「3.1 フィリップ リム」CEOがサステナビリティにこだわる理由 「トレンドではなく、生き方そのもの」

 ニューヨーク発の「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」は、“長く着られるタイムレスなワードローブ”をポリシーに掲げる。他社と協業した素材開発にも積極的で、国際連合(UN)が支援する、「スワロフスキー(SWAROVSKI)」と、持続可能なファッションを推進するスロー・ファクトリー協会主宰のサステナビリティプロジェクト「ワン×ワン(One×One)」に参画するなど、サステナビリティに真摯に取り組んできた。10月には、「ボルボ・カーズ(Volvo Cars)」が電気自動車の内装用に開発した、レザー風の新素材“ノルディコ(Nordico)”を使った限定バッグを発売。あらゆる業種とタッグを組みながら、地球環境に配慮したブランド経営に挑んでいる。ウェン・ゾウ(Wen Zhou)=3.1 フィリップ リム最高経営責任者(CEO)に、ビジネスやサステナブルなモノづくりについて聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):「ボルボ・カーズ」とコラボレーションした経緯は?

ウェン・ゾウCEO(以下、ゾウCEO):私たちは、サステナビリティをブランドの根底にある価値観として捉え、ビジネスの方法や製品の生産工程など、あらゆる側面から取り組んできた。私とフィリップにとって生き方そのものといえる。今回のコラボレーションについては、「3.1 フィリップ リム」も「ボルボ・カーズ」も、互いにサステナビリティを重視し、植物由来やリサイクルの素材を積極的に使用するなど共通の価値観を持っていたので、自然な形で実現した。

WWD:デザインでこだわった点は?

ゾウCEO:「ボルボ・カーズ」から提案されたのは、サステナブルでありながら機能性にも優れ、魅力的なものを作ること。それは、両社が掲げる顧客像が共有して求める価値観だった。地球を汚さない、それでいて美しい商品こそが究極のラグジュアリーだ。“ノルディコ”は、ペットボトルなどのリサイクル素材や、スウェーデンやフィンランドの持続可能な森林から採取された素材、ワイン産業からリサイクルされたコルクから作られたテキスタイルなどで構成され、自動車産業の厳しい基準とテストをクリアした新素材を用いている。そんな革新的な素材をわれわれの“ウィークエンド・バッグ”に取り入れ、新たな方法でサステナビリティを発信できることにワクワクした。そして、素晴らしいデザインとは、カテゴリーを超えて響くものだということを証明できたと思う。

今必要なのは、立ち止まって互いを支え合うこと

WWD:9月に発表した2022年春夏コレクションでは、6割をサステナブルな素材に切り替えた。これは過去最高の割合?

ゾウCEO:過去最高だ。ここまで到達できたチームとサプライチェーンの功績を誇りに思う。現在もサプライチェーンと共に、新しい糸や原料を模索しながら素材の開発を進めており、サステナブルな取り組みを日々進化させている。大切なのは、見た目が美しいだけではなく、植物由来やリサイクル、再生可能といった素材を選ぶこと。サプライチェーンを含むエコシステム全体で取り組むことが重要だ。既存の価値観やシステムを問い続け、より良質なものを求め続ければ、全員が高いモチベーションで取り組める。

 次のステップは、消費者も同じ熱量を持てるかだ。消費者がお金を少し多く払ってでも、サステナブルなものの良さを分かってくれるかを、ファッションに関わる全ての人々が考える必要がある。

WWD:企業として、サステナビリティに本格的に取り組んだのはいつ?きっかけは?

ゾウCEO:サステナビリティに本腰を入れた時期は、10周年を迎えた2015年。建築家兼アーティストのマヤ・リン(Maya Lin)とコラボレーションした16年春夏コレクションで、600トンのコンポスト(堆肥)を使って、“STOP AND SMELL THE FLOWERS(立ち止まって花を香って)”というサステナブルなメッセージを込めた。従来多くのゴミを出すランウエイだが、ショー後はその堆肥をニューヨーク中の公園や花に返し、カーボンオフセットを実現したショーだった。

 現在、サステナビリティは業界の“バズワード”になっているので、使うのはあまり好きではないし、ビジネスストラテジーにも掲げていない。前述の通り、私たちにとってサステナビリティは生き方そのものであり、自然なものだから。私は仏教の教えのもと、必要以上に浪費しないことを昔から教えられて育ってきた。それはフィリップも同じ。だからこそ、われわれのビジネス経営は倫理的で無駄がなく、独立している。流行りの“サステナビリティ経営”という言葉を使ってトレンドに乗っかり、時流に合わせて経営スタイルを変えたくない。あくまでも自分たちらしい経営で、ビジネスをどう良いものにできるかを常に考えたい。そして、ビジネス的観点からすると、サステナビリティは考えるだけでは足りない。口約束だけではなく、マイルストーンや目標を立てて、責任感を持って取り組む必要がある。

WWD:近年のコレクション発表では、ランウエイではなく招待制の展示会形式をとっている。

ゾウCEO:改めてリセットする必要があると感じたため、ここ数シーズンは店舗で少人数制のプレゼンテーションを開催してきた。特に、現在はパンデミック下で誰もがコロナの影響を受けている。長いロックダウン期間を経て、大々的に派手なランウエイショーをするのは少し違うと感じた。それよりも、今一度自分たちのコミュニティを集めて、“つながり”を大切にしたかった。ランウエイショーは、やろうと思えばいつでもできる。今必要なのは、立ち止まって互いを支え合うことだと感じた。

WWD:インティメイトな空間での展示会では、どのような気付きがあった?

ゾウCEO:やはり近い距離感でつながれて、直接対話できることの大切さを実感した。支援してくれる関係者や友人らと濃い時間を過ごせるし、服もじっくり見ることができる。ランウエイより充実した時間になった。

 今シーズンも、ニューヨークのファッション・ウイークのスケジュールは相変わらず詰まっていた。いろいろなブランドが華やかなファッションショーを開催し、ニューヨークに活気が戻ったことは素晴らしいことだし、実際フィリップもほかのデザイナーを応援するためにファッションショーを訪れていた。われわれは違うアプローチを取ったが、業界を盛り上げて互いをサポートしたい思いは全員同じだ。

“Less(少ない)でBetter(より良い)”な選択を

WWD:以前のインタビューで、「SKU数を50%カットして、素材研究に注力している」と話していたが、新たな取り組みはある?

ゾウCEO: CO2削減目標や認証取得よりも、まずはSKU数を減らすことで主に2つの取り組みを優先している。1つ目は、デザインチームがクリエイティビティを最大限に発揮し、パンデミックの状況下でもモチベーションをキープできるようにしたこと。デザインは、相当な時間とエネルギーを要する。アイテム数を削ったことで、一つ一つのアイテムを作るプロセスを楽しめるようにし、丁寧なモノづくりを促した。またパンデミックで家庭環境やワークライフバランスまでもが激変する中、これまでと同等レベルの仕事量やアウトプットを従業員に求められなかった。

 2つ目は、新たな素材の発見・発掘にリソースを割くこと。アイテム数を減らしたため、サステナビリティ以外のプロジェクトにも時間を割くことができた。フィリップは、科学者やエンジニアとタッグを組んで、プラスチックに替わる素材を共同開発・試作するプロジェクト「ワン×ワン(One x One)」で、100%海藻から作られたカーボンニュートラルなドレスを開発するなど、新たな試みにも挑戦した。「ボルボ・カーズ」との協業もそうだ。

 今後もこういった取り組みをさらに注力していく。クリエイティビティを通して自分たちをインスパイアしながら、新たなサステナブル素材の開発を続けたい。また、ファッション業界内外の企業と意義のあるコラボレーションを続けて、新しいビジネスにも挑んでいきたい。

WWD:環境に配慮した素材を使うと、必然的に商品の価格は上がる。一方で、少しでも安く購入したい消費者も多くいる中、そのバランスをどう図っている?

ゾウCEO:この課題とは常に向き合っている。われわれは、商品価格を注意深く、意識してコントロールしてきた。過去16年間ずっと言い続けてきたことだが、コストだけを優先したモノづくりは実は有益ではない。ローカルから調達すれば世界中に材料を運送する必要がなくなる。必要最低限のサプライヤーと付き合う代わりに、深く密に関わる——こういったことを意識すれば、コストを抑え、消費者に価値ある商品を届けられる。

 私はよく食品業界で例えるのだが、オーガニック食品とそうでない食品がある。私が望むのは、消費者が数あるものの中から“Less(少ない)でBetter(より良い)”な選択をできるようになること。必要以上にものを購入しない代わりに、良質なものを選ぶ。例えば、安いブラウスを2着買う代わりに、長く着続けられる良質なブラウスを1枚買う。サステナブルな生地を用いた、生産者や労働者にきちんとした給料を払えるような、倫理的なブラウスを選んでほしい。いつか皆がそのようなスマートな選択ができるようになることを期待している。

WWD:最後に、「3.1 フィリップ リム」にとってサステナビリティとは?

ゾウCEO:大きな変化につながる小さな行動。毎日取り組める、そして誰もができる、日常的な行動の積み重ねだ。

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業界のトップ経営者ら5人が語る「若手に期待すること」 ルミネ×WWDの次世代応援企画「MOVE ON」

 「WWDJAPAN」はルミネと共に、ファッション&ビューティ業界の次世代を応援するプロジェクト「MOVE ON」をこのたび開始した。「WWDJAPAN」が2017年に立ち上げ、業界の未来を担う人材を讃えてきた企画「NEXT LEADER」も、今年は「MOVE ON」の中で実施。受賞者は22年2月14日号で発表すると共に、3月2日に開催する「Next Generations Forum」にも登壇いただく予定だ。編集部の推薦や公募で募った候補者の中から受賞者を選出するのは、業界のトップ経営者らで構成するアドバイザーたち。今回は業界の中核を担う5人のアドバイザーに、「MOVE ON」や候補者に望むことを聞いた。

※アドバイザーは今後追加発表予定


WWD:「MOVE ON」にどんなことを期待しているか。

佐々木進ジュン社長(以下、佐々木):ビジネスの原動力はクリエイションです。新しい文化や考え方、価値観が生まれた時に、結果として経済はついてくるもの。ただ、現状は文化全般でリバイバルが多いし、何かと何かの掛け合わせであるリミックスが中心です。焼き直しではなく全く新しいものが出てくると、世の中もファッション業界も活性化していくと思います。「MOVE ON」が、そういった新しい価値観が出てくる場になればと期待しています。

近藤広幸マッシュホールディングス社長(以下、近藤):ファッション業界の次世代の話になると、音楽や映画の世界に比べてすごくマニアックだと感じます。業界内では知られていても、世の中は知らないというか。例えば音楽では、宇多田ヒカルさんが出てきたときに曲調にも歌詞にもゾクっとするものがあって、大人も子どもも魅了されました。ハンマーで頭を殴られるような、価値観をドーンと変えるような人がファッションでも出てきたら嬉しいですし、自分や自社も常にそうありたい。現状では、ファッションのクリエイションの部分は一部のマニアのもので、大量生産のブランドだけが大衆とつながっている印象です。消費者と直接つながって、クリエイションや情熱でみんなの心を刺激するような、メジャーな存在感の人に出てきてほしいですね。

山井梨沙スノーピーク社長(以下、山井):私はかつてファッションデザイナーを志し、アウトドア業界に転じました。ファッションは不確定さが面白くて、人の心を動かすモノが出てくる可能性は大いにあると思います。でも、そこにビジネスの商流がついてきていない。マスに向けた大量生産が小売りの支配的な商流としてあり、カルチャーを生み出す可能性のある新進ブランドの影響力はどんどん小さくなっています。D2Cも出てきてはいますが、ビジネスの手法の部分がもっと広がっていけば、業界としてよくなるんじゃないでしょうか。コロナによって従来のやり方にひずみが生じた今だからこそ、誰のために何をどう提供するのが最適かを考えて、新しいことができるはず。服をお客さまに提供すること自体が目的なのではなく、服はあくまで手段です。服によってどんな価値が伝えられるかをもっと掘り下げていくべき。これまで業界は、服自体を目的とする考え方に偏り過ぎていたのではないでしょうか。

齋藤峰明ルミネ顧問(以下、齋藤):ファッションはこれまで消費の最先端を担ってきました。それが行き着くところまで行って、このままでは続けられなくなっていますし、続けていってはいけない。このまま続けていけば地球環境は取り返しがつかないと多くの学者も指摘しています。消費社会を見直し、ファッションの役割や産業のあり方を転換していく必要があります。未来を担う世代の人たちには、われわれ世代がやってきたこと、やっていることを自由にどんどん批判してほしい。それを真摯に受け止めたいし、受け止める体制を業界として作ることが重要だと思っています。

佐々木:イノベーションとは非常識が常識になることですよね。ひょっとしたら、われわれアドバイザーの尺度で良い悪いを判断すること自体が予定調和を招くのかもしれません。「ZOZOTOWN」が始まったときも、服がECで売れるなんて誰も思っていませんでしたが、それを信念でやり通してここまで大きくなった。今までの尺度では測れないような、全然価値観の違うアイデアを持った人が自由に動ける環境を作っていくことが大事だと思っています。「NEXT LEADER」の選出でも、私たちの中で一番反対意見の多かった人が、ひょっとしたら一番可能性があるのかもしれない。そのくらいの発想の転換が必要です。

伊藤純子ルミネプロジェクト戦略部担当部長(以下、伊藤):ルミネの中で長らく業態開発などを担当してきましたが、1を2にするのではなく、0を1にするようなマインドを持った人と組みたいと常に思ってやってきました。商業施設は、1を2にも3にもしていくのが仕事です。だからこそ、0からアイデアを生み出せる人たちのことを本当に尊敬していますし、どうやっても敵わないと強く感じてきました。マーケットの進化やお客さまの気持ちに沿って、新しいものを生み出せる人はまだまだいると信じています。そういう人たちにとってチャンスとなる場がたくさんあってほしい。「MOVE ON」もその一つです。

「たとえダメだと言われてもやる
そうでないと新しいものは生まれない」

WWD:候補者に求める資質や、若い世代に伝えたいことは何か。

近藤:今は若い人にとって大チャンスの時代です。今回アドバイザーを引き受けたのは、今はサブカルチャーがカルチャーに変わる瞬間だから。かつてはクラシック音楽がカルチャーで、ビートルズがサブカルチャーでしたが、今となってはそれが入れ替わっています。同様に、従来はサブカルチャーだったサステナビリティの考え方が、先進国全てがコミットするメインカルチャーになっています。地球環境を無視したブランドはもう認められません。時代がガラっと変わる中では、大企業も駆け出しのブランドもみんな1年生。当社だって、オーガニックコスメなどの事業を始めてからほんの10年ちょっとですから。ココ・シャネルだってそうですよね。彼女は服装で女性を解放しましたが、当時は「女性は家にいるもの」という価値観から、外に出て働くようにカルチャーが変わる瞬間だった。あの時代はデザイナーにとって大チャンスだったわけです。社会的なルールが変わろうとしているとき、やはりファッションがそれをリードしないと絶対いけない。世の中が変わっていくことを後押しするデザインや、そんなデザインのルールを生み出すべきです。サステナビリティが審査基準の全てではないですが、そうした考えが0の人が「NEXT LEADER」にふさわしいとは思わない。大手も若手も関係なく、みんなライバルという時代ですから、候補者から自分にはないアイデアが出てきたら心底悔しいって僕も思いますよ。

山井:ファッションはカウンターカルチャーで時代を作ってきました。時代に反発してやったことが多数派になって、それが流行になっていく。でも、最近はカウンターですらないものが多いです。「このやり方に沿ってやればそこそこ稼げる」という感じのものが中心で、オリジナルが生まれてこない。たとえダメだと言われても振り切ってやるような人じゃないと、新しいものは生まれません。今の若い人は平均的にすごくよくできるんですが、突き抜けるものが見出しづらい。これはファッション業界に限った話ではないですし、教育や幼少期の環境といった部分に根っこがあるのかもしれませんが。

佐々木:“生き方のヒエラルキー”じゃないんだけど、業界の中で有名なトップの人に憧れて仕事を始めた人たちは、必然的にその人の生き方や価値観をなぞって、その枠の中で考えてしまう。だからその人たちからは新しい価値はなかなか出てこないと思うんです。全く新しい枠組みで物事を捉え、ライフスタイル提案からクリエイションまでできる人が必要だと考えます。

齋藤:ファッションは本来何をやってもいいはず。それなのに若者が自由にやらないということは、できる環境ではないんだということです。日本には優秀なクリエイターがたくさんいますが、世の中が多様性と口では言いながら仲間外れにならないようなモノを求めているから、クリエイターは自由にモノを作れない。ファッション業界は、そういう世の中のあり方から変えていかないといけないと思います。

「自分の“好き”を表現すべき
マーケティング先行では続かない」

WWD:自分自身がまだ「NEXT LEADER」世代だったころを振り返って、若い人にメッセージを。

山井:10年ほど前は、自分がファッション業界をよくしたいという思いを相当強く持っていましたね。時代を作ってやるんだと思っていました。

佐々木:仕事を通し世の中をよくしたいという目的はみんな一緒だと思います。その山(目的)に、自分は人とは違う登り方をしたいと思っていました。例えば、当時はインポートブランドの日本での紹介のされ方にすごく違和感を感じていて、それとは違うやり方を模索して、「アー・ペー・セー」との合弁会社を立ち上げたりしました。

近藤:当時は昼も夜もなく働いて、手痛い失敗を繰り返しながら「いつか見ていろ」と思ってやっていました。ファッションが大好きで、やりたいことや表現したいことがあるなら表現すべきです。そうした思いを抜きに、売れるかどうかのマーケティングで始めたようなものは続きませんから。

齋藤:勤め始めて5年間ほどは思うように仕事ができず、自分のクリエイティビティーが略奪されていくような感覚がありました。社会に出たばかりのころはみんな同じように感じるのではないでしょうか。でも、自分のやりたいことがビジネスとして表現できるようになると楽しくなってくる。そのためには勉強も大事です。何も分からない人には仕事を任せられません。

伊藤:元来好奇心旺盛だからというのもありますが、どんなことに対しても難しい、怖いと尻込みせずにやってきました。今考えると、それを支えてくれた大人がとても寛容でしたし、自分は今そういう存在になれているかとは常々考えます。若い皆さんにも、好奇心を大切に挑戦していってほしいですね。


【現在、公募も受け付け中】

「MOVE ON」では、「我こそは、業界の発展に貢献するネクストリーダーだ!」という自薦や、「業界の未来に、あの人は欠かせない」という他薦を募集しています。締め切りは2022年1月10日です。アツい想いやポートフォリオとともに、ぜひエントリーしてください。

問い合わせ先
ルミネ代表電話
03-5334-0550

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業界のトップ経営者ら5人が語る「若手に期待すること」 ルミネ×WWDの次世代応援企画「MOVE ON」

 「WWDJAPAN」はルミネと共に、ファッション&ビューティ業界の次世代を応援するプロジェクト「MOVE ON」をこのたび開始した。「WWDJAPAN」が2017年に立ち上げ、業界の未来を担う人材を讃えてきた企画「NEXT LEADER」も、今年は「MOVE ON」の中で実施。受賞者は22年2月14日号で発表すると共に、3月2日に開催する「Next Generations Forum」にも登壇いただく予定だ。編集部の推薦や公募で募った候補者の中から受賞者を選出するのは、業界のトップ経営者らで構成するアドバイザーたち。今回は業界の中核を担う5人のアドバイザーに、「MOVE ON」や候補者に望むことを聞いた。

※アドバイザーは今後追加発表予定


WWD:「MOVE ON」にどんなことを期待しているか。

佐々木進ジュン社長(以下、佐々木):ビジネスの原動力はクリエイションです。新しい文化や考え方、価値観が生まれた時に、結果として経済はついてくるもの。ただ、現状は文化全般でリバイバルが多いし、何かと何かの掛け合わせであるリミックスが中心です。焼き直しではなく全く新しいものが出てくると、世の中もファッション業界も活性化していくと思います。「MOVE ON」が、そういった新しい価値観が出てくる場になればと期待しています。

近藤広幸マッシュホールディングス社長(以下、近藤):ファッション業界の次世代の話になると、音楽や映画の世界に比べてすごくマニアックだと感じます。業界内では知られていても、世の中は知らないというか。例えば音楽では、宇多田ヒカルさんが出てきたときに曲調にも歌詞にもゾクっとするものがあって、大人も子どもも魅了されました。ハンマーで頭を殴られるような、価値観をドーンと変えるような人がファッションでも出てきたら嬉しいですし、自分や自社も常にそうありたい。現状では、ファッションのクリエイションの部分は一部のマニアのもので、大量生産のブランドだけが大衆とつながっている印象です。消費者と直接つながって、クリエイションや情熱でみんなの心を刺激するような、メジャーな存在感の人に出てきてほしいですね。

山井梨沙スノーピーク社長(以下、山井):私はかつてファッションデザイナーを志し、アウトドア業界に転じました。ファッションは不確定さが面白くて、人の心を動かすモノが出てくる可能性は大いにあると思います。でも、そこにビジネスの商流がついてきていない。マスに向けた大量生産が小売りの支配的な商流としてあり、カルチャーを生み出す可能性のある新進ブランドの影響力はどんどん小さくなっています。D2Cも出てきてはいますが、ビジネスの手法の部分がもっと広がっていけば、業界としてよくなるんじゃないでしょうか。コロナによって従来のやり方にひずみが生じた今だからこそ、誰のために何をどう提供するのが最適かを考えて、新しいことができるはず。服をお客さまに提供すること自体が目的なのではなく、服はあくまで手段です。服によってどんな価値が伝えられるかをもっと掘り下げていくべき。これまで業界は、服自体を目的とする考え方に偏り過ぎていたのではないでしょうか。

齋藤峰明ルミネ顧問(以下、齋藤):ファッションはこれまで消費の最先端を担ってきました。それが行き着くところまで行って、このままでは続けられなくなっていますし、続けていってはいけない。このまま続けていけば地球環境は取り返しがつかないと多くの学者も指摘しています。消費社会を見直し、ファッションの役割や産業のあり方を転換していく必要があります。未来を担う世代の人たちには、われわれ世代がやってきたこと、やっていることを自由にどんどん批判してほしい。それを真摯に受け止めたいし、受け止める体制を業界として作ることが重要だと思っています。

佐々木:イノベーションとは非常識が常識になることですよね。ひょっとしたら、われわれアドバイザーの尺度で良い悪いを判断すること自体が予定調和を招くのかもしれません。「ZOZOTOWN」が始まったときも、服がECで売れるなんて誰も思っていませんでしたが、それを信念でやり通してここまで大きくなった。今までの尺度では測れないような、全然価値観の違うアイデアを持った人が自由に動ける環境を作っていくことが大事だと思っています。「NEXT LEADER」の選出でも、私たちの中で一番反対意見の多かった人が、ひょっとしたら一番可能性があるのかもしれない。そのくらいの発想の転換が必要です。

伊藤純子ルミネプロジェクト戦略部担当部長(以下、伊藤):ルミネの中で長らく業態開発などを担当してきましたが、1を2にするのではなく、0を1にするようなマインドを持った人と組みたいと常に思ってやってきました。商業施設は、1を2にも3にもしていくのが仕事です。だからこそ、0からアイデアを生み出せる人たちのことを本当に尊敬していますし、どうやっても敵わないと強く感じてきました。マーケットの進化やお客さまの気持ちに沿って、新しいものを生み出せる人はまだまだいると信じています。そういう人たちにとってチャンスとなる場がたくさんあってほしい。「MOVE ON」もその一つです。

「たとえダメだと言われてもやる
そうでないと新しいものは生まれない」

WWD:候補者に求める資質や、若い世代に伝えたいことは何か。

近藤:今は若い人にとって大チャンスの時代です。今回アドバイザーを引き受けたのは、今はサブカルチャーがカルチャーに変わる瞬間だから。かつてはクラシック音楽がカルチャーで、ビートルズがサブカルチャーでしたが、今となってはそれが入れ替わっています。同様に、従来はサブカルチャーだったサステナビリティの考え方が、先進国全てがコミットするメインカルチャーになっています。地球環境を無視したブランドはもう認められません。時代がガラっと変わる中では、大企業も駆け出しのブランドもみんな1年生。当社だって、オーガニックコスメなどの事業を始めてからほんの10年ちょっとですから。ココ・シャネルだってそうですよね。彼女は服装で女性を解放しましたが、当時は「女性は家にいるもの」という価値観から、外に出て働くようにカルチャーが変わる瞬間だった。あの時代はデザイナーにとって大チャンスだったわけです。社会的なルールが変わろうとしているとき、やはりファッションがそれをリードしないと絶対いけない。世の中が変わっていくことを後押しするデザインや、そんなデザインのルールを生み出すべきです。サステナビリティが審査基準の全てではないですが、そうした考えが0の人が「NEXT LEADER」にふさわしいとは思わない。大手も若手も関係なく、みんなライバルという時代ですから、候補者から自分にはないアイデアが出てきたら心底悔しいって僕も思いますよ。

山井:ファッションはカウンターカルチャーで時代を作ってきました。時代に反発してやったことが多数派になって、それが流行になっていく。でも、最近はカウンターですらないものが多いです。「このやり方に沿ってやればそこそこ稼げる」という感じのものが中心で、オリジナルが生まれてこない。たとえダメだと言われても振り切ってやるような人じゃないと、新しいものは生まれません。今の若い人は平均的にすごくよくできるんですが、突き抜けるものが見出しづらい。これはファッション業界に限った話ではないですし、教育や幼少期の環境といった部分に根っこがあるのかもしれませんが。

佐々木:“生き方のヒエラルキー”じゃないんだけど、業界の中で有名なトップの人に憧れて仕事を始めた人たちは、必然的にその人の生き方や価値観をなぞって、その枠の中で考えてしまう。だからその人たちからは新しい価値はなかなか出てこないと思うんです。全く新しい枠組みで物事を捉え、ライフスタイル提案からクリエイションまでできる人が必要だと考えます。

齋藤:ファッションは本来何をやってもいいはず。それなのに若者が自由にやらないということは、できる環境ではないんだということです。日本には優秀なクリエイターがたくさんいますが、世の中が多様性と口では言いながら仲間外れにならないようなモノを求めているから、クリエイターは自由にモノを作れない。ファッション業界は、そういう世の中のあり方から変えていかないといけないと思います。

「自分の“好き”を表現すべき
マーケティング先行では続かない」

WWD:自分自身がまだ「NEXT LEADER」世代だったころを振り返って、若い人にメッセージを。

山井:10年ほど前は、自分がファッション業界をよくしたいという思いを相当強く持っていましたね。時代を作ってやるんだと思っていました。

佐々木:仕事を通し世の中をよくしたいという目的はみんな一緒だと思います。その山(目的)に、自分は人とは違う登り方をしたいと思っていました。例えば、当時はインポートブランドの日本での紹介のされ方にすごく違和感を感じていて、それとは違うやり方を模索して、「アー・ペー・セー」との合弁会社を立ち上げたりしました。

近藤:当時は昼も夜もなく働いて、手痛い失敗を繰り返しながら「いつか見ていろ」と思ってやっていました。ファッションが大好きで、やりたいことや表現したいことがあるなら表現すべきです。そうした思いを抜きに、売れるかどうかのマーケティングで始めたようなものは続きませんから。

齋藤:勤め始めて5年間ほどは思うように仕事ができず、自分のクリエイティビティーが略奪されていくような感覚がありました。社会に出たばかりのころはみんな同じように感じるのではないでしょうか。でも、自分のやりたいことがビジネスとして表現できるようになると楽しくなってくる。そのためには勉強も大事です。何も分からない人には仕事を任せられません。

伊藤:元来好奇心旺盛だからというのもありますが、どんなことに対しても難しい、怖いと尻込みせずにやってきました。今考えると、それを支えてくれた大人がとても寛容でしたし、自分は今そういう存在になれているかとは常々考えます。若い皆さんにも、好奇心を大切に挑戦していってほしいですね。


【現在、公募も受け付け中】

「MOVE ON」では、「我こそは、業界の発展に貢献するネクストリーダーだ!」という自薦や、「業界の未来に、あの人は欠かせない」という他薦を募集しています。締め切りは2022年1月10日です。アツい想いやポートフォリオとともに、ぜひエントリーしてください。

問い合わせ先
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ZOZO610(武藤貴宣)の喜び溢れるファッション人生^_^  特別編 憧れの武田邦彦先生に意見をいただきました(前編)

 「ファッション業界がもっと喜び溢れるようになるためにどうしたらいいのか」――ZOZO執行役員の武藤貴宣氏が、敬愛してやまない武田邦彦先生と対談。78歳の科学者ならではの視点で、ファッションおよびファッション業界の課題を指摘してもらった。今回は特別に無料公開でお届けする。(この連載のアーカイブはこちら

武藤:武田先生は、科学や環境問題、政治だけでなく、アートや美術に対してもすごく造詣が深く、さまざまなことをロジカルに科学的な根拠を持って説明されていて、本当に尊敬しています。ファッションやファッション業界についても、こうしたらいいんじゃないかというすごいヒントをいただけるのではないかと思い、今日はお時間をいただきました。

武田:自由に言わせてもらえば、ファッションというのはやはり名前が良くないんでしょうね。カッコつけているのか、英語を使いたいのか、フランスの影響なのか分からないけれど。「俺たちだけでやればいいよ」という態度に見えるんです。ファッション業界自体がそう見えますね。

武藤:いきなりガツンときました!? (笑)

武田:じいさんをモデルとして出してもいいのか。そこが一番、ファッションで問題だと思います。要するにファッションは特別な人のものなんです。日本人が1億2000万人いたら、1000万人ぐらい相手にすればいいやという感じでやっているように見えます。ZOZOさんはそういうのを覆したんでしょうけど。

武藤:僕たちはただ洋服が好きで、やっていたらこうなっていたというのが正直なところです。社員の多くはもともとZOZOTOWNのユーザーで、楽しそうだからと集まってきていて。ただ、今は商品取扱高で年間4100億円ぐらいの規模感でやっているので、当然ですが責任ある立場ですね。

武田:非常にいいモデルだったからこそ、これだけ受け入れられたわけだから。社会的責任がありますよね。

武藤:そうですね。

武田:今日はわざとこういう服を着てきたんです。汚い色。ブランド品ですよ。だけど映えない。なぜこういうふうにしたかというと、私の知るところでは今、アルバイトなどは除いての統計だけれど、20歳から50歳までの30年間の収入の平均というのが、だいたい年間590万円から600万円ぐらいなんです。一方、50歳から80歳の30年間の収入の平均もほぼ一緒で、せいぜい10万円程度違うぐらい。教育費負担を引いたら、可処分所得はお年寄りのほうがずっと高いんです。そして、20歳から50歳までが所有している資産額は平均1300万円。かたや50歳から80歳の資産は平均で4300万円なんです。

 加えて今年、50歳以下の女性と50歳以上の女性の人口が多分、一緒になるんです。男性は少し遅れるんですが。さらに一昨年、一昨々年、50歳を超えた人の平均余命が50年を超えまして。ということは平均100歳。50歳になった人はあと50年生きるということになっています。

 日本には昔から、「隠居」というのがあったんです。余生を基に現役を決めていて、昔は男性の平均寿命が70歳だったから55歳が定年だったわけです。つまり引退後の10年が余暇です。旅行だとかゲートボールだとかに費やして、残りの5年は死ぬ準備。あまり活動できなくなってから死ぬまでの間の年数は正確に測定されていて、統計上は6年なんですけれど、一応5年。それで15年。年金も老人施設や病院の数も旅行会社のプランも全部この余生15年に合っていたのですが、今はもう全然合わないんです。

武藤:なるほど。

武田:そこで最大の問題は、50歳以降をどう生きるかが決まってないということなんです。今までは、結婚して、家を持って、子どもができて、その中で服でも生活でも選んでいくわけです。基本的な概念は誰が作っていたかというと、小説家なんです。皆、小説を読んだりしながら結婚したらどうの、家を持ったらどうの、どこに住んだらどういう生活を送るかのイメージを頭の中に持っていました。そこには、人生の楽しさもある。悲しさもあって、失敗もあるし成功もある。ところが、50歳以上はそのイメージがないんです。

武藤:手本がないということですね。

武田:自分の人生をどう送るかのイメージがないんです。50歳すぎの女性に聞くと、誰もイメージを持っていない。真っ白です。

「ビジネスは必ず幸福とつながっている」

武藤:どうしたらいいのでしょう。

武田:まず必要なのは、小説家に小説を書いてもらうことです。今、50歳から100歳の人が資産4300万円と収入があっても使わないのは、自分が着たい服や住みたい住宅など、欲しいものが分からないんです。もっと言えば、老人には要らないんです。だから、買う意欲ももちろんない。80歳のじいさんに「畳を替えたらどうですか」って言っても、「何言ってんの」って。「俺、もう死ぬばかりだから、そんなの要らないよ」とくるわけです。それが非常に大きな問題です。

 人生そのものの提案、それは企業から見ればビジネスでしょうけれど、僕から見れば老人を幸福にすることなんです。老人が生きている意味がある、そういう社会の像をまず見せる。一刻も早くやるべきです。僕は45歳のときにそれに気が付いたんです。当時は大企業の出世頭で、このままいったら万々歳。ところが、45歳のときに「老婆の一時間」という随筆を書いたんです。

武藤:周りの人がその人を「老婆」扱いするから、その人が「老婆」になってしまう。若いときの1時間も老婆の1時間も価値は一緒だという内容ですよね。

武田:そう。それを書いたときに自分で気が付いて。「なんだ。僕には50歳以上の人生ってないじゃないか。役員になってごますって、定年ちょっと延ばしてもらってゴルフして、旅行に行って死ぬだけだ」って。これ、人生じゃないです。

武藤:ドキ!自分も大丈夫かな(笑)。

武田:それで、50歳でばっと会社を辞めて、60歳から90歳までの30年間を、20歳から50歳までの30年間と全く同じように生活しようと決めたんです。だから今78歳ですけれど、僕は心の中では38歳だと思っているわけです。いつ死ぬか分かりませんよ。死亡の確率は上がってきますから。でも一番の大きな障害は、周りの目なんです。例えば洋服だったら、僕は随分、派手な色の背広を持っています。テレビのときは着ますが、普段は無理ですね。

武藤:「虎ノ門ニュース」で着ていらっしゃった真っ白なスーツ、カッコよかったです。

武田:ところが、そういう格好して街中で友達とご飯を食べようとなんかしたら、あっという間に排斥されちゃう。急にやっては駄目なんです。徐々にやっていかなきゃいけない。ZOZOさんみたいなところや、ファッションをやっているところが徐々に。僕も派手な格好をするときがあります。けれど、それは短時間だけ。あとは、こういう野暮ったいやつを着ているしかない。

武藤:僕個人の意見ですが、70歳ぐらいの人がおしゃれを楽しんだり、カッコよくするというのは、若者からすると、「70歳で!」というレバレッジが利いて、逆にカッコいいですよ。

武田:僕ら78歳のソサエティーというのは、みんな死んでいる世界なんです。お金を持っていても、使う先がない。例えば、市役所に文句を言ってくるのは、50歳以上の男性が多いそうです。それで、四日市の市役所がそういう人たちに、何か話をしてくれと僕に頼んできた。会場に行ったら200人ぐらいの白髪の、60歳から80歳ぐらいのじいさんばっかり。僕はもちろんいろいろ言ったんだけど、「(四日市はすごく洪水が多いから)雨が降ったらわれわれは土のうを担いで川のほうに行こうじゃない。市民はみんな川のほうから引き揚げてくるけど、僕らは川に行こうじゃないか。土のうを積むんだ。足りなければ僕らが寝るんだ。それで、そこで死ぬんだ」って言ったら、みんなわーって笑って。市役所の人が言うには、来るときはみんな下を向いていたけど、帰りはみんな上を向いていたって。つまり、精神的な生きがいとか喜びが必要なんです。まず小説家が書いてくれないと、思いが至らないというか、イメージが湧かないんです。

 それで、悪口言ったらなんだけど、ZOZOTOWNを見たら、全部若者。こっちの資産は4300万円だよと。ビジネスは必ず幸福とつながっていますから。幸福にさえしてあげればみんな買うんです。でも、きっかけがない感じなんです。(次回は2022年1月10日12時にアップ予定です)

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ホリデームードあふれる「ラルフ ローレン 銀座」 俳優・桜田通がアイススケートに挑戦!

 クリスマスには毎年、ユニークな体験型イベントを開催する「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」。2021年のホリデーキャンペーンは、「An occasion to celebrate“祝いの時”」をテーマに掲げ、再びドレスアップできるようになった喜びを表現している。
 ウィメンズ、メンズ、キッズの最新ホリデーコレクションが登場するほか、多彩なタッチポイントを通じてブランドの新たな体験方法を提案する。今年の11月からサンフランシスコやリヤドの各都市ではドローンによるライティングショーを行い、ニューヨークやロンドン、パリ、ミュンヘンでは、お祝いの菓子やホットチョコレートの提供などでパーティー気分を盛り上げた。
 ⽇本の各店舗でも期間限定のフォトブースを設置し、ホリデーらしい店内装飾とともにさまざまなコンテンツを用意している。12月10日には、「ラルフ ローレン 銀座」を訪れた俳優・桜田通がショップクルーズを楽しむ模様がライブ配信された。配信中には、併設されている「ラルフズ コーヒー(RALPH’S COFFEE)」のホリデー限定ドリンクや、特設アイススケートリンクでスケートに挑戦したほか、桜田が大切な人に贈りたいホリデーギフトをセレクトするなど、この時期ならではの楽しみ方を披露した。

限定ドリンクにアイススケート!
ホリデーシーズンの
「ラルフ ローレン 銀座」の楽しみ方

桜田通にクエスチョン!
理想のクリスマスの過ごし方は?

WWD:「ラルフ ローレン」に持つイメージとは?
桜田通(以下、桜田):昔は、“ポロシャツ!”というカジュアルなイメージが強かったのですが、大人になった今、いろいろと勉強させていただき、メジャーメイドスーツや「ラルフ ローレン パープル レーベル(RALPH LAUREN PURPLE LABEL)」などのラグジュアリーレーベルのアイテム、食器などのホームコレクションも気になります。“必要なものは全てそろう”“衣服だけではなくライフスタイルにも寄り添ってくれる”ブランドという印象です。
WWD:「ラルフ ローレン」のアイテムやブランドイメージで魅力を感じるポイントは?
桜田:歴史があり、「ラルフ ローレン」と言えば多くの人が知っているほど、時代や流行に対応しながらも一貫しているアイコン、スタイルを持ち続けているのがかっこいいと思います。

WWD:これまでに過ごしたクリスマスの思い出を聞かせてほしい。また、今年のクリスマスはどんなふうに過ごしたい?
桜田:最高というほどではないのですが、現場で過ごした時にささやかなケーキやチキンなどをスタッフの皆さんが用意して下さったのは優しさを感じました。
 今年こそはクリスマスにデートを、夜景の見えるレストランで……と理想はありますが、とにかくクリスマスまで時間がないですね(笑)。

WWD:今年頑張った自分にプレゼントをあげるなら?
桜田:もちろん「ポロ ラルフ ローレン」のニットです!あとは、大好きなアート作品など、普段はなかなか買えないような高価なものを買ってみたいですね。

WWD:「ラルフ ローレン」のアイテムをホリデーギフトとして選びたい理由とは?
桜田:幅広い方に似合うアイテムが多く、高級感がありながらもカジュアルさがあるから、プレゼントする側、受け取る側、両方にとって気持ちの良いプレゼントになると思います。

WWD:来年の目標はありますか?
桜田:何事ももう一段階だけでも、より世界で活躍できるよう努力していきたいです。それと同時に、近くにいる人とはもっと心の距離が縮まるような楽しい時間をたくさん過ごしていきたいですね。

桜田通が選ぶホリデーギフトは?

ホリデー仕様の
「ラルフ ローレン 銀座」から
ライブ配信

桜⽥通着⽤ ジャケット3万5200円、カーディガン4万8400円、ケーブルニット2万5300円、パンツ2万8600円/すべてポロ ラルフ ローレン(ラルフ ローレン0120-3274-20)、首に巻いたチーフ2万3100円、シューズ8万300円/ラルフ ローレン(ラルフ ローレン0120-3274-20)
村上要「WWDJAPAN」編集長着⽤ ニット7万2600円、シャツ1万8700円、デニム2万1000円、マフラー2万5300円/すべてポロ ラルフ ローレン(ラルフ ローレン0120-3274-20)
MC・ヤハラリカ着⽤ ニット4万2900円、スカート6万4900円、ベルト8万6900円/すべてポロ ラルフ ローレン(ラルフ ローレン0120-3274-20)

 ゲストの桜田通、「WWDJAPAN」編集長の村上で行われたライブ配信。この時期ならではの華やかなムードに包まれた店内を思う存分楽しみながら、「ラルフズコーヒー」のホリデー限定ドリンクのテイスティングや、「CYOカスタムショップ」を体験し、ギフト選びの楽しみ⽅を紹介した。
 クリスマスツリーとともにライトアップされたスケートリンクでは、桜田本人もスケートに挑戦。スケートをするのは小学生ぶりだと語る桜田だが、その腕前にはファンたちからも称賛のコメントが寄せられるなど配信中も盛り上がりを見せた。
 質問コーナーでは、視聴者から寄せられた「実際に持っている『ラルフ ローレン』のアイテムは?」「クリスマスの予定は?」といったコメントに桜⽥が笑顔で答え、視聴者を魅了した。

※価格は全て税込です
PHOTOS:TOMOYA TANY TANIGUCHI
問い合わせ先
ラルフ ローレン
0120-3274-20

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ジェフ・クーンズの作品が身近に 仏磁器ブランド「ベルナルド」がコラボコレクションを展示販売

 フランス発高級磁器ブランド「ベルナルド(BERNARDAUD)」は、東京・原宿のJPSアートギャラリーで、ジェフ・クーンズ(Jeff Koons)との新作コラボレーション作品「バルーン・ドッグ(ブルー)“を展示販売した。同ブランドとクーンズのコラボは8回目で、新作は世界限定799点。新作の他にも、今までのクーンズとのコラボ作品も展示販売する。クーンズといえば、今『ユニクロ(UNIQLO)』ともコラボしており、アート愛好家以外にも認知度がアップしている。クーンズとの長年のコラボについて、6代目のアーサー・ベルナルド(Arthur Bernardaud)=ベルナルドジャパン社長に話を聞いた。

WWD:クーンズとコラボをスタートしたきっかけは?

アーサー・ベルナルド=ベルナルドジャパン社長(以下、ベルナルド):クーンズとのコラボがスタートしたのは2013年。彼がベルサイユ宮殿に巨大な花を使用した作品を制作したときから。彼は『ベルナルド』のファンで、当時社長だった祖父のミシェル・ベルナルド(Michelle Bernardaud)にアプローチがあり、その作品を白い磁器のベースで再現したのが始まりだ。その後、『バナリティ・シリーズ』のテーブルセットを制作。『バルーン・ドッグ』のプレートや『バルーン・スワン』『バルーン・モンキー』『バルーン・ラビット』などをコラボで制作し、昨年には『ダイヤモンド・レッド』が登場した。それに続くのが「バルーン・ドッグ(ブルー)」だ。

WWD:最新コラボの限定数が799なのは?

ベルナルド:クーンズの希望からだ。彼の作品はとても高価で、美術館でしか見ることができない。彼は、もっと幅広い人に作品を家で楽しんでもらいたいと思っている。多くのコピーがあるが、「ベルナルド」とのコラボ作品はオリジナルのプロポーション、カラー、ミラー効果を完璧に再現したクーンズのお墨付きのものだ。

WWD:8回目のコラボということだが、製造の過程は?

ベルナルド:今まで、いろいろなコラボ作品を製造してきたが、サイズやプロポーション、カラーが異なるため、今まで蓄積してきた製造工程をそのまま当てはめることはできない。素材作りから、焼く温度、カラーの出し方、ペイントの仕方など、毎回カスタマイズしているといってもいいくらいだ。

WWD:どのような層が購入して行くか?

ベルナルド:クーンズのファンやアート好き。若い富裕層なども投資目的で購入する。なぜなら、われわれのコラボ製品はオークションハウスなどで再販されるからだ。

WWD:コロナ禍の商況は?

ベルナルド:グローバルでは好調だ。“おうち時間”で百貨店などの売り上げも好調。 B to Bでは、ホテルはコロナの影響で不調だが、それ以外は「ゲラン(GUELAIN)」のハイエンドの“オーキデアンペリアル”のクリームやセラムのパッケージなどを“金継ぎ”のコレクションを用いて手がけたし、10月にオープンした「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE & GABBANA)」のパリ旗艦店の外壁を手がけたりした。

WWD:日本市場の商況は?

ベルナルド:21年の年商は前年の2倍以上になった。18年にジャパン社ができたばかりなので、ある意味当然のこと。日本では、フランスの磁器はあまり知名度がない。だから、雑誌などのメディアを通じて、より多くの人々にその魅力を知ってもらえるようにしている。まだまだ、時間がかかると思う。20年に日本でもECをスタートし予想通りの売り上げだ。SNSでの発信も行っている。約8割が新規顧客だ。出店が滞っているのが残念。来年には旗艦店をオープンできればいいなと思っている。BtoBに関しては、19~20年は東京オリンピック需要で好調だったが、今年はコロナ禍の影響でホテルのオープンなど大きなプロジェクトが減り不調。だが、回復してきている。

WWD:今後の戦略は?

ベルナルド:日本市場では、ギフト用のブランドとして確立したい。また、テーブルウエアだけでなく、ジュエリーやランプ、家具といったものも提供していくつもりだ。

WWD:「ベルナルド」が提案する豊かな“おうち時間”とは?

ベルナルド:家族や友人と美味しい料理を楽しむことが至福の“おうち時間”だと思う。クラシックからモダンまでさまざまなスタイルの製品があるので、好みで選んでもらえるはずだ。

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“違い”をパワーに IMALUが運転する「MINI」で “ドライビング・ディスカッション”

 ひと目で認識できるアイコニックなデザイン、コンパクトなボディにパワフルな走りを凝縮した「MINI」は、1959年のデビュー以来世界中で愛され、進化を続けてきた。そんな「MINI」が新たに掲げたブランドアティチュードが、“BIG LOVE”だ。世界的に発信される同テーマを日本ではもう少し噛み砕き、「みんなの違いを、みんなのパワーに。」というキーメッセージとして発信している。“BIG LOVE”を体現するスペシャル動画コンテンツ“「MINI」ドライビング・ディスカッション”を、「WWDJAPAN.com」と「MINI」のウエブサイトで公開する。ハンドルを握るのはタレントのIMALU。助手席には「WWDJAPAN」編集長の村上要が座る。「初めまして」から始まる2人の価値観がぶつかり合う。

IMALUが語る「MINI」の魅力

 “「MINI」ドライビング・ディスカッション”は、“BIG LOVE”のメッセージを体現する日本オリジナルコンテンツだ。建前で語られることの多い日本の文化の中にあって、車内というクローズドな空間であれば本音で語り合いやすくなることを狙い、企画された。自分の意見を相手に伝えること、そして自分と違う意見を認め合う大切さを提案する。年齢や職業、ライフスタイルも異なるIMALUと村上だが、初めての愛車が「MINI」という共通項を持つ。IMALUは以前、赤色の「MINI」に乗っていたという。「小柄な私でも運転しやすいのがお気に入り。ハンドルを握った時の高揚感は『MINI』ならではです。機能やデザインがアップデートされても、根幹の魅力はずっと変わらなくて愛おしい。街で『MINI』を見かけるとつい手を振りたくなっちゃいますね」と笑う。

より実用的にスタイリッシュに進化

 小回りが効き、狭い市街地でも思いのままのドライビングをかなえるボディサイズは、「MINI」が持つ大きな魅力の一つだ。一方で高速かつ低重心なハンドリングによる力強い走りは、“ゴーカート・フィーリング”とも形容される。3気筒と4気筒の“ツインパワー・ターボ・エンジン”は瞬時にトルクを発生させ、加速力を発揮。快適な乗り心地でありながら、ダイレクトな操作感と力強い疾走感こそ、「MINI」が支持され続ける所以だ。
 進化を遂げたアイコニックなフロントフェイスにも注目したい。ヘッドランプを囲う“LEDデイライト・リング”によって、「MINI」らしい“丸い目”がさらに強調された。エンブレムデザインはそのままに、マットなブラックでよりスタイリッシュな印象に。“The New MINI 3 Door”は、ダイナミックなバンパーとフロントデザインが際立つ。ヘッドライトの下に配置された新たなエア・カーテンは、燃費向上に大きく貢献している。
 デザインに定評のある「MINI」は後ろ姿にも抜かりない。ユニオン・ジャックをあしらったリア・ライトには、イギリス生まれというアイデンティティに加えて、大人の遊び心まで見て取れる。

正解がないから面白い!?
“ドライビング・ディスカッション”を公開

 最初のトークテーマは、「日本は自分をさらけ出しやすい?さらけ出しにくい?」というもの。高校時代にカナダに留学していたIMALUと、ニューヨークでの生活経験を持つ村上。「日本では何かを決める際に、多数決という方法が多いように感じる」と話すのはIMALUだ。カナダでは『君はどう考える?』という投げかけが多くカルチャーショックを受けたという。村上からは「“カッコつけがち”なファッション業界も、失敗もさらけだすことで共感を得られることもあるのかもしれない」などビジネスの話にも広がった。
 続いて、「日本社会にフェムテックはなじむ?なじまない?」というテーマへ。音声メディアやイベントなどでフェムテック関連の情報や考えを発信しているIMALU。「フェムテックという言葉自体は最近の言葉ではあるけれど、生理や妊娠・出産は女性の体に自然に起きることだからこそ、もっと当たり前に語り合いたいですね」と話す。「日本に限らず女性として生まれた人にとって(フェムテックは)助けてくれるし、必要なこと」と語るIMALUに対して、村上は「いずれは、男性のための“オムテック”(村上による造語)という概念も生まれるかもしれない」と締め括った。
 最後のトピックスは、「期待されるのはうれしい?つらい?」というもの。超がつくほどの有名な両親の元に生まれ、芸能界デビューをしたIMALUが、不安や葛藤といった感情をどのように乗り越えていったかについても深掘りする。熱いトークセッションの全貌は動画でチェック。

※運転時にはスニーカーに履き替えています
※車内に設置したカメラは動画撮影のために用意したものです
※こまめな消毒と換気を行い、運転席と助手席の間に仕切りを設置するなど感染症対策の元に撮影をしました
MODEL:IMALU
PHOTOS:KAZUHIRO FUKUMOTO
MOVIE:KEIICHIRO TOKUNAGA
STYLING:TAKAYUKI SEKIYA
HAIR & MAKEUP:CHIHIRO(TRON)
問い合わせ先
MINI カスタマー・インタラクション・センター
0120-3298-14

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大草直子が「アマーク マガジン」を刊行 “雑誌”にこだわった理由に迫る

   ファッションエディターでスタイリストの大草直子は10月末、雑誌「アマーク マガジン」(アマーク刊、税込1650円)を刊行した。大草氏が立ち上げたメディア「アマーク」からの発売で、運営するオンラインストア“アマーク ストア”をはじめ、代官山 蔦屋書店を筆頭とした大手書店のほか、アマゾンでも展開。12月1日現在、累計発行部数は1万6000部を突破している。全128ページという、読み応えたっぷりの本格的な雑誌に仕上がっている。ここでは大草氏に、「アマーク マガジン」に込めた思いと、あえて“雑誌”にこだわった理由を聞いた。

「WWDJAPAN」編集部(以下、WWD):「アマーク マガジン」創刊に至るまでの経緯は?

大草直子ファッションエディター兼スタイリスト(以下、大草):世代的にずっと雑誌で育ってきて、自分のキャリアのスタートも雑誌の編集者でした。遡ると中学時代の文集にも「ファッション誌の編集者になりたい」と書いていたくらい、雑誌が大好きなんです。けれどウェブに関わり始めたのも比較的早くて、人からすすめられるままにブログやインスタグラムを始めました。特にユーザーから寄せられた質問に対し、一つ一つ答えていくことに注力しましたね。そのコミュニケーションが楽しくて、おかげさまでフォローしていただけ
る方が増えました。

WWD:“ヤフー 知恵袋”みたいな感じ?

大草:まさにそうですね。アカデミックにいうと“各論”ですかね。でもここ数年「大人の女性のおしゃれとか、そもそもなぜおしゃれをするのかとか、ある意味哲学的なこと、もっと大きなことを考えなければいけない」と思うようになりました。それまで取り組んできたことが“赤ペン先生”だとすると、今後やるべきことは“哲学書の制作”ですかね。コロナ禍を経て、その思いはますます強くなりました。私は「大人の女性のおしゃれ=自分を好きになるティップス(秘訣)」だと思っているのですが、その部分を伝えるのがすっぽりと抜け落ちていました。私を今まで助けてくれた“おしゃれ”の根本を伝えるには、“枝葉”だけではなく“土の養分”の部分に取り組むことが必要で、それが雑誌だと考えました。

WWD:どういった雑誌を目指した?

大草:例えば2021年の秋冬だけ使える情報とか、そういった刹那的な内容にはしたくなかったですね。トレンドを追い過ぎず、普遍的に、読者にとっての“おしゃれ”の幹になるものを提供したいと思って作りました。その人が本来持つ豊かさや美しさ、朗らかさへの気付き、自分を好きになるヒントといった、かなりベーシックな要素を散りばめました。10年後、大げさに言うと100年後でも読める雑誌になっていればうれしいですね。

WWD:そもそもなぜ“雑誌”にした?

大草:時間をかけて考えてもらうメッセージって、送り手もそれなりの時間と労力とかけないとできない。例えばインスタグラムへの投稿は、私はいつも電車の中で書いていて、一駅移動する間に大体書き終えてアップするので、時間にして3~4分で仕上げています。そうすると、人の記憶にステイするのも3~4分といわれているんです。雑誌ははるかに長い時間をかけて作るので、それだけ長い時間ステイしてくれる。その間に考えてもらう、咀嚼してもらうことができるので、やはり雑誌がいいと思いました。

WWD:“紙”から“デジタル”に移行するメディアが多い中、あえて“紙”の雑誌にこだわった理由は?

大草:行間や余白にメッセージを込めるとか、もう1度読み返してもらうとか、雑誌ならではのことができればと考えました。あと、以前は今のように画集や写真集がオンラインで手軽に購入できる時代ではなかったので、よくスクラッピングをしていました。今はウェブでピン留めもセーブもスクショもできるけれど、ちゃんと空間に残しておくことも大事かな、という思いもありますね。さらに個人的なことをいうと、私はインクが沈んでいく様や、紙の感触や匂いなど、デジタルでは表現できない部分が好きなんです。フォトグラファーなどのスタッフの皆さんも共感してくれて盛り上がりましたね。

WWD:「アマーク」ではデジタル施策にも注力している。

大草:そうですね。今はデジタルがアナログを補完する時代ではないし、アナログがダメな時代でもない。両者が全く違う性質で存在している時代だと思うんです。ですので、双方の良いところを全部使っていくことが、今ならできると考えています。

WWD:コンテンツでこだわったポイントは?

大草:私たちが雑誌を出すと聞いて、私のSNSのように「大草さんがいっぱい載っている」紙面を想像した人も少なくないかと思います。ですが、私は一切出ていません。SNSでは“私のようなリアルな日本人体型の女性が着るとどう見えるか”を示すために登場していますが、雑誌ではリアルを感じてもらうより、イマジネーションを働かせてもらうことに重きをおきました。

WWD:創刊号を作り終えた感想と、今後の発刊計画は?

大草:創刊号を作るにあたり、これまで関わってきたフォトグラファーやライターなど、さまざまな人が協力してくれました。また、最近はリース先を絞っているファッションブランドが多い中で、どのブランドも快くリースしてくれて、本当に“これまで仕事を続けてきたご褒美”的な一冊だと思っています。今後は、年に2回くらい刊行していきたいと考えています。今後は是非、“スナップ”をやりたいですね。

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30周年を迎えた芦田多恵デザイナーに、学生から30の質問

 芦田多恵デザイナーがコレクションデビュー30周年を迎えた。1991年に「ミスアシダ(MISS ASHIDA)」で初のコレクションを披露し、2012年に「タエ アシダ(TAE ASHIDA)」をスタート。18年には故・芦田純デザイナーから「ジュン アシダ(JUN ASHIDA)」を受け継いだ。いずれのブランドも、上質な素材と手仕事を生かした加工、時代の空気を反映したクリエイションを続けている。

 そんな芦田デザイナーのパーソナリティーに迫るべく、都内の大学でファッションサークルに所属する学生4人が、インタビューを敢行した。好きな食べ物から尊敬するクリエイター、父親との関係、今後のアドバイスまで、等身大な30の質問をぶつけた。

―「タエアシダ」は来年で30周年を迎えます。当初から長く続けるつもりでしたか?

芦田多恵デザイナー(以下、芦田):そんなつもりはなかったです。私、目の前のハードルを飛び越えることに必死で、10年後の自分とかブランドとかを一切考えられないので(笑)。

―10月には、「タエアシダ」2022年春夏コレクションをリアルショーで披露しました。どんな思いでリアルショーに挑んだのでしょう?

芦田:世の中にファッションのパワーを再確認してほしい。その使命感で突き進みました。

―当日の感想は?

芦田:本当に楽しかった。私だけじゃなく、ヘアメイクやモデルたちもテンション上がりっ放し。いつもはクールな販売責任者もボロ泣きでした。ここまでの感動はデジタルではまだ生み出せません。

―ショーでのこだわりは?

芦田:一番はモデル。本当に体がきれいで、ちゃんと歩ける人は実はかなり少ない。オーディションは業界でもかなり厳しい方だと思います。

―デジタルコレクションのフル3D映像や複製のアイデアなどはどこから生まれるのでしょうか?

芦田:「こんな感じで撮りたい」と漠然と話していたら、それに適したスタッフやアーティストとご縁があって、広がっていく感じです。

―新しい技術に抵抗はありませんか?

芦田:全くないです。自分でコントロールすると想定内のものしかできないから、むしろ知らない技術やクリエイターとやる方が面白いでしょう?

自分の言葉で説明できないなら
その作品の価値は半分になる

―デザインのインスピレーション源は?

芦田:日常の全て。「このデザインはここから採用しました」と明確に言えるものはあまりないです。それもできるけど、つまらないし。今、皆さんとお話していることも、何かと重なって、クリエイションにつながります。

―お仕事で行き詰まったとき、どうやってリフレッシュしていますか?

芦田:違うデザインをしたり、思い切って気分転換したり。そのまま続けても、間違った選択を続けてしまうだけです。

―1シーズンに試作も含めてどれくらいデザインしていますか?

芦田:最終的に発表するコレクションの3倍はデザインしています。最近はiPadで描いていて、違うと思ったらすぐに削除しちゃうから、正確には分かりませんけど。

―iPadなのですね。

芦田:年上のアーティストがiPadで絵を描き始めたと聞いて、すごく衝撃を受けて。コロナでステイホームしているうちにマスターしました。

―「ジュンアシダ」と「タエアシダ」はデザインの手法にどんな違いがありますか?

芦田:全然違います。「タエアシダ」はでき上がったデザインに対して、「これはなんだろう」と問いかけながら、ゴールを模索します。一方で「ジュンアシダ」は、デザインチームから上がって来たものを第三者的に判断するから、「これはもっとドレッシーな素材でやるべき」「これはこの色がいい」と自分でも驚くほどクリアに進んでいきます。

―近年はメンズウエアにも挑戦しています。ウィメンズと違う面白さはありますか?

芦田:メンズを手掛けて6シーズン目にして、一つ大きな発見がありました。女性は「きれい」「かわいい」があれば、理屈はいらない。でも男性はそれだけじゃダメで、なぜそうなったのかという理屈や、背景の説明が必要なんです。突き詰めれば生態の違い。こういった気づきが楽しいです。

―男女の違いで言えば、私たちのサークルには男性部員も多く、パンフレットの進行などでレイアウトの説明を求められることもあります。理屈なしで作った場合、どう回答すればよいでしょうか?

芦田:「自分で作ったものを自分の言葉で説明できないなら、その作品の価値は半分だと思いなさい」――私がアメリカの大学でよく言われた言葉です。アーティストは自分の感覚で作品を作るし、アーティスト同士なら分かりあえるかもしれない。でも、世の中はそうじゃない。クリエイティブマインドでない人に、自分の言葉で説明して伝えるというプロセスがとても重要です。細部まで理由をつける必要はないけど、コンセプトだけは自分の言葉で伝える。これを意識して、説明する癖をつければ、自然と身につきますよ。

意外にも
「あんまりオートクチュールはやっていません」

―「タエ アシダ」のメンバーは何人いますか?

芦田:アシスタントが2人で、その下に数人のスタッフ、ほかに製図と縫製の担当者がそれぞれ20〜30人です。「ジュン アシダ」は私がクリエイティブディレクターで、 4〜5人くらいのデザインチームを統括しています。

―パターンは自分で引くのでしょうか?

芦田:引きません。でも、パターンを踏まえてデザインしています。服を学んだ美術大学(米ロードアイランド造形大学)のカリキュラムが、デザインだけでなくスカートからオーバーコートまでパターンも習得する内容だったから、頭に入っています。

―芦田デザイナーにとって黒はどんな色?どんなときに使いたくなりますか?

芦田:その人がむき出しになり、デザインが際立つ色。クリエイティブなものを作りたいときに使います。

―「タエアシダ」はどんな人に着てほしいですか?

芦田:洋服のみならず、ライフスタイルに軸を持っている人に着てもらいたいです。あとは、社会で活躍する都会的な女性にも支持されたらうれしいですね。

―オートクチュールの面白さはなんですか?

芦田:実はあんまりオートクチュールはやっていません。父も、“高級服といえばオートクチュール”の時代に、「理想的な体型をイメージした洋服に、その人の体を入れた方が美しいのでは」という発想で高級な既製服を作りました。私も同じです。クチュールの技術者もいますし、たまに作りますが、基本はプレタです。

―アパレルで働く中で大切にしていることは?

芦田:ものづくりかな。産業だから、利益を上げるとか、大量に作って安価にするとか、いろいろな戦略もありますが、私たちはやりません。

―サステナビリティな取り組みはしていますか?

芦田:いいものを無駄なく作り、できるだけ値段を抑える。この基本姿勢を続けていくことが一番だと思っています。ほかに、具体的な数値目標の掲出や、洋服を回収する仕組み作りも進めています。

―Z世代に向けてやりたい企画は?

芦田:Z世代の人って、日本をすごい国だと思っていないと思う。でも私たちバブル世代は、 “ジャパンイズナンバーワン”の気持ちで育ってきた。順位はどうでもから、日本は今もいい国で、ものづくりも素晴らしいというメッセージを届けたいです。

―好きな食べ物はなんですか?

芦田:基本何でも食べます。和洋中全部好き。でも、「今後それしか食べられない」と言われたらパンとチーズを選ぶかな。

―毎日欠かさないルーティンは?

芦田:メディテーション。コロナになってから、毎朝20分くらいやっています。正直、“無になる”とかよく分かんないし、雑念だらけ(笑)。ただ、頭の中の状態がよく分かるのがいい。

―尊敬するデザイナーやクリエイターは?

芦田:父はもちろん、クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)とイブ・サン=ローラン(Yves Saint-Laurent)もすごく好きです。ラクロワはまず、絵が天才的にうまい。彼とわが家は深い関係があって、彼が20代で無名のころ、トレンドを日本に持ってくる仕事をお願いしていました。次はこういう色が来る、シルエットはこんな感じ、とか。そのムードを伝えるため、自分で絵を描いてくれていて、それが本当に素晴らしかった。私はデビュー前に2回彼の元で研修もさせてもらって、今でもいい関係です。

 サンローランは、もはや説明不要。世の中には、時代を一歩先、半歩先に進める使命を持った人がいる。彼はその使命を持っていました。

―憧れの女性像は?

芦田:自分のキャリアと社会貢献のバランスが取れていることかな。あとは、どんなライフステージでも、自分に対する美意識を持ち続ける人がやっぱり素敵だと思う。

―80年代や90年代はSNSやネットがなく、能動的な情報収集が普通でした。個人的に、今よりもおしゃれな人が多かったと思うのですが、芦田デザイナーはどう考えますか?

芦田:私はむしろ今の方がおしゃれだと思います。80年代、90年代は「これがトレンド」というアイテムをこぞって身につけて、みんな同じ格好をしていた。今は選択肢が広がって、自分の好きなものを、自分のセンスでコーディネートしています。ただ、薄味にはなったかも。でもそれが悪いことではなく、そういう時代なのでしょうね。

―幼い頃からファッションデザイナーを夢見ていたのでしょうか?

芦田:夢見るというか、“なるもの”だと思っていました。私は姉と二人姉妹で、姉はものづくりが大嫌い。私は絵を描くのが大好き。だから私がデザイナーになるんだなって。同級生からも「タエちゃんはデザイナーになるもんね」って言われていました(笑)。

―他の道に興味がわいたことはありませんでしたか?

芦田:写真に興味を持ったことがあります。アメリカの大学でフォトグラフィーの授業を受けて、すごく楽しかった。しかも父の友人で写真界の巨匠に自分の作品を見せたら、絶賛してくれて。「デザインよりも写真に進むべきかも」とさえ思いましたが、次の作品を見せると「前の方が良かった」とあっさり言われて、踏ん切りがつきました。

―日本と海外のファッション業界の違いは?

芦田:日本は新しい人を見出すことに特化している。ファッションはビジネスだから、インキュベーションはとっても重要。でも、長くファッションに携わっている人にも目を向けないと、上っ面な産業になっちゃう。そのバランス感覚が必要かもしれません。

―故・芦田淳デザイナーはどんな父親でしたか?

芦田:すごく子煩悩な人だった。私が中学でバスケ部に入りたいと言ったら、「土日に試合があるでしょ?土日しか一緒にいられないのに、そんな部活はダメだ!」と言われたくらい(笑)。

―デザイナーとしては?

芦田:本当に不思議な人でした。30代前半で皇室の専属デザイナーになり、80歳までものづくりがほとんど変わらなかった。動物的な勘が働いて、いろんなことが最初から分かっていたのかな。

「昔がよかった」は一度もない
毎回“楽しい”を更新し続ける

―30年間で最も印象に残っているコレクションはなんですか?

芦田:「ミスアシダ(MISS ASHIDA)」の1996年春夏コレクションです。“お見合い服”として知られるスイートなブランドで、91年に父からデザインを受け継ぎました。ずっと同じイメージでデザインしていましたが、ある日、「父の真似事で洋服を作るのはもういいや」と、アニマル柄を多用したワイルドなコレクションにしちゃいました。賛否両論があり、離れるお客さまもいたけれど、ブランドを新しく知ってくれたり、「いいじゃん、こういうの」と支持する人も多かった。それ以降、“作りたいものを作る”というマインドで、今もデザインを続けています。

―30年間で辞めようと思った時期はありましたか?

芦田:ありません。そもそも、辞めるタイミングがない(笑)。コレクションが終わった次の日には来季の生地を探し始めますから。ものづくりはもちろん辛いけど、最近はその苦しみも楽しめるようになってきた。父は最後の10年くらい、「生みの苦しみがなくなった。楽しくてしかたない」と言っていました。今はそれを目指しています。

―最も楽しかったコレクションは?

芦田:最新の22年春夏コレクションですね。「昔がよかった」と思うことは一度もなく、毎回“楽しい”を更新し続けています。

―チャレンジングな姿勢を保つ秘訣は?

芦田:「これが必要」と確信したときらすぐにやること。昨年は、ラウンジウエアやホームウエアなどに特化した新ブランドを3つ立ち上げたし、メンズウエアも「今シーズンからやります」って宣言して、勉強しながら仕上げました。いつかやろうじゃ絶対にやらないし、火事場の馬鹿力が必要なんです。

―今後チャレンジしたいことは?

芦田:まだ降りて来てません。降りて来てたら、すでにやってます(笑)。

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「#FR2」の石川涼「D2Cブームは長く続かない」 内田理央、本気でTシャツビジネスに挑むVol.4

 モデルや女優として活躍する内田理央の普段着は、Tシャツやパーカなどカジュアルな装い。そこで本人の感性と個性を存分に生かしながら、ファッション性やプロセス、ビジネスにまでこだわった「本気のTシャツビジネス」をスタート!「WWDJAPAN」が各界の先駆者を紹介することでTシャツ、イラスト、ビジネスについて学びながら、「名前貸し」とは全然違う、本気のタレントによるアパレルブランドを目指します。第4回は「#FR2」などを手掛けるせーのの石川涼社長に迫ります。

内田理央(以下、内田):ファッションブランドを立ち上げたきっかけは?

石川涼(以下、石川):中学生の頃からファッションに興味を持ち始め、20歳で上京しました。コネクションがなかったので、日雇いバイトをしながらアパレル関係の職を探し続け、OEM会社に就職をしました。24歳で独立して、5年間はOEMをしていたんですが、得意先に振り回される環境を変えるべく、ファッションブランドを立ち上げたんです。

内田:ブランド設立以降、消費者に認知してもらうために意識していることは?

石川:盛り上がっているマーケットを探して、そこに足りないものを作ることです。「バンキッシュ(VANQUISH)」は、渋谷のギャル男ブーム時に、彼らの専用ブランドがなかったので始めました。

内田:「#FR2」のような唯一無二なブランドを作り上げるにはそれらが重要なんですね。消費者が欲している物や、流行していることはどうリサーチしていますか?

石川:物にフォーカスするよりも、環境がどう変化しているかに注目することが大事です。「#FR2」設立当初は、インスタグラムが日本でそこまで流行していなかった。海外の友人に「文字より写真の方が面白いよ」と言われたんです。世界で勝負していくためには何が重要かを考えて、世界中が写真でコミュニケーションをしていることにSNSを通して気付いたんです。

内田:ブランド名に“#”が付いているのも先を見据えていたからなんですね。今だと誰もがSNSで使う記号になりました。

石川:インターネットで探す時代からSNSの“#”で検索する時代に変わっていくのではないかと考えて付けました。

内田:ブランドを続けていく上で重要なことは?

石川:スマートフォンを通して世界中のユーザーが商品を見ているので、日本のマーケットだけを意識していてはダメです。今はインターネットで服を買うのが日常になり、買い物が楽しみだと感じる人は少なくなったんじゃないかな。お客さまがワクワクしているのかを常に疑い続けないといけないです。

内田:オンライン上で服が売れる時代になり、ファッション業界への参入のハードルも低くなっているように感じますが、D2Cブランドについてどう捉えていますか?

石川:D2Cブランドは長く続かないと思いますよ。簡単にスタートできるから始めがちですけど、周りと同じ方向に行ったらダメなんです。今は売れるかもしれないですが、いずれ同じような服で溢れかえり、ブランド同士の差がなくなっていきます。ブランドの世界観も根付きません。D2Cが主流になればなるほど、店舗を構えているブランドの価値が上がっていきますし、外国人観光客が体感できる場がないから世界では勝負できない。内田さんがTシャツを販売するならインターネットで買えない方が売れます。セールも絶対にしない方がいい。周りと同じことをしていたら埋もれてしまうだけです。

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「#FR2」の石川涼「D2Cブームは長く続かない」 内田理央、本気でTシャツビジネスに挑むVol.4

 モデルや女優として活躍する内田理央の普段着は、Tシャツやパーカなどカジュアルな装い。そこで本人の感性と個性を存分に生かしながら、ファッション性やプロセス、ビジネスにまでこだわった「本気のTシャツビジネス」をスタート!「WWDJAPAN」が各界の先駆者を紹介することでTシャツ、イラスト、ビジネスについて学びながら、「名前貸し」とは全然違う、本気のタレントによるアパレルブランドを目指します。第4回は「#FR2」などを手掛けるせーのの石川涼社長に迫ります。

内田理央(以下、内田):ファッションブランドを立ち上げたきっかけは?

石川涼(以下、石川):中学生の頃からファッションに興味を持ち始め、20歳で上京しました。コネクションがなかったので、日雇いバイトをしながらアパレル関係の職を探し続け、OEM会社に就職をしました。24歳で独立して、5年間はOEMをしていたんですが、得意先に振り回される環境を変えるべく、ファッションブランドを立ち上げたんです。

内田:ブランド設立以降、消費者に認知してもらうために意識していることは?

石川:盛り上がっているマーケットを探して、そこに足りないものを作ることです。「バンキッシュ(VANQUISH)」は、渋谷のギャル男ブーム時に、彼らの専用ブランドがなかったので始めました。

内田:「#FR2」のような唯一無二なブランドを作り上げるにはそれらが重要なんですね。消費者が欲している物や、流行していることはどうリサーチしていますか?

石川:物にフォーカスするよりも、環境がどう変化しているかに注目することが大事です。「#FR2」設立当初は、インスタグラムが日本でそこまで流行していなかった。海外の友人に「文字より写真の方が面白いよ」と言われたんです。世界で勝負していくためには何が重要かを考えて、世界中が写真でコミュニケーションをしていることにSNSを通して気付いたんです。

内田:ブランド名に“#”が付いているのも先を見据えていたからなんですね。今だと誰もがSNSで使う記号になりました。

石川:インターネットで探す時代からSNSの“#”で検索する時代に変わっていくのではないかと考えて付けました。

内田:ブランドを続けていく上で重要なことは?

石川:スマートフォンを通して世界中のユーザーが商品を見ているので、日本のマーケットだけを意識していてはダメです。今はインターネットで服を買うのが日常になり、買い物が楽しみだと感じる人は少なくなったんじゃないかな。お客さまがワクワクしているのかを常に疑い続けないといけないです。

内田:オンライン上で服が売れる時代になり、ファッション業界への参入のハードルも低くなっているように感じますが、D2Cブランドについてどう捉えていますか?

石川:D2Cブランドは長く続かないと思いますよ。簡単にスタートできるから始めがちですけど、周りと同じ方向に行ったらダメなんです。今は売れるかもしれないですが、いずれ同じような服で溢れかえり、ブランド同士の差がなくなっていきます。ブランドの世界観も根付きません。D2Cが主流になればなるほど、店舗を構えているブランドの価値が上がっていきますし、外国人観光客が体感できる場がないから世界では勝負できない。内田さんがTシャツを販売するならインターネットで買えない方が売れます。セールも絶対にしない方がいい。周りと同じことをしていたら埋もれてしまうだけです。

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「アットコスメ」を共同創業した山田メユミと業界有志らが化粧品を経済的困難下の女性に無償配布

 国内最大のコスメと美容の総合クチコミサイト「アットコスメ(@COSME)」を共同創業した山田メユミと有志はこのほど、「コスメバンクプロジェクト(COSME BANK PROJECT)」をスタートする。まずは12月、全国約2万2000のシングルマザーら経済的困難を抱える女性の世帯に、化粧品メーカーが抱える余剰在庫となったコスメを詰め合わせ、支援団体などを通じて無償提供する取り組みのパイロットテストを実施。今後も「女性と地球にスマイルを」を合言葉に、行き先が決まっていない化粧品を、必要とする人の元に届けることで、コスメの余剰品問題に向き合いながらコスメが消費者に提供できる自分への自信や高揚感を届けたい考えだ。山田共同創業者と、想いを共有しプロジェクトの事務局長を務める藤田恭子ISパートナーズ代表に話を聞いた。

WWDJAPAN:なぜ「コスメバンクプロジェクト」を立ち上げようと考えたのか?

山田メユミ「アットコスメ」共同創業者(以下、山田):一番の理由は女性支援団体を通じて聞いた、「子どもの入学式や卒業式のようなハレの日にさえ、口紅のひとつも手元になくて、マスクで顔を隠して行くしかなかった」というシングルマザーの存在でした。ショックでした。これまで「化粧品は、女性のQOL(Quality of Life. 生活の質のこと)を高め、幸せをもたらすもの」という自負を持ちながら業界に携わってきましたが、「化粧品がないことで、女性を悲しい気持ちにさせてしまう」とは全く気づけていなかった自分を恥ずかしく思いました。一方、化粧品業界は余剰品という問題を恒常的に抱えており、これを完全にゼロにするのは難しい状況です。欲しいのに入手できない人がいる一方で、誰の手にも渡らず廃棄される化粧品が存在するんです。化粧品は嗜好品ですが、一方で社会コミュニケーションにおいて不可欠な必需品だと私は思っています。そこで入手できない人と、余剰となった化粧品を1つでも多くマッチングさせて手渡すことができたら、女性はもちろん、企業にも地球にも貢献できるのでは?と考えました。

WWD:化粧品はどのように集めた?

山田:プロジェクトに共感してくださった、主にセルフ商材を扱う化粧品・日用品メーカー様から、現行品や旧仕様品を寄贈いただいたり、店頭から未開封の状態で返品された製品を預かったりなど、品質にはなんら問題がないものの残念ながら再販が難しくなった良品を、「コスメバンクプロジェクト」事務局が「コスメ詰め合わせギフト」にしました。12月の初回は17社に参画いただき、スキンケアからベース&カラーメイク、ヘアケアまで幅広い商材を集めることができました。1世帯につき6~8点、「気持ちはコフレ」な詰め合わせギフトにしてお送りします。配送はセイノーホールディングス傘下のココネットにご協力いただき、宅食支援に取り組むフードバンクや母子寮、シェルターなどの女性支援施設を通じて女性たちに届けていただきます。すでに15万を超える化粧品が集まり、今回は2万2000ほどの世帯にお届けできる予定です。今回のトライアルパイロットテスト運用を踏まえ、今後は春と秋、その時に必要な化粧品をお届けできればと考えています。

WWD:再販が難しいとは言え、製品を無償提供する企業側の反応は?

山田:皆さん「女性たちのために何かできたら」という想いを強く持っていらっしゃいましたし、「コスメバンクプロジェクト」の理念に深く共感してくださっています。各社それぞれ環境問題に取り組み、環境に優しいエコシステムを考案・構築中でいらっしゃいますが、化粧品はリサイクルやアップサイクルが難しい商材。しかも流通の構造上、余剰品が生まれやすいのに有効活用の手段は多くありません。女性と社会、そして企業の「三方良し」な取り組みと捉えてくださいました。この取り組みが軌道にのったら、未出荷在庫が何割か削減できる企業もあるそうです。ご説明に伺った際、一番多くいただいた質問は「販売できなくなったものを提供してしまって良いのだろうか?」でした。企業側が言う通り、「余っている受け取ってくださった女性たちからもたくさんのお声を頂くと思います。そうした声を企業側にフィードバックすることで、活動に賛同くださる企業が増えればと思います。一番嬉しかったのは、参画を決めてくださった企業の社長さんが、他の企業の社長さんに話を広げてくださったことです。事前に概要を説明してくださっていたので、私たちの説明は最低限で済みました(笑)。まだスタートラインに立ったばかりですが、こうした支援の輪が企業間で連鎖的に広がっていったら、とても嬉しいです。

WWD:取り組みを担うのは?

山田:11月に一般社団法人「バンク・フォー・スマイルズ」を立ち上げ、複数の化粧品メーカーや運輸会社の役員、長年女性支援を続けていらっしゃる元国会議員ら、性別も年齢も多様な有志のプロフェッショナルと理事会を構成しました。NPO法人代表やメディア編集長など、さまざまな有識者のみなさまにもアドバイザーとしてご助言いただいています。また事務局をはじめとする運営チームには、「アットコスメ」を手掛けるアイスタイルのメンバーを含む、多くの有志の皆さんがプロボノ(職業上の知識やスキルを無償提供して社会貢献するボランディア活動のこと)で参画してくれています。

WWD:藤田さんは、なぜこの活動に参画したのか?

藤田恭子「コスメバンクプロジェクト」事務局長:私は、山田とは20年来の付き合い。「アットコスメ」を立ち上げ、ブレずに化粧品とユーザーを繋げる姿勢を貫き、そして、ここまで成長させてきた彼女の歴史を見てきました。さらに新しいことにチャレンジする山田のバイタリティと志に感銘を受け、サポートしたいと思い、このプロジェクトに参画しました。私は今、「アットコスメ」を中心としたウェブの運用やライティング、商品情報の登録を担うアイスタイルのグループ会社で代表を務め、千葉県流山市のサテライトオフィスを運営しています。朝5時~夜10時のうち、毎週20時間以上働くことができれば正社員として雇用している会社です。この会社も、山田が中心になって誕生しました。働くママは都心の本社では働きにくいけれど、自宅の近くなら働けるのでは?という発想です。私には子どもがいませんが、働くお母さんと一緒に仕事をして、改めて子育ての苦労を知りました。そして、困難な状況にあるお母さんの支援に繋がる企画に強く共感しています。

山田:私もワンオペで子どもを育てる母親として、「装うことへの罪悪感」を感じていた時期がありました。「子どもたちは、自分がしっかり育てなくちゃ」と肩に力が入ってしまうと、“自分に手をかける”ことを罪悪と思ってしまいがちで。そんな折、サブスクリプションで購入しているコスメのトライアルボックスが届いたら、とても嬉しかったんです。香りの良い入浴剤が入っていたときは、その日の夜のバスタイムが本当に充実して。シングルマザーには経済的な事情だけでなく、精神的な余裕のなさやプレッシャーから、「自分のケアなんてしてる場合じゃない」と思ってしまっている方も存在すると思います。そんな女性に思いがけずコスメが届いたら、きっと喜んでいただけるのでは?と思っています。振り返れば「アットコスメ」は、世の中にあるべきものを、その時代にたまたま自分たちが作っただけのようにも感じています。「コスメバンクプロジェクト」も同じです。「アットコスメ」が今日まで成長したように、業界内外の多くの皆さんとの共創によって、「コスメバンクプロジェクト」という支援プラットフォームを育てていきたい。女性、そして企業がエンパワーメントできれば、業界はより自信を持ってビューティの存在意義を社会に伝えられると思っています。

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期待の新星、“テキスタイルモンスター”羽生菜月が目指す先

 服や衣装のデザイナーにとってテキスタイルはパーツの一つに過ぎないが、服を単一のプロダクトとして考えた場合に目に入るほぼ全てを構成する素材でもある。ならば服のビジュアル表現を考えれば、テキスタイルを極めるのが一番ではないか。”テキスタイルモンスター”を自称する27歳の新進気鋭のテキスタイルクリエイター、羽生菜月もそう考える一人だ。「有名無名にかかわらず、色んな人とお仕事をしたいし、ファッションやアートに限らず、既存のカテゴリーにはめられたくない。テキスタイルモンスターは自由でいたいという気持ちを込めている」という。

 テキスタイル作りを目指すきっかけは、ファッションだった。高校生の時にあるファッションデザインコンテストに参加し、進学先に女子美術大学でファッションを学ぶことを選んだ。ただ、当時は「課題や制作に取り組んでも、なんかいつもピンと来なくて。みんなが課題で”服”を作っているのに、私は生地を細かく割いて編んだり織ったりしたバッグらしきものを作っていた」と振り返る。

 転機になったのは、女子美を卒業後に留学したセント・マーチンズ美術大学ファンデーションコースだった。「布以外の素材でテキスタイルを作ったりしていたら、それがいいと認められた。私が作りたかったのは、これなんだって気づいたんです」。本格的なテキスタイル制作に取り組むため、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)に進学することになった。

 進学後すぐにコロナ禍になり、英国は厳しいロックダウンを敷いたため、英国滞在をを切り上げて1年前に帰国。日本で制作を続け、今年6月にRCAを修了した。「実質的に英国に滞在したのは2年弱。もっと居たかったという思いもあるけど、制作自体にはそれほど不便さは感じなかった。修了制作のプレゼンがオンラインだったのは、さすがに大変でしたが(笑)」。

 アトリエ兼作業場は東京の実家。「私の制作スタイルは、子どもの頃の工作の延長。生地をオカダヤとかで買ってきて、切ったり縫い付けたり染めたり編み込んだり。明確なイメージが合って作り出すというより、手を動かしながら最終のゴールが見つけていく。ベースとなるコンセプトが人間の動きとテキスタイルの関係を探ること。基本は人が着ることを前提に作っています。なので制作時は何度も自分で着てみてしっくりくるまで、調整しながら作り続けます。他人との制作でなければ、満足行くまで直し続けるので1作品に1カ月くらいかけています」。

 そんな羽生が衣装関係者の注目を集めることになったのは、今年9月に開催された東京パラリンピックの閉会式だった。閉会式に過去の作品を3体貸し出したところ、閉会式のクリエイティブディレクターの一人だった演出家の潤間大仁の目に止まったのだ。

 潤間氏は、総合演出を務める12月9日から東京の明治神宮外苑の正徳記念絵画館で開催の「トウキョウライツ(TOKYO LIGHTS)」のメーンコンテンツの一つである光とダンスと映像のエンターテインメントショー「リフレクツ-いのちのひかり-」へ、羽生に参画を依頼した。「リフレクツ」のコスチュームデザイナーは、齋藤ヒロスミ。東京パラリンピックのコスチュームディレクターを務め、羽生の作品を取り上げ、直接潤間氏に紹介した本人でもある。羽生は「リフレクツ」のため、3体分の衣装を制作した。「これほど大掛かりなプロジェクトに参加するのは初めて。でも齋藤さんが、とても丁寧かつ親身になってバックアップしてくださって。激しい動きをするダンサーのための衣装なのですが、私の経験が足りずなかなかそうした作りに対応しきれないことも多いのですが、私のクリエイティブの持ち味を生かすためにどうするかを、一緒になって、ときには斎藤さんやアシスタントさんが実際に手を動かして修正していただいたりしています」。「リフレクツ」は9〜12日にかけて、全5回上演される予定だ。

 今後について「最近は自分の作品の完成度は70%にして、コラボレーションした方々と一緒に残りの30%を上げていくというスタイル。演劇、音楽、ファッション、アート。色んな分野の人たちとコラボレーションしていきたいと思っています」。

■REFLECTION ‐いのりのひかり‐
光の祭典「TOKYO LIGHTS」内イベント
日程:12月9日〜12月11日
時間:1部 17:10〜/18:35〜 2部19:10〜/20:35〜
(12月9〜11日)
12月12日 17:50〜 
※一回のみの公演
場所:明治神宮外苑総合球技場軟式球場
入場料:無料(人数制限のため事前予約必須)

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H&M、サステナブルな“進化”の舞台裏 本国チームが循環型思考を語る

 H&Mは、2040年までにバリューチェーンを通じてクライメート・ポジティブ(自社で発生するCO2排出量よりも吸収量の方が多い状態)の達成を目指す。これに向け、今年始動した“イノベーション・ストーリーズ(Innovation Stories)”と名付けたカプセルコレクションシリーズでは、革新的技術や素材を最大限に活用し、サステナブルなファッションの可能性を追求している。

 同シリーズの最新コレクション“サーキュラー・デザイン・ストーリー・コレクション(Circular Design Story Collection)”では、同社が開発した「サーキュレーター(Circulator)」と呼ばれるデザインツールを初めて導入。循環型への移行を進める同社の“進化”が凝縮されたコレクションとなった。アン・ソフィー・ヨハンソン(Ann Sofie Johansson)=H&Mクリエイティブ・アドバイザーと、エラ・ソッコルシ(Ella Soccorsi)=H&Mコンセプトデザイナーに、同コレクションに込めた思いや制作の裏側について話を聞いた。「デザイナーとして新たなマインドを得た」と語る彼女たちの言葉には、循環型社会におけるファッションを考えるさまざまなヒントが詰まっている。

WWD:改めて、“イノベーション・ストーリーズ”シリーズはH&Mにとって、どのような位置付けか。サステナビリティをテーマとした“コンシャス・エクスクルーシブ(CONSCIOUS EXCLUSIVE)”コレクションからどのように発展したのか?

アン・ソフィー・ヨハンソン=H&Mクリエイティブ・アドバイザー(以下、ヨハンソン):“コンシャス・エクスクルーシブ”コレクションでは、主にオケージョンウエアを取り扱っていた。次のステップとして、あらゆる顧客に向けて、さまざまなトレンドやスタイルのものを作りたいと考え、“イノベーション・ストーリーズ”はより自由度の高いシリーズとなっている。最初は科学者と協業した革新的な素材にフォーカスを当て、次はサステナブルな染色、その次は廃棄物といった具合にコレクションごとに異なるトピックについて取り上げた。問題をより明確にしつつ深く掘り下げるアプローチも特徴だ。いずれもファッショナブルかつ先進的なコレクションだった。

エラ・ソッコルシ=H&Mコンセプトデザイナー(以下、ソッコルシ):各課題を解決するために、私たちはサステナビリティ部門と密接に連携している。彼らから画期的な新素材や繊維があると連絡があれば、まず同シリーズで(小規模に)テストしてから、ブランド全体および業界全体にスケールしていく。こうした意味で、“イノベーション・ストーリーズ”はさまざまな実験ができるプラットフォームだと考えている。

WWD:フォーカスを当てる課題・ポイントはどのように選定している?

ソッコルシ:サステナビリティ部門から、優先すべき課題の提案があったり、準備ができているものから決めたりすることもある。例えば「新たな染色プロセスが試験段階まで来ている、ではそれをテストしてみよう」という具合だ。

ヨハンソン:テストを繰り返す中で、使用するには尚早だったと判明し、実際に店頭に並ぶまで数年かかることもあるが、それは必要なプロセスだ。トライし続けることが重要だからだ。小規模でしか実現できないものもあるが、“イノベーション・ストーリーズ”で学んだことを「H&M」のほかの商品に適用してスケールすることも狙いであり、目標の一つだ。

循環型ファッションの最新ツールを導入 「現在だけでなく未来のための服を作る」

WWD:最新コレクションの“サーキュラー・デザイン・ストーリー・コレクション”にはどんなメッセージを込めた?

ソッコルシ:主要なメッセージは、循環型をさらに推し進めていくことだ。今回はH&Mが業界向けに開発した循環型ファッションを推進するためのツール、「サーキュレーター」を初めて導入した。衣服や製品のライフサイクル全体を俯瞰し、消費者が製品を購入した後もできる限り“良いもの”であるようにするにはどうすればいいかを考えた。耐久性、修理のしやすさ、いずれ誰かに譲ることはできるかなど、製品をできる限り長く、循環サイクルにとどめておくための長期的な視点でデザインした。リサイクルしやすいパーツにも着目した。従来はまず生地を選び、それに合うボタンやライニングなどを選ぶという手順だったが、そこに初めてリサイクルのしやすさという視点が加わった。

WWD:従来とはデザインのプロセスが全く変わったということか。

ヨハンソン:その通り。私たちはこれをある種の旅路のようなものだと思っている。完全に新たなマインドになったし、それを継続していきたい。正直に言えば、山のような課題に直面したが、何事も最初はそういうものだ。革新的なものである場合はなおさらだ。

ソッコルシ:デザインチームにとっても(こうしたマインドの変化は)インスピレーションの源となった。服は現在だけでなく未来のためのものでもある、という考え方にインスパイアされて浮かんだのが今回使用した水玉模様や大きなリボン飾りだ。こうした要素は不思議と何度も流行するからだ。

WWD:例えば、どのような課題にぶつかった?

ヨハンソン:当初考えていたことを実現できなかったり、装飾用のパーツやさまざまな種類の素材に関しては、新しい方法を模索する必要があったりした。一方で、循環型を前提に考えることで以前は思いつかなかったようなアイデアがひらめいたりもした。おかげで視野が広がり、課題の解決策を考えたり、問題を乗り越えたりするプロセスは楽しかった。

ソッコルシ:人々のスタイルをかなえる華やかなアイテムを循環可能にしたいと思ったからこそ、難しいプロジェクトになった。例えば、スパンコールのメタリックなコーティングをなくすこれまでにない方法を発見し、リサイクルできるようにしたことは大きなステップだった。「こうすればできるんだ」というひらめき、アハ体験をもたらしてくれたし、見た目も美しかった。ほかには、2018年のグローバル・チェンジ・アワード(Global Change Award ※H&Mが主催するイノベーション・コンペティション)を受賞したリゾーテックスとも協業した。同社の糸を使用すれば、高熱を加えるだけで縫い付けたパール飾りなどが服から外れる。これは非常に面白いし、画期的なものだ。このコレクションには、自分たちの限界に挑戦したからこそ可能となった“進化”がいろいろ含まれている。

WWD:そのほか、同コレクションで使用した革新的な素材は?

ソッコルシ:海から回収したプラスチックボトルから作られたリサイクルポリエステル、「リプライブ・アワー・オーシャン(REPREVE Our Oceans)」がある。これはリサイクルシステムがない国の沿岸地域から回収したボトルを使っているので、すでに循環されているものではなく、放っておけばごみとなって環境に悪影響を与えてしまうものを利用している。ほかには、衣服をリサイクルしたポリエステルなどがある。

ヨハンソン:衣服をリサイクルした繊維や原料で衣服を作ることも、ファッション業界が排出した廃棄物を自ら再利用するという意味で重要だ。古着や使用済みの繊維廃棄物を利用したファブリックのサイコーラ(Cycora)などがそうで、新たな協業先となっている。またリサイクルコットンのテックスループ(Texloop)、イタリアのアクアフィル(AQUAFIL)のリサイクルナイロン「エコニール(ECONYL)」も使用している。以前から使用しているベジェア(VEGEA)のグレープレザー(※ブドウの絞りかすから作る人工皮革)も素晴らしいものだし、どんどん進化している。

ソッコルシ:衣服のリメイクも行った。古着のリサイクル企業、ソエックス・グループ(SOEX Group)のアイコレクト(I:COLLECT)と提携し、「H&M」が回収した古着をアイコレクトが、二次流通で再び売れるもの、修理できるもの、リサイクル可能なものなどに選別するのだが、今回は回収したものの中からメンズのブレザーを選り分け、リメイクした。東京やパリ、ミラノ、ロンドンなど都市ごとに異なるデザインで、東京は東京だけのユニークなデザインとなっている。

ヨハンソン:こうしたリメイクプロジェクトを行ったのは今回が初めてだったが、将来的にもっと実施していきたい。デザインし直してリメイクし、アップサイクルすることは今後さらに重要になるだろう。

WWD:最近は、リサイクル素材のバリエーションも増えてきたが、素材を選定する際に大事にしていることは?

ソッコルシ:リサイクル素材にはたくさんの種類があり、常に増え続けている。最適な選択をするためにも、サステナビリティ部門との連携が要だ。彼らはその素材の耐久性や使い勝手などを試すため、さまざまなテストを行っている。当社は化学薬品の使用に関する厳しい規制を設けているので、そうしたことも詳しく調べている。

服の寿命を一度で終わらせない啓発が大事

WWD:循環型の推進には消費者のマインドの変化も重要だ。どのように循環の重要性を消費者に伝えていく?

ヨハンソン:本当に重要かつ不可欠な部分だ。顧客とコミュニケーションを取りながら、“正しい選択”をするように促すことが大切だ。製品がどこでどのように製造されたのかなどについて透明性を保つことや、いらなくなった製品をリサイクルする最適な方法について明確に示すことも重要。コレクションのタグにはQRコードを付けて、そうした情報を提供している。

ソッコルシ:実際に私たち自身も、消費者としてのマインドが変わったと思う。フィットしなくなったり、ボタンがなくなったりしても、(すぐに捨てるのではなく)リペアしようと考えるようになった。H&Mではリペアやリユースを促す「REイニシアチブ(RE Initiative)」を行っている。また衣類のタグには、当社からのメッセージとして、循環を念頭にデザインして製造した製品であり、修理やメンテナンスをして長く愛用してもらいたいこと、いらなくなったらリサイクルしてほしいこと、製品のライフサイクルの最後にはさらに循環させるため店頭の回収ボックスに入れてほしいことなどを記載している。愛着があるからなどの理由で取ってあるけれど使用していない、というのも実はあまりサステナブルなことではない。使っていない物は誰かに売るか譲るかして使われるようにする、という新たなマインドになるよう顧客を啓もうしていく必要がある。

ヨハンソン:衣類の寿命は一度では終わらない。リサイクルなどによって生まれ変わるので複数の寿命がある。自分が飽きてしまった製品でも、それを喜んで使ってくれる人がどこかにいるので、循環の輪(ループ)に含めることが大切だ。

ソッコルシ:もう一つ、当社で推し進めている事業にレンタルがある。これまでにない新たなビジネスモデルだと思う。

ヨハンソン:二次流通市場も大きく成長していて、当社ではスウェーデンのリセールプラットフォーム、セルピー(SELLPY)と提携している。サステナブルな未来のファッションを実現するにあたり、業界内で、企業同士が協力し合う必要がある。(環境問題は)全員に関わりがあることなので、知識やノウハウを共有し、互いに助け合うことが重要だ。

WWD: 2040年までにクライメート・ポジティブを実現するための、次のステップは?

ヨハンソン:すでに多くの目標を達成している。例えば、20年までにコットンを全てリサイクルされたもの、再生可能なもの、もしくはオーガニックコットンに切り替えるという目標は昨年達成した。また、H&Mグループで使用するファブリックを30年までに全てサステナブルなものにするという目標があり、それも達成に向けて順調に進んでいる。40年にクライメート・ポジティブを実現するという大きな目標に向けては、小さな目標がたくさんあるが、デザインの段階から循環型ファッションを意識するというマインドを持つことが重要だ。当社の全てのデザイナーにはそのマインドを学び、必要なアプリやツールを活用して循環型ファッションに取り組み、引き続き美しいコレクションを発表してもらいたい。ファッションは自分を表現するための最高の方法の一つなので、今後もそうであると同時に、できる限り環境負荷をかけないようにしたい。

ソッコルシ:リセール、リペア、レンタルなどの再生・再利用のコンセプトは加速度的に広がりを見せているが、手持ちの服を“リスタイル(着回し)”するという考えも広まってほしい。いろいろな組み合わせができるアイテムを作ることは、循環型ファッションを推進する上でとても重要なことなので、このコレクションをデザインする際にも意識した。華やかなストラップの付いた黒パンツであれば、ストラップを付け外し可能にすることで、オケージョン用としてだけでなく通勤服としても使える。そうした着回しのできる服にすることも非常に重要だ。

WWD:サステナビリティに関する事柄を“制限”ではなく“可能性”として捉えているところに感銘を受けた。楽しんで取り組んでいることが、よく伝わってきた。

ヨハンソン:その通り。当社はさまざまな活動をしているが、何事においてもクリエイティブであること、新たなマインドで考えることが大切だと思う。

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「ダンヒル」の新アイコン“ロックバッグ” 高島涼が伝統と革新のデザインに迫る

 「ダンヒル(DUNHILL)」は2020年秋冬シーズンのパリコレクションでブランドの新しいアイコン“ロックバッグ(THE LOCK BAG)”を初披露して以来、様々な素材やデザインで展開をしている。堅牢なフレームと鍵のモチーフが印象的なこのバッグは、英国紳士のスタイルの象徴であるアタッシュケースからインスピレーションを得たという。クラシカルな見た目の一方で、裏地にナイロンパッドを採用していたり、幅広いマチを設けていたりと機能はアップデートしている。1893年創業の「ダンヒル」の伝統と現代的なデザインをそなえた“ロックバッグ”を、ミレニアル世代のファッションディレクター・高島涼がまとう。

“ロックバッグ”は
リアリティーのある服にも
合わせやすい

WWD:これまでの「ダンヒル」のイメージと実際にコレクションを見た感想を教えて欲しい。

高島涼(以下、高島):これまではテーラーのイメージが強くて、僕よりももっと上の世代の方が着ているめちゃめちゃ良いブランドという印象が強かった。でも実際にコレクションを見るとルーツやバックボーンには深い歴史があって、新しいことに挑戦する柔軟性を持っているブランドだと改めて感じた。

WWD:“ロックバッグ”の印象は?

高島:ビジュアルにも高級感があって、身につけるだけで品が出るアイテムだと思う。僕が普段着る洋服は、カチッとしたものよりも曲線的なものが多い。その中にこういった構築的なバッグを差し込むのは面白いし、ファッションとしても取り入れやすい。

WWD:高島さんならどんなコーディネートに合わせる?

高島:テーラーのイメージは大事にしつつ、今シーズンっぽくスポーティーなアイテムと合わせて、カジュアルとミックスさせるのが良いと思った。今日は、日本のブランドとアウトドアブランドを合わせた。そういった僕らの世代でリアリティーのある服でも“ロックバッグ”は組み合わせやすいし、品のあるアイテムを取り入れるだけで、服もより良く見える。

WWD:高島さんのファッションに欠かせないものは?

高島:僕は低身長がコンプレックスなので、どうスタイルをよく見せるかが自分のファッションの考え方。だから綺麗に見えるシルエットはすごく気にしているけど、「ダンヒル」はすごくシルエットが綺麗で、品もあってかっこいいと思う。

WWD:今注目しているモノやコトは?

高島:サステナブルについては気になっている。少し前まで、消費者としては生産側と感覚がかけ離れていると思っていたけど、コロナを機に意識が高まって、長く使えるいいものを選ぶようになった。そういう意味でも“ロックバッグ”は長く使える“本物”のアイテムだと思う。

アタッシュケースの新しい提案

アタッシュケースを彷彿とさせる真鍮の鍵が“ロックバッグ”の特徴だ。熟練の職人が手作業で作り上げ、素材には丈夫で滑らかなボックスカーフレザーを採用する。いずれも使うほどに独特の風格と味が増すのも魅力。スマートフォンにぴったりのサイズ感で、マチも広がり、ショルダーストラップは取り外し可能と、使い勝手にも優れる。カラーはブラック、インクにメタリックデザインのADブラス、ADシルバーを加えた全4色展開。

 なお、鍵のディテールを踏襲した“ロックコレクション”には、ほかにもメッセンジャーバッグやアタッシュケースなどもラインアップする。全国の「ダンヒル」の店舗とオンラインストアで販売中だ。

EDIT&TEXT : YUKI KOIKE
問い合わせ先
ダンヒル
0800-000-0835

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「ダンヒル」の新アイコン“ロックバッグ” 高島涼が伝統と革新のデザインに迫る

 「ダンヒル(DUNHILL)」は2020年秋冬シーズンのパリコレクションでブランドの新しいアイコン“ロックバッグ(THE LOCK BAG)”を初披露して以来、様々な素材やデザインで展開をしている。堅牢なフレームと鍵のモチーフが印象的なこのバッグは、英国紳士のスタイルの象徴であるアタッシュケースからインスピレーションを得たという。クラシカルな見た目の一方で、裏地にナイロンパッドを採用していたり、幅広いマチを設けていたりと機能はアップデートしている。1893年創業の「ダンヒル」の伝統と現代的なデザインをそなえた“ロックバッグ”を、ミレニアル世代のファッションディレクター・高島涼がまとう。

“ロックバッグ”は
リアリティーのある服にも
合わせやすい

WWD:これまでの「ダンヒル」のイメージと実際にコレクションを見た感想を教えて欲しい。

高島涼(以下、高島):これまではテーラーのイメージが強くて、僕よりももっと上の世代の方が着ているめちゃめちゃ良いブランドという印象が強かった。でも実際にコレクションを見るとルーツやバックボーンには深い歴史があって、新しいことに挑戦する柔軟性を持っているブランドだと改めて感じた。

WWD:“ロックバッグ”の印象は?

高島:ビジュアルにも高級感があって、身につけるだけで品が出るアイテムだと思う。僕が普段着る洋服は、カチッとしたものよりも曲線的なものが多い。その中にこういった構築的なバッグを差し込むのは面白いし、ファッションとしても取り入れやすい。

WWD:高島さんならどんなコーディネートに合わせる?

高島:テーラーのイメージは大事にしつつ、今シーズンっぽくスポーティーなアイテムと合わせて、カジュアルとミックスさせるのが良いと思った。今日は、日本のブランドとアウトドアブランドを合わせた。そういった僕らの世代でリアリティーのある服でも“ロックバッグ”は組み合わせやすいし、品のあるアイテムを取り入れるだけで、服もより良く見える。

WWD:高島さんのファッションに欠かせないものは?

高島:僕は低身長がコンプレックスなので、どうスタイルをよく見せるかが自分のファッションの考え方。だから綺麗に見えるシルエットはすごく気にしているけど、「ダンヒル」はすごくシルエットが綺麗で、品もあってかっこいいと思う。

WWD:今注目しているモノやコトは?

高島:サステナブルについては気になっている。少し前まで、消費者としては生産側と感覚がかけ離れていると思っていたけど、コロナを機に意識が高まって、長く使えるいいものを選ぶようになった。そういう意味でも“ロックバッグ”は長く使える“本物”のアイテムだと思う。

アタッシュケースの新しい提案

アタッシュケースを彷彿とさせる真鍮の鍵が“ロックバッグ”の特徴だ。熟練の職人が手作業で作り上げ、素材には丈夫で滑らかなボックスカーフレザーを採用する。いずれも使うほどに独特の風格と味が増すのも魅力。スマートフォンにぴったりのサイズ感で、マチも広がり、ショルダーストラップは取り外し可能と、使い勝手にも優れる。カラーはブラック、インクにメタリックデザインのADブラス、ADシルバーを加えた全4色展開。

 なお、鍵のディテールを踏襲した“ロックコレクション”には、ほかにもメッセンジャーバッグやアタッシュケースなどもラインアップする。全国の「ダンヒル」の店舗とオンラインストアで販売中だ。

EDIT&TEXT : YUKI KOIKE
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服とウツワの“交差点”に立つ陶芸家・吉田直嗣

 コロナ禍で、消費者の意識は家の中の暮らしへ向いた。ファッションをメインに取り扱うショップでも「ライフスタイル提案」をうたい、皿やコーヒーカップなどの調度品を売り場に並べる店は増えている。

 だがそれ以前から、陶芸家・吉田直嗣(45)の作る器は、コアなファッション愛好家や業界人の間で注目を集めていた。彼の作品は「グラフペーパー(GRAPHPAPER)」や「レクトホール(RECTOHALL)」といった高感度なセレクトショップが買い付け、個展ではおしゃれな若い客を見かけることも多い。自身も「ブルータス(BRUTUS)」(マガジンハウス)「ウオモ(UOMO)」(集英社)といった男性誌にも登場し、ファッション好きとしての一面も見せる。

 抑揚の効いたフォルムと、黒と白で表現するストイックな世界観の作品で、コアな陶芸愛好家からの評価も高い。そんな彼の作る器が服好きにも刺さる理由とは。東京・代々木上原のギャラリー「アエル(AELU)」の個展(12月12日まで)で吉田に話を聞いた。

WWD:コロナ禍で、陶芸家の仕事はどう変化しましたか。

吉田直嗣(以下、吉田):ギャラリーや僕以外の作家からは、(器が)以前より売れるようになったという声が聞かれます。僕は富士山の麓(静岡県)にあるアトリエにこもっているので、身の回りで特段変化は感じられないんですが。

WWD:陶芸には明るくないのですが、「グラフペーパー」の展示で吉田さんの器を知り、興味を持ちました。

吉田直嗣:同じように陶器は買ったことがなけれど、僕の器の「デザインが好き」と言っていただける方も多くいらっしゃいます。陶芸に造詣の深い方に評価していただけることはもちろんですが、その世界にはないものさしで見ていただき、気に入ってもらえるのはとても嬉しいですね。

 僕が作陶で大事にしていることも、今の僕が見て「美しい」と感じられるか、という一点です。店に並べたあとは、お客さまに想像を膨らませていただき、直感で買ってほしい。逆に「このお皿はどう使うのが正解なんですか?」などと聞かれると、困ってしまいます。

 「グラフペーパー」には5〜6年くらい作品を置いてもらっていますが、(ディレクターの)南(貴之)さんも、僕の器を「焼き物」としては見てらっしゃらないような感じがします。店内空間を作るオブジェであると同時に、洋服と同じフラットな目線で「好き」かどうかで選んでくれている。だからありがたいんですよね。

WWD:今日も「グラフペーパー」の服を着ていますね。

吉田:はい、普段はこればかりです。ファッションは好きなのですが、学生時代はお金は全て陶芸の勉強に投資していましたし、陶芸家としてはご飯を食べていくのでやっとという時期が続いたので、そんなにたくさんの服に袖を通してきた訳でもありません。この前の個展には「ソフ(SOPH.)」の清永浩文さんが来てくださり、周囲はざわついていましたが、僕だけがすぐに気づくことができず恥ずかしい思いをしました。

 同じ作り手としての目線で話すと、ファッション業界は一流の領域でも分業制が成り立っていてすごいなと思います。僕は今回の個展で500個ほど作品を納入しましたが、全てこの1カ月くらいの間で一気に作りました。普段もこんな感じです。自分でデザインを考え、ろくろを回し、クリエイションを完結できるのが陶芸家の醍醐味だとも思っています。しかしファッション業界では、デザインを考える人と縫い針を動かす人は離れているのに、最終製品のクオリティーがしっかり担保されている。エモーショナルな要素とロジカルな要素のバランスが優れている人たちでないと、できない芸当だと感じます。

WWD:シーズンで消費されていくファッションと違い、器には普遍的な魅力を感じます。

吉田:もちろん、器にもその時代のトレンドがあります。ただ、そういった大きな流れよりも「この作家のこれがほしい」というこだわりを持ち、本当に気に入った器を買われる方が多いと感じます。器の世界は、伝統的な作風にこだわり続ける職人も入れば、前衛的すぎて理解不能な作家まで(笑)、本当に多種多様な作り手が息づいています。それを理解し、支えてくれるコアな人たちがいるから、僕も食べていけています。

 服に関しても「新しいものほどいい」という考え方が薄まれば、消費者は「本当に大切にできる1着」を求めるようになるでしょう。すると「安い」「使いやすい」という合理性よりも「好き」が大事になり、作り手の個性がもっと表れる風景になりそうです。ファッションと器の買い方は、だんだん似てくるかもしれませんね。

 コロナ禍で、大手のアパレルやセレクトショップさんなどを中心に(取り引きの)お声掛けをいただくことは増えています。ファッション業界には、器の世界では味わえない華やかさや(トレンドの)スピード感があります。その中に浸かり、感じたことをろくろの土に混ぜることができたら、作家としてもっと成長できるのではないかと感じています。

■吉田直嗣 個展 「境界」
日時:12月3日(金)〜12日(日)
会場:AELU(gallery)
住所:東京都渋谷区西原3-12-14 西原ビル4F

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シティ・ポップブームの火付け役、Night Tempo “ダブルスーツ”ファッションや初のオリジナルアルバムを語る

 DJ、音楽プロデューサーのNight Tempo(ナイト・テンポ)は、世界中で人気が再燃している日本のシティ・ポップブームの火付け役の1人として知られる。韓国出身で、日本のレトロカルチャーの魅力を欧米を中心とした世界に発信する彼は、竹内まりやの「プラスティック・ラブ」をリエディットし、インターネットでその名を知らしめた。2019年にはフジロックフェスティバルの最終日に出演し、日本とアメリカでの活動の幅を広げている。音楽のみならず、1980年代を中心としたレトロカルチャーの“キュレーター”として注目を集める彼の音楽、ファッション、そして12月1日に発売した初のオリジナルアルバムについて話を聞いた。

WWD:音楽活動はいつから?

Night Tempo:元々はサラリーマンとしてプログラミングをする傍ら、趣味で音楽を作っていました。音楽は独学で、インターネットで情報取集したり、ユーチューブ(YouTube)のチュートリアルを見たりしました。2019年にサラリーマンを辞め、正式に仕事として音楽をやっています。

WWD:12月1日に発売した初のオリジナルアルバム「Ladies In The City」のテーマやインスピレーションは?

Night Tempo:1990年代前半、都会に住む女性がメインのイメージです。1980年代と2000年代が重なる世界観で、この頃のドラマに出てくる都会の景色やファッションなどの文化をいろいろ参考にしました。その時代の音楽を再現するだけではなく、自分らしさを加えた“都会的な音楽”です。

WWD:都会というのは東京?

Night Tempo:東京ではなく、“東京みたいな都会”といったところでしょうか。この時代、大阪、ソウル、香港や台北などアジアの都会には共通していることが多く、特に当時のファッションなどの都会的な文化はほぼ一致していると思います。なので、特定の都市ではなく、“女性の社会進出が盛んになった時代のアジアの都会”をイメージしています。また、日本の音楽業界はカテゴリー分けをしっかりする印象なのですが、自分はジャンルなどは特に決めていなくて別路線だと考えています。

WWD:今までの楽曲は80年代のイメージが強かったが90年代にフォーカスした理由は?

Night Tempo:アルバムの制作を進めていく中、ハマったという感じです。90年代は前半と後半でかなりイメージが違うと思っていて、後半は経済的にも厳しい状況もありましたが、前半は豊かだったと思います。特に韓国も96年くらいまでは豊かでした。日本の年代感覚とはズレるかもしれませんが、シティ・ポップが描く景色と自分が経験した韓国の豊かな都会のイメージと重ねられるのがちょうどこの年代でした。

WWD:インスピレーションとなるレトロカルチャーのリサーチの方法は?

Night Tempo:インターネットでのリサーチはもちろん、その時代の物にもインスパイアされます。とりあえず集めておいたレトロなアイテムのコレクションを後からチェックすることも多いです。日本にはいろいろなジャンルのマニアがいるので、90年代の「カシオ(CASIO)」のデジタル時計の図鑑があったりして、それに載っている時計を買ったりとコレクションを増やしていきます。コロナ禍の前、日本に行けた時は直接掘り出し物を探していましたが、最近は中古サイトを活用しています。90年代、韓国の富裕層は日本製のものを使う傾向があったので、日本に行けなくてもゲットできることもありますね。

WWD:現代の音楽は聴く?

Night Tempo:あまり聞かないです。仕事として音楽を始めてから数年でまだまだこれからなので、他の音楽を聞いている余裕がないのが現状です。収集したカセットやレコードが合わせたら1000本以上はあると思います。まだ聴いていないものも多く、今は好きなものに集中して、後からいろいろ他の音楽を聞いてもいいのかなと考えています。おじいちゃんになってからかも知れませんが(笑)。

WWD:普段のファッションもレトロな物が多い?

Night Tempo:昔はよくスポーティーな古着のトレーナーを着ていました。特に「プーマ(PUMA)」と「エレッセ(ELLESSE)」が好きでした。最近は好みが変わって、90年代のサラリーマンをイメージしたダブルスーツにハマっていて、色んなカラーで集めています。トレンディドラマに出てくるような、“実際に会社に行ったことはないだろうけど、そういう演技をするサラリーマン”のラフなスーツスタイルです。角松敏生さんを参考にしています。スーツは、新品だけど眠っていたものをメルカリ(mercari)などオンラインで見つけて、それを自分にフィットするようにお店で仕立ててもらい日常的に着ています。スーツに合わせて日本製のメガネも集めています。ウィメンズのレトロファッションは一般的ですが、メンズはまだまだだと思います。なので、ライバルも少なく簡単に収集することができますね。

WWD:音楽の制作にもファッションは大事?

Night Tempo:気合という意味で大事だと思います。特にシティ・ポップなどを作るにあたって、当時の人になりきってタイムスリップをすると、より本格的で味のある音楽が作れます。ファッションは音楽の色にもなるし、世界観という意味で重要です。「シティ・ポップ作っています」と言った時に、ヒップホップ系のファッションをしているより、ダブルスーツの方が説得力ありますよね(笑)。

WWD:これから挑戦したいことは?

Night Tempo:最近、都会的でレトロなスポットを背景にスーツを着た写真をインスタグラムにアップしているのですが、自分だけでなくてモデルさんを起用して写真集をプロデュースできたらと考えています。ちゃんとファッションスタイリングとかもして、そういうスポットのガイドブック的写真集を作りたいです。例えばソウルの昔の航空写真を手に入れて、その当時からある建物を探しに行ったりしています。シティ・ポップが海外で人気になったように、アジアのレトロで都会的なデザインの素晴らしさも海外の人にも知ってほしいという思いがあります。

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ハシモト産業がVR展示会で皮革業界の新たな扉を開く

  皮革販売・加工のハシモト産業(大阪府大阪市、橋本信一社長)は11月15日〜2022年2月28日、2回目となるバーチャル(VR)展示会を、自社ホームページ内の特設サイトで開催する。昨年、コロナ禍で自粛を余儀なくされた展示会の代わりに顧客との新たなコミュニケーションの場として企画。皮革業界では初めての試みだったが、海外からのアクセスも増え、結果的に国内外での認知拡大に成功した。時代の先駆けとして、新たな業界のスタンダードに挑む。

国内屈指のタンナーと
共に作り上げる
上質な皮革を販売

 ハシモト産業は1968年に橋本現社長の父親が革紐メーカーとして創業した。革紐を製作するために、革素材からオリジナルで開発している。40種類以上の革素材をそろえ、各10色前後、多いものは80色超のカラーバリエーションを展開する。橋本社長は「うちは“皮革業界一”ハードルが低い。革を知らない人にこそ革の良さを知ってもらいたい。全ての革を一からご説明させていただく」と言い、個人から同業者まで革1枚から販売する。

 国内有数のタンナーと共同で行う素材開発にも積極的だ。橋本社長は「革紐製作で培った技術があるからこそ、タンナー(皮革製造工場)に作り手の視点から革の利点や欠点を理解した要望ができ、より良い素材開発ができる」と話す。革紐を作るためには、革を漉く、切る、つなぐなどのさまざまな工程が発生するが、 ハシモト産業では、中に芯を通した細さ1mmの革紐まで作れる。そのときの革の厚さは0.25mmと毛穴が透き通るほど薄い。天然素材である革を一定の厚さで漉くには高度な技術が必要なのはもちろん、より吟味された素材を扱う必要もある。タンナーへの要求は高くなるが、一歩踏み込んだ素材提案は、ハシモト産業ならではの強みとなった。

 ハシモト産業は15年ほど前に、業界では比較的早めにインターネット通販事業に取り組み始めた。個体差のある天然素材をECで販売するのは難しいが、「コロナ禍をきっかけに皮革業界全体にとってもデジタル化は避けては通れないものになった」と橋本社長。そこで 昨年、業界に先駆けてVR展示会をスタートした。イベントスペースに会場を設営し、Mat terportで3Dパノラマ動画を撮影することで、展示空間のリアルでスムーズなウオークスルー体験を実現。国内外から好評を得たものの改善点も見えた。今回は新たに購入機能を設け、動画の質も向上させる。「お客さまの利便性が一番大事。どうしたらお客さんが革を買いやすいか、その利便性を提供し続ける」と、皮革産業の発展に尽力する。

ハシモト産業の革を手掛ける
国内タンナーの魅力

 「栃木レザー」は、昔ながらのピット鞣しを用いて、最も素材に優しい加工を行うタンナー。石灰漬けによる毛抜きに1週間、50枚の皮をプール槽につけて鞣すのに1カ月、さらに乾燥に2週間かけるという。このように長い時間をかけながら作られた革は、独自の色艶や色合いを発し、繊維層が傷んでいないため形崩れしにくいのが特徴だ。

 「新喜皮革」は“革のダイヤモンド”と呼ばれるコードバンを鞣しから仕上げまで、日本で唯一、一貫生産する世界屈指のタンナー。高級バッグや革靴に使われるコードバンは非常にキメが細かく、扱うには技術力を要するが、60年以上にわたって積み上げた技術と最新鋭の設備を用いて、 上質なコードバンを生産する。

 「キモトレザーワークス」柔軟性と耐熱性の高い革を作れるクロム鞣しを用い、主に靴用の革を扱う。原皮を仕入れ、下鞣しを自社で行っているため、革を細部までコントロールできる。そのため、キモト製の革はオリジナル性とクオリティーの高さが伴っているのが特徴。

EDIT&TEXT:YUKI KOIKE
問い合わせ先
ハシモト産業
06-6771-6911

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手仕事を大事にする若きデザイナー 東京・下高井戸発「レットルース」

 1994年生まれの安田光作デザイナーが手掛ける「レットルース(LET LOOSE)」は、ロゴやグラフィックを載せたTシャツやポロシャツ、フーディーから、クッションやキャンドルなどのグッズまでを扱うファッションブランドだ。販路は公式ECと年に数回の受注会のみだが、3月には伊勢丹新宿本店メンズ館でポップアップを実施するなど、知名度を着実に上げている。

 同ブランド最大の特徴は、手仕事へのこだわりだ。ファッションブランドの大半は商品の量産を工場に依頼するが、安田デザイナーは生地・資材の購入から裁断、縫製まで、量産も一人で行っている。1シーズンの生産量は400着前後で、「朝起きて、裁断して、縫っての繰り返しです」。

 そんな安田デザイナーに、自宅兼アトリエのある下高井戸で話を聞いた。誰もが手軽に物が作れる時代に、手間と時間をかける裏には、どのような思いがあるのか。

はじまりは、一枚のCD

WWD:服が好きになったきっかけは?

安田光作デザイナー(以下、安田):小学生のころ、10歳上の姉にRHYMESTER(ライムスター)のCDを渡されて、ヒップホップに傾倒しました。周りにヒップホップ好きがいなくて、自分でミックスした音源を1枚500円とかで売ってたくらいです。父もジャズが大好きで、音楽にどっぷり浸かりました。その流れでファッションにも興味を持って、いろんな服に袖を通しました。おばあちゃんが呉服店を営んでいたから、さまざま生地が身近にありました。

WWD:高校卒業後、服飾学校に入った?

安田:最初は4年制の大学に入りました。父がフリーランスのライターだったこともあり、母親から「あなたは定職に就きなさい」と口すっぱく言われていて。でも、すごく退屈でした。そんな中、原宿に買い物に行ったとき、友達から「光作、服好きだし、作ってほしいな」と言われて。妙に納得して、数日後には退学届を出して、文化(文化服装学院)への入学手続きをしました。

WWD:文化での生活はどうだった?

安田:3年制に入学し、2年目からデザイン科に入りました。でも、「デザインってその人の感性だから、勉強するものなんだろうか」と感じ、3年目にアパレル技術科に転科しました。パターンを引いたり、縫製したり、“手に職”って感じで、デザインを学ぶよりずっと面白かったです。

誰かが自分の洋服に
価値を見出してくれる。
それがすごくうれしかった

WWD:「レットルース」立ち上げはいつ?

安田:文化の1年のときに始めました。Tシャツにシルクスクリーンで刷って、ECの「BASE」で販売していました。1枚5000円くらいだったかな?量は作っていなかったけれど、誰かが自分の洋服に価値を見出してくれて、お金を払ってくれるのはすごくうれしかった。今もそれが根底にあります。

WWD:他ブランドでの経験は?

安田:文化を卒業して「ヒステリックグラマー(HYSTERIC GLAMOUR)」で働きました。布帛やニット、カットソー、グッズと部門が分かれていて、僕はカットソーの企画担当。ブランド運営を学ぶ大事な機会になった一方で、「自分のものづくりがしたい」という気持ちが強くなり、1年で独立しました。

WWD:安田デザイナーの目指すものづくりとは?

安田:手仕事を大事にしたものづくりです。例えば陶芸家だったら、どんなものを作るか考えて、粘土を成型して、焼いて、自分で完成させる。料理家も、自分で材料を買って、下ごしらえして、調理して、提供する。外部に任せる方がもちろん効率はいいし、ビジネスとしては正解かもしれない。でも、ものづくりが好きだから、全ての工程に自分の手を加えたいんです。

WWD:ブランド規模が大きくなると、自分で量産するのは難しいのでは?

安田:正直、すでにギリギリです(笑)。でも、そもそもブランドを大きくしたいとか、バズりたいとは思ってないから、できるだけ今のスタンスは貫きたい。仮に大きくなっても、ロゴTのシルクスクリーンだけは絶対に自分で刷り続けたいです。

WWD:クッションやキャンドルなどのグッズも手掛けている。

安田:こういう雰囲気のブランドでグッズまで作るところってあんまりないので、意図的にアイテムの幅を広げています。ほかと同じことをやっても仕方ないですからね。実はクッションってTシャツよりも手間が掛かって、工場に頼むと発注数のミニマムも増える。でも僕は自分で縫うから、ミニマムとか関係なく提案できる。クリエイションに自由が効くのは、「レットルース」の強みかもしれません。

WWD:伊勢丹のポップアップも大きな反響だった。出店の経緯は?

安田:伊勢丹の担当者から「ポップアップやらない?」と声をかけられました。これまで受注会は、自分が好きなエリアでしかやったことがなかったので、思い切って挑戦しました。11月には、日本橋のヒューマンネイチャーというワイン屋で受注型のポップアップをやりました。地方から来てくれる人もいて、すごくうれしかったです。ポップアップで交流できるのはとても楽しいし、励みになりますね。

小さい規模でもいい
周りの人に「いいもの作ってるね」と言われたい

WWD:卸売りは考えている?

安田:悩んでます。卸をやるなら、むしろ自分でお店をやりたいかな、とか。自分がコントロールできる範囲で、地に足つけて発信したいんです。それと、ネットがあればどこでも買える時代だからこそ、特別感を大事にしたくて。直営のECと受注会でしか買えず、そもそも数に限りがあることがブランドの価値につながっているから、当分はこのやり方を続けると思います。

WWD:今後の展望は?

安田:世田線沿いにアトリエ兼事務所を構えたいです。自宅が手狭になってきたから、もう少しゆったりした空間が欲しい。知り合いはもちろん、予約制でお客さんも入れるスタイルで、来年にでも実現したいですね。あとは、実直にアイテムを作るだけです。小さい規模でもいいから、周りの人に「いいもの作ってるね」と言われ続けたいです。

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ブームを支える「古着卸」とは? “川上”にある選別工場に潜入

 古着にまつわる取材を進めるうちに、“川上”に興味を引かれるようになった。東京・下北沢で税込110円で古着を販売する「スティックアウト100」では、藤原輝敏社長に“古着卸”の存在について聞いた。しかし、ごみビジネスゆえのアンタッチャブルさもあってか、取材交渉は難航……。数社からお断りを受けたが、町田や下北沢に古着店「デザートスノー」を7店舗運営する「MIC(ミック)グループ」傘下の鈴可(鈴木道雄社長)に許可をもらい、神奈川県相模原市の選別工場を取材した。

WWD:古着が小売店舗に並ぶまでの流れを教えてほしい。

鈴木道雄鈴可社長(以下、鈴木):古着には海外と国内、大きく2通りの仕入れ先がありますが、鈴可は国内仕入れ専門です。80%が家庭ごみ、残りの20%をリサイクルショップから購入しています。家庭ごみは、行政(鈴可の場合は相模原市)に委託された産廃業者が回収しています。古着卸である鈴可は別途市と契約し、産廃業者から“原料”(衣料ごみ)を引き取ります。

WWD:その“原料”が、この小さなビニール袋に入った集合体である?

鈴木:そうです。家庭から出された、ごみのままの状態です。これをスタッフが1つずつ開封して選別します。

WWD:作業を見ていると1つのビニール袋の開封・選別はほんの数秒だが、品定めも同時に行っている?

鈴木:はい。そのために、この作業にあたるスタッフは目が利かなくてはなりません。1人が1日に2~3t分を選別します。鈴可は2つの選別工場を持っていて、それぞれが1500平方メートルほど。計3000平方メートルのスペースに衣料ごみを集積し、日々選り分けています。

WWD:選別について詳しく聞きたい。

鈴木:鈴可では4つに大別します。1.古着として海外に輸出するもの、これが90%ほど。機械で圧縮して“ベール”と呼ばれる状態にします。“アンタッチド(クレデンシャル)ベール”と呼ばれる、ビニール袋に入ったままの状態で圧縮して海外に輸出する古着卸もいますが、当社では100%開封・選別したものを“製品”にしています。こちらは“タッチドベール”と言います。2.MICグループの小売部門である「ミクモ」で販売するもの、これが10%ほど。ただしこれは、ミクモが全品税込330円の店舗から国内デザイナーズブランドを2万円ほどで販売する店舗まで幅広いレンジを持っているからできることで、一般的なピック率は5%ほどだと思います。あ、それから当然ミクモで販売する商品は洗濯やクリーニング、検品、リペアを経たものです。続いて3.毛布やシーツ類、4.生ごみや燃えないごみなどです。毛布やシーツ類を衣料に混ぜたままで輸出する古着卸もいますが、選別のひと手間をかけることで“製品”のクオリティーは上がりますし、古着業界は狭いとも言え、評判の良さはお客さんの獲得にもつながります。

WWD:選別した毛布やシーツ類はどうする?

鈴木:それらが目当てのお客さんもいるんです。いや、そういうお客さんを鈴可では作ったんです。だから、手間やそれに伴う人件費をカバーできています。

WWD:生ごみや燃えないごみも混在しているとのことだが、日本は比較的マナーが良いものと勝手に考えていた。そんなことはない?

鈴木:ええ、残念なことに……。それにアメリカなどの古着はドネーション(寄付)によるものが多く、あくまでごみとして出される日本とは性質が異なります。だから、初めて日本の古着卸と取引する海外業者の中には、衣料以外が混在することに対して不満を口にする人もいます。商習慣というか、流通の違いなんですけどね。

WWD:輸出先の海外とは具体的にどの国を指す?

鈴木:マレーシアや韓国です。特にマレーシアは古着における東南アジアのハブになっています。そこからインドネシアなどの第三国に入ることが多いですね。

WWD:タッチドベールの価格は?

鈴木:キロ20~30円ほどです。1つのベールが300kgほどで、それをコンテナ単位で売買します。1つのコンテナに23~24tほどの“製品”を積み、月に400~500tを輸出しています。

WWD:鈴可以外に古着卸と呼ばれる業者は何軒ほどある?

鈴木:関東では20軒ほどだと思います。ちなみに衣料ごみのリサイクル率は欧州で90%、日本は20%程度と言われています。

WWD:欧州並みの水準に高めるには、古着卸ビジネスの伸長や、家庭から出る衣料を可燃ごみにせず、あくまで古着として回収するシステムの徹底が必要そうだ。

鈴木:システムについてはその通りですね。ただ、古着卸が今後増えるかというとそんなことはないと思います。

WWD:それはなぜ?

鈴木:古着卸の多くは戦後から続く家業で、われわれのような新規参入組はまれです。

WWD:参入障壁は高い?

鈴木:ええ。やはり最後は“人”というか、歴史は買えないというか……。ですので、鈴可では「キロ5円で売買している“原料”を、10円で買わせてほしい」と交渉することもあります。それができるのは、買った“原料”を効率良く“製品”化するスキームとネットワークがあるからですね。鈴可の創業は2006年ですが、6~7年かけてそれらを獲得しました。

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JO1・鶴房汐恩に直撃 グループ一の“破天荒キャラ”がファッションとビューティを語る

 日本国内のみならず、グローバルで活躍する新時代のボーイズグループJO1は、今年でデビュー2年目を迎えた。サバイバルオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN」で結成後は、エンタメ界のみならず、「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT 以下、YSL」のオフィシャルビューティパートナーを務めるなど、ファッション&ビューティアイコンとしても輝きを放っている。12月15日には5枚目のシングル「WANDERING」をリリースする。同作品にはJO1初となるダブルリードシングル「僕らの季節」「Prologue」のほか、さらなる成長をキーワードとした新曲を複数収録予定だ。今回はグループ内でも“破天荒キャラ”として個性を際立たせている鶴房汐恩に、JO1の魅力や目指す場所、そして自身のファッションやビューティへの想いについて聞いた。

WWD:昔からファッションに興味があった?

鶴房汐恩(以下、鶴房):実を言うと、もともとはファッションに無頓着なタイプでした。デビューしてからファッションに触れる機会が増えて、一気に目覚めていった感じです。仕事ではスタイリストが用意してくれた衣装を着ることがほとんどですが、仕事のときはもちろん、オフでもちゃんとオシャレにしていたいなと思うようになりました。

WWD:今日はセットアップスタイルで撮影に挑んでもらったが、普段のスタイルは?

鶴房:私服はカジュアルでシンプルなものがほとんど。銀座にお気に入りのショップがあって、スタイリッシュな品ぞろえが今の自分のスタイルに合っています。以前はフーディーなどもよく着ていたんですが、最近はもっとシンプルで、スエットにダボっとしたシルエットのワイドパンツなどを合わせることが多いです。カジュアルだけど、どこかきれい目に見えるスタイルが好きですね。

WWD:最近購入したものは?

鶴房:ハイブランドのスニーカーを購入しました。存在感がありながら、品格のあるデザインが気に入っています。普段はカチッとした靴を履くことが多くて、そもそもスニーカーってあまり持っていないなと。気に入った靴ばっかり履いてしまうクセがあるので、どうしてもボロボロになってしまって(笑)。今後はいろいろとローテーションしてみたいです。あとは、海外通販サイトで韓国ブランドのシューズやアイテムを買うことも多いです。

韓国の人気俳優ソン・ガンがスタイルアイコン

WWD:ファッションで参考にしているものや人は?

鶴房:好きなブランドのインスタグラムアカウントをフォローしていて、アップされているスタイルを参考にしています。あとは、韓国にソン・ガン(Song Kang)という人気俳優がいて、彼のファッションはシンプルでオシャレだし、体格もいいから参考になる。韓国のファッションシーンは自分のスタイルともマッチするので、特にチェックしています。

WWD:アクセサリーは好き?

鶴房:ネックレスやリングが特に好き。アクセサリーもシンプルに合わせることがほとんどなので、シルバーばかりに目がいってしまいます。逆に、ゴールドはあまりつける習慣がないかな。女性が身につけているのを見ると素敵だなって思うんですが、僕がつけると少し派手になりすぎちゃう気がして(笑)。ちなみにピアスは怖いので開けていないです!でもイヤーカフは好きですね。衣装でつけることも多いので。まだ自分では買ったことがないのですが、今度チャレンジしてみたいです。

WWD:ビューティについて意識していることは?

鶴房:「YSL」でオフィシャルビューティパートナーをやらせてもらい、仕事上でメイクをする機会もかなり増えたので、メイクをすることへの抵抗は全くなくなりました。仕事でメイクをした日は、しっかりメイクオフし、スキンケアをすることも少しずつ習慣になってきた気がします。ただどちらかというと、インナービューティを気にしているかな。例えば、毎日ストレッチをするとか……。あとは体型管理のために、食べるものにも気を遣っています。

WWD:どのように体型を管理をしている?

鶴房:野菜から食べるようにする、なるべくお米を控えるなど、食べる量が多いので、全体のカロリーを計算しながら食事するように気を付けています。お肉も脂質の少ない部分を選ぶなど、工夫できることはやってみようかなと。本当はポテトサラダが大好きなんですけど、最近は控えていますね(笑)。でも食生活を意識するようになってから、工夫次第で好きなものを食べられるということが分かったので、意外と制限が苦じゃないんです。スープなどを選ぶことも多いですね。この仕事を始めてから食事はもちろんですが、自分自身の体や、美容について意識することが増えました。

アクセサリーブランドのプロデュースに挑戦したい

WWD:今後やってみたいファッションやビューティ関係のお仕事は?

鶴房:アクセサリーブランドのプロデュースです。僕が学生なら、女性ならこれがほしい!という視点で客観的にマーケットを見ながら、ジェンダーレスなアクセサリーを作ってみたい。僕自身はシルバーやブラックが好きですが、ゴールドだったり、ピンクだったり、いろいろなカラーを使っても楽しそう。みんながどういうものを求めているのかをリサーチして、自分のエッセンスを取り入れていきたいです。

WWD:JO1の中での自分の立ち位置、そして魅力は?

鶴房:僕は11人の中でいうと破天荒キャラ。グループでは、結構お兄さんポジションなんですけど(笑)。実は周りを見ながら暴れている感じですね。JO1は僕を含めたメンバー全員、とても個性が立っているグループです。11人全員が本当に性格が違って面白い。

WWD:12月に「WANDERING」が発売されますが、今後の目標は?

鶴房:近い目標は日本制覇。誰もがJO1を知っているという国民的グループになりたい。具体的な目標でいうと、日本各地でドームツアーを開催したいです。最終的にはメンバーの一人一人が影響力を持って世界に発信していくグループになれればいいですね。12月15日に発売する「WANDERING」は、これまでの曲と違って少し落ち着いた大人な曲調です。キャッチコピーは“予期せぬ局面、直面した苦難を乗り越え僕らは成長する”。僕らの新たなコンセプト、そして成長を感じてもらえるシングルです。

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元「キャンディストリッパー」デザイナーの菊地千春が一人一人に合った服を提案する真意

 ファッションが好きな人なら「キャンディストリッパー(CANDY STRIPPER)」を知らない人はいないだろう。“NO RULE, NO GENRE, NO AGE”をコンセプトに1994年に誕生したウィメンズブランドで、年齢に関係なく遊び心を忘れない自由な発想の中に、普段着として着やすいウエアを提案。立ち上げから20年経った今でも若者に愛されている。

 同ブランドの立ち上げメンバーの一人、菊池千春デザイナーは今、リメイクブランド「マザーズメイド(MOTHER’S MADE)」に注力している。“捨てないおしゃれ”をコンセプトに、デッドストックやビンテージアイテム、輸入生地や付属を使って、1点モノを生産・販売。体が不自由な人が着る服にも興味を持ち、車椅子ユーザーであり、約14万のフォロワーを持つTikTokerえまちゃんに洋服作りを自らオファーするなど、既製品ではファッションを楽しみづらい人に向けてもアプローチしている。

 そんな菊地デザイナーにインタビューを行った。トレンドを追う「キャンディストリッパー」を離れて「マザーズメイド」を始めた理由から、障がいを持つ人の服をデザインする真意まで、菊池デザイナーに迫った。

「キャンディストリッパー」から中国移住まで
アパレル全盛時代のデザイナー活動

―どんな経緯で「キャンディストリッパー」を立ち上げたのですか?

菊地:バンタンデザイン研究所(以下、バンタン)に在学中、相方(板橋よしえデザイナー)が定期的にクラブイベントでファッションショーを企画していて、一緒に動いていた私に話を持ちかけてくれたんです。ブランドをやるからにはコレクションが必要だからと、授業が終わったら洋服を制作する期間が続きました。コレクションを発表するときには、彼女が写真家のホンマタカシさんと親しかったこともあり、デビューショーの写真を撮ってくれました。それが宝島社のファッション雑誌「キューティ(CUTiE)」に載って、大きな反響をもらいました。当時はバブルの名残でファッションが元気だったから、バンタンもテレビなどのメディア露出に力を入れてました。私たちも取り上げてもらったり、現在の所属会社の社長に知り合ったりと、あれよあれよという間にブランドが本格的に始動していきました。

 ブランドが始まってからは、彼女と当時気になっているカルチャーを話しながら、年4回新作を作りました。デザインを一緒にやりつつも彼女はとてもアクティブで、広告や営業などの仕事も受けていて、ブランドの顔のような存在になっていました。

 私はデザイナーとして勤める一方で、中国の生産背景や市場に興味が湧いてきちゃって。“世界の台所”と言われるくらい巨大だし、当時(2008年)は北京オリンピックもあって中国が非常に盛り上がっていました。そこでブランドを離れて、単身で中国に移住しました。

―ブランドが好調な最中に中国へ移住したのですか。

菊地:最初は語学の勉強をしつつ、アパレルの仕事に就けたらいいなと思っていました。私のようなフリーのファッションデザイナーって現地に少なかったし、景気が良かったことも追い風になり、百貨店のブランド立ち上げに関わったり、セレクトショップを開いたり、スタイリストやVMDの仕事もしました。それと、ブランド立ち上げの話も頻繁にいただきましたよ。飲食店の社長が「アパレルをやりたい」と勢いで始めた事業とかね(笑)。でも勢いだけだから、毎週プレゼンしたのに商品化されなかったり、実際にローンチできたブランドもあったけど、すぐ撤退しちゃったり。そんな中、女の子を授かったので、17年に日本へ戻りました。

「何百人に向けたデザインを
これからは1人のために」

―その後、なぜ「マザーズメイド」を立ち上ようと思ったのでしょうか?

菊地:きっかけは、19年に通販番組「ショップチャンネル(SHOP CHANNEL)」に出演依頼が来たこと。番組スタッフさんが「キャンディストリッパー」世代で、「一緒に何かやりましょう!」と言ってもらって。当時、夫の仕事の関係で衣類メーカーのデットストックが家に山ほどあったので、「この子たちをもう一度蘇らせたい」という思いで「マザーズメイド」を始めました。でも、いざリメイクしてみると、自分の技術が全然足りないことを痛感して。専門的な知識を学ぶため、お直し屋さんで2年間修行しました。

―お直し屋さんで修行ですか。そこでの経験は今に生きていますか?

菊地:もちろんです。対面してお客さまと話をすることで、多様な方々の悩みや細かなニーズを知ることができました。長年アパレルのデザイナーをやってきて、“何百人に向けた洋服”を企画してきましたが、お直しは一人のために作るので、考え方が全く違うんです。

―「マザーズメイド」のさらなる成長のため、21年10月にクラウドファンディングを実施しましたが、反響はいかがでしたか?

菊池:クラウドファンディングを行ったのは、まずは「マザーズメイド」を知ってもらいたかったから。それと、デザイナーが企画を考えオーダーメイドでリメイクできるサービスがほかになくて、「そんなサービスがあったら自分も利用したい」と構想しました。 お直しってパンツの裾上げ以外利用したことがない人が多数だと思うんです。でも、お洋服がどんどん安くなって簡単に捨ててしまったり、逆に、捨てられないお洋服もあったり、誰にでも悩みはある。あと、新しいお洋服を買うのも良いですが、古いお洋服をリメイクするという選択肢を増やしてもらい、気軽にリメイクをみんなに楽しんでもらいたくて。そこで、「オンラインを通してお直しやリメイクの考えが広めたらいいじゃん」って考えました。

 もう一つの理由は、障がいを持っている方とつながるきっかけがほしかったこと。 実は母が末期ガンで他界し、生前は毎日お見舞いに行っていたのですが、「キャンディストリッパー」の服をいつも着てくれていました。母との関係は良好とは言えませんでしたが、洋服がそれをつないでくれた。この経験から「ファッションを楽しみづらい環境でも、オシャレをするって大事だな」と思ったんです。お直しを活かせば、障がいを持つ人のニーズにも答えられるはず。試しに、クラウドファンディングの告知ページにTiktokerえまちゃんとのコラボ企画を載せてみたら、当事者やご家族のサポーターも集まり、リターンとしてリメイク洋服をたくさん作ることができました。

―意外なリメイク依頼もあった?

菊地:私の想像を超えてさまざまな境遇の人から連絡をいただきました。中でも忘れられないのは、お子さんを4歳で亡くしたお母さまから「捨てられずにとってある子ども服をリメイクできないか」というご相談。私も4歳の娘がいますので目頭が熱くなり、「身に付けるより家で飾れるものが良いのでは」とカーテンを提案したところ、とても喜んでもらえました。一口に“お直し”といっても、いろんな想いに応えることができる。こんなにやりがいのある仕事だなんて想像できなかったです。

クラウドファンディングに参加した親子の声

 同連載で取材した落合陽一・監修の「TRUE COLOR FASHION」でモデルを務めた五十嵐ここねさんもクラウドファンディングに参加されたそう。そこで、ここねさんの母・純子さんに話を聞いた。

五十嵐純子:私もファッションが大好きなので、元「キャンディストリッパー」の菊地デザイナーにリメイクしてもらえるだけでとても嬉しかった。菊地デザイナーには「ここねは車椅子から落ちないようにベルトをつけているから、せっかくかわいい洋服を着てもベルトで隠れてしまう」と相談すると、「だったらベルト自体を隠せばいいのでは?」と、スタイ(よだれかけ)を大きく設計し、つけ襟風の大人っぽいデザインを考案してくれました。機能とおしゃれを両立した、とても素敵なデザインで、ここねも満足そうでした。カーディガンとワンピースをドッキングさせた服を自分用に作ってもらったのですが、カーディガンは肌触りが合わないと伝えると菊地デザイナーから「裏地をつけましょう」と提案してもらったことで着心地を高めてくれたおかげで、ここねもストレスなく着られる服になっていました。私が着やすいと感じる洋服が、ここねの着やすさにも通じるんだという発見につながりました。


【ライターズ・チェック】

 菊地デザイナーは洋服を着やすくするだけでなく、かわいさも含めて提案している。若者に愛される「キャンディストリッパー」をはじめ、洋服にトキメキを与えてきた菊地デザイナーだからできる提案で、リメイクやお直しの域を超えていると感じた。サステナブルな社会には、可愛さの提案と、お直しの技術を兼ね備えるクリエイターが必要かもしれない。

 クラウドファンディングに参加した五十嵐親子のリメイク相談は、全てオンラインで完結したそう。自宅からデザイナーに相談できるのは、外に出かけることが難しい人やその家族にとってより良いサービスだ。お直しのオンラインサービスが少しでも広まればうれしい。

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“架空のホテルのレストラン”がコンセプト HOTEL’Sが確立する新たなスタンダード

 コロナ禍により人々のライフスタイルが大きく変わった昨今。特に飲食業界では夜の営業時間が短くなり、多くの店舗がさまざまなアイデアを打ち出した。そのような環境下で10月1日、表参道にオープンしたミシュランひとつ星を2年連続獲得「SIO」の鳥羽周作シェフによる新形態レストラン「HOTEL’S(ホテルズ)」は、朝昼夜の全力3部営業で異なるスペシャリテが楽しめ、新たな朝食スタイルも提案。まさにホテルのような居心地の良い空間で楽しむ優雅なモーニングコースが反響を呼んでいる。その背景やこだわり、今後の展望について鳥羽シェフに聞いた。

コロナ禍で生まれた朝のフルコース

WWD:朝のフルコースを提案した背景とは?

鳥羽周作シェフ(以下、鳥羽シェフ):コロナ禍で緊急事態宣言を迎え、リモートワークが当たり前になり、僕たち飲食業界では夜の営業時間が短くなった上、朝型のライフスタイルを送る人も増えたように感じます。そこで、夜の営業時間を午前中にスライドできないかと考え、朝からディナー体験という朝専用フルコースを思いつきました。

 そもそも”ディナー”という言葉はただ単純に”夕食”を示すものではなく、語源を調べると“1日で一番大切にする食事のこと”を指すそうです。Twitterで発信してみたところ多くの反響があり、確信を得られたので、早速翌日に「SIO」での予約を開始しました。数日後から提供を始めました。今年10月にオープンした「HOTEL'S」でも朝からスペシャリテが楽しめます。ミシュランのお店の中でも朝、昼、夜の営業スタイルは珍しいという理由から、オープン時からさまざまなメディアにも取り上げていただきました。お客様からも「気持ちの良い1日のスタートが切られる」「コースだが量もちょうどよく、最後までおいしく食べられる」と好評です。

WWD:「どこの店舗でもサラダを一番大事にしている」と語る、鳥羽シェフ渾身のサラダへのこだわりが知りたい。

鳥羽シェフ:「モーニングスペシャリテ」含む全時間帯で共通して提供している“ホテルズサラダ”では、季節や仕入れ先のおすすめに応じて20種類以上の食材を使っています。野菜をはじめ、果物、ハーブ、キヌア、そしてドライフルーツやスパイスなど7種の食材を手作業でブレンドしたサラダのためのミックスナッツ“グッド ナッツ グッド サラダ(GOOD NUTS GOOD SALAD)”を使用し、一口ごとに違う味わいを楽しめるよう仕上げました。素材の味を活かすために、ホワイトバルサミコをベースとしたシンプルなドレッシングを和えています。

「架空のホテルのレストラン」で提供する期待を超えた感動体験

WWD:食事だけではなく、空間作りにも一層のこだわりが感じられるが、「架空のホテルのレストラン」というコンセプトにどのように紐づいている?

鳥羽シェフ:「レストラン体験=期待を超えた感動体験」だと考えています。そのため、 ユニフォーム、インテリア、食器など、感動体験を構成する一つ一つの要素を、それぞれの道で一流であるクリエイターに手掛けてもらうことにしました。またホテルでの食事の特徴の一つに、朝、昼、夜とそれぞれの時間帯でお客さまに合わせたお料理が提供されていることが挙げられます。それぞれの時間帯でスペシャリテを用意するように、音楽も朝、昼、夜と時間帯ごとに用意したいと考え、大沢伸一氏にプレイリストの作成を依頼しました。

 ユニフォームは、クリエイティブディレクターとして「ノンネイティブ(NONNATIVE)」デザイナーの藤井隆行氏にアドバイスをもらいセレクト。「そもそもレストランのユニフォームは、本当に日本人にフィットしているのか」と疑いながらイメージを固めました。強いていえば、テーマは90年代アメリントラッド。「HOTEL'S」のシンボルマークである鳥をモチーフに、テーマカラーのネイビーでまとめています。スタッフがはいているブーツはレッドウィングで、職人の足元を支えるというワークブーツ本来の居場所に戻しました。「レストランだけど、ゆるすぎず固すぎない」、居心地のよさを大事にしている「HOTEL'S」にぴったりと合うユニフォームになったと思います。

 食器は、陶芸家の鈴木麻起子氏が手掛ける「ラ メゾン デ ヴォン(LA MAISON DE VENT)」を特注しました。レストランで使われる食器の多くは、大きいことで料理の存在感を伝えているが、「HOTEL’S」は緊張感なくカジュアルな雰囲気を伝えたい。そして器に触れて温度を感じてもらいたいので、通常のお皿より薄く小さく、軽いサイズでオーダーしました。ブランドのシンボリックカラーかつ、「HOTEL’S」のイメージに合うターコイズブルーを中心に選んでいます。

 そして、美しい姿勢のまま胃を圧迫せずに料理を楽しめるテーブルセットなど、HOTEL'Sの家具は「マルニ木工」を採用しています。メンバー自らが工場に足を運び選んだ家具は、最高の食体験に欠かせません。

鳥羽シェフが目指す“飲食業界の新スタンダード”

WWD:“朝ディナー”を打ち出した上で、飲食業界の新たな可能性を見出したのでは。

鳥羽シェフ:緊急事態宣言下を通じて、たくさんの気づきがありました。「SIO」で始めた朝ディナーは、レストランに新しい収益の可能性をもたらしたと思っています。朝昼夜全力三部営業をかなえるレストランを作ることで、収益面で持続可能なモデルが作れるのではないでしょうか。

WWD:自身のnoteでも「愛ゆえに俺は厨房を去らねばならぬ」と語っているが、新スタンダードを確立するための課題とは。

鳥羽シェフ:このモデルでは、“シェフに依存することがない仕組み”を作らなければ継続的に営業していくことが難しいです。そのためには、感動を生むための料理やコースの作り方をスタッフに落とし込んでいく必要があり、スタッフの教育が非常に重要だと思います。もしこのモデルが可能になれば、属人的な営業から開放され、レストランを継続的に営業することができ、“おいしい!”という感動をたくさんの人々に伝えることができるはずです。新たなモデルを確立することは、最終的には新たな食文化をつくることにつながると考えています。食のプラットフォームとなれるように、今後も事業を展開していきたい。バラバラの点を線に、そして線と線とつないで面にしていくことで、より豊かで美味しい世界を作れたら、と思っています。

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“架空のホテルのレストラン”がコンセプト HOTEL’Sが確立する新たなスタンダード

 コロナ禍により人々のライフスタイルが大きく変わった昨今。特に飲食業界では夜の営業時間が短くなり、多くの店舗がさまざまなアイデアを打ち出した。そのような環境下で10月1日、表参道にオープンしたミシュランひとつ星を2年連続獲得「SIO」の鳥羽周作シェフによる新形態レストラン「HOTEL’S(ホテルズ)」は、朝昼夜の全力3部営業で異なるスペシャリテが楽しめ、新たな朝食スタイルも提案。まさにホテルのような居心地の良い空間で楽しむ優雅なモーニングコースが反響を呼んでいる。その背景やこだわり、今後の展望について鳥羽シェフに聞いた。

コロナ禍で生まれた朝のフルコース

WWD:朝のフルコースを提案した背景とは?

鳥羽周作シェフ(以下、鳥羽シェフ):コロナ禍で緊急事態宣言を迎え、リモートワークが当たり前になり、僕たち飲食業界では夜の営業時間が短くなった上、朝型のライフスタイルを送る人も増えたように感じます。そこで、夜の営業時間を午前中にスライドできないかと考え、朝からディナー体験という朝専用フルコースを思いつきました。

 そもそも”ディナー”という言葉はただ単純に”夕食”を示すものではなく、語源を調べると“1日で一番大切にする食事のこと”を指すそうです。Twitterで発信してみたところ多くの反響があり、確信を得られたので、早速翌日に「SIO」での予約を開始しました。数日後から提供を始めました。今年10月にオープンした「HOTEL'S」でも朝からスペシャリテが楽しめます。ミシュランのお店の中でも朝、昼、夜の営業スタイルは珍しいという理由から、オープン時からさまざまなメディアにも取り上げていただきました。お客様からも「気持ちの良い1日のスタートが切られる」「コースだが量もちょうどよく、最後までおいしく食べられる」と好評です。

WWD:「どこの店舗でもサラダを一番大事にしている」と語る、鳥羽シェフ渾身のサラダへのこだわりが知りたい。

鳥羽シェフ:「モーニングスペシャリテ」含む全時間帯で共通して提供している“ホテルズサラダ”では、季節や仕入れ先のおすすめに応じて20種類以上の食材を使っています。野菜をはじめ、果物、ハーブ、キヌア、そしてドライフルーツやスパイスなど7種の食材を手作業でブレンドしたサラダのためのミックスナッツ“グッド ナッツ グッド サラダ(GOOD NUTS GOOD SALAD)”を使用し、一口ごとに違う味わいを楽しめるよう仕上げました。素材の味を活かすために、ホワイトバルサミコをベースとしたシンプルなドレッシングを和えています。

「架空のホテルのレストラン」で提供する期待を超えた感動体験

WWD:食事だけではなく、空間作りにも一層のこだわりが感じられるが、「架空のホテルのレストラン」というコンセプトにどのように紐づいている?

鳥羽シェフ:「レストラン体験=期待を超えた感動体験」だと考えています。そのため、 ユニフォーム、インテリア、食器など、感動体験を構成する一つ一つの要素を、それぞれの道で一流であるクリエイターに手掛けてもらうことにしました。またホテルでの食事の特徴の一つに、朝、昼、夜とそれぞれの時間帯でお客さまに合わせたお料理が提供されていることが挙げられます。それぞれの時間帯でスペシャリテを用意するように、音楽も朝、昼、夜と時間帯ごとに用意したいと考え、大沢伸一氏にプレイリストの作成を依頼しました。

 ユニフォームは、クリエイティブディレクターとして「ノンネイティブ(NONNATIVE)」デザイナーの藤井隆行氏にアドバイスをもらいセレクト。「そもそもレストランのユニフォームは、本当に日本人にフィットしているのか」と疑いながらイメージを固めました。強いていえば、テーマは90年代アメリントラッド。「HOTEL'S」のシンボルマークである鳥をモチーフに、テーマカラーのネイビーでまとめています。スタッフがはいているブーツはレッドウィングで、職人の足元を支えるというワークブーツ本来の居場所に戻しました。「レストランだけど、ゆるすぎず固すぎない」、居心地のよさを大事にしている「HOTEL'S」にぴったりと合うユニフォームになったと思います。

 食器は、陶芸家の鈴木麻起子氏が手掛ける「ラ メゾン デ ヴォン(LA MAISON DE VENT)」を特注しました。レストランで使われる食器の多くは、大きいことで料理の存在感を伝えているが、「HOTEL’S」は緊張感なくカジュアルな雰囲気を伝えたい。そして器に触れて温度を感じてもらいたいので、通常のお皿より薄く小さく、軽いサイズでオーダーしました。ブランドのシンボリックカラーかつ、「HOTEL’S」のイメージに合うターコイズブルーを中心に選んでいます。

 そして、美しい姿勢のまま胃を圧迫せずに料理を楽しめるテーブルセットなど、HOTEL'Sの家具は「マルニ木工」を採用しています。メンバー自らが工場に足を運び選んだ家具は、最高の食体験に欠かせません。

鳥羽シェフが目指す“飲食業界の新スタンダード”

WWD:“朝ディナー”を打ち出した上で、飲食業界の新たな可能性を見出したのでは。

鳥羽シェフ:緊急事態宣言下を通じて、たくさんの気づきがありました。「SIO」で始めた朝ディナーは、レストランに新しい収益の可能性をもたらしたと思っています。朝昼夜全力三部営業をかなえるレストランを作ることで、収益面で持続可能なモデルが作れるのではないでしょうか。

WWD:自身のnoteでも「愛ゆえに俺は厨房を去らねばならぬ」と語っているが、新スタンダードを確立するための課題とは。

鳥羽シェフ:このモデルでは、“シェフに依存することがない仕組み”を作らなければ継続的に営業していくことが難しいです。そのためには、感動を生むための料理やコースの作り方をスタッフに落とし込んでいく必要があり、スタッフの教育が非常に重要だと思います。もしこのモデルが可能になれば、属人的な営業から開放され、レストランを継続的に営業することができ、“おいしい!”という感動をたくさんの人々に伝えることができるはずです。新たなモデルを確立することは、最終的には新たな食文化をつくることにつながると考えています。食のプラットフォームとなれるように、今後も事業を展開していきたい。バラバラの点を線に、そして線と線とつないで面にしていくことで、より豊かで美味しい世界を作れたら、と思っています。

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カップルで楽しめる消臭・抗菌サステナ素材の下着を提供 「シュット!インティメイツ」のトップを直撃

 オンワードグループ傘下のインティメイツによる下着ブランド「シュット!インティメイツ(CHUT!INTIMATES以下、シュット)」は、2014年にルミネ新宿内に1号店をオープンし、現在全国に9店舗を構える。ファッショントレンドを反映したランジェリーを提案すると同時に、ボディーメイク機能で特許を取得したブランドを代表するブラジャーなど、下着における新しい価値観を提案してきた。多くの店舗が休業したコロナ禍でも売り上げは安定し着実に成長している。今年8月就任した鈴木淳也インティメイツ社長に話を聞いた。

――14年にオンワードグループが下着事業をスタートしたきっかけは?

鈴木淳也インティメイツ社長(以下、鈴木):オンワードグループはアパレルだけでなく生活文化企業であり、創業時から“人々の生活に潤いと彩りを提供すること”を経営理念に掲げている。それら商品の一環として、下着を展開することになった。

――「シュット」のコンセプトは?

鈴木:「ランジェリーもファッションのように楽しんでもらいたい」という願いを込めてスタートした。欧米に比べて日本の下着は機能性や実用性が重視される中で、下着もファッションのように楽しめる文化を作り、下着でもトレンドを発信したいと思った。“盛る”“痩せ見え”などの機能だけでなく、ファッションのように楽しめるランジェリーを提案したい。

――ブランド設立から8年目となるが、売り上げの推移は?

鈴木:コロナ禍でもECが店舗分の売り上げをカバーしてほぼ前年実績をキープできている。3〜4年前からECを強化してきたが、それがコロナの影響で、店舗とECの売り上げの割合が約6対4から約3対7になった。

コロナ禍2年目で売れるブラジャーに変化

――コロナで市場を取り巻く環境やニーズはどう変化したか?

鈴木:市場はもちろん厳しくなっている。下着もコトがなければ、購入が減る。それは、洋服と連動している。コロナ禍2年目でニーズに変化が見られる。昨年は、家ナカ需要により、ルームウエアやナイトブラが好調だった。特に、ナイトブラは前年の約2倍を売り上げた。“おうち時間”が増えたことによる、自分磨きへの意識の高まりからだろう。一方、“外出しないけれど下着はおしゃれをしたい”という消費者もあり、レース物を中心にデコラティブなデザインがよく動いた。今年は、Tシャツに合うようなシンプルなモールドカップブラが売れるようになった。昨年のノンワイヤーブラの売り上げは19年とほぼ同じだったのに対し、今年は前年比約20%増だ。リモートワークの定着により、外出着と部屋着にあまり差がなくなり、リラックスした外出着にもなるTシャツなどに対応したノンワイヤーブラの需要が高まっている。

――SNSを含めたプロモーション面での施策や成果は?

鈴木:ここ数年、アプリを軸としたサービスを強化している。専用アプリをリニューアルして使い勝手を良くした。19年にはショッピング用アプリとしての環境を整え、20年にはコンシェルジュサービスを導入してお客さまとスタッフが1対1でコミュニケーションできるようにした。SNSはインスタグラムが中心で、“おうち時間”に役立つサービスやマメ知識、情報などを積極的に発信している。顧客層は20代後半から40代前半が中心だが、あまり年齢は意識していない。今は、SNS発信を強化した結果、20代後半の顧客が増えている状況だ。

――コラボレーションを積極的に行っているが、その意図は?

鈴木:今年の春はクリス-ウェブ佳子さん、昨年の春と今年の夏にベイカー恵利沙さんとコラボレーションした。知名度の高い人の起用による宣伝目的というより、もともと「シュット」を使ってくれている人や下着に対するフィーリングが合う人々とコラボしている。ブランドとしてランジェリーを楽しむ文化を伝えていきたいので、年齢は関係なく、一緒にランジェリーシーンを盛り上げてくれる人々とコラボしていきたい。

女性下着初の“トリポーラス ファブリック”を採用

――9月にサステナブル素材の商品を発売したが、その開発背景は?

鈴木:サステナブルな取り組みへの意識は以前からあり、ブランド設立初期からブラジャーの回収キャンペーンなどは行っていたが、商品開発はできていなかった。その理由は、肌触りが悪かったりと、品質面や価格の面でも納得するものに出合えなかったから。価格の高いサステナブルな素材を使用すれば、当然販売価格も高くなる。消費者にメリットがある付加価値のあるモノ作りをしたかった。リサーチを進めるうちに、ソニーグループが開発した“トリポーラス ファイバー(以下、トリポーラス)”に出合った。米の籾殻由来の素材で、レーヨンベースで柔らかく肌触りが良い。また、消臭機能や抗菌機能などもある。消臭機能から、今まではメンズウエアや靴下などに使用されていた。それらの機能は、サニタリーショーツに生かせると思い、女性下着業界で初の採用となった。ノンワイヤーブラが2型、ショーツはサニタリーを含む3型、メンズトランクス1型をラインアップしている。

――“トリポーラス”の初動は?

鈴木:ウイメンズ商品を購入する3人に1人がメンズトランクスを購入し、カップルランジェリーとして支持されている。私自身これまでボクサー派だったが、このトランクスを愛用している。肌触りがよく、トランクスの内側に立体的なインナーポケットが付いていて快適だ。サステナブル素材というよりも、肌触りのよさを気に入り購入する消費者が多い。Tシャツにも合わせやすいブラジャー需要にも合う。今後は定番化を実現し、アイテムの幅を広げたい。

――今後のビジネスの展望は?

鈴木:デジタルを中心としたサービスをさらに強化する。販売員がオンラインで接客するコンセルジュサービスと来店時の接客をアプリで共有し、その次の接客へとつなげる仕組みにしている。アプリをリニューアルして使いやすくしたことで、ロイヤルカスタマーが毎年2ケタ増だ。今後は、アプリでチャットやテレビ電話ができるようにしたい。

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カップルで楽しめる消臭・抗菌サステナ素材の下着を提供 「シュット!インティメイツ」のトップを直撃

 オンワードグループ傘下のインティメイツによる下着ブランド「シュット!インティメイツ(CHUT!INTIMATES以下、シュット)」は、2014年にルミネ新宿内に1号店をオープンし、現在全国に9店舗を構える。ファッショントレンドを反映したランジェリーを提案すると同時に、ボディーメイク機能で特許を取得したブランドを代表するブラジャーなど、下着における新しい価値観を提案してきた。多くの店舗が休業したコロナ禍でも売り上げは安定し着実に成長している。今年8月就任した鈴木淳也インティメイツ社長に話を聞いた。

――14年にオンワードグループが下着事業をスタートしたきっかけは?

鈴木淳也インティメイツ社長(以下、鈴木):オンワードグループはアパレルだけでなく生活文化企業であり、創業時から“人々の生活に潤いと彩りを提供すること”を経営理念に掲げている。それら商品の一環として、下着を展開することになった。

――「シュット」のコンセプトは?

鈴木:「ランジェリーもファッションのように楽しんでもらいたい」という願いを込めてスタートした。欧米に比べて日本の下着は機能性や実用性が重視される中で、下着もファッションのように楽しめる文化を作り、下着でもトレンドを発信したいと思った。“盛る”“痩せ見え”などの機能だけでなく、ファッションのように楽しめるランジェリーを提案したい。

――ブランド設立から8年目となるが、売り上げの推移は?

鈴木:コロナ禍でもECが店舗分の売り上げをカバーしてほぼ前年実績をキープできている。3〜4年前からECを強化してきたが、それがコロナの影響で、店舗とECの売り上げの割合が約6対4から約3対7になった。

コロナ禍2年目で売れるブラジャーに変化

――コロナで市場を取り巻く環境やニーズはどう変化したか?

鈴木:市場はもちろん厳しくなっている。下着もコトがなければ、購入が減る。それは、洋服と連動している。コロナ禍2年目でニーズに変化が見られる。昨年は、家ナカ需要により、ルームウエアやナイトブラが好調だった。特に、ナイトブラは前年の約2倍を売り上げた。“おうち時間”が増えたことによる、自分磨きへの意識の高まりからだろう。一方、“外出しないけれど下着はおしゃれをしたい”という消費者もあり、レース物を中心にデコラティブなデザインがよく動いた。今年は、Tシャツに合うようなシンプルなモールドカップブラが売れるようになった。昨年のノンワイヤーブラの売り上げは19年とほぼ同じだったのに対し、今年は前年比約20%増だ。リモートワークの定着により、外出着と部屋着にあまり差がなくなり、リラックスした外出着にもなるTシャツなどに対応したノンワイヤーブラの需要が高まっている。

――SNSを含めたプロモーション面での施策や成果は?

鈴木:ここ数年、アプリを軸としたサービスを強化している。専用アプリをリニューアルして使い勝手を良くした。19年にはショッピング用アプリとしての環境を整え、20年にはコンシェルジュサービスを導入してお客さまとスタッフが1対1でコミュニケーションできるようにした。SNSはインスタグラムが中心で、“おうち時間”に役立つサービスやマメ知識、情報などを積極的に発信している。顧客層は20代後半から40代前半が中心だが、あまり年齢は意識していない。今は、SNS発信を強化した結果、20代後半の顧客が増えている状況だ。

――コラボレーションを積極的に行っているが、その意図は?

鈴木:今年の春はクリス-ウェブ佳子さん、昨年の春と今年の夏にベイカー恵利沙さんとコラボレーションした。知名度の高い人の起用による宣伝目的というより、もともと「シュット」を使ってくれている人や下着に対するフィーリングが合う人々とコラボしている。ブランドとしてランジェリーを楽しむ文化を伝えていきたいので、年齢は関係なく、一緒にランジェリーシーンを盛り上げてくれる人々とコラボしていきたい。

女性下着初の“トリポーラス ファブリック”を採用

――9月にサステナブル素材の商品を発売したが、その開発背景は?

鈴木:サステナブルな取り組みへの意識は以前からあり、ブランド設立初期からブラジャーの回収キャンペーンなどは行っていたが、商品開発はできていなかった。その理由は、肌触りが悪かったりと、品質面や価格の面でも納得するものに出合えなかったから。価格の高いサステナブルな素材を使用すれば、当然販売価格も高くなる。消費者にメリットがある付加価値のあるモノ作りをしたかった。リサーチを進めるうちに、ソニーグループが開発した“トリポーラス ファイバー(以下、トリポーラス)”に出合った。米の籾殻由来の素材で、レーヨンベースで柔らかく肌触りが良い。また、消臭機能や抗菌機能などもある。消臭機能から、今まではメンズウエアや靴下などに使用されていた。それらの機能は、サニタリーショーツに生かせると思い、女性下着業界で初の採用となった。ノンワイヤーブラが2型、ショーツはサニタリーを含む3型、メンズトランクス1型をラインアップしている。

――“トリポーラス”の初動は?

鈴木:ウイメンズ商品を購入する3人に1人がメンズトランクスを購入し、カップルランジェリーとして支持されている。私自身これまでボクサー派だったが、このトランクスを愛用している。肌触りがよく、トランクスの内側に立体的なインナーポケットが付いていて快適だ。サステナブル素材というよりも、肌触りのよさを気に入り購入する消費者が多い。Tシャツにも合わせやすいブラジャー需要にも合う。今後は定番化を実現し、アイテムの幅を広げたい。

――今後のビジネスの展望は?

鈴木:デジタルを中心としたサービスをさらに強化する。販売員がオンラインで接客するコンセルジュサービスと来店時の接客をアプリで共有し、その次の接客へとつなげる仕組みにしている。アプリをリニューアルして使いやすくしたことで、ロイヤルカスタマーが毎年2ケタ増だ。今後は、アプリでチャットやテレビ電話ができるようにしたい。

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史上初!? 「水着ナシ」の東レ新キャンペンガール間瀬遥花に聞く12の質問

 東レは11月29日、「2022年 東レキャンペーンガール」に間瀬遥花さんを選出した。間瀬さんは1997年9月29日生まれ、名古屋市出身。子どもの頃から名古屋で劇団やモデル活動を行っており、今年6月に上京し、現在の事務所であるインセント所属になった。同キャンペーンモデルは、かつて水着の仕事がメーンだったものの、東レによると「現時点では水着のキャンペーンの予定がなく、水着の着用予定はない。選考のときもそういった観点で選んでいない」という。新しいキャンペーンガールはどんな女性なのか。一問一答を掲載する。

――応募のきっかけは?

間瀬:マネージャーさんです。

――受かったときの気持ちは?

間瀬:マネージャーさんから電話をもらって、「やったー!」って。実は少し予定より選考に時間がかかっていたので、その間はドキドキしながら待ってました。だからその分も嬉しかったですね。両親にLINEで伝えると、すぐに電話がかかってきました。両親も喜んでいました。

――上京を決めた理由は?

間瀬:直感で決めました。家族や周囲の人も、私が言い出したら聞かない事は知っているので、反対はされませんでした(笑)。

――プロポーション維持の秘訣は?

間瀬:骨盤矯正ですね。普段から姿勢は意識していて、そのおかげなのか、モデルの仕事をはじめてから身長が3cm伸びました。

――趣味は世界遺産巡りとか?今まで行ったところで印象深いところは?

間瀬:世界遺産検定2級を取っているのですが、その直後にコロナ禍担ってしまって。実際行っているのは国内のみ。でも昔、家族で行った姫路城がすごくきれいで印象に残ってます。

――水着はお仕事では着ないということですが、海外の世界遺産に行ったら、泳いだりするのは楽しみですね。

間瀬:泳げないんです。カナヅチです(笑)。

――好きな男性のタイプは?

間瀬:心の広い寛大な人です。

――普段着は?

間瀬:シンプルな服が好きです。ただ、モノクロではなくカラーや柄を使った服が好きです。

――買い物はどこで?

間瀬:よく行くのは、新宿のルミネエストです。好きなブランドは「ページボーイ(PAGEBOY)」と「レディアゼル(REDYAZEL)」。身長が高い(169cm)ので、ボトムスとかだとピッタリ来るのがなかなかなくて、あまりネット通販は使いません。ショッピングはもっぱらリアルです。

――インスタやTikTokでよく見るアカウントは?

間瀬:インスタグラムは自分でもやっている(@maseharu_929)し、よく見ています。よく見るアカウントは、モデルの先輩たちです。

――最近はまっていることは?

間瀬:喫茶店が好きなので、東京でもカフェ巡りしたいなあって思っています。

――地元名古屋のおすすめのお店を教えてください。

間瀬:味噌煮込みうどんが好きなんですけど、私の一番のオススメは「山本屋本店」です。名古屋に行ったらぜひ行ってみてください!

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内田理央、本気でTシャツビジネスに挑むVol.3 yutori片石社長「ファッション界は気合いが足りない」

 モデルや女優として活躍する内田理央の普段着は、Tシャツやパーカなどカジュアルな装い。そこで本人の感性と個性を存分に生かしながら、ファッション性やプロセス、ビジネスにまでこだわった「本気のTシャツビジネス」をスタート!「WWDJAPAN」が各界の先駆者を紹介することでTシャツ、イラスト、ビジネスについて学びながら、「名前貸し」とは全然違う、本気のタレントによるアパレルブランドを目指します。第3回はyutoriの片石貴展社長に直撃します。

内田:これまでのキャリアを教えてください。

片石:新卒でモバイルゲーム事業などを手掛けるアカツキに入社して、インスタグラマーにサイトのPR依頼をする仕事をしていました。当時はファッションに注目しているアカウントがなく、音楽フェスや下北沢にいる若者が古着をよく着ているのを目にして、在籍中に副業でメディア「古着女子」を立ち上げました。

内田:学生時代にアパレルブランドを立ち上げたいという夢はなかったんですか?

片石:高校生の頃から古着が好きだったので、洋服屋はいつかやりたいと思っていました。でもファッション業界よりIT業界の方が自分自身を高めることができて、起業に近づけそうだと感じたので寄り道をしました。

内田:現在はD2Cブランドを手掛けられていますが、今後も店舗を持つ予定はないんですか?

片石:売り上げを増やすために店舗を出すのではなく、ブランドの世界観をより伝えるための出店を考えたいです。グローバルで顧客が増加した際に、観光地にお土産屋として店舗を出すケースはあると思います。でもチェーン店を多店舗展開して売り上げを増やすことは考えていないです。

内田:アパレルブランドを始める上で、SNSで重要なポイントは?

片石:SNSは仕事中も常に見るようにしていて、最近はTikTokを一番見ていますね。今、TikTokのメインユーザーが20代中盤から後半に変わり始めていて、インスタグラマーとティックトッカーの2万フォロワーでは熱量が全然違います。今年のマーケティングの予算は、インスタグラムからTikTokに全てシフトしました。周りが気付いてしまうから、あまり言いたくないんですけどね(笑)。自分が上の世代に勝っていることは若さだけなので、時代の空気感や話題のインフルエンサーに対しては誰よりも早くキャッチアップすることを意識しています。いい商品とそれに適したお客さまを招くマーケティングの両方ができていないと、物を売ってお金を稼ぎ続けるのは難しいです。

内田:単にバズればいいというわけでもないし、いい商品を作っても伝わらなければ意味がないということですね。D2Cブランドなどが普及して、ファッション界参入のハードルが低くなった今、上手くいく人とそうでない人の違いはなんですか?

片石:正直、ファッション業界には気合いが入っている人がいません。簡単に作れるものは作るんですが、服のクオリティーを上げたり、お金を稼いだり、本気でファッション業界で勝負をかけている人はいないですね。資金によって洋服のクオリティーも変わってくるので、規模が小さいと同じような物しか作れない。逆に大手は作れるものは沢山あるけど、現代風の見せ方や売り方が分からないからインターネットビジネスに弱い。両立できている会社やブランドはほとんどありません。

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頭が大きい人のための帽子ブランド「アンネームドヘッドウェア」が絶好調 元ZOZO社員が立ち上げ

 “頭が大きな人”に向けたヘッドウエアブランド「アンネームドヘッドウェア(UNNAMED HEADWEAR)」が売れている。昨年9月にクラウドファンディング「マクアケ」でブランド立ち上げのサポートを募ると、目標の20万円を大きく上回り、4日間で300万円を調達した。その後、公式サイトを開設し、新作入荷のたびに完売が続出。入荷待ちリストに100人近くの名前が連なることもある。平均月商は600万円前後だ。

 同ブランドの商品企画から生産管理、サイト運営、梱包・発送まで1人で行うのが、渡邉貴浩ディレクターだ。渡邉ディレクターはZOZOでEC運営と物流の経験を積み、31歳で独立。コンプレックスだった大きな頭に勝機を見出し、同ブランドを立ち上げた。「入ればいいってもんじゃない」と語る帽子デザインのこだわりと、コンプレックスを逆手にとったマーケティング戦略について聞いた。

きっかけは単純な疑問
「帽子の“フリーサイズ”って何?」

WWD:「アンネームドヘッドウエア」を立ち上げた理由は?

渡邉貴浩ディレクター(以下、渡邉):僕の頭にフィットする帽子がなかったからです。靴や服って複数のサイズが用意されているのに、帽子はフリーサイズが当たり前。いやいや、フリーサイズって何?27.0cmしか扱わない靴屋があったらイヤでしょ?(笑)と思って始めました。

WWD:後頭部のアジャスターで、ある程度はサイズ調節できるのでは?

渡邉:そう言う人も多いんですけど、入ればいいってもんじゃないんです。デコが広くて頭が長い人は高さのある帽子が似合うし、ハチが張って頭周りが大きい人は、被り口が広くて浅めのキャップがいい。世の中にはいろんな頭がある。僕は、それぞれのニーズに応えたいんです。

パッと見は「ほぼ一緒」
それでもこだわる
帽子の“高さ”

WWD:アイテムのこだわりは?

渡邉:同じ型でハイ、ミドル、ローの3種類の高さを用意しています。パッと見ほぼ一緒なんですけど、深さが微妙に違っていて、ツバの大きさも最適なバランスに設計しています。提携先の工場に協力してもらいながら、サンプルを何度も確認して、納得のいくアイテムに仕上げます。素材もこだわっていて、最近はコットン100%のカツラギをよく使います。厚手で重厚感があり、チープに見えないのがポイントです。大きめのキャップってネットで探せば見つかるんですけど、どれもアイデア商品というか、サクッとつくったものばかり。「アンネームドヘッドウェア」は、大きめだけど、モノづくりもしっかりしているところが強みです。

WWD:型数は今後増やしていく?

渡邉:現在、10型弱とそれほど多くないので、今後はもっと増やそうと思っています。例えばフェルトのハットとか、キャケットとか。今はサファリハットを開発中です。インスタのDMで「この形を作って!」とお客さまの声が頻繁に届くので、「その声を無下にはしない」と実際の企画に反映しています。

WWD:サイト立ち上げから入荷と完売を繰り返し、最近ようやく在庫が安定してきた印象だ。

渡邉:おっしゃる通りです。そもそも「マクアケ」での資金調達は2カ月を予想していたのに、4日でリターン枠が埋まっちゃって。大量のウェイティングリストができました。一般販売しても供給が追いつかず、「まだ売り切れですか?」とDMが届くような毎日でした。今は即完売のアイテムも減ってきて、一定の在庫を置けるようになりました。ニッチな市場だと思っていたのですが予想以上に大きなニーズがありました。

ZOZOでECの裏方を経験
学生時代は“ササゲ”に捧げる

WWD:ZOZOから独立してブランドを立ち上げた経緯は?

渡邉:大学在学中にZOZOでアルバイトを初めました。業務は、商品の撮影や採寸、原稿という、いわゆるECの“ササゲ”です。週5で働き、学生時代をササゲに捧げました。みんなが就活している時も、「正社員になれるのでは?」とバイトばかりしていたら、運良く社員登用制度で正社員に採用されました。正社員1年目はカメラマンとして毎日撮影ばかり。その後、撮影や管理、商品の出荷、梱包などの現場や管理職などを経験しました。ECの裏側は一通りやりましたね。

WWD:そこからプロダクトを作りたくなった?

渡邉:「自分で何かやりたい」と思い独立しましたが、当初は帽子と決めていたわけではありませんでした。最初はインフルエンサーを起用したウィメンズアパレルをやろうと、事業計画書を綿密に作り込んで公庫と面談し、事業をスタートさせました。でもZOZOとは勝手が違って、自社サイトにお客さまが全く集まらず、売り上げが立たなかった。在庫もかなり積んだのに、全く動かない。「これはやばい」と、なんとなく構想していた帽子の事業を1〜2カ月で詰めて、クラウドファンディングに着手しました。

コンプレックス商材でも
嫌悪感を抱かれないSNS戦略

WWD:「アンネームドヘッドウェア」はいわゆるコンプレックス商材にも分類されるが、マーケティングで気をつけていることは?

渡邉:ブランド名は何度も考え直しました。サイジングが最大の特徴なので、それに関連する名前をつけようとしたのですが、例えば「ビッグキャップ」なんて名前だったら、友達にバレたら恥ずかしいし、自分じゃ買わない。ならば、「名前なし」をブランド名にしちゃおうと、「アンネームド」に決めました。あとはSNSの打ち出し方も気をつけています。個人アカウントで「頭の大きな人向けに帽子作っています」と全面にアピールする一方で、ブランド公式アカウントでは“オリジナルサイズヘッドウエア”としか謳っていません。その方が、ユーザーがシェアしやすいし、フィード投稿を見ても嫌悪感を抱かないはず。コンプレックス広告なども問題になってますよねが、気持ち良いプロダクトや広告の方が刺さると考えています。

WWD:今後の展望は?

渡邉:まずはアイテムを増やしたい。お客さまが、自分のキャラクターを踏まえて帽子を選べるようにしたいです。それと、オフラインでコミュニケーションできる場を作りたい。実際に被り比べて、初めて納得して買ってもらえる商材なので、ポップアップや試着専用のショールームなどを用意しようと構想しています。最近法人化したから、いろいろと動きやすくなるはず。帽子が似合わないとお悩みの皆さん、ぜひ期待してください。

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「ねぎらいの気持ちを表現」 トモ・コイズミが「東京エディション 虎ノ門」とコラボしたクリスマスツリー登場

 デザイナーのトモ・コイズミがデザインしたクリスマスツリーが、「東京エディション 虎ノ門(TOYO EDITION TORANOMON 以下、エディション)」のロビーフロア31階に登場した。コイズミのシグニチャーであるラッフルが施された華やかなツリーは、ピンクやレッドで彩られ華やいだ気分にしてくれる、このツリーは実はドレス。12月26日〜2022年1月6日は、ドレスとして展示される。コイズミにこのコラボレーションやコラボに込めた思いなどについて聞いた。

WWD:このクリスマスツリーに込めた思いは?

トモ・コイズミ:“ねぎらい”の気持ちを込めて作った。コロナ禍でみんな大変なので、気持ちだけでも明るくハッピーになるものにしたかった。色合いや大きさにもこだわり、一目見て、“かわいい” “美しい”と思ってもらえるようにしたかった。

WWD:制作にかかった時間は?

コイズミ:約1年半。今まで作ったドレスの中で一番たくさん素材を使った。12月26日までは、クリスマスツリーとして展示されるが、それ以降22年1月6日まではドレスとして展示する。肩紐のついたサックドレスだ。

WWD:「エディション」とコラボした経緯は?

コイズミ:昨年のオープン時に、コレクションを2階のボールルームに展示させてもらったのがきっかけだ。また、イギリス・ロンドンの友人を通して、「エディション」のファーストゲストになった。今回のコラボも、ファッション性が高い「エディション」と相乗効果があると思い取り組んだ。

WWD:宿泊した感想は?

コイズミ:ミニマルで不必要なものがないすてきな部屋だった。ラグジュアリーホテルというと、ゴテゴテしている印象があるが、「エディション」の部屋は“センスのいい家”といった感じだ。

WWD:今後のクリエイションについては?

コイズミ:衣装デザイナーとして、エンタメ系の衣装を作ってみたいと思う。今年開催された東京オリンピックの開会式のMISIAの衣装が代表的。今後は、米ハリウッドのMETガラなどのレッドカーペットの衣装をデザインしてみたい。コンテンポラリーダンスやオペラなどの衣装にも興味がある。

WWD:自身のスタイルを表現すると?

コイズミ:華やかなものが好き。それが私の原点だから、それを追いかけたい。10代のころに見たジョン・ガリアーノ(John Galliano)による「ディオール(DIOR)」のオートクチュールが大好きだ。だから、パリのオートクチュールに参加するのが夢だ。フレグランスも作ってみたい。

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高橋愛がジェンダーレスコスメ「アイムミクス」を初プロデュース メイクもファッションも「ワクワクが大切」

 化粧品の製造などを手掛けるG.Oホールディングスから今秋、女優やモデルとして活躍する高橋愛の初プロデュースコスメ「アイムミクス(AIMMX)」が誕生した。第1弾アイテムとして5色のアイシャドウパレット(全2種、各税込2380円)をリリース。10月4日に予約を開始した楽天市場内ではウィークリー&デイリー&リアルタイムランキングで合計18冠を獲得し、楽天市場内の全3億1389万8788点(10月1日時点)のアイテムを対象とする総合ランキングでも1位を獲得するほど。スタイルや性別を問わないカラー構成や、イメージビジュアルには高橋さんの実の従兄弟である前田陸さんを起用するなどいま話題の新ブランドだ。そこで、高橋さんにブランドのこだわりポイントや前田さんとの初共演の思いなど話を聞いた。

WWD:初のコスメプロデュースはどうでしたか?

高橋愛(以下、高橋):G.Oホールディングさんにオファーをいただき、びっくりしましたが挑戦してみようと思いました。第1弾アイテムをアイシャドウにしたのは、マスク着用生活が続き、今は目元メイクが主役なので目元をキラキラさせて少しでも気分がハッピーになってくれたらうれしいと思ったからです。

WWD:アイシャドウは高橋さんの大好きな“ファッション”をキーワードにしています。

高橋:“メイクもファッションのように楽しめばいい”という思いを取り入れています。私のファッションのこだわりは、“好きな格好をする”こと。 いつも、自分自身に「今何が着たい?」と聞いてあげています!テンションが上がる服を着たり、今日のテーマを決めてそれに合うコーデを作ろう!など、毎日楽しくコーデを決めたりしています!ただ、時間がかかってしまうので前日の夜に決めることが多いですね。

WWD:今回のアイシャドウのこだわりポイントは?

高橋:環境に配慮して採用した紙パレットです!オーガニックに興味があるので、環境への配慮は自然と意識するようになりました。普段もビーガンの日を作るなど、自分の選択が結果的に環境にも配慮されているということが少しずつ増えていっている感覚があります。それらを少しずつ積み重ねていければいいなと思いますね。そして、アイシャドウのカラーはベーシックなカフェベージュ、大好きなピンクを取り入れたフラワーピンクの2つを作りました。どちらも開けたときに、ワクワクするようなカラーリングになったと思います!数多くのカラー候補から最終的に5色を選ぶというのはとても大変でしたね。特にオレンジとピンクの配分、いちばん時間がかかりました!

従兄弟との初共演は自分でオファー

WWD:「アイムミクス(AIMMX)」はAIM=「私=I’m=愛」の3つの意味が込められ、MXは性別に関わりなく使える敬称という、ジェンダーニュートラルで使える“ボーダーのないコスメ”に仕上げています。

高橋:LGBTQを知ってからジェンダーレスに興味を持ち、「アイムミクス」は性別を問わない製品にしたいと思いました。男女問わず、ファッションのようにメイクも楽しむことができたら、なんて最高だろうと感じました。メインビジュアルに関しては、従兄弟の陸と並んでいる写真を思いつき、私から提案させていただきました!実は、陸とはあまり話したことがなかったんです、笑。ただ、芸能に興味があることも知っていたので、いい経験にもなると思ってオファーしました!ファッションについてはあまりこだわりもなさそうなので、いつかは陸のスタイリングなどもやりたいですね。

WWD:高橋さんが美容で重視していることは?

高橋:保湿です!ほかにも、使うものはそのときの気分で決めるようにしています。その方がテンションが上がります。それが1番大切です!

WWD:最後に「アイムミクス」に込めた思いについて教えてください。

高橋:性別問わず、ジェンダーレスで使っていただきたいという思いがあります。そして「ブルベ(もしくはイエベ)だから、どちらのアイシャドウがいいですか?」という質問もよくいただきます。私はそのような枠も取り払っていただきたいので、「自分がワクワクする方を選択してください」といつも答えさせていただいています。ブランドが、自分が輝くための“選択肢の一つ”になれたらいいなと思っています!

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オンワードの男性社員が育休で学んだ「キャリアより大切なこと」

 昼下がりの東京・二子玉川公園。遊具ではしゃぐ子連れの親子に混じって、ダブルブレストのブレザーを着こなすおしゃれな男性がいる。

 生後間もない息子を腕に抱き抱え、よく一緒に遊びに来ているという彼は、オンワード樫山・第三カンパニー ポール・スミス事業部マーチャンダイザーの羽田野良太さん(30)。妻・英里佳さんの出産を期に、この10月から来年11月中旬までの育児休暇に入った。

 MDとして順調にキャリアを歩む中、この1年間は育児に専念することを決めた。「周囲からは(育休で)キャリアに水を差さない方がいいのでは、という声もありました。まだ先は長いですが、この選択は間違っていなかったと思っています」。そう笑顔で話す羽田野さんに、始まったばかりの育児奮闘記とこれからのキャリア観を聞いた。

WWD:(写真を見て)かわいいお子さんですね。男の子ですか?

羽田野良太マーチャンダイザー(以下、羽田野):宇玄(うげん)っていいます。この9月に産まれました。親馬鹿なんですが、かわいいですよね(笑)。僕似なんです。まだ遊具では遊べないんですが、よく一緒にここに来るんですよ。

WWD:現場で働いているときと今とでは、どちらが大変ですか?

羽田野:う〜ん……。スケジュールのタイトさでいえば、仕事をしているときと同じか、それ以上に忙しいです。一晩中夜泣きをして寝られない日もあれば、お腹が空いて朝早くに起こされるときもありますから。今も眠いんですよ。かわいい息子のためだからか、不思議とストレスはありませんが。

 とくに苦労するのは、お風呂です。服を脱がすと寒いって泣くし、お湯になかなか入りたがらないので、まずは風呂桶に入るところから慣らしていきました。耳に水を入れると炎症を起こしちゃうとか、気をつけることも多くて、色々手探りです。ネコ2匹の世話もしなきゃいけないので、自分のことはする暇もなく、1日がいつの間にか終わっています。

 息子が産まれてから1カ月は、事業部が本当に忙しい時期だったので、リモートワークしながら育児をしていました。これがもう、本当に大変で。泣いている子どもの隣で仕事をしていては、やっぱりパフォーマンスが落ちてしまう。在宅といえど、両立は難しいなと感じました。

WWD:育休取得にためらいはありませんでしたか?

羽田野:妻の妊娠が発覚して安定期に入ったころには人事に相談していました。職場の上司に話したのもそのくらいの時期です。2年ほど前から社内の働き方改革の一環で、現場のチーム単位で、自分たちの理想の働き方を考える会議を週1回実施してきました。そこでは自分のキャリア観やプライベートのことをフランクに話していましたから、育休のことも話しやすい雰囲気があったように思います。

WWD:30歳という、キャリアにおいては脂が乗った時期でもあります。

羽田野:入社当初の「身を粉にして働いて、昇進してやるぞ」っていう自分だったら、今も会社のオフィスにいたかもしれません。この(育休取得の)選択には、新型コロナの影響も大きかったですね。僕がいる部署では週1回ほど出社し、あとは在宅で仕事をしています。その中で、プライベートを充実させることも大切だと実感しました。

WWD:職場復帰は怖くないですか?

羽田野:もちろん、(部署に)戻ったときのポジションがどうなるか分かりませんし、すぐに仕事の勘が取り戻せるかという不安もあります。職場のメンバーには少なからず負担をかけています。復帰後は人一倍努力をするつもりですし、仕事を甘く見ているわけではないけれど、1年のブランクなら取り返せると思っています。

 でも、息子とゆっくり過ごす時間は今しかありません。数週間したら目が開いたとか、笑うようになったとか、成長をすぐそばで見守れる幸せを感じています。仕事をしている中では味わえない、かけがえのない喜びです。

 僕の周囲の若い社員も育休を考えているみたいで、「いい先行事例になってね」ってプレッシャーを掛けてきます(笑)。がむしゃらに仕事に打ち込んできた先輩社員も、「3人目(の子供)ができたら、(育児休暇を)取ろうかなあ」なんてぼやいていました。アパレル企業は休むことを是としない、体育会系の雰囲気がありました。特に上の世代だとそれが根強いと感じます。そんな雰囲気も徐々にですが、変わりつつあります。

WWD :宇玄君にはどんなふうに育ってほしいですか?

羽田野:芯が強い子に育ってほしいですね。「スポーツをやらせるなら、団体競技がいいね」とか、ぼんやりですけどそんな風に(妻と)二人で考えています。こんな話がゆっくりできるのも、やっぱり育休を取れたからなんですよね。


 オンワードホールディングスは働き方改革を推進するため、2019年から「働き方デザインプロジェクト」をスタートした。週に1度、仕事のチーム単位で「自分たちがよりよい働き方をするために何をすべきかを考える会議=カエル会議」をスタート。社員間のコミュニケーションの活発化と、ボトムアップ型の業務効率化に取り組んでいる。

 リモートワーク推進も視野に、20年7月には本社勤務者全員にスマートフォンの配布を完了。マイクロソフトが提供する社内SNS「ヤマー(YAMMER)」の活用で、「誰がどこで何を言っても平気」(同社)な風通しのいい社風の醸成にも努めている。

 その成果として、中核事業会社であるオンワード樫山における21年2月期の男性育休取得率は、19年2月期との比較で12.3ポイント向上し20%に到達。国内企業平均(厚生労働省調べ)の12.6%を大きく上回っている。

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メイクアップを初プロデュースしたBLACKPINKのLISAを独占インタビュー 「M・A・C」とのコラボについて語る

 「M・A・C」は12月3日、世界的ガールズグループ、BLACKPINKのLISAとコラボレーションしたメイクアップコレクション“M・A・C x L”を発売する(一部店舗では先行販売中)。LISAは同ブランドのグローバルブランドアンバサダーを務め、これまでキャンペーンには登場してきたものの、メイクアップを手掛けるのは初めて。現在インスタグラムで6000万人以上のフォロワーを持ち、BLACKPINKのメンバーとしての音楽活動はもちろん、ファッション・ビューティのトレンドセッターでもあるLISAのカリスマ性と個性を表現したコレクションが誕生した。そんなLISAに、初めてプロデュースしたメイクアップコレクションに込めた思いやこだわりについて聞いた。

WWD:“M・A・C x L”のコンセプトは?

LISA:自分自身でコレクションを選び抜き、本当に好きなものを基に全てのアイテムをデザインしました。全てのシェード、製品、ネーミング、そしてパッケージデザインも、私にとって非常に特別なものを表しています。例えばアイシャドウパレットは、柔らかく官能的なデイリールックから、夜の外出のためのグラマラスなルックまで対応する多用途なシェードをマット、シマー、グリッターの組み合わせで実現したいと思いました。リップも私が個人的に好きな色とトーンを組み合わせて、全ての人に向けたシェードにしました。

WWD:今回のコレクションで伝えたいメッセージは?

LISA:あらゆる人に自分がプロデュースしたメイクアップをつけてもらい、私が詰めたこだわりや世界観を感じて欲しいです。音楽を作るのと同じ情熱、喜び、創造性を注ぎ込み、このコレクションをファンのために作りました。私自身の私生活やプライベートに関するこだわりをたくさん込めたので、それが伝わるとうれしいです。

WWD:制作に関する裏話は?

LISA:ただ色を選んだだけでなく、今回ロゴやパッケージ、製品名まで全てプロデュースしました。ちなみにアイシャドウは愛してやまない飼い猫の名前「レオ」「ルイス」「リリー」や、お気に入りのアイスクリームからインスピレーションを受け、「ミルクティーアイスクリーム」「キャンディラッパー」といったシェードネームをつけました。

WWD:グラマラスなパッケージも目を引く。

LISA:モダンでグラマラスな雰囲気を出すために、パープルにグリッターを加えました。そして、パッケージに施した私のサインには、お気に入りの色の1つイエローしか考えられませんでした!これは通常のイエローではなく、ネオンライトのクールでヒップホップな、都会的なムードを与えるために作った特別なイエローなんです。

WWD:プライベートではどんなメイクアップが好き?

LISA:ステージに立つときは濃いメイクアップをつけることが多いので、オフの日はナチュラルなルックが好きですね。ベースメイクアップを軽く塗ってから、洋服に合わせてリップを選びます。

WWD:今までのミュージックビデオの中で最も気に入っているメイクアップは?

LISA:曲のコンセプトに合わせてメイクアップは随時変わるので、全て気に入っています。1つ選ぶとしたら、初のソロアルバム「ラリサ(LALISA)」のときに作ったメイクアップですかね。全ての曲やプロジェクトにおいて、自分から積極的にメイクアップのアイデアを出すようにしています。たくさんのメイクアップルックを試しながら、最終的にぴったりなルックを選んでいるので、どれもこだわりや思い出深いんです。

WWD:世界的なファッション・ビューティのアイコンであるLISAはどこからインスピレーションを得る?

LISA:日々いろんなものからインスパイアされています。映画だったり、出会う人だったり、出来事だったり、本当に毎日いろんなものに刺激を得ていますね。メイクアップはアーティストと相談しながら自分に合うものを作っています。

WWD:「M・A・C」のアイテムでおすすめは?

LISA:たくさんあるので選びきれないですが、個人的に気に入っているのはリキッドリップ“パウダー キス リキッド リップカラー”。「M・A・C」で初めて使ったアイテムもリップスティックでしたが、“パウダーキス”はステージやミュージックビデオで頼りにしているアイテムです。本当に色持ちが長く、心地よく付けることができます。また、色のバリエーションが豊富でその日の気分や洋服に合わせて自由に変えられるのもいいですね。

WWD:これからの目標は?

LISA:これまで与えられたたくさんの素晴らしい機会に感謝していますし、これからの機会もとても楽しみにしています。まずはより多くの人に“M・A・C x L”コレクションを手に取って楽しんでいただきたいです!

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「アーデム」初のメンズは「ヴィヴィアン・ウエストウッドと双子の妹」から影響 デザイナーが探求する“実用的ロマン主義”

 ロンドン発のブランド「アーデム(ERDEM)」は、2022年春夏シーズンからメンズ・コレクションを立ち上げる。同ブランドは、トルコ人とイギリス人の血を引くアーデム・モラリオグル(Erdem Moralioglu)デザイナーが2005年に設立。15周年を迎えた今年6月に、メンズのファーストコレクションを発表した。テーラードジャケットやトレンチコートといったクラシックなアイテムに、シグネチャーであるロマンティックな花柄や、鮮やかな色のケーブル編みのカーディガンなどは若々しい雰囲気だ。ロンドンの老舗百貨店ハロッズ(HARRODS)や、大手ファッションECサイトのミスターポーター(MR PORTER)とマイテレサ(MYTHERESA)、日本ではユナイテッド アローズ(UNITED ARROWS)や阪急メンズなどでの取り扱いが決まっている。

 メンズ立ち上げの背景には、「ヴィヴィアン・ウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD)」でのインターン経験や、18年に「H&M」とのコラボレーションで初めてメンズのデザインを手掛けたこと、そして双子の妹の影響があるという。次なるステージへと向かうモラリオグル=デザイナーに話を聞いた。

空想的なウィメンズ
現実的なメンズ

ーーメンズライン立ち上げに至った経緯とは?

アーデム・モラリオグル=デザイナー(以下、モラリオグル):パンデミックで全てが止まり、アトリエも静まり返っていた。設立から15年で初めての穏やかな時間でもあった。その時、男性スタッフが「アーデム」の服をさまざまに着こなす姿を見て、メンズのクリエーションや色彩が、鮮明なアイデアとして浮かんできたんだ。そこから、僕が大好きな映画監督でアーティスト、園芸家でもあるデレク・ジャーマン(Derek jarman)のワードローブから着想を得てデザインに取り掛かった。彼の作品はカラフルで幻想的だが、彼自身はユニホームを独自に解釈して私服にするという面白い人物だ。また「H&M」との3年前のコラボレーションでメンズを初めて発売し、予想以上に好評だった。本格的に立ち上げるにはいいタイミングだったんだ。

ーーメンズとウィメンズではデザインアプローチは異なるか?

モラリオグル:ウィメンズでは、空想的な物語や特定のアーティストや過去の偉人などがコレクションに関係している。“このコレクションを着用する現代の女性とは誰なのか””彼女に今何が起こっているのか”と考えながら制作する。一方でメンズは“彼には今何が必要なのか”という、より現実的な問いを自分に投げかけ、僕自身が何を求めているかという直接的な欲求もアプローチに含まれている。

ーーメンズはどのようなイメージ?

モラリオグル:姉の服を、自分なりの着方で楽しむ弟だろうか。夫ではない。同じアイデンティティを共有する姉弟で、男性の中にあるフェミニティを引き出すことが重要だった。メンズでは「アーデム」のロマン主義と、実用性を重視している。なぜなら、男性服は基本的にユニホームに由来していると思うから。ファーストシーズンはテーラードやコーデュロイパンツ、モヘアニットといったベーシックアイテムを、色とプリント、カッティングでロマン主義の要素を加えている。

ーーウィメンズはフェミニン、ロマンティック、幻想的と表現されることが多いが、メンズはどんな言葉を付け加えたい?

モラリオグル:“実用的ロマン主義”だろうか。例えば、ウィメンズのアイテムに触発されたケープは、まさに実用的でロマンティックな作品に仕上がっている。メンズウエアのカテゴリーの中で、“実用的ロマン主義”を具現化することは僕にとっての新たな挑戦だった。そして、ウィメンズやメンズを問わず「アーデム」創設当初から大切にしている言葉は、“永続性”だ。トレンドや一過性とは関係がなく、必ずそこへ戻ってくるような、永遠に続く洋服をデザインするという考えが芯にある。

「ヴィヴィアンには真の流動性があった」

ーーメンズライン立ち上げに至り、デザインチームを再編成した?

モラリオグル:全く同じメンバーだ。非常に小さいチームで、ウィメンズとメンズの両方を手掛けている。

ーーメンズウエアのデザイン経験がほぼないあなたにとって、挑戦だったのでは?

モラリオグル:確かに、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(Royal College of Art)ではウィメンズデザインを学び、「アーデム」で15年間ウィメンズに注力してきた。メンズの制作で想起したのは、「ヴィヴィアン ウエストウッド」でのインターン経験だ。ヴィヴィアンが生み出す作品には、性差の対話や性別の遊び、進歩的なユニセックスの概念が宿っていた。そこには真の流動性が存在していて、学生だった僕にとっては刺激的で素晴らしい経験だった。また、双子の妹を持つ僕にとって性別は、関係上で成り立つ相対的なものにすぎない。子供の頃、祖母が編んでくれたセーターを妹とおそろいで着ていたこともあるぐらいだから。洋服における性差や、フェミニティとマスキュリニティの認識は、こういった幼い頃の経験が影響しているのだろう。「アーデム」にとってフェミニティとは、自信を与える力のようなもの。メンズウエアでもそれを表現することに、とてもワクワクしている。

ーーメンズを始めたことが、ウィメンズのデザインにも影響を与えることはあるか?

モラリオグル:それは絶対にある。両方に大きな影響を与え合っている。前途したケープと同じく、トレンチコートもウィメンズのデザインを踏襲したものだ。逆に、男性的なラインのテーラードジャケットやニットのネックラインは、今後のウィメンズのデザインに影響を与えそうだ。メンズが店頭に並ぶと、女性顧客もメンズのフラットなシェイプのチノパンや、ざっくりと着られるニットを手に取るのではないだろうか。顧客にも、その動向を見た僕にも影響を与えることになるだろう。

ーー次の15年に向けての展望は?

モラリオグル:まずはメンズを拡大させ、同時にウィメンズも成長させていく。ロンドン・メイフェアにある旗艦店では、両方のコレクションのボリュームがこれから増えていくだろう。次の目標は、ブランドの世界観に没入できる実店舗を各都市で育てること。ロックダウンを経て、服を見て、触れて、感じることができる物理的な体験の重要性を、これまで以上に認識したと思うから。日本やニューヨークに出店して、「アーデム」の世界観に足を踏み入れる人が増えることを目指したい。

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「アンリアレイジ」と日本酒ブランド「サケハンドレッド」が協業 グローバルブランドを目指す両者の熱い思い

 Clearが運営する日本酒ブランド「サケハンドレッド(SAKE HUNDRED)」は、森永邦彦によるファッションブランド「アンリアレイジ(ANREALAGE)」とコラボレーションした商品を発売した。「サケハンドレッド」を代表する日本酒「百光(BYAKKO)」に、森永がデザインしたラベルをのせた「百光 ANREALAGE Edition “A LIGHT/UN LIGHT”」(5万2800円)と、限定グラスを合わせた「百光 ANREALAGE Edition “A LIGHT/UN LIGHT” 限定グラスセット」(7万4800円)の2種をラインアップ。「光と影」をテーマに、一見モノクロのラベルが光によってその表情はがらりと変化する。カメラでフラッシュ撮影すると、彩られ輝くラベルが画面上に映し出される仕掛けだ。

 コラボレーションに至った経緯や異業種の協業の意義について、「サケハンドレッド」を運営する生駒龍史Clear CEOと森永邦彦「アンリアレイジ」デザイナーに聞いた。

「光と影」をテーマにした
限定ラベル
共通する“細部への
異様なまでのこだわり”

—コラボレーションの経緯は?

生駒龍史Clear CEO(以下、生駒):「サケハンドレッド」は「心を満たし、人生を彩る」というブランドパーパスを掲げています。心を満たすためには、おいしいという味覚にとどまらず、五感で楽しむ豊かさを提供する必要があります。その思いをコラボレーションで表現しようと考えたときに、一緒に取り組む相手先に必然性がなければなりませんでした。そこで「アンリアレイジ」は、細部への異様なまでのこだわりがあるブランドであり、僕らがつくる日本酒と重なる部分があると思いました。日本酒は嗜好品で、透明の液体なのですが、原料の米がどういう育ち方をしたのか、日照量や雨はどのくらいだったのか、どんな酵母を用いるのか、麹やもろみの発酵管理は適切かどうかなど、細かいことが生産背景に隠されています。そういった要素の全てが味に大きく影響し、その緊張感がブランドの佇まいに表れます。また、「日本から世界に挑戦する」というミッションを持っているところも両ブランドが持ち合わせている共通点でした。

森永邦彦「アンリアレイジ」デザイナー(以下、森永):業界は違えど、同世代で世界に挑戦する同志であり、コンセプトやビジョンも一致すると思いました。「アンリアレイジ」は「日常と非日常」をテーマにして服作りをしながら、“光”や“クリア”をキーワードにしたコレクションを発表したこともあり、親近感を覚えました。

「百光」であり、
「アンリアレイジ」である
お互いの延長線上で
交差したコラボレーション

—実際のコラボレーション商品の制作はどのように依頼した?

生駒:「サケハンドレッド」には現在8つの商品がありますが、今回コラボレーションした「百光」はブランドを代表する日本酒です。「100年先まで光照らすように」という思いを込めて名付け、ラベルには日本の古来の吉祥文様であるひし形を採用しています。味わいにはとても透明感があり、滑らかで余韻も長い、最高品質の日本酒です。僕らの中心にあるフラッグシップ商品でご一緒したいと思いました。そして、このひし形のラベルを使ったコラボレーションを実現したいと伝えさせていただきました。

森永:「アンリアレイジ」は「神は細部に宿る」というコンセプトでモノ作りをしており、いかに小さく、誰もが見過ごしてしまうようなものにも価値があるということを考えています。「百光」はその名前と、ひし形のラベルという2つの要素が完成されているものだったので、そこにどう付加価値を出していくのかということにフォーカスしました。まずはひし形を100分の1スケールに小さくして、光が当たることでさまざまな色が浮かび上がる仕掛けで、ラベルの彩りが満たされることを表現しました。また光は影がないと確認できないものなので、グラスでは光が当たるとひし形と文字の影として落ちるデザインを考えました。

生駒:これを見て、「『百光』であり、『アンリアレイジ』だ!」と思いました。それはこれ以上ない成功であり、しっかりお互いの延長線上で交差できたことがとてもうれしかったですね。これは僕らが100年かけても、絶対できない、「アンリアレイジ」でなければ実現できないデザインでした。両方のブランドの良さが一目でうまく入っていると分かることが何よりも大事に感じていました。

森永:従来、商品名を認識しやすいラベルにしなければいけないと思いますが、僕らが提案したのは、黒いラベルに小さい文字が書いてあるもの(笑)。一見すると何か分からないものを生駒さんたちが受け入れてくださいましたね。ボトルを手にした方がこれを見て、「何て書いてあるの?」という疑問を持ち、「百光」を飲んだ体験が、記憶に残るものになってほしいと思いました。

—このコラボレーションのラベルの「百光」は、どのようなシーンで飲んでもらいたい?

生駒:「サケハンドレッド」は、何か大切な場面で飲んでいただけるケースが多いですが、それはお客さまの自由ですので、委ねたいと思っています。数に限りがある商品ではあるので、誰かの人生の記憶に残るようなタイミングに飲んでいただけたらうれしいです。

森永:僕はハレの日にとてもふさわしいお酒だと思いました。「アンリアレイジ」は非日常のファンタジーへの扉のような洋服を作っていますが、「百光」を飲んだときにもその非日常を感じられるような、艶やかな感覚を味わえますね。

新しい価値観が出てくる中で、
恐れずに挑戦していきたい

—日本酒とファッションの異業種の協業の面白さとは?

生駒:このコラボレーションを通じて、「アンリアレイジ」に触れることができたと思いました。自分たちの知らない「百光」の側面に出合えたことができたことが良いサプライズであり、有機的な取り組みを通して新しい学びとなり、ブランドとしてとてもいい経験になりました。

森永:僕らは洋服を作る上で、着る人に寄り添って、その人たちにどう力を与えるのか、ということを考えてきました。今回はお酒でしたが、いろいろ議論を重ねて、異なる価値を与えるということは、ファッションでやっていることと変わらないと思いましたね。今まで自分たちが成してきたことで、また異なる形の可能性を見ることができました。

—両ブランドともに世界に向けた発信を強化しているが、どう独自性を見せていきたいと考えているか?

生駒:グローバルブランドを目指しています。根本には「日本酒の魅力を伝えたい」という思いがあり、1人でも多くの人に日本酒を通じて、日本の米や酵母、麹の魅力を知ってもらいたいという気持ちもあります。日本酒は、日本らしさや日本文化があらゆる側面から感じられる飲み物。おいしいものは世界共通なので、ブランドの体験を通じて、まさに世界中の人々の「心を満たし、人生を彩る」ことに貢献していきたいと思っています。

森永:ファッションには先代からジャポニズムがあり、その強さが必ずあると思っています。僕らも独自のジャポニズムを打ち出そうと考えたとき、2022年春夏にアニメーションとテクノロジーという分かりやすい“日本らしさ”を表現しました。日本にルーツがあるからこそできることを武器として、今後も発展させていきたいです。

—今後のビジョンはどのように考えているか?

生駒:日本酒産業はコロナ禍において苦しんでいる産業ですので、その中でも成長する姿を見せていくという意味で、産業全体をリードしていけるような会社になっていきたいと思っています。また日本酒産業だけでなく、日本の産業全体にとって希望になれるように頑張りたい。まだまだ日本酒は、世界に高く評価される可能性を秘めていると思っています。

森永:今年ブランドが18年目を迎え、ある程度、慣れが出てきてしまっている部分もありますが、時代が変わり新しい価値観が出てくる中で、恐れずに挑戦していきたいですね。やりたいことはたくさんあり、特にNFT(非代替性トークン)にも可能性を感じていますし、仮想3次元空間「メタバース」を使った接客などにも取り掛かっています。僕らが持つデジタルやテクノロジーの強みをファッションで発信する時が来たと思っています。

日本的な美意識が
込められた限定ラベル

 今回のコラボレーションは特別動画でも概要を確認できる。谷崎潤一郎による『陰翳礼讃』に着想を得た、日本人の美意識がラベルデザインに落とし込まれている。商品は、2021年11月8日からオンラインで発売されており、商品発送は2021年12月下旬を予定する。

TEXT : MAMI OSUGI

問い合わせ先
サケハンドレッド
https://sake100.com/inquiry/create/customer

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内田理央、本気でTシャツビジネスに挑むVol.2 「ビームスT」から学ぶ最大の武器“好きな気持ち”

 モデルや女優として活躍する内田理央の普段着は、Tシャツやパーカなどカジュアルな装い。そこで本人の感性と個性を存分に生かしながら、ファッション性やプロセス、ビジネスにまでこだわった「本気のTシャツビジネス」をスタート!「WWDJAPAN」が紹介する各界の先駆者からTシャツ、イラスト、ビジネスについて学びながら、「名前貸し」とは全然違う、本気のタレントによるアパレルブランドを目指します。第2回は「ビームス T(BEAMS T)」の水村幸平ディレクターに迫ります。

内田理央(以下、内田):「ビームスT」のコンセプトを教えてください。

水村幸平ディレクター(以下、水村):“アートを身近に”というコンセプトのもと、Tシャツを軸にアートを訴求している「ビームス」内のレーベルです。

内田:「ビームスT」の顧客層は?

水村:ストリートブランド好きの若年層を中心に、コロナ以前は外国人観光客が来ていました。

内田:店舗の内装こだわっていますよね。ベルトコンベアでTシャツを運ぼうと思ったのはなぜですか?

水村:“グラフィックをどう美しく見せるか”に着目し、デザイナーの片山正通さんに20年以上前に依頼しました。未だに色褪せないのが凄いし、海外で同じようにベルトコンベアを使って商品を見せているセレクトショップもあります。

内田:店舗とECサイトで売れる商品の違いは?

水村:イベント商材は店舗の方が売れますが、特に違いはないですね。店舗で原画を飾るアートショーを開催すると、お客さまが知らないアーティストの商品でも、その場で購入されていくケースが多いです。

内田:現在のTシャツのトレンドは?

水村:現在は無地のTシャツにバックプリントが着やすくて人気です。フロントは胸ポケットにワンポイントぐらいが丁度いい。

内田:私もグッズTシャツを製作していますが、カラーリングですら決めるのに悩むんです。「ビームスT」はどうしているんですか?

水村:僕らは現代のトレンド感を意識しつつ、シミュレーションを組んでからサンプル作成をしているので、不安要素を取り除くことができます。定番のホワイトは外せませんが、昨年はアッシュグレーが人気でした。

内田:コラボ相手を選ぶときの決め手は?

水村:最近はインスタグラムでチェックして、直接オファーを掛けることが多いです。そのほか、コラボしたアーティストから数珠つながりで派生していくパターンもあります。僕らはアートカルチャーが好きで働いているので、普段から自然と情報をかき集めています(笑)。

内田:だから今の流行を敏感に察知できるんですね。私も自分が着たいものや気になっていることを大事にすべきだと改めて学びました。Tシャツのグラフィックの配置や大きさはどのように決めているんですか?

水村:アーティストにお任せする場合もあれば、お互いで意見交換して作り上げる場合もあります。コラボする上では、頭に浮かんだイメージを相手にどう伝えるかが一番重要かつ難しいです。僕は絵が苦手なので、参考資料と言葉で説明するのですが、商談後はいつも不安になります。

内田:アーティスト側からオファーが来る場合もありますか?

水村:インスタグラムのDMからオファーが来て実現したケースもあります。

内田:送ってみるものなんですね。私も送ってみようかな(笑)。コラボ相手の数は1シーズンごとに決まっているんですか?

水村:特に人数は決めていません。僕とバイヤー2人を中心に、販売員からの提案も積極的に取り入れています。フレキシブルに物事を進められるのが僕らの強みです。

内田:私自身もそうですが、「『ビームスT』に自分の商品を置いてほしい」という人が意識すべき重要なポイントはありますか?

水村:誰とも被らないオリジナリティーのあるイラストであれば、常にアートカルチャーを掘り続ける僕らが見つけ出し、声を掛けさせていただきます。

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発売直前、ユニクロ「+J」21-22年秋冬 ジル・サンダー氏と柳井正会長に6つの質問

 ユニクロは11月12日の「+J」2021-22年秋冬コレクションの発売に合わせて、「+J」を手掛けるデザイナーのジル・サンダー(Jil Sander)氏と、柳井正ファーストリテイリング会長兼社長への一問一答を公開した。「+J」は09年にスタートし、休止期間を経て9年ぶり20-21年年秋冬に復活。21-22年秋冬をもって再度休止することが決まっている。

Q1. 09年〜11年の「+J」の“第1章”と、20年からの“第2章”との間で、自身や「+J」、ユニクロの変化した点、変わらない点は何か。

ジル・サンダー(以下、サンダー):09年の時点で、ユニクロは「+J」を成功させるための最高の品質、素材に対する研究、優れた職人技術に基づく生産ノウハウや物流の仕組みを持っていた。その後ユニクロは世界中に店舗を持つ真のグローバル企業へと大きく成長し、大量生産と高い品質は両立できると証明した。20年に「+J」を再開すると同時にコレクションもより磨かれ、世界中の多くのお客さまにリーチできたのはとても嬉しいこと。「+J」がミッションとしてきた、モダンでグローバルなユニフォームと新たな価値、スマートかつ控えめで丁寧に作られた現代的なシルエットをお客さまに提供できたことは、私にとって大きな喜びだ。

 ユニクロのチームは年々、よりプロフェッショナルになっている。彼らはコラボ当初から非常に気配りがあり、新しい手法を生み出すことにとても協力的だった。私は日本の文化や日本人の仕事に対する向き合い方、品質へのこだわり、高い要求に応えようとする姿勢、革新しようとする意欲、必要に応じてゼロからの出発もいとわないあり方に、強い親近感を抱いている。

柳井正ファーストリテイリング会長兼社長(以下、柳井):サンダーさんの指摘の通り、変化した点はユニクロのビジネス規模だ。09年当時にユニクロが出店していた国・地域は8つだったが、20年には25にまで広がった。また、ユニクロの品質やサービスに対するお客さまからの信頼も、よい方向へと変わっているのではないかと自負している。

 一方で不変なことは、サンダーさんの服作りへの情熱、クオリティーへの探求心、そして時代を捉える鋭い感覚だ。ユニクロも、お客さまの声に応えるためにあらゆる努力を行う姿勢は創業以来不変のものだ。それがクオリティーやサービスの追求につながっている。 サンダーさんと長きにわたるコラボレーションが実現できたのも、お互いの基本的な理念に一致点が多かったからではないかと考えている。

Q2. 復活以降の3シーズン(20-21年秋冬、21年春夏、21-22年秋冬)で、最も心に残っている商品は何か。

サンダー:何年にもわたって私たちがデザインしてきた、すばらしいコートのコレクションが特に好きだ。時代を超越したモダンさや主張のある品質、そしてユニクロの力によって実現した手に取りやすい価格帯が気に入っている。

柳井:ダウンをモダンにアップデートしていただいたことが印象に残っている。また、サンダーさんならではのニットのバリエーションとディテールに感動し、個人的に何枚も購入した。この先も長年愛用していくことになるだろう。

「ユニクロのチームは年々プロフェッショナルになっている」(サンダー氏)

Q3. お互いについてどう思っているか。

サンダー:柳井さんには間違いなく先見の明がある。常に進化を続け、より高い目標に取り組み、同時代の人々のニーズや要望を研究して常に予測をしてきた最高の企業家だ。「+J」という大胆なコンセプトを実現するためのパートナーとして彼と出会えたことは、私にとって大きな幸運だった。私が見る限り、柳井さんは起業した当初と変わらず誠実で良心的な人だと思う。彼の頭の中には、早くからサクセスストーリーがあって、自分の信じる道を決して疑わなかったのだろうと思う。

柳井:ユニクロの理念の一つに「Simple Made Better」という言葉がある。サンダーさんはまさにそうした考え方の先駆者だが、シンプルで美しい服というものは、細部への飽くなきこだわりがないと成立しない。私たちはサンダーさんと取り組むことで、そのことを確信した。サンダーさんはたぐいまれな美意識と情熱を持った天才であると同時に、タイムレスかつ究極のスタイルを長年創り続けることがきる唯一無二の人だと思う。

Q4. コロナのパンデミックでは何を思い、何を感じたか。

サンダー:自然の大切さをより感じた。田舎ではコロナ禍中も自由に動けるし、庭の美しさは私たちを楽観的な気持ちにしてくれる。植物の世話をしたり、森や草原を長く散歩したりするのはよいことだと感じている。コロナによって私たちは東京に行くことできず、コレクションは全てデジタルベースで作られたが、結果的にオンラインでの仕事は大きな問題にはならず、うまく進んだ。ユニクロとわれわれが継続的にコラボレーションを重ねてきて、お互いのチームが親密だったからこそできたのだと思う。私たちはお互いをよく知っており、信頼し合っている。「+J」に取り組むことで私は集中力を維持することができ、コロナ禍がもたらした精神的・社会的な変化について考えることができた。この期間を通して、私たちは恵まれた文明と、困難な挑戦から抜け出すために蓄積したノウハウに、より謙虚に感謝するようになった。

柳井:コロナの蔓延により、世界が深くつながっていることを改めて認識した。 世界中のほとんどの企業は、この危機をチャンスと捉えることができるか問われたのではないか。(コロナ禍を通し)うわべだけのものは通用せず、本質的なものがさらに求められるようになった。

「いつかまた一緒に世界をワクワクさせたい」(柳井会長)

Q5. 09年以降の12年間の関係において、お互いに得たもの、未来に生かしたいものは何か。

サンダー:私にとって「+J」プロジェクトとは、ハイファッションでの経験を生かした品質と、洗練されたデザインを備えた魅力的でモダンなユニフォームを、目の肥えた現代的なお客さまに提供することだった。 そして、服を通して、世界中の人々が自己肯定感を持ち、共通の目標に取り組めるようサポートしていくことを目的としていた。非常に要求の多いコレクションを、ユニクロがすばやいスピードで世界規模で生産することができたのは、私にとって非常にうれしい驚きだった。

柳井:サンダーさんのビジョンとハイファッションでのノウハウを、ユニクロの品質へのこだわりと生産力をもって民主化したものが「+J」だと考えている。サンダーさんの本質を世界のあらゆるお客さまにお届けできたことは、ユニクロにとって大きな自信となった。サンダーさんの服作りに対する真摯な姿勢を今後も忘れることなく、私たちのさらなる成長の糧にしたいと考えている。

Q6. 最後に、お互いにエールとなる一言を。

サンダー:これからも柳井さんのアイデアにはずっと注目していくと思う。そして、柳井さんがグローバルなビジョンをさらに発展させてくれると確信している。柳井さんが私や私のチームを信頼してくれたこと、そうした信頼を通して生まれたすばらしいコラボレーションに感謝すると共に、柳井さんの今後の活躍を祈っている。今、私たちは一つの章を閉じるが、未来がどういったものになるのか楽しみにしている。

柳井:サンダーさんのあふれんばかりの情熱やクリエイティビティーが、今後どこに向かっていくのか非常に興味がある。サンダーさんのクリエイションはタイムレスだが、さらに新しいものを創造していかれることを期待せずにはいられない。そして、いつかまた一緒に世界をワクワクさせたいと思っている。

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ヨンアが「ほぼ毎日」店頭に立つワケ 自身のブランド「コエル」が初の路面店

 DMI(東京、島田延幸社長)が運営し、モデル・ヨンアがディレクターを務めるウィメンズブランド「コエル(COEL)」は1月上旬まで、東京・南青山の骨董通りに期間限定店舗を開いている。同ブランドは2018年の立ち上げ以降、ECを主軸に販売してきた。路面店の出店は今回が初めて。

 店内にはカフェも併設。白を基調にした内装、ビンテージ調で統一した什器はヨンアが自分の目で見て選んだ。壁面には現代アートも陳列し、ゆったりとくつろぎながら買い物を楽しむことができる空間を演出した。

 開店から1カ月がたち、売上高や客数は計画を上回る盛況。だが、それ以上に収穫だったのは、ファンとのコミュニケーションを通じ、ディレクターのヨンア自身がさまざまな発見ができたことだという。店頭に立つ彼女に話を聞いた。

WWD:ブランドを立ち上げて4年目になりました。

ヨンア:「コエル」はとにかく、自分の“好き”を表現したいと思って始めたブランドです。正直、これまでは目標とか、そんなことを考えるひまもないくらい忙しくて……。ブランドを始めるまではモデルとして服を着る側にいましたが、実際それを作るとなるとすごく大変ですね。でも、街で「コエル」の服を着てくださっている人を見かけると、そんな苦労も吹き飛びます。「こんなブランドにしたい」っていうイメージはまだぼんやりとしているけれど、服作りに携わることは本当に好きなんだなあと実感しています。

WWD:このタイミングで期間限定店舗を出店した理由は?

ヨンア:これまで(出店は)いつか、とずっと頭に描いてきました。たまたまいいタイミングで、自分のイメージ通りの物件が見つかったので、思い切ってチャレンジしてみようと。でも、果たしてどの程度店舗運営にコミットできるのか、という不安もありました。だったら期間を3カ月と決めて、その間はやれるだけやろうと決めました。

WWD:ほぼ毎日のように店頭に立っているそうですね。

ヨンア:そうなんです(笑)。リアルの売り場に立つと、お客さまが「コエル」にどんな服を求めているかという生の声を聞くことができる。それがすごく楽しいですね。ブランドを始めたころはとにかく好きなものを表現しようと突き進んできましたが、自分自身が歳を重ね、子育てにも追われる中でライフスタイルも変化しています。すると徐々に、服に求めるものも変化していくんですね。あんまり外に出られないから華やかな色味の服を着たいとか、でもリラックスできる生地感がいいとか、それでいて洗える機能性が欲しいとか。普段から自分も「あったらいいな」と考えていることですが、実際にお客さまの声を聞くと、「やっぱりそうだよね」と共感できる。また次の服作りに生かせそうです。

WWD:カフェでは、ヨンアさんの思い入れのあるメニューを提供しているそうですね。

ヨンア:やっぱり自分の店を出すなら自分の好きを詰め込んだ場所にしたいからです。もちろん時間と共に自分の興味も、好きな物も移り変わっていくでしょう。でも「コエル」のファンにはいつも等身大の自分を知ってほしいし、そこに共感してくれるからついてきてもらえるとも思っています。だから、これからもその時その時で、自分が胸を張って好きだと言える服を作っていきたいです。

 今年4月にはジュエリーブランド「ナリン.(NARIN.)」をスタートしました(今回の期間限定ショップでも展示販売)。シーズンごとに新作を出していく「コエル」とは違い、自分のペースで、納得がいくまで腰を据えて取り組める面白さがあります。全く新しいチャレンジで試行錯誤していますが、天然石にこだわった本気のジュエリーを作っていきたいです。 

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トム・フォードが17年ぶりの書籍 飲酒&ドラッグから子育てと変わった生活と変わらないクリエイションを語る

 トム・フォード(Tom Ford)は11月10日、自身のクリエイションやキャリアなどをまとめた444ページの書籍「TOM FORD 002」を日本でも発売した。2004年に発売した「001」に次ぐ本作は、「グッチ(GUCCI)」や「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」を去って05年に立ち上げた「トム フォード」のキャンペーン・ビジュアルなどを収録しており、スティーブン・クライン(Steven Klein)やイネス&ヴィノード(Inez & Vinoodh)、ニック・ナイト(Nick Knight)、マート&マーカス(Mert & Marcus)らが撮影。「トム フォード」をまとったセレブの画像も多い。15年以上のクリエイションの中から、何をピックアップしたのか?15年前と現在の気分やクリエイションの違いは?トムに聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):なぜ今、「002」の発行を決めたのか?世界が大きく変わろうとしていることが影響している?

トム・フォード(以下、トム): 最初の本を出版してから17年、多くの変化があった。「001」でフィーチャーしたのは、「グッチ」と「イヴ・サンローラン」時代の私。つまり最初の章で、「002」は第二章だ。60歳になって、2冊目を企画し始めたときには、すでに「トム フォード」を設立してから15年が経っていた。 15年後、そして60歳。「振り返る時が来た」と思った。過去を振り返ることはめったになく、いつも先だけを見ることを好んできた。特にファッションにおいては、めったに過去を振り返らない。ショーのフィナーレで(ゲストへの挨拶を終えて)ランウエイに背を向けた瞬間、私は、次のコレクションを考えている。「次は、何をしようか?」といつも心配している。「私は今、何をするつもりだろう?」「それは、良いのだろうか?」「どのように受け取られるだろうか?」。この本の制作は、非常にカタルシス(無意識だったものを意識化するような)なプロセス。文字通り何千枚もの写真を見る過程で、その瞬間についてのすべてを思い出す興味深いプロセスだった。私が考えていたこと、感じていたこと、住んでいた場所、パーソナルライフでの出来事、そしてビジネスライフを思い起こさせてくれた。写真はすべてを反映していた。この本で、私は、私の人生のひとつの章の幕を閉じたんだ。

WWD:05年以降の作品を中心に、15年以上のクリエイションの中から、どんなビジュアルを中心にピックアップしたのか?

トム:まずは世界中のすべてのプレスオフィス、ニューヨークと東京、ソウル、香港、ミラノ、そしてロンドンから、過去10年間の記事や写真を送ってもらうことから始めた。印刷された記事や写真は、データを出力して確認した。画像をオンラインで見るのは、印刷された画像を見ることと同じじゃないからね。文字通り、何千もの画像を確認した。何かに取り組むときは、直感を信じている。すべての写真の確認は非常に早く、私の目をつかんだものは何でも書類の山に投げ込んだ。1000枚までの編集は早かった。そこから700枚に、そして最終的には400枚の画像に絞った。最後は、とても誇りに思ったと言わざるを得ない。本の中のすべての写真は、私にとって何かを意味している。それは、私の人生の特定の時間を強調している。 「過去15年間、私は何をしてきたのだろう?」とよく自問する。そして、子どもを授かったこと、2本の映画を作り、この素晴らしいグローバルブランドを創作してきたことに気づく。「実際、とてもたくさんのことをしてきたんだ!」と物事をきちんと整理して先に進めた。こうして過去の15年をスリップカバーに入れ、60歳で新しい章を始めることができた。素晴らしいことだ。

WWD:「グッチ」や「イヴ・サンローラン」を手がけていた頃と、05年以降の一番の違いは?

トム:世界は変わり、私の人生も変わった。今はロサンゼルスに住んでいて、9歳の息子がいる。ジャックを育てることは、私の人生の優先事項だ。「グッチ」にいたとき、私はよく飲み、ドラッグもやっていた。今は酔っていないし、冷静で、人生が変わった。すべてが、より良くなった。ただ過去と現在のクリエイションの間には、1本の共通の糸がある。私はまだ同じ人間で、同じことが好きだから。もちろん当時はやっていたのに、今はもうやらないこともある。ただ創造的なプロセスは、アルコールと薬物がないことを除いて、これまでと同じだ。本能的な人間だから、インスピレーションを得たもの、感動したものから創造を発信している。常に「私は自分の人生の中で、人々が何を着ているのを見たいのだろう?」「私は、どんな世界を見たいのだろう?」「私は、何を見たいのだろう?」と考え続けている。だからショーで発表するコレクションは、6カ月前とまったく違っていることも多いんだ。

WWD:「グッチ」時代から、肌見せのセクシーは1つの特徴だと思う。露出にこだわる理由は?

トム:私の服は、いつもセクシー。 それは、私のコアの一部だ。 しかし年をとって子どもを授かると、世に出したいものに対する認識は変わる。 考える必要が生まれたんだ。「ジャックがこの写真を見たら、彼はどう思うだろうか?」「彼の友達は、なんて言うだろう?」とかね。 だからかつてほど露骨に性的ではなくなったが、それでも官能的だろう。 私は官能的な人間、私の服はそれを反映しているよ。

WWD:「003」を出す頃(いつ頃出したい?)、世の中はどんな風になっていると思う?

トム:Oh, my god!!まだ何にもわからない。私の70歳の誕生日だろうか?!その時の世界なんて、誰がわかるだろう?すべてが急速に変化しているから、5年後の世界だってわからない。19歳のジャックさえ、まったく想像できないよ(笑)。

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バロック村井社長が考える 「売上高」よりも大事にすべきこと

 バロックジャパンリミテッドの2021年3〜8月期は営業利益5億2000万円、純利益2億9000万円で、前年同期(営業利益9億7000万円、純利益12億円)に続き上半期を黒字で折り返した。コロナ前の水準には至らないものの、売上高(前年同期比26.9%増)、売上総利益(30.9%増)ともに大きく回復している。主力の「アズール バイ マウジー(AZUL BY MOUSSY)」などSC販路のブランド(前年同期比27.9%増)、「マウジー(MOUSSY)「 スライ(SLY)」などファッションビル販路のブランド(同16.7%増)がけん引した。だが、村井博之社長は状況を楽観していない。「コロナ禍を経て、お客さまに求められる商品はより本質的なものとなる。市場にないものを作るという『マーケットアウト』の発想を常に持ち続けなければ生き残れない」と気を引き締める。

WWD:上半期を振り返ると?

村井博之社長(以下、村井):黒字着地はできたものの、課題の残る上半期だった。8月に急激に感染状況が深刻化し、ある程度の需要を見込んで準備していた夏物在庫の在庫消化に追われ、値引き販売が増えてしまった。昨年は4月の緊急事態宣言を受けて、急きょ夏物企画の仕入れを大きく減らしたため、セールもほとんどせず売り切ることができた。結果論で言えば、こちらの方が健全であり、理想に近かった。

WWD:売上高、売上総利益ともに順調に回復している。

村井:売上高を右肩上がりで伸ばすことを正義と考えるのは、もうやめにしたい。日本では消費者のボリューム自体が減る中、既存店売上高を上げ続けることにとらわれていては、いつまでたってもセールはなくならない。すぐになくせるものではないが、これ(コロナ禍)を契機にすることはできる。30年前のクリアランスセールは、7月と1月にそれぞれ2週間ずつ開催する程度だった。これがじわじわと拡大し、いまや6月から前倒し開催しているところもあれば、8月までダラダラ続けているところもある。我々のような規模の大きい上場アパレルがそれをしていては、業界全体がそれに引っ張られてしまう。今回のコロナ禍で従来の商習慣に疑問を持つ経営者が、一気に増えていると感じる。これを実行に移すことが重要だ。

WWD:値引き販売を減らすために、仕入れコントロール以外ではどんな努力が必要か。

村井:商品企画を見直すことも重要だ。世の中に本当に必要とされる商品ならば、値引きをしなくても売り切れる。期初の企画段階でしっかりお客さまの方を向き、意思のある商品を作らなくてはならない。最近ではQR(クイックレスポンス)生産が流行り言葉のように言われているが、これに頼ってばかりではいけない。周到に練った商品企画がヒットし、在庫が追いつかなくなって追加発注を掛けるのであれば素晴らしいことだ。しかし、コロナ禍という状況になって増えているのが“悪い”QR。自分たちでよくものを考えず、他社で売れているものを横目に見て、似たり寄ったりの服を急いで生産すること。本質的でない商品は同質化を生み、いずれは廃棄の温床にもなる。このようなことを繰り返しているプレーヤーは、消費者から「必要ない」という烙印を押されるのは時間の問題だ。これは自戒を込めて言うことでもある。

 当社はこれまで、ITバブルが崩壊した2000年代前後には「マウジー(MOUSSY)」「スライ(SLY)」が、リーマンショック(09年)のころには「アズール バイ マウジー(AZUL BY MOUSSY)」がそれぞれ業績を伸ばした。消費マインドが停滞する中、逆にそれを好機と捉え、値ごろな価格で独自性のあるファッションを打ち出たことが消費者の心をとらえたのだと自負している。今回のコロナ禍も大きなピンチではあるものの、そこには必ずビジネスチャンスが眠っているはずだ。

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“金継ぎ”の魅力を世界に発信するジュエリー「ミラモア」の稲城ジョージが目指すのは業界の千利休

 米ニューヨーク発メード・イン・ジャパンのジュエリー「ミラモア(MILAMORE)」の新作は“点字”がモチーフだ。“金継ぎ”モチーフのジュエリーを打ち出し、世界中に日本の美意識を発信しているミラモアの稲城ジョージ最高経営責任者(CEO)兼ブランドビジョニアに新作ジュエリーやブランドに込める思いについて聞いた。

WWD:“点字”を新作ジュエリーのモチーフに採用した理由は?

稲城ジョージCEO(以下、稲城):既存の“パズル”コレクションに点字を使用していて、それから派生したのが新コレクションだ。大学生のとき、ひらがなでレタージュエリーを作ったりしていたけど、それが恥ずかしいと思った。ユニバーサルデザインとかバリアフリーについて学んで、触れることで読める点字はクールでポエティックだと思った。盲目の人のコミュニケーションツールをポジティブに変換できないかと思ったんだ。自分がインクルーシブな人間なので、“点字”をモチーフにしたのもそこからだ。

WWD:点字の意味するものは?このコレクションに込めた思いは?

稲城:これらの点字の意味は、有言実行の“マニフェスト”や自己愛の“セルフラブ”、そして“ビジョン”、感謝を表す“グラチチュード”や“ホープ”、愛を意味する“アモーレ”など。“マニフェスト”は私の座右の銘、また、ビジネスを成長させるには“ビジョン”が大切。ほかの言葉は、コロナ禍のロックダウン中に大切なことは何かを考えて思いついたものだ。もちろんカスタマイズすることも可能だ。点字は、ローズカットのダイヤモンドをアンティークジュエリーのセッティングで施していて星のように見える。インスタグラムで“点字”のリングをアップしたら、「盲目の父に見せたかった」というようなメッセージが送られてきた。一見、わからないけど、人の心に触れたり、「このモチーフは何か」というような会話のきっかけになるようなジュエリーであってほしいと思う。

WWD:“金継ぎ”という言葉が世界中で一般的に使われるようになったが?

稲城:“金継ぎ”は「ミラモア」のDNAだ。“金継ぎ”は日本特有の壊れたものを直した痕だが、なかなかその美しさを理解するのは難しい。それをジュエリーで表現することで、ジュエリー業界の千利休になりたいと思った。“金継ぎ”の意味や美しさが世界で理解されて大切にされるようになってうれしい。“金継ぎ”コレクションをアレンジした“インフィニティー”コレクションも新作として登場した。

WWD:今後の予定は?

稲城:来年にサングラスを発売する予定だ。メガネといえばにほんの鯖江が有名だから、そこの職人と一緒に制作する。「ミラモア」はメード・イン・ジャパンのクオリティーで成熟できた。だから、同じ世代の職人を育成したり、日本の職人を世界に紹介していく活動もしていきたい。

WWD:「ミラモア」をどのように発展させていきたいか?

稲城:「ミラモア」は小さなブランド。アメリカでは、最近、ローカルビジネスをサポートする動きがある。そして、自分もそれを意識するようになった。例えば、大企業が運営するスーパーマーケットで買い物するのと家族経営のコーナーショップで同じ金額買い物するのでは、意味が違う。大企業にとっての1000円とコーナーショップにとっての1000円は、重みが違う。だから、私自身も小さなブランドが好きでサポートしたいと思うし、「ミラモア」が目指すのもニッチなラグジュアリーブランド。細部まで目が届くブランドでありたい。企業の規模=商品の価値とは思わない。それは、インスタグラムのフォロワー数も同じこと。「ミラモア」は宣伝や広告はせず、口コミで広がってきた。ジュエリーやファッション業界には夢があると思っているので、「ミラモア」をヘリテージブランドとして長年愛されるブランドに大切に育てていきたいと思う。

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就任から半年、ユナイテッドアローズの松崎社長が語る「危機と挑戦」

 ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS、以下、UA)の松崎善則社長が10月5日、2022年4〜9月期決算説明会に登壇し、コロナ禍での経営動向や今後の重点施策について語った。4月に社長に就任してから半年。セレクトショップの雄と言われた同社が抱く危機感と、相次いで新たな取り組みを立ち上げる狙い―レーベルの立ち上げ:D2Cの「シテン(CITEN)」、インフルエンサーを起用した「マルゥ ユナイテッドアローズ(MARW UNITED ARROWS)」、ヨガを軸としたウィメンズの「トゥー ユナイテッドアローズ(TO UNITED ARROWS)」、商標権を承継したサーフショップ「カリフォルニアジェネラルストア(CALIFORNIA GENERAL STORE)」プライベートサービスデスクの設置―などを自らの言葉で説明。ECのリプレイスメントなど基幹システム構想と並行して、2025年度内に向けたPLM(製品ライフサイクルマネジメント)システムと在庫分析システムの導入によるサプライチェーンのデジタル化も控えている。業績や店舗閉鎖などネガティブな部分がある中で、社員のモチベーションを高め、接客を中心とした品質を高めることで、「お客様の期待に応えること」の重要性にも言及した。質疑応答と含めて、会見の発言をレポートする。

松崎善則社長(以下、松崎):私からは、このハーフターム(中間期で)、今後大事にしていきたい考え方をみなさまに共有させていただきたいと思います。私が4月より社長就任いたしまして、半年強が経過しましたが、今期も引き続いて厳しい状況が続いている部分が多々あって大変ご心配をおかけしていることと存じます。

 改めて、前期からの業績動向を大枠ダイジェストすると、計4回の、延べ11カ月以上に及ぶ緊急事態ということで、ネガティブインパクトが非常に大きかったというところです。

 この資料の通り、コロナが始まった昨年の第1四半期(4〜6月)は、緊急事態によって2カ月間店舗がほぼすべてクローズしたことで売り上げが非常に苦戦しました。第2四半期(7〜9月)は一時的に需要は回復したのですが、第1クオーターの在庫消化を優先したことで利益面が非常に苦しかった。第3四半期(10〜12月)は回復基調がいよいよ見られるかと思われたが、再度秋口から感染が広がって、第4四半期(1〜3月)についても再度緊急事態宣言ということで、いつ(コロナ禍が)開けるかどうかわからない状況下で、在庫の持ち方も施策も含めて、社内全体、右往左往という形で昨期は終えました。

 今期から、ようやく一新してやっていこうと新体制の中で取り組みを進めていますが、4月下旬から再度宣言が発令され、7月以降も第五波ということで、この上半期は想定した回復シナリオには残念ながらもう一歩届かない状況になっております。緊急事態がようやく明け、気温が低下した先月中旬以降から回復が顕著に見られています。足元、11月に入っても回復が想定以上に見られているということで、お客様の動向にも期待が高まっており、準備を進めている状況です。

今期方針は「選択と集中」「新たな挑戦」「経営理念の再浸透」

 今年度のグループ経営方針として、「持続的成長と、未来に向けた大改革~新時代のお客様大満足」を掲げています。文字通りでございますが、この厳しい経営環境におきまして、従来のやり方ではお客さまのご期待、ご支持をいただくのは難しいということで、「大改革なくして持続的成長は果たせない」という危機感を持っての方針です。この方針の下、営業利益生産性計画(一人当たり営業利益計画)の必達、連結粗利益率(50.7%)の必達に向けた施策と、サステナビリティやDXの取り組みを進めている最中でございます。

 大改革というタイトルを進めていくうえで、重要なポイントを3点考えています。一発逆転を狙いたいところなのですが、大改革には不断に継続していくことが非常に重要と考えておりまして、文字づらですとあまり目新しいものではないのですが、一つ目は“選択と集中”です。“選択と集中”によってクオリティを上げるいう部分を挙げています。優先順位の高いものに専念することで強い利益率の体質を構築します。前期から約10%の店舗をクローズする(計画を打ち出し)、今、10%強になる見込みです。店舗やレーベルを閉めることは、少なからずご支持いただいているお客さまを想像すると、大変心苦しくて難しいものではありますが、この下半期も引き続き選択と集中を既存取り組みについては進めてまいることで、強い経営体質を実現していきたいと思います。このためには、何よりもクオリティが重要で、ヒト・モノ・ウツワのすべての領域において活動の質を高めていくことで、“選択と集中”が有意義なものになっていくと考えております。

 まずはこの緊急事態が明けた先月から、店頭にお戻りになるお客様が多数見られています。(過去に築いてきた接客力、おもてなしの心が薄れないように)リアル店舗の接客の質(を上げること)が既存店舗の回復の大きな柱だと考えています。実店舗の強みを取り戻していくことを主軸にこの後半戦は臨んでいきたいと思います。この実店舗の回復によって、今後進めていくOMO(店舗とECの融合)施策、ECのリプレイスなども控えておりますが、この成功につながっていくものと考えています。

 二つ目は、“新たな挑戦”が積極的になされている状態を目指しています。これは“選択と集中”と相関するように捉えられる部分もあるかと思いますが、規模の大小を問わず、“新たな挑戦”を積極的に行い、次の兆しをつくっていくことが、この不透明な不確実な時代においては重要だと考えています。過去の成功パターンに依存せず、スピード感を持ってトライ&エラーを繰り返すことが必要で、時代の動きが転換期に当たる今、大きな施策一つで大逆転を狙うということではなく、先ほどIR広報部長からいくつかの事例を説明させていただきましたが、こうしたものを繰り返していくことで、次の機会を作っていくことを続けてまいります。

 当社はセレクトショップとして先駆的であること、新しいことを提案し続けてくれるであろうことをお客さまから期待されているはずですので、それが当社の優位性を築いてきた原動力の一つでもあるので、“選択と集中”によって得られたものを、新たな価値創造(に向けた“挑戦”)につなげていくことをこの下半期もより強く意識していきたいと思っています。

不安定な時代にこそ、“経営理念の浸透”を重視

 三点目は“経営理念の再浸透”を掲げております。(経営理念:「真心と美意識をこめてお客様の明日を創り、生活文化のスタンダードを創造し続ける。」)。これは社員メンバーのエンゲージメントをより強め、高め、お客様への価値提供が薄れていかないために掲げていることです。当社が事業活動をしていくうえでの絶対的な拠り所が理念だと考えております。この理念によって、ユナイテッドアローズがユナイテッドアローズで居続けていけるわけであって、こういった不安定な中で、社員メンバーが自分たちの存在意義や志、なすべき方向性にゆらぎが出そうなときこそ、“経営理念の浸透”が重要になります。コロナ禍で一旦中断している、とくに出張を伴う店舗の巡回や理念セッションを下半期は再開して、全社員メンバーに私たちが目指すところ、社会に果たしたい価値は何かということを、一緒に考えて、全社一丸となって乗り越えて行きたいと考えています。このコロナ禍に伴って、店舗人員の見直しなどを一部行ってきましたが、私たちが築いてきた強みを喪失しないように、店舗メンバーの士気を維持向上する取り組みを進めてまいります。繰り返しですが、この上半期は想定した回復には及んでおりませんが、申し上げた3点(“選択と集中”“新たな挑戦”“経営理念の再浸透”)を通じて当社は変革を進めており、手ごたえを感じているところ多数感じているところです。


【メディアからの質疑応答】
――他社の新興系SPAやセレクトに比べるとやや回復が遅いように思う。コロナという状況は同じだが、どういったところがUAにとっては難しいのか教えてほしい。

松崎善則社長(以下、松崎):他社比較でちょっと回復が遅いのではないかというご指摘・ご質問ですが、精緻にまだ捉えきれていない部分もあるのですが、一つはお客さまの年齢層の違いがあるなと捉えています。コロナの緊急事態が開ける前から、20代、30代前半の若い方の外出はある中で、われわれが主としている30代、40代の方の動向、外出が非常におとなしかった。もう一つは、従来からですが、ビジネス衣料の回復は見られてきていますが、まだまだコロナ以前に比較するとビジネス衣料の完全な回復には及んでいないという状況です。対応はしていますが、そこがまだ実を結んでいない。そういった点が若干の弱含み担っている点と捉えております。

――10月から始めている富裕層向けサービスの件で。ファッションだけでなく富裕層向けに衣食住を含めて提供していくというが、従来から手がけてきた百貨店も富裕層向けサービスを強化している。UAとしては?

松崎:富裕層向けのプライベートサービスデスクですが、おっしゃるように、以前より百貨店で外商という形はあると思いますけれども、われわれ、今回このコロナにより捉えたのは、ECで年間100万円以上お買い上げになられるお客さまが200人近くいらっしゃる。多いか少ないかといえば、金額だと2億円ぐらいの売上げになり、まだまだ潜在的なものがあると考えています。年間100万円という切り方をしましたが、50万円ぐらいだとまた増えてくるのですが、ECでもかなり年間で購買をいただいているお客さまに対して、何のサポートもできていないねと。全社のDXというところにも絡んでくるのですが、まずはそういったお客さまの特性というか購買について、よりサポートを深めていこうということです。これが百貨店の外商と違う点でいうと、百貨店が抱えていらっしゃる団塊層ではなく、われわれは団塊ジュニア層の購買が顕著でして、新しい形の富裕層というお客さまについては、百貨店には行かれていないお客さまが多いということで、われわれに商機があるのではないだろうかと捉えています。

――サプライチェーンについてお尋ねいたします。東南アジアでコロナの感染拡大で商品に遅れなどが出ている企業が出ている。ユナイテッドアローズは該当されているか。二点目が、人権問題が取り上げられている中で、海外を含めたサプライチェーンの透明化や見直しの考え、今後取り組む予定のものは?

三井俊治IR広報部部長:当社の産業に限らず、ベトナムの感染拡大で工場が止まっていたり、中国で電力の問題で工場が止まっていたり、そういう問題が当社でも影響が出ています。秋冬商品の納期遅れが若干発生しています。ここについては常に状況が変わっているので、どういうキャッチアップができるか検討しながら対応を進めているところです。

松崎:人権問題等も含めて、海外生産の透明性をどう担保していくかということですが、昨今話題の綿の問題に端を発して、当社でも各取引先様、とくに大手商社様を中心に、そこからのさらに下の下請け様などに、基準を満たしているか否かという状況調査を行っています。そこで追える、追えない、トレーサビリティが取れるものと取れないものの種別を行い、取れないものについては代替素材、代替工場等を含めて振り替えていく動きをしていこうと、各ベンダー様と話しをさせていただいている最中です。透明性については、海外、国内問わず、人権問題があってはいけませんし、商品のトレーサビリティはすべて取っいきたいという方向性の下に進めているという状況です。

――“選択と集中”の部分で、上期では2020年3月期末に比べて店舗数が14%減少していて、下期も“選択と集中”を進めていくという話があったが、現時点で具体的にどういった計画があるのか。

松崎:先様、デベロッパーもあることなので詳細の詳細まではお伝えできないのですが、グループ全体を通して、コーエン社の店舗などについて下半期はより進めていこうと思っています。UA社の取り組みについても、非常に厳しいところがいくつか残っていますので、こういったところも見極めていきます。これはある程度、UA社についてはメドがついていますが、あと数店舗。主にはコーエン社について進めていく考えです。

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就任から半年、ユナイテッドアローズの松崎社長が語る「危機と挑戦」

 ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS、以下、UA)の松崎善則社長が10月5日、2022年4〜9月期決算説明会に登壇し、コロナ禍での経営動向や今後の重点施策について語った。4月に社長に就任してから半年。セレクトショップの雄と言われた同社が抱く危機感と、相次いで新たな取り組みを立ち上げる狙い―レーベルの立ち上げ:D2Cの「シテン(CITEN)」、インフルエンサーを起用した「マルゥ ユナイテッドアローズ(MARW UNITED ARROWS)」、ヨガを軸としたウィメンズの「トゥー ユナイテッドアローズ(TO UNITED ARROWS)」、商標権を承継したサーフショップ「カリフォルニアジェネラルストア(CALIFORNIA GENERAL STORE)」プライベートサービスデスクの設置―などを自らの言葉で説明。ECのリプレイスメントなど基幹システム構想と並行して、2025年度内に向けたPLM(製品ライフサイクルマネジメント)システムと在庫分析システムの導入によるサプライチェーンのデジタル化も控えている。業績や店舗閉鎖などネガティブな部分がある中で、社員のモチベーションを高め、接客を中心とした品質を高めることで、「お客様の期待に応えること」の重要性にも言及した。質疑応答と含めて、会見の発言をレポートする。

松崎善則社長(以下、松崎):私からは、このハーフターム(中間期で)、今後大事にしていきたい考え方をみなさまに共有させていただきたいと思います。私が4月より社長就任いたしまして、半年強が経過しましたが、今期も引き続いて厳しい状況が続いている部分が多々あって大変ご心配をおかけしていることと存じます。

 改めて、前期からの業績動向を大枠ダイジェストすると、計4回の、延べ11カ月以上に及ぶ緊急事態ということで、ネガティブインパクトが非常に大きかったというところです。

 この資料の通り、コロナが始まった昨年の第1四半期(4〜6月)は、緊急事態によって2カ月間店舗がほぼすべてクローズしたことで売り上げが非常に苦戦しました。第2四半期(7〜9月)は一時的に需要は回復したのですが、第1クオーターの在庫消化を優先したことで利益面が非常に苦しかった。第3四半期(10〜12月)は回復基調がいよいよ見られるかと思われたが、再度秋口から感染が広がって、第4四半期(1〜3月)についても再度緊急事態宣言ということで、いつ(コロナ禍が)開けるかどうかわからない状況下で、在庫の持ち方も施策も含めて、社内全体、右往左往という形で昨期は終えました。

 今期から、ようやく一新してやっていこうと新体制の中で取り組みを進めていますが、4月下旬から再度宣言が発令され、7月以降も第五波ということで、この上半期は想定した回復シナリオには残念ながらもう一歩届かない状況になっております。緊急事態がようやく明け、気温が低下した先月中旬以降から回復が顕著に見られています。足元、11月に入っても回復が想定以上に見られているということで、お客様の動向にも期待が高まっており、準備を進めている状況です。

今期方針は「選択と集中」「新たな挑戦」「経営理念の再浸透」

 今年度のグループ経営方針として、「持続的成長と、未来に向けた大改革~新時代のお客様大満足」を掲げています。文字通りでございますが、この厳しい経営環境におきまして、従来のやり方ではお客さまのご期待、ご支持をいただくのは難しいということで、「大改革なくして持続的成長は果たせない」という危機感を持っての方針です。この方針の下、営業利益生産性計画(一人当たり営業利益計画)の必達、連結粗利益率(50.7%)の必達に向けた施策と、サステナビリティやDXの取り組みを進めている最中でございます。

 大改革というタイトルを進めていくうえで、重要なポイントを3点考えています。一発逆転を狙いたいところなのですが、大改革には不断に継続していくことが非常に重要と考えておりまして、文字づらですとあまり目新しいものではないのですが、一つ目は“選択と集中”です。“選択と集中”によってクオリティを上げるいう部分を挙げています。優先順位の高いものに専念することで強い利益率の体質を構築します。前期から約10%の店舗をクローズする(計画を打ち出し)、今、10%強になる見込みです。店舗やレーベルを閉めることは、少なからずご支持いただいているお客さまを想像すると、大変心苦しくて難しいものではありますが、この下半期も引き続き選択と集中を既存取り組みについては進めてまいることで、強い経営体質を実現していきたいと思います。このためには、何よりもクオリティが重要で、ヒト・モノ・ウツワのすべての領域において活動の質を高めていくことで、“選択と集中”が有意義なものになっていくと考えております。

 まずはこの緊急事態が明けた先月から、店頭にお戻りになるお客様が多数見られています。(過去に築いてきた接客力、おもてなしの心が薄れないように)リアル店舗の接客の質(を上げること)が既存店舗の回復の大きな柱だと考えています。実店舗の強みを取り戻していくことを主軸にこの後半戦は臨んでいきたいと思います。この実店舗の回復によって、今後進めていくOMO(店舗とECの融合)施策、ECのリプレイスなども控えておりますが、この成功につながっていくものと考えています。

 二つ目は、“新たな挑戦”が積極的になされている状態を目指しています。これは“選択と集中”と相関するように捉えられる部分もあるかと思いますが、規模の大小を問わず、“新たな挑戦”を積極的に行い、次の兆しをつくっていくことが、この不透明な不確実な時代においては重要だと考えています。過去の成功パターンに依存せず、スピード感を持ってトライ&エラーを繰り返すことが必要で、時代の動きが転換期に当たる今、大きな施策一つで大逆転を狙うということではなく、先ほどIR広報部長からいくつかの事例を説明させていただきましたが、こうしたものを繰り返していくことで、次の機会を作っていくことを続けてまいります。

 当社はセレクトショップとして先駆的であること、新しいことを提案し続けてくれるであろうことをお客さまから期待されているはずですので、それが当社の優位性を築いてきた原動力の一つでもあるので、“選択と集中”によって得られたものを、新たな価値創造(に向けた“挑戦”)につなげていくことをこの下半期もより強く意識していきたいと思っています。

不安定な時代にこそ、“経営理念の浸透”を重視

 三点目は“経営理念の再浸透”を掲げております。(経営理念:「真心と美意識をこめてお客様の明日を創り、生活文化のスタンダードを創造し続ける。」)。これは社員メンバーのエンゲージメントをより強め、高め、お客様への価値提供が薄れていかないために掲げていることです。当社が事業活動をしていくうえでの絶対的な拠り所が理念だと考えております。この理念によって、ユナイテッドアローズがユナイテッドアローズで居続けていけるわけであって、こういった不安定な中で、社員メンバーが自分たちの存在意義や志、なすべき方向性にゆらぎが出そうなときこそ、“経営理念の浸透”が重要になります。コロナ禍で一旦中断している、とくに出張を伴う店舗の巡回や理念セッションを下半期は再開して、全社員メンバーに私たちが目指すところ、社会に果たしたい価値は何かということを、一緒に考えて、全社一丸となって乗り越えて行きたいと考えています。このコロナ禍に伴って、店舗人員の見直しなどを一部行ってきましたが、私たちが築いてきた強みを喪失しないように、店舗メンバーの士気を維持向上する取り組みを進めてまいります。繰り返しですが、この上半期は想定した回復には及んでおりませんが、申し上げた3点(“選択と集中”“新たな挑戦”“経営理念の再浸透”)を通じて当社は変革を進めており、手ごたえを感じているところ多数感じているところです。


【メディアからの質疑応答】
――他社の新興系SPAやセレクトに比べるとやや回復が遅いように思う。コロナという状況は同じだが、どういったところがUAにとっては難しいのか教えてほしい。

松崎善則社長(以下、松崎):他社比較でちょっと回復が遅いのではないかというご指摘・ご質問ですが、精緻にまだ捉えきれていない部分もあるのですが、一つはお客さまの年齢層の違いがあるなと捉えています。コロナの緊急事態が開ける前から、20代、30代前半の若い方の外出はある中で、われわれが主としている30代、40代の方の動向、外出が非常におとなしかった。もう一つは、従来からですが、ビジネス衣料の回復は見られてきていますが、まだまだコロナ以前に比較するとビジネス衣料の完全な回復には及んでいないという状況です。対応はしていますが、そこがまだ実を結んでいない。そういった点が若干の弱含み担っている点と捉えております。

――10月から始めている富裕層向けサービスの件で。ファッションだけでなく富裕層向けに衣食住を含めて提供していくというが、従来から手がけてきた百貨店も富裕層向けサービスを強化している。UAとしては?

松崎:富裕層向けのプライベートサービスデスクですが、おっしゃるように、以前より百貨店で外商という形はあると思いますけれども、われわれ、今回このコロナにより捉えたのは、ECで年間100万円以上お買い上げになられるお客さまが200人近くいらっしゃる。多いか少ないかといえば、金額だと2億円ぐらいの売上げになり、まだまだ潜在的なものがあると考えています。年間100万円という切り方をしましたが、50万円ぐらいだとまた増えてくるのですが、ECでもかなり年間で購買をいただいているお客さまに対して、何のサポートもできていないねと。全社のDXというところにも絡んでくるのですが、まずはそういったお客さまの特性というか購買について、よりサポートを深めていこうということです。これが百貨店の外商と違う点でいうと、百貨店が抱えていらっしゃる団塊層ではなく、われわれは団塊ジュニア層の購買が顕著でして、新しい形の富裕層というお客さまについては、百貨店には行かれていないお客さまが多いということで、われわれに商機があるのではないだろうかと捉えています。

――サプライチェーンについてお尋ねいたします。東南アジアでコロナの感染拡大で商品に遅れなどが出ている企業が出ている。ユナイテッドアローズは該当されているか。二点目が、人権問題が取り上げられている中で、海外を含めたサプライチェーンの透明化や見直しの考え、今後取り組む予定のものは?

三井俊治IR広報部部長:当社の産業に限らず、ベトナムの感染拡大で工場が止まっていたり、中国で電力の問題で工場が止まっていたり、そういう問題が当社でも影響が出ています。秋冬商品の納期遅れが若干発生しています。ここについては常に状況が変わっているので、どういうキャッチアップができるか検討しながら対応を進めているところです。

松崎:人権問題等も含めて、海外生産の透明性をどう担保していくかということですが、昨今話題の綿の問題に端を発して、当社でも各取引先様、とくに大手商社様を中心に、そこからのさらに下の下請け様などに、基準を満たしているか否かという状況調査を行っています。そこで追える、追えない、トレーサビリティが取れるものと取れないものの種別を行い、取れないものについては代替素材、代替工場等を含めて振り替えていく動きをしていこうと、各ベンダー様と話しをさせていただいている最中です。透明性については、海外、国内問わず、人権問題があってはいけませんし、商品のトレーサビリティはすべて取っいきたいという方向性の下に進めているという状況です。

――“選択と集中”の部分で、上期では2020年3月期末に比べて店舗数が14%減少していて、下期も“選択と集中”を進めていくという話があったが、現時点で具体的にどういった計画があるのか。

松崎:先様、デベロッパーもあることなので詳細の詳細まではお伝えできないのですが、グループ全体を通して、コーエン社の店舗などについて下半期はより進めていこうと思っています。UA社の取り組みについても、非常に厳しいところがいくつか残っていますので、こういったところも見極めていきます。これはある程度、UA社についてはメドがついていますが、あと数店舗。主にはコーエン社について進めていく考えです。

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京都における古着店の出店ラッシュは、原宿エリア再浮上のヒントとなるか?

 東京・原宿エリアの空室化が問題となっている。コロナショックを受けてテナントが撤退、その後賃料が下げられるケースもあるが、もともとが破格ということもあり新規入居者が決定していない。一方で、京都のメインストリートの一つ、寺町通(寺町京極商店街)ではこの1年で古着店の出店ラッシュが続いている。この動きは、原宿再浮上のヒントになるのでは?そう仮説を立てて、現地を取材した。

 まず話を聞いたのは、「古着屋ジャム京都四条店」を2021年4月、“低価格(平均価格帯2100円)”や“エコ”を掲げる「ロエコ・バイ・ジャム京都店」を7月に寺町通にオープンしたJAM TRADING(大阪)の福嶋政憲社長だ。

「古着ビジネスは、メインストリートの家賃にも釣り合うものに成長した」

WWD:原宿の空き物件に古着店が続々出店するのでは?との見立てについて、思うところを聞きたい。同じような現象が京都でも(先行して)起きているのではないか?と見ている。

福嶋政憲JAM TRADING社長(以下、福嶋):京都、原宿のみならず、古着についてはどのエリアでも、“今がビジネスチャンス!”と積極的に出店する企業が多い。寺町通のような商店街の場合、老舗もある中での出店なので、これまで異質だった古着店が目立っているということもあると思う。

 古着ビジネスはお客さまを選ぶニッチなものだったが、古着ブームにより購買層が広がり、また彼らへのサステナブルな考え方の浸透もあり、メインストリートの家賃にも釣り合うものに成長した。コロナ禍で新品アパレル店の撤退が続き、大家さんは次のテナントも物販が良いと考えてもなかなか手が上がらず、空室状態が続くことで家賃も下がり、そんな状況の中で古着店も受け入れられ始めた。風当りの変化を感じている。

 とはいえ原宿エリアの家賃はまだまだ高く、すぐに古着店で埋まるとは考えられない。また原宿には、地方や海外からのお客さまも多いので、その点では地域差のあまりない(なくなった)古着店が勝負しづらい一面もある。

WWD:京都のユーザーに、古着はどう受け入れられている?また、そこに東京や大阪との違いはある?

福嶋:京都は学生の街なので、先輩からユニホームや日常着をもらい受ける文化が根付いている。流行りについては今や東京、大阪と変わらないが、比較的おとなしめの色や柄が好まれる傾向がある。

WWD:他県からの進出を嫌う傾向があるとも言われる京都だが、出店のしにくさはあった?

福嶋:なかった。加えて、寺町京極商店街の理事長を務めるセレクトショップ、ロフトマンの村井修平会長から「空きテナントが埋まって良かった。寺町は商売人の通りだから、頑張ってやってください」と言われたことは、とても心強かった。

WWD:古着店が増えることに対して、「街の景観が……」などと危惧する一定層がいると思う。何か対策は?

福嶋:行政や商店街のルールを順守するのはもちろん、極めて基本的はことだが、近隣の皆さんへのあいさつや地域の清掃などを積極的に行い、地域の一員として街づくりに寄与し、認められればと思う。

WWD:次なる出店候補地について聞きたい。

福嶋:京都にはすでに3店舗を構えているので、同エリアでのこれ以上のドミナントは考えていない。東京も原宿にエリア最大規模の古着店を出店したばかりだが、物件との出合い次第では下北沢に出店したい。また札幌、仙台、名古屋でもリサーチを続けている。

 続いて、地元企業を代表してヒューマンフォーラム(京都、岩崎仁志社長)の岩月臣人事業部長に質問をぶつけてみた。同社は、10月に祖業である「スピンズ」(全国に33店舗を展開)の原宿店を業態転換。3割ほどだった古着の扱いを100%にした。さらに、“ユーズドを拡張する進化型古着屋”をうたう「森」を20年12月、大阪・中崎町から京都・新京極(寺町と隣接する通り)に移転している。

「古着は、“シーズンという概念のない唯一のアパレル商材”である」

WWD:古着ブーム、また古着ビジネスの隆盛について、どう感じている?

岩月臣人ヒューマンフォーラム事業部長(以下、岩月):古着は“シーズンという概念のない唯一のアパレル商材”だ。在庫を抱えても、それが目減りすることはない。事業を継続していけるかは別として参入障壁も低く、古物商免許さえ持っていればすぐに始められる。実際、古着ビジネスをスタートする大学生などを目にするようになった。“サステナブルだから”という理由でユーザーが古着を選び、起業する側も同じ理由から古着ビジネスを選択している。

WWD:京都が“おひざもと”であるヒューマンフォーラムは、古着における進出組をどう見ている?

岩月:とてもありがたいと感じている。一点物の集積である古着には宝探し感覚があるが、それが街中に1店舗だけでは、“出掛けよう”というスイッチをONにするのが難しい。一方で、街中に古着店があふれていれば、ユーザーのモチベーションは上昇する。“点”として当社だけが良ければいいのではなく、“面”や“立体”として古着、そして街全体を盛り上げていけたらと思う。

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京都における古着店の出店ラッシュは、原宿エリア再浮上のヒントとなるか?

 東京・原宿エリアの空室化が問題となっている。コロナショックを受けてテナントが撤退、その後賃料が下げられるケースもあるが、もともとが破格ということもあり新規入居者が決定していない。一方で、京都のメインストリートの一つ、寺町通(寺町京極商店街)ではこの1年で古着店の出店ラッシュが続いている。この動きは、原宿再浮上のヒントになるのでは?そう仮説を立てて、現地を取材した。

 まず話を聞いたのは、「古着屋ジャム京都四条店」を2021年4月、“低価格(平均価格帯2100円)”や“エコ”を掲げる「ロエコ・バイ・ジャム京都店」を7月に寺町通にオープンしたJAM TRADING(大阪)の福嶋政憲社長だ。

「古着ビジネスは、メインストリートの家賃にも釣り合うものに成長した」

WWD:原宿の空き物件に古着店が続々出店するのでは?との見立てについて、思うところを聞きたい。同じような現象が京都でも(先行して)起きているのではないか?と見ている。

福嶋政憲JAM TRADING社長(以下、福嶋):京都、原宿のみならず、古着についてはどのエリアでも、“今がビジネスチャンス!”と積極的に出店する企業が多い。寺町通のような商店街の場合、老舗もある中での出店なので、これまで異質だった古着店が目立っているということもあると思う。

 古着ビジネスはお客さまを選ぶニッチなものだったが、古着ブームにより購買層が広がり、また彼らへのサステナブルな考え方の浸透もあり、メインストリートの家賃にも釣り合うものに成長した。コロナ禍で新品アパレル店の撤退が続き、大家さんは次のテナントも物販が良いと考えてもなかなか手が上がらず、空室状態が続くことで家賃も下がり、そんな状況の中で古着店も受け入れられ始めた。風当りの変化を感じている。

 とはいえ原宿エリアの家賃はまだまだ高く、すぐに古着店で埋まるとは考えられない。また原宿には、地方や海外からのお客さまも多いので、その点では地域差のあまりない(なくなった)古着店が勝負しづらい一面もある。

WWD:京都のユーザーに、古着はどう受け入れられている?また、そこに東京や大阪との違いはある?

福嶋:京都は学生の街なので、先輩からユニホームや日常着をもらい受ける文化が根付いている。流行りについては今や東京、大阪と変わらないが、比較的おとなしめの色や柄が好まれる傾向がある。

WWD:他県からの進出を嫌う傾向があるとも言われる京都だが、出店のしにくさはあった?

福嶋:なかった。加えて、寺町京極商店街の理事長を務めるセレクトショップ、ロフトマンの村井修平会長から「空きテナントが埋まって良かった。寺町は商売人の通りだから、頑張ってやってください」と言われたことは、とても心強かった。

WWD:古着店が増えることに対して、「街の景観が……」などと危惧する一定層がいると思う。何か対策は?

福嶋:行政や商店街のルールを順守するのはもちろん、極めて基本的はことだが、近隣の皆さんへのあいさつや地域の清掃などを積極的に行い、地域の一員として街づくりに寄与し、認められればと思う。

WWD:次なる出店候補地について聞きたい。

福嶋:京都にはすでに3店舗を構えているので、同エリアでのこれ以上のドミナントは考えていない。東京も原宿にエリア最大規模の古着店を出店したばかりだが、物件との出合い次第では下北沢に出店したい。また札幌、仙台、名古屋でもリサーチを続けている。

 続いて、地元企業を代表してヒューマンフォーラム(京都、岩崎仁志社長)の岩月臣人事業部長に質問をぶつけてみた。同社は、10月に祖業である「スピンズ」(全国に33店舗を展開)の原宿店を業態転換。3割ほどだった古着の扱いを100%にした。さらに、“ユーズドを拡張する進化型古着屋”をうたう「森」を20年12月、大阪・中崎町から京都・新京極(寺町と隣接する通り)に移転している。

「古着は、“シーズンという概念のない唯一のアパレル商材”である」

WWD:古着ブーム、また古着ビジネスの隆盛について、どう感じている?

岩月臣人ヒューマンフォーラム事業部長(以下、岩月):古着は“シーズンという概念のない唯一のアパレル商材”だ。在庫を抱えても、それが目減りすることはない。事業を継続していけるかは別として参入障壁も低く、古物商免許さえ持っていればすぐに始められる。実際、古着ビジネスをスタートする大学生などを目にするようになった。“サステナブルだから”という理由でユーザーが古着を選び、起業する側も同じ理由から古着ビジネスを選択している。

WWD:京都が“おひざもと”であるヒューマンフォーラムは、古着における進出組をどう見ている?

岩月:とてもありがたいと感じている。一点物の集積である古着には宝探し感覚があるが、それが街中に1店舗だけでは、“出掛けよう”というスイッチをONにするのが難しい。一方で、街中に古着店があふれていれば、ユーザーのモチベーションは上昇する。“点”として当社だけが良ければいいのではなく、“面”や“立体”として古着、そして街全体を盛り上げていけたらと思う。

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京都における古着店の出店ラッシュは、原宿エリア再浮上のヒントとなるか?

 東京・原宿エリアの空室化が問題となっている。コロナショックを受けてテナントが撤退、その後賃料が下げられるケースもあるが、もともとが破格ということもあり新規入居者が決定していない。一方で、京都のメインストリートの一つ、寺町通(寺町京極商店街)ではこの1年で古着店の出店ラッシュが続いている。この動きは、原宿再浮上のヒントになるのでは?そう仮説を立てて、現地を取材した。

 まず話を聞いたのは、「古着屋ジャム京都四条店」を2021年4月、“低価格(平均価格帯2100円)”や“エコ”を掲げる「ロエコ・バイ・ジャム京都店」を7月に寺町通にオープンしたJAM TRADING(大阪)の福嶋政憲社長だ。

「古着ビジネスは、メインストリートの家賃にも釣り合うものに成長した」

WWD:原宿の空き物件に古着店が続々出店するのでは?との見立てについて、思うところを聞きたい。同じような現象が京都でも(先行して)起きているのではないか?と見ている。

福嶋政憲JAM TRADING社長(以下、福嶋):京都、原宿のみならず、古着についてはどのエリアでも、“今がビジネスチャンス!”と積極的に出店する企業が多い。寺町通のような商店街の場合、老舗もある中での出店なので、これまで異質だった古着店が目立っているということもあると思う。

 古着ビジネスはお客さまを選ぶニッチなものだったが、古着ブームにより購買層が広がり、また彼らへのサステナブルな考え方の浸透もあり、メインストリートの家賃にも釣り合うものに成長した。コロナ禍で新品アパレル店の撤退が続き、大家さんは次のテナントも物販が良いと考えてもなかなか手が上がらず、空室状態が続くことで家賃も下がり、そんな状況の中で古着店も受け入れられ始めた。風当りの変化を感じている。

 とはいえ原宿エリアの家賃はまだまだ高く、すぐに古着店で埋まるとは考えられない。また原宿には、地方や海外からのお客さまも多いので、その点では地域差のあまりない(なくなった)古着店が勝負しづらい一面もある。

WWD:京都のユーザーに、古着はどう受け入れられている?また、そこに東京や大阪との違いはある?

福嶋:京都は学生の街なので、先輩からユニホームや日常着をもらい受ける文化が根付いている。流行りについては今や東京、大阪と変わらないが、比較的おとなしめの色や柄が好まれる傾向がある。

WWD:他県からの進出を嫌う傾向があるとも言われる京都だが、出店のしにくさはあった?

福嶋:なかった。加えて、寺町京極商店街の理事長を務めるセレクトショップ、ロフトマンの村井修平会長から「空きテナントが埋まって良かった。寺町は商売人の通りだから、頑張ってやってください」と言われたことは、とても心強かった。

WWD:古着店が増えることに対して、「街の景観が……」などと危惧する一定層がいると思う。何か対策は?

福嶋:行政や商店街のルールを順守するのはもちろん、極めて基本的はことだが、近隣の皆さんへのあいさつや地域の清掃などを積極的に行い、地域の一員として街づくりに寄与し、認められればと思う。

WWD:次なる出店候補地について聞きたい。

福嶋:京都にはすでに3店舗を構えているので、同エリアでのこれ以上のドミナントは考えていない。東京も原宿にエリア最大規模の古着店を出店したばかりだが、物件との出合い次第では下北沢に出店したい。また札幌、仙台、名古屋でもリサーチを続けている。

 続いて、地元企業を代表してヒューマンフォーラム(京都、岩崎仁志社長)の岩月臣人事業部長に質問をぶつけてみた。同社は、10月に祖業である「スピンズ」(全国に33店舗を展開)の原宿店を業態転換。3割ほどだった古着の扱いを100%にした。さらに、“ユーズドを拡張する進化型古着屋”をうたう「森」を20年12月、大阪・中崎町から京都・新京極(寺町と隣接する通り)に移転している。

「古着は、“シーズンという概念のない唯一のアパレル商材”である」

WWD:古着ブーム、また古着ビジネスの隆盛について、どう感じている?

岩月臣人ヒューマンフォーラム事業部長(以下、岩月):古着は“シーズンという概念のない唯一のアパレル商材”だ。在庫を抱えても、それが目減りすることはない。事業を継続していけるかは別として参入障壁も低く、古物商免許さえ持っていればすぐに始められる。実際、古着ビジネスをスタートする大学生などを目にするようになった。“サステナブルだから”という理由でユーザーが古着を選び、起業する側も同じ理由から古着ビジネスを選択している。

WWD:京都が“おひざもと”であるヒューマンフォーラムは、古着における進出組をどう見ている?

岩月:とてもありがたいと感じている。一点物の集積である古着には宝探し感覚があるが、それが街中に1店舗だけでは、“出掛けよう”というスイッチをONにするのが難しい。一方で、街中に古着店があふれていれば、ユーザーのモチベーションは上昇する。“点”として当社だけが良ければいいのではなく、“面”や“立体”として古着、そして街全体を盛り上げていけたらと思う。

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楽天が「本気のアパレルDX」 キーマンの松村亮執行役員に聞く「在庫一元管理とリアル店舗支援」

 楽天グループはこの秋から、アパレル事業者向けに、複数販路における様々なデータを一元管理するデジタルソリューション「楽天ファッション オムニチャネルプラットフォーム(Rakuten Fashion Omni-channel Platform以下、RFOP)」の提供をスタートする。楽天が培ったファッションECサイトや物流フルフィルメントサービス運営の知見に加え、フロー・メイカーズHDやAMS、ダイアモンドヘッドなどの有力な物流、EC支援企業のノウハウを活用し、1年がかりで独自のシステムを構築した同サービスは、在庫一元管理システムを軸に、リアルとECの融合を図る画期的なもの。日本発のインターネット・サービス企業が、本格的に日本のアパレル業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)に動き出す。ファッション通販サイト「楽天ファッション(Rakuten Fashion)」を率いる松村亮・楽天執行役員コマースカンパニー ヴァイスプレジデントに直撃した。

WWDJAPAN(以下、WWD):楽天は2019年秋に東コレの冠スポンサー就任以降、ファッションにかなりの投資を行っているように見える。その真意は?

松村亮(以下、松村):ファッションに関して、楽天は本気だ。冠スポンサーとなった「楽天ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」でも「バイアール(by R)」を筆頭に様々なイベントを実施してきたし、「楽天ファッション」のリニューアル、中島敏子・元「ギンザ」編集長をエグゼクティブ ファッション クリエイティブディレクターに迎えた有識者会議、ラグジュアリー&デザイナーズブランドの商品販売を行う「楽天ファッションラグジュアリー(Rakuten Fashion Luxury)」など、積極的な投資を行ってきた。こうした取り組みのベースにあるのは、ビジネスフィールドとしてファッションが非常に魅力的なマーケットであること。日本のアパレル市場は頭打ちと言われるが、市場規模としては9兆〜11兆円と大きい上に、デジタル/ECという側面で見ると成長を続けており、しかもまだその余地は大きい。ほとんどのブランドが自社で運営する公式通販サイト(自社EC)や「楽天ファッション」などのECモールに出店し、その全てが伸びているという状況だ。コロナ禍でリアル店舗の休業や時短営業などを余儀なくされる中で、ECが企業業績も下支えしていた。その一方で、この数年大手企業のトップを始め、才能ある日本のデザイナー、スタイリスト、編集者など、数多くの人たちに会って、実際に議論を交わし、実際にビジネスも行う中で課題も見えてきた。

重要なのは顧客がリアルとEC、
どちらでもストレスなく買えること

WWD:課題とは?

松村:大量生産・大量廃棄やサステナビリティへの対応の遅れなど、ファッション産業全体が抱える課題はすでに多くの識者などが指摘しているが、われわれからすると、それらの大きな原因の一つが、バリューチェーンの中で商品を顧客に対して最適に配置できていないこと。一つのブランドの商品を例にとっても、直営店舗、卸先のセレクトショップ、ブランドの公式ECサイト、多種多彩なファッションECモールなど、販路が多岐に渡っている。消費者は当然、一番買いやすい場所やタッチポイントで購入するが、そうしたニーズに対応するために在庫が散らばってしまう。

WWD:アパレル業界でも、在庫の一元化はかなり前から課題として挙がってきたが。

松村:在庫の一元化は、想像以上に複雑だと捉えている。ECがこの10年で急拡大してきたため、多くのアパレル企業はバックエンドのシステムとロジスティクスがツギハギのようになっている。急成長するECに対応しようとすれば、それ自体はやむを得ないことだ。すでに在庫の一元化などを実現し、かなりの成果を収めている企業も出ているが、それを実行しようとすればかなりの投資も必要になる。「RFOP」の狙いはそこにある。ファッション企業にとって最も重要な資産である在庫を極限まで有効に活用するために、リアル/ECの区分なくできる限り効率的に在庫を運用すること。楽天が、そうした部分を肩代わりするような形で投資し、非常に低コストかつ効率的なシステムを提供したい。

アパレル業界の課題に真正面から取り組む

WWD:アパレル企業からの反応は?

松村:「RFOP」に関しては、楽天ならではのECで培った知見やノウハウに加え、物流支援サービスを提供する大手フロー・メイカーズHDや、EC支援の有力企業であるAMS、ダイアモンドヘッドなどのノウハウを活用し、1年がかりで独自のシステムを構築した。今年1月に発表後、アパレル企業からの関心は高く、実際に問い合わせも多い。ただ、アパレル企業にしても、日々モノとデータを動かしている在庫や物流を現行のやり方やシステムから切り替えるわけだから、システム更新のタイミング、実際の切り替え作業などは、一朝一夕で行えるものではない。それに業務フローのすり合わせなども必要だから、実に泥臭い仕事になる。数年単位でじっくり取り組んでいく。だが、だからこそ取り組み意義は大きい。ここを乗り越えれば、データ連携や在庫連携の基盤が整備され、いよいよリアルとECが融合した新しいコマースの形が見えてくる。楽天経済圏のビッグデータを活用した商品開発や在庫の効率化など、データドリブンな産業モデルへの転換が加速するはずだ。

WWD:今後をどう見る?

松村:この数年、ファッション産業と様々な取り組みを行ってきて、当初は想定していなかった魅力も体感している。それはファッションが文化産業であるということ。RFWTや有識者会議などは、より深く産業を知るために行ってきたことではあるが、実際に取り組みを始めてから、ビジネス的なインパクトだけでなく、楽天グループ全体のブランド価値が上がったことを実感している。これは他の商品カテゴリーではあまりない。大量生産・大量廃棄などのネガティブな面がフォーカスされることもあるが、ITの力でそうした課題を解決することは産業全体の活性化だけでなく、本来ファッションが持つ文化的な価値を取り戻すことにもつながる。そのことも大きな意義だと考えている。

「楽天ファッション
オムニチャネルプラットフォーム(RFOP)」
とは?

 「RFOP」は、在庫の一元管理システムを軸に、フロントでの販売支援からバックエンドでの物流支援まで、オムニチャネル推進に必要なソリューションをパッケージ化して、網羅的かつ安価に提供するサービス。必要なサービスや機能だけを選択したり、組み合わせたりすることも可能で、ユーザーとなるアパレル企業のオムニチャネル施策や戦略、現状に対応する。

 「RFOP」の最大の特徴は、EC面では主要なファッションECサイトと連携可能で、バックエンドの在庫連携に関しても店舗用・EC用の双方をリアルタイムで連携し、一元管理できるようにもなる。リアル店舗に加え、自社EC&全ネット通販モールでの販売と、リアルタイム在庫連携による一元管理が組み合わさることで、一つの在庫を文字通り全チャネルで販売できるようになり、販売機会ロスを極限まで減らすことができる。

 「楽天ファッション」のスケールメリットを生かしたフルフィルメントサービスの活用により、B2B2C倉庫での在庫の一元管理や物流面でのコスト削減も見込める。また、店頭や会員カードなどで「楽天ポイントカード」と連携すれば、ECからリアル店舗への送客なども可能になるほか、効果的なプロモーション施策などを打てるようになる。

問い合わせ先
楽天ファッション オムニチャネル プラットフォーム運営事務局
rakuten-fashion-omni-inquiry@mail.rakuten.com

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落合陽一に聞くサステナブル 総合演出した日中韓芸術祭の背景

 「日中韓芸術祭2021in北九州」が10月25日に北九州市立美術館で開催された。「日中韓芸術祭」は日中韓の伝統文化や現代芸術の紹介を目的に14年から始まった3カ国共同事業で、毎年持ち回りで開催されている。日本が開催国の今年は東アジア文化都市である北九州市で開催。南條史⽣キュレーターをスーパーバイザーに、メディアアーティストの落合陽一が総合演出を担当し、ホログラム技術を活用したデジタルショーを発表した。テーマは「デジタル時代に花開く,時空間を超えたパッチワーク」。⽇本・中国・韓国の装いの⼟着性やその⽂化の根底に流れるサステナビリティを共通のコンセプトに掲げる。落合陽一が考えるサステナビリティとは?都内で事前に行われた撮影現場で話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD): SDGsとファッションとデジタルを組み合わせて何を伝えようとしているのか教えてください。

落合陽一メディアアーティスト(以下、落合):何を伝えるかそれほど固めていません。どちらかというと素材を集め、デジタルのパッチワークをすることで何が生まれるだろう、という感覚です。

WWD:モデルには冨永愛はじめ多様性あるモデルを起用しています。パッチワークはどこに向かっているのでしょうか。

落合:自分はメディアアーティストであり、やっていることはずっとぶれていません。自然と共生する新しいデジタルとは何か、「デジタルネイチャー」の探求です。だから演出するショーごとにコンセプトを大きくは変えません。今回のテーマである「デジタル時代に花開く、時空間を超えたパッチワーク」の裏にある話としては、デジタルネイチャーという新しい生態系において人はどういう形をしているのだろう?民芸のような古いものの価値はどう高められていくのだろうといったこと。最終的にどういう形に落ち着くかは料理しないとわかりません。フランス料理か日本料理か中国料理かと聞かれるなら「計算機自然料理」です。味はまだ分からない。

WWD:ゴールは明確だけどどんな味になるかはわからない、それはおもしろいですね。

落合:結構おいしく仕上がりそうです。カメラのチームが良いことは最初からわかっていましたが、モデルさんもよいし、スタイリストさんもよく、ヘアメイクも服もよい。撮影は現場でハマってみないと相性が良いか分からないですよね。

日本のぼろと「スノーピーク」は相性がとてもいい

WWD:服は、日本のぼろ(襤褸)に加えて「ユイマ ナカザト(YUIMA NAKAZATO)」、日本環境設計の「ブリング(BRING)」を使った「スノーピーク(SNOWPEAK)」とバリエーションに富んでいます。これらを選んだ理由を教えてください。

落合:フィジカルのパッチワークと言えば唯馬さんじゃないですか?ぼろは継ぎはぎを繰り返して長い年月着られ続けてきた、いわば“アナログパッチワーク・オブ・ジ・エンシエント・トラディショナル・カルチャー”。受け継がれるぼろは、あの上で子供が生まれ、寒い夜はドンシャンと呼ばれる夜着に数人で包まり寝た。その中で亡くなる人もいたでしょう。服を着る本質的な理由は防寒であり、ぼろは防寒の極み。そしてキャンプやアウトドアファッションの基本は防寒や機能。キャンプから誕生しサステナブルな材料を使う「スノーピーク」はぼろとの相性はとてもいい。「われわれはキャンパーなのだ、都市で」みたいなメッセージを受け取ります。

WWD:「スノーピーク」の素材が再生ポリエステルであることは重要でしたか?そういえば「ブリング」の工場も北九州市にありますが。

落合:重要です。循環する素材のほうが面白いですから。

WWD:⽇本・中国・韓国の装いの⼟着性やその⽂化の根底に流れるサステナビリティを共通のコンセプトに掲げています。詳しく教えてください。

落合:人類がつくってきた文化的活動は、常にアーカイブがあります。デジタル以降は古今東西から集めてきた断片的なコンテクストが、何らかの形をしていることが非常に気持ちがよいと思うようになりました。それは日本から来たのかもしれないし、中国から来たのかもしれないし、韓国から来たのかもしれない。そして、それが一点通じて華厳や老荘思想になる。

 ⽇中韓の⽂化の根底に流れているものを考えたとき、真っ先に浮かんだのは物化・華厳・⺠藝・侘寂などの東洋的美的感覚と世界観の中に構築される持続可能なデジタルの⾃然です。一は全、全は一。一瞬の中に美学を見て茶室の茶の中に宇宙がある、老い木に花の世界など華厳的思想は老荘から生まれて半島伝来して日本にやって来たわけですよね。そして今はデジタルネイチャーです。1980年のナムジュン・パイク(Nam June Paik)の⾔葉を借りれば、リモートコラボレーションが当たり前になったわれわれは「定在する遊牧⺠(stationary nomad )」とも⾔えます。地球上のあらゆるところからデジタルの⾃然に接続され,共⽣し饗宴することができるようになりましたから。

ナムジュン・パイクは多分、完全に正しい

WWD:ナムジュン・パイクはビデオアートの父と言われるアーティストですね。

落合:ナムジュン・パイクが1980年に「アートフォーラム」という美術誌に書いた「ランダム・アクセス・インフォメーション」という寄稿文があり「60キロの体を動かすのに60キロの体しか動かさなかった人類が、60キロの体を動かすために300キロの車を動かすようになったから、石油を使うようになった。これは最も愚かしい」といった意味のことを書いていて、おもしろい。その解決策として彼が言い出したのが、われわれがステーショナリー・ノマド=定住する遊牧民になることです。世界中に電子情報としてものを送り合う世界が来ればわれわれは動かなくていい。そうすれば石油問題を解決できると。今思うと本質をついている。ナムジュン・パイクは多分、完全に正しい。

 ただ、「ステーショナリー・ノマド」に欠けていたものは何かと言えば、多分、質量への憧憬です。電子情報を送れば人が存在できるという点は完全に正しいけれど、コロナで強制ロックダウンされたことで身体性への飢えが発生するといったところまでは彼も考えが及んでいなかったと思う。人間には質量への憧憬があるから、ステーショナリー・ノマドになり切れない。だからその間にあるものをうまく取り持つみたいなところが、ここ数年の僕のテーマです。デジタルから見た身体性、質量への欲求は一体何なのか?今回パッチワークの素材のひとつにサイアノタイプという鉄を使ったプリントを使ったのも、質量がないデジタルを質量のあるフィジカルに変換する喜びみたいなことからです。

WWD:インスタレーションの本番ではそれをホログラムで見せ、12月には一般配信もあるそうですね。

落合:空間に映像を直接表示するディスプレーをLEDで作ります。身体からデータになり、データが自然となびくところを表現したい。質量性のあるボロとうまいコントラストが出ると思います。

僕らの世代はデジタルからフィジカルに戻すことに愛着が湧く

WWD:以前、インタビューで「何をかっこいいと思うか、その感覚は幼少期に決まる」といったことを話されていました。落合さんが考えるかっこよさとは?

落合:忘れられて消えてしまうデジタルデータと、古めかしくて触れると壊れてしまうものを観察する喜びの間に、今の時代のかっこよさがあると思う。この質量への憧憬が漂う時代においては重要な価値観だと思います。ナムジュン・パイクはデジタルネイティブじゃなかった。彼が写真を見たときにケミカルプロセスを考えたのは、写真との出会いがフィルムからだったからですよね。僕の世代は写真との出会いはデジタルからで逆にフィジカルに戻すことにものすごい愛着が湧いたりするわけです。その感覚が表現されるといいなと思っています。

 ボロは壊れそうだけど美しい。どんどんトランスフォームしていく。「ユイマ ナカザト」の服もこうやってトランスフォームしていく。でも、トランスフォームする最大のものを僕はデジタルだと思う。トランスフォームしまくるデジタルであるが故に、質量ある形を与えてもっと愛してあげたいっていつも思っているけど、質量ある形を与えると、壊れて死んじゃうから、そのギリギリのラインがフルデジタル時代のかっこよさなのだと僕は信じています。

WWD:ニューヨークのMOMAが2019年にリニューアルした後にパフォーマンス用のエリアを設けるなど、ここにきて消えてなくなるもののアート性が重視されているように思います。

落合:おもしろいですね。ちなみステーショナリー・ノマドという言葉が出てくる数行前でナムジュン・パイクが言っているのは、歌や口語、ダンスや音楽みたいに形が残らない芸術は過去50万年間、支配的であったのに、農耕を始めた人類が壁に描いたり彫刻を彫ったりと持ち運べない芸術を作り始めたと。20世紀はそれを成功させてきたが、形を持たない無形のジャンルへ芸術を戻していくことも意味があると言っていました。

 形のないものは質量のないもの。古来、芸術ってほとんど質量がないものでした。質量がないものから突然、質量があるものが生じたのではなく、定住することによって生じた。今、だから定住することの意味を逆にデジタルの側に発散していくと、あらゆるものは形あるものから形のないものへ、そして形ないものから形あるものへというトランスフォームが起こる。それを文化的に着目し続けるのに意味があります。

WWD:日本のカルチャーは戦後、ファッションはじめアメリカから大きな影響受けてきました。けれどここにきて、長く使うことをよしとするヨーロッパ型の価値観が大事だな、と言われ始めている。この点についてはどう思いますか?

落合 石の文化ですね。広がると思います。僕は新品を買う行為をあまりかっこよくないと思っています。例えば使っている「ライカ(LEICA)」のレンズは1960年のレンズで、過去50年間誰かの手を渡って僕のところにやって来ている。「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」が好きで、高校生のときに買ったヨウジの服を今でも着ています。破けているし、ペンキが付いたりしているけどその方がカッコいいじゃないですか。別に新しい物買うよりリメークしたほうがかっこよくない?とか、ほつれが生まれた瞬間がオリジナリティーであるとか、“小汚い服”ではなく“あなた色になった服”であるとか。そういったことをみんなが意識するようになることが、僕は大切だと思っています。

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落合陽一に聞くサステナブル 総合演出した日中韓芸術祭の背景

 「日中韓芸術祭2021in北九州」が10月25日に北九州市立美術館で開催された。「日中韓芸術祭」は日中韓の伝統文化や現代芸術の紹介を目的に14年から始まった3カ国共同事業で、毎年持ち回りで開催されている。日本が開催国の今年は東アジア文化都市である北九州市で開催。南條史⽣キュレーターをスーパーバイザーに、メディアアーティストの落合陽一が総合演出を担当し、ホログラム技術を活用したデジタルショーを発表した。テーマは「デジタル時代に花開く,時空間を超えたパッチワーク」。⽇本・中国・韓国の装いの⼟着性やその⽂化の根底に流れるサステナビリティを共通のコンセプトに掲げる。落合陽一が考えるサステナビリティとは?都内で事前に行われた撮影現場で話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD): SDGsとファッションとデジタルを組み合わせて何を伝えようとしているのか教えてください。

落合陽一メディアアーティスト(以下、落合):何を伝えるかそれほど固めていません。どちらかというと素材を集め、デジタルのパッチワークをすることで何が生まれるだろう、という感覚です。

WWD:モデルには冨永愛はじめ多様性あるモデルを起用しています。パッチワークはどこに向かっているのでしょうか。

落合:自分はメディアアーティストであり、やっていることはずっとぶれていません。自然と共生する新しいデジタルとは何か、「デジタルネイチャー」の探求です。だから演出するショーごとにコンセプトを大きくは変えません。今回のテーマである「デジタル時代に花開く、時空間を超えたパッチワーク」の裏にある話としては、デジタルネイチャーという新しい生態系において人はどういう形をしているのだろう?民芸のような古いものの価値はどう高められていくのだろうといったこと。最終的にどういう形に落ち着くかは料理しないとわかりません。フランス料理か日本料理か中国料理かと聞かれるなら「計算機自然料理」です。味はまだ分からない。

WWD:ゴールは明確だけどどんな味になるかはわからない、それはおもしろいですね。

落合:結構おいしく仕上がりそうです。カメラのチームが良いことは最初からわかっていましたが、モデルさんもよいし、スタイリストさんもよく、ヘアメイクも服もよい。撮影は現場でハマってみないと相性が良いか分からないですよね。

日本のぼろと「スノーピーク」は相性がとてもいい

WWD:服は、日本のぼろ(襤褸)に加えて「ユイマ ナカザト(YUIMA NAKAZATO)」、日本環境設計の「ブリング(BRING)」を使った「スノーピーク(SNOWPEAK)」とバリエーションに富んでいます。これらを選んだ理由を教えてください。

落合:フィジカルのパッチワークと言えば唯馬さんじゃないですか?ぼろは継ぎはぎを繰り返して長い年月着られ続けてきた、いわば“アナログパッチワーク・オブ・ジ・エンシエント・トラディショナル・カルチャー”。受け継がれるぼろは、あの上で子供が生まれ、寒い夜はドンシャンと呼ばれる夜着に数人で包まり寝た。その中で亡くなる人もいたでしょう。服を着る本質的な理由は防寒であり、ぼろは防寒の極み。そしてキャンプやアウトドアファッションの基本は防寒や機能。キャンプから誕生しサステナブルな材料を使う「スノーピーク」はぼろとの相性はとてもいい。「われわれはキャンパーなのだ、都市で」みたいなメッセージを受け取ります。

WWD:「スノーピーク」の素材が再生ポリエステルであることは重要でしたか?そういえば「ブリング」の工場も北九州市にありますが。

落合:重要です。循環する素材のほうが面白いですから。

WWD:⽇本・中国・韓国の装いの⼟着性やその⽂化の根底に流れるサステナビリティを共通のコンセプトに掲げています。詳しく教えてください。

落合:人類がつくってきた文化的活動は、常にアーカイブがあります。デジタル以降は古今東西から集めてきた断片的なコンテクストが、何らかの形をしていることが非常に気持ちがよいと思うようになりました。それは日本から来たのかもしれないし、中国から来たのかもしれないし、韓国から来たのかもしれない。そして、それが一点通じて華厳や老荘思想になる。

 ⽇中韓の⽂化の根底に流れているものを考えたとき、真っ先に浮かんだのは物化・華厳・⺠藝・侘寂などの東洋的美的感覚と世界観の中に構築される持続可能なデジタルの⾃然です。一は全、全は一。一瞬の中に美学を見て茶室の茶の中に宇宙がある、老い木に花の世界など華厳的思想は老荘から生まれて半島伝来して日本にやって来たわけですよね。そして今はデジタルネイチャーです。1980年のナムジュン・パイク(Nam June Paik)の⾔葉を借りれば、リモートコラボレーションが当たり前になったわれわれは「定在する遊牧⺠(stationary nomad )」とも⾔えます。地球上のあらゆるところからデジタルの⾃然に接続され,共⽣し饗宴することができるようになりましたから。

ナムジュン・パイクは多分、完全に正しい

WWD:ナムジュン・パイクはビデオアートの父と言われるアーティストですね。

落合:ナムジュン・パイクが1980年に「アートフォーラム」という美術誌に書いた「ランダム・アクセス・インフォメーション」という寄稿文があり「60キロの体を動かすのに60キロの体しか動かさなかった人類が、60キロの体を動かすために300キロの車を動かすようになったから、石油を使うようになった。これは最も愚かしい」といった意味のことを書いていて、おもしろい。その解決策として彼が言い出したのが、われわれがステーショナリー・ノマド=定住する遊牧民になることです。世界中に電子情報としてものを送り合う世界が来ればわれわれは動かなくていい。そうすれば石油問題を解決できると。今思うと本質をついている。ナムジュン・パイクは多分、完全に正しい。

 ただ、「ステーショナリー・ノマド」に欠けていたものは何かと言えば、多分、質量への憧憬です。電子情報を送れば人が存在できるという点は完全に正しいけれど、コロナで強制ロックダウンされたことで身体性への飢えが発生するといったところまでは彼も考えが及んでいなかったと思う。人間には質量への憧憬があるから、ステーショナリー・ノマドになり切れない。だからその間にあるものをうまく取り持つみたいなところが、ここ数年の僕のテーマです。デジタルから見た身体性、質量への欲求は一体何なのか?今回パッチワークの素材のひとつにサイアノタイプという鉄を使ったプリントを使ったのも、質量がないデジタルを質量のあるフィジカルに変換する喜びみたいなことからです。

WWD:インスタレーションの本番ではそれをホログラムで見せ、12月には一般配信もあるそうですね。

落合:空間に映像を直接表示するディスプレーをLEDで作ります。身体からデータになり、データが自然となびくところを表現したい。質量性のあるボロとうまいコントラストが出ると思います。

僕らの世代はデジタルからフィジカルに戻すことに愛着が湧く

WWD:以前、インタビューで「何をかっこいいと思うか、その感覚は幼少期に決まる」といったことを話されていました。落合さんが考えるかっこよさとは?

落合:忘れられて消えてしまうデジタルデータと、古めかしくて触れると壊れてしまうものを観察する喜びの間に、今の時代のかっこよさがあると思う。この質量への憧憬が漂う時代においては重要な価値観だと思います。ナムジュン・パイクはデジタルネイティブじゃなかった。彼が写真を見たときにケミカルプロセスを考えたのは、写真との出会いがフィルムからだったからですよね。僕の世代は写真との出会いはデジタルからで逆にフィジカルに戻すことにものすごい愛着が湧いたりするわけです。その感覚が表現されるといいなと思っています。

 ボロは壊れそうだけど美しい。どんどんトランスフォームしていく。「ユイマ ナカザト」の服もこうやってトランスフォームしていく。でも、トランスフォームする最大のものを僕はデジタルだと思う。トランスフォームしまくるデジタルであるが故に、質量ある形を与えてもっと愛してあげたいっていつも思っているけど、質量ある形を与えると、壊れて死んじゃうから、そのギリギリのラインがフルデジタル時代のかっこよさなのだと僕は信じています。

WWD:ニューヨークのMOMAが2019年にリニューアルした後にパフォーマンス用のエリアを設けるなど、ここにきて消えてなくなるもののアート性が重視されているように思います。

落合:おもしろいですね。ちなみステーショナリー・ノマドという言葉が出てくる数行前でナムジュン・パイクが言っているのは、歌や口語、ダンスや音楽みたいに形が残らない芸術は過去50万年間、支配的であったのに、農耕を始めた人類が壁に描いたり彫刻を彫ったりと持ち運べない芸術を作り始めたと。20世紀はそれを成功させてきたが、形を持たない無形のジャンルへ芸術を戻していくことも意味があると言っていました。

 形のないものは質量のないもの。古来、芸術ってほとんど質量がないものでした。質量がないものから突然、質量があるものが生じたのではなく、定住することによって生じた。今、だから定住することの意味を逆にデジタルの側に発散していくと、あらゆるものは形あるものから形のないものへ、そして形ないものから形あるものへというトランスフォームが起こる。それを文化的に着目し続けるのに意味があります。

WWD:日本のカルチャーは戦後、ファッションはじめアメリカから大きな影響受けてきました。けれどここにきて、長く使うことをよしとするヨーロッパ型の価値観が大事だな、と言われ始めている。この点についてはどう思いますか?

落合 石の文化ですね。広がると思います。僕は新品を買う行為をあまりかっこよくないと思っています。例えば使っている「ライカ(LEICA)」のレンズは1960年のレンズで、過去50年間誰かの手を渡って僕のところにやって来ている。「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」が好きで、高校生のときに買ったヨウジの服を今でも着ています。破けているし、ペンキが付いたりしているけどその方がカッコいいじゃないですか。別に新しい物買うよりリメークしたほうがかっこよくない?とか、ほつれが生まれた瞬間がオリジナリティーであるとか、“小汚い服”ではなく“あなた色になった服”であるとか。そういったことをみんなが意識するようになることが、僕は大切だと思っています。

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販売員から“ライバー”へ、オンラインでの接客スキルの生かし方 TIG LIVER阿蘇奈南子

 コロナ禍を経てEC化率はさらに上がった。ネットで服を買う人はさらに増えて、ECサイトにはスタッフのスタイリングページが必須になり、オンライン接客を始めたブランドも急増している。そうした中で注目を浴びているのが、ライブコマースだ。人材派遣のiDAではライブ配信で活躍できるスタッフの育成、派遣を始めた。その第一号としてオンワード・クローゼットのライブ配信に登場した阿蘇奈南子さんが抜擢された。ライバーとして初めて出演した配信の感想や販売の仕事への向き合い方、ファッションの魅力などをうかがった。

―iDAに登録したきっかけを教えてください。

阿蘇奈南子さん(以下、阿蘇):元々、おしゃれすることがとても大好きだったので、接客販売をしながら洋服について勉強できたらなと思い、派遣登録しました。もっと現実的な話をすると、子どもの保育園のお迎えの時間に合わせて働けるところをiDAから紹介していただいたのがきっかけです。

―それ以前にも販売職はされていたのですか?

阿蘇:お菓子の販売や飲食店などでも働いていましたが、ギャル系ブランドの販売員として働いていたこともありました。その後、子どもが生まれてからはヤクルトレディをしていたこともあります。

―幅広く接客や人と接する仕事をされていたんですね。また、ファッション業界へ戻ってきたのは?

阿蘇:ギャル系ブランドで働いていた時に、ある服を着ていると褒められるのに、違う服を着ている時は何も言われないのはなんで?と漠然と考えていました。例えば、お客様にはこの形が似合う、この色が似合うということは感覚で分かるけど、なぜ似合うのか、それをどう伝えたらいいのだろうか?と。プライベートで子どもができたこともあり、一時は離れていましたが、それから心理カウンセラー、占星術、パーソナルカラー、骨格診断などを勉強して、今は個人でもファッションコンサルタントとしても活動をしているんです。

―それは凄い!骨格診断やパーソナルカラーは理解できますが、なぜ占星術や心理学も勉強を?

阿蘇:パーソナルカラーや骨格診断はロジカルな手法ですが、人が持つ潜在的な魅力をさらに引き出したいと追求していたら、心理学や占星術にも辿り着いたんです。今やっているファッションコンサルタントも占星術とファッションを組み合わせた内容になっています。

―それはどういった内容なのですか?

阿蘇:パーソナルカラーや骨格診断で理論的に似合うもの診断した上で、星占いでさらに似合うものを深掘りしています。

―似合うものへの探求心が凄いですね。

阿蘇:私自身が「おしゃれになりたい」という気持ちが強かったからだと思います。私は着ている服や色で、その人の第一印象は決まると考えていて、特に初めて会った人への印象は見た目に大きく左右されると考えています。例えば、全く自分に似合わない色を身に着けると、顔色が悪く見えたり、クマが目立ったり、そのせいで具合が悪そうに見えるのはもったいない。でも、似合う色を身に着けていると元気があって明るい人だな、一緒に仕事がしたいと思ってもらえる。それがファッションの凄いところで、ファッションの仕事をしたいという原動力になっています。

―実は私も骨格診断とパーソナルカラーを受けたことがあるのですが、この服を着ると太って見える理由が分かった時に腑に落ちた経験があります。今も似合うシルエットになるようコーディネートしています。一方で診断結果に縛られて、オシャレになれないという方もいます。だから販売員の方が理論として身に着けて接客してもらえると心強いですね。

阿蘇:そう思います。例えば、いろんなピンク系の色の中でもお客さまにはどのピンクが似合うか的確なアドバイスができるようになれると思います。私は勉強をして、アドバイスの幅が広がり、接客がより楽しくなりました。試着室から出てきたお客さまにただ「かわいいですね!」だけでは味気ない。どういうところか似合っているのか褒めることができれば、さらにお客さまとの信頼が深まり、楽しい接客ができると思います。

―そうですよね!その経験が今回のTIG LIVERへの抜擢につながったんですか?

阿蘇:そうです。今回、ご依頼いただいたオンワード樫山の「エニスィス(ANY SIS)」のライブ配信ではパーソナルカラーや骨格診断がテーマにあり、iDAから「やってみませんか?」とお声がけいただきました。

―それまでライブ配信などはやったことは?

阿蘇:知人の占い師さんとインスタでコラボ配信はしましたが、それ以外では経験はありませんでした。でも、今まで経験したことのないお仕事でしたので、二つ返事でお受けしました。

―実際にライブ配信をしてみていかがでしたか?

阿蘇:オンワードの社員の方、スタイリストさんと3人で和気あいあいと配信ができて、とても楽しかったです。一応、台本などもあり、リハーサルもしたのですが、台本通りだったのは最初の自己紹介まででしたね(笑)。それからは視聴者からのコメントを拾って、それに答えるような形でした。

―ライブ配信にあたり、心がけたことは。

阿蘇:目の前にお客さまがいる想定で、接客するように話そうと心がけました。最初は少し緊張しましたが、コメントを拾いながら配信しているとだんだん目の前にお客さまがいるように感じられて、楽しくなってきました。自分が実際に着てみて、こんな手触り、着心地はどうで、骨格とパーソナルカラーでいうとこんな感じ見えるよと説明をしていると、コメントで反応があり、目の前にお客さまがいて一緒にショッピングをしているような気持ちになりました。特に、最初のコーディネートから自分の骨格とパーソナルカラーにあった服にチェンジしたときはお客さまの反応が「すごい変わった!」「こっちの方が似合う」など、パーっとコメントが流れてきて、そのときはすごく嬉しかったですね。

―目に見えて変わったということですね。

阿蘇:「今、買いました」ってコメントが届いたときは嬉しかったです。改めて、このTIG LIVEの仕組みはすごく便利だと思いました。

―逆に何か反省するとしたら?

阿蘇:そうですね、もっと緊張感を持った方がよかったかなと思います。本番は3人が意気投合して、結構ノリノリでしたので(笑)。

―視聴者的にはその方が楽しいと思いますよ(笑)。

阿蘇:そうですよね!台本を棒読みで淡々と商品説明をされても面白くないので、リアルな接客のように、目の前にお客様を楽しませることが大切だなと思いました。だから話すときはカメラ目線で、うなずく時もカメラを見ながら「そうだよね」とするように気をつけました。アクションもオーバー気味で、声も大きめで話すなど、その場で工夫しながらやりました。至らない点もあったと思いますが、とてもいい経験になりました。改めて、ライブ配信だけに限らず、接客も仕事も子育ても、やっぱり楽しむことが一番だなと思いました。

―ほう。それは?

阿蘇:この仕事は、身にまとうものが変わるだけで、お客様の表情もすごく明るくなるのを目の前で見ることができます。それが醍醐味ではあるのですが、一方で売り上げを意識しなくてはいけません。好きなものを提供している意識と売ることを意識した接客は少し違うようで、その感覚はお客様にも伝わるんですよね。

―それは多くの販売員が悩むところですね。どう折り合いをつけるのですか?

阿蘇:私は「接客したら絶対買ってもらわないといけない」「必ずこれを今日中に売らなければいけない」という固定観念を外しました。お客さまは好きな服、自分に似合う服を探しに来ているのですから、それを一緒に考えて、ワクワクを提供することを意識するようになってから接客が一段と楽しくなりました。

―中々それを解除するのは難しいですよね。

阿蘇:そうですね。私の場合は目標売上も100%達成するものではなく、「あくまで目標数値なんだ」程度にとどめて頭の片隅に置きながら、お客さまに似合うものを提供する接客に意識を向けました。

―目標に縛られず、まずは楽しむ、楽しませることに集中するということですね。

阿蘇:これまでいろんな業界で人と接する仕事をしてきて感じるのは、遊び感覚で楽しんで仕事をしていると人が寄って来るということです。遊び=ふざけている、怠けているというわけでありません。とにかく仕事を楽しんでいると、自然と「話を聞きたいです」と寄ってきてくれるので、今後もその意識は忘れずに仕事をしていきたいですね。

―最後に阿蘇さんにとって“ファッション”とは?

阿蘇:ファッションは“魔法”です。心理カウンセリングをしていると、話すことで心のメンタルを変えるのには時間かかります。でも、手始めに身に纏うものを変えると、それだけで気分が変わるんですよね。私自身も洋服でその日の気分が変わるから、面白いです。それくらいファッションにはパワーがある。だから魔法なんです。

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販売員から“ライバー”へ、オンラインでの接客スキルの生かし方 TIG LIVER阿蘇奈南子

 コロナ禍を経てEC化率はさらに上がった。ネットで服を買う人はさらに増えて、ECサイトにはスタッフのスタイリングページが必須になり、オンライン接客を始めたブランドも急増している。そうした中で注目を浴びているのが、ライブコマースだ。人材派遣のiDAではライブ配信で活躍できるスタッフの育成、派遣を始めた。その第一号としてオンワード・クローゼットのライブ配信に登場した阿蘇奈南子さんが抜擢された。ライバーとして初めて出演した配信の感想や販売の仕事への向き合い方、ファッションの魅力などをうかがった。

―iDAに登録したきっかけを教えてください。

阿蘇奈南子さん(以下、阿蘇):元々、おしゃれすることがとても大好きだったので、接客販売をしながら洋服について勉強できたらなと思い、派遣登録しました。もっと現実的な話をすると、子どもの保育園のお迎えの時間に合わせて働けるところをiDAから紹介していただいたのがきっかけです。

―それ以前にも販売職はされていたのですか?

阿蘇:お菓子の販売や飲食店などでも働いていましたが、ギャル系ブランドの販売員として働いていたこともありました。その後、子どもが生まれてからはヤクルトレディをしていたこともあります。

―幅広く接客や人と接する仕事をされていたんですね。また、ファッション業界へ戻ってきたのは?

阿蘇:ギャル系ブランドで働いていた時に、ある服を着ていると褒められるのに、違う服を着ている時は何も言われないのはなんで?と漠然と考えていました。例えば、お客様にはこの形が似合う、この色が似合うということは感覚で分かるけど、なぜ似合うのか、それをどう伝えたらいいのだろうか?と。プライベートで子どもができたこともあり、一時は離れていましたが、それから心理カウンセラー、占星術、パーソナルカラー、骨格診断などを勉強して、今は個人でもファッションコンサルタントとしても活動をしているんです。

―それは凄い!骨格診断やパーソナルカラーは理解できますが、なぜ占星術や心理学も勉強を?

阿蘇:パーソナルカラーや骨格診断はロジカルな手法ですが、人が持つ潜在的な魅力をさらに引き出したいと追求していたら、心理学や占星術にも辿り着いたんです。今やっているファッションコンサルタントも占星術とファッションを組み合わせた内容になっています。

―それはどういった内容なのですか?

阿蘇:パーソナルカラーや骨格診断で理論的に似合うもの診断した上で、星占いでさらに似合うものを深掘りしています。

―似合うものへの探求心が凄いですね。

阿蘇:私自身が「おしゃれになりたい」という気持ちが強かったからだと思います。私は着ている服や色で、その人の第一印象は決まると考えていて、特に初めて会った人への印象は見た目に大きく左右されると考えています。例えば、全く自分に似合わない色を身に着けると、顔色が悪く見えたり、クマが目立ったり、そのせいで具合が悪そうに見えるのはもったいない。でも、似合う色を身に着けていると元気があって明るい人だな、一緒に仕事がしたいと思ってもらえる。それがファッションの凄いところで、ファッションの仕事をしたいという原動力になっています。

―実は私も骨格診断とパーソナルカラーを受けたことがあるのですが、この服を着ると太って見える理由が分かった時に腑に落ちた経験があります。今も似合うシルエットになるようコーディネートしています。一方で診断結果に縛られて、オシャレになれないという方もいます。だから販売員の方が理論として身に着けて接客してもらえると心強いですね。

阿蘇:そう思います。例えば、いろんなピンク系の色の中でもお客さまにはどのピンクが似合うか的確なアドバイスができるようになれると思います。私は勉強をして、アドバイスの幅が広がり、接客がより楽しくなりました。試着室から出てきたお客さまにただ「かわいいですね!」だけでは味気ない。どういうところか似合っているのか褒めることができれば、さらにお客さまとの信頼が深まり、楽しい接客ができると思います。

―そうですよね!その経験が今回のTIG LIVERへの抜擢につながったんですか?

阿蘇:そうです。今回、ご依頼いただいたオンワード樫山の「エニスィス(ANY SIS)」のライブ配信ではパーソナルカラーや骨格診断がテーマにあり、iDAから「やってみませんか?」とお声がけいただきました。

―それまでライブ配信などはやったことは?

阿蘇:知人の占い師さんとインスタでコラボ配信はしましたが、それ以外では経験はありませんでした。でも、今まで経験したことのないお仕事でしたので、二つ返事でお受けしました。

―実際にライブ配信をしてみていかがでしたか?

阿蘇:オンワードの社員の方、スタイリストさんと3人で和気あいあいと配信ができて、とても楽しかったです。一応、台本などもあり、リハーサルもしたのですが、台本通りだったのは最初の自己紹介まででしたね(笑)。それからは視聴者からのコメントを拾って、それに答えるような形でした。

―ライブ配信にあたり、心がけたことは。

阿蘇:目の前にお客さまがいる想定で、接客するように話そうと心がけました。最初は少し緊張しましたが、コメントを拾いながら配信しているとだんだん目の前にお客さまがいるように感じられて、楽しくなってきました。自分が実際に着てみて、こんな手触り、着心地はどうで、骨格とパーソナルカラーでいうとこんな感じ見えるよと説明をしていると、コメントで反応があり、目の前にお客さまがいて一緒にショッピングをしているような気持ちになりました。特に、最初のコーディネートから自分の骨格とパーソナルカラーにあった服にチェンジしたときはお客さまの反応が「すごい変わった!」「こっちの方が似合う」など、パーっとコメントが流れてきて、そのときはすごく嬉しかったですね。

―目に見えて変わったということですね。

阿蘇:「今、買いました」ってコメントが届いたときは嬉しかったです。改めて、このTIG LIVEの仕組みはすごく便利だと思いました。

―逆に何か反省するとしたら?

阿蘇:そうですね、もっと緊張感を持った方がよかったかなと思います。本番は3人が意気投合して、結構ノリノリでしたので(笑)。

―視聴者的にはその方が楽しいと思いますよ(笑)。

阿蘇:そうですよね!台本を棒読みで淡々と商品説明をされても面白くないので、リアルな接客のように、目の前にお客様を楽しませることが大切だなと思いました。だから話すときはカメラ目線で、うなずく時もカメラを見ながら「そうだよね」とするように気をつけました。アクションもオーバー気味で、声も大きめで話すなど、その場で工夫しながらやりました。至らない点もあったと思いますが、とてもいい経験になりました。改めて、ライブ配信だけに限らず、接客も仕事も子育ても、やっぱり楽しむことが一番だなと思いました。

―ほう。それは?

阿蘇:この仕事は、身にまとうものが変わるだけで、お客様の表情もすごく明るくなるのを目の前で見ることができます。それが醍醐味ではあるのですが、一方で売り上げを意識しなくてはいけません。好きなものを提供している意識と売ることを意識した接客は少し違うようで、その感覚はお客様にも伝わるんですよね。

―それは多くの販売員が悩むところですね。どう折り合いをつけるのですか?

阿蘇:私は「接客したら絶対買ってもらわないといけない」「必ずこれを今日中に売らなければいけない」という固定観念を外しました。お客さまは好きな服、自分に似合う服を探しに来ているのですから、それを一緒に考えて、ワクワクを提供することを意識するようになってから接客が一段と楽しくなりました。

―中々それを解除するのは難しいですよね。

阿蘇:そうですね。私の場合は目標売上も100%達成するものではなく、「あくまで目標数値なんだ」程度にとどめて頭の片隅に置きながら、お客さまに似合うものを提供する接客に意識を向けました。

―目標に縛られず、まずは楽しむ、楽しませることに集中するということですね。

阿蘇:これまでいろんな業界で人と接する仕事をしてきて感じるのは、遊び感覚で楽しんで仕事をしていると人が寄って来るということです。遊び=ふざけている、怠けているというわけでありません。とにかく仕事を楽しんでいると、自然と「話を聞きたいです」と寄ってきてくれるので、今後もその意識は忘れずに仕事をしていきたいですね。

―最後に阿蘇さんにとって“ファッション”とは?

阿蘇:ファッションは“魔法”です。心理カウンセリングをしていると、話すことで心のメンタルを変えるのには時間かかります。でも、手始めに身に纏うものを変えると、それだけで気分が変わるんですよね。私自身も洋服でその日の気分が変わるから、面白いです。それくらいファッションにはパワーがある。だから魔法なんです。

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【動画】作り手の価値観を伝え、つなげる「イコーランド シブヤ」 Youth in focus Vol.6

 ミレニアルズやZ世代と呼ばれる若者たちは今何を考え、ファッションやビューティと向き合い、どんな未来を描いているのだろうか。U30の若者たちにフォーカスした連載「ユース イン フォーカス(Youth in focus)」では、業界に新たな価値観を持ち込み、変化を起こそうと挑戦する若者たちを紹介する。連載の6回目は、信頼をキーワードに消費行動を問い直し、作り手と消費者が等しい価値観でつながる場を提供する渋谷ミヤシタパークの「イコーランド シブヤ(EQUALAND SHIBUYA)」でディレクターを務める森井杏南(27)にフォーカスを当てる。

 2020年7月にオープンした同店は、2〜3カ月ごとに異なるテーマに沿って集めたファッションアイテムや雑貨、食品などが並ぶキュレーションメディア型店舗だ。森井ディレクターをはじめ、20代の社員が中心となり運営する。新しい世代が提案するこれからの時代の消費のあり方として、生産者のものづくりへの思いや価値観を掘り下げ発信するプレゼンテーションが特徴だ。ソーシャルアクティビストや、買い物に信頼や意味を求める人々が集う空間を生み出す森井ディレクターに話を聞いた。動画では、スタッフがオススメする3ブランドを紹介する。

WWD:「イコーランド シブヤ」立ち上げの背景は?

森井杏南「イコーランド シブヤ」ディレクター(以下、森井):「イコーランド」は、PR事業などを手掛けるワンオーが「等しい価値観でつながる人たちが集まる村のような場を作ること」を目指すプロジェクトとして2019年にスタートしました。まず、ワンオーのオリジナルブランド「イコーランド トラストファッション」を始動させ、その後20年7月末にそのコンセプトを体現したリアル店舗として「イコーランド シブヤ」を開きました。

WWD:森井さんがディレクターに任命された理由は?

森井:会社から「新しい世代が考える新しいことをやってみてほしい」と突然話を受けました。私は新卒でワンオーに入社し、主にデザイナーズブランドや企業のPR業務に携わっていたので、店作りも販売員の経験もなく、最初はかなり焦りましたね(笑)。右も左もわからず、20代のチームメンバーと一緒に試行錯誤しながらのスタートでした。

WWD:なぜキュレーションメディア型の店舗に?

森井:私自身、さまざまなブランドと仕事をする中で、ビジネスを通すと作り手が伝えたい本質的な部分が見えづらくなってしまう事例を見てきました。だからこそ、「等しい価値観でつながるコミュニティー」というコンセプトに強く共感し、商品やブランドの背景ストーリーをきちんと伝えたいと考えたんです。PR会社の私たちならではの伝え方として、雑誌のように期間ごとにテーマを変えて取り扱いブランドをキュレーションする今の見せ方に行き着きました。

WWD:オープン当初はどんな反応が?

森井:「いい意味で売る気がないね」とよく言われました(笑)。空間の使い方が下手で、気付けばギャラリーのようになってしまって。でも、それを新しいと感じてくれる人が多かった。狙ったつもりはなかったですが、印象的なスペースは作れたのだと思います。

WWD:テーマはどのように決めている?

森井:メンバーとの日常会話の中で自然に生まれることが多く、今私たちが気になること、発信したいことを反映しています。例えば、最近は旅行に行けず、「どこかに出掛けたい」というモヤモヤした感情がずっとあるよね、という話から5〜7月は「リトルトリップ」をテーマに、ものを通して、風景を想像したり、旅行に行った気分になれたりするような商品を集めました。テーマが決まったら、メンバーそれぞれが気になるブランドをリストアップします。インターネットやSNS、街で偶然見つけたブランドや、メンバーの友人のブランドも比較的多いです。10月17日までのテーマ「トラスト」では、私たちがキュレーションしたブランド以外にもこの場所で出会ったクリエイターらをキュレーターに迎え、彼らが信用・信頼しているアイテムを集めました。

WWD:運営メンバーは同世代でも、それぞれ興味関心は違うはず。どのようにまとめている?

森井:そうですね。でも、なんとなくみんなが“イコーランドらしさ”を理解している。言葉にはしづらいですが、各々の“らしさ”の解釈が、多様性と統一感を良い塩梅で表現してくれています。

WWD:取り扱うブランドを選定する上で大事にしていることは?

森井:そのブランドに温度を感じるか、です。ものの良さはもちろんですが、それ以外にも作り手の顔が見えたり、人柄が伝わったりすることを大切にしています。実際に、取り扱うときには、作り手に会い、どうしてブランドを始めようと思ったのか、どういう思いで作っているのかを直接聞き、そのストーリーに自分が共感できるかを大事にしています。

WWD:特に印象的だったブランドとの出合いは?

森井:あるハンドメードのソイキャンドルブランドの商品を扱っていた際、キャンドルを手に取ったお客さまが、ブランドの方へ直接写真とともに感想を送ったそうです。そのブランドの方から、後日「イコーランドのようにコンセプチュアルで本当の意味での豊かさに導いてくれるような在り方が、とてもしっくりくる」という言葉をいただきました。特にものが溢れている今、もの作りに対して矛盾を感じる作り手が多いと思います。そんな中で、作り手も買い手も豊かさを感じる瞬間を生み出せた。この方向性で良かったなと感じた瞬間でした。

WWD:あえてサステナビリティやエシカルというワードは使わないようにしている?

森井:オープン時には、プラスチック問題の展示を行いましたし、プラスチックパッケージの商品は避けるなど、店作りをする上で当たり前なことは実践していますが、私たちが伝えたいことはあくまでブランドのストーリーです。ストーリーを大切にすることで、自然とサステナブルな商品が集まりました。「エコでなければいけない」といったメッセージではなく、ファッション性があり、「あっこれ、かわいい」と自然と手に取った商品が何かを考えるきっかけになったらいいと考えています。

WWD:顧客はどんな人たち?

森井:20代のお客さまが比較的多いですが、どんな人が来ても何かしらは手に取れるようなものをそろえています。SNSのフォロワーは、ソーシャルアクティビストとして何かを発信していたり、サステナブルなことに興味があったりする人たちが多いです。特徴的なのは、一人当たりの店での滞在時間が長く、パネル展示やポップなどをじっくり読んでから購入してくれる人が多いこと。ただ買うだけではなく、その先の意味を考えたい人が多いのだと思います。

WWD:今後「等しい価値観でつながるコミュニティー」をさらに拡大していくための施策は?

森井:まずは自然に集まる人たちを大事にしていきたいです。例えば地理的なコミュニティーに根ざして、渋谷区にまつわる社会問題を取り上げたり、地域同士を結び付けたりもしたい。今後は物販以外にも、展示やイベントをさらに増やします。多くの人が気軽に立ち寄れる立地を生かして、さまざまなトピックを扱い、売る以外の表現方法も用いながら何かに気付くきっかけになる場所でありたいです。

■EQUALAND SHIBUYA
時間:11:00〜21:00
場所:渋谷ミヤシタパーク
住所:東京都渋谷区神宮前6丁目20-10 RAYARD MIYASHITA PARK South 3階

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本田仁美の「あったらいいな」を凝縮 プロデュースコスメとこだわりの美容法について一問一答

 グローバルで注目を集めたガールズグループIZ *ONEでの活動を経て、多くの人の憧れの的となった本田仁美。10月には日韓共同制作プロジェクト「ベイズ(BAYS)」とともに自身が初めてプロデュースしたコスメブランド「ノートーン」を発売し、予約殺到で話題を集めた。アイシャドウパレット“ピーチブラッシュトースト(Peach Blush Toast)” (税込2090円)は日韓で活動した彼女だからこそ作れたアイテムだという。開発秘話から、メイクアップのこだわりまでを聞いた。

WWD:なぜコスメプロデュースの依頼を受けた?

本田仁美(以下、本田):IZ*ONEとして活動していた時は、常にメイクさんがついていました。プロのメイクは雰囲気をガラリと変えてくれるので、自分のメイクとは違う自分の姿になれたんです。メイクアップ次第で雰囲気を変えられるのって面白いなと、そこからメイクに興味を持つようになりました。

 そのうちに、「こういう製品があったらいいな」と考えることが増え、コスメを作ってみたいと思うようになりました。今回その夢がかないました。

WWD:今回の製品のコンセプトは?

本田:私はアイシャドウが好きなのですが、多色が詰まったアイパレットは使わない“捨て色”が出てきてしまうことが多く、コンパクトに必要なものがそろって、持ち運びしやすいといいなと考えました。そこでアイシャドウだけでなく、チークやアイブロウ、涙袋にも使える、万能なコンパクトパレットというコンセプトにしました。

 日韓で活動したからこそ両方のいいところを知っているので、流行りの韓国トレンドを日本の方々にも楽しんでもらえるような製品にしました。

WWD:製品名は桃とパン。どんな意味が込められている?

本田:“ピーチブラッシュトースト(Peach Blush Toast)”という製品名は、まさに私そのものなんです。韓国ではファンの方々に「桃みたいな見た目をしている」と言っていただき、桃といえば私、のイメージがつきました。また私のチャームポイントはふわふわのほっぺなのですが、そこからふわふわのパンみたいだと、パンと仁美をかけて「パントミ」と呼ばれるように。なので、正式発表前のティーザーで桃やパンを出して匂わせをしたら、ファンの方はすぐ気がついてしまったようです(笑)。

WWD:本田さんがこだわったポイントは?

本田:使用色は一から提案しました。私がよく使うアイパレットの中のカラーを混ぜたらどうなるか?ラメは落ちにくいことが大事、などリクエストをしました。多色のパレットと違って既にブレンドされたカラーなので、簡単にグラデーションを作ることができると思います。

 パッケージは韓国トレンドを意識していて、韓国コスメではやっているブックタイプにしました。それぞれカラーから連想したカフェメニューの名前がついています。カフェのメニューは写真があるとイメージがつきやすいので、パッケージにもイラストを入れたいなと思って、家族に描いてもらいました!

WWD:アイパレットはどう使ってもらいたい?

本田:私のメイクで陰影を作る濃いカラー、ラメはマスト。濃いカラーは目尻に「くの字」に入れてアイラインの影を作ります。そうすると目が横に大きく見えるんです。そして私はマットカラーを使うことが多いので、ラメをプラスして濡れたような質感を出します。なのでラメは濡れた質感が出るよう大きすぎず、パールもこだわりました。ラメは気分次第で涙袋に置いたり、上まぶたに伸ばしたり、使い方を変えます。これまで使ったコスメの中で、1番落ちにくいラメです!

 そしてアイカラーはチークとしても使えるので、ワントーンメイクをしてみて欲しいです。私もチークとアイホールに使用しています。韓国のヘアメイクさんがリップをチークにも使っていたことがあって、そこから1アイテムでワントーンメイクをするという発想が生まれました。

WWD:本田さん自身が普段のコスメ選びでこだわるポイントは?

本田:私はとにかくマット質感が好き。ファンデーションも程よいツヤ感のあるセミマット、リップも韓国に行ってからはグロスからマットティントを使うようになりました。全体的にマットなので、目元のラメが大事なんです。私は人より肌がツヤツヤに見えちゃうタイプのようで、パウダーをたくさんつけているのに、カメラ越しだとツヤツヤに見えるようです。

WWD:本田さんが考える、アイドルメイクのマストアイテムは?

本田:こだわるのはベースメイクです!ベースメイクがキチンとできてこそ、アイシャドウなども映えると思うので。私はあまり顔に汗をかかないのですが、それでもたくさん踊るので、フィニッシュパウダーはマストです。ファンデーションは油分の少ないものを選びます。韓国に行く前は手の甲に出してから伸ばしていたのですが、韓国のヘアメイクさんはファンデーションを筆で伸ばした後に水で濡らしたスポンジで叩き込んでいて、そのやり方を真似しています。あとはステージで強いライトを浴びるので、下地はSPF50のものを選んでいます。ステージライトにも効果があるかはわかりませんが、気休めに……(笑)。

WWD:コスメや美容情報はどう仕入れている?

本田:欲しいコスメがある時は、韓国のヘアメイクさんに「どちらの方が私に似合う?」と訪ねていました。技術的な部分は、ユーチューブ(YouTube)で韓国のメイクユーチューバーさんの動画を見ることが多いですね。ファンの方は、韓国でヘアメイクさんにメイクしてもらった私の姿を見慣れているはずなので、帰国しても自分でそのレベルを再現しなければいけないと、帰国前から必死に勉強しました。韓国のヘアメイクさんは竹串を火で炙って、まつ毛をあげるんですが、真似できないので今はビューラーを使っています。

WWD:韓国で学んだ美容習慣やメイクアップ方法で、取り入れてよかったものは?

本田:スキンケア方法はIZ*ONEメンバーと情報交換していました。髪の巻き方もずっと縦巻きだったんですが、韓国に行ってから今のような波ウェーブスタイルにしていただくことが多く、これも帰国前に動画でやり方を勉強しました。あとは、韓国で流行っているピラティスですね。体幹を鍛えられるので、週1度、一年半通っていました。日本にもピラティス文化を広めたいです!

WWD:10月に20歳を迎えましたが、今後の目標は?

本田:10代では挑戦することを学びました。勇気を出して出演したオーディション番組「プロデュース48(PRODUCE48)」から今につながったのが大きな経験で、今後も挑戦し続け対と思っています。具体的にはモデルや、演技もしてみたいです!そして韓国語を勉強し、語学の楽しさにも目覚めたので、語学を生かしてグローバルで活躍できたら嬉しいなと思っています。

 今回、誕生日に合わせて「NOTONE」のチームの皆さんが誕生日広告を原宿駅に出してくださって、ファンの方からもたくさんの反響をいただきました。韓国では誕生日広告は一般的ですが、日本に帰ってきてもこんなにお祝いしてもらえるなんて…私にとってファンの方々は原動力なので、もっと好きになってもらえるように頑張りたいと思っています。

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内田理央、本気でTシャツビジネスに挑むVol.1 白T専門店でTシャツが持つ無限大の可能性を痛感

 モデルや女優として活躍する内田理央の普段着は、Tシャツやパーカなどカジュアルな装い。そこで本人の感性と個性を存分に生かしながら、ファッション性やプロセス、ビジネスにまでこだわった「本気のTシャツビジネス」をスタート!「WWDJAPAN」が紹介する各界の先駆者からTシャツ、イラスト、ビジネスについて学びながら、「名前貸し」とは全然違う、本気のタレントによるアパレルブランドを目指します。第1回は白Tシャツ専門店「#FFFFFFT(シロティ)」の夏目拓也オーナーに直撃します。

内田理央(以下、内田):「#FFFFFFT」の名前の由来は?

夏目拓也オーナー(以下、夏目):「#FFFFFF」はウェブのカラーコードでホワイトと読みます。白T専門店なので、コードをそのまま採用しました。

内田:なぜ白T専門店を始めようと思ったんですか?

夏目:私はもともとファッションが大好きで、人並み以上に洋服を買ってきました。20代中盤〜後半に白の無地Tを着始めたときに、すごく自分の中でしっくりきた感覚がありました。それをキッカケに、100円ショップからラグジュアリーブランドまで、いろいろな白Tを集めるようになりました。いつの間にかライフワークになり、集約した店は世界のどこにもなかったので、思い切ってスタートしました。自分にとっては夢のようなショップなんです。

内田:どんな客層の人が多いんでしょう?

夏目:老若男女問わず、自分の中のファッションの価値観が定まっていて、白T1枚にもこだわりたい人が多いですね。オープン当初から海外まで情報が飛び交い、コロナ前は外国人もたくさんきてくれました。

内田:世界中の人たちが白T専門店を探されていたんでしょうね。たくさんの種類があるので、選ぶのを迷われる方も多いんじゃないですか?

夏目:“どんな人にも自分の欲しい一枚が見つかる”というコンセプトのもと、お客さまの好みやこだわりのほか、体型の悩みを手掛かりにする場合もあります。

内田:オンラインストアを設けない理由は?

夏目:デザイン性のない無地の白Tはオンラインに不向き。直接見て触る体験を重要視しています。新型コロナの店舗休業中は、インスタグラムやフェイスブックのDMで、出来るだけ店頭と同じような接客を心掛けて販売していました。

内田:一番の売れ筋商品はなんですか?

夏目:ブランドのネームバリューで決めるのではなく、それぞれのお客さまが本当に似合う一枚を提供しているので、圧倒的に売れている商品はないんです。常時60種類をそろえ、毎週ラインアップを変えています。

内田:Tシャツを作る上でのアドバイスをお願いします。

夏目:まずは自分が夢中になれることや心から好きなものを見つけて、それを起点に誰もやってないことをやってほしいです。この対談企画を頂いたときに、「単なる名前貸しやファングッズではないTシャツを作りたい」という挑戦心がいいなと思いました。内田さんがやるべき理由をしっかり持ち、誰かの後追いではなくて初めてのアクションを起こすことが重要です。内田さんはラーメン好きですよね?

内田:すごく大好きです!

夏目:ラーメンのプリントをTシャツに載せている人はたくさんいますが、ラーメンを勢いよく食べられるように油や水分を弾く加工のTシャツを作るという発想をする人はいないと思います。そのようにTシャツは作り手も着る人も自由だから可能性は無限大です。

内田:心に響く言葉を頂いたことで、Tシャツビジネスの道が開けた気がします。好きなものを作ろうと思いがちですが、自分が今一番欲しいものや求めていることを形にするのが重要なんですね。

夏目:好きな気持ちは重要だけど、そこにもう一捻り加えるといいんじゃないかな。

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人気美容師・宮村浩気「アフロート」CEOも共感 髪にもスキンケア発想 きれいのカギは“髪のキメ”

 花王は約80年に渡り、健康的で美しい髪を手に入れるための本質研究に取り組んでいる。人が髪をきれいと感じるには潤い感や艶感が欠かせないが、同社の長年の毛髪研究によって“潤いや艶を感じる美しい髪”とは、“髪のキメがそろっている”状態だと分かった。しっかりケアをしても、髪のキメがそろっていなければパサつきを感じ、きれいな髪を実現できないのだ。人気美容師・宮村浩気「アフロート(AFLOAT)」CEOも共感する“髪のキメ”とは?

髪のキメそろう=
髪の毛1本1本がきれいに並ぶこと

 “潤いや艶を感じる美しい髪”とは、髪1本1本が乱れなくきれいに並んで整った状態、つまりは“髪のキメがそろっている”状態のこと。くわえて花王は研究によって、普段髪に触れたときに感じる潤い感は毛髪内の水分量に左右されないということも明らかにした※1。髪が均一に乱れなく整列しキメがそろうと、指通りが滑らかでまとまり、しっとりとした触り心地になるという。また髪のキメは見た目の美しさも左右する。キメがそろっていると光が一方向に反射して美しく艶やかに見えるのだ。髪のキメをそろえる意識をすることでヘアスタイルやヘアカラー、さらには傷んだ髪でも艶があり、しっとりと滑らかな手触りがかなう。

※1 H. Tanamachi,Int J Cosmet Sci.,2011,Feb,33(1),p25-36.,‘Temperature as a moisture cue in haptics on hair’

宮村浩気に聞く髪のキメを
そろえることの重要性

 宮村浩気「アフロート」CEOは、「美容師は“髪のキメ”と言われたときに、潤い感やしっとり感、艶感のある『きれいだな』と思う髪を指すとわかると思います。これまで“髪のキメ”という表現はしてきませんでしたが、多くの美容師が認識しているはずです。一般の女性たちは毎日忙しくお手入れが行き届かないことも多い中で、キメがそろった髪のイメージを持つことで、きれいな髪を目指しやすくなるのではないでしょうか」と話す。

トレンドのスタイルも
キメをそろえると
艶のあるきれいな仕上がりに

 髪のキメがそろうとトレンドのヘアスタイルも綺麗に見えると宮村「アフロート」CEOは語る。「当サロンでは“くびれヘア”にレイヤーを混ぜるのがトレンドです。艶髪ブームが長く続いていますが、“韓国ヘア”も人気。そのほかにも襟足のリバース巻きや外はねも支持を集めています。“くびれヘア”や“韓国風ヘア”では、スタイリングをする際にアイロンで巻いた部分をブラシでとかすと艶が出ます。ゆるやかなウェーブもトレンドなので、巻いた部分を勇気を持って崩してみてください(笑)。キメをそろえるとヘアカラーをしている髪でも艶のある美しい印象になります。艶髪ブームから髪質改善も流行っていますが、実はカールがつきにくくなってしまうこともあるので、よりヘアスタイルを楽しむためにキメのそろった素髪の美しさを高めてはいかがでしょうか」と話す。

日常で取り入れられる
キメがそろった
美しさを作るヘアケア方法

 髪のキメをそろえるためのセルフケアとして、取り入れやすいのは乾かし方。「アウトバストリートメントをつけた後、髪の間を少しテンションをかけるように指でとかしながら上から風を当てて乾かすとキメがそろいやすくなります。最後にブラシでとかせば艶感や潤い感が手に入ります」と話し、宮村「アフロート」CEOもハンドブローを意識することをおすすめしている。

問い合わせ先
花王
0120-165-692

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「ヴァレクストラ」×「トム・ディクソン」 イタリア・ミラノをたたえる光の彫刻

 今年9月に開催された「ミラノサローネ(MILANO SALONE)2021」で、「ヴァレクストラ(VALEXTRA)」はミラノ市内のブティックでインスタレーションを行った。コロナ禍で参加を控えるブランドもあったが、隈研吾やジョン・ポーソン(John Pawson)などの建築家とコラボレーションしてきた同ブランドは今年、トム・ディクソン(Tom Dixon)と協業。ディクソンが得意な照明の新作を使用した光の彫刻がブティックに登場した。ディクソンとグザヴィエ・ルジュー(Xavier Rougeaux)=ヴァレクストラ最高経営責任者(CEO)に今回のコラボについて聞いた。

WWD:.「ヴァレクストラ」とコラボするきっかけは?

トム・ディクソン(以下、ディクソン):「ヴァレクストラ」のブティックの隣に2年半前にレストラン・ブティック兼ショールームの「ザ・マンツォーニ(THE MANZONI)」をオープンした。われわれは、お隣さん同士。一つは丸く、もう一つは四角のレゴのように組み合わせることのできる新作照明をデザインした。ミニマルでアートギャラリーのような「ヴァレクストラ」のブティックでインスタレーションしたら面白いと思った。デザインの根本にあるミニマリズムを讃える意味でもね。

WWD:今まで、さまざまな建築家やクリエイターとコラボしてきたが、今回ディクソンを選んだ理由は?

グザヴィエ・ルジュー=ヴァレクストラCEO(以下、ルジュー):ミラノは建築やデザインで知られているが、ミラノ発の「ヴァレクストラ」も建築と同じ美的感覚を持ったブランド。ディクソンもミラノと深いつながりがあり、彼の新作はミラノの偉大なクリエイターであるアッキーレ・カスティリオーニ(Acchille Castiglioni)などへのオマージュだ。そこでコラボすることで、空間における対話を試みるのが面白いと思った。

WWD:インスタレーションのコンセプトは?どのような効果を出したかったか?

ディクソン:イサム・ノグチの照明のような光の彫刻を現代のテクノロジーでモダンに表現したかった。テクノロジーの発展により、同じ照明でも異なる効果が出せる。

 テクノロジーの力で、パーツを自由自在に組み合わせて、今まで見たことのないようなフォトジェニックな照明を作り出したいと思った。

WWD:ブラックライトの着想源は?ブラックライトという名前はどこから?その特徴は?

ディクソン:真っ暗な場所も光により真っ白に変化するそのスピリットを表現したかった。夜は真っ暗だけど、夜が開けて光が入ると明るくなる。そういった自然現象を、照明でデコラティブに表現したかったんだ。あと、「ヴァレクストラ」の新作“キアロスクーロ”は、イタリア語で“明暗”という意味。アイコニックなバッグの白と黒のコントラストがぴったりだと思った。

ルジュー:“キアロスクーロ”の洗練された黒いトリミングはブランドのコードを強調したもの。それだけでなく、バッグの裏側には機能的な黒いポケットを施している。洗練されたディテールと機能性は1960年以降、デザインや建築の世界では重要視されてきた。それと同じような表現だ。また、今回のコラボレーションは、コロナから開放されて、再度光を灯すといったような意味もある。

WWD:コロナがクリエイションに与えた影響は?

ディクソン:田舎の蘭を育てる温室がある場所にスタジオを移して制作し始めた。静かな場所でアシスタントもなく、完全に一人で制作に打ち込んだ。決まったスケジュールもなく、手を使ってクリエイションできたから、とてもリフレッシュできた。

ルジュー:コロナにより、自身に忠実であることの大切さを気付かされた。「ヴァレクストラ」のアイコン自体がブランドの価値だ。それらに、顧客にとって便利な機能性などを加えることで、よりクリエイティブに進化できる。

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ラグジュアリーの世界で失いかけた熱量を再び 「マックイーン」の元ジャパン社社長が服作りスタート

 「グッチ(GUCCI)」や「フェンディ(FENDI)」「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」のジャパン社で要職を務め、「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」ではジャパン社の社長を務めた蜂谷雅彦はこのほど、書籍の出版などを手掛ける夜間飛行とアパレルブランド「ハチヤ(HACHIYA)」を立ち上げた。第一弾は、こだわりのプルオーバーフーディー(税込5万9400円)と、ドローストリングのナップサック(同7万5900円)の2アイテム。春に向けてはシャツなど、3カ月に1、2アイテムのペースで商品を拡充するが、いずれも定番として常時販売する。「アレキサンダー・マックイーン」のジャパン社トップを離れて5年。「完全にファッションから離れ、アーリー・リタイアメントしていた」という蜂谷デザイナーは、なぜ洋服を作るのか?話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):なぜ、「ハチヤ」を立ち上げ、ファッション業界に戻ってきたのか?

蜂谷雅彦デザイナー(以下、蜂谷):「マックイーン」を辞めてから5年間は完全にファッションから離れ、アーリー・リタイアメント状態。時々、単発の仕事を引き受けた程度だった。多くの企業やブランドから経営やコンサルティングのオファーを頂いたが、業界にいた頃から感じていた「消費者が求めていないことを勝手に設定し、その上でビジネスをしている」感覚にわだかまりがあった。そんな中で出版社から、アパレルのセオリーを知らないからこそ縛られないビジネスができそうなオファーをいただいた。夜間飛行が既に手がけている「マダムH クローゼット(MADAMEH CLOSET)」(1947年生まれの人気ブロガーでもある佐藤治子デザイナーが「価値あるベーシックアイテム」を提案するブランド)は、ニッチなマーケットの中で成功している。時間をかけて納得できるものが作れたら、携わる人がみんなハッピーになれるのでは?と考えた。

WWD:“わだかまり”は、ラグジュアリー・ブランドに携わっていた頃から感じていた?

蜂谷:投資会社の資本がラグジュアリーの世界に注入されるようになって以降は、そんな思いが募っていた。フルラインを作ることのムダ、シーズンごとの提案の意味など、すべては仕組まれていて、それを望んでいないお客様がいることもわかっていた。感情は、薄れていたと思う。管理職のプロとして、市場にマッチする洋服を渡し続けるだけの仕事になっていた。「ハチヤ」では、僕が望むことを望んでくれるお客様に洋服を届けたい。

WWD:どんな洋服を作りたかった?

蜂谷:色々経験したが、それでも「昔から着ているもの」がある。それは、すべて良いものだった。クオリティはもちろん、作り手には信条があって、明確なコンセプトがあって、僕はそれを感じ取って購入し、愛用し続けているもの。そういうものなら、自分やデザインが声高に叫ばなくても、ときめくブランドになると思う。世界を回り、本当に優れた技術は日本とイタリアにしか存在しないことは分かっていた。イタリアの技術は中国に流出してしまったが、日本にはまだ技術と職人が存在する。でも経済が鈍化する中で、ビジネスが回らないと続かない。微力ながら貢献したい。

WWD:「昔から着ているもの」には、どんな洋服がある?

蜂谷:学生時代は、ブリトラ(ブリティッシュ・トラッド)少年だった。ジェントルマン志向で、ウイングチップに関する雑誌や書籍を読み込み、スーツで登校していた(笑)。最初に務めたのは、トゥモローランド。自分が好きな洋服を着たかったから、務める会社やブランドの洋服しか着られないと思っていたアパレルで働くつもりはなかったけれど、当時のトゥモローランドはウィメンズだけの会社。だから自分の洋服は自由で、営業の仕事から始まった。25歳くらいの時に買ったのは、「インバーティア(INVERTERE)」の真っ白なダッフルコート。清水の舞台から飛び降りる気持ちで買った洋服は、今でも着ている。生地が“くたらない”し、ボックスシルエットで今っぽい。トラッドテイストのミニマルな商品が好きだった。作りたいのは、そういう洋服。自分が好きなものしか表現できない。そして表現できる最高のものを提案することは、責任だと思っている。

WWD:最初のアイテムをプルオーバーとバックパックにした理由は?

蜂谷:プルオーバーは、オーバーサイズでいまの気分。バックパックと共に、誰が着ても似合うと思う。ニットで作ったパーカはボリューム感の表現が難しい。カシミヤコットンの糸にストレッチ糸を絡めることで生地自体で膨らみを表現した。前から見るとラグランスリーブ、横から見るとセットインの袖も、ボリュームの表現に繋がっている。形がしっかりしているから、その中の体がどんなでも、男性でも女性でも美しく見える。フードは中心からキレイに立ち上がるようにリブテープを貼った。これまで、いろんなものを着倒し、見てきたからこそ考えられる。いろんな人に会ってきたからこそ、すべての工程に携わる人の気持ちが考えられる。皆がハッピーになれるモノづくりにこだわりたかった。90年代の後半から2000年代の初頭にかけては、イタリアでブランドを立ち上げ、コレクションを発表していた。でもあの時はアシスタントに任せて最終チェックだけするような場面も多く、今のモノづくりとは全然違う。ただ、その時に川上から川下を、帰国してラグジュアリー・ブランドで働くようになってからはお客様のことを見てきた。見てきた人たち、みんなに寄り添える洋服を作りたい。

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「クレージュ」初のメンズは“究極のシンプル”を探求 デザイナーの美意識に迫る

 「クレージュ(COURREGES)」は、2020年9月にアーティスティック・ディレクターに就任したニコラ・デ・フェリーチェ(Nicolas Di Felice)の指揮のもと、2022年春夏シーズンのパリ・メンズ・コレクションで初のメンズウエアを披露した。同ブランドはほかにもアーカイブを現代に向けて再解釈した新プロジェクト「リエディション・コレクション(Reedition Collection)」の始動や、パリ・フランソワ=プルミエ通りにある歴史ある旗艦店を今年6月に改装したり、マレ地区にも新しい旗艦店を構えたりと、動きが活発化。同ブランドの全株式を保有する投資会社アルテミス(Altemis)のサポートで、成長戦略を加速させている。

 デ・フェリーチェはこれまで、ニコラ・ジェスキエール (Nicolas Ghesquiere)時代の「バレンシアガ(BALENCIAGA)」と「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」、ラフ・シモンズ(Raf Simons)の「ディオール(DIOR)」などでウィメンズのデザインを手掛けてきた。彼にとっても、「クレージュ」にとっても、メンズコレクションは新たなチャレンジである。ブランドの未来を託されたデ・フェリーチェに、メンズでの挑戦やデザインについて聞いた。

「シンプルなものほど実は複雑である」

——「クレージュ」初のメンズコレクションの制作において、ウィメンズとの違いは?

ニコラ・デ・フェリーチェ「クレージュ」=アーティスティック・ディレクター(以下、デ・フェリーチェ):特に大きな違いはなく、ウィメンズ・コレクションでのアプローチと同じ方法で取り組んだ。私たちが今着たい服を、「クレージュ」のコードや表現と両立させるアイデアをベースにし、シンプルで端的でありながら、シャープで先進的な男性像を描いた。身にまといたいという自発的な欲求と、精度の高い洋服の構造を組み合わせたアプローチだ。

——あなたはウィメンズのデザイナーとしてキャリアを積んだきたが、初のメンズコレクションにどのような手ごたえを感じている?

デ・フェリーチェ:自分にとって初めてだったが、「クレージュ」のメンズとしても前例がなかったため、プレッシャーを感じることなく、とても自然にのびのびと制作に打ち込むことができた。このいい流れをそのまま継続していきたい。

——「クレージュ」らしいデザインはどういった部分で表現した?

デ・フェリーチェ:レザーもしくはテクニカル素材で作ったトラッカージャケットが私のお気に入りで、「クレージュ」のコードを詰め込んだキーアイテムでもある。誰もが一着は持っているであろう定番アイテムを「クレージュ」なりの表現で仕上げた。具体的には、丸みを帯びたポケットや三角形のショルダーラインなど、ブランドを象徴する形状をディテールに取り入れてブランドらしいスタイルを打ち出した。また、ファーストルックを飾ったビッグコートは、創業者アンドレ・クレージュ(Andre Courreges)自身が着用していたコートからインスパイアされた作品だ。豊かなアーカイブを間近でよく観察し、自分の目と手を使って現代風にアップデートを試みている。

—— 自身の約12年のデザイナーとしての経験を現職でどう活かしている?

デ・フェリーチェ:ここ数年は、特に正確なカットと仕立ての方法を学んできた。同時に、自分の好みやセンスについてもより深く自覚できた。私のデザインは、まず“構造”と“ライン”に特徴がある。シンプルで分かりやすく、幾何学的なシェイプを探求し続けているからだ。ルックを見て服がどのような形をしているのか一目で分かったとしたら、その構造は非常に複雑で、洗練されていると思ってほしい。つまり、シンプルなものほど実は複雑であるということだ。多くの作業や知識、綿密な計算が要求されるシンプルなデザインを、これからも追究していく。

——大盛況だったマレ地区の旗艦店のオープニングなど、新しい「クレージュ」は特に若い世代から注目を集めている。デジタルネイティブ世代にとって実店舗はどのような役割を果たす?

デ・フェリーチェ:実物に触れたり、洋服を試着したり、ブランドの世界観を体感できる物理的な場は、私たちにとって非常に重要だ。リアルかデジタルの二者択一ではなく、両方の体験を顧客に提供する必要がある。双方からのアプローチが、最適な顧客体験を見つけることにつながるはずだ。

——今後の構想は?

デ・フェリーチェ:自分の好きなもの、信じるものの焦点をブラさず、自分自身をゆっくりとブランドに溶け込ませていくつもりだ。

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メディコム・トイの「アカシック レコーズ」に27万通の応募 赤司社長の狙いは?

 メディコム・トイ(MEDICOM TOY)は10月31日まで、同社の赤司竜彦社長がキュレーションするポップアップイベント「アカシック レコーズ 2021(AKASHIC RECORDS 2021)〜まぼろしのパレード〜」を開催中だ。昨年に続く2回目の今回は、場所を東京・渋谷のレイヤード ミヤシタパーク(RAYARD MIYASHITA PARK)3階の「En STUDIO」に移し、昨年以上に規模を拡大。ほかではなかなか見られない“まぼろし”のアートやトイが並ぶ光景は、眺めるだけでも圧巻だ。昨今のアート・トイ市場の盛り上がりには目を見張るものがあり、今回の入場抽選への応募は27万通に及んだという。人でごった返した会場には、名だたる企業の社長や著名人の姿も見え、注目度の高さが伺えた。赤司社長に「アカシック レコーズ」の狙いを聞いた。

――前回の反響は?

赤司竜彦メディコム・トイ社長(以下、赤司):お客さまに好評だったのはもちろん、作家やデザイナーから参加したいという声をたくさんいただけて嬉しかった。それもあって前回よりも規模を大きくしたけれど、今回の応募は27万通もあって全然足りなかった。できる限りたくさんのお客さまに見てもらいたいが、会場に入れたのは3000人前後。3回目はもっと広い場所で開催したい。

――27万通もの応募の感想は?

赤司:ものすごくビックリした。前回は重複応募が多かったので2通目以降を無効にしたが、その作業が社内的にも大変だった。今回は同じ端末から重複応募できないプロテクトをかけた。純粋に27万端末から応募があったという意味で、それはすごくありがたいこと。ご入場いただけなかったお客さまには申し訳ないと思いつつも、販売システムや開催ルール、運営プログラムなどを作り込むいい機会になった。

――改めて、「アカシック レコーズ 2021」の開催経緯を教えて欲しい。

赤司:昨年の開催直前から既に今年の準備に入っていた。毎年、会社のエキシビションがあって、何年かに一度は周年イベントもある。そこで超一流の方々とモノ作りをさせてもらっているが、「アカシック レコーズ」はほんの少し外れたというか、ビーンボールまがいのイベントとして開催していきたい。

――“まぼろしのパレード”というテーマの意味は?

赤司:敬愛するザ・コレクターズ(THE COLLECTORS)の名曲から借りた。徐々に集まっていく作品を見たとき、この楽曲のタイトルが一番しっくりくると思った。前回はエレクトリック・グラス・バルーン(ELECTRIC GLASS BALLOON)の「カルトスター・ガイドブック(CULTSTAR GUIDEBOOK)」から着想を得て、まさにカルトスターを紹介するイベントにしようと思った。今回は「幻の作品を集めたパレードをやろう」みたいなイメージ。タイトルと集まったモノのシンクロ感がいいのだけれど、3回目も同じコンセプトでタイトルが思い浮かぶのか、プレッシャーになっている(笑)。

――キービジュアルに“You Are Free”と書かれている。このメッセージの意味は?

赤司:キービジュアルを手掛けてくれたリーバイ・パタ(Levi Pata)が付けてくれた。僕に対してなのか、催事に対してなのか分からないが、彼には「お前は自由だ」という印象に映ったのだと思う。彼は素晴らしい詩人でもあるので、特にこちらから注文したわけではなく、感じたことをメッセージにして欲しいとお願いした。

――30以上のアーティストやコンテンツとコラボレーションしているが、どのような基準でキュレーションしたのか?

赤司:マーケット全体がコンテンポラリーアートに寄っている印象があったので、それを基準に声をかけさせていただいた。実際に取り組みに至ったのは、ご縁とタイミングがほとんど。見せたかったけど制作がギリギリ間に合わなかったり、次回まで隠しとこうと思ってまだ見せていない作品があったりするので、次回も楽しみにして欲しい。

――特に思い入れの強い作品は?

赤司:協業的なモノ作りを行なっているので優劣はないけど、ナグナグナグ(NAGNAGNAG)との取り組みはいつも刺激的だ。マスプロダクツとは違った共同作業になるので、その分、神経を使うこともあるが学びも多い。ナグナグナグとアン・ヴァレリー・デュポン(Anne Valerie Dupond)の作品は、前回も特に反響が大きかった。

――前回の会場スタッフの衣装は、(海外ドラマの)「ツイン・ピークス(TWIN PEAKS)」の執事からイメージしたと言っていたが、今回は?

赤司:会場がダンススタジオとしても使われている白のシンプルな場所だったので、作品の印象を左右しないシンプルなスタイルでお願いした。

――「アカシック レコーズ」の今後の予定は?

赤司:次回は3回目ではなく、2.5回目として来年の3月にアートフェアトーキョーで開催する。このイベントに来場するお客さまと作家たちに、良いシナジーが生まれる気がするから。あとは、ありがたいことに海外からもオファーがあるので、無理のない程度に広げていきたい。ただし、インディオペンデントなイベントの方向性は変えない。作家にとってもきちんとマネタイズできる場所になればいいなと思っている。

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メディコム・トイの「アカシック レコーズ」に27万通の応募 赤司社長の狙いは?

 メディコム・トイ(MEDICOM TOY)は10月31日まで、同社の赤司竜彦社長がキュレーションするポップアップイベント「アカシック レコーズ 2021(AKASHIC RECORDS 2021)〜まぼろしのパレード〜」を開催中だ。昨年に続く2回目の今回は、場所を東京・渋谷のレイヤード ミヤシタパーク(RAYARD MIYASHITA PARK)3階の「En STUDIO」に移し、昨年以上に規模を拡大。ほかではなかなか見られない“まぼろし”のアートやトイが並ぶ光景は、眺めるだけでも圧巻だ。昨今のアート・トイ市場の盛り上がりには目を見張るものがあり、今回の入場抽選への応募は27万通に及んだという。人でごった返した会場には、名だたる企業の社長や著名人の姿も見え、注目度の高さが伺えた。赤司社長に「アカシック レコーズ」の狙いを聞いた。

――前回の反響は?

赤司竜彦メディコム・トイ社長(以下、赤司):お客さまに好評だったのはもちろん、作家やデザイナーから参加したいという声をたくさんいただけて嬉しかった。それもあって前回よりも規模を大きくしたけれど、今回の応募は27万通もあって全然足りなかった。できる限りたくさんのお客さまに見てもらいたいが、会場に入れたのは3000人前後。3回目はもっと広い場所で開催したい。

――27万通もの応募の感想は?

赤司:ものすごくビックリした。前回は重複応募が多かったので2通目以降を無効にしたが、その作業が社内的にも大変だった。今回は同じ端末から重複応募できないプロテクトをかけた。純粋に27万端末から応募があったという意味で、それはすごくありがたいこと。ご入場いただけなかったお客さまには申し訳ないと思いつつも、販売システムや開催ルール、運営プログラムなどを作り込むいい機会になった。

――改めて、「アカシック レコーズ 2021」の開催経緯を教えて欲しい。

赤司:昨年の開催直前から既に今年の準備に入っていた。毎年、会社のエキシビションがあって、何年かに一度は周年イベントもある。そこで超一流の方々とモノ作りをさせてもらっているが、「アカシック レコーズ」はほんの少し外れたというか、ビーンボールまがいのイベントとして開催していきたい。

――“まぼろしのパレード”というテーマの意味は?

赤司:敬愛するザ・コレクターズ(THE COLLECTORS)の名曲から借りた。徐々に集まっていく作品を見たとき、この楽曲のタイトルが一番しっくりくると思った。前回はエレクトリック・グラス・バルーン(ELECTRIC GLASS BALLOON)の「カルトスター・ガイドブック(CULTSTAR GUIDEBOOK)」から着想を得て、まさにカルトスターを紹介するイベントにしようと思った。今回は「幻の作品を集めたパレードをやろう」みたいなイメージ。タイトルと集まったモノのシンクロ感がいいのだけれど、3回目も同じコンセプトでタイトルが思い浮かぶのか、プレッシャーになっている(笑)。

――キービジュアルに“You Are Free”と書かれている。このメッセージの意味は?

赤司:キービジュアルを手掛けてくれたリーバイ・パタ(Levi Pata)が付けてくれた。僕に対してなのか、催事に対してなのか分からないが、彼には「お前は自由だ」という印象に映ったのだと思う。彼は素晴らしい詩人でもあるので、特にこちらから注文したわけではなく、感じたことをメッセージにして欲しいとお願いした。

――30以上のアーティストやコンテンツとコラボレーションしているが、どのような基準でキュレーションしたのか?

赤司:マーケット全体がコンテンポラリーアートに寄っている印象があったので、それを基準に声をかけさせていただいた。実際に取り組みに至ったのは、ご縁とタイミングがほとんど。見せたかったけど制作がギリギリ間に合わなかったり、次回まで隠しとこうと思ってまだ見せていない作品があったりするので、次回も楽しみにして欲しい。

――特に思い入れの強い作品は?

赤司:協業的なモノ作りを行なっているので優劣はないけど、ナグナグナグ(NAGNAGNAG)との取り組みはいつも刺激的だ。マスプロダクツとは違った共同作業になるので、その分、神経を使うこともあるが学びも多い。ナグナグナグとアン・ヴァレリー・デュポン(Anne Valerie Dupond)の作品は、前回も特に反響が大きかった。

――前回の会場スタッフの衣装は、(海外ドラマの)「ツイン・ピークス(TWIN PEAKS)」の執事からイメージしたと言っていたが、今回は?

赤司:会場がダンススタジオとしても使われている白のシンプルな場所だったので、作品の印象を左右しないシンプルなスタイルでお願いした。

――「アカシック レコーズ」の今後の予定は?

赤司:次回は3回目ではなく、2.5回目として来年の3月にアートフェアトーキョーで開催する。このイベントに来場するお客さまと作家たちに、良いシナジーが生まれる気がするから。あとは、ありがたいことに海外からもオファーがあるので、無理のない程度に広げていきたい。ただし、インディオペンデントなイベントの方向性は変えない。作家にとってもきちんとマネタイズできる場所になればいいなと思っている。

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長谷川ミラが自身のブランドをリブランディング 青学生らとタッグを組みSDGsを発信

 長谷川ミラは、自身のブランド「ジェイムジー(JAMESIE)」をリブランディングし、新たに「ジャム アパレル(JAM APALLELL)」として再始動する。10月22〜24日に開催されたアッシュ・ペー・フランス主催の合同展示会イベント「ルームス(rooms)」で初披露した。

 「ジェイムジー」はオールジェンダーブランドとしてスタートし、プリントアイテムを中心に、ジェンダーや環境問題に対するメッセージを発信してきた。「ジャム アパレル」では、新たに“Fashion goes green”をテーマに掲げ、サステナブルな素材への取り組みを強化する。

 2021年カプセルコレクションのアイテムは、オーガニックコットン100%のポロシャツ(税込7920円)や伊藤忠商事の再生ポリエステル素材「レニュー(RENU)」を使用したスエットトップ(同9790円)などのアパレル全9型と、タキヒヨーのアップサイクルプロジェクト“ザ・ニューデニムプロジェクト(THE NEW DENIM PROJECT)”から生まれたデニム生地を使用したバッグ(同4950円、同6600円)、豊島の「オーガビッツ(ORGABITS)」のオーガニックコットン糸100%のソックス(同3520円)などの雑貨類全3型をそろえる。販路は、11月11日に開設予定の公式ECサイトを中心に、ポップアップなどの期間限定ショップでの販売も企画する。

WWD:リブランディングの背景は?

長谷川ミラ(以下、長谷川):「ジェイムジー」は、性別にとらわれずにみんなが自由にファッションを楽しんでほしいという思いを込めて立ち上げ、LGBTQを支持するメッセージをプリントしたり、フェミニズムコミュニティーと一緒にイベントを企画したりもしていました。当時は、サステナブルな素材の選択肢が非常に限られていたこともあり、素材よりもプリントするメッセージ性を意識していました。一方で、サステナビリティについて勉強を深めると、Tシャツ1枚を製作するための水使用量は約2900リットルだと知り、ポジティブなことをしているつもりだった自分が環境に負担をかけているとショックを受けました。そこで2019年に販売を停止し、もう一度方向性を考え直すことにしました。サステナブルなブランドを実現するためには、もっと大きなチームが必要だと考えていたところ、友人で同い年のデザイナーの一法師拓間(デザイン会社コンセピオン代表)がデザインを担当してくれることになりました。加えて、彼が特別顧問を務める青山学院大学のファッションサークル、Aoyama Fashion Association(以下、AFA)の大学生たちからも協力を得られることになりました。

WWD:大学生を巻き込もうと思った理由は?

長谷川:SDGsは、一人で叫んでいても社会は変わらない。もっと同世代や下の世代とチームにならなければいけないと感じていたからです。AFAに所属する103人がマイクロインフルエンサーになり、その周辺にいる人たちへとどんどん変化の輪が広がっていくことを信じています。学生には一部のアイテムのデザインを考えてもらったり、撮影やイベント運営の手伝いをお願いしたりしています。

WWD:ブランド名に込めた思いは?

長谷川:本名の頭文字から取りました。父親からは“ジェイムジー”や“ジャム”のニックネームで呼ばれていて、子どものときから愛着のある名前です。拓門デザイナーのアイデアで、ロゴの“J”の部分にスラッシュを入れることで、“I AM”という文字が隠れています。みんながブランドから発信するメッセージを自分ごと化してとらえてほしい、自由に自分を表現してほしいという思いを込めました。

WWD:特にお気に入りのアイテムは?

長谷川:オーガニックコットン100%の国産生地を使用したポロシャツです。縫製や刺しゅうも日本国内で行いました。国内の技術職が減っている現状に貢献するために、メイドインジャパンにこだわりました。透明性が求められる時代ですし、今後は工場へのインタビューなどを通して、誰がどんな思いで作っているのかを発信します。

WWD:「ジャム アパレル」を通して伝えたいメッセージとは?

長谷川:ファッション産業は環境破壊や人権侵害など、多くのネガティブな問題を抱えています。しかし、人の心を一瞬でハッピーにできるのもファッションです。「ジャム アパレル」では、袖を通すだけでポジティブになれるようなきっかけを提案したい。AFAの学生たちとの取り組みや工場の生産背景など、このブランドが作られる工程自体に意味があり、その背景もきちんと伝えていきたいです。

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奥が深くて懐も深い「着物販売員の世界」 40年のベテランに聞く 三松 青木良子

 明治時代に洋装文化が日本に入り、和装文化は徐々に衰退の一途をたどる。着物を着る機会といえば七五三、成人式、冠婚葬祭など、かしこまった場面でしかないというイメージも定着しつつあるため、きっちりルールを守った着方をしていないとダメだと指摘する『着物警察』の存在が話題になることも。一方で、ポップな柄の着物や着物コーデをした若者たちによる積極的なSNS発信も増えている。最近では“代々受け継いでいくもの”という観点から“サステナブル”であると再認識され、着なくなった着物をリメイクするブランドも登場。老舗の着物専門店「三松」ルミネ立川店の青木良子さんは、約40年に渡り着物の歴史を販売員の立場で見てきた。

―着物の販売員になったきっかけを教えてください。

青木良子さん(以下、青木):うちの家系はみんな代々、結婚前に和裁を習う習慣があったのです。行儀見習いのような感じで叔母たちも和裁教室に通っていましたので、私も行くことになりました。

―手に職をつけるというかんじでしょうか?

青木:そんな感じです。それに昔は、結婚したらご主人の浴衣ぐらい縫えるように針仕事くらいできないといけない時代でもありましたね。年齢の離れた姉は洋裁学校に行っていたので、中学生の頃は姉に服を縫ってもらっていました。当時は「次はコレにする?」なんて言いながら、雑誌を見ていましたね。私は和裁教室に行きましたが、そこで同い年のお友達に誘われて、着付け教室にも行くようになりました。和裁と着付けを3年半も習っていたので、折角だからと着物業界へ入ったのが昭和54年(1979年)の12月。ボーナス支給日に入社して、あの日はとても忙しかったからよく覚えているのです(笑)。さすがにその時は「私、続けていけるかしら…」と思いましたけど、「“三日三月三年”という言葉もあるし、ま、大丈夫か」と思い直しました。研修を受けても実際に店頭に出るとちょっと違いますでしょ。だから先輩の接客を見様見真似で覚えて、最初はお客さまに「外はいいお天気ですか?」なんて話しかけることができただけで喜んでいました。本当に毎日一歩ずつ成長していった感じですね。

―先輩の姿を見て仕事を覚えるというのは今も昔も変わらない上達の近道ですよね。

青木:そうです。要は「人の振り見て我が振り直せ」じゃないですが、そんな気持ちで仕事もしています。例えば、和裁教室の時はみんな進行具合も違うし、作っているものも違うから、先生が一人ひとり教えていくことは大変なんですよ。他の生徒さんが注意されている姿を見て、自分も「あの部分は雑だったかな」と思い、縫い直したことがありました。

―故事、ことわざってよくできていますよね。

青木:そう、とても的を射ていますよ。例えば「泣き面に蜂」ってありますけど、めげている時はどんどんめげて、良いことが起こらなくなります。誰かのせいにしたくなりますが、すべての原因は自分から発しているんですよね。まずは自分で反省しない限り、前には進めないと思います。

―今の社会的状況にも通じるものを感じます。新宿店にはいつまで?

青木:新宿には3年半いて、1984年に渋谷パルコ店に異動しました。渋谷店は99年に一旦クローズして「ふりふ」になったのです。私が入社当時に三松が掲げていた企業理念に「伝統と新しさに微笑みながらこれが三松の個性」というのがありまして、まさにそれを体現するようなブランドでした。古いことも守りつつ、新しいことにもチャレンジするって素晴らしいことだと思いました。「ふりふ」のような斬新な着物にも挑戦しているのは三松の強みですね。

―斬新でかわいい着物を展開していますよね。私も、成人式を迎えた頃に「ふりふ」があったらよかったのに…と思います。昭和から平成にかけての渋谷は活気があったと思いますが、当時の様子は?

青木:私が84年に渋谷に異動したころの渋谷は勢いがあって、若者がどんどん街に集まってきていました。在籍期間も長く、楽しい時代でした。でも、はじめのころは競合店が揃っていたのに、少しずつ撤退していって、結局は最後の一軒になりました。一店舗だけになると結構大変で、やはり競合店がある方が店は運営しやすいし、お客さまも呼びやすいんです。お客さまもお店が近くにあることで、各店を比較検討できますからね。そんな低迷の続く着物の状況を打破しようと、若者が集まるパルコで「ふりふ」が誕生したのです。最初は本当に大変で、顧客様にもたくさん声をかけました。普通なら数カ月かかるお仕立てを数日で仕立ててもらったこともありました。当時はお客様にも職人さんにもたくさん協力してもらいました。

―青木さんだから協力してくれたのではないでしょうか?

青木:そんなことはないですよ。新しいブランドは多くの人の協力なくしては成り立ちません。会社も頑張っていたから、私たち販売員も頑張っていろいろなことをしました。例えば、ディスプレイをこまめに変更してみたり、店に一日中立っているだけだと疲れるからスタッフに「着物を着たままでいいから館内や渋谷の街中を周ってきて」とお願いしたり。

―渋谷の街を「ふりふ」の着物で歩いたら目立ちそうですね。

青木:歩いているだけではもったいないので、「外で写真でも撮ってきたら?」といって、スタッフ数人で撮影会をしたこともありました。

―イマ風に言うと、インスタ映えのようなものですね!

青木:渋谷はロケーションが良いですからね。歩いてもらうだけで宣伝になりました。当時の渋谷は、若者が街を歩き回って服を探し、それをちょっと高かったとしても思い切って買う、そんな時代でした。今は世の中に物が溢れて選択肢が広がる一方で、余計なものは要らないという時代になり、インターネットを使って下調べするのが当たり前。買い物の仕方は大きく変わったと感じています。

―自由に着物を着ている若い方もいますが、一方で着物警察なんて呼ばれる方もいます。青木さんは着物の着方には何かルールや思うことはありますか?

青木:着物は本来、日常着だったのですから、自由に着ればいいと思いますよ。私は普段から着物を着ていますけど、洋服よりコーディネートを考えなくていいから楽(笑)。形は一律だし、後は小物や帯の色でどうか飾るか考えればいい。それも自分の好みで自由に合わせればいいんです。私なんか着物で卓球とかボウリングもやりましたよ(笑)。

―え!着崩れませんか?それに暑そう。

青木:着物は一つに繋がっているから、出てきたら引っ張れば直るんですよ(笑)。それに着物は意外と暑くないんですよ。わきの下が開いているから洋服よりも熱が逃げるんです。歌舞伎役者さんが扇子で顔の方ではなく、下の方、袖口の方を仰いでいるのも、風が袖から入って体の方へ通るからなんです。品が良いですよね。

―もっと気軽に考えればいいんですね。

青木:そう。強いて言えば、最近の子は補正をしてきれいに着ているでしょ。でも、昔の人は補正なしで自分の体型を生かして楽に着るものだったんですよ。その方が人間らしいじゃないですか。って、私はきれいに着られないからそう言うだけ(笑)。キチンと着られる方がうらやましいとは思います。

―着物のお店は何となく敷居が高いイメージがあるのですが……。

青木:そんなことないですよ。夏は浴衣が着たいからと見に来られる方もいらっしゃいます。振袖になると七五三で着て以来という方も多いですけどね。

―40年以上販売を続けてこられた秘訣は何でしょうか?

青木:やっぱりお客様に育てていただいているということだと思います。勤め始めて間もないころ、私の失敗で間違えて商品をお渡しした親子のお客様がいまして、何とか事無きを得たのですが、それをきっかけに顧客としてずっとついてきてくださいました。着物は洋服のように流行が変わって買い替えるものではない分、お客様とのお付き合いも自然と長くなりやすいんです。ご自宅にお電話すると旦那さんが出られて「青木さん、いつもお世話になってありがとう。今、代わるね」と奥様につないでくださることもあって、家族ぐるみのお付き合いになります。

―青木さんの接客のモットーは。

青木:お客様のお好み発見器みたいな感じですね。例えば、振袖はどれを選んだらいいか分からない人もいますが、話すうちに徐々に着てみたいイメージが浮かんできます。そういうのを引き出せることができたら良いですね。着てみたいイメージがある方でも、これが似合いそうだと思った小物を入れ替えてみて、さらに新しい発見ができたらいいなと思います。でも、私の販売スタイルは“カリスマ”ではないんです。

―いらっしゃいますね。「あなたにはコレ」みたいな決める方。確かに似合うかもとは思いますが(笑)。

青木:私はそれができませんが、迷っている方は「これが似合うと思うけど、こういうのは好き?」と聞いてから、合わせてもらいます。ダメだったら引っ込める(笑)。自分が買う立場になった時にあんまりしつこくされると嫌じゃないですか。特に考えているときに一生懸命勧められても困るなと思うのです。あまりにも悩むのであれば「また来てください」とか帰すこともありますよ。

―その見極めは難しいですね。

青木:そうですね。商品とお店の雰囲気を気に入ってくださっていれば、その時にご縁がなくても、ふと思い出して来店されます。その辺は洋服の販売の方と変わらないですよ。

―そうですね。では、最後に今後の目標は。

青木:誰かのお役に立てる限りは仕事を続けたいですね。私のような年配が店に立つ方が「重みが出る」とはいわれますが、そんな時代じゃないとも思っています。でも、必要とされる限りはお店に立ちたいですね。

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保育専門学校から子ども服販売へ、“ナルミヤ世代”が接客でつなぐバトン ナルミヤ・インターナショナル井野温子

 ショップスタッフインタビューで経歴をたずねると、1980年代後半から1990年代生まれの女性のほとんどが「子どもの頃に、ナルミヤのブランドがきっかけで洋服が好きになりました」と答える。それほどこの業界に多大な影響を与えたのがナルミヤ・インターナショナルだ。その後の低迷を経て、百貨店依存に陥っていた体質を変えて18年2月期には再び子供服メーカー売り上げトップに返り咲いた。まさに、その“ナルミヤ世代”のそごう横浜店の井野温子ストアマネージャーに聞いた。

―ショップスタッフの取材では、井野さん世代の女性からは必ずといっていいほど「ナルミヤのブランドに憧れて……」といわれます。

井野温子さん(以下、井野):店頭に立っていても同じです。店の前を女子高生や20代くらいのお客様が通ると「メゾピアノだ」「私、着てた!」という声が聞こえてくることがよくあります。改めて、歴史があるブランドなんだなって思います。接客のときにも孫が生まれたというおばあちゃま世代の方が「自分の娘にも着せていたの。今も好きだから、孫にも着せたくて」とお話しされます。

―そうなんですね!確かにナルミヤが盛り上がっていたときから20年近く経っているので、子どもがいてもおかしくないですよね。

井野:お客様の中には長い方で10年以上のお付き合いがあるので、いつ赤ちゃんを連れてくるかなとドキドキしながら待っています(笑)。普段は名前よりも「お姉さん」と呼ばれることが多いのですが、そごう横浜店に異動してきたばかりの頃に一番初めに私のことを「井野さん」と名前で呼んでくれたお客様がいて、嬉しくて今でも覚えています。その子が当時、小学校6年生でそろそろナルミヤブランドは卒業かな?という年代でした。今でも館内で見かけると声をかけてくれるのです。今はすっかり大人になっていて……。

―それはドキドキですね(笑)。子ども服の接客では、日頃から何を心がけていますか?

井野:私は洋服を売りたいというより、お話しをしたいという気持ちで接しています。ジュニアブランドの場合は割とママともお話することの方が多いので、ママの意見とお子さんの意見を聞きながら提案しています。ベビーやキッズの場合はママと、ジュニアはどちらかというと子どもとお話しすることが多いですね。売り場によって、お客さまとの接し方が全く変わるんです。あとは、男の子と女の子でも接し方が変わります。女の子は自分で選びたがるのですが、男の子は割と椅子に座って、ママの買い物が終わるのを待っている感じです。

―なるほど(笑)。男性の買い物待ちは、幼少の頃から始まっているんですね。

井野:しかも、男の子のママはお話好きな方が多い印象がありますね。女の子の場合は、ママが割と服を選び、その間は私と女の子でおしゃべりする感じです。先日来店した4歳くらいの女の子とママは、フィッティングルームで私と女の子が待機して、ママが店頭から服を持って来て「これ着てみる?」「あれ着てみる?」とやっていました。何着がお買い上げされて帰られたのですが、後日ママが一人で来店されて「この前、お姉さんと話したのがとても楽しかったみたいで、家に帰ってからもずっとその時に話していました」と教えてくれたのです。それはうれしかったですね。

―それでこの業界を目指してくれるといいですね。井野さんが販売を始めたきっかけは?

井野:専門学校時代の先生に勧められたのがきっかけです。地元が静岡県下田市で本当に何もない場所で、ブランドの店も近くになかったのでファッションには興味はありませんでした。卒業後は飲食店でアルバイトをしていたのですが、先生に雑貨や子ども関連の販売の仕事をいくつか紹介され、ナルミヤでアルバイトすることになりました。最初の勤務地が渋谷109-2の店舗で、いろんな事に驚きしました。

―当時はまだ人気もありましたし、渋谷という場所にも圧倒されましたよね。では、接客の仕事をしてみてどうでしたか?

井野:実家が宿泊業経営だったので、お客さまと話をするのは苦ではありませんでしたね。子どもの頃から知らない人が家に来る機会がとても多く、お母さんの後ろをついて行って「いらっしゃいませ!」とかやってたので(笑)。でも働き始めたときは、ノルマがあったわけでもないのに「売り上げを絶対取る!」みたいなノリで頑張っていました。接客も先輩のうしろに付いて、接客の仕方やママとの距離の取り方などを見て、自分に取り入れられそうなことは取り入れていました。ただ、あるとき私一人が頑張って売り上げを取るだけが仕事じゃないと気づいて、力が抜けてお店全体を見ること、マネジメントに目が行くようになりました。前のめりに頑張り過ぎていた気持ちが落ち着つきました。

―それはいつ頃から?

井野:横浜そごうに移動してきて、尊敬する先輩に出会ってからです。その方の下で5~6年ぐらい一緒に働かせてもらったことで、考え方が変わりました。プライベートでもよく相談にのってもらっていて、離婚のときにも、その先輩に証人にもなってもらいました。私の話を聞いて一緒になって落ち込んでくれるところもあるのに、一方でとてもさっぱりとした性格でそういうところは見習っています。何か店で問題があった時にはスパっと自分で判断はしますが、そうしたときにも一歩引いて「あの先輩ならどうしたかな?」と考えることもあります。

―素敵な先輩と出会えたのですね。その方は今?

井野:今は産休明けで、時短勤務で店頭に立っています。

―今でも働き方のモデルになっているのですね。その後、業績がどんどん低迷していくわけですが、ナルミヤで働き続けられた理由は?

井野:やはり一緒に働く人たちがすごくよかったからです。自分にとってプラスになる人たちばかりで。それに、本部もよく現場を見に来てくれました。ただ回るだけでなく各ブランドの売り場でスタッフに声をかけてくれてましたね。以前よりも接することも多くなりましたし、役職が上の方でも現場を見に来て、声をかけてくれるので、言いたいことも伝えられるようになりました。

―風通しがいい会社なんですね。

井野:そうですね。上の方は現場のことを知らないんでしょと思われがちですが、ナルミヤはそんなことないですね。連絡もまめにくれますし、お休みもしっかりとれています。自分のプライベートでやりたいこともちゃんとできています。

―以前は販売員の人手不足や、店長になると休日もあったようなものじゃないということを耳にしますが、そんなことはないと。

井野:それもないです。特に複数ブランドをそごう内に出店しているので、スタッフは基本的に所属ブランドが決まっているのですが、休みの調整も兼ねて所属外のブランドでも月に1日は店頭に立つシフト作りをしています。これは複数ブランドを展開しているからできることだと思いますが、他ブランドでも仕事をすることで所属ブランド以外にも目が向けられるようになりますし、スタッフ間の交流も増えます。

―ブランドの異動になっても、少し知っていれば気持ちが違いますしね。

井野:はい。一人で「売らなきゃ」と頑張っていた時は、スタッフに仕事を任せることもできなかったので考え方が変わりました。

―スタッフに仕事を任せられないという悩みも店長あるあるです。何かきっかけで任せられるように?

井野:ストアマネージャーに昇格した時ですね。前任者がキャリアのある方だったので、昇格直後は「私に同じことができるんだろうか?」と思いました。同時にSC向けだったベビートドラーブランドの「プティマイン」が百貨店に初出店することになり、会社的にも注目していたので猛烈に頑張りました。その期間の記憶が思い出せないほどです(笑)。その時にスタッフに仕事を任せようとなって頼んでみたら、みんな責任感を持ってやってくれていて「凄い!」と思いました。一番若手のスタッフは私よりもしっかりしています。自分の考えを持って仕事をしている姿を見て、それならみんなに任せてみよう、と。

―それでは最後に今後の目標を。

井野:本当に悩みがなくて、すごく楽しくて仕事もプライベートも充実しています。自分が仕事の楽しさを分かるような年齢になってきて、今はスタッフが仕事を楽しいんでいるかな?って、考えるようになりました。なので、スタッフが少しても楽しく働けるような環境を作っていきたいと思っています。確かに会社は売り上げを重視するとは思いますが、それでも楽しく働こうよと伝えていきたいです。

―ちなみにプライベートでは何を?

井野:4年ほど前から書道を始めたんです。仕事では子どもたちと触れ合い、趣味では100歳近いお年寄りと交流しています。

―それはプライベートも楽しそうですね。加えて仕事も楽しいと言えるのって素敵です!

井野:はい。このまま、この気持ちで働き続けていきたいです。

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保育専門学校から子ども服販売へ、“ナルミヤ世代”が接客でつなぐバトン ナルミヤ・インターナショナル井野温子

 ショップスタッフインタビューで経歴をたずねると、1980年代後半から1990年代生まれの女性のほとんどが「子どもの頃に、ナルミヤのブランドがきっかけで洋服が好きになりました」と答える。それほどこの業界に多大な影響を与えたのがナルミヤ・インターナショナルだ。その後の低迷を経て、百貨店依存に陥っていた体質を変えて18年2月期には再び子供服メーカー売り上げトップに返り咲いた。まさに、その“ナルミヤ世代”のそごう横浜店の井野温子ストアマネージャーに聞いた。

―ショップスタッフの取材では、井野さん世代の女性からは必ずといっていいほど「ナルミヤのブランドに憧れて……」といわれます。

井野温子さん(以下、井野):店頭に立っていても同じです。店の前を女子高生や20代くらいのお客様が通ると「メゾピアノだ」「私、着てた!」という声が聞こえてくることがよくあります。改めて、歴史があるブランドなんだなって思います。接客のときにも孫が生まれたというおばあちゃま世代の方が「自分の娘にも着せていたの。今も好きだから、孫にも着せたくて」とお話しされます。

―そうなんですね!確かにナルミヤが盛り上がっていたときから20年近く経っているので、子どもがいてもおかしくないですよね。

井野:お客様の中には長い方で10年以上のお付き合いがあるので、いつ赤ちゃんを連れてくるかなとドキドキしながら待っています(笑)。普段は名前よりも「お姉さん」と呼ばれることが多いのですが、そごう横浜店に異動してきたばかりの頃に一番初めに私のことを「井野さん」と名前で呼んでくれたお客様がいて、嬉しくて今でも覚えています。その子が当時、小学校6年生でそろそろナルミヤブランドは卒業かな?という年代でした。今でも館内で見かけると声をかけてくれるのです。今はすっかり大人になっていて……。

―それはドキドキですね(笑)。子ども服の接客では、日頃から何を心がけていますか?

井野:私は洋服を売りたいというより、お話しをしたいという気持ちで接しています。ジュニアブランドの場合は割とママともお話することの方が多いので、ママの意見とお子さんの意見を聞きながら提案しています。ベビーやキッズの場合はママと、ジュニアはどちらかというと子どもとお話しすることが多いですね。売り場によって、お客さまとの接し方が全く変わるんです。あとは、男の子と女の子でも接し方が変わります。女の子は自分で選びたがるのですが、男の子は割と椅子に座って、ママの買い物が終わるのを待っている感じです。

―なるほど(笑)。男性の買い物待ちは、幼少の頃から始まっているんですね。

井野:しかも、男の子のママはお話好きな方が多い印象がありますね。女の子の場合は、ママが割と服を選び、その間は私と女の子でおしゃべりする感じです。先日来店した4歳くらいの女の子とママは、フィッティングルームで私と女の子が待機して、ママが店頭から服を持って来て「これ着てみる?」「あれ着てみる?」とやっていました。何着がお買い上げされて帰られたのですが、後日ママが一人で来店されて「この前、お姉さんと話したのがとても楽しかったみたいで、家に帰ってからもずっとその時に話していました」と教えてくれたのです。それはうれしかったですね。

―それでこの業界を目指してくれるといいですね。井野さんが販売を始めたきっかけは?

井野:専門学校時代の先生に勧められたのがきっかけです。地元が静岡県下田市で本当に何もない場所で、ブランドの店も近くになかったのでファッションには興味はありませんでした。卒業後は飲食店でアルバイトをしていたのですが、先生に雑貨や子ども関連の販売の仕事をいくつか紹介され、ナルミヤでアルバイトすることになりました。最初の勤務地が渋谷109-2の店舗で、いろんな事に驚きしました。

―当時はまだ人気もありましたし、渋谷という場所にも圧倒されましたよね。では、接客の仕事をしてみてどうでしたか?

井野:実家が宿泊業経営だったので、お客さまと話をするのは苦ではありませんでしたね。子どもの頃から知らない人が家に来る機会がとても多く、お母さんの後ろをついて行って「いらっしゃいませ!」とかやってたので(笑)。でも働き始めたときは、ノルマがあったわけでもないのに「売り上げを絶対取る!」みたいなノリで頑張っていました。接客も先輩のうしろに付いて、接客の仕方やママとの距離の取り方などを見て、自分に取り入れられそうなことは取り入れていました。ただ、あるとき私一人が頑張って売り上げを取るだけが仕事じゃないと気づいて、力が抜けてお店全体を見ること、マネジメントに目が行くようになりました。前のめりに頑張り過ぎていた気持ちが落ち着つきました。

―それはいつ頃から?

井野:横浜そごうに移動してきて、尊敬する先輩に出会ってからです。その方の下で5~6年ぐらい一緒に働かせてもらったことで、考え方が変わりました。プライベートでもよく相談にのってもらっていて、離婚のときにも、その先輩に証人にもなってもらいました。私の話を聞いて一緒になって落ち込んでくれるところもあるのに、一方でとてもさっぱりとした性格でそういうところは見習っています。何か店で問題があった時にはスパっと自分で判断はしますが、そうしたときにも一歩引いて「あの先輩ならどうしたかな?」と考えることもあります。

―素敵な先輩と出会えたのですね。その方は今?

井野:今は産休明けで、時短勤務で店頭に立っています。

―今でも働き方のモデルになっているのですね。その後、業績がどんどん低迷していくわけですが、ナルミヤで働き続けられた理由は?

井野:やはり一緒に働く人たちがすごくよかったからです。自分にとってプラスになる人たちばかりで。それに、本部もよく現場を見に来てくれました。ただ回るだけでなく各ブランドの売り場でスタッフに声をかけてくれてましたね。以前よりも接することも多くなりましたし、役職が上の方でも現場を見に来て、声をかけてくれるので、言いたいことも伝えられるようになりました。

―風通しがいい会社なんですね。

井野:そうですね。上の方は現場のことを知らないんでしょと思われがちですが、ナルミヤはそんなことないですね。連絡もまめにくれますし、お休みもしっかりとれています。自分のプライベートでやりたいこともちゃんとできています。

―以前は販売員の人手不足や、店長になると休日もあったようなものじゃないということを耳にしますが、そんなことはないと。

井野:それもないです。特に複数ブランドをそごう内に出店しているので、スタッフは基本的に所属ブランドが決まっているのですが、休みの調整も兼ねて所属外のブランドでも月に1日は店頭に立つシフト作りをしています。これは複数ブランドを展開しているからできることだと思いますが、他ブランドでも仕事をすることで所属ブランド以外にも目が向けられるようになりますし、スタッフ間の交流も増えます。

―ブランドの異動になっても、少し知っていれば気持ちが違いますしね。

井野:はい。一人で「売らなきゃ」と頑張っていた時は、スタッフに仕事を任せることもできなかったので考え方が変わりました。

―スタッフに仕事を任せられないという悩みも店長あるあるです。何かきっかけで任せられるように?

井野:ストアマネージャーに昇格した時ですね。前任者がキャリアのある方だったので、昇格直後は「私に同じことができるんだろうか?」と思いました。同時にSC向けだったベビートドラーブランドの「プティマイン」が百貨店に初出店することになり、会社的にも注目していたので猛烈に頑張りました。その期間の記憶が思い出せないほどです(笑)。その時にスタッフに仕事を任せようとなって頼んでみたら、みんな責任感を持ってやってくれていて「凄い!」と思いました。一番若手のスタッフは私よりもしっかりしています。自分の考えを持って仕事をしている姿を見て、それならみんなに任せてみよう、と。

―それでは最後に今後の目標を。

井野:本当に悩みがなくて、すごく楽しくて仕事もプライベートも充実しています。自分が仕事の楽しさを分かるような年齢になってきて、今はスタッフが仕事を楽しいんでいるかな?って、考えるようになりました。なので、スタッフが少しても楽しく働けるような環境を作っていきたいと思っています。確かに会社は売り上げを重視するとは思いますが、それでも楽しく働こうよと伝えていきたいです。

―ちなみにプライベートでは何を?

井野:4年ほど前から書道を始めたんです。仕事では子どもたちと触れ合い、趣味では100歳近いお年寄りと交流しています。

―それはプライベートも楽しそうですね。加えて仕事も楽しいと言えるのって素敵です!

井野:はい。このまま、この気持ちで働き続けていきたいです。

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「スワロフスキー」の新クリエイティブ・ディレクターが語るジェンダーレス、エイジレスなジュエリーの楽しみ方

 「スワロフスキー(SWAROVSKY)」のクリエイティブ・ディレクターであるジョバンナ・エンゲルパート(Giovanna Engelbert) が就任して1年が経過した。5月には、新コンセプトのショップが新宿にオープンし、リブランディングが進んでいる。新作の“コレクションⅡ“も登場した。エンゲルバートに、新生「スワロフスキー」のコンセプトやファッションとジュエリーの関係などについて話を聞いた。

WWD:「スワロフスキー」のクリエイティブディレクターに就任し、リブランディングが進んでいるが、新たなブランドコンセプトとは?

ジョバンナ・エンゲルバート(以下、エンゲルバート):個性が一番大切。さまざまなカラーがあるシグニチャーのクリスタルの力をさらに進化させたい。あと、インクルーシビティーがキーワードだ。男女、年齢関係なく楽しんでもらえるブランドにしたい。

WWD:東京でも新コンセプトのショップがオープンし好評だがこのコンセプトはどこから?

エンゲルバート:ジオメトリックなファセットをイメージさせるようなショップにした。蜂の巣または、アートのインスタレーションのように全てのサンプルをボックスに入れて壁一面に飾ることで、クリエイティブな精神を表現している。ジュエリーが大好きな人に楽しんでもらえると思う。

WWD:ファッションとジュエリーの関係性をどのように考えるか?

エンゲルバート:ファッションとジュエリーはベストフレンドよ。お互いを引き立たてる切っても切れない関係。私はジュエリーを着けないと裸のような気分になるわ。ファッション同様に、ジュエリーにはこだわりがあるの。宝石もクリスタルも同じ。クリスタルの方が手に取りやすい価格だから、より多くの人に楽しんでもらえるわ。

WWD:コロナ禍で行動が制限された中におけるインスピレーションは?

エンゲルバート:まずは、クリスタルとそのカラー。そして、「スワロフスキー」の本拠地はオーストリアで、代表的な画家のグスタフ・クリムト(Gustav Klimt)の風景や人物などさまざまな絵画からも着想を得ている。ラグジュアリーなアプローチでちょっとボヘミアンな要素を加えている。

WWD:自身のファッションのモットーは?

エンゲルバート:自分自身を表現すること。快適であること、そして着て楽しめるファッション。

WWD:コロナで自身のファッションはどのように変化したか?

エンゲルバート:より快適な服装をするようになったので、スエットにジュエリーをつけるようになった。シンプルで快適な装いにジュエリーをつけることでワクワクする。

WWD:「スワロフスキー」のコレクションを通して伝えたいメッセージは?

エンゲルバート:個性を表現して欲しい。年齢や性別に関係なく、自分自身を大胆に表現できるコレクションになっていると思う。

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下北沢最安値の“110円古着”はなぜ可能か? 藤原輝敏スティックアウト社長に聞く

 何度目かの古着ブームにより、がぜん注目を浴びている下北沢。“若者が大挙し、かつその多くが買い物袋を持っている”ことは以前伝えた通りだ。その際に声を掛けた10代女性が持っていたのが「スティックアウト」の買い物袋だった。彼女たちが買い物したのは税込770円均一の「スティックアウト700」(1号店)だったが、取材後に調べて110円から古着をラインアップする3号店(「スティックアウト100」)が今年2月にオープンしていたことを知る。“下北沢最安値”をうたう古着店は少なくないが、常時一定量の110円商品を並べる店はまれだ。藤原輝敏スティックアウト社長に話を聞いた。

WWD:まずはスティックアウトの“自己紹介”をお願いしたい。

藤原輝敏スティックアウト社長(以下、藤原):下北沢で3店舗を運営していて、1号店のオープンは2007年です。現在税込770円均一の「スティックアウト700」がそれで、20年に2号店である「スティックアウト3」を開店しました。“3”は税抜3000円以下の意味で、店頭には税込で770~3190円の商品を並べています。110~770円の古着をラインアップする3号店(「スティックアウト100」)をオープンしたのは今年2月です。

WWD:「スティックアウト100」における“110円古着”の比率は?

藤原:2割程度を心掛けています。

WWD:「スティックアウト100」の客層についても教えてほしい。

藤原:品ぞろえ、来客像どちらも男女比は半々で、年齢層は10~20代が中心ですね。

知られざる古着の供給源について

WWD:“110円古着”を実現するための供給源について聞きたい。

藤原:これからお話するのはあくまで当社のケースで、それが古着業界の唯一の方法ではありません。特に僕は古着店で修業を積んだわけではなく、独学な部分が多いので。

 まず仕入れ先には国外と国内があります。海外仕入れは当社の場合、世界的な古着の集積地であるタイのアランヤプラテートが供給源となっています。しかしコロナ禍で渡航機会が失われ、今は現地スタッフに依頼して輸入しています。国内仕入れは、さらに2つに大別できます。“ウェス屋(ボロ屋)”と呼ばれるものと、古着卸(古着問屋)です。“ウェス屋”は、家庭から出たゴミ(衣類)が原料です。それを行政が回収して、“紙屋”と呼ばれる業者に持ち込みます。

WWD:衣類なのに“紙屋”に持ち込まれる?

藤原:はい、ただしこれは行政によってまちまちかもしれないですね。“紙屋”が選別し、衣類はあらためて“ウェス屋”にという流れです。

WWD:そして“ウェス屋”から古着店(小売り)が買う?

藤原:ええ。およそ3つの料金形態が存在します。キロ値が1000~1200円の最上位のカテゴリーには「グッチ(GUCCI)」や「パタゴニア(PATAGONIA)」といった人気ブランドや、レザージャケットのような高額商品が混在します。これに続いてキロ値400円、200円などのカテゴリーが設けられています。

WWD:その下はない?

藤原:そうですね。その下は文字通りのゴミになるのかと。

WWD:一方の古着卸とは?

藤原: t(トン)単位の量り売りで、“信用買い”な部分が多く、中身は見ずに決定します。

WWD:中身が見れないということは内容物に偏りがあることも?

藤原:はい。それもあって、当社で仕分けして店頭に並べられるのは15%ほどです。

WWD:残りの85%は?

藤原:当社は、古着卸に戻します。“ウェス屋”に売ることもできるんですが、毎週古着卸に買い付けに行くので、不要な物を持って行って、また買って帰ってくる方が性分的に楽なんですよね(笑)。

WWD:スティックアウトの場合、どの程度の量を買う?

藤原:毎週2、3トンです。僕は中型免許を持っているので、4tトラックで東京郊外をピストン輸送しています。

WWD:社長自ら?

藤原:アルバイトを入れて25人程度の小さな会社ですからね(笑)。社長といったって、デスクで座っているわけにはいきません。“ウェス屋”は埼玉、神奈川、千葉あたりに多く、そこまで行って買い付け、川口市の本社倉庫に持ち込んで仕分けします。僕で週に2往復くらい。ほかのスタッフも入れて、週に10往復くらいはしています。秋冬シーズンはかさばる服も多いので、配送費を安くあげるため、乗用車で下北沢の店舗まで商品を持ってくることもあります。

WWD:古着卸と“ウェス屋”、それぞれのメリット・デメリットについてあらためて聞きたい。

藤原:古着卸のメリットは、なんといっても安さです。t単位の量り売りで、かつ条件がある(内容物が見れない)ため、仕入れ値は“ウェス屋”の10分の1ほど。それに、こちらにも「ディオール(DIOR)」や「プラダ(PRADA)」などラグジュアリーブランドが入っていることがあります。そのあたりは宝くじ感覚というか(笑)。デメリットは、買ったものを当社サイドで仕分ける必要があるので、そこに人件費が掛かることですね。それに仕分けは誰でもできるわけではなく、目が利かなくてはなりません。

 “ウェス屋”のメリットは、“ウェス屋”側で仕分けをしてくれる点です。ジーンズ、ダウン、スカートといった具合にジャンルごとになっているので、狙って買い物ができます。サイズや状態を確認できるのも利点ですね。しかし、“ウェス屋”での売買も100~200kg単位なので、あくまで“ある程度”です。デメリットは、より多くの量を売買する古着卸に比べて割高ということです。

WWD:つまり値段を取るか、時間と手間を取るかの違いである?

藤原:そうですね。中長期的な店舗運営のためには古着卸での買い付けを続けることが必要で、ただしその場合は中身は分からないし、商品の偏りもあるので“ウェス屋”も併用しています。

本題、“110円古着”はなぜ可能か?

WWD:そのあたりに“110円古着”の秘密が隠されていそうだ。

藤原:秘密というほどのものはありません(笑)。時間と手間を掛けるに尽きます。強いて言うなら、古着小売りは一般的に“ウェス屋”で買い付けることが多く、古着卸からt買いするのは珍しいかもしれませんね。その分、売値を下げることができます。ただ、1次流通量が多い(結果としてゴミに出される量も多い)女性物が多くなってしまいがちで、つまりメンズ商品が枯渇気味です。

WWD:ほかに、“明日のスティックアウト”になるために必要なものは?

藤原:誰でもすぐになれますよ(笑)。でも、そうだなぁ、倉庫やトラック、その運転手や駐車場も必要ですね。というわけで、あくまで郊外型のビジネスモデルといえるのかもしれません。いずれにしても、僕らはゴミの中から宝を探し出すことにやりがいを感じています!

WWD:最後に、今後のビジョンについて聞きたい。

藤原:来年めどで、下北沢駅の北口に4号店目の出店を考えています。

WWD:既存の店舗で例えるなら、どの業態に近いものになる?

藤原:2号店(「スティックアウト3」)ですね。スティックアウトの中ではブランド名が立っていたり、少しトレンドを感じさせるアイテムを集約している業態です。それでいて価格は770~3190円。

WWD:“110円古着”の値段を、さらに下げることはない?

藤原:110円で売れないものは50円でも10円でも売れないと思います。“要らないものは無料(タダ)でも要らない”、令和のお客さまはとても賢明ですよ。

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ファストリ柳井社長が10月14日に語った「人権」「信念」「ユニクロ改革」 6000字超の全文公開

 ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は10月14日、2021年8月期決算説明会に登壇し、「グローバル展開の加速」や「人権侵害を容認しない」「事業を通じてより良い世界をつくっていく」ことなど、「商人としての信念」や今後の経営方針を17分にわたって熱弁を奮った。そのほぼ全文に加え、報道陣からの質問に対する一問一答をまとめた。

柳井正会長兼社長(以下、柳井):業績の詳細および有明プロジェクトに関してはご説明を申し上げましたので、私からは、主にファーストリテイリンググループが今何が最も重要だと考えているのか、今後どのような考え方で経営を進めていくのかをお話させていただきます。

(東京)オリンピック・パラリンピックが終わり、世界各地でワクチン接種が進んで感染拡大を押さえこみつつ、経済も成長させていく動きが本格化してまいりました。ファーストリテイリングはこれまでにも増して積極的にグローバル展開、事業展開をしていきたいと考えています。グローバルナンバーワンブランドを目指して成長を加速していく所存であります。

(ユニクロが掲げる)LifeWearの本質は、お客様の要望に応え、顧客を創造することにあります。自ら販売する商品、提供するサービスそのものが世の中の役に立っているのか、事業活動が社会的負荷を増大させるやり方になっていないのか、日常的な事業活動そのもので環境への負荷を減らし、社会の持続的な成長を実現して、自らのビジネスや商品を通じて社会を良くしていく、こうした考え方を具体的な商品の形で表現したのがLifeWearです。このような考え方をよりグローバル、さらに、「ユニクロ(UNIQLO)」だけでなく、「ジーユー(GU)」、「セオリー(THEORY)」、「プラステ(PLST)」などのグローバルブランドでも実現していきたいと考えています。

私たちは服を変え、常識を変え、世界を変えていくことを目指す会社です。日本の美意識を背景に、生まれたLifeWearというまったく新しい概念のもと、これからも服の世界の常識をどんどん変えていきたいと思います。

パリ、台湾、ロンドンで新たな旗艦店出店

世界中のさまざまな国の固有の歴史や文化、習慣などを深く理解し、それぞれの国の社会の発展、人々に暮らしに貢献し、その国のみなさまに最も愛され、支持されるブランドになりたいと思います。それに向けて、今後、グローバル展開を一段と加速させていきたいと思います。

9月16日、パリのリヴォリ通りに「服とアートの融合」をテーマに、ユニクロリヴォリ店を出店しました。オープン当日はファッション感度の高いお客様が多数ご来店され、大変盛況でした。ルーブル美術館やパリ市庁舎があるリヴォリ通りは今パリで最も注目のエリアです。ルーブル美術館とは今年1月、4年間にわたるパートナーシップを締結しました。その一環として継続的にコラボレーションコレクションを発売していくほか、同美術館で実施されるさまざまな活動をスポンサードしていきます。また、ロンドンのリージェントストリートに2022年春、ユニクロとセオリーがコラボした新店舗をオープンします。1900平方メートルという大型店で、ユニクロとセオリーが同居する欧州で初の店舗となります。さらに、今年10月8日、台北のグローバル旗艦店、ユニクロタイペイがリニューアルオープンしました。オープン前にはオープンを待ちわびた多数のお客様が並ばれ、広く新しくなったグローバル旗艦店でのお買い物を楽しんでいただきました。来月には北京初のグローバル旗艦店もオープンします。

人権侵害は容認しない 2004年から「コード・オブ・コンダクト」導入

ファーストリテイリングはこれまでも、人権侵害を絶対容認しない方針を明確にしてまいりました。そして、そのための仕組みを作り、実際に行動してきました。

まず基本的な枠組みとして、すべての取引先工場に、2004年の段階で私たちが設定した「生産パートナー向けのコード・オブ・コンダクト」の遵守、署名を求めています。これは国際労働機関(ILO)の基準に沿ったものです。常にグローバルレベルの人権原則や宣言に沿ってその責任を果たすよう行動してまいりました。

また、すべての取引先工場に対して担当社員および、第三者機関により労働環境のモニタリングを定期的に行い、その結果を取引先工場にフィードバックしています。発見された課題に対しては工場に迅速な改善を求めるとともに、万一、児童労働、強制労働などの深刻な事象が発覚した場合には、取引停止を含めた厳しい対処を行ってきています。

当社の生産事務所がある上海、ホーチミン、ダッカ、ジャカルタ、バンガロールには、品質や生産進捗管理を担う生産部の従業員が常駐しています。加えて主要の事務所には、労働環境のモニタリングや工場の改善指導などを専門的に行う専任チームを配属しています。担当者は毎週担当の取引先工場を訪問し、直接自分の目で工場の現場を把握し、正しい生産プロセスの改善指導を行っています。

世界のさまざまな外部団体との連携も重視しています。労働問題に特化した国連の専門機関である「国際労働機関(ILO)」とのパートナーシップは先ほど申し上げましたが、それ以外にも、世界銀行グループとILOの共同プログラムの「ベターワーク」、
労働環境改善を目指す世界的なNGO「公正労働協会(FLA)」などに加盟しています。また、2019年度からは国連女性機関(UN Women)とのパートナーシップにより、縫製工場で働く女性を対象としたキャリア形成支援プログラム開発と展開に取り組んでいます。これら当社の取り組みはいずれも国際機関などから高く評価されており、世界的に見てもわれわれの取り組みは最も高い水準のものと自負しています。

安易な政治的立場への便乗は、ビジネスの死を意味する

私たち、グローバルに事業を展開する企業として、お互いに利益があるフェアな取引をし、その国の社会を豊かにしていくことが使命です。そのような明確な理念を持って独立自尊の商人として、自らの信念と現実が違っていたら勇気をもってそれは違うと発言しなければなりません。目先の利益のために安易に政治的な立場に便乗することは世界のさまざまなお客様の期待に応えることにはならず、それはビジネスの死を意味します。長い目で見て、けして企業のためにも社会のためにも国のためにもなりません。これは私の商人としての信念であります。

コロナの感染拡大で各国の経済が内向きになり、鎖国のような状況が出てきています。大国同士の政治的な対立、世界を分断しようという動きが強まっています。しかしそれでも現実に情報は世界を絶え間なく行き来し、情報量は数百倍、数千倍、数万倍になっています。ビジネスの世界も世界中で行われ、国と国を分断しいようとする試みはけしてうまくいかない。大国同士の対立は当事国だけの問題ではすみません。周辺地域や近隣諸国は壊滅的な打撃を受けます。そのような事態を避けるため、企業も個人も国も、あらゆる手段を尽くし、すべての国が共存共栄できる世界を作らなければなりません。

高度なトレーサビリティに向け100人体制

私は世界中のお客様に用商品を提供しようとしています。多くの企業に対して政治的な選択を迫るような風潮には強い疑問を感じています。だからといって人権問題に対する自らの姿勢をあいまいにするつもりはありません。説明を申し上げましたように、事業を通じてよりよい世界を作っていくという考え方、むしろ、業界の先頭に立って率先してそれらの問題に関し、改善のための努力を現実行ってきたのはわれわれであります。早い時期から人権侵害をけして容認しない姿勢を明らかにし、そのための仕組みを作り、具体的な行動をしてまいりました。世界各地の現場で工場や現地当局と粘り強く交渉を重ね、われわれの基準に照らして問題があれば改善を自らし、求め、その成果が着々と上がっています。

これまで申し上げた通り、縫製工場と素材工場については、自社と第三者による監査で問題ないことを確認しています。また、服の生産において素材調達は商社や縫製工場が行うのではなく、ユニクロ、われわれ自体で自社の調達チームが生地や糸について指定し、どの紡績工場で生産されているか把握したうえで調達しています。原材料の原産地についても特定ができています。今後、原材料生産地の農家の素材調達の最上流にいたるまで自らの手で確認し、より高いレベルのトレーサビリティを確保していきます。

これに加え、第三者認証の枠組みを活用してより客観性があるプロセスを一つひとつ着実に実現してまいります。これを実現するために、すでにグローバルで100人規模のプロジェクトチームを立ち上げて農家の特定に向けた取り組みを始めています。

柳井財団の第一期生が英米の大学を卒業、志のある個人や企業は軽々と国境を超える

先日、とても嬉しいことがありました。柳井正財団が奨学金を支給している第一期生が初めて今年米国や英国の大学を卒業しました。われわれの財団は、2017年から米国や英国のトップクラスの大学で勉強する日本の学生たち、毎年30人ぐらいに奨学金を支給しています。その人たちがみな最優秀に近い成績で卒業しています。ある人はコロンビア大学の生物医療学と比較文学の両方の学位を取りました。そして卒業後は英国のオックスフォード大学の大学院で医療の勉強をし、その後、米国のメディカルスクールに入って医師資格を取り、世界中で研究と医療の両方やりたいと言っています。そういう若い人が日本から次々と出てきています。本当に頼もしい、喜ぶべきことだと考えます。このように、志のある個人や民間企業は軽々と国境を越えていきます。今の若い世代の最優秀の人々には、そもそも国境の意識がなくなりつつある。このような流れを世界中の国や企業が応援していくべきであると思います。

扉を閉ざして成功した企業はありません。国を閉ざして繁栄した国はありません。とくに日本人、日本企業はこういう時代だからこそ、世界中の志のある個人、企業と力を合わせ、お互いに利益が上がり、持続可能な成長の仕組みを作ることが必要です。そこに日本人および日本という国の将来がかかっている。私たちを含め、海外でビジネスをしている日本企業、日本人はみんなそのために必死の努力をしています。難しい問題は山ほどありますが、それ以外に日本の生き残る道はありません。

【メディアからの質疑応答】

――グローバルに出店し、ビジネスを加速していくという話だったが、コロナ禍を経て、人々の生活や行動様式も変わった。出店をパリや台湾、ロンドンなどにも出すということだが、新たな生活スタイルを実践するようになった世の中において、これからどんなお店がグローバルなお客様に求められると考えるか?

柳井正(以下、柳井):われわれ旗艦店は繁華街に出していくが、むしろ郊外の自分の生活圏、これをより重要視するお客様に対応した店、あるいは、都心でも自分たちの住んでいる地域を大事にする、そういうライフスタイルに変わるんじゃないかなと思います。ですので、そういうライフスタイル(に合った店や商品)。それと、コロナ禍でテレワークがあり、いろいろなことを深く考えるようになったり、家族と一緒に生活する時間が増えてきた。仕事と家族の生活を両方とも追求する、どちらのバランスをとるということではなしに、両方とも追求するようなライフスタイルに変わったので、それに従った服に変わっていくのではないかと思います。

――ファーストリテイリングが人権侵害を容認しないという姿勢について。これまでもその姿勢をクリアにするために自社でもいろいろな取り組みをし、第三者機関の判定や評価を得る活動を現在も行っているということだが、今年4月に新疆綿の問題などで人権侵害についていろいろなマスコミなどでの報道もあった。あえてここで伺いたいのは、ここでこういったステートメントを柳井さんが出したということは、サプライチェーンの中で現時点で感知している人権侵害にあたるような問題はないという理解でよいのか?

柳井:今までも、そして今でもいろいろな地域で起こっています。ただし、それはその都度その都度、工場側と取引を停止したり、あるいは、それに対する改善案を求めたりということをやっています。でも、幸いなことに、われわれはまず、どこの工場でもいい、安いところがいい、ということではなしに、われわれと同じ志を持っている工場の経営者と話をして、そのうえで本当にいい品質の商品を作ってくれるということ前提に話をしているので、そんなにひどい人権侵害みたいなことは、新規の国にいったとき以外はあんまりありません。

――中国のことを聞きたい。終わった期は過去最高ということだったが、コロナ前の2019年に比べると6%ぐらいの増収にとどまっている。ずっと2ケタで成長してきたのが、店舗がこれだけ増えたわりには増収のペースがやや落ちてきているのかなと気になっている。今期は上期は減収減益を見込んでいるが、外資ブランド離れが起きてローカルブランドが強くなってきている市場構造の変化なども影響しているのか?1兆円の目標は今も変わらないのか?

柳井:そういう面も確かにあると思います。ただしわれわれ今、上海や北京などの一級都市以外の、二級都市、三級都市にも出店しています。二級都市、三級都市ではまだそれほど知名度が上がっていません。ですから今から知名度が上がってくれば売り上げが伸びていくと考えています。

――今期、国内ユニクロは事業構造の変革の年ということで減収減益を見込んでいるが、既存店の売り上げが11%の減収ということは、今年の春に(消費税の内税表記に合わせて実質約9%の)値下げをした影響もあるのかと思っている。今、円安や素材高などで値下げの影響が大きく出てくる時期だと思うが、改めて今期の国内事業にどう臨むのか?

柳井:値下げの影響は短期的なものだと考えています。むしろ今、所得が上がらない、報酬が上がらないというところで、プラス消費税という。あの時点で、それを新しい価格にするということは私としてできなかった。また、われわれの会社は為替リスクをとって先物を予約しているので、当面為替の円安に関してはあまり影響がないというふうに考えています。ただし世界的に原材料がすごく上がっているので、インフレになる可能性は、これは服だけということでなしに、あらゆる商品で起きうるのではないかと考えています。

――この決算について、柳井社長としての総括と、増収増益になった要因を改めて聞きたい。

柳井:私は社員全員努力して、こういう苦しい状況の中で非常に頑張ったんじゃないかと考えています。ただしコロナが収束したわけでなく、むしろ東南アジアでロックダウンが続いていたり、止まったり、またロックダウンになったりということもありますし、先進国でもイギリスやフランスはもうコロナと共存するということでいつどんなことが起きるか見当がつかない。そういう不安定な状況ですが、やっぱりグローバルで商売をやっていて良かったなと。というのは、世界経済自体がグローバル経済になっているので。それと世界中の情報、叡智を結して商売をしないと日本だけで完結するような商売は今後非常に難しくなるのではないかと思う。

――決算期間中に吸水ショーツをGU、ユニクロで販売したが、フェムテック関連の商品を販売することになった経緯と、足元をどう見ているのか、今後このような市場がどのように広がっていくとみているのか、御社としてどのようにこのような市場に関わっていきたいと考えているのか?

柳井:これはお客様の要望で非常に多かったんですよ。われわれの取引先で作っているところがあったので、こんなに要望が多いんだったら実験で一度作ってみようかということだったのですが、非常に反響がありました。こういうことで困っている女性の方が非常に多いのだなと。ここを一度深掘りしようと。これは障害者用のアンダーウエアもそうだが、今までのアパレル業界にないようなニーズに関して研究開発、および、実際にそういう商品を作って販売してみてそれを改良・改善してより良い商品を作りたいなと思います。

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「経営の変革」が描く小売業界の明るい未来とは? フルカイテンが初のカンファレンス開催

 小売業界が恒常的に抱えている在庫問題を、独自開発のAIによる分析で解決するクラウド型サービス「フルカイテン(FULL KAITEN)」。このサービスを提供するフルカイテンの瀬川直寛代表は、小売業界の未来への危機感から経営への変革を唱え、それに賛同する経営者や識者が登壇するカンファレンスを開催予定だ。自社サービスの売り込みよりも難しい意識改革にあえて取り組む、瀬川代表のビジョンを聞いた。

市場縮小が「自分ごと」に
なりにくいアパレル業界

WWD:国内市場が縮小し続ける中で、とくにアパレル業界は大きく影響を受けている。そこにどんな危機感を感じているか。

瀬川直寛代表(以下、瀬川):今、国内では年間50万人のペースで日本人の人口が減少している。これは鳥取県くらいの規模だ。同時に2030年には人口の1/3が高齢者となるなど高齢化も進んでいる。さらに消費者が1カ月間に使えるお金(可処分所得)は1999〜2014年の15年間で最大6.2万円も減少した。それだけ国内市場が急激に縮小し続けているにも関わらず、多くの企業はこの30年ほど売り上げ至上主義のまま経営方針を切り替えられていない。縮小市場のときは粗利経営に切り換えないと、在庫の物量勝負で消耗戦を続けるのは、国力を弱めることにもつながると思っている。

WWD:小売業者の中でもアパレルの経営改革が遅れているのはなぜか。

瀬川:日本のファッション産業の市場規模は7兆円だの9兆円だのと言われているが、個別にみると大多数は100億~300億円くらいの企業規模だ。だから9兆円の市場が小さくなると言われても、自社の年商300億円と比べると、規模が違いすぎて自分ごとになりづらい。しかし現在と同じ年齢構成で人口が減少するのではなく高齢化も進んでいるので、例えば30代前半の女性をターゲットにしたブランドだとすると、人口の縮小スピード以上の速さでターゲット層がいなくなるので、年商300億円は維持できない。より早急に手を打つ必要がある。

WWD:小売業者が切り替えるべき「粗利経営」とはどういうことか。

瀬川:在庫の物量で売り上げをつくるのではなく、少ない在庫で売り上げ、粗利益、キャッシュフローのいずれかを最大化させるビジネスモデルのことだ。しかし単純に在庫の量を減らすのは間違い。粗利経営への第一歩は「儲ける力」をつけること。その次に在庫量を減らしていくというステップが重要。

WWD:「儲ける力」とは具体的には何を指すのか。それがなくなったのはなぜか。

瀬川:「儲ける力」をつけるとは、1品番あたりの粗利を上げていくことだ。市場が拡大し続けているときは、そこそこ在庫もはけ、大量の在庫の中からたまたま売れた商品の利益で売れ残った商品の赤字をカバーできていた。しかし縮小市場に転じ、大量の売れ残った在庫をさばくためにセールを早める、回数を増やす、アウトレットを出す、オフプライスストアもできる…など、どんどん利益を失う方向でなんとか在庫をお金に換え、それでも売れないものは場合によっては廃棄されている。サステナブルという観点からもおかしいし、現状がそれでは、近い将来の高齢化社会に向け、恐怖しかない。

WWD:「儲ける力」をつけるために何をすべきか。

瀬川:小売業界では定価でどれだけ売れたかを示す「プロパー消化率」という指標がよく使われる。粗利を上げようとするとき、よく見受けられる間違いが「プロパー消化率を上げよう」という命題を掲げ、消化率何パーセントという“結果”をエクセルで一生懸命追いかけることだ。プロパー消化率を上げるには先手を打つ必要があるのに、結果の数字を見ているところに矛盾がある。数学の分析ではこれを「遅行指標」といい、結果を見るためのものだ。施策を打つためにはフルカイテンでも提供しているような「先行指標」を指針とする必要があるが、小売業界ではこの「結果が出る前の数字」を見る文化がなかった。それはやはり、見なくても大量の在庫があれば売れる時代が過去にあったからだろう。

経営改革でこれからの
「ブランディングの時代」に備えよ

WWD:経営者の意識はどう変わるべきか。

瀬川:当社ではセールスの早い段階から、経営層の方と相談することが多い。いろいろな経営者と接するうち、2種類に分かれていることに気付いた。一つ目は、当社のツールのようなテクノロジーが全てを解決すると思っている人。二つ目は、世の中のあり方や消費者の生活の仕方を変えるために、手段としてツールを使おうと考えている人。これは前者のほうが多いが、正直な話、われわれのようなIT業界側が良くないと思っている。今はDX(Digital Transformation)、少し前ならOMO(Online Merges with Offline)やAI(artificial intelligence)などキーワードでマーケティングをし、そのキーワードに紐づくITツールを導入することが大事だと思い込ませているところがある。実際に社会の考え方を変えるのはとても大変なので、ツールのセールスだけを考えたらキーワードをポンと出して売るほうが楽。だから経営者もツールの導入が全てを癒やしてくれるとう幻想を抱きがちだ。しかし本質を理解している経営者は、大事なのはツールを導入することではなく、どんな未来を作ろうとしているのか、自分の会社のあり方をどう変えたいのか、自分の会社で買い物する消費者の方の生活をどう変えたいかという観点から逆算し、必要なツールがDX系のツールでした、OMO系のツールでした、という選択になる。当社が提供するフルカイテンは粗利経営に有効なツールの一つではあるが、今はツール自体の話よりも、経営者たちに現状の危機を理解していただき、経営改革が必要だと呼びかけていきたい。

WWD:経営改革の先には、どんな未来が待っているか。

瀬川:粗利経営になることでブランディング時代がやってくる。粗利経営とは、単純に値引きをしない、在庫を減らす、原価を下げる、ということではない。原価を下げる点に関しては、各企業の努力で下がりきっている印象だが、それでも大量発注することでさらに数ポイント下げることを頑張っている。在庫を減らすことで、原価が上がってもいい。むしろ原価を上げて、付加価値の高い良い商品をつくることで、値引きをせずに済む。結局、粗利経営に変わることで、従業員の方の待遇を改善し、競合企業と差別化できる良い商品作りや、売り場で顧客に特別な体験を提供することに投資できる。このことを、私は「ブランディングの時代」と呼んでいて、商売をする人には一番楽しい時代が到来する。

WWD:フルカイテンは経営者の改革意識の啓蒙活動として小売業界の識者との対談をYouTubeに精力的にアップしたり、11月には小売業界向けのオンラインカンファレンスを予定したりしている。

瀬川:これまで話してきたことは、産業や国の未来につながる話なので、いちスタートアップの経営者がするには規模が大きすぎるテーマだ。スタートアップの経営者はそういった大きな大志を抱いていることが多いが、実際に語ってしまうと、それよりも目先の自分の会社の経営をなんとかしろと言われがち。また、発信力があるわけではないのでポジショントークと受け止められがちだ。そこで今回のカンファレンスは大きなテーマを「改革」とし、同じような危機感を抱いている登壇者たちが経営の改革について発信することで、小売業界の経営者の意識改革にドライブをかけたい。粗利経営に変わると、各企業の在庫の量が減る。それは大量生産をしなくて済むので、廃棄が減る。国内だけでなく世界中で粗利経営で成功する企業が増えていけば、有限な地球の資源を守ることにつながる。生活のためのお金も大事だが、子どもや孫にいかに今よりよい地球を残せるかにつながっていたら、そんな素敵なことはない。賛同してくれる経営者が増えることを願う。

明るい未来のための
「経営の変革」を目指す
カンファレンス

 フルカイテンが主催する初のカンファレンスが、2021年11月9日(火)に開催される。登壇者は元TSIホールディングス社長・上田谷真一氏をはじめ、北の達人コーポレーション社長の木下勝寿氏など、瀬川社長の意思に賛同してくれた、今をときめく小売業界をけん引する立役者や識者が登壇。全部で5つのセッションで、さまざまな角度から経営改革について、対話を重ねる。

INFORMATION

開催日程:2021年11月9日(火)
時間:13:00~18:00 (計5セッションを予定)
形式:ZOOMでのオンライン
視聴:無料
集客予定人数:500名程度
参加対象者:小売関係者

PHOTO:TAKAO OHTA
TEXT:MIWAKO ANNEN
問い合わせ先
フルカイテン
contact@full-kaiten.com

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投資家も注目するデジタルファッションのドレスX創業者が語る 「10年以内に1億のデジタルアイテム販売を目指す」

 ロサンゼルスを拠点とするスタートアップ企業、ドレスX(DRESSX)はデジタルファッションのみを販売する注目企業だ。同社のウェブサイトではプライベートレーベルのほか、100ブランド以上1000以上のアパレルやシューズ、アクセサリーなどのデジタルアイテムが並ぶ。価格は20ドル(約2300円)前後のTシャツから、1400ドル(約15万円)のドレスまでと幅広い。ユーザーは同社のウェブサイトで着用したいアイテムを購入し、自分の全身写真をサイトにアップロードすると、後日購入したアイテムを着用した状態の画像が送られてくるという仕組みだ。

 ドレスXは、ファッションとテック業界でキャリアを積んだ3人の女性起業家によって2020年8月にウクライナで誕生した。業界の大量生産の現状に課題を感じ、「ファッションが生み出す美しさや楽しさを保ちながら、生産量を減らしたよりサステナブルなファッション、もしくは生産しないファッション」として、デジタルファッションに着目し、その可能性を広げることに挑戦している。これまでに330万ドル(約3億7000万円)の資金を調達し、アプリの開発や独自のNFT市場の構築などを進める。共同創業者のダリア・シャポヴァロヴァ(Daria Shapovalova)とナタリア・モデノヴァ(Natalia Modenova)にオンラインで話を聞いた。

WWD:デジタルファッションに着目した理由は?

ダリア・シャポヴァロヴァ=ドレスX共同創業者兼CEO(以下、シャポヴァロヴァ):私は18歳でファッション業界に入り、出身地ウクライナでファッション番組を企画したり、地元のファッションシーンを盛り上げるためにメルセデス・ベンツ(MERCEDES BENZ)をスポンサーに迎えてキエフでファッション・ウイークを立ち上げ運営したりしていました。ファッション・ウイークをスタートした同時期に、ナタリアと私は東欧デザイナーを中心としたショールームの運営をはじめ、ネッタポルテ(NET-A-PORTER)やファーフェッチ(FARFETCH)、パリ、ニューヨーク、東京などの世界の大型店舗に商品を卸していました。ビジネスをする中でアパレルは生産サイクルが速く、大量に生産している点や、最近ではSNSで写真を投稿するためだけに服を購入し、撮影後には返却する客が多いといった話も聞くようになり問題意識が芽生えました。そこで私たちはSNSやゲームの世界において人々がデジタル上でファッションを楽しむ様子に、未来のファッションのあり方のヒントがあるのではないかと考えました。ちょうどパンデミックになり、人々がオンラインで過ごす時間が増えたことにも後押しされ、創業を決めました。

ナタリア・モデノヴァ=ドレスX共同創業者兼最高執行責任者(以下、モデノヴァ):社名の“ドレス”は、アイテムとしてのドレスにフォーカスを当てるという意味ではなく、“着る行為”そのものをアップデートせよという意味です。英国のバークレイズ銀行の調査によると、英国で購入されたファッションのうち9%がSNS用の写真撮影の後に返却されたそうです。これはコロナ以前の調査結果なので、今現在さらに多くの人がオンラインで過ごしていることを踏まえれば、デジタルファッション市場にポテンシャルがあると思ったんです。

WWD:デジタルファッションを環境負荷が低いという観点でアピールしている点がユニークだ。

シャポヴァロヴァ:ショールームで働きながら、売られない服をたくさん見てきました。これらを誰かの手に渡らせたいというのが、アイデアの発端の一つでした。私たちはデジタルで新しいファッションや消費のあり方を提案したい。これが業界の環境問題を解決する唯一の選択肢というわけではありませんが、その一つであることは間違いない。例えば、ギフティングをデジタルファッションで行えば、ブランドは資源やコストの削減につながります。そして、デジタル上ではデザイナーたちが頭の中に思い描くデザインを膨大な資源を使わずに実現することもできる。表現の幅を広げるという意味でも可能性は大きいでしょう。

モデノヴァ:私たちの独自の方法で、フィジカルで生産していたものをデジタルに変えることでどれくらいCO2排出量が減らせるかを計測したといったデータも掲出しています。

WWD:デジタルファッションは、未知の分野だったと思うが技術的な課題はどのように解決した?

シャポヴァロヴァ:私とナタリアはファッション業界にいましたが、もう一人の創業者のジュリー・クラニエンコ(Julie Krasnienko)はウクライナのスナップチャットで働いていた経験があり、テック系の知識を持っていました。最初は手探りの部分も多かったですが、創業から3カ月後には現在のチーフ・テクノロジー・オフィサーを含む8人のエンジニアを迎えて急ピッチで開発を進めました。現在は写真だけでなく、リアルタイムで撮影をしながら、その人がデジタルファッションを着用しているように見せることもできるようになりました。

NFT市場参入でビジネス規模をさらに拡大

WWD:現在ウェブサイトでは100ブランド以上のアイテムを取り扱っている。どのように参加デザイナーを募った?

モデノヴァ:最初は何人かのファッションデザイナーに声をかけ、彼らの商品をデジタル化することから始まり、さらにどんな機能が必要かといった検証を重ねました。同時にさまざまなデザイナーにドレスXの意義やコンセプトを伝えることで興味を持ってくれるデザイナーが増えていきました。

WWD:フィジカルファッションを提供するブランドとの協業も増えていく?

モデノヴァ:8月にはファーフェッチとのパートナーシップの下、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」や「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」のデジタルサンプルを製作しました。ファーフェッチの先行予約サービス開始に合わせたもので、インフルエンサーだけがそのデジタルサンプルを着用することができ、その着用画像をSNSなどに投稿することで、消費者の実際のオーダーにつなげるというものです。ファーフェッチは顧客からサステナビリティへの要求が高まる中、一部のキャンペーンをデジタル化することでCO2排出量を抑えられるという点にメリットを感じていました。そのほか私たちのウェブサイトにはありませんが、「バルマン(BALMAIN)」とは、彼らのNFT商品の製作を手伝いました。デジタル化には、実際の商品を送ってもらう必要はなく、商品の写真から作成できます。

WWD:「10年で1億のデジタルファッションを販売すること」を目標に掲げているが、その進捗は?

シャポヴァロヴァ:売り上げは非公表ですが、月15~20%増くらいで成長しています。私たちはデジタルファッション分野のパイオニア企業の一つで世界最大のプレーヤーです。11月には自分たちのNFTマーケットを立ち上げるので、その規模はさらに大きくなります。

WWD:ビジネス規模を拡大する上でNFTは重視している?

モデノヴァ:すでにいくつかのNFTマーケットと連携しています。例えばクリプト.comで販売しているNFTアイテムは、購入者だけが着用することができ、その購入者がアイテムを売りに出した場合は、アイテムの所有権が次の購入者に移るという仕組みです。NFTで私たちは、よりエクスクルーシブで少数のアイテムを取り扱うラグジュアリーファッションのカテゴリーを新設する予定です。自分たちのNFTマーケットでは、アプリと連携してユーザが常に自分のデジタルクローゼットを管理できるような仕組みを作ります。

シャポヴァロヴァ:カテゴリーは服だけでなく、靴やアクセサリーもあります。残念ながら、靴はあまり強い商材ではないですが、アプリ内のAR試着では特にアクセサリーが人気です。全カテゴリーを網羅し、まだデジタルコレクションを持っていないラグジュアリーブランドを巻き込んで規模を拡大します。

WWD:現在どのような人がデジタルファッションを購入している?

モデノヴァ:SNSのアクティブユーザーや新しいテクノロジーに関心の高い層、ファッションが好きでかつサステナブルな楽しみ方を模索している層などです。

WWD:今後どのようにデジタルファッションの魅力を広げていく?

シャポヴァロヴァ:例えば、この取材もオンラインで行われていますよね。ナタリアが今着けているアクセサリーはドレスXの商品です。SNSやゲーム、オンライン上でのコミュニケーションの場ではデジタルファッションの需要が分かると思います。ただ、デジタルはフィジカルなファッション市場を侵略するものではありません。現在のファション市場のうちの1%でも、デジタルで楽しむことができればそれだけでも相当なインパクトがあります。いかにデジタルとフィジカルを共存させていくかがポイントになるのではないでしょうか。

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「ガールズ バイ ピーチ・ジョン」と馬場ふみかがコラボ! “ランジェリーマニア”が作ったこだわりのラインアップ

 「ピーチ・ジョン(PEACH JOHN)」は10月13日、若年層向けブランド「ガールズバイ ピーチ・ジョン(GiRLS by PEACH JOHN)」のブランドミューズを務める馬場ふみかとのコラボレーション・コレクションを発売する。

 10〜20代前半の若年層をターゲットにした「ガールズ バイ ピーチ・ジョン」は昨年1月にデビューし、アイコン製品のノンワイヤーブラジャー“ピージィ”など若年層のニーズに合わせた製品を手頃な価格でそろえる。今年3月にはブランドミューズに女優・モデルの馬場ふみかを起用し、同世代からの支持を集めている。

 馬場はミューズに就任する以前からランジェリー好きで、今回は念願のコラボレーションという。製品は下着2型と、ルームウエア1型をラインアップ。ブランド担当者も驚くほどの知識を持つ“ランジェリーマニア”の馬場のこだわりや製品開発のエピソードを聞いた。

WWD:ブランドミューズとして活動は?

馬場ふみか(以下、馬場):今回3回目の撮影でしたが、毎回とても楽しいです。撮影のたびにたくさんの新作ランジェリーに囲まれて、それを身につけて撮影できるのが本当に楽しくて。ブランドミューズになる前からランジェリーが大好きだったので、幸せです。

WWD:コラボレーションに至った経緯は?

馬場:私自身ランジェリーが大好きで、いつか仕事がしたいと思っていました。そんな時にブランドミューズの就任が決まり、せっかくなら作りたいと思い、挙手したのがきっかけです(笑)。

WWD:ランジェリーには専門的な知識も必要だが、コラボコレクションを作っていく中で難しいと思ったことは?

馬場:難しいとか、大変だと思うことはありませんでした。下着ってある程度基本の形は決まっていて、そこからどんなデザインにするか、どんな機能にこだわるかなので。とにかく楽しかったです。色んなランジェリーを身につけてきたからアイデアはすぐに浮かびましたね。

WWD:ランジェリーの知識はブランド担当者も驚くほどだったとか。

馬場:根っからのランジェリー好きというか、マニアというか……。自然と身についていました。「ピーチ・ジョン」も昔から大好きで、以前展開していた「ヤミー・マート(YUMMY MART)」(2019年に終了した若年層向けライン)の店舗もよく訪れていました。今回のコラボコレクションのルームウエアも「ヤミー・マート」でお気に入りだった型を探してもらって、再現したんです。

WWD:コラボコレクションのこだわった点は?

馬場:既存のブラジャーをベースにデザインしたんですが、とにかく盛れて脇をしっかりカバーしてくれる “もりこれ脇高ブラ”(全2色、各税込2728円)を選びました。タイトな服を着るとやっぱり下着のラインって気になるんですよね。私自身も気になる所だったので、脇高は外せませんでした。「ガールズバイ ピーチ・ジョン」世代にも人気みたいです。胸元にはカシュクールを付けました。デザイン性だけではなく、胸の谷間が強調されすぎないようにさりげなくカバーしてくれます。バストの形は盛りつつも上品に着られる工夫です。おそろいのショーツには一部にメッシュを入れて、ほどよい透け感が「ちょっとセクシー」な仕上がりになって大満足です。自画自賛(笑)!若い世代だけじゃなく、大人世代にも気に入ってもらえるデザインだと思います。 “なちゅこれブラセット”(全2色、各税込3278円)は「ガールズ バイ ピーチ・ジョン」の人気アイテムでカラーバリエーションも豊富なんですが、今回はレースのデザインが際立つ淡いラベンダーを選びました。やっぱりレースってかわいいですよね。ショーツもバックまで総レースになっているので、セクシーな雰囲気。ベージュの下地とレースを重ねた透け感デザインもこだわったポイントです。デザイン性と服にひびきにくい実用性を兼ね備えているので、デイリー使いにぴったりです。

WWD:ルームウエアは型からこだわって作ったと聞いた。

馬場:そうなんです。何年も前に「ヤミー・マート」で買ったルームウエアがすごくお気に入りで、最初に「あの型で作って欲しいです!」ってお願いしました。当時の製品を再現しつつ私のリクエストをかなえてもらいました。とくにパンツにこだわっていて、細いリブで裾がフレアになっているので、楽なのにスタイルが良く見えます。着厚ソックスなどを履いても余裕があるくらいの少しゆったりした作りで、おなかをしっかりカバーできる深履きもポイントです。 トップスの襟はスキンケアやデコルテケアがしやすいように大きめにして、丈はおしりがすっぽり隠れる長さ。パンツにインしても出してもかわいいデザインです。あと私的に、もこもこのルームウエアって寝苦しくて……。暖かさもありつつ軽い薄手の生地にしました。寒い時にはガウンなども羽織りやすいちょうど良い着心地です。 とにかく私自身が着たい!と思えるものを追求しました。外出が難しく、おしゃれな服を着る機会が少ない中ですが、おうちの中でもかわいいルームウエアで気分が上がり、中に着る下着ひとつで気持ちが変わると思うので、コラボコレクションで今年の冬を楽しんでもらいたいです。

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イッセイミヤケの宮前義之が考える“次世代のモノ作り” 「エイポック」で未来を織りなす

 イッセイミヤケは9月23日、「エイポック エイブル イッセイ ミヤケ(A-POC ABLE ISSEY MIYAKE、以下、エイブル)」の新路面店を京都市に開いた。「エイポック」は1998年に三宅一生が「服作りのプロセスを変革し、着る人が参加する新しいデザインのあり方を提案する」をコンセプトにスタートした実験的なブランドで、07年に休止。「エイブル」は今年3月に前「イッセイミヤケ」デザイナーの宮前義之が率いるチームにより始動し、「エイポック」のモノ作りを継承しながら「作り手と受け手のコミュニケーションを広げ未来を織りなす」ことを目指す。なぜこのタイミングでの再始動なのか。どう「未来を織りなす」のか。宮前義之「エイポック エイブル イッセイ ミヤケ」デザイナーに聞く。

WWD:改めてA-POCのコンセプトを教えてください。またそれをどのように継承して発展させていくのでしょうか。

宮前義之(以下、宮前):三宅は70年代からパリコレを舞台に仕事をしてきて、新しい時代を迎える2000年を前に、「イッセイミヤケ」のバトンを滝沢直己に渡し、三宅自身は藤原大と「ファッションから新しい価値観を」という思いで「エイポック」を立ち上げ98年に初めてパリで発表しました。A-POCは“A Piece of Cloth”一枚の布という意味です。当時あまり服の業界では使わない“立体成型”という言葉を使い、新しい概念の服作りを探求しようと始まりました。

WWD:「エイポック」は無縫製ニットが印象的でしたね。

宮前:今でこそコンピューターを使うのは当たり前ですが、当時からコンピュータープログラムを駆使して編まれた無縫製ニットが特徴で、チューブ状に編まれたものを切り出すと服が現れる――どこをカットしてもほつれないので、着る人が自由にカットできてカスタマイズできます。つまり、服の完成には作り手だけではなく受け手も不可欠であり、そこが「エイポック」の重要なコンセプトの一つだと理解しています。

 「着る人が服を完成させる」――80~90年代はスターデザイナーがたくさんいて新しいスタイルを作り上げることに大きな影響力を持ち、ファンは誰よりも早く着ることにステータスを感じ価値があった。三宅はそこからさらに、「着る人が参加する意識を作ること」をデザインの世界で提案しました。

WWD:98年は時代の変わり目でした。

宮前:アップル(APPLE)が“アイマック”を発表して、コンピューターが普及し始め、ファッションの世界は「ユニクロ(UNIQLO)」が原宿に出店して格安のフリースが流行り、安くて身近に服を楽しめる時代に向かっていました。大量生産大量消費に向かっていた時代に、小ロット多品種を作るシステムを作り上げたこと、1着でも1000着でも必要な数だけ作ることができる仕組みを作ったのは画期的だったと思います。

WWD:画期的な「エイポック」の服作りは既存の服作りのプラットフォームにはあてはまりません。デザインチームはこれまでとは異なるアプローチをしたのでしょうか。

宮前:従来のように生地を集めて編集して服を作るのではなく、デザイナーやパタンナーが原料、糸作り、生地を織る・編む、染色、加工など全ての生産プロセスに関わりながら作っています。僕自身も2001年に入社して「エイポック」で川上から川下に関与しながら、一枚の布の中に服作りを入れることを経験しました。その姿勢は、三宅が会社を設立して日本でモノ作りを始めた時からですが、特に研究開発が活発なのは社内でも三宅率いる「エイポック」チームだったと感じます。

WWD:宮前さんは「エイポック」からキャリアをスタートしたんですね。

宮前:僕が参加したときはちょうど本格的に始まるときでした。素材のこともわからずに入社しましたが、一から経験できたことが11~19年まで手掛けた「イッセイミヤケ」につながっていると思います。「エイポック」の考えを発展させて“スチームストレッチ”が生まれました。

WWD:「エイブル」はどのようにして生まれましたか?

宮前:コロナ禍で立ち止まり、改めてこれからのモノ作りを考えたときに「エイポック」での経験が自分を成り立たせていると感じました。三宅と会話するなかで、「エイポック」の考え方は今、この時代の変化の中で新しいことができるのではないか、改めてチャレンジしようとなりました。

 “できる、可能にする”という意味の「エイブル」という言葉を加えたのは、「エイポック」の思想から、さまざまなことを現実化したいという思いを込めました。エポックメイキングという言葉もありますが、20年前に画期的な服作りを作り出したように、僕たちもこれからの時代に合った新しい服を発信していきたいとスタート地点に立ったところです。

WWD:“可能にする”についてもう少し教えてください。

宮前:モノ作りは協業です。つまり、いろんな人たちと知恵を出し合わないと新しいモノ作りは非常に難しい。「エイポック」はあらゆる人と密につながり、研究するだけでなく、実装させてきました。着る人を巻き込む形で現実化していきたい。一連のことをコミュニケーションという言葉を使いながら行うことがモノ作りで大切だと思っています。“現実”という言葉が改めて大切になってきている。

WWD:現実とは?

宮前:難しいことではなくて、服作りを通じてチームだけでは見えないことも外の人と会話すると新しい景色が見えて見方が変わり、成長させられる。全てのモノ作りに通じているのではないかと思います。だから面白い。

WWD:“新品はいらない”コンセプトが生まれるほど、気候変動や資源の枯渇といった私たちの現実は厳しくなっています。次世代のモノ作りをどのようにとらえていますか?

宮前:“新しいものを作らない”という考えが生まれるのは、時代を考えると当然のことかもしれません。産業革命以降、大量生産して消費することが経済や豊かさの価値基準として存在してきました。その反動が今起きていて、「これからどうしようか」というフェーズに入ってきている。いろんな方法があると思います。モノをリサイクルすることもそうですし、車や家をシェアすること、そして「イッセイミヤケ」が大事にしてきたことーー長く大切に着てもらうことをどう伝えていくかということもそう。時代の価値観が確実に変化しているし、新しいものだけが豊かさの価値にはつながらないし、それが何なのかを考えています。

 先日読んだ(西陣織の)細尾(真孝代表取締役社長)さんのインタビューに共感しました。「人間が創造することを止めてはいけない」という言葉です。人間には新しい美を追求してきたという歴史があり、それが蓄積されて文化になった。太古の昔から美を求めることでテクノロジーが進化して人間が豊かになってきました。それが止まることはないと思うし、その中で新たな美の価値観、時代ごとに変わる美が問われています。

 ファッションの仕事は誤解を受けやすいと感じます。次の時代のモノ作りに不可欠なことは常に社会とのつながりを感じながら作ること。服は一人では作れない。協力者がいて服ができます。そうした優れた技術やその環境をどう持続可能にするか。何事も継続することは大事で、プリーツもそうですが、一つの技術を継承して発展させることが大切だと思います。もちろん変わることが美徳という価値観もありますが、僕たちはいかに継続させていくかを大事にしています。続けていくにはクリエイションとビジネスの両輪が必要になります。

WWD:発信の場が京都だったのは?

宮前:これからの時代に大切なものは文化だと考えます。三宅との日々の対話でも、文化があるかないかは今後非常に重要になってくると話しています。京都は伝統と革新が共存した町。古いものだけがあるのではなくて、イノベーションが起きています。京セラ、島津製作所、任天堂など独自のイノベーションを起こしている企業があります。三宅の哲学を継承して発展させていくことと、自分自身のやりたいことを重ねたときに、どこで発信したいかを考えたら京都でした。

WWD:伝統と革新の街で、三宅さんの哲学を継承していくんですね。

宮前:自分たち独自のモノ作りを伝統にしたいと社内で話しています。伝統とは物事を大切に守る、残すととらえられがちですが、僕は、伝統は時代に合わせて変化させることだと思っています。三宅一生と「エイボック」の考え方を継承させて発展させる場所として、京都にアトリエも構えられたらと話しています。三宅も「京都の水を借りて僕たちのモノ作り(蒔いた種)を成長させていこう」と話していました。

WWD:今回の新作では、現代美術家の宮島達夫さんとコラボレーションされました。

宮前:宮島さんは、ご自身が迷ったりぶれないようにするために3つのコンセプトを掲げられて時間と生命を表現されています。3つのコンセプトとは「変化し続けること」「あらゆるものと関係を作ること」「永遠に続くこと」。僕たちが次の時代のモノ作りを考えて出した答えと宮島さんの言葉が重なり、前に進むために宮島さんの力をお借りできないかとお声がけしました。

 既存のチームだけではアイデアは限られてくるし、固定概念も生まれます。知らない土地に行きたい、心揺さぶられる景色を見たいのと同じで、異分野に触れたい。モノ作りの原動力の全ては好奇心だと思っています。旅と同じ感覚で、異分野の人、出会ったことない人と面白いモノ作りを「エイブル」で行っていきたい。面白い人に出会うのは半年に1回とは限りません。コレクションのスケジュールに合わせていくのではなくて、違うベクトルで取り組んでいきたい。

WWD:宮島さんとのプロジェクトでは「ソニー」のもみ殻を原料にした多孔質カーボン素材“トリポーラス”を用いました。

宮前:実は「ソニー」とは3年前から取り組んでいました。“トリポーラス”は黒しか出せない制限がある素材ですが、今回の用いるのに最適な素材でした。宮島さんの表現する0~9の数字は生命を表していて、0は闇や死を表現しています。服を通じてこういう人がいるんだ、とかこういう素材があるんだ、と着る人の物語が始まればという思いがあります。

WWD:“トリポーラス”についてもう少し教えてください。

宮前:ソニーはバッテリー電極材料の研究開発をしていた中で、もみ殻が持つ独特な微細構造を発見し、優れた吸着特性を持つ新しい植物由来の多孔質炭素材料“トリポーラス”を開発しました。もみ殻は日本で200万トン、世界で1億トン以上が廃棄されていて、そのほとんどが野焼きされていてCO2が排出されます(編集部注:国連食糧農業機関によると、現在世界で年間4億トン以上のもみ殻を含むバイオマスが、野焼きなど焼却によって処理されており、野焼きで発生する短寿命気候汚染物質(SLCPs)は、気候変動の原因のひとつと言われている)。またもみ殻にはシリカという有害なガラス繊維が入っていて、それを取り除く技術をソニーが開発しました。炭と同じでにおいを吸着したりウイルスを除去したりする性質があり、その性質を生かした用途開発をしていました。「ソニー」には繊維だけではなく、シャンプーや食品に発展したいというヴィジョンがあります。一人でも多くの人に素晴らしい技術があることと世界で起こっている問題を伝える機会を持ちたい。

 今回用いた素材はレーヨンに“トリポーラス”を練りこんでいます。黒の美しさは見る人が見たら違います。通常の黒より黒い。どれだけ洗濯しても、繊維が先に壊れるほど黒が落ちません。黒は色が褪せたり、縫いしろにあたりが出たりしますが、新しい代替素材に用いることができればとも考えています。今回はジャケットやパンツに使っています。今後ベーシック素材にしていきたい。

WWD:売り方について教えてください。シーズン制ではない売り方も検討していますか?

宮前:「エイポック」と「エイブル」の2つ、シリーズとプロジェクトの活動があります。プロジェクトはローマ数字のⅠ、Ⅱ、Ⅲと表現されるもので、異分野や異業種とのコミュニケーションから新たな発想、技術開発を行い、ブランドの革新性を示す重要な役割になっていきます。従来のコレクションのようにシーズンではなく、プロジェクト単位で行います。販売方法は、宮島さんのプロジェクトは店に並べて展示の場を作り、予約をいただき、約1カ月後にお届けするというものです。一切余剰在庫を抱えずに気に入ってくださった方に届けたい。

 シリーズもシーズンはなく、タイプS、O、Uなどアルファベットで発表したベーシックアイテムを提案します。20年間で生まれたスチームストレッチや形状記憶素材、無縫製ニットなどでシリーズ化していきます。普遍的なデザインで汎用性のある男女兼用のアイテムで、日常の中の服のアイコニックな存在になればと考えています。作り方は、当時も今も変わらない、一枚の生地の中に服が織り込まれていて、ジャケット、パンツ、ベーシックアイテムを作り始めています。型は一度作ったら変えない予定で、お客さまにとってのメリットは、気に入って自分の型が見つかれば繰り返し購入できます。自分の好きな形を見つけてもらって生活の中に使ってもらいたい。

■A-POC ABLE ISSEY MIYAKE / KYOTO
京都府京都市中京区富小路通三条上ル福長町106
075-251-1288

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予約66万人待ちの「悟空のきもち」に加えオリジナル製品も大ヒット ゴールデンフィールドの“発想力”に迫る

 
 日本初の頭専門の揉みほぐし店として、2008年に京都に1号店をオープンした「悟空のきもち」。独自に考案した手技で「ほとんどの人を10分程度で眠らせ、幸福感のある“絶頂睡眠”に導く店」として瞬く間に話題となり、現在は5店舗を展開。予約のキャンセル待ち人数が約66万人という驚異の人気を誇っている。さらに睡眠関連製品を中心とした企画開発も手掛け、驚きのコンセプトを持った製品を生み出してヒットさせている。ここでは、そうした規格外のオリジナル製品の概要と、誕生した背景について、同社の創業者である金田淳美代表に話を聞いた。

「WWDJAPAN」(以下、WWD):本業である「悟空のきもち」の現在の状況は?

金田淳美代表(以下、金田):好調です。予約待ちの人数が毎月5000~1万人のペースで増えていて、現在は約66万人待ちになっています。コロナの影響もさほど受けず、最初の緊急事態宣言の時に1カ月間閉めただけでした。

WWD:創業時と比べて手技は進化している?

金田:“絶頂睡眠”を提供するコンセプトは変わりないですが、より快適な“寝落ち体験”をしてもらうために進化を続けています。施術後のお客さまへのアンケート調査で、「快適に眠れた」という回答の多かった際の手技を検証し、それを全員で共有。さらにその中でも高評価を得たスタッフの手技を検証し……という作業を繰り返すことで常にブラッシュアップしています。独創的なビジネスのため、“正解”が世界のどこにもないので、自分たちで常に正解により近づく回答を探している感じです。

WWD:お客さまアンケートは重要視している?

金田:ものすごく重要視しています。例えば“睡眠をアトラクションとして楽しむ”をテーマに、店舗(フロア)ごとに内装を変え、“タイムマシン”“死後の眠りからの蘇生”といったコンセプトのデザインを施しています。これも、施術後のお客さまアンケートで「(眠りが)タイムマシンに乗っているようだった」「(寝起きが)死後の世界から蘇生したようだった」という回答があったからなんです。

WWD:ここ数年はオリジナル製品も話題になっていますね。まず第1弾製品の“塾眠用たわし”とは?

金田:18年に、“熟眠用たわし”というオリジナル枕を発売しました。公式サイトへの掲載以外に広告宣伝を行っていないにも関わらず、累計5万個を売り上げるヒット製品になっています。最大の特徴は、“毛が放射状に伸びている”というたわしの構造を再現し、少しだけ頭皮を均一にいじめ、快適な眠りを誘うことです。

WWD:考案したきっかけは?

金田:開発のきっかけは、寝具メーカーからオリジナル枕の開発依頼を受けたことでした。こういう依頼の際、先方が求めているのって、既存の製品に少しだけ改良を加えることなんです。中には改良は既にできていて、名前を貸すだけのようなパターンもあります。そういう仕事は絶対に嫌なので、受けるか決められずに、スタッフに案件の共有だけして放置していたんです。そんな時、スタッフとのお喋りの中で「彼氏と喧嘩して、むかついてたわしを枕にして寝たら意外と快適だった」という話を聞いたんです。普通なら笑って終わりの会話なのですが、私は施術の経験から“少し強めに頭を刺激した方が快適に眠るお客さまが多い”と感じていたので、「これは!」と思い製品化に行き着きました。

WWD:“睡眠用うどん”は?ちなみに、編集部にこの製品のプレスリリースが届いた時、エイプリルフールネタかと思いました(笑)。

金田:そうなんですね、真面目に作りました(笑)。布団の全てを否定する“睡眠用うどん”として19年に発売し、話題を呼びました。発売初月に2億円の売り上げを叩き出して、現在までに累計2万5000個を売り上げています。製品の見た目は、巨大なうどんを数本並べて作ったような形状で、それを体に掛けたり、すき間に足や手、頭を挟んだりして寝るものです。開発のきっかけは、ざるうどんを食べながら「うどんの中で寝たい」と言ったスタッフの声でした。うどんを数本並べた構造をよく考えてみると、温度調整機能に優れているうえ、寝姿をいつでも自由に変えられ、“抱き枕”にも“足枕”にもなります。とても理にかなっていたので製品化に至りました。

緻密なデータ分析で夢をコントロール

WWD:“睡眠用しゃぼん玉”は?

金田:ゴールデンフィールドの最新作で、早くも2カ月の予約待ちのヒットアイテムになっています。これは一言で言うと“夢をコントロールして、見たい夢を見るための製品”です。“ジャーニー”(旅行)、“スカイ”(浮遊・飛行)、“チャイルド”(遠い昔・再会)、“ロ
マンス”などの“夢カートリッジ”があり、ランプ型の本体にセットして寝るとしゃぼん玉が膨らみ、カートリッジごとに異なった香りと色彩を放つことで理想の夢を見る確率が高まるという製品です。

WWD:開発のきっかけは?

金田:子どもが生まれたスタッフから、「子どもにしゃぼん玉を見せるとよく寝てくれる」という話を聞いたのがきっかけでした。「本当に良いのかなぁ……」と思って調べてみると、“しゃぼん玉は悪夢を軽減する”と言われていることが分かったんです。毎日数多くの施術を繰り返しているので、お客さまアンケートの中には「悪夢を見た」という回答もあります。そのことに関して「何とかいい夢に変えられないか」と考えていたことに加え、“快適な眠りのためには寝る前に見るものが重要”ということが分かっていたので、「寝る前にしゃぼん玉を見せたら変わるのでは」と思いました。

WWD:そこから検証していった?

金田:そうですね。アンケートで“施術で眠った時にどんな夢を見たか”を細かく聞くようにしました。継続しているうちに膨大なデータが蓄積され、それを分析すると“フロアによる壁色や香りの違いで、見る夢の内容に一定の傾向がある”ことが分かりました。そこで、夢をコントロールできる可能性に気付きましたね。それから壁色や香りを意図的に変え、色ごと・香りごとに見た夢の種類を検証し、夢の系統がどのように変わるかというデータを緻密に取集していきました。そうして得られた結果を、落とし込んで作った製品になっています。

WWD:データが蓄積されるほど夢のコントロールの精度が高まる。

金田:まさにそうなのですが、1つ問題があって、夢を見てくれないとデータの収集ができないし、コントロールとかの問題ではなくなってしまうんです。それで、今は夢を見てもらうための手技を研究していて、だいぶ完成に近づいてきたところです。さらに検証を重ねることで、また違った体験を提供できるようになると思います。

WWD:「悟空のきもち 旅する畳店」は?

金田:お客さまと「悟空のきもち」の施術者を、自動運行する“畳”に乗せて走り(時速3~5km)、景色を見ながら施術を受けられるサービスです。“空飛ぶじゅうたんで眠る”ことを畳で実現した企画ですね。期間限定でよみうりランドで運行して、予約枠が全て埋まるほど好評でした。今後も機会があれば、どこかで運行させたいと思っています。

WWD:考案したきっかけは?

金田:これは関西電力と損害保険ジャパン日本興亜との、“自動運転サービス”に関連した共同プロジェクトです。「自動運転の時に何をしたいですか?」という調査で第1位が「寝る」だったことから、最高の睡眠を提供するために3社で企画しました。「自動運転の最新技術と古い畳を合わせたら面白いね」という話になり、できる限り古い畳を探したところ、栃木の天明鋳物家屋から推定200年以上の江戸時代の畳を頂戴したほか、京都の平安神宮からも頂きました。

WWD:“メロンパンマスク”も驚きの製品。

金田:メロンパン専門店「メロン・ドゥ・メロン」の協力を得て開発した、メロンパン製のマスクです。「悟空のきもち」の実験会社として21年に稼働した、悟空のきもち ザ ラボの企画で、パンを愛する大学生の「パンの匂いをずっとかいでいたい」という発想から生まれた、(おそらく)世界初の食べられるマスクです。SNSでかなりバズりましたね。中身をくり抜くのは手作業で行っているので、あまり大量生産はできないのですが、海外からの注文も多いです。ただ最近は、使わずに食べてしまう方が多いようです(笑)。

WWD:なぜ大学生のアイデアを採用した?

金田:今の大学生は、コロナのせいでずっとマスク生活で、思うように集まることもできず、「せっかくの大学時代なのに……」と思っている人も多いようです。そこで、コロナに負けないユーモアを大学生と一緒に表現しました。彼らにとっては“ビジネス体験”のような感じでしたが、自分たちが作ったものが海外にまで届いて、いい経験になったと思います。

会議なし、事業計画なし、売り上げ目標なし

WWD:次から次へと面白い企画が出てくるが、ゴールデンフィールドの社内制度の特徴は?

金田:現在は社員100人ほどの会社なのですが、一般的な企業にあるべきものが、ほとんどありません。会議なし、事業計画なし、売り上げ目標なし、マニュアルなし、さらには採用面接すらありません。これは「普通の企業にあるべきものを設けないという“縛り”の中で何ができるか」という挑戦なんです。私は“縛り”にこだわっていて、例えばサッカーが面白いのって、手を使ってはいけないという“縛り”があるからだと思うんです。実はゴールデンフィールドの社員は全員女性で、悟空のきもち ザ ラボのスタッフは全員21歳以下なんです。これは“女性だけ”“21歳以下だけ”という縛りの中で、社会にもっと面白いことを提案したいという考えからです。ちなみに、売り上げ目標なないけれど、売り上げは創業以来ずっと右肩上がりです。

WWD:特にマニュアルと採用面接がないのは驚き。

金田:手技のマニュアルもありません。手技のスクールを開校しているのですが、そこでは“1度やったことはやってはいけない”という縛りを課しています。ですので、スタッフは常に新しいものを生み出しながら、手技をブラッシュアップさせていく必要があるんです。採用面接に関しては、創業当初は行っていました。でも面接では“自分を作る”人が多く、ミスマッチが起きていました。それで、思い切って面接を止めて、代わりにオリジナルの心理テストをやってもらうことにしました。“似たような嗜好を持った女の子が集まってビジネスをやる”という縛りを設けて、今では心理テストの結果をもとに採用しています。さらに言うと、退職したいときはLINEでそのことを伝えてくれるだけでオーケーです(笑)。

WWD:製品開発などは誰が行っている?

金田:挙手制で、やりたいスタッフがやる感じです。一般的な企業では、「新規開発プロジェクトを任されたら誰だってうれしい」と考えている人も多いですが、それは男性の思考ですね。女性には、新しいことをやるとプライベートが奪われるので、現状維持がいい人も多いんです。今後も“一般的な社内制度は設けない”という縛りの中で、誰も想像していないことを手掛けていきたいです。

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ビジネスウエア3.0を定義せよ! 青山商事×「ニューズピックス」のジャケット製作秘話

 青山商事(広島、青山理社長)が、ビジネスニュースメディアの「ニューズピックス(NEWSPICKS)」と協業し、リモートワーカー向けのジャケットを製作・販売することは既報の通りだ。ここではキーマン2人に製作秘話や、服以外のサービス展開について聞く。

WWD:まずは、今回のプロジェクトのハブとなった「ニューズピックス クリエーションズ」について簡単に説明いただきたい。

纓田和隆「ニューズピックス クリエーションズ」事業責任者(以下、纓田):「ニューズピックス」のユーザーと企業(青山商事)が共同で商品開発および支援を行うサービスの名称で、コンセプトワーク、マーケティング、プロモーションの各フェーズにおいて、知的でビジネス感度の高い若手ビジネスパーソンが集う「ニューズピックス」のポテンシャルを生かし、“伴走する”ことが役目だ。

WWD:「ニューズピックス」のユーザーについても聞きたい。

纓田:会員数は約600 万人で、20〜30代がボリュームゾーン。男女比は8:2だ。

平松葉月・青山商事リブランディング推進室副室長(以下、平松):この20〜30代こそ、“青山商事が取るべきで、しかし決定的に取れていない”ゾーン!……。

WWD:青山商事は2020年に発表した中期経営計画内で、“「洋服の青山」から「ビジネスの青山」へ”をスローガンに掲げた。

平松:それに合わせて同年7月、「ニューズピックス」内に「シン・シゴト服ラボ」コミュニティーを作り、“ビジネスウエア3.0を定義する”をミッションとした。“ビジネスウエア1.0”が企業や社会が定めた白シャツ&スーツスタイル、“2.0”が政府の働きかけによるクールビズやウォームビズなど。そして、“3.0”が生活者が発信する新たなビジネス着だ。働き方が激変する時代において、“ビジネスウエアとは誰のためのもので、われわれは何を提供すべきなのか?”を再考した。

WWD:「シン・シゴト服ラボ」を構成するメンバーとは?

纓田:約140人が参加し、男女比はおよそ半々だ。

WWD:彼らはあくまでボランティア(無償)でプロジェクトに協力している?

纓田:大変ありがたいことに。プロジェクト始動当初は毎週、現在は隔週でオンライン会議を重ねている。

平松:「リモートワーク下のオンライン会議で何を着る?」といったところからスタートし、「着席が基本になるから、上着の着丈は短めでよいのでは?」「パソコンを操作する際にカチカチと鳴って作業の邪魔になる袖ボタンは無くしては?」など、コミュニティーメンバーの声を反映しながら、リモートワーカーの需要に沿うジャケットに仕上げていった。

WWD:ショールカラーのデザインは意外だった。

平松:男女兼用であることが一因かもしれない。「そもそも襟は要らない」という意見もあったが、それだとどうしてもカーディガンに見えてしまう。そこで王道のノッチドを含め、何パターンかの襟型を見てもらい多数決した。

WWD:2色展開の内の1色が、鮮やかなブルーというのも驚いた。

平松:コロナ禍での進行となったため、ほぼ全てのメンバーがサンプル完成までモニター越しに生地を見ていた。素材調達責任者からは「本当にこれでいいのか?」と何度も念を押されたが、コミュニティーの総意は「ぜひ、この色で」だった。完成したサンプルを見たときは、私も「えっ、こんなに明るい色!?」と驚いたが(笑)、すでにウェブ映えを裏付けた格好でもあり、製品化を進めた。

WWD:クラウドファンディングサービス「マクアケ(MAKUAKE)」で10月5日から予約を受け付けているが、商品到着はいつ?

平松:22年2月だ。さらに4月には一般発売も予定する。

「シン・シゴト服ラボ」はコワーキングスペースも開発

WWD:「洋服の青山」の実店舗を活用したコワーキングスペースの提供も始めている。

平松:外出先からオンライン会議に参加しなくてはならないビジネスパーソンのために、20年10月に「洋服の青山 水道橋東口店」を改装して、約半分のスペースをシェアオフィス事業の「ビー・スマート(BE SMART)」として開業した。

纓田:そして21年7月、「シン・シゴト服ラボ」が主導する形で、この内の2つのブースを改装した。1つは顔色を明るく見せるリングライトや高画質のカメラ、ヘアアイロンなどを備える“ウェブ映え1アップルーム”で、もう1つは作業効率を高める横長のモニターや腰痛をケアするチェアなどを備えた“究極の集中部屋”だ。

WWD:平松副室長は「AIチャットボット スナックママよしこ」も手掛けた、青山商事の改革派筆頭だ。次なるアクションも気になる。

平松:次になすべきは店舗改革だ。どんな装置があれば、「洋服の青山」への来客を増やせるのか?例えば、緊急事態宣言が解除されて出張も復活するはずで、その際の手土産を出張先の「洋服の青山」で受け取れたら?ここで生きるのが、全国に700店舗以上を持つ「洋服の青山」のスケールメリットだ。また、急なミーティング用にスマホに入ったデータを出力して資料化できる場としたり、機密情報を破棄する際のシュレッターを配置することも考えられる。ここでは「洋服の青山」の名前が、安心感となるだろう。改革といっても、白を黒にしたいわけではない。かわゆいところに手の届くサービスを心掛け、チームと共に前進したい。

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大迫傑が語る東京オリンピックとランニング人生、思い出の一足

 「100点満点の頑張りができた」――日本の男子マラソンをけん引してきた大迫傑が、8月の東京オリンピックで現役を引退した。一時は先頭集団に話されるも、終盤に2人を抜き、6位に入賞。レース後、涙ながらに胸中を語る姿に心を打たれた人も多いだろう。

 そんな大迫が、スポーツ分野で事業を行う新法人I(アイ)を立ち上げた。アメリカやケニアでの単身練習、ユーチューブでの動画発信、大学のエリート選手を集めるトレーニングチーム“シュガーエリート(SUGER ELITE)”の発足など、枠にとらわれない活動で注目を集めてきた彼は、新会社で何を行うのか。複数メディアの合同取材に応じ、夏のレースや競技生活などを振り返った。
 

――東京オリンピックを一言で振り返ると?

大迫傑(以下、大迫):自分の集大成。インタビューで「100%出し切れた」と言った通り、本当に出し切ったレースで、完全燃焼できました。自分を肯定して競技人生を締めくくれたのは、大きな意味があります。

――引退を決めた理由は?

大迫:多くの選手にとって東京オリンピックは特別な大会でした。言い訳を作れない環境に身を置き、オールダイブするのが一番きれいだと思い、このレースでの引退を決めました。去年から一昨年くらいには考えていましたね。競技人生は、追求すればきりがありません。どこかで物語の終わりを作ることが大切だと思います。

――人生の分岐点は?

大迫:アメリカに行ったことですかね。場所はどこでもよかったけど、自分の世界から一歩踏み出せたことが財産になりました。見えてなかったものが見え始めたし、いろんな人と出会い、刺激を受けて、アウトプットできました。「こんなことが日本でできたら楽しいんじゃないか」と、新しく挑戦したいことも見つかりました。(約半年の合宿を行った)ケニアでは、より削ぎ落とされた環境でトレーニングができ、思考がクリアになり、メンタルがシンプルになりました。これは今にも生きています。

――英語は話せた?

大迫:全くしゃべれませんでした。銀行口座を作るのに5〜6回も通ったし、部屋をかりるのも大変だった。でも、だからこそ、ランニング以外でタフになれたんだと思います。練習や大会は自分の好きなことなのでやり切れるけど、その他の“やらなきゃいけないこと”でも学びが多かったです。

――海外で戦う難しさと、それを乗り越えるために必要なものは?

大迫:フラットな気持ちでいること。考え過ぎたり、計画を練り過ぎたりすると、それに沿った行動しかできません。それよりも、自分がいる場所で、今、何ができるかを考える。出たとこ勝負でもベストを出せる実力と自信を備える。こういったことが必要だと思います。

――2016年のリオ五輪後にマラソンに転向したのはなぜ?

大迫:いずれはマラソンに挑戦したいと思っていて、リオの後に「香川丸亀国際ハーフマラソン」に参加しました。そしたら意外とよく走れて、その勢いのまま「ボストンマラソン」にエントリーしました。初のマラソンだし、そもそも42.195km走れるのか不安もあったんですけど、3位に入って。「もしかしたら、僕の種目はこれかもしれない」と感じました。

――大迫選手の足元は、常に厚底シューズが支えていた。思い入れのあるシューズは?

大迫:「ナイキ(NIKE)」の“ズーム ヴェイパーフライ 4%(ZOOM VAPORFLY 4%)”。ボストンではいたシューズだし、厚底シューズが注目されるきっかけのモデル。その後もレースでは厚底ばかりだったので、ストーリーを感じますね。他には、“フライニット”のモデルが出た時は、「アッパーにニットを使うんだ」とびっくりしました。シカゴマラソンは“ズーム ヴェイパーフライ 4% フライニット(ZOOM VAPORFLY 4% FLYKNIT)”で日本記録を出せたし、結構好きでした。

――東京オリンピックで着用したシューズはどこに保管している?記録を出したシューズはしっかりと残しておくタイプ?

大迫:どこにあるかな、絶対に置いてあるんですけど……。探してみます。そういうタイプです(笑)。

――アスリートの教育やマネジメントを行う株式会社Iを立ち上げた。会社名の由来は?

大迫:SNS全盛の今は、主語が“自分”になりづらい時代です。情報であふれていて、何かを決めるときも誰かの考えに影響されています。でも、主語を“I”にすることで、人生はもっと豊かになる。そんな思いを込めています。あとは、競技や社会への“愛”、第一歩という意味も込めています。

――会社立ち上げの目的は?

大迫:僕にしかない立場や視点から、スポーツ界の価値を高めるためです。いろんなことに挑戦してきた、気づいたことがたくさんあるので、それを生かした事業を行います。まずは、ランニングプログラム“シュガーエリート”でパフォーマンスのトップ集団を作ること。アメリカやケニアの練習で「一人では到達できるレベルに限界があること」を痛感したし、大学や企業がコーチング活動の裾野を広げるのも難しい。チームの枠にとらわれず、速くなりたい人が集まり、外にいる僕らがサポートしながら切磋琢磨するコミュニティを目指します。

――アスリート教育やマネジメント以外は?

大迫:スポーツで得られるスキルや価値を幅広い人に還元し、スポーツを通じた社会貢献を目指します。スポーツで得られる経験は、スキルを磨くことだけじゃありません。例えば目標を細分化し、ステップアップするプラン設計。これはスポーツだけでなく、あらゆる“夢”に通ずる考え方です。僕自身、子どもの頃にこれを知っていたら違う生き方をしていたかもしれません。こういった一般生活にも通ずるスポーツの価値を、もっと発信していきたいです。あと、全国を回るなかで、いろいろな地域課題を知りました。スポーツやランニング文化を通して解決できることも多いと考えているので、それを実現していきたいです。

――最後に、読者にメッセージをお願いします

大迫:これからもどんどん発信していくし、陸上やスポーツを軸に活動していきます。興味のある人は、僕と一緒にスポーツと社会を盛り上げましょう。

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「デジタルの寵児」がトラベルブランド「モルン」をスタート “モノ”にこだわった理由に迫る

 

 ライフスタイル分野におけるサブスクリプション事業の企画などを手掛けるフランキーは今冬、トラベルブランド「モルン(MOLN)」をスタートする。それに先立ち、第1弾アイテムであるスーツケースのデザインイメージをティザーサイトで公開し、バーチャルトラベルコンテンツ“I Miss Traveling”を同時公開。空港ロビーや航空機での離着陸、世界のさまざまな都市を音で楽しめる体験の提供を開始した。フランキーの赤坂優代表は、2012年に国内最大級の恋愛・婚活マッチングサービス「ペアーズ(PAIRS)」をリリースし、婚活アプリブームの発端を作った“デジタルの寵児”だ。そんな赤坂代表がなぜ“モノ”にこだわり、しかもコロナ禍で逆風が吹いているトラベルジャンルなのか。ここでは、スーツケースのデザインを手掛けたデザインスタジオエスの柴⽥⽂江代表、ロゴやウェブサイトのデザインを手掛けた岡本健デザイン事務所の岡本健代表とともに話を聞いた。

「WWDJAPAN」(以下、WWD):コロナ禍でデジタルがもてはやされている中、なぜ“モノ”のブランドで、しかもトラベル関連なのか?

⾚坂優代表(以下、赤坂):インターネット界隈にいたからこそ、“モノ”がすごく恋しいというのがあります。もともと好きだったけれど、“モノ”を作る仕事には縁がなく、インターネットやスマートフォン向けのサービスを作ってきました。でもやはり“モノ”を作ってみたいという、合理性やロジックではない、「やってみたい」という気持ちを優先させた感じです。前の会社を売却し終えて、18年にアパレルブランドを、20年にバイオエタノール暖炉の会社を買収してモノ作りに触れ、その後に愛犬向けアイテムのサブスクリプションサービスのブランド、完全会員制の料理とワインのサブスクリプションサービスのブランドを立ち上げました。愛犬向けアイテムのブランドが、初めて自分がゼロから立ち上げた“モノ”の会社なのですが、実は着手したのは「モルン」の方が早く、以前からずっと作りたかったのがスーツケースなんです。

WWD:コロナの影響で旅行関連の業種は苦境に立たされているが、それでも立ち上げた理由は?

赤坂:まず着手し始めたのが20年1月くらいで、国内ではコロナの深刻さがあまり理解されていない時期でした。緊急事態宣言が出る頃になっても「これを機にライフスタイルの変化が進むことはあっても、いつかまた絶対に日常が戻って来る」と漠然と思っていたので、一時的に世の中全体として旅行ができなくなったことは気にしていませんでした。今の気持ちは、その時とはちょっと変化していて、「旅行に行けなくなった分、『行きたい』という意欲は抑圧されていたので、必ず跳ね返ってくる」と思っています。また安心して旅行に行ける世の中になることを願いつつ、そこは期待している部分でもありますね。

WWD:そもそもトラベルグッズを作ろうと思ったのはなぜ?

赤坂:シンプルに旅行が好きだからです。それに加えて、既存のスーツケースを含む旅行関連アイテムの市場に関して、「本当にこのままでいいのだろうか」と感じていたことも大きかったです。小売店のスーツケース売り場などによく行くのですが、あまりにもメーカーから生活者までの距離感が遠い印象で、メーカーがユーザーである生活者と向き合えていないというか、どちらかというと「“販売員がセールストークをしやすいかどうか”といった視点での製品作りをしているのではないかな」と感じてきました。また、購入者の目線でも「こういうスーツケースが欲しい」などと具体的に想起するイメージがありませんでした。店頭で「できるだけ軽いものがいいな」「動かしてみて静かなものを買おう」といった軸のみでの購入検討となる傾向にあり、ブランドが持つ世界観やそこで醸成されるカルチャーへの共感が購入動機となるケースが少ない状態だと思いました。そこで、自分たちでブランディングして、直接販売できる環境を作れば、今までと違うトラベルブランド作りができるかなと考えたんです。

ニューノーマル時代のトラベルブランド

WWD:その企画を実行するに当たって、2人をパートナーにしたのはどういったことから?

赤坂:僕はモノ作りが初めてなので、スーツケースを作りたいけれど、どうすればいいのか分からなかったんです。そこで協力いただきたいパートナーを探す過程で、「この人の作品がすごく好き」と感じたのが(柴⽥)⽂江さんで、時間をもらって「スーツケースを作りたいんです」と説明に伺いました。面識がないのにいきなりアポイントメントの電話をかけたので、「一体何者?」と感じられたと思います(笑)。そこから、文江さんとプロダクトのグラフィックやロゴのデザインを進めていく中で、(岡本)健さんを紹介していただきました。

WWD:柴田さんは、最初にお話を受けた時どう思った?

柴⽥⽂江代表(以下、柴田):若い男性が事務所に来て「スーツケースを作りたい」と言うので、「ああ、この人絶対分かってない」と思いました(笑)。スーツケースを作るのってすごく大変なのに、「お菓子を作るみたいに、すぐその場で作れるようなイメージでいるのかな?」みたいな(笑)。けれどお話を聞いてみると、いろいろとリサーチされていて、ほかの協力者の方々もいて、本気だなとすぐに分かりました。何より「“スーツケース”という既存の価値観に対するチャレンジがしたい」という気持ちにすごく共感しました。固定概念に対して違う選択肢を作るのは“デザイン”が得意なところですが、そう言ってくる経営者はなかなかいません。「こういうのを作って儲かる商売をしたい」など、経済的な狙いから始まることは結構あるのですが、「世の中の価値観をモノ作りを通して変えたい」という依頼は珍しく、参加したいと思いました。

WWD:岡本さんを紹介したのは?

柴田:ある程度「モルン」のイメージができてきて、赤坂さんから「グラフィック周りはどうするのがよいですか?」と相談があったとき、私は岡本さんの仕事が好きで「いつかチャンスがあったら」と思っていたので推薦しました。

岡本健代表(以下、岡本):僕も柴田さんと同じで「スーツケース作りは大変」という印象を持っていましたが、プロダクトを柴田さんがデザインされるということで、生半可なモノは作らないだろうと分かりましたし、何より柴田さんのクリエイティブを間近で見られる貴重な機会が嬉しくて参加に至りました。

WWD:なぜスーツケース作りは大変?

柴田:例えば部品が多岐にわたっていて、それぞれ製造している工場が違うケースが多いので生産管理が大変、などといったハードルがあります。新規で作るとなると、私の経験上ではかなり難易度が高いプロダクトだと感じていました。

赤坂:プロジェクトを進めていくうちに、スーツケースを作った経験がある人がチームにいないと難易度がさらに高まると分かってきて、その道に長けたゼロワンデザインの田中信吉代表にもチームに参加いただきました。中国の製造工場とつないでくださるなど、本当に助かりました。

岡本:新ブランドを立ち上げてゼロからイチを作る際には、開発コストも含め取り掛かりやすいモノから着手しがちですが、今回のようにいきなり難易度の高いプロダクトに取り組む姿勢はとてもワクワクしました。僕が参加したタイミングでは、CGなどである程度プロダクトの設計が仕上がっており、すでに柴田さんが「モルン」の世界観を定着してくれていたので、ロゴなどのデザインにも取り掛かりやすかったです。

表参道にフラッグシップショップをオープン

WWD:デザインはどう決めていった?

赤坂:デザインは正直、お2人にお任せした部分が大きかったです。僕がゴールに設定したのは、旅行に行こうと思った時に、最初にイメージしてもらえるブランドです。そのためには、機能がしっかりしていて、買い求めやすい価格で、なおかつデザイン性の高さが必要。ですので、僕が理想とする機能を伝えて、そこからデザインいただきました。

柴田:赤坂さんへのヒアリングはとても細かく行いました。例えば「PCを持ち運びたい」という要望をもらった時、「ビジネスバッグみたいになってしまい、うまくまとまらない」と伝えたのですが、「そこは譲れない」という話になりました。でもよく考えて、それは新しいなと思ったんです。旅って昔からある非日常で、デジタルではないけれど、私たちの生活の中でもはやデジタルは切り離せず、懐かしさやノスタルジーの気持ちの横にはPCがある。それがフランキーの求めている普遍性や新しさ、懐かしさなのかなと思うようになりました。それで、PCを入れるポケットを設けたのですが、まるでポケットがないように見えるデザインにしました。

WWD:確かにシンプルに見える。

柴田:でもそのシンプルが一番大変なんです。シンプルに見せるために、物理的にいろいろなものを内包しないといけない。それが難しかったですね。その一方で、スーツケースは便利だけれど、“旅”という点からすると味気ない感じもしました。旅には“鞄”を持って行くのがかっこいいし、絵本などでも旅のお供は鞄で描かれるケースが多い。そこで、鞄のしっとりした感じがほしくて、PCのポケット部分は合皮でレザーの質感を演出しました。

WWD:カラーリングのこだわりは?

柴田:地球を旅するイメージで、地球の色にしたいと思いました。赤土のチャコールや、石のライトグレーなどですね。

WWD:ロゴはどういう発想から作った?

岡本:スウェーデン語で“雲”を意味する「moln」というブランド名を体現するべく、まずは雲についてリサーチしたり、思いを巡らせたりしました。そして旅と雲の関係性について考えていたのですが、スーツケースを持って旅する時って、飛行機に乗ることが多いですよね。飛行機で目的地に向かう途中、飛行機は1度雲の上まで上昇し、雲の上でのフライトを楽しんだ後、再び雲の下に降りると目的地の街並みが見えていたり……。旅の道中には必ず雲が介在しているので、その情景をロゴとして形にできないかと思い、「moln」のアルファベットが雲で見え隠れしている様子を表したロゴマークを制作しました。プロダクトには、「moln」の文字が雲の上と雲の下に存在している2種のロゴマークが刻印されています。

WWD:「モルン」の店舗もオープンするそうだが、それも含めた今後の予定は?

赤坂:スーツケースは、実物を見て購入したいという方も多いので、今冬に東京の表参道エリアにフラッグシップショップをオープンする予定です。店舗設計はケース・リアルの二俣公一代表に手掛けていただき、「モルン」らしい空間を表現しています。今後は、アイテム数を増やしていきたいですね。スーツケースだけで旅行に行けるわけではないので、ネックピローやアイマスクといった必要なモノをラインアップして、“旅”といえば一番に思い浮かべてもらえるようなブランドになりたいと思っています。

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医学×美学×睡眠学の専門家と共同開発 「セラティス バイ ミクシム」で新・夜のうねりケア

 「アンドハニー」や「ミクシムシリーズ」など数多くのヘアケアアイテムを企画・開発するヴィークレアは今秋、“夜の寝ぐせ・うねりケア”をコンセプトとした新ヘアケアシリーズ「セラティス バイ ミクシム(THERATIS by mixim 以下、セラティス)」を登場させた。同シリーズは医学・美学・睡眠学の3人の専門家とともに開発を行った、ナイトケアに着目して寝ぐせやうねりを抑制する製品。そこで今回、美学のスペシャリストとして開発に携わった内田聡一郎「レコ(LECO)」代表と、寝ぐせやうねりなど髪の悩みを抱えているという、モデルの菅沼ゆりと松本優が鼎談を実施。オリジナルの“寝ぐせコントロール処方”や、効果だけではない使用を続けることで得られたことについても話を聞いた。

新習慣
「夜の寝ぐせ・うねりケア」を提案

WWD:新しい美容習慣「夜の寝ぐせ・うねりケア」を提案する「セラティス」の特徴は?

内田聡一郎「レコ」代表(以下、内田):同製品には寝ぐせを抑制するために3つの成分が入っており、うねり抑制成分※1、枕などによる寝ている間の摩擦ダメージを軽減する成分※2、就寝時に髪が蒸れて寝ぐせができてしまうのを防ぐための水分コントロール成分※3です。さらに、ナノ化した補修成分※4が寝ている間に髪にしみ込んでダメージを補修してくれます。

菅沼ゆり(以下、菅沼):髪質が細くて柔らかいので、普段から広がりやダメージが気になっていました。けれど「セラティス」を使ってからは、軽くアイロンをしただけでもストレートになるような、髪のまとまりが良くなったと感じましたね。

松本優(以下、松本):私は約3カ月前に初めて黒髪をブリーチしてハイトーンにし、そこから髪の傷みやうねりがさらにひどくなっていました。「セラティス」を使ってから、ドライヤーだけでもうねりが収まりやすくなったように感じます。

※1 γ-ドコサラクトン(補修)
※2 加水分解コンキオリン(保湿)
※3 加水分解ハトムギ種子(保湿)
※4 加水分解乳タンパク(補修)

使うほどに効果を実感

WWD:内田さんのこだわりポイントは?

内田:中身はもちろん、パッケージにもブランドのこだわりが感じられます。特に若年層は、バスルームに置いておいても“絵になること”が大事。だからこそバスルームでも“映える”ものに仕上がっていると思います。あらゆるヘアケア製品があふれている中で、一番自分が使いたいと思える製品になりましたね。また、サロンのお客さまからも、寝ぐせやうねりのデイリーケアは直結した悩みとしてよくあげられます。今回は女性視点に立ち、そんなデイリーの髪悩みケアに特化させて朝のセットしやすさも重視しました。

菅沼:ヘアオイルは特にお気に入りです。寝る前に髪の保湿として使うのも好きですが、朝にスタイリング剤として毛先に使用すればまとまりが出ます。

松本:ヘアパックも髪が保湿されてさらさらになりますよね。毎日使うと成分が浸透して髪のまとまりが良くなったと感じます。ドラッグストアやバラエティーショップなど手に取りやすい場所で扱っている点もうれしいです。

内田:シャンプーやトリートメントは使用するほど効果が分かると思います。最低でも3週間は使い続けて欲しいですね。ヘアオイルはドライヤー前に使うと髪に成分が浸透されて保湿などの効果を感じると思いますよ。

松本:スキンケアと同じですね、これからも使い続けたいと思いました。家で簡単に美容室と同じケアができるのは、本当に便利な製品だと思いました!そして“朝のセットしやすさ”も重視しているアイテムなだけあり、うねりを直すことが少なくなって朝のストレスがすごく減りました。

菅沼:これまでは寝ぐせを直すのに、私は30分以上かかっていました。ここまでくるとむしろ、直す気もなかなかおきないくらい。「セラティス」を使うようになってからは、朝にすぐ寝ぐせを直せるようになり、今はノンストレスですね。ストレス軽減につながったのが一番うれしいです!

スペシャリストのこだわりを紹介

 「セラティス」は、医学・美学・睡眠学・の専門家3人と共同開発。各分野の視点から、髪の悩みである寝ぐせやうねりの抑制に着目した処方設計や成分配合を行った。

※5 基剤を除く、水を含む
※6 水溶性コラーゲン(補修)
※7 セラミドNG(補修)

“うるサラ”な仕上がりに導く
「セラティス」

 「セラティス」は、仕事にもプライベートにも忙しい20代後半の女性がターゲット。そんな時間も気持ちも余裕がなくなりがちな忙しい朝の時間を、少しでもストレス軽減できるようにと開発された。

 同製品は、髪の補修に特化したナチュラルヘアケアブランド「ミクシム(mixim)」の新シリーズ。未来の美髪をつくる&予防するダメージケア「ミクシムサプリ(mixim suppli)」、高機能オーガニックヘアケア「ミクシムポーション(mixim POTION)」、自然科学から生まれた機能性ナチュラルヘアケア「ミクシムパフューム(mixim Perfume)」などを展開している。一人一人にぴったりの「ミクシム」がきっと見つかるはずだ。

問い合わせ先
ヴィークレア
03-6804-5033

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豊島の21年6月期は2期連続の最高益更新も、22年は一転減益へ 豊島社長「今期は4重苦」

 大手繊維商社の豊島(非上場)は7日、2021年6月期決算は売上高が前期比9.6%減の1814億円、営業利益が同25.7%増の77億円、経常利益が同18.2%増の90億円、純利益が39億円(前期は7億6500万円の赤字)だった。営業利益と経常利益は2期連続で過去最高を更新した。売上総利益率は14.2%で、前期に比べ2.4ポイント改善。コロナ関連の医療用品や主力のOEM・ODM事業が好調が押し上げた。減収の主な要因は綿花取引からの戦略的な撤退で、素材全体では220億円の減収要因になった。

 22年6月期の目標は売上高が1800億円、経常利益が70億円。同社は年1億着とも言われる物量を供給するアパレルOEM・ODMの最大手グループの一角だが、豊島半七社長は「緊急事態宣言の解除など小売りには明るい材料が出ているものの、足元では停電やコンテナ不足による出荷遅れなどの物流の混乱、ASEANでのロックダウンの影響、綿花を始めとした原料高、円安など、サプライヤーは4重苦5重苦のような状態だ。全般的にアパレル市況は依然として苦しく、値上げが通っていない。今期(22年6月期)は大変厳しい」という見通しを示す。決算発表での豊島社長とメディアの主な一問一答は以下の通り。

−1年を振り返って。

豊島半七社長(以下、豊島):コロナが20カ月近く続いて、日本のアパレル産業、特に営業時間の短縮や人流の減少などで小売業にダメージが大きかった。サプライヤーであるわれわれも原材料費の高騰や、短納期対応のためのエアー(航空便)が増えて経費増を強いられたものの、医療ガウンなどのコロナ特需や不採算部門の縮小などで増益になった。現場の社員はよく頑張ったとは思うが、一方で在宅ワークが当たり前になる中で、どこかに「それでもなんとかなる」ようなムードが出て、仕事がどこか雑になっている。エアーの増加は、そうした緩みによるものだ。

−22年6月期は減益の計画。理由は?

豊島:足元の状況は大変厳しい、というのが率直な感想だ。停電やコンテナ不足による出荷遅れなどの物流の混乱、ASEANでのロックダウンの影響、綿花を始めとした原料高、円安など、サプライヤーにとっては4重苦5重苦のような状態だ。それでも市場全体が値上げを受け入れる地合いではなく、コスト増はわれわれが負担するような形になっている。(減益は)前期まであったコロナ特需もなくなることも一因だ。

−納入単価は?

豊島:原燃料高などに加えて、トレーサビリティの確保やカーボンゼロに向けた取り組みの強化をしているが、それもコスト増につながっている。それでも結果として全般的に納入単価を押し上げることにはなっていない。それだけ市況が厳しい。ASEANのロックダウンに加え、業界全体が小ロット短納期に再び以降しつつあり、中国での生産比率が再び高まっているのも不安材料だ。コロナ禍以前に戦略的にASEANシフトを進め、一時は当社の生産比率はASEAN生産が全体の2割くらいまで上昇したが、現在はまた1割近くにまで減少している。

−15年前からオーガニックコットン素材「オーガビッツ」に取り組むなど、サステナビリティを業界の先頭に立って推進してきた。課題は?

豊島:トレーサビルなオーガニックコットン「トゥルーコットン」は取引先から高い評価を得て、順調に取扱いが増加している。ただ、「オーガビッツ」も含め、素材の取扱いがコットンに偏っている。素材全体のシェアは圧倒的にポリエステルやナイロンなどの化学繊維が多いのだから、社としてはその部分を強化する必要がある。

−こちらも業界の先駆けだったスタートアップへのCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)の状況は?

豊島:この1年ではアディダスの創業家によるスポーツテック向けのファンドであるリードスポーツリミテッド(leAD SPORTS LTD.)や、そのリードとイスラエルのベンチャーキャピタルであるアワークラウド(OurCrowd)の設立したアドバンテージスポーテックファンド(Advantege Sports Tech Fund)、日本のフィットネスベンチャーのテンシャル(TENTIAL)、リハビリ介護のクラウドソフト開発のリハブフォージャパン(Rehab for JAPAN)など5社に出資した。いずれも少額出資でああるものの合計で23社。それなりの規模感にはなっている。年内は近々発表予定のグッドバイブスオンリーを含め2社への出資を予定している。

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「日本発のラグジュアリーを作る」 羽田空港が山本寛斎事務所と目指す地方創生

 羽田空港は来春、日本各地の商材を世界に発信するラグジュアリーブランド「ジャパンマスタリーコレクション(JAPAN MASTERY COLLECTION以下、JMC)」を本格始動させる。地方の優れた技術や素材に裏打ちされた商品を集めるほか、「カンサイ ヤマモト(KANSAI YAMAMOTO)」を運営する山本寛斎事務所のサポートを受け、ファッションや日本のポップカルチャーなどを掛け合わせたオリジナル商品も提案する。同時に、同ブランドに特化した売り場を羽田空港ターミナルに設けるほか、ECサイトの運営も予定する。中国から欧米まで広く訪日客を取り込む。

 同プロジェクトをリードしてきたのは、羽田未来総合研究所の大西洋社長だ。三越伊勢丹ホールディングス社長を経て、2018年に現職についた大西社長は、地方創生や文化・アートに可能性を見出し、小売りの新たな価値想像を目指してきた。パンデミックで経済全体が低迷する今、地方にフォーカスする目的とは。大西社長と、高谷健太・山本寛斎事務所代表取締役に聞いた。

WWD:地方にフォーカスしたブランドを作る目的は?

大西洋・羽田未来総合研究所社長(以下、大西):地方は日本のGDPの半分を稼いでいる。ここが伸びないと日本の経済は良くならない。半導体など、アメリカや中国に勝てる分野もあるが、自動車といった分野はダウントレンドになり、戦後のようにファイティングする力はどんどんなくなっていく。競争ではなく、日本にしかない産業を生み出すべきだ。

WWD:その可能性の一つが、地方だと考えている。

大西:その通り。地方には歴史と伝統に育まれた技術力や匠の技、職人の技が無数に眠る。それを産業化し、経済循環を作り、日本を盛り上げたい。

WWD:いわゆる伝統工芸を集めるだけでなく、ファッションMDも重視する。その理由は?

大西:長い小売経験から、「日本発のラグジュアリーブランドを作りたい」という思いがある。フランスやイタリア、イギリスのラグジュアリーには、日本のテキスタイルや素材が使われている。デニム生地はその代表だろう。それなのに日本発のブランドが出来ないのは、ブランディングをやる人がいなかったから。ファッションの歴史や文化が関係するとはいえ、多くのラグジュアリーブランドもさかのぼればファクトリーブランドだった。日本でもラグジュアリーは作れるはずだ。兼ねてから付き合いがある山本寛斎事務所にブランドの発掘やコンサルティングなどを手伝っていただきながら、ジャパン発のラグジュアリーブランドを目指したい。

WWD:山本寛斎事務所にサポートを依頼した理由は?

大西:寛斎さんは早くからヨーロッパに進出し、最後はデザイナーの域を超えて活躍した。寛斎さんは亡くなったが、チームには彼の思いが色濃く継がれ、地域とのつながりを何よりも大切にしている。その姿勢に強く共感した。

WWD:実際にさまざまな産地を訪れると、改めて日本や地方の底力を感じる?

高谷健太・山本寛斎事務所代表取締役(以下、高谷):ものすごいパワーを持っている。しかし、私たちが素晴らしいと思っても、相手はキョトンとしていることが多い。地方の素材を産業化するには、まずは彼らが自分たちの技術力の高さ、アイテムの完成度の高さを誇り、自信を持ってもらうことが大事だ。

WWD:自信を持たせるため、具体的にどんなサポートを行う?

高谷:強く意識しているのは、普段はあまり表舞台に立たない人たちを、どう主役にして、世界にチャレンジする環境を整えるかだ。例えば日本が誇るレザーの産地の姫路では、彼らの素材の魅力をミラノの見本市でプレゼンし、大英博物館でそのアイテムを紹介した。さらに、「この街の技術が世界中の人々に紹介され、評価された」という事実を伝えるため、JR姫路駅にその功績を展示した。こういった取り組みが、地域の誇りと自信、やりがいとエネルギーになり、未来につながる。若い人は、地元の産業について詳しく知らない。地元への関心を喚起するのも、自分たちの役目だと思う。

大西:同感だ。それに加えて、作り手は自分たちの商材を良いと自負していても、プロモーションやPR面で苦労したり、どうすれば技術や素材がバリューアップするか分からなかったりすることも多い。中には、現状で十分だと考える人もいるし、外の人がやって来て、プロジェクトを行うことに抵抗感を抱く人もいる。いろんな背景はあるが、“世界が認める素材と技術力”が各地に存在するのは事実。それを海外に発信しない手はないと考えている。羽田未来総合研究所はこれまでも地方からブランディングを受託しており、さまざまな地域との接点もできている。さらに事例を積み重ねて、新しい技術や素材を見つけていく。

WWD:どんな商材を集める?

大西:これまでの小売りでは大きく衣食住のカテゴリーを設けていたが、今はそういう時代じゃない。“地方独特の生活文化”という大きなコンセプトのもと、各地で生まれたモノを隔てなく扱いたい。陶器やテキスタイルなど、そのまま提案できるものはそのまま扱うし、新しいプロダクトに落とし込むこともやる。ファッションやアニメ、キャラクターなど、掛け算しながらやっていく。

WWD:ビューティに関しては?

大西:もちろんビューティも入る。2020年3月に新しい国際線ターミナルを作り、「ジャパンビューティ」という免税エリアを開いた。地方発のビューティブランドを10個ほど集めた売り場だった。新型コロナウイルスの影響で、開業から1週間で営業停止を余儀なくされたが、地方に眠る素材はたくさんあることが分かった。「JMC」でも継続し、ビューティコーナーを作る。今注目しているのは、民間と自治体が協働し、コスメブランドを開発する事業で、すでに多くのトライアルを実践している。そういった面白い取り組みも紹介していきたい。

WWD:これまでも地方にフォーカスした売り場はあった?

大西:免税エリアにポップアップを設けて、2年間、仮説・検証を実施した。通常、訪日客の55〜60%が中国の方たちで、ヨーロッパは20数%にとどまる。ヨーロッパの方はシェアが低く、大きなポテンシャルを秘めるが、認められるには工夫が必要だ。中国人は南部鉄器を置くと、面白がって買ってくれる。しかしヨーロッパの人は、ユニークなだけでは買ってくれない。それを自宅の部屋に置いた時、自分たちの生活がどう変化するか、豊かになるかが購買の決め手になる。そしてトライアルした結果、目標としていた売上全体の40%をヨーロッパが占めるまで成長した。

WWD:免税の可能性はまだある。

大西:そうだ。そもそも訪日客はピークで4000万人近くまで上ったが、4.5兆円しかお金を落としていなかった。これは日本のGDPの1%に過ぎない。訪日客を増やすことも大切だが、一人一人がもっと消費したくなる商材やサービスを整え、10兆〜15兆円規模に拡大する方が重要になる。良いものがあるのに、そのプロモーションが奏功していない。重ねてきた仮説検証をターミナルのリアル店舗やECにてカタチにし、そのそのきっかけになればいい。

WWD:今、地方創生に取り組む意義は?

大西:新型コロナウイルスで生活スタイルがガラリと変わり、地方の魅力が見直されておる。移住とまではいかなくとも、週末だけ地方に滞在したり、都心の職場から離れた場所でリモート作業する人もいる。これは小売りにも追い風になる。我々は東京に拠点があり、小売りの“場”を持つ。

高谷:羽田は、地方商材を扱うのに素晴らしい場所だと思っている。東京の玄関口であり、ここに地方から新鮮なモノがどこよりも早く集まる。そして、世界各国に届けることができる。ファッションではショーのことをランウエイと呼び、飛行機の滑走路も“ランウエイ”と呼ばれる。地方から世界に発信するランウエイになるべく、その一翼を担いたい。

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SNSで話題沸騰の人気コスメ「ミース」、経験も広告費もゼロ、なのに2年半で注文数は月1万超えの「ファン育成術」

 美肌研究家のソンミが2019年3月に立ち上げて以降、成長を続ける「ミース(MEETH)」。ソンミが自己資金300万円を元手に、1商品からスタートし、現在は12SKUまで拡大。阪急うめだ本店、 ジェイアール名古屋タカシマヤなど百貨店でのポップアップイベントではファンが殺到。10月6日からは伊勢丹新宿本店で2度目のポップアップを開催する。最初の2年間は広告費0円で成長してきたというが、SNSではたびたびアイテムが話題となる。「ミース」はどのようにバズ商品を生んでいるのか。

WWD:立ち上げ2年半でどのくらい規模は拡大した?

ソンミ:私1人で始めた会社は23人まで増え、消費数も拡大した。ユーザーも口コミを通じて増えており、月に1万件以上は注文を受けている。商品はポップアップ以外では全てオンラインで販売しており、昨秋オープンした表参道の旗艦店は体験の場としている。また今夏には韓国に研究所を作り、商品展開もスタートした。中国、韓国、台湾、シンガポールでも販売しており、アジアを代表するブランドに育てたいと考えている。

WWD:特に人気のある商品は?

ソンミ:“モアリッチエッセンシャルローション”は初期に出した商品で、「ミース」の名刺代わりの1本。無名の状態からスキンケアラインを揃えるのは難しいと考え、美容液なしでも満足できる化粧水として考案した。品質が良いことが最大の宣伝広告だと考えている。今はまつ毛美容液“ルルビューラッシュ”を販売しているが、これは初めてファンの要望から作ったものだ。「ミース」は私がほしいと思える商品を作るのが基本で、秋には美容と健康の観点から「アンドミール(&MEAL)」を立ち上げる。カロリーやPFCバランス、塩分、食物繊維などに配慮した食事で、最初は7日間のスープセットを販売予定だ。

WWD:なぜ美容ブランドとして食品を扱うのか

ソンミ:昨年「ミース60日間チャレンジ」というプロモーションを実施した。一般の方に60日間ブランド製品を使用してもらい、その変化を映像などで公開するもの。商品力に自信があるので実施したが、中には肌が荒れる人もいた。ヒアリングしたところ、スキンケアはできていても食生活が乱れていて、食事もアドバイスできるようにもっと学ぼうと栄養学の専門学校に通ったのがきっかけ。

WWD:学校に通ったのは、新規事業が決まっていたから?

ソンミ:いえ、食品を出そうと考えたのは学校に通ってから。学校にはドクターなど各分野のプロも通っていて、みんな「女性を輝かせるにはどうしたらいいか」という課題に真剣に向き合っている人たちだった。そこで、プロの人たちと協業して「アンドミール」を立ち上げることにした。サプリメントは補助的なもので、根本的な解決を目指したいので食事を作った。「アンドミール」のために、これまで貯めてきた資金を注ぎ込み自社工場も立ち上げた。

WWD:これも自己資金のみで?

ソンミ:出資などは受けていないので、大変だった。「アンドミール」は3つ星レストランのシェフと作ったレシピなので味も自信がある。OEMで試作品を作ったが、その再現が難しかった。これまで妥協をしないもの作りを続けてきた「ミース」が作るなら、ここまでやらなきゃだめだと工場を建てた。そのため大量生産はむずかしく、初期は数量を絞って販売する予定だ。

ギフティング・広告なし、無名状態から1万円超えフェイスパックはどう売れた?

WWD:今では広告投資も行うようになったが、どういう広告を出すのか

ソンミ:これまで広告を出さずに売ってきて、「代わりに私たちが拡散します」と口コミをしてくれるファンの方もいた。なので広告を出す際は前もってファンの方たちに「もっと大きくなるために、これからは広告もやります」と伝えるインスタライブを配信した。今も広告は必要な分だけ。最初に出したのはタクシーの車内広告。タクシー広告はインパクトが強く、客層が近い。掲出期間は短かったが、いまだに反響をもらう。またJウェーブ(J WAVE)の番組「アクロスザスカイ(ACROSS THE SKY)」に協賛する。この番組はグローバルな感性や感覚を磨くというテーマで、リスナーは客層が近く、内容も「ミース」が注力するSDGsにも近い。ブランドのユーザーの方にも届けたかった。

WWD:化粧品広告っぽくない場所に出している

ソンミ:広告だけでなく、これまで業界のセオリー通りにやってきたことは何もないと思う。流行ってるものや鉄板の手法はやらない。ギフティングも今まで一切してこなかった。「どうしても使いたい、欲しい」という気持ちで使ってもらい、自発的に口コミして欲しい。それに原価をかけすぎて広告費やギフティングにまわすお金がない、あげられないというのも理由(笑)。

WWD:そうすると、ソンミ代表の発信と自然発生的な口コミだけで売れている?

ソンミ:最初に販売した炭酸ガスパックの“モアリッチパック”は7日間で1万4960円と高額な商品。高額だが、自分のインスタグラムで毎日ライブ配信をして商品について発信し続けるうち、ユーザーの方が「おうちでできる美容医療のようだ」と口コミしてくださり、広まっていった。インスタライブは最初は十数人しか見ていなかったが一生懸命継続し、最近までほぼ毎日実施していた。内容は商品の話だけでなく、美容ハウツーから人生相談まで幅広い質問に答えている。最近ではインスタライブのコメント欄でファン同士の交流が発生し、私抜きでも会話が盛り上がってる(笑)。また私だけでなくスタッフのインスタグラム発信も力を入れている。

WWD:スタッフはインスタグラムでどういった発信を行う?

ソンミ:「ミース」のスタッフはほぼ全員が元々ブランド製品の愛用者で、ユーザー目線で発信できる強みがある。スタッフは個人のアカウントを持ち、発信は義務化している。月1度はスタッフと“インスタ個人面談”を行う。どんな投稿に反応があったか、どんな人の投稿が好きか、次はどう発信するか…私は何事も分析をするタイプで、スタッフにも考える癖をつけるよう指導する。

WWD:普段はどういったことを分析している?

ソンミ:毎月購入者のデータには全て目を通す。そしてこの人はどのくらいのスパンで購入しているのか、この期間なぜ買わなかったのかなどを考えている。企画出しでも1つの答えだけ持ってくるのではなく、私は50でも100でも考えてくる。自分で仕事を作れるようにすることが大事だとスタッフにも伝えている。

WWD:ファンをとても大事にしているブランドだが、ファンとはどういったことを行う?

ソンミ:「ミース」はみんなで育てるブランド。ブランド2周年の際にはオンラインで全国のファンと交流し、先日は「商品企画プレゼン会」をオンラインで行った。ファンが欲しい商品をプレゼンするというもので、中には資料を製作する方もいるなど熱意が高かった。そのうち1人の方とは月1でミーティングを行い、開発を進めている。

WWD:今後はどういう発信をしていく?

ソンミ:元々私自身がコンプレックスをなくすのではなく、美肌という長所を伸ばすことで人生を変えた。その成功体験がブランドになっており、「美肌は最高のジュエリー」というコピーを大事に、毎日伝えている。コピーに惹かれるといってくださる方も多い。またこれまで誰かを立てて宣伝することもしてこなかった。誰かが使っているから欲しい、という人もいれば、誰かのイメージがついているから嫌だという人もいる。今後は私のブランドという見え方からも脱却し、1ブランドとして発展していきたいと思っている。

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ナイキが考える持続可能性をサステナビリティ責任者に聞く 複雑なサプライチェーンの対応策 【後編】

 ナイキ(NIKE)は、1990年代に企業活動におけるサステナビリティに取り組み始め、2000年代に入ると情報公開を始め、05年にはサプライチェーンを公開した。これには、90年代に同社が製造を委託する工場での児童労働が明らかになり、不買運動につながったという経緯がある。サプライチェーンを把握しておくことは企業の責任であると同時にリスクを回避することができるともいえる。複雑なサプライチェーンを把握するのは容易ではないが、ナイキはどのように対応してきたのか。ノエル・キンダー(Noel Kinder)チーフ・サステナビリティ・オフィサーに聞く。

WWD:アパレルやシューズのサプライチェーンの複雑さへの対応について教えてください。ナイキは透明性を確立していますが、どのように確立したのでしょうか。

ノエル・キンダー=チーフ・サステナビリティ・オフィサー(以下、キンダー):グローバル規模で非常に複雑なバリューチェーンの中で、私たちはシステムの変革に注力しています。そして、業界の中でも大手の企業として、より良いことをし、より良い規模で、そしてより良くなるために、自らの役割を果たすことを決意しています。透明性と説明責任から始まり、メーカーやサプライヤーのコンプライアンスを達成するために、一連の厳しい基準を策定しています。

 また、科学的根拠に基づく大胆な目標を設定し、25年までに私たちと業界全体がより持続可能なものへと移行することを目指しています。例えば、所有または運営している施設で再生可能エネルギーを100%使用することや、主要な事業においてエネルギー使用量とCO2排出量を単位当たり25%削減すること、デザインや業務効率の改善により製造、流通、本社、包装において廃棄物を単位当たり10%削減することなどが挙げられます。また、繊維の染色・加工における1kg当たりの淡水使用量を25%削減することを目標としています。当社の綿花サプライチェーン内の水不足に苦しむ生態系やコミュニティの長期的な回復力を支援する流域プロジェクトのポートフォリオを通じて、すでに130億リットルの水量が回復しています。

WWD:複雑なサプライチェーンの把握と改善に向けた取り組みは、一社だけではどうにもならない部分もあると感じます。

キンダー:ええ。政府間、業界間、地域のステークホルダーとの強力な連携と理解も大切で、私たちはこの分野でも提携しています。 20年5月、私たちはサプライヤー気候行動プログラム(SCAP)を開始しました。このプログラムに参加することで、サプライヤーはナイキ関連の生産以外でも排出量を削減することを約束し、業界全体の大幅な排出量削減に貢献することになります。

 私たちは、エシカルで責任ある製造を行い、製品を製造する全ての人々が尊重され、大切にされることに深くコミットしていることを忘れてはなりません。 そのために、25年までに、戦略的サプライヤーの100%が、製品を作る人々のために、世界水準の安全で健康的な職場を構築するという目標も設定しています。 また、サプライチェーンにおける女性の活躍の場をいかにして増やすかについても検討しています。 サプライヤーの施設で働く人々の約70%は女性ですが、その割合は職位が上がるにつれて減少します。そこで私たちは、2025年までに100%の戦略的サプライヤーが、施設で働く女性の就業機会へのアクセスと上昇志向を高めるという目標を設定しました。

WWD:ナイキが考える環境に配慮したプロダクトデザインとは。

キンダー:私たちの地球を守ることは、多様で革新的なチームが協力して解決策をまとめ、引き出すことから始まります。私たちには、よりサステナブルな新製品を生み出し、インパクトを与える責任があります。そのため、サステナビリティはデザインプロセス全体に組み込まれています。

 最初から廃棄物を出さないようにデザインし、廃材を新しい製品に変え、循環型のソリューションを拡大しています。また、業界をリードするマテリアル・サステナビリティ・インデックス(サステナブルアパレル連合が運用する環境負荷を評価するツール。ナイキはこれまでフットウエアサステナビリティインデックスを用いており、このインデックスは業界標準に遅れをとっていたことがわかったという。また以前は素材の種類や工程ごとに具体的な炭素削減目標を設定しておらず、サプライチェーンにまで目標が及ぶことはほとんどなかった)を使用し、デジタルツールを活用してチームを教育し、より持続可能な意思決定ができるようにしています。

WWD:現在重視していることは?

キンダー:スポーツはナイキの中核であり、私たちの活動全ての中心です。残念ながら、気候変動はスポーツにとって本質的な脅威です。だからこそ、サステナビリティは私たちのブランドとビジネスへの取り組み方の根幹にあるのです。 持続可能性は、大きな問題を提起することで革新的な解決策を導き出し、可能性を再定義するのに役立ちます。 しかし、これは単に「正しい」ことではなく、より効率的な戦略がナイキの成長を促進するため、長期的な価値を生み出します。

 今日、私たちは重要な瞬間を迎えています。2020年目標の章を閉じ、私たちがどこにいたか、どこで成功し、どこでつまずいたか(CO2削減目標は未達)を振り返ることで、次の章を開き、ゼロカーボン、ゼロウェイストの未来というビジョンを達成するために、新たな25年目標に向けて学び、進化していきます。この目標は、私たちの活動を支えるものであると同時に、私たちに責任を持たせ、私たちが達成できることを数値化するものでもあります。

WWD:ナイキはメッセージを生活者に伝えることに最も長けている企業の一つだと感じます。サステナビリティをどのように消費者に伝えていきますか?

キンダー:今、私が最も興奮しているのは、消費者がこの運動に参加し、変化の一部になりたいと思っていることです。私たちは、スポーツの力を使って世界を前進させることができると信じています。そのためには、持続可能性を実現し、真のインパクトを与えるためのハードワークを行うと同時に、製品やサービス、体験を通じて、消費者により責任ある選択をしてもらうこと、あるいは製品のライフサイクルの最後にある廃棄物の削減に貢献することが重要です。私たちは、人々が私たちのブランドに寄せる情熱と、私たちが地球、人々、コミュニティのために、より持続可能な未来を再構築し、創造することに貢献できる文化的影響を理解しています。

WWD:社内における多様性をどういう形で実現していますか?また、社員のモチベーション向上やスタッフとの意識共有や教育はどのように行っていますか

キンダー:私たちの社員は、ソリューションの創造と運用にとても情熱を持っています。19年には「Move to Zero Employee Challenge」を開始しました。これは、ナイキがスポーツの未来を守るためのアイデアを社員が提出し、そのアイデアを実現するための資金やメンターシップを獲得する機会です。製品作りから物流、リテールまで、さまざまな分野を対象にし、世界中から信じられないようなアイデアが寄せられました。私たちはそれらの多くを実行に移しています。例えば、余剰原材料のデータベースの作成、製品発売までの航空貨物への依存度の低減、ニューヨークオフィスの照明を調整するための占有センサーの設置などです。私たちは、無駄を省き、従業員を教育し、行動を促すことに注力しています。今後も、循環型社会、再利用、使い捨て廃棄物の排除を体現した空間を創造し、運営していきたいと考えています。

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ナイキが考える持続可能性をサステナビリティ責任者に聞く 複雑なサプライチェーンの対応策 【後編】

 ナイキ(NIKE)は、1990年代に企業活動におけるサステナビリティに取り組み始め、2000年代に入ると情報公開を始め、05年にはサプライチェーンを公開した。これには、90年代に同社が製造を委託する工場での児童労働が明らかになり、不買運動につながったという経緯がある。サプライチェーンを把握しておくことは企業の責任であると同時にリスクを回避することができるともいえる。複雑なサプライチェーンを把握するのは容易ではないが、ナイキはどのように対応してきたのか。ノエル・キンダー(Noel Kinder)チーフ・サステナビリティ・オフィサーに聞く。

WWD:アパレルやシューズのサプライチェーンの複雑さへの対応について教えてください。ナイキは透明性を確立していますが、どのように確立したのでしょうか。

ノエル・キンダー=チーフ・サステナビリティ・オフィサー(以下、キンダー):グローバル規模で非常に複雑なバリューチェーンの中で、私たちはシステムの変革に注力しています。そして、業界の中でも大手の企業として、より良いことをし、より良い規模で、そしてより良くなるために、自らの役割を果たすことを決意しています。透明性と説明責任から始まり、メーカーやサプライヤーのコンプライアンスを達成するために、一連の厳しい基準を策定しています。

 また、科学的根拠に基づく大胆な目標を設定し、25年までに私たちと業界全体がより持続可能なものへと移行することを目指しています。例えば、所有または運営している施設で再生可能エネルギーを100%使用することや、主要な事業においてエネルギー使用量とCO2排出量を単位当たり25%削減すること、デザインや業務効率の改善により製造、流通、本社、包装において廃棄物を単位当たり10%削減することなどが挙げられます。また、繊維の染色・加工における1kg当たりの淡水使用量を25%削減することを目標としています。当社の綿花サプライチェーン内の水不足に苦しむ生態系やコミュニティの長期的な回復力を支援する流域プロジェクトのポートフォリオを通じて、すでに130億リットルの水量が回復しています。

WWD:複雑なサプライチェーンの把握と改善に向けた取り組みは、一社だけではどうにもならない部分もあると感じます。

キンダー:ええ。政府間、業界間、地域のステークホルダーとの強力な連携と理解も大切で、私たちはこの分野でも提携しています。 20年5月、私たちはサプライヤー気候行動プログラム(SCAP)を開始しました。このプログラムに参加することで、サプライヤーはナイキ関連の生産以外でも排出量を削減することを約束し、業界全体の大幅な排出量削減に貢献することになります。

 私たちは、エシカルで責任ある製造を行い、製品を製造する全ての人々が尊重され、大切にされることに深くコミットしていることを忘れてはなりません。 そのために、25年までに、戦略的サプライヤーの100%が、製品を作る人々のために、世界水準の安全で健康的な職場を構築するという目標も設定しています。 また、サプライチェーンにおける女性の活躍の場をいかにして増やすかについても検討しています。 サプライヤーの施設で働く人々の約70%は女性ですが、その割合は職位が上がるにつれて減少します。そこで私たちは、2025年までに100%の戦略的サプライヤーが、施設で働く女性の就業機会へのアクセスと上昇志向を高めるという目標を設定しました。

WWD:ナイキが考える環境に配慮したプロダクトデザインとは。

キンダー:私たちの地球を守ることは、多様で革新的なチームが協力して解決策をまとめ、引き出すことから始まります。私たちには、よりサステナブルな新製品を生み出し、インパクトを与える責任があります。そのため、サステナビリティはデザインプロセス全体に組み込まれています。

 最初から廃棄物を出さないようにデザインし、廃材を新しい製品に変え、循環型のソリューションを拡大しています。また、業界をリードするマテリアル・サステナビリティ・インデックス(サステナブルアパレル連合が運用する環境負荷を評価するツール。ナイキはこれまでフットウエアサステナビリティインデックスを用いており、このインデックスは業界標準に遅れをとっていたことがわかったという。また以前は素材の種類や工程ごとに具体的な炭素削減目標を設定しておらず、サプライチェーンにまで目標が及ぶことはほとんどなかった)を使用し、デジタルツールを活用してチームを教育し、より持続可能な意思決定ができるようにしています。

WWD:現在重視していることは?

キンダー:スポーツはナイキの中核であり、私たちの活動全ての中心です。残念ながら、気候変動はスポーツにとって本質的な脅威です。だからこそ、サステナビリティは私たちのブランドとビジネスへの取り組み方の根幹にあるのです。 持続可能性は、大きな問題を提起することで革新的な解決策を導き出し、可能性を再定義するのに役立ちます。 しかし、これは単に「正しい」ことではなく、より効率的な戦略がナイキの成長を促進するため、長期的な価値を生み出します。

 今日、私たちは重要な瞬間を迎えています。2020年目標の章を閉じ、私たちがどこにいたか、どこで成功し、どこでつまずいたか(CO2削減目標は未達)を振り返ることで、次の章を開き、ゼロカーボン、ゼロウェイストの未来というビジョンを達成するために、新たな25年目標に向けて学び、進化していきます。この目標は、私たちの活動を支えるものであると同時に、私たちに責任を持たせ、私たちが達成できることを数値化するものでもあります。

WWD:ナイキはメッセージを生活者に伝えることに最も長けている企業の一つだと感じます。サステナビリティをどのように消費者に伝えていきますか?

キンダー:今、私が最も興奮しているのは、消費者がこの運動に参加し、変化の一部になりたいと思っていることです。私たちは、スポーツの力を使って世界を前進させることができると信じています。そのためには、持続可能性を実現し、真のインパクトを与えるためのハードワークを行うと同時に、製品やサービス、体験を通じて、消費者により責任ある選択をしてもらうこと、あるいは製品のライフサイクルの最後にある廃棄物の削減に貢献することが重要です。私たちは、人々が私たちのブランドに寄せる情熱と、私たちが地球、人々、コミュニティのために、より持続可能な未来を再構築し、創造することに貢献できる文化的影響を理解しています。

WWD:社内における多様性をどういう形で実現していますか?また、社員のモチベーション向上やスタッフとの意識共有や教育はどのように行っていますか

キンダー:私たちの社員は、ソリューションの創造と運用にとても情熱を持っています。19年には「Move to Zero Employee Challenge」を開始しました。これは、ナイキがスポーツの未来を守るためのアイデアを社員が提出し、そのアイデアを実現するための資金やメンターシップを獲得する機会です。製品作りから物流、リテールまで、さまざまな分野を対象にし、世界中から信じられないようなアイデアが寄せられました。私たちはそれらの多くを実行に移しています。例えば、余剰原材料のデータベースの作成、製品発売までの航空貨物への依存度の低減、ニューヨークオフィスの照明を調整するための占有センサーの設置などです。私たちは、無駄を省き、従業員を教育し、行動を促すことに注力しています。今後も、循環型社会、再利用、使い捨て廃棄物の排除を体現した空間を創造し、運営していきたいと考えています。

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ローラ、サステナブル・ブランド立ち上げから1年 「達成率は80%、今度は作っている人たちの労働環境をもっともっと大切にしたい」

 ローラが自身のブランド「ステュディオ アール スリーサーティー(STUDIO R330)」を始動して1年が経過した。ポリエステルのケミカルリサイクル技術を持つ日本環境設計やサステナブル経営で知られるベトナムのデニム工場サイテックス(SAITEX)などと連携し、ローラがブランド立ち上げ当初に語っていた「毎日のライフスタイルがわくわくするようなものをクリエイティブに、環境にやさしい形で作っていきたい」という思いを実践している。

 8月に発表した新作のユニセックスコレクションは“スローライフ”をテーマに掲げ、オーガニックコットン100%のスエットや環境負荷の少ないニットを取り入れたエッセンシャルなリラックスウエアだ。余剰在庫や廃棄を減らすため、今回からは受注生産も取り入れた。「みんなの幸せが地球の幸せ」をモットーに日々学びを深め、ポジティブな発信を続けるローラに、ブランド立ち上げからの変化や今後のビジョンについて聞いた。

WWD:ブランド立ち上げから1年をどう振り返る?

ローラ:まず、ブランド立ち上げまでにはすごく時間がかかったの。色々と地球環境について調べていたんだけど、自分の目でしっかり確かめたいなと思って、インドネシア、ベトナム、バングラデシュを訪れて、現状を見たり、聞いたりしていたから。そして自分の心の問題とも向き合った。去年ついにブランドが始まった時はとてもドキドキしたけど、たくさんの人が共感してくれてうれしかった。特にリサイクルポリエステルのワークウエアやオーガニックコットンの白シャツ、デニムのアイテムを気に入ってくれる人が多かったの。ブランドを通して、今まで出会えなかった人たちともつがることができて、すごく感謝している。環境について真剣に勉強している人たちから「こういうアイテムが欲しかった」って言ってもらえたのはもっとうれしかった。ただ、地球環境の問題はあまりにも複雑で、簡単には伝わらないという難しさも感じてる。だから伝わるためにはどうしたら良いんだろうと日々考えてチームのみんなと話し合っているんだ。

WWD:新作コレクションのこだわりは?

ローラ:日本の伝統的な企業を応援したいから、デニム生地は今回もカイハラさんにお願いしたの。生産は、「世界で最もエシカルなデニムを生産する」と言われるベトナムのサイテックスさん。スエットとTシャツは、オーガニックコットン100%で、漂白剤は使いたくなかったから、ありのままのコットンの素晴らしさを伝えたいと思って生成りカラーも取り入れたの。ユニセックスのエコファーのアイテムは、リサイクルペットボトル由来。ウールはどういう風に作られているか調べてみたら、羊さんにすごく負担がかかってしまっている事が多いと知って、悲しい気持ちになっちゃったの。だから全てのニットは環境に負荷が少なくて、正しい方法で育てられているウール素材を使用したよ。

WWD:今回のコレクションから受注生産を取り入れた理由は?

ローラ:私たちはコレクションで使用するサステナブルな素材の大半を一から作っているから、原価がすごく高いの。少しだけ作ろうと思っても、それを受け入れてくれる工場がなかなかなくて、少し多めに作らないといけない葛藤がずっとあった。これからは、商品ごとに売れるもの、そうでないものがあってもいいから、商品が余ることをなるべく避けようと決めて一般販売に加えて受注生産に切り替えたの。あとは希望のサイズやカラーが完売して、要望に100%答えられない商品が結構出てしまったから、それも今回から改善したいんだ。

WWD:100%サステナブルな商品開発は難しい。迷ったときに大事にしていることは?

ローラ:100%は本当に難しいの。この1年自分の中での葛藤に苦しんだり、チームとも言い合いになったりしたことが何度もあったから。でも、諦めないで100%に近づけるように最善の努力を続けて自分を信じれば、いつか花が咲くと思うんだ。ブランドもライフスタイルも段階的にバランスを取りながら変化することが大事。今はチームで話し合いながら少しずつでもできるところから進めているの。

WWD:今回のコレクションは何%達成できた?

ローラ:80%ぐらいかな。残りの20%は、フェアトレード。環境に配慮された素材は何とか調達できたけど、今度はそれを作っている人たちの労働環境をもっともっと大切にしたいんだ。例えば、サイテックスさんの工場では、オーガニックの食事を従業員に提供していたり、安全な通勤をサポートしていたり。今回のニットとスエットをお願いした中国の工場も、労働環境をきちんと管理しているけど、フェアトレードの認証までは取れていない。認証の取得はすごく難しいんだって。でも、やっぱり認証はこれからすごく大切になるから、一緒に話し合っているところ。日本でもどんどん工場の数が減少しているから、来年のコレクションは、そこもサポートできるような取り組みを考えているの。

一人一人の健康と幸せが地球を守ることにつながる

WWD:一つ一つの問題に丁寧に向き合い、学ぶ姿勢が印象的だ。1日で勉強やリサーチに費やす時間はどれくらい?

ローラ:大体5〜6時間くらいかな。毎日、たくさん本を読んだり、情報収集したりしているよ。今日もこの取材の後、地球環境に関係するドキュメンタリーを見るの。脳が何個もあったらいいのにって思う(笑)。でも、すごく楽しいの。あとは現地に足を運ぶことも大切。故郷のバングラデシュに行ったとき、昔自分が住んでいた田舎に行ったら、よく水遊びしていた池が、プラスチックごみで誰も入れない状態になっていてすごくショックだった。村の人たちに「ローラ助けて」って言われて、すごく心に響いたの。どれだけこの問題が深刻なのかを実際に肌で感じたことは大きかった。

WWD:“サステナビリティ”はさまざまな問題が含まれているが、今特に関心のあるトピックは?

ローラ:全てだけど、やっぱり気象変動と人間の心についてはすごく関心があるかな。最近、気象変動の原因は、一人一人の意識や心にひも付いているんだなって思うの。便利な生活を求めて楽をしようとか、誰かがやってくれるから大丈夫とか、何も考えずにお買い物をすることが環境問題の悪化につながっているから。まずは一人一人の行動、そして心と体の健康が大事で、心と体が健康だと、誰かを幸せにしてあげよう、地球環境を良くしようと思える気持ちが湧いてくると思うんだ。

WWD:勉強すればするほど、問題の深刻さに落ち込むことはない?モチベーションを保つ秘訣は?

ローラ:実は最初は環境問題について勉強するうちに、「私たち人間は、地球や動物になんてひどいことしているんだ」「どうすればいいんだろう」って思ってどんどん気分が落ち込んだんだ。学んだことを(SNSに)書いたら、否定的なコメントを受け取ることもあって。でも、今はそれを乗り越えることができた。どんな意見があっても全てを受け入れて自分の直感を信じて正しいと思う方向に突き進んでいく事が一番大事だと思ったから。自分の心が幸せになると、好奇心が広がって、周りへの感謝も大きくなることに気付いたら、自分=みんな、みんな=地球、全てがつながっていることが分かったの。だから、「セルフラブ」は、実はこの地球を愛すること。例えば、農薬をなるべく使わないオーガニックの食事をすれば、土地に負担をかけずに地球も一緒に健康でいられる。自分が健康で幸せでいることが、地球の健康と幸せにつながるって思うと、もっと人々が幸せになるべきだなって。

WWD:揺るがない強さを持てたのは拠点をLAに移したことも関係している?

ローラ:本当に大きかったわ。今住んでいるエリアは、自分の体と心を大切にする人が多いの。夢に向かって好きな事を仕事にしている人も多くて、そういう人たちと話す時間も楽しいんだ。日本にいるとき、実はお散歩にもあまり行けなかったの。外に出るときは、いつも帽子とマスクで顔を隠して、まるで私は悪いことしたみたいって思ってた。でもここは自然もたくさんあって、開放的な気分で歩ける。拠点を移したからこそ、改めて日本の素晴らしさや美しさにも気付いて、今はその伝統を世界に広げたいんだ。逆に今、心が落ち込んでいる人や自分の夢を見つけられない人の心のサポートもしたくて、勉強中なの。

ファッションの次は、食やアロマ、メディア立ち上げも

WWD:服作りを手掛けるようになってファッションを楽しむ視点に変化は?

ローラ:昔は、好きだった服でも何カ月かすると、「あれ?これって、もう古いのかな」「もっとトレンドのもの着た方がいいかな」とかをよく気にしていたけど、今は自分が本当に好きなスタイルが見えてきて、エッセンシャルなアイテムで満足するようになったの。何度も同じコーディネートをするし、古着を取り入れたりもする。「スタジオR330」も、トレンドに関係なく私が考える長く着られるエッセンシャルなアイテムを作っていて、アパレルラインはもう少しで完成するの。そしたらその後は、食やアロマを通して、健康的なライフスタイルを提案できるプロダクトに広げていきたいな。

WWD:ビジネス規模はどれくらいを目指す?

ローラ:あまり大きくし過ぎず、今のチームでできる規模がちょうどいいかなって思ってる。自分の直感を信じて動いているから、ゴールはあえて決めていないの。何を作るかは、実際にサステナブルで健康的なライフスタイルを過ごしたりながら見えてきたものを少しずつ形にしたいから。

WWD:チームはどのような体制?

ローラ:メンバーは6人。チームのみんなが同じ気持ちで一緒に勉強や運動をしていて、いろんなアイデアがどんどん出てくるの。規模はスモールチームだけど、今は木の根っこのような強いチームに進化しているんじゃないかな。

WWD:グローバル進出の進捗は?

ローラ:今年の冬ごろから始めたいな。将来的にはLAか日本に店舗をオープンしたいの。まだ誰も挑戦したことのないようなお店にしたいから、今は頭に浮かんでくる絵を整理中なの。

WWD:今後の目標は?

ローラ:常に学び続けてセルフラブを忘れないこと。感謝の気持ちを持って、チームのみんなと一緒に楽しみながら進んでいくこと。実は今新たに、新しい形のメディアを立ち上げようと考えているの。人の心や環境について、学ぶことの楽しさを伝えていきたいなって思って。その発信がきっかけで、ワクワクする気持ちが出てきたり、好奇心が湧いたりして、学ぶことを楽しむ輪が広がって自分を愛する事に繋がったらうれしいな。それが自然に地球を守ることにつながると思うから。

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「キッカ」でも「アンミックス」でも変わらぬ吉川康雄の思いは? 音声配信「LOVE=好きの先の幸せ」 Vol.4

 「蓉子の部屋」改め「LOVE=好きの先の幸せ」は、伊藤忠ファッションシステムを辞めて心機一転の川島蓉子ジャーナリストが毎回ゲストを招き、「LOVE=好き」がある人との対談を通して幸せを伝える音声番組です。

 今回のゲストは、自身のビューティブランド「アンミックス(UNMIX)」を立ち上げた吉川康雄ビューティクリエイター。修行時代からニューヨークで掴んだ千載一遇のチャンス、そして現在に至るまでの半生を伺いました。さらにカネボウ化粧品とタッグを組んだ「キッカ(CHICCA)」時代から変わらない「美しさ」に対する想いと、そんな想いから生まれた製品がなかなか理解されなかった当時の葛藤までを吐露しています。

川島蓉子:1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている

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グローバルボーイズグループINIが着こなす「アディダス2021秋冬コレクション」第2弾 撮影の感想&お気に入りポイントは?

 「アディダス(ADIDAS)」は、快適性と着こなしやすさを重視した「アディダス2021秋冬コレクション」の第2弾を10月上旬に発売する。イメージキャラクターには、今年6月にオーディション番組から誕生したボーイズグループINI(アイエヌアイ)を起用した。ここではアイテムの特徴や着こなしのポイント、撮影現場のオフショット、メンバーのコメントを通して、コレクションの魅力を伝える。

Q:初の広告撮影の感想は?

ストリートとスポーツの両方で活躍

「プリザーブ」

 10月上旬発売の第2弾は、「プリザーブ(PRSVE)」と「フューチャーアイコン(FUTURE ICON)」の2つのコレクションで構成する。「プリザーブ」は、スポーツと日常生活の両方で着られるコレクションで、ウィメンズにはドロップショルダーで程よい抜け感を演出するジャケットや着心地の良いフリース素材のワンピースなどをそろえる。メンズは、東京を拠点にするデザイン事務所MO’DESIGNが手掛けたグラフィックをあしらったリップストップジャケットや、迷彩柄のスエットシャツなどをそろえる。

Q:「アディダス」の
好きなところは?

ブランドの象徴を大胆に採用

「フューチャーアイコン」

 「フューチャーアイコン」は、「アディダス」の象徴であるスリーストライプスとスリーバーがメインのコレクション。裏起毛や裏パイルといった秋冬らしい素材使いで、スエットやパーカ、ジャケット、パンツなど幅広いアイテムをそろえる。日本限定アイテムとして、はっ水性のあるナイロン素材を使用したウーブンジャケットや、重ね着しやすいリラックスフィットのパーカなど、機能性を備えた商品も提案する。

 同コレクションアイテムはスポーツデポ・アルペン、スポーツオーソリティ、ゼビオグループ、ヒマラヤなどのアディダス取り扱い店舗およびオンラインストアにて、10月上旬から順次販売する。店舗ではINIのビジュアルも掲載し、店舗により扱うビジュアルは異なるため、全メンバーの表情が気になる人は複数店舗やオンラインストアもチェックしよう。スポーツオーソリティやヒマラヤでは限定のキャンペーンも実施中だ。

PHOTOS:HIRONORI SAKUNAGA
問い合わせ先
アディダスお客様窓口
0570-033-033

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CFDAが包括的なサステナビリティガイドを作成 その理由をCEOに聞く

 サステナビリティに関して、さまざまな企業や団体がレポートやガイドを公開しており、参考になるものが増えている。その中の一つに、アメリカンファッションデザイナーズ協議会(以下、CFDA)が無料で公開しているサステナビリティガイド「KPIデザインキット」がある。これは、サステナビリティと財務の重要業績評価指標(KPI)を包括するガイドとして、とても参考になる。CFDAがニューヨーク大学スターン校MBAの 1チームに依頼して作成したもので、目的は「小規模なブランドが現実的に実行でき、大きなインパクトを与えうる“クイック・ウィン(初期の成功)”の分野を適切に優先順位づけさせること」。社内にサステナビリティの専門家や研究開発予算を持たない、小さなデザイン・生産チームで手掛ける独立系デザイナーブランドの現実を考慮しており、中小規模の企業が取り組むべき項目を分かりやすく示している。CFDAのスティーブン・コルブ(Steven Kolb)最高経営責任者(CEO)にKPIキットを作った経緯を聞いた。

WWD:CFDAが、KPIデザインキットを作ることになった理由を教えてほしい。

スティーブン・コルブCEO(以下コルブ):以前からニューヨーク大学ビジネス学科スターンセンターとは、CFDAのファッションイニシアチブであるサステイナブルビジネスに関してパートナーシップを組んでいた。2019年に、公式サイトでサステナビリティハブをローンチした際に、そのリーダーを務めているCFDAの教育およびサステイナビリティイニシアティブ部署のバイスプレジデントであるサラ・コズロウスキー(Sara Kozlowski)が、業界全体でサステナビリティを実践するための実現可能なロードマップを作成する手伝いをニューヨーク大学に依頼した。そこで誕生したのが、KPIツールキットだ。同チームが、新しく設立されたサステナビリティハブ及びガイドを分析し、(233ページあるガイドの)重要ポイントをまとめるためのアドバイスをくれた。KPIキットは、デザイナーがより敏速に変化をもたらすことができる攻略ガイドと言える。

WWD:KPIデザインキットは、小規模及び中規模のビジネスに焦点を当てている。どのようにその規模を決めたのか。

コルブ:会社の売り上げがベースになっている。年商が500万ドル(約5億5000万円)以下、または従業員30人以下の規模の企業に向けて作られた。

WWD:KPIデザインキットに対するファッション業界からの反応はどうか?デザイナーらは特にどの部分を生かしているか?

コルブ:多くのデザイナーは即効果が見える部分、サプライチェーンの素材に関する点から取り組んでいることが多い。特にサステナビリティに最も影響のある、染料がそれだ。このガイドは、デザイナーたちがすでに気にしていた点を明らかにし、インパクトを3つの段階に分けることで取り組みやすくしている。

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パラリンピック開会式を沸かせたデコトラ演出 衣装担当デザイナー小西翔に迫る

 2021年9月4日、東京パラリンピックが閉会した。新型コロナウイルス感染拡大による開催延期や厳しい感染対策など、さまざまな関門をくぐり抜けての実施となった。そんな中、パラリンピックの開会式・閉会式は高い評価を受け、SNSでは「デコトラがすごい」「強そう・かっこいい」「ラスボスが出てきた」などのコメントが飛び交った。デコトラ演出でパフォーマーが着用していた、LED付きの衣装も大きな存在感を放った。

 この衣装を手がけたのは、ファッションデザイナー小西翔。パーフォーマー約50人の衣装を、全てゼロからデザインした。小西デザイナーは1991年高知県生まれ。東京モード学園を首席で卒業し、パリやニューヨークの大学院でもファッションを学んだ人物だ。現在はニューヨークと東京を行き来し、世界で活躍するアーティストのコスチュームを多数手掛けている。

 取材当日の小西デザイナーは、全身ブラックの装いで長い髪を結んでいた。クールな人かと思ったが、満面の笑みで「パラリンピックの衣装に関われたことはデザイナーとして冥利に尽きます。こんなに嬉しいことはない」と話した。彼の愛嬌の良さと熱い信念を感じた。

「障がいというネガティブな要素を
吹き飛ばすビジュアルに挑戦したい」

 小西デザイナーが手掛けたのは、デコトラの演出でパフォーマーが着用した、LEDを全身に纏った衣装。蛍光色を基調としたカラフルな色合いと、甲冑のようなド派手な装飾が特徴だ。「彼・彼女たちにしか似合わない衣装にしたかった」との思いから、参加者一人一人の個性を考え、ゼロから衣装を作っていった。筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者で車椅子にのった武藤将胤(むとう・まさたね)氏は、パワフルなキャラクターを反映してメンバーを率いる“ボス”のような強いクリエイションにした。義足モデルのGIMICO氏は、あえて義足をそのまま見せ、それ以外をサイボーグのように仕上げた。それぞれの装飾は鉄板のように重い質感に見えるが、実は特殊なレザーで薄く柔らかい素材。強さを誇張するため、あえてビスで留めている。ギタリスト布袋寅泰は、「踊るようにギターを演奏する」という話と、演出テーマ“WE HAVE WING”の羽に着想して、燕尾服をベースにフレアシルエットのジャケットをデザインした。

不安だらけの衣装製作
原動力は
「アスリートと変わらない演者の熱量」

 コロナ禍でのパラリピック開催については「もちろん不安もありました」と振り返る小西デザイナー。「オファーをいただいたときはニューヨークにいて、日本に戻れるかどうかもわからなかった。それに、これまで身体に障がいを持っている人のために洋服を作ったことがなかったから、この状況下で本当に完成させられるか心配でした」。

 2021年に入り、送られてきた資料に目を通すと演者の病名や身体の状態、注意事項等が明記されていた。しかし、文書だけでは演者の本当の個性がわからないため、「僕はそれぞれの演者さんと直接お話がしたいと提案しました」。演者と対面し、話を聞いていくうちに「どの人もパフォーマーとして芯があり、アスリートと同等の熱量がある」ことを痛感した。「僕も夢を追いかける人のサポーターでいたい」という気持ちが生まれ、「いつのまにか不安はなくなっていました」。武藤氏とは音楽活動の話で盛り上がり、「衣装はできるだけ光らせてください!なんでもやりますから」と答えてくれたという。その後も主要パフォーマーと対面し、それぞれの個性や内面に触れるにつれ、「義足モデルだからといって義足を目立たせたいわけじゃない。車椅子だから車椅子を光らすのも違う。それぞれの伝えたい意志やバックグラウンドが融合し、“個性”が“魅力”へと変貌する。そこに焦点を当ててデザインすることに決めました」。

パラリンピックの衣装は
「服作りの哲学が繋がる機会」

 小西デザイナーに声が掛かったきっかけは、衣装ディレクター伊藤佐智子氏の目に彼の過去作が止まったことだった。とあるプロジェクトで刑務所にいる少年と一緒に制作した作品と、パリ時代に考案した、LEDを駆使した“光るクリエイション”を採用した衣装だった。「多様な価値観と、オートクチュール、テクノロジー、サステナビリティの技術ーーこれまで培ってきたファッションの哲学が全て繋がる機会だと思いました」。

 小西デザイナーはパリ美術学校でオートクチュール&テクノロジー学科を専攻し、3Dプリンターとサステナビリティとの関係を論文で発表。その後パーソンズ美術大学に移り、多様な体、人種、性別、肌の色が異なる人々が集まるニューヨークで、“カテゴリーを取っ払った”美しさ”を考えるようになったという。「ニューヨークで”美しさとは何か”を多角的に議論する時間が刺激的だった。例えば美しい=色白と答えてしまうと、差別につながりますよね。男女や人種、障害の有無などカテゴライズを取っ払ったときの美しさとは何か。デザイナーとしてできることはーーこれを考えて、アイデアを練っていたタイミングでパラリンピックの衣装オファーが来ました」。

「マイノリティという枠を取っ払い、
徹底的に個人と向き合う」

 小西デザイナーがファッションデザイナーとして意識しているのは、「男性らしさや、女性らしさを見直されてきている中で、無意識にカテゴリー分けしないこと」だ。これは身体に障がいを持っている人でも変わらない。「車椅子だから、義足だからと枠にはめたらダメ。個人と向き合う機会が必要なんです」。ある出演者からは「終わったけど脱ぎたくない」という言葉をもらった。

 身体に障がいを持っている方にとって着せやすい・着させやすいという利便性だけでなく、彼・彼女らとしっかり向き合いデザインで昇華させる小西デザイナー。その姿勢は、当事者がファッションの素晴らしさを感じ取るかけがえのない機会になっただろう。パラリンピック開会式以外にも、身体障がい者がデザイナーと向き合い、特別な一着を着られる機会が増えて欲しい。

 小西デザイナーは今年3月、ファッションの教育を取り入れたスタジオスペース「ショウ コニシ デザイン ラボ(SHO KONISHI DESIGN LAB)」を世田谷区に開設した。「開会式の現場を肌で感じた経験を自分よりも若い世代に伝えていきたいです」と、教育者としての夢を語る。

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海外メゾンを離れ、独自路線を行く若きデザイナー 「タイガタカハシ」の“時代を超える服作り”

 26歳の高橋大雅デザイナーが手掛ける「タイガタカハシ(TAIGA TAKAHASHI)」は、ビンテージウエアをベースに、付属やディテールをアレンジして現代生活に再提案する“時代を超越した服作り”が特徴のブランドだ。2021-22年秋冬は、乗馬を前提にしたバックプリーツと腕を前にふったシェイプを持つ1920年代アメリカのサックコートや、1940年代のイギリス郵便局員のコートとアメリカのワークジャケットを融合させたアイテムなどがそろう。ジャケットは4〜8万、コートは約12万円、パンツは4〜5万円で、今シーズンは立ち上がりから数週間で消化率70%を超えるアカウントもあるなど、順調な滑り出しとなった。ラグジュアリーECサイトのエッセンス(SSENCE)やスーパー エー マーケット(SUPER A MARKET)、渋谷の吾亦紅、神奈川・厚木のマスマティクス(mathematics)など8店舗で扱われ、22年春夏からは国内外合わせて22店舗に拡大する。今年12月には京都に初の直営店をオープン予定だ。

 デザイナーの高橋大雅は1995年生まれ。中学卒業後に渡英し、ロンドン国際芸術高校(International School of Creative Arts)とセント・マーチン美術大学(Central Saint Martins BA)でアートやウィメンズウエアを学んだ。メゾンブランドでアシスタントデザイナーも務め、トレンドの第一線で活動していた。そんな彼が、なぜ現在の服作りに行き着いたのか。海外生活からデザイン哲学の変化までを聞いた。

WWD:はじめに、ファッションを志したきっかけを教えてください。

高橋大雅デザイナー(以下、高橋):小さいころから物を作ることが好きで、芸術の世界に憧れがありました。美しいものに強烈に引かれる性格で、自分に合った表現方法を模索した結果、ファッションに落ち着きました。

WWD:15歳でイギリスへ渡ったのはなぜ?海外と日本では教育方針にどんな違いがある?

高橋:中学までを日本で過ごすうちに、同調圧力や周りに合わせないと生きていけない空気が嫌になったんです。そんな中、セントマーチンズが芸術の視点からファッションなど幅広い領域を学ぶサマーコースを実施しているのを見つけて、すぐにロンドンに行くことを決めました。2010年は、キャンパスがまだチャーリングクロス(現在はキングスクロスに移転)にあったころです。

WWD:言語の壁はなかった?

高橋:英語は話せませんでしたが、クリエイティブな作業では文化と言語の壁を超え、多様な国の人とつながることができました。その時、「今後の人生を海外で過ごそう」と決意してそのままロンドンの高校に入学し、大学はセントマーチンズに入りました。

WWD:卒業後、コレクションにも参加するメゾンで経験を積むが、それぞれのブランドでどんな業務を担当した?

高橋:セントマーチンズでは2年生と3年生の間、1年間ギャップイヤーを取ってインターンシップをする制度があります。もともとアントワープでも仕事をしてみたいと思っていて、ダメ元で履歴書とポートフォリオを送ってみたら、すぐに面接したいと言われ、アントワープに移住してインターンがスタートしました。主にウィメンズウエアのデザインで、ドレーピングや3Dデザインを担当し、スケッチだけじゃなく、手を動かして造形するクチュールとテーラリングを掛け合わせた視点で服づくり学びました。その後、“女性が作る女性のための服”に魅力を感じ、ロンドンのメゾンでもウィメンズウエアのデザインアシスタントを務めました。

WWD:トレンドを追求するメゾンから一転し、「タイガタカハシ」では過去の洋服を現代に再現させるコレクションを制作している。服へのアプローチが全く異なるが、心境にはどんな変化があった?

高橋:自分が何をしたいのか自問自答した結果、常に新しいものを提案するだけでなく、過去の遺物に真の美しさを見出すことも伝えたいことに気づきました。10代からいろんな国々のアンティークディーラーや古美術商を通じて70~100年以上前の服を収集するほど古着が好きで、その“コレクション”を通して、現在もしくは未来にも存在する衣服を研究したいと思ったんです。それに、ストレスのないコンフォートゾーンにいると、本当にしたいことに気づけないし、挑戦できない。誰かの真似ではなく、自分だけの道を進もうという決意でもありました。

WWD:“時代を超える服作り”の目的は?

高橋:人々の装いは社会情勢に大きく左右されます。でも、衣服がタイムカプセルのように時間に耐えて生き残ることで、失われつつある文化や伝統を閉じ込め、過去の記憶を追体験できると考えているんです。

WWD:衣服を消費し、早いサイクルでビジネスを行う既存のファッションへのアンチテーゼも込めている?

高橋:すでにこれほど素晴らしい服がたくさんあるのだから、新しく作る意味はよく考えています。アンチテーゼになりうるビジネス規模には到達していませんし、世の中の流れに逆らうことは賢明な判断ではないかもしれませんが、自分自身に対しては正直であり続けたいです。

WWD:2021-22年秋冬シーズンは順調な滑り出しとなった。手応えや率直な感想を教えてください。

高橋:自分はただ単に服を売りたいのではなく、自分の思想や美意識を共有したい。そこに共感してもらった人たちには感謝の気持ちばかりです。

WWD:冬には京都に直営店をオープンする。ECで何もかもが買える今、リアル店舗を構える理由は?

高橋:万物に神は宿るという日本の精神性を独自に解釈し、服だけでなく彫刻や建築なども含め、自分の総合芸術として提案するつもりです。人生の半分を海外で過ごし、「日本人とは何か」を客観的に考えるようになった結果でもあります。

WWD:今後、ブランドをどう成長させていきたい?

高橋:服だけを作り続けるわけではありません。今はロンドンのデザインスタジオOK-RMとのブランディングやアートディレクションプロジェクト、香川・牟礼(むれ)とイタリア・フィレンツェでの彫刻制作、失われつつある銀塩写真の研究などさまざまな取り組みを進めています。これらの表現を通して自分の美意識の幅を広げ、自分たちにしかできない現代美術に昇華した物作りを目指していきます。

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東コレ参加5ブランドを支えたファッショニスタ 山田慎とは何者か

 2022年春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、東コレ)」が8月30日〜9月4日に開催された。参加ブランドのうち、デジタルの「ベースマーク(BASE MARK)」「アヤーム(AYAME)」「エイ・クライプシス((A)CRYPSIS)」、リアルの「ホウガ(HOUGA)」「セイヴソン(SEIVSON)」の5ブランドのショーをディレクションしたのが、フリーランスとしてPRやマーケティング活動を行う山田慎だ。「セイヴソン」では、コロナ禍でヅゥチン・シン(Tzu Chin Shen)デザイナーが来日できないというトラブルもありながら、機転を効かせて遠隔でショーを実現させた。普段は「アンリアレイジ(ANREALAGE)」「リコール(REQUAL≡)」「ソンシンバル(SONSHINBAL)」など、10ブランドのPRを担当。また個性豊かなファッションスタイルが特徴的で、インスタグラムのフォロワーは2.3万を抱える。今回の東コレでは、自身のフォロワーから18〜25歳のインターン生20人を募集して、ファッション界の未来を担う若者たちに向けて経験の場を提供した。東京ブランドを支えるキーマンに、部屋中が植物に囲まれた自宅で話を聞いた。

サンプル到着2日後にデジタルショーの撮影

WWD:これまでのキャリアは?
山田慎(以下、山田):日本の理系の大学を経た後に、ニューヨーク州立ファッション工科大学(F.I.T.)に入学しました。VMDやマーケティングを勉強して帰国後、電通グループの広告代理店ザ・ゴールの営業部とマーケティング部に2年半在籍し、イタリアの大手眼鏡企業デリーゴのハウスブランド「ポリス(POLICE)」などを担当していました。新店舗の内装や外装、打ち出し方を任され、広告代理店の幅を超えた経験ができましたね。それから自分の力を試すために独立し、現在はフリーランスとして活動しています。

WWD:5ブランドのショーを手掛けた経緯は?
山田:もともとは、普段からPRを担当している「ベースマーク」「ホウガ」「アヤーム」の3ブランドの予定だったんです。でも石田萌「ホウガ」デザイナーを介して、ECサイト「シーナウトウキョウ(SEENOWTOKYO)」の内⽥裕也代表から、「セイヴソン」「エイクライプシス」のショーのディレクションの依頼が届きました。

WWD:5ブランドのショーを同時進行させるのは大変だったのでは?
山田:何をどのタイミングで行えばいいのか分からなかったので、人員の確保だけは先に進めたんです。7月中に撮影場所や方向性の大枠をはじめ、照明や音響の手配は全ブランド終えていました。8月にサンプルが届き始めてからは、デジタルショーの撮影から取り掛かりました。デジタルで一番大変だったのは「ベースマーク」です。モデルのフィッティングはなく、「似合うだろう」という憶測のもと、サンプル到着2日後に撮影しました。いつものメンバーだからこそ実現できた、異例中の異例だと思います(笑)。今回の映像はランウエイ形式ではなく、初めてイメージムービーに挑戦しました。イメージなので、現場で見たものと出来上がりとの差が激しく、僕が納得いくものに仕上がるまで動画チームと修正を繰り返し続けました。リアルショーのディレクションに本格的に取り掛かったのは8月中旬以降です。

WWD:「セイヴソン」はデザイナーが来日できず、100%遠隔のリアルショーが成功できた要因は?
山田:本番の2カ月前から打ち合わせが始まり、全てLINEとZoom、Google Meetのみで打ち合わせをしました。遠隔でも成功できたのは、ブランド側がこちらの意見に対してきちんと耳を傾けてくれたからです。ショー自体はライティングの形を少し変えて、モデルの歩き方もシンプルにしたので、僕自身はそこまで大変ではありませんでした。

WWD:リアルショーで一番苦労したブランドは?
山田:「ホウガ」です。当初の構想よりも会場が狭くなり、洋服が見えにくいように感じたので、直前で図面を大きく変更しました。フィナーレ演出も変えたので、会場に設置した花のオブジェを組み立て直したり、ライトを調整し直したりして本番前ギリギリで完成しました。

WWD:実際に東コレを終えてみての感想は?
山田:最初はファッションショーのやり方すら分からなかったんですが、「アンリアレイジ」の演出を担当している金子繁孝さんが身近にいたので、自然と少しは吸収できていたのが成功できた要因かもしれません。ファッションショーには費用がかかるし、決して簡単なことではないけど本当に楽しかった。

下の世代にリアルな姿を見せる意味

WWD:ブランドが東コレで発表する意味は?
山田:デザイナーが自信を持つことです。「自分が手掛けた服がこんなにかっこよく映るんだ」「自分たちの領域外の表現に挑めるんだ」という気持ちは、デザイナーにとって一番大きい経験です。それに、ショーを行うことで自分のブランドを支えてくれる人、応援してくれる人がいることに改めて気付くことができます。僕も今は発表する側に立ち、東コレをもっと地域に根付くようにしていきたいと考えました。そこで、僕のインスタグラムフォロワーから18〜25歳のインターン生20人を集めました。下の世代に、自分が失敗する姿や苦しむ姿、楽しむ姿をあえて見せることで、彼らの今後につながるきっかけを作れたと思っています。自分のやれる範囲のことはやれたんじゃないかな。

WWD:デジタルとリアルの両方をディレクションして感じたことは?
山田:デジタルショーのメリットは、低予算で東コレに参加しやすいところです。でも映像をただ発表するだけでは絶対にダメだし、見てもらうためにはプロモーション全体の座組みが必要です。リアルにしかない良さは、来場者の拍手や一言があるだけで、発表する側のモチベーションは全然違うこと。その瞬間は、ファッション界にいてよかったと感じることができました。

WWD:仕事に対するモチベーションは?
山田:買い物をすることです。買い物をすれば消費者の気持ちが分かるから、マーケティングに生きるんです。なぜそれがほしくなったのかはクリエイティブに、好きを伝えることはPRに生きてくる。仕事後の楽しみは、「エルメス(HERMES)」「カルティエ(CARTIER)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」を買うことです。服が好きな気持ちやランウエイを見に行っていたことが、今の自分の仕事につながっているのが何よりも奇跡です。

WWD:山田さんのファッションのルーツは?
山田:虫です。僕は特に蝶が好きで、蝶の模様や自然界の色合いを参考にしています。ピンクと青の服を合わせているときは、南国の虫を思い浮かべてコーディネートしています。もともと海外のストリートスナップからファッションに興味を持ち始めたので、個性的な装いから日本ではすごく珍しがられる。基本は売れ残り商材が好きなので、焦って買いに行かなくても大体残っています(笑)。

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東コレ参加5ブランドを支えたファッショニスタ 山田慎とは何者か

 2022年春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、東コレ)」が8月30日〜9月4日に開催された。参加ブランドのうち、デジタルの「ベースマーク(BASE MARK)」「アヤーム(AYAME)」「エイ・クライプシス((A)CRYPSIS)」、リアルの「ホウガ(HOUGA)」「セイヴソン(SEIVSON)」の5ブランドのショーをディレクションしたのが、フリーランスとしてPRやマーケティング活動を行う山田慎だ。「セイヴソン」では、コロナ禍でヅゥチン・シン(Tzu Chin Shen)デザイナーが来日できないというトラブルもありながら、機転を効かせて遠隔でショーを実現させた。普段は「アンリアレイジ(ANREALAGE)」「リコール(REQUAL≡)」「ソンシンバル(SONSHINBAL)」など、10ブランドのPRを担当。また個性豊かなファッションスタイルが特徴的で、インスタグラムのフォロワーは2.3万を抱える。今回の東コレでは、自身のフォロワーから18〜25歳のインターン生20人を募集して、ファッション界の未来を担う若者たちに向けて経験の場を提供した。東京ブランドを支えるキーマンに、部屋中が植物に囲まれた自宅で話を聞いた。

サンプル到着2日後にデジタルショーの撮影

WWD:これまでのキャリアは?
山田慎(以下、山田):日本の理系の大学を経た後に、ニューヨーク州立ファッション工科大学(F.I.T.)に入学しました。VMDやマーケティングを勉強して帰国後、電通グループの広告代理店ザ・ゴールの営業部とマーケティング部に2年半在籍し、イタリアの大手眼鏡企業デリーゴのハウスブランド「ポリス(POLICE)」などを担当していました。新店舗の内装や外装、打ち出し方を任され、広告代理店の幅を超えた経験ができましたね。それから自分の力を試すために独立し、現在はフリーランスとして活動しています。

WWD:5ブランドのショーを手掛けた経緯は?
山田:もともとは、普段からPRを担当している「ベースマーク」「ホウガ」「アヤーム」の3ブランドの予定だったんです。でも石田萌「ホウガ」デザイナーを介して、ECサイト「シーナウトウキョウ(SEENOWTOKYO)」の内⽥裕也代表から、「セイヴソン」「エイクライプシス」のショーのディレクションの依頼が届きました。

WWD:5ブランドのショーを同時進行させるのは大変だったのでは?
山田:何をどのタイミングで行えばいいのか分からなかったので、人員の確保だけは先に進めたんです。7月中に撮影場所や方向性の大枠をはじめ、照明や音響の手配は全ブランド終えていました。8月にサンプルが届き始めてからは、デジタルショーの撮影から取り掛かりました。デジタルで一番大変だったのは「ベースマーク」です。モデルのフィッティングはなく、「似合うだろう」という憶測のもと、サンプル到着2日後に撮影しました。いつものメンバーだからこそ実現できた、異例中の異例だと思います(笑)。今回の映像はランウエイ形式ではなく、初めてイメージムービーに挑戦しました。イメージなので、現場で見たものと出来上がりとの差が激しく、僕が納得いくものに仕上がるまで動画チームと修正を繰り返し続けました。リアルショーのディレクションに本格的に取り掛かったのは8月中旬以降です。

WWD:「セイヴソン」はデザイナーが来日できず、100%遠隔のリアルショーが成功できた要因は?
山田:本番の2カ月前から打ち合わせが始まり、全てLINEとZoom、Google Meetのみで打ち合わせをしました。遠隔でも成功できたのは、ブランド側がこちらの意見に対してきちんと耳を傾けてくれたからです。ショー自体はライティングの形を少し変えて、モデルの歩き方もシンプルにしたので、僕自身はそこまで大変ではありませんでした。

WWD:リアルショーで一番苦労したブランドは?
山田:「ホウガ」です。当初の構想よりも会場が狭くなり、洋服が見えにくいように感じたので、直前で図面を大きく変更しました。フィナーレ演出も変えたので、会場に設置した花のオブジェを組み立て直したり、ライトを調整し直したりして本番前ギリギリで完成しました。

WWD:実際に東コレを終えてみての感想は?
山田:最初はファッションショーのやり方すら分からなかったんですが、「アンリアレイジ」の演出を担当している金子繁孝さんが身近にいたので、自然と少しは吸収できていたのが成功できた要因かもしれません。ファッションショーには費用がかかるし、決して簡単なことではないけど本当に楽しかった。

下の世代にリアルな姿を見せる意味

WWD:ブランドが東コレで発表する意味は?
山田:デザイナーが自信を持つことです。「自分が手掛けた服がこんなにかっこよく映るんだ」「自分たちの領域外の表現に挑めるんだ」という気持ちは、デザイナーにとって一番大きい経験です。それに、ショーを行うことで自分のブランドを支えてくれる人、応援してくれる人がいることに改めて気付くことができます。僕も今は発表する側に立ち、東コレをもっと地域に根付くようにしていきたいと考えました。そこで、僕のインスタグラムフォロワーから18〜25歳のインターン生20人を集めました。下の世代に、自分が失敗する姿や苦しむ姿、楽しむ姿をあえて見せることで、彼らの今後につながるきっかけを作れたと思っています。自分のやれる範囲のことはやれたんじゃないかな。

WWD:デジタルとリアルの両方をディレクションして感じたことは?
山田:デジタルショーのメリットは、低予算で東コレに参加しやすいところです。でも映像をただ発表するだけでは絶対にダメだし、見てもらうためにはプロモーション全体の座組みが必要です。リアルにしかない良さは、来場者の拍手や一言があるだけで、発表する側のモチベーションは全然違うこと。その瞬間は、ファッション界にいてよかったと感じることができました。

WWD:仕事に対するモチベーションは?
山田:買い物をすることです。買い物をすれば消費者の気持ちが分かるから、マーケティングに生きるんです。なぜそれがほしくなったのかはクリエイティブに、好きを伝えることはPRに生きてくる。仕事後の楽しみは、「エルメス(HERMES)」「カルティエ(CARTIER)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」を買うことです。服が好きな気持ちやランウエイを見に行っていたことが、今の自分の仕事につながっているのが何よりも奇跡です。

WWD:山田さんのファッションのルーツは?
山田:虫です。僕は特に蝶が好きで、蝶の模様や自然界の色合いを参考にしています。ピンクと青の服を合わせているときは、南国の虫を思い浮かべてコーディネートしています。もともと海外のストリートスナップからファッションに興味を持ち始めたので、個性的な装いから日本ではすごく珍しがられる。基本は売れ残り商材が好きなので、焦って買いに行かなくても大体残っています(笑)。

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東コレ参加5ブランドを支えたファッショニスタ 山田慎とは何者か

 2022年春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、東コレ)」が8月30日〜9月4日に開催された。参加ブランドのうち、デジタルの「ベースマーク(BASE MARK)」「アヤーム(AYAME)」「エイ・クライプシス((A)CRYPSIS)」、リアルの「ホウガ(HOUGA)」「セイヴソン(SEIVSON)」の5ブランドのショーをディレクションしたのが、フリーランスとしてPRやマーケティング活動を行う山田慎だ。「セイヴソン」では、コロナ禍でヅゥチン・シン(Tzu Chin Shen)デザイナーが来日できないというトラブルもありながら、機転を効かせて遠隔でショーを実現させた。普段は「アンリアレイジ(ANREALAGE)」「リコール(REQUAL≡)」「ソンシンバル(SONSHINBAL)」など、10ブランドのPRを担当。また個性豊かなファッションスタイルが特徴的で、インスタグラムのフォロワーは2.3万を抱える。今回の東コレでは、自身のフォロワーから18〜25歳のインターン生20人を募集して、ファッション界の未来を担う若者たちに向けて経験の場を提供した。東京ブランドを支えるキーマンに、部屋中が植物に囲まれた自宅で話を聞いた。

サンプル到着2日後にデジタルショーの撮影

WWD:これまでのキャリアは?
山田慎(以下、山田):日本の理系の大学を経た後に、ニューヨーク州立ファッション工科大学(F.I.T.)に入学しました。VMDやマーケティングを勉強して帰国後、電通グループの広告代理店ザ・ゴールの営業部とマーケティング部に2年半在籍し、イタリアの大手眼鏡企業デリーゴのハウスブランド「ポリス(POLICE)」などを担当していました。新店舗の内装や外装、打ち出し方を任され、広告代理店の幅を超えた経験ができましたね。それから自分の力を試すために独立し、現在はフリーランスとして活動しています。

WWD:5ブランドのショーを手掛けた経緯は?
山田:もともとは、普段からPRを担当している「ベースマーク」「ホウガ」「アヤーム」の3ブランドの予定だったんです。でも石田萌「ホウガ」デザイナーを介して、ECサイト「シーナウトウキョウ(SEENOWTOKYO)」の内⽥裕也代表から、「セイヴソン」「エイクライプシス」のショーのディレクションの依頼が届きました。

WWD:5ブランドのショーを同時進行させるのは大変だったのでは?
山田:何をどのタイミングで行えばいいのか分からなかったので、人員の確保だけは先に進めたんです。7月中に撮影場所や方向性の大枠をはじめ、照明や音響の手配は全ブランド終えていました。8月にサンプルが届き始めてからは、デジタルショーの撮影から取り掛かりました。デジタルで一番大変だったのは「ベースマーク」です。モデルのフィッティングはなく、「似合うだろう」という憶測のもと、サンプル到着2日後に撮影しました。いつものメンバーだからこそ実現できた、異例中の異例だと思います(笑)。今回の映像はランウエイ形式ではなく、初めてイメージムービーに挑戦しました。イメージなので、現場で見たものと出来上がりとの差が激しく、僕が納得いくものに仕上がるまで動画チームと修正を繰り返し続けました。リアルショーのディレクションに本格的に取り掛かったのは8月中旬以降です。

WWD:「セイヴソン」はデザイナーが来日できず、100%遠隔のリアルショーが成功できた要因は?
山田:本番の2カ月前から打ち合わせが始まり、全てLINEとZoom、Google Meetのみで打ち合わせをしました。遠隔でも成功できたのは、ブランド側がこちらの意見に対してきちんと耳を傾けてくれたからです。ショー自体はライティングの形を少し変えて、モデルの歩き方もシンプルにしたので、僕自身はそこまで大変ではありませんでした。

WWD:リアルショーで一番苦労したブランドは?
山田:「ホウガ」です。当初の構想よりも会場が狭くなり、洋服が見えにくいように感じたので、直前で図面を大きく変更しました。フィナーレ演出も変えたので、会場に設置した花のオブジェを組み立て直したり、ライトを調整し直したりして本番前ギリギリで完成しました。

WWD:実際に東コレを終えてみての感想は?
山田:最初はファッションショーのやり方すら分からなかったんですが、「アンリアレイジ」の演出を担当している金子繁孝さんが身近にいたので、自然と少しは吸収できていたのが成功できた要因かもしれません。ファッションショーには費用がかかるし、決して簡単なことではないけど本当に楽しかった。

下の世代にリアルな姿を見せる意味

WWD:ブランドが東コレで発表する意味は?
山田:デザイナーが自信を持つことです。「自分が手掛けた服がこんなにかっこよく映るんだ」「自分たちの領域外の表現に挑めるんだ」という気持ちは、デザイナーにとって一番大きい経験です。それに、ショーを行うことで自分のブランドを支えてくれる人、応援してくれる人がいることに改めて気付くことができます。僕も今は発表する側に立ち、東コレをもっと地域に根付くようにしていきたいと考えました。そこで、僕のインスタグラムフォロワーから18〜25歳のインターン生20人を集めました。下の世代に、自分が失敗する姿や苦しむ姿、楽しむ姿をあえて見せることで、彼らの今後につながるきっかけを作れたと思っています。自分のやれる範囲のことはやれたんじゃないかな。

WWD:デジタルとリアルの両方をディレクションして感じたことは?
山田:デジタルショーのメリットは、低予算で東コレに参加しやすいところです。でも映像をただ発表するだけでは絶対にダメだし、見てもらうためにはプロモーション全体の座組みが必要です。リアルにしかない良さは、来場者の拍手や一言があるだけで、発表する側のモチベーションは全然違うこと。その瞬間は、ファッション界にいてよかったと感じることができました。

WWD:仕事に対するモチベーションは?
山田:買い物をすることです。買い物をすれば消費者の気持ちが分かるから、マーケティングに生きるんです。なぜそれがほしくなったのかはクリエイティブに、好きを伝えることはPRに生きてくる。仕事後の楽しみは、「エルメス(HERMES)」「カルティエ(CARTIER)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」を買うことです。服が好きな気持ちやランウエイを見に行っていたことが、今の自分の仕事につながっているのが何よりも奇跡です。

WWD:山田さんのファッションのルーツは?
山田:虫です。僕は特に蝶が好きで、蝶の模様や自然界の色合いを参考にしています。ピンクと青の服を合わせているときは、南国の虫を思い浮かべてコーディネートしています。もともと海外のストリートスナップからファッションに興味を持ち始めたので、個性的な装いから日本ではすごく珍しがられる。基本は売れ残り商材が好きなので、焦って買いに行かなくても大体残っています(笑)。

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美容業界未経験者がわずか数年で資生堂傘下のグローバルブランドを作るまで 「ドランク エレファント」創設者に聞く成功のレシピ

 資生堂が2019年に買収したスキンケアブランド「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」が10月1日、いよいよ日本に上陸する。三越伊勢丹のコスメEC「ミーコ(MEECO)」、イセタン ミラー ルミネ新宿店、ららぽーとTOKYO-BAY店に出店し、イセタン ミラー 東京ミッドタウン日比谷店、イセタン ミラーテラスモール湘南店では期間限定で取り扱う。また6日からは伊勢丹新宿本店でポップアップイベントを行う。

 「ドランク エレファント」は13年、当時専業主婦だったティファニー・マスターソン(Tiffany Masterson)がビューティ業界未経験で立ち上げたブランド。SNSを中心に熱狂的なファンを育てたD2C戦略とクリーンビューティコンセプトで急成長し、わずか数年でセフォラのトップセラーに上り詰めた。ポップなパッケージと環境・肌への安全性に配慮した処方で若年層を中心に人気を集めている。

 また買収した資生堂は「ローラ メルシエ(LAURA MERCIER)」や「ベアミネラル(BAREMINERALS)」をはじめとするメイクアップブランドに加え、「ツバキ(TSUBAKI)」 などを擁するパーソナルケア事業を売却しており、今後プレステージスキンケアに一層注力する計画だ。そんな中で「ドランクエレファント」は事業をけん引するビジネスの1つの柱と捉え、日本での事業展開にも大きな期待をかける。

 そんな「ドランク エレファント」を手掛けるティファニー・マスターソン(Tiffany Masterson)創設者に、ブランド立ち上げの経緯や、日本進出にかけた思いなどについて聞いた。

WWD:「ドランク エレファント」を立ち上げた理由は。

ティファニー・マスターソン創業者(以下、ティファニー):ブランドを立ち上げる前は専業主婦として4人の子どもを育てていた。サイドビジネスとしてクレンジングバー(石けん)を作っていたのだが、これをきっかけに成分や原料、化粧品全般について学ぶようになった。私自身の肌が弱くてエッセンシャルオイルや香料にも敏感に反応してしまうのだが、安全・安心でありながら効果実感もある製品がなかなか見つからず、友人に勧められて自分でスキンケアラインを立ち上げることにした。

WWD:化粧品市場はすでにスキンケアブランドであふれているが、なぜここまで成長できたと考えるか。

ティファニー:「ドランク エレファント」を立ち上げる際、自分のこれまでの経験と知識を踏まえ6つの原料(エッセンシャルオイル、アルコール、シリコーン、紫外線吸収剤、香料・染料、界面活性剤)を絶対に配合しないと決めた。また肌にメリットのある、もしくは処方の安定・安全性に必要不可欠な原料のみを使用するシンプルな処方にこだわった。

重要なのは、単に処方にこだわるのだけでなく、なぜその処方にしたのかを発信すること。本当は不要な成分や肌に負担となる原料が含まれていることが多い化粧品だが、一般的な消費者はそんなことも知らない。だから消費者を“教育”する思いで、製品のことだけでなくスキンケアや化粧品全般について発信し続けた。このアプローチがこれまでの美容業界で新しかったのだと思う。透明性を重視した、消費者ファーストな戦略が支持され、口コミで人気が広がった。

WWD:買収のウワサが立っていた時、資生堂以外にも他の化粧品大手が買い手候補として多く挙がっていた。最終的に資生堂を選んだ理由は?

ティファニー:同じ価値観を持っているから。ポジティブな企業風土、“ピープルファースト”な考え方、イノベーション。これまでの「ドランクエレファント」のカルチャーを崩さずに、資生堂が誇る最新技術を活用してさらなるイノベーションを実現できるだろう。また、グローバル展開を目指す上で最適なパートナーだと感じた。

WWD:資生堂に買収された際、D2Cブランドとしての成功が高く評価されていた。欧米で奏功したD2Cアプローチは、日本でもどのように続けるのか?

ティファニー:SNSは消費者とつながる最も重要なツールの一つだと捉えている。「ドランク エレファント」のファンは、躊躇せずに意見を発信するし、互いにコミュニケーションを積極的に取り合っている。だから常に彼らの声に耳を傾け、なるべくスピーディーに製品開発などに生かしている。ブランドの成功の一因は、このコミュニティーに近い距離で接し、対話をしてきたことだと思う。9月にはLINEの公式アカウントを開設し、10月には伊勢丹新宿本店でポップアップイベントを開催予定で、そこで消費者と直接つながることも楽しみにしている。

消費者は決して“無知”じゃない
真面目すぎない啓もう活動が成功

WWD:「ドランク エレファント」は時に難しくもある、クリーンビューティやサステナビリティについて楽しく消費者に啓もうしており、それが多くの若年層の関心を引きつけている。

ティファニー:「ドランク エレファント」はあまりシリアスになりすぎず、常に“楽しむこと”を忘れないブランド。以前リテーラーの人に、消費者は“無知(知識がない)”だから、なるべくシンプルに消費者と対話する必要があると言われたことがある。でも私は決してそう思わないわ。今の消費者は学びたい意欲が高く、知識を手に入れることで自身の体に入れるものをコントロールできると分かっている。全く無知じゃないわ。私も一消費者として常に学んでいるし、なるべく楽しく気楽な方法で学べる場を作りたかった。だからユーモラスで“映える”コンテンツを用いて、原料や化粧品の使い方、ブランドのフィロソフィーなどについて楽しく発信している。

WWD:製品を重ね付けせず、手のひらで自由自在に混ぜて使う”スムージー”コンセプトもユニーク。それはどこから生まれた発想?

ティファニー:4人の子どもと仕事で常に忙しいから、丁寧に一つずつ重ね付けしている余裕がないの。ほぼ全ての製品が混ぜて使えるように、なるべく軽い質感にこだわった。毎朝飲んでいるスムージーにインスパイアされたの。

WWD:ここ数年でクリーンビューティは大きなブームとなったが、市場の未来は?

ティファニー:これからも次々とクリーンビューティブランドが誕生するだろう。ただ決まった定義がないために、クリーンの基準がブランドによって異なるのは懸念点だ。一方で消費者がどんどん賢くなっていく中で透明性はより重要になってくるだろうし、それはいい変化だと思う。

WWD:日本の化粧品市場は世界を見ても競争が激しい。そんな日本でどのように戦っていくのか。

ティファニー:全ての市場に共通することだが、まずはブランドのユニークな哲学をきちんと消費者に伝えることが成功の要だと思っている。欧米でも“教育”アプローチで多くの消費者が改めて自身の肌と向き合い、化粧品について学んだと感じている。日本の消費者にも同様に、“スキンケア改革”を起こしたい。

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“モード界の帝王”アルマーニが語る「エンポリオ アルマーニ」40年の軌跡 展覧会も開催

 デザイナーのジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)による「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」が創立40周年を迎えた。初めての店舗は1981年、ミラノに開き、その後「ジョルジオ・アルマーニ」などファッションラインを充実させた。21年のオリンピックでは、イタリア代表が表彰台で着用する公式ウエアは、「エンポリオ アルマーニ」のスポーツライン「エンポリオ アルマーニ EA7(EMPORIO ARMANI EA7)」がイタリア選手の公式ウエアを手掛けた。

 アルマーニは「エンポリオ アルマーニ」の2022年春夏コレクションをミラノで発表し、「The Way We Are(ザ・ウェイ・ウィー・アー)」と題した展覧会を開催。「エンポリオ アルマーニ」マガジンの特別号を発行するなどして40周年を祝っている。ここでは、ブランドのこれまでの軌跡やこれからの展望、現在地などを語る。

WWD:「ザ・ウェイ・ウィー・アー」はどんなイベント?

ジョルジオ・アルマーニ(以下、アルマーニ):メゾンの方針や意図を伝えるためのマニフェストのような役割を担う企画です。オープンであることの大切さや包括性、文化・ジェンダーの多様性といった価値観をブランドが設立当初から掲げてきた価値を再確認するものだ。基本的に、懐かしさに思いを馳せるノスタルジックなものは好んでいない。それはずっと変わっていないので、このイベントでも現在や未来に目を向けている。

WWD:40年前に「エンポリオ アルマーニ」を立ち上げた経緯は?

アルマーニ:1981年を思い返すと、雑踏とした世の中に気ままなムードがあり、「何かしたい」という衝動があった。多くの若者が自立して社会進出していたが、その気持ちを後押しするファッションはなかった。こういった市場のギャップは明らかにあったので、チャンスだと思った。(ブランドを立ち上げ後)すぐに大きな反響があり、一気に人気が広がった。イタリア語でデパートや百貨店、市場といった意味を持つ“エンポリオ”という名前は、誰もが簡単に入ることができ、何かに出合える場所ということが一目で分かるもの。ロゴの鷲は、国境の壁を超えて高く飛べることや地平線の続きを表す象徴として取り入れた。

WWD:2017年に「アルマーニ コレツィオーニ(ARMANI COLLEZIONI)」と「アルマーニ ジーンズ(ARMANI JEANS)」を「エンポリオ アルマーニ」に統合したが、その理由は?

アルマーニ:ブランドがこれからも発展していくだろうという自信はもちろんあった。加えて保有するブランド同士のバランスを取るために、「エンポリオ アルマーニ」にはもっと自由が必要だと考えた。設立当初から慎重に多様性を捉えており、「エンポリオ アルマーニ」では自分のスタイルを維持しながら、より多くの人にアピールできる製品を提供する。言うなれば、「エンポリオ」は(デザインの)本能で「ジョルジオ・アルマーニ」は(デザインをする)理由そのもの。どちらも欠けてはならない存在だ。

WWD:「エンポリオ アルマーニ」はここ数年でどう進化したと思う?

アルマーニ:デザインの幅も広がったし、より多くの人に向けた商品が増えている。今日の「エンポリオ アルマーニ」は、時代の変化に応じて、とても多様だ。“若さ”は今や年齢や生まれた年によって決まるものではなく、感覚やあり方を指している。だからこそ誰しもがブランドとつながりを感じられるような器でありたい。ブランドの精神は自由でメトロポリタンで、ダイナミックだ。

WWD:どのような人が「エンポリオ アルマーニ」らしいと思う?

アルマーニ:ファッションで自分を表現する人。そういう人が“ファッショニスタ”というわけではないけれど、確かな個性を持っていることは間違いない。そして年齢に縛られない人。

WWD:エキシビジョンの見所は?展示するアイテムや照明など、こだわった部分は?

アルマーニ:インスタレーションを中心に、テーマ別に部屋を設けている。それぞれがブランドの大切な要素を構成する。例えばメンズウエアとウィメンズウエアや、ミラノと世界の大都市、雑誌間で生まれる対話などを表現。部屋ごとのコンセプトに合わせて、配置するファッションアイテムなどを選んだ。活気あふれるビジュアルで、大きなムードボードのような部屋をミラーで覆い、万華鏡のようにそれぞれの要素を集めたんだ。

WWD:開催の準備をしながらどんなことを感じていた?

アルマーニ:これまでのデザインや取り組みを整理しながら、私のスタイルの本質やアイデア、アイテムを再考するきっかけとなった。たくさんの記憶が蘇ったよ。ミラノのブロレット通りの壁面広告の影響力は特にすごかった。思い出の多くには、レオ(Leo)や姪のシルヴァーナ(Silvana)がいる。長年私のそばにいてくれて、頭が上がらない2人だ。シルヴァーナとは一緒にウィメンズのコレクションを作ったりして、常にオープンに意見交換をしてきた。レオは私の片腕として一緒に働いてきた。忠誠であることに加えて、しんどい時もそれを軽くしてくれるような性格に本当に感謝している。

WWD:雑誌の発行や壁面広告を通して伝えたいメッセージは?

アルマーニ:一般的に広く語られるようになった「包括性(インクルージョン)」について、私は40年前から伝えようとしている。雑誌や広告でコミュニケーションに重きを置いているのは、“エンポリオ”という名の通り、ブランドが大切にしている価値観を自然に広げていくことを願ってのこと。雑誌を出版していた頃から妹のロザンナ(Rosanna)とは一緒に働いてきたが、広告のアイデアを提案してくれたのは彼女。この展覧会でも一緒に動いてくれた。

WWD:デジタルを使った仕掛けはある?

アルマーニ:もちろん!インスタグラムは要チェックだ。

WWD:「エンポリオ アルマーニ」の現在地は?顧客層や店舗数、これから新店舗オープンの予定は?

アルマーニ:メインの顧客層はヨーロッパとアジア。でもアメリカもコロナからの復帰を大きく支える市場だ。店舗は、250店以上ある。直近でイタリアのリナーテ、スペインのバルセロナに新店舗をオープンしたので、今後北米や中国にもっと店舗を増やしたいと思っている。

WWD:独立企業として迎えた40年だが、そこにこだわりは?

アルマーニ:1人の男として、そして起業家として独立しているということは大きな意味を持つ。特に今の時代は強く感じることだ。スピーディーかつ柔軟に動くためにも、大事な選択だ。これまでも自分の道を切り開いてきたし、これからもそうしていくだろう。

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ナイキが考える持続可能性をサステナビリティ責任者に聞く CO2排出と廃棄のゼロに向けて 【前編】

 ナイキ(NIKE)は2020年度に同社が排出したCO2量が1170万6664トンだったと公表した。同社は1500以上の拠点を有し、約7万5400人の従業員を抱え、サプライヤーの工場には100万人を超える従業員が働いており、その排出量と人口の規模はオランダ・アムステルダム市に匹敵する。同社はサステナビリティ戦略のコンセプトを“MOVE TO ZORO”とし、CO2排出量と廃棄物、2つのゼロを目指している。1170万6664トンから排出ゼロをどのように達成していくのか。ノエル・キンダー(Noel Kinder)=チーフ・サステナビリティ・オフィサーに聞く。

WWD:ナイキの考えるサステナビリティとは?サステナビリティ戦略でCO2排出と廃棄のゼロを目標にしていますね。

ノエル・キンダー=チーフ・サステナビリティ・オフィサー(以下、キンダー):ナイキは世界の都市1つ分のCO2を排出しており、気候変動に影響を与えています。これは、私たちが行う全てのことに目を向ける動機となっています。一企業が果たすべき重要な役割であり、小さな調整が大きな変化につながります。この精神に基づき、私たちは解決策を待つのではなく、解決策を生み出し、その規模を拡大するために取り組んでいます。私たちのサステナビリティ活動は、炭素、廃棄物、水、化学に焦点を当てており、科学的根拠に基づく大胆な目標を設定して、地球の保護に貢献する責任を果たしています。 さらに私たちは、どのような製品を、どのようにして作り、どのようにしてアスリートに届け、どのようにして回収して新しいものに変えていくのか、というナイキのあらゆる側面を常に考え直し、新しいソリューションを生み出してビジネス全体で迅速にスケールアップする方法を模索しています。

WWD:先日公開した資料で、2020年度のCO2排出量が1170万6664トンというリポートがありました。その数字をゼロにするには現状のビジネスの見直し、改良を積み重ねていくことだけでは難しいようにも思います。

キンダー:気候変動の緊急性に対処するために必要な変化の規模は、ナイキのあらゆる部分で革新を必要とします。私たちはただ解決策を待つだけではなく、解決策を生み出さなければならないのです。そして、新しい解決策を見つけたら(あるいは業界内の他の人から学んだら)、スケールアップするためのハードワークを迅速に行わなければなりません。

 私たちはCO2排出量を削減することを決意し、その規模と影響力を利用して他の企業が同じことをするのを支援しています。気候変動対策には集団行動が不可欠なので、私たちは業界内外でパートナーとなり、共通する影響を軽減しています。

WWD:CO2排出量に並び、水リスクに関しても深刻化しています。ナイキの対応策は?

キンダー:水資源の使用量を削減するために、私たちは原材料が生産されている現場での取り組みに重点を置いています。また、製造の効率化と廃水のリサイクルにより、繊維の染色・仕上げに使用する淡水の使用量を削減しています。実際、私たちの繊維製品の染色・仕上げを行うサプライヤーは、20年の目標を大幅に上回る30%の淡水使用量を削減しました。

WWD:環境負荷の低減を考えたときに重視されるのが素材ですが、ナイキが考える環境配慮型素材とはどういうものですか?

キンダー:私たちは持続可能な素材を、化学的に優れ、資源強度が低く、廃棄物が少なく、リサイクルが可能であることにより、製品の環境影響を低減するものと定義しています。材料を大規模に改善するためには、製品開発、材料、製造において、材料サプライヤーを含めてナイキチーム間の関係の調整が必要になります。私たちは、リサイクル素材やリサイクル可能な素材、素材を最も効率的に使用するための新しい機械や製造方法、新しいリサイクル技術の飛躍的な向上を可能にするために、イノベーションへの投資を計画しています。また、廃棄物を新製品に使用する新しい方法を見つけたいと考えています。重量に対して25%以上のリサイクル素材を使用したスニーカー“スペース ヒッピー”をはじめとし、今後の新製品にも採用することでスケールアップしていきます。

WWD:近年、キノコの菌糸体由来の“マッシュルームレザー”やリサイクル可能なセルロース繊維の革新、人工たんぱく質素材など、これまでになかった新素材が登場しています。注目している素材があれば教えてください。

キンダー:私たちが注力しているのは、影響の少ない素材を拡大し、廃棄物を新素材に変えることで、より持続可能な選択肢を新たに提供することです。具体的には、スタイルや性能を損なうことなく、大量生産される製品の素材に低炭素の代替素材を使用する方法を検討しています。

 例えば、主要素材(ポリエステル、コットン、レザー、ゴム)の低炭素素材の使用率を50%にすることで、25年までに50万トンの温室効果ガス排出量を削減することができます。この例を基に、私たちはリサイクルポリエステルを全製品に拡大しています。 現在、リサイクルポリエステルは当社の全ポリエステルの26%を占めており、そのおかげで、年間平均10億本のペットボトルが埋め立て地や水路に行くのを回避しています。廃棄物の削減に加えて、リサイクルポリエステルはバージンポリエステルに比べてCO2排出量を最大30%削減します。

WWD:生産工程で出る廃棄物を再資源化した“ナイキ グラインド”をデザインに活用していますね。

キンダー:はい。このプログラム(Reuse-A-Shoe)では、ゴム、フォーム、レザー、テキスタイルの混合物など、回収可能な価値を持つ余剰のフットウエア素材と、使用済みのシューズを回収し、リサイクルして新しい製品に再利用しています。このプログラムは25年以上続いていますが、今も成長し、進化し続けています。“ナイキ グラインド”で部分的に作られた最も新しいイノベーションは、ナイキ クレーター フォームです。この新しいフォームは、“スペースヒッピー”プロジェクトから生まれたもので、現在ではライフスタイルやパフォーマンスフットウエアのさまざまなスタイルに採用されています。

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「有害な男らしさ」や「セックス」にアートから迫る「リチャードソン」マガジン “嫌われ者”覚悟の発行人のこだわり

 ニューヨーク発のインディペンデント・マガジン「リチャードソン(Richardson)」はこのほど、3年ぶりとなる新刊を発表した。同号は、“道徳”を意味する「A10:ザ・モラリティー・イシュー(A10 The Morality Issue)」と題し、アートやカルチャー、学術的視点を交えて、「性」に関する倫理観や歴史を掘り下げている。

 表紙に起用したポルノスター兼モデルのドミニク・シルバー(Dominique Silver)へのインタビューをはじめ、現代アーティストの作品、「有害な男らしさ(トキシック・マスキュリニティ)」を批評するエッセイなどを掲載している。さらに、「フッド・バイ・エアー(HOOD BY AIR)」のデザイナーとして世間をたびたび騒がせているシェーン・オリバー(Shayne Oliver)の「アノニマスクラブ(ANONYMOUS CLUB)」とコラボレーションした限定のカプセルコレクションも発売する。同雑誌を設立したアンドリュー・リチャードソン(Andrew Richardson)に、この“コントロバーシャル(=議論を巻き起こすような内容)”な号の発行について、インタビューした。

WWD:新刊のテーマを“モラリティー(道徳)”にした背景は?

アンドリュー・リチャードソン(以下、アンドリュー):「リチャードソン」は進化しながら形を作っていく、天然の産物である。テーマを決めて素材を編集したのではなく、興味関心があるものを寄せ集めていったら、それらをつなぐものが「モラリティー」だった。それがまた派生して新しいコンテンツになっていった。

WWD:どのようなコンテンツが同テーマにつながったのか?

アンドリュー:きっかけは、アメリカの白人男性社会を中心に行われている、新入生歓迎会での過激な洗礼儀式「ヘイジング(Hazing)」の非公開写真を見つけたこと。仲間として認めてもらうために、どれだけ過激なことができるかを見せつける儀式があるんだ。それを起点に精神分析学の専門家、ジェイミソン・ウェブスター(Jamieson Webster)を招いて「有害な男らしさ」について考察した。

WWD:「有害な男らしさ」とは、“男らしくない”行動や思想をバカにし、排斥する偏った男らしさを指す。近年は男性自身の心身の健康に害をおよぼしたり、女性蔑視や性暴力に発展する可能性があると指摘されているが、「リチャードソン」が触れる意義とは?

アンドリュー:本誌では、良し悪しの決めつけや矯正するといったことを目的にせず、考察・批評をしている。読者がどういう考えを抱くかは自然の反応に任せて、われわれはたださまざまなトピックスについて語ることが大事だと考えている。

WWD:コンテンツを通じて読者に正解は掲示しないということ?

アンドリュー:そう、あくまで対話を生み出したい。専門家や思想家などの、知的視点を土台にして会話を重ねている。私たちはニッチな出版社なので、自分たちでやりたい企画を決めやすい。いわば大きな“バブル”の中で、みんなで作業している感覚だ。私たちも作りながら一緒に学んでいるので、制作しながら生まれる対話や疑問を全てマガジンに落とし込んでいる。

WWD:シェーン・オリバーの「アノニマスクラブ」とコラボレーションしたきっかけは?

アンドリュー:シェーンとは昔から親しかったし、彼が今号でドミニクへのインタビューを担当したことからコラボレーションが決まった。彼とは目的や意思がすごく似ていて、売ることをゴールにしない広い視点に共感した。

WWD:カプセルコレクションのデザインにあるテキストは何を意味する?

アンドリュー:シェーンによるドミニクへのインタビューから、有益な部分を引用した。本人たちが直面する日常を淡々と描いて、新しい見方で世の中を感じるきっかけとなるような一文を選んだ。

WWD:特に力を入れたページは?

アンドリュー:全ページが自分の子どもみたいに大切だが、表紙とカバーストーリーは特にエネルギーを注いだ。ほかにもセックス・ポジティブ・フェミニズム(セックスをポジティブに捉える運動)のアーティスト、ペニー・スリンガー(Penny Slinger)のエッセイページには、特色の銀を使ってこだわった。

WWD:プリント版で発行することへのこだわりは?

アンドリュー:アートの美しさを感じるには、自分の目や手で直接触れられる印刷物が適していると思う。本号ではコンテンツに合わせて、使用する紙などを一からこだわっている。例えば、挑発的な作品で知られるジョーダン・ウルフソン(Jordan Wolfson)のアートをシール状にし、自由にめくって遊べるようにしている。表紙には、70年代で主流だったグラビア印刷を採用した。細かい濃淡が表現できるので、試行錯誤の末に印刷方法を習得し、モノクロ写真を際立たせた。

WWD:表紙にドミニク・シルバーを起用した理由は?

アンドリュー:ドミニクは、ナターシャ・ドリームス(Natashia Dreams)という名でポルノスターのキャリアもある。セックスワークへのスティグマ(恥や不名誉などのネガティブなイメージ)について対話を生むことも、本号の大きなテーマだ。セックスワーカーのトランスジェンダー女性であるということは、彼女の人生にさまざまな影響を与えている。LGBTQ+コミュニティーの中にいても、セックスワーカーであるということで生まれるハードルがある。そんな人たちのためにも、トランスコミュニティーの日常やリアルな部分に光を当てたかった。

WWD:“コントロバーシャル”な雑誌を制作することに苦悩はないのか?

アンドリュー:クリエイションをする上で、社会的なトピックに触れていくことは私にとって自然で、避けては通れないこと。トラブルをわざと起こそうと思っているわけではないが、時々議論を起こすことはある。

WWD:コアなファンが多い理由は何だと思う?

アンドリュー:きっと誠実さに惹かれている人が多いのだと思う。純粋な気持ちでクリエイションに向き合っているから、一部の人は作品に感銘を受けるが、一部の人は全く気に入らない。大好きか大嫌いか、のどちらかだろう。


 キム・カーダシアン(Kim Kardashian)を表紙に迎えた前作、「A9」から3年。記念すべき10号目およびコラボカプセルコレクションは、「リチャードソン」の公式オンラインストアや、東京・原宿の「リチャードソン・東京」店、セレクトショップの「ボンジュール・レコード(Bonjour Records)」で販売中だ。

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ミラノの異才「マリアーノ」 26歳デザイナーが世界に届ける“ハッピーなプレタポルテ”

 イタリアを拠点とする「マリアーノ(MAGLIANO)」は、サルトリア仕込みのテーラリング技術を武器にしたシェイプの面白さと、ポルノ漫画など奇抜なモチーフ使いでジワジワと知名度を上げているメンズブランドだ。2018年に「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)」で新人デザイナー賞「Who’s on next !」受賞し、19年にミラノ・コレクションでランウエイデビューを果たした。現在、海外で20、日本で15のアカウントに卸している。

 デザイナーのルカ・マリアーノ(Luca Magliano)は1995年生まれの26歳。「まだまだ小さなブランドだよ」と話す彼に、デザイナーを目指した原体験から毎シーズンのコレクションの作り方、ブランド初期から登場する謎のおじさんモデルなどについて聞いた。

WWD:服作りを始めたきっかけは?

ルカ・マリアーノ(以下、ルカ):小さなころから服が好きだった。僕の地元ボローニャには大きなマーケットがあって、そこで服を買ったり売ったりしながら、 “服を着てハッピーになる感覚”を覚えたんだ。これがデザイナーを目指した原体験だね。高校卒業後、ジャーナリストで建築家のバルバラ・ネロッツィ(Barbara Nerozzi)に師事して、服や建築などデザイン全般を学んだ。

WWD:ファッションに専念していたわけではなかった。

ルカ:そう。建築からグラフィック、プロダクトまでいろんなデザインを勉強した。知らないことだらけで、毎日衝撃を受けていたよ。そんな時、師匠から「ルカはファッションがいいんじゃない?」と勧められて、ファッションデザイナーに専念することに決めたんだ。その後、運良くアレッサンドロ デラクア(Alessandro dell'Acqua)のもとで経験を積めて、16年に「マリアーノ」を立ち上げた。

WWD:デラクアのもとで学んだテーラリングは「マリアーノ」の軸になっている。

ルカ:そうだね。「マリアーノ」はストリートブランドではなく、フォーマルな日常着。だからサルトリアの技術やイタリアの工場でしか表現できない素材・ディテールを積極的に使ってるんだ。

WWD:その一方で、生地をツイストさせたり、ポルノのグラフィックを用いたりと、斬新なデザインも目を引く。これらの根底にはどんな思いがある?

ルカ:フォーマルでありながら、“ハッピーな時間に着てもらうプレタポルテ”を目指している。着るだけで気分が上がるのはファッションの一番の面白さだからね。最近は頭の中でヒーローを作って、それにインスパイアされながらコレクションを広げている。例えばスーパーセクシーなキャラクターだったり、ボローニャで有名なゲイのキャラクターだったり。ポルノの絵をジャケットに貼り付けたのも、ここから派生したアイデアだね。あとは「こういうコミュニティがいるんだよ」と政治的なメッセージも忍ばせている。洋服はメッセージを伝えるツールでもあるから。

WWD:2022年春夏コレクションではアップサイクルを大々的に取り入れた。その理由は?

ルカ:ブランドを始めたときから、デッドストック素材を使ったり、古着をリユースしたりしてアップサイクルを取り入れてきた。予算の都合だけじゃなく、エコロジカルな服をどう提案していくのかは毎シーズン考えているテーマなんだ。今回はミリタリーウエアを再利用するなど、エコロジカルなアイテムを拡大した。ロックダウン以降、服作りの環境が変わって、よりサステナブルについて考えるようになったんだと思う。今、この時代にファッションをやる以上、環境に対する責任は持たないといけないからね。

WWD:現在の顧客層は?

ルカ:マーケットにもよるけど、幅広い年齢層に男女問わず着てもらっている。若者向けなイメージがあるかもしれないけど、実はおじいさん、おばあさんにも人気なんだ。クラシックな作りがベースだから、手に取りやすいんだと思う。

WWD:一番大きなマーケットは?日本のマーケットは何番目に大きい?

ルカ:日本が一番大きい。セールス戦略もしっかり練っているし、毎シーズンフィードバックももらっている。2番目はフランスで、ここ数シーズンは中国もすごく伸びている。まだまだ大きなブランドじゃないけど、着実に成長している。どんなものが市場で必要か、そして自分たちにとってベストなどんな手段は何か。地味だけど、これを意識し続けることが大事なんだと思う。

WWD:チームメンバーはどんな人がいる?

ルカ:スタイリストのエリーザと、MDやプロモーション、ディベロプメントを担当するヌンツィオ、そして僕の3人。この3人で密にコミュニケーションを取り、SNSコンテンツやコレクションの方向性を決定している。そして外部のクリエイターと協力しながら、40〜50型のコレクションを制作しているんだ。少数だからこそ、自分たちのやりたいことを純度高く表現できている。

WWD:毎シーズン登場するおじさんモデルは誰?

ルカ:トニーのこと?よく見てるね!彼は仲の良い友達で、ファーストシーズンのショーから起用しているんだ。クールでチャーミングでセンシュアリーだから、ブランドの象徴なんだ。

WWD:26歳でいろんなことに興味があると思う。休日は何をしている?

ルカ:今は仕事ばかりだね(笑)。ファッションデザインが好きなというのはもちろん、それ以上に、今が頑張りときだと思ってるから。本当にフリーなときは、ビーチで1日中本を読んでるかな。

WWD:今後ブランドの展望を教えてください。

ルカ:ブランドをもっと成長させたい。あと、ショーもやりたい。さらに先のことを言えば、ビスポークにチャレンジしたいと思っている。プレタポルテはあくまで量産できる服。個人の好みをそのまま反映できるビスポークで、よりスペシャルな服が作ってみたい。あとは自分の店を持って、ブランドのはハッピーな世界観を伝えながら、それに共感する人が集まる場所を作りたい。でもまずは、目の前の仕事に打ち込んでいくよ。

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ミラノの異才「マリアーノ」 26歳デザイナーが世界に届ける“ハッピーなプレタポルテ”

 イタリアを拠点とする「マリアーノ(MAGLIANO)」は、サルトリア仕込みのテーラリング技術を武器にしたシェイプの面白さと、ポルノ漫画など奇抜なモチーフ使いでジワジワと知名度を上げているメンズブランドだ。2018年に「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)」で新人デザイナー賞「Who’s on next !」受賞し、19年にミラノ・コレクションでランウエイデビューを果たした。現在、海外で20、日本で15のアカウントに卸している。

 デザイナーのルカ・マリアーノ(Luca Magliano)は1995年生まれの26歳。「まだまだ小さなブランドだよ」と話す彼に、デザイナーを目指した原体験から毎シーズンのコレクションの作り方、ブランド初期から登場する謎のおじさんモデルなどについて聞いた。

WWD:服作りを始めたきっかけは?

ルカ・マリアーノ(以下、ルカ):小さなころから服が好きだった。僕の地元ボローニャには大きなマーケットがあって、そこで服を買ったり売ったりしながら、 “服を着てハッピーになる感覚”を覚えたんだ。これがデザイナーを目指した原体験だね。高校卒業後、ジャーナリストで建築家のバルバラ・ネロッツィ(Barbara Nerozzi)に師事して、服や建築などデザイン全般を学んだ。

WWD:ファッションに専念していたわけではなかった。

ルカ:そう。建築からグラフィック、プロダクトまでいろんなデザインを勉強した。知らないことだらけで、毎日衝撃を受けていたよ。そんな時、師匠から「ルカはファッションがいいんじゃない?」と勧められて、ファッションデザイナーに専念することに決めたんだ。その後、運良くアレッサンドロ デラクア(Alessandro dell'Acqua)のもとで経験を積めて、16年に「マリアーノ」を立ち上げた。

WWD:デラクアのもとで学んだテーラリングは「マリアーノ」の軸になっている。

ルカ:そうだね。「マリアーノ」はストリートブランドではなく、フォーマルな日常着。だからサルトリアの技術やイタリアの工場でしか表現できない素材・ディテールを積極的に使ってるんだ。

WWD:その一方で、生地をツイストさせたり、ポルノのグラフィックを用いたりと、斬新なデザインも目を引く。これらの根底にはどんな思いがある?

ルカ:フォーマルでありながら、“ハッピーな時間に着てもらうプレタポルテ”を目指している。着るだけで気分が上がるのはファッションの一番の面白さだからね。最近は頭の中でヒーローを作って、それにインスパイアされながらコレクションを広げている。例えばスーパーセクシーなキャラクターだったり、ボローニャで有名なゲイのキャラクターだったり。ポルノの絵をジャケットに貼り付けたのも、ここから派生したアイデアだね。あとは「こういうコミュニティがいるんだよ」と政治的なメッセージも忍ばせている。洋服はメッセージを伝えるツールでもあるから。

WWD:2022年春夏コレクションではアップサイクルを大々的に取り入れた。その理由は?

ルカ:ブランドを始めたときから、デッドストック素材を使ったり、古着をリユースしたりしてアップサイクルを取り入れてきた。予算の都合だけじゃなく、エコロジカルな服をどう提案していくのかは毎シーズン考えているテーマなんだ。今回はミリタリーウエアを再利用するなど、エコロジカルなアイテムを拡大した。ロックダウン以降、服作りの環境が変わって、よりサステナブルについて考えるようになったんだと思う。今、この時代にファッションをやる以上、環境に対する責任は持たないといけないからね。

WWD:現在の顧客層は?

ルカ:マーケットにもよるけど、幅広い年齢層に男女問わず着てもらっている。若者向けなイメージがあるかもしれないけど、実はおじいさん、おばあさんにも人気なんだ。クラシックな作りがベースだから、手に取りやすいんだと思う。

WWD:一番大きなマーケットは?日本のマーケットは何番目に大きい?

ルカ:日本が一番大きい。セールス戦略もしっかり練っているし、毎シーズンフィードバックももらっている。2番目はフランスで、ここ数シーズンは中国もすごく伸びている。まだまだ大きなブランドじゃないけど、着実に成長している。どんなものが市場で必要か、そして自分たちにとってベストなどんな手段は何か。地味だけど、これを意識し続けることが大事なんだと思う。

WWD:チームメンバーはどんな人がいる?

ルカ:スタイリストのエリーザと、MDやプロモーション、ディベロプメントを担当するヌンツィオ、そして僕の3人。この3人で密にコミュニケーションを取り、SNSコンテンツやコレクションの方向性を決定している。そして外部のクリエイターと協力しながら、40〜50型のコレクションを制作しているんだ。少数だからこそ、自分たちのやりたいことