきました。その中で、こういう気遣いはすてきだな、粋だなと感じてきたものがあるから、そう感じていただけるようなサービスをこの店からも提供していきたい。

WWD:店ができたことで、イベントもこれまで以上に実施しやすくなった。例えば27日には、一般オープンに先駆けて店を体験できるプレビューイベントも3000円のチケット制で企画しており、抽選で当たった客が入店できる仕組みになっている。

小嶋:27日のストアプレビューパーティーは、一番近いファンの方にいち早く店を見ていただきたいと思って企画しました。どういう形がいいか、考えに考えてこの形にしています。ケータリングを用意し、一部商品は一足早く購入が可能。ブランドのことがより好きな方に来ていただいて、楽しんでいただくために絶妙な金額だと判断して、チケットは3000円としました。お店を完成させることでいっぱいいっぱいだったので、それ以降のイベントなどの計画はこれから。熱量の高いお客さまに、よりエクスクルーシブな体験を提供できるようにしていきたいと思っています。

ブランドはスケールさせればいいわけじゃない

WWD:会社組織の話に移ると、安倉知弘CEOなどIT系企業出身の経営層メンバーが増え、2月に新体制となってパワーアップしている。

小嶋:お店を出し、さまざまな事業を行っていくとなると、人が足りない、私1人では実行できない。それで仲間を増やしてきました。今、社員は約40人です。やりたいことをやり切る力のある、いいチームになってきたと思います。今は毎日が文化祭の前日みたいな感じ。6月は月間売り上げとしても過去最高を記録しました。

 IT系出身メンバーは、それまで「事業をいかにスケールさせるか」という世界で生きてきた人たち。でも、ブランド運営は単にスケールさせればいいわけじゃない。余白とか、アート的感覚みたいなものがブランドを作る上では重要だから、発想としては真逆です。そこの考え方のすり合わせにはものすごく時間をかけました。IT系出身のメンバーは増えましたが、グラフィックデザイナーや動画制作者などクリエイターの方はもっと社内に必要で、クリエイターが働きやすい環境や仕組み作りが大事だなと思っています。

WWD:新事業ではどんなことを考えているか。例えば今は、NFTに大きな注目が集まっている。

小嶋:サプライズを届けることを会社のテーマにしているので、次に何をやるかは秘密です。NFTは2年ほど前に社内で“アメリカのマーケットトレンド共有会”みたいな勉強会を開いたときに知って、何かに取り入れられたら面白いなとは思ってきました。でも、「ハーリップトゥ」のお客さま世代に浸透するにはまだまだハードルがあると感じています。NFTが世の中にどうなじんでいくのかは、個人的な興味としても追っていきたいと思っています。

 “アメリカのマーケットトレンド勉強会”は常にやっているわけではないですが、今は新卒採用で入社したニューヨーク出身の社員もいて、海外のビューティトレンドなどをどんどんシェアしてくれる。そんなふうに、どんどんいろんな情報が出てくるカオスみたいな状態が好きだし、会社としてすごくいい雰囲気だと思います。「自分たちの事業はこれ」って、決めつけないことが大事。アパレルだけ、ビューティだけって決めつけない。私はエンタメ界出身というのもあって、何と何を組み合わせて、どうすれば面白くなるかを常に考えています。

ここから経営として新しいフェーズに

WWD:常設店舗は今後増やしていくのか。

小嶋:まずはこのお店でお客さまとより深いコミュニケーションを取っていきます。それ以降のことはまだ考えていません。ポップアップショップも、いろんな地域のファンの方から「うちのエリアにも来て」と多くの声をいただきます。でも、求められるクオリティーのものを出していくのはものすごく難しい。やりたいけど、まずその体制を作らないといけない。お客さまの熱量が非常に高い分、販売員はそれをさらに超える商品知識やホスピタリティーがないといけません。そういう方を採用するのは非常に大変ですが、それでも一緒にやっていきたいという仲間をぜひ採用したい。

 実店舗を持って、お店と本社というようにロケーションが離れたことで、ここからはまた(経営の)見え方やフェーズが変わってくると思う。そういう中で「みんなで頑張ろう!」という形をどう作るのか。それは私にとっても課題だし、会社としてこれからのチャレンジだなと思います。

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【9月23日まで無料公開】アディダスの海洋ごみ靴誕生秘話【海の危機、私たちはどう動く?】

 アディダスは15年、海洋環境保護団体のパーレイ・フォー・ジ・オ―ション(以下、パーレイ)とパートナーシップを組み、ペットボトルなどの海洋プラスチックごみをアップサイクルした糸“パーレイ・オーシャン・プラスチック”を用いた製品を販売している。14年にパーレイからのアプローチがきっかけで協働が始まったというが、海洋ごみを活用した靴の生産数は17年に約100万足、19年に約1100万足、そして21年には約1800万足にまで拡大。今春発売された「オリジナルス」では“パーレイ・オーシャン・プラスチック”の使用率を50%以上にするなど、アディダスが大きく掲げる「END PLASTIC WASTE プラスチックゴミゼロの未来へ。」に向けた鍵の一つで、海洋ごみを活用した新しいサプライチェーンを構築した点が高く評価されている。メーカーはこれまでの良質な素材を集めて製品を作ることから、廃棄物などをどう活用して製品に生かすか、という視点を持つことが重要になっており、この取り組みはイノベーションが環境問題の解決策につながっている好例でもある。パーレイとの取り組みをマルヴィン・ホフマン(Marwin Hoffman)=ヴァイスプレジデント・アウトドアマーケティングに聞く。

WWD:2015年にパーレイとパートナーシップを結び、アディダスは本格的にサステナビリティに取り組み始めた。わずか数年で数千万足を生産するに至った原動力は?

マルヴィン・ホフマン/ヴァイスプレジデント・アウトドアマーケティング(以下、ホフマン):2015年の国連本部で展示した、漁網をアップサイクルした糸でアッパーを作ったシューズを、多くのアスリートが「ゲームチェンジャー」として取り上げてくれた。そこで当社は、海岸や海沿いの地域で回収されたプラスチックごみを使用した商品生産の実現を目指した。わずか5年で、グローバルなソリューションへと拡大することができた。このシューズは、身に着けることのできる“可能性の象徴”と言えるだろう。ほかにできることはないか、という会話や質問、アイデアのきっかけになるから。

 パーレイはプラスチック廃棄物だけに留まらず、海洋の状態を改善するための新しいイノベーションに着手している。彼らの取り組みが注目を集めるにつれ、その影響力と実行力も増している。そして、共通するゴールに向けたアディダスとパーレイの協力態勢によって、イノベーションのスピードを速め、より効率的に規模を拡大し、よりオーガニックに影響を与えることができると考えている。

WWD:具体的にどのようにサプライチェーンを築いたか。

ホフマン:パーレイと提携した15年以降、“パーレイ・オーシャン・プラスチック”をバージンポリエステルの革新的な代替品として商品生産に使用している。“パーレイ・オーシャン・プラスチック”は、海に到達する前に海岸や海沿いの地域から回収されたプラスチックをアップサイクルして作成される素材だ。パーレイはパートナーと協力して、回収された原材料(主にペットボトル)を収集・分類し、糸を製造するサプライヤーに輸送している。そこで製造された糸は商標登録されており、アディダスはその素材を使用したシューズ、アパレル、アクセサリーなどを、パフォーマンスとライフスタイル両方のカテゴリーで展開している。

WWD:“パーレイ・オーシャン・プラスチック”は、バージン素材に比べて扱いづらい点もあると思うが、どのように解決しているか。

ホフマン:アディダスにとって、アスリートのために最高の製品を作ることが大きなミッションだが、それは地球を犠牲にしてまで行うことではない。25年までに品目の90%にサステナブルな技術、素材、デザインもしくは製造方法を採用するという私たちのゴールで大事なポイントは、ポートフォリオ全体にわたる目標であるということだ。この目標を実現するには、全てのカテゴリーにわたり、綿密な開発プロセスと妥協のないパフォーマンステストが必要となり、また同時に途中で失敗すること、実験を恐れない姿勢も必要となる。パーレイは単一のプロトタイプから始まり、多数のアパレルへと広がった。“メイド・トゥ・ビィ・リメイド(Made to be Remade、以下MTBR)”、(オールバーズと協業する)“フューチャークラフト.フットプリント(FUTURECRAFT.FOOTPRINT)」も同じく、プロトタイプから始まっている。

 アディダスには、200名にも上るエンジニアや技術者、デザイナー、スポーツサイエンスのスペシャリストで構成された強力なイノベーションチームがある。彼らは、アスリートにとって最善のものを生み出すだけでなく、それを再定義し続けるためにも、日々失敗を繰り返している。

WWD:公式サイトで大きく掲げている“END PLASTIC WASTE プラスチックゴミゼロの未来へ。”のメッセージが印象的だ。

ホフマン:サステナビリティにおける当社の大きなミッションは、CO2排出量の削減や、消費者行動の変化促進に焦点を当てたイノベーションとパートナーシップを通じて、プラスチックごみゼロの未来を実現することだ。プラスチックごみは非常に大きな問題であり、一刻を争う状況だ。世界的にも、この問題の緊急性に注目が集まりつつある。国連によってプラスチック汚染の解決に向けた協定が最近承認されたことで、この問題に新たに焦点が当てられている。

