シンガーソングランナー®︎・SUIが「シックスパッド」を体感 ラン初心者にこそおすすめしたい理由とは?

 MTGのトレーニングブランド「シックスパッド(SIXPAD)」は4月27日、新たな体幹トレーニングギア“パワースーツ コアベルト”を発売した。従来の“パワースーツ アブズ”からグレードアップし、背筋のトレーニングが可能になった新製品の魅力を、シンガーソングランナー®︎のSUI(スイ)が語る。

ダイエット目的で
始めたランニングが、
新たなコミュニティーの
輪を生んでくれた

 「高校生時代からダイエットを繰り返す中でなかなか体重が落ちなくなり、“このままではまずい”と感じて、ダイエットの一環としてランニングを始めたのが走り始めたきっかけです。3km、10kmと目標を決めて達成していくうちに、少しずつ自分に自信がつき、気持ちも前向きになりました。昔は食べることに罪悪感がありましたが、今では走るためにしっかり食べるよう心掛けるほどランニングに夢中です。

 最近は週4~5回、1日10km前後を走っています。ランニングを続けることで、マラソン大会で歌う機会もいただけるようになり、シンガーソングランナー®︎として新たなコミュニティーや活躍の場が生まれました。挑戦し続ける人の支えになったり、応援できたりしたらうれしいです。

 運動には人を変える力があると思っています。ランニングを続けると脳の司令塔である前頭葉が刺激され、集中力や発想力、判断力などが研ぎ澄まされるという研究結果があるそうです。ストレス発散にもなりますし、私のように自己肯定感を得られたという話も聞きます。走ることで、自分本来の輝きを取り戻せるのではないかと信じています」。

腹筋に意識が向くことで、
美しいフォームに近づける

 「ランニングは手軽にスタートできる運動だからこそ、基本を学ばずにトライしてしまう人がとても多いです。走るときは体幹を意識して、お腹とお尻に力を入れることが大切。フォームが乱れると必要以上に疲れてしまったり、けがの原因になったりすることも。とはいえ、日頃あまり運動をしていない人やラン初心者は、体幹といわれてもどこを意識したら良いのか悩んでしまうかもしれません。『シックスパッド』=プロアスリートのためのものと思わずに、ラン初心者の人こそ“パワースーツ コアベルト”を使うと、使うべき筋肉が意識しやすくなると思います。

 私自身、これまでもEMSトレーニング機器を利用したことはあるのですが、“パワースーツ コアベルト”はしっかり鍛えられている感覚があり、使い始めてすぐに手応えを感じることができました。お腹の前部分だけではなく、腹斜筋、広背筋下部と広範囲にアプローチすることで、ランニング時にも美しいフォームを意識しやすくなりました。

 そしてありがたいのが、Tシャツの下に着ても他の人に気づかれないほど薄い生地と、お手入れの手軽さ。ランナー同士、走った後に一緒にカフェでお茶をすることが多いのですが、装着したままでも気にせずいられるのがうれしいです。自宅の洗濯機で洗えるのも衛生的ですし、スプレーで電極部に水を吹きかけるだけで使え、簡単に操作できる点も気に入っているポイントです。4Hzと20Hz、2つのモード選択に加え、EMSのレベルも幅広く選択できます。個人的には4Hzが心地良く感じますが、筋肉トレーニングの感覚を掴みたい方には20Hz がおすすめです」。

パフォーマンス向上に
欠かせない、
宅トレ効率をアップ

 「ランニングのパフォーマンス向上のためには、お腹やお尻の筋肉が欠かせません。特にお腹はインナーコアのトレーニングが重要なので日頃から意識的に鍛えています。特にプランクトレーニングを行う時は、時間が経つにつれて腕で身体を支えてしまいがちですが、“パワースーツ コアベルト”を着用することで体幹を意識しやすいです。

 日常生活の中では洗い物やパソコン作業をする時にも使うことで、自然と姿勢に意識が向くようになりました。無意識の時の姿勢の悪さは日々の肩こりや腰痛につながりますし、猫背になったり、肩が丸まったりすると気持ちが下向きになってしまうと聞きます。美しい姿勢を意識して、明るい気持ちをキープしたいですね。また、運動不足でお悩みの人、腰周りの筋肉が気になる人にもぜひ試してほしいです」。

“パワースーツ
コアベルト”で
効率の良いハイブリッド
ランニングを

 今回SUIが試した“パワースーツ コアベルト”はお腹から腰周りを一周するように6つの電極がつき、腹直筋や腹斜筋、広背筋下部、脊柱起立筋下部にアプローチ。ランナーが重視したい体幹を鍛える。“ながらエクササイズ”や筋肉トレーニングの効率UPを助ける20Hz と、ウォームアップ時などに適した4Hz の2種のモードを搭載し、用途によって使い分けができる。

 また、現在ランニングステーション「ラフィネ ランニングスタイル ネオ(RAFFINE RUNNING STYLE NEO)」では、先着で“パワースーツ コアベルト”を1時間無料で貸し出すキャンペーンを行っている

※価格は全て税込みです
PHOTOS:RYOHEI HASHIMOTO
STYLING:MASUMI YAKUZAWA
HAIR&MAKEUP:TATSUYA SUZUKI
問い合わせ先
MTG
0120‐467‐222

The post シンガーソングランナー®︎・SUIが「シックスパッド」を体感 ラン初心者にこそおすすめしたい理由とは? appeared first on WWDJAPAN.

新生「エミリオ・プッチ」お披露目 デザイナーが目指す「ウェルビーイングなリゾート」とは?

 「エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)」は4月末、新アーティスティック・ディレクターのカミーユ・ミチェリ(Camille Miceli)による最新コレクションをイタリアのカプリ島で発表した。フランス出身のミチェリ=アーティスティック・ディレクターは、15歳から「シャネル(CHANEL)」や「アライア(ALAIA)」などでインターンとして経験を積み、「シャネル」や「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の広報担当を務めた後、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下の複数ブランドではコスチュームジュエリーやレザーグッズの監修やコンサルティングを担った。カミーユによる新コレクションの発表に際して、「エミリオ・プッチ」はブランドのルーツに立ち返り、「リゾートに特化したブランド」としてリブランディングすると発表していた。彼女に、その想いを聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):「リゾートに特化したブランド」とは?年に1度、リゾート・コレクション(一般的には、春夏と秋冬の間に発表するコレクションとして知られている)しか発表しない、ということ?

カミーユ・ミチェリ「エミリオ・プッチ」新アーティスティック・ディレクター(以下、カミーユ):「リゾート」とは、業界の当たり前じゃなくて、ブランドのDNA。年に1度だけリゾート・コレクションを発表するのではなく、“リゾートマインド”なカプセル・コレクションを毎月ドロップする体制に切り替えるの。「エミリオ・プッチ」と聞かれたらビーチウエアを連想する人が多いくらい、私たちにとってリゾートシーンは馴染みのあるもの。でも同時にブランドは、鮮やかなスキーウエアを発表して一世を風靡したこともあるの。季節を問わず、リゾートは「エミリオ・プッチ」にとって大切よ。コロナを経た今は、「エスケープしたい」というマインドも高まっている。そんな想いに寄り添いたい。私たちにとって「リゾート」とは、ウェルビーイングなマインドセットのことよ。

WWD:具体的には?

カミーユ:スポーティな洋服はもちろん、シューズは快適性にこだわった。ヒールもあるけれど、プラットフォームシューズは欠かせないわ。こだわったのは、素材。パディングを筆頭に、とても柔らかな素材使いにこだわった。こうした洋服を身にまとえば、空港だって、旅先だって、人生全般が楽しくなるハズよ。毎日を笑顔で過ごすこと、それがウェルビーイングな「リゾート」なの。と同時に、私たちの柄は、着る人だけでなく、見る人も笑顔にしてくれるわ。

WWD:プリント柄は、「エミリオ・プッチ」のアイデンティティーでもある。

カミーユ:とても大切な存在。でも最近の「エミリオ・プッチ」は、プリントの中に“人間性”を欠いていたと思うの。昔の柄は、すべて手作業。だからこそ不完全で、そこには“人間性”が宿っていたわ。だから今回発表したプリント柄は、すべてを一から手作業で描きなおしたの。代表的な「ジオメトリック」を筆頭に、「マルモ」や「フローラル」など、スタートしてから3回目にドロップするまでのコレクションに使った、6つの柄を描き直したわ。とっても大変な作業だったけれど、絶対に必要なことだった。最初は手間かもしれないけれど、きっと慣れるわ。だって「エミリオ・プッチ」は1960~70年代、コンピューターを使うよりずっと素早く、数々のモチーフを描き、世に送り出したんだもの。

WWD:ウエアを手掛けるのは、今回が初めて。不安や難しさはなかった?

カミーユ:長年ファッション業界に携わり、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)やマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)と仕事をしながら、彼らを観察してきたわ。そこで素晴らしいコレクションには、素晴らしいチームが欠かせないことを学んだの。「エミリオ・プッチ」は、素晴らしいチーム。だから不安はなかったわ。厄介なのは、私が完璧主義なこと(笑)。アクセサリー、特にジュエリーにはミリ単位の細かさが求められるから。

WWD:4月末には、ゲストをカプリ島に招き、さまざまなアクティビティーを通してコレクションを発表した。

カミーユ:ファッションショーより、ずっとラクだったわ!ゲストは、土曜の夜に到着すると、まずは「エミリオ・プッチ」の柄に覆われたバーなどを筆頭に、“プッチの海にダイブ”するの。翌朝はヨガやゲームを楽しみながら、カフタンドレス姿のモデルをチェック。そして、みんなでダンスよ(笑)。こうしたコンテンツは、ウェブサイトを通してみんなに共有するつもり。私たちのコアバリューは「リゾート」だけど、今はスピーディな社会でもあるから、デジタルも頑張らなくちゃ。サイトでは、水着もセーターも、いつでも買えるわ。だって日本が冬でも、ブラジルは夏よ!世界のどこかには、必ず「リゾート」を楽しめる環境、楽しんでいる人が存在するんだから、「エミリオ・プッチ」の可能性は大きいわ。

The post 新生「エミリオ・プッチ」お披露目 デザイナーが目指す「ウェルビーイングなリゾート」とは? appeared first on WWDJAPAN.

新生「エミリオ・プッチ」お披露目 デザイナーが目指す「ウェルビーイングなリゾート」とは?

 「エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)」は4月末、新アーティスティック・ディレクターのカミーユ・ミチェリ(Camille Miceli)による最新コレクションをイタリアのカプリ島で発表した。フランス出身のミチェリ=アーティスティック・ディレクターは、15歳から「シャネル(CHANEL)」や「アライア(ALAIA)」などでインターンとして経験を積み、「シャネル」や「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の広報担当を務めた後、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下の複数ブランドではコスチュームジュエリーやレザーグッズの監修やコンサルティングを担った。カミーユによる新コレクションの発表に際して、「エミリオ・プッチ」はブランドのルーツに立ち返り、「リゾートに特化したブランド」としてリブランディングすると発表していた。彼女に、その想いを聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):「リゾートに特化したブランド」とは?年に1度、リゾート・コレクション(一般的には、春夏と秋冬の間に発表するコレクションとして知られている)しか発表しない、ということ?

カミーユ・ミチェリ「エミリオ・プッチ」新アーティスティック・ディレクター(以下、カミーユ):「リゾート」とは、業界の当たり前じゃなくて、ブランドのDNA。年に1度だけリゾート・コレクションを発表するのではなく、“リゾートマインド”なカプセル・コレクションを毎月ドロップする体制に切り替えるの。「エミリオ・プッチ」と聞かれたらビーチウエアを連想する人が多いくらい、私たちにとってリゾートシーンは馴染みのあるもの。でも同時にブランドは、鮮やかなスキーウエアを発表して一世を風靡したこともあるの。季節を問わず、リゾートは「エミリオ・プッチ」にとって大切よ。コロナを経た今は、「エスケープしたい」というマインドも高まっている。そんな想いに寄り添いたい。私たちにとって「リゾート」とは、ウェルビーイングなマインドセットのことよ。

WWD:具体的には?

カミーユ:スポーティな洋服はもちろん、シューズは快適性にこだわった。ヒールもあるけれど、プラットフォームシューズは欠かせないわ。こだわったのは、素材。パディングを筆頭に、とても柔らかな素材使いにこだわった。こうした洋服を身にまとえば、空港だって、旅先だって、人生全般が楽しくなるハズよ。毎日を笑顔で過ごすこと、それがウェルビーイングな「リゾート」なの。と同時に、私たちの柄は、着る人だけでなく、見る人も笑顔にしてくれるわ。

WWD:プリント柄は、「エミリオ・プッチ」のアイデンティティーでもある。

カミーユ:とても大切な存在。でも最近の「エミリオ・プッチ」は、プリントの中に“人間性”を欠いていたと思うの。昔の柄は、すべて手作業。だからこそ不完全で、そこには“人間性”が宿っていたわ。だから今回発表したプリント柄は、すべてを一から手作業で描きなおしたの。代表的な「ジオメトリック」を筆頭に、「マルモ」や「フローラル」など、スタートしてから3回目にドロップするまでのコレクションに使った、6つの柄を描き直したわ。とっても大変な作業だったけれど、絶対に必要なことだった。最初は手間かもしれないけれど、きっと慣れるわ。だって「エミリオ・プッチ」は1960~70年代、コンピューターを使うよりずっと素早く、数々のモチーフを描き、世に送り出したんだもの。

WWD:ウエアを手掛けるのは、今回が初めて。不安や難しさはなかった?

カミーユ:長年ファッション業界に携わり、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)やマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)と仕事をしながら、彼らを観察してきたわ。そこで素晴らしいコレクションには、素晴らしいチームが欠かせないことを学んだの。「エミリオ・プッチ」は、素晴らしいチーム。だから不安はなかったわ。厄介なのは、私が完璧主義なこと(笑)。アクセサリー、特にジュエリーにはミリ単位の細かさが求められるから。

WWD:4月末には、ゲストをカプリ島に招き、さまざまなアクティビティーを通してコレクションを発表した。

カミーユ:ファッションショーより、ずっとラクだったわ!ゲストは、土曜の夜に到着すると、まずは「エミリオ・プッチ」の柄に覆われたバーなどを筆頭に、“プッチの海にダイブ”するの。翌朝はヨガやゲームを楽しみながら、カフタンドレス姿のモデルをチェック。そして、みんなでダンスよ(笑)。こうしたコンテンツは、ウェブサイトを通してみんなに共有するつもり。私たちのコアバリューは「リゾート」だけど、今はスピーディな社会でもあるから、デジタルも頑張らなくちゃ。サイトでは、水着もセーターも、いつでも買えるわ。だって日本が冬でも、ブラジルは夏よ!世界のどこかには、必ず「リゾート」を楽しめる環境、楽しんでいる人が存在するんだから、「エミリオ・プッチ」の可能性は大きいわ。

The post 新生「エミリオ・プッチ」お披露目 デザイナーが目指す「ウェルビーイングなリゾート」とは? appeared first on WWDJAPAN.

“エモラップ界のニューヒーロー”イアン・ディオール ファッションから「ヒロアカ」まで、愛する日本のカルチャーについて語る

 毎年、アメリカのヒップホップファンたちが発表を待ち望んでいる「XXL・マガジン(XXL Magazine)」の企画“XXL・フレッシュマン・クラス(XXL Freshman Class)”をご存知だろうか。同企画は、アップカミングな若手ラッパー約10人を紹介する企画で、これまでケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)やマック・ミラー(Mac Miller)、トラヴィス・スコット(Travis Scott)らが選出されてきた“新人の登竜門”である。その2021年版に選ばれたのが“エモラップ界のニューヒーロー”と称されるイアン・ディオール(Iann Dior)だ。

 エモラップとは、感傷的なリリックとロックのエッセンスを取り入れたジャンルである。故XXXテンタシオン(XXXTentacion)や故リル・ピープ(Lil Peep)らの影響で10年代後半から市場が拡大した。イアンは、高校生の頃に自主制作した楽曲が口コミで広まると、19年に若干20歳で「サウンドクラウド(SoundCloud)」で発表した「Cutthroat」が1300万再生以上を記録。さらに20年、旧友24k・ゴールデン(24kGoldn)とのコラボ楽曲「Mood」が「ビルボード(Billboard)」史に残るヒットソングとなり、21年には「フォーブス(FORBES)」の 「30アンダー30(30 UNDER 30、フォーブスが選ぶ30歳未満の30人)」にも名を連ねた。わずか数年で時の人となったイアン・ディオールとは、一体どんな人物なのか。あどけなさの残る23歳の彼にオンラインインタビューを実施し、ラッパーになった経緯や新作アルバムについて、大好きだというアニメやファッションなどの日本のカルチャーについても語ってもらった。

——プエルトリコで生まれテキサスで育ったそうですが、どのような環境でしたか?また、振り返ってどんな子どもでしたか?

イアン・ディオール:いつもヘッドフォンをしてフードを被って、あまり人と話さないような子どもだったね。でも結構早い頃からユーチューバーみたいなことをしていて、高校ではいつもカメラを手に持って歩いていたんだ。最初は周りから変なやつだって思われたけど、動画を投稿するようになってからは好評だったよ。

——ラップをするようになったきっかけは?友人から楽曲を作ってほしいと頼まれたことが原因と耳にしたことがあります。

イアン:16~17歳くらいの頃だったと思うけど、曲を作ってほしいと頼まれたんじゃなくて、友人のRJ・ボーイ(RJ BOY)に「レコーディングをやらないか」って声を掛けられたんだ。ちょうどビートのない状態でノートに書き留めていた「Where You At」という楽曲があったから、チャレンジしてみることにした。彼は自分の部屋をスタジオ仕様にしていたんだけど、レコーディングの直前にバスルームに駆け込んだことをよく覚えているよ(笑)。実はビートを用意していなくて、急いで曲に合うビートをユーチューブで探したんだ。偶然いいビートが見つかったからメロディも少し変えて、彼の部屋に戻ってレコーディングをした。これがきっかけで楽曲制作が好きになったんだよ。

あと、別の友達のハーフタイム(Halftime)も同じように部屋をスタジオ仕様にしていたから、彼とは毎日のように曲をレコーディングしていたね。平日の午前3時に「マジで今録らないとヤバい曲がある」って電話したら、彼が母親の車ですぐに迎えに来てくれて、朝までレコーディングをし、そのまま学校に行ったこともあったね。

——インターネット・マネー(Internet Money、LAを拠点とするプロデューサー集団)に発掘されたことがデビューのきっかけのひとつだそうですが、この経緯は?

イアン:インターネット・マネーと契約はしなかったんだけど、ある日、俺の楽曲をたまたま聴いた創設者のタズ・テイラー(Taz Taylor)から楽曲制作の連絡があったんだ。すぐにロサンゼルスに飛んで2曲を制作したらそれが高く評価されて、レーベル12社とのミーティングが決まった。そんな感じで、短期間の間にとんとん拍子に事が運んでいったのさ。

——先ほど、初めてレコーディングをした時に楽曲をノートに書き留めていたと話していましたが、昔からラッパーになることを意識していたからでしょうか?

イアン:もともと詩やリリックを書くことが好きで、いつもノートに書き溜めていたんだ。だから最初にレコーディングに誘われたとき、ノートにはリリックが出来上がった状態の「Where You At」がすでにあって、あとはビートを見つけて微調整するだけでよかったってこと。

——ネガティブな表現の多いリリックは実体験が多いそうですね。書く際に意識していることは?

イアン:昔と違って、今はビートを聴いてからリリックを書くようになったね。ビートから何かを感じ取って、そこに自分が綴りたい内容を乗せる感じ。

——ビートを聴いて、まずはテーマを決めるのか、それとも思いついたフレーズから広げていく感じですか?

イアン:スタジオに入ってから2~3通りのメロディーを歌ってみて、そこから作り上げていく流れかな。気に入ったメロディーを軸に、「これはフックがいい」や「これは曲の終わりに使おう」とか考えながら構成していく。こうやって大枠が決まったところで、リリックを書き始めるんだ。リリックのテーマは例えば、ビートを聴いて「高校時代を思い出す」って感じたら「当時はこんなことを考えて生活していたな」ってイメージを広げ、当時抱えていた気持ちについて綴ってみるんだ。

——1月に2ndアルバム『on to better things』をリリースしました。タイトルに込めた思いは?

イアン:これまで自分がやってきたバカなことを断つ、という宣誓のようなもの。アルバム制作前までは何も考えていなかったけど、これをきっかけに「自分の健康を考え、より良い生き方をする」って誓いたかったんだ。

——アルバムはどのようなプロセスで制作を進めましたか?また、コロナ禍の影響はありましたか?

イアン:この数年は自分に限ったことではなくて、世間にとっても異常な時期だったと思う。コロナのせいで精神的にやられて、ネガティブなことばかり考えるようになった。しかも、コーヒーを買いに外に出ることすらもできない。マスクで鼻を覆っていないだけで怒鳴られることもあった。もう違和感だらけで、外に出るのも嫌になったよ。

アルバムには、家族の問題だったり、自分自身を好きになれずにいたことだったり、そこからありのままの自分を受け入れるまでの道のりだったり、その時々で抱えていた感情を反映している。「自分自身を愛せなければ人を愛せない」ってみんな言うけど、自分がまさにそうで、全てが嫌になっていた。夢に描いていた全てを手に入れたのに、なぜ自分はこんなにも満たされないのかーーこのアルバムを作ることで、少しずつその答えを見つけていったね。

——リードシングルでもある収録曲「let you」について、何かエピソードはありますか?

イアン:この曲とビデオのコンセプトはサーカスで、自分にとってのロサンゼルスを例えているんだ。みんな衣装を着てカッコ良く見せようとして、ショービズで仕事していることに特権を感じている。あと、当時めちゃくちゃ大好きだった女の子がいたんだけど、その子も俺もこの世界にいて、2人とも衣装を着て大見栄を張っていた。俺にとって「let you」は、彼女との関係を断つと同時に、ショーオフな生き方も断ち切ることを意味しているんだよ。心の底から愛している相手だったから、その人が何をしようと許せたんだけど、「もう限界だ。さようなら」って最後のきっかけに制作したのさ。

——コンセプトにサーカスを選んだのは、“いかに自分をよく見せるか”という最近のSNSの体質も意味していますか?

イアン:SNSにもそういった側面はあるけど、俺からするととにかくロサンゼルスが普通じゃないんだよ。世界のほかのどの場所とも違う。「へえ、その服ブランドものじゃないんだ」って感じで、見た目で物差しを測ってくる。普通じゃダメで、普通の人だと受け入れられない。正直、あまり好きじゃないね。

——収録曲「complicate it」でも女の子に関してラップしていますね。

イアン:そうだね。「どうしたらいいんだ。全て完璧なはずなのに、ものすごく面倒臭い」っていう女の子。ちょっとしたことで口論になり、最終的に彼女が「大嫌い」と言い出して、俺が「嘘だ。愛しているだろ。何を言ってるんだ」って返す。この曲は、「大変だけど、絶対に諦めない。君を愛しているから」という俺の気持ちを楽曲にしているんだ。

——今作ではさまざまなラッパーをフィーチャーし、一方でこれまで数々フィーチャーもされてきました。特に気の合う人は?

イアン:今1番好きなのは、断然リル・ウージー・ヴァート(Lil Uzi Vert)。彼の音楽が大好きだからね。あとはガンナ(Gunna)とリル・ベイビー(Lil Baby)。この3人が、俺にとってのトップ3だ。

——では、一緒に楽曲を作りたい人は?

イアン:ヤング・サグ(Young Thug)と組んでみたいし、ザ・ウィークエンド(The Weeknd)とポスト・マローン(Post Malone)とも仕事をしてみたい。

——ジャンルの垣根を超えたコラボが多いのは意図的?

イアン:もちろん!「On To Better Things」の前に1stミックステープ「Nothings Ever Good Enough」と1stアルバム「Industry Plant」をリリースしてるけど、どちらの時も完成させた瞬間に「何か違う。記憶から消したい」と納得していなかった。でも今回は出来た時に「これはいい。気に入った。すぐに出したい」って思ったね。実際、自分の納得がいく作品にするために500曲は用意したよ。

——少し過去の話をすると、2020年にリリースした24k・ゴールデンとの「Mood」は日本でも人気ですが、何かエピソードはありますか?

イアン:「Mood」は、アパートのベッドルームで仲間とつるんでいた時にできた曲なんだ。みんなでシューティングゲームの「コール オブ デューティ(Call Of Duty)」をプレイしている最中に、「曲を作ろうぜ」って話になったらすぐに完成して、また「コール オブ デューティ」をプレイした(笑)。当時は、そんなにイカした曲だって自覚は全くなくて、リリースする直前に「これ、マジでいい曲じゃん」って気付いたくらい。何週にもわたって全米1位を獲るとは思っていなかったよ。

——シングル「Shots In The Dark」のアートワークは、日本人アーティストのSora Aota(K2)がデザインしています。そのきっかけを教えてください。

イアン:彼から「何かデザインしたい」とインスタグラムでDMをもらったのがきっかけだね。彼の投稿を見たらすぐに才能を感じ、「『Shots In The Dark』のために何か作ってみてよ」と頼んだらアートワークを送ってきてくれて、とても気に入ったから採用することにしたんだ。

アーティスト名は「ディオール」が由来

——名前のディオールは、ファッションブランドの「ディオール(DIOR)」と関係がありますか?

イアン:そうだね。ロサンゼルスに移住した時に自分のことが嫌いで、チャンスを目の前にして生まれ変わった新しい自分としてスタートを切りたかったから、名前をイアン・ディオールに変えた。これは、自分のミドルネームと絶対に手の届かないブランド名の組み合わせ。あまり時間をかけずにパッと思い付くままに決めたのもあって、いい名前かどうか自分でも分からなかったし、「みんなきっと嫌いだろうな」とさえ思ったよ。でも、そのまま使い続けてるうちに定着したね。

——数あるブランドの中から、なぜ「ディオール」を?

イアン:1番お気に入りのブランドだったから。今でもそうだね。上品だし、プリント使いがとにかく好きなんだ。「ディオール」と「ゴヤール(GOYARD)」のプリント柄が好きだね。

——ほかにお気に入りのブランドはありますか?

イアン:挙げ出したらキリがないけど、「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」と「リック・オウエンス(RICK OWENS)」は最高。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」と「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATHESOLOIST.)」「ミキモト(MIKIMOTO)」も好き。アメリカと比べて、日本のファッションはすごく進んでいると思う。ロサンゼルスにエイチ・ロレンゾ(H. Lorenzo)ってセレクトショップがあるんだけど、そこは日本のブランドばかり取り扱っていて、店のオーナーに「俺に見せるまで日本のブランドのアイテムは誰にも売らないでくれ」って冗談を言うくらい気に入ってる。いま履いているパンツもエイチ・ロレンゾで買った日本のブランド。名前は忘れちゃったけど(笑)。

——ほかにアメリカでお気に入りのショップは?

イアン:またロサンゼルスなんだけど、セレクトショップのマックスフィールド(MAXFIELD)や、ランウエイのアイテムも取り扱っているデパータメント(Departamento)によく行くね。あとは、アーカイブをたくさん持っている子たちとインスタグラムでつながっていて、彼らから買うことが多いね。というのも、俺は自分と全く同じものを着ている人を見かけることが1番ムカつくんだ(笑)。1990~2000年代のアーカイブを着ている人は、なかなかロサンゼルスにはいないからね。

——ロサンゼルスにはアーカイブを取り扱うショップは少ないんですか?

イアン:ウェイストランド(Wasteland)ってショップがあるけど、数は少ないしリサイクルに近いね。インスタグラムで繋がった子たちの家に行くと、めちゃくちゃ良いアーカイブがラック単位で置いてあるから、大抵の欲しいものが見つかるんだ。最近だと「クロムハーツ(CHROME HEARTS)」のデニムを手に入れたよ。

——では、日本で行きたいショップは?

イアン:エイチ・ロレンゾで働いているマックって仲良いスタッフの父親がセレクトショップのオーナーで、オススメの日本のショップをたくさんリストにしてくれたんだ。だから今度日本に行ったときは、1週間くらい滞在してリストを制覇するつもり。「スーパー・ニンテンドー・ワールド(SUPER NINTENDO WORLD)」にも行きたいね(笑)。あとは、村上隆が1番お気に入りのアーティストだから彼の洋服や作品が欲しいし、日本には俺が1番好きな日産のスカイラインGT-Rもあるらしいから、マジで早く行きたいよ。

——ファッションにおいて、何かを参考にすることはありますか?

イアン:子どもの頃からファッションが好きで、自分のお金で買えるようになってからはショップに足を運び、試着を繰り返して変わったスタイルを見つける。それが自分流のこだわり。例えば、お金が入って最初に買ったのはパールのネックレス。その頃は誰もパールなんて着けてなくて、それだけでひどいことも言われた。それが今では、みんながパールを着けるようになった。笑っちゃうよね。昔からファンキーな洋服を着ていると父親に笑われたけど、最近は彼も少し分かってきたみたいで、そんなに笑わなくなった。誰かを参考にしているというよりも、昔から興味があって今につながったって感じかな。

——ヘアスタイルもアイコニックですが、どんなこだわりが?

イアン:なぜドレッドを前に垂らしてるかっていうと、昔はきれいドレッドだったんだけど、母親にブラシでほぐされちゃったんだ(笑)。ドレッドは頭皮に負担がかかるから痛くて、ある日、その痛みに耐えられなくなって母親にほぐしてもらうことにした。でも、それすら痛すぎて途中で止めてシャワーを浴びたら今の髪型になっていて、意外と気に入ったから続けてる。最近ブロンドに染めたよ。

——ネイルもよくしていますね。

イアン:清潔でいることは大事だと思っているから、ネイル、フェイス、ヘアの手入れは怠らないね。女の子なら特に共感してくれるはずさ。

「ヒロアカ」が1番好きなアニメの理由とは?

——2019年にマイアミで開催されたヒップホップフェス「ローリングラウド(Rolling Loud)」では、ヒトカゲのバックパックを背負っていましたね。日本のアニメや漫画が好きになったきっかけは?

イアン:子どもの頃から当たり前のようにテレビでたくさんのアニメを見てきたけど、それが日本のものだって知らなかったんだ(※アメリカでは、2000年代前半から日本のアニメ専門チャンネルが人気)。際どい表現も結構あって、母親によく怒られたよ(笑)。小さい頃に好きだったアニメは「ソウルイーター」で、「寄生獣」にもハマってたね。

——1番好きなアニメは?

イアン:「僕のヒーローアカデミア」さ!主人公の緑谷出久に自分を重ね合わせちゃうんだ。

——日本人で会いたい人はいますか?

イアン:誰だろう。村上隆はもちろん会いたいけど、実際に行ったら俺がまだ知らないクールな人たちと出会えるんじゃないかな。アメリカにいると、入ってくる情報が限られてしまっているからね。かっこいいビジュアル・アーティストやミュージシャンに会ってみたいな。

——スケートボード好きとして、日本で開催された「Xゲーム(X Games)」は注目していましたか?

イアン:12歳の頃からスケートボードをやっていて、「Xゲーム」に出場するのが夢だったこともある。それに毎年父親と欠かさず観ているから、日本で開催されるのに観に行けないのがめちゃくちゃ悲しい。スノーボードやダートバイクも昔から好きで、いろんなエクストリーム・スポーツを父親と一緒に見て育ったから、「Xゲーム」は2人の絆を深める時間だったんだ。堀米雄斗は、自国で開催されたオリンピックも「Xゲーム」も優勝してすごいよ。

The post “エモラップ界のニューヒーロー”イアン・ディオール ファッションから「ヒロアカ」まで、愛する日本のカルチャーについて語る appeared first on WWDJAPAN.

ファッション業界歴「40年」、スタイリスト北村道子の哲学

 日本を代表するスタイリストとして地位を確立しているのが、現在73歳の北村道子だ。10代の頃にサハラ砂漠、アメリカ大陸、フランスで過ごした後、30代でスタイリストのキャリアをスタート。初期は広告や資生堂の企業文化誌「花椿」でスタイリングを担当していたが、森田芳光監督の映画「それから」に主演だった松田優作の指名により参加することになった。以降、「キッチン」や「幻の光」「東京日和」など数々の映画の衣装に携わるほか、雑誌「流行通信」や「スタジオ・ボイス(STUDIO VOICE)」などでも活動するようになる。

 切りそろえられたグレーヘアにメガネという佇まい。そして独自の人生論やファッションに対する考えを、まるで哲学者のように語る北村の言葉には、人を惹きつける強いパワーがある。業界歴40年以上という彼女に自身のキャリアをはじめ、変化するファッションの価値観や、最前線で活躍するために大切にしていることについて語ってもらった。

映画が自分の基盤

WWD:衣装を手掛けるようになったきっかけは?

北村道子(以下、北村):金沢の美大で比較人類学を教えている先生がいたんです。その先生が調査で海外へ行くことになり、私がどうしても一緒に行きたかったので、親に懇願して同行することができました。それからアメリカ大陸の横断を経て、最後は南米のグアテマラにたどり着いたんです。そこに住むネイティブアメリカンのオジブワ族の村で民族衣装やビーズ付けを学び、衣装を作ることに興味を持ち始めました。

WWD:10代の頃から世界中を旅していますが、海外を経験して得たことは?

北村:危険を瞬時に肌で感じること、そこの地の宗教を調べて旅をすること、子どもたちと仲良くなり情報を交換することが大事だということを学びました。当時はiPhoneがない時代でしたが、今でもこれらのことを実行しています。

WWD:一日一本は映画を見るというシネマホリックな北村さんですが、衣装づくりやスタイリングは映画からインスピレーションを受けることが多いですか?

北村:映画監督ジム・ジャームッシュ(Jim Jarmusch)の作品のカメラマンとして知られているロビー・ミューラー(Robby Muller)に影響を受けています。彼は撮影を行う際、長回しをするのでセットは作らず、自然光のみを使い、カメラのために特別な装飾美を施さないんです。彼のようにリアリティを追求したいので、私も撮影現場でヘアメイクの微調整はしないようにクリエーターたちにお願いすることが多いですね。

WWD:衣装や写真など、「モノクロ」にこだわる理由もミューラーの影響でしょうか?

北村:ミューラーが言うように、モノクロというのは色がつかない世界であり、想像なんです。たくさんの色で溢れているこの世界でモノクロのものを使うと、実際に目に映る色は白か黒だけれど、想像力を豊かにさせてくれるんです。色が2色しかないからこそ、映像の細部や着るモデルの個性に目を配ることができると思います。

「価値とは何か?」を問うこと

WWD:ジェンダーレスやサステナブルなど、世間のファッションへの価値観が以前と今とでどう変化していると感じますか?

北村:ジェンダーレス化やサステナブルはもはや当たり前のこと。特に環境問題について、私たち人間は脆く、弱い生き物であるということをまず理解し、地球の問題というよりも人間の問題という視点を持つことが重要です。だから価値観という言葉にくくるべきではありません。むしろ今、「価値とは何か?」を自分自身に問うべきではないでしょうか?

WWD:憧れだったファッションが環境問題により悪者になっていますが、今ファッションの何を信じればいいのでしょうか?

北村:一概にファッションが悪者にされているとは思わないです。例えば、量産型のファストファッションが環境にダメージを与えているかもしれませんが、若い子たちが低価格で服を購入できるじゃないですか。そういう手段があることで、Z世代の子たちはトレンド関係なく自分のスタイルを作ることができる。「かっこよくなりたい」という感情ではなく、「かっこいいとは何だろう」と問いながら、自分の中の“かっこよさ”を見つけることが重要です。まずは一歩引いて、俯瞰で自分を見てみること。そうするとあなたの“姿”が見えてくるはずだから。

WWD:それは、さまざまな仕事にも通じる部分がありますか?

北村:仕事に対しての考えを言うならば、一旦決めたことはぶらさないこと。最初に、その仕事をエンジョイできているかを自分に問うてみてください。もし楽しめていないのなら、仕事は一人ではできないので、関わる相手をどう見るかという観察をしてみるといいでしょう。

WWD:戦争やコロナ禍という情勢が揺れる中、ファッションが持つ力とはなんでしょうか?

北村:ファッションの力については分かりませんが、服の力はあります。人々はデコラティブなものから機能美のある服を頼りにしています。それは、地球が変化していることとパラレルな関係です。

WWD:ファッション業界の最前線で活躍する上で心掛けていることは?

北村:自分の道を失わないことです。例えば、歌手のビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)がいつもオーバーサイズの服を着ていること。周りに流されることなく、彼女は自分だけが知る「自分」というものをちゃんと理解し、独自のスタイルを貫いていると思います。また情緒を養うことも大切です。「人の中心は情緒である」と言う数学者の岡潔の理論があるように、情緒を育むことで共感力や思いやりを持つことができ、豊かな人生を築くための大きな力になってくれるでしょう。

The post ファッション業界歴「40年」、スタイリスト北村道子の哲学 appeared first on WWDJAPAN.

ファッションから学んだ気鋭のフローリスト 「デリジェンスパーラー」店主が考えるものづくりの本質

 表参道ヒルズの一角に店を構えるフラワーショップ「デリジェンスパーラー(DILIGENCE PARLOUR)」は、今年でオープン7年目を迎える。越智康貴は同ショップを22歳で開業し、現在は2店舗の経営、企業やブランドの装花、文筆活動など多方面で活躍する。フローリストになる前は文化服装学院で学んでいたという彼に、ものづくりに対する考え方やアイデアの着想源を聞いた。

ファッションを通して触れたものづくりの源流
広がった人とのつながり

WWD:文化服装学院(以下、文化)入学の理由は?

越智康貴ヨーロッパ代表取締役(以下、越智):文化に入学したのは、ものづくりに対する憧れから。源流に近いところからファッションを学びたい。新しいことをスタートするなら一流の環境から、という感覚が当時からありました。

WWD:文化で学んだことで今に通じるものは?

越智:服装科の授業では、パターンの引き方、素材、デザイン、流通のことまで幅広く学びます。技術的に役に立ったことはたくさんありますが、いちばん大きかったのは多様なものの見方を養えたこと。個性的な先生、年齢も立場も違うクラスメイトの存在は大きな刺激になりましたし、著名な卒業生に学んだ制作との向き合い方も今に活きています。

WWD:卒業生の言葉で特に印象に残っているのは?

越智:印象に残ったのは卒業生・皆川明さんの講演。ある生徒の「丁寧に縫うこととスピード、どちらを優先するべき?」という質問に対する「両者は反比例するものではない。だって、寿司屋がゆっくり寿司を握ってたらまずそうでしょ?」という返しには、目からうろこでした。クオリティーとスピードは共存しうる。仕事をテキパキと時間内に進めていく要領は、文化の課題と向き合う中で身に付きました。

 「繊細な服と強い(長持ちする)服」について、「デザインが繊細で素材が強くなくても、着る人が長く大切にしたいと思えるなら、それは長持ちする服だ」とのお話もありました。たくさんインプットを得て、それを絶えずアウトプットできたのは貴重な経験です。

WWD:花にはいつ頃から携わっていた?また、そのきっかけは?

越智:在学中から花屋で働いていました。卒業後もいくつかのアルバイトを掛け持ちしながら花仕事を続けていくうちに、デザイナーになった同級生から、ポップアップや展示会の依頼が増えてきて。「シアタープロダクツ(TEHEATRE PRODUCTS)」のディスプレーに空の花瓶があるのを見て、お花を生けませんか?と電話で提案したり、地道にアプローチを続けました。今振り返るとファッションが入り口となって、業界を中心に仕事の輪が広がっていったように思います。

WWD:その後、表参道ヒルズに「デリジェンスパーラー」を開店した?

越智:表参道ヒルズ開業10周年のタイミングで花屋を開店する話が挙がり、入店を決めるコンペに参加しました。そこで出店が決まり、今年で7年目を迎えます。ラグジュアリーブランドの仕事が増えたのもその頃で、フィービー・ファイロ時代の「セリーヌ(CELINE)」の展示会で装飾を任せてもらえたことは、業界内外での信頼に繋がったのかもしれません。

花という素材と向き合いながら
花だけにとらわれない表現の可能性を模索する

WWD:最近ではJR東海「そうだ 京都、行こう」の東福寺光明院のインスタレーションが印象的だったが、自身の中で最も思い入れのある仕事は?

越智:ライブハウス・リキッドルームにある「カタ(KATA)」での初個展です。種から育て、わずか7cmで咲いてしまった早咲きの“黄花コスモス”を題材にしました。1輪の黄花コスモスにマジックミラーの箱を被せ、ペンライトの光を当てると合わせ鏡の反射によってコスモスの花畑が箱の中に広がって見えるという作品です。

 植物の個性を活かしながら、新しい花の見せ方を提案する作品として、自分なりの自信はありました。ところが、来客はまさかの3人。当時はこれが自分の実力なのだ、と悲しさに似た複雑で強烈な感情を覚えました。この時の「多くの人に自分が作ったものを見てもらえるのは、とても貴重なことなんだ」という感覚は、今も忘れずに持ち続けています。

WWD:アイデアの着想源や制作の際に大切にしていることは?

越智:基本的には、植物そのものがインスピレーション源です。いろんなフローリストがいますが、自分は造形的な美しさのみを追求するタイプではないですね。もちろん、花一つ一つの色や形にも目を向けますが、それ以上にイメージをいかに表現するかを大切にしています。例えば、ブーケを作るとき「花びらの波を強調する」「色のグラデーションを見せる」など、常にイメージを据えてブーケを制作しています。自分の場合、イメージが先行しすぎて空想の世界に入ってしまうこともありますが(笑)。持っているイメージを形にするために何かを組み合わせる意味では、ファッションにも似たものがあると思っています。

WWD:西武池袋での花言葉を取り入れたイベントも盛況だった。

越智:花は愛、感謝、悲哀など人の気持ちを媒介する側面があります。エンターテインメント性のある形で、人の心によりダイレクトにアクセスしたいという思いから、花言葉のアイデアは生まれました。花言葉のトレーディングカードを3枚受け取る来場者は、その組み合わせによってメッセージを楽しめるようになっています。生活文化に根付いた花言葉をヒントに、違う手法で表現したり見せ方を展開することで、花の新しい可能性を提示する企画になりました。

WWD:写真、文筆活動など、幅広く活躍されているが、花以外の活動の原動力となっているものは?

越智:根幹には花があります。花の新たな表現を模索する中で、「花と何かを一緒に写真に収めたら面白いんじゃないか」「花のことを文章化してみたらどうだろう」という試みから、写真や文筆活動に繋がっていきました。花、言葉、写真、どれか一つ抜き出した時、自分は1番になれないと自覚しているからこそ、花以外に“伝える”ためのツールが必要なんです。心の機微をシェアしたり、従来の表現方法の一歩先に踏み込んでいきたいと思っています。

まだない表現方法を追求しながら
ものごとの原点に立ち戻る

WWD:今後挑戦していきたいことは?

越智:最近は生け花に取り組んでいます。新しい表現を通して磨かれる鋭敏な感性は大切にしつつ、人が脈々と受け継いできた技巧を取り込んでみたい。20代の時はとにかくたくさん経験を積み、いろんな感情を味わいました。30代は伝統に立ち戻ってその先の景色を見てみたいです。

WWD:自分のファッションとの関わり方は?

越智:「とにかく普通の格好」「とにかく派手な格好」「古着」の3パターンを気分によって取り入れています。洋服がその日の気分に合わないと塞ぎ込んでしまうくらい(笑)。自分を表現するうえで、ファッションはかかせないものです。作り手に思いを馳せたとき、デザイナーの視点が活きているものは身につける喜びがありますし、流通の過程や環境への負荷を考えると、古着なら安心して着られます。

WWD:制作に関わる若い世代に伝えたいことは?

越智:自分自身、人が作るものに励まされてきました。情報が簡単に手に入る今、自分だからできることは何なのか、悩んでしまうことが多いと思います。自分の考えを臆せず、たとえ初めはいびつでもいいから発信していってほしい。明確なイメージを通して伝わる人の思いやメッセージには、価値があると思います。技術を追求した先に残る本質が何なのか知りたいですね。

The post ファッションから学んだ気鋭のフローリスト 「デリジェンスパーラー」店主が考えるものづくりの本質 appeared first on WWDJAPAN.

ファッションから学んだ気鋭のフローリスト 「デリジェンスパーラー」店主が考えるものづくりの本質

 表参道ヒルズの一角に店を構えるフラワーショップ「デリジェンスパーラー(DILIGENCE PARLOUR)」は、今年でオープン7年目を迎える。越智康貴は同ショップを22歳で開業し、現在は2店舗の経営、企業やブランドの装花、文筆活動など多方面で活躍する。フローリストになる前は文化服装学院で学んでいたという彼に、ものづくりに対する考え方やアイデアの着想源を聞いた。

ファッションを通して触れたものづくりの源流
広がった人とのつながり

WWD:文化服装学院(以下、文化)入学の理由は?

越智康貴ヨーロッパ代表取締役(以下、越智):文化に入学したのは、ものづくりに対する憧れから。源流に近いところからファッションを学びたい。新しいことをスタートするなら一流の環境から、という感覚が当時からありました。

WWD:文化で学んだことで今に通じるものは?

越智:服装科の授業では、パターンの引き方、素材、デザイン、流通のことまで幅広く学びます。技術的に役に立ったことはたくさんありますが、いちばん大きかったのは多様なものの見方を養えたこと。個性的な先生、年齢も立場も違うクラスメイトの存在は大きな刺激になりましたし、著名な卒業生に学んだ制作との向き合い方も今に活きています。

WWD:卒業生の言葉で特に印象に残っているのは?

越智:印象に残ったのは卒業生・皆川明さんの講演。ある生徒の「丁寧に縫うこととスピード、どちらを優先するべき?」という質問に対する「両者は反比例するものではない。だって、寿司屋がゆっくり寿司を握ってたらまずそうでしょ?」という返しには、目からうろこでした。クオリティーとスピードは共存しうる。仕事をテキパキと時間内に進めていく要領は、文化の課題と向き合う中で身に付きました。

 「繊細な服と強い(長持ちする)服」について、「デザインが繊細で素材が強くなくても、着る人が長く大切にしたいと思えるなら、それは長持ちする服だ」とのお話もありました。たくさんインプットを得て、それを絶えずアウトプットできたのは貴重な経験です。

WWD:花にはいつ頃から携わっていた?また、そのきっかけは?

越智:在学中から花屋で働いていました。卒業後もいくつかのアルバイトを掛け持ちしながら花仕事を続けていくうちに、デザイナーになった同級生から、ポップアップや展示会の依頼が増えてきて。「シアタープロダクツ(TEHEATRE PRODUCTS)」のディスプレーに空の花瓶があるのを見て、お花を生けませんか?と電話で提案したり、地道にアプローチを続けました。今振り返るとファッションが入り口となって、業界を中心に仕事の輪が広がっていったように思います。

WWD:その後、表参道ヒルズに「デリジェンスパーラー」を開店した?

越智:表参道ヒルズ開業10周年のタイミングで花屋を開店する話が挙がり、入店を決めるコンペに参加しました。そこで出店が決まり、今年で7年目を迎えます。ラグジュアリーブランドの仕事が増えたのもその頃で、フィービー・ファイロ時代の「セリーヌ(CELINE)」の展示会で装飾を任せてもらえたことは、業界内外での信頼に繋がったのかもしれません。

花という素材と向き合いながら
花だけにとらわれない表現の可能性を模索する

WWD:最近ではJR東海「そうだ 京都、行こう」の東福寺光明院のインスタレーションが印象的だったが、自身の中で最も思い入れのある仕事は?

越智:ライブハウス・リキッドルームにある「カタ(KATA)」での初個展です。種から育て、わずか7cmで咲いてしまった早咲きの“黄花コスモス”を題材にしました。1輪の黄花コスモスにマジックミラーの箱を被せ、ペンライトの光を当てると合わせ鏡の反射によってコスモスの花畑が箱の中に広がって見えるという作品です。

 植物の個性を活かしながら、新しい花の見せ方を提案する作品として、自分なりの自信はありました。ところが、来客はまさかの3人。当時はこれが自分の実力なのだ、と悲しさに似た複雑で強烈な感情を覚えました。この時の「多くの人に自分が作ったものを見てもらえるのは、とても貴重なことなんだ」という感覚は、今も忘れずに持ち続けています。

WWD:アイデアの着想源や制作の際に大切にしていることは?

越智:基本的には、植物そのものがインスピレーション源です。いろんなフローリストがいますが、自分は造形的な美しさのみを追求するタイプではないですね。もちろん、花一つ一つの色や形にも目を向けますが、それ以上にイメージをいかに表現するかを大切にしています。例えば、ブーケを作るとき「花びらの波を強調する」「色のグラデーションを見せる」など、常にイメージを据えてブーケを制作しています。自分の場合、イメージが先行しすぎて空想の世界に入ってしまうこともありますが(笑)。持っているイメージを形にするために何かを組み合わせる意味では、ファッションにも似たものがあると思っています。

WWD:西武池袋での花言葉を取り入れたイベントも盛況だった。

越智:花は愛、感謝、悲哀など人の気持ちを媒介する側面があります。エンターテインメント性のある形で、人の心によりダイレクトにアクセスしたいという思いから、花言葉のアイデアは生まれました。花言葉のトレーディングカードを3枚受け取る来場者は、その組み合わせによってメッセージを楽しめるようになっています。生活文化に根付いた花言葉をヒントに、違う手法で表現したり見せ方を展開することで、花の新しい可能性を提示する企画になりました。

WWD:写真、文筆活動など、幅広く活躍されているが、花以外の活動の原動力となっているものは?

越智:根幹には花があります。花の新たな表現を模索する中で、「花と何かを一緒に写真に収めたら面白いんじゃないか」「花のことを文章化してみたらどうだろう」という試みから、写真や文筆活動に繋がっていきました。花、言葉、写真、どれか一つ抜き出した時、自分は1番になれないと自覚しているからこそ、花以外に“伝える”ためのツールが必要なんです。心の機微をシェアしたり、従来の表現方法の一歩先に踏み込んでいきたいと思っています。

まだない表現方法を追求しながら
ものごとの原点に立ち戻る

WWD:今後挑戦していきたいことは?

越智:最近は生け花に取り組んでいます。新しい表現を通して磨かれる鋭敏な感性は大切にしつつ、人が脈々と受け継いできた技巧を取り込んでみたい。20代の時はとにかくたくさん経験を積み、いろんな感情を味わいました。30代は伝統に立ち戻ってその先の景色を見てみたいです。

WWD:自分のファッションとの関わり方は?

越智:「とにかく普通の格好」「とにかく派手な格好」「古着」の3パターンを気分によって取り入れています。洋服がその日の気分に合わないと塞ぎ込んでしまうくらい(笑)。自分を表現するうえで、ファッションはかかせないものです。作り手に思いを馳せたとき、デザイナーの視点が活きているものは身につける喜びがありますし、流通の過程や環境への負荷を考えると、古着なら安心して着られます。

WWD:制作に関わる若い世代に伝えたいことは?

越智:自分自身、人が作るものに励まされてきました。情報が簡単に手に入る今、自分だからできることは何なのか、悩んでしまうことが多いと思います。自分の考えを臆せず、たとえ初めはいびつでもいいから発信していってほしい。明確なイメージを通して伝わる人の思いやメッセージには、価値があると思います。技術を追求した先に残る本質が何なのか知りたいですね。

The post ファッションから学んだ気鋭のフローリスト 「デリジェンスパーラー」店主が考えるものづくりの本質 appeared first on WWDJAPAN.

「アパレルのサプライチェーンを変える」 3DCGサンプル作成サービス「ストゥーラ」が旗揚げ 

 3DCGを活用したアパレルメーカー向けの商品サンプル作成サービス「ストゥーラ(STURE)」がこのほどスタートした。サービスを提供するforGIFT(東京、白井崇文社長)は、親会社クリーク・アンド・リバーのゲームグラフィックの開発ノウハウに、長らくアパレル業界に携わってきた白井社長の知見を掛け合わせることで、リアルに近い高品質な3DCGサンプル制作を可能にした。白井社長は「(3DCGサンプルの活用で)ムダな費用を減らせば、“攻め”に転じる資金余力が生まれる。多くのアパレルが構造改革が迫られている今だからこそ、業界が生まれ変わる手助けをしたい」と語る。

 3DCGサンプルの導入は、商品の企画、製造、販売に至るまで、サプライチェーンにおけるさまざまなプロセスでコスト削減などの効果が期待できる。白井社長は具体的なメリットを次のように挙げる。

・リードタイムの短縮:発注から通常1カ月程度かかるサンプル製作が数日程度に短縮。企画から販売開始までを縮め、商品の販売期間を延ばすことができる。

・サンプルの精度向上:サンプル製作の過程をリアルタイムで共有・確認できるため完成品の精度が向上。何度もサンプルを作成する時間的・資金的コストを抑制できる。

・ECの「ささげ」業務の簡略化:精巧な3DCGコストをEC商品ページに掲出でき、実物の画像を撮影する手間が省ける。ECでの事前予約商品は販売機会の延長が期待できる。

 白井社長はこれまでメンズブランドの運営やOEM(他社ブランドの商品製造)などを手がけ、それ以前にはアーティストの衣装制作やホテルのタキシードデザインなどモノ作りの現場でも経験を積んだ。「アパレルビジネスの首を絞めるのは販管費だ。ビジネスの規模を拡大すれば人件費や設備費の膨張は必然で、それは業績が悪くなっても変わらず肩にのしかかるもの。このような状況を打破するには、デジタルをテコに、サプライチェーンそのものを変革していかなくてはならない」と語る。

3DCG開発チームの自社構築は
「本末転倒になりかねない」

 「ストゥーラ」は撮影スタジオや最新の機材、3DCG専門の開発チームなど、クリーク・アンド・リバーのリソースをフル活用することで、シーズン単位のまとまった数のサンプル受注にも対応できる。服の素材やシワなどの表面感、フォルムなどはクライアントとすり合わせながら、可能な限りリアルに近づけていく。納品後も、ECやオンライン商談などへの導入・活用を支援する。すでに大手メーカーと共同でサービスの実証実験を終え、コスト削減効果も検証した。「ケースバイケースではあるが、サプライチェーンに関わるさまざまなコスト全体のうち20%程度の削減が見込める」という。

 アパレルメーカーが3DCGサンプル開発チームを自社で構築するという選択肢には、「人材面も設備面も大きな投資が必要になり、『コストを抑制する』という目的が本末転倒になりかねない」と警鐘を鳴らす。「だからこそ僕らに手助けできることがある。導入いただいた企業さまには、まずは小規模なブランドや一部商品でテスト的にスタートし、コスト抑制効果に納得した上で導入を拡大してもらう。(3DCGサンプルの導入が)絵に書いた餅にらないよう、できる限り伴走する」。

 長期的な展望としては、「3DCGサンプルによるバーチャル試着システム」や「アバターコスチュームを活用したリアル商品のテストマーケティング支援」のほか、ゲームやアニメなどのエンタメやカルチャーと結びつけた事業などを構想する。ただ白井社長は「3DCGというとメタバースやNFTというバズワードを連想しがちだが、それは次のステップ」と強調する。「企業が新しい分野で戦うための力(資金)を生み出す、サプライチェーン改革に3DCGを活用する。まずはここに僕らのやるべきことがあると考えている」。

The post 「アパレルのサプライチェーンを変える」 3DCGサンプル作成サービス「ストゥーラ」が旗揚げ  appeared first on WWDJAPAN.

「アットコスメ」の口コミから読み解く“韓国コスメ”ヒットの法則

 今回は「アットコスメ」に寄せられた「韓国コスメ メイクアップ」に関する口コミを西原羽衣子「アットコスメ」リサーチプランナーが解説。ヒットの法則を読み解いていく(集計期間:22年3月1~31日)。

―――「韓国コスメ メイクアップ」で、象徴的に使われているワードは?

西原羽衣子「アットコスメ」リサーチプランナー(以下、西原):ランキング上位の韓国メイクアップコスメへの口コミには「グリッター・ラメ」と「ティント」というワードが特徴的に使われている。「日本のコスメで、ここまでぎっしり大粒ラメが詰まっているものはなかなかない」「『ロムアンド(ROM&ND)』のラメは別格」と言われるように、特に大粒のラメ(グリッターという言葉も口コミでは同義で使われている)が韓国コスメを代表する特徴と捉えられているようだ。リップティントに関しても、依然として韓国コスメへの期待が高い様子。「韓国コスメデビュー」「初韓国コスメ&初ティント」といった口コミも見られ、エントリーアイテムとなっているようだ。

―――3月に、「韓国コスメ メイクアップ」以外で好調なカテゴリーは?

西原:UVやプライマーが伸長した。「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE-POSAY)」“UVイデア XL プロテクショントーンアップ ローズ”(30mL、税込3740円)、「コスメデコルテ(DECORTE)」“サンシェルター トーンアップCC”(全3色、35g、各税込3300円)、「なめらか本舗」“スキンケアUV下地”(50g、税込1100円)といった既存商品に加え、「イハダ(IHADA)」“薬用フェイスプロテクトパウダー”(9g、税込1980円)といった敏感肌やゆらいだ肌でも使えるものや、「アネッサ(ANESSA)」“デイセラム”(30mL、税込3850円)や「カネボウ(KANEBO)」“ヴェイル オブ デイ”(40g、税込5500円)といった高いスキンケア効果を訴求する新製品が登場しており、日焼け止めにスキンケアとしての潤い感や心地よさや求める声は、ますます増えるのではないかと思う。

 またマスク生活でのノーファンデ化の影響か、「プライマー」という言葉が使われる頻度が高まっている。ロングセラー商品である「ポール & ジョーボーテ(PAUL&JOE)」“プロテクティング ファンデーション プライマー” (全2種、30mL、各税込3850円)の他に、「アンドビー(&BE)」“UVプライマー”(36g、税込2750円)や「アピュー(A’PIEU)」“ジューシーパン スキンケアプライマー”(全2種、14.7g、各税込1980円)、「リリミュウ(RIRIMEW)」“トーンアップカラープライマー” (全4種、30g、各税込1760円)といった新商品が注目されている。ファンデーション以外で肌をきれいに見せるという選択肢の広がりを感じさせる。

22年3月「韓国コスメ メイクアップ」口コミランキング

1位「ロムアンド」“ジューシーラスティングティント”(全11色、5.5g、各税込1320円)

西原:口コミで「本当に唇の色そのまま」などと評される、「MLBB(My Lips But Better=自分の唇のようだけど、よりきれいに見せてくれる色。粘膜カラー)」であることが、人気の理由。「口紅全般苦手だが、自然に血色がいい唇のような色のリップでありがたい」という口コミも見られた。周囲や肌から「浮かない」ことを重視する現代の生活者が、リップの色が肌から浮いてしまう心配なく安心してメイクアップを楽しめることに価値を見出していると思われる。2つめの理由がリップティントであること。「落ちてもほんのり血色感が残っているのが最高」と評され、「マスク生活には欠かせない」アイテムとなっているようだ。

2位「クリオ(CLIO)」“プロ アイ パレット”(全3種、各税込3740円)

西原:「可愛い色がいっぱいつまっていて、毎日のアイメイクが楽しい」など、他商品に比べて「楽しい」というワードが多く出現することが、この商品の特徴。10色もの色がセットされたパレットタイプで、一見使いこなすのが難しいようにも思われるが、「10色全て統一感がある」「マット、細かいラメ入りマット、ラメ数種(小ぶりなもの、ざくざくしたもの)のいろんな組み合わせ」と色味ではなく、質感のバリエーションがあり「本当に捨て色がなく全部使える」という評価につながっている。

3位「ロムアンド」“ロムアンド ハンオールフィックスマスカラ L01 ロングブラック”(7g、税込1430円)

西原:他商品よりも特徴的に語られているのが、色味の絶妙さ。「ブラックでもブラウンでもない絶妙な色味」が「ブルベでも使えるブラウン」と評価されている。「黒より優しい色合いなのに、しっかり盛れるし、茶色より肌がくすまない」「(ブルべの)虹彩を引き立ててくれるような色合いが素晴らしい」というコメントも見られ、パーソナルカラーがブルーベースの人たちの「ブラウンのマスカラはことごとく似合わない」という悩みに応えたことが人気の理由と言える。

4位「ロムアンド」“デュイフルウォーターティント”(全8色、5g、各税込1320円)

西原:1位と同ブランドのリップティントだが、こちらはよりツヤ感のあるウォータータイプ。「サラッとしたテクスチャーなのでつけ心地が軽く、唇への負担が軽い」という使い心地と、「重ね塗りをしても濁りなく透明感のある仕上がり」が評価されている。「透け感あるほうが好きなら絶対こっち」とコメントも見られ、1位の“ジューシーラスティングティント”と使い分けしている様子も見られる。

5位「ロムアンド)」“リキッドグリッターシャドウ”(全4色、2g、各税込1100円)

西原:大きさの異なるラメが「小中大特大みたいな感じで配分良く」入っており「筆が細くて涙袋にも塗りやすい」と評されるリキッド状アイシャドウ。涙袋に使うことで「うるっとした目元になる」「白目がキレイに見える」と言われている。特徴的に見られるのが、「友達にも褒められる率高くて大満足」「彼氏ウケ◎」といった声。同性であれ異性であれ、他者から自分がどう見えるかを意識する層からの評価が高いようだ。

The post 「アットコスメ」の口コミから読み解く“韓国コスメ”ヒットの法則 appeared first on WWDJAPAN.

12歳の新星モデル 山口らいらの素顔

 レプロエンタテインメント所属のモデル・山口らいらは、福岡県生まれの12歳。身長166cmと小学生離れしたスタイルとルックスで、ファッション誌やウェブメディア、広告など活動の幅を広げている注目株だ。3月に東京・代々木で開かれた「東京ガールズコレクション(TGC)」では、堂々としたランウエイウオークを披露した。

そんな山口も、普段は一人の中学生の女の子。地元・福岡での学校生活、モデルを始めたきっかけから将来の夢まで、等身大を語ってもらった。

WWD:「TGC」では堂々としたランウエイでしたね。

山口らいら(以下、山口):12歳でTGCに出させていただけるなんて思いもしませんでしたし、豪華な出演者さんの中に私もいることが、本当に信じられませんでした。本番はとても緊張していて体がガチガチだったのですが、ステージに立ったら楽しく歩くことができたのでよかったです。

WWD:モデルになったきっかけは?

山口:お母さんの勧めがきっかけで、仕事も見つけてきてくれました。初めてのお仕事は、3歳のときのブライダルモデルでした。あまり覚えてないんですが、楽しかった気がします(笑)。それからもっとモデルのお仕事がしたいと思って、今もお仕事を続けています。今の事務所に所属したきっかけは、SNSでのスカウトです。

WWD:モデルをしていて楽しいこと、大変なことは?

山口:モデルはいろんな衣装やヘアメイクが楽しめるし、たくさんの人に出会えるのでとても面白いです!長時間の撮影だと少し疲れる時もありますが、どんな撮影でもスタッフさんがとても優しくしてくださります。だから、大変だと感じることは特にありません。

(女性ファッション誌の)「ヴィヴィ(ViVi)」に出させていただけることが決まった時は、驚きと喜びが止まらなかったです。ずっと見ていた雑誌やSNSで見ていた方と一緒にお仕事させていただけたことが、とてもうれしかったです。(ヘアサロンの)「ミンクス(MINX)」のミューズにも起用していただき、普段の自分よりも大人っぽい雰囲気で撮影をしたので、(出来上がったデータを見て)自分が別人のように見えました。

WWD:目標とする人はいますか?

山口:橋本環奈さんが憧れの存在です。私と同じ福岡県出身で、テレビや映画にたくさん出演してる姿を見て、私も将来同じぐらい活躍できるようになりたいと思っています。

WWD:普段の学校生活についても教えてください。

山口:好きな科目は体育です!小さい頃から運動することが大好きで、お父さんとずっと公園で走っていました。今でも走ったり、ボールを使った運動が好きです。苦手な科目は、図工です。絵を描くのはちょっぴり苦手です。野菜全般が苦手で、特にとうもろこしが苦手なんです。でも学校では野菜をちゃんと食べるようにしています。

WWD:今後の目標を。

山口:4月から中学生になったので、モデルの仕事をがんばりながら、勉強やヘアメイクなども自分でできるようになりたいです。これからも色々な経験を積んで、成長する姿を皆さんに見ていただきたいです!

The post 12歳の新星モデル 山口らいらの素顔 appeared first on WWDJAPAN.

脱サラしてモデルデビュー ヒロ クリヅカって何者?

 日本人モデルのヒロ クリヅカは、脱サラしてモデルデビューした異色の経歴の持ち主だ。坊主頭に鋭い目、鼻筋が通った端正な顔立ちで、2020-21年秋冬シーズンの「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」のランウエイや、「トム フォード(TOM FORD)」の広告など、名だたるブランドに起用されている。モデルを目指した経緯からランウエイデビューまでの道のり、「コンプレックスの固まりだった」と語る学生時代までを聞いた。

海外出張でモデルを勧められ
一週間で辞表を提出

WWD:脱サラしてモデルになったのは本当?

クリヅカ:はい。大学卒業後、繊維商社に入社し、海外ブランドに生地を売っていました。メゾンブランドや「ザラ(ZARA)」などもクライアントでした。海外出張に行った際、あるブランドの生地デザイナーから「君、いいよ。モデルやりなよ」と言われてその気になり、一週間後に辞表を提出。数カ月後には海外コレクションを目がけて、イタリアに発ちました。

WWD:すごいスピード感ですね。いきなりランウエイデビューしたとか?

クリヅカ:いえ。当時は体重88kgで、とてもじゃないけどモデルができるルックスじゃなかった。オーディションも全く引っかかりませんでした。これじゃダメだと減量を決意し、いろいろと調べたら1カ月で4kg痩せる計算になったので、4カ月で16kg落としました。

WWD:どんな計算だったのか気になりますが、その後の流れは?

クリヅカ:やみくもにオーディションを受けてもダメだと、モデル市場をリサーチしました。パリや日本は、線が細くてウィアードな顔立ちのモデルが人気。骨格が太く、顔立ちも個性派じゃない僕は、ミラノやシンガポールにハマると考えて、シンガポールに行きました。すると2週間で事務所が決まり、雑誌とかショーとか、仕事のオファーがバンバン来ました。

WWD:戦略的にモデル業を行ったと。

クリヅカ:そうです。僕はスターモデルになるタイプじゃないし、普通にやっても上手くいきませんからね。シンガポールではモデル仲間にカナダのマザーエージェンシーを紹介してもらい、イタリアやドイツなど8カ国の事務所と契約できました。そこで可能性が一気に広がり、さらに当時はトレンドがストリートからテーラードに回帰していたタイミングで、「ミラノならイケるかも」と思って現地に行きました。そしてついに、2020-21秋冬シーズンに「ドルチェ&ガッバーナ」のショー出演を勝ち取りました。その後、他ブランドのランウエイや「バーバリー(BURBERRY)」「トム フォード」「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」などのキャンペーンも務めました。

WWD:名だたるブランドばかりです。印象深いショーや撮影は?

クリヅカ:まずは「ドルチェ&ガッバーナ」ですね。初の海外コレクションの大舞台は一生忘れません。モデルは100人くらいで、日本人はわずか3人でした。あと「バーバリー」も思い出深い。メッセージがダイレクトで届いて、日本の仕事も結構入っていたからかなり迷ったのですが、こんな機会はもうないとパリに発ちました。撮影の舞台は、パリの中心部から4時間くらい離れた森の中。スケールが異次元で、やっぱすげえなって。日本人モデルは歴代で2人目だったらしく、それもうれしかったです。

WWD:体型維持には気を使っている?

クリヅカ:もちろん。気を緩めるとすぐに体型は崩れちゃうし、プロとしてやらせてもらう以上、100%の自分を提供したいと思っています。撮影前日は絶対飲みにいかないし、当日は水も抜きます。モデルは一つの自己表現だし、それくらいの覚悟がないとやる意味がありません。

WWD:TikTokではモデルデビューまでのエピソードなどを投稿していますね。どんな思いで発信しているのでしょうか?

クリヅカ:いろんな人に夢を与えられたらといいなと。僕は自分にコンプレックスがあって、何をしても1位になれなかった。実は父親がバスケの元日本代表で、親戚にもプロスポーツ選手がいるなど、超がつくほどの体育会の家系。僕は大学までサッカーを本気でやったのですが、華が咲かなかった。しかも友達もいなくて、高校ではいじめも受けていました。そんな僕がモデルとして活動しているのって、夢があるじゃないですか。家族も最初はモデルに肯定的じゃなかったんですけど、最近、スバルの広告に出演させてもらい、それを見た父親が初めて褒めてくれました。めちゃくちゃうれしかったです。

ブランドや写真事業も運営
全ては「本気でモデルをやるため」

WWD:アパレルブランドのディレクションも行っていると聞きました。

クリヅカ:ブランドを2つ運営しています。繊維商社時代に培ったノウハウを生かして、企画・生産から販売まで担っています。キャンペーンなどのクリエイティブも自分で撮影しています。モデルのセカンドキャリアはマネージャーや会社員が多く、今からビジネスをちゃんとやっといた方がいいと考えて始めました。

WWD:写真はどのように学んだのでしょうか?

クリヅカ:いろんなブランドや写真を研究し、独学で学びました。最近は写真メインの仕事もやっています。僕は“フォトディレクション”と呼んでいて、ブツ撮りからSNS投稿までをディレクションし、投稿エンゲージメントのリポートも一括して請け負います。yutoriのブランドとか、飲食店のクリエイティブとか。

WWD:ブランド運営から写真事業までをやっていると、かなり稼いでいるのでは?

クリヅカ:サイドビジネスはモデルをヘルシーにやるためで、金もうけが大きな目的ではありません。別の収入源があるからこそ、本当にやりたいモデルの仕事に集中できるんです。

WWD:なるほど。最後に、今後の目標を教えてください。

クリヅカ:モデル以外の表現にもいろいろと挑戦したい。ヒップホップ好きなので音楽もやりたいし、ユーチューブでの情報発信も良さそう。“脱サラモデル”から、さらに活動を広げて、いろんな人に夢を与え続けたいです。

The post 脱サラしてモデルデビュー ヒロ クリヅカって何者? appeared first on WWDJAPAN.

「焦り」を感じていたスタイリスト小沢宏が、地元で審美眼を生かして在庫活用のセレクトショップ

 スタイリストの小沢宏は5月1日、地元の長野県上田市にセレクトショップ「エディトリアル ストア」をオープンする。取り扱うのは、「サイ(SCYE)」や「ミスター・ジェントルマン(MISTER GENTLEMAN.今春、ブランド名をソフトハイフン(SOFTHYPHEN)に改称」「マッキントッシュ(MACKINTOSH)」のほか、ビームスやネペンテス、エストネーション、ベイクルーズ 、デイトナインターナショナルなどが手掛けるセレクトショップの眠った在庫。シーズン落ちした商品をスタイリストならではの審美眼で買い付け、もちろん定価より安い値段で販売。古里での新たなビジネスのきっかけは、これまでの仕事が縮小していくことに対する「焦燥感」と、だからこその「新しい挑戦への意欲」だった。ゴールデンウイークのオープンを目指す小沢に話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):地元での新たな挑戦に駆り立てたものは?

小沢宏(以下、小沢):スタイリストとして業界に飛び込んで、21歳で「ポパイ(POPEYE)」のアシスタントになって、今は57歳。正直最近は「ボールを投げる距離が短くなってきた」と悶々とするようになった。プロ野球選手のトライアウトなどの“悲喜こもごも”が、自分にとって身近になった。焦燥感があった。

WWD:焦りの理由は?

小沢:「ヌメロ ウーノ(NUNERO UNO)」や「コーヒー アンド ミルク(COFFEE AND MILK)」など、手がけていたブランドが縮小した。かつての事務所を引き払ったとき、サンプルなど、大量の洋服が出てきて驚いた。自分のブランドは決して大規模じゃないし、廃棄が生まれないよう気を使ってもいた。「それでも、行き場のない洋服がこんなにあるのか?」「俺でこんななら、世の中、どうなっているのか?」と考えた。みんな、好きで洋服を作っている。だから「残っちゃいました」「捨てなければなりません」は、すごく悲しい。業界人の多くが同様に悲しい思いをしているなら、「何かできないか?」と考えた。

WWD:そこで、各ブランドの在庫をスタイリストの自分が選び、コーディネートし直して販売するショップを思いつく。

小沢:スタイリストは、いろんなブランドの洋服をディグって、1つのアイテム、1つのスタイルを見つけるような仕事。今、若い世代が夢中な古着屋のようなショップは、自分のこれまでの仕事に近く、今までにない価値を提供できるかもしれないと考えた。企画をまとめて業界の先輩や友人にぶつけてみたら、「成立しないよね」と否定“してくれた”。皆、思った以上に「自分ごと」として捉えてくれたからこその返答だった。それぞれ会社の事情があるから「ユニークなこと、やろうとしてますね」という反応も多かった。「必要とされているのかも?」と現実味が増した。

「広がらないと腹落ちしない」だろう
でも、続ければ「大きな渦になる」手応え

WWD:「ユニークなこと、やろうとしてますね」は、個人的には共感するけれど、会社の事情もあるから距離を置きたいという答え。交渉は、大変だったのでは?

小沢:正直、ラグジュアリーやインポートは、全滅(笑)。でも、親身になって話を聞いてくれるブランドも多かった。不安は、とてもよくわかる。外部の人間が倉庫に入って、商品をピックアップして、直営店とは異なる店頭で売るスキームが受け入れられるのか?という不安は大きく、本音で話して、意向を聞いて、修正を繰り返した。特にアウトレットを持つブランドは「なぜ、ここで?」と考えるし、セレクトは卸売りをしていない。ハードルは高かった。実店舗できて、ECがオープンして、広がらないと腹落ちできないこともあると思う。一方、続けば理解してもらえて、大きな渦になることもあるだろうという手応えを感じた。

WWD:各ブランドの倉庫を周り、一点一点商品をピックアップする過程も大変そうだ。

小沢:基本的にはエクセルの在庫リストとにらめっこしながら個々の倉庫に赴き、在庫の山からお目当てを探し出し、購入するカンジ。倉庫の一角にキレイな段ボールを広げて、洋服を床に置いて吟味している。地道な作業だが、かつて経験したアメリカでの古着の買い付けのようで、とても楽しい。自分で試着して、自撮りして、ピックアップするサンプルを決めるスタイリストの仕事にも通じる。ただ今の僕が目指すのは、「デッドストック」を「ライブストック」にすること。古着業界の「デッドストック」は、未使用のヴィンテージ品。一方の「ライブストック」=「生きた在庫」で、本来なら処分される在庫を新たな流通で新しい価値と共に甦らせたい。

WWD:ショップでは、洋服以外も扱う?ECは?

小沢:実店舗もECも、フルラインアップ。帽子では「キジマタカユキ(KIJIMATAKAYUKI)」、シューズでは「パラブーツ(PARABOOT)」に賛同していただいた。商品の他、残反も買い取った。2、3mの残反は洋服にもできないから業者にお金を払って回収してもらっていたようだが、大手のシャツメーカーのフレックスジャパン(百貨店や専門店、郊外のロードサイドの量販店などで販売するシャツの製造メーカーで、長野県千曲市に拠点を構える)でショッピングバッグにしてもらった。大と小、シューズ用の3種類を用意している。縫製を依頼したフレックスジャパンからは、シャツの端切れを頂いた。細長く切り裂いて三つ編みにして、フーディのドローコードなどにしている。

WWD:ショッピングバッグもフーディもカワイイ。

小沢:さまざまなブランドやスタイルを組み合わせてきた僕の得意技は、「マッシュアップ」。ブランドとシャツメーカーのマッシュアップで生まれたショッピングバッグや、そのメーカーと僕のマッシュアップによるドローコードは、そんなにお金や時間をかけなくても売れるのでは?と思う。最初から最後までを自己完結する形のアップサイクルは、ツラくて続けられない気がする。違うものを組み合わせ、単純に「あ、いいね」と思えるものにしたい。地元に帰り、自分の想いがブランドやシャツメーカーとつながり、彼らの想いがまた別の形につながっている。「ファッションのカラクリ」を知っていて、安易には「いいですね」と言い切れないことが多いと自覚している中、この取り組みは「いいことしかない」と言い切れる。信州大学の繊維学部がある上田市の、元気のない商店街にオープンする「エディトリアル ストア」は、きっとまた、次の想いにつながるだろう。想いの裏にある課題を知りながら、地方と東京、社会と業界をシェイク、ミックス、マッシュアップする架け橋になりたい。

The post 「焦り」を感じていたスタイリスト小沢宏が、地元で審美眼を生かして在庫活用のセレクトショップ appeared first on WWDJAPAN.

写真とアートを両立するココ・カピタン 「グッチ」「ディオール」も注目する若き才能

 スペイン出身の写真家でアーティストのココ・カピタン(Coco Capitan)による日本初の個展“ナイーヴィ(NAIVY)”がパルコミュージアムトーキョーで開催中だ。カピタンは2017年に「グッチ(GUCCI)」のコラボレーターに抜てきされ、手描きの強いメッセージを載せたアイテムなどで高い評価を得た。その後も「アー・ペー・セー(A.P.C.)」や「ナイキ(NIKE)」「ディオール(DIOR)」などさまざまなブランドとの協業を重ねているほか、コマーシャルフォトやファインアートの作品を発表し続けており、写真家とアーティストの狭間をいく独自のポジションを確立している。

 彼女が20代の10年間をかけて制作したという“ナイーヴィ”は、2020年にロンドンのギャラリー、マキシミリアン・ウィリアム(Maximillian William)を皮切りに、21年にアムステルダムの写真美術館ハイス・マルセイユ(Huis Marseille)を巡回し、今年東京・渋谷に上陸した。開催に合わせて来日したカピタンが、個展にかけた思いや、これまでのキャリアのこと、今後立ち上げる新ブランドについて語ってくれた。

――ひさしぶりの来日だそうですね。東京の印象はいかがですか?

ココ・カピタン(以下、カピタン):日本は大好きな国なので、戻ってくることができてとてもうれしいです。今回で訪れるのは3回目ですが、西洋とは異なる文化やデザイン、細部へのこだわりに刺激を受けています。東京はとてもモダンで、物事が迅速に進んでいるイメージ。より伝統的な日本の文化を楽しめる京都も好きですね。今回は日本に2週間滞在し、後半の6日間は京都に行く予定です。日本には憧れる写真家やアーティストがたくさんいて、特に森山大道さんや東松照明さんの作品がとても好きです。

――今回の写真展“ナイーヴィ”について教えてください。

カピタン:ネイビー(海軍)とナイーブ(純粋で傷つきやすいさま)の二つの言葉をかけ合わせた造語です。私はなぜかミリタリーから着想を得ることが多いんです。ネイビーの“戦う訓練をするための集団”という要素は好きではありませんが、人々が社会から離れた場所に集まり、一緒に生活をし、訓練するというような要素を取り上げるのは面白いと思いました。固定されたアイデアを壊しながら、ネイビーとナイーブを表現しています。

東京展のために現像した“決定的な50枚”の作品

――このプロジェクトに10年を費やしたと聞きました。この間、価値観はどのように変化していきましたか?

カピタン:“ナイーヴィ”の作品は長年撮りためてきたものなので、撮影した時期や場所はバラバラです。一番古い写真は私が20歳で初めてニューヨークを訪れたときのもので、当時からもう10年が経ちますね。振り返ると最初の方の写真はエネルギッシュでナイーブな空気感があり、最近の作品はより自信に満ち溢れている感覚です。しかし「こうでなければいけない」という先入観も次第に強くなり、葛藤することもありましたね。

――ロンドンとアムステルダムを巡回し、東京展ではどのように構成したのですか?

カピタン:日本は写真に特別な感性を持っている人が多いので、写真にフォーカスした展示にしたかったんです。“NAIVY : in fifty (definitive) photographs(ナイーヴィ:50枚の決定的な写真)”というタイトルで、東京で発表するために刷った新たな写真を発表しています。現像は暗室で3カ月かけて行いました。他都市で展示した写真と現像方法もサイズも異なる“決定的な50枚”のため、これ以降は“ナイーヴィ”に関する写真をプリントする予定はありません。

――キャリアについても話を聞かせてください。フォトグラファーやアーティストを志したきっかけは?

カピタン:私はスペインの小さな町で育ち、幼い頃から美術館に行くのが好きで、アートにも興味がありました。当時はアーティストが職業だなんて考えたこともなく、自分にできることだとも思っていませんでした。ただ、13歳から写真は撮り続けていて、クリエイティブな仕事をしたいということは分かっていました。そうして18歳でロンドンに引っ越してきたとき、「自分が一番楽しめることは何だろう?」と考え、雑誌で写真を撮り始めたんです。

――代表的な作品に、手描きのメッセージがありますね。これらはどのように制作しているのですか?

カピタン:子どもの頃は内気な性格で、自分の考えや気持ちを人に伝えることが苦手でした。その頃からノートをどこにでも持ち歩いていて、自分の考えを書き留める習慣がついています。今でも同じプロセスで、自分の中で何が起こっているのかを確認しています。それがこの作品につながりました。

――力強いメッセージが多いですが、たまに文字が反転していたり、誤字のようなものがあったりしますね。どのような意図があるのでしょうか?

カピタン:私は少し失読症で、文法はあまり重要ではないと思っています。完璧じゃなくても、見る人は自分なりの解釈をしてくれる。解読するのが難しい方がおもしろいし、個性があると感じますね。

アートの醍醐味は他者の考えにつながりを持てること

――今はロンドンとマヨルカ島を拠点にしているそうですね。それぞれの都市でどのように活動しているのですか?

カピタン:ロンドンでロックダウンを経験し、全てのイベントや文化的な発信が止まったことに衝撃を受けました。その後マヨルカ島で休暇をとり、友だちと楽しい時間を過ごすと、私の理想の居場所はロンドンではないということに気が付いたんです。自然に囲まれたマヨルカ島の方がインスピレーションをより受けられるだろうし、広いスペースで作業ができ、友人も招待できる。そうして、1年前にマヨルカ島に新たな拠点を作りました。気候も良く、海辺で美しいですよ。

――チームで仕事をしているのですか?

カピタン:プロジェクトによってチームを編成しています。ロンドンのチームには2人いて、マヨルカ島では別のチームで仕事をすることも。特にマヨルカ島のアトリエには、他のアーティストたちも招き入れているので、時には助け合い、それぞれ別の仕事もしています。アーティストは孤独な職業でもあるので、異なる目標を持つ人々と働くことは楽しいですね。

――数々のブランドとコラボレーションも行ってきましたね。特に印象深い仕事は何ですか?

カピタン:「グッチ」とのコラボレーションは、大きな経験になりました。アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)と一緒に仕事をしたことで、自分の作品に対する考え方が大きく変わったと思います。またCEOのマルコ・ビッザーリ(Marco Bizzari)の考えにも感銘を受けました。デザイナーと親密に仕事を行い、ブランドにとって何がベストなのかを一緒に考えていることが印象的でしたね。

――パンデミックを経て、今年は戦争が起こるなど私たちは変化の大きい時代を生きています。このような時期にアートはどのような力を持っていると思いますか?

カピタン:私にとってアートは人生そのものであり、感情を処理する方法で、自分自身を表現する手段でもあります。アートの醍醐味は、人々が評価する感性を持つことができ、他者の考えに共感し、つながりを持つことができること。特に他人の立場に立って、客観的に物事を見る力は生きていく上でとても大切なことだと思います。

今後は油絵に力を注ぎ新ブランド「カピターナ」も計画中

――アーティストやフォトグラファーを目指す人にアドバイスはありますか?

カピタン:自分にも、周りの人にも正直になり、挑戦を続けること。全員に好かれる作品を作ることは難しいですが、自分自身が心地よく、満足できる表現を見つけることは重要です。有名になりたいのであれば、情熱を持って、世の中に伝えたいメッセージを持つことも大事。私は正統派なアーティストのキャリアを積んでいるとは言えませんが、このような展覧会を開くために努力を重ねてきました。誰かに「ノー」と言われたり、「無理だ」と否定されたりしても、失望せずに自分を信じることが大切です。

――今後、挑戦してみたいことはありますか?

カピタン:絵をもっと上達させたいです。写真家として経験を積んできたものの、画家としての技術を専門的に学んだことがありません。私は「誰のアシスタントにもつかずに写真家になれてラッキーだね」と言われることもありますが、今は誰かの元でスキルを身に付けたい。時間があれば学校に通ったり、尊敬するアーティストのもとで学んだりしたいですね。また今は“ナイーヴィ”に次ぐ、新しいテーマの作品作りにも取り掛かっており、油絵も描いています。

――直近で計画している仕事はありますか?

カピタン: 「カピターナ(CAPITANA)」というブランドをスタートさせる予定です。カピタンはスペイン語で船長という意味で、カピターナはその女性形(女性の船長)。シーズンごとに新作を出す典型的なファッションブランドではなく、手に取りやすいファッションアイテムとホームウエアを扱います。ファインアートに限らず、モノ作りをすることが好きなので、「カピターナ」ではより多くの人に私のデザインを届けたいです初めてのコレクションでは、マヨルカ島の職人たちと組んで、洋服や陶器などを作りました。将来的には家具にもチャレンジしたいですね。販売は、とあるオンラインプラットフォームとの協業で行う予定です。日本のみなさんが楽しみにしてくれるとうれしいです!

The post 写真とアートを両立するココ・カピタン 「グッチ」「ディオール」も注目する若き才能 appeared first on WWDJAPAN.

「ケイト」に聞いた絶好調の理由 “リップモンスター”やSNS世代に刺さる商品誕生の裏側

 カネボウ化粧品のメイクブランド「ケイト(KATE)」は、1997年に誕生した当初から“no more rules”を掲げ、ルールに縛られないメイクを提唱すると同時にクールでシャープなブランドイメージを確立してきた。ここ数年は、ユーザーの変身欲に着目したユニークなアプローチのものも多い。例えば、たれ目や涙袋を強調できる“マンガジェニックライナー”や、フェイクのふたえを描くことができる“トリプルグラデエキスパート”、白目の幅を自然に大きく見せるアイライナー“リアルアイズプロデューサー”などだ。

 また、コロナ禍で大ヒットを記録した“リップモンスター”は累計300万本を出荷し、2021年度は46部門のベスコスを受賞。“欲望の塊”や“ラスボス”といったユニークなカラー名も話題になった。今年3月にはイラストレーターの米山舞とのコラボビジュアルと共に“欲コレクション(YOKU COLLECTION)”をリリース。同時に、歌手のEveによるオリジナル楽曲「YOKU」のミュージックビデオを公開すると、2カ月足らずで650万回以上再生(4月28日現在)されている。

 このような商品は、どのように開発しているのだろうか。「ケイト」の変化について岩田有弘ブランドマネジャーとPRの若井麻衣に話を聞いた。

WWD:「ケイト」はなぜ変化したのか?

岩田有弘(以下、岩田):2019年ごろから「ケイト」を進化させようと頑張ってきた。これまでも安定した売り上げのあるブランドだったが、イメージが固定化した上に売り上げの成長も鈍くなり、飽和状態になっていた。さらに、業界内でもデジタルシフトするブランドが多くなり、マスブランドとしてのお客さまとのつながり方を考えなくてはいけなかった。

WWD:方向性をどう改めた?

岩田: まずは、当初から唱えてきた“no more rules”のパーパスに、ブランドの意志をいっそう強めて発信していこうと決めた。さらに“no more rules”を通して戦うべきものが、時代と共に変化していることにも注目した。

 これまではハイヒールや制服など、誰かに押し付けられた美の基準が戦うべき“ルール"だった。しかし、ソーシャルが発達した現代は画像の加工技術が発達し、SNS上はきれいな人ばかりになった。その周囲からの“ソーシャルプレッシャー”が不安や自信喪失につながっているのではないかと考えた。そこでわれわれは、同調圧力や固定観念をといったある種の“ルール"に従うのではなく、お客さまと一緒に取り組むスタンスを大切にしようと話し合った。

SNS世代に刺さる商品はどうやって生まれている?

WWD:消費者のリアルなニーズをつかみ、商品化するまでが早いイメージだ。

若井麻衣(以下、岩井): チームのメンバーは美容への愛が本当に強いため、リサーチ力がものすごい。私から見ていても、お客さまのちょっとした発信から、ニーズを汲み取る早さと感性が素晴らしいと感じる。定期的に実施しているアイデア出し会では若いスタッフもどんどんアイデアを出している。みんな、とんでもなく積極的だ。

岩田: たしかに要所要所にジャッジが必要な場面はあるが、そこまではみんな自由な発想で楽しくやっている。そういう雰囲気のおかげで、今は発案とリリースのサイクルがすごくよく回っているなと感じる。ただ、スピード感を保ったままリリースするのはやっぱり大変で、現場は体力勝負だ。

WWD:大ヒットした“リップモンスター”はどうやって生まれた?

岩田: コロナ禍でリップ市場が縮小する中、われわれが注目したのは「マスクをするからってメイクをしないのはありえない!」と思っている、メイクが生きがいの若年層。落ちにくいのは大前提として、コロナ禍でも楽しめるリップを作ろうと企画したのがきっかけだ。

 ネーミングは、唇を起点に“欲”を考えたときに、色落ちを気にせず食べ物を食べたかったり、写真や動画に映る自分をかわいいくキープしたかったり、楽しくおしゃべりをしたかったりして、まるで怪物みたいだなと想像した。そこから“リップモンスター”という商品名が生まれた。

WWD:商品名だけでなく、ユニークな色の名前も特徴だ。

岩田: “思わず誰かに話したくなる商品”を目指して、“欲望の塊”や“ラスボス”など気になる色名を付けた。色の名前も候補が100案ほどあって、その中から厳選した。

若井: 色名だけでなく、カラーバリエーションも評価されたポイントだと思っている。SNSを見ていると、絶妙な色の違いを楽しみたい人が多そうだったので、普通はピンク、ブラウン、レッドと幅広くそろえるのが定石のところ、既存色はあえてブラウンベースのみのカラーに絞った。絶妙な色味の違いだからこそ似合う色が必ず見つかるし、集めてくれる人も多かったようだ。

WWD:3月にリリースした“欲コレクション”のような、イラストレーターや歌手との協業も好調を後押ししている。他ジャンルへのアプローチは一歩間違えるとイメージを左右することもあるはずだが、コラボの際に気をつけていることは?

岩田: 私たちも本気でやるという姿勢は大前提だ。「エヴァンゲリオン(EVANGELION)」と昨年コラボしたときもそうだったが、コンセプトをきちんと持ちながら、パロディにしないのは当然のこと、メイクの世界に元のコンテンツをいかに引き込んでいくかを意識している。

WWD:「ケイト」がものづくりで大切にしていることは?

岩田: 売れている商品の真似をせず、自分たちの感性を大切にすること。また、ニーズはシーズンではなくターゲットで捉える。「ケイト」のターゲットである若年層や、美容好きで感度の高い人が次に欲しいものは何だろうとメンバー全員が常に考えている。そのニーズを一番いいタイミングでキャッチすることが結果につながるはずだ。

WWD:ここ2〜3年の施策は成功と言える?

岩田: 成功だと思っている。今までもセルフメイクブランド部門では売り上げシェア1位だったが、去年は全メイク市場でナンバーワンのブランドになった。一つの通過点だが、方向性が定まって取り組むべき方向が見えてきたのは成長といえるだろう。今後はいかに継続しながら進化していくかが大事だと考えている。

The post 「ケイト」に聞いた絶好調の理由 “リップモンスター”やSNS世代に刺さる商品誕生の裏側 appeared first on WWDJAPAN.

「ケイト」に聞いた絶好調の理由 “リップモンスター”やSNS世代に刺さる商品誕生の裏側

 カネボウ化粧品のメイクブランド「ケイト(KATE)」は、1997年に誕生した当初から“no more rules”を掲げ、ルールに縛られないメイクを提唱すると同時にクールでシャープなブランドイメージを確立してきた。ここ数年は、ユーザーの変身欲に着目したユニークなアプローチのものも多い。例えば、たれ目や涙袋を強調できる“マンガジェニックライナー”や、フェイクのふたえを描くことができる“トリプルグラデエキスパート”、白目の幅を自然に大きく見せるアイライナー“リアルアイズプロデューサー”などだ。

 また、コロナ禍で大ヒットを記録した“リップモンスター”は累計300万本を出荷し、2021年度は46部門のベスコスを受賞。“欲望の塊”や“ラスボス”といったユニークなカラー名も話題になった。今年3月にはイラストレーターの米山舞とのコラボビジュアルと共に“欲コレクション(YOKU COLLECTION)”をリリース。同時に、歌手のEveによるオリジナル楽曲「YOKU」のミュージックビデオを公開すると、2カ月足らずで650万回以上再生(4月28日現在)されている。

 このような商品は、どのように開発しているのだろうか。「ケイト」の変化について岩田有弘ブランドマネジャーとPRの若井麻衣に話を聞いた。

WWD:「ケイト」はなぜ変化したのか?

岩田有弘(以下、岩田):2019年ごろから「ケイト」を進化させようと頑張ってきた。これまでも安定した売り上げのあるブランドだったが、イメージが固定化した上に売り上げの成長も鈍くなり、飽和状態になっていた。さらに、業界内でもデジタルシフトするブランドが多くなり、マスブランドとしてのお客さまとのつながり方を考えなくてはいけなかった。

WWD:方向性をどう改めた?

岩田: まずは、当初から唱えてきた“no more rules”のパーパスに、ブランドの意志をいっそう強めて発信していこうと決めた。さらに“no more rules”を通して戦うべきものが、時代と共に変化していることにも注目した。

 これまではハイヒールや制服など、誰かに押し付けられた美の基準が戦うべき“ルール"だった。しかし、ソーシャルが発達した現代は画像の加工技術が発達し、SNS上はきれいな人ばかりになった。その周囲からの“ソーシャルプレッシャー”が不安や自信喪失につながっているのではないかと考えた。そこでわれわれは、同調圧力や固定観念をといったある種の“ルール"に従うのではなく、お客さまと一緒に取り組むスタンスを大切にしようと話し合った。

SNS世代に刺さる商品はどうやって生まれている?

WWD:消費者のリアルなニーズをつかみ、商品化するまでが早いイメージだ。

若井麻衣(以下、岩井): チームのメンバーは美容への愛が本当に強いため、リサーチ力がものすごい。私から見ていても、お客さまのちょっとした発信から、ニーズを汲み取る早さと感性が素晴らしいと感じる。定期的に実施しているアイデア出し会では若いスタッフもどんどんアイデアを出している。みんな、とんでもなく積極的だ。

岩田: たしかに要所要所にジャッジが必要な場面はあるが、そこまではみんな自由な発想で楽しくやっている。そういう雰囲気のおかげで、今は発案とリリースのサイクルがすごくよく回っているなと感じる。ただ、スピード感を保ったままリリースするのはやっぱり大変で、現場は体力勝負だ。

WWD:大ヒットした“リップモンスター”はどうやって生まれた?

岩田: コロナ禍でリップ市場が縮小する中、われわれが注目したのは「マスクをするからってメイクをしないのはありえない!」と思っている、メイクが生きがいの若年層。落ちにくいのは大前提として、コロナ禍でも楽しめるリップを作ろうと企画したのがきっかけだ。

 ネーミングは、唇を起点に“欲”を考えたときに、色落ちを気にせず食べ物を食べたかったり、写真や動画に映る自分をかわいいくキープしたかったり、楽しくおしゃべりをしたかったりして、まるで怪物みたいだなと想像した。そこから“リップモンスター”という商品名が生まれた。

WWD:商品名だけでなく、ユニークな色の名前も特徴だ。

岩田: “思わず誰かに話したくなる商品”を目指して、“欲望の塊”や“ラスボス”など気になる色名を付けた。色の名前も候補が100案ほどあって、その中から厳選した。

若井: 色名だけでなく、カラーバリエーションも評価されたポイントだと思っている。SNSを見ていると、絶妙な色の違いを楽しみたい人が多そうだったので、普通はピンク、ブラウン、レッドと幅広くそろえるのが定石のところ、既存色はあえてブラウンベースのみのカラーに絞った。絶妙な色味の違いだからこそ似合う色が必ず見つかるし、集めてくれる人も多かったようだ。

WWD:3月にリリースした“欲コレクション”のような、イラストレーターや歌手との協業も好調を後押ししている。他ジャンルへのアプローチは一歩間違えるとイメージを左右することもあるはずだが、コラボの際に気をつけていることは?

岩田: 私たちも本気でやるという姿勢は大前提だ。「エヴァンゲリオン(EVANGELION)」と昨年コラボしたときもそうだったが、コンセプトをきちんと持ちながら、パロディにしないのは当然のこと、メイクの世界に元のコンテンツをいかに引き込んでいくかを意識している。

WWD:「ケイト」がものづくりで大切にしていることは?

岩田: 売れている商品の真似をせず、自分たちの感性を大切にすること。また、ニーズはシーズンではなくターゲットで捉える。「ケイト」のターゲットである若年層や、美容好きで感度の高い人が次に欲しいものは何だろうとメンバー全員が常に考えている。そのニーズを一番いいタイミングでキャッチすることが結果につながるはずだ。

WWD:ここ2〜3年の施策は成功と言える?

岩田: 成功だと思っている。今までもセルフメイクブランド部門では売り上げシェア1位だったが、去年は全メイク市場でナンバーワンのブランドになった。一つの通過点だが、方向性が定まって取り組むべき方向が見えてきたのは成長といえるだろう。今後はいかに継続しながら進化していくかが大事だと考えている。

The post 「ケイト」に聞いた絶好調の理由 “リップモンスター”やSNS世代に刺さる商品誕生の裏側 appeared first on WWDJAPAN.

ユーチューバー、モデルのそわんわんが「ガールズ バイ ピーチ・ジョン」に登場 “みんなそのままで素敵”SNS世代に投げかける自己肯定感のあり方

 「ピーチ・ジョン(PEACH JOHN)」の若年層向けブランド「ガールズ バイ ピーチ・ジョン(GiRLS by PEACH JOHN)」が運営する公式PRクラブ “ガーリスタ(GiRLISTA)”のメンバーにチャンネル登録者数63万人以上を抱える人気ユーチューバーのそわんわんが加入する。1年の活動期間中にコラムの執筆やブランドと自身のSNSを通してブランドメッセージや下着の魅力を発信するほか、下着の着用モデルも務める。

 そわんわんは親しみやすいキャラクターとポジティブなマインドで10〜20代を中心に支持を集める人気ユーチューバーで、20年からはファッション雑誌「ラファーファ(la farfa)」の専属モデルを務め、ライフスタイルやファッションなどを中心に発信している。今回の“ガーリスタ”の加入はブランドからのオファーではなく、そわんわん自らが「ピーチ・ジョン」にコンタクトをとり、出演を希望したことから始まったという。行動に至ったきっかけや今後の活動について聞いた。

WWD:自ら「ピーチ・ジョン」のインスタグラムにダイレクトメッセージを送ったと聞いた。

そわんわん:私は見た目が理由でできないことはないと信じて自分の悩みに関する発信も行っています。もちろん、発信するだけでなく行動で示さなければ説得力がありません。だから、可愛い服を着てファッションを楽しんでいる私の姿を見て「自分も楽しんでいいんだ!」と思ってもらえるように発信をしています。そういった思いから、年齢や体型を問わず魅力を発信し、「リアルサイズモデル™」の取り組みをしている「ピーチ・ジョン」と一緒に活動したい!やらせてほしい!と強く思いコンタクトを取りました。下着のモデルに挑戦することで、体型や外見に自信が持てない人でも1歩踏み出す勇気を持って行動を起こすことで、色んな可能性があることをもっとたくさんの人に伝えたいです。

WWD:外見をポジティブに捉えた発信が増えたきっかけは?

そわんわん:最近は自己肯定感という言葉をよく聞きますが、私は3〜4年前にユーチューブのコメントで「自己肯定感高いね」と言われて初めてその言葉を知りました。そして、世の中には自分の外見について悩んでいる人、他人の否定的な意見ばかり気にして生きている人が多いと感じました。私も昔は動画で自虐ネタをよくしていたのですが、「好きな洋服を着て楽しもう」と発信しているのに、「自分ブスやねん」と自虐していたら説得力ないですよね。その気づきがあって、自虐ネタは一切やめました。そして自己肯定感に悩む人が自分を好きになれるように、“みんなそのままで素敵”ということを積極的に発信しています。

WWD:発信する際に意識していることや大切にしていることは?

そわんわん: “誰かを否定していないか”をすごく考えます。自分の体型をポジティブに捉えて肯定する内容を発信していますが、やっぱり長い間“細い女性が美しい”という価値観があったし、人それぞれに価値観があって、どれも間違いじゃない。だから自分が発信するときは誰かを否定する言い方になっていないか?自分の価値観を押し付けていないか?と見直すようにしています。

WWD:ネットの世界は感情をむき出しでぶつけられることもある。発信することに怖さやためらいはなかった?

そわんわん:「どうしてこんな事が言えるんだろう」と怖く感じることもありますが、ネットとリアルの世界は分けて考えています。スマートフォンのこんな小さな世界の中で言われていることを気にするよりも、リアルを大切にしたいからです。悪口や批判など、どんな意見でも「そういう考え方もあるよね」といったん受け止めますが、否定的な意見に振り回されることはありません。誰かの否定的な意見で自分を変えるのって楽しくないし、自分のために生きていないと思うからです。

 人にとやかく言う人って自分に対しても厳しいんじゃないかな。だから人にも厳しく言ってしまう。もっと自分に甘くてもいいんです。でも、世の中には「美はこういうもの」という価値観の押し付けがまだ沢山あるのかな?と思ったり……。

WWD:今後“ガーリスタ”として発信したいことは?

そわんわん:サイズや体型で可愛い下着を諦めていた人って多いと思うんです。でも、手持ちのブラジャーのホックにセットしてアンダーを調整できる“ブラバックエクステンダーズ”というアイテムがあって、「こんな便利なものあるんだ!」と感動しました。私も最近まで知らなかったのですが、同じように知らなかった人に便利なアイテムがあることや、可愛い下着を楽しむ方法を発信したい。こういったアイテムを使うことは恥ずかしいと思う人もいるかもしれません。でも、可能性や選択肢が広がるとポジティブに捉えてほしい。製品だけじゃなくて身につける人のマインドも変えていきたいです。

WWD:やってみたいことや目標は?

そわんわん:大きな看板に出ることが目標です。多くの人の目に触れる場所で、私がファッションや自分自身を楽しんでいる姿を見せることで、今のあなたも十分素敵で、ファッションは楽しいものだと伝えたい。痩せていないからとか、なりたい自分になれていないからと今の自分を否定しないでほしい。発信していく中で傷つくような意見も出てくるかもしれません。でも、そこで自分を諦めずに“今の自分が楽しい”ことを伝え続けたいです。

The post ユーチューバー、モデルのそわんわんが「ガールズ バイ ピーチ・ジョン」に登場 “みんなそのままで素敵”SNS世代に投げかける自己肯定感のあり方 appeared first on WWDJAPAN.

渋谷パルコに新名所爆誕!? 超ハイクオリティーな等身大フィギュアを展示&販売

 渋谷パルコは4月27日、新たな自主編集スペースとしてアートフィギュアギャラリー「ワンスラッシュ(1/ONE SLASH)」を5階にオープンした。フィギュア界の重鎮であるデザインココとタッグを組み、約9坪のスペースで等身大フィギュアを展示・販売する。第一弾として7月18日まで、コーエーテクモゲームの「ソフィーのアトリエ2」の主人公ソフィーの等身大フィギュアを展示・販売する。高さと幅が2mの等身大フィギュアで台座付きの特別バージョン(1個限定)が605万円、通常バージョンが429万円、1/7スケールの高さ26cmのフィギュアが2万3980円で、フィギュアは全商品がパルコのオンラインストア「カエルパルコ」経由での完全受注生産&販売になる。

 デザインココと同社を率いる千賀淳哉・代表取締役は、フィギュア界ではよく知られた存在だ。同社はフィギュアを、デザインから3Dデータ作成、製造、彩色までの一貫生産しており、これまで六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催された「尾田栄一郎監修 ONE PIECE展」や「エヴァンゲリオン」「初音ミク」の等身大フィギュアなど、数多くのプロジェクトも手がけてきた。千賀代表に聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):なぜ渋谷パルコに?

千賀淳哉デザインココ社長(以下、千賀):これまでも数多くの企業から出店要請や共同プロジェクトを持ちかけられてきたが、ほとんど断ってきた。ただ、フィギュアを売ることだけが目的のプロジェクトなら、パルコでも断っていただろう。最大の目的は、フィギュア、それ自体の付加価値をもっと高めたかったからだ。漫画やアニメ、ゲームは大ヒットした作品ばかりに目が行きがちだが、実際にはヒットするのは本当に少ない。それでも作者から出版社、ゲーム会社などと一体になって全員で夢を追い求めてきて、今がある。加えて、フィギュアにする場合は、それぞれのキャラクターや原作の世界観を生かしながら、2次元のものを3次元にするわけだから当然難易度も高い。評価を受けているのは、常に全力で取り組んできた結果だが、このフィギュア自体の価値を高めるためには、単独では難しい。フィギュアの歴史に新たな価値を付け加えたいと考えたときに、パルコからオファーがあった。

WWD:特別バージョンは605万円、通常バージョンでも429万円とかなり高いですね。

千賀:フィギュアに馴染みのない人には高いと思うかもしれないが、それは違う。これまでもアート作品なども数多く手がけてきたが、この「ソフィー」に関しては、手間や細部のこだわり、クオリティーの高さを考えれば10倍の価格で販売してもいいくらいだ。ただ、価格や売り上げよりもこれまでECのみで売ることが多かったフィギュアを、リアルな場所で、国内外のいろいろな人が行き交う「渋谷パルコ」という場所で見せられることに意義を感じている。

WWD:今後は?

千賀:当社の工場は宮城県登米市にあって、最先端の機械も使うし、丹念な手作業も行っているが、そうした社員のほとんどは、最近は美大出身者も増えてきたが、地元雇用の女性だ。我々が漫画やアニメが原作のキャラクターをフィギュア化するときは、誇張でもなんでもなく、原画1枚から最終的にフィギュアにまで仕上げることだって少なくない。実際に当の漫画の作家本人からフィギュアを見て「ようやく本当に漫画の中から出てきてもらえた!」と言われることだって少なくない。それくらい心血を注いでフィギュア作りに取り組んできた。フィギュアはまだ現時点ではポップカルチャーの一種と取られられているが、最終的なゴールは現代アートを目指している。そのためにはこれからはパルコと組み、ファッションやアート、カルチャーとった分野の企業やクリエイター、アーティストとのコラボレーションを積極的に進めたい。

The post 渋谷パルコに新名所爆誕!? 超ハイクオリティーな等身大フィギュアを展示&販売 appeared first on WWDJAPAN.

渋谷パルコに新名所爆誕!? 超ハイクオリティーな等身大フィギュアを展示&販売

 渋谷パルコは4月27日、新たな自主編集スペースとしてアートフィギュアギャラリー「ワンスラッシュ(1/ONE SLASH)」を5階にオープンした。フィギュア界の重鎮であるデザインココとタッグを組み、約9坪のスペースで等身大フィギュアを展示・販売する。第一弾として7月18日まで、コーエーテクモゲームの「ソフィーのアトリエ2」の主人公ソフィーの等身大フィギュアを展示・販売する。高さと幅が2mの等身大フィギュアで台座付きの特別バージョン(1個限定)が605万円、通常バージョンが429万円、1/7スケールの高さ26cmのフィギュアが2万3980円で、フィギュアは全商品がパルコのオンラインストア「カエルパルコ」経由での完全受注生産&販売になる。

 デザインココと同社を率いる千賀淳哉・代表取締役は、フィギュア界ではよく知られた存在だ。同社はフィギュアを、デザインから3Dデータ作成、製造、彩色までの一貫生産しており、これまで六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催された「尾田栄一郎監修 ONE PIECE展」や「エヴァンゲリオン」「初音ミク」の等身大フィギュアなど、数多くのプロジェクトも手がけてきた。千賀代表に聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):なぜ渋谷パルコに?

千賀淳哉デザインココ社長(以下、千賀):これまでも数多くの企業から出店要請や共同プロジェクトを持ちかけられてきたが、ほとんど断ってきた。ただ、フィギュアを売ることだけが目的のプロジェクトなら、パルコでも断っていただろう。最大の目的は、フィギュア、それ自体の付加価値をもっと高めたかったからだ。漫画やアニメ、ゲームは大ヒットした作品ばかりに目が行きがちだが、実際にはヒットするのは本当に少ない。それでも作者から出版社、ゲーム会社などと一体になって全員で夢を追い求めてきて、今がある。加えて、フィギュアにする場合は、それぞれのキャラクターや原作の世界観を生かしながら、2次元のものを3次元にするわけだから当然難易度も高い。評価を受けているのは、常に全力で取り組んできた結果だが、このフィギュア自体の価値を高めるためには、単独では難しい。フィギュアの歴史に新たな価値を付け加えたいと考えたときに、パルコからオファーがあった。

WWD:特別バージョンは605万円、通常バージョンでも429万円とかなり高いですね。

千賀:フィギュアに馴染みのない人には高いと思うかもしれないが、それは違う。これまでもアート作品なども数多く手がけてきたが、この「ソフィー」に関しては、手間や細部のこだわり、クオリティーの高さを考えれば10倍の価格で販売してもいいくらいだ。ただ、価格や売り上げよりもこれまでECのみで売ることが多かったフィギュアを、リアルな場所で、国内外のいろいろな人が行き交う「渋谷パルコ」という場所で見せられることに意義を感じている。

WWD:今後は?

千賀:当社の工場は宮城県登米市にあって、最先端の機械も使うし、丹念な手作業も行っているが、そうした社員のほとんどは、最近は美大出身者も増えてきたが、地元雇用の女性だ。我々が漫画やアニメが原作のキャラクターをフィギュア化するときは、誇張でもなんでもなく、原画1枚から最終的にフィギュアにまで仕上げることだって少なくない。実際に当の漫画の作家本人からフィギュアを見て「ようやく本当に漫画の中から出てきてもらえた!」と言われることだって少なくない。それくらい心血を注いでフィギュア作りに取り組んできた。フィギュアはまだ現時点ではポップカルチャーの一種と取られられているが、最終的なゴールは現代アートを目指している。そのためにはこれからはパルコと組み、ファッションやアート、カルチャーとった分野の企業やクリエイター、アーティストとのコラボレーションを積極的に進めたい。

The post 渋谷パルコに新名所爆誕!? 超ハイクオリティーな等身大フィギュアを展示&販売 appeared first on WWDJAPAN.

渋谷パルコに新名所爆誕!? 超ハイクオリティーな等身大フィギュアを展示&販売

 渋谷パルコは4月27日、新たな自主編集スペースとしてアートフィギュアギャラリー「ワンスラッシュ(1/ONE SLASH)」を5階にオープンした。フィギュア界の重鎮であるデザインココとタッグを組み、約9坪のスペースで等身大フィギュアを展示・販売する。第一弾として7月18日まで、コーエーテクモゲームの「ソフィーのアトリエ2」の主人公ソフィーの等身大フィギュアを展示・販売する。高さと幅が2mの等身大フィギュアで台座付きの特別バージョン(1個限定)が605万円、通常バージョンが429万円、1/7スケールの高さ26cmのフィギュアが2万3980円で、フィギュアは全商品がパルコのオンラインストア「カエルパルコ」経由での完全受注生産&販売になる。

 デザインココと同社を率いる千賀淳哉・代表取締役は、フィギュア界ではよく知られた存在だ。同社はフィギュアを、デザインから3Dデータ作成、製造、彩色までの一貫生産しており、これまで六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催された「尾田栄一郎監修 ONE PIECE展」や「エヴァンゲリオン」「初音ミク」の等身大フィギュアなど、数多くのプロジェクトも手がけてきた。千賀代表に聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):なぜ渋谷パルコに?

千賀淳哉デザインココ社長(以下、千賀):これまでも数多くの企業から出店要請や共同プロジェクトを持ちかけられてきたが、ほとんど断ってきた。ただ、フィギュアを売ることだけが目的のプロジェクトなら、パルコでも断っていただろう。最大の目的は、フィギュア、それ自体の付加価値をもっと高めたかったからだ。漫画やアニメ、ゲームは大ヒットした作品ばかりに目が行きがちだが、実際にはヒットするのは本当に少ない。それでも作者から出版社、ゲーム会社などと一体になって全員で夢を追い求めてきて、今がある。加えて、フィギュアにする場合は、それぞれのキャラクターや原作の世界観を生かしながら、2次元のものを3次元にするわけだから当然難易度も高い。評価を受けているのは、常に全力で取り組んできた結果だが、このフィギュア自体の価値を高めるためには、単独では難しい。フィギュアの歴史に新たな価値を付け加えたいと考えたときに、パルコからオファーがあった。

WWD:特別バージョンは605万円、通常バージョンでも429万円とかなり高いですね。

千賀:フィギュアに馴染みのない人には高いと思うかもしれないが、それは違う。これまでもアート作品なども数多く手がけてきたが、この「ソフィー」に関しては、手間や細部のこだわり、クオリティーの高さを考えれば10倍の価格で販売してもいいくらいだ。ただ、価格や売り上げよりもこれまでECのみで売ることが多かったフィギュアを、リアルな場所で、国内外のいろいろな人が行き交う「渋谷パルコ」という場所で見せられることに意義を感じている。

WWD:今後は?

千賀:当社の工場は宮城県登米市にあって、最先端の機械も使うし、丹念な手作業も行っているが、そうした社員のほとんどは、最近は美大出身者も増えてきたが、地元雇用の女性だ。我々が漫画やアニメが原作のキャラクターをフィギュア化するときは、誇張でもなんでもなく、原画1枚から最終的にフィギュアにまで仕上げることだって少なくない。実際に当の漫画の作家本人からフィギュアを見て「ようやく本当に漫画の中から出てきてもらえた!」と言われることだって少なくない。それくらい心血を注いでフィギュア作りに取り組んできた。フィギュアはまだ現時点ではポップカルチャーの一種と取られられているが、最終的なゴールは現代アートを目指している。そのためにはこれからはパルコと組み、ファッションやアート、カルチャーとった分野の企業やクリエイター、アーティストとのコラボレーションを積極的に進めたい。

The post 渋谷パルコに新名所爆誕!? 超ハイクオリティーな等身大フィギュアを展示&販売 appeared first on WWDJAPAN.

AMIAYAと考えるサステナビリティvol.2 「CFCL」代表兼クリエイティブディレクター高橋「いろんな答えがあるからこそ、軸が大事」

 双子モデルのAMIAYAは、原宿のストリートで誕生し、今や東京のファッションシーンと世界をつなぐ架け橋のような存在だ。2011年には、マークスタイラーから自身がクリエイティブ・ディレクターを務めるアパレルブランド「ジュエティ(JOUETIE)」を立ち上げ、10〜20代の層を中心に支持を集める。「ファッションを謳歌し、自由に表現する楽しさを届ける」ことをモットーに、ポジティブなパワーを発信してきた2人は、環境問題や人権問題など業界の負の側面への関心が高まる今、「私たちが発信すべき責任あるメッセージとは何か」を自問する。本連載では、AMIAYAがさまざまな角度からサステナビリティを学ぶ姿を追う。連載2回目は、無縫製のニットウエアを中心に、「現代生活のための衣服」を提案する「CFCL」の代表兼クリエイティブディレクター高橋悠介に話を聞いた。

AYA:サステナビリティを学ぶため、高橋さんにぜひお話を伺いたいと思っていました。そもそもなぜ起業しようと思ったんですか?

高橋悠介「CFCL」代表兼クリエイティブ・ディレクター(以下、高橋):娘が生まれて自分の生きがいについてもう一度考えたこともきっかけでしたが、産業の大量廃棄の問題や生産地の過酷な労働環境にまつわるニュースを見ていて、経営者として生産地や会社の福利厚生など服以外のことを全てデザインしたいと思うようになったことが大きかったです。加えて、グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)さんみたいに、一般市民だった女の子でも芯が通っていればあれだけのインパクトを与えられる時代で、世界に届くスピードもどんどん加速している。であれば、自分も早く立ち上げた方がいいと思ったんです。

AMI:高橋さんが洋服を作る上で大切にしていることは?

高橋:ブランド名の「CFCL」は、Clothing for Contemporary Lifeの頭文字で、「現代生活のための衣服」という意味です。僕が目指したのは従来のファッションブランドの反対側の位置。ちょっと乱暴な言い方かもしれないけど、これだけ服が余っている時代、デザイナーの美意識を打ち出して、それに共感する人は買ってくださいというやり方がしっくりこなかった。例えば、デザイナーの感覚や経験に基づいて作られたコレクションではなくて、現代の生活を豊かにするための道具として服を捉え、どのようによい作用を生み出せるかを理念にしています。次に「現代生活のための衣服」の定義を考え、たどり着いたのが「ソフィスティケーション」「コンフォート&イージーケア」「コンシャスネス」の3要素です。都会に暮らす人がパジャマから「CFCL」に着替えて、家事を済ませて、オフィスに行く。スニーカーからヒールに履き替えれば、パーティーやディナーにも行けるぐらいの品格を兼ね備えています。そして、ほとんどのアイテムが家で洗え、速乾性のある「コンフォート&イージーケア」。最後の「コンシャスネス」がサステナビリティにもつながる部分で、人権や環境に配慮された素材の選択、ローカルで透明性のあるサプライチェーンを確保し、企業のスタンスとして示していく。この3つがそろって初めて「現代生活のための衣服」と定義します。

AYA:すごい。そこまでコンセプトを言語化しているんですね。「CFCL」はニットのドレスがアイコンです。ニット素材にこだわっている理由は?

高橋:僕が文化ファッション大学院大学に通っていたころに3Dコンピューター・ニッティングの技法に出会いました。実は大学院に入る前は、テキスタイルデザインと現代アートの批評論を勉強していて、服の縫製は得意分野ではありませんでした。

AMIAYA:そうなんですか。意外です。

高橋:好きなことはやり続けるけど、課題とか面倒くさいと思っちゃうタイプで(笑)。大学院では周りの学生の縫製のレベルが高く、僕は彼らと学んできたバックグラウンドが異なるので、そこで勝負していては勝てませんでした。僕はどうやったら合理的に時間を節約して良いものを作れるかを考えるのが好きなんです。プログラミングニットは、プログラミングを組んでボタンを押したら、3Dプリンターみたいに服が出力されます。学生時代、課題ではチェック項目だったパターンと縫製がスキップできるし、ほかの学生とも全然違った面白い物ができると可能性を感じていました。元々、横編みのニットはヨーロッパで庶民が日常的に着ていた歴史があるので、オートクチュールの時代からニットやジャージをドレスとしてメインで使うブランドはあまりなかったんです。その当時からニットをメインで使用しているブランドは、フォークロアやリラックスの印象が強く、いわゆるモードの雰囲気でニットを扱うブランドはマーケットにおいて希少性があると考えました。

AYA:素材の幅を広げることは考えていない?

高橋:「現代生活のため」という軸は、応用が利くと思います。だから、むしろ服だけでなくてもいい。フードやワインを始めているブランドもいますよね。そういう発展の仕方もできるのではないかとチームで話しています。

AMI:再生ポリエステルでもたくさんの種類があります。環境に配慮したものづくりを目指すときに、まず何を選んだらいいのか分からなくて。

高橋:難しい問いですが、自分たちのフォーカスポイントをはっきりさせることがとても大事だと思います。僕が起業したときは、動物愛護の観点からファーの使用が問題視されていました。でも、石油由来の化学繊維から作られるイミテーションファーには、マイクロプラスチックの問題がある。こっちで良いことが、あっちではあんまり良くなかったりする矛盾はたくさんあります。結局何を選択するかは指針が必要で、突っ込まれた時に一貫性がないと信頼も得られません。「CFCL」では、LCA(ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment)の略。ある製品やサービスの資源採取から廃棄・リサイクルに至るまでの環境負荷を評価する手法)の測定と削減を進めていますが、そこにも矛盾が存在します。例えば、カーボンフットプリントを減らすために製品の重量を減らすと、軽量化しすぎて壊れやすい商品になりえます。従来の半分のCO2排出量で作ったとしても、商品寿命が半分では本末転倒です。素材に関してもさまざまな代替品が出ていますが、自然由来のバイオマスプラスチック原料の需要が増えると農地の奪い合いが起こり、食料品の価格高騰や森林破壊につながりかねません。「CFCL」は、クローズドループ(廃棄されていた製品や原材料などを新たな資源と捉えた循環のこと)を構築するべきだと考えて、基本的には全品番に再生素材を使用し、その比率を上げる努力をしています。 カーボンフットプリントが高いリサイクル素材もあり、ここにもリサイクル素材使用率向上と温室効果ガス削減の両立に矛盾が存在しますが、それでもLCA測定をすれば、どこにどのくらいの温室効果ガスが使われているか分かり、今後の技術革新で削減目標を立てられるので、クローズドループを押し進めたいと考えています。

AYA:お客さまとコミュニケーションを取るときに意識していることは?

高橋:われわれはメーカーであると同時に、メディアでもあると考えています。カスタマーのウェルネスや満足度、リテラシーを上げる役割を担っている。消費を促す物欲をあおるマーケティングもできるけど、影響力を使って生活者をいい方向に先導もできる。今、環境に対して意識が高い人が増えている中で、何を着ていいか分からないと迷う人も多い。確かな情報を定期的に発信して、「CFCL」を着れば間違いないという安心感をしっかりと伝えたい。そういう人たちの受け皿になることは、社会的な企業の存在意義につながります。

AYA:私たちもメディアとしての影響力をどう使うかを日々考えています。

高橋:繰り返しになりますが、サステナビリティは、さまざまな答えがあるからこそ自分たちの姿勢や軸を明確にする必要があります。

AYA:最後に、高橋さんがこれから目指す「CFCL」の形を教えてください。

高橋:ファッションが汚染産業の第2位と言われ、その現実にすごくショックを受けたという話は周りでもよく聞きますが、僕はファッションにとても可能性を感じています。身近だからこそ、良い方向にインパクトを与える力も同時に強いと思うから。ブランドとしては、売り上げ規模もまだまだ成長段階ですが、メディアのインタビューをはじめ、行政の人たちと協議する機会も頂いています。それは、ファッションがそれだけ注目されているからで、ファッションの中にはこれからの日本の経済全体の考え方を変えるヒントがたくさん眠っている気がします。世界にチャレンジすると同時に、日本の地域社会全体に良い影響を与えることも必要です。実現できるかどうか分からないことも現段階では多く、難しい挑戦ではありますが、それくらいの気持ちでやった方が面白いと思うんです。

AYA:なるほど。ファッションの可能性を信じ切る姿勢がすてきですね。私たちもファッションの持つパワーを信じているからこそ、発信できることがあるはず。デザインするのは服だけではないという視点は学びになりました。

AMI:サステナビリティの発信に関しては、何を指針にするかが鍵ですね。軸を決めるためにももっと広く学ばないといけないなと。でも、ファッションに対する信念は私たちも同じです。大切にしたいです。

The post AMIAYAと考えるサステナビリティvol.2 「CFCL」代表兼クリエイティブディレクター高橋「いろんな答えがあるからこそ、軸が大事」 appeared first on WWDJAPAN.

“売らない小売り”ブームはもう終わった? 「ベータ」北川代表に聞く日本市場の展望

 “売らない小売り”の先駆け的な存在、「ベータ(b8ta)」を日本で運営するベータ・ジャパン(北川卓司代表)は4月27日、埼玉・越谷のイオンレイクタウンに4店目となる常設店を出店する。同社は先日、第3者割当増資による累計6億円前後の資金調達も発表。一方で気になるのが、「ベータ」発祥の地である米国の事情だ。米国はコロナ禍による客数減の打撃が大きく、22年2月をもって「ベータ」は全店閉店している。日本では百貨店を中心に“売らない小売り”への新規参入が目立つが、米国の潮流を受けて「“売らない小売り”のブームは既に終わった」という声もある。ベータ・ジャパンは今後どのような展望を描くのか。北川代表に聞いた。

※「ベータ」は2015年に米サンフランシスコ郊外のパロアルトに1号店をオープン。日本上陸は20年8月で、新宿、有楽町に同時出店した。商品を販売するのではなく、出展スペースを月額使用料で企業やブランドに提供するビジネスモデル(越谷店は49センチ×98センチ四方のスペースが30万円)を採っており、テスター(店頭スタッフ)の雇用や教育は出展企業ではなく「ベータ」が担う。「ベータ」は店内カメラで収集した客の行動データやテスターが集めた声を出展企業にフィードバックする。

WWD:まずは新店の話から。4号店の出店先に越谷のイオンレイクタウンを選んだ理由は。

北川卓司ベータ・ジャパン代表(以下、北川):大阪や福岡などへの出店も検討したが、東京の本社が店舗を運営することを考え、都心から1時間以内で行ける横浜、川崎、越谷などが最終的な候補だった。イオンレイクタウンは圧倒的なトラフィック(集客、店舗前交通量)があり、客層が30〜40代のファミリー中心で「ベータ」の既存3店とは異なる。「スターバックスコーヒー(STARBUCKS COFFEE)」と同じ区画内にオープンできることも大きな決め手となった。トラフィックは全店の中で越谷店が一番多くなるかもしれないと期待している。

WWD:3号店の渋谷店では“食”にフォーカスし、試飲試食を打ち出した。越谷店の注力ポイントは。

北川:渋谷店の試飲試食は非常に好評で、モノではなく体験を打ち出すことに手応えを得ている。食との関連で渋谷店に調理家電などが出展すると、「実際に試してみたい」という声がお客さまからは非常に多かった。それを受けて、越谷店ではもう一歩踏み込んでライブキッチンを設けている。コロナの状況を見ながらにはなるが、順次お客さまがライブキッチンで家電を実際に使えるようにしていく。さらに、家電のレンタルサービスを手掛けるレンティオと3月に業務提携しており、越谷店ではレンティオを通して気に入った調理家電はその場でレンタルを申し込めるようにした。“売らない小売り”には百貨店などさまざまな企業が参入し、既にコモディティー化している。競合他社との差別化として、ライブキッチンの設置やレンタルサービスとの提携が次の一手になると考えた。また、越谷店では同区画の「スターバックスコーヒー」やイオンモール、りそなグループとも共同で、さまざまなイベントを実施していく予定だ。

WWD:20年8月に新宿、有楽町に出店し、渋谷店を出店したのは21年11月。そこから越谷出店までは約半年と短かった。今後もこのスピードで出店を続けるのか。

北川:以前から発表している通り、常設店の数は25年時点で8〜10店をイメージしている。4号店の出店スピードに関しては、社内からも「少し早過ぎるのではないか」という声はあった。確かに現状の社内の人材リソース(ベータ・ジャパンとして社員数40人強)を考えると、半年に常設店を1店出店するというのは少しスピードが早い。まずは1年に1店といったペースで進め、調達した資金も生かしてチームメンバーが増えていけば、半年に1店のペースで出店していきたい。22年中の新規出店は越谷のみだが、ポップアップストアは2〜3拠点で行う予定だ。越谷で運営が滞りなく進むことを確認できたら、今後は東京からさらに離れた地域への常設店出店も検討したい。

WWD:ベータ・ジャパンとして、アジア諸国への出店も目指すと公言している。

北川:23年中に、タイ、台湾、韓国でまずはポップアップストアを予定している。既に現地のデベロッパーとの交渉も始めている。出展は現地ブランドと日本ブランドをミックスし、現地ブランドが日本市場に進出する際の足がかりにもなれればと思っている。

「本国の閉店による日本事業への影響はない」

WWD:最大23店を運営していた米本国は、22年2月をもって全店閉店した。どういった経緯があったのか。

北川:日本の1号店、2号店のオープン翌月である20年9月には、(コロナ禍により来店客数の回復が見込めない本国側の要請を受けて)本国との資本関係を解消し、日本国内での商標・ソフトウエアの使用についてライセンス料を支払う形に切り替えていた。21年12月には商標権とソフトウエアのライセンスを本国から独占的に取得して独立した。つまり、日本のお客さまが「ベータ」として認識している店やサービスは、ベータ・ジャパンが作り上げてきたものであり、本国の閉店による日本事業への影響はない。車社会である米国は、コロナ禍で来店客数が平均で50〜70%も減っていた。また、本国では来店客数に応じて出展料を決める歩合制モデルも導入しており、そこも痛手となった。日本は出展料を固定しており、その点も米国とは異なる。

WWD:米国での全店閉店が報じられた際、「“売らない小売り”のブームは既に終わった」という声も出た。そういった声に対してはどう思うか。

北川:本国の状況からそういう意見が出るのも当然かとは思う。しかし、車社会の米国、電車社会の日本(の主要都市)というように、米国と日本では与件が異なる。米国で頓挫したからといって日本も同様になるとは言えない。日本は家電量販店を例にとっても、非常にプレーヤー(企業数)が多く、店舗数も多い。実店舗の利便性が消費者に受け入れられている。コロナ禍を背景にECが盛り上がったからといって、実店舗が突然、全てECに置き換わるということはない。その点もECの比重が劇的に高まっている米国とは異なるだろう。日本の商業施設の全テナントが、われわれのような“売らない小売り”になるといった未来は考えられないが、施設内の1、2個のテナントがそうなる可能性は十分にある。商業施設にはポップアップスペースが何箇所かあるが、それを“売らない小売り”に切り替えていくという流れは日本国内で進むと思っている。

WWD:6月末までで完了する計6億円の資金調達を生かして、“売らない小売り”のビジネスモデル自体を他社に売っていく事業案も発表している。

北川:国内で「ベータ」を今後何十店舗も出店できるかというと、それは難しい。商業施設などが運営するポップアップスペースの裏側の運営をわれわれが担うなどし、他社が「ベータ」のようなRaaS(Retail as a Service、サービスとしての小売り)を容易にスタートできる仕組みを整えて事業化していくことで、ベータ・ジャパンのビジネスが加速する。一見、商業施設が運営しているポップアップスペースのようで、実際は「ベータ」の什器が入り、われわれの店頭データ収集・活用のシステムが動いているといったイメージだ。4月に完了したシリーズBファーストクローズの第3者割当増資では、東芝テックがリードインベスターとなった。POSシステム大手で多数の企業顧客を抱え、システムの保守にも長けた同社と組むことで、こうした新事業がスムーズに進められると考えている。

WWD:百貨店なども“売らない小売り”に続々参入している。百貨店は接客力が強みであり、自店舗内に出店するため家賃もかからない。そうした競合に対し、改めて「ベータ」の強みは何か。

北川:競合の中で多店舗展開できているのは、現状「ベータ」のみだ。競合との差別化として、繰り返しになるが越谷の新店ではライブキッチンを導入したり、家電レンタルサービスと組んだりしている。また、われわれも接客力はオープン時から強みとしている。イベントなどに「ベータ」のテスター(店頭スタッフ)を派遣してほしいという声も商業施設から多数寄せられている。現状ではスタッフ数が限られるので全て断っているが、そのような人材派遣業ももしかしたら将来的に可能性があるのかもしれない。そういったアイデアも含め、日本ではまだまだ事業の可能性があると思っている。

The post “売らない小売り”ブームはもう終わった? 「ベータ」北川代表に聞く日本市場の展望 appeared first on WWDJAPAN.

「レディメイド」が“億越え”トゥールビヨン時計発売 細川雄太に聞く「パーネル」コラボの裏側

 細川雄太の「レディメイド(READYMADE)」は5月に、スイスの高級時計「パーネル(PURNELL)」とコラボした複雑機構トゥールビヨン搭載の機械式腕時計“レディメイド × パーネル エスケープⅡ(READYMADE × PURNELL ESCAPE Ⅱ)”を発売する。

 “エスケープⅡ”は、世界最速3軸トゥールビヨンである“スフェリオン”を2つ搭載した「パーネル」の代表モデル。コラボモデルは、カーボンラミナ(税込み6825万円)、ホワイトパーネルマクロファイバー(同6900万円)、サファイア・クリスタル(同1億8450万円)の3種類のケースから選べ、最高級モデルは1億円を優に超える。ストラップの素材には、「レディメイド」の代名詞でもあるビンテージのミリタリーテントを採用。左側のバレル、リューズ、ケースバッグリング、バックル、専用ボックスに“READYMADE”のロゴを入れ、右側のバレルには、エジソンが残した「Time is really the only capital that any human being has and the thing that he can least afford to waste or lose.(時間は人間に与えられた唯一の資本であり、無駄にしたり失ったりしないよう努めるべき)」という哲学を刻印した。ファッションブランドとしては異例の超高級時計コラボについて、細川デザイナーに聞いた。

――「レディメイド」として、初の時計のデザインに何を心掛けた?

細川雄太デザイナー(以下、細川):「レディメイド」にはミリタリーアイテムを解体することで、反戦のメッセージを込めている。そのコンセプトを踏まえた肯定的なデザインにしたくて、希望を虹色で表現した。

――今回もベルトにビンテージのミリタリーテントを使っている。時計自体には、リサイクル素材を取り入れようと試みた?

細川:時計自体は「パーネル」が素晴らしい技術を持っているのでプロに任せて、僕は外装のデザインだけ。どうすれば「パーネル」のブランドイメージと「レディメイド」のブランドイメージが中立でいられるかをすごく考えて、お互いの良いところをとった感じ。

――最もこだわった点は?

細川:色のバランスかな。ベルトがカーキなので、それに合わせて、“スフェリオン”をオレンジとグリーンにした。それと、ビンテージウオッチから持ってきたカラーパレットを使っている。経年変化で焼けたような色合いと、宝石の色のバランスを見ながら、「パーネル」らしいカラーリングをイメージした。

――時計と他のアイテムとで、デザインの思考に違いはあった?

細川:時計の中身を知り過ぎるとデザインできない気がしたので、あまり意識していない。知らないから挑戦できるデザインもある。

――細川さん自身は、時計に機能性や実用性を求める?

細川:正直、機能は全然必要ないと思っている。僕は、普段ビンテージウオッチをしているけど、これに対して「タッチパネルだったらいいのに」とか思ったことがない。ビンテージの不便なところはいっぱいあると思うけど、それがいい。どこが良いかの理由はないと思う。だから今回も機能ではないところで魅力的に感じる時計を作りたかった。

――あらためて、1億8450万円の時計をデザインしてどう思う?

細川:時計の世界の話を聞いたら、そういう世界もあるのかなと、だんだん実感が湧いていった。僕にとってはめちゃくちゃ高いけど、NFTとかを見ているとそれ以上の値段でも売れているものがたくさんあって、不思議な感じだった。一度だけ実物を腕につけたのだけど、全部が宙に浮いていて、本当に“宇宙”みたいですごかった。

――細川さんにとって時計とは?

細川:仕事中は重いので外してしまうけど、人と会うときには必ず着けるので、僕にとってはパンツをはくのと同じような感覚(笑)。

The post 「レディメイド」が“億越え”トゥールビヨン時計発売 細川雄太に聞く「パーネル」コラボの裏側 appeared first on WWDJAPAN.

29歳コスメD2C社長が語る「起業」「野望」「恋愛」「ファッション」 ディネット尾﨑美紀

 コスメのD2Cブランド「フィービー ビューティー アップ(PHOEBE BEAUTY UP)」を展開するスタートアップ企業のディネット(DINETTE)はこのほど、シリーズBとして総額8億円の資金調達を行った。尾﨑美紀ディネット代表取締役は、芸能活動を行っていた学生時代、あるスタートアップ企業でのインターンシップをきっかけに起業。2020年にはフォーブスの「30 UNDER 30 ASIA」に選出。昨年には経営体制を一新し、「女性最年少社長でのIPO(株式公開)」という目標を掲げる。目標に向けて最速で駆け抜ける起業家、尾﨑代表に聞いた。

WWDJAPAN(以下WWD):今回の資金調達の背景と使い道は?

尾﨑美紀(以下、尾﨑):大和企業投資がリードになり、既存株主のセレスとMTGベンチャーズから追加出資を受けました。実は昨年、女性最年少社長でのIPOを掲げ、組織と経営のあり方を大きく変えていました。今回調達した資金は、アジア地域でのマーケティングとフェムテック分野での新ブランド開発に投じて、IPOに向けて事業をさらに加速します。

WWD:起業のきっかけは?

尾﨑:大学で芸能の仕事をするようになって、ヘアメイクを始め、いろいろな美容をするようになって、可愛くなること、きれいになることが楽しくて。なので就職活動でも、キラキラワクワクできるような仕事という意味で広告代理店などのマスコミ系を中心に受けていました。それなりにうまくいっていたのですが、同時に思ったほどワクワクしていない自分もいました。ほぼ同時期に、あるスタートアップ企業のCEOの下でインターンに行っていたのですが、そのCEOがものすごい魅力的で、輝いて見えたんです。私もこうなりたい、でも経験もないし、と悩んでいたときに背中を押してくれたのが、当時アパレル向けの動画制作やメディア、アパレルD2Cブランド「エイミーイストワール」などを展開していた3ミニッツのCEOだった宮地(洋州・現1SEC代表)さんでした。3ミニッツはアパレルが中心だったので、私はビューティでやろう!と。宮地さんには起業してから2〜3年はいろいろとメンターとしてアドバイスをもらったり、相談させてもらってました。

WWD:19年2月にブランド「フィービービューティアップ」を立ち上げて、1年で月商5000万円に。直近の2月では月商2億円にまで成長した。順風満帆にも思えるが、資金繰りに困るようなことはなかった?

尾﨑:うーん。初年度は資金繰りに困ることもありましたが、ブランドの立ち上げ以降、事業は順調に拡大してきたと思います。それより大変だったのは、やっぱり人と組織のマネジメントです。昨年、数年内のIPOを目標に掲げ、組織のあり方を根本から見直したときに、そのせいで初期のころから一緒にやってきたメンバーがまとまって辞めてしまって。とてもショックでした。何度もワンオンワンで思いを説明したつもりだったのですが、「なんで思いが伝わらなかったんだんだろう」って。そのときにはみんなの前で泣いてしまって。でもその後、残った社員たちが「私たちが美紀さんのことを助けますよ」って言ってくれた。それを聞いてまた大泣き(笑)。でも、これが私にとって大きな転機になりました。

WWD:どういうことでしょう?

尾﨑:スタートアップの経営をしていると、売り上げや社員がどんどん大きくなるので、同じように背負っているものと責任感もどんどん大きくなって、社員に弱いところなんて見せちゃいけない、かっこよく見せなきゃいけないんだ、っていう気持ちになっちゃうんですよ。でも、社員のみんなが「助けますよ」って言ってくれたことで、そっか、頼っていいんだって気づいたんです。これはプライベートでも同じです。起業後ずっと恋愛もうまくいかなくて、それも結局は弱い部分を見せられなかったからなんだと気づきました。

WWD:芸能活動から起業家へ。過去の経験は生きている?

尾﨑:コスメブランドの運営にあたって、メイクや話し方など容姿をどう他人に見せるか、といった経験はプラスにはなっていると思います。ただ、起業家界隈、投資家界隈ってやっぱり男社会なんですよ。資金調達になると、それこそいろんな投資家に会いに行くのですが、「自分がペルソナじゃないから(事業を)理解できない」みたいなことで断られることが本当に多くて。資金調達は断られることが当たり前なので、断られる事自体はいいんです。けど、そもそもトップが女性だから、女性による女性のためのビジネスモデルだからみたいな理由で断られると本当に悔しくて。加えて、投資家の男性から明らかにビジネスとは関係ない食事にしつこく誘われたり、ときにはさらに露骨な誘いを受けたことも。「女性の最年少上場社長」という目標は、そうした現状を変えたいという思いを込めています。もし実現できたら、「女性起業家」「フェムテック」への視線や考え方も変えられるし、これから起業を目指す女性のロールモデルにもなれる。

WWD:コスメだけでなく、ファッションも好きですよね。

尾﨑:もちろんファッションも好きです。今日着けている指輪は「シャネル(CHANEL)」「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」。高級品を買うのは、目標を達成したときの自分へのご褒美です。先日もある大きな目標を達成したので、「エルメス」のバーキンを買いました。当たり前ですが、高級ブランドばかりを買っているわけではなく、ピアスはヨーロッパのヴィンテージで、インスタで見つけて気に入って買いました。

WWD:女性の最年少上場を達成したときは何を買う?

尾﨑:うーん。まだ決めてませんが、家とかかなあ(笑)。

The post 29歳コスメD2C社長が語る「起業」「野望」「恋愛」「ファッション」 ディネット尾﨑美紀 appeared first on WWDJAPAN.

ブランドリユースは序章にすぎない 「なんぼや」バリュエンスグループ嵜本CEOが描く成長ストーリー

 買い取り専門店「なんぼや」を運営するバリュエンスホールディングス(HD)は、会社設立(2011年)から11期目にして売上高500億円を突破し、老舗のコメ兵ホールディングスとも肩を並べる国内のブランドリユース市場におけるトッププレイヤーだ。

 事業子会社バリュエンスジャパンは現在、「なんぼや」と完全予約制の「ブランドコンシェル(BRAND CONCIER)」を国内外に計150店舗(うち国内が128店舗)を構える。ていねいな接客とデジタルを活用した強固な顧客の構築が、他社との競争優位性を生み出している。店舗は買い取りに特化し、買い取り品の販路はオークションによる古物商への卸売が中心。直販よりも粗利率は下がるが、在庫リスクを軽減し、安定した収益を得ることができる。

 近年は消費者の中古品への抵抗感が薄れるとともに、コロナ禍で在宅時間が増えたことで自宅に眠っていたブランド品を整理する人が増え、二次流通市場も活況を呈している。バリュエンスHDの2021年9月〜22年2月期は売上高が前年同期比10.0%増の261億円。買取商品の仕入高は116億円で、同期間としては過去最高となった。

 だが嵜本晋輔バリュエンスグループCEOは、「(ブランドリユース市場は)今後はますます難しい局面に入っていくだろう」と見る。「このビジネスをテコに、“その先”の可能性を広げていかなければ未来はない」と語る嵜本CEOに、今後の展望を聞いた。

WWD:自社の強みをどう分析するか。

嵜本晋輔バリュエンスグループCEO(以下、嵜本):競合との差別化要素になったのは、一つがデジタルでの集客。設立当時(2011年)から折込チラシや新聞広告といった買取業者の集客の常套手段に縛られず、新規客獲得のためのリソースをデジタルに振り切った。自社に約20人のデジタル専門チームを作り、SEO対策やリスティング広告で認知拡大を進めた。

 二つ目が「おもてなし」。当社の収益構造を説明すると、約半数の優良顧客が利益の9割以上を生み出してくださっている。高価なジュエリーや時計をお持ちになる40〜60代の男女がその中心だ。会社を起こす前に競合他社の買い取り現場を見て、正直に言えばもう勝ち筋は見えていた。どこも顧客目線での店舗設計ができていなかったからだ。高価なブランド品、それもお客さまが思い入れのある大切な品物を扱うにもかかわらず、周りから丸見えのチープな買取ブース。担当するスタッフもブランド品をこれみよがしに身ににまとい、お世辞にも信頼に足るような装いではなかった。そこで僕たちは、買い取りの際にはお客さまを上質でプライベートな個室空間にお招きし、スーツにネクタイを締めたスタッフに応対させた。今では業界のスタンダードと言えるものも、実は僕たちが先駆けとして導入した。

WWD:買い取りにおいて「おもてなし」が重要なのはなぜか?

嵜本:買い取りは「いかに高い金額で買い取れるか」の勝負になるかと思われがちだが、必ずしもそうではない。お客さまに査定金額を提示するまでの数十分の間に、対話を通じて提供できる価値がある。持ち込んでいただく品物には、お客さまのさまざまな思いが詰まっている。「正しい査定金額を出してもらえるか」「引き取った後も大切に扱っていただけるのか」と、さまざまな不安も抱えている。だからこそスタッフはお客さまと真摯に向き合い、物と出合って別れを決断するまでのストーリーを分かち合う。商品には「価格」があるが、所有する人によって「価値」は違う。コミュニケーションから得た情報は、買い取り価格の値付けにも反映している。例えばお客さまが新卒社員のときにコツコツお金を貯めて買ったというバッグなら、たとえこちらが少し損をしてでも高く買うようにする。

WWD:店頭スタッフはどのように育てている?

嵜本:評価制度として、点数成約率やリピーター率、利益貢献度などを数値化し、インセンティブ報酬として還元する仕組みを創業時から敷いている。その上で、単にモノの価値が正確に分かるだけではなく、お客さまから信頼され、「この人になら託したい」と思われるような人間力のあるスタッフになってもらいたいと考えている。企業して間もなく、僕も現場で鑑定士をしていた。ある日女性のお客さまが持ち込まれた高級バッグに、査定額7万円を提示した。聞けば、前に訪れた店の査定額は10万円だったという。半ば諦めかけた僕に、女性は「あなたに買い取ってもらいたい」と。僕は驚いた。そして、こういった事象が何度も続いたことで確信した。お客さまは最後は「誰に委ねたいか」で決めている、と。

 たしかに買い取り価格で訴求することは簡単だ。他店で10万円と査定された品物に対して「うちは11万円出しますよ」と提案すればいいだけ。だがこれはアパレルの値引きと同じで、いわば麻薬のようなもの。これを市場のプレイヤーが一様に同じことを繰り返せば査定価格のつり上げ合戦になり、業界全体がジリ貧に陥ってしまう。

WWD:業界の今後をどう見通すか。

嵜本:企業はより透明性のある経営を求められ、業界もそのような流れに向かう。この業界は消費者との情報の非対称性で稼いできた部分があるが、それが崩れるだろう。どういうことかというと、買取業者は消費者が「自分の持ち物の価値や買取相場がわからない」ということを前提に買取価格を提示し、利益を稼いできた。だから「隠した方が得」だった。僕らに関して言えば、創業当初からホームページで買い取り価格を積極的に公開し、信頼につなげてきたわけだが。

 だが情報化社会が進む中で消費者の情報力はますます高まっていく。するとわれわれの提示する買取価格に対してもシビアになるだろう。すると、従来のような利益を生み出せなくなるプレイヤーも出てくる。そもそも国内のブランド品の中古市場の規模は2400億円※にすぎず、限られたパイを数多くのプレイヤーで奪い合ってきた構図がある。市場には今後、かなり難しい局面が訪れると予想している。

※出典:リサイクル通信「リユース市場データブック2021」

WWD:自社の長期的な経営戦略は?

嵜本:時代に合わせて、僕らもビジネスモデルを大胆に変えていく。コロナがきっかけで、古物商向けのオークションがリアルで開催できなくなり、オンラインに移行した。結果、小さな企業でもウェブ上で自由にオークションが開催できるようになった一方、僕らのように自社で大きなオークションハウスを構える優位性が薄れてしまった。今後は主戦場をB to B取引(古物商への卸売)からB to C取引(消費者への直販)へ移していく。顧客とより近づき、深くつながることが必要になる。この春には、買取だけでなく販売も行う新業態「アリュー(ALLU)」を、銀座、心斎橋に続く3店舗目として表参道に新規出店した。開店から1週間で売り上げが1億円を超える好調なすべり出しで、初年度予算10億円を大きく超えるペースで推移している。

 さらにブランドの買い取り販売を入口として、自動車やマンションなどの不動産買取といったビジネスにも裾野を広げる。高級時計を身につけている男性は、高級車に乗っている人が多いことは想像がつく。当社には100万人以上の顧客情報があり、月間約3万人ずつ増えている。買い取り客に訪れたお客さまにはアンケートをお願いし、年齢や性別、収入や興味関心などさまざまなデータを収集している。すでに自社内には不動産買い取り専門の10人程度のチームを組織した。まだ赤字ではあるが、「LINE」でのメッセージや店頭に買い取り目的で訪れたお客さまに営業をかけ、マンションなどの買い取りが月に数件ペースで成立している。今後はスタッフに求める役割やスキルも変わっていくだろう。テクノロジーの進歩で真贋はAI(人工知能)が判別し、査定価格もデータを叩けば瞬時に出せる時代になる。これから磨くべきはお客さまが持つ潜在的なニーズをあぶり出す能力だ。

 こういったブランド品の買い取り販売以外の分野が、全社の収益の2〜3割を稼ぎ出す体制を近い将来作っていく。取り扱うカテゴリーは不動産や車だけでなくアートや骨董品、ワインなどあらゆる実物資産へ広げる。まだ価値が見出されず、埋もれているアセット(資産)は世界中に山ほどある。それらを発掘し循環させていく役割を、僕らが担っていきたい。

The post ブランドリユースは序章にすぎない 「なんぼや」バリュエンスグループ嵜本CEOが描く成長ストーリー appeared first on WWDJAPAN.

“恋多き”女ジェニファー・ロペスが語る、「マリー・ミー」主人公の波乱恋愛劇 エンタメから読み解くトレンドナビ Vol.3

 映画やドラマなどのエンタメを通して、ファッションやビューティ、社会問題などを読み解く連載企画「エンタメで読み解くトレンドナビ」。LA在住の映画ジャーナリストである猿渡由紀が、話題作にまつわる裏話や作品に込められたメッセージを独自の視点で深掘りしていく。

 第3回は、映画「マリー・ミー(Marry Me)」主演のジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)にインタビュー。同作のヒロインと共通する自身の境遇や、劇中に披露される衣装について話を聞いた。

 52歳にして、まだまだ女盛り。モテ男、モテ女がそろうハリウッドでも“恋多き女”で知られているジェニファー・ロペスは、最近もまたベン・アフレック(Ben Affleck)との婚約ニュースで世間を騒がせている。ジェニファーとベンの婚約は2回目。1回目は、結婚式の数日前になって急遽延期となり、その4カ月月後に二人は破局した。

 ドタキャンの理由は、ぎりぎりになってベンがジェニファーとの結婚に怖気付いたことだと報道されている。破局の5カ月後には、歌手のマーク・アンソニー(Marc Anthony)と結婚して立ち直りの早さを見せつけたジェニファーだが、全世界の見つめる中でウエディングが中止になった時にはさすがに傷つき、屈辱を感じたようだ。

 

主人公と共鳴するバックグラウンド 

 そんな彼女は、最新主演作「マリー・ミー」で、同じような状況を描いてみせる。ジェニファー演じる主人公キャットは、大人気のポップスター。彼女と人気シンガーであるバスティアンは、ファンを前にしたライブコンサートの中で結婚式を挙げようとする。だが、それと同じタイミングで、バスティアンが浮気をしていた事実がネットで暴露された。ショックを受け、何も考えられなくなったキャットは、バスティアンではなく、ファンの中にいた一般男性チャーリーに「私はあなたと結婚する」と宣言してしまった。

 キャットと自分との間に共通点がたくさんあると認めるジェニファーは、「この役にリサーチは不要だった」と語る。「有名な歌手であるというのはどんなことか、私は知っている。ブランドとコラボするのがどんなことかということも。そして、世界が見つめる中で失恋をして、それがメディアに取り上げられた時、どう感じるのかということもね。そこを演じるのはちょっと辛くもあったけれど、私自身がシーンに真実を持ち込めるチャンスはたくさんあった」。

 セレブリティと一般人の恋愛物語というこの設定はいかにも少女漫画だが、実際、原作はグラフィックノベルだ。ジェニファーとは長い関係にあるプロデューサーのエレイン・ゴールドスミス=トーマス(Elaine Goldsmith-Thomas)は、この企画をどこかに売り込むたびに「あまりに現実離れしている」と拒否されたと振り返っている。

 たしかにそれは普通の感覚だが、ジェニファーの私生活を考えると、彼女の場合、必ずしもそうではない。彼女が有名になってから結婚した最初の夫はウエイターだし、次の夫はバックダンサー。ジェニファーより24歳も下のマルーマ(Malum)が婚約者役を演じているのも、彼女がかつて17歳下の男性と付き合っていたことを思えば、あり得なくもないだろう。良くも悪くも、華やかすぎる恋愛遍歴がゴシップをにぎわせてきたことで、このストーリーに信憑性が出ているのだ。

 「ソーシャルメディアが出てきて、有名人である私たちの日常は、より厳しくなった。ソーシャルメディアはタブロイドよりももっと私たちを不安に陥れる。ゴシップ雑誌だけだった頃は、『もうすぐこのことを書かれてしまうらしい』『でも、そんなに大きくは出ないんじゃないか』というような、いわば猶予期間があった。今は、何かが起きた時に誰かがスマホを向けて、それがたちまちシェアされてしまう。公の目にさらされている人間にとって、そこをコントロールするのは難しい。特に私生活で嫌なことが起きた時にはね。キャットみたいな思いは、誰にもしてほしくない」。

 

着用したウエディングドレスは約40キロ 

 そんなネガティブな面だけでなく、この映画は、セレブリティだからこそ得られる華やかな体験も描いていく。とりわけ衣装は魅力的だ。ライブコンサートでの衣装やレコーディングスタジオでの服装、そしてこの映画のポスターにもなっている「ズハイル・ミュラド(ZUHAIR MURAD)」のウエディングドレスまで、劇中でジェニファーは素敵なファッションの数々を披露している。

 「あのウエディングドレスは最高に素敵だったわ。でも、実はとても窮屈なの。約40キロもあるドレスを着て4日間も撮影するのは楽じゃなかったわね。もう一つのお気に入りは、『On My Way』を歌うシーンの服装。コーラルカラーのスエードパンツ、セーター、帽子というスタイルよ。私はあの歌も大好きなの。今作のためにオリジナル曲がたくさん書かれて、アルバムも同時に制作したけれど、『On My Way』は誰もが共感できる感情を伝える歌。自分がおかしたミスについて辛く感じることは誰にでもあるでしょう。だけど、そこには希望もあるの。私も、自分が過去に経験した失敗が、今いるところへ導いてくれたんだと思っている」。

 3回の離婚、2回の婚約破棄を経て、今、再びベンと真の愛を築こうとしているジェニファー。そんな彼女にとって最高にロマンチックな時間とは?「パパラッチがいない、誰にも見られないところで二人きりでいられる時間。愛する人と一緒に人生や愛について語り合う。お互いといる喜びを、ただ満喫できる。それが理想ね」。

The post “恋多き”女ジェニファー・ロペスが語る、「マリー・ミー」主人公の波乱恋愛劇 エンタメから読み解くトレンドナビ Vol.3 appeared first on WWDJAPAN.

東コレのメインテーマに抜てきされた23歳 音楽アーティスト、にしなの素顔

 1998年生まれのにしなは、儚さを感じる歌声と多様な楽曲サウンド、日常を切り取った飾り気のない歌詞が魅力のアーティストだ。昨年は、あいみょんやKing Gnuなど名だたるアーティストを輩出してきたスポティファイ(Spotify)の新人サポートプログラム“アーリーノイズ(Early Noise)2021”に選出されたほか、テレビCMとのタイアップソングの書き下ろしや初のワンマンライブを実現。1月にリリースした「スローモーション」は、3月の「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」のメインテーマにも選ばれ、この夏にビームスが主催する音楽フェス「BE FES!!」への出演も決まるなど、ファッション業界からも注目を集め始めている。7月にはニューアルバム「1999」のリリースも決定した。そんな彼女に音楽を始めたきっかけや曲作りの哲学、好きなファッションスタイルなどを聞いた。

WWD:音楽に興味を持ち始めたたのはいつから?

にしな:もともと歌うことが好きで、小学生の時には歌手になりたいと思っていました。でも漠然と思っていただけで、それを行動につなげることはありませんでした。家族にもバレないようにお風呂で小さな声で歌う、みたいな感じでした(笑)。

WWD:本格的に音楽活動を始めたきっかけは?

にしな:高校2年生のときに、音楽をやっていた友達から無料でレッスンを受けられるオーディション情報を聞いて、「これなら落ちても誰にもバレないし、やってみてもいいじゃん」と軽い気持ちで応募しました。1次審査のために音源を送らなきゃいけなくて、録音のやり方が知らず、iPhoneを裏向きに置いて動画として撮影したくらい(笑)。あんなに手探りだったのに、よく受かったなと思います。

WWD:レッスンではどんなことを学んだのでしょうか?

にしな:ギターの選び方とか、ライブハウスに出るにはどうすればいいかとか、音楽活動の基礎を教えてもらいました。実戦的な学びはもちろん、それ以上によかったのが、本気で音楽に取り組む同世代に出会えたこと。私はどちらかというとシャイで内側にこもりがちだったけど、自分のやりたいことに挑戦する同世代を見て大きな刺激を受けました。そこからライブハウスに自分で電話して出させてもらったり、ユーチューブに動画をあげたりと、マイペースだけど継続して音楽に取り組んでいきました。

WWD:アコースティックな音楽が多い印象ですが、ルーツは?

にしな:歌うことに憧れたのはコブクロさんがきっかけです。中学からはバンドも聞くようになって、クリープハイプやラッドウィンプス、バックナンバーなどもよく聞いていました。

WWD:1月にリリースした「スローモーション」は、バンドライクなサウンドでしたね。

にしな:椎名林檎さんの「ギブス」を聞きながら、こういう世界観の曲をやってみたいと思ったのがスタートでした。ヒリヒリするようなギターのアレンジは意識しています。それと、恋をして、一瞬一瞬の出来事が激情的になると、後からスローの映像で思い返せる感覚があって。喧嘩のときに花瓶が割れたら、その瞬間を後から明確に思い出せるというか。その個人的な感覚をタイトルの「スローモーション」に込めました。

WWD:昨年はGMOクリック証券のCMソングとして「U+」をリリースしました。壮大なアレンジが印象的でした。

にしな:“多様性”という大きなテーマのもと、「私にとっての多様性を表現してほしい」とリクエストされて。コラージュアーティストの五反田和樹さんの映像が先に出来ていたので、それを見ながら歌詞とメロディーを広げていきました。クライアントやほかのクリエイターの熱に良い意味で影響されて、いつもと違うアレンジに挑戦できたのがよかったです。制作過程はいつもと異なるけど、コードと歌詞とメロディというシンプルな要素は変わらないから、タイアップやコラボ楽曲でも自分らしく音楽と向き合えています。

WWD:ライブでの衣装のこだわりは?

にしな:これというこだわりは特にないですが、衣装はパフォーマンスにも影響を与えます。ガーリーな服を着るとかわいい自分になりたい、かっこいい服なら強い自分になりたいと思うので。自分の中でモードが切り替わりますね。

WWD:雑誌撮影なども増えています。音楽ではなく、ファッションや写真で表現することの面白さは?

にしな:コンプレックスがたくさんあるから、「私なんかでいいのかな」って思っちゃいます。でも、いろんな服を着て、素敵に撮ってもらうと、自分が知らなかった側面に出合えて、自分を好きになるきっかけをくれる。それがうれしくて、最近は楽しめるようになってきました。

WWD:普段はどんなファッションが好き?

にしな:ゆるい雰囲気が好きです。古着が好きで下北によく行っています。あとはニューヨーク発のニットブランド「ヤンヤン(YANYAN)」とか、「フィル ザ ビル(FILL THE BILL)」も好き。衣装で着てから知るブランドも多いです。

WWD:今後チャレンジしたいことは?

にしな:まずはいろんな音楽を作り続けること。いろんな人と出会って、ふざけた曲も、真面目な曲も作りたい。あとはライブですね。ライブってお客さんと時間を共有して、エネルギーをもらえる大事な時間で。行ったことのない地域の方が多いから、いろんな所に行きたいです。ほかにも音楽を軸にしながら、短い映画とか、絵本とか、枠にとらわれずに新しい表現に挑戦できたらうれしいです。

The post 東コレのメインテーマに抜てきされた23歳 音楽アーティスト、にしなの素顔 appeared first on WWDJAPAN.

土地を再生しながらダウンの代替素材を作る “バイオパフ”とは何か

 英国発ソルティコー(SaltyCo)は、土地を修復しながら育つ植物を原料にプラネット・ポジティブ(地球にとっていい影響)な素材供給を目指すスタートアップ企業だ。初めての製品“バイオパフ(BioPuff)”はグースダウンや石油由来の合成充填材に代わる種子繊維を原料にした素材で、2022年のH&M創業者によるイノベーションアワード、グローバル・チェンジ・アワードを受賞した。すでにサステナビリティ先進企業数社と開発を進めている。

 2021年12月にはネッタポルテで“バイオパフ”を用いたカプセルコレクションを発売。ジャケットや帽子などを販売した。ジュリアン・エリス・ブラウン(Julian Ellis-Brown)最高経営責任者(CEO)とネリー・タヘリ(Nelly Taheri)=チーフ・オペレーティング・オフィサーにオンラインで話を聞いた。

WWD:環境負荷が高い素材が数多くある中で、なぜダウンだったのか?

ジュリアン・エリス・ブラウンCEO(以下、ジュリアン):ダウンの代替品を探すというよりも、土地の修復に役立つ植物や再生農法を見つけることに注力していました。土地を再生しながら、役に立つ製品を生み出すことができるかーー研究の結果、グースダウンの代わりになる素材を見つけました。

WWD:“バイオパフ”はどのような植物からできているか。

ジュリアン:種子繊維を原料としています。その植物は乾燥地帯で自生している場合もあれば、極端に湿った環境でも見つかります。植物自体は、湿地に生息する丈夫で弾力性のある作物「ヘロフィテス」と呼ばれる大きな種族に由来します。この種の植物は、厳しい気象条件、代替水源、あらゆる質の土壌で生育することができます。将来的に気候変動が進み、世界中で気象の影響が大きくなっても気候や環境の変化にも耐えられます。

WWD:具体的にどのような条件下で育つのか。

ジュリアン:再湿潤化した泥炭地で育てています。これまで泥炭地は農地化され、CO2の大量放出につながっていましたが、私たちは革新的な農法を用いて、CO2を地中に閉じ込められるように土地を修復し、再び湿らせて在来植物を栽培しています。現在、英国で再生が必要な農作地は約30万ヘクタールありますが、その10%を私たちの農法に切り替えると全世界のグースダウンの供給量の約15%をカバーできます。

WWD:英国以外の土地でも適応可能か?

ネリー・タヘリ=チーフ・オペレーティング・オフィサー(以下、ネリー):もちろんです。私たちが用いている植物や土地の種類は、アジアや南米、ヨーロッパなど世界中のいろんな地域にあります。ダメージを受け、再生が必要な土地はあらゆるとこに存在します。また、この植物はさまざまな地域で自生していて、植物自体はとても簡単に育つものだからこそ、地元の農家に容易に取り入れてもらえますし、リスクも少ない。このような点からも私たちは今後エリアを拡大していきたいと考えています。

WWD:“バイオパフ”はポリエステル綿ではなく、ダウンに似た構造とのことだが、機能面でダウンに劣る点はあるか?

ジュリアン:グースダウンは、たくさんの繊維が集まりその繊維にさらに小さな繊維があり、それによって保温性が生まれ、エアーポケットができてふわふわした膨らみにもつながっています。それこそがダウンが愛される主な理由になっています。私たちが開発した素材は、このダウンの構造に似た、繊維の集まりによる構造をしています。それによって保温性に非常に優れ、ふわふわとした膨らみも生まれます。しかしグースダウンにも、“バイオパフ”のような植物由来の代替品にも共通する課題は洗濯の問題ですが、私たちは過去6~12カ月にわたり、洗濯ができるようになるかを研究しています。私たちの素材の改善すべき点は洗濯だと考えており、今後も注力していきたいと考えています。

WWD:どのような工程を経て植物からダウンのような繊維になるのか。

ジュリアン:原料の植物は乾燥工程を経て製造工場に運ばれます。その後、独自の繊維抽出機を用いて植物から繊維を抽出し、一連の機械での工程を経て作られます。小さなエアーポケットに熱を閉じ込めて保温するクラスター構造が特徴です。

WWD:“バイオパフ”は環境を再生することだけではなく、動物の権利も守られ化石燃料を用いることもない。が、コスト面ではどうか。

ジュリアン:現時点での価格帯は生産規模の理由から、1キロあたり約75~80ポンド(約1万2150~1万2960円)です。私たちはグースダウンの価格と並ぶ程度にまで下げることを目標にしており、すでにできると確信しています。 石油由来素材の製造方法が単純であることや、生産量も多いことから、ポリエステルと同等の価格まで下げることは難しいかもしれませんが、できるだけ早く価格を下げられるとうに、そしてこの新素材による好影響を世界中に広められるように取り組みたい。

 サステナビリティは非常に手間がかかるため、非常にコストがかかると思われがちですが、研究開発の過程で経済的にも有効なモデルである可能性があることもわかってきました。私たちの生産工程は、グースダウンの生産に比べて40分の1の土地でできるので、私たちはより経済的にも環境的にもサステナブルなものを作ることができます。

WWD:今後の生産量拡大への計画は?

ネリー:直近2年程では、パイロットの拡大や研究開発に比重を置いていました。次のステップは、製造拠点となる大きな工場に移転し、スケールアップした製造ラインを作ること。英国内の農業用地への進出も検討しています。より多くの収穫に備え、栽培をすぐに開始できるようなさまざまな土地を探していますし、もちろんチームも拡大していく予定です。

 現在3~5つのブランドと話しを進めていて、ブランドは中規模のコンテンポラリー・ブランドから、現地サプライチェーンを構えるヨーロピアン・ブランド、世界中に生産拠点や店舗を持つマス向けのグローバルブランドやアウトドアブランドなど、多岐に渡りますが、今後2~3年の内に展開できるように進めています。

WWD:拡大するにあたっての課題は?

ジュリアン:本質的な課題は新しいサプライチェーンを構築することです。特にリスクも伴う可能性があると困難になることもあります。農家が土地を所有している場合、その土地がダメージを受けていても、従来の慣行から方法を変えることに抵抗があることも考えられます。だからこそ、私たちは安全で確実な方法を模索し、収益モデルを構築する方法を追求したいと考えています。つまり彼らから素材を購入することで収益を提供するだけでなく、温室効果ガスの排出削減量証明となる炭素クレジットによる収益や、英国政府が行っているエンバイロメンタル ランド マネジメント スキーム(Environmental Land Management Scheme)を通して収益を得られるようにしたい。そうすることで、私たちのアイデアを拡張するにあたってのリスクや困難を軽減したいと考えています。私たちは英国王立鳥類保護協会(RSPB)や野生動物保護団体(Wildlife Trusts)など、より再生可能な農法への移行を先導する自然保護団体とも協同しています。

繊維発見までの開発秘話

WWD:そもそも、その植物がダウンの代替となるということはどのように見出したのか?

ネリー:ダウンの構造や他に代替を検討している素材についての研究を重ねていた頃だったと思います。私たちの目標は、繊維がどのように栽培され、どのように育ち、どこから供給されるかを見出してアプローチすることでした。ダウンであれ石油由来の素材であれ、その他の素材であれ、アパレル産業のサプライチェーンにおける環境負荷の多くがこの工程にあるからです。そこで代替が必要な素材を見出し、そこから逆算して研究対象となるさまざまな植物を特定し、それらを研究所に持ち帰って研究を進めていきました。ですので、いろんな研究を並行して進めていました。

 そもそも、私たちの研究は素材やサプライチェーンについて、それらがもたらす環境への負荷について考えるところから始まりました。天然資源の過剰使用や土地利用、それらに伴う環境への悪影響についてです。初期段階では、不織布・織物の研究も行っていました。そしてその中で保温性(断熱性)のある代替素材に関する市場は全く飽和されておらず、高い需要があるにも関わらず、植物由来の代替素材はあまりなかったので、そこに注力することにしました。多くのブランドはヴィーガンでありながら石油由来でない断熱素材を求めていますが、現状は多くの製品がリサイクル素材か、責任ある調達方法で作られたダウンなどに留まっています。そこに膨大な需要がある中で、私たちが並行して行っていた研究や開発、私たちが求めている製品と合致する部分がありました。今後のクライアントになりうる人たちとは最初の段階から多くの協議を行い、彼らが求めているものは何なのかを理解するために、フィードバックをもらい、コミュニケーションを重ねてきました。

WWD:現在の資金調達額は?

ジュリアン:100万ポンド(約1億6200万円)です。グローバル・チェンジ・アワードで得た助成金は今後私たちのアイデアをスケールアップしていくのにとても役立ちます。その他にも、イノベーションを目指して研究を行う企業を英国政府に代わって支援するイノベートUK(Innovate UK)やインペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)、新しいサステナブルな素材へのムーブメントをリードするフューチャー ファッション ファクトリー(Future Fashion Factory)などとも一緒に取り組んでいます。

The post 土地を再生しながらダウンの代替素材を作る “バイオパフ”とは何か appeared first on WWDJAPAN.

「稼いだお金はほぼ事業に」 カリスマホストROLANDがファッションを通じて得たもの(インタビュー後編)

(前編はこちらから)
 カリスマホストのROLANDは4月15日、新ブランド「ミニマス(MINIMUS)」をスタートした。後編は、起業家でもあるROLANDから見たファッション・ビジネスの難しさやミニマリストとしてのワードローブと消費生活、アパレルビジネスの最終目標を聞いた。ROLANDは2019年に自己資金で事業を始め、わずか数年で従業員を300人まで大きくした現在も無借金を貫く。ミニマリストを自称し、浪費をせず、稼いだお金の大半を事業につぎ込む姿からは、自分の美意識を貫きながら、ストイックに事業に打ち込む起業家の姿が見えてきた。

WWD:「ミニマス」のコンセプトはどう決めた?

ROLAND:僕自身、所有している服の数が少なくて、シンプルが自分のフィロソフィーなところもあり、色使いが多いものや柄物をあまり着ないことを、本間さんにお話させていただきました。

WWD:所有している服の数は?

ROLAND:ファッションメディアのインタビューで答えていいようなワードローブではないんですよ。下着類が3着、ジャケットが1着、ワイシャツ3着、トレンチコートが1着、靴1足、サングラス1個。あとは同じデザインのルームウェアが3着。俗に言うミニマリストですね。YouTubeを見てもらうとわかりますが、どの番組見ても、衣装提供がある場合以外は、黒のジャケットか黒のシャツですね。

WWD:ちなみにブランドは?

ROLAND:スーツはイギリスのサヴィル・ロウのテーラーブランド「ハンツマン(HUNTSMAN)」で、ジャケットはそこのビスポークでビロードの1着。靴は今日履いている「プラダ(PRADA)」。もし、気に入ったアイテムが見つかれば、それまで使っていたものをトコロテン方式で押し出して処分して、最高の1着だけを常に大事にするという考え方です。毎日服を選ぶ時間を、別の思考する時間にあてたいというのがきっかけだったんですけど、そういうふうに生活していくと、同じ服を着ていることで、体重の変化や、服の肌触りで風邪ひきそうとか、体調の良・不調までわかってきます。思考もクリアになるので、もっと大切なこと…家族のことや仕事のことにフォーカスできるようになる。「ミニマス」を通じて伝えたいことも、そういうことです。「ミニマス」をまとうことで、シンプルな思考になり、もっと人生大事なことにフォーカスできるようになってほしい。そうやって、人々のライフスタイルを変えるのが、最終的なこのブランドの野望です。なので、ブランドのメッセージにも「服を選んでいた時間を、もっと大切なことに向ける。服を選ぶこと以上に、あなたのライフスタイルには価値がある」としています。

WWD:自身では、ホストやアパレル以外にも飲食店やサロンなど、さまざま事業を手掛けている。起業家としてアパレルビジネスをどう見ている?

ROLAND:他の事業と異なる点は、競合他社さんの数。アパレルはまさにレッドオーシャンで、選ばれる大義名分を作るのがすごく難しい。「クリスチャンローランド」のときも、まるで自分の子どもを育てているかのように愛情と時間と手間を注いで作ってきた。でも例えば、自分の子どもが受験に落ちたとします。うちの子はこんなに頑張ってきたし、こんなに可愛くてこんなに才能があるのに、なんで落ちたんだろう?って思いますよね。親は我が子が塾に通ったり、家で勉強しているその365日24時間のフルタイムの頑張りを見てるわけじゃないすか。でも学校側は試験と一瞬の面接だけで、いいか悪いか、それだけで判断する。アパレルも同じことです。「これだけ熱量を入れてめちゃくちゃこだわってるのに、何で売れないんだろう」というこちらの温度感に対し、お客さんは試着したり、ぱっと目にとめたり、ポップアップで手にとったときに、「これ違うな」って思えば一瞬でハンガーに戻してしまう。だからこそ「他のブランドではない、これをわざわざ買うべき」という大義名分が、価格なのかデザインなのか、それこそネームバリュー、あるいはブランドなのか。それを作るのがとても難しかった。

WWD:ホストも一瞬で心をつかむ難しい仕事だと思うが、アパレルは何が違った?

ROLAND:「クリスチャンローランド」を例に取るとデザインは、サンローランとかセリーヌと同じ方向性だったけど、そこには勝てなかった。値段の点で、同じクオリティーで価格が10分の1だったら、買われたかもしれない。でも、そういう大義名分を作れなかった。あるいは、仮に価格も高くてデザインも悪くても「天下の〇〇」みたいな、そういう位置付けのブランドだったら、また話は変わってきたかもしれない。選ばれる大義名分作りっていうのが、今回の「ミニマス」の新しいテーマでもあったし、難しさでもあった。

WWD:経営者として、今後「ミニマス」をどのくらいの期間継続していく?

ROLAND:仮に収益が悪かったとしても、自分の資金力が続く限りは続けたい。なので、資金が続く限りはやるつもりだし、業績が良ければ別に終わらせる必要はないので、半永久的に続けます。

WWD:なぜそこまで?ビジネスとしての可能性?

ROLAND:私は服は好きですが、単なる好きとはちょっと違う。ライフスタイルを変えられるのは、家具でもなければ食生活でもなくて、やっぱり身に着ける衣服なんじゃないのかっていうのが僕の考えです。先ほども言ったように僕自身がクローゼットをシンプルにしたら、思考がシンプルになって、すごくクリアな思考でいろんな物事をもっと大事なことに向き合えるようになった。それは、僕の成功の一番の要因なんじゃないのかなと思えるくらいの体験だった。それを服を通じて伝えることができたら、素敵なことだなあ、と。だからやっぱり僕にはこのアパレルビジネスが、すごく魅力的に映るんですよね。

WWD:話を聞くと「クリスチャンローランド」でも、伝えたいコンセプトは変わっていない。その考え方は今後もずっと変わらない部分?

ROLAND:そうです。そこを変えたらアパレルブランドをやる意味がなくなっちゃうんですよね。この事業でめちゃくちゃ儲けたいというのはあまりない。それ以上に、1億総ミニマリストに変えることができたら、それが面白い。

本間:哲学は同じでも、前の「クリスチャンローランド」は特別な日の一着だったが、今回の「ミニマス」はその逆。どれだけ日常にシームレスに入っていけるのかっがポイントだった。ジムと仕事、仕事とゴルフなど、自分たちの生活を全部シームレスにできる1着があるといいだろうな、どんな服だろうな、と。それが先ほどの無人島に持っていう服の話に繋がっていきます。価格帯もジャケットで大体3万円台後半、パンツで1万円台後半から2万円台前半。シャツも大体同じぐらいですかね。ジャージのブルゾンで2万円台後半から。価格帯でいうと、本当にいわゆる“ドメブラ”です。

WWD:その価格帯で素材もこだわって日本製ということだが、原価率も相当高いと?

ROLAND:具体的には言えませんが、もしプロ野球選手だったら、伝説のバッターになってるぐらいの割合です。イチロー以上ではあることは断言します(笑)。「儲けたい」ではなく、目標は「ライフスタイルを変えたい」ですから。

WWD:売り上げの目標は?

ROLAND:まずは年商1億円です。

WWD:けっこう謙虚な目標設定だが、他の事業でも常にそういう感じ?

ROLAND:リアリストな自分とロマンチックな自分が同居しているので難しいですが、やっぱり新しい業界に行けば、1年生だよっていうのは忘れちゃいけないなと思っています。もちろん自信も大事だと思うんですけど、謙虚な姿勢が一番だなっていうのは起業して一番学んだことです。アパレルでも、本当にできることからしっかりやっていこうと。

本間:サロンの方はうまく行ってますよね。

ROLAND:サロンはそうですね、今年おそらく、全国で50店舗くらいいけるんじゃないかと思います。でもそれも、できるところからやった結果です。

WWD:ROLANDグループホールディングスの年商は?

ROLAND:正確な数字は出せませんが、脱毛サロンは直営で30店舗あって、全体で社員は300人くらいです。

WWD:起業にあたって出資や融資は?

ROLAND:少し出資を受けていますが、ほぼ自己資金で始めて、いまも金融機関からの融資は受けず、無借金経営です。そもそも水商売をやっているとお金を貸してもらえないので。あくまで僕の感覚ですが、出資を受けてやるのって、他人のふんどしで相撲をとるじゃないですけど、なんかそういう感覚に近いものがある。だから経営も、あくまでも背伸びをせず、自分の身の丈に合う形でやっています。

WWD:「ミニマス」の最終的な夢や目標は?妄想レベルでもいいので。

ROLAND:先ほども言ったように常設の実店舗を持ちたいっていうのは、そんなにない。今の時代、コストに見合った効果が得られるかわからないので。そういった意味では、最終的な目標は10人すれ違って5人ぐらい「ミニマス」を着ているみたいな未来でしょうか。すれ違う人たちが「この人も『ミニマス』を着ている、あの人も『ミニマス』を着ている…」という状態になったら、みんながもっと家族や仕事など、大切なことにフォーカスできる未来になる、それが目標です。

本間:あくまで体感の話ですが、東京で生活圏が同じだと、5000枚くらい売れると、1週間にひとりすれ違うくらいかなと。しかし10人中5人となると…。

ROLAND:例えば「ユニクロ」さんだとそのくらいでしょうか。そのくらい生活に入り込みたい。

WWD:言われてみると「ユニクロ」の“LifeWear”ってコンセプトと「ミニマス」の目指す方向性は近い。

ROLAND:いや、「ユニクロ」さんとは勝負しません。ある仕事でユニクロさんのオフィスに行って企画会議にご一緒させてもらう機会があったのですが、本当にびっくりした。お客さまからのクレームの受け方やヒアリングの仕方がとにかくすごい。規模も圧倒的だけど、その姿勢はさらにすごい。日本人って「1000円あげるから俺の嫌いなとこ挙げて」と言ったとしても、言わない人が大多数の国民性なのに、そんなお金をもらってもクレームを言えない人種から、クレームとか改善点を引き出す技術があり、その上「毛玉が多い」と言ってきたお客さまには、わざわざ素材のスワッチを送り直して、フィードバックをもらっていた。その謙虚な姿勢を見て、これはさすがに勝てないな、と。「ユニクロ」さんと戦ったら負けるんで、あくまで違う土俵で「ミニマス」はやっていく。

WWD:あまり服にはお金を使わないということだが、お金の使いみちは?

ROLAND:時計は普段、アップルウォッチだし、いわゆる高級時計も持っていますが、本当に一つだけ。その他にコレクター癖もない。ただ、節約しているわけではなく、欲しいものがないという感覚です。サングラスも買ってから4、5年経つ。ものを買うときは特に期限や時期を決めているわけではなく、欲しいと思ったら、心の赴くままに、という感じ。車は自社で一台持ってますが、他は法人として買っている社用車。服を最後に買ったのは、思い出せないくらい前です。

WWD:ではお金は何に使っている?

ROLAND:うーん。新しい事業の資金かなあ。去年はレストランを開業するなど、いろんな業種にチャレンジしていて、その資金が必要だったので。不動産を買ったりということもない。

WWD:今までいろいろな方と仕事をしてきた本間さんから見て、ROLANDさんはどういう人でしょう?

本間:一番は、未知数というか可能性が多い人だなって印象です。会って話をしてみると、めちゃくちゃスマート。デザイン監修に入っているデザイナーの橋本さんも似たような感じで、楽しくやってますね。

WWD:全員が体育会系だから?

本間:それは大いにあるかもしれないすね。みんなトレーニーだし。

ROLAND:確かに体育会系ノリかもしれませんね。

The post 「稼いだお金はほぼ事業に」 カリスマホストROLANDがファッションを通じて得たもの(インタビュー後編) appeared first on WWDJAPAN.

現役モデルが業界の厳しさや苦悩のケアを目指し異業種参入 SAWAがコーチングを始めた理由

 トップモデルとしてキャリアを積んだSAWAが、2021年12月にメンタルメイクコーチング「ゆうなぎ(YOUNaGI+)」を設立した。モデルとして表舞台に立ってきたキャリアと、私生活では母親である経験を生かし、モデルやタレント、そして彼らを支えるマネジャーたちに向けて段階別のコーチングコースを設け、対話を重ねながら受講者の目標達成やメンタルをサポートしている。

 “コーチング”とはコミュニケーション手法の一つ。相手との対話や質問を通して、本来持っている能力や可能性を最大限に引き出し、目標に向けてモチベーションを高めるというもの。さまざまな悩みを抱えている人々に寄り添う彼女に、コーチングを身につけることの大切さや、厳しいモデル業界で苦労したこと、そこから得た気づきなどについて話しを聞いた。

WWD:「ゆうなぎ」をはじめたきっかけは?

SAWA:モデル業は常に自分と向き合っていないといけなくて、現場だけが仕事ではないんです。当時の私は仕事について一日中考えることが当たり前になっていて、心から楽しめていませんでした。楽しむよりも、全力投球で仕事に臨むことにしか目を向けられていなかったんです。あのときにセルフコーチングを身につけていたら、もっと心に余裕が持てて、自分を上手くコントロールしながら楽しめたんじゃないかなと。だからこそ、自分を育ててくれたこの業界で私にもできることがあると思い、「ゆうなぎ」を立ち上げました。自分と向き合うのを辛く感じているモデルたちをサポートすることで、モデルという仕事をもっと楽しんで、自分らしさを見つけてほしいです。

WWD:コーチングに出合ったのはいつですか?

SAWA:不妊治療を経て、無事に生まれてきてくれた長女が重度の食物アレルギーとアトピー性皮膚炎持ちであることが分かったんです。食べられるものが制限されるため、食物アレルギーについて学んではみたものの、なかなか苦労が多くて。育児に悩んでいるときに友人に紹介されたのが子どものコミュニケーション能力を学ぶマザーズコーチング(母親のためのコーチング)でした。スクールを受講して、自分のこれまでの価値観や考え方などが大きく覆されて、そこから学んだことが本当に多かったですね。その体験をきっかけに、よりたくさんの子どもや子育てに悩むママたちの助けになりたいと思い、資格を取りコーチとしての活動も始めました。

孤独と不安に押しつぶされた過去

WWD:コーチングに出合う前、自身もメンタルヘルスへの影響がありましたか?

SAWA:当時の私は精神的に完全に壊れていましたね。接触障害になったり、急に不安や恐怖に駆られたり。うつ病の一歩手前までになったこともありました。モデル業は華やかな印象ですが、実はとても孤独な職業なんです。オーディションに行かないと仕事はもらえないし、仕事が保証されているわけでもありません。オーディションに落ち続けていると、自分自身を否定されている気持ちになることもありましたね。その仕事がダメだっただけなのに、私の全てを否定されているように捉えてしまっていました。

WWD:そんな時、支えてくれたものは何だったのでしょうか?

SAWA:モデルとしての自分を確立できたのは、マネジャーのおかげです。私が悩んだ時に、自分以上にモデルとしての価値や良さを教えてくれました。一番最初のマネジャーに「SAWAにしかないものがある」「SAWAを選んでくれる人はずっとあなたのファンでいてくれる」と言われた言葉に強く背中を押されましたね。自分の可能性を自分以上に信じてくれる人が一人いるだけで、すごく励みになりました。自分一人だと不安になりますが、周りからのエネルギーが加わると、「やるぞ!」という強いパワーを与えてくれるんです。

WWD:厳しいモデル業界を経験して得たことは?

SAWA:私は完璧なモデル体型ではないので、海外でもキャスティングに入るかギリギリなんです。それでもこの業界で勝ち残っていくには、周りや時代に合わせるのではなく、個性を出していくことが一番大事だと気づきました。キャスティングのオーディションでは、会場に入った瞬間からジャッジされることがほとんどなので、その短い時間の中で自分らしさをどう表現するかが重要なんです。だからこそ、若い子たちにもコーチングについて知ってもらい、個性を発揮できるように自分自身と向き合えてもらえるとうれしいです。

WWD:実際にどんな悩みを抱えている人が多いですか?

SAWA:自分で自分の不安の正体が分からず悩んでいる人が多いですね。ゴールが見えない状態でも日々がむしゃらに走り続けて、自分で自分を追い詰めてしまっているんです。そんな彼らの孤独や不安をなくし、本当にやりたいことや個性を理解した上で、課題に向き合うプロセスを提案していきたい。無意識に周りや時代に合わせて自分の中の正解を見つけることよりも、まずは自分が持っている思考癖を理解し、うまく付き合っていくことが大切ですね。

WWD:モデルであり、母であるバッググラウンドを今の仕事でどのように生かしていますか?

SAWA:モデル業を通していろいろなクリエイターやスタッフと関わり、さまざまな価値観や考え方を自然に吸収できたので、多角的な視点を持ちながらアドバイスしています。そして、母になってからは“待てる”ようになりました。今までは子どもに「それはダメ」「こうしなさい」と注意していたのが、いろいろ経験させることで本人が学ぶ機会を得られるのかなと徐々に思えるようになっていったんです。子どもも一人の人間として見ることで、距離感をうまく保てるようになりましたね。親子や夫婦関係に悩んでいる講習者もいるんですが、自分の経験を通して寄り添うことを大切にしています。

自分の価値観を問うこと

WWD:SAWAさんがメンタルヘルスを維持するために心掛けていることは?

SAWA:自分自身に問いを持つことを意識して、セルフコーチングを心掛けています。自分がこうやって話している時も考えながら話しているんです。「あの時、この言葉を選んだけれど、どういう気持ちで言ったんだろうか」など、自分の価値観を問うようにしています。人が話している言葉もそのまま受け取るのではなく、一歩引いて、相手の感情をさまざまな視点で考えられるようになり、ぶつかることもなくなりました。

WWD:今後のプロジェクトについて教えてください。

SAWA:モデル業界をサポートすると同時に、後輩たちの目標となれる存在でありたいです。また小・中学生を対象とした“たいわ室”という講習も行っているので、彼らが大人になった時に「自分自身を追い込まずに、誰かに頼ってもいいんだよ」と気づけるようにしてあげたいですね。コーチングを身につけて、心の孤独を持たない子どもたちが増えてくれることを願います。

The post 現役モデルが業界の厳しさや苦悩のケアを目指し異業種参入 SAWAがコーチングを始めた理由 appeared first on WWDJAPAN.

現役モデルが業界の厳しさや苦悩のケアを目指し異業種参入 SAWAがコーチングを始めた理由

 トップモデルとしてキャリアを積んだSAWAが、2021年12月にメンタルメイクコーチング「ゆうなぎ(YOUNaGI+)」を設立した。モデルとして表舞台に立ってきたキャリアと、私生活では母親である経験を生かし、モデルやタレント、そして彼らを支えるマネジャーたちに向けて段階別のコーチングコースを設け、対話を重ねながら受講者の目標達成やメンタルをサポートしている。

 “コーチング”とはコミュニケーション手法の一つ。相手との対話や質問を通して、本来持っている能力や可能性を最大限に引き出し、目標に向けてモチベーションを高めるというもの。さまざまな悩みを抱えている人々に寄り添う彼女に、コーチングを身につけることの大切さや、厳しいモデル業界で苦労したこと、そこから得た気づきなどについて話しを聞いた。

WWD:「ゆうなぎ」をはじめたきっかけは?

SAWA:モデル業は常に自分と向き合っていないといけなくて、現場だけが仕事ではないんです。当時の私は仕事について一日中考えることが当たり前になっていて、心から楽しめていませんでした。楽しむよりも、全力投球で仕事に臨むことにしか目を向けられていなかったんです。あのときにセルフコーチングを身につけていたら、もっと心に余裕が持てて、自分を上手くコントロールしながら楽しめたんじゃないかなと。だからこそ、自分を育ててくれたこの業界で私にもできることがあると思い、「ゆうなぎ」を立ち上げました。自分と向き合うのを辛く感じているモデルたちをサポートすることで、モデルという仕事をもっと楽しんで、自分らしさを見つけてほしいです。

WWD:コーチングに出合ったのはいつですか?

SAWA:不妊治療を経て、無事に生まれてきてくれた長女が重度の食物アレルギーとアトピー性皮膚炎持ちであることが分かったんです。食べられるものが制限されるため、食物アレルギーについて学んではみたものの、なかなか苦労が多くて。育児に悩んでいるときに友人に紹介されたのが子どものコミュニケーション能力を学ぶマザーズコーチング(母親のためのコーチング)でした。スクールを受講して、自分のこれまでの価値観や考え方などが大きく覆されて、そこから学んだことが本当に多かったですね。その体験をきっかけに、よりたくさんの子どもや子育てに悩むママたちの助けになりたいと思い、資格を取りコーチとしての活動も始めました。

孤独と不安に押しつぶされた過去

WWD:コーチングに出合う前、自身もメンタルヘルスへの影響がありましたか?

SAWA:当時の私は精神的に完全に壊れていましたね。接触障害になったり、急に不安や恐怖に駆られたり。うつ病の一歩手前までになったこともありました。モデル業は華やかな印象ですが、実はとても孤独な職業なんです。オーディションに行かないと仕事はもらえないし、仕事が保証されているわけでもありません。オーディションに落ち続けていると、自分自身を否定されている気持ちになることもありましたね。その仕事がダメだっただけなのに、私の全てを否定されているように捉えてしまっていました。

WWD:そんな時、支えてくれたものは何だったのでしょうか?

SAWA:モデルとしての自分を確立できたのは、マネジャーのおかげです。私が悩んだ時に、自分以上にモデルとしての価値や良さを教えてくれました。一番最初のマネジャーに「SAWAにしかないものがある」「SAWAを選んでくれる人はずっとあなたのファンでいてくれる」と言われた言葉に強く背中を押されましたね。自分の可能性を自分以上に信じてくれる人が一人いるだけで、すごく励みになりました。自分一人だと不安になりますが、周りからのエネルギーが加わると、「やるぞ!」という強いパワーを与えてくれるんです。

WWD:厳しいモデル業界を経験して得たことは?

SAWA:私は完璧なモデル体型ではないので、海外でもキャスティングに入るかギリギリなんです。それでもこの業界で勝ち残っていくには、周りや時代に合わせるのではなく、個性を出していくことが一番大事だと気づきました。キャスティングのオーディションでは、会場に入った瞬間からジャッジされることがほとんどなので、その短い時間の中で自分らしさをどう表現するかが重要なんです。だからこそ、若い子たちにもコーチングについて知ってもらい、個性を発揮できるように自分自身と向き合えてもらえるとうれしいです。

WWD:実際にどんな悩みを抱えている人が多いですか?

SAWA:自分で自分の不安の正体が分からず悩んでいる人が多いですね。ゴールが見えない状態でも日々がむしゃらに走り続けて、自分で自分を追い詰めてしまっているんです。そんな彼らの孤独や不安をなくし、本当にやりたいことや個性を理解した上で、課題に向き合うプロセスを提案していきたい。無意識に周りや時代に合わせて自分の中の正解を見つけることよりも、まずは自分が持っている思考癖を理解し、うまく付き合っていくことが大切ですね。

WWD:モデルであり、母であるバッググラウンドを今の仕事でどのように生かしていますか?

SAWA:モデル業を通していろいろなクリエイターやスタッフと関わり、さまざまな価値観や考え方を自然に吸収できたので、多角的な視点を持ちながらアドバイスしています。そして、母になってからは“待てる”ようになりました。今までは子どもに「それはダメ」「こうしなさい」と注意していたのが、いろいろ経験させることで本人が学ぶ機会を得られるのかなと徐々に思えるようになっていったんです。子どもも一人の人間として見ることで、距離感をうまく保てるようになりましたね。親子や夫婦関係に悩んでいる講習者もいるんですが、自分の経験を通して寄り添うことを大切にしています。

自分の価値観を問うこと

WWD:SAWAさんがメンタルヘルスを維持するために心掛けていることは?

SAWA:自分自身に問いを持つことを意識して、セルフコーチングを心掛けています。自分がこうやって話している時も考えながら話しているんです。「あの時、この言葉を選んだけれど、どういう気持ちで言ったんだろうか」など、自分の価値観を問うようにしています。人が話している言葉もそのまま受け取るのではなく、一歩引いて、相手の感情をさまざまな視点で考えられるようになり、ぶつかることもなくなりました。

WWD:今後のプロジェクトについて教えてください。

SAWA:モデル業界をサポートすると同時に、後輩たちの目標となれる存在でありたいです。また小・中学生を対象とした“たいわ室”という講習も行っているので、彼らが大人になった時に「自分自身を追い込まずに、誰かに頼ってもいいんだよ」と気づけるようにしてあげたいですね。コーチングを身につけて、心の孤独を持たない子どもたちが増えてくれることを願います。

The post 現役モデルが業界の厳しさや苦悩のケアを目指し異業種参入 SAWAがコーチングを始めた理由 appeared first on WWDJAPAN.

起業家&カリスマホストROLANDが語る「自己資金でブランドをやる理由」(前編)

 カリスマホストとして知られるROLANDは4月15日、新ブランド「ミニマス(MINIUS)」をスタートする。アパレルではすでに自らの名前を冠した「クリスチャンローランド(CHRISTIAN ROLAND)」を2019年3月にスタートさせていたが、同ブランドのサイトにアクセスすると自動的に「ミニマス」のページに切り替わる。実質的に自らの名前を冠した「クリスチャンローランド」を休止し、全く別のコンセプトでブランドを立ち上げることになる。数々の伝説的なエピソードを持つホストであり、同時にインスタグラムやツイッターなどのSNSの総フォロワー数290万を抱えるROLANDが、なぜアパレルに失敗したのか。新ブランドでは、ウイメンズブランド「ジュエミ(JUEMI)」などのD2Cブランド運営するディーエスエスアール(DSSR)の本間英俊・代表取締役をパートナーに迎え、ブランドと同名のミニマス社を設立。デザイン監修にはメンズブランド「ジュンハシモト(JUNHASHIMOTO)」の橋本淳デザイナーを迎える。美容や飲食などの事業を運営する経営者でもあるROLANDはファッションビジネスをどう見ているのか?二人に話を聞いた。

WWD:なぜ新ブランド「ミニマス」を?

ROLAND:失敗を隠すつもりはないので、わかりやすく言うと「クリスチャンローランド」は敗戦だった。僕なりに全力でいろんなことに向き合ったが、ビジネスとしては失敗だった。ブランドを初めてからこの2年で、自分の服を着てる人を街で見かけたのは、2年間で驚くことに1回しかなかった。

WWD:「クリスチャンローランド」は単なる名前貸しのブランドではなく、自己資金だった?

ROLAND:もし名前貸しだけだったら「ああ、クリスチャンローランド、そんなの昔プロデューサー的にやってましたね」って言えるかもしれませんが、ブランド自体に名前も入っているし、自己資金も入れていた。いずれにしろうまく行かなかった全責任は僕にあります。振り返ってみれば知識や経験が不十分だった。まず第1に、インフルエンサーがアパレルやるときに言いがちなキメ台詞、「自分が欲しいものを作っていきます」っていうやつ。僕が欲しいと思ってるものを、世間はそんなに欲していなかった(笑)。そしてもう一つは、僕が全面的に出すぎることによって、仮にプロダクト自体が良かったとしても、ファングッズのような認識になってしまったこと。加えて、これがかなり大きいと思うのだけど、素人のくせに「アパレルをなめていた」んだな、と。

WWD:どういうことでしょう?

ROLAND:ホストクラブでも、アイドルがホストをするとすごく売れるんです。でもそれって本職の僕らからすると、内心は面白くないですよね。泥水すすりながら新人のときはトイレ掃除をして、先輩のヘルプをして勉強しながら這い上って、やっと日の目を浴びて、売り上げを上げられるようになってきたのに、超パワフルなインフルエンサーが来ると、リスペクトなく、業界を荒らすみたいな感覚になる。僕も同じこと、それに近いことを、インフルエンサーとして、アパレル業界に対してやってしまったら、やっぱり受け入れてくれないよなと。僕は自分なりに、パタンナーの方や取引先の方と熱を持って話をしていたつもりだけど、先方は僕に対してそこまでの温度感をなかなか持ってもらえないときもあった。でも当然ですよね。やっぱり心のどこかで自分がインフルエンサーで、これだけのフォロワーやファンがいれば、なんとかなると思っていたんです。

WWD:ミニマス社の代表取締役は本間英俊氏で、所在地も本間氏が代表を務めるDSSRのオフィスになる。ROLANDはどういう立場なのか。

本間:僕も出資していますが、ROLANDさんが筆頭株主であり、実質的なオーナーです。

ROLAND:「クリスチャンローランド」の失敗を踏まえ、誰がどういった役割で何をやるか、どういった座組がベストなのか、自分なりにかなり考えましたし、本間さんとも話し合いました。最終的には僕が一番責任がある立場であると同時に、任せるべきところは全部任せる。業務でいうと僕が担う業務は5%くらいで、95%くらいはプロの人達に任せようと。デザイン監修は、メンズデザイナーの重鎮である「ジュンハシモト(JUN HASHIMOTO)」のハシモトジュンさんに担っていただいてますし、売り方や販売戦略みたいなところは本間さんにお任せしています。二人ともプロ中のプロで、私が口を出す必要はない。ECサイトのモデルとしても、私は出ません。私が出ることでファングッズになるリスクがあるからです。

WWD:ではどういった役割を?

ROLAND:ブランドの方向性やコンセプトは僕自身が出しますし、最終的な商品の仕上がりも見ています。できるだけプロにおまかせしつつ、最終的な責任は私にある、そういった座組みですが、僕のイズムが全く反映されずにお金だけ投げてる出資者っていうようなものではない。これは言っておきたいのですが、例えば不祥事だったり、業績が良くなかったり、それらはすべて僕の責任です。名義貸しではないということです。

WWD:新ブランド「ミニマス」はアクティブファッションブランドと銘打たれていますが、どんなブランドでしょうか。

ROLAND:基本的なコンセプトは自分で決めたのですが、まずブランドパーパスとして「多くを持たない。消費するのではなく、一着を身につけ続ける」というメッセージを掲げています。わかりやすくいうと、日本人の質問の代表的なものに、無人島に例えたものがありますよね。僕が「無人島になにか1つ着ていくとしたら、何がいいですか」っていう質問をされたときにどう答えるか考えました。機能性でいったらアウトドアブランドなんでしょうけど、ギアに振ったものってシルエットがダボついたものが多くて。ヘリコプターでいきなり救助されて、めちゃくちゃカメラに抜かれたときに「こいつめちゃくちゃ暖取りに行ってるな~」と見えそうな、全然かっこよくない服を着るのは嫌なんですよ。かといって、エディ・スリマンが作ったようなタイトな服を着て、木の実を採りに行きたくないじゃないですか。それ着て魚は獲れないし、焚き火もできない。だから、エレガントさの中に、機能的なギア的な要素をミックスして、というものがあったら、僕は無人島に一着、それを着ていきたいなと思えるんですよね。デザイン性だと、おそらくハイブランドには勝てない。機能性でいくと、やっぱりギアに振ったアウトドアブランドには勝てない。ただふたつをミックスさせたら勝機があるんじゃないのかなと。ギアに振りすぎず、かつデザインに振りすぎない、とにかくシンプルなものです。

本間: ROLANDさんから、昔は着飾ることを重視していたけど今は引いていくことに美学を感じていると伺ったときに、どうやったらそれを服で実現できるかを考えました。ROLANDさんの世界観を表せるデザインの筆を取れるのは、橋本さんしかいないだろうとと、お願いに行きました。橋本さんももともとミニマルな世界がお好きなのでROLANDさんとお話が合ったんですよね。それで、橋本さんとスポーツウェアに使うような機能素材を使って、どうエレガントにできるか、素材探しから徹底的に行いました。

ROLAND:相当こだわってくれたと思います。素材の部分では、やっぱり良質なものにこだわりったことで、90%くらいは日本製の生地になった。

WWD:途中経過に関してあまり口を挟まないようにしていたということだが、上がってきたものを見てどうだったのか?

ROLAND:やっぱり専門家すげえな、と(笑)。バーバリーのトレンチって襟がアイコニックで、立たせるためにわざとステッチを入れてますよね。このジャージトップスも、襟の後ろに飾りのファスナーをつけることで、襟がしっかり立つようにしている。プロじゃないと思いつかないアイデアが散りばめられている。そして、もちろん普通にかっこいい。今着ているこのジャケットも、形はスーツだけどジャージー素材なのでジムにも行ける。ベンチプレスもできるし、ジョギングもできるくらいの吸水速乾素材を使っています。

本間: ROLANDさんと打ち合わせすると、基本は全部引いてくるので、服がすっごいシンプルになるんですよ。

ROLAND:ロゴ入れる位置も、最初はフロントにみたいな話もあったんだけど、橋本さんと色々話して、肩に同系色でできるだけさりげなく入れるのがかっこいいというアイデアをいただいて。

本間:どんどん引き算するので、放っておくとロゴもなくていいみたいな(笑)。それはさすがに目立たなくてもいいので入れてくださいとこちらからお願いしたり。

ROLAND:削ぎ落としていくのって、僕自身は好きなんすけど、難しいですね。足していくよりも全然難しい。

本間:逆に足すというポイントで言えば、ROLANDさんはサッカーをやるので、スパイク履いたまま脱ぎ着できるようにジャージパンツの裾にファスナーをつけたいって言ったんですよね。

ROLAND:あ、95%おまかせしていましたが、そこは5%の僕のこだわりです(笑)。

WWD:今売り方は?

ROLAND:常設の店舗を作りたいっていうのは今のところは頭にはない。EC中心で考えています。

本間:主にはD2C型という形ですね。あとはポップアップストアはやっぱり魅力の一つなんじゃないかなと思ってるんで、いいデベロッパーさんだったり、いい箱があれば、ぜひやりたい。

WWD:ライブコマースは?

ROLAND:時代に適した売り方ではあるなと思うので、選択肢のひとつとして興味はありますね。ただ、前回の反省の一つが「自分が出過ぎない」ってところなので、バランスを見ながら、と思っています。多数のフォロワーを抱えるSNSは強力な武器なので、そうした発信のところで出し惜しみするつもりはないですし、写真はモデル撮影の時に私の分も撮っていて、それは使っていくつもりです。いずれにしろ、やり方は決めつけず、様子を見ながら変えていこうとも思っています。

本間:やっぱりROLANDさんの持っているSNS合計290万人というは圧倒的なメディア。だからこそ、ブランドのメッセージやパーパスを、SNSを通じて丁寧に発信していきたい。お客様が望む限り製品を修理して使い続けられるシステムや、身体のサイズに合わせた補正、着なくなったアイテムの買取クーポンの発行、そのアイテムにメンテナンスを施したリバイバル商品の販売など、ブランドとしてのお約束も、予めきめ細かく決めています。

ROLAND:「ミニマス」は極めてシンプルで、一見してわかりやすいデザインではないので、何もしないと、そういうシンプルなものが好きな人にしか買われないかもしれない。でもSNSを通じて、現時点ではそういうものに興味ない人にも、メッセージを伝えられる。幸い芸能系の仕事もしているので、ブランドのパーパスが合っている方へのギフティングはする予定です。やっぱり手にとってもらわないと伝わりにくい服なので。アスリートが多くなるのかなと思っています。

本間:あと、ROLANDさんのメディア力で、実は海外にもすごく可能性を感じています。ROLANDさんの本は台湾でもベストセラーになっていて、日本と海外合わせて累計40万部も売れている。これはやっぱりSNSならではの強力な武器になる。なのでミニマスは最初から、海外対応をやっていきます。今の日本のアパレルだと、ゴルフウェアくらいしかあまり盛り上がっていないので、機能的でエレガントな服は可能性がある。

WWD:ROLANDさんのSNSの海外フォロワーの割合は?

ROLAND:正確にはわかりませんが、例えば今はフォロワー60万人くらいのInstagramで言うと、1割ぐらいは中国語圏の印象です。YouTubeコメントとかもかなり多いっていう話も聞きますね。なので東アジア圏とか、あとこんまりさんとかのライフスタイルがアメリカでヒットしたっていうのも、やっぱりアメリカも「大量消費、大量生産」なところに、少なからず疲弊している部分と思うので「ミニマス」のコンセプトはけっこう海外の方も共感してくれるんじゃないかな、というワクワク感がありますね。

The post 起業家&カリスマホストROLANDが語る「自己資金でブランドをやる理由」(前編) appeared first on WWDJAPAN.

数多くのセレブのレッドカーペット衣装を手掛けてきたジョルジオ・アルマーニ レディー・ガガの衣装などについて語る

 レッドカーペットイベントや授賞式がリアルに戻った今シーズン、多くのセレブは久しぶりに華やかな衣装を身に纏い、スポットライトを浴びる場を楽しんだ。中でも今季はクリステン・スチュワート(Kristen Stewart)が着用した「シャネル(CHANEL)」のショートパンツやアリアナ・デボーズ(Ariana DeBose)の「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のパンツといった目を引く衣装から、従来の豪華なボールガウンといったハリウッドらしいルックがレッドカーペットを占めた。肌の露出度が高いような衣装はあまり多く見られず、レッドカーペットにエレガンスが戻ったといっても過言ではないだろう。

 このトレンドをまさに体現したのがアカデミー賞授賞式でのニコール・キッドマン(Nicole Kidman)やグラミー賞授賞式のレディー・ガガ(Lady Gaga)だ。2人とも「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ(GIORGIO ARMANI PRIVE)」のカスタムガウンを着用した。2人の個性に合わせ、テイストもデザインも異なる衣装は、デザイナーのジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)のデザインの幅広さを物語った。

 トニー・ベネット(Tony Bennett)との曲「ラヴ・フォー・セール(Love For Sale)」で最優秀トラディショナル・ポップ・ヴォーカル・アルバム賞受賞を受賞したレディー・ガガは、ホワイトのスカートがウエストに巻かれたブラックのワンショルダーのシルクガウン姿で登場した。一方、映画「愛すべき夫妻の秘密(Being the Ricardos)」でルシール・ボール(Lucille Ball)役を演じ、主演女優賞にノミネートされたニコールはパステルブルーのシルクガウンをチョイス。ペプラムスカートと大ぶりなリボン、ゴールドのクリスタルをあしらったエレガントなドレスだ。

 米「WWD」は、ジョルジオ本人にレッドカーペットのトレンドや影響力ある女性の衣装を手掛けること、自身のデザインを着用したセレブを見た時の感動などについて聞いた。

WWD:クラシックなスタイルがレッドカーペットに戻ったと思う?それは昔ながらのハリウッドらしいスタイルなのか、もしくは言葉通りのクラシックなスタイル?

ジョルジオ・アルマーニ=デザイナー(以下、アルマーニ):はい、ハリウッドの黄金期を連想させるような、ドラマチックで煌びやかなグラマラスさが戻ってきている。私がキャリアを始めた頃と真逆なトレンドだ。ファッショントレンドは循環するもので、必ず何年かに1回戻ってくるからね。今は誰しもがSNSでスーパースターになれる中、みんなが大胆な夢を抱き、輝ける時代。だからこそ本当のスターたちはさらに輝かなければならない。彼らのスタイルをフォローすることはとてもワクワクすることだ。

WWD:ニコール・キッドマンとレディー・ガガは全く異なる性格の持ち主だが、2人とも授賞式で着用した衣装は素晴らしかった。彼女たちに共通するファッションのメッセージはあるのか。

アルマーニ:確かにニコールとレディー・ガガは全く違う女性だが、共に「アルマーニ」ウーマンであり、ファッションに大きな興味と熱量を抱いている。2人はドレスに負けることなく、自分らしく着こなせる。だからどれだけ華やかでゴージャスな衣装を着ても、個性が埋もれてしまうことなく、自分らしさが際立つのだ。

WWD:2人の衣装をデザインする際にこだわった点は?彼女たちから何かリクエストはあったのか?

アルマーニ:私が作る全てのドレスは、必ず会話から生まれる。着る人の要望に耳を傾け、それをデザインに反映する。2人は今、キャリアにおいて重要なステージに立っている。そこで、彼女たちの美しさや功績を讃えるようなドレスを作りたかった。また2人ならではの女性らしさも表現すべく、エレガントで品のあるニコール、色気のあるレディー・ガガを際立たせたかった。カラーパレットやデザインに関しては、ニコールには絵画的なもの、レディー・ガガにはグラフィカルなものを提案し、2人とも最初から気に入ってくれた。

WWD:自分でスケッチした衣装がレッドカーペットでセレブが着用しているのを見た時の感情はどのようなもの?人それぞれ立ち方だったりパーソナリティーがあったりするので、それも加味してデザインをする?

アルマーニ:ドレスは単体では動きのないもの。誰かが着て初めて命が吹き込まれ、その人その人のパーソナリティーにに合わせて動く。コレクションをデザインするときは特定の女性をイメージすることはないが、レッドカーペットは着る人のアティチュードや姿勢を知っているので、そういった要素をデザインに落とし込む。今でも自分が作ったドレスが、セレブが着用することによって生き生きと輝く瞬間を見ると、毎回感動するよ。

WWD:レッドカーペットのデザインはどのように進化してきた?

アルマーニ:時代に合わせて自分のスタイルも年々進化してきた。これまで、従来のグラマラスさに近いスタイルを自分のレンズを通してたくさん表現してきた。私は引き算をしたエレガンスが好きで、“やりすぎた”派手なグラマーは耐えられない。しかし派手なデザインやグラマラスさも上手に取り入れれば、素敵なクリエイションを生み出すことができる。その絶妙なバランスは面白いと思う。

WWD:衣装を手掛けた女優で驚いたことはある?

アルマーニ:予想外なディテールや気づきは必ずある。たとえば女優の歩き方だったり、見た目だったり。毎回何かしらサプライズはあるけれど、それもこの仕事の魅力の一つだと思う。

WWD:レッドカーペットは、今でも世間の憧れであり続けると思う?

アルマーニ:今も憧れではあるが、もしかしたら昔とは少し違う意味合いかもしれない。今はみんな、(SNSなどで)日々大量のニュースや写真を目にする。そんな中でレッドカーペットがハリウッドの全てではなくなったが、あの華やかさや雰囲気を真似できるイベントはないだろう。レッドカーペットの写真や記事はセレブやブランドへの憧れや興味を高め、たくさんの話題を生み出す。ポップカルチャーにはなくてはならない存在で、ファッションの重要性を物語る。

The post 数多くのセレブのレッドカーペット衣装を手掛けてきたジョルジオ・アルマーニ レディー・ガガの衣装などについて語る appeared first on WWDJAPAN.

数多くのセレブのレッドカーペット衣装を手掛けてきたジョルジオ・アルマーニ レディー・ガガの衣装などについて語る

 レッドカーペットイベントや授賞式がリアルに戻った今シーズン、多くのセレブは久しぶりに華やかな衣装を身に纏い、スポットライトを浴びる場を楽しんだ。中でも今季はクリステン・スチュワート(Kristen Stewart)が着用した「シャネル(CHANEL)」のショートパンツやアリアナ・デボーズ(Ariana DeBose)の「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のパンツといった目を引く衣装から、従来の豪華なボールガウンといったハリウッドらしいルックがレッドカーペットを占めた。肌の露出度が高いような衣装はあまり多く見られず、レッドカーペットにエレガンスが戻ったといっても過言ではないだろう。

 このトレンドをまさに体現したのがアカデミー賞授賞式でのニコール・キッドマン(Nicole Kidman)やグラミー賞授賞式のレディー・ガガ(Lady Gaga)だ。2人とも「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ(GIORGIO ARMANI PRIVE)」のカスタムガウンを着用した。2人の個性に合わせ、テイストもデザインも異なる衣装は、デザイナーのジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)のデザインの幅広さを物語った。

 トニー・ベネット(Tony Bennett)との曲「ラヴ・フォー・セール(Love For Sale)」で最優秀トラディショナル・ポップ・ヴォーカル・アルバム賞受賞を受賞したレディー・ガガは、ホワイトのスカートがウエストに巻かれたブラックのワンショルダーのシルクガウン姿で登場した。一方、映画「愛すべき夫妻の秘密(Being the Ricardos)」でルシール・ボール(Lucille Ball)役を演じ、主演女優賞にノミネートされたニコールはパステルブルーのシルクガウンをチョイス。ペプラムスカートと大ぶりなリボン、ゴールドのクリスタルをあしらったエレガントなドレスだ。

 米「WWD」は、ジョルジオ本人にレッドカーペットのトレンドや影響力ある女性の衣装を手掛けること、自身のデザインを着用したセレブを見た時の感動などについて聞いた。

WWD:クラシックなスタイルがレッドカーペットに戻ったと思う?それは昔ながらのハリウッドらしいスタイルなのか、もしくは言葉通りのクラシックなスタイル?

ジョルジオ・アルマーニ=デザイナー(以下、アルマーニ):はい、ハリウッドの黄金期を連想させるような、ドラマチックで煌びやかなグラマラスさが戻ってきている。私がキャリアを始めた頃と真逆なトレンドだ。ファッショントレンドは循環するもので、必ず何年かに1回戻ってくるからね。今は誰しもがSNSでスーパースターになれる中、みんなが大胆な夢を抱き、輝ける時代。だからこそ本当のスターたちはさらに輝かなければならない。彼らのスタイルをフォローすることはとてもワクワクすることだ。

WWD:ニコール・キッドマンとレディー・ガガは全く異なる性格の持ち主だが、2人とも授賞式で着用した衣装は素晴らしかった。彼女たちに共通するファッションのメッセージはあるのか。

アルマーニ:確かにニコールとレディー・ガガは全く違う女性だが、共に「アルマーニ」ウーマンであり、ファッションに大きな興味と熱量を抱いている。2人はドレスに負けることなく、自分らしく着こなせる。だからどれだけ華やかでゴージャスな衣装を着ても、個性が埋もれてしまうことなく、自分らしさが際立つのだ。

WWD:2人の衣装をデザインする際にこだわった点は?彼女たちから何かリクエストはあったのか?

アルマーニ:私が作る全てのドレスは、必ず会話から生まれる。着る人の要望に耳を傾け、それをデザインに反映する。2人は今、キャリアにおいて重要なステージに立っている。そこで、彼女たちの美しさや功績を讃えるようなドレスを作りたかった。また2人ならではの女性らしさも表現すべく、エレガントで品のあるニコール、色気のあるレディー・ガガを際立たせたかった。カラーパレットやデザインに関しては、ニコールには絵画的なもの、レディー・ガガにはグラフィカルなものを提案し、2人とも最初から気に入ってくれた。

WWD:自分でスケッチした衣装がレッドカーペットでセレブが着用しているのを見た時の感情はどのようなもの?人それぞれ立ち方だったりパーソナリティーがあったりするので、それも加味してデザインをする?

アルマーニ:ドレスは単体では動きのないもの。誰かが着て初めて命が吹き込まれ、その人その人のパーソナリティーにに合わせて動く。コレクションをデザインするときは特定の女性をイメージすることはないが、レッドカーペットは着る人のアティチュードや姿勢を知っているので、そういった要素をデザインに落とし込む。今でも自分が作ったドレスが、セレブが着用することによって生き生きと輝く瞬間を見ると、毎回感動するよ。

WWD:レッドカーペットのデザインはどのように進化してきた?

アルマーニ:時代に合わせて自分のスタイルも年々進化してきた。これまで、従来のグラマラスさに近いスタイルを自分のレンズを通してたくさん表現してきた。私は引き算をしたエレガンスが好きで、“やりすぎた”派手なグラマーは耐えられない。しかし派手なデザインやグラマラスさも上手に取り入れれば、素敵なクリエイションを生み出すことができる。その絶妙なバランスは面白いと思う。

WWD:衣装を手掛けた女優で驚いたことはある?

アルマーニ:予想外なディテールや気づきは必ずある。たとえば女優の歩き方だったり、見た目だったり。毎回何かしらサプライズはあるけれど、それもこの仕事の魅力の一つだと思う。

WWD:レッドカーペットは、今でも世間の憧れであり続けると思う?

アルマーニ:今も憧れではあるが、もしかしたら昔とは少し違う意味合いかもしれない。今はみんな、(SNSなどで)日々大量のニュースや写真を目にする。そんな中でレッドカーペットがハリウッドの全てではなくなったが、あの華やかさや雰囲気を真似できるイベントはないだろう。レッドカーペットの写真や記事はセレブやブランドへの憧れや興味を高め、たくさんの話題を生み出す。ポップカルチャーにはなくてはならない存在で、ファッションの重要性を物語る。

The post 数多くのセレブのレッドカーペット衣装を手掛けてきたジョルジオ・アルマーニ レディー・ガガの衣装などについて語る appeared first on WWDJAPAN.

ファストリ柳井正会長が語った「ウクライナ紛争」「企業のあるべき姿」「成長の次の一手」

 「本気で次の成長を目指す」「企業こそが平和を作る」。ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は4月14日、2022年8月期上期決算会見に登壇した。決算会見の場で半年ごとに行われる柳井会長のプレゼンテーションは、同社が今後長期的に何を目指すのか、なぜそう考えるのを知るための絶好の機会だ。コロナによる足踏み状態から次の一手へ。柳井会長のプレゼンテーションとメディアとの一問一答をまとめた。

 柳井正ファーストリテイリング会長兼社長(以下、柳井):ファーストリテイリングとして今何が最も大切だと考えているのか、今後どのような考え方で経営を進めていくのかをお話します。新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、一部の国や地域では今も拡大傾向にありますが、日本を含め多くの国では感染拡大に警戒しつつ、正常な経済活動や日常生活を取り戻そうとしています。これからは、いよいよウィズ・コロナの時代に入っていきます。この2年間、お客さまや従業員の感染防止、国内外の移動制限、物流の混乱といったことが影響し、ビジネスを思い通りに進められない状況でした。しかし、今からは新しい時代に向けて、改めて今期は新しい成長を目指していきます。

 今年の年頭、私はファーストリテイリンググループの一年の方針を「世界で稼ぐ」としました。私たちがお客さまに提供している“LifeWear”、つまり快適で豊かな生活を実現する高品質な日常着を、世界中のさまざまな国と地域で、現地の人々と一緒に作って売っていく、この姿勢をより徹底していきます。コロナの影響で、世界各地での新規出店ペースは落ちていましたが、今期から積極出店を再開し、近い将来に年間で400〜500店を作りたいと思います。

 同時に店舗とECの融合を世界各地で高いレベルで実現していきます。工場、倉庫、店頭の全ての在庫を一元化し、商品の企画から生産、物流、販売の動向、お客さまのご意見や要望、あらゆる情報を瞬時に把握し、それをもとに世界各地域のヘッドクオーターが現場で直接経営判断をしていく体制を構築します。そして、世界各地で集めた情報に基づき即座に商品化し、優れた技術を持つ世界中の生産パートナーと協力して新たな売れ筋商品を開発していきます。

 今月21日、英ロンドンのリージェントストリートに、「ユニクロ(UNIQLO)」と「セオリー(THEORY)」が同居する欧州で初の店舗がオープンします。今後、イタリアやスペイン、ドイツでも出店していきます。アメリカや東南アジアでも、中国と同様に服の分野で圧倒的なトップ企業となり、世界ナンバーワンのカジュアルウエア企業を今期で目指します。そのためのカギを握るのは人材です。世界各地で今後の会社の経営を任せられる人材が次々と育ち、私の経営を引き継ぐ次代の体制も大枠は固まってきています。世界各地で圧倒的な成長を成し遂げるために、立派に経営を遂行できる体制が整いつつあります。その点、私は何も心配しておりません。

あらゆる戦争に強く反対する

 企業の最大の意義は継続にあります。10年後、20年後、30年後、さらに次の世代まで見据える経営をする。それが本当のガバナンスであると思います。そして、上場企業の最大の目的は成長して収益を上げることです。目先の会計年度ばかりを考えて近視眼的な経営に陥らず、良い意味でのオーナーシップを維持し、より高い利益を上げ、株主の利益を守ります。少数株主の利益にも、引き続き十分な配慮をして参ります。そのために一番大切なことは、企業とは世の中にとって良いことをする存在でなければならないということです。

 まず、私たちの本業である服の事業を通じて、世界中のあらゆる人々により快適で豊かな生活を実現する。このことを徹底的に実現していきます。さらにサプライチェーンにおける人権や労働環境の尊重、気候変動などの地球環境問題、障がい者雇用、難民支援といった世界的な問題解決への取り組みを、より積極的に進めます。

 現在、ファーストリテイリングは世界27の国と地域に3500店舗以上を展開し、中国やアジアを中心に数多くの国々に生産パートナーも存在します。こうした地域では、現地のパートナーと一緒になって、多くの社員がボランティアとして社会貢献活動に参加し、現地社会に溶け込んでいます。しかし、こうした活動はまだ十分ではなく、出発点に立ったばかりですが、今後さらに力を入れていきます。

 私はあらゆる戦争に強く反対します。人々の人権を侵害し、平穏な生活を脅かすいかなる攻撃も非難します。現在行われている戦争を即座に停止し、国家間の深刻な対立をいかに解消し、どうすれば平和な世界ができるのか、世界中の人々が幸せに暮らすことができるのか、真剣にその方法を考えなければなりません。特に、日本はその役割を積極的に担うべきだと考えます。その点で企業の果たすべき役割は非常に大きいものがあります。企業にできることは限りがあるのではなく、企業にしかできないことがたくさんある。そう考えるべきです。暴力で解決できることは何一つありません。憎しみあって対立構造を作るのではなく、世界の人々が協調する。そのために企業としてできることを最大限やる。国が分断されても、企業は分断されません。むしろ分断を解消し、お互いの理解と融合を深めるのが企業活動です。

国ではなく、企業にしかできないことがある

 私たちの服の産業は平和産業です。人々の暮らしをより豊かに、楽しく、快適にする産業です。私たちの使命は、快適な普段着を継続的に人々に提供することにあります。現在のように混迷した状況にあっても、平和な社会の実現のために、一つ一つの企業、一人一人の個人が最大の努力をするべきです。そのために、私たちは世界各地で安定的に事業を継続し、経済の成長、雇用の確保に努力すると共に、緊急事態に対応するため、国連難民高等弁務官事務所を通じて(ウクライナ避難民支援のために)1000万米ドルの寄付を行い、20万点の衣料を提供しております。欧州各地で、多数の従業員有志がウクライナからの避難民の方々に直接日常の服をお届けする活動を始めています。戦火に見舞われている方々の境遇に深く思いを寄せ、今後も最大限の支援を続けていきます。

 平和は黙っていてもやってはきません。世界が一つにつながっている現代、戦争は違う国のことだから、自分は民間人だから、と傍観者になることはできません。服を変え、常識を変え、世界を変えていく。私たちの提供する“LifeWear”、そしてその基本となる“MADE FOR ALL”の核心は、服を通じて社会を変え、より良い社会を作っていく、そのこと自体にあります。平和な世界が実現しない限り、グローバルな企業として私たちが成長することは不可能です。冒頭に申し上げた世界ナンバーワンも、それでは何の意味も持ちません。

 私たちはこれまでの活動を通じて、国連難民高等弁務官事務所、国連女性機関、国際労働機関などの国際機関と長い協力関係があります。さらに、社会貢献を目的に活動する各国の民間団体、法人、世界中の心ある投資家の方々とも連携できる関係にあります。豊かで安定した社会の実現を他人任せにするのではなく、世界中のあらゆる人々との協働を通じ、自分たちの力で未来を作り出す、そのような考え方に立って今後も行動していきます。

 厳しい現実があっても、人類は必ず混乱を克服し、新しい平和で繁栄した時代がくると私は確信しております。アジアを中心に40億人の新たな中産階級が誕生しつつあります。この動きは止まることはありません。世界は確実にアジアの時代になります。発展途上国と先進国が協力し、その流れを促進し、人々の生活をより良くする、自国の都合のみを考えた国益ファーストではなく、本当の自由主義、民主主義の世界を実現する主役は、企業であり個人です。改めて、自分たちは何のために商売をするのか、企業の存在意義とは何か、自分たちの原点を深く考え、より平和な世界とより良い生活の実現に努力して参ります。今後ともご理解とご協力をお願いします。

【質疑応答】

――ウクライナ紛争など、世界情勢を今どのように見ているか。ファッション企業が何をすべきか。ファーストリテイリングには何ができるのか。

柳井:今の状況は危機的だと思いますが、世界の全てがそういうこと(悲観すべきもの)ではなく、欧州で起きたことが全世界に瞬時に伝わっているということは、(見方を変えれば)素晴らしいことでもある。ある一カ所で起きたことが世界中に瞬時に伝わり、世界中に影響を及ぼしている。そのことを世界中の人がもっと認識すべきだと思います。それぞれの役割と本質が問われる時代になっている。民間企業だから(支援が)できない、個人だからできない、ということではないと思っています。むしろ国だと国益が影響して、やりたくてもできない。民間企業や個人の方がむしろ自由にできる。ここは自由と民主主義の国ですから。その中で、本当にやってやろうと思っている企業や個人が少ないんじゃないかと思っています。

 日本は欧州から見たら極東、アメリカから見たら極西です。だからこそなんでもできるんじゃないか。日本はアジアで最初に先進国になった国ですし、ファッションにおいてもアジアで最初になった(産業や文化として成熟した)国だと思います。戦前は欧州、戦後はアメリカからファッションが入ってきて、それをうまく消化したのが日本。日本ほど情報に敏感な国はありません。日本の企業だからこそいろんな発想がきっとできると思うし、ファッション企業だからどうのということではなく、企業として個人として、できないことを考えるよりできることを考えて実行することが大事だと思っています。(ファーストリテイリングとして)できないことは何もないです。どんなことでもできると思います。日本には国益やアメリカとの軍事同盟など、いろんなものがある。国にはやりたくてもやれないことがあると思います。

――今後の価格戦略について。今春物は一部商品で値上げをしているが、今後の値上げをどう考えているか。

柳井:今の日本の経済情勢から考えて、安易な値上げはできないと思います。価格に非常に敏感ですよね。われわれは値上げはほとんどの商品でしていませんが、ほとんどしていない中でも「これは値上がりした」という情報はすぐに伝わります。それが今の現状です。ただし、原材料価格が2倍や3倍になっているなっているケースもある中で、それを今のままのプライスで売ることは不可能です。われわれも上場企業ですから、成長を目指していく中で利益がなければできません。それをどううまく努力していくか、それを考えて実行していく。ビジネスは会計年度やシーズンで考えるものではなく、もっと長期で考えるものです。2022-23年秋冬物、23年春夏物は考えに考えぬいたプライスになる。それが私の答えです。

――今後も値上げはやむを得ないということか。

柳井:やむを得ないということではないんじゃないでしょうか。考えに考え抜いたプライスならば、お客さまにご理解していただけると思います。

――中国のゼロコロナ政策が事業に与える影響は。

柳井:われわれも収益面や従業員の生活で大変困っています。しかしこれは国の政策なので、それぞれの国によって考え方は違います。やはりまずはコロナが早く収束すること、それが一番大事で、世界中で同時に(コロナに)対応していくことが重要だと考えています。

岡崎健取締役グループ上席執行役員CFO(以下、岡崎):中国の行動規制が今後どうなるかについては、我々がコントロールできることではありません。上海港からの出荷が難しくなるなど、個別の問題は出てきています。しかし起きている問題は仕方がないことなので、他の港から出荷するなどしています。中国は行動規制により休業している店もありますが、それがない地域ではかなり売り上げも戻っています。規制が明ければ経営も回復してくると思っています。短期的な業績の影響はもちろんありますが、下期全体としてはそれほど大きな心配はしていません。

――ロシアの店舗について、営業継続から一転して休業に至った経緯は。

柳井:あらゆる状況を見極めて判断しないといけません。さまざまな面で事業継続が困難になったから休業しました。商品が届かない、紛争が非常に激しくなった、さまざまな面があり、総合的に判断して休業に至ったということです。

岡崎:当初は状況を注視しながら、我々の使命である一般の方に日常着を提供すること、現地従業員の雇用という面でも営業はでき得る限り継続するというのが我々のスタンスでした。しかし、その後状況を注視する中で紛争が進み、人々の平穏な日常が脅かされるということで、営業を継続するべきではないと判断しました。

――営業休止の決定が遅れたと思っているか。

柳井:遅れてはいないと思います。皆さん勘違いされているんじゃないかと思いますが、今はいつでもどこでも誰とでも、テレビ会議で話ができる時代です。現地の状況、世界各地の状況は全て分かっています。ですから遅れるということはあり得ません。

――円安について。円安のメリットとデメリットをどう考えるか。

柳井:円安にメリットは一切ありません。日本全体から見てデメリットばかりです。今まで円安メリットといったことを言っていたのは、企業ばかりですね。しかも、それも本当のところではメリットではない。日本は世界中から原材料を仕入れて、加工して付加価値を出して売っています。そういう中で、自国通貨が安く評価されることは決していいことではありません。円安の行方については心配しています。これ以上円安が続くと、日本の財政が悪い方向にいく。そうならないように日本の財政をどうにかしないといけないんじゃないかと考えます。

The post ファストリ柳井正会長が語った「ウクライナ紛争」「企業のあるべき姿」「成長の次の一手」 appeared first on WWDJAPAN.

TikTokフォロワー420万のTakumaが新ブランド 「世界中のみんなに着てほしい」

 モデルであり、アパレルブランド「エスピナ(ESPINA)」を運営するTakumaが、ノットイコールの支援で新ブランド「アビセア(ABYSSEA)」を今春立ち上げた。同氏がデザインを手掛けた第1弾のアイテムを、ラフォーレ原宿でのポップアップストアで4月29日に発売する。Takuma はTikTokフォロワー約420万、インスタグラムフォロワー約75万(2022年4月8日現在)を抱えるインフルエンサーでもあり、ミステリアスな佇まいや鍛え上げられた肉体で、国内外の多くのファンが注目。公式SNSのコメント欄は多様な言語でにぎわっている。美意識の高い同氏が作る服には、どのようなこだわりがあるのか。本人に聞いた。

WWD:「アビセア」のデビューコレクションはどんな思いを込めてデザインした?

Takuma:一発目なので、無駄なものを取り払って、差別や片寄った偏見をなくしたいというメッセージを込めたんです。これから発表し続けていく中で今回のアイテムは基本になっていくので、ミニマルなデザインにしました。ここから徐々にアレンジしていくと思います。

WWD:特にこだわった点は?

Takuma:今までにないものを作りたかった。例えばジーンズはストレッチの効いた素材を使ってるんですけど、それでダメージ加工するのってすごく難しい。クレームが届いたりB品が出てしまうことも珍しくないので、工場からNGが出ることが多いんです。でも今回はどうしても作りたかったので、あえて難しい素材を使うことにしました。

WWD:以前から運営しているアパレルブランド「エスピナ」とはどう違う?

Takuma:「エスピナ」はファンのために作っている服で、「アビセア」は自分が作りたい服という感覚。インフルエンサーが服を作って売るだけなら、ただ人気をお金に変えているだけなんじゃないかってふと思ったんです。であれば、その発信力を社会貢献に役立てたい。だから「アビセア」の服を通して、社会が良くなるメッセージを発信していきたいんです。だからハンガーは廃材で作り、タグは紙製にして、洗濯したらボロボロになるかもしれないけど、それも味として楽しんでほしい。

WWD:生産背景は?

Takuma:全て日本生産です。価格帯はTシャツで1万円前後、パンツで2万円前後、ジャケットで2〜4万円前後と安くはなく、若いファンは買いづらいかもしれない。でも無理して工場に負担をかけたくなかったし、それでもファッション感度の高い人に着たいと思わせる服作りに挑戦したかったんです。

WWD:「アビセア」の今後の目標は?

Takuma:最終的には、世界中のみんなに着てほしい(笑)。やっぱり着る人によってそれぞれの良さが出るから、いろんな人が着ているブランドのほうがおもろいんですよね。だから「アビセア」が、男の子も女の子も、おじいちゃんもおばあちゃんも着ているようなブランドになったらいいなと思います。

大切なのは、
トレンド感と自分らしさのバランス

WWD:SNSを始めたときから意識してきたことは?

Takuma:最初から意識していたのは、自分の軸を持ちながら、トレンドのインフルエンサーを表面的にまねることです。インフルエンサーにもトレンドがあって、時代に個性が合致してフォロワーが一時的に増えても、半年くらいすると伸び悩んだり減ったりするんです。それを見ていて、もったいないなって。

 でも、トレンドばかりを追いすぎると一時的なファンしかつかんから、トレンド感と自分らしさのバランスは大事にしてたんです。それがうまくいって、インスタグラムのフォロワーは始めて半年で2万、1年経ったころには10万くらいになりました。

WWD:モデルとして表舞台に立つのと、作り手として裏方に回るのはそれぞれどんな楽しさがある?

Takuma:モデルしているときはちょっとナルシストになれます。自分をかっこいいなと思えたり、こういうのも似合うんやって気付きがあったり。新しい自分に出合える楽しさがありますね。

 でも、僕は裏方のほうが好きかな。作っているときは、自分が手掛けたものが世に出たとき、どんな反応が返ってくるかや、どれだけ反響があるかを考えながらやっているので、それも楽しいです。

WWD:自分にはどっちが向いていると思う?

Takuma:今はインフルエンサーとデザイナー半々ですが、ゆくゆくはデザイナーを本業にしたいですね。でも、今後もインフルエンサーとして発信すべきことを発信していきたい。どちらの自分も強くしたいですね。

WWD:最後に、インフルエンサーを目指す人にメッセージを

Takuma:軸をぶらさず継続することが大事。僕も今は見てくれる人がおるから「 載せなあかん!」って思うんですけど、やっぱり最初はリアクションもあまりないので、モチベーションが上がらないんです。でも、まずはその第一関門を乗り切ること。ただ、新しいことをしないと飽きられるのも早いから、挑戦し続けることと、軸をぶらさず継続するバランスが大事ですね。

The post TikTokフォロワー420万のTakumaが新ブランド 「世界中のみんなに着てほしい」 appeared first on WWDJAPAN.

写真家レスリー・キーが見た「アカデミー賞」 自ら撮影した写真とともに語る

 ファッションシューティングやセレブリティのポートレートなどを多く手がける写真家レスリー・キーが、米国ロサンゼルスで3月27日(日本時間28日)に開催されたアカデミー賞授賞式に初出席した。そこで体感した興奮と感動、そして、時代を象徴するかのような受賞作や受賞者、ウィル・スミスのビンタ事件の瞬間などについて、現地のレスリーに話を聞いた。

――ロサンゼルスのドルビー・シアターで行われたアカデミー賞授賞式に出席することになった経緯は?

レスリー・キー(以下、レスリー):アメリカのNetflixのトップから招待され、授賞式に出席するとともに、レッドカーペットや会場で数々の俳優や映画監督などセレブリティを間近に撮影する機会をもらった。実は今年、拠点をNYに移す計画をしていた。その前にロサンゼルスで行われたアカデミー賞授賞式と、ラスベガスで開催されたグラミー賞授賞式という、世界最高峰の映画祭と音楽祭に出席できた。アメリカに引き寄せられる何かがあったのだと思う。

――授賞式に出席するために渡米したわけだが、会場や街の雰囲気などで感じたことは?

レスリー:魔法の時間だった!映画もセレブリティも素晴らしかった。エンタメ界もコロナのパンデミックで2年間苦しい時間を過ごしたが、、ハリウッドがどのように業界を再建したかを知ることができる、忘れられない経験になった。本番前に、バックステージの撮影もしたが、随所に感動の場面があった。たまたまオスカーのステージを作ったスタッフの中に知り合いがいたのだが、コロナ禍ではスタッフも仕事がなくなり、不安を抱え、生活苦に脅かされる人々も少なくなかった。久しぶりにエンタメの仕事の現場に戻れたようで、一生懸命レッドカーペットを敷いたり、ステージやライティング、音響をセットしたりしている人々がみな嬉しそうだったのが印象的だった。

 参加者は事前にPCR検査をしっかり行っており(私の場合は5日前と2日前)。コロナの感染拡大防止の意味もあり、客席を半分に絞り込んでゆとりをもたせる一方、開催時間は4~6時間ぐらいだったものを2時間ちょっとに短縮したので、かなり凝縮されたものになっていた。

 NHKの「SWITCHインタビュー 達人達」でYOSHIKI(ヨシキ)と対談するために前回渡米した昨年9月には、マスクもワクチンパスも隔離も必要だった。それが今回は全部いらなくなっていた。人類の生活が正常に戻ってきていることを体感できた。人の顔や表情が見えるようになって、ハリウッドのブルバードや海などいろいろなところを黒人、白人、ヒスパニック、アジア人など多様な人々が歩いている姿は、嬉しいしあるべき姿だなと思った。アメリカを訪れる前にパリコレに行ったが、マスクをしている人は少ないし、街もカフェも人が溢れていて活気があった。比べることではないけど、日本はコロナからの回復が遅れていて、楽天ファッションウィークも見に行ったけれども盛り上がりきれていなかった。2年間の冬眠の時期は長すぎた。でも、復活の時がもうすぐ訪れるということを、業界の仲間たちに伝えたい。

――受賞作で特に印象に残ったのは?

レスリー:やはり、アカデミー賞作品賞(脚色賞、助演男優賞も)を獲得した「コーダ あいのうた」だ。日本の映画館で3回観て、3回とも泣いたくらい、ここ最近で一番好きな作品だった。名前が告げられた瞬間、セレブがみなスタンディングオベーションで讃えていて鳥肌が立った!また、助演男優賞を受賞したのは、主人公で耳の聞こえない父親役を演じたトロイ・コッツァーだ。彼自身がろうあ者であり、男性ろうあ者として初めてオスカーを獲得した。受賞の瞬間、みんなが彼に向けて手をひらひらと振りながら、声援を送っていたのは感動した。みんなにもぜひ観て欲しい。また、村上春樹さん原作の「ドライブ・マイ・カー」が国際長編映画賞を受賞したのは本当にうれしい。日本映画が世界的に認められたことも、名作として村上春樹さんの名前が世界に残ることも感無量!邦画界の励みにもなると思った。

――今回のアカデミー賞では、ダイバーシティ&インクルーシブにもスポットが当たっていた。

レスリー:ものすごく感動したのは、アリアナ・デボーズが「ウエスト・サイド・ストーリー」で助演女優賞を獲得したこと。 “クィアの有色人種”として歴史を塗り替えたといわれている。過去にジョディー・フォスターなども受賞しているが、カメラの前でも堂々とLGBTを公表している人物の受賞は初めて。真っ赤なドレスも素晴らしかった。また、94回の歴史の中で、初めて女性が司会を務めた。エイミー・シューマー、レジーナ・ホール、ワンダ・サイクスの3人で、以前からエイミーの番組を観ていたので親しみがもてた。映画界やアカデミー賞も、白人社会や男性社会、セクハラなどと戦ってきた。2022年はほぼ2年ぶりに、会場の半分ぐらいだったけれども観客も入れて、リアル開催した。この2年間は、いろいろな意味で「反省」の期間だったのかもしれないと思う。

 この数年、BLM(ブラック・ライブズ・マター)問題から、アジアンヘイトという大問題が起きる中で、20年の「パラサイト」(韓国)、21年の「ミナリ」(アメリカ製だが、韓国人・韓国語が主で韓国映画とみなされている)に続き、22年には「ドライブ・マイ・カー」(日本)とアジア映画がさまざまな部門で受賞したことも大きな意味を持つ。映画界、音楽界など、われわれクリエイターのプラットフォームとなる方々が、平和や愛、平等やダイバーシティのメッセージを込めていることが随所に現れていて、すごく攻めているなと思った。ダイバーシティ&インクルーシブは私の生活や活動のキーワードでもある。自分もクリエイターとして、アジア人として、アジアに活躍の場を与えたり脚光を浴びる機会を作ってくれたアカデミー賞のコミッティ(協会)に感謝したい。

 ちなみに、アジア系メディアの人に聞いた話だが、これまでアメリカメディア以外はなかなか取材がしにくい部分もあったようだが、今回は韓国、中国、フィリピン、タイなど、アジアのメディアもこれまでより多く入っているとのことだった。

――アカデミー賞授賞式では、さまざまな企画や仕掛けも注目されている。

レスリー:スノーボード界のレジェンドのショーン・ホワイトと、サーフィン界のレジェンド、ケリー・スレーター、そして、スケート界のレジェンド、トニー・ホークという、横ノリ系のレジェンド3人がプレゼンテーターとして登場し、60周年を迎えた「007」やジェームズ・ボンドへのオマージュが行われたシーンも良かった。もう一つ、50周年を迎えた「ゴッドファーザー」を讃えて、アル・パチーノ、フランシス・フォード・コッポラ、ロバート・デ・ニーロの3人が並んだシーンも忘れ難い。

――レッドカーペットで特に印象的だったのは?

レスリー:ニコール・キッドマンと、ペネロペ・クルスだ。入ってきた瞬間に周りの空気が一変した。ニコールは「愛すべき夫妻の秘密」で主演女優賞にノミネートされていたのだが、夫のキース・アーバンと登場。少しくすんだベビーブルーで、背中を大胆に開けつつ、長くリボンを垂らしたドレス姿はとても美しかった。テニス女王のセリーナ&ビーナス・ウィリアムズ姉妹も赤と白の対照的なカラーのドレスで際立っていた。その父を題材としたスポーツ映画「ドリームプラン」(原題は「KING RICHARD」)がノミネートされていたり、夫婦、姉妹など、今まで以上に明確にファミリーに対する意識の高まりを感じた。

――これはどうしても聞いておきたいのだが、「ドリームプラン」で主演男優賞を受賞したウィル・スミスが、プレゼンターのクリス・ロックを平手打ちした事件を目の当たりにしたわけだが、現場では何が起こっていたのか?

レスリー:あのハプニングはあまりにも突然すぎて……。わずか2分の出来事だったが、こんなに問題になり考えさせられることになるとは思わなかった。ウィル・スミスは撮影したこともあるし、彼の歴代出演してきた映画も好きで。今回の「ドリームプラン」は、スラム街から抜け出すために独学でテニスを学び、ビーナスとセリーナをテニス界の女王姉妹に育てた父、リチャード・ウィリアムズの生き方や家族の奇跡の物語。映画もウィル・スミスの演技も素晴らしかったし、受賞してもらいたいと思っていた。脱毛症で坊主頭にしていた妻のジェイダ・ピンケット・スミスに対して発した「ジェイダ、愛しているよ。『G.I.ジェーン2』で君を見るのが待ちきれない」と発言したクリス・ロックのシニカルなジョークには、会場も笑ったし、ウィル・スミスも一瞬笑っていたが、ジェイダはあきれたような傷ついたような顔をしていた。ウィル・スミスの平手打ちは暴力だったが、気持ちはわかる。ドキュメンタリー賞のプレゼンテーターとして登壇していたクリス・ロックは、アメリカでトップクラスのコメディアンで、映画監督や俳優業もしているが、日本で明石家さんまさんやビートたけしさん、マツコ・デラックスなどもアーティストを揶揄することはあるけれど、他人の妻、しかも、病気のことを知らずにちゃかしたり皮肉を言ったりすることはしてはいけないこと。芸能人として勉強不足だった。

――ウィル・スミスの行動を誰も止めることはできなかったのか?

レスリー:今回の来場者のうち、大御所俳優は、名誉賞を受賞してオスカー俳優となったサミュエル・L・ジャクソンと、アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ、ケビン・コスナーなどだったが、彼らは皆、シニア層。トップ俳優はといえば、オスカーの最有力と言われて6部門にノミネートされていた「ドリームプラン」に主演したウィル・スミスであり、主演男優賞の大本命だった。会場の一番前、ど真ん中に座っているのが彼だった。それだけステージに近かったので、誰が止めに行っても間に合わなかった。ABCテレビ局が、これはやばいと思って、テレビ放送では音を消したが、会場には感情的になったウィル・スミスのFワードと言われる放送禁止用語が響いてしまった。スポーツ界で尊敬される立派なお父さんのロールモデルを演じていたのに、輝かしい瞬間に、その映画や功績まで傷つけてしまった。主演男優賞の受賞コメントや終了後にSNSなどを通じて謝罪したり、アカデミー会員から脱退したりもしているが、とても残念。BLM問題が何年も続いているが、白人社会といわれているアカデミー賞やアメリカの様々なメディアも雑誌の表紙、映画の主役にも黒人が台頭している。「ブラックパンサー」の続編も年内に公開される予定で話題になっている。輝かしい場で、黒人2人がばかばかしいことをしてしまったのは、個人的に悔しかった。

――ちなみに、冒頭でNYに拠点を移すと言っていたが、その決意をしたのはなぜ?

レスリー:コロナ禍だったけれど、2020~2021年にかけて、写真家20周年の集大成として写真集を出すことと、多くのアーティストや関係者に参加してもらってチャリティイベントを兼ねた自分の結婚披露パーティを開くことができた。われわれクリエイターは、難しい状況の中でも、その時代や環境の中で、闘いながら、困難を乗り越え、自分が感じたものを表現し続けることが大切だ。立ち止まらず、それをその乗り越えたことで、「ギャップ(GAP)」のSDRs、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)のキャンペーンや、羽田空港でのD&I写真展なども経験させてもらった。2022年は日本にきて30年の節目の年。次はアメリカに拠点を移して活動したいと思った。

 実は歴史のある雑誌の日本版が今夏創刊される。撮影はこれからだが、しっかりとハリウッドの世界を日本の雑誌で届けるためのリサーチのために来た。これまでパリコレ、ミラノコレなど10年以上撮影してきたので、ファッションの世界はよくわかった。これからフォトグラファーとして、ハリウッドの情報を日本に届ける。4~7月まで、いろいろな俳優の撮影を予定している。ハリウッドのファッションを日本につなげる橋渡し役になりたい。楽しみにしていてほしい。

レスリーが選んだ、2022年オスカーのレッドカーペットに登場した22人のベスト・ハリウッドスターの豪華ドレス&スーツスタイル

レスリー・キー/フォトグラファー
PROFILE:シンガポール出身。1994年に来日。98年にフォトグラファーとしての活動を開始。ファッションや広告などの分野で、日本を始め、アジア各国やニューヨークなどで精力的に活動

The post 写真家レスリー・キーが見た「アカデミー賞」 自ら撮影した写真とともに語る appeared first on WWDJAPAN.

特異性は生まれ持った力 モデルTAIRAが語る「多様性という言葉が必要ない社会へ」

 ルミネと「WWDJAPAN」が「MOVE ON」プロジェクトの一環として3月2日に行ったイベント「Next Generations Forum 2022」には、 “ファッション&ビューティ業界の次代を担う存在”として、「WWDJAPAN」が2月14日号でネクストリーダーに選出していたモデルのTAIRAも登壇した。2021年春夏ウィメンズの「プラダ(PRADA)」で、鮮烈なデビュー果たしたTAIRA。ここでは、当日TAIRAがビデオメッセージで語った内容のダイジェストを紹介する。セッションの全容は、このページから登録すれば4月24日まで無料で視聴ができる。

WWD:かつてはジェンダー・ノンバイナリー(性自認が男女どちらにも当てはまらないこと)という1つの個性を、コンプレックスに思うことがあったか。

TAIRA:非常にセンシティブな子どもだったため、周りの友達と自分を比べて「なんで自分はこうじゃないんだろう」といったコンプレックスがあった。その中でモデルにスカウトされたことがきっかけとなり、自分の少し変わっている部分を力に変えることができるようになったし、今では生まれ持った力だと信じることができるようになっている。ファッション業界で特にモデルは、皆さまざまなコンプレックスを抱えている。「気にすることはない」と軽くあしらうのではなく、逆に寄り添って発言をするようにするなど、自分も気をつけている。コンプレックスは皆持っているもの。そこにフォーカスするのではなく、何が自分にとって武器なのか、何が強いのか、そちらに目を向けることのほうが大切だと感じている

WWD:今後、社会はどのように変わると思うか。

TAIRA:今は多様性という言葉がすごく盛んに使われることが多く、自分の強みとしても多様性でランウエイショーなどにキャスティングしていただくことも多いが、ゆくゆくは多様性という概念自体がない社会になってほしい。

問い合わせ先
ルミネ代表電話
03-5334-0550

The post 特異性は生まれ持った力 モデルTAIRAが語る「多様性という言葉が必要ない社会へ」 appeared first on WWDJAPAN.

アートとファッションを自然体で飛び越える「リュウノスケオカザキ」 「業界の垣根は重要ではない」

 ルミネと「WWDJAPAN」が「MOVE ON」プロジェクトの一環として3月2日に行ったイベント「Next Generations Forum 2022」には、 “ファッション&ビューティ業界の次代を担う存在”として、「WWDJAPAN」が2月14日号でネクストリーダーに選出していた「リュウノスケオカザキ(RYUNOSUKEOKAZAKI)」の岡﨑龍之祐デザイナーも登壇した。アートとファッションの枠を超えて独自のクリエーションを追求する岡﨑は、若手デザイナーの世界的な登竜門「LVMHプライズ」でも8組のファイナリストに選出されている。当日、岡﨑がビデオメッセージで語った内容のダイジェストを紹介する。セッションの続きは、このページから登録すれば4月24日まで無料で視聴ができる。

WWD:ファッションとアートをどう学んできたのか。

岡﨑龍之祐(以下、岡﨑):東京藝術大学のデザイン科だったので、デザインを学びながらアートに触れる機会も多い環境だった。服作りは独学だが、表現という意味ではアートもファッションも似たようなもの。両方をいろいろな角度から見て、作り続けてきた。

WWD:なぜファッションに引かれるのか?

岡﨑:ファッションの自由さ、不思議さ、人が着ることで自分を表現するのが面白いと思ったから。自分自身ではアートとファッションの垣根を超えて表現しようという意識はなく、自然体でモノを作っているだけ。アートとファッションは業界や市場は異なるけれど、いち表現者として重要なことではない。

WWD:日常で着られるアイテムは構想しているか。

岡﨑:いつかは作ってみたいが、今は自分の思いが高純度で乗ったピースを作り続けたいと考えている。

問い合わせ先
ルミネ代表電話
03-5334-0550

The post アートとファッションを自然体で飛び越える「リュウノスケオカザキ」 「業界の垣根は重要ではない」 appeared first on WWDJAPAN.

たんすに眠るブランド品を世界中に売る 「ブランディア」社長に聞く

 ブランド品などのリユース事業「ブランディア(BRANDEAR)」を運営するデファクトスタンダード(東京、仙頭健一社長)は、海外での販売を強化する。米国、欧州、中国、東南アジアなどの有力なマーケットプレイスに出店し、世界的に高まりを見せるリユース市場での存在感を高める。経営トップとして海外戦略の旗を振るとともに、自ら中国向けのライブコマースにも出演する仙頭社長に聞いた。

WWD:ブランド品のリユース企業は多いが、デファクトスタンダードの強みは?

仙頭健一社長(以下、仙頭):ブランディアはお客さまの自宅の不要品を宅配で送ってもらうスタイルで始まった。段ボール箱1個に20点前後の品物が詰められて届くことも珍しくない。いかにスピーディーに査定し、いかに効率よく出荷の準備に持っていくか。しかも中古品なので品物もコンディションも一つ一つ異なる。1日1万点以上の品物を手際よくさばく。そのノウハウは当社ならだと思う。

WWD:高級バッグ、アパレル、時計、ジュエリー、服飾雑貨まで取り扱うアイテムは幅広い。

仙頭:価格帯(小売価格)は1000円台から1000万円を超えるものまである。カジュアルブランドからハイブランドまで7000ブランド以上取り扱う。正直にいって面倒くさい(笑)。(他社のように)高級ブランドに絞った方が楽だけど、これまでに延べ300万人以上のお客さまに利用されてきた。お客さまが望む幅広いリユース品の売買で、循環型消費の促進に貢献していきたい。

WWD:コロナによる影響はあるか。

仙頭:宅配買い取りの利用者は増えた。巣ごもり生活の浸透によって断捨離の意識が広まり、使っていない品物を現金化したいというニーズが高まった。一方、販売については苦戦している。当社はブランド品が主力なので人と会う機会が減ってしまうと購入意欲が落ちる。

WWD:売りたい意欲は高いけれど、買いたい意欲は低い。

仙頭:当社に限らずファッションカテゴリーは一部を除き厳しいと認識している。でも海外での販売は順調に伸ばしている。デファクトスタンダードは(20年に)BEENOSの100%子会社になってから戦略転換した。「海外強化」と「高単価シフト」の2本柱の戦略を推進する。

 これまでは国内で買い取った品物を国内で販売していた。だが、今後の日本の人口減少を考えれば、リユースへの熱量が高まる海外市場に打って出るべきだと判断した。リユース企業では買い取ったものをtoB(企業)に売るか、toC(消費者)に売るかの2通りがある。当社の場合は元々の強みであるtoCの市場を海外でも取っていくことを選んだ。海外の有力マーケットプレイスを通じて販売する。販売における海外比率はそれまで6%程度だったが、直近(21年10〜12月期)は24.4%に高まった。比率だけでなく、具体的な数字はいえないが海外のトップライン(売上高)自体が伸びている。25年には50%を目指している。

WWD:もう一つの柱である高単価シフトの理由は?

仙頭:これもシンプルにいうと海外で売るためだ。シッピングコスト(輸送費や関税など)を勘案すると、海外では高単価の品物でないと採算が合わない。海外のお客さまに購入のメリットを感じてもらうためには高単価シフトが欠かせない。そのため宅配買い取りだけでなく、買い取り専門店やオンライン査定を通じて、高単価の品物を集めるように努めている。

WWD:リアルの買い取り専門店は3月にオープンした京都四条河原町店で12店になった。

仙頭:今期(22年9月期)には計15店舗になる見通しだ。高単価シフトの戦略に基づけば、対面で接客しながらていねいに査定するプロセスが大切になる。宅配買い取りは便利だけど、何十万円の高額品を宅配で取り引きするのに抵抗を持つ方は多い。宅配買い取りと店舗買い取りでは、買い取り単価が10倍も違う。またオンラインでも人を介した査定が行える「ブランディアベル(BRANDEAR)」も運営している。オフライン、オンライン問わずに買い取りの間口を広げている。

WWD:海外販売はどこで伸ばしている?

仙頭:既存チャネルと新規チャネル両方で伸ばしている。もともと出店していた米国のイーベイ(E BAY)、新しく取り組みだした欧州の仏ヴェスティエール・コレクティブ(VESTIAIRE COLLECTIVE)、中国のTモールと京東全球購(JD WORLD WIDE)、東南アジアのショッピー(SHOPEE)など。高級時計専門のドイツ初のマーケットプレイス「クロノ24(CHRONO24)」にも出品を開始した。現状は米国4割、欧州2割、中国2割、東南アジアその他2割くらいになる。伸び代はどこも大きいが、特に中国は新品市場に比べた中古品市場の比率が5%程度と言われており、飛躍的な成長が見込まれる。国や地域、マーケットプレイスごとにコミュニケーションは異なる。柔軟に対応することが大事だ。例えばイーベイでは価格に対するリクエストが細かい。

WWD:日本を拠点にするメリットはあるのか。

仙頭:希少な高級ブランド品をお持ちのお客さまが多い。大事に扱われているためコンディションがいい。商品のコンディションは販売価格に直結しており、それだけ良い品物が確保できる。特に中国のお客さまはコンディションを重視し、日本からの出品に安心感がある。米国のお客さまは傷や劣化の具合をきちんと説明し、価格に納得すれば買ってくださる。同じコンディションのものなら、日本よりも海外の方が高く売れる。

WWD:蓄積された膨大なデータが武器になる。

仙頭:その通り。オークションサイトであれば、どのような商品がいくらで落札されたか。この販売データが蓄積されると、どこの国・地域のマーケットプレイスにどの商品を出品するか見極められる。求められるものを高く買い取ることも可能になり、結果として買い取りのお客さまにも還元できる。まず高く買い取ることがお客さまの最大の願いであり、そこから逃げてはいけない。そして企業としてサステナビリティへの姿勢も明確に打ち出す。数ある買い取りサービスから「ブランディア」が選ばれるようになる。そんな好循環が生まれる。

WWD:親会社BEENOSとの連携は?

仙頭:BEENOSは日本の越境ECのリーディングカンパニーといってよい。グループの中核会社tensoを筆頭に日本から海外、海外から日本といった越境に伴う言語、決済、情報、物流、商習慣などの課題を克服するノウハウを持ち合わせている。海外のマーケットプレイスにつなぐだけは売れない。それぞれの国の事情に合わせた最適な販売戦略を確立できることが、グループとしての強みだ。

The post たんすに眠るブランド品を世界中に売る 「ブランディア」社長に聞く appeared first on WWDJAPAN.

ユーチューバーあさぎーにょが語るファンと自身の関係性 近い距離での交流が原動力

 ルミネと「WWDJAPAN」が「MOVE ON」プロジェクトの一環として3月2日に行ったイベント「Next Generations Forum 2022」には、 “ファッション&ビューティ業界の次代を担う存在”として、「WWDJAPAN」が2月14日号でネクストリーダーに選出していたユーチューバーで「ポピー(POPPY)」ディレクターのあさぎーにょも登壇した。音楽、ファッション、映像制作とどんどん活躍の幅を広げるあさぎーにょ。ここでは、当日あさぎーにょが語った内容のダイジェストを紹介する。セッションの続きは、このページから登録すれば4月24日まで無料で視聴ができる。

WWD:多彩な分野の仕事を手掛けているが、それについて悩んでいたこともあったと聞く。

あさぎーにょ:ユーチューブをはじめ、「ポピー」というアパレルブランド、映画の制作、音楽、企業CMのディレクションまで、仕事の幅がどんどん広がっている。全部やりたくて全てに全力投球しているが、「どれかに絞らなくていいのかな?」という葛藤もあった。

WWD:その葛藤はどのように乗り越えたのか。

あさぎーにょ:私自身の活動のコンセプトは“ワクワクを抱きしめよう”。新しいことを始めるたびに、仲間を探して一緒に取り組んできた。そうした仕事と活動が仲間や同志を増やし、私自身の可能性も広げている。

WWD:ユーチューブやSNSの向こうにいるファンはどんな存在か。

あさぎーにょ:ファンの方や、ユーチューブやSNSを通じ、コメントやリアクションをくださる方は、ずばり友達という感覚。発信することで、ファンの方がコメントをくれて、それが私らしさを際立たせてくれる。私が可能性を広げられるのは、みなさんがリアクションをくれるからだと思っている。

WWD:自身が手がける「ポピー」の2022年春夏のコンセプトは“芽生え”。どんな思いを託したのか。

あさぎーにょ:私自身が、ファンの方々のリアクションによって自分の殻を破り、可能性を広げてきたように、「ポピー」も厚くなってしまった(ファンの方々の)殻を破る、そんな後押しができたらいいなという願いを込めた。クールなスタイルへの憧れもあるが、それよりもファンの方と近い距離で一緒にコミュニケーションを取っていきたい。それはずっと変わらない、私の活動の根幹にある。

問い合わせ先
ルミネ代表電話
03-5334-0550

The post ユーチューバーあさぎーにょが語るファンと自身の関係性 近い距離での交流が原動力 appeared first on WWDJAPAN.

ユーチューバーあさぎーにょが語るファンと自身の関係性 近い距離での交流が原動力

 ルミネと「WWDJAPAN」が「MOVE ON」プロジェクトの一環として3月2日に行ったイベント「Next Generations Forum 2022」には、 “ファッション&ビューティ業界の次代を担う存在”として、「WWDJAPAN」が2月14日号でネクストリーダーに選出していたユーチューバーで「ポピー(POPPY)」ディレクターのあさぎーにょも登壇した。音楽、ファッション、映像制作とどんどん活躍の幅を広げるあさぎーにょ。ここでは、当日あさぎーにょが語った内容のダイジェストを紹介する。セッションの続きは、このページから登録すれば4月24日まで無料で視聴ができる。

WWD:多彩な分野の仕事を手掛けているが、それについて悩んでいたこともあったと聞く。

あさぎーにょ:ユーチューブをはじめ、「ポピー」というアパレルブランド、映画の制作、音楽、企業CMのディレクションまで、仕事の幅がどんどん広がっている。全部やりたくて全てに全力投球しているが、「どれかに絞らなくていいのかな?」という葛藤もあった。

WWD:その葛藤はどのように乗り越えたのか。

あさぎーにょ:私自身の活動のコンセプトは“ワクワクを抱きしめよう”。新しいことを始めるたびに、仲間を探して一緒に取り組んできた。そうした仕事と活動が仲間や同志を増やし、私自身の可能性も広げている。

WWD:ユーチューブやSNSの向こうにいるファンはどんな存在か。

あさぎーにょ:ファンの方や、ユーチューブやSNSを通じ、コメントやリアクションをくださる方は、ずばり友達という感覚。発信することで、ファンの方がコメントをくれて、それが私らしさを際立たせてくれる。私が可能性を広げられるのは、みなさんがリアクションをくれるからだと思っている。

WWD:自身が手がける「ポピー」の2022年春夏のコンセプトは“芽生え”。どんな思いを託したのか。

あさぎーにょ:私自身が、ファンの方々のリアクションによって自分の殻を破り、可能性を広げてきたように、「ポピー」も厚くなってしまった(ファンの方々の)殻を破る、そんな後押しができたらいいなという願いを込めた。クールなスタイルへの憧れもあるが、それよりもファンの方と近い距離で一緒にコミュニケーションを取っていきたい。それはずっと変わらない、私の活動の根幹にある。

問い合わせ先
ルミネ代表電話
03-5334-0550

The post ユーチューバーあさぎーにょが語るファンと自身の関係性 近い距離での交流が原動力 appeared first on WWDJAPAN.

ユーチューバーあさぎーにょが語るファンと自身の関係性 近い距離での交流が原動力

 ルミネと「WWDJAPAN」が「MOVE ON」プロジェクトの一環として3月2日に行ったイベント「Next Generations Forum 2022」には、 “ファッション&ビューティ業界の次代を担う存在”として、「WWDJAPAN」が2月14日号でネクストリーダーに選出していたユーチューバーで「ポピー(POPPY)」ディレクターのあさぎーにょも登壇した。音楽、ファッション、映像制作とどんどん活躍の幅を広げるあさぎーにょ。ここでは、当日あさぎーにょが語った内容のダイジェストを紹介する。セッションの続きは、このページから登録すれば4月24日まで無料で視聴ができる。

WWD:多彩な分野の仕事を手掛けているが、それについて悩んでいたこともあったと聞く。

あさぎーにょ:ユーチューブをはじめ、「ポピー」というアパレルブランド、映画の制作、音楽、企業CMのディレクションまで、仕事の幅がどんどん広がっている。全部やりたくて全てに全力投球しているが、「どれかに絞らなくていいのかな?」という葛藤もあった。

WWD:その葛藤はどのように乗り越えたのか。

あさぎーにょ:私自身の活動のコンセプトは“ワクワクを抱きしめよう”。新しいことを始めるたびに、仲間を探して一緒に取り組んできた。そうした仕事と活動が仲間や同志を増やし、私自身の可能性も広げている。

WWD:ユーチューブやSNSの向こうにいるファンはどんな存在か。

あさぎーにょ:ファンの方や、ユーチューブやSNSを通じ、コメントやリアクションをくださる方は、ずばり友達という感覚。発信することで、ファンの方がコメントをくれて、それが私らしさを際立たせてくれる。私が可能性を広げられるのは、みなさんがリアクションをくれるからだと思っている。

WWD:自身が手がける「ポピー」の2022年春夏のコンセプトは“芽生え”。どんな思いを託したのか。

あさぎーにょ:私自身が、ファンの方々のリアクションによって自分の殻を破り、可能性を広げてきたように、「ポピー」も厚くなってしまった(ファンの方々の)殻を破る、そんな後押しができたらいいなという願いを込めた。クールなスタイルへの憧れもあるが、それよりもファンの方と近い距離で一緒にコミュニケーションを取っていきたい。それはずっと変わらない、私の活動の根幹にある。

問い合わせ先
ルミネ代表電話
03-5334-0550

The post ユーチューバーあさぎーにょが語るファンと自身の関係性 近い距離での交流が原動力 appeared first on WWDJAPAN.

東レが“ウルトラスエード”の5つの価値観を解き明かす動画プロジェクト開始

 東レは4月4日から、人工皮革“ウルトラスエード®(Ultrasuede®以下、ウルトラスエード)”の公式ウェブサイトで、インタビュー動画「Beyond the Material」を公開している。これは1970年にデビューした“ウルトラスエード”が50年以上育んだ5つの価値観を、同素材を採用する著名なクリエイターの声を通して解き明かすプロジェクトだ。その価値観とは、1「東レの代表ブランドとして。」、2「豊かな社会を次世代へ。」、3「ジャパンクオリティで世界を繋ぐ。」、4「技術革新で、無限の広がりへ。」、5「お客様と価値を高め合う。」で、6月までに5本の動画を順次公開する。東レの代表ブランドとしてウルトラスエードが掲げる「素材の進化で、まだ見ぬクリエイションを共に。社会をより豊かに、美しく。」というビジョンの背景となっている作り手の想いを改めて見つめ直すことで、クリエイションに貢献し続けられる素材としての責任や意志を伝えたいという。

宮前義之が語る
歴史ある素材の魅力

 第1弾は一つ目の価値観「東レの代表ブランドとして。」について、「エイポック エイブル イッセイ ミヤケ(A-POC ABLE ISSEY MIYAKE)」の宮前義之デザイナーにインタビューを実施。宮前が“ウルトラスエード”とイッセイ ミヤケの関わりをはじめ、素材の魅力や新たな発見、長い歴史の中でイッセイ ミヤケがなぜいつの時代も“新しい”のかなどを語った。両社の伝統と革新がもたらすクリエイションを垣間見ることができる約5分間の動画になっている。 

“ウルトラスエード®︎ヌー”を
採用した次世代のサンダル

 動画の中でも紹介されたサンダルは、日本の草履から着想を得て、素足で履くことのできる男女兼用のサンダルへとアップデートしたものだ。こちらは、アッパーに銀面調人工皮革“ウルトラスエード®︎ヌー(Ultrasuede®nu以下、ヌー)”を採用。表側が部分植物由来のポリエステル、裏側がリサイクルポリエステルからなる“ヌー”は、履いた時に感じる肌への温もりやフィット感が非常に良く、宮前デザイナーも納得の出来上がりと語っている。

技術革新が生んだ上質な素材感と
多彩な加工バリエーション

 “ウルトラスエード”はジャパンクオリティの最先端素材として技術革新を繰り返しながら進化してきた高感度・高機能素材だ。スエード調人工皮革“ウルトラスエード”に加えて、銀面調人工皮革“ヌー”をラインアップし、いずれも柔らかな風合いと手触りが特徴。ポリマー・リサイクルシステムの導入や植物由来ポリマーへの移行など、環境負荷低減と共に、産学連携活動などの社会活動も積極的に行う。近年は、天然皮革や合成皮革を超える特性を持った素材としてアパレルやバッグ、雑貨、靴、インテリア、自動車内装、コンシューマーエレクトロニクスなど、幅広い用途で採用されている。

 なお、公式サイト上では通常在庫しているアイテムのスワッチサンプルの無料提供も実施している。

TEXT:YUKI KOIKE
問い合わせ先
東レ ウルトラスエード事業部
03-3245-5401

The post 東レが“ウルトラスエード”の5つの価値観を解き明かす動画プロジェクト開始 appeared first on WWDJAPAN.

ソンミが語る「肌が変われば、世界が変わる」 新ブランド「クレイヴュ」立ち上げ

 ルミネと「WWDJAPAN」が「MOVE ON」プロジェクトの一環として3月2日に行ったイベント「Next Generations Forum 2022」には、 “ファッション&ビューティ業界の次代を担う存在”として、「WWDJAPAN」が2月14日号でネクストリーダーに選出していたソンミ「ミース(MEETH)」CEO兼美肌研究家も登壇した。炭酸ガスパックを看板商品に、女性からの支持を急速に高めている「ミース」。ここでは、当日ソンミ CEOが語った内容のダイジェストを紹介する。セッションの続きは、このページから登録すれば4月24日まで無料で視聴ができる。

WWD:自身のコンプレックスからスキンケアの「ミース」を立ち上げた。

ソンミ:20代の頃に芸能活動をしていた時期がある。そのころは、モデルや女優と自分の容姿を比べてしまうことが多く、自分の欠点にばかり目が行きがちだった。そんな中で、コンプレックスを克服しようと努力するよりも自分の強みはなんだろうかと考え、褒めてもらうことが多かった肌を磨こうと思った。肌が荒れていると人前にも出たくなくなってしまう。自分に自信を持ちたくて化粧品を探したが、自分が使い続けたい化粧品は片手に収まるほどしかなかった。「だったら自分で作ってみよう!」と思ったのが、ブランドを立ち上げたきっかけだ。正しいケアをすれば、肌は必ず応えてくれる。肌が健やかになることで、私は自分が好きになった。自分に自信が持てると笑顔が増え、それによってもしかしたら世の中さえも変えていくことができるかもしれない。そんな可能性を感じている。

WWD:今日(3月2日)は「ミース」の立ち上げから3年という節目の日。さらに本日、「ミース」に続く新ブランド「クレイビュ(CRAAYBEAU)」も発表した。

ソンミ:“狂おしいほどに美しい”をコンセプトに、“最高の美肌”をサポートする最高峰ライン「クレイビュ」を立ち上げた。自分が30代に入り、「きれいになるために努力することは恥ずかしいことなのか?(いや、違う)」と思わされるような出来事があった。私の周りにいる美しい人は正しい努力をしているし、年齢関係なく肌がきれいな人はかっこいいとも思っている。年齢に応じて、生き方も変わるし求める美容も異なってくる。「クレイビュ」は、自分の限界を超えていきたいという気持ちを後押ししていくようなブランドだ。

問い合わせ先
ルミネ代表電話
03-5334-0550

The post ソンミが語る「肌が変われば、世界が変わる」 新ブランド「クレイヴュ」立ち上げ appeared first on WWDJAPAN.

ファッション界も注目する不思議でかわいいぬいぐるみ「ドールズサン」

 「ドールズサン(DOLLSSAN)」は、手作りのぬいぐるみをインスタグラムや展示イベントを中心に発表している“ぬいぐるみメゾン”だ。ドールズさんこと那須野さつきの作品は、耳に安全ピンを大量につけたコアラや、手足に4つの目があるゾウなど、かわいいのか、ポップなのか、毒々しいのか、一言では言い表せない不思議な魅力がある。その個性が徐々に注目を集め、13日間の展示で1万円前後のぬいぐるみ100体が完売。さらに、パリ・メンズ・コレクションにも参加しているファッションブランド「キディル(KIDILL)」とはぬいぐるみをドッキングさせたウエアを共作し、「ビームス(BEAMS)」主催の企画展に参加するなど、ファッション界からも注目を集めている。型破りなぬいぐるみの数々はどのようにして誕生しているのか。そのクリエイションに迫るべく、那須野にインタビューを行った。

WWD:ぬいぐるみを作り始めた経緯は?

那須野さつき氏(以下、那須野):美術の勉強をしていたと思われることも多いのですが、もともとトリマーの学校に通っていたんです。毛のフワフワを形作ることは楽しかったのですが、犬の扱い方が本当に難しく感じて、生き物にハサミを向けるのが怖くなってしまった。トリマーとして就職したものの、働いた期間は短かったですね。

 これからどうしようかと考えていたとき、ふいに幼い頃にフェルトで人形を作るのが好きだったことを思い出したんです。そして偶然入った喫茶店でクリエイターが集まるイベントのチラシを見つけて、それに参加したところからぬいぐるみ作りが始まりました。

WWD:ぬいぐるみ作家として活動していく覚悟を決めたきっかけは?

那須野:しばらくはイベントに出展し、ビンテージのトランクにぬいぐるみを入れて売るスタイルで活動していました。でも、私は絵を描くような感覚でぬいぐるみを作っていきたいと思うようになった。そんな心境の変化が、きっかけかもしれません。それからはイベント出展よりも個展を増やし、作風も変わっていきましたね。

WWD:「ドールズサン」の作品はどのように生まれている?

那須野:基本的にはアドリブです。最初からデザインが決まっているわけではなく、生地を選んだらとにかく切り始めます。黙々と作業しているときも頭の中は暇だから、考えていることや耳から入ってきた情報、昨日見たものとかがぬいぐるみに出ちゃう。

WWD:具体的にいうと、どういった部分?

那須野:例えばこのゾウのぬいぐるみだと、赤と緑の組み合わせがかわいいなと生地を選んで作り始めたら、切りっぱなしになっていたフェルトが目に入ってきたんです。それをゾウの手に当てたら目のように見えて面白かったので、手足に目を四つ付けることを決めました。さらに、ピンクのガムテープも目に入ったので、切って貼って完成させたという感じです。

 “隠れクマタン(sharaku)”は、もともと個展で飾っていたときは目にライトを入れてビームが出るようになっていたんです。個展が終わってからリメイクのアイデアを考えていた頃に“隠れキリシタン”について知り、“隠れクマタン”のイメージが湧いてきてこう仕上がりました。“隠れキリシタン”に着想していることが誰かに伝わるかなと期待したのですが、結局、誰にも気づいてもらえませんでした(笑)。

WWD:表現の手段として、ぬいぐるみを選ぶことのメリットは?

那須野:まず、フワフワでかわいいこと。そして、誰にとってもぬいぐるみは愛着や懐かしさがあること。そういう温かみがベースにあるおかげで、どれだけクセの強いことやハードなことをやっても“かわいい”という印象に吸収されたり、ギャップが生まれてより魅力的になったりするので、そういう意味でぬいぐるみという素材は面白いで
すね。

今、作りたいのは
“爆発力のある一点"

WWD:個人的に気に入っているシリーズは?

那須野:名画をフワフワのぬいぐるみで再現する“絵画シリーズ”は、作るのが本当に大変ですが、やっていて楽しいです。これまでに、ピカソの「ゲルニカ」や「泣く女」を作りました。作り方は、ベースになる生地を2mくらい買い、絵を見ながら下書きせずに大体の位置に色を置いて仮止めして、本縫いしながらフェルトでラインもつけていきます。これを全部手縫いでやるので、必死でやっても一つ作るのに一カ月くらいかかります。

WWD:「キディル」とコラボレーションしていますが、ファッションとぬいぐるみを掛け合わせた作品づくりで感じたことは?

那須野:「キディル」との共作は、参加した企画展の会場にヒロ(末安弘明デザイナー)さんが来ていて、ぬいぐるみを気に入ってくれたことがきっかけです。ヒロさんがチャンスをくれたおかげで、視野が広がりました。歩くモデルが身に着けてかっこよく動くのはどんなぬいぐるみなのかなど、これまでとは別の角度から考える視点をもらえましたね。ヒロさんが「ドールズサン」のぬいぐるみをファッションの一部として扱ってくれたり、「ビームス」の担当者さんが面白がって応援してくれたりしたおかげで、アートとして見てくれる人が増えました。

WWD:2020年の暮れに出産を経験し、クリエイションで変化した部分は?

那須野:制作に使える時間は少なくなりましたが、時間が限られているからこそ、一つでインパクトを残す作品づくりに興味が出てきました。今考えているのは、ショーやビジュアルの撮影だけで使われるコスチュームだったり、ぬいぐるみで作ったヘッドピースだったり。量産はできないけど、爆発力のある作品を作りたいです。

The post ファッション界も注目する不思議でかわいいぬいぐるみ「ドールズサン」 appeared first on WWDJAPAN.

ニッチ香水専門店「ノーズショップ」が新業態「コーグ」をスタート 自由に組み合わせられる香りの“道具”を提供

 ニッチフレグランスの輸入販売を行うノーズショップ(NOSE SHOP)はこのほど、新ブランド「コーグ(KOGU)」をスタートし、1号店をルミネ新宿内にオープンした。「ノーズショップ」は世界各国のニッチなフレグランスを扱うのに対し、「コーグ」はオリジナルのフレグランスを開発・販売。シンプルな香りを組み合わせて道具のように楽しむ「香りの道具=香具」をコンセプトにしており、フレグランス初心者に対してもアプローチする。

 香りは“アップル”“バナナ”“アンバー”“ネロリ”“バニラ”“ムスク”というように、香水を構成する原料やノートを再現。天然香料を用いたシンプルな香りにすることにより、自由自在に重ねづけして自分だけのフレグランスを作ることができる。さらに価格も4mLで税込1760円、20mLで同4180円と手が届きやすいように設定し、香水初心者でも手に取りやすく、複数購入しやすいようにした。また香りのミニサイズがランダムで出てくる“香水ガチャ”や香りを言語化しながら提案するAIシステム「カオリウム(KAORIUM)」を設置し、さまざまなアプローチで香りの提案を行う。

 世界の新進気鋭のフレグランスを扱う「ノーズショップ」とは真逆のアプローチをとる「コーグ」。その背景には、「日本人の鼻感度を上げたい」という中森友喜社長の思いがある。これまでもニッチフレグランスの販売で日本のフレグランス市場の拡大を目指してきた中森社長だが、「コーグ」ではどのようにさらに市場を広げようと図るのかーー。新業態をスタートしたきっかけや思いについて中森友喜ノーズショップ社長に聞いた。

WWD:「コーグ」を立ち上げた理由は。

中森友喜ノーズショップ社長(以下、中森):「ノーズショップ」でもそうだが、そもそも香りの面白さを世の中にもっと伝えていきたいというのがモチベーションの根源にある。「ノーズショップ」は立ち上げてから4年経つが、最初は香水マニアの人が中心だったものの、今は香水初心者まで、いろいろな人が来店し、香りの楽しさを体験してもらえるようになった。それでも、香り好きはいまだにマイノリティーだと感じる。だからもっと香りの世界を発信し、香り好きの仲間を増やしたくて「コーグ」を立ち上げた。

WWD:「ノーズショップ」同様にユニークなコンセプトだが、アイデアはどこから生まれたのか。

中森:実は社内の研修からヒントを得た。ありがたいことに、今はお客さまから「ノーズショップ」の店員になりたいと言ってくださる人が増えている。そういった人は香水への愛は人一倍あるものの、香りそのものの知識があるとは限らない。そこで社員を養成していくための“嗅覚改革メソッド”を開発した。たとえばラベンダーの精油を嗅いで、その香りを言葉にしていく。香りと言語が結びつくと、記憶として形成され、香りを認識しやすくなる。すると複雑な香りが組み合わさった香水などを嗅いだ時に、中にある原料やノートを嗅ぎ分けることができ、ある意味「香りの因数分解」ができるようになる。この「香りの因数分解」ができるようになると、香りのことがもっと深く理解できるようになる。

 実際にこのトレーニングを続けていくうちに、社員の鼻の解像度がどんどん高まり、香りのセンスが培われていくのを目の当たりにした。そこで一般の消費者にもこのような“鼻のトレーニング”ができたら、自身の好みが分かったり、香りの良し悪しも判断できるようになったり、もっと香りを楽しめるようになるのでは、と思ったことがきっかけだ。

WWD:香りを楽しむだけでなく、“鼻を鍛える”フレグランスでもあるということか。

中森:その通り。ワインのテイスティングの勉強をする際も、たとえばイチゴやバナナの香りを嗅いで、ワインの中にそういった香りのノートがあるかを確かめたりする。香りの原料一つ一つを嗅ぎ分けることで、嗅覚や味覚を鍛えるのだ。そういったワインの教育システムからも少しインスパイアされた。

 もちろん、「コーグ」の香りは一つ一つ単体で使うフレグランスとしての完成度も高く、ラストノートまで綺麗に香るように設計した。一方で全て香りの元となる原料をある程度共通化しているため、どの香りを組み合わせても喧嘩しないようになっている。重ね付けを前提として作っているのだ。2つの香りのレイヤリングは他社でもよくあるが、「コーグ」は極端な話、5つ重ねてもいいようになっているため、香りのパターンはほぼ無限に可能性がある。「コーグ」は「香りの道具」という意味を込めているが、素材や道具を提供することで、消費者には自由自在に組み合わせて、香りで遊んでもらいたい。フレグランスをゴルフやスポーツのようにホビーとして成立させたいという思いもある。香りの遊び道具を提供しつつ、日本人の鼻感度を上げたるのがミッションだ。

WWD:香水は美しいボトルも魅力の一つだが、あえてシンプルな容器にしたのか。

中森:香水はおおむね3つの要素からできていると考える。中身の香り、ストーリー、そしてビジュアルだ。中身の香りは言うまでもないが、なぜその香水が生まれたのか、作り手はどんな思いを込めたのか、香りの背景にある哲学や物語も重要。さらに中身の香りをビジュアルで表現するボトルも欠かせない要素だ。だが、今回われわれはそのストーリーとビジュアルを無視した。あくまでも香りの道具を提供しており、香りのストーリーといったところはユーザーに委ねた。自分で香りを嗅ぎ、フレグランスを作り、鼻感度を上げる。そのためにはユーザーが自ら想像力を掻き立てて考える必要があり、ストーリーやビジュアルを提案してしまうとその幅が狭まってしまう。今回は「与えすぎない」ということにもこだわった。

WWD:原料は天然香料にこだわっている。

中森:合成香料は日本人にとっては強度と濃度が強すぎると感じる。人類には500万年の歴史がある中で、合成香料はここ100〜200年で出てきたもの。だから、合成香料を鼻として対応できる体になっていないのでは、と思ったりする。なるべく鼻に優しく負担がかからない香りを作りたくて、500万年前からあり、馴染みがある自然界の香料にこだわった。

 またこれまで「日本のフレグランス市場が小さい」と言われ続けているには、日本人の鼻の性質にも要因があると思う。日本人の鼻は欧米やアラブ人の鼻に比べると繊細で、絶妙なニュアンスなどを嗅ぎ分けるのは得意だけど、強い香りには弱いのでは、と自分なりに分析している。だから強い合成香料を多く含む欧米のフレグランスを“香水くさい”と感じやすいのではないだろうか。そこで「コーグ」ではなるべくインパクトが少なく、強烈すぎない香りにこだわった。いろいろな香りを重ねたりして実験してもらいたいので、そういう意味でもたくさん嗅いでも鼻が“疲れない”香りにした。

WWD:ニッチフレグランスを扱う「ノーズショップ」とは真逆のアプローチというのも面白い。

中森:ニッチフレグランスは特定の少数の人に届けば十分という狭小なジャンル。射程距離が短く、届く人が少ない。その反面届く人には心奥底まで刺さる。ある意味ロックでパンクなモノづくりだ。またファッションフレグランスやラグジュアリーフレグランスなど、いろいろなフレグランスを使ってみて、最終的に行き着く最終点で、変わり者が好むフレグランスと捉えられることも多い。でも、香水ってもっと身近なものであってもいいと思っている。われわれは以前から「香りの民主化」を目指してビジネスをしてきたが、天才調香師や香水マニアだけが存在する世界ではなく、いろいろな人が香りに携わり、香りを発信できる世界があってもいい。みんなで香りを作り、誰もが香りを楽しめるようになる、そんな民主化された香りの世界を作りたい。

WWD:日本人の鼻感度が上がれば、市場もさらに広がりそう。

中森:人の人生を豊かにするのは、やはり五感だと思う。嗅覚の感性を磨くことができたら、もっと人生が豊かにもなると信じている。そういった意味でも、香りの可能性はまだまだあると感じる。「コーグ」は一つのビジネスでもありながら、香りの教育でもあると捉えている。香りを楽しむ人が増え、業界全体が盛り上がると新規プレイヤーが入ってきたり、どんどん面白い香りが出てくるだろう。日本人調香師も増えていくかもしれないし、市場全体の活性化に貢献できたら、と思う。

The post ニッチ香水専門店「ノーズショップ」が新業態「コーグ」をスタート 自由に組み合わせられる香りの“道具”を提供 appeared first on WWDJAPAN.

元AKBこじはるが語った「コミュニケーションとしてのブランド運営」 ルミネ×WWDJAPANイベントから

 ルミネと「WWDJAPAN」が「MOVE ON」プロジェクトの一環として3月2日に行ったイベント「Next Generations Forum 2022」には、 “ファッション&ビューティ業界の次代を担う存在”として、「WWDJAPAN」が2月14日号でネクストリーダーに選出していた小嶋陽菜heart relation代表取締役チーフクリエイティブオフィサー(CCO)も登壇した。アイドルグループAKB48の人気メンバーとして活躍した小嶋CCOのブランド、「ハーリップトゥ(HER LIP TO)」成長の秘けつとは?ここでは、当日小嶋CCOが語った内容のダイジェストを紹介する。セッションの続きは、このページから登録すれば4月24日まで無料で視聴ができる。

WWD:「ハーリップトゥ」を立ち上げた経緯は。

小嶋陽菜(以下、小嶋):アイドルグループAKB48のメンバーとして12年間活動してきた。もともと卒業後に、「ブランドをやろう!」と思っていたわけではない。自分の好きなモノを作って、それをファンの方にシェアしてコミュニケーションが取れたらいいなという考えで最初は小さくブランドを始めた。開始当初は、「これからは個の時代になる」「自分自身がプラットフォームになる」といった世の中の変化についてはなんとなく想像していたが、ブランドがこのように大きな規模になったり、ネクストリーダーに選ばれたりといったことは考えておらず、とても驚いている(笑)。

WWD:コロナ禍もあり、業界の多くの企業が苦戦している。厳しい時代に成長できている秘けつは何か。

小嶋:われわれも大変なことはたくさんあった。4年前にブランドを始め、お客さまが増えていく中でその期待に応えたいと思うようになり、2年前に自分の会社を立ち上げた。しかし、「よし、やるぞ!」というタイミングでコロナになってしまい、出鼻をくじかれた感覚はあった。ただ、大きな会社のように1年先に販売する商品まで決まっているというようなことはないので、部屋で楽しく過ごすためのアイテムやマスクの製作に取り掛かるなど、小回りを利かせることができた。今はアパレルだけでなくビューティアイテムも販売している。ビューティは「セルフケア・イコール・セルフラブ」をテーマにしている。在宅時間が増え、自分と向き合う時間が大事だと感じ、ファンの方にももっと自分を大切にしてほしいという思いが強まった。そのための時間を作るアイテムとして、ボディークリームやボディーバームを企画している。

問い合わせ先
ルミネ代表電話
03-5334-0550

The post 元AKBこじはるが語った「コミュニケーションとしてのブランド運営」 ルミネ×WWDJAPANイベントから appeared first on WWDJAPAN.

俳優・松山ケンイチが命と向き合う理由 獣皮のアップサイクルに見いだした可能性

 松山ケンイチと小雪が、廃棄される獣皮のアップサイクルを目的としたライフスタイルブランド「モミジ(MOMIJI)」を設立した。松山が東京と地方の二拠点生活を始めて約3年。地方では野菜作りなど自給自足に近い生活を送りながら、ハンターとして畑を荒らす鹿や猪などの害獣駆除にも携わっている。自然と共生し、命と向き合いながら過ごす中で、なぜブランドを始めようと思ったのか?ブランド初披露となったブルー マーブル(Blue Marble)主催の新たな合同展「ニュー エナジー ゼロ(NEW ENERGY ZERO)」で、その真意を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):地方に移住したきっかけは?

松山ケンイチ(以下、松山):僕は青森の田舎で生まれ育ち、16歳から東京で俳優の仕事を始めました。田舎で育った自分と、俳優・松山ケンイチとして過ごした時間が同じくらいになったころ、祖父母と畑で過ごしていた昔の自分に戻りたくなったんです。田舎で生活することで、東京では感じにくい自然との共生に目を向け、その感覚を家族と共有しながら過ごしたくて、3年ほど前に移住しました。

WWD:その生活からなぜブランド立ち上げに至ったのでしょうか?

松山:田舎に住んでいても、東京で得たお金で生活するのでは、結局は東京に依存しているといえます。畑で作物を作り、田舎でも収入源がある暮らしをしてこそ住む意味があると考え、自分に何ができるか探っていたところ、獣皮のアップサイクルを思いつきました。移住してからはハンターとして有害駆除をしており、捕獲した動物の肉は全て使い切っていましたが、骨と内臓、そして皮は自分には活用できないと思い込んでいたんです。ですが、皮をレザーの原料にすればいいのではと思いつき、獣皮の利活用が始まりました。

WWD:ブランド名を鹿の別称である“モミジ”にした思いは?

松山:日本には、鹿革を武具などに使用してきた歴史があります。僕が初めてレザーにしたのも鹿の皮でした。鹿は人間にとって身近な存在ですし、日本らしい名前でもあるので「モミジ」と名付けました。

WWD:ロゴがブランドの頭文字“M”にも、動物にも見えてユニークです。

松山:妻が、複数の意味を重ね合わせるアイデアを提案してくれました。それでずっと描き続けていたら、だんだん四つ足動物のようになったんです(笑)。ロゴは架空の聖獣をイメージしていますが、鹿や猪、熊など、僕が捕獲している動物も皆四つ足動物です。彼らは神聖な生き物として崇拝される一方で、畑の作物を食べ荒らし、人に害を与える害獣としての側面もある。そんな動物と僕たちはどう向き合って生きていくべきか——そんな思いを込めました。

WWD:小雪さんと共同名義にした理由と、2人の役割は?

松山:僕は有害駆除に従事しているハンターで、獣皮の調達人。それを形にするのが妻です。僕はものをほとんど持たないし、1人では右も左も分からなかったけれど、ファッション業界とつながりのある彼女が加わることで大きな輪に広がりました。また有害駆除は、自分たちが田舎で暮らす以上、この先も向き合わなければならない問題です。1人でやるより夫婦のライフワークとして取り組み、それを子どもたちが見ている環境が、家族にとって学びがあると考えました。

ハンターとして鹿の捕獲を続ける理由

WWD:皮はどのように仕入れていますか?またどの動物が多いですか?

松山:僕や仲間の猟師が有害駆除で捕獲したものと、解体所に連絡して引き取ったものがあります。皮の種類は鹿、その次に熊、猪、羊の順ですね。羊は害獣ではありませんが、ジンギスカンとして食される羊の皮が廃棄されているので、それを引き取り、利活用しています。

WWD:環境保全や動物愛護などの視点から、革を使わない方向にシフトするブランドも増えています。「モミジ」は有害駆除した動物の皮の利活用ではありますが、革製品を扱う事業について賛否両論が起こることも想定していますか?

松山:毛皮や革を使わない意思も自然との共生の中では大事なことで、僕も自然の中でのヒトの立ち位置を意識したいと思っています。ただ、世の中全体がエコに向かうには解決しなければいけない複雑な社会のシステムがあります。その道のりは遠く、まだまだ時間がかかり、その間も農林業被害軽減のために動物は捕獲され、廃棄され続けます。それなら僕は、肉も皮も利活用したい。当たり前ですが、全ての生物には個体の大きさに関係なく命があり、その命をいただいて僕たちの命は持続しています。宇宙から見れば、僕の命とそれ以外の命に差なんてない。その循環の中にいたいと思っています。

WWD:鹿による農作物への被害も拡大していると聞きます。

松山:鹿の増加による農作物や自然への被害は、無視できないほど大きいです。鹿が増えた原因は温暖化という説もあります。昔は厳しい冬を越せず自然と数が減少していたのですが、冬でも生息しやすい環境になり、数が爆発的に増えた分被害が大きくなっています。鹿の数を減らすなら、鉄砲で打つより温暖化を止めるほうがよっぽど効果的です。ほかにも、革をなめす技術の継承や、それに携わる人々の雇用についても考えないといけません。

WWD:日本では、駆除対象として捕獲された動物の約10%のみが食肉に活用され、皮として使われるのはそのうちの数%といわれています。この現状に「モミジ」が貢献できることは?

松山:日本ではようやくジビエが学校の給食でも出るようになり、ジビエのレストランが盛り上がってきた段階です。これから獣皮への意識も上がっていくだろうし、実際に獣皮の利活用に向けて動いているレストラン関係者もいます。彼らや猟師など、みんなの思いが集まれば大きな力になるので、そういった方々の力になりたい。僕の役目は、獣皮の背景を伝え、レザーになった革の素材の面白さを広めていくことだと思っています。

「モミジ」の革を使ってほしい

WWD:デザインのインスピレーション源やこだわり、現在のラインアップは?

松山:現在はライダースジャケットのみ。俳優の仕事を通じて得た、“足し算より引き算の方がいい”という経験から、できるだけ無駄は省いています。ライダースジャケットは、シルエットが長年変わらない完成されたアイテム。それを「モミジ」が作るなら、何を引き算できるかを考えながら作りました。ただ、どちらかといえば、自分たちは少量生産を維持し、企業やほかのブランドに「モミジ」の革を使ってもらいたい。将来的には、「モミジ」として発表する革製品に関しては、購入者が使い終えたら回収し、その革でインテリアやほかのアイテムを作るような循環型の仕組みも考えていきたいです。

WWD:染色など環境配慮へのこだわりは?

松山:世間ではクロムなめしが一般的ですが、僕たちは環境負荷が少ない植物タンニンなめしを行っています。ただ環境負荷は少ないけれど、植物タンニンなめしは植物の命を消費しているので、今はそれに代わる技術もタンナーと試し始めています。ほかにも、兵庫県・姫路市発祥の日本独自のなめし技術“白なめし”や火の煙でなめす“燻煙なめし”などは、今後ぜひ試していきたいです。

WWD:今後も国産にこだわっていく予定ですか?

松山:南部裂織や藍染め、泥染めなど、日本の伝統技術にも興味があるので、一緒に何かを作れたらうれしいです。ただ、獣皮の利活用は世界規模の問題。海外に面白い技術があれば、彼らとの協業もあるかもしれないですね。

WWD:「モミジ」を通じて実現したいことは?

松山:インテリアやアートの分野、障がいを持つ方も使える用具など、ファッション以外での革の活用法も広げたいです。教育面でも、子どもたちと革小物を作りながら、皮がどこから来たのかを学ぶワークショップも実施したい。可能性を秘めた素材なので、変にこだわったりせず、柔軟な考え方を持ち、同じ方向を向いて進んでくれる人々と共に考え、楽しみながら挑戦していきたいです。

さまざまな命をいただいて
今の自分がある

WWD:地方ではどんな生活を送っていますか?

松山:野菜作りや草刈り、害獣駆除など、現地の人が当たり前にしていることを僕も同じようにやっています。遊びながら学んでいる感覚に近いですね。

WWD:東京と地方の二拠点生活で得た学びとは?

松山:移住して感じたのは、さまざまな命をいただいて今の自分があるということ。「雑草1本にも命がある」と農家の人は教えてくれました。そしてハンターをやっていると、その肉を食べるのにどれほどの労力を要したかが分かるので、暴飲暴食なんてできなくなります。「いただきます」という言葉が、作ってくれた人と自然の恵みに対してだと実感します。現代の子どもたちの中には、刺身や肉がパック詰めされた状態で生きていると思っている子もいるかもしれません。それに近いことが大人の頭の中でも起こっている。都会での生活は、そんな背景を考える想像力を薄れさせているように感じます。

WWD:地方での生活を通じて、自身の子どもたちに教えていることは?

松山:虫や生き物を愛でたり、殺したりすることで、命についての学びを大事にしています。この世界にはさまざまな命があり、そこには上も下もないということ。そして、人は簡単に命を奪う力があることを学び、本当に奪う必要があるのか、その奪った命に何を思うのか。僕も子どもたちと共に学び続けています。これからも一緒に考え、向き合っていきたいです。

The post 俳優・松山ケンイチが命と向き合う理由 獣皮のアップサイクルに見いだした可能性 appeared first on WWDJAPAN.

12歳の“小学生ギャル”じゅなが語るY2K 「かわいいんだけど……」

 ギャル雑誌「エッグ(egg)」の公式ユーチューブチャンネルに出演するギャルの中で、ひと回り小柄な女の子が“小学生ギャル”こと、じゅなだ。きれいな金髪につけまつげ、ヘソ出しルックなど、12歳とは思えないほどギャルスタイルの完成度は高い。彼女は現在インスタグラムのフォロワー数4万以上を、ユーチューブの「じゅなチャンネル」登録者数は3万以上を抱えるなど、注目を集めている。4月からは“小学生ギャル”を卒業し、中学生になる。そんな未来のファッションアイコン候補に、トレンドのY2Kファッションはどう映るのか。ギャルになるまでの道のりや、ファッション観についても聞いた。

WWD:ギャルに憧れるようになったきっかけは?

じゅな:化粧を始めたのは小2の頃です。そのときは、ただ化粧の練習をしてただけでした。ギャルに憧れ始めたのは小4くらいのとき。SNSを見ていたらギャルさんたちの写真がたくさん流れてきて、自分もこういうふうになりたいなーって。憧れの人は「エッグ」モデルのみんなだけど、“茨城組”のきぃりぷちゃんとまぁみちゃんが特に好きです!

WWD:ギャルに近づくためにやっていたことは?

じゅな:ギャルといえばやっぱり化粧で、特にタレ目に見せることが大事。だから頑張ってタレ目メイクを研究して、最初はカラコンを目に入れるも怖かったけど、最近になってやっと慣れてきた感じです。髪を染めて、つけま(つげ)を着けて、目がドンってなったときは「ギャルに近づけたー!」って。たくさん練習して、今のメイクにたどり着きました。

WWD:化粧品はどうやってそろえた?

じゅな:月のお小遣いが3000円〜5000円だから、自分で買ったり、家族で一緒に出掛けたときに買ってもらったり。お母さんも昔ちょこっとだけギャルだったから「ギャルを目指す!」って宣言したときから、「いいじゃん!」って応援してくれてるんです。

WWD:今は“小学生ギャル”としてどんな活動をしている?

じゅな:今は「エッグ」や個人のユーチューブチャンネルと、インスタグラム、ティックトック(TikTok)で活動してます。じゅなは「エッグ」モデルが多くいる事務所に所属してるんですけど、まだ正式な「エッグ」モデルじゃなくて。事務所に入れただけでもうれしいんだけど、モデルになるために頑張ってるところです!

ショーパンに腹出し
「寒さに耐えてこそギャル」

WWD:服を選ぶときのこだわりは?

じゅな:特になくって、自分が着たいものを着ること。ただキッズサイズだと自分好みのギャルっぽい服がないから、大人用で一番小さいサイズを買って、ブカブカなサイズ感で着てます。でもギャルっぽさは意識していて、ショーパンとか、腹出し系の服は寒くても着る。普通はショーパンとか腹出しって寒いんだけど、その寒さに耐えるのがギャルだと思ってるんで!(笑)

WWD:買い物に行くのはどんな場所?

じゅな:最近はコロナがすごくてあまり行けてないけど、地元のイオンが多いです。好きなのは、元「小悪魔ageha」モデルの武藤静香さんがプロデュースしてる「レディ(RADY)」ってブランド。お母さんもお父さんも好きだから、家のカーテンも「レディ」なんです。あとは「シーイン(SHEIN)」でも買ってるかな。安くてかわいい服がたくさん売ってるから。

WWD:小学校にはどんなファッションで通っていた?

じゅな:学校にはラフなファッションで行ってました。パーカにショーパンで、メイクも日焼け止めを塗って、眉毛描いてまつげをあげて、リップ塗るくらい。撮影のときと違って、めっちゃナチュラルです。本当はもっと派手にしたいんだけど、朝にギャルメイクをしていたら学校に間に合わないんじゃないかって問題があって……。

WWD:SNSには4歳の妹さんも多く登場している。

じゅな:弟とは喧嘩ばかりだけど、妹とは仲良し。妹は自分が遊んでほしいときだけ寄ってくるんですけど、それがかわいくて。妹はじゅなが髪を染めてくると「ねえね、かわいいね。いいな〜」って言ってくるんです。いずれ、ギャルの道に進んでほしいな。

WWD:小学校の卒業式では個性的な服だったが?

じゅな:ほかの子と違うことがしたくて、おばあちゃんのお下がりのブレザーにオーダーメードで刺しゅうを入れて着て行きました。刺しゅうも、お母さんや友だちと意見を出し合って決めて、袖に“小学生ギャル”って入っているのもお気に入りです!

WWD:春から中学生だが、制服はどう着こなしたい?

じゅな:実はそんなに気に入ってないけど、校則が厳しいので我慢して着ます(笑)。

WWD:今年トレンドの、2000年前後に流行したY2Kって知ってる?

じゅな:なんとなく知ってます。特に、ルーズソックスにミニ丈のスタイルはじゅなが目指してるファッションに近いから、普通にかわいい。自分が好きで履いてるルーズソックスが昔流行っていたのかと思うと、なんかすごいですね。

12歳が正直に語る“最新のY2Kどう思う?”

The post 12歳の“小学生ギャル”じゅなが語るY2K 「かわいいんだけど……」 appeared first on WWDJAPAN.

“リアル”と“メタ”の同時展開 「メタトーキョー」がAMIAYAとストリート誌「STREET」をフィーチャーしイベントを開催

 AMIAYAとストリート誌「ストリート(STREET)」、メタバース上のグローバル文化都市「メタトーキョー」は3月30日まで、原宿「ブックマーク(BOOKMARC)」でコラボレーション写真展「AMIAYA × STREET × METATOKYO」を開催している。写真展と並行し、NFTを活用したメタバース・プラットフォーム「ディセントラランド(DECENTRALAND)」内ではポップアップミュージアム「SPACE BY METATOKYO」を「AMIAYA × STREET」仕様にアップデートした写真展示を開催。27日まで開催中の世界最大級のデジタルファッションウィーク「メタバース ファッション ウイーク(METAVERSE FASHION WEEK)」の公式プログラムだ。

 今回のコラボレーションではAMIAYAと「ストリート」のコラボレーションによる写真集「AMIAYA x STREET TOKYO FASHION 2021SS」をフィーチャー。原宿を中心としたストリートを舞台に東京ファッションをまとったAMIAYAを青木正一「ストリート」 編集長兼フォトグラファーが撮り下ろし、メタバースとデジタルファッション、NFTを組み合わせた“Web3.0時代”のファッション&カルチャーをグローバルに発信する。NFTマーケットプレイス「オープンシー(OPENSEA)」では、NFT化した「AMIAYA × STREET」の写真を販売する。本企画の背景やメタバースの未来の可能性について、AMIAYA、青木編集長、鈴木雄大「メタトーキョー」最高戦略責任者に話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):企画にはどんな想いを込めた?

AMIAYA:コロナ禍で私達が出来ることを考え、日本が誇るファッションブランドをフィーチャーし、海外からの支持が熱い「STREET」と、日本のファッションシーンを盛り上げてたいと考えました。世界へ繋がる日本のファッションの可能性を信じ、ファッションが持つポジティブなエネルギーを届けられるよう考えました。

青木正一「ストリート」編集長(以下、青木):AMIAYAが東京に出てきた当時にストリート誌「フルーツ(FRUiTS)」でスナップ撮影して以来、世界へと飛躍する彼女たちを長く見てきました。コロナ渦で東京ファッションを発信する機会が少なくなった時に、日本を代表するAMIAYAが東京ファッションをまとえば、魅力を世界に発信できると考えたのが始まりです。メタバースやNFTは、未来の可能性への挑戦です。

WWD:「ディセントラランド」内マーケットプレイスでは、AMIAYAのファッションスタイルをモチーフにしたウェアラブルを販売、配布する。どんなこだわりを持って製作を進めた?

AMIAYA:「AMIAYAといえば!」と思える、分かりやすいピンクボブのヘアスタイルを作りました。これまでウェアラブルにピンクのヘアがなかったようで、とてもアイコニックなアイテムになったと思います。

鈴木雄大「メタトーキョー」最高戦略責任者(以下、鈴木):「ディセントラランド」の中では、アバターは全てウェアラブルという形で、それぞれNFT形式でアイテムを作成できます。今回はAMIAYAさんが希望する繊細なイメージから、今まで意識をしたことがなかったメタバース空間でのサイジングの重要性に気付きました。ぜひ絶妙なサイジングをメタバースアバター、ウェアラブルで感じて下さい。

WWD:それぞれが感じているメタバースの可能性について聞かせて欲しい。

鈴木:メタバースの拡大により、今後はよりデジタルファッションブランドが立ち上がる機運があります。昨年は「ナイキ(NIKE)」がデジタル領域で活躍するクリエイター組織「アーティファクト(RTKFT)」を買収するなど、今後はより多くのブランドやアーティストを巻き込む可能性が高いでしょう。「メタバース ファッション ウイーク」を境に、デジタルファッションが一層広まることを期待しています。

青木:メタバースは、今後ファッションの領域でかなり重要になり、さまざまな仕組みができていくと思います。表現だけではなく、マネタイズ、ブランド化、ファンとのコミュニケーションなど、多角的に大きく広がるはずです。

AMIAYA:今後、メタバース上で自分たちのブランドを作ってクリエイティブの幅を広げたいです。リアルでは不可能なファッションの楽しみ方を、メタバースで提案できたら嬉しいです。

The post “リアル”と“メタ”の同時展開 「メタトーキョー」がAMIAYAとストリート誌「STREET」をフィーチャーしイベントを開催 appeared first on WWDJAPAN.

ユナイテッドアローズ栗野上級顧問に聞く、受難の時代のスーツ販売 ギャルソンと組んでイベント開催

 コラボ飽和により、めったなコラボでは驚かなくなっている昨今。しかし、ユナイテッドアローズ(以下、UA)とコム デ ギャルソン(以下、CdG)、ニューバランスの3社がタッグを組み、リモートワークなどで近年ますます存在感が薄くなっているスーツのポップアップストアを渋谷パルコで行う、しかもファサードデザインはCdGの川久保玲社長自身が手掛けると聞いたら、「これは何かありそうだ!」と感じるというもの。実際、初日の3月23日に店頭を訪れると、非常に盛況だった。4月12日まで開催しているポップアップストア“自由な背広”について、プロデュースする栗野宏文UA上級顧問に聞いた。

WWD:このポップアップストアを企画した意図は?

栗野宏文UA上級顧問(以下、栗野):今、スーツが置かれている立場がすごくかわいそうなものになってしまっています。スーツ=サラリーマンのユニフォーム、というイメージで、それすらもリモートワークが広がったことで失われつつある。「スーツはおしゃれな服ですよ」「もっと自由に着ていいんですよ」と改めて言いたい。スーツとスニーカーを合わせたスタイルが僕自身はすごく好きで、トレードマークのようになっています。皆さんもどんどん自由に組み合わせればいい。でも「スーツとスニーカーはどう合わせればいいの?」と非常によく聞かれるので、それならば “見える化”しようと思いました。もちろん、UAはもともとスーツ販売を得意としていますから、スーツは推していきたい。しかし、(1社での企画とするのではなく)よりエキサイティングな企画にするにはどうしたらいいかと考え、強いもの同士を組み合わせようと思いました。それがこの座組みに至った理由です。ただし、アイテム自体で「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」×「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」といったコラボはしていません。今って、(コラボで)仕掛けて売ることばかり。今回のイベントもそのような仕掛けの一つと受け取られるかもしれませんが、コラボしたのは商品ではなく会社です。それぞれの会社に対するリスペクトがあって、実現できました。

WWD:“自由な背広”というネーミングやフォントも非常に強く、パッと目に飛び込んできます。

栗野:ネーミングもフォントも川久保さんです。今回、CdGは「コム デ ギャルソン オムドゥ(COMME DES GARCONS HOMME DEUX以下、オムドゥ)」の商品をそろえていますが、「オムドゥ」は1987年にブランドを立ち上げた際、“日本の背広”と打ち出していました。当時はバブル全盛で、メンズスーツと言えば肩パッドのないソフトスーツ。そんな中で、ちゃらちゃらしたバブルへのアンチとして、「日本人が背筋を伸ばし、矜恃を持って着るスーツとはこういうものでしょう?」という川久保さんのメッセージなんだと当時僕は受け取りました。その3年後に、UAもクラシコイタリアとして、肩パッドの入ったスーツを打ち出しています。そうした経緯が頭にあって、「今回は“自由な背広”でどうですか?」と川久保さんに提案しました。「オムドゥ」は09-10年秋冬と10年春夏、僕がディレクションをお手伝いしていたというご縁もあります。

「店頭重視、それがギャルソンとの共通点」

WWD:強いもの同士(企業)を組み合わせたということですが、UAとCdGの組み合わせにはやはり驚きがあります。

栗野:そうですか?CdGとUAは取り引きをして30年になります。「コム デ ギャルソン シャツ(COMME DES GARCONS SHIRT)」を初めてCdG社外で売った店がUAだったと思う。両社は基本のスピリットの部分ではお互いにリスペクトしているんじゃないかと思っています。基本のスピリットとは、小売りを大事にしているという点。近年のファッションビジネスは、SNSでインフルエンサーに拡散してもらっていかに売るか、という部分も大きく、UAももちろんそういうこともやっています。でも、それが最大の推進ドライバーではない。お店でお客さまに接して買っていただくということをCdGは50年、UAは31年やってきた。それは共通する部分です。OMO(オンラインとオフラインの融合)は僕たちも進めています。でも、店頭接客の信頼がなければECでも商品を買っていただくことはできない。そういう面で、CdGとは課題意識が共通していると思います。恐らくそうした意図から、昨年、CdGの販売員向けの社内勉強会に呼んでいただいたこともありました。

WWD:ポップアップストアを告知するリリースには、「さまざまな面で小売の既成概念を超えた提案を試みる」とありました。具体的にどういうことでしょうか。

栗野:例えばアイテムの面で言えば、スーツのポップアップでも、UAはネクタイは1つも置きません。スタイリングでは「スーツはこう着るもの」というルールを超えて提案をしていきますし、服だけでなくレコードや本も売る。販売や接客の面では、UAの販売員がCdGも売りますし、その逆も然り。UAからは毎日3人、日替わりで販売員が立ちます。首都圏から公募で募ったメンバーで、3週間の延べ人数は60人。3人のうち2人はベテラン、1人は若手にしていて、「ユナイテッドアローズ」業態だけでなく、「グリーンレーベル リラクシング(GREEN LABEL RELAXING)」業態の販売員もいますし、女性もいます。本当のスゴ腕販売員は、どこのブランドの商品でも売れる人のこと。普段、他社の販売員と一緒に自社以外の商品を売るというケースはまずありません。スタッフが今回のイベントでの販売経験を普段の職場に持ち帰れば、とても大きな力になると思います。

「やっぱり服は人が着てこそかっこいい」

WWD:市場全体として見ると、スーツは今、堅苦しくないものにどうトランスフォームさせるか、それによっていかに多くの人に振り向いてもらうかが焦点になっているように感じます。スーツ量販店の“パジャマスーツ”なども話題です。

栗野:そういうスーツも求められているのだからいいと思う。でも、(手をかけて作った)食事とカップラーメンは別ものです。カップラーメンがいかに進化しても、食事を駆逐して凌駕するというものではありません。(スーツ量販店などでは)「洗えるスーツ」「○○できるスーツ」といったように、利便性を考えたさまざまな提案がある。そのような与えられたフレキシビリティー(自由)もいいですが、自分でスーツをフレキシブルに着てしまう、自分でフレキシビリティーを作っていくというのもいいと思うんです。UAとして、「スーツってかっこいいよね」と言い続けてきましたが、改めて言いたい。落語はオチが分かっていても何度も聞きたくなるものです。何百年間と同じ話がされていても、そこにそのときそのときの時代性や落語家のクリエイティビティーを感じるから聞きたくなる。スーツも、そういった古典落語や古典芸能と近しいのかもしれません。

WWD:スーツに限らず、ファッション自体もかつてとは楽しみ方がかなり違ってきています。

栗野:キャリアの中でバイイングやディレクションも担当してきましたが、僕が一番興味がある分野は自分の原点でもある販売です。お客さまとコミュニケーションして、時には家族にも話していない内容を聞いたりと、その方の人生に深くコミットすることもできる。そうした瞬間に、洋服屋って面白いなとつくづく思います。今はEC専業で店頭を持たないブランドも出てきていますし、洋服屋のあり方がかつてとは変わってきているとももちろん感じます。それを批判する気持ちはありません。今回のイベントでは、スーツを通してファッションというカルチャーを再認識してほしいという気持ちもある。単にモノを買って終わりではないんです。(背景にさまざまなストーリーやカルチャーがあって、それを感じ)人が着るからこそ服はかっこいい。接客も含め、そういう人とのつながりにフォーカスしたいと思って今回のポップアップを考えました。今、メタバースやNFTの文脈でファッションが盛り上がっていますが、それはそれとして、僕はやっぱり服は着てこそだと思っています。

The post ユナイテッドアローズ栗野上級顧問に聞く、受難の時代のスーツ販売 ギャルソンと組んでイベント開催 appeared first on WWDJAPAN.

「ルイ・ヴィトン」が新作ウオッチを発表 時計部門トップも絶賛「ジェームズ・ボンドの時計に一歩近づいた」

 LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)のウオッチ部門は今年、設立20周年を迎える。そんなアニバーサリーイヤーに、新作ウオッチ“タンブール スピン タイム エア クアンタム(Tambour Spin Time Air Quantum)”を発表した。深海に潜む生き物が暗闇の中で発光する様子からインスパイアされた時計は、マットなブラックとビビッドなイエローを用いた。さらに宙に浮かぶ数字はメカニックなクリック音とともに1時間ごとに1/4回転するように設計されている。

 フロスト加工したチタンケースは磨き上げられた縁とシャープなフォルムを特徴とする。フランジ(見返しリング)はマットに仕上げられ、時間を記す刻み込みはさりげないV字をかたどる。サファイアガラス製の裏面にはブランドのモノグラムを回路基板風のデザインに仕立てた。ストラップはアリゲーターレザーを用い、鮮やかなイエローで縁取った。さらに数字のキューブはシリカガラスを用い、発光エフェクトを加えた。

 ジャン・アルノー(Jean Arnault) =ルイ・ヴィトン ウオッチ部門マーケティングおよびプロダクト・ディベロップメント・ディレクターはこの腕時計を開発するのに2年かかったといい、その魅力は「手に取ればすぐに分かる」と話す。

 また同時に3つのタイムピース“タンブール スリム ヴィヴィエンヌ ジャンピング アワーズ”も発表した。ブランドを代表する“タンブール スリム”シリーズが、3つのジュエルトーンに染まって登場する。それぞれには、「ルイ・ヴィトン」のマスコットであるヴィヴィエンヌが占い師、カジノディーラー、サーカスパフォーマーに変身したイラストが添えられている。

 米「WWD」は、ウオッチ部門を率いるアルノー=ディレクターに新作ウオッチに込めた思いやこだわりを聞いた。

WWD:「ルイ・ヴィトン」は時計を20年作ってきた。“タンブール スピン タイム エア クアンタム”はそれを象徴するタイムピースだと捉える?

ジャン・アルノー =ルイ・ヴィトン ウォッチ部門マーケティングおよびプロダクト・ディベロップメント・ディレクター(以下、アルノー):これはアニバーサリーアイテムではないが、「ルイ・ヴィトン」が他ブランドが挑戦しない領域にまで時計の世界を広げてきたことを讃えるピースだと思う。例えばメカニカルムーブメントとエレクトロニックなモジュールを組み合わせたりしているが、このような複雑な作り方は現代の時計市場でも稀に見るものだ。

WWD:ラグジュアリーウオッチと、近年人気が高まるスマートウオッチの世界の橋渡しのような存在になるのか。

アルノー:その通り。どちらにも魅力があるし、それぞれ単独としても、組み合わせても素晴らしい時計を生み出す。メカニカルとエレクトロニックを融合することのポテンシャルは大きいと感じるし、今後もっと探求していきたいと思うカテゴリーだ。ある意味ジェームズ・ボンド(James Bond)のウオッチに一歩近づいているよ。ボタンひとつ押せばデジタルなディスプレーが表示されるような時計は想像するだけでワクワクするし、すぐに実現できるかは分からないが、夢のある話だ。

WWD:新作ウオッチで最も誇りに思う点は。

アルノー:エレクトロニックなモジュールを用いながらも、ケースを薄く、大きさもコンパクトに保てたことかな。機能性がきちんとありながら、それを意識させない。“タンブール カルペ・ディエム(Tambour Carpe Diem)”と同じ作りで、時間も読める、「腕に着けるアートピース」だ。

 われわれが誇る“スピン タイム エア”ムーブメントを、夜間でも読みやすいようにアップグレードしたのも特徴だ。また個人的に気に入っているのは、バッテリーレベルの表示。ボタンを押す回数が残り100プッシュに達したら、明滅して知らせてくれる。こうした細かいこだわりこそが、設計するのに一番難しくもあるのだ。

デザインだけでない、使いやすさも重視した時計づくり

WWD:「ルイ・ヴィトン」の時計作りにおいて、(デザインに加え)操作のしやすさにもこだわっている。

アルノー:市場の調査をしていると、現代の消費者はより使いやすく頑丈な時計を求めていることが分かった。巻き方や設定を一つ間違えるだけで直すのが大変な時計も多くある中で、壊れにくく誤操作があっても簡単に戻せるように作っている。また文字の読みやすさや大胆なディスプレーにもこだわっており、新作ウオッチも1/4回転といった細かく美しい動作と、読みやすさの両方を追求した。これは「ルイ・ヴィトン」にしか成し遂げられない技術力を物語る。

WWD:その技術力に引かれて時計部門のトップに就いたのか。

アルノー:メゾンの中のさまざまな部門を経験する中で、時計部門は2021年1月に入った。そこで感じたのは、まるで家族のようなチームの雰囲気。また、他メゾンに負けない高い技術力とサヴォワフェール(受け継がれる職人技術)も目の当たりにし、感銘を受けた。ここで働く一人ひとりの職人は、デザインから技術的な話まで、卓越したクラフツマンシップを誇る。

WWD:グループにはいくつかのウオッチメゾンがあるが、最新技術などをシェアしているのか。

アルノー:今はそれぞれのブランドが独立して運営している。でもメゾン同士でシナジーを生み出すことは、近い将来考えるべきことかもしれない。個人的に各メゾンが所有するノウハウを共有しないのはもったいないと感じるが、今のところ技術の共有などはない。

「ルイ・ヴィトン」の時計の顧客は「普通では満足できない」

WWD:「ルイ・ヴィトン」の時計を購入する顧客はどんな人?

アルノー:大胆なクリエイションを求める人。われわれは高度な技術に裏付けされた最高品質のタイムピースを作っている。同時にデザインにもこだわり、エングレービング(彫刻)を手掛けるディック・スティーンマン(Dick Steenman)やエナメルアーティストのアニータ・ポルシェ(Anita Porchet)など、業界トップのアーティストと協業している。「ルイ・ヴィトン」のウオッチを購入する人は、“普通”では満足しない。特にわれわれはほかのウオッチメゾンに比べて歴史が浅いだけに、新規プレイヤーとしての新しいアプローチや他とは少し違う魅力を求められている。またスペシャルなオーダーをする人も多く、ムーブメントからダイアル、ケースまでをパーソナライズするニーズが高まっている。こういったサービスには今後も注力していく。

WWD:近年は女性の間でもデザインだけでなく技術を求める人が増えているが、そういったことにも目を向けているのか。

アルノー:「ルイ・ヴィトン」の魅力の一つは、幅広い顧客層にアプローチできていること。現在ウィメンズ・メンズウオッチの位置付けを考えている中で、改めてアイコンピースの強化を図っている。

WWD:ウオッチ部門の今後の展望は。

アルノー:言うまでもないが、20周年は大きなマイルストーンだ。われわれはまだ若いが、歴史は立派なものだ。過去の作品を振り返ると、これまで歩んできた技術的な進歩が一目瞭然だ。またジュネーブ時計グランプリ(GRAND PRIX D'HORLOGERIE DE GENEVE)で受賞したオーダシティ賞も20周年に先駆けてうれしかった。この賞によって業界からオフィシャルに認められた証になったし、これまでの20年の努力が報われたような気持ちになった。今後も前進し続けて、素晴らしい成果を出し続けたい。

 今後は引き続き技術力を磨きつつ、“タンブール スピン タイム エア クアンタム”や“タンブール カルペ・ディエム”のように業界を驚かせる傑作を作りたい。複雑で高度な技術を巧みに用いながら、使いやすさも妥協しないクリエイションを続ける。楽しみにしていてほしい。

The post 「ルイ・ヴィトン」が新作ウオッチを発表 時計部門トップも絶賛「ジェームズ・ボンドの時計に一歩近づいた」 appeared first on WWDJAPAN.

「エコバッグもビンテージになったらカッコいい」 アーバンリサーチ出身者が繰り返し使いたい「ルーパック」普及

 アーバンリサーチで店長やPR、バイヤー、イベント企画、CSR担当などの経験を積んだ喜多泰之は、社会福祉士の同僚と「繰り返し使いたくなるバリューを生む」エコバッグと仕組みの「ルーパック(LOOPACH)」を立ち上げた。「流行らせることはできないか?」や「大量に売れないか?」という“ナンセンスな物質主義”からエコバッグを救う選択肢を増やすべく、自社はもちろん、他社のエコバッグにNFC内蔵のネームタグを取り付けることを提案。専用アプリや加盟店に配布するリーダー端末を開発し、ユーザーがレジ袋やショッピングバッグを断るたびに「フラワー」と称するポイントが貯まるシステムを構築した。フラワーを公益・共益に寄付できる循環の構築を目指す。

WWDJAPAN(以下、WWD):立ち上げたMILKBOTTLE SHAKERSは、社会福祉事業やSDGsに関連するコンサルティングなども手がけている。サステナブルやSDGsに興味を持った経緯は?

喜多泰之MILKBOTTLE SHAKERS代表(以下、喜多):近畿大学の在学中にアーバンリサーチ ドアーズ(以下、ドアーズ) 茶屋町店でアルバイトを始めました。そのままアーバンリサーチに入社し、「ドアーズ」というライフスタイル業態で働くうちにフェスなどに出かけたり、「パタゴニア(PATAGONIA)」や「スノーピーク(SNOW PEAK)」とも仕事をしたりするようになりました。社会課題を“自分ごと化”するようになったのは、20代の半ばくらい。その後、社会福祉士の川本健太郎(取締役)とともに、課題に思うことを事業にしています。

WWD:ファッション業界で働いていた頃から、サステナブルなアクションに取り組んでいた?

喜多:「パタゴニア」などに影響も受けたし、お客さまと湘南でゴミを拾ったこともあります。ファッション業界でも社会課題に貢献できると思ったし、「お客さまの外見をカッコよくする」だけがファッションじゃないことも体験しました。

WWD:そんな経験が「繰り返し使いたくなるバリューを生む」エコバッグと仕組みの「ルーパック」につながった?

喜多:レジ袋の有料化が施行される前、アパレル企業から「エコバッグが大量に売れる施策はないか?」や「SDGsの文脈で良い打ち出しはないか?」という相談を受けるようになったんです。物質主義に縛られたまま目先のビジネスとして簡単な方法を選ぶと、エコバッグでも「中国で数万~十万個単位で生産すれば、1つ300円で販売できる」や「ミニマムはいくつ」という話になってしまう。結局安いから大量に作らないと利益が出ず、国内の生産は増えず、結局みんな疲弊する。「もっと自然に、新しいスタイルで解決できないか?」と考えたんです。

WWD:「『ルーパック』があるから」とショッピングバッグやレジ袋を断ると「フラワー」が溜まり、集めた「フラワー」は公益・共益に寄付できる。「ポイント」を集めて商品やサービスを手に入れる形にしなかったのは、なぜ?

喜多:将来消費できる「ポイント」を提供するのは、「環境負荷のポイントをズラしているだけ」と思ったんです。集めた「ポイント」でも、結局は消費。それでは「新しいスタイル」が広がりません。

WWD:同時にアプリに登録したバッグを使い続けると、「スタンダード」から「シルバー」、そして「ゴールド」へとエコバッグがランクアップして、1回のアクションで獲得できる「フラワー」が増える。

喜多:長く使い続けると“プレミア感”が生まれる仕組みです。合計300回使って「ゴールド」にランクアップしたエコバッグを「カッコいい」と思ってほしい。「ルーパック」のシステムが普及したら、デニムのように「ビンテージのエコバッグがカッコいい」という価値観さえ広がるかもしれません。と同時に「何百回、何千回、何万回と使い続けてもらえるエコバッグを作ろう」と日本のモノづくりを刺激できたら面白いですね。

WWD:現在のユーザー、導入店舗は?

喜多:昨年8月に本格始動し、ユーザーはまもなく300になります。加盟店は70くらい。

WWD:インパクトが生まれるには、まだまだ数が足りない。

喜多:現在、コンビニエンスストアやスーパーとの話し合いも進んでいます。導入の初期費用は、1店舗当たりの年会費が2500円、リーダー端末の導入費が同じく1万1000円など。ランニングコストは、「ゴールド」のエコバッグで1アクションあたり4円ですから、レジ袋やショッピングバッグを作るより安いはずです。2025年の大阪万博までに1万くらいの店舗で使えるようになったら、来日した外国人に「日本で流行っている『ルーパック』ってなんだろう?」と思ってもらえるかな?なんて想像しています。

The post 「エコバッグもビンテージになったらカッコいい」 アーバンリサーチ出身者が繰り返し使いたい「ルーパック」普及 appeared first on WWDJAPAN.

スタイリスト伏見京子が新ブランドにかける思い サステナビリティで心地よさと幸せを

 伏見京子は、1988年に「anan」(マガジンハウス)でスタイリストとしてデビューして以来、広告や雑誌、アーティストなどのスタイリングを担当し、キャリアを積んできた。2014年には、ファッションパフォーマンス集団“ハプニング(The HAPPENING)”を結成し、原宿や銀座駅でのゲリラファッションショーなど、既存のシステムに捉われない活動を行い、ファッション以外のシーンからも注目を浴びた。

 そんな彼女が昨年、古着を使ったアップサイクルブランド「サイクリング(CYCLEING)」を立ち上げた。自ら問屋に向かい古着を買い付け、独自のセンスで新たな命を吹き込んでいる。代々木上原のセレクトショップ、ブレスバイデルタ(breath by delta)でポップアップを開催するなど、活動の幅を着実に広げている。そんな彼女に、ブランド立ち上げの経緯や、サステナビリティに関するこれまでの活動などを聞いた。

「循環可能性に『心地よさ』は必要不可欠」
20年前と変わらない姿勢

徳永啓太(以下、徳永):「サイクリング」を始めたきっかけは?

伏見京子(以下、伏見):とある仕事で古着を使ったスタイリングをイメージし、デザイン画を描き起こしたのですが、結局それが頓挫してしまって。せっかく描いたんだし、形にしたいと思って、知り合いのデザイナーから古着問屋のナカノさんを紹介してもらい、そこで仕入れた古着を使って具現化しました。それを“ハプニング”の展示会で発表したんです。

徳永:それが始まりだったのですね。「サイクリング」というブランド名からも既存のファッションサイクルや環境への問題提起をしているように感じますが、ずっと関心はあったのでしょうか?

伏見:はい。私は過去にエコとファッションを軸にした「エルピーマガジン(ELPEE magazine)」という本を1999年と2000年に出版しています。当時は、化学繊維を使って大量生産した服が世間に浸透し始めると同時に、膨大な服が消費され、環境にも負荷がかかることが問題視され始めたタイミングでした。“エコロジー”や“リサイクル”という考えがはやり始めたのも同じ頃だと思います。現代の“SDGs”や“サステナビリティ”のうたわれ方とも通じるところがありますよね。20年前から環境問題への問題提起はあって、今に始まったことではないんです。

徳永:「エルピーマガジン」ではどのようなメッセージを掲げていたのでしょうか?

伏見:一つは、エネルギーは石油由来だけじゃなく代替え可能ということ。環境に負荷をかけない素材を開発すれば、新しい産業や雇用が生まれ、世界が良い方向に進むんじゃないかという考えです。当時は「水素自動車は不可能だ」って言われていたけど、今はたくさん走っていますし、これは実現されつつありますね。もう一つは、“ユニバーサルデザイン”。障がいのある方にとっても、私たちにとっても、良いデザインとは何かを考えるもので、かつては建築や食器などのプロダクトにしか反映されておらず、ファッションには浸透していなかったから、服にも大事だよと伝えたかったんです。

徳永:たしかに2000年代は、障がいのある人が利用しやすい“バリアフリーデザイン”から、年齢や性別などを超えて、誰でも使いやすい“ユニバーサルデザイン”へと考えがシフトした時代でした。ファッションスタイリストである伏見さんが、このような福祉の分野にも興味を持ったのはなぜですか?

伏見:スタイリストはものを選んで届けることが仕事。私は、衣服に限らず、空間や生活においても“心地いいもの”を届けたいんです。ユニバーサルデザインに興味を持ったのもそれがきっかけです。

徳永:「エルピーマガジン」から年月を経て、「サイクリング」というブランドとして改めてエコに向き合ったわけですが、考え方に変化はありましたか?

伏見:「エルピーマガジン」では、環境に負荷をかけるシステム自体に警鐘を鳴らしたけど、結局、大きな企業が動かないと個人では何も変えられないと痛感しました。「サイクリング」でサステナビリティに改めて向き合うと、「当時と何も変わってないなぁ」という印象を持ちました。大量の服が捨てられていますし。でも、2000年代当時は、エコに積極的なヒッピーでさえ麻以外を着なかったり、農業から始めないと本物じゃないと言われたりと、視野が狭く、サステナビリティにアプローチする選択肢も少なかった。でも今は、リサイクルや再生繊維、オーガニック素材など、取り入れる手法が多様化している。その結果、サステナブルでありながら美しく、モダンなアウトプットが増えていると思います。それがいい変化ですね。

サステナビリティと服飾芸術

徳永:”サステナビリティをモダンに”というのは、最近の特徴かもしれませんね。古着をデザインの強い服に昇華する「サイクリング」にも通ずるものがあります。

伏見:私が独立した頃は、”服飾芸術”という言葉があって、「服が芸術性を帯びたアート作品である」という考えがありました。ジョン・ガリアーノ(John Galliano)の「ディオール(DIOR)」、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)の「ジバンシィ(GIVENCHY)」、マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)、フセイン・チャラヤン(Hussein Chalayan)ら、彼らが活躍していた時代はとてもきらびやかで、今よりも服が重視されていました。そんな時代を作った数々のデザイナーとブランドから影響を受けた私も、作品を美しくすることはクリエイターの責任だと思っています。だから「サイクリング」でも、きれいな仕立てのテーラードスタイルとスポーティーなアイテムをドッキングさせているんです。

徳永:ポップアップでは持参アイテムをベースにした、カスタムオーダーにも対応していましたね。

伏見:祖父からもらった捨てられない服や、最近着ていないけど愛着のある服など、いろいろな背景のあるアイテムを組み合わせて特別な一着にする瞬間は、とても幸せでした。お客さまの服への愛も実感できたし、作っている私も心地がよかったです。私は、ファッションで一番重要なのは“心地よさ”だと思っています。環境に負荷をかけないサイクルや、障がいの有無に限らず使いやすいユニバーサルデザイン、服を大事にするお客さまと対話して特別な一着を作る時間、そして美しくモダンな服を着る高揚感。どの要素も心地よく、関わる全ての人が幸せになるーーそれがサステナビリティの理想ですね。


 取材では、ナカノの秦野工場のご厚意により仕事場を見学。神奈川県の家庭から手放された衣類を市役所が回収し、ナカノが資源有価物として買い取り、「国内販売できる古着」「再生繊維できるもの」「中古衣料として輸出できるもの」の大きく3つに仕分けしていた。取材日にはトラック1台分の服が運ばれ、倉庫には約100kgの服を圧縮してビニール袋に梱包したものが天井まで敷き詰められていた。

 ポップアップにはファッション感度の高い若者や服飾学生が来場し、それぞれが大量に服が捨てられている現状と向き合っていた。この時間を創出できることこそ、このポップアップ最大の価値ではないだろうか。2週間の期間でほとんどのアイテムが売り切れており、ビジネスとして成立させている点も「サイクリング」のすごさだ。古着を美しく、モダンに提案する伏見さんの姿勢がなければこうはならないだろう。

 日本国内で年間約130万トンの衣類が家庭から手放され、国内で循環される古着はたった4%だという。それでも、現状を変えようと、本気で取り組む人と企業がいる。再利用できるように仕分けする古着問屋ナカノ、少しでも解決するために挑戦する伏見氏のクリエイション、この挑戦を一般の方に伝えるスペース「ブリース バイ デルタ」。それぞれの思いを肌で感じ、ファッションの側面からサステナブルな社会を実現できるのでは?と思わされた。

The post スタイリスト伏見京子が新ブランドにかける思い サステナビリティで心地よさと幸せを appeared first on WWDJAPAN.

長濱ねるが東コレでサステナブルを語る SDGsレポーターとして登場

 タレントの長濱ねるが14日、「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」のイベントに登場した。長濱は2022年春夏シーズンから「RFWT」のSDGsレポーターを務めており、同イベントでもサステナブルについて語った。

 長濱は釣り具総合メーカー「ダイワ(DAIWA)」が手掛けた、漁網をリサイクルしたドレスと、セットアップの2通りの衣装を披露。リサイクルドレスの着心地について「生地をたくさん使ったゴージャスなドレスでしたが、すごく軽くて動きやすかったです。これからさらに開発されていくという話を聞いて、すごくワクワクしました」とコメントした。

 さらに、私生活でのサステナブルな取り組みについても語った。「身近なところでいうと、自分の着た服を友だちに譲っています。ほかにも『マラミュート(MALAMUTE)』が取り扱っている、バックにリサイクルできるニットを選んで買っています」。

 SDGsレポーターに就任して変わったことについて「リサイクルショップをよく利用するようになりました」と明かした。さらに「以前から古着は買っていましたが、家具や食器でも誰かが使ったものを手に取るようになりました。サステナブランドが増えてきているので、衣装でも『CFCL』などを着用しています。自分が着用することで、その存在を広めていけたらいいなと思うようになったのは、変化したところですね」。

The post 長濱ねるが東コレでサステナブルを語る SDGsレポーターとして登場 appeared first on WWDJAPAN.

メタバースの大本命「ZEPETO」、2.9億人のアバターが新時代のファッションを生み出す

 スマホを通じて仮想空間上でアバターが動く、いわゆるメタバースのまさに象徴的な存在が「ゼペット(ZEPETO)」だ。Z世代を中心に世界中に2億9000万ユーザーを抱え、しかもその数はどんどん増えている。すでに同アプリ内では350万以上ものアイテムがリリースされ、アバターたちが着用している。韓国ネイバーグループ傘下の「ゼペット」は、何を変えるのか。スノー・ジャパン(SNOW JAPAN)の日本事業統括の崔 智安(チェ・ジアン)氏に聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):「ゼペット」の成り立ちは?

崔智安(以下、崔):もともとはSNSアプリ「スノー(SNOW)」の派生として生まれた。だが今では、非常に多彩な機能があり、実は一言で定義するのは難しい。顔認識機能を生かし、自撮りをベースに自分でアバターを作成して動くアニメーションも作って、それらを普通のSNSのように投稿もできるし、ゲームをしたり、自分で街や空間を作って他人を招き、その中で遊んだり、おしゃべりすることもできる。しかし、なんと言っても最大の特徴は、いつでもどこでも、アバターを通じてコミュニケーションを取れることだ。ユーザーは世界中に2億9000万人を抱えており、彼ら/彼女らはすでに、髪型、メイク、服装、体型を自由に選び、人によってはファッションと同じように、それらを毎日変えたアバターでコミュニケーションを取っているのだ。

WWD:ユーザーの属性は?

崔:最大のユーザーを抱える中国を筆頭に、日本、米国、韓国、フランス、イントネシア、タイ、メキシコに広がっている。多いのはアジアだが、フランスや米国などでも急速に広がっている。共通しているのはユーザーの7割以上が13〜24歳の女性、つまりはZ世代であることだ。重要なポイントは、Z世代の多くが、「ゼペット」というメタバース上で、アバターを使ってコミュニケーションを取ることが当たり前になりつつあり、コミュニケーションの日常的な手段の一つに「メタバースとアバター」が登場しているのだ。これは注目すべき大きな変化だ。

WWD:これまで「グッチ(GUCCI)」「クリスチャン ルブタン(CHRISTIAN LOUBOUTIN)」といった高級ブランドから、「ナイキ」「アディダス」などのメガブランド、ディズニー、サンリオといった世界的なキャラクターホルダー、ブラックピンクなどの超大物アーティストまで、幅広い企業やブランドとコラボレーションしている。なぜブランドやIPホルダーは「ゼペット」とコラボするのか?

崔:最大の魅力は、「ゼペット」が世界中の多くのZ世代をユーザーとして抱えているからだろう。Z世代、いわゆるデジタルネイティブ世代に対して、大手といえども、多くの企業は課題を抱えていた。つまりデジタルネイティブのZ世代にどうアプローチすべきか、と。日本ではあまりそう感じないかもしれないが、世界的にはZ世代がマーケティングのトレンドや発信力でオピニオンリーダー的なパワーを持ち始めている。Z世代との接点をどう作るのか?あるいはブランド体験をどう提供するのか。そこに「ゼペット」がぴたりとハマった。

WWD:「ゼペット」の場合、「グッチ」のようなブランドであってもアイテムの価格はそう高くない。ブランディングを重視する高級ブランドにとっては珍しいことだ。その理由は?

崔:アバターの服に数万円を払うか、という考え方もあるし、そもそも「ゼペット」はユーザーの体験ということを特に重視している。価格をある程度標準化することで、より多くのユーザーがいろいろなブランドやファッションを体験できる。多くの企業やブランドにとっても、先ほども言ったように「ゼペット」を新しい接点として捉えており、「ゼペット」のこうした考え方に理解を示している。

WWD:メタバースという点で見た場合の「ゼペット」の強みは?

崔:「ゼペット」は仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、ゲームなど、メタバースに必要とされるあらゆる要素を含んでいる。特筆すべきは、これまでのSNSは、主要な機能が2次元のフィード(投稿)に過ぎなかったが、「ゼペット」ではアバターを軸にした空間になっていること。これは非常に大きなゲームチェンジだ。

WWD:そうしたメタバース空間で、ファッションはどのような意味と役割を持つのか?

崔:まさに最も重要な要素だと言っても過言ではない。アバターとは、髪型、メイク、服装、体型の組み合わせだ。つまり、ファッションがほぼ全てと言っていい。「ゼペット」の中心ユーザーであるZ世代は、自己表現を特に重視する年代であり、しかも我々の分析ではファッションを軸にした、例えば「クール」「おしゃれ」のような感覚は、グローバルで共通のコモンセンス(共感覚)だ。ただ、ファッション、あるいはファッションブランドに関して再定義する必要はあるかもしれない。「ゼペット」では想像しえるすべての世界を作り出せるからだ。

WWD:というと?

崔:「ゼペット」ではアイデアさえあれば簡単に表現できるため、誰もが新しいクリエイターになれる可能性を秘めている。誰もがブランドを作ったり、アイテムを生み出すことができるのだ。すでに200万人以上が、新たな「ファッション」アイテムを生み出している。日々、「ゼペット」上で新しいアイデアと表現が生まれており、中には「ゼペット」内独自のトレンドも生まれている。これまでのリアルの世界では、あり得なかった現象だ。その一方で、既存の“プロ”のファッションブランドはまだ本気を出しているとは言い難い。私の見るところ、これからのファッションは服をデザインするだけでなく、体験まで含めてデザインする必要がある。ファッションショーだけを例に取っても、リアルの世界ではこれだけの奥深い表現や演出をしているにもかかわらず、「ゼペット」を含め、デジタルの世界でそれだけの表現に取り組んでいるブランドは決して多くはない。

WWD:今後「ゼペット」、あるいはメタバースで既存のファッションブランドが成功する秘訣は?

崔:何よりもまずは、挑戦することだろう。日本企業は実感としてコンサバティブだと感じることは少なくないし、新しいこと、理解できないことに対するハードルが高い。メタバースでは世界で通じるファッション感覚が重要だと話したが、加えてシビアな話だが、ある程度の知名度も必要だ。この2つに適応する日本のブランドは数多くあると思うが、個人的には「ビームス」のようなセレクトショップや、Z世代の顧客を多数抱えるファストファッションブランドには注目している。特に日本のセレクトショップの場合、ファッション感覚にグローバルで強い共感を呼ぶ可能性を感じている。日本発のコンテンツという意味では、ファッションではないが「鬼滅の刃」「呪術廻戦」のようなアジアで高い知名度を持つコンテンツはとても可能性がある。

The post メタバースの大本命「ZEPETO」、2.9億人のアバターが新時代のファッションを生み出す appeared first on WWDJAPAN.

クリストフ・ルメール騎手がアパレルブランド開始 名手が語る「競馬とファッション」

 JRA(日本中央競馬会)で5年連続リーディングジョッキーを獲得する騎手のクリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)氏が、アパレルブランド「CL. by C.ルメール」を今春スタートする。故郷フランスをはじめ各国で活躍した後、外国人として初めてJRAの通年騎手免許を取得し、驚異的なペースで勝ち鞍を重ねてきたルメール氏。アパレルブランド設立は「日本への恩返し」だと話す。

WWD:もともとファッションに関心が強かったのですか。

クリストフ・ルメール(以下、ルメール):幼い頃からおしゃれが大好きでした。フランスで生まれ育った僕は、騎手だった父と一緒に競馬場をたびたび訪れていました。競馬場は社交場でもあるので、子供でもドレスコードに従います。ブレザーにネクタイ、ピカピカに磨かれた靴でめかしこむのです。この体験が僕をファッションに目覚めさせた気がします。

 騎手になって稼げるようになると、「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」「グッチ(GUCCI)」「ケンゾー(KENZO)」などの服を愛用していました。パリには有名ブランドがそろっています。けっこうお金を使ってきました。

WWD:ファッション好きが高じて、自分で服を作りたくなったと?

ルメール:2、3年前から自分のブランドの服を作りたいと考えるようになりました。僕がやるからには競馬とストリートをつなげて、競馬の楽しさや奥深さをもっと多くの人に広めたい。今回の服はどれも騎手がレースで着る勝負服から着想を得ています。バスケットボールなどは、ストリートファッションとも密接に結びついて、バスケをしない人にとっても身近な存在になっていますよね。競馬もそうなれたらいい。「ストリートジョッキー」というコンセプトで、服を通じて競馬の文化にも触れてもうらことを目指しました。競馬ファンだけでなく、ファッションが好きな人にも着てほしいのです。

お世話になった日本への恩返し

WWD:ポロシャツやTシャツ、ジョッキーパンツなどスポーティーなアイテムが多いようですね。

ルメール:馬の調教など仕事のときだけでなく、プライベートでも動きやすい服が好きです。でも僕の好みとしては、いつもスマートな印象でいたい。例えば、いま僕が着ているTシャツは細身のVネックで、(テーラード)ジャケットのインナーに着てもカジュアルになりすぎません。ポロシャツには、競馬の騎手が着る勝負服から着想を得た柄を用いました。デザインを考えるのは本当に楽しい。暇さえあれば(イラストやデザイン用の)アプリを開いて描いています。

 一般の方のなじみはないでしょうが、ジョッキーパンツは普段着としてもカッコいいので是非おすすめです。少しシェイプさせて、シルエットも美しくしました。フランス人の僕が作るからには、エレガントな服にしたかったのです。

WWD:でも、モノ作りの点では日本製にこだわっていると聞きました。

ルメール:はい。それはブランドを立ち上げた動機の一つでもあります。日本に恩返ししたいという気持ちが、僕の中で日増しに強くなっているのです。競馬界への恩返しはもちろん、お世話になった日本の皆さんへの恩返し。このブランドを発信することで、少しでも日本の産業に貢献できたらいい。特に僕が暮らす京都には、素晴らしい技術を持った職人さんがたくさんいます。彼らと仕事できるのは喜びでもありました。

「デザイナーのルメールさんに会いたい」

WWD:製造現場も訪ねたそうですが、どんな感想を持ちましたか。

ルメール:ポロシャツなどを縫う和歌山県の工場を訪ねました。広い工場を想像していましたが、意外に小さくて家族的な雰囲気の中で真剣に服が作られる様子に感心しました。日本のモノ作りのクオリティーは素晴らしい。僕もミシンに挑戦したけれど、なかなかうまくいかなかった。

 帽子で協業した京都の佐藤喜代松商店も訪ねました。漆の神秘的な工程には驚きました。Tシャツのグラフィックでは、京都を拠点にするアーティストのMOYAさんに協力してもらいました。今後もたくさんの職人やアーティストと協業していきたいです。

WWD:ところで、「ルメール」を展開するファッションデザイナー、クリストフ・ルメール氏と同姓同名ですね。

ルメール:「ユニクロ」などで活躍されているルメールさんですね。確かに僕と同じ名前です(笑)。だからブランド名は騎手のルメールだと分かるよう「CL. by C.ルメール」にしました。面識はありませんが、デザイナーのルメールさんには是非お会いしたいです。コラボレーションできたら“ルメール×ルメール”になりますね。

            ◆
 「CL. by C.ルメール」は、4月13日から専用のオンラインサイトで販売を開始する。また、4月13〜24日まで高島屋京都店、4月27日〜5月8日までイセタンサローネ メンズ(東京・丸の内)でポップアップストアを開く。主力商品の税抜価格は、半袖ポロシャツ1万8000円、Tシャツ9000円、パンツ2万4000円など。各商品はJRAの年間重賞レースとG1レースの数に合わせて、各128枚または各24枚の限定販売となる。

The post クリストフ・ルメール騎手がアパレルブランド開始 名手が語る「競馬とファッション」 appeared first on WWDJAPAN.

ブランドの卸売り事業を拡大させるWEBサービス「homula」とは?

 コロナ禍をきっかけに、アパレル業界でもさまざまな領域でデジタル化が進んでいる。小売店に対するブランドの卸売も例外ではない。その領域をサポートするべく生まれたサービスが「homula(ホムラ)」だ。同サービスは2021年12月に本格スタート。現在、登録ブランド数は250以上、登録バイヤー・小売店数は2500以上。全国各地の多種多様なブランドとバイヤーが日々取引を行っているという。「ブランドの卸売事業を成長させることにフォーカスし、“使わない理由がない”サービス設計を目指している」と語る福地峻homula代表取締役CEOに、「homulaでブランドの卸売事業はどう変わるのか」を聞いた。

ブランドと小売店をつなぐ
オンラインマーケットプレイスは、
何故生まれたのか?

―homulaとはどのようなサービスか? 

福地峻(以下、福地):端的に言うと、ブランドと小売店をマッチングさせるオンラインマーケットプレイスだ。オンライン展示会をhomulaで行い、既存取引先との受発注だけでなく新しい卸先を見つけることができたり、オフラインで展示会を行い、発注をhomulaで実施したりとさまざまな使い方をすることができる。また、ブランドによっては展示会後も多少在庫を持つことがあるが、そういった在庫の卸販売もhomula上でできるようになっている。

―そもそも、なぜhomulaを立ち上げようと考えたのか? 

福地:コロナ禍で、アパレル店の方から、コロナで展示会に行けなくなったり、新規のブランドを仕入れることに対してリスクを感じるようになったりして、仕入れがしづらくなったという話を聞いた。私自身、前職の金融時代にB2Bの取引において買う側のリスクを軽減するためのビジネスを立ち上げた経験があり、その知見を生かせるのではないかと考えた。社内メンバーに大手百貨店やセレクトショップ、ファッションテック出身者を迎えて、彼らに話を聞いたり、小売店側だけでなく仕入れ先であるブランドの方にもいろいろと話を聞いたりして機能を追加していったことで、今のhomulaのサービスに行き着いた。ブランドの卸売の成長を全力でサポートするべく、“使わない理由がない”くらいのサービスを目指して日々機能をアップデートしている。

“使わない理由がない”と
思わせるほどのメリットとは?

―ブランドにとって、homulaを利用することにはどのようなメリットがあるのか? 

福地:いくつかあるが、まず、費用面においては初期費用や固定費が無料で、発生する費用はhomulaを通じて新規の取引先を見つけた場合のみ、といった形を取っていることがある。機能面に関しては、取引対象となる商品を登録するだけで、既存の取引先や新規の取引先に対して、在庫販売〜展示会受注までをワンストップでできる。こういったサービスは私の知る限り、今のところ日本には存在していない。また、顧客管理機能が付いていることもポイントだ。取引先に対して展示会案内などのメールを簡単に作成して送ることができ、そのメールをどのバイヤーがどの程度クリックしているのか、受注用のページをどれだけ見ているのかを全て可視化できるようにしている。これにより、バイヤーの温度感が分かり、どのバイヤーに積極的にアプローチをかけていくべきかが一目瞭然になる。また、バイヤー側にとっても取引がしやすい仕組みを整えているため、ブランドとしては新規卸先の発掘だけでなく、既存卸先との取引ボリュームの増加にもつながるはずだ。

―「バイヤーにとっての取引がしやすい仕組み」とは? 

福地:まず、支払いや在庫のリスクを当社が負う形にしている。支払いに関しては、取引が成立した際、いったんは当社からブランド側に支払うようにしており、バイヤー側は60日後までに支払えば良い、ということにしている。在庫においては、初回取引に関しては当社がブランド側から買い取るような手法を取っており、バイヤー側は仕入れ後に当社に返品することができる。返品された在庫は当社の会員の方に販売しているため、最終的にはhomulaで在庫を抱えることもない。

挑戦する“リスク”を下げ、
ファッション業界をより多様に

―最後に、homulaを通じてどのような世界を実現したいのか? 

福地:ファッションにおいて、挑戦がしやすいような環境を作れればと思っている。ブランドや小売店は、立ち上げの際は少人数であることがほとんど。大企業でも、1ブランドは少人数のチームで回しているところもある。そのような中で挑戦していくことは尊いし、それが結果、新しいものや、人を熱狂させるものを生むことに繋がっていく。ただ一方で、挑戦する際にはリスクや、リスクに対する不安も生まれてくる。我々としてはリスクを限りなく下げることで、挑戦をする人たちがどんどん生まれるはずだし、さらにはそれがファッション業界の多様性の維持にも繋がってくると考えている。homulaではそのためのロードマップを引き、ユーザーの要望も取り入れながら新しい機能やバリューを打ち出していっている。私自身も事業に挑戦している身として、“挑戦する人たち”を全力で後押ししていきたい。

【ブランド成長事例】利用を
開始して数ヶ月で
新規取引先が約20件増

 カイタックインターナショナルが運営する「グランマ ママ ドーター(GRANDMA MAMA DAUGHTER)」は、コロナ禍でhomulaの利用をスタートしたブランドの1つだ。同ブランドを担当するカイタックインターナショナル卸営業部の丸川博文氏は、homulaを使い始めた理由について「コロナ禍で、新規卸先の開拓を行うには従来の営業スタイルを変えていく必要性を感じていた。そのような中で、homulaならブランドイメージを守りながら効率的に売上アップが行えるのではないかと感じて導入を決めた」と話す。「初期費用や固定費もかからずリスク低く始められたのも大きなポイント。作業工数が少なく、かつ与信リスクを気にせず受注が取れる点が非常に便利だ。コロナもありオフライン展示会での営業が難しい中、homulaでは温度感が高いバイヤーの可視化もしてくれるので、効率的な営業を行うことができ、開始から数カ月で約20件もの新規取引先を増やすことができた。UIもシンプルかつきれいで使いやすく、機能もどんどんアップデートされて使いやすくなっているので今後も楽しみ」。

INTERVIEW & TEXT : SHIN ISHIZUKA
問い合わせ先
homula

The post ブランドの卸売り事業を拡大させるWEBサービス「homula」とは? appeared first on WWDJAPAN.

最強の繊維商社集団へ、新会社MNインターファッションの今後をトップ2人に聞く

 1月1日、三井物産の繊維部門中核子会社である三井物産アイ・ファッションと日鉄物産の繊維部門が統合し、新会社MNインターファッションが誕生した。2021年2月に統合合意を発表。売上高は旧三井物産アイ・ファッションが796億円、旧日鉄物産繊維部門が984億円で、単純合算で約1800億円という巨大企業が誕生する。繊維商社の合従連衡の号砲にもなった統合の今後を、キーマンである木原伸一社長(旧三井物産アイ・ファッション会長)と吉本一心(かずみ)副社長(旧日鉄物産常務執行役員)に聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):統合合意から約1年。社内外の反応は?

木原伸一社長:水面下ではコロナ前から統合に向けて動き出しており、1月1日の新会社発足で、山でいえば5合目まで来たといったところ。お互い上場企業なので、水面下での話し合いも、知っていたのはごく一部の役員のみ。社員にもなかなか情報を開示できず、とても心配をかけたと思う。取引先への売り上げなどの情報交換も(新会社発足の)1月1日までは一切できず、その意味でも統合の具体的な道のりは始まったばかりだ。オフィスの統合は4月1日なので、現場の社員にまだ実感は湧きづらいと思う。

吉本一心副社長(以下、吉本):昨年2月の基本合意の発表はコロナ禍の真っ最中。この2年の若手の離職率は従来よりも若干高かったが、それは統合というよりもコロナ禍に伴う業界全体の不振が理由だと分析している。中堅以上に関しての離職には影響はほぼない。

WWD:人事制度や組織、取引の統合はどうなる?

木原:現時点では組織や人事制度にはほとんど手を付けていない。経営幹部間では今後についてかなりディスカッションしてきたが、「将来のあるべき姿とは何か?」といった企業理念から中長期的な業績目標、人事設計まで、全社員と議論し、共有した上で、1年をかけて変えていく。現時点で言えるのは、「お互いのいいところを見つけましょう」ということ。今はオンラインで、お互いの商売の勉強会などを行っており、アプローチや商売のやり方の情報交換を行っている。

吉本:大枠で決まっているのは、従来の商社像にこだわらず、川上から川中、川下までサプライチェーン全体でやれることはすべてやる、強い企業になろう、ということ。両社ともアパレルOEMが主力の事業だったので意外に思われるかもしれないが、取引先の重複については全体の3割以下で、そういった部分での整理・調整という作業はそれほど多くない。それに、かつては例えば取引先とのゴルフコンペなどを通じて、競合であっても交流があったりしたが、最近はそういったことも多くないようだ。ほとんどの社員は、お互いに交流がない状態だった。

WWD:個を重視し伝統的にプロパー社員の育成に力を入れてきた日鉄物産と、外部人材も多く混成部隊である三井物産アイ・ファッション。異なる社風を、どう融合していくのか?

吉本:まず前提として、成長への意思、誠実さ、顧客満足度の高さなど共通する部分は多い。その上で異なる部分をあげるとすれば旧日鉄物産は組織がニットやカットソーで、海外に自社の縫製工場も多く構えていて子会社も多い。一方、旧三井物産アイ・ファッションは顧客単位の組織で、高機能素材「パーテックス」など素材に強いといった面がある。理想はそれぞれのいいところをハイブリッドで組み合わせることだ。もちろん物量を出せれば、貿易、物流などのコストのシナジーも出せる。そういった部分は細かい項目を書き出して、精査しているところだ。

木原:私からすると、日鉄物産は現場が強い。数字へのコミットが強く、製品に対する知識や知見も深い。こうした知見を融合できれば、取引先へのサービスレベルもアップできるし、その上で規模や取引先の統合できるのでサプライチェーン全体の強化にもつながる。シナジーは大きい。

WWD:シナジーを発揮するという意味ではデジタル分野が大きいのでは?

吉本:例えば3DCADの分野では、三井物産はすでにデジタルクロージングという事業会社を持っており、この部分の知見を活用できるのは単純に大きい。両社とももともとデジタル投資には継続的に取り組んでおり、今後はさらに加速する。

木原:特にデジタルに関しては、共通化やスケールが重要になってくる。その意味ではMNインターファッションだけというより、取引先に加え、競合他社も含めた大きな連携も見据えている。

WWD:株主構成は三井物産50、日鉄物産50の完全な折半出資。親会社が2つになり、経営判断が遅くなる懸念はないのか?

木原:そもそも統合は、変化の激しい時代の中でより迅速な経営判断をするためにどうするべきか、というのが出発点だった。投資判断なども含め、経営面での自由度はずっと高くなる。

WWD:繊維商社の今後をどう見る?

木原:商社の繊維・アパレルビジネスということで言えば、実際には10年前から危機感はかなり高かった。コロナ禍でいよいよ顕在化した、というのが実際のところだ。従来の枠組みだと繊維専門商社と言われる企業も、実際には非衣料や、コスメなども含めたライフスタイル全般に事業領域を広げており、だいぶ個性がはっきりしてきた。実感としても競争相手はだいぶ変わってきた。10年後20年後はさらに変わっていく。

吉本:個人的には、水面下で進めてきた統合作業に加え、20年6月からは繊維事業部門の管掌になり、事業全般を見ることになってかなり大変だった。だが今は、以前はそれぞれ別々にしていた商社の今後のような議論を、文字通り一体となってできるようになって、それだけでも個人的にはとてもワクワクしている。足元でも市況は回復基調にあり、今は上がるだけという状況だ。

The post 最強の繊維商社集団へ、新会社MNインターファッションの今後をトップ2人に聞く appeared first on WWDJAPAN.

「日本人のおしゃれしたい気持ちは消えてない」 大丸松坂屋がファッションサブスクで得た確信

 大丸松坂屋百貨店が運営するファッションレンタルのサブスクサービス「アナザーアドレス(ANOTHER ADRESS)」が3月12日でサービス開始から1周年を迎える。2月末時点で、すでに初年度目標(会員数3000人)を大きく上回る獲得会員6700人、貸し出し着数は計2万着に到達した。

 同サービスは1カ月に3着までレンタルでき、料金は月額1万1880円。気に入った商品は買い取りも可能だ。「エアクローゼット(AIRCLOSET)」「メチャカリ(MECHAKARI)」といった国内の主要ファッションレンタルサービスの相場は月額6000〜7000円程度。競合と比較すると2倍近い料金設定だが、「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「マルニ(MARNI)」など海外のデザイナーズブランドの取り扱いがある点が差別化要素になっている。サービス発足当初は会員が殺到し、21年5月には新規会員登録を一時休止。以降も貸し出し商品の在庫が不足する状態が続いている。

 事業責任者の田端竜也DX推進部マネージャーは発足からの1年を「さまざまな課題は山積するが、ファッションサブスクの可能性を大いに感じることができた」と手応えとともに振り返る。この3月には「ディースクエアード(DSQUARED2)」「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)など63ブランドを新規導入(計113ブランド)し、在庫点数を従来の2倍、年度内には3倍まで増やす。「5年後に日本一のファッションレンタルサービスに成長させる」ことを目標に、さらにアクセルを踏み込む。

WWD:立ち上げ当初の計画を大きく上回った。

田端竜也DX推進部マネージャー(以下、田端):ファッションレンタルという百貨店としては初めての挑戦だったが、お客さまから大きなレスポンスをいただけたことにほっとしている。1年前は取引を開拓するのも一苦労という状況だったが、今ではブランド側からアプローチをいただくことも増えた。

WWD:スタートから申し込みが殺到し、5月には新規受け付けの停止を余儀なくされた。

田端:当初用意していたのは会員1000人分を想定した商品在庫。だがふたを開けてみれば、サービス開始から3日間で初年度目標としていた会員数3000人を超え、完全にパンクしてしまった。「借りられる服がない」とお客さまからクレームもいただく事態となり、(新規受け付けを)停止せざるを得なかった。今は再開しているものの、登録からご利用までには少しお時間をお待ちいただくことになり、ご迷惑をおかけしている。

 1年を通じ、シーズンの変化に対応した品ぞろえの切り替えも課題だった。「シーズンレスに使える=長い期間貸し出しができる」と考え、そういった類の商品を重点的に仕入れた結果、季節感を感じられるような服がほとんどなくなってしまった。例えば薄手のノースリーブトップスやダウンジャケットなどだ。「夏(冬)に着られる服がない」というお声も多く頂戴した。

WWD:デザイナーズブランドの品ぞろえが強みだが、人気ブランドは?

田端:貸し出し点数で見ると、「アドーア(ADORE)」「セルフォード(CELFORD)」など海外ブランドに限らず、なじみのあるブランドがレンタルでも人気だ。ただ回転率(在庫に対する貸し出し回数の割合)でみると、上位から順に「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIElA)」「ヴァレンティノ(VALENTINO)」「クロエ(CHROE)」「マルニ(MARNI)」と海外ブランドが強い。これらのブランドは抱えている在庫は少ないため、常に貸し出し中の状態が続いている。「エズミ(EZUMI)」「ミントデザインズ(MINT DESIGNS)」などコアなファンを持つドメスティックブランドの人気も高い。

WWD:貸し出し率が高い商品の傾向は?

田端:シンプルで使いやすいデザインよりも、大きな花柄などデザイン性の高いものの動きがいい。百貨店の店頭では“見せ筋”と言われるような、店内のアクセントにはなるが売れ筋にはならない商品も、レンタルでは人気がある。「着てみたいけれど、(価格が)高くて手が出せない」「すぐ飽きてしまうかもしれない」と購入にちゅうちょしていた商品も、レンタルなら手軽に試せる。気に入って購入するお客さまも一定数いらっしゃり、売上構成の10%ほどは買い取りによるものだ。

WWD:利用者はファッションラバーが多い?

田端:そうとも限らない。一般的な会社勤めで、デザイナーズブランドは買ったことがないという方もいらっしゃる。そういった方々にもサービスの価値を感じてもらえているようで、有料会員の解約率は1%以下にとどまる。

 服は人を元気にしたり、新たな出会いを生み出したりするもの。このサービスは、多くの人に袖を通していただくことで、そのパワーを伝えることを本懐としてスタートした。日本人のファッションに使うお金は減っていると言われるが、「おしゃれをしたい」という気持ちがなくなったわけではない。まだ1年ではあるが、そこに確信が得られたことはとても大きかった。

WWD:百貨店との相乗効果は?

田端:貸し出し商品や顧客の情報を、リアル店舗のMDや出店エリアの選定に生かすなど、テストマーケティング的に活用している取引先さまもある。ブランドの売り場では「アナザーアドレス」の商品ページを販売員に見せて「この商品が欲しい」とおっしゃるお客さまもいる。

 「アナザーアドレス」での取り扱いブランドの半分以上は、百貨店では取り引きがなかったブランドだ。百貨店への新規出店交渉でも、「アナザーアドレス」への出店をセットで提案することで、先方が前向きになることもあると聞いている。会員の分布は首都圏が中心で、大阪や名古屋が中心の大丸松坂屋の顧客とは異なる。年齢層も40代前半が中心で百貨店顧客(50代中心)より若い。シナジーが生まれるのはこれからだが、さまざまな可能性が眠っているだろう。

WWD:スタート時に中長期目標として利用者3万人、年間売上高50億〜60億円を目標に掲げていた。今後の展望は?

田端:個人的な野望としては、「百貨店のファッションレンタルサービス」にとどまるつもりはない。J.フロントグループ内では大丸松坂屋百貨店、パルコといった主要子会社と並べるようなスケールを目指していきたいし、グループからスピンアウトすることもありえる。まずは3年で事業の損益分岐点を突破し、5年で日本国内でナンバーワンのファッションレンタルサービスに成長させる。

The post 「日本人のおしゃれしたい気持ちは消えてない」 大丸松坂屋がファッションサブスクで得た確信 appeared first on WWDJAPAN.

「マムート」アンバサダーの柴咲コウに聞く地方生活 ブランド160周年記念イベントで

 スイス発のアウトドアブランド「マムート(MAMMUT)」は、創業160周年を記念したプロジェクト“マムート 160周年記念プロジェクト〜すべては山を楽しむ為に〜”を始動し、アンバサダーに柴咲コウが就任した。3月9日に行った記者発表会では、福田太一マムート・スポーツグループジャパン社長がブランドのこれまでの歩みやCSR活動について解説。柴崎は160周年記念のアイテムを着用して登場した。

 同プロジェクトの一環として、東京・渋谷のミヤシタパーク3階のサイ(SAI)ギャラリーで、ブランドの歴史を振り返る展示を13日まで開催している。ブランドのルーツであるクライミングロープの初期モデルをはじめ、日本初公開となる商品や日本の山景色の写真を展示する。5月からは、一般参加者を募った登山ツアーなどのイベントを開催予定だ。これらの取り組みを通して、都市生活者に山の魅力を伝え、環境保全の意識喚起を促す狙いだ。

 柴咲は2020年に自身が代表を務めるレトロワグラースを立ち上げ、環境に配慮した衣食住にまつわる製品企画・開発に取り組む。18年には環境省の環境特別広報大使に就任。現在は北海道を拠点にし、自然と共生する暮らしを実践している。そうした柴咲の姿勢が「マムート」のフィロソフィーと通ずることが、アンバサダー就任のきっかけになった。柴咲にアンバサダーとしての意気込みを聞いた。

WWD:「マムート」のイメージは?

柴咲コウ(以下、柴咲):商品は、厳しい自然環境でも耐える機能性を備えたプロ仕様のイメージです。そして、ロゴがかわいい。最近は両親の故郷である北海道にも拠点を置いているので、そこで登山をする人たちが身につけているのをよく見かけます。本気で登山をする人たちに愛されているブランドですね。

WWD:展示を見た感想は?

柴咲:自然を相手にしているからこそ、CSRの活動にしっかり力を入れている企業だということ改めて理解しました。これからの取り組みにも注目したいです。特に、有機フッ素化合物については知らなかったので勉強になりました。アンバサダーとして、こういった事実を生活者の人々へ伝えていきたいです。自然は何万年もの長い年月をかけて形成されていて、すごく偉大です。責任を持ってモノづくりをしている様子を生活者は見ているし、ブランドに対する信頼につながると思いました。

WWD:北海道にいる間はどんな生活を?

柴咲:目的がなく過ごす時間が多くて、鳥のさえずりや山の木々が揺れる音に耳を傾けるだけで満たされた気持ちになるんです。微生物の存在も意識するようになりました。例えば、腐葉土の上を歩くと、温かくてエネルギーを感じます。枯れて終わったと思っていたものがまだ生きていて、これからの季節に向かって栄養を貯め、循環している。循環の大切さを学ぶと、なんでこれまで使い捨てでモノを消費することが許されていたのかなと考えています。モノの循環が重視される世の中にシフトできたらいいなと願っています。

WWD:アンバサダーとしてどんなことに挑戦したい?

柴咲:さまざまなアウトドアスポーツに挑戦したいです。ちょうどフライフィッシングに誘われているので、まずはそこから。登山はまだ初心者ですが、山や自然が大好きで、数年前には会社のレクリエーションで御嶽山に行きました。都内の会議室とは全く違う環境で、山に登りながら親睦を深めるのもいいなと思いました。まずは、ハイキングから始めて、今後は本格的な登山にも挑戦してみたいです。

WWD:環境問題について発信するときに気をつけていることは?

柴咲:発言した後に反省することばかりです。いろんな考え方があるけど、地球環境の課題は社会全体で取り組まなければいけない段階です。みんなが自分も取り組みたいと思えるように、ワクワクに包んで情報を届けることを大切にしています。一人の力は小さいかもしれないけど、それが集まれば大きな力になると信じて、諦めずに発信を続けていきたいです。

The post 「マムート」アンバサダーの柴咲コウに聞く地方生活 ブランド160周年記念イベントで appeared first on WWDJAPAN.

「マムート」アンバサダーの柴咲コウに聞く地方生活 ブランド160周年記念イベントで

 スイス発のアウトドアブランド「マムート(MAMMUT)」は、創業160周年を記念したプロジェクト“マムート 160周年記念プロジェクト〜すべては山を楽しむ為に〜”を始動し、アンバサダーに柴咲コウが就任した。3月9日に行った記者発表会では、福田太一マムート・スポーツグループジャパン社長がブランドのこれまでの歩みやCSR活動について解説。柴崎は160周年記念のアイテムを着用して登場した。

 同プロジェクトの一環として、東京・渋谷のミヤシタパーク3階のサイ(SAI)ギャラリーで、ブランドの歴史を振り返る展示を13日まで開催している。ブランドのルーツであるクライミングロープの初期モデルをはじめ、日本初公開となる商品や日本の山景色の写真を展示する。5月からは、一般参加者を募った登山ツアーなどのイベントを開催予定だ。これらの取り組みを通して、都市生活者に山の魅力を伝え、環境保全の意識喚起を促す狙いだ。

 柴咲は2020年に自身が代表を務めるレトロワグラースを立ち上げ、環境に配慮した衣食住にまつわる製品企画・開発に取り組む。18年には環境省の環境特別広報大使に就任。現在は北海道を拠点にし、自然と共生する暮らしを実践している。そうした柴咲の姿勢が「マムート」のフィロソフィーと通ずることが、アンバサダー就任のきっかけになった。柴咲にアンバサダーとしての意気込みを聞いた。

WWD:「マムート」のイメージは?

柴咲コウ(以下、柴咲):商品は、厳しい自然環境でも耐える機能性を備えたプロ仕様のイメージです。そして、ロゴがかわいい。最近は両親の故郷である北海道にも拠点を置いているので、そこで登山をする人たちが身につけているのをよく見かけます。本気で登山をする人たちに愛されているブランドですね。

WWD:展示を見た感想は?

柴咲:自然を相手にしているからこそ、CSRの活動にしっかり力を入れている企業だということ改めて理解しました。これからの取り組みにも注目したいです。特に、有機フッ素化合物については知らなかったので勉強になりました。アンバサダーとして、こういった事実を生活者の人々へ伝えていきたいです。自然は何万年もの長い年月をかけて形成されていて、すごく偉大です。責任を持ってモノづくりをしている様子を生活者は見ているし、ブランドに対する信頼につながると思いました。

WWD:北海道にいる間はどんな生活を?

柴咲:目的がなく過ごす時間が多くて、鳥のさえずりや山の木々が揺れる音に耳を傾けるだけで満たされた気持ちになるんです。微生物の存在も意識するようになりました。例えば、腐葉土の上を歩くと、温かくてエネルギーを感じます。枯れて終わったと思っていたものがまだ生きていて、これからの季節に向かって栄養を貯め、循環している。循環の大切さを学ぶと、なんでこれまで使い捨てでモノを消費することが許されていたのかなと考えています。モノの循環が重視される世の中にシフトできたらいいなと願っています。

WWD:アンバサダーとしてどんなことに挑戦したい?

柴咲:さまざまなアウトドアスポーツに挑戦したいです。ちょうどフライフィッシングに誘われているので、まずはそこから。登山はまだ初心者ですが、山や自然が大好きで、数年前には会社のレクリエーションで御嶽山に行きました。都内の会議室とは全く違う環境で、山に登りながら親睦を深めるのもいいなと思いました。まずは、ハイキングから始めて、今後は本格的な登山にも挑戦してみたいです。

WWD:環境問題について発信するときに気をつけていることは?

柴咲:発言した後に反省することばかりです。いろんな考え方があるけど、地球環境の課題は社会全体で取り組まなければいけない段階です。みんなが自分も取り組みたいと思えるように、ワクワクに包んで情報を届けることを大切にしています。一人の力は小さいかもしれないけど、それが集まれば大きな力になると信じて、諦めずに発信を続けていきたいです。

The post 「マムート」アンバサダーの柴咲コウに聞く地方生活 ブランド160周年記念イベントで appeared first on WWDJAPAN.

なぜパタゴニアが日本酒を手掛けるのか 日本発「五人娘」誕生秘話

 パタゴニア(PATAGONIA)の食品事業プロビジョンズは2021年12月、日本発の初めての製品として寺田本家が手掛ける「五人娘」を発売した。本国アメリカでは寺田本家オリジナルの「五人娘」を、日本ではパタゴニア日本支社がソーラーシェアリングに投資する「坪口農業未来研究所」のコシヒカリを掛米(もろみ造りに直接使われるお米)に用いた独自配合の「五人娘」を販売し、売れ行きは上々だという。なぜパタゴニアが日本酒を手掛けたのか。近藤勝宏パタゴニア プロビジョンズ ディレクターに聞いた。

WWD:パタゴニアの日本発の初プロダクトが日本酒でした。

近藤勝宏パタゴニア プロビジョンズ ディレクター(以下、近藤):実はお酒に的を絞っていたわけではなく、きっかけは“自然発酵”のコレクションを作り、お客さまに紹介しようとプロジェクトが始まったことでした。プロジェクトが本格化したのは2020年秋。発酵から熟成、そして瓶詰めまで、天然の風味を維持しながら向上させるために人的介入は最小限に抑える技術を持ち、日本酒であれば米、ワインならブドウといった原材料も環境にダメージを与えない方法で作られたモノを提案することが環境や社会問題への解決策の一つになるのではないかと考えました。

WWD:なぜ、自然発酵だったのでしょうか。

近藤:自然派ワインや自然酒はコアなファンがいるけれどなかなか広がらない。多くの方は通常、値段と量、ラベルで選び、モノ作りの背景までは考えることはないでしょう。なぜ自然派ワインや自然酒に価値があるのか、どうやって作られているかを伝えることで、ファンを作るいいきっかけになるのではないかと考えました。

WWD:自然派ワインは、どこでどんな作り手がどんな気象条件や醸造方法で作っているかが語られ、トレーサブルです。自然条件で味が変化することを楽しむ文化が少しずつ広がっているようにも感じます。

近藤:自然派ワインのファンは一定数いて、その年を味わうことを楽しみ、共有する文化ができていますが、酒はあまりない。同じようにお米も品種があり自然の影響を受けているのでそうあってしかるべき。自然の影響を受けてそれぞれ個性が出てくる。それを楽しむような方が今後増えていけばと思います。

WWD:食品生産における課題解決に向けて、すでにビールや豆のスープ、魚の缶詰などを販売しています。自然農(不耕起(耕さない)、不除草(除草しない)、不施肥(肥料を与えない)、無農薬(農薬を使用しない)を特徴とする農法)で栽培された原材料を用いたプロダクトを販売することーーつまり土壌を回復しながら生産する食品を販売することは今パタゴニアにとって最重要プロジェクトといっても過言ではありませんね。

近藤:水や空気、土壌を再生しながら、野生動物を保護するような方法で原材料が生産されていればいいというわけではなく、食品事業は(創業者の)イヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard)やシュイナードファミリーが深く関わっています。クオリティにもこだわりがあり、これまで発売したプロダクトは全て彼らの舌を通り承認を得ています。

WWD:寺田本家との取り組みはどのように始まりましたか?

近藤:米国チームが自然発酵プログラムに適したものを探していたときに、寺田本家と出合い、彼らのモノ作りに共感してアプローチしました。米国の担当者が直接オンラインで寺田本家に、どのように稲を育てているか、働いている人は幸せか、どういう環境で働いているかなどのインタビューを行いました。

WWD:日本でパタゴニアが販売している「五人娘」は掛米に「坪口農業未来研究所」が生産するコシヒカリを用いています。

近藤:通常の「五人娘」とは味が異なり、フレッシュかつワイルドな味わいになりました。私自身「五人娘」のファンでよく飲んでいますが、今回仕上がった「五人娘」は味にパンチがある。実は、(お酒が出来上がるまで)「正直わからない」と言われました。掛米で使われる米は味に大きな影響を与えないと聞いていましたし、寺田本家はコシヒカリを使って酒を造る経験もあったので当主の優さん(寺田本家の24代目寺田優氏)は自信があったと思います。わからないとは、クオリティが落ちる可能性があるということではなく、自然が決めるという意味です。寺田本家はあるがままの自然の状態に任せて醸造しますし、タイミングでも味が変わります。それが本来の食べ物、つまり食べ物も生き物であるということだと思います。あるがままの自然を受け入れて、生まれるものを発酵の一部として考えるーー蔵に集まったものを受け入れるという思想です。

WWD:どのように協業しているのですか?

近藤:パタゴニアが原材料を提供するのではなく、寺田本家が「坪口農業未来研究所」から買い取る形です。日本では「寺田本家」オリジナルの「五人娘」は飲めるので、パタゴニアが販売するのは、パタゴニアでしか味わえないもの、パタゴニアとのストーリー関係性の深いものを使おうとなりました。ワインもオリジナル企画です。

WWD:食こそが唯一の解決策だとイヴォン・シュイナード氏は語っています。

近藤:ジャケットは5~10年に1回買い替えればいいけれど、食は毎日のことです。食品産業はエネルギー産業と並び、気候変動や環境に対するインパクトが大きく、この分野を変えていくことが地球を救うことになります。食のあり方や食の選ばれ方、土壌を豊かにして炭素を固定することーー“解決策としての食”をコンセプトにしていて、そうした食品を今後開発して選択肢を増やしていきたい。

食品の複雑なサプライチェーンを再構築する

WWD:今後、食品事業をどのように拡大していくのでしょう。

近藤:食は土地のものがあり、地域で好みが異なります。主食も違う。アメリカの企画で作られたものを日本に紹介して波及させることで日本の食品業界にインパクトを出すことももちろんですが、直接日本の食卓や農業にインパクトを出せる日本製品の開発に力を入れていきます。

WWD:具体的なアイデアはありますか?

近藤:イヴォン・シュイナードは日本食が好きです。例えば、米や麦を用いた、みそやみそ汁など日本の伝統的な食材と食品加工技術を用いたものを作っていきたい。

WWD:各地域で独自商品が生まれる、ということでしょうか。

近藤:日本で成功モデルを作り、他のブランチで波及させたいと考えています。私自身、日本の伝統的な食生活が解決策としての可能性があると考えています。主食は雑穀、野菜や海藻が食の中心にあり、肉食中心ではなかった。伝統的な日本食をいい形で世界に提供したい。地球の変化の原因の一つで、環境へのインパクトが大きいのは畜産です。食生活の変化も気候変動の要因の一つで、その解決を目指すためには、伝統的な姿に戻していく必要があるのではないでしょうか。伝統的な日本食をいい形で世界に提供したい。

 また、現在、健全性のある食品がなかなかありません。プロビジョンズのビジネスを通じて、食品産業の複雑に絡み合ったビジネスを変えたい。アパレル産業を40年かけて改革してきました。ウエアビジネスで学んだことを生かし、複雑な食品の世界を再構築したい。

The post なぜパタゴニアが日本酒を手掛けるのか 日本発「五人娘」誕生秘話 appeared first on WWDJAPAN.

「みんなのために」じゃないフェミニズム 出版社エトセトラブックス代表が語る日本のフェミニズムとファッション

 2018年12月に設立したエトセトラブックス(etc.books)は、フェミニズム本が専門の出版社だ。これまで聞かれてこなかった“エトセトラ(その他)”の声を発信することを目標に掲げている。同社の松尾亜紀子代表は、同名の店舗を東京・新代田に2021年1月にオープンし、企画や編集、販売、イベントの運営を通してフェミニズムを伝えている。今回、松尾代表にフェミニズム出版社としての想いやファッションとフェミニズムのつながり、自身のファッションについてを聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):エトセトラブックスを設立しようと思った理由は?

松尾亜紀子エトセトラブックス代表(以下、松尾):15年間編集者をした後、「ジェンダーやフェミニズムの本を出す出版社を作る」いう想いを胸に、18年に独立しました。独立への背中を押してくれたきっかけは二つ。一つは、2010年ごろからSNSを中心に日本の多くの女性たちがフェミニズムについての対話を始めたこと。当時、性暴力や職場での性差別について声を上げる人が増え、ジェンダーやフェミニズムに関連する本の感想がダイレクトに届くようになり、フェミニズムの動向も見えやすくなりました。もう一つは、独立系の出版社がたくさん登場したこと。独立した人たちが流通や経営の仕組みを構築して前例を築いてくれたので、フェミニズムだけの出版社を立ち上げて、より直接的に読者に届けたいという気持ちでスタートしました。

WWD:現在の事業は?

松尾:毎年2回発行するフェミマガジン「エトセトラ」は大体3000部から始めて、毎回増刷を重ねて6000部ほど作っています。毎月のイベントには、約60〜100人が集まります。21年1月に開いた新代田の店舗には、学生から70代のお客さままで、幅広い客層が来店しています。

WWD:仕事のやりがいは?

松尾:原稿を一番早く読める、というのは編集者として何より大きな喜び。フェミニズムを専門にしているので、出版のプロセス自体がフェミニズムの実践になります。こうして話を聞きにきてくれる人が増えていることに対しては、いまだに「私はただの一人の編集者ですが……」という気持ですが。

届けたい人がいるから、「みんなのため」にしない

WWD:エトセトラブックスが担う役割とは?

松尾:誰かのフェミニズムを、また別のフェミニストに伝えるのが使命です。書籍では、これまで聞こえなかった“エトセトラ”の声を届け、イベントではそれを読んだ人たちと一緒に理解を深めて思いを共有する。店頭では、自社の出版物だけでは伝えられないフェミニズムの多様さや葛藤を扱うことが目的です。「ここに来たら居場所がある」って思ってもらえるような場所を作りたいんです。

WWD:実際にはどんな反響が届く?

松尾:「お店で生きているフェミニストに会えてうれしい」と言ってもらえたことがありました。今はSNSでフェミニズムを実践する人が多いけれど、実態が見えづらい。だからスタッフやお客さまが、“生身のフェミニスト”として可視化できているのでしょうね。

WWD:ジェンダーやフェミニズムのトピックスを扱う上で工夫していることは?

松尾:私の話を聞いて、対話しようとしている目の前の人に向けて話すことです。広く漠然と「みんな」に向けてだと、本来届けたい層とは離れてしまう。マジョリティーのための、ジェンダーの話になってしまいます。

ずっと正しいわけではない。許してくれる仲間やシスターフッドがあった

WWD:日本では特にジェンダーやフェミニズムの話は敬遠されがちだ。発信を続けることに葛藤や恐怖はない?

松尾:恐怖はないですね。活動をする上で何をやりたいかも大事ですが、それ以上に「これはやらない」を決めるのがとても大事。やりたくないことを選ぶようになってから、フェミニストとして発信する葛藤はなくなりました。独立してからは、自分の発信したいことについて、誰かの顔色を気にしないようになれました。

WWD:間違えてしまうこともある?

松尾:私は編集者として本を作る過程でフェミニズムを知ってきたので、学問的・専門的には学んでいません。今でも間違えることはあるし、全然完成形じゃない。だからこそ何かを考えて実践する姿を見せていくことにも意味があると思っています。これから失敗するかもしれないし、迷うこともあるかもしれませんが、エトセトラブックスの成長や歩みはオープンにしていきたい。その過程を共有したいんです。

WWD:日本でフェミニズムを語る難しさとは?

松尾:前からのつながりや歴史について“共有する前提”が足りていないと感じます。例えば、ここ数年「フェミニズムの流れが来ている」「盛り上がっている」という風に言われることも多いですが、これまでずっと闘ってきて、社会を少しずつ変えてきた女性やフェミニストたちの存在があまり語られません。そういう人たちも、みんなが正しかった訳ではなく、間違うこともあった。でもそれを許してくれる仲間の存在やシスターフッドがあり、少しずつ積み上げられてきたものが今のフェミニズムを作っている。歴史への理解を深めることで、連帯がさらに生まれてくるはずです。

「洋服くらいは、自分の味方に」

WWD:ファッションとフェミニズムの関連性は?

松尾:1960年代にアメリカから広まったフェミニズム運動で、「個人的なことは政治的なこと」というスローガンがあります。この考えは、ファッションも同じだと思うんです。どんな装いを選ぶかは、それを社会的要因などによって選べない人がいるということも含めて、政治的ですよね。ファッションは自分らしさを表現する時のツールでもあるし、みんなで共有できる楽しさがある。ものを通して、フェミニストたちをつなぐものでもあると思います。

WWD:自身のファッションに対するポリシーは?

松尾:自分の好きなTシャツと、パンツ、黒い上着が基本の装いです。時々変えることがありますが、基本はこのスタイルが落ち着く。「したくないこと」を洋服に置き換えて選べるようになってから、楽しめたり、心地よく感じられるようになってきた気がします。Tシャツは、エトセトラブックスの店内でも売っているようなメッセージTシャツやスローガンTシャツをよく着ています。

WWD:なぜメッセージ性のあるTシャツを選んでいる?

松尾:フェミニズムTシャツが大好きなのは、気分的に勇ましくなれるし、何より自分がアガるから。誰かに見せるとか攻撃するためではなくて、洋服ぐらいは自分の味方で、自分にパワーを与えてくれるものであってほしい。フェミニストだと公表したら、周りに「もっと明るく、攻撃的ではない服を着た方いい」と指摘されることがありました。短い髪に、好きな革ジャンやパンツスタイルをすると、「いかにもフェミニストだね」と言われたこともあります。でもそういう人たちは結局、自分が思うフェニミストの型にはめようとしているだけなんだろうなと感じましたね。自分のプレジャーになるためのファッションが大事なのであって、お互い「こうでなくてはいけない」と主張し合うのは無駄なはず。

WWD:具体的には?

松尾:装いに関するところでは、女性に限った話ではないですが、就職活動のリクルートスーツが自分たちの世代よりもっと画一的になっていて驚きました。しかも衝撃だったのが、基本の装いであるスーツはガチガチにルールに縛られたままなのに、ピアスやヘアースタイルで“おしゃれ・個性をプラス”とうたう記事を見たこと。そのギャップに、鎖に繋がれた中の自由、そして「それで満足せよ」と若者に言っている社会の圧が詰まっている気がします。ファッションで何かを主張したい人はすればいいと思いますが、誰かにさせられているファッションなら早く脱いだ方がいい。“脱げる社会”をつくらないといけないと思いますね。

メッセージには、尊厳とプレジャーの視点が大事

WWD:当事者に寄り添う発信のつもりが、攻撃的なアウトプットになってしまうケースもある。どう気をつけていくべき?

松尾:女性を題材にして炎上するものは、とにかく尊厳がない。マイノリティーの尊厳とプレジャーを本当に大事にしているのか、気にかけなければいけません。キャンペーンや広告、アイテムのきれいな見かけが、メッセージの危うさを隠してしまうことがあります。

WWD:情報を見分けるには。

松尾:商業主義や新自由主義にまみれた“フェミニズムぶったもの”には注意が必要。女性の体を利用したビジネスが多くあります。脱毛や痩身などの広告や情報ばかりが増え、自分の体を守れなくなっていってしまうんですよね。フェムテックも、女性の身体を商業的に利用しているように見える会社もあります。例えば、ホームページにはきれいな言葉が並んでいても、役員は全員男性で、社外顧問というポジションだけに女性を据えるような組織の体制は信用できないですね。

出版のプロセスがフェミニズムであり、社会運動

WWD:エトセトラマガジンのトピックはどのように選んでいる?

松尾:長田杏奈さんが責任編集を務めた「エトセトラVOL.3 私の私による私のための身体」では、美容ライターとして活躍する長田さんの考えにフェミニズムを絡めて制作を依頼しました。「エトセトラVOL.4 韓国ドラマで私たちは強くなれる」は、自分や周囲の女性たちがコロナ禍で韓ドラにはまったことから始まりました。最新号の「エトセトラVOL.6 ジェンダーとスポーツ」は反オリンピックの運動の一環として、時事的なことをきっかけに発行しました。

WWD:マガジンの特徴的な表紙デザインはどういうアイデア?

松尾:この表紙がプラカードになるイメージで制作しています。2017年に参加したウィメンズマーチ(国際女性デーに世界各国で、ジェンダーに基づく暴力・差別に反対の意思を表明するデモ行進)で、現在デザインを手掛ける福岡南央子さんに出会いました。福岡さんが当時持っていた自作のプラカードのデザインに惹かれて、「絶対この人に頼もう」と決めていたんです。書店で表紙が並んだり、誰かが電車で読んだりしているときに、周囲には社会へのステートメントとして映るよう願いを込めています。

WWD:これからの目標は?

松尾:まずは続けることですね。5年、いや10年先も今やっていることを続けていきたい。ハリウッド発信で#MeTooが広がる前に、日本で伊藤詩織さんは声を上げていたし、石川優実さんの#KuTooも独自に広まっていきました。日本は海外ほどフェミニズムが広がらないとか、#MeTooが不完全燃焼とかよく言われますが、私自身も伊藤詩織さんに連帯を表明できなかった、応援しきれなかったという後悔があります。そういった後悔も共有しながら少しずつ進んでいるのが、今の日本のフェミニズムなのかもしれません。私が関わっているフラワーデモ(毎月11日に、性暴力根絶を目指して全国で同時に行われるデモ)は#MeTooの一つですが、まず寄り添うための#Withyouがないと、#Metooは発展しません。今は一緒に声を上げていく土俵として、#WithYouを創っているところなのだと思います。

松尾代表が選ぶおすすめの書籍3点

The post 「みんなのために」じゃないフェミニズム 出版社エトセトラブックス代表が語る日本のフェミニズムとファッション appeared first on WWDJAPAN.

「完璧な人しか語っちゃいけないタブーを変えたい」 AMIAYAと考えるサステナビリティvol.1

 双子モデルのAMIAYAは、原宿のストリートで誕生し、今や東京のファッションシーンと世界を繋ぐ架け橋のような存在だ。2011年には、マークスタイラーから自身がクリエイティブ・ディレクターを務めるアパレルブランド「ジュエティ(JOUETIE)」を立ち上げ、10〜20代の層を中心に支持を集める。「ファッションを謳歌し、自由に表現する楽しさを届ける」ことをモットーに、ポジティブなパワーを発信してきた2人は、環境問題や人権問題など業界の負の側面に関心が高まる今、あらためて「私たちが発信すべき責任あるメッセージとは何か」を自問する。本連載では、AMIAYAがさまざまな角度からサステナビリティを学ぶ姿を追う。第1回は、AMIAYAにこの連載にかける思いについて聞いた。

WWD:今回の連載は、2人から「サステナビリティについてもっと学ぶ機会が欲しい」と声をかけてくれたことがきっかけです。そう思った背景にはどんな理由が?

AMI:2019年ごろから海外のコレクションに行くと、環境問題やサステナビリティをテーマにしたブランドのプレゼンテーションを見る機会が増えました。主に海外でそういった情報に触れながら、自分たちも何か変えられることはないか、どんな発信をしていくべきかを2人でよく話すようになりました。

WWD:特に印象的だったショーの思い出は?

AMI:20年春夏シーズンの「ディオール(DIOR)」です。森を再現した会場で、ショーで使用した木を街に植樹する取り組みを実践していました。メディアの人からこういったサステナビリティのメッセージをどう思うかと聞かれましたが、その時はうまく答えられませんでした。一方で、海外のインフルエンサーたちは自分の言葉でちゃんと意見を述べていて、私たちもこうならなくてはと思った瞬間でした。

WWD:ファッションの楽しさや華やかな部分を経験してきた2人が、生産工程の裏の人権問題や環境破壊などに目を向けることで、ファッションに対する姿勢に変化はありましたか?

AYA:自分たちもファッションを選ぶ視点が変化しています。加えて、若い子に向けてファッションの楽しさを発信する責任を強く意識するようになりました。ずっと大事にしてもらえる服も大事だけど、トレンドも発信したい。そんな葛藤を感じるようになりました。

WWD:環境問題などに対する発信はこれまで意識的に避けていたのですか?

AMI:正直抵抗はありました。以前、ラジオでサステナビリティの話題に触れたら、その後インスタグラムのDMで「何も知らないくせに」とか「なんかイメージと違う」といったコメントを受け取りました。この話題は特に、“完璧に知識を蓄えていないと触れてはいけない”という雰囲気を世間からは感じています。今も話すことが怖いし、攻撃されるかもしれないと不安です。だけど本当は、みんなで話して、一人ひとりの意識を変えていくべきだと思うんです。私たちが等身大で発信することで、その壁を取り払って、いろんなところでディスカッションが始まるきっかけを作りたい。

AYA:私はエシカルやフェアトレードに興味を持つようになってから、洋服の話は政治や自分たちの生活のさまざまな部分と密接につながっていることに気が付きました。ファッションについて発信する立場として、もっといろんなことに興味を持ち、知ろうとするべきだと強く感じています。友達とご飯の話をするみたいに、サステナビリティや政治の話も日常的に話せるようになることが理想です。

AMI:「ジュエティ」は“ミックスガール”というコンセプトで立ち上げました。当時は、青文字系や赤文字系などファッションのジャンルが分かれていたので、もっと自由な表現を楽しんでほしいという思いを込めました。今はエシカルなブランドも、ある意味ジャンルとして分かれている気がしますし、サステナビリティに関する発言をできる人が限られている気がします。私たちが等身大で発信することで、完璧な人しか語っちゃいけないタブーを取り払いたい。

WWD:最後にこの連載を通じて、どんなメッセージを届けたいですか?

AMI:私たちの好きなブランドの「ガニー(GANNI)」のデザイナーがあるインタビューで、「新しいものを作るビジネスと、持続可能な社会には絶対的な矛盾がある。だから自分たちではサステナビリティは謳わない。それでも自分たちができる最善のことをして、ファッションブランドとしての責任を果たしたい」と話していました。問題にしっかりと向き合っているからこその言葉です。私たちもさまざまな問題にちゃんと向き合い、感じたことを自分たちの言葉で伝えていきたいです。

AYA:私たちの役目は、ファッションの楽しさを伝えること。これまで世界で認められるファッションアイコンを目指してきましたが、それは日本のファッションと世界をつなげ、ファッションを通じて社会に貢献したいから。社会に貢献するためにファッションのポジティブなパワーを、責任を持って届けていきたいです。

The post 「完璧な人しか語っちゃいけないタブーを変えたい」 AMIAYAと考えるサステナビリティvol.1 appeared first on WWDJAPAN.

ヘアメイクアップアーティスト藤原美智子が42年のキャリアを振り返る 「ヘアメイクで人を輝かせることが一番の幸せ」

 ヘアメイクアップアーティストの藤原美智子は4月19日付で、42年にわたるヘアメイクアップアーティストとしてのキャリアに終止符を打つ。同日に自身が経営する事務所のラ・ドンナ(LA DONNA)も解散する。藤原氏はこれまで数多くの雑誌や広告のヘアメイクを手掛け、長年にわたり日本のヘアメイク業界の最前線を走ってきた。化粧品やファッション関連のアドバイザーを務め、テレビ出演など幅広く活躍するほか、栄養コンサルタントの資格も持ち、食や健康、暮らしまでライフスタイル全般の発信をしてきた。2017年には自身のライフスタイルブランド「ミチコドットライフ(MICHIKO.LIFE)」を立ち上げ、長年のヘアメイクのノウハウを生かした化粧品や雑貨を販売。また1992年4月に事務所のラ・ドンナを立ち上げ、小田切ヒロやAYA、田中宏典といった業界トップのヘア・メイクアップアーティストを多く輩出してきた。
 
 藤原氏は今後、ビューティ・ライフスタイルデザイナーという肩書きで再出発する。引き続き「ミチコドットライフ」のプロデュースやヘアメイクアップアーティスト丸山智路のスキンケアブランド「ボーテ ド ラ・ドンナ(BEAUTE DE LA DONNA)」のアドバイザー活動を行う。そんな藤原氏に、これまでの42年のヘアメイクのキャリアを振り返りつつ、今後の活動について聞いた。

WWD:そもそも42年前、ヘアメイクアップアーティストになろうと思ったきっかけは?

藤原美智子ビューティ・ライフスタイルデザイナー(以下、藤原):母が美容室を経営していて、後を継ぐために美容学校に通っていました。しかし卒業間際になって、子どもの頃から見ていた世界を自分が続けることに興味が失せ始め、何か新しいことをしたいという思いが湧いてきました。

そんなとき、後に私が師事する先生(松永タカコ氏)が取材されている週刊誌を偶然目にしました。それを読んで、初めてヘアメイクアップアーティストという職業があることを知りました。そしてたまたまアシスタントを募集していることを目にした途端にピンときて、すぐに連絡をして面接を受けたら合格したんです。それが私の42年に及ぶヘアメイクアップアーティストのキャリアのはじめですね。

WWD:日本のビューティ業界の最前線で活躍してきたが、キャリアが軌道に乗ったと思うエピソードは?

藤原:ちょうど30歳になったころから「藤原さんはこういうメイクが得意ですよね」と頼まれる仕事が一気に増えたことです。つまり、それは自分の個性や好きな美しさの表現をハッキリと他者に伝えられるようなヘアメイクを作れるようになったことであり、それが認められてきたということなので、とてもうれしかったことを覚えています。

 私が表現できるようになりたいと思っていた女性の美しさとは、透明感や品性があり、ノーブル性(気品がある)と「今」が感じられるもの。私は一人の女性の中にある多面的な内面の魅力をメイクで外側に表せられるようなヘアメイクアップアーティストになりたいということを、この職業に就いたときから目指していました。

WWD:キャリアを振り返り、一番苦労した点は?

藤原:20代のころは私自身、好きな世界観や個性というものを模索していた時代だったので、依頼される仕事もさまざま。ですから、どういった綺麗さを求めているのかを把握できない仕事を依頼されたり、自分が不得意な女性像を作らなければいけなかったり。でも仕事なので依頼側が納得する以上のものを作らなければいけない。それが今思うと一番の苦労だったと思います。

WWD:逆に一番印象に残る仕事は?

藤原:アシスタント時代に急遽、先生の代わりにとある雑誌の表紙のヘアメイクを担当しなければいけなくなったときの仕事です(そして、これが私にとって初めての一人仕事となりました)。そのとき、自分が納得するまでヘアメイクに時間をかけてしまったのに、編集者やカメラマン、スタイリスト、モデル、誰一人として私を急かしたり文句を言ったりせずに、私の気が済むまで待ってくれました。そんな皆さんの懐の深さをそのときは気づく余裕はなかったのですが、後でその有り難さや「創る」とはどういうことなのかを気付かされました。

鉄則は「人の内面が引き出されるヘアメイク」

WWD:ヘアメイクをして一番幸せに感じる瞬間は?

藤原:自分がヘアメイクした相手の目が、まるで星が入ったかのようにキラキラと輝き出し、カメラの前で自信を持って魅力的な表情をしながら撮られているのを見ているときです。この瞬間を見るために私はこの仕事をしているのだな、と毎回思っていました。

WWD:ご自身のヘアメイクのこだわりや鉄則を教えてほしい。

藤原:その人の内面が引き出されるヘアメイクをすることですね。

WWD:長きに渡り美容業界を見てきたが、この間で業界はどう変わったと考えるか。

藤原:いつのときも時代というのは変わっていくものであり、変化していくのが人間。当然ながら人が求める美も変化していきますし、その道具となるものを作り発信する美容業界も変わっていくのが常です(これは「鶏が先が卵が先か」かもしれませんが)。もちろん私自身も時代の空気感に感化して変化してきましたが、私が美しいと思う「透明感」や「品性」という根っこの部分は変わっていませんし、それはこれからも変わらないと思います。

WWD:コロナで暗いニュースが続きましたが、ビューティ業界の未来はどう見ている?

藤原:何が美しいのか、その本質を考え直す岐路にあるように感じています。これまでのただ「モノ」を提供するだけではなく、そして近年多い“トータル美容”を提供するだけでなく、またSDGs的なものを提供するだけでなく、今は「コト」を提供することも大切。「美」は人間が本能で求めるものであるからこそ、もう「モノ」だけでは難しい時代になってきているように感じています。これからは単に「売る」というだけではなく、トータルで「美の元」を提供していかなければならない時代になるように感じています。

WWD:これまで自身も現役として最前線で活躍しつつ、多くの次世代アーティストを世に出してきた。これからヘアメイクの道に進む人に対してのアドバイスは?

藤原:自分はどんなものを美しいと感じるのか。どんなものを可愛いと思うのか。どんなことをカッコイイと思うのかーー。そういったことを自分に投げかけて、自分自身を知ること。それが美を創るための元であり、全ての始まりになります。

WWD:ヘアメイクを始めて42年。感謝を伝えたい人は?

藤原:もちろん今まで全ての仕事で関わった編集者やカメラマン、スタイリスト、女優、プロのモデル、モデルになって下さった一般の方々、全ての方々にお礼を申し上げたいと思います。そして「ヘアメイクの人のアシスタントにつきたい」と話したとき、「あら、良いんじゃない?面白いんじゃない?!」と即答で賛成し、そして援助してくれた母に感謝したいです。

今後はライフスタイル全般を発信

WWD:今回引退を決めた理由は?

藤原:実は数年前から「ヘアメイクの仕事はもう十分にしたよね」と思っていました。それで昨年末にマネージャーと今後の事務所のことについて話しをしているときに、4月19日で丸30周年になることに気づき、それを機会に事務所を閉じることに決めました。そして「事務所を閉じるのだったら、へアメイクもやめようかな」と。この数年間、「きっかけ」を待っていたので速攻で決められたのだと思います。

WWD:今後は「ビューティ・ライフスタイルデザイナー」として活動されていくが、具体的にどのようなことをしていくのか。

藤原:40代前半からは、講演や取材、執筆依頼される本において、メイクのことだけではなく、生き方や暮らし方などライフスタイル全般について聞かれたり頼まれたりすることが多かったのですが、実は20代のころから実質的なメイクのことだけではなく、メイクと心、ライフスタイルの関わりに興味を持っていましたし、それが楽しいと感じていました。

また実際に作るメイクも「美しい印象」「幸せな印象」など、その美しさによって女性はどんなふうに幸せな気持ちになるのか、イキイキと輝き出すのかを考えながらヘアメイクの提案をすることが好きでした。ヘアメイクアップアーティストという具体的に表現をする仕事からは卒業しますが、20代のころから「楽しい」「好き」だった、そして40代からさまざまな場面で聞かれていた美とライフスタイル(生き方)を具現化する仕事に専念していきたいと思っています。

そうした事柄を自分のブログ「BEAUTY LIFE」での無料コンテンツ、また有料コンテンツ「MICHIKO’S DIARY 日々のこと」で発信していきます。これからは、このホームページを太い幹に育てていきたいと思っています。また私がプロデューサーとして関わっているライフスタイルブランド「ミチコドットライフ」も同じ理念を持って立ち上げたものです。これからの女性の生き方に沿った、そして総合的に「モノ」や「コト」を提供できるブランドに関係者一同で育てていきたいと思っています。

WWD:「ラ・ドンナ」の所属アーティストの今後については?

藤原:所属アーティストに知らせるとき、「仕事ということだけではなく、自分の生き方も含めて今後のことを決めて欲しい」と伝えました。今事務所を立ち上げる準備をしている人もいれば、他の事務所に所属することを決めた人、ヘアメイクだけではなく映像の仕事もする人もいます。皆それぞれの生き方に沿った「次なる」ことを決めているところです。その報告は会社のホームページ上で随時更新していきますので、これからも応援して頂けるようよろしく願い致します。

WWD:最後に今後の展望や夢について教えほしい。

藤原:これから日本の大人女性の現役時間は長くなるわけですが、ただ長いだけではなく、前向きにイキイキと自信を持って、軽やかに時を積み重ねられる新しい大人の女性像を提案し応援していけたらと思っています。そして、そのような生き方であるライフスタイルの提案もしていきたいと思っています。

The post ヘアメイクアップアーティスト藤原美智子が42年のキャリアを振り返る 「ヘアメイクで人を輝かせることが一番の幸せ」 appeared first on WWDJAPAN.

ランニングしながら腹筋も鍛えられる 「シックスパッド」で引き締まったボディへ

 MTGのトレーニングブランド「シックスパッド(SIXPAD)」は、腹筋を鍛えるEMSスーツの新タイプ“シックスパッド パワースーツ アブズ(SIXPAD Powersuit Abs以下、アブズ)”を 開発した。ジェルシートが不要で、手間やストレスがなく、時間や場所に限定されない汎用性の高い製品だ。ヨガや筋トレ、ランニング時にも使用 できるため、短時間でより効率的なトレーニングを実現する。新しい「シックスパッド」で、より引き締まったボディを目指そう。

 「シックスパッド」は2015年に誕生して以来、ジェルシートを使用して腹筋や太もも、ヒップなどをEMSトレーニングできる製品を販売してきた。EMSとは Electrical Muscle Stimulationの略で、文字通り電気で筋肉に刺激を与え、トレーニングを行うというもの。ジェルシートは通電性を高めるために必要だったが、「ジェルシートの交換が手間」「交換と ともに、トレーニングを止めてしまった」などの声もあったという。そこで、より習慣化を促すため、“ジェルシート不要”のタイプを開発した。

 古来の染色技術を応用した独自の布製電極「エレダイン」は、水で濡らすことで通電が可能だ。付属のスプレーボトルで、各電極部に水をしっかり吹きかけるだけ。その後、1回わずか23分のオート・プログラムで、本格的な筋トレができる。

 体へのフィット感と伸縮性(伸縮率+110%)も非常に高く、そのまま洗濯できるのも特長。薄くて軽い布製のため、トレーニングウエアのような感覚で持ち 運びができる。“アブズ”と運動を組み合わせた“ハイブリッドトレーニング”を習慣化すれば、 より効果実感を追求できるはずだ。

ラン&フィットと組み合わせて
より効率的に!
業界人が本気で体感

問い合わせ先
MTG
0120-467-222

The post ランニングしながら腹筋も鍛えられる 「シックスパッド」で引き締まったボディへ appeared first on WWDJAPAN.

「ラ ブーシュ ルージュ」が榮倉奈々とコラボ サステナブルなリップスティックに込めた思いとは

 フランス発のサステナブルメイクアップブランド「ラ ブーシュ ルージュ(LA BOUCHE ROUGE)」はこのほど、榮倉奈々とコラボレーションしたリップスティックを発売した。肌馴染みが良いブラウンレッドカラー“KOTO”(レフィル税込5500円)とブルーのレザーケースを合わせた“ル バーム KOTOセット“(同1万4410円)をそろえる。榮倉氏は二児の母になったことをきっかけに、未来の地球環境について考えるようになったという。そんな中でニコラス・ジェルリエ(Nicolas Gerlier)「ラ ブーシュ ルージュ」創業者のモノづくりに共感し、今回コラボレーションが誕生した。榮倉氏に、コラボリップに込めた思いや、普段から取り組んでいるサステナビリティについて聞いた。

WWD:「ラ ブーシュ ルージュ」は化粧品業界において肥大化するプラスチック問題に立ち向かうべくスタートしたブランド。サステナビリティを創業時から貫いているが、どのような面に共感したのか。

榮倉奈々(以下、榮倉):プラスチックはもちろん、ミツロウすら使わないというストイックな姿勢には最初は正直驚きました。ラグジュアリーでモードな雰囲気を醸し出しながら、ここまで本気で取り組んでいるブランドに出合うことができてうれしいです。

 またニコラスさんは地球環境だけでなく、本当に女性を大切にされているのが伝わりました。リップスティックは口に直接塗るもので体内に入ってしまうことから、妊娠中の女性でも安心してつけられる処方にこだわっているそうです。また粘膜に触れる可能性があるマスカラも同じ思いで作っていると聞いた時には、女性の体を本当に大切に思ってくれているのだと感心しました。

WWD:コラボに際し、ニコラスさんとはどのような話をしたのか。

榮倉:リップは多くの女性のポーチの中に必ず入っていて、毎日使うもの。そんな身近な存在であるリップで世界を救う第一歩になる、という話は素晴らしいと思いました。小さなステップでも、みんなが参加すればいずれ大きな変化をもたらします。だから誰もが参加できるような、ハードルが高すぎず、それであって気分が上がるリップスティックを作りたいと思いました。

WWD:そんな思いで完成したリップはどのようなもの?

榮倉:前提として地球環境を配慮していることから、海や山、森など何か自然に着想を得た色を選びたいと思いました。そこでいろいろ模索したあと、木をイメージしたブラウンレッドにたどり着きました。誰もが使えるように、日焼けしやすい肌にも、透明感のある肌にも合う色にしました。また保湿成分も多く配合し、リップクリームなしで美しい仕上がりが続くように設計しました。一度塗りだと薄づきで、重ねるごとに自由に濃さを調節できるようにすることで、あらゆるシーンに馴染むリップメイクを可能にしました。

WWD:肌馴染みの良いカラーでチークにも使えそう。

榮倉:元々小さいポーチやバッグを使うことが多くて、マルチユースなアイテムが好きなんです。保湿成分が多く入っているので伸びがいいですし、自然な仕上がりを実現します。チークに塗ってもキレイな艶を与えます。またチークを買わなくてもいいので、そういう意味でもサステナブルなアイテムになるかもしれません!

WWD:榮倉さんは子どもを産んでから世界を見る目が変わったということだが、子どもにはどのようなサステナビリティ教育をしているのか。

榮倉:今は何でも手に入り、便利すぎる時代でもあると思っています。子どもには、モノの原型やモノがどこから生まれるのか、ということをしっかり理解してほしいと考えます。またゴミは捨てること自体はとても簡単ですが、捨てた末を考えることはあまりありませんよね。だから子どもにはゴミが捨てられた後にどこに行き、誰がどのように処理するのかを考えられるようになってほしいですね。蛇口をひねれば必ずキレイな水が出るとは限らないということだったり、モノのライフサイクルをきちんと知ってほしい。これからの時代を生きる子どもたちにこういったことを考えてもらうだけで、私たちよりももっと(サステナビリティにおいて)先に進めると思うんです。

WWD:ご自身はどのような活動に取り組んでいる?

榮倉:コンポストは昨年の夏あたりから始めました。簡単ですし、だいぶゴミが減ったのでとても楽です。またリサイクルよりもリユースが好きですね。リサイクル回収だと最後まで見届けられないので、自分がリサイクルしたものがきちんと処理されているのかわからないのが不安で。なので私はどちらかというと使いまわせるものを選ぶようになりました。洋服も滅多に買わなくなりましたし、着なくなったものは譲るか、雑巾に再利用しています。

WWD:今回のコラボを経て、化粧品の見方も変わったか。

榮倉:これまでもなるべく詰め替え製品を使うようにしてきましたが、正直リップまでは手が届いていなかったです。今回ニコラスさんといろいろ話して、化粧品が地球に及ぼす壮大な影響について改めて学びました。当たり前なことかもしれませんが、まずは現状を知ることの大切さも痛感しました。コラボのリップを通して、皆様にも自分が使う化粧品や使い方についてもう一度考え直すきっかけになればうれしいです。

WWD:最後に今回のコラボで伝えたいメッセージがあれば教えてください。

榮倉:まずは一度手にとっていただけるといいなと思います。重厚感のあるずっしりとした重さ、美しいパッケージ、そしてさまざまな人の表情を華やかにするこだわりのカラーを楽しんでいただけるのでは、と思います。そしてその中には環境に配慮し、女性を守るというメッセージが詰まっていると考えると、さらにその素晴らしさに魅了されるはずです。「ラ ブーシュ ルージュ」のリップ一つで、地球環境に目を向けてもらえたらうれしいです。

The post 「ラ ブーシュ ルージュ」が榮倉奈々とコラボ サステナブルなリップスティックに込めた思いとは appeared first on WWDJAPAN.

「毎日着る洋服を選ぶことは、生活の解像度をあげること」 洋服好きの小説家が新作小説でメッセージ

 ⼩説家の松澤くれはは、(ファッションデザイナーが主人公の小説「明日のフリル」(光文社)を刊行した)。上野の森に佇む、夜だけオープンする謎めいた洋品店で販売する一点モノの洋服を作るのは、主人公のデザイナー、梓振流(あずさ・ふりる)。振流は、仕事に追われるアパレル販売員、五福あやめをはじめとする店を訪れた人に、作った洋服を通じて「洋服を選ぶ楽しさ」「洋服を選ぶことで広がるかもしれない世界の存在」などを伝える。

 小説は、あやめの暮らしぶりを通してアパレル業界の問題にも踏み込むドキュメンタリータッチでありながら、振流の隠された過去についてはミステリアス。でありながら作品全体は、洋服が「新しい自分」に近づけてくれるかもしれない可能性を秘めた存在として描かれ、きっと業界人は勇気をもらえるだろう。自身も「洋服を選ぶ楽しさ」を体現している松澤に話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):もともと、ファッションは好きだった?

松澤くれは(以下、松澤):昔から興味があり、大学時代は丸井で“シュッ”とした洋服を買っていた。転機は、雑誌の「チューン(TUNE)」を読んでいたとき。「これ、いいな」や「こっちもカッコいいな」と思った洋服が大体「ノゾミ イシグロ(NOZOMI ISHIGURO)」で、どうやらラフォーレ原宿で買えるらしいことを知り、セールの時に買い始めて、世界が広がっていった。そんな中、「アールビーティ(RBTXCO)」の東哲平デザイナーに出会い、ますますのめり込んだ。東さんから洋服の背後にはデザイナーを筆頭にいろんな人、いろんな想いがあることを学んだ。「オシャレ」や「カッコいい」「カワイイ」の裏側には、意図があることを知った。

WWD:それを伝えたいと思った?

松澤:僕が総柄の洋服を着ていると、みんな「すごいね」「オシャレだね」と言ってくれる。嬉しいけれど、距離を感じる。「すごいね」「オシャレだね」とコミュニケーションしてくれるのに、一方で「自分には関係のないもの」と距離があるものと思われていることの違和感をどうにか解説できないか?と考えた。「その服、スゴいね」を突破できる小説が作りたかった。「オシャレがわからない」や、僕を見て「あなたは個性的な洋服が着られていいね」と思っている人たちに、“ファッションのおおらかさ”や“受け皿の広さ”を知ってほしい。だから小説の帯では「おしゃれって、しんどい?」と問いかけた。ファッションの世界の“選民的なところ”を取っ払い、「面白いんだよ」と伝え、この世界には無限に近い洋服があって、出会いきれないほどの人がいて、そんな中から選べることを伝えたい。洋服は、毎日着るもの。それを、もっと気軽に選ぶ後押しができたらと思う。

WWD:ちょうどファッションやビューティ業界でも、一方的に押し付けるのではなく、選択肢を提示する接客やMD、空間づくりの模索が始まっている。

松澤:鷲田清一さんは、「服は、第二の皮膚」と述べている。皮膚が選べるって、考えてみるとスゴいこと。人間は、毎日絶対服を着る。毎日着る服をないがしろにするのは、その日一日をないがしろにする危険性を孕んでいる。朝、その洋服を選んだから現れる選択肢もある。白い服を選んだ日は「パスタを食べない」と決めるかもしれないし、「ラーメンを食べたいから」黒いシャツを選ぶときもあるだろう。僕も真面目な打ち合わせには襟付きのシャツを選び、雑談の日にはニットを着るかもしれない。相手を考えて、洋服を選ぶときもある。毎日の洋服を選ぶことは、日々の生活の解像度をあげること。僕は、そう思っている。「『ユニクロ(UNIQLO)』を着たい」を否定するつもりはない。でも、本当は挑戦したい洋服があるのに「『ユニクロ』でいいや」は、ちょっと違う。「選ぶ」の本質を描きたかった。

WWD:アパレル販売員の五福あやめが働くプチプラブランドには、「制服」としてのファッションや、そこで働く人の葛藤などのリアリティがあった。

松澤:プチプラブランドのスタッフなどに話を聞き、想像を膨らませた。インタビューした人から、「うちらのプチプラにも、存在意義がある」と教えてもらった。子育てが終わって、新しい洋服が欲しい。でも、浪費はできない。そんな人に「4000円のワンピースには、存在意義がある」という。洋服が好きなアパレル販売員が、プチプラでも、洋服がぞんざいに扱われたらどんな風に思うのか?など想像を膨らませた。

WWD:4⽇から20⽇まではラフォーレ原宿内のセレクトショップ、チェルシーにオープンするポップアップストアで、「アールビーティ」による文中の服を販売する。

松澤:服を見て「すごい。デザイナーの考えを含め、伝えたい」と心動かされて完成した小説が、服を作った本人の心を動かして「洋服を作りましょう」となった。こんな状況じゃなかったら、ファッションショーをやりたかった。舞台の劇作や演出から創作活動を始めたせいか、舞台という現実の空間でフィクションを描くように、現実とフィクションが曖昧になって、交錯する世界が好き。ファッションショー自体が「現実なの?フィクションなの?」という空間だと思うし、そこに現れる洋服が小説から生まれたものならなおさら「目この世界は現実?小説の中?今は日常?非日常?目の前で見ている洋服は?」と現実とフィクションが交錯するだろう。小説の世界の洋服を実際に売ることで、小説を読んだ人が買ったり、読んでいない人も買ったり、2つの世界を行き来したり、2つの世界が逆転したりしたら面白い。

WWD:今、好きなブランドは?

松澤:「え、何?」っていう、単純に面白いブランドが好き。「ダブレット(DOUBLET)」や「リック オウエンス(RICK OWENS)」「コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS)」とか。「どうした?」って気軽に問いかけられるブランドが好き(笑)。

The post 「毎日着る洋服を選ぶことは、生活の解像度をあげること」 洋服好きの小説家が新作小説でメッセージ appeared first on WWDJAPAN.

「ヴァレンティノ」がオンラインストアの自社運営スタート オニムニチャネル強化

 「ヴァレンティノ(VALENTINO)」は、オムニチャネル強化の一貫でオンラインストアをユークス内から自社運営へと移行する。他国に先駆け日本では2月15日から新しいウエブサイトをローンチした。顧客の購買体験を高めるため、新オンラインストアを通じてオンラインとオフラインの顧客情報を一元化。オンライン上でのリアル店舗での接客予約や、オンラインで購入した商品の店頭での受け取りなどをよりスムースに行う。オンラインでの購入は送料・返品手数料とも無料。14日以内返品交換可能だ。

 なお、オンラインストアには、オンラインのみのサービスとしてイニシャルとペットのイラストレーションをカスタマイズできる“ロックスタッズペット”を展開しており人気だ。

 また、店舗へ足を運ばすともブランドの世界観を堪能できるコーナー「シェ・メゾン・ヴァレンティノ(CHEZ MAISON VALENTINO)」では、イラストレーター、ジョアナ・アビレス(Joana Avillez)がブランドの世界観をキュートに演出。クイズを通じてオートクチュールの歴史やコレクションについて学んだり、写真や動画をローマのアトリエの様子に触れたりすることができる。

COMMMENT
ヤコポ・ヴェントゥリーニ/ヴァレンティノ最高経営責任者(CEO)

 「我々はeコマースを内製化し、先進的な技術を搭載した新しいプラットフォームを立ち上げることで、eコマースとリアルを統合し革新を進める。これは、メゾンの柱のひとつである "顧客中心主義 "に基づいた、相互作用と双方向性という新しいクリエイティブな時代を祝福する多層的な内部移行である。この実験的なプラットフォームは、一対一の関係、対話、タッチポイント、オーダーメイドのサービスを軸に、パーソナライズされた新しい物語の触媒となり、顧客を没入感のあるユニークで本物のブランドの旅にいざなう。それは、最高の顧客体験を提供することを目的とした新しい視点。オンラインとリアルの相乗効果を高めるために、エンターテインメントとオーダーメイドのテクノロジーを中核とした“エンターテーラー”を提供する。 このような考え方は、サービス全体に深く浸透しており、新しい挑戦の原動力になるだろう。私たちは、絶え間ない進化を求められる非常に速いペースで進む産業の一部であると考えており、私たちがデジタルトランスフォーメーション(DX)を全速力で進めるのはそのためだ。私たちはDXを急速に進めており、日本はその最初の国である。2022年2月に日本でスタートし、その後各国に拡大する。ヴァレンティノにとって引き続き重要なマーケットであり、今後も投資を続けてゆく」。

問い合わせ先
ヴァレンティノ インフォメーションデスク
03-6384-3512

The post 「ヴァレンティノ」がオンラインストアの自社運営スタート オニムニチャネル強化 appeared first on WWDJAPAN.

「ヴァレンティノ」がオンラインストアの自社運営スタート オニムニチャネル強化

 「ヴァレンティノ(VALENTINO)」は、オムニチャネル強化の一貫でオンラインストアをユークス内から自社運営へと移行する。他国に先駆け日本では2月15日から新しいウエブサイトをローンチした。顧客の購買体験を高めるため、新オンラインストアを通じてオンラインとオフラインの顧客情報を一元化。オンライン上でのリアル店舗での接客予約や、オンラインで購入した商品の店頭での受け取りなどをよりスムースに行う。オンラインでの購入は送料・返品手数料とも無料。14日以内返品交換可能だ。

 なお、オンラインストアには、オンラインのみのサービスとしてイニシャルとペットのイラストレーションをカスタマイズできる“ロックスタッズペット”を展開しており人気だ。

 また、店舗へ足を運ばすともブランドの世界観を堪能できるコーナー「シェ・メゾン・ヴァレンティノ(CHEZ MAISON VALENTINO)」では、イラストレーター、ジョアナ・アビレス(Joana Avillez)がブランドの世界観をキュートに演出。クイズを通じてオートクチュールの歴史やコレクションについて学んだり、写真や動画をローマのアトリエの様子に触れたりすることができる。

COMMMENT
ヤコポ・ヴェントゥリーニ/ヴァレンティノ最高経営責任者(CEO)

 「我々はeコマースを内製化し、先進的な技術を搭載した新しいプラットフォームを立ち上げることで、eコマースとリアルを統合し革新を進める。これは、メゾンの柱のひとつである "顧客中心主義 "に基づいた、相互作用と双方向性という新しいクリエイティブな時代を祝福する多層的な内部移行である。この実験的なプラットフォームは、一対一の関係、対話、タッチポイント、オーダーメイドのサービスを軸に、パーソナライズされた新しい物語の触媒となり、顧客を没入感のあるユニークで本物のブランドの旅にいざなう。それは、最高の顧客体験を提供することを目的とした新しい視点。オンラインとリアルの相乗効果を高めるために、エンターテインメントとオーダーメイドのテクノロジーを中核とした“エンターテーラー”を提供する。 このような考え方は、サービス全体に深く浸透しており、新しい挑戦の原動力になるだろう。私たちは、絶え間ない進化を求められる非常に速いペースで進む産業の一部であると考えており、私たちがデジタルトランスフォーメーション(DX)を全速力で進めるのはそのためだ。私たちはDXを急速に進めており、日本はその最初の国である。2022年2月に日本でスタートし、その後各国に拡大する。ヴァレンティノにとって引き続き重要なマーケットであり、今後も投資を続けてゆく」。

問い合わせ先
ヴァレンティノ インフォメーションデスク
03-6384-3512

The post 「ヴァレンティノ」がオンラインストアの自社運営スタート オニムニチャネル強化 appeared first on WWDJAPAN.

シングルマザーの支援で「美は社会性を育む」を実感 日本ロレアルとNPO法人、当事者が語る

 「アットコスメ」を共同創業した山田メユミと有志はこのほど、「コスメバンクプロジェクト」をスタートした。昨年12月には全国約2万2000のシングルマザーら経済的困難を抱える女性の世帯に、化粧品メーカーが抱える余剰在庫となったコスメを詰め合わせ、支援団体などを通じて無償提供。今後も「女性と地球にスマイルを」を合言葉に、行き先が決まっていない化粧品を、必要とする人の元に届けることで、余剰品問題に向き合いながらコスメが消費者に提供できる自分への自信や高揚感を届けたい考えだ。今回は参画する日本ロレアル、NPO法人、そしてシングルマザーに話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):そもそも日本ロレアルが、NPO法人のしんぐるまざあず・ふぉーらむと連携して、シングルマザー家庭の経済的安定を目指したキャリア支援プログラム「未来への扉」に取り組み始めた経緯は?

楠田倫子日本ロレアル ヴァイスプレジデント コーポレート・アフェアズ&エンゲージメント本部長(以下、楠田):世界No.1のビューティ企業であるロレアルは、まさに社会に支えられています。だからこそ、私たちは社会に何か還元したい。そこでグローバルで環境や社会問題に取り組んでいますが、その活動は各国の実情に即したいと思っています。日本で深刻な社会問題の1つは、子どもの貧困です。現在貧困に苦しんでいる子どもは7人に1人とOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で突出しており、その背景には、シングルマザー家庭の厳しい環境があります。継続的かつ根本的な問題解決につながることを考えた時、シングルマザー家庭の経済的安定のために尽力している赤石さんの存在を知ったんです。

赤石千衣子しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長(以下、赤石):日本ロレアルにお声がけいただいたときは、もっと小さな団体で、企業連携は初めてに近かったんです。NPOと企業がタッグを組む支援は先駆的で、他の企業に「やれることがあるかもしれない」と考えていただく契機につながったと思います。日本ロレアルにはキャリア支援プログラムの策定にもコミットしていただきました。

楠田:女性のモチベーションをアップすることも必要と考えました。前向きにライフプランやキャリアを考えるきっかけになればと願ったんです。

林:講座は、本当にモチベーションのアップにつながりました。「落ち込んでいる場合じゃない!」「色々やらないと!!」と感じさせてくれたんです。シングルマザーに寄り添う講座でした。

WWD:シングルマザー家庭の支援には、チアアップが必要?

楠田:「どうして一人になっちゃったんだろう?」「何でこんなに大変なの?」「私が悪かったのかな?」など、自分を見失ったり、自信が持てなかったりしているシングルマザーが多いように思えたんです。シングルマザーは、「子ども優先」と思いつめるあまり「自分のことなんて構っちゃいけないんだ。ケアしちゃいけないんだ」と思いがちです。そこを“棚卸し”して、自分を見つめ直し、人生を再設計し、自信を持って前進していただければ。まずはマインドを切り替えられたら、と思ったんです。化粧品会社ならではの「身だしなみ講座」も人気です。日々のスキンケアを楽しむ精神的余裕さえなかったシングルマザーの方には、クリームを顔に置いて肌をマッサージした瞬間「自分の肌に、こんな風に触れたのは何年ぶりだろう?」と涙を流したという体験を話す方もいらっしゃいました。

林:私自身、まずは子どものことで「自分は後回し」でした。でも自分が笑っていないと、子どもも楽しくありませんよね?「未来への扉」は、そんな原点に立ち返る機会でもありました。

赤石:日本ロレアルと連携して、初めて「美の力の強さ」を痛感しました。自分をケアしてキレイになることは、自分自身を持ち上げ、誇りを持って働くことに繋がります。美しくなることで自分をエンパワーし、可能性を広げるんです。

楠田:私たちは「美は、人々の心、生活、そして社会の在り方において、ポジティブなインパクトを与えることができる」と信じています。それを具体的な形で届け、喜び実感していただけて、本当に嬉しく思っています。「美とは、表面を飾ること」という考えは根強いですが、根源的には「自分を慈しむこと」です。自分を慈しむと、社会と関わろうという気持ちになれます。美は、個人の社会性も高めるんです。

林:私も「未来への扉」に参加する前は、すっぴんでした(笑)。自分のことはどうでも良くなっていて、“女らしさ”を忘れていたかもしれません。コロナ禍では仕事がなかなか見つからなくて苦しかったけれど、「未来への扉」に参加して「苦しいのは、自分だけじゃない」「前向きで、明るい人もいるんだ」と思えるようになりました。

赤石:シングルマザー家庭のキャリア支援では、“出口戦略”も重要です。「未来への扉」では、当初から美容部員とアデコのスーパーバイザーなどの“出口”を目指し、選考は皆さん平等だから結果に繋がらない場合もあるけれど、面接のチャンスまで提供してきました。転職や社内の評価アップを経て、お給料が上がった方もいらしゃいます。

WWD:長年シングルマザーを支援してきた皆さんは、「コスメバンクプロジェクト」をどう思いますか?

赤石:フードバンクのように、「このままだと捨てられてしまうものと困っている人のマッチングを、コスメでもやるべきだ」という発想に驚きました。化粧品業界にとっても、大量廃棄は大きな問題なんでしょうね。シングルマザーの支援に携わっていると、食事の回数さえ減らしているから「スキンケアやファンデーションなんて、考えられない」という女性が本当に多いことを感じます。そんな女性がコスメを受け取ったときの喜びは、言い表せません。「あなたを大事にしてほしい」のメッセージが、言葉以上に届きました。「キレイになっていいんだ」「子どもも喜んでくれた」「頑張ろうと思えた」などの声をいただいています。1つ1つ、丁寧にラッピングしていただきました。「あなたに向けて」の思いが感じられ、頭が下がりました。

楠田:ビューティは、「人としての尊厳を取り戻す」にも貢献できると思っています。話を聞いて、「ぜひ」と参画を決めました。この活動は、ビューティ業界全体を巻き込む大きなムーブメントになれる、そう思っています。

林:シングルマザーの一人として、「自分だったら、こんな風に届いたらいいのにな」と考えました。私もギフトをいただき、嬉しくなりました(笑)。事務局には500 以上のLINEが届いています。私は、化粧品の廃棄に想像が全く及んでいなかったので、サステナブルな取り組みに貢献している喜びも感じています。

The post シングルマザーの支援で「美は社会性を育む」を実感 日本ロレアルとNPO法人、当事者が語る appeared first on WWDJAPAN.

モデル吉井添が語る「FF14愛」とファッション

 ゲーム好きで知られるファッションモデルの吉井添だが、その中でも「ファイナルファンタジー14(以下、FF14)」は人生に欠かせないほど重要だ。「FF14」はドラマでいうところの新シーズンとなる拡張パッケージ「暁月のフィナーレ」の発売にあたって昨年の12月8〜14日、伊勢丹新宿店でポップアップショップを行った。駆けつけた吉井に、全世界で2500万人以上のプレイヤーを持つオンラインRPG「FF14」への「FF14愛」を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):FF14、本当に好きなんですね。

吉井添(以下、吉井):本当に本当に大好きです。「暁月のフィナーレ」はアーリーアクセス(予約特典として得られる発売日前の先行プレイ権のこと)から、やらせていただいているのですが、すごくあつくてとても興奮しました。早く家に帰って体を取り戻しに行きたいです。

WWD:「暁月のフィナーレ」、どうプレイしていますか?

吉井:とりあえず、電気を消してカーテンを閉めて、スマホの電源も落としてプレイに専念しています。あ、仕事用のスマホは切ってないです(笑)。ゲームの中身は余り言うとネタバレになってファンの方にご迷惑をおかけするので言えませんが、実は最近、「モンク」から「リーパー」にジョブチェンジしたんです。これまで「モンク」で3年くらいプレイしていて、お前のモンク愛はそんなものなのかって言われそうなんですが、「リーパー」も熱い!楽しみしかないです。

WWD:「FF14」の魅力は?

吉井:うーん。正直思い入れが強すぎて、伝えたいことが多すぎるというか、逆に伝えられないというか。自分なんかがどうこう言えることはないというか。でも自分にとっては、生涯思い続けるゲームであり、もしなければ性格や人生が変わっていたかも。少なくとも性格はもう少し暗かったと思います。そんな僕からあえて言わせてもらうなら、コアな層からライトな層まで色々な楽しみ方ができますし、年齢も地域もとても幅広い人たちがプレイしていますよね。スクウェア・エニックスの方々には、もうリスペクトと感謝しかないです。

WWD:ゲームではどんなプレイヤーですか?

吉井:自分、リアルではコミュニケーションを取るのが得意じゃなくて、ゲームならうまくできるかなと思ったら、ゲームでも陰キャは変わらず(笑)。NPC(=Non Player Character、プレイヤーが操作しないキャラクターのこと)やストーリーも本当は生きている人間じゃないけど、寄り添ってくれるんですよね。ビジュアルもかっこいいキャラクターが多くて。

WWD:プライベートでよくコスプレをしていますが、コスプレイヤーとして気になるキャラは?

吉井:アサヒが好きで、この前アサヒのコスプレをしました。もっと大人の方々もやりたいと思っていて、次はエメトセルクもやりたいし、人間じゃないキャラクターにも挑戦してみたいですね。

WWD:人生にはどういった影響を与えています?

吉井:昔からコミュニケーションが苦手でゲームばかりしていました。でも「FF14」で人との繋がり合いや理念みたいなことに触れることで、精神の深いところで前向きになれた。具体的にはこれもネタバレになるので言えないのですが、「暁月のフィナーレ」で、アリゼーとアルフィノがめっちゃ深いこと言ってて、刺さりました。キャラクターがストーリーのなかで成長していく様子をみて、涙腺崩壊でした。

WWD:ゲームやネット上の仮想空間の世界を指す「メタバース」が注目されていますが、吉井さんはどういったところに注目されていますか?

吉井:ゲームだと姿や服を思い通りに変えられて、そのことでポジティブになれたり、色んな人と繋がれたりみたいなことがありますよね。リアルの世界も、もっと自由になったらいいなと思います。自分はコスプレをしますが、そういったところで繋がれるのはとてもいいことだと感じています。そういった新しい繋がり方、コミュニケーションの仕方、そういった場がもっと増えればいいなと思います。

WWD:最後に「FF14」に一言お願いします。

吉井:コロナ禍で大変な時期にもかかわらず、こうしてゲームをリリースしていただいてとても感謝していますし、感動もしました。ゲームを無事にできたということが本当に嬉しいし、ありがたいです。こんな大変なときだからこそ、「FF14」があって変わらずにプレイできることで、自分自身はすごく救われています。本当に感謝です。

The post モデル吉井添が語る「FF14愛」とファッション appeared first on WWDJAPAN.

シャネルの未来をプレジデントに直撃 クチュールやクラフツマンシップ、サステナビリティまで

 「シャネル(CHANEL)」はコロナ禍で大きな打撃を受けたが、2021年上期からは本格的な復活を遂げた。同年7月のオートクチュールからは、観客を迎えたショーも再開。今年に入ってからは、傘下の専門アトリエが集結する複合施設「le19M」を正式にオープンするなど、活発な動きを見せている。ブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)=シャネル ファッション部門プレジデント兼シャネルSASプレジデントに、クチュールビジネスから新たな取り組みまでを聞いた。(この記事はWWDジャパン2022年2月21日号からの抜粋です)

WWDJAPAN(以下、WWD):アジアのクチュール顧客は、まだ自由にパリを訪れられる状況には戻っていない。コロナによって、その制作にはどのような変化があったか?

ブルーノ・パブロフスキー=シャネル ファッション部門プレジデント兼シャネルSASプレジデント(以下、パブロフスキー):自由な渡航ができなくなった2020年7月のクチュールから半年は正直、簡単にはいかなかった。顧客とのつながりを保つため、各国のチームのサポートを得たり、コレクションを現地に送って紹介したりしたが、初めて経験することでパリのチームに戸惑いがあったのも事実だ。しかし、21年1月からは遠隔でのアプローチをブラッシュアップ。7月にはアジア以外の海外顧客がパリに戻ってきたので、取り組みやすくなった。まだ渡航できない日本や韓国、中国、香港などの顧客については、現地のチームを育成するとともに、ビデオ通話の画面越しでも求められる詳細の説明やフィッティングを提供できるようにしている。最初は少し低調だったと言わざるを得ないが、今は渡航できないからといって全てをやめてしまうのではなく、人々の生活は続いていくということが分かった。実際、オンラインでもオフラインでも顧客は戻ってきていて、ビジネスは好調だ。この期間を通して、私たちは顧客自身やそのニーズに対して多くのことを学んだ。これを機に確立した新たな方法は、今後も活用し続けていく。

WWD:環境や価値観が大きく変わった現代におけるクチュールの価値とは?

パブロフスキー:クチュールとは、コレクション、舞台装飾、音楽など全てのミックスで作り上げられる完璧かつインパクトのあるものであり、大切なのはユニークなストーリーや特別なエモーションを届けること。エモーションはお金で買えるものではないからこそラグジュアリーの極みであり、クチュールは私たちが顧客に提供できる究極の体験だ。そして、「シャネル」のルーツでありDNAの一部でもある。ビジネスの規模は関係なく、(プレタポルテと比べて)顧客は多くないとしても、ブランドにとっての価値という点で大きな存在だ。そして、クチュールにおける探求や作品は、プレタポルテにも大きなインスピレーションを与えている。クチュールはマネーメーカーではなく、イメージメーカー。だからこそ、守り続ける必要がある。

「最大のカギ、ビジネスの原動力は
シャネルにおいてはクリエイション」

WWD:1月20日には、パリ19区にクリエイションの中心地となる新複合施設「le19M」を正式にオープンした。刺しゅうのルサージュや羽根細工のルマリエ、金細工のゴッサンスといった傘下の専門アトリエが集まる施設に期待する役割は?

パブロフスキー:「シャネル」にとって最大のカギは、ビジネスの原動力でもあるクリエイションだ。その点で、「le19M」のオープンは重要だった。10年をかけて開発したこの施設は、今回のクチュール・コレクションにも見られたメティエダール(芸術的な手仕事)のための“窓”になる。大切なのは、専門技術を持ったアトリエにふさわしい空間を提供し、製品に魂を吹き込む職人の存在を可視化すること。それは、新たな人々や若い世代を引きつけることにつながるだろう。落成式でも話したが、この施設の目的は“伝承”だ。経験豊かな職人が若手と関わり合い、エネルギーを生み続けることは大きな価値になる。

WWD:フランスでは、1月1日に「廃棄禁止およびサーキュラーエコノミーに関する法律」が施行された。在庫や売れ残り品の廃棄などが禁止されたが、「シャネル」ではどのように取り組んでいるか?

パブロフスキー:私たちは、すでに19年に「アトリエ デ マティエール」という新会社を設立した。その目的は、「シャネル」だけでなく他ブランドの販売されなかった製品や未使用の素材を解体し、新たな素材を生み出すこと。私たちはもともと多くの在庫を抱えているわけではないが、売れ残った商品がある場合、この会社で引き取り、新たな素材へと生まれ変わらせる。例えば、テキスタイルではウール、シルク、カシミヤなどに分かれていて、コスチュームジュエリーやチェーンといった金属、そしてレザーの再生にも取り組んでいる。そのため、技術的や化学的などの新しいプロセスで素材の開発を実現するスタートアップ企業とも協業している。

WWD:19年には、パイナップルの葉の繊維から作られるレザーに似た素材「ピニャテックス」製の帽子を販売したこともあった。

パブロフスキー:あれはパイロット版のようなものだったが、私たちは常に新たな素材とイノベーションを探求し続けている。例えば、22年クルーズ・コレクションで用いたツイードの中には、この循環型の取り組みから生まれた糸が使われているものもあり、一歩ずつ前進しているところだ。今はまだ少し高価で、ビジネスモデルを確立するには、ある程度の時間を要するだろう。しかし、将来のための良い投資だと考えている。

The post シャネルの未来をプレジデントに直撃 クチュールやクラフツマンシップ、サステナビリティまで appeared first on WWDJAPAN.

「ビープル バイ コスメキッチン」がショップ名を「ビープル」に変更 オリジナリティー溢れる業態へ

 マッシュビューティーラボはこのほど、食やコスメ、ライフスタイル製品を取り扱うナチュラル&オーガニックのセレクトショップ「ビープル バイ コスメキッチン(Biople by CosmeKitchen)」のブランド名を「ビープル」に変更した。環境に配慮したオーガニックなライフスタイルに寄り添い、独自の商品やサービスを強化しながら、オリジナリティー溢れる業態として一層の成長を目指す。

 「ビープル バイ コスメキッチン」は、ナチュラル&オーガニックのセレクトショップ「コスメキッチン(COSME KITCHEN)」のセカンドブランドとして2013年に誕生。「オーガニックがもっと身近なものであることを実感してほしい」という思いから、「自然のものに囲まれてオーガニックライフを送る人たち」の意味を込めて「BioなPeople=Biople(ビープル)」と名付けた。コスメのほか、食品やサプリメントなどインナーケア製品を多数取り扱い、現在23店舗を展開。23年9月には10周年を迎える。

 椋林裕貴マッシュビューティーラボ副社長は、「『ビープル バイ コスメキッチン』はフードカテゴリーが定着し、ここ数年インナーケアカテゴリーも成長してきた。さらに最近では、フェムケアやレメディ、ペット、ベビーカテゴリーにも力を入れ、オーガニックライフ全般における挑戦ができている。そこで10周年を機に、次なる成長を見据えて『バイ コスメキッチン』という屋号を外した。覚悟をもって挑戦する」と話す。一方で「コスメキッチン」は現在約60店舗を展開し、今春もいくつか出店を控えておりその存在感は大きい。「名前に『コスメキッチン』がないリスクへの恐怖はある。しかし、それよりも将来の楽しみの方が大きい」と期待をかける。今後、化粧品のMDが約8割が同じという「コスメキッチン」との役割を棲み分け、「ビープル」ならではのカテゴリーを際立たせながら、さらなるステージへとステップアップする。

 ブランド名の変更に伴いロゴもリニューアル。新しいロゴは、近藤広幸マッシュホールディングス社長がデザインした。デザインコンセプトは、“親しみやすさと心を穏やかにするウェルネスデザイン”。「by CosmeKitchen(バイ コスメキッチン)」から、「ORGANIC LIFE(オーガニックライフ)」に変更し、オーガニックに寄り添ったデイリーストアであることへの理解や、ブランド名を短くしたことによる視覚認知性を高めた。また、モノクロのロゴから色相を追加。グリーンの配色は、「性別問わず楽しめる空間作りの強化」とグループのアイデンティティとして掲げる「GO GREEN」への一致を体現した。中央の「O」は、“ハッピーの連鎖”の思いを込めてオリジナルのサークルをデザインしている。

 さらに、これまで誤読が多かったブランド名の「ビープル」の読みやすさや、正式なブランド名の認知の向上を図る。「『BIOPLE』を『ビオープル』や『ビープレ』と読み間違えられることが多かった。新しいロゴは、Oがデザインのアクセントとなったことで、Oを飛ばして呼んでも『ビープル』と読めるようになっている」。

 店頭のロゴの変更は3月上旬から、錦糸町店テルミナからスタートし、順次変更する。「今春は商業施設のリニューアルも多く、そういった新しいアクションがあるところから徐々に変えていく。また、ロゴ変わったからといって以前のショッパーを捨てるようなことはしない。サステナビリティを前提に、当面は新旧のロゴが混在するが、1年以内に統一させるのが理想だ」という。また、店頭スタッフの制服もリニューアルする。廃棄物を減らすことを考え、玉ねぎの皮から抽出した天然成分で染めたブラウンカラーが特徴。各店舗、順次変更してく。

 3月下旬には、名古屋パルコに出店している「コスメキッチン」の売り場を22坪から30坪へと拡大し、「ビープル」のフードカテゴリーを切り出した新業態を併設する。「ハーブティーを軸としたドリンク類やCBD関連、フェムケアを盛り込む予定だ」という。

The post 「ビープル バイ コスメキッチン」がショップ名を「ビープル」に変更 オリジナリティー溢れる業態へ appeared first on WWDJAPAN.

テーラリングの更新に挑んだ「ダンヒル」の反抗、破壊 2022-23年秋冬コレクション

 英国発の「ダンヒル(DUNHILL)」は、2022-23年秋冬コレクションを発表した。18-19年秋冬以降はパリでの発表を続けていたが、今シーズンは拠点のロンドンに帰還。主軸であるテーラリングの伝統に回帰すると同時に、身にまとう者の個性によってその規律が破壊される感覚に着目した。マーク・ウェストン(Mark Weston)=クリエイティブ・ディレクターが、クリエイションの意図やロンドンで発表した理由を語る。

今、ロンドンで発表するのが
正しいと感じた

WWD:発表の場をパリからロンドンに移した理由は?

マーク・ウェストン「ダンヒル」クリエイティブ・ディレクター(以下、ウェストン):パリのファッション・ウイークに参加したことで、広い世界の人たちとつながることができ、目的にしていた新たな「ダンヒル」の世界観を見せることができた。しかし私たちは英国ブランドなので、いつでもロンドンを中心に考えている。そして今シーズンは英国のテーラリングの探求を大きなテーマにしているため、ロンドンで発表するのが正しいと感じた。また、パンデミックで不透明な状況が続いているのもきっかけの一つではある。

WWD:英国のテーラリングに着目したきっかけは?

ウェストン:仕立ての感覚と洗練された厳格さをもう一度追求したかったから。英国のテーラリングのルーツは、制服やミリタリーに通じる。その厳格なスーツを若い男性が着ることで、どれほど破壊的で反抗的に見えるのか、型にはまったユニホームをどこまで型破りに見せられるのかに挑んだ。今シーズンは規律と伝統への回帰であると同時に、作る側と着る側に英国的な破壊の感覚が常に存在していることを表現したかった。伝統を更新するのは服そのものではなく、着る人なのだから。

若い世代はテーラリングに
魅力を感じている

WWD:メンズのスタイルの変化についてはどう分析している?

ウェストン:若い世代は、飽和しているスポーツウエアへの反動でテーラリングに魅力を感じており、それを現代的なスタイルで自分たちのものにしようとしている。「ダンヒル」の強みは厳格なテーラリングと専門性なので、非常に優位な立場にあるといえる。今度はいかに伝統と新しい時代感を掛け合わせ、再文脈化していけるかが成功へのカギだ。

WWD:ブランドを率いて8シーズン目になるが、どのようなクリエイションを意識してきた?

ウェストン:現職に就いてからは、ステレオタイプな古典主義をいかにしてゆがませ、官能と挑発によって破壊することをテーマに掲げてコレクションを制作してきた。伝統のスタイルにモダンな要素を、日常的なスタイリングに時代感を取り入れてコントラストを利かせ、英国らしさを伝えるための視点を盛り込んできた。好奇心をもってアーカイブを探求し、時代に合わせて進化させたい要素のみをくみ取っている。過去にとらわれるのではなく、アーカイブとのつながりを作り出すことが好きだから。

アーカイブを継承し時代を
超えるアイテム

WWD:数々生み出してきた新しいアイテムのアイデアは?

ウェストン:全てのコレクションはつながっており、前シーズンのアップデートを繰り返すことでアイデアを磨き、進化させてきた。18-19年秋冬に発表したラップジャケットや、19年春夏のスプリットヘムのトラウザー、クラシックなアタッシュケースに着想したクロスボディーバッグの“ロックバッグ”などは、アーカイブと現代的なプロポーションや機能性を組み合わせたもの。これらは今季もアップデートして継続する、時代を超えたアイテムである。

WWD:ブランドとして、また個人として今後チャレンジしたいことは?

ウェストン:クリエイティブ・ディレクターとして、まずは「ダンヒル」のクリエイションの定義と一貫性にこだわること。そして新しい時代を見据え、ほかのクリエイターやコミュニティ、顧客とのつながりを魅力的な方法で作り出すことが目標だ。個人としては、仕事を通じてさまざまな業界の尊敬するクリエイターたちと出会うことができた。このリアルのつながりが、今後どのように発展していくか楽しみだ。

着る側の個性で洗練された
テーラリングの殻を破る

 今シーズンはテーラリングを主軸に、シティボーイやミリタリーのユニホームの要素を融合した。規律と伝統の象徴である男性服同士を組み合わせ、それを現代の男性が着用することで生じる破壊的、反抗的な感覚を表現した。パワーショルダーのジャケットは男性性を強調し、裾に向かってゆるやかにフレアするスプリットヘムのトラウザーが、伝統のシルエットを優しく覆す。またネオプレンをボンディングしたウールカシミヤのコートや、表面にモアレを表現したナイロンのコートなど、素材の探究も積極的だ。

問い合わせ先
ダンヒル
0800-000-0835

The post テーラリングの更新に挑んだ「ダンヒル」の反抗、破壊 2022-23年秋冬コレクション appeared first on WWDJAPAN.

「ハーパーズ バザー」の新編集長は「変わる遺志を示したい」 表紙に日本人初の小松菜奈を起用

 ハースト婦人画報社の「ハーパーズ バザー(Harper's BAZAAR)」は2月19日、小栗裕子新編集長体制になって初めての2022年4月号を発行、日本人として初めて表紙に起用した小松菜奈のムービーも発表した。小栗新編集長が目指す、新しい「ハーパーズ バザー」とは?

WWDJAPAN(以下、WWD):編集長に就任して、どう感じている?

小栗裕子「ハーパーズ バザー」編集長(以下、小栗):率直に「まだまだ知られていないな」と思っています。「ハーパーズ バザー」の誕生は、1867年。150余年という長い歴史を持ち、グローバルの視点を大事にしながら各国でローカライズも実現している、働く女性を大事にしたメディアです。一般的なファッションメディアは、「ファッション」や「ビューティ」「バッグ&シューズ」「トラベル」という軸の中で“らしさ”を追求しますが、「ハーパーズ バザー」はキャリアやビューティにおけるサイエンス、国によっては政治なども、さまざまな視点から、美しく、まさにバザールのように届けています。隠れた声に光を当て、今で言うSDGsやエンパワーメントにも取り組んできました。読みやすく、入りやすい世界観を持っているのに、「まだまだ伝わっていないな」と思っています。

WWD:「伝わっていない」原因は?

小栗:ローカライズの視点やバランスだと思っています。インターナショナル・メディアは長らく、欧米の価値観をインポートしてきました。それに価値がある時代だったんです。でも今は、リアリティも必要です。リアリティをどう取り入れ、どう発信するか?は、大きな課題であり、ポテンシャルです。具体的には、プリントメディアではデザインやフォント(書体)選び、装飾などで親近感を表現したい。モデルも、「どのページも外国人」ではありません。デジタルは、可能な限りシンプルにして、メッセージを明確に。今はまず「やらないライン」を決め、「社会を動かす女性をもっと美しく」というブランドパーパスを追求したいと思います。

WWD:「やる」だけではなく、「やらない」も考える?

小栗:「やる」「やりたい」は欲求、「やらない」は意志だと思っています。今は、「そのコンテンツは、働く女性のライフスタイルに即しているか?」「彼女たちに、ポジティブな影響を与えることができるか?」をすごく選別しています。プリントもデジタルも、大事なのは「言いたいことが明確」なことです。そこで昨年以降、スタッフ一人ひとりとかなり密に話し合って、みんなの意志を確認しました。私が指揮を執る媒体にロイヤリティを感じてくれるか?は、本人の幸せにも直結します。幸いエディターはみんな、私同様に「ハーパーズ バザー」のパーパスに魅力を感じている、私よりはるかにプロフェッショナルな人たちでした。

WWD:「エル・ガール(ELLEgirl)」では、インフルエンサーコミュニティの「ELLEgirl UNI」やオンラインサロン「ELLEgilr NextLAB」などのコミュニティ作りに尽力した。

小栗:「良いお手本」も「残念なお手本」もありますが(笑)、立ち上げの時はみんなが「へぇ。頑張ってね」くらいのテンションだったからこそ、「絶対成功させたい」と努力してきました。「エル・ガール」は立ち上げ当初、正直誰も読者像を分かっていなかったんです。彼女たちの最先端を感じて共感を得なくてはと考えた時、「手を借りたかった」というのが本音です。私にとって「エル・ガール」のコミュニティは、“外付けの編集部”です。お互いのクリエイティビティを出し合い、コンテンツを作ってもらったり、教えてくれた言葉をコンテンツにしたりのアイデアボックスでした。「ハーパーズ バザー」でも読者に寄り添い、コミュニティを形作りたいと思っています。

WWD:具体的には?

小栗:昨年はオンラインでSDGsなどを学ぶ「バザー サミット」を立ち上げ、ご好評をいただきました。ロイヤリティや知的欲求が高く、英語のコンテンツもライブで楽しめるような方々が集ってくださり、その可能性を体感しました。視聴者と直接関わりたいし、働く世代とコンテンツを作り続けたい。日本同様「バザー サミット」に取り組む、イギリスや香港ともタッグを組みたいと思っています。

WWD:時に一方通行な「本国」との協業のみならず、「リージョン」と呼ばれる各国のメディアと相互協力するのは、インターナショナル・メディアとしては珍しい。

小栗:確かにこれまで現場レベルでの会話は、多くなかったかもしれません。でもムードは、コロナ禍で確実に変わりました。今は環境が違っても、同じマインドを持つ仲間として、チームになりたい。規模感やクラス感のあるチームを結成できるのは、「ハーパーズ バザー」の強みです。

WWD:新生「ハーパーズ バザー」の表紙は、小松菜奈が務めた。

小栗:インターナショナル・メディアの「ハーパーズ バザー」にとって、いわゆる通常版の表紙で日本人をフィーチャーするのは、はじめてのことです。雑誌のみならず動画にもご出演いただきました。「最初の表紙に誰を?」は、本当に考えました。そんな中で小松さんを選んだのは、彼女にパワーウーマンの全てをのせたかったのではなく、「変わる」「変える」という意志を示したかったからです。カメラマンも、ラグジュアリー・ファッションの撮影は初めての若手です。もちろん読者に喜んでいただきたいけれど、メディアは関わる人たちにとってもチャレンジの場であって欲しい。「これから、どうなって行くのか?」を読者とともに楽しみ、皆で一緒に育っていきたいと思います。

WWD:雑誌も、オンラインも、SNSも、コミュニティも変わって行く中で、まずは新生「ハーパーズ バザー」の何を見て欲しい?

小栗:「ちょっと覗きに来ました」で構いません。とにかく一度、見ていただきたいと思います。「ハーパーズ バザー」の日本版は、来年創刊10周年を迎えます。創刊当時の「次世代」が、社会の中核を担うようになりました。彼女たちのライフステージが変わりつつ、世の中のパラダイムシフトも進みました。だからこそ一度固定概念を捨てて、彼女たちを見つめ直さないと思っています。一方で私たちの「顔」も大事ですね。作っている人たちの魅力は、メディアに反映されます。今はモノではなく、人にお金を払う時代。読者は、私たちのステートメントに集まりますから。

The post 「ハーパーズ バザー」の新編集長は「変わる遺志を示したい」 表紙に日本人初の小松菜奈を起用 appeared first on WWDJAPAN.

「私をスキーに連れてって」から35年 石井スポーツに聞くスキー市場

 日本のメダル獲得数が冬季五輪として最多記録を更新した北京冬季五輪も、いよいよ20日が閉会式。冬のスポーツの代名詞、スキー競技でも、ジャンプの小林陵侑選手やモーグルの堀島行真選手、ノルディック複合の渡部暁人選手や日本チームがメダルを獲得して話題を呼んだ。ただし、世の中一般に目を向けると、スキーはスノーボードやフィギュアスケートなどに比べると、若い世代での認知度や人気が今ひとつというイメージもある。映画「私をスキーに連れてって」のブームからは35年、日本のスキー人口は90年代をピークに漸減しているともよく言われる。アウトドアレジャーの人気が高まる中で、スキー市場にも何か変化はないのか。スキー用品を扱う石井スポーツ神田本館の佐藤晶店長に聞いた。

WWD:まずは足元の商況から聞かせてほしい。一昨年は暖冬、昨年はコロナ禍という逆風が続いているが、2021-22年シーズンの販売状況は。

佐藤晶石井スポーツ神田本館店長(以下、佐藤):12月までは前年に対して50%増で推移していたが、年明け以降は同40%増と、感染再拡大もありやや客足は落ち着き傾向だ。ただ、「10年ぶり、15年ぶりにスキーを再開する」というような40代前後の“リターン層“は年明け以降も一定数訪れ続けている。“3密”を避けられるという点が支持され、かつてスキーを楽しんでいた層が雪山に戻ってきているようだ。また、感染予防の一環で、これまでは用具を全てレンタルしていた人が、ブーツやウエアだけは自分のものを買っていくというケースもある。

WWD:スキーの市場規模は1990年代をピークに縮小してきている。登山やキャンプなどのアウトドアレジャーを楽しむ人は近年増加傾向にあるが、スキーに影響はないのか。

佐藤:アウトドアレジャーの広がりを背景に、スキーの楽しみ方も多様化してきているのが近年の変化だ。かつては整地されたスキー場のゲレンデを滑ることだけがスキーだったが、今は山を滑るバックカントリー(自然の中を滑走すること)などの楽しみ方もある。バックカントリーはここ数年特に盛り上がってきている実感がある。一昨年、昨年はコロナ禍で春スキーが難しかったこともあり、今年こそはと春の山スキーを楽しみにしている人は少なくないだろう。

WWD:楽しみ方の多様化は、スキーギアやウエアなどにも変化をもたらしているか。

佐藤:板やブーツで言えば、各メーカーが乗り味を損なうことなく軽量化を進めている。昔はスキーブーツと言えば硬い、痛いというイメージがあったと思うが、近年のブーツは外側のプラスチックシェルや内側のインナーブーツを、熱成形でお客さまの足に合わせて加工することができる。午前中に店頭に来ていただければ、ランチを食べている間に加工ができてしまうぐらい手軽だ。今まさに規格が切り替わっている最中だが、ブーツのソール形状も従来よりも歩きやすい形に変化してきている。板もブーツの性能や快適性は昔に比べたらかなり向上してきている。十数年ぶりにスキーを再開するという人は、ギアの進化に驚く部分が多いと思う。

 ウエアは、派手なカラーを採用した昔ながらのコテコテなスキーウエアは今もあるが、バックカントリーで山を登る際に体温調節がしやすいように、中綿が入っていない、色合いも比較的落ち着いたシェルジャケットやシェルパンツなどの提案が増えている。「ミレー(MILLET)」などの山ブランドが企画しているのはもちろん、「ゴールドウイン(GOLDWIN)」など、国内のスキーウエアメーカーを含め各社提案している。

WWD:スキーの楽しみ方が多様化する中で、バックカントリーでの遭難事故がニュースサイトなどで取り上げられ、批判を集めるケースも増えている。バックカントリーを楽しんでいる人と世間との間に、まだまだ認識のギャップを感じる部分もあるが。

佐藤:バックカントリー人気の高まりを受けて、近年は整備されたゲレンデではない、スキー場内の非圧雪ゾーンの滑走を自己責任のもとで認めるスキー場が実は増えている。入山届を出してガイドと共に山に入るツアーや、雪崩に関する講習会などもある。リスクを減らして真摯にバックカントリーに向き合っている人は多く、ニュースになるような事故が常に起きているというわけではない。ただ、ひとたび事故が起きてしまうとどうしても世間を驚かせてしまうということだろう。(批判を集めるのは)世の中の人にとってなじみのないものだから、という面も大きいのだと思う。スキーをする人自体が世の中では少数で、バックカントリーはそこからさらに枝分かれしたもの。バックカントリーの大会も開かれているが、メディアなどで取り上げられる機会は少なく、普通に生活している人はバックカントリースキーを見ることはなく、「ならず者がすること」といったイメージが先行している。分からないものだから批判を呼びやすく、逆に言えば、そこに世間との認識のギャップを埋めていくヒントがあるのではないかと思っている。

WWD:認識の溝を埋めていくためにも、スキーを楽しむ層自体を広げていく必要があるということか。

佐藤:神田本館はコアなスキー好きのお客さまが多く、エントリー層向けのスキー板、ブーツ、ビンディングの3点セット売りなども行っていない。ただ、より幅広いお客さまに来ていただくことは重要だと思っている。6月に“カスタムフェア”という次シーズンのギアを紹介するイベントを毎年行っているが、そこにももっとエントリー層の方に来ていただきたい。コアな層に次シーズンの商品を紹介して買っていただくだけの場にするのではなく、スキーに思いをはせ、スキーの楽しみ方を知る場にできればと思っている。

The post 「私をスキーに連れてって」から35年 石井スポーツに聞くスキー市場 appeared first on WWDJAPAN.

ユニクロ「UT」は「ファンに発信していただくことが大事」 内田理央、本気でTシャツビジネスに挑むVol.7

 モデルや女優として活躍する内田理央の普段着は、Tシャツやパーカなどカジュアルな装い。そこで本人の感性と個性を存分に生かしながら、ファッション性やプロセス、ビジネスにまでこだわった「本気のTシャツビジネス」をスタート!「WWDJAPAN」が各界の先駆者を紹介することでTシャツ、イラスト、ビジネスについて学びながら、「名前貸し」とは全然違う、本気のタレントによるアパレルブランドを目指します。第7回はだれでも簡単にオリジナルTシャツを作ることができるユニクロ(UNIQLO)の「UT」について、石川篤「UT」事業部統括に話を聞きました。

内田:「UTme!」で自分だけのオリジナルTシャツが作れると知ってびっくりしました。

石川:そうなんです。スマートフォンの「UTme!」専用アプリを使用すればいつでもどこでも作ることができるので、店舗に行かなくても自宅でオリジナルTシャツを作ることができます。

内田:「UTme!」をスタートしようと思ったきっかけは?

石川:前進ブランドとなる「UT」は2003年に始まりました。ユニクロから提供する商品ではなく、お客様ご自身で作れるサービスを始めたいなと思ったのがきっかけです。

内田:オリジナルTシャツを制作できる会社って他にもたくさんあるじゃないですか。「UTme!」ならではの、ここは負けないというポイントは?

石川:1つはサービスが速くて簡単です。ご自宅のPCやスマートフォンで作成したとしても3〜5日間ほどで商品をお届けできます。2つ目は品質です。ユニクロの商品をベースにしているので、ご好評いただいています。

内田:自分でデザインしたオリジナルアイテムを販売できるサービスもあるんですか?

石川:「UTme!マーケット」というサービスがあります。自分のオリジナルアイテムに自身で報酬額を設定して出品し、出品者はアイテムが売れるたびに報酬をもらうことができる仕組みになっています。その際のやりとりや配送は、全てユニクロが行っています。

内田:「UTme!マーケット」なら、自分の小さなTシャツ屋さんを開くこともできる、ということですね。この連載は、最終目標が「自分でTシャツを作る」なんですけど、「めっちゃ簡単にできるやん!」って思っちゃいました(笑)。自分でデザインする上で気をつけた方がいいことはありますか?

石川:絵ですね。攻撃的すぎるものとかは削除させていただいております。

内田:「UTme!」には、キャラクターのスタンプもあるんですね!

石川:はい。通常のキャラクタースタンプだけでなく、ご自身が描いた絵、またはスマートフォンに保存してある画像もスタンプにできます。原宿周辺にあるお店とコラボレーションした、ユニクロ原宿店限定のスタンプもあるんです。

内田:コラボレーションしたいと思ったお店には、どうオファーをするんですか?

石川:近隣の店舗と「原宿を盛り上げよう!」と、各店舗の店長が集まる場に参加させていただき、打診をしています。地域に愛されていくことを目標にしているので、「UTme!」でもこうした活動も行っています。

内田:「UT」は色々な方とコラボレーションしていますが、基準や選び方について教えてください。

石川:"WEAR YOUR WORLD"という「UT」のコンセプトに基づいて、様々なカルチャーに触れようと思って日々探しています。音楽や漫画、アーティストなど作風が様々なものを、年間のスケジュールを組んで計画しています。話題性やタイミングも大事ですし、「ユニクロ」だからできるコラボレーションであるとか、企画の理由も考えています。

内田:「UT」のマーケティングプロモーションを通して、私にアドバイスがあればお願いします。

石川:コンテンツによってオリジナルのマーケティングを考えています。店舗やデジタル上で、広告とは違う形でコンテンツの良さを伝えており、例えば店舗ではアーティストのドローイング教室を開いたりしています。大々的な広告も大事ですが、作品が好きなファンの方に発信していただくことが本当に大事だと思っています。

内田:石川さんが内田理央だったら、どんなTシャツを作りますか?

石川:この連載を通して色々なTシャツのデザインやビジネスを知ることができたと思うので、その知見を生かして自分の好きなものを軸にしていくのが良いと思います。猫がお好きなら、女性だけではなく猫も着用できるボディを作り、ペアで着れたら面白いと思います。

The post ユニクロ「UT」は「ファンに発信していただくことが大事」 内田理央、本気でTシャツビジネスに挑むVol.7 appeared first on WWDJAPAN.

Koki,が初主演する“最恐”映画「牛首村」 “ルックスも最強”と話題の主要キャスト3人に話を聞いた

 モデルとして国内外で活躍中のKoki,が、2月18日公開の最恐ホラー映画「牛首村」(東映)で女優デビューした。2020年2月に公開してヒットした「犬鳴村」、21年2月公開の「樹海村」に続く、ホラー映画の巨匠・清水崇監督が手掛ける“恐怖の村”シリーズの第3弾だ。主要キャストは主演のKoki,のほか、今話題の若手俳優、萩原利久と高橋文哉。今後、ファッション&ビューティ業界からもさらに注目されるであろう“美しすぎる3人”に、映画の見どころや日々の美容法などを聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):本日公開だが、今の心境は?

Koki,:完成した作品を見終わって試写室が明るくなったとき、すごく感情的になりました。スタッフが一つのチームとなって約1カ月半の撮影を終え、「本当に映画を撮ったんだ……」という実感が湧いてきて感動しました。

萩原利久(以下、萩原):ホラーでありながら、人と人が接することで互いの弱点に気付いていくという、ストーリー部分にも力を入れました。ホラーとしてはもちろん、ドラマとしても楽しんでもらえるよう、チーム全体として高いモチベーションで臨んだので、そこにも注目してほしいですね。

高橋文哉(以下、高橋):試写の際、次に何が起きるか分かっているのに、ハラハラドキドキ、わくわくして観ることができました。絶対に楽しんでもらえると思います。

WWD:ホラーならではの演技は難しかった?

Koki,:監督と相談しながら演技を組み立てていったのですが、“緊迫感”をどのように保つか“が難しかったですね。特に表情のアップのシーンでは、息づかいや口元の動きなど、些細なことでも緊迫感は失われてしまうと教えてもらいました。

萩原:“リアクションをする間”にこだわりました。監督に教わったのが、「観客より先に驚いてはいけない」ということ。リアルな生活では、何かあると瞬間的に反応してしまうけれど、それを演技で再現すると観客に驚いてもらう隙がありません。一拍おいてから驚くように心掛けたのですが、なかなか慣れなかったですね。ホラー以外だとあまり経験しないと思います。

高橋:僕が演じた将太という役は、だんだんと恐怖が増してきて、ラストに向かうにつれて耐えられなくなってしまうんです。“恐怖”という階段を上っていることを伝えるにはどう表現すればいいか、ホラーだからこそ考える場面が多かったですね。

WWD:特にKoki,さんは今回が初演技だったが、監督からどのような演技指導を受けた?

Koki,:監督から教えてもらった中で印象に残っているのは、「日常的なシーンをいかにリアルにするかが大切」ということ。日常が成立しているからこそ、ホラーの部分が怖くなるので、そこは心掛けましたね。清水監督はシーンなどの説明がとても丁寧なので、説明を聞いているだけですでに怖かったです(笑)。もともと清水監督と仕事がしたいと思っていたのですが、いろいろなことを教わりました。最初が清水監督作品で本当に良かったと思っています。

WWD:映画初主演で一人二役(姉妹役)という挑戦、演じ分けるのは大変だった?

Koki,:特に演じ分けようとは思わず、奏音(姉)を演じているときは奏音、詩音を演じているときは詩音、という気持ちで演じました。一人二役は大変というより、演技を2倍経験できたので、2倍の学びになりました。

WWD:撮影現場の雰囲気は?

萩原:ホラー作品とは思えないくらい、現場の雰囲気は明るかったですね。3人とも同年代なので、役ではいがみ合うシーンがあっても裏ではわちゃわちゃしていて、いい意味でオン・オフのスイッチを切り替えることができました。

高橋:過酷なロケもあったけれど、この3人で作れる楽しさの方が強かったですね。撮影現場に行くとき、いつもわくわくしていました。

WWD:劇中で3人が並んでいるとき、「実際にこんな美男美女の高校生がいたらヤバい」と思いました(笑)。プライベートにおいて、ビューティやファッションでこだわっていることは?

Koki,:スキンケアでは、常に保湿することを大切にしています。あと、化粧水の後に乳液をつけるなど、ちゃんとステップを踏んでケアすることの大切さを実感しています。メイクに関しては、マスカラやビューラーを使ったり、そこに色を入れてみたり、目にポイントをおくのが好きですね。目を強調するときは、横ではなく、縦に大きく見えるようにメイクしています(笑)。ファッションは、カジュアルもシックも好きですが、常に自分らしいファッションでいたいです。あとどんな服でも、どこかにエレガンスな要素を入れることにこだわっていますね。

萩原:髪型に関して、僕は今までパーマをしたことも、染めたこともないんです。演じる役の関係で、自分の意志では大胆に変えられないので。金髪に憧れているので、「そんな役が来ないかなー」と思っています。ファッションでは、オーバーサイズの服を着るのが好きです。あと動くのが好きなので、いつ走ることになってもいいように、スニーカーを履くことが多いですね。

WWD:高橋さんも肌がとてもきれいですが、メンズコスメは使っている?

高橋:「最近肌だめだな……」と思ったときだけ、パックすることがありますね。でも休みの日は、カサカサのままいることも多いです(笑)。ファッションは、モノトーンの無地を選ぶことが多いですね。服は「いいな」と思ったら即買うけれども、気分で半年くらい買わないときもありますね。

WWD:最後に作品の見どころを。

Koki,:ホラー好きな方はもちろん、「ホラーはちょっと……」という方にも観てほしいです。家族の絆や姉妹の絆、人間性や「大切な人を守りたい気持ち」を丁寧に描いているので、注目してほしいですね。

The post Koki,が初主演する“最恐”映画「牛首村」 “ルックスも最強”と話題の主要キャスト3人に話を聞いた appeared first on WWDJAPAN.

よしミチ姉弟がコスメをプロデュース 「ファンと近くでつながれる場所」を目指す新たな挑戦

 “よしミチ”の愛称でZ世代を中心に人気を集める姉弟モデルのミチとよしあきは、自身がプロデュースするコスメブランド「パースビューティー(PERSE BEAUTY)」の第1弾製品となる“ベルベットフィックスリップバーム”(全4色、各税込1680円)を3月3日から公式サイトで先行販売する。3月17日から全国のロフト・PLAZAなどで順次販売する予定だ。製品はベルベットのような柔らかいバームテクスチャーで、ソフトマットな仕上がりと肌になじむ透け感のある発色が特徴。時間が経っても自然な色味が続くティントタイプのリップスティックだ。

 同ブランドは、2人が新しい発信の場として昨年7月に立ち上げたクリエイティブスタジオ 「パース(PERSE)」からスタートしたコスメラインだ。 “PERSE”はラテン語で“&”を意味し、ファンとのコミュニケーションの場として最新の情報やプロデュース商品などを発信していくという。また、第2弾としてカラーコンタクトの発売も決定している。SNSの総フォロワー数250万人以上をかかえ絶大な影響力を持つ彼らが、なぜ今クリエティブスタジオを立ち上げたのか、製品に込めた思いやこだわりなどをミチとよしあきに聞いた。

WWD:クリエイティブスタジオ「パース」を立ち上げた経緯は?

よしあき:SNSだけでなく、自分たちが表現したいものを作ったり、僕達をもっと身近に感じたりしてもらえるような空間として「パース」を作りました。

ミチ:姉弟として2人で活動してこれたのは、応援してくださったみなさまのおかげ。「パース」はそんな人たちともっと近くでつながれる場所にしたいです。

WWD:SNSではなくクリエイティブスタジオを立ち上げた理由は?

ミチ:SNSだと発信できることに限りもありますし、それぞれのメディアのスタイルがあると思うので、私たちの表現や作りたいものをより分かりやすく発信するために新しく立ち上げました。今回のコスメを皮切りに、幅広くチャレンジしていきたいです。

WWD:「パース」の最初のプロジェクトにコスメラインを選んだ理由は?その中でもなぜリップだった?

ミチ:私が自分に自信を持つことができたり、好きになれたりしたきっかけがコスメでした。例えば顔にホクロがあったとして、コンプレックスに思う人もいれば、チャームポイントと捉える人もいます。自分のことを好きになれるかどうかは結局自分次第なので、少しでもその後押しがしたくてコスメにしました。最初に持ったコスメがリップで、化粧をしたことがなかった当時の私にとって、リップ1本塗るだけでこんなに変化があるんだ!というのが楽しくて。寝る時もリップを塗っていたくらい大好きでした(笑)。その時の変化や感動が忘れられなくて、最初のアイテムは一番思い入れのあるリップにしました。

よしあき:僕も中学生くらいからメイクを始めて、高校生のときはメイクしないと外出したくないくらいでした。最近では仕事でヘアメイクをしてもらう機会も増え、メイクをすると自分に自信がつくし、メイクは楽しい所に連れて行ってくれるなと改めて感じています。「パースビューティ」をスタートするのもすごく楽しみでした。メイクは技術が必要なので、僕も最初はベースメイクで顔と首の色が全然違ったり、ノーズシャドウを入れすぎちゃったり……。いろいろ失敗をしながら引き算も出来るようになったのですが、その中でもリップって塗るだけでかわいくなれて、一番簡単に自分に自信が持てるアイテムだと思います。

 少し前までは男性でメイクをしていると驚かれることが多かったのですが、最近ではメイクをしていると「そのリップどこの?」と聞かれるくらいメンズメイクは違和感のないものになってきていると感じます。だからメンズにも使えるようなカラーやテクスチャーを目指した「パースビューティ」は、性別に関係なく使ってほしいです。

WWD:製品でこだわった点は?

ミチ:発色とつけ心地の良さにこだわりました。最初は色味から調整していたものの、保湿効果やプランピング効果、ティント効果も追加していくうちに質感が硬くなってしまい、何度も調整して理想通りの発色と質感を追求しました。カラーは、肌なじみにこだわったニュアンスカラー4色を作りました。マットリップって“しっかりお化粧感”が出るイメージがあるのですが、鏡を見なくてさっと塗れて、どんなシーンでも使いやすいリップに仕上がりました。

よしあき:中身はもちろん、僕はお守りのように持ち歩いてほしいという思いを込めて、毎日手に取りたくなるようなパッケージのデザインにもこだわりました。それぞれのカラーによってパッケージが色違いになっています。あとは手ごろな価格もポイントで、学生でも手に取りやすい価格になるように頑張りました。

ミチ:私は中身の発色や質感、彼はパッケージにこだわりを発揮して、上手く役割分担した感じですね。2人で妥協なく作り上げました。

WWD: “ベルベットフィックスリップバーム”を使ったおすすめのメイクは?

ミチ:個人的に一番好きなカラーは“01 NUDE ROSE”ですが、おしゃれな雰囲気になれるブラウンがかったオレンジ“03 CHILI ORANGE”も男女問わずどんな人でも似合うはず。おすすめの使い方は、“01 NUDE ROSE”が全体に塗ったあと、唇の中心に“02 INNOCENT RED”を重ねるとじゅわっとにじみ出るような血色感のあるリップに仕上がります。リップとアイシャドウの色味を合わせたワントーンメイクもおすすめです。

よしあき:ブラウン系の“03 CHILI ORANGE”や“04 ALMOND BROWN”はスッピンにさっと塗ってもモードな雰囲気でおしゃれにきまると思います。“ベルベットフィックスリップバーム”は重ねて塗ればしっかり発色してカラーを楽しめるし、一度塗りで軽くティッシュオフすればより自然な発色になるので、塗り方次第でいろいろな楽しみ方ができます。性別や年齢関係なく、ボーダーレスに使ってほしいです。

WWD:製品とパッケージともにヴィーガン素材なのは、若い世代の環境問題に対する意識が高まっているから?

ミチ:“ベルベットフィックスリップバーム”はフランスのヴィーガン認証機関「EVE VEGAN」の認証を取得しています。環境問題について私たちもまだまだ勉強不足ではあるものの、できることは少しずつでも取り組んでいきたいです。“環境問題に興味を持っているのがおしゃれ”という風潮があるのは事実ですが、入り口はそれでもいいと思っています。身近なコスメから意識するきっかけになってほしいです。

WWD:今後「パース」を通じでどういった企画や発信を考えている?

ミチ:アクセサリーにも挑戦してみたいです。今回は日常をより素敵にしてくれるものがコンセプトでしたが、アクセサリーは“特別”をコンセプトに作りたいです。家族とおそろいのリングをしていたり、大切な友人とはアクセサリーを送り合ったりするくらい、私にとってアクセサリーは特別なつながりを感じさせてくれるものなので。

よしあき:直近では、カラーコンタクトの発売が決定しています。リップのように、手軽に取り入れられるものから作っていきたいと考えています。ゼロから物を作ることは大変でしたが、僕たちの愛情や熱意を込めて作ったものがみなさんの手に届くことが1つの“つながり”なので。僕はやっぱり発信することが大好きなので、作ることから発信までできる「パース」の今後を楽しみにしていてください。

The post よしミチ姉弟がコスメをプロデュース 「ファンと近くでつながれる場所」を目指す新たな挑戦 appeared first on WWDJAPAN.

「ブルガリ」トップが語る女性のエンパワーメントとデジタルの可能性

 ブルガリ ジャパンは毎年12月、さまざまな分野で活躍する女性をたたえる「ブルガリ アウローラ アワード(BVLGARI AVRORA AWARDS 以下、アウローラ)」のイベントを華々しく開催している。昨年で6回目を迎えた同賞の“アウローラ”とは、ローマ神話で“暁の女神”を意味し、文化、スポーツ、社会貢献などの分野でインスピレーションを与える女性に贈られるものだ。毎年同賞の授賞式のために来日するジャン・クリストフ・ババン(Jean Christophe Babin)=ブルガリ グループ 最高経営責任者(CEO)だが、今年は、コロナ禍のため来日できなかった。同CEOに「アウローラ」をスタートした理由や、同賞に込めた思い、そして、コロナ禍におけるビジネスについて聞いた。

WWD:「アウローラ」を2016年にスタートした理由と目的は?

ジャン・クリストフ・ババン=ブルガリグループCEO(以下、ババン):「ブルガリ」のブランドとしての成功は女性によるものが大きい。われわれは、女性なくして世界的なラグジュアリーの象徴かつ羨望の的のジュエラーの一つになることはできなかったはずだ。だから、女性たちに捧げる賞を作りたかった。ジュエリーだけでなく、ウオッチやアクセサリー、フレグランスなどのインスピレーションの始まりは女性から。「アウローラ」は女性が持つ注目されるべき隠れた才能にフォーカスし、その声を伝えるのが目的だ。

WWD:このイベントは6年にわたり開催されてきた。この6年間の変化についてどのように分析するか?

ババン:男性のライフスタイルよりも女性のライフスタイルの方が早いスピードで変化している。今日の女性は自分自身の才能を信じて発揮することにより、社会的にますます重要な役割を果たすようになった。自分の人生を動かすエンジンそのものになっている。これが、この賞を誇りに思う理由だ。「アウローラ」は、女性のありのままの姿を讃えて、それぞれの女性が持つ夢の実現に導く賞だと思う。この賞を受賞することにより、夢が明確になり、それを実現する決意になるだろう。

WWD:幾つかの企業が女性のエンパワーメントに関する賞を設けているが、「アウローラ」はそれらとどのように違うか?

ババン:“卓越性”を重視している点。「ブルガリ」は、世界的なトップジュエラーとして、日々、“卓越性”を実現するために尽力している。宝石や貴金属といった材料から、オリジナリティー溢れるクリエイション、世界中の店舗やさまざまな方法による顧客へのサービスまで、“卓越”していることが重要。「アウローラ」も同様に、参加する女性がそれぞれの才能を通して世界に卓越した作品を届ける決心をする場なのだ。歌でも、建築でも、アートでも、“卓越”したものを作り出す方法を知っている、そんな女性に贈られるのが「アウローラ」だ。

デジタルはターゲットとの需要なタッチポイント

WWD:コロナ禍におけるビジネス状況は?好調の市場とその理由は?

ババン:パンデミックをもたらすウイルスとの戦いで世界は一致団結した。しかも渡航制限により世界はある意味、小さくなったと言えるかもしれない。われわれのようなラグジュアリーブランドは、より、ローカルな戦略でビジネスをするようになった。そして、経済全体が徐々に回復しつつある。コロナ禍で、デジタルが重要な後押しになった。ECは、ロックダウンなど危機的な状況で大きな味方となったが、状況に関わらず重要なビジネスチャネルになっている。優れた業績を残すことを忘れず、デジタルで、顧客によりパーソナライズされたサービスをどう届けるかというのが興味深いチャレンジだ。

WWD:コロナ禍における富裕層市場は?どのようなサービスを提供しているか?

ババン:ラグジュアリービジネスは近年、デジタルとの相互作用により、デジタルに明るい若い世代を市場の中心に押し上げた。EC顧客の消費動向を研究し、好みに合わせた商品を提供することにより完璧なショッピング体験を提供することができる。「ブルガリ」にとってデジタルは、理想的なターゲットと接触できる刺激的で有用なチャネルであり、SNS上でユーザーが発信する価値や経験に基づいたマーケティング戦略が可能になる。また、3Dデジタル技術を駆使して、メタバース上で商品を存分に楽しめるユニークな体験を提供することも課題だ。

WWD:コロナは一部地域で落ち着きつつあるが、この先行きの見えない状況における戦略は?

ババン:世界情勢は常に変化している。長期的に危機的状況にある地域はもはやない。実店舗とデジタルの融合により消費者のニーズに応えるのが理想的な戦略だ。われわれは決して立ち止まることなく、状況を考慮に入れながら、コレクションの発表や店舗のオープン計画を進めている。昨年秋には、フランス・パリのヴァンドーム広場に新しい旗艦店をオープンし、ジュエラーの聖地である同広場における存在感がアップした。12月には、「ブルガリ ホテル パリ(BVLGARI HOTEL PARIS)」をオープンした。コロナ禍が落ち着けば、国際的なラグジュアリーショッピングの拠点であるパリで、多くの宿泊客を迎える特別な存在になると信じている。「ブルガリ」ならではの、細部まで気を配ったサービスの質の高さを感じてもらえるはずだ。このように、われわれは国別に具体的な戦略を立てて、計画を実行している。ECによる販売は、ブティックにおけるサービスや、ブルガリの世界観を再現することはできないが、実店舗とECは補完し合うもの。コロナ禍による制約がある地域では、ECやSNSをを通して顧客とタッチポイントを作り販売することが重要だ。

The post 「ブルガリ」トップが語る女性のエンパワーメントとデジタルの可能性 appeared first on WWDJAPAN.

所属する村瀬心椛選手が銅メダル獲得 ムラサキスポーツに聞くスノーボード市場の変化

  北京冬季五輪も後半戦。スノーボード競技ではハーフパイプで平野歩夢選手が金メダル、冨田せな選手が銅メダル、ビッグエアで17歳の村瀬心椛選手が銅メダルと日本勢のメダルラッシュに沸いている。メダリストの村瀬選手が所属するのが、スノーボードやサーフィン、スケートボードの専門店であるムラサキスポーツ。東京五輪でも、同社所属の堀米雄斗選手、西矢椛選手がスケートボードで金メダルを獲得し、大きな注目を集めた。野球やサッカーに比べるとまだまだマイナーなスノーボードやスケートボードだが、大きな大会で選手が活躍するとどんな変化があるのか。ムラサキスポーツ新宿店の倉持正臣さんに、スノーボード市場の概況と共に聞いた。

WWD:まず初めに、ムラサキスポーツに所属する村瀬選手をはじめ、日本人選手の北京冬季五輪での活躍は店頭にどんな変化をもたらしているか。

倉持正臣(以下、倉持):日本人選手が活躍すると、スノーボードを始めてみようというお客さまが増えて、業界全体に還元がある。例年、スノーボードの売り上げのピークは12〜1月だが、今年は五輪効果なのか2月の3連休(11〜13日)時点でも各店で集客が落ちなかった。東京五輪のスケートボードで堀米選手や西矢選手、中山楓奈選手(銅メダル獲得)が活躍した際も、彼らが当社の所属と知った方からの問い合わせが増え、初めてスケボーに挑戦するという10代のお客さまがかなり増えた。スケボーは“3密”を避けられる遊びとして、20年3月以降売り上げを伸ばしていた。その反動で21年はやや前年比で伸び悩んでいたが、東京五輪後の8〜9月は大幅に伸長し、店によっては売り上げが例年の2〜3倍になるというケースもあった。

WWD:五輪の効果でここからさらに伸びる可能性はあるが、2021-22年シーズンのスノーボード市場の現時点までの概況を教えてほしい。

倉持:当社のスノーボードカテゴリーは、1月までの時点で前年同期比20%増にやや届かずという着地。雪不足だった前々年との比較では、20%増以上の伸びだ。昨年はコロナ禍でお客さまは商品を買おうにも買えず、さらに今年はベトナムや中国でロックダウンや電力不足に伴う生産遅延が発生した。「今年こそ買うぞ」と思っていたお客さまのマインドを、納期遅れがさらに刺激した面はある。コロナ禍前は、ムラサキスポーツとして各地のゲレンデで毎月のようにボードの試乗会やイベントを行い、広告も出稿して売り上げにつなげていた。今シーズンは広告出稿を大幅に減らしているにも関わらず、売り上げが回復している。

WWD:新宿店はコロナ禍前は海外観光客からの支持も厚かった。

倉持:コロナ禍前は新宿店は売り上げの15〜20%を中国や韓国のお客さまが占めていた。海外観光客はかなり減ったが、昨年12月ごろから徐々に戻りが見られる。特に中国は自国での五輪開催もあって、スノーボード市場が今まさに大きく拡大しているところだ。「バートン(BURTON)」など有力ブランドの中国では売っていない品番のボードや、10万円超の「オガサカ(OGASAKA)」「ヨネックス(YONEX)」などの日本製ボードを求める声は強い。また、“プレミア感”を重視して、国際大会で有力選手が使用したボードを指名買いするケースも中国のお客さまでは五輪前からよく見られる。

スノボウエアも韓国ファッションが席巻

WWD:コロナ禍前と比べて売れるアイテムに変化はあるか。

倉持:マスク代わりのバラクラバやフェイスマスクは非常によく売れている。感染を避けるためにゴーグルやグローブをレンタルすることは避けて、初心者でも自分のものを買うという傾向も広がっている。

WWD:ウエアはどんなデザインが売れているか。

倉持:「ゴアテックス(GORE-TEX)」など機能素材を使用したギア系と、街着のトレンドを取り入れたストリートミックス系とにニーズが二分している。ギア系は「バートン」の上級ラインである“akコレクション”や、今回の五輪で米国スノーボードチームのウエアのサプライヤーにもなっている「ボルコム(VOLCOM)」の商品などが支持されている。“akコレクション”には藤原ヒロシさんとの協業商品もあり、それには中国や韓国のお客さまからの問い合わせも毎シーズン多い。一方、ストリートミックス系ではK-POPファッションの波がスノーボードウエアの世界も席巻している。新宿店では、淡い色使いなどが特徴の韓国発のウエア「ディミト(DIMITO)」が人気だ。

WWD:スノーボードが日本に入ってきて約40年。スノーボード人口は減少し続けていると言われるが、そうした市場の変化をどう見ているか。

倉持:業界内でよく言われることだが、今40代である僕たちが若かったころは、スノーボードがファッションや音楽などと共にカルチャーの一つとして受け止められていた。今の若い世代は(うまい人であればあるほど)カルチャーというよりも競技志向が強く、(カルチャーに紐づいたマイナースポーツという領域から)より一般的なスポーツになりつつあると言えるのかもしれない。東京五輪でスケボーが注目を集めた際もそうだったが、大きな大会で選手が活躍すると、10代などの若い世代がそのスポーツに挑戦することが増える。同時に、かつてそのスポーツに親しんでいた世代が刺激を受けて再開するケースもある。今回の五輪でも、「スノーボードってかっこいい」と若い世代に知ってもらいたいし、かつてスノーボードにハマっていた40〜50代が、再開するきっかけの一つになればと思っている。

The post 所属する村瀬心椛選手が銅メダル獲得 ムラサキスポーツに聞くスノーボード市場の変化 appeared first on WWDJAPAN.

美肌研究家ソンミの「ミース」が絶好調 「肌が変われば、世界が変わる」【ネクストリーダー2022】

 美肌研究家のソンミが2019年3月に立ち上げたスキンケアブランド「ミース(MEETH)」の勢いが止まらない。同ブランドは“美肌は最高のジュエリー”をコンセプトに誕生。「肌がきれいだと人生が変わる」というメッセージを発信し、美肌についてとことん追求したスキンケアをそろえる。国内外で展開するなど“美容通”からの支持も高く、右肩上がりで成長し続けている。今年はインナーケアに特化した食のブランド「アンドミール(&MEAL)」を本格的にスタート。「美肌に関係するもの以外は絶対に発売しない」と強い意思を持つソンミが、思い描く世界とは?

WWD:今年はブランド誕生から3周年を迎える。改めて「ミース」を立ち上げたきっかけは。

ソンミ・ミースCEO兼美肌研究家(以下、ソンミ):「ミース」は、自分のコンプレックスから誕生した。芸能活動をしていた20代の時は他の人と容姿を比べてしまうことが多く、自分の欠点に目が行きがちだった。コンプレックスを克服しようと努力するよりも、自分の魅力を磨くことの方が自信への近道だと思い、褒めてもらうことが多かった「肌」を磨くために、20代半ばから、デパートコスメからドラッグストアコスメまで千以上もの化粧品を試してみたり、多くの美容法を取り入れたりしてみた。とにかく“良さそう”と思うものはトライして、その中で自分が気になった製品は成分について製造元に問い合わせるなど、とにかく自分なりの美肌の研究に没頭していた。

WWD:気になるものがあればすぐ行動に移した。

ソンミ:本気で自分がおすすめしたい製品というのは片手に収まる程度だったが、それをSNSで紹介したら「同じものを使ったら肌がきれいになりました。本当に涙が出そうです。ありがとうございます」というメッセージをいただくようになった。良いと思ったモノを発信して喜んでもらえたことが、自分にとっても喜びであると感じた。30歳を目前に自分の肌が変わる中で、本当に使い続けたいと思うアイテムを作りたいと思い立ち、「ミース」を立ち上げた。

WWD:自己資金300万円を元手にスタートした。

ソンミ:ビジネスの勉強をしたわけでもなく、会社勤めの経験もない中、たった1人で始めたので不安しかなかった。ただ、当時から今も変わらず胸のなかにあるのは「人生が変わるような化粧品を作る」ということ。「肌」がきれいになると前向きになり、振る舞いも代わり、チャンスが生まれる。私自身「ミース」を始めて人生が変わったと思っている。この3年間はそれだけを追求して、とにかく無我夢中だった。

WWD:現在は12SKUをラインアップする。

ソンミ:炭酸ガスパックから始まり、クレンジング、オイル美容液、クリームなどスキンケア製品を揃えている。ブランドのアイコンでもある化粧水“モアリッチエッセンシャルローション”は嬉しいことに、昨年10月から北海道・岩内町のふるさと納税返礼品に採用されている。同化粧水は岩内町の海洋深層水をベースに製造していることから選んでいただいたが、申し込みが前年度に比170%増だったと、町長さんから喜びのご連絡をいただいた。肌をきれいにしたいと思いながら作っていた製品が町おこしに繋がり、社会に貢献できるというのにスキンケアの可能性を感じた。

WWD:「ミース」は開発する製品によって工場を選定しているのも特徴だ。

ソンミ:自分の目で確かめたいので全ての工場に出向き、それぞれ得意分野が異なる工場から選んで取り引きしている。国内では6社と取り組んでいるが、「ミース」の強みである製品力をさらに高めるべく、韓国の江南区にブランド初となる化粧品開発研究所を昨年設立した。日本の繊細な技術は誇りに思いながらも、美容大国とも呼ばれている韓国の美容医療や研究も素晴らしい。日本と韓国の技術を融合しながら、美肌を追求するための商品を開発していく。

WWD:ファンの声を製品開発に生かすこともある。

ソンミ:「ミース」は自分のコンプレックスから始めたブランドであり、お客さまに寄り添いながらも自分が良いと思える製品を生み出してきたが、お客さまの悩みを解決する製品を作りたいという思いもあったため、2周年のタイミングで「商品企画プレゼン会議」を実施した。「ミース」のお客さまには、成分をも把握しているとても意識の高い方が多い。そういったお客さまが欲しいと思う商品をプレゼンしてもらい、採用された方と一緒に作るという企画で、その中で選ばれた方と一緒に、9カ月ほど毎月お会いして開発を進め、8割がた完成に近づいている。

WWD:新しいことに挑戦し続けている。

ソンミ:「肌」をきれいにするためなら、どんなことでもチャレンジしたいと考えている。ただ、化粧品だけでは限界がある。ある日、「ミース」を使っても肌の変化が感じられないというお客さまがいたのでヒアリングしたら、食生活が乱れていたことが分かった。その食生活を改善できない限り、スキンケアブランドになれないと強く感じた。スキンケアブランドとしての在り方を考え、内側からも外側からもサポートできるようになりたいと思い、栄養学の専門学校に通った。そこでドクターや栄養士、料理家など各分野のプロとの出会いがあり、協業してフード事業「アンドミール(&MEAL)」を立ち上げた。

WWD:「アンドミール」のこだわりは?

ソンミ:例えば、製造過程では添加物を使いたくなかった。肉の挽き方や野菜の洗い方一つをとっても自分のこだわりが強すぎて、受け入れてくれる工場が見つからなかった。さすがに断られ続けたので、断念しようとも思ったが、それだと“スキンケアブランド”ではなくなると思い、人生をかけて、自分たちで製造から配送までしようと決意し、自社工場をゼロから作り上げた。最初はEC販売で、人の体が変わると言われる7日間分のスープセット(7食)と、オートミールのクッキーを用意する。

WWD:本気度がうかがえる。

ソンミ:私たちは「おいしいだけ」のブランドではなく、「体や肌に優しい」だけのブランドでもない。「肌がきれいになる」ことは「体が健やかになる」ことだ。全てを掛け合わせて展開するのが「アンドミール」。マインドが変わると行動が変わり、それが習慣になり、結果、肌がきれいになることにつながると思っている。「ミース」も「アンドミール」も、ただ商品を販売して終わりではなく、美肌になった先まで想像してもらえるようなブランドにしたい。販売だけではなく、その先につながるようSNSでのコミュニケーションにも注力する。まずは、食の大切さを多くの方に知ってもらうことを使命とし、ゆくゆくはショップをオープンしたいと考えている。

WWD:今後「ミース」も店舗を増やしていくのか?

ソンミ:昨年は定期的に百貨店でポップアップを開催し、常設のお話もいただいたが、「ミース」はお客さまとの信頼で繋がっているので、国内においては、自分の目が行き届く範囲かつ、しっかりと接客ができてブランドの世界観を守れる範囲でとどめておきたいと今の時点では思っている。一方でお客さまの利便性を高めるために、ショールーミングストアの「ミース タッチアップ ラボ (meeth touch up lab)」(東京・表参道)では、2月に製品の販売を開始した。自分の経験からゆっくり製品を知っていただける場所にしたいという思いがあり、お客さまご自身のタイミングでECで購入いただくという形態をとっていた。しかし、初めて来店されたお客さまから「ラボで体験した製品をそのまま購入したい」という声が多かったので店頭販売を決めた。ただ、肌診断機を使ったカウンセリングやアドバイスなどラボとしての役割は変えない。

WWD:海外展開は?

ソンミ:中国、台湾、ロシア、ベトナム、韓国、シンガポールで販売している。海外の売り上げ構成比率は3割で、特に台湾では20年に“モアリッチパック”が台湾の美容大賞である「女人我最大賞」パック部門で大賞受賞し、翌年はボディケア部門で「総合ボディオイル賞」を受賞するなど、日本に次いで好調に推移している。今年1月には、海外初の直営店をシンガポールにオープンした。

WWD:国内外問わず着実にファンを増やしている。

ソンミ:「ミース」が「ソンミのブランド」というところから脱却したいと思っている。嬉しいことに最近では、私の顔を知らなくても製品を支持してくれる方が多い。ある女優の方にコスメ企画で「『ミース』を紹介すると、自分がしっかりモノを選んでいる認識をもってもらえ、自分の価値を高めてくれる」と言っていただけた時には、今までやってきたことは間違いではなかったと確信できた。

WWD:これまでのターニングポイントは?

ソンミ:3年のうち、リブランディングを2回したこと。最初のリブランディングでは、環境に配慮した取り組みの一環としてパッケージを森林循環紙に変え、ベジタブルインクに変更した。そこから、「正しいスキンケアを続ければ、何歳になっても肌は生まれ変わる」と発信するなかで、深刻化する環境問題とともに「ミース」も進化させていかなければと思い、2周年のタイミングで外箱をリサイクル率が高いダンボールに切り変えた。会社の取り組みや在り方を考えながら、お客さまと世の中にどういうことができるのか考え、いろんなことが動き始めた。日々環境に配慮した新しい容器が出ているので、変化を恐れず、積極的に変えていきたい。

WWD:スピーディーに環境に配慮した取り組みを行っている。

ソンミ:ブランドを立ち上げた時から動物実験を行わず、廃棄につながる大量生産は行わない。製品はレフィルも用意し、店頭では容器回収を始めた。企業としてSDGsへの取り組みは使命。まだまだ発展途上だが、できるところから確実に変えていく。これまでもこれからも、「肌が変われば、人生が変わる」そして「スキンケアで肌が変わると社会も世界も変えていける」という思いを持ち続け、進化していきたい。

WWD:今後の展望は。

ソンミ:3月に新ブランド「クレイビュ(CRAYBEAU)」を立ち上げる。ブランド名は「クレイジービューティ」の造語で、コンセプトは“狂おしいほどに美しい”。友人から「ソンミの肌はがんばってケアしている肌だ。」と言われたのがきっかけ。最初は「がんばることは恥ずかしいのか?」と衝撃を受けたが、私の周りにいる美しい人は正しい努力をしていると思うし、年齢関係なく肌がきれいな人はかっこいいとも思っている。人生は平等ではないと言われるが、スキンケアは平等。正しくケアすれば、肌は必ず応えてくれると思っている。そこで、「最高の美肌」をサポートする最高峰ラインとして誕生させる。

WWD:ブランド領域を広げる。

ソンミ:この先、ビジネスで新しいことを始めたとしても肌に関係すること以外、絶対しないと決めている。この1年は「ミース」「アンドミール」「クレイビュ」の3ブランドをしっかり育成し、「肌が変われば、人生が変わる」ということをメッセージとして伝え続けていきたい。


The post 美肌研究家ソンミの「ミース」が絶好調 「肌が変われば、世界が変わる」【ネクストリーダー2022】 appeared first on WWDJAPAN.

洋服との出合いでワクワクを 笑顔あふれるライフスタイルを創造【ネクストリーダー2022】

 オフィススタイルに定評のある月額制レンタルサービスがエアークローゼット(AIRCLOSET)だ。スタイリストがユーザー1人1人に向けて洋服を選び、新たな出合いを提供している。2015年にサービスを開始し、昨年黒字化を達成。会員数も70万人を突破した。しかし、創業者・天沼聰の夢の実現はまだ始まったばかりだ。

WWD:起業した経緯は?

天沼聰エアークローゼット社長兼CEO(以下、天沼):仲間と何かを切り開いていったり、何かを形作ったりすることがすごく好きで、世の中に何らかの価値を提供したいというのが、そもそもの出発点だ。コンサル時代に起業を考え始め、実業を経験した後に、仲間を誘って3人で起業した。

WWD:なぜ洋服のレンタルサブスクを?

天沼:3人とも「ライフスタイルが豊かになる、人の生活が何か豊かになることをやりたい」が一致していて、「1分でも1秒でもいいから、人々のワクワクする時間を増やそう」というのがスタートだった。そこから「ライフスタイルに一番近くて、かつ、人の心に一番近いものって何だろう」と考えていったときに、ファッションだと。人の肌に触れるもので、長くワクワク感が長く持続する。ファッションの力はすてきだなと。ライフステージも時間の使い方も変わることが多く、忙しい女性たちに、生活リズムを崩さずに新しいファッションにたくさん出合えるサービスができたら、きっとワクワクするんじゃないかと考えた。選ぶのに時間がかかっては本末転倒なので、スタイリストが提案し、実際に着て、外に出ることができるレンタルが良いと思った。さらに返却期限なく、いつでも返せて、また新しいものが届くようにと月額制を採用した。

WWD:スタイリングサービスや物流、クリーニングなどが組み合わさっている。事業化は容易ではなかっただろう。

天沼:ビジネスモデルは定まったものの、3人とも全くファッション業界について知らないし、SNSにさえ業界の知り合いがいなかった(苦笑)。知り合いの知り合いの紹介で何人かに会うことができて、そこからテレフォンショッキング形式で広がっていった。世界的にも前例がなかったので、予測と軌道修正を繰り返しをしてここまできた。常に大変ではあるが、自分たちが作りたい世界観に向けてサービスを構築しているので、とても楽しい。

WWD:ワクワクをお客さまに提供できている実感は?

天沼:サービスを開始して1、2年の時に、返却の洋服と一緒に手紙を受け取った。その方はファッションが大好きで、ファッション業界で働いていたけれど、うつ病になって仕事を辞めて家に引きこもっていた。でも、エアークローゼットを利用するようになって、洋服に出合ったら少しずつ出掛けるようになったという内容で、「今も闘病中だけれど、アパレル業界に復帰して働いています。エアークローゼットを作ってくれてありがとうございました」と。それを泣きながら読んだ。ファッションとの出合い、洋服との出合いという、私たちがコアだと思っている価値を認めてもらえたと感じて、心の底からうれしかった。今でも問い合わせメールなどは全てに目を通しており、お客さまにワクワクしてもらえていると感じている。

WWD:現在注力していることは?

天沼:このコロナ禍で、ウインドーショッピングなど、洋服に出合う機会やきっかけが減っている。より多くの人にワクワクを体験してもらいたいので広報活動を強化している。また、アパレル企業がレンタルやサブスクリプションサービスを始めやすいように、私たちの物流基盤を利用できるようにした。ゼロからエンジニアが作ったシステムや、データサイエンス、人工知能の活用など、私たちの経験やノウハウをシェアすることで業界全体を盛り上げたい。競争が原理原則ではあるが、パイの取り合い以上に、パイを大きくすることを意識している。

WWD:今後は?

天沼:ライフスタイルとして広げたいという最初の思いを考えると、私としては、まだスタートラインに立ったかどうか半信半疑なぐらい。メンズやシニア、マタニティーと領域を広げたり、海外で展開したり、やりたいことがたくさんある。大量生産によって、一人一人が出合うべくして出合う洋服だけではなくなり、廃棄される服が増えている。今後はよりパーソナライズされたファッションが求められるようになっていくと思う。出合うべきアイテムを提案し、「“ワクワク”が空気のようにあたりまえになる世界へ」というビジョンを実現したい。

WWD:最後に受賞の感想を。

天沼:候補に挙がっていると連絡が来て驚いたが、チームとして長く一緒に働いてきたスタイリストの一人が推薦してくれたと聞いて本当にうれしかった。2月3日でサービス開始7周年。仲間と一緒にやれている環境で、最高だと感じている。


The post 洋服との出合いでワクワクを 笑顔あふれるライフスタイルを創造【ネクストリーダー2022】 appeared first on WWDJAPAN.

中国で増すローカルブランドの存在感 「メイド・イン・チャイナ」を誇りに掲げる新鋭デザイナー【ネクストリーダー2022】

 中国のメンズウエアブランド「K-ボクシング(劲霸男装、K-BOXING)」を手掛けるホン・ボーミン(洪伯明、Hong Boming)最高経営責任者(CEO)兼クリエイティブ・ディレクターはトレードマークの“中国製のジャケット”を武器に、ブランドの成長をけん引する。42年続く家族経営ブランドを引き継いだ“3代目”として、「メイド・イン・チャイナ」への誇りを貫き、国内での存在感を増している。カーボンフットプリント(CO2e・温室効果ガス)を算出できるQRを導入するなど、サステナビリティを意識した新しいジャケット開発にも取り組み、事業拡大を目指す。中国およびアジア発のファッションをどのように見据え、どうブランドを導いていくのか。

WWDJAPAN(以下、WWD):ファッション事業を継ぐまでの経緯は?

ホン・ボーミンCEO兼クリエイティブ・ディレクター(以下、ボーミンCEO):中国の四字熟語に、水到渠成(すいとうきょせい)という言葉がある。「然るべき物事は、自然とうまい具合に進行する」「流れに任せてしまえばよい」といった意味を持つが、まさに自分の境遇を言い表す言葉だと思う。“3代目”として生まれて幼い頃からファッションに触れるにつれて、家族や会社に対する責任感が育ち、自然と「K-ボクシング」に参加したいと思うようになっていった。大学では工業デザインを専攻し、副専攻でファッションデザインを学んだ。製品開発や人事、テクノロジーなどの方面で知識とビジネスのノウハウを身につけ、ファッションビジネスの基礎を築いた。入社したのは、2017年。家のルールに従って、見習いとしてスタートした。その後19年にCEO兼クリエイティブ・ディレクターに就任した。

WWD:歴史あるブランドをどう導く?

ボーミンCEO:継承は起業活動で、相続はイノベーションだ。“3代目”として会社を存続させるためには、起業家精神の養成と人一倍の努力が必要。業界で活躍を続けるブランドであるために、商品設計からクリエイティブまで、新鮮でインターナショナルな視点を加えていきたい。急速に成長する中国市場や消費者の購買動向の変化、メディアの発達によるコミュニケーション方法の進化を受けて、会社も大きな転換期を迎えると感じていたので、自分なら貢献できると思った。経営戦略や体制の在り方、マネジメントなど、3代目であるからこそ見えてくる課題を意識して、進化を続けたい。これまでのヘリテージを大切にしながら、時流をつかんでいくことは大切だ。

WWD:これまでのキャリアで苦労したことは?

ボーミンCEO:私のバックグランドは挑戦の機会をたくさんくれたが、プレッシャーでもあった。比較的若くしてCEOになったので、社会経験やマネジメントスキル、市場分析力、素材についてはこれからもっと学んでいく必要がある。生活者のニーズや意識はより細かく、高まる一方だ。購買に慎重で品質が良いものを好み、デザイン性もあって着心地が良いだけでなく、ブランドの理念と共感するかどうかも細かく見ている。ライフスタイルや好みの変化に適応していくことに難しさを覚える。また、ブランドの知名度が上がるにつれ、ビジネスを超えて、社会的な責任の重さを感じるようになった。生活者と対話をするためにはビジネスをするだけでなく、ポジティブなメッセージや付加価値の創出が不可欠となった。

WWD:中国国内での人気をどう獲得した?

ボーミンCEO:社会が多く変わり、働く時のファッションにも変化が生まれ、スーツが徐々にカジュアルなジャケットに変わっていった。今やジャケットを着ていることが、ビジネスのコミュニティーでは企業家としての自立や余裕を表すシンボルになっている印象を受ける。「K-ボクシング」は当初からジャケットに焦点を当て、30〜45歳のメイン顧客層に着実にリーチした。ジャケットに精通するブランドイメージを確立し、中国で生活を送る男性に自信を与える存在に育っていった。21年9月には、新たに“ニュー・プレミアム・ナショナル・プロダクト”をコンセプトとして打ち出した。この“プレミアム”は値段に限定するものではなくて、最高の体験と“ちょっといい自分”になるための特別感を指すもの。ブランドの歴史と我々が提供する品質にコミットするために、「メイド・イン・チャイナ」を前面に出した。同時期に万里の長城でメンズジャケットにフォーカスを当てたショーを開催。中国のローカルブランドのファッションが注目を集めているという世の動きをキャッチしていった。

WWD:中国のローカルブランドが人気を集める理由は?

ボーミンCEO:中国が国として経済成長して文化的にも成熟してきたことで、国内のブランドに焦点があたり、誇りが生まれていると感じる。世界で存在感を増すようになるにつれて若い世代のアイデンティティーの形成においても一翼を担い、自己表現の幅を広げた。国家開発計画で「ファッション、ビューティ、繊維、そのほかの消費財の多くでハイエンドのローカルブランド育成に力を入れていく」ことが提案されていることも大きいだろう。

WWD:サステナビリティに配慮したスーツとは?

ボーミンCEO:“カーボンフットプリント・スーツ”と題し、カーボンフットプリント(CO2e・温室効果ガス)の計測に着手した。製品についているQRコードをスキャンすることで、素材の調達から店頭に並ぶまでの排出量が一目でわかるものを、ジャケットとパンツ、コットン製のTシャツで展開。中国では初めての取り組みだ。19年には国内で初めて気候変動枠組条約(United Nations Framework Convention on Climate Change、UNFCCC)に参加し、21年に中国紡織工業連合会(China National Textile And Apparel Council、CNTAC)が提唱するカーボン・ニュートラルを促進するプログラムに加わった。責任ある購買や新しいライフスタイルの後押しになるような提案をし、持っているだけで良い気持ちになるような商品として愛されてほしい。

WWD:中国発のファッションの可能性は?

ボーミンCEO:これからの躍進に非常に自信がある。中国の国としての成熟は、中国のファッションやブランドがグローバルに世界の舞台で輝く可能性を提供する。純粋な「メイド・イン・チャイナ」からより高性能に生産して「スマート・メイド・イン・チャイナ」に、さらにクリエイティブなモノづくり、「クリエイティッド・イン・チャイナ」と成長していくと期待する。中国のように規模の大きい市場においてローカルブランドは、生活者や国の文化をよく理解しているので、迅速かつ的確にビジネスを展開できるという利点がある。文化の盗用のリスクも少なめ。その分ブランドの未来を見据え、長期的な成長戦略とともにサステナブルな製品を作っていくなど、進化を絶え間なく続けている。ますます多様化するライフスタイルと生活者の質の高いニーズに適応する力で、世界的に認知されていくだろう。

WWD:これからの目標は?

ボーミンCEO:現在の「K-ボクシング」を支えているコアな生活者は中国が中心で、今後もそこはブレない。2020〜22年にわたって、ミラノ・ファッション・ウイークでこれまで3回ショーを発表し、アジアの美学とイタリアのエレガンスが融合したコレクションを届けた。インターナショナルなプラットフォームでの露出はこれからも増やしていくつもりだ。今後も社会的に良いインパクトを残しているかを確認しながら、良い未来に向かって生活者と一緒に歩んでいきたい。


The post 中国で増すローカルブランドの存在感 「メイド・イン・チャイナ」を誇りに掲げる新鋭デザイナー【ネクストリーダー2022】 appeared first on WWDJAPAN.

元AKBこじはるが目指す明るくビジョナリーなリーダー像 商品の先のストーリーを作る【ネクストリーダー2022】

 元AKB48の小嶋陽菜がファッションやビューティのブランド「ハーリップトゥ(HER LIP TO)」を手掛けていると聞くと、名前だけで、実質はメーカーにお任せというイメージを抱く人も多いだろう。しかし本人に会って話を聞くと、約40人のチームを導き、“ガチ”で会社にコミットしていることに驚く。アイドル経験者だからこそ描けるブランド運営のビジョンとは。

WWD:所属する芸能事務所でECを主販路とするブランドを開始したのが2018年。20年1月からは、新会社heart relationでブランドを運営している。

小嶋陽菜「ハーリップトゥ」ディレクター(以下、小嶋):最初は芸能事務所の中で3〜4人で運営していたが、徐々にお客さまが増えて発注数が多くなり、組織を作って人を増やす必要が出てきた。アパレルの専門知識が何もないままスタートしたので、事業を進める中で生産管理やMD担当者などの仲間を集めてきた。(自分の名前を他社に貸して、あとはお任せという運営方法もあるだろうが)自分の思いがメンバーに伝わり、それがモノ作りに表れ、お客さまにも伝わっていく。全てはつながっているので、仕事の中のどこかだけを切り離すようなことはできない。自分でしっかり見たいという思いが私は強い。同時に、組織としてさらに多くのことをしていくためには、社内で権限移譲を進めていくことも自分の課題だと思っている。

WWD:今は芸能活動とブランド運営とに、それぞれどれくらい時間を割いているのか。

小嶋:ファッション誌の連載などには引き続き出させていただいているが、今はテレビ番組にはほぼ出ていない。毎日オフィスで会議とモノ作りをしており、芸能関係の仕事が入れられない。会議は組織としての定例会議や、毎週2日間、1時間刻みで行っている取引先メーカーとの商談、経営会議などがぎっしりある。発信する全てのコンテンツのチェックやフィードバックも行っているし、採用面接も最終はもちろん、その前の段階から人事担当者の横で聞いていることがある。

WWD:社員数は20人。業務委託やアルバイトも含むと約40人という小さくはない組織だ。

小嶋:昨年は採用を強化し、いかにいいチームを作るかに注力してきた。人が増えたこともあって、21年の会社としての売上高は前年の2倍になった。IT系スタートアップやアパレル、エンタメなど、さまざまな分野出身の社員が混ざっているが、仕事のやり方や考え方がそれぞれ全く異なるので、社内のコミュニケーションに難しさを感じることもある。それぞれの良さをうまく共存させて、この会社らしい、ほかのアパレル企業にはできないオリジナルな価値を作りたいと思っている。新卒入社の社員も含め、いろんな背景を持つ人がこの会社に集まってきてくれたのはすごいこと。できるだけみんなにいい経験をしてもらいたいし、他の会社にいたらできないような面白い体験をしてもらうために自分は頑張りたい。

自分の役割は「インパクトを作り出すこと」

WWD:チームを引っ張る存在として、大切にしていることは何か。

小嶋:シンプルに、いつも明るくいようと思っている。どんなことも人対人だからこそ、みんなが楽しめる空間を作りたい。実際は仕事の細かい部分にまで関わっているので、現実的になり過ぎて物事を小さく考えてしまうこともあるし、毎日そんなに能天気ではいられない。でも、人にはできないインパクトを作るのが自分の役割であり、そのためにはいつもできるだけビジョナリーで、明るく、かわいい子でいたい。自分は比較的現実的なタイプで、本当はもっと“ぶっ飛んだ人”になりたいと思っている。普通の人が思いつかないことを次々と思い描いたり、出せないカードを出したりできる人が私の思い描くリーダーだ。その理想に少しでも近づきたい。それと同時に感じるのは、すばらしいリーダーになるためには時間がかかるということ。たとえ採用を強化して組織作りを頑張っていようが、今この瞬間にはそれはお客さまには関係ない。それよりも、毎日華やかな姿でユーチューブやSNSで発信することの方が短期的には求められている。そこのバランスをどう取っていくかには葛藤もある。

WWD:経営に携わる上で、参考にしている人や本などはあるか。

小嶋:「これを読んだ方がいいよ」と、いろんな人からビジネス本などのリンクはたくさん届くが、まだ1冊も読んでいない(笑)。ツイッターなどで流れてくる、知り合いではない一般の経営者の方が書いている「note」などはよく読んでいる。会社を運営していく上で人がつまずく壁は恐らく一緒なんだと思う。「組織が何人のときにこんな問題が起きる」といった事例にはすごく共感するし、そこに書いてあることは参考にして実践もしている。今はツイッター上に大体の情報があると思う。

WWD:ブランド立ち上げからの4年間で、一番手応えを感じていることは何か。

小嶋:お客さまが「ハーリップトゥ」の服を着てSNSで発信してくださっている姿や、ポップアップショップなどでお客さま同士が交流しているところを見ると、やってきてよかったなと感じる。SNSの投稿を見ていると、自分のことが分からない、自分に自信がないという子が少なくないように感じる。うちの服を着たことで「彼氏にほめられた」「自分に自信が持てた」といったコメントをいただくケースも多く、単に服を届けているのではなく、その先のストーリーを作れているんだなと実感する。「ハーリップトゥ」が前向きに変わるきっかけとなれていることに、一番やりがいを覚えている。

アイドル出身だからこその視点を共有

WWD:ファッションだけでなく、昨年はビューティ分野にも進出した。

小嶋:ビューティはもともと大好きで、4年前のブランド立ち上げ当初から構想はあった。ファッションについても同様だが、いつまでに何をどれだけ販売し、いくら売り上げるといった事業計画を精緻に決め込んでいる会社ではない。いろんな化粧品を使ってきた私自身が「これはいい」と感じるものが完成して、みんなにシェアできると思うまでは販売しない。最初に発売したビューティ商品はUV美容液だ。年齢を重ねて、スキンケアの中でもUV対策が一番大切だと感じるようになって開発に取り掛かった。ほかのスキンケアアイテムにも着手しているが、こだわるあまり「気づいたら1年がたっていた」ということも多く、発売はまだまだ先になりそうだ。ファッションもビューティも絶対に妥協はしたくない。どちらも本気で取り組んでいるが、最近それが本当に大変なことだとつくづく実感している。だからこそ、もっと会社の規模を大きくし、メンバーを増やしていく必要がある。

WWD:AKB48での経験は、今の仕事にどう生かされているか。

小嶋:AKB時代は何ものにも代えられない、非常に貴重な経験だった。体力もメンタルも鍛えられたし、同世代とは見てきた景色が全く違う。人からかけてもらってきた言葉やその数も違う。自分はすごくラッキーだったと思う。小さい劇場でライブをしていた時代から、ファンの方に向けて、こういうことを発信すればこう返ってくるというのをずっと繰り返してきた。こう思っている人にはこう伝えた方がいい、こういう写真を投稿すればこういう反応がもらえるといったことは、マーケティング的に生かされている。今、少しずつ自分がこれまで見てきたものや仕事の中で感じていることを社内で伝えたり、共有ツールにまとめたりするようにしている。普通のファッションやビューティのブランドとは考え方が違う部分も多いだろうし、アイドル出身だからこその私の視点の中には、理解できないものもあるだろうから。そうやって、少しずつ権限委譲を進めていければと思っている。

WWD:ブランドや会社として、今後どんなあり方を目指すのか。

小嶋:お客さまに楽しんでいただくためのリアルな場所を作りたいと思っている。昨年12月に、2週間の期間限定で代官山にカフェをオープンしたら、平日も含めて予約枠がすぐにいっぱいになった。これまでは「ハーリップトゥ」のワンピースを着て旅行に出掛け、その画像をSNSに投稿してくださるお客さまが多かったが、コロナ禍で今はアフタヌーンティーに行くというお客さまが増えている。そういう場を自分たちで作りたいと思って企画したものだ。カフェ出店をへて、リアルな交流の場を作りたいという思いはより強くなった。他にも、ビューティは納得できるものが開発できたら発売したいし、将来的にはブランドとして海外展開もしたい。この会社の中で、(自身以外が手掛ける)新しいブランドを立ち上げることも思い描いている。ただ、そうなるまでにはまだまだすべきことがあるし、人も足りない。足元のことを少しずつ積み重ねていった先に、未来が開けるかなと思っている。


The post 元AKBこじはるが目指す明るくビジョナリーなリーダー像 商品の先のストーリーを作る【ネクストリーダー2022】 appeared first on WWDJAPAN.

世界の「水問題」の解決へ 循環システムの伝道者【ネクストリーダー2022】

 東大発ベンチャー・WOTAは、「持ち運べる浄水場」とうたった循環型浄水システムで注目を浴びている。少量の水を浄化処理して何度も再利用できるこのシステムが普及すれば、世界の水問題は大きく前進する。同社を率いる前田瑶介氏はサステナブルの時代を代表する若きリーダーだ。

WWDJAPAN(以下、WWD):商業施設などでドラム缶型の手洗いスタンド「WOSH」を見かける機会が増えた。

前田瑶介CEO(以下、前田):水道設備は不要で、手洗いの排水をドラム缶の中で98%以上浄化して、繰り返し循環させる。WOSHの設備を採用することで、衛生面だけでなく、環境への企業姿勢を示したいという機運もあるようだ。

WWD:WOSHは19年11月に発表した「WOTA BOX」の技術を利用した。

前田:きっかけは18年7月の西日本豪雨。まだ試作段階だったが、岡山県の2カ所の避難所にシャワー設備として持っていった。水道の復旧が遅れ、真夏なのに入浴できない日が何日も続いていた。久しぶりのシャワーに喜ぶ人たちの声を聞き、水が持つ圧倒的な価値を感じた。同時に力不足も思い知らされた。きれいな水が必要な避難所はたくさんあるのに、技術者と設備の問題で限られた貢献しかできなかった。本来はトイレ排水などの生物処理も完成させた上で世に出すつもりだった。でもいま困っている人がいるなら、現時点で最善のことをしたいと考え、翌年の製品化に向けて動いた。

WWD:自然災害が多発する日本でニーズは多い。

前田:(製品化直前の)19年10月の台風19号では長野県が多大な被害を受けた。この時、内閣府の要請を受けて、WOTA BOXを14カ所に設置した。この様子が報じられて、製品が広く知られるきっかけになった。でも、いくら優れた設備でも災害が起きてから出来ることは限られる。平時の備えの重要性も痛感している。

WWD:水問題に関心を持ったのは?

前田:阪神淡路大震災(1995年)で被災した。たまたま泊まりに行っていた神戸の親戚の家で、3歳だったけど長らく水を使えない記憶が強烈だった。上下水道が止まると、避難所では入浴もできない不衛生な環境でたくさんの人が密集し、さらにトイレのがまんを強いられる。赤ちゃんやお年寄り、体に不自由を抱えた人など弱い人を直撃してしまう。

WWD:原体験と水問題が重なると。

前田:でも、それだけはない。私の一番大きなテーマは、自然の中でどうしたら人が持続可能で生きていけるか。徳島県の山深い地域で生まれ育った。四国なのに雪も積もり、時には交通も遮断される。でも地元の人たちは干し芋など昔ながらの保存食を常備したり、薪で暖をとったり、川から水をひいたり、臨機応変に暮らしてきた。逆に高度なインフラが整った都市部のほど自然の変化に脆弱だったりする。テクノロジーによる問題解決は一つの手段に過ぎない。世界の水問題の本質は、そこに暮らす人たち自律的に解決できるようになることだと思う。WOTAがその一助になればいい。


The post 世界の「水問題」の解決へ 循環システムの伝道者【ネクストリーダー2022】 appeared first on WWDJAPAN.

「応援消費」が彩る世界を目指し、“人”と向き合う女性リーダー【ネクストリーダー2022】

 クラウドファンディングサイト「マクアケ(MAKUAKE)」は2021年9月期、重要経営指標である「応援購入総額」(クラウドファウンディングで集まった資金の総額)が前期比46.9%増の215億円に達した。2013年の創業から順調な成長を続けるマクアケの共同創業者の一人で、30代の若さで同社をけん引するのが坊垣佳奈取締役だ。彼女が追い求めるリーダー像と、その眼差しの先にある「プロジェクトへの『共感』を通じた、新しい消費文化」について聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):「応援消費」の意義とは。

坊垣佳奈マクアケ取締役:クラウドファンディングは東日本大震災を契機に“寄付”として広まったが、この認識を一歩進めるためにそう呼ぶことにした。ゆくゆくはモノやサービスへの「共感」を軸に、消費のあり方そのものを変えたいと考えている。企業は今、これまでの利益追求型の経営から、環境や人権問題と向き合い、持続可能な経営に舵を切ろうとしている。企業淘汰も進むだろうが、われわれは「応援消費」の普及を通じて「生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る」(同社の理念)世界を作る。「マクアケ」では、プロジェクトに共感する人やお金が先に集まり、無駄のない数だけモノを作って届ける。懐が潤沢な大企業がプロモーションを打ち、(販売店の)棚を確保し、大量の商品を売りさばく商いとは違う。ここでは大資本も中小企業も、個人も対等。主役は消費者であり、作り手のこだわりや背景に納得してモノを選ぶ世界。これを新しい消費の形として普及させたい。

WWD:2020年からビームスと提携している。

坊垣:新商品のテストマーケティングや未来人材の発掘にご活用いただいている。歴史と規模のある企業ほど、過去の成功体験や既成概念から離れ、新しい価値を生み出すことが難しくなる。そういった状況を打破する上で、「マクアケ」は一つの武器になる。ただ、(ビームスとの)協業の目的はここに止まらない。ファッション業界の最重要課題は廃棄だ。例えば、「この商品はピンクが欲しい人が500人いる」ということが事前に分かれば、その数だけ作れば余剰在庫が出ない。このようなスキームが業界の主流になるのはまだ先の話。だが、ビームスさんとはそんなことまで見据えた上で手を取り合った。

WWD:坊垣さんは女性リーダーとしても注目されている。

坊垣:経営者を目指す女性がいれば、彼女たちを勇気づける存在でいたい。ただ、「リーダーには女性を」「いや、男性だ」という極端な議論はしたくない。組織のさまざまな意思決定の場において、男女がバランスよく存在することが重要だ。私見だが、男女で仕事における資質や適性は違う。男性はクリエイティブに物事をイメージすることが得意。男同士の居酒屋での会話を想像してもらえれば(笑)。一方、女性は現実をしっかり認識し、目標を着実に実現に結びつける力がある。それに対する責任感も強い。だから、「ここは思い切って女性に任せる」というような、うまく性差を「活用する」考え方を実践したい。

 年齢に関してもそうだ。若い人だけで構成する組織より、ベテランの視点がある方がよりフラットで適切な判断ができる。年次が上がってマネジメントする範囲が広がれば、現場感覚は失われていく。だったら現場のことをよく知っている若手に頼るべきだ。役職や年次に関係なく、フラットに声を聞ける環境を作っている。ただこれらはあくまで「傾向」の話で、一番大事なのは社員一人一人の「個」に目を向け、長所や意思を尊重すること。社員1人につき、月に最低1回は対話の場を持つことを徹底している。

WWD:自身をどんなリーダーだと分析するか。

坊垣:周りからは「お母さんみたい」、と。人をよく観察している自覚はあって、毎日会っている社員の微妙な変化に気付くことが多い。「なんか元気がないな」と思うと、プライベートに悩みを抱えていたりとか。人間は「仕事だから」「プライベートだから」と簡単には割り切れない。結婚した今は、以前のように部下の恋愛話をすることも少なくなったけれど(笑)、仕事のことだけでなく、「人」として相談に乗れるリーダーでいたい。あとは、「たまに抜けてるね」とも(笑)。これは隠そうとも、さらけ出そうとも思わない。常に自然体でいたい。

WWD:創業期と今とでは、リーダーとして求められることは変わったか。

坊垣:これまでは自社のことだけに集中してきたが、社外の若手経営者の会議などに出席する機会も増え、社会において自社が果たすべき役割や存在意義を考えるようになった。専門外の知識もどんどんインプットしている。毎日同じことは一つもないし、学ぶばかりの日々だ。

 折れずいられるのは、20代の頃にがむしゃらに頑張った経験が基盤になっているからだと思う。新卒で入社したサイバーエージェントでは、ゲーム事業の子会社の立ち上げに参画し、まさに死に物狂いだった。ウェブサービスやエンジニアリングの知識がろくにないのに、外注先へシステムの仕様書を書くこともあった。金曜を回って土曜の夜まで働き、トイレで寝たこともある。世の中の新卒で一番忙しかったんじゃないか、と思っている。

 このときに、誰かの教えを待ち、指示されて動くのではなく、問題に対して自分なりの仮説立てて立ち向かうことを学んだ。そして「何とかなる」の精神を持ち続けると、結果がついてくることも。今は、「社会において何を成し遂げたいのか」という経営者の意志がますます重要な世の中。それはサービスや商品を通じて世の中に伝わっていくものだし、意志があるから仲間を巻き込める。私も「マクアケ」のサービスを通じて本気で世の中をよくしたいと思っているから、これからも自信を持って突き進んでいく。


The post 「応援消費」が彩る世界を目指し、“人”と向き合う女性リーダー【ネクストリーダー2022】 appeared first on WWDJAPAN.

G-DRAGONやソミのプロデュースの貢献者から見るアジア発のファッションの可能性【ネクストリーダー2022】

 大手芸能事務所、YGエンターテインメントの傘下企業ザ・ブラックレーベル(The Black Label)でアーティストのディレクションなどを行うチェ・スンホ(Choi Soonho)ビジネス・デベロップメント・シニア・ディレクタは、過去10年にわたってK-POPビジネス展開戦略などを担ってきた。これまで手掛けたアーティストは、元I.O.Iメンバーでソロデビューしたソミ(Somi)など。アイドルグループ、ビッグバン(BIGBANG)を率いるG-DRAGON(ジードラゴン)のブランド「ピースマイナスワン(PEACEMINUSONE)」の運営にも関わった。K-POPカルチャーと深い結びつきを持つ同氏が語るファッションとカルチャーの関係性とは?

WWDJAPAN(以下、WWD):ザ・ブラックレーベルでのプロデュース業で感じた、カルチャーとファッションとのつながりは?

チェ・スンホ=ビジネス・デベロップメント・シニア・ディレクター(以下、スンホ):エンターテインメント業界とファッションはすごく深い関わりを持っている。ファッションは自己表現やクリエイティビティーを発揮する一番の方法であり、その人物が持つカルチャーや人間性を表すものだ。韓国は今すごいスピードで発展しており、アートの分野も広く関心を集めている。ダイナミックな国でいろいろなことを学びながら成熟していくにつれて、文化的にも一緒に発展してきた。K-POPを中心に、ファッションもアジア圏で一緒に盛り上がっていることをうれしく思う。

WWD:G-DRAGONのプロデュースにも関わっており、彼のブランド「ピースマイナスワン」を立ち上げにも貢献している。その背景・経緯は?

スンホ:きっかけはG-DRAGONと彼の知人ら。彼らの発案をもとにスタートした。G-DRAGONはミュージックビデオやコンサートなど、自身のパフォーマンスのために、長年にわたってファッションからアクセサリー、バッグ、家具までのデザインを手掛けてきた人物。アイテムを自分流にアレンジしたり、イメージに沿うものがない場合は手作りで作成してきたりした。PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)には共通のネットワークでつながるグループがあり、みんな知人らによって構成されている。G-DRAGONが着たいと思うようなもので溢れる世界観を表現している。

WWD:プロデューサーになる前から自身はファッションに関心があった?

スンホ:ファッションは日常の中でみんなが使用する自己表現の形だ。人と会ったとき、最初に見るのは相手のファッション。感情を伝達して、個性を表現する方法として興味があった。着ている人のルックスや特徴を際立たせ、気分をあげるものだ。情報を介してつながりやすくなった今、ファッションはよりアクセスしやすくなっている。トレンドは行ったり来たりするが、今関心を持つ一番の分野。カルチャーを形成する上で欠かせない存在だ。

WWD:日本発のカルチャーとの関わりは?

スンホ:日本は世界的にも、カルチャーの重要な“ハブ”だ。日本が持つクリエイティビティーやパッションに刺激を受けてきた。素晴らしいメンバーが多すぎてとても選べないが、川久保玲や高橋盾、NIGO®、藤原ヒロシ、山本耀司といったデザイナーやアーティストとはコラボもしてみたい。

WWD:「ピースマイナスワン」では、グローバル・ビジネス・デベロップメント・マネジャーとしてブランドの世界的認知拡大に従事した。今後アジア発のファッションは、どう発展していける?

スンホ:アジア発のブランドは、長年にわたってユニークで特別な視点からクリエイションを手掛けてきた。アジアは全体的に大きく成長していて、文化も共有しながら刺激を与えあっていると思う。韓国やアジアのファッションの存在感は、年々増すばかりだ。世界に広めていくために、少しでも貢献できたら。カルチャーの成長をより大きく、ポジティブな方向にけん引したい。


The post G-DRAGONやソミのプロデュースの貢献者から見るアジア発のファッションの可能性【ネクストリーダー2022】 appeared first on WWDJAPAN.

G-DRAGONやソミのプロデュースの貢献者から見るアジア発のファッションの可能性【ネクストリーダー2022】

 大手芸能事務所、YGエンターテインメントの傘下企業ザ・ブラックレーベル(The Black Label)でアーティストのディレクションなどを行うチェ・スンホ(Choi Soonho)ビジネス・デベロップメント・シニア・ディレクタは、過去10年にわたってK-POPビジネス展開戦略などを担ってきた。これまで手掛けたアーティストは、元I.O.Iメンバーでソロデビューしたソミ(Somi)など。アイドルグループ、ビッグバン(BIGBANG)を率いるG-DRAGON(ジードラゴン)のブランド「ピースマイナスワン(PEACEMINUSONE)」の運営にも関わった。K-POPカルチャーと深い結びつきを持つ同氏が語るファッションとカルチャーの関係性とは?

WWDJAPAN(以下、WWD):ザ・ブラックレーベルでのプロデュース業で感じた、カルチャーとファッションとのつながりは?

チェ・スンホ=ビジネス・デベロップメント・シニア・ディレクター(以下、スンホ):エンターテインメント業界とファッションはすごく深い関わりを持っている。ファッションは自己表現やクリエイティビティーを発揮する一番の方法であり、その人物が持つカルチャーや人間性を表すものだ。韓国は今すごいスピードで発展しており、アートの分野も広く関心を集めている。ダイナミックな国でいろいろなことを学びながら成熟していくにつれて、文化的にも一緒に発展してきた。K-POPを中心に、ファッションもアジア圏で一緒に盛り上がっていることをうれしく思う。

WWD:G-DRAGONのプロデュースにも関わっており、彼のブランド「ピースマイナスワン」を立ち上げにも貢献している。その背景・経緯は?

スンホ:きっかけはG-DRAGONと彼の知人ら。彼らの発案をもとにスタートした。G-DRAGONはミュージックビデオやコンサートなど、自身のパフォーマンスのために、長年にわたってファッションからアクセサリー、バッグ、家具までのデザインを手掛けてきた人物。アイテムを自分流にアレンジしたり、イメージに沿うものがない場合は手作りで作成してきたりした。PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)には共通のネットワークでつながるグループがあり、みんな知人らによって構成されている。G-DRAGONが着たいと思うようなもので溢れる世界観を表現している。

WWD:プロデューサーになる前から自身はファッションに関心があった?

スンホ:ファッションは日常の中でみんなが使用する自己表現の形だ。人と会ったとき、最初に見るのは相手のファッション。感情を伝達して、個性を表現する方法として興味があった。着ている人のルックスや特徴を際立たせ、気分をあげるものだ。情報を介してつながりやすくなった今、ファッションはよりアクセスしやすくなっている。トレンドは行ったり来たりするが、今関心を持つ一番の分野。カルチャーを形成する上で欠かせない存在だ。

WWD:日本発のカルチャーとの関わりは?

スンホ:日本は世界的にも、カルチャーの重要な“ハブ”だ。日本が持つクリエイティビティーやパッションに刺激を受けてきた。素晴らしいメンバーが多すぎてとても選べないが、川久保玲や高橋盾、NIGO®、藤原ヒロシ、山本耀司といったデザイナーやアーティストとはコラボもしてみたい。

WWD:「ピースマイナスワン」では、グローバル・ビジネス・デベロップメント・マネジャーとしてブランドの世界的認知拡大に従事した。今後アジア発のファッションは、どう発展していける?

スンホ:アジア発のブランドは、長年にわたってユニークで特別な視点からクリエイションを手掛けてきた。アジアは全体的に大きく成長していて、文化も共有しながら刺激を与えあっていると思う。韓国やアジアのファッションの存在感は、年々増すばかりだ。世界に広めていくために、少しでも貢献できたら。カルチャーの成長をより大きく、ポジティブな方向にけん引したい。


The post G-DRAGONやソミのプロデュースの貢献者から見るアジア発のファッションの可能性【ネクストリーダー2022】 appeared first on WWDJAPAN.

SNSを活用し女性のエンパワーメント向上にまい進するBLASTの石井CEO【ネクストリーダー2022】

 エンパワーメントメディア「ブラスト」は女性のライフスタイルをエンパワーすることを目的に2018年にスタートした。石井リナBLAST CEOは世界の中で男女格差の度合いを示す「ジェンダーギャップ指数」が下位である日本の現状を打破するため、女性が連帯し社会に変化をもたらすべく、SNSを活用し理解しやすい言葉や製品を発信し続けている。

WWDJAPAN(以下、WWD):2018年にBLASTを立ち上げたきっかけは。

石井リナBLAST CEO(以下、石井):IT系の広告代理店で3年働き、スタートアップ企業に転職した後フリーランスとしても働いていた。いずれもSNSのマーケティングに携わっていたため、海外のインフルエンサーをリサーチする機会が多かった。16〜17年は米国でダイバーシティやフェミニズムがキーワードとして挙がったが、日本での注目度は低く、欧米との差を強く感じた。男女格差の度合いを示す「ジェンダーギャップ指数」では世界144カ国の中で日本が下位に位置し、男女の間にもギャップがあると知り衝撃を受けた。本来はどんな性別の人も社会、政治、経済的に平等であるべきなのに、私自身もフェミニズムを知るまでは政治家も男性が中心であることが自然に思っていた。それは自然ではないことに気づき、課題意識が芽生えた。欧米にはフェミニズムを伝えるメディアやコミュニティーがあったため、日本でも立ち上げるべきだと感じ「ブラスト」をスタートした。

WWD:BLASTでプロダクト、メディア、コミュニティーと3つの事業を軸に展開する。

石井:欧米の動きをみると気づきや連帯することで社会を変えてきた例が多かった。例えばアイスランドは仕事の有無や年代を問わず女性の9割が1日ストライキを起こし、社会的地位向上や賃金格差を訴えた。その数年後に女性の首相が誕生した。こうした事例のようにメディアを通じて気づきを与え、連帯することで女性のライフスタイルをエンパワーしていく。プロダクトは女性のエンパワーを物理的にサポートし、エンパワーする意味で始めた。女性の9割は生理の悩みを抱えていることを知り、吸水ショーツブランド「ナギ」を手掛けた。コミュニティーは近い将来動き出す予定だ。

WWD:プロダクトの中で吸水ショーツに焦点を当てたきっかけは。

石井:女性がポジティブに選択できないものを、プロダクトを通じて解決したかった。生理に悩みを持つ女性は多く、年齢やライフスタイルによっても悩みが異なり、同じ女性でも想像しえなかった悩みがあることも知った。アンケートをとると7〜8割くらいの人が紙ナプキンを使用していて、環境面を考えた上でも海外で普及しはじめていた吸水ショーツを手がけようと20年5月に「ナギ」を立ち上げた。モノ作りに携わるのは初めてで全ての工程が大変だったが、自分が納得できる製品が完成するまで何度も試作品を作った。こだわったクロッチ部分は防水や防臭、吸収、速乾の機能を持つ生地の5層構造(スタンダードタイプで60mLの吸水性能を持つ)で、世界でも勝負できるクオリティーの高い製品が完成した。

WWD:「ナギ」では学割や選挙割など注目を集める取り組みも行っている。

石井:ジェンダーギャップから生まれたBLASTとしては、社会とつながる企画を推進する。生理の貧困が話題になったタイミングで、アクションを起こす必要性を感じ22才以下には500円を割り引くことにした。そのほか、1枚の生理用ナプキンの素材が分解されるまで800年程度かかるといわれていることから、グリーンアクションを21年6月に実施。期間中は「ナギ」の商品の購入を環境団体への寄付につなげた。21年10月には衆議院議員選挙の投票証明書の送付で割引する選挙割も実施。各政党の主張を分かりやすく表にしてSNSで訴求したが、これはアクションを起こし、周りとの会話につなげられる機会の創出を図ったものだった。著名な政治家からリツイートされるなど、想像を超える反響を得られた。

WWD:現在事業を進める中での課題と、それに向けて取り組むことは。

石井:BLASTはスタートアップの経済圏にいるので成長させること大前提。事業を始めるにあたりベンチャーキャピタル(VC)から資金調達をしたが、そこでもジェンダーギャップを感じた。VCの多くは男性なので当社の取り組みを説明し、共感を得られるまで多くの時間を要したが、現在の出資者は深い理解を示してくれている。女性が資金調達で事業を始めるハードルは高いが、その成功事例として成長を遂げていく。またBLASTはサステナブルであることも必須。大風呂敷を広げることなく、まずはソーシャルキャペーンなどを堅実に行い、口コミで拡散を図る。「ナギ」は現在吸水ショーツのみを扱うが、早い時点でグローバル展開をしたい。さらに女性のライフスタイルに寄り添った商品展開も視野に入れている。

WWD:今後取り組むコミュニティーに関しては。

石井:実際形は変わるかもしれないが、女性の体の悩み別につながれるコミュニティーがあってもいい。妊活用のショーツ“ナギ サイン(NAGI SIGN)”を手掛ける際に、妊活中の女性は生理がくることや、ナプキンを用意すること自体も多くのストレスに感じていることを当事者に聞いて理解した。そこでクロッチ部分をグレーにすることで周期の始まりや体の不調にいち早く気づけるようにした。こうした思いを共感できる場の創出ができたら。また、賢い消費者作りにも貢献したい。商品を販売する企業のミッションや事業内容、経営層の男女比率などを理解することができれば、自分の志向に合わない商品は購入しないという選択ができるが、知らないと指摘することも選ぶこともできない。社会や経済の構造に目を向けるきっかけを作りたい。


The post SNSを活用し女性のエンパワーメント向上にまい進するBLASTの石井CEO【ネクストリーダー2022】 appeared first on WWDJAPAN.

SNSを活用し女性のエンパワーメント向上にまい進するBLASTの石井CEO【ネクストリーダー2022】

 エンパワーメントメディア「ブラスト」は女性のライフスタイルをエンパワーすることを目的に2018年にスタートした。石井リナBLAST CEOは世界の中で男女格差の度合いを示す「ジェンダーギャップ指数」が下位である日本の現状を打破するため、女性が連帯し社会に変化をもたらすべく、SNSを活用し理解しやすい言葉や製品を発信し続けている。

WWDJAPAN(以下、WWD):2018年にBLASTを立ち上げたきっかけは。

石井リナBLAST CEO(以下、石井):IT系の広告代理店で3年働き、スタートアップ企業に転職した後フリーランスとしても働いていた。いずれもSNSのマーケティングに携わっていたため、海外のインフルエンサーをリサーチする機会が多かった。16〜17年は米国でダイバーシティやフェミニズムがキーワードとして挙がったが、日本での注目度は低く、欧米との差を強く感じた。男女格差の度合いを示す「ジェンダーギャップ指数」では世界144カ国の中で日本が下位に位置し、男女の間にもギャップがあると知り衝撃を受けた。本来はどんな性別の人も社会、政治、経済的に平等であるべきなのに、私自身もフェミニズムを知るまでは政治家も男性が中心であることが自然に思っていた。それは自然ではないことに気づき、課題意識が芽生えた。欧米にはフェミニズムを伝えるメディアやコミュニティーがあったため、日本でも立ち上げるべきだと感じ「ブラスト」をスタートした。

WWD:BLASTでプロダクト、メディア、コミュニティーと3つの事業を軸に展開する。

石井:欧米の動きをみると気づきや連帯することで社会を変えてきた例が多かった。例えばアイスランドは仕事の有無や年代を問わず女性の9割が1日ストライキを起こし、社会的地位向上や賃金格差を訴えた。その数年後に女性の首相が誕生した。こうした事例のようにメディアを通じて気づきを与え、連帯することで女性のライフスタイルをエンパワーしていく。プロダクトは女性のエンパワーを物理的にサポートし、エンパワーする意味で始めた。女性の9割は生理の悩みを抱えていることを知り、吸水ショーツブランド「ナギ」を手掛けた。コミュニティーは近い将来動き出す予定だ。

WWD:プロダクトの中で吸水ショーツに焦点を当てたきっかけは。

石井:女性がポジティブに選択できないものを、プロダクトを通じて解決したかった。生理に悩みを持つ女性は多く、年齢やライフスタイルによっても悩みが異なり、同じ女性でも想像しえなかった悩みがあることも知った。アンケートをとると7〜8割くらいの人が紙ナプキンを使用していて、環境面を考えた上でも海外で普及しはじめていた吸水ショーツを手がけようと20年5月に「ナギ」を立ち上げた。モノ作りに携わるのは初めてで全ての工程が大変だったが、自分が納得できる製品が完成するまで何度も試作品を作った。こだわったクロッチ部分は防水や防臭、吸収、速乾の機能を持つ生地の5層構造(スタンダードタイプで60mLの吸水性能を持つ)で、世界でも勝負できるクオリティーの高い製品が完成した。

WWD:「ナギ」では学割や選挙割など注目を集める取り組みも行っている。

石井:ジェンダーギャップから生まれたBLASTとしては、社会とつながる企画を推進する。生理の貧困が話題になったタイミングで、アクションを起こす必要性を感じ22才以下には500円を割り引くことにした。そのほか、1枚の生理用ナプキンの素材が分解されるまで800年程度かかるといわれていることから、グリーンアクションを21年6月に実施。期間中は「ナギ」の商品の購入を環境団体への寄付につなげた。21年10月には衆議院議員選挙の投票証明書の送付で割引する選挙割も実施。各政党の主張を分かりやすく表にしてSNSで訴求したが、これはアクションを起こし、周りとの会話につなげられる機会の創出を図ったものだった。著名な政治家からリツイートされるなど、想像を超える反響を得られた。

WWD:現在事業を進める中での課題と、それに向けて取り組むことは。

石井:BLASTはスタートアップの経済圏にいるので成長させること大前提。事業を始めるにあたりベンチャーキャピタル(VC)から資金調達をしたが、そこでもジェンダーギャップを感じた。VCの多くは男性なので当社の取り組みを説明し、共感を得られるまで多くの時間を要したが、現在の出資者は深い理解を示してくれている。女性が資金調達で事業を始めるハードルは高いが、その成功事例として成長を遂げていく。またBLASTはサステナブルであることも必須。大風呂敷を広げることなく、まずはソーシャルキャペーンなどを堅実に行い、口コミで拡散を図る。「ナギ」は現在吸水ショーツのみを扱うが、早い時点でグローバル展開をしたい。さらに女性のライフスタイルに寄り添った商品展開も視野に入れている。

WWD:今後取り組むコミュニティーに関しては。

石井:実際形は変わるかもしれないが、女性の体の悩み別につながれるコミュニティーがあってもいい。妊活用のショーツ“ナギ サイン(NAGI SIGN)”を手掛ける際に、妊活中の女性は生理がくることや、ナプキンを用意すること自体も多くのストレスに感じていることを当事者に聞いて理解した。そこでクロッチ部分をグレーにすることで周期の始まりや体の不調にいち早く気づけるようにした。こうした思いを共感できる場の創出ができたら。また、賢い消費者作りにも貢献したい。商品を販売する企業のミッションや事業内容、経営層の男女比率などを理解することができれば、自分の志向に合わない商品は購入しないという選択ができるが、知らないと指摘することも選ぶこともできない。社会や経済の構造に目を向けるきっかけを作りたい。


The post SNSを活用し女性のエンパワーメント向上にまい進するBLASTの石井CEO【ネクストリーダー2022】 appeared first on WWDJAPAN.

中国出身、32歳の若きトップが米「ダイアン フォン ファステンバーグ」に新風を吹き込む【ネクストリーダー2022】

 31歳だったギャビー・ヒラタ氏が、ダイアン フォン ファステンバーグ(DIANE VON FURSTENBERG以下、DVF)の社長兼最高経営責任者(CEO)に抜擢されたのは、入社して一年たった2021年1月のこと。異例の若さでトップに就き、以降、女性のエンパワーメントを掲げてきたブランドをけん引する。未だファッション&ビューティ業界のトップを占めるのは男性が多く、欧米ではアジアにルーツを持つ女性のトップはさらに目にすることが少ない。その中で社員の多様な声に耳を傾けながら、ブランドの事業を見直し、女性に寄り添うことをモットーとするヒラタ社長の歩みを讃え、その実績とこれからの活躍に期待を込めて「WWD NEXT LEADERS 2022」に選んだ。

WWDJAPAN(以下、WWD):トップに就くまでの経緯は?

ギャビー・ヒラタDVF社長兼CEO(以下、ヒラタ社長):DVFには20年1月、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった当初にアジア太平洋地域担当として入社した。当時の中国・武漢での状況を知り、中国を支援するためにチャリティー企画を提案。ブランド創業者のダイアンとともにライブ配信を行い、現地の小学校への寄付につなげた。アメリカでもロックダウンが始まったときは、人員削減に伴い北京に工場や生産拠点を移すべきだと提案した。デザイン本部は約100人から30人に縮小してニューヨークに残し、生産チームを別に設けたことでコストパフォーマンスの向上や、品質の確保につながった。こういった取り組みがダイアンの目に留まったことがきっかけとなった。

WWD:現在のパフォーマンスは?

ヒラタ社長:経営目標は達成し、27〜30歳の新たな顧客層にもリーチを広げている。また(EC構築サービスの)「ショッピファイ(SHOPIFY)」を通じて、公式ウェブサイトをリローンチした。これによりグローバルにお客さまの傾向やプロファイルが分析可能となり、より具体的にデザインに落とし込めるようになってきた手応えがある。北京の生産チームの設立などを通して、中国市場での存在感を増したい。

WWD:トップに就任することを知ったときの気持ちは?

ヒラタ社長:最初は本当に怖かったし、私がなっていいものだと思えなかった。当時の日記を読み返してみると、不安がる言葉ばかりが並んでいる。だって私が思い浮かべることができるリーダーの姿は、白人の男性で、アメリカ出身の人で、私より年配で、経験をたくさん持っている人ばかり。想像もつかないことで、「私は31歳だし、第一言語も英語じゃないし、中国人だし、女性だし、本当に務まるのか……?」と、ダイアンにも不安な気持ちを話した。ダイアンは笑い飛ばして、「だからこそあなたがトップになることに意味がある」と背中を押してくれた。

WWD:そもそもリーダーになりたかった?

ヒラタ社長:中国では一人っ子の場合、女子より男子が好まれる傾向があり、子どもの頃にその現実を知ったときにすごく落ち込んだ。そこで幼い頃から「絶対見返してみせる」との決意を持っていた。でもアクティビストとして活動するのも中国では色々な制約があるし、教授になってジェンダー学を深めるにしても学術的場所に限定された活動になる気がして、17歳の時にビジネスのトップになることを目標に。トップについたら「変化を生めるし、人々の夢を実現できる。インスピレーションにもなれる」と。世の中は男性のリーダーが多数を占めるので、女性の“ボス”になってやる!という気持ちだった。

WWD:なぜファッションに?

ヒラタ社長:ファッションは、ビジネスとアートの真ん中に位置しているように思う。「アート」的に見た目だけを追求してしまって機能性を置き去りにするのはファッションとは言えないが、夢やワクワク、“マジック”を与えるのもファッションのはず。「ビジネス」と言い切るのも難しいだろう。複合的に社会に交わるファッションに共感した。

WWD:自分はどんなリーダーだと思う?

ヒラタ社長:「バランス力のある」リーダーかな……。直感的なところと戦略的な側面、共感性と厳しさ、KPIと働いている人の幸せ、などのバランスをとっていく人だと思う。アメリカと中国をまたいで活動してきたので、間を取っていくアプローチが得意。これまではトップの人は「強くあれ」と教え込まれてきたが、私は繊細だし、自分の弱い部分を見せることを怖いと思わない。仲間たちもそれを心地よいと感じていると思う。チームと話すとき、「トップとしてじゃなくて、人間として私と話をして!」「一回建前は置いておいて、“普通に”話そう?」と言ったりして、等身大でいるようにしている。そんな私を見て、「私にもできる!」「私もやりたい!」と思うみたい。チームとして成長しているのを肌で感じている。リーダーとして自分のゴールを追うだけでなく、チームのみんなも幸せであることは私にとってとても大事なこと。

WWD:自分の強みは?

ヒラタ社長:外国から来た私がアメリカやこの業界で成功するには、いかに「自覚的」になって自分の立ち位置を受け止めるかが大事だと思っている。自分の人種やバックグラウンドに自信を持てなかったこともあるけれど、ダイアンには「あなたの不安や自信のなさは、あなたの強みになる」と教えをもらった。今は子どもがいるけれど「仕事と育児を両立している」と美談にするつもりはなくて。マザーフッド(母であることや母性)を美化することもしたくない。子どもを持って育てることで「これで母親という当事者として発言できる」と自覚的だったし、「まずはある程度仕事で成功をしてから」と決めていた。このように淡々と子育てについて語ると、「愛情が足りていない」「母親失格」と判断されてしまうような風潮をたまに感じるが、自分のしたいことやゴール、できることに“アウェア”でいることは、物事を進めていく上ですごく大切だと思う。率直に対話ができることも私を形成する大きな部分だ。

WWD:生活者とはどうコミュニケーションをとっている?

ヒラタ社長:歴史の長い企業や、伝統のあるブランドは「お客さまに向けて」コミュニケーションを取ることに集中しすぎているような気がする。私はもっと「お客さまと」コミュニケーションをとっていきたい。配信もいっぱいしたいし、お客さまから寄せられたコメントに返信もしていきたい。一時期は、毎週欠かさず時間を作って、SNSのコメントを返したりもした。お客さまからは「DVFのトップが返信してる!」と驚かれたけれど、逆になんで普通はしないと思われているのか不思議な感覚だ。ブラントとしては、私たちは「一着のドレスに止まらず、着た人の自信や喜び、それらが生む“マジック”を提供している」との自負がある。理念に沿うメッセージを届けるために月に一回、生活者の中から多様な女性像にSNSでフォーカスする「DVF WOMEN」キャンペーンを打ち出してきた。発足当時からミッションは、ファッションの美しさに加えて実際に着る女性を優先すること。着ている女性の着心地や自信、魅力を感じることに重きを置いた洋服を作り、メッセージを届けている。

WWD:これからの戦略は?

ヒラタ社長:日本と韓国に再進出したいと考えている。2010年ごろの市場は大きかった、その後日本とのつながりが薄れてしまった。製品の質やデザインも大きくアップデートして、素晴らしいものをそろえていると胸を張っていえるし、日本と韓国市場にも愛される自信がある。中東やオーストラリアへの進出も考えている。あとは、キッズウエア、インテリアの分野の開拓。母親になって子ども服に着目するようになり、充実した家具製品への需要も感じている。どのように製品にしていくかはこれから詰めるが、地域に合わせた最適な戦略を掲げたい。

WWD:自身のゴールは?

ヒラタ社長:ブランドを通して、女性をエンパワーする取り組みを継続して実施・発信する。私にはライブ配信や中国市場とのつながりが転機になったから、それ以来、年に2回は配信を継続している。一度の配信やキャンペーンでは生活者の心は掴めないし、即席なアプローチは見抜かれてしまう。ダイアンは90年代、今以上にデザインの中心に男性が多かった頃、「女性にデザインがわかるわけないだろう」と周りから揶揄されていたという。そこからブランドを築いたダイアンに共感するし、自分も誰かのインスピレーションとなり続けたい。商品を販売するだけでなく、私含む女性たちのストーリーを積極的に広め、周りを巻き込んだ大きなムーブメントを起こしていきたい。


The post 中国出身、32歳の若きトップが米「ダイアン フォン ファステンバーグ」に新風を吹き込む【ネクストリーダー2022】 appeared first on WWDJAPAN.

中国出身、32歳の若きトップが米「ダイアン フォン ファステンバーグ」に新風を吹き込む【ネクストリーダー2022】

 31歳だったギャビー・ヒラタ氏が、ダイアン フォン ファステンバーグ(DIANE VON FURSTENBERG以下、DVF)の社長兼最高経営責任者(CEO)に抜擢されたのは、入社して一年たった2021年1月のこと。異例の若さでトップに就き、以降、女性のエンパワーメントを掲げてきたブランドをけん引する。未だファッション&ビューティ業界のトップを占めるのは男性が多く、欧米ではアジアにルーツを持つ女性のトップはさらに目にすることが少ない。その中で社員の多様な声に耳を傾けながら、ブランドの事業を見直し、女性に寄り添うことをモットーとするヒラタ社長の歩みを讃え、その実績とこれからの活躍に期待を込めて「WWD NEXT LEADERS 2022」に選んだ。

WWDJAPAN(以下、WWD):トップに就くまでの経緯は?

ギャビー・ヒラタDVF社長兼CEO(以下、ヒラタ社長):DVFには20年1月、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった当初にアジア太平洋地域担当として入社した。当時の中国・武漢での状況を知り、中国を支援するためにチャリティー企画を提案。ブランド創業者のダイアンとともにライブ配信を行い、現地の小学校への寄付につなげた。アメリカでもロックダウンが始まったときは、人員削減に伴い北京に工場や生産拠点を移すべきだと提案した。デザイン本部は約100人から30人に縮小してニューヨークに残し、生産チームを別に設けたことでコストパフォーマンスの向上や、品質の確保につながった。こういった取り組みがダイアンの目に留まったことがきっかけとなった。

WWD:現在のパフォーマンスは?

ヒラタ社長:経営目標は達成し、27〜30歳の新たな顧客層にもリーチを広げている。また(EC構築サービスの)「ショッピファイ(SHOPIFY)」を通じて、公式ウェブサイトをリローンチした。これによりグローバルにお客さまの傾向やプロファイルが分析可能となり、より具体的にデザインに落とし込めるようになってきた手応えがある。北京の生産チームの設立などを通して、中国市場での存在感を増したい。

WWD:トップに就任することを知ったときの気持ちは?

ヒラタ社長:最初は本当に怖かったし、私がなっていいものだと思えなかった。当時の日記を読み返してみると、不安がる言葉ばかりが並んでいる。だって私が思い浮かべることができるリーダーの姿は、白人の男性で、アメリカ出身の人で、私より年配で、経験をたくさん持っている人ばかり。想像もつかないことで、「私は31歳だし、第一言語も英語じゃないし、中国人だし、女性だし、本当に務まるのか……?」と、ダイアンにも不安な気持ちを話した。ダイアンは笑い飛ばして、「だからこそあなたがトップになることに意味がある」と背中を押してくれた。

WWD:そもそもリーダーになりたかった?

ヒラタ社長:中国では一人っ子の場合、女子より男子が好まれる傾向があり、子どもの頃にその現実を知ったときにすごく落ち込んだ。そこで幼い頃から「絶対見返してみせる」との決意を持っていた。でもアクティビストとして活動するのも中国では色々な制約があるし、教授になってジェンダー学を深めるにしても学術的場所に限定された活動になる気がして、17歳の時にビジネスのトップになることを目標に。トップについたら「変化を生めるし、人々の夢を実現できる。インスピレーションにもなれる」と。世の中は男性のリーダーが多数を占めるので、女性の“ボス”になってやる!という気持ちだった。

WWD:なぜファッションに?

ヒラタ社長:ファッションは、ビジネスとアートの真ん中に位置しているように思う。「アート」的に見た目だけを追求してしまって機能性を置き去りにするのはファッションとは言えないが、夢やワクワク、“マジック”を与えるのもファッションのはず。「ビジネス」と言い切るのも難しいだろう。複合的に社会に交わるファッションに共感した。

WWD:自分はどんなリーダーだと思う?

ヒラタ社長:「バランス力のある」リーダーかな……。直感的なところと戦略的な側面、共感性と厳しさ、KPIと働いている人の幸せ、などのバランスをとっていく人だと思う。アメリカと中国をまたいで活動してきたので、間を取っていくアプローチが得意。これまではトップの人は「強くあれ」と教え込まれてきたが、私は繊細だし、自分の弱い部分を見せることを怖いと思わない。仲間たちもそれを心地よいと感じていると思う。チームと話すとき、「トップとしてじゃなくて、人間として私と話をして!」「一回建前は置いておいて、“普通に”話そう?」と言ったりして、等身大でいるようにしている。そんな私を見て、「私にもできる!」「私もやりたい!」と思うみたい。チームとして成長しているのを肌で感じている。リーダーとして自分のゴールを追うだけでなく、チームのみんなも幸せであることは私にとってとても大事なこと。

WWD:自分の強みは?

ヒラタ社長:外国から来た私がアメリカやこの業界で成功するには、いかに「自覚的」になって自分の立ち位置を受け止めるかが大事だと思っている。自分の人種やバックグラウンドに自信を持てなかったこともあるけれど、ダイアンには「あなたの不安や自信のなさは、あなたの強みになる」と教えをもらった。今は子どもがいるけれど「仕事と育児を両立している」と美談にするつもりはなくて。マザーフッド(母であることや母性)を美化することもしたくない。子どもを持って育てることで「これで母親という当事者として発言できる」と自覚的だったし、「まずはある程度仕事で成功をしてから」と決めていた。このように淡々と子育てについて語ると、「愛情が足りていない」「母親失格」と判断されてしまうような風潮をたまに感じるが、自分のしたいことやゴール、できることに“アウェア”でいることは、物事を進めていく上ですごく大切だと思う。率直に対話ができることも私を形成する大きな部分だ。

WWD:生活者とはどうコミュニケーションをとっている?

ヒラタ社長:歴史の長い企業や、伝統のあるブランドは「お客さまに向けて」コミュニケーションを取ることに集中しすぎているような気がする。私はもっと「お客さまと」コミュニケーションをとっていきたい。配信もいっぱいしたいし、お客さまから寄せられたコメントに返信もしていきたい。一時期は、毎週欠かさず時間を作って、SNSのコメントを返したりもした。お客さまからは「DVFのトップが返信してる!」と驚かれたけれど、逆になんで普通はしないと思われているのか不思議な感覚だ。ブラントとしては、私たちは「一着のドレスに止まらず、着た人の自信や喜び、それらが生む“マジック”を提供している」との自負がある。理念に沿うメッセージを届けるために月に一回、生活者の中から多様な女性像にSNSでフォーカスする「DVF WOMEN」キャンペーンを打ち出してきた。発足当時からミッションは、ファッションの美しさに加えて実際に着る女性を優先すること。着ている女性の着心地や自信、魅力を感じることに重きを置いた洋服を作り、メッセージを届けている。

WWD:これからの戦略は?

ヒラタ社長:日本と韓国に再進出したいと考えている。2010年ごろの市場は大きかった、その後日本とのつながりが薄れてしまった。製品の質やデザインも大きくアップデートして、素晴らしいものをそろえていると胸を張っていえるし、日本と韓国市場にも愛される自信がある。中東やオーストラリアへの進出も考えている。あとは、キッズウエア、インテリアの分野の開拓。母親になって子ども服に着目するようになり、充実した家具製品への需要も感じている。どのように製品にしていくかはこれから詰めるが、地域に合わせた最適な戦略を掲げたい。

WWD:自身のゴールは?

ヒラタ社長:ブランドを通して、女性をエンパワーする取り組みを継続して実施・発信する。私にはライブ配信や中国市場とのつながりが転機になったから、それ以来、年に2回は配信を継続している。一度の配信やキャンペーンでは生活者の心は掴めないし、即席なアプローチは見抜かれてしまう。ダイアンは90年代、今以上にデザインの中心に男性が多かった頃、「女性にデザインがわかるわけないだろう」と周りから揶揄されていたという。そこからブランドを築いたダイアンに共感するし、自分も誰かのインスピレーションとなり続けたい。商品を販売するだけでなく、私含む女性たちのストーリーを積極的に広め、周りを巻き込んだ大きなムーブメントを起こしていきたい。


The post 中国出身、32歳の若きトップが米「ダイアン フォン ファステンバーグ」に新風を吹き込む【ネクストリーダー2022】 appeared first on WWDJAPAN.

ユーチューブを通し自分と対話するあさぎーにょ 目指す姿はウォルト・ディズニー【ネクストリーダー2022】

 2015年にユーチューブを開始し、現在は登録者数77万人超の人気ユーチューバーとなったあさぎーにょ。同時にファッションブランド「ポピー(POPPY)」のディレクターやアーティストとしての顔も持ち、「ワクワクを抱きしめよう」というメッセージをさまざまな切り口で伝えている。SNS時代の申し子あさぎーにょに、リーダーシップやユーチューブとの向き合い方を聞いた。

WWD:ユーチューバーになったきっかけは?

あさぎーきょ:歌手になりたくて、大学を辞めて関西から上京した。路上ライブをしたり、オーディションを受けたりしていたが、ちょうどそのころユーチューバーが注目を集め始めていて、自分の歌を発信する新しいプラットフォームとして気軽に始めた。「ユーチューバーになろう」と思ったわけではない。動画投稿を重ねて、「あさぎーにょはこうだね」「あさぎーにょのこういうところが好き」といったコメントをもらうようになって、自分の個性やキャラクターが何なのかを深く考えるようになった。自分がどうありたいか、自分らしさが何なのかをユーチューブを通して見つけてきた。そしてたどり着いたのが、「ワクワクを抱きしめよう」というメッセージだ。

WWD:表現者としてさまざまなジャンルの活動をする中で、気をつけていることは何か。

あさぎーにょ:「ワクワクを抱きしめよう」の軸をブラさないこと。そして、自分らしさをしっかりディテールに落とし込むこと。ただ、作ったものが人に褒められてもなんだか空っぽだと感じたり、逆に自分は最高だと思ったものへの人からの反応が悪かったりすると、自分の中でバランスが崩れてくる。それは年に数回風邪をひくようなもの。そういうときはホテルに一日こもってユーチューブのコメントを見返したり、自分が好きなものをじっくり振り返ったりするようにしている。そうすると、毎回必ずそのとき足りないものや課題が見えてくる。

WWD:自分の課題はどんな部分だと分析しているか。

あさぎーにょ:たくさんあるが、いろんなジャンルの仕事をさせてもらう中で、全部“本物”になり切れない。見よう見まねの部分がまだ多い。スキルも知識ももっともっと追求したいが、体は一つしかないので、ある程度割り切って進めていかないといけない。そこは悩むところだ。(スキルが不足している部分については)仕事の現場でプロの方に素直に聞くようにしている。例えばカメラマンさんに、「どういうディレクションをしたらこういう雰囲気の絵になるのか」といったように聞く。プロの方にそんなことを聞いてもいいのかと最初は悩んだが、皆さん私の無知も受け入れてくださるし、大御所の方も優しく教えてくださる。私もいつかそういう存在になりたい。

少女の心を持ち続けるリーダーが憧れ

WWD:自身のブランド「ポピー」を立ち上げた経緯は。

あさぎーにょ:CDの代わりに音楽を届ける方法として、パジャマのタグにQRコードを付けて販売したのが始まりだ。少しずつアイテムを企画していく中で、オリジナルなもの、自分たちが熱狂できるものを作りたいと考えるようになった。チームが整って、シーズンごとに商品を出せるようになったタイミングで、「ポピー」というブランドとしてしっかりローンチした。ユーチューブの撮影はほぼ一人で完結しているが、チームみんなでモノ作りをしていくことも好きだ。チームの指針のようなものはあって、新しいメンバーが入ったらそれを伝えている。「褒める」ことや、「モヤモヤしたらすぐに解決する」というのはそうした指針の一つ。私自身、モヤモヤをすぐに人に切り出して解決することが苦手だったが、みんなと考えが共有できているので、とても助けられている。

WWD:目指すリーダー像はあるか。

あさぎーにょ:少女のようなリーダーになりたいとは強く思っている。実際の年齢は関係なく、私が誰よりも少女の心を持っていて、私がワクワクしたことはどんな大きな夢であっても、チームのみんなが「叶うんじゃないか」と信じられるような存在でありたい。目指すはウォルト(・ディズニー)だ。コミュニケーションが取れていないと、チームの存在意義が分からなくなることもある。だからこそ、チームのメンバーには日々感じたことを常に熱量高く伝えるようにしている。それはユーチューブやSNSに日々の出来事や気持ちを共有するのと同じ感覚で、自分のクセでもある。

WWD:「ポピー」ではどのようにデザインを決めていくのか。

あさぎーにょ:シーズンテーマから入ることもあるし、今何が着たいかという気分から企画を進めることもある。ユーチューブを通して自分がどうありたいかを考えてきた中で、お日さまのような、温かみのある人でありたいという思いに行き着いた。だから、シルエットは包み込むような感じを意識しているし、コットンレースが好き。可愛くキュートでありたいが、人と違う個性もほしい。そういう感覚が「ポピー」のチームはとても似ていて、共有できている。

発信は、与えるより与えられるものの方が多い

WWD:あさぎーにょにとってユーチューブとは。

あさぎーにょ:ユーチューブをやっていなかったら、自分がやりたいことや自分とは何かが分からなかったと思う。発信をすることは、人に与えるよりも人から与えられるものの方が実は多いと近頃強く思う。最初はコメントなどを通して(ファンから)教えてもらうことばかりだったが、もらったものを返したいという気持ちが強くなっている。発信することの怖さはもちろん感じている。自分だけの考えを押し付けていないか、意図せず人を傷つけていないかと不安に思うときはある。それでも、発信をして、それに対してみんなから受け取ってきたものであさぎーにょはできている。やはりそこに大きな価値を感じている。

WWD:今後の目標は。

あさぎーにょ:「ワクワクを抱きしめよう」というメッセージを、ファッション、音楽、物語、映画、カフェなど、さまざまな切り口で伝えていきたい。そのためには多くの仲間が必要だし、私自身もスキルや知識を磨いて、ワクワクをしっかりディレクションできるようになりたい。今、中国語の勉強もしている。中国の視聴者から非常に熱量の高いコメントをいただくことがあり、言葉が違う人に自分の世界観が伝わるのはものすごく嬉しいし、それは動画だからこそできるのだとも思う。中国のSNSも何種類か始めていて、既に日本のフォロワー数より多くなっている。ただ、中国ですぐにビジネスをするというのではなく、語学の勉強も中国向けの動画の投稿も、まだ楽しくてやっているという感じ。続けていく中で今後、何かにつながればいいなと思っている。


The post ユーチューブを通し自分と対話するあさぎーにょ 目指す姿はウォルト・ディズニー【ネクストリーダー2022】 appeared first on WWDJAPAN.

ユーチューブを通し自分と対話するあさぎーにょ 目指す姿はウォルト・ディズニー【ネクストリーダー2022】

 2015年にユーチューブを開始し、現在は登録者数77万人超の人気ユーチューバーとなったあさぎーにょ。同時にファッションブランド「ポピー(POPPY)」のディレクターやアーティストとしての顔も持ち、「ワクワクを抱きしめよう」というメッセージをさまざまな切り口で伝えている。SNS時代の申し子あさぎーにょに、リーダーシップやユーチューブとの向き合い方を聞いた。

WWD:ユーチューバーになったきっかけは?

あさぎーきょ:歌手になりたくて、大学を辞めて関西から上京した。路上ライブをしたり、オーディションを受けたりしていたが、ちょうどそのころユーチューバーが注目を集め始めていて、自分の歌を発信する新しいプラットフォームとして気軽に始めた。「ユーチューバーになろう」と思ったわけではない。動画投稿を重ねて、「あさぎーにょはこうだね」「あさぎーにょのこういうところが好き」といったコメントをもらうようになって、自分の個性やキャラクターが何なのかを深く考えるようになった。自分がどうありたいか、自分らしさが何なのかをユーチューブを通して見つけてきた。そしてたどり着いたのが、「ワクワクを抱きしめよう」というメッセージだ。

WWD:表現者としてさまざまなジャンルの活動をする中で、気をつけていることは何か。

あさぎーにょ:「ワクワクを抱きしめよう」の軸をブラさないこと。そして、自分らしさをしっかりディテールに落とし込むこと。ただ、作ったものが人に褒められてもなんだか空っぽだと感じたり、逆に自分は最高だと思ったものへの人からの反応が悪かったりすると、自分の中でバランスが崩れてくる。それは年に数回風邪をひくようなもの。そういうときはホテルに一日こもってユーチューブのコメントを見返したり、自分が好きなものをじっくり振り返ったりするようにしている。そうすると、毎回必ずそのとき足りないものや課題が見えてくる。

WWD:自分の課題はどんな部分だと分析しているか。

あさぎーにょ:たくさんあるが、いろんなジャンルの仕事をさせてもらう中で、全部“本物”になり切れない。見よう見まねの部分がまだ多い。スキルも知識ももっともっと追求したいが、体は一つしかないので、ある程度割り切って進めていかないといけない。そこは悩むところだ。(スキルが不足している部分については)仕事の現場でプロの方に素直に聞くようにしている。例えばカメラマンさんに、「どういうディレクションをしたらこういう雰囲気の絵になるのか」といったように聞く。プロの方にそんなことを聞いてもいいのかと最初は悩んだが、皆さん私の無知も受け入れてくださるし、大御所の方も優しく教えてくださる。私もいつかそういう存在になりたい。

少女の心を持ち続けるリーダーが憧れ

WWD:自身のブランド「ポピー」を立ち上げた経緯は。

あさぎーにょ:CDの代わりに音楽を届ける方法として、パジャマのタグにQRコードを付けて販売したのが始まりだ。少しずつアイテムを企画していく中で、オリジナルなもの、自分たちが熱狂できるものを作りたいと考えるようになった。チームが整って、シーズンごとに商品を出せるようになったタイミングで、「ポピー」というブランドとしてしっかりローンチした。ユーチューブの撮影はほぼ一人で完結しているが、チームみんなでモノ作りをしていくことも好きだ。チームの指針のようなものはあって、新しいメンバーが入ったらそれを伝えている。「褒める」ことや、「モヤモヤしたらすぐに解決する」というのはそうした指針の一つ。私自身、モヤモヤをすぐに人に切り出して解決することが苦手だったが、みんなと考えが共有できているので、とても助けられている。

WWD:目指すリーダー像はあるか。

あさぎーにょ:少女のようなリーダーになりたいとは強く思っている。実際の年齢は関係なく、私が誰よりも少女の心を持っていて、私がワクワクしたことはどんな大きな夢であっても、チームのみんなが「叶うんじゃないか」と信じられるような存在でありたい。目指すはウォルト(・ディズニー)だ。コミュニケーションが取れていないと、チームの存在意義が分からなくなることもある。だからこそ、チームのメンバーには日々感じたことを常に熱量高く伝えるようにしている。それはユーチューブやSNSに日々の出来事や気持ちを共有するのと同じ感覚で、自分のクセでもある。

WWD:「ポピー」ではどのようにデザインを決めていくのか。

あさぎーにょ:シーズンテーマから入ることもあるし、今何が着たいかという気分から企画を進めることもある。ユーチューブを通して自分がどうありたいかを考えてきた中で、お日さまのような、温かみのある人でありたいという思いに行き着いた。だから、シルエットは包み込むような感じを意識しているし、コットンレースが好き。可愛くキュートでありたいが、人と違う個性もほしい。そういう感覚が「ポピー」のチームはとても似ていて、共有できている。

発信は、与えるより与えられるものの方が多い

WWD:あさぎーにょにとってユーチューブとは。

あさぎーにょ:ユーチューブをやっていなかったら、自分がやりたいことや自分とは何かが分からなかったと思う。発信をすることは、人に与えるよりも人から与えられるものの方が実は多いと近頃強く思う。最初はコメントなどを通して(ファンから)教えてもらうことばかりだったが、もらったものを返したいという気持ちが強くなっている。発信することの怖さはもちろん感じている。自分だけの考えを押し付けていないか、意図せず人を傷つけていないかと不安に思うときはある。それでも、発信をして、それに対してみんなから受け取ってきたものであさぎーにょはできている。やはりそこに大きな価値を感じている。

WWD:今後の目標は。

あさぎーにょ:「ワクワクを抱きしめよう」というメッセージを、ファッション、音楽、物語、映画、カフェなど、さまざまな切り口で伝えていきたい。そのためには多くの仲間が必要だし、私自身もスキルや知識を磨いて、ワクワクをしっかりディレクションできるようになりたい。今、中国語の勉強もしている。中国の視聴者から非常に熱量の高いコメントをいただくことがあり、言葉が違う人に自分の世界観が伝わるのはものすごく嬉しいし、それは動画だからこそできるのだとも思う。中国のSNSも何種類か始めていて、既に日本のフォロワー数より多くなっている。ただ、中国ですぐにビジネスをするというのではなく、語学の勉強も中国向けの動画の投稿も、まだ楽しくてやっているという感じ。続けていく中で今後、何かにつながればいいなと思っている。


The post ユーチューブを通し自分と対話するあさぎーにょ 目指す姿はウォルト・ディズニー【ネクストリーダー2022】 appeared first on WWDJAPAN.

イヤホンでアートとファッションを融合、多彩なクリエイターをマーブルミックス EBRU佐藤怜【ネクストリーダー2022】

 音楽とファッション、アートの融合を掲げるイヤホン「イヤーマインド」を展開するエブル(EBRU)は、金沢美術工芸大学の同級生3人組の女性が設立したスタートアップ企業だ。プロダクトのスケール(規模)化を前提に軽やかに、でも志は高く突き進む。代表の佐藤怜氏に話を聞いた。

WWD:起業のきっかけは?

佐藤怜(以下、佐藤):怒りだ。私は高校で美術を学び、文化服装学院に入り1年次を終了して中退。2年浪人して金沢美術工芸大学でアートと工芸の中間にある染織を、留学先のイタリア・ローマにあるファッション専門の大学であるアカデミアコスチューム&モーダ(Accademia Costume & Moda)ではファッションアクセサリーを学びました。つまり私自身はテキスタイルを軸にアート、ファッション、工芸を行き来しながら学んできたものの、日本に帰国して仕事を探してみると、ファッションブランドに行けば「アートがいいのでは?」、工芸に行けば「ファッションがいい?」、テキスタイル企業に行けば「日本よりも海外がいい」と、どこに話を聞きに行ってもとりつくしまもない。業界が分断していて、就職をしようにもどこにも行きようがなかった。一方で共同創業者の田邊(樹美・取締役)と先山(絵梨・取締役)の2人はすでに働いていたものの、産地やものづくりの現場の疲弊に悩んでいた。ならば、起業しかないというのが3人で出した結論だった。

WWD:プロフィールを見ると、全員がクリエイティブ出身。あえてスタートアップのような形で起業せず、デザイン会社という体裁でも良かったのでは?

佐藤:起業前、3人で話して行き着いた結論は、業界の分断で生まれている不健全な文化芸術産業の現状を改革し、文化を愛するユーザーと作り手、双方のウェルネスを実現すること。でもそのためには、プロダクトを作って、しかもスケールさせることが必要だった。ご指摘の通り、私を含め、事業計画なんて作ったこともない3人。ならば、ということで無職状態だった私が、あるアクセレータープログラムに参画して、1年ほど起業準備した。見るもの聞くもの新鮮で新しいことばかりではあったけど、すごく大変だったかと言われればそうでもない。たとえ就職していたにせよ、慣れないことの連続だったはず。参加者のほとんどがビジネス起点の起業家の卵たちで、私のようなアート/工芸出身者は珍しく、でもそれが逆に個性になった。ここで知ったクラウドファンディング型の資金調達で1400万円も集められた。開業資金は銀行からの創業融資の1000万円も元手になっている。起業準備期間には、イタリアの著名なファッションコンテストのITS(=International Talent Support)に応募して、アクセサリー部門のファイナリストに選ばれ、スウォッチ アートワーク賞を受賞した。

WWD:ビジネスの状況は?

佐藤:カスタマイズイヤホン「イヤーマインド」はクラウドファンディングの「マクアケ」で234万円の売り上げになった。製品は自分たちのアート活動名義のユニット「エブル(EbRu)」を含めた6人/組のアーティストとのコラボレーションしており、アートワーク、シェイプ、サウンドタイプのそれぞれからお気に入りの組み合わせを選べるようになっている。現在、機械部分のトラブルで当初の製造メーカーの変更をすることになって受注は止めて、クラファンの受注分も納品をお待ちいただいている状態だ。メーカー変更はめどが付き始めており、夏ごろまでには受注を再開始して、受注分も納品の予定だ。ただ、アートワークのコラボレーターは随時、声をかけさえて頂いている。優れた工芸作家やデザイナー、アーティストはそれこそ、知れば知るほどたくさんいて、そうしたアーティストたちとのコラボレーションが楽しくてしょうがない。

WWD:創業メンバー3人の出会いは?

佐藤:田邊と先山とは大学1年生のときに出会ってすぐに意気投合し、社名のルーツにもなった「EbRu」というユニットを結成した。だからかれこれ10年ほどの付き合いになる。金沢美術工芸大学は当時、比較的自由に学生が出入りして制作できるユニークなところで、学生時代は3人ともずっと作業場の床で寝起きをするほど、ものづくりに打ち込んでいた。大学を卒業後はそれぞれ違う進路になったものの、田邊と先山の2人はシェアハウス兼アトリエを東京に構えて一緒に住み、私もイタリアから帰国後は、そこにジョインした。田邊はパートナーと住むために今は出たけど、私と先山は今もその住居兼アトリエに住んでて、文字通り寝食もずっと一緒。10年の付き合いになるけど、ディスカッションはすることがあっても喧嘩はしたことがない。起業後も、ある程度の役割分担はあるけど、いつも3人で話し合ったり手を動かして決める。工芸がベースの3人だから、口よりも手を動かすことが先にあって、だから喧嘩にならないのかも。これまでも今も、イヤホンの型の原型やパッケージのデザインも、アトリエ兼住居で全部3人で手を動かして作ってきた。

WWD:今後は?

佐藤:エブルの根底にあるのは、いろいろな個性を認め合って、優れたクリエイティブを社会に提供すること。日本には優れた作家や工房がたくさんいて、それを「イヤーマインド」を通じて世界に発信もしたいし、世界にも進出し、イヤホンをキャンバスに世界中の優れたクリエイターやアーティストを紹介したい。


The post イヤホンでアートとファッションを融合、多彩なクリエイターをマーブルミックス EBRU佐藤怜【ネクストリーダー2022】 appeared first on WWDJAPAN.

イヤホンでアートとファッションを融合、多彩なクリエイターをマーブルミックス EBRU佐藤怜【ネクストリーダー2022】

 音楽とファッション、アートの融合を掲げるイヤホン「イヤーマインド」を展開するエブル(EBRU)は、金沢美術工芸大学の同級生3人組の女性が設立したスタートアップ企業だ。プロダクトのスケール(規模)化を前提に軽やかに、でも志は高く突き進む。代表の佐藤怜氏に話を聞いた。

WWD:起業のきっかけは?

佐藤怜(以下、佐藤):怒りだ。私は高校で美術を学び、文化服装学院に入り1年次を終了して中退。2年浪人して金沢美術工芸大学でアートと工芸の中間にある染織を、留学先のイタリア・ローマにあるファッション専門の大学であるアカデミアコスチューム&モーダ(Accademia Costume & Moda)ではファッションアクセサリーを学びました。つまり私自身はテキスタイルを軸にアート、ファッション、工芸を行き来しながら学んできたものの、日本に帰国して仕事を探してみると、ファッションブランドに行けば「アートがいいのでは?」、工芸に行けば「ファッションがいい?」、テキスタイル企業に行けば「日本よりも海外がいい」と、どこに話を聞きに行ってもとりつくしまもない。業界が分断していて、就職をしようにもどこにも行きようがなかった。一方で共同創業者の田邊(樹美・取締役)と先山(絵梨・取締役)の2人はすでに働いていたものの、産地やものづくりの現場の疲弊に悩んでいた。ならば、起業しかないというのが3人で出した結論だった。

WWD:プロフィールを見ると、全員がクリエイティブ出身。あえてスタートアップのような形で起業せず、デザイン会社という体裁でも良かったのでは?

佐藤:起業前、3人で話して行き着いた結論は、業界の分断で生まれている不健全な文化芸術産業の現状を改革し、文化を愛するユーザーと作り手、双方のウェルネスを実現すること。でもそのためには、プロダクトを作って、しかもスケールさせることが必要だった。ご指摘の通り、私を含め、事業計画なんて作ったこともない3人。ならば、ということで無職状態だった私が、あるアクセレータープログラムに参画して、1年ほど起業準備した。見るもの聞くもの新鮮で新しいことばかりではあったけど、すごく大変だったかと言われればそうでもない。たとえ就職していたにせよ、慣れないことの連続だったはず。参加者のほとんどがビジネス起点の起業家の卵たちで、私のようなアート/工芸出身者は珍しく、でもそれが逆に個性になった。ここで知ったクラウドファンディング型の資金調達で1400万円も集められた。開業資金は銀行からの創業融資の1000万円も元手になっている。起業準備期間には、イタリアの著名なファッションコンテストのITS(=International Talent Support)に応募して、アクセサリー部門のファイナリストに選ばれ、スウォッチ アートワーク賞を受賞した。

WWD:ビジネスの状況は?

佐藤:カスタマイズイヤホン「イヤーマインド」はクラウドファンディングの「マクアケ」で234万円の売り上げになった。製品は自分たちのアート活動名義のユニット「エブル(EbRu)」を含めた6人/組のアーティストとのコラボレーションしており、アートワーク、シェイプ、サウンドタイプのそれぞれからお気に入りの組み合わせを選べるようになっている。現在、機械部分のトラブルで当初の製造メーカーの変更をすることになって受注は止めて、クラファンの受注分も納品をお待ちいただいている状態だ。メーカー変更はめどが付き始めており、夏ごろまでには受注を再開始して、受注分も納品の予定だ。ただ、アートワークのコラボレーターは随時、声をかけさえて頂いている。優れた工芸作家やデザイナー、アーティストはそれこそ、知れば知るほどたくさんいて、そうしたアーティストたちとのコラボレーションが楽しくてしょうがない。

WWD:創業メンバー3人の出会いは?

佐藤:田邊と先山とは大学1年生のときに出会ってすぐに意気投合し、社名のルーツにもなった「EbRu」というユニットを結成した。だからかれこれ10年ほどの付き合いになる。金沢美術工芸大学は当時、比較的自由に学生が出入りして制作できるユニークなところで、学生時代は3人ともずっと作業場の床で寝起きをするほど、ものづくりに打ち込んでいた。大学を卒業後はそれぞれ違う進路になったものの、田邊と先山の2人はシェアハウス兼アトリエを東京に構えて一緒に住み、私もイタリアから帰国後は、そこにジョインした。田邊はパートナーと住むために今は出たけど、私と先山は今もその住居兼アトリエに住んでて、文字通り寝食もずっと一緒。10年の付き合いになるけど、ディスカッションはすることがあっても喧嘩はしたことがない。起業後も、ある程度の役割分担はあるけど、いつも3人で話し合ったり手を動かして決める。工芸がベースの3人だから、口よりも手を動かすことが先にあって、だから喧嘩にならないのかも。これまでも今も、イヤホンの型の原型やパッケージのデザインも、アトリエ兼住居で全部3人で手を動かして作ってきた。

WWD:今後は?

佐藤:エブルの根底にあるのは、いろいろな個性を認め合って、優れたクリエイティブを社会に提供すること。日本には優れた作家や工房がたくさんいて、それを「イヤーマインド」を通じて世界に発信もしたいし、世界にも進出し、イヤホンをキャンバスに世界中の優れたクリエイターやアーティストを紹介したい。


The post イヤホンでアートとファッションを融合、多彩なクリエイターをマーブルミックス EBRU佐藤怜【ネクストリーダー2022】 appeared first on WWDJAPAN.

「リュウノスケオカザキ」は未知のクリエイションを探求する【ネクストリーダー2022】

 岡﨑龍之祐は、彗星のごとく現れた異色のファッションデザイナーだ。高校卒業後に東京藝術大学大学院を経て「楽天 ファッション ウィーク東京」でコレクションを披露し、大きな話題を集めた。アートの視点で生み出す服は、まるでオートクチュールのようにグラフィカルで、造形美にあふれている。ファッションとアートの境界線を超える26歳が、世界を驚かせるのは目前だ。

ファッションの道に進んだ理由

WWD:ファッションに目覚めたきっかけは?

岡﨑龍之祐「リュウノスケオカザキ」デザイナー(以下、岡﨑):理由は自分でも分からないけれど、中学生のころからとにかく好きだった。最初は小遣いを貯めて古着を買い、次第にいろいろなブランドのショー映像やルックを見るようになっていた。

WWD:ファッションの道を志し、東京藝術大学に進学した理由は?

岡﨑:絵を描くのがもともと好きで藝大に憧れていたし、まずはアートを通した幅広い表現方法を勉強したかったから。だから、ファッションデザイナーになりたいという気持ちは早い段階で漠然とはあったものの、専門学校へ進学する考えはなかった。

WWD:デザイナーになると決めたのはいつ?

岡﨑:ハッキリと意識したのは、1年生のとき。デザインやアートに触れて、自分が何を感じてどういった方向に進みたいかを考えるようになった。デザイナーという職業にはいろいろなジャンルがあり、プロダクトやグラフィックの仕事内容は想像できたのに、ファッションだけは全然分からなかった。学校で学び続けても答えは出ず、だったら自分がデザイナーになってみればいいと考え、そこから身にまとうもので表現したいという気持ちが強くなった。

WWD:藝大では何を学んだ?

岡﨑:デザインを広い解釈で学びつつ、何かしらの作品を常に作っていた。デザインといってもいろいろで、問題解決や機能的なものは感覚的に理解できたけれど、ファッションだけはやっぱり分からなかった。でも分からないからこそ興味がそそられるし、自分で何かいい作品を完成させたときの喜びも大きい。

WWD:デザインのこだわりは?

岡﨑:とにかく、好きなものを作り続けること。ファッションは着るという“機能”に加え、一見無駄に見える装飾に価値があったり、人の心を豊かにしてくれたりする。この装飾については、藝大で学んだデザインとは違うけれど、人間の暮らしや営みには大切なもの。それを受け取り手に大事だと気付かせるためには自分の作品に説得力がないといけない。

WWD:初めての作品は?

岡﨑:2年生のときに作ったドレス“祈纏 -Wearing Prayer-”だ。広島に贈られた折り鶴の再生紙を細かく裁断した紙糸を織ったもので、1年生のときに故・高田賢三氏が行っていた平和活動に参加したことがきっかけで製作した。

いつかはパリの舞台で

WWD:大学院に進学してグラフィックを学んだ理由は?

岡﨑:グラフィックデザインを服作りに生かしたら面白いのではと思いつき、研究室で学ぶことにした。グラフィックは一見表面的だが、実は奥深い意匠が詰まっている。ビジュアルで語る点に、ファッションとの親和性もある。このアプローチを体現したのが、「第69回 東京藝術大学卒業・修了作品展」のために製作したドレス“JOMONJOMON”だ。神道的な左右対称のグラフィカルなビジュアルにし、実際に服を見た瞬間に飛び込んでくる視覚的な情報を大切にしている。この面白さは、グラフィックデザインを学んで気付いたこと。 “祈纏”のようにストーリーを想起させるようなものづくりを意識しながら、いかにグラフィカルに表現できるかを大切にしている。

WWD:デザインのインスピレーションは?

岡﨑:日常的な気付きや、不思議に思ったこと。例えば“JOMONJOMON”は、縄文土器の形について調べたことが出発点。自然の造形から着想することが多いのは、昔から何ごとも答えが分かっているのが嫌で、謎めいたものや不思議なものに引かれるからかもしれない。

WWD:作品は完成をイメージして組み立てる?

岡﨑:デザインは、抽象画家が筆を当ててストロークで描き続けるように、謎に向かって探る感覚に近い。だから終わりがなく、ずっと続けてしまうので自分で終着点を決めるのが大変(笑)。それに組み立て方まで考えているわけではないので、完成品をどこかに発送すると受け取り手がうまく組み立てられず、壊れて戻ってくることがある。今後はそういった点も考える必要があるかもしれない。

WWD:2021年8月に「楽天 ファッション ウィーク東京」への参加が決まった際の気持ちは?

岡﨑:とにかくうれしくて、大学院を卒業した半年後にコレクションを発表するというタイミングも良かった。作品がどう思われるか不安な気持ちもあったけれど、自分が作った作品を愛しているので、いい形で見せたいと一心で走り続けた。「何だアレは?」という反響も、「分からない」を探るのは自分のものづくりの原点だから、ポジティブに受け取っている。「分からない」って面白いし、かっこいいから。

WWD:これまで販売したヘッドピース以外にも、売れる商品の制作は考えている?

岡﨑:将来的に考えてはいるけれど、今はそれよりも作りたいものを高いクオリティーで作り続けてブランドの価値を高めることが大事。「リュウノスケオカザキ」は同じものを2つ作れないブランドだからこそ、一点一点に価値が生まれ、ブランドの価値も自然と高まっていくはず。売ることを考えて日常に無理に落とし込むよりは、作りたいものを作って発表する方が今の自分には合っている。

WWD:今後の目標は?

岡﨑:老若男女を問わずたくさんの人に見てもらい、例えポジティブじゃなくても何かを感じ取れるものづくりを続けること。チャンスがあれば、パリでファッションショーをやりたい。


The post 「リュウノスケオカザキ」は未知のクリエイションを探求する【ネクストリーダー2022】 appeared first on WWDJAPAN.