就任から半年、ユナイテッドアローズの松崎社長が語る「危機と挑戦」

 ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS、以下、UA)の松崎善則社長が10月5日、2022年4〜9月期決算説明会に登壇し、コロナ禍での経営動向や今後の重点施策について語った。4月に社長に就任してから半年。セレクトショップの雄と言われた同社が抱く危機感と、相次いで新たな取り組みを立ち上げる狙い―レーベルの立ち上げ:D2Cの「シテン(CITEN)」、インフルエンサーを起用した「マルゥ ユナイテッドアローズ(MARW UNITED ARROWS)」、ヨガを軸としたウィメンズの「トゥー ユナイテッドアローズ(TO UNITED ARROWS)」、商標権を承継したサーフショップ「カリフォルニアジェネラルストア(CALIFORNIA GENERAL STORE)」プライベートサービスデスクの設置―などを自らの言葉で説明。ECのリプレイスメントなど基幹システム構想と並行して、2025年度内に向けたPLM(製品ライフサイクルマネジメント)システムと在庫分析システムの導入によるサプライチェーンのデジタル化も控えている。業績や店舗閉鎖などネガティブな部分がある中で、社員のモチベーションを高め、接客を中心とした品質を高めることで、「お客様の期待に応えること」の重要性にも言及した。質疑応答と含めて、会見の発言をレポートする。

松崎善則社長(以下、松崎):私からは、このハーフターム(中間期で)、今後大事にしていきたい考え方をみなさまに共有させていただきたいと思います。私が4月より社長就任いたしまして、半年強が経過しましたが、今期も引き続いて厳しい状況が続いている部分が多々あって大変ご心配をおかけしていることと存じます。

 改めて、前期からの業績動向を大枠ダイジェストすると、計4回の、延べ11カ月以上に及ぶ緊急事態ということで、ネガティブインパクトが非常に大きかったというところです。

 この資料の通り、コロナが始まった昨年の第1四半期(4〜6月)は、緊急事態によって2カ月間店舗がほぼすべてクローズしたことで売り上げが非常に苦戦しました。第2四半期(7〜9月)は一時的に需要は回復したのですが、第1クオーターの在庫消化を優先したことで利益面が非常に苦しかった。第3四半期(10〜12月)は回復基調がいよいよ見られるかと思われたが、再度秋口から感染が広がって、第4四半期(1〜3月)についても再度緊急事態宣言ということで、いつ(コロナ禍が)開けるかどうかわからない状況下で、在庫の持ち方も施策も含めて、社内全体、右往左往という形で昨期は終えました。

 今期から、ようやく一新してやっていこうと新体制の中で取り組みを進めていますが、4月下旬から再度宣言が発令され、7月以降も第五波ということで、この上半期は想定した回復シナリオには残念ながらもう一歩届かない状況になっております。緊急事態がようやく明け、気温が低下した先月中旬以降から回復が顕著に見られています。足元、11月に入っても回復が想定以上に見られているということで、お客様の動向にも期待が高まっており、準備を進めている状況です。

今期方針は「選択と集中」「新たな挑戦」「経営理念の再浸透」

 今年度のグループ経営方針として、「持続的成長と、未来に向けた大改革~新時代のお客様大満足」を掲げています。文字通りでございますが、この厳しい経営環境におきまして、従来のやり方ではお客さまのご期待、ご支持をいただくのは難しいということで、「大改革なくして持続的成長は果たせない」という危機感を持っての方針です。この方針の下、営業利益生産性計画(一人当たり営業利益計画)の必達、連結粗利益率(50.7%)の必達に向けた施策と、サステナビリティやDXの取り組みを進めている最中でございます。

 大改革というタイトルを進めていくうえで、重要なポイントを3点考えています。一発逆転を狙いたいところなのですが、大改革には不断に継続していくことが非常に重要と考えておりまして、文字づらですとあまり目新しいものではないのですが、一つ目は“選択と集中”です。“選択と集中”によってクオリティを上げるいう部分を挙げています。優先順位の高いものに専念することで強い利益率の体質を構築します。前期から約10%の店舗をクローズする(計画を打ち出し)、今、10%強になる見込みです。店舗やレーベルを閉めることは、少なからずご支持いただいているお客さまを想像すると、大変心苦しくて難しいものではありますが、この下半期も引き続き選択と集中を既存取り組みについては進めてまいることで、強い経営体質を実現していきたいと思います。このためには、何よりもクオリティが重要で、ヒト・モノ・ウツワのすべての領域において活動の質を高めていくことで、“選択と集中”が有意義なものになっていくと考えております。

 まずはこの緊急事態が明けた先月から、店頭にお戻りになるお客様が多数見られています。(過去に築いてきた接客力、おもてなしの心が薄れないように)リアル店舗の接客の質(を上げること)が既存店舗の回復の大きな柱だと考えています。実店舗の強みを取り戻していくことを主軸にこの後半戦は臨んでいきたいと思います。この実店舗の回復によって、今後進めていくOMO(店舗とECの融合)施策、ECのリプレイスなども控えておりますが、この成功につながっていくものと考えています。

 二つ目は、“新たな挑戦”が積極的になされている状態を目指しています。これは“選択と集中”と相関するように捉えられる部分もあるかと思いますが、規模の大小を問わず、“新たな挑戦”を積極的に行い、次の兆しをつくっていくことが、この不透明な不確実な時代においては重要だと考えています。過去の成功パターンに依存せず、スピード感を持ってトライ&エラーを繰り返すことが必要で、時代の動きが転換期に当たる今、大きな施策一つで大逆転を狙うということではなく、先ほどIR広報部長からいくつかの事例を説明させていただきましたが、こうしたものを繰り返していくことで、次の機会を作っていくことを続けてまいります。

 当社はセレクトショップとして先駆的であること、新しいことを提案し続けてくれるであろうことをお客さまから期待されているはずですので、それが当社の優位性を築いてきた原動力の一つでもあるので、“選択と集中”によって得られたものを、新たな価値創造(に向けた“挑戦”)につなげていくことをこの下半期もより強く意識していきたいと思っています。

不安定な時代にこそ、“経営理念の浸透”を重視

 三点目は“経営理念の再浸透”を掲げております。(経営理念:「真心と美意識をこめてお客様の明日を創り、生活文化のスタンダードを創造し続ける。」)。これは社員メンバーのエンゲージメントをより強め、高め、お客様への価値提供が薄れていかないために掲げていることです。当社が事業活動をしていくうえでの絶対的な拠り所が理念だと考えております。この理念によって、ユナイテッドアローズがユナイテッドアローズで居続けていけるわけであって、こういった不安定な中で、社員メンバーが自分たちの存在意義や志、なすべき方向性にゆらぎが出そうなときこそ、“経営理念の浸透”が重要になります。コロナ禍で一旦中断している、とくに出張を伴う店舗の巡回や理念セッションを下半期は再開して、全社員メンバーに私たちが目指すところ、社会に果たしたい価値は何かということを、一緒に考えて、全社一丸となって乗り越えて行きたいと考えています。このコロナ禍に伴って、店舗人員の見直しなどを一部行ってきましたが、私たちが築いてきた強みを喪失しないように、店舗メンバーの士気を維持向上する取り組みを進めてまいります。繰り返しですが、この上半期は想定した回復には及んでおりませんが、申し上げた3点(“選択と集中”“新たな挑戦”“経営理念の再浸透”)を通じて当社は変革を進めており、手ごたえを感じているところ多数感じているところです。


【メディアからの質疑応答】
――他社の新興系SPAやセレクトに比べるとやや回復が遅いように思う。コロナという状況は同じだが、どういったところがUAにとっては難しいのか教えてほしい。

松崎善則社長(以下、松崎):他社比較でちょっと回復が遅いのではないかというご指摘・ご質問ですが、精緻にまだ捉えきれていない部分もあるのですが、一つはお客さまの年齢層の違いがあるなと捉えています。コロナの緊急事態が開ける前から、20代、30代前半の若い方の外出はある中で、われわれが主としている30代、40代の方の動向、外出が非常におとなしかった。もう一つは、従来からですが、ビジネス衣料の回復は見られてきていますが、まだまだコロナ以前に比較するとビジネス衣料の完全な回復には及んでいないという状況です。対応はしていますが、そこがまだ実を結んでいない。そういった点が若干の弱含み担っている点と捉えております。

――10月から始めている富裕層向けサービスの件で。ファッションだけでなく富裕層向けに衣食住を含めて提供していくというが、従来から手がけてきた百貨店も富裕層向けサービスを強化している。UAとしては?

松崎:富裕層向けのプライベートサービスデスクですが、おっしゃるように、以前より百貨店で外商という形はあると思いますけれども、われわれ、今回このコロナにより捉えたのは、ECで年間100万円以上お買い上げになられるお客さまが200人近くいらっしゃる。多いか少ないかといえば、金額だと2億円ぐらいの売上げになり、まだまだ潜在的なものがあると考えています。年間100万円という切り方をしましたが、50万円ぐらいだとまた増えてくるのですが、ECでもかなり年間で購買をいただいているお客さまに対して、何のサポートもできていないねと。全社のDXというところにも絡んでくるのですが、まずはそういったお客さまの特性というか購買について、よりサポートを深めていこうということです。これが百貨店の外商と違う点でいうと、百貨店が抱えていらっしゃる団塊層ではなく、われわれは団塊ジュニア層の購買が顕著でして、新しい形の富裕層というお客さまについては、百貨店には行かれていないお客さまが多いということで、われわれに商機があるのではないだろうかと捉えています。

――サプライチェーンについてお尋ねいたします。東南アジアでコロナの感染拡大で商品に遅れなどが出ている企業が出ている。ユナイテッドアローズは該当されているか。二点目が、人権問題が取り上げられている中で、海外を含めたサプライチェーンの透明化や見直しの考え、今後取り組む予定のものは?

三井俊治IR広報部部長:当社の産業に限らず、ベトナムの感染拡大で工場が止まっていたり、中国で電力の問題で工場が止まっていたり、そういう問題が当社でも影響が出ています。秋冬商品の納期遅れが若干発生しています。ここについては常に状況が変わっているので、どういうキャッチアップができるか検討しながら対応を進めているところです。

松崎:人権問題等も含めて、海外生産の透明性をどう担保していくかということですが、昨今話題の綿の問題に端を発して、当社でも各取引先様、とくに大手商社様を中心に、そこからのさらに下の下請け様などに、基準を満たしているか否かという状況調査を行っています。そこで追える、追えない、トレーサビリティが取れるものと取れないものの種別を行い、取れないものについては代替素材、代替工場等を含めて振り替えていく動きをしていこうと、各ベンダー様と話しをさせていただいている最中です。透明性については、海外、国内問わず、人権問題があってはいけませんし、商品のトレーサビリティはすべて取っいきたいという方向性の下に進めているという状況です。

――“選択と集中”の部分で、上期では2020年3月期末に比べて店舗数が14%減少していて、下期も“選択と集中”を進めていくという話があったが、現時点で具体的にどういった計画があるのか。

松崎:先様、デベロッパーもあることなので詳細の詳細まではお伝えできないのですが、グループ全体を通して、コーエン社の店舗などについて下半期はより進めていこうと思っています。UA社の取り組みについても、非常に厳しいところがいくつか残っていますので、こういったところも見極めていきます。これはある程度、UA社についてはメドがついていますが、あと数店舗。主にはコーエン社について進めていく考えです。

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就任から半年、ユナイテッドアローズの松崎社長が語る「危機と挑戦」

 ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS、以下、UA)の松崎善則社長が10月5日、2022年4〜9月期決算説明会に登壇し、コロナ禍での経営動向や今後の重点施策について語った。4月に社長に就任してから半年。セレクトショップの雄と言われた同社が抱く危機感と、相次いで新たな取り組みを立ち上げる狙い―レーベルの立ち上げ:D2Cの「シテン(CITEN)」、インフルエンサーを起用した「マルゥ ユナイテッドアローズ(MARW UNITED ARROWS)」、ヨガを軸としたウィメンズの「トゥー ユナイテッドアローズ(TO UNITED ARROWS)」、商標権を承継したサーフショップ「カリフォルニアジェネラルストア(CALIFORNIA GENERAL STORE)」プライベートサービスデスクの設置―などを自らの言葉で説明。ECのリプレイスメントなど基幹システム構想と並行して、2025年度内に向けたPLM(製品ライフサイクルマネジメント)システムと在庫分析システムの導入によるサプライチェーンのデジタル化も控えている。業績や店舗閉鎖などネガティブな部分がある中で、社員のモチベーションを高め、接客を中心とした品質を高めることで、「お客様の期待に応えること」の重要性にも言及した。質疑応答と含めて、会見の発言をレポートする。

松崎善則社長(以下、松崎):私からは、このハーフターム(中間期で)、今後大事にしていきたい考え方をみなさまに共有させていただきたいと思います。私が4月より社長就任いたしまして、半年強が経過しましたが、今期も引き続いて厳しい状況が続いている部分が多々あって大変ご心配をおかけしていることと存じます。

 改めて、前期からの業績動向を大枠ダイジェストすると、計4回の、延べ11カ月以上に及ぶ緊急事態ということで、ネガティブインパクトが非常に大きかったというところです。

 この資料の通り、コロナが始まった昨年の第1四半期(4〜6月)は、緊急事態によって2カ月間店舗がほぼすべてクローズしたことで売り上げが非常に苦戦しました。第2四半期(7〜9月)は一時的に需要は回復したのですが、第1クオーターの在庫消化を優先したことで利益面が非常に苦しかった。第3四半期(10〜12月)は回復基調がいよいよ見られるかと思われたが、再度秋口から感染が広がって、第4四半期(1〜3月)についても再度緊急事態宣言ということで、いつ(コロナ禍が)開けるかどうかわからない状況下で、在庫の持ち方も施策も含めて、社内全体、右往左往という形で昨期は終えました。

 今期から、ようやく一新してやっていこうと新体制の中で取り組みを進めていますが、4月下旬から再度宣言が発令され、7月以降も第五波ということで、この上半期は想定した回復シナリオには残念ながらもう一歩届かない状況になっております。緊急事態がようやく明け、気温が低下した先月中旬以降から回復が顕著に見られています。足元、11月に入っても回復が想定以上に見られているということで、お客様の動向にも期待が高まっており、準備を進めている状況です。

今期方針は「選択と集中」「新たな挑戦」「経営理念の再浸透」

 今年度のグループ経営方針として、「持続的成長と、未来に向けた大改革~新時代のお客様大満足」を掲げています。文字通りでございますが、この厳しい経営環境におきまして、従来のやり方ではお客さまのご期待、ご支持をいただくのは難しいということで、「大改革なくして持続的成長は果たせない」という危機感を持っての方針です。この方針の下、営業利益生産性計画(一人当たり営業利益計画)の必達、連結粗利益率(50.7%)の必達に向けた施策と、サステナビリティやDXの取り組みを進めている最中でございます。

 大改革というタイトルを進めていくうえで、重要なポイントを3点考えています。一発逆転を狙いたいところなのですが、大改革には不断に継続していくことが非常に重要と考えておりまして、文字づらですとあまり目新しいものではないのですが、一つ目は“選択と集中”です。“選択と集中”によってクオリティを上げるいう部分を挙げています。優先順位の高いものに専念することで強い利益率の体質を構築します。前期から約10%の店舗をクローズする(計画を打ち出し)、今、10%強になる見込みです。店舗やレーベルを閉めることは、少なからずご支持いただいているお客さまを想像すると、大変心苦しくて難しいものではありますが、この下半期も引き続き選択と集中を既存取り組みについては進めてまいることで、強い経営体質を実現していきたいと思います。このためには、何よりもクオリティが重要で、ヒト・モノ・ウツワのすべての領域において活動の質を高めていくことで、“選択と集中”が有意義なものになっていくと考えております。

 まずはこの緊急事態が明けた先月から、店頭にお戻りになるお客様が多数見られています。(過去に築いてきた接客力、おもてなしの心が薄れないように)リアル店舗の接客の質(を上げること)が既存店舗の回復の大きな柱だと考えています。実店舗の強みを取り戻していくことを主軸にこの後半戦は臨んでいきたいと思います。この実店舗の回復によって、今後進めていくOMO(店舗とECの融合)施策、ECのリプレイスなども控えておりますが、この成功につながっていくものと考えています。

 二つ目は、“新たな挑戦”が積極的になされている状態を目指しています。これは“選択と集中”と相関するように捉えられる部分もあるかと思いますが、規模の大小を問わず、“新たな挑戦”を積極的に行い、次の兆しをつくっていくことが、この不透明な不確実な時代においては重要だと考えています。過去の成功パターンに依存せず、スピード感を持ってトライ&エラーを繰り返すことが必要で、時代の動きが転換期に当たる今、大きな施策一つで大逆転を狙うということではなく、先ほどIR広報部長からいくつかの事例を説明させていただきましたが、こうしたものを繰り返していくことで、次の機会を作っていくことを続けてまいります。

 当社はセレクトショップとして先駆的であること、新しいことを提案し続けてくれるであろうことをお客さまから期待されているはずですので、それが当社の優位性を築いてきた原動力の一つでもあるので、“選択と集中”によって得られたものを、新たな価値創造(に向けた“挑戦”)につなげていくことをこの下半期もより強く意識していきたいと思っています。

不安定な時代にこそ、“経営理念の浸透”を重視

 三点目は“経営理念の再浸透”を掲げております。(経営理念:「真心と美意識をこめてお客様の明日を創り、生活文化のスタンダードを創造し続ける。」)。これは社員メンバーのエンゲージメントをより強め、高め、お客様への価値提供が薄れていかないために掲げていることです。当社が事業活動をしていくうえでの絶対的な拠り所が理念だと考えております。この理念によって、ユナイテッドアローズがユナイテッドアローズで居続けていけるわけであって、こういった不安定な中で、社員メンバーが自分たちの存在意義や志、なすべき方向性にゆらぎが出そうなときこそ、“経営理念の浸透”が重要になります。コロナ禍で一旦中断している、とくに出張を伴う店舗の巡回や理念セッションを下半期は再開して、全社員メンバーに私たちが目指すところ、社会に果たしたい価値は何かということを、一緒に考えて、全社一丸となって乗り越えて行きたいと考えています。このコロナ禍に伴って、店舗人員の見直しなどを一部行ってきましたが、私たちが築いてきた強みを喪失しないように、店舗メンバーの士気を維持向上する取り組みを進めてまいります。繰り返しですが、この上半期は想定した回復には及んでおりませんが、申し上げた3点(“選択と集中”“新たな挑戦”“経営理念の再浸透”)を通じて当社は変革を進めており、手ごたえを感じているところ多数感じているところです。


【メディアからの質疑応答】
――他社の新興系SPAやセレクトに比べるとやや回復が遅いように思う。コロナという状況は同じだが、どういったところがUAにとっては難しいのか教えてほしい。

松崎善則社長(以下、松崎):他社比較でちょっと回復が遅いのではないかというご指摘・ご質問ですが、精緻にまだ捉えきれていない部分もあるのですが、一つはお客さまの年齢層の違いがあるなと捉えています。コロナの緊急事態が開ける前から、20代、30代前半の若い方の外出はある中で、われわれが主としている30代、40代の方の動向、外出が非常におとなしかった。もう一つは、従来からですが、ビジネス衣料の回復は見られてきていますが、まだまだコロナ以前に比較するとビジネス衣料の完全な回復には及んでいないという状況です。対応はしていますが、そこがまだ実を結んでいない。そういった点が若干の弱含み担っている点と捉えております。

――10月から始めている富裕層向けサービスの件で。ファッションだけでなく富裕層向けに衣食住を含めて提供していくというが、従来から手がけてきた百貨店も富裕層向けサービスを強化している。UAとしては?

松崎:富裕層向けのプライベートサービスデスクですが、おっしゃるように、以前より百貨店で外商という形はあると思いますけれども、われわれ、今回このコロナにより捉えたのは、ECで年間100万円以上お買い上げになられるお客さまが200人近くいらっしゃる。多いか少ないかといえば、金額だと2億円ぐらいの売上げになり、まだまだ潜在的なものがあると考えています。年間100万円という切り方をしましたが、50万円ぐらいだとまた増えてくるのですが、ECでもかなり年間で購買をいただいているお客さまに対して、何のサポートもできていないねと。全社のDXというところにも絡んでくるのですが、まずはそういったお客さまの特性というか購買について、よりサポートを深めていこうということです。これが百貨店の外商と違う点でいうと、百貨店が抱えていらっしゃる団塊層ではなく、われわれは団塊ジュニア層の購買が顕著でして、新しい形の富裕層というお客さまについては、百貨店には行かれていないお客さまが多いということで、われわれに商機があるのではないだろうかと捉えています。

――サプライチェーンについてお尋ねいたします。東南アジアでコロナの感染拡大で商品に遅れなどが出ている企業が出ている。ユナイテッドアローズは該当されているか。二点目が、人権問題が取り上げられている中で、海外を含めたサプライチェーンの透明化や見直しの考え、今後取り組む予定のものは?

三井俊治IR広報部部長:当社の産業に限らず、ベトナムの感染拡大で工場が止まっていたり、中国で電力の問題で工場が止まっていたり、そういう問題が当社でも影響が出ています。秋冬商品の納期遅れが若干発生しています。ここについては常に状況が変わっているので、どういうキャッチアップができるか検討しながら対応を進めているところです。

松崎:人権問題等も含めて、海外生産の透明性をどう担保していくかということですが、昨今話題の綿の問題に端を発して、当社でも各取引先様、とくに大手商社様を中心に、そこからのさらに下の下請け様などに、基準を満たしているか否かという状況調査を行っています。そこで追える、追えない、トレーサビリティが取れるものと取れないものの種別を行い、取れないものについては代替素材、代替工場等を含めて振り替えていく動きをしていこうと、各ベンダー様と話しをさせていただいている最中です。透明性については、海外、国内問わず、人権問題があってはいけませんし、商品のトレーサビリティはすべて取っいきたいという方向性の下に進めているという状況です。

――“選択と集中”の部分で、上期では2020年3月期末に比べて店舗数が14%減少していて、下期も“選択と集中”を進めていくという話があったが、現時点で具体的にどういった計画があるのか。

松崎:先様、デベロッパーもあることなので詳細の詳細まではお伝えできないのですが、グループ全体を通して、コーエン社の店舗などについて下半期はより進めていこうと思っています。UA社の取り組みについても、非常に厳しいところがいくつか残っていますので、こういったところも見極めていきます。これはある程度、UA社についてはメドがついていますが、あと数店舗。主にはコーエン社について進めていく考えです。

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京都における古着店の出店ラッシュは、原宿エリア再浮上のヒントとなるか?

 東京・原宿エリアの空室化が問題となっている。コロナショックを受けてテナントが撤退、その後賃料が下げられるケースもあるが、もともとが破格ということもあり新規入居者が決定していない。一方で、京都のメインストリートの一つ、寺町通(寺町京極商店街)ではこの1年で古着店の出店ラッシュが続いている。この動きは、原宿再浮上のヒントになるのでは?そう仮説を立てて、現地を取材した。

 まず話を聞いたのは、「古着屋ジャム京都四条店」を2021年4月、“低価格(平均価格帯2100円)”や“エコ”を掲げる「ロエコ・バイ・ジャム京都店」を7月に寺町通にオープンしたJAM TRADING(大阪)の福嶋政憲社長だ。

「古着ビジネスは、メインストリートの家賃にも釣り合うものに成長した」

WWD:原宿の空き物件に古着店が続々出店するのでは?との見立てについて、思うところを聞きたい。同じような現象が京都でも(先行して)起きているのではないか?と見ている。

福嶋政憲JAM TRADING社長(以下、福嶋):京都、原宿のみならず、古着についてはどのエリアでも、“今がビジネスチャンス!”と積極的に出店する企業が多い。寺町通のような商店街の場合、老舗もある中での出店なので、これまで異質だった古着店が目立っているということもあると思う。

 古着ビジネスはお客さまを選ぶニッチなものだったが、古着ブームにより購買層が広がり、また彼らへのサステナブルな考え方の浸透もあり、メインストリートの家賃にも釣り合うものに成長した。コロナ禍で新品アパレル店の撤退が続き、大家さんは次のテナントも物販が良いと考えてもなかなか手が上がらず、空室状態が続くことで家賃も下がり、そんな状況の中で古着店も受け入れられ始めた。風当りの変化を感じている。

 とはいえ原宿エリアの家賃はまだまだ高く、すぐに古着店で埋まるとは考えられない。また原宿には、地方や海外からのお客さまも多いので、その点では地域差のあまりない(なくなった)古着店が勝負しづらい一面もある。

WWD:京都のユーザーに、古着はどう受け入れられている?また、そこに東京や大阪との違いはある?

福嶋:京都は学生の街なので、先輩からユニホームや日常着をもらい受ける文化が根付いている。流行りについては今や東京、大阪と変わらないが、比較的おとなしめの色や柄が好まれる傾向がある。

WWD:他県からの進出を嫌う傾向があるとも言われる京都だが、出店のしにくさはあった?

福嶋:なかった。加えて、寺町京極商店街の理事長を務めるセレクトショップ、ロフトマンの村井修平会長から「空きテナントが埋まって良かった。寺町は商売人の通りだから、頑張ってやってください」と言われたことは、とても心強かった。

WWD:古着店が増えることに対して、「街の景観が……」などと危惧する一定層がいると思う。何か対策は?

福嶋:行政や商店街のルールを順守するのはもちろん、極めて基本的はことだが、近隣の皆さんへのあいさつや地域の清掃などを積極的に行い、地域の一員として街づくりに寄与し、認められればと思う。

WWD:次なる出店候補地について聞きたい。

福嶋:京都にはすでに3店舗を構えているので、同エリアでのこれ以上のドミナントは考えていない。東京も原宿にエリア最大規模の古着店を出店したばかりだが、物件との出合い次第では下北沢に出店したい。また札幌、仙台、名古屋でもリサーチを続けている。

 続いて、地元企業を代表してヒューマンフォーラム(京都、岩崎仁志社長)の岩月臣人事業部長に質問をぶつけてみた。同社は、10月に祖業である「スピンズ」(全国に33店舗を展開)の原宿店を業態転換。3割ほどだった古着の扱いを100%にした。さらに、“ユーズドを拡張する進化型古着屋”をうたう「森」を20年12月、大阪・中崎町から京都・新京極(寺町と隣接する通り)に移転している。

「古着は、“シーズンという概念のない唯一のアパレル商材”である」

WWD:古着ブーム、また古着ビジネスの隆盛について、どう感じている?

岩月臣人ヒューマンフォーラム事業部長(以下、岩月):古着は“シーズンという概念のない唯一のアパレル商材”だ。在庫を抱えても、それが目減りすることはない。事業を継続していけるかは別として参入障壁も低く、古物商免許さえ持っていればすぐに始められる。実際、古着ビジネスをスタートする大学生などを目にするようになった。“サステナブルだから”という理由でユーザーが古着を選び、起業する側も同じ理由から古着ビジネスを選択している。

WWD:京都が“おひざもと”であるヒューマンフォーラムは、古着における進出組をどう見ている?

岩月:とてもありがたいと感じている。一点物の集積である古着には宝探し感覚があるが、それが街中に1店舗だけでは、“出掛けよう”というスイッチをONにするのが難しい。一方で、街中に古着店があふれていれば、ユーザーのモチベーションは上昇する。“点”として当社だけが良ければいいのではなく、“面”や“立体”として古着、そして街全体を盛り上げていけたらと思う。

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京都における古着店の出店ラッシュは、原宿エリア再浮上のヒントとなるか?

 東京・原宿エリアの空室化が問題となっている。コロナショックを受けてテナントが撤退、その後賃料が下げられるケースもあるが、もともとが破格ということもあり新規入居者が決定していない。一方で、京都のメインストリートの一つ、寺町通(寺町京極商店街)ではこの1年で古着店の出店ラッシュが続いている。この動きは、原宿再浮上のヒントになるのでは?そう仮説を立てて、現地を取材した。

 まず話を聞いたのは、「古着屋ジャム京都四条店」を2021年4月、“低価格(平均価格帯2100円)”や“エコ”を掲げる「ロエコ・バイ・ジャム京都店」を7月に寺町通にオープンしたJAM TRADING(大阪)の福嶋政憲社長だ。

「古着ビジネスは、メインストリートの家賃にも釣り合うものに成長した」

WWD:原宿の空き物件に古着店が続々出店するのでは?との見立てについて、思うところを聞きたい。同じような現象が京都でも(先行して)起きているのではないか?と見ている。

福嶋政憲JAM TRADING社長(以下、福嶋):京都、原宿のみならず、古着についてはどのエリアでも、“今がビジネスチャンス!”と積極的に出店する企業が多い。寺町通のような商店街の場合、老舗もある中での出店なので、これまで異質だった古着店が目立っているということもあると思う。

 古着ビジネスはお客さまを選ぶニッチなものだったが、古着ブームにより購買層が広がり、また彼らへのサステナブルな考え方の浸透もあり、メインストリートの家賃にも釣り合うものに成長した。コロナ禍で新品アパレル店の撤退が続き、大家さんは次のテナントも物販が良いと考えてもなかなか手が上がらず、空室状態が続くことで家賃も下がり、そんな状況の中で古着店も受け入れられ始めた。風当りの変化を感じている。

 とはいえ原宿エリアの家賃はまだまだ高く、すぐに古着店で埋まるとは考えられない。また原宿には、地方や海外からのお客さまも多いので、その点では地域差のあまりない(なくなった)古着店が勝負しづらい一面もある。

WWD:京都のユーザーに、古着はどう受け入れられている?また、そこに東京や大阪との違いはある?

福嶋:京都は学生の街なので、先輩からユニホームや日常着をもらい受ける文化が根付いている。流行りについては今や東京、大阪と変わらないが、比較的おとなしめの色や柄が好まれる傾向がある。

WWD:他県からの進出を嫌う傾向があるとも言われる京都だが、出店のしにくさはあった?

福嶋:なかった。加えて、寺町京極商店街の理事長を務めるセレクトショップ、ロフトマンの村井修平会長から「空きテナントが埋まって良かった。寺町は商売人の通りだから、頑張ってやってください」と言われたことは、とても心強かった。

WWD:古着店が増えることに対して、「街の景観が……」などと危惧する一定層がいると思う。何か対策は?

福嶋:行政や商店街のルールを順守するのはもちろん、極めて基本的はことだが、近隣の皆さんへのあいさつや地域の清掃などを積極的に行い、地域の一員として街づくりに寄与し、認められればと思う。

WWD:次なる出店候補地について聞きたい。

福嶋:京都にはすでに3店舗を構えているので、同エリアでのこれ以上のドミナントは考えていない。東京も原宿にエリア最大規模の古着店を出店したばかりだが、物件との出合い次第では下北沢に出店したい。また札幌、仙台、名古屋でもリサーチを続けている。

 続いて、地元企業を代表してヒューマンフォーラム(京都、岩崎仁志社長)の岩月臣人事業部長に質問をぶつけてみた。同社は、10月に祖業である「スピンズ」(全国に33店舗を展開)の原宿店を業態転換。3割ほどだった古着の扱いを100%にした。さらに、“ユーズドを拡張する進化型古着屋”をうたう「森」を20年12月、大阪・中崎町から京都・新京極(寺町と隣接する通り)に移転している。

「古着は、“シーズンという概念のない唯一のアパレル商材”である」

WWD:古着ブーム、また古着ビジネスの隆盛について、どう感じている?

岩月臣人ヒューマンフォーラム事業部長(以下、岩月):古着は“シーズンという概念のない唯一のアパレル商材”だ。在庫を抱えても、それが目減りすることはない。事業を継続していけるかは別として参入障壁も低く、古物商免許さえ持っていればすぐに始められる。実際、古着ビジネスをスタートする大学生などを目にするようになった。“サステナブルだから”という理由でユーザーが古着を選び、起業する側も同じ理由から古着ビジネスを選択している。

WWD:京都が“おひざもと”であるヒューマンフォーラムは、古着における進出組をどう見ている?

岩月:とてもありがたいと感じている。一点物の集積である古着には宝探し感覚があるが、それが街中に1店舗だけでは、“出掛けよう”というスイッチをONにするのが難しい。一方で、街中に古着店があふれていれば、ユーザーのモチベーションは上昇する。“点”として当社だけが良ければいいのではなく、“面”や“立体”として古着、そして街全体を盛り上げていけたらと思う。

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京都における古着店の出店ラッシュは、原宿エリア再浮上のヒントとなるか?

 東京・原宿エリアの空室化が問題となっている。コロナショックを受けてテナントが撤退、その後賃料が下げられるケースもあるが、もともとが破格ということもあり新規入居者が決定していない。一方で、京都のメインストリートの一つ、寺町通(寺町京極商店街)ではこの1年で古着店の出店ラッシュが続いている。この動きは、原宿再浮上のヒントになるのでは?そう仮説を立てて、現地を取材した。

 まず話を聞いたのは、「古着屋ジャム京都四条店」を2021年4月、“低価格(平均価格帯2100円)”や“エコ”を掲げる「ロエコ・バイ・ジャム京都店」を7月に寺町通にオープンしたJAM TRADING(大阪)の福嶋政憲社長だ。

「古着ビジネスは、メインストリートの家賃にも釣り合うものに成長した」

WWD:原宿の空き物件に古着店が続々出店するのでは?との見立てについて、思うところを聞きたい。同じような現象が京都でも(先行して)起きているのではないか?と見ている。

福嶋政憲JAM TRADING社長(以下、福嶋):京都、原宿のみならず、古着についてはどのエリアでも、“今がビジネスチャンス!”と積極的に出店する企業が多い。寺町通のような商店街の場合、老舗もある中での出店なので、これまで異質だった古着店が目立っているということもあると思う。

 古着ビジネスはお客さまを選ぶニッチなものだったが、古着ブームにより購買層が広がり、また彼らへのサステナブルな考え方の浸透もあり、メインストリートの家賃にも釣り合うものに成長した。コロナ禍で新品アパレル店の撤退が続き、大家さんは次のテナントも物販が良いと考えてもなかなか手が上がらず、空室状態が続くことで家賃も下がり、そんな状況の中で古着店も受け入れられ始めた。風当りの変化を感じている。

 とはいえ原宿エリアの家賃はまだまだ高く、すぐに古着店で埋まるとは考えられない。また原宿には、地方や海外からのお客さまも多いので、その点では地域差のあまりない(なくなった)古着店が勝負しづらい一面もある。

WWD:京都のユーザーに、古着はどう受け入れられている?また、そこに東京や大阪との違いはある?

福嶋:京都は学生の街なので、先輩からユニホームや日常着をもらい受ける文化が根付いている。流行りについては今や東京、大阪と変わらないが、比較的おとなしめの色や柄が好まれる傾向がある。

WWD:他県からの進出を嫌う傾向があるとも言われる京都だが、出店のしにくさはあった?

福嶋:なかった。加えて、寺町京極商店街の理事長を務めるセレクトショップ、ロフトマンの村井修平会長から「空きテナントが埋まって良かった。寺町は商売人の通りだから、頑張ってやってください」と言われたことは、とても心強かった。

WWD:古着店が増えることに対して、「街の景観が……」などと危惧する一定層がいると思う。何か対策は?

福嶋:行政や商店街のルールを順守するのはもちろん、極めて基本的はことだが、近隣の皆さんへのあいさつや地域の清掃などを積極的に行い、地域の一員として街づくりに寄与し、認められればと思う。

WWD:次なる出店候補地について聞きたい。

福嶋:京都にはすでに3店舗を構えているので、同エリアでのこれ以上のドミナントは考えていない。東京も原宿にエリア最大規模の古着店を出店したばかりだが、物件との出合い次第では下北沢に出店したい。また札幌、仙台、名古屋でもリサーチを続けている。

 続いて、地元企業を代表してヒューマンフォーラム(京都、岩崎仁志社長)の岩月臣人事業部長に質問をぶつけてみた。同社は、10月に祖業である「スピンズ」(全国に33店舗を展開)の原宿店を業態転換。3割ほどだった古着の扱いを100%にした。さらに、“ユーズドを拡張する進化型古着屋”をうたう「森」を20年12月、大阪・中崎町から京都・新京極(寺町と隣接する通り)に移転している。

「古着は、“シーズンという概念のない唯一のアパレル商材”である」

WWD:古着ブーム、また古着ビジネスの隆盛について、どう感じている?

岩月臣人ヒューマンフォーラム事業部長(以下、岩月):古着は“シーズンという概念のない唯一のアパレル商材”だ。在庫を抱えても、それが目減りすることはない。事業を継続していけるかは別として参入障壁も低く、古物商免許さえ持っていればすぐに始められる。実際、古着ビジネスをスタートする大学生などを目にするようになった。“サステナブルだから”という理由でユーザーが古着を選び、起業する側も同じ理由から古着ビジネスを選択している。

WWD:京都が“おひざもと”であるヒューマンフォーラムは、古着における進出組をどう見ている?

岩月:とてもありがたいと感じている。一点物の集積である古着には宝探し感覚があるが、それが街中に1店舗だけでは、“出掛けよう”というスイッチをONにするのが難しい。一方で、街中に古着店があふれていれば、ユーザーのモチベーションは上昇する。“点”として当社だけが良ければいいのではなく、“面”や“立体”として古着、そして街全体を盛り上げていけたらと思う。

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楽天が「本気のアパレルDX」 キーマンの松村亮執行役員に聞く「在庫一元管理とリアル店舗支援」

 楽天グループはこの秋から、アパレル事業者向けに、複数販路における様々なデータを一元管理するデジタルソリューション「楽天ファッション オムニチャネルプラットフォーム(Rakuten Fashion Omni-channel Platform以下、RFOP)」の提供をスタートする。楽天が培ったファッションECサイトや物流フルフィルメントサービス運営の知見に加え、フロー・メイカーズHDやAMS、ダイアモンドヘッドなどの有力な物流、EC支援企業のノウハウを活用し、1年がかりで独自のシステムを構築した同サービスは、在庫一元管理システムを軸に、リアルとECの融合を図る画期的なもの。日本発のインターネット・サービス企業が、本格的に日本のアパレル業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)に動き出す。ファッション通販サイト「楽天ファッション(Rakuten Fashion)」を率いる松村亮・楽天執行役員コマースカンパニー ヴァイスプレジデントに直撃した。

WWDJAPAN(以下、WWD):楽天は2019年秋に東コレの冠スポンサー就任以降、ファッションにかなりの投資を行っているように見える。その真意は?

松村亮(以下、松村):ファッションに関して、楽天は本気だ。冠スポンサーとなった「楽天ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」でも「バイアール(by R)」を筆頭に様々なイベントを実施してきたし、「楽天ファッション」のリニューアル、中島敏子・元「ギンザ」編集長をエグゼクティブ ファッション クリエイティブディレクターに迎えた有識者会議、ラグジュアリー&デザイナーズブランドの商品販売を行う「楽天ファッションラグジュアリー(Rakuten Fashion Luxury)」など、積極的な投資を行ってきた。こうした取り組みのベースにあるのは、ビジネスフィールドとしてファッションが非常に魅力的なマーケットであること。日本のアパレル市場は頭打ちと言われるが、市場規模としては9兆〜11兆円と大きい上に、デジタル/ECという側面で見ると成長を続けており、しかもまだその余地は大きい。ほとんどのブランドが自社で運営する公式通販サイト(自社EC)や「楽天ファッション」などのECモールに出店し、その全てが伸びているという状況だ。コロナ禍でリアル店舗の休業や時短営業などを余儀なくされる中で、ECが企業業績も下支えしていた。その一方で、この数年大手企業のトップを始め、才能ある日本のデザイナー、スタイリスト、編集者など、数多くの人たちに会って、実際に議論を交わし、実際にビジネスも行う中で課題も見えてきた。

重要なのは顧客がリアルとEC、
どちらでもストレスなく買えること

WWD:課題とは?

松村:大量生産・大量廃棄やサステナビリティへの対応の遅れなど、ファッション産業全体が抱える課題はすでに多くの識者などが指摘しているが、われわれからすると、それらの大きな原因の一つが、バリューチェーンの中で商品を顧客に対して最適に配置できていないこと。一つのブランドの商品を例にとっても、直営店舗、卸先のセレクトショップ、ブランドの公式ECサイト、多種多彩なファッションECモールなど、販路が多岐に渡っている。消費者は当然、一番買いやすい場所やタッチポイントで購入するが、そうしたニーズに対応するために在庫が散らばってしまう。

WWD:アパレル業界でも、在庫の一元化はかなり前から課題として挙がってきたが。

松村:在庫の一元化は、想像以上に複雑だと捉えている。ECがこの10年で急拡大してきたため、多くのアパレル企業はバックエンドのシステムとロジスティクスがツギハギのようになっている。急成長するECに対応しようとすれば、それ自体はやむを得ないことだ。すでに在庫の一元化などを実現し、かなりの成果を収めている企業も出ているが、それを実行しようとすればかなりの投資も必要になる。「RFOP」の狙いはそこにある。ファッション企業にとって最も重要な資産である在庫を極限まで有効に活用するために、リアル/ECの区分なくできる限り効率的に在庫を運用すること。楽天が、そうした部分を肩代わりするような形で投資し、非常に低コストかつ効率的なシステムを提供したい。

アパレル業界の課題に真正面から取り組む

WWD:アパレル企業からの反応は?

松村:「RFOP」に関しては、楽天ならではのECで培った知見やノウハウに加え、物流支援サービスを提供する大手フロー・メイカーズHDや、EC支援の有力企業であるAMS、ダイアモンドヘッドなどのノウハウを活用し、1年がかりで独自のシステムを構築した。今年1月に発表後、アパレル企業からの関心は高く、実際に問い合わせも多い。ただ、アパレル企業にしても、日々モノとデータを動かしている在庫や物流を現行のやり方やシステムから切り替えるわけだから、システム更新のタイミング、実際の切り替え作業などは、一朝一夕で行えるものではない。それに業務フローのすり合わせなども必要だから、実に泥臭い仕事になる。数年単位でじっくり取り組んでいく。だが、だからこそ取り組み意義は大きい。ここを乗り越えれば、データ連携や在庫連携の基盤が整備され、いよいよリアルとECが融合した新しいコマースの形が見えてくる。楽天経済圏のビッグデータを活用した商品開発や在庫の効率化など、データドリブンな産業モデルへの転換が加速するはずだ。

WWD:今後をどう見る?

松村:この数年、ファッション産業と様々な取り組みを行ってきて、当初は想定していなかった魅力も体感している。それはファッションが文化産業であるということ。RFWTや有識者会議などは、より深く産業を知るために行ってきたことではあるが、実際に取り組みを始めてから、ビジネス的なインパクトだけでなく、楽天グループ全体のブランド価値が上がったことを実感している。これは他の商品カテゴリーではあまりない。大量生産・大量廃棄などのネガティブな面がフォーカスされることもあるが、ITの力でそうした課題を解決することは産業全体の活性化だけでなく、本来ファッションが持つ文化的な価値を取り戻すことにもつながる。そのことも大きな意義だと考えている。

「楽天ファッション
オムニチャネルプラットフォーム(RFOP)」
とは?

 「RFOP」は、在庫の一元管理システムを軸に、フロントでの販売支援からバックエンドでの物流支援まで、オムニチャネル推進に必要なソリューションをパッケージ化して、網羅的かつ安価に提供するサービス。必要なサービスや機能だけを選択したり、組み合わせたりすることも可能で、ユーザーとなるアパレル企業のオムニチャネル施策や戦略、現状に対応する。

 「RFOP」の最大の特徴は、EC面では主要なファッションECサイトと連携可能で、バックエンドの在庫連携に関しても店舗用・EC用の双方をリアルタイムで連携し、一元管理できるようにもなる。リアル店舗に加え、自社EC&全ネット通販モールでの販売と、リアルタイム在庫連携による一元管理が組み合わさることで、一つの在庫を文字通り全チャネルで販売できるようになり、販売機会ロスを極限まで減らすことができる。

 「楽天ファッション」のスケールメリットを生かしたフルフィルメントサービスの活用により、B2B2C倉庫での在庫の一元管理や物流面でのコスト削減も見込める。また、店頭や会員カードなどで「楽天ポイントカード」と連携すれば、ECからリアル店舗への送客なども可能になるほか、効果的なプロモーション施策などを打てるようになる。

問い合わせ先
楽天ファッション オムニチャネル プラットフォーム運営事務局
rakuten-fashion-omni-inquiry@mail.rakuten.com

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落合陽一に聞くサステナブル 総合演出した日中韓芸術祭の背景

 「日中韓芸術祭2021in北九州」が10月25日に北九州市立美術館で開催された。「日中韓芸術祭」は日中韓の伝統文化や現代芸術の紹介を目的に14年から始まった3カ国共同事業で、毎年持ち回りで開催されている。日本が開催国の今年は東アジア文化都市である北九州市で開催。南條史⽣キュレーターをスーパーバイザーに、メディアアーティストの落合陽一が総合演出を担当し、ホログラム技術を活用したデジタルショーを発表した。テーマは「デジタル時代に花開く,時空間を超えたパッチワーク」。⽇本・中国・韓国の装いの⼟着性やその⽂化の根底に流れるサステナビリティを共通のコンセプトに掲げる。落合陽一が考えるサステナビリティとは?都内で事前に行われた撮影現場で話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD): SDGsとファッションとデジタルを組み合わせて何を伝えようとしているのか教えてください。

落合陽一メディアアーティスト(以下、落合):何を伝えるかそれほど固めていません。どちらかというと素材を集め、デジタルのパッチワークをすることで何が生まれるだろう、という感覚です。

WWD:モデルには冨永愛はじめ多様性あるモデルを起用しています。パッチワークはどこに向かっているのでしょうか。

落合:自分はメディアアーティストであり、やっていることはずっとぶれていません。自然と共生する新しいデジタルとは何か、「デジタルネイチャー」の探求です。だから演出するショーごとにコンセプトを大きくは変えません。今回のテーマである「デジタル時代に花開く、時空間を超えたパッチワーク」の裏にある話としては、デジタルネイチャーという新しい生態系において人はどういう形をしているのだろう?民芸のような古いものの価値はどう高められていくのだろうといったこと。最終的にどういう形に落ち着くかは料理しないとわかりません。フランス料理か日本料理か中国料理かと聞かれるなら「計算機自然料理」です。味はまだ分からない。

WWD:ゴールは明確だけどどんな味になるかはわからない、それはおもしろいですね。

落合:結構おいしく仕上がりそうです。カメラのチームが良いことは最初からわかっていましたが、モデルさんもよいし、スタイリストさんもよく、ヘアメイクも服もよい。撮影は現場でハマってみないと相性が良いか分からないですよね。

日本のぼろと「スノーピーク」は相性がとてもいい

WWD:服は、日本のぼろ(襤褸)に加えて「ユイマ ナカザト(YUIMA NAKAZATO)」、日本環境設計の「ブリング(BRING)」を使った「スノーピーク(SNOWPEAK)」とバリエーションに富んでいます。これらを選んだ理由を教えてください。

落合:フィジカルのパッチワークと言えば唯馬さんじゃないですか?ぼろは継ぎはぎを繰り返して長い年月着られ続けてきた、いわば“アナログパッチワーク・オブ・ジ・エンシエント・トラディショナル・カルチャー”。受け継がれるぼろは、あの上で子供が生まれ、寒い夜はドンシャンと呼ばれる夜着に数人で包まり寝た。その中で亡くなる人もいたでしょう。服を着る本質的な理由は防寒であり、ぼろは防寒の極み。そしてキャンプやアウトドアファッションの基本は防寒や機能。キャンプから誕生しサステナブルな材料を使う「スノーピーク」はぼろとの相性はとてもいい。「われわれはキャンパーなのだ、都市で」みたいなメッセージを受け取ります。

WWD:「スノーピーク」の素材が再生ポリエステルであることは重要でしたか?そういえば「ブリング」の工場も北九州市にありますが。

落合:重要です。循環する素材のほうが面白いですから。

WWD:⽇本・中国・韓国の装いの⼟着性やその⽂化の根底に流れるサステナビリティを共通のコンセプトに掲げています。詳しく教えてください。

落合:人類がつくってきた文化的活動は、常にアーカイブがあります。デジタル以降は古今東西から集めてきた断片的なコンテクストが、何らかの形をしていることが非常に気持ちがよいと思うようになりました。それは日本から来たのかもしれないし、中国から来たのかもしれないし、韓国から来たのかもしれない。そして、それが一点通じて華厳や老荘思想になる。

 ⽇中韓の⽂化の根底に流れているものを考えたとき、真っ先に浮かんだのは物化・華厳・⺠藝・侘寂などの東洋的美的感覚と世界観の中に構築される持続可能なデジタルの⾃然です。一は全、全は一。一瞬の中に美学を見て茶室の茶の中に宇宙がある、老い木に花の世界など華厳的思想は老荘から生まれて半島伝来して日本にやって来たわけですよね。そして今はデジタルネイチャーです。1980年のナムジュン・パイク(Nam June Paik)の⾔葉を借りれば、リモートコラボレーションが当たり前になったわれわれは「定在する遊牧⺠(stationary nomad )」とも⾔えます。地球上のあらゆるところからデジタルの⾃然に接続され,共⽣し饗宴することができるようになりましたから。

ナムジュン・パイクは多分、完全に正しい

WWD:ナムジュン・パイクはビデオアートの父と言われるアーティストですね。

落合:ナムジュン・パイクが1980年に「アートフォーラム」という美術誌に書いた「ランダム・アクセス・インフォメーション」という寄稿文があり「60キロの体を動かすのに60キロの体しか動かさなかった人類が、60キロの体を動かすために300キロの車を動かすようになったから、石油を使うようになった。これは最も愚かしい」といった意味のことを書いていて、おもしろい。その解決策として彼が言い出したのが、われわれがステーショナリー・ノマド=定住する遊牧民になることです。世界中に電子情報としてものを送り合う世界が来ればわれわれは動かなくていい。そうすれば石油問題を解決できると。今思うと本質をついている。ナムジュン・パイクは多分、完全に正しい。

 ただ、「ステーショナリー・ノマド」に欠けていたものは何かと言えば、多分、質量への憧憬です。電子情報を送れば人が存在できるという点は完全に正しいけれど、コロナで強制ロックダウンされたことで身体性への飢えが発生するといったところまでは彼も考えが及んでいなかったと思う。人間には質量への憧憬があるから、ステーショナリー・ノマドになり切れない。だからその間にあるものをうまく取り持つみたいなところが、ここ数年の僕のテーマです。デジタルから見た身体性、質量への欲求は一体何なのか?今回パッチワークの素材のひとつにサイアノタイプという鉄を使ったプリントを使ったのも、質量がないデジタルを質量のあるフィジカルに変換する喜びみたいなことからです。

WWD:インスタレーションの本番ではそれをホログラムで見せ、12月には一般配信もあるそうですね。

落合:空間に映像を直接表示するディスプレーをLEDで作ります。身体からデータになり、データが自然となびくところを表現したい。質量性のあるボロとうまいコントラストが出ると思います。

僕らの世代はデジタルからフィジカルに戻すことに愛着が湧く

WWD:以前、インタビューで「何をかっこいいと思うか、その感覚は幼少期に決まる」といったことを話されていました。落合さんが考えるかっこよさとは?

落合:忘れられて消えてしまうデジタルデータと、古めかしくて触れると壊れてしまうものを観察する喜びの間に、今の時代のかっこよさがあると思う。この質量への憧憬が漂う時代においては重要な価値観だと思います。ナムジュン・パイクはデジタルネイティブじゃなかった。彼が写真を見たときにケミカルプロセスを考えたのは、写真との出会いがフィルムからだったからですよね。僕の世代は写真との出会いはデジタルからで逆にフィジカルに戻すことにものすごい愛着が湧いたりするわけです。その感覚が表現されるといいなと思っています。

 ボロは壊れそうだけど美しい。どんどんトランスフォームしていく。「ユイマ ナカザト」の服もこうやってトランスフォームしていく。でも、トランスフォームする最大のものを僕はデジタルだと思う。トランスフォームしまくるデジタルであるが故に、質量ある形を与えてもっと愛してあげたいっていつも思っているけど、質量ある形を与えると、壊れて死んじゃうから、そのギリギリのラインがフルデジタル時代のかっこよさなのだと僕は信じています。

WWD:ニューヨークのMOMAが2019年にリニューアルした後にパフォーマンス用のエリアを設けるなど、ここにきて消えてなくなるもののアート性が重視されているように思います。

落合:おもしろいですね。ちなみステーショナリー・ノマドという言葉が出てくる数行前でナムジュン・パイクが言っているのは、歌や口語、ダンスや音楽みたいに形が残らない芸術は過去50万年間、支配的であったのに、農耕を始めた人類が壁に描いたり彫刻を彫ったりと持ち運べない芸術を作り始めたと。20世紀はそれを成功させてきたが、形を持たない無形のジャンルへ芸術を戻していくことも意味があると言っていました。

 形のないものは質量のないもの。古来、芸術ってほとんど質量がないものでした。質量がないものから突然、質量があるものが生じたのではなく、定住することによって生じた。今、だから定住することの意味を逆にデジタルの側に発散していくと、あらゆるものは形あるものから形のないものへ、そして形ないものから形あるものへというトランスフォームが起こる。それを文化的に着目し続けるのに意味があります。

WWD:日本のカルチャーは戦後、ファッションはじめアメリカから大きな影響受けてきました。けれどここにきて、長く使うことをよしとするヨーロッパ型の価値観が大事だな、と言われ始めている。この点についてはどう思いますか?

落合 石の文化ですね。広がると思います。僕は新品を買う行為をあまりかっこよくないと思っています。例えば使っている「ライカ(LEICA)」のレンズは1960年のレンズで、過去50年間誰かの手を渡って僕のところにやって来ている。「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」が好きで、高校生のときに買ったヨウジの服を今でも着ています。破けているし、ペンキが付いたりしているけどその方がカッコいいじゃないですか。別に新しい物買うよりリメークしたほうがかっこよくない?とか、ほつれが生まれた瞬間がオリジナリティーであるとか、“小汚い服”ではなく“あなた色になった服”であるとか。そういったことをみんなが意識するようになることが、僕は大切だと思っています。

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落合陽一に聞くサステナブル 総合演出した日中韓芸術祭の背景

 「日中韓芸術祭2021in北九州」が10月25日に北九州市立美術館で開催された。「日中韓芸術祭」は日中韓の伝統文化や現代芸術の紹介を目的に14年から始まった3カ国共同事業で、毎年持ち回りで開催されている。日本が開催国の今年は東アジア文化都市である北九州市で開催。南條史⽣キュレーターをスーパーバイザーに、メディアアーティストの落合陽一が総合演出を担当し、ホログラム技術を活用したデジタルショーを発表した。テーマは「デジタル時代に花開く,時空間を超えたパッチワーク」。⽇本・中国・韓国の装いの⼟着性やその⽂化の根底に流れるサステナビリティを共通のコンセプトに掲げる。落合陽一が考えるサステナビリティとは?都内で事前に行われた撮影現場で話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD): SDGsとファッションとデジタルを組み合わせて何を伝えようとしているのか教えてください。

落合陽一メディアアーティスト(以下、落合):何を伝えるかそれほど固めていません。どちらかというと素材を集め、デジタルのパッチワークをすることで何が生まれるだろう、という感覚です。

WWD:モデルには冨永愛はじめ多様性あるモデルを起用しています。パッチワークはどこに向かっているのでしょうか。

落合:自分はメディアアーティストであり、やっていることはずっとぶれていません。自然と共生する新しいデジタルとは何か、「デジタルネイチャー」の探求です。だから演出するショーごとにコンセプトを大きくは変えません。今回のテーマである「デジタル時代に花開く、時空間を超えたパッチワーク」の裏にある話としては、デジタルネイチャーという新しい生態系において人はどういう形をしているのだろう?民芸のような古いものの価値はどう高められていくのだろうといったこと。最終的にどういう形に落ち着くかは料理しないとわかりません。フランス料理か日本料理か中国料理かと聞かれるなら「計算機自然料理」です。味はまだ分からない。

WWD:ゴールは明確だけどどんな味になるかはわからない、それはおもしろいですね。

落合:結構おいしく仕上がりそうです。カメラのチームが良いことは最初からわかっていましたが、モデルさんもよいし、スタイリストさんもよく、ヘアメイクも服もよい。撮影は現場でハマってみないと相性が良いか分からないですよね。

日本のぼろと「スノーピーク」は相性がとてもいい

WWD:服は、日本のぼろ(襤褸)に加えて「ユイマ ナカザト(YUIMA NAKAZATO)」、日本環境設計の「ブリング(BRING)」を使った「スノーピーク(SNOWPEAK)」とバリエーションに富んでいます。これらを選んだ理由を教えてください。

落合:フィジカルのパッチワークと言えば唯馬さんじゃないですか?ぼろは継ぎはぎを繰り返して長い年月着られ続けてきた、いわば“アナログパッチワーク・オブ・ジ・エンシエント・トラディショナル・カルチャー”。受け継がれるぼろは、あの上で子供が生まれ、寒い夜はドンシャンと呼ばれる夜着に数人で包まり寝た。その中で亡くなる人もいたでしょう。服を着る本質的な理由は防寒であり、ぼろは防寒の極み。そしてキャンプやアウトドアファッションの基本は防寒や機能。キャンプから誕生しサステナブルな材料を使う「スノーピーク」はぼろとの相性はとてもいい。「われわれはキャンパーなのだ、都市で」みたいなメッセージを受け取ります。

WWD:「スノーピーク」の素材が再生ポリエステルであることは重要でしたか?そういえば「ブリング」の工場も北九州市にありますが。

落合:重要です。循環する素材のほうが面白いですから。

WWD:⽇本・中国・韓国の装いの⼟着性やその⽂化の根底に流れるサステナビリティを共通のコンセプトに掲げています。詳しく教えてください。

落合:人類がつくってきた文化的活動は、常にアーカイブがあります。デジタル以降は古今東西から集めてきた断片的なコンテクストが、何らかの形をしていることが非常に気持ちがよいと思うようになりました。それは日本から来たのかもしれないし、中国から来たのかもしれないし、韓国から来たのかもしれない。そして、それが一点通じて華厳や老荘思想になる。

 ⽇中韓の⽂化の根底に流れているものを考えたとき、真っ先に浮かんだのは物化・華厳・⺠藝・侘寂などの東洋的美的感覚と世界観の中に構築される持続可能なデジタルの⾃然です。一は全、全は一。一瞬の中に美学を見て茶室の茶の中に宇宙がある、老い木に花の世界など華厳的思想は老荘から生まれて半島伝来して日本にやって来たわけですよね。そして今はデジタルネイチャーです。1980年のナムジュン・パイク(Nam June Paik)の⾔葉を借りれば、リモートコラボレーションが当たり前になったわれわれは「定在する遊牧⺠(stationary nomad )」とも⾔えます。地球上のあらゆるところからデジタルの⾃然に接続され,共⽣し饗宴することができるようになりましたから。

ナムジュン・パイクは多分、完全に正しい

WWD:ナムジュン・パイクはビデオアートの父と言われるアーティストですね。

落合:ナムジュン・パイクが1980年に「アートフォーラム」という美術誌に書いた「ランダム・アクセス・インフォメーション」という寄稿文があり「60キロの体を動かすのに60キロの体しか動かさなかった人類が、60キロの体を動かすために300キロの車を動かすようになったから、石油を使うようになった。これは最も愚かしい」といった意味のことを書いていて、おもしろい。その解決策として彼が言い出したのが、われわれがステーショナリー・ノマド=定住する遊牧民になることです。世界中に電子情報としてものを送り合う世界が来ればわれわれは動かなくていい。そうすれば石油問題を解決できると。今思うと本質をついている。ナムジュン・パイクは多分、完全に正しい。

 ただ、「ステーショナリー・ノマド」に欠けていたものは何かと言えば、多分、質量への憧憬です。電子情報を送れば人が存在できるという点は完全に正しいけれど、コロナで強制ロックダウンされたことで身体性への飢えが発生するといったところまでは彼も考えが及んでいなかったと思う。人間には質量への憧憬があるから、ステーショナリー・ノマドになり切れない。だからその間にあるものをうまく取り持つみたいなところが、ここ数年の僕のテーマです。デジタルから見た身体性、質量への欲求は一体何なのか?今回パッチワークの素材のひとつにサイアノタイプという鉄を使ったプリントを使ったのも、質量がないデジタルを質量のあるフィジカルに変換する喜びみたいなことからです。

WWD:インスタレーションの本番ではそれをホログラムで見せ、12月には一般配信もあるそうですね。

落合:空間に映像を直接表示するディスプレーをLEDで作ります。身体からデータになり、データが自然となびくところを表現したい。質量性のあるボロとうまいコントラストが出ると思います。

僕らの世代はデジタルからフィジカルに戻すことに愛着が湧く

WWD:以前、インタビューで「何をかっこいいと思うか、その感覚は幼少期に決まる」といったことを話されていました。落合さんが考えるかっこよさとは?

落合:忘れられて消えてしまうデジタルデータと、古めかしくて触れると壊れてしまうものを観察する喜びの間に、今の時代のかっこよさがあると思う。この質量への憧憬が漂う時代においては重要な価値観だと思います。ナムジュン・パイクはデジタルネイティブじゃなかった。彼が写真を見たときにケミカルプロセスを考えたのは、写真との出会いがフィルムからだったからですよね。僕の世代は写真との出会いはデジタルからで逆にフィジカルに戻すことにものすごい愛着が湧いたりするわけです。その感覚が表現されるといいなと思っています。

 ボロは壊れそうだけど美しい。どんどんトランスフォームしていく。「ユイマ ナカザト」の服もこうやってトランスフォームしていく。でも、トランスフォームする最大のものを僕はデジタルだと思う。トランスフォームしまくるデジタルであるが故に、質量ある形を与えてもっと愛してあげたいっていつも思っているけど、質量ある形を与えると、壊れて死んじゃうから、そのギリギリのラインがフルデジタル時代のかっこよさなのだと僕は信じています。

WWD:ニューヨークのMOMAが2019年にリニューアルした後にパフォーマンス用のエリアを設けるなど、ここにきて消えてなくなるもののアート性が重視されているように思います。

落合:おもしろいですね。ちなみステーショナリー・ノマドという言葉が出てくる数行前でナムジュン・パイクが言っているのは、歌や口語、ダンスや音楽みたいに形が残らない芸術は過去50万年間、支配的であったのに、農耕を始めた人類が壁に描いたり彫刻を彫ったりと持ち運べない芸術を作り始めたと。20世紀はそれを成功させてきたが、形を持たない無形のジャンルへ芸術を戻していくことも意味があると言っていました。

 形のないものは質量のないもの。古来、芸術ってほとんど質量がないものでした。質量がないものから突然、質量があるものが生じたのではなく、定住することによって生じた。今、だから定住することの意味を逆にデジタルの側に発散していくと、あらゆるものは形あるものから形のないものへ、そして形ないものから形あるものへというトランスフォームが起こる。それを文化的に着目し続けるのに意味があります。

WWD:日本のカルチャーは戦後、ファッションはじめアメリカから大きな影響受けてきました。けれどここにきて、長く使うことをよしとするヨーロッパ型の価値観が大事だな、と言われ始めている。この点についてはどう思いますか?

落合 石の文化ですね。広がると思います。僕は新品を買う行為をあまりかっこよくないと思っています。例えば使っている「ライカ(LEICA)」のレンズは1960年のレンズで、過去50年間誰かの手を渡って僕のところにやって来ている。「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」が好きで、高校生のときに買ったヨウジの服を今でも着ています。破けているし、ペンキが付いたりしているけどその方がカッコいいじゃないですか。別に新しい物買うよりリメークしたほうがかっこよくない?とか、ほつれが生まれた瞬間がオリジナリティーであるとか、“小汚い服”ではなく“あなた色になった服”であるとか。そういったことをみんなが意識するようになることが、僕は大切だと思っています。

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販売員から“ライバー”へ、オンラインでの接客スキルの生かし方 TIG LIVER阿蘇奈南子

 コロナ禍を経てEC化率はさらに上がった。ネットで服を買う人はさらに増えて、ECサイトにはスタッフのスタイリングページが必須になり、オンライン接客を始めたブランドも急増している。そうした中で注目を浴びているのが、ライブコマースだ。人材派遣のiDAではライブ配信で活躍できるスタッフの育成、派遣を始めた。その第一号としてオンワード・クローゼットのライブ配信に登場した阿蘇奈南子さんが抜擢された。ライバーとして初めて出演した配信の感想や販売の仕事への向き合い方、ファッションの魅力などをうかがった。

―iDAに登録したきっかけを教えてください。

阿蘇奈南子さん(以下、阿蘇):元々、おしゃれすることがとても大好きだったので、接客販売をしながら洋服について勉強できたらなと思い、派遣登録しました。もっと現実的な話をすると、子どもの保育園のお迎えの時間に合わせて働けるところをiDAから紹介していただいたのがきっかけです。

―それ以前にも販売職はされていたのですか?

阿蘇:お菓子の販売や飲食店などでも働いていましたが、ギャル系ブランドの販売員として働いていたこともありました。その後、子どもが生まれてからはヤクルトレディをしていたこともあります。

―幅広く接客や人と接する仕事をされていたんですね。また、ファッション業界へ戻ってきたのは?

阿蘇:ギャル系ブランドで働いていた時に、ある服を着ていると褒められるのに、違う服を着ている時は何も言われないのはなんで?と漠然と考えていました。例えば、お客様にはこの形が似合う、この色が似合うということは感覚で分かるけど、なぜ似合うのか、それをどう伝えたらいいのだろうか?と。プライベートで子どもができたこともあり、一時は離れていましたが、それから心理カウンセラー、占星術、パーソナルカラー、骨格診断などを勉強して、今は個人でもファッションコンサルタントとしても活動をしているんです。

―それは凄い!骨格診断やパーソナルカラーは理解できますが、なぜ占星術や心理学も勉強を?

阿蘇:パーソナルカラーや骨格診断はロジカルな手法ですが、人が持つ潜在的な魅力をさらに引き出したいと追求していたら、心理学や占星術にも辿り着いたんです。今やっているファッションコンサルタントも占星術とファッションを組み合わせた内容になっています。

―それはどういった内容なのですか?

阿蘇:パーソナルカラーや骨格診断で理論的に似合うもの診断した上で、星占いでさらに似合うものを深掘りしています。

―似合うものへの探求心が凄いですね。

阿蘇:私自身が「おしゃれになりたい」という気持ちが強かったからだと思います。私は着ている服や色で、その人の第一印象は決まると考えていて、特に初めて会った人への印象は見た目に大きく左右されると考えています。例えば、全く自分に似合わない色を身に着けると、顔色が悪く見えたり、クマが目立ったり、そのせいで具合が悪そうに見えるのはもったいない。でも、似合う色を身に着けていると元気があって明るい人だな、一緒に仕事がしたいと思ってもらえる。それがファッションの凄いところで、ファッションの仕事をしたいという原動力になっています。

―実は私も骨格診断とパーソナルカラーを受けたことがあるのですが、この服を着ると太って見える理由が分かった時に腑に落ちた経験があります。今も似合うシルエットになるようコーディネートしています。一方で診断結果に縛られて、オシャレになれないという方もいます。だから販売員の方が理論として身に着けて接客してもらえると心強いですね。

阿蘇:そう思います。例えば、いろんなピンク系の色の中でもお客さまにはどのピンクが似合うか的確なアドバイスができるようになれると思います。私は勉強をして、アドバイスの幅が広がり、接客がより楽しくなりました。試着室から出てきたお客さまにただ「かわいいですね!」だけでは味気ない。どういうところか似合っているのか褒めることができれば、さらにお客さまとの信頼が深まり、楽しい接客ができると思います。

―そうですよね!その経験が今回のTIG LIVERへの抜擢につながったんですか?

阿蘇:そうです。今回、ご依頼いただいたオンワード樫山の「エニスィス(ANY SIS)」のライブ配信ではパーソナルカラーや骨格診断がテーマにあり、iDAから「やってみませんか?」とお声がけいただきました。

―それまでライブ配信などはやったことは?

阿蘇:知人の占い師さんとインスタでコラボ配信はしましたが、それ以外では経験はありませんでした。でも、今まで経験したことのないお仕事でしたので、二つ返事でお受けしました。

―実際にライブ配信をしてみていかがでしたか?

阿蘇:オンワードの社員の方、スタイリストさんと3人で和気あいあいと配信ができて、とても楽しかったです。一応、台本などもあり、リハーサルもしたのですが、台本通りだったのは最初の自己紹介まででしたね(笑)。それからは視聴者からのコメントを拾って、それに答えるような形でした。

―ライブ配信にあたり、心がけたことは。

阿蘇:目の前にお客さまがいる想定で、接客するように話そうと心がけました。最初は少し緊張しましたが、コメントを拾いながら配信しているとだんだん目の前にお客さまがいるように感じられて、楽しくなってきました。自分が実際に着てみて、こんな手触り、着心地はどうで、骨格とパーソナルカラーでいうとこんな感じ見えるよと説明をしていると、コメントで反応があり、目の前にお客さまがいて一緒にショッピングをしているような気持ちになりました。特に、最初のコーディネートから自分の骨格とパーソナルカラーにあった服にチェンジしたときはお客さまの反応が「すごい変わった!」「こっちの方が似合う」など、パーっとコメントが流れてきて、そのときはすごく嬉しかったですね。

―目に見えて変わったということですね。

阿蘇:「今、買いました」ってコメントが届いたときは嬉しかったです。改めて、このTIG LIVEの仕組みはすごく便利だと思いました。

―逆に何か反省するとしたら?

阿蘇:そうですね、もっと緊張感を持った方がよかったかなと思います。本番は3人が意気投合して、結構ノリノリでしたので(笑)。

―視聴者的にはその方が楽しいと思いますよ(笑)。

阿蘇:そうですよね!台本を棒読みで淡々と商品説明をされても面白くないので、リアルな接客のように、目の前にお客様を楽しませることが大切だなと思いました。だから話すときはカメラ目線で、うなずく時もカメラを見ながら「そうだよね」とするように気をつけました。アクションもオーバー気味で、声も大きめで話すなど、その場で工夫しながらやりました。至らない点もあったと思いますが、とてもいい経験になりました。改めて、ライブ配信だけに限らず、接客も仕事も子育ても、やっぱり楽しむことが一番だなと思いました。

―ほう。それは?

阿蘇:この仕事は、身にまとうものが変わるだけで、お客様の表情もすごく明るくなるのを目の前で見ることができます。それが醍醐味ではあるのですが、一方で売り上げを意識しなくてはいけません。好きなものを提供している意識と売ることを意識した接客は少し違うようで、その感覚はお客様にも伝わるんですよね。

―それは多くの販売員が悩むところですね。どう折り合いをつけるのですか?

阿蘇:私は「接客したら絶対買ってもらわないといけない」「必ずこれを今日中に売らなければいけない」という固定観念を外しました。お客さまは好きな服、自分に似合う服を探しに来ているのですから、それを一緒に考えて、ワクワクを提供することを意識するようになってから接客が一段と楽しくなりました。

―中々それを解除するのは難しいですよね。

阿蘇:そうですね。私の場合は目標売上も100%達成するものではなく、「あくまで目標数値なんだ」程度にとどめて頭の片隅に置きながら、お客さまに似合うものを提供する接客に意識を向けました。

―目標に縛られず、まずは楽しむ、楽しませることに集中するということですね。

阿蘇:これまでいろんな業界で人と接する仕事をしてきて感じるのは、遊び感覚で楽しんで仕事をしていると人が寄って来るということです。遊び=ふざけている、怠けているというわけでありません。とにかく仕事を楽しんでいると、自然と「話を聞きたいです」と寄ってきてくれるので、今後もその意識は忘れずに仕事をしていきたいですね。

―最後に阿蘇さんにとって“ファッション”とは?

阿蘇:ファッションは“魔法”です。心理カウンセリングをしていると、話すことで心のメンタルを変えるのには時間かかります。でも、手始めに身に纏うものを変えると、それだけで気分が変わるんですよね。私自身も洋服でその日の気分が変わるから、面白いです。それくらいファッションにはパワーがある。だから魔法なんです。

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販売員から“ライバー”へ、オンラインでの接客スキルの生かし方 TIG LIVER阿蘇奈南子

 コロナ禍を経てEC化率はさらに上がった。ネットで服を買う人はさらに増えて、ECサイトにはスタッフのスタイリングページが必須になり、オンライン接客を始めたブランドも急増している。そうした中で注目を浴びているのが、ライブコマースだ。人材派遣のiDAではライブ配信で活躍できるスタッフの育成、派遣を始めた。その第一号としてオンワード・クローゼットのライブ配信に登場した阿蘇奈南子さんが抜擢された。ライバーとして初めて出演した配信の感想や販売の仕事への向き合い方、ファッションの魅力などをうかがった。

―iDAに登録したきっかけを教えてください。

阿蘇奈南子さん(以下、阿蘇):元々、おしゃれすることがとても大好きだったので、接客販売をしながら洋服について勉強できたらなと思い、派遣登録しました。もっと現実的な話をすると、子どもの保育園のお迎えの時間に合わせて働けるところをiDAから紹介していただいたのがきっかけです。

―それ以前にも販売職はされていたのですか?

阿蘇:お菓子の販売や飲食店などでも働いていましたが、ギャル系ブランドの販売員として働いていたこともありました。その後、子どもが生まれてからはヤクルトレディをしていたこともあります。

―幅広く接客や人と接する仕事をされていたんですね。また、ファッション業界へ戻ってきたのは?

阿蘇:ギャル系ブランドで働いていた時に、ある服を着ていると褒められるのに、違う服を着ている時は何も言われないのはなんで?と漠然と考えていました。例えば、お客様にはこの形が似合う、この色が似合うということは感覚で分かるけど、なぜ似合うのか、それをどう伝えたらいいのだろうか?と。プライベートで子どもができたこともあり、一時は離れていましたが、それから心理カウンセラー、占星術、パーソナルカラー、骨格診断などを勉強して、今は個人でもファッションコンサルタントとしても活動をしているんです。

―それは凄い!骨格診断やパーソナルカラーは理解できますが、なぜ占星術や心理学も勉強を?

阿蘇:パーソナルカラーや骨格診断はロジカルな手法ですが、人が持つ潜在的な魅力をさらに引き出したいと追求していたら、心理学や占星術にも辿り着いたんです。今やっているファッションコンサルタントも占星術とファッションを組み合わせた内容になっています。

―それはどういった内容なのですか?

阿蘇:パーソナルカラーや骨格診断で理論的に似合うもの診断した上で、星占いでさらに似合うものを深掘りしています。

―似合うものへの探求心が凄いですね。

阿蘇:私自身が「おしゃれになりたい」という気持ちが強かったからだと思います。私は着ている服や色で、その人の第一印象は決まると考えていて、特に初めて会った人への印象は見た目に大きく左右されると考えています。例えば、全く自分に似合わない色を身に着けると、顔色が悪く見えたり、クマが目立ったり、そのせいで具合が悪そうに見えるのはもったいない。でも、似合う色を身に着けていると元気があって明るい人だな、一緒に仕事がしたいと思ってもらえる。それがファッションの凄いところで、ファッションの仕事をしたいという原動力になっています。

―実は私も骨格診断とパーソナルカラーを受けたことがあるのですが、この服を着ると太って見える理由が分かった時に腑に落ちた経験があります。今も似合うシルエットになるようコーディネートしています。一方で診断結果に縛られて、オシャレになれないという方もいます。だから販売員の方が理論として身に着けて接客してもらえると心強いですね。

阿蘇:そう思います。例えば、いろんなピンク系の色の中でもお客さまにはどのピンクが似合うか的確なアドバイスができるようになれると思います。私は勉強をして、アドバイスの幅が広がり、接客がより楽しくなりました。試着室から出てきたお客さまにただ「かわいいですね!」だけでは味気ない。どういうところか似合っているのか褒めることができれば、さらにお客さまとの信頼が深まり、楽しい接客ができると思います。

―そうですよね!その経験が今回のTIG LIVERへの抜擢につながったんですか?

阿蘇:そうです。今回、ご依頼いただいたオンワード樫山の「エニスィス(ANY SIS)」のライブ配信ではパーソナルカラーや骨格診断がテーマにあり、iDAから「やってみませんか?」とお声がけいただきました。

―それまでライブ配信などはやったことは?

阿蘇:知人の占い師さんとインスタでコラボ配信はしましたが、それ以外では経験はありませんでした。でも、今まで経験したことのないお仕事でしたので、二つ返事でお受けしました。

―実際にライブ配信をしてみていかがでしたか?

阿蘇:オンワードの社員の方、スタイリストさんと3人で和気あいあいと配信ができて、とても楽しかったです。一応、台本などもあり、リハーサルもしたのですが、台本通りだったのは最初の自己紹介まででしたね(笑)。それからは視聴者からのコメントを拾って、それに答えるような形でした。

―ライブ配信にあたり、心がけたことは。

阿蘇:目の前にお客さまがいる想定で、接客するように話そうと心がけました。最初は少し緊張しましたが、コメントを拾いながら配信しているとだんだん目の前にお客さまがいるように感じられて、楽しくなってきました。自分が実際に着てみて、こんな手触り、着心地はどうで、骨格とパーソナルカラーでいうとこんな感じ見えるよと説明をしていると、コメントで反応があり、目の前にお客さまがいて一緒にショッピングをしているような気持ちになりました。特に、最初のコーディネートから自分の骨格とパーソナルカラーにあった服にチェンジしたときはお客さまの反応が「すごい変わった!」「こっちの方が似合う」など、パーっとコメントが流れてきて、そのときはすごく嬉しかったですね。

―目に見えて変わったということですね。

阿蘇:「今、買いました」ってコメントが届いたときは嬉しかったです。改めて、このTIG LIVEの仕組みはすごく便利だと思いました。

―逆に何か反省するとしたら?

阿蘇:そうですね、もっと緊張感を持った方がよかったかなと思います。本番は3人が意気投合して、結構ノリノリでしたので(笑)。

―視聴者的にはその方が楽しいと思いますよ(笑)。

阿蘇:そうですよね!台本を棒読みで淡々と商品説明をされても面白くないので、リアルな接客のように、目の前にお客様を楽しませることが大切だなと思いました。だから話すときはカメラ目線で、うなずく時もカメラを見ながら「そうだよね」とするように気をつけました。アクションもオーバー気味で、声も大きめで話すなど、その場で工夫しながらやりました。至らない点もあったと思いますが、とてもいい経験になりました。改めて、ライブ配信だけに限らず、接客も仕事も子育ても、やっぱり楽しむことが一番だなと思いました。

―ほう。それは?

阿蘇:この仕事は、身にまとうものが変わるだけで、お客様の表情もすごく明るくなるのを目の前で見ることができます。それが醍醐味ではあるのですが、一方で売り上げを意識しなくてはいけません。好きなものを提供している意識と売ることを意識した接客は少し違うようで、その感覚はお客様にも伝わるんですよね。

―それは多くの販売員が悩むところですね。どう折り合いをつけるのですか?

阿蘇:私は「接客したら絶対買ってもらわないといけない」「必ずこれを今日中に売らなければいけない」という固定観念を外しました。お客さまは好きな服、自分に似合う服を探しに来ているのですから、それを一緒に考えて、ワクワクを提供することを意識するようになってから接客が一段と楽しくなりました。

―中々それを解除するのは難しいですよね。

阿蘇:そうですね。私の場合は目標売上も100%達成するものではなく、「あくまで目標数値なんだ」程度にとどめて頭の片隅に置きながら、お客さまに似合うものを提供する接客に意識を向けました。

―目標に縛られず、まずは楽しむ、楽しませることに集中するということですね。

阿蘇:これまでいろんな業界で人と接する仕事をしてきて感じるのは、遊び感覚で楽しんで仕事をしていると人が寄って来るということです。遊び=ふざけている、怠けているというわけでありません。とにかく仕事を楽しんでいると、自然と「話を聞きたいです」と寄ってきてくれるので、今後もその意識は忘れずに仕事をしていきたいですね。

―最後に阿蘇さんにとって“ファッション”とは?