 パーレイとのパートナーシップは、このアクションを迅速かつ大規模に実現するための鍵になっている。社内にはない専門分野を持つイノベーターを見つけてパートナーシップを組むことで、より良い解決方法を生み出し、目標を達成することが可能になる。

WWD:アディダスはパーレイ以外にも多くの団体や企業と協働している。

ホフマン:プラスチックごみ問題を解決するには、業界全体のソリューションだけではなく、業界を超えたソリューションも必要だ。また、「Fashion For Good」のような団体を介して、革新的な解決策をもたらすスタートアップ企業を見つけることも非常に重要。もしくは、地球のために競争を脇に置いて、オールバーズ(Allbirds)のような「競合」とも考えられるブランドと協働し、カーボンフットプリントを抑えたシューズを作ることも一例だ。私たちは、ビジネスとイノベーションの方法を再発明しようとしているさまざまなブランドや志を同じくする企業と協力し、可能性を広げることが、業界のリーダーとしての務めだと考えている。

WWD:アスリートや生活者を巻き込んだ“ラン・フォー・ジ・オーシャンズ(Run for the Oceans)”が毎年拡大し、影響力が増している。

ホフマン:ちょうど今年も終了したところだ。6年目となるこの取り組みでは、さまざまな能力とレベルのアスリートやランナーが一つになり、スポーツの力を通じて海洋プラスチック汚染問題への意識を高めることを目的としている。今年は、5月23日~6月8日までの間に670万人以上の参加者(676万161人)が取り組みに参加し、合計7億7100万分以上(7億7122万5511分)の走行時間を記録するなど、世界最大のランニング・ムーブメントの一つとなっている。

WWD:消費者を啓発することは重要だが、非常に難しい。どのようにイベントを企画しているか。ポイントは?

ホフマン:“ラン・フォー・ジ・オーシャン”が効果的に機能している要素として、消費者のアクションと活動が、海岸や海岸地域のコミュニティを保護することに貢献しているという、具体的な体験を提供しているところだと考えている。またその体験を、できる限りアクセスしやすくしているところもポイント。例えば今年は、参加者は幅広いスポーツ、アクティビティー、トレーニングで、このチャレンジに参加することができ、また使用アプリについても、「adidas Runtastic」「Joyrun」「Codoon」「Yeudongquan」「Strava」など、複数用意されていたところも大きいと思う。


【WWDJAPAN Educations】

【第2期】サステナビリティ・ディレクター養成講座
2022年9月30日(金)開講

 昨年初めて開催し好評を得た「サステナビリティ・ディレクター養成講座」を今年も開講。サステナビリティはこれからの企業経営の支柱や根底となるものであり、実践が急がれる事業の課題である。この課題についてのビジョンを描くリーダーの育成を目的に、必要な思考力・牽引力を身につける全7回のワークショップとなる。前半は各回テーマに沿った第一線で活躍する講師を迎え、講義後にはディスカッションやワークショップを通して課題を明確化し、実践に向けたアクションプランに繋げていく。

 また、受講者だけが参加できるオンライン・コミュニティーでは、「WWDJAPAN」が取り上げるサステナビリティに関する最新ニュースや知っておくべき注目記事をチェックでき、更に講義内容をより深く理解するための情報を「WWDJAPAN」編集部が届ける、まさに“サステナ漬け”の3カ月となる。
講義のみが受講できるオンラインコースも同時に受け付けています。


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好業績の陰に「顧客体験」への伴走 ゴールドウインとプレイドの事例

 さまざまなデジタルマーケティングツールが存在する中、数多くのアパレル企業から信頼を得ているのが、プレイドが提供する「カルテ(KARTE)」だ。「ザ・ノース・フェイス」などで知られるゴールドウインは、OMO(オンラインとオフラインの融合)の切り札として「カルテ」を活用し、実績を上げてきた。「カルテ」導入は小売業にどんな変革をもたらすのか。ゴールドウインの梅田輝和氏とプレイドの金井良輔氏が語り合った。

オンライン接客の導入で感じた手ごたえ

WWD:ゴールドウインが「カルテ」を導入した経緯は?

梅田輝和ゴールドウインEC販売部長(以下、梅田):以前から接客ツールの提案をプレイドから受けていた。ただ当社の環境が整っていなかったこともあり、見送っていた。第1回目の緊急事態宣言が出た2020年4月、再び新しいツールの提案があった。コロナ禍での私の問題意識とも一致したため導入を決めた。店舗を休業せざるを得ず、店に行きたくても行けないお客さまがいる。売り上げにも大きな打撃を受けた。ちょうどZOOM接客を始める小売業も出始めていたが、プレイドの提案はさらに進んだものだった。

金井良輔カスタマー・エクスペリエンス・プロデューサー(以下、金井):私たちが提案したのは「カルテ ギャザー(KARTE GATHER)」という店舗スタッフとEC上のお客さまをビデオでつないで接客できるツールだ。ECサイトと店舗スタッフは違う土俵で捉えがちだが、「カルテ ギャザー」を使えばデジタル上で店舗と同じリッチな接客が可能になる。お客さまがECサイトを回遊する中、適切なタイミングでオンライン接客のご案内を提示。店舗スタッフは店頭の端末を通じて、お客さまとコミュニケーションが取れる。店舗スタッフが「カルテ ギャザー」を通じてECの顧客に接客した場合、店舗からお客さまに商品を直送することもできるし、後からECサイト上で購入した場合も、その履歴が分かる。分断されたECと店頭を一体化して、その後の成果検証もできるようにした。

梅田:オンライン接客ツールにつなげるお客さまは、何かしらの商品に興味があり、課題をお持ちだ。「ザ・ノース・フェイス」ならバックパックのサイズ感、あるいはダウンジャケットの暖かさなど、購入前にいろいろ聞きたいことがある。ダウンジャケットの暖かさについて、ECサイトの文字だけで伝えるのは難しい。お客さまから「週末から北海道旅行に行く」と聞いて初めて、「でしたら、これがいいのでは」と具体的な接客ができる。

WWD:顧客データの活用とは具体的にどんなことか。

金井:接客スタッフにも、お客さまのニーズを拾い上げるのが得意な方と、不得手な方がいる。不得意な方でも「カルテ」を使うと、顧客がECサイトでどんな商品に興味を持っていたのか、今はこんなカテゴリーを探しているのでは、ということが分かる。データを集約していけば、過去に店頭で受けた接客も分かる。「以前購入したアウターに合わせるなら、このボトムスがいいと思います」というように、コミュニケーションが洗練されていく。一斉に同じ内容を送っていたメルマガを、顧客に合わせて変えていくことも可能だ。

梅田:デジタルの浸透によって、店舗スタッフの役割が変わった。仕事を再定義する必要性を感じる。店舗での売り上げだけでなく、ECの売り上げに貢献してくれたことを、会社として適切に評価する。インセンティブやモチベーションにつなげることも大切だ。

金井:ゴールドウインはどの部署の人もお客さまのことをすごく考えている。店舗スタッフとECをつなぐというソリューションからスタートしたが、「カルテ」導入から付随するプロジェクトへと取り組みがどんどん広がり、現在は週3回くらいの割合でディスカッションしている。どんな顧客体験を作りたいか、リアル店舗の役割とは何かなど、突っ込んだ議論を重ねてきた。当社がその期待にどれだけ応えられるか、宿題は多い。

WWD:ゴールドウインが考える顧客体験とは?

梅田:難しくは考えていない。お客さまが求めているものを提供する。そのためにお客さまのことを深く知らなければいけない。お客さまをワクワクさせ、お客さまの想像を超える感動を提供できるか。感動によってゴールドウインのファンをいかに増やすか。長い関係性を築いていくか。最高の顧客体験を築く土台にデータがある。

金井:顧客体験というと、漠然としたものになりがち。でも求められる売り上げにも寄与していくことが大前提だ。ゴールドウインがお客さまに対してどんな存在でありたいかなど、抽象的かつ本質的なところから話し合い、ポップアップのメッセージはこんな雰囲気がいいんじゃないか、サイトを訪問したらいきなりクーポンを出すようなことは違うのでは、といった具体的な話を詰める。言語化するのが難しいけれど、ディスカッションを重ねていく中で、ゴールドウインが目指す顧客体験を私たちも理解し、一緒に深めていく感覚だ。

ECサイトの利便性向上に伴い売り上げも伸長

WWD:売り上げも両社で共有しているのか。

梅田:週単位で共有している。やるからには数字を共有して、一緒に成果と課題を考えた方がいい。年間の平均購入単価×平均購入回数というシンプルなLTV(ライフタイムバリュー)の指標も大切にしている。直近ではVOC(お客さまの声)の分析も始めた。

金井:「カルテ」では、お客さまがこの画面でサイトを閉じたなどの行動データが集積できる。そういったアクションとVOCとを合わせて次のコミュニケーションに生かしたい。

梅田:一番大事なのは、デジタルもフィジカルも一つに捉えることだ。これまでは店舗でお客さまと対峙し、ある商品をしっかり売っていればよかった。今は新しいツールを導入することで、店舗スタッフがデジタルに貢献できる。データを活用しながら、人の力をうまく組み合わせるということが非常に大事だ。最近「コトラーのマーケティング5.0」(フィリップ・コトラー著、朝日新聞出版)を読んで、腑に落ちたことがある。情報や知識はAIや機械に置き換えることができるが、知恵を出すとか知見を活かすことは人間の領域であって、機械にはできない。それぞれで線を引くのではなく、データと人の力をうまく組み合わせて、お客さまに新しい価値を提案できるというのが、まさに「カルテ」でやっていることなのかなと。新しい取り組みが、次の新しい取り組みを生む。

金井:まさにそうだ。ゴールドウインにはさまざまなブランドがあるが、「カルテ」はあらゆるケースのお客さまにチューニング可能な設計なので、それぞれ解決策を紹介できる。各社のお客さま一人一人を分析して、どんなソリューションを組み合わせて使っていただくかを提案するのが私たちの仕事。この分野ではどこにも負けない自信がある。

販売に限定しない
「カスタマージャーニー」

WWD:今後の「カルテ」活用の展望は。

梅田:当社のカスタマージャーニーは、販売がゴールではない。特にアウトドアウエアやアウトドア用品は、長く愛用していただけるよう高品質な物作りをしてきた。修理・修繕の仕組みも整っている。膨大なデータの中に、お客さまに喜んでいただけるヒントが潜んでいる。一人一人のデータをしっかり見て、それを積み上げていくことが大切だ。それを磨き上げた結果、当社のファンになってくれる。

金井:ゴールドウインの販売だけでなく、MD、生産のスタッフまでが、僕らの提供するデータを通じて、その向こうにいるお客さまのことを想像し、それを未来につなげていく。「カルテ」を通じて、そんな姿を実現したい。

梅田:金井さん含め、プレイドのチームの皆さんと本音で議論した結果、OMOに本気で取り組む腹を決めることができた。会社は違えども考えているベクトルは同じという安心感がある。週に1回は私と金井さんの2人で話し合っている。現場レベルでも頻繁にコミュニケーションをとる。今も4〜5つの新しいプロジェクトが動いている。スポーツメーカーなので、良い商品を作ればいいと考えがちだった。でもプレイドとの取り組みによって、宝のようなデータを活用すれば、さまざまな可能性が広がっていくことが分かった。長年培ってきたリアル店舗の価値と、デジタルのテクノロジーをうまく組み合わせて顧客体験を磨いていきたい。

PHOTO : KAZUO YOSHIDA
TEXT : MIWAKO ANNEN
問い合わせ先
プレイド
https://karte.io/enterprise/

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7月29日に新規上場 エアークローゼットCEOに聞く「今、上場する理由」

 衣料品レンタルサービスのエアークローゼットは東京証券取引所から承認され、7月29日に東証グロース市場に新規上場する。2014年7月に創業し、翌年2月に月額制レンタルサービス「エアークローゼット」を開始。7年間で会員登録者数70万人超に成長した。創業者でもある天沼聰社長兼CEOに上場の狙いとその後の計画について聞いた。

WWD:上場の目的は?

天沼CEO:社会的な信頼・信用を得ることと、資金調達の2つが大きな目的だ。しっかりと事業成長させていくことが一番大事だと思っている。

WWD:長引くコロナ禍に加え、世界的なインフレなど不安定な情勢が続くが、なぜこのタイミングで?

天沼CEO:市況が悪いことは重々承知で、資金調達価格が下がったり、時価総額もそんなに大きな額にならなかったりという一定のネガティブ要因があり、悩まないわけではなかった。それでも長い目で見たときに、私たちのビジネスモデルが生活に絶対根付くことや、この事業の拡大を見据えると、上場時の時価総額よりも、かねてからの事業計画に沿って、事業基盤ができたタイミングで上場し、その先の成長につなげようと考えた。2007年のZOZOの上場以降、ファッション業界で新しいプラットフォームビジネスでの上場は見当たらないし、コロナ禍によって消費行動も含めて変革が進んでいる。業界を一緒に盛り上げていくと打ち出す意味合いも込めた。

WWD:具体的にどこまで経営基盤ができたタイミングなのか?

天沼CEO:われわれが予定としていたオペレーションコストに達したタイミングだ。

WWD:収益化の目処が立ったということか。21年6月期は売上高が28億円、営業利益は3800万円、純損益は3億4400万円の赤字。22年6月期は売上高が前期比16.1%増の33億円、営業損益は5100万円の赤字、純損益は4億2300万円の赤字を見込んでいる。

天沼CEO:21年6月期に営業黒字を出せたというは一つのマイルストーンだ。当期純利益の赤字は継続しているが、限界利益として黒字を出し、会員数が増えることによって固定費をまかなえれば、持続可能な利益が堅いものとなる。会員数がここまで増えれば大丈夫というラインは割と明確に見えている。計画通りという感じだが、先行投資の状況によって最終的に赤字か黒字かは変動する。

WWD:公募株数は73万3000株で、公開価格は1株あたり800円。調達した資金は何に使う?

天沼CEO:すごい額の資金調達ではないというのもあるが、基本的には今の私たちの事業基盤をさらに強化し、拡大することに投じる。ウィメンズを中心にサービスを展開しているが、まだまだすごく広いポテンシャルがある。ほとんどの方が私たちのサービスを知らない状態なので、まず一つは認知度を高めて、広げていくことが大事だ。具体的には、われわれのレンタル資産である洋服の調達とマーケティング、そして人材採用の3つに充てようと考えている。人材採用はサービス自体が広がっていくので、エンジニアやデザイナー、データサイエンティストのほか、引き続きスタイリストも採用を拡大する。メンズもかねてから計画しているが、また別の機会を考えている。

WWD:まずはウィメンズを拡大し、収益性のあるビジネスモデルを確立することが優先ということか。これまでの知見やネットワーク、物流基盤を生かしてレンタル事業のプラットフォーム展開も始めたが?

天沼CEO:これから本格始動する。これまでコストも時間もすごくかけて物流基盤の構築・改善を続け、独自の倉庫管理システムも開発した。これらを他のブランドやメーカー、セレクトショップ等にプラットフォームとして提供する。自社のレンタルサービスやサブスクサービスとして運用してもらいつつ、われわれが裏方として、洋服を預かり、プラットフォームとして動く。

WWD:「エアークローゼット」事業とは別の大きな柱になりそうだ。

天沼CEO:そのつもりだ。メンズ等のセグメント展開と、プラットフォーム展開は並行して行い、2つの柱にしていく。

WWD:自身がコンサルティング会社や大手IT企業で経験を積んでいるということもあり、上場についても準備万端で、非常に落ち着いているように見える。

天沼CEO:いやいや、コロナ禍でなかなか波瀾万丈だ(苦笑)。ただ、開示こそしていなかったが、事業基盤作りが優先順位として高かったので、数字管理や会計については、社内では情報整理ができていた。上場によって、認知度向上や、お客さまや取引先からの信頼度・信用度の向上加速は期待しているが、経営方針やKPIが変わるようなことはない。上場当日の夜は社内でささやかな祝賀会をして、チームみんなを労いたい。

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雑誌編集とアパレル、巨匠二人からのメッセージとは? 【UA重松理×石川次郎対談 最終回VOL.5】

 ユナイテッドアローズの名誉会長で、日本服飾文化振興財団の理事長を務める重松理が、「ポパイ」「ブルータス」「ターザン」などの創刊編集長を務めた雑誌の編集者である石川次郎氏と組み、今年3月に「日本現代服飾文化史 ジャパンファッションクロニクル インサイトガイド 1945~2021」(発行・講談社エディトリアル)を発行した。二人のレジェンドは、なぜタッグを組み、書籍を発行したのか。最終回のテーマは、「過去とこれからのムーブメントの作り方」。二人からこれからを担う若い世代へのメッセージとは?

VOL.4はこちら

――今の流れからすると、これはもう、書籍の第2弾、もしかしたら、第3弾もありそうですね(笑)。

重松:(笑)。自分は本当に、遊び場のこともやりたいし、インフルエンサーの変遷もやりたいんですよね。裏原宿から生まれたインフルエンサーが今のランウェイを引っ張っているなんて、本当に面白いですよね。そこもまとめたいなとか。大変なんですけど、それを全部やってから引退しようかなと思っています。

――今、インフルエンサーの話が出てきましたが、お二人が考えるムーブメントのつくり方とは?

石川:雑誌編集者の立場でいうと、ムーブメントを作ろうと思って仕事をしたことはないんですよ。外国のムーブメントをそのまま紹介することが大切だと。日本で同じようなことを巻き起こしたいといった大それた考えはとくになかったんです。僕たちがやったことをもとに、その道のプロが「じゃあ、日本でもロックコンサートをしよう」とか、「この街をもっと面白くしよう」という動きはありましたけどね。雑誌の編集者はそこまでは考えられないですし、見せちゃったら終わりというか。常に新しいものを探して、知らせて、終わり。そこから先のムーブメントは結果的に起きても、自分たちがやった仕事ではないという思いはどこかにあるんですね。

――意図していなかったけれども、結果としてムーブメントになったということはありますが、それは結果論であって、スタンスは異なる、ということですね。では、特に注目してきたインフルエンサーとは?

