“日本一急成長したティックトッカー”スタン・フカセ 「マーク・ジェイコブス」も注目する23歳

 “日本で最もティックトック(TikTok)のフォロワーが急増したインフルエンサー”として「ジャパン・タイムス(The Japan Times)」が報じた人物がスタン・フカセ(Stan Fukase)だ。「マーク・ジェイコブス(MARC JACOBS)」のソーシャルメディアキャンペーンに起用されるなどファッション業界でも注目を集めており、現在はユーチューブ(YouTube)を中心に活動し、チャンネル登録者数は50万を越える。

 フカセは日本が拠点ながら、英語での配信がメインのため、アメリカを中心とした海外での知名度の方が高い。特にZ世代には人気で、昨年は自身のファッションブランドも始動させた。幅広く活動する次世代のインフルエンサーに、ファッションのこだわりやキャリア、日本のLGBTQ+の現状について聞いた。

WWD:インフルエンサーになったきっかけは?

スタン・フカセ(以下、フカセ):計画していたわけではなく、たまたまでした。2020年に新型コロナウイルスのパンデミックに入ってすぐの頃に、暇だったので特に理由もなくティックトックを始めました。最初はみんなと同じように、ただ流行っているダンスなどを投稿して自由にやっていたら、「ジャパン・タイムス」に“日本で最もティックトックのフォロワーが急増したインフルエンサー”と報じられて、自分でもびっくり(笑)。それから少しづつドラァグについてや、海外と日本の生活を比較するティックトックなど、自分を表現するコンテンツを増やしました。

 その後、今のメインのプラットフォームでもあるユーチューブを始めました。現在はインスタグラム(instagram)も積極的に使っていて、ファッションも発信しています。最近では「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」の小泉智貴さんに2022-23年秋冬のショーに呼んでもらって、その時のスナップ写真が「WWDJAPAN」に載っているんですよ(笑)。ほかには、「マーク・ジェイコブス」のソーシャルメディアキャンペーンにも参加するなど、仕事の幅も広がっています。

WWD:英語で配信しているのはなぜ?

フカセ:ティックトックでは、当初は日本語で配信していました。でも自分がゲイでハーフであることから、「おかま」「外人」など差別的用語を使用した誹謗中傷がひどかったので、現在は英語だけで配信しています。日本語は母親と一緒に出演するときに使いますが、それでもタイトルや字幕は英語です。英語と日本語以外では、タガログ語とセブアノ語が話せて、中国語とスペイン語も勉強しました。

WWD:フォロワーや視聴者はどの国が多い?

フカセ:アメリカが一番多いです。そこにフィリピン、ブラジル、イギリスとオーストラリアが続く感じですね。日本は10番目ぐらいであまり多くはないです。仕事の案件などもアメリカが中心です。アメリカ・ロサンゼルスの事務所に所属しているのもそれが理由で、所属インフルエンサーで一番遠くにいると言われました(笑)

WWD:日本では街中で気付かれない?

フカセ:渋谷や原宿を歩けば声を掛けられますが、それ以外のエリアでは1日1回あるかな?くらい。土曜日の夜に新宿2丁目に飲みに行けば、10人以上に声を掛けられます。でも“ストロングゼロ”を持って酔っているときに視聴者に会うのはちょっと恥ずかしいですね(笑)。でもやっぱり、海外の方が気付かれることは多いです。旅行先のギリシャ、イタリアやオーストリアなどでも声を掛けられた時はびっくりしました。

止まらない“クロップトップ愛”とドラァグを通して辿り着いたジェンダーフリーなファッション

WWD:ファッションのインスピレーションやよく行くお店は?

フカセ:参考にしている人はエマ・チェンバレン(Emma Chamberlain)やベラ・ハディド(Bella Hadid)かな。ブランドなら「ヘブン バイ マーク ジェイコブス(HEAVEN BY MARC JACOBS)」や「ゴルフ ワン(GOLF WANG)」、オンラインストア「ユニフ(UNIF)」。

 あとは、親友と原宿の古着を見ることが定番で、安くて大きなキンジ(KINJI)で掘り出し物を探すこともあるし、1980~90年代のビンテージが中心のピンナップ(PIN-NAP)など、アイテムが厳選された店も好きです。

WWD:スタンさんといえばクロップトップのイメージがある

フカセ:冬でもクロップトップを着るくらい好き。

 12月に表参道のローソンに入ったら、店員さんが「いつもクロップトップ着ているお兄さんですよね?表参道歩いているのを見ています。寒くないんですか?」って言われました(笑)

 クロップトップが好きな理由の一つは、ジェンダーの規範を壊しているから。男性が着ることを“普通”とされてこなかったので。僕が着始めたのは、大学の友だちが黄色いクロップトップをプレゼントしてくれたのがきっかけです。すごく気に入って、もらってから1週間、毎日着ていました。気に入りすぎて、メルカリでミシンを買って、自分の持ってるTシャツを全部クロップトップにしちゃったくらい。これは裏ワザですが、キッズ用のトップスをクロップトップとして着ることもできますよ(笑)。

WWD:東京のファッションシーンについてどう思う?

フカセ:日本は海外と比べて“身だしなみ”のレベルが高いと思います。欧米ではオシャレな人と気にしていない人の差がすごくあるように感じるけど、日本ではより多くの人が身なりを気にしていると思います。「ユニクロ(UNIQLO)」のように低価格だけど素材や作りがいいベーシックアイテムが豊富だからかな。でも、だからこそ、“身だしなみ”のためではなくて、もっと個性のある楽しいファッションもしてほしい。

WWD:昨年、自身のブランド「バイ エクストラ(byEXTRA)」を始動した。どういうブランド?

フカセ:テーマは“clothes have no gender(服に性別はない)”。最初は、全てクロップトップのコレクションを発表し、今年に入ってアクセサリーのコレクションも制作しました。オンラインストアでも「メンズ」「ウィメンズ」などのカテゴリーはありません。

 ブランドを始めるにあたって、デザインを0から考えるのはもちろん、工場、配送センターなど全て自分で手配をし、ウエブサイトは兄に手伝ってもらいました。現在は、事務所が物流をサポートしてくれていますが、クリエイティブは自分で全て担っています。

 小さい頃から、服をデザインすることが夢でした。高校生の時にはTシャツなどのプリントオンデマンドサービスを使っただけの「ユニセックス(UNISX)」というブランドを作っていたくらいです。その時のブランド名も自分のジェンダー観を表していると思います。

WWD:「バイ スタン(bySTAN)」ではなくて「バイ エクストラ」の理由は?

フカセ:“エクストラ(Xtra)”は僕がドラァグをする際のステージネームです。そもそもドラァグをしようと思った理由は、“ウィメンズ”とされている服を楽しむ口実でした。男性が着ていると変な目で見られてしまうかもという不安があり、自分ではない女性のペルソナで着てみようと思ったんです。

 現在はドラァグをしなくても、着たい服をジェンダー関係なく着られていますが、それもエクストラのおかげだと感じています。このジェンダーフリーなブランドも彼女がいなかったら作ることはできなかったので、「バイ エクストラ」と命名しました。

LGBTQ+コミュニティーの1人として東京から発信を続ける

WWD:LGBTQ+に関するコンテンツも多く発信している。

フカセ:日本から英語で発信しているインフルエンサーは観光情報や伝統文化をメインにしていることが多いですが、僕はあくまで自分の日常を見せたいと思っています。なので、ゲイである自分の日常として、LGBTQ+当事者である僕から見た日本や東京を発信しています。

 LGBTQ+についての情報、日本に関する情報それぞれを英語で発信するインフルエンサーはいても、日本のLGBTQ+を発信するインフルエンサーは少ない。だからこそ、視聴者の興味も集まっているんだと思います。

WWD:日本のLGBTQ+の状況はどう思うか?

フカセ:視点によって捉え方が変わります。文化的にLGBTQ+の人々が生きやすいとは言えませんが、海外に比べて暴力的な犯罪などは少ない。LGBTQ+への暴力が少ない訳ではなく、全体的に少ない、というだけですが、犯罪が少ないことはそれ自体が利点です。

 とはいえ、僕もクロップトップを着て東京の電車に載った際、年配の男性にいきなりピアスを引っ張られ、顔を引っ掻かれて、「おかま」と叫ばれた経験があります。久しぶりに泣きましたね。でも、世界にはもっと頻繁に、もっと深刻な被害に合っている人がいるということも忘れないようにしています。目立たない格好をすれば安全なのかもしれません。でも、ありのままの自分でいることが、一種のプロテストなのだと気付きました。

 新宿2丁目のように、コミュニティが集まれる場所があるのもいいですよね。「世界で最も密集しているLGBTQ+エリア」だと聞いたこともありますよ。多くの人がLGBTQ+にフレンドリーであれば、密集したLGBTQ+エリアはそもそも必要ありません。実際に、欧米ではこういうエリアが少なくなってきているんです。でも、小さいけど賑わっている新宿2丁目はコミュニティ感が強くて素敵だなとも思います。

The post “日本一急成長したティックトッカー”スタン・フカセ 「マーク・ジェイコブス」も注目する23歳 appeared first on WWDJAPAN.

“日本一急成長したティックトッカー”スタン・フカセ 「マーク・ジェイコブス」も注目する23歳

 “日本で最もティックトック(TikTok)のフォロワーが急増したインフルエンサー”として「ジャパン・タイムス(The Japan Times)」が報じた人物がスタン・フカセ(Stan Fukase)だ。「マーク・ジェイコブス(MARC JACOBS)」のソーシャルメディアキャンペーンに起用されるなどファッション業界でも注目を集めており、現在はユーチューブ(YouTube)を中心に活動し、チャンネル登録者数は50万を越える。

 フカセは日本が拠点ながら、英語での配信がメインのため、アメリカを中心とした海外での知名度の方が高い。特にZ世代には人気で、昨年は自身のファッションブランドも始動させた。幅広く活動する次世代のインフルエンサーに、ファッションのこだわりやキャリア、日本のLGBTQ+の現状について聞いた。

WWD:インフルエンサーになったきっかけは?

スタン・フカセ(以下、フカセ):計画していたわけではなく、たまたまでした。2020年に新型コロナウイルスのパンデミックに入ってすぐの頃に、暇だったので特に理由もなくティックトックを始めました。最初はみんなと同じように、ただ流行っているダンスなどを投稿して自由にやっていたら、「ジャパン・タイムス」に“日本で最もティックトックのフォロワーが急増したインフルエンサー”と報じられて、自分でもびっくり(笑)。それから少しづつドラァグについてや、海外と日本の生活を比較するティックトックなど、自分を表現するコンテンツを増やしました。

 その後、今のメインのプラットフォームでもあるユーチューブを始めました。現在はインスタグラム(instagram)も積極的に使っていて、ファッションも発信しています。最近では「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」の小泉智貴さんに2022-23年秋冬のショーに呼んでもらって、その時のスナップ写真が「WWDJAPAN」に載っているんですよ(笑)。ほかには、「マーク・ジェイコブス」のソーシャルメディアキャンペーンにも参加するなど、仕事の幅も広がっています。

WWD:英語で配信しているのはなぜ?

フカセ:ティックトックでは、当初は日本語で配信していました。でも自分がゲイでハーフであることから、「おかま」「外人」など差別的用語を使用した誹謗中傷がひどかったので、現在は英語だけで配信しています。日本語は母親と一緒に出演するときに使いますが、それでもタイトルや字幕は英語です。英語と日本語以外では、タガログ語とセブアノ語が話せて、中国語とスペイン語も勉強しました。

WWD:フォロワーや視聴者はどの国が多い?

フカセ:アメリカが一番多いです。そこにフィリピン、ブラジル、イギリスとオーストラリアが続く感じですね。日本は10番目ぐらいであまり多くはないです。仕事の案件などもアメリカが中心です。アメリカ・ロサンゼルスの事務所に所属しているのもそれが理由で、所属インフルエンサーで一番遠くにいると言われました(笑)

WWD:日本では街中で気付かれない?

フカセ:渋谷や原宿を歩けば声を掛けられますが、それ以外のエリアでは1日1回あるかな?くらい。土曜日の夜に新宿2丁目に飲みに行けば、10人以上に声を掛けられます。でも“ストロングゼロ”を持って酔っているときに視聴者に会うのはちょっと恥ずかしいですね(笑)。でもやっぱり、海外の方が気付かれることは多いです。旅行先のギリシャ、イタリアやオーストリアなどでも声を掛けられた時はびっくりしました。

止まらない“クロップトップ愛”とドラァグを通して辿り着いたジェンダーフリーなファッション

WWD:ファッションのインスピレーションやよく行くお店は?

フカセ:参考にしている人はエマ・チェンバレン(Emma Chamberlain)やベラ・ハディド(Bella Hadid)かな。ブランドなら「ヘブン バイ マーク ジェイコブス(HEAVEN BY MARC JACOBS)」や「ゴルフ ワン(GOLF WANG)」、オンラインストア「ユニフ(UNIF)」。

 あとは、親友と原宿の古着を見ることが定番で、安くて大きなキンジ(KINJI)で掘り出し物を探すこともあるし、1980~90年代のビンテージが中心のピンナップ(PIN-NAP)など、アイテムが厳選された店も好きです。

WWD:スタンさんといえばクロップトップのイメージがある

フカセ:冬でもクロップトップを着るくらい好き。

 12月に表参道のローソンに入ったら、店員さんが「いつもクロップトップ着ているお兄さんですよね?表参道歩いているのを見ています。寒くないんですか?」って言われました(笑)

 クロップトップが好きな理由の一つは、ジェンダーの規範を壊しているから。男性が着ることを“普通”とされてこなかったので。僕が着始めたのは、大学の友だちが黄色いクロップトップをプレゼントしてくれたのがきっかけです。すごく気に入って、もらってから1週間、毎日着ていました。気に入りすぎて、メルカリでミシンを買って、自分の持ってるTシャツを全部クロップトップにしちゃったくらい。これは裏ワザですが、キッズ用のトップスをクロップトップとして着ることもできますよ(笑)。

WWD:東京のファッションシーンについてどう思う?

フカセ:日本は海外と比べて“身だしなみ”のレベルが高いと思います。欧米ではオシャレな人と気にしていない人の差がすごくあるように感じるけど、日本ではより多くの人が身なりを気にしていると思います。「ユニクロ(UNIQLO)」のように低価格だけど素材や作りがいいベーシックアイテムが豊富だからかな。でも、だからこそ、“身だしなみ”のためではなくて、もっと個性のある楽しいファッションもしてほしい。

WWD:昨年、自身のブランド「バイ エクストラ(byEXTRA)」を始動した。どういうブランド?

フカセ:テーマは“clothes have no gender(服に性別はない)”。最初は、全てクロップトップのコレクションを発表し、今年に入ってアクセサリーのコレクションも制作しました。オンラインストアでも「メンズ」「ウィメンズ」などのカテゴリーはありません。

 ブランドを始めるにあたって、デザインを0から考えるのはもちろん、工場、配送センターなど全て自分で手配をし、ウエブサイトは兄に手伝ってもらいました。現在は、事務所が物流をサポートしてくれていますが、クリエイティブは自分で全て担っています。

 小さい頃から、服をデザインすることが夢でした。高校生の時にはTシャツなどのプリントオンデマンドサービスを使っただけの「ユニセックス(UNISX)」というブランドを作っていたくらいです。その時のブランド名も自分のジェンダー観を表していると思います。

WWD:「バイ スタン(bySTAN)」ではなくて「バイ エクストラ」の理由は?

フカセ:“エクストラ(Xtra)”は僕がドラァグをする際のステージネームです。そもそもドラァグをしようと思った理由は、“ウィメンズ”とされている服を楽しむ口実でした。男性が着ていると変な目で見られてしまうかもという不安があり、自分ではない女性のペルソナで着てみようと思ったんです。

 現在はドラァグをしなくても、着たい服をジェンダー関係なく着られていますが、それもエクストラのおかげだと感じています。このジェンダーフリーなブランドも彼女がいなかったら作ることはできなかったので、「バイ エクストラ」と命名しました。

LGBTQ+コミュニティーの1人として東京から発信を続ける

WWD:LGBTQ+に関するコンテンツも多く発信している。

フカセ:日本から英語で発信しているインフルエンサーは観光情報や伝統文化をメインにしていることが多いですが、僕はあくまで自分の日常を見せたいと思っています。なので、ゲイである自分の日常として、LGBTQ+当事者である僕から見た日本や東京を発信しています。

 LGBTQ+についての情報、日本に関する情報それぞれを英語で発信するインフルエンサーはいても、日本のLGBTQ+を発信するインフルエンサーは少ない。だからこそ、視聴者の興味も集まっているんだと思います。

WWD:日本のLGBTQ+の状況はどう思うか?

フカセ:視点によって捉え方が変わります。文化的にLGBTQ+の人々が生きやすいとは言えませんが、海外に比べて暴力的な犯罪などは少ない。LGBTQ+への暴力が少ない訳ではなく、全体的に少ない、というだけですが、犯罪が少ないことはそれ自体が利点です。

 とはいえ、僕もクロップトップを着て東京の電車に載った際、年配の男性にいきなりピアスを引っ張られ、顔を引っ掻かれて、「おかま」と叫ばれた経験があります。久しぶりに泣きましたね。でも、世界にはもっと頻繁に、もっと深刻な被害に合っている人がいるということも忘れないようにしています。目立たない格好をすれば安全なのかもしれません。でも、ありのままの自分でいることが、一種のプロテストなのだと気付きました。

 新宿2丁目のように、コミュニティが集まれる場所があるのもいいですよね。「世界で最も密集しているLGBTQ+エリア」だと聞いたこともありますよ。多くの人がLGBTQ+にフレンドリーであれば、密集したLGBTQ+エリアはそもそも必要ありません。実際に、欧米ではこういうエリアが少なくなってきているんです。でも、小さいけど賑わっている新宿2丁目はコミュニティ感が強くて素敵だなとも思います。

The post “日本一急成長したティックトッカー”スタン・フカセ 「マーク・ジェイコブス」も注目する23歳 appeared first on WWDJAPAN.

大学生も中核を担い「ティティーアンドコー」刷新 社長は「自分はもう監督兼4番バッターじゃいられない」

 ガールズマーケットの一翼を担っていた「ティティーアンドコー(TITTY&CO.)」が、大卒1年目の超若手も中核として活躍する新チームで刷新を進めている。ガールズマーケットの衰退で、「良くも悪くも優等生で、『どこがいいの?』と聞かれたら『やりすぎていないこと』だった」(ブランドを手掛ける高田憲男ディーアンドエー社長)という「ティティーアンドコー」も停滞、コロナが追い討ちをかけた。同社は20あった直営店を3つにまで絞り、ZOZOを皮切りにECにシフト。同時にディレクターに起用したインフルエンサーのPOYOは、昨秋以降入社したメンバーと共に2月、リブランディングを象徴する2022年春夏コレクションを発表。顧客やファンを招いた受注会にも初挑戦し、3月末には公式サイトもリニューアルした。「WWDJAPAN」推定でピーク時の半分の10億円弱まで落ち込んだ年商も回復の兆しにあり、新ECの売り上げも「かつての7、8割まで戻ってきた」という。若手にブランドの未来を託した高田社長、そのバトンを受け取った高田航輔副社長とPOYO、参画したばかりのチームメンバーに話を聞いた。

「WWDJAPAN」(以下、「WWD」):ビジネスのあり方も、ブランドのスタイルも、組織まで生まれ変わった。

高田憲男ディーアンドエー社長(以下、高田社長):数年前から厳しかったが、コロナで「とどめを刺された」。でも、「とどめを刺される」わけにはいかなかった。まずは通常営業さえ難しかった直営店からECにシフト、一番手っ取り早かったZOZOで直営の閉店で落とした売り上げを補いはじめた。ZOZOでの売り上げは、1年で3倍くらいになって「ひと段落」。そこで少し放置していた、ブランドとしての「ティティーアンドコー」の改革を始めた。POYOさんに出会ったのは、昨年の夏頃。ZOZOで売ったコラボアイテムが好評だったし、何より本人にガッツや向上心がある。「なんとかしないと」と考えるうち、「任せてみよう」と思うようになった。スタッフは、大改革の最中で出入りが激しかった。今のチームメンバーは、大半が昨年の11月から今春にかけて入社している。

「WWD」:「ティティーアンドコー」の生みの親として、そんな新しいチームによるリブランディングに複雑な想いはなかった?

高田社長:ブランドが生まれたのは2008年。まだまだ赤文字、109やルミネでのビジネスなどは、自然に広がる時代だった。昭和生まれの僕は、直営店メーンのビジネスを手がけてきた。でもECは自然には広がらず、仕掛けることがたくさんある。でも、自分にはわからない。わからないなら、わかる人にやってもらうしかない。一方、商品については「おじさん」でも、経験や感性でわかるところがある。それぞれ役割分担できると思った。でも今は、どんどん僕の仕事を受け継いで欲しい。

「WWD」:大きな責任を託されたチームを担う気持ちは?

高田航輔副社長:社長のように突出したものがあるわけではないので、優秀な人たちに入ってもらい、働きやすい環境づくりを意識した。トップダウンで引っ張るのではなく、みんなの意見を聞き、みんなで作り上げていく。だからみんなが生き生き働けるようにしたい。

POYOディレクター(以下、POYO):社長は、私たちのやりたいコトを尊重してくれる。「『ティティーアンドコー』のお客さまは~」と語り出して否定せず、私たちの「これって、かわいくないですか?」に反応してくれる。例えば「ティティーアンドコー」にはフレアスカートのイメージがあるけれど、今はマーメイド。私もフレアが好きだけどマーメイドを押すと、「いいね、やってみよう」と背中を押してくれる。転じてくれる、融通の良さがある。

高田社長:ずっとトップダウンでやってきたが、正直もうやりたくない。僕は疲れ、みんなは意見を言わなく・言えなくなる。今は、自然にミーティングが生まれ、皆が意見を出し合っている。すごく新鮮な光景で、嬉しかった。

「WWD」:チームメンバーは、それぞれどうして入社した?

本間翔子プレス:転職活動中に求人を見た。アパレルでのプレスの経験はなかったけれど、ずっとやりたいと思っていた仕事。もともと知っているブランドで、楽しそうな会社に見えた。実際一人ひとりの裁量が大きく、大変だが、やり甲斐も大きい。お客さまを招いたはじめての展示会は、本当に“はじめてだらけ”だった(笑)。公式サイトへの集客やインスタライブも未経験だったが、若手社員が“参戦服”として洋服を発信するなど、自由に発想できる。

後藤和也販売促進担当(以下、後藤販促担当):「ティティーアンドコー」で働き始めたのは昨年、まだ大学4年生だったとき。広告代理店から内定をいただき、インターンとしてインフルエンサー・マーケティングに携わっていたが、自分じゃなくても出来そうな仕事に思えてしまった。色々探している中で、アパレルでもインフルエンサー・マーケティングができるのでは?と考えた。展示会でのモデルキャスティングは、ほとんどが自分の考え。「ここまで任せてもらえるの?」と嬉しくなった。

高田副社長:各々がやりたいこととマッチするか?を考える採用に切り替え、自分なりの意見がある人を探すようになった。ビジネスSNSの「Wantedly」での採用は、目からウロコだった。職種や条件ではなく、「こんなことを目指している人」「共感してくれる人」を探すことができる。

「WWD」:とは言え、未経験者ばかりのチームは、大変そうだ。

本間プレス:まず、プレスの先輩がいなかった。何もかも「前例がない」ことで、教えてもらうという経験が一切なかった。

POYO:私がディレクターの仕事に“飛びついた”のは、昨年の12月。「サンプルは1カ月くらいで揃うだろう」と2月の展示会を目指したが、考えが甘かった(笑)。「旧正月は、こんなに何も動かないなんて!」と痛感した。

後藤販促担当:展示会の準備とルックブックの撮影は、忘れられない。展示会はずっと社内で開催していたと聞いていたが、リブランディングの節目だったので社外で開きたかった。提案すると社長は「いいね、会場探しといて」と言ってくれたけれど、「会場を探すのは、僕なのか」と焦った(笑)。会場のレイアウト、モデルの交渉など全てが同時進行だったけれど、終わったときの達成感は大きかった。入社前だったのに。

POYO:タフなネゴシエーションには、社長に入ってもらった。毎日が、文化祭の準備をしていたようなカンジ。作ることの楽しさを体感していた。

高田社長:社外での展示会は、本当に良かった。抽選で当たったお客さまの中には、九州から上京してくれた方も。22年春夏の売り上げは、1年前と比べて130%くらいで推移している。合格点。ただ3月にオープンしたECなど、試行錯誤は今も続いている。

「WWD」:今後の予定は?

POYO:秋冬は9月の展示会を目指している。8月には洋服が揃って、推しの品番で撮影できるようスケジュールを立てている(笑)。パワーアップして、もっと多くの人に手に取ってもらいたい。

高田社長:最初は学園祭のような一体感が良かったが、やっぱり会社。経験はまだまだ足りない。それでも新しい、自由な発想が出てくるのは本当に良いこと。経験して、理解できたら、僕は業務を任せることができる。もう現場で監督兼4番バッター兼エースではいられない、いるわけにはいかない。

The post 大学生も中核を担い「ティティーアンドコー」刷新 社長は「自分はもう監督兼4番バッターじゃいられない」 appeared first on WWDJAPAN.

村上隆が語るNFTの可能性やベルナール・アルノーとの関係 「30年前のビジョンが今実現している」

 村上隆は、ニューヨークの美術館ガゴシアン(Gagosian)で自身の展覧会“An Arrow through History(歴史を射抜く矢)”を5月11日〜6月25日に開催している。

 同展覧会は、マディソン・アベニューにある2つのガゴシアンの美術館で開催。さらに、公式サイトとVRヘッドセットでも没入型のVR体験を提供する。来場者はSNSアプリ、スナップチャット(Snapchat)のレンズを通して各ギャラリーや会場の建物外壁でARアニメーションを見ることができる。VRのプロジェクトは、昨年ナイキ(NIKE)が買収したバーチャルファッションブランド、「RTFKT(読み方:アーティファクト)」が手掛けた。

 展覧会では、絵画、肖像画、彫刻、スーパーフラット(Superflat)の作品、中国元時代の陶磁器からインスピレーションを得た作品などに加え、「クローンX(CloneX)」のアバターや話題のNFTコレクション「Murakami.Flowers」をはじめとするNFT作品も展示している。ガゴシアンの広報によると、展覧会前に販売した作品127点は24時間以内に売り切れたという。

 同氏はロサンゼルスの美術館ザ・ブロード(The Broad)でも個展“Takashi Murakami: Stepping on the Tail of a Rainbow”5月21日~9月25日に開催している。ニューヨークの展覧会同様に、モバイルデバイスを使ったAR体験を提供する。

 「リアルの作品とデジタルの作品を並行して体験してもらうためにも、ぜひリアルの展覧会に足を運んでもらいたい」と語る村上隆。米「WWD」は、展覧会を前に通訳を通じてインタビューを行った。

米「WWD」(以下、WWD):今後リアルな作品よりもNFTが重要になるか?

村上隆(以下、村上):リアルのアート作品とデジタルのNFTアート作品の対立や境界線といったものは意味がないと考えている。日本人アーティストにとって、ニューヨークのコンテンポラリーアートは、雲の上の存在だった。幼い頃からアートといえば、丁寧に絵を描いたり、ハイクオリティで繊細に仕上げないといけないものだと思っていた。コンセプトが全てのコンテンポラリーアートはアートの概念をひっくり返して革命を起こすものだった。ポップ・アート以来歴史的なアートムーブメントがなかったが、NFTはそんなレベルの大きなムーブメントだと思う。これからは、若いアーティストや美大生がNFTアートでデビューすると同時に、美術館で展覧会を開くかもしれない。そんな時代がすぐそこまで来ている。早ければ今年の秋にはそうなると思う。僕は少し早かったかもしれないが、いずれそうなるだろう。

WWD:「Murakami.Flowers」の価格が高騰していることに関してツイッターで批判の声が上がっているが、これについてはどう思っている?

村上:今はあまりにも多くの人が価格に注目しすぎていると思う。僕のように大きなギャラリーで発表するようなアーティストは、常に株価のように作品の価格が上下する状況にさらされてきた。作品を披露するときの価格はものすごく高いか安いかのどちらか。オークションもあるし価格変動も激しいが、最終的に安定するようになり、いいアーティストだけが生き残るだろう。内容がないアートだったらそのアーティストは消えていくかもしれない。NFTアートは大量にあるが、今から2~3年後に自分のアートがどの地点にいて、どうなっているのかが重要。黎明期の今ある価格に関する噂や推測はあまり重要ではない。

WWD:アートを民主化することがあなたの活動の中心にあるが、NFTはファッションよりもアートの民主化を加速させると思うか?例えば「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「シュプリーム(SUPREME)」などあなたが協業してきたブランドはどうか?

村上:「コンプレックスコン(COMPLEXCON)」に参加したのだが、転売ヤーがいるため常に狩りと競争の世界だった。NFTではその流れがもっとずっと早い。「Murakami.Flowers」を初披露したときはまるでIPO(新規株価公開)であるかのようにみんな注目してくれた。(アートではなく)純粋なプロダクトとして売り出されたかのようだったが、そういう意味で、究極の民主化だと思う。

WWD:東京でLVMH モエ ヘネシー·ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)を率いるアルノー一家と一緒にいたのはなぜか?

村上:「ウブロ(HUBLOT)」とNFTの作品を作っている。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」とはマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)以来(マーク・ジェイコブスが同ブランドを手掛けていた2004年にコラボレーションした)関係が続いている。またベルナール・アルノー(Bernard Arnault)氏は僕の作品のアートコレクターなこともあり、長きにわたって関係が続いている。

WWD:彼と何を話した?

村上:アルノー氏は、自身の名前を冠したブランド「ベルナール・アルノー」を作るべきだと、僕は強く思っている。20年以上彼の仕事を見ているが、とにかく何をやっても上手くて、多くの人にうらやましがられている。彼の驚異的な才能に、みんな少し嫉妬しているのかもしれない。世界中に店を抱え、ブランドの商品はどれも素晴らしいものばかり。もはやこれはアーティスティックな才能だと思うが、多くの人は彼がビジネスでどう成功しているかに気を取られすぎている。ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)やキム・ジョーンズ(Kim Jones)など、アルノー氏とコラボレーションしたクリエイターたちは全員モチベーションが高く、ベストを尽くしている。20年後に彼が亡くなっていても、LVMHというブランドは残るだろう。だが、ベルナール・アルノーという名前は、本当に情熱的にファッションシーンを引っ張ってきた人物として、歴史に刻まれないかもしれない。だから歴史に名を残すためにも、彼は絶対自身の名前を冠したブランドを作るべきだと思う。これはクリエイターとしての僕の意見に過ぎないが、僕は彼をクリエイターとして尊敬している。これはビジネスの提案でも何でもない。こうした意見を僕は前からインスタグラムに投稿していて、彼も見ている。彼に会うと「恥ずかしいが、クリエイターからそんな提案をされるのは光栄だ」と言われる。

WWD:アルノー氏は本気にしていると思うか?

村上:たぶんしていないだろうね(笑)。

WWD:「ティファニー(TIFFANY & CO.)」がティファニーブルーで描かれたジャン・ミシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat)の作品「イコールズ・パイ(Equals Pi)」を買い取って公開したが、このように広告の中でアートを見せることは今後あり得るか?

村上:アルノー氏がLVMHの社員や店舗の販売員に、前に進むようにとスピーチをしているのを日本で拝見したのだが、社内向けのスピーチを聞くことができたのはとてもラッキーだった。彼がクリエイティブという言葉を何度も何度も繰り返し、創作について話していたのが印象に残っている。彼はフォンダシオン ルイ・ヴィトン(Fondation Louis Vuitton)を持っているし、アートも収集している。でも、フォンダシオンを持つことによるブランドの見え方だとか、ブランドがアートを収集するのがトレンドだからとか、そういうことが目的ではないと僕は思っている。彼は純粋にアートに興味があるんだ。なぜなら、誰でもゼロから何かを生み出すときには、アイデアをピックアップして、自分の中のアイデアが生まれる部分にアクセスしなければならないから。例えばアスリートは、本番で起きることを理解し備えるために本番と同じレベルでトレーニングをしている。それと同じように、クリエイターも、自身が手掛けているのとは異なるジャンルのアートでも、クリエイターが創作過程においてどのような経験をするかを想像し、理解することができる。絵画や彫刻はそういう創作の過程が直接的でわかりやすい。だから、彼はアートに惹かれ、収集しているのだと思う。

広告の中のアートに関して、アルノー氏は仕事が上手いのでブランドを宣伝するためにアートを使っているように見えるかもしれないが、これはどちらかと言えば逆なんだ。彼は純粋に創造性にフォーカスし、アートを愛している。僕は今「ウブロ」としか仕事をしていないが、LVMHとはもっと一緒に仕事がしたいと思っている。

WWD:今のファッション業界で最もインスピレーションを受けているものは?

村上:「RTFKT」とナイキのメタバースでのコラボレーションは素晴らしいね。

WWD:「RTFKT」を通してそのブランディングにも関わっていたりするのか?

村上:僕が「RTFKT」とコラボレーションをしていたところに、ナイキが偶然「RTFKT」を買収しただけだよ。

WWD:ウクライナへの侵攻やパンデミックは、アートの重要性をどう変えたか?

村上:僕の初期の作品は、(第二次)世界大戦に敗れ、ほぼアメリカが樹立した政府による日本で育ったことを消化するためのものだった。子どものころベトナム戦争などを見て、「どうして戦争が起こるのか?」と疑問に思っていた。その疑問は、日本のアニメの中で常に問い続けられてきたものでもある。日本のアニメは、善悪の境界線がはっきりしていない。ヒーローか悪役かということはさほど重要じゃなく、なぜ戦争が起こるのかという問いが重要なんだ。その問いは今も変わらない。「なぜ戦争が起こるのか?」の明確な答えはない。エンターテインメントの世界でも、この曖昧なテーマが次々出てくるだろう。もちろん、大切な人を亡くした人には憎しみや負の感情も生まれてくるだろう。しかし、世界大戦後の日本とアメリカの関係も最初はネガティブなものだったがやがてお互いにリスペクトするようになった。そして、より良い未来を一緒に作ろうというムードになっていく。今の世界もそんな方向に進んでいってほしい。でもヨーロッパの歴史は複雑で、深く、長い。こんなことを言うのは楽観的だが、戦争を経験し、それを乗り越えた日本から来た一人の人間として、切に願っている。

WWD:今興味を持っているファッションデザイナーやアーティストはいるか?

村上:「ボアード・エイプ・ヨット・クラブ(Bored Ape Yacht Club)」を手掛けるユガ・ラボ(Yuga Labs)のような人たちに興味がある。それから、ジェームズ・キャメロン(James Cameron)監督の映画「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(Avatar: The Way of Water)」の広告を見たのだがその年齢(67歳)で、まだまだ若くて感心する。

WWD:今のファッションシーンをどう見ている?

村上:業界全体でメタバース内のファッションが大きな課題になるだろう。僕はそこにもっと深く関われるような気がする。現実のファッションの世界では、ヴァージルのように新しいものを常に取り込んできた人たちがいて、僕ももっと深く関わりたいと思ってはいたが、ファッションの素材やそういったものを全く理解していなかった。でも、メタバースはコンセプトだけで深く入り込むことができる。

WWD:今後どんなプロジェクトが控えている?

村上:「Murakami.Flowers」のNFTプロジェクトは、チームを作って全力を注いでいる。TVアニメの「シックスハートプリンセス(Six Hearts Princess)」は15年前から作り続けているが、ようやく完成に近づいた。僕自身も編集に携わり、新しいカットを追加したり、セレクトしたりしている。どこで放映されるかは決まっていないが、僕はただ作って完成させるだけだ。ストリーミングや放映したい人がいれば最高だが、もしいなければユーチューブ(YouTube)か何かにアップするかもしれない。

WWD:あなたの活動について、どんなことを理解してもらいたいか?

村上:30年前、僕にはビジョンとやりたいことがあった。それを今の若者が汲み取り、一緒に取り組めていると感じている。若いころにやりたかったことが、今実現していると感じる。僕と同世代の人たちや、大人には理解されていないかもしれないが、若者、子どもたち、小学生や中学生が、僕が今やっていることを理解してくれている。30年後、彼らは大人になり社会に出て、自分たちのビジョンを実現するようになるだろう。

WWD:ニューヨーク滞在中の仕事以外の予定は?

村上:今朝生まれて初めてセントラルパークを歩いたのだが、最高だった。今回は観光客的な体験をちゃんとしていると思う。

WWD:あなたのアートやクリエイティビティ、将来性についてどんな印象を抱いてもらいたいか?

村上:「ああ、彼はオタクなんだな」と思ってほしいね。

The post 村上隆が語るNFTの可能性やベルナール・アルノーとの関係 「30年前のビジョンが今実現している」 appeared first on WWDJAPAN.

「ディーゼル」は「ハッピーなメルティングポット」 来日デザイナーは「サステナブルも『説教クサく』したくない」

 「ディーゼル(DIESEL)」は6月9日、クリエイティブ・ディレクターのグレン・マーティンス(Glenn Martens)が来日し、2022-23年秋冬のファッションショーを開催した。巨大な人間型バルーンの、足の間やお腹の下をモデルが通り抜ける演出はミラノ・コレクション同様。“Y2K”を感じるブラトップやローライズジーンズ、ミニスカートも変わらないが、日本での発表に際して真っ赤な6ルックを追加した。ショーの翌日、来日中は連日ナイトライフを満喫し、若干二日酔い気味だった(!?)グレンに話を聞いた。

「WWDJAPAN」(以下、「WWD」):22-23年秋冬コレクションを、日本でもファッションショーで発表した理由は?

グレン・マーティンス「ディーゼル」クリエイティブ・ディレクター(以下、グレン):「ディーゼル」は、グローバルなブランド。世界中の人と出会い、耳を傾けるためにもミラノ以外の場所でファッションショーを開催してみたかった。日本を選んだのは、(コロナ禍の影響で)アジアのゲストはミラノ・コレクションを訪れることができなかったから。特に日本は「ディーゼル」にとって大切な市場で、「ディーゼル」らしい「エクレクティック(折衷主義の意味。ここでは、さまざまなカルチャーが融合している様子を表す)」なマーケット。東京でファッションショーを開くことは、「エクレクティック」で「ファン」な「ディーゼル」らしい。

「WWD」:だからこそミラノ・コレクションを丸ごと、東京に持ってきた。

グレン:バルーンも含めてね(笑)。あのバルーンは、90年代に広告のあり方を変えた「ディーゼル」の歴史を表現している。ちょっとダサいかもしれないけれど、セクシーで、驚きに溢れ、楽しかった「ディーゼル」の広告を、ランウエイショーで表現したかった。

「WWD」:一方、真っ赤な6ルックを追加した。

グレン:より強いエネルギーを表現するため、色が欲しかった。日本だから、「ディーゼル」だから「赤」ではなかったけれど、一番エネルギッシュだと思って選んだ色が、日本にとっても「ディーゼル」にとっても大事な色だった。

「WWD」:そのエネルギーこそ、「ディーゼル」で表現したいもの?

グレン:パリで生まれ育った僕にとって新鮮な、深掘りすべき「ディーゼル」のアイデンティティはエネルギーだ。それはオープンマインドに、なんでもすぐに結びつける原動力。ブランドやデザインチームは、その本質を40年間体現し続けている。究極言えば、「尊敬しあえていれば、なんでもオッケー」。そんな社会を作りたい。「ディーゼル」は、ハッピーなメルティングポット。それは今世界中が求めていることだし、これまで“スカし”続けてきたパリでも、そんなムードを感じている。でもハッピーなメルティングポットは、どこにでもあるワケじゃない。誰かがボタンを押さないと、実現しないかもしれない。そんなとき「ディーゼル」が、真っ先にボタンを押す存在になったらと思う。

「WWD」:会場には、多数のティックトッカーやユーチューバーが来場し、これまでのファッションショーとは異なる、新しいエネルギーを発信していた。

グレン:デジタルSNSこそ、異なるバックグラウンドの人たちが尊敬しあっているハッピーなメルティングポットだ。

「WWD」:一方、資源利用を最小限に抑えて生産するプロジェクト“ディーゼル ライブラリー(DIESEL LIBRARY)”など、サステナブルな取り組みには真剣だ。

グレン:デニムは、世界を汚してきた。だからこそグローバルブランドの「ディーゼル」が、率先すべきだ。コレクションピースはどんな方法で作っても大した問題にはならないが(笑)、コマーシャルなデニムは違う。使うコットン、洗い、そして加工。全てを順次、進化させたい。デニムの次は23年のプレ・コレクションで、オーガニックコットンや再利用した素材を活用したジャージーの商品化に成功した。次はレザー。僕が今も着ている祖父のブルゾンのように、価値あるレザーウエアを生み出したい。

「WWD」:真剣に取り組まなければならないサステナブルについては、「メッセージの発信までシリアスになりすぎた」と反省するブランドも多い。楽しい「ディーゼル」として、そのメッセージをどう発信する?

グレン:例えばポケットをひっくり返したり、股間のファスナーを開けたりすると初めて見えるサステナブルなメッセージは、「ディーゼル」らしいと思う。「説教クサく」ならないよう、これからも考えたいね。

The post 「ディーゼル」は「ハッピーなメルティングポット」 来日デザイナーは「サステナブルも『説教クサく』したくない」 appeared first on WWDJAPAN.

“デジタルアーティスト”大平修蔵の今とこれから デジタルから世界へ羽ばたく21歳

 現在21歳の大平修蔵は、ファッションモデルなど、いくつものフィールドを股にかけて活躍している。TikTokの一つの投稿をきっかけに世界中から注目を集め、2022年6月8日現在はSNSの総フォロワーを700万以上を抱えている。モデルとしては、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の2021年春夏メンズコレクションでランウエイデビューすると、9日に行われた「ディーゼル(DIESEL)」のショーにも起用され、堂々としたウオーキングを披露した。また俳優やDJもこなし、さらに英語が堪能であることから“次世代のグローバルアイコン”として熱い視線を浴びている。大平に、活動の原点や今後の展望について聞いた。

応援団長でなく、副団長を選ぶような人生だった

WWD:どんな子供時代を過ごしましたか?

大平修蔵(以下、大平):両親が航空会社で働いていたので、普段から英語が飛び交う家庭でした。家に遊びに来るのも米軍基地で働いている人の家族や、いろいろなバックグラウンドを持つ人が昔から身近にいましたね。

僕は一つのことに集中し始めたらそれしかできなくなっちゃう子供でした。幼稚園で縄跳び大会があった時は1位にこだわり、母親を付き合わせて泣きながら練習していたらしくて。今もとことん突き詰めるタイプなので、あまり変わっていないですね。

WWD:15歳でニュージーランドに留学。留学先での経験で、特に印象的だったのは?

大平:通っていた学校に日本人は僕一人でした。ほかにも中国、韓国から来たアジア圏の留学生がいたんですが、仲間はずれにされたくなくて、文法も気にせず英語でコミュニケーションを取るようにしたり、スポーツに打ち込んだりしました。そうするとクラスメイトも僕のパーソナルな部分に興味を持ってくれるようになりました。いじめっ子タイプの同級生も最初は好きではありませんでしたが、自分に自信をつけて堂々と話してみると、彼らも同じ人間なんだと分かったんです。どんな人でもフラットに見る大切さは、その時に覚えましたね。

WWD:TikTokを始めたきっかけは?

大平:帰国してから芸能事務所に所属していたものの、以前と特に変わらない生活でした。ある時友達に勧められて、TikTokを何となく始めました。でも、最初は照れがありましたね。もともと目立ちたがり屋だけど、いざ注目されると恥ずかしくて、応援団長じゃなくて副団長を選ぶような人生だったので。

でも、トレンドを真似た最初の投稿が運良くバズったんです。通知が次々に届くから友だちに見せたら「それ、バズってるよ」って教えてくれました。それからTikTokで動画を日々アップするようになったらフォロワーもどんどん増えていき、ブランドのデジタルプロモーションの仕事も依頼されるようになりました。

「デジタルで得たパワーをフィジカルで爆発させたい」

WWD:その後、東京で開催された「ルイ・ヴィトン」の2021年春夏メンズ・コレクションで、ランウエイデビューしました。

大平:デジタルの仕事をしながら初めて受けたオーディションでした。デジタルでの活動はすでに行っていましたが、みんなと同じようにオーディションを受けて選んでもらいました。この「ルイ・ヴィトン」のショーは、自分の人生で大きなターニングポイントになりました。コロナが流行し始め、これからどうするという不安定な時期に、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が手掛けたショーに参加できるなんて、二度とない経験です。本当に幸せな瞬間でしたね。以前は“TikToker”と紹介されるのがあまり好きじゃなかったけれど、このショーを歩いてからはモデルとしての自信がつき、TikTok以外のフィールドで自分の存在価値を少しずつ見出せるようになりました。

WWD:デジタルでの発信に注力していこうと思ったきっかけは?

大平:TikTokを始めて半年ほどでフォロワーが200万を超えた時に、何気なくやっていたことが人のためになっていると気がついたんです。自分にオファーが届いた仕事はメイクやスタイリストなどみんなで一緒にできるし、コメントで「おはよう」「おやすみ」と毎日送ってくれる世界中のファンにとっては、僕が生活の一部になっているのかなと。そう考えるとさらにやる気がでましたね。

WWD:世界中にファンがたくさんいるのはどうしてだと思いますか?

大平:愛が一方通行にならないように、動画を通してファンの方が求めるものをお返しするのは意識しているからでしょうか。最近、6月12日放送の「アナザースカイ」のロケでパリを訪れた時に、街にいたファンが寄ってきてハグをしてくれたんです。その時に、見えないところで応援してくれている人たちと愛を分かち合える喜びを感じ、愛をしっかり受け取ることも大事だと改めて感じました。

WWD:大平さんは活動テーマに“デジタルブリッジ”を掲げています。これはどういう意味ですか?

大平:デジタルを使って、人と人との掛け橋になりたいんです。戦争をやめてほしいとか、差別は嫌だとか、僕の思いに共感してくれる人たちがいろいろな国にいるので、僕を通してその人たちが思いを共有する輪が生まれたらうれしい。でも、それを言葉ではなく、僕自身の活動を通じて、背中を見せて伝えていきたいです。

WWD:今の自分自身の肩書きをあえて一言で表すならば?

大平:写真家のレスリー・キー(Leslie Kee)さんが「修蔵はデジタルアーティストだね」って言ってくれたのが印象に残っています。そういう捉え方があるんだ!って新鮮でした。確かに、デジタル上のクリエイトはもちろん、モデルもDJしています。だから“デジタルアーティスト”という呼び方はしっくりくる気がして、インスタグラムのプロフィールにも書いています。

WWD:今後の目標は?

大平:今年は国境を越えての移動もしやすくなるはずなので、デジタルで得たパワーをフィジカルで爆発させたいです。僕は欲張りなので、ショーのフロントローに座りたいし、モデルとしてランウエイも歩きたい。ドラマで主演もやりたい。DJとしてフェスにも出たい。フィジカルでやるならデジタルと違ってお金も時間もかかるので、一気に全部は無理だと分かっています。でも、一つずつ叶えていきたいですね。漠然としていた自分の夢がリアルに見え始め、今スタートラインに立てた感覚なので。

The post “デジタルアーティスト”大平修蔵の今とこれから デジタルから世界へ羽ばたく21歳 appeared first on WWDJAPAN.

洗濯で衣類が回復 寿命を延ばすケア製品誕生秘話

 洗えば洗うほど衣類にダメージを与えてしまう洗濯の常識を覆す製品が誕生した。洗濯機に使い古した衣類と一緒に入れて洗うだけで衣類が回復するバウダーをスウェーデンのスタートアップ、バイオリストア(BIORESTORE)が開発した。毛羽立ちや色落ちが、酵素とミネラルの力で復元するという。現在、特許を出願中のこの技術で、2022年のH&M創業者によるイノベーションアワード、グローバル・チェンジ・アワードを受賞した。すでに製品化に成功しており、4月19日からキックスターターのプラットフォームでプレオーダーを実施した。現在の資金調達額は430万スウェーデン・クローナ(約5750万円)。創設者のワジャハット・ハッサン(Wajahat Hussain)とリチャード・トゥーン(Richard Toon)クリエイティブ・ディレクターにオンラインで話を聞いた。

WWD:洗濯に着目した経緯は?

ワジャハット・ハッサン(以下、ハッサン):実は洗濯に注目していたわけではなく、ファッション産業が抱える最大の課題を解決したいという思いがありました。最大の課題ーーそれは衣類には寿命があることだと考えました。服が高品質であろうとなかろうと全ての衣類は着古され、いずれ着用できなくなります。私たちはその解決策となる使い古された衣類を復活させる方法について模索を始め、パウダー“バイオリストリア”を開発しました。パウダーは洗剤のようなものではありますが、私たちは洗剤(detergent)ではなくre-tergent(造語)と呼んでいます。

WWD:どのように復元させるのですか?

ハッサン:パウダーを衣類と一緒に洗濯機に投入し、40℃の温水で洗濯すると、取り出した衣類は新品のように復活します。洗剤のように洗浄するわけではないので、“バイオリストリア”をretergentと呼び、将来的にはこのretergentがスーパーなどの洗剤・洗濯コーナーで、新たなカテゴリーになればと思っています。

WWD:パウダーの原料は?

ハッサン:主な原料は5~6種類で、一番メインとなる要素は酵素です。専門的な言葉で言うとケミカルリサイクルのプロセスを行います。酵素と洗濯機が互いに作用して、酵素が小さな繊維を取り除き、繊維構造から構築することで、衣類を復元することを可能にしました。

WWD:酵素についてもう少し詳しく教えてください。

ハッサン:発酵の過程によって得られる酵素で、その由来となるものはさまざまです。それぞれ異なる種類の原料から抽出され、酵素はそれぞれの性能を持ち合わせていて、それを混合したものを使用しています。

WWD:世界中のどんな洗濯機でも効果を発揮する?

リチャード・トゥーン(以下、トゥーン):洗濯機に求める機能は主に2つで、一つは回転のメカニズム、そしてもう一つは40度の温水を使用すること。この両方を備えた洗濯機であれば、問題なくどこの洗濯機でも使用できます。

WWD:一般的な家庭用洗濯機で使用できると。

トゥーン:はい。だからこそ消費者向けに製品化していて、使い方はいたってシンプルです。この製品はいずれスーパーや小売店、オンラインでも購入できるようになります。

WWD:価格を教えてください。

ハッサン:第一弾となる製品は、大人向けの衣類であれば8着程度、子ども服であれば10着程度に使用できる量が入っています。価格は1着を復活させるのに約2~3ドルの計算で、1回使用すると約6~7カ月ほど効果を発揮します。複数回着用し、劣化してきたと感じたら使用していただくようなものです。

トゥーン:例えば150ドルの服購入し、着用して4回“バイオリストア”を使ったとします。4回新たに服を購入する機会を減らすことができて600ドルの節約になる。4回衣類を復活させるためにかかる費用は15ドルほどです。

WWD:セルロースに反応するとのことですが、他の素材や混紡素材などでも使えますか?

ハッサン:使えないのは100%ウールや、100%合成繊維などの製品です。コットンやコットン混、セルロースとコットンの混紡素材に加えて、アクリルやポリエステルなどでも良い結果が得られました。

トゥーン:世の中の約60~70% の製品をカバーできます。

WWD:今後の量産化への計画や、価格を下げる予定があれば教えてください。

ハッサン:私たちはすでに良い生産能力を備えており、スピード感を持って拡大できると思います。キックスターターでのキャンペーンは米国、欧州、豪州を対象としていて初期段階で3つの巨大なマーケットをカバーしています。生産コストがかかるので、価格を下げる予定は現時点ではありません。イノベーションはコストがかかるものではありますが、“バイオリストア”は節約につながるのでとても経済的な製品です。よく洗剤と同じ感覚で見られがちなのですが、一般的な洗剤は毎日使うものとして価格設定されているため比較は難しい。“バイオリストア”は洗剤とは科学的にも経済学的にも全く異なります。新たに服を購入する機会を減らせることから“バイオリストア”がもたらす金銭的な価値はもっと高く、必要だと感じたときだけ使用するものであるため、サステナビリティの観点からも優れています。

WWD:開発にどれくらいの期間かかったのですか?

ハッサン:このアイデア自体が生まれたのは2016年。初めてのプロトタイプを生産したのが19年でした。その後19~20年の1年間で量や素材を変えながら試験を重ね、21年には消費者による試験も行いました。どこでも使用できることを確認したかったので、英国、スウェーデン、米国などで150程度のサンプルを配布しました。

WWD:さらに拡大するために、生産拠点を世界各地に設けたり、アウトソースするなどライセンス化は考えていますか?

ハッサン:ブランドのマーケティングや管理を全て自分たちで行おうと考えています。サプライチェーンに関しては現在全ての製造をヨーロッパ内で行っていますが、現時点ではヨーロッパ内でそれりの量を生産できる体制があるので、量産化についてはそこまで課題として捉えていません。需要が高まり、生産スピードが求められたら、1カ所以上の生産拠点を設けようかということになるかもしれません。

WWD:それなりの量を生産できるとのことですが、どれくらいの時間でどれくらいの量を生産できるのですか?

ハッサン:1日に複数回、トン単位で生産が可能ですが、リードタイムは約2カ月かかります。現在は立ち上げ段階にあり、サプライチェーン全体で考えると、箱の発注や梱包作業なども考慮しなくてはならず、そこに時間がかかっています。しかし今後需要が高まれば、在庫としてストックしておき、製品をもっと高頻度で発送することが可能になると思います。量産化の準備は整っており、アパレル産業や繊維産業の製造における経験や知見もたくさんあるので、それと同じようなプロセスを取る準備もすでに築いています。あとはいつそれを実行するかということだと思います。

The post 洗濯で衣類が回復 寿命を延ばすケア製品誕生秘話 appeared first on WWDJAPAN.

洗濯で衣類が回復 寿命を延ばすケア製品誕生秘話

 洗えば洗うほど衣類にダメージを与えてしまう洗濯の常識を覆す製品が誕生した。洗濯機に使い古した衣類と一緒に入れて洗うだけで衣類が回復するバウダーをスウェーデンのスタートアップ、バイオリストア(BIORESTORE)が開発した。毛羽立ちや色落ちが、酵素とミネラルの力で復元するという。現在、特許を出願中のこの技術で、2022年のH&M創業者によるイノベーションアワード、グローバル・チェンジ・アワードを受賞した。すでに製品化に成功しており、4月19日からキックスターターのプラットフォームでプレオーダーを実施した。現在の資金調達額は430万スウェーデン・クローナ(約5750万円)。創設者のワジャハット・ハッサン(Wajahat Hussain)とリチャード・トゥーン(Richard Toon)クリエイティブ・ディレクターにオンラインで話を聞いた。

WWD:洗濯に着目した経緯は?

ワジャハット・ハッサン(以下、ハッサン):実は洗濯に注目していたわけではなく、ファッション産業が抱える最大の課題を解決したいという思いがありました。最大の課題ーーそれは衣類には寿命があることだと考えました。服が高品質であろうとなかろうと全ての衣類は着古され、いずれ着用できなくなります。私たちはその解決策となる使い古された衣類を復活させる方法について模索を始め、パウダー“バイオリストリア”を開発しました。パウダーは洗剤のようなものではありますが、私たちは洗剤(detergent)ではなくre-tergent(造語)と呼んでいます。

WWD:どのように復元させるのですか?

ハッサン:パウダーを衣類と一緒に洗濯機に投入し、40℃の温水で洗濯すると、取り出した衣類は新品のように復活します。洗剤のように洗浄するわけではないので、“バイオリストリア”をretergentと呼び、将来的にはこのretergentがスーパーなどの洗剤・洗濯コーナーで、新たなカテゴリーになればと思っています。

WWD:パウダーの原料は?

ハッサン:主な原料は5~6種類で、一番メインとなる要素は酵素です。専門的な言葉で言うとケミカルリサイクルのプロセスを行います。酵素と洗濯機が互いに作用して、酵素が小さな繊維を取り除き、繊維構造から構築することで、衣類を復元することを可能にしました。

WWD:酵素についてもう少し詳しく教えてください。

ハッサン:発酵の過程によって得られる酵素で、その由来となるものはさまざまです。それぞれ異なる種類の原料から抽出され、酵素はそれぞれの性能を持ち合わせていて、それを混合したものを使用しています。

WWD:世界中のどんな洗濯機でも効果を発揮する?

リチャード・トゥーン(以下、トゥーン):洗濯機に求める機能は主に2つで、一つは回転のメカニズム、そしてもう一つは40度の温水を使用すること。この両方を備えた洗濯機であれば、問題なくどこの洗濯機でも使用できます。

WWD:一般的な家庭用洗濯機で使用できると。

トゥーン:はい。だからこそ消費者向けに製品化していて、使い方はいたってシンプルです。この製品はいずれスーパーや小売店、オンラインでも購入できるようになります。

WWD:価格を教えてください。

ハッサン:第一弾となる製品は、大人向けの衣類であれば8着程度、子ども服であれば10着程度に使用できる量が入っています。価格は1着を復活させるのに約2~3ドルの計算で、1回使用すると約6~7カ月ほど効果を発揮します。複数回着用し、劣化してきたと感じたら使用していただくようなものです。

トゥーン:例えば150ドルの服購入し、着用して4回“バイオリストア”を使ったとします。4回新たに服を購入する機会を減らすことができて600ドルの節約になる。4回衣類を復活させるためにかかる費用は15ドルほどです。

WWD:セルロースに反応するとのことですが、他の素材や混紡素材などでも使えますか?

ハッサン:使えないのは100%ウールや、100%合成繊維などの製品です。コットンやコットン混、セルロースとコットンの混紡素材に加えて、アクリルやポリエステルなどでも良い結果が得られました。

トゥーン:世の中の約60~70% の製品をカバーできます。

WWD:今後の量産化への計画や、価格を下げる予定があれば教えてください。

ハッサン:私たちはすでに良い生産能力を備えており、スピード感を持って拡大できると思います。キックスターターでのキャンペーンは米国、欧州、豪州を対象としていて初期段階で3つの巨大なマーケットをカバーしています。生産コストがかかるので、価格を下げる予定は現時点ではありません。イノベーションはコストがかかるものではありますが、“バイオリストア”は節約につながるのでとても経済的な製品です。よく洗剤と同じ感覚で見られがちなのですが、一般的な洗剤は毎日使うものとして価格設定されているため比較は難しい。“バイオリストア”は洗剤とは科学的にも経済学的にも全く異なります。新たに服を購入する機会を減らせることから“バイオリストア”がもたらす金銭的な価値はもっと高く、必要だと感じたときだけ使用するものであるため、サステナビリティの観点からも優れています。

WWD:開発にどれくらいの期間かかったのですか?

ハッサン:このアイデア自体が生まれたのは2016年。初めてのプロトタイプを生産したのが19年でした。その後19~20年の1年間で量や素材を変えながら試験を重ね、21年には消費者による試験も行いました。どこでも使用できることを確認したかったので、英国、スウェーデン、米国などで150程度のサンプルを配布しました。

WWD:さらに拡大するために、生産拠点を世界各地に設けたり、アウトソースするなどライセンス化は考えていますか?

ハッサン:ブランドのマーケティングや管理を全て自分たちで行おうと考えています。サプライチェーンに関しては現在全ての製造をヨーロッパ内で行っていますが、現時点ではヨーロッパ内でそれりの量を生産できる体制があるので、量産化についてはそこまで課題として捉えていません。需要が高まり、生産スピードが求められたら、1カ所以上の生産拠点を設けようかということになるかもしれません。

WWD:それなりの量を生産できるとのことですが、どれくらいの時間でどれくらいの量を生産できるのですか?

ハッサン:1日に複数回、トン単位で生産が可能ですが、リードタイムは約2カ月かかります。現在は立ち上げ段階にあり、サプライチェーン全体で考えると、箱の発注や梱包作業なども考慮しなくてはならず、そこに時間がかかっています。しかし今後需要が高まれば、在庫としてストックしておき、製品をもっと高頻度で発送することが可能になると思います。量産化の準備は整っており、アパレル産業や繊維産業の製造における経験や知見もたくさんあるので、それと同じようなプロセスを取る準備もすでに築いています。あとはいつそれを実行するかということだと思います。

The post 洗濯で衣類が回復 寿命を延ばすケア製品誕生秘話 appeared first on WWDJAPAN.

「フラグメント」が“やり過ぎない”アイデアで「シュタイフ」の歴史を変えた 藤原ヒロシ的「ちょうどいい塩梅」とは?

 藤原ヒロシの「フラグメント デザイン(FRAGMENT DESIGN以下、フラグメント)」と1880年創業のドイツ発ぬいぐるみブランド「シュタイフ(STEIFF)」は、コラボレーション第4弾を発表した。欧州で出産祝いとして渡されるテディベア“マイファースト シュタイフ”を「フラグメント」らしく真っ黒にアレンジ。これを“マイファースト フラグメント”(9900円税込、サイズ26cm)と名付け、1000体限定で販売する。さらに今回は、親子でそろって着られるように、ベビー&キッズと大人向けのアパレルも用意。テディベアのグラフィックから色使い、アルファベットの使い方に至るまで、藤原らしいアイデアを散りばめている。4回目のコラボについて、藤原に根掘り葉掘り聞いた。

 なお、アイテムは6月22日から伊勢丹新宿店と阪急うめだ本店で先行発売し、25日から「シュタイフ」の青山店と公式オンラインショップほか、正規取扱店で販売する。

――ヒロシさんが思うシュタイフの魅力は?

藤原ヒロシ(以下、藤原):テディベアといえば「シュタイフ」。僕の中ではそれしかなかったですね。コラボする前は、「古いテディベアがいくらになった」とかのニュースをたまに見るぐらいだったんだけど、調べたらゴジラからピカチュウまで、いろんなものを「シュタイフ」が作っているんですよ。だから“しっかりしたぬいぐるみ”といえば「シュタイフ」かな。キルティングバッグ=シャネルというのと一緒ですね。

――確かに、古いテディベアに希少価値があるのは、それだけデザインや技術が高いということだと思うが、ヒロシさん自身はビンテージの価値を意識する?

藤原:ビンテージの価値を分かっていない方が多いかな。「それ着ちゃうの?」って言われるし。時計でもデニムでもビンテージはみんなすごく大切に扱うけど、僕は欲しいものを買って、それがたまたまビンテージだったから着るというか。そういうタイプだから本当の意味でのビンテージの良さは分かっていないと思います。ビンテージも新しいものも同じ目線で、良いか悪いかだけですね。

――なるほど。今回、子ども服をデザインするにあたってこだわった部分は?

藤原:子ども服だからといって子ども服に寄せるわけではないんですよね。よく言われるんですけど、子どもと話すときも大人に接するときと同じようにできる限り対等に話すから。だから洋服のデザインも僕の中ではそんなに意識してなくて。いつも通り作ったものを専門家が子ども服サイズに落とし込んでくれました。わりと分かりやすく。

――分かりやすさは大事?

藤原:分かりやすさを求められることが多いかもね。それを汲み取りながらだけど、ブランドによっても違う。「シュタイフ」だったら「フラグメント」を知らない人もいるだろうから、そういうマーケットだったら分かりやすくても逆に面白いかな。

――ヒロシさんといえば黒のイメージがあるが、今回はブルーやピンクも使っている。

藤原:タイミングによって変わるんだけど、ブルーとピンクは、その頃使っていた色なんです。定期的に使う色ではあるんだけど。でも黒は一般的には子どもに着せたくないと思うんでしょうね。だから世の中に少ないんだろうけど。ひねくれた家族に着てもらえばいいんじゃないかなと(笑)。

――バックプリントの“steiff”の“s”を小文字にしたのは、140年以上続くブランド史上、ヒロシさんが初めてだ。本国のドイツでも驚きだったと。

藤原:何も考えてなかったんだけど、先に言われていたら大文字に直していたかも知れないなぁ。僕のイメージだけど、小文字の方が優しい感じがするんですよね。だからメールとかでも、「Mr.Hiroshi」と大文字+小文字で来るより、全部小文字の方が友達っぽいなと自分では感じるかも。

――では、今回の「シュタイフ」もその優しい感じを表現したかった?

藤原:そうだね。なんとなく小文字の方が柔らかいかなと。なぜそうなのか本当の意味は分からないけれど、小文字の方が丸っこいところが多いよね。だから小文字を使うことが多いです。

――MA-1の袖の切り替えは、「グッドイナフ(GOOD ENOUGH)」でも使っていたディテールだ。そもそも、このディテールを思いついた経緯は?

藤原:これね。マット・ヘンズリー(Matt Hensley)というスケーターがやっていたんですよ。それを昔、写真で見て。切り替えしてあったのか、貼り付けていただけだったのか分からないんだけど、ここだけ違うフットボールマフラーみたいなのを付けていて。それを真似してやってみて、それ以来ですね。

――今回が第4弾だが、これまでの反響はヒロシさんの耳にも入っている?

藤原:いや、ないですね。褒めてもらいたいのに褒められない。あれすごい良かったとか誰からもない(笑)。

――毎回、完売していると聞いている。ところで、「フラグメント」としてコラボするときに大事にしていることは?

藤原:まずはやるかやらないかの時点でかなりふるいにかけるので、やるってことは「フラグメント」っぽいものが出来上がるってことだと思う。これは「フラグメント」っぽくないなとか「フラグメント」がやってもあんまり意味がないなってものは全部お断りするんですよ。

――「フラグメント」っぽくないものとは?

藤原:具体的に何?って言われても難しいけど、そのときのタイミングにもよるかな。

――ヒロシさんが1からデザインする場合もあれば、完成しているものだからという理由でロゴを載せるだけの場合もある。それはどう見極めている?

藤原:でも世の中のほとんどのものは完成しているから、グラフィックを載せるパターンが多いね。Tシャツも完成されたデザインだし、子ども用に一から袖をどうこうしようとかも最近はあんまりないから、世の中のいろんなプロダクトがほとんど完成形なのかもしれない。

――過去の「シュタイフ」にはぬいぐるみのお腹を裂いたラグもあった。

藤原:でもぬいぐるみ自体は元々あるものだし、そのぬいぐるみのお腹を裂くのをよく許してくれたな、とは思います(笑)。ありものだけど、誰も思いつかなかったこととかこんなものがあったらいいのになとか、そういうことが好きですね。だからルール以上のことや、やりすぎなことはあんまり好きじゃない。オーバーデザインのものは世の中にいっぱいあるじゃん。それが世の中ではやることももちろんあるんだけど。あるデザイナーにとってみれば、(今回の)Tシャツに毛皮を貼ろうとか、アップリケにしようとか考える人がいるのかもしれないけれど、僕はそれがオーバー過ぎるなと思ったりします。自分の中のちょうどいい塩梅があるんですよね。

――Tシャツに使った熊のグラフィックに「シュタイフ」の耳タグ(黄タグ)が付いていない。耳タグがないグラフィックも「シュタイフ」では初めてだそう。

藤原:そうそう。ここに耳タグがあると土産物みたいで興醒めするなと思ったので。もし耳タグを付けるデザインにしないといけないなら違うデザインにしましょうとは言いました。そこはこだわったと言ったら大袈裟だけど、アレンジしすぎちゃうと商業っぽくなりすぎる気がするんですよね。

――なるほど。今後デザインしてみたいものは?

藤原:自分からはあまりないかな。声をかけられたら考えるというか。デザインのことをやっていて自分では「これ最高だ」と思っても、そういうものこそあんまり人に言わないでひっそりやりたいタイプなんです。

――では、僕らがまだ目にしていない名作があると。

藤原:はい、自分の中にはあります。あとで誰かに発掘されたらうれしいなみたいな。

undefined PHOTO:GYO TERAUCHI

The post 「フラグメント」が“やり過ぎない”アイデアで「シュタイフ」の歴史を変えた 藤原ヒロシ的「ちょうどいい塩梅」とは? appeared first on WWDJAPAN.

新生「エーグル」CEO、「価値観を共有する全ての人々に届けることが使命」

 1853年にフランスで誕生した「エーグル(AIGLE)」の歴史は、機能性とスタイルを重視したハンドメイドのラバーブーツを生み出したことから始まる。創業以来自然との調和を大切にし、アウトドアのみならず都会でのアクティブなライフスタイルをサポートしてきた「エーグル」は、コロナ禍での人々の価値観の変化を追い風に躍進する。2019年にCEOに就任したサンドリン・コンセイエ(Sandrine Conseiller)氏に、「エーグル」が描くビジョンを聞いた。

自然との真の絆を求める
人々に届ける

WWD:改めて、「エーグル」の強みは?

サンドリン・コンセイエ「エーグル」CEO(以下、コンセイエCEO):CEOに就任してまず、アーカイブを振り返り、ブランドがたどってきた169年の歴史を理解するところから始めた。驚いたのは、「エーグル」が創業当初から「スタイル」と「機能性」を掲げていたことだ。そして、サステナビリティという言葉がなかった時代から商品の耐久性に価値を置いていた。今の時代にブランドに求められる価値観をすでにコアに持っていたことは、非常に嬉しい発見だった。

WWD:「エチュード スタジオ(ETUDES STUDIO)」創業者チームをアーティスティック・ディレクターに指名した狙いは?

コンセイエCEO:彼らが就任する以前は、アーティスティック・ディレクターというポジションを設けていなかった。人々は地球に優しいからではなく、それを身に着けたくて商品を買う。だからブランドの根幹にあるサステナビリティによりコミットするためには、同時にファッション性を高めることが必要だ。創業以来大切にしてきた都会と自然を融合させる感覚を維持しながら、商品をさらに魅力的なものにアップデートできるのが彼らだった。

WWD:ファーストコレクションの感想は?

コンセイエCEO:非常に良いスタートが切れたと思う。特に自然を感じる色やプリントが素晴らしい。コロナ禍でロックダウンを経験した人々の間で、自然とのつながりを感じたいという欲求が高まっている。昨今、多くのブランドが“地球のために”といったメッセージを打ち出しているが、「エーグル」は、自然との真の絆がある点で大きく違う。それを強調するようなコレクションだった。ターゲット層は、こちらから年齢や属性で絞らない。価値観を共有する全ての人々に届けることがブランドの使命だ。実際にそうした価値観に敏感な人々は増えており、ブランドの魅力を再発見してくれているように感じている。

顧客を巻き込みパーパスを実現

WWD:コロナ禍での商況は?

コンセイエCEO:21年は20年比で20%増、コロナ以前の19年比でも7%増という業績を残すことができた。利益も同様に、19年、20年を超えた。厳しい局面もあったが、この世界的なクライシスがブランドの進化を後押ししてくれた。19年にはファッションブランドとして初めて、フランス政府が定める「使命を果たす会社(Purpose driven company)」に認定された。

※2019年にフランスでPACTE法に基づき導入された、企業が利益以外の社会や環境目標を定款に定める新たな企業形態

WWD:「エーグル」のパーパスとは?

コンセイエCEO:「足跡以外の痕跡を残さずに、大いに経験し人生を謳歌するために」だ。つまり、あらゆる天候下で人々が外に出掛けることをサポートすると同時に、カーボンフットプリントの削減に向けて最大限の努力をするということ。このパーパスの下、温室効果ガスの排出量を30年までに少なくとも現在より40%削減することを目指し、環境に配慮した素材や再生可能エネルギーへの切り替えなどを進めている。また、本国で実施する中古品の販売などを通して、私たちのコミットメントに顧客を巻き込むことにも取り組んでいる。

WWD:今後の展望と日本市場に期待することは?

コンセイエCEO:「スタイル」と「機能性」を時代に合わせて発展させていく。またすでに述べたように、カーボンフットプリントの削減は優先事項の一つだ。ブランドの成長にとって、日本は非常に重要なマーケットだ。加えて、日本は「エーグル」が海外で初めて路面店を開いた場所でもある。日本は新しいトレンドが生まれる場所でありながら歴史を重んじるという点でユニークだ。歴史に裏打ちされたフランス製のクラフツマンシップとサステナビリティはまさに日本市場の顧客が求めるもので、原宿にオープンした旗艦店を拠点にブランドの価値観を発信していきたい。

「エーグル」の哲学をひもとく
様子を捉えた
ドキュメンタリー動画を制作

 YouTubeと日本公式インスタグラムでは、アーティスティック・ディレクターの3人が22年春夏コレクションを制作する過程を追ったドキュメンタリー動画を公開している。撮影は、ファッションドキュメンタリーを数多く手掛けるロイック・プリジェント(Loic Prigent)監督が行った。3人が新たなアイコンブーツ“アトリエ”を製造する工場を訪れる様子や、キーアイテムであるトレンチコートに施した工夫を語る様子を映している。

日本公式インスタグラム
アカウントを立ち上げ

 「エーグル」はこのほど、日本の顧客に向けた公式インスタグラムアカウントを立ち上げた。“エーグルメーカーズ”と名付ける、「まちと自然をつなぎ、寄りそう暮らし」を実現するクリエイターらの紹介や、日本で活躍するスタイリストを起用した日本の顧客に向けたコーディネート提案などのコンテンツを発信していく。

問い合わせ先
AIGLEカスタマーサービス
0120-810-378

The post 新生「エーグル」CEO、「価値観を共有する全ての人々に届けることが使命」 appeared first on WWDJAPAN.

HYDE、セカオワ、kemioまで 「60%」が仕掛ける“日本人アーティスト×アジアブランド”の異業種コラボが好調

 アジアブランドに特化したオンラインセレクトショップ「シックスティーパーセント(60%)」が仕掛ける“日本のアーティスト×アジアブランド”のコラボレーション企画が好調だ。これまでHYDE×「ハイパンダ(HIPANDA)」(中国)、セカイノオワリのFukase×「モアザンドープ(MORE THAN DOPE)」(韓国)、kemio×「ハヴィズム(HAVISM)」(韓国)など、50以上の限定コレクションを発売。商品の売れ行きだけでなく、アジア進出するアーティスト×日本進出を狙うアジアブランドの声を捉えた企画は、相乗効果のあるプロモーションとしても注目を集めている。

 さらに6月16日には、アジア発のハイエンドなストリートブランドを集約した新エリア「60% レベリー(60% LEVELY)」を同サイト内にオープン予定だ。アジアのストリートシーンを牽引するストアとして、さらにブランドのラインアップを強化する。国を超えての異業種コラボを成功に導くマッチングのポイントとは?さらに今アジアで注目される日本人アーティストとは?同コラボ企画を一手に担う木下程アライアンスマネジャーに話を聞いた。

WWD:日本人アーティストのアジア進出の魅力とは?

木下程アライアンスマネジャー(以下、木下):急成長するアジアマーケットの規模だ。K-ポップやKスタイルの世界的なトレンドから、日本のアーティストもグローバルに発信すべきと考えるエージェントや芸能事務所が増えている。日本は人口約1億2500万人と市場規模は小さくないが、世界に発信しないと同じ土壌では戦えないとう認識が広まりつつある。

WWD:反響があったコラボ企画は?

木下:2020年のクリスマスに発売したHYDE×「ハイパンダ」は、特に反響が大きかった。日本と中国だけでなく、ヨーロッパ圏の方からもDMがたくさん届くなど、かなりの盛り上がりを見せた。「ハイパンダ」も現地では知名度がかなり高いが、この時はレジェンドであるHYDEさん側からの流入が顕著だった。韓国の「FCMM」×日本の「ウィンダンシー(WIND AND SEA)」の企画では、ビジュアルにアイドルグループNCTの日本人メンバーであるSHOTAROさんを起用した。影響力のあるモデルのパワーも加わって、相乗効果が3倍に。急遽在庫を追加して、数量限定で再販するほど好評だった。

WWD:5月には韓国の「マハグリット(MAHAGRID)」×日本の「ヤンガーソング(YOUNGERSONG)」とのコラボコレクションも発売した。

木下:「ヤンガーソング」は、モデルやインフルエンサーとして活動する齋藤天晴さんが立ち上げたブランドで、Z世代から絶大な人気がある。「マハグリット」は、韓国のストリートブランドで日本にもファンが多い。コラボコレクションでは、両ブランドの定番のロゴをメーングラフィックにしたTシャツやパンツなどを発売した。

初日に目標売り上げの8割を達成

WWD:具体的な実績は?

木下:ブランドやアーティスト名は公表できないが、コラボ企画は発売日の盛り上がりが全体の売り上げを大きく左右する。アイテムの上代価格は、ブランディングなどを考慮して決めるが、平均すると1万円前後。基本的には受注生産なので「完売」はないが、反響の大きかった企画では、初日だけで数千万円を売り上げたときもあった。「マハグリット」×「ヤンガーソング」も予想以上の反響。初日だけで目標売り上げの8割を達成できた。

WWD:マッチングする上での重要なポイントは?

木下:最も大切なのは世界観が合うかどうか。知名度やフォロワー数も重要な要素のひとつではあるが、お互いの背景やブランディングの方向性は同じかなどを重視している。特にアーティストコラボの場合は、親和性のありそうなブランドを私たちから提案するといった仲介的な役割を担うことが多いが、そこからは両者の合意次第。企画段階で、売れ筋アイテムや価格帯などの情報は共有するが、お互いの意見を汲みつつバランスを取りながら企画を進めていく。

WWD:今アジアで人気の日本のアーティストは?

木下:YOASOBIやオフィシャル髭男dism、INIなど。現地にもファンが多いという理由で、一緒にやってみたいとコラボのリクエストをもらうことが多い。日本のアニメも人気なので、マンガやそのキャラクターとコラボしてみたいという話もたびたびいただく。

WWD:アジアで勢いのあるブランドは?

木下:「マハグリッド」や「エジュクロ(ASCLO)」、アクセサリーブランドなら「ジャストラバー(JUST LOVER.)」などの韓国ブランドが売れ筋。「シックスティーパーセント」でもラインアップの約8割が韓国ブランドだ。次に続くのが、ディープなアジアンカルチャーが魅力の台湾や香港ブランド。彼らの共通点は、“1枚でサマになる”ストリートブランド。グラフィックやロゴを使ったアイテムの提案が上手い。サイトの顧客属性は10代後半~20代後半が9割。平均購入単価は1万2000円前後だ。

ハイエンドなブランドをそろえた新エリアをオープン

WWD:以前に「日本ブランドのラインアップも強化したい」と話していたが進捗は?