阿蘇:ファッションは“魔法”です。心理カウンセリングをしていると、話すことで心のメンタルを変えるのには時間かかります。でも、手始めに身に纏うものを変えると、それだけで気分が変わるんですよね。私自身も洋服でその日の気分が変わるから、面白いです。それくらいファッションにはパワーがある。だから魔法なんです。

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【動画】作り手の価値観を伝え、つなげる「イコーランド シブヤ」 Youth in focus Vol.6

 ミレニアルズやZ世代と呼ばれる若者たちは今何を考え、ファッションやビューティと向き合い、どんな未来を描いているのだろうか。U30の若者たちにフォーカスした連載「ユース イン フォーカス(Youth in focus)」では、業界に新たな価値観を持ち込み、変化を起こそうと挑戦する若者たちを紹介する。連載の6回目は、信頼をキーワードに消費行動を問い直し、作り手と消費者が等しい価値観でつながる場を提供する渋谷ミヤシタパークの「イコーランド シブヤ(EQUALAND SHIBUYA)」でディレクターを務める森井杏南(27)にフォーカスを当てる。

 2020年7月にオープンした同店は、2〜3カ月ごとに異なるテーマに沿って集めたファッションアイテムや雑貨、食品などが並ぶキュレーションメディア型店舗だ。森井ディレクターをはじめ、20代の社員が中心となり運営する。新しい世代が提案するこれからの時代の消費のあり方として、生産者のものづくりへの思いや価値観を掘り下げ発信するプレゼンテーションが特徴だ。ソーシャルアクティビストや、買い物に信頼や意味を求める人々が集う空間を生み出す森井ディレクターに話を聞いた。動画では、スタッフがオススメする3ブランドを紹介する。

WWD:「イコーランド シブヤ」立ち上げの背景は?

森井杏南「イコーランド シブヤ」ディレクター(以下、森井):「イコーランド」は、PR事業などを手掛けるワンオーが「等しい価値観でつながる人たちが集まる村のような場を作ること」を目指すプロジェクトとして2019年にスタートしました。まず、ワンオーのオリジナルブランド「イコーランド トラストファッション」を始動させ、その後20年7月末にそのコンセプトを体現したリアル店舗として「イコーランド シブヤ」を開きました。

WWD:森井さんがディレクターに任命された理由は?

森井:会社から「新しい世代が考える新しいことをやってみてほしい」と突然話を受けました。私は新卒でワンオーに入社し、主にデザイナーズブランドや企業のPR業務に携わっていたので、店作りも販売員の経験もなく、最初はかなり焦りましたね(笑)。右も左もわからず、20代のチームメンバーと一緒に試行錯誤しながらのスタートでした。

WWD:なぜキュレーションメディア型の店舗に?

森井:私自身、さまざまなブランドと仕事をする中で、ビジネスを通すと作り手が伝えたい本質的な部分が見えづらくなってしまう事例を見てきました。だからこそ、「等しい価値観でつながるコミュニティー」というコンセプトに強く共感し、商品やブランドの背景ストーリーをきちんと伝えたいと考えたんです。PR会社の私たちならではの伝え方として、雑誌のように期間ごとにテーマを変えて取り扱いブランドをキュレーションする今の見せ方に行き着きました。

WWD:オープン当初はどんな反応が?

森井:「いい意味で売る気がないね」とよく言われました(笑)。空間の使い方が下手で、気付けばギャラリーのようになってしまって。でも、それを新しいと感じてくれる人が多かった。狙ったつもりはなかったですが、印象的なスペースは作れたのだと思います。

WWD:テーマはどのように決めている?

森井:メンバーとの日常会話の中で自然に生まれることが多く、今私たちが気になること、発信したいことを反映しています。例えば、最近は旅行に行けず、「どこかに出掛けたい」というモヤモヤした感情がずっとあるよね、という話から5〜7月は「リトルトリップ」をテーマに、ものを通して、風景を想像したり、旅行に行った気分になれたりするような商品を集めました。テーマが決まったら、メンバーそれぞれが気になるブランドをリストアップします。インターネットやSNS、街で偶然見つけたブランドや、メンバーの友人のブランドも比較的多いです。10月17日までのテーマ「トラスト」では、私たちがキュレーションしたブランド以外にもこの場所で出会ったクリエイターらをキュレーターに迎え、彼らが信用・信頼しているアイテムを集めました。

WWD:運営メンバーは同世代でも、それぞれ興味関心は違うはず。どのようにまとめている?

森井:そうですね。でも、なんとなくみんなが“イコーランドらしさ”を理解している。言葉にはしづらいですが、各々の“らしさ”の解釈が、多様性と統一感を良い塩梅で表現してくれています。

WWD:取り扱うブランドを選定する上で大事にしていることは?

森井:そのブランドに温度を感じるか、です。ものの良さはもちろんですが、それ以外にも作り手の顔が見えたり、人柄が伝わったりすることを大切にしています。実際に、取り扱うときには、作り手に会い、どうしてブランドを始めようと思ったのか、どういう思いで作っているのかを直接聞き、そのストーリーに自分が共感できるかを大事にしています。

WWD:特に印象的だったブランドとの出合いは?

森井:あるハンドメードのソイキャンドルブランドの商品を扱っていた際、キャンドルを手に取ったお客さまが、ブランドの方へ直接写真とともに感想を送ったそうです。そのブランドの方から、後日「イコーランドのようにコンセプチュアルで本当の意味での豊かさに導いてくれるような在り方が、とてもしっくりくる」という言葉をいただきました。特にものが溢れている今、もの作りに対して矛盾を感じる作り手が多いと思います。そんな中で、作り手も買い手も豊かさを感じる瞬間を生み出せた。この方向性で良かったなと感じた瞬間でした。

WWD:あえてサステナビリティやエシカルというワードは使わないようにしている?

森井:オープン時には、プラスチック問題の展示を行いましたし、プラスチックパッケージの商品は避けるなど、店作りをする上で当たり前なことは実践していますが、私たちが伝えたいことはあくまでブランドのストーリーです。ストーリーを大切にすることで、自然とサステナブルな商品が集まりました。「エコでなければいけない」といったメッセージではなく、ファッション性があり、「あっこれ、かわいい」と自然と手に取った商品が何かを考えるきっかけになったらいいと考えています。

WWD:顧客はどんな人たち?

森井:20代のお客さまが比較的多いですが、どんな人が来ても何かしらは手に取れるようなものをそろえています。SNSのフォロワーは、ソーシャルアクティビストとして何かを発信していたり、サステナブルなことに興味があったりする人たちが多いです。特徴的なのは、一人当たりの店での滞在時間が長く、パネル展示やポップなどをじっくり読んでから購入してくれる人が多いこと。ただ買うだけではなく、その先の意味を考えたい人が多いのだと思います。

WWD:今後「等しい価値観でつながるコミュニティー」をさらに拡大していくための施策は?

森井:まずは自然に集まる人たちを大事にしていきたいです。例えば地理的なコミュニティーに根ざして、渋谷区にまつわる社会問題を取り上げたり、地域同士を結び付けたりもしたい。今後は物販以外にも、展示やイベントをさらに増やします。多くの人が気軽に立ち寄れる立地を生かして、さまざまなトピックを扱い、売る以外の表現方法も用いながら何かに気付くきっかけになる場所でありたいです。

■EQUALAND SHIBUYA
時間:11:00〜21:00
場所:渋谷ミヤシタパーク
住所:東京都渋谷区神宮前6丁目20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3階

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本田仁美の「あったらいいな」を凝縮 プロデュースコスメとこだわりの美容法について一問一答

 グローバルで注目を集めたガールズグループIZ *ONEでの活動を経て、多くの人の憧れの的となった本田仁美。10月には日韓共同制作プロジェクト「ベイズ(BAYS)」とともに自身が初めてプロデュースしたコスメブランド「ノートーン」を発売し、予約殺到で話題を集めた。アイシャドウパレット“ピーチブラッシュトースト(Peach Blush Toast)” (税込2090円)は日韓で活動した彼女だからこそ作れたアイテムだという。開発秘話から、メイクアップのこだわりまでを聞いた。

WWD:なぜコスメプロデュースの依頼を受けた?

本田仁美(以下、本田):IZ*ONEとして活動していた時は、常にメイクさんがついていました。プロのメイクは雰囲気をガラリと変えてくれるので、自分のメイクとは違う自分の姿になれたんです。メイクアップ次第で雰囲気を変えられるのって面白いなと、そこからメイクに興味を持つようになりました。

 そのうちに、「こういう製品があったらいいな」と考えることが増え、コスメを作ってみたいと思うようになりました。今回その夢がかないました。

WWD:今回の製品のコンセプトは?

本田:私はアイシャドウが好きなのですが、多色が詰まったアイパレットは使わない“捨て色”が出てきてしまうことが多く、コンパクトに必要なものがそろって、持ち運びしやすいといいなと考えました。そこでアイシャドウだけでなく、チークやアイブロウ、涙袋にも使える、万能なコンパクトパレットというコンセプトにしました。

 日韓で活動したからこそ両方のいいところを知っているので、流行りの韓国トレンドを日本の方々にも楽しんでもらえるような製品にしました。

WWD:製品名は桃とパン。どんな意味が込められている?

本田:“ピーチブラッシュトースト(Peach Blush Toast)”という製品名は、まさに私そのものなんです。韓国ではファンの方々に「桃みたいな見た目をしている」と言っていただき、桃といえば私、のイメージがつきました。また私のチャームポイントはふわふわのほっぺなのですが、そこからふわふわのパンみたいだと、パンと仁美をかけて「パントミ」と呼ばれるように。なので、正式発表前のティーザーで桃やパンを出して匂わせをしたら、ファンの方はすぐ気がついてしまったようです(笑)。

WWD:本田さんがこだわったポイントは?

本田:使用色は一から提案しました。私がよく使うアイパレットの中のカラーを混ぜたらどうなるか?ラメは落ちにくいことが大事、などリクエストをしました。多色のパレットと違って既にブレンドされたカラーなので、簡単にグラデーションを作ることができると思います。

 パッケージは韓国トレンドを意識していて、韓国コスメではやっているブックタイプにしました。それぞれカラーから連想したカフェメニューの名前がついています。カフェのメニューは写真があるとイメージがつきやすいので、パッケージにもイラストを入れたいなと思って、家族に描いてもらいました!

WWD:アイパレットはどう使ってもらいたい?

本田:私のメイクで陰影を作る濃いカラー、ラメはマスト。濃いカラーは目尻に「くの字」に入れてアイラインの影を作ります。そうすると目が横に大きく見えるんです。そして私はマットカラーを使うことが多いので、ラメをプラスして濡れたような質感を出します。なのでラメは濡れた質感が出るよう大きすぎず、パールもこだわりました。ラメは気分次第で涙袋に置いたり、上まぶたに伸ばしたり、使い方を変えます。これまで使ったコスメの中で、1番落ちにくいラメです!

 そしてアイカラーはチークとしても使えるので、ワントーンメイクをしてみて欲しいです。私もチークとアイホールに使用しています。韓国のヘアメイクさんがリップをチークにも使っていたことがあって、そこから1アイテムでワントーンメイクをするという発想が生まれました。

WWD:本田さん自身が普段のコスメ選びでこだわるポイントは?

本田:私はとにかくマット質感が好き。ファンデーションも程よいツヤ感のあるセミマット、リップも韓国に行ってからはグロスからマットティントを使うようになりました。全体的にマットなので、目元のラメが大事なんです。私は人より肌がツヤツヤに見えちゃうタイプのようで、パウダーをたくさんつけているのに、カメラ越しだとツヤツヤに見えるようです。

WWD:本田さんが考える、アイドルメイクのマストアイテムは?

本田:こだわるのはベースメイクです!ベースメイクがキチンとできてこそ、アイシャドウなども映えると思うので。私はあまり顔に汗をかかないのですが、それでもたくさん踊るので、フィニッシュパウダーはマストです。ファンデーションは油分の少ないものを選びます。韓国に行く前は手の甲に出してから伸ばしていたのですが、韓国のヘアメイクさんはファンデーションを筆で伸ばした後に水で濡らしたスポンジで叩き込んでいて、そのやり方を真似しています。あとはステージで強いライトを浴びるので、下地はSPF50のものを選んでいます。ステージライトにも効果があるかはわかりませんが、気休めに……(笑)。

WWD:コスメや美容情報はどう仕入れている?

本田:欲しいコスメがある時は、韓国のヘアメイクさんに「どちらの方が私に似合う?」と訪ねていました。技術的な部分は、ユーチューブ(YouTube)で韓国のメイクユーチューバーさんの動画を見ることが多いですね。ファンの方は、韓国でヘアメイクさんにメイクしてもらった私の姿を見慣れているはずなので、帰国しても自分でそのレベルを再現しなければいけないと、帰国前から必死に勉強しました。韓国のヘアメイクさんは竹串を火で炙って、まつ毛をあげるんですが、真似できないので今はビューラーを使っています。

WWD:韓国で学んだ美容習慣やメイクアップ方法で、取り入れてよかったものは?

本田:スキンケア方法はIZ*ONEメンバーと情報交換していました。髪の巻き方もずっと縦巻きだったんですが、韓国に行ってから今のような波ウェーブスタイルにしていただくことが多く、これも帰国前に動画でやり方を勉強しました。あとは、韓国で流行っているピラティスですね。体幹を鍛えられるので、週1度、一年半通っていました。日本にもピラティス文化を広めたいです!

WWD:10月に20歳を迎えましたが、今後の目標は?

本田:10代では挑戦することを学びました。勇気を出して出演したオーディション番組「プロデュース48(PRODUCE48)」から今につながったのが大きな経験で、今後も挑戦し続け対と思っています。具体的にはモデルや、演技もしてみたいです!そして韓国語を勉強し、語学の楽しさにも目覚めたので、語学を生かしてグローバルで活躍できたら嬉しいなと思っています。

 今回、誕生日に合わせて「NOTONE」のチームの皆さんが誕生日広告を原宿駅に出してくださって、ファンの方からもたくさんの反響をいただきました。韓国では誕生日広告は一般的ですが、日本に帰ってきてもこんなにお祝いしてもらえるなんて…私にとってファンの方々は原動力なので、もっと好きになってもらえるように頑張りたいと思っています。

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内田理央、本気でTシャツビジネスに挑むVol.1 白T専門店でTシャツが持つ無限大の可能性を痛感

 モデルや女優として活躍する内田理央の普段着は、Tシャツやパーカなどカジュアルな装い。そこで本人の感性と個性を存分に生かしながら、ファッション性やプロセス、ビジネスにまでこだわった「本気のTシャツビジネス」をスタート!「WWDJAPAN」が紹介する各界の先駆者からTシャツ、イラスト、ビジネスについて学びながら、「名前貸し」とは全然違う、本気のタレントによるアパレルブランドを目指します。第1回は白Tシャツ専門店「#FFFFFFT(シロティ)」の夏目拓也オーナーに直撃します。

内田理央(以下、内田):「#FFFFFFT」の名前の由来は?

夏目拓也オーナー(以下、夏目):「#FFFFFF」はウェブのカラーコードでホワイトと読みます。白T専門店なので、コードをそのまま採用しました。

内田:なぜ白T専門店を始めようと思ったんですか?

夏目:私はもともとファッションが大好きで、人並み以上に洋服を買ってきました。20代中盤〜後半に白の無地Tを着始めたときに、すごく自分の中でしっくりきた感覚がありました。それをキッカケに、100円ショップからラグジュアリーブランドまで、いろいろな白Tを集めるようになりました。いつの間にかライフワークになり、集約した店は世界のどこにもなかったので、思い切ってスタートしました。自分にとっては夢のようなショップなんです。

内田:どんな客層の人が多いんでしょう?

夏目:老若男女問わず、自分の中のファッションの価値観が定まっていて、白T1枚にもこだわりたい人が多いですね。オープン当初から海外まで情報が飛び交い、コロナ前は外国人もたくさんきてくれました。

内田:世界中の人たちが白T専門店を探されていたんでしょうね。たくさんの種類があるので、選ぶのを迷われる方も多いんじゃないですか?

夏目:“どんな人にも自分の欲しい一枚が見つかる”というコンセプトのもと、お客さまの好みやこだわりのほか、体型の悩みを手掛かりにする場合もあります。

内田:オンラインストアを設けない理由は?

夏目:デザイン性のない無地の白Tはオンラインに不向き。直接見て触る体験を重要視しています。新型コロナの店舗休業中は、インスタグラムやフェイスブックのDMで、出来るだけ店頭と同じような接客を心掛けて販売していました。

内田:一番の売れ筋商品はなんですか?

夏目:ブランドのネームバリューで決めるのではなく、それぞれのお客さまが本当に似合う一枚を提供しているので、圧倒的に売れている商品はないんです。常時60種類をそろえ、毎週ラインアップを変えています。

内田:Tシャツを作る上でのアドバイスをお願いします。

夏目:まずは自分が夢中になれることや心から好きなものを見つけて、それを起点に誰もやってないことをやってほしいです。この対談企画を頂いたときに、「単なる名前貸しやファングッズではないTシャツを作りたい」という挑戦心がいいなと思いました。内田さんがやるべき理由をしっかり持ち、誰かの後追いではなくて初めてのアクションを起こすことが重要です。内田さんはラーメン好きですよね?

内田:すごく大好きです!

夏目:ラーメンのプリントをTシャツに載せている人はたくさんいますが、ラーメンを勢いよく食べられるように油や水分を弾く加工のTシャツを作るという発想をする人はいないと思います。そのようにTシャツは作り手も着る人も自由だから可能性は無限大です。

内田:心に響く言葉を頂いたことで、Tシャツビジネスの道が開けた気がします。好きなものを作ろうと思いがちですが、自分が今一番欲しいものや求めていることを形にするのが重要なんですね。

夏目:好きな気持ちは重要だけど、そこにもう一捻り加えるといいんじゃないかな。

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人気美容師・宮村浩気「アフロート」CEOも共感 髪にもスキンケア発想 きれいのカギは“髪のキメ”

 花王は約80年に渡り、健康的で美しい髪を手に入れるための本質研究に取り組んでいる。人が髪をきれいと感じるには潤い感や艶感が欠かせないが、同社の長年の毛髪研究によって“潤いや艶を感じる美しい髪”とは、“髪のキメがそろっている”状態だと分かった。しっかりケアをしても、髪のキメがそろっていなければパサつきを感じ、きれいな髪を実現できないのだ。人気美容師・宮村浩気「アフロート(AFLOAT)」CEOも共感する“髪のキメ”とは?

髪のキメそろう=
髪の毛1本1本がきれいに並ぶこと

 “潤いや艶を感じる美しい髪”とは、髪1本1本が乱れなくきれいに並んで整った状態、つまりは“髪のキメがそろっている”状態のこと。くわえて花王は研究によって、普段髪に触れたときに感じる潤い感は毛髪内の水分量に左右されないということも明らかにした※1。髪が均一に乱れなく整列しキメがそろうと、指通りが滑らかでまとまり、しっとりとした触り心地になるという。また髪のキメは見た目の美しさも左右する。キメがそろっていると光が一方向に反射して美しく艶やかに見えるのだ。髪のキメをそろえる意識をすることでヘアスタイルやヘアカラー、さらには傷んだ髪でも艶があり、しっとりと滑らかな手触りがかなう。

※1 H. Tanamachi,Int J Cosmet Sci.,2011,Feb,33(1),p25-36.,‘Temperature as a moisture cue in haptics on hair’

宮村浩気に聞く髪のキメを
そろえることの重要性

 宮村浩気「アフロート」CEOは、「美容師は“髪のキメ”と言われたときに、潤い感やしっとり感、艶感のある『きれいだな』と思う髪を指すとわかると思います。これまで“髪のキメ”という表現はしてきませんでしたが、多くの美容師が認識しているはずです。一般の女性たちは毎日忙しくお手入れが行き届かないことも多い中で、キメがそろった髪のイメージを持つことで、きれいな髪を目指しやすくなるのではないでしょうか」と話す。

トレンドのスタイルも
キメをそろえると
艶のあるきれいな仕上がりに

 髪のキメがそろうとトレンドのヘアスタイルも綺麗に見えると宮村「アフロート」CEOは語る。「当サロンでは“くびれヘア”にレイヤーを混ぜるのがトレンドです。艶髪ブームが長く続いていますが、“韓国ヘア”も人気。そのほかにも襟足のリバース巻きや外はねも支持を集めています。“くびれヘア”や“韓国風ヘア”では、スタイリングをする際にアイロンで巻いた部分をブラシでとかすと艶が出ます。ゆるやかなウェーブもトレンドなので、巻いた部分を勇気を持って崩してみてください(笑)。キメをそろえるとヘアカラーをしている髪でも艶のある美しい印象になります。艶髪ブームから髪質改善も流行っていますが、実はカールがつきにくくなってしまうこともあるので、よりヘアスタイルを楽しむためにキメのそろった素髪の美しさを高めてはいかがでしょうか」と話す。

日常で取り入れられる
キメがそろった
美しさを作るヘアケア方法

 髪のキメをそろえるためのセルフケアとして、取り入れやすいのは乾かし方。「アウトバストリートメントをつけた後、髪の間を少しテンションをかけるように指でとかしながら上から風を当てて乾かすとキメがそろいやすくなります。最後にブラシでとかせば艶感や潤い感が手に入ります」と話し、宮村「アフロート」CEOもハンドブローを意識することをおすすめしている。

問い合わせ先
花王
0120-165-692

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「ヴァレクストラ」×「トム・ディクソン」 イタリア・ミラノをたたえる光の彫刻

 今年9月に開催された「ミラノサローネ(MILANO SALONE)2021」で、「ヴァレクストラ(VALEXTRA)」はミラノ市内のブティックでインスタレーションを行った。コロナ禍で参加を控えるブランドもあったが、隈研吾やジョン・ポーソン(John Pawson)などの建築家とコラボレーションしてきた同ブランドは今年、トム・ディクソン(Tom Dixon)と協業。ディクソンが得意な照明の新作を使用した光の彫刻がブティックに登場した。ディクソンとグザヴィエ・ルジュー(Xavier Rougeaux)=ヴァレクストラ最高経営責任者(CEO)に今回のコラボについて聞いた。

WWD:.「ヴァレクストラ」とコラボするきっかけは?

トム・ディクソン(以下、ディクソン):「ヴァレクストラ」のブティックの隣に2年半前にレストラン・ブティック兼ショールームの「ザ・マンツォーニ(THE MANZONI)」をオープンした。われわれは、お隣さん同士。一つは丸く、もう一つは四角のレゴのように組み合わせることのできる新作照明をデザインした。ミニマルでアートギャラリーのような「ヴァレクストラ」のブティックでインスタレーションしたら面白いと思った。デザインの根本にあるミニマリズムを讃える意味でもね。

WWD:今まで、さまざまな建築家やクリエイターとコラボしてきたが、今回ディクソンを選んだ理由は?

グザヴィエ・ルジュー=ヴァレクストラCEO(以下、ルジュー):ミラノは建築やデザインで知られているが、ミラノ発の「ヴァレクストラ」も建築と同じ美的感覚を持ったブランド。ディクソンもミラノと深いつながりがあり、彼の新作はミラノの偉大なクリエイターであるアッキーレ・カスティリオーニ(Acchille Castiglioni)などへのオマージュだ。そこでコラボすることで、空間における対話を試みるのが面白いと思った。

WWD:インスタレーションのコンセプトは?どのような効果を出したかったか?

ディクソン:イサム・ノグチの照明のような光の彫刻を現代のテクノロジーでモダンに表現したかった。テクノロジーの発展により、同じ照明でも異なる効果が出せる。

 テクノロジーの力で、パーツを自由自在に組み合わせて、今まで見たことのないようなフォトジェニックな照明を作り出したいと思った。

WWD:ブラックライトの着想源は?ブラックライトという名前はどこから?その特徴は?

ディクソン:真っ暗な場所も光により真っ白に変化するそのスピリットを表現したかった。夜は真っ暗だけど、夜が開けて光が入ると明るくなる。そういった自然現象を、照明でデコラティブに表現したかったんだ。あと、「ヴァレクストラ」の新作“キアロスクーロ”は、イタリア語で“明暗”という意味。アイコニックなバッグの白と黒のコントラストがぴったりだと思った。

ルジュー:“キアロスクーロ”の洗練された黒いトリミングはブランドのコードを強調したもの。それだけでなく、バッグの裏側には機能的な黒いポケットを施している。洗練されたディテールと機能性は1960年以降、デザインや建築の世界では重要視されてきた。それと同じような表現だ。また、今回のコラボレーションは、コロナから開放されて、再度光を灯すといったような意味もある。

WWD:コロナがクリエイションに与えた影響は?

ディクソン:田舎の蘭を育てる温室がある場所にスタジオを移して制作し始めた。静かな場所でアシスタントもなく、完全に一人で制作に打ち込んだ。決まったスケジュールもなく、手を使ってクリエイションできたから、とてもリフレッシュできた。

ルジュー:コロナにより、自身に忠実であることの大切さを気付かされた。「ヴァレクストラ」のアイコン自体がブランドの価値だ。それらに、顧客にとって便利な機能性などを加えることで、よりクリエイティブに進化できる。

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ラグジュアリーの世界で失いかけた熱量を再び 「マックイーン」の元ジャパン社社長が服作りスタート

 「グッチ(GUCCI)」や「フェンディ(FENDI)」「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」のジャパン社で要職を務め、「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」ではジャパン社の社長を務めた蜂谷雅彦はこのほど、書籍の出版などを手掛ける夜間飛行とアパレルブランド「ハチヤ(HACHIYA)」を立ち上げた。第一弾は、こだわりのプルオーバーフーディー(税込5万9400円)と、ドローストリングのナップサック(同7万5900円)の2アイテム。春に向けてはシャツなど、3カ月に1、2アイテムのペースで商品を拡充するが、いずれも定番として常時販売する。「アレキサンダー・マックイーン」のジャパン社トップを離れて5年。「完全にファッションから離れ、アーリー・リタイアメントしていた」という蜂谷デザイナーは、なぜ洋服を作るのか?話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):なぜ、「ハチヤ」を立ち上げ、ファッション業界に戻ってきたのか?

蜂谷雅彦デザイナー(以下、蜂谷):「マックイーン」を辞めてから5年間は完全にファッションから離れ、アーリー・リタイアメント状態。時々、単発の仕事を引き受けた程度だった。多くの企業やブランドから経営やコンサルティングのオファーを頂いたが、業界にいた頃から感じていた「消費者が求めていないことを勝手に設定し、その上でビジネスをしている」感覚にわだかまりがあった。そんな中で出版社から、アパレルのセオリーを知らないからこそ縛られないビジネスができそうなオファーをいただいた。夜間飛行が既に手がけている「マダムH クローゼット(MADAMEH CLOSET)」(1947年生まれの人気ブロガーでもある佐藤治子デザイナーが「価値あるベーシックアイテム」を提案するブランド)は、ニッチなマーケットの中で成功している。時間をかけて納得できるものが作れたら、携わる人がみんなハッピーになれるのでは?と考えた。

WWD:“わだかまり”は、ラグジュアリー・ブランドに携わっていた頃から感じていた?

蜂谷:投資会社の資本がラグジュアリーの世界に注入されるようになって以降は、そんな思いが募っていた。フルラインを作ることのムダ、シーズンごとの提案の意味など、すべては仕組まれていて、それを望んでいないお客様がいることもわかっていた。感情は、薄れていたと思う。管理職のプロとして、市場にマッチする洋服を渡し続けるだけの仕事になっていた。「ハチヤ」では、僕が望むことを望んでくれるお客様に洋服を届けたい。

WWD:どんな洋服を作りたかった?

蜂谷:色々経験したが、それでも「昔から着ているもの」がある。それは、すべて良いものだった。クオリティはもちろん、作り手には信条があって、明確なコンセプトがあって、僕はそれを感じ取って購入し、愛用し続けているもの。そういうものなら、自分やデザインが声高に叫ばなくても、ときめくブランドになると思う。世界を回り、本当に優れた技術は日本とイタリアにしか存在しないことは分かっていた。イタリアの技術は中国に流出してしまったが、日本にはまだ技術と職人が存在する。でも経済が鈍化する中で、ビジネスが回らないと続かない。微力ながら貢献したい。

WWD:「昔から着ているもの」には、どんな洋服がある?

蜂谷:学生時代は、ブリトラ(ブリティッシュ・トラッド)少年だった。ジェントルマン志向で、ウイングチップに関する雑誌や書籍を読み込み、スーツで登校していた(笑)。最初に務めたのは、トゥモローランド。自分が好きな洋服を着たかったから、務める会社やブランドの洋服しか着られないと思っていたアパレルで働くつもりはなかったけれど、当時のトゥモローランドはウィメンズだけの会社。だから自分の洋服は自由で、営業の仕事から始まった。25歳くらいの時に買ったのは、「インバーティア(INVERTERE)」の真っ白なダッフルコート。清水の舞台から飛び降りる気持ちで買った洋服は、今でも着ている。生地が“くたらない”し、ボックスシルエットで今っぽい。トラッドテイストのミニマルな商品が好きだった。作りたいのは、そういう洋服。自分が好きなものしか表現できない。そして表現できる最高のものを提案することは、責任だと思っている。

WWD:最初のアイテムをプルオーバーとバックパックにした理由は?

蜂谷:プルオーバーは、オーバーサイズでいまの気分。バックパックと共に、誰が着ても似合うと思う。ニットで作ったパーカはボリューム感の表現が難しい。カシミヤコットンの糸にストレッチ糸を絡めることで生地自体で膨らみを表現した。前から見るとラグランスリーブ、横から見るとセットインの袖も、ボリュームの表現に繋がっている。形がしっかりしているから、その中の体がどんなでも、男性でも女性でも美しく見える。フードは中心からキレイに立ち上がるようにリブテープを貼った。これまで、いろんなものを着倒し、見てきたからこそ考えられる。いろんな人に会ってきたからこそ、すべての工程に携わる人の気持ちが考えられる。皆がハッピーになれるモノづくりにこだわりたかった。90年代の後半から2000年代の初頭にかけては、イタリアでブランドを立ち上げ、コレクションを発表していた。でもあの時はアシスタントに任せて最終チェックだけするような場面も多く、今のモノづくりとは全然違う。ただ、その時に川上から川下を、帰国してラグジュアリー・ブランドで働くようになってからはお客様のことを見てきた。見てきた人たち、みんなに寄り添える洋服を作りたい。

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「クレージュ」初のメンズは“究極のシンプル”を探求 デザイナーの美意識に迫る

 「クレージュ(COURREGES)」は、2020年9月にアーティスティック・ディレクターに就任したニコラ・デ・フェリーチェ(Nicolas Di Felice)の指揮のもと、2022年春夏シーズンのパリ・メンズ・コレクションで初のメンズウエアを披露した。同ブランドはほかにもアーカイブを現代に向けて再解釈した新プロジェクト「リエディション・コレクション(Reedition Collection)」の始動や、パリ・フランソワ=プルミエ通りにある歴史ある旗艦店を今年6月に改装したり、マレ地区にも新しい旗艦店を構えたりと、動きが活発化。同ブランドの全株式を保有する投資会社アルテミス(Altemis)のサポートで、成長戦略を加速させている。

 デ・フェリーチェはこれまで、ニコラ・ジェスキエール (Nicolas Ghesquiere)時代の「バレンシアガ(BALENCIAGA)」と「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」、ラフ・シモンズ(Raf Simons)の「ディオール(DIOR)」などでウィメンズのデザインを手掛けてきた。彼にとっても、「クレージュ」にとっても、メンズコレクションは新たなチャレンジである。ブランドの未来を託されたデ・フェリーチェに、メンズでの挑戦やデザインについて聞いた。

「シンプルなものほど実は複雑である」

——「クレージュ」初のメンズコレクションの制作において、ウィメンズとの違いは?

ニコラ・デ・フェリーチェ「クレージュ」=アーティスティック・ディレクター(以下、デ・フェリーチェ):特に大きな違いはなく、ウィメンズ・コレクションでのアプローチと同じ方法で取り組んだ。私たちが今着たい服を、「クレージュ」のコードや表現と両立させるアイデアをベースにし、シンプルで端的でありながら、シャープで先進的な男性像を描いた。身にまといたいという自発的な欲求と、精度の高い洋服の構造を組み合わせたアプローチだ。

——あなたはウィメンズのデザイナーとしてキャリアを積んだきたが、初のメンズコレクションにどのような手ごたえを感じている?

デ・フェリーチェ:自分にとって初めてだったが、「クレージュ」のメンズとしても前例がなかったため、プレッシャーを感じることなく、とても自然にのびのびと制作に打ち込むことができた。このいい流れをそのまま継続していきたい。

——「クレージュ」らしいデザインはどういった部分で表現した?

デ・フェリーチェ:レザーもしくはテクニカル素材で作ったトラッカージャケットが私のお気に入りで、「クレージュ」のコードを詰め込んだキーアイテムでもある。誰もが一着は持っているであろう定番アイテムを「クレージュ」なりの表現で仕上げた。具体的には、丸みを帯びたポケットや三角形のショルダーラインなど、ブランドを象徴する形状をディテールに取り入れてブランドらしいスタイルを打ち出した。また、ファーストルックを飾ったビッグコートは、創業者アンドレ・クレージュ(Andre Courreges)自身が着用していたコートからインスパイアされた作品だ。豊かなアーカイブを間近でよく観察し、自分の目と手を使って現代風にアップデートを試みている。

—— 自身の約12年のデザイナーとしての経験を現職でどう活かしている?

デ・フェリーチェ:ここ数年は、特に正確なカットと仕立ての方法を学んできた。同時に、自分の好みやセンスについてもより深く自覚できた。私のデザインは、まず“構造”と“ライン”に特徴がある。シンプルで分かりやすく、幾何学的なシェイプを探求し続けているからだ。ルックを見て服がどのような形をしているのか一目で分かったとしたら、その構造は非常に複雑で、洗練されていると思ってほしい。つまり、シンプルなものほど実は複雑であるということだ。多くの作業や知識、綿密な計算が要求されるシンプルなデザインを、これからも追究していく。

——大盛況だったマレ地区の旗艦店のオープニングなど、新しい「クレージュ」は特に若い世代から注目を集めている。デジタルネイティブ世代にとって実店舗はどのような役割を果たす?

デ・フェリーチェ:実物に触れたり、洋服を試着したり、ブランドの世界観を体感できる物理的な場は、私たちにとって非常に重要だ。リアルかデジタルの二者択一ではなく、両方の体験を顧客に提供する必要がある。双方からのアプローチが、最適な顧客体験を見つけることにつながるはずだ。

——今後の構想は?

デ・フェリーチェ:自分の好きなもの、信じるものの焦点をブラさず、自分自身をゆっくりとブランドに溶け込ませていくつもりだ。

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メディコム・トイの「アカシック レコーズ」に27万通の応募 赤司社長の狙いは?

 メディコム・トイ(MEDICOM TOY)は10月31日まで、同社の赤司竜彦社長がキュレーションするポップアップイベント「アカシック レコーズ 2021(AKASHIC RECORDS 2021)〜まぼろしのパレード〜」を開催中だ。昨年に続く2回目の今回は、場所を東京・渋谷のレイヤード ミヤシタパーク(RAYARD MIYASHITA PARK)3階の「En STUDIO」に移し、昨年以上に規模を拡大。ほかではなかなか見られない“まぼろし”のアートやトイが並ぶ光景は、眺めるだけでも圧巻だ。昨今のアート・トイ市場の盛り上がりには目を見張るものがあり、今回の入場抽選への応募は27万通に及んだという。人でごった返した会場には、名だたる企業の社長や著名人の姿も見え、注目度の高さが伺えた。赤司社長に「アカシック レコーズ」の狙いを聞いた。

――前回の反響は?

赤司竜彦メディコム・トイ社長(以下、赤司):お客さまに好評だったのはもちろん、作家やデザイナーから参加したいという声をたくさんいただけて嬉しかった。それもあって前回よりも規模を大きくしたけれど、今回の応募は27万通もあって全然足りなかった。できる限りたくさんのお客さまに見てもらいたいが、会場に入れたのは3000人前後。3回目はもっと広い場所で開催したい。

――27万通もの応募の感想は?

赤司:ものすごくビックリした。前回は重複応募が多かったので2通目以降を無効にしたが、その作業が社内的にも大変だった。今回は同じ端末から重複応募できないプロテクトをかけた。純粋に27万端末から応募があったという意味で、それはすごくありがたいこと。ご入場いただけなかったお客さまには申し訳ないと思いつつも、販売システムや開催ルール、運営プログラムなどを作り込むいい機会になった。

――改めて、「アカシック レコーズ 2021」の開催経緯を教えて欲しい。

赤司:昨年の開催直前から既に今年の準備に入っていた。毎年、会社のエキシビションがあって、何年かに一度は周年イベントもある。そこで超一流の方々とモノ作りをさせてもらっているが、「アカシック レコーズ」はほんの少し外れたというか、ビーンボールまがいのイベントとして開催していきたい。

――“まぼろしのパレード”というテーマの意味は?

赤司:敬愛するザ・コレクターズ(THE COLLECTORS)の名曲から借りた。徐々に集まっていく作品を見たとき、この楽曲のタイトルが一番しっくりくると思った。前回はエレクトリック・グラス・バルーン(ELECTRIC GLASS BALLOON)の「カルトスター・ガイドブック(CULTSTAR GUIDEBOOK)」から着想を得て、まさにカルトスターを紹介するイベントにしようと思った。今回は「幻の作品を集めたパレードをやろう」みたいなイメージ。タイトルと集まったモノのシンクロ感がいいのだけれど、3回目も同じコンセプトでタイトルが思い浮かぶのか、プレッシャーになっている(笑)。

――キービジュアルに“You Are Free”と書かれている。このメッセージの意味は?

赤司:キービジュアルを手掛けてくれたリーバイ・パタ(Levi Pata)が付けてくれた。僕に対してなのか、催事に対してなのか分からないが、彼には「お前は自由だ」という印象に映ったのだと思う。彼は素晴らしい詩人でもあるので、特にこちらから注文したわけではなく、感じたことをメッセージにして欲しいとお願いした。

――30以上のアーティストやコンテンツとコラボレーションしているが、どのような基準でキュレーションしたのか?

赤司:マーケット全体がコンテンポラリーアートに寄っている印象があったので、それを基準に声をかけさせていただいた。実際に取り組みに至ったのは、ご縁とタイミングがほとんど。見せたかったけど制作がギリギリ間に合わなかったり、次回まで隠しとこうと思ってまだ見せていない作品があったりするので、次回も楽しみにして欲しい。

――特に思い入れの強い作品は?

赤司:協業的なモノ作りを行なっているので優劣はないけど、ナグナグナグ(NAGNAGNAG)との取り組みはいつも刺激的だ。マスプロダクツとは違った共同作業になるので、その分、神経を使うこともあるが学びも多い。ナグナグナグとアン・ヴァレリー・デュポン(Anne Valerie Dupond)の作品は、前回も特に反響が大きかった。

――前回の会場スタッフの衣装は、(海外ドラマの)「ツイン・ピークス(TWIN PEAKS)」の執事からイメージしたと言っていたが、今回は?

赤司:会場がダンススタジオとしても使われている白のシンプルな場所だったので、作品の印象を左右しないシンプルなスタイルでお願いした。

――「アカシック レコーズ」の今後の予定は?

赤司:次回は3回目ではなく、2.5回目として来年の3月にアートフェアトーキョーで開催する。このイベントに来場するお客さまと作家たちに、良いシナジーが生まれる気がするから。あとは、ありがたいことに海外からもオファーがあるので、無理のない程度に広げていきたい。ただし、インディオペンデントなイベントの方向性は変えない。作家にとってもきちんとマネタイズできる場所になればいいなと思っている。

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メディコム・トイの「アカシック レコーズ」に27万通の応募 赤司社長の狙いは?

 メディコム・トイ(MEDICOM TOY)は10月31日まで、同社の赤司竜彦社長がキュレーションするポップアップイベント「アカシック レコーズ 2021(AKASHIC RECORDS 2021)〜まぼろしのパレード〜」を開催中だ。昨年に続く2回目の今回は、場所を東京・渋谷のレイヤード ミヤシタパーク(RAYARD MIYASHITA PARK)3階の「En STUDIO」に移し、昨年以上に規模を拡大。ほかではなかなか見られない“まぼろし”のアートやトイが並ぶ光景は、眺めるだけでも圧巻だ。昨今のアート・トイ市場の盛り上がりには目を見張るものがあり、今回の入場抽選への応募は27万通に及んだという。人でごった返した会場には、名だたる企業の社長や著名人の姿も見え、注目度の高さが伺えた。赤司社長に「アカシック レコーズ」の狙いを聞いた。

――前回の反響は?

赤司竜彦メディコム・トイ社長(以下、赤司):お客さまに好評だったのはもちろん、作家やデザイナーから参加したいという声をたくさんいただけて嬉しかった。それもあって前回よりも規模を大きくしたけれど、今回の応募は27万通もあって全然足りなかった。できる限りたくさんのお客さまに見てもらいたいが、会場に入れたのは3000人前後。3回目はもっと広い場所で開催したい。

――27万通もの応募の感想は?

赤司:ものすごくビックリした。前回は重複応募が多かったので2通目以降を無効にしたが、その作業が社内的にも大変だった。今回は同じ端末から重複応募できないプロテクトをかけた。純粋に27万端末から応募があったという意味で、それはすごくありがたいこと。ご入場いただけなかったお客さまには申し訳ないと思いつつも、販売システムや開催ルール、運営プログラムなどを作り込むいい機会になった。

――改めて、「アカシック レコーズ 2021」の開催経緯を教えて欲しい。

赤司:昨年の開催直前から既に今年の準備に入っていた。毎年、会社のエキシビションがあって、何年かに一度は周年イベントもある。そこで超一流の方々とモノ作りをさせてもらっているが、「アカシック レコーズ」はほんの少し外れたというか、ビーンボールまがいのイベントとして開催していきたい。

――“まぼろしのパレード”というテーマの意味は?

赤司:敬愛するザ・コレクターズ(THE COLLECTORS)の名曲から借りた。徐々に集まっていく作品を見たとき、この楽曲のタイトルが一番しっくりくると思った。前回はエレクトリック・グラス・バルーン(ELECTRIC GLASS BALLOON)の「カルトスター・ガイドブック(CULTSTAR GUIDEBOOK)」から着想を得て、まさにカルトスターを紹介するイベントにしようと思った。今回は「幻の作品を集めたパレードをやろう」みたいなイメージ。タイトルと集まったモノのシンクロ感がいいのだけれど、3回目も同じコンセプトでタイトルが思い浮かぶのか、プレッシャーになっている(笑)。

――キービジュアルに“You Are Free”と書かれている。このメッセージの意味は?

赤司:キービジュアルを手掛けてくれたリーバイ・パタ(Levi Pata)が付けてくれた。僕に対してなのか、催事に対してなのか分からないが、彼には「お前は自由だ」という印象に映ったのだと思う。彼は素晴らしい詩人でもあるので、特にこちらから注文したわけではなく、感じたことをメッセージにして欲しいとお願いした。

――30以上のアーティストやコンテンツとコラボレーションしているが、どのような基準でキュレーションしたのか?

赤司:マーケット全体がコンテンポラリーアートに寄っている印象があったので、それを基準に声をかけさせていただいた。実際に取り組みに至ったのは、ご縁とタイミングがほとんど。見せたかったけど制作がギリギリ間に合わなかったり、次回まで隠しとこうと思ってまだ見せていない作品があったりするので、次回も楽しみにして欲しい。

――特に思い入れの強い作品は?

赤司:協業的なモノ作りを行なっているので優劣はないけど、ナグナグナグ(NAGNAGNAG)との取り組みはいつも刺激的だ。マスプロダクツとは違った共同作業になるので、その分、神経を使うこともあるが学びも多い。ナグナグナグとアン・ヴァレリー・デュポン(Anne Valerie Dupond)の作品は、前回も特に反響が大きかった。

――前回の会場スタッフの衣装は、(海外ドラマの)「ツイン・ピークス(TWIN PEAKS)」の執事からイメージしたと言っていたが、今回は?

赤司:会場がダンススタジオとしても使われている白のシンプルな場所だったので、作品の印象を左右しないシンプルなスタイルでお願いした。

――「アカシック レコーズ」の今後の予定は?

赤司:次回は3回目ではなく、2.5回目として来年の3月にアートフェアトーキョーで開催する。このイベントに来場するお客さまと作家たちに、良いシナジーが生まれる気がするから。あとは、ありがたいことに海外からもオファーがあるので、無理のない程度に広げていきたい。ただし、インディオペンデントなイベントの方向性は変えない。作家にとってもきちんとマネタイズできる場所になればいいなと思っている。

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長谷川ミラが自身のブランドをリブランディング 青学生らとタッグを組みSDGsを発信

 長谷川ミラは、自身のブランド「ジェイムジー(JAMESIE)」をリブランディングし、新たに「ジャム アパレル(JAM APALLELL)」として再始動する。10月22〜24日に開催されたアッシュ・ペー・フランス主催の合同展示会イベント「ルームス(rooms)」で初披露した。

 「ジェイムジー」はオールジェンダーブランドとしてスタートし、プリントアイテムを中心に、ジェンダーや環境問題に対するメッセージを発信してきた。「ジャム アパレル」では、新たに“Fashion goes green”をテーマに掲げ、サステナブルな素材への取り組みを強化する。

 2021年カプセルコレクションのアイテムは、オーガニックコットン100%のポロシャツ(税込7920円)や伊藤忠商事の再生ポリエステル素材「レニュー(RENU)」を使用したスエットトップ(同9790円)などのアパレル全9型と、タキヒヨーのアップサイクルプロジェクト“ザ・ニューデニムプロジェクト(THE NEW DENIM PROJECT)”から生まれたデニム生地を使用したバッグ(同4950円、同6600円)、豊島の「オーガビッツ(ORGABITS)」のオーガニックコットン糸100%のソックス(同3520円)などの雑貨類全3型をそろえる。販路は、11月11日に開設予定の公式ECサイトを中心に、ポップアップなどの期間限定ショップでの販売も企画する。

WWD:リブランディングの背景は?

長谷川ミラ(以下、長谷川):「ジェイムジー」は、性別にとらわれずにみんなが自由にファッションを楽しんでほしいという思いを込めて立ち上げ、LGBTQを支持するメッセージをプリントしたり、フェミニズムコミュニティーと一緒にイベントを企画したりもしていました。当時は、サステナブルな素材の選択肢が非常に限られていたこともあり、素材よりもプリントするメッセージ性を意識していました。一方で、サステナビリティについて勉強を深めると、Tシャツ1枚を製作するための水使用量は約2900リットルだと知り、ポジティブなことをしているつもりだった自分が環境に負担をかけているとショックを受けました。そこで2019年に販売を停止し、もう一度方向性を考え直すことにしました。サステナブルなブランドを実現するためには、もっと大きなチームが必要だと考えていたところ、友人で同い年のデザイナーの一法師拓間(デザイン会社コンセピオン代表)がデザインを担当してくれることになりました。加えて、彼が特別顧問を務める青山学院大学のファッションサークル、Aoyama Fashion Association(以下、AFA)の大学生たちからも協力を得られることになりました。

WWD:大学生を巻き込もうと思った理由は?

長谷川:SDGsは、一人で叫んでいても社会は変わらない。もっと同世代や下の世代とチームにならなければいけないと感じていたからです。AFAに所属する103人がマイクロインフルエンサーになり、その周辺にいる人たちへとどんどん変化の輪が広がっていくことを信じています。学生には一部のアイテムのデザインを考えてもらったり、撮影やイベント運営の手伝いをお願いしたりしています。

WWD:ブランド名に込めた思いは?

長谷川:本名の頭文字から取りました。父親からは“ジェイムジー”や“ジャム”のニックネームで呼ばれていて、子どものときから愛着のある名前です。拓門デザイナーのアイデアで、ロゴの“J”の部分にスラッシュを入れることで、“I AM”という文字が隠れています。みんながブランドから発信するメッセージを自分ごと化してとらえてほしい、自由に自分を表現してほしいという思いを込めました。

WWD:特にお気に入りのアイテムは?

長谷川:オーガニックコットン100%の国産生地を使用したポロシャツです。縫製や刺しゅうも日本国内で行いました。国内の技術職が減っている現状に貢献するために、メイドインジャパンにこだわりました。透明性が求められる時代ですし、今後は工場へのインタビューなどを通して、誰がどんな思いで作っているのかを発信します。

WWD:「ジャム アパレル」を通して伝えたいメッセージとは?

長谷川:ファッション産業は環境破壊や人権侵害など、多くのネガティブな問題を抱えています。しかし、人の心を一瞬でハッピーにできるのもファッションです。「ジャム アパレル」では、袖を通すだけでポジティブになれるようなきっかけを提案したい。AFAの学生たちとの取り組みや工場の生産背景など、このブランドが作られる工程自体に意味があり、その背景もきちんと伝えていきたいです。

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奥が深くて懐も深い「着物販売員の世界」 40年のベテランに聞く 三松 青木良子

 明治時代に洋装文化が日本に入り、和装文化は徐々に衰退の一途をたどる。着物を着る機会といえば七五三、成人式、冠婚葬祭など、かしこまった場面でしかないというイメージも定着しつつあるため、きっちりルールを守った着方をしていないとダメだと指摘する『着物警察』の存在が話題になることも。一方で、ポップな柄の着物や着物コーデをした若者たちによる積極的なSNS発信も増えている。最近では“代々受け継いでいくもの”という観点から“サステナブル”であると再認識され、着なくなった着物をリメイクするブランドも登場。老舗の着物専門店「三松」ルミネ立川店の青木良子さんは、約40年に渡り着物の歴史を販売員の立場で見てきた。

―着物の販売員になったきっかけを教えてください。

青木良子さん(以下、青木):うちの家系はみんな代々、結婚前に和裁を習う習慣があったのです。行儀見習いのような感じで叔母たちも和裁教室に通っていましたので、私も行くことになりました。

―手に職をつけるというかんじでしょうか?

青木:そんな感じです。それに昔は、結婚したらご主人の浴衣ぐらい縫えるように針仕事くらいできないといけない時代でもありましたね。年齢の離れた姉は洋裁学校に行っていたので、中学生の頃は姉に服を縫ってもらっていました。当時は「次はコレにする?」なんて言いながら、雑誌を見ていましたね。私は和裁教室に行きましたが、そこで同い年のお友達に誘われて、着付け教室にも行くようになりました。和裁と着付けを3年半も習っていたので、折角だからと着物業界へ入ったのが昭和54年(1979年)の12月。ボーナス支給日に入社して、あの日はとても忙しかったからよく覚えているのです(笑)。さすがにその時は「私、続けていけるかしら…」と思いましたけど、「“三日三月三年”という言葉もあるし、ま、大丈夫か」と思い直しました。研修を受けても実際に店頭に出るとちょっと違いますでしょ。だから先輩の接客を見様見真似で覚えて、最初はお客さまに「外はいいお天気ですか?」なんて話しかけることができただけで喜んでいました。本当に毎日一歩ずつ成長していった感じですね。

―先輩の姿を見て仕事を覚えるというのは今も昔も変わらない上達の近道ですよね。

青木:そうです。要は「人の振り見て我が振り直せ」じゃないですが、そんな気持ちで仕事もしています。例えば、和裁教室の時はみんな進行具合も違うし、作っているものも違うから、先生が一人ひとり教えていくことは大変なんですよ。他の生徒さんが注意されている姿を見て、自分も「あの部分は雑だったかな」と思い、縫い直したことがありました。

―故事、ことわざってよくできていますよね。

青木:そう、とても的を射ていますよ。例えば「泣き面に蜂」ってありますけど、めげている時はどんどんめげて、良いことが起こらなくなります。誰かのせいにしたくなりますが、すべての原因は自分から発しているんですよね。まずは自分で反省しない限り、前には進めないと思います。

―今の社会的状況にも通じるものを感じます。新宿店にはいつまで?

青木:新宿には3年半いて、1984年に渋谷パルコ店に異動しました。渋谷店は99年に一旦クローズして「ふりふ」になったのです。私が入社当時に三松が掲げていた企業理念に「伝統と新しさに微笑みながらこれが三松の個性」というのがありまして、まさにそれを体現するようなブランドでした。古いことも守りつつ、新しいことにもチャレンジするって素晴らしいことだと思いました。「ふりふ」のような斬新な着物にも挑戦しているのは三松の強みですね。

―斬新でかわいい着物を展開していますよね。私も、成人式を迎えた頃に「ふりふ」があったらよかったのに…と思います。昭和から平成にかけての渋谷は活気があったと思いますが、当時の様子は?

青木:私が84年に渋谷に異動したころの渋谷は勢いがあって、若者がどんどん街に集まってきていました。在籍期間も長く、楽しい時代でした。でも、はじめのころは競合店が揃っていたのに、少しずつ撤退していって、結局は最後の一軒になりました。一店舗だけになると結構大変で、やはり競合店がある方が店は運営しやすいし、お客さまも呼びやすいんです。お客さまもお店が近くにあることで、各店を比較検討できますからね。そんな低迷の続く着物の状況を打破しようと、若者が集まるパルコで「ふりふ」が誕生したのです。最初は本当に大変で、顧客様にもたくさん声をかけました。普通なら数カ月かかるお仕立てを数日で仕立ててもらったこともありました。当時はお客様にも職人さんにもたくさん協力してもらいました。

―青木さんだから協力してくれたのではないでしょうか?

青木:そんなことはないですよ。新しいブランドは多くの人の協力なくしては成り立ちません。会社も頑張っていたから、私たち販売員も頑張っていろいろなことをしました。例えば、ディスプレイをこまめに変更してみたり、店に一日中立っているだけだと疲れるからスタッフに「着物を着たままでいいから館内や渋谷の街中を周ってきて」とお願いしたり。

―渋谷の街を「ふりふ」の着物で歩いたら目立ちそうですね。

青木:歩いているだけではもったいないので、「外で写真でも撮ってきたら?」といって、スタッフ数人で撮影会をしたこともありました。

―イマ風に言うと、インスタ映えのようなものですね!

青木:渋谷はロケーションが良いですからね。歩いてもらうだけで宣伝になりました。当時の渋谷は、若者が街を歩き回って服を探し、それをちょっと高かったとしても思い切って買う、そんな時代でした。今は世の中に物が溢れて選択肢が広がる一方で、余計なものは要らないという時代になり、インターネットを使って下調べするのが当たり前。買い物の仕方は大きく変わったと感じています。

―自由に着物を着ている若い方もいますが、一方で着物警察なんて呼ばれる方もいます。青木さんは着物の着方には何かルールや思うことはありますか?

青木:着物は本来、日常着だったのですから、自由に着ればいいと思いますよ。私は普段から着物を着ていますけど、洋服よりコーディネートを考えなくていいから楽(笑)。形は一律だし、後は小物や帯の色でどうか飾るか考えればいい。それも自分の好みで自由に合わせればいいんです。私なんか着物で卓球とかボウリングもやりましたよ(笑)。

―え!着崩れませんか?それに暑そう。

青木:着物は一つに繋がっているから、出てきたら引っ張れば直るんですよ(笑)。それに着物は意外と暑くないんですよ。わきの下が開いているから洋服よりも熱が逃げるんです。歌舞伎役者さんが扇子で顔の方ではなく、下の方、袖口の方を仰いでいるのも、風が袖から入って体の方へ通るからなんです。品が良いですよね。

―もっと気軽に考えればいいんですね。

青木:そう。強いて言えば、最近の子は補正をしてきれいに着ているでしょ。でも、昔の人は補正なしで自分の体型を生かして楽に着るものだったんですよ。その方が人間らしいじゃないですか。って、私はきれいに着られないからそう言うだけ(笑)。キチンと着られる方がうらやましいとは思います。

―着物のお店は何となく敷居が高いイメージがあるのですが……。

青木:そんなことないですよ。夏は浴衣が着たいからと見に来られる方もいらっしゃいます。振袖になると七五三で着て以来という方も多いですけどね。

―40年以上販売を続けてこられた秘訣は何でしょうか?

青木:やっぱりお客様に育てていただいているということだと思います。勤め始めて間もないころ、私の失敗で間違えて商品をお渡しした親子のお客様がいまして、何とか事無きを得たのですが、それをきっかけに顧客としてずっとついてきてくださいました。着物は洋服のように流行が変わって買い替えるものではない分、お客様とのお付き合いも自然と長くなりやすいんです。ご自宅にお電話すると旦那さんが出られて「青木さん、いつもお世話になってありがとう。今、代わるね」と奥様につないでくださることもあって、家族ぐるみのお付き合いになります。

―青木さんの接客のモットーは。

青木:お客様のお好み発見器みたいな感じですね。例えば、振袖はどれを選んだらいいか分からない人もいますが、話すうちに徐々に着てみたいイメージが浮かんできます。そういうのを引き出せることができたら良いですね。着てみたいイメージがある方でも、これが似合いそうだと思った小物を入れ替えてみて、さらに新しい発見ができたらいいなと思います。でも、私の販売スタイルは“カリスマ”ではないんです。

―いらっしゃいますね。「あなたにはコレ」みたいな決める方。確かに似合うかもとは思いますが(笑)。

青木:私はそれができませんが、迷っている方は「これが似合うと思うけど、こういうのは好き?」と聞いてから、合わせてもらいます。ダメだったら引っ込める(笑)。自分が買う立場になった時にあんまりしつこくされると嫌じゃないですか。特に考えているときに一生懸命勧められても困るなと思うのです。あまりにも悩むのであれば「また来てください」とか帰すこともありますよ。

―その見極めは難しいですね。

青木:そうですね。商品とお店の雰囲気を気に入ってくださっていれば、その時にご縁がなくても、ふと思い出して来店されます。その辺は洋服の販売の方と変わらないですよ。

―そうですね。では、最後に今後の目標は。

青木:誰かのお役に立てる限りは仕事を続けたいですね。私のような年配が店に立つ方が「重みが出る」とはいわれますが、そんな時代じゃないとも思っています。でも、必要とされる限りはお店に立ちたいですね。

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保育専門学校から子ども服販売へ、“ナルミヤ世代”が接客でつなぐバトン ナルミヤ・インターナショナル井野温子

 ショップスタッフインタビューで経歴をたずねると、1980年代後半から1990年代生まれの女性のほとんどが「子どもの頃に、ナルミヤのブランドがきっかけで洋服が好きになりました」と答える。それほどこの業界に多大な影響を与えたのがナルミヤ・インターナショナルだ。その後の低迷を経て、百貨店依存に陥っていた体質を変えて18年2月期には再び子供服メーカー売り上げトップに返り咲いた。まさに、その“ナルミヤ世代”のそごう横浜店の井野温子ストアマネージャーに聞いた。

―ショップスタッフの取材では、井野さん世代の女性からは必ずといっていいほど「ナルミヤのブランドに憧れて……」といわれます。

井野温子さん(以下、井野):店頭に立っていても同じです。店の前を女子高生や20代くらいのお客様が通ると「メゾピアノだ」「私、着てた!」という声が聞こえてくることがよくあります。改めて、歴史があるブランドなんだなって思います。接客のときにも孫が生まれたというおばあちゃま世代の方が「自分の娘にも着せていたの。今も好きだから、孫にも着せたくて」とお話しされます。

―そうなんですね!確かにナルミヤが盛り上がっていたときから20年近く経っているので、子どもがいてもおかしくないですよね。

井野:お客様の中には長い方で10年以上のお付き合いがあるので、いつ赤ちゃんを連れてくるかなとドキドキしながら待っています(笑)。普段は名前よりも「お姉さん」と呼ばれることが多いのですが、そごう横浜店に異動してきたばかりの頃に一番初めに私のことを「井野さん」と名前で呼んでくれたお客様がいて、嬉しくて今でも覚えています。その子が当時、小学校6年生でそろそろナルミヤブランドは卒業かな?という年代でした。今でも館内で見かけると声をかけてくれるのです。今はすっかり大人になっていて……。

―それはドキドキですね(笑)。子ども服の接客では、日頃から何を心がけていますか?

井野:私は洋服を売りたいというより、お話しをしたいという気持ちで接しています。ジュニアブランドの場合は割とママともお話することの方が多いので、ママの意見とお子さんの意見を聞きながら提案しています。ベビーやキッズの場合はママと、ジュニアはどちらかというと子どもとお話しすることが多いですね。売り場によって、お客さまとの接し方が全く変わるんです。あとは、男の子と女の子でも接し方が変わります。女の子は自分で選びたがるのですが、男の子は割と椅子に座って、ママの買い物が終わるのを待っている感じです。

―なるほど(笑)。男性の買い物待ちは、幼少の頃から始まっているんですね。

井野:しかも、男の子のママはお話好きな方が多い印象がありますね。女の子の場合は、ママが割と服を選び、その間は私と女の子でおしゃべりする感じです。先日来店した4歳くらいの女の子とママは、フィッティングルームで私と女の子が待機して、ママが店頭から服を持って来て「これ着てみる?」「あれ着てみる?」とやっていました。何着がお買い上げされて帰られたのですが、後日ママが一人で来店されて「この前、お姉さんと話したのがとても楽しかったみたいで、家に帰ってからもずっとその時に話していました」と教えてくれたのです。それはうれしかったですね。

―それでこの業界を目指してくれるといいですね。井野さんが販売を始めたきっかけは?

井野:専門学校時代の先生に勧められたのがきっかけです。地元が静岡県下田市で本当に何もない場所で、ブランドの店も近くになかったのでファッションには興味はありませんでした。卒業後は飲食店でアルバイトをしていたのですが、先生に雑貨や子ども関連の販売の仕事をいくつか紹介され、ナルミヤでアルバイトすることになりました。最初の勤務地が渋谷109-2の店舗で、いろんな事に驚きしました。

―当時はまだ人気もありましたし、渋谷という場所にも圧倒されましたよね。では、接客の仕事をしてみてどうでしたか?

井野:実家が宿泊業経営だったので、お客さまと話をするのは苦ではありませんでしたね。子どもの頃から知らない人が家に来る機会がとても多く、お母さんの後ろをついて行って「いらっしゃいませ!」とかやってたので(笑)。でも働き始めたときは、ノルマがあったわけでもないのに「売り上げを絶対取る!」みたいなノリで頑張っていました。接客も先輩のうしろに付いて、接客の仕方やママとの距離の取り方などを見て、自分に取り入れられそうなことは取り入れていました。ただ、あるとき私一人が頑張って売り上げを取るだけが仕事じゃないと気づいて、力が抜けてお店全体を見ること、マネジメントに目が行くようになりました。前のめりに頑張り過ぎていた気持ちが落ち着つきました。

―それはいつ頃から?

井野:横浜そごうに移動してきて、尊敬する先輩に出会ってからです。その方の下で5~6年ぐらい一緒に働かせてもらったことで、考え方が変わりました。プライベートでもよく相談にのってもらっていて、離婚のときにも、その先輩に証人にもなってもらいました。私の話を聞いて一緒になって落ち込んでくれるところもあるのに、一方でとてもさっぱりとした性格でそういうところは見習っています。何か店で問題があった時にはスパっと自分で判断はしますが、そうしたときにも一歩引いて「あの先輩ならどうしたかな?」と考えることもあります。

―素敵な先輩と出会えたのですね。その方は今?

井野:今は産休明けで、時短勤務で店頭に立っています。

―今でも働き方のモデルになっているのですね。その後、業績がどんどん低迷していくわけですが、ナルミヤで働き続けられた理由は?

井野:やはり一緒に働く人たちがすごくよかったからです。自分にとってプラスになる人たちばかりで。それに、本部もよく現場を見に来てくれました。ただ回るだけでなく各ブランドの売り場でスタッフに声をかけてくれてましたね。以前よりも接することも多くなりましたし、役職が上の方でも現場を見に来て、声をかけてくれるので、言いたいことも伝えられるようになりました。

―風通しがいい会社なんですね。

井野:そうですね。上の方は現場のことを知らないんでしょと思われがちですが、ナルミヤはそんなことないですね。連絡もまめにくれますし、お休みもしっかりとれています。自分のプライベートでやりたいこともちゃんとできています。

―以前は販売員の人手不足や、店長になると休日もあったようなものじゃないということを耳にしますが、そんなことはないと。

井野:それもないです。特に複数ブランドをそごう内に出店しているので、スタッフは基本的に所属ブランドが決まっているのですが、休みの調整も兼ねて所属外のブランドでも月に1日は店頭に立つシフト作りをしています。これは複数ブランドを展開しているからできることだと思いますが、他ブランドでも仕事をすることで所属ブランド以外にも目が向けられるようになりますし、スタッフ間の交流も増えます。

―ブランドの異動になっても、少し知っていれば気持ちが違いますしね。

井野:はい。一人で「売らなきゃ」と頑張っていた時は、スタッフに仕事を任せることもできなかったので考え方が変わりました。

―スタッフに仕事を任せられないという悩みも店長あるあるです。何かきっかけで任せられるように?

井野:ストアマネージャーに昇格した時ですね。前任者がキャリアのある方だったので、昇格直後は「私に同じことができるんだろうか?」と思いました。同時にSC向けだったベビートドラーブランドの「プティマイン」が百貨店に初出店することになり、会社的にも注目していたので猛烈に頑張りました。その期間の記憶が思い出せないほどです(笑)。その時にスタッフに仕事を任せようとなって頼んでみたら、みんな責任感を持ってやってくれていて「凄い!」と思いました。一番若手のスタッフは私よりもしっかりしています。自分の考えを持って仕事をしている姿を見て、それならみんなに任せてみよう、と。

―それでは最後に今後の目標を。

井野:本当に悩みがなくて、すごく楽しくて仕事もプライベートも充実しています。自分が仕事の楽しさを分かるような年齢になってきて、今はスタッフが仕事を楽しいんでいるかな?って、考えるようになりました。なので、スタッフが少しても楽しく働けるような環境を作っていきたいと思っています。確かに会社は売り上げを重視するとは思いますが、それでも楽しく働こうよと伝えていきたいです。

―ちなみにプライベートでは何を?

井野:4年ほど前から書道を始めたんです。仕事では子どもたちと触れ合い、趣味では100歳近いお年寄りと交流しています。

―それはプライベートも楽しそうですね。加えて仕事も楽しいと言えるのって素敵です!

井野:はい。このまま、この気持ちで働き続けていきたいです。

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保育専門学校から子ども服販売へ、“ナルミヤ世代”が接客でつなぐバトン ナルミヤ・インターナショナル井野温子

 ショップスタッフインタビューで経歴をたずねると、1980年代後半から1990年代生まれの女性のほとんどが「子どもの頃に、ナルミヤのブランドがきっかけで洋服が好きになりました」と答える。それほどこの業界に多大な影響を与えたのがナルミヤ・インターナショナルだ。その後の低迷を経て、百貨店依存に陥っていた体質を変えて18年2月期には再び子供服メーカー売り上げトップに返り咲いた。まさに、その“ナルミヤ世代”のそごう横浜店の井野温子ストアマネージャーに聞いた。

―ショップスタッフの取材では、井野さん世代の女性からは必ずといっていいほど「ナルミヤのブランドに憧れて……」といわれます。

井野温子さん(以下、井野):店頭に立っていても同じです。店の前を女子高生や20代くらいのお客様が通ると「メゾピアノだ」「私、着てた!」という声が聞こえてくることがよくあります。改めて、歴史があるブランドなんだなって思います。接客のときにも孫が生まれたというおばあちゃま世代の方が「自分の娘にも着せていたの。今も好きだから、孫にも着せたくて」とお話しされます。

―そうなんですね!確かにナルミヤが盛り上がっていたときから20年近く経っているので、子どもがいてもおかしくないですよね。

井野:お客様の中には長い方で10年以上のお付き合いがあるので、いつ赤ちゃんを連れてくるかなとドキドキしながら待っています(笑)。普段は名前よりも「お姉さん」と呼ばれることが多いのですが、そごう横浜店に異動してきたばかりの頃に一番初めに私のことを「井野さん」と名前で呼んでくれたお客様がいて、嬉しくて今でも覚えています。その子が当時、小学校6年生でそろそろナルミヤブランドは卒業かな?という年代でした。今でも館内で見かけると声をかけてくれるのです。今はすっかり大人になっていて……。

―それはドキドキですね(笑)。子ども服の接客では、日頃から何を心がけていますか?

井野:私は洋服を売りたいというより、お話しをしたいという気持ちで接しています。ジュニアブランドの場合は割とママともお話することの方が多いので、ママの意見とお子さんの意見を聞きながら提案しています。ベビーやキッズの場合はママと、ジュニアはどちらかというと子どもとお話しすることが多いですね。売り場によって、お客さまとの接し方が全く変わるんです。あとは、男の子と女の子でも接し方が変わります。女の子は自分で選びたがるのですが、男の子は割と椅子に座って、ママの買い物が終わるのを待っている感じです。

―なるほど(笑)。男性の買い物待ちは、幼少の頃から始まっているんですね。

井野:しかも、男の子のママはお話好きな方が多い印象がありますね。女の子の場合は、ママが割と服を選び、その間は私と女の子でおしゃべりする感じです。先日来店した4歳くらいの女の子とママは、フィッティングルームで私と女の子が待機して、ママが店頭から服を持って来て「これ着てみる?」「あれ着てみる?」とやっていました。何着がお買い上げされて帰られたのですが、後日ママが一人で来店されて「この前、お姉さんと話したのがとても楽しかったみたいで、家に帰ってからもずっとその時に話していました」と教えてくれたのです。それはうれしかったですね。

―それでこの業界を目指してくれるといいですね。井野さんが販売を始めたきっかけは?

井野:専門学校時代の先生に勧められたのがきっかけです。地元が静岡県下田市で本当に何もない場所で、ブランドの店も近くになかったのでファッションには興味はありませんでした。卒業後は飲食店でアルバイトをしていたのですが、先生に雑貨や子ども関連の販売の仕事をいくつか紹介され、ナルミヤでアルバイトすることになりました。最初の勤務地が渋谷109-2の店舗で、いろんな事に驚きしました。

―当時はまだ人気もありましたし、渋谷という場所にも圧倒されましたよね。では、接客の仕事をしてみてどうでしたか?

井野:実家が宿泊業経営だったので、お客さまと話をするのは苦ではありませんでしたね。子どもの頃から知らない人が家に来る機会がとても多く、お母さんの後ろをついて行って「いらっしゃいませ!」とかやってたので(笑)。でも働き始めたときは、ノルマがあったわけでもないのに「売り上げを絶対取る!」みたいなノリで頑張っていました。接客も先輩のうしろに付いて、接客の仕方やママとの距離の取り方などを見て、自分に取り入れられそうなことは取り入れていました。ただ、あるとき私一人が頑張って売り上げを取るだけが仕事じゃないと気づいて、力が抜けてお店全体を見ること、マネジメントに目が行くようになりました。前のめりに頑張り過ぎていた気持ちが落ち着つきました。

―それはいつ頃から?

井野:横浜そごうに移動してきて、尊敬する先輩に出会ってからです。その方の下で5~6年ぐらい一緒に働かせてもらったことで、考え方が変わりました。プライベートでもよく相談にのってもらっていて、離婚のときにも、その先輩に証人にもなってもらいました。私の話を聞いて一緒になって落ち込んでくれるところもあるのに、一方でとてもさっぱりとした性格でそういうところは見習っています。何か店で問題があった時にはスパっと自分で判断はしますが、そうしたときにも一歩引いて「あの先輩ならどうしたかな?」と考えることもあります。

―素敵な先輩と出会えたのですね。その方は今?

井野:今は産休明けで、時短勤務で店頭に立っています。

―今でも働き方のモデルになっているのですね。その後、業績がどんどん低迷していくわけですが、ナルミヤで働き続けられた理由は?

井野:やはり一緒に働く人たちがすごくよかったからです。自分にとってプラスになる人たちばかりで。それに、本部もよく現場を見に来てくれました。ただ回るだけでなく各ブランドの売り場でスタッフに声をかけてくれてましたね。以前よりも接することも多くなりましたし、役職が上の方でも現場を見に来て、声をかけてくれるので、言いたいことも伝えられるようになりました。

―風通しがいい会社なんですね。

井野:そうですね。上の方は現場のことを知らないんでしょと思われがちですが、ナルミヤはそんなことないですね。連絡もまめにくれますし、お休みもしっかりとれています。自分のプライベートでやりたいこともちゃんとできています。

―以前は販売員の人手不足や、店長になると休日もあったようなものじゃないということを耳にしますが、そんなことはないと。

井野:それもないです。特に複数ブランドをそごう内に出店しているので、スタッフは基本的に所属ブランドが決まっているのですが、休みの調整も兼ねて所属外のブランドでも月に1日は店頭に立つシフト作りをしています。これは複数ブランドを展開しているからできることだと思いますが、他ブランドでも仕事をすることで所属ブランド以外にも目が向けられるようになりますし、スタッフ間の交流も増えます。

―ブランドの異動になっても、少し知っていれば気持ちが違いますしね。

井野:はい。一人で「売らなきゃ」と頑張っていた時は、スタッフに仕事を任せることもできなかったので考え方が変わりました。

―スタッフに仕事を任せられないという悩みも店長あるあるです。何かきっかけで任せられるように?

井野:ストアマネージャーに昇格した時ですね。前任者がキャリアのある方だったので、昇格直後は「私に同じことができるんだろうか?」と思いました。同時にSC向けだったベビートドラーブランドの「プティマイン」が百貨店に初出店することになり、会社的にも注目していたので猛烈に頑張りました。その期間の記憶が思い出せないほどです(笑)。その時にスタッフに仕事を任せようとなって頼んでみたら、みんな責任感を持ってやってくれていて「凄い!」と思いました。一番若手のスタッフは私よりもしっかりしています。自分の考えを持って仕事をしている姿を見て、それならみんなに任せてみよう、と。

―それでは最後に今後の目標を。

井野:本当に悩みがなくて、すごく楽しくて仕事もプライベートも充実しています。自分が仕事の楽しさを分かるような年齢になってきて、今はスタッフが仕事を楽しいんでいるかな?って、考えるようになりました。なので、スタッフが少しても楽しく働けるような環境を作っていきたいと思っています。確かに会社は売り上げを重視するとは思いますが、それでも楽しく働こうよと伝えていきたいです。

―ちなみにプライベートでは何を?

井野:4年ほど前から書道を始めたんです。仕事では子どもたちと触れ合い、趣味では100歳近いお年寄りと交流しています。

―それはプライベートも楽しそうですね。加えて仕事も楽しいと言えるのって素敵です!

井野:はい。このまま、この気持ちで働き続けていきたいです。

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「スワロフスキー」の新クリエイティブ・ディレクターが語るジェンダーレス、エイジレスなジュエリーの楽しみ方

 「スワロフスキー(SWAROVSKY)」のクリエイティブ・ディレクターであるジョバンナ・エンゲルパート(Giovanna Engelbert) が就任して1年が経過した。5月には、新コンセプトのショップが新宿にオープンし、リブランディングが進んでいる。新作の“コレクションⅡ“も登場した。エンゲルバートに、新生「スワロフスキー」のコンセプトやファッションとジュエリーの関係などについて話を聞いた。

WWD:「スワロフスキー」のクリエイティブディレクターに就任し、リブランディングが進んでいるが、新たなブランドコンセプトとは?

ジョバンナ・エンゲルバート(以下、エンゲルバート):個性が一番大切。さまざまなカラーがあるシグニチャーのクリスタルの力をさらに進化させたい。あと、インクルーシビティーがキーワードだ。男女、年齢関係なく楽しんでもらえるブランドにしたい。

WWD:東京でも新コンセプトのショップがオープンし好評だがこのコンセプトはどこから?

エンゲルバート:ジオメトリックなファセットをイメージさせるようなショップにした。蜂の巣または、アートのインスタレーションのように全てのサンプルをボックスに入れて壁一面に飾ることで、クリエイティブな精神を表現している。ジュエリーが大好きな人に楽しんでもらえると思う。

WWD:ファッションとジュエリーの関係性をどのように考えるか?

エンゲルバート:ファッションとジュエリーはベストフレンドよ。お互いを引き立たてる切っても切れない関係。私はジュエリーを着けないと裸のような気分になるわ。ファッション同様に、ジュエリーにはこだわりがあるの。宝石もクリスタルも同じ。クリスタルの方が手に取りやすい価格だから、より多くの人に楽しんでもらえるわ。

WWD:コロナ禍で行動が制限された中におけるインスピレーションは?

エンゲルバート:まずは、クリスタルとそのカラー。そして、「スワロフスキー」の本拠地はオーストリアで、代表的な画家のグスタフ・クリムト(Gustav Klimt)の風景や人物などさまざまな絵画からも着想を得ている。ラグジュアリーなアプローチでちょっとボヘミアンな要素を加えている。

WWD:自身のファッションのモットーは?

エンゲルバート:自分自身を表現すること。快適であること、そして着て楽しめるファッション。

WWD:コロナで自身のファッションはどのように変化したか?

エンゲルバート:より快適な服装をするようになったので、スエットにジュエリーをつけるようになった。シンプルで快適な装いにジュエリーをつけることでワクワクする。

WWD:「スワロフスキー」のコレクションを通して伝えたいメッセージは?

エンゲルバート:個性を表現して欲しい。年齢や性別に関係なく、自分自身を大胆に表現できるコレクションになっていると思う。

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下北沢最安値の“110円古着”はなぜ可能か? 藤原輝敏スティックアウト社長に聞く

 何度目かの古着ブームにより、がぜん注目を浴びている下北沢。“若者が大挙し、かつその多くが買い物袋を持っている”ことは以前伝えた通りだ。その際に声を掛けた10代女性が持っていたのが「スティックアウト」の買い物袋だった。彼女たちが買い物したのは税込770円均一の「スティックアウト700」(1号店)だったが、取材後に調べて110円から古着をラインアップする3号店(「スティックアウト100」)が今年2月にオープンしていたことを知る。“下北沢最安値”をうたう古着店は少なくないが、常時一定量の110円商品を並べる店はまれだ。藤原輝敏スティックアウト社長に話を聞いた。

WWD:まずはスティックアウトの“自己紹介”をお願いしたい。

藤原輝敏スティックアウト社長(以下、藤原):下北沢で3店舗を運営していて、1号店のオープンは2007年です。現在税込770円均一の「スティックアウト700」がそれで、20年に2号店である「スティックアウト3」を開店しました。“3”は税抜3000円以下の意味で、店頭には税込で770~3190円の商品を並べています。110~770円の古着をラインアップする3号店(「スティックアウト100」)をオープンしたのは今年2月です。

WWD:「スティックアウト100」における“110円古着”の比率は?

藤原:2割程度を心掛けています。

WWD:「スティックアウト100」の客層についても教えてほしい。

藤原:品ぞろえ、来客像どちらも男女比は半々で、年齢層は10~20代が中心ですね。

知られざる古着の供給源について

WWD:“110円古着”を実現するための供給源について聞きたい。

藤原:これからお話するのはあくまで当社のケースで、それが古着業界の唯一の方法ではありません。特に僕は古着店で修業を積んだわけではなく、独学な部分が多いので。

 まず仕入れ先には国外と国内があります。海外仕入れは当社の場合、世界的な古着の集積地であるタイのアランヤプラテートが供給源となっています。しかしコロナ禍で渡航機会が失われ、今は現地スタッフに依頼して輸入しています。国内仕入れは、さらに2つに大別できます。“ウェス屋(ボロ屋)”と呼ばれるものと、古着卸(古着問屋)です。“ウェス屋”は、家庭から出たゴミ(衣類)が原料です。それを行政が回収して、“紙屋”と呼ばれる業者に持ち込みます。

WWD:衣類なのに“紙屋”に持ち込まれる?

藤原:はい、ただしこれは行政によってまちまちかもしれないですね。“紙屋”が選別し、衣類はあらためて“ウェス屋”にという流れです。

WWD:そして“ウェス屋”から古着店(小売り)が買う?

藤原:ええ。およそ3つの料金形態が存在します。キロ値が1000~1200円の最上位のカテゴリーには「グッチ(GUCCI)」や「パタゴニア(PATAGONIA)」といった人気ブランドや、レザージャケットのような高額商品が混在します。これに続いてキロ値400円、200円などのカテゴリーが設けられています。

WWD:その下はない?

藤原:そうですね。その下は文字通りのゴミになるのかと。

WWD:一方の古着卸とは?

藤原: t(トン)単位の量り売りで、“信用買い”な部分が多く、中身は見ずに決定します。

WWD:中身が見れないということは内容物に偏りがあることも?

藤原:はい。それもあって、当社で仕分けして店頭に並べられるのは15%ほどです。

WWD:残りの85%は?

藤原:当社は、古着卸に戻します。“ウェス屋”に売ることもできるんですが、毎週古着卸に買い付けに行くので、不要な物を持って行って、また買って帰ってくる方が性分的に楽なんですよね(笑)。

WWD:スティックアウトの場合、どの程度の量を買う?

藤原:毎週2、3トンです。僕は中型免許を持っているので、4tトラックで東京郊外をピストン輸送しています。

WWD:社長自ら?

藤原:アルバイトを入れて25人程度の小さな会社ですからね(笑)。社長といったって、デスクで座っているわけにはいきません。“ウェス屋”は埼玉、神奈川、千葉あたりに多く、そこまで行って買い付け、川口市の本社倉庫に持ち込んで仕分けします。僕で週に2往復くらい。ほかのスタッフも入れて、週に10往復くらいはしています。秋冬シーズンはかさばる服も多いので、配送費を安くあげるため、乗用車で下北沢の店舗まで商品を持ってくることもあります。

WWD:古着卸と“ウェス屋”、それぞれのメリット・デメリットについてあらためて聞きたい。

藤原:古着卸のメリットは、なんといっても安さです。t単位の量り売りで、かつ条件がある(内容物が見れない)ため、仕入れ値は“ウェス屋”の10分の1ほど。それに、こちらにも「ディオール(DIOR)」や「プラダ(PRADA)」などラグジュアリーブランドが入っていることがあります。そのあたりは宝くじ感覚というか(笑)。デメリットは、買ったものを当社サイドで仕分ける必要があるので、そこに人件費が掛かることですね。それに仕分けは誰でもできるわけではなく、目が利かなくてはなりません。

 “ウェス屋”のメリットは、“ウェス屋”側で仕分けをしてくれる点です。ジーンズ、ダウン、スカートといった具合にジャンルごとになっているので、狙って買い物ができます。サイズや状態を確認できるのも利点ですね。しかし、“ウェス屋”での売買も100~200kg単位なので、あくまで“ある程度”です。デメリットは、より多くの量を売買する古着卸に比べて割高ということです。

WWD:つまり値段を取るか、時間と手間を取るかの違いである?

藤原:そうですね。中長期的な店舗運営のためには古着卸での買い付けを続けることが必要で、ただしその場合は中身は分からないし、商品の偏りもあるので“ウェス屋”も併用しています。

本題、“110円古着”はなぜ可能か?

WWD:そのあたりに“110円古着”の秘密が隠されていそうだ。

藤原:秘密というほどのものはありません(笑)。時間と手間を掛けるに尽きます。強いて言うなら、古着小売りは一般的に“ウェス屋”で買い付けることが多く、古着卸からt買いするのは珍しいかもしれませんね。その分、売値を下げることができます。ただ、1次流通量が多い(結果としてゴミに出される量も多い)女性物が多くなってしまいがちで、つまりメンズ商品が枯渇気味です。

WWD:ほかに、“明日のスティックアウト”になるために必要なものは?

藤原:誰でもすぐになれますよ(笑)。でも、そうだなぁ、倉庫やトラック、その運転手や駐車場も必要ですね。というわけで、あくまで郊外型のビジネスモデルといえるのかもしれません。いずれにしても、僕らはゴミの中から宝を探し出すことにやりがいを感じています!

WWD:最後に、今後のビジョンについて聞きたい。

藤原:来年めどで、下北沢駅の北口に4号店目の出店を考えています。

WWD:既存の店舗で例えるなら、どの業態に近いものになる?

藤原:2号店(「スティックアウト3」)ですね。スティックアウトの中ではブランド名が立っていたり、少しトレンドを感じさせるアイテムを集約している業態です。それでいて価格は770~3190円。

WWD:“110円古着”の値段を、さらに下げることはない?

藤原:110円で売れないものは50円でも10円でも売れないと思います。“要らないものは無料(タダ)でも要らない”、令和のお客さまはとても賢明ですよ。

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ファストリ柳井社長が10月14日に語った「人権」「信念」「ユニクロ改革」 6000字超の全文公開

 ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は10月14日、2021年8月期決算説明会に登壇し、「グローバル展開の加速」や「人権侵害を容認しない」「事業を通じてより良い世界をつくっていく」ことなど、「商人としての信念」や今後の経営方針を17分にわたって熱弁を奮った。そのほぼ全文に加え、報道陣からの質問に対する一問一答をまとめた。

柳井正会長兼社長(以下、柳井):業績の詳細および有明プロジェクトに関してはご説明を申し上げましたので、私からは、主にファーストリテイリンググループが今何が最も重要だと考えているのか、今後どのような考え方で経営を進めていくのかをお話させていただきます。

(東京)オリンピック・パラリンピックが終わり、世界各地でワクチン接種が進んで感染拡大を押さえこみつつ、経済も成長させていく動きが本格化してまいりました。ファーストリテイリングはこれまでにも増して積極的にグローバル展開、事業展開をしていきたいと考えています。グローバルナンバーワンブランドを目指して成長を加速していく所存であります。

(ユニクロが掲げる)LifeWearの本質は、お客様の要望に応え、顧客を創造することにあります。自ら販売する商品、提供するサービスそのものが世の中の役に立っているのか、事業活動が社会的負荷を増大させるやり方になっていないのか、日常的な事業活動そのもので環境への負荷を減らし、社会の持続的な成長を実現して、自らのビジネスや商品を通じて社会を良くしていく、こうした考え方を具体的な商品の形で表現したのがLifeWearです。このような考え方をよりグローバル、さらに、「ユニクロ(UNIQLO)」だけでなく、「ジーユー(GU)」、「セオリー(THEORY)」、「プラステ(PLST)」などのグローバルブランドでも実現していきたいと考えています。

私たちは服を変え、常識を変え、世界を変えていくことを目指す会社です。日本の美意識を背景に、生まれたLifeWearというまったく新しい概念のもと、これからも服の世界の常識をどんどん変えていきたいと思います。

パリ、台湾、ロンドンで新たな旗艦店出店

世界中のさまざまな国の固有の歴史や文化、習慣などを深く理解し、それぞれの国の社会の発展、人々に暮らしに貢献し、その国のみなさまに最も愛され、支持されるブランドになりたいと思います。それに向けて、今後、グローバル展開を一段と加速させていきたいと思います。

9月16日、パリのリヴォリ通りに「服とアートの融合」をテーマに、ユニクロリヴォリ店を出店しました。オープン当日はファッション感度の高いお客様が多数ご来店され、大変盛況でした。ルーブル美術館やパリ市庁舎があるリヴォリ通りは今パリで最も注目のエリアです。ルーブル美術館とは今年1月、4年間にわたるパートナーシップを締結しました。その一環として継続的にコラボレーションコレクションを発売していくほか、同美術館で実施されるさまざまな活動をスポンサードしていきます。また、ロンドンのリージェントストリートに2022年春、ユニクロとセオリーがコラボした新店舗をオープンします。1900平方メートルという大型店で、ユニクロとセオリーが同居する欧州で初の店舗となります。さらに、今年10月8日、台北のグローバル旗艦店、ユニクロタイペイがリニューアルオープンしました。オープン前にはオープンを待ちわびた多数のお客様が並ばれ、広く新しくなったグローバル旗艦店でのお買い物を楽しんでいただきました。来月には北京初のグローバル旗艦店もオープンします。

人権侵害は容認しない 2004年から「コード・オブ・コンダクト」導入

ファーストリテイリングはこれまでも、人権侵害を絶対容認しない方針を明確にしてまいりました。そして、そのための仕組みを作り、実際に行動してきました。

まず基本的な枠組みとして、すべての取引先工場に、2004年の段階で私たちが設定した「生産パートナー向けのコード・オブ・コンダクト」の遵守、署名を求めています。これは国際労働機関(ILO)の基準に沿ったものです。常にグローバルレベルの人権原則や宣言に沿ってその責任を果たすよう行動してまいりました。

また、すべての取引先工場に対して担当社員および、第三者機関により労働環境のモニタリングを定期的に行い、その結果を取引先工場にフィードバックしています。発見された課題に対しては工場に迅速な改善を求めるとともに、万一、児童労働、強制労働などの深刻な事象が発覚した場合には、取引停止を含めた厳しい対処を行ってきています。

当社の生産事務所がある上海、ホーチミン、ダッカ、ジャカルタ、バンガロールには、品質や生産進捗管理を担う生産部の従業員が常駐しています。加えて主要の事務所には、労働環境のモニタリングや工場の改善指導などを専門的に行う専任チームを配属しています。担当者は毎週担当の取引先工場を訪問し、直接自分の目で工場の現場を把握し、正しい生産プロセスの改善指導を行っています。

世界のさまざまな外部団体との連携も重視しています。労働問題に特化した国連の専門機関である「国際労働機関(ILO)」とのパートナーシップは先ほど申し上げましたが、それ以外にも、世界銀行グループとILOの共同プログラムの「ベターワーク」、
労働環境改善を目指す世界的なNGO「公正労働協会(FLA)」などに加盟しています。また、2019年度からは国連女性機関(UN Women)とのパートナーシップにより、縫製工場で働く女性を対象としたキャリア形成支援プログラム開発と展開に取り組んでいます。これら当社の取り組みはいずれも国際機関などから高く評価されており、世界的に見てもわれわれの取り組みは最も高い水準のものと自負しています。

安易な政治的立場への便乗は、ビジネスの死を意味する

私たち、グローバルに事業を展開する企業として、お互いに利益があるフェアな取引をし、その国の社会を豊かにしていくことが使命です。そのような明確な理念を持って独立自尊の商人として、自らの信念と現実が違っていたら勇気をもってそれは違うと発言しなければなりません。目先の利益のために安易に政治的な立場に便乗することは世界のさまざまなお客様の期待に応えることにはならず、それはビジネスの死を意味します。長い目で見て、けして企業のためにも社会のためにも国のためにもなりません。これは私の商人としての信念であります。

コロナの感染拡大で各国の経済が内向きになり、鎖国のような状況が出てきています。大国同士の政治的な対立、世界を分断しようという動きが強まっています。しかしそれでも現実に情報は世界を絶え間なく行き来し、情報量は数百倍、数千倍、数万倍になっています。ビジネスの世界も世界中で行われ、国と国を分断しいようとする試みはけしてうまくいかない。大国同士の対立は当事国だけの問題ではすみません。周辺地域や近隣諸国は壊滅的な打撃を受けます。そのような事態を避けるため、企業も個人も国も、あらゆる手段を尽くし、すべての国が共存共栄できる世界を作らなければなりません。

高度なトレーサビリティに向け100人体制

私は世界中のお客様に用商品を提供しようとしています。多くの企業に対して政治的な選択を迫るような風潮には強い疑問を感じています。だからといって人権問題に対する自らの姿勢をあいまいにするつもりはありません。説明を申し上げましたように、事業を通じてよりよい世界を作っていくという考え方、むしろ、業界の先頭に立って率先してそれらの問題に関し、改善のための努力を現実行ってきたのはわれわれであります。早い時期から人権侵害をけして容認しない姿勢を明らかにし、そのための仕組みを作り、具体的な行動をしてまいりました。世界各地の現場で工場や現地当局と粘り強く交渉を重ね、われわれの基準に照らして問題があれば改善を自らし、求め、その成果が着々と上がっています。

これまで申し上げた通り、縫製工場と素材工場については、自社と第三者による監査で問題ないことを確認しています。また、服の生産において素材調達は商社や縫製工場が行うのではなく、ユニクロ、われわれ自体で自社の調達チームが生地や糸について指定し、どの紡績工場で生産されているか把握したうえで調達しています。原材料の原産地についても特定ができています。今後、原材料生産地の農家の素材調達の最上流にいたるまで自らの手で確認し、より高いレベルのトレーサビリティを確保していきます。

これに加え、第三者認証の枠組みを活用してより客観性があるプロセスを一つひとつ着実に実現してまいります。これを実現するために、すでにグローバルで100人規模のプロジェクトチームを立ち上げて農家の特定に向けた取り組みを始めています。

柳井財団の第一期生が英米の大学を卒業、志のある個人や企業は軽々と国境を超える

先日、とても嬉しいことがありました。柳井正財団が奨学金を支給している第一期生が初めて今年米国や英国の大学を卒業しました。われわれの財団は、2017年から米国や英国のトップクラスの大学で勉強する日本の学生たち、毎年30人ぐらいに奨学金を支給しています。その人たちがみな最優秀に近い成績で卒業しています。ある人はコロンビア大学の生物医療学と比較文学の両方の学位を取りました。そして卒業後は英国のオックスフォード大学の大学院で医療の勉強をし、その後、米国のメディカルスクールに入って医師資格を取り、世界中で研究と医療の両方やりたいと言っています。そういう若い人が日本から次々と出てきています。本当に頼もしい、喜ぶべきことだと考えます。このように、志のある個人や民間企業は軽々と国境を越えていきます。今の若い世代の最優秀の人々には、そもそも国境の意識がなくなりつつある。このような流れを世界中の国や企業が応援していくべきであると思います。

扉を閉ざして成功した企業はありません。国を閉ざして繁栄した国はありません。とくに日本人、日本企業はこういう時代だからこそ、世界中の志のある個人、企業と力を合わせ、お互いに利益が上がり、持続可能な成長の仕組みを作ることが必要です。そこに日本人および日本という国の将来がかかっている。私たちを含め、海外でビジネスをしている日本企業、日本人はみんなそのために必死の努力をしています。難しい問題は山ほどありますが、それ以外に日本の生き残る道はありません。

【メディアからの質疑応答】

――グローバルに出店し、ビジネスを加速していくという話だったが、コロナ禍を経て、人々の生活や行動様式も変わった。出店をパリや台湾、ロンドンなどにも出すということだが、新たな生活スタイルを実践するようになった世の中において、これからどんなお店がグローバルなお客様に求められると考えるか?

柳井正(以下、柳井):われわれ旗艦店は繁華街に出していくが、むしろ郊外の自分の生活圏、これをより重要視するお客様に対応した店、あるいは、都心でも自分たちの住んでいる地域を大事にする、そういうライフスタイルに変わるんじゃないかなと思います。ですので、そういうライフスタイル(に合った店や商品)。それと、コロナ禍でテレワークがあり、いろいろなことを深く考えるようになったり、家族と一緒に生活する時間が増えてきた。仕事と家族の生活を両方とも追求する、どちらのバランスをとるということではなしに、両方とも追求するようなライフスタイルに変わったので、それに従った服に変わっていくのではないかと思います。

――ファーストリテイリングが人権侵害を容認しないという姿勢について。これまでもその姿勢をクリアにするために自社でもいろいろな取り組みをし、第三者機関の判定や評価を得る活動を現在も行っているということだが、今年4月に新疆綿の問題などで人権侵害についていろいろなマスコミなどでの報道もあった。あえてここで伺いたいのは、ここでこういったステートメントを柳井さんが出したということは、サプライチェーンの中で現時点で感知している人権侵害にあたるような問題はないという理解でよいのか?

柳井:今までも、そして今でもいろいろな地域で起こっています。ただし、それはその都度その都度、工場側と取引を停止したり、あるいは、それに対する改善案を求めたりということをやっています。でも、幸いなことに、われわれはまず、どこの工場でもいい、安いところがいい、ということではなしに、われわれと同じ志を持っている工場の経営者と話をして、そのうえで本当にいい品質の商品を作ってくれるということ前提に話をしているので、そんなにひどい人権侵害みたいなことは、新規の国にいったとき以外はあんまりありません。

――中国のことを聞きたい。終わった期は過去最高ということだったが、コロナ前の2019年に比べると6%ぐらいの増収にとどまっている。ずっと2ケタで成長してきたのが、店舗がこれだけ増えたわりには増収のペースがやや落ちてきているのかなと気になっている。今期は上期は減収減益を見込んでいるが、外資ブランド離れが起きてローカルブランドが強くなってきている市場構造の変化なども影響しているのか?1兆円の目標は今も変わらないのか?

柳井:そういう面も確かにあると思います。ただしわれわれ今、上海や北京などの一級都市以外の、二級都市、三級都市にも出店しています。二級都市、三級都市ではまだそれほど知名度が上がっていません。ですから今から知名度が上がってくれば売り上げが伸びていくと考えています。

――今期、国内ユニクロは事業構造の変革の年ということで減収減益を見込んでいるが、既存店の売り上げが11%の減収ということは、今年の春に(消費税の内税表記に合わせて実質約9%の)値下げをした影響もあるのかと思っている。今、円安や素材高などで値下げの影響が大きく出てくる時期だと思うが、改めて今期の国内事業にどう臨むのか?

柳井:値下げの影響は短期的なものだと考えています。むしろ今、所得が上がらない、報酬が上がらないというところで、プラス消費税という。あの時点で、それを新しい価格にするということは私としてできなかった。また、われわれの会社は為替リスクをとって先物を予約しているので、当面為替の円安に関してはあまり影響がないというふうに考えています。ただし世界的に原材料がすごく上がっているので、インフレになる可能性は、これは服だけということでなしに、あらゆる商品で起きうるのではないかと考えています。

――この決算について、柳井社長としての総括と、増収増益になった要因を改めて聞きたい。

柳井:私は社員全員努力して、こういう苦しい状況の中で非常に頑張ったんじゃないかと考えています。ただしコロナが収束したわけでなく、むしろ東南アジアでロックダウンが続いていたり、止まったり、またロックダウンになったりということもありますし、先進国でもイギリスやフランスはもうコロナと共存するということでいつどんなことが起きるか見当がつかない。そういう不安定な状況ですが、やっぱりグローバルで商売をやっていて良かったなと。というのは、世界経済自体がグローバル経済になっているので。それと世界中の情報、叡智を結して商売をしないと日本だけで完結するような商売は今後非常に難しくなるのではないかと思う。

――決算期間中に吸水ショーツをGU、ユニクロで販売したが、フェムテック関連の商品を販売することになった経緯と、足元をどう見ているのか、今後このような市場がどのように広がっていくとみているのか、御社としてどのようにこのような市場に関わっていきたいと考えているのか?

柳井:これはお客様の要望で非常に多かったんですよ。われわれの取引先で作っているところがあったので、こんなに要望が多いんだったら実験で一度作ってみようかということだったのですが、非常に反響がありました。こういうことで困っている女性の方が非常に多いのだなと。ここを一度深掘りしようと。これは障害者用のアンダーウエアもそうだが、今までのアパレル業界にないようなニーズに関して研究開発、および、実際にそういう商品を作って販売してみてそれを改良・改善してより良い商品を作りたいなと思います。

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「経営の変革」が描く小売業界の明るい未来とは? フルカイテンが初のカンファレンス開催

 小売業界が恒常的に抱えている在庫問題を、独自開発のAIによる分析で解決するクラウド型サービス「フルカイテン(FULL KAITEN)」。このサービスを提供するフルカイテンの瀬川直寛代表は、小売業界の未来への危機感から経営への変革を唱え、それに賛同する経営者や識者が登壇するカンファレンスを開催予定だ。自社サービスの売り込みよりも難しい意識改革にあえて取り組む、瀬川代表のビジョンを聞いた。

市場縮小が「自分ごと」に
なりにくいアパレル業界

WWD:国内市場が縮小し続ける中で、とくにアパレル業界は大きく影響を受けている。そこにどんな危機感を感じているか。

瀬川直寛代表(以下、瀬川):今、国内では年間50万人のペースで日本人の人口が減少している。これは鳥取県くらいの規模だ。同時に2030年には人口の1/3が高齢者となるなど高齢化も進んでいる。さらに消費者が1カ月間に使えるお金(可処分所得)は1999〜2014年の15年間で最大6.2万円も減少した。それだけ国内市場が急激に縮小し続けているにも関わらず、多くの企業はこの30年ほど売り上げ至上主義のまま経営方針を切り替えられていない。縮小市場のときは粗利経営に切り換えないと、在庫の物量勝負で消耗戦を続けるのは、国力を弱めることにもつながると思っている。

WWD:小売業者の中でもアパレルの経営改革が遅れているのはなぜか。

瀬川:日本のファッション産業の市場規模は7兆円だの9兆円だのと言われているが、個別にみると大多数は100億~300億円くらいの企業規模だ。だから9兆円の市場が小さくなると言われても、自社の年商300億円と比べると、規模が違いすぎて自分ごとになりづらい。しかし現在と同じ年齢構成で人口が減少するのではなく高齢化も進んでいるので、例えば30代前半の女性をターゲットにしたブランドだとすると、人口の縮小スピード以上の速さでターゲット層がいなくなるので、年商300億円は維持できない。より早急に手を打つ必要がある。

WWD:小売業者が切り替えるべき「粗利経営」とはどういうことか。

瀬川:在庫の物量で売り上げをつくるのではなく、少ない在庫で売り上げ、粗利益、キャッシュフローのいずれかを最大化させるビジネスモデルのことだ。しかし単純に在庫の量を減らすのは間違い。粗利経営への第一歩は「儲ける力」をつけること。その次に在庫量を減らしていくというステップが重要。

WWD:「儲ける力」とは具体的には何を指すのか。それがなくなったのはなぜか。

瀬川:「儲ける力」をつけるとは、1品番あたりの粗利を上げていくことだ。市場が拡大し続けているときは、そこそこ在庫もはけ、大量の在庫の中からたまたま売れた商品の利益で売れ残った商品の赤字をカバーできていた。しかし縮小市場に転じ、大量の売れ残った在庫をさばくためにセールを早める、回数を増やす、アウトレットを出す、オフプライスストアもできる…など、どんどん利益を失う方向でなんとか在庫をお金に換え、それでも売れないものは場合によっては廃棄されている。サステナブルという観点からもおかしいし、現状がそれでは、近い将来の高齢化社会に向け、恐怖しかない。

WWD:「儲ける力」をつけるために何をすべきか。

瀬川:小売業界では定価でどれだけ売れたかを示す「プロパー消化率」という指標がよく使われる。粗利を上げようとするとき、よく見受けられる間違いが「プロパー消化率を上げよう」という命題を掲げ、消化率何パーセントという“結果”をエクセルで一生懸命追いかけることだ。プロパー消化率を上げるには先手を打つ必要があるのに、結果の数字を見ているところに矛盾がある。数学の分析ではこれを「遅行指標」といい、結果を見るためのものだ。施策を打つためにはフルカイテンでも提供しているような「先行指標」を指針とする必要があるが、小売業界ではこの「結果が出る前の数字」を見る文化がなかった。それはやはり、見なくても大量の在庫があれば売れる時代が過去にあったからだろう。

経営改革でこれからの
「ブランディングの時代」に備えよ

WWD:経営者の意識はどう変わるべきか。

瀬川:当社ではセールスの早い段階から、経営層の方と相談することが多い。いろいろな経営者と接するうち、2種類に分かれていることに気付いた。一つ目は、当社のツールのようなテクノロジーが全てを解決すると思っている人。二つ目は、世の中のあり方や消費者の生活の仕方を変えるために、手段としてツールを使おうと考えている人。これは前者のほうが多いが、正直な話、われわれのようなIT業界側が良くないと思っている。今はDX(Digital Transformation)、少し前ならOMO(Online Merges with Offline)やAI(artificial intelligence)などキーワードでマーケティングをし、そのキーワードに紐づくITツールを導入することが大事だと思い込ませているところがある。実際に社会の考え方を変えるのはとても大変なので、ツールのセールスだけを考えたらキーワードをポンと出して売るほうが楽。だから経営者もツールの導入が全てを癒やしてくれるとう幻想を抱きがちだ。しかし本質を理解している経営者は、大事なのはツールを導入することではなく、どんな未来を作ろうとしているのか、自分の会社のあり方をどう変えたいのか、自分の会社で買い物する消費者の方の生活をどう変えたいかという観点から逆算し、必要なツールがDX系のツールでした、OMO系のツールでした、という選択になる。当社が提供するフルカイテンは粗利経営に有効なツールの一つではあるが、今はツール自体の話よりも、経営者たちに現状の危機を理解していただき、経営改革が必要だと呼びかけていきたい。

WWD:経営改革の先には、どんな未来が待っているか。

瀬川:粗利経営になることでブランディング時代がやってくる。粗利経営とは、単純に値引きをしない、在庫を減らす、原価を下げる、ということではない。原価を下げる点に関しては、各企業の努力で下がりきっている印象だが、それでも大量発注することでさらに数ポイント下げることを頑張っている。在庫を減らすことで、原価が上がってもいい。むしろ原価を上げて、付加価値の高い良い商品をつくることで、値引きをせずに済む。結局、粗利経営に変わることで、従業員の方の待遇を改善し、競合企業と差別化できる良い商品作りや、売り場で顧客に特別な体験を提供することに投資できる。このことを、私は「ブランディングの時代」と呼んでいて、商売をする人には一番楽しい時代が到来する。

WWD:フルカイテンは経営者の改革意識の啓蒙活動として小売業界の識者との対談をYouTubeに精力的にアップしたり、11月には小売業界向けのオンラインカンファレンスを予定したりしている。

瀬川:これまで話してきたことは、産業や国の未来につながる話なので、いちスタートアップの経営者がするには規模が大きすぎるテーマだ。スタートアップの経営者はそういった大きな大志を抱いていることが多いが、実際に語ってしまうと、それよりも目先の自分の会社の経営をなんとかしろと言われがち。また、発信力があるわけではないのでポジショントークと受け止められがちだ。そこで今回のカンファレンスは大きなテーマを「改革」とし、同じような危機感を抱いている登壇者たちが経営の改革について発信することで、小売業界の経営者の意識改革にドライブをかけたい。粗利経営に変わると、各企業の在庫の量が減る。それは大量生産をしなくて済むので、廃棄が減る。国内だけでなく世界中で粗利経営で成功する企業が増えていけば、有限な地球の資源を守ることにつながる。生活のためのお金も大事だが、子どもや孫にいかに今よりよい地球を残せるかにつながっていたら、そんな素敵なことはない。賛同してくれる経営者が増えることを願う。

明るい未来のための
「経営の変革」を目指す
カンファレンス

 フルカイテンが主催する初のカンファレンスが、2021年11月9日(火)に開催される。登壇者は元TSIホールディングス社長・上田谷真一氏をはじめ、北の達人コーポレーション社長の木下勝寿氏など、瀬川社長の意思に賛同してくれた、今をときめく小売業界をけん引する立役者や識者が登壇。全部で5つのセッションで、さまざまな角度から経営改革について、対話を重ねる。

INFORMATION

開催日程:2021年11月9日(火)
時間:13:00~18:00 (計5セッションを予定)
形式:ZOOMでのオンライン
視聴:無料
集客予定人数:500名程度
参加対象者:小売関係者

PHOTO:TAKAO OHTA
TEXT:MIWAKO ANNEN
問い合わせ先
フルカイテン
contact@full-kaiten.com

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投資家も注目するデジタルファッションのドレスX創業者が語る 「10年以内に1億のデジタルアイテム販売を目指す」

 ロサンゼルスを拠点とするスタートアップ企業、ドレスX(DRESSX)はデジタルファッションのみを販売する注目企業だ。同社のウェブサイトではプライベートレーベルのほか、100ブランド以上1000以上のアパレルやシューズ、アクセサリーなどのデジタルアイテムが並ぶ。価格は20ドル(約2300円)前後のTシャツから、1400ドル(約15万円)のドレスまでと幅広い。ユーザーは同社のウェブサイトで着用したいアイテムを購入し、自分の全身写真をサイトにアップロードすると、後日購入したアイテムを着用した状態の画像が送られてくるという仕組みだ。

 ドレスXは、ファッションとテック業界でキャリアを積んだ3人の女性起業家によって2020年8月にウクライナで誕生した。業界の大量生産の現状に課題を感じ、「ファッションが生み出す美しさや楽しさを保ちながら、生産量を減らしたよりサステナブルなファッション、もしくは生産しないファッション」として、デジタルファッションに着目し、その可能性を広げることに挑戦している。これまでに330万ドル(約3億7000万円)の資金を調達し、アプリの開発や独自のNFT市場の構築などを進める。共同創業者のダリア・シャポヴァロヴァ(Daria Shapovalova)とナタリア・モデノヴァ(Natalia Modenova)にオンラインで話を聞いた。

WWD:デジタルファッションに着目した理由は?

ダリア・シャポヴァロヴァ=ドレスX共同創業者兼CEO(以下、シャポヴァロヴァ):私は18歳でファッション業界に入り、出身地ウクライナでファッション番組を企画したり、地元のファッションシーンを盛り上げるためにメルセデス・ベンツ(MERCEDES BENZ)をスポンサーに迎えてキエフでファッション・ウイークを立ち上げ運営したりしていました。ファッション・ウイークをスタートした同時期に、ナタリアと私は東欧デザイナーを中心としたショールームの運営をはじめ、ネッタポルテ(NET-A-PORTER)やファーフェッチ(FARFETCH)、パリ、ニューヨーク、東京などの世界の大型店舗に商品を卸していました。ビジネスをする中でアパレルは生産サイクルが速く、大量に生産している点や、最近ではSNSで写真を投稿するためだけに服を購入し、撮影後には返却する客が多いといった話も聞くようになり問題意識が芽生えました。そこで私たちはSNSやゲームの世界において人々がデジタル上でファッションを楽しむ様子に、未来のファッションのあり方のヒントがあるのではないかと考えました。ちょうどパンデミックになり、人々がオンラインで過ごす時間が増えたことにも後押しされ、創業を決めました。

ナタリア・モデノヴァ=ドレスX共同創業者兼最高執行責任者(以下、モデノヴァ):社名の“ドレス”は、アイテムとしてのドレスにフォーカスを当てるという意味ではなく、“着る行為”そのものをアップデートせよという意味です。英国のバークレイズ銀行の調査によると、英国で購入されたファッションのうち9%がSNS用の写真撮影の後に返却されたそうです。これはコロナ以前の調査結果なので、今現在さらに多くの人がオンラインで過ごしていることを踏まえれば、デジタルファッション市場にポテンシャルがあると思ったんです。

WWD:デジタルファッションを環境負荷が低いという観点でアピールしている点がユニークだ。

シャポヴァロヴァ:ショールームで働きながら、売られない服をたくさん見てきました。これらを誰かの手に渡らせたいというのが、アイデアの発端の一つでした。私たちはデジタルで新しいファッションや消費のあり方を提案したい。これが業界の環境問題を解決する唯一の選択肢というわけではありませんが、その一つであることは間違いない。例えば、ギフティングをデジタルファッションで行えば、ブランドは資源やコストの削減につながります。そして、デジタル上ではデザイナーたちが頭の中に思い描くデザインを膨大な資源を使わずに実現することもできる。表現の幅を広げるという意味でも可能性は大きいでしょう。

モデノヴァ:私たちの独自の方法で、フィジカルで生産していたものをデジタルに変えることでどれくらいCO2排出量が減らせるかを計測したといったデータも掲出しています。

WWD:デジタルファッションは、未知の分野だったと思うが技術的な課題はどのように解決した?

シャポヴァロヴァ:私とナタリアはファッション業界にいましたが、もう一人の創業者のジュリー・クラニエンコ(Julie Krasnienko)はウクライナのスナップチャットで働いていた経験があり、テック系の知識を持っていました。最初は手探りの部分も多かったですが、創業から3カ月後には現在のチーフ・テクノロジー・オフィサーを含む8人のエンジニアを迎えて急ピッチで開発を進めました。現在は写真だけでなく、リアルタイムで撮影をしながら、その人がデジタルファッションを着用しているように見せることもできるようになりました。

NFT市場参入でビジネス規模をさらに拡大

WWD:現在ウェブサイトでは100ブランド以上のアイテムを取り扱っている。どのように参加デザイナーを募った?

モデノヴァ:最初は何人かのファッションデザイナーに声をかけ、彼らの商品をデジタル化することから始まり、さらにどんな機能が必要かといった検証を重ねました。同時にさまざまなデザイナーにドレスXの意義やコンセプトを伝えることで興味を持ってくれるデザイナーが増えていきました。

WWD:フィジカルファッションを提供するブランドとの協業も増えていく?

モデノヴァ:8月にはファーフェッチとのパートナーシップの下、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」や「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」のデジタルサンプルを製作しました。ファーフェッチの先行予約サービス開始に合わせたもので、インフルエンサーだけがそのデジタルサンプルを着用することができ、その着用画像をSNSなどに投稿することで、消費者の実際のオーダーにつなげるというものです。ファーフェッチは顧客からサステナビリティへの要求が高まる中、一部のキャンペーンをデジタル化することでCO2排出量を抑えられるという点にメリットを感じていました。そのほか私たちのウェブサイトにはありませんが、「バルマン(BALMAIN)」とは、彼らのNFT商品の製作を手伝いました。デジタル化には、実際の商品を送ってもらう必要はなく、商品の写真から作成できます。

WWD:「10年で1億のデジタルファッションを販売すること」を目標に掲げているが、その進捗は?

シャポヴァロヴァ:売り上げは非公表ですが、月15~20%増くらいで成長しています。私たちはデジタルファッション分野のパイオニア企業の一つで世界最大のプレーヤーです。11月には自分たちのNFTマーケットを立ち上げるので、その規模はさらに大きくなります。

WWD:ビジネス規模を拡大する上でNFTは重視している?

モデノヴァ:すでにいくつかのNFTマーケットと連携しています。例えばクリプト.comで販売しているNFTアイテムは、購入者だけが着用することができ、その購入者がアイテムを売りに出した場合は、アイテムの所有権が次の購入者に移るという仕組みです。NFTで私たちは、よりエクスクルーシブで少数のアイテムを取り扱うラグジュアリーファッションのカテゴリーを新設する予定です。自分たちのNFTマーケットでは、アプリと連携してユーザが常に自分のデジタルクローゼットを管理できるような仕組みを作ります。

シャポヴァロヴァ:カテゴリーは服だけでなく、靴やアクセサリーもあります。残念ながら、靴はあまり強い商材ではないですが、アプリ内のAR試着では特にアクセサリーが人気です。全カテゴリーを網羅し、まだデジタルコレクションを持っていないラグジュアリーブランドを巻き込んで規模を拡大します。

WWD:現在どのような人がデジタルファッションを購入している?

モデノヴァ:SNSのアクティブユーザーや新しいテクノロジーに関心の高い層、ファッションが好きでかつサステナブルな楽しみ方を模索している層などです。

WWD:今後どのようにデジタルファッションの魅力を広げていく?

シャポヴァロヴァ:例えば、この取材もオンラインで行われていますよね。ナタリアが今着けているアクセサリーはドレスXの商品です。SNSやゲーム、オンライン上でのコミュニケーションの場ではデジタルファッションの需要が分かると思います。ただ、デジタルはフィジカルなファッション市場を侵略するものではありません。現在のファション市場のうちの1%でも、デジタルで楽しむことができればそれだけでも相当なインパクトがあります。いかにデジタルとフィジカルを共存させていくかがポイントになるのではないでしょうか。

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「ガールズ バイ ピーチ・ジョン」と馬場ふみかがコラボ! “ランジェリーマニア”が作ったこだわりのラインアップ

 「ピーチ・ジョン(PEACH JOHN)」は10月13日、若年層向けブランド「ガールズバイ ピーチ・ジョン(GiRLS by PEACH JOHN)」のブランドミューズを務める馬場ふみかとのコラボレーション・コレクションを発売する。

 10〜20代前半の若年層をターゲットにした「ガールズ バイ ピーチ・ジョン」は昨年1月にデビューし、アイコン製品のノンワイヤーブラジャー“ピージィ”など若年層のニーズに合わせた製品を手頃な価格でそろえる。今年3月にはブランドミューズに女優・モデルの馬場ふみかを起用し、同世代からの支持を集めている。

 馬場はミューズに就任する以前からランジェリー好きで、今回は念願のコラボレーションという。製品は下着2型と、ルームウエア1型をラインアップ。ブランド担当者も驚くほどの知識を持つ“ランジェリーマニア”の馬場のこだわりや製品開発のエピソードを聞いた。

WWD:ブランドミューズとして活動は?

馬場ふみか(以下、馬場):今回3回目の撮影でしたが、毎回とても楽しいです。撮影のたびにたくさんの新作ランジェリーに囲まれて、それを身につけて撮影できるのが本当に楽しくて。ブランドミューズになる前からランジェリーが大好きだったので、幸せです。

WWD:コラボレーションに至った経緯は?

馬場:私自身ランジェリーが大好きで、いつか仕事がしたいと思っていました。そんな時にブランドミューズの就任が決まり、せっかくなら作りたいと思い、挙手したのがきっかけです(笑)。

WWD:ランジェリーには専門的な知識も必要だが、コラボコレクションを作っていく中で難しいと思ったことは?

馬場:難しいとか、大変だと思うことはありませんでした。下着ってある程度基本の形は決まっていて、そこからどんなデザインにするか、どんな機能にこだわるかなので。とにかく楽しかったです。色んなランジェリーを身につけてきたからアイデアはすぐに浮かびましたね。

WWD:ランジェリーの知識はブランド担当者も驚くほどだったとか。

馬場:根っからのランジェリー好きというか、マニアというか……。自然と身についていました。「ピーチ・ジョン」も昔から大好きで、以前展開していた「ヤミー・マート(YUMMY MART)」(2019年に終了した若年層向けライン)の店舗もよく訪れていました。今回のコラボコレクションのルームウエアも「ヤミー・マート」でお気に入りだった型を探してもらって、再現したんです。

WWD:コラボコレクションのこだわった点は?

馬場:既存のブラジャーをベースにデザインしたんですが、とにかく盛れて脇をしっかりカバーしてくれる “もりこれ脇高ブラ”(全2色、各税込2728円)を選びました。タイトな服を着るとやっぱり下着のラインって気になるんですよね。私自身も気になる所だったので、脇高は外せませんでした。「ガールズバイ ピーチ・ジョン」世代にも人気みたいです。胸元にはカシュクールを付けました。デザイン性だけではなく、胸の谷間が強調されすぎないようにさりげなくカバーしてくれます。バストの形は盛りつつも上品に着られる工夫です。おそろいのショーツには一部にメッシュを入れて、ほどよい透け感が「ちょっとセクシー」な仕上がりになって大満足です。自画自賛(笑)!若い世代だけじゃなく、大人世代にも気に入ってもらえるデザインだと思います。 “なちゅこれブラセット”(全2色、各税込3278円)は「ガールズ バイ ピーチ・ジョン」の人気アイテムでカラーバリエーションも豊富なんですが、今回はレースのデザインが際立つ淡いラベンダーを選びました。やっぱりレースってかわいいですよね。ショーツもバックまで総レースになっているので、セクシーな雰囲気。ベージュの下地とレースを重ねた透け感デザインもこだわったポイントです。デザイン性と服にひびきにくい実用性を兼ね備えているので、デイリー使いにぴったりです。

WWD:ルームウエアは型からこだわって作ったと聞いた。

馬場:そうなんです。何年も前に「ヤミー・マート」で買ったルームウエアがすごくお気に入りで、最初に「あの型で作って欲しいです!」ってお願いしました。当時の製品を再現しつつ私のリクエストをかなえてもらいました。とくにパンツにこだわっていて、細いリブで裾がフレアになっているので、楽なのにスタイルが良く見えます。着厚ソックスなどを履いても余裕があるくらいの少しゆったりした作りで、おなかをしっかりカバーできる深履きもポイントです。 トップスの襟はスキンケアやデコルテケアがしやすいように大きめにして、丈はおしりがすっぽり隠れる長さ。パンツにインしても出してもかわいいデザインです。あと私的に、もこもこのルームウエアって寝苦しくて……。暖かさもありつつ軽い薄手の生地にしました。寒い時にはガウンなども羽織りやすいちょうど良い着心地です。 とにかく私自身が着たい!と思えるものを追求しました。外出が難しく、おしゃれな服を着る機会が少ない中ですが、おうちの中でもかわいいルームウエアで気分が上がり、中に着る下着ひとつで気持ちが変わると思うので、コラボコレクションで今年の冬を楽しんでもらいたいです。

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イッセイミヤケの宮前義之が考える“次世代のモノ作り” 「エイポック」で未来を織りなす

 イッセイミヤケは9月23日、「エイポック エイブル イッセイ ミヤケ(A-POC ABLE ISSEY MIYAKE、以下、エイブル)」の新路面店を京都市に開いた。「エイポック」は1998年に三宅一生が「服作りのプロセスを変革し、着る人が参加する新しいデザインのあり方を提案する」をコンセプトにスタートした実験的なブランドで、07年に休止。「エイブル」は今年3月に前「イッセイミヤケ」デザイナーの宮前義之が率いるチームにより始動し、「エイポック」のモノ作りを継承しながら「作り手と受け手のコミュニケーションを広げ未来を織りなす」ことを目指す。なぜこのタイミングでの再始動なのか。どう「未来を織りなす」のか。宮前義之「エイポック エイブル イッセイ ミヤケ」デザイナーに聞く。

WWD:改めてA-POCのコンセプトを教えてください。またそれをどのように継承して発展させていくのでしょうか。

宮前義之(以下、宮前):三宅は70年代からパリコレを舞台に仕事をしてきて、新しい時代を迎える2000年を前に、「イッセイミヤケ」のバトンを滝沢直己に渡し、三宅自身は藤原大と「ファッションから新しい価値観を」という思いで「エイポック」を立ち上げ98年に初めてパリで発表しました。A-POCは“A Piece of Cloth”一枚の布という意味です。当時あまり服の業界では使わない“立体成型”という言葉を使い、新しい概念の服作りを探求しようと始まりました。

WWD:「エイポック」は無縫製ニットが印象的でしたね。

宮前:今でこそコンピューターを使うのは当たり前ですが、当時からコンピュータープログラムを駆使して編まれた無縫製ニットが特徴で、チューブ状に編まれたものを切り出すと服が現れる――どこをカットしてもほつれないので、着る人が自由にカットできてカスタマイズできます。つまり、服の完成には作り手だけではなく受け手も不可欠であり、そこが「エイポック」の重要なコンセプトの一つだと理解しています。

 「着る人が服を完成させる」――80~90年代はスターデザイナーがたくさんいて新しいスタイルを作り上げることに大きな影響力を持ち、ファンは誰よりも早く着ることにステータスを感じ価値があった。三宅はそこからさらに、「着る人が参加する意識を作ること」をデザインの世界で提案しました。

WWD:98年は時代の変わり目でした。

宮前:アップル(APPLE)が“アイマック”を発表して、コンピューターが普及し始め、ファッションの世界は「ユニクロ(UNIQLO)」が原宿に出店して格安のフリースが流行り、安くて身近に服を楽しめる時代に向かっていました。大量生産大量消費に向かっていた時代に、小ロット多品種を作るシステムを作り上げたこと、1着でも1000着でも必要な数だけ作ることができる仕組みを作ったのは画期的だったと思います。

WWD:画期的な「エイポック」の服作りは既存の服作りのプラットフォームにはあてはまりません。デザインチームはこれまでとは異なるアプローチをしたのでしょうか。

宮前:従来のように生地を集めて編集して服を作るのではなく、デザイナーやパタンナーが原料、糸作り、生地を織る・編む、染色、加工など全ての生産プロセスに関わりながら作っています。僕自身も2001年に入社して「エイポック」で川上から川下に関与しながら、一枚の布の中に服作りを入れることを経験しました。その姿勢は、三宅が会社を設立して日本でモノ作りを始めた時からですが、特に研究開発が活発なのは社内でも三宅率いる「エイポック」チームだったと感じます。

WWD:宮前さんは「エイポック」からキャリアをスタートしたんですね。

宮前:僕が参加したときはちょうど本格的に始まるときでした。素材のこともわからずに入社しましたが、一から経験できたことが11~19年まで手掛けた「イッセイミヤケ」につながっていると思います。「エイポック」の考えを発展させて“スチームストレッチ”が生まれました。

WWD:「エイブル」はどのようにして生まれましたか?

宮前:コロナ禍で立ち止まり、改めてこれからのモノ作りを考えたときに「エイポック」での経験が自分を成り立たせていると感じました。三宅と会話するなかで、「エイポック」の考え方は今、この時代の変化の中で新しいことができるのではないか、改めてチャレンジしようとなりました。

 “できる、可能にする”という意味の「エイブル」という言葉を加えたのは、「エイポック」の思想から、さまざまなことを現実化したいという思いを込めました。エポックメイキングという言葉もありますが、20年前に画期的な服作りを作り出したように、僕たちもこれからの時代に合った新しい服を発信していきたいとスタート地点に立ったところです。

WWD:“可能にする”についてもう少し教えてください。

宮前:モノ作りは協業です。つまり、いろんな人たちと知恵を出し合わないと新しいモノ作りは非常に難しい。「エイポック」はあらゆる人と密につながり、研究するだけでなく、実装させてきました。着る人を巻き込む形で現実化していきたい。一連のことをコミュニケーションという言葉を使いながら行うことがモノ作りで大切だと思っています。“現実”という言葉が改めて大切になってきている。

WWD:現実とは?

宮前:難しいことではなくて、服作りを通じてチームだけでは見えないことも外の人と会話すると新しい景色が見えて見方が変わり、成長させられる。全てのモノ作りに通じているのではないかと思います。だから面白い。

WWD:“新品はいらない”コンセプトが生まれるほど、気候変動や資源の枯渇といった私たちの現実は厳しくなっています。次世代のモノ作りをどのようにとらえていますか?

宮前:“新しいものを作らない”という考えが生まれるのは、時代を考えると当然のことかもしれません。産業革命以降、大量生産して消費することが経済や豊かさの価値基準として存在してきました。その反動が今起きていて、「これからどうしようか」というフェーズに入ってきている。いろんな方法があると思います。モノをリサイクルすることもそうですし、車や家をシェアすること、そして「イッセイミヤケ」が大事にしてきたことーー長く大切に着てもらうことをどう伝えていくかということもそう。時代の価値観が確実に変化しているし、新しいものだけが豊かさの価値にはつながらないし、それが何なのかを考えています。

 先日読んだ(西陣織の)細尾(真孝代表取締役社長)さんのインタビューに共感しました。「人間が創造することを止めてはいけない」という言葉です。人間には新しい美を追求してきたという歴史があり、それが蓄積されて文化になった。太古の昔から美を求めることでテクノロジーが進化して人間が豊かになってきました。それが止まることはないと思うし、その中で新たな美の価値観、時代ごとに変わる美が問われています。

 ファッションの仕事は誤解を受けやすいと感じます。次の時代のモノ作りに不可欠なことは常に社会とのつながりを感じながら作ること。服は一人では作れない。協力者がいて服ができます。そうした優れた技術やその環境をどう持続可能にするか。何事も継続することは大事で、プリーツもそうですが、一つの技術を継承して発展させることが大切だと思います。もちろん変わることが美徳という価値観もありますが、僕たちはいかに継続させていくかを大事にしています。続けていくにはクリエイションとビジネスの両輪が必要になります。

WWD:発信の場が京都だったのは?

宮前:これからの時代に大切なものは文化だと考えます。三宅との日々の対話でも、文化があるかないかは今後非常に重要になってくると話しています。京都は伝統と革新が共存した町。古いものだけがあるのではなくて、イノベーションが起きています。京セラ、島津製作所、任天堂など独自のイノベーションを起こしている企業があります。三宅の哲学を継承して発展させていくことと、自分自身のやりたいことを重ねたときに、どこで発信したいかを考えたら京都でした。

WWD:伝統と革新の街で、三宅さんの哲学を継承していくんですね。

宮前:自分たち独自のモノ作りを伝統にしたいと社内で話しています。伝統とは物事を大切に守る、残すととらえられがちですが、僕は、伝統は時代に合わせて変化させることだと思っています。三宅一生と「エイボック」の考え方を継承させて発展させる場所として、京都にアトリエも構えられたらと話しています。三宅も「京都の水を借りて僕たちのモノ作り(蒔いた種)を成長させていこう」と話していました。

WWD:今回の新作では、現代美術家の宮島達夫さんとコラボレーションされました。

宮前:宮島さんは、ご自身が迷ったりぶれないようにするために3つのコンセプトを掲げられて時間と生命を表現されています。3つのコンセプトとは「変化し続けること」「あらゆるものと関係を作ること」「永遠に続くこと」。僕たちが次の時代のモノ作りを考えて出した答えと宮島さんの言葉が重なり、前に進むために宮島さんの力をお借りできないかとお声がけしました。

 既存のチームだけではアイデアは限られてくるし、固定概念も生まれます。知らない土地に行きたい、心揺さぶられる景色を見たいのと同じで、異分野に触れたい。モノ作りの原動力の全ては好奇心だと思っています。旅と同じ感覚で、異分野の人、出会ったことない人と面白いモノ作りを「エイブル」で行っていきたい。面白い人に出会うのは半年に1回とは限りません。コレクションのスケジュールに合わせていくのではなくて、違うベクトルで取り組んでいきたい。

WWD:宮島さんとのプロジェクトでは「ソニー」のもみ殻を原料にした多孔質カーボン素材“トリポーラス”を用いました。

宮前:実は「ソニー」とは3年前から取り組んでいました。“トリポーラス”は黒しか出せない制限がある素材ですが、今回の用いるのに最適な素材でした。宮島さんの表現する0~9の数字は生命を表していて、0は闇や死を表現しています。服を通じてこういう人がいるんだ、とかこういう素材があるんだ、と着る人の物語が始まればという思いがあります。

WWD:“トリポーラス”についてもう少し教えてください。

宮前:ソニーはバッテリー電極材料の研究開発をしていた中で、もみ殻が持つ独特な微細構造を発見し、優れた吸着特性を持つ新しい植物由来の多孔質炭素材料“トリポーラス”を開発しました。もみ殻は日本で200万トン、世界で1億トン以上が廃棄されていて、そのほとんどが野焼きされていてCO2が排出されます(編集部注:国連食糧農業機関によると、現在世界で年間4億トン以上のもみ殻を含むバイオマスが、野焼きなど焼却によって処理されており、野焼きで発生する短寿命気候汚染物質(SLCPs)は、気候変動の原因のひとつと言われている)。またもみ殻にはシリカという有害なガラス繊維が入っていて、それを取り除く技術をソニーが開発しました。炭と同じでにおいを吸着したりウイルスを除去したりする性質があり、その性質を生かした用途開発をしていました。「ソニー」には繊維だけではなく、シャンプーや食品に発展したいというヴィジョンがあります。一人でも多くの人に素晴らしい技術があることと世界で起こっている問題を伝える機会を持ちたい。

 今回用いた素材はレーヨンに“トリポーラス”を練りこんでいます。黒の美しさは見る人が見たら違います。通常の黒より黒い。どれだけ洗濯しても、繊維が先に壊れるほど黒が落ちません。黒は色が褪せたり、縫いしろにあたりが出たりしますが、新しい代替素材に用いることができればとも考えています。今回はジャケットやパンツに使っています。今後ベーシック素材にしていきたい。

WWD:売り方について教えてください。シーズン制ではない売り方も検討していますか?

宮前:「エイポック」と「エイブル」の2つ、シリーズとプロジェクトの活動があります。プロジェクトはローマ数字のⅠ、Ⅱ、Ⅲと表現されるもので、異分野や異業種とのコミュニケーションから新たな発想、技術開発を行い、ブランドの革新性を示す重要な役割になっていきます。従来のコレクションのようにシーズンではなく、プロジェクト単位で行います。販売方法は、宮島さんのプロジェクトは店に並べて展示の場を作り、予約をいただき、約1カ月後にお届けするというものです。一切余剰在庫を抱えずに気に入ってくださった方に届けたい。

 シリーズもシーズンはなく、タイプS、O、Uなどアルファベットで発表したベーシックアイテムを提案します。20年間で生まれたスチームストレッチや形状記憶素材、無縫製ニットなどでシリーズ化していきます。普遍的なデザインで汎用性のある男女兼用のアイテムで、日常の中の服のアイコニックな存在になればと考えています。作り方は、当時も今も変わらない、一枚の生地の中に服が織り込まれていて、ジャケット、パンツ、ベーシックアイテムを作り始めています。型は一度作ったら変えない予定で、お客さまにとってのメリットは、気に入って自分の型が見つかれば繰り返し購入できます。自分の好きな形を見つけてもらって生活の中に使ってもらいたい。

■A-POC ABLE ISSEY MIYAKE / KYOTO
京都府京都市中京区富小路通三条上ル福長町106
075-251-1288

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予約66万人待ちの「悟空のきもち」に加えオリジナル製品も大ヒット ゴールデンフィールドの“発想力”に迫る

 
 日本初の頭専門の揉みほぐし店として、2008年に京都に1号店をオープンした「悟空のきもち」。独自に考案した手技で「ほとんどの人を10分程度で眠らせ、幸福感のある“絶頂睡眠”に導く店」として瞬く間に話題となり、現在は5店舗を展開。予約のキャンセル待ち人数が約66万人という驚異の人気を誇っている。さらに睡眠関連製品を中心とした企画開発も手掛け、驚きのコンセプトを持った製品を生み出してヒットさせている。ここでは、そうした規格外のオリジナル製品の概要と、誕生した背景について、同社の創業者である金田淳美代表に話を聞いた。

「WWDJAPAN」(以下、WWD):本業である「悟空のきもち」の現在の状況は?

金田淳美代表(以下、金田):好調です。予約待ちの人数が毎月5000~1万人のペースで増えていて、現在は約66万人待ちになっています。コロナの影響もさほど受けず、最初の緊急事態宣言の時に1カ月間閉めただけでした。

WWD:創業時と比べて手技は進化している?

金田:“絶頂睡眠”を提供するコンセプトは変わりないですが、より快適な“寝落ち体験”をしてもらうために進化を続けています。施術後のお客さまへのアンケート調査で、「快適に眠れた」という回答の多かった際の手技を検証し、それを全員で共有。さらにその中でも高評価を得たスタッフの手技を検証し……という作業を繰り返すことで常にブラッシュアップしています。独創的なビジネスのため、“正解”が世界のどこにもないので、自分たちで常に正解により近づく回答を探している感じです。

WWD:お客さまアンケートは重要視している?

金田:ものすごく重要視しています。例えば“睡眠をアトラクションとして楽しむ”をテーマに、店舗(フロア)ごとに内装を変え、“タイムマシン”“死後の眠りからの蘇生”といったコンセプトのデザインを施しています。これも、施術後のお客さまアンケートで「(眠りが)タイムマシンに乗っているようだった」「(寝起きが)死後の世界から蘇生したようだった」という回答があったからなんです。

WWD:ここ数年はオリジナル製品も話題になっていますね。まず第1弾製品の“塾眠用たわし”とは?

金田:18年に、“熟眠用たわし”というオリジナル枕を発売しました。公式サイトへの掲載以外に広告宣伝を行っていないにも関わらず、累計5万個を売り上げるヒット製品になっています。最大の特徴は、“毛が放射状に伸びている”というたわしの構造を再現し、少しだけ頭皮を均一にいじめ、快適な眠りを誘うことです。

WWD:考案したきっかけは?

金田:開発のきっかけは、寝具メーカーからオリジナル枕の開発依頼を受けたことでした。こういう依頼の際、先方が求めているのって、既存の製品に少しだけ改良を加えることなんです。中には改良は既にできていて、名前を貸すだけのようなパターンもあります。そういう仕事は絶対に嫌なので、受けるか決められずに、スタッフに案件の共有だけして放置していたんです。そんな時、スタッフとのお喋りの中で「彼氏と喧嘩して、むかついてたわしを枕にして寝たら意外と快適だった」という話を聞いたんです。普通なら笑って終わりの会話なのですが、私は施術の経験から“少し強めに頭を刺激した方が快適に眠るお客さまが多い”と感じていたので、「これは!」と思い製品化に行き着きました。

WWD:“睡眠用うどん”は?ちなみに、編集部にこの製品のプレスリリースが届いた時、エイプリルフールネタかと思いました(笑)。

金田:そうなんですね、真面目に作りました(笑)。布団の全てを否定する“睡眠用うどん”として19年に発売し、話題を呼びました。発売初月に2億円の売り上げを叩き出して、現在までに累計2万5000個を売り上げています。製品の見た目は、巨大なうどんを数本並べて作ったような形状で、それを体に掛けたり、すき間に足や手、頭を挟んだりして寝るものです。開発のきっかけは、ざるうどんを食べながら「うどんの中で寝たい」と言ったスタッフの声でした。うどんを数本並べた構造をよく考えてみると、温度調整機能に優れているうえ、寝姿をいつでも自由に変えられ、“抱き枕”にも“足枕”にもなります。とても理にかなっていたので製品化に至りました。

緻密なデータ分析で夢をコントロール

WWD:“睡眠用しゃぼん玉”は?

金田:ゴールデンフィールドの最新作で、早くも2カ月の予約待ちのヒットアイテムになっています。これは一言で言うと“夢をコントロールして、見たい夢を見るための製品”です。“ジャーニー”(旅行)、“スカイ”(浮遊・飛行)、“チャイルド”(遠い昔・再会)、“ロ
マンス”などの“夢カートリッジ”があり、ランプ型の本体にセットして寝るとしゃぼん玉が膨らみ、カートリッジごとに異なった香りと色彩を放つことで理想の夢を見る確率が高まるという製品です。

WWD:開発のきっかけは?

金田:子どもが生まれたスタッフから、「子どもにしゃぼん玉を見せるとよく寝てくれる」という話を聞いたのがきっかけでした。「本当に良いのかなぁ……」と思って調べてみると、“しゃぼん玉は悪夢を軽減する”と言われていることが分かったんです。毎日数多くの施術を繰り返しているので、お客さまアンケートの中には「悪夢を見た」という回答もあります。そのことに関して「何とかいい夢に変えられないか」と考えていたことに加え、“快適な眠りのためには寝る前に見るものが重要”ということが分かっていたので、「寝る前にしゃぼん玉を見せたら変わるのでは」と思いました。

WWD:そこから検証していった?

金田:そうですね。アンケートで“施術で眠った時にどんな夢を見たか”を細かく聞くようにしました。継続しているうちに膨大なデータが蓄積され、それを分析すると“フロアによる壁色や香りの違いで、見る夢の内容に一定の傾向がある”ことが分かりました。そこで、夢をコントロールできる可能性に気付きましたね。それから壁色や香りを意図的に変え、色ごと・香りごとに見た夢の種類を検証し、夢の系統がどのように変わるかというデータを緻密に取集していきました。そうして得られた結果を、落とし込んで作った製品になっています。

WWD:データが蓄積されるほど夢のコントロールの精度が高まる。

金田:まさにそうなのですが、1つ問題があって、夢を見てくれないとデータの収集ができないし、コントロールとかの問題ではなくなってしまうんです。それで、今は夢を見てもらうための手技を研究していて、だいぶ完成に近づいてきたところです。さらに検証を重ねることで、また違った体験を提供できるようになると思います。

WWD:「悟空のきもち 旅する畳店」は?

金田:お客さまと「悟空のきもち」の施術者を、自動運行する“畳”に乗せて走り(時速3~5km)、景色を見ながら施術を受けられるサービスです。“空飛ぶじゅうたんで眠る”ことを畳で実現した企画ですね。期間限定でよみうりランドで運行して、予約枠が全て埋まるほど好評でした。今後も機会があれば、どこかで運行させたいと思っています。

WWD:考案したきっかけは?

金田:これは関西電力と損害保険ジャパン日本興亜との、“自動運転サービス”に関連した共同プロジェクトです。「自動運転の時に何をしたいですか?」という調査で第1位が「寝る」だったことから、最高の睡眠を提供するために3社で企画しました。「自動運転の最新技術と古い畳を合わせたら面白いね」という話になり、できる限り古い畳を探したところ、栃木の天明鋳物家屋から推定200年以上の江戸時代の畳を頂戴したほか、京都の平安神宮からも頂きました。

WWD:“メロンパンマスク”も驚きの製品。

金田:メロンパン専門店「メロン・ドゥ・メロン」の協力を得て開発した、メロンパン製のマスクです。「悟空のきもち」の実験会社として21年に稼働した、悟空のきもち ザ ラボの企画で、パンを愛する大学生の「パンの匂いをずっとかいでいたい」という発想から生まれた、(おそらく)世界初の食べられるマスクです。SNSでかなりバズりましたね。中身をくり抜くのは手作業で行っているので、あまり大量生産はできないのですが、海外からの注文も多いです。ただ最近は、使わずに食べてしまう方が多いようです(笑)。

WWD:なぜ大学生のアイデアを採用した?

金田:今の大学生は、コロナのせいでずっとマスク生活で、思うように集まることもできず、「せっかくの大学時代なのに……」と思っている人も多いようです。そこで、コロナに負けないユーモアを大学生と一緒に表現しました。彼らにとっては“ビジネス体験”のような感じでしたが、自分たちが作ったものが海外にまで届いて、いい経験になったと思います。

会議なし、事業計画なし、売り上げ目標なし

WWD:次から次へと面白い企画が出てくるが、ゴールデンフィールドの社内制度の特徴は?

金田:現在は社員100人ほどの会社なのですが、一般的な企業にあるべきものが、ほとんどありません。会議なし、事業計画なし、売り上げ目標なし、マニュアルなし、さらには採用面接すらありません。これは「普通の企業にあるべきものを設けないという“縛り”の中で何ができるか」という挑戦なんです。私は“縛り”にこだわっていて、例えばサッカーが面白いのって、手を使ってはいけないという“縛り”があるからだと思うんです。実はゴールデンフィールドの社員は全員女性で、悟空のきもち ザ ラボのスタッフは全員21歳以下なんです。これは“女性だけ”“21歳以下だけ”という縛りの中で、社会にもっと面白いことを提案したいという考えからです。ちなみに、売り上げ目標なないけれど、売り上げは創業以来ずっと右肩上がりです。

WWD:特にマニュアルと採用面接がないのは驚き。

金田:手技のマニュアルもありません。手技のスクールを開校しているのですが、そこでは“1度やったことはやってはいけない”という縛りを課しています。ですので、スタッフは常に新しいものを生み出しながら、手技をブラッシュアップさせていく必要があるんです。採用面接に関しては、創業当初は行っていました。でも面接では“自分を作る”人が多く、ミスマッチが起きていました。それで、思い切って面接を止めて、代わりにオリジナルの心理テストをやってもらうことにしました。“似たような嗜好を持った女の子が集まってビジネスをやる”という縛りを設けて、今では心理テストの結果をもとに採用しています。さらに言うと、退職したいときはLINEでそのことを伝えてくれるだけでオーケーです(笑)。

WWD:製品開発などは誰が行っている?

金田:挙手制で、やりたいスタッフがやる感じです。一般的な企業では、「新規開発プロジェクトを任されたら誰だってうれしい」と考えている人も多いですが、それは男性の思考ですね。女性には、新しいことをやるとプライベートが奪われるので、現状維持がいい人も多いんです。今後も“一般的な社内制度は設けない”という縛りの中で、誰も想像していないことを手掛けていきたいです。

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ビジネスウエア3.0を定義せよ! 青山商事×「ニューズピックス」のジャケット製作秘話

 青山商事(広島、青山理社長)が、ビジネスニュースメディアの「ニューズピックス(NEWSPICKS)」と協業し、リモートワーカー向けのジャケットを製作・販売することは既報の通りだ。ここではキーマン2人に製作秘話や、服以外のサービス展開について聞く。

WWD:まずは、今回のプロジェクトのハブとなった「ニューズピックス クリエーションズ」について簡単に説明いただきたい。

纓田和隆「ニューズピックス クリエーションズ」事業責任者(以下、纓田):「ニューズピックス」のユーザーと企業(青山商事)が共同で商品開発および支援を行うサービスの名称で、コンセプトワーク、マーケティング、プロモーションの各フェーズにおいて、知的でビジネス感度の高い若手ビジネスパーソンが集う「ニューズピックス」のポテンシャルを生かし、“伴走する”ことが役目だ。

WWD:「ニューズピックス」のユーザーについても聞きたい。

纓田:会員数は約600 万人で、20〜30代がボリュームゾーン。男女比は8:2だ。

平松葉月・青山商事リブランディング推進室副室長(以下、平松):この20〜30代こそ、“青山商事が取るべきで、しかし決定的に取れていない”ゾーン!……。

WWD:青山商事は2020年に発表した中期経営計画内で、“「洋服の青山」から「ビジネスの青山」へ”をスローガンに掲げた。

平松:それに合わせて同年7月、「ニューズピックス」内に「シン・シゴト服ラボ」コミュニティーを作り、“ビジネスウエア3.0を定義する”をミッションとした。“ビジネスウエア1.0”が企業や社会が定めた白シャツ&スーツスタイル、“2.0”が政府の働きかけによるクールビズやウォームビズなど。そして、“3.0”が生活者が発信する新たなビジネス着だ。働き方が激変する時代において、“ビジネスウエアとは誰のためのもので、われわれは何を提供すべきなのか?”を再考した。

WWD:「シン・シゴト服ラボ」を構成するメンバーとは?

纓田:約140人が参加し、男女比はおよそ半々だ。

WWD:彼らはあくまでボランティア(無償)でプロジェクトに協力している?

纓田:大変ありがたいことに。プロジェクト始動当初は毎週、現在は隔週でオンライン会議を重ねている。

平松:「リモートワーク下のオンライン会議で何を着る?」といったところからスタートし、「着席が基本になるから、上着の着丈は短めでよいのでは?」「パソコンを操作する際にカチカチと鳴って作業の邪魔になる袖ボタンは無くしては?」など、コミュニティーメンバーの声を反映しながら、リモートワーカーの需要に沿うジャケットに仕上げていった。

WWD:ショールカラーのデザインは意外だった。

平松:男女兼用であることが一因かもしれない。「そもそも襟は要らない」という意見もあったが、それだとどうしてもカーディガンに見えてしまう。そこで王道のノッチドを含め、何パターンかの襟型を見てもらい多数決した。

WWD:2色展開の内の1色が、鮮やかなブルーというのも驚いた。

平松:コロナ禍での進行となったため、ほぼ全てのメンバーがサンプル完成までモニター越しに生地を見ていた。素材調達責任者からは「本当にこれでいいのか?」と何度も念を押されたが、コミュニティーの総意は「ぜひ、この色で」だった。完成したサンプルを見たときは、私も「えっ、こんなに明るい色!?」と驚いたが(笑)、すでにウェブ映えを裏付けた格好でもあり、製品化を進めた。

WWD:クラウドファンディングサービス「マクアケ(MAKUAKE)」で10月5日から予約を受け付けているが、商品到着はいつ?

平松:22年2月だ。さらに4月には一般発売も予定する。

「シン・シゴト服ラボ」はコワーキングスペースも開発

WWD:「洋服の青山」の実店舗を活用したコワーキングスペースの提供も始めている。

平松:外出先からオンライン会議に参加しなくてはならないビジネスパーソンのために、20年10月に「洋服の青山 水道橋東口店」を改装して、約半分のスペースをシェアオフィス事業の「ビー・スマート(BE SMART)」として開業した。

纓田:そして21年7月、「シン・シゴト服ラボ」が主導する形で、この内の2つのブースを改装した。1つは顔色を明るく見せるリングライトや高画質のカメラ、ヘアアイロンなどを備える“ウェブ映え1アップルーム”で、もう1つは作業効率を高める横長のモニターや腰痛をケアするチェアなどを備えた“究極の集中部屋”だ。

WWD:平松副室長は「AIチャットボット スナックママよしこ」も手掛けた、青山商事の改革派筆頭だ。次なるアクションも気になる。

平松:次になすべきは店舗改革だ。どんな装置があれば、「洋服の青山」への来客を増やせるのか?例えば、緊急事態宣言が解除されて出張も復活するはずで、その際の手土産を出張先の「洋服の青山」で受け取れたら?ここで生きるのが、全国に700店舗以上を持つ「洋服の青山」のスケールメリットだ。また、急なミーティング用にスマホに入ったデータを出力して資料化できる場としたり、機密情報を破棄する際のシュレッターを配置することも考えられる。ここでは「洋服の青山」の名前が、安心感となるだろう。改革といっても、白を黒にしたいわけではない。かわゆいところに手の届くサービスを心掛け、チームと共に前進したい。

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大迫傑が語る東京オリンピックとランニング人生、思い出の一足

 「100点満点の頑張りができた」――日本の男子マラソンをけん引してきた大迫傑が、8月の東京オリンピックで現役を引退した。一時は先頭集団に話されるも、終盤に2人を抜き、6位に入賞。レース後、涙ながらに胸中を語る姿に心を打たれた人も多いだろう。

 そんな大迫が、スポーツ分野で事業を行う新法人I(アイ)を立ち上げた。アメリカやケニアでの単身練習、ユーチューブでの動画発信、大学のエリート選手を集めるトレーニングチーム“シュガーエリート(SUGER ELITE)”の発足など、枠にとらわれない活動で注目を集めてきた彼は、新会社で何を行うのか。複数メディアの合同取材に応じ、夏のレースや競技生活などを振り返った。
 

――東京オリンピックを一言で振り返ると?

大迫傑(以下、大迫):自分の集大成。インタビューで「100%出し切れた」と言った通り、本当に出し切ったレースで、完全燃焼できました。自分を肯定して競技人生を締めくくれたのは、大きな意味があります。

――引退を決めた理由は?

大迫:多くの選手にとって東京オリンピックは特別な大会でした。言い訳を作れない環境に身を置き、オールダイブするのが一番きれいだと思い、このレースでの引退を決めました。去年から一昨年くらいには考えていましたね。競技人生は、追求すればきりがありません。どこかで物語の終わりを作ることが大切だと思います。

――人生の分岐点は?

大迫:アメリカに行ったことですかね。場所はどこでもよかったけど、自分の世界から一歩踏み出せたことが財産になりました。見えてなかったものが見え始めたし、いろんな人と出会い、刺激を受けて、アウトプットできました。「こんなことが日本でできたら楽しいんじゃないか」と、新しく挑戦したいことも見つかりました。(約半年の合宿を行った)ケニアでは、より削ぎ落とされた環境でトレーニングができ、思考がクリアになり、メンタルがシンプルになりました。これは今にも生きています。

――英語は話せた?

大迫:全くしゃべれませんでした。銀行口座を作るのに5〜6回も通ったし、部屋をかりるのも大変だった。でも、だからこそ、ランニング以外でタフになれたんだと思います。練習や大会は自分の好きなことなのでやり切れるけど、その他の“やらなきゃいけないこと”でも学びが多かったです。

――海外で戦う難しさと、それを乗り越えるために必要なものは?

大迫:フラットな気持ちでいること。考え過ぎたり、計画を練り過ぎたりすると、それに沿った行動しかできません。それよりも、自分がいる場所で、今、何ができるかを考える。出たとこ勝負でもベストを出せる実力と自信を備える。こういったことが必要だと思います。

――2016年のリオ五輪後にマラソンに転向したのはなぜ?

大迫:いずれはマラソンに挑戦したいと思っていて、リオの後に「香川丸亀国際ハーフマラソン」に参加しました。そしたら意外とよく走れて、その勢いのまま「ボストンマラソン」にエントリーしました。初のマラソンだし、そもそも42.195km走れるのか不安もあったんですけど、3位に入って。「もしかしたら、僕の種目はこれかもしれない」と感じました。

――大迫選手の足元は、常に厚底シューズが支えていた。思い入れのあるシューズは?

大迫:「ナイキ(NIKE)」の“ズーム ヴェイパーフライ 4%(ZOOM VAPORFLY 4%)”。ボストンではいたシューズだし、厚底シューズが注目されるきっかけのモデル。その後もレースでは厚底ばかりだったので、ストーリーを感じますね。他には、“フライニット”のモデルが出た時は、「アッパーにニットを使うんだ」とびっくりしました。シカゴマラソンは“ズーム ヴェイパーフライ 4% フライニット(ZOOM VAPORFLY 4% FLYKNIT)”で日本記録を出せたし、結構好きでした。

――東京オリンピックで着用したシューズはどこに保管している?記録を出したシューズはしっかりと残しておくタイプ?

大迫:どこにあるかな、絶対に置いてあるんですけど……。探してみます。そういうタイプです(笑)。

――アスリートの教育やマネジメントを行う株式会社Iを立ち上げた。会社名の由来は?

大迫:SNS全盛の今は、主語が“自分”になりづらい時代です。情報であふれていて、何かを決めるときも誰かの考えに影響されています。でも、主語を“I”にすることで、人生はもっと豊かになる。そんな思いを込めています。あとは、競技や社会への“愛”、第一歩という意味も込めています。

――会社立ち上げの目的は?

大迫:僕にしかない立場や視点から、スポーツ界の価値を高めるためです。いろんなことに挑戦してきた、気づいたことがたくさんあるので、それを生かした事業を行います。まずは、ランニングプログラム“シュガーエリート”でパフォーマンスのトップ集団を作ること。アメリカやケニアの練習で「一人では到達できるレベルに限界があること」を痛感したし、大学や企業がコーチング活動の裾野を広げるのも難しい。チームの枠にとらわれず、速くなりたい人が集まり、外にいる僕らがサポートしながら切磋琢磨するコミュニティを目指します。

――アスリート教育やマネジメント以外は?

大迫:スポーツで得られるスキルや価値を幅広い人に還元し、スポーツを通じた社会貢献を目指します。スポーツで得られる経験は、スキルを磨くことだけじゃありません。例えば目標を細分化し、ステップアップするプラン設計。これはスポーツだけでなく、あらゆる“夢”に通ずる考え方です。僕自身、子どもの頃にこれを知っていたら違う生き方をしていたかもしれません。こういった一般生活にも通ずるスポーツの価値を、もっと発信していきたいです。あと、全国を回るなかで、いろいろな地域課題を知りました。スポーツやランニング文化を通して解決できることも多いと考えているので、それを実現していきたいです。

――最後に、読者にメッセージをお願いします

大迫:これからもどんどん発信していくし、陸上やスポーツを軸に活動していきます。興味のある人は、僕と一緒にスポーツと社会を盛り上げましょう。

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「デジタルの寵児」がトラベルブランド「モルン」をスタート “モノ”にこだわった理由に迫る

 

 ライフスタイル分野におけるサブスクリプション事業の企画などを手掛けるフランキーは今冬、トラベルブランド「モルン(MOLN)」をスタートする。それに先立ち、第1弾アイテムであるスーツケースのデザインイメージをティザーサイトで公開し、バーチャルトラベルコンテンツ“I Miss Traveling”を同時公開。空港ロビーや航空機での離着陸、世界のさまざまな都市を音で楽しめる体験の提供を開始した。フランキーの赤坂優代表は、2012年に国内最大級の恋愛・婚活マッチングサービス「ペアーズ(PAIRS)」をリリースし、婚活アプリブームの発端を作った“デジタルの寵児”だ。そんな赤坂代表がなぜ“モノ”にこだわり、しかもコロナ禍で逆風が吹いているトラベルジャンルなのか。ここでは、スーツケースのデザインを手掛けたデザインスタジオエスの柴⽥⽂江代表、ロゴやウェブサイトのデザインを手掛けた岡本健デザイン事務所の岡本健代表とともに話を聞いた。

「WWDJAPAN」(以下、WWD):コロナ禍でデジタルがもてはやされている中、なぜ“モノ”のブランドで、しかもトラベル関連なのか?

⾚坂優代表(以下、赤坂):インターネット界隈にいたからこそ、“モノ”がすごく恋しいというのがあります。もともと好きだったけれど、“モノ”を作る仕事には縁がなく、インターネットやスマートフォン向けのサービスを作ってきました。でもやはり“モノ”を作ってみたいという、合理性やロジックではない、「やってみたい」という気持ちを優先させた感じです。前の会社を売却し終えて、18年にアパレルブランドを、20年にバイオエタノール暖炉の会社を買収してモノ作りに触れ、その後に愛犬向けアイテムのサブスクリプションサービスのブランド、完全会員制の料理とワインのサブスクリプションサービスのブランドを立ち上げました。愛犬向けアイテムのブランドが、初めて自分がゼロから立ち上げた“モノ”の会社なのですが、実は着手したのは「モルン」の方が早く、以前からずっと作りたかったのがスーツケースなんです。

WWD:コロナの影響で旅行関連の業種は苦境に立たされているが、それでも立ち上げた理由は?

赤坂:まず着手し始めたのが20年1月くらいで、国内ではコロナの深刻さがあまり理解されていない時期でした。緊急事態宣言が出る頃になっても「これを機にライフスタイルの変化が進むことはあっても、いつかまた絶対に日常が戻って来る」と漠然と思っていたので、一時的に世の中全体として旅行ができなくなったことは気にしていませんでした。今の気持ちは、その時とはちょっと変化していて、「旅行に行けなくなった分、『行きたい』という意欲は抑圧されていたので、必ず跳ね返ってくる」と思っています。また安心して旅行に行ける世の中になることを願いつつ、そこは期待している部分でもありますね。

WWD:そもそもトラベルグッズを作ろうと思ったのはなぜ?

赤坂:シンプルに旅行が好きだからです。それに加えて、既存のスーツケースを含む旅行関連アイテムの市場に関して、「本当にこのままでいいのだろうか」と感じていたことも大きかったです。小売店のスーツケース売り場などによく行くのですが、あまりにもメーカーから生活者までの距離感が遠い印象で、メーカーがユーザーである生活者と向き合えていないというか、どちらかというと「“販売員がセールストークをしやすいかどうか”といった視点での製品作りをしているのではないかな」と感じてきました。また、購入者の目線でも「こういうスーツケースが欲しい」などと具体的に想起するイメージがありませんでした。店頭で「できるだけ軽いものがいいな」「動かしてみて静かなものを買おう」といった軸のみでの購入検討となる傾向にあり、ブランドが持つ世界観やそこで醸成されるカルチャーへの共感が購入動機となるケースが少ない状態だと思いました。そこで、自分たちでブランディングして、直接販売できる環境を作れば、今までと違うトラベルブランド作りができるかなと考えたんです。

ニューノーマル時代のトラベルブランド

WWD:その企画を実行するに当たって、2人をパートナーにしたのはどういったことから?

赤坂:僕はモノ作りが初めてなので、スーツケースを作りたいけれど、どうすればいいのか分からなかったんです。そこで協力いただきたいパートナーを探す過程で、「この人の作品がすごく好き」と感じたのが(柴⽥)⽂江さんで、時間をもらって「スーツケースを作りたいんです」と説明に伺いました。面識がないのにいきなりアポイントメントの電話をかけたので、「一体何者?」と感じられたと思います(笑)。そこから、文江さんとプロダクトのグラフィックやロゴのデザインを進めていく中で、(岡本)健さんを紹介していただきました。

WWD:柴田さんは、最初にお話を受けた時どう思った?

柴⽥⽂江代表(以下、柴田):若い男性が事務所に来て「スーツケースを作りたい」と言うので、「ああ、この人絶対分かってない」と思いました(笑)。スーツケースを作るのってすごく大変なのに、「お菓子を作るみたいに、すぐその場で作れるようなイメージでいるのかな?」みたいな(笑)。けれどお話を聞いてみると、いろいろとリサーチされていて、ほかの協力者の方々もいて、本気だなとすぐに分かりました。何より「“スーツケース”という既存の価値観に対するチャレンジがしたい」という気持ちにすごく共感しました。固定概念に対して違う選択肢を作るのは“デザイン”が得意なところですが、そう言ってくる経営者はなかなかいません。「こういうのを作って儲かる商売をしたい」など、経済的な狙いから始まることは結構あるのですが、「世の中の価値観をモノ作りを通して変えたい」という依頼は珍しく、参加したいと思いました。

WWD:岡本さんを紹介したのは?