重松:たくさんいますよね。今、あげきれないので、一つのものにまとめたほうがいいと思っているぐらいなので(笑)。われわれの時代には、ビートルズもいたし、ジョン・レノンのメガネも買いましたし。だからミュージシャンはかなり多いと思うんです。今はミュージシャンもあると思いますが、女優さんやアイドルグループだったり、多種多様で商業的に売らんかなという仕組みを作る人たちが考えることなので、多岐にわたっていますね。

石川:これまで自分が面白がって取材した人たちは、今でいうインフルエンサーなんだなという気がしますね。僕が興味を持ってアプローチをして、取材させてください、一緒になんかやりましょう、といった人はけっこうインフルエンサーでしたね。自分がインフルエンサーではないから、インフルエンサーと一緒に仕事をしたいんです。編集者になってすぐに会いたかった人は何人かいましたが、その中の一人が伊丹十三さんでした。当時は伊丹一三という名前で。映画はまだ撮っていなかったけれど、書いているエッセーがすごく面白かった。世の中に広く影響を与えはしないかもしれないけれど、この人の面白さはわかる人にはわかるだろうなと。それでいきいなり公衆電話から電話をした。「平凡パンチですが」「取材ですか?」「取材させてもらいたいです」「僕、高いですよ」と。一瞬、えっと思ったけれど、「高くても僕がお金払うわけではないから大丈夫です。いくらでもいってください」みたいな感じで。そうしたらあちらも面白がってくれて、すぐ会ってくれた。案の定、面白い人でしたね。

 小林泰彦さんとは僕が編集者になって1カ月後に、それまで全く知らなかった彼にアプローチをしました。彼が描いたものを見た瞬間に、「この人と仕事がしたい」「この人と一緒に外国に行きたい」と思ったから。それは一種の彼にインフルエンサーとしての要素を感じたんでしょうね。片岡義男さんもテディ片岡という名のコラムニストだったけど、言うことはすごく面白かったし、アメリカの面白い話をたくさん知っていました。言われてみれば、自分の編集者人生はインフルエンサーとのつきあいだったなと思いますね。本当に親しくしていただいた方はその後みんな活躍された。横尾忠則さんもデビューしたばかりでまだ有名ではなかったけど、編集会議で「横尾忠則さんをフィーチャーしたい」と話したら、「俺もそう思う」と手を挙げたいという人が2人いた。同期の編集者の椎根和と今野雄二。それを見て木滑編集長が、「そんな面白いと思うんだったら3人で付き合って、それぞれの視点で取り上げろ」と。それで、横尾さんに「毎週パンチに出てもらいますよ」とお願いして本当に毎週取り上げた。あんな大きな存在になっちゃうとは思わなかったけれど、彼も大変なインフルエンサーですよね。

――インフルエンサーや面白い人の見つけ方とは?

石川:いつもキョロキョロしていましたよ。自分にないものを持っている、自分が逆立ちしても出来ないことをやる人は面白いですよ。小林さんのように絵は描けないし、横尾さんの発想は、僕の中からは絶対に生まれない。編集者というのは真っ白でいいと思っている。そういう人たちといかに付き合うか。自分がお願いしたときに、手伝ってくれる人が何人いるかが、一種の編集者が持つべき力じゃないかなと思っています。

――今回のコラムを書いていただいた方々、イラストを描いていただいた方々、提供いただいた方々もめちゃめちゃ贅沢ですね。小林さんに穂積さん、大橋歩さん、カメラマンの立木義浩さん、片岡義男さん、甘糟りり子さんなどなど。

石川:皆さん、すぐにOKしてくれた。編集者としての財産ですよね。最初はあまり外部の方々の原稿を入れる予定はなくて、編集部で全部書こうと思っていたんですが、このテーマに関してはやっぱりこの人に書かせたいな、という気がどんどん出てきてしまった。

――この本は、ファッションに携わってきた方々や若い方々に、ファッションの歴史を後世に残したい、伝えていきたいという、ある種、お二人の遺言のようなものだととらえています。最後に、改めてメッセージをお願いします。

重松:自分はあんまりないんですよね。若い人にどうだとかこうだとか。でも、もっと勇気をもって、もっと冒険をしてほしいと思っています。そういうことを言うとダサイと言われるかもしれないし、今はそういう時代なのかもしれないけれど、車も欲しくない、海外も行きたくないんだろうから、何したいんだろうなと思いますよね。でも、世代が違うから仕方ないし、否定はしませんが。もう一つ、これまでやり残したこととして、副代表理事を務める日本和文化振興プロジェクトをはじめとしていまいくつか取り組んでいることでもあるのですが、和文化をもっと意識してほしい、興味をもってほしいですね。それだけです。

石川:僕はもう82歳になるのですが、80歳を超えて、しかもコロナ禍真っ最中という大変な時期に、こういった面白い仕事をいただいたのはとてもありがたくて、幸せを感じました。つくづく思ったのは、紙の印刷の本はやっぱり面白い。本を作る仕事をあまりされてきたことがない財団の方々と一緒に仕事をしましたが、校正刷りの段階では順番が滅茶苦茶に出てきて、財団の皆さんもページを見開きごとに順不同でチェックしていた。だから作っている最中は本全体の構成や流れはわかんないわけですよ。でも、それが一冊の本になって出てきたときに、みなさんが驚きを感じられているな、ということがよく伝わってきた。あぁ、本の面白さを感じていただけているな、とすごく嬉しかったですね。本をパラパラとめくっていくと、流れや、本独特の感覚が間違いなく存在しているんです。本や雑誌が古いメディアだととらえられて、デジタルやSNSの時代になっていると言われかもしれないけれど、そんなことはない。これがまた新しく感じる逆転現象が生まれています。僕の一番小さな孫が今11歳で、女の子なんだけれど、生まれたときからスマートフォンがあり、周りはデジタルだらけという環境にいます。取り扱い説明書なんてなくてもスマホもパソコンもタブレットもどんどん触って使っている。それを見ると、じいさんは一種不思議な感覚がするけれど、逆にその子たちからしてみると、紙の本は新しいメディアなんです。本屋に連れていくと、夢中になって本を見ている。アナログな本の方が新しさを感じるという逆転現象が起きているんでしょうね。だから、本や雑誌がただの古臭いメディアになるなんていうことを考えたくない。新しさは出せるはず。「時代が違うから」とか「デジタルにやられている」とか言わないこと。編集者なんだから、雑誌づくりの楽しさを体験してほしいですね。


「日本現代服飾文化史 ジャパンファッションクロニクル インサイトガイド 1945~2021」

【Contents】
1. 1945-1950年 貧しい時代でもお洒落がしたかった
2. 1950-1959年 ファッションが動き出した
3. 1960-1969年 ファッションに自由がやって来た
4. 1970-1979年 経済成長が支えたファッション
5. 1980-1989年 おしゃれのエネルギーが頂点に!
6. 1990-2000年 流行はストリートから生まれてくる
7. 2000-2009年 誰もがセレブ気分になれた時代
8. 2010-2021年 ファッションの多様化は続く

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【偏愛コレクターズの世界】アーミーナイフ200本収集、勝見ケイが語る「ビクトリノックス」愛

 コレクターと呼ばれる人たちの物欲は限りない。新連載「偏愛コレクターズの世界」では、その偏愛ぶりに迫るとともに、さまざまな業界で活躍するコレクターたちの思いを探る。

 第1回は、スイスを代表するナイフメーカー「ビクトリノックス(VICTORINOX)」を長年愛する勝見ケイが、190点ものコレクションを披露してくれた。同氏はイラストレーターで、バンド「シェリフ(SHERIFF)」のドラマーでもあり、ナイフとは遠い職業に思える。しかし定番のマルチツールからアーミーナイフ、時計、限定品やノベルティーまで、日本のブランドスタッフも「写真でしか見たことがない」という貴重なアイテムが並ぶ。勝見はこれまでも中学生時代のモデルガンに始まり、「スウォッチ(SWATCH)」1000点、「G-SHOCK」600点などを集めてきた。限定品とあればわざわざ海外へ行き、個数限定ものは2個買いする。物欲を追求し続ける先にあるものとは?

欲しいものなら、標高3466mの高山も登頂!

――日本でも珍しいものがあるそうだが、コレクションについて教えてほしい。

勝見ケイ(以下、勝見):今回持参した190点のナイフは、コレクションするようになってから約15年分のアイテムです。迷彩柄の“スイスチャンプ”は、こう見えて33種類のナイフやはさみが入っているんですよ。実際、どれがどう使えるのか覚えきれないんですけどね(笑)。開く時も順番通りじゃないときれいに広がらない。面白いですよね。“I.N.O.X.メカニカルウォッチ”は木製のストラップが他にないデザインで気に入っています。“レスキューツール”はスイスで買ったもの。当時はまだ日本では販売されていなかったんだけど、通常のモデルにないツールがあったり、暗闇で光る仕様になっていたり、実用性もあってお土産感覚で購入しました。ほかにスイスで買ったものは、標高3466mにあるユングフラウヨッホという山の頂上でしか買えないデザインのマルチツール。これが欲しくてスイスまで行きました。海外の限定品を集めることも、グローバルブランドならではの楽しみ。最近購入したものは、子どもの頃から大好きな「マッハ GoGoGo」とのコラボデザイン。うれしくてすぐに買いに行きました。

――数ある中でも、特に自慢したいアイテムは?

勝見:一番レアなのは、創業125周年記念として、「ビクトリノックス」が1891年にスイス軍に納品した最初のオリジナル・ソルジャーナイフのレプリカを発売したもの。高級素材を使って複製されていて、4シリーズある中の一つで、それぞれ世界で1884個のみ。そのうちの「0756」を証明するシリアルナンバーもついた特製のボックスには、当時の製作図面も入っています。ほかにも、クリストファー・レイバーン(Christopher Raeburn)が手掛けたマルチナイフは男心をくすぐる逸品。スイス軍が使っていたというビンテージの毛布やジャケットの素材を用いたパッケージも大事にしています。双方の価値を見出すコラボレーションはコレクターを魅了してくれますよね。世界でも数量限定の“ダマスカス・ナイフ”は毎年発売されるのが楽しみで、特に2011年と19年のモデルはお気に入りです。「ビクトリノックス」でも珍しく、刃に柄が入っているところがカッコいい。これも職人技が光る一級品ですね。

きっかけはエンライトメントとのコラボデザイン

――「ビクトリノックス」のナイフを集めるようになったきっかけとは?

勝見:「ビクトリノックス」との出合いは実はアパレルから。2005年に青山にあった店舗(現在は表参道ヒルズ店に移転)へアパレルを見に訪れた時、アーティストコラボの限定マルチツールを見つけました。日本人アーティストと組んだ6点で、特に惹かれたのが、女性のイラストが描かれたエンライトメント(ENLIGHTENMENT)のもの。僕が「ビクトリノックス」に魅了されたきっかけです。それ以来、新作をチェックしており、日本限定の商品もたくさんあって、企画力がすごくいいんです。“トモ(TOMO)”という四角いマルチツールも日本からグローバルに採用されています。小さなノベルティーにさえも企業努力が見えるんですよね。

――エンライトメントとのコラボや“レスキューツール”など、同じものが2つあったり、同じモデルを全色持っていたりしますね。使い分けは?また、これほどの数をどのように保管していますか?

勝見:貴重なものや思い入れがあるものは2つ購入していますね。1つはカバンに入れて実際に使って、もう1つは保管用なんです。集めたコレクションは衣装や楽器と同じトランクルームに入れています。ときどきは開いて見ますが、大事なものは大体開けずに保管したままです。今回の取材で初めて開けたものもたくさんありますよ。

――いつも持ち歩いているアイテムはありますか?

勝見:“スイスカード”というカード型のマルチツールです。カードサイズでコンパクトなんですが、つまようじや爪やすり、ボールペンなど8つのツールがあるんですよね。服のほつれを見つければハサミですぐに切ることができるし、小さいから扱いやすい。シンプルなデザインの「ザ・コンビニ(THE CONVENI)」(ジュンのコンセプトショップ)コラボを常にバッグに入れています。

コレクションを止められないのはワクワクさせられるから

――職人技が光る、「ビクトリノックス」のナイフにこだわる理由は?

勝見:使う人やあらゆるシーンを考え抜いた、多機能で実用的なツールが「ビクトリノックス」の認知されているポイントではありますが、僕の場合はファッション性やアート性に惹かれるんです。イラストレーターやアーティストとして活動している点から、見た目の印象や色味、デザインは僕にとって欠かせないポイントです。エンライトメントとコラボしたマルチツールに出合って以来、「ビクトリノックス」の道具としての機能性に加えて、デザイン性を兼ね備えた圧倒的な表現力にいつもワクワクさせられます。ファッションと同じように、常に新しいデザインに出合えることがコレクションを止められない理由ですね。次にどんなデザインが発表されるのかなって待ち遠しくて仕方ない。

――最後に勝見さんにとって、好きなものを追い求めるということとは?

勝見:コレクションすることはゴールまでの道のりが楽しい。ひとつひとつのアイテムに思い出が詰まっている。好きなものを集めてきた歴史は私だけのものです。

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1960’s〜70’sの「ジーンズ」「ロカビリー」「ロンドン」【UA重松理×石川次郎対談 VOL.4】

 ユナイテッドアローズの名誉会長で、日本服飾文化振興財団の理事長を務める重松理が、「ポパイ」「ブルータス」「ターザン」などの創刊編集長を務めた雑誌編集者である石川次郎氏と組み、今年3月に「日本現代服飾文化史 ジャパンファッションクロニクル インサイトガイド 1945~2021」(発行・講談社エディトリアル)を発行した。二人のレジェンドは、なぜタッグを組み、書籍を発行したのか。4回目のテーマは、「日本のファッションとジーンズ」。レジェンドの二人の人生を変えたファッションアイテムとは?

VOL.3はこちら

――今日はかれているのも「リーバイス」ですね!? 次郎さんぐらいの世代からですよね。ジーンズをはくようになったのは。

石川:そう。僕はもう「リーバイス」しかはかないようになっちゃった。重松さんより8歳上ですが、この差が大きな違いだと思います。僕は56年かな、中学校から高校に上がる春休みに1本の映画を観て洋服に目覚めました。それが「理由なき反抗」です。ジェームス・ディーンの。何も知らずにあの映画を観て、あんまりにも日本の高校生と違うので驚いて。アメリカでは高校生が車を運転してるんだから。ジャケットなんかを着て。なんかすごいなぁと思って。その時にジェームス・ディーンがはいていた「リー(LEE)」の101のジーンズがものすごいカッコ良かった。でも信じられないだろうけど、その当時、日本ってジーパンを売っていなかったの。あるのは、在日米軍の兵士たちが朝鮮戦争に発つのに置いていった古いジーンズだけ。アメリカのアーミー(陸軍)、ネイビー(海軍)の軍服と一緒に廃品という感じで送られてきたものの中から、一生懸命探してはいていた時代だった。僕も映画の後、すぐジーパンを買いに行きましたよ。そんな時代だったので、ジーンズに対する想い入れが強く本当に憧れていた。「ジーンズは、アメリカの生活そのものだ」と感じたんですね。

――当時、ジーンズを買い物に行ったのは上野のアメ横(アメリカ横丁)だったんですか?

石川:アメ横ですね。古いジーンズの山の中から、自分の体に合いそうなものを探して。あんまりカラダに合わなかったけどね。しかも当時で2000円ぐらいしていたから、母親に「なんでこんな汚いものにお金を使うのか?なんでこんなの欲しいのかわからない?」とまったく理解されなかった。数年後にはでいくらでもジーンズは手に入るようになったけど。それまでいいジーンズは高くて買えなくて。湘南の海で立教大生と喧嘩をしたことがあった。喧嘩相手のことはよく覚えてないんだけど、彼がはいていた「リー(LEE)」の新品のジーンズがカッコ良くてね。羨ましくてそればっかり目についちゃった(笑)。

重松:自分もファッションの転機はたくさんありますね。一番初めにファッションを意識したのがロカビリーで、ジーンズを見たのもロカビリーからでした。映画からもたくさん影響を受けましたね。ジーンズはわれわれの世代のころには学生服屋さんで売られていました。ジーンズの新品に目が入ったのは13歳ぐらい、1961~62年ぐらいの頃でしたね。高校に入った頃には、新しいものは買おうと思えば買えるけれど、ちょっとはき古したようなものが欲しくて。神奈川出身なので、アメ横と同じような機能を担っていた、横浜の(伊勢佐木町と野毛の間の)吉田町にあったジーンズの古着屋に通っていましたね。

 他にもすごいこまごまとたくさんきっかけがありましたね。64年の東京オリンピックを境に、みゆき族も台頭しましたし、当然、先ほども話に出たVANヂャケットの存在が男性の服にものすごい影響力を持っていました。一つのセオリーやオケージョンなど、われわれが「型」と呼んでいる、オーセンティックス、一つの規則が明らかになり、流れができました。ただ、自分たちはちょっと外れていて、古着のパンツや米軍の横流しのものを買っていました。それに比べると、VANは日本ナイズされていて、サイジングなどが少しおかしいんですよ。アメリカの映画で見るような若者の恰好にはならなくて、体にピタッとなって、なんだか真面目な子みたいになっちゃうんですよ。だから、VANの石津謙介さんにはいつも申し訳ないなと思っていたけれど、靴下1足とプルオーバーのシャツ1枚しか買ったことがないんです。あとは全部古着とか、本当のアメリカのものを買って着て育ってきました。

 そして、「平凡パンチ」のファッションページですよね。小林さんのイラストに大きな影響を受けて、「本物が見たい」「本物が欲しい」と熱くなって。当時はまだ海外に行っていなかったですからね。67~68年ぐらいの時期ですかね。ウッドストックもとても衝撃的な出来事で、髪も伸ばしていました。でも、ロンドンやパリに新しいファッションの流れがあることを見て、「これからはアメリカじゃないんじゃないか!?」という感じになって、ロンドンブーツを履いたり(笑)。ロンドンポップなんて完全にロックミュージシャンの恰好、ステージ衣装ですからね。それをロンドンのカーナビ―ストリートなどではみんな普段着で着ていたんですから。「平凡パンチ」の小林泰彦さんのイラストで知り、実際に現地に行き、「ほんとにこういう格好してるんだ~!」って確認ができるわけで。日本で手に入らなければ、そのイラストに合うものをオーダーで作ったりもしていましたね。髪を長くしたり短くしたり、アメリカのローファーを履いていたと思ったらロンドンブーツのハイヒールになっちゃったり。とんでもない流れで、本当に大変な時代でした(笑)。面白い時代でしたけどね。その当時、「ファッションは風俗」と言われていて。風俗といっても今とは全く違う使われ方で、一つの大きな社会の流れと捉えられていたんです。まぁ、本当にその都度その都度影響を受けて、いろいろなものを見て、今に至るわけです。

石川:本当にみんなロンドンブーツを履いていましたからね。ちなみに、ロンドンポップで一番面白いころのロンドンに仲間をみんな連れていったことがあります。加藤和彦の奥さんのミカ(サディスティック・ミカ・バンドのボーカルの福井ミカ)や、(スタイリストの)堀切ミロ、(「オリーブ」「アンアン」「ギンザ」「クウネル」の編集長を歴任した)淀川美代子、イラストレーターの大橋歩、今野雄二など20人ぐらいで団体旅行をした。1970年代初頭の正月に。石坂敬一という有名な音楽プロデューサーは、行きはウグイス色のダッフルコートを着てたのが、帰りはアフガンコートで丸眼鏡をかけて、ジョン・レノンみたいになっちゃって、行きと帰りは大違い。それくらいみんな影響を受けていましたね。行けなかった加藤君用にミカが山ほど服を買ってね。いろいろな店を案内するのが僕の役目だった。

――次郎さんの本にはたくさんの付箋が貼られていますが?

石川:今回、入れられなかったテーマもかなりあって、例えば重松さんも影響を受けたというロカビリーなんかがそうです。山下敬二郎やミッキー・カーチスの恰好などが大きな話題になった日本のロカビリーは入れる必要があったなと思っています。

重松:日劇ウエスタンカーニバルという音楽フェスもありましたね(58~77年)。内容はウエスタンでもなんでもないんだけど(笑)。最初のころはロカビリーがブームになり、その後、グループサウンズが台頭して。その時代時代によってはやりの音楽は変わりましたが、そこからデビューする人たちも多かったですね。アメリカのロックバンド、オールマン・ブラザーズ・バンドもコンサートを開いたり。ポール・アンカも出ていましたね。

――スターがスターであった時代ですね。ステージ衣装が世の中に大きな影響を与えていたと。

重松:音楽はファッション史、服飾文化史には乗らないけれど、ファッションをつくった音楽はたくさんありましたから。この本では少しだけ触れていますが、欠けてしまったなと反省しています。音楽、というよりも、ミュージシャンがファッションをリードした、まさにインフルエンサーでしたね。

石川:とくにイギリスのミュージシャンは多いですね。エルトン・ジョンから始まって、ジミ・ヘンドリックス、ミック・ジャガー、デヴィッド・ボウイなど。彼らの服を作っていたのが、デザイナーのトミー・ロバーツ(Tommy Roberts)でした。僕は当時「平凡パンチ」で取材したことがあります。ロンドンに着いた日に直行で彼の「ミスター・フリーダム」という店に行った。そしたら偶然トミーがいて、その場で交渉して写真を撮らせてもらうことができた。撮影は長浜治さん。それがp.88の写真です。自分でいうものなんですが、これは貴重ですよ。

重松:そうそう、「平凡パンチ」で見たのを覚えています。この人は天才的なテーラーで、ミュージシャンの服ばっかり作っていたんですよね。サヴィルローの歴史の中でもすごく有名な人です。日本ではあまり報道されませんでしたが、後輩がたくさんテーラーにいましたね。

(vol.5に続く)


「日本現代服飾文化史 ジャパンファッションクロニクル インサイトガイド 1945~2021」

【Contents】
1. 1945-1950年 貧しい時代でもお洒落がしたかった
2. 1950-1959年 ファッションが動き出した
3. 1960-1969年 ファッションに自由がやって来た
4. 1970-1979年 経済成長が支えたファッション
5. 1980-1989年 おしゃれのエネルギーが頂点に!
6. 1990-2000年 流行はストリートから生まれてくる
7. 2000-2009年 誰もがセレブ気分になれた時代
8. 2010-2021年 ファッションの多様化は続く

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原宿・竹下通りに43年続く「ブティック竹の子」 “竹の子族”やBLACKPINK、レディー・ガガも愛した名店

 原宿・竹下通りでひときわ目を引く、きらびやかな服がひしめく店が「ブティック竹の子」だ。同店は1979年のオープン以来、43年間にわたって婦人服や舞台衣装を販売し、変わりゆく原宿を見てきた。80年代前半には、野外でカラフルな衣装を身に着けて踊る若者たちの文化“竹の子族”の誕生にも大きく関わった。最近では、レディー・ガガ(Lady Gaga)が来店したという噂もある。同店に約30年間務めている黒田店長に、店の歴史から現在のあり方まで聞いた。

72歳の名物オーナーが築いた“竹の子族”文化

WWD:黒田店長はいつから「ブティック竹の子」に勤めている?

黒田店長(以下、黒田):私は30年近く勤めています。もともとはパターンを中心に服の勉強をしていて、デザインから製造、販売までを一貫して行うこの店が面白そうだと思ったんです。私は元竹の子族ではないですし、田舎の出身なのでどういう店なのかは全然知りませんでした。

WWD:創業者の大竹竹則オーナーはどんな人?

黒田:大竹オーナーは現在72歳です。もう店には立っていませんが、今でもデザインを一人で担当していて、店頭に並ぶ商品の半分は彼がデザインしたオリジナルのものです。

 子供の頃は、学校にお弁当を持っていけないほど貧しい暮らしをしていたと聞きました。でも足がすごく速くて、高校時代には地元・北海道の記録のほとんどを塗り替えるような陸上選手だったそうです。その後、ディスコやキャバレーなどの夜の世界に入って、水商売をしている人たちから注文を受けてオーダーメードの服を売り始めた。服作りのノウハウは、文化服装学院を卒業した知り合いに少し教えてもらっただけで、基本的には社員たちと実践しながら身に付けていったみたいです。

WWD:「ブティック竹の子」の始まりは?

黒田:実は1号店は桜上水店で、原宿は5〜6店舗目なんです。水商売の人にオーダーメードの服を売っていた流れで、婦人服を販売する「ブティック竹の子」1号店を桜上水に出店し、千歳烏山や中板橋など東京の住宅街を中心にお店を拡大しました。どこもオープン当初から好調で、月商1500万円を売り上げていたそうです。その後、ファッションの中心地に出店しようと、表参道と原宿にもオープンしました。どちらも小さいお店でしたが、全盛期は2店舗でそれぞれ1日35〜40万円を売り上げるほどになりました。一時は店内がすしづめ状態で、床が抜けたという話も聞きましたよ。

WWD:当時の運営体制は?

黒田:一番多い時で5店舗を運営していて、各店舗に店長の女の子が1〜2人ずついました。スタッフは全体でも10人以下だったはずです。各店舗の営業が終わってからみんなで集まり、売り上げの報告や商品のアイデア出しをしていたみたいですね。

WWD:竹の子族の衣装として親しまれたツーピースはどのようにして生まれた?

黒田:竹の子族の衣装“ハーレムスーツ”が完成したのは、表参道と原宿に店を出す前でした。普通の婦人服を中心に販売していながら、舞台衣装のように華やかなガウンが駆け出しのタレントやディスコに行く若者に売れるようになっていったんです。そんな状況を見て、若者みんなが踊りに行きたくなるような服を作れないかと考え始めたそうです。着心地が良くて動きやすいドルマンスリーブに、日本的な要素として、もんぺや法被の作りを掛け合わせたみたいですね。大竹オーナーは、ほかの人が考えられないようなものを作るんです。服の勉強をしていないからこそ、型にはまらないスタイルなんでしょうね。

WWD:竹の子族はどのように誕生した?

黒田:“ハーレムスーツ”は一着3000〜3500円で販売し、発売日に150着が完売するほど好評でした。表参道と原宿の店でも販売したら、“ハーレムスーツ”を着た若者が徐々に街に増えていき、半年ほどでメディアが彼らを“竹の子族”と呼ぶようになりました。彼らが外で踊り始めたのもきっかけがあります。大竹オーナーと親しくしていた男の子が、高校生だからという理由でディスコに入れてもらえず、店の前で音楽をかけて踊り出すようになっちゃったんです。同じような人がどんどん増えていくうちに、いつの間にか野外で踊る集団が“竹の子族”と呼ばれるようになっていました。大竹オーナーは“竹の子族の仕掛け人”と呼ばれるのが不本意だったみたいですけどね。

BLACK PINKにレディー・ガガ
各年代のスターたちが着用

WWD:竹の子族のブームが落ち着いてから、お店で扱うラインアップも変わった?

黒田:変わりましたね。時代を意識しつつ、変えていったんです。これまでのような独特のデザインは残しつつ、色味を抑えたものが増えました。戦略的に、若者に売れていたものとは逆を行ったんでしょう。また、昔は型数を絞っていたのですが、2000年前後から今ぐらいのバリエーションに拡充しました。ダンサー向けのものから、アイドルがステージで着る衣装、コスプレ要素のあるものまでそろえるようになりました。

WWD:レディー・ガガが来店したという噂も聞いた。

黒田:そうですね。以前からガガさんのスタイリストは来店していましたけど、本人も来日した時に店に来てくれました。当時は別のスタッフが対応しており、私はテレビ局から「ガガは何を買っていった?」と問い合わせを受けて知りました。ガガさんはうちで買った服をステージでも着てくれていたみたいですね。最近では浜崎あゆみさんがうちの衣装をアレンジして着ていたり、BLACKPINKが着ていたり。買ってもらった後はどう使おうがお客さまの自由ですし、うちは干渉しない主義なんです。

WWD:昨今は、どんなお客さんが来店することが多い?

黒田:最近は男女ともにステージ衣装を買いにくる、アイドルのお客さまが多いです。あとは芸人の方ですね。スタイリストが、衣装のスタイリング相談に来たり、若い服飾学生が勉強のために見に来たりすることもあります。みんなから「最初はこの店に入るのも勇気が必要だった」と言われますね。

WWD:歴史がある分、付き合いの長いお客さんも多いのでは?

黒田:そうですね。「昔、竹の子族だったんだよ!」と店に来てくれるおじさんやおばさんもいます。あと、若いお客さまがいつの間にか立派になっているケースもあります。竹の子族として踊っていた人がダンスの先生になり、発表会の衣装を毎年買いに来てくれるというつながりも、店を長く続けているからこそですね。最近では売れなかったアイドルの子がいつのまにか人気者になっていたり、服飾の勉強をしていた子がデザインの賞を取ったりしていました。私は、お客さまみんなを応援しています。

WWD:43年続いてきた「ブティック竹の子」の今後は?

黒田:「ブティック竹の子」一番のポリシーは、夢を売ること。ステージで着る人やそれを見た人、関わったみなさんが少しでも幸せな気持ちになったらいいですね。今後の目標は、それを何十年も続けていくことです。

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トラッドからヒップホップ、そして古着へ 「日本のファッションのルーツと新潮流」【UA重松理×石川次郎対談 VOL.3】

 ユナイテッドアローズの名誉会長で、日本服飾文化振興財団の理事長を務める重松理が、「ポパイ」「ブルータス」「ターザン」などの創刊編集長を務めた伝説の編集者である石川次郎氏と組み、今年3月に「日本現代服飾文化史 ジャパンファッションクロニクル インサイトガイド 1945~2021」(発行・講談社エディトリアル)を発行した。二人のレジェンドは、なぜタッグを組み、書籍を発行したのか。3回目の今回は、「日本のファッションのルーツと新しい潮流について」。

VOL.1、VOL.2はこちら

――今、若い層を中心に、トラッドやオーセンティックスなどを通らないで育ってきた人が増えていますよね。それでファッションが大好きという人々もいますし、ファッションに興味がないという人々も増えています。この事象をどう考えますか?

重松:自分はまったく悪いとは思っていません。時代の潮流なので。仕方ないもんね。自分が育った環境というのは、ファッションという文化がまだまだ日本に芽生えたばかりの頃、諸先輩方がいろいろな海外の情報を満たしていって、次の自分たちのファッション文化みたいなものにつなげていけるような素地をもらったと思っているんです。今は情報も溢れているわけで。若い人たちが先輩を見て何も感じなくて、情報は別になくてもいいとか、ファッションなんてふざけんなよ、みたいに思っている人もいると思う。でもその点で一番大きな影響を与えたのは、アップルの創業者のスティーブ・ジョブスだと思います。彼の黒T(「イッセイミヤケ(ISSEY MIYAKE)」のモックネックTシャツ)と、(「リーバイス」の)ジーンズのスタイルは、研ぎ澄まされていて、無駄なものを全部省いていて。企業の規模も技術も生き様もあってのファッションだから、あれは否定できない。みんなが「着飾るよりもカッコイイ!」となるのもよくわかるんです。しょうがないですよね。時代の潮流そのものだと思います。だから、(トラッドやオーセンティックスを通らない人々の増加や、若者のファッション離れなどを)ちっとも悪いと思っていない。ただ、われわれは仕事として残していきたいし、ちゃんと見たら「あぁ、こんなものがあったんだね、世の中には」と感じられるものを残しておかなければならないんです。

石川:面白い現象ですよね。僕は1941年生まれで、45年の終戦後はひどい生活が続くなかでも、だんだん豊かになり、男たちもわりとお洒落に目覚め始めたんですよ。そんなときに「VANヂャケット」が出てきて(1954年開始)、男の服の一種のルールみたいなものを楽しく教えてくれたわけです。男というのは規則じゃないけど着方があるんだよと。こういうジャケットにはこういうシャツを合わせて、こういうタイをするんだよ。パンツはこれくらいの長さで、靴はこういったものを履くんだよと。これがとってもシステムとして感じさせてくれて面白かった。自分の中でお洒落に関心があるとしたら、間違いなく「VAN」なんです。お小遣いを貯めてはボタンダウンシャツを1枚買う、とか。そういったことは僕より上の世代にはあんまりなかったことで、そういう意味では面白い世代に生まれたなと思いますね。そして、そのうちルールを破るヤツが出てくるわけです。規則だらけの服の着方なんてつまらない、これが自分なりの服の着方だ、なんて言い出して、それまでの常識を壊そうとするんです。それに同調する人間の数がジワジワ増えてくると一派となり、知らないうちにメジャーになったりして、皮肉にもある種の権威になったりもする。そうすると、それを壊す連中が出てくるという、一種の繰り返し現象みたいなものがファッションにはあって、そのあたりがすごく面白い。ただ、僕は男の服というのは一種のルールみたいなものがあるというのは、今でもいい話だと思うし、ドレスアップがあって、ドレスダウンがある。それをどう崩すかというのがファッションの醍醐味なんじゃないかな。今の子たちは初めからドレスダウンというか、ルールなんて初めから知らないよという。そのあたりがまたすごいよね。僕の孫は今大学2年生なんだけど、もう古着以外興味を持たない(笑)。でもけっこうな値段の古着を買ってくるんですよ。全部見せてもらっているけれど、「だったらおれのこれを着るか」とタンスから出してくると喜んで着るんです。こんなもの捨てようかなと思っていたようなものなんですけどね。そういう世代が今後どういう大人になっていくのか、とっても興味がある。しかもそんな子が成人式には普通の紺のスーツを着るわけですよ。抵抗もなく。その辺りの感覚が僕たちにはなかったし、面白いなと思いますよ。

――一方で、日本のファッションが世界に認められるようにもなってきています。

石川:日本のファッションは世界的に見ても面白がられていると思いますね。僕たちの世代は「外国のものはいいものだ」と思い込んでいる節があって、なるべく外国から買ってくるし、外国人の着こなしをマネるのが主で、自分らしさを出そうなんて気はあまりなかった。でも、若い世代を見ていると、そんなことお構いないにどんどん自分のものを作って世界的に発信し、それが注目されている。最近ものすごく面白い。日本のストリート出身のクリエイターたちが大きなブランドから頼られてコラボをやってるじゃないですか。あれなんか痛快ですよね。軒並み大きなブランドが日本のサブカルの人々と一緒に商品作りをしているのなんか典型的な例だと思うんですけどね。

重松:もう本当に著名なブランドとね。あれはすごいと思いますよね。堂々とやっているし。彼ら・彼女たちはみんなBボーイ(ヒップホップ系)から始まった人たちなんですよね。それが裏原宿系になって。それに海外の人たちが興味を持ち、文化が融合して。それを自国に持って帰って、欧米でもそれがとても貴重で、人気を博して、逆に一緒にやりたいとオファーされるところまでいった。セレクトショップにはそれはないですからね。最近特に顕著になっていて。すごいと思う。

――キム・ジョーンズなどメゾンで活躍するデザイナーも、若いころから東京や原宿が好きで、藤原ヒロシさんやNIGOさんと交流したり、彼らの緻密なモノ作りやリミックスのデザイン構築に感銘や影響を受けていた人も多いですからね。では、お二人の目から見た、ファッションの節目や転換点となる出来事を教えてください。

石川:人によってとらえ方は違うと思うけれど、僕の場合は、(68年5月に)パリで5月革命があり、次の年(69年8月)にニューヨーク郊外のウッドストックでロックフェスが行われたことで、若者たちのファッションが大きく変わったと思っています。その代表がジーンズであり、この本でもジーンズを取り上げることは必須でした。ただ、その取り上げ方をどうするのかは一番考えましたね。単にジーパンを紹介するページではなく、ジーンズにはもっと違う意味があることを強く言いたかった。なのでp.72にはあえてこの、パリの五月革命のデモで投石している学生の写真を紙面に大きく使いました。間違いなくジーンズをはいているでしょ。2カ月後の7月にパリを訪れた時には、まだ投石の後があり、カルチェラタンにも催涙ガスの匂いが残っていました。街では本当に若者たちがジーンズをよくはいていたし、黒のセーターが一種のユニフォームになっていたこともあわせて、とっても印象に残っていました。だからどうしてもこういうページから入りたくて、これ、という写真をいろいろ探しました。普通のファッション誌だと、ジーンズ、イコール、(「リーバイス」の)501の写真やビンテージ、となると思うけど、この本ではそうじゃないなと思って。象徴的な出来事である五月革命と、ウッドストックの写真を生かしました。僕はこの辺りに若者たちの服に対する考え方を大きく変えた何かがあったという気がしています。

(vol.4に続く)


「日本現代服飾文化史 ジャパンファッションクロニクル インサイトガイド 1945~2021」

【Contents】
1. 1945-1950年 貧しい時代でもお洒落がしたかった
2. 1950-1959年 ファッションが動き出した
3. 1960-1969年 ファッションに自由がやって来た
4. 1970-1979年 経済成長が支えたファッション
5. 1980-1989年 おしゃれのエネルギーが頂点に!
6. 1990-2000年 流行はストリートから生まれてくる
7. 2000-2009年 誰もがセレブ気分になれた時代
8. 2010-2021年 ファッションの多様化は続く

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全ては「メード・イン・USAカタログ」から始まった!?【UA重松理×石川次郎対談 VOL.2】

 ユナイテッドアローズの名誉会長で、日本服飾文化振興財団の理事長を務める重松理が、「ポパイ」「ブルータス」「ターザン」などの創刊編集長を務めた伝説の編集者である石川次郎氏と組み、今年3月に「日本現代服飾文化史 ジャパンファッションクロニクル インサイトガイド 1945~2021」(発行・講談社エディトリアル)を発行した。二人のレジェンドは、なぜタッグを組み、書籍を発行したのか。全5回の2回目の対談をお届けする。

――今の時代、ファッションやトレンドが大きく変わらないとか、ファッションはメインストリームではなく、サブカルチャーになってしまったと言われることも増えていますが、当時はファッションがカルチャーのど真ん中にあったのですね。

重松:生活文化の、そして、衣食住の中でも、自分を表現するというのは衣・ファッションしかない。好みは住まい方などにも反映されますが、個人を表現するにはファッションしかない。今もそう思っています。

石川:僕は編集者だから、外国にイラストレーターと一緒に行って、面白い人間を昆虫採集のように採取して、絵にしてもらって誌面に出せば仕事は終わり。でも、僕たちのレポートの中には、ビジネスのヒントやチャンスがたくさんあったとずいぶん言われました。たとえば、それまで日本人は誰も行っていなかったけれど、僕たちが取材して雑誌に載せると、次に行くと「とんでもなく日本人がたくさん来たよ」と。有名なワークブーツの店では名刺の束を渡されて、「ビジネスをやりたいという人がこれだけ来たけど、どれがいいかわからないから教えて」といわれて、アドバイスしてあげたり。

 その典型が「ハンティングワールド(HUNTING WORLD)」でした。カメラマンの繰上(和美)さんが日本でいち早くそのバッグを持っていて。どこで買ったのか聞くと、「ニューヨークに新しく面白い店が57丁目にできたよ。『ハンティングワールド』っていうから行ってごらん」と教えてもらって。次の機会に訪れてみるといいものを作っていて。それまでバッグは「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」が有名だったけれど、同じ工場で作っていて、モノ作りがしっかりしているなと。オーナーのボブ・リーは嫌味な親父なんだけどモノが面白いなと思って、徹底的に取材して、「メイド・イン・USAカタログ」の2号目あたりに出したら大反響で。本も売れたけど、想像していなかった反応があって。その記事を見て貿易会社や商社、百貨店などがこぞって訪れたらしく、翌年ボブ・リーに会いに行ったら手紙の束を見せられて、「これだけオファーが来たんだけど、どれを選んだらいいのかわからない」と。見たら伊藤忠とか西武百貨店とかどこも知っているところで。そのころ親しかった西武の人を紹介したら本当に決まったりね。

――ある意味、ファッション業界のフィクサーだったんですね!雑誌から流行が生まれていたと。

石川:そんなことが知らないところで発生していたんですよ。ニューヨークには各社とも支社があってバイヤーや特派員もいるだろうに、つかめないニュースというのがあるんですね。商売のネタを探しにいっていたらそんなに簡単にいかなかったと思うけど、商売っ気なしに行っていたから面白いことができたんですね。「LLビーン(LL BEAN)」も当時は日本に入っていなくて。神田の古本屋で買った古いカタログを見て「LLビーンってところに行ってみたいね」「欲しいね」と話していて。次のNY取材時に、カタログに24時間営業と書いてあったので、わざわざ夜中の12時に行ったら本当に店が開いていて。大騒ぎで夜中に取材して、大特集をしたら、やっぱり人気になって。重松さんもビームス時代から、いつも面白いものを探さないといけないという気持ちがあったんでしょ?

重松:もちろん。75年に初めて海外に買い付けに行ったときには、当然、「メード・イン・USAカタログ」を持っていきましたから。アメリカの「ナイキ(NIKE)」もロンドンの「ヴィヴィアン・ウエストウッド(VIVIEN WESTWOOD)」も、それを見て買ってきました。そこから始まっているんです。買い付けのバイブルみたいなものでしたね。本に出ているから、圧倒的な説得力があるじゃないですか。しかも、説明も書いているから、店頭に出したらすぐ売れましたからね。ずっとそれの繰り返しでしたね。雑誌が早いか、洋服屋が早いかといえば、雑誌のほうが圧倒的に早いんです。洋服屋が後追いして、雑誌に合わせて品ぞろえしていくという時代でしたね。それで流行がまた出来上っていくという。

石川:僕たちは誌面に出したい、紹介したいだけで。連携プレーしていたわけではないけれど、重松さんたちが活用してくれて。しかも、読者サービスにもなるし。嬉しかったですね。

――「日本現代服飾文化史」の構想を聞いたときの最初の印象は?

次郎:光栄だけど、果たして自分にできるかなと。自分はファッションを専門にやってきた人間ではないので。ただ、世界中を取材してきた中で、どうしてもファッションは同時に報告しなければならない要素だったんです。若者雑誌なので。ファッションは常に意識はしてきましたが、クロニクルという年代記でファッションをまとめることが僕にできるのか考えましたよ。背中を押してくれたのは、重松さんの「サブカルチャーとしてのファッション、あるいは、権威の外にあるファッションでまとめて欲しい」という言葉でしたね。書籍で扱うのが1941年生まれの僕が物心がつき始めたころの45年からということで、僕の人生と重なるということもあって、これも一つのご縁だなと。自分の経験としてまとめることはできるかなと思ったんです。でも、60年代、70年代はわかるけれども、最近のことは若い人々にはかなわないし、現場で取材しているわけではないので、若い世代、違う世代の協力が絶対に必要だなと。うまく少ない人数でチームが作れれば、面白いものができるのではと考えました。

――戦後75年のファッション史をまとめるとなると膨大な内容になりますが、どんな手順や切り口で企画・製作を進めたのですか?

重松:ファッションビジネスにかかわってきた者として、社会で起きた出来事やファッションの流れに基づく年表をメモにして、トピックスを書き出しました。それを財団のメンバーに渡して、年表を完成させていきました。

石川:その年表には、45年から現代までの、世の中で起こったこと、ファッション業界で起こったこと、風俗的なものなどが大変詳細に書かれて、よく整理されたものでした。これをベースに本を作ってほしいと言われて。大変だな、と思いつつ、年表があったからこそ本を作り上げることができました。とくに70年代ぐらいまでは、まさに僕の仕事、現場でバンバンやっていたことがたっぷり入っています。

――テーマを設定し、歴史とともに、その時代の象徴的な事象がコンパクトにまとめられていますね。

石川:限られたページの中になるべくたくさんのことを入れたくて。最初は100のテーマにしたかったけれど、それだと細切れになってしまうし、4ページ、6ページ、中には8ページで紹介するものもあったほうがリズムができるので。65のテーマが精一杯でした。それぞれ一冊の本になるぐらいのものをどう切るか。難しかったけれども、すごく面白かったですね。入りきれないぐらい、まだネタは余っています。それにしてもあの年表はかなり完璧で。ほとんど漏れているものはないでしょ?

重松:そう思っていたのですが、よく考えたら漏れているものがたくさんあって、追加したい項目が出てきてしまいました。なぜかというと、生活文化の中で、ファッションは衣なのですが、食住があってこそ文化なんです。この本には食住がないんですよね。それと、衣といえば、遊び場じゃないですか。遊び場があって、ファッションの流れというものができた。それに全然触れていないし、遊ばせてくれた人にも触れていないんです。どういうお店に、どういう人がいて、そこにどんな人々が集まっていたのか。そういうこともちゃんと残しておいたほうがいいなと。そういうことも含めて、追記したいなという思いが湧いてきました。

石川:実はあの年表は、重松さんのディスコ遍歴から書かれたものなんだとか(笑)!?

重松:そうなんです。もともと、そこから始まったんです(笑)。そこを残さなければならない。

――早速、改訂版や第2弾などの発行がありそうですね(笑)。それにしても、ファッションを社会潮流とリンクして考えることの重要性に改めて気付かされます。UAでも社会潮流からディレクションを行い、シーズンテーマやMDを組み立てることを長く行ってきましたよね。

重松:そこが、この本で残さないといけないなと思った理由でもあります。ファッション史というとランウェイやコレクションを軸に語られることが多いのですが、デザイナーのブランドは、いい時と悪い時があったら、悪い時は歴史から消してしまいがち。自分が納得できなかった作品なども隠してしまうというか。でも、そうじゃないだろ、と自分は思うんです。社会潮流の中で起きたファッションの事象を、全部同じトーンで残すことをルールにして、足跡を正しく残すべきだと考えました。UAの視点にもそういう部分があるので、(半歩先をいく、次代にトレンドとなる可能性のある)先駆性商品と、(そのシーズンのトレンドを反映した)時代性商品、そして、(トレンドに左右されずに安定的に売れ続ける)独自性商品、オーセンティックスを追求しているんです。ファッションは流れているから、今残っているものは本当はない、という定義だけれども、そんなことはなくて、文化の潮流を下支えする重要なものであり、それが今に至っているのだというところに帰結したいと思ったんです。

(vol.3に続く)


「日本現代服飾文化史 ジャパンファッションクロニクル インサイトガイド 1945~2021」

【Contents】
1. 1945-1950年 貧しい時代でもお洒落がしたかった
2. 1950-1959年 ファッションが動き出した
3. 1960-1969年 ファッションに自由がやって来た
4. 1970-1979年 経済成長が支えたファッション
5. 1980-1989年 おしゃれのエネルギーが頂点に!
6. 1990-2000年 流行はストリートから生まれてくる
7. 2000-2009年 誰もがセレブ気分になれた時代
8. 2010-2021年 ファッションの多様化は続く

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