木下:6月16日にアジア発のハイエンドなストリートブランドだけを集約した新エリア「60% レベリー(60% LEVELY)」をオープンする予定だ。立ち上げのタイミングには、日本の「エクストララージ(XLARGE)」、韓国の「アクメドラビ(ACME DE LA VIE)」、タイの「カーニバルバンコク(CARNIVAL BANGKOK)」など、計12のブランドをラインアップする。さらにローンチ後には、フリーペーパー「FLJ」と共同制作した「60% レベリー」独占号を部数限定で発行する。日本ブランドの取り扱いも本格的にスタートするので、日本ブランド×アジアアーティストのコラボ企画も実施していきたい。

WWD:あらためて、日本ブランドの強みとは?

木下:モノづくりの精神に限る。メイド・イン・ジャパンの品質は、他国からの印象も実際のクオリティーも秀でている。ただ、韓国や中国などのアジアでは、新生ブランドでも立ち上げから公式サイトを多言語化するなど、スタートからグローバル目線。全てのブランドではないが、日本ブランドも「まずは国内」ではなく「いきなり世界発信」でもいいと思う。

WWD:この1年間で扱うブランド数も約250から600に増えて急成長した。

木下:ブランド数を増やせば必ずしも売り上げが増えるわけではない。でも「シックスティーパーセント」でしか購入できないブランドを増やすことが、自社の強みにも、ブランド側のスケールメリットにもなる。来年には1000ブランドまで増やすのが目標。アジアブランドを日本に紹介する役割だけでなく、日本ブランドを海外に向けて発信する使命も担っていきたい。

The post HYDE、セカオワ、kemioまで 「60%」が仕掛ける“日本人アーティスト×アジアブランド”の異業種コラボが好調 appeared first on WWDJAPAN.

ウィメンズスニーカーのヒット請負人! 「エミ」に聞く“バズる別注”のヒケツ

 近年のスニーカーブームで、働く女性の足元にスニーカーは当たり前になった。「#KuToo」運動など社会機運の追い風もあり、窮屈なパンプスからスニーカーに履き変える女性はますます増えている。

 そのような流れの中、2015年の発足当初から“女性のスニーカー通勤の定着”を掲げてきたのがマッシュスタイルラボの「エミ(EMMI)」だ。ファッションビルを主販路にヨガやアウトドアテイストのアパレルをスニーカーとのスタイリングで提案し、スニーカー特化型業態の「スニーカーズ バイ エミ」も展開。ブランドの売り上げ全体においても、スニーカー(主に買い付け、一部オリジナル商品)がけん引している。

 毎シーズンのスニーカーのラインアップにおいて、別注商品が5〜10型を占める点も特徴だ。スポーティーなスニーカーを、ほどよくトレンドを取り入れたシティライクなデザインに仕上げている。「男性はレアスニーカーに夢中になることが多いけれど、女性が『欲しい』と思うポイントはもっと多様できめ細かい」と話すのは木下沙理菜マッシュスタイルラボ企画部「エミ」デザイナー。「手に取って初めて気が付くようなさりげないデザインや、コーディネートをしっかりイメージできるバランスも重要視しています」。

 別注商品のヒット実績を積み重ねてきたことで、「メーカーが新作スニーカーをウィメンズ市場でバズらせたいと考える際、まず先にウチへ(別注の)相談をいただくことが増えた」と語る。ウィメンズスニーカーのヒット請負人として存在感を高める「エミ」が考える、女性に支持されるスニーカーの条件とは。木下デザイナーに聞いた。

WWD:スニーカー提案を重視してきた理由は。

木下沙理菜マッシュスタイルラボ企画部「エミ」デザイナー(以下、木下):マッシュグループは近年、1週間の真ん中で疲れがたまりがちな水曜日を「ウェルネスウェンズデー」と呼び、「女性が美容と健康を楽しむ日」としてさまざまなプロモーションを行ってきました。その取り組みの一環として「エミ」は、ヒールで疲れた女性の足元を癒すというコンセプトで、通勤におけるスニーカー提案を主軸としたブランドとして発足しました。ただ当時は、スポーツメーカーのスニーカーを取り入れたコーディネートは男性には浸透しつつあったものの、女性の間では、ワンピースやスカートにはパンプスやフラットシューズを合わせるのがまだまだ当たり前でした。そのような状況を変えるべく、女性が本当にほしいと思える別注スニーカーを積極的に企画するとともに、大人の女性が真似したいと思えるようなスニーカースタイリングを、アパレルとトータルで提案してきました。

WWD:「エミ」でスニーカーが売れ行きがいい理由をどう分析する?

木下:周りのショップの一歩先をいくラインアップには自信があります。スニーカーにおいては、メンズのトレンドをウィメンズが追従することが多いので、買い付け担当には男性社員もいます。「ロエベ(LOEWE)」とのコラボで人気に火がついてる「オン(ON)」も、ウィメンズショップでは「エミ」が他に先がけて取り扱いを始めました。豊富なラインアップを強調するため壁面にずらりとスニーカーを並べている店舗もあり、スニーカー好きの男性の興味を引いて入店されるカップルも多いです。私が店舗スタッフをしていたときも、彼氏が彼女に「これはイケてる」「買った方がいいよ」と勧め、成約に至るケースも多く目にしてきました。展示会では、男性の雑誌編集者や取引先の営業担当からは、「大きいサイズがあったら欲しかったのに!」と残念がる声がよく聞かれます(笑)。

WWD:これまでにどんな別注のヒット商品が生まれた?

木下:昨年秋、ある世界的なスポーツメーカーがネクストブレイクとして期待をかけていたモデルを発売したのですが、蓋を開けてみたら商品の販売が芳しくありませんでした。そんな中、「エミ」の別注モデルは発売から2週間で2500足以上売れるなど絶好調だったんです。メーカー側がうちの売れ行きの進捗を見て、「こんな店は世界のどこにもない」と仰天していました(笑)。そのほかにもオールベージュで別注した「コンバース(CONVERSE)」の“オールスター100”(1万1000円、19-20年秋冬)や「キーン(KEEN)」の定番サンダル“ユニーク”(1万3200円)は、いずれも数日で品薄もしくは完売になるなど、ご好評をいただきました。

WWD:別注スニーカーの企画のキモは?

木下:まず大事なのはファーストインプレッション。スポーツメーカーのスニーカーは、女性が気軽に日常のファッションの中に取り入れるには少々スポーティーすぎるものが多いなと感じます。近未来的なパキッとした配色ではなく、トーナル(同系統の配色)で洗練された雰囲気に仕上げています。

 女性のお客さまは手にとった後も、ディテールまでまじまじと見られます。そのためデザイン面では、光沢をつけるにしてもギラギラとした輝きではなくサテンっぽい華やかなつやめきだったり、一部をスエード素材で切り替えてみたりといった、繊細なこだわりを大切にしています。「このバランスなら、靴ひもはコットンじゃなくてポリエステルがいいよね」というような、理屈ではなく直感から生まれるチョイスも、女性のお客さまには「かわいい」と共感いただけるポイントだと考えています。

WWD:トータルスタイリングではどう提案する?

木下:スニーカーそのものの出来栄えだけでなく、「体の線がきれいに見えるか」「コーディネートにすんなりなじむか」といった点も重要。パンプスを履いたときのように背筋がしゃんと見えるよう、ヒールは高めに設計することが多いです。別注スニーカーの企画は、同じシーズンに販売するアパレルの1年以上前からスタートするものもあります。ですから、別注スニーカーと配色をリンクさせたアパレルも企画しています。別注スニーカーとアパレルでトータルスタイリングした店頭のVMDやビジュアルの訴求がうまく行くと、セット買いが顕著に増えます。スニーカー単体で見たときにはない、「これかわいい!」という化学反応が起こるんでしょうね。

WWD:今後の展望は?

木下:「エミ」のお客さまはスニーカーを取り入れたコーディネートを自由に楽しんでいて、スニーカーの民主化という一つのゴールは達成できたと思っています。これからはもっと視野を高く持ち、「エミ」発のブームや社会現象を作り出せたらと考えています。

The post ウィメンズスニーカーのヒット請負人! 「エミ」に聞く“バズる別注”のヒケツ appeared first on WWDJAPAN.

ウィメンズスニーカーのヒット請負人! 「エミ」に聞く“バズる別注”のヒケツ

 近年のスニーカーブームで、働く女性の足元にスニーカーは当たり前になった。「#KuToo」運動など社会機運の追い風もあり、窮屈なパンプスからスニーカーに履き変える女性はますます増えている。

 そのような流れの中、2015年の発足当初から“女性のスニーカー通勤の定着”を掲げてきたのがマッシュスタイルラボの「エミ(EMMI)」だ。ファッションビルを主販路にヨガやアウトドアテイストのアパレルをスニーカーとのスタイリングで提案し、スニーカー特化型業態の「スニーカーズ バイ エミ」も展開。ブランドの売り上げ全体においても、スニーカー(主に買い付け、一部オリジナル商品)がけん引している。

 毎シーズンのスニーカーのラインアップにおいて、別注商品が5〜10型を占める点も特徴だ。スポーティーなスニーカーを、ほどよくトレンドを取り入れたシティライクなデザインに仕上げている。「男性はレアスニーカーに夢中になることが多いけれど、女性が『欲しい』と思うポイントはもっと多様できめ細かい」と話すのは木下沙理菜マッシュスタイルラボ企画部「エミ」デザイナー。「手に取って初めて気が付くようなさりげないデザインや、コーディネートをしっかりイメージできるバランスも重要視しています」。

 別注商品のヒット実績を積み重ねてきたことで、「メーカーが新作スニーカーをウィメンズ市場でバズらせたいと考える際、まず先にウチへ(別注の)相談をいただくことが増えた」と語る。ウィメンズスニーカーのヒット請負人として存在感を高める「エミ」が考える、女性に支持されるスニーカーの条件とは。木下デザイナーに聞いた。

WWD:スニーカー提案を重視してきた理由は。

木下沙理菜マッシュスタイルラボ企画部「エミ」デザイナー(以下、木下):マッシュグループは近年、1週間の真ん中で疲れがたまりがちな水曜日を「ウェルネスウェンズデー」と呼び、「女性が美容と健康を楽しむ日」としてさまざまなプロモーションを行ってきました。その取り組みの一環として「エミ」は、ヒールで疲れた女性の足元を癒すというコンセプトで、通勤におけるスニーカー提案を主軸としたブランドとして発足しました。ただ当時は、スポーツメーカーのスニーカーを取り入れたコーディネートは男性には浸透しつつあったものの、女性の間では、ワンピースやスカートにはパンプスやフラットシューズを合わせるのがまだまだ当たり前でした。そのような状況を変えるべく、女性が本当にほしいと思える別注スニーカーを積極的に企画するとともに、大人の女性が真似したいと思えるようなスニーカースタイリングを、アパレルとトータルで提案してきました。

WWD:「エミ」でスニーカーが売れ行きがいい理由をどう分析する?

木下:周りのショップの一歩先をいくラインアップには自信があります。スニーカーにおいては、メンズのトレンドをウィメンズが追従することが多いので、買い付け担当には男性社員もいます。「ロエベ(LOEWE)」とのコラボで人気に火がついてる「オン(ON)」も、ウィメンズショップでは「エミ」が他に先がけて取り扱いを始めました。豊富なラインアップを強調するため壁面にずらりとスニーカーを並べている店舗もあり、スニーカー好きの男性の興味を引いて入店されるカップルも多いです。私が店舗スタッフをしていたときも、彼氏が彼女に「これはイケてる」「買った方がいいよ」と勧め、成約に至るケースも多く目にしてきました。展示会では、男性の雑誌編集者や取引先の営業担当からは、「大きいサイズがあったら欲しかったのに!」と残念がる声がよく聞かれます(笑)。

WWD:これまでにどんな別注のヒット商品が生まれた?

木下:昨年秋、ある世界的なスポーツメーカーがネクストブレイクとして期待をかけていたモデルを発売したのですが、蓋を開けてみたら商品の販売が芳しくありませんでした。そんな中、「エミ」の別注モデルは発売から2週間で2500足以上売れるなど絶好調だったんです。メーカー側がうちの売れ行きの進捗を見て、「こんな店は世界のどこにもない」と仰天していました(笑)。そのほかにもオールベージュで別注した「コンバース(CONVERSE)」の“オールスター100”(1万1000円、19-20年秋冬)や「キーン(KEEN)」の定番サンダル“ユニーク”(1万3200円)は、いずれも数日で品薄もしくは完売になるなど、ご好評をいただきました。

WWD:別注スニーカーの企画のキモは?

木下:まず大事なのはファーストインプレッション。スポーツメーカーのスニーカーは、女性が気軽に日常のファッションの中に取り入れるには少々スポーティーすぎるものが多いなと感じます。近未来的なパキッとした配色ではなく、トーナル(同系統の配色)で洗練された雰囲気に仕上げています。

 女性のお客さまは手にとった後も、ディテールまでまじまじと見られます。そのためデザイン面では、光沢をつけるにしてもギラギラとした輝きではなくサテンっぽい華やかなつやめきだったり、一部をスエード素材で切り替えてみたりといった、繊細なこだわりを大切にしています。「このバランスなら、靴ひもはコットンじゃなくてポリエステルがいいよね」というような、理屈ではなく直感から生まれるチョイスも、女性のお客さまには「かわいい」と共感いただけるポイントだと考えています。

WWD:トータルスタイリングではどう提案する?

木下:スニーカーそのものの出来栄えだけでなく、「体の線がきれいに見えるか」「コーディネートにすんなりなじむか」といった点も重要。パンプスを履いたときのように背筋がしゃんと見えるよう、ヒールは高めに設計することが多いです。別注スニーカーの企画は、同じシーズンに販売するアパレルの1年以上前からスタートするものもあります。ですから、別注スニーカーと配色をリンクさせたアパレルも企画しています。別注スニーカーとアパレルでトータルスタイリングした店頭のVMDやビジュアルの訴求がうまく行くと、セット買いが顕著に増えます。スニーカー単体で見たときにはない、「これかわいい!」という化学反応が起こるんでしょうね。

WWD:今後の展望は?

木下:「エミ」のお客さまはスニーカーを取り入れたコーディネートを自由に楽しんでいて、スニーカーの民主化という一つのゴールは達成できたと思っています。これからはもっと視野を高く持ち、「エミ」発のブームや社会現象を作り出せたらと考えています。

The post ウィメンズスニーカーのヒット請負人! 「エミ」に聞く“バズる別注”のヒケツ appeared first on WWDJAPAN.

アライアCEOが語る 「“宝”を引き継ぐことは誰だって怖い。だけど恐れず前に進むとき」

 「アライア(ALAIA)」は“、ファッション界の宝”という表現がふさわしいブランドのひとつだろう。多くの人から慕われ、尊敬されたデザイナー、アズディン・アライア(Azzdine Alaia)が亡き後の「アライア」のビジネスがパンデミックを経て本格的に動き出した。5月には日本初の直営店を東京のギンザシックス(GINZA SIX)にオープン。来日したミリアム・セラーノ(Myriam Serrano)アライア最高経営責任者(CEO)にそのビジョンを聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):あなたがコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)傘下であるアライアのCEOに就任した6ヶ月後にパンデミックが始まりました。この2年間をどのように過ごしましたか。

ミリアム・セラーノ=アライア最高経営責任者(以下、ミリアム):店舗が営業できなかった時期は、オンラインビジネスも大きくなかったので、それこそ本当にビジネスがいったん閉じました。外か見ると静寂に見えたでしょうが、ブランドの中は実に活発でした。毎日遅くまでオンラインで会議を重ね、皆から次々投げかけられる多くの質問に答えて議論をする。ブティックでどう対応すればいいのか、ブランドはどうしたら続けることができるのか?マスクの提供はどのようにするのか?などなど。

 そして、ブランドのルーツを理解することに時間をかけ、コレクションを再編成しました。結果的にコレクションは年4回から2回へ縮小し、その分より精度の高いものに。これはパンデミックがなかったら難しかったかもしれません。

WWD:スタッフは何人いますか?

ミリアム:140人です。小さな会社ですが、大きなひとつの家族になりつつあります。

WWD:故アズディン・アライアは生前、モデルを始め多く人たちから「私たちのパパ」と呼ばれ家族のように慕われていました。

ミリアム:私は彼が残した、「アライア」という名前の “ファミリー”が大好きです。彼はもういませんが、会社には彼と長年過ごしてきた人が大勢いてたくさんのことを私に教えてくれます。互いを尊重し信頼する “ファミリー”であることはとても重要。この存在を大切にして、新しいメンバーを加えることで新しいエメルギーを統合し、新しい価値観を作ってゆきたい。何ごとにおいても高いレベルを求めるブランドだからとても難しいですけどね。

WWD:「アライア」というブランドの強みをどう解釈していますか?

ミリアム:強みはある意味、ファッションを超えた存在であること。アズディンは芸術家であり、女性の体を彫刻のようにとらえ昇華しました。流行を超えた「美」そのものを生み出しファッションと融合していた。だから時代を超越し、流行遅れにならないのです。本当に強いブランドですが、攻撃的なブランドではありません。女性を美しくすること、そのための強さです。「アライア」を愛用している女性を見るとわかりますが、彼女たちは教養があり、自立した女性です。

 もうひとつの強みは、完璧なカッティングと、素材と生産のクオリティの高さです。品質はとても重要です。バッグと靴は、すべてイタリアとフランスで作っています。イタリアでの生産は1980年代初めから40年以上、同じ会社と組んでおり、当時18歳だった工場のオーナーには今では4人の子どもがいて、彼らも仕事を手伝っている。まさにファミリーです。

WWD:2022年春夏コレクションからは、ピーター・ミュリエ(Pieter Mulier)が新クリエイティブ・ディレクターに就任しました。ピーターの仕事をどう評価していますか?

ミリアム:ピーターはメゾンを内側から深く理解しています。彼はアズディン時代の「アライア」のヴィンテージ・コレクターであり、アートが大好き。優秀な技術者であり、キャリアが豊富でグローバルな視点を持っています。そして、女性に対するイメージやメッセージに独自の興味深い見解を持っています。課題は、ルーツを重んじ、最高のレベルを保ちながら新しいものを提供し続けることであり、それは関わる私たち全員の課題です。正しい方法でスタートを切れたと思いますが、継続が大切です。

WWD:就任にあたってピーターに出したリクエストは?

ミリアム:リクエストというより「恐れないで」と伝えました。「アライア」はファッション界の宝。これを引き継ぐことは誰だって、正直怖い。それだけの価値と責任があるものだから。ピーターはそのことを十分にわかっていました。だから十分議論をした後に「敬意を持って、そして怖がらないで。私たちは前に進まなければならないから」と伝えました。今は勤勉で自分に厳しい彼のビジョンを尊重し、前に進むときです。

WWD:今後のビジネス戦略は?

ミリアム:ブランドの認知度をあげること。そのためにより多くの人にオープンに語りかけること。特に若い世代に向けて私たちのアイデアを知ってもらう必要があります。ギンザシックスに直営店を開いた理由もそこにあります。ピーターによるコンセプトを反映した世界初のブティックで、ストアデザインは建築家のソフィー・ヒックス(Sophie Hicks)が手掛けています。日本には長年良好な関係にある顧客がたくさんいます。新しい「アライア」を紹介するには絶好のタイミングでした。今年はニューヨークと中国にも直営店を開く予定です。2年後にはパリで大きなプロジェクトを計画しています。

WWD:あなた自身のキャリアについて教えてください。「セリーヌ(CELINE)」や「ニナ リッチ(NINA RICCI)」「クロエ(CHLOE)」で経験から得たことは?

ミリアム:コレクション制作の各工程に関わり、デザインから生産、コミュニケーションといった一連の流れとその複雑さを理解したことは財産になっています。技術と同じくらいスケジュール通りに進めることも重要。ビジネスを理解しビジョンを持つことと同じくらい、関わる多くの人たちと強い絆を築くことも重要といった具合にね。コミュニケーション・ディレクターとしてはグローバルブランドの視点を学びました。

WWD:アクセサリー分野でのキャリアが豊富ですがアクセサリービジネスで成功する秘訣とは?そしてそれを「アライア」でどう生かす?

ミリアム:アクセサリーで成功するためにはまず、自分のブランドと他のブランドの違いを理解すること。ブランドロゴなのか、何かしらのコードなのか、ブランドの強みを理解し、そのエッセンスをアクセサリーに取り入れます。「アライア」の場合は「シルエット」です。一目で違いがわかる独特なシルエットであることが大切です。そしてそれをお客さんが認知してくれるまで継続すること。ファッションビジネスは、コレクションを発表するとすぐ次へと意識が向かいがち。喝采を受けたコレクションでも最初の反応に甘んじることなく、繰り返し伝えることが大切です。

The post アライアCEOが語る 「“宝”を引き継ぐことは誰だって怖い。だけど恐れず前に進むとき」 appeared first on WWDJAPAN.

新生「セルジオ ロッシ」が掲げるハイパーフェミニン ヘリテージと女性性に焦点を当てる新アーティスティック・ディレクター

 「セルジオ ロッシ(Sergio Rossi)」は1月、新アーティスティック・ディレクターにエヴァンジェリー・スミルニォタキ(Evengelie Smyrniotaki)を任命した。スミルニォタキはギリシャ・アテネ出身。ファッション・スタイリストやインフルエンサーとして活動し、現在も自身が立ち上げたファッションブログ「スタイル ヒロイン(Style Heroine)」のアートディレクターを務めている。「セルジオ ロッシ」ではクリエイティブとスタイリング、広告キャンペーン、コンテンツなどのディレクションを手掛ける。

 同氏は、就任後初のカプセルコレクションとなる“エヴァンジェリー・スミルニォタキ × セルジオ ロッシ”を、2月のミラノ・ファッション・ウイーク会期中にプレゼンテーションで発表した。コレクションはブランドの根幹である“女性的なアティチュード”に重点を置き、丸みを帯びたチャンキーヒールや華奢なミュール、鋭いスティレットヒールのデザインで、輪郭のラインが際立つシェイプが特徴的。PVCやサテンクレープなど光沢のある素材を使い、鮮やかなカラーで彩ったシューズは、女性性を謳歌するハイパーフェミニンだ。今年で創業71年となる「セルジオ ロッシ」は、スミルニォタキと共にブランドの次なるステップアップを見据える。初めてシューズブランドを手掛けるスミルニォタキに、ファーストコレクションや今後の展望について聞いた。

デジタルでの表現を強化
「何も変えない」もの作り

——「セルジオ ロッシ」から現職に任命され、最初にどう思った?

エヴァンジェリー・スミルニォタキ(以下、スミルニォタキ):大きな喜びと共に、私と「セルジオ ロッシ」にとっての新たな挑戦に興奮したわ。コンテンツ制作を通じてブランドのチームとは以前から交流があったし、個人的にも憧れていたから、本当に光栄だったの。ファーストコレクションを発表できて夢心地よ。

——あなたが手掛ける新生「セルジオ ロッシ」をどのように定義する?

スミルニォタキ:ハイパーフェミニンね。女性的でセンシュアルなシューズというブランドのDNAを継ぎながら、より現代的でフェミニニティーな側面を強く押し出していきたいの。1951年に創業した「セルジオ ロッシ」には、豊富なノウハウとヘリテージが基盤にあるから、品質とクラフトマンシップは世界最高峰だと自信を持って言える。だから、それらを生かして脚の延長となる快適なシューズを届けていきたいわ。

——ファーストコレクションの制作にあたって、意識したことやこだわりのポイントは?

スミルニォタキ:まずはミニマル、シンプリシティ、洗練さという3つのキーワードを掲げたの。ラインストーンを散りばめた装飾的なピースでさえ、派手さではなくミニマリズムな美を表現したかった。装飾を削ぎ落とすことで、曲線的なラインやシャープで華奢なヒールのシェイプを強調し、シューズそのものと脚を美しく見せることにこだわったわ。そして、快適な履き心地にも強くこだわっているの。例えば、ウェッジヒールのシューズは「セルジオ ロッシ」のアーカイブの中で最もヒールが高いモデルの一つだけれど、足をしっかりと支えるデザインとアンクルストラップ、それにシューズの軽さによって、長時間履いていても疲れにくいシューズを作ることができたのよ。この快適さは、熟練した職人がハンドメイドで仕上げているからこそ。実際に履いてみて、ブランドのクラフトマンシップをより多くの人に届けたいわ。

——広告キャンペーンやコンテンツのディレクションについての方向性は?

スミルニォタキ:現代的な表現にこだわっていきたい。コンテンツ・クリエーターとしての私の経験を生かして、デジタルでの表現や顧客とのコミュニケーションを強化するつもりよ。インクルシビティを念頭に置いて、より幅広い女性層にブランドの魅力を知ってもらえるようにディレクションしていきたいわ。

——あなたが加わったことで、ブランド全体の方向性は今後どのように変わる?

スミルニォタキ:正直なところ、何も変えたいとは思わないの。71年という長い歴史を持つ「セルジオ ロッシ」のヘリテージを継承し、この世界観を継続させることが私の役割よ。デザインにおいても豊富なアーカイブがあるから、それらを踏襲しながらハイパーフェミニンなシェイプを追求し、現代的でタイムレスなピースを制作していきたいの。抜根的な変革をせずとも、「セルジオ ロッシ」は時代を超越する美しさを持ち合わせたブランドだから。

The post 新生「セルジオ ロッシ」が掲げるハイパーフェミニン ヘリテージと女性性に焦点を当てる新アーティスティック・ディレクター appeared first on WWDJAPAN.

アダストリア木村社長の人材育成術 「みんな社長を経験するべき」

 「社員みんなに、自分でジャッジするという経験をさせたい」「失敗もたくさんするべき」。アダストリアの木村治社長はそう語る。社長就任から1年が経過し、5月26日には代表取締役に就いた。オーナーである福田三千男会長も引き続き代表権を持ち、他の取締役3人を含めたチーム経営に手応えを得ている。後進育成はオーナー企業にとって共通の課題であり、同社もかつては短期で社長交代を繰り返し、福田会長が陣頭指揮に復帰するという経緯もあった。苦い経験を経て、経営層にも社員にも次世代リーダーが育っているアダストリア。木村社長に、人材育成の秘訣や今後のビジョンを聞いた。

――コロナ禍での社長交代だったが、業績も回復し、チーム経営で成果を出している。経営する上で重視していることは。

木村治社長(以下、木村):経営ができる人を増やしたいと思っている。どんな人も社長を一度やってみた方がいいし、自分でジャッジをするという経験をしてみてほしい。それは、僕自身がかつて自分のお金で会社を経営していたからこそ思うこと※1。自分がトリニティアーツの社長だった時代を振り返って、「あのときこうだったらよかったのに」と思うことを、子会社の社長に今経験させている。自分でジャッジしていないと、たとえ失敗しても責任を感じない。失敗を経験させることが次世代の経営者を育てる上では大切だ。

※1:木村社長は1990年に福田屋洋服店(現アダストリア)に入社し、2001年に一度退社、福岡市で自身の会社ワークデザインを設立している。07年にワークデザインはドロップと経営統合し、これが後にアダストリアに合併されるトリニティアーツになった

――EC専業ブランドを手掛けて好調な子会社BUZZWITは、子ども服のECブランドを運営するオープンアンドナチュラルを子会社化し(アダストリアにとっては孫会社化)、5月から連結に加えている。この判断も子会社経営陣にさせたのか。

木村:子会社の経営がうまく回り、利益が出ていてキャッシュがある。これをどう使うかとなったとき、全て親会社であるアダストリアが吸い上げるという手法もあり得るだろう。ただ、会長の福田は「お前たちはどう会社を成長させたいのか」とBUZZWITの社長や経営陣に聞いている。M&Aをするという決断は子会社社長一人ではなかなかできるものではないだろうが、BUZZWITを一気に育てるなら、M&Aもいいんじゃないかと福田が背中を押しした。福田は「人を育てたい」という思いが人一倍強い。僕自身もそうやって福田に育てられた。

――M&Aは、26年2月期を最終年度とする新中期経営計画の柱の1つにも据えている。

木村:今までM&Aをしてきた中には失敗もあったが、当社は成功している例(アリシアやバビロンなど)も多い。M&Aによって人材交流が進み、新しい知見が入ってきたことがうまく作用している。(今後M&Aを進めていく中で)アパレルという垣根は関係ない。ポイントとトリニティアーツが一緒になったときに、既に「アパレルだけでなくライフスタイル雑貨も手掛ける」ということになっていた。当社のコーポレートスローガンである“Play Fashion!”のファッションは、(字義通りのファッションではなく)さまざまな楽しいことを指す言葉。M&Aによって2月に連結子会社化した飲食業のゼットンは(カフェなどを軸にした)公園再生事業にも取り組んでいる。その中で、将来のさまざまな可能性のために温泉やサウナの企画・設計などを先日定款に加えて一部で報道もされたが、現時点で何か計画があるというわけではない。

――ゼットンのM&Aでは、具体的にどんなシナジーを想定しているのか。

木村:(M&Aの対象として)飲食業はいくつも候補があった。その中で、ハワイアンカフェ「アロハテーブル」などを運営するゼットンが最もアダストリアと親和性があると判断した。ゼットンはまだECが手付かずのため、そこは純粋に売り上げにプラスオンとなるはずだ。「アロハテーブル」のロコモコ丼を宅配で届ける仕組みなどを設計したい。ただし、ゼットンは名古屋や東京にしかまだ店舗がない。実店舗とECが生む相乗効果がアダストリアの強みであり、ゼットンも今後実店舗出店とECの2軸で成長させていく。ゼットンと「スタッフボード」※2を絡めても面白いだろう。

※2:アダストリアの自社ECモール「ドットエスティ」内にある、販売員の着こなし共有コンテンツ

――自社ECモール「ドットエスティ(.st)」を他社にも開放するなど、業界のプラットフォームといったあり方を目指して進んでいる印象だ。

木村:「ドットエスティ」のオープン化はまだテスト段階だが、業界の共通課題については、僕らの世代の経営者はなるべくシェアして解決していくべきだと思っている。そうでなければ業界として持続可能ではない。例えば、物流もECも各社の共通課題だ。ECはシステムを構築するのに莫大な費用がかかるが、「本当にうちの会社だけでこの負担のもと構築するべきなのか」「業界でまとまって、シェアしながら作っていくべきではないのか」といったことを考える。なるべく業界内の横のつながりで、課題をシェアできるようなあり方を考えていきたい。業界内でM&Aも始まっているが、それがグループ化にもつながる。まずはECを台風の目として、こうしたシェアの動きが広がるのではないかと見ている。どことどう組むかは重要だ。(グループ化が始まったとき)僕たちはリーディングカンパニーでありたいし、業界全体として、ファッションビジネスの社会的地位を上げていく必要性がある。

The post アダストリア木村社長の人材育成術 「みんな社長を経験するべき」 appeared first on WWDJAPAN.

VERDYが語る「ウェイステッド ユース」×「バドワイザー」への思い 「コラボ缶が初めて手に取る僕のアイテムになれば」

  グラフィックアーティストのVERDY(ヴェルディ)は、これまで数多くのコラボレーションを成功に導いてきた。5月には、“The King of Beers”と称されるアメリカ発のビールブランド「バドワイザー(BUDWEISER)」とのコラボを実現させ、自身の若い頃からの夢を一つ叶えた。

 今回のコラボはVERDYを代表するアートプロジェクト「ウェイステッド ユース(WASTED YOUTH)」との協業で、同プロジェクトを象徴するチューリップのグラフィックなどを落とし込んだ355mL缶と355mL缶の6本パッケージ、そして330mL瓶を用意した。缶は全国のコンビニやスーパー、量販店、アマゾンなどで販売中で、瓶は7月1日前後に発売する。東京・青山の「ピザ スライス2(PIZZA SLICE 2)」はコラボを記念して約1ヶ月間、店内に「ウェイステッド ユース」×「バドワイザー」のクラフトボックスを設置するなど、特別仕様になっている。

 日本全国規模という、VERDY史上最大級のプロジェクトとなった今回のコラボは、一体どのような経緯で実現したのか。東京・青山の「ピザ スライス2(PIZZA SLICE 2)」で「バドワイザー」とピザを片手に語ってもらった。

ーーコラボの経緯を教えてください。

VERDY:数年前に、知人経由で「バドワイザー」の担当者からコンタクトがあったんです。その時は、いろいろなアーティストが「バドワイザー」をテーマに作品を作るプロジェクトのオファーでした。「バドワイザー」は自分にとって特別なビールだったのでうれしかったんですけど、それよりも缶のデザインがしたいことを正直に伝えたら、規模感的にもすぐに実現できるものではないからと、保留になりました。

その後、新型コロナウイルスの流行で自分自身と見つめ直す時間が生まれました。以前は世界中を飛び回って「ガールズ ドント クライ(GIRLS DON'T CRY)」や「ウェイステッド ユース」、自分のキャラクター"ヴィック(VICK)”を海外に持っていく感覚だったのに、コロナ禍を経て、海外での経験を集約して新しいことを始めたいと思うようになったんです。本当に自分がやりたいことは何か、「ウェイステッド ユース」で一番ワクワクするプロジェクトは何かを考えたとき、「バドワイザー」の缶をデザインすることが頭に浮かびました。すぐに「バドワイザー」に電話して、「やっぱり缶をデザインしたいです。どうにかなりませんか?」って(笑)。こうして本当に実現に至りました。

ーー「ウェイステッド ユース」のロゴは、「バドワイザー」のロゴのサンプリングですよね?

VERDY:もともとは、「バドワイザー」のロゴをモチーフにしていたボストン・ハードコアバンドのギャング・グリーン(GANG GREEN)のオマージュです。「ウェイステッド ユース」は、僕が10~20代前半の頃に影響を受けたものをテーマに作っているプロジェクトなんですけど、「バドワイザー」もギャング・グリーンも好きだったので、「バドワイザー」の旧ロゴをサンプリングしました。だから初めて「バドワイザー」からコンタクトがあった時は、仕事のオファーではなく怒られると覚悟しましたね(笑)。サンプリングしていた側がオフィシャルとコラボするなんて、滅多にないことだと思います。

ーー立体物である缶や瓶をデザインする難しさはありましたか?

VERDY:頭の中に完全なイメージがある状態からスタートしていたので、コラボのOKが出れば数時間後にはデータを送れるくらいのテンションでしたね。オリジナルに忠実なデザインにしつつ、どこで自分らしさを出すかにこだわった結果、あえて横向きのデザインにしました。これは、自分が影響を受けてきた1980年代の「バドワイザー」の缶のデザインが横向きだったことに着想しています。アパレルでも、横向きのデザインのアイテムはなかなかないので、パッと見ただけで「ウェイステッド ユース」とのコラボだと分かるなと。

ーー全国に流通する商品なので、購買意欲を喚起させる商業的なアプローチも重要です。自分の思い描くデザインを貫けましたか?

VERDY:全てのデザインに言えるのですが、誰かに向けてというよりも自分らしいデザインを心掛けています。本気で取り組むから、お客さんに届いてきたと思っています。

ーーここまでのビッグプロジェクトは初めて?

VERDY:「ユニクロ(UNIQLO)」とのコラボも全国規模でしたけど、小さな町のコンビニでも「アマゾン(AMAZON)」でも買えるほど、本当にどこでも手に入るという意味では初めてかもしれません。これが今回の目的の一つでもありました。中学生の時、NIGO®さんの「ア ベイシング エイプ®(A BATHING APE®)」が「ペプシコーラ(PEPSI-COLA)」とコラボして、服は手に入れられなかったけど「ペプシコーラ」はコンビニで買えたんですよ。これと同じように、今回のコラボ缶はビールなので未成年は買えませんが、インスタグラムは見ているけどポップアップに行けなかったり、お金がなくて買えなかったりした人たちにとって、僕のアイテムを初めて手に取るきっかけになったらうれしいです。できる限りたくさん売りたいし、いろいろな人に届いてほしいんですよ。もしリセールサイトで売ろうとしている人がいても、全国流通しているので売れないと思います。そうしたら「売れないから飲んじゃうか。え、『バドワイザー』ってこんなおいしいの?」ってなってくれたらハッピーですね。

ーーイメージムービーでは缶を潰すシーンが映し出されていますね。。

VERDY:「ウェイステッド ユース」が初めてポップアップをオープンした時、ポスターを刷るお金もないくらいの状態でした。でも、どうしてもインスタレーション的なことをしたくて、コンビニで買ってきた「バドワイザー」の缶を潰して造花を添えて飾っていましたね。飲み終わった缶は潰してもいいし、単体で飾ってもいいし、花を挿してもかわいいと思います。

ーーフード系のコラボは以前にも経験はありますか?

VERDY:代々木上原のフレンチレストラン「エテ(ETE)」と、不定期にコラボケーキやチョコを作ってはいますね。フードでいうと、今年の夏に初めての自分のお店としてピザ屋を大阪にオープンします。僕のアイテムも販売し、ギャラリーも併設する予定です。

ーー今後も「バドワイザー」と何か計画していますか?

VERDY:個人的には一度きりよりも定期的にコラボがするような関係性が好きなので、来年以降も缶をデザインしたいし、いつかイベントを一緒に開催したい。長くリレーションを続けていきたいですね。僕のピザ屋で出すビールは、もちろん「バドワイザー」です。

The post VERDYが語る「ウェイステッド ユース」×「バドワイザー」への思い 「コラボ缶が初めて手に取る僕のアイテムになれば」 appeared first on WWDJAPAN.

“セクシーロボット”の創造主・空山基にロングインタビュー 半世紀近く筆を走らせ続けた創造の源泉

  空山基、75歳。1970年代から女性が放つ官能的な美しさとロボットのような金属的な質感を併せ持つ“セクシーロボット”を描き続け、今なお日本や世界のアートシーンの最前線で活躍するリビングレジェンドだ。同氏はアートの枠を飛び越えた活躍を見せており、近年ファッションブランドからも引く手あまた。「ディオール(DIOR)」のキム・ジョーンズ(Kim Jones)やステラ・マッカートニー(Stella McCartney)からは直々にラブコールが届き、コラボを実現させている。

 それでも同氏は、「自分のことをアーティストだと思ったことは一度もない」と語る。では、なぜ半世紀近くも筆を走ら続けてきたのか。創造の源泉を生い立ちから探り、作品に対するルールやコラボの魅力、そして表に出ることのなかった数々の秘話まで、何でも検索できる今の時代だからこそ、膝を突き合わせて語ってもらった。

「いつだって現実はどうってことないんだよ」

――どのような幼少期を過ごし、絵を描いていたのでしょうか?

空山基(以下、空山):生まれは四国の愛媛県今治市だね。当時の四国は文化が果つるところだったから、芸術系の人は一切いなくて、貧乏で産業もない閉鎖された城下町。若い頃は文化の話が誰にも通じないことが嫌で嫌で、なんとか脱出したかった。話し相手を見つけたかったけど、東京に出ても、外国に行っても、同じ空気が吸えて波長の合う人はそうそういなかったね。

小さい頃から絵を描いてはいたけど、大人っぽかったから評価されなかったし、学校には親が代わりに描いていると思われていたよ。例えば運動会がテーマだったとき、ほかの子たちは走ってる人を描くのに、私は人間の頭越しの運動場の絵を描いた。周りには不思議がられたけど、ほかの子たちが描いたのは運動会のイメージで、私は自分の目で捉えた現実を描いただけ。こうやってひねくれていたから、絵がうまくてもコンクールでは評価されなかった。そんな時、自分でも絵を描く小学校の担任の先生が初めて褒めてくれて、教室の壁に貼り出してくれたんだ。人生で初めての展示だけど、絵で食べていけると勘違いした元凶だね(笑)。

――今治で文化的情報をキャッチする手段とは?

空山:映画と印刷媒体だけ。自分で求めないといけない飢餓状態で、常に渇望していたね。でも、20歳で上京してメディアに載っていた本物たちに会ったら自分のイマジネーションの方がはるかに上で、「こんなものを針小棒大に取り扱っていたのか」とビックリした。数年ぶりに再会した初恋の人にショックを受けたり、妄想のセックスが一番楽しかったりするのと一緒。いつだって現実はどうってことないんだよ。

――なぜ上京を?

空山:学校でグラフィックデザインを学ぶため。ありとあらゆる勉強がダメだったけど、小さい頃に絵を褒められたことが何度かあったし、無試験で入学できたのが理由だね。

――当時、グラフィックデザイナーやイラストレーターといった職業は、今ほど世間に知られてはいなかったように思います。

空山:イラストレーターという言葉すらないような時代だったから、現実主義のお袋には「豚と絵描きは死んでから芽が出る」って反対されたよ。その前に別の学校にも通っていたし、「あんたにいくら使ったと思っているんだ」って学費換算の責め方もされたね。グラフィックデザインの学校は中退したかったけど、お袋が面倒くさいからちゃんと卒業した。

「自分をアーティストだと思ったことはない」

――卒業後はなにを?

空山:すでにフリーランスとして食べていけるくらい稼いではいた。でも学生結婚したときの義父が広告業界のお偉いさんで、当時は今よりも“フリーランス=プータロー”のイメージが強かったから「娘婿がフリーランスなんて恥ずかしい」ってことでADKを紹介してもらった。義父の顔を潰せないから入社して、1週間で胃潰瘍になるほど辛い日々だったけど、社会のシステムや生きていくすべは勉強できたね。それでも会社という組織には慣れず、2年後に再びフリーランスに転身したんだ。

――フリーランスでは具体的にどのような仕事をされていましたか?

空山:いろいろなところにイラストを提供していて、その一つが「月刊プレイボーイ」だね。その頃は田名網敬一さんがアートディレクターで、“困った時の空山頼み”って言葉が生まれるくらい一緒に仕事をしていた。「月刊プレイボーイ」で小さなイラストを2つ描けば、それだけでADKの月収を超える恵まれた時代だったよ。

――その後、アーティストとして活躍するようになった転機は?

空山:自分のことをアーティストだと思ったことは一度もないし、気恥ずかしくて名乗るなんて無理だよ。照れ隠しでエンターテイナーなんて言うこともあるけど、肩書きには何の意味もない。呼びたいように呼べばいいし、自分がしたいことがあったらそれになる。というか、私は自分のために好きな絵を描いているだけで、人のために描いているつもりはないんだ。生活習慣病みたいなもので、描き出したら止まらないのよ。嫌な仕事も楽しくなっちゃう、悲しい人間なのさ(笑)。

The post “セクシーロボット”の創造主・空山基にロングインタビュー 半世紀近く筆を走らせ続けた創造の源泉 appeared first on WWDJAPAN.

「マークジェイコブス」がラブコールを送った日本人アーティスト 巨大な女の子を描く23歳“つのつの”って何者?

 「マークジェイコブス(MARC JACOBS)」の、「ヘブン バイ マークジェイコブス(HEAVEN BY MARC JACOBS)」2022年春夏コレクションのビジュアルに登場した、巨大なキャラクターを描いたのが、日本人アーティストのつのつのだ。同氏はSNSを中心に作品を発表しており、SNSアカウントの合計フォロワー数は2022年6月1日時点で約3万6000人と、まだ知名度は高くない。しかし、街に巨大な女の子のキャラクターを描いたビジュアルが「マークジェイコブス」の目に留まり、キャンペーンに起用されるという快挙を成し遂げた。性別も年齢も分からず、顔出しもしないという謎多き人物だが、6月10日まで東京・日本橋で開催中だという展示“bring me to the another world”に合わせて、インタビューを実施。意外な素顔に迫った。

“思い通りにいかない不穏な状況”を表現

WWD:今の作風にたどり着くまでの経歴は?

つのつの:普段は大学の修士課程で工学の研究をしています。美術を始めたのは、大学2年の夏に美術部に入ってから。基礎は美術部で勉強したんですけど、学生同士でお互いにアドバイスしたり、教本を読んだりしながら習得していくスタイルだったので、ほとんど独学ですね。美術を始めてすぐに、大学の近くの風景をバックに女の子のキャラクターが立っている絵をSNSにアップしたら、学内の人が拡散してくれて、SNSを中心にたくさんの人に見てもらえたんです。そういう反応がうれしくて、絵を投稿するようになりました。その後、SNSとの相性の良さもあって、デジタルで作品を作り始めました。美術部のみんなが描くアナログの絵は迫力があるけど、自分はデジタルにしかできない表現をやってみたいと思い、写真にCGを合成した作品を作り始めました。

WWD:作品で表現したいことは?

つのつの:思い通りに行かない状況を表現したいんです。今は前向きな気持ちで作品を作っているけど、美術を始めたのがちょっと落ち込んでいた時期だったこともあって、明るくない作品が多い。うまくいかない状況と向き合うのはしんどいけど、どうすべきか分からなりに、とりあえず受け止めてぶつかっていこうと、作品では衝突している状況を描いています。キャラクターには、自分の気持ちを投影している部分もありますね。

WWD:どこからインスピレーションを受けて作品を作ることが多い?

つのつの:僕は通学で自転車を1日20キロくらい乗り回すんです。いろいろ街並みや風景を見て、この景色にこういうポーズがあったら面白そうだなという想像から創作が始まります。その後、自分が表現したい感情やキャラクターの服、シチュエーションを詰めていきます。

WWD:背景を選ぶときのこだわりは?

つのつの:僕が描くキャラクターは原寸大にすると約10メートルあります。その大きさでポーズをとらせてキマる背景写真って、日々撮影している写真の10枚に1枚くらいしかなくて。特に大事なのは、道の広さです。例えば、周りに建物が少ない大きい道路の写真を使うと、ステージの上にキャラクターがいるだけのような嘘っぽいビジュアルになってしまう。でも狭い道なら建物がギチっと詰まっているから、キャラクターの大きさが際立ち、影も落ちてリアリティーが出ます。

 それに、背景とポーズと角度をちゃんと固めないと、キャラクターを下から見上げることになってしまい、いい角度から切り取れません。なので“ビビッ”ときた景色の写真から、ロジカルに考えて背景を選んでいます。

WWD:よく見る景色が多い印象だが?

つのつの:特別な場所に巨大なモニュメントを置くアートは実際にあります。せっかくCGでやるのなら、普段過ごしている街並みに非日常のキャラクターがいる方が面白いので、普通の路地を背景にするのが好きですね。

WWD:女の子のキャラクターをモチーフに選んでいるのはなぜ?

つのつの:女の子のキャラクターはビジュアルが多様だから。高橋留美子先生や鳥山明先生が描くような、デフォルメされたかわいいキャラクターが好きなんです。あとは、衝突や葛藤を描くのにデフォルメされたキャラクターをモチーフにすることで、表現が引き立つとも思っています。とはいえ、一番の理由はやっぱりかわいいキャラクターが好きで、夢中だからですね。

起きたらフォロワーが倍に
アメリカの俳優からの突然のリポスト

WWD:キャラクターのファッションでこだわっているところは?

つのつの:スニーカーが好きなので、ユニークなキャラクターに合ったスニーカーを描き込んでデザインしています。例えば、雷神をモチーフにした作品では、黄色い稲妻が飛び出しているデザインとか。服はキャラクターの個性が出るように心掛けています。新しいファッションも意識して、最近の作品ではK-POPから影響を受けてハーネスを着用させました。ほかにも天使っぽいドレスやメイド服、いかにもサブカルチャーっぽい服もあります。偏りすぎたり、ゴチャゴチャしてダサくなったりしないようには気を付けています。

WWD:海外にもファンが多い?

つのつの:そうですね。インスタグラム(INSTAGRAM)のフォロワーが700人くらいしかいなかったころ、フォロワーが600万くらいいるアメリカの俳優のローワン・ブランチャード(Rowan Blanchard)が作品をリポストしてくれたんです。そのおかげで朝起きたらフォロワーが倍以上になって、さらにどんどん増えていきました。インスタグラムのフォロワーの内訳を見ると、日本人は5%で、半分がアメリカ人でしたね。

WWD:「ヘブン バイ マーク ジェイコブス」の案件も、その流れでオファーが来た?

つのつの:多分そうだと思います。インスタグラム経由でいきなり英語のメッセージが届いて、すごくびっくりしました。やりとりしながら、僕の作品は作るのにすごく時間がかかるので、今回のビジュアルでは発表済みだったキャラクターに「ヘブン」の服を着せようと決まりました。やりたいようにやらせてもらえたし、作品をすごくほめてくれたのが印象的でしたね。

WWD:SNSを中心に活動する作家として、思うことは?

つのつの:僕は美術を始めたのが大学からなので、SNSがなかったら作品をみんなに見てもらう機会はなかったはず。CGの作品を作るようになったのも、思いも寄らないところから声をかけてもらえたのも、全部SNSのおかげです。僕はいいタイミングで生まれ、創作ができているなと感じます。

■bring me to the another world
会期:〜6月10日
場所:MASATAKA CONTEMPORARY
住所:東京都中央区日本橋 3-2-9 三晶ビル B1F

The post 「マークジェイコブス」がラブコールを送った日本人アーティスト 巨大な女の子を描く23歳“つのつの”って何者? appeared first on WWDJAPAN.

2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロへ 環境先進企業アシックスのサステナ戦略

 アシックスは、2050年までに事業における「温室効果ガスの排出実質ゼロ」の実現を目指す。国際イニシアチブとの連携を進め、グローバル基準のサステナビリティ戦略を実装するなど日本の中では先進的な存在だ。取り組みのきっかけや今後の課題についてサステナビリティ統括部で指揮を執る吉川美奈子統括部長に話を聞いた。

WWD:アシックスがCO2排出量の測定に取り組んだきっかけは?

吉川美奈子サステナビリティ統括部統括部長(以下、吉川):2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロに向けた数値目標設定を公表した19年以前から、環境負荷削減に向けて取り組んでいた。さかのぼれば、フットウエア業界としては初めて米国マサチューセッツ工科大学とフットウエアのLCA(ライフサイクルアセスメント)に関する共同研究を10年に行った。社内では特にヨーロッパのCSRチームが、将来的なサステナビリティの流れをいち早く感じていた。この研究で得たデータは、世界的な環境負荷測定ツール「ヒグインデックス」の開発にも活用されている。

WWD:20年にはファッション産業の環境負荷低減に向けた国際的枠組み「ファッション協定(THE FASHION PACT)」に日本企業としては初めて加盟した。国際イニシアチブに加盟するメリットは?

吉川:「温室効果ガスの排出実質ゼロ」実現に向けたロードマップの策定においても、国際イニシアチブから得られる知見を参考にした。欧米を筆頭に、サステナビリティの分野でさまざまな法規制が進む中、情報をいち早く得られることは大きいだろう。例えば、フランスでは商品の環境負荷を開示させる動きがあるが、これを見据えて商品戦略を立てるなど、グローバルの動きを知ることで先に行動を起こすことができる。最近では、気候変動対策に加えて生物多様性の保護が話題に上がっており、次に取り組むべき課題として認識している。社会の流れを日本だけで考えないことがアドバンテージになる。

WWD:目標達成に向けた進捗と課題は?

吉川:スコープ3における温室効果ガス排出量の約7割を占める材料と生産の部分での取り組みが鍵になる。150以上あるサプライヤーのうち、売り上げベースで9割以上が東南アジアだ。工場での使用電力を再エネに切り替えていくためには、国として再エネ導入の優先順位を上げてもらう必要がある。いち企業が国に働きかけるハードルは高いので、ここでも国際イニシアチブに加盟することで声を大きくできるメリットがある。正直、50年の目標達成にはまだまだ多くの努力が必要で、ビジネスの転換が必要だ。アシックスは、「デジタル」「パーソナル」「サステナブル」をキーワードに、デジタル技術を活用して、パーソナライズされた製品・サービスをサステナブルな方法で開発することに力を入れている。

WWD:リペアや中古品販売など、循環型ビジネスにも注力するのか?

吉川:「循環型」というと、商品の回収ばかりを思い浮かべがちだが、私たちが考える「循環」は、どれだけ廃棄物を出さずに、よりクリーンなエネルギーでより長く使用できる商品設計にするかというをバリューチェーン全体での取り組みを意味する。アメリカでは、商品のリペアや中古品販売などを実施しているが、それだけをトレンド的に注力するつもりはない。なぜなら、サステナビリティの前に機能性の高い商品をお客さまに届ける価値創造が企業のミッションで、そこを妥協するべきではないからだ。私たちはセルロースナノファイバーを初めて日用品で使ったブランドでもあるが、イノベーションを起こしながらサステナブルな新しい商品を開発し、お客さまに価値のあるものを届けていく。

WWD:さまざまな企業が環境対策への取り組みを模索するなか、アシックスの戦略の強みは?

吉川:サステナビリティ統括部が立てた戦略を、ビジネス戦略、オペレーション、社のカルチャーに統合できていることが成功の要因だ。例えば、商品開発のチームとはシーズンごとにサステナビリティに関連する情報をインプットする機会を設けるなど、社全体が同じ方向を向くようにコミュニケーションをとっている。最大の強みは、トップがサステナビリティをビジネス戦略の中枢に据えていることだろう。スポーツを通して、お客さまの心と体を健やかにすることが私たちのパーパスだ。スポーツができる環境を守るため、サステナビリティへのコミットを続けていく。

The post 2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロへ 環境先進企業アシックスのサステナ戦略 appeared first on WWDJAPAN.

フランスの国民的子ども服ブランド「プチバトー」が描く自然との共生 古着の回収再販プロジェクトを日本でも目指す

 1893年にフランスのシャンパーニュ地方で生まれたフランスの子ども服ブランド、「プチバトー(PETIT BATEAU)」は、母国では国民的ブランドとして130年以上にわたって愛されている。ギヨーム・ダルーゼ(Guillaume Darrousez)最高経営責任者(CEO)は、「フランスでは、ファミリーブランドしての認知度はナンバーワン。みんな知っていて、特に何かをしなくてもビジネスは順調」という。一方の日本は、「同じ認知度ではなく、違うものを目指す」。「子供たちと自然をつなぐ」を世界共通のミッションに策定し、サステナブルを「プレイフル」に発信するブランドを目指す。フランスで始めた古着の買い取り&再販のほか、ワークショップにも意欲的だ。

WWD:フランスで始めた古着を回収して再販するリサイクルプロジェクトの反響は?

ダルーゼCEO:プロジェクト自体は2017年にアプリからスタートし、21年5月に店舗での回収も開始した。クーポンと引き換えに着なくなった「プチバトー」の製品を買い取って再販するという仕組みを作り、フランスでは6店舗目での導入がはじまったところだ。今後ポップアップや百貨店など店舗数を増やし、オンラインサイトでも取り扱いたい。フランスの消費者からは、「もっと早く始めてほしかった」「耐久性のある洋服を作る『プチバトー』だからこそできること」と非常に好評だ。

WWD:課題は?

ダルーゼCEO:引き取りや再販価格については、もっと詰めていきたい。洋服の、Tシャツは5〜10ユーロ(約680〜1300円)、コートは30〜35ユーロ(約4000〜4700円)、ベビー服は1〜2ユーロ(約130〜270円)で買い取っている。30年までには2次流通で利益の10%を稼ぐまでに成長させたい。状態の良くない服はリメイクして再販するなど、工夫も増やす予定だ。

WWD:日本でも開始する?

ダルーゼCEO:フランスに比べ、日本の2次流通はこれからだと感じているが、この先間違いなく盛り上がりをもっと見せるはず。日本でもこのプロジェクトをスタートさせたいと考えている。この秋にでも、東京で試験的に始めていくことに日本チームも前向きだ。

WWD:プロジェクトを開始したきっかけは?

ダルーゼCEO:自社工場で手掛ける製品の耐久性と質に誇りがあるからこそはじめられたこと。“125回洗濯してもへこたれない”ことが実験済みのTシャツは「プチバトー」のアイコンであり、再販が可能なアパレルを取り扱っているというブランドのバリューを保証している。スローファッションを推進して、洋服の“人生”がゴミ箱でおわらないよう取り組めるのも、耐久性への自信があるからだ。

WWD:新スローガン、「自由(Liberty)」「品質(Quality)」「持続可能(Durability)」の策定による、消費者や従業員、ブランドのあり方への反響は?

ダルーゼCEO:サーキュラーエコノミー(循環型経済)へのシフトやリサイクルの強化、2次流通を自ブランドで取り扱うに際して、「品質」「持続可能」の強化は必須だった。だがこれらはブランドに長く根付く基本的な価値観だ。中でも私が重きをおくのは、「自由」だ。近年、サステナビリティや社会課題についての対話が増える中で、自由で楽しい、オープンなコミュニケーションが減っていた。われわれは“真面目”になりすぎてしまった。もっと遊び心を持って自由に、プレイフルにならなければ。

WWD:社会課題といった話を、遊び心を持って伝えるのはとても難しいこと。どう実践していく?

ダルーゼCEO:消費者とのコミュニケーションのためにショートムービーを活用するなど、自由な発想を増やそうと動いている。22年末には、新たなコンセプトストアの開店を予定している。「プチバトー」を着るのは、子どもたちがメイン。子どもはいつだってクリエイティブで遊び心を持っている。製品ばかりを見せるのだけでなく、子どもたちが持っているものを生かして、彼らの感情や、外でどんなことをしているか、ありのままの姿を見せていきたい。それがプレイフルな発信につながるだろう。

WWD:「子供たちと自然をつなぐ」というミッションに込めた思いは?

ダルーゼCEO:子どもたちが自然の中で遊びながら自然に触れ、クリエイティビティーと自己肯定心を育んでほしいという願いを込めた。自然の楽しさがわかると、環境を守る意識も自発的に生まれるはず。汚れを気にせず外で思いっきり遊び回れる洋服と共に、子どもたちにはのびのび成長してほしい。

WWD:これまでどのような取り組みを?

ダルーゼCEO:従業員向けのサステナビリティに関する教育プログラムを設け、子どもを対象にワークショップなどを開催している。日本では7〜12歳くらいの子どもたちを約20人招待して、生物学者を招いてユーチューブで動画や写真を見せながら、今地球に何が起こっているのか、マイクロプラスチックとは何か、海洋環境などについて対話。その後「地球環境を守るため、大人にしてほしいこと」をプラカードに書いてもらった。そうすると子どもたちはプラカードを持って、保護者にその日学んだことについて語る。子どもたちに新しいことを教えると、大人も巻き込める。フランスでは水の大切さを教える「ウォーター ファミリー(Water Family)」とタッグを結んで、学校でレクチャーを行っている。

WWD:従業員へのサステナ教育は?

ダルーゼCEO:「世界海洋デー」の6月8日には、工場で働く人も含む世界中の「プチバトー」の従業員に、水汚染に関する教育の場を設けている。勤務日をボランティア活動の時間にあてて、従業員が学校で子どもたちに学校に教える制度も確立。ワークショップやボランティア活動を通して2023年のおわりまでに世界で100万人の子どもに教育の機会を提供するという目標に向けて一丸となって取り組んでいる。21年は8万人を対象とした教育の場を創出。22年は40万人を目標にしている。

WWD:25年までのBコープ認証の取得を掲げているが、原動力は?

ダルーゼCEO:より良い会社であり続けたい一心だ。環境問題へのアプローチだけでなく、社会責任の追求にも目を向けている点に共感し、絶えず努力を続ける源となるよう目標に設定した。会社として利益を求めるだけでなく、社会に向き合う姿勢を表明するにはうってつけだ。

WWD:これからの展望は?

ダルーゼCEO:今後挑戦したいのは、サブスクリプションサービス。赤ちゃんの成長に合わせたベビー服の月額レンタルサービスなどを、まずはフランスで始めたい。この2年で取り組んだことの1つは、役員レベルに女性を増やすこと。就任当時の女性役員は10人中1人だったが、今は6人にまで増えた。それでも、フランスチームには多様性という観点でまだまだ課題がある。もっと異なるバッググラウンドを持つ人を増やし、子どもたちを見習ってクリエイティブでプレイフルでありたい。

WWD:日本チームとはどう連携していく?

ダルーゼCEO:日本チームが始めたアイデアがフランスで導入されたこともあった。例えば、日本のギフトボックスはとてもクリエイティブでホスピタリティに溢れていたので、フランスでも取り入れた。細かいところまで行き届きた気持ちいいサービスは、とても参考になる。フランス基準で見ると本当に“プレミア”な接客だ。eコマースも日本は非常に強い。世界でも「プチバトー」のビジネスの約50%を占めているので、日本で生まれたバーチャル試着サービスを展開するなどして、高めあっていけたらと思う。

The post フランスの国民的子ども服ブランド「プチバトー」が描く自然との共生 古着の回収再販プロジェクトを日本でも目指す appeared first on WWDJAPAN.

アパレル販売員からライブコマーサー、そして起業 「ももち」こと牛江桃子が社長になるまで

 SNSの総フォロワー67万超えのももち(牛江桃子)が5月、次世代タレントエージェンシー、M-YOU(エムユー)を設立した。主力はタレントマネジメント事業だが、その他にもD2Cブランド、コンテンツプロデュース、Z世代マーケティング事業など幅広くトレンドに関連した事業を手掛ける。既に社員は7人在籍し、新卒から35歳までの女性で働く。

 販売員をキャリアの出発点に、ユーチューバー、ライブコマーサー、アパレルブランド「リル アンビション(Lil Ambition)」プロデューサーとして活躍してきたが、特に自身が名前をつけた“ライブコマーサー”としての活動には思い入れが深く、エムユーでも注力する分野だ。ライブコマーサーとはライブコマースに出演する販売員で、一般的なインフルエンサーやユーチューバーとは異なるアプローチで商品やブランドの魅力を伝える役割を担う。起業によって何を成し遂げようとしているのか。起業の経緯や思い、目標に掲げるライブコマーサーの育成について話を聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):なぜエムユーを起業?

牛江桃子(以下、牛江):心を大切にする、タレントのパートナーのような会社を作りたかったのと、ライブコマーサーを育成したいと考えたことが理由。周りのインフルエンサーから「頑張りたいのに頑張れる環境がない」「人間不信になる部分がある」という相談を受けることが多く、私自身も活動する中で、場所よりも人が大事だと感じることが多かった。そこで自分の経験を生かし、心に寄り添える、一緒に人生のブランディングまでもしていけるような会社を作りたいと考えた。

WWD:頑張れる場所がない、というのは具体的にいうと?

牛江:仕事を取ってきて振る、というやり方でマネジメントは効率化できる。けどタレントやクリエイターはとても繊細で、(SNS上の)数字や人からの意見で気分の浮き沈みも激しくなることもあるので、メンタルケアが本当は大事なはず。数字を分析して「はい、こうやって」というだけのマネジメントでは疲れてしまう。私は今のパートナーの浜内に出会い、クリエイターではなく一人の人間として真摯に向き合ってもらえた経験があった。お互い中立な立場だからこそ仕事が円滑に回り、生き生きと活動できる。M-YOUにはこの人にマネジメントして欲しい、この人なら一緒に歩んでいきたいと思ってもらえるような人が集まった。

WWD:元々起業したいという思いがあった?

牛江:全く(笑)。けれど活動する中でどんどん見える景色が変わってきて、クリエイター仲間の悩みの声を聞いたり、SNSで活動したいけど一歩踏み出せないという子の声を聞いたりする中で、自分だけじゃなくみんなが楽しい世界にしたいと感じたのが起業につながった。また一緒に創業した浜内や佐久間とミッションが一致し、事業を絶対大きくできると感じた。最初は会社としてではなく一つの事業としてやることも検討したが、一番いい手段として起業を選んだ。もちろん、これまでの活動も続けます。自分がタレントとして居続けることで、タレントの痛みもわかるようになりたい。

WWD:この3人で起業したのはどういった経緯?

牛江:元々、浜内と佐久間は別会社のRooMooNでともに仕事をしていて、私は浜内にマネジメントをお願いしている関係だった。それぞれ元の会社から資金を出し合い、資金調達や借り入れをせず立ち上げた。それぞれの仕事を集めているので、M-YOUは事業の幅が広い。ただ集めたわけではなく、相互作用で事業が大きくなると考えている。それぞれの強みを活かしたい。

WWD:それぞれの強みとは?

牛江:タレントマネジメント部 部長の浜内は、心に寄り添いながら長期的にマネジメントできる人。通常マネージャーは1人あたり複数人のタレントを抱える場合があり、タレント側は不安を覚えることも。M-YOUではチームでタレント1人にフルコミットする体制を取り、その主軸が浜内だ。コンテンツプロデュース部 部長の佐久間はテレビ業界出身で、コンテンツ企画のノウハウがある。また数字分析に強いだけでなく、クリエイターの個性に寄り添って企画提案をできるというところが強み。

 私はD2Cブランド部の部長で、販売師の資格を持ち、アパレル店員で接客をしてきた経験やライブコマーサーの経験がある。その経験をもとにライブコマーサーを育て、ブランド事業を展開する。6月からは2人のユーチューバー、えみ姉とpicaruの所属も決まっていて、2人の意向を最大限尊重しながらではあるが、D2Cブランドの立ち上げも考えている。

WWD:タレントマネジメントではライブコマーサーの育成も行う。

牛江:起業した大きな理由の一つ。これまでの経験の中で、世の中の動きがある一方でEC化率がなかなか上がらないのは(オンラインでの商品購入に対する)不安要素を解消して、背中を押してあげられる人がいないからだと気がついた。そこでM-YOUでは“第2のももち”じゃないですけれど、ライブコマーサーを育てて社会貢献したいと考えた。

WWD:日本ではライブコマースも広がらないが、課題は何だと考える?

牛江:第一にファッションや美容分野の本格的なライブコマーサーがまだまだ少ないこと。また大きなライブコマースプラットフォームがないことも課題だ。ライブコマース先進国の中国では大勢が見るプラットフォームでライブ中にパッと購入できる機能がある。一方、日本ではZ世代が服を買う時の参考にするインスタグラムやTikTokなど主要なSNSにライブ配信からの購入機能がついていない。インスタグラムで他プラットフォームのライブコマースの告知をしても、コアなファンしか流入しにくいのが現状だ。日本でも3年後にはインスタグラムやTikTokにライブコマース機能がついていると考えているので、それに向けてライブコマーサーを育てていく。

WWD:ライブコマースを依頼する企業側にも課題はある?

牛江:フォロワー数など数字で判断することが多いが、エンゲージメントを重視した依頼が大事。ライブコマースはコアなファンの方が心が動いて購入に至る。1000人のライトなファンより100人のコアなファンだ。またライブコマースは後から編集でテロップが入れられず、声や表情に全ての感情が出てしまうので、何かを言わせるのはあまり適していない。ライブコマーサー自身がいいと思った点を伝えることで視聴者の心が動く。企業側がクリエイターに寄り添ってもらえると、よりリアルなコマースができる。

WWD:どんな人が心を動かすライブコマーサーになれる?

牛江:何かに精通した“オタク”がいい。好きだからこそ情報を追うし、細かいことまで調べる。商材がライブコマーサー自身に適していないと意味がないので、ライブコマーサーは自分が何が好きか分析することが大事。またライブ配信は想像している5倍のテンションでやらないと伝わらない。その点ではインスタグラムなどの写真で伝えるインフルエンサーとはタイプが違うかもしれない。さらに普段のSNS運用やコミュニケーションから信頼を作っていくことが大事。M-YOUでは夏にタレント所属オーディションを開催するが、こういった素質がある子を5〜10人程度見つけられたらいいなと思っている。また自社で抱えるタレントだけでなく、他社と提携してライブコマーサーになりたい人に向けた講演会をしたりして、100人を目標にライブコマーサーを育成したい。

WWD:会社として、個人として今後の目標は?

牛江:日本ではライブコマーサー事業での成功例はまだないので、その成功例になりたい。「ライブコマースといえばM-YOUだよね」と言われるようになれれば。個人としては2年前からライブコマーサーと名乗ってやってきたので、ライブコマーサーとしても、プロデュースする側としても、ライブコマースの第一人者になりたい。

The post アパレル販売員からライブコマーサー、そして起業 「ももち」こと牛江桃子が社長になるまで appeared first on WWDJAPAN.

「儲かる」と「環境保護」をどう両立させるか パタゴニア本社キーマンに聞く【後編】

 パタゴニア(PATAGONIA)は環境保護先進企業として広く知られる。どの企業も行ってこなかったような新しい方法でビジネスを拡大しながら、環境保護に取り組んできた特異な企業だ。これまでの選択に葛藤はなかったのか。経営判断で重視したことを創業当時から断続的に同社で働くパタゴニア哲学の要、ヴィンセント・スタンリー=フィロソファー(哲学者の意。パタゴニア独自の役職)にオンラインで話を聞いた。

WWD:「儲かる」と「環境保護」の間で揺らいだことはないですか?経営判断基準はありますか?

ヴィンセント・スタンリー哲学者(以下、ヴィンセント):興味深いのは、振り返ってみると私たちのビジネス判断は「Is this the right thing to do?(これは正しいことか?)」という考えに基づいて行われてきたことです。例えば、(1996年に)1年で完全にオーガニックコットンに切り替えるという決断は、多額な投資が必要になるので既存ビジネスにリスクをもたらすことはわかっていました。実際、オーガニックコットンに移行すると決めてから、私たちは2年間生産ができず、利益を上げられずにもがきました。でも2年後には私たちのビジネスはより健全に、そして力強くなった。なぜなら、あの時代に完全にオーガニックコットンにコミットしている企業がなかったからです。支持してくれる新しい消費者を獲得することもできました。

 この会社に来て50年経ちますが、新たな手法を取り入れるのは容易ではないですし、踏み切れずにもがいている時期もありました。けれど、もがくことがイノベーションに繋がり、また、それが蓄積されていくことを私は目撃してきました。

WWD:「正しいことかどうか」、そうしたいと思っても多くは費用の理由から選択できないことがあります。そうした判断は社内全体に浸透しているのでしょうか。

ヴィンセント:例えば、アメリカで新しい倉庫を作らなければならなかった時のこと。環境部でも製品開発部ではなく、財務部が担当しましたが、会社のDNAに盛り込まれている思考回路が発揮されました。3万平方メートルの倉庫を建てるために、不動産業者は農地を勧めたのですが、彼らは「この土地を使うなんて自分たちらしくない。ここではできない」と判断しました。そして彼らはペンシルベニアの経営破綻した石炭工場跡地を見つけ、そこに倉庫を建てました。どの部署でも企業の考えを理解してビジネスを行えば、いい結果をもたらすことができると確信しています。

 時には正しいことをするには費用がかかりますし、時には節約にもなり利益につながります。時には、お金の問題ではなく想像力の問題であったりします。豊かな想像力で新しい可能性につなげていくことが大切だと考えています。

WWD:アパレルメーカーの経営者は今後何をポイントに戦略を立てて行くべきでしょうか?

ヴィンセント:セカンドハンド(リユース)の導入や、リクラフテッド(そのままでは着用できなくなった古着から新たな衣類を生みだすアップサイクル)の商品を取り入れるのは重要です。最大の課題は、消費者に消費について疑問を投げかけることです。アパレルビジネスは、服を購入する時に感じる高揚感ーークレジットカードをカウンター越しに手渡す瞬間に依存してきました。

 私たちは過去10年間、消費者と製品のつながりについて力を入れてきました。最高の製品を提供することはもちろん、製品を着てさまざまな体験をして楽しむことが大切であると伝えてきました。この方が購入した商品と長期的な関係を保てて経済的にも健全です。多くのアパレルメーカーは変化を求められています。品質にこだわっている企業にはさほど難しいことではないですが、ファストファッションは非常に難しいでしょう。アメリカではファストファッションの平均着用回数は7回で、その後捨てられています。どうみても持続可能ではないでしょう。私たちは社会的、環境的危機に直面しています。産業全体が環境の改善が見込め、かつ労働者やコミュニティーが健全で地域が活性化するような商品作りに変わっていかなければいけません。

WWD:長く着てもらえるように、リペアの事業部を立ち上げたとして、その事業部だけで利益を出すのは難しい。良い物を売ったうえでそのサービスとしてのリペアを行うという考え方が大切になってくると思います。

ヴィンセント:一つの事業で利益を出すのは難しいでしょう。また、人々が着なくなった服を循環させることにも目を向けなければならないと思います。多くの消費者も変化を求めています。自動車産業が今後15年で電気自動車に移行するという目標で移行していますが、自動車業界がそのように大きく変われるなら、アパレル産業も同じ期間内にシフトできると思うのです。

WWD:そもそもシーズンで区切り、どんどん新商品を発売するこれまでの慣例をやめない限り、問題は解決できないようにも思います。「パタゴニア」ではシーズンレスへの動きはあるのでしょうか?

ヴィンセント:「パタゴニア」は多くのアパレル企業に比べて定番品が多いと思います。“スタンドアップショーツ”や“センチュラジャケット”は30~40年にわたり提案しています。シーズン毎(春夏・秋冬)の提案ですが、3分の1が新商品で、3分の1が調整されたリバイズドの商品、3分の1キャリーオーバーの商品です。また、リテールの店舗だけではなく消費者のためにも廃れないスタイルも心掛けています。10年経ってもまだ快適と思ってもらいたいから。私たちにとっては、それも品質における重要な要素の一つです。リバイズドの商品とは、色の変更などだけではなく、機能がより良くなっているか、環境面が改善されているかという点も含んでいます。

WWD:安価な製品をたくさん売る仕組みだけを持っている企業は今後厳しくなるということでしょうか。

ヴィンセント:厳しいですね。安価な製品で利益を上げるのがとても難しいからです。常にタイトなスケジュールで作るファストファッションは、買い手が間に合わず製品が溢れているため)商品を店側が受け取れない悪循環が生まれており、燃やしてしまうことがあります。非常に悲しいことです。良いビジネスとは言えませんし、利益を上げるのも難しいですね。

WWD:パタゴニアのビジネスの展望は?

ヴィンセント:まず10年後、今以上に私たちと消費者の関係が強くなっていること。環境面では、私たちは(2025年までに)ポリエステルやナイロンのバージン素材の使用をやめますが、これは大きな変化をもたらします。再生素材とナチュラルファイバーの開発に非常に力を注いでいます。私たちが格闘している問題は、今後10年間成長するにあたり、成長に依存しない、より質のいい会社を作れるのか、ということです。強制的に成長を拡大させようとすると社会にも環境にも悪影響を及ぼします。日本では何百年も続く旅館がありますね。何百年も健全なビジネスを行えるのは温泉がいい状態に保てているからだと思います。それが経営に盛り込まれているはず。アパレルビジネスも、そうした旅館の心理から学ぶべきです。

The post 「儲かる」と「環境保護」をどう両立させるか パタゴニア本社キーマンに聞く【後編】 appeared first on WWDJAPAN.

VRクリエイター・せきぐちあいみが語るバーチャル × ファッションの可能性 AR、NFTなどもわかりやすく解説

 昨年フェイスブック(Facebook)が仮想空間の開発を強化するため社名をメタ(Meta)に変更したことを皮切りに、世界中でVRコンテンツの普及が加速している。ファッション業界でも今年「メタバース・ファッションウィーク(MVFW)」が開催されたり、東京ガールズコレクション公式のメタバース「バーチャルTGC」が生まれたりなど、今後さらにメタバース市場に注目が集まりそうだ。今回はVRクリエイターとして活躍するせきぐちあいみが、メタバースやVRとファッション業界のつながりを紐解く。

WWDJAPAN(以下、WWD):VRアーティストに関心を持ったきっかけとは?

せきぐちあいみ(以下、せきぐち):もともとはクリーク&リバー社(CREEK&RIVER)所属のユーチューブクリエイターとして活動していました。その時はVRやARとは関係なくライフスタイルやバラエティ系の発信をしていたのですが、たまたま3Dペンに興味を持ち、その様子を発信するように。3Dペンは、熱でプラスチックが溶けたもので描くと、描いた瞬間から冷えて固まるもので立体が描けるのが面白い。作品を作り続けていくうちにデジタル上での3Dアートにも興味が湧き、2016年から公式でVRアーティストと名乗るようになりました。当時はまだVRアーティストという職業もなかったような時期です。

 ちなみに最近は、脳波を使って絵を描く実験もしています。頭蓋骨や頭皮を通して受け取ることができる脳波はかなり微弱なので、まだコントロールするまでに修行が必要です。でも脳波で何かをするというのはたくさんの可能性があると思い挑戦しています。

WWD:VRとARの違いとは?

せきぐち:VRとはバーチャルリアリティー(仮想現実)のことで機器の中に別の世界が広がっているという面白さや魅力があります。この別世界の空間に3Dの絵を描くのが私が、行なっているVRアートです。360度広がるキャンバスの中に、自分だけのワンルームから壮大なテーマパークまでの世界が作れるのも魅力です。

 VRはバーチャル空間に世界を作っていくものですが、ARはオーグメンテッドリアリティ(拡張現実)のことで、現実の世界に重ねてバーチャルを作っていくもの。パンデミックの影響で現実世界の行き来が難しくなったので、ARのトレンドは少し後回しになってしまいましたが、もしコロナがなかったらVRよりARの方が流行っていたのでは、と思います。ARの技術を使えば、何もないところに新たな観光名所を作ったり、観光地や遺産などを工事することなく新たな魅力を加えたりできます。ちょうど今、歴史ある神社とコラボレーションして、NFTアートの作品を作っているので、ぜひ見ていただけると嬉しいです。

 とはいえ、VRやARの面白さは世間的に皆さんが使っているパソコンやスマートフォン、テレビなどでは伝えにくい。まずは実際にデバイスを使って感動体験をしないと、初めての人にとっては少し遠い存在のように感じてしまうと思います。コロナ禍で直接人と会う機会がなくなったのでオンライン上のテクノロジーが注目された一方、リアルでデバイスを体験してもらう機会がなくなり、VRの体験施設もかなり減ってしまいました。

WWD:ファッション業界におけるメタバースにはどんな可能性がある?

せきぐち:ファッション業界における廃棄の問題は、事前にVRでシミュレーションができるのがメリットだと思います。最近は素材感の再現度も非常に高いため、材料を無駄にせず仕上がりをテストできると思います。実際に建築業界ではすでにこのシミュレーション技術が役立っていて、建物が建つことを想定した人の動きなどを事前に確認し、安全性と効率性を確かめているのです。

 また、消費者にとってメタバース空間が身近になり、仮想空間の中にもう1人の自分を持つようになったら、第二の自分の容姿もこだわりたくなる人もでてくると思います。デジタルファッションだと現実の制約から開放されるので、現実とはまた違ったクリエイティブが楽しめ、リアルだとできない素材や形状など、新たなファッションが登場します。現実の洋服とアバター用の洋服がセット販売も増え、新たな市場が広がると思います。

 メタバース上での雇用についても、今後は注目が集まりそうです。メタバースのプラットフォームの一つである「VRチャット(VRChat)」内では、「バーチャルマーケット」という即売会イベントが開催されていて、バーチャルファッションやアバターなど、VR内で使えるものがたくさん売られ、百貨店やコンビニエンスストアチェーンなども出店しています。

 そういった仮想空間でのショップ運営の中で、メタバース上のカリスマ店員なども生まれてくると思います。すでにメタバース上にアルバイト求人を出しているショップもありますし、実際に収益を得ている人もいますよ。地方の人がメタバース上でなら都会でお仕事できたり、さまざまな事情で自宅から出られない人もメタバース内で働いて実際に収入が得られたりするのは嬉しいですよね。「バーチャルの中ならショップスタッフもAIでいいじゃん」と思う方もいるでしょうが、VR内とはいえ実際に人間が販売と売上は全く異なります。「この店員さんから服を買いたい!」というファンが生まれることもあるし、1人でAIと話しながら買い物するよりは画面の向こうに誰かがいて、お買い物をサポートしてもらう方が楽しんでしょうね。現実とVR内では商品のおすすめの仕方が変わってくるので、現実は売れっ子店員さんでも、VR内ではなかなかうまくいかない、なんてことも起きてくるかもしれません。

WWD:メタバース上で購入した商品は、どのように価値が保証される?

せきぐち:メタバース上では、NFT(非代替性トークン)であることが本物の価値を担保します。NFTはブロックチェーンで管理されている、誰にも改竄(かいざん)することのできないデータ。そのためコピーされることも変更されることもなく、きちんと本物であることが証明されるのです。

 現実で物を買う時、「コピー品でもいいや」という人には「人に偽物だとバレなければいいや」という感覚の人が多いと思うのですが、メタバース上では人の持っているもののリストを可視化できる“ウォレット”という機能があり、NFTに紐付けることで本物かどうかが他人にもわかります。そのため、メタバース上で本物のレアアイテムを持っていれば、世界中から注目されることもあります。実際にNFTのレアスニーカーはすでにかなり高額で販売されています。

 変更されることがないのがNFTですが、洋服自体が経年劣化したり、逆に育ったりするプログラムは可能です。経年劣化した服のみを扱う古着屋さんのようなショップも今後メタバース上で生まれるかもしれません。

 また、NFTのデータは過去に持っていた人も可視化することができます。だからセレブリティが昔着用していた服などは付加価値がついたりするのです。セレブが買っているから私も買おう、という売れ方も実際に多いです。パリス・ヒルトン(Paris Hilton)やジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)、スヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)など、多くの海外セレブもNFTアートに進出しています。日本でもこれらの動きは今後活発化してくると思います。

 ただ、現状NFTと連携しているメタバースの有名なプラットフォームは「メタバースファッション・ウィーク」を行なっていた「ディセントラランド(DECENTRALAND)」くらいです。現実のイベントと連携しているので、ファッションビジネスに向いているのかもしれませんね。

WWD:ファッション業界に置いて注目したいプラットフォームは?

せきぐち:初心者でも楽しみやすいのは「クラスター(cluster)」だと思います。アバターやファッションもいろいろなものが選べるし、スマホやパソコンでも楽しめるのでおすすめです。ちょうど話題になっていた“バーチャル渋谷”をやっていたのも「クラスター」です。

 ファッションビジネスとして注目したいのは「バーチャルコレクション(Virtual Collection)」。クリエイターたちが自主的に集まり、アバターのファッションショーを定期的に行なっている団体です。これまでに何度も開催しているので、大企業よりノウハウがあり、クオリティがどんどん上がってきているので今後の参考になりそうです。例えば「メタバース・ファッションウィーク」ではお客さん一人ひとりの洋服のデータを読み込むため、膨大なデータ量が発生して会場のコントロールができなくなるなど、多くのトラブルが発生しました。一方「バーチャルコレクション」では、ランウエイ会場に入った途端にお客さんは皆、シンプルな服装に強制的に変更される仕様にしました。会場のデータ量を軽減でき、その分ランウエイを歩くモデルたちの衣装をより細かく作り込むことができるのです。また、デジタルファッションはリアルな服とはまた見せ方が少し変わってくるので、ランウエイ上での動きにも工夫が必要です。「バーチャルコレクション」では、そういったメタバース上のファッションショーに適したモーションを得意とするモデルも生まれてきています。

WWD:メタバースが抱える課題とは?

せきぐち:一つ目はVRデバイスの問題だと思います。先述した通り実際に体験できる場所が少ないことのほか、デバイスそのもののをまだ進化させる必要があります。もっと手軽に、スタイリッシュに、サングラスのような感覚で着用できるようになった時に、VRやARの技術、そしてメタバースも爆発的に広まっていくのではないでしょうか。ちょうど昨年「レイバン(RAY-BAN)」とフェイスブックがコラボしたスマートアイウエアが発売されていましたが、スタイリッシュにするため機能をかなり削ぎ落としていました。今後見た目も機能もアップデートされ、皆さんが「これならアリかも!」と思えるものがきっと生まれるでしょう。また、仕事や友達とコミュニケーションができるなど、日常生活で活かしやすいVRデバイス向けアプリケーションが増えていくことも、世間に浸透するために必要な要素です。

 二つ目の課題は、プラットフォームの統一。現状違うプラットフォーム同士を行き来することはできません。アバターの形式もそれぞれ違うことから、プラットフォームを移動すると全く違う人になってしまうのです。この課題についてはメタバース業界だけではなく、国を挙げて検討している段階なので、今後何らかの取り組みが行われるはずです。個人的には、日本だけではなく世界共通の規制やルールができると良いと思うのですが、著作権の問題などまだまだたくさんの壁があります。今後絶対的に支持されるような今後プラットフォームができたら、自然と周囲もその形式に合わせることになると思うので、時間が問題を解決していくことでしょう。


 6月6日発行の「WWDJAPAN」(ウィークリー版)では、「メタバース特集」と題し業界の先駆者たちにフォーカスしていく。

The post VRクリエイター・せきぐちあいみが語るバーチャル × ファッションの可能性 AR、NFTなどもわかりやすく解説 appeared first on WWDJAPAN.

VRクリエイター・せきぐちあいみが語るバーチャル × ファッションの可能性 AR、NFTなどもわかりやすく解説

 昨年フェイスブック(Facebook)が仮想空間の開発を強化するため社名をメタ(Meta)に変更したことを皮切りに、世界中でVRコンテンツの普及が加速している。ファッション業界でも今年「メタバース・ファッションウィーク(MVFW)」が開催されたり、東京ガールズコレクション公式のメタバース「バーチャルTGC」が生まれたりなど、今後さらにメタバース市場に注目が集まりそうだ。今回はVRクリエイターとして活躍するせきぐちあいみが、メタバースやVRとファッション業界のつながりを紐解く。

WWDJAPAN(以下、WWD):VRアーティストに関心を持ったきっかけとは?

せきぐちあいみ(以下、せきぐち):もともとはクリーク&リバー社(CREEK&RIVER)所属のユーチューブクリエイターとして活動していました。その時はVRやARとは関係なくライフスタイルやバラエティ系の発信をしていたのですが、たまたま3Dペンに興味を持ち、その様子を発信するように。3Dペンは、熱でプラスチックが溶けたもので描くと、描いた瞬間から冷えて固まるもので立体が描けるのが面白い。作品を作り続けていくうちにデジタル上での3Dアートにも興味が湧き、2016年から公式でVRアーティストと名乗るようになりました。当時はまだVRアーティストという職業もなかったような時期です。

 ちなみに最近は、脳波を使って絵を描く実験もしています。頭蓋骨や頭皮を通して受け取ることができる脳波はかなり微弱なので、まだコントロールするまでに修行が必要です。でも脳波で何かをするというのはたくさんの可能性があると思い挑戦しています。

WWD:VRとARの違いとは?

せきぐち:VRとはバーチャルリアリティー(仮想現実)のことで機器の中に別の世界が広がっているという面白さや魅力があります。この別世界の空間に3Dの絵を描くのが私が、行なっているVRアートです。360度広がるキャンバスの中に、自分だけのワンルームから壮大なテーマパークまでの世界が作れるのも魅力です。

 VRはバーチャル空間に世界を作っていくものですが、ARはオーグメンテッドリアリティ(拡張現実)のことで、現実の世界に重ねてバーチャルを作っていくもの。パンデミックの影響で現実世界の行き来が難しくなったので、ARのトレンドは少し後回しになってしまいましたが、もしコロナがなかったらVRよりARの方が流行っていたのでは、と思います。ARの技術を使えば、何もないところに新たな観光名所を作ったり、観光地や遺産などを工事することなく新たな魅力を加えたりできます。ちょうど今、歴史ある神社とコラボレーションして、NFTアートの作品を作っているので、ぜひ見ていただけると嬉しいです。

 とはいえ、VRやARの面白さは世間的に皆さんが使っているパソコンやスマートフォン、テレビなどでは伝えにくい。まずは実際にデバイスを使って感動体験をしないと、初めての人にとっては少し遠い存在のように感じてしまうと思います。コロナ禍で直接人と会う機会がなくなったのでオンライン上のテクノロジーが注目された一方、リアルでデバイスを体験してもらう機会がなくなり、VRの体験施設もかなり減ってしまいました。

WWD:ファッション業界におけるメタバースにはどんな可能性がある?

せきぐち:ファッション業界における廃棄の問題は、事前にVRでシミュレーションができるのがメリットだと思います。最近は素材感の再現度も非常に高いため、材料を無駄にせず仕上がりをテストできると思います。実際に建築業界ではすでにこのシミュレーション技術が役立っていて、建物が建つことを想定した人の動きなどを事前に確認し、安全性と効率性を確かめているのです。

 また、消費者にとってメタバース空間が身近になり、仮想空間の中にもう1人の自分を持つようになったら、第二の自分の容姿もこだわりたくなる人もでてくると思います。デジタルファッションだと現実の制約から開放されるので、現実とはまた違ったクリエイティブが楽しめ、リアルだとできない素材や形状など、新たなファッションが登場します。現実の洋服とアバター用の洋服がセット販売も増え、新たな市場が広がると思います。

 メタバース上での雇用についても、今後は注目が集まりそうです。メタバースのプラットフォームの一つである「VRチャット(VRChat)」内では、「バーチャルマーケット」という即売会イベントが開催されていて、バーチャルファッションやアバターなど、VR内で使えるものがたくさん売られ、百貨店やコンビニエンスストアチェーンなども出店しています。

 そういった仮想空間でのショップ運営の中で、メタバース上のカリスマ店員なども生まれてくると思います。すでにメタバース上にアルバイト求人を出しているショップもありますし、実際に収益を得ている人もいますよ。地方の人がメタバース上でなら都会でお仕事できたり、さまざまな事情で自宅から出られない人もメタバース内で働いて実際に収入が得られたりするのは嬉しいですよね。「バーチャルの中ならショップスタッフもAIでいいじゃん」と思う方もいるでしょうが、VR内とはいえ実際に人間が販売と売上は全く異なります。「この店員さんから服を買いたい!」というファンが生まれることもあるし、1人でAIと話しながら買い物するよりは画面の向こうに誰かがいて、お買い物をサポートしてもらう方が楽しんでしょうね。現実とVR内では商品のおすすめの仕方が変わってくるので、現実は売れっ子店員さんでも、VR内ではなかなかうまくいかない、なんてことも起きてくるかもしれません。

WWD:メタバース上で購入した商品は、どのように価値が保証される?

せきぐち:メタバース上では、NFT(非代替性トークン)であることが本物の価値を担保します。NFTはブロックチェーンで管理されている、誰にも改竄(かいざん)することのできないデータ。そのためコピーされることも変更されることもなく、きちんと本物であることが証明されるのです。

 現実で物を買う時、「コピー品でもいいや」という人には「人に偽物だとバレなければいいや」という感覚の人が多いと思うのですが、メタバース上では人の持っているもののリストを可視化できる“ウォレット”という機能があり、NFTに紐付けることで本物かどうかが他人にもわかります。そのため、メタバース上で本物のレアアイテムを持っていれば、世界中から注目されることもあります。実際にNFTのレアスニーカーはすでにかなり高額で販売されています。

 変更されることがないのがNFTですが、洋服自体が経年劣化したり、逆に育ったりするプログラムは可能です。経年劣化した服のみを扱う古着屋さんのようなショップも今後メタバース上で生まれるかもしれません。

 また、NFTのデータは過去に持っていた人も可視化することができます。だからセレブリティが昔着用していた服などは付加価値がついたりするのです。セレブが買っているから私も買おう、という売れ方も実際に多いです。パリス・ヒルトン(Paris Hilton)やジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)、スヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)など、多くの海外セレブもNFTアートに進出しています。日本でもこれらの動きは今後活発化してくると思います。

 ただ、現状NFTと連携しているメタバースの有名なプラットフォームは「メタバースファッション・ウィーク」を行なっていた「ディセントラランド(DECENTRALAND)」くらいです。現実のイベントと連携しているので、ファッションビジネスに向いているのかもしれませんね。

WWD:ファッション業界に置いて注目したいプラットフォームは?

せきぐち:初心者でも楽しみやすいのは「クラスター(cluster)」だと思います。アバターやファッションもいろいろなものが選べるし、スマホやパソコンでも楽しめるのでおすすめです。ちょうど話題になっていた“バーチャル渋谷”をやっていたのも「クラスター」です。

 ファッションビジネスとして注目したいのは「バーチャルコレクション(Virtual Collection)」。クリエイターたちが自主的に集まり、アバターのファッションショーを定期的に行なっている団体です。これまでに何度も開催しているので、大企業よりノウハウがあり、クオリティがどんどん上がってきているので今後の参考になりそうです。例えば「メタバース・ファッションウィーク」ではお客さん一人ひとりの洋服のデータを読み込むため、膨大なデータ量が発生して会場のコントロールができなくなるなど、多くのトラブルが発生しました。一方「バーチャルコレクション」では、ランウエイ会場に入った途端にお客さんは皆、シンプルな服装に強制的に変更される仕様にしました。会場のデータ量を軽減でき、その分ランウエイを歩くモデルたちの衣装をより細かく作り込むことができるのです。また、デジタルファッションはリアルな服とはまた見せ方が少し変わってくるので、ランウエイ上での動きにも工夫が必要です。「バーチャルコレクション」では、そういったメタバース上のファッションショーに適したモーションを得意とするモデルも生まれてきています。

WWD:メタバースが抱える課題とは?

せきぐち:一つ目はVRデバイスの問題だと思います。先述した通り実際に体験できる場所が少ないことのほか、デバイスそのもののをまだ進化させる必要があります。もっと手軽に、スタイリッシュに、サングラスのような感覚で着用できるようになった時に、VRやARの技術、そしてメタバースも爆発的に広まっていくのではないでしょうか。ちょうど昨年「レイバン(RAY-BAN)」とフェイスブックがコラボしたスマートアイウエアが発売されていましたが、スタイリッシュにするため機能をかなり削ぎ落としていました。今後見た目も機能もアップデートされ、皆さんが「これならアリかも!」と思えるものがきっと生まれるでしょう。また、仕事や友達とコミュニケーションができるなど、日常生活で活かしやすいVRデバイス向けアプリケーションが増えていくことも、世間に浸透するために必要な要素です。

 二つ目の課題は、プラットフォームの統一。現状違うプラットフォーム同士を行き来することはできません。アバターの形式もそれぞれ違うことから、プラットフォームを移動すると全く違う人になってしまうのです。この課題についてはメタバース業界だけではなく、国を挙げて検討している段階なので、今後何らかの取り組みが行われるはずです。個人的には、日本だけではなく世界共通の規制やルールができると良いと思うのですが、著作権の問題などまだまだたくさんの壁があります。今後絶対的に支持されるような今後プラットフォームができたら、自然と周囲もその形式に合わせることになると思うので、時間が問題を解決していくことでしょう。


 6月6日発行の「WWDJAPAN」(ウィークリー版)では、「メタバース特集」と題し業界の先駆者たちにフォーカスしていく。

The post VRクリエイター・せきぐちあいみが語るバーチャル × ファッションの可能性 AR、NFTなどもわかりやすく解説 appeared first on WWDJAPAN.

食に“地球を救う”商機あり パタゴニアが食産業に参入した理由を本社キーマンが語る【前編】

 パタゴニアは食品事業プロビジョンズ(PROVISIONS)を立ち上げ、フードビジネスに力を入れる。現在のプロビジョンズのビジネス規模はアパレルに比べると非常に小さいが、創業者のイヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard)は、プロビジョンズがアパレルのビジネスを上回ると断言する。背景には2018年に改訂した企業理念“私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む”がある。パタゴニアは創業当時から環境保護に熱心に取り組むが、改訂された企業理念はより強い使命感が現れており、発表後、環境保護の取り組みを加速させている。創業当時から断続的に同社で働くパタゴニア哲学の要、ヴィンセント・スタンリー=フィロソファー(哲学者の意。パタゴニア独自の役職)にオンラインで話を聞いた。

WWD:パタゴニアがフードビジネスに参入した理由は?

ヴィンセント・スタンリー哲学者(ヴィンセント):イヴォン(シュイナード創業者)が食べるのが大好きだから(笑)。実は25年ほど前にフードビジネス参入を試みましたが、うまくいきませんでした。2011年にフードビジネス業界出身のバーゲット・キャメロン(Birgit Cameron、現在はプロビジョンズのマネジメントを担当)が加わってから、真剣に取り組むようになりました。

WWD:スープや缶詰め、ドライフルーツやビール、最近では日本酒やワインとさまざまに提案していますが製品作りの基準は?

ヴィンセント:食産業のシステムにある問題(サプライチェーンが複雑に絡み合い複雑であること)を改善できるか、あるいは環境再生型農業に貢献できるかを重視しています。これこそ進むべき道だと考えたから。

 プロビジョンズビジネスで私たちが土を作る時、農薬を使わないだけでなく、最低限の耕作を行うことで、自然界よりもはるかに速く表土を作り上げることができます。この惑星に、取るよりも多く返せています。また、食だけではなく(農耕が必要な)コットンやヘンプなどの繊維に関しても農法を変革することで良い影響を与えることができます。再生型農業は、私たちが小規模農家や農業コミュニティーを支援できるので、環境面だけでなく社会的なサポートも行うことができます。

WWD:2016年に発売したビールは見たことがない植物“カーンザ”が原料でした。どのように生まれたのですか?

ヴィンセント:私たちの大切な友人にカンザス在住の農学者ウェス・ジャクソン(Wes Jackson)という人がいます。彼のライフワークはカンザス州の大平原を健全な状態に戻すこと。彼は約20年前に根が6mの深さまで伸びる多年草麦“カーンザ”を開発したと教えてくれました。根が土の中に深く張ると、あらゆる微生物や菌類をかき乱すことで表土を作り上げ、土中に新しい命が宿ります。カーンザは長い根と多年生という特徴により、耕起や農薬なしに成長し、従来の小麦より水を使いません。また、表土を回復させて一年生穀物より多くの炭素を大気中から吸収します。収穫後は地中に残った根が分解され、炭素を土に封じ込めることができる特徴がありました。

 「素晴らしいね、ウェス。そのカーンザはどこで買えるの?」と聞いたら、「カーンザは買えないよ」と言われました。「なぜ?」と聞くと、彼は「カーンザを栽培しようと思う農家はないと思うよ。彼らは売れないものは植えないから」と。

WWD:どうやって製品化まで漕ぎつけたのですか?

ヴィンセント:私たちはオレゴンのポートランドにあるビール醸造所とパートナーになり、カーンザをエールの成分として取り入れることを試みました。まず100ヘクタール(100万平方メートル)にカーンザを栽培し、いくつかの穀物会社に関心がないかアプローチし、数社が関心を持ってくれました。今では、何千ヘクタールにも渡ってカーンザが植えられています。

 私たちは、これまで使われていなかったものを取り入れることで環境的問題を解決する方法になると学びました。もし私たちが問題を解決できるような商品を作れば、政府が税金を引き上げる必要もないし、慈善家に資金をお願いする必要もありませんよね。

WWD:独自の商品開発するにあたり、パートナーに求める条件は?

ヴィンセント:最終的な製品が、土壌の状態をより良くすること、海も同様で同じでより健康な状態にすることーーその手助けに興味を持ってエキサイトしてくれるかどうかでしょうか。

WWD:新製品はどのように選定していますか?

ヴィンセント:自然な流れとして、ビールが成功したから次は酒やワインに、ムール貝が成功したから鯖缶という流れでした。私たちは自分たちに環境を改善できるか、という問題を課しています。時々農学者や科学者と意見交換をし、穀物にはとてつもない可能性があるという話をしています。また、ワシントン州西部に有名な研究所からアプローチされたり、フードビジネスを行っている人から提案されたりもします。環境が改善されるかどうかに加えて、栄養はあるか、上質な製品か、そして大切なのは美味しいかどうか、です。美味しければ、それだけで食べてもらえますからね。自然食品は可能性に満ちていますが、私たちはその可能性の一部しか見ていませんし、まだ革新の初期段階と言えるでしょう。

WWD:環境改善のほかに地方・地域を盛り上げていくことも戦略にありますか?

ヴィンセント:私たちは、ローデールプレス(The Rodale Institute)とブロナー博士(Dr. Bronner)とともに、環境再生型農業の認可基準を作りました。土を健全な状態に戻せるかどうかに加え、同じくらい鍵となる要素が2つあります。1つ目は動物福祉です。多くの農場はバイソン(バッファロー)や牛などを放牧することによって土壌の改善を行っていて、バイソンや牛は最後にはジャーキーになります。命をいただくことに敬意を持ち、最後まで優しい気持ちを持って動物と接することも認可基準に含まれています。もう一つは人間のコミュニティーです。労働者がきちんとサポートされているか、良い賃金が払われているか、きちんと待遇されているか、農業コミュニティーの状態はどうか、などです。人の状態が良くないと、農業への良い状態を保証できないと考えるからです。

WWD:「五人娘」では千葉の酒造、寺田本家と組みましたね。

ヴィンセント:千葉はとても複雑な場所ですね。都心から離れて農業を営む人がいると同時に都会でもあります。農業を営んでいる人やそのコミュニティーの状態がどうなっているのかに目を向けました。

 環境再生型農業は小規模農家ととても相性がいいんです。小さい農家は、どんな害虫がいるのか、土の状態はどうかなど細部のあらゆる状態までしっかりと目が行き届くから。日本の農業やアメリカ北東部で行われている農業と相性がいいですね。

WWD:今後、どういう形でビジネスを拡大していきますか?プロビジョンズビジネスがアパレルビジネスを上回ることは本当にあるのでしょうか。

ヴィンセント:そうですね。イヴォンも断言しています。すごく時間はかかるでしょうけどね。プロビジョンズビジネスはアパレルビジネスと比べると非常に小さく、長い時間と注意力を必要とします。どう商品を作り、どう良い品質にするか、その解決策を見つけなければいけません。でも、素晴らしい可能性があると確信しています。

The post 食に“地球を救う”商機あり パタゴニアが食産業に参入した理由を本社キーマンが語る【前編】 appeared first on WWDJAPAN.

食に“地球を救う”商機あり パタゴニアが食産業に参入した理由を本社キーマンが語る【前編】

 パタゴニアは食品事業プロビジョンズ(PROVISIONS)を立ち上げ、フードビジネスに力を入れる。現在のプロビジョンズのビジネス規模はアパレルに比べると非常に小さいが、創業者のイヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard)は、プロビジョンズがアパレルのビジネスを上回ると断言する。背景には2018年に改訂した企業理念“私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む”がある。パタゴニアは創業当時から環境保護に熱心に取り組むが、改訂された企業理念はより強い使命感が現れており、発表後、環境保護の取り組みを加速させている。創業当時から断続的に同社で働くパタゴニア哲学の要、ヴィンセント・スタンリー=フィロソファー(哲学者の意。パタゴニア独自の役職)にオンラインで話を聞いた。

WWD:パタゴニアがフードビジネスに参入した理由は?

ヴィンセント・スタンリー哲学者(ヴィンセント):イヴォン(シュイナード創業者)が食べるのが大好きだから(笑)。実は25年ほど前にフードビジネス参入を試みましたが、うまくいきませんでした。2011年にフードビジネス業界出身のバーゲット・キャメロン(Birgit Cameron、現在はプロビジョンズのマネジメントを担当)が加わってから、真剣に取り組むようになりました。

WWD:スープや缶詰め、ドライフルーツやビール、最近では日本酒やワインとさまざまに提案していますが製品作りの基準は?

ヴィンセント:食産業のシステムにある問題(サプライチェーンが複雑に絡み合い複雑であること)を改善できるか、あるいは環境再生型農業に貢献できるかを重視しています。これこそ進むべき道だと考えたから。

 プロビジョンズビジネスで私たちが土を作る時、農薬を使わないだけでなく、最低限の耕作を行うことで、自然界よりもはるかに速く表土を作り上げることができます。この惑星に、取るよりも多く返せています。また、食だけではなく(農耕が必要な)コットンやヘンプなどの繊維に関しても農法を変革することで良い影響を与えることができます。再生型農業は、私たちが小規模農家や農業コミュニティーを支援できるので、環境面だけでなく社会的なサポートも行うことができます。

WWD:2016年に発売したビールは見たことがない植物“カーンザ”が原料でした。どのように生まれたのですか?

ヴィンセント:私たちの大切な友人にカンザス在住の農学者ウェス・ジャクソン(Wes Jackson)という人がいます。彼のライフワークはカンザス州の大平原を健全な状態に戻すこと。彼は約20年前に根が6mの深さまで伸びる多年草麦“カーンザ”を開発したと教えてくれました。根が土の中に深く張ると、あらゆる微生物や菌類をかき乱すことで表土を作り上げ、土中に新しい命が宿ります。カーンザは長い根と多年生という特徴により、耕起や農薬なしに成長し、従来の小麦より水を使いません。また、表土を回復させて一年生穀物より多くの炭素を大気中から吸収します。収穫後は地中に残った根が分解され、炭素を土に封じ込めることができる特徴がありました。

 「素晴らしいね、ウェス。そのカーンザはどこで買えるの?」と聞いたら、「カーンザは買えないよ」と言われました。「なぜ?」と聞くと、彼は「カーンザを栽培しようと思う農家はないと思うよ。彼らは売れないものは植えないから」と。

WWD:どうやって製品化まで漕ぎつけたのですか?

ヴィンセント:私たちはオレゴンのポートランドにあるビール醸造所とパートナーになり、カーンザをエールの成分として取り入れることを試みました。まず100ヘクタール(100万平方メートル)にカーンザを栽培し、いくつかの穀物会社に関心がないかアプローチし、数社が関心を持ってくれました。今では、何千ヘクタールにも渡ってカーンザが植えられています。

 私たちは、これまで使われていなかったものを取り入れることで環境的問題を解決する方法になると学びました。もし私たちが問題を解決できるような商品を作れば、政府が税金を引き上げる必要もないし、慈善家に資金をお願いする必要もありませんよね。

WWD:独自の商品開発するにあたり、パートナーに求める条件は?

ヴィンセント:最終的な製品が、土壌の状態をより良くすること、海も同様で同じでより健康な状態にすることーーその手助けに興味を持ってエキサイトしてくれるかどうかでしょうか。

WWD:新製品はどのように選定していますか?

ヴィンセント:自然な流れとして、ビールが成功したから次は酒やワインに、ムール貝が成功したから鯖缶という流れでした。私たちは自分たちに環境を改善できるか、という問題を課しています。時々農学者や科学者と意見交換をし、穀物にはとてつもない可能性があるという話をしています。また、ワシントン州西部に有名な研究所からアプローチされたり、フードビジネスを行っている人から提案されたりもします。環境が改善されるかどうかに加えて、栄養はあるか、上質な製品か、そして大切なのは美味しいかどうか、です。美味しければ、それだけで食べてもらえますからね。自然食品は可能性に満ちていますが、私たちはその可能性の一部しか見ていませんし、まだ革新の初期段階と言えるでしょう。

WWD:環境改善のほかに地方・地域を盛り上げていくことも戦略にありますか?

ヴィンセント:私たちは、ローデールプレス(The Rodale Institute)とブロナー博士(Dr. Bronner)とともに、環境再生型農業の認可基準を作りました。土を健全な状態に戻せるかどうかに加え、同じくらい鍵となる要素が2つあります。1つ目は動物福祉です。多くの農場はバイソン(バッファロー)や牛などを放牧することによって土壌の改善を行っていて、バイソンや牛は最後にはジャーキーになります。命をいただくことに敬意を持ち、最後まで優しい気持ちを持って動物と接することも認可基準に含まれています。もう一つは人間のコミュニティーです。労働者がきちんとサポートされているか、良い賃金が払われているか、きちんと待遇されているか、農業コミュニティーの状態はどうか、などです。人の状態が良くないと、農業への良い状態を保証できないと考えるからです。

WWD:「五人娘」では千葉の酒造、寺田本家と組みましたね。

ヴィンセント:千葉はとても複雑な場所ですね。都心から離れて農業を営む人がいると同時に都会でもあります。農業を営んでいる人やそのコミュニティーの状態がどうなっているのかに目を向けました。

 環境再生型農業は小規模農家ととても相性がいいんです。小さい農家は、どんな害虫がいるのか、土の状態はどうかなど細部のあらゆる状態までしっかりと目が行き届くから。日本の農業やアメリカ北東部で行われている農業と相性がいいですね。

WWD:今後、どういう形でビジネスを拡大していきますか?プロビジョンズビジネスがアパレルビジネスを上回ることは本当にあるのでしょうか。

ヴィンセント:そうですね。イヴォンも断言しています。すごく時間はかかるでしょうけどね。プロビジョンズビジネスはアパレルビジネスと比べると非常に小さく、長い時間と注意力を必要とします。どう商品を作り、どう良い品質にするか、その解決策を見つけなければいけません。でも、素晴らしい可能性があると確信しています。

The post 食に“地球を救う”商機あり パタゴニアが食産業に参入した理由を本社キーマンが語る【前編】 appeared first on WWDJAPAN.

広告会社からデザイナーへ 乃木坂46の衣装デザインも担当した「ミカゲシン」のファッション哲学

 「ミカゲシン(MIKAGE SHIN)」は、“性別、年齢、ボーダーを越えて個人の知性と強さを引き出す”を掲げるファッションブランドだ。テーラリングを軸に、哲学者のノートや中世ヨーロッパの医学書といったユニークなグラフィックとカッティングのレイヤードスタイルを得意とする。現在の卸先は15アカウント。自社ECやポップアップでもファンを集め、3月には乃木坂46の楽曲「Actually…」のミュージックビデオで着用する衣装デザインを担当するなど、コレクション以外でも活動の幅を広げている。

 ブランドを手掛ける進美影デザイナーは1991年生まれ。大学卒業後、広告会社に入るが、デザイナーを目指して退社し、17年に米ニューヨークのパーソンズ美術大学(Parsons School of Design)に進学した。19年にニューヨークでブランドを設立し、20年から日本に拠点を移してコレクションを発表している。ダイバーシティやサステナビリティなど、時代の潮流に合ったクリエイションでも注目される彼女に、「不安ばかりだった」と語る衣装デザインの裏側から、一般企業からデザイナーへと転身した経緯までを聞いた。

WWD:乃木坂46(以下、乃木坂)の衣装デザインを担当したきっかけは?

進美影デザイナー(以下、進):同グループのファッションをディレクションしている軍地彩弓さんが推薦してくれた。もともと乃木坂の衣装クオリティーに注目していたこともあり、二つ返事で引き受けた。過去にりゅうちぇるさんのワンピースを作ったことはあったが、ここまで大掛かりな衣装デザインは初めて。運営側、生産チームと密にコミュニケーションをとり、コレクション制作と並行して準備を進めた。

WWD:具体的な制作の流れは?

進:まずは楽曲を聴き、洋服の大まかな方向性を考えた。力強くて疾走感があり、新たな一面を垣間見る音楽だったため、可憐で優雅な既存のグループイメージとともに、“強さ”と“覚悟”も感じさせるデザインに決めた。大きく5つのパターンを用意し、それぞれに20ルックほどのイラストを載せて視覚化し、運営側と協議を重ねた。

WWD:これまでの乃木坂の衣装は、ロングスカートなどフェミニンなイメージが強く、クールなクリエイションが得意な進デザイナーの起用は新鮮だった。

進:最初は自分も不安だった。既存のテイストが好きなファンが大多数だから、その期待を裏切ったらどうしよう、楽曲の表現を衣装が邪魔したらどうしようと思っていた。しかし、彼女たちが出演するテレビ番組やインタビュー記事から、アイドル活動に対する覚悟を感じて、「新しい一面を引き出す方向に挑戦しよう」と意思が固まった。その後、背が高い人はパンツでスタイルの良さを際立たせたり、優雅なディテールが似合う人にはキルトを付けたり、首元をスッキリさせた方が表情の生きる人はVネックにしたりと、衣装の詳細が自然と決まっていった。彼女たちの持つ世界観や表現を120%まで拡張するのが私の使命。いつもの服作りとは違う刺激があり、楽しかった。

WWD:衣装作りといったクライアントワークは今後も挑戦したい?

進:通常は一人でクリエイションに勤しむことが多いけど、今回は制作チームとともにみんなで作り上げていった。そのチーム感も楽しかったし、第3者に向けて作ったからこそ、いつもと違うクリエイションも引き出せた。チャンスがあるならどんどんチャレンジしたい。

広告会社を辞めファッションの道へ
きっかけは母親の助言

WWD:大学卒業後、一度は広告会社に入った。その後デザイナーに転向するまでには、どんな経緯があった?

進:小さな頃からファッションが好きだった。服のコーディネートはもちろん、デザインにも興味があった。しかし、中学・高校と進学校に通っていたこともあり、安定した仕事に就きたいという意識が強く、新卒で広告会社に入った。コンサルを軸にさまざまな業界・業種の課題を解決する仕事にやりがいを感じながらも、自分よりも広告に向いている人たちがいっぱいいて、「私以上の適任がいるのに、この案件をやっていていいのか」「人生をかけて、広告業界で何が残せるのか」と疑問を持つようになった。一方で、諦めていたファッションについての熱は冷めなかった。「女性の内面に沿ったデザインが少ない」「社会課題やアートに興味がある人のアイデンティティを反映したクリエイションが見たい」と、自分にしかできない服作りがあるかもと思い始めていた。そんなとき、母親から「今の会社に残って続けるか、キャリアチェンジしてゼロからファッション始めるか。どっちが正解なんて分からないんだから、自分で動いて正しい道にしなさい」と言われた。「ファッションを正解にしたい」と、一念発起してデザイナーになることを決めた。

WWD:退社後、NYの名門パーソンズ美術大学に入学する。同校を選んだ理由は?

進:英語を学びながら、グローバルな環境で切磋琢磨できる学校が第一条件だったから。中でもパーソンズを選んだのは、ダイバーシティファッションを学ぶためだ。同校には“オープンスタイルラボ”というダイバーシティファッションのクラスがあり、障がいを持つ人とチームを組み、対等な立場でファッション性の高いクリエイションを実践していた。それに加えて、ニューヨークは世界で指折りの国際都市で、さまざまな人種が当たり前に存在している。ジェンダー云々という話ではなく、個人個人がその人生を生きる、というムードが強く、その環境で学びたいと思った。

アメリカで感じた“心地いい不干渉”
服以外でも発信する意義

WWD:アメリカと日本で、人々のファッションへの向き合い方に違いはある?

進:日本はファッションと内面を同一視する傾向があるが、アメリカでは服は服、内面は内面と区別する考えが強い。だから「あそこはイケてる」「あそこはダサい」といったファッションによるヒエラルキーもないし、同じコミュニティーにさまざまな服装の人がいる。他人の服装にとやかく言うのはナンセンスだ、という共通認識があり、いい意味で不干渉だった。そのあり方が心地よかった。

WWD:17〜20年のアメリカでは、#MeToo運動やBLM(ブラック・ライブズ・マター)といった人権のムーブメントも起こった。

進:ちょうどアメリカにいたタイミングで、さまざまな人権問題が表面化し、大きなムーブメントが生まれていた。運動自体も大きな出来事だったが、それらに対するメゾンブランドの動きにも衝撃を受けた。多くのブランドが一斉にステートメントを出し、クリエイティブ・ディレクターも個人で意見を表明する姿を見て、人権意識の違いを痛感した。“Fashion Is Not an Island”という言葉があるように、ファッションは陸の孤島じゃなく、社会に生きるもの。だから、デザイナーは服を作るだけでなく、意見を発信することも大事だと思う。SNSで発信し続けているのもこれが理由だ。

WWD:20年にアメリカから東京に拠点を移したのはコロナの影響?

進:そうだ。コロナによってNYの工場が終業してしまったり、稼働しなくなったりして、現地でのブランド継続が難しくなったため、日本に拠点を移した。しかし、ベースメントが変わっただけで、ブランドテーマは変えていない。日本にはユニークな生地や加工工場がたくさんある。一度海外に行ったからこそ、その価値が分かった。その価値はブランドとして生かさなきゃいけないし、残さなきゃいけないと思っている。

WWD:ここ数シーズンは東京を舞台にコレクションを発表し、国内での知名度がぐっと高まった印象だ。

進:演出家や音楽チームとコンセプト設計からディスカッションし、クオリティーの高いショーを実現することができた結果、国内のバイヤーやメディアからの注目度が高まった。これはブランド成長にとって欠かせない大きなステップだと思う。一方で、世界から見つけてもらうのは難しく、現在のアカウントは全て国内だ。デザイナーズブランドをやる以上、やはり海外で勝負したい。6月にはパリ・メンズに合わせて現地での展示会を控えており、世界市場の開拓を本格化させていく。

WWD:リサイクルウールなどを採用したコートなどを提案しており、“サステナブルなデザイナーズ”と紹介されることもある。

進:環境問題は、アクションを起こさないと何も始まらない。異常気象をはじめ、地球が明らかに変化していることみんな気づいているはずだから、無関係では済まされない。今できることを継続していくことが大事だ。ただ、ファッションが好きな人こそ、上質な素材にこだわりがあり、洗練された自分を見せたいと思っている。だから、どれだけ環境に配慮しても、服のクオリティーが低いと手に取ってもらえない。技術と一緒に進化することが必要だ。

WWD:ブランドを初めて3年が経った。服作りで変わらない姿勢は?

進:自信を持って提案できるプロダクトを作ること。「売れるから」「安いから」という理由では絶対に作らない。それと、“人生を変える瞬間に携わりたい”という思いも変わらない。ファッションには、人を変える力がある。それを信じて、自分にしかできないクリエイションを追い求めていく。

The post 広告会社からデザイナーへ 乃木坂46の衣装デザインも担当した「ミカゲシン」のファッション哲学 appeared first on WWDJAPAN.

「シュプリーム」「ナイキ」の広告を手掛ける写真家 ピーター・サザーランドが語るアートを通じたコミュニケーション

 ピーター・サザーランド(Peter Sutherland)は、アーティストや写真家、映像作家などさまざまな顔を持つ。ミシガンに生まれ、1998年にニューヨークに移ってまもなくして弟にもらったカメラで面白いと思ったものを何気なく撮影し、最初のZINE「Unscathed」を自ら6部制作した。その後同作が「ヴァイス マガジン(VICE MAGAZINE)」やアートギャラリーの目に留まり、計らずも写真家としてのキャリアをスタートさせた。やがてニューヨークのバイクメッセンジャーたちを撮ったドキュメンタリー映像「Pedal(2001)」がサンダンス映画祭に出品され、映像作家としても注目を集めた。以来、ファッション誌のエディトリアルや「シュプリーム(SUPREME)」「ナイキ(NIKE)」などのブランドの広告を撮影する傍ら、精力的に作品集の刊行や展示を行っている。日本でも原宿にあるコンセプトショップ、ドミサイル東京(DOMICILE TOKYO)での個展“ESCAPISM”や今年の2月に新宿伊勢丹で行われた“STUDIO VISIT”なども記憶に新しい。

 そんな彼が、2015年にアーティストでパートナーのマイア・ルース・リー(Maia Ruth Lee)と始めたブランドが「シー・エヌ・ワイ(CNY)」だ。小さな頃から好きだったという、1990年代のスケートボードやBMXにまつわる雑誌やバンドTにインスピレーションを受けたグラフィックをあしらったTシャツやフーディーは、ニューヨークのストリートシーンを中心に人気を博し、今年の2月には日本国内初のECサイトもオープンした。パンデミックを機に、20年以上過ごしたニューヨークから故郷のコロラドに拠点を移したサザーランドに、創作活動やブランドの現在地を聞いた。

――まずはキャリアについて教えてください。アートに目覚めたきっかけは?

サザーランド:5、6歳の頃、母親のスーパーの買い出しについて行って、BMXやスケートボード関連の雑誌「BMX plus」の写真やロゴが混在した誌面を見るのがとても好きだったんだ。当時は小さな街で育ったから、アートのことなんて何も分かってなかった。でも歳を重ねるにつれてアートを作るということや、色んなアートが存在することを理解していった。今では、小さい頃に見ていた雑誌のようなコラージュを作っているなんて面白いよね。

――写真に興味を持ったのはなぜ?

サザーランド:特にやりたいことや目標もないまま22歳のころにニューヨークに引っ越したんだけど、弟に誕生日プレゼントとしてカメラをもらったんだ。まずは撮り方を学ぼうと、自分が面白おかしいと思うものや周りの人たちを撮り始めてみた。しばらくして、すぐにそれらの写真をまとめた「Unscathed」というZINEを6部だけ作った。どうやって作ったのか、なぜ作ったのかも覚えてないんだけど、それを友達にあげたり、「バイス・マガジン」に送ったりしたら、思いがけないほどいい反応が返ってきたんだよね。バイスの広告に使ってもらったり、アートギャラリーに展示されたりしたから、とりあえず続けてみるかという感じで今に至るのさ。

地元コロラドに拠点を移して変わった価値観

――昨年、20年分の友人のポートレートをまとめた写真集「STREET LORDS」を発売しましたね。写真集を手掛ける中で感じたことはありましたか?

サザーランド:シンプルに、ラッキーな人間だと思ったよ。撮っておけばよかった人も数え切れないほどいるし、周りの友達を撮るのはあいさつのようになっていたし、まさかこんな形で写真集として出版できるなんて想像もしてなかったから。コロナがあり、20年以上過ごしたニューヨークを離れるタイミングで、これまでの思い出が詰まった一つの区切りのような一冊になった。この本を作って学んだことの一つが、時に最もシンプルなものがベストなものになるということ。シンプルな写真とレイアウトだけど、1、2枚しかシャッターを切らないからこそ写るエネルギーや瞬間があって、そこには確かに感じるものがあるんだ。本音を言うとページが全然足りなくて、1000ページくらいの本にしたかったけどね(笑)。

――2015年に始めたブランド「シー・エヌ・ワイ」の名前は「チャイニーズ・ニュー・イヤー(中国における旧暦の正月)」から取ったと聞きました。きっかけやコンセプト教えてください。

サザーランド:「シー・エヌ・ワイ」を一緒に立ち上げた妻のマイアは韓国人で、旧正月を祝うんだけど、言葉の響きや、その時期のチャイナタウンの雰囲気が好きで。だから、そのままブランド名にしたんだ。Tシャツやレコードスリーブなどのアートワークを手掛けるのはもともと興味があったんだよね。当時周りの友人たちがTシャツをオンラインで販売し始めたのもあって、とりあえずやってみようかなと思ったんだ。それが割と好評で、タイミングがよかったのかもね。自分が年を重ねても、「シー・エヌ・ワイ」を通して若者たちとコミュニケーションがとれるのはうれしいことだね。

――2020年に地元のコロラドに拠点を移して活動しています。「シー・エヌ・ワイ」のモノ作りにおいて、考え方や価値観に変化はありましたか?

サザーランド:今はニューヨークにいたときより時間があるから、よりアーティストらしい生活ができているように感じるよ。自然の中で過ごす時間が増えたから、アウトドアとシティのライフスタイルが共存しているようなものに関心があるんだ。例えば、ニューヨークのグラフィティ・アーティストがアウトドアブランドの「アークテリクス(ARC'TERYX)」を着ているような感覚かな。僕自身の「シー・エヌ・ワイ」の捉え方は間違いなく変わったよ。

――今年の2月に日本のECサイトを開設したこともその変化が関係しているのでしょうか?

サザーランド:ECの開設は、少し時間を置いていたんだ。拠点を移したことで、生産や発送などのプロダクションの体制が整っていなかったというのもあったから。でも「シー・エヌ・ワイ」を取り扱ってるコンセプトショップのドミサイル東京から日本で生産を引き受けられるというオファーをもらって、新たな試みだけどやってみようと思ったんだ。

作品の向こう側にいる人とのコミュニケーション

――写真やドローイング、アパレルなどさまざま表現方法を用いてますが、それらを通して伝えたいメッセージは?

サザーランド:作品や洋服に対して、みんながどんな反応をするのかはすごく興味があるよね。僕のジョークに少しでもクスッとしてくれる人がいたら、こんなうれしいことはないから。今45歳だけど、若い世代の心に届く何かを作ることは僕にとってとても興味深いこと。20歳の子が面白いと思うものが作れたら最高だよね。そのつながりはコミュニケーションだと思うんだ。オーディエンスを意識しないアーティストもいる中で、僕はいつも作品や洋服の先にいる人たちのことを考えている。

――コロナ禍や戦争など揺れ動く情勢の中でアートができる力について、どのように考えていますか?

サザーランド:コロナや戦争、環境問題も含めて、アートができる力についての答えはまだ見つけられていない。世界的に著名なアーティストが何かを作ればすぐにお金が集まるだろうし、寄付のための資金調達という手段にはなるんじゃないかな。

――最後に、今後のプロジェクトについて教えてください。

サザーランド:現在「Group Show」というタイトルで、写真家のダニエル・アーノルド(Daniel Arnold)や、ペインターでエル・エス・ディー・ワールド・ピース(LSD World Peace)ことジョー・ロバーツ(Joe Roberts)ら6人のアーティストのインタビューを集めたショートムービーを制作中なんだ。この秋には公開できると思うから、楽しみにしててよ。

The post 「シュプリーム」「ナイキ」の広告を手掛ける写真家 ピーター・サザーランドが語るアートを通じたコミュニケーション appeared first on WWDJAPAN.

AMIAYAと考えるサステナビリティvol.3 「リン」川島デザイナー「デザイナーである限り、自分の思いを発信しなければ意味がない」

 双子モデルのAMIAYAは、原宿のストリートで誕生し、今や東京のファッションシーンと世界をつなぐ架け橋のような存在だ。2011年には、マークスタイラーから自身がクリエイティブ・ディレクターを務めるアパレルブランド「ジュエティ(JOUETIE)」を立ち上げ、10〜20代の層を中心に支持を集める。「ファッションを謳歌し、自由に表現する楽しさを届ける」ことをモットーに、ポジティブなパワーを発信してきた2人は、環境問題や人権問題など業界の負の側面への関心が高まる今、「私たちが発信すべき責任あるメッセージとは何か」を自問する。本連載では、AMIAYAがさまざまな角度からサステナビリティを学ぶ姿を追う。連載3回目は、「持続可能なファッション」を模索するD2Cブランド「リン(WRINN)」の川島幸美デザイナーに話を聞いた。

AMI:川島さんは過去に「アウラアイラ(AULA AILA)」や「アウラ(AULA)」といったブランドを手掛けていらっしゃいました。それらを辞めて、あらためて「リン」を立ち上げた背景を教えてください。

川島幸美「リン」デザイナー(以下、川島):以前のブランドでは、半年ごとにコレクションを発表し、商品が店頭に並んだ3カ月後にはセールに出して、また次の商品を作るというサイクルを当たり前にこなしていました。でも正直すごく忙しかったし、大変でした。このままこのサイクルを回し続けるべきなのか疑問に感じていたころ、パリで出会った有識者から温暖化で地球に住めなくなる未来が迫っていることを聞きました。もともとオーガニックコスメやフードが好きで、環境問題には関心がありましたが、このころから自分がすごいスピードで生産しているものと環境汚染のつながりに向き合うようになりました。本当は既存のブランドを変えたかったけど、コンセプトが確立したブランドでは難しかったので、ゼロからもう一度自分が本当に伝えたいことを表現できる場所を作ろうと決めました。

AYA:ファッションのサイクルに疑問を持っていたからこそ、「リン」ではセールをしない売り方を実践しているんですね。

川島:はい。受注生産を取り入れ、在庫は付き合いのある工場と小ロットで生産しています。これまで大手企業で育ってきたので、セールを前提とした価格のつけ方を当たり前だと思っていました。でも、一度立ち止まって考えると、きちんと商品に合う価格でセールをせずに売り切ればその分の利益も還元できるし、もっと安く消費者にも提供できる。それに売れ残りの廃棄も出ない。まずはここから変えようと思ったんです。

AMI:考え方を見直したことで、デザインの仕方も変わりましたか?

川島:時代の流れや今のテンションを洋服に落とし込んでいることや、気持ちのこもった商品を届けたい思いは変わりません。ただ、長く着てもらうことが前提となり、シーズンごとの打ち出しはあまり意識しなくなりました。素材に関しては、リサイクル素材や認証の取れたオーガニックコットンなど背景により意識を向けるようになりました。

AYA:商品の価格帯も買いやすくて驚きました。ターゲット層を意識しているのでしょうか?

川島:ターゲット層は定めていません。エイジレスで幅広い人たちに着てもらいたい。でも、オンラインで買いやすい価格は意識しています。原価率は高いけど、なるべく少人数のチームでランニングコストを抑えるように努力しています。

ブランド名はモノづくりをする上で大切にしたいことの頭文字

AMI:私たちはまさに移り変わりの激しい業界の中にいて、どんな発信をするべきなのか日々考えています。「リン」の軸は何ですか?

川島:ブランド名の「WRINN」はモノづくりをする上で大切にしたいことの頭文字を取りました。「Wastes(ごみを出さない)」「Recycle(資源を無駄にしない)」「Improve(生産者の生活環境を改善する)」「Nature(土壌を守る)」「No more animals(動物の毛皮を使用しない)」です。これらを軸に、オーガニックコットンやリサイクル素材、植物由来の繊維などを主に使用しています。私が生地を探し始めたころは、まだまだ選択肢が少なかったですが、最近はリサイクル素材のバリエーションも増えましたし、環境負荷の低いプリント技術も出てきたので、これからさらに表現の幅を増やしていきたいです。

AYA:一方で、サステナブルなファッションを打ち出すことに躊躇はありませんでしたか?

川島:確かに最初は勇気がいりました。でも、ファッションデザイナーである限り、自分の思いを発信しなければ意味がない。「リン」を立ち上げた時、本当に伝えたいことは何かをすごく考えました。先日はマギーとコラボしてゴルフウエアを発売しましたが、彼女もブランドの考え方に共感して「『リン』とであれば一緒にモノづくりをしたい」と思ってくれました。そんな仲間が少しずつ増えているのを感じます。

AMI:私たちも洋服を通して誰かの背中を押したいと強く思っています。川島さんはそれをちゃんと形にしてエイジレスに届けている姿勢に、勇気をもらいました。私たちも日々葛藤を抱えていますが、できるところから変化を生み出したいと思いました。

川島:2人がこの連載を始めたように、何かしたい、変えたいと思うことが第一歩。サステナビリティは正解がなく、先が見えないので私もたくさん苦しみました。でも、いろんな人との会話にヒントがありました。こうして同じ意識を持つ人が増えてとてもうれしいです。これからも一緒に発信できたらいいですね。

AYA:私たちも川島さんの背中を追いかけていきます!

The post AMIAYAと考えるサステナビリティvol.3 「リン」川島デザイナー「デザイナーである限り、自分の思いを発信しなければ意味がない」 appeared first on WWDJAPAN.

「ドクターマーチン」とアーティスト山瀬まゆみがタッグ 限定店を彩るカラフルなパンクができるまで

 「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」は、2022年春夏の新作のサンダルをそろえたポップアップストアを伊勢丹新宿店 本館2階婦人靴プロモーションスペースで5月24日まで開催中だ。店内にはシルバーのスタッズを施した“クラリッサ II クアッド ハードウェア(CLARISSA Ⅱ QUAD HDW)”(税込2万4200円)や、ピンクやイエローのパステルカラーが特徴の“ヴォス モノ(VOSS MONO)”(同1万9800円)をはじめ、ストラップを飾った定番の“グリフォン(GRYPHON)”(同1万9800円)など、バリエーション豊富に用意する。

 ポップアップの空間を手掛けたのは、アーティストの山瀬まゆみだ。彼女が得意とする抽象的なモチーフと、カラフルな色がフロアを彩る。山瀬は高校卒業後、ロンドン芸術大学でファインアートを学んだ後、 “肉体のリアリティと目に見えないファンタジーや想像の相対”をコンセプトにペインティングとソフトスカルプチャーを制作している。2018年には「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」と、2021年にはスポーツブランドとのコラボレーションを発表した。現在は東京を拠点にし、アーティストとしてだけでなく、ライター・編集者としても活動している。クリエイティビティの最前線を行く彼女に、「ドクターマーチン」とのコラボレーションや自身のキャリアについて語ってもらった。

WWD:「ドクターマーチン」とのコラボレーションに至った経緯は?

山瀬まゆみ(以下、山瀬):ペインターの友人が開いていた展示会を見に行く機会があり、そこで「ドクターマーチン」の方を紹介してくれました。私のことを知ってくれていて、そこから今回のポップアップの空間を作ってほしいと声を掛けてもらいました。

WWD:ポップアップ空間のテーマは?

山瀬:“サンダル”と“夏”をテーマに、サマーシーズンを連想させるオレンジや黄色、緑などの色を使ってカラフルに仕上げました。「ドクターマーチン」といえばパンクスピリット溢れる強いイメージです。そのブランドらしさを表現したかったので、私が得意とする抽象的なモチーフや落ち着いたトーンを用いながら、シグネチャーであるステッチを自分なりの解釈でポップに描いてみました。

アクリル絵具で描くカラフルな抽象画

WWD:抽象的なモチーフの作品を描き始めたのはいつから?

山瀬:通っていた高校で美術と音楽の授業どちらかを選ぶ方針があり、音楽が苦手だったので美術を選択しました。授業で「好きな絵を描いていい」とキャンバス一枚を渡されて、何気なく描き始めたのがきっかけでしたね。美術の先生に見せたら「いいじゃない!」と褒めてもらえたこともあり、そこから今の作風を築き上げていきました。

WWD:有機的な曲線と穏やかな色味は高校時代から?

山瀬:高校時代に描いていたものはもっとダークトーンでおどろおどろしく、絵的にも生々しいニュアンスでした。青春時代はすごく多感な時期だから、悩みもたくさんあるじゃないですか。今思えば、その時の心情が作品にすごく表れていますね。年齢を重ねることで心が穏やかになり、今のような柔らかいトーンになったのかもしれません。

WWD:ワークショップやこの空間を通して伝えたいことは?

山瀬:ギャラリーのようにキャンバスを飾っているわけではないので、作品一つ一つを説明するのは難しいですね。でも、目の前を通ったときに「かわいい!」と気になってもらえるだけでうれしいです。期間中にワークショップも行いましたが、お客さまとのコミュニュケーションを通して山瀬まゆみというアーティストを知ってもらうきっかけになれたらいいですね。

アートが生み出す大きなエネルギー

WWD:アーティストを目指したきっかけは?

山瀬:日本の美術大学へ進学するには、専門の予備校に通わないといけないんです。でも、いざ受験勉強をしようと思っても、予備校に入っていないし、何も準備していなかった。そんなとき、高校の美術の先生が、ロンドンの大学を勧めてくれて、ロンドン芸術大学に進学しました。当時は、母親がファッションデザイナーということもあり、興味があったファッションを学ぼうと考えていました。ただ、ポートフォリオを作る入試課題でドローイングなどの課題制作に新鮮さを感じ、ファインアートに出合いました。自分の中で一番自由な表現ができるのがファインアートだったので、専攻を変えて改めて勉強することにしました。

WWD:激動の時代の中で、アートが持つ力とは?

山瀬:アートは直接的ではないからこそ、与えられるものがすごく大きい。アートの良さに気がつくと、私たちの生活に欠かせない水よりも人を満たせる力があると思っています。特にコロナ禍においては、私も周りもすごくヒリヒリとした時間を過ごす中で、不安を和らげてくれたのがアートでした。私は描くことで心が穏やかになったので、すごく助けられましたね。私が手掛けた作品や空間を見ることで、ポジティブな気持ちになる手助けができればうれしいです。

WWD:今後のプロジェクトについて教えてください。

山瀬:5月28、29日に開催される音楽フェス「グリーンルーム フェスティバル(GREENROOM FESTIVAL)」のアートスペースで展示を行います。20人ぐらいのアーティストたちと一緒に参加するので、ぜひ足を運んでもらえたらうれしいです。

The post 「ドクターマーチン」とアーティスト山瀬まゆみがタッグ 限定店を彩るカラフルなパンクができるまで appeared first on WWDJAPAN.

ユニクロ×「マルニ」の仕掛け人、勝田執行役員に聞く ユニクロが考えるコラボの成否とは?

 ユニクロは5月20日、イタリアのファッションブランド「マルニ(MARNI)」とのコラボレーションコレクション「ユニクロ アンド マルニ(UNIQLO AND MARNI)」を発売する。過去1年だけを見ても、ユニクロはジル・サンダー(Jil Sander)氏との「+J」や「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」手掛ける黒河内真衣子など、国内外のさまざまなデザイナーとのコラボで話題を呼んでいるが、そうしたコラボプロジェクトを率いているのが、ユニクロのR&D統括責任者である勝田幸宏ファーストリテイリンググループ執行役員だ。勝田執行役員に、「マルニ」とのやり取りやコラボについての考え方を聞いた。

WWD:「マルニ」とのコラボプロジェクトは、いつからどのように始まったのか。

勝田幸宏ファーストリテイリンググループ執行役員ユニクロR&D統括責任者(以下、勝田):ちょうど1年前だ。2022年春夏商品について考える中で、その頃にはコロナによる自粛も終わり始めて、世の中に「解放されたい」というムードが広がるだろうと予想していた。そういった空気を洋服に置き換えると、鮮やかな色や柄のアイテムを元気よく着たいとみんな感じるようになるんじゃないかと考えた。社内で使っている22年春夏のキーワードの1つが“リバレーション(解放)”だが、解放をユニクロとしてどう表現するか。ユニクロの通常ラインでも色や柄の打ち出しは頑張って行っていくが、それを盛り上げる22年春夏の大トリのようなプロジェクトがあるといいなと思った。それで「マルニ(MARNI)」が思い浮かんだ。以前から注目していたブランドの1つだが、フランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)がディレクターを務めるようになってから、若い人から大人の客まで、より幅広い層に受け入れられているという印象がある。

WWD:色柄を得意とするブランドとして、「マルニ」に注目したということか。

勝田:色や柄の表現はとても難しい。特に柄表現についてはその難しさ常々実感している。柄はアートそのもの。ユニクロ社内のグラフィックデザイナーももちろん日々努力しているが、柄というアートの領域に踏み込む以上は、そこに長けた、その領域で生きているブランドやデザイナーと組むべき。それで「マルニ」が真っ先に思い浮かんだし、「マルニ」以外にはアプローチしていない。実際に取り組んでみて、色柄の使い方は真似できないし、真似をしようとしても無理だなと改めて強く感じた。柄も配色のセンスも、見様見真似でできるようなものではない。今回のプリント柄は全て手描きでコラボのために製作してもらっている。ユニクロとして、これまでも柄の使用で他社と協業することはあったが、「マルニ」は柄や色という二次元だけでなく、シルエットやシェイプといった三次元にも定評があるブランドだ。シルエットやディテールを含め、洋服全体としての完成度をお互い突き詰めることができた点で、非常に意義があるコラボだと思っている。

WWD:「マルニ」からはどのような意見や要望があったか。

勝田:ユニクロは19年9月にミラノに出店しているが、フランチェスコや「マルニ」のメンバーと最初に顔を合わせた際に、「ミラノの店を見に行っているし、実際に買っているよ」と教えてくれた。ユニクロの商品のことや使用素材についても非常によく知っていて、「コラボをするならこの素材を使いたい」というものが彼らの中に最初から明確にあった。その1つがコートに使った“ブロックテック”素材だ。ブロックテックという名前までは知らなかったが、「あれを絶対に使いたい」という指名が入った。ブロックテックは3層構造で防風などの機能性を持たせた素材だが、「適度なハリやコシがあるので目指すシェイプを作り出せる点がいい」として、実用性とファッション性を兼ね備えた素材だと気に入ってくれた。ただ、欧州だとこの素材は年間を通して売れるが、日本の梅雨は蒸し暑いので、この時期は通常あまり使わない。「ブロックテックを使いたい」と言われて最初は困ったなと思ったが、今年は日本もまだまだ気温の低い日があるので、ちょうどよかった。これまでブロックテックのコートはいくつも作ってきたが、今回の商品はその中でも最高傑作だと僕は思っている。

 “感動ジャケット”や“感動パンツ”の素材にも興味を持ってくれた。感動シリーズはお客さまからの要望を受けて、ユニクロとして今年からウィメンズも作っている。その追い風となるように、「セオリー(THEORY)」とのグループ内コラボでも感動シリーズを企画して非常に好調だが、社内で作るとどうしてもスリムなシルエットできれいめな印象になる。「マルニ」と組むことで、感動シリーズをベースにしながら、独特の「マルニ」らしいリラックスしたシルエットで作ることができた。今回のコラボでは、このように既存の素材を使うことで、価格も通常商品からそのままスライドできている。その点も、「試しに1着買ってちょっと挑戦してみる」ということにつながると思う。

単に実用的なものを作ればいいというわけでは決してない

WWD:ユニクロとしてはかなり大胆な柄表現を取り入れている。大胆さと、あらゆる人が着られるデザインとのバランスについては、どのように考えているのか。

勝田:確かにユニクロとしては初めてと言ってもいいくら振り切った柄ではある。洋服は着やすいものを着回すという考え方もあるが、最初に話した22年春夏の解放というキーワードのように、今年の夏は少し大胆な色や柄を取り入れることで、これまでとはちょっと違う、新しい自分に出会うというエモーショナルな(感性的な)要素が、われわれのコンセプトである“LifeWear”の中にあってもいいんじゃないかと考えた。もちろん、全てが着られない服では困る。僕自身も全てをルック写真のスタイリング通りに着ることはできないが、ユニクロのベーシックな商品とこれらを組み合わせることで着こなすことができる。「マルニ」が好きな方はルックの通りに着こなすだろうが、一般のお客さまも、ユニクロの既存商品に今回のコラボ商品を1、2点取り入れることで、きっと新しい自分を発見できる。これまでとは違う自分に出会う楽しさは、洋服が持っている可能性や魅力の1つ。コラボ商品を1着買うことで、そうした楽しさにつながれば嬉しい。

WWD:ユニクロは非常に論理的に商品を作っている印象がある。エモーションの話がこんなに強く出てくることは正直意外だ。

勝田:実際のところ、論理とエモーションのバランスをどう取るかはとても難しいが、エモーションの要素はもちろんユニクロの中にある。服は結局のところ、値段やブランドよりもその人が毎日着たくなるか、実際着るかに尽きると思う。1000円のユニクロのTシャツでも、ラグジュアリーブランドの20万円のシャツでも、着なければいいか悪いか、便利かそうではないか、心地いいかどうかは分からない。20万円で買ってタンスにしまい込んでいたら、本質的にその服はよかったと言えるだろうか。1000円のTシャツでも、毎日それを着て生活の中に溶け込んでいれば、その人のパートオブボディー、つまり自分の服になる。それは、その人にとって実用的でありエモーショナルでもある服だったということ。エモーションの取り入れ方は永遠の課題であり、これが完成形だというものはない。ユニクロとして、ワクワクするようなエモーションを抜きにして単に実用的なものを作ればいいとは決して思っていないし、常にそうしているつもりだ。どう受け取るかはお客さまに委ねている。LifeWearが目指すのはアート&サイエンス。感性や美というエモーションと、論理性のバランスがLifeWearの真髄なのかなと思う。こういう議論は社内でもよくしている。

WWD:近年は「+J」や「マメ クロゴウチ」「ホワイトマウンテニアリング(WHITE MOUNTAINEERING)」など、コラボが続いている。コロナ禍以降、特に直近は売り上げが厳しい時期も続いていたが、意図的にコラボを増やしているのか。

勝田:たまたま去年はコラボが多かっただけで、戦略的に増やしたわけではない。よく聞かれることだが、毎シーズン、コラボをいくつやるといった取り決めは全くない。信じられないかもしれないが、コラボは意外と無計画なものだ。僕としては無理をしてコラボをすることはない。毎年3件コラボをするなどと決めると、自分に嘘をつくことになるからブレてくる。(今シーズンはコラボはないのかと)期待はされるが、ない時はない。われわれの考え方に賛同してくれる理想のデザイナーがいる時はするし、いない時はしない。コラボは社内のシーズンディレクションやコンセプトありき。社内のディレクションの延長上に、その分野でずっとやってきている、世界ナンバーワンのデザイナーやブランドがないかを考える。それで、一緒に取り組めばきっとすばらしい商品ができると思ったらオファーをする。

コラボは毎シーズンいくつと決めているわけではない

WWD:今はどんなブランドもコラボをするのが当たり前になっている。

勝田:だからこそ、それらと同じだとは思われたくない。われわれは(社内ディレクションの延長上でデザイナーにオファーをするというように)少なくとも自分たちにストーリーがあってコラボをしている。有名なデザイナーだから、売れているブランドだからと何でもかんでもコラボをするわけではない。ユニクロとして外部デザイナーとのコラボを始めたのは15〜16年前だが、当時からその考えは変わっていない。コラボの目的は、自分たちの商品をレベルアップすることであって、集客のためのマーケティングではない。もちろん、コラボは売り上げにつながったり、お客さまへ新しい商品提案になったりはするが、われわれ自身がプロジェクトを通して成長していくことが、コラボの本質だ。

WWD:ユニクロにとって、コラボの成否を判断する基準や、コラボによって得られるものは何か。

勝田:自画自賛ではないが、売り上げとして目も当てられないというようなコラボはこれまでなかった。過去のどのコラボも、それぞれのデザイナーの服作りへのアプローチとして非常に学ぶことがあった。ユニクロの服はベーシック、シンプルといった言葉で片付けられがちだが、そんなに簡単なものではない。デザインはとても奥が深くて、シンプルでベーシック“っぽい”もので品質もよければそれがいいというわけではない。白いTシャツなら何でもベーシックというわけではなく、やはりそこに革新的なディテール、デザイン、素材など、何かしら進化があり続けないと、作っている僕たちもお客さまもつまらない。コラボを通して、外部デザイナーの追求の姿勢に触れる度に、改めてデザインの奥深さや難しさを感じるし、それが僕たちのモチベーションにもなる。会社の成長のために日々勉強しないといけないという面ももちろんあるが、モノ作りに携わる人間として、そのように突き詰めていく領域が無限にあるということは楽しくもある。ユニクロはお客さまの声や要望も日々収集し、それを商品作りに反映しているが、いただいた声の通りに作るのであれば、われわれでなくても作ることができる。声を聞いた上で、それを2倍、3倍にしてプロダクトとしてお返しするのがデザインの力。ユニクロが企業・ブランドとしてグローバルでもっと差別化していくためには、デザイン力がさらに重要になる。

WWD:「マルニ」コラボは継続の予定はあるのか。フルラインアップ展開店舗は国内で123店と他のコラボと比べても多く、その点からも力が入っていると感じる。

勝田:春夏シーズンに関してはお互いに(アイデアややるべきことを)出し尽くした感覚はある。今回のコラボは、特別にファッションを知っていたり、好きだったりする方だけでなく、世界中のどこの人でも、どんな方にも、試しに1枚買ってみることで、日常の中でアートを楽しむように既存のワードローブに華を添えていただきたいという意図がある。それで、今回はチャレンジとして小規模な店にもサイズを絞って全型投入するようにしている。在庫量には細心の注意を払っている。「+J」の復活後最初のシーズン(20年秋冬)のように、買いたくても買えないというお客さまが出てしまってもダメだし、余らせてしまってせっかく買った商品がもう値引きされているというのでもいけない。これについても永遠の課題だ。

The post ユニクロ×「マルニ」の仕掛け人、勝田執行役員に聞く ユニクロが考えるコラボの成否とは? appeared first on WWDJAPAN.

「ザラ」がLA発「ルード」デザイナーとコラボ “アイビーリーグ”を再解釈した理由を聞く

 「ザラ(ZARA)」は、米ロサンゼルス拠点のブランド「ルード(RHUDE)」のルイージ・ビラセノール(Rhuigi Villasenor)=デザイナーとのコラボコレクション“RHU”を5月16日に発売した。国内の全店舗と公式オンラインショップで扱う。コレクション名は“Redesigning Human Uniform(ユニホームの再構築)”の頭文字で、“次世代に向けた新たなスポーツウエア”をコンセプトに、ワイドシルエットのデニムパンツやモトクロスに着想したシャツ、“RHU”のロゴをあしらったバーシティージャケットなど、ウエア57型、シューズ6型、バッグ6型を用意する。価格帯は税込1190円〜2万3990円。

 ビラセノールはフィリピン・マニラ出身。香港やサウジアラビア、タイでの生活を経て、9歳でアメリカに移住し、LAでファッションのキャリアをスタートさせた。2013年に「ルード」を設立すると、アメカジやロック、グランジなどのカルチャーに自身のルーツを織り交ぜたストリートウエアを提案。今年2月には「バリー(BALLY)」のクリエイティブ・ディレクターに就任するなど、活動の幅を広げている。
ビラセノールに、コラボコレクションのこだわりを聞いた。

WWD:コラボコレクションのテーマやインスピレーションは?

ビラセノール:“RHU”は、民主的なスポーツウエアを表現したコレクションだ。さまざまな人が取り入れやすく、精神が刺激される新しい発想のスポーツウエアになっている。このプロジェクトの立ち上げにおいて、「ザラ」以外のパートナーは考えられなかった。

WWD:コレクションのこだわりは?

ビラセノール:「ザラ」と僕で、互いにやったことのないデザインを追求した。その結果、“人間のユニホームの再設計”というプロセスにたどり着いた。スポーツやラグジュアリー、ストリートなどの定番のメンズウエアを再構築するクリエイションを目指し、アートやカルチャーの中心でもあった、アメリカ北東部の8つの私立大学の総称“アイビーリーグ”のスタイルを再解釈している。コレクション全てのアイテムがお気に入りだ。

WWD: 今後もコラボは継続する?

ビラセノール:この先も続ける意味があるかどうかはユーザーが決めること。“RHU”は“人間のユニホーム”を再解釈したものだから、より多くの人がこの服を試し、フィードバックすることで、今後の可能性が見えてくる。

WWD:「ザラ」はあなたにとってどんなブランド?

ビラセノール:型破りで、画期的で、偉大なブランドだ。そんな「ザラ」と一緒に仕事をするのなら、「僕も素晴らしいクリエイションを実現しよう」と取り組んだ。英語に、“友達はあなたの映し鏡だ”ということわざがあるように。

The post 「ザラ」がLA発「ルード」デザイナーとコラボ “アイビーリーグ”を再解釈した理由を聞く appeared first on WWDJAPAN.

経済産業省係長に聞く 「ファッション未来研究会」報告書の背景

 経済産業省は「これからのファッションを考える研究会 ~ファッション未来研究会~」をテーマに、2021年11〜12月に34人の有識者を集めて議論をし、このほど報告書としてホームページ上に公開した。ファッション産業の現状のデーターやインタビューなどを交え、雑誌のようにデザインされた報告書は100ページに近く、“卒論級”のボリュームと濃度だ。企画を舵取りしたのは経済産業省の若き担当者。「これは未来へ向かうための地図」と話す彼女にその背景を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):行政が開く有識者会議には正直、何か政策を行うための、極端に言うと「予算確保準備」のための会議というイメージもありますが、今回は「結論ありき」の答え合わせではなかった。その分議論が壮大でしたね。

井上彩花経済産業省商務サービスグループクールジャパン政策課ファッション政策室係長(以下、井上):持っていきたかった筋書きがあったわけではもちろん、なく。ファッションの未来って何なのか?を、有識者としっかり議論をする中で導き出すことが非常に重要でした。ファッションを考えることは、人がどういう風に生活するのか、どんな生き方をするのかと全く同じなんだと思います。私は今6年目ですが、こんなプロジェクトは初めてで楽しかったです。

WWD:そもそも経済産業省はなぜこのプロジェクトを立ち上げたのでしょうか。

井上:前提としてファッション政策室ではファッションを衣服ではなく、文化やライフスタイル、時代ごとの人々の価値観や創造性を表す媒体だととらえています。生活文化に関連するモノ全体ですね。そう考えた時、ファッションには経済産業の視点でさまざまな意義があります。

WWD:意義とは?

井上:経済産業省なので外貨・外需をいかに獲得していくか?を常に考えていますが、ファッションはその重要な分野の一つです。例えばテキスタイルをはじめとする、各地に存在する伝統工芸や伝統技術が海外から需要され、金継ぎや襤褸(ぼろ)といった、昔からの生活の工夫が海外から改めて注目されています。少子高齢社会の日本にとって、ファッションは海外需要を獲得していくために高いポテンシャルのある領域だと思います。

 また、感性によるビジネス領域は、クリエイターがグローバル市場に一気にリーチできる可能性があり、グローバルで競争力を持つために長期的視点で重要な分野です。さらに研究会でも取り上げたバイオマテリアルやデジタルファッションなど、従来のファッションビジネスとは異なるスキルが求められていることを踏まえると、今後ファッションが新しい成長産業に変化する可能性も秘めています。

WWD:なるほど。サステナビリティも一つのポイントですね。

井上:サステナブルは不可欠です。ただ今回はその先、サステナブルを達成したその先に日本企業がどのように価値を創造し、外需をとっていくことかを議論する点がポイントでした。今起きている変化を整理した上で、世界に乗り遅れることなくむしろ日本企業がリードする “望ましいファッションの未来”を考えることを目的にしました。

WWD:34人の委員はどのような基準で選びましたか。

井上:未来を議論するために、専門分野、ジャンル、世代、国籍を越えた各領域のトップランナーの方々に集まり、議論をしていただきました。デジタル、バイオ・素材、デザイン、アート、ラグジュアリー、教育、評論、編集、経営、投資、研究など幅広い専門性からそれぞれファッションに向き合っている有識者です。

議論は白熱。得た答えの中から3つのポイント

WWD:会議は全てオンラインで全5回。チャットや共有ファイルを並行して活用し、誰かの発表と同タイミングでオンライン上で意見が飛び交うという、非常に活発な会議でした。どのような結論を得られましたか?

井上:具体的には大きく3つの方向性が議論されました。一つ目は人と自然に調和的で持続可能である状態です。サステナビリティの対応を行うことは一層不可欠なものとなるでしょう。障がいの有無や年齢、身体的差異やジェンダーなどに制限されることなく、自由にファッションを楽しむことが肯定されるようになっています。廃棄物が出ない、循環型システムの構築していくために、バイオマテリアルなどの素材開発も重要なポイントの一つです。

 これからは、消費を刺激して稼ぐのではなく、商品寿命を延ばして消費頻度を抑制してもビジネスが成立し、持続的に成長できるビジネスモデルへの転換が必要だと考えています。一つの方法が、ブロックチェーンなどのテクノロジーの活用です。製造工程から二次流通市場での取り引きも含めたトレーサビリティを担保し、二次流通の収益の一部をクリエイターに還元する新しい取引ルールを社会に提案し、根付かせていくことを考えています。

WWD:デジタルは大きな柱でしたね。議論ではクリエイターの新しい収益源との話題も出ています。

井上:はい。議論の二つ目の方向性がゲームを始めとする、デジタルファッション市場です。コミュニケーションの場が現実世界から仮想空間にも接続・拡張しつつあることで、自分自身のアバターを着飾ったり、表現するためのファッションが拡大したりしています。そこではこれまでのファッション産業とは異なるスキルが求められるため、世界を見ると、既存のファッション企業がデジタル産業との結びつきを進める動きが見られます。日本のゲーム産業は国際的にも存在感があリますから、連携をより深めることも重要です。

 デジタルファッション空間は、ファッションの楽しさをより多くの人が享受することのできる「平等な場」だという声もありました。デジタルツールの発展は単なる効率化だけではなくクリエイターの想像力を解放し、新しい創造が生まれるとしたら、それはとても楽しみな世界です。

 例えば、YouTubeの登場が映像作品の制作を一般の方にも解放したように、ファッションの分野でも、デジタルツールの発展によって、より多くの人が創造活動を行えるようになるのではないでしょうか。今後、クリエイターの新しい収益源として期待できる中、デジタルファッション市場への参入時に留意すべき論点、ファッションローなどをとりまとめるなど、国としても環境整備を行っていきます。

これは未来へ向かうための地図。官民で盛り上げたい

WWD:ラグジュアリーというキーワードもたびたび登場しました。

井上:三つ目のポイントは、突き抜けた個を支援し、経済・地域全体の成長に繋げること。その中で、「新しいラグジュアリーの概念」について議論しました。日本には長い歴史に積み重ねてきた伝統があります。各地域に存在するこうした伝統工芸や伝統技術が生み出すクオリティこそが、国際競争力の源泉であり、他国には真似することのできない独自性でしょう。

 また、日本は、これまで多くのクリエイターやアーティストが海外に挑戦し、海外の市場からも一定の評価を獲得しつつあります。とはいえ、こうしたクリエイターの中には、磐石な経営体制を伴わないままに海外市場にリーチしている、できてしまっているような場合もあり、まだまだ支援が必要だという指摘もあります。突き抜けた「個」を経済社会の発展に戦略的に取り込み、ローカルの持つ素晴らしい資源を世界の市場にリーチさせ、文化を次世代に向けてアップデートしていく仕組みを作っていくということにつなげる好循環を作りたい。

WWD:この取り組みをどう生かしますか?

井上:議論の内容をとりまとめた報告書を経済産業省のホームページ上に公開しました。ファッション業界に携わる方だけでなく業界の方や学生にもご覧いただき、目指す未来に向けて一緒に進んでいきたい。また、すでにいくつかのプロジェクトを進めているところですが、国としても、この未来に向かうための地図をもとに、必要な取り組みを行いたいと思います。報告書を読んだ方が自分の取り組みと結びつけて、さらに意見を寄せてくれると嬉しい。メールアドレスは表紙に書いてありますのでぜひ。官民で連携して、日本のファッションをますます盛り上げていくことができたら嬉しいです。

The post 経済産業省係長に聞く 「ファッション未来研究会」報告書の背景 appeared first on WWDJAPAN.

マッシュEC担当役員が考える「ユーザー中心主義のアパレルEC」 バーチャサイズの幹部と語る

 アパレルECで切っても切り離せないのが、実際に試着ができないが故の「サイズが合わない」問題だ。それを解決すべく登場したのが、オンライン試着サービス「バーチャサイズ(Virtusize)」だ。同サービスは自分の性別や身長を登録すると、アイテムごとに自分の体形にフィットするサイズをリコメンドするものとして、世界で標準的なオンライン試着サービスとなっている。「バーチャサイズ」はアパレルECの何を変えたのか。「スナイデル」「ジェラート ピケ」などを展開するマッシュホールディングスのEC事業を担当する須藤誠執行役員EC管理本部本部長と、バーチャサイズの森永マーク最高執行責任者(COO)、高橋君成・最高ビジネス責任者(CBO)との対談をお送りする。

WWDJAPAN(以下、WWD):マッシュホールディングスにおけるECの基本的な考え方は?

須藤誠マッシュホールディングス執行役員(以下、須藤):当社は、ブランドを横断した商品を取り扱う「ウサギオンライン」とブランドごとの自社EC、他社と共同運営するモール型の「スタイル ヴォイス(STYLEVOICE.COM)」など、全部で14のECサイトを運営しています。EC運営の基本的な考え方の一つが、グループ企業と連携した自社開発です。マッシュはもともと、店舗を軸にブランドをお客さまに訴求しながら発展してきました。EC化率でいうとコロナ以前は20%前後だったのに対し、現在では40%近いブランドも出てきています。最終的にご購入を決定するのはお客さま、というスタンスではあるものの、マッシュグループが掲げている「お客さまに幸せを届けられるサービス」という意味で言うと、ECはまだリアル店舗には追いつけていないという感覚です。

WWD:アパレルECの課題をどう見る?

須藤:デジタルテクノロジーは猛烈な勢いで発展していますが、あえて言いたいのは、基本的に服の購入に関してはリアル店舗の方が利便性が高いのでは?ということです。だからこそ、「バーチャサイズ」の、試着をオンラインでもできるという部分に着目したサービスには非常に注目しています。

森永マーク=バーチャサイズCOO(以下、森永):「バーチャサイズ」の役割は、お客さまの最初の購入のハードルを下げつつ、2回目以降のリピートにどうつなげ、最終的に顧客のライフタイムバリュー(LTV)をどう上げていくかという点になります。これはたとえ、最初に購入いただけたとしても、実際にサイズ感が思った通りでないと、2回目以降のコンバージョンが落ちてしまう。悪い体験だったら、もう購入しない。逆に、いいサイズを見つけられたら、その商品と比較しつつ、違うブランドでもこのサイズ、とだんだん組み合わせた体験にもつなげられる。この部分に関しては、相当の研究開発を行っています。

須藤:EC自体の課題と感じているのが、お客さまからの評価と不満を、すくい取りづらいことです。店頭ならサイズ感が違えば、その場でフィードバックがあって販売員が解決できます。でもECだと何も言わずに離れていき、結果的にノークレームでも離脱率だけが高くなっていく怖さがあります。「バーチャサイズ」の場合は、導入後に返品率は20ポイント以上低下しました。返品率の低下で、商品の販売効率の向上だけでなく、返品関連業務の削減など、全体的な業務効率の改善にもつながりました。なぜこのような効果を上げられるのでしょう?

高橋君成バーチャサイズCBO(以下、高橋):ユーザーにとってサイズやフィット感は最もセンシティブなものだ、と当社は認識しています。先ほど森永も指摘した通り、サイズが合わないと、それ以降の購入率がかなり落ちてしまいます。一方でユーザーが求めるフィット感は、実はブランドやアイテムによってだいぶ違うんです。マッシュさんのブランドの中でも「スナイデル」と「ジェラート ピケ」では、それぞれに求めるフィット感はだいぶ違う。当社は裏側でブランドの特徴に合わせて、カスタムしたサイズリコメンドエンジンを作っており、例えば購買履歴や閲覧履歴などユーザーデータをベースにロジックを組み合わせています。ブランドによっては、ぴったり合わせたものを展開するだけでなく、あえてワンサイズ上をリコメンドすることも。こうしたことは当社がディープラーニングに基づいた年間5億回を超えるリコメンドを、改善しながら行っているからこそできると自負しています。

リアル店舗やCRMで活用、
「オンライン試着」の
先にあるもの

WWD:いま、両社でリアル店舗で使えるツールを開発中とか?

高橋:まさにマッシュの方から「もっと試着室の体験をリッチにできないか?」という要望をいただいています。当社はこうしたオンラインのサイズフィッティングテクノロジーをオンライン試着やネットだけにとどめておくつもりはなく、リアル店舗での活用などにも積極的に取り組みたいと考えています。逆に、そのリアルで買うときの接客のポイントを、オンラインでも提案できるようにブラッシュアップも進めています。例えば、カートに商品を入れて、買う寸前に「このサイズで本当にいいですか」っていう一言を出そうと思っています。リアル店舗でもレジで、「Mサイズですけどよろしいですか?」と聞かれますよね。それと同じことを、カートの中身を確認するページで実施したい。また、最近だとインスタグラムや公式サイトなどのスタッフのコーディネートのページとも連携させて、自分とそのサイズがマッチするかどうかみたいなことの相談も受けています。

WWD:須藤さんから「バーチャサイズ」にリクエストは?

須藤:店頭での接客をECに例えるなら、多くのお客さまがサイトに来た場合にはまず検索することを考えると思います。ECでは、商品検索の精度をもう少し進化させたい。検索結果が自分にとって刺されば、すぐクリックするはずです。店頭の販売員はそれをコミュニケーションを取りながら、自然にやっている。お客さまから「旅行に行く」と聞いたら、「だったらこれを」と接客することで、購買率が上がっていく。でも、ECだと検索結果を見てもらうことしかできないため、新機能でカバーできると嬉しいです。

森永:おっしゃる通りです。実は検索機能って、ファッションとあまり相性が良くないんですよね。店舗に行って「何をお探しですか?」って聞かれたときに、「赤いドレス」って具体的にいう方はあまりいない。実際には、「こういう雰囲気で」とか「こういうスタイルを探している」ということを仰るわけで。われわれは、そういった行動を「ディスカバリー」と定義していて、実はすでに開発済みです。「このアイテムはどんなシーンで着たいですか?」「どんなスタイルをお探しですか?」といった、いくつかの質問に答えてもらうだけで、自分の好みに合う商品がずらっと出てくるような仕組みがあります。

「バーチャサイズ」は、
実はオンライン試着サービス
じゃなかった!?

須藤:これまでは、「こういった機能がほしい」といった場合はまず、社内で検討して、それから機能に応じてサービス会社を探したり、取引のある会社に投げかけてみる、といった流れでした。そもそも「バーチャサイズ」は私の中で「オンライン試着サービス」というイメージが強くて。けど、実はCX(顧客体験)系のふんわりとした開発テーマを初期段階で相談してもいいわけですね。なら、実はもう一つ相談が(笑)。これは接客か集客か、定義しにくいところではあるのですが、ECでコンテンツとして楽しい企画がほしいんです。実は当社はECでかなり早い時期から今はやりの骨格診断を行っていて、非常にアクセスを伸ばせたことがあった。店頭でよくフェアやイベントをやるように、ECならではのイベントや企画をもっともっと増やしたい。ただ、自分たちだけではなかなか思いつかないことがあり。そういったことも相談していいですか?

森永:もちろんです!ぜひお願いします。これまでもさまざまな取り組みをアパレル企業とさせていただいていて、「バーチャサイズ」を筆頭に自社の新しいサービスやプロダクトに関してデータを収集させていただくことはありますが、実は「骨格診断」のような新しい切り口や企画のデータを取ることが難しくて。こういった切り口の場合、単にコンバージョンだけでなく、アクセス数や他のコンテンツへの遷移率などが重要になってくるからです。企画の早い段階からご一緒できれば、新しいアイデアや切り口、さらにはその後のデータ分析とそのフィードバックも含め、もっとお役に立てる可能性があります。

「バーチャサイズ」とは?

 オンライン試着サービス「バーチャサイズ」は、身長や体重などの項目を入れるだけで、自分に合った製品をリコメンドしてくれるサービスだ。月間のアクティブユーザー数は200万人を超え、年間のリコメンド数はなんと5億回に達している。これまで蓄積してきた1000万体以上のボディーデータをディープラーニングで分析し、リコメンドだけでなく、さまざまなツールやサービスの開発も行っている。

TEXT:MIWAKO ANNEN
PHOTO:TAMEKI OSHIRO
問い合わせ先
バーチャサイズ

The post マッシュEC担当役員が考える「ユーザー中心主義のアパレルEC」 バーチャサイズの幹部と語る appeared first on WWDJAPAN.

「マーク BY マーク ジェイコブス」や「カルバン・クライン ジーンズ」のデザイナーがアーティストに転向

 「マーク BY マーク ジェイコブス(MARC BY MARC JACOBS)」や「カルバン・クライン ジーンズ(CALVIN KLEIN JEANS)」などを手がけてきたルエラ・バートリー(Luella Bartley)が、ファッションデザイナーから芸術家に転向した。同じくデザイナーからアーティストに転向したサラ・バーマン(Sara Berman)と共催する展覧会「Armoured」は6月11日まで、ロンドンのKHギャラリーで開かれている。2人のアーティストは彫刻や絵画などを通して、ファッションデザイナーだった頃と変わらず、女性の体の曲線美や複雑さなどに迫っている。バーマンの作品がカラフルなのに対し、バートリーのアプローチは硬質的だ。純白の彫刻は手足が奇妙な方向に折りたたまれ、裸の女性を描いた作品ではプロポーションを誇張。バーマンが洋服をまとった女性を描いたのに対し、バートリーは裸の女性と向き合っている。米「WWD」が、バートリーに話を聞いた。

米「WWD」(以下、WWD):芸術活動を始めたのは、いつ頃?

ルエラ・バートリー(以下、バートリー):ファッション界を離れてしばらくしてから、です。仕事を休んですぐ、「私は、止まることができないんだ」と感じました。そして「何かを描いて、言語化できない思いを探ってみたい」という衝動に駆られました。だから描いて、描いて、描いて。誰かに見せる予定なんてないのに、創作意欲が爆発したんです。とても自然な流れで、結果、良い方向につながったと思っています。

WWD:自分をどんなアーティストだと思っている?

バートリー:私のアプローチは、「自分と格闘すること」。ドローイングは鋭い鉛筆と、まるで刀の様なブラシで描いています。一方の彫刻は、石膏です。

WWD:ファッションデザイナーとしてのキャリアは、今の創作活動にも役立っている?

バートリー:ファッション業界にいた頃から、私はずっと「女性と、彼女たちの体への意識、セクシャリティ、そしてフェミニニティ」について考えてきました。でもファッションの世界では、イメージが先行していた。それは仮面の様なもので、意識は常に体の外側にあったんです。でも今は、私自身が全てをさらけ出し、ありのままの、裸の、何にも覆われていない「女性と、彼女たちの体への意識、セクシャリティ、そしてフェミニニティ」について考えています。それは繊細ながら勇敢で、とても興味深いんです。仮面を考えていたデザイナーだった頃と比較すると、今は内臓にも興味を向けている感じです。

WWD:今後、ファッション業界にカムバックする可能性は?

バートリー:すぐに戻ることはないでしょう。今は、アートの世界を極めたい。今はまだ進化の途中だと思っています。探索したいことが、まだまだたくさんありますから。

The post 「マーク BY マーク ジェイコブス」や「カルバン・クライン ジーンズ」のデザイナーがアーティストに転向 appeared first on WWDJAPAN.

リアル店舗は今後どうなる?アパレル業界はヤバい? 読者の不安&お悩みに編集長と新卒入社5年目の記者が回答!

 「WWDJAPAN」はユーチューブとインスタグラムで"新生活のお悩み相談会"を同時ライブ配信しました。「ファッション業界の将来はどうなる?」や「希望するプレス職のためにはどんな能力を磨けばいい?」など、新生活が始まって色々な悩みを抱える新入社員や学生は多いのではないでしょうか?そんな皆さんのお悩みに村上要「WWDJAPAN」編集長と新卒入社5年目の美濃島匡記者が回答!今回は、動画の一部を抜粋してご紹介します。動画のアーカイブはページ下部からご視聴ください。

Q:アパレル企業で50代後半まで働き続けることは厳しい?

村上要編集長(以下、村上):確かに昔は「接客は若い子だよね」というムードなどが少なからずありましたが、今はベテラン販売員が活躍できる環境が整い始めています。むしろ、「ベテランの接客もいいよね」という雰囲気もあるくらいです。アダストリアの「エルーラ(ELURA)」や「ウタオ(UTAO)」など、50〜60代以上の”主役世代”に向けたブランドは、商品企画に「同世代の意見を反映したい」とベテランを起用しています。50代後半でも働き続けられる業界に変化しつつあると思います。

Q:服作りを学びたいと思いながらも、踏み出す勇気を持てずに総合大学へ進んでしまいました。けれど大学卒業後は2、3年働いて資金を貯め、パリでファッションの勉強をして、デザイナーを目指す決心をしました。デザイナーに最も大事な能力は何ですか?

村上:デザイナーにとって最も大事な能力は「今の世の中を知る力」や、そんな中で生きている人たちがファッションに求めるニーズを思考する力だと思います。

美濃島匡記者(以下、美濃島):「ファッションは時代の写し鏡」とよく言われますが、まさにその通りだと思います。今を知るためにアンテナを張り巡らせ、ファッションに落とし込むのが大切です。そして、服以外にも色々なこと(アートや音楽、映画など)に興味がないとできない仕事だと思います。

Q:広告代理店の営業をしています。3年経験したらファッションやビューティの編集職を目指しているのですが、元々違う職種/業種だった編集者はいますか?また、いた場合はどういう風に過去の経験を活かしていますか?

村上:「WWDJAPAN」の副編集長の1人は元々、百貨店に入社し、寝具売り場で働いた後に転職してきました。だから百貨店の売り場構成については誰よりも詳しく、取材にリアリティがあります。アパレル企業からの転職者もいますよ。

Q:新卒で入社した美濃島記者が苦労したことは?

美濃島:自分の思い描いていた編集の仕事がすぐにできないことに苦労しました。当時は最初からできるんじゃないかと期待していたのですが、そうでもないなって(笑)。研修や編集アシスタントを経て、重要な仕事ができるようになるんだなと思いましたね。

Q:リアル店舗の今後の展望が見えません。

村上:ECが便利になればなるほど「リアルの意味」は、より一層明確になっています。リアル店舗の将来は明るいと思いますよ。

美濃島:利便性ではECに敵わないかもしれませんが、リアル店舗の販売員のアドバイスはすごく参考になるし、商品を実際に手にとって見られるのはいいですよね。そして、知らないブランドや自分が普段購入しない商品をオススメしてくれると運命的な出会いに繋がることもあります。3年後くらいに「あのお店で買ったな……」と当時の体験を思い出すのもまたリアル店舗の良さだと思います。

Q:プレス職希望です。どんな能力を磨けばいい?

美濃島:色々な方とコミュニケーションを取る仕事だと思うので、心配りが細かいところまで行き渡っていると「また一緒に仕事をしたいな」と思いますね。

村上:そうですね、コミュニケーション能力が一番重要かな。私は気軽に話しかけてくれるとありがたい。「こんなのどうでしょう?」とかコミュニケーションが頻繁だと仲良くなりやすいです。

Q:「アパレル業界は今後ヤバい……」とよく言われるけれど、実際どうなの?

村上:よく言われるし、多分お父さんとかお母さんが言うんだと思います。確かに、「洋服だけ」というのは大変かもしれませんが、異業種とのコラボレーションなどは加速するばかり。「今後ヤバい」だけじゃないですよ。

動画内でご紹介したキャンペーンはこちらをチェック


 

 「WWDJAPAN」は25歳以下を対象に、ファッションとビューティ業界の“今”と基礎知識を学ぶ「U25スペシャルプラン」をスタートします。価格は年間で1万6500円(税込)。申込み受付は5月31日まで。新入社員や若手社員への活用をご希望の企業人事や教育ご担当の方からのお問い合わせもお待ちしています。
詳細はこちら→

【お申込みはこちら】

The post リアル店舗は今後どうなる?アパレル業界はヤバい? 読者の不安&お悩みに編集長と新卒入社5年目の記者が回答! appeared first on WWDJAPAN.

kemioの子供時代の憧れが詰まった「ケミオ ストア」 Z世代の共感を呼ぶ“異次元空間”の裏側

 Z世代のファッションアイコンとして活躍するkemioは、オフィシャルグッズを制作する「ケミオ ストア(kemio store)」の初となるポップアップストアをラフォーレ原宿で5月15日まで開催中だ。同店ではアーカイブ品や限定商品のほか、プレイステーションゲーム「パラッパラッパー(PaRappa the Rapper)」とのコラボアイテムを販売している。限定店の開催に合わせて、「ケミオ ストア」を手掛けるファッションメーカー、コネクトインターナショナルの小林翔太取締役とkemioに、ブランドのクリエイティブについて聞いた。

WWD:kemioさんとの協業のきっかけは?

小林翔太(以下、小林):日本のアーティストグッズはファンのためという意味合いが強く、洗練されたものが少ないですよね。一方、海外ではグッズをブランドやクリエイターとコラボして作るケースも多く、日常的におしゃれに着られるアイテムがたくさんある。それを見て日本のグッズの常識を変えたいと思い、ファッショナブルでクリエイティビティー溢れるkemioさんに声をかけました。

WWD:最初にオファーが来たとき、どう思った?

kemio:お話をもらった時はすごくうれしかったし、自分のグッズを出せるんだとワクワクしました。これまでもファッションブランドをプロデュースしてほしいというオファーが届くことはあったけど、僕は洋服を作る知識がないので、ファッションブランドをやるのは失礼じゃないかと。でも、自分のグッズはずっと作りたかったので、「ケミオ ストア」は、ぜひやりたいと思いました。

WWD:kemioさんの仕事ぶりで印象的だった一面は?

小林:メンバーのモチベーションを上げるのがすごく上手です。kemioさんは意識していないのでしょうけど、こちらが企画したものを褒めてくれるんですよ。そういうリアクションは素直にうれしいですね。そんな人柄が魅力的なので、われわれもkemioさんのためにもよりいいブランドを作ろうと意欲が湧いてきます。

WWD:「ケミオ ストア」のものづくりのこだわりは?

kemio:やっぱ自分が着たいかとかですかね。自分自身が身につけないアイテムを「はいどうぞ」っていうのは違うなと思っていて。作ったものを自分で着用している姿を発信してみんなに楽しんでほしいので、自分が着たいかや欲しいかは結構大事に考えちゃうかもですね。

小林:デザイン面では、kemioさんが大事にしている幼い頃に憧れていた世界、今で言うY2K時代のカルチャーを落とし込んでいますね。結果として「ケミオ ストア」は未来的でありながらノスタルジックな世界観を持つブランドになっています。そんな世界観にkemioさんと同世代の方が共感してくれて、絆が生まれていると感じます。

 販売しているアイテム以外でも世界観作りはこだわっています。例えばウェブサイトも訪れた人が何番目のお客さまか分かる、昔懐かしの仕様にしています。キリ番になったお客さまがスクリーンショットを撮ってSNSにアップしてくれて、また認知の拡大につながるということもありますね。

子供の頃に体験できなかった
憧れの世界

WWD:kemioさんがその時代のカルチャーに憧れるのはなぜ?

kemio:小さい頃に出合って憧れたものって、自分の中にずっと住み着いているんですよね。子供の頃はSNSがなかったから雑誌やテレビの世界を見て育ったけど、僕は幼くて実際にその世界や文化を体験できなかった。だから、大人になった今も憧れ続けているんだと思います。お金を稼げるようになってからは、子供の頃に買えなかった「エンジェルブルー(ANGEL BULE)」のアイテムをメルカリで買っていますね。

 今回コラボした「パラッパラッパー」も、まさに子供の頃に憧れていた世界。1990年代後半にプレイステーションのリズムゲームが流行ったり、フジテレビで放送されていたアニメが放送されたりしていたのを見ていました。マクドナルドのハッピーセットで登場したおもちゃも集めていて、作品の何でもアリみたいな世界に憧れていましたね。

WWD:今回ラインアップされたなかでも特にkemioさんが気に入っているアイテムは?

kemio:第1弾で作った青地にレインボーのロゴが入ったTシャツは「ケミオ ストア」のアイコニックな商品になりつつあって、思い入れがあります。“kemio store”のロゴは最初はシンプルだったんですけど、僕が個人的に異次元空間みたいなのが好きなので、歪ませてもらったんです。

WWD:「ケミオ ストア」のアイテムには、海外からの反応も集まるとか?

小林:最初のコレクションでガラケーと宇宙を組み合わせたようなグラフィックのTシャツとフーディを作ったのですが、これは特に海外の方からも褒められましたね。ギャル文化に通ずるところがあるのか、「ヤバイね!」みたいなリアクションが英語でたくさん届きました。あと名前は出せませんが、海外のラグジュアリーブランドがやっているセレクトショップから、商品を卸してほしいとオファーがありましたね。

WWD:「ケミオ ストア」の今後の目標は?

小林:メタバースにも進出したいです。ラグジュアリーブランドではすでに参入しているブランドもありますが、グッズストアはまだないはず。いち早く投入できたらいいですね。

 あと、“モノからコトへ”と言われた時期がありましたが、今は“コト消費”からさらモノにつながっている気がするんです。体験を通して得たモノを大切にしたり、見たりするだけで元気が出ることってありますよね。モノを通じて生まれる絆ってやっぱり強いんです。だから「ケミオ ストア」も、今後もアイテムを通して価値を提供できる存在であり続けたいです。

■「ケミオ ストア」ポップアップ
会期:5月7〜15日
場所:ラフォーレ原宿2階 コンテナ
住所:東京都渋谷区神宮前1-11-6

The post kemioの子供時代の憧れが詰まった「ケミオ ストア」 Z世代の共感を呼ぶ“異次元空間”の裏側 appeared first on WWDJAPAN.

kemioの子供時代の憧れが詰まった「ケミオ ストア」 Z世代の共感を呼ぶ“異次元空間”の裏側

 Z世代のファッションアイコンとして活躍するkemioは、オフィシャルグッズを制作する「ケミオ ストア(kemio store)」の初となるポップアップストアをラフォーレ原宿で5月15日まで開催中だ。同店ではアーカイブ品や限定商品のほか、プレイステーションゲーム「パラッパラッパー(PaRappa the Rapper)」とのコラボアイテムを販売している。限定店の開催に合わせて、「ケミオ ストア」を手掛けるファッションメーカー、コネクトインターナショナルの小林翔太取締役とkemioに、ブランドのクリエイティブについて聞いた。

WWD:kemioさんとの協業のきっかけは?

小林翔太(以下、小林):日本のアーティストグッズはファンのためという意味合いが強く、洗練されたものが少ないですよね。一方、海外ではグッズをブランドやクリエイターとコラボして作るケースも多く、日常的におしゃれに着られるアイテムがたくさんある。それを見て日本のグッズの常識を変えたいと思い、ファッショナブルでクリエイティビティー溢れるkemioさんに声をかけました。

WWD:最初にオファーが来たとき、どう思った?

kemio:お話をもらった時はすごくうれしかったし、自分のグッズを出せるんだとワクワクしました。これまでもファッションブランドをプロデュースしてほしいというオファーが届くことはあったけど、僕は洋服を作る知識がないので、ファッションブランドをやるのは失礼じゃないかと。でも、自分のグッズはずっと作りたかったので、「ケミオ ストア」は、ぜひやりたいと思いました。

WWD:kemioさんの仕事ぶりで印象的だった一面は?

小林:メンバーのモチベーションを上げるのがすごく上手です。kemioさんは意識していないのでしょうけど、こちらが企画したものを褒めてくれるんですよ。そういうリアクションは素直にうれしいですね。そんな人柄が魅力的なので、われわれもkemioさんのためにもよりいいブランドを作ろうと意欲が湧いてきます。

WWD:「ケミオ ストア」のものづくりのこだわりは?

kemio:やっぱ自分が着たいかとかですかね。自分自身が身につけないアイテムを「はいどうぞ」っていうのは違うなと思っていて。作ったものを自分で着用している姿を発信してみんなに楽しんでほしいので、自分が着たいかや欲しいかは結構大事に考えちゃうかもですね。

小林:デザイン面では、kemioさんが大事にしている幼い頃に憧れていた世界、今で言うY2K時代のカルチャーを落とし込んでいますね。結果として「ケミオ ストア」は未来的でありながらノスタルジックな世界観を持つブランドになっています。そんな世界観にkemioさんと同世代の方が共感してくれて、絆が生まれていると感じます。

 販売しているアイテム以外でも世界観作りはこだわっています。例えばウェブサイトも訪れた人が何番目のお客さまか分かる、昔懐かしの仕様にしています。キリ番になったお客さまがスクリーンショットを撮ってSNSにアップしてくれて、また認知の拡大につながるということもありますね。

子供の頃に体験できなかった
憧れの世界

WWD:kemioさんがその時代のカルチャーに憧れるのはなぜ?

kemio:小さい頃に出合って憧れたものって、自分の中にずっと住み着いているんですよね。子供の頃はSNSがなかったから雑誌やテレビの世界を見て育ったけど、僕は幼くて実際にその世界や文化を体験できなかった。だから、大人になった今も憧れ続けているんだと思います。お金を稼げるようになってからは、子供の頃に買えなかった「エンジェルブルー(ANGEL BULE)」のアイテムをメルカリで買っていますね。

 今回コラボした「パラッパラッパー」も、まさに子供の頃に憧れていた世界。1990年代後半にプレイステーションのリズムゲームが流行ったり、フジテレビで放送されていたアニメが放送されたりしていたのを見ていました。マクドナルドのハッピーセットで登場したおもちゃも集めていて、作品の何でもアリみたいな世界に憧れていましたね。

WWD:今回ラインアップされたなかでも特にkemioさんが気に入っているアイテムは?

kemio:第1弾で作った青地にレインボーのロゴが入ったTシャツは「ケミオ ストア」のアイコニックな商品になりつつあって、思い入れがあります。“kemio store”のロゴは最初はシンプルだったんですけど、僕が個人的に異次元空間みたいなのが好きなので、歪ませてもらったんです。

WWD:「ケミオ ストア」のアイテムには、海外からの反応も集まるとか?

小林:最初のコレクションでガラケーと宇宙を組み合わせたようなグラフィックのTシャツとフーディを作ったのですが、これは特に海外の方からも褒められましたね。ギャル文化に通ずるところがあるのか、「ヤバイね!」みたいなリアクションが英語でたくさん届きました。あと名前は出せませんが、海外のラグジュアリーブランドがやっているセレクトショップから、商品を卸してほしいとオファーがありましたね。

WWD:「ケミオ ストア」の今後の目標は?

小林:メタバースにも進出したいです。ラグジュアリーブランドではすでに参入しているブランドもありますが、グッズストアはまだないはず。いち早く投入できたらいいですね。

 あと、“モノからコトへ”と言われた時期がありましたが、今は“コト消費”からさらモノにつながっている気がするんです。体験を通して得たモノを大切にしたり、見たりするだけで元気が出ることってありますよね。モノを通じて生まれる絆ってやっぱり強いんです。だから「ケミオ ストア」も、今後もアイテムを通して価値を提供できる存在であり続けたいです。

■「ケミオ ストア」ポップアップ
会期:5月7〜15日
場所:ラフォーレ原宿2階 コンテナ
住所:東京都渋谷区神宮前1-11-6

The post kemioの子供時代の憧れが詰まった「ケミオ ストア」 Z世代の共感を呼ぶ“異次元空間”の裏側 appeared first on WWDJAPAN.

訪日観光客受け入れ再開の兆し 台湾人の30代女性「早く日本で買い物したい」

 政府は6月以降の訪日外国人観光客の受け入れについて、段階的な再開を検討している。新型コロナ禍でインバウンド消費が消滅して約2年。ファッション・ビューティ業界のみならず日本経済にとっても大きな打撃となったが、ようやく明るい兆しが見えてきた。

 「久しぶりに日本に行きたいです。ちょっとうずうずしています」。そう画面越しに笑うのは、台湾・台北市在住の会社員・鄭宜君さん(仮名、36)。記者が友人を介して知り合った鄭さんは、20代のころの日本留学を経験きっかけに、日本の俳優やアイドルが好きになり、たびたび日本を訪れて観光や買い物を楽しむようになった。日本旅行はコロナ禍以前、2019年の冬が最後という彼女に、「久しぶりに日本に来たら何をしたい?」と尋ねた。

WWD:日本に来たらまず、何をしたいですか?

鄭宜君さん(以下、鄭):日本に住んでいる台湾人の友達に会いたいです。みんなとディズニーランドに行きたいですね。それからUSJも。大丸東京店や京王新宿本店のデパ地下のグルメも恋しい(笑)。

WWD:日本語がとても上手なんですね。

鄭:ありがとうございます。元々漫画に興味があって、日本語を独学で勉強していました。大学では日本語学を専攻して留学し、卒業してからも日本の専門学校で2年間学びました。そのまま日系企業のホテルへ就職が決まっていたのですが、ちょうどそのとき東日本大震災が起こってしまい。家族も心配していたので帰国を決めました。

WWD:台湾ではどんな仕事についたのですが?

鄭:企業名は伏せていただきたいのですが、日系企業の台湾支社で事務職として働いています。

WWD:超一流企業ですね!

鄭:同世代の友人と比較すると、(給料を)もらっている方だと思います(笑)。ジャニーズ、特に嵐が好きなので、ライブやイベントがある度に日本に来て、オタ活にお金をたくさん使っていました。洋服や化粧品も、日本に来るたびに買っていましたね。

WWD:好きな日本のファッションや化粧品のブランドは?

鄭:「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」と「ローリーズファーム(LOWRYS FARM)」はかわいくて、大好きです。日本で買うと安いので、たくさん買い込んでいました。台湾で買うと、日本の2倍くらいの価格だと思います。日本旅行ができなくなってからも、転送サービス(日本のECで購入した商品を倉庫に集荷・海外発送するサービス)を使って買っています。送料や関税がかかりますが、それでも台湾で買うよりは安いです。

 化粧品なら、「ファンケル(FANCL)」がお気に入りです。“マイルドクレンジングオイル”は安くてメイクがスルッと落ちるので、台湾の女性に大人気です。かぜ薬や「メンソレータム」のリップクリームと一緒に、日本旅行のお土産として配るのが定番ですね(笑)。台湾のドラッグストアには日本の化粧品がたくさん並んでいて、ちょっと高いけれど品質がいいイメージがあります。

WWD:また日本旅行ができるのが楽しみですね。

鄭:早く行きたい気持ちはやまやまなんですが。台湾では毎日新規感染者が6万人くらい(5月12日現在)出ていて、感染対策の締め付けがまた強くなってきました。日本に行けたとしても、帰ってきたら隔離期間が10日間ぐらい必要になるので、会社がそれを許してくれないです。日本の感染状況がよくなっても、他の国がそうとも限らないので、タイミングがかみ合わないと旅行は難しいですね。私もまだしばらく、日本旅行はお預けになりそうです。

The post 訪日観光客受け入れ再開の兆し 台湾人の30代女性「早く日本で買い物したい」 appeared first on WWDJAPAN.

訪日観光客受け入れ再開の兆し 台湾人の30代女性「早く日本で買い物したい」

 政府は6月以降の訪日外国人観光客の受け入れについて、段階的な再開を検討している。新型コロナ禍でインバウンド消費が消滅して約2年。ファッション・ビューティ業界のみならず日本経済にとっても大きな打撃となったが、ようやく明るい兆しが見えてきた。

 「久しぶりに日本に行きたいです。ちょっとうずうずしています」。そう画面越しに笑うのは、台湾・台北市在住の会社員・鄭宜君さん(仮名、36)。記者が友人を介して知り合った鄭さんは、20代のころの日本留学を経験きっかけに、日本の俳優やアイドルが好きになり、たびたび日本を訪れて観光や買い物を楽しむようになった。日本旅行はコロナ禍以前、2019年の冬が最後という彼女に、「久しぶりに日本に来たら何をしたい?」と尋ねた。

WWD:日本に来たらまず、何をしたいですか?

鄭宜君さん(以下、鄭):日本に住んでいる台湾人の友達に会いたいです。みんなとディズニーランドに行きたいですね。それからUSJも。大丸東京店や京王新宿本店のデパ地下のグルメも恋しい(笑)。

WWD:日本語がとても上手なんですね。

鄭:ありがとうございます。元々漫画に興味があって、日本語を独学で勉強していました。大学では日本語学を専攻して留学し、卒業してからも日本の専門学校で2年間学びました。そのまま日系企業のホテルへ就職が決まっていたのですが、ちょうどそのとき東日本大震災が起こってしまい。家族も心配していたので帰国を決めました。

WWD:台湾ではどんな仕事についたのですが?

鄭:企業名は伏せていただきたいのですが、日系企業の台湾支社で事務職として働いています。

WWD:超一流企業ですね!

鄭:同世代の友人と比較すると、(給料を)もらっている方だと思います(笑)。ジャニーズ、特に嵐が好きなので、ライブやイベントがある度に日本に来て、オタ活にお金をたくさん使っていました。洋服や化粧品も、日本に来るたびに買っていましたね。

WWD:好きな日本のファッションや化粧品のブランドは?

鄭:「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」と「ローリーズファーム(LOWRYS FARM)」はかわいくて、大好きです。日本で買うと安いので、たくさん買い込んでいました。台湾で買うと、日本の2倍くらいの価格だと思います。日本旅行ができなくなってからも、転送サービス(日本のECで購入した商品を倉庫に集荷・海外発送するサービス)を使って買っています。送料や関税がかかりますが、それでも台湾で買うよりは安いです。

 化粧品なら、「ファンケル(FANCL)」がお気に入りです。“マイルドクレンジングオイル”は安くてメイクがスルッと落ちるので、台湾の女性に大人気です。かぜ薬や「メンソレータム」のリップクリームと一緒に、日本旅行のお土産として配るのが定番ですね(笑)。台湾のドラッグストアには日本の化粧品がたくさん並んでいて、ちょっと高いけれど品質がいいイメージがあります。

WWD:また日本旅行ができるのが楽しみですね。

鄭:早く行きたい気持ちはやまやまなんですが。台湾では毎日新規感染者が6万人くらい(5月12日現在)出ていて、感染対策の締め付けがまた強くなってきました。日本に行けたとしても、帰ってきたら隔離期間が10日間ぐらい必要になるので、会社がそれを許してくれないです。日本の感染状況がよくなっても、他の国がそうとも限らないので、タイミングがかみ合わないと旅行は難しいですね。私もまだしばらく、日本旅行はお預けになりそうです。

The post 訪日観光客受け入れ再開の兆し 台湾人の30代女性「早く日本で買い物したい」 appeared first on WWDJAPAN.

伊藤忠とロコンドが異色のタッグ、共同でリーボックの日本事業を展開

 伊藤忠商事とロコンドは、共同で日本での「リーボック(REEBOK)」事業を展開する。10月にロコンドが66%、伊藤忠が34%を出資した合弁会社を設立し、「リーボック」日本事業を承継するほか、伊藤忠は「リーボック」の親会社である米オーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)とマスターライセンス契約を締結。ロコンドは伊藤忠とサブライセンス契約を締結し、シューズのライセンス生産・販売も行う。資本金の金額は現在調整中。日本での「リーボック」事業のおおよそ100億円(小売り換算)規模だと見られるが、伊藤忠は2028年にライセンス商品も含め、小売り換算で200億円に引き上げる考え。また、伊藤忠は4月にも「アンダーアーマー」のドームを買収しており、スポーツ分野での取り組みを加速する。

 ロコンドはこれまでも、自社のオムニコマースプラットフォームを生かし、スペイン発ファストファッション「マンゴ(MANGO)」、英D2Cブランドの「カストーレ」など、外資ブランドの日本上陸のパートナーとなってきた。ただ、今回の「リーボック」は事業規模は100億円、伊藤忠をパートナーにECだけでなく、全国の直営店や卸も行うなど、事業規模もビジネスモデルも過去最大になる。「リーボック」事業は、リアルとデジタルを横断したオムニ型のプラットフォームを構築し、それらを活用したシューズとアパレル産業のDXを掲げてきたロコンドの集大成とも言える。今回の経緯などを田中裕輔ロコンド社長に聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):今回の経緯は?

田中裕輔社長(以下、田中):オファーはABG/伊藤忠側からだった。「リーボック」は日本での売り上げの5割がオンラインで、ABGは「リーボック」で欧州での同様のパートナーシップをファーフェッチ傘下のニューガーズグループ(NEW GURARDS GROUP)と行っており、「シューズ×オンラインに強い会社」ということで日本では当社に白羽の矢が立った形だ。

WWD:承継の具体的な中身は?

田中:当社と伊藤忠で新会社を設立し、「リーボック」の日本事業を引き継ぐ。ただ、直営店の中にはアディダスジャパンと共同運営している店舗があり、引き継ぐ店舗は9店舗、全体の3割ほどになる。「リーボック」のシューズに関しては今後、日本でのオンラインとオフライン、いずれの販売権も獲得しているだけでなく、シューズに関してはライセンス権も獲得しており、新会社でそれらを行っていく。今後販売の仕組みも、リアル店舗とECを横断して使用できる当社のプラットフォームサービスをすべて導入する。

WWD:今後は?

田中:日本で「リーボック」事業を展開する新会社(ロコンド66%/伊藤忠34%出資)では、売り上げをも大幅に拡大しようとは思っていない。むしろ2〜3年をかけてABG/伊藤忠と共同でMDを丁寧に見直しつつ、店舗やECで横行している値引きを抑制し、「リーボック」ブランドを磨き直す。その上で大胆なECへのシフトチェンジを行い、EC化率を75%に引き上げる。ECも、自社ECを50%くらいに設定することで、自社でブランディングをコントロールできる体制にする。伊藤忠とは、この取り組みをきっかけにさまざまな事業提携も模索したい。

The post 伊藤忠とロコンドが異色のタッグ、共同でリーボックの日本事業を展開 appeared first on WWDJAPAN.

シンガーソングランナー®︎・SUIが「シックスパッド」を体感 ラン初心者にこそおすすめしたい理由とは?

 MTGのトレーニングブランド「シックスパッド(SIXPAD)」は4月27日、新たな体幹トレーニングギア“パワースーツ コアベルト”を発売した。従来の“パワースーツ アブズ”からグレードアップし、背筋のトレーニングが可能になった新製品の魅力を、シンガーソングランナー®︎のSUI(スイ)が語る。

ダイエット目的で
始めたランニングが、
新たなコミュニティーの
輪を生んでくれた

 「高校生時代からダイエットを繰り返す中でなかなか体重が落ちなくなり、“このままではまずい”と感じて、ダイエットの一環としてランニングを始めたのが走り始めたきっかけです。3km、10kmと目標を決めて達成していくうちに、少しずつ自分に自信がつき、気持ちも前向きになりました。昔は食べることに罪悪感がありましたが、今では走るためにしっかり食べるよう心掛けるほどランニングに夢中です。

 最近は週4~5回、1日10km前後を走っています。ランニングを続けることで、マラソン大会で歌う機会もいただけるようになり、シンガーソングランナー®︎として新たなコミュニティーや活躍の場が生まれました。挑戦し続ける人の支えになったり、応援できたりしたらうれしいです。

 運動には人を変える力があると思っています。ランニングを続けると脳の司令塔である前頭葉が刺激され、集中力や発想力、判断力などが研ぎ澄まされるという研究結果があるそうです。ストレス発散にもなりますし、私のように自己肯定感を得られたという話も聞きます。走ることで、自分本来の輝きを取り戻せるのではないかと信じています」。

腹筋に意識が向くことで、
美しいフォームに近づける

 「ランニングは手軽にスタートできる運動だからこそ、基本を学ばずにトライしてしまう人がとても多いです。走るときは体幹を意識して、お腹とお尻に力を入れることが大切。フォームが乱れると必要以上に疲れてしまったり、けがの原因になったりすることも。とはいえ、日頃あまり運動をしていない人やラン初心者は、体幹といわれてもどこを意識したら良いのか悩んでしまうかもしれません。『シックスパッド』=プロアスリートのためのものと思わずに、ラン初心者の人こそ“パワースーツ コアベルト”を使うと、使うべき筋肉が意識しやすくなると思います。

 私自身、これまでもEMSトレーニング機器を利用したことはあるのですが、“パワースーツ コアベルト”はしっかり鍛えられている感覚があり、使い始めてすぐに手応えを感じることができました。お腹の前部分だけではなく、腹斜筋、広背筋下部と広範囲にアプローチすることで、ランニング時にも美しいフォームを意識しやすくなりました。

 そしてありがたいのが、Tシャツの下に着ても他の人に気づかれないほど薄い生地と、お手入れの手軽さ。ランナー同士、走った後に一緒にカフェでお茶をすることが多いのですが、装着したままでも気にせずいられるのがうれしいです。自宅の洗濯機で洗えるのも衛生的ですし、スプレーで電極部に水を吹きかけるだけで使え、簡単に操作できる点も気に入っているポイントです。4Hzと20Hz、2つのモード選択に加え、EMSのレベルも幅広く選択できます。個人的には4Hzが心地良く感じますが、筋肉トレーニングの感覚を掴みたい方には20Hz がおすすめです」。

パフォーマンス向上に
欠かせない、
宅トレ効率をアップ

 「ランニングのパフォーマンス向上のためには、お腹やお尻の筋肉が欠かせません。特にお腹はインナーコアのトレーニングが重要なので日頃から意識的に鍛えています。特にプランクトレーニングを行う時は、時間が経つにつれて腕で身体を支えてしまいがちですが、“パワースーツ コアベルト”を着用することで体幹を意識しやすいです。

 日常生活の中では洗い物やパソコン作業をする時にも使うことで、自然と姿勢に意識が向くようになりました。無意識の時の姿勢の悪さは日々の肩こりや腰痛につながりますし、猫背になったり、肩が丸まったりすると気持ちが下向きになってしまうと聞きます。美しい姿勢を意識して、明るい気持ちをキープしたいですね。また、運動不足でお悩みの人、腰周りの筋肉が気になる人にもぜひ試してほしいです」。

“パワースーツ
コアベルト”で
効率の良いハイブリッド
ランニングを

 今回SUIが試した“パワースーツ コアベルト”はお腹から腰周りを一周するように6つの電極がつき、腹直筋や腹斜筋、広背筋下部、脊柱起立筋下部にアプローチ。ランナーが重視したい体幹を鍛える。“ながらエクササイズ”や筋肉トレーニングの効率UPを助ける20Hz と、ウォームアップ時などに適した4Hz の2種のモードを搭載し、用途によって使い分けができる。

 また、現在ランニングステーション「ラフィネ ランニングスタイル ネオ(RAFFINE RUNNING STYLE NEO)」では、先着で“パワースーツ コアベルト”を1時間無料で貸し出すキャンペーンを行っている

※価格は全て税込みです
PHOTOS:RYOHEI HASHIMOTO
STYLING:MASUMI YAKUZAWA
HAIR&MAKEUP:TATSUYA SUZUKI
問い合わせ先
MTG
0120‐467‐222

The post シンガーソングランナー®︎・SUIが「シックスパッド」を体感 ラン初心者にこそおすすめしたい理由とは? appeared first on WWDJAPAN.

新生「エミリオ・プッチ」お披露目 デザイナーが目指す「ウェルビーイングなリゾート」とは?

 「エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)」は4月末、新アーティスティック・ディレクターのカミーユ・ミチェリ(Camille Miceli)による最新コレクションをイタリアのカプリ島で発表した。フランス出身のミチェリ=アーティスティック・ディレクターは、15歳から「シャネル(CHANEL)」や「アライア(ALAIA)」などでインターンとして経験を積み、「シャネル」や「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の広報担当を務めた後、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下の複数ブランドではコスチュームジュエリーやレザーグッズの監修やコンサルティングを担った。カミーユによる新コレクションの発表に際して、「エミリオ・プッチ」はブランドのルーツに立ち返り、「リゾートに特化したブランド」としてリブランディングすると発表していた。彼女に、その想いを聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):「リゾートに特化したブランド」とは?年に1度、リゾート・コレクション(一般的には、春夏と秋冬の間に発表するコレクションとして知られている)しか発表しない、ということ?

カミーユ・ミチェリ「エミリオ・プッチ」新アーティスティック・ディレクター(以下、カミーユ):「リゾート」とは、業界の当たり前じゃなくて、ブランドのDNA。年に1度だけリゾート・コレクションを発表するのではなく、“リゾートマインド”なカプセル・コレクションを毎月ドロップする体制に切り替えるの。「エミリオ・プッチ」と聞かれたらビーチウエアを連想する人が多いくらい、私たちにとってリゾートシーンは馴染みのあるもの。でも同時にブランドは、鮮やかなスキーウエアを発表して一世を風靡したこともあるの。季節を問わず、リゾートは「エミリオ・プッチ」にとって大切よ。コロナを経た今は、「エスケープしたい」というマインドも高まっている。そんな想いに寄り添いたい。私たちにとって「リゾート」とは、ウェルビーイングなマインドセットのことよ。

WWD:具体的には?

カミーユ:スポーティな洋服はもちろん、シューズは快適性にこだわった。ヒールもあるけれど、プラットフォームシューズは欠かせないわ。こだわったのは、素材。パディングを筆頭に、とても柔らかな素材使いにこだわった。こうした洋服を身にまとえば、空港だって、旅先だって、人生全般が楽しくなるハズよ。毎日を笑顔で過ごすこと、それがウェルビーイングな「リゾート」なの。と同時に、私たちの柄は、着る人だけでなく、見る人も笑顔にしてくれるわ。

WWD:プリント柄は、「エミリオ・プッチ」のアイデンティティーでもある。

カミーユ:とても大切な存在。でも最近の「エミリオ・プッチ」は、プリントの中に“人間性”を欠いていたと思うの。昔の柄は、すべて手作業。だからこそ不完全で、そこには“人間性”が宿っていたわ。だから今回発表したプリント柄は、すべてを一から手作業で描きなおしたの。代表的な「ジオメトリック」を筆頭に、「マルモ」や「フローラル」など、スタートしてから3回目にドロップするまでのコレクションに使った、6つの柄を描き直したわ。とっても大変な作業だったけれど、絶対に必要なことだった。最初は手間かもしれないけれど、きっと慣れるわ。だって「エミリオ・プッチ」は1960~70年代、コンピューターを使うよりずっと素早く、数々のモチーフを描き、世に送り出したんだもの。

WWD:ウエアを手掛けるのは、今回が初めて。不安や難しさはなかった?

カミーユ:長年ファッション業界に携わり、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)やマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)と仕事をしながら、彼らを観察してきたわ。そこで素晴らしいコレクションには、素晴らしいチームが欠かせないことを学んだの。「エミリオ・プッチ」は、素晴らしいチーム。だから不安はなかったわ。厄介なのは、私が完璧主義なこと(笑)。アクセサリー、特にジュエリーにはミリ単位の細かさが求められるから。

WWD:4月末には、ゲストをカプリ島に招き、さまざまなアクティビティーを通してコレクションを発表した。

カミーユ:ファッションショーより、ずっとラクだったわ!ゲストは、土曜の夜に到着すると、まずは「エミリオ・プッチ」の柄に覆われたバーなどを筆頭に、“プッチの海にダイブ”するの。翌朝はヨガやゲームを楽しみながら、カフタンドレス姿のモデルをチェック。そして、みんなでダンスよ(笑)。こうしたコンテンツは、ウェブサイトを通してみんなに共有するつもり。私たちのコアバリューは「リゾート」だけど、今はスピーディな社会でもあるから、デジタルも頑張らなくちゃ。サイトでは、水着もセーターも、いつでも買えるわ。だって日本が冬でも、ブラジルは夏よ!世界のどこかには、必ず「リゾート」を楽しめる環境、楽しんでいる人が存在するんだから、「エミリオ・プッチ」の可能性は大きいわ。

The post 新生「エミリオ・プッチ」お披露目 デザイナーが目指す「ウェルビーイングなリゾート」とは? appeared first on WWDJAPAN.

新生「エミリオ・プッチ」お披露目 デザイナーが目指す「ウェルビーイングなリゾート」とは?

 「エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)」は4月末、新アーティスティック・ディレクターのカミーユ・ミチェリ(Camille Miceli)による最新コレクションをイタリアのカプリ島で発表した。フランス出身のミチェリ=アーティスティック・ディレクターは、15歳から「シャネル(CHANEL)」や「アライア(ALAIA)」などでインターンとして経験を積み、「シャネル」や「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の広報担当を務めた後、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下の複数ブランドではコスチュームジュエリーやレザーグッズの監修やコンサルティングを担った。カミーユによる新コレクションの発表に際して、「エミリオ・プッチ」はブランドのルーツに立ち返り、「リゾートに特化したブランド」としてリブランディングすると発表していた。彼女に、その想いを聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):「リゾートに特化したブランド」とは?年に1度、リゾート・コレクション(一般的には、春夏と秋冬の間に発表するコレクションとして知られている)しか発表しない、ということ?

カミーユ・ミチェリ「エミリオ・プッチ」新アーティスティック・ディレクター(以下、カミーユ):「リゾート」とは、業界の当たり前じゃなくて、ブランドのDNA。年に1度だけリゾート・コレクションを発表するのではなく、“リゾートマインド”なカプセル・コレクションを毎月ドロップする体制に切り替えるの。「エミリオ・プッチ」と聞かれたらビーチウエアを連想する人が多いくらい、私たちにとってリゾートシーンは馴染みのあるもの。でも同時にブランドは、鮮やかなスキーウエアを発表して一世を風靡したこともあるの。季節を問わず、リゾートは「エミリオ・プッチ」にとって大切よ。コロナを経た今は、「エスケープしたい」というマインドも高まっている。そんな想いに寄り添いたい。私たちにとって「リゾート」とは、ウェルビーイングなマインドセットのことよ。

WWD:具体的には?

カミーユ:スポーティな洋服はもちろん、シューズは快適性にこだわった。ヒールもあるけれど、プラットフォームシューズは欠かせないわ。こだわったのは、素材。パディングを筆頭に、とても柔らかな素材使いにこだわった。こうした洋服を身にまとえば、空港だって、旅先だって、人生全般が楽しくなるハズよ。毎日を笑顔で過ごすこと、それがウェルビーイングな「リゾート」なの。と同時に、私たちの柄は、着る人だけでなく、見る人も笑顔にしてくれるわ。

WWD:プリント柄は、「エミリオ・プッチ」のアイデンティティーでもある。

カミーユ:とても大切な存在。でも最近の「エミリオ・プッチ」は、プリントの中に“人間性”を欠いていたと思うの。昔の柄は、すべて手作業。だからこそ不完全で、そこには“人間性”が宿っていたわ。だから今回発表したプリント柄は、すべてを一から手作業で描きなおしたの。代表的な「ジオメトリック」を筆頭に、「マルモ」や「フローラル」など、スタートしてから3回目にドロップするまでのコレクションに使った、6つの柄を描き直したわ。とっても大変な作業だったけれど、絶対に必要なことだった。最初は手間かもしれないけれど、きっと慣れるわ。だって「エミリオ・プッチ」は1960~70年代、コンピューターを使うよりずっと素早く、数々のモチーフを描き、世に送り出したんだもの。

WWD:ウエアを手掛けるのは、今回が初めて。不安や難しさはなかった?

カミーユ:長年ファッション業界に携わり、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)やマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)と仕事をしながら、彼らを観察してきたわ。そこで素晴らしいコレクションには、素晴らしいチームが欠かせないことを学んだの。「エミリオ・プッチ」は、素晴らしいチーム。だから不安はなかったわ。厄介なのは、私が完璧主義なこと(笑)。アクセサリー、特にジュエリーにはミリ単位の細かさが求められるから。

WWD:4月末には、ゲストをカプリ島に招き、さまざまなアクティビティーを通してコレクションを発表した。

カミーユ:ファッションショーより、ずっとラクだったわ!ゲストは、土曜の夜に到着すると、まずは「エミリオ・プッチ」の柄に覆われたバーなどを筆頭に、“プッチの海にダイブ”するの。翌朝はヨガやゲームを楽しみながら、カフタンドレス姿のモデルをチェック。そして、みんなでダンスよ(笑)。こうしたコンテンツは、ウェブサイトを通してみんなに共有するつもり。私たちのコアバリューは「リゾート」だけど、今はスピーディな社会でもあるから、デジタルも頑張らなくちゃ。サイトでは、水着もセーターも、いつでも買えるわ。だって日本が冬でも、ブラジルは夏よ!世界のどこかには、必ず「リゾート」を楽しめる環境、楽しんでいる人が存在するんだから、「エミリオ・プッチ」の可能性は大きいわ。

The post 新生「エミリオ・プッチ」お披露目 デザイナーが目指す「ウェルビーイングなリゾート」とは? appeared first on WWDJAPAN.

“エモラップ界のニューヒーロー”イアン・ディオール ファッションから「ヒロアカ」まで、愛する日本のカルチャーについて語る

 毎年、アメリカのヒップホップファンたちが発表を待ち望んでいる「XXL・マガジン(XXL Magazine)」の企画“XXL・フレッシュマン・クラス(XXL Freshman Class)”をご存知だろうか。同企画は、アップカミングな若手ラッパー約10人を紹介する企画で、これまでケンドリック・ラマー(Kendrick Lamar)やマック・ミラー(Mac Miller)、トラヴィス・スコット(Travis Scott)らが選出されてきた“新人の登竜門”である。その2021年版に選ばれたのが“エモラップ界のニューヒーロー”と称されるイアン・ディオール(Iann Dior)だ。

 エモラップとは、感傷的なリリックとロックのエッセンスを取り入れたジャンルである。故XXXテンタシオン(XXXTentacion)や故リル・ピープ(Lil Peep)らの影響で10年代後半から市場が拡大した。イアンは、高校生の頃に自主制作した楽曲が口コミで広まると、19年に若干20歳で「サウンドクラウド(SoundCloud)」で発表した「Cutthroat」が1300万再生以上を記録。さらに20年、旧友24k・ゴールデン(24kGoldn)とのコラボ楽曲「Mood」が「ビルボード(Billboard)」史に残るヒットソングとなり、21年には「フォーブス(FORBES)」の 「30アンダー30(30 UNDER 30、フォーブスが選ぶ30歳未満の30人)」にも名を連ねた。わずか数年で時の人となったイアン・ディオールとは、一体どんな人物なのか。あどけなさの残る23歳の彼にオンラインインタビューを実施し、ラッパーになった経緯や新作アルバムについて、大好きだというアニメやファッションなどの日本のカルチャーについても語ってもらった。

——プエルトリコで生まれテキサスで育ったそうですが、どのような環境でしたか?また、振り返ってどんな子どもでしたか?

イアン・ディオール:いつもヘッドフォンをしてフードを被って、あまり人と話さないような子どもだったね。でも結構早い頃からユーチューバーみたいなことをしていて、高校ではいつもカメラを手に持って歩いていたんだ。最初は周りから変なやつだって思われたけど、動画を投稿するようになってからは好評だったよ。

——ラップをするようになったきっかけは?友人から楽曲を作ってほしいと頼まれたことが原因と耳にしたことがあります。

イアン:16~17歳くらいの頃だったと思うけど、曲を作ってほしいと頼まれたんじゃなくて、友人のRJ・ボーイ(RJ BOY)に「レコーディングをやらないか」って声を掛けられたんだ。ちょうどビートのない状態でノートに書き留めていた「Where You At」という楽曲があったから、チャレンジしてみることにした。彼は自分の部屋をスタジオ仕様にしていたんだけど、レコーディングの直前にバスルームに駆け込んだことをよく覚えているよ(笑)。実はビートを用意していなくて、急いで曲に合うビートをユーチューブで探したんだ。偶然いいビートが見つかったからメロディも少し変えて、彼の部屋に戻ってレコーディングをした。これがきっかけで楽曲制作が好きになったんだよ。

あと、別の友達のハーフタイム(Halftime)も同じように部屋をスタジオ仕様にしていたから、彼とは毎日のように曲をレコーディングしていたね。平日の午前3時に「マジで今録らないとヤバい曲がある」って電話したら、彼が母親の車ですぐに迎えに来てくれて、朝までレコーディングをし、そのまま学校に行ったこともあったね。

——インターネット・マネー(Internet Money、LAを拠点とするプロデューサー集団)に発掘されたことがデビューのきっかけのひとつだそうですが、この経緯は?

イアン:インターネット・マネーと契約はしなかったんだけど、ある日、俺の楽曲をたまたま聴いた創設者のタズ・テイラー(Taz Taylor)から楽曲制作の連絡があったんだ。すぐにロサンゼルスに飛んで2曲を制作したらそれが高く評価されて、レーベル12社とのミーティングが決まった。そんな感じで、短期間の間にとんとん拍子に事が運んでいったのさ。

——先ほど、初めてレコーディングをした時に楽曲をノートに書き留めていたと話していましたが、昔からラッパーになることを意識していたからでしょうか?

イアン:もともと詩やリリックを書くことが好きで、いつもノートに書き溜めていたんだ。だから最初にレコーディングに誘われたとき、ノートにはリリックが出来上がった状態の「Where You At」がすでにあって、あとはビートを見つけて微調整するだけでよかったってこと。

——ネガティブな表現の多いリリックは実体験が多いそうですね。書く際に意識していることは?

イアン:昔と違って、今はビートを聴いてからリリックを書くようになったね。ビートから何かを感じ取って、そこに自分が綴りたい内容を乗せる感じ。

——ビートを聴いて、まずはテーマを決めるのか、それとも思いついたフレーズから広げていく感じですか?

イアン:スタジオに入ってから2~3通りのメロディーを歌ってみて、そこから作り上げていく流れかな。気に入ったメロディーを軸に、「これはフックがいい」や「これは曲の終わりに使おう」とか考えながら構成していく。こうやって大枠が決まったところで、リリックを書き始めるんだ。リリックのテーマは例えば、ビートを聴いて「高校時代を思い出す」って感じたら「当時はこんなことを考えて生活していたな」ってイメージを広げ、当時抱えていた気持ちについて綴ってみるんだ。

——1月に2ndアルバム『on to better things』をリリースしました。タイトルに込めた思いは?

イアン:これまで自分がやってきたバカなことを断つ、という宣誓のようなもの。アルバム制作前までは何も考えていなかったけど、これをきっかけに「自分の健康を考え、より良い生き方をする」って誓いたかったんだ。

——アルバムはどのようなプロセスで制作を進めましたか?また、コロナ禍の影響はありましたか?

イアン:この数年は自分に限ったことではなくて、世間にとっても異常な時期だったと思う。コロナのせいで精神的にやられて、ネガティブなことばかり考えるようになった。しかも、コーヒーを買いに外に出ることすらもできない。マスクで鼻を覆っていないだけで怒鳴られることもあった。もう違和感だらけで、外に出るのも嫌になったよ。

アルバムには、家族の問題だったり、自分自身を好きになれずにいたことだったり、そこからありのままの自分を受け入れるまでの道のりだったり、その時々で抱えていた感情を反映している。「自分自身を愛せなければ人を愛せない」ってみんな言うけど、自分がまさにそうで、全てが嫌になっていた。夢に描いていた全てを手に入れたのに、なぜ自分はこんなにも満たされないのかーーこのアルバムを作ることで、少しずつその答えを見つけていったね。

——リードシングルでもある収録曲「let you」について、何かエピソードはありますか?

イアン:この曲とビデオのコンセプトはサーカスで、自分にとってのロサンゼルスを例えているんだ。みんな衣装を着てカッコ良く見せようとして、ショービズで仕事していることに特権を感じている。あと、当時めちゃくちゃ大好きだった女の子がいたんだけど、その子も俺もこの世界にいて、2人とも衣装を着て大見栄を張っていた。俺にとって「let you」は、彼女との関係を断つと同時に、ショーオフな生き方も断ち切ることを意味しているんだよ。心の底から愛している相手だったから、その人が何をしようと許せたんだけど、「もう限界だ。さようなら」って最後のきっかけに制作したのさ。

——コンセプトにサーカスを選んだのは、“いかに自分をよく見せるか”という最近のSNSの体質も意味していますか?

イアン:SNSにもそういった側面はあるけど、俺からするととにかくロサンゼルスが普通じゃないんだよ。世界のほかのどの場所とも違う。「へえ、その服ブランドものじゃないんだ」って感じで、見た目で物差しを測ってくる。普通じゃダメで、普通の人だと受け入れられない。正直、あまり好きじゃないね。

——収録曲「complicate it」でも女の子に関してラップしていますね。

イアン:そうだね。「どうしたらいいんだ。全て完璧なはずなのに、ものすごく面倒臭い」っていう女の子。ちょっとしたことで口論になり、最終的に彼女が「大嫌い」と言い出して、俺が「嘘だ。愛しているだろ。何を言ってるんだ」って返す。この曲は、「大変だけど、絶対に諦めない。君を愛しているから」という俺の気持ちを楽曲にしているんだ。

——今作ではさまざまなラッパーをフィーチャーし、一方でこれまで数々フィーチャーもされてきました。特に気の合う人は?

イアン:今1番好きなのは、断然リル・ウージー・ヴァート(Lil Uzi Vert)。彼の音楽が大好きだからね。あとはガンナ(Gunna)とリル・ベイビー(Lil Baby)。この3人が、俺にとってのトップ3だ。

——では、一緒に楽曲を作りたい人は?

イアン:ヤング・サグ(Young Thug)と組んでみたいし、ザ・ウィークエンド(The Weeknd)とポスト・マローン(Post Malone)とも仕事をしてみたい。

——ジャンルの垣根を超えたコラボが多いのは意図的?

イアン:もちろん!「On To Better Things」の前に1stミックステープ「Nothings Ever Good Enough」と1stアルバム「Industry Plant」をリリースしてるけど、どちらの時も完成させた瞬間に「何か違う。記憶から消したい」と納得していなかった。でも今回は出来た時に「これはいい。気に入った。すぐに出したい」って思ったね。実際、自分の納得がいく作品にするために500曲は用意したよ。

——少し過去の話をすると、2020年にリリースした24k・ゴールデンとの「Mood」は日本でも人気ですが、何かエピソードはありますか?

イアン:「Mood」は、アパートのベッドルームで仲間とつるんでいた時にできた曲なんだ。みんなでシューティングゲームの「コール オブ デューティ(Call Of Duty)」をプレイしている最中に、「曲を作ろうぜ」って話になったらすぐに完成して、また「コール オブ デューティ」をプレイした(笑)。当時は、そんなにイカした曲だって自覚は全くなくて、リリースする直前に「これ、マジでいい曲じゃん」って気付いたくらい。何週にもわたって全米1位を獲るとは思っていなかったよ。

——シングル「Shots In The Dark」のアートワークは、日本人アーティストのSora Aota(K2)がデザインしています。そのきっかけを教えてください。

イアン:彼から「何かデザインしたい」とインスタグラムでDMをもらったのがきっかけだね。彼の投稿を見たらすぐに才能を感じ、「『Shots In The Dark』のために何か作ってみてよ」と頼んだらアートワークを送ってきてくれて、とても気に入ったから採用することにしたんだ。

アーティスト名は「ディオール」が由来

——名前のディオールは、ファッションブランドの「ディオール(DIOR)」と関係がありますか?

イアン:そうだね。ロサンゼルスに移住した時に自分のことが嫌いで、チャンスを目の前にして生まれ変わった新しい自分としてスタートを切りたかったから、名前をイアン・ディオールに変えた。これは、自分のミドルネームと絶対に手の届かないブランド名の組み合わせ。あまり時間をかけずにパッと思い付くままに決めたのもあって、いい名前かどうか自分でも分からなかったし、「みんなきっと嫌いだろうな」とさえ思ったよ。でも、そのまま使い続けてるうちに定着したね。

——数あるブランドの中から、なぜ「ディオール」を?

イアン:1番お気に入りのブランドだったから。今でもそうだね。上品だし、プリント使いがとにかく好きなんだ。「ディオール」と「ゴヤール(GOYARD)」のプリント柄が好きだね。

——ほかにお気に入りのブランドはありますか?

イアン:挙げ出したらキリがないけど、「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」と「リック・オウエンス(RICK OWENS)」は最高。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」と「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATHESOLOIST.)」「ミキモト(MIKIMOTO)」も好き。アメリカと比べて、日本のファッションはすごく進んでいると思う。ロサンゼルスにエイチ・ロレンゾ(H. Lorenzo)ってセレクトショップがあるんだけど、そこは日本のブランドばかり取り扱っていて、店のオーナーに「俺に見せるまで日本のブランドのアイテムは誰にも売らないでくれ」って冗談を言うくらい気に入ってる。いま履いているパンツもエイチ・ロレンゾで買った日本のブランド。名前は忘れちゃったけど(笑)。

——ほかにアメリカでお気に入りのショップは?

イアン:またロサンゼルスなんだけど、セレクトショップのマックスフィールド(MAXFIELD)や、ランウエイのアイテムも取り扱っているデパータメント(Departamento)によく行くね。あとは、アーカイブをたくさん持っている子たちとインスタグラムでつながっていて、彼らから買うことが多いね。というのも、俺は自分と全く同じものを着ている人を見かけることが1番ムカつくんだ(笑)。1990~2000年代のアーカイブを着ている人は、なかなかロサンゼルスにはいないからね。

——ロサンゼルスにはアーカイブを取り扱うショップは少ないんですか?

イアン:ウェイストランド(Wasteland)ってショップがあるけど、数は少ないしリサイクルに近いね。インスタグラムで繋がった子たちの家に行くと、めちゃくちゃ良いアーカイブがラック単位で置いてあるから、大抵の欲しいものが見つかるんだ。最近だと「クロムハーツ(CHROME HEARTS)」のデニムを手に入れたよ。

——では、日本で行きたいショップは?

イアン:エイチ・ロレンゾで働いているマックって仲良いスタッフの父親がセレクトショップのオーナーで、オススメの日本のショップをたくさんリストにしてくれたんだ。だから今度日本に行ったときは、1週間くらい滞在してリストを制覇するつもり。「スーパー・ニンテンドー・ワールド(SUPER NINTENDO WORLD)」にも行きたいね(笑)。あとは、村上隆が1番お気に入りのアーティストだから彼の洋服や作品が欲しいし、日本には俺が1番好きな日産のスカイラインGT-Rもあるらしいから、マジで早く行きたいよ。

——ファッションにおいて、何かを参考にすることはありますか?

イアン:子どもの頃からファッションが好きで、自分のお金で買えるようになってからはショップに足を運び、試着を繰り返して変わったスタイルを見つける。それが自分流のこだわり。例えば、お金が入って最初に買ったのはパールのネックレス。その頃は誰もパールなんて着けてなくて、それだけでひどいことも言われた。それが今では、みんながパールを着けるようになった。笑っちゃうよね。昔からファンキーな洋服を着ていると父親に笑われたけど、最近は彼も少し分かってきたみたいで、そんなに笑わなくなった。誰かを参考にしているというよりも、昔から興味があって今につながったって感じかな。

——ヘアスタイルもアイコニックですが、どんなこだわりが?

イアン:なぜドレッドを前に垂らしてるかっていうと、昔はきれいドレッドだったんだけど、母親にブラシでほぐされちゃったんだ(笑)。ドレッドは頭皮に負担がかかるから痛くて、ある日、その痛みに耐えられなくなって母親にほぐしてもらうことにした。でも、それすら痛すぎて途中で止めてシャワーを浴びたら今の髪型になっていて、意外と気に入ったから続けてる。最近ブロンドに染めたよ。

——ネイルもよくしていますね。

イアン:清潔でいることは大事だと思っているから、ネイル、フェイス、ヘアの手入れは怠らないね。女の子なら特に共感してくれるはずさ。

「ヒロアカ」が1番好きなアニメの理由とは?

——2019年にマイアミで開催されたヒップホップフェス「ローリングラウド(Rolling Loud)」では、ヒトカゲのバックパックを背負っていましたね。日本のアニメや漫画が好きになったきっかけは?

イアン:子どもの頃から当たり前のようにテレビでたくさんのアニメを見てきたけど、それが日本のものだって知らなかったんだ(※アメリカでは、2000年代前半から日本のアニメ専門チャンネルが人気)。際どい表現も結構あって、母親によく怒られたよ(笑)。小さい頃に好きだったアニメは「ソウルイーター」で、「寄生獣」にもハマってたね。

——1番好きなアニメは?

イアン:「僕のヒーローアカデミア」さ!主人公の緑谷出久に自分を重ね合わせちゃうんだ。

——日本人で会いたい人はいますか?

イアン:誰だろう。村上隆はもちろん会いたいけど、実際に行ったら俺がまだ知らないクールな人たちと出会えるんじゃないかな。アメリカにいると、入ってくる情報が限られてしまっているからね。かっこいいビジュアル・アーティストやミュージシャンに会ってみたいな。

——スケートボード好きとして、日本で開催された「Xゲーム(X Games)」は注目していましたか?

イアン:12歳の頃からスケートボードをやっていて、「Xゲーム」に出場するのが夢だったこともある。それに毎年父親と欠かさず観ているから、日本で開催されるのに観に行けないのがめちゃくちゃ悲しい。スノーボードやダートバイクも昔から好きで、いろんなエクストリーム・スポーツを父親と一緒に見て育ったから、「Xゲーム」は2人の絆を深める時間だったんだ。堀米雄斗は、自国で開催されたオリンピックも「Xゲーム」も優勝してすごいよ。

The post “エモラップ界のニューヒーロー”イアン・ディオール ファッションから「ヒロアカ」まで、愛する日本のカルチャーについて語る appeared first on WWDJAPAN.

ファッション業界歴「40年」、スタイリスト北村道子の哲学

 日本を代表するスタイリストとして地位を確立しているのが、現在73歳の北村道子だ。10代の頃にサハラ砂漠、アメリカ大陸、フランスで過ごした後、30代でスタイリストのキャリアをスタート。初期は広告や資生堂の企業文化誌「花椿」でスタイリングを担当していたが、森田芳光監督の映画「それから」に主演だった松田優作の指名により参加することになった。以降、「キッチン」や「幻の光」「東京日和」など数々の映画の衣装に携わるほか、雑誌「流行通信」や「スタジオ・ボイス(STUDIO VOICE)」などでも活動するようになる。

 切りそろえられたグレーヘアにメガネという佇まい。そして独自の人生論やファッションに対する考えを、まるで哲学者のように語る北村の言葉には、人を惹きつける強いパワーがある。業界歴40年以上という彼女に自身のキャリアをはじめ、変化するファッションの価値観や、最前線で活躍するために大切にしていることについて語ってもらった。

映画が自分の基盤

WWD:衣装を手掛けるようになったきっかけは?

北村道子(以下、北村):金沢の美大で比較人類学を教えている先生がいたんです。その先生が調査で海外へ行くことになり、私がどうしても一緒に行きたかったので、親に懇願して同行することができました。それからアメリカ大陸の横断を経て、最後は南米のグアテマラにたどり着いたんです。そこに住むネイティブアメリカンのオジブワ族の村で民族衣装やビーズ付けを学び、衣装を作ることに興味を持ち始めました。

WWD:10代の頃から世界中を旅していますが、海外を経験して得たことは?

北村:危険を瞬時に肌で感じること、そこの地の宗教を調べて旅をすること、子どもたちと仲良くなり情報を交換することが大事だということを学びました。当時はiPhoneがない時代でしたが、今でもこれらのことを実行しています。

WWD:一日一本は映画を見るというシネマホリックな北村さんですが、衣装づくりやスタイリングは映画からインスピレーションを受けることが多いですか?

北村:映画監督ジム・ジャームッシュ(Jim Jarmusch)の作品のカメラマンとして知られているロビー・ミューラー(Robby Muller)に影響を受けています。彼は撮影を行う際、長回しをするのでセットは作らず、自然光のみを使い、カメラのために特別な装飾美を施さないんです。彼のようにリアリティを追求したいので、私も撮影現場でヘアメイクの微調整はしないようにクリエーターたちにお願いすることが多いですね。

WWD:衣装や写真など、「モノクロ」にこだわる理由もミューラーの影響でしょうか?

北村:ミューラーが言うように、モノクロというのは色がつかない世界であり、想像なんです。たくさんの色で溢れているこの世界でモノクロのものを使うと、実際に目に映る色は白か黒だけれど、想像力を豊かにさせてくれるんです。色が2色しかないからこそ、映像の細部や着るモデルの個性に目を配ることができると思います。

「価値とは何か?」を問うこと

WWD:ジェンダーレスやサステナブルなど、世間のファッションへの価値観が以前と今とでどう変化していると感じますか?

北村:ジェンダーレス化やサステナブルはもはや当たり前のこと。特に環境問題について、私たち人間は脆く、弱い生き物であるということをまず理解し、地球の問題というよりも人間の問題という視点を持つことが重要です。だから価値観という言葉にくくるべきではありません。むしろ今、「価値とは何か?」を自分自身に問うべきではないでしょうか?

WWD:憧れだったファッションが環境問題により悪者になっていますが、今ファッションの何を信じればいいのでしょうか?

北村:一概にファッションが悪者にされているとは思わないです。例えば、量産型のファストファッションが環境にダメージを与えているかもしれませんが、若い子たちが低価格で服を購入できるじゃないですか。そういう手段があることで、Z世代の子たちはトレンド関係なく自分のスタイルを作ることができる。「かっこよくなりたい」という感情ではなく、「かっこいいとは何だろう」と問いながら、自分の中の“かっこよさ”を見つけることが重要です。まずは一歩引いて、俯瞰で自分を見てみること。そうするとあなたの“姿”が見えてくるはずだから。

WWD:それは、さまざまな仕事にも通じる部分がありますか?

北村:仕事に対しての考えを言うならば、一旦決めたことはぶらさないこと。最初に、その仕事をエンジョイできているかを自分に問うてみてください。もし楽しめていないのなら、仕事は一人ではできないので、関わる相手をどう見るかという観察をしてみるといいでしょう。

WWD:戦争やコロナ禍という情勢が揺れる中、ファッションが持つ力とはなんでしょうか?

北村:ファッションの力については分かりませんが、服の力はあります。人々はデコラティブなものから機能美のある服を頼りにしています。それは、地球が変化していることとパラレルな関係です。

WWD:ファッション業界の最前線で活躍する上で心掛けていることは?

北村:自分の道を失わないことです。例えば、歌手のビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)がいつもオーバーサイズの服を着ていること。周りに流されることなく、彼女は自分だけが知る「自分」というものをちゃんと理解し、独自のスタイルを貫いていると思います。また情緒を養うことも大切です。「人の中心は情緒である」と言う数学者の岡潔の理論があるように、情緒を育むことで共感力や思いやりを持つことができ、豊かな人生を築くための大きな力になってくれるでしょう。

The post ファッション業界歴「40年」、スタイリスト北村道子の哲学 appeared first on WWDJAPAN.

ファッションから学んだ気鋭のフローリスト 「デリジェンスパーラー」店主が考えるものづくりの本質

 表参道ヒルズの一角に店を構えるフラワーショップ「デリジェンスパーラー(DILIGENCE PARLOUR)」は、今年でオープン7年目を迎える。越智康貴は同ショップを22歳で開業し、現在は2店舗の経営、企業やブランドの装花、文筆活動など多方面で活躍する。フローリストになる前は文化服装学院で学んでいたという彼に、ものづくりに対する考え方やアイデアの着想源を聞いた。

ファッションを通して触れたものづくりの源流
広がった人とのつながり

WWD:文化服装学院(以下、文化)入学の理由は?

越智康貴ヨーロッパ代表取締役(以下、越智):文化に入学したのは、ものづくりに対する憧れから。源流に近いところからファッションを学びたい。新しいことをスタートするなら一流の環境から、という感覚が当時からありました。

WWD:文化で学んだことで今に通じるものは?

越智:服装科の授業では、パターンの引き方、素材、デザイン、流通のことまで幅広く学びます。技術的に役に立ったことはたくさんありますが、いちばん大きかったのは多様なものの見方を養えたこと。個性的な先生、年齢も立場も違うクラスメイトの存在は大きな刺激になりましたし、著名な卒業生に学んだ制作との向き合い方も今に活きています。

WWD:卒業生の言葉で特に印象に残っているのは?

越智:印象に残ったのは卒業生・皆川明さんの講演。ある生徒の「丁寧に縫うこととスピード、どちらを優先するべき?」という質問に対する「両者は反比例するものではない。だって、寿司屋がゆっくり寿司を握ってたらまずそうでしょ?」という返しには、目からうろこでした。クオリティーとスピードは共存しうる。仕事をテキパキと時間内に進めていく要領は、文化の課題と向き合う中で身に付きました。

 「繊細な服と強い(長持ちする)服」について、「デザインが繊細で素材が強くなくても、着る人が長く大切にしたいと思えるなら、それは長持ちする服だ」とのお話もありました。たくさんインプットを得て、それを絶えずアウトプットできたのは貴重な経験です。

WWD:花にはいつ頃から携わっていた?また、そのきっかけは?

越智:在学中から花屋で働いていました。卒業後もいくつかのアルバイトを掛け持ちしながら花仕事を続けていくうちに、デザイナーになった同級生から、ポップアップや展示会の依頼が増えてきて。「シアタープロダクツ(TEHEATRE PRODUCTS)」のディスプレーに空の花瓶があるのを見て、お花を生けませんか?と電話で提案したり、地道にアプローチを続けました。今振り返るとファッションが入り口となって、業界を中心に仕事の輪が広がっていったように思います。

WWD:その後、表参道ヒルズに「デリジェンスパーラー」を開店した?

越智:表参道ヒルズ開業10周年のタイミングで花屋を開店する話が挙がり、入店を決めるコンペに参加しました。そこで出店が決まり、今年で7年目を迎えます。ラグジュアリーブランドの仕事が増えたのもその頃で、フィービー・ファイロ時代の「セリーヌ(CELINE)」の展示会で装飾を任せてもらえたことは、業界内外での信頼に繋がったのかもしれません。

花という素材と向き合いながら
花だけにとらわれない表現の可能性を模索する

WWD:最近ではJR東海「そうだ 京都、行こう」の東福寺光明院のインスタレーションが印象的だったが、自身の中で最も思い入れのある仕事は?

越智:ライブハウス・リキッドルームにある「カタ(KATA)」での初個展です。種から育て、わずか7cmで咲いてしまった早咲きの“黄花コスモス”を題材にしました。1輪の黄花コスモスにマジックミラーの箱を被せ、ペンライトの光を当てると合わせ鏡の反射によってコスモスの花畑が箱の中に広がって見えるという作品です。

 植物の個性を活かしながら、新しい花の見せ方を提案する作品として、自分なりの自信はありました。ところが、来客はまさかの3人。当時はこれが自分の実力なのだ、と悲しさに似た複雑で強烈な感情を覚えました。この時の「多くの人に自分が作ったものを見てもらえるのは、とても貴重なことなんだ」という感覚は、今も忘れずに持ち続けています。

WWD:アイデアの着想源や制作の際に大切にしていることは?

越智:基本的には、植物そのものがインスピレーション源です。いろんなフローリストがいますが、自分は造形的な美しさのみを追求するタイプではないですね。もちろん、花一つ一つの色や形にも目を向けますが、それ以上にイメージをいかに表現するかを大切にしています。例えば、ブーケを作るとき「花びらの波を強調する」「色のグラデーションを見せる」など、常にイメージを据えてブーケを制作しています。自分の場合、イメージが先行しすぎて空想の世界に入ってしまうこともありますが(笑)。持っているイメージを形にするために何かを組み合わせる意味では、ファッションにも似たものがあると思っています。

WWD:西武池袋での花言葉を取り入れたイベントも盛況だった。

越智:花は愛、感謝、悲哀など人の気持ちを媒介する側面があります。エンターテインメント性のある形で、人の心によりダイレクトにアクセスしたいという思いから、花言葉のアイデアは生まれました。花言葉のトレーディングカードを3枚受け取る来場者は、その組み合わせによってメッセージを楽しめるようになっています。生活文化に根付いた花言葉をヒントに、違う手法で表現したり見せ方を展開することで、花の新しい可能性を提示する企画になりました。

WWD:写真、文筆活動など、幅広く活躍されているが、花以外の活動の原動力となっているものは?

越智:根幹には花があります。花の新たな表現を模索する中で、「花と何かを一緒に写真に収めたら面白いんじゃないか」「花のことを文章化してみたらどうだろう」という試みから、写真や文筆活動に繋がっていきました。花、言葉、写真、どれか一つ抜き出した時、自分は1番になれないと自覚しているからこそ、花以外に“伝える”ためのツールが必要なんです。心の機微をシェアしたり、従来の表現方法の一歩先に踏み込んでいきたいと思っています。

まだない表現方法を追求しながら
ものごとの原点に立ち戻る

WWD:今後挑戦していきたいことは?

越智:最近は生け花に取り組んでいます。新しい表現を通して磨かれる鋭敏な感性は大切にしつつ、人が脈々と受け継いできた技巧を取り込んでみたい。20代の時はとにかくたくさん経験を積み、いろんな感情を味わいました。30代は伝統に立ち戻ってその先の景色を見てみたいです。

WWD:自分のファッションとの関わり方は?

越智:「とにかく普通の格好」「とにかく派手な格好」「古着」の3パターンを気分によって取り入れています。洋服がその日の気分に合わないと塞ぎ込んでしまうくらい(笑)。自分を表現するうえで、ファッションはかかせないものです。作り手に思いを馳せたとき、デザイナーの視点が活きているものは身につける喜びがありますし、流通の過程や環境への負荷を考えると、古着なら安心して着られます。

WWD:制作に関わる若い世代に伝えたいことは?

越智:自分自身、人が作るものに励まされてきました。情報が簡単に手に入る今、自分だからできることは何なのか、悩んでしまうことが多いと思います。自分の考えを臆せず、たとえ初めはいびつでもいいから発信していってほしい。明確なイメージを通して伝わる人の思いやメッセージには、価値があると思います。技術を追求した先に残る本質が何なのか知りたいですね。

The post ファッションから学んだ気鋭のフローリスト 「デリジェンスパーラー」店主が考えるものづくりの本質 appeared first on WWDJAPAN.

ファッションから学んだ気鋭のフローリスト 「デリジェンスパーラー」店主が考えるものづくりの本質

 表参道ヒルズの一角に店を構えるフラワーショップ「デリジェンスパーラー(DILIGENCE PARLOUR)」は、今年でオープン7年目を迎える。越智康貴は同ショップを22歳で開業し、現在は2店舗の経営、企業やブランドの装花、文筆活動など多方面で活躍する。フローリストになる前は文化服装学院で学んでいたという彼に、ものづくりに対する考え方やアイデアの着想源を聞いた。

ファッションを通して触れたものづくりの源流
広がった人とのつながり

WWD:文化服装学院(以下、文化)入学の理由は?

越智康貴ヨーロッパ代表取締役(以下、越智):文化に入学したのは、ものづくりに対する憧れから。源流に近いところからファッションを学びたい。新しいことをスタートするなら一流の環境から、という感覚が当時からありました。

WWD:文化で学んだことで今に通じるものは?

越智:服装科の授業では、パターンの引き方、素材、デザイン、流通のことまで幅広く学びます。技術的に役に立ったことはたくさんありますが、いちばん大きかったのは多様なものの見方を養えたこと。個性的な先生、年齢も立場も違うクラスメイトの存在は大きな刺激になりましたし、著名な卒業生に学んだ制作との向き合い方も今に活きています。

WWD:卒業生の言葉で特に印象に残っているのは?

越智:印象に残ったのは卒業生・皆川明さんの講演。ある生徒の「丁寧に縫うこととスピード、どちらを優先するべき?」という質問に対する「両者は反比例するものではない。だって、寿司屋がゆっくり寿司を握ってたらまずそうでしょ?」という返しには、目からうろこでした。クオリティーとスピードは共存しうる。仕事をテキパキと時間内に進めていく要領は、文化の課題と向き合う中で身に付きました。

 「繊細な服と強い(長持ちする)服」について、「デザインが繊細で素材が強くなくても、着る人が長く大切にしたいと思えるなら、それは長持ちする服だ」とのお話もありました。たくさんインプットを得て、それを絶えずアウトプットできたのは貴重な経験です。

WWD:花にはいつ頃から携わっていた?また、そのきっかけは?

越智:在学中から花屋で働いていました。卒業後もいくつかのアルバイトを掛け持ちしながら花仕事を続けていくうちに、デザイナーになった同級生から、ポップアップや展示会の依頼が増えてきて。「シアタープロダクツ(TEHEATRE PRODUCTS)」のディスプレーに空の花瓶があるのを見て、お花を生けませんか?と電話で提案したり、地道にアプローチを続けました。今振り返るとファッションが入り口となって、業界を中心に仕事の輪が広がっていったように思います。

WWD:その後、表参道ヒルズに「デリジェンスパーラー」を開店した?

越智:表参道ヒルズ開業10周年のタイミングで花屋を開店する話が挙がり、入店を決めるコンペに参加しました。そこで出店が決まり、今年で7年目を迎えます。ラグジュアリーブランドの仕事が増えたのもその頃で、フィービー・ファイロ時代の「セリーヌ(CELINE)」の展示会で装飾を任せてもらえたことは、業界内外での信頼に繋がったのかもしれません。

花という素材と向き合いながら
花だけにとらわれない表現の可能性を模索する

WWD:最近ではJR東海「そうだ 京都、行こう」の東福寺光明院のインスタレーションが印象的だったが、自身の中で最も思い入れのある仕事は?

越智:ライブハウス・リキッドルームにある「カタ(KATA)」での初個展です。種から育て、わずか7cmで咲いてしまった早咲きの“黄花コスモス”を題材にしました。1輪の黄花コスモスにマジックミラーの箱を被せ、ペンライトの光を当てると合わせ鏡の反射によってコスモスの花畑が箱の中に広がって見えるという作品です。

 植物の個性を活かしながら、新しい花の見せ方を提案する作品として、自分なりの自信はありました。ところが、来客はまさかの3人。当時はこれが自分の実力なのだ、と悲しさに似た複雑で強烈な感情を覚えました。この時の「多くの人に自分が作ったものを見てもらえるのは、とても貴重なことなんだ」という感覚は、今も忘れずに持ち続けています。

WWD:アイデアの着想源や制作の際に大切にしていることは?

越智:基本的には、植物そのものがインスピレーション源です。いろんなフローリストがいますが、自分は造形的な美しさのみを追求するタイプではないですね。もちろん、花一つ一つの色や形にも目を向けますが、それ以上にイメージをいかに表現するかを大切にしています。例えば、ブーケを作るとき「花びらの波を強調する」「色のグラデーションを見せる」など、常にイメージを据えてブーケを制作しています。自分の場合、イメージが先行しすぎて空想の世界に入ってしまうこともありますが(笑)。持っているイメージを形にするために何かを組み合わせる意味では、ファッションにも似たものがあると思っています。

WWD:西武池袋での花言葉を取り入れたイベントも盛況だった。

越智:花は愛、感謝、悲哀など人の気持ちを媒介する側面があります。エンターテインメント性のある形で、人の心によりダイレクトにアクセスしたいという思いから、花言葉のアイデアは生まれました。花言葉のトレーディングカードを3枚受け取る来場者は、その組み合わせによってメッセージを楽しめるようになっています。生活文化に根付いた花言葉をヒントに、違う手法で表現したり見せ方を展開することで、花の新しい可能性を提示する企画になりました。

WWD:写真、文筆活動など、幅広く活躍されているが、花以外の活動の原動力となっているものは?

越智:根幹には花があります。花の新たな表現を模索する中で、「花と何かを一緒に写真に収めたら面白いんじゃないか」「花のことを文章化してみたらどうだろう」という試みから、写真や文筆活動に繋がっていきました。花、言葉、写真、どれか一つ抜き出した時、自分は1番になれないと自覚しているからこそ、花以外に“伝える”ためのツールが必要なんです。心の機微をシェアしたり、従来の表現方法の一歩先に踏み込んでいきたいと思っています。

まだない表現方法を追求しながら
ものごとの原点に立ち戻る

WWD:今後挑戦していきたいことは?

越智:最近は生け花に取り組んでいます。新しい表現を通して磨かれる鋭敏な感性は大切にしつつ、人が脈々と受け継いできた技巧を取り込んでみたい。20代の時はとにかくたくさん経験を積み、いろんな感情を味わいました。30代は伝統に立ち戻ってその先の景色を見てみたいです。

WWD:自分のファッションとの関わり方は?

越智:「とにかく普通の格好」「とにかく派手な格好」「古着」の3パターンを気分によって取り入れています。洋服がその日の気分に合わないと塞ぎ込んでしまうくらい(笑)。自分を表現するうえで、ファッションはかかせないものです。作り手に思いを馳せたとき、デザイナーの視点が活きているものは身につける喜びがありますし、流通の過程や環境への負荷を考えると、古着なら安心して着られます。

WWD:制作に関わる若い世代に伝えたいことは?

越智:自分自身、人が作るものに励まされてきました。情報が簡単に手に入る今、自分だからできることは何なのか、悩んでしまうことが多いと思います。自分の考えを臆せず、たとえ初めはいびつでもいいから発信していってほしい。明確なイメージを通して伝わる人の思いやメッセージには、価値があると思います。技術を追求した先に残る本質が何なのか知りたいですね。

The post ファッションから学んだ気鋭のフローリスト 「デリジェンスパーラー」店主が考えるものづくりの本質 appeared first on WWDJAPAN.

「アパレルのサプライチェーンを変える」 3DCGサンプル作成サービス「ストゥーラ」が旗揚げ 

 3DCGを活用したアパレルメーカー向けの商品サンプル作成サービス「ストゥーラ(STURE)」がこのほどスタートした。サービスを提供するforGIFT(東京、白井崇文社長)は、親会社クリーク・アンド・リバーのゲームグラフィックの開発ノウハウに、長らくアパレル業界に携わってきた白井社長の知見を掛け合わせることで、リアルに近い高品質な3DCGサンプル制作を可能にした。白井社長は「(3DCGサンプルの活用で)ムダな費用を減らせば、“攻め”に転じる資金余力が生まれる。多くのアパレルが構造改革が迫られている今だからこそ、業界が生まれ変わる手助けをしたい」と語る。

 3DCGサンプルの導入は、商品の企画、製造、販売に至るまで、サプライチェーンにおけるさまざまなプロセスでコスト削減などの効果が期待できる。白井社長は具体的なメリットを次のように挙げる。

・リードタイムの短縮:発注から通常1カ月程度かかるサンプル製作が数日程度に短縮。企画から販売開始までを縮め、商品の販売期間を延ばすことができる。

・サンプルの精度向上:サンプル製作の過程をリアルタイムで共有・確認できるため完成品の精度が向上。何度もサンプルを作成する時間的・資金的コストを抑制できる。

・ECの「ささげ」業務の簡略化:精巧な3DCGコストをEC商品ページに掲出でき、実物の画像を撮影する手間が省ける。ECでの事前予約商品は販売機会の延長が期待できる。

 白井社長はこれまでメンズブランドの運営やOEM(他社ブランドの商品製造)などを手がけ、それ以前にはアーティストの衣装制作やホテルのタキシードデザインなどモノ作りの現場でも経験を積んだ。「アパレルビジネスの首を絞めるのは販管費だ。ビジネスの規模を拡大すれば人件費や設備費の膨張は必然で、それは業績が悪くなっても変わらず肩にのしかかるもの。このような状況を打破するには、デジタルをテコに、サプライチェーンそのものを変革していかなくてはならない」と語る。

3DCG開発チームの自社構築は
「本末転倒になりかねない」

 「ストゥーラ」は撮影スタジオや最新の機材、3DCG専門の開発チームなど、クリーク・アンド・リバーのリソースをフル活用することで、シーズン単位のまとまった数のサンプル受注にも対応できる。服の素材やシワなどの表面感、フォルムなどはクライアントとすり合わせながら、可能な限りリアルに近づけていく。納品後も、ECやオンライン商談などへの導入・活用を支援する。すでに大手メーカーと共同でサービスの実証実験を終え、コスト削減効果も検証した。「ケースバイケースではあるが、サプライチェーンに関わるさまざまなコスト全体のうち20%程度の削減が見込める」という。

 アパレルメーカーが3DCGサンプル開発チームを自社で構築するという選択肢には、「人材面も設備面も大きな投資が必要になり、『コストを抑制する』という目的が本末転倒になりかねない」と警鐘を鳴らす。「だからこそ僕らに手助けできることがある。導入いただいた企業さまには、まずは小規模なブランドや一部商品でテスト的にスタートし、コスト抑制効果に納得した上で導入を拡大してもらう。(3DCGサンプルの導入が)絵に書いた餅にらないよう、できる限り伴走する」。

 長期的な展望としては、「3DCGサンプルによるバーチャル試着システム」や「アバターコスチュームを活用したリアル商品のテストマーケティング支援」のほか、ゲームやアニメなどのエンタメやカルチャーと結びつけた事業などを構想する。ただ白井社長は「3DCGというとメタバースやNFTというバズワードを連想しがちだが、それは次のステップ」と強調する。「企業が新しい分野で戦うための力(資金)を生み出す、サプライチェーン改革に3DCGを活用する。まずはここに僕らのやるべきことがあると考えている」。

The post 「アパレルのサプライチェーンを変える」 3DCGサンプル作成サービス「ストゥーラ」が旗揚げ  appeared first on WWDJAPAN.

「アットコスメ」の口コミから読み解く“韓国コスメ”ヒットの法則

 今回は「アットコスメ」に寄せられた「韓国コスメ メイクアップ」に関する口コミを西原羽衣子「アットコスメ」リサーチプランナーが解説。ヒットの法則を読み解いていく(集計期間:22年3月1~31日)。

―――「韓国コスメ メイクアップ」で、象徴的に使われているワードは?

西原羽衣子「アットコスメ」リサーチプランナー(以下、西原):ランキング上位の韓国メイクアップコスメへの口コミには「グリッター・ラメ」と「ティント」というワードが特徴的に使われている。「日本のコスメで、ここまでぎっしり大粒ラメが詰まっているものはなかなかない」「『ロムアンド(ROM&ND)』のラメは別格」と言われるように、特に大粒のラメ(グリッターという言葉も口コミでは同義で使われている)が韓国コスメを代表する特徴と捉えられているようだ。リップティントに関しても、依然として韓国コスメへの期待が高い様子。「韓国コスメデビュー」「初韓国コスメ&初ティント」といった口コミも見られ、エントリーアイテムとなっているようだ。

―――3月に、「韓国コスメ メイクアップ」以外で好調なカテゴリーは?

西原:UVやプライマーが伸長した。「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE-POSAY)」“UVイデア XL プロテクショントーンアップ ローズ”(30mL、税込3740円)、「コスメデコルテ(DECORTE)」“サンシェルター トーンアップCC”(全3色、35g、各税込3300円)、「なめらか本舗」“スキンケアUV下地”(50g、税込1100円)といった既存商品に加え、「イハダ(IHADA)」“薬用フェイスプロテクトパウダー”(9g、税込1980円)といった敏感肌やゆらいだ肌でも使えるものや、「アネッサ(ANESSA)」“デイセラム”(30mL、税込3850円)や「カネボウ(KANEBO)」“ヴェイル オブ デイ”(40g、税込5500円)といった高いスキンケア効果を訴求する新製品が登場しており、日焼け止めにスキンケアとしての潤い感や心地よさや求める声は、ますます増えるのではないかと思う。

 またマスク生活でのノーファンデ化の影響か、「プライマー」という言葉が使われる頻度が高まっている。ロングセラー商品である「ポール & ジョーボーテ(PAUL&JOE)」“プロテクティング ファンデーション プライマー” (全2種、30mL、各税込3850円)の他に、「アンドビー(&BE)」“UVプライマー”(36g、税込2750円)や「アピュー(A’PIEU)」“ジューシーパン スキンケアプライマー”(全2種、14.7g、各税込1980円)、「リリミュウ(RIRIMEW)」“トーンアップカラープライマー” (全4種、30g、各税込1760円)といった新商品が注目されている。ファンデーション以外で肌をきれいに見せるという選択肢の広がりを感じさせる。

22年3月「韓国コスメ メイクアップ」口コミランキング

1位「ロムアンド」“ジューシーラスティングティント”(全11色、5.5g、各税込1320円)

西原:口コミで「本当に唇の色そのまま」などと評される、「MLBB(My Lips But Better=自分の唇のようだけど、よりきれいに見せてくれる色。粘膜カラー)」であることが、人気の理由。「口紅全般苦手だが、自然に血色がいい唇のような色のリップでありがたい」という口コミも見られた。周囲や肌から「浮かない」ことを重視する現代の生活者が、リップの色が肌から浮いてしまう心配なく安心してメイクアップを楽しめることに価値を見出していると思われる。2つめの理由がリップティントであること。「落ちてもほんのり血色感が残っているのが最高」と評され、「マスク生活には欠かせない」アイテムとなっているようだ。

2位「クリオ(CLIO)」“プロ アイ パレット”(全3種、各税込3740円)

西原:「可愛い色がいっぱいつまっていて、毎日のアイメイクが楽しい」など、他商品に比べて「楽しい」というワードが多く出現することが、この商品の特徴。10色もの色がセットされたパレットタイプで、一見使いこなすのが難しいようにも思われるが、「10色全て統一感がある」「マット、細かいラメ入りマット、ラメ数種(小ぶりなもの、ざくざくしたもの)のいろんな組み合わせ」と色味ではなく、質感のバリエーションがあり「本当に捨て色がなく全部使える」という評価につながっている。

3位「ロムアンド」“ロムアンド ハンオールフィックスマスカラ L01 ロングブラック”(7g、税込1430円)

西原:他商品よりも特徴的に語られているのが、色味の絶妙さ。「ブラックでもブラウンでもない絶妙な色味」が「ブルベでも使えるブラウン」と評価されている。「黒より優しい色合いなのに、しっかり盛れるし、茶色より肌がくすまない」「(ブルべの)虹彩を引き立ててくれるような色合いが素晴らしい」というコメントも見られ、パーソナルカラーがブルーベースの人たちの「ブラウンのマスカラはことごとく似合わない」という悩みに応えたことが人気の理由と言える。

4位「ロムアンド」“デュイフルウォーターティント”(全8色、5g、各税込1320円)

西原:1位と同ブランドのリップティントだが、こちらはよりツヤ感のあるウォータータイプ。「サラッとしたテクスチャーなのでつけ心地が軽く、唇への負担が軽い」という使い心地と、「重ね塗りをしても濁りなく透明感のある仕上がり」が評価されている。「透け感あるほうが好きなら絶対こっち」とコメントも見られ、1位の“ジューシーラスティングティント”と使い分けしている様子も見られる。

5位「ロムアンド)」“リキッドグリッターシャドウ”(全4色、2g、各税込1100円)

西原:大きさの異なるラメが「小中大特大みたいな感じで配分良く」入っており「筆が細くて涙袋にも塗りやすい」と評されるリキッド状アイシャドウ。涙袋に使うことで「うるっとした目元になる」「白目がキレイに見える」と言われている。特徴的に見られるのが、「友達にも褒められる率高くて大満足」「彼氏ウケ◎」といった声。同性であれ異性であれ、他者から自分がどう見えるかを意識する層からの評価が高いようだ。

The post 「アットコスメ」の口コミから読み解く“韓国コスメ”ヒットの法則 appeared first on WWDJAPAN.

12歳の新星モデル 山口らいらの素顔

 レプロエンタテインメント所属のモデル・山口らいらは、福岡県生まれの12歳。身長166cmと小学生離れしたスタイルとルックスで、ファッション誌やウェブメディア、広告など活動の幅を広げている注目株だ。3月に東京・代々木で開かれた「東京ガールズコレクション(TGC)」では、堂々としたランウエイウオークを披露した。

そんな山口も、普段は一人の中学生の女の子。地元・福岡での学校生活、モデルを始めたきっかけから将来の夢まで、等身大を語ってもらった。

WWD:「TGC」では堂々としたランウエイでしたね。

山口らいら(以下、山口):12歳でTGCに出させていただけるなんて思いもしませんでしたし、豪華な出演者さんの中に私もいることが、本当に信じられませんでした。本番はとても緊張していて体がガチガチだったのですが、ステージに立ったら楽しく歩くことができたのでよかったです。

WWD:モデルになったきっかけは?

山口:お母さんの勧めがきっかけで、仕事も見つけてきてくれました。初めてのお仕事は、3歳のときのブライダルモデルでした。あまり覚えてないんですが、楽しかった気がします(笑)。それからもっとモデルのお仕事がしたいと思って、今もお仕事を続けています。今の事務所に所属したきっかけは、SNSでのスカウトです。

WWD:モデルをしていて楽しいこと、大変なことは?

山口:モデルはいろんな衣装やヘアメイクが楽しめるし、たくさんの人に出会えるのでとても面白いです!長時間の撮影だと少し疲れる時もありますが、どんな撮影でもスタッフさんがとても優しくしてくださります。だから、大変だと感じることは特にありません。

(女性ファッション誌の)「ヴィヴィ(ViVi)」に出させていただけることが決まった時は、驚きと喜びが止まらなかったです。ずっと見ていた雑誌やSNSで見ていた方と一緒にお仕事させていただけたことが、とてもうれしかったです。(ヘアサロンの)「ミンクス(MINX)」のミューズにも起用していただき、普段の自分よりも大人っぽい雰囲気で撮影をしたので、(出来上がったデータを見て)自分が別人のように見えました。

WWD:目標とする人はいますか?

山口:橋本環奈さんが憧れの存在です。私と同じ福岡県出身で、テレビや映画にたくさん出演してる姿を見て、私も将来同じぐらい活躍できるようになりたいと思っています。

WWD:普段の学校生活についても教えてください。

山口:好きな科目は体育です!小さい頃から運動することが大好きで、お父さんとずっと公園で走っていました。今でも走ったり、ボールを使った運動が好きです。苦手な科目は、図工です。絵を描くのはちょっぴり苦手です。野菜全般が苦手で、特にとうもろこしが苦手なんです。でも学校では野菜をちゃんと食べるようにしています。

WWD:今後の目標を。

山口:4月から中学生になったので、モデルの仕事をがんばりながら、勉強やヘアメイクなども自分でできるようになりたいです。これからも色々な経験を積んで、成長する姿を皆さんに見ていただきたいです!

The post 12歳の新星モデル 山口らいらの素顔 appeared first on WWDJAPAN.

脱サラしてモデルデビュー ヒロ クリヅカって何者?

 日本人モデルのヒロ クリヅカは、脱サラしてモデルデビューした異色の経歴の持ち主だ。坊主頭に鋭い目、鼻筋が通った端正な顔立ちで、2020-21年秋冬シーズンの「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」のランウエイや、「トム フォード(TOM FORD)」の広告など、名だたるブランドに起用されている。モデルを目指した経緯からランウエイデビューまでの道のり、「コンプレックスの固まりだった」と語る学生時代までを聞いた。

海外出張でモデルを勧められ
一週間で辞表を提出

WWD:脱サラしてモデルになったのは本当?

クリヅカ:はい。大学卒業後、繊維商社に入社し、海外ブランドに生地を売っていました。メゾンブランドや「ザラ(ZARA)」などもクライアントでした。海外出張に行った際、あるブランドの生地デザイナーから「君、いいよ。モデルやりなよ」と言われてその気になり、一週間後に辞表を提出。数カ月後には海外コレクションを目がけて、イタリアに発ちました。

WWD:すごいスピード感ですね。いきなりランウエイデビューしたとか?

クリヅカ:いえ。当時は体重88kgで、とてもじゃないけどモデルができるルックスじゃなかった。オーディションも全く引っかかりませんでした。これじゃダメだと減量を決意し、いろいろと調べたら1カ月で4kg痩せる計算になったので、4カ月で16kg落としました。

WWD:どんな計算だったのか気になりますが、その後の流れは?

クリヅカ:やみくもにオーディションを受けてもダメだと、モデル市場をリサーチしました。パリや日本は、線が細くてウィアードな顔立ちのモデルが人気。骨格が太く、顔立ちも個性派じゃない僕は、ミラノやシンガポールにハマると考えて、シンガポールに行きました。すると2週間で事務所が決まり、雑誌とかショーとか、仕事のオファーがバンバン来ました。

WWD:戦略的にモデル業を行ったと。

クリヅカ:そうです。僕はスターモデルになるタイプじゃないし、普通にやっても上手くいきませんからね。シンガポールではモデル仲間にカナダのマザーエージェンシーを紹介してもらい、イタリアやドイツなど8カ国の事務所と契約できました。そこで可能性が一気に広がり、さらに当時はトレンドがストリートからテーラードに回帰していたタイミングで、「ミラノならイケるかも」と思って現地に行きました。そしてついに、2020-21秋冬シーズンに「ドルチェ&ガッバーナ」のショー出演を勝ち取りました。その後、他ブランドのランウエイや「バーバリー(BURBERRY)」「トム フォード」「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」などのキャンペーンも務めました。

WWD:名だたるブランドばかりです。印象深いショーや撮影は?

クリヅカ:まずは「ドルチェ&ガッバーナ」ですね。初の海外コレクションの大舞台は一生忘れません。モデルは100人くらいで、日本人はわずか3人でした。あと「バーバリー」も思い出深い。メッセージがダイレクトで届いて、日本の仕事も結構入っていたからかなり迷ったのですが、こんな機会はもうないとパリに発ちました。撮影の舞台は、パリの中心部から4時間くらい離れた森の中。スケールが異次元で、やっぱすげえなって。日本人モデルは歴代で2人目だったらしく、それもうれしかったです。

WWD:体型維持には気を使っている?

クリヅカ:もちろん。気を緩めるとすぐに体型は崩れちゃうし、プロとしてやらせてもらう以上、100%の自分を提供したいと思っています。撮影前日は絶対飲みにいかないし、当日は水も抜きます。モデルは一つの自己表現だし、それくらいの覚悟がないとやる意味がありません。

WWD:TikTokではモデルデビューまでのエピソードなどを投稿していますね。どんな思いで発信しているのでしょうか?

クリヅカ:いろんな人に夢を与えられたらといいなと。僕は自分にコンプレックスがあって、何をしても1位になれなかった。実は父親がバスケの元日本代表で、親戚にもプロスポーツ選手がいるなど、超がつくほどの体育会の家系。僕は大学までサッカーを本気でやったのですが、華が咲かなかった。しかも友達もいなくて、高校ではいじめも受けていました。そんな僕がモデルとして活動しているのって、夢があるじゃないですか。家族も最初はモデルに肯定的じゃなかったんですけど、最近、スバルの広告に出演させてもらい、それを見た父親が初めて褒めてくれました。めちゃくちゃうれしかったです。

ブランドや写真事業も運営
全ては「本気でモデルをやるため」

WWD:アパレルブランドのディレクションも行っていると聞きました。

クリヅカ:ブランドを2つ運営しています。繊維商社時代に培ったノウハウを生かして、企画・生産から販売まで担っています。キャンペーンなどのクリエイティブも自分で撮影しています。モデルのセカンドキャリアはマネージャーや会社員が多く、今からビジネスをちゃんとやっといた方がいいと考えて始めました。

WWD:写真はどのように学んだのでしょうか?

クリヅカ:いろんなブランドや写真を研究し、独学で学びました。最近は写真メインの仕事もやっています。僕は“フォトディレクション”と呼んでいて、ブツ撮りからSNS投稿までをディレクションし、投稿エンゲージメントのリポートも一括して請け負います。yutoriのブランドとか、飲食店のクリエイティブとか。

WWD:ブランド運営から写真事業までをやっていると、かなり稼いでいるのでは?

クリヅカ:サイドビジネスはモデルをヘルシーにやるためで、金もうけが大きな目的ではありません。別の収入源があるからこそ、本当にやりたいモデルの仕事に集中できるんです。

WWD:なるほど。最後に、今後の目標を教えてください。

クリヅカ:モデル以外の表現にもいろいろと挑戦したい。ヒップホップ好きなので音楽もやりたいし、ユーチューブでの情報発信も良さそう。“脱サラモデル”から、さらに活動を広げて、いろんな人に夢を与え続けたいです。

The post 脱サラしてモデルデビュー ヒロ クリヅカって何者? appeared first on WWDJAPAN.

「焦り」を感じていたスタイリスト小沢宏が、地元で審美眼を生かして在庫活用のセレクトショップ

 スタイリストの小沢宏は5月1日、地元の長野県上田市にセレクトショップ「エディトリアル ストア」をオープンする。取り扱うのは、「サイ(SCYE)」や「ミスター・ジェントルマン(MISTER GENTLEMAN.今春、ブランド名をソフトハイフン(SOFTHYPHEN)に改称」「マッキントッシュ(MACKINTOSH)」のほか、ビームスやネペンテス、エストネーション、ベイクルーズ 、デイトナインターナショナルなどが手掛けるセレクトショップの眠った在庫。シーズン落ちした商品をスタイリストならではの審美眼で買い付け、もちろん定価より安い値段で販売。古里での新たなビジネスのきっかけは、これまでの仕事が縮小していくことに対する「焦燥感」と、だからこその「新しい挑戦への意欲」だった。ゴールデンウイークのオープンを目指す小沢に話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):地元での新たな挑戦に駆り立てたものは?

小沢宏(以下、小沢):スタイリストとして業界に飛び込んで、21歳で「ポパイ(POPEYE)」のアシスタントになって、今は57歳。正直最近は「ボールを投げる距離が短くなってきた」と悶々とするようになった。プロ野球選手のトライアウトなどの“悲喜こもごも”が、自分にとって身近になった。焦燥感があった。

WWD:焦りの理由は?

小沢:「ヌメロ ウーノ(NUNERO UNO)」や「コーヒー アンド ミルク(COFFEE AND MILK)」など、手がけていたブランドが縮小した。かつての事務所を引き払ったとき、サンプルなど、大量の洋服が出てきて驚いた。自分のブランドは決して大規模じゃないし、廃棄が生まれないよう気を使ってもいた。「それでも、行き場のない洋服がこんなにあるのか?」「俺でこんななら、世の中、どうなっているのか?」と考えた。みんな、好きで洋服を作っている。だから「残っちゃいました」「捨てなければなりません」は、すごく悲しい。業界人の多くが同様に悲しい思いをしているなら、「何かできないか?」と考えた。

WWD:そこで、各ブランドの在庫をスタイリストの自分が選び、コーディネートし直して販売するショップを思いつく。

小沢:スタイリストは、いろんなブランドの洋服をディグって、1つのアイテム、1つのスタイルを見つけるような仕事。今、若い世代が夢中な古着屋のようなショップは、自分のこれまでの仕事に近く、今までにない価値を提供できるかもしれないと考えた。企画をまとめて業界の先輩や友人にぶつけてみたら、「成立しないよね」と否定“してくれた”。皆、思った以上に「自分ごと」として捉えてくれたからこその返答だった。それぞれ会社の事情があるから「ユニークなこと、やろうとしてますね」という反応も多かった。「必要とされているのかも?」と現実味が増した。

「広がらないと腹落ちしない」だろう
でも、続ければ「大きな渦になる」手応え

WWD:「ユニークなこと、やろうとしてますね」は、個人的には共感するけれど、会社の事情もあるから距離を置きたいという答え。交渉は、大変だったのでは?

小沢:正直、ラグジュアリーやインポートは、全滅(笑)。でも、親身になって話を聞いてくれるブランドも多かった。不安は、とてもよくわかる。外部の人間が倉庫に入って、商品をピックアップして、直営店とは異なる店頭で売るスキームが受け入れられるのか?という不安は大きく、本音で話して、意向を聞いて、修正を繰り返した。特にアウトレットを持つブランドは「なぜ、ここで?」と考えるし、セレクトは卸売りをしていない。ハードルは高かった。実店舗できて、ECがオープンして、広がらないと腹落ちできないこともあると思う。一方、続けば理解してもらえて、大きな渦になることもあるだろうという手応えを感じた。

WWD:各ブランドの倉庫を周り、一点一点商品をピックアップする過程も大変そうだ。

小沢:基本的にはエクセルの在庫リストとにらめっこしながら個々の倉庫に赴き、在庫の山からお目当てを探し出し、購入するカンジ。倉庫の一角にキレイな段ボールを広げて、洋服を床に置いて吟味している。地道な作業だが、かつて経験したアメリカでの古着の買い付けのようで、とても楽しい。自分で試着して、自撮りして、ピックアップするサンプルを決めるスタイリストの仕事にも通じる。ただ今の僕が目指すのは、「デッドストック」を「ライブストック」にすること。古着業界の「デッドストック」は、未使用のヴィンテージ品。一方の「ライブストック」=「生きた在庫」で、本来なら処分される在庫を新たな流通で新しい価値と共に甦らせたい。

WWD:ショップでは、洋服以外も扱う?ECは?

小沢:実店舗もECも、フルラインアップ。帽子では「キジマタカユキ(KIJIMATAKAYUKI)」、シューズでは「パラブーツ(PARABOOT)」に賛同していただいた。商品の他、残反も買い取った。2、3mの残反は洋服にもできないから業者にお金を払って回収してもらっていたようだが、大手のシャツメーカーのフレックスジャパン(百貨店や専門店、郊外のロードサイドの量販店などで販売するシャツの製造メーカーで、長野県千曲市に拠点を構える)でショッピングバッグにしてもらった。大と小、シューズ用の3種類を用意している。縫製を依頼したフレックスジャパンからは、シャツの端切れを頂いた。細長く切り裂いて三つ編みにして、フーディのドローコードなどにしている。

WWD:ショッピングバッグもフーディもカワイイ。

小沢:さまざまなブランドやスタイルを組み合わせてきた僕の得意技は、「マッシュアップ」。ブランドとシャツメーカーのマッシュアップで生まれたショッピングバッグや、そのメーカーと僕のマッシュアップによるドローコードは、そんなにお金や時間をかけなくても売れるのでは?と思う。最初から最後までを自己完結する形のアップサイクルは、ツラくて続けられない気がする。違うものを組み合わせ、単純に「あ、いいね」と思えるものにしたい。地元に帰り、自分の想いがブランドやシャツメーカーとつながり、彼らの想いがまた別の形につながっている。「ファッションのカラクリ」を知っていて、安易には「いいですね」と言い切れないことが多いと自覚している中、この取り組みは「いいことしかない」と言い切れる。信州大学の繊維学部がある上田市の、元気のない商店街にオープンする「エディトリアル ストア」は、きっとまた、次の想いにつながるだろう。想いの裏にある課題を知りながら、地方と東京、社会と業界をシェイク、ミックス、マッシュアップする架け橋になりたい。

The post 「焦り」を感じていたスタイリスト小沢宏が、地元で審美眼を生かして在庫活用のセレクトショップ appeared first on WWDJAPAN.

写真とアートを両立するココ・カピタン 「グッチ」「ディオール」も注目する若き才能

 スペイン出身の写真家でアーティストのココ・カピタン(Coco Capitan)による日本初の個展“ナイーヴィ(NAIVY)”がパルコミュージアムトーキョーで開催中だ。カピタンは2017年に「グッチ(GUCCI)」のコラボレーターに抜てきされ、手描きの強いメッセージを載せたアイテムなどで高い評価を得た。その後も「アー・ペー・セー(A.P.C.)」や「ナイキ(NIKE)」「ディオール(DIOR)」などさまざまなブランドとの協業を重ねているほか、コマーシャルフォトやファインアートの作品を発表し続けており、写真家とアーティストの狭間をいく独自のポジションを確立している。

 彼女が20代の10年間をかけて制作したという“ナイーヴィ”は、2020年にロンドンのギャラリー、マキシミリアン・ウィリアム(Maximillian William)を皮切りに、21年にアムステルダムの写真美術館ハイス・マルセイユ(Huis Marseille)を巡回し、今年東京・渋谷に上陸した。開催に合わせて来日したカピタンが、個展にかけた思いや、これまでのキャリアのこと、今後立ち上げる新ブランドについて語ってくれた。

――ひさしぶりの来日だそうですね。東京の印象はいかがですか?

ココ・カピタン(以下、カピタン):日本は大好きな国なので、戻ってくることができてとてもうれしいです。今回で訪れるのは3回目ですが、西洋とは異なる文化やデザイン、細部へのこだわりに刺激を受けています。東京はとてもモダンで、物事が迅速に進んでいるイメージ。より伝統的な日本の文化を楽しめる京都も好きですね。今回は日本に2週間滞在し、後半の6日間は京都に行く予定です。日本には憧れる写真家やアーティストがたくさんいて、特に森山大道さんや東松照明さんの作品がとても好きです。

――今回の写真展“ナイーヴィ”について教えてください。

カピタン:ネイビー(海軍)とナイーブ(純粋で傷つきやすいさま)の二つの言葉をかけ合わせた造語です。私はなぜかミリタリーから着想を得ることが多いんです。ネイビーの“戦う訓練をするための集団”という要素は好きではありませんが、人々が社会から離れた場所に集まり、一緒に生活をし、訓練するというような要素を取り上げるのは面白いと思いました。固定されたアイデアを壊しながら、ネイビーとナイーブを表現しています。

東京展のために現像した“決定的な50枚”の作品

――このプロジェクトに10年を費やしたと聞きました。この間、価値観はどのように変化していきましたか?

カピタン:“ナイーヴィ”の作品は長年撮りためてきたものなので、撮影した時期や場所はバラバラです。一番古い写真は私が20歳で初めてニューヨークを訪れたときのもので、当時からもう10年が経ちますね。振り返ると最初の方の写真はエネルギッシュでナイーブな空気感があり、最近の作品はより自信に満ち溢れている感覚です。しかし「こうでなければいけない」という先入観も次第に強くなり、葛藤することもありましたね。

――ロンドンとアムステルダムを巡回し、東京展ではどのように構成したのですか?

カピタン:日本は写真に特別な感性を持っている人が多いので、写真にフォーカスした展示にしたかったんです。“NAIVY : in fifty (definitive) photographs(ナイーヴィ:50枚の決定的な写真)”というタイトルで、東京で発表するために刷った新たな写真を発表しています。現像は暗室で3カ月かけて行いました。他都市で展示した写真と現像方法もサイズも異なる“決定的な50枚”のため、これ以降は“ナイーヴィ”に関する写真をプリントする予定はありません。

――キャリアについても話を聞かせてください。フォトグラファーやアーティストを志したきっかけは?

カピタン:私はスペインの小さな町で育ち、幼い頃から美術館に行くのが好きで、アートにも興味がありました。当時はアーティストが職業だなんて考えたこともなく、自分にできることだとも思っていませんでした。ただ、13歳から写真は撮り続けていて、クリエイティブな仕事をしたいということは分かっていました。そうして18歳でロンドンに引っ越してきたとき、「自分が一番楽しめることは何だろう?」と考え、雑誌で写真を撮り始めたんです。

――代表的な作品に、手描きのメッセージがありますね。これらはどのように制作しているのですか?

カピタン:子どもの頃は内気な性格で、自分の考えや気持ちを人に伝えることが苦手でした。その頃からノートをどこにでも持ち歩いていて、自分の考えを書き留める習慣がついています。今でも同じプロセスで、自分の中で何が起こっているのかを確認しています。それがこの作品につながりました。

――力強いメッセージが多いですが、たまに文字が反転していたり、誤字のようなものがあったりしますね。どのような意図があるのでしょうか?

カピタン:私は少し失読症で、文法はあまり重要ではないと思っています。完璧じゃなくても、見る人は自分なりの解釈をしてくれる。解読するのが難しい方がおもしろいし、個性があると感じますね。

アートの醍醐味は他者の考えにつながりを持てること

――今はロンドンとマヨルカ島を拠点にしているそうですね。それぞれの都市でどのように活動しているのですか?

カピタン:ロンドンでロックダウンを経験し、全てのイベントや文化的な発信が止まったことに衝撃を受けました。その後マヨルカ島で休暇をとり、友だちと楽しい時間を過ごすと、私の理想の居場所はロンドンではないということに気が付いたんです。自然に囲まれたマヨルカ島の方がインスピレーションをより受けられるだろうし、広いスペースで作業ができ、友人も招待できる。そうして、1年前にマヨルカ島に新たな拠点を作りました。気候も良く、海辺で美しいですよ。

――チームで仕事をしているのですか?

カピタン:プロジェクトによってチームを編成しています。ロンドンのチームには2人いて、マヨルカ島では別のチームで仕事をすることも。特にマヨルカ島のアトリエには、他のアーティストたちも招き入れているので、時には助け合い、それぞれ別の仕事もしています。アーティストは孤独な職業でもあるので、異なる目標を持つ人々と働くことは楽しいですね。

――数々のブランドとコラボレーションも行ってきましたね。特に印象深い仕事は何ですか?

カピタン:「グッチ」とのコラボレーションは、大きな経験になりました。アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)と一緒に仕事をしたことで、自分の作品に対する考え方が大きく変わったと思います。またCEOのマルコ・ビッザーリ(Marco Bizzari)の考えにも感銘を受けました。デザイナーと親密に仕事を行い、ブランドにとって何がベストなのかを一緒に考えていることが印象的でしたね。

――パンデミックを経て、今年は戦争が起こるなど私たちは変化の大きい時代を生きています。このような時期にアートはどのような力を持っていると思いますか?

カピタン:私にとってアートは人生そのものであり、感情を処理する方法で、自分自身を表現する手段でもあります。アートの醍醐味は、人々が評価する感性を持つことができ、他者の考えに共感し、つながりを持つことができること。特に他人の立場に立って、客観的に物事を見る力は生きていく上でとても大切なことだと思います。

今後は油絵に力を注ぎ新ブランド「カピターナ」も計画中

――アーティストやフォトグラファーを目指す人にアドバイスはありますか?

カピタン:自分にも、周りの人にも正直になり、挑戦を続けること。全員に好かれる作品を作ることは難しいですが、自分自身が心地よく、満足できる表現を見つけることは重要です。有名になりたいのであれば、情熱を持って、世の中に伝えたいメッセージを持つことも大事。私は正統派なアーティストのキャリアを積んでいるとは言えませんが、このような展覧会を開くために努力を重ねてきました。誰かに「ノー」と言われたり、「無理だ」と否定されたりしても、失望せずに自分を信じることが大切です。

――今後、挑戦してみたいことはありますか?

カピタン:絵をもっと上達させたいです。写真家として経験を積んできたものの、画家としての技術を専門的に学んだことがありません。私は「誰のアシスタントにもつかずに写真家になれてラッキーだね」と言われることもありますが、今は誰かの元でスキルを身に付けたい。時間があれば学校に通ったり、尊敬するアーティストのもとで学んだりしたいですね。また今は“ナイーヴィ”に次ぐ、新しいテーマの作品作りにも取り掛かっており、油絵も描いています。

――直近で計画している仕事はありますか?

カピタン: 「カピターナ(CAPITANA)」というブランドをスタートさせる予定です。カピタンはスペイン語で船長という意味で、カピターナはその女性形(女性の船長)。シーズンごとに新作を出す典型的なファッションブランドではなく、手に取りやすいファッションアイテムとホームウエアを扱います。ファインアートに限らず、モノ作りをすることが好きなので、「カピターナ」ではより多くの人に私のデザインを届けたいです初めてのコレクションでは、マヨルカ島の職人たちと組んで、洋服や陶器などを作りました。将来的には家具にもチャレンジしたいですね。販売は、とあるオンラインプラットフォームとの協業で行う予定です。日本のみなさんが楽しみにしてくれるとうれしいです!

The post 写真とアートを両立するココ・カピタン 「グッチ」「ディオール」も注目する若き才能 appeared first on WWDJAPAN.

「ケイト」に聞いた絶好調の理由 “リップモンスター”やSNS世代に刺さる商品誕生の裏側

 カネボウ化粧品のメイクブランド「ケイト(KATE)」は、1997年に誕生した当初から“no more rules”を掲げ、ルールに縛られないメイクを提唱すると同時にクールでシャープなブランドイメージを確立してきた。ここ数年は、ユーザーの変身欲に着目したユニークなアプローチのものも多い。例えば、たれ目や涙袋を強調できる“マンガジェニックライナー”や、フェイクのふたえを描くことができる“トリプルグラデエキスパート”、白目の幅を自然に大きく見せるアイライナー“リアルアイズプロデューサー”などだ。

 また、コロナ禍で大ヒットを記録した“リップモンスター”は累計300万本を出荷し、2021年度は46部門のベスコスを受賞。“欲望の塊”や“ラスボス”といったユニークなカラー名も話題になった。今年3月にはイラストレーターの米山舞とのコラボビジュアルと共に“欲コレクション(YOKU COLLECTION)”をリリース。同時に、歌手のEveによるオリジナル楽曲「YOKU」のミュージックビデオを公開すると、2カ月足らずで650万回以上再生(4月28日現在)されている。

 このような商品は、どのように開発しているのだろうか。「ケイト」の変化について岩田有弘ブランドマネジャーとPRの若井麻衣に話を聞いた。

WWD:「ケイト」はなぜ変化したのか?

岩田有弘(以下、岩田):2019年ごろから「ケイト」を進化させようと頑張ってきた。これまでも安定した売り上げのあるブランドだったが、イメージが固定化した上に売り上げの成長も鈍くなり、飽和状態になっていた。さらに、業界内でもデジタルシフトするブランドが多くなり、マスブランドとしてのお客さまとのつながり方を考えなくてはいけなかった。

WWD:方向性をどう改めた?

岩田: まずは、当初から唱えてきた“no more rules”のパーパスに、ブランドの意志をいっそう強めて発信していこうと決めた。さらに“no more rules”を通して戦うべきものが、時代と共に変化していることにも注目した。

 これまではハイヒールや制服など、誰かに押し付けられた美の基準が戦うべき“ルール"だった。しかし、ソーシャルが発達した現代は画像の加工技術が発達し、SNS上はきれいな人ばかりになった。その周囲からの“ソーシャルプレッシャー”が不安や自信喪失につながっているのではないかと考えた。そこでわれわれは、同調圧力や固定観念をといったある種の“ルール"に従うのではなく、お客さまと一緒に取り組むスタンスを大切にしようと話し合った。

SNS世代に刺さる商品はどうやって生まれている?

WWD:消費者のリアルなニーズをつかみ、商品化するまでが早いイメージだ。

若井麻衣(以下、岩井): チームのメンバーは美容への愛が本当に強いため、リサーチ力がものすごい。私から見ていても、お客さまのちょっとした発信から、ニーズを汲み取る早さと感性が素晴らしいと感じる。定期的に実施しているアイデア出し会では若いスタッフもどんどんアイデアを出している。みんな、とんでもなく積極的だ。

岩田: たしかに要所要所にジャッジが必要な場面はあるが、そこまではみんな自由な発想で楽しくやっている。そういう雰囲気のおかげで、今は発案とリリースのサイクルがすごくよく回っているなと感じる。ただ、スピード感を保ったままリリースするのはやっぱり大変で、現場は体力勝負だ。

WWD:大ヒットした“リップモンスター”はどうやって生まれた?

岩田: コロナ禍でリップ市場が縮小する中、われわれが注目したのは「マスクをするからってメイクをしないのはありえない!」と思っている、メイクが生きがいの若年層。落ちにくいのは大前提として、コロナ禍でも楽しめるリップを作ろうと企画したのがきっかけだ。

 ネーミングは、唇を起点に“欲”を考えたときに、色落ちを気にせず食べ物を食べたかったり、写真や動画に映る自分をかわいいくキープしたかったり、楽しくおしゃべりをしたかったりして、まるで怪物みたいだなと想像した。そこから“リップモンスター”という商品名が生まれた。

WWD:商品名だけでなく、ユニークな色の名前も特徴だ。

岩田: “思わず誰かに話したくなる商品”を目指して、“欲望の塊”や“ラスボス”など気になる色名を付けた。色の名前も候補が100案ほどあって、その中から厳選した。

若井: 色名だけでなく、カラーバリエーションも評価されたポイントだと思っている。SNSを見ていると、絶妙な色の違いを楽しみたい人が多そうだったので、普通はピンク、ブラウン、レッドと幅広くそろえるのが定石のところ、既存色はあえてブラウンベースのみのカラーに絞った。絶妙な色味の違いだからこそ似合う色が必ず見つかるし、集めてくれる人も多かったようだ。

WWD:3月にリリースした“欲コレクション”のような、イラストレーターや歌手との協業も好調を後押ししている。他ジャンルへのアプローチは一歩間違えるとイメージを左右することもあるはずだが、コラボの際に気をつけていることは?

岩田: 私たちも本気でやるという姿勢は大前提だ。「エヴァンゲリオン(EVANGELION)」と昨年コラボしたときもそうだったが、コンセプトをきちんと持ちながら、パロディにしないのは当然のこと、メイクの世界に元のコンテンツをいかに引き込んでいくかを意識している。

WWD:「ケイト」がものづくりで大切にしていることは?

岩田: 売れている商品の真似をせず、自分たちの感性を大切にすること。また、ニーズはシーズンではなくターゲットで捉える。「ケイト」のターゲットである若年層や、美容好きで感度の高い人が次に欲しいものは何だろうとメンバー全員が常に考えている。そのニーズを一番いいタイミングでキャッチすることが結果につながるはずだ。

WWD:ここ2〜3年の施策は成功と言える?

岩田: 成功だと思っている。今までもセルフメイクブランド部門では売り上げシェア1位だったが、去年は全メイク市場でナンバーワンのブランドになった。一つの通過点だが、方向性が定まって取り組むべき方向が見えてきたのは成長といえるだろう。今後はいかに継続しながら進化していくかが大事だと考えている。

The post 「ケイト」に聞いた絶好調の理由 “リップモンスター”やSNS世代に刺さる商品誕生の裏側 appeared first on WWDJAPAN.

「ケイト」に聞いた絶好調の理由 “リップモンスター”やSNS世代に刺さる商品誕生の裏側

 カネボウ化粧品のメイクブランド「ケイト(KATE)」は、1997年に誕生した当初から“no more rules”を掲げ、ルールに縛られないメイクを提唱すると同時にクールでシャープなブランドイメージを確立してきた。ここ数年は、ユーザーの変身欲に着目したユニークなアプローチのものも多い。例えば、たれ目や涙袋を強調できる“マンガジェニックライナー”や、フェイクのふたえを描くことができる“トリプルグラデエキスパート”、白目の幅を自然に大きく見せるアイライナー“リアルアイズプロデューサー”などだ。

 また、コロナ禍で大ヒットを記録した“リップモンスター”は累計300万本を出荷し、2021年度は46部門のベスコスを受賞。“欲望の塊”や“ラスボス”といったユニークなカラー名も話題になった。今年3月にはイラストレーターの米山舞とのコラボビジュアルと共に“欲コレクション(YOKU COLLECTION)”をリリース。同時に、歌手のEveによるオリジナル楽曲「YOKU」のミュージックビデオを公開すると、2カ月足らずで650万回以上再生(4月28日現在)されている。

 このような商品は、どのように開発しているのだろうか。「ケイト」の変化について岩田有弘ブランドマネジャーとPRの若井麻衣に話を聞いた。

WWD:「ケイト」はなぜ変化したのか?

岩田有弘(以下、岩田):2019年ごろから「ケイト」を進化させようと頑張ってきた。これまでも安定した売り上げのあるブランドだったが、イメージが固定化した上に売り上げの成長も鈍くなり、飽和状態になっていた。さらに、業界内でもデジタルシフトするブランドが多くなり、マスブランドとしてのお客さまとのつながり方を考えなくてはいけなかった。

WWD:方向性をどう改めた?

岩田: まずは、当初から唱えてきた“no more rules”のパーパスに、ブランドの意志をいっそう強めて発信していこうと決めた。さらに“no more rules”を通して戦うべきものが、時代と共に変化していることにも注目した。

 これまではハイヒールや制服など、誰かに押し付けられた美の基準が戦うべき“ルール"だった。しかし、ソーシャルが発達した現代は画像の加工技術が発達し、SNS上はきれいな人ばかりになった。その周囲からの“ソーシャルプレッシャー”が不安や自信喪失につながっているのではないかと考えた。そこでわれわれは、同調圧力や固定観念をといったある種の“ルール"に従うのではなく、お客さまと一緒に取り組むスタンスを大切にしようと話し合った。

SNS世代に刺さる商品はどうやって生まれている?

WWD:消費者のリアルなニーズをつかみ、商品化するまでが早いイメージだ。

若井麻衣(以下、岩井): チームのメンバーは美容への愛が本当に強いため、リサーチ力がものすごい。私から見ていても、お客さまのちょっとした発信から、ニーズを汲み取る早さと感性が素晴らしいと感じる。定期的に実施しているアイデア出し会では若いスタッフもどんどんアイデアを出している。みんな、とんでもなく積極的だ。

岩田: たしかに要所要所にジャッジが必要な場面はあるが、そこまではみんな自由な発想で楽しくやっている。そういう雰囲気のおかげで、今は発案とリリースのサイクルがすごくよく回っているなと感じる。ただ、スピード感を保ったままリリースするのはやっぱり大変で、現場は体力勝負だ。

WWD:大ヒットした“リップモンスター”はどうやって生まれた?

岩田: コロナ禍でリップ市場が縮小する中、われわれが注目したのは「マスクをするからってメイクをしないのはありえない!」と思っている、メイクが生きがいの若年層。落ちにくいのは大前提として、コロナ禍でも楽しめるリップを作ろうと企画したのがきっかけだ。

 ネーミングは、唇を起点に“欲”を考えたときに、色落ちを気にせず食べ物を食べたかったり、写真や動画に映る自分をかわいいくキープしたかったり、楽しくおしゃべりをしたかったりして、まるで怪物みたいだなと想像した。そこから“リップモンスター”という商品名が生まれた。

WWD:商品名だけでなく、ユニークな色の名前も特徴だ。

岩田: “思わず誰かに話したくなる商品”を目指して、“欲望の塊”や“ラスボス”など気になる色名を付けた。色の名前も候補が100案ほどあって、その中から厳選した。

若井: 色名だけでなく、カラーバリエーションも評価されたポイントだと思っている。SNSを見ていると、絶妙な色の違いを楽しみたい人が多そうだったので、普通はピンク、ブラウン、レッドと幅広くそろえるのが定石のところ、既存色はあえてブラウンベースのみのカラーに絞った。絶妙な色味の違いだからこそ似合う色が必ず見つかるし、集めてくれる人も多かったようだ。

WWD:3月にリリースした“欲コレクション”のような、イラストレーターや歌手との協業も好調を後押ししている。他ジャンルへのアプローチは一歩間違えるとイメージを左右することもあるはずだが、コラボの際に気をつけていることは?

岩田: 私たちも本気でやるという姿勢は大前提だ。「エヴァンゲリオン(EVANGELION)」と昨年コラボしたときもそうだったが、コンセプトをきちんと持ちながら、パロディにしないのは当然のこと、メイクの世界に元のコンテンツをいかに引き込んでいくかを意識している。

WWD:「ケイト」がものづくりで大切にしていることは?

岩田: 売れている商品の真似をせず、自分たちの感性を大切にすること。また、ニーズはシーズンではなくターゲットで捉える。「ケイト」のターゲットである若年層や、美容好きで感度の高い人が次に欲しいものは何だろうとメンバー全員が常に考えている。そのニーズを一番いいタイミングでキャッチすることが結果につながるはずだ。

WWD:ここ2〜3年の施策は成功と言える?

岩田: 成功だと思っている。今までもセルフメイクブランド部門では売り上げシェア1位だったが、去年は全メイク市場でナンバーワンのブランドになった。一つの通過点だが、方向性が定まって取り組むべき方向が見えてきたのは成長といえるだろう。今後はいかに継続しながら進化していくかが大事だと考えている。

The post 「ケイト」に聞いた絶好調の理由 “リップモンスター”やSNS世代に刺さる商品誕生の裏側 appeared first on WWDJAPAN.

ユーチューバー、モデルのそわんわんが「ガールズ バイ ピーチ・ジョン」に登場 “みんなそのままで素敵”SNS世代に投げかける自己肯定感のあり方

 「ピーチ・ジョン(PEACH JOHN)」の若年層向けブランド「ガールズ バイ ピーチ・ジョン(GiRLS by PEACH JOHN)」が運営する公式PRクラブ “ガーリスタ(GiRLISTA)”のメンバーにチャンネル登録者数63万人以上を抱える人気ユーチューバーのそわんわんが加入する。1年の活動期間中にコラムの執筆やブランドと自身のSNSを通してブランドメッセージや下着の魅力を発信するほか、下着の着用モデルも務める。

 そわんわんは親しみやすいキャラクターとポジティブなマインドで10〜20代を中心に支持を集める人気ユーチューバーで、20年からはファッション雑誌「ラファーファ(la farfa)」の専属モデルを務め、ライフスタイルやファッションなどを中心に発信している。今回の“ガーリスタ”の加入はブランドからのオファーではなく、そわんわん自らが「ピーチ・ジョン」にコンタクトをとり、出演を希望したことから始まったという。行動に至ったきっかけや今後の活動について聞いた。

WWD:自ら「ピーチ・ジョン」のインスタグラムにダイレクトメッセージを送ったと聞いた。

そわんわん:私は見た目が理由でできないことはないと信じて自分の悩みに関する発信も行っています。もちろん、発信するだけでなく行動で示さなければ説得力がありません。だから、可愛い服を着てファッションを楽しんでいる私の姿を見て「自分も楽しんでいいんだ!」と思ってもらえるように発信をしています。そういった思いから、年齢や体型を問わず魅力を発信し、「リアルサイズモデル™」の取り組みをしている「ピーチ・ジョン」と一緒に活動したい!やらせてほしい!と強く思いコンタクトを取りました。下着のモデルに挑戦することで、体型や外見に自信が持てない人でも1歩踏み出す勇気を持って行動を起こすことで、色んな可能性があることをもっとたくさんの人に伝えたいです。

WWD:外見をポジティブに捉えた発信が増えたきっかけは?

そわんわん:最近は自己肯定感という言葉をよく聞きますが、私は3〜4年前にユーチューブのコメントで「自己肯定感高いね」と言われて初めてその言葉を知りました。そして、世の中には自分の外見について悩んでいる人、他人の否定的な意見ばかり気にして生きている人が多いと感じました。私も昔は動画で自虐ネタをよくしていたのですが、「好きな洋服を着て楽しもう」と発信しているのに、「自分ブスやねん」と自虐していたら説得力ないですよね。その気づきがあって、自虐ネタは一切やめました。そして自己肯定感に悩む人が自分を好きになれるように、“みんなそのままで素敵”ということを積極的に発信しています。

WWD:発信する際に意識していることや大切にしていることは?

そわんわん: “誰かを否定していないか”をすごく考えます。自分の体型をポジティブに捉えて肯定する内容を発信していますが、やっぱり長い間“細い女性が美しい”という価値観があったし、人それぞれに価値観があって、どれも間違いじゃない。だから自分が発信するときは誰かを否定する言い方になっていないか?自分の価値観を押し付けていないか?と見直すようにしています。

WWD:ネットの世界は感情をむき出しでぶつけられることもある。発信することに怖さやためらいはなかった?

そわんわん:「どうしてこんな事が言えるんだろう」と怖く感じることもありますが、ネットとリアルの世界は分けて考えています。スマートフォンのこんな小さな世界の中で言われていることを気にするよりも、リアルを大切にしたいからです。悪口や批判など、どんな意見でも「そういう考え方もあるよね」といったん受け止めますが、否定的な意見に振り回されることはありません。誰かの否定的な意見で自分を変えるのって楽しくないし、自分のために生きていないと思うからです。

 人にとやかく言う人って自分に対しても厳しいんじゃないかな。だから人にも厳しく言ってしまう。もっと自分に甘くてもいいんです。でも、世の中には「美はこういうもの」という価値観の押し付けがまだ沢山あるのかな?と思ったり……。

WWD:今後“ガーリスタ”として発信したいことは?

そわんわん:サイズや体型で可愛い下着を諦めていた人って多いと思うんです。でも、手持ちのブラジャーのホックにセットしてアンダーを調整できる“ブラバックエクステンダーズ”というアイテムがあって、「こんな便利なものあるんだ!」と感動しました。私も最近まで知らなかったのですが、同じように知らなかった人に便利なアイテムがあることや、可愛い下着を楽しむ方法を発信したい。こういったアイテムを使うことは恥ずかしいと思う人もいるかもしれません。でも、可能性や選択肢が広がるとポジティブに捉えてほしい。製品だけじゃなくて身につける人のマインドも変えていきたいです。

WWD:やってみたいことや目標は?

そわんわん:大きな看板に出ることが目標です。多くの人の目に触れる場所で、私がファッションや自分自身を楽しんでいる姿を見せることで、今のあなたも十分素敵で、ファッションは楽しいものだと伝えたい。痩せていないからとか、なりたい自分になれていないからと今の自分を否定しないでほしい。発信していく中で傷つくような意見も出てくるかもしれません。でも、そこで自分を諦めずに“今の自分が楽しい”ことを伝え続けたいです。

The post ユーチューバー、モデルのそわんわんが「ガールズ バイ ピーチ・ジョン」に登場 “みんなそのままで素敵”SNS世代に投げかける自己肯定感のあり方 appeared first on WWDJAPAN.

渋谷パルコに新名所爆誕!? 超ハイクオリティーな等身大フィギュアを展示&販売

 渋谷パルコは4月27日、新たな自主編集スペースとしてアートフィギュアギャラリー「ワンスラッシュ(1/ONE SLASH)」を5階にオープンした。フィギュア界の重鎮であるデザインココとタッグを組み、約9坪のスペースで等身大フィギュアを展示・販売する。第一弾として7月18日まで、コーエーテクモゲームの「ソフィーのアトリエ2」の主人公ソフィーの等身大フィギュアを展示・販売する。高さと幅が2mの等身大フィギュアで台座付きの特別バージョン(1個限定)が605万円、通常バージョンが429万円、1/7スケールの高さ26cmのフィギュアが2万3980円で、フィギュアは全商品がパルコのオンラインストア「カエルパルコ」経由での完全受注生産&販売になる。

 デザインココと同社を率いる千賀淳哉・代表取締役は、フィギュア界ではよく知られた存在だ。同社はフィギュアを、デザインから3Dデータ作成、製造、彩色までの一貫生産しており、これまで六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催された「尾田栄一郎監修 ONE PIECE展」や「エヴァンゲリオン」「初音ミク」の等身大フィギュアなど、数多くのプロジェクトも手がけてきた。千賀代表に聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):なぜ渋谷パルコに?

千賀淳哉デザインココ社長(以下、千賀):これまでも数多くの企業から出店要請や共同プロジェクトを持ちかけられてきたが、ほとんど断ってきた。ただ、フィギュアを売ることだけが目的のプロジェクトなら、パルコでも断っていただろう。最大の目的は、フィギュア、それ自体の付加価値をもっと高めたかったからだ。漫画やアニメ、ゲームは大ヒットした作品ばかりに目が行きがちだが、実際にはヒットするのは本当に少ない。それでも作者から出版社、ゲーム会社などと一体になって全員で夢を追い求めてきて、今がある。加えて、フィギュアにする場合は、それぞれのキャラクターや原作の世界観を生かしながら、2次元のものを3次元にするわけだから当然難易度も高い。評価を受けているのは、常に全力で取り組んできた結果だが、このフィギュア自体の価値を高めるためには、単独では難しい。フィギュアの歴史に新たな価値を付け加えたいと考えたときに、パルコからオファーがあった。

WWD:特別バージョンは605万円、通常バージョンでも429万円とかなり高いですね。

千賀:フィギュアに馴染みのない人には高いと思うかもしれないが、それは違う。これまでもアート作品なども数多く手がけてきたが、この「ソフィー」に関しては、手間や細部のこだわり、クオリティーの高さを考えれば10倍の価格で販売してもいいくらいだ。ただ、価格や売り上げよりもこれまでECのみで売ることが多かったフィギュアを、リアルな場所で、国内外のいろいろな人が行き交う「渋谷パルコ」という場所で見せられることに意義を感じている。

WWD:今後は?

千賀:当社の工場は宮城県登米市にあって、最先端の機械も使うし、丹念な手作業も行っているが、そうした社員のほとんどは、最近は美大出身者も増えてきたが、地元雇用の女性だ。我々が漫画やアニメが原作のキャラクターをフィギュア化するときは、誇張でもなんでもなく、原画1枚から最終的にフィギュアにまで仕上げることだって少なくない。実際に当の漫画の作家本人からフィギュアを見て「ようやく本当に漫画の中から出てきてもらえた!」と言われることだって少なくない。それくらい心血を注いでフィギュア作りに取り組んできた。フィギュアはまだ現時点ではポップカルチャーの一種と取られられているが、最終的なゴールは現代アートを目指している。そのためにはこれからはパルコと組み、ファッションやアート、カルチャーとった分野の企業やクリエイター、アーティストとのコラボレーションを積極的に進めたい。

The post 渋谷パルコに新名所爆誕!? 超ハイクオリティーな等身大フィギュアを展示&販売 appeared first on WWDJAPAN.

渋谷パルコに新名所爆誕!? 超ハイクオリティーな等身大フィギュアを展示&販売

 渋谷パルコは4月27日、新たな自主編集スペースとしてアートフィギュアギャラリー「ワンスラッシュ(1/ONE SLASH)」を5階にオープンした。フィギュア界の重鎮であるデザインココとタッグを組み、約9坪のスペースで等身大フィギュアを展示・販売する。第一弾として7月18日まで、コーエーテクモゲームの「ソフィーのアトリエ2」の主人公ソフィーの等身大フィギュアを展示・販売する。高さと幅が2mの等身大フィギュアで台座付きの特別バージョン(1個限定)が605万円、通常バージョンが429万円、1/7スケールの高さ26cmのフィギュアが2万3980円で、フィギュアは全商品がパルコのオンラインストア「カエルパルコ」経由での完全受注生産&販売になる。

 デザインココと同社を率いる千賀淳哉・代表取締役は、フィギュア界ではよく知られた存在だ。同社はフィギュアを、デザインから3Dデータ作成、製造、彩色までの一貫生産しており、これまで六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催された「尾田栄一郎監修 ONE PIECE展」や「エヴァンゲリオン」「初音ミク」の等身大フィギュアなど、数多くのプロジェクトも手がけてきた。千賀代表に聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):なぜ渋谷パルコに?

千賀淳哉デザインココ社長(以下、千賀):これまでも数多くの企業から出店要請や共同プロジェクトを持ちかけられてきたが、ほとんど断ってきた。ただ、フィギュアを売ることだけが目的のプロジェクトなら、パルコでも断っていただろう。最大の目的は、フィギュア、それ自体の付加価値をもっと高めたかったからだ。漫画やアニメ、ゲームは大ヒットした作品ばかりに目が行きがちだが、実際にはヒットするのは本当に少ない。それでも作者から出版社、ゲーム会社などと一体になって全員で夢を追い求めてきて、今がある。加えて、フィギュアにする場合は、それぞれのキャラクターや原作の世界観を生かしながら、2次元のものを3次元にするわけだから当然難易度も高い。評価を受けているのは、常に全力で取り組んできた結果だが、このフィギュア自体の価値を高めるためには、単独では難しい。フィギュアの歴史に新たな価値を付け加えたいと考えたときに、パルコからオファーがあった。

WWD:特別バージョンは605万円、通常バージョンでも429万円とかなり高いですね。

千賀:フィギュアに馴染みのない人には高いと思うかもしれないが、それは違う。これまでもアート作品なども数多く手がけてきたが、この「ソフィー」に関しては、手間や細部のこだわり、クオリティーの高さを考えれば10倍の価格で販売してもいいくらいだ。ただ、価格や売り上げよりもこれまでECのみで売ることが多かったフィギュアを、リアルな場所で、国内外のいろいろな人が行き交う「渋谷パルコ」という場所で見せられることに意義を感じている。

WWD:今後は?

千賀:当社の工場は宮城県登米市にあって、最先端の機械も使うし、丹念な手作業も行っているが、そうした社員のほとんどは、最近は美大出身者も増えてきたが、地元雇用の女性だ。我々が漫画やアニメが原作のキャラクターをフィギュア化するときは、誇張でもなんでもなく、原画1枚から最終的にフィギュアにまで仕上げることだって少なくない。実際に当の漫画の作家本人からフィギュアを見て「ようやく本当に漫画の中から出てきてもらえた!」と言われることだって少なくない。それくらい心血を注いでフィギュア作りに取り組んできた。フィギュアはまだ現時点ではポップカルチャーの一種と取られられているが、最終的なゴールは現代アートを目指している。そのためにはこれからはパルコと組み、ファッションやアート、カルチャーとった分野の企業やクリエイター、アーティストとのコラボレーションを積極的に進めたい。

The post 渋谷パルコに新名所爆誕!? 超ハイクオリティーな等身大フィギュアを展示&販売 appeared first on WWDJAPAN.

渋谷パルコに新名所爆誕!? 超ハイクオリティーな等身大フィギュアを展示&販売

 渋谷パルコは4月27日、新たな自主編集スペースとしてアートフィギュアギャラリー「ワンスラッシュ(1/ONE SLASH)」を5階にオープンした。フィギュア界の重鎮であるデザインココとタッグを組み、約9坪のスペースで等身大フィギュアを展示・販売する。第一弾として7月18日まで、コーエーテクモゲームの「ソフィーのアトリエ2」の主人公ソフィーの等身大フィギュアを展示・販売する。高さと幅が2mの等身大フィギュアで台座付きの特別バージョン(1個限定)が605万円、通常バージョンが429万円、1/7スケールの高さ26cmのフィギュアが2万3980円で、フィギュアは全商品がパルコのオンラインストア「カエルパルコ」経由での完全受注生産&販売になる。

 デザインココと同社を率いる千賀淳哉・代表取締役は、フィギュア界ではよく知られた存在だ。同社はフィギュアを、デザインから3Dデータ作成、製造、彩色までの一貫生産しており、これまで六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催された「尾田栄一郎監修 ONE PIECE展」や「エヴァンゲリオン」「初音ミク」の等身大フィギュアなど、数多くのプロジェクトも手がけてきた。千賀代表に聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):なぜ渋谷パルコに?

千賀淳哉デザインココ社長(以下、千賀):これまでも数多くの企業から出店要請や共同プロジェクトを持ちかけられてきたが、ほとんど断ってきた。ただ、フィギュアを売ることだけが目的のプロジェクトなら、パルコでも断っていただろう。最大の目的は、フィギュア、それ自体の付加価値をもっと高めたかったからだ。漫画やアニメ、ゲームは大ヒットした作品ばかりに目が行きがちだが、実際にはヒットするのは本当に少ない。それでも作者から出版社、ゲーム会社などと一体になって全員で夢を追い求めてきて、今がある。加えて、フィギュアにする場合は、それぞれのキャラクターや原作の世界観を生かしながら、2次元のものを3次元にするわけだから当然難易度も高い。評価を受けているのは、常に全力で取り組んできた結果だが、このフィギュア自体の価値を高めるためには、単独では難しい。フィギュアの歴史に新たな価値を付け加えたいと考えたときに、パルコからオファーがあった。

WWD:特別バージョンは605万円、通常バージョンでも429万円とかなり高いですね。

千賀:フィギュアに馴染みのない人には高いと思うかもしれないが、それは違う。これまでもアート作品なども数多く手がけてきたが、この「ソフィー」に関しては、手間や細部のこだわり、クオリティーの高さを考えれば10倍の価格で販売してもいいくらいだ。ただ、価格や売り上げよりもこれまでECのみで売ることが多かったフィギュアを、リアルな場所で、国内外のいろいろな人が行き交う「渋谷パルコ」という場所で見せられることに意義を感じている。

WWD:今後は?

千賀:当社の工場は宮城県登米市にあって、最先端の機械も使うし、丹念な手作業も行っているが、そうした社員のほとんどは、最近は美大出身者も増えてきたが、地元雇用の女性だ。我々が漫画やアニメが原作のキャラクターをフィギュア化するときは、誇張でもなんでもなく、原画1枚から最終的にフィギュアにまで仕上げることだって少なくない。実際に当の漫画の作家本人からフィギュアを見て「ようやく本当に漫画の中から出てきてもらえた!」と言われることだって少なくない。それくらい心血を注いでフィギュア作りに取り組んできた。フィギュアはまだ現時点ではポップカルチャーの一種と取られられているが、最終的なゴールは現代アートを目指している。そのためにはこれからはパルコと組み、ファッションやアート、カルチャーとった分野の企業やクリエイター、アーティストとのコラボレーションを積極的に進めたい。

The post 渋谷パルコに新名所爆誕!? 超ハイクオリティーな等身大フィギュアを展示&販売 appeared first on WWDJAPAN.

AMIAYAと考えるサステナビリティvol.2 「CFCL」代表兼クリエイティブディレクター高橋「いろんな答えがあるからこそ、軸が大事」

 双子モデルのAMIAYAは、原宿のストリートで誕生し、今や東京のファッションシーンと世界をつなぐ架け橋のような存在だ。2011年には、マークスタイラーから自身がクリエイティブ・ディレクターを務めるアパレルブランド「ジュエティ(JOUETIE)」を立ち上げ、10〜20代の層を中心に支持を集める。「ファッションを謳歌し、自由に表現する楽しさを届ける」ことをモットーに、ポジティブなパワーを発信してきた2人は、環境問題や人権問題など業界の負の側面への関心が高まる今、「私たちが発信すべき責任あるメッセージとは何か」を自問する。本連載では、AMIAYAがさまざまな角度からサステナビリティを学ぶ姿を追う。連載2回目は、無縫製のニットウエアを中心に、「現代生活のための衣服」を提案する「CFCL」の代表兼クリエイティブディレクター高橋悠介に話を聞いた。

AYA:サステナビリティを学ぶため、高橋さんにぜひお話を伺いたいと思っていました。そもそもなぜ起業しようと思ったんですか?

高橋悠介「CFCL」代表兼クリエイティブ・ディレクター(以下、高橋):娘が生まれて自分の生きがいについてもう一度考えたこともきっかけでしたが、産業の大量廃棄の問題や生産地の過酷な労働環境にまつわるニュースを見ていて、経営者として生産地や会社の福利厚生など服以外のことを全てデザインしたいと思うようになったことが大きかったです。加えて、グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)さんみたいに、一般市民だった女の子でも芯が通っていればあれだけのインパクトを与えられる時代で、世界に届くスピードもどんどん加速している。であれば、自分も早く立ち上げた方がいいと思ったんです。

AMI:高橋さんが洋服を作る上で大切にしていることは?

高橋:ブランド名の「CFCL」は、Clothing for Contemporary Lifeの頭文字で、「現代生活のための衣服」という意味です。僕が目指したのは従来のファッションブランドの反対側の位置。ちょっと乱暴な言い方かもしれないけど、これだけ服が余っている時代、デザイナーの美意識を打ち出して、それに共感する人は買ってくださいというやり方がしっくりこなかった。例えば、デザイナーの感覚や経験に基づいて作られたコレクションではなくて、現代の生活を豊かにするための道具として服を捉え、どのようによい作用を生み出せるかを理念にしています。次に「現代生活のための衣服」の定義を考え、たどり着いたのが「ソフィスティケーション」「コンフォート&イージーケア」「コンシャスネス」の3要素です。都会に暮らす人がパジャマから「CFCL」に着替えて、家事を済ませて、オフィスに行く。スニーカーからヒールに履き替えれば、パーティーやディナーにも行けるぐらいの品格を兼ね備えています。そして、ほとんどのアイテムが家で洗え、速乾性のある「コンフォート&イージーケア」。最後の「コンシャスネス」がサステナビリティにもつながる部分で、人権や環境に配慮された素材の選択、ローカルで透明性のあるサプライチェーンを確保し、企業のスタンスとして示していく。この3つがそろって初めて「現代生活のための衣服」と定義します。

AYA:すごい。そこまでコンセプトを言語化しているんですね。「CFCL」はニットのドレスがアイコンです。ニット素材にこだわっている理由は?

高橋:僕が文化ファッション大学院大学に通っていたころに3Dコンピューター・ニッティングの技法に出会いました。実は大学院に入る前は、テキスタイルデザインと現代アートの批評論を勉強していて、服の縫製は得意分野ではありませんでした。

AMIAYA:そうなんですか。意外です。

高橋:好きなことはやり続けるけど、課題とか面倒くさいと思っちゃうタイプで(笑)。大学院では周りの学生の縫製のレベルが高く、僕は彼らと学んできたバックグラウンドが異なるので、そこで勝負していては勝てませんでした。僕はどうやったら合理的に時間を節約して良いものを作れるかを考えるのが好きなんです。プログラミングニットは、プログラミングを組んでボタンを押したら、3Dプリンターみたいに服が出力されます。学生時代、課題ではチェック項目だったパターンと縫製がスキップできるし、ほかの学生とも全然違った面白い物ができると可能性を感じていました。元々、横編みのニットはヨーロッパで庶民が日常的に着ていた歴史があるので、オートクチュールの時代からニットやジャージをドレスとしてメインで使うブランドはあまりなかったんです。その当時からニットをメインで使用しているブランドは、フォークロアやリラックスの印象が強く、いわゆるモードの雰囲気でニットを扱うブランドはマーケットにおいて希少性があると考えました。

AYA:素材の幅を広げることは考えていない?

高橋:「現代生活のため」という軸は、応用が利くと思います。だから、むしろ服だけでなくてもいい。フードやワインを始めているブランドもいますよね。そういう発展の仕方もできるのではないかとチームで話しています。

AMI:再生ポリエステルでもたくさんの種類があります。環境に配慮したものづくりを目指すときに、まず何を選んだらいいのか分からなくて。

高橋:難しい問いですが、自分たちのフォーカスポイントをはっきりさせることがとても大事だと思います。僕が起業したときは、動物愛護の観点からファーの使用が問題視されていました。でも、石油由来の化学繊維から作られるイミテーションファーには、マイクロプラスチックの問題がある。こっちで良いことが、あっちではあんまり良くなかったりする矛盾はたくさんあります。結局何を選択するかは指針が必要で、突っ込まれた時に一貫性がないと信頼も得られません。「CFCL」では、LCA(ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment)の略。ある製品やサービスの資源採取から廃棄・リサイクルに至るまでの環境負荷を評価する手法)の測定と削減を進めていますが、そこにも矛盾が存在します。例えば、カーボンフットプリントを減らすために製品の重量を減らすと、軽量化しすぎて壊れやすい商品になりえます。従来の半分のCO2排出量で作ったとしても、商品寿命が半分では本末転倒です。素材に関してもさまざまな代替品が出ていますが、自然由来のバイオマスプラスチック原料の需要が増えると農地の奪い合いが起こり、食料品の価格高騰や森林破壊につながりかねません。「CFCL」は、クローズドループ(廃棄されていた製品や原材料などを新たな資源と捉えた循環のこと)を構築するべきだと考えて、基本的には全品番に再生素材を使用し、その比率を上げる努力をしています。 カーボンフットプリントが高いリサイクル素材もあり、ここにもリサイクル素材使用率向上と温室効果ガス削減の両立に矛盾が存在しますが、それでもLCA測定をすれば、どこにどのくらいの温室効果ガスが使われているか分かり、今後の技術革新で削減目標を立てられるので、クローズドループを押し進めたいと考えています。

AYA:お客さまとコミュニケーションを取るときに意識していることは?

高橋:われわれはメーカーであると同時に、メディアでもあると考えています。カスタマーのウェルネスや満足度、リテラシーを上げる役割を担っている。消費を促す物欲をあおるマーケティングもできるけど、影響力を使って生活者をいい方向に先導もできる。今、環境に対して意識が高い人が増えている中で、何を着ていいか分からないと迷う人も多い。確かな情報を定期的に発信して、「CFCL」を着れば間違いないという安心感をしっかりと伝えたい。そういう人たちの受け皿になることは、社会的な企業の存在意義につながります。

AYA:私たちもメディアとしての影響力をどう使うかを日々考えています。

高橋:繰り返しになりますが、サステナビリティは、さまざまな答えがあるからこそ自分たちの姿勢や軸を明確にする必要があります。

AYA:最後に、高橋さんがこれから目指す「CFCL」の形を教えてください。

高橋:ファッションが汚染産業の第2位と言われ、その現実にすごくショックを受けたという話は周りでもよく聞きますが、僕はファッションにとても可能性を感じています。身近だからこそ、良い方向にインパクトを与える力も同時に強いと思うから。ブランドとしては、売り上げ規模もまだまだ成長段階ですが、メディアのインタビューをはじめ、行政の人たちと協議する機会も頂いています。それは、ファッションがそれだけ注目されているからで、ファッションの中にはこれからの日本の経済全体の考え方を変えるヒントがたくさん眠っている気がします。世界にチャレンジすると同時に、日本の地域社会全体に良い影響を与えることも必要です。実現できるかどうか分からないことも現段階では多く、難しい挑戦ではありますが、それくらいの気持ちでやった方が面白いと思うんです。

AYA:なるほど。ファッションの可能性を信じ切る姿勢がすてきですね。私たちもファッションの持つパワーを信じているからこそ、発信できることがあるはず。デザインするのは服だけではないという視点は学びになりました。

AMI:サステナビリティの発信に関しては、何を指針にするかが鍵ですね。軸を決めるためにももっと広く学ばないといけないなと。でも、ファッションに対する信念は私たちも同じです。大切にしたいです。

The post AMIAYAと考えるサステナビリティvol.2 「CFCL」代表兼クリエイティブディレクター高橋「いろんな答えがあるからこそ、軸が大事」 appeared first on WWDJAPAN.

“売らない小売り”ブームはもう終わった? 「ベータ」北川代表に聞く日本市場の展望

 “売らない小売り”の先駆け的な存在、「ベータ(b8ta)」を日本で運営するベータ・ジャパン(北川卓司代表)は4月27日、埼玉・越谷のイオンレイクタウンに4店目となる常設店を出店する。同社は先日、第3者割当増資による累計6億円前後の資金調達も発表。一方で気になるのが、「ベータ」発祥の地である米国の事情だ。米国はコロナ禍による客数減の打撃が大きく、22年2月をもって「ベータ」は全店閉店している。日本では百貨店を中心に“売らない小売り”への新規参入が目立つが、米国の潮流を受けて「“売らない小売り”のブームは既に終わった」という声もある。ベータ・ジャパンは今後どのような展望を描くのか。北川代表に聞いた。

※「ベータ」は2015年に米サンフランシスコ郊外のパロアルトに1号店をオープン。日本上陸は20年8月で、新宿、有楽町に同時出店した。商品を販売するのではなく、出展スペースを月額使用料で企業やブランドに提供するビジネスモデル(越谷店は49センチ×98センチ四方のスペースが30万円)を採っており、テスター(店頭スタッフ)の雇用や教育は出展企業ではなく「ベータ」が担う。「ベータ」は店内カメラで収集した客の行動データやテスターが集めた声を出展企業にフィードバックする。

WWD:まずは新店の話から。4号店の出店先に越谷のイオンレイクタウンを選んだ理由は。

北川卓司ベータ・ジャパン代表(以下、北川):大阪や福岡などへの出店も検討したが、東京の本社が店舗を運営することを考え、都心から1時間以内で行ける横浜、川崎、越谷などが最終的な候補だった。イオンレイクタウンは圧倒的なトラフィック(集客、店舗前交通量)があり、客層が30〜40代のファミリー中心で「ベータ」の既存3店とは異なる。「スターバックスコーヒー(STARBUCKS COFFEE)」と同じ区画内にオープンできることも大きな決め手となった。トラフィックは全店の中で越谷店が一番多くなるかもしれないと期待している。

WWD:3号店の渋谷店では“食”にフォーカスし、試飲試食を打ち出した。越谷店の注力ポイントは。

北川:渋谷店の試飲試食は非常に好評で、モノではなく体験を打ち出すことに手応えを得ている。食との関連で渋谷店に調理家電などが出展すると、「実際に試してみたい」という声がお客さまからは非常に多かった。それを受けて、越谷店ではもう一歩踏み込んでライブキッチンを設けている。コロナの状況を見ながらにはなるが、順次お客さまがライブキッチンで家電を実際に使えるようにしていく。さらに、家電のレンタルサービスを手掛けるレンティオと3月に業務提携しており、越谷店ではレンティオを通して気に入った調理家電はその場でレンタルを申し込めるようにした。“売らない小売り”には百貨店などさまざまな企業が参入し、既にコモディティー化している。競合他社との差別化として、ライブキッチンの設置やレンタルサービスとの提携が次の一手になると考えた。また、越谷店では同区画の「スターバックスコーヒー」やイオンモール、りそなグループとも共同で、さまざまなイベントを実施していく予定だ。

WWD:20年8月に新宿、有楽町に出店し、渋谷店を出店したのは21年11月。そこから越谷出店までは約半年と短かった。今後もこのスピードで出店を続けるのか。

北川:以前から発表している通り、常設店の数は25年時点で8〜10店をイメージしている。4号店の出店スピードに関しては、社内からも「少し早過ぎるのではないか」という声はあった。確かに現状の社内の人材リソース(ベータ・ジャパンとして社員数40人強)を考えると、半年に常設店を1店出店するというのは少しスピードが早い。まずは1年に1店といったペースで進め、調達した資金も生かしてチームメンバーが増えていけば、半年に1店のペースで出店していきたい。22年中の新規出店は越谷のみだが、ポップアップストアは2〜3拠点で行う予定だ。越谷で運営が滞りなく進むことを確認できたら、今後は東京からさらに離れた地域への常設店出店も検討したい。

WWD:ベータ・ジャパンとして、アジア諸国への出店も目指すと公言している。

北川:23年中に、タイ、台湾、韓国でまずはポップアップストアを予定している。既に現地のデベロッパーとの交渉も始めている。出展は現地ブランドと日本ブランドをミックスし、現地ブランドが日本市場に進出する際の足がかりにもなれればと思っている。

「本国の閉店による日本事業への影響はない」

WWD:最大23店を運営していた米本国は、22年2月をもって全店閉店した。どういった経緯があったのか。

北川:日本の1号店、2号店のオープン翌月である20年9月には、(コロナ禍により来店客数の回復が見込めない本国側の要請を受けて)本国との資本関係を解消し、日本国内での商標・ソフトウエアの使用についてライセンス料を支払う形に切り替えていた。21年12月には商標権とソフトウエアのライセンスを本国から独占的に取得して独立した。つまり、日本のお客さまが「ベータ」として認識している店やサービスは、ベータ・ジャパンが作り上げてきたものであり、本国の閉店による日本事業への影響はない。車社会である米国は、コロナ禍で来店客数が平均で50〜70%も減っていた。また、本国では来店客数に応じて出展料を決める歩合制モデルも導入しており、そこも痛手となった。日本は出展料を固定しており、その点も米国とは異なる。

WWD:米国での全店閉店が報じられた際、「“売らない小売り”のブームは既に終わった」という声も出た。そういった声に対してはどう思うか。

北川:本国の状況からそういう意見が出るのも当然かとは思う。しかし、車社会の米国、電車社会の日本(の主要都市)というように、米国と日本では与件が異なる。米国で頓挫したからといって日本も同様になるとは言えない。日本は家電量販店を例にとっても、非常にプレーヤー(企業数)が多く、店舗数も多い。実店舗の利便性が消費者に受け入れられている。コロナ禍を背景にECが盛り上がったからといって、実店舗が突然、全てECに置き換わるということはない。その点もECの比重が劇的に高まっている米国とは異なるだろう。日本の商業施設の全テナントが、われわれのような“売らない小売り”になるといった未来は考えられないが、施設内の1、2個のテナントがそうなる可能性は十分にある。商業施設にはポップアップスペースが何箇所かあるが、それを“売らない小売り”に切り替えていくという流れは日本国内で進むと思っている。

WWD:6月末までで完了する計6億円の資金調達を生かして、“売らない小売り”のビジネスモデル自体を他社に売っていく事業案も発表している。

北川:国内で「ベータ」を今後何十店舗も出店できるかというと、それは難しい。商業施設などが運営するポップアップスペースの裏側の運営をわれわれが担うなどし、他社が「ベータ」のようなRaaS(Retail as a Service、サービスとしての小売り)を容易にスタートできる仕組みを整えて事業化していくことで、ベータ・ジャパンのビジネスが加速する。一見、商業施設が運営しているポップアップスペースのようで、実際は「ベータ」の什器が入り、われわれの店頭データ収集・活用のシステムが動いているといったイメージだ。4月に完了したシリーズBファーストクローズの第3者割当増資では、東芝テックがリードインベスターとなった。POSシステム大手で多数の企業顧客を抱え、システムの保守にも長けた同社と組むことで、こうした新事業がスムーズに進められると考えている。

WWD:百貨店なども“売らない小売り”に続々参入している。百貨店は接客力が強みであり、自店舗内に出店するため家賃もかからない。そうした競合に対し、改めて「ベータ」の強みは何か。

北川:競合の中で多店舗展開できているのは、現状「ベータ」のみだ。競合との差別化として、繰り返しになるが越谷の新店ではライブキッチンを導入したり、家電レンタルサービスと組んだりしている。また、われわれも接客力はオープン時から強みとしている。イベントなどに「ベータ」のテスター(店頭スタッフ)を派遣してほしいという声も商業施設から多数寄せられている。現状ではスタッフ数が限られるので全て断っているが、そのような人材派遣業ももしかしたら将来的に可能性があるのかもしれない。そういったアイデアも含め、日本ではまだまだ事業の可能性があると思っている。

The post “売らない小売り”ブームはもう終わった? 「ベータ」北川代表に聞く日本市場の展望 appeared first on WWDJAPAN.

「レディメイド」が“億越え”トゥールビヨン時計発売 細川雄太に聞く「パーネル」コラボの裏側

 細川雄太の「レディメイド(READYMADE)」は5月に、スイスの高級時計「パーネル(PURNELL)」とコラボした複雑機構トゥールビヨン搭載の機械式腕時計“レディメイド × パーネル エスケープⅡ(READYMADE × PURNELL ESCAPE Ⅱ)”を発売する。

 “エスケープⅡ”は、世界最速3軸トゥールビヨンである“スフェリオン”を2つ搭載した「パーネル」の代表モデル。コラボモデルは、カーボンラミナ(税込み6825万円)、ホワイトパーネルマクロファイバー(同6900万円)、サファイア・クリスタル(同1億8450万円)の3種類のケースから選べ、最高級モデルは1億円を優に超える。ストラップの素材には、「レディメイド」の代名詞でもあるビンテージのミリタリーテントを採用。左側のバレル、リューズ、ケースバッグリング、バックル、専用ボックスに“READYMADE”のロゴを入れ、右側のバレルには、エジソンが残した「Time is really the only capital that any human being has and the thing that he can least afford to waste or lose.(時間は人間に与えられた唯一の資本であり、無駄にしたり失ったりしないよう努めるべき)」という哲学を刻印した。ファッションブランドとしては異例の超高級時計コラボについて、細川デザイナーに聞いた。

――「レディメイド」として、初の時計のデザインに何を心掛けた?

細川雄太デザイナー(以下、細川):「レディメイド」にはミリタリーアイテムを解体することで、反戦のメッセージを込めている。そのコンセプトを踏まえた肯定的なデザインにしたくて、希望を虹色で表現した。

――今回もベルトにビンテージのミリタリーテントを使っている。時計自体には、リサイクル素材を取り入れようと試みた?

細川:時計自体は「パーネル」が素晴らしい技術を持っているのでプロに任せて、僕は外装のデザインだけ。どうすれば「パーネル」のブランドイメージと「レディメイド」のブランドイメージが中立でいられるかをすごく考えて、お互いの良いところをとった感じ。

――最もこだわった点は?

細川:色のバランスかな。ベルトがカーキなので、それに合わせて、“スフェリオン”をオレンジとグリーンにした。それと、ビンテージウオッチから持ってきたカラーパレットを使っている。経年変化で焼けたような色合いと、宝石の色のバランスを見ながら、「パーネル」らしいカラーリングをイメージした。

――時計と他のアイテムとで、デザインの思考に違いはあった?

細川:時計の中身を知り過ぎるとデザインできない気がしたので、あまり意識していない。知らないから挑戦できるデザインもある。

――細川さん自身は、時計に機能性や実用性を求める?

細川:正直、機能は全然必要ないと思っている。僕は、普段ビンテージウオッチをしているけど、これに対して「タッチパネルだったらいいのに」とか思ったことがない。ビンテージの不便なところはいっぱいあると思うけど、それがいい。どこが良いかの理由はないと思う。だから今回も機能ではないところで魅力的に感じる時計を作りたかった。

――あらためて、1億8450万円の時計をデザインしてどう思う?

細川:時計の世界の話を聞いたら、そういう世界もあるのかなと、だんだん実感が湧いていった。僕にとってはめちゃくちゃ高いけど、NFTとかを見ているとそれ以上の値段でも売れているものがたくさんあって、不思議な感じだった。一度だけ実物を腕につけたのだけど、全部が宙に浮いていて、本当に“宇宙”みたいですごかった。

――細川さんにとって時計とは?

細川:仕事中は重いので外してしまうけど、人と会うときには必ず着けるので、僕にとってはパンツをはくのと同じような感覚(笑)。

The post 「レディメイド」が“億越え”トゥールビヨン時計発売 細川雄太に聞く「パーネル」コラボの裏側 appeared first on WWDJAPAN.

29歳コスメD2C社長が語る「起業」「野望」「恋愛」「ファッション」 ディネット尾﨑美紀

 コスメのD2Cブランド「フィービー ビューティー アップ(PHOEBE BEAUTY UP)」を展開するスタートアップ企業のディネット(DINETTE)はこのほど、シリーズBとして総額8億円の資金調達を行った。尾﨑美紀ディネット代表取締役は、芸能活動を行っていた学生時代、あるスタートアップ企業でのインターンシップをきっかけに起業。2020年にはフォーブスの「30 UNDER 30 ASIA」に選出。昨年には経営体制を一新し、「女性最年少社長でのIPO(株式公開)」という目標を掲げる。目標に向けて最速で駆け抜ける起業家、尾﨑代表に聞いた。

WWDJAPAN(以下WWD):今回の資金調達の背景と使い道は?

尾﨑美紀(以下、尾﨑):大和企業投資がリードになり、既存株主のセレスとMTGベンチャーズから追加出資を受けました。実は昨年、女性最年少社長でのIPOを掲げ、組織と経営のあり方を大きく変えていました。今回調達した資金は、アジア地域でのマーケティングとフェムテック分野での新ブランド開発に投じて、IPOに向けて事業をさらに加速します。

WWD:起業のきっかけは?

尾﨑:大学で芸能の仕事をするようになって、ヘアメイクを始め、いろいろな美容をするようになって、可愛くなること、きれいになることが楽しくて。なので就職活動でも、キラキラワクワクできるような仕事という意味で広告代理店などのマスコミ系を中心に受けていました。それなりにうまくいっていたのですが、同時に思ったほどワクワクしていない自分もいました。ほぼ同時期に、あるスタートアップ企業のCEOの下でインターンに行っていたのですが、そのCEOがものすごい魅力的で、輝いて見えたんです。私もこうなりたい、でも経験もないし、と悩んでいたときに背中を押してくれたのが、当時アパレル向けの動画制作やメディア、アパレルD2Cブランド「エイミーイストワール」などを展開していた3ミニッツのCEOだった宮地(洋州・現1SEC代表)さんでした。3ミニッツはアパレルが中心だったので、私はビューティでやろう!と。宮地さんには起業してから2〜3年はいろいろとメンターとしてアドバイスをもらったり、相談させてもらってました。

WWD:19年2月にブランド「フィービービューティアップ」を立ち上げて、1年で月商5000万円に。直近の2月では月商2億円にまで成長した。順風満帆にも思えるが、資金繰りに困るようなことはなかった?

尾﨑:うーん。初年度は資金繰りに困ることもありましたが、ブランドの立ち上げ以降、事業は順調に拡大してきたと思います。それより大変だったのは、やっぱり人と組織のマネジメントです。昨年、数年内のIPOを目標に掲げ、組織のあり方を根本から見直したときに、そのせいで初期のころから一緒にやってきたメンバーがまとまって辞めてしまって。とてもショックでした。何度もワンオンワンで思いを説明したつもりだったのですが、「なんで思いが伝わらなかったんだんだろう」って。そのときにはみんなの前で泣いてしまって。でもその後、残った社員たちが「私たちが美紀さんのことを助けますよ」って言ってくれた。それを聞いてまた大泣き(笑)。でも、これが私にとって大きな転機になりました。

WWD:どういうことでしょう?

尾﨑:スタートアップの経営をしていると、売り上げや社員がどんどん大きくなるので、同じように背負っているものと責任感もどんどん大きくなって、社員に弱いところなんて見せちゃいけない、かっこよく見せなきゃいけないんだ、っていう気持ちになっちゃうんですよ。でも、社員のみんなが「助けますよ」って言ってくれたことで、そっか、頼っていいんだって気づいたんです。これはプライベートでも同じです。起業後ずっと恋愛もうまくいかなくて、それも結局は弱い部分を見せられなかったからなんだと気づきました。

WWD:芸能活動から起業家へ。過去の経験は生きている?

尾﨑:コスメブランドの運営にあたって、メイクや話し方など容姿をどう他人に見せるか、といった経験はプラスにはなっていると思います。ただ、起業家界隈、投資家界隈ってやっぱり男社会なんですよ。資金調達になると、それこそいろんな投資家に会いに行くのですが、「自分がペルソナじゃないから(事業を)理解できない」みたいなことで断られることが本当に多くて。資金調達は断られることが当たり前なので、断られる事自体はいいんです。けど、そもそもトップが女性だから、女性による女性のためのビジネスモデルだからみたいな理由で断られると本当に悔しくて。加えて、投資家の男性から明らかにビジネスとは関係ない食事にしつこく誘われたり、ときにはさらに露骨な誘いを受けたことも。「女性の最年少上場社長」という目標は、そうした現状を変えたいという思いを込めています。もし実現できたら、「女性起業家」「フェムテック」への視線や考え方も変えられるし、これから起業を目指す女性のロールモデルにもなれる。

WWD:コスメだけでなく、ファッションも好きですよね。

尾﨑:もちろんファッションも好きです。今日着けている指輪は「シャネル(CHANEL)」「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」。高級品を買うのは、目標を達成したときの自分へのご褒美です。先日もある大きな目標を達成したので、「エルメス」のバーキンを買いました。当たり前ですが、高級ブランドばかりを買っているわけではなく、ピアスはヨーロッパのヴィンテージで、インスタで見つけて気に入って買いました。

WWD:女性の最年少上場を達成したときは何を買う?

尾﨑:うーん。まだ決めてませんが、家とかかなあ(笑)。

The post 29歳コスメD2C社長が語る「起業」「野望」「恋愛」「ファッション」 ディネット尾﨑美紀 appeared first on WWDJAPAN.

ブランドリユースは序章にすぎない 「なんぼや」バリュエンスグループ嵜本CEOが描く成長ストーリー

 買い取り専門店「なんぼや」を運営するバリュエンスホールディングス(HD)は、会社設立(2011年)から11期目にして売上高500億円を突破し、老舗のコメ兵ホールディングスとも肩を並べる国内のブランドリユース市場におけるトッププレイヤーだ。

 事業子会社バリュエンスジャパンは現在、「なんぼや」と完全予約制の「ブランドコンシェル(BRAND CONCIER)」を国内外に計150店舗(うち国内が128店舗)を構える。ていねいな接客とデジタルを活用した強固な顧客の構築が、他社との競争優位性を生み出している。店舗は買い取りに特化し、買い取り品の販路はオークションによる古物商への卸売が中心。直販よりも粗利率は下がるが、在庫リスクを軽減し、安定した収益を得ることができる。

 近年は消費者の中古品への抵抗感が薄れるとともに、コロナ禍で在宅時間が増えたことで自宅に眠っていたブランド品を整理する人が増え、二次流通市場も活況を呈している。バリュエンスHDの2021年9月〜22年2月期は売上高が前年同期比10.0%増の261億円。買取商品の仕入高は116億円で、同期間としては過去最高となった。

 だが嵜本晋輔バリュエンスグループCEOは、「(ブランドリユース市場は)今後はますます難しい局面に入っていくだろう」と見る。「このビジネスをテコに、“その先”の可能性を広げていかなければ未来はない」と語る嵜本CEOに、今後の展望を聞いた。

WWD:自社の強みをどう分析するか。

嵜本晋輔バリュエンスグループCEO(以下、嵜本):競合との差別化要素になったのは、一つがデジタルでの集客。設立当時(2011年)から折込チラシや新聞広告といった買取業者の集客の常套手段に縛られず、新規客獲得のためのリソースをデジタルに振り切った。自社に約20人のデジタル専門チームを作り、SEO対策やリスティング広告で認知拡大を進めた。

 二つ目が「おもてなし」。当社の収益構造を説明すると、約半数の優良顧客が利益の9割以上を生み出してくださっている。高価なジュエリーや時計をお持ちになる40〜60代の男女がその中心だ。会社を起こす前に競合他社の買い取り現場を見て、正直に言えばもう勝ち筋は見えていた。どこも顧客目線での店舗設計ができていなかったからだ。高価なブランド品、それもお客さまが思い入れのある大切な品物を扱うにもかかわらず、周りから丸見えのチープな買取ブース。担当するスタッフもブランド品をこれみよがしに身ににまとい、お世辞にも信頼に足るような装いではなかった。そこで僕たちは、買い取りの際にはお客さまを上質でプライベートな個室空間にお招きし、スーツにネクタイを締めたスタッフに応対させた。今では業界のスタンダードと言えるものも、実は僕たちが先駆けとして導入した。

WWD:買い取りにおいて「おもてなし」が重要なのはなぜか?

嵜本:買い取りは「いかに高い金額で買い取れるか」の勝負になるかと思われがちだが、必ずしもそうではない。お客さまに査定金額を提示するまでの数十分の間に、対話を通じて提供できる価値がある。持ち込んでいただく品物には、お客さまのさまざまな思いが詰まっている。「正しい査定金額を出してもらえるか」「引き取った後も大切に扱っていただけるのか」と、さまざまな不安も抱えている。だからこそスタッフはお客さまと真摯に向き合い、物と出合って別れを決断するまでのストーリーを分かち合う。商品には「価格」があるが、所有する人によって「価値」は違う。コミュニケーションから得た情報は、買い取り価格の値付けにも反映している。例えばお客さまが新卒社員のときにコツコツお金を貯めて買ったというバッグなら、たとえこちらが少し損をしてでも高く買うようにする。

WWD:店頭スタッフはどのように育てている?

嵜本:評価制度として、点数成約率やリピーター率、利益貢献度などを数値化し、インセンティブ報酬として還元する仕組みを創業時から敷いている。その上で、単にモノの価値が正確に分かるだけではなく、お客さまから信頼され、「この人になら託したい」と思われるような人間力のあるスタッフになってもらいたいと考えている。企業して間もなく、僕も現場で鑑定士をしていた。ある日女性のお客さまが持ち込まれた高級バッグに、査定額7万円を提示した。聞けば、前に訪れた店の査定額は10万円だったという。半ば諦めかけた僕に、女性は「あなたに買い取ってもらいたい」と。僕は驚いた。そして、こういった事象が何度も続いたことで確信した。お客さまは最後は「誰に委ねたいか」で決めている、と。

 たしかに買い取り価格で訴求することは簡単だ。他店で10万円と査定された品物に対して「うちは11万円出しますよ」と提案すればいいだけ。だがこれはアパレルの値引きと同じで、いわば麻薬のようなもの。これを市場のプレイヤーが一様に同じことを繰り返せば査定価格のつり上げ合戦になり、業界全体がジリ貧に陥ってしまう。

WWD:業界の今後をどう見通すか。

嵜本:企業はより透明性のある経営を求められ、業界もそのような流れに向かう。この業界は消費者との情報の非対称性で稼いできた部分があるが、それが崩れるだろう。どういうことかというと、買取業者は消費者が「自分の持ち物の価値や買取相場がわからない」ということを前提に買取価格を提示し、利益を稼いできた。だから「隠した方が得」だった。僕らに関して言えば、創業当初からホームページで買い取り価格を積極的に公開し、信頼につなげてきたわけだが。

 だが情報化社会が進む中で消費者の情報力はますます高まっていく。するとわれわれの提示する買取価格に対してもシビアになるだろう。すると、従来のような利益を生み出せなくなるプレイヤーも出てくる。そもそも国内のブランド品の中古市場の規模は2400億円※にすぎず、限られたパイを数多くのプレイヤーで奪い合ってきた構図がある。市場には今後、かなり難しい局面が訪れると予想している。

※出典:リサイクル通信「リユース市場データブック2021」

WWD:自社の長期的な経営戦略は?

嵜本:時代に合わせて、僕らもビジネスモデルを大胆に変えていく。コロナがきっかけで、古物商向けのオークションがリアルで開催できなくなり、オンラインに移行した。結果、小さな企業でもウェブ上で自由にオークションが開催できるようになった一方、僕らのように自社で大きなオークションハウスを構える優位性が薄れてしまった。今後は主戦場をB to B取引(古物商への卸売)からB to C取引(消費者への直販)へ移していく。顧客とより近づき、深くつながることが必要になる。この春には、買取だけでなく販売も行う新業態「アリュー(ALLU)」を、銀座、心斎橋に続く3店舗目として表参道に新規出店した。開店から1週間で売り上げが1億円を超える好調なすべり出しで、初年度予算10億円を大きく超えるペースで推移している。

 さらにブランドの買い取り販売を入口として、自動車やマンションなどの不動産買取といったビジネスにも裾野を広げる。高級時計を身につけている男性は、高級車に乗っている人が多いことは想像がつく。当社には100万人以上の顧客情報があり、月間約3万人ずつ増えている。買い取り客に訪れたお客さまにはアンケートをお願いし、年齢や性別、収入や興味関心などさまざまなデータを収集している。すでに自社内には不動産買い取り専門の10人程度のチームを組織した。まだ赤字ではあるが、「LINE」でのメッセージや店頭に買い取り目的で訪れたお客さまに営業をかけ、マンションなどの買い取りが月に数件ペースで成立している。今後はスタッフに求める役割やスキルも変わっていくだろう。テクノロジーの進歩で真贋はAI(人工知能)が判別し、査定価格もデータを叩けば瞬時に出せる時代になる。これから磨くべきはお客さまが持つ潜在的なニーズをあぶり出す能力だ。

 こういったブランド品の買い取り販売以外の分野が、全社の収益の2〜3割を稼ぎ出す体制を近い将来作っていく。取り扱うカテゴリーは不動産や車だけでなくアートや骨董品、ワインなどあらゆる実物資産へ広げる。まだ価値が見出されず、埋もれているアセット(資産)は世界中に山ほどある。それらを発掘し循環させていく役割を、僕らが担っていきたい。

The post ブランドリユースは序章にすぎない 「なんぼや」バリュエンスグループ嵜本CEOが描く成長ストーリー appeared first on WWDJAPAN.

“恋多き”女ジェニファー・ロペスが語る、「マリー・ミー」主人公の波乱恋愛劇 エンタメから読み解くトレンドナビ Vol.3

 映画やドラマなどのエンタメを通して、ファッションやビューティ、社会問題などを読み解く連載企画「エンタメで読み解くトレンドナビ」。LA在住の映画ジャーナリストである猿渡由紀が、話題作にまつわる裏話や作品に込められたメッセージを独自の視点で深掘りしていく。

 第3回は、映画「マリー・ミー(Marry Me)」主演のジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)にインタビュー。同作のヒロインと共通する自身の境遇や、劇中に披露される衣装について話を聞いた。

 52歳にして、まだまだ女盛り。モテ男、モテ女がそろうハリウッドでも“恋多き女”で知られているジェニファー・ロペスは、最近もまたベン・アフレック(Ben Affleck)との婚約ニュースで世間を騒がせている。ジェニファーとベンの婚約は2回目。1回目は、結婚式の数日前になって急遽延期となり、その4カ月月後に二人は破局した。

 ドタキャンの理由は、ぎりぎりになってベンがジェニファーとの結婚に怖気付いたことだと報道されている。破局の5カ月後には、歌手のマーク・アンソニー(Marc Anthony)と結婚して立ち直りの早さを見せつけたジェニファーだが、全世界の見つめる中でウエディングが中止になった時にはさすがに傷つき、屈辱を感じたようだ。

 

主人公と共鳴するバックグラウンド 

 そんな彼女は、最新主演作「マリー・ミー」で、同じような状況を描いてみせる。ジェニファー演じる主人公キャットは、大人気のポップスター。彼女と人気シンガーであるバスティアンは、ファンを前にしたライブコンサートの中で結婚式を挙げようとする。だが、それと同じタイミングで、バスティアンが浮気をしていた事実がネットで暴露された。ショックを受け、何も考えられなくなったキャットは、バスティアンではなく、ファンの中にいた一般男性チャーリーに「私はあなたと結婚する」と宣言してしまった。

 キャットと自分との間に共通点がたくさんあると認めるジェニファーは、「この役にリサーチは不要だった」と語る。「有名な歌手であるというのはどんなことか、私は知っている。ブランドとコラボするのがどんなことかということも。そして、世界が見つめる中で失恋をして、それがメディアに取り上げられた時、どう感じるのかということもね。そこを演じるのはちょっと辛くもあったけれど、私自身がシーンに真実を持ち込めるチャンスはたくさんあった」。

 セレブリティと一般人の恋愛物語というこの設定はいかにも少女漫画だが、実際、原作はグラフィックノベルだ。ジェニファーとは長い関係にあるプロデューサーのエレイン・ゴールドスミス=トーマス(Elaine Goldsmith-Thomas)は、この企画をどこかに売り込むたびに「あまりに現実離れしている」と拒否されたと振り返っている。

 たしかにそれは普通の感覚だが、ジェニファーの私生活を考えると、彼女の場合、必ずしもそうではない。彼女が有名になってから結婚した最初の夫はウエイターだし、次の夫はバックダンサー。ジェニファーより24歳も下のマルーマ(Malum)が婚約者役を演じているのも、彼女がかつて17歳下の男性と付き合っていたことを思えば、あり得なくもないだろう。良くも悪くも、華やかすぎる恋愛遍歴がゴシップをにぎわせてきたことで、このストーリーに信憑性が出ているのだ。

 「ソーシャルメディアが出てきて、有名人である私たちの日常は、より厳しくなった。ソーシャルメディアはタブロイドよりももっと私たちを不安に陥れる。ゴシップ雑誌だけだった頃は、『もうすぐこのことを書かれてしまうらしい』『でも、そんなに大きくは出ないんじゃないか』というような、いわば猶予期間があった。今は、何かが起きた時に誰かがスマホを向けて、それがたちまちシェアされてしまう。公の目にさらされている人間にとって、そこをコントロールするのは難しい。特に私生活で嫌なことが起きた時にはね。キャットみたいな思いは、誰にもしてほしくない」。

 

着用したウエディングドレスは約40キロ 

 そんなネガティブな面だけでなく、この映画は、セレブリティだからこそ得られる華やかな体験も描いていく。とりわけ衣装は魅力的だ。ライブコンサートでの衣装やレコーディングスタジオでの服装、そしてこの映画のポスターにもなっている「ズハイル・ミュラド(ZUHAIR MURAD)」のウエディングドレスまで、劇中でジェニファーは素敵なファッションの数々を披露している。

 「あのウエディングドレスは最高に素敵だったわ。でも、実はとても窮屈なの。約40キロもあるドレスを着て4日間も撮影するのは楽じゃなかったわね。もう一つのお気に入りは、『On My Way』を歌うシーンの服装。コーラルカラーのスエードパンツ、セーター、帽子というスタイルよ。私はあの歌も大好きなの。今作のためにオリジナル曲がたくさん書かれて、アルバムも同時に制作したけれど、『On My Way』は誰もが共感できる感情を伝える歌。自分がおかしたミスについて辛く感じることは誰にでもあるでしょう。だけど、そこには希望もあるの。私も、自分が過去に経験した失敗が、今いるところへ導いてくれたんだと思っている」。

 3回の離婚、2回の婚約破棄を経て、今、再びベンと真の愛を築こうとしているジェニファー。そんな彼女にとって最高にロマンチックな時間とは?「パパラッチがいない、誰にも見られないところで二人きりでいられる時間。愛する人と一緒に人生や愛について語り合う。お互いといる喜びを、ただ満喫できる。それが理想ね」。

The post “恋多き”女ジェニファー・ロペスが語る、「マリー・ミー」主人公の波乱恋愛劇 エンタメから読み解くトレンドナビ Vol.3 appeared first on WWDJAPAN.

東コレのメインテーマに抜てきされた23歳 音楽アーティスト、にしなの素顔

 1998年生まれのにしなは、儚さを感じる歌声と多様な楽曲サウンド、日常を切り取った飾り気のない歌詞が魅力のアーティストだ。昨年は、あいみょんやKing Gnuなど名だたるアーティストを輩出してきたスポティファイ(Spotify)の新人サポートプログラム“アーリーノイズ(Early Noise)2021”に選出されたほか、テレビCMとのタイアップソングの書き下ろしや初のワンマンライブを実現。1月にリリースした「スローモーション」は、3月の「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」のメインテーマにも選ばれ、この夏にビームスが主催する音楽フェス「BE FES!!」への出演も決まるなど、ファッション業界からも注目を集め始めている。7月にはニューアルバム「1999」のリリースも決定した。そんな彼女に音楽を始めたきっかけや曲作りの哲学、好きなファッションスタイルなどを聞いた。

WWD:音楽に興味を持ち始めたたのはいつから?

にしな:もともと歌うことが好きで、小学生の時には歌手になりたいと思っていました。でも漠然と思っていただけで、それを行動につなげることはありませんでした。家族にもバレないようにお風呂で小さな声で歌う、みたいな感じでした(笑)。

WWD:本格的に音楽活動を始めたきっかけは?

にしな:高校2年生のときに、音楽をやっていた友達から無料でレッスンを受けられるオーディション情報を聞いて、「これなら落ちても誰にもバレないし、やってみてもいいじゃん」と軽い気持ちで応募しました。1次審査のために音源を送らなきゃいけなくて、録音のやり方が知らず、iPhoneを裏向きに置いて動画として撮影したくらい(笑)。あんなに手探りだったのに、よく受かったなと思います。

WWD:レッスンではどんなことを学んだのでしょうか?

にしな:ギターの選び方とか、ライブハウスに出るにはどうすればいいかとか、音楽活動の基礎を教えてもらいました。実戦的な学びはもちろん、それ以上によかったのが、本気で音楽に取り組む同世代に出会えたこと。私はどちらかというとシャイで内側にこもりがちだったけど、自分のやりたいことに挑戦する同世代を見て大きな刺激を受けました。そこからライブハウスに自分で電話して出させてもらったり、ユーチューブに動画をあげたりと、マイペースだけど継続して音楽に取り組んでいきました。

WWD:アコースティックな音楽が多い印象ですが、ルーツは?

にしな:歌うことに憧れたのはコブクロさんがきっかけです。中学からはバンドも聞くようになって、クリープハイプやラッドウィンプス、バックナンバーなどもよく聞いていました。

WWD:1月にリリースした「スローモーション」は、バンドライクなサウンドでしたね。

にしな:椎名林檎さんの「ギブス」を聞きながら、こういう世界観の曲をやってみたいと思ったのがスタートでした。ヒリヒリするようなギターのアレンジは意識しています。それと、恋をして、一瞬一瞬の出来事が激情的になると、後からスローの映像で思い返せる感覚があって。喧嘩のときに花瓶が割れたら、その瞬間を後から明確に思い出せるというか。その個人的な感覚をタイトルの「スローモーション」に込めました。

WWD:昨年はGMOクリック証券のCMソングとして「U+」をリリースしました。壮大なアレンジが印象的でした。

にしな:“多様性”という大きなテーマのもと、「私にとっての多様性を表現してほしい」とリクエストされて。コラージュアーティストの五反田和樹さんの映像が先に出来ていたので、それを見ながら歌詞とメロディーを広げていきました。クライアントやほかのクリエイターの熱に良い意味で影響されて、いつもと違うアレンジに挑戦できたのがよかったです。制作過程はいつもと異なるけど、コードと歌詞とメロディというシンプルな要素は変わらないから、タイアップやコラボ楽曲でも自分らしく音楽と向き合えています。

WWD:ライブでの衣装のこだわりは?

にしな:これというこだわりは特にないですが、衣装はパフォーマンスにも影響を与えます。ガーリーな服を着るとかわいい自分になりたい、かっこいい服なら強い自分になりたいと思うので。自分の中でモードが切り替わりますね。

WWD:雑誌撮影なども増えています。音楽ではなく、ファッションや写真で表現することの面白さは?

にしな:コンプレックスがたくさんあるから、「私なんかでいいのかな」って思っちゃいます。でも、いろんな服を着て、素敵に撮ってもらうと、自分が知らなかった側面に出合えて、自分を好きになるきっかけをくれる。それがうれしくて、最近は楽しめるようになってきました。

WWD:普段はどんなファッションが好き?

にしな:ゆるい雰囲気が好きです。古着が好きで下北によく行っています。あとはニューヨーク発のニットブランド「ヤンヤン(YANYAN)」とか、「フィル ザ ビル(FILL THE BILL)」も好き。衣装で着てから知るブランドも多いです。

WWD:今後チャレンジしたいことは?

にしな:まずはいろんな音楽を作り続けること。いろんな人と出会って、ふざけた曲も、真面目な曲も作りたい。あとはライブですね。ライブってお客さんと時間を共有して、エネルギーをもらえる大事な時間で。行ったことのない地域の方が多いから、いろんな所に行きたいです。ほかにも音楽を軸にしながら、短い映画とか、絵本とか、枠にとらわれずに新しい表現に挑戦できたらうれしいです。

The post 東コレのメインテーマに抜てきされた23歳 音楽アーティスト、にしなの素顔 appeared first on WWDJAPAN.

土地を再生しながらダウンの代替素材を作る “バイオパフ”とは何か

 英国発ソルティコー(SaltyCo)は、土地を修復しながら育つ植物を原料にプラネット・ポジティブ(地球にとっていい影響)な素材供給を目指すスタートアップ企業だ。初めての製品“バイオパフ(BioPuff)”はグースダウンや石油由来の合成充填材に代わる種子繊維を原料にした素材で、2022年のH&M創業者によるイノベーションアワード、グローバル・チェンジ・アワードを受賞した。すでにサステナビリティ先進企業数社と開発を進めている。

 2021年12月にはネッタポルテで“バイオパフ”を用いたカプセルコレクションを発売。ジャケットや帽子などを販売した。ジュリアン・エリス・ブラウン(Julian Ellis-Brown)最高経営責任者(CEO)とネリー・タヘリ(Nelly Taheri)=チーフ・オペレーティング・オフィサーにオンラインで話を聞いた。

WWD:環境負荷が高い素材が数多くある中で、なぜダウンだったのか?

ジュリアン・エリス・ブラウンCEO(以下、ジュリアン):ダウンの代替品を探すというよりも、土地の修復に役立つ植物や再生農法を見つけることに注力していました。土地を再生しながら、役に立つ製品を生み出すことができるかーー研究の結果、グースダウンの代わりになる素材を見つけました。

WWD:“バイオパフ”はどのような植物からできているか。

ジュリアン:種子繊維を原料としています。その植物は乾燥地帯で自生している場合もあれば、極端に湿った環境でも見つかります。植物自体は、湿地に生息する丈夫で弾力性のある作物「ヘロフィテス」と呼ばれる大きな種族に由来します。この種の植物は、厳しい気象条件、代替水源、あらゆる質の土壌で生育することができます。将来的に気候変動が進み、世界中で気象の影響が大きくなっても気候や環境の変化にも耐えられます。

WWD:具体的にどのような条件下で育つのか。

ジュリアン:再湿潤化した泥炭地で育てています。これまで泥炭地は農地化され、CO2の大量放出につながっていましたが、私たちは革新的な農法を用いて、CO2を地中に閉じ込められるように土地を修復し、再び湿らせて在来植物を栽培しています。現在、英国で再生が必要な農作地は約30万ヘクタールありますが、その10%を私たちの農法に切り替えると全世界のグースダウンの供給量の約15%をカバーできます。

WWD:英国以外の土地でも適応可能か?

ネリー・タヘリ=チーフ・オペレーティング・オフィサー(以下、ネリー):もちろんです。私たちが用いている植物や土地の種類は、アジアや南米、ヨーロッパなど世界中のいろんな地域にあります。ダメージを受け、再生が必要な土地はあらゆるとこに存在します。また、この植物はさまざまな地域で自生していて、植物自体はとても簡単に育つものだからこそ、地元の農家に容易に取り入れてもらえますし、リスクも少ない。このような点からも私たちは今後エリアを拡大していきたいと考えています。

WWD:“バイオパフ”はポリエステル綿ではなく、ダウンに似た構造とのことだが、機能面でダウンに劣る点はあるか?

ジュリアン:グースダウンは、たくさんの繊維が集まりその繊維にさらに小さな繊維があり、それによって保温性が生まれ、エアーポケットができてふわふわした膨らみにもつながっています。それこそがダウンが愛される主な理由になっています。私たちが開発した素材は、このダウンの構造に似た、繊維の集まりによる構造をしています。それによって保温性に非常に優れ、ふわふわとした膨らみも生まれます。しかしグースダウンにも、“バイオパフ”のような植物由来の代替品にも共通する課題は洗濯の問題ですが、私たちは過去6~12カ月にわたり、洗濯ができるようになるかを研究しています。私たちの素材の改善すべき点は洗濯だと考えており、今後も注力していきたいと考えています。

WWD:どのような工程を経て植物からダウンのような繊維になるのか。

ジュリアン:原料の植物は乾燥工程を経て製造工場に運ばれます。その後、独自の繊維抽出機を用いて植物から繊維を抽出し、一連の機械での工程を経て作られます。小さなエアーポケットに熱を閉じ込めて保温するクラスター構造が特徴です。

WWD:“バイオパフ”は環境を再生することだけではなく、動物の権利も守られ化石燃料を用いることもない。が、コスト面ではどうか。

ジュリアン:現時点での価格帯は生産規模の理由から、1キロあたり約75~80ポンド(約1万2150~1万2960円)です。私たちはグースダウンの価格と並ぶ程度にまで下げることを目標にしており、すでにできると確信しています。 石油由来素材の製造方法が単純であることや、生産量も多いことから、ポリエステルと同等の価格まで下げることは難しいかもしれませんが、できるだけ早く価格を下げられるとうに、そしてこの新素材による好影響を世界中に広められるように取り組みたい。

 サステナビリティは非常に手間がかかるため、非常にコストがかかると思われがちですが、研究開発の過程で経済的にも有効なモデルである可能性があることもわかってきました。私たちの生産工程は、グースダウンの生産に比べて40分の1の土地でできるので、私たちはより経済的にも環境的にもサステナブルなものを作ることができます。

WWD:今後の生産量拡大への計画は?

ネリー:直近2年程では、パイロットの拡大や研究開発に比重を置いていました。次のステップは、製造拠点となる大きな工場に移転し、スケールアップした製造ラインを作ること。英国内の農業用地への進出も検討しています。より多くの収穫に備え、栽培をすぐに開始できるようなさまざまな土地を探していますし、もちろんチームも拡大していく予定です。

 現在3~5つのブランドと話しを進めていて、ブランドは中規模のコンテンポラリー・ブランドから、現地サプライチェーンを構えるヨーロピアン・ブランド、世界中に生産拠点や店舗を持つマス向けのグローバルブランドやアウトドアブランドなど、多岐に渡りますが、今後2~3年の内に展開できるように進めています。

WWD:拡大するにあたっての課題は?

ジュリアン:本質的な課題は新しいサプライチェーンを構築することです。特にリスクも伴う可能性があると困難になることもあります。農家が土地を所有している場合、その土地がダメージを受けていても、従来の慣行から方法を変えることに抵抗があることも考えられます。だからこそ、私たちは安全で確実な方法を模索し、収益モデルを構築する方法を追求したいと考えています。つまり彼らから素材を購入することで収益を提供するだけでなく、温室効果ガスの排出削減量証明となる炭素クレジットによる収益や、英国政府が行っているエンバイロメンタル ランド マネジメント スキーム(Environmental Land Management Scheme)を通して収益を得られるようにしたい。そうすることで、私たちのアイデアを拡張するにあたってのリスクや困難を軽減したいと考えています。私たちは英国王立鳥類保護協会(RSPB)や野生動物保護団体(Wildlife Trusts)など、より再生可能な農法への移行を先導する自然保護団体とも協同しています。

繊維発見までの開発秘話

WWD:そもそも、その植物がダウンの代替となるということはどのように見出したのか?

ネリー:ダウンの構造や他に代替を検討している素材についての研究を重ねていた頃だったと思います。私たちの目標は、繊維がどのように栽培され、どのように育ち、どこから供給されるかを見出してアプローチすることでした。ダウンであれ石油由来の素材であれ、その他の素材であれ、アパレル産業のサプライチェーンにおける環境負荷の多くがこの工程にあるからです。そこで代替が必要な素材を見出し、そこから逆算して研究対象となるさまざまな植物を特定し、それらを研究所に持ち帰って研究を進めていきました。ですので、いろんな研究を並行して進めていました。

 そもそも、私たちの研究は素材やサプライチェーンについて、それらがもたらす環境への負荷について考えるところから始まりました。天然資源の過剰使用や土地利用、それらに伴う環境への悪影響についてです。初期段階では、不織布・織物の研究も行っていました。そしてその中で保温性(断熱性)のある代替素材に関する市場は全く飽和されておらず、高い需要があるにも関わらず、植物由来の代替素材はあまりなかったので、そこに注力することにしました。多くのブランドはヴィーガンでありながら石油由来でない断熱素材を求めていますが、現状は多くの製品がリサイクル素材か、責任ある調達方法で作られたダウンなどに留まっています。そこに膨大な需要がある中で、私たちが並行して行っていた研究や開発、私たちが求めている製品と合致する部分がありました。今後のクライアントになりうる人たちとは最初の段階から多くの協議を行い、彼らが求めているものは何なのかを理解するために、フィードバックをもらい、コミュニケーションを重ねてきました。

WWD:現在の資金調達額は?

ジュリアン:100万ポンド(約1億6200万円)です。グローバル・チェンジ・アワードで得た助成金は今後私たちのアイデアをスケールアップしていくのにとても役立ちます。その他にも、イノベーションを目指して研究を行う企業を英国政府に代わって支援するイノベートUK(Innovate UK)やインペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)、新しいサステナブルな素材へのムーブメントをリードするフューチャー ファッション ファクトリー(Future Fashion Factory)などとも一緒に取り組んでいます。

The post 土地を再生しながらダウンの代替素材を作る “バイオパフ”とは何か appeared first on WWDJAPAN.

「稼いだお金はほぼ事業に」 カリスマホストROLANDがファッションを通じて得たもの(インタビュー後編)

(前編はこちらから)
 カリスマホストのROLANDは4月15日、新ブランド「ミニマス(MINIMUS)」をスタートした。後編は、起業家でもあるROLANDから見たファッション・ビジネスの難しさやミニマリストとしてのワードローブと消費生活、アパレルビジネスの最終目標を聞いた。ROLANDは2019年に自己資金で事業を始め、わずか数年で従業員を300人まで大きくした現在も無借金を貫く。ミニマリストを自称し、浪費をせず、稼いだお金の大半を事業につぎ込む姿からは、自分の美意識を貫きながら、ストイックに事業に打ち込む起業家の姿が見えてきた。

WWD:「ミニマス」のコンセプトはどう決めた?

ROLAND:僕自身、所有している服の数が少なくて、シンプルが自分のフィロソフィーなところもあり、色使いが多いものや柄物をあまり着ないことを、本間さんにお話させていただきました。

WWD:所有している服の数は?

ROLAND:ファッションメディアのインタビューで答えていいようなワードローブではないんですよ。下着類が3着、ジャケットが1着、ワイシャツ3着、トレンチコートが1着、靴1足、サングラス1個。あとは同じデザインのルームウェアが3着。俗に言うミニマリストですね。YouTubeを見てもらうとわかりますが、どの番組見ても、衣装提供がある場合以外は、黒のジャケットか黒のシャツですね。

WWD:ちなみにブランドは?

ROLAND:スーツはイギリスのサヴィル・ロウのテーラーブランド「ハンツマン(HUNTSMAN)」で、ジャケットはそこのビスポークでビロードの1着。靴は今日履いている「プラダ(PRADA)」。もし、気に入ったアイテムが見つかれば、それまで使っていたものをトコロテン方式で押し出して処分して、最高の1着だけを常に大事にするという考え方です。毎日服を選ぶ時間を、別の思考する時間にあてたいというのがきっかけだったんですけど、そういうふうに生活していくと、同じ服を着ていることで、体重の変化や、服の肌触りで風邪ひきそうとか、体調の良・不調までわかってきます。思考もクリアになるので、もっと大切なこと…家族のことや仕事のことにフォーカスできるようになる。「ミニマス」を通じて伝えたいことも、そういうことです。「ミニマス」をまとうことで、シンプルな思考になり、もっと人生大事なことにフォーカスできるようになってほしい。そうやって、人々のライフスタイルを変えるのが、最終的なこのブランドの野望です。なので、ブランドのメッセージにも「服を選んでいた時間を、もっと大切なことに向ける。服を選ぶこと以上に、あなたのライフスタイルには価値がある」としています。

WWD:自身では、ホストやアパレル以外にも飲食店やサロンなど、さまざま事業を手掛けている。起業家としてアパレルビジネスをどう見ている?

ROLAND:他の事業と異なる点は、競合他社さんの数。アパレルはまさにレッドオーシャンで、選ばれる大義名分を作るのがすごく難しい。「クリスチャンローランド」のときも、まるで自分の子どもを育てているかのように愛情と時間と手間を注いで作ってきた。でも例えば、自分の子どもが受験に落ちたとします。うちの子はこんなに頑張ってきたし、こんなに可愛くてこんなに才能があるのに、なんで落ちたんだろう?って思いますよね。親は我が子が塾に通ったり、家で勉強しているその365日24時間のフルタイムの頑張りを見てるわけじゃないすか。でも学校側は試験と一瞬の面接だけで、いいか悪いか、それだけで判断する。アパレルも同じことです。「これだけ熱量を入れてめちゃくちゃこだわってるのに、何で売れないんだろう」というこちらの温度感に対し、お客さんは試着したり、ぱっと目にとめたり、ポップアップで手にとったときに、「これ違うな」って思えば一瞬でハンガーに戻してしまう。だからこそ「他のブランドではない、これをわざわざ買うべき」という大義名分が、価格なのかデザインなのか、それこそネームバリュー、あるいはブランドなのか。それを作るのがとても難しかった。

WWD:ホストも一瞬で心をつかむ難しい仕事だと思うが、アパレルは何が違った?

ROLAND:「クリスチャンローランド」を例に取るとデザインは、サンローランとかセリーヌと同じ方向性だったけど、そこには勝てなかった。値段の点で、同じクオリティーで価格が10分の1だったら、買われたかもしれない。でも、そういう大義名分を作れなかった。あるいは、仮に価格も高くてデザインも悪くても「天下の〇〇」みたいな、そういう位置付けのブランドだったら、また話は変わってきたかもしれない。選ばれる大義名分作りっていうのが、今回の「ミニマス」の新しいテーマでもあったし、難しさでもあった。

WWD:経営者として、今後「ミニマス」をどのくらいの期間継続していく?

ROLAND:仮に収益が悪かったとしても、自分の資金力が続く限りは続けたい。なので、資金が続く限りはやるつもりだし、業績が良ければ別に終わらせる必要はないので、半永久的に続けます。

WWD:なぜそこまで?ビジネスとしての可能性?

ROLAND:私は服は好きですが、単なる好きとはちょっと違う。ライフスタイルを変えられるのは、家具でもなければ食生活でもなくて、やっぱり身に着ける衣服なんじゃないのかっていうのが僕の考えです。先ほども言ったように僕自身がクローゼットをシンプルにしたら、思考がシンプルになって、すごくクリアな思考でいろんな物事をもっと大事なことに向き合えるようになった。それは、僕の成功の一番の要因なんじゃないのかなと思えるくらいの体験だった。それを服を通じて伝えることができたら、素敵なことだなあ、と。だからやっぱり僕にはこのアパレルビジネスが、すごく魅力的に映るんですよね。

WWD:話を聞くと「クリスチャンローランド」でも、伝えたいコンセプトは変わっていない。その考え方は今後もずっと変わらない部分?

ROLAND:そうです。そこを変えたらアパレルブランドをやる意味がなくなっちゃうんですよね。この事業でめちゃくちゃ儲けたいというのはあまりない。それ以上に、1億総ミニマリストに変えることができたら、それが面白い。

本間:哲学は同じでも、前の「クリスチャンローランド」は特別な日の一着だったが、今回の「ミニマス」はその逆。どれだけ日常にシームレスに入っていけるのかっがポイントだった。ジムと仕事、仕事とゴルフなど、自分たちの生活を全部シームレスにできる1着があるといいだろうな、どんな服だろうな、と。それが先ほどの無人島に持っていう服の話に繋がっていきます。価格帯もジャケットで大体3万円台後半、パンツで1万円台後半から2万円台前半。シャツも大体同じぐらいですかね。ジャージのブルゾンで2万円台後半から。価格帯でいうと、本当にいわゆる“ドメブラ”です。

WWD:その価格帯で素材もこだわって日本製ということだが、原価率も相当高いと?

ROLAND:具体的には言えませんが、もしプロ野球選手だったら、伝説のバッターになってるぐらいの割合です。イチロー以上ではあることは断言します(笑)。「儲けたい」ではなく、目標は「ライフスタイルを変えたい」ですから。

WWD:売り上げの目標は?

ROLAND:まずは年商1億円です。

WWD:けっこう謙虚な目標設定だが、他の事業でも常にそういう感じ?

ROLAND:リアリストな自分とロマンチックな自分が同居しているので難しいですが、やっぱり新しい業界に行けば、1年生だよっていうのは忘れちゃいけないなと思っています。もちろん自信も大事だと思うんですけど、謙虚な姿勢が一番だなっていうのは起業して一番学んだことです。アパレルでも、本当にできることからしっかりやっていこうと。

本間:サロンの方はうまく行ってますよね。

ROLAND:サロンはそうですね、今年おそらく、全国で50店舗くらいいけるんじゃないかと思います。でもそれも、できるところからやった結果です。

WWD:ROLANDグループホールディングスの年商は?

ROLAND:正確な数字は出せませんが、脱毛サロンは直営で30店舗あって、全体で社員は300人くらいです。

WWD:起業にあたって出資や融資は?

ROLAND:少し出資を受けていますが、ほぼ自己資金で始めて、いまも金融機関からの融資は受けず、無借金経営です。そもそも水商売をやっているとお金を貸してもらえないので。あくまで僕の感覚ですが、出資を受けてやるのって、他人のふんどしで相撲をとるじゃないですけど、なんかそういう感覚に近いものがある。だから経営も、あくまでも背伸びをせず、自分の身の丈に合う形でやっています。

WWD:「ミニマス」の最終的な夢や目標は?妄想レベルでもいいので。

ROLAND:先ほども言ったように常設の実店舗を持ちたいっていうのは、そんなにない。今の時代、コストに見合った効果が得られるかわからないので。そういった意味では、最終的な目標は10人すれ違って5人ぐらい「ミニマス」を着ているみたいな未来でしょうか。すれ違う人たちが「この人も『ミニマス』を着ている、あの人も『ミニマス』を着ている…」という状態になったら、みんながもっと家族や仕事など、大切なことにフォーカスできる未来になる、それが目標です。

本間:あくまで体感の話ですが、東京で生活圏が同じだと、5000枚くらい売れると、1週間にひとりすれ違うくらいかなと。しかし10人中5人となると…。

ROLAND:例えば「ユニクロ」さんだとそのくらいでしょうか。そのくらい生活に入り込みたい。

WWD:言われてみると「ユニクロ」の“LifeWear”ってコンセプトと「ミニマス」の目指す方向性は近い。

ROLAND:いや、「ユニクロ」さんとは勝負しません。ある仕事でユニクロさんのオフィスに行って企画会議にご一緒させてもらう機会があったのですが、本当にびっくりした。お客さまからのクレームの受け方やヒアリングの仕方がとにかくすごい。規模も圧倒的だけど、その姿勢はさらにすごい。日本人って「1000円あげるから俺の嫌いなとこ挙げて」と言ったとしても、言わない人が大多数の国民性なのに、そんなお金をもらってもクレームを言えない人種から、クレームとか改善点を引き出す技術があり、その上「毛玉が多い」と言ってきたお客さまには、わざわざ素材のスワッチを送り直して、フィードバックをもらっていた。その謙虚な姿勢を見て、これはさすがに勝てないな、と。「ユニクロ」さんと戦ったら負けるんで、あくまで違う土俵で「ミニマス」はやっていく。

WWD:あまり服にはお金を使わないということだが、お金の使いみちは?

ROLAND:時計は普段、アップルウォッチだし、いわゆる高級時計も持っていますが、本当に一つだけ。その他にコレクター癖もない。ただ、節約しているわけではなく、欲しいものがないという感覚です。サングラスも買ってから4、5年経つ。ものを買うときは特に期限や時期を決めているわけではなく、欲しいと思ったら、心の赴くままに、という感じ。車は自社で一台持ってますが、他は法人として買っている社用車。服を最後に買ったのは、思い出せないくらい前です。

WWD:ではお金は何に使っている?

ROLAND:うーん。新しい事業の資金かなあ。去年はレストランを開業するなど、いろんな業種にチャレンジしていて、その資金が必要だったので。不動産を買ったりということもない。

WWD:今までいろいろな方と仕事をしてきた本間さんから見て、ROLANDさんはどういう人でしょう?

本間:一番は、未知数というか可能性が多い人だなって印象です。会って話をしてみると、めちゃくちゃスマート。デザイン監修に入っているデザイナーの橋本さんも似たような感じで、楽しくやってますね。

WWD:全員が体育会系だから?

本間:それは大いにあるかもしれないすね。みんなトレーニーだし。

ROLAND:確かに体育会系ノリかもしれませんね。

The post 「稼いだお金はほぼ事業に」 カリスマホストROLANDがファッションを通じて得たもの(インタビュー後編) appeared first on WWDJAPAN.

現役モデルが業界の厳しさや苦悩のケアを目指し異業種参入 SAWAがコーチングを始めた理由

 トップモデルとしてキャリアを積んだSAWAが、2021年12月にメンタルメイクコーチング「ゆうなぎ(YOUNaGI+)」を設立した。モデルとして表舞台に立ってきたキャリアと、私生活では母親である経験を生かし、モデルやタレント、そして彼らを支えるマネジャーたちに向けて段階別のコーチングコースを設け、対話を重ねながら受講者の目標達成やメンタルをサポートしている。

 “コーチング”とはコミュニケーション手法の一つ。相手との対話や質問を通して、本来持っている能力や可能性を最大限に引き出し、目標に向けてモチベーションを高めるというもの。さまざまな悩みを抱えている人々に寄り添う彼女に、コーチングを身につけることの大切さや、厳しいモデル業界で苦労したこと、そこから得た気づきなどについて話しを聞いた。

WWD:「ゆうなぎ」をはじめたきっかけは?

SAWA:モデル業は常に自分と向き合っていないといけなくて、現場だけが仕事ではないんです。当時の私は仕事について一日中考えることが当たり前になっていて、心から楽しめていませんでした。楽しむよりも、全力投球で仕事に臨むことにしか目を向けられていなかったんです。あのときにセルフコーチングを身につけていたら、もっと心に余裕が持てて、自分を上手くコントロールしながら楽しめたんじゃないかなと。だからこそ、自分を育ててくれたこの業界で私にもできることがあると思い、「ゆうなぎ」を立ち上げました。自分と向き合うのを辛く感じているモデルたちをサポートすることで、モデルという仕事をもっと楽しんで、自分らしさを見つけてほしいです。

WWD:コーチングに出合ったのはいつですか?

SAWA:不妊治療を経て、無事に生まれてきてくれた長女が重度の食物アレルギーとアトピー性皮膚炎持ちであることが分かったんです。食べられるものが制限されるため、食物アレルギーについて学んではみたものの、なかなか苦労が多くて。育児に悩んでいるときに友人に紹介されたのが子どものコミュニケーション能力を学ぶマザーズコーチング(母親のためのコーチング)でした。スクールを受講して、自分のこれまでの価値観や考え方などが大きく覆されて、そこから学んだことが本当に多かったですね。その体験をきっかけに、よりたくさんの子どもや子育てに悩むママたちの助けになりたいと思い、資格を取りコーチとしての活動も始めました。

孤独と不安に押しつぶされた過去

WWD:コーチングに出合う前、自身もメンタルヘルスへの影響がありましたか?

SAWA:当時の私は精神的に完全に壊れていましたね。接触障害になったり、急に不安や恐怖に駆られたり。うつ病の一歩手前までになったこともありました。モデル業は華やかな印象ですが、実はとても孤独な職業なんです。オーディションに行かないと仕事はもらえないし、仕事が保証されているわけでもありません。オーディションに落ち続けていると、自分自身を否定されている気持ちになることもありましたね。その仕事がダメだっただけなのに、私の全てを否定されているように捉えてしまっていました。

WWD:そんな時、支えてくれたものは何だったのでしょうか?

SAWA:モデルとしての自分を確立できたのは、マネジャーのおかげです。私が悩んだ時に、自分以上にモデルとしての価値や良さを教えてくれました。一番最初のマネジャーに「SAWAにしかないものがある」「SAWAを選んでくれる人はずっとあなたのファンでいてくれる」と言われた言葉に強く背中を押されましたね。自分の可能性を自分以上に信じてくれる人が一人いるだけで、すごく励みになりました。自分一人だと不安になりますが、周りからのエネルギーが加わると、「やるぞ!」という強いパワーを与えてくれるんです。

WWD:厳しいモデル業界を経験して得たことは?

SAWA:私は完璧なモデル体型ではないので、海外でもキャスティングに入るかギリギリなんです。それでもこの業界で勝ち残っていくには、周りや時代に合わせるのではなく、個性を出していくことが一番大事だと気づきました。キャスティングのオーディションでは、会場に入った瞬間からジャッジされることがほとんどなので、その短い時間の中で自分らしさをどう表現するかが重要なんです。だからこそ、若い子たちにもコーチングについて知ってもらい、個性を発揮できるように自分自身と向き合えてもらえるとうれしいです。

WWD:実際にどんな悩みを抱えている人が多いですか?

SAWA:自分で自分の不安の正体が分からず悩んでいる人が多いですね。ゴールが見えない状態でも日々がむしゃらに走り続けて、自分で自分を追い詰めてしまっているんです。そんな彼らの孤独や不安をなくし、本当にやりたいことや個性を理解した上で、課題に向き合うプロセスを提案していきたい。無意識に周りや時代に合わせて自分の中の正解を見つけることよりも、まずは自分が持っている思考癖を理解し、うまく付き合っていくことが大切ですね。

WWD:モデルであり、母であるバッググラウンドを今の仕事でどのように生かしていますか?

SAWA:モデル業を通していろいろなクリエイターやスタッフと関わり、さまざまな価値観や考え方を自然に吸収できたので、多角的な視点を持ちながらアドバイスしています。そして、母になってからは“待てる”ようになりました。今までは子どもに「それはダメ」「こうしなさい」と注意していたのが、いろいろ経験させることで本人が学ぶ機会を得られるのかなと徐々に思えるようになっていったんです。子どもも一人の人間として見ることで、距離感をうまく保てるようになりましたね。親子や夫婦関係に悩んでいる講習者もいるんですが、自分の経験を通して寄り添うことを大切にしています。

自分の価値観を問うこと

WWD:SAWAさんがメンタルヘルスを維持するために心掛けていることは?

SAWA:自分自身に問いを持つことを意識して、セルフコーチングを心掛けています。自分がこうやって話している時も考えながら話しているんです。「あの時、この言葉を選んだけれど、どういう気持ちで言ったんだろうか」など、自分の価値観を問うようにしています。人が話している言葉もそのまま受け取るのではなく、一歩引いて、相手の感情をさまざまな視点で考えられるようになり、ぶつかることもなくなりました。

WWD:今後のプロジェクトについて教えてください。

SAWA:モデル業界をサポートすると同時に、後輩たちの目標となれる存在でありたいです。また小・中学生を対象とした“たいわ室”という講習も行っているので、彼らが大人になった時に「自分自身を追い込まずに、誰かに頼ってもいいんだよ」と気づけるようにしてあげたいですね。コーチングを身につけて、心の孤独を持たない子どもたちが増えてくれることを願います。

The post 現役モデルが業界の厳しさや苦悩のケアを目指し異業種参入 SAWAがコーチングを始めた理由 appeared first on WWDJAPAN.

現役モデルが業界の厳しさや苦悩のケアを目指し異業種参入 SAWAがコーチングを始めた理由

 トップモデルとしてキャリアを積んだSAWAが、2021年12月にメンタルメイクコーチング「ゆうなぎ(YOUNaGI+)」を設立した。モデルとして表舞台に立ってきたキャリアと、私生活では母親である経験を生かし、モデルやタレント、そして彼らを支えるマネジャーたちに向けて段階別のコーチングコースを設け、対話を重ねながら受講者の目標達成やメンタルをサポートしている。

 “コーチング”とはコミュニケーション手法の一つ。相手との対話や質問を通して、本来持っている能力や可能性を最大限に引き出し、目標に向けてモチベーションを高めるというもの。さまざまな悩みを抱えている人々に寄り添う彼女に、コーチングを身につけることの大切さや、厳しいモデル業界で苦労したこと、そこから得た気づきなどについて話しを聞いた。

WWD:「ゆうなぎ」をはじめたきっかけは?

SAWA:モデル業は常に自分と向き合っていないといけなくて、現場だけが仕事ではないんです。当時の私は仕事について一日中考えることが当たり前になっていて、心から楽しめていませんでした。楽しむよりも、全力投球で仕事に臨むことにしか目を向けられていなかったんです。あのときにセルフコーチングを身につけていたら、もっと心に余裕が持てて、自分を上手くコントロールしながら楽しめたんじゃないかなと。だからこそ、自分を育ててくれたこの業界で私にもできることがあると思い、「ゆうなぎ」を立ち上げました。自分と向き合うのを辛く感じているモデルたちをサポートすることで、モデルという仕事をもっと楽しんで、自分らしさを見つけてほしいです。

WWD:コーチングに出合ったのはいつですか?

SAWA:不妊治療を経て、無事に生まれてきてくれた長女が重度の食物アレルギーとアトピー性皮膚炎持ちであることが分かったんです。食べられるものが制限されるため、食物アレルギーについて学んではみたものの、なかなか苦労が多くて。育児に悩んでいるときに友人に紹介されたのが子どものコミュニケーション能力を学ぶマザーズコーチング(母親のためのコーチング)でした。スクールを受講して、自分のこれまでの価値観や考え方などが大きく覆されて、そこから学んだことが本当に多かったですね。その体験をきっかけに、よりたくさんの子どもや子育てに悩むママたちの助けになりたいと思い、資格を取りコーチとしての活動も始めました。

孤独と不安に押しつぶされた過去

WWD:コーチングに出合う前、自身もメンタルヘルスへの影響がありましたか?

SAWA:当時の私は精神的に完全に壊れていましたね。接触障害になったり、急に不安や恐怖に駆られたり。うつ病の一歩手前までになったこともありました。モデル業は華やかな印象ですが、実はとても孤独な職業なんです。オーディションに行かないと仕事はもらえないし、仕事が保証されているわけでもありません。オーディションに落ち続けていると、自分自身を否定されている気持ちになることもありましたね。その仕事がダメだっただけなのに、私の全てを否定されているように捉えてしまっていました。

WWD:そんな時、支えてくれたものは何だったのでしょうか?

SAWA:モデルとしての自分を確立できたのは、マネジャーのおかげです。私が悩んだ時に、自分以上にモデルとしての価値や良さを教えてくれました。一番最初のマネジャーに「SAWAにしかないものがある」「SAWAを選んでくれる人はずっとあなたのファンでいてくれる」と言われた言葉に強く背中を押されましたね。自分の可能性を自分以上に信じてくれる人が一人いるだけで、すごく励みになりました。自分一人だと不安になりますが、周りからのエネルギーが加わると、「やるぞ!」という強いパワーを与えてくれるんです。

WWD:厳しいモデル業界を経験して得たことは?

SAWA:私は完璧なモデル体型ではないので、海外でもキャスティングに入るかギリギリなんです。それでもこの業界で勝ち残っていくには、周りや時代に合わせるのではなく、個性を出していくことが一番大事だと気づきました。キャスティングのオーディションでは、会場に入った瞬間からジャッジされることがほとんどなので、その短い時間の中で自分らしさをどう表現するかが重要なんです。だからこそ、若い子たちにもコーチングについて知ってもらい、個性を発揮できるように自分自身と向き合えてもらえるとうれしいです。

WWD:実際にどんな悩みを抱えている人が多いですか?

SAWA:自分で自分の不安の正体が分からず悩んでいる人が多いですね。ゴールが見えない状態でも日々がむしゃらに走り続けて、自分で自分を追い詰めてしまっているんです。そんな彼らの孤独や不安をなくし、本当にやりたいことや個性を理解した上で、課題に向き合うプロセスを提案していきたい。無意識に周りや時代に合わせて自分の中の正解を見つけることよりも、まずは自分が持っている思考癖を理解し、うまく付き合っていくことが大切ですね。

WWD:モデルであり、母であるバッググラウンドを今の仕事でどのように生かしていますか?

SAWA:モデル業を通していろいろなクリエイターやスタッフと関わり、さまざまな価値観や考え方を自然に吸収できたので、多角的な視点を持ちながらアドバイスしています。そして、母になってからは“待てる”ようになりました。今までは子どもに「それはダメ」「こうしなさい」と注意していたのが、いろいろ経験させることで本人が学ぶ機会を得られるのかなと徐々に思えるようになっていったんです。子どもも一人の人間として見ることで、距離感をうまく保てるようになりましたね。親子や夫婦関係に悩んでいる講習者もいるんですが、自分の経験を通して寄り添うことを大切にしています。

自分の価値観を問うこと

WWD:SAWAさんがメンタルヘルスを維持するために心掛けていることは?

SAWA:自分自身に問いを持つことを意識して、セルフコーチングを心掛けています。自分がこうやって話している時も考えながら話しているんです。「あの時、この言葉を選んだけれど、どういう気持ちで言ったんだろうか」など、自分の価値観を問うようにしています。人が話している言葉もそのまま受け取るのではなく、一歩引いて、相手の感情をさまざまな視点で考えられるようになり、ぶつかることもなくなりました。

WWD:今後のプロジェクトについて教えてください。

SAWA:モデル業界をサポートすると同時に、後輩たちの目標となれる存在でありたいです。また小・中学生を対象とした“たいわ室”という講習も行っているので、彼らが大人になった時に「自分自身を追い込まずに、誰かに頼ってもいいんだよ」と気づけるようにしてあげたいですね。コーチングを身につけて、心の孤独を持たない子どもたちが増えてくれることを願います。

The post 現役モデルが業界の厳しさや苦悩のケアを目指し異業種参入 SAWAがコーチングを始めた理由 appeared first on WWDJAPAN.

起業家&カリスマホストROLANDが語る「自己資金でブランドをやる理由」(前編)

 カリスマホストとして知られるROLANDは4月15日、新ブランド「ミニマス(MINIUS)」をスタートする。アパレルではすでに自らの名前を冠した「クリスチャンローランド(CHRISTIAN ROLAND)」を2019年3月にスタートさせていたが、同ブランドのサイトにアクセスすると自動的に「ミニマス」のページに切り替わる。実質的に自らの名前を冠した「クリスチャンローランド」を休止し、全く別のコンセプトでブランドを立ち上げることになる。数々の伝説的なエピソードを持つホストであり、同時にインスタグラムやツイッターなどのSNSの総フォロワー数290万を抱えるROLANDが、なぜアパレルに失敗したのか。新ブランドでは、ウイメンズブランド「ジュエミ(JUEMI)」などのD2Cブランド運営するディーエスエスアール(DSSR)の本間英俊・代表取締役をパートナーに迎え、ブランドと同名のミニマス社を設立。デザイン監修にはメンズブランド「ジュンハシモト(JUNHASHIMOTO)」の橋本淳デザイナーを迎える。美容や飲食などの事業を運営する経営者でもあるROLANDはファッションビジネスをどう見ているのか?二人に話を聞いた。

WWD:なぜ新ブランド「ミニマス」を?

ROLAND:失敗を隠すつもりはないので、わかりやすく言うと「クリスチャンローランド」は敗戦だった。僕なりに全力でいろんなことに向き合ったが、ビジネスとしては失敗だった。ブランドを初めてからこの2年で、自分の服を着てる人を街で見かけたのは、2年間で驚くことに1回しかなかった。

WWD:「クリスチャンローランド」は単なる名前貸しのブランドではなく、自己資金だった?

ROLAND:もし名前貸しだけだったら「ああ、クリスチャンローランド、そんなの昔プロデューサー的にやってましたね」って言えるかもしれませんが、ブランド自体に名前も入っているし、自己資金も入れていた。いずれにしろうまく行かなかった全責任は僕にあります。振り返ってみれば知識や経験が不十分だった。まず第1に、インフルエンサーがアパレルやるときに言いがちなキメ台詞、「自分が欲しいものを作っていきます」っていうやつ。僕が欲しいと思ってるものを、世間はそんなに欲していなかった(笑)。そしてもう一つは、僕が全面的に出すぎることによって、仮にプロダクト自体が良かったとしても、ファングッズのような認識になってしまったこと。加えて、これがかなり大きいと思うのだけど、素人のくせに「アパレルをなめていた」んだな、と。

WWD:どういうことでしょう?

ROLAND:ホストクラブでも、アイドルがホストをするとすごく売れるんです。でもそれって本職の僕らからすると、内心は面白くないですよね。泥水すすりながら新人のときはトイレ掃除をして、先輩のヘルプをして勉強しながら這い上って、やっと日の目を浴びて、売り上げを上げられるようになってきたのに、超パワフルなインフルエンサーが来ると、リスペクトなく、業界を荒らすみたいな感覚になる。僕も同じこと、それに近いことを、インフルエンサーとして、アパレル業界に対してやってしまったら、やっぱり受け入れてくれないよなと。僕は自分なりに、パタンナーの方や取引先の方と熱を持って話をしていたつもりだけど、先方は僕に対してそこまでの温度感をなかなか持ってもらえないときもあった。でも当然ですよね。やっぱり心のどこかで自分がインフルエンサーで、これだけのフォロワーやファンがいれば、なんとかなると思っていたんです。

WWD:ミニマス社の代表取締役は本間英俊氏で、所在地も本間氏が代表を務めるDSSRのオフィスになる。ROLANDはどういう立場なのか。

本間:僕も出資していますが、ROLANDさんが筆頭株主であり、実質的なオーナーです。

ROLAND:「クリスチャンローランド」の失敗を踏まえ、誰がどういった役割で何をやるか、どういった座組がベストなのか、自分なりにかなり考えましたし、本間さんとも話し合いました。最終的には僕が一番責任がある立場であると同時に、任せるべきところは全部任せる。業務でいうと僕が担う業務は5%くらいで、95%くらいはプロの人達に任せようと。デザイン監修は、メンズデザイナーの重鎮である「ジュンハシモト(JUN HASHIMOTO)」のハシモトジュンさんに担っていただいてますし、売り方や販売戦略みたいなところは本間さんにお任せしています。二人ともプロ中のプロで、私が口を出す必要はない。ECサイトのモデルとしても、私は出ません。私が出ることでファングッズになるリスクがあるからです。

WWD:ではどういった役割を?

ROLAND:ブランドの方向性やコンセプトは僕自身が出しますし、最終的な商品の仕上がりも見ています。できるだけプロにおまかせしつつ、最終的な責任は私にある、そういった座組みですが、僕のイズムが全く反映されずにお金だけ投げてる出資者っていうようなものではない。これは言っておきたいのですが、例えば不祥事だったり、業績が良くなかったり、それらはすべて僕の責任です。名義貸しではないということです。

WWD:新ブランド「ミニマス」はアクティブファッションブランドと銘打たれていますが、どんなブランドでしょうか。

ROLAND:基本的なコンセプトは自分で決めたのですが、まずブランドパーパスとして「多くを持たない。消費するのではなく、一着を身につけ続ける」というメッセージを掲げています。わかりやすくいうと、日本人の質問の代表的なものに、無人島に例えたものがありますよね。僕が「無人島になにか1つ着ていくとしたら、何がいいですか」っていう質問をされたときにどう答えるか考えました。機能性でいったらアウトドアブランドなんでしょうけど、ギアに振ったものってシルエットがダボついたものが多くて。ヘリコプターでいきなり救助されて、めちゃくちゃカメラに抜かれたときに「こいつめちゃくちゃ暖取りに行ってるな~」と見えそうな、全然かっこよくない服を着るのは嫌なんですよ。かといって、エディ・スリマンが作ったようなタイトな服を着て、木の実を採りに行きたくないじゃないですか。それ着て魚は獲れないし、焚き火もできない。だから、エレガントさの中に、機能的なギア的な要素をミックスして、というものがあったら、僕は無人島に一着、それを着ていきたいなと思えるんですよね。デザイン性だと、おそらくハイブランドには勝てない。機能性でいくと、やっぱりギアに振ったアウトドアブランドには勝てない。ただふたつをミックスさせたら勝機があるんじゃないのかなと。ギアに振りすぎず、かつデザインに振りすぎない、とにかくシンプルなものです。

本間: ROLANDさんから、昔は着飾ることを重視していたけど今は引いていくことに美学を感じていると伺ったときに、どうやったらそれを服で実現できるかを考えました。ROLANDさんの世界観を表せるデザインの筆を取れるのは、橋本さんしかいないだろうとと、お願いに行きました。橋本さんももともとミニマルな世界がお好きなのでROLANDさんとお話が合ったんですよね。それで、橋本さんとスポーツウェアに使うような機能素材を使って、どうエレガントにできるか、素材探しから徹底的に行いました。

ROLAND:相当こだわってくれたと思います。素材の部分では、やっぱり良質なものにこだわりったことで、90%くらいは日本製の生地になった。

WWD:途中経過に関してあまり口を挟まないようにしていたということだが、上がってきたものを見てどうだったのか?

ROLAND:やっぱり専門家すげえな、と(笑)。バーバリーのトレンチって襟がアイコニックで、立たせるためにわざとステッチを入れてますよね。このジャージトップスも、襟の後ろに飾りのファスナーをつけることで、襟がしっかり立つようにしている。プロじゃないと思いつかないアイデアが散りばめられている。そして、もちろん普通にかっこいい。今着ているこのジャケットも、形はスーツだけどジャージー素材なのでジムにも行ける。ベンチプレスもできるし、ジョギングもできるくらいの吸水速乾素材を使っています。

本間: ROLANDさんと打ち合わせすると、基本は全部引いてくるので、服がすっごいシンプルになるんですよ。

ROLAND:ロゴ入れる位置も、最初はフロントにみたいな話もあったんだけど、橋本さんと色々話して、肩に同系色でできるだけさりげなく入れるのがかっこいいというアイデアをいただいて。

本間:どんどん引き算するので、放っておくとロゴもなくていいみたいな(笑)。それはさすがに目立たなくてもいいので入れてくださいとこちらからお願いしたり。

ROLAND:削ぎ落としていくのって、僕自身は好きなんすけど、難しいですね。足していくよりも全然難しい。

本間:逆に足すというポイントで言えば、ROLANDさんはサッカーをやるので、スパイク履いたまま脱ぎ着できるようにジャージパンツの裾にファスナーをつけたいって言ったんですよね。

ROLAND:あ、95%おまかせしていましたが、そこは5%の僕のこだわりです(笑)。

WWD:今売り方は?

ROLAND:常設の店舗を作りたいっていうのは今のところは頭にはない。EC中心で考えています。

本間:主にはD2C型という形ですね。あとはポップアップストアはやっぱり魅力の一つなんじゃないかなと思ってるんで、いいデベロッパーさんだったり、いい箱があれば、ぜひやりたい。

WWD:ライブコマースは?

ROLAND:時代に適した売り方ではあるなと思うので、選択肢のひとつとして興味はありますね。ただ、前回の反省の一つが「自分が出過ぎない」ってところなので、バランスを見ながら、と思っています。多数のフォロワーを抱えるSNSは強力な武器なので、そうした発信のところで出し惜しみするつもりはないですし、写真はモデル撮影の時に私の分も撮っていて、それは使っていくつもりです。いずれにしろ、やり方は決めつけず、様子を見ながら変えていこうとも思っています。

本間:やっぱりROLANDさんの持っているSNS合計290万人というは圧倒的なメディア。だからこそ、ブランドのメッセージやパーパスを、SNSを通じて丁寧に発信していきたい。お客様が望む限り製品を修理して使い続けられるシステムや、身体のサイズに合わせた補正、着なくなったアイテムの買取クーポンの発行、そのアイテムにメンテナンスを施したリバイバル商品の販売など、ブランドとしてのお約束も、予めきめ細かく決めています。

ROLAND:「ミニマス」は極めてシンプルで、一見してわかりやすいデザインではないので、何もしないと、そういうシンプルなものが好きな人にしか買われないかもしれない。でもSNSを通じて、現時点ではそういうものに興味ない人にも、メッセージを伝えられる。幸い芸能系の仕事もしているので、ブランドのパーパスが合っている方へのギフティングはする予定です。やっぱり手にとってもらわないと伝わりにくい服なので。アスリートが多くなるのかなと思っています。

本間:あと、ROLANDさんのメディア力で、実は海外にもすごく可能性を感じています。ROLANDさんの本は台湾でもベストセラーになっていて、日本と海外合わせて累計40万部も売れている。これはやっぱりSNSならではの強力な武器になる。なのでミニマスは最初から、海外対応をやっていきます。今の日本のアパレルだと、ゴルフウェアくらいしかあまり盛り上がっていないので、機能的でエレガントな服は可能性がある。

WWD:ROLANDさんのSNSの海外フォロワーの割合は?

ROLAND:正確にはわかりませんが、例えば今はフォロワー60万人くらいのInstagramで言うと、1割ぐらいは中国語圏の印象です。YouTubeコメントとかもかなり多いっていう話も聞きますね。なので東アジア圏とか、あとこんまりさんとかのライフスタイルがアメリカでヒットしたっていうのも、やっぱりアメリカも「大量消費、大量生産」なところに、少なからず疲弊している部分と思うので「ミニマス」のコンセプトはけっこう海外の方も共感してくれるんじゃないかな、というワクワク感がありますね。

The post 起業家&カリスマホストROLANDが語る「自己資金でブランドをやる理由」(前編) appeared first on WWDJAPAN.

数多くのセレブのレッドカーペット衣装を手掛けてきたジョルジオ・アルマーニ レディー・ガガの衣装などについて語る

 レッドカーペットイベントや授賞式がリアルに戻った今シーズン、多くのセレブは久しぶりに華やかな衣装を身に纏い、スポットライトを浴びる場を楽しんだ。中でも今季はクリステン・スチュワート(Kristen Stewart)が着用した「シャネル(CHANEL)」のショートパンツやアリアナ・デボーズ(Ariana DeBose)の「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のパンツといった目を引く衣装から、従来の豪華なボールガウンといったハリウッドらしいルックがレッドカーペットを占めた。肌の露出度が高いような衣装はあまり多く見られず、レッドカーペットにエレガンスが戻ったといっても過言ではないだろう。

 このトレンドをまさに体現したのがアカデミー賞授賞式でのニコール・キッドマン(Nicole Kidman)やグラミー賞授賞式のレディー・ガガ(Lady Gaga)だ。2人とも「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ(GIORGIO ARMANI PRIVE)」のカスタムガウンを着用した。2人の個性に合わせ、テイストもデザインも異なる衣装は、デザイナーのジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)のデザインの幅広さを物語った。

 トニー・ベネット(Tony Bennett)との曲「ラヴ・フォー・セール(Love For Sale)」で最優秀トラディショナル・ポップ・ヴォーカル・アルバム賞受賞を受賞したレディー・ガガは、ホワイトのスカートがウエストに巻かれたブラックのワンショルダーのシルクガウン姿で登場した。一方、映画「愛すべき夫妻の秘密(Being the Ricardos)」でルシール・ボール(Lucille Ball)役を演じ、主演女優賞にノミネートされたニコールはパステルブルーのシルクガウンをチョイス。ペプラムスカートと大ぶりなリボン、ゴールドのクリスタルをあしらったエレガントなドレスだ。

 米「WWD」は、ジョルジオ本人にレッドカーペットのトレンドや影響力ある女性の衣装を手掛けること、自身のデザインを着用したセレブを見た時の感動などについて聞いた。

WWD:クラシックなスタイルがレッドカーペットに戻ったと思う?それは昔ながらのハリウッドらしいスタイルなのか、もしくは言葉通りのクラシックなスタイル?

ジョルジオ・アルマーニ=デザイナー(以下、アルマーニ):はい、ハリウッドの黄金期を連想させるような、ドラマチックで煌びやかなグラマラスさが戻ってきている。私がキャリアを始めた頃と真逆なトレンドだ。ファッショントレンドは循環するもので、必ず何年かに1回戻ってくるからね。今は誰しもがSNSでスーパースターになれる中、みんなが大胆な夢を抱き、輝ける時代。だからこそ本当のスターたちはさらに輝かなければならない。彼らのスタイルをフォローすることはとてもワクワクすることだ。

WWD:ニコール・キッドマンとレディー・ガガは全く異なる性格の持ち主だが、2人とも授賞式で着用した衣装は素晴らしかった。彼女たちに共通するファッションのメッセージはあるのか。

アルマーニ:確かにニコールとレディー・ガガは全く違う女性だが、共に「アルマーニ」ウーマンであり、ファッションに大きな興味と熱量を抱いている。2人はドレスに負けることなく、自分らしく着こなせる。だからどれだけ華やかでゴージャスな衣装を着ても、個性が埋もれてしまうことなく、自分らしさが際立つのだ。

WWD:2人の衣装をデザインする際にこだわった点は?彼女たちから何かリクエストはあったのか?

アルマーニ:私が作る全てのドレスは、必ず会話から生まれる。着る人の要望に耳を傾け、それをデザインに反映する。2人は今、キャリアにおいて重要なステージに立っている。そこで、彼女たちの美しさや功績を讃えるようなドレスを作りたかった。また2人ならではの女性らしさも表現すべく、エレガントで品のあるニコール、色気のあるレディー・ガガを際立たせたかった。カラーパレットやデザインに関しては、ニコールには絵画的なもの、レディー・ガガにはグラフィカルなものを提案し、2人とも最初から気に入ってくれた。

WWD:自分でスケッチした衣装がレッドカーペットでセレブが着用しているのを見た時の感情はどのようなもの?人それぞれ立ち方だったりパーソナリティーがあったりするので、それも加味してデザインをする?

アルマーニ:ドレスは単体では動きのないもの。誰かが着て初めて命が吹き込まれ、その人その人のパーソナリティーにに合わせて動く。コレクションをデザインするときは特定の女性をイメージすることはないが、レッドカーペットは着る人のアティチュードや姿勢を知っているので、そういった要素をデザインに落とし込む。今でも自分が作ったドレスが、セレブが着用することによって生き生きと輝く瞬間を見ると、毎回感動するよ。

WWD:レッドカーペットのデザインはどのように進化してきた?

アルマーニ:時代に合わせて自分のスタイルも年々進化してきた。これまで、従来のグラマラスさに近いスタイルを自分のレンズを通してたくさん表現してきた。私は引き算をしたエレガンスが好きで、“やりすぎた”派手なグラマーは耐えられない。しかし派手なデザインやグラマラスさも上手に取り入れれば、素敵なクリエイションを生み出すことができる。その絶妙なバランスは面白いと思う。

WWD:衣装を手掛けた女優で驚いたことはある?

アルマーニ:予想外なディテールや気づきは必ずある。たとえば女優の歩き方だったり、見た目だったり。毎回何かしらサプライズはあるけれど、それもこの仕事の魅力の一つだと思う。

WWD:レッドカーペットは、今でも世間の憧れであり続けると思う?

アルマーニ:今も憧れではあるが、もしかしたら昔とは少し違う意味合いかもしれない。今はみんな、(SNSなどで)日々大量のニュースや写真を目にする。そんな中でレッドカーペットがハリウッドの全てではなくなったが、あの華やかさや雰囲気を真似できるイベントはないだろう。レッドカーペットの写真や記事はセレブやブランドへの憧れや興味を高め、たくさんの話題を生み出す。ポップカルチャーにはなくてはならない存在で、ファッションの重要性を物語る。

The post 数多くのセレブのレッドカーペット衣装を手掛けてきたジョルジオ・アルマーニ レディー・ガガの衣装などについて語る appeared first on WWDJAPAN.

数多くのセレブのレッドカーペット衣装を手掛けてきたジョルジオ・アルマーニ レディー・ガガの衣装などについて語る

 レッドカーペットイベントや授賞式がリアルに戻った今シーズン、多くのセレブは久しぶりに華やかな衣装を身に纏い、スポットライトを浴びる場を楽しんだ。中でも今季はクリステン・スチュワート(Kristen Stewart)が着用した「シャネル(CHANEL)」のショートパンツやアリアナ・デボーズ(Ariana DeBose)の「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のパンツといった目を引く衣装から、従来の豪華なボールガウンといったハリウッドらしいルックがレッドカーペットを占めた。肌の露出度が高いような衣装はあまり多く見られず、レッドカーペットにエレガンスが戻ったといっても過言ではないだろう。

 このトレンドをまさに体現したのがアカデミー賞授賞式でのニコール・キッドマン(Nicole Kidman)やグラミー賞授賞式のレディー・ガガ(Lady Gaga)だ。2人とも「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ(GIORGIO ARMANI PRIVE)」のカスタムガウンを着用した。2人の個性に合わせ、テイストもデザインも異なる衣装は、デザイナーのジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)のデザインの幅広さを物語った。

 トニー・ベネット(Tony Bennett)との曲「ラヴ・フォー・セール(Love For Sale)」で最優秀トラディショナル・ポップ・ヴォーカル・アルバム賞受賞を受賞したレディー・ガガは、ホワイトのスカートがウエストに巻かれたブラックのワンショルダーのシルクガウン姿で登場した。一方、映画「愛すべき夫妻の秘密(Being the Ricardos)」でルシール・ボール(Lucille Ball)役を演じ、主演女優賞にノミネートされたニコールはパステルブルーのシルクガウンをチョイス。ペプラムスカートと大ぶりなリボン、ゴールドのクリスタルをあしらったエレガントなドレスだ。

 米「WWD」は、ジョルジオ本人にレッドカーペットのトレンドや影響力ある女性の衣装を手掛けること、自身のデザインを着用したセレブを見た時の感動などについて聞いた。

WWD:クラシックなスタイルがレッドカーペットに戻ったと思う?それは昔ながらのハリウッドらしいスタイルなのか、もしくは言葉通りのクラシックなスタイル?

ジョルジオ・アルマーニ=デザイナー(以下、アルマーニ):はい、ハリウッドの黄金期を連想させるような、ドラマチックで煌びやかなグラマラスさが戻ってきている。私がキャリアを始めた頃と真逆なトレンドだ。ファッショントレンドは循環するもので、必ず何年かに1回戻ってくるからね。今は誰しもがSNSでスーパースターになれる中、みんなが大胆な夢を抱き、輝ける時代。だからこそ本当のスターたちはさらに輝かなければならない。彼らのスタイルをフォローすることはとてもワクワクすることだ。

WWD:ニコール・キッドマンとレディー・ガガは全く異なる性格の持ち主だが、2人とも授賞式で着用した衣装は素晴らしかった。彼女たちに共通するファッションのメッセージはあるのか。

アルマーニ:確かにニコールとレディー・ガガは全く違う女性だが、共に「アルマーニ」ウーマンであり、ファッションに大きな興味と熱量を抱いている。2人はドレスに負けることなく、自分らしく着こなせる。だからどれだけ華やかでゴージャスな衣装を着ても、個性が埋もれてしまうことなく、自分らしさが際立つのだ。

WWD:2人の衣装をデザインする際にこだわった点は?彼女たちから何かリクエストはあったのか?

アルマーニ:私が作る全てのドレスは、必ず会話から生まれる。着る人の要望に耳を傾け、それをデザインに反映する。2人は今、キャリアにおいて重要なステージに立っている。そこで、彼女たちの美しさや功績を讃えるようなドレスを作りたかった。また2人ならではの女性らしさも表現すべく、エレガントで品のあるニコール、色気のあるレディー・ガガを際立たせたかった。カラーパレットやデザインに関しては、ニコールには絵画的なもの、レディー・ガガにはグラフィカルなものを提案し、2人とも最初から気に入ってくれた。

WWD:自分でスケッチした衣装がレッドカーペットでセレブが着用しているのを見た時の感情はどのようなもの?人それぞれ立ち方だったりパーソナリティーがあったりするので、それも加味してデザインをする?

アルマーニ:ドレスは単体では動きのないもの。誰かが着て初めて命が吹き込まれ、その人その人のパーソナリティーにに合わせて動く。コレクションをデザインするときは特定の女性をイメージすることはないが、レッドカーペットは着る人のアティチュードや姿勢を知っているので、そういった要素をデザインに落とし込む。今でも自分が作ったドレスが、セレブが着用することによって生き生きと輝く瞬間を見ると、毎回感動するよ。

WWD:レッドカーペットのデザインはどのように進化してきた?

アルマーニ:時代に合わせて自分のスタイルも年々進化してきた。これまで、従来のグラマラスさに近いスタイルを自分のレンズを通してたくさん表現してきた。私は引き算をしたエレガンスが好きで、“やりすぎた”派手なグラマーは耐えられない。しかし派手なデザインやグラマラスさも上手に取り入れれば、素敵なクリエイションを生み出すことができる。その絶妙なバランスは面白いと思う。

WWD:衣装を手掛けた女優で驚いたことはある?

アルマーニ:予想外なディテールや気づきは必ずある。たとえば女優の歩き方だったり、見た目だったり。毎回何かしらサプライズはあるけれど、それもこの仕事の魅力の一つだと思う。

WWD:レッドカーペットは、今でも世間の憧れであり続けると思う?

アルマーニ:今も憧れではあるが、もしかしたら昔とは少し違う意味合いかもしれない。今はみんな、(SNSなどで)日々大量のニュースや写真を目にする。そんな中でレッドカーペットがハリウッドの全てではなくなったが、あの華やかさや雰囲気を真似できるイベントはないだろう。レッドカーペットの写真や記事はセレブやブランドへの憧れや興味を高め、たくさんの話題を生み出す。ポップカルチャーにはなくてはならない存在で、ファッションの重要性を物語る。

The post 数多くのセレブのレッドカーペット衣装を手掛けてきたジョルジオ・アルマーニ レディー・ガガの衣装などについて語る appeared first on WWDJAPAN.

ファストリ柳井正会長が語った「ウクライナ紛争」「企業のあるべき姿」「成長の次の一手」

 「本気で次の成長を目指す」「企業こそが平和を作る」。ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は4月14日、2022年8月期上期決算会見に登壇した。決算会見の場で半年ごとに行われる柳井会長のプレゼンテーションは、同社が今後長期的に何を目指すのか、なぜそう考えるのを知るための絶好の機会だ。コロナによる足踏み状態から次の一手へ。柳井会長のプレゼンテーションとメディアとの一問一答をまとめた。

 柳井正ファーストリテイリング会長兼社長(以下、柳井):ファーストリテイリングとして今何が最も大切だと考えているのか、今後どのような考え方で経営を進めていくのかをお話します。新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、一部の国や地域では今も拡大傾向にありますが、日本を含め多くの国では感染拡大に警戒しつつ、正常な経済活動や日常生活を取り戻そうとしています。これからは、いよいよウィズ・コロナの時代に入っていきます。この2年間、お客さまや従業員の感染防止、国内外の移動制限、物流の混乱といったことが影響し、ビジネスを思い通りに進められない状況でした。しかし、今からは新しい時代に向けて、改めて今期は新しい成長を目指していきます。

 今年の年頭、私はファーストリテイリンググループの一年の方針を「世界で稼ぐ」としました。私たちがお客さまに提供している“LifeWear”、つまり快適で豊かな生活を実現する高品質な日常着を、世界中のさまざまな国と地域で、現地の人々と一緒に作って売っていく、この姿勢をより徹底していきます。コロナの影響で、世界各地での新規出店ペースは落ちていましたが、今期から積極出店を再開し、近い将来に年間で400〜500店を作りたいと思います。

 同時に店舗とECの融合を世界各地で高いレベルで実現していきます。工場、倉庫、店頭の全ての在庫を一元化し、商品の企画から生産、物流、販売の動向、お客さまのご意見や要望、あらゆる情報を瞬時に把握し、それをもとに世界各地域のヘッドクオーターが現場で直接経営判断をしていく体制を構築します。そして、世界各地で集めた情報に基づき即座に商品化し、優れた技術を持つ世界中の生産パートナーと協力して新たな売れ筋商品を開発していきます。

 今月21日、英ロンドンのリージェントストリートに、「ユニクロ(UNIQLO)」と「セオリー(THEORY)」が同居する欧州で初の店舗がオープンします。今後、イタリアやスペイン、ドイツでも出店していきます。アメリカや東南アジアでも、中国と同様に服の分野で圧倒的なトップ企業となり、世界ナンバーワンのカジュアルウエア企業を今期で目指します。そのためのカギを握るのは人材です。世界各地で今後の会社の経営を任せられる人材が次々と育ち、私の経営を引き継ぐ次代の体制も大枠は固まってきています。世界各地で圧倒的な成長を成し遂げるために、立派に経営を遂行できる体制が整いつつあります。その点、私は何も心配しておりません。

あらゆる戦争に強く反対する

 企業の最大の意義は継続にあります。10年後、20年後、30年後、さらに次の世代まで見据える経営をする。それが本当のガバナンスであると思います。そして、上場企業の最大の目的は成長して収益を上げることです。目先の会計年度ばかりを考えて近視眼的な経営に陥らず、良い意味でのオーナーシップを維持し、より高い利益を上げ、株主の利益を守ります。少数株主の利益にも、引き続き十分な配慮をして参ります。そのために一番大切なことは、企業とは世の中にとって良いことをする存在でなければならないということです。

 まず、私たちの本業である服の事業を通じて、世界中のあらゆる人々により快適で豊かな生活を実現する。このことを徹底的に実現していきます。さらにサプライチェーンにおける人権や労働環境の尊重、気候変動などの地球環境問題、障がい者雇用、難民支援といった世界的な問題解決への取り組みを、より積極的に進めます。

 現在、ファーストリテイリングは世界27の国と地域に3500店舗以上を展開し、中国やアジアを中心に数多くの国々に生産パートナーも存在します。こうした地域では、現地のパートナーと一緒になって、多くの社員がボランティアとして社会貢献活動に参加し、現地社会に溶け込んでいます。しかし、こうした活動はまだ十分ではなく、出発点に立ったばかりですが、今後さらに力を入れていきます。

 私はあらゆる戦争に強く反対します。人々の人権を侵害し、平穏な生活を脅かすいかなる攻撃も非難します。現在行われている戦争を即座に停止し、国家間の深刻な対立をいかに解消し、どうすれば平和な世界ができるのか、世界中の人々が幸せに暮らすことができるのか、真剣にその方法を考えなければなりません。特に、日本はその役割を積極的に担うべきだと考えます。その点で企業の果たすべき役割は非常に大きいものがあります。企業にできることは限りがあるのではなく、企業にしかできないことがたくさんある。そう考えるべきです。暴力で解決できることは何一つありません。憎しみあって対立構造を作るのではなく、世界の人々が協調する。そのために企業としてできることを最大限やる。国が分断されても、企業は分断されません。むしろ分断を解消し、お互いの理解と融合を深めるのが企業活動です。

国ではなく、企業にしかできないことがある

 私たちの服の産業は平和産業です。人々の暮らしをより豊かに、楽しく、快適にする産業です。私たちの使命は、快適な普段着を継続的に人々に提供することにあります。現在のように混迷した状況にあっても、平和な社会の実現のために、一つ一つの企業、一人一人の個人が最大の努力をするべきです。そのために、私たちは世界各地で安定的に事業を継続し、経済の成長、雇用の確保に努力すると共に、緊急事態に対応するため、国連難民高等弁務官事務所を通じて(ウクライナ避難民支援のために)1000万米ドルの寄付を行い、20万点の衣料を提供しております。欧州各地で、多数の従業員有志がウクライナからの避難民の方々に直接日常の服をお届けする活動を始めています。戦火に見舞われている方々の境遇に深く思いを寄せ、今後も最大限の支援を続けていきます。

 平和は黙っていてもやってはきません。世界が一つにつながっている現代、戦争は違う国のことだから、自分は民間人だから、と傍観者になることはできません。服を変え、常識を変え、世界を変えていく。私たちの提供する“LifeWear”、そしてその基本となる“MADE FOR ALL”の核心は、服を通じて社会を変え、より良い社会を作っていく、そのこと自体にあります。平和な世界が実現しない限り、グローバルな企業として私たちが成長することは不可能です。冒頭に申し上げた世界ナンバーワンも、それでは何の意味も持ちません。

 私たちはこれまでの活動を通じて、国連難民高等弁務官事務所、国連女性機関、国際労働機関などの国際機関と長い協力関係があります。さらに、社会貢献を目的に活動する各国の民間団体、法人、世界中の心ある投資家の方々とも連携できる関係にあります。豊かで安定した社会の実現を他人任せにするのではなく、世界中のあらゆる人々との協働を通じ、自分たちの力で未来を作り出す、そのような考え方に立って今後も行動していきます。

 厳しい現実があっても、人類は必ず混乱を克服し、新しい平和で繁栄した時代がくると私は確信しております。アジアを中心に40億人の新たな中産階級が誕生しつつあります。この動きは止まることはありません。世界は確実にアジアの時代になります。発展途上国と先進国が協力し、その流れを促進し、人々の生活をより良くする、自国の都合のみを考えた国益ファーストではなく、本当の自由主義、民主主義の世界を実現する主役は、企業であり個人です。改めて、自分たちは何のために商売をするのか、企業の存在意義とは何か、自分たちの原点を深く考え、より平和な世界とより良い生活の実現に努力して参ります。今後ともご理解とご協力をお願いします。

【質疑応答】

――ウクライナ紛争など、世界情勢を今どのように見ているか。ファッション企業が何をすべきか。ファーストリテイリングには何ができるのか。

柳井:今の状況は危機的だと思いますが、世界の全てがそういうこと(悲観すべきもの)ではなく、欧州で起きたことが全世界に瞬時に伝わっているということは、(見方を変えれば)素晴らしいことでもある。ある一カ所で起きたことが世界中に瞬時に伝わり、世界中に影響を及ぼしている。そのことを世界中の人がもっと認識すべきだと思います。それぞれの役割と本質が問われる時代になっている。民間企業だから(支援が)できない、個人だからできない、ということではないと思っています。むしろ国だと国益が影響して、やりたくてもできない。民間企業や個人の方がむしろ自由にできる。ここは自由と民主主義の国ですから。その中で、本当にやってやろうと思っている企業や個人が少ないんじゃないかと思っています。

 日本は欧州から見たら極東、アメリカから見たら極西です。だからこそなんでもできるんじゃないか。日本はアジアで最初に先進国になった国ですし、ファッションにおいてもアジアで最初になった(産業や文化として成熟した)国だと思います。戦前は欧州、戦後はアメリカからファッションが入ってきて、それをうまく消化したのが日本。日本ほど情報に敏感な国はありません。日本の企業だからこそいろんな発想がきっとできると思うし、ファッション企業だからどうのということではなく、企業として個人として、できないことを考えるよりできることを考えて実行することが大事だと思っています。(ファーストリテイリングとして)できないことは何もないです。どんなことでもできると思います。日本には国益やアメリカとの軍事同盟など、いろんなものがある。国にはやりたくてもやれないことがあると思います。

――今後の価格戦略について。今春物は一部商品で値上げをしているが、今後の値上げをどう考えているか。

柳井:今の日本の経済情勢から考えて、安易な値上げはできないと思います。価格に非常に敏感ですよね。われわれは値上げはほとんどの商品でしていませんが、ほとんどしていない中でも「これは値上がりした」という情報はすぐに伝わります。それが今の現状です。ただし、原材料価格が2倍や3倍になっているなっているケースもある中で、それを今のままのプライスで売ることは不可能です。われわれも上場企業ですから、成長を目指していく中で利益がなければできません。それをどううまく努力していくか、それを考えて実行していく。ビジネスは会計年度やシーズンで考えるものではなく、もっと長期で考えるものです。2022-23年秋冬物、23年春夏物は考えに考えぬいたプライスになる。それが私の答えです。

――今後も値上げはやむを得ないということか。

柳井:やむを得ないということではないんじゃないでしょうか。考えに考え抜いたプライスならば、お客さまにご理解していただけると思います。

――中国のゼロコロナ政策が事業に与える影響は。

柳井:われわれも収益面や従業員の生活で大変困っています。しかしこれは国の政策なので、それぞれの国によって考え方は違います。やはりまずはコロナが早く収束すること、それが一番大事で、世界中で同時に(コロナに)対応していくことが重要だと考えています。

岡崎健取締役グループ上席執行役員CFO(以下、岡崎):中国の行動規制が今後どうなるかについては、我々がコントロールできることではありません。上海港からの出荷が難しくなるなど、個別の問題は出てきています。しかし起きている問題は仕方がないことなので、他の港から出荷するなどしています。中国は行動規制により休業している店もありますが、それがない地域ではかなり売り上げも戻っています。規制が明ければ経営も回復してくると思っています。短期的な業績の影響はもちろんありますが、下期全体としてはそれほど大きな心配はしていません。

――ロシアの店舗について、営業継続から一転して休業に至った経緯は。

柳井:あらゆる状況を見極めて判断しないといけません。さまざまな面で事業継続が困難になったから休業しました。商品が届かない、紛争が非常に激しくなった、さまざまな面があり、総合的に判断して休業に至ったということです。

岡崎:当初は状況を注視しながら、我々の使命である一般の方に日常着を提供すること、現地従業員の雇用という面でも営業はでき得る限り継続するというのが我々のスタンスでした。しかし、その後状況を注視する中で紛争が進み、人々の平穏な日常が脅かされるということで、営業を継続するべきではないと判断しました。

――営業休止の決定が遅れたと思っているか。

柳井:遅れてはいないと思います。皆さん勘違いされているんじゃないかと思いますが、今はいつでもどこでも誰とでも、テレビ会議で話ができる時代です。現地の状況、世界各地の状況は全て分かっています。ですから遅れるということはあり得ません。

――円安について。円安のメリットとデメリットをどう考えるか。

柳井:円安にメリットは一切ありません。日本全体から見てデメリットばかりです。今まで円安メリットといったことを言っていたのは、企業ばかりですね。しかも、それも本当のところではメリットではない。日本は世界中から原材料を仕入れて、加工して付加価値を出して売っています。そういう中で、自国通貨が安く評価されることは決していいことではありません。円安の行方については心配しています。これ以上円安が続くと、日本の財政が悪い方向にいく。そうならないように日本の財政をどうにかしないといけないんじゃないかと考えます。

The post ファストリ柳井正会長が語った「ウクライナ紛争」「企業のあるべき姿」「成長の次の一手」 appeared first on WWDJAPAN.

TikTokフォロワー420万のTakumaが新ブランド 「世界中のみんなに着てほしい」

 モデルであり、アパレルブランド「エスピナ(ESPINA)」を運営するTakumaが、ノットイコールの支援で新ブランド「アビセア(ABYSSEA)」を今春立ち上げた。同氏がデザインを手掛けた第1弾のアイテムを、ラフォーレ原宿でのポップアップストアで4月29日に発売する。Takuma はTikTokフォロワー約420万、インスタグラムフォロワー約75万(2022年4月8日現在)を抱えるインフルエンサーでもあり、ミステリアスな佇まいや鍛え上げられた肉体で、国内外の多くのファンが注目。公式SNSのコメント欄は多様な言語でにぎわっている。美意識の高い同氏が作る服には、どのようなこだわりがあるのか。本人に聞いた。

WWD:「アビセア」のデビューコレクションはどんな思いを込めてデザインした?

Takuma:一発目なので、無駄なものを取り払って、差別や片寄った偏見をなくしたいというメッセージを込めたんです。これから発表し続けていく中で今回のアイテムは基本になっていくので、ミニマルなデザインにしました。ここから徐々にアレンジしていくと思います。

WWD:特にこだわった点は?

Takuma:今までにないものを作りたかった。例えばジーンズはストレッチの効いた素材を使ってるんですけど、それでダメージ加工するのってすごく難しい。クレームが届いたりB品が出てしまうことも珍しくないので、工場からNGが出ることが多いんです。でも今回はどうしても作りたかったので、あえて難しい素材を使うことにしました。

WWD:以前から運営しているアパレルブランド「エスピナ」とはどう違う?

Takuma:「エスピナ」はファンのために作っている服で、「アビセア」は自分が作りたい服という感覚。インフルエンサーが服を作って売るだけなら、ただ人気をお金に変えているだけなんじゃないかってふと思ったんです。であれば、その発信力を社会貢献に役立てたい。だから「アビセア」の服を通して、社会が良くなるメッセージを発信していきたいんです。だからハンガーは廃材で作り、タグは紙製にして、洗濯したらボロボロになるかもしれないけど、それも味として楽しんでほしい。

WWD:生産背景は?

Takuma:全て日本生産です。価格帯はTシャツで1万円前後、パンツで2万円前後、ジャケットで2〜4万円前後と安くはなく、若いファンは買いづらいかもしれない。でも無理して工場に負担をかけたくなかったし、それでもファッション感度の高い人に着たいと思わせる服作りに挑戦したかったんです。

WWD:「アビセア」の今後の目標は?

Takuma:最終的には、世界中のみんなに着てほしい(笑)。やっぱり着る人によってそれぞれの良さが出るから、いろんな人が着ているブランドのほうがおもろいんですよね。だから「アビセア」が、男の子も女の子も、おじいちゃんもおばあちゃんも着ているようなブランドになったらいいなと思います。

大切なのは、
トレンド感と自分らしさのバランス

WWD:SNSを始めたときから意識してきたことは?

Takuma:最初から意識していたのは、自分の軸を持ちながら、トレンドのインフルエンサーを表面的にまねることです。インフルエンサーにもトレンドがあって、時代に個性が合致してフォロワーが一時的に増えても、半年くらいすると伸び悩んだり減ったりするんです。それを見ていて、もったいないなって。

 でも、トレンドばかりを追いすぎると一時的なファンしかつかんから、トレンド感と自分らしさのバランスは大事にしてたんです。それがうまくいって、インスタグラムのフォロワーは始めて半年で2万、1年経ったころには10万くらいになりました。

WWD:モデルとして表舞台に立つのと、作り手として裏方に回るのはそれぞれどんな楽しさがある?

Takuma:モデルしているときはちょっとナルシストになれます。自分をかっこいいなと思えたり、こういうのも似合うんやって気付きがあったり。新しい自分に出合える楽しさがありますね。

 でも、僕は裏方のほうが好きかな。作っているときは、自分が手掛けたものが世に出たとき、どんな反応が返ってくるかや、どれだけ反響があるかを考えながらやっているので、それも楽しいです。

WWD:自分にはどっちが向いていると思う?

Takuma:今はインフルエンサーとデザイナー半々ですが、ゆくゆくはデザイナーを本業にしたいですね。でも、今後もインフルエンサーとして発信すべきことを発信していきたい。どちらの自分も強くしたいですね。

WWD:最後に、インフルエンサーを目指す人にメッセージを

Takuma:軸をぶらさず継続することが大事。僕も今は見てくれる人がおるから「 載せなあかん!」って思うんですけど、やっぱり最初はリアクションもあまりないので、モチベーションが上がらないんです。でも、まずはその第一関門を乗り切ること。ただ、新しいことをしないと飽きられるのも早いから、挑戦し続けることと、軸をぶらさず継続するバランスが大事ですね。

The post TikTokフォロワー420万のTakumaが新ブランド 「世界中のみんなに着てほしい」 appeared first on WWDJAPAN.

写真家レスリー・キーが見た「アカデミー賞」 自ら撮影した写真とともに語る

 ファッションシューティングやセレブリティのポートレートなどを多く手がける写真家レスリー・キーが、米国ロサンゼルスで3月27日(日本時間28日)に開催されたアカデミー賞授賞式に初出席した。そこで体感した興奮と感動、そして、時代を象徴するかのような受賞作や受賞者、ウィル・スミスのビンタ事件の瞬間などについて、現地のレスリーに話を聞いた。

――ロサンゼルスのドルビー・シアターで行われたアカデミー賞授賞式に出席することになった経緯は?

レスリー・キー(以下、レスリー):アメリカのNetflixのトップから招待され、授賞式に出席するとともに、レッドカーペットや会場で数々の俳優や映画監督などセレブリティを間近に撮影する機会をもらった。実は今年、拠点をNYに移す計画をしていた。その前にロサンゼルスで行われたアカデミー賞授賞式と、ラスベガスで開催されたグラミー賞授賞式という、世界最高峰の映画祭と音楽祭に出席できた。アメリカに引き寄せられる何かがあったのだと思う。

――授賞式に出席するために渡米したわけだが、会場や街の雰囲気などで感じたことは?

レスリー:魔法の時間だった!映画もセレブリティも素晴らしかった。エンタメ界もコロナのパンデミックで2年間苦しい時間を過ごしたが、、ハリウッドがどのように業界を再建したかを知ることができる、忘れられない経験になった。本番前に、バックステージの撮影もしたが、随所に感動の場面があった。たまたまオスカーのステージを作ったスタッフの中に知り合いがいたのだが、コロナ禍ではスタッフも仕事がなくなり、不安を抱え、生活苦に脅かされる人々も少なくなかった。久しぶりにエンタメの仕事の現場に戻れたようで、一生懸命レッドカーペットを敷いたり、ステージやライティング、音響をセットしたりしている人々がみな嬉しそうだったのが印象的だった。

 参加者は事前にPCR検査をしっかり行っており(私の場合は5日前と2日前)。コロナの感染拡大防止の意味もあり、客席を半分に絞り込んでゆとりをもたせる一方、開催時間は4~6時間ぐらいだったものを2時間ちょっとに短縮したので、かなり凝縮されたものになっていた。

 NHKの「SWITCHインタビュー 達人達」でYOSHIKI(ヨシキ)と対談するために前回渡米した昨年9月には、マスクもワクチンパスも隔離も必要だった。それが今回は全部いらなくなっていた。人類の生活が正常に戻ってきていることを体感できた。人の顔や表情が見えるようになって、ハリウッドのブルバードや海などいろいろなところを黒人、白人、ヒスパニック、アジア人など多様な人々が歩いている姿は、嬉しいしあるべき姿だなと思った。アメリカを訪れる前にパリコレに行ったが、マスクをしている人は少ないし、街もカフェも人が溢れていて活気があった。比べることではないけど、日本はコロナからの回復が遅れていて、楽天ファッションウィークも見に行ったけれども盛り上がりきれていなかった。2年間の冬眠の時期は長すぎた。でも、復活の時がもうすぐ訪れるということを、業界の仲間たちに伝えたい。

――受賞作で特に印象に残ったのは?

レスリー:やはり、アカデミー賞作品賞(脚色賞、助演男優賞も)を獲得した「コーダ あいのうた」だ。日本の映画館で3回観て、3回とも泣いたくらい、ここ最近で一番好きな作品だった。名前が告げられた瞬間、セレブがみなスタンディングオベーションで讃えていて鳥肌が立った!また、助演男優賞を受賞したのは、主人公で耳の聞こえない父親役を演じたトロイ・コッツァーだ。彼自身がろうあ者であり、男性ろうあ者として初めてオスカーを獲得した。受賞の瞬間、みんなが彼に向けて手をひらひらと振りながら、声援を送っていたのは感動した。みんなにもぜひ観て欲しい。また、村上春樹さん原作の「ドライブ・マイ・カー」が国際長編映画賞を受賞したのは本当にうれしい。日本映画が世界的に認められたことも、名作として村上春樹さんの名前が世界に残ることも感無量!邦画界の励みにもなると思った。

――今回のアカデミー賞では、ダイバーシティ&インクルーシブにもスポットが当たっていた。

レスリー:ものすごく感動したのは、アリアナ・デボーズが「ウエスト・サイド・ストーリー」で助演女優賞を獲得したこと。 “クィアの有色人種”として歴史を塗り替えたといわれている。過去にジョディー・フォスターなども受賞しているが、カメラの前でも堂々とLGBTを公表している人物の受賞は初めて。真っ赤なドレスも素晴らしかった。また、94回の歴史の中で、初めて女性が司会を務めた。エイミー・シューマー、レジーナ・ホール、ワンダ・サイクスの3人で、以前からエイミーの番組を観ていたので親しみがもてた。映画界やアカデミー賞も、白人社会や男性社会、セクハラなどと戦ってきた。2022年はほぼ2年ぶりに、会場の半分ぐらいだったけれども観客も入れて、リアル開催した。この2年間は、いろいろな意味で「反省」の期間だったのかもしれないと思う。

 この数年、BLM(ブラック・ライブズ・マター)問題から、アジアンヘイトという大問題が起きる中で、20年の「パラサイト」(韓国)、21年の「ミナリ」(アメリカ製だが、韓国人・韓国語が主で韓国映画とみなされている)に続き、22年には「ドライブ・マイ・カー」(日本)とアジア映画がさまざまな部門で受賞したことも大きな意味を持つ。映画界、音楽界など、われわれクリエイターのプラットフォームとなる方々が、平和や愛、平等やダイバーシティのメッセージを込めていることが随所に現れていて、すごく攻めているなと思った。ダイバーシティ&インクルーシブは私の生活や活動のキーワードでもある。自分もクリエイターとして、アジア人として、アジアに活躍の場を与えたり脚光を浴びる機会を作ってくれたアカデミー賞のコミッティ(協会)に感謝したい。

 ちなみに、アジア系メディアの人に聞いた話だが、これまでアメリカメディア以外はなかなか取材がしにくい部分もあったようだが、今回は韓国、中国、フィリピン、タイなど、アジアのメディアもこれまでより多く入っているとのことだった。

――アカデミー賞授賞式では、さまざまな企画や仕掛けも注目されている。

レスリー:スノーボード界のレジェンドのショーン・ホワイトと、サーフィン界のレジェンド、ケリー・スレーター、そして、スケート界のレジェンド、トニー・ホークという、横ノリ系のレジェンド3人がプレゼンテーターとして登場し、60周年を迎えた「007」やジェームズ・ボンドへのオマージュが行われたシーンも良かった。もう一つ、50周年を迎えた「ゴッドファーザー」を讃えて、アル・パチーノ、フランシス・フォード・コッポラ、ロバート・デ・ニーロの3人が並んだシーンも忘れ難い。

――レッドカーペットで特に印象的だったのは?

レスリー:ニコール・キッドマンと、ペネロペ・クルスだ。入ってきた瞬間に周りの空気が一変した。ニコールは「愛すべき夫妻の秘密」で主演女優賞にノミネートされていたのだが、夫のキース・アーバンと登場。少しくすんだベビーブルーで、背中を大胆に開けつつ、長くリボンを垂らしたドレス姿はとても美しかった。テニス女王のセリーナ&ビーナス・ウィリアムズ姉妹も赤と白の対照的なカラーのドレスで際立っていた。その父を題材としたスポーツ映画「ドリームプラン」(原題は「KING RICHARD」)がノミネートされていたり、夫婦、姉妹など、今まで以上に明確にファミリーに対する意識の高まりを感じた。

――これはどうしても聞いておきたいのだが、「ドリームプラン」で主演男優賞を受賞したウィル・スミスが、プレゼンターのクリス・ロックを平手打ちした事件を目の当たりにしたわけだが、現場では何が起こっていたのか?

レスリー:あのハプニングはあまりにも突然すぎて……。わずか2分の出来事だったが、こんなに問題になり考えさせられることになるとは思わなかった。ウィル・スミスは撮影したこともあるし、彼の歴代出演してきた映画も好きで。今回の「ドリームプラン」は、スラム街から抜け出すために独学でテニスを学び、ビーナスとセリーナをテニス界の女王姉妹に育てた父、リチャード・ウィリアムズの生き方や家族の奇跡の物語。映画もウィル・スミスの演技も素晴らしかったし、受賞してもらいたいと思っていた。脱毛症で坊主頭にしていた妻のジェイダ・ピンケット・スミスに対して発した「ジェイダ、愛しているよ。『G.I.ジェーン2』で君を見るのが待ちきれない」と発言したクリス・ロックのシニカルなジョークには、会場も笑ったし、ウィル・スミスも一瞬笑っていたが、ジェイダはあきれたような傷ついたような顔をしていた。ウィル・スミスの平手打ちは暴力だったが、気持ちはわかる。ドキュメンタリー賞のプレゼンテーターとして登壇していたクリス・ロックは、アメリカでトップクラスのコメディアンで、映画監督や俳優業もしているが、日本で明石家さんまさんやビートたけしさん、マツコ・デラックスなどもアーティストを揶揄することはあるけれど、他人の妻、しかも、病気のことを知らずにちゃかしたり皮肉を言ったりすることはしてはいけないこと。芸能人として勉強不足だった。

――ウィル・スミスの行動を誰も止めることはできなかったのか?

レスリー:今回の来場者のうち、大御所俳優は、名誉賞を受賞してオスカー俳優となったサミュエル・L・ジャクソンと、アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ、ケビン・コスナーなどだったが、彼らは皆、シニア層。トップ俳優はといえば、オスカーの最有力と言われて6部門にノミネートされていた「ドリームプラン」に主演したウィル・スミスであり、主演男優賞の大本命だった。会場の一番前、ど真ん中に座っているのが彼だった。それだけステージに近かったので、誰が止めに行っても間に合わなかった。ABCテレビ局が、これはやばいと思って、テレビ放送では音を消したが、会場には感情的になったウィル・スミスのFワードと言われる放送禁止用語が響いてしまった。スポーツ界で尊敬される立派なお父さんのロールモデルを演じていたのに、輝かしい瞬間に、その映画や功績まで傷つけてしまった。主演男優賞の受賞コメントや終了後にSNSなどを通じて謝罪したり、アカデミー会員から脱退したりもしているが、とても残念。BLM問題が何年も続いているが、白人社会といわれているアカデミー賞やアメリカの様々なメディアも雑誌の表紙、映画の主役にも黒人が台頭している。「ブラックパンサー」の続編も年内に公開される予定で話題になっている。輝かしい場で、黒人2人がばかばかしいことをしてしまったのは、個人的に悔しかった。

――ちなみに、冒頭でNYに拠点を移すと言っていたが、その決意をしたのはなぜ?

レスリー:コロナ禍だったけれど、2020~2021年にかけて、写真家20周年の集大成として写真集を出すことと、多くのアーティストや関係者に参加してもらってチャリティイベントを兼ねた自分の結婚披露パーティを開くことができた。われわれクリエイターは、難しい状況の中でも、その時代や環境の中で、闘いながら、困難を乗り越え、自分が感じたものを表現し続けることが大切だ。立ち止まらず、それをその乗り越えたことで、「ギャップ(GAP)」のSDRs、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)のキャンペーンや、羽田空港でのD&I写真展なども経験させてもらった。2022年は日本にきて30年の節目の年。次はアメリカに拠点を移して活動したいと思った。

 実は歴史のある雑誌の日本版が今夏創刊される。撮影はこれからだが、しっかりとハリウッドの世界を日本の雑誌で届けるためのリサーチのために来た。これまでパリコレ、ミラノコレなど10年以上撮影してきたので、ファッションの世界はよくわかった。これからフォトグラファーとして、ハリウッドの情報を日本に届ける。4~7月まで、いろいろな俳優の撮影を予定している。ハリウッドのファッションを日本につなげる橋渡し役になりたい。楽しみにしていてほしい。

レスリーが選んだ、2022年オスカーのレッドカーペットに登場した22人のベスト・ハリウッドスターの豪華ドレス&スーツスタイル

レスリー・キー/フォトグラファー
PROFILE:シンガポール出身。1994年に来日。98年にフォトグラファーとしての活動を開始。ファッションや広告などの分野で、日本を始め、アジア各国やニューヨークなどで精力的に活動

The post 写真家レスリー・キーが見た「アカデミー賞」 自ら撮影した写真とともに語る appeared first on WWDJAPAN.

特異性は生まれ持った力 モデルTAIRAが語る「多様性という言葉が必要ない社会へ」

 ルミネと「WWDJAPAN」が「MOVE ON」プロジェクトの一環として3月2日に行ったイベント「Next Generations Forum 2022」には、 “ファッション&ビューティ業界の次代を担う存在”として、「WWDJAPAN」が2月14日号でネクストリーダーに選出していたモデルのTAIRAも登壇した。2021年春夏ウィメンズの「プラダ(PRADA)」で、鮮烈なデビュー果たしたTAIRA。ここでは、当日TAIRAがビデオメッセージで語った内容のダイジェストを紹介する。セッションの全容は、このページから登録すれば4月24日まで無料で視聴ができる。

WWD:かつてはジェンダー・ノンバイナリー(性自認が男女どちらにも当てはまらないこと)という1つの個性を、コンプレックスに思うことがあったか。

TAIRA:非常にセンシティブな子どもだったため、周りの友達と自分を比べて「なんで自分はこうじゃないんだろう」といったコンプレックスがあった。その中でモデルにスカウトされたことがきっかけとなり、自分の少し変わっている部分を力に変えることができるようになったし、今では生まれ持った力だと信じることができるようになっている。ファッション業界で特にモデルは、皆さまざまなコンプレックスを抱えている。「気にすることはない」と軽くあしらうのではなく、逆に寄り添って発言をするようにするなど、自分も気をつけている。コンプレックスは皆持っているもの。そこにフォーカスするのではなく、何が自分にとって武器なのか、何が強いのか、そちらに目を向けることのほうが大切だと感じている

WWD:今後、社会はどのように変わると思うか。

TAIRA:今は多様性という言葉がすごく盛んに使われることが多く、自分の強みとしても多様性でランウエイショーなどにキャスティングしていただくことも多いが、ゆくゆくは多様性という概念自体がない社会になってほしい。

問い合わせ先
ルミネ代表電話
03-5334-0550

The post 特異性は生まれ持った力 モデルTAIRAが語る「多様性という言葉が必要ない社会へ」 appeared first on WWDJAPAN.

アートとファッションを自然体で飛び越える「リュウノスケオカザキ」 「業界の垣根は重要ではない」

 ルミネと「WWDJAPAN」が「MOVE ON」プロジェクトの一環として3月2日に行ったイベント「Next Generations Forum 2022」には、 “ファッション&ビューティ業界の次代を担う存在”として、「WWDJAPAN」が2月14日号でネクストリーダーに選出していた「リュウノスケオカザキ(RYUNOSUKEOKAZAKI)」の岡﨑龍之祐デザイナーも登壇した。アートとファッションの枠を超えて独自のクリエーションを追求する岡﨑は、若手デザイナーの世界的な登竜門「LVMHプライズ」でも8組のファイナリストに選出されている。当日、岡﨑がビデオメッセージで語った内容のダイジェストを紹介する。セッションの続きは、このページから登録すれば4月24日まで無料で視聴ができる。

WWD:ファッションとアートをどう学んできたのか。

岡﨑龍之祐(以下、岡﨑):東京藝術大学のデザイン科だったので、デザインを学びながらアートに触れる機会も多い環境だった。服作りは独学だが、表現という意味ではアートもファッションも似たようなもの。両方をいろいろな角度から見て、作り続けてきた。

WWD:なぜファッションに引かれるのか?

岡﨑:ファッションの自由さ、不思議さ、人が着ることで自分を表現するのが面白いと思ったから。自分自身ではアートとファッションの垣根を超えて表現しようという意識はなく、自然体でモノを作っているだけ。アートとファッションは業界や市場は異なるけれど、いち表現者として重要なことではない。

WWD:日常で着られるアイテムは構想しているか。

岡﨑:いつかは作ってみたいが、今は自分の思いが高純度で乗ったピースを作り続けたいと考えている。

問い合わせ先
ルミネ代表電話
03-5334-0550

The post アートとファッションを自然体で飛び越える「リュウノスケオカザキ」 「業界の垣根は重要ではない」 appeared first on WWDJAPAN.

たんすに眠るブランド品を世界中に売る 「ブランディア」社長に聞く

 ブランド品などのリユース事業「ブランディア(BRANDEAR)」を運営するデファクトスタンダード(東京、仙頭健一社長)は、海外での販売を強化する。米国、欧州、中国、東南アジアなどの有力なマーケットプレイスに出店し、世界的に高まりを見せるリユース市場での存在感を高める。経営トップとして海外戦略の旗を振るとともに、自ら中国向けのライブコマースにも出演する仙頭社長に聞いた。

WWD:ブランド品のリユース企業は多いが、デファクトスタンダードの強みは?

仙頭健一社長(以下、仙頭):ブランディアはお客さまの自宅の不要品を宅配で送ってもらうスタイルで始まった。段ボール箱1個に20点前後の品物が詰められて届くことも珍しくない。いかにスピーディーに査定し、いかに効率よく出荷の準備に持っていくか。しかも中古品なので品物もコンディションも一つ一つ異なる。1日1万点以上の品物を手際よくさばく。そのノウハウは当社ならだと思う。

WWD:高級バッグ、アパレル、時計、ジュエリー、服飾雑貨まで取り扱うアイテムは幅広い。

仙頭:価格帯(小売価格)は1000円台から1000万円を超えるものまである。カジュアルブランドからハイブランドまで7000ブランド以上取り扱う。正直にいって面倒くさい(笑)。(他社のように)高級ブランドに絞った方が楽だけど、これまでに延べ300万人以上のお客さまに利用されてきた。お客さまが望む幅広いリユース品の売買で、循環型消費の促進に貢献していきたい。

WWD:コロナによる影響はあるか。

仙頭:宅配買い取りの利用者は増えた。巣ごもり生活の浸透によって断捨離の意識が広まり、使っていない品物を現金化したいというニーズが高まった。一方、販売については苦戦している。当社はブランド品が主力なので人と会う機会が減ってしまうと購入意欲が落ちる。

WWD:売りたい意欲は高いけれど、買いたい意欲は低い。

仙頭:当社に限らずファッションカテゴリーは一部を除き厳しいと認識している。でも海外での販売は順調に伸ばしている。デファクトスタンダードは(20年に)BEENOSの100%子会社になってから戦略転換した。「海外強化」と「高単価シフト」の2本柱の戦略を推進する。

 これまでは国内で買い取った品物を国内で販売していた。だが、今後の日本の人口減少を考えれば、リユースへの熱量が高まる海外市場に打って出るべきだと判断した。リユース企業では買い取ったものをtoB(企業)に売るか、toC(消費者)に売るかの2通りがある。当社の場合は元々の強みであるtoCの市場を海外でも取っていくことを選んだ。海外の有力マーケットプレイスを通じて販売する。販売における海外比率はそれまで6%程度だったが、直近(21年10〜12月期)は24.4%に高まった。比率だけでなく、具体的な数字はいえないが海外のトップライン(売上高)自体が伸びている。25年には50%を目指している。

WWD:もう一つの柱である高単価シフトの理由は?

仙頭:これもシンプルにいうと海外で売るためだ。シッピングコスト(輸送費や関税など)を勘案すると、海外では高単価の品物でないと採算が合わない。海外のお客さまに購入のメリットを感じてもらうためには高単価シフトが欠かせない。そのため宅配買い取りだけでなく、買い取り専門店やオンライン査定を通じて、高単価の品物を集めるように努めている。

WWD:リアルの買い取り専門店は3月にオープンした京都四条河原町店で12店になった。

仙頭:今期(22年9月期)には計15店舗になる見通しだ。高単価シフトの戦略に基づけば、対面で接客しながらていねいに査定するプロセスが大切になる。宅配買い取りは便利だけど、何十万円の高額品を宅配で取り引きするのに抵抗を持つ方は多い。宅配買い取りと店舗買い取りでは、買い取り単価が10倍も違う。またオンラインでも人を介した査定が行える「ブランディアベル(BRANDEAR)」も運営している。オフライン、オンライン問わずに買い取りの間口を広げている。

WWD:海外販売はどこで伸ばしている?

仙頭:既存チャネルと新規チャネル両方で伸ばしている。もともと出店していた米国のイーベイ(E BAY)、新しく取り組みだした欧州の仏ヴェスティエール・コレクティブ(VESTIAIRE COLLECTIVE)、中国のTモールと京東全球購(JD WORLD WIDE)、東南アジアのショッピー(SHOPEE)など。高級時計専門のドイツ初のマーケットプレイス「クロノ24(CHRONO24)」にも出品を開始した。現状は米国4割、欧州2割、中国2割、東南アジアその他2割くらいになる。伸び代はどこも大きいが、特に中国は新品市場に比べた中古品市場の比率が5%程度と言われており、飛躍的な成長が見込まれる。国や地域、マーケットプレイスごとにコミュニケーションは異なる。柔軟に対応することが大事だ。例えばイーベイでは価格に対するリクエストが細かい。

WWD:日本を拠点にするメリットはあるのか。

仙頭:希少な高級ブランド品をお持ちのお客さまが多い。大事に扱われているためコンディションがいい。商品のコンディションは販売価格に直結しており、それだけ良い品物が確保できる。特に中国のお客さまはコンディションを重視し、日本からの出品に安心感がある。米国のお客さまは傷や劣化の具合をきちんと説明し、価格に納得すれば買ってくださる。同じコンディションのものなら、日本よりも海外の方が高く売れる。

WWD:蓄積された膨大なデータが武器になる。

仙頭:その通り。オークションサイトであれば、どのような商品がいくらで落札されたか。この販売データが蓄積されると、どこの国・地域のマーケットプレイスにどの商品を出品するか見極められる。求められるものを高く買い取ることも可能になり、結果として買い取りのお客さまにも還元できる。まず高く買い取ることがお客さまの最大の願いであり、そこから逃げてはいけない。そして企業としてサステナビリティへの姿勢も明確に打ち出す。数ある買い取りサービスから「ブランディア」が選ばれるようになる。そんな好循環が生まれる。

WWD:親会社BEENOSとの連携は?

仙頭:BEENOSは日本の越境ECのリーディングカンパニーといってよい。グループの中核会社tensoを筆頭に日本から海外、海外から日本といった越境に伴う言語、決済、情報、物流、商習慣などの課題を克服するノウハウを持ち合わせている。海外のマーケットプレイスにつなぐだけは売れない。それぞれの国の事情に合わせた最適な販売戦略を確立できることが、グループとしての強みだ。

The post たんすに眠るブランド品を世界中に売る 「ブランディア」社長に聞く appeared first on WWDJAPAN.

ユーチューバーあさぎーにょが語るファンと自身の関係性 近い距離での交流が原動力

 ルミネと「WWDJAPAN」が「MOVE ON」プロジェクトの一環として3月2日に行ったイベント「Next Generations Forum 2022」には、 “ファッション&ビューティ業界の次代を担う存在”として、「WWDJAPAN」が2月14日号でネクストリーダーに選出していたユーチューバーで「ポピー(POPPY)」ディレクターのあさぎーにょも登壇した。音楽、ファッション、映像制作とどんどん活躍の幅を広げるあさぎーにょ。ここでは、当日あさぎーにょが語った内容のダイジェストを紹介する。セッションの続きは、このページから登録すれば4月24日まで無料で視聴ができる。

WWD:多彩な分野の仕事を手掛けているが、それについて悩んでいたこともあったと聞く。

あさぎーにょ:ユーチューブをはじめ、「ポピー」というアパレルブランド、映画の制作、音楽、企業CMのディレクションまで、仕事の幅がどんどん広がっている。全部やりたくて全てに全力投球しているが、「どれかに絞らなくていいのかな?」という葛藤もあった。

WWD:その葛藤はどのように乗り越えたのか。

あさぎーにょ:私自身の活動のコンセプトは“ワクワクを抱きしめよう”。新しいことを始めるたびに、仲間を探して一緒に取り組んできた。そうした仕事と活動が仲間や同志を増やし、私自身の可能性も広げている。

WWD:ユーチューブやSNSの向こうにいるファンはどんな存在か。

あさぎーにょ:ファンの方や、ユーチューブやSNSを通じ、コメントやリアクションをくださる方は、ずばり友達という感覚。発信することで、ファンの方がコメントをくれて、それが私らしさを際立たせてくれる。私が可能性を広げられるのは、みなさんがリアクションをくれるからだと思っている。

WWD:自身が手がける「ポピー」の2022年春夏のコンセプトは“芽生え”。どんな思いを託したのか。

あさぎーにょ:私自身が、ファンの方々のリアクションによって自分の殻を破り、可能性を広げてきたように、「ポピー」も厚くなってしまった(ファンの方々の)殻を破る、そんな後押しができたらいいなという願いを込めた。クールなスタイルへの憧れもあるが、それよりもファンの方と近い距離で一緒にコミュニケーションを取っていきたい。それはずっと変わらない、私の活動の根幹にある。

問い合わせ先
ルミネ代表電話
03-5334-0550

The post ユーチューバーあさぎーにょが語るファンと自身の関係性 近い距離での交流が原動力 appeared first on WWDJAPAN.

ユーチューバーあさぎーにょが語るファンと自身の関係性 近い距離での交流が原動力

 ルミネと「WWDJAPAN」が「MOVE ON」プロジェクトの一環として3月2日に行ったイベント「Next Generations Forum 2022」には、 “ファッション&ビューティ業界の次代を担う存在”として、「WWDJAPAN」が2月14日号でネクストリーダーに選出していたユーチューバーで「ポピー(POPPY)」ディレクターのあさぎーにょも登壇した。音楽、ファッション、映像制作とどんどん活躍の幅を広げるあさぎーにょ。ここでは、当日あさぎーにょが語った内容のダイジェストを紹介する。セッションの続きは、このページから登録すれば4月24日まで無料で視聴ができる。

WWD:多彩な分野の仕事を手掛けているが、それについて悩んでいたこともあったと聞く。

あさぎーにょ:ユーチューブをはじめ、「ポピー」というアパレルブランド、映画の制作、音楽、企業CMのディレクションまで、仕事の幅がどんどん広がっている。全部やりたくて全てに全力投球しているが、「どれかに絞らなくていいのかな?」という葛藤もあった。

WWD:その葛藤はどのように乗り越えたのか。

あさぎーにょ:私自身の活動のコンセプトは“ワクワクを抱きしめよう”。新しいことを始めるたびに、仲間を探して一緒に取り組んできた。そうした仕事と活動が仲間や同志を増やし、私自身の可能性も広げている。

WWD:ユーチューブやSNSの向こうにいるファンはどんな存在か。

あさぎーにょ:ファンの方や、ユーチューブやSNSを通じ、コメントやリアクションをくださる方は、ずばり友達という感覚。発信することで、ファンの方がコメントをくれて、それが私らしさを際立たせてくれる。私が可能性を広げられるのは、みなさんがリアクションをくれるからだと思っている。

WWD:自身が手がける「ポピー」の2022年春夏のコンセプトは“芽生え”。どんな思いを託したのか。

あさぎーにょ:私自身が、ファンの方々のリアクションによって自分の殻を破り、可能性を広げてきたように、「ポピー」も厚くなってしまった(ファンの方々の)殻を破る、そんな後押しができたらいいなという願いを込めた。クールなスタイルへの憧れもあるが、それよりもファンの方と近い距離で一緒にコミュニケーションを取っていきたい。それはずっと変わらない、私の活動の根幹にある。

問い合わせ先
ルミネ代表電話
03-5334-0550

The post ユーチューバーあさぎーにょが語るファンと自身の関係性 近い距離での交流が原動力 appeared first on WWDJAPAN.

ユーチューバーあさぎーにょが語るファンと自身の関係性 近い距離での交流が原動力

 ルミネと「WWDJAPAN」が「MOVE ON」プロジェクトの一環として3月2日に行ったイベント「Next Generations Forum 2022」には、 “ファッション&ビューティ業界の次代を担う存在”として、「WWDJAPAN」が2月14日号でネクストリーダーに選出していたユーチューバーで「ポピー(POPPY)」ディレクターのあさぎーにょも登壇した。音楽、ファッション、映像制作とどんどん活躍の幅を広げるあさぎーにょ。ここでは、当日あさぎーにょが語った内容のダイジェストを紹介する。セッションの続きは、このページから登録すれば4月24日まで無料で視聴ができる。

WWD:多彩な分野の仕事を手掛けているが、それについて悩んでいたこともあったと聞く。

あさぎーにょ:ユーチューブをはじめ、「ポピー」というアパレルブランド、映画の制作、音楽、企業CMのディレクションまで、仕事の幅がどんどん広がっている。全部やりたくて全てに全力投球しているが、「どれかに絞らなくていいのかな?」という葛藤もあった。

WWD:その葛藤はどのように乗り越えたのか。

あさぎーにょ:私自身の活動のコンセプトは“ワクワクを抱きしめよう”。新しいことを始めるたびに、仲間を探して一緒に取り組んできた。そうした仕事と活動が仲間や同志を増やし、私自身の可能性も広げている。

WWD:ユーチューブやSNSの向こうにいるファンはどんな存在か。

あさぎーにょ:ファンの方や、ユーチューブやSNSを通じ、コメントやリアクションをくださる方は、ずばり友達という感覚。発信することで、ファンの方がコメントをくれて、それが私らしさを際立たせてくれる。私が可能性を広げられるのは、みなさんがリアクションをくれるからだと思っている。

WWD:自身が手がける「ポピー」の2022年春夏のコンセプトは“芽生え”。どんな思いを託したのか。

あさぎーにょ:私自身が、ファンの方々のリアクションによって自分の殻を破り、可能性を広げてきたように、「ポピー」も厚くなってしまった(ファンの方々の)殻を破る、そんな後押しができたらいいなという願いを込めた。クールなスタイルへの憧れもあるが、それよりもファンの方と近い距離で一緒にコミュニケーションを取っていきたい。それはずっと変わらない、私の活動の根幹にある。

問い合わせ先
ルミネ代表電話
03-5334-0550

The post ユーチューバーあさぎーにょが語るファンと自身の関係性 近い距離での交流が原動力 appeared first on WWDJAPAN.

東レが“ウルトラスエード”の5つの価値観を解き明かす動画プロジェクト開始

 東レは4月4日から、人工皮革“ウルトラスエード®(Ultrasuede®以下、ウルトラスエード)”の公式ウェブサイトで、インタビュー動画「Beyond the Material」を公開している。これは1970年にデビューした“ウルトラスエード”が50年以上育んだ5つの価値観を、同素材を採用する著名なクリエイターの声を通して解き明かすプロジェクトだ。その価値観とは、1「東レの代表ブランドとして。」、2「豊かな社会を次世代へ。」、3「ジャパンクオリティで世界を繋ぐ。」、4「技術革新で、無限の広がりへ。」、5「お客様と価値を高め合う。」で、6月までに5本の動画を順次公開する。東レの代表ブランドとしてウルトラスエードが掲げる「素材の進化で、まだ見ぬクリエイションを共に。社会をより豊かに、美しく。」というビジョンの背景となっている作り手の想いを改めて見つめ直すことで、クリエイションに貢献し続けられる素材としての責任や意志を伝えたいという。

宮前義之が語る
歴史ある素材の魅力

 第1弾は一つ目の価値観「東レの代表ブランドとして。」について、「エイポック エイブル イッセイ ミヤケ(A-POC ABLE ISSEY MIYAKE)」の宮前義之デザイナーにインタビューを実施。宮前が“ウルトラスエード”とイッセイ ミヤケの関わりをはじめ、素材の魅力や新たな発見、長い歴史の中でイッセイ ミヤケがなぜいつの時代も“新しい”のかなどを語った。両社の伝統と革新がもたらすクリエイションを垣間見ることができる約5分間の動画になっている。 

“ウルトラスエード®︎ヌー”を
採用した次世代のサンダル

 動画の中でも紹介されたサンダルは、日本の草履から着想を得て、素足で履くことのできる男女兼用のサンダルへとアップデートしたものだ。こちらは、アッパーに銀面調人工皮革“ウルトラスエード®︎ヌー(Ultrasuede®nu以下、ヌー)”を採用。表側が部分植物由来のポリエステル、裏側がリサイクルポリエステルからなる“ヌー”は、履いた時に感じる肌への温もりやフィット感が非常に良く、宮前デザイナーも納得の出来上がりと語っている。

技術革新が生んだ上質な素材感と
多彩な加工バリエーション

 “ウルトラスエード”はジャパンクオリティの最先端素材として技術革新を繰り返しながら進化してきた高感度・高機能素材だ。スエード調人工皮革“ウルトラスエード”に加えて、銀面調人工皮革“ヌー”をラインアップし、いずれも柔らかな風合いと手触りが特徴。ポリマー・リサイクルシステムの導入や植物由来ポリマーへの移行など、環境負荷低減と共に、産学連携活動などの社会活動も積極的に行う。近年は、天然皮革や合成皮革を超える特性を持った素材としてアパレルやバッグ、雑貨、靴、インテリア、自動車内装、コンシューマーエレクトロニクスなど、幅広い用途で採用されている。

 なお、公式サイト上では通常在庫しているアイテムのスワッチサンプルの無料提供も実施している。

TEXT:YUKI KOIKE
問い合わせ先
東レ ウルトラスエード事業部
03-3245-5401

The post 東レが“ウルトラスエード”の5つの価値観を解き明かす動画プロジェクト開始 appeared first on WWDJAPAN.

ソンミが語る「肌が変われば、世界が変わる」 新ブランド「クレイヴュ」立ち上げ

 ルミネと「WWDJAPAN」が「MOVE ON」プロジェクトの一環として3月2日に行ったイベント「Next Generations Forum 2022」には、 “ファッション&ビューティ業界の次代を担う存在”として、「WWDJAPAN」が2月14日号でネクストリーダーに選出していたソンミ「ミース(MEETH)」CEO兼美肌研究家も登壇した。炭酸ガスパックを看板商品に、女性からの支持を急速に高めている「ミース」。ここでは、当日ソンミ CEOが語った内容のダイジェストを紹介する。セッションの続きは、このページから登録すれば4月24日まで無料で視聴ができる。

WWD:自身のコンプレックスからスキンケアの「ミース」を立ち上げた。

ソンミ:20代の頃に芸能活動をしていた時期がある。そのころは、モデルや女優と自分の容姿を比べてしまうことが多く、自分の欠点にばかり目が行きがちだった。そんな中で、コンプレックスを克服しようと努力するよりも自分の強みはなんだろうかと考え、褒めてもらうことが多かった肌を磨こうと思った。肌が荒れていると人前にも出たくなくなってしまう。自分に自信を持ちたくて化粧品を探したが、自分が使い続けたい化粧品は片手に収まるほどしかなかった。「だったら自分で作ってみよう!」と思ったのが、ブランドを立ち上げたきっかけだ。正しいケアをすれば、肌は必ず応えてくれる。肌が健やかになることで、私は自分が好きになった。自分に自信が持てると笑顔が増え、それによってもしかしたら世の中さえも変えていくことができるかもしれない。そんな可能性を感じている。

WWD:今日(3月2日)は「ミース」の立ち上げから3年という節目の日。さらに本日、「ミース」に続く新ブランド「クレイビュ(CRAAYBEAU)」も発表した。

ソンミ:“狂おしいほどに美しい”をコンセプトに、“最高の美肌”をサポートする最高峰ライン「クレイビュ」を立ち上げた。自分が30代に入り、「きれいになるために努力することは恥ずかしいことなのか?(いや、違う)」と思わされるような出来事があった。私の周りにいる美しい人は正しい努力をしているし、年齢関係なく肌がきれいな人はかっこいいとも思っている。年齢に応じて、生き方も変わるし求める美容も異なってくる。「クレイビュ」は、自分の限界を超えていきたいという気持ちを後押ししていくようなブランドだ。

問い合わせ先
ルミネ代表電話
03-5334-0550

The post ソンミが語る「肌が変われば、世界が変わる」 新ブランド「クレイヴュ」立ち上げ appeared first on WWDJAPAN.

ファッション界も注目する不思議でかわいいぬいぐるみ「ドールズサン」

 「ドールズサン(DOLLSSAN)」は、手作りのぬいぐるみをインスタグラムや展示イベントを中心に発表している“ぬいぐるみメゾン”だ。ドールズさんこと那須野さつきの作品は、耳に安全ピンを大量につけたコアラや、手足に4つの目があるゾウなど、かわいいのか、ポップなのか、毒々しいのか、一言では言い表せない不思議な魅力がある。その個性が徐々に注目を集め、13日間の展示で1万円前後のぬいぐるみ100体が完売。さらに、パリ・メンズ・コレクションにも参加しているファッションブランド「キディル(KIDILL)」とはぬいぐるみをドッキングさせたウエアを共作し、「ビームス(BEAMS)」主催の企画展に参加するなど、ファッション界からも注目を集めている。型破りなぬいぐるみの数々はどのようにして誕生しているのか。そのクリエイションに迫るべく、那須野にインタビューを行った。

WWD:ぬいぐるみを作り始めた経緯は?

那須野さつき氏(以下、那須野):美術の勉強をしていたと思われることも多いのですが、もともとトリマーの学校に通っていたんです。毛のフワフワを形作ることは楽しかったのですが、犬の扱い方が本当に難しく感じて、生き物にハサミを向けるのが怖くなってしまった。トリマーとして就職したものの、働いた期間は短かったですね。

 これからどうしようかと考えていたとき、ふいに幼い頃にフェルトで人形を作るのが好きだったことを思い出したんです。そして偶然入った喫茶店でクリエイターが集まるイベントのチラシを見つけて、それに参加したところからぬいぐるみ作りが始まりました。

WWD:ぬいぐるみ作家として活動していく覚悟を決めたきっかけは?

那須野:しばらくはイベントに出展し、ビンテージのトランクにぬいぐるみを入れて売るスタイルで活動していました。でも、私は絵を描くような感覚でぬいぐるみを作っていきたいと思うようになった。そんな心境の変化が、きっかけかもしれません。それからはイベント出展よりも個展を増やし、作風も変わっていきましたね。

WWD:「ドールズサン」の作品はどのように生まれている?

那須野:基本的にはアドリブです。最初からデザインが決まっているわけではなく、生地を選んだらとにかく切り始めます。黙々と作業しているときも頭の中は暇だから、考えていることや耳から入ってきた情報、昨日見たものとかがぬいぐるみに出ちゃう。

WWD:具体的にいうと、どういった部分?

那須野:例えばこのゾウのぬいぐるみだと、赤と緑の組み合わせがかわいいなと生地を選んで作り始めたら、切りっぱなしになっていたフェルトが目に入ってきたんです。それをゾウの手に当てたら目のように見えて面白かったので、手足に目を四つ付けることを決めました。さらに、ピンクのガムテープも目に入ったので、切って貼って完成させたという感じです。

 “隠れクマタン(sharaku)”は、もともと個展で飾っていたときは目にライトを入れてビームが出るようになっていたんです。個展が終わってからリメイクのアイデアを考えていた頃に“隠れキリシタン”について知り、“隠れクマタン”のイメージが湧いてきてこう仕上がりました。“隠れキリシタン”に着想していることが誰かに伝わるかなと期待したのですが、結局、誰にも気づいてもらえませんでした(笑)。

WWD:表現の手段として、ぬいぐるみを選ぶことのメリットは?

那須野:まず、フワフワでかわいいこと。そして、誰にとってもぬいぐるみは愛着や懐かしさがあること。そういう温かみがベースにあるおかげで、どれだけクセの強いことやハードなことをやっても“かわいい”という印象に吸収されたり、ギャップが生まれてより魅力的になったりするので、そういう意味でぬいぐるみという素材は面白いで
すね。

今、作りたいのは
“爆発力のある一点"

WWD:個人的に気に入っているシリーズは?

那須野:名画をフワフワのぬいぐるみで再現する“絵画シリーズ”は、作るのが本当に大変ですが、やっていて楽しいです。これまでに、ピカソの「ゲルニカ」や「泣く女」を作りました。作り方は、ベースになる生地を2mくらい買い、絵を見ながら下書きせずに大体の位置に色を置いて仮止めして、本縫いしながらフェルトでラインもつけていきます。これを全部手縫いでやるので、必死でやっても一つ作るのに一カ月くらいかかります。

WWD:「キディル」とコラボレーションしていますが、ファッションとぬいぐるみを掛け合わせた作品づくりで感じたことは?

那須野:「キディル」との共作は、参加した企画展の会場にヒロ(末安弘明デザイナー)さんが来ていて、ぬいぐるみを気に入ってくれたことがきっかけです。ヒロさんがチャンスをくれたおかげで、視野が広がりました。歩くモデルが身に着けてかっこよく動くのはどんなぬいぐるみなのかなど、これまでとは別の角度から考える視点をもらえましたね。ヒロさんが「ドールズサン」のぬいぐるみをファッションの一部として扱ってくれたり、「ビームス」の担当者さんが面白がって応援してくれたりしたおかげで、アートとして見てくれる人が増えました。

WWD:2020年の暮れに出産を経験し、クリエイションで変化した部分は?

那須野:制作に使える時間は少なくなりましたが、時間が限られているからこそ、一つでインパクトを残す作品づくりに興味が出てきました。今考えているのは、ショーやビジュアルの撮影だけで使われるコスチュームだったり、ぬいぐるみで作ったヘッドピースだったり。量産はできないけど、爆発力のある作品を作りたいです。

The post ファッション界も注目する不思議でかわいいぬいぐるみ「ドールズサン」 appeared first on WWDJAPAN.

ニッチ香水専門店「ノーズショップ」が新業態「コーグ」をスタート 自由に組み合わせられる香りの“道具”を提供

 ニッチフレグランスの輸入販売を行うノーズショップ(NOSE SHOP)はこのほど、新ブランド「コーグ(KOGU)」をスタートし、1号店をルミネ新宿内にオープンした。「ノーズショップ」は世界各国のニッチなフレグランスを扱うのに対し、「コーグ」はオリジナルのフレグランスを開発・販売。シンプルな香りを組み合わせて道具のように楽しむ「香りの道具=香具」をコンセプトにしており、フレグランス初心者に対してもアプローチする。

 香りは“アップル”“バナナ”“アンバー”“ネロリ”“バニラ”“ムスク”というように、香水を構成する原料やノートを再現。天然香料を用いたシンプルな香りにすることにより、自由自在に重ねづけして自分だけのフレグランスを作ることができる。さらに価格も4mLで税込1760円、20mLで同4180円と手が届きやすいように設定し、香水初心者でも手に取りやすく、複数購入しやすいようにした。また香りのミニサイズがランダムで出てくる“香水ガチャ”や香りを言語化しながら提案するAIシステム「カオリウム(KAORIUM)」を設置し、さまざまなアプローチで香りの提案を行う。

 世界の新進気鋭のフレグランスを扱う「ノーズショップ」とは真逆のアプローチをとる「コーグ」。その背景には、「日本人の鼻感度を上げたい」という中森友喜社長の思いがある。これまでもニッチフレグランスの販売で日本のフレグランス市場の拡大を目指してきた中森社長だが、「コーグ」ではどのようにさらに市場を広げようと図るのかーー。新業態をスタートしたきっかけや思いについて中森友喜ノーズショップ社長に聞いた。

WWD:「コーグ」を立ち上げた理由は。

中森友喜ノーズショップ社長(以下、中森):「ノーズショップ」でもそうだが、そもそも香りの面白さを世の中にもっと伝えていきたいというのがモチベーションの根源にある。「ノーズショップ」は立ち上げてから4年経つが、最初は香水マニアの人が中心だったものの、今は香水初心者まで、いろいろな人が来店し、香りの楽しさを体験してもらえるようになった。それでも、香り好きはいまだにマイノリティーだと感じる。だからもっと香りの世界を発信し、香り好きの仲間を増やしたくて「コーグ」を立ち上げた。

WWD:「ノーズショップ」同様にユニークなコンセプトだが、アイデアはどこから生まれたのか。

中森:実は社内の研修からヒントを得た。ありがたいことに、今はお客さまから「ノーズショップ」の店員になりたいと言ってくださる人が増えている。そういった人は香水への愛は人一倍あるものの、香りそのものの知識があるとは限らない。そこで社員を養成していくための“嗅覚改革メソッド”を開発した。たとえばラベンダーの精油を嗅いで、その香りを言葉にしていく。香りと言語が結びつくと、記憶として形成され、香りを認識しやすくなる。すると複雑な香りが組み合わさった香水などを嗅いだ時に、中にある原料やノートを嗅ぎ分けることができ、ある意味「香りの因数分解」ができるようになる。この「香りの因数分解」ができるようになると、香りのことがもっと深く理解できるようになる。

 実際にこのトレーニングを続けていくうちに、社員の鼻の解像度がどんどん高まり、香りのセンスが培われていくのを目の当たりにした。そこで一般の消費者にもこのような“鼻のトレーニング”ができたら、自身の好みが分かったり、香りの良し悪しも判断できるようになったり、もっと香りを楽しめるようになるのでは、と思ったことがきっかけだ。

WWD:香りを楽しむだけでなく、“鼻を鍛える”フレグランスでもあるということか。

中森:その通り。ワインのテイスティングの勉強をする際も、たとえばイチゴやバナナの香りを嗅いで、ワインの中にそういった香りのノートがあるかを確かめたりする。香りの原料一つ一つを嗅ぎ分けることで、嗅覚や味覚を鍛えるのだ。そういったワインの教育システムからも少しインスパイアされた。

 もちろん、「コーグ」の香りは一つ一つ単体で使うフレグランスとしての完成度も高く、ラストノートまで綺麗に香るように設計した。一方で全て香りの元となる原料をある程度共通化しているため、どの香りを組み合わせても喧嘩しないようになっている。重ね付けを前提として作っているのだ。2つの香りのレイヤリングは他社でもよくあるが、「コーグ」は極端な話、5つ重ねてもいいようになっているため、香りのパターンはほぼ無限に可能性がある。「コーグ」は「香りの道具」という意味を込めているが、素材や道具を提供することで、消費者には自由自在に組み合わせて、香りで遊んでもらいたい。フレグランスをゴルフやスポーツのようにホビーとして成立させたいという思いもある。香りの遊び道具を提供しつつ、日本人の鼻感度を上げたるのがミッションだ。

WWD:香水は美しいボトルも魅力の一つだが、あえてシンプルな容器にしたのか。

中森:香水はおおむね3つの要素からできていると考える。中身の香り、ストーリー、そしてビジュアルだ。中身の香りは言うまでもないが、なぜその香水が生まれたのか、作り手はどんな思いを込めたのか、香りの背景にある哲学や物語も重要。さらに中身の香りをビジュアルで表現するボトルも欠かせない要素だ。だが、今回われわれはそのストーリーとビジュアルを無視した。あくまでも香りの道具を提供しており、香りのストーリーといったところはユーザーに委ねた。自分で香りを嗅ぎ、フレグランスを作り、鼻感度を上げる。そのためにはユーザーが自ら想像力を掻き立てて考える必要があり、ストーリーやビジュアルを提案してしまうとその幅が狭まってしまう。今回は「与えすぎない」ということにもこだわった。

WWD:原料は天然香料にこだわっている。

中森:合成香料は日本人にとっては強度と濃度が強すぎると感じる。人類には500万年の歴史がある中で、合成香料はここ100〜200年で出てきたもの。だから、合成香料を鼻として対応できる体になっていないのでは、と思ったりする。なるべく鼻に優しく負担がかからない香りを作りたくて、500万年前からあり、馴染みがある自然界の香料にこだわった。

 またこれまで「日本のフレグランス市場が小さい」と言われ続けているには、日本人の鼻の性質にも要因があると思う。日本人の鼻は欧米やアラブ人の鼻に比べると繊細で、絶妙なニュアンスなどを嗅ぎ分けるのは得意だけど、強い香りには弱いのでは、と自分なりに分析している。だから強い合成香料を多く含む欧米のフレグランスを“香水くさい”と感じやすいのではないだろうか。そこで「コーグ」ではなるべくインパクトが少なく、強烈すぎない香りにこだわった。いろいろな香りを重ねたりして実験してもらいたいので、そういう意味でもたくさん嗅いでも鼻が“疲れない”香りにした。

WWD:ニッチフレグランスを扱う「ノーズショップ」とは真逆のアプローチというのも面白い。

中森:ニッチフレグランスは特定の少数の人に届けば十分という狭小なジャンル。射程距離が短く、届く人が少ない。その反面届く人には心奥底まで刺さる。ある意味ロックでパンクなモノづくりだ。またファッションフレグランスやラグジュアリーフレグランスなど、いろいろなフレグランスを使ってみて、最終的に行き着く最終点で、変わり者が好むフレグランスと捉えられることも多い。でも、香水ってもっと身近なものであってもいいと思っている。われわれは以前から「香りの民主化」を目指してビジネスをしてきたが、天才調香師や香水マニアだけが存在する世界ではなく、いろいろな人が香りに携わり、香りを発信できる世界があってもいい。みんなで香りを作り、誰もが香りを楽しめるようになる、そんな民主化された香りの世界を作りたい。

WWD:日本人の鼻感度が上がれば、市場もさらに広がりそう。

中森:人の人生を豊かにするのは、やはり五感だと思う。嗅覚の感性を磨くことができたら、もっと人生が豊かにもなると信じている。そういった意味でも、香りの可能性はまだまだあると感じる。「コーグ」は一つのビジネスでもありながら、香りの教育でもあると捉えている。香りを楽しむ人が増え、業界全体が盛り上がると新規プレイヤーが入ってきたり、どんどん面白い香りが出てくるだろう。日本人調香師も増えていくかもしれないし、市場全体の活性化に貢献できたら、と思う。

The post ニッチ香水専門店「ノーズショップ」が新業態「コーグ」をスタート 自由に組み合わせられる香りの“道具”を提供 appeared first on WWDJAPAN.

元AKBこじはるが語った「コミュニケーションとしてのブランド運営」 ルミネ×WWDJAPANイベントから

 ルミネと「WWDJAPAN」が「MOVE ON」プロジェクトの一環として3月2日に行ったイベント「Next Generations Forum 2022」には、 “ファッション&ビューティ業界の次代を担う存在”として、「WWDJAPAN」が2月14日号でネクストリーダーに選出していた小嶋陽菜heart relation代表取締役チーフクリエイティブオフィサー(CCO)も登壇した。アイドルグループAKB48の人気メンバーとして活躍した小嶋CCOのブランド、「ハーリップトゥ(HER LIP TO)」成長の秘けつとは?ここでは、当日小嶋CCOが語った内容のダイジェストを紹介する。セッションの続きは、このページから登録すれば4月24日まで無料で視聴ができる。

WWD:「ハーリップトゥ」を立ち上げた経緯は。

小嶋陽菜(以下、小嶋):アイドルグループAKB48のメンバーとして12年間活動してきた。もともと卒業後に、「ブランドをやろう!」と思っていたわけではない。自分の好きなモノを作って、それをファンの方にシェアしてコミュニケーションが取れたらいいなという考えで最初は小さくブランドを始めた。開始当初は、「これからは個の時代になる」「自分自身がプラットフォームになる」といった世の中の変化についてはなんとなく想像していたが、ブランドがこのように大きな規模になったり、ネクストリーダーに選ばれたりといったことは考えておらず、とても驚いている(笑)。

WWD:コロナ禍もあり、業界の多くの企業が苦戦している。厳しい時代に成長できている秘けつは何か。

小嶋:われわれも大変なことはたくさんあった。4年前にブランドを始め、お客さまが増えていく中でその期待に応えたいと思うようになり、2年前に自分の会社を立ち上げた。しかし、「よし、やるぞ!」というタイミングでコロナになってしまい、出鼻をくじかれた感覚はあった。ただ、大きな会社のように1年先に販売する商品まで決まっているというようなことはないので、部屋で楽しく過ごすためのアイテムやマスクの製作に取り掛かるなど、小回りを利かせることができた。今はアパレルだけでなくビューティアイテムも販売している。ビューティは「セルフケア・イコール・セルフラブ」をテーマにしている。在宅時間が増え、自分と向き合う時間が大事だと感じ、ファンの方にももっと自分を大切にしてほしいという思いが強まった。そのための時間を作るアイテムとして、ボディークリームやボディーバームを企画している。

問い合わせ先
ルミネ代表電話
03-5334-0550

The post 元AKBこじはるが語った「コミュニケーションとしてのブランド運営」 ルミネ×WWDJAPANイベントから appeared first on WWDJAPAN.

俳優・松山ケンイチが命と向き合う理由 獣皮のアップサイクルに見いだした可能性

 松山ケンイチと小雪が、廃棄される獣皮のアップサイクルを目的としたライフスタイルブランド「モミジ(MOMIJI)」を設立した。松山が東京と地方の二拠点生活を始めて約3年。地方では野菜作りなど自給自足に近い生活を送りながら、ハンターとして畑を荒らす鹿や猪などの害獣駆除にも携わっている。自然と共生し、命と向き合いながら過ごす中で、なぜブランドを始めようと思ったのか?ブランド初披露となったブルー マーブル(Blue Marble)主催の新たな合同展「ニュー エナジー ゼロ(NEW ENERGY ZERO)」で、その真意を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):地方に移住したきっかけは?

松山ケンイチ(以下、松山):僕は青森の田舎で生まれ育ち、16歳から東京で俳優の仕事を始めました。田舎で育った自分と、俳優・松山ケンイチとして過ごした時間が同じくらいになったころ、祖父母と畑で過ごしていた昔の自分に戻りたくなったんです。田舎で生活することで、東京では感じにくい自然との共生に目を向け、その感覚を家族と共有しながら過ごしたくて、3年ほど前に移住しました。

WWD:その生活からなぜブランド立ち上げに至ったのでしょうか?

松山:田舎に住んでいても、東京で得たお金で生活するのでは、結局は東京に依存しているといえます。畑で作物を作り、田舎でも収入源がある暮らしをしてこそ住む意味があると考え、自分に何ができるか探っていたところ、獣皮のアップサイクルを思いつきました。移住してからはハンターとして有害駆除をしており、捕獲した動物の肉は全て使い切っていましたが、骨と内臓、そして皮は自分には活用できないと思い込んでいたんです。ですが、皮をレザーの原料にすればいいのではと思いつき、獣皮の利活用が始まりました。

WWD:ブランド名を鹿の別称である“モミジ”にした思いは?

松山:日本には、鹿革を武具などに使用してきた歴史があります。僕が初めてレザーにしたのも鹿の皮でした。鹿は人間にとって身近な存在ですし、日本らしい名前でもあるので「モミジ」と名付けました。

WWD:ロゴがブランドの頭文字“M”にも、動物にも見えてユニークです。

松山:妻が、複数の意味を重ね合わせるアイデアを提案してくれました。それでずっと描き続けていたら、だんだん四つ足動物のようになったんです(笑)。ロゴは架空の聖獣をイメージしていますが、鹿や猪、熊など、僕が捕獲している動物も皆四つ足動物です。彼らは神聖な生き物として崇拝される一方で、畑の作物を食べ荒らし、人に害を与える害獣としての側面もある。そんな動物と僕たちはどう向き合って生きていくべきか——そんな思いを込めました。

WWD:小雪さんと共同名義にした理由と、2人の役割は?

松山:僕は有害駆除に従事しているハンターで、獣皮の調達人。それを形にするのが妻です。僕はものをほとんど持たないし、1人では右も左も分からなかったけれど、ファッション業界とつながりのある彼女が加わることで大きな輪に広がりました。また有害駆除は、自分たちが田舎で暮らす以上、この先も向き合わなければならない問題です。1人でやるより夫婦のライフワークとして取り組み、それを子どもたちが見ている環境が、家族にとって学びがあると考えました。

ハンターとして鹿の捕獲を続ける理由

WWD:皮はどのように仕入れていますか?またどの動物が多いですか?

松山:僕や仲間の猟師が有害駆除で捕獲したものと、解体所に連絡して引き取ったものがあります。皮の種類は鹿、その次に熊、猪、羊の順ですね。羊は害獣ではありませんが、ジンギスカンとして食される羊の皮が廃棄されているので、それを引き取り、利活用しています。

WWD:環境保全や動物愛護などの視点から、革を使わない方向にシフトするブランドも増えています。「モミジ」は有害駆除した動物の皮の利活用ではありますが、革製品を扱う事業について賛否両論が起こることも想定していますか?

松山:毛皮や革を使わない意思も自然との共生の中では大事なことで、僕も自然の中でのヒトの立ち位置を意識したいと思っています。ただ、世の中全体がエコに向かうには解決しなければいけない複雑な社会のシステムがあります。その道のりは遠く、まだまだ時間がかかり、その間も農林業被害軽減のために動物は捕獲され、廃棄され続けます。それなら僕は、肉も皮も利活用したい。当たり前ですが、全ての生物には個体の大きさに関係なく命があり、その命をいただいて僕たちの命は持続しています。宇宙から見れば、僕の命とそれ以外の命に差なんてない。その循環の中にいたいと思っています。

WWD:鹿による農作物への被害も拡大していると聞きます。

松山:鹿の増加による農作物や自然への被害は、無視できないほど大きいです。鹿が増えた原因は温暖化という説もあります。昔は厳しい冬を越せず自然と数が減少していたのですが、冬でも生息しやすい環境になり、数が爆発的に増えた分被害が大きくなっています。鹿の数を減らすなら、鉄砲で打つより温暖化を止めるほうがよっぽど効果的です。ほかにも、革をなめす技術の継承や、それに携わる人々の雇用についても考えないといけません。

WWD:日本では、駆除対象として捕獲された動物の約10%のみが食肉に活用され、皮として使われるのはそのうちの数%といわれています。この現状に「モミジ」が貢献できることは?

松山:日本ではようやくジビエが学校の給食でも出るようになり、ジビエのレストランが盛り上がってきた段階です。これから獣皮への意識も上がっていくだろうし、実際に獣皮の利活用に向けて動いているレストラン関係者もいます。彼らや猟師など、みんなの思いが集まれば大きな力になるので、そういった方々の力になりたい。僕の役目は、獣皮の背景を伝え、レザーになった革の素材の面白さを広めていくことだと思っています。

「モミジ」の革を使ってほしい

WWD:デザインのインスピレーション源やこだわり、現在のラインアップは?

松山:現在はライダースジャケットのみ。俳優の仕事を通じて得た、“足し算より引き算の方がいい”という経験から、できるだけ無駄は省いています。ライダースジャケットは、シルエットが長年変わらない完成されたアイテム。それを「モミジ」が作るなら、何を引き算できるかを考えながら作りました。ただ、どちらかといえば、自分たちは少量生産を維持し、企業やほかのブランドに「モミジ」の革を使ってもらいたい。将来的には、「モミジ」として発表する革製品に関しては、購入者が使い終えたら回収し、その革でインテリアやほかのアイテムを作るような循環型の仕組みも考えていきたいです。

WWD:染色など環境配慮へのこだわりは?

松山:世間ではクロムなめしが一般的ですが、僕たちは環境負荷が少ない植物タンニンなめしを行っています。ただ環境負荷は少ないけれど、植物タンニンなめしは植物の命を消費しているので、今はそれに代わる技術もタンナーと試し始めています。ほかにも、兵庫県・姫路市発祥の日本独自のなめし技術“白なめし”や火の煙でなめす“燻煙なめし”などは、今後ぜひ試していきたいです。

WWD:今後も国産にこだわっていく予定ですか?

松山:南部裂織や藍染め、泥染めなど、日本の伝統技術にも興味があるので、一緒に何かを作れたらうれしいです。ただ、獣皮の利活用は世界規模の問題。海外に面白い技術があれば、彼らとの協業もあるかもしれないですね。

WWD:「モミジ」を通じて実現したいことは?

松山:インテリアやアートの分野、障がいを持つ方も使える用具など、ファッション以外での革の活用法も広げたいです。教育面でも、子どもたちと革小物を作りながら、皮がどこから来たのかを学ぶワークショップも実施したい。可能性を秘めた素材なので、変にこだわったりせず、柔軟な考え方を持ち、同じ方向を向いて進んでくれる人々と共に考え、楽しみながら挑戦していきたいです。

さまざまな命をいただいて
今の自分がある

WWD:地方ではどんな生活を送っていますか?

松山:野菜作りや草刈り、害獣駆除など、現地の人が当たり前にしていることを僕も同じようにやっています。遊びながら学んでいる感覚に近いですね。

WWD:東京と地方の二拠点生活で得た学びとは?

松山:移住して感じたのは、さまざまな命をいただいて今の自分があるということ。「雑草1本にも命がある」と農家の人は教えてくれました。そしてハンターをやっていると、その肉を食べるのにどれほどの労力を要したかが分かるので、暴飲暴食なんてできなくなります。「いただきます」という言葉が、作ってくれた人と自然の恵みに対してだと実感します。現代の子どもたちの中には、刺身や肉がパック詰めされた状態で生きていると思っている子もいるかもしれません。それに近いことが大人の頭の中でも起こっている。都会での生活は、そんな背景を考える想像力を薄れさせているように感じます。

WWD:地方での生活を通じて、自身の子どもたちに教えていることは?

松山:虫や生き物を愛でたり、殺したりすることで、命についての学びを大事にしています。この世界にはさまざまな命があり、そこには上も下もないということ。そして、人は簡単に命を奪う力があることを学び、本当に奪う必要があるのか、その奪った命に何を思うのか。僕も子どもたちと共に学び続けています。これからも一緒に考え、向き合っていきたいです。

The post 俳優・松山ケンイチが命と向き合う理由 獣皮のアップサイクルに見いだした可能性 appeared first on WWDJAPAN.

12歳の“小学生ギャル”じゅなが語るY2K 「かわいいんだけど……」

 ギャル雑誌「エッグ(egg)」の公式ユーチューブチャンネルに出演するギャルの中で、ひと回り小柄な女の子が“小学生ギャル”こと、じゅなだ。きれいな金髪につけまつげ、ヘソ出しルックなど、12歳とは思えないほどギャルスタイルの完成度は高い。彼女は現在インスタグラムのフォロワー数4万以上を、ユーチューブの「じゅなチャンネル」登録者数は3万以上を抱えるなど、注目を集めている。4月からは“小学生ギャル”を卒業し、中学生になる。そんな未来のファッションアイコン候補に、トレンドのY2Kファッションはどう映るのか。ギャルになるまでの道のりや、ファッション観についても聞いた。

WWD:ギャルに憧れるようになったきっかけは?

じゅな:化粧を始めたのは小2の頃です。そのときは、ただ化粧の練習をしてただけでした。ギャルに憧れ始めたのは小4くらいのとき。SNSを見ていたらギャルさんたちの写真がたくさん流れてきて、自分もこういうふうになりたいなーって。憧れの人は「エッグ」モデルのみんなだけど、“茨城組”のきぃりぷちゃんとまぁみちゃんが特に好きです!

WWD:ギャルに近づくためにやっていたことは?

じゅな:ギャルといえばやっぱり化粧で、特にタレ目に見せることが大事。だから頑張ってタレ目メイクを研究して、最初はカラコンを目に入れるも怖かったけど、最近になってやっと慣れてきた感じです。髪を染めて、つけま(つげ)を着けて、目がドンってなったときは「ギャルに近づけたー!」って。たくさん練習して、今のメイクにたどり着きました。

WWD:化粧品はどうやってそろえた?

じゅな:月のお小遣いが3000円〜5000円だから、自分で買ったり、家族で一緒に出掛けたときに買ってもらったり。お母さんも昔ちょこっとだけギャルだったから「ギャルを目指す!」って宣言したときから、「いいじゃん!」って応援してくれてるんです。

WWD:今は“小学生ギャル”としてどんな活動をしている?

じゅな:今は「エッグ」や個人のユーチューブチャンネルと、インスタグラム、ティックトック(TikTok)で活動してます。じゅなは「エッグ」モデルが多くいる事務所に所属してるんですけど、まだ正式な「エッグ」モデルじゃなくて。事務所に入れただけでもうれしいんだけど、モデルになるために頑張ってるところです!

ショーパンに腹出し
「寒さに耐えてこそギャル」

WWD:服を選ぶときのこだわりは?

じゅな:特になくって、自分が着たいものを着ること。ただキッズサイズだと自分好みのギャルっぽい服がないから、大人用で一番小さいサイズを買って、ブカブカなサイズ感で着てます。でもギャルっぽさは意識していて、ショーパンとか、腹出し系の服は寒くても着る。普通はショーパンとか腹出しって寒いんだけど、その寒さに耐えるのがギャルだと思ってるんで!(笑)

WWD:買い物に行くのはどんな場所?

じゅな:最近はコロナがすごくてあまり行けてないけど、地元のイオンが多いです。好きなのは、元「小悪魔ageha」モデルの武藤静香さんがプロデュースしてる「レディ(RADY)」ってブランド。お母さんもお父さんも好きだから、家のカーテンも「レディ」なんです。あとは「シーイン(SHEIN)」でも買ってるかな。安くてかわいい服がたくさん売ってるから。

WWD:小学校にはどんなファッションで通っていた?

じゅな:学校にはラフなファッションで行ってました。パーカにショーパンで、メイクも日焼け止めを塗って、眉毛描いてまつげをあげて、リップ塗るくらい。撮影のときと違って、めっちゃナチュラルです。本当はもっと派手にしたいんだけど、朝にギャルメイクをしていたら学校に間に合わないんじゃないかって問題があって……。

WWD:SNSには4歳の妹さんも多く登場している。

じゅな:弟とは喧嘩ばかりだけど、妹とは仲良し。妹は自分が遊んでほしいときだけ寄ってくるんですけど、それがかわいくて。妹はじゅなが髪を染めてくると「ねえね、かわいいね。いいな〜」って言ってくるんです。いずれ、ギャルの道に進んでほしいな。

WWD:小学校の卒業式では個性的な服だったが?

じゅな:ほかの子と違うことがしたくて、おばあちゃんのお下がりのブレザーにオーダーメードで刺しゅうを入れて着て行きました。刺しゅうも、お母さんや友だちと意見を出し合って決めて、袖に“小学生ギャル”って入っているのもお気に入りです!

WWD:春から中学生だが、制服はどう着こなしたい?

じゅな:実はそんなに気に入ってないけど、校則が厳しいので我慢して着ます(笑)。

WWD:今年トレンドの、2000年前後に流行したY2Kって知ってる?

じゅな:なんとなく知ってます。特に、ルーズソックスにミニ丈のスタイルはじゅなが目指してるファッションに近いから、普通にかわいい。自分が好きで履いてるルーズソックスが昔流行っていたのかと思うと、なんかすごいですね。

12歳が正直に語る“最新のY2Kどう思う?”

The post 12歳の“小学生ギャル”じゅなが語るY2K 「かわいいんだけど……」 appeared first on WWDJAPAN.

“リアル”と“メタ”の同時展開 「メタトーキョー」がAMIAYAとストリート誌「STREET」をフィーチャーしイベントを開催

 AMIAYAとストリート誌「ストリート(STREET)」、メタバース上のグローバル文化都市「メタトーキョー」は3月30日まで、原宿「ブックマーク(BOOKMARC)」でコラボレーション写真展「AMIAYA × STREET × METATOKYO」を開催している。写真展と並行し、NFTを活用したメタバース・プラットフォーム「ディセントラランド(DECENTRALAND)」内ではポップアップミュージアム「SPACE BY METATOKYO」を「AMIAYA × STREET」仕様にアップデートした写真展示を開催。27日まで開催中の世界最大級のデジタルファッションウィーク「メタバース ファッション ウイーク(METAVERSE FASHION WEEK)」の公式プログラムだ。

 今回のコラボレーションではAMIAYAと「ストリート」のコラボレーションによる写真集「AMIAYA x STREET TOKYO FASHION 2021SS」をフィーチャー。原宿を中心としたストリートを舞台に東京ファッションをまとったAMIAYAを青木正一「ストリート」 編集長兼フォトグラファーが撮り下ろし、メタバースとデジタルファッション、NFTを組み合わせた“Web3.0時代”のファッション&カルチャーをグローバルに発信する。NFTマーケットプレイス「オープンシー(OPENSEA)」では、NFT化した「AMIAYA × STREET」の写真を販売する。本企画の背景やメタバースの未来の可能性について、AMIAYA、青木編集長、鈴木雄大「メタトーキョー」最高戦略責任者に話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):企画にはどんな想いを込めた?

AMIAYA:コロナ禍で私達が出来ることを考え、日本が誇るファッションブランドをフィーチャーし、海外からの支持が熱い「STREET」と、日本のファッションシーンを盛り上げてたいと考えました。世界へ繋がる日本のファッションの可能性を信じ、ファッションが持つポジティブなエネルギーを届けられるよう考えました。

青木正一「ストリート」編集長(以下、青木):AMIAYAが東京に出てきた当時にストリート誌「フルーツ(FRUiTS)」でスナップ撮影して以来、世界へと飛躍する彼女たちを長く見てきました。コロナ渦で東京ファッションを発信する機会が少なくなった時に、日本を代表するAMIAYAが東京ファッションをまとえば、魅力を世界に発信できると考えたのが始まりです。メタバースやNFTは、未来の可能性への挑戦です。

WWD:「ディセントラランド」内マーケットプレイスでは、AMIAYAのファッションスタイルをモチーフにしたウェアラブルを販売、配布する。どんなこだわりを持って製作を進めた?

AMIAYA:「AMIAYAといえば!」と思える、分かりやすいピンクボブのヘアスタイルを作りました。これまでウェアラブルにピンクのヘアがなかったようで、とてもアイコニックなアイテムになったと思います。

鈴木雄大「メタトーキョー」最高戦略責任者(以下、鈴木):「ディセントラランド」の中では、アバターは全てウェアラブルという形で、それぞれNFT形式でアイテムを作成できます。今回はAMIAYAさんが希望する繊細なイメージから、今まで意識をしたことがなかったメタバース空間でのサイジングの重要性に気付きました。ぜひ絶妙なサイジングをメタバースアバター、ウェアラブルで感じて下さい。

WWD:それぞれが感じているメタバースの可能性について聞かせて欲しい。

鈴木:メタバースの拡大により、今後はよりデジタルファッションブランドが立ち上がる機運があります。昨年は「ナイキ(NIKE)」がデジタル領域で活躍するクリエイター組織「アーティファクト(RTKFT)」を買収するなど、今後はより多くのブランドやアーティストを巻き込む可能性が高いでしょう。「メタバース ファッション ウイーク」を境に、デジタルファッションが一層広まることを期待しています。

青木:メタバースは、今後ファッションの領域でかなり重要になり、さまざまな仕組みができていくと思います。表現だけではなく、マネタイズ、ブランド化、ファンとのコミュニケーションなど、多角的に大きく広がるはずです。

AMIAYA:今後、メタバース上で自分たちのブランドを作ってクリエイティブの幅を広げたいです。リアルでは不可能なファッションの楽しみ方を、メタバースで提案できたら嬉しいです。

The post “リアル”と“メタ”の同時展開 「メタトーキョー」がAMIAYAとストリート誌「STREET」をフィーチャーしイベントを開催 appeared first on WWDJAPAN.

ユナイテッドアローズ栗野上級顧問に聞く、受難の時代のスーツ販売 ギャルソンと組んでイベント開催

 コラボ飽和により、めったなコラボでは驚かなくなっている昨今。しかし、ユナイテッドアローズ(以下、UA)とコム デ ギャルソン(以下、CdG)、ニューバランスの3社がタッグを組み、リモートワークなどで近年ますます存在感が薄くなっているスーツのポップアップストアを渋谷パルコで行う、しかもファサードデザインはCdGの川久保玲社長自身が手掛けると聞いたら、「これは何かありそうだ!」と感じるというもの。実際、初日の3月23日に店頭を訪れると、非常に盛況だった。4月12日まで開催しているポップアップストア“自由な背広”について、プロデュースする栗野宏文UA上級顧問に聞いた。

WWD:このポップアップストアを企画した意図は?

栗野宏文UA上級顧問(以下、栗野):今、スーツが置かれている立場がすごくかわいそうなものになってしまっています。スーツ=サラリーマンのユニフォーム、というイメージで、それすらもリモートワークが広がったことで失われつつある。「スーツはおしゃれな服ですよ」「もっと自由に着ていいんですよ」と改めて言いたい。スーツとスニーカーを合わせたスタイルが僕自身はすごく好きで、トレードマークのようになっています。皆さんもどんどん自由に組み合わせればいい。でも「スーツとスニーカーはどう合わせればいいの?」と非常によく聞かれるので、それならば “見える化”しようと思いました。もちろん、UAはもともとスーツ販売を得意としていますから、スーツは推していきたい。しかし、(1社での企画とするのではなく)よりエキサイティングな企画にするにはどうしたらいいかと考え、強いもの同士を組み合わせようと思いました。それがこの座組みに至った理由です。ただし、アイテム自体で「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」×「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」といったコラボはしていません。今って、(コラボで)仕掛けて売ることばかり。今回のイベントもそのような仕掛けの一つと受け取られるかもしれませんが、コラボしたのは商品ではなく会社です。それぞれの会社に対するリスペクトがあって、実現できました。

WWD:“自由な背広”というネーミングやフォントも非常に強く、パッと目に飛び込んできます。

栗野:ネーミングもフォントも川久保さんです。今回、CdGは「コム デ ギャルソン オムドゥ(COMME DES GARCONS HOMME DEUX以下、オムドゥ)」の商品をそろえていますが、「オムドゥ」は1987年にブランドを立ち上げた際、“日本の背広”と打ち出していました。当時はバブル全盛で、メンズスーツと言えば肩パッドのないソフトスーツ。そんな中で、ちゃらちゃらしたバブルへのアンチとして、「日本人が背筋を伸ばし、矜恃を持って着るスーツとはこういうものでしょう?」という川久保さんのメッセージなんだと当時僕は受け取りました。その3年後に、UAもクラシコイタリアとして、肩パッドの入ったスーツを打ち出しています。そうした経緯が頭にあって、「今回は“自由な背広”でどうですか?」と川久保さんに提案しました。「オムドゥ」は09-10年秋冬と10年春夏、僕がディレクションをお手伝いしていたというご縁もあります。

「店頭重視、それがギャルソンとの共通点」

WWD:強いもの同士(企業)を組み合わせたということですが、UAとCdGの組み合わせにはやはり驚きがあります。

栗野:そうですか?CdGとUAは取り引きをして30年になります。「コム デ ギャルソン シャツ(COMME DES GARCONS SHIRT)」を初めてCdG社外で売った店がUAだったと思う。両社は基本のスピリットの部分ではお互いにリスペクトしているんじゃないかと思っています。基本のスピリットとは、小売りを大事にしているという点。近年のファッションビジネスは、SNSでインフルエンサーに拡散してもらっていかに売るか、という部分も大きく、UAももちろんそういうこともやっています。でも、それが最大の推進ドライバーではない。お店でお客さまに接して買っていただくということをCdGは50年、UAは31年やってきた。それは共通する部分です。OMO(オンラインとオフラインの融合)は僕たちも進めています。でも、店頭接客の信頼がなければECでも商品を買っていただくことはできない。そういう面で、CdGとは課題意識が共通していると思います。恐らくそうした意図から、昨年、CdGの販売員向けの社内勉強会に呼んでいただいたこともありました。

WWD:ポップアップストアを告知するリリースには、「さまざまな面で小売の既成概念を超えた提案を試みる」とありました。具体的にどういうことでしょうか。

栗野:例えばアイテムの面で言えば、スーツのポップアップでも、UAはネクタイは1つも置きません。スタイリングでは「スーツはこう着るもの」というルールを超えて提案をしていきますし、服だけでなくレコードや本も売る。販売や接客の面では、UAの販売員がCdGも売りますし、その逆も然り。UAからは毎日3人、日替わりで販売員が立ちます。首都圏から公募で募ったメンバーで、3週間の延べ人数は60人。3人のうち2人はベテラン、1人は若手にしていて、「ユナイテッドアローズ」業態だけでなく、「グリーンレーベル リラクシング(GREEN LABEL RELAXING)」業態の販売員もいますし、女性もいます。本当のスゴ腕販売員は、どこのブランドの商品でも売れる人のこと。普段、他社の販売員と一緒に自社以外の商品を売るというケースはまずありません。スタッフが今回のイベントでの販売経験を普段の職場に持ち帰れば、とても大きな力になると思います。

「やっぱり服は人が着てこそかっこいい」

WWD:市場全体として見ると、スーツは今、堅苦しくないものにどうトランスフォームさせるか、それによっていかに多くの人に振り向いてもらうかが焦点になっているように感じます。スーツ量販店の“パジャマスーツ”なども話題です。

栗野:そういうスーツも求められているのだからいいと思う。でも、(手をかけて作った)食事とカップラーメンは別ものです。カップラーメンがいかに進化しても、食事を駆逐して凌駕するというものではありません。(スーツ量販店などでは)「洗えるスーツ」「○○できるスーツ」といったように、利便性を考えたさまざまな提案がある。そのような与えられたフレキシビリティー(自由)もいいですが、自分でスーツをフレキシブルに着てしまう、自分でフレキシビリティーを作っていくというのもいいと思うんです。UAとして、「スーツってかっこいいよね」と言い続けてきましたが、改めて言いたい。落語はオチが分かっていても何度も聞きたくなるものです。何百年間と同じ話がされていても、そこにそのときそのときの時代性や落語家のクリエイティビティーを感じるから聞きたくなる。スーツも、そういった古典落語や古典芸能と近しいのかもしれません。

WWD:スーツに限らず、ファッション自体もかつてとは楽しみ方がかなり違ってきています。

栗野:キャリアの中でバイイングやディレクションも担当してきましたが、僕が一番興味がある分野は自分の原点でもある販売です。お客さまとコミュニケーションして、時には家族にも話していない内容を聞いたりと、その方の人生に深くコミットすることもできる。そうした瞬間に、洋服屋って面白いなとつくづく思います。今はEC専業で店頭を持たないブランドも出てきていますし、洋服屋のあり方がかつてとは変わってきているとももちろん感じます。それを批判する気持ちはありません。今回のイベントでは、スーツを通してファッションというカルチャーを再認識してほしいという気持ちもある。単にモノを買って終わりではないんです。(背景にさまざまなストーリーやカルチャーがあって、それを感じ)人が着るからこそ服はかっこいい。接客も含め、そういう人とのつながりにフォーカスしたいと思って今回のポップアップを考えました。今、メタバースやNFTの文脈でファッションが盛り上がっていますが、それはそれとして、僕はやっぱり服は着てこそだと思っています。

The post ユナイテッドアローズ栗野上級顧問に聞く、受難の時代のスーツ販売 ギャルソンと組んでイベント開催 appeared first on WWDJAPAN.

「ルイ・ヴィトン」が新作ウオッチを発表 時計部門トップも絶賛「ジェームズ・ボンドの時計に一歩近づいた」

 LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)のウオッチ部門は今年、設立20周年を迎える。そんなアニバーサリーイヤーに、新作ウオッチ“タンブール スピン タイム エア クアンタム(Tambour Spin Time Air Quantum)”を発表した。深海に潜む生き物が暗闇の中で発光する様子からインスパイアされた時計は、マットなブラックとビビッドなイエローを用いた。さらに宙に浮かぶ数字はメカニックなクリック音とともに1時間ごとに1/4回転するように設計されている。

 フロスト加工したチタンケースは磨き上げられた縁とシャープなフォルムを特徴とする。フランジ(見返しリング)はマットに仕上げられ、時間を記す刻み込みはさりげないV字をかたどる。サファイアガラス製の裏面にはブランドのモノグラムを回路基板風のデザインに仕立てた。ストラップはアリゲーターレザーを用い、鮮やかなイエローで縁取った。さらに数字のキューブはシリカガラスを用い、発光エフェクトを加えた。

 ジャン・アルノー(Jean Arnault) =ルイ・ヴィトン ウオッチ部門マーケティングおよびプロダクト・ディベロップメント・ディレクターはこの腕時計を開発するのに2年かかったといい、その魅力は「手に取ればすぐに分かる」と話す。

 また同時に3つのタイムピース“タンブール スリム ヴィヴィエンヌ ジャンピング アワーズ”も発表した。ブランドを代表する“タンブール スリム”シリーズが、3つのジュエルトーンに染まって登場する。それぞれには、「ルイ・ヴィトン」のマスコットであるヴィヴィエンヌが占い師、カジノディーラー、サーカスパフォーマーに変身したイラストが添えられている。

 米「WWD」は、ウオッチ部門を率いるアルノー=ディレクターに新作ウオッチに込めた思いやこだわりを聞いた。

WWD:「ルイ・ヴィトン」は時計を20年作ってきた。“タンブール スピン タイム エア クアンタム”はそれを象徴するタイムピースだと捉える?

ジャン・アルノー =ルイ・ヴィトン ウォッチ部門マーケティングおよびプロダクト・ディベロップメント・ディレクター(以下、アルノー):これはアニバーサリーアイテムではないが、「ルイ・ヴィトン」が他ブランドが挑戦しない領域にまで時計の世界を広げてきたことを讃えるピースだと思う。例えばメカニカルムーブメントとエレクトロニックなモジュールを組み合わせたりしているが、このような複雑な作り方は現代の時計市場でも稀に見るものだ。

WWD:ラグジュアリーウオッチと、近年人気が高まるスマートウオッチの世界の橋渡しのような存在になるのか。

アルノー:その通り。どちらにも魅力があるし、それぞれ単独としても、組み合わせても素晴らしい時計を生み出す。メカニカルとエレクトロニックを融合することのポテンシャルは大きいと感じるし、今後もっと探求していきたいと思うカテゴリーだ。ある意味ジェームズ・ボンド(James Bond)のウオッチに一歩近づいているよ。ボタンひとつ押せばデジタルなディスプレーが表示されるような時計は想像するだけでワクワクするし、すぐに実現できるかは分からないが、夢のある話だ。

WWD:新作ウオッチで最も誇りに思う点は。

アルノー:エレクトロニックなモジュールを用いながらも、ケースを薄く、大きさもコンパクトに保てたことかな。機能性がきちんとありながら、それを意識させない。“タンブール カルペ・ディエム(Tambour Carpe Diem)”と同じ作りで、時間も読める、「腕に着けるアートピース」だ。

 われわれが誇る“スピン タイム エア”ムーブメントを、夜間でも読みやすいようにアップグレードしたのも特徴だ。また個人的に気に入っているのは、バッテリーレベルの表示。ボタンを押す回数が残り100プッシュに達したら、明滅して知らせてくれる。こうした細かいこだわりこそが、設計するのに一番難しくもあるのだ。

デザインだけでない、使いやすさも重視した時計づくり

WWD:「ルイ・ヴィトン」の時計作りにおいて、(デザインに加え)操作のしやすさにもこだわっている。

アルノー:市場の調査をしていると、現代の消費者はより使いやすく頑丈な時計を求めていることが分かった。巻き方や設定を一つ間違えるだけで直すのが大変な時計も多くある中で、壊れにくく誤操作があっても簡単に戻せるように作っている。また文字の読みやすさや大胆なディスプレーにもこだわっており、新作ウオッチも1/4回転といった細かく美しい動作と、読みやすさの両方を追求した。これは「ルイ・ヴィトン」にしか成し遂げられない技術力を物語る。

WWD:その技術力に引かれて時計部門のトップに就いたのか。

アルノー:メゾンの中のさまざまな部門を経験する中で、時計部門は2021年1月に入った。そこで感じたのは、まるで家族のようなチームの雰囲気。また、他メゾンに負けない高い技術力とサヴォワフェール(受け継がれる職人技術)も目の当たりにし、感銘を受けた。ここで働く一人ひとりの職人は、デザインから技術的な話まで、卓越したクラフツマンシップを誇る。

WWD:グループにはいくつかのウオッチメゾンがあるが、最新技術などをシェアしているのか。

アルノー:今はそれぞれのブランドが独立して運営している。でもメゾン同士でシナジーを生み出すことは、近い将来考えるべきことかもしれない。個人的に各メゾンが所有するノウハウを共有しないのはもったいないと感じるが、今のところ技術の共有などはない。

「ルイ・ヴィトン」の時計の顧客は「普通では満足できない」

WWD:「ルイ・ヴィトン」の時計を購入する顧客はどんな人?

アルノー:大胆なクリエイションを求める人。われわれは高度な技術に裏付けされた最高品質のタイムピースを作っている。同時にデザインにもこだわり、エングレービング(彫刻)を手掛けるディック・スティーンマン(Dick Steenman)やエナメルアーティストのアニータ・ポルシェ(Anita Porchet)など、業界トップのアーティストと協業している。「ルイ・ヴィトン」のウオッチを購入する人は、“普通”では満足しない。特にわれわれはほかのウオッチメゾンに比べて歴史が浅いだけに、新規プレイヤーとしての新しいアプローチや他とは少し違う魅力を求められている。またスペシャルなオーダーをする人も多く、ムーブメントからダイアル、ケースまでをパーソナライズするニーズが高まっている。こういったサービスには今後も注力していく。

WWD:近年は女性の間でもデザインだけでなく技術を求める人が増えているが、そういったことにも目を向けているのか。

アルノー:「ルイ・ヴィトン」の魅力の一つは、幅広い顧客層にアプローチできていること。現在ウィメンズ・メンズウオッチの位置付けを考えている中で、改めてアイコンピースの強化を図っている。

WWD:ウオッチ部門の今後の展望は。

アルノー:言うまでもないが、20周年は大きなマイルストーンだ。われわれはまだ若いが、歴史は立派なものだ。過去の作品を振り返ると、これまで歩んできた技術的な進歩が一目瞭然だ。またジュネーブ時計グランプリ(GRAND PRIX D'HORLOGERIE DE GENEVE)で受賞したオーダシティ賞も20周年に先駆けてうれしかった。この賞によって業界からオフィシャルに認められた証になったし、これまでの20年の努力が報われたような気持ちになった。今後も前進し続けて、素晴らしい成果を出し続けたい。

 今後は引き続き技術力を磨きつつ、“タンブール スピン タイム エア クアンタム”や“タンブール カルペ・ディエム”のように業界を驚かせる傑作を作りたい。複雑で高度な技術を巧みに用いながら、使いやすさも妥協しないクリエイションを続ける。楽しみにしていてほしい。

The post 「ルイ・ヴィトン」が新作ウオッチを発表 時計部門トップも絶賛「ジェームズ・ボンドの時計に一歩近づいた」 appeared first on WWDJAPAN.

「エコバッグもビンテージになったらカッコいい」 アーバンリサーチ出身者が繰り返し使いたい「ルーパック」普及

 アーバンリサーチで店長やPR、バイヤー、イベント企画、CSR担当などの経験を積んだ喜多泰之は、社会福祉士の同僚と「繰り返し使いたくなるバリューを生む」エコバッグと仕組みの「ルーパック(LOOPACH)」を立ち上げた。「流行らせることはできないか?」や「大量に売れないか?」という“ナンセンスな物質主義”からエコバッグを救う選択肢を増やすべく、自社はもちろん、他社のエコバッグにNFC内蔵のネームタグを取り付けることを提案。専用アプリや加盟店に配布するリーダー端末を開発し、ユーザーがレジ袋やショッピングバッグを断るたびに「フラワー」と称するポイントが貯まるシステムを構築した。フラワーを公益・共益に寄付できる循環の構築を目指す。

WWDJAPAN(以下、WWD):立ち上げたMILKBOTTLE SHAKERSは、社会福祉事業やSDGsに関連するコンサルティングなども手がけている。サステナブルやSDGsに興味を持った経緯は?

喜多泰之MILKBOTTLE SHAKERS代表(以下、喜多):近畿大学の在学中にアーバンリサーチ ドアーズ(以下、ドアーズ) 茶屋町店でアルバイトを始めました。そのままアーバンリサーチに入社し、「ドアーズ」というライフスタイル業態で働くうちにフェスなどに出かけたり、「パタゴニア(PATAGONIA)」や「スノーピーク(SNOW PEAK)」とも仕事をしたりするようになりました。社会課題を“自分ごと化”するようになったのは、20代の半ばくらい。その後、社会福祉士の川本健太郎(取締役)とともに、課題に思うことを事業にしています。

WWD:ファッション業界で働いていた頃から、サステナブルなアクションに取り組んでいた?

喜多:「パタゴニア」などに影響も受けたし、お客さまと湘南でゴミを拾ったこともあります。ファッション業界でも社会課題に貢献できると思ったし、「お客さまの外見をカッコよくする」だけがファッションじゃないことも体験しました。

WWD:そんな経験が「繰り返し使いたくなるバリューを生む」エコバッグと仕組みの「ルーパック」につながった?

喜多:レジ袋の有料化が施行される前、アパレル企業から「エコバッグが大量に売れる施策はないか?」や「SDGsの文脈で良い打ち出しはないか?」という相談を受けるようになったんです。物質主義に縛られたまま目先のビジネスとして簡単な方法を選ぶと、エコバッグでも「中国で数万~十万個単位で生産すれば、1つ300円で販売できる」や「ミニマムはいくつ」という話になってしまう。結局安いから大量に作らないと利益が出ず、国内の生産は増えず、結局みんな疲弊する。「もっと自然に、新しいスタイルで解決できないか?」と考えたんです。

WWD:「『ルーパック』があるから」とショッピングバッグやレジ袋を断ると「フラワー」が溜まり、集めた「フラワー」は公益・共益に寄付できる。「ポイント」を集めて商品やサービスを手に入れる形にしなかったのは、なぜ?

喜多:将来消費できる「ポイント」を提供するのは、「環境負荷のポイントをズラしているだけ」と思ったんです。集めた「ポイント」でも、結局は消費。それでは「新しいスタイル」が広がりません。

WWD:同時にアプリに登録したバッグを使い続けると、「スタンダード」から「シルバー」、そして「ゴールド」へとエコバッグがランクアップして、1回のアクションで獲得できる「フラワー」が増える。

喜多:長く使い続けると“プレミア感”が生まれる仕組みです。合計300回使って「ゴールド」にランクアップしたエコバッグを「カッコいい」と思ってほしい。「ルーパック」のシステムが普及したら、デニムのように「ビンテージのエコバッグがカッコいい」という価値観さえ広がるかもしれません。と同時に「何百回、何千回、何万回と使い続けてもらえるエコバッグを作ろう」と日本のモノづくりを刺激できたら面白いですね。

WWD:現在のユーザー、導入店舗は?

喜多:昨年8月に本格始動し、ユーザーはまもなく300になります。加盟店は70くらい。

WWD:インパクトが生まれるには、まだまだ数が足りない。

喜多:現在、コンビニエンスストアやスーパーとの話し合いも進んでいます。導入の初期費用は、1店舗当たりの年会費が2500円、リーダー端末の導入費が同じく1万1000円など。ランニングコストは、「ゴールド」のエコバッグで1アクションあたり4円ですから、レジ袋やショッピングバッグを作るより安いはずです。2025年の大阪万博までに1万くらいの店舗で使えるようになったら、来日した外国人に「日本で流行っている『ルーパック』ってなんだろう?」と思ってもらえるかな?なんて想像しています。

The post 「エコバッグもビンテージになったらカッコいい」 アーバンリサーチ出身者が繰り返し使いたい「ルーパック」普及 appeared first on WWDJAPAN.

スタイリスト伏見京子が新ブランドにかける思い サステナビリティで心地よさと幸せを

 伏見京子は、1988年に「anan」(マガジンハウス)でスタイリストとしてデビューして以来、広告や雑誌、アーティストなどのスタイリングを担当し、キャリアを積んできた。2014年には、ファッションパフォーマンス集団“ハプニング(The HAPPENING)”を結成し、原宿や銀座駅でのゲリラファッションショーなど、既存のシステムに捉われない活動を行い、ファッション以外のシーンからも注目を浴びた。

 そんな彼女が昨年、古着を使ったアップサイクルブランド「サイクリング(CYCLEING)」を立ち上げた。自ら問屋に向かい古着を買い付け、独自のセンスで新たな命を吹き込んでいる。代々木上原のセレクトショップ、ブレスバイデルタ(breath by delta)でポップアップを開催するなど、活動の幅を着実に広げている。そんな彼女に、ブランド立ち上げの経緯や、サステナビリティに関するこれまでの活動などを聞いた。

「循環可能性に『心地よさ』は必要不可欠」
20年前と変わらない姿勢

徳永啓太(以下、徳永):「サイクリング」を始めたきっかけは?

伏見京子(以下、伏見):とある仕事で古着を使ったスタイリングをイメージし、デザイン画を描き起こしたのですが、結局それが頓挫してしまって。せっかく描いたんだし、形にしたいと思って、知り合いのデザイナーから古着問屋のナカノさんを紹介してもらい、そこで仕入れた古着を使って具現化しました。それを“ハプニング”の展示会で発表したんです。

徳永:それが始まりだったのですね。「サイクリング」というブランド名からも既存のファッションサイクルや環境への問題提起をしているように感じますが、ずっと関心はあったのでしょうか?

伏見:はい。私は過去にエコとファッションを軸にした「エルピーマガジン(ELPEE magazine)」という本を1999年と2000年に出版しています。当時は、化学繊維を使って大量生産した服が世間に浸透し始めると同時に、膨大な服が消費され、環境にも負荷がかかることが問題視され始めたタイミングでした。“エコロジー”や“リサイクル”という考えがはやり始めたのも同じ頃だと思います。現代の“SDGs”や“サステナビリティ”のうたわれ方とも通じるところがありますよね。20年前から環境問題への問題提起はあって、今に始まったことではないんです。

徳永:「エルピーマガジン」ではどのようなメッセージを掲げていたのでしょうか?

伏見:一つは、エネルギーは石油由来だけじゃなく代替え可能ということ。環境に負荷をかけない素材を開発すれば、新しい産業や雇用が生まれ、世界が良い方向に進むんじゃないかという考えです。当時は「水素自動車は不可能だ」って言われていたけど、今はたくさん走っていますし、これは実現されつつありますね。もう一つは、“ユニバーサルデザイン”。障がいのある方にとっても、私たちにとっても、良いデザインとは何かを考えるもので、かつては建築や食器などのプロダクトにしか反映されておらず、ファッションには浸透していなかったから、服にも大事だよと伝えたかったんです。

徳永:たしかに2000年代は、障がいのある人が利用しやすい“バリアフリーデザイン”から、年齢や性別などを超えて、誰でも使いやすい“ユニバーサルデザイン”へと考えがシフトした時代でした。ファッションスタイリストである伏見さんが、このような福祉の分野にも興味を持ったのはなぜですか?

伏見:スタイリストはものを選んで届けることが仕事。私は、衣服に限らず、空間や生活においても“心地いいもの”を届けたいんです。ユニバーサルデザインに興味を持ったのもそれがきっかけです。

徳永:「エルピーマガジン」から年月を経て、「サイクリング」というブランドとして改めてエコに向き合ったわけですが、考え方に変化はありましたか?

伏見:「エルピーマガジン」では、環境に負荷をかけるシステム自体に警鐘を鳴らしたけど、結局、大きな企業が動かないと個人では何も変えられないと痛感しました。「サイクリング」でサステナビリティに改めて向き合うと、「当時と何も変わってないなぁ」という印象を持ちました。大量の服が捨てられていますし。でも、2000年代当時は、エコに積極的なヒッピーでさえ麻以外を着なかったり、農業から始めないと本物じゃないと言われたりと、視野が狭く、サステナビリティにアプローチする選択肢も少なかった。でも今は、リサイクルや再生繊維、オーガニック素材など、取り入れる手法が多様化している。その結果、サステナブルでありながら美しく、モダンなアウトプットが増えていると思います。それがいい変化ですね。

サステナビリティと服飾芸術

徳永:”サステナビリティをモダンに”というのは、最近の特徴かもしれませんね。古着をデザインの強い服に昇華する「サイクリング」にも通ずるものがあります。

伏見:私が独立した頃は、”服飾芸術”という言葉があって、「服が芸術性を帯びたアート作品である」という考えがありました。ジョン・ガリアーノ(John Galliano)の「ディオール(DIOR)」、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)の「ジバンシィ(GIVENCHY)」、マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)、フセイン・チャラヤン(Hussein Chalayan)ら、彼らが活躍していた時代はとてもきらびやかで、今よりも服が重視されていました。そんな時代を作った数々のデザイナーとブランドから影響を受けた私も、作品を美しくすることはクリエイターの責任だと思っています。だから「サイクリング」でも、きれいな仕立てのテーラードスタイルとスポーティーなアイテムをドッキングさせているんです。

徳永:ポップアップでは持参アイテムをベースにした、カスタムオーダーにも対応していましたね。

伏見:祖父からもらった捨てられない服や、最近着ていないけど愛着のある服など、いろいろな背景のあるアイテムを組み合わせて特別な一着にする瞬間は、とても幸せでした。お客さまの服への愛も実感できたし、作っている私も心地がよかったです。私は、ファッションで一番重要なのは“心地よさ”だと思っています。環境に負荷をかけないサイクルや、障がいの有無に限らず使いやすいユニバーサルデザイン、服を大事にするお客さまと対話して特別な一着を作る時間、そして美しくモダンな服を着る高揚感。どの要素も心地よく、関わる全ての人が幸せになるーーそれがサステナビリティの理想ですね。


 取材では、ナカノの秦野工場のご厚意により仕事場を見学。神奈川県の家庭から手放された衣類を市役所が回収し、ナカノが資源有価物として買い取り、「国内販売できる古着」「再生繊維できるもの」「中古衣料として輸出できるもの」の大きく3つに仕分けしていた。取材日にはトラック1台分の服が運ばれ、倉庫には約100kgの服を圧縮してビニール袋に梱包したものが天井まで敷き詰められていた。

 ポップアップにはファッション感度の高い若者や服飾学生が来場し、それぞれが大量に服が捨てられている現状と向き合っていた。この時間を創出できることこそ、このポップアップ最大の価値ではないだろうか。2週間の期間でほとんどのアイテムが売り切れており、ビジネスとして成立させている点も「サイクリング」のすごさだ。古着を美しく、モダンに提案する伏見さんの姿勢がなければこうはならないだろう。

 日本国内で年間約130万トンの衣類が家庭から手放され、国内で循環される古着はたった4%だという。それでも、現状を変えようと、本気で取り組む人と企業がいる。再利用できるように仕分けする古着問屋ナカノ、少しでも解決するために挑戦する伏見氏のクリエイション、この挑戦を一般の方に伝えるスペース「ブリース バイ デルタ」。それぞれの思いを肌で感じ、ファッションの側面からサステナブルな社会を実現できるのでは?と思わされた。

The post スタイリスト伏見京子が新ブランドにかける思い サステナビリティで心地よさと幸せを appeared first on WWDJAPAN.

長濱ねるが東コレでサステナブルを語る SDGsレポーターとして登場

 タレントの長濱ねるが14日、「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」のイベントに登場した。長濱は2022年春夏シーズンから「RFWT」のSDGsレポーターを務めており、同イベントでもサステナブルについて語った。

 長濱は釣り具総合メーカー「ダイワ(DAIWA)」が手掛けた、漁網をリサイクルしたドレスと、セットアップの2通りの衣装を披露。リサイクルドレスの着心地について「生地をたくさん使ったゴージャスなドレスでしたが、すごく軽くて動きやすかったです。これからさらに開発されていくという話を聞いて、すごくワクワクしました」とコメントした。

 さらに、私生活でのサステナブルな取り組みについても語った。「身近なところでいうと、自分の着た服を友だちに譲っています。ほかにも『マラミュート(MALAMUTE)』が取り扱っている、バックにリサイクルできるニットを選んで買っています」。

 SDGsレポーターに就任して変わったことについて「リサイクルショップをよく利用するようになりました」と明かした。さらに「以前から古着は買っていましたが、家具や食器でも誰かが使ったものを手に取るようになりました。サステナブランドが増えてきているので、衣装でも『CFCL』などを着用しています。自分が着用することで、その存在を広めていけたらいいなと思うようになったのは、変化したところですね」。

The post 長濱ねるが東コレでサステナブルを語る SDGsレポーターとして登場 appeared first on WWDJAPAN.

メタバースの大本命「ZEPETO」、2.9億人のアバターが新時代のファッションを生み出す

 スマホを通じて仮想空間上でアバターが動く、いわゆるメタバースのまさに象徴的な存在が「ゼペット(ZEPETO)」だ。Z世代を中心に世界中に2億9000万ユーザーを抱え、しかもその数はどんどん増えている。すでに同アプリ内では350万以上ものアイテムがリリースされ、アバターたちが着用している。韓国ネイバーグループ傘下の「ゼペット」は、何を変えるのか。スノー・ジャパン(SNOW JAPAN)の日本事業統括の崔 智安(チェ・ジアン)氏に聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):「ゼペット」の成り立ちは?

崔智安(以下、崔):もともとはSNSアプリ「スノー(SNOW)」の派生として生まれた。だが今では、非常に多彩な機能があり、実は一言で定義するのは難しい。顔認識機能を生かし、自撮りをベースに自分でアバターを作成して動くアニメーションも作って、それらを普通のSNSのように投稿もできるし、ゲームをしたり、自分で街や空間を作って他人を招き、その中で遊んだり、おしゃべりすることもできる。しかし、なんと言っても最大の特徴は、いつでもどこでも、アバターを通じてコミュニケーションを取れることだ。ユーザーは世界中に2億9000万人を抱えており、彼ら/彼女らはすでに、髪型、メイク、服装、体型を自由に選び、人によってはファッションと同じように、それらを毎日変えたアバターでコミュニケーションを取っているのだ。

WWD:ユーザーの属性は?

崔:最大のユーザーを抱える中国を筆頭に、日本、米国、韓国、フランス、イントネシア、タイ、メキシコに広がっている。多いのはアジアだが、フランスや米国などでも急速に広がっている。共通しているのはユーザーの7割以上が13〜24歳の女性、つまりはZ世代であることだ。重要なポイントは、Z世代の多くが、「ゼペット」というメタバース上で、アバターを使ってコミュニケーションを取ることが当たり前になりつつあり、コミュニケーションの日常的な手段の一つに「メタバースとアバター」が登場しているのだ。これは注目すべき大きな変化だ。

WWD:これまで「グッチ(GUCCI)」「クリスチャン ルブタン(CHRISTIAN LOUBOUTIN)」といった高級ブランドから、「ナイキ」「アディダス」などのメガブランド、ディズニー、サンリオといった世界的なキャラクターホルダー、ブラックピンクなどの超大物アーティストまで、幅広い企業やブランドとコラボレーションしている。なぜブランドやIPホルダーは「ゼペット」とコラボするのか?

崔:最大の魅力は、「ゼペット」が世界中の多くのZ世代をユーザーとして抱えているからだろう。Z世代、いわゆるデジタルネイティブ世代に対して、大手といえども、多くの企業は課題を抱えていた。つまりデジタルネイティブのZ世代にどうアプローチすべきか、と。日本ではあまりそう感じないかもしれないが、世界的にはZ世代がマーケティングのトレンドや発信力でオピニオンリーダー的なパワーを持ち始めている。Z世代との接点をどう作るのか?あるいはブランド体験をどう提供するのか。そこに「ゼペット」がぴたりとハマった。

WWD:「ゼペット」の場合、「グッチ」のようなブランドであってもアイテムの価格はそう高くない。ブランディングを重視する高級ブランドにとっては珍しいことだ。その理由は?

崔:アバターの服に数万円を払うか、という考え方もあるし、そもそも「ゼペット」はユーザーの体験ということを特に重視している。価格をある程度標準化することで、より多くのユーザーがいろいろなブランドやファッションを体験できる。多くの企業やブランドにとっても、先ほども言ったように「ゼペット」を新しい接点として捉えており、「ゼペット」のこうした考え方に理解を示している。

WWD:メタバースという点で見た場合の「ゼペット」の強みは?

崔:「ゼペット」は仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、ゲームなど、メタバースに必要とされるあらゆる要素を含んでいる。特筆すべきは、これまでのSNSは、主要な機能が2次元のフィード(投稿)に過ぎなかったが、「ゼペット」ではアバターを軸にした空間になっていること。これは非常に大きなゲームチェンジだ。

WWD:そうしたメタバース空間で、ファッションはどのような意味と役割を持つのか?

崔:まさに最も重要な要素だと言っても過言ではない。アバターとは、髪型、メイク、服装、体型の組み合わせだ。つまり、ファッションがほぼ全てと言っていい。「ゼペット」の中心ユーザーであるZ世代は、自己表現を特に重視する年代であり、しかも我々の分析ではファッションを軸にした、例えば「クール」「おしゃれ」のような感覚は、グローバルで共通のコモンセンス(共感覚)だ。ただ、ファッション、あるいはファッションブランドに関して再定義する必要はあるかもしれない。「ゼペット」では想像しえるすべての世界を作り出せるからだ。

WWD:というと?

崔:「ゼペット」ではアイデアさえあれば簡単に表現できるため、誰もが新しいクリエイターになれる可能性を秘めている。誰もがブランドを作ったり、アイテムを生み出すことができるのだ。すでに200万人以上が、新たな「ファッション」アイテムを生み出している。日々、「ゼペット」上で新しいアイデアと表現が生まれており、中には「ゼペット」内独自のトレンドも生まれている。これまでのリアルの世界では、あり得なかった現象だ。その一方で、既存の“プロ”のファッションブランドはまだ本気を出しているとは言い難い。私の見るところ、これからのファッションは服をデザインするだけでなく、体験まで含めてデザインする必要がある。ファッションショーだけを例に取っても、リアルの世界ではこれだけの奥深い表現や演出をしているにもかかわらず、「ゼペット」を含め、デジタルの世界でそれだけの表現に取り組んでいるブランドは決して多くはない。

WWD:今後「ゼペット」、あるいはメタバースで既存のファッションブランドが成功する秘訣は?

崔:何よりもまずは、挑戦することだろう。日本企業は実感としてコンサバティブだと感じることは少なくないし、新しいこと、理解できないことに対するハードルが高い。メタバースでは世界で通じるファッション感覚が重要だと話したが、加えてシビアな話だが、ある程度の知名度も必要だ。この2つに適応する日本のブランドは数多くあると思うが、個人的には「ビームス」のようなセレクトショップや、Z世代の顧客を多数抱えるファストファッションブランドには注目している。特に日本のセレクトショップの場合、ファッション感覚にグローバルで強い共感を呼ぶ可能性を感じている。日本発のコンテンツという意味では、ファッションではないが「鬼滅の刃」「呪術廻戦」のようなアジアで高い知名度を持つコンテンツはとても可能性がある。

The post メタバースの大本命「ZEPETO」、2.9億人のアバターが新時代のファッションを生み出す appeared first on WWDJAPAN.

クリストフ・ルメール騎手がアパレルブランド開始 名手が語る「競馬とファッション」

 JRA(日本中央競馬会)で5年連続リーディングジョッキーを獲得する騎手のクリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)氏が、アパレルブランド「CL. by C.ルメール」を今春スタートする。故郷フランスをはじめ各国で活躍した後、外国人として初めてJRAの通年騎手免許を取得し、驚異的なペースで勝ち鞍を重ねてきたルメール氏。アパレルブランド設立は「日本への恩返し」だと話す。

WWD:もともとファッションに関心が強かったのですか。

クリストフ・ルメール(以下、ルメール):幼い頃からおしゃれが大好きでした。フランスで生まれ育った僕は、騎手だった父と一緒に競馬場をたびたび訪れていました。競馬場は社交場でもあるので、子供でもドレスコードに従います。ブレザーにネクタイ、ピカピカに磨かれた靴でめかしこむのです。この体験が僕をファッションに目覚めさせた気がします。

 騎手になって稼げるようになると、「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」「グッチ(GUCCI)」「ケンゾー(KENZO)」などの服を愛用していました。パリには有名ブランドがそろっています。けっこうお金を使ってきました。

WWD:ファッション好きが高じて、自分で服を作りたくなったと?

ルメール:2、3年前から自分のブランドの服を作りたいと考えるようになりました。僕がやるからには競馬とストリートをつなげて、競馬の楽しさや奥深さをもっと多くの人に広めたい。今回の服はどれも騎手がレースで着る勝負服から着想を得ています。バスケットボールなどは、ストリートファッションとも密接に結びついて、バスケをしない人にとっても身近な存在になっていますよね。競馬もそうなれたらいい。「ストリートジョッキー」というコンセプトで、服を通じて競馬の文化にも触れてもうらことを目指しました。競馬ファンだけでなく、ファッションが好きな人にも着てほしいのです。

お世話になった日本への恩返し

WWD:ポロシャツやTシャツ、ジョッキーパンツなどスポーティーなアイテムが多いようですね。

ルメール:馬の調教など仕事のときだけでなく、プライベートでも動きやすい服が好きです。でも僕の好みとしては、いつもスマートな印象でいたい。例えば、いま僕が着ているTシャツは細身のVネックで、(テーラード)ジャケットのインナーに着てもカジュアルになりすぎません。ポロシャツには、競馬の騎手が着る勝負服から着想を得た柄を用いました。デザインを考えるのは本当に楽しい。暇さえあれば(イラストやデザイン用の)アプリを開いて描いています。

 一般の方のなじみはないでしょうが、ジョッキーパンツは普段着としてもカッコいいので是非おすすめです。少しシェイプさせて、シルエットも美しくしました。フランス人の僕が作るからには、エレガントな服にしたかったのです。

WWD:でも、モノ作りの点では日本製にこだわっていると聞きました。

ルメール:はい。それはブランドを立ち上げた動機の一つでもあります。日本に恩返ししたいという気持ちが、僕の中で日増しに強くなっているのです。競馬界への恩返しはもちろん、お世話になった日本の皆さんへの恩返し。このブランドを発信することで、少しでも日本の産業に貢献できたらいい。特に僕が暮らす京都には、素晴らしい技術を持った職人さんがたくさんいます。彼らと仕事できるのは喜びでもありました。

「デザイナーのルメールさんに会いたい」

WWD:製造現場も訪ねたそうですが、どんな感想を持ちましたか。

ルメール:ポロシャツなどを縫う和歌山県の工場を訪ねました。広い工場を想像していましたが、意外に小さくて家族的な雰囲気の中で真剣に服が作られる様子に感心しました。日本のモノ作りのクオリティーは素晴らしい。僕もミシンに挑戦したけれど、なかなかうまくいかなかった。

 帽子で協業した京都の佐藤喜代松商店も訪ねました。漆の神秘的な工程には驚きました。Tシャツのグラフィックでは、京都を拠点にするアーティストのMOYAさんに協力してもらいました。今後もたくさんの職人やアーティストと協業していきたいです。

WWD:ところで、「ルメール」を展開するファッションデザイナー、クリストフ・ルメール氏と同姓同名ですね。

ルメール:「ユニクロ」などで活躍されているルメールさんですね。確かに僕と同じ名前です(笑)。だからブランド名は騎手のルメールだと分かるよう「CL. by C.ルメール」にしました。面識はありませんが、デザイナーのルメールさんには是非お会いしたいです。コラボレーションできたら“ルメール×ルメール”になりますね。

            ◆
 「CL. by C.ルメール」は、4月13日から専用のオンラインサイトで販売を開始する。また、4月13〜24日まで高島屋京都店、4月27日〜5月8日までイセタンサローネ メンズ(東京・丸の内)でポップアップストアを開く。主力商品の税抜価格は、半袖ポロシャツ1万8000円、Tシャツ9000円、パンツ2万4000円など。各商品はJRAの年間重賞レースとG1レースの数に合わせて、各128枚または各24枚の限定販売となる。

The post クリストフ・ルメール騎手がアパレルブランド開始 名手が語る「競馬とファッション」 appeared first on WWDJAPAN.

ブランドの卸売り事業を拡大させるWEBサービス「homula」とは?

 コロナ禍をきっかけに、アパレル業界でもさまざまな領域でデジタル化が進んでいる。小売店に対するブランドの卸売も例外ではない。その領域をサポートするべく生まれたサービスが「homula(ホムラ)」だ。同サービスは2021年12月に本格スタート。現在、登録ブランド数は250以上、登録バイヤー・小売店数は2500以上。全国各地の多種多様なブランドとバイヤーが日々取引を行っているという。「ブランドの卸売事業を成長させることにフォーカスし、“使わない理由がない”サービス設計を目指している」と語る福地峻homula代表取締役CEOに、「homulaでブランドの卸売事業はどう変わるのか」を聞いた。

ブランドと小売店をつなぐ
オンラインマーケットプレイスは、
何故生まれたのか?

―homulaとはどのようなサービスか? 

福地峻(以下、福地):端的に言うと、ブランドと小売店をマッチングさせるオンラインマーケットプレイスだ。オンライン展示会をhomulaで行い、既存取引先との受発注だけでなく新しい卸先を見つけることができたり、オフラインで展示会を行い、発注をhomulaで実施したりとさまざまな使い方をすることができる。また、ブランドによっては展示会後も多少在庫を持つことがあるが、そういった在庫の卸販売もhomula上でできるようになっている。

―そもそも、なぜhomulaを立ち上げようと考えたのか? 

福地:コロナ禍で、アパレル店の方から、コロナで展示会に行けなくなったり、新規のブランドを仕入れることに対してリスクを感じるようになったりして、仕入れがしづらくなったという話を聞いた。私自身、前職の金融時代にB2Bの取引において買う側のリスクを軽減するためのビジネスを立ち上げた経験があり、その知見を生かせるのではないかと考えた。社内メンバーに大手百貨店やセレクトショップ、ファッションテック出身者を迎えて、彼らに話を聞いたり、小売店側だけでなく仕入れ先であるブランドの方にもいろいろと話を聞いたりして機能を追加していったことで、今のhomulaのサービスに行き着いた。ブランドの卸売の成長を全力でサポートするべく、“使わない理由がない”くらいのサービスを目指して日々機能をアップデートしている。

“使わない理由がない”と
思わせるほどのメリットとは?

―ブランドにとって、homulaを利用することにはどのようなメリットがあるのか? 

福地:いくつかあるが、まず、費用面においては初期費用や固定費が無料で、発生する費用はhomulaを通じて新規の取引先を見つけた場合のみ、といった形を取っていることがある。機能面に関しては、取引対象となる商品を登録するだけで、既存の取引先や新規の取引先に対して、在庫販売〜展示会受注までをワンストップでできる。こういったサービスは私の知る限り、今のところ日本には存在していない。また、顧客管理機能が付いていることもポイントだ。取引先に対して展示会案内などのメールを簡単に作成して送ることができ、そのメールをどのバイヤーがどの程度クリックしているのか、受注用のページをどれだけ見ているのかを全て可視化できるようにしている。これにより、バイヤーの温度感が分かり、どのバイヤーに積極的にアプローチをかけていくべきかが一目瞭然になる。また、バイヤー側にとっても取引がしやすい仕組みを整えているため、ブランドとしては新規卸先の発掘だけでなく、既存卸先との取引ボリュームの増加にもつながるはずだ。

―「バイヤーにとっての取引がしやすい仕組み」とは? 

福地:まず、支払いや在庫のリスクを当社が負う形にしている。支払いに関しては、取引が成立した際、いったんは当社からブランド側に支払うようにしており、バイヤー側は60日後までに支払えば良い、ということにしている。在庫においては、初回取引に関しては当社がブランド側から買い取るような手法を取っており、バイヤー側は仕入れ後に当社に返品することができる。返品された在庫は当社の会員の方に販売しているため、最終的にはhomulaで在庫を抱えることもない。

挑戦する“リスク”を下げ、
ファッション業界をより多様に

―最後に、homulaを通じてどのような世界を実現したいのか? 

福地:ファッションにおいて、挑戦がしやすいような環境を作れればと思っている。ブランドや小売店は、立ち上げの際は少人数であることがほとんど。大企業でも、1ブランドは少人数のチームで回しているところもある。そのような中で挑戦していくことは尊いし、それが結果、新しいものや、人を熱狂させるものを生むことに繋がっていく。ただ一方で、挑戦する際にはリスクや、リスクに対する不安も生まれてくる。我々としてはリスクを限りなく下げることで、挑戦をする人たちがどんどん生まれるはずだし、さらにはそれがファッション業界の多様性の維持にも繋がってくると考えている。homulaではそのためのロードマップを引き、ユーザーの要望も取り入れながら新しい機能やバリューを打ち出していっている。私自身も事業に挑戦している身として、“挑戦する人たち”を全力で後押ししていきたい。

【ブランド成長事例】利用を
開始して数ヶ月で
新規取引先が約20件増

 カイタックインターナショナルが運営する「グランマ ママ ドーター(GRANDMA MAMA DAUGHTER)」は、コロナ禍でhomulaの利用をスタートしたブランドの1つだ。同ブランドを担当するカイタックインターナショナル卸営業部の丸川博文氏は、homulaを使い始めた理由について「コロナ禍で、新規卸先の開拓を行うには従来の営業スタイルを変えていく必要性を感じていた。そのような中で、homulaならブランドイメージを守りながら効率的に売上アップが行えるのではないかと感じて導入を決めた」と話す。「初期費用や固定費もかからずリスク低く始められたのも大きなポイント。作業工数が少なく、かつ与信リスクを気にせず受注が取れる点が非常に便利だ。コロナもありオフライン展示会での営業が難しい中、homulaでは温度感が高いバイヤーの可視化もしてくれるので、効率的な営業を行うことができ、開始から数カ月で約20件もの新規取引先を増やすことができた。UIもシンプルかつきれいで使いやすく、機能もどんどんアップデートされて使いやすくなっているので今後も楽しみ」。

INTERVIEW & TEXT : SHIN ISHIZUKA
問い合わせ先
homula

The post ブランドの卸売り事業を拡大させるWEBサービス「homula」とは? appeared first on WWDJAPAN.