柴田:ある程度「モルン」のイメージができてきて、赤坂さんから「グラフィック周りはどうするのがよいですか?」と相談があったとき、私は岡本さんの仕事が好きで「いつかチャンスがあったら」と思っていたので推薦しました。

岡本健代表(以下、岡本):僕も柴田さんと同じで「スーツケース作りは大変」という印象を持っていましたが、プロダクトを柴田さんがデザインされるということで、生半可なモノは作らないだろうと分かりましたし、何より柴田さんのクリエイティブを間近で見られる貴重な機会が嬉しくて参加に至りました。

WWD:なぜスーツケース作りは大変?

柴田:例えば部品が多岐にわたっていて、それぞれ製造している工場が違うケースが多いので生産管理が大変、などといったハードルがあります。新規で作るとなると、私の経験上ではかなり難易度が高いプロダクトだと感じていました。

赤坂:プロジェクトを進めていくうちに、スーツケースを作った経験がある人がチームにいないと難易度がさらに高まると分かってきて、その道に長けたゼロワンデザインの田中信吉代表にもチームに参加いただきました。中国の製造工場とつないでくださるなど、本当に助かりました。

岡本:新ブランドを立ち上げてゼロからイチを作る際には、開発コストも含め取り掛かりやすいモノから着手しがちですが、今回のようにいきなり難易度の高いプロダクトに取り組む姿勢はとてもワクワクしました。僕が参加したタイミングでは、CGなどである程度プロダクトの設計が仕上がっており、すでに柴田さんが「モルン」の世界観を定着してくれていたので、ロゴなどのデザインにも取り掛かりやすかったです。

表参道にフラッグシップショップをオープン

WWD:デザインはどう決めていった?

赤坂:デザインは正直、お2人にお任せした部分が大きかったです。僕がゴールに設定したのは、旅行に行こうと思った時に、最初にイメージしてもらえるブランドです。そのためには、機能がしっかりしていて、買い求めやすい価格で、なおかつデザイン性の高さが必要。ですので、僕が理想とする機能を伝えて、そこからデザインいただきました。

柴田:赤坂さんへのヒアリングはとても細かく行いました。例えば「PCを持ち運びたい」という要望をもらった時、「ビジネスバッグみたいになってしまい、うまくまとまらない」と伝えたのですが、「そこは譲れない」という話になりました。でもよく考えて、それは新しいなと思ったんです。旅って昔からある非日常で、デジタルではないけれど、私たちの生活の中でもはやデジタルは切り離せず、懐かしさやノスタルジーの気持ちの横にはPCがある。それがフランキーの求めている普遍性や新しさ、懐かしさなのかなと思うようになりました。それで、PCを入れるポケットを設けたのですが、まるでポケットがないように見えるデザインにしました。

WWD:確かにシンプルに見える。

柴田:でもそのシンプルが一番大変なんです。シンプルに見せるために、物理的にいろいろなものを内包しないといけない。それが難しかったですね。その一方で、スーツケースは便利だけれど、“旅”という点からすると味気ない感じもしました。旅には“鞄”を持って行くのがかっこいいし、絵本などでも旅のお供は鞄で描かれるケースが多い。そこで、鞄のしっとりした感じがほしくて、PCのポケット部分は合皮でレザーの質感を演出しました。

WWD:カラーリングのこだわりは?

柴田:地球を旅するイメージで、地球の色にしたいと思いました。赤土のチャコールや、石のライトグレーなどですね。

WWD:ロゴはどういう発想から作った?

岡本:スウェーデン語で“雲”を意味する「moln」というブランド名を体現するべく、まずは雲についてリサーチしたり、思いを巡らせたりしました。そして旅と雲の関係性について考えていたのですが、スーツケースを持って旅する時って、飛行機に乗ることが多いですよね。飛行機で目的地に向かう途中、飛行機は1度雲の上まで上昇し、雲の上でのフライトを楽しんだ後、再び雲の下に降りると目的地の街並みが見えていたり……。旅の道中には必ず雲が介在しているので、その情景をロゴとして形にできないかと思い、「moln」のアルファベットが雲で見え隠れしている様子を表したロゴマークを制作しました。プロダクトには、「moln」の文字が雲の上と雲の下に存在している2種のロゴマークが刻印されています。

WWD:「モルン」の店舗もオープンするそうだが、それも含めた今後の予定は?

赤坂:スーツケースは、実物を見て購入したいという方も多いので、今冬に東京の表参道エリアにフラッグシップショップをオープンする予定です。店舗設計はケース・リアルの二俣公一代表に手掛けていただき、「モルン」らしい空間を表現しています。今後は、アイテム数を増やしていきたいですね。スーツケースだけで旅行に行けるわけではないので、ネックピローやアイマスクといった必要なモノをラインアップして、“旅”といえば一番に思い浮かべてもらえるようなブランドになりたいと思っています。

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医学×美学×睡眠学の専門家と共同開発 「セラティス バイ ミクシム」で新・夜のうねりケア

 「アンドハニー」や「ミクシムシリーズ」など数多くのヘアケアアイテムを企画・開発するヴィークレアは今秋、“夜の寝ぐせ・うねりケア”をコンセプトとした新ヘアケアシリーズ「セラティス バイ ミクシム(THERATIS by mixim 以下、セラティス)」を登場させた。同シリーズは医学・美学・睡眠学の3人の専門家とともに開発を行った、ナイトケアに着目して寝ぐせやうねりを抑制する製品。そこで今回、美学のスペシャリストとして開発に携わった内田聡一郎「レコ(LECO)」代表と、寝ぐせやうねりなど髪の悩みを抱えているという、モデルの菅沼ゆりと松本優が鼎談を実施。オリジナルの“寝ぐせコントロール処方”や、効果だけではない使用を続けることで得られたことについても話を聞いた。

新習慣
「夜の寝ぐせ・うねりケア」を提案

WWD:新しい美容習慣「夜の寝ぐせ・うねりケア」を提案する「セラティス」の特徴は?

内田聡一郎「レコ」代表(以下、内田):同製品には寝ぐせを抑制するために3つの成分が入っており、うねり抑制成分※1、枕などによる寝ている間の摩擦ダメージを軽減する成分※2、就寝時に髪が蒸れて寝ぐせができてしまうのを防ぐための水分コントロール成分※3です。さらに、ナノ化した補修成分※4が寝ている間に髪にしみ込んでダメージを補修してくれます。

菅沼ゆり(以下、菅沼):髪質が細くて柔らかいので、普段から広がりやダメージが気になっていました。けれど「セラティス」を使ってからは、軽くアイロンをしただけでもストレートになるような、髪のまとまりが良くなったと感じましたね。

松本優(以下、松本):私は約3カ月前に初めて黒髪をブリーチしてハイトーンにし、そこから髪の傷みやうねりがさらにひどくなっていました。「セラティス」を使ってから、ドライヤーだけでもうねりが収まりやすくなったように感じます。

※1 γ-ドコサラクトン(補修)
※2 加水分解コンキオリン(保湿)
※3 加水分解ハトムギ種子(保湿)
※4 加水分解乳タンパク(補修)

使うほどに効果を実感

WWD:内田さんのこだわりポイントは?

内田:中身はもちろん、パッケージにもブランドのこだわりが感じられます。特に若年層は、バスルームに置いておいても“絵になること”が大事。だからこそバスルームでも“映える”ものに仕上がっていると思います。あらゆるヘアケア製品があふれている中で、一番自分が使いたいと思える製品になりましたね。また、サロンのお客さまからも、寝ぐせやうねりのデイリーケアは直結した悩みとしてよくあげられます。今回は女性視点に立ち、そんなデイリーの髪悩みケアに特化させて朝のセットしやすさも重視しました。

菅沼:ヘアオイルは特にお気に入りです。寝る前に髪の保湿として使うのも好きですが、朝にスタイリング剤として毛先に使用すればまとまりが出ます。

松本:ヘアパックも髪が保湿されてさらさらになりますよね。毎日使うと成分が浸透して髪のまとまりが良くなったと感じます。ドラッグストアやバラエティーショップなど手に取りやすい場所で扱っている点もうれしいです。

内田:シャンプーやトリートメントは使用するほど効果が分かると思います。最低でも3週間は使い続けて欲しいですね。ヘアオイルはドライヤー前に使うと髪に成分が浸透されて保湿などの効果を感じると思いますよ。

松本:スキンケアと同じですね、これからも使い続けたいと思いました。家で簡単に美容室と同じケアができるのは、本当に便利な製品だと思いました!そして“朝のセットしやすさ”も重視しているアイテムなだけあり、うねりを直すことが少なくなって朝のストレスがすごく減りました。

菅沼:これまでは寝ぐせを直すのに、私は30分以上かかっていました。ここまでくるとむしろ、直す気もなかなかおきないくらい。「セラティス」を使うようになってからは、朝にすぐ寝ぐせを直せるようになり、今はノンストレスですね。ストレス軽減につながったのが一番うれしいです!

スペシャリストのこだわりを紹介

 「セラティス」は、医学・美学・睡眠学・の専門家3人と共同開発。各分野の視点から、髪の悩みである寝ぐせやうねりの抑制に着目した処方設計や成分配合を行った。

※5 基剤を除く、水を含む
※6 水溶性コラーゲン(補修)
※7 セラミドNG(補修)

“うるサラ”な仕上がりに導く
「セラティス」

 「セラティス」は、仕事にもプライベートにも忙しい20代後半の女性がターゲット。そんな時間も気持ちも余裕がなくなりがちな忙しい朝の時間を、少しでもストレス軽減できるようにと開発された。

 同製品は、髪の補修に特化したナチュラルヘアケアブランド「ミクシム(mixim)」の新シリーズ。未来の美髪をつくる&予防するダメージケア「ミクシムサプリ(mixim suppli)」、高機能オーガニックヘアケア「ミクシムポーション(mixim POTION)」、自然科学から生まれた機能性ナチュラルヘアケア「ミクシムパフューム(mixim Perfume)」などを展開している。一人一人にぴったりの「ミクシム」がきっと見つかるはずだ。

問い合わせ先
ヴィークレア
03-6804-5033

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豊島の21年6月期は2期連続の最高益更新も、22年は一転減益へ 豊島社長「今期は4重苦」

 大手繊維商社の豊島(非上場)は7日、2021年6月期決算は売上高が前期比9.6%減の1814億円、営業利益が同25.7%増の77億円、経常利益が同18.2%増の90億円、純利益が39億円(前期は7億6500万円の赤字)だった。営業利益と経常利益は2期連続で過去最高を更新した。売上総利益率は14.2%で、前期に比べ2.4ポイント改善。コロナ関連の医療用品や主力のOEM・ODM事業が好調が押し上げた。減収の主な要因は綿花取引からの戦略的な撤退で、素材全体では220億円の減収要因になった。

 22年6月期の目標は売上高が1800億円、経常利益が70億円。同社は年1億着とも言われる物量を供給するアパレルOEM・ODMの最大手グループの一角だが、豊島半七社長は「緊急事態宣言の解除など小売りには明るい材料が出ているものの、足元では停電やコンテナ不足による出荷遅れなどの物流の混乱、ASEANでのロックダウンの影響、綿花を始めとした原料高、円安など、サプライヤーは4重苦5重苦のような状態だ。全般的にアパレル市況は依然として苦しく、値上げが通っていない。今期(22年6月期)は大変厳しい」という見通しを示す。決算発表での豊島社長とメディアの主な一問一答は以下の通り。

−1年を振り返って。

豊島半七社長(以下、豊島):コロナが20カ月近く続いて、日本のアパレル産業、特に営業時間の短縮や人流の減少などで小売業にダメージが大きかった。サプライヤーであるわれわれも原材料費の高騰や、短納期対応のためのエアー(航空便)が増えて経費増を強いられたものの、医療ガウンなどのコロナ特需や不採算部門の縮小などで増益になった。現場の社員はよく頑張ったとは思うが、一方で在宅ワークが当たり前になる中で、どこかに「それでもなんとかなる」ようなムードが出て、仕事がどこか雑になっている。エアーの増加は、そうした緩みによるものだ。

−22年6月期は減益の計画。理由は?

豊島:足元の状況は大変厳しい、というのが率直な感想だ。停電やコンテナ不足による出荷遅れなどの物流の混乱、ASEANでのロックダウンの影響、綿花を始めとした原料高、円安など、サプライヤーにとっては4重苦5重苦のような状態だ。それでも市場全体が値上げを受け入れる地合いではなく、コスト増はわれわれが負担するような形になっている。(減益は)前期まであったコロナ特需もなくなることも一因だ。

−納入単価は?

豊島:原燃料高などに加えて、トレーサビリティの確保やカーボンゼロに向けた取り組みの強化をしているが、それもコスト増につながっている。それでも結果として全般的に納入単価を押し上げることにはなっていない。それだけ市況が厳しい。ASEANのロックダウンに加え、業界全体が小ロット短納期に再び以降しつつあり、中国での生産比率が再び高まっているのも不安材料だ。コロナ禍以前に戦略的にASEANシフトを進め、一時は当社の生産比率はASEAN生産が全体の2割くらいまで上昇したが、現在はまた1割近くにまで減少している。

−15年前からオーガニックコットン素材「オーガビッツ」に取り組むなど、サステナビリティを業界の先頭に立って推進してきた。課題は?

豊島:トレーサビルなオーガニックコットン「トゥルーコットン」は取引先から高い評価を得て、順調に取扱いが増加している。ただ、「オーガビッツ」も含め、素材の取扱いがコットンに偏っている。素材全体のシェアは圧倒的にポリエステルやナイロンなどの化学繊維が多いのだから、社としてはその部分を強化する必要がある。

−こちらも業界の先駆けだったスタートアップへのCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の状況は?

豊島:この1年ではアディダスの創業家によるスポーツテック向けのファンドであるリードスポーツリミテッド(leAD SPORTS LTD.)や、そのリードとイスラエルのベンチャーキャピタルであるアワークラウド(OurCrowd)の設立したアドバンテージスポーテックファンド(Advantege Sports Tech Fund)、日本のフィットネスベンチャーのテンシャル(TENTIAL)、リハビリ介護のクラウドソフト開発のリハブフォージャパン(Rehab for JAPAN)など5社に出資した。いずれも少額出資でああるものの合計で23社。それなりの規模感にはなっている。年内は近々発表予定のグッドバイブスオンリーを含め2社への出資を予定している。

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「日本発のラグジュアリーを作る」 羽田空港が山本寛斎事務所と目指す地方創生

 羽田空港は来春、日本各地の商材を世界に発信するラグジュアリーブランド「ジャパンマスタリーコレクション(JAPAN MASTERY COLLECTION以下、JMC)」を本格始動させる。地方の優れた技術や素材に裏打ちされた商品を集めるほか、「カンサイ ヤマモト(KANSAI YAMAMOTO)」を運営する山本寛斎事務所のサポートを受け、ファッションや日本のポップカルチャーなどを掛け合わせたオリジナル商品も提案する。同時に、同ブランドに特化した売り場を羽田空港ターミナルに設けるほか、ECサイトの運営も予定する。中国から欧米まで広く訪日客を取り込む。

 同プロジェクトをリードしてきたのは、羽田未来総合研究所の大西洋社長だ。三越伊勢丹ホールディングス社長を経て、2018年に現職についた大西社長は、地方創生や文化・アートに可能性を見出し、小売りの新たな価値想像を目指してきた。パンデミックで経済全体が低迷する今、地方にフォーカスする目的とは。大西社長と、高谷健太・山本寛斎事務所代表取締役に聞いた。

WWD:地方にフォーカスしたブランドを作る目的は?

大西洋・羽田未来総合研究所社長(以下、大西):地方は日本のGDPの半分を稼いでいる。ここが伸びないと日本の経済は良くならない。半導体など、アメリカや中国に勝てる分野もあるが、自動車といった分野はダウントレンドになり、戦後のようにファイティングする力はどんどんなくなっていく。競争ではなく、日本にしかない産業を生み出すべきだ。

WWD:その可能性の一つが、地方だと考えている。

大西:その通り。地方には歴史と伝統に育まれた技術力や匠の技、職人の技が無数に眠る。それを産業化し、経済循環を作り、日本を盛り上げたい。

WWD:いわゆる伝統工芸を集めるだけでなく、ファッションMDも重視する。その理由は?

大西:長い小売経験から、「日本発のラグジュアリーブランドを作りたい」という思いがある。フランスやイタリア、イギリスのラグジュアリーには、日本のテキスタイルや素材が使われている。デニム生地はその代表だろう。それなのに日本発のブランドが出来ないのは、ブランディングをやる人がいなかったから。ファッションの歴史や文化が関係するとはいえ、多くのラグジュアリーブランドもさかのぼればファクトリーブランドだった。日本でもラグジュアリーは作れるはずだ。兼ねてから付き合いがある山本寛斎事務所にブランドの発掘やコンサルティングなどを手伝っていただきながら、ジャパン発のラグジュアリーブランドを目指したい。

WWD:山本寛斎事務所にサポートを依頼した理由は?

大西:寛斎さんは早くからヨーロッパに進出し、最後はデザイナーの域を超えて活躍した。寛斎さんは亡くなったが、チームには彼の思いが色濃く継がれ、地域とのつながりを何よりも大切にしている。その姿勢に強く共感した。

WWD:実際にさまざまな産地を訪れると、改めて日本や地方の底力を感じる?

高谷健太・山本寛斎事務所代表取締役(以下、高谷):ものすごいパワーを持っている。しかし、私たちが素晴らしいと思っても、相手はキョトンとしていることが多い。地方の素材を産業化するには、まずは彼らが自分たちの技術力の高さ、アイテムの完成度の高さを誇り、自信を持ってもらうことが大事だ。

WWD:自信を持たせるため、具体的にどんなサポートを行う?

高谷:強く意識しているのは、普段はあまり表舞台に立たない人たちを、どう主役にして、世界にチャレンジする環境を整えるかだ。例えば日本が誇るレザーの産地の姫路では、彼らの素材の魅力をミラノの見本市でプレゼンし、大英博物館でそのアイテムを紹介した。さらに、「この街の技術が世界中の人々に紹介され、評価された」という事実を伝えるため、JR姫路駅にその功績を展示した。こういった取り組みが、地域の誇りと自信、やりがいとエネルギーになり、未来につながる。若い人は、地元の産業について詳しく知らない。地元への関心を喚起するのも、自分たちの役目だと思う。

大西:同感だ。それに加えて、作り手は自分たちの商材を良いと自負していても、プロモーションやPR面で苦労したり、どうすれば技術や素材がバリューアップするか分からなかったりすることも多い。中には、現状で十分だと考える人もいるし、外の人がやって来て、プロジェクトを行うことに抵抗感を抱く人もいる。いろんな背景はあるが、“世界が認める素材と技術力”が各地に存在するのは事実。それを海外に発信しない手はないと考えている。羽田未来総合研究所はこれまでも地方からブランディングを受託しており、さまざまな地域との接点もできている。さらに事例を積み重ねて、新しい技術や素材を見つけていく。

WWD:どんな商材を集める?

大西:これまでの小売りでは大きく衣食住のカテゴリーを設けていたが、今はそういう時代じゃない。“地方独特の生活文化”という大きなコンセプトのもと、各地で生まれたモノを隔てなく扱いたい。陶器やテキスタイルなど、そのまま提案できるものはそのまま扱うし、新しいプロダクトに落とし込むこともやる。ファッションやアニメ、キャラクターなど、掛け算しながらやっていく。

WWD:ビューティに関しては?

大西:もちろんビューティも入る。2020年3月に新しい国際線ターミナルを作り、「ジャパンビューティ」という免税エリアを開いた。地方発のビューティブランドを10個ほど集めた売り場だった。新型コロナウイルスの影響で、開業から1週間で営業停止を余儀なくされたが、地方に眠る素材はたくさんあることが分かった。「JMC」でも継続し、ビューティコーナーを作る。今注目しているのは、民間と自治体が協働し、コスメブランドを開発する事業で、すでに多くのトライアルを実践している。そういった面白い取り組みも紹介していきたい。

WWD:これまでも地方にフォーカスした売り場はあった?

大西:免税エリアにポップアップを設けて、2年間、仮説・検証を実施した。通常、訪日客の55〜60%が中国の方たちで、ヨーロッパは20数%にとどまる。ヨーロッパの方はシェアが低く、大きなポテンシャルを秘めるが、認められるには工夫が必要だ。中国人は南部鉄器を置くと、面白がって買ってくれる。しかしヨーロッパの人は、ユニークなだけでは買ってくれない。それを自宅の部屋に置いた時、自分たちの生活がどう変化するか、豊かになるかが購買の決め手になる。そしてトライアルした結果、目標としていた売上全体の40%をヨーロッパが占めるまで成長した。

WWD:免税の可能性はまだある。

大西:そうだ。そもそも訪日客はピークで4000万人近くまで上ったが、4.5兆円しかお金を落としていなかった。これは日本のGDPの1%に過ぎない。訪日客を増やすことも大切だが、一人一人がもっと消費したくなる商材やサービスを整え、10兆〜15兆円規模に拡大する方が重要になる。良いものがあるのに、そのプロモーションが奏功していない。重ねてきた仮説検証をターミナルのリアル店舗やECにてカタチにし、そのそのきっかけになればいい。

WWD:今、地方創生に取り組む意義は?

大西:新型コロナウイルスで生活スタイルがガラリと変わり、地方の魅力が見直されておる。移住とまではいかなくとも、週末だけ地方に滞在したり、都心の職場から離れた場所でリモート作業する人もいる。これは小売りにも追い風になる。我々は東京に拠点があり、小売りの“場”を持つ。

高谷:羽田は、地方商材を扱うのに素晴らしい場所だと思っている。東京の玄関口であり、ここに地方から新鮮なモノがどこよりも早く集まる。そして、世界各国に届けることができる。ファッションではショーのことをランウエイと呼び、飛行機の滑走路も“ランウエイ”と呼ばれる。地方から世界に発信するランウエイになるべく、その一翼を担いたい。

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SNSで話題沸騰の人気コスメ「ミース」、経験も広告費もゼロ、なのに2年半で注文数は月1万超えの「ファン育成術」

 美肌研究家のソンミが2019年3月に立ち上げて以降、成長を続ける「ミース(MEETH)」。ソンミが自己資金300万円を元手に、1商品からスタートし、現在は12SKUまで拡大。阪急うめだ本店、 ジェイアール名古屋タカシマヤなど百貨店でのポップアップイベントではファンが殺到。10月6日からは伊勢丹新宿本店で2度目のポップアップを開催する。最初の2年間は広告費0円で成長してきたというが、SNSではたびたびアイテムが話題となる。「ミース」はどのようにバズ商品を生んでいるのか。

WWD:立ち上げ2年半でどのくらい規模は拡大した?

ソンミ:私1人で始めた会社は23人まで増え、消費数も拡大した。ユーザーも口コミを通じて増えており、月に1万件以上は注文を受けている。商品はポップアップ以外では全てオンラインで販売しており、昨秋オープンした表参道の旗艦店は体験の場としている。また今夏には韓国に研究所を作り、商品展開もスタートした。中国、韓国、台湾、シンガポールでも販売しており、アジアを代表するブランドに育てたいと考えている。

WWD:特に人気のある商品は?

ソンミ:“モアリッチエッセンシャルローション”は初期に出した商品で、「ミース」の名刺代わりの1本。無名の状態からスキンケアラインを揃えるのは難しいと考え、美容液なしでも満足できる化粧水として考案した。品質が良いことが最大の宣伝広告だと考えている。今はまつ毛美容液“ルルビューラッシュ”を販売しているが、これは初めてファンの要望から作ったものだ。「ミース」は私がほしいと思える商品を作るのが基本で、秋には美容と健康の観点から「アンドミール(&MEAL)」を立ち上げる。カロリーやPFCバランス、塩分、食物繊維などに配慮した食事で、最初は7日間のスープセットを販売予定だ。

WWD:なぜ美容ブランドとして食品を扱うのか

ソンミ:昨年「ミース60日間チャレンジ」というプロモーションを実施した。一般の方に60日間ブランド製品を使用してもらい、その変化を映像などで公開するもの。商品力に自信があるので実施したが、中には肌が荒れる人もいた。ヒアリングしたところ、スキンケアはできていても食生活が乱れていて、食事もアドバイスできるようにもっと学ぼうと栄養学の専門学校に通ったのがきっかけ。

WWD:学校に通ったのは、新規事業が決まっていたから?

ソンミ:いえ、食品を出そうと考えたのは学校に通ってから。学校にはドクターなど各分野のプロも通っていて、みんな「女性を輝かせるにはどうしたらいいか」という課題に真剣に向き合っている人たちだった。そこで、プロの人たちと協業して「アンドミール」を立ち上げることにした。サプリメントは補助的なもので、根本的な解決を目指したいので食事を作った。「アンドミール」のために、これまで貯めてきた資金を注ぎ込み自社工場も立ち上げた。

WWD:これも自己資金のみで?

ソンミ:出資などは受けていないので、大変だった。「アンドミール」は3つ星レストランのシェフと作ったレシピなので味も自信がある。OEMで試作品を作ったが、その再現が難しかった。これまで妥協をしないもの作りを続けてきた「ミース」が作るなら、ここまでやらなきゃだめだと工場を建てた。そのため大量生産はむずかしく、初期は数量を絞って販売する予定だ。

ギフティング・広告なし、無名状態から1万円超えフェイスパックはどう売れた?

WWD:今では広告投資も行うようになったが、どういう広告を出すのか

ソンミ:これまで広告を出さずに売ってきて、「代わりに私たちが拡散します」と口コミをしてくれるファンの方もいた。なので広告を出す際は前もってファンの方たちに「もっと大きくなるために、これからは広告もやります」と伝えるインスタライブを配信した。今も広告は必要な分だけ。最初に出したのはタクシーの車内広告。タクシー広告はインパクトが強く、客層が近い。掲出期間は短かったが、いまだに反響をもらう。またJウェーブ(J WAVE)の番組「アクロスザスカイ(ACROSS THE SKY)」に協賛する。この番組はグローバルな感性や感覚を磨くというテーマで、リスナーは客層が近く、内容も「ミース」が注力するSDGsにも近い。ブランドのユーザーの方にも届けたかった。

WWD:化粧品広告っぽくない場所に出している

ソンミ:広告だけでなく、これまで業界のセオリー通りにやってきたことは何もないと思う。流行ってるものや鉄板の手法はやらない。ギフティングも今まで一切してこなかった。「どうしても使いたい、欲しい」という気持ちで使ってもらい、自発的に口コミして欲しい。それに原価をかけすぎて広告費やギフティングにまわすお金がない、あげられないというのも理由(笑)。

WWD:そうすると、ソンミ代表の発信と自然発生的な口コミだけで売れている?

ソンミ:最初に販売した炭酸ガスパックの“モアリッチパック”は7日間で1万4960円と高額な商品。高額だが、自分のインスタグラムで毎日ライブ配信をして商品について発信し続けるうち、ユーザーの方が「おうちでできる美容医療のようだ」と口コミしてくださり、広まっていった。インスタライブは最初は十数人しか見ていなかったが一生懸命継続し、最近までほぼ毎日実施していた。内容は商品の話だけでなく、美容ハウツーから人生相談まで幅広い質問に答えている。最近ではインスタライブのコメント欄でファン同士の交流が発生し、私抜きでも会話が盛り上がってる(笑)。また私だけでなくスタッフのインスタグラム発信も力を入れている。

WWD:スタッフはインスタグラムでどういった発信を行う?

ソンミ:「ミース」のスタッフはほぼ全員が元々ブランド製品の愛用者で、ユーザー目線で発信できる強みがある。スタッフは個人のアカウントを持ち、発信は義務化している。月1度はスタッフと“インスタ個人面談”を行う。どんな投稿に反応があったか、どんな人の投稿が好きか、次はどう発信するか…私は何事も分析をするタイプで、スタッフにも考える癖をつけるよう指導する。

WWD:普段はどういったことを分析している?

ソンミ:毎月購入者のデータには全て目を通す。そしてこの人はどのくらいのスパンで購入しているのか、この期間なぜ買わなかったのかなどを考えている。企画出しでも1つの答えだけ持ってくるのではなく、私は50でも100でも考えてくる。自分で仕事を作れるようにすることが大事だとスタッフにも伝えている。

WWD:ファンをとても大事にしているブランドだが、ファンとはどういったことを行う?

ソンミ:「ミース」はみんなで育てるブランド。ブランド2周年の際にはオンラインで全国のファンと交流し、先日は「商品企画プレゼン会」をオンラインで行った。ファンが欲しい商品をプレゼンするというもので、中には資料を製作する方もいるなど熱意が高かった。そのうち1人の方とは月1でミーティングを行い、開発を進めている。

WWD:今後はどういう発信をしていく?

ソンミ:元々私自身がコンプレックスをなくすのではなく、美肌という長所を伸ばすことで人生を変えた。その成功体験がブランドになっており、「美肌は最高のジュエリー」というコピーを大事に、毎日伝えている。コピーに惹かれるといってくださる方も多い。またこれまで誰かを立てて宣伝することもしてこなかった。誰かが使っているから欲しい、という人もいれば、誰かのイメージがついているから嫌だという人もいる。今後は私のブランドという見え方からも脱却し、1ブランドとして発展していきたいと思っている。

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ナイキが考える持続可能性をサステナビリティ責任者に聞く 複雑なサプライチェーンの対応策 【後編】

 ナイキ(NIKE)は、1990年代に企業活動におけるサステナビリティに取り組み始め、2000年代に入ると情報公開を始め、05年にはサプライチェーンを公開した。これには、90年代に同社が製造を委託する工場での児童労働が明らかになり、不買運動につながったという経緯がある。サプライチェーンを把握しておくことは企業の責任であると同時にリスクを回避することができるともいえる。複雑なサプライチェーンを把握するのは容易ではないが、ナイキはどのように対応してきたのか。ノエル・キンダー(Noel Kinder)チーフ・サステナビリティ・オフィサーに聞く。

WWD:アパレルやシューズのサプライチェーンの複雑さへの対応について教えてください。ナイキは透明性を確立していますが、どのように確立したのでしょうか。

ノエル・キンダー=チーフ・サステナビリティ・オフィサー(以下、キンダー):グローバル規模で非常に複雑なバリューチェーンの中で、私たちはシステムの変革に注力しています。そして、業界の中でも大手の企業として、より良いことをし、より良い規模で、そしてより良くなるために、自らの役割を果たすことを決意しています。透明性と説明責任から始まり、メーカーやサプライヤーのコンプライアンスを達成するために、一連の厳しい基準を策定しています。

 また、科学的根拠に基づく大胆な目標を設定し、25年までに私たちと業界全体がより持続可能なものへと移行することを目指しています。例えば、所有または運営している施設で再生可能エネルギーを100%使用することや、主要な事業においてエネルギー使用量とCO2排出量を単位当たり25%削減すること、デザインや業務効率の改善により製造、流通、本社、包装において廃棄物を単位当たり10%削減することなどが挙げられます。また、繊維の染色・加工における1kg当たりの淡水使用量を25%削減することを目標としています。当社の綿花サプライチェーン内の水不足に苦しむ生態系やコミュニティの長期的な回復力を支援する流域プロジェクトのポートフォリオを通じて、すでに130億リットルの水量が回復しています。

WWD:複雑なサプライチェーンの把握と改善に向けた取り組みは、一社だけではどうにもならない部分もあると感じます。

キンダー:ええ。政府間、業界間、地域のステークホルダーとの強力な連携と理解も大切で、私たちはこの分野でも提携しています。 20年5月、私たちはサプライヤー気候行動プログラム(SCAP)を開始しました。このプログラムに参加することで、サプライヤーはナイキ関連の生産以外でも排出量を削減することを約束し、業界全体の大幅な排出量削減に貢献することになります。

 私たちは、エシカルで責任ある製造を行い、製品を製造する全ての人々が尊重され、大切にされることに深くコミットしていることを忘れてはなりません。 そのために、25年までに、戦略的サプライヤーの100%が、製品を作る人々のために、世界水準の安全で健康的な職場を構築するという目標も設定しています。 また、サプライチェーンにおける女性の活躍の場をいかにして増やすかについても検討しています。 サプライヤーの施設で働く人々の約70%は女性ですが、その割合は職位が上がるにつれて減少します。そこで私たちは、2025年までに100%の戦略的サプライヤーが、施設で働く女性の就業機会へのアクセスと上昇志向を高めるという目標を設定しました。

WWD:ナイキが考える環境に配慮したプロダクトデザインとは。

キンダー:私たちの地球を守ることは、多様で革新的なチームが協力して解決策をまとめ、引き出すことから始まります。私たちには、よりサステナブルな新製品を生み出し、インパクトを与える責任があります。そのため、サステナビリティはデザインプロセス全体に組み込まれています。

 最初から廃棄物を出さないようにデザインし、廃材を新しい製品に変え、循環型のソリューションを拡大しています。また、業界をリードするマテリアル・サステナビリティ・インデックス(サステナブルアパレル連合が運用する環境負荷を評価するツール。ナイキはこれまでフットウエアサステナビリティインデックスを用いており、このインデックスは業界標準に遅れをとっていたことがわかったという。また以前は素材の種類や工程ごとに具体的な炭素削減目標を設定しておらず、サプライチェーンにまで目標が及ぶことはほとんどなかった)を使用し、デジタルツールを活用してチームを教育し、より持続可能な意思決定ができるようにしています。

WWD:現在重視していることは?

キンダー:スポーツはナイキの中核であり、私たちの活動全ての中心です。残念ながら、気候変動はスポーツにとって本質的な脅威です。だからこそ、サステナビリティは私たちのブランドとビジネスへの取り組み方の根幹にあるのです。 持続可能性は、大きな問題を提起することで革新的な解決策を導き出し、可能性を再定義するのに役立ちます。 しかし、これは単に「正しい」ことではなく、より効率的な戦略がナイキの成長を促進するため、長期的な価値を生み出します。

 今日、私たちは重要な瞬間を迎えています。2020年目標の章を閉じ、私たちがどこにいたか、どこで成功し、どこでつまずいたか(CO2削減目標は未達)を振り返ることで、次の章を開き、ゼロカーボン、ゼロウェイストの未来というビジョンを達成するために、新たな25年目標に向けて学び、進化していきます。この目標は、私たちの活動を支えるものであると同時に、私たちに責任を持たせ、私たちが達成できることを数値化するものでもあります。

WWD:ナイキはメッセージを生活者に伝えることに最も長けている企業の一つだと感じます。サステナビリティをどのように消費者に伝えていきますか?

キンダー:今、私が最も興奮しているのは、消費者がこの運動に参加し、変化の一部になりたいと思っていることです。私たちは、スポーツの力を使って世界を前進させることができると信じています。そのためには、持続可能性を実現し、真のインパクトを与えるためのハードワークを行うと同時に、製品やサービス、体験を通じて、消費者により責任ある選択をしてもらうこと、あるいは製品のライフサイクルの最後にある廃棄物の削減に貢献することが重要です。私たちは、人々が私たちのブランドに寄せる情熱と、私たちが地球、人々、コミュニティのために、より持続可能な未来を再構築し、創造することに貢献できる文化的影響を理解しています。

WWD:社内における多様性をどういう形で実現していますか?また、社員のモチベーション向上やスタッフとの意識共有や教育はどのように行っていますか

キンダー:私たちの社員は、ソリューションの創造と運用にとても情熱を持っています。19年には「Move to Zero Employee Challenge」を開始しました。これは、ナイキがスポーツの未来を守るためのアイデアを社員が提出し、そのアイデアを実現するための資金やメンターシップを獲得する機会です。製品作りから物流、リテールまで、さまざまな分野を対象にし、世界中から信じられないようなアイデアが寄せられました。私たちはそれらの多くを実行に移しています。例えば、余剰原材料のデータベースの作成、製品発売までの航空貨物への依存度の低減、ニューヨークオフィスの照明を調整するための占有センサーの設置などです。私たちは、無駄を省き、従業員を教育し、行動を促すことに注力しています。今後も、循環型社会、再利用、使い捨て廃棄物の排除を体現した空間を創造し、運営していきたいと考えています。

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ナイキが考える持続可能性をサステナビリティ責任者に聞く 複雑なサプライチェーンの対応策 【後編】

 ナイキ(NIKE)は、1990年代に企業活動におけるサステナビリティに取り組み始め、2000年代に入ると情報公開を始め、05年にはサプライチェーンを公開した。これには、90年代に同社が製造を委託する工場での児童労働が明らかになり、不買運動につながったという経緯がある。サプライチェーンを把握しておくことは企業の責任であると同時にリスクを回避することができるともいえる。複雑なサプライチェーンを把握するのは容易ではないが、ナイキはどのように対応してきたのか。ノエル・キンダー(Noel Kinder)チーフ・サステナビリティ・オフィサーに聞く。

WWD:アパレルやシューズのサプライチェーンの複雑さへの対応について教えてください。ナイキは透明性を確立していますが、どのように確立したのでしょうか。

ノエル・キンダー=チーフ・サステナビリティ・オフィサー(以下、キンダー):グローバル規模で非常に複雑なバリューチェーンの中で、私たちはシステムの変革に注力しています。そして、業界の中でも大手の企業として、より良いことをし、より良い規模で、そしてより良くなるために、自らの役割を果たすことを決意しています。透明性と説明責任から始まり、メーカーやサプライヤーのコンプライアンスを達成するために、一連の厳しい基準を策定しています。

 また、科学的根拠に基づく大胆な目標を設定し、25年までに私たちと業界全体がより持続可能なものへと移行することを目指しています。例えば、所有または運営している施設で再生可能エネルギーを100%使用することや、主要な事業においてエネルギー使用量とCO2排出量を単位当たり25%削減すること、デザインや業務効率の改善により製造、流通、本社、包装において廃棄物を単位当たり10%削減することなどが挙げられます。また、繊維の染色・加工における1kg当たりの淡水使用量を25%削減することを目標としています。当社の綿花サプライチェーン内の水不足に苦しむ生態系やコミュニティの長期的な回復力を支援する流域プロジェクトのポートフォリオを通じて、すでに130億リットルの水量が回復しています。

WWD:複雑なサプライチェーンの把握と改善に向けた取り組みは、一社だけではどうにもならない部分もあると感じます。

キンダー:ええ。政府間、業界間、地域のステークホルダーとの強力な連携と理解も大切で、私たちはこの分野でも提携しています。 20年5月、私たちはサプライヤー気候行動プログラム(SCAP)を開始しました。このプログラムに参加することで、サプライヤーはナイキ関連の生産以外でも排出量を削減することを約束し、業界全体の大幅な排出量削減に貢献することになります。

 私たちは、エシカルで責任ある製造を行い、製品を製造する全ての人々が尊重され、大切にされることに深くコミットしていることを忘れてはなりません。 そのために、25年までに、戦略的サプライヤーの100%が、製品を作る人々のために、世界水準の安全で健康的な職場を構築するという目標も設定しています。 また、サプライチェーンにおける女性の活躍の場をいかにして増やすかについても検討しています。 サプライヤーの施設で働く人々の約70%は女性ですが、その割合は職位が上がるにつれて減少します。そこで私たちは、2025年までに100%の戦略的サプライヤーが、施設で働く女性の就業機会へのアクセスと上昇志向を高めるという目標を設定しました。

WWD:ナイキが考える環境に配慮したプロダクトデザインとは。

キンダー:私たちの地球を守ることは、多様で革新的なチームが協力して解決策をまとめ、引き出すことから始まります。私たちには、よりサステナブルな新製品を生み出し、インパクトを与える責任があります。そのため、サステナビリティはデザインプロセス全体に組み込まれています。

 最初から廃棄物を出さないようにデザインし、廃材を新しい製品に変え、循環型のソリューションを拡大しています。また、業界をリードするマテリアル・サステナビリティ・インデックス(サステナブルアパレル連合が運用する環境負荷を評価するツール。ナイキはこれまでフットウエアサステナビリティインデックスを用いており、このインデックスは業界標準に遅れをとっていたことがわかったという。また以前は素材の種類や工程ごとに具体的な炭素削減目標を設定しておらず、サプライチェーンにまで目標が及ぶことはほとんどなかった)を使用し、デジタルツールを活用してチームを教育し、より持続可能な意思決定ができるようにしています。

WWD:現在重視していることは?

キンダー:スポーツはナイキの中核であり、私たちの活動全ての中心です。残念ながら、気候変動はスポーツにとって本質的な脅威です。だからこそ、サステナビリティは私たちのブランドとビジネスへの取り組み方の根幹にあるのです。 持続可能性は、大きな問題を提起することで革新的な解決策を導き出し、可能性を再定義するのに役立ちます。 しかし、これは単に「正しい」ことではなく、より効率的な戦略がナイキの成長を促進するため、長期的な価値を生み出します。

 今日、私たちは重要な瞬間を迎えています。2020年目標の章を閉じ、私たちがどこにいたか、どこで成功し、どこでつまずいたか(CO2削減目標は未達)を振り返ることで、次の章を開き、ゼロカーボン、ゼロウェイストの未来というビジョンを達成するために、新たな25年目標に向けて学び、進化していきます。この目標は、私たちの活動を支えるものであると同時に、私たちに責任を持たせ、私たちが達成できることを数値化するものでもあります。

WWD:ナイキはメッセージを生活者に伝えることに最も長けている企業の一つだと感じます。サステナビリティをどのように消費者に伝えていきますか?

キンダー:今、私が最も興奮しているのは、消費者がこの運動に参加し、変化の一部になりたいと思っていることです。私たちは、スポーツの力を使って世界を前進させることができると信じています。そのためには、持続可能性を実現し、真のインパクトを与えるためのハードワークを行うと同時に、製品やサービス、体験を通じて、消費者により責任ある選択をしてもらうこと、あるいは製品のライフサイクルの最後にある廃棄物の削減に貢献することが重要です。私たちは、人々が私たちのブランドに寄せる情熱と、私たちが地球、人々、コミュニティのために、より持続可能な未来を再構築し、創造することに貢献できる文化的影響を理解しています。

WWD:社内における多様性をどういう形で実現していますか?また、社員のモチベーション向上やスタッフとの意識共有や教育はどのように行っていますか

キンダー:私たちの社員は、ソリューションの創造と運用にとても情熱を持っています。19年には「Move to Zero Employee Challenge」を開始しました。これは、ナイキがスポーツの未来を守るためのアイデアを社員が提出し、そのアイデアを実現するための資金やメンターシップを獲得する機会です。製品作りから物流、リテールまで、さまざまな分野を対象にし、世界中から信じられないようなアイデアが寄せられました。私たちはそれらの多くを実行に移しています。例えば、余剰原材料のデータベースの作成、製品発売までの航空貨物への依存度の低減、ニューヨークオフィスの照明を調整するための占有センサーの設置などです。私たちは、無駄を省き、従業員を教育し、行動を促すことに注力しています。今後も、循環型社会、再利用、使い捨て廃棄物の排除を体現した空間を創造し、運営していきたいと考えています。

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ローラ、サステナブル・ブランド立ち上げから1年 「達成率は80%、今度は作っている人たちの労働環境をもっともっと大切にしたい」

 ローラが自身のブランド「ステュディオ アール スリーサーティー(STUDIO R330)」を始動して1年が経過した。ポリエステルのケミカルリサイクル技術を持つ日本環境設計やサステナブル経営で知られるベトナムのデニム工場サイテックス(SAITEX)などと連携し、ローラがブランド立ち上げ当初に語っていた「毎日のライフスタイルがわくわくするようなものをクリエイティブに、環境にやさしい形で作っていきたい」という思いを実践している。

 8月に発表した新作のユニセックスコレクションは“スローライフ”をテーマに掲げ、オーガニックコットン100%のスエットや環境負荷の少ないニットを取り入れたエッセンシャルなリラックスウエアだ。余剰在庫や廃棄を減らすため、今回からは受注生産も取り入れた。「みんなの幸せが地球の幸せ」をモットーに日々学びを深め、ポジティブな発信を続けるローラに、ブランド立ち上げからの変化や今後のビジョンについて聞いた。

WWD:ブランド立ち上げから1年をどう振り返る?

ローラ:まず、ブランド立ち上げまでにはすごく時間がかかったの。色々と地球環境について調べていたんだけど、自分の目でしっかり確かめたいなと思って、インドネシア、ベトナム、バングラデシュを訪れて、現状を見たり、聞いたりしていたから。そして自分の心の問題とも向き合った。去年ついにブランドが始まった時はとてもドキドキしたけど、たくさんの人が共感してくれてうれしかった。特にリサイクルポリエステルのワークウエアやオーガニックコットンの白シャツ、デニムのアイテムを気に入ってくれる人が多かったの。ブランドを通して、今まで出会えなかった人たちともつがることができて、すごく感謝している。環境について真剣に勉強している人たちから「こういうアイテムが欲しかった」って言ってもらえたのはもっとうれしかった。ただ、地球環境の問題はあまりにも複雑で、簡単には伝わらないという難しさも感じてる。だから伝わるためにはどうしたら良いんだろうと日々考えてチームのみんなと話し合っているんだ。

WWD:新作コレクションのこだわりは?

ローラ:日本の伝統的な企業を応援したいから、デニム生地は今回もカイハラさんにお願いしたの。生産は、「世界で最もエシカルなデニムを生産する」と言われるベトナムのサイテックスさん。スエットとTシャツは、オーガニックコットン100%で、漂白剤は使いたくなかったから、ありのままのコットンの素晴らしさを伝えたいと思って生成りカラーも取り入れたの。ユニセックスのエコファーのアイテムは、リサイクルペットボトル由来。ウールはどういう風に作られているか調べてみたら、羊さんにすごく負担がかかってしまっている事が多いと知って、悲しい気持ちになっちゃったの。だから全てのニットは環境に負荷が少なくて、正しい方法で育てられているウール素材を使用したよ。

WWD:今回のコレクションから受注生産を取り入れた理由は?

ローラ:私たちはコレクションで使用するサステナブルな素材の大半を一から作っているから、原価がすごく高いの。少しだけ作ろうと思っても、それを受け入れてくれる工場がなかなかなくて、少し多めに作らないといけない葛藤がずっとあった。これからは、商品ごとに売れるもの、そうでないものがあってもいいから、商品が余ることをなるべく避けようと決めて一般販売に加えて受注生産に切り替えたの。あとは希望のサイズやカラーが完売して、要望に100%答えられない商品が結構出てしまったから、それも今回から改善したいんだ。

WWD:100%サステナブルな商品開発は難しい。迷ったときに大事にしていることは?

ローラ:100%は本当に難しいの。この1年自分の中での葛藤に苦しんだり、チームとも言い合いになったりしたことが何度もあったから。でも、諦めないで100%に近づけるように最善の努力を続けて自分を信じれば、いつか花が咲くと思うんだ。ブランドもライフスタイルも段階的にバランスを取りながら変化することが大事。今はチームで話し合いながら少しずつでもできるところから進めているの。

WWD:今回のコレクションは何%達成できた?

ローラ:80%ぐらいかな。残りの20%は、フェアトレード。環境に配慮された素材は何とか調達できたけど、今度はそれを作っている人たちの労働環境をもっともっと大切にしたいんだ。例えば、サイテックスさんの工場では、オーガニックの食事を従業員に提供していたり、安全な通勤をサポートしていたり。今回のニットとスエットをお願いした中国の工場も、労働環境をきちんと管理しているけど、フェアトレードの認証までは取れていない。認証の取得はすごく難しいんだって。でも、やっぱり認証はこれからすごく大切になるから、一緒に話し合っているところ。日本でもどんどん工場の数が減少しているから、来年のコレクションは、そこもサポートできるような取り組みを考えているの。

一人一人の健康と幸せが地球を守ることにつながる

WWD:一つ一つの問題に丁寧に向き合い、学ぶ姿勢が印象的だ。1日で勉強やリサーチに費やす時間はどれくらい?

ローラ:大体5〜6時間くらいかな。毎日、たくさん本を読んだり、情報収集したりしているよ。今日もこの取材の後、地球環境に関係するドキュメンタリーを見るの。脳が何個もあったらいいのにって思う(笑)。でも、すごく楽しいの。あとは現地に足を運ぶことも大切。故郷のバングラデシュに行ったとき、昔自分が住んでいた田舎に行ったら、よく水遊びしていた池が、プラスチックごみで誰も入れない状態になっていてすごくショックだった。村の人たちに「ローラ助けて」って言われて、すごく心に響いたの。どれだけこの問題が深刻なのかを実際に肌で感じたことは大きかった。

WWD:“サステナビリティ”はさまざまな問題が含まれているが、今特に関心のあるトピックは?

ローラ:全てだけど、やっぱり気象変動と人間の心についてはすごく関心があるかな。最近、気象変動の原因は、一人一人の意識や心にひも付いているんだなって思うの。便利な生活を求めて楽をしようとか、誰かがやってくれるから大丈夫とか、何も考えずにお買い物をすることが環境問題の悪化につながっているから。まずは一人一人の行動、そして心と体の健康が大事で、心と体が健康だと、誰かを幸せにしてあげよう、地球環境を良くしようと思える気持ちが湧いてくると思うんだ。

WWD:勉強すればするほど、問題の深刻さに落ち込むことはない?モチベーションを保つ秘訣は?

ローラ:実は最初は環境問題について勉強するうちに、「私たち人間は、地球や動物になんてひどいことしているんだ」「どうすればいいんだろう」って思ってどんどん気分が落ち込んだんだ。学んだことを(SNSに)書いたら、否定的なコメントを受け取ることもあって。でも、今はそれを乗り越えることができた。どんな意見があっても全てを受け入れて自分の直感を信じて正しいと思う方向に突き進んでいく事が一番大事だと思ったから。自分の心が幸せになると、好奇心が広がって、周りへの感謝も大きくなることに気付いたら、自分=みんな、みんな=地球、全てがつながっていることが分かったの。だから、「セルフラブ」は、実はこの地球を愛すること。例えば、農薬をなるべく使わないオーガニックの食事をすれば、土地に負担をかけずに地球も一緒に健康でいられる。自分が健康で幸せでいることが、地球の健康と幸せにつながるって思うと、もっと人々が幸せになるべきだなって。

WWD:揺るがない強さを持てたのは拠点をLAに移したことも関係している?

ローラ:本当に大きかったわ。今住んでいるエリアは、自分の体と心を大切にする人が多いの。夢に向かって好きな事を仕事にしている人も多くて、そういう人たちと話す時間も楽しいんだ。日本にいるとき、実はお散歩にもあまり行けなかったの。外に出るときは、いつも帽子とマスクで顔を隠して、まるで私は悪いことしたみたいって思ってた。でもここは自然もたくさんあって、開放的な気分で歩ける。拠点を移したからこそ、改めて日本の素晴らしさや美しさにも気付いて、今はその伝統を世界に広げたいんだ。逆に今、心が落ち込んでいる人や自分の夢を見つけられない人の心のサポートもしたくて、勉強中なの。

ファッションの次は、食やアロマ、メディア立ち上げも

WWD:服作りを手掛けるようになってファッションを楽しむ視点に変化は?

ローラ:昔は、好きだった服でも何カ月かすると、「あれ?これって、もう古いのかな」「もっとトレンドのもの着た方がいいかな」とかをよく気にしていたけど、今は自分が本当に好きなスタイルが見えてきて、エッセンシャルなアイテムで満足するようになったの。何度も同じコーディネートをするし、古着を取り入れたりもする。「スタジオR330」も、トレンドに関係なく私が考える長く着られるエッセンシャルなアイテムを作っていて、アパレルラインはもう少しで完成するの。そしたらその後は、食やアロマを通して、健康的なライフスタイルを提案できるプロダクトに広げていきたいな。

WWD:ビジネス規模はどれくらいを目指す?

ローラ:あまり大きくし過ぎず、今のチームでできる規模がちょうどいいかなって思ってる。自分の直感を信じて動いているから、ゴールはあえて決めていないの。何を作るかは、実際にサステナブルで健康的なライフスタイルを過ごしたりながら見えてきたものを少しずつ形にしたいから。

WWD:チームはどのような体制?

ローラ:メンバーは6人。チームのみんなが同じ気持ちで一緒に勉強や運動をしていて、いろんなアイデアがどんどん出てくるの。規模はスモールチームだけど、今は木の根っこのような強いチームに進化しているんじゃないかな。

WWD:グローバル進出の進捗は?

ローラ:今年の冬ごろから始めたいな。将来的にはLAか日本に店舗をオープンしたいの。まだ誰も挑戦したことのないようなお店にしたいから、今は頭に浮かんでくる絵を整理中なの。

WWD:今後の目標は?

ローラ:常に学び続けてセルフラブを忘れないこと。感謝の気持ちを持って、チームのみんなと一緒に楽しみながら進んでいくこと。実は今新たに、新しい形のメディアを立ち上げようと考えているの。人の心や環境について、学ぶことの楽しさを伝えていきたいなって思って。その発信がきっかけで、ワクワクする気持ちが出てきたり、好奇心が湧いたりして、学ぶことを楽しむ輪が広がって自分を愛する事に繋がったらうれしいな。それが自然に地球を守ることにつながると思うから。

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「キッカ」でも「アンミックス」でも変わらぬ吉川康雄の思いは? 音声配信「LOVE=好きの先の幸せ」 Vol.4

 「蓉子の部屋」改め「LOVE=好きの先の幸せ」は、伊藤忠ファッションシステムを辞めて心機一転の川島蓉子ジャーナリストが毎回ゲストを招き、「LOVE=好き」がある人との対談を通して幸せを伝える音声番組です。

 今回のゲストは、自身のビューティブランド「アンミックス(UNMIX)」を立ち上げた吉川康雄ビューティクリエイター。修行時代からニューヨークで掴んだ千載一遇のチャンス、そして現在に至るまでの半生を伺いました。さらにカネボウ化粧品とタッグを組んだ「キッカ(CHICCA)」時代から変わらない「美しさ」に対する想いと、そんな想いから生まれた製品がなかなか理解されなかった当時の葛藤までを吐露しています。

川島蓉子:1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている

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グローバルボーイズグループINIが着こなす「アディダス2021秋冬コレクション」第2弾 撮影の感想&お気に入りポイントは?

 「アディダス(ADIDAS)」は、快適性と着こなしやすさを重視した「アディダス2021秋冬コレクション」の第2弾を10月上旬に発売する。イメージキャラクターには、今年6月にオーディション番組から誕生したボーイズグループINI(アイエヌアイ)を起用した。ここではアイテムの特徴や着こなしのポイント、撮影現場のオフショット、メンバーのコメントを通して、コレクションの魅力を伝える。

Q:初の広告撮影の感想は?

ストリートとスポーツの両方で活躍

「プリザーブ」

 10月上旬発売の第2弾は、「プリザーブ(PRSVE)」と「フューチャーアイコン(FUTURE ICON)」の2つのコレクションで構成する。「プリザーブ」は、スポーツと日常生活の両方で着られるコレクションで、ウィメンズにはドロップショルダーで程よい抜け感を演出するジャケットや着心地の良いフリース素材のワンピースなどをそろえる。メンズは、東京を拠点にするデザイン事務所MO’DESIGNが手掛けたグラフィックをあしらったリップストップジャケットや、迷彩柄のスエットシャツなどをそろえる。

Q:「アディダス」の
好きなところは?

ブランドの象徴を大胆に採用

「フューチャーアイコン」

 「フューチャーアイコン」は、「アディダス」の象徴であるスリーストライプスとスリーバーがメインのコレクション。裏起毛や裏パイルといった秋冬らしい素材使いで、スエットやパーカ、ジャケット、パンツなど幅広いアイテムをそろえる。日本限定アイテムとして、はっ水性のあるナイロン素材を使用したウーブンジャケットや、重ね着しやすいリラックスフィットのパーカなど、機能性を備えた商品も提案する。

 同コレクションアイテムはスポーツデポ・アルペン、スポーツオーソリティ、ゼビオグループ、ヒマラヤなどのアディダス取り扱い店舗およびオンラインストアにて、10月上旬から順次販売する。店舗ではINIのビジュアルも掲載し、店舗により扱うビジュアルは異なるため、全メンバーの表情が気になる人は複数店舗やオンラインストアもチェックしよう。スポーツオーソリティやヒマラヤでは限定のキャンペーンも実施中だ。

PHOTOS:HIRONORI SAKUNAGA
問い合わせ先
アディダスお客様窓口
0570-033-033

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CFDAが包括的なサステナビリティガイドを作成 その理由をCEOに聞く

 サステナビリティに関して、さまざまな企業や団体がレポートやガイドを公開しており、参考になるものが増えている。その中の一つに、アメリカンファッションデザイナーズ協議会(以下、CFDA)が無料で公開しているサステナビリティガイド「KPIデザインキット」がある。これは、サステナビリティと財務の重要業績評価指標(KPI)を包括するガイドとして、とても参考になる。CFDAがニューヨーク大学スターン校MBAの 1チームに依頼して作成したもので、目的は「小規模なブランドが現実的に実行でき、大きなインパクトを与えうる“クイック・ウィン(初期の成功)”の分野を適切に優先順位づけさせること」。社内にサステナビリティの専門家や研究開発予算を持たない、小さなデザイン・生産チームで手掛ける独立系デザイナーブランドの現実を考慮しており、中小規模の企業が取り組むべき項目を分かりやすく示している。CFDAのスティーブン・コルブ(Steven Kolb)最高経営責任者(CEO)にKPIキットを作った経緯を聞いた。

WWD:CFDAが、KPIデザインキットを作ることになった理由を教えてほしい。

スティーブン・コルブCEO(以下コルブ):以前からニューヨーク大学ビジネス学科スターンセンターとは、CFDAのファッションイニシアチブであるサステイナブルビジネスに関してパートナーシップを組んでいた。2019年に、公式サイトでサステナビリティハブをローンチした際に、そのリーダーを務めているCFDAの教育およびサステイナビリティイニシアティブ部署のバイスプレジデントであるサラ・コズロウスキー(Sara Kozlowski)が、業界全体でサステナビリティを実践するための実現可能なロードマップを作成する手伝いをニューヨーク大学に依頼した。そこで誕生したのが、KPIツールキットだ。同チームが、新しく設立されたサステナビリティハブ及びガイドを分析し、(233ページあるガイドの)重要ポイントをまとめるためのアドバイスをくれた。KPIキットは、デザイナーがより敏速に変化をもたらすことができる攻略ガイドと言える。

WWD:KPIデザインキットは、小規模及び中規模のビジネスに焦点を当てている。どのようにその規模を決めたのか。

コルブ:会社の売り上げがベースになっている。年商が500万ドル(約5億5000万円)以下、または従業員30人以下の規模の企業に向けて作られた。

WWD:KPIデザインキットに対するファッション業界からの反応はどうか?デザイナーらは特にどの部分を生かしているか?

コルブ:多くのデザイナーは即効果が見える部分、サプライチェーンの素材に関する点から取り組んでいることが多い。特にサステナビリティに最も影響のある、染料がそれだ。このガイドは、デザイナーたちがすでに気にしていた点を明らかにし、インパクトを3つの段階に分けることで取り組みやすくしている。

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パラリンピック開会式を沸かせたデコトラ演出 衣装担当デザイナー小西翔に迫る

 2021年9月4日、東京パラリンピックが閉会した。新型コロナウイルス感染拡大による開催延期や厳しい感染対策など、さまざまな関門をくぐり抜けての実施となった。そんな中、パラリンピックの開会式・閉会式は高い評価を受け、SNSでは「デコトラがすごい」「強そう・かっこいい」「ラスボスが出てきた」などのコメントが飛び交った。デコトラ演出でパフォーマーが着用していた、LED付きの衣装も大きな存在感を放った。

 この衣装を手がけたのは、ファッションデザイナー小西翔。パーフォーマー約50人の衣装を、全てゼロからデザインした。小西デザイナーは1991年高知県生まれ。東京モード学園を首席で卒業し、パリやニューヨークの大学院でもファッションを学んだ人物だ。現在はニューヨークと東京を行き来し、世界で活躍するアーティストのコスチュームを多数手掛けている。

 取材当日の小西デザイナーは、全身ブラックの装いで長い髪を結んでいた。クールな人かと思ったが、満面の笑みで「パラリンピックの衣装に関われたことはデザイナーとして冥利に尽きます。こんなに嬉しいことはない」と話した。彼の愛嬌の良さと熱い信念を感じた。

「障がいというネガティブな要素を
吹き飛ばすビジュアルに挑戦したい」

 小西デザイナーが手掛けたのは、デコトラの演出でパフォーマーが着用した、LEDを全身に纏った衣装。蛍光色を基調としたカラフルな色合いと、甲冑のようなド派手な装飾が特徴だ。「彼・彼女たちにしか似合わない衣装にしたかった」との思いから、参加者一人一人の個性を考え、ゼロから衣装を作っていった。筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者で車椅子にのった武藤将胤(むとう・まさたね)氏は、パワフルなキャラクターを反映してメンバーを率いる“ボス”のような強いクリエイションにした。義足モデルのGIMICO氏は、あえて義足をそのまま見せ、それ以外をサイボーグのように仕上げた。それぞれの装飾は鉄板のように重い質感に見えるが、実は特殊なレザーで薄く柔らかい素材。強さを誇張するため、あえてビスで留めている。ギタリスト布袋寅泰は、「踊るようにギターを演奏する」という話と、演出テーマ“WE HAVE WING”の羽に着想して、燕尾服をベースにフレアシルエットのジャケットをデザインした。

不安だらけの衣装製作
原動力は
「アスリートと変わらない演者の熱量」

 コロナ禍でのパラリピック開催については「もちろん不安もありました」と振り返る小西デザイナー。「オファーをいただいたときはニューヨークにいて、日本に戻れるかどうかもわからなかった。それに、これまで身体に障がいを持っている人のために洋服を作ったことがなかったから、この状況下で本当に完成させられるか心配でした」。

 2021年に入り、送られてきた資料に目を通すと演者の病名や身体の状態、注意事項等が明記されていた。しかし、文書だけでは演者の本当の個性がわからないため、「僕はそれぞれの演者さんと直接お話がしたいと提案しました」。演者と対面し、話を聞いていくうちに「どの人もパフォーマーとして芯があり、アスリートと同等の熱量がある」ことを痛感した。「僕も夢を追いかける人のサポーターでいたい」という気持ちが生まれ、「いつのまにか不安はなくなっていました」。武藤氏とは音楽活動の話で盛り上がり、「衣装はできるだけ光らせてください!なんでもやりますから」と答えてくれたという。その後も主要パフォーマーと対面し、それぞれの個性や内面に触れるにつれ、「義足モデルだからといって義足を目立たせたいわけじゃない。車椅子だから車椅子を光らすのも違う。それぞれの伝えたい意志やバックグラウンドが融合し、“個性”が“魅力”へと変貌する。そこに焦点を当ててデザインすることに決めました」。

パラリンピックの衣装は
「服作りの哲学が繋がる機会」

 小西デザイナーに声が掛かったきっかけは、衣装ディレクター伊藤佐智子氏の目に彼の過去作が止まったことだった。とあるプロジェクトで刑務所にいる少年と一緒に制作した作品と、パリ時代に考案した、LEDを駆使した“光るクリエイション”を採用した衣装だった。「多様な価値観と、オートクチュール、テクノロジー、サステナビリティの技術ーーこれまで培ってきたファッションの哲学が全て繋がる機会だと思いました」。

 小西デザイナーはパリ美術学校でオートクチュール&テクノロジー学科を専攻し、3Dプリンターとサステナビリティとの関係を論文で発表。その後パーソンズ美術大学に移り、多様な体、人種、性別、肌の色が異なる人々が集まるニューヨークで、“カテゴリーを取っ払った”美しさ”を考えるようになったという。「ニューヨークで”美しさとは何か”を多角的に議論する時間が刺激的だった。例えば美しい=色白と答えてしまうと、差別につながりますよね。男女や人種、障害の有無などカテゴライズを取っ払ったときの美しさとは何か。デザイナーとしてできることはーーこれを考えて、アイデアを練っていたタイミングでパラリンピックの衣装オファーが来ました」。

「マイノリティという枠を取っ払い、
徹底的に個人と向き合う」

 小西デザイナーがファッションデザイナーとして意識しているのは、「男性らしさや、女性らしさを見直されてきている中で、無意識にカテゴリー分けしないこと」だ。これは身体に障がいを持っている人でも変わらない。「車椅子だから、義足だからと枠にはめたらダメ。個人と向き合う機会が必要なんです」。ある出演者からは「終わったけど脱ぎたくない」という言葉をもらった。

 身体に障がいを持っている方にとって着せやすい・着させやすいという利便性だけでなく、彼・彼女らとしっかり向き合いデザインで昇華させる小西デザイナー。その姿勢は、当事者がファッションの素晴らしさを感じ取るかけがえのない機会になっただろう。パラリンピック開会式以外にも、身体障がい者がデザイナーと向き合い、特別な一着を着られる機会が増えて欲しい。

 小西デザイナーは今年3月、ファッションの教育を取り入れたスタジオスペース「ショウ コニシ デザイン ラボ(SHO KONISHI DESIGN LAB)」を世田谷区に開設した。「開会式の現場を肌で感じた経験を自分よりも若い世代に伝えていきたいです」と、教育者としての夢を語る。

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海外メゾンを離れ、独自路線を行く若きデザイナー 「タイガタカハシ」の“時代を超える服作り”

 26歳の高橋大雅デザイナーが手掛ける「タイガタカハシ(TAIGA TAKAHASHI)」は、ビンテージウエアをベースに、付属やディテールをアレンジして現代生活に再提案する“時代を超越した服作り”が特徴のブランドだ。2021-22年秋冬は、乗馬を前提にしたバックプリーツと腕を前にふったシェイプを持つ1920年代アメリカのサックコートや、1940年代のイギリス郵便局員のコートとアメリカのワークジャケットを融合させたアイテムなどがそろう。ジャケットは4〜8万、コートは約12万円、パンツは4〜5万円で、今シーズンは立ち上がりから数週間で消化率70%を超えるアカウントもあるなど、順調な滑り出しとなった。ラグジュアリーECサイトのエッセンス(SSENCE)やスーパー エー マーケット(SUPER A MARKET)、渋谷の吾亦紅、神奈川・厚木のマスマティクス(mathematics)など8店舗で扱われ、22年春夏からは国内外合わせて22店舗に拡大する。今年12月には京都に初の直営店をオープン予定だ。

 デザイナーの高橋大雅は1995年生まれ。中学卒業後に渡英し、ロンドン国際芸術高校(International School of Creative Arts)とセント・マーチン美術大学(Central Saint Martins BA)でアートやウィメンズウエアを学んだ。メゾンブランドでアシスタントデザイナーも務め、トレンドの第一線で活動していた。そんな彼が、なぜ現在の服作りに行き着いたのか。海外生活からデザイン哲学の変化までを聞いた。

WWD:はじめに、ファッションを志したきっかけを教えてください。

高橋大雅デザイナー(以下、高橋):小さいころから物を作ることが好きで、芸術の世界に憧れがありました。美しいものに強烈に引かれる性格で、自分に合った表現方法を模索した結果、ファッションに落ち着きました。

WWD:15歳でイギリスへ渡ったのはなぜ?海外と日本では教育方針にどんな違いがある?

高橋:中学までを日本で過ごすうちに、同調圧力や周りに合わせないと生きていけない空気が嫌になったんです。そんな中、セントマーチンズが芸術の視点からファッションなど幅広い領域を学ぶサマーコースを実施しているのを見つけて、すぐにロンドンに行くことを決めました。2010年は、キャンパスがまだチャーリングクロス(現在はキングスクロスに移転)にあったころです。

WWD:言語の壁はなかった?

高橋:英語は話せませんでしたが、クリエイティブな作業では文化と言語の壁を超え、多様な国の人とつながることができました。その時、「今後の人生を海外で過ごそう」と決意してそのままロンドンの高校に入学し、大学はセントマーチンズに入りました。

WWD:卒業後、コレクションにも参加するメゾンで経験を積むが、それぞれのブランドでどんな業務を担当した?

高橋:セントマーチンズでは2年生と3年生の間、1年間ギャップイヤーを取ってインターンシップをする制度があります。もともとアントワープでも仕事をしてみたいと思っていて、ダメ元で履歴書とポートフォリオを送ってみたら、すぐに面接したいと言われ、アントワープに移住してインターンがスタートしました。主にウィメンズウエアのデザインで、ドレーピングや3Dデザインを担当し、スケッチだけじゃなく、手を動かして造形するクチュールとテーラリングを掛け合わせた視点で服づくり学びました。その後、“女性が作る女性のための服”に魅力を感じ、ロンドンのメゾンでもウィメンズウエアのデザインアシスタントを務めました。

WWD:トレンドを追求するメゾンから一転し、「タイガタカハシ」では過去の洋服を現代に再現させるコレクションを制作している。服へのアプローチが全く異なるが、心境にはどんな変化があった?

高橋:自分が何をしたいのか自問自答した結果、常に新しいものを提案するだけでなく、過去の遺物に真の美しさを見出すことも伝えたいことに気づきました。10代からいろんな国々のアンティークディーラーや古美術商を通じて70~100年以上前の服を収集するほど古着が好きで、その“コレクション”を通して、現在もしくは未来にも存在する衣服を研究したいと思ったんです。それに、ストレスのないコンフォートゾーンにいると、本当にしたいことに気づけないし、挑戦できない。誰かの真似ではなく、自分だけの道を進もうという決意でもありました。

WWD:“時代を超える服作り”の目的は?

高橋:人々の装いは社会情勢に大きく左右されます。でも、衣服がタイムカプセルのように時間に耐えて生き残ることで、失われつつある文化や伝統を閉じ込め、過去の記憶を追体験できると考えているんです。

WWD:衣服を消費し、早いサイクルでビジネスを行う既存のファッションへのアンチテーゼも込めている?

高橋:すでにこれほど素晴らしい服がたくさんあるのだから、新しく作る意味はよく考えています。アンチテーゼになりうるビジネス規模には到達していませんし、世の中の流れに逆らうことは賢明な判断ではないかもしれませんが、自分自身に対しては正直であり続けたいです。

WWD:2021-22年秋冬シーズンは順調な滑り出しとなった。手応えや率直な感想を教えてください。

高橋:自分はただ単に服を売りたいのではなく、自分の思想や美意識を共有したい。そこに共感してもらった人たちには感謝の気持ちばかりです。

WWD:冬には京都に直営店をオープンする。ECで何もかもが買える今、リアル店舗を構える理由は?

高橋:万物に神は宿るという日本の精神性を独自に解釈し、服だけでなく彫刻や建築なども含め、自分の総合芸術として提案するつもりです。人生の半分を海外で過ごし、「日本人とは何か」を客観的に考えるようになった結果でもあります。

WWD:今後、ブランドをどう成長させていきたい?

高橋:服だけを作り続けるわけではありません。今はロンドンのデザインスタジオOK-RMとのブランディングやアートディレクションプロジェクト、香川・牟礼(むれ)とイタリア・フィレンツェでの彫刻制作、失われつつある銀塩写真の研究などさまざまな取り組みを進めています。これらの表現を通して自分の美意識の幅を広げ、自分たちにしかできない現代美術に昇華した物作りを目指していきます。

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東コレ参加5ブランドを支えたファッショニスタ 山田慎とは何者か

 2022年春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、東コレ)」が8月30日〜9月4日に開催された。参加ブランドのうち、デジタルの「ベースマーク(BASE MARK)」「アヤーム(AYAME)」「エイ・クライプシス((A)CRYPSIS)」、リアルの「ホウガ(HOUGA)」「セイヴソン(SEIVSON)」の5ブランドのショーをディレクションしたのが、フリーランスとしてPRやマーケティング活動を行う山田慎だ。「セイヴソン」では、コロナ禍でヅゥチン・シン(Tzu Chin Shen)デザイナーが来日できないというトラブルもありながら、機転を効かせて遠隔でショーを実現させた。普段は「アンリアレイジ(ANREALAGE)」「リコール(REQUAL≡)」「ソンシンバル(SONSHINBAL)」など、10ブランドのPRを担当。また個性豊かなファッションスタイルが特徴的で、インスタグラムのフォロワーは2.3万を抱える。今回の東コレでは、自身のフォロワーから18〜25歳のインターン生20人を募集して、ファッション界の未来を担う若者たちに向けて経験の場を提供した。東京ブランドを支えるキーマンに、部屋中が植物に囲まれた自宅で話を聞いた。

サンプル到着2日後にデジタルショーの撮影

WWD:これまでのキャリアは?
山田慎(以下、山田):日本の理系の大学を経た後に、ニューヨーク州立ファッション工科大学(F.I.T.)に入学しました。VMDやマーケティングを勉強して帰国後、電通グループの広告代理店ザ・ゴールの営業部とマーケティング部に2年半在籍し、イタリアの大手眼鏡企業デリーゴのハウスブランド「ポリス(POLICE)」などを担当していました。新店舗の内装や外装、打ち出し方を任され、広告代理店の幅を超えた経験ができましたね。それから自分の力を試すために独立し、現在はフリーランスとして活動しています。

WWD:5ブランドのショーを手掛けた経緯は?
山田:もともとは、普段からPRを担当している「ベースマーク」「ホウガ」「アヤーム」の3ブランドの予定だったんです。でも石田萌「ホウガ」デザイナーを介して、ECサイト「シーナウトウキョウ(SEENOWTOKYO)」の内⽥裕也代表から、「セイヴソン」「エイクライプシス」のショーのディレクションの依頼が届きました。

WWD:5ブランドのショーを同時進行させるのは大変だったのでは?
山田:何をどのタイミングで行えばいいのか分からなかったので、人員の確保だけは先に進めたんです。7月中に撮影場所や方向性の大枠をはじめ、照明や音響の手配は全ブランド終えていました。8月にサンプルが届き始めてからは、デジタルショーの撮影から取り掛かりました。デジタルで一番大変だったのは「ベースマーク」です。モデルのフィッティングはなく、「似合うだろう」という憶測のもと、サンプル到着2日後に撮影しました。いつものメンバーだからこそ実現できた、異例中の異例だと思います(笑)。今回の映像はランウエイ形式ではなく、初めてイメージムービーに挑戦しました。イメージなので、現場で見たものと出来上がりとの差が激しく、僕が納得いくものに仕上がるまで動画チームと修正を繰り返し続けました。リアルショーのディレクションに本格的に取り掛かったのは8月中旬以降です。

WWD:「セイヴソン」はデザイナーが来日できず、100%遠隔のリアルショーが成功できた要因は?
山田:本番の2カ月前から打ち合わせが始まり、全てLINEとZoom、Google Meetのみで打ち合わせをしました。遠隔でも成功できたのは、ブランド側がこちらの意見に対してきちんと耳を傾けてくれたからです。ショー自体はライティングの形を少し変えて、モデルの歩き方もシンプルにしたので、僕自身はそこまで大変ではありませんでした。

WWD:リアルショーで一番苦労したブランドは?
山田:「ホウガ」です。当初の構想よりも会場が狭くなり、洋服が見えにくいように感じたので、直前で図面を大きく変更しました。フィナーレ演出も変えたので、会場に設置した花のオブジェを組み立て直したり、ライトを調整し直したりして本番前ギリギリで完成しました。

WWD:実際に東コレを終えてみての感想は?
山田:最初はファッションショーのやり方すら分からなかったんですが、「アンリアレイジ」の演出を担当している金子繁孝さんが身近にいたので、自然と少しは吸収できていたのが成功できた要因かもしれません。ファッションショーには費用がかかるし、決して簡単なことではないけど本当に楽しかった。

下の世代にリアルな姿を見せる意味

WWD:ブランドが東コレで発表する意味は?
山田:デザイナーが自信を持つことです。「自分が手掛けた服がこんなにかっこよく映るんだ」「自分たちの領域外の表現に挑めるんだ」という気持ちは、デザイナーにとって一番大きい経験です。それに、ショーを行うことで自分のブランドを支えてくれる人、応援してくれる人がいることに改めて気付くことができます。僕も今は発表する側に立ち、東コレをもっと地域に根付くようにしていきたいと考えました。そこで、僕のインスタグラムフォロワーから18〜25歳のインターン生20人を集めました。下の世代に、自分が失敗する姿や苦しむ姿、楽しむ姿をあえて見せることで、彼らの今後につながるきっかけを作れたと思っています。自分のやれる範囲のことはやれたんじゃないかな。

WWD:デジタルとリアルの両方をディレクションして感じたことは?
山田:デジタルショーのメリットは、低予算で東コレに参加しやすいところです。でも映像をただ発表するだけでは絶対にダメだし、見てもらうためにはプロモーション全体の座組みが必要です。リアルにしかない良さは、来場者の拍手や一言があるだけで、発表する側のモチベーションは全然違うこと。その瞬間は、ファッション界にいてよかったと感じることができました。

WWD:仕事に対するモチベーションは?
山田:買い物をすることです。買い物をすれば消費者の気持ちが分かるから、マーケティングに生きるんです。なぜそれがほしくなったのかはクリエイティブに、好きを伝えることはPRに生きてくる。仕事後の楽しみは、「エルメス(HERMES)」「カルティエ(CARTIER)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」を買うことです。服が好きな気持ちやランウエイを見に行っていたことが、今の自分の仕事につながっているのが何よりも奇跡です。

WWD:山田さんのファッションのルーツは?
山田:虫です。僕は特に蝶が好きで、蝶の模様や自然界の色合いを参考にしています。ピンクと青の服を合わせているときは、南国の虫を思い浮かべてコーディネートしています。もともと海外のストリートスナップからファッションに興味を持ち始めたので、個性的な装いから日本ではすごく珍しがられる。基本は売れ残り商材が好きなので、焦って買いに行かなくても大体残っています(笑)。

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東コレ参加5ブランドを支えたファッショニスタ 山田慎とは何者か

 2022年春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、東コレ)」が8月30日〜9月4日に開催された。参加ブランドのうち、デジタルの「ベースマーク(BASE MARK)」「アヤーム(AYAME)」「エイ・クライプシス((A)CRYPSIS)」、リアルの「ホウガ(HOUGA)」「セイヴソン(SEIVSON)」の5ブランドのショーをディレクションしたのが、フリーランスとしてPRやマーケティング活動を行う山田慎だ。「セイヴソン」では、コロナ禍でヅゥチン・シン(Tzu Chin Shen)デザイナーが来日できないというトラブルもありながら、機転を効かせて遠隔でショーを実現させた。普段は「アンリアレイジ(ANREALAGE)」「リコール(REQUAL≡)」「ソンシンバル(SONSHINBAL)」など、10ブランドのPRを担当。また個性豊かなファッションスタイルが特徴的で、インスタグラムのフォロワーは2.3万を抱える。今回の東コレでは、自身のフォロワーから18〜25歳のインターン生20人を募集して、ファッション界の未来を担う若者たちに向けて経験の場を提供した。東京ブランドを支えるキーマンに、部屋中が植物に囲まれた自宅で話を聞いた。

サンプル到着2日後にデジタルショーの撮影

WWD:これまでのキャリアは?
山田慎(以下、山田):日本の理系の大学を経た後に、ニューヨーク州立ファッション工科大学(F.I.T.)に入学しました。VMDやマーケティングを勉強して帰国後、電通グループの広告代理店ザ・ゴールの営業部とマーケティング部に2年半在籍し、イタリアの大手眼鏡企業デリーゴのハウスブランド「ポリス(POLICE)」などを担当していました。新店舗の内装や外装、打ち出し方を任され、広告代理店の幅を超えた経験ができましたね。それから自分の力を試すために独立し、現在はフリーランスとして活動しています。

WWD:5ブランドのショーを手掛けた経緯は?
山田:もともとは、普段からPRを担当している「ベースマーク」「ホウガ」「アヤーム」の3ブランドの予定だったんです。でも石田萌「ホウガ」デザイナーを介して、ECサイト「シーナウトウキョウ(SEENOWTOKYO)」の内⽥裕也代表から、「セイヴソン」「エイクライプシス」のショーのディレクションの依頼が届きました。

WWD:5ブランドのショーを同時進行させるのは大変だったのでは?
山田:何をどのタイミングで行えばいいのか分からなかったので、人員の確保だけは先に進めたんです。7月中に撮影場所や方向性の大枠をはじめ、照明や音響の手配は全ブランド終えていました。8月にサンプルが届き始めてからは、デジタルショーの撮影から取り掛かりました。デジタルで一番大変だったのは「ベースマーク」です。モデルのフィッティングはなく、「似合うだろう」という憶測のもと、サンプル到着2日後に撮影しました。いつものメンバーだからこそ実現できた、異例中の異例だと思います(笑)。今回の映像はランウエイ形式ではなく、初めてイメージムービーに挑戦しました。イメージなので、現場で見たものと出来上がりとの差が激しく、僕が納得いくものに仕上がるまで動画チームと修正を繰り返し続けました。リアルショーのディレクションに本格的に取り掛かったのは8月中旬以降です。

WWD:「セイヴソン」はデザイナーが来日できず、100%遠隔のリアルショーが成功できた要因は?
山田:本番の2カ月前から打ち合わせが始まり、全てLINEとZoom、Google Meetのみで打ち合わせをしました。遠隔でも成功できたのは、ブランド側がこちらの意見に対してきちんと耳を傾けてくれたからです。ショー自体はライティングの形を少し変えて、モデルの歩き方もシンプルにしたので、僕自身はそこまで大変ではありませんでした。

WWD:リアルショーで一番苦労したブランドは?
山田:「ホウガ」です。当初の構想よりも会場が狭くなり、洋服が見えにくいように感じたので、直前で図面を大きく変更しました。フィナーレ演出も変えたので、会場に設置した花のオブジェを組み立て直したり、ライトを調整し直したりして本番前ギリギリで完成しました。

WWD:実際に東コレを終えてみての感想は?
山田:最初はファッションショーのやり方すら分からなかったんですが、「アンリアレイジ」の演出を担当している金子繁孝さんが身近にいたので、自然と少しは吸収できていたのが成功できた要因かもしれません。ファッションショーには費用がかかるし、決して簡単なことではないけど本当に楽しかった。

下の世代にリアルな姿を見せる意味

WWD:ブランドが東コレで発表する意味は?
山田:デザイナーが自信を持つことです。「自分が手掛けた服がこんなにかっこよく映るんだ」「自分たちの領域外の表現に挑めるんだ」という気持ちは、デザイナーにとって一番大きい経験です。それに、ショーを行うことで自分のブランドを支えてくれる人、応援してくれる人がいることに改めて気付くことができます。僕も今は発表する側に立ち、東コレをもっと地域に根付くようにしていきたいと考えました。そこで、僕のインスタグラムフォロワーから18〜25歳のインターン生20人を集めました。下の世代に、自分が失敗する姿や苦しむ姿、楽しむ姿をあえて見せることで、彼らの今後につながるきっかけを作れたと思っています。自分のやれる範囲のことはやれたんじゃないかな。

WWD:デジタルとリアルの両方をディレクションして感じたことは?
山田:デジタルショーのメリットは、低予算で東コレに参加しやすいところです。でも映像をただ発表するだけでは絶対にダメだし、見てもらうためにはプロモーション全体の座組みが必要です。リアルにしかない良さは、来場者の拍手や一言があるだけで、発表する側のモチベーションは全然違うこと。その瞬間は、ファッション界にいてよかったと感じることができました。

WWD:仕事に対するモチベーションは?
山田:買い物をすることです。買い物をすれば消費者の気持ちが分かるから、マーケティングに生きるんです。なぜそれがほしくなったのかはクリエイティブに、好きを伝えることはPRに生きてくる。仕事後の楽しみは、「エルメス(HERMES)」「カルティエ(CARTIER)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」を買うことです。服が好きな気持ちやランウエイを見に行っていたことが、今の自分の仕事につながっているのが何よりも奇跡です。

WWD:山田さんのファッションのルーツは?
山田:虫です。僕は特に蝶が好きで、蝶の模様や自然界の色合いを参考にしています。ピンクと青の服を合わせているときは、南国の虫を思い浮かべてコーディネートしています。もともと海外のストリートスナップからファッションに興味を持ち始めたので、個性的な装いから日本ではすごく珍しがられる。基本は売れ残り商材が好きなので、焦って買いに行かなくても大体残っています(笑)。

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東コレ参加5ブランドを支えたファッショニスタ 山田慎とは何者か

 2022年春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、東コレ)」が8月30日〜9月4日に開催された。参加ブランドのうち、デジタルの「ベースマーク(BASE MARK)」「アヤーム(AYAME)」「エイ・クライプシス((A)CRYPSIS)」、リアルの「ホウガ(HOUGA)」「セイヴソン(SEIVSON)」の5ブランドのショーをディレクションしたのが、フリーランスとしてPRやマーケティング活動を行う山田慎だ。「セイヴソン」では、コロナ禍でヅゥチン・シン(Tzu Chin Shen)デザイナーが来日できないというトラブルもありながら、機転を効かせて遠隔でショーを実現させた。普段は「アンリアレイジ(ANREALAGE)」「リコール(REQUAL≡)」「ソンシンバル(SONSHINBAL)」など、10ブランドのPRを担当。また個性豊かなファッションスタイルが特徴的で、インスタグラムのフォロワーは2.3万を抱える。今回の東コレでは、自身のフォロワーから18〜25歳のインターン生20人を募集して、ファッション界の未来を担う若者たちに向けて経験の場を提供した。東京ブランドを支えるキーマンに、部屋中が植物に囲まれた自宅で話を聞いた。

サンプル到着2日後にデジタルショーの撮影

WWD:これまでのキャリアは?
山田慎(以下、山田):日本の理系の大学を経た後に、ニューヨーク州立ファッション工科大学(F.I.T.)に入学しました。VMDやマーケティングを勉強して帰国後、電通グループの広告代理店ザ・ゴールの営業部とマーケティング部に2年半在籍し、イタリアの大手眼鏡企業デリーゴのハウスブランド「ポリス(POLICE)」などを担当していました。新店舗の内装や外装、打ち出し方を任され、広告代理店の幅を超えた経験ができましたね。それから自分の力を試すために独立し、現在はフリーランスとして活動しています。

WWD:5ブランドのショーを手掛けた経緯は?
山田:もともとは、普段からPRを担当している「ベースマーク」「ホウガ」「アヤーム」の3ブランドの予定だったんです。でも石田萌「ホウガ」デザイナーを介して、ECサイト「シーナウトウキョウ(SEENOWTOKYO)」の内⽥裕也代表から、「セイヴソン」「エイクライプシス」のショーのディレクションの依頼が届きました。

WWD:5ブランドのショーを同時進行させるのは大変だったのでは?
山田:何をどのタイミングで行えばいいのか分からなかったので、人員の確保だけは先に進めたんです。7月中に撮影場所や方向性の大枠をはじめ、照明や音響の手配は全ブランド終えていました。8月にサンプルが届き始めてからは、デジタルショーの撮影から取り掛かりました。デジタルで一番大変だったのは「ベースマーク」です。モデルのフィッティングはなく、「似合うだろう」という憶測のもと、サンプル到着2日後に撮影しました。いつものメンバーだからこそ実現できた、異例中の異例だと思います(笑)。今回の映像はランウエイ形式ではなく、初めてイメージムービーに挑戦しました。イメージなので、現場で見たものと出来上がりとの差が激しく、僕が納得いくものに仕上がるまで動画チームと修正を繰り返し続けました。リアルショーのディレクションに本格的に取り掛かったのは8月中旬以降です。

WWD:「セイヴソン」はデザイナーが来日できず、100%遠隔のリアルショーが成功できた要因は?
山田:本番の2カ月前から打ち合わせが始まり、全てLINEとZoom、Google Meetのみで打ち合わせをしました。遠隔でも成功できたのは、ブランド側がこちらの意見に対してきちんと耳を傾けてくれたからです。ショー自体はライティングの形を少し変えて、モデルの歩き方もシンプルにしたので、僕自身はそこまで大変ではありませんでした。

WWD:リアルショーで一番苦労したブランドは?
山田:「ホウガ」です。当初の構想よりも会場が狭くなり、洋服が見えにくいように感じたので、直前で図面を大きく変更しました。フィナーレ演出も変えたので、会場に設置した花のオブジェを組み立て直したり、ライトを調整し直したりして本番前ギリギリで完成しました。

WWD:実際に東コレを終えてみての感想は?
山田:最初はファッションショーのやり方すら分からなかったんですが、「アンリアレイジ」の演出を担当している金子繁孝さんが身近にいたので、自然と少しは吸収できていたのが成功できた要因かもしれません。ファッションショーには費用がかかるし、決して簡単なことではないけど本当に楽しかった。

下の世代にリアルな姿を見せる意味

WWD:ブランドが東コレで発表する意味は?
山田:デザイナーが自信を持つことです。「自分が手掛けた服がこんなにかっこよく映るんだ」「自分たちの領域外の表現に挑めるんだ」という気持ちは、デザイナーにとって一番大きい経験です。それに、ショーを行うことで自分のブランドを支えてくれる人、応援してくれる人がいることに改めて気付くことができます。僕も今は発表する側に立ち、東コレをもっと地域に根付くようにしていきたいと考えました。そこで、僕のインスタグラムフォロワーから18〜25歳のインターン生20人を集めました。下の世代に、自分が失敗する姿や苦しむ姿、楽しむ姿をあえて見せることで、彼らの今後につながるきっかけを作れたと思っています。自分のやれる範囲のことはやれたんじゃないかな。

WWD:デジタルとリアルの両方をディレクションして感じたことは?
山田:デジタルショーのメリットは、低予算で東コレに参加しやすいところです。でも映像をただ発表するだけでは絶対にダメだし、見てもらうためにはプロモーション全体の座組みが必要です。リアルにしかない良さは、来場者の拍手や一言があるだけで、発表する側のモチベーションは全然違うこと。その瞬間は、ファッション界にいてよかったと感じることができました。

WWD:仕事に対するモチベーションは?
山田:買い物をすることです。買い物をすれば消費者の気持ちが分かるから、マーケティングに生きるんです。なぜそれがほしくなったのかはクリエイティブに、好きを伝えることはPRに生きてくる。仕事後の楽しみは、「エルメス(HERMES)」「カルティエ(CARTIER)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」を買うことです。服が好きな気持ちやランウエイを見に行っていたことが、今の自分の仕事につながっているのが何よりも奇跡です。

WWD:山田さんのファッションのルーツは?
山田:虫です。僕は特に蝶が好きで、蝶の模様や自然界の色合いを参考にしています。ピンクと青の服を合わせているときは、南国の虫を思い浮かべてコーディネートしています。もともと海外のストリートスナップからファッションに興味を持ち始めたので、個性的な装いから日本ではすごく珍しがられる。基本は売れ残り商材が好きなので、焦って買いに行かなくても大体残っています(笑)。

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美容業界未経験者がわずか数年で資生堂傘下のグローバルブランドを作るまで 「ドランク エレファント」創設者に聞く成功のレシピ

 資生堂が2019年に買収したスキンケアブランド「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」が10月1日、いよいよ日本に上陸する。三越伊勢丹のコスメEC「ミーコ(MEECO)」、イセタン ミラー ルミネ新宿店、ららぽーとTOKYO-BAY店に出店し、イセタン ミラー 東京ミッドタウン日比谷店、イセタン ミラーテラスモール湘南店では期間限定で取り扱う。また6日からは伊勢丹新宿本店でポップアップイベントを行う。

 「ドランク エレファント」は13年、当時専業主婦だったティファニー・マスターソン(Tiffany Masterson)がビューティ業界未経験で立ち上げたブランド。SNSを中心に熱狂的なファンを育てたD2C戦略とクリーンビューティコンセプトで急成長し、わずか数年でセフォラのトップセラーに上り詰めた。ポップなパッケージと環境・肌への安全性に配慮した処方で若年層を中心に人気を集めている。

 また買収した資生堂は「ローラ メルシエ(LAURA MERCIER)」や「ベアミネラル(BAREMINERALS)」をはじめとするメイクアップブランドに加え、「ツバキ(TSUBAKI)」 などを擁するパーソナルケア事業を売却しており、今後プレステージスキンケアに一層注力する計画だ。そんな中で「ドランクエレファント」は事業をけん引するビジネスの1つの柱と捉え、日本での事業展開にも大きな期待をかける。

 そんな「ドランク エレファント」を手掛けるティファニー・マスターソン(Tiffany Masterson)創設者に、ブランド立ち上げの経緯や、日本進出にかけた思いなどについて聞いた。

WWD:「ドランク エレファント」を立ち上げた理由は。

ティファニー・マスターソン創業者(以下、ティファニー):ブランドを立ち上げる前は専業主婦として4人の子どもを育てていた。サイドビジネスとしてクレンジングバー(石けん)を作っていたのだが、これをきっかけに成分や原料、化粧品全般について学ぶようになった。私自身の肌が弱くてエッセンシャルオイルや香料にも敏感に反応してしまうのだが、安全・安心でありながら効果実感もある製品がなかなか見つからず、友人に勧められて自分でスキンケアラインを立ち上げることにした。

WWD:化粧品市場はすでにスキンケアブランドであふれているが、なぜここまで成長できたと考えるか。

ティファニー:「ドランク エレファント」を立ち上げる際、自分のこれまでの経験と知識を踏まえ6つの原料(エッセンシャルオイル、アルコール、シリコーン、紫外線吸収剤、香料・染料、界面活性剤)を絶対に配合しないと決めた。また肌にメリットのある、もしくは処方の安定・安全性に必要不可欠な原料のみを使用するシンプルな処方にこだわった。

重要なのは、単に処方にこだわるのだけでなく、なぜその処方にしたのかを発信すること。本当は不要な成分や肌に負担となる原料が含まれていることが多い化粧品だが、一般的な消費者はそんなことも知らない。だから消費者を“教育”する思いで、製品のことだけでなくスキンケアや化粧品全般について発信し続けた。このアプローチがこれまでの美容業界で新しかったのだと思う。透明性を重視した、消費者ファーストな戦略が支持され、口コミで人気が広がった。

WWD:買収のウワサが立っていた時、資生堂以外にも他の化粧品大手が買い手候補として多く挙がっていた。最終的に資生堂を選んだ理由は?

ティファニー:同じ価値観を持っているから。ポジティブな企業風土、“ピープルファースト”な考え方、イノベーション。これまでの「ドランクエレファント」のカルチャーを崩さずに、資生堂が誇る最新技術を活用してさらなるイノベーションを実現できるだろう。また、グローバル展開を目指す上で最適なパートナーだと感じた。

WWD:資生堂に買収された際、D2Cブランドとしての成功が高く評価されていた。欧米で奏功したD2Cアプローチは、日本でもどのように続けるのか?

ティファニー:SNSは消費者とつながる最も重要なツールの一つだと捉えている。「ドランク エレファント」のファンは、躊躇せずに意見を発信するし、互いにコミュニケーションを積極的に取り合っている。だから常に彼らの声に耳を傾け、なるべくスピーディーに製品開発などに生かしている。ブランドの成功の一因は、このコミュニティーに近い距離で接し、対話をしてきたことだと思う。9月にはLINEの公式アカウントを開設し、10月には伊勢丹新宿本店でポップアップイベントを開催予定で、そこで消費者と直接つながることも楽しみにしている。

消費者は決して“無知”じゃない
真面目すぎない啓もう活動が成功

WWD:「ドランク エレファント」は時に難しくもある、クリーンビューティやサステナビリティについて楽しく消費者に啓もうしており、それが多くの若年層の関心を引きつけている。

ティファニー:「ドランク エレファント」はあまりシリアスになりすぎず、常に“楽しむこと”を忘れないブランド。以前リテーラーの人に、消費者は“無知(知識がない)”だから、なるべくシンプルに消費者と対話する必要があると言われたことがある。でも私は決してそう思わないわ。今の消費者は学びたい意欲が高く、知識を手に入れることで自身の体に入れるものをコントロールできると分かっている。全く無知じゃないわ。私も一消費者として常に学んでいるし、なるべく楽しく気楽な方法で学べる場を作りたかった。だからユーモラスで“映える”コンテンツを用いて、原料や化粧品の使い方、ブランドのフィロソフィーなどについて楽しく発信している。

WWD:製品を重ね付けせず、手のひらで自由自在に混ぜて使う”スムージー”コンセプトもユニーク。それはどこから生まれた発想?

ティファニー:4人の子どもと仕事で常に忙しいから、丁寧に一つずつ重ね付けしている余裕がないの。ほぼ全ての製品が混ぜて使えるように、なるべく軽い質感にこだわった。毎朝飲んでいるスムージーにインスパイアされたの。

WWD:ここ数年でクリーンビューティは大きなブームとなったが、市場の未来は?

ティファニー:これからも次々とクリーンビューティブランドが誕生するだろう。ただ決まった定義がないために、クリーンの基準がブランドによって異なるのは懸念点だ。一方で消費者がどんどん賢くなっていく中で透明性はより重要になってくるだろうし、それはいい変化だと思う。

WWD:日本の化粧品市場は世界を見ても競争が激しい。そんな日本でどのように戦っていくのか。

ティファニー:全ての市場に共通することだが、まずはブランドのユニークな哲学をきちんと消費者に伝えることが成功の要だと思っている。欧米でも“教育”アプローチで多くの消費者が改めて自身の肌と向き合い、化粧品について学んだと感じている。日本の消費者にも同様に、“スキンケア改革”を起こしたい。

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“モード界の帝王”アルマーニが語る「エンポリオ アルマーニ」40年の軌跡 展覧会も開催

 デザイナーのジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)による「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」が創立40周年を迎えた。初めての店舗は1981年、ミラノに開き、その後「ジョルジオ・アルマーニ」などファッションラインを充実させた。21年のオリンピックでは、イタリア代表が表彰台で着用する公式ウエアは、「エンポリオ アルマーニ」のスポーツライン「エンポリオ アルマーニ EA7(EMPORIO ARMANI EA7)」がイタリア選手の公式ウエアを手掛けた。

 アルマーニは「エンポリオ アルマーニ」の2022年春夏コレクションをミラノで発表し、「The Way We Are(ザ・ウェイ・ウィー・アー)」と題した展覧会を開催。「エンポリオ アルマーニ」マガジンの特別号を発行するなどして40周年を祝っている。ここでは、ブランドのこれまでの軌跡やこれからの展望、現在地などを語る。

WWD:「ザ・ウェイ・ウィー・アー」はどんなイベント?

ジョルジオ・アルマーニ(以下、アルマーニ):メゾンの方針や意図を伝えるためのマニフェストのような役割を担う企画です。オープンであることの大切さや包括性、文化・ジェンダーの多様性といった価値観をブランドが設立当初から掲げてきた価値を再確認するものだ。基本的に、懐かしさに思いを馳せるノスタルジックなものは好んでいない。それはずっと変わっていないので、このイベントでも現在や未来に目を向けている。

WWD:40年前に「エンポリオ アルマーニ」を立ち上げた経緯は?

アルマーニ:1981年を思い返すと、雑踏とした世の中に気ままなムードがあり、「何かしたい」という衝動があった。多くの若者が自立して社会進出していたが、その気持ちを後押しするファッションはなかった。こういった市場のギャップは明らかにあったので、チャンスだと思った。(ブランドを立ち上げ後)すぐに大きな反響があり、一気に人気が広がった。イタリア語でデパートや百貨店、市場といった意味を持つ“エンポリオ”という名前は、誰もが簡単に入ることができ、何かに出合える場所ということが一目で分かるもの。ロゴの鷲は、国境の壁を超えて高く飛べることや地平線の続きを表す象徴として取り入れた。

WWD:2017年に「アルマーニ コレツィオーニ(ARMANI COLLEZIONI)」と「アルマーニ ジーンズ(ARMANI JEANS)」を「エンポリオ アルマーニ」に統合したが、その理由は?

アルマーニ:ブランドがこれからも発展していくだろうという自信はもちろんあった。加えて保有するブランド同士のバランスを取るために、「エンポリオ アルマーニ」にはもっと自由が必要だと考えた。設立当初から慎重に多様性を捉えており、「エンポリオ アルマーニ」では自分のスタイルを維持しながら、より多くの人にアピールできる製品を提供する。言うなれば、「エンポリオ」は(デザインの)本能で「ジョルジオ・アルマーニ」は(デザインをする)理由そのもの。どちらも欠けてはならない存在だ。

WWD:「エンポリオ アルマーニ」はここ数年でどう進化したと思う?

アルマーニ:デザインの幅も広がったし、より多くの人に向けた商品が増えている。今日の「エンポリオ アルマーニ」は、時代の変化に応じて、とても多様だ。“若さ”は今や年齢や生まれた年によって決まるものではなく、感覚やあり方を指している。だからこそ誰しもがブランドとつながりを感じられるような器でありたい。ブランドの精神は自由でメトロポリタンで、ダイナミックだ。

WWD:どのような人が「エンポリオ アルマーニ」らしいと思う?

アルマーニ:ファッションで自分を表現する人。そういう人が“ファッショニスタ”というわけではないけれど、確かな個性を持っていることは間違いない。そして年齢に縛られない人。

WWD:エキシビジョンの見所は?展示するアイテムや照明など、こだわった部分は?

アルマーニ:インスタレーションを中心に、テーマ別に部屋を設けている。それぞれがブランドの大切な要素を構成する。例えばメンズウエアとウィメンズウエアや、ミラノと世界の大都市、雑誌間で生まれる対話などを表現。部屋ごとのコンセプトに合わせて、配置するファッションアイテムなどを選んだ。活気あふれるビジュアルで、大きなムードボードのような部屋をミラーで覆い、万華鏡のようにそれぞれの要素を集めたんだ。

WWD:開催の準備をしながらどんなことを感じていた?

アルマーニ:これまでのデザインや取り組みを整理しながら、私のスタイルの本質やアイデア、アイテムを再考するきっかけとなった。たくさんの記憶が蘇ったよ。ミラノのブロレット通りの壁面広告の影響力は特にすごかった。思い出の多くには、レオ(Leo)や姪のシルヴァーナ(Silvana)がいる。長年私のそばにいてくれて、頭が上がらない2人だ。シルヴァーナとは一緒にウィメンズのコレクションを作ったりして、常にオープンに意見交換をしてきた。レオは私の片腕として一緒に働いてきた。忠誠であることに加えて、しんどい時もそれを軽くしてくれるような性格に本当に感謝している。

WWD:雑誌の発行や壁面広告を通して伝えたいメッセージは?

アルマーニ:一般的に広く語られるようになった「包括性(インクルージョン)」について、私は40年前から伝えようとしている。雑誌や広告でコミュニケーションに重きを置いているのは、“エンポリオ”という名の通り、ブランドが大切にしている価値観を自然に広げていくことを願ってのこと。雑誌を出版していた頃から妹のロザンナ(Rosanna)とは一緒に働いてきたが、広告のアイデアを提案してくれたのは彼女。この展覧会でも一緒に動いてくれた。

WWD:デジタルを使った仕掛けはある?

アルマーニ:もちろん!インスタグラムは要チェックだ。

WWD:「エンポリオ アルマーニ」の現在地は?顧客層や店舗数、これから新店舗オープンの予定は?

アルマーニ:メインの顧客層はヨーロッパとアジア。でもアメリカもコロナからの復帰を大きく支える市場だ。店舗は、250店以上ある。直近でイタリアのリナーテ、スペインのバルセロナに新店舗をオープンしたので、今後北米や中国にもっと店舗を増やしたいと思っている。

WWD:独立企業として迎えた40年だが、そこにこだわりは?

アルマーニ:1人の男として、そして起業家として独立しているということは大きな意味を持つ。特に今の時代は強く感じることだ。スピーディーかつ柔軟に動くためにも、大事な選択だ。これまでも自分の道を切り開いてきたし、これからもそうしていくだろう。

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ナイキが考える持続可能性をサステナビリティ責任者に聞く CO2排出と廃棄のゼロに向けて 【前編】

 ナイキ(NIKE)は2020年度に同社が排出したCO2量が1170万6664トンだったと公表した。同社は1500以上の拠点を有し、約7万5400人の従業員を抱え、サプライヤーの工場には100万人を超える従業員が働いており、その排出量と人口の規模はオランダ・アムステルダム市に匹敵する。同社はサステナビリティ戦略のコンセプトを“MOVE TO ZORO”とし、CO2排出量と廃棄物、2つのゼロを目指している。1170万6664トンから排出ゼロをどのように達成していくのか。ノエル・キンダー(Noel Kinder)=チーフ・サステナビリティ・オフィサーに聞く。

WWD:ナイキの考えるサステナビリティとは?サステナビリティ戦略でCO2排出と廃棄のゼロを目標にしていますね。

ノエル・キンダー=チーフ・サステナビリティ・オフィサー(以下、キンダー):ナイキは世界の都市1つ分のCO2を排出しており、気候変動に影響を与えています。これは、私たちが行う全てのことに目を向ける動機となっています。一企業が果たすべき重要な役割であり、小さな調整が大きな変化につながります。この精神に基づき、私たちは解決策を待つのではなく、解決策を生み出し、その規模を拡大するために取り組んでいます。私たちのサステナビリティ活動は、炭素、廃棄物、水、化学に焦点を当てており、科学的根拠に基づく大胆な目標を設定して、地球の保護に貢献する責任を果たしています。 さらに私たちは、どのような製品を、どのようにして作り、どのようにしてアスリートに届け、どのようにして回収して新しいものに変えていくのか、というナイキのあらゆる側面を常に考え直し、新しいソリューションを生み出してビジネス全体で迅速にスケールアップする方法を模索しています。

WWD:先日公開した資料で、2020年度のCO2排出量が1170万6664トンというリポートがありました。その数字をゼロにするには現状のビジネスの見直し、改良を積み重ねていくことだけでは難しいようにも思います。

キンダー:気候変動の緊急性に対処するために必要な変化の規模は、ナイキのあらゆる部分で革新を必要とします。私たちはただ解決策を待つだけではなく、解決策を生み出さなければならないのです。そして、新しい解決策を見つけたら(あるいは業界内の他の人から学んだら)、スケールアップするためのハードワークを迅速に行わなければなりません。

 私たちはCO2排出量を削減することを決意し、その規模と影響力を利用して他の企業が同じことをするのを支援しています。気候変動対策には集団行動が不可欠なので、私たちは業界内外でパートナーとなり、共通する影響を軽減しています。

WWD:CO2排出量に並び、水リスクに関しても深刻化しています。ナイキの対応策は?

キンダー:水資源の使用量を削減するために、私たちは原材料が生産されている現場での取り組みに重点を置いています。また、製造の効率化と廃水のリサイクルにより、繊維の染色・仕上げに使用する淡水の使用量を削減しています。実際、私たちの繊維製品の染色・仕上げを行うサプライヤーは、20年の目標を大幅に上回る30%の淡水使用量を削減しました。

WWD:環境負荷の低減を考えたときに重視されるのが素材ですが、ナイキが考える環境配慮型素材とはどういうものですか?

キンダー:私たちは持続可能な素材を、化学的に優れ、資源強度が低く、廃棄物が少なく、リサイクルが可能であることにより、製品の環境影響を低減するものと定義しています。材料を大規模に改善するためには、製品開発、材料、製造において、材料サプライヤーを含めてナイキチーム間の関係の調整が必要になります。私たちは、リサイクル素材やリサイクル可能な素材、素材を最も効率的に使用するための新しい機械や製造方法、新しいリサイクル技術の飛躍的な向上を可能にするために、イノベーションへの投資を計画しています。また、廃棄物を新製品に使用する新しい方法を見つけたいと考えています。重量に対して25%以上のリサイクル素材を使用したスニーカー“スペース ヒッピー”をはじめとし、今後の新製品にも採用することでスケールアップしていきます。

WWD:近年、キノコの菌糸体由来の“マッシュルームレザー”やリサイクル可能なセルロース繊維の革新、人工たんぱく質素材など、これまでになかった新素材が登場しています。注目している素材があれば教えてください。

キンダー:私たちが注力しているのは、影響の少ない素材を拡大し、廃棄物を新素材に変えることで、より持続可能な選択肢を新たに提供することです。具体的には、スタイルや性能を損なうことなく、大量生産される製品の素材に低炭素の代替素材を使用する方法を検討しています。

 例えば、主要素材(ポリエステル、コットン、レザー、ゴム)の低炭素素材の使用率を50%にすることで、25年までに50万トンの温室効果ガス排出量を削減することができます。この例を基に、私たちはリサイクルポリエステルを全製品に拡大しています。 現在、リサイクルポリエステルは当社の全ポリエステルの26%を占めており、そのおかげで、年間平均10億本のペットボトルが埋め立て地や水路に行くのを回避しています。廃棄物の削減に加えて、リサイクルポリエステルはバージンポリエステルに比べてCO2排出量を最大30%削減します。

WWD:生産工程で出る廃棄物を再資源化した“ナイキ グラインド”をデザインに活用していますね。

キンダー:はい。このプログラム(Reuse-A-Shoe)では、ゴム、フォーム、レザー、テキスタイルの混合物など、回収可能な価値を持つ余剰のフットウエア素材と、使用済みのシューズを回収し、リサイクルして新しい製品に再利用しています。このプログラムは25年以上続いていますが、今も成長し、進化し続けています。“ナイキ グラインド”で部分的に作られた最も新しいイノベーションは、ナイキ クレーター フォームです。この新しいフォームは、“スペースヒッピー”プロジェクトから生まれたもので、現在ではライフスタイルやパフォーマンスフットウエアのさまざまなスタイルに採用されています。

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「有害な男らしさ」や「セックス」にアートから迫る「リチャードソン」マガジン “嫌われ者”覚悟の発行人のこだわり

 ニューヨーク発のインディペンデント・マガジン「リチャードソン(Richardson)」はこのほど、3年ぶりとなる新刊を発表した。同号は、“道徳”を意味する「A10:ザ・モラリティー・イシュー(A10 The Morality Issue)」と題し、アートやカルチャー、学術的視点を交えて、「性」に関する倫理観や歴史を掘り下げている。

 表紙に起用したポルノスター兼モデルのドミニク・シルバー(Dominique Silver)へのインタビューをはじめ、現代アーティストの作品、「有害な男らしさ(トキシック・マスキュリニティ)」を批評するエッセイなどを掲載している。さらに、「フッド・バイ・エアー(HOOD BY AIR)」のデザイナーとして世間をたびたび騒がせているシェーン・オリバー(Shayne Oliver)の「アノニマスクラブ(ANONYMOUS CLUB)」とコラボレーションした限定のカプセルコレクションも発売する。同雑誌を設立したアンドリュー・リチャードソン(Andrew Richardson)に、この“コントロバーシャル(=議論を巻き起こすような内容)”な号の発行について、インタビューした。

WWD:新刊のテーマを“モラリティー(道徳)”にした背景は?

アンドリュー・リチャードソン(以下、アンドリュー):「リチャードソン」は進化しながら形を作っていく、天然の産物である。テーマを決めて素材を編集したのではなく、興味関心があるものを寄せ集めていったら、それらをつなぐものが「モラリティー」だった。それがまた派生して新しいコンテンツになっていった。

WWD:どのようなコンテンツが同テーマにつながったのか?

アンドリュー:きっかけは、アメリカの白人男性社会を中心に行われている、新入生歓迎会での過激な洗礼儀式「ヘイジング(Hazing)」の非公開写真を見つけたこと。仲間として認めてもらうために、どれだけ過激なことができるかを見せつける儀式があるんだ。それを起点に精神分析学の専門家、ジェイミソン・ウェブスター(Jamieson Webster)を招いて「有害な男らしさ」について考察した。

WWD:「有害な男らしさ」とは、“男らしくない”行動や思想をバカにし、排斥する偏った男らしさを指す。近年は男性自身の心身の健康に害をおよぼしたり、女性蔑視や性暴力に発展する可能性があると指摘されているが、「リチャードソン」が触れる意義とは?

アンドリュー:本誌では、良し悪しの決めつけや矯正するといったことを目的にせず、考察・批評をしている。読者がどういう考えを抱くかは自然の反応に任せて、われわれはたださまざまなトピックスについて語ることが大事だと考えている。

WWD:コンテンツを通じて読者に正解は掲示しないということ?

アンドリュー:そう、あくまで対話を生み出したい。専門家や思想家などの、知的視点を土台にして会話を重ねている。私たちはニッチな出版社なので、自分たちでやりたい企画を決めやすい。いわば大きな“バブル”の中で、みんなで作業している感覚だ。私たちも作りながら一緒に学んでいるので、制作しながら生まれる対話や疑問を全てマガジンに落とし込んでいる。

WWD:シェーン・オリバーの「アノニマスクラブ」とコラボレーションしたきっかけは?

アンドリュー:シェーンとは昔から親しかったし、彼が今号でドミニクへのインタビューを担当したことからコラボレーションが決まった。彼とは目的や意思がすごく似ていて、売ることをゴールにしない広い視点に共感した。

WWD:カプセルコレクションのデザインにあるテキストは何を意味する?

アンドリュー:シェーンによるドミニクへのインタビューから、有益な部分を引用した。本人たちが直面する日常を淡々と描いて、新しい見方で世の中を感じるきっかけとなるような一文を選んだ。

WWD:特に力を入れたページは?

アンドリュー:全ページが自分の子どもみたいに大切だが、表紙とカバーストーリーは特にエネルギーを注いだ。ほかにもセックス・ポジティブ・フェミニズム(セックスをポジティブに捉える運動)のアーティスト、ペニー・スリンガー(Penny Slinger)のエッセイページには、特色の銀を使ってこだわった。

WWD:プリント版で発行することへのこだわりは?

アンドリュー:アートの美しさを感じるには、自分の目や手で直接触れられる印刷物が適していると思う。本号ではコンテンツに合わせて、使用する紙などを一からこだわっている。例えば、挑発的な作品で知られるジョーダン・ウルフソン(Jordan Wolfson)のアートをシール状にし、自由にめくって遊べるようにしている。表紙には、70年代で主流だったグラビア印刷を採用した。細かい濃淡が表現できるので、試行錯誤の末に印刷方法を習得し、モノクロ写真を際立たせた。

WWD:表紙にドミニク・シルバーを起用した理由は?

アンドリュー:ドミニクは、ナターシャ・ドリームス(Natashia Dreams)という名でポルノスターのキャリアもある。セックスワークへのスティグマ(恥や不名誉などのネガティブなイメージ)について対話を生むことも、本号の大きなテーマだ。セックスワーカーのトランスジェンダー女性であるということは、彼女の人生にさまざまな影響を与えている。LGBTQ+コミュニティーの中にいても、セックスワーカーであるということで生まれるハードルがある。そんな人たちのためにも、トランスコミュニティーの日常やリアルな部分に光を当てたかった。

WWD:“コントロバーシャル”な雑誌を制作することに苦悩はないのか?

アンドリュー:クリエイションをする上で、社会的なトピックに触れていくことは私にとって自然で、避けては通れないこと。トラブルをわざと起こそうと思っているわけではないが、時々議論を起こすことはある。

WWD:コアなファンが多い理由は何だと思う?

アンドリュー:きっと誠実さに惹かれている人が多いのだと思う。純粋な気持ちでクリエイションに向き合っているから、一部の人は作品に感銘を受けるが、一部の人は全く気に入らない。大好きか大嫌いか、のどちらかだろう。


 キム・カーダシアン(Kim Kardashian)を表紙に迎えた前作、「A9」から3年。記念すべき10号目およびコラボカプセルコレクションは、「リチャードソン」の公式オンラインストアや、東京・原宿の「リチャードソン・東京」店、セレクトショップの「ボンジュール・レコード(Bonjour Records)」で販売中だ。

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ミラノの異才「マリアーノ」 26歳デザイナーが世界に届ける“ハッピーなプレタポルテ”

 イタリアを拠点とする「マリアーノ(MAGLIANO)」は、サルトリア仕込みのテーラリング技術を武器にしたシェイプの面白さと、ポルノ漫画など奇抜なモチーフ使いでジワジワと知名度を上げているメンズブランドだ。2018年に「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)」で新人デザイナー賞「Who’s on next !」受賞し、19年にミラノ・コレクションでランウエイデビューを果たした。現在、海外で20、日本で15のアカウントに卸している。

 デザイナーのルカ・マリアーノ(Luca Magliano)は1995年生まれの26歳。「まだまだ小さなブランドだよ」と話す彼に、デザイナーを目指した原体験から毎シーズンのコレクションの作り方、ブランド初期から登場する謎のおじさんモデルなどについて聞いた。

WWD:服作りを始めたきっかけは?

ルカ・マリアーノ(以下、ルカ):小さなころから服が好きだった。僕の地元ボローニャには大きなマーケットがあって、そこで服を買ったり売ったりしながら、 “服を着てハッピーになる感覚”を覚えたんだ。これがデザイナーを目指した原体験だね。高校卒業後、ジャーナリストで建築家のバルバラ・ネロッツィ(Barbara Nerozzi)に師事して、服や建築などデザイン全般を学んだ。

WWD:ファッションに専念していたわけではなかった。

ルカ:そう。建築からグラフィック、プロダクトまでいろんなデザインを勉強した。知らないことだらけで、毎日衝撃を受けていたよ。そんな時、師匠から「ルカはファッションがいいんじゃない?」と勧められて、ファッションデザイナーに専念することに決めたんだ。その後、運良くアレッサンドロ デラクア(Alessandro dell'Acqua)のもとで経験を積めて、16年に「マリアーノ」を立ち上げた。

WWD:デラクアのもとで学んだテーラリングは「マリアーノ」の軸になっている。

ルカ:そうだね。「マリアーノ」はストリートブランドではなく、フォーマルな日常着。だからサルトリアの技術やイタリアの工場でしか表現できない素材・ディテールを積極的に使ってるんだ。

WWD:その一方で、生地をツイストさせたり、ポルノのグラフィックを用いたりと、斬新なデザインも目を引く。これらの根底にはどんな思いがある?

ルカ:フォーマルでありながら、“ハッピーな時間に着てもらうプレタポルテ”を目指している。着るだけで気分が上がるのはファッションの一番の面白さだからね。最近は頭の中でヒーローを作って、それにインスパイアされながらコレクションを広げている。例えばスーパーセクシーなキャラクターだったり、ボローニャで有名なゲイのキャラクターだったり。ポルノの絵をジャケットに貼り付けたのも、ここから派生したアイデアだね。あとは「こういうコミュニティがいるんだよ」と政治的なメッセージも忍ばせている。洋服はメッセージを伝えるツールでもあるから。

WWD:2022年春夏コレクションではアップサイクルを大々的に取り入れた。その理由は?

ルカ:ブランドを始めたときから、デッドストック素材を使ったり、古着をリユースしたりしてアップサイクルを取り入れてきた。予算の都合だけじゃなく、エコロジカルな服をどう提案していくのかは毎シーズン考えているテーマなんだ。今回はミリタリーウエアを再利用するなど、エコロジカルなアイテムを拡大した。ロックダウン以降、服作りの環境が変わって、よりサステナブルについて考えるようになったんだと思う。今、この時代にファッションをやる以上、環境に対する責任は持たないといけないからね。

WWD:現在の顧客層は?

ルカ:マーケットにもよるけど、幅広い年齢層に男女問わず着てもらっている。若者向けなイメージがあるかもしれないけど、実はおじいさん、おばあさんにも人気なんだ。クラシックな作りがベースだから、手に取りやすいんだと思う。

WWD:一番大きなマーケットは?日本のマーケットは何番目に大きい?

ルカ:日本が一番大きい。セールス戦略もしっかり練っているし、毎シーズンフィードバックももらっている。2番目はフランスで、ここ数シーズンは中国もすごく伸びている。まだまだ大きなブランドじゃないけど、着実に成長している。どんなものが市場で必要か、そして自分たちにとってベストなどんな手段は何か。地味だけど、これを意識し続けることが大事なんだと思う。

WWD:チームメンバーはどんな人がいる?

ルカ:スタイリストのエリーザと、MDやプロモーション、ディベロプメントを担当するヌンツィオ、そして僕の3人。この3人で密にコミュニケーションを取り、SNSコンテンツやコレクションの方向性を決定している。そして外部のクリエイターと協力しながら、40〜50型のコレクションを制作しているんだ。少数だからこそ、自分たちのやりたいことを純度高く表現できている。

WWD:毎シーズン登場するおじさんモデルは誰?

ルカ:トニーのこと?よく見てるね!彼は仲の良い友達で、ファーストシーズンのショーから起用しているんだ。クールでチャーミングでセンシュアリーだから、ブランドの象徴なんだ。

WWD:26歳でいろんなことに興味があると思う。休日は何をしている?

ルカ:今は仕事ばかりだね(笑)。ファッションデザインが好きなというのはもちろん、それ以上に、今が頑張りときだと思ってるから。本当にフリーなときは、ビーチで1日中本を読んでるかな。

WWD:今後ブランドの展望を教えてください。

ルカ:ブランドをもっと成長させたい。あと、ショーもやりたい。さらに先のことを言えば、ビスポークにチャレンジしたいと思っている。プレタポルテはあくまで量産できる服。個人の好みをそのまま反映できるビスポークで、よりスペシャルな服が作ってみたい。あとは自分の店を持って、ブランドのはハッピーな世界観を伝えながら、それに共感する人が集まる場所を作りたい。でもまずは、目の前の仕事に打ち込んでいくよ。

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ミラノの異才「マリアーノ」 26歳デザイナーが世界に届ける“ハッピーなプレタポルテ”

 イタリアを拠点とする「マリアーノ(MAGLIANO)」は、サルトリア仕込みのテーラリング技術を武器にしたシェイプの面白さと、ポルノ漫画など奇抜なモチーフ使いでジワジワと知名度を上げているメンズブランドだ。2018年に「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)」で新人デザイナー賞「Who’s on next !」受賞し、19年にミラノ・コレクションでランウエイデビューを果たした。現在、海外で20、日本で15のアカウントに卸している。

 デザイナーのルカ・マリアーノ(Luca Magliano)は1995年生まれの26歳。「まだまだ小さなブランドだよ」と話す彼に、デザイナーを目指した原体験から毎シーズンのコレクションの作り方、ブランド初期から登場する謎のおじさんモデルなどについて聞いた。

WWD:服作りを始めたきっかけは?

ルカ・マリアーノ(以下、ルカ):小さなころから服が好きだった。僕の地元ボローニャには大きなマーケットがあって、そこで服を買ったり売ったりしながら、 “服を着てハッピーになる感覚”を覚えたんだ。これがデザイナーを目指した原体験だね。高校卒業後、ジャーナリストで建築家のバルバラ・ネロッツィ(Barbara Nerozzi)に師事して、服や建築などデザイン全般を学んだ。

WWD:ファッションに専念していたわけではなかった。

ルカ:そう。建築からグラフィック、プロダクトまでいろんなデザインを勉強した。知らないことだらけで、毎日衝撃を受けていたよ。そんな時、師匠から「ルカはファッションがいいんじゃない?」と勧められて、ファッションデザイナーに専念することに決めたんだ。その後、運良くアレッサンドロ デラクア(Alessandro dell'Acqua)のもとで経験を積めて、16年に「マリアーノ」を立ち上げた。

WWD:デラクアのもとで学んだテーラリングは「マリアーノ」の軸になっている。

ルカ:そうだね。「マリアーノ」はストリートブランドではなく、フォーマルな日常着。だからサルトリアの技術やイタリアの工場でしか表現できない素材・ディテールを積極的に使ってるんだ。

WWD:その一方で、生地をツイストさせたり、ポルノのグラフィックを用いたりと、斬新なデザインも目を引く。これらの根底にはどんな思いがある?

ルカ:フォーマルでありながら、“ハッピーな時間に着てもらうプレタポルテ”を目指している。着るだけで気分が上がるのはファッションの一番の面白さだからね。最近は頭の中でヒーローを作って、それにインスパイアされながらコレクションを広げている。例えばスーパーセクシーなキャラクターだったり、ボローニャで有名なゲイのキャラクターだったり。ポルノの絵をジャケットに貼り付けたのも、ここから派生したアイデアだね。あとは「こういうコミュニティがいるんだよ」と政治的なメッセージも忍ばせている。洋服はメッセージを伝えるツールでもあるから。

WWD:2022年春夏コレクションではアップサイクルを大々的に取り入れた。その理由は?

ルカ:ブランドを始めたときから、デッドストック素材を使ったり、古着をリユースしたりしてアップサイクルを取り入れてきた。予算の都合だけじゃなく、エコロジカルな服をどう提案していくのかは毎シーズン考えているテーマなんだ。今回はミリタリーウエアを再利用するなど、エコロジカルなアイテムを拡大した。ロックダウン以降、服作りの環境が変わって、よりサステナブルについて考えるようになったんだと思う。今、この時代にファッションをやる以上、環境に対する責任は持たないといけないからね。

WWD:現在の顧客層は?

ルカ:マーケットにもよるけど、幅広い年齢層に男女問わず着てもらっている。若者向けなイメージがあるかもしれないけど、実はおじいさん、おばあさんにも人気なんだ。クラシックな作りがベースだから、手に取りやすいんだと思う。

WWD:一番大きなマーケットは?日本のマーケットは何番目に大きい?

ルカ:日本が一番大きい。セールス戦略もしっかり練っているし、毎シーズンフィードバックももらっている。2番目はフランスで、ここ数シーズンは中国もすごく伸びている。まだまだ大きなブランドじゃないけど、着実に成長している。どんなものが市場で必要か、そして自分たちにとってベストなどんな手段は何か。地味だけど、これを意識し続けることが大事なんだと思う。

WWD:チームメンバーはどんな人がいる?

ルカ:スタイリストのエリーザと、MDやプロモーション、ディベロプメントを担当するヌンツィオ、そして僕の3人。この3人で密にコミュニケーションを取り、SNSコンテンツやコレクションの方向性を決定している。そして外部のクリエイターと協力しながら、40〜50型のコレクションを制作しているんだ。少数だからこそ、自分たちのやりたいことを純度高く表現できている。

WWD:毎シーズン登場するおじさんモデルは誰?

ルカ:トニーのこと?よく見てるね!彼は仲の良い友達で、ファーストシーズンのショーから起用しているんだ。クールでチャーミングでセンシュアリーだから、ブランドの象徴なんだ。

WWD:26歳でいろんなことに興味があると思う。休日は何をしている?

ルカ:今は仕事ばかりだね(笑)。ファッションデザインが好きなというのはもちろん、それ以上に、今が頑張りときだと思ってるから。本当にフリーなときは、ビーチで1日中本を読んでるかな。

WWD:今後ブランドの展望を教えてください。

ルカ:ブランドをもっと成長させたい。あと、ショーもやりたい。さらに先のことを言えば、ビスポークにチャレンジしたいと思っている。プレタポルテはあくまで量産できる服。個人の好みをそのまま反映できるビスポークで、よりスペシャルな服が作ってみたい。あとは自分の店を持って、ブランドのはハッピーな世界観を伝えながら、それに共感する人が集まる場所を作りたい。でもまずは、目の前の仕事に打ち込んでいくよ。

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「セックス・エデュケーション」出演俳優の日常 オラを演じるパトリシア・アリソンのファッション日記

 ネットフリックス(NETFLIX)の大人気ドラマ「セックス・エデュケーション(Sex Education)」に出演し、オラ役を演じるパトリシア・アリソン(Patricia Allison)は今をときめく俳優の1人。セックスをテーマに性教育やクィア・アイデンティティを包括的に扱う学園物語「セックス・エデュケーション」に出演したことをきっかけに話題を集めている。最近では、ヴェネチア映画祭や同ドラマ待望のシーズン3のオンラインプレミアに参加し、「ミュウミュウ(MIU MIU)」を着用した。そんなパトリシアのヴェネチアでの“ファッション日記”を写真とコメントでお届けする。

WWD:「ミュウミュウ」のルックのお気に入りポイントは?

アリソン:一番好きなのは、ブルーの「ミュウミュウ」のスーツにあしらわれたスタッヅが、私のヘアースタイルにぴったり合っているところ。スカートもすごく気に入っていて、履き心地もよかったし、“無敵”って気分だった。

WWD:ファッションはどんなスタイルが好き?

アリソン:ファッションにハマった最初のころは、ビンテージアイテムや両親のクローゼットから借りたオーバーサイズの洋服をよく着ていた。そこからいろんなテイストや着こなしを楽しむようになったかな。自分で選んだアイテムやブランドのファッションを通して、自分に“しっくり”くる感覚がとてもワクワクする。「ミュウミュウ」は中でも、いつでも私らしさを表現してくれる存在。

WWD:ヴェネチアではどんなひとときを過ごした?

アリソン:「ミュウミュウ」のショートフィルム「MIU MIU WOMEN’S TALES(女性たちの物語)」を観て、トークセッションにも参加して、とっても楽しかった。毎日いろんな「ミュウミュウ」のアイテムを着て過ごしたよ。素敵なティードレスや猫柄のトップスに合わせたレザーのスカートがお気に入り。ヴェネチアは本当に素敵な都市だったので、また絶対訪れたい。

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「ディオール」の“メダリオンチェア” 吉岡徳仁と佐藤オオキの再解釈は?

 「ディオール(DIOR)」は9月5~10日、イタリア・ミラノ市内で“メダリオンチェア”をテーマにした展示を行った。“メダリオンチェア”とは、クリスチャン・ディオール(Christian Dior)がファッションショーのゲスト用に選んだ椅子。回想録でムッシュ・ディオールは、「落ち着きがあり、シンプルかつクラシックでパリらしい」と述べている。リボンをあしらった楕円形の背もたれを持つ椅子は「ディオール」初のパリのブティックに置かれたほか、メゾンのコードとして香水のボトルなどにも影響を与えている。今回の展示では、世界中のクリエイターが再解釈した“メダリオンチェア”を展示。日本からは、吉岡徳仁とネンドの佐藤オオキが参加した。2人の作品に対する思いを紹介する。

 吉岡は、“人の感覚を超越すること”を模索しながら抽象と現実の間にあるオブジェを制作し続けている。“メダリオンチェア”に関しては、「光を素材そのものへ転換した。境界や外観の概念を超えて夢見ることへ誘うインビテーションだ」と述べている。彼が好んで用いるガラス素材を用いた作品は透明感と優美な起伏の融合からレトロフューチャリスティックな雰囲気を醸し出している。シンデレラのガラスの靴を想起させるエレガントなチェアだ。

 ミニマルなアプローチで世界的に評価されている佐藤も“メダリオンチェア”の素材にガラスを使用。背面、座面、脚は単一のパーツで構成されている。フューチャリスティックな印象の作品は、メゾンのシンボルカラーであるグレーやムッシュ・ディオールが好んだペールピンクで彩られている。背面を楕円形にくり抜くことで、“メダリオンチェア”のフォームを暗喩的に引き立たせている。佐藤は、「ムッシュ・ディオールとの長い会話」を表現したとコメントしている。

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宮永えいとがyutori片石らから資金調達 月商1億円ブランドへ

 宮永えいとが代表を務めるCiiKは、第三者割当増資により3000万円の資金調達を行った。引き受け先は、アパレルブランド「ウィンダンシー(WIND AND SEA)」経営者の赤坂優氏が代表を務めるAAファンド、主にライフスタイルやエンタメ、スポーツ領域に出資するWベンチャーズ(W ventures)、そしてyutoriの片石貴展代表取締役だ。資金は、宮永がプロデュースするメンズコスメブランド「レタッチ(RETOUCH)」の新規プロダクト開発などに充てる。

 宮永はユーチューブチャンネル「大人男子ラボ」で約15万の登録者を持つインフルエンサーだ。スキンケアやメイク、ヘアなどの情報を発信し、今年1月には「レタッチ」をローンチした。過去に都内のヘアサロンで店長を務め、今もサロンワークを続ける現役美容師でもある。

 インフルエンサー自らが資金調達し、事業拡大するのは珍しい。「正直、お金がめちゃくちゃ欲しかったわけではない」と語る宮永に、真の目的と今後の展望を聞いた。

WWD:調達した資金の使い道は?

宮永えいと(以下、宮永):「レタッチ」の新規プロダクト開発や事業拡大に充てます。まずはヘア関係のプロダクトを増やす。これまでリップやBBクリームも作ってきましたが、ヘアバームは初回生産分5000個が完売し、急きょ追加生産するほど大きな反響でした。世の中の男性の身だしなみは髪から始まるんだと実感しました。

WWD:「レタッチ」の強みは?

宮永:僕自身が美容師でヘアの知見を持ってることに加えて、ユーチューブでユーザーのニーズをキャッチできること。動画を分析すれば、どんなトピックに興味があって、どこで離脱されて、どこで登録者が伸びているかが分かる。一種のマーケティングツールなんです。今後も動画やればやるほど、プロダクトの精度も高まります。

WWD:ECや百貨店のほか、全国のヘアサロンと組んで店販するビジネスモデルも奏功している。

宮永:美容師と横の繋がりがあるのは大きいです。中には1カ月で200個売ってくれる美容師もいます。お客さんにも求められるし、プロも使いやすい。これは僕ならではの商品提案力だと思います。

WWD:実売を考えると、自己資本でも十分賄えそうだ。

宮永:正直、めちゃくちゃお金が欲しかったわけじゃありません。僕は男性の身だしなみに課題を感じて、社会貢献できるブランドを本気で作りたいと思っている。でも1人の美容師であり、インフルエンサーだから、「レタッチ」には“インフルエンサーが出したブランド”という認知が少なからずあるんです。このイメージを払拭したい。そこでビジビネスのプロと組んで自分のビジョンを共有し、それを達成する環境を整えました。

WWD:名だたる投資家のサポートによって、ブランドに箔が付く。

宮永:そうです。それと、自分自身に発破をかけるためでもあります。美容の現場しか知らない僕は、世の中のビジネスがどう回っているか、どうやって資金調達するかは全く知らないし、数字も強くない。でもそれを言い訳にしていたら理想のブランドは作れません。今ここで本気でプレゼンして、一流のビジネスマンに認めてもらうことができたら、自分自信も成長する。その一心で行動しました。今回、ライフスタイルや見た目に関する事業に強い3人に仲間になってもらえて、本当に心強いです。

WWD:株主とのつながりは?

宮永:Wベンチャーズの東明宏さんは、僕も所属する「ゴウトゥデイシェアサロン(GO TODAY SHAiRE SALON)に出資されていて知り合いました。片石さんは、実は彼の弟さんの髪を切っていて、そこからつながりました。赤坂さんは片石さんからの紹介です。

WWD:今後の展望は?

宮永:プロダクト数を増やして月商1億円をコンスタントに達成することが当面の目標です。“大人男子の身だしなみをアップデートする”に関係することなら、どんどん挑戦していきたい。開発中の商品がたくさんあるので、まずはそれらを早く詰めてローンチしていきます。楽しみにしていてください。

株主が語る出資の決め手

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「エンダースキーマ」デザイナーに聞く「トッズ」コラボの裏側 ピタゴラ装置を使った映像撮影にドキドキ

 イタリア発の「トッズ(TOD’S)」は、柏崎亮が手掛ける東京発のフットウエアブランド「エンダースキーマ(HENDER SCHEME)」とコラボレーションしたカプセルコレクションを9月28日に発売する。22日にはミラノ・ファッション・ウイークでイベントを開催し、商品と動画を公開した。

 同カプセルコレクションはコロナ禍を経て、丸2年かけて制作したという。“TOD’S”のTとDを入れ替えた“DOT’S”と題し、ブランドを象徴するモカシンシューズ“ゴンミーニ”のペブル(ゴムの突起)を「エンダースキーマ」流に再解釈。ペブルを巨大化させた“マキシペブル”をソールに配置したシューズなどが目を引く。他にも「トッズ」の“オーボエ バッグ”から着想したショルダーバッグや、「トッズ」から贈られたワインからヒントを得て開発したバッグなど、両者のコミュニケーションからもアイデアが生まれた。トレンチコートやトラックスーツ、デニムなどユニセックスで着用できるウエア9型をはじめ、アクセサリー5型、バッグ4型、シューズ10型(メンズ5型、ウィメンズ5型)で構成している。

 「エンダースキーマ」はこれまで「アディダス オリジナルス(ADIDAS ORIGINALS)」や「ドクターマーチン(DR. MARTENS)」「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」などの著名ブランドと協業してきた。柏崎デザイナーに今回の「トッズ」との取り組みの感想や、遠隔でのモノ作り、“ピタゴラ装置”を使ってワンテイクで撮影した動画について聞いた。

——「トッズ」の第一印象は?

柏崎亮デザイナー(以下、柏崎):“ゴンミーニ”の印象が強かったです。履いたことはなかったのですが、実際に協業が決まってから足入れしてみると、履き心地を通して長く愛されるプロダクトであることが理解できました。

——コロナ禍の遠隔でのモノづくりは大変だったに違いない。協業をして印象的だったことは?

柏崎:物理的な距離や言葉の壁に加えて、コロナ禍での渡航制限もありましたが、アトリエでプロトタイプを制作することで解決することができました。プロトタイプは言葉やデッサンよりも情報量が多く、コミュニケーションにとても有効。また、両ブランドともにインハウスでプロトタイプを制作できる環境を持っていたことが強みになっていると感じました。

——イタリアと日本、職人技で違いを感じることは?

柏崎:多少の違いはあれど、プロダクトに対する愛情はそれぞれ深い。そこがクラフトマンシップに重きを置く両ブランドの共通項なのだと思いました。

アイコニックな“ゴンミーニ”を
「エンダースキーマ」流にリプロダクト

——「エンダースキーマ」の代表的なヌメ革使いは控えめだが、素材選びで気をつけたことは?

柏崎:意識的に控えたつもりはありません。ヌメ革はブランドを象徴する大切なマテリアルの一つですが、「トッズ」は僕たちのデザインやアイデア、クラフトマンシップに期待していました。素材を自由にセレクトした結果、このようなバランスになりました。

——シューズはペブルを大きくした“マキシペブル”が印象的だった。ドットに着目した理由は?

柏崎:初めから、アイコニックな“ゴンミーニ”を僕たちなりの解釈でリプロダクトしようと考えていました。でも、プロダクトを単品で作り込むとカプセルコレクションとしての統一感が出せないと考えて、“TOD’S”のTとDを入れ替えて、“DOT’S”とすることで、全体を包み込むことにしました。そうしてドッツ=ペブル、円環、ピリオド、ループなどの文脈をつないでいくことで、コレクション全体とプロダクトを構成していきました。

——シューズだけでなくウエアを制作した感想は?

柏崎:「トッズ」のプロフェッショナルたちと制作することで新しい領域に挑戦できたことはとても楽しく有意義でした。プロダクトもとても良いものに仕上がったと思います。

ピタゴラ装置を使った動画
ワンテイク撮影にハラハラドキドキ

——ピタゴラ装置を使った動画がユニークだった。制作する上でこだわった点は?

柏崎:コレクションに取り組み始めるタイミングで、動画でのプレゼンテーションになることが分かっていたので、プロダクト制作と同時進行でアイディアを固めていきました。ムービーの中に「TOD'S」「DOT'S」の解釈がたくさん散らばっています。プロダクトの特徴を活かした装置の作成や、音楽と連動したテンポの心地よさなど、かなり細かいところまで踏み込んで制作しました。

——動画のラストで、また始まりに戻る演出はコレクションと関連している?

柏崎:“点の連続が線になり、それが行き来することで円になる”というコレクションの副題的を、ドットの円を引用して表現しました。

——撮影はワンテイクのため、2日間かけたと聞いた。

柏崎:とにかくハラハラドキドキでした。装置自体の精度やモデルとの連動など、ライブ感が痺れましたね(笑)。60テイク以上かけました。OKが出ないまま1日目を終えて、最終日にOKテイクが撮れて、その後のスチール撮影を終了した高揚感は普段味わえないものでした。携わってくれたスタッフの方々にはとても感謝しています。大勢の人と、瞬間的な作品を共に作り出すことは普段あまりしないので、楽しかったですね。

——この協業を通じて、「エンダースキーマ」のどのような点を世界にアピールしたい?
柏崎:新しいクラフトの概念の種になるような何かを感じてもらえたらうれしいです。

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エディ注目の気鋭ミュージシャン 「セリーヌ オム」2022年春夏のBGMを手掛けたイジー・カミナとは

 「セリーヌ オム(CELINE HOMME)」が2022年春夏コレクションをデジタルで発表し、音楽はアメリカ・ロサンゼルス出身の26歳、イジー・カミナ(Izzy Camina)が担当しました。同ブランドをアーティスティック、クリエイティブ&イメージディレクターとして率いるエディ・スリマン(Hedi Slimane)にとって、音楽は“エディ=音楽”という方程式ができるほど切っても切り離せない関係性ですよね。そこで、最新コレクションを解き明かすためにイジー・カミナにインタビューを実施しました。さらに、エディが過去にピックアップしてきたミュージシャン3組と、エディとの仕事の後の活躍ぶりを、私的好みを交えて振り返ります。インスタグラムのフォロワーがまだ4000にも満たないカミナも、これからブレイク必至かもしれませんよ。

エディが愛したミュージシャン超私的3選

THE DRUMS

 日本にも何度か来日をしているニューヨーク・ブルックリンのバンドがザ・ドラムス(THE DRUMS)です。彼らは、エディが「ディオール オム(DIOR HOMME)」を去った後に出版した写真集“Rock Diarie”(2009)にモデルとして出演しました。08年に結成したザ・ドラムスは、09年にアルバム「Let's Go Surfing」でデビュー。ニューヨークの街中から生まれたとは思えない「Oh,Mama I Wanna Go Surfing」というキャッチーなフレーズと、サーフポップの軽やかなメロディー、そしてスマートでスタイリッシュな彼らのルックスが絶妙にマッチして、これまでのインディポップシーンとは一線を画すバンドに成長していきました。デビュー間もない無名な彼らのアー写を、エディが自ら撮影するほど溺愛したのも納得!

DIIV

 「サンローラン(SAINT LAURENT)」の2013-14年秋冬コレクションのキャンペーンでモデルを務めたのがニューヨークのバンド、ダイブ(DIIV)のザカリー・コール・スミス(Zachary Cole Smith)です。14-15年秋冬にはランウエイショーにもモデルとして登場しました。ダイブのノイジーなギターと浮遊感のあるヴォーカルは、あえてカセットテープで聴きたくなり、どことなくティーン時代のようなエモーションを感じる人は少なくないはず。メンバーの中でもスミスの存在感は圧倒的で、ミュージシャン・モデルのスカイ・フェレイラ(Sky Ferreira)と交際していたことも当時は話題でした。バンドはデビューしてから何かと紆余曲折ありますが、どんどん深みを増していく彼らの姿に私はこれからも目が離せません。

CURTIS HARDING

 デトロイトのシンガー、カーティス・ハーディング(Curtis Harding)は、エディが2013年にカリフォルニアのフェス「ビーチ ゴス(Beach Goth)」でミュージシャンを撮影した際にたまたま撮影されたことがきっかけで、15年の「サンローラン」のプロジェクト“SAINT LAURENT MUSIC PROJECT”に起用されました。ハーディングは往年のソウルシンガーを彷彿とさせるメロディーとパワーで、そこにインディーロックのガレージ感が融合した独自の音楽性が魅力です。彼が14年のデビュー時にエディと制作したムービーやアルバムのジャケットは、両者らしさがふんだんに詰め込まれた何度見ても色あせないビジュアル!その後は「グッチ(GUCCI)」とも協業するなど大活躍で、デビュー前から見出したエディの先見の明には脱帽です。

「セリーヌ オム」の音楽を手掛けた26歳にインタビュー

——まずはプロフィールを教えてください

イジー・カミナ(以下、カミナ):ハイ!私はシンガーで、自分の曲をパソコンで制作しているわ。生まれたのはロサンゼルスだけど、ニューヨークの近く、ニュージャージーで育ったの。複雑な子ども時代を送ったから大変だったけれど、いいこともあったわ。音楽を始めたのは高校生のころで、アプリでビートを作り始めたのがきっかけ。

——音楽との出合いはいつ?

カミナ:記憶にある限り、本当に小さな子どもの時からよ。私が覚えている一番昔の思い出は、ロサンゼルスにある父親のアパレル会社のワークショップでのものかな。「モスキートヘッド(MOSQUITOHEAD)」というブランド名で、ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)やジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)とかいろんなバンドのプリントTシャツを出していたの。だから、小さなころから素晴らしいロックアイコンのイメージにたくさん触れてきたというわけ。それが私と音楽が出合った初めての経験ね。

——作品を作るインスピレーション源や、影響を受けてきたアーティストは?

カミナ:世の中の状況と、自分の経験。さまざまなことからインスピレーションを受けるから、私の音楽もいろんなジャンルにまたがっているんだと思う。影響を受けたアーティストはたくさんいるわ。スージー・スー(Siouxsie Sioux)、エム・アイ・エー(M.I.A.)、コーン(Korn)、システム・オブ・ア・ダウン(System of a Down)、そして両親が聴いていたもっと昔のバンドとか。中学生のころはエム・エフ・ドゥーム(MF DOOM)やウータン・クラン(Wu Tang Clan)を、大学生になってからはゲサフェルスタイン(Gesaffelstein)なんかのエレクトロ系のアーティストも聴いていたな。今となってはあまり聴いていないアーティストもいるけれど、ジャンルを問わず聴いてきた積み重ねが今の音楽性につながっているのは間違いないわ。

——コロナの前と後で環境の変化は?

カミナ:幸運なことに、ほとんど変わってないの。もともと、自分のベッドルームで作業をしたり、録音したりしていたから。

——音楽を始めてから今までで、印象に残っているエピソードは?

カミナ:初めて高級なマイクで歌った時だと思う。自分の声を即座に嫌いにならなかったのは、あれが初めてだったから。

ショーの曲は「頭にこびりつくみたい」

——「セリーヌ オム」のコレクションに参加して、どんな気持ち?

カミナ:ショーには、深いインスピレーションを受けたわ。私の曲に対する反応は……どうやら、みんなの頭にこびりつくみたい!それがいいことなのかどうか、分からないけど。

——エディと会った印象は?

カミナ:初めて正式に会ったのは、ショーの撮影をしているとき。ロケ地まで飛んで行ったの。想像通りのクールで知的な人だったわ。

——エディは音楽との関係性が深いが、あなたから見てエディはどんな音楽センスがあると思う?

カミナ:過去のショーや、エディが撮影した有名なミュージシャンのポートレートなどを見れば、そこに答えがあるんじゃないかな。

——「セリーヌ オム」2022年春夏コレクションの印象は?

カミナ:今回のコレクションは、めちゃくちゃかっこよくてグラマラスだったし、タフだけど美しかった。私はもともと、自分の音楽でそういう感じを表現しようとしていると思っているから、自分の芯の部分ともマッチしていると感じたわ。

——自身のファッションのこだわりは?

カミナ:私の場合、髪の毛がクレイジーなほどボサボサしていて、どうしても注目を集めちゃうから、服は調和が取れたシンプルな感じが理想。色や柄、素材じゃなく、フィットやシルエットにこだわっているわ。サステナブルだから、ビンテージを買うのも好き。

——ファッションと音楽の関係性についてはどう考える?

カミナ:私にとって、アートは言葉を通じて表現できないことを、理解したり伝えたりするのを助けてくれるものなの。ファッションや音楽には、何かを伝えるための言葉や表現とは“別の言語”という側面もあるから。

——日本はどんなイメージ?

カミナ:実は、高校を卒業した後、東京の墨田区に数カ月ほど住んでいたことがあるの。日本というと、自然の美しさを思い出すと同時に、ホストファミリーとその飼い猫のパールと過ごした、温かくてハッピーな思い出がよみがえってくるわ。自転車であちこち訪ねて、美味しいものを食べて、地元のロックバーに行って、日本のカルチャーを学んだこととかね。また東京に行って、マユミとユリコに会いたいし、もっと地方や、北海道にも行ってみたいな。

——今はパソコンやスマートフォン上に情報があふれていて、若い世代はそのような環境で音楽を制作している。あなたはミュージシャンとして、その状況とどう向き合って活動していきたい?

カミナ:今の、この常に刺激や情報であふれている状態は嫌いだな。ありがたく思ってはいるけれど、あまりに急激に、手に負えないぐらい過剰になってしまった。個人的には、それに反抗するためにスマホの電源を切って、自然の中で長い時間を過ごすのが好き。マイペースでゆっくり動いていたら成功できないっていうのなら、私はそれで構わないわ。

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勢いを増す北欧発の人気ブランド「ガニー」 CEOが語るブランド戦略とは

 「みんなが『ガニー』ガールズのとりこだ」と語るのは、デンマーク・コペンハーゲン発のファッションブランド「ガニー(GANNI)」のアンドレア・バルドー(Andrea Baldo)最高経営責任者(CEO)だ。

 「ガニー」は2000年にカシミヤ製品を扱う店として創業し、09年にニコライ・レフストラップ(Nicolaj Reffstrup)とディッテ・レフストラップ(Ditte Reffstrup)夫妻がウィメンズブランドとしてリブランディングした。17年にはLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下の投資会社Lキャタルトン(L CATTERTON)が出資している。

 「ガニー」はSNSマーケティングに優れ、ブランド着用者の画像を集めたハッシュタグ「#GanniGirls」はインスタグラム上で7万件以上の投稿を誇る。これにより、ブランド特有のプリントやルーズなシルエット、ピーターパンカラーを好む女性たちのコミュニティーを築いている。

 バルドーCEOは18年にガニーのCEOに就任。ブランドのグローバル化のために尽力し、ブランドの成長をけん引してきた。「良いデザインを手の届く価格帯で提供することが重要だ」とバルドーCEOは好調の理由を語る。また、キルティングコートからクリスタルをあしらったニット、ラバーブーツ、ピーターパンカラーのシャツまで、あらゆるカテゴリーで“売れ筋”を生み出したことがブランド成功の秘訣だと付け加えた。

最重要市場は米国、そして中国へ

 「ガニー」を真のグローバルブランドにするためにも、現在の最重要市場は米国だという。米国はこの3年間で、本国のビジネスを上回る、ブランドにとって最大の市場になった。ローカライゼーションに重点を置き、ロサンゼルスのメルローズ・アベニューとニューヨークのマーサー・ストリートに出店。現地のチームを結成し、ショールームも立ち上げた。

 米国の次に狙う市場は中国だ。その足掛かりとして、まずはネッタポルテ(NET-A-PORTER)やエッセンス(SSENSE)といった第三者が運営するECサイトを通じて中国市場に参入。5月には中国最大手EC企業のアリババ(ALIBABA)が運営するECサイト「Tモール(TMALL)」に単独で出店した。

 「結果は驚くものだった。市場が整っていたため、われわれの予想をはるかに上回る成果を出すことができた。おそらく韓国やSNSにおける影響力の大きさが理由だと思うが、認知度が想定より高かった。この結果を受けて、やっと市場に直接進出することができる。この数字は次のステップである実店舗の出店を後押ししてくれる。実店舗出店は中期的目標だったが、現在は最優先課題だ」。

 バルドーCEOが着任して以来、共同創業者のニコライ・レフストラップは完全にサステナビリティと循環型社会に焦点を移し、事業のあらゆる側面において試行錯誤を繰り返しているという。原材料については、リサイクル素材やデッドストック素材を増やし、コペンハーゲンの店舗ではレンタルサービスを試験的に開始。生産後の衣服の寿命を延ばす方法を模索している。

 「われわれは、資源からより多くの価値を引き出せるようなビジネスモデルを構築する必要がある。経済的に成立させることは容易なことではないが、理想としては、同一の資源から価値を引き出す回数を増やしたい」とバルドーCEOは話す。「製品には残存価値があるのに、業界ではこれまで最初の取引にしか注目していなかった」。

 この目標をかなえる可能性を秘めているのがレンタルモデルだ。レンタルモデルを導入することで、ブランドは1つの衣服で複数の取引を行い、その後、中古市場で販売することで利益を得る機会をさらに得ることができる。他方、需要の創出は継続課題だという。「最大級の二次流通市場を誇るデンマークで試験運用を開始し、このモデルが機能する手ごたえを感じた。しかし、現時点では経済的に成立せず、数量も思うように増えていない。だからこそ、より多くのトラフィックを生み出すために他の市場への拡大を考えている」とバルドーCEOは説明する。

 最終的な目標についてバルドーCEOは、会計時に支払い方法を選択できるように、レンタル品、新品、中古品のいずれかを選択できるようにすることだと答えた。「顧客とこのようなやり取りを行うことが普通になるだろう。また、異なるビジネスモデルの間でバランスを取り、適切なコスト構造を構築できるかどうかはブランドにかかっている」と意気込む。

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【動画】三越伊勢丹バイヤーの仕事に密着  「服を選ぶ基準は感性と科学」 

 「ファッション業界人辞典」は、ファッション業界で働く人にフォーカスし、その仕事に密着リポートします。業界のさまざまな職業を紹介しながら、「実際、どんな仕事をしているの?」「どうしたらその職に就けるのか?」などの疑問を解決。これからの若者たちの指針になるような情報や、業界人が気になるあの人の素顔や過去を、日々の仕事姿や過去の映像・写真を通して発信します。

 第4弾は、伊勢丹新宿本店本館3階の婦人服の自主編集売り場「リ・スタイル(RESTYLE)」の神谷将太バイヤーに密着しました。ファッション業界の花形ポジションであるバイヤー、商品の買い付けやプロモーション企画、時には店頭にも立つという多様な仕事内容に迫りました。また、バイヤーという枠にとらわれずに、計20トンにも及ぶ廃棄寸前の「リーバイス(LEVI’S)」のジーンズ“501”を海外の業者から買い取り、リメイクして販売するプロジェクトについても聞きました。

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「推し時計、燃ゆ」 勝手連が本国スイスに公認され、コラボモデル販売に至るまで

 今回の「推し時計、燃ゆ」の主人公は、名古屋在住の中澤浩司さん(41歳)だ。スイスの時計ブランド「モーリス・ラクロア(MAURICE LACROIX)」の代表的モデル“アイコン オートマティック”の写真を2年半インスタグラム(@koji_nkzw)に投稿し続け、ついには本国から世界初の公認ファンクラブの運営を任された人物だ。さらに驚くべきは今秋、中澤さんが企画した日本限定ウオッチが発売されるという。“推し活”の最高型とも言える夢は、いかにしてかなえられたのか?

WWD:「モーリス・ラクロア」との出合いは?

中澤浩司(以下、中澤):スイス・バーゼルで開催されていた世界最大の時計見本市「バーゼル・ワールド(BASEL WORLD)」でした。もともとはバイヤーやメディア向けに行われていたイベントですが、近年は一般ユーザー向けにも情報が同時に解禁されていて、時計ファンは年に一度のタイミングで発表される新作に注目していました。そこで2018年にお披露目されたのが、“アイコン オートマティック”でした。それまでの“アイコン”はクオーツ式で、初の機械式モデルでした。

WWD:ビビビ!ときたわけですね?

中澤:はい(笑)。「バーゼル・ワールド」をリアルタイムで見るようになったのは10年ごろからなんですが、ビビビ!ときて購入したのは初めてでした。

WWD:これまでの時計遍歴について教えてもらえますか?

中澤:初めての本格時計は、「オリス(ORIS)」の“BC3”でした。04年のことです。その後、「オメガ(OMEGA)」の“シーマスター”、「ティソ(TISSOT)」「ラドー(RADO)」などを購入し、今では十数本をコレクションしています。価格は10万~20万円が中心で、ファッションアイテムとして取り入れています。1980~90年代のデザインに引かれるため、中古品も多いです。とはいえ、最近身に着けるのは“アイコン オートマティック”ばかりです。

WWD:何にそんなに引かれるんですか?

中澤:う~ん、ドンズバの答えになっていないかもしれませんが“人”かなぁ。時計って、狭く深いコミュニティーが特徴だと思うんですが、だからこそ人がとても大事で。もちろん実機も重要ですが、時計には歴史があるので、それをきちんと伝えるストーリーテラーの存在が欠かせません。“この人から買いたい”と思えるかどうかは、間違いなく分岐点になりますね。

WWD:その点、「モーリス・ラクロア」は合格したと?

中澤:はい。「バーゼル・ワールド」で“アイコン オートマティック”を見た直後に、日本の正規代理店であるDKSHジャパンに問い合わせました。電話対応してくれた方の印象が、とても良くて。それに続く連絡でも、つまり人が代わっても皆さん丁寧で。その年の10月に名古屋の百貨店に入荷したと聞きお邪魔した際も、販売員の方がとても熱心でした。

WWD:“時計縁”とでも言うべきものですね。他ブランドにはない、「モーリス・ラクロア」の魅力とは?

中澤:75年デビューと時計としては新興ブランドで、認知度も“もうすこしがんばりましょう”なんですが、全ての商品がスイスメードで、部品製造メーカーとしての出自を持つことから機能面も信頼できます。デザイン性にも優れ、それでいて中心価格帯が20万円前後とコストパフォーマンスも高いです。つまり、“バランスが良い”んだと思います。

WWD:初めての高級時計の候補として最適で、かつセカンドウオッチにもなり得るということですね。インスタグラムに“アイコン オートマティック”の写真を投稿する推し活を始めたのはいつから?

中澤:もともと時計をメインに投稿していたんですが、“アイコン オートマティック”を買ってから数カ月で「モーリス・ラクロア」一色になりました(笑)。インスタ映えする時計なんですよ。写真も動画も全て僕が1人で撮影していて、1日1回のペースでアップしています。当初1000弱だったフォロワーが、今では3000を超えるまでになりました。コメントやDMでブランドや新作モデルについて質問を受けることも多く、自分がかつてそうしてもらったように、きちんと対応することでコミュニティーを強化できているのかな?と思います。

WWD:「モーリス・ラクロア」から公認を受けた経緯について教えてもらえますか?

中澤:毎日“アイコン オートマティック”の写真をアップしていたので、そのうちに本国の公式アカウントにシェアされるようになりました。そんな関係が続く中で2019年の春に、僕が撮った動画を公式アカウント内で使いたいと相談されました。もちろん、即OKの返事をしました。その年の8月に、ステファン・ワザー(Stephane Waser)=マネジングディレクターが来日すると聞いて、初めてお会いしました。その場で、「実はアメリカに非公認のファンクラブがあるのだが、その日本版をオフィシャルとして運営しないか?」と打診を受けました。「モーリス・ラクロア」がファンクラブを公認するのは世界初とのことで、大変光栄でした。公認を得たことで、本来ならオフ会なども企画したかったんですが、新型コロナの影響でオンライン限定の活動を余儀なくされています……。

WWD:さらには、これまでの貢献が認められ、コラボモデル“アイコン オートマティック クラブジャパン エディション”を発売するに至りました。

中澤:ワザー=マネジングディレクターから「おまえになら任せられる」と言われ、天にも昇る気持ちでした!日本でお会いしたあと、「僕なら、より日本市場にフィットした商品が作れる」とメールで直談判していたんです。

WWD:コラボモデル製作において最も苦労した点、またこだわった点は?

中澤:まずは、ファンクラブに寄せられたコメントをさかのぼり、全て洗い出しました。分かったつもりになっている日本人の好みについて、あらためて学びました。そのうえで変更したのは大きく3点です。

1.デイト表示

 “アイコン オートマティック”には、3時位置にデイト(日付)表示がありますが、それをなくしました。「よりシンプル、かつソリッドなものを」というファンの声に応えた形です。実際のアクションは、シート状の文字盤でデイト表示をふさぐといった安直なものではなく、今回のコラボモデルのためにムーブメントに手を加えてもらいました。

2.文字盤

 従来モデルの文字盤は、小さなピラミッド状の意匠が連結する“クル・ド・パリ”を採用していますが、“アイコン オートマティック クラブジャパン エディション”では手の動きに合わせて、さまざまな表情を見せてくれるサンブラッシュ仕上げにしました。カラーも日本人に人気のダークブルー一択です。

3.ベルト

 “アイコン オートマティック”用に初めてラバーベルトを製作しました。他モデルのベルトを転用するのではなく、一から作りました。カラーにもこだわっていて、ブランドや売り場からはブラックやダークグレーを希望されましたが断固拒否(笑)。アクティブイメージのラバーベルトを上品に見せたくて、“クールグレー”にしました。キーワードやニュアンスを伝えるのではなく、きっちりパントーンで指定したんですよ。ステンレススチール製ベルトも付属するので、TPOや気分に合わせて付け替えてほしいですね。

WWD:すごい!形だけの、“なんちゃってコラボ”ではないんですね。最後に、中澤さんにとって時計とは?

中澤:“つながり”です。“アイコン オートマティック”との出合いもそうだし、それがきっかけで憧れのブランドとも協業できました。こうして「WWDJAPAN」から取材も受けています。これからも時計を通じて、世界中の人とコミュニケーションしていきたいですね。

<「推し時計、燃ゆ」とは?>
「推し、燃ゆ」が芥川賞を受賞し、“推し活”が豊かな生き方につながるとの認識が広まっている。そこで元来、推しの要素が強い時計の世界で、さまざまな人に“推し時計があることで得られる幸福感”や“そもそも、なぜ推しているのか?”などを聞き、時計の持つ“時間を知る”以上の価値について探る企画。

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オーナーは世界照準の22歳 eスポーツ強豪のリジェクトが本気のアパレルブランド

 プロeスポーツチームを運営するリジェクト(REJECT)は、メンズブランド「オールモストブラック(ALMOSTBLACK)」の中嶋峻太デザイナーをディレクターに迎えて、アパレルブランド「リジェクト」を立ち上げた。アイテムは16日に公式ECサイトで発売し、チームカラーのブラックで統一したモッズコート(税込2万9700円)やブルゾン(同2万4200円)、シャツ(同1万6500円)、カーゴパンツ(同1万7600円)、Tシャツ(同6930円)の5型からスタート。今後はグッズなども拡充する予定だという。初年度売上高の目標は5000万円。さらに同社はeスポーツを軸とした他の事業にも積極的で、9月には東京・本郷に合計4フロアの新たな拠点リジェクト ゲーミング ベースを開いた。eスポーツチームでは日本トップクラスの実績を誇る組織を率いるのは、若干22歳の甲山翔也代表取締役。世界を見据える若きリーダーは、ゲームを起点にビジネスの世界をどう攻略していくのだろうか。そして、その武器としてなぜファッションを選んだのか。甲山代表と中嶋ディレクターを新オフィスで直撃した。

ファッションで“バフ”をかけろ

WWD:アパレルブランドを立ち上げた経緯は?

甲山翔也リジェクト代表取締役(以下、甲山):20歳前後の若いスタッフがチームに所属しているんですけど、ゲームで結果を出して人前に出るようになると着る服も変わり、成長していく姿を見ていたことが大きかったです。ゲームだけしているときは何も気にしていなかったのに、顔出しでゲームの配信をし始めると美意識が急に高くなって、プロとして覚悟が出てくるのだなと気づきました。彼らのために何かできないかなと思ったのがきっかけです。

WWD:ではファン用のグッズというより、選手のためという考え?

中嶋峻太「リジェクト」ディレクター(以下、中嶋):出発点は、選手とスタッフをかっこよくしたいという思いでしたね。もちろん一般販売もしますが。最初にイメージしたのは、プロレスラーが入場時にマントを着て、リングに上がるときにバンって脱ぐ瞬間があるじゃないですか。それをeスポーツ選手が全員でモッズコートをフードまで被って入場し、座るときは脱ぐっていうのもかっこいいんじゃないかと。急にアパレルを販売しても売れないけれど、選手が着ていいイメージを作ることができれば、ファンはアイテムをきっと欲しくなるはずだと考えています。

WWD:中嶋ディレクターが参加した経緯は?

中嶋:eスポーツの分野にはもともと興味があったんです。ファッション的な角度からも今後伸びてくるだろうと。そんなときに、僕が生地のディレクションをしているスタイレム瀧定大阪にリジェクトのスタッフの知人がいて、アパレルブランド立ち上げを計画しているという話を聞きました。そのときは正直リジェクトを知らなかったんですけど、調べたら日本で断トツ1位のチームで、ぜひやりたいと手を挙げました。それで春ごろに甲山さんと初めて会い、企画が実際にスタートしました。

WWD:これまで接点がなかったeスポーツチームのオーナーとの協業で何を感じた?

中嶋:出発点がたまたまeスポーツへの興味だったというだけで、甲山さんと実際に会うと「この人と何かしたい」ってすぐに思ったんですよ。年齢が15歳も下なのに話している目線が同じだし、良い悪いの判断が早くてびっくりしました。それに甲山さんの実家が製造業ということもあって、生地や縫製のクオリティーに強くこだわる姿勢も信頼できたんです。品質には徹底的にこだわりながら、スタイレムでディレクションしている生地“トライアングル”を使うなどして、手が届きやすい価格に抑えることもできました。よくあるチームグッズではないけれど、やっぱりファンの人に買ってもらいたいですからね。

WWD:プロのファッションデザイナーと仕事をした印象は?

甲山:選手や会社のストーリーをとても上手く表現してくれました。例えば、モッズコートに刺しゅうしている座標は、僕が初めて事務所を立ち上げた京都のアパートの場所なんです。僕はオーナーとして所属選手の生き様を本当に尊敬していて、彼らのストーリーが僕のストーリーでもあり、会社のストーリーでもあるんです。それがデザインとして服になることで、これからチームがどんどんかっこよくなれそうだなと自信が付きました。僕自身も好きな服を着るとその日はずっと楽しいし、自分が強くなった気がするんですよね。ゲーム用語っぽく言うと“バフ”がかかるというか。

中嶋:それがまさにファッションの醍醐味ですよね。新しい服を買って着たら、今でもテンション上がりますもん。いい武器を手に入れた感覚みたいなものというか。だから、選手たちのテンションが上がる服を作りたいとはずっと考えていました。

甲山:僕はチームが世界で1位をとるために、選手たちには常に最高のデバイスを提供しています。そのデバイスの次に彼らに提供できるものは何だろうと考えたら、身に着けるものなんじゃないかという答えにたどり着いたんですよね。ゲームをプレーしてる人たちって、究極を言えばファッションに興味はないんですよ。でも、かっこいいものへの憧れはある。だからメタバースの世界にみんな魅了されて、5万円とか平気で課金するんです。その“憧れ”を、身に着けるもので表現できればいいんじゃないかって。彼らはユニホームを着ると“バフ”がかかるから、今回のアパレルでさらに強力な“バフ”がかかるとうれしいですね。

世界を視野に入れる若きリーダーの原点

WWD:リジェクト社の現在の規模は?

甲山:社員が20人で、プロ契約の選手は45人所属しています。トップチームとアカデミー組織があり、全員に給料を支払っています。トップチームの中には、年収1000万円の選手もいます。来年のチームの収益は約3億円を見込んでいますが、これぐらいの規模は世界では一般的で、日本の市場が急成長しているだけなんですよ。逆をいうとゲームを起点にした事業の実例がまだまだ少ないので、僕たちが始めようとしているアパレルブランドのような取り組みにもチャンスはあると考えています。

WWD:eスポーツの世界に参加したきっかけは?

甲山:大きなきっかけはなくて、自然にのめりこんでいましたね。小学生のときに親友にオンラインゲームを教えてもらい、小学生でも大人に勝てる世界が面白いなと。親にめちゃくちゃ怒られながら、1日3時間ぐらいプレーする毎日でした。中学生になってゲームをするためのパソコン“ゲーミングPC”の存在をしり、父親に頼んで頼んで2、3年がかりで買ってもらいました。“ゲーミングPC”のおかげで強くなり、高校生で初めて大会で優勝したんです。それから自然とプロを目指すようになっていました。

WWD:実際にプロ契約したのはいつ?

甲山:18歳のときです。ただプロ契約とはいえ、当時の平均月給って2〜3万円でした。でも僕は10万円のオファーで喜んだのですが、どうせなら自分でチームを作りたかった。だから当時のオーナーに「僕にチームをやらせてください」と逆提案したんです。それでチームを任されて、僕も含めて4人チームを結成しました。

WWD:すぐに実績を残せた?

甲山:実績も何も、オーナーが突然失踪したんですよ。4人の中には本業を辞めてプロ一本で活動すると決めて参加してくれたメンバーもいたのに、チームが発足して2、3カ月したらオーナーが給料を一度も支払わず失踪するという。信じられませんでした。チームも結成しちゃったし、プロのリーグにも上がっちゃったし、結果も残していたので後戻りができなかった。でも選手たちに給料を支払えないので、まずは僕が資金を集めようと19歳でオーナー業に専念することにしました。最初は自分の貯金を切り崩して、各選手に2万円ぐらいの給料を払ってましたもん。

WWD:その逆境からどう盛り返した?

甲山:当時はビジネスについて無知だったので、「スポーツチームにはスポンサーが必要だ」という思い込みで、何も知らないまま1人で謎のスポンサー営業を1年間やっていました。そうしたらウェブ系の会社が僕のプレゼンに共感してくれて、本当にスポンサーしてくれることになったんです。その会社もeスポーツ についていろいろ調べてくれて、グッズ販売やコンテンツ制作など、いろいろなかたちの収益モデルがあるというのを一緒に学びました。何も知らなかった自分にとっても、視座が上がるきっかけになりましたね。

WWD:今の規模にどのように拡大した?

甲山:世界大会でサウジアラビアに遠征したときに、投資会社のイースト ベンチャーズ(East Ventures)から会いたいと連絡が届いたんです。僕はまだ学生だったので「べんちゃーきゃぴたるって何?」という感じでしたし、警戒もしていて。でも実際にビデオ通話してみると「君のチームはこれからの時代を見れている」と褒められて、気分がよくなったところに「1000万円投資したい」とオファーが届きました。僕の年齢が若いことと、eスポーツが盛り上がっていたタイミングだったこと、それに日本では競合相手が少ないモバイルeスポーツに絞って実際に結果を残していたのも評価されたみたいです。

WWD:今年春には、複数社から国内最大規模となる約3億6000万円の資金を調達したが、今後の目標は?

甲山:日本でもeスポーツが盛り上がっていますけど、世界との差はまだまだ大きい。ビジネスの規模も、選手の待遇も、何もかもが圧倒的に違います。でも、ただ海外を追いかけるのではなく、日本は独自の路線で盛り上がっていくと予想しています。まずは新しく立ち上げたアパレルブランドや新オフィス、将来的にはゲーミングギアなどの事業を立ち上げて成長させながら、いつかはIT系の企業と組み、メタバースの世界でリジェクトを収益化するビジネスがしたいです。リジェクトがこの2年で急速に拡大したように思われていますけど、ゲーム界の変化の速さを考えるといたって普通のこと。人、お金、時代の流れが今は一気に変わっていますから。

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「エアリズムマスク」も手掛けた敏腕MDに聞く ユニクロ女性下着の歩みと展望

 圧倒的な存在感で国内女性下着市場でのシェアを伸ばす「ユニクロ(UNIQLO)」。今年2月にはユニクロ史上最高のリフトアップをかなえる「ワイヤレスブラ シェイプリフト」、6月には「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」とのコラボレーションのインナーウエアを発売し、9月17日には吸水ショーツを発売するなど話題も絶えない。これらを始め、昨年6月に発売して大ヒットした「エアリズムマスク」なども手掛けるのが炬口佳乃子ユニクログローバル商品本部ウィメンズMD部長だ。数々のヒット商品を世に送り出す敏腕MDに、ユニクロ女性下着の歩みを振り返ってもらいながら、展望を聞いた。

――はじめに「マメ クロゴウチ」とのコラボレーションの反響はどうだったか?

炬口佳乃子ユニクログローバル商品本部ウィメンズMD部長(以下、炬口):非常に好評いただきありがたい。私も発売日は販売応援で売り場に立ったが「マメ クロゴウチ」ファンだけでなく、同ブランドを知らなかったけれど、事前告知やメディアでの紹介を見て「世界観がすてきだったから」と来店してくださる方が非常に多かった。コラボ商品ではあったが、下着などデイリーに使うアイテムの価格を上げることは避けたかったため、ワイヤレスブラもブラトップも既存商品と同じ1990円にしたことも好調要因のひとつだろう。ある程度在庫を積んで販売したこともあり、リピート買いしてくださったお客さまも多かった。海外での反響も大きく、シンガポールなどでも発売直後に品切れが起こるほど。今回のコラボは“下着と洋服の境界線を超える”という発想からスタートしたのが最大のメリット。花火のように打ち上げて一瞬で終わるコラボではなく、商品そのものが評価され、幅広い世代の方に「長く愛せる商品に出合えた」と言っていただけたことは嬉しかった。

――現在の「ユニクロ」の中でのウィメンズインナーの位置付けは?

炬口:女性の下着はユニセックス化しにくいものであり、女性の体の変化を支えていける商品。ライフスタイルや年齢による体の変化などに合わせた下着はまだまだ提案をしきれていない部分も多く、その開発は重要だ。気に入ればリピートしていただけるので、当然伸び代も期待できる。日本国内ではユニクロの下着が認知されてきたが、海外ではまだまだで「ユニクロに下着を買いに行こう」とまでには至っていない。世界のお客さまに支持されるようにならなければと思う。

――MDとして次々とヒット商品を送り出しているが、その手応えは?

炬口:お客さまが求めているものをチームで追求していったことの結果だ。「エアリズムマスク」も同様で、お客さまからのマスクの要望にすぐに応える必要があり、たまたま私が担当しただけ。常識にとらわれず、新しいアイデアをぶつけられる環境にあるのは恵まれているし、R&Dチームのたゆまぬ努力は大きい。そのチャレンジ精神にサプライヤー(工場)が高い技術で応えてくれる循環がうまくいっている。社内でいくらアイデアを持っていても、それを形にしてくれるサプライヤーがいなければ実現しない。

ブラトップで「世の中になかったカテゴリーを作った」

――03年のブラジャー発売から現在までで、エポックメイキングだったと感じる商品は?

炬口:06年のブラトップの発売は大きい。当時ブラトップのような商品は一部の下着メーカーは扱ってはいたが「Tシャツのようにもっと手軽に着られるものを作ればラクなのではないか?」という発想で完成した。初めは馴染みがなかったかもしれないが、その便利さが口コミで全国にじわじわと広がり、幅広い年齢のお客さまに支持される商品となった。ブラトップに関しては、デザインをちょっと変えたものを新商品として出すというような商品開発ではなく、それまで世の中にはなかった新しいカテゴリーを作ることができたと思うし、それができるとこんなに世の中に広がるんだと実感した。お客さまに対し、日常の中の満足を提供することに喜びを感じた。

――11年にブラジャーをワイヤレスに一本化した経緯は?

炬口:ユニクロは03年にブラジャーを発売し、しばらくはワイヤ入りブラが主力だった。ただ、ユニクロの店頭では常時接客し採寸するのが難しい。さらにそのころから、世の中全体の流れが、バストを寄せて上げて男性の目線を気にするというよりも、自分自身のために美しく、心地いい状態であることを重視する方向へと移っていった。それを受け「着けていて快適」がこれからの主流になると判断し、ワイヤレスに一本化した。その延長に16年の「ワイヤレスブラ ビューティライト(現在の「ワイヤレスブラ 3Dホールド」)がある。カップに樹脂テープを内蔵することで、“バストメイクできるワイヤレスブラ”としてデビューし、「ワイヤレスブラ=ゆるい(機能性に劣る)」という概念を転換させた。

体に一番近い下着は、体にできることがたくさんある

――9月17日に発売する「吸水サニタリーショーツ」も大きな話題になっている。

炬口:発表会には想定を超える多くの方が来場され、これだけ高い関心を持っていただいていることに、私たちがハッとさせられた。女性誌だけでなく、テレビのニュースとしても取り上げられていたが、それは大変有り難く嬉しいこと。吸水ショーツを初めて使う人にはまだまだハードルがあるだろうが、間口が広がってお客さまの手に届きやすくなることで、ハードルは越えやすくなる。吸水ショーツは使うことで人生が変わると思う。そうした変化がユニクロだけでなく、多くのプレーヤー(吸水ショーツメーカー)の手で広がることを願っている。

――最近は、吸水ショーツや乳がん手術後などに便利な前開きインナー、マタニティインナーなどを、「フェムケア関連インナー」として打ち出すようになっている。その意図や今後の展開は?

炬口:吸水ショーツ、マタニティインナー、前開きインナーなどは、女性のライフスタイルの変化やウエルネスに寄り添うフェムケア特化商品ではある。しかし、それ以外でも実はブラトップが授乳ブラとして高く支持されていたり、「ウルトラシームレスショーツ」を妊婦さんが愛用していたりなど、通常商品も女性のライフシーンやバイオリズムに寄り添っていることがメディアの評価やリサーチによって浮き上がってきた。これはつまり、快適な日常着である“LifeWear”の一環として、われわれが20年前から下着で取り組んできたことに間違いはなく、しっかり認知されているということだ。今後もユニクロは、そういった価値を提供していくとあらためて伝えたい。まずは17日に発売する吸水ショーツがお客さまのニーズにあっているのか一つ一つ検証し、改良にも注力しなければならない。それと並行して、新しいニーズがあれば開発していきたい。

――これからチャレンジしたい商品は?

炬口:インナーに限らず、新しいカテゴリーを作ることにMDとして挑戦していきたい。「こういうものって今までなかったけれど、確かに面白い」と思える新しい価値の商品が生まれれば、今まで当たり前過ぎて意識さえしていなかった不便が解消され、生活がラクになる。そういった商品を作ることに、私はMDとしてやりがいを感じる。体に一番近い存在である下着は体に対して解決できることがたくさんあり、毎日身に着けるからこそ、下着が少しよくなれば生活全体が快適になる。そんな日常を支える相棒のような存在、一歩踏み出す背中を押してくれるような商品を作っていきたい。

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ユーチューバーかんだまがユナイテッドアローズとモノ作りに挑んだワケ

 ユナイテッドアローズ(以下、UA)は16日、人気ユーチューバーの“かんだま”こと神田麻衣をディレクターに迎えた新ブランド「マルゥ ユナイテッドアローズ(MARU UNITED ARROWS)以下、マルゥ」を公式サイトとECモール限定で発売した。25〜34歳の女性をターゲットに「消費者目線のリアルクローズ」を提案する。

 神田は、前職のバロックジャパンリミテッド(以下、バロック)に勤めていた2017年に自身のYouTubeチャンネル「かんだま劇場」を立ち上げ、ユーチューバーとしての活動を開始した。プチプラアイテムを組み合わせたコーディネートや着まわし動画が、20〜30代の女性を中心に支持を集め、現在は約32万人の登録者を持つ。神田とUAの池谷啓介営業統括本部プランニングディレクターに同ブランドを立ち上げた狙いやビジョンを聞いた。

WWD:「マルゥ」立ち上げの背景は?

神田麻衣(以下、神田):昨年末に前職のバロックを退社し、今年は少しのんびりしようかなと思っていました。ただ、最近自転車での移動が多く、おしゃれなジャージーが欲しくて、自分の生活雑貨ブランド「白黒商店」でジャージーを製作していたんです。そこで、シルエットや生地のバリエーションなど、改めて服作りの難しさにぶつかりました。困っていた私に、所属事務所から「UAさんが相談に乗ってくれるよ」と話があったんです。

池谷啓介UA営業統括本部プランニングディレクター(以下、池谷):実は僕は神田さんがYouTubeを始めた当初からフォロワーでした。丁寧な商品紹介や共感できるコーディネート提案など、独りよがりでない発信の仕方に感心していました。ちょうどコロナ禍で社としてもECやデジタル上のコミュニケーション力を向上させる施策を考えていて、神田さんのような方と商品開発ができたら面白いのでは、と思い立ったんです。

WWD:ファッションユーチューバーの中でも神田さんの際立っている点は?

池谷:視聴者への愛情のある伝え方だと思います。バズを起こして、一過性の売り上げを立たせるのではなく、神田さんとは本質的なモノづくりに取り組めると思いました。

神田:ありがたいですね。私はバロックに入社以前は全然ファッションに興味がありませんでした。でも、「マウジー(MOUSSY)」に出合ってファッションに目覚め、雑誌の好きなコーディネートを見つけては文字でその要素を書き出してみるなど、コツコツ学んできたタイプです。だからこそファッションの“カッコ良さ”や“可愛さ”を、噛み砕いて伝える力は強みだと自負しています。その手法の一つとして、プチプラアイテムと組み合わせたコーディネート提案があります。

池谷:「マルゥ」でも、着まわしやすさが大きなポイントです。自社ブランドだけで完結した提案はリアルではない。神田さんには是非、他のブランドともどんどん組み合わせて提案してほしい。

WWD:神田さんのUAに対するイメージは?

神田:高級感や大人、優等生。いろいろな意味で距離感が遠い。SNSでのコミュニケーションに対しても距離を感じていたのが正直なところです。

池谷:それは私たちも認識しているところ。だからこそ、神田さんと取り組むことでその距離感を縮めていきたい。神田さんとの会議で印象的だったのは、「スカートはビールっ腹をカバーできるようなシルエットに」といったリアルな意見です。これまでファッションは、カッコ悪い部分を隠して表現していましたが、赤裸々な悩みをベースに提案してくのもありかもしれないと思いました。神田さんを通すことで良い意味で「UAなのに言えること」が増え、社の多様性を高めたい。

悩みの多いアラサーにリアルクローズを提案

WWD:神田さんはこれまで「ファッションを楽しむ消費者側にいること」にこだわっていたと思うが、UAと組むと決めた理由は?

神田:実際に過去に同様の話をもらったことがありましたが、断っていました。でも、UAとなら、モノを見て買ってもらえると思いました。おそらく、バロックからブランドを出せば、すでに私を知っている人が多いので、売れたと思います。だけど、「この人だから買いたい」ではなく、「モノがいいから買いたい」と思ってほしいんです。モノづくりへの圧倒的な安心感があるUAとならば、それができると思いました。

WWD:あえてコミュニティーの枠から出て挑戦したということ?

神田:はい。なので正直、毎日めちゃくちゃ不安でいっぱいです。最近、変な夢もたくさん見ます。自分は満足しているけど、自己満足で終わってしまわないかが不安です。ただ、先日YouTubeで「マルゥ」誕生を発表した時には、ファンの方から予想以上に「応援する」といったコメントがもらえてうれしかったです。

WWD:神田さんの想像する“消費者”とはどんな人?

神田:郊外に住んでいるアラサーを想定しています。アラサーは体型やライフスタイルも変化が多く、悩みの尽きない年代です。周りも生活におけるファッションの優先順位が落ちて、服を買わない人も多い。そんな人たちに、「マルゥ」を通してファッションの高揚感を伝えたい。都会に住んでいるとさまざまなアイテムに挑戦しやすいですが、私が以前住んでいた八王子では派手すぎると浮いてしまう。「マルゥ」では、郊外での日常にも馴染むし、おしゃれを頑張りたくない人でも自然におしゃれになるアイテムを提案したい。

WWD:デザインでこだわった点は?

神田:私自身や周りのファッションに関する悩みをベースに考えています。例えば世に出ているパフスリーブ袖は、パフッとしすぎているものが多い。「マルゥ」では、仕事中や洗い物する時など袖をまくっても邪魔にならないボリューム感をパタンナーと相談して作りました。ほかにも、ワンピースは身長によって着こなし方がわからないといった悩みも多い。「マルゥ」のワンピースはサイドにスリットを入れ、段差を生み、高身長の方はパンツやミドルブーツと組み合わせてレイヤードを楽しめるようにしました。同時に159cmの私で長すぎない丈なので、低身長の方はすっぽりロング丈として着られる。切り替え位置を上に持ってくることで、スタイルアップもできます。ハリ感のある素材で体型カバーも叶えています。

池谷:当社のブランドも消費者の課題解決を商品開発の軸に置いていますが、神田さんのように特定少数に向けた開発はめずらしい。でも、神田さんが狙う層のニーズを拾うことで、共感の輪が広がり、マーケットが大きくなることを想定しています。

10年後も商品が消費者の手に渡り続けてほしい

WWD:神田さんのコミュニケーション力はどう生かす?

神田:一方的に世界観を提示するのではなく、消費者と共創する姿勢を「マルゥ」の強みにしたい。公式インスタグラムでは、どんどんコメントしてくださいと呼びかけています。アンケートを実施して、色展開に反映するなど商品を購入する以外の関わり方ができるような施策も考えています。まだ相談中ですが、生産過程も生配信したい。業界にいなければ、服作りの裏側ってなかなか想像できないですよね。あえて、モノ作りの現場を見てもらうことで、ファッションの楽しみ方が変わったり、商品への愛着が湧いたり、何かしらのきっかけになると思います。

WWD:「マルゥ」では、サステナビリティにどう取り組む?

神田:バロックでは廃棄予定の在庫を再販する事業に取り組んでいて、やはり私の問題意識は在庫です。まずは作りすぎず、適正価格で売り切ることに注力します。チームでは、“高みえ正直プライス”と呼んでいます。そして、着回しや商品の良さを私がきちんと伝えることで、長く楽しんでもらいたい。今後は環境配慮型素材も視野に入れて採用したいですし、UAの在庫を活用したモノ作りにも挑戦してみたいです。一つの会社で解決できる問題ではないと思うので、業界がもっとチームになってほしい。

WWD:今後どのようにブランドを成長させていく?

神田:個人的には、10年後もブランドを続けられていたらうれしいです。10年後にも「マルゥ」の商品を着てくれている人がいたり、家族や友人に引き継がれていたりするのが理想です。そのためにもカテゴリーを広げる前に、まずは“ダマベーシック”と呼んでいるシャツやジャケット、セットアップなどを中心にモノ作りに注力します。ただ商品を購入してほしいのではなく、おしゃれをすることの楽しさをさまざまなな角度で表現したい。「マルゥ」をいろんなアイテムと組み合わせて、「この格好している自分が好き」と思える経験を多くの人に提供したいです。

池谷:当社も神田さんの思いに共感しています。安心、安全なイメージだけでなく、改めてファッションの楽しみを発信するブランドとして育てていきたい。具体的な目標数値は非公開ですが、神田さんが持っているコミュニケーションのサークルが壊れないことを最優先させ、規模よりもお客さまとの関係性を深めていくことを重視します。

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マッシュルームレザーの生産拠点が日本に 「ダブレット」が組んだインドネシア発スタートアップ創業者が語る

 キノコの菌製の人工レザー“マッシュルームレザー”が環境への負荷や動物の権利といった問題を解決する新素材として注目を集めている。すでに有力ブランドが“マッシュルームレザー”を開発・運用する新興企業との協働に乗り出しており、特に米国の新興企業と組んだエルメスやアディダスやステラ マッカートニーなどはその成果を発表し商品化を進めているブランドもある。

 「日本に“マッシュルームレザー”の生産拠点を作る」――インドネシア発のマイセル/マイコテック ラボ(MYCL / MYCOTECH LAB)は、8月23日に開催された京都工芸繊維大学主催のオンラインレクチャー「スクール オブ ファッション フューチャー」に登壇し、日本に生産拠点を構えることを明かした。彼らはアジアでの生産拠点拡大を目指しており、中でも日本は「きのこの培養に関して非常に優れた自動化技術がある」と期待を寄せる。同社が開発したマッシュルームレザー“マイリー(Mylea)”は、東京のデザイナーズブランド「ダブレット(DOUBLET)」が2022年春夏コレクションで用い、ライダースジャケットやミニポーチを来春発売すると発表している。

 マイセルは2015年にインドネシアで創業し、地元のキノコ農家と協力してキノコの菌糸を天然接着剤として使用したバインダーレスボード“BIOBO”やキノコの菌糸体を用いたマッシュルームレザー“マイリー”を開発した。米クランチベースによると累計の資金調達額は83万3000ドル(約9080万円)。共同創業者でチーフイノベーションオフィサーのロナルディアス・ハータンチョ(Ronaldiaz Hartantyo)にオンラインで話を聞いた。

WWD:先日登壇したウェビナーで日本での生産拠点を開発すると明かしていたが、どこと組むのか。

ロナルディアス・ハータンチョ共同創業者兼チーフイノベーションオフィサー(以下、ロナルディアス):マッシュルーム関連のコンサルティング会社で長野県を拠点にしているサライ・インターナショナル(SALAI INTERNATINAL、 キノコプラントなどの栽培設備の輸出・輸入・販売、キノコなどの食品生産に関わるコンサルティングを行う)と組む。本格的に動き出すのは来年で、将来的には新会社を設立することになるだろう。当社の担当者がこれから日本に向かう予定だ。

WWD:なぜ、サライ・インターナショナルだったのか。

ロナルディアス:ビジョンやミッションに共通点を感じた。メールでのやりとりを経て、バーチャルなミーティングを行うようになり、今はサンプルや製品を交換しながら進めている。

WWD:具体的な計画は?

ロナルディアス:現在検討中だ。最終的にどのようなコラボレーションになるのか、ライセンス契約になるのか合弁会社を設立するのか――現時点でははっきりわからないが、2023年ごろの供給を目指している。

WWD:日本での生産拠点の候補地は?

ロナルディアス:現時点では言えない。サライ・インターナショナルの協力を得て、素材(原料となる農業廃棄物)が調達できる候補地を紹介してもらい、どの素材を使用するか検討した上で、その素材を調達できる場所にアプローチしていきたい。

WWD:マイコテック ラボは“マッシュルームレザー”の生産(オガクズなどの木質機材に米ぬかなど栄養源を混ぜて栽培する)に農業廃棄物を用いているが、具体的に何を用いているか。

ロナルディアス:森林廃棄物に加え、農業廃棄物は米、とうもろこし、サトウキビなどを用いている。

WWD:原料に農業廃棄物を利用する点が、他社とは異なる優位性だと感じる。改めてマイコテック ラボの優位性を教えてほしい。

ロナルディアス:効率性だといえる。廃棄物を利用して、さらに、マッシュルームレザーを作る工程で出る液体と個体の廃棄物も活用する。個体廃棄物は建材に、液体廃棄物はバイオプラスチック製造に用いる予定だ。生産工程における環境負荷の低減にも取り組んでいる。イノベーションでどう社会的にインパクトを与えることができるか、どう貢献できるかを考えながら、マイセリウムレザーを市場に供給できるように取り組んでいる。

WWD:菌糸体から作られた“マッシュルームレザー”が本革よりも優れていると話していた。

ロナルディアス:ポイントは3つある。1つ目は耐火性。2つ目は30~60日で成長する点。3つ目は、生産コストが安い点だ。

WWD:量産に向けた計画は?

ロナルディアス:2023年の生産目標は25万平方フィート(2万3225平方メートル)だ。現在はパイロットプラントで製造しながら、品質の標準化と最適化を行っている。また、ISOなどの認証取得に力を入れている。加えて、今、インドネシアに1万平方フィート(929平方メートル)規模の工場を建設中で11月に完成する予定だ。

WWD:量産する上で難しいと感じていることは何?

ロナルディアス:現時点で挑戦的なことは品質を標準化することだ。1枚のシートをラボで作るのは簡単だが、同じ品質のものを2000枚作るのが難しい。自社の標準を質量や衛生面など108の項目を決めて取り組んでいるが、キノコは生物的なものだから思うようにいかないね。人間に例えるといろいろうるさいタイプ(笑)。

WWD:森林廃棄物や農業廃棄物の利用についてのハードルはない?

ロナルディアス:これまでサトウキビやパイナップル、おがくずなど15種類の廃棄物を活用してみたが、問題なかった。それよりも現時点で挑戦的なのは品質の標準化だ。

WWD:加工に関しての課題は?

ロナルディアス:本革に比べて低い環境負荷で加工することができる。一例を挙げると、菌糸体は重金属のクロムを使わずになめすことができる。現在、セチャンという木材から作られたタンニン材を用いているが、さらに環境への負荷が低い方法があるかも探っていく。

WWD:そもそもあなたがサステナビリティに興味を持ったきっかけは?

ロナルディアス:大学生のころにエコキャンパス運動に参加したことだ。その後、建築家として自然保護やヴァナキュラー建築を手掛けるようになり、より深くサステナビリティについて学び、サステナビリティを推進するコミュニティーや運動を起こすようになった。私は、サステナビリティはトレンドではなく、必要不可欠なものだと考えている。次の世代のために世界を守るために、私たちはイノベーションと小さな習慣の変化で貢献することができる。

WWD:もともと建築家としてキャリアをスタートしたが、キノコが持つ素材としての可能性を感じて創業したと聞いたが。

ロナルディアス:建材、ファッション、バイオプラスチックの梱包材とビジネスのポテンシャルは高い。ファッションを優先して進めているのは、製品だけではなくコンセプトが重視されているから。消費者も自分が着ている服が何から作られているかを知りたいと思うようになっている。建材にする場合、軽くて丈夫なレンガを作ることができるが、建材は今、価格が重視されている(がアパレルはコンセプトが良ければ多少価格が高くても売ることができる)。

WWD:数あるキノコの中でもレイシを選んだ。

ロナルディアス:品種さえ同じであれば品質は変わらないが、育つ環境がポイントで、レイシは、いろんな気候に順応できるんだ。

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「ミンクス」が流山にセカンドブランドをオープン 岡村享央社長に新プロジェクトの狙いと現況を聞いた

 ヘアサロン「ミンクス(MINX)」は7月、セカンドブランド「ミンクスプラス(MINXplus)」をスタートさせ、1号店として千葉県流山市に「ミンクスプラス 流山おおたかの森美容室」をオープンした。ここでは岡村享央ミンクスワールド社長兼「ミンクス 青山店・銀座店」ディレクターに、セカンドブランドに込めた思いと1号店の現況を聞いた。

「WWDJAPAN」(以下、WWD):セカンドブランド「ミンクスプラス」とは?

岡村享央ミンクスワールド社長(以下、岡村):「ミンクス」グループでありながら、「ミンクス」とは異なったコンセプトを持つヘアサロンです。「ミンクス」には、経験を積んだ30代半ばくらいのスタッフも多く、彼らが「自分のお店を持ちたい」と考えるケースも少なくありません。しかし、長年一緒にやってきたスタッフが辞めてしまうのは寂しいし、スタッフにとっても、独立にはさまざまなリスクがともなうため、実現のハードルはかなり高いんです。そこで、独立したように店舗運営は任せ、かつ「ミンクス」とのつながりも持ち続ける“セカンドライン”を考えました。

WWD:セカンドブランドは初の試み?

岡村:初めてですね。独立しても良好な関係性を継続しているスタッフはいますが、「ミンクス」の名を冠したサロンを出店するのは初の試みです。これはスタッフからの要望で、「セカンドブランドを出すなら『ミンクス』の名前をつけたい」という意見が多かったんです。それによって集客やリクルート面でのリスクがぜんぜん違いますから。セカンドブランドは、長年当社に貢献してくれた幹部クラスのスタッフにセカンドステージを用意し、彼らの夢の実現をサポートするという目的で始めました。よって、可能な限り彼らの要望に応えたコンセプトになっています。

WWD;「ミンクス」との違いは?

岡村:「ミンクス」は東京の銀座・青山・原宿にこだわって出店していますが、セカンドブランドは全国展開を視野に入れています。だから、例えば「自分の地元に出店したい」といった要望も、今後は出てくるかと思います。1号店は流山でしたが、例えば九州や北海道でも可能性は十分にあります。ちなみに流山は、現在は同店のCEOを務めている花渕慶太が、マーケティングの末に「これから発展していく街なのでここに出店したい」と提案してきた場所なんです。私も実際に行ってみたのですが、自然と商業施設が共存する住みやすそうな街で、タワーマンションなどの建設が進んで若い家族連れも増えていて、発展性が見込めると判断して決めました。

WWD:「ミンクスプラス 流山おおたかの森美容室」はどんな店舗?

岡村:子どもが遊べるスペースなどもあり、「ミンクス」のブランディングに“地域性”をより強く持たせたような店舗です。流山周辺に住んでいる産休明けのスタッフが、同店での勤務を希望するなど、既にセカンドブランドならではのメリットも出始めています。花渕には「『ミンクス』でできないことをセカンドブランドでやってほしい」と言っているので、引き続き“ならでは”の取り組みを模索中だと思います。

WWD:オープンから1カ月の商況は?

岡村:好調ですね。お客さまの約半数が地元の方で、狙い通りに進んでいます。新客の大半が、「『ミンクス』は以前から知っていて、それが地元にできたから来た」という理由で来店してくれています。あと、お客さまの中には地元の美容師の方も多いようです。1カ月足らずで、予約サイトに70件以上の口コミが集まりました。口コミには「待ってました!」「期待以上でした!」といった内容が多く、うれしい限りです。このまま成長していけば、2店舗目の出店も大いに考えられます。「ミンクス」にも「ミンクスプラス」にも、共通して“地域1番店を目指す”という目標があります。これからも、お互いが得たノウハウを共有するなど助け合いながら、ミンクスグループの発展を目指していきたいです。

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柳井康治取締役に聞く「ユニクロがスポーツに力を入れる理由」 スウェーデン選手団との契約をパリ五輪まで延長

 ユニクロがスポーツを切り口にしたマーケティングや社会貢献に力を入れている。先日は、同社のグローバルブランドアンバサダーを務め、東京2020パラリンピックで金メダルを獲得した車いすテニスの国枝慎吾選手に、ファーストリテイリングと柳井正会長兼社長から報奨金1億円を贈ったことが話題となった。また、東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京大会)期間中に、ユニクロロゴのユニフォーム姿で活躍していたスウェーデン代表選手団の姿を記憶している人も多いだろう。それ以外にも、元サッカー日本代表内田篤人選手を起用した子ども向けサッカー教室などにも協賛している。スポーツ関連の取り組みを増やすことは、ブランド・企業のあり方や商品にどうつながっていくのか。柳井康治ファーストリテイリング取締役に聞いた。

WWD:東京大会ではグローバルブランドアンバサダーの国枝選手やスケートボードの平野歩夢選手の活躍が印象的だった。改めて大会を振り返ると。

柳井康治ファーストリテイリング取締役グループ上席執行役員(以下、柳井):ユニクロは長らく車いすテニスのツアーをサポートしており、国際テニス連盟とパートナーシップを結んでいる。それによってテニス競技だけは会場で観戦する機会があったが、観戦して感じたのは、選手の素晴らしいパフォーマンスは言葉や国境を超えて、人を興奮させたり、感情を揺さぶったりする力があるということ。ボランティアスタッフの方が大会運営を献身的に支えていたことも感動的だった。人が会場に出入りする度に丁寧に挨拶を繰り返していて、日本人として誇らしい気持ちになった。

WWD:スウェーデン選手団には公式ウエアを提供し、イベントなども一緒に行ってきた。大会前には「このプロジェクトを通して社会貢献のあり方を模索する」と柳井取締役は発言していたが、その意図は。

柳井:スウェーデンでは子どもたちにスポーツの楽しさを伝える“ドリームプロジェクト”というイベントを実施し、そこにアスリートにも来てもらっている。スポーツは言葉が通じなくても、障がいがあっても、それを乗り越えてエモーショナルになる瞬間を作り出すことができる。自分ではできなくても、プロのアスリートのすごいプレーを見れば感動や憧れが生まれる。子どもたちのそんな瞬間にユニクロの服が寄り添えるということは、われわれも国境や人種、性別といった差異を越えていけるということ。そこには非常に大きな可能性がある。

WWD:今はファッション小売業であっても、ただ服を売っていればいいという時代ではないということか。

柳井:ファッションの企業かどうかというよりも、何かしらの経済活動をする企業や団体である以上、自分たちの本業だけをやっていればいいということではない。環境問題や紛争などで、今は地球自体が存続できるかどうかというような状況にある。事業活動をする中で環境などには負荷をかけている。だからといって、生きていく以上それをやめるわけにはいかない。事業活動をしていくからこそ、その分地球や社会に貢献もしていく。一見矛盾しているようだが、その両方を成し遂げるために努力することが大切だ。

スウェーデン選手団のウエアはサステナビリティを追求

WWD:スウェーデン代表選手団との取り組みは、19年にパートナーシップ締結が発表された時点では22年の北京冬季大会までの予定だった。それがこの度、24年のパリ大会までの延長されることに決まった。

柳井:スウェーデン代表選手団や関係者とは、東京大会に向けて頻繁にやり取りを重ねてきた。コロナ禍前の19年には現地に行って採寸し、どんな機能が必要かを各競技団体に尋ねて回った。選手からニーズを聞き取るヒアリングセッションも何度も行った。実際に大会が開幕してからも、酷暑を受けて「半袖ではなくノースリーブにしたい」「他の競技の選手がかぶっていた帽子に変えてほしい」といった要望が出て、日々それに対応していた。そうしたやり取りに満足してもらえたことが、延長につながったと思う。

WWD:プロのアスリートに競技用ウエアやユニフォームを提供するという点で、技術的に苦労した部分もあったのでは。

柳井:02年のソルトレイクシティー冬季大会、04年のアテネ大会では日本選手団の公式ユニフォームを手掛けた経験があったし、われわれは普段からユニクログローバルアンバサダーであるアスリート6人と取り組んでいる。各ジャンルの一流選手である6人はウエアに対するこだわりも強く、高いレベルの要求が届く。彼らとやり取りを重ねてきたので、スウェーデン代表選手団から「こんなことまで気にするのか!」といったような要求が届いたということはなかった。例えば、トレーニングによって数ヶ月後に筋肉がどれくらい大きくなるかといったことは、選手よりわれわれの方がよく知っていたりもする。

 そういった中で今回最もチャレンジだと感じたのは、サステナビリティの面だ。スウェーデンオリンピック・パラリンピック委員会は、クオリティ、イノベーションと共にサステナビリティをキーワードとして掲げており、われわれもそれをどう実現するかを考え抜いた。単に再生素材を使えばいいというものではなく、縫製せずにボンディングにすれば布の端切れを減らすことができる。染色や裁断なども含め、総合的にサステナビリティをいかに達成するか。技術的には既に存在しているものだが、それらの組み合わせに腐心した。

WWD:そのようにアスリートの声を反映して生まれたデザインや技術は、ユニクロの日常着にはどう還元されるのか。

柳井:高温多湿の東京大会で快適に過ごすことができ、プレーもできるウエアを追求したことは日常でも役に立つだろう。また、「エアリズム」やスエットなどの既存商品も、トレーニングの際などにスウェーデン選手団に着てもらった。それにより、われわれの通常商品が選手のパフォーマンスを妨げないクオリティだということの証明にもなった。

 東京大会での取り組みに限らず、アンバサダーの声を生かした商品開発も行っている。代表的なのが、プロゴルフのアダム・スコット(Adam Scott)選手と開発した「感動パンツ」だ。薄くて軽くて伸縮性があり、シワにもなりにくいパンツがあれば、オフィスでも出張でもカジュアルシーンでも当然便利だとお客さまに思ってもらえる。「感動パンツ」は、スコット選手が求めたゴルフをしているときにビシっときまって見えて、スイングもしやすく、転戦するときにも畳んで持ち運びがしやすいパンツ、という発想が原点になっている。同様に、平野歩夢選手とは「ハイブリッドダウン」を一緒に作っている。スノーボードで1ミリでも高く飛べて、動きを邪魔せず、暖かいジャケットを追求したら、都会の生活の中でも役に立つアウターになった。

お客さまのことを考えれば、スポーツに対応するのは必然

WWD:スポーツ切り口のマーケティングは、今後も強化していくのか。

柳井:スポーツマーケティングを強化しているというイメージを持っていただくことはありがたいが、われわれはスポーツだけに特化しているわけではない。ユニクロには究極の普段着を意味する“LifeWear”というフィロソフィーがあって、お客さまの24時間365日に寄り添うことを目指している。今の時代は生活の中にスポーツが自然と組み込まれている。だから、お客さまの生活を支えようと考えれば考えるほど、スポーツにも対応することは必然となる。それを分かりやすく伝えるために、テニスならロジャー・フェデラー(Roger Federer)選手や国枝選手、サッカーなら子ども向けサッカー教室を一緒に行っている内田篤人選手と組む、という形になっている。

WWD:スウェーデン代表選手団との契約はパリ大会まで延びたが、日本を含む他国の選手団とも契約する可能性はあるか。

柳井:スウェーデン代表選手団とは、向かっていく先が一緒だったからよいパートナーシップになった。ユニクロだけが取り組みたいと思っても、またその逆でもうまくはいかない。われわれと組みたいと思っていただける内容と、われわれの気持ちが合致すれば、日本に限らずお受けしたい。実際、東京大会でもスウェーデンだけでなく、南スーダンの選手団に公式ウエアとしてユニクロを着ていただいた。南スーダン選手団は群馬・前橋で合宿をしていて、市役所の方からウエアの提供に関してお話をいただき、選手に店頭で商品を選んでもらった。パートナーシップは思いや志が一致することが大事で、それが重なるなら取り組みにつながると思う。

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大丸松坂屋は“ニューリッチ”をどう取り込む? 戸賀敬城「J PRIME」編集長に聞く富裕層商売

 大丸松坂屋百貨店は9月15日、2018年にスタートした富裕層向けメディア「J PRIME」を、30〜50代の若年男性富裕層向けに刷新する。新編集長を務めるのは、「メンズクラブ(MEN’S CLUB)」の元編集長で、現在はラグジュアリーブランドや自動車メーカー、セレクトショップなどのコンサルタントを務める戸賀敬城氏だ。歴史的な株高を背景に、コロナ渦中でも“ニューリッチ”と呼ばれるような若年富裕層の高額品消費は非常に活発。消費の二極化が進む中で、百貨店各社にとって富裕層市場は今後ますます重要になる。しかし、ニューリッチのし好や消費様式は旧来の富裕層とは異なる部分も多く、旧来型の外商の仕組みでは彼らの消費をつかみきれないという課題もある。大丸松坂屋は、ニューリッチとどうつながっていくのか。

 「われわれの外商会員データや外商催事に来場されるお客さまの定性データを見ていても、世代交代を感じる。オーナー企業の経営者が若返っていることや、IT関連を中心にコロナの中でも業績好調なベンチャー企業が多いことなどが背景にある」と話すのは、大丸松坂屋で「J PRIME」リニューアルを指揮する永井滋本社営業企画部部長。世代交代に伴い、富裕層の消費も変化している。スーツに代わって「ディオール(DIOR)」や「セリーヌ(CELINE)」などのスニーカーやロゴ入りパーカなどが売れているのはその代表例だ。

 それ以外にも、「コロナもあって、現代アートやスマート家電、ホームジム機器などへのニーズが高まっている」「以前は『食は女性のもの』というイメージがあったが、高級酒やそれに合わせるおつまみ、スイーツへの問い合わせも増えている」といった傾向がニューリッチ男性の消費として浮かび上がっている。時間に余裕があるというかつてのオーナー社長像とは異なり、「ニューリッチは自らバリバリ働いていて非常に忙しい人たち」。デジタルメディアによって、彼らとの接点拡大を目指す。

 従来の「J PRIME」は大丸松坂屋が運営しているとはうたってこなかったが、今後は大丸松坂屋発として打ち出し、ゆくゆくは店頭での集客や売り上げにもつなげていく。時計やファッション、食、アートなど、多ジャンルにわたって情報を網羅できるのも百貨店運営ならではの強みだ。また、例えばジェット機やクルーザー、不動産など、百貨店では扱っていない事柄やモノも、富裕層が欲する情報ならば取り上げていくという。

 富裕層メディアではあるが、「J PRIME」では読者をID登録で囲い込んだり、ECに直結させたりはしない。掲載商品やサービスに興味を持った富裕層は店頭や「大丸・松坂屋アプリ」、同社の外商顧客向けサイト「コネスリーニュ」に送客し、将来的に外商部門につなげていく。「ニューリッチの憧れの存在」という戸賀編集長とも密にアイデアを出し合って、今後は富裕層への物販以外のサービス提供の方向性も探っていくという。


「富裕層の進化に百貨店やブランドが追いついていない」

戸賀敬城/「J PRIME」編集長

 「ちょい悪オヤジ」ブームから約20年が経ち、僕が雑誌編集をしていたころのメイン読者は50〜60代になっている。一方で、30〜40代の富裕層も増えていて、ある高級車メーカーではオーナーの平均年齢が30代半ばというデータもある。「J PRIME」は雑誌と違い、現時点では広告出稿に依らない媒体作りを考えている。だからこそ、純粋に彼ら富裕層を満足させられるコンテンツ作りができる。

 仕事でラグジュアリーブランドや高級車の顧客イベントに参加すると、顧客から「(戸賀氏自身がSNSやブログで発信している)予約の取れないあのレストランに行きたい」などと相談されることが非常に多い。「J PRIME」でも、コロナの収束を見ながらレストランを貸し切るなどしてイベントを行い、そこで出た富裕層の声や要望をそのままコンテンツに反映させていきたい。いわばそこが編集会議の場だ。雑誌編集のノウハウを生かし、商品の背景のストーリーに光を当てて発信することで、売り上げにもつなげられると思っている。

 お金持ちはどんどん進化しているのに、百貨店に限らず、富裕層を対象とする小売りやメーカーの手法がそれに追いついていないとは強く感じる。例えば、顧客向けイベントでいまだに冷えたケータリングフードを出しているブランドがあるが、星付きレストランに行き慣れている顧客はそれでは満足しない。富裕層ビジネスをするうえでは、自社の商品だけでなく他社や他分野もしっかり勉強し、ニューリッチの世界に入っていくようにすべきだ。

 新世代富裕層の増加で、今後伸びると感じる市場はまず車。スポーツカーだけでなく、キャンピングカーやラグジュアリーなミニバンなどへのニーズが拡大するだろう。時計は5大ブランドはまだまだとんでもなく伸びるだろうし、ファッションではよりカルチャー色の強いブランドが支持されるようになる。メンズコスメもここから伸びると思っている。

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家族経営の伊ブティック「ルイーザヴィアローマ」が好調 CEOの“未来への投資”が富裕層に奏功

 イタリア発のファッションリテーラー「ルイーザヴィアローマ(LUISA VIA ROMA)」が好調だ。2020年のイタリアはコロナ禍でロックダウンを敢行したため店舗営業日数が半分だったが、20年度の年間売上高は前年比24%増の2億6000万ユーロ(約340億円)を達成。ECの売り上げが31%増という成長も後押しした。

 同店は1930年代に女性向けハットのブティックをフェレンツェで創業。その後ラグジュアリーブランドを取り扱うセレクトショップに転身し、1999年にECサイトをスタートした。大手ラグジュアリーECサイトとしては唯一、家族経営を継続している。現在は創業者の孫にあたる3代目のアンドレア・パンコネージ(Andrea Panconesi)=ルイーザヴィアローマ最高経営責任者(CEO)が経営理念を引き継いでいる。ラグジュアリーブランドから若手デザイナーズ、スポーツウエア、キッズウエア、香水やコスメなど計700ブランドを取り扱い、従業員は200人以上を抱える。

 企業として、環境保全や途上国の労働環境改善にも熱心に取り組んでいる。2018年からはユニセフ(国連児童基金)と共同でチャリティガライベントを年に1度開き、国際的なシンガーのパフォーマンスとサザビーズ(SOTHEBY’S)によるオークションで資金調達を行ってきた。7月31日にイタリア・カプリ島で開催された今年の同イベントでは、ケイティ・ペリー(Katy Perry)とジョン・レジェンド(John Legend)によるライブパフォーマンスに加え、オークションで1961年のフォーミュラ・ジュニア・レースカーが最高額となる約1億300万円で落札され、合計約6億5000万円の収益をユニセフに寄付した。

 競合ひしめくラグジュアリーEC市場の中で「顧客が納得する十分な透明性と未来への投資」が成長を続ける理由だとパンコネージCEOは語る。コロナ禍でのマーケットの変化や他社との差別化、ルイーザヴィアローマの今後について聞いた。

富裕層で増加する投資感覚の消費行動

——コロナ禍の昨年、売り上げや顧客にどのような変化が見られた?

アンドレア・パンコネージCEO(以下、パンコネージ):実店舗の営業停止は避けられなかったが、その分ECサイトの売り上げが急増した。ECサイトの売り上げ比率は全体の90%から、95%となった。さらに、長年アメリカを最大のマーケットにしていたが、昨年はイタリアでの売り上げがアメリカを上回り、全体の66%をイタリアが占めている。

——イタリアでの売り上げが伸長した要因は?

パンコネージ:実店舗の顧客がECサイトに流れたことと、ロックダウン時でも配送の懸念が少ない自国イタリアのECサイトを利用したこと。加えて、パンデミックという初めての経験は、日常の営みや消費行動について改めて考える機会となり、消費者は洋服がどこで作られていて、どんな企業が売っていて、その企業はどんな社会貢献をしているのかという背景にまで目を向けた。ラグジュアリー商品を購入するとき、物を消費するだけでなく、ブランドや企業に“投資する”という感覚で消費するようになったのだと考えている。特に、富裕層を中心に見られる傾向だ。

——“投資する”感覚とは具体的に?

パンコネージ:大手ラグジュアリーECサイトを見比べてみてほしい。セレクションやサービスは似たり寄ったりで大差はない。もちろん、どこで購入したって届くのは同じ製品だ。配送に関しては、アメリカでに届けるには他の大手よりも1日長く日数がかかるものの、「ルイーザヴィアローマ」を選んでくれる顧客がいる。その理由は、家族経営で独立した企業のオリジナリティーを尊重し、十分な透明性に納得しているからだろう。同じ金額を使うのであれば、サステナビリティやエシカル、社会貢献に取り組んでいる企業を選ぶ方が、地球と社会の未来への投資につながる。4年前に始めたユニセフのためのチャリティガライベントは、「ルイーザヴィアローマ」の企業理念を象徴するものとして大きな反響があった。

——チャリティガライベントを始めたきっかけは?

パンコネージ:アイデアが思いついたのは、娘と孫について話をしていたとき。いつだって子供というのは“未来”であり、次の時代を担っていく存在である。より良い社会を作っていくためには、世界中の子供に必要なケアを届けることが、地球の未来に投資することだと考えついた。これは家族経営だからこそ思いついた考えなのかもしれない。目先の利益ではなく、遠い未来を考えた。結果的には、ソーシャルグッドな取り組みが他大手との差別化を図るきっかけとなり、売り上げの数字にもつながった。ユニセフにも貢献できるため、契約を延長して当初の予定よりも長くイベントを継続している。私は常に、因果応報を信じている。善良な行いをすればそれだけの報いがあり、その信念がビジネスの基盤になっている。

——ECサイトのさらなる成長のための、今後のデジタル戦略は?

パンコネージ:ブランドとのコラボレーションや独自のコンテンツ作りはこれまで通り継続する。特にコンテンツに関しては、ラグジュアリー製品の工芸から文化的要素、歴史にまで触れて、顧客に学びを提供することを大切にしている。私にとってラグジュアリーとは“教養”を意味する。ラグジュアリー製品についての理解を深め、品格を養えるようなコンテンツを発信していきたい。

——今後実店舗はどのような役割を果たす?

パンコネージ:ECが成長しているとはいえ、人々が集い、コミュニティを意識できる実店舗の必要性は高い。パンデミックを通して、多くの人がリアルな体験こそ最も高い価値があると実感したように、実店舗での体験を提供することは企業として欠かせない。そのため、フィレンツェ郊外にカルチャーハブとなるような新店舗をオープンする予定だ。コンセプトストアとしての立ち位置ではなく、アートや音楽といったカルチャーも体験できるスペースとなる。フィレンツェはルネサンス期に最も栄えた都市で、時代の文明を築いた。最先端のカルチャーを発信するだけでなく、この地の歴史と文化に触れて、顧客やローカルの人々の学びとなるような実店舗にしたいと思っている。フィレンツェの姉妹都市である京都には、教養を身に付けられる素晴らしいショップや施設がたくさんあり、インスピレーションを受けた。近日中にオープン予定の新店舗に日本からの渡航者を迎え入れて、フィレンツェやラグジュアリーについて学んでもらいたい。

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「バルミューダ」から新作コーヒーメーカーが登場 新商品で淹れたコーヒーで1日が始まりワインで終わる寺尾社長の素顔に迫る

 「バルミューダ(BALMUDA)」から新製品コーヒーメーカー“バルミューダ ザ・ブリュー(以下、ザ・ブリュー)”が登場した。寺尾玄バルミューダ社長兼チーフデザイナーから直々にそのプレゼンテーションが受けられるということで、東京・武蔵境のバルミューダ本社へ向かった。会場はオフィスの一角で、至ってリラックスした雰囲気。新作“ザ・ブリュー”などが置かれた空間で寺尾社長のプレゼンテーションが始まった。ここでは、新作の開発秘話や寺尾社長の素顔などを紹介する。

WWD:コーヒーメーカーを開発したきっかけは?

寺尾玄バルミューダ社長兼チーフデザイナー(以下、寺尾):“バルミューダ ザ・トースター”の第2弾として発売しようと考えたのが約6年前。頓挫しては復活したが結局、うまくいかず商品化はできないと思っていた。ところが、コーヒーマニアの太田剛平エンジニアが入社して流れが変わった。面白い方法で開発できればと思ったが結局中止。だが、太田君は自宅で研究を続けて新しい方法を見つけた。そしてテイスティングしてみたら「これは、おいしい」と商品化することにした。製品化まで約2年半かかり完成した今では、私自身、「バルミューダ」の製品の中で一番使うものだ。

WWD:どのような製品か?

寺尾:プロポーションへこだわり、縦長で幅はできるだけ狭くした。なぜなら、日本の家庭のキッチンは、奥行きはあるが幅がないから。今までキッチン家電を手がけてきたが、“ザ・ブリュー”は佇まいにエレガンスがあり、モダンクラシックの完成形だと思う。バリスタが使う“王道”の円錐型ドリッパー、真空二重構造のサーバー、ウオータータンクから構成されるオープンドリップ方式を採用。抽出のためにお湯を注ぐ注湯口が2箇所あり、1つはコーヒーを抽出するため、もう1つは最後に仕上げの加水をするバイパス注湯の役割を果たす。この2つの注湯口がストロングでクリアな味わいを生み出す。コーヒーの抽出は、適切な湯量と温度が大切。後半になるとコーヒーの雑味やえぐみ、渋みが出てくるからだ。それらが出ないタイミングで抽出をやめてお湯で濃く出たコーヒーをちょうど良い濃度に割るという方式だ。モードは、ホットがレギュラーまたはストロング、アイスの3つ。どんなコーヒーでも“ザ・ブリュー”で淹れるとその最高の味を引き出せる。

デザインと味のクオリティーの妥協は一切なし

WWD:開発するのに苦労した点は?

寺尾:商品化のスタート地点はビジョンから。家電の役割は誰もが簡単においしさなどの感動体験を提供するのが役割だと思っている。だから、理想形を思い描いてその再現性をひたすら高める。抽出するための穴の数から、各パーツの距離などベストな組み合わせに辿り着くまでに何度も実験を繰り返した。それは常に行っていることだが、“ザ・ブリュー”では、デザインと味のクオリティー両方を落とさず商品化するという点が一番のチャレンジだった。コストダウンは製品開発につきもの。だが、“ザ・ブリュー”は、どれも妥協できず貫き通した。

WWD:エスプレッソからサードウェーブまでさまざまなコーヒーがあるが?

寺尾:コーヒーは香ばしさや華やかさを味わえる飲み物。そのおいしさは熱を加えることでおいしくなるメイラード反応によるもので、香ばしいトーストや焼肉などと同じ。メイラード反応による香ばしさの記憶が人間のDNAに刻み込まれているから人々はコーヒーを欲するのだと思う。“ザ・ブリュー”では、さまざまなコーヒーの中でも誰もがおいしいと感じるピュアでポップなコーヒーを目指したつもりだ。

WWD:今後の予定は?

寺尾:今までの5年間はキッチン家電をつくってきて、“ザ・ブリュー”という完成形ができた。11月に携帯電話を発売予定だ。1日一番使うもので、より便利なものがつくれればと思っている。

宝物は「バルミューダ」なぜなら、ドラえもんレベルだから

WWD:典型的な1日のスケジュールは?

寺尾:1日は朝“ザ・ブリュー”のコーヒーで始まり、ワインで終わる。会社ではミーティングがほとんどで、それは試合のようなもの。いかに短く言い早く終わらすかが勝負だ。ほかデザインや文章などに時間を費やしている。

WWD:自身のファッションスタイルを表現すると?

寺尾:ミュージシャンっぽくあろうとしている。スーツは持っていないし、ネクタイも白と黒1本ずつ。

WWD:座右の銘は?

寺尾:ライフ・イズ・ショート。それが行動のもとになっている。母が亡くなったときに身をもって感じた。生きているから、おいしいものを食べることができるし、楽しい話もできる。

WWD:愛読書は?

寺尾:シャーロックホームズ。本を読まないと眠れないので、よく読む。私は、武蔵境のシャーロックホームズと呼ばれている。なぜなら、シャーロックホームズは現象を観察し推理して事件を解決する。われわれがしていることも同じで、事件の解決がビジョンの実現に置き換わっただけだ。

WWD:休日の過ごし方は?

寺尾:朝、コーヒーとIPA(ビール)を飲み、「今日も飲むぞ!」とスタート。午後はボクシングに行って、夜は赤ワインを飲む。ナパやボルドーが好き。飲む理由は、単に酔っ払いたいわけではなく、頭の強制終了が必要だから。そういう意味では、常にアルコール消毒しているかも(笑)。

WWD:料理は?

寺尾:週に3〜5回する。平日は夕飯、休日は昼と夜両方つくる。得意料理はペペロンチーニで76点くらい。たまに、包丁で手を切って痛い思いもするが腕は上がっていると思う。

WWD:尊敬するアーティストは?

寺尾:ミュージシャンだとキース・リチャーズ(Keith Richards)、ブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)、作家ではガルシア・マルケス(Garcia Marquez)やウンベルト・エコー(Umberto Eco)、アーネスト・ヘミングウェイ(Ernest Hemingway)。

WWD:自身の宝物は?

寺尾:「バルミューダ」。世の中にない欲しいものをつくれるから。ドラえもんレベルだと思っている。

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“かわいい系原宿女子”をけん引するビームス ボーイ 今さら聞けないあれこれを“おじさん系記者”が問う

 メンズに限って、ファッションメディアの仕事を20年以上続けてきた。つまり、ウィメンズは完全なる門外漢だ。そんな僕だがここ2、3年、ビームス ボーイがなんとも気になる。別件でビームスを取材した際、それとなく広報担当者に聞くと、3年前にディレクターが交代したという。変化がそれによるものなのか?そして“四十路男子”な僕にとって、近くて遠いビームス ボーイを知るために、伊野宏美ディレクターをインタビューした。

WWD:この3年ほど、“ビームス ボーイが(ポジティブに)変わった”と感じており、それは伊野ディレクターの就任と時を同じくする。意識的なアクションによるものなのか?

伊野宏美ビームス ボーイ ディレクター(以下、伊野):レーベルの特徴として、テイストを変えないことが大前提であり、私自身変えようとしたことはない。初代の窪(浩志)以降、私が4代目ディレクターとなるのだが、創設時の思いを継承している。

 ただ、“より分かりやすくしたい”ということはあるかもしれない。代替わりに伴って、スタッフも“ビームス ボーイとは?”を自問自答したし、レーベルの“人格”をあらためて外に向けて発信したいと考えている。

 おかげさまでビームス ボーイには熱狂的なファンが社内外に多く、あうんの呼吸で成立してしまっているところがある。それを可視化、言語化することに務めている。その一つの施策が小冊子「ボーイズ ルール」「ボーイズ ライフ」であり、一定額以上買い上げいただいた方にノベルティーとして渡している。製作にあたって過去の資料や写真を探り、“変わっていない”ことを再確認することもできた。

WWD:伊野ディレクターは、ビームス ボーイひと筋だと聞いた。

伊野:中学生のころからビームス ボーイで買い物をしていたので、ビームス ボーイ歴は社歴より長い(笑)。その間もビームス ボーイは変わっていない。私はずっとビームス ボーイが好きだし、ほかのスタッフにもビームス ボーイのことをもっと好きになってほしくて、それが小冊子作りの原動力ともなった。販売員時代からビームス ボーイの仕事に携わることは日々楽しくて、気持ちが高まりついつい早め出勤してしまい、スタバで誰に見せるわけでもないのに、その日のコーディネートについて手帳に書き出したり(笑)。考えてみれば、当時から伝えたい気持ちはあふれていたのだと思う。当時はそれがお客さまに向いていて、今は小冊子やウェブ、SNSなどでより多くの人に発信している。

WWD:ビームス ボーイは現在、原宿店のみ?

伊野:単独店舗としてはそうだ。そのほかは、複合店に収まる形で運営している。

WWD:顧客像について教えてほしい。

伊野:30代後半~40代が圧倒的。カジュアルに着られて、体型を問わないからか主婦層からの支持も厚い。それに続くのが20代前半だ。土地柄、美容師などが多く、また20代のころにビームス ボーイに通っていた方が母となり、娘と来店することもある。

WWD:客単価は?

伊野:1万5000円ほど。

WWD:店頭に顔を出すことも?

伊野:原宿店が明治通りを挟んでオフィスの目の前ということもあり、週1で顔は出すようにしている。

WWD:約30あるビームスのレーベルの中で、ビームス ボーイはどういう存在?

伊野:ビームス ボーイのコンセプトは、“女性がメンズ服を着る”というもの。服の背景にあるストーリーや、ヘビーデューティーの考え方などを女性に伝えることを大事にしている。個人的に、ビームス ボーイはビームスらしさを最も体現しているレーベルであると考えていて、例えばロゴもビームス創業時のフォントを継承している。アメリカにあこがれるスタイルを、今なお提案しているのがビームス ボーイだ。

WWD:“伊野版ビームス ボーイ”を象徴する3つのキーワードを挙げるとしたら?

伊野:重複となるが、ビームス ボーイの根幹はディレクターによって変わってはならないもので、あくまでレーベルとしての意見となるが3つある。

1.ルールを知って、ルールを破る

 体型がきれいに見えるとか、トレンドに沿っているとか、皆が着ているとかではなく、ビームス ボーイは独自の判断基準(ルール)を持っている。ビームス ボーイにとって服のルーツを知ることは必須条件であり、同時に喜びでもある。それによってスタイリングに深みが生まれるし、服への愛着も増す。ただ、それ以上に大事なのは“ファッションは楽しい!”ということ。だから、ルールを理解しつつもそれにとらわれず、自分の好きなように着てほしいし、それによって得られる服のパワーを伝えたい。ルールを破ることで、初めて発見できる自分らしさがあるはずだから。

2.お洒落はユーモア!

 ビームス ボーイの商品や服装は「面白い」と言われることが多く、「かわいい」ではない……(笑)。でも、それがわれわれにとって最大の褒め言葉。ビームス ボーイは1998年の創設当初からクセが強く、でもそれは“ファッションは楽しい!”を提案しているからこそで、それが色や柄などに自然と表れているのだと思う。ユーモアのある商品や服装によって自分らしくいられ、それによって周りもハッピーになる。この好サイクルに共鳴する方をファン化、コア化できている。また“高いから良い”でもなく、歴史ある名品や傑作だけを扱いたいわけでもない。チープでキッチュなアメリカンスーベニアもとても魅力的で、それをバッグやジャケットにちょこっと付けるだけで気分が高揚する。それでいいじゃない!という思い。

3.女性が着ることで際立つメンズ服の魅力

 性別でセグメントするのは時代的にナンセンスだと思うが、女性がメンズ服を着ることで、メンズ服の魅力を再発見できると信じている。例えば、女性がビッグシルエットの軍パンをベルトでぎゅっと締めてはく。男性ではありえない、しわやフォームが現れる。アイテムが本来持つ機能は十分に発揮できないかもしれないが、ファッション的には新たな可能性が付与される。ビームス ボーイは、女性がメンズ服を着ることがまだ斬新だった98年から、このような着こなしを提案してきた。不都合の中に生まれる面白さを“個性”ととらえ、まもなく四半世紀を迎えようとしている。

WWD:変わらないビームス ボーイを今後どのようにけん引する?

伊野:カジュアル服の楽しさを新たな世代にも発信してきたい。そのためには、アンテナを張り続けることが大事。ランウエイ的なそれとは違うがベーシック服にもトレンドがあり、逃さず拾っていかなくてはならない。

WWD:“老舗ラーメン店の味が変わらないのは、日々味を改良しているから”のように?

伊野:その通りだ(笑)。

WWD:原宿女子とはほど遠い、僕のような“四十路男子”もビームス ボーイに入店していい?

伊野:もちろん!ビームス ボーイにはカップル客も多く、男性客が売り上げの5%ほどを占める。最近は小柄な男性も多いので服を買う方もいるし、小物だけ購入する方もいる。また近年、「メンズサイズが欲しい」という声が高まり、ビームス ボーイ別注の商品をビームス ジャパンで販売している。

<インタビューを終えて>
 店頭取材時、オープン直前ということもあって20代の女性販売員たちが慌ただしく準備していた。娘ほど年の違う彼女たちと同等に話ができるのは、ひとえにファッションのおかげだ。ある1人が履いていた英国靴「サンダース(SANDERS)」の木型について話したり、別の1人が着ていたミリタリー由来の服についてオリジナルのステンシルプリントについて話したり。共有言語としてのファッションがあり、それが性別や世代を超越するパスポートとなる。思えば、今年91歳になる祖父世代の現役ファッションイラストレーター穂積和夫さんに仕事を依頼する際も、シアサッカーのジャケットに合わせるバミューダショーツの色について意見交換したり、「眼鏡は定番のウエリントン型ではなく、あえてラウンド型にしたい」などと話したりできる。これもファッションの力だ。「ルールを知りつつもそれにとらわれず、自分の好きなようにファッションを楽しんで!」、伊野ディレクターにあらためて背中を押され、今日もコスプレのような格好で取材に出掛けよう。

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「ファーと同じ」 「ネクストダイヤモンド ニューヨーク」社長に聞くこれからのダイヤモンドの選択肢

 ジュエリーブランド「ネクストダイヤモンド ニューヨーク(NEXT DIAMOND NEW YORK以下、ネクストダイヤモンド)」が日本に上陸した。ラボグロウンダイヤモンド(以下、ラボグロウン)と日本で常設店舗は初のダイヤモンドより輝くといわれるモアサナイトに特化したジュエリーを販売するブランドだ。8月末、松屋銀座本店(以下、松屋)1階にショップおよび公式ECサイトをオープン。同ブランドを率いるのは米ニューヨークを拠点に、さまざまなジュエリーブランドを運営している二宮美生ネクストダイヤモンド ニューヨーク社長だ。上陸に伴い来日した二宮社長に、ブランドをはじめラボグロウンとモアサナイトについて聞いた。

WWD:「ネクストダイヤモンド」を立ち上げたきっかけは?

二宮美生ネクストダイヤモンド ニューヨーク社長(以下、二宮):ジュエリー業界における新しい価値観を提供したいと思った。日本でエンゲージメントリングに使用される平均的な天然の大きさは0.3カラット、アメリカでは1カラット以上だ。天然より価格の安いラボグロウン、ラボグロウンよりも手に取りやすいモアサナイトを扱うことで、予算とエシカルという観点で消費者に選択肢を与え、若年層のブライダル需要や第二のエンゲージメントリング世代(アメリカで再婚が多い年代)といわれる50〜60代の女性のニーズに応えたい。

WWD:ラボグロウンとは、具体的にどのようなものか?

二宮:天然と全く同じ組成で、「ネクストダイヤモンド」が扱うものの主な製法は、CVD(CHEMICAL VAPORDEPOSITION)と呼ばれる化学気相蒸着法とHPHT(HIGH PRESSURE AND HIGH TEMPERATURE)と呼ばれる高温高圧法の2種類が主流。アメリカやインド、中国などで製造されており、約5年前から市場で出回り始めた。

WWD:扱うラボグロウンのグレード(4C)や価格、調達方法などは?鑑定書は付くか?

二宮:カラーは、無色〜ほぼ無色のD〜H、クラリティーはIF〜VS(ベリー・スライトリー・インクルーデッド)以上、カットはエクセレントかベリー・グッド、カラットは1〜7カラット。価格は天然の価格相場である週刊ラパポルト・ダイヤモンド・レポートと連動しており、天然の3分1程度。調達はインドやアメリカのメーカーから。インドはカッティングの技術が優れており独自のカットなどもできる。中国にもメーカーがたくさんあるが、小ぶりのものを製造しているメーカーが多いため扱わない。鑑定書は国際宝石学会(IGI)、または米国宝石学会(GIA)のものが付く。

WWD:デザインや製造はどこで行うか?

二宮:デザインはニューヨークで、360度どこから見ても美しいデザインにしている。製造は、アメリカ、日本、中国。日本の工房と提携してアフターサービスを提供する。

WWD:ラボグロウンの1カラットのリングの税込価格は?

二宮:プラチナ四つ爪リングが39万6000円から。地金はプラチナ以外に、ピンク・イエロー18金から選べる。

ラボグロウンより価格の低いモアサナイト

WWD:モアサナイトとは?

二宮:1893年に米アリゾナ州で発見された隕石の中の鉱物で、地球上でほぼ天然のものは存在しない。研究が進められ、1998年に米企業のチャールズ&コルバード(CHARLS & COLVARD)が開発に成功し特許を取得し製造を始めた。今は特許が切れてチャールズ&コルバード社以外でも製造されている。化学組成は、炭化ケイ素で硬度は天然・ラボグロウンに次いで高く、光の屈折率や分散度は、天然・ラボグロウンよりも高い。だから、欧米では天然やラボグロウンの代替としてエンゲージメントリングなどに使用されている。価格はラボグロウンよりも安い。

WWD:グレードや1カラットの税込価格は?

二宮:モアサナイトはダイヤモンドとは違うが「ネクストダイヤモンド」の基準でグレードを付けている。カラーはD〜F、クラリティーはVVS(ベリーベリー・スライトリー・インクルーデッド)、カットはエクセレントでラウンドブリリアントの場合はH&C(ハート&キューピッド)が確認できる。「ネクストダイヤモンド」の保証書が付き、1カラット、プラチナ四つ爪リングが19万2500円〜。

WWD:エンゲージメントリングの納品方法は?それ以外の商材はあるか?

二宮:受注してから納期は1〜2ヶ月程度。エンゲージメントリング以外にも、ファッションジュエリーも販売するが、それらは在庫を持つ。

消費者の価値観により市場が分散化

WWD:天然、ラボグロウン、モアサナイトのすみ分けをどのように考えるか?

二宮:天然とラボグロウンは、全く同じ組成で鑑定士が見ても見分けがつかない。天然は1gを採掘するのに1トンの土砂を掘り起こしている。一方、ラボグロウンは人と地球に優しい。ダイヤモンドにこだわる人は、天然かラボグロウンのどちらかを選択するだろう。モアサナイトはダイヤモンドではないが虹色の強い輝きがあり、ラボグロウンより安価。予算でこちらを選ぶ人もいるはずだ。消費者それぞれの価値観で、天然、ラボグロウン、モアサナイトを選べばいいと思う。ただ、正しい知識に基づいて選ぶことが大切だ。

WWD:「ネクストダイヤモンド」の戦略は?

二宮:アメリカ市場では約3年間でラボグロウンがメジャーになった。日本でもそのような動きが出てくると思っている。「ネクストダイヤモンド」を通して日本のジュエリー業界を変革したい。ECをメーンにLINE接客など気軽に相談できるサービスを提供したい。いろいろな企業とコラボレーションしながら、ラボグロウンの市場を作っていくつもりだ。ラボグロウンやモアサナイトがどのようなものかという啓蒙活動も行っていく。多様性が求められる時代だからこそ、異なる価値を提供するのは大切なこと。5年後にエンゲージメントリング市場でトップを目指したい。そのうち、日本でも「エンゲージメントリングの石は、何にした?」というような会話が当たり前になってほしい。

WWD:現在のラボグロウンの製造状況は?

二宮:DやIFを作れる技術はあり進化しているのは確実だ。大きさは、7〜8カラットまで。大きくなれば、その分内包物も増えるので、課題もある。

WWD:現在のラボグロウンの大きな市場は?

二宮:アメリカと中国だ。

WWD:今後のラボグロウン市場をどのように分析するか?

二宮:金の市場の成長率は、ここ数年では毎年15〜20%。ラボグロウンに関しては、2015年に1億5000万円の市場規模だったのが20年には1兆円を超え、約700倍に成長した。ある意味、天然はリアルファーと同じようなものだと思う。今では、エコファーが主流。だから、エシカルな考えを持つ消費者が増えるにつれ、あえてラボグロウンを選ぶ層が増加するはずだ。これからは、消費者の価値観によって、天然、ラボグロウン、モアサナイトそれぞれの市場に需要が分散すると思う。

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キーマンに直撃 松屋がラボグロウンダイヤモンドに注力するワケ

 松屋銀座本店(以下、松屋)は8月末に、ラボグロウンダイヤモンド(以下、ラボグロウン)に特化して独自のジュエリーブランド「エネイ(ENEY)」とブライダル需要に対応するラボグロウンに特化した「ネクストダイヤモンド ニューヨーク(NEXT DIAMOND NEW YORK、以下ネクストダイヤモンド)」2つのショップを1階にオープンした。同時に、各ECサイトもスタート。この2つのブランドで、売り場・EC合わせて通常のこの売り場面積の約1.7倍の年商が目標だ。プロジェクトのキーマンである古屋穀彦・松屋代表取締役専務執行役員 経営企画室長、経理部管掌、環境マネジメント部担当に聞いた。

WWD:ラボグロウンの存在を知ったのはいつか?それに対してどう思ったか?

古屋穀彦・松屋代表取締役専務執行役員 経営企画室長、経理部管掌、環境マネジメント部担当(以下、古屋):2019年に米ニューヨークの知人がジュエリーブランド「ニューヨークの贈り物」を運営しているGFM二宮美生 & カンパニー代表に出会ったのがきっかけだ。2020年2月に1週間「GFM」のポップアップショップを開催したところ好評だった。二宮さんから、ラボグロウンの話を聞いて興味が沸いた。それがどういうものか、研究を重ねて、新しい市場ができると感じた。

WWD:独自で「エネイ」というジュエリーブランドを立ち上げたきっかけは?

古屋:昨年の自粛期間中に、自粛明けに差がつく何かを考えたいと思っていた。店舗休業で、われわれも取引先も厳しい。今後の百貨店ビジネスはどうなるのかと考え、新しいチャレンジをするべきだと考えた。そこで、島田成一郎・松屋 事業推進部スタートアップ事業課長と話して、「自社ブランドを作ることにチャレンジする」という意見に合意した、ラボグロウンと出合い、それは、SDGsという時流の流れにも合っている、今後市場が広がる可能性も大きくチャレンジしがいがある。島田を中心とした現場が本気で、「いいブランドを作りたい」と動き始めたので、背中を押したような感じだ。チャレンジするなら、リスクがあっても勝算率が高く、市場が広まる可能性を持っているものがベストだと考えた。

WWD:「エネイ」を立ち上げた手応えは?

古屋:ビューティブランドの「セルヴォーク(CELVOKE)」などを手掛ける田上陽子さんにディレクションをお願いし、外部を巻き込めたのが良かった。今まで、“松屋オリジナル”的なものが多かったが、若年層にアピールするには、外部の力が必要だと考えた。ブランドのメディア発表後に行った一部顧客などを招いた販売会では予想の2.5倍を売り上げたので、期待以上の手応えを感じている。

WWD:「エネイ」のラボグロウンダイヤモンドの調達は?ラボグロウンを使用するメリットは?

古屋:「ネクストダイヤモンド」を運営する二宮社長と契約して入手する。“ハーフムーン”というシリーズは、石を真っ二つに割ったデザイン。天然だと躊躇するが、ラボグロウンだとこのような大胆なデザインにもチャレンジできる。

WWD:同時に「エネイ」と「ネクストダイヤモンド」2つのブランドを導入する理由と目的は?

古屋:ラボグロウンの市場を作って行きたいという志から。「エネイ」は、” エニー(ANY)”と“エナジー(ENERGY)”を組み合わせた造語だ。ファッション感度の高い女性にデザインでアピールし、使っているのがラボグロウンで、なおさらいい、かっこいいと思ってもらいたい。それで自然にラボグロウンのジュエリーブランドとして育っていけばいいと思う。「ネクストダイヤモンド」は、石が主役でデザインはベーシック。ブライダルなど、人生の節目に対応するブランドだ。「エネイ」と「ネクストダイヤモンド」2ブランドを展開することで、幅広い層にアピールできる。松屋の顧客は新しいものに対する関心が高いので、どちらも響くと思っている。

ラボグロウンによるジュエリー市場全体の活性化に期待

WWD:これら2つのブランドでラボグロウンに注力する理由は?同じ売り場にコーナーがある日本のジュエリー企業の反応は?

古屋:既存のジュエリーブランドは、いまだに、天然とラボグロウンが混ざることを懸念しているところが多い。松屋としては、天然の市場とラボグロウンの市場は別々で、それを消費者に理解してもらいつつ、ラボグロウンの市場を作っていくつもりだ。国内ジュエラーからは、「これら2つのブランドの導入によりジュエリー市場が活性化すれば」とポジティブに捉えられ、応援してくれている。

WWD:ラボグロウンを扱うメリットとデメリットは?

古屋:メリットは、他の百貨店と差別化できる点。また、消費者にとって選択肢が増えるという点。デメリットは、ほぼないと考えるが、天然の価値がラボグロウンの影響で落ちると思われるのは良くないので、天然とラボグロウンの価値、その違いを、きちんと説明していく。

WWD:ラボグロウンが天然と競合する可能性は?

古屋:「エネイ」も「ネクストダイヤモンド」も、新しい価値を提供するブランドだ。天然のオプションという選択肢だとは考えていない。それぞれのブランドの価値を理解して購入する顧客を増やすことにより、ブランドとして成長し、ジュエリービジネスが全体的に広がればいいと思っている。

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キーマンに直撃 松屋がラボグロウンダイヤモンドに注力するワケ

 松屋銀座本店(以下、松屋)は8月末に、ラボグロウンダイヤモンド(以下、ラボグロウン)に特化して独自のジュエリーブランド「エネイ(ENEY)」とブライダル需要に対応するラボグロウンに特化した「ネクストダイヤモンド ニューヨーク(NEXT DIAMOND NEW YORK、以下ネクストダイヤモンド)」2つのショップを1階にオープンした。同時に、各ECサイトもスタート。この2つのブランドで、売り場・EC合わせて通常のこの売り場面積の約1.7倍の年商が目標だ。プロジェクトのキーマンである古屋穀彦・松屋代表取締役専務執行役員 経営企画室長、経理部管掌、環境マネジメント部担当に聞いた。

WWD:ラボグロウンの存在を知ったのはいつか?それに対してどう思ったか?

古屋穀彦・松屋代表取締役専務執行役員 経営企画室長、経理部管掌、環境マネジメント部担当(以下、古屋):2019年に米ニューヨークの知人がジュエリーブランド「ニューヨークの贈り物」を運営しているGFM二宮美生 & カンパニー代表に出会ったのがきっかけだ。2020年2月に1週間「GFM」のポップアップショップを開催したところ好評だった。二宮さんから、ラボグロウンの話を聞いて興味が沸いた。それがどういうものか、研究を重ねて、新しい市場ができると感じた。

WWD:独自で「エネイ」というジュエリーブランドを立ち上げたきっかけは?

古屋:昨年の自粛期間中に、自粛明けに差がつく何かを考えたいと思っていた。店舗休業で、われわれも取引先も厳しい。今後の百貨店ビジネスはどうなるのかと考え、新しいチャレンジをするべきだと考えた。そこで、島田成一郎・松屋 事業推進部スタートアップ事業課長と話して、「自社ブランドを作ることにチャレンジする」という意見に合意した、ラボグロウンと出合い、それは、SDGsという時流の流れにも合っている、今後市場が広がる可能性も大きくチャレンジしがいがある。島田を中心とした現場が本気で、「いいブランドを作りたい」と動き始めたので、背中を押したような感じだ。チャレンジするなら、リスクがあっても勝算率が高く、市場が広まる可能性を持っているものがベストだと考えた。

WWD:「エネイ」を立ち上げた手応えは?

古屋:ビューティブランドの「セルヴォーク(CELVOKE)」などを手掛ける田上陽子さんにディレクションをお願いし、外部を巻き込めたのが良かった。今まで、“松屋オリジナル”的なものが多かったが、若年層にアピールするには、外部の力が必要だと考えた。ブランドのメディア発表後に行った一部顧客などを招いた販売会では予想の2.5倍を売り上げたので、期待以上の手応えを感じている。

WWD:「エネイ」のラボグロウンダイヤモンドの調達は?ラボグロウンを使用するメリットは?

古屋:「ネクストダイヤモンド」を運営する二宮社長と契約して入手する。“ハーフムーン”というシリーズは、石を真っ二つに割ったデザイン。天然だと躊躇するが、ラボグロウンだとこのような大胆なデザインにもチャレンジできる。

WWD:同時に「エネイ」と「ネクストダイヤモンド」2つのブランドを導入する理由と目的は?

古屋:ラボグロウンの市場を作って行きたいという志から。「エネイ」は、” エニー(ANY)”と“エナジー(ENERGY)”を組み合わせた造語だ。ファッション感度の高い女性にデザインでアピールし、使っているのがラボグロウンで、なおさらいい、かっこいいと思ってもらいたい。それで自然にラボグロウンのジュエリーブランドとして育っていけばいいと思う。「ネクストダイヤモンド」は、石が主役でデザインはベーシック。ブライダルなど、人生の節目に対応するブランドだ。「エネイ」と「ネクストダイヤモンド」2ブランドを展開することで、幅広い層にアピールできる。松屋の顧客は新しいものに対する関心が高いので、どちらも響くと思っている。

ラボグロウンによるジュエリー市場全体の活性化に期待

WWD:これら2つのブランドでラボグロウンに注力する理由は?同じ売り場にコーナーがある日本のジュエリー企業の反応は?

古屋:既存のジュエリーブランドは、いまだに、天然とラボグロウンが混ざることを懸念しているところが多い。松屋としては、天然の市場とラボグロウンの市場は別々で、それを消費者に理解してもらいつつ、ラボグロウンの市場を作っていくつもりだ。国内ジュエラーからは、「これら2つのブランドの導入によりジュエリー市場が活性化すれば」とポジティブに捉えられ、応援してくれている。

WWD:ラボグロウンを扱うメリットとデメリットは?

古屋:メリットは、他の百貨店と差別化できる点。また、消費者にとって選択肢が増えるという点。デメリットは、ほぼないと考えるが、天然の価値がラボグロウンの影響で落ちると思われるのは良くないので、天然とラボグロウンの価値、その違いを、きちんと説明していく。

WWD:ラボグロウンが天然と競合する可能性は?

古屋:「エネイ」も「ネクストダイヤモンド」も、新しい価値を提供するブランドだ。天然のオプションという選択肢だとは考えていない。それぞれのブランドの価値を理解して購入する顧客を増やすことにより、ブランドとして成長し、ジュエリービジネスが全体的に広がればいいと思っている。

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スパイバー、上場へ本格始動 カーライルなどから340億円を調達

 人工タンパク質素材のスタートアップのスパイバーは8日、投資ファンドのカーライルや官民ファンドであるクールジャパン機構などからの増資と事業価値の証券化で新たに340億円の資金調達を行ったと発表した。カーライルは第三者割当増資で100億円を出資し、クールジャパン機構とともに取締役も派遣する。スパイバーの資金調達はこれまでベンチャーキャピタルや取引先が主力だったが、有力なプライベートエクイティ(PE)ファンドであるカーライルの参加で、本格的にIPOに向けて動き出す。カーライルの渡辺雄介マネージングディレクターは「アパレル産業への強力なインパクトと共に、中長期的にも大きな市場をターゲットにしており、大きな可能性を感じた。経営基盤の強化に加え、海外進出への支援を行う」という。

 資金調達の内訳は投資ファンドのカーライルのほか、フィディリティインターナショナル(Fidelity International)やベイリーギフォード(BAILLIE GIFFORD)などの海外の機関投資家による出資のほか、官民ファンドのクールジャパン機構の追加増資で240億円。将来の事業価値を担保にした事業価値証券化で100億円になる。新たな増資は1株4500円で行い、最新の株式評価額は1330億円になる。

 今回の資本提携に対し、スパイバーの関山和秀取締役兼代表執行役とカーライルの渡辺雄介マネージングディレクターにオンライン取材を行った。一問一答は以下の通り。

WWDJAPAN(以下、WWD):資金調達の狙いは?

関山和秀スパイバー取締役兼代表執行役(以下、関山):タイの原料プラントが年内にも立ち上がり、米国の原料プラントの準備も順調に進んでおり、グローバルな垂直立ち上げのための資金だ。カーライルから出資だけでなく取締役の派遣も受けるのは、2〜3年内にIPOを検討しており、経営基盤の強化のためだ。

WWD:有価証券報告書によるとスパイバーは、この5年間、売上高はわずか2億円で、対して損益はずっと赤字。この5年累積赤字は160億円超に達する。PEファンドであるカーライルが出資を決めた理由は?

渡辺雄介カーライル マネージングディレクター(以下、渡辺):「ブリュードプロテイン(BREWED PROTEIN)」の商業化の進捗から、所有する技術、それらに付随する特許、さらには将来の市場規模まで、スパイバーの企業価値については徹底的に分析した。現在の生産技術やタイの原料プラントの進捗、米国プラントの規模、水面下で進んでいる世界規模でのブランドやアパレル企業との共同開発の状況などから見て、数年内の収益化はかなり有望だと分析している。かつ、人工タンパク質素材という革新的な素材の持つTAM(Total Addressable Market=将来獲得可能な市場規模)に関しても、繊維にかかわらず、プラスチックなどへの応用範囲も広く、しかもそこでのシェアを取れる可能性も高く、かなり大きい。日本でははじめての非バイアウト型のマイノリティグロース投資ということもあって、投資委員会でどう説明しようか迷ったものの、第一声は“素晴らしい!”と、かなりの高評価だった。

WWD:どう支援していく?

渡辺:まずはグローバルな事業展開に向けた支援だ。グローバルな投資ファンドであるカーライルはご存知の通り、シュプリーム(2020年にイグジット)やモンクレール(14年にイグジット)など、有力なグローバルブランド支援の実績があり、現在もゴールデングース(GOLDEN GOOSE)などの支援も行っている。出資先にとどまらず、幅広くさまざまなブランドとのコラボレーションなど、やれることは多いと感じている。IPOだけでなく、これまで培ってきた当社のグローバル展開とサステナビリティの知見を最大限に提供したい。

WWD:人工タンパク質素材に関しては、同業の米国のボルトスレッズ(BOLT THREADS)を筆頭に開発競争が激しくなっている。今後の展望は?

関山:スパイバーは人工合成タンパク質素材の分野では、タイと米国での原料プラントの着工や準備から、紡糸、ユーザーとの商品化に向けた共同開発といった商業生産から、研究開発から生産にまたがる圧倒的で多彩な特許網、さらには世界での標準化規格まで、あらゆる分野で世界でも他を圧倒している。タンパク質合成の分野では、先日SPAC(特別買収目的会社)上場を発表した、米ボストン発のギンコ・バイオワークス(GINKO BIOWORKS)のような強力なスタートアップが台頭しており、ユニコーン企業以上のレベルで競争は激化している。ただ、スパイバーの最大の強みは、タンパク質合成から、発酵による原料の生産、紡糸まで、合成生物学や遺伝子工学、高分子学など幅広い分野にまたがるコア技術を内製化し、超高速回転させて発展させられること。ラボレベルから量産に踏み出すときには大手素材メーカーとの協業や共同開発なども必要になってくるが、有力な技術や特許をどちらが持つかで事業の進捗が停滞したり、止まってしまうことも多い。その意味でも内製化している当社はかなりのアドバンテージがある。事業の垂直立ち上げのため、今後まだまだ大きな資金が必要になるが、カーライルとの提携で、2〜3年内の上場に向けての動きも整った。今後はさらに経営のスピードを上げていく。

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「ザ・ノース・フェイス」はなぜ「ロイカEF」を選んだのか 担当者が語る妥協なきこだわり

 環境負荷軽減を目指すファッション業界でサステナブルな素材に注目が集まる中、旭化成のリサイクルストレッチファイバー「ロイカEF」に多くの企業が熱視線を送っている。アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」を日本で運営するゴールドウインもそのうちの一社だ。同社はサステナビリティに関する長期ビジョン“プレイ アース 2030(PLAY EARTH 2030)”を5月に発表し、2030年までに環境に配慮した素材の使用率を現在の28%から90%へ引き上げを目標とし推進している。「ザ・ノース・フェイス」でも人気商品“バーブライトパンツ”を20年春夏シーズンから「ロイカEF」を使った環境配慮型の生地に切り替え、ほかの定番品も環境に配慮した素材に徐々にシフトしている。数あるサステナブルな素材の中で、なぜ「ロイカEF」を選んだのか。同ブランドの千葉弥生アウトドアアパレル企画担当に、その理由や背景を聞いた。

伸縮性や汎用性など
機能面のバランスが秀逸

 「ザ・ノース・フェイス」の万能パンツとして、登山やさまざまなスポーツに対応する定番品が“バーブパンツ”だ。2016年には、薄さと軽さにこだわった“ライト版”としてメンズ向けの“バーブライトパンツ”とウィメンズ向けの“バーブライトスリムパンツ”が登場。日常使いできるシンプルなデザインと、夏場のトレッキングや激しい運動にも対応する機能性で、多くの顧客から支持を集めている。そんな人気商品が、「ロイカEF」を用いた環境配慮型のストレッチ生地に昨年リニューアル。「定番品を徐々に環境に配慮した素材に切り替えており、“バーブライト”も変えたいと、『ザ・ノース・フェイス』から生地を取り扱う旭化成アドバンスに相談した」と、千葉は経緯を語る。

 リサイクル素材への切り替えは、従来の生地より光沢が強かったり、伸縮性が下がったりと品質の壁もある。しかし、千葉は「ロイカEF」を使った素材に「安心してシフトできた」と話す。「環境配慮型のストレッチ生地に変更しても、従来の“バーブライトパンツ”が持つ伸縮性や汎用性といった機能性は保ちたかった。しっかり伸びて表面が滑らかなもの、不要な光沢感もないもの、テクニカルなパンツ然としないもの——。妥協したくない部分がいろいろあった。『ロイカEF』は全体のバランスが優れていて、その全てをかなえてくれた」。

 機能性に加え、「ロイカEF」はデザイン面でもブランドのこだわりに貢献している。「“バーブライト”の一番の強みは、いい意味で見た目が“普通”なこと。通常トレッキングや激しい動きを想定したパンツは、膝部分にダーツや切り替えが入っているものが多い。でも“バーブライト”は、膝の切り替えがなく、ポケットの仕様も含めてシンプルでベーシックなデザインをとことん追求している。『ロイカEF』を使った素材は、そんなデザインの邪魔をすることもないし、機能性の高さも維持してくれた」。千葉自身も同パンツの愛用者で、“バーブライトスリムパンツ”を着用して3泊4日の登山を敢行したところ、「細いシルエットに見えるかもしれないが、はくと全くストレスを感じない。伸縮性が高いので動いても突っ張らず、登山靴やブーツにかぶせても、裾が上がってこなかった」という。

サステナブルな
ストレッチファイバー
「ロイカEF」とは?

 旭化成が開発した「ロイカEF」は、工場内で発生する残糸や未出荷品といった、従来は廃棄していた糸を原料として再利用し、新しい糸に生まれ変わらせたサステナブルなストレッチファイバーだ。環境への配慮はもちろん、優れたストレッチ性とキックバック性も兼ね備え、通常のスパンデックスと同様に扱うことができるため、汎用性も高い。国内外のアウトドアメーカーをはじめ、スポーツブランドや環境意識の高いファッションブランドが取り入れ、アウターからインナーまでさまざまなアイテムに採用されている。

女性の体の構造に合わせて、
不便に感じる部分は改善

 「ザ・ノース・フェイス」がシンプルなデザインと機能性を実現させる「ロイカEF」を選んだのには、市場の変化も関係している。現在、“バーブライトパンツ”と“バーブライトスリムパンツ”の購入目的は、アクティビティーとタウンユースでほぼ半々に分かれるという。「コロナ禍でワンマイルウエアと呼ばれるイージーパンツが売れているが、キャンプ人気の後押しでアクティブウエアの売り上げもここ1年半でぐっと伸びている。最近では、キャンプから始まり、ちょっと歩いてみよう、走ってみようと運動を始める人も増えている。そのため当社もアクティビティーと日常生活の境界線を越えて行き来できることを念頭に置き、日帰り登山での本格的な登山ウエアには足踏みしてしまうような方でも手に取りやすいデザインを増やしているところだ」。

 また女性層の増加も顕著で、「コロナ禍で女性客の売り上げも増加している。“バーブライトスリムパンツ”のような、汎用性が高い商品からまずは購入した方が多い印象だ。コロナ禍で初めて『ザ・ノース・フェイス』の製品を買ったという方も増えている。こうした中、企画メンバーの半数は女性なので、女性の体の構造に合わせて自分たちが不便に感じる部分はどんどん改善している。例えば、“バーブライトスリムパンツ”の前ポケットは、ファスナーを下から上に開ける仕様にしている。これは女性の腰骨が出ているため、バックのヒップハーネスを締めたときにファスナーが重なりやすく、長期縦走などをした際にあざになりやすいため、できるだけ重なりが少なくなるように改善した」。

 「ロイカEF」を用いた新商品の可能性については、「『ロイカEF』 を使用した生地の薄さと高い伸縮性は、登山やその他のアウトドアアクティビティー用のウエアにマッチする。全面に使うだけでなく、テクニカルなウエアの袖口や、ディテールなど、アイテムの機能性を向上させるためにポイント使いする可能性も考えられそうだ」と期待した。

問い合わせ先
パフォーマンスプロダクツ事業本部 ロイカ事業部 ロイカ営業部 テキスタイル担当
06-7636-3558

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500人以上が来場する出展無料のアート&音楽イベント「TOKYO LOVEHOTELS」 「日本の真面目すぎるアートイベントを変えたい」

 アーティストとして東京で活動するカリン ロー(Kalinlaw 以下、カリン)とロビン・ラステンベリエル(Robin Rastenberger 以下、ロビン)が立ち上げたアートイベント「TOKYO LOVEHOTELS(トーキョーラブホテルズ)」は、“アーティストのための自由な場所”を目指して2019年にスタートした。東京・原宿の「サンキーズペントハウス(SANKEYS PENTHOUSE)」をメイン会場に毎月開催し、出展者は作品の展示・販売などを無料で実施できる。他にないシステムが話題となり、新型コロナウイルスのパンデミック以前は20人前後の出展 ・出演者が集まり、入場料1500円ながら500人以上が来場していた。

 同イベントで扱うのは写真や絵画に加え、アパレルやジュエリーといった物販、ヘアメイクやネイル、クラフト教室などの体験型コンテンツまでさまざま。国内外からアップカミングなアーティストが集まり、これまでには「WWDJAPAN」のU30の若者たちにフォーカスした連載「ユース イン フォーカス(Youth in focus)」で追ったサウジアラビア出身の若者3人が立ち上げたストリートブランド「ウナストーキョー(UNAS TOKYO)」も参加している。

 オーガナイザーのカリンとロビンは、どんな思いでこのイベントを立ち上げたのか。コロナを経て、どんな未来を描くのか。2人に話を聞いた。

WWD:自己紹介をお願いします。

カリン:イギリスと日本のハーフで、東京には10年以上住んでいます。イベントオーガナイザー以外ではアーティストとDJをしています。アーティスト活動はTシャツにエアブラシでペイントをするアパレル作品がメインでしたが、今はキャンバスにもペイントしています。

ロビン:僕はスウェーデン出身で、「どこか遠くの世界に行きたい」と高校卒業後に日本へやって来ました。もう12年間住んでいます。普段はシンガーソングライターとモデルをしています。カリンとは元々「アメリカン アパレル(AMERICAN APPAREL)」で一緒にアルバイトをしていて、その後しばらく会っていなかったのですが、4年前にお茶をしたら、バイトの時以上に意気投合しました。

WWD:「TOKYO LOVEHOTELS」を始めた経緯は?

カリン:最初は自分が作ったアパレルを展示・販売する場所として始めました。ポップアップをずっとやりたかったのですが、主催者に出展料を払うのが難しくて、なかなか実現できなかったんです。その悩みをロビンに話すと、「売れるかわからない駆け出しのアーティストにとって、ポップアップの出展料を先払いするのは厳しいよね」と同じ悩みを持っていました。

ロビン:例えばライブハウスでは、出演にかかるお金は自分で負担し、お客さんがある程度集まったらようやく数10パーセントのキックバック(売上割戻)がもらえるようなシステムも少なくありません。日本にはまだまだアーティストが自由に表現する場所が足りてないんです。

カリン:そんな中、道玄坂に小さなイベントスペースを持っている知り合いから「そこでイベントをしないか」とチャンスをもらったんです。自分が作品のポップアップをして、ロビンが音楽のパフォーマンスをしたらどうかと考えて、話を持ちかけました。それから私たち以外にも興味を持ってくれた友人らが出演、出展するようになり徐々に大きくなっていきました。

ロビン:出展料なしのこだわりは、今でも続けているイベントの原点。“主催者”と“出展者”という上下関係はなく、僕たちはアーティストに場所を提供するだけです。自分たちの売り上げはチケット代からパフォーマーへの出演料を引いた分だけ。アーティストの売り上げには一切さわりません。アートに使うお金も残しておいてほしいっていう気持ちがあるから、チケット代も全然上げていない。本当にアートのためにやっています。

WWD:ユニークなイベント名の由来は?

カリン:初回の会場が道玄坂の“ラブホ街”だったのが由来の一つです。あとは、海外では日本のラブホテル文化がユニークなものとして知られていて、キャッチーだと思い採用しました。

ロビン:音楽やアートを通して、人々が“一夜の愛をシェア”するというイベントのテーマにもぴったりだよね。たまに本当のラブホテルと勘違いする人もいて、インスタグラムのDMで「一泊いくらですか?」って値段を聞かれたこともあります(笑)。

WWD:イベントのマスコットキャラがいると聞いたが?

カリン:よく知っていますね!プロスティ(Prostie)というマスコットがいます。ホテル暮らしをする、独立した現代の女性像を表現したキャラクターです。

ロビン:テーマも毎回異なるし、出展者のジャンルも多様なイベントだからこそ、特定の世界観を出したくて制作したキャラクターです。僕はゲーム作りが趣味なので、彼女をテーマにしたゲームも制作してウエブサイトで公開しています。最近、NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)としてプロスティのデジタルアートの販売も始めました。

多種多様なアートを求め、数百人が集まる空間に

WWD:今では数百人が集まるイベントになったが、どのように認知度を上げた?

カリン:最初は40人くらいの小さなイベントでしたが、徐々に口コミで広がり、色々な人から出演・出展したいと連絡が来るようになりました。反響を受けて、3回目から原宿の「サンキーズペントハウス」に会場を移して規模を大きくしました。ちゃんと人が集まるか不安だったけれど、100人以上集まり、オーナーからも「やるじゃん!」と言われロビンとすごく感動したのをよく覚えています。

ロビン:パンデミック直前には毎月の開催で500人以上が集まるほど大きくなっていました。出演者・出展者も常時20人ほどのラインアップで、クラブや飲食店、ギャラリーが融合したような面白い空間になって行きました。

WWD:どのような出展者が多い?

カリン:ジャンルは多種多様で、アパレル・ジュエリーなどの物販からヘアカット、メイクやネイルなどの体験型コンテンツ、フードやクラフト教室、写真や絵画などの展示・販売など本当に自由です。例えばジュエリーの販売ブースではその場で金属を削って制作するアーティストがいたり、タロット占いやヘナタトゥーを提供する人もいたりします。パフォーマンスもさまざまで、ライブ音楽だけでなくヴォーギング(アメリカの有色人種のLGBTQ+コミュニティにルーツを持つダンススタイル)のダンスパフォーマンス、華道や絵のライブパフォーマンスなどもあります。

ロビン:ただ、ジャンルレス過ぎてもイベントの色が伝わらないので、テーマを設けて、それに沿って出展者を決めることもあります。例えば“地球温暖化”をテーマにした回は、サステナビリティに取り組むアーティストやブランドを集めて、売り上げの一部をオーストラリアで起きた森林火災のチャリティに寄付しました。

WWD:来場者はどんな人が多い?

ロビン:年齢制限は設けていませんが、若い世代が中心ですね。クラブ目的でなくても楽しめるので、子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで遊びに来てくれています。

カリン:自分たちの周りから口コミで広がったこともあって、外国人や帰国子女などが多いです。パンデミック前は海外からの観光客にも人気で、「TOKYO LOVEHOTELS」の開催に合わせて旅の日程を調整してくれる人もいました。これからはもっと日本の人にも来てほしいですね。

パンデミックを乗り越え、世界的なアートイベントを目指す

WWD:新型コロナウイルスで風向きが変わった。

ロビン:本当に大きく変わりました。2020年はほとんどが休止期間になってしまいましたが、夏からは少しづつ再開しました。オンラインでやればという声もたくさんいただいたのですが、体験をメインにしているから、オンラインで伝わらないことも多い。そのため、政府と自治体の感染予防ガイドラインに従い、リアルでの開催にこだわりました。もちろん批判もありましたが、発表の場を失っていた多くのアーティストから感謝の声をもらいました。やって良かったと思っています。

カリン:ほかにも、ポッドキャストでの情報発信を始めました。ゲストにアーティストを招いて、活動について語ってもらい、人々に知ってもらえるプラットフォームになればと思っています。

ロビン:全編英語だし、かなりマニアックな話だけど、とっても面白いから興味のある人は是非聞いてみて欲しいな。

WWD:今後の展望は?

カリン:アート・バーゼル(Art Basel)みたいなイベントを目指しています。スイスのバーゼルとアメリカのマイアミ、香港で開催されるアートフェアで、ファッション・ウイークのアート版のような存在。特にマイアミでは、アートをアカデミックに発表する場でもありながら、イケイケなパーティも開催されるので、全世界から若者が集まります。海外と比べて日本のアートイベントは真面目なイメージが強く、若者が心から行きたい、かっこいいと思えるクールな場所にはなっていません。「TOKYO LOVEHOTELS」がアートを身近に楽しめる場になれたらうれしいです。

ロビン:ここに来れば東京のカルチャーとアートシーンが一度に味わえると国内外の人に認知されたい。そして、出展したアーティストや起業家、出演したパフォーマーがさらに活躍する機会を与えられるようなイベントになればと思います。

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Tシャツのグラニフが雑貨&出店を拡大、売上高3倍の300億円に 上場も視野

 グラフィックTシャツのグラニフ(GRANIPH)は、成長戦略をスタートする。商品をアパレルに加え、服飾雑貨や生活雑貨などにも広げ、店舗面積も従来の3倍に拡大し、スクラップ&ビルドで年20〜30店舗を出店する。EC化率も50%に引き上げ、5年後の2026年には売上高を現在の3倍の300億円に引き上げる。村田昭彦社長は「グラニフの最大の強みは、多彩なアーティストやクリエイター、キャラクターなどとのコラボレーションで生まれるグラフィック。一方で商品はノンエージ、ノンセックスの広がりがあり、顧客からの支持も高い。アパレル以外にも、販売する商品カテゴリーを広げることで企業価値を最大化する」と語った。2〜3年内の上場に向け、その準備にも入った。

 9月8日には、東京・原宿の旗艦店店をリニューアルオープンする。60坪強の店舗には、従来の主力アイテムであるTシャツやパーカーなどのアパレルに加え、スニーカーやマグカップ、スマホケース、クッションなど雑貨を加え、450アイテムを販売する。雑貨も商品単価は2000〜3000円が中心になり、アパレルとほぼ同じ。現在商品構成でほぼ100%を占めるアパレル製品の割合を5年後には50%に下げ、服飾雑貨や生活雑貨といった非アパレルの50%上乗せすを目指す同社の象徴的な店舗になる。村田社長は「この1〜2年をかけてサプライチェーンも含めたビジネスモデル全体を変えていく。これまではプリントまでして在庫にして売り減らすやり方だったが、今後は原型となるTシャツのボディをストックし、売れた分だけをプリントして追加していくやり方に変える。短ければ1〜2週間、長くても4〜5週間で追加生産する。Tシャツのボディも一度に大量に発注すればコストダウンにもつながるし、セールもやらなくても良くなる。販売するアイテム全体の7〜8割を追加生産型に切り替え、早ければ来春からはセールも止めたい」という。原宿店で試験的に先行販売したプリントスニーカーは1500足がすぐに完売したが、「プリントできる工場が少なかったが、試行錯誤して量産体制を整え、リニューアルオープン後は、定番アイテムとして販売体制が整った。今後拡充する雑貨でもこうした追加発注型のビジネスモデルで展開する」という。

 同社の直近の店舗数は124店舗(8月1日時点)。店舗は郊外の大型ショッピングモールや都心のファッションビル、路面店などさまざまだが、従来は15〜20坪(50〜70平方メートル)と小型店が中心だった。雑貨アイテムの拡充に伴い、今後は小型店をクローズし、年間20〜30店舗のペースで45〜60坪(150〜200平方メートル)の店舗を積極的に出店する。45〜60坪という店舗サイズは、ファッションブランドの標準サイズと重なる。「デベロッパーからは多くのお声がけをいただいており、今年度でも20店舗の出店はほぼ固まっている。サイズも大きいところだと90坪弱の案件もある」という。

 5年後の売上高300億円に対して、利益はEBITDA(償却前利益)で20%台を目指す。「自社ECサイトは10月にリニューアルオープンする。まずはUI/UX部分を使いやすく変えるが、2〜3年をかけてEC部門を内製化していく。ECのシステムも、店舗在庫をフル活用して店舗から消費者に発注できるような独自のシステムをフルスクラッチで開発し、リアルとECが融合したOMOを追求する」という。

 グラニフは2020年1月に三菱商事などが出資する投資ファンド丸の内キャピタルが買収し、オーナーになっている。村田社長は「社長就任から1年強が経ったが、いまだに顧客ロイヤルティの高さに驚くことが多い。グラニフの場合、例えば顧客同士で着ている商品がかぶっても、ネガティブにならず、『あ、それ好きなんですね』みたいに、逆にコミュニケーションが始まる。そんなブランドは稀有だと思う。この時代に5年で3倍というと野心的にも見えるかもしれないが、潜在的なパワーはそれ以上だ」と語った。

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石田ニコルと考える 電気自動車「日産アリア」とファッションのサステナブルな共通点

 電気自動車(EV)「日産アリア(ARIYA)」は、レジャーやスポーツに適したSUVタイプの新型車。快適なドライブだけでなく、サステナブルなライフスタイルを叶えるクルマだ。現在予約注文を受け付けている日本専用の限定モデル「日産アリア リミテッド(ARIYA limited)」は、大容量のバッテリーはもちろん、高速道路での同一車線内ハンズオフ走行や、駐車スペースからの出し入れの車外操作を可能とする先進的システムを搭載。同時に「ボーズ(BOSE)」の上級サウンドシステムや、枯山水をモチーフにした専用色のフロアカーペットなどを装備している。「バーガンディー/ミッドナイトブラック」など、「日産アリア リミテッド」限定の2色の2トーンボディーカラーも魅力的だ。
 サステナブルなライフスタイルを叶える「日産アリア リミテッド」とファッションには意外な関係性が存在するのではないか?そう考え、ファッションモデルで女優・タレントの石田ニコルと、横浜にある日産 グローバル本社ギャラリーを訪問。世界中の日産車のデザインを統括する田井悟(たい・さとる)エグゼクティブ・デザイン・ダイレクターと、「日産アリア」とファッションの共通点を考えた。

「粋」な外観と「間」な
車内で二面性を表現

 日産 グローバル本社ギャラリーで展示中の「日産アリア リミテッド」は、「シェルブロンド/ミッドナイトブラック」というリミテッド専用のツートンカラーが印象的だ。環境負荷が少ないためか勝手に思い描いていた、電気自動車の“優等生”的な印象は、軽やかに裏切られる。田井ダイレクターは、エンジンがないからこそ最初からフルパワーで走る電気自動車の「静かだけれど、ダイナミックに動く姿を形で表現したかった」と話す。サステナブルな車だからこそ、“車好き”以外のドライバーにも届けたいと願い、「車好きが好むパワフル」だけじゃない表現を意識した。
 「抑揚をつけるのではなく、なるべくシンプルに」。そう考え、日本の伝統にインスピレーションを得た。ホイールは折り紙、フロントのシールドには組子、ランプには行灯、そして、室内のカーペットには枯山水。日本の車メーカーとしての歴史とプライドを、最先端の電気自動車に注ぎ込んだ。石田ニコルは粋な電気自動車を「日本の伝統美が加わりスタイリッシュ。和洋が折衷しているからこそ、オシャレに感じます」と話す。
 室内は、電気自動車だからこそ、これまでエンジンが侵食していた足元の空間が格段に広くなった。外観が「粋」なら車内は「間」が特徴で、後部座席に座った石田も「前方の広さと“抜けている”カンジがスゴい!」と驚いた。

日本の伝統美は
「みんな好き」

WWDJAPAN(以下、WWD):そもそも、車やドライブは好き?
石田ニコル(以下、石田):車の中の空間、が好きなんです。友人とのドライブはもちろん、一人でSUVを走らせるのも好きですよ(笑)。プレイリストを作って、BGMを楽しみながらドライブしています。今は自分で運転する機会があまりないので、レンタカーやカーシェアリングのお世話になっています。
田井悟エグゼクティブ・デザイン・ダイレクター(以下、田井):今後車を買うなら、多分電気自動車になりますね(笑)。ご覧になった「アリア」はいかがでしたか?
石田:運転したことがなかったせいか、電気自動車をまだ身近に思えていなかったんです。大好きなゲームにはスタイリッシュで未来的な車が登場するのですが、「将来、こんな車が増えるのかな?」と思っていたくらいで。でも「アリア」は、日本の伝統美も表現しているせいか、親近感がわきますね。想像していたスタイリッシュさと、予期しなかった繊細な日本らしさ、いろんなものがミックスされてオシャレになってきたのは、ファッションと同じですね。
田井:仕事柄、コロナ前は世界中のモーターショーを訪ねていました。ファッションメディアやバイヤーの皆さんと一緒です。そこである時から、どの国でも、日本の要素が入り始めたのに気づいたんです。食べ物もそうでしょう?日本食の“格”は増すばかり。刺身がニューヨークのアメリカンレストランで出てきても驚かなくなりました。「繊細」や「健康的」などのイメージが浸透したのでしょう。今は「伸るか反るか」のギャンブルではなく、「みんな好きですよね?」という感覚で、日本的な要素が取り入れられています。
石田:ゲームの世界も同じです。海外の方にとって、アニメとゲームに溢れている日本はたまらない場所なんです。
田井:ゲームの世界は、めちゃくちゃ刺激になっているんですよ。世界中から何万人が集まって、着替えて、好きな武器を持って、同時に戦う。プラットフォームとしてモノ凄くて、「未来は、ここにあるに違いない」って思っています。

車でも「時代はサステナブル。
若い世代は地球のために選択」

石田:ゲームは没入できる世界観が大事ですが、「アリア」も周りの空気やライフスタイルを大事にしている印象です。
田井:車業界には「俺を見ろ!」という意気込みで、オブジェとしての車を作ってしまう感覚がありました。でも、僕は「アリア」は「景色」にしたかった。存在感はあるんだけれど、「俺が、俺が」じゃないカンジ。日本の伝統美は、そんなアプローチにもピッタリだったんです。
WWD:丁寧に作ったシンプルな洋服こそ、着る人の個性を引き出し、結果、長く愛されると考えるファッション業界に通じます。
田井:今までは異なる業界と分け隔てていましたが、これからは一緒。ファッションやゲームの世界で起こることは、車業界でも起こっているんです。
WWD:「アリア」はファッション業界同様、サステナブルにも真摯に向き合い生み出されている。
石田:私はサンゴ礁を守るための日焼け止めのほか、エコバッグなどサステナブルなアイテムをプロデュースしていますが、環境問題などをもっと深く学びたいと思い今年、ドイツのミュンヘンで開かれた次世代リーダーのためのグローバル・フォーラム「ワン ヤング ワールド サミット 2021(One Young World Summit 2021)」に参加したんです。改めてヨーロッパではサステナブルな生活が浸透していて、マイボトルから再生糸を使ったファッションまで、環境負荷が少ない選択肢の幅広さを感じました。私自身、買う物は、迷ったらサステナブルな方を選びたい。今は多くのファッションブランドが関心を抱き始め、オシャレに表現してくれるので嬉しいです。
田井:私たち日産も、社会に貢献するサステナブルというムーブメントを応援すべく、電気自動車という選択肢を用意したいと思っています。同時に「地球に良い」だけでなく、クルマとして、デザインとして楽しめるモノに仕上がるようこだわりました。これもファッションも同じだと思いますが、車業界にもいろんな考えがあります。その全てを叶える車の開発は、本当に難しいです。でも、時代がサステナブルなのは間違いありません。電気自動車についても、若い世代は「電気はガソリンより安い」や「燃費が良い」ではなく、地球のために選んでいる気がします。

「車は、いろんな世界の美しさの
間に存在する架け橋」

WWD:ファッション業界では、多くを捨てないように、タイムレスな洋服を生み出そうという流れがある。車業界は?
田井:バブルを経た世代には、モノは買って、捨てるのが当たり前という感覚がありました。そんな消費者に向き合ってきた業界として、「飽きられることを前提にモノを作ってきた」感覚は存在したのかもしれません。でも今は洋服同様、車を取り巻く環境も変わっています。電気自動車は間違いなく増えますが、同様にカーシェアも普及するでしょう。最近は、「シェアする時代にふさわしい性能って、なんだろう?」って考えますよ。衛生や更なる安全など、求められる性能も変わるでしょう。
WWD:レンタルやサブスクリプション、カスタマイズが広がり始めたのは、ファッション業界も同じです。
田井:直近では、カスタマイズの流れは間違いなく来るでしょうね。
石田:ゲームの世界も、カスタマイズです。スキン(ゲーム業界では「見た目の変更」の意味。「着せ替え」と同義)にお金をかけています。スゴい銃とかが出てくると、みんなが「うわぁ~」ってなるんです(笑)。お金をかけたスキンでゲームを楽しんでいますが、私には自然の中で楽しむダイビングも大事です。ゲームとは違う、「今」を見ているカンジ。このメリハリが良いんです。だからこそ、サンゴ礁を守る活動を続けながら、サステナブルな生活も心掛けたいです。私にとっての車やドライブは、2つの世界の美しさの間に存在する架け橋みたいな存在です。これからも楽しみたいと思います。
田井:ぜひ、「アリア」で出掛けてください。自画自賛ですが、静かなのにパワフルな、本当に新しいSUVなんです。知らないうちにいろいろサポートしてくれるから、運転が上手くなった気分になって、ますますドライブが楽しくなりますよ(笑)。

HAIR&MAKE:ICHIKI KITA
PHOTO:TSUKASA NAKAGAWA
STYLING:NATSUKO DEGUCHI
石田ニコルの衣装は、
ブラウス&パンツ:共に「デザイナーズ リミックス」税込2万9700円(コロネット03-5216-6518)
イヤリング:「リプサリス」同9680円(ロードス03-6416-1995)
ブーツ:「ダイアナ」同2万6950円(ダイアナ 銀座本店03-3573-4005)
問い合わせ先
日産自動車 お客さま相談室
(9:00-17:00)
0120-315-232

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石田ニコルと考える 電気自動車「日産アリア」とファッションのサステナブルな共通点

 電気自動車(EV)「日産アリア(ARIYA)」は、レジャーやスポーツに適したSUVタイプの新型車。快適なドライブだけでなく、サステナブルなライフスタイルを叶えるクルマだ。現在予約注文を受け付けている日本専用の限定モデル「日産アリア リミテッド(ARIYA limited)」は、大容量のバッテリーはもちろん、高速道路での同一車線内ハンズオフ走行や、駐車スペースからの出し入れの車外操作を可能とする先進的システムを搭載。同時に「ボーズ(BOSE)」の上級サウンドシステムや、枯山水をモチーフにした専用色のフロアカーペットなどを装備している。「バーガンディー/ミッドナイトブラック」など、「日産アリア リミテッド」限定の2色の2トーンボディーカラーも魅力的だ。
 サステナブルなライフスタイルを叶える「日産アリア リミテッド」とファッションには意外な関係性が存在するのではないか?そう考え、ファッションモデルで女優・タレントの石田ニコルと、横浜にある日産 グローバル本社ギャラリーを訪問。世界中の日産車のデザインを統括する田井悟(たい・さとる)エグゼクティブ・デザイン・ダイレクターと、「日産アリア」とファッションの共通点を考えた。

「粋」な外観と「間」な
車内で二面性を表現

 日産 グローバル本社ギャラリーで展示中の「日産アリア リミテッド」は、「シェルブロンド/ミッドナイトブラック」というリミテッド専用のツートンカラーが印象的だ。環境負荷が少ないためか勝手に思い描いていた、電気自動車の“優等生”的な印象は、軽やかに裏切られる。田井ダイレクターは、エンジンがないからこそ最初からフルパワーで走る電気自動車の「静かだけれど、ダイナミックに動く姿を形で表現したかった」と話す。サステナブルな車だからこそ、“車好き”以外のドライバーにも届けたいと願い、「車好きが好むパワフル」だけじゃない表現を意識した。
 「抑揚をつけるのではなく、なるべくシンプルに」。そう考え、日本の伝統にインスピレーションを得た。ホイールは折り紙、フロントのシールドには組子、ランプには行灯、そして、室内のカーペットには枯山水。日本の車メーカーとしての歴史とプライドを、最先端の電気自動車に注ぎ込んだ。石田ニコルは粋な電気自動車を「日本の伝統美が加わりスタイリッシュ。和洋が折衷しているからこそ、オシャレに感じます」と話す。
 室内は、電気自動車だからこそ、これまでエンジンが侵食していた足元の空間が格段に広くなった。外観が「粋」なら車内は「間」が特徴で、後部座席に座った石田も「前方の広さと“抜けている”カンジがスゴい!」と驚いた。

日本の伝統美は
「みんな好き」

WWDJAPAN(以下、WWD):そもそも、車やドライブは好き?
石田ニコル(以下、石田):車の中の空間、が好きなんです。友人とのドライブはもちろん、一人でSUVを走らせるのも好きですよ(笑)。プレイリストを作って、BGMを楽しみながらドライブしています。今は自分で運転する機会があまりないので、レンタカーやカーシェアリングのお世話になっています。
田井悟エグゼクティブ・デザイン・ダイレクター(以下、田井):今後車を買うなら、多分電気自動車になりますね(笑)。ご覧になった「アリア」はいかがでしたか?
石田:運転したことがなかったせいか、電気自動車をまだ身近に思えていなかったんです。大好きなゲームにはスタイリッシュで未来的な車が登場するのですが、「将来、こんな車が増えるのかな?」と思っていたくらいで。でも「アリア」は、日本の伝統美も表現しているせいか、親近感がわきますね。想像していたスタイリッシュさと、予期しなかった繊細な日本らしさ、いろんなものがミックスされてオシャレになってきたのは、ファッションと同じですね。
田井:仕事柄、コロナ前は世界中のモーターショーを訪ねていました。ファッションメディアやバイヤーの皆さんと一緒です。そこである時から、どの国でも、日本の要素が入り始めたのに気づいたんです。食べ物もそうでしょう?日本食の“格”は増すばかり。刺身がニューヨークのアメリカンレストランで出てきても驚かなくなりました。「繊細」や「健康的」などのイメージが浸透したのでしょう。今は「伸るか反るか」のギャンブルではなく、「みんな好きですよね?」という感覚で、日本的な要素が取り入れられています。
石田:ゲームの世界も同じです。海外の方にとって、アニメとゲームに溢れている日本はたまらない場所なんです。
田井:ゲームの世界は、めちゃくちゃ刺激になっているんですよ。世界中から何万人が集まって、着替えて、好きな武器を持って、同時に戦う。プラットフォームとしてモノ凄くて、「未来は、ここにあるに違いない」って思っています。

車でも「時代はサステナブル。
若い世代は地球のために選択」

石田:ゲームは没入できる世界観が大事ですが、「アリア」も周りの空気やライフスタイルを大事にしている印象です。
田井:車業界には「俺を見ろ!」という意気込みで、オブジェとしての車を作ってしまう感覚がありました。でも、僕は「アリア」は「景色」にしたかった。存在感はあるんだけれど、「俺が、俺が」じゃないカンジ。日本の伝統美は、そんなアプローチにもピッタリだったんです。
WWD:丁寧に作ったシンプルな洋服こそ、着る人の個性を引き出し、結果、長く愛されると考えるファッション業界に通じます。
田井:今までは異なる業界と分け隔てていましたが、これからは一緒。ファッションやゲームの世界で起こることは、車業界でも起こっているんです。
WWD:「アリア」はファッション業界同様、サステナブルにも真摯に向き合い生み出されている。
石田:私はサンゴ礁を守るための日焼け止めのほか、エコバッグなどサステナブルなアイテムをプロデュースしていますが、環境問題などをもっと深く学びたいと思い今年、ドイツのミュンヘンで開かれた次世代リーダーのためのグローバル・フォーラム「ワン ヤング ワールド サミット 2021(One Young World Summit 2021)」に参加したんです。改めてヨーロッパではサステナブルな生活が浸透していて、マイボトルから再生糸を使ったファッションまで、環境負荷が少ない選択肢の幅広さを感じました。私自身、買う物は、迷ったらサステナブルな方を選びたい。今は多くのファッションブランドが関心を抱き始め、オシャレに表現してくれるので嬉しいです。
田井:私たち日産も、社会に貢献するサステナブルというムーブメントを応援すべく、電気自動車という選択肢を用意したいと思っています。同時に「地球に良い」だけでなく、クルマとして、デザインとして楽しめるモノに仕上がるようこだわりました。これもファッションも同じだと思いますが、車業界にもいろんな考えがあります。その全てを叶える車の開発は、本当に難しいです。でも、時代がサステナブルなのは間違いありません。電気自動車についても、若い世代は「電気はガソリンより安い」や「燃費が良い」ではなく、地球のために選んでいる気がします。

「車は、いろんな世界の美しさの
間に存在する架け橋」

WWD:ファッション業界では、多くを捨てないように、タイムレスな洋服を生み出そうという流れがある。車業界は?
田井:バブルを経た世代には、モノは買って、捨てるのが当たり前という感覚がありました。そんな消費者に向き合ってきた業界として、「飽きられることを前提にモノを作ってきた」感覚は存在したのかもしれません。でも今は洋服同様、車を取り巻く環境も変わっています。電気自動車は間違いなく増えますが、同様にカーシェアも普及するでしょう。最近は、「シェアする時代にふさわしい性能って、なんだろう?」って考えますよ。衛生や更なる安全など、求められる性能も変わるでしょう。
WWD:レンタルやサブスクリプション、カスタマイズが広がり始めたのは、ファッション業界も同じです。
田井:直近では、カスタマイズの流れは間違いなく来るでしょうね。
石田:ゲームの世界も、カスタマイズです。スキン(ゲーム業界では「見た目の変更」の意味。「着せ替え」と同義)にお金をかけています。スゴい銃とかが出てくると、みんなが「うわぁ~」ってなるんです(笑)。お金をかけたスキンでゲームを楽しんでいますが、私には自然の中で楽しむダイビングも大事です。ゲームとは違う、「今」を見ているカンジ。このメリハリが良いんです。だからこそ、サンゴ礁を守る活動を続けながら、サステナブルな生活も心掛けたいです。私にとっての車やドライブは、2つの世界の美しさの間に存在する架け橋みたいな存在です。これからも楽しみたいと思います。
田井:ぜひ、「アリア」で出掛けてください。自画自賛ですが、静かなのにパワフルな、本当に新しいSUVなんです。知らないうちにいろいろサポートしてくれるから、運転が上手くなった気分になって、ますますドライブが楽しくなりますよ(笑)。

HAIR&MAKE:ICHIKI KITA
PHOTO:TSUKASA NAKAGAWA
STYLING:NATSUKO DEGUCHI
石田ニコルの衣装は、
ブラウス&パンツ:共に「デザイナーズ リミックス」税込2万9700円(コロネット03-5216-6518)
イヤリング:「リプサリス」同9680円(ロードス03-6416-1995)
ブーツ:「ダイアナ」同2万6950円(ダイアナ 銀座本店03-3573-4005)
問い合わせ先
日産自動車 お客さま相談室
(9:00-17:00)
0120-315-232

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オリラジ中田敦彦に聞く 原価率65%のサステナブル・アパレルブランド「カール・フォン・リンネ」の本気度

 オリエンタルラジオの中田敦彦は8月8日、アパレルブランド「カール・フォン・リンネ (CARL VON LINNE)」を自身のユーチューブ「中田敦彦のYouTube大学」で発表した。動画内ではアパレルの廃棄問題や低賃金問題を解説。植物学者の名を冠した同ブランドについては村松啓市をデザイナーに迎え「未来のために、知性の上に着る」をコンセプトに設計し、作り手の顔が見える国内生産とサステナブルな素材使いが特徴であると語った。シャツ、Tシャツ、パーカー、ニットセーター、コートの5型の原価率は驚きの65%。予約販売は一晩で完売したときく。なぜ中田氏がサステナブル・アパレルなのか?その真意を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD ):「カール・フォン・リンネ」を立ち上げた経緯を教えて下さい。

中田敦彦「カール・フォン・リンネ」オーナー(以下、中田):実は当初はサステナブルなアパレルは想定していませんでした。以前「幸福洗脳」というブランドを販売しており、その経験を踏まえて今度は“ちゃんとした服を作りたい”と考えたのが先です。

WWD:「幸福洗脳」は “「シュプリーム」はなぜ売れるの?”と疑問を抱いた中田さんがその解を探して2018年に立ち上げたブランドですね。「幸福洗脳」のボックスロゴTシャツなど、攻めたデザインでした。それに対する“ちゃんとした服”とは?

中田:多くの人が着やすいデザイン、買いやすい価格の服、といった意味です。当初は価格とデザインのことしか考えていませんでした。その「カール・フォン・リンネ」にサステナブルの魂を入れたのはデザイナーの村松さんです。「幸福洗脳」で村松さんに作っていただいたニットのクオリティーの高さを覚えていたので、今回も依頼したところ「中田さんにはアパレル業界のサステナビリティの問題に挑戦してほしい」と逆提案を受けた。今年の5月の話です。

WWD:村松さんはなぜそのような提案を?

村松啓市「カール・フォン・リンネ」デザイナー(以下、村松):何かを作って世の中や購入者に届けるとき、今はやはりサステナビリティが非常に大切です。僕も長らくサステナブル・アパレルの活動を続けてきたけれど、多くのジレンマがあり、なかなかうまくいかない。中田さんとなら新しいことに挑戦できると思いました。

WWD:挑戦とは?

村松:アパレルの構造、システム自体への挑戦です。購入者が商品だけではなく、手に届くまでの構造自体を一緒に作り上げることを楽しむブランドです。オファーをもらってから1カ月考えて中田さんにぶつけました。

WWD:中田さんはどう受け止めた?

中田:主催する「ユーチューブ大学」を通じてこれまで気候変動問題や電気自動車、工業的な畜産業との関係などサステナビリティについてはいろいろ勉強してきました。欧米ではサステナビリティに取り組まない企業は淘汰されている。自動車産業で言えばガソリン車の法規制など外圧も多い。これからは従来の資本主義の原理だけではなく、サステナビリティ抜きには企業は投資を得られない。要するにサステナブルではない企業はどれだけいいものを作ってもゲームから退場せざるを得ない未来が見えている。だからサステナブル×アパレルビジネスの挑戦はおもしろそうだな、と単純に思いました。

WWD:おもしろい、の意味をかみ砕くと?

中田:この流れは数年遅れで必ず日本にもくる。だから挑戦してみたいと思ったんです。僕の肌感では今の日本にはサステナブル×アパレルの気配がまだありません。もちろん頑張っている方はいると思いますが僕に届いていないのだから、一般にはほとんど知られていないはず。アパレルに限らず日本の9割の人はSDGsや気候変動にピンときておらず、「一部のインテリが言っているだけ」と受け止めていると思う。僕はファッション感度は高くないけど発信力はあるから。村松さんのアイデアを翻訳し伝えられると思ったんです。

WWD:中田さんは「実験」という言葉をよく使いますが、サステナビリティの取り組みも「地球のため」というより、一つの「実験」でしょうか。

中田:志が高いのは村松さんであり、僕は発信力を生かしてサステナブルというカルチャーそのものを輸入するゲームや実験ができると考えました。ゲーム感覚というと、「サイコパス野郎が、遊び感覚でやっている」印象を与えるかもしれませんが、僕は気候変動に関しても、わが事としてとらえているんですよ。数年前では考えられなかった規模の水害などから気候変動の影響を肌感で受け止め「このままでは地球はマズイ、自分も何かやりたい」とは思う。かといって元グーグルCEOのラリー・ペイジ(Larry Page)やフェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)みたいに世界を動かせるかといえば、そこまでは勘違いしない。

中田が世界を変える、のではなく、中田は世界を変えるパーツのひとつ、です。音楽で言えば「ヒップホップってこういうものだよ」と日本に持ち込んだ人と、その後に出てきたラッパーは役割が違いますよね。わかりやすく“DA.YO.NE”から始まり、「今夜はブギー・バック」に進み、「メロディーと組み合わせると気持ちいいんだぜ」とわかってドラゴンアッシュ(Dragon Ash)の「グレイトフル・デイズ(Grateful Days)」となる。そこでジブラ(Zeebra)の「俺は東京生まれのヒップホップ育ち」を聴いて初めて、「ヒップホップはストリートのカルチャーなんだ」とわかりました。

コーヒーもしかりで文化は3段階ぐらいかけてじっくり伝わる。だとするとサステナブル1.0の今は「サステナブルって何だよ」「意味分かんねえ」って言われながらも誰かがまず発信することで「面白いじゃん」と少しでも伝わればいいかなと。僕は、ヒップホップで言うところの “DA.YO.NE”の立場。大騒ぎして知ってもらう役割はできる。門外漢の僕がアパレル業界に何か貢献を1ミリでもできたら、それは面白いゲームです。

服は新商品を出すこととサステナブルが相反関係にありますよね。そこもパーフェクトではなくベターを目指すべきでは?だって、原始時代に戻るわけにはいかない。人間は新しい服を着たいし、服で自分を表現したい。そういう生き物だし、そういう文化があるから、それを前に進めながらもサステナブルを目指すのが、現実的なサステナビリティだと思う。

WWD:このブランドを通じて成し遂げたいことは「サステナビリティを伝える、知らせる」ですね。

中田:あくまで僕は、ですよ。わあわあ言ったら、こうやって取材に来てくれるわけですからドミノの2つ目は倒れています。村松さんにはまた別の考えがあるでしょう。

アパレル業界から予想以上の好反応

WWD:村松さんへの反響はどうでしたか?

村松:僕は自分のブランドでサステナブルな活動を続けてきましたが、これまではすでにサステナブルにアンテナが立っている人にしか受け止めてもらえてこなかった。今回は中田さんを通じて、知ってもらえるきっかけができた。本当に反響が大きくて驚いています。価格を工夫したこともあり「メード・イン・ジャパンの服を初めて買った」というメッセージももらい嬉しかった。

意外だったのが、アパレル関係者からの好反応です。応援のメールが多く届きました。地球や社会環境に良くないことをしている自覚を持ちつつ動けていない人も多いようで、ユーチューブを見てハッとしたと。特に町工場の方たちとのプロジェクトへの応援メッセージは多かったです。工場からは「これまではいい物を作ってもそれを伝えることができなかった」と喜ばれています。

WWD:中田さんは反響を受けて思ったことは?

中田:僕、音楽業界でも門外漢で大騒ぎしたことが一度ありますが、ファッションと似ています。音楽をすごく好きな人は世の中の1割で、9割の人はスポティファイから流れてくる曲を何となく聴いている。今回はその9割の人に向けて話したつもりです。

だけど僕の想定よりも、服の買い方に対して選択肢のなさを感じていた人が多いとは思いました。極論すると全身「グッチ(GUCCI)」か「ユニクロ(UNIQLO)」かの2極化がすごい。だから6000円のカットソーを「鬼高い」、2万円のコートを「鬼安い」と、反響が乖離しています。「ユニクロ」のTシャツが安過ぎること、「グッチ」のTシャツが高過ぎることにもう一度目を向けて、「あれ、真ん中の選択肢はいつからなくなったんだっけ?」と議論が始まる手応えはありました。

WWD:「原価率65%」とのことですが、アパレルが本業なら65%で事業を成長させるのは難易度が高い。中田さんにとっては問題提起こそが第1目標だから儲け度外視でよい、のでしょうか。

中田:村松さんに丸投げしたら「中田さんが言う通りの、怖くない良質な服、サステナブルな服ができました」と鬼高い原価率の服があがってきた。それを僕のオンラインサロンのメンバーに見せたら全員が「高い」と白目をむいた。その反応を見て「いいものが高いことが今の日本では全く受け入れられないんだな」と実感しました。「ユニクロ」のクオリティーが1500円、2000円で買えることに慣れてしまっているから。

僕は「いい物は高いんだよ、当たり前だろ、誰が泣けばいいんだよ、工場か?生産者か?目を覚ませ」と言いたい。村松さんが笑い、工場の人が笑い、売ろうとしているお客さんを笑顔にするには経営者が笑わないしかないと知ったときに「ブランドをスケールしない」という答えが見えました。企業はより多くの顧客により多くの商品を売って、より多くの売り上げを得ようとする。株式会社であれば株主の利益を追求する。これが資本主義のルールですが、僕は上場していないし、お金はユーチューブで稼いでいる。ならば資本主義のルールを放棄する実験をすることに価値があると思いました。アンチ資本主義ですね。それをこの資本主義の権化みたいな男が手がける遊びです。

WWD:では「カール・フォン・リンネ」の未来は?

中田:売り上げではなく、その活動の知名度を高めたい。それは僕の信頼につながります。そして「この規模なら自分にもできる」と思った人が事業をスタートして第2、第3の「カール・フォン・リンネ」が生まれ、小規模かつコアファンを抱える企業が増えたらおもしろい。1社で「ユニクロ」に勝つ未来はないけど、1万人のファンを抱える1万社が1億の人口をカバーする未来だったらあり得る。

サステナビリティの取り組みとは

WWD:中田さんはデザインにはかかわらず、村松さんがすべて担当している?

村松:はい。「幅広い年齢層、性別や時代を問わず着てもらいやすいデザイン」という中田さんからの発注のもと私がデザインしています。どこでどのように作られている素材か、トレーサビリティに重きを置いて生地を選び、全アイテムのトワルを何度も丁寧に作り、品質とデザイン性の両方とも妥協せずに作っています。低コストで粗悪なもの、高品質だけど高価格のもの、高品質で適正価格だけどオシャレではないもの、低価格だけど作り手が低賃金のものなど「誰かの犠牲の上で誰かが泣く」のでなく、誰もが幸せに服を楽しめる未来へ世界を前進させたい。

WWD:トレーサビリティについて。たとえば工場の電力や水の使い方も把握をしているのでしょうか?

村松:自社の判断基準数値を持つわけではなく、あくまで工場からの申告制です。1着の服が完成するまでには多くの工程があり、多くの企業・物流を通ります。それらをすべてトレースすることは一部の大手商社の素材をのぞいてはほぼ不可能です。僕らメーカーも、工場もその仕組みをもっていない。であれば工場さんには正直に話してもらい、僕らはそれを動画などでそのまま消費者に伝えます。

WWD:取り組んだ工場を教えてください。

村松:敬称略でお伝えするとシャツは遠州織物の古山、染色はイワン、ニットは福島の木幡メリヤスと大阪の深喜毛織、コートは尾州の東伸、オーガニックコットンを使ったTシャツとパーカーはパノコトレーディングがそれぞれ生産しています。

WWD:生産工場名を明かすこと自体、アパレル業界ではまれです。

村松:どこで染めているか、どこで織っているかといった情報は生地の販売会社の手の内を明かすことなのでどこも言いたがりません。今回も「言いたくない」という会社が多かったけど長年信頼関係を築いている会社さんたちに無理言って門を開いてもらいました。

WWD:ここで言うリサイクルウールとは?

村松:廃棄されたウール製品やウールの繊維を作るときに出るくずを集めて再生したものです。デッドストックを使った製品は別にあります。

WWD:オンライン販売ですが、配送時に梱包など商品以外に取り組んでいるサステナビリティはありますか?

村松:梱包材についてはまだ対応していません。ひとつ、これは中田さんにもこの場で初めて話すのですが、僕がこれまで一緒に仕事をしてきた障がい者の方の就労支援活動との取り組みも検討しています。商品と環境に加えて、生産者も持続可能でありたく、正当な対価を支払う仕組みを作りたい。

ユーチューブの可能性はライブコマースにある

WWD:ユーチューブの可能性と課題について教えてください。

中田:可能性はライブコマースです。中国がまさに今、ライブコマースでとんでもないことになっています。大手企業がマスメディアに大金を払ってCM打ち盛り上げる空中戦ではなく、インフルエンサーそれぞれがライブコマースでそれぞれゲリラ戦みたいな形で莫大な売り上げを上げています。日本は浸透しておらず、まさにライブコマース1.0な状況。ユーチューブがもっとシームレスに商品販売まで直結できる進化をしてくれると可能性が広がると思います。

WWD:現在、ユーチューバーが得られる収益とは?

中田:広告収入とメンバーシップによるサブスクリプションに加えて投げ銭機能も強くなってきています。でも、動画上の商品をタップしたら購入ページにリンクするところまではいっておらず、「概要欄へどうぞ」となる。ここがシームレスになると大きい。時間の問題だとは思います。

WWD:ユーチューブ以外のメディア、プラットフォームで物販する可能性は?

中田:僕は、あらゆるプラットフォームで影響力を持つ人間は少ないと考えています。僕らもコンテンツです。コンテンツに最適なプラットフォームがあるとすると、僕は長くしゃべるユーチューブが一番向いていて、渡辺直美ちゃんはインスタグラム、有吉さんはテレビが向いているんだと思う。僕は完全にユーチューブ軍の人間として、“頑張れ、ユーチューブ”です。

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「アトモス」が多店舗EC管理ツール「CROSS MALL」を選んだワケ

 自社ECサイトに加えて、モール出店が増え、複数のネットショップを運営するときに煩雑になりがちな、商品情報の登録や在庫管理などの業務を、一元管理できるのがアイルが提供するクラウドサービス「クロスモール(CROSS MALL)」だ。日本屈指のスニーカーショップである「アトモス(ATMOS)」も、そのユーザーの一つ。巧みなデジタル戦略でEC化率の高さでも知られる「アトモス」は、なぜ「クロスモール」を使うのか。「アトモス」の運営元であるテクストトレーディングカンパニーのWeb/ECビジネス事業部 岡山暢祐部長と、アイルのCROSS事業部 本守崇宏マネージャーにその成功の秘訣を聞いた。

急成長のECの課題を
「クロスモール」導入で解決

WWDジャパン(以下、WWD):現在のECの取り組みの概要は?

岡山暢祐(以下、岡山):ECでの取り扱い商品数は約1万点で、EC化率は5割程度。最近はスニーカー以外にアパレルの取り扱いも始めている。通販サイトはメンズの「アトモス」とウィメンズの「アトモス ピンク」があるので、楽天市場に2店舗、楽天ファッション、ヤフーショッピング、ペイペイモール、マガシーク、ロコンド、ゾゾタウン、それに公式サイトが2つ、それにクロスモールで連携していないアイルミネがある。

WWD:近ごろの売り上げの傾向は?

岡山:主力ブランドの一つがネット通販モールでの扱いができなくなり、通販モールの売り上げは落ち込んだものの、自社ECが伸びているのでトータルではプラス。EC全体の売上の6,7割は自社ECでの販売で、そのうちの3〜4割がアプリ経由になる。

WWD:「クロスモール」の導入はいつから?

岡山:2010年から。当時は自社ECに加え、楽天やヤフーに出店したら、急に在庫管理が大変で慌てて管理ツールを探した。当時は取扱高も商品数も20分の1くらいの規模だったが、手作業では到底無理。売り残しや売り越しによる機会損失は、当時でも見過ごせない規模になる。その後、リアル店舗の出店数も加速しており、もしクロスモールを導入していなかったら、在庫管理がぐちゃぐちゃでできていなかったはず。

プロも唸る、夜間にリアル店舗の
在庫をECにも活用する方法

本守崇宏(以下、本守):テクストトレーディングさんは「クロスモール」を導入していただき11年になりますが、実はその間、一度フルフィルメント(運営代行)への変更を検討されたこともありましたよね?

岡山:はい。ただ、その際に大きな問題になったのが、在庫が最後の一点になったときに1店舗にしか在庫表示ができなくなること。それだけで機会損失が数千万円単位になることがわかり、取りやめになった。

WWD:今は、実店舗の在庫も管理できるアイルの販売管理システム「アラジンオフィス」も利用しているとか?

岡山:スニーカーの場合、在庫の管理がやや複雑で、製品の体積が大きいこともあって在庫すべてを必ずしも自社倉庫に置いておらず、一部引き取り前のメーカー倉庫にあるものも「確保」という形で在庫として扱う。そこに、さらにリアル店舗用、自社EC用、通販モール用の倉庫も加わって、在庫の場所が多岐にわたり、かなり複雑になる。そのためリアル店舗やメーカー在庫も含めた在庫の一元管理のため、2016年から「アラジンオフィス」を導入した。「アラジンオフィス」を使って、今はリアル店舗の閉店後の夜の時間に、店舗の在庫を全部ネット通販に見かけ上移動して、翌日の朝に店舗が開く前に、また店舗在庫へ戻すということをしている。社内では「夜間反映」と呼んでいるが、これで月に数千万円単位で売り上げが変わる。

「アトモス」がECで高成長を
達成できた理由とは?

WWD:ネット通販の担当者として、テクストトレーディングのECがうまくいっている理由をどう考えるか。

岡山:一番大きな理由は、圧倒的に商品力。ただ、数を多く売るにも仕組みが必要で、システムや倉庫など商品量に応じて作っていかないといけない。また、ちょっとした工夫でも売り上げは変わってくるので、そういった部分をきちんとできていることも大きい。あとはスピード感。スピード感はECにかかわらず当社が一番大切にしていることだが、ECでもどこよりも早く商品をサイトに出すことを心掛けている。他店でも同じ商品を取り扱っていることも多いわけで、早く出すほうがやっぱり売れる。商品情報の準備から画像撮影や加工、原稿など、1分1秒でも早く販売できるよう、作業に取り掛かっている。

WWD:アイルから見て、テクストトレーディングのEC運営で上手だと感じるところは?

本守:スピード感です。岡山さんがおっしゃるポイントもそうだし、新しいことを取り入れたり、逆にうまくいかないことを辞めたりする決断も速い。テクストトレーディングさんの要望に対応したことが、結果的に他の「クロスモール」ユーザーのニーズを先取りするということが本当に多い。

WWD:逆にテクストトレーディングから見たアイルの強みは?

岡山:先ほど本守さんがご指摘された通り、当社は上手くいかないときには、サービスやツールの使用をすぐに止めてしまうし、コストパフォーマンスへの要求もかなり厳しい。なので、おそらくEC関連では「クロスモール」のように10年以上も使い続けているサービスは他にない。それだけコストパフォーマンスの面でも使い勝手の面でもプロダクトの完成度が高いということかと。

本守:「クロスモール」は個別対応での開発をやっておらず、利用いただいているユーザーは全機能が使えるし、開発費は自社で吸収している。なのでテクストトレーディングさんのようにある種、ニーズや時代を先取りしている企業の要望に応えることが、結果的にプロダクトの完成度を高めることにも、コストパフォーマンスを上げることにも繋がっているのかもしれません。

複数のECモールの在庫を
一元管理できる
「クロスモール」の仕組み

 「クロスモール」は、東証一部上場企業のアイルが2009年にスタートした、複数のネットショップの在庫・受発注の管理ソフト。自社ECサイトから有力ECモールに出店する店舗まで、複数のECショップの在庫・受発注を一元管理できる。「楽天市場」「ゾゾタウン」「ロコンド」「マガシーク」など、ファッション企業でもネット通販モールへの多店舗出店が当たり前になっており、手動での在庫管理はほぼ不可能といっていい。商品データの一括入力や在庫の一元管理など、EC運営に不可欠な機能をすべて備え、商品管理の手間を大幅に軽減する。サービスから開始12年で1600社以上が導入しており、コストパフォーマンスもよく、一元管理ツールのデファクトスタンダードなサービスになっている。

PHOTO:YOHEI KICHIRAKU

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教えて!パタゴニアさん 連載第10回 ビジネスモデルを抜本的に変えて危機に強い企業へ 日本支社長が語る 【後編】

 アパレル製品の持続可能性についての議論が活発化している。サステナブルな製品、サステナブルな〇〇といったあいまいなキャッチコピーがあふれる中で、アパレル企業には何をもってサステナブルなのかを説明する責任が問われ始めている。製品はもちろん、そもそもアパレル企業が存続していくにはどうしたらいいのだろうかーー「アパレル企業はサステナブルではない」と言い切りながら、ジャパン社を運営し、同社のミッションステートメント“私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む”に取り組むマーティ・ポンフレー(Marty Pomphrey)日本支社長に、パタゴニアがこれから進む道を聞いた。

WWD:多くの外資系企業は、本国の方針をなぞる形で日本でのビジネスを展開している。パタゴニアが推進する“製品の循環性”の実現は、国によって制度が異なるため、独自の施策も必要な気がする。日本独自の施策を行う予定はあるのか。

マーティ・ポンフレー日本支社長(以下、ポンフレー):当社もある程度世界全体で一括集中されてはいるが、日本独自のビジネスモデルを作り上げたいと考えている。もちろん考え方などベストプラクティスは本社の方法を踏襲するが、われわれは日本で33年間ビジネスをしてきた実績があり、フォローしてくれているカスタマーもいる。日本のカスタマーは品質に対して要求が高い。米国とは異なる日本独自の方法を作り、楽しく行っていきたい。熱心なスタッフも多いので、日本市場に合った、日本モデルを作っていきたい。

WWD:そのために行っていることがあれば教えてほしい。

ポンフレー:実は日本は大きな移行期間の真っ最中にある。プロセスや構造を変えるために、そして効率化を図るためにシステムに投資しようと考えている。理由は、この12~18カ月の間、私たちは危機に強い会社になろうと取り組んできたことがある。危機というのは新型コロナウイルスもその一つだし、環境危機もそうだ。このような危機的状況は今後発生していくし、ビジネスを抜本的に変え、危機に対応できる企業になっていきたいと考えている。

WWD:もう少し具体的に教えてほしい。

ポンフレー:例えば社員は、個々のスキルをさらに広げていろいろな仕事ができるようにしたいと考えている。社員一人が複数のスキルを持つことで、いろんな状況に対応できるようになる。店舗は関東に集中しているが、関東に大地震が来ると店舗も社員も大打撃を受けてしまう。もっと地域的にバランスが取れたものにすることもその一つだ。今こうしたディスカッションを重ねている。

 システムや人材に投資をすることで効率を高めることで時間的余裕が生まれる。そうすると仕事のほかにアクティビズムに時間を費やすことができる。

WWD:複数のスキルを身に付ける環境作りには、コストもかかる。そこまで社員に投資できるのは離職率が低いパタゴニアならではのような気もする。

ポンフレー:離職率は非常に低い。会社と社員、お互い何を期待しているかを明確にしているからだし、われわれはお互いに投資をしている。社員に対する投資は私たちの優先順位ナンバーワンになっている。社員のスキルが上がればミッションのためにより多くのことができるようになるからだ。社員への投資は必須だ。

 われわれのマネジメント理念では、マネジャーは管理することを減らし、コミュニケーションをより深めることが求められている。これが私たちの戦略だ。マネジャーの仕事は社員が障害に直面したときにそれを取り除くこと。そうすることで第一線で意思決定ができる。

WWD:創業当時からストーリーを伝えることでファン作りをしてきているので、意思を持った人々が集まってきていると感じる。

ポンフレー:ファンが多いのは、創業者が先見の明がある人物だったから、企業としていいスタートが切れている。私たちは時間を費やして考えることが可能だ。一般的な企業は利益を求めて四半期ごとに売り上げ目標を掲げてそのための戦略を立てている。われわれは、長期的な戦略を持ちながら、短期的な課題にチャレンジしている。

WWD:“新しく作らないファッション”が求められていると感じる。パタゴニアは“ウォーン ウエア”で一つの答えを出しているが、売り上げや規模を大きくするのには限界があるとも感じる。

ポンフレー:“ウォーン ウエア”はアパレルビジネスのほんの一部だ。われわれは新品を作るときに、素材や生産工程をよりよいものにしていくこと、より長持ちするもの、環境負荷が低いもの、これまでよりも、よりよいものを作ろうと試みているが、将来的には新品の販売よりも古着の販売の成長率を伸ばしたいと考えている。パタゴニアのユニークなビジネスとしてプロヴィジョンズのフードビジネスがある。これを伸ばしていきたいし、ローカルビジネスとしても伸ばしていきたい。

 日本ではソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)のプロジェクトも行っていて、エネルギーのソリューションを活用したフードビジネスも行っていく。日本産の食品を広げていきたいし、日本での取り組みを全社的にも広げていきたい。

WWD:古着販売の成長率を伸ばすことについてもう少し教えてほしい。

ポンフレー:どちらかというと新製品のビジネスをスローにしようという考え方だ。そのためにビジネスの構造を変えて、意図的に新品の販売がスローになるようにしたいと考えている。パタゴニアのビジネスにとっても地球にとっても現実的な対策ではないかと考えている。成長という考え方も、自然な成長とはどういうことか――前とは異なるアプローチを考えている。

WWD:新しいアパレル製品を売らない、作れば作るほど環境に貢献するという点でプロヴィジョンズの拡大はポジティブだ。

ポンフレー:フードビジネスは、地球にいいことをしているので大きく伸ばしたい。地球にとっても日本にとってもポジティブなインパクトをもたらすものだ。意図的に成長を遅らせるアパレルとは異なるビジネスモデルだ。

 簡単なことのように聞こえるかもしれないが、パタゴニアのビジネスモデルは非常に難しい。私がパタゴニアに雇われたときにイヴォン(・シュイナード創業者)と面談があったが、そのときに「2つの帽子をかぶらなければならない、2つのことをも全うしなければならない」と言われた。1つ目はビジネスを行うこと、2つ目は地球を救うというミッションを成し遂げること。この2つをやっていかなければいけないと言われた。会社として私に期待されていることは利益を出すことだが、それだけでは十分ではなく、もう一つのミッションを遂行していくことも期待されている。

 (8月9日に)IPCCの報告書が出たが、何も変えずに今のまま進むと、目標にしている気温1.5度の上昇幅を大きく上回ってしまう。これまでの成長モデルではなく、より厳しいビジネスモデルを採用しなければならないと考えている。今までの考え方を変えないと、人類はこの危機から逃れられないし、ただ単に砂に頭をうずめて何もできないと嘆いていてはいけない。

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LVMH傘下の「ウブロ」がDJスネイクと初コラボ 虹色に輝く時計を発売

 LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下のスイスの時計ブランド「ウブロ(HUBLOT)」は、ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)やセレーナ・ゴメス(Selena Gomez)ともコラボ曲を発表するフランス人ミュージシャンのDJスネイク(DJ SNAKE)と初めて協業し、ブランドのアイコンモデルである“ビッグ・バン”をベースに“ビッグ・バン DJスネイク”を製作、9月3日に全世界で発売した。DJスネイク本人とリカルド・グアダルーペ(Ricardo Guadalupe)=ウブロ最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。

WWD:“ビッグ・バン DJスネイク”において、最もあなたらしさが表現できている部分は?

DJスネイク:ダイアル上に描いた世界地図だ。旅をして、さまざまな文化や音楽を学ぶことへの僕の情熱を表した。僕は音楽と向き合う際、ルールや既成概念は意識しない。自分の直感を信じ、自分らしいアプローチで音楽にする。“ビッグ・バン DJスネイク”のデザインに関しても同じことが言える。“僕にしか作れないもの”を実現するために最善を尽くした。結果として、「ウブロ」のアイコンモデルの上で僕の情熱が表現され、とても光栄に感じている。

WWD:パープルを主とするカラーリングに込めた思いとは?

DJスネイク:“ビッグ・バン DJスネイク”では虹のようにさまざまな色が介在し、それぞれが主張する。ある言語によるボーカル、そこに全く異なる文化の音を重ねることで生まれる僕の音楽のように表現した。

WWD:DJをプレーする際にも時計は着用する?

DJスネイク:もちろん、いつも「ウブロ」を着用している(笑)。

ミュージシャンとタッグを組む意味をCEOが語る

WWD:本コラボにおいて、DJスネイクに期待したこととは?

リカルド・グアダルーペ=ウブロCEO(以下、グアダルーペ):DJスネイクには、2018年からブランドアンバサダーを務めてもらっている。彼は本物のアーティストであり、彼の創造性には限界がない。だからこそ彼のイメージを忠実に具現化し、ひと目でそれと分かる時計を作る必要があった。時間はかかったが、成果はご覧の通りだ。

WWD:「ウブロ」は“アート・オブ・フュージョン”の哲学のもと、さまざまなミュージシャン、アーティストとコラボしている。

グアダルーペ:われわれのアクションは単に彼らのサインを裏蓋に刻んだり、文字盤にアートワークをプリントしたりするだけではない。例えば、村上隆とタッグを組んだ際には彼の代表作である“お花”を時計に組み込むためにムーブメントを全面的に作り直したし、リチャード・オーリンスキー(Richard Orlinski)との協業時には多面的な彫刻を表現するためにケースを再設計した。「ウブロ」がコラボレーションにおいて重要視するのは、彼らとブランド、双方の世界観を文字通り融合させることだ。

WWD:これまでの「ウブロ」の時計にはない、“ビッグ・バン DJスネイク”の特別性とは?

グアダルーペ:DJスネイクも話した通り、虹のような発色だ。チタニウムパーツに、本モデルのために開発した“ニュートンリング加工”を施している。これによって光の加減や見る角度によって、さまざまな視覚的効果が得られる。

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抱腹絶倒!? ビームス「SSZ」ディレクターが語るZINEに込めた偏愛とは? 音声配信「LOVE=好きの先の幸せ」Vol.3

 「LOVE=好きの先の幸せ」は、伊藤忠ファッションシステムを辞めて心機一転の川島蓉子ジャーナリストが毎回ゲストを招き、「LOVE=好き」がある人との対談を通して幸せを伝える音声番組です。

 今回のゲストは、「ビームス」のサーフ&スケートバイヤーも務める加藤忠幸「SSZ」ディレクターです。「SSZ」と言えば、長年発行し続けるZINE。加藤ディレクターが語る、ZINEに込める思い、モデルとして登場した息子さんとの撮影秘話、さらには設楽洋社長の愛らしい応援エピソードは、立ち会った広報まで大笑いするほど。笑い過ぎにはご用心ください。

川島蓉子:1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている

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プロスケートボーダーの四十住さくら選手を「ラルフ ローレン 銀座」でインタビュー 最新ウエスタンスタイルにも挑戦

 ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)は、東京・銀座の中央通りに構えた期間限定のコンセプトストア「ラルフ ローレン 銀座」の情報発信ステーション「RL NEWS STATION」から、さまざまな映像コンテンツをオンライン配信している。最新コンテンツのゲストは、プロスケートボーダーの四十住さくら選手。「ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)」のスペシャルサポーターを務める四十住選手が「ラルフ ローレン 銀座」を訪れ、8月末まで同店に設けられたスケートボードランプでライディングを披露。インタビューでは、練習中も頻繁に着用した「ポロ ラルフ ローレン」の魅力や、ブーツさえ初挑戦というウエスタンなプレ・フォール・コレクションに身を包んだ感想、そして、将来の夢などを語っている。

お気に入りの「ポロ スポーツ」のランプは、
「持ち帰りたいくらい(笑)」

 四十住選手は8月中旬、「ラルフ ローレン」が「ラルフ ローレン 銀座」で開催したプレスイベントに登場した。当日は、背面にさくら色で「SAKURA 1」と書かれた白いTシャツに、スエット、イエローのケーブルニットのコーディネート。全て「ポロ ラルフ ローレン」だ。四十住選手は「将来は、子どもにスケートボードの魅力を伝えたい。子どもが大好きだから、頑張っているみんなを応援したい。そして私も、みんなに憧れてもらえる存在になれたら」などと話した。イベントでは、自身も設計に携わった「ポロ スポーツ(POLO SPORT)」のスケートボードランプでライディングも披露した。「『ポロ』のランプを作ってもらえて、すごく嬉しい。サイズ感や高さもちょうど良く、とても満足。(『ポロ ラルフ ローレン』の洋服だけでなく)このランプも地元に持ち帰りたい(笑)」と話し、会場を沸かせた。「ラルフ ローレン 銀座」は8月まで、プロスケーターらが指導するスケートボードスクールを開催。四十住選手の活躍で、期間中の受講生の募集はあっという間に定員に達したという。

「『ポロ ラルフ ローレン』に支えていただき、
本当に嬉しかった」

 店内の「RL NEWS STATION」で行ったインタビューでは、「ポロ スポーツ」のブルゾンにブラックのパンツ姿で、普段のスタイルや、「ポロ ラルフ ローレン」との思い出などについて語った。「ポロ ラルフ ローレン」のスペシャルサポーターに就任した時を「こんなに大きなブランドにサポートしていただけて、本当に嬉しかった」と振り返り、以降はさまざまなアイテムを着用し練習していると仲間のスケートボーダーや家族から羨ましがられることも多かったと笑う。さまざまな洋服に袖を通してきた中でのお気に入りは、ポロベアのアイテム。インタビューでは、勝負カラーや、最近のスケートボードシーンなどについても話している。

 「ラルフ ローレン 銀座」1階のカフェ「ラルフズ コーヒー(RALPH’S COFFEE)」には、「ポロ ラルフ ローレン」の2021年プレ・フォール・コレクション姿で現れた。ニットカーディガンにネルシャツ、ピュアホワイトのコットンスカート&ブーツという「ラルフ ローレン」らしいウエスタン&ボヘミアンなスタイルだ。さくら色のロングヘアが、ピンクも混じる淡い色彩のカーディガンとマッチしている。Tシャツやポロシャツ、スエットなどの普段着とは全く違う装いについては、「スカートもあんまり履いたことがなく、ブーツはまだ履きづらいけれど(笑)、こんなスタイルでいろんなところに出かけてみたい」という。

 「ラルフ ローレン 銀座」独自の情報発信ステーション「RL NEWS STATION」では、今後もさまざまなコンテンツをオンライン配信。デジタルを通して、ブランドの世界観やメッセージをダイレクトに届ける予定だ。

PHOTO:TSUKASA NAKAGAWA
問い合わせ先
ラルフ ローレン
0120-3274-20

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プロスケートボーダーの四十住さくら選手を「ラルフ ローレン 銀座」でインタビュー 最新ウエスタンスタイルにも挑戦

 ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)は、東京・銀座の中央通りに構えた期間限定のコンセプトストア「ラルフ ローレン 銀座」の情報発信ステーション「RL NEWS STATION」から、さまざまな映像コンテンツをオンライン配信している。最新コンテンツのゲストは、プロスケートボーダーの四十住さくら選手。「ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)」のスペシャルサポーターを務める四十住選手が「ラルフ ローレン 銀座」を訪れ、8月末まで同店に設けられたスケートボードランプでライディングを披露。インタビューでは、練習中も頻繁に着用した「ポロ ラルフ ローレン」の魅力や、ブーツさえ初挑戦というウエスタンなプレ・フォール・コレクションに身を包んだ感想、そして、将来の夢などを語っている。

お気に入りの「ポロ スポーツ」のランプは、
「持ち帰りたいくらい(笑)」

 四十住選手は8月中旬、「ラルフ ローレン」が「ラルフ ローレン 銀座」で開催したプレスイベントに登場した。当日は、背面にさくら色で「SAKURA 1」と書かれた白いTシャツに、スエット、イエローのケーブルニットのコーディネート。全て「ポロ ラルフ ローレン」だ。四十住選手は「将来は、子どもにスケートボードの魅力を伝えたい。子どもが大好きだから、頑張っているみんなを応援したい。そして私も、みんなに憧れてもらえる存在になれたら」などと話した。イベントでは、自身も設計に携わった「ポロ スポーツ(POLO SPORT)」のスケートボードランプでライディングも披露した。「『ポロ』のランプを作ってもらえて、すごく嬉しい。サイズ感や高さもちょうど良く、とても満足。(『ポロ ラルフ ローレン』の洋服だけでなく)このランプも地元に持ち帰りたい(笑)」と話し、会場を沸かせた。「ラルフ ローレン 銀座」は8月まで、プロスケーターらが指導するスケートボードスクールを開催。四十住選手の活躍で、期間中の受講生の募集はあっという間に定員に達したという。

「『ポロ ラルフ ローレン』に支えていただき、
本当に嬉しかった」

 店内の「RL NEWS STATION」で行ったインタビューでは、「ポロ スポーツ」のブルゾンにブラックのパンツ姿で、普段のスタイルや、「ポロ ラルフ ローレン」との思い出などについて語った。「ポロ ラルフ ローレン」のスペシャルサポーターに就任した時を「こんなに大きなブランドにサポートしていただけて、本当に嬉しかった」と振り返り、以降はさまざまなアイテムを着用し練習していると仲間のスケートボーダーや家族から羨ましがられることも多かったと笑う。さまざまな洋服に袖を通してきた中でのお気に入りは、ポロベアのアイテム。インタビューでは、勝負カラーや、最近のスケートボードシーンなどについても話している。

 「ラルフ ローレン 銀座」1階のカフェ「ラルフズ コーヒー(RALPH’S COFFEE)」には、「ポロ ラルフ ローレン」の2021年プレ・フォール・コレクション姿で現れた。ニットカーディガンにネルシャツ、ピュアホワイトのコットンスカート&ブーツという「ラルフ ローレン」らしいウエスタン&ボヘミアンなスタイルだ。さくら色のロングヘアが、ピンクも混じる淡い色彩のカーディガンとマッチしている。Tシャツやポロシャツ、スエットなどの普段着とは全く違う装いについては、「スカートもあんまり履いたことがなく、ブーツはまだ履きづらいけれど(笑)、こんなスタイルでいろんなところに出かけてみたい」という。

 「ラルフ ローレン 銀座」独自の情報発信ステーション「RL NEWS STATION」では、今後もさまざまなコンテンツをオンライン配信。デジタルを通して、ブランドの世界観やメッセージをダイレクトに届ける予定だ。

PHOTO:TSUKASA NAKAGAWA
問い合わせ先
ラルフ ローレン
0120-3274-20

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アルカの辻愛沙子に聞く小売りや消費の未来 西武渋谷店に“スタンスを問う”D2C売り場がオープン

 西武渋谷店は9月2日、パーキング館1階に“メディア型OMOストア”をうたう「チューズベース シブヤ(CHOOSEBASE SHIBUYA、以下チューズベース)」をオープンした。半年ごとに変わるテーマに沿ってD2Cブランドを集積する売り場で、オープン時は「タイムリミット」をテーマに、環境に配慮したファッションやビューティ、食品など54ブランドをそろえる。D2Cの集積売り場は近年増えているが、「意味に出合い、意志を買う」売り場を目指すという「チューズベース」は、そのどれとも毛色が異なり、「社会に対して自分はこうありたい」といった打ち出しがはっきりしている点が特徴的。それもそのはず、売り場のコンセプト策定やクリエイティブ面を担ったのは、“社会派クリエイティブ”を掲げ、報道番組のコメンテーターとしても活躍する辻愛沙子アルカCEOだ。辻CEOに、売り場に込めた思いやこれからの消費のあり方を聞いた。

WWD:そごう・西武の担当者からSNSのダイレクトメールで熱烈なラブコールを受けて、今回の取り組みが始まったと聞いた。

辻愛沙子アルカCEO(以下、辻):最初は小売りの未来について一緒に考えてほしいとお話をいただきました。小売りの未来、つまり消費の未来を考えると、もちろんDX(デジタルトランスフォーメーション)などの機能面の進化は重要ですし、「チューズベース」でもそれは要の1つです。ただ、それとは別の話で、この1、2年で社会が急激に変わったと感じます。企業がESG経営やSDGsを強く打ち出すようになっていますが、そういった流れは企業だけのものではなくて、むしろ生活者からのボトムアップによって社会が変わってきている。

 そうした変化の中で、ブランドも「社会に対して何を届けるのか」ということを考えるようになっている。同時に、私自身を含め、生活者も“便利”“安い”“近い”といったこと以外の価値を消費に求めるように変わりつつあります。環境によいものとそうでないものが同じ価格で並んでいるなら、環境によいものを選びたい。なんなら、ちょっと高くてもそっちを買いたいという人が増えています。それなのに、小売りの世界は従来のままで、利便性や(テイストによる区分のような)トンマナによるカテゴライズが中心。例えば百貨店も、まず性別でフロアが決まって、そこからテイストで細分化されていきますよね。そういうカテゴライズではなくて、思想やスタンスでキュレーションされた売り場があったらいいなと思いました。バイブス近い人たちが集まっている、みたいな売り場です(笑)。

WWD:バイブスが近い人が集まる場所というのは、具体的に言うとどんなイメージか。

辻:北海道物産展とかは、北海道好きな人が集うものなので近いと思います。あとはニューヨークに住んでいたとき、日本食が食べたくなると日本のお店が集まっているエリアに行きました。そこに行けば見慣れた「チキンラーメン」があってほっとできて、しかも日本から来ている人が多い。みんな知らない人たちなんだけど、なんだか安心する。そんな感覚があります。国内でも、飲食店だと同じアイデンティティーやバイブスを持った人が集まっている場所ってありますが、商業施設にはいろんな人が来るし、それが多様性でもある。それは良いこと。ただ、私とは“ガワ”(見た目やファッション)が全く違って、マーケティング分類では絶対同じペルソナにならないような人が、実はバイブスは近いっていうことがあると思うんですよね。そういう人たちが集うお店って、個人でやっているセレクトショップとかではありますが、ある程度の規模の商業施設では私は見たことがないです。

“パーパスドリブン”な売り場があったら面白い

WWD:売り場が目指すあり方を、「意味に出合い、意志を買う」場所と表現しているのが印象的だ。

辻:目指したのは、未来の社会にはどんなものが必要かというパーパス(PURPOSE)を軸にして、ブランドや生活者、メディア、KOL(インフルエンサー)などが集う場所です。そこには、お客さま、そごう・西武、ブランドというようにさまざまな主語があるんですが、みんな見ている方向は同じで、同じパーパスを共有しているという連帯がある。そんな“パーパスドリブン”なお店が出きたら面白い。商品として、機能性やデザインが優れていることは前提です。その上で、大量生産・大量消費の社会の中でなぜこの商品を作るのかというスタンスを明確にし、お客さまはただ買うのではなく、これを買うことで社会に対してどんな意味があるのかを考える。そんなふうに、意味や意志を選び取っていく場所にしたいと思っています。

 ただし、説教臭い場所にはしたくない。売り場で商品からテーマに入るからこそ、「これがかわいい」とか「おしゃれ」とかが先に来て、堅苦しくならない。そこにこそ、百貨店やブランドができることがたくさんあると思います。学校とかで教える直接的な学びだけでなく、商業施設やブランドがいろんな切り口から社会に向き合うきっかけを作る。気づきの入り口のような場所になればと思います。

WWD:立ち上げ時のテーマは「タイムリミット」。「サステナビリティ」や「SDGs」といった最近よく聞く言葉ではなく、どこかフワッとした「タイムリミット」という言葉を選んだ意図は。

辻:繰り返しになりますが、テーマ設定はあくまでクエスチョニング(問いかけ)であって、それを選ぶか選ばないかはお客さまやブランドのスタンス次第です。「チューズベース」という名前の通り、「これが正解です」というアンサーベース(答えありき)の場所にはしたくない。ただ、「タイムリミット」という言葉を選ぶ際には分かりやすさとの葛藤はすごくありました。今回に限らず、「もっと説明的で分かりやすい言葉を使ってほしい」と(クライアントから)言われるケースはよくあります。でも、例えば「サステナビリティ」って言葉を出されちゃうと、もうそれが答えみたいで「はいはい大事ですね、以上、完!」みたいになってしまうんですよね。だから、「タイムリミット」という言葉で違和感を作りたかった。タイムリミットには誰にでもそれぞれの解釈があるからこそ、何を選ぶかにつながっていきます。

 誰だって、できれば環境に良いことをしたいと思っています。その方がいいことはみんな分かっている。それなのになぜできないのかということがすごく大事で、耳触りのいい、聞いたことがある言葉では伝わりきらないんです。そういう言葉で伝わるものなら、地球環境の問題は既に解決しているはずですから。そこに対して、こちらが答えを出してしまうと、みんな思考停止してしまう。と言うか、一人の人間や一つの企業が答えを出せるという発想自体が、傲慢だと思います。

カリスマ1人に背負わせるのは
“平成の価値観”

WWD:売り場から問いかける、という考え方は新鮮だ。ただ、日本人は社会課題などに対し、自分で考えて発信することに慣れていないともよく言われるし、SNS上ではそれをよしとしない空気もある。

辻:特に政治や宗教、社会のことについて、考えることを是としない空気感がこれまではなんとなくあった気がします。でも、議論することは当たり前だし、意見が違ったらそこで考えるっていうことがすごく大事。そのきっかけを作れたらと思っているので、私はメディアに出るときもSNSも、「チューズベース」のような仕事のアウトプットでも、問いかけることを大事にしています。私も分かんないからこそ、「みんなで考えようよ」って。「チューズベース」でブランド同士の連帯を意識しているのもそういう考えからです。

 主語が一つじゃないことが、今の時代はすごく大事。誰かをアイコンや象徴にして、そこに背負わせないということ。「そごう・西武が全部作ります」じゃなくて、集まるブランドそれぞれが語って、お客さまがそのストーリーを解釈して、どう選択していくか。最近、友人が“PURPOSEHOOD”(目的意識による連帯)という言葉を使っていていいなと思いました。誰か1人をアイコンにすると、その人が折れたときに全体がガタンと(ダメに)なる。1人をアイコンにするのは平成の価値観。象徴を作らず、主語を“WE”(私たち)にしていくことがこれからはすごく大切だと思います。

WWD:そういう考え方は、売り場にはどう反映したのか。

辻:ブランドそれぞれにちゃんと光が当たるような売り場になっています。分かりやすくはあるんだけど、分かりやすさだけを極めないというのが、(お客さまやブランドに)解釈を委ねるということ。だから、店の真ん中だけにスポットライトをバーンと当てる、みたいな売り場にはしていません。スクランブル交差点じゃないですが、店内は十字の形で回遊できるようにしました。出口も入り口も正解もなく、入った人がそれぞれ感じた正解を持ち帰って、家やほかの場所で思い返して、ちょっとずつ自分の中で咀しゃくしていったほしい。それで次に歯ブラシが切れた、化粧水が切れたというときの選択肢として、戻ってきていただければと思います。

 MD面の実務はそごう・西武の方が担当されましたが、テーマからブレたり、悪い意味で間口を広げたりしてしまうことはよくないと何度かお伝えしていました。ビジネスとして、どこまでテーマに対してストイックにいくかは難しい。でも、「タイムリミット」と掲げた下でお客さまが「あれ?」と思うような商品やブランドが並んでいたら、「ウソじゃん」となってしまう。それは「チューズベース」だけでなく、そのブランドにとってもよくない。最悪、炎上してしまいます。この1年でウオッシング(それっぽく装うこと)もすごく批判されるようになっているので、そういう議論はチーム内で喧々諤々と繰り返しました。

WWD:かなりゆとりのある商品陳列など、効率重視の百貨店とは大分違う店の作り方だと感じる。百貨店の中でこうした売り場を作るのは、大変だったのでは。

辻:一番しんどい部分は、チーム内のそごう・西武の社員の方に担っていただきました。私はベンチャー企業出身なので想像しかできませんが、大きな会社で新しいことをするのはすごく大変なんだと思う。ただ、会社の成り立ちというか、1980年代のセゾン文化を考えてみても、(西武は)渋谷の街を作ってきた企業だと思うんです。今ではもうグループが違う企業や業態も含め、渋谷には西武と兄弟みたいな商業施設がたくさんある。そうした下地があって、いろんな出自の人が集まっている会社だからこそ、ダイバーシティーが社内にあるのかなと勝手に感じていました。

 渋谷という街で「チューズベース」をやることの意義もすごく感じています。私は渋谷区生まれ、渋谷区育ちのレペゼン渋谷(笑)。この街にはカウンターカルチャーのDNAがありますが、それでも、大量生産・大量消費の流れの中で街がどこも似てきて、渋谷にも高層ビルが次々と建っている。それも便利ではあるんですが、この街とあの街、あっちのビルとこっちのビル、何が違うんだろうと思ったりもする。街は行政が作るものではないし、「この街はこうであれ」というように上から与えられるものでもない。「俺らがこの街を作っていくんだ」みたいなマインドが大事だと思うし、そういう意識が渋谷の街にはもともとある。それは「チューズベース」のあり方にも通じるものです。

スタンスを明確に、生活者を信じて

WWD:百貨店やアパレルといった業種は構造不況と言われ、コロナもあってなかなか展望を描きづらい。それでも、辻さんの話を聞いていると、やれることや可能性はまだまだたくさんあるように感じられる。レガシー的な企業や業界が未来を切り開くために、アドバイスを。

辻:何事も言うはやすしで、よそ者である私が簡単に言えるようなことはないです。業界で長らく仕事をされている方が、いろんなことを一番分かっている。それは前提として、それでも私から何かを伝えるなら大事だと思うことは2つ。1つ目はスタンスを明確にすることです。企業やブランドって個人とは大きさが違うだけで、根底は個人と同じだと思う。私は自身のスタンスを明確にし続ける人生を図らずも歩んできて、「怖くないいの?」と聞かれることもあります。(炎上などで)誰かを失うかもしれないと思うから、スタンスを明確にする前は怖い。でも、ブランドだったら明確にした先で本当のロイヤルカスタマーに出会えるかもしれない。利害関係の一致ではなく、向いている先が同じ者同士だから連帯していくという流れが今は本当に強まっているし、その流れに乗ると、いい化学反応が起こってもっといいアウトプットができるようになります。

 マス一強の時代ではないからこそ、スタンスの表明はすごく大事です。もちろん、企業としてスタンスを明確にしないことも1つの選択肢ではある。ただ、「スタンスを明確にしないというスタンスを、あなたは今取っているんですよ」ということには自覚的になるべきだとは思います。

 2つ目は、生活者を信じること。生活者はブランドや企業が思っている以上にいろんなことを考えていると思う。例えば環境によいブランドを選ばない人も、本当は買いたいのに、今はお金がないというだけかもしれない。買えない場合でも、ブランドのスタンスには共感してSNSでシェアしてくれるかもしれない。ブランドや企業が正解を提示しようとしたり、「分かりやすくしなきゃ」と考えたりするのは、生活者を信じていないから。それっておこがましいことです。言葉が雑になりますが、生活者も世論もバカじゃないと私は強く思っていて、信じているからこそ問いかけている。企業やブランドも同じように、スタンスを明確にして、生活者を信じることは大事だと思います。

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教えて!パタゴニアさん 連載第9回 “新品を売らない”店の展望を日本支社長が語る 【前編】

 「パタゴニア」が渋谷店内に開いた新品を売らないポップアップストア注目を集めている。このポップアップストアは「パタゴニア」製品を長く使用するためのプラットフォーム“ウォーン ウエア”を体現するもので、製品の修理を行ったり、買い取った中古品を修繕して再販売したりするもの。パタゴニアはこれまで“プロダクト・サーキュラリティ(製品の循環性)”が重要と考え、製品全ての寿命をのばすことを目標にしてきた。また、「サステナブルな製品はアパレル産業においてはありえない。そのためサステナブルカンパニーではなくレスポンシブルカンパニーであろう」として事業を行ってきた。製品の修理は1970年代から、中古品の販売は2013年に米国で始動し、中古品はこれまで30万枚以上を販売している。中古品の販売を米国以外で行うのは今回が初めてだ。マーティ・ポンフレー(Marty Pomphrey)日本支社長にその経緯と日本での展望を聞く。

WWD:日本で“ウォーン ウエア”のポップアップストアを開くに至った理由を教えてほしい。

マーティ・ポンフレー日本支社長(以下、ポンフレー):もっと早い段階で行いたいと考えていたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって予定よりも実現までに時間がかかってしまった。われわれの“サーキュラリティ(循環)”戦略で非常に重要な一部を占めている。

前提としてアパレル産業は環境によくないし、アパレル企業がサステナブルであることはあり得ない。われわれには、アパレル企業として責任を負っていこうという考え方がある。ある報告書によると、アパレル産業が排出する温室効果ガスは全排気量の10%を占めると推定されている。日本国内に目を向けると、日本で購入されたアパレル製品の68%が焼却されたり、埋め立てられたりする運命にあるという数字がある。アパレル産業の作って売って買って捨てるというリニア(線形)型のモデルはうまくいかないのは明らかだ。これからは、循環型モデルのビジネスしかあり得ない。“ウォーン ウエア”は“循環型”戦略の一部だ。われわれは製品の寿命を長くして、寿命が来たものに関してはリサイクルするなり責任ある形で処分したいと考えている。

WWD:初めてのポップアップストアを渋谷店に開いた。

ポンフレー:渋谷には若いカスタマーベースがある。“ウォーン ウエア”は古着なので(古着屋が多く点在する渋谷・原宿エリアでは)アピールすることができるし、若い人でも買える価格帯でもある。新しいカスタマーに「パタゴニア」を紹介するに適切な場所だと考えた。また、渋谷店はパタゴニアの店舗の中でも大きい方で、リペアする設備があるし、正しい形で“ウォーン ウエア”を紹介できる。

WWD:ポップアップストアを開いてみての反響を教えてほしい。

ポンフレー:圧倒的にポジティブな反応だ。8月20~22日の最初の3日間は予定の3倍の売り上げで、1カ月間このプログラムを維持するためにどれだけ在庫が必要かと考えるほどだった。さらに古着を投入していきたい。

この1カ月間は学びの期間だと考えている。どのようなモデルで“ウォーン ウエア”を広げていくのがいいか、どれくらいの需要があるのかを見極めたい。このビジネスを成功させ、将来的には“ウォーン ウエア”のオンリーストアを作りたいと考えている。

WWD:現在、世界を見渡しても“ウォーン ウエア”の単独店はない。新品が並ばないストア開発に力を入れていくのか。

ポンフレー:ストア開発は初期段階にある。小規模なビジネスだ。日本はリセールのチャンスが大きいと感じている。売り上げという意味ではなく、ブランドにとって大きなチャンスになるのではないかと感じている。現在日本には2つのリペアセンターがあり、55人の技術のあるスタッフがいる。日本は品質の高い商品の需要が多い。高い技術を提供する場は限られていると思うので、古着の販売ほどではないが、リペアも日本市場では大きなチャンスだと考えている。

WWD:ダメージがひどくて中古として販売できない製品の場合、捨てるのではなく複数のダメージの大きい製品を使って、新しい衣類に作り替えた“リクラフテッド”の販売を日本で行う予定はあるのか。

ポンフレー:今戦略を練っているところだ。

WWD:“リクラフテッド”は修繕技術だけではなくデザイン性も問われる。

ポンフレー:米国ではアイコニックな製品を担当している社内デザイナーがLAにいる優れた職人とコラボレーションしてLAで生産している。“リクラフテッド”も“サーキュラリティ”ストーリーの一部だ。“リクラフテッド”は衣類だけではなく、使われているファブリックの寿命を最大限に延ばすという考え方に基づいている。

WWD:日本で“リクラフテッド”を導入する場合、どのような人材がデザインを担当するのか。

ポンフレー:日本はクラフトマンシップが優れているし、そうした考え方も浸透している。リペアセンターのスタッフのスキルを考えても“リクラフテッド”はマッチングするのではないかと考えている。リペアセンターではすでに自分の服を持ってきてアップサイクルしているスタッフもいる。

今、考えているのは、リペアセンターをサーキュラリティセンターのようなものに変えていきたいということ。全ての製品をリペアするのではなく、技術力が問われるようなもののみを行い、カスタマーに修理方法を伝えてカスタマー自身が修理できるようにしたいと考えている。パタゴニア以外のリペアのコミュニティーとパートナーシップを組み、リペアしてもらうことも考えている。パタゴニアの才能あるリペアスタッフは、より技術力が問われるものに焦点を当てて作業することができるし、そうすることによってカスタマーに付加価値を提供できるのではないかと考えている。長期的にはそういうものにしたいと考えている。

WWD:パタゴニアは創業時からフォロワー作りが上手でそういったファンたちとコミュニティーを形成して新しいカルチャーを創出してきた。

ポンフレー:マーケティング、マーケッターという言葉は好きではない。「パタゴニア」はストーリーテラーだと思っている。ストーリーを伝えることで人々の感情に訴え、訴えたことが私たちのミッションステートメントの実現につながる行動を起こしてほしいと考えている。このストーリーを伝えることによって“サーキュラリティ”ビジネスにハイライトを当てる。リペアサービスはコストと時間がかかるが、そうしたサービスを提供していることを知ってもらい、われわれはただ単に新品を売るだけの企業ではなく、リペアサービスを提供していることを訴求したい。

WWD:パタゴニアはブランドの考え方を理解している顧客が非常に多いが、それでも買って必要なくなったら捨てる、といった顧客も一定数いるとも思う。“サーキュラリティ”実現には、顧客の協力なくしては不可能だ。

ポンフレー:まず必要なのはビジネスモデルに“買って捨てる”メンタリティーを変えることが含まれていなければならない。カスタマーには使わなくなったら店舗に持ってきてほしいと伝えること。われわれは製品寿命を延ばして、捨てられることは避けたい。カスタマーには繰り返し伝えていきたい。カスタマーは考えることも多いだろうし、たくさんの情報も入ってくる。時に注意力がそがれることもあるし、混乱することもあるだろう。私たちは一貫して明確なメッセージを伝えていきたい。

これが“レスポンシブルカンパニー”としての歴史を持つ企業であり、自信を持って製品を提供し、“サーキュラリティ”ビジネスを行っているわれわれがやるべきことだと考えている。われわれが求める“サーキュラリティ”ビジネスは他社にも参加してほしいと考えている。パタゴニアは小さな企業なので、大企業と手を組み、大企業とともに地球を救うために活動していきたい。

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教えて!パタゴニアさん 連載第9回 “新品を売らない”店の展望を日本支社長が語る 【前編】

 「パタゴニア」が渋谷店内に開いた新品を売らないポップアップストア注目を集めている。このポップアップストアは「パタゴニア」製品を長く使用するためのプラットフォーム“ウォーン ウエア”を体現するもので、製品の修理を行ったり、買い取った中古品を修繕して再販売したりするもの。パタゴニアはこれまで“プロダクト・サーキュラリティ(製品の循環性)”が重要と考え、製品全ての寿命をのばすことを目標にしてきた。また、「サステナブルな製品はアパレル産業においてはありえない。そのためサステナブルカンパニーではなくレスポンシブルカンパニーであろう」として事業を行ってきた。製品の修理は1970年代から、中古品の販売は2013年に米国で始動し、中古品はこれまで30万枚以上を販売している。中古品の販売を米国以外で行うのは今回が初めてだ。マーティ・ポンフレー(Marty Pomphrey)日本支社長にその経緯と日本での展望を聞く。

WWD:日本で“ウォーン ウエア”のポップアップストアを開くに至った理由を教えてほしい。

マーティ・ポンフレー日本支社長(以下、ポンフレー):もっと早い段階で行いたいと考えていたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって予定よりも実現までに時間がかかってしまった。われわれの“サーキュラリティ(循環)”戦略で非常に重要な一部を占めている。

前提としてアパレル産業は環境によくないし、アパレル企業がサステナブルであることはあり得ない。われわれには、アパレル企業として責任を負っていこうという考え方がある。ある報告書によると、アパレル産業が排出する温室効果ガスは全排気量の10%を占めると推定されている。日本国内に目を向けると、日本で購入されたアパレル製品の68%が焼却されたり、埋め立てられたりする運命にあるという数字がある。アパレル産業の作って売って買って捨てるというリニア(線形)型のモデルはうまくいかないのは明らかだ。これからは、循環型モデルのビジネスしかあり得ない。“ウォーン ウエア”は“循環型”戦略の一部だ。われわれは製品の寿命を長くして、寿命が来たものに関してはリサイクルするなり責任ある形で処分したいと考えている。

WWD:初めてのポップアップストアを渋谷店に開いた。

ポンフレー:渋谷には若いカスタマーベースがある。“ウォーン ウエア”は古着なので(古着屋が多く点在する渋谷・原宿エリアでは)アピールすることができるし、若い人でも買える価格帯でもある。新しいカスタマーに「パタゴニア」を紹介するに適切な場所だと考えた。また、渋谷店はパタゴニアの店舗の中でも大きい方で、リペアする設備があるし、正しい形で“ウォーン ウエア”を紹介できる。

WWD:ポップアップストアを開いてみての反響を教えてほしい。

ポンフレー:圧倒的にポジティブな反応だ。8月20~22日の最初の3日間は予定の3倍の売り上げで、1カ月間このプログラムを維持するためにどれだけ在庫が必要かと考えるほどだった。さらに古着を投入していきたい。

この1カ月間は学びの期間だと考えている。どのようなモデルで“ウォーン ウエア”を広げていくのがいいか、どれくらいの需要があるのかを見極めたい。このビジネスを成功させ、将来的には“ウォーン ウエア”のオンリーストアを作りたいと考えている。

WWD:現在、世界を見渡しても“ウォーン ウエア”の単独店はない。新品が並ばないストア開発に力を入れていくのか。

ポンフレー:ストア開発は初期段階にある。小規模なビジネスだ。日本はリセールのチャンスが大きいと感じている。売り上げという意味ではなく、ブランドにとって大きなチャンスになるのではないかと感じている。現在日本には2つのリペアセンターがあり、55人の技術のあるスタッフがいる。日本は品質の高い商品の需要が多い。高い技術を提供する場は限られていると思うので、古着の販売ほどではないが、リペアも日本市場では大きなチャンスだと考えている。

WWD:ダメージがひどくて中古として販売できない製品の場合、捨てるのではなく複数のダメージの大きい製品を使って、新しい衣類に作り替えた“リクラフテッド”の販売を日本で行う予定はあるのか。

ポンフレー:今戦略を練っているところだ。

WWD:“リクラフテッド”は修繕技術だけではなくデザイン性も問われる。

ポンフレー:米国ではアイコニックな製品を担当している社内デザイナーがLAにいる優れた職人とコラボレーションしてLAで生産している。“リクラフテッド”も“サーキュラリティ”ストーリーの一部だ。“リクラフテッド”は衣類だけではなく、使われているファブリックの寿命を最大限に延ばすという考え方に基づいている。

WWD:日本で“リクラフテッド”を導入する場合、どのような人材がデザインを担当するのか。

ポンフレー:日本はクラフトマンシップが優れているし、そうした考え方も浸透している。リペアセンターのスタッフのスキルを考えても“リクラフテッド”はマッチングするのではないかと考えている。リペアセンターではすでに自分の服を持ってきてアップサイクルしているスタッフもいる。

今、考えているのは、リペアセンターをサーキュラリティセンターのようなものに変えていきたいということ。全ての製品をリペアするのではなく、技術力が問われるようなもののみを行い、カスタマーに修理方法を伝えてカスタマー自身が修理できるようにしたいと考えている。パタゴニア以外のリペアのコミュニティーとパートナーシップを組み、リペアしてもらうことも考えている。パタゴニアの才能あるリペアスタッフは、より技術力が問われるものに焦点を当てて作業することができるし、そうすることによってカスタマーに付加価値を提供できるのではないかと考えている。長期的にはそういうものにしたいと考えている。

WWD:パタゴニアは創業時からフォロワー作りが上手でそういったファンたちとコミュニティーを形成して新しいカルチャーを創出してきた。

ポンフレー:マーケティング、マーケッターという言葉は好きではない。「パタゴニア」はストーリーテラーだと思っている。ストーリーを伝えることで人々の感情に訴え、訴えたことが私たちのミッションステートメントの実現につながる行動を起こしてほしいと考えている。このストーリーを伝えることによって“サーキュラリティ”ビジネスにハイライトを当てる。リペアサービスはコストと時間がかかるが、そうしたサービスを提供していることを知ってもらい、われわれはただ単に新品を売るだけの企業ではなく、リペアサービスを提供していることを訴求したい。

WWD:パタゴニアはブランドの考え方を理解している顧客が非常に多いが、それでも買って必要なくなったら捨てる、といった顧客も一定数いるとも思う。“サーキュラリティ”実現には、顧客の協力なくしては不可能だ。

ポンフレー:まず必要なのはビジネスモデルに“買って捨てる”メンタリティーを変えることが含まれていなければならない。カスタマーには使わなくなったら店舗に持ってきてほしいと伝えること。われわれは製品寿命を延ばして、捨てられることは避けたい。カスタマーには繰り返し伝えていきたい。カスタマーは考えることも多いだろうし、たくさんの情報も入ってくる。時に注意力がそがれることもあるし、混乱することもあるだろう。私たちは一貫して明確なメッセージを伝えていきたい。

これが“レスポンシブルカンパニー”としての歴史を持つ企業であり、自信を持って製品を提供し、“サーキュラリティ”ビジネスを行っているわれわれがやるべきことだと考えている。われわれが求める“サーキュラリティ”ビジネスは他社にも参加してほしいと考えている。パタゴニアは小さな企業なので、大企業と手を組み、大企業とともに地球を救うために活動していきたい。

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長濱ねるが東コレのSDGsサポーターに ベストコレクションは「ミカゲ シン」

 「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」は、2022年春夏シーズンに新設したSDGsサポーターにタレントの長濱ねるを起用した。長濱はNHK・SDGsキャンペーン「未来へ17アクション」への参加や、ファッション誌「with」の連載でSDGsについて勉強するなど、自身も持続可能な取り組みに関心があることからサポーター就任に至った。

 長濱は、「自分自身がファッションに精通して仕事をしてきたわけではないので、ファッション界に携われていることが純粋にうれしい。同世代で『もっとファッションのことを知りたい』という人たちの入り口が広くなるように役立ちたい」とコメントした。

 長濱はコレクション3日目までにリアルショー4本、オンラインショー3本を視聴した。「ショーを見て、自分が『着たい』『かわいい』と思う洋服が実はSDGsに配慮していて、ファッション業界でも当たり前になりつつあるのかなと感じました」。一番印象に残ったブランドは「ミカゲ シン(MIKAGE SHIN)」だという。「ショーの照明や音楽、生地の美しさが直に伝わってきて感動した」。さらに「ショーを通して、それぞれの作り手の思いがひしひしと伝わってきた。オンライン配信が主流の今だからこそ、リアルで見られることのぜいたくさ、喜びを感じた」と続けた。また実際にSDGsサポーターとしてショーを見て、新たな気付きがあったという。「今、持っている洋服を長く着たり、洋服を購入する際に『長く着られるかどうか』の選択を慎重にしたり。環境に配慮した服を買うのも一つの手ですが、持っている服を大事に着続けることは誰にでも始められること」と、日常の意識の変化に対する重要性を述べた。

 ショー会場で注目される衣装は撮影時、「ナオキトミヅカ(NAOKITOMIZUKA)」のシャツワンピースを着用した。ブラックを基調に、取り外し可能なメッシュ地の襟や、無数に伸びたひもの数々、赤のタータンチェックを差し色に仕上げている。

 長濱は、長崎県長崎市生まれの23歳。15年に女性アイドルグループの欅坂46のメンバーとしてデビュー。19年に同グループを卒業した。現在はテレビ・ラジオのMCやエッセイの執筆など、活動は多岐にわたる。

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コスプレ上等! スーツさえ非日常化する中、わが道をいくメンズブランドが10周年

 コスプレ上等!――そう言い切るのが2011年デビューの日本ブランド「アジャスタブル・コスチューム(ADJUSTABLE COSTUME)」だ。ファストファッションの隆盛(と衰退)、ECの定着、ジェンダーレスやサステナビリティといったキーワードの台頭など、ファッションを取り巻く環境はこの10年も激動だった。その中にあって、スタイルを貫徹するのが同ブランドだ。小高一樹デザイナーに10年の歩みについて聞いた。

WWD:10年の間に客層に変化はあった?

小高一樹「アジャスタブル・コスチューム」デザイナー(以下、小高):ブランドデビュー時、僕は37歳で、顧客は僕より少し上の世代(40~50代)が中心だった。「アジャスタブル・コスチューム」は特異なブランドであると自認しており、“らしさ”を出すためにはトータルでお買い求めいただく必要がある。となると、総額は15万~20万円ほど。経済的な余裕があることも、結果として顧客の条件だった。それがこの2、3年は20代前半の顧客が増えている。

WWD:その要因は?

小高:ひとえにSNSによるものだ。“1920~40年代の、男が格好良かったころの服”を標ぼうする「アジャスタブル・コスチューム」が、同じくアメリカンクラシックを愛する理美容師の間で受け入れられ始めた。カリスマ的な人気を持つ彼らがSNSで発信してくれ、フォロワーが服装を真似するようになった。芸能人などではない、「それ、どこの服?」と店頭やDMで気軽に聞ける距離感も奏功し、ブランド認知度が高まった。SNSでの広がりは国内にとどまらず、海外のマニアなコミュニティーにも拡散していった。

WWD:それに合わせて販路も海外に拡大した?

小高:その通りだ。現在、国内外の売り上げ比率は4:6ほど。台湾、香港、中国(上海、北京)、韓国、タイ、ドイツ、スウェーデン、スイスなどに卸している。アメリカや英国の店舗とも交渉中だ。

WWD:クリエイションの着想源について教えてほしい。

小高:映画や、そのもとになった小説が多い。その後で史実を調べたり、資料や写真を集めたりする。古着やアンティーク生地から物語を創造することもある。例えば、今季のイチ押し素材であるオリジナルの“ワイルドスパンツイード”は、1900年代のフランスの貴族層がアウトドアレジャー用に作らせたフロックコートから着想し、糸から作った。これを着てどこへ出掛けたのか?、そのときの足元(靴)は?とイメージを膨らませる。

WWD:ニューノーマル下でスーツさえ非日常化するなか、「アジャスタブル・コスチューム」は次の10年もわが道をいく?

小高:そもそも「アジャスタブル・コスチューム」は、“非日常を表現しよう”とスタートした。名は体を表すではないが、ブランド名も「(アジャスタブル・)ウエア」や「(アジャスタブル・)クロージング」ではなく、「(アジャスタブル・)コスチューム」とした。コスプレの“コス”だ。つまりコスプレに対してポジティブであり、“コスプレでなにが悪いの?”“自分の気持ちを高めるためのファッション(コスプレ)でしょ?”という立場。それを各々アジャスタブル(調整)して自分なりに取り入れてほしいと、服を作り続けている。

 例えば、ヒットアイテムに“サイレンスーツ”というものがある。これは英国首相を務めたウィンストン・チャーチル(Winston Churchill)が発案したと言われる、スーツ生地のつなぎだ。「アジャスタブル・コスチューム」のファン、つまりコスプレ好きな方は本物志向も強い。一方で、“サイレンスーツ”はビンテージ市場でも出回らない幻の逸品だ。そこで「アジャスタブル・コスチューム」は資料や写真を徹底分析して、それに応えるものを作った。8万5800円と決して安くはないが、多くの方に満足いただいている。

 これからも自信を持ってコスプレを楽しんでほしい!

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ビームスが立ち上げたビーアットってなんなん? 半年後の“現在地”を社長に直撃

 ビームスが2021年1月、デザイン会社のフロウプラトウ(東京、千葉秀憲社長)との合弁として設立した企業がビーアットだ。4月には、ラフォーレ原宿の6階にビーアット スタジオ ハラジュクをオープンした。公式ホームページを見ると、「東京からまだ見ぬカルチャーを生み出すためのカルチュラル・アパートメンツ」とあり、さらに「メディアであり、スタジオであり、ラボであり、ショップでもある」と続く。う~ん、難しい……。ならばと、土井地博社長を直撃。今さら聞けない……と二の足を踏む業界関係者の代わりに、あれこれ質問してみた。

WWD:業界内には“ビーアットとは?”をつかみかねている雰囲気がある。ずばり、ひと言で言うと?

土井地博ビーアット社長(以下、土井地):クリエイターが集う場、それをつくる会社だ。スマホ一つで誰でも表現者になれる時代に、クリエイター同士、またクリエイターと企業をつなぐのがビーアットのミッションだ。

WWD:実は、事前に僕なりに答えを考えてきたのだが(笑)、それは“長年コミュニケーションディレクターとしてヒト・コト・モノ、またさまざまな企業・ブランドをつなげてきた土井地社長のアクションを最大化=マネタイズするための組織”だった。

土井地:おおむね正解でよいと思う(笑)。40年を超えるビームスの歴史の中で、コミュニケーションディレクターという肩書を持つのは、これまでに僕しかいない。僕自身、会社いちの“人たらし”を自負している。一方で、何かを自ら生み出すタイプではないことも自覚している。

WWD:ラフォーレ原宿が、本来ラフォーレミュージアム原宿である6階を長期レンタルするのは初だ。これもやはり土井地社長のコミュニケーション力があってこそ?

土井地:それはぜひラフォーレ原宿に聞いてほしいが(笑)、荒川信雄フォーレ原宿社長をはじめ、ビーアットのコンセプトに共鳴してくれたことに感謝している。

WWD:「レッツゴーアップ マ・フォーレ」という、ラフォーレ原宿の魅力をビーアットのスタッフが再発見するユーチューブコンテンツも製作している。

土井地:ユーチューブまでチェックいただき、大変ありがたい。御礼というわけではないが(笑)、おかげさまで好評を得ている。僕のような40代男性にとって、ラフォーレ原宿はいささか場違いに感じるかもしれないが、今も昔も原宿の情報発信拠点であるし、こんな状況でも日々にぎわっている。ファッション&ビューティ業界人であれば、定期的にチェックしておくべき商業施設なはずだ。

WWD:ビーアット事業は、ビームスという組織の中ではできなかった?

土井地:ビームスは長らく、実店舗を主とする小売業を生業としてきた。そのビームスが、次のステップに進むために参考にしたのがGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoftの米国巨大IT5社)だった。10年ごろから、現地を視察するなど研究を重ねてきた。それと前後するように、車やホテルなど服以外のビジネスにもタッチするようになった。その内、ビームスの冠がない方がスムーズに進行する事案も出てきた。これがビーアット設立のモチベーションだ。

WWD:土井地社長はビームスの執行役員も務めるが、今後ビーアットのような合弁会社を増やす予定はある?

土井地:現状として具体はないが、可能性は多いにある。僕には夢があって、それは“生活の中にビームスを息づかせること”だ。例えば朝起きて、その日にやるべき10のことの中にビームスが入っていたい。そのためには、服以外にもフィールドを広げなくてはならない。

WWD:ビーアットを走らせて約半年。目標地点には到達できている?

土井地:合弁会社を設立し、社長を務めるというのは、ビームスにとっても僕にとっても初めてのことだった。コロナの影響でラフォーレ原宿が閉館するなど、予期しない事態ともなったが、ここまでは“成功”と言える。また当初から、半年は“立ち上げ”ととらえ、地力を蓄える期間でもあった。秋からはクライアント仕事が増えていく予定なので、成果を見せたい。

WWD:“つなげる”を行う際、土井地社長が最も気を付けていることは?

土井地:“答えを導かないこと”だろうか。自分も含めてビックリしたいわけで、つまり答えなんて自分の中にはないはず。コミュニケーションの先に化学反応が起き、結果として答えが生まれるのだと思う。

WWD:タレント豊富なビームス軍団の中で、土井地社長の“これだけは人に負けない”を教えてほしい。

土井地:お話した通り、僕は“才能がある人”ではないが、“才能がある人”とコミュニケーションし、そこで得たものを第三者に効果的に伝えることは得意だ。また、インプットとアウトプットを常にセットで考えていることも特徴かもしれない。

WWD:ビーアットの今後について聞きたい。

土井地:アート、教育、福祉といった、日本でいまだ抽象的と考えられているものに積極的に働きかけ、コンテンツ化していきたい。また、都内の空き物件などでビーアット スタジオをサテライト展開することも考えている。

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D2Cアクセサリー「グレイ」が目指すサーキュラービジネスとは デジタル世代経営者が考えていること

 アクセサリーブランド「グレイ(GRAY)」は2020年1月に設立されたD2Cブランドだ。インフルエンサーの影響もあり、コスパの良いアクセサリーブランドとして人気上昇中だ。現在のインスタグラムのフォロワーは13万以上、売り上げは1年以内で月商5000万円を超えるなど急成長している。最近では、アイウエア「ジンズ(JINS)」とのコラボレーションを発表したばかりだ。オンライン中心にSNSなどデジタルツールを駆使することで、マージンや店舗運営などのコストを省くD2Cブランドが増えているが、ファッション、ジュエリーなど、まずはものありきで、それを起点にブランド構築をするケースがほとんどだ。ところが、「グレイ」はD2Cブランドとして成功するための計算された戦略に基づいて作られたアクセサリーブランドだ。しかも、ビジネス面だけでなく、サステナビリティの観点からも新たなビジネスモデルを構築しようとしている。同ブランドを率いるのは、恩地祥博BRH最高経営責任者(CEO)だ。彼は、米ニューヨーク留学から帰国後に知人の紹介でBRH元社長とスカイプで面接。約30分のインタビューでBHRのCEOに抜擢された。恩地CEOに、「グレイ」の立ち上げの過程や、今後の取り組みなどについて聞いた。

WWD:BHRの元代表と出会ったきっかけは?

恩地祥博BHR・CEO(以下、恩地):米ニューヨーク・ファッション工科大学(FIT)に留学中にデジタルマーケティングを手がけていた稲城ジョージさんのアシスタントをしていた。帰国して就職活動を始めたときに、知り合いのスタートアップ支援企業であるアーキタイプ(ARCHETYPE)の中嶋淳CEOに佐藤俊介BHR前CEOを紹介されてスカイプで約30分話したら、「CEOをやってみないか」と言われた。BHRは当時、複数のファッションブランドを展開していたが今では「グレイ」だけを運営。佐藤前CEOは現在、BHRの取締役兼会長を務めている。

WWD:スカイプのインタビュー30分でCEOに任命された決め手は?

恩地:実家が創業90年のうどん製造メーカーという環境で育ったせいか、小さい頃からビジネス運営に興味があった。そのせいか、大学1年生のときにSNSのコンサルテーション会社を立ち上げたが、コンサルよりもファッションがやりたいと思って1年後には社を畳んだ。それにより、まずビジネスの箱を作ることを学んだ。ニューヨークでは稲城さんのアシスタントをしながら、「ファーフェッチ(FARFETCH)」のマーケティング PRや委託販売サイト「ザ リアルリアル( THE REAL REAL)」のSNS担当などをしていた。私はデジタル世代であり、ほかの人とは違う経験を積んできたのでCEOに抜擢されたのだと思う。日本のファッション業界で経験がないから、ルールにとらわれず行動に起こせる推進力があると思われたのではと思う。知らないからこそ、できることはたくさんあるし、そうでなければ業界内で革命を起こせない。

WWD:企業運営のノウハウはどのようにして学んだか?

恩地:メンターがいなかったので、自分で経験して覚えるしか無かった。ウルトラOJTだった。人の真似をしたところで新しいことはできないから、当たって砕けろという気持ちで仕事に挑んだ。経営しているという意識は正直なく、細かいことを気にせずに、事業をどうしたら伸ばせるか考えてきた。

コスパ良くスタイリングで楽しむアクセサリー

WWD:アクセサリーブランドの「グレイ」を立ち上げた理由と目的は?

恩地: BHRでは、ブランディングの一環として、広告など社内でキャスティングからクリエイティブを制作することを行ってきた。そういう意味で、既にD2Cブランドを立ち上げるために必要な要素が社内にあったので、それを最大限に利用しようと思った。アパレルだとサイズをはじめ、いろいろとオペレーションが大変なので、すぐにものづくりができて販売できる小さなものから始めようと思った。また、マーケティングの観点から勝算があると思われるものがアクセサリーだった。

WWD:デザインは誰が担当?

恩地:FITで一緒だった女性デザイナーにクリエイティブは任せている。

WWD:ブランド名を「グレイ」にした理由は?

恩地:誰もが読めて言えるブランド名にしたかった。分かりやすく、人に伝えやすい名前がいいと思った。ターゲットは20~34歳のF1層と言われる女性が中心。“グレイ”は白と黒の間で、ブランドコンセプトには、感情の起伏を愛することや、コンプレックスを力にといった思いが込められている。

WWD:素材調達と生産は?

恩地:国内企業から素材の調達を行い、東京、山梨、埼玉などの下請け工場で生産している。

WWD:手に取りやすい価格帯を実現できるのは?

恩地:発注工場を絞って、大量発注することでコストを下げている。これは「グレイ」が売れているからできること。価格で勝負するためには1品番、納期を分けて1万個発注することもある。発注量を増やすことにより、取引先としての優先順位も高くなる。

WWD:D2Cブランドの一番の課題である認知度アップのために行ったことは?

恩地:われわれのオペレーションは、ほぼ全てデジタル上で行われる。インスタグラムなどのSNSを軸に、どれだけ露出できるか、コンテンツ発信できるかといったマーケティングに費用を費やした。もともと、インフルエンサーやモデルなどとのつながりが多いので、彼女らにジュエリーを着けてもらい投稿してもらう。ある意味、質より量が大切で50人以上に協力してもらった。毎月100人のインフルエンサーによる300のコンテンツをアップしている。それにより、約1年半で累計6万人、9万個以上のジュエリーを販売した。

WWD:他ブランドとの差別化は?

恩地:リングやイヤカフなどをはじめとするスタイリング売りをしている。コスパ良く、楽におしゃれをしたいという女性の心理に刺さっていると思う。ブランドが違うと、ゴールドの色味が微妙に異なるので合わせるのが難しい。重ね付けが可愛いけど、どこでそれらのジュエリーを見つけられるかという消費者の需要を捉えたのがスタイリング販売だ。同じブランドであれば、それら問題は解決できる。

100%受注生産のブランドを目指して

WWD:SDGsにおいてジュエリーブランドが第一に取り組むべきことは?

恩地:作る人、買う人両方に責任があると思っている。ジュエリーは嗜好品で生活必需品ではない。だからこそ、環境に悪いことはするべきでないと思う。将来的には在庫を持たず100%受注生産のビジネスをしたい。納期が5~10日程度だったら、消費者は待ってくれるはずだ。そうすることで、本当に必要なものだけ作るようにしたい。また、ジュエリーの再利用化=サーキュラーシステムの仕組みを作るために、自社工場を持ち、透明性を高くしたい。その資金集めのためにIPOを視野に入れている。そうすることによりシステムや物流などに投資をし、業界で新しい流れを作り、それが業界で当然になっていけばいいと思っている。サステナビリティを前提に自社のシステムを作っていきたい。だから、ビーコープ認証(環境・社会に配慮した企業活動を行なっており、ガバナンス、従業員、コミュニティー、環境、顧客から構成される認証試験の厳しい基準を満たす必要がある)を取るつもりでいる。

WWD:今後の戦略は?

恩地:芸能人やブランドなどとコラボレーションしてマスに対する認知度をアップしたい。また、ギフト需要が高いので、それを伸ばして行きたい。プロダクトを売るだけでは未来がないと思っているので、サブスクリプションサービスなどを通してコミュニティー作りをしていきたい。デジタルメディアでオンラインサロンのようなものを設けて、「グレイ」が好きな顧客同士がつながれる仕組みを作りたい。「グレイ」のデジタルメディアを通してリアルな人と人との出会いを作っていきたい。顧客のリアルな声を吸い上げるという意味でもコミュニティーの価値はある。ブランドと消費者が対等であるべきだと考えるので、消費者と一緒にブランドを作っていたい。ファッション業界を変えるのは新興企業だ。気合いは半端ないし、絶対にあきらめない、そういう気持ちで事業活動をしていきたい。

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カルバン・クラインは日本で今後どうなる キーマンが語る新アパレル事業や既存ブランド

 米PVHコープ(PVH CORP)傘下のカルバン・クラインは、日本でメンズとウィメンズを扱うアパレル部門を今秋立ち上げる。年内には日本公式ECも開設する予定だ。同社は、20年以上にわたって継続してきたオンワード樫山とのライセンス契約を2020年で解消し、ライセンスブランドの「CK カルバン・クライン(CK CALVIN KLEIN))」を20-21年秋冬シーズンで終了させていた。新たに立ち上げるアパレルブランドの狙いや、既存のライセンスブランドを日本でどう運営していくのかを、PVHジャパンの楠龍人シニアバイスプレジデント ゴートゥーマーケットに聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):日本で新たにアパレルブランドを立ち上げるが、なぜ日本で?また他のライセンスブランドは今後どうなる?

楠龍人PVHジャパン シニアバイスプレジデント(以下、楠):日本で立ち上げるのは、多種多様なコミュニティーと大きなビジネスの可能性を備えており、カルバン・クラインが急速に成長できる国だと期待しているから。他のライセンスパートナーとも、厳しいパンデミック状況下でも取り組みを継続できているので、連携を引き続き深めていきたい。

WWD:オンワード樫山時代の顧客はどう引き継ぐ?

楠:お客さまが身に付けたいと思える商品を提供し続けることで、既存顧客に満足してもらえるはず。ブランド価値を高めていくためには、お客さまとの関わりを維持するのが優先事項の一つだ。

WWD:日本市場における各カテゴリーの戦略は?

楠:カルバン・クラインは他のファッションブランドよりも幅広いカテゴリーを持っている。そのためマーケットのチャネルごとのお客さまに最適な商品を届けるには、チャネルごとのマーチャンダイジング戦略が非常に重要だ。例えば、「カルバン・クライン」は主に百貨店で、「カルバン・クライン ジーンズ(CALVIN KLEIN JEANS)」は若者が集まるファッションビルやショッピングモールに出店するなど、ニーズに合ったラインを適切な顧客グループにアプローチしている。マーチャンダイジング戦略に柔軟性を持たせることで、マーケットのニーズに迅速に対応することができる。

WWD:日本で今後打ち出す予定のプロモーションや販売戦略は?

楠:新アパレル事業では、日本の有名タレントを起用したキャンペーンを秋に開始するなど、プロダクトストーリーを伝えるためにさまざまな準備を進めている。日本の若年層の消費者は、純粋なショッピングよりも価値のある体験を重視し、自分と同じ価値観を共有するブランドを好む傾向がある。Z世代とのエンゲージメントや相互作用を最大限に広げるために、価値観を共有することのできるメディアや文化的なキュレーターと関わり、関連性のあるコンテンツを制作していきたい。

WWD:4月に発売したデザイナーのヘロン・プレストンとの協業はまさにZ世代を意識したものだったが、反響は?

楠:初のグローバルコラボレーションとして発売した“ヘロン・プレストン フォー カルバン・クライン(Heron Preston for Calvin Klein)”は、ブランドDNAの幅を広げて新製品の方向性を打ち出し、新規客と既存客との架け橋を作ることができて日本でも大好評だった。今後もブランドや商品ストーリーを伝えるための革新的な方法を常に模索していきたい。

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パリメンズ30年の「リンシュウ」がウィメンズに初挑戦 9月に東京で発表

 パリ・メンズ・コレクションに参加し続けて30年の「リンシュウ(RYNSHU)」は9月3日、2022年春夏ウィメンズ・コレクションを発表する。ウィメンズ・コレクションは、長い歴史の中で初の試み。手掛けるのは、「リンシュウ」の山地正倫周(やまじ・りんしゅう。以下、正倫周)デザイナーと、パートナーでもあるRieco YAMAJI(以下、Rieco)だ。美容業界に精通するRiecoはこれまで、ブランド初のフレグランス“RYNSHU 1217”などに携わってきたが、洋服のクリエイションは初めて。とはいえ、クチュールのような「リンシュウ」のウィメンズ・コレクションには、自身の経験が役だったという。

トップバレエダンサーとして、
舞台衣装の一通りを経験

 Riecoは、5歳でバレエをスタート。小学生の頃から全国大会に出場し、シニアデビュー以降はさまざまな大会でグランプリを獲得した。国際コンクールも含め、フランスやカナダへのバレエ留学など海外経験も豊富だ。バレリーナは、自分で舞台衣装をデザインしたり、チュチュを自力で製作したりが当たり前という。Riecoは、「小学生の頃からデザインをはじめ、高校に入るまでにはデザインから縫製まで一通りができるようになりました。だから、洋服のクリエイションには抵抗がありませんでした。クチュールに近い『リンシュウ』の製作過程を間近で見たときは、自分の過去を思い出したくらいです」という。
 そして近年、「リンシュウ」のクリエイションに参画。美容業界での経験を踏まえ、最初はスズランやムスク、フレッシュローズなどが香るフレグランス“RYNSHU 1217”のローンチに携わった。「最後にセンシュアル(官能的)な香りをまとうことで、スタイルは完成する」との思いを込めた香水のクリエイションは、「リンシュウ」を深く理解する契機になったという。自身のクラフツマンシップと、香水の開発を経て見出した“「RYNSHU」らしさ”の双方を自身のウィメンズ・コレクションにぶつける。

華やかで、心地よく、シンプル。
なかなか形にできないものを形に

 Riecoが考える“「RYNSHU」らしさ”とは、なんだろうか?そう聞くと、「華やかで、心地よく、シンプルなのに、なかなか形にできないもの。それを職人や工場と作り上げるのが、『RYNSHU』です」と語る。自身も正倫周がデザインするメンズ・コレクションのウィメンズサイズを着るようになって、「『RYNSHU』の洋服に袖を通すことで得られる“グッとくる”カンジ」を体感している。その“グッとくるカンジ”を、ヒールを履いたり、赤いリップを塗ったり、香りをまとったりで高揚し、前に進む女性の気持ちと重ね合わせた。「こんな時代だからこそ、『RYNSHU』の洋服が必要だと思っています。それをウィメンズ・コレクションで提供したいんです」と力強い。

パリメンズ30年のベテランが
「新しい目が開いた」

 正倫周は、パリデビュー30年という節目のウィメンズ・コレクションについて、「キリの良いタイミングでの新たな一歩」と話す。「Riecoとのクリエイションは、新しいイメージを作り上げる上で面白い。僕にはない女性ならではの発想、新しい発想に触れ、新しい目が開いた感覚(笑)」と話す。その思いは素直に、正倫周のポートレートの額にサードアイが開眼したイラストに仕上げ、9月3日のファッションショーのインビテーションにプリントした(冒頭のイラスト参照)。
 「RYNSHU」に改名して10年強。この間には自身も改名したり、コロナ禍では発表の場を東京に移したり、時流に即した変化を恐れない。正倫周は、「ウィメンズ・コレクションはもちろん、その発表方法も新しいチャレンジ」と新機軸を楽しんでいる。

PHOTOS:TSUKASA NAKAGAWA
問い合わせ先
RYNSHU
03-3402-5300

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「H&M」に古田泰子が提案したこと 「『トーガ』をそのまま持ち込んだ。その再現性には驚くべきものがあった」

 「H&M」は「トーガ(TOGA)」とのコラボレーション「トーガ アーカイブス × エイチ・アンド・エム」を9月2日に国内外で発売する。「トーガ」は個性的なデザインで知られるブランドであり、発売前の8月31日19時からH&Mが配信するライブイベントのゲストも俳優の滝藤賢一、 アーティストのコムアイ、 タレントの椿鬼奴、 女優のMEGUMIとファッション通で知られる“一癖”ある顔ぶれだ。創業から24年、インディペンデントな貫くデザイナーの古田泰子は、グローバル展開する「H&M」とどのように協業を進めたのか。発売まで2年をかけたというコラボの背景を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):「H&M」との仕事は楽しかった?

古田泰子「トーガ」デザイナー(以下、古田):はい。コミュニケーションが本当にスムースでした。パンデミックが始まる直前にロンドンで立ち上げのミーティングと食事会をしたのですが両チーム合わせて30人くらいだったでしょうか?結構な大所帯ですが、その時点ですでに長く一緒仕事をしているチームの感覚でした。

WWD:コラボレーションはどのようにして始まったのでしょうか?

古田:オファーをもらったときは驚きました。私たちは「H&M」の歴代のコラボレーションデザイナーより規模がずっと小さくて、インディペンデントだから。だから「まずは私たちがH&Mの企業背景を学び、実践したいことをプレゼンさせてください」と提案しました。それを受け入れてもらえるならやりたいと。

WWD:内容は?

古田:「露出のコントロールをするコレクション」です。これまで作ってきたワードローブ、たとえばベーシックなビジネススーツに切り込みを入れて肌を露出して違うものに見せることに特化したいと伝えました。返事はすべてOKでした。

WWD:「穴を開けて露出」は「トーガ」のコアバリューのひとつですが、全部ではないですよね。ウエスタンなど他にもいろいろ側面がある中で「穴」を選んだのはなぜ?

古田:切れ込みを入れたり穴を開けたりするデザインは「破壊的な構築」として捉えられることが多いのですが、私としてはちょっと違うのです。パンク的な発想というより「どう露出するか」の視点が大事です。オーガンジーを一枚重ねて露出をコントロールする提案は「肌の露出のコントロールを誰かに求められてではなく、自分で決める」という姿勢を着る人にもってほしいから。

WWD:「トーガ」は“女らしさとは”とか“女の強さ”を追求し続けていますが、それがまた一歩進みましたね。

古田:着る人をジェンダーの問題から解放したい。ジェンダーレスを一過性の流行のように思っている人がいたらそれは大きな間違いだと伝えたい。スカートに穴を開けるのは「スカートは女性が着るもの」という定義を更新したいからです。

WWD:「自分の肌の露出のコントロールを自分で決める」は刺さる言葉ですが確かに真意は伝わりにくい。理解を一気に深めてもらうには、「H&M」というステージは強力ですね。プレゼンでその真意は伝わったのでしょうか。

古田:感覚的にすぐに理解してもらいました。一過性の流行の話ではない、ことを共有できたのは嬉しかった。

WWD:以前古田さんは代官山より歌舞伎町の方がいろいろな人がいるから観察するのが好きだ、と言っていました。「H&M」は全世界に展開しているから服の向こうにはいろいろ人がいます。そういった背景も企業の強さと関係があるのでは?

古田:あると思います。私自身、「H&M」という企業を理解していなかったから自分なりに調べたのですが、社会的問題に気が付いたときの行動が迅速です。透明性への取り組みも早かった。ウイグルの問題に関してもうやむやにせず発言をしています。「大量生産企業だから」と発言を避けたり、否定したりするとファッション全体を否定することになります。グローバル企業には責任があり、大企業だからこそマイノリティーと向き合う機会が多い。マイノリティーの意見を聞き、取り組めるからこそファッションは面白いと私は思います。

今、モードとは自分の意志や考えを発信すること

WWD:コラボの制作過程でパンデミックを経験して見えたことも多いのでは。

古田:ブラック・ライブズ・マターをはじめ差別や分断といった社会的な問題が芋ずる式に表土に出てきて、それらの多くが世界共通の課題ですよね。家で過ごしていてもネットでそれらのニュースを見聞きして考えさせられました。洋服のブランドも洋服についてだけではなく、社会的なできごとに対してどんな意見を持っているかを世の中に提示するべきだと思います。その意見に共感をしてモノを購買する流れがありますよね。コロナ以前の消費だけの社会にはもう戻らないと思う。

さらに東京オリンピックでは日本と世界との人権問題の意識の違いが如実になりましたよね。いろいろなことが表面化されたことでその違いを知ることができてよかったと思う。ただ、出た問題をそのままに蓋をしちゃいそうな流れもあるので、ここで洋服のブランドには何ができて、どう伝えるのか、考えています。今は、自分を発信することがモードの一端となっていますから。

WWD:と、いいますと?

古田:私自身、「モードとはタブーの要素を引っ張り上げることである」という思考だった時があるけれど、最近は、「自分の意思や考えを発信すること」がモードなのかなと。そういった意味で「H&M」さんのメディアの発信の仕方など、学びは多かったです。

WWD:「トーガ」の魅力のひとつは着る人の体をきれいに見せるパターンでありつつ同時に攻めたデザインであるところ。それは24年の歴史の中で社内のパタンナーや縫製工場と積み重ねてきた成果ですが、そのパターンを「H&M」のパタンナーや工場にゆだねるのは難しくなかったですか?仕様書があればOK?

古田:「トーガ」がここまで来られたのはパタンナーと工場の努力の結晶です。だから仕様書だけでは再現できない。弊社のパタンナーが「H&M」のパタンナーに一型ずつ現物と仕様書を使って説明をしました。ただし世界中で販売するにあたり、バストダーツの長さやサイズレンジが「トーガ」と異なるのでそこはお任せしましました。変更点が生じたときは、どんなに小さなことでも「トーガ」がアプルーバルを出すまでは絶対に勝手には進めないから安心でした。

WWD:私が個人的に「トーガ」の服を捨てられない理由は生地の良さです。普段はオリジナル生地が多いですよね。今回の生地のポイントは?

古田:オリジナルをお渡しして再現してもらいました。再現の正確さは驚くものがありました。それどころか私たちがやりたくてもできなかったことが実現した例もあります。たとえば表裏を完璧に同一に染色したスカーフのプリントがそうです。私たちも20年以上トライしてきたけど難しかった。それを相談したら「できますよ」と簡単に言われちゃって。驚きました。

WWD:52型のラインアップは下着やTシャツ、ドレス、仕事用のスーツがそろい1人の女性のワードローブのようです。従来の「トーガ」ファンからすると好きでもなかなか手が出なかったよりチャレンジングなアイテムにもこの価格なら手が出せそうです。ブルマ(1299円)のや透けている全身透け散るレイヤードアイテム(1万6999円)とか。

古田:そうですね。家の鏡の前でコーディネートを悩んで楽しんでほしいです。

WWD:「H&M」らしさは意識をしましたか?

古田:まったく考えなかったです。それがこれまでのコラボレーションとは違う点ですね。これまでは基本的に相手の利点、「トーガ」にはできないことを取り入れていろいろなことを“一致させてゆく”コラボレーションでしてが、今回はモノづくりに関しては「トーガ」のブランド哲学をそのまま「H&M」に持ち込んでいます。発信の仕方や売り方にはもちろん違いがありますが。

WWD:では2021年らしさについては?

古田:バストやウエスト、肩の位置などには時代性が表れます。いつもはジャストウエストだけど、今は少し緩いほうがいい、肩は少し小さくてもいい、パッドは少し薄い方がなど感覚的で本当にちょっとしたことですが。

「サステナビリティとファッション」をどう定義する

WWD:「サステナビリティとファッション」をどう定義しますか。サステナビリティ先進企業の取り組みに触れて何か思うことがあれば教えてください。

古田:一過性のものではなく常に取り組まなくてはいけないものだと思っています。「トーガ」原宿本店は2007年からヴィンテージショップも併設しています。それは新しい服と古着の組み合わせを考えることを楽しんでほしいから。2010年頃展開していた「トーガ・オッズ&エンズ」は、「半端と端っこ」を意味し、半端物やガラクタ物、既存の大量生産物を集めてそこに加工やデザインを加えることで新しい価値を“再製造”したものでした。これだけ街中にものがあふれているのに、どうして自分たちはゼロから作っているのか、と向き合った結果生まれたものでした。

ただ「トーガ」自体で考えたらやはり“捨てられない服”を作ることが、私たちが実践し続けているサステナビリティだと思う。「無駄を作る側」の人間として、ファッションがデザイン性として必要なものであると伝えたい。今、若い世代は洋服を買うこと自体が罪で、買わないことが一つの意思表示にもなっていますが、罪ではない購買があること、意思表示ができるファッションがあることをちゃんと伝えたい。でもこのまま「トーガ」だけで発信していたら自分が死ぬまでも伝わらないかもしれない。だからコラボレーションができてよかったです。

WWD: 私はサステナビリティ・ディレクターとして、古田さんみたいな意志あるデザイナーが自分の感覚を存分に発揮して選んだ生地、生産方法がすでにサステナビリティなものであり、悩むことなく使える、そんな状態へアパレル業界を早くシフトしたいと思っています。

古田:今回のコラボレーションがまさにそうでした。生地はすべて「H&M」独自のサステナビリティの基準に基づいて選ばれたもので理想的でした。「これは土に還らないからこちらにしてください」という指示も出る。自分たちが同じことをすると価格がグンと跳ね上がったりしますが、企業努力によって安価に抑えられているから気兼ねなく使用できる。サステナビリティについてよく考えられた土壌の上でデザインをできるのは安心でした。

WWD:それは消費者視点でも同様ですね。手に取ったものに対して「これはサステナビリティか」と悩まなくていいのはラクです。

古田:そうですね。ただ、意識することは非常に大切。惰性で買い物をしない、商品の説明をよく読むといった時間の余裕はあってよいと思います。多くの人がそういった意識を持たないと流れは変わらないからこれに関しては“気にしすぎ”はないと思う。デザイナーに対しても「もっと気にしましょう」って言ってもいいと思いますよ。

WWD:「トーガ」と音楽は密接です。今回のコラボレーションに音楽をつけるとしたら何を選びますか?

コラボコレクションに音楽をつけるとしたら

古田:ロンドンでの撮影時にはスティーブ・ライヒ(Steve Reich)の「クラッピング・ミュージック・バレエ」と「カム・アウト」。人間が手をたたいたり、呼吸をしたり古田 撮影現場も、本当に今となったら、そういうのをちょっと意識してやっていたと思います。

WWD:ビジュアルのディレクションも古田さんが行ったのですか。

古田:撮影はロンドンで行い、私はオンラインでつながりながら意見を言いました。メンバー選出のときに、一度お願いしたかったスタイリスト、ジェーン・ハウの希望を出したら一発OKで嬉しかったです。フォトグラファーのジョニーとは何度か仕事をしたことがあり、彼がスタイリストのジェーンが最近よく仕事をしているのを見ていたから、聞いてみたら実現しました。

WWD:撮影場所に選んだ場所は、シティ・オブ・ロンドンにあるヨーロッパ最大の文化施設、バービカン。日常と非日常の間みたいで面白いです。

古田:バービカンの美術館や施設を丸一日、全部貸し切り、60人近いスタッフが参加していました。映画の撮影並みのスケールでたくさん撮影した中からたった一枚を選ぶ。フォトグラファーが「絶対これがいい」と言うのに対して、「H&M」からもものすごく強い指示が出る。相手がトップクラスと言えども、妥協なく強い指示が出ます。トップメゾンのキャンペーンビジュアルの1枚はこうやって作られるんだろうな、と実感しました。インディペンデントな我々とはスケールが違う経験です。

WWD:ビジュアルに対して出したリクエストとは?

古田:日常の風景に溶け込んでいるがオーガニック過ぎず、ダークな世界も映っている写真にしたいと伝えました。

WWD:いろいろなことが“あ、うん”ですね。それはトップブランドのクリエイションに携わる人たちからよく聞く話です。関わるスタッフの見えている景色が同じ、なんでしょう。

古田:そうですね。同じ意識を持っているから話が早かったです。

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セレクトリサイクル「パスザバトン」丸の内店が閉店 事業部長に聞くこれからの“もったいない”ビジネス

 「スープストックトーキョー(SOUPSTOCK TOKYO)」を運営するスマイルズによるセレクトリサイクルショップ「パスザバトン(PASS THE BATON)」丸の内店が9月7日に閉店する。第一号店の表参道店は6月末に閉店。京都店は、市の保護物件ということもあり、継続運営する。「パスザバトン」は個人の思い出の品物や愛用していたが必要なくなったものを使ってくれる人に渡す(バトン)をコンセプトにスタート。有名ブランドの古着から食器棚の奥に眠っていた器まで、さまざまな商品および、一部企業のデッドストックなども販売してきた。2019年からは、「パスザバトン マーケット(以下、PTBマーケット)」と称して、外でいろいろな企業の在庫を販売する市を開催。表参道店と丸の内店の閉店により「パスザバトン」のリブランディングを図る。今後の「パスザバトン」の方向性について、箕浦俊太スマイルズ パスザバトン事業部長に話を聞いた。

WWD:「パスザバトン」をこのタイミングでリブランディングする理由と目的は?

箕浦俊太スマイルズ パスザバトン事業部長(以下、箕浦):2009年に「パスザバトン」が設立されてから、個人レベルのリサイクルは浸透してきた。最近SDGsやサーキュラーエコノミーへの関心が高まり、企業のもの作りや既存の商流を見直すような世の中になった。「パスザバトン」でも、1部は企業のデッドストックなどを販売し、各企業の困りごとを解決する目的もあったが、店鋪内でそれをするには限度を感じていた。そこで19年に、店外で「パスザバトン マーケット(以下、 PTBマーケット)」を開催したところ、手応えを感じ、これからの方向性はこちらだと感じた。

WWD:「パスザバトン」表参道店が閉店、丸の内店も閉店するが、その理由は?京都店は?

箕浦:閉店というよりは、個人レベルのリサイクル事業をやめてみるということ。京都店は市の保護物件を借りていることもあり、京都の文化を世界に発信する場所として継続する。今後は、京都の企業との取り組みを強化していく。日本の伝統や四季の祭りごとを大切にしたいという想いがある。また、表参道店や丸の内店の売り上げの6割以上はリサイクル商品だったが、京都店のリサイクル商品の売り上げは3割と低く、お土産やギフト需要が多いという点からも、出品者に依存することなく維持できるのが理由だ。

WWD:19年に店外で、「PTBマーケット」を開催した理由は?

箕浦:店で企業の困りごとに向き合うには難しいと感じたから。半年に一度、一社の在庫を販売したところであまり意味がないと思った。だから、店の外である規模感を持って開いた。

WWD:個人対個人のリサイクル市場を作ってきたわけだが、それを、企業対個人のマーケットに移行する理由は?

箕浦:企業のもの作りのシステムを見直す必要がある。例えば、ECで返品されたものはB品として販売するしかない企業が多い。それらを消化する手段が「PTBマーケット」だ。企業と消費者両方の活動を見直し、一緒に考える場にしていきたい。

WWD:今まで「PTBマーケット」を4回開催してきたが、参加企業数などの推移は?

蓑浦:1回目は22ブランドが参加した。オンラインで開催した2回目「十勝第百貨店」は20社、同じくオンラインで開催した3回目「デッドストック陶器市 九州編」は17社が参加。4回目は42社が参加し、2日間で約3600人が来場し、2300万円を売り上げた。

販売だけでなく、発信や実験の場に

WWD:「PTBマーケット」における、収益の仕組みは?出展する条件や対象業種などはあるか?

蓑浦:出展料及び売り上げ歩合は、ファッションアパレル・雑貨が5万円で売り上げ歩合が20%、 食物販、お菓子などの軽飲食が2万5000円で売上歩合 25%、フードトラックが出展料 なし で売上歩合 10%。出展条件は「PTBマーケット」のコンセプトを理解し、共感してくれること。また、B品を販売するにあたり、コミュニケーションが取れるスタッフを配置できること。業種は限っていない。気付けていないものがあるかもしれないので、関心があれば連絡して欲しい。

WWD:「PTBマーケット」は企業の倉庫に眠っているB級品や在庫に光を当てるというイベントだが、消費者からの反応は?直近の来場者の性別や年齢層、平均単価は?

蓑浦:出展企業からは、消費者とのコミュニケーションが生まれるという声がある。4回目は入場料を300円に設定した。そうすることにより、お金を払っても入る価値があるかというハードルになった。事前に情報を入手して、「よし、行くぞ」という気持ちで来場してくれた人がほとんどだ。入場者からは、いろいろなブランドなどが一堂に会する場で知らないブランドに出合えたという声があった。4回目の来場者の6〜7割が女性で年齢別では30代が37%、40代が29%、20代が21%。平均客単価は3500円程度だ。

WWD:「PTBマーケット」の出展企業へはどのようにアプローチを行うか?

蓑浦:「PTBマーケット」の公式サイトで募集、受け付けを行う。4回目には企業による視察もあり認知度がアップしていると感じる。SDGsの意識が高まる中、10年以上にわたり各ブランドをリスペクトしながら“もったいない”と向き合ってきたのが「パスザバトン」だ。ある意味、経済効率性から反対の位置にある活動だが、最近では企業から「どこから、どう始めたらいいか」というような相談が増えている。企業によっては「PTBマーケット」を発信や実験の場として捉えてくれており、不要になったものの回収なども行っている。

出展者、来場者、主催者でシステムを変える

WWD:コロナ禍で消費者はコロナ前以上に慎重かつ、より良いものを求める傾向があるが、そのような状況下でのマーケット開催の結果は?

蓑浦:人は買い物好き。それは、コロナ前後で変わらない本能的なこと。4回目の開催で、十分な手応えを感じた。入場料を設けたが、1時間半待って入場する人もあり、イベントに共感してくれる来場者が増えて一体感が生まれた。

WWD:主催者、出展者、消費者、それぞれにおけるマーケットを開催する一番のメリットは?

蓑浦:出展者にとっては、在庫の消化チャネルになりつつある。物作りは続くわけであり、売れ残ったものを「PTBマーケット」で販売し、倉庫が空っぽになれば、また、物作りをする勇気が出る。過去の負を未来につなげるイベントだ。消費者にとっては、いいものを安く買えるので経済合理性にかなっているし、B品の理由などに触れることで消費行動への気づきにつながっている。主催者側としては、コロナ禍でも楽しく開催できた。社会的意義があるし、ビジネスとして成立しているので、これから大きくしていきたい。「PTBマーケット」を軸に“ニューサイクル コモンズ”と掲げて、既存のビジネスシステムを見直して新しいシステムを共感してくれる仲間と築いていきたい。出展者、来場者、主催者、会場、全てがスクラムを組んで、システムを変えていこうという思いがある。また、出展者同士の繋がりや、回収拠点の場を提供することで、偶発的な出合いを提供できればと思っている。いわゆるコミュニティー的な活動で、企業と消費者の垣根をなくすのが目標だ。

WWD:「PTBマーケット」開催予定と今後の戦略は?

蓑浦:年内は、10月9〜10日、12月11~12日に開催予定だ。22年には4~6回、規模を大きくして開催したい。本気で日本国内の倉庫を空っぽにする意気込みがあるので、行政と組んで地方でも行いたいと思う。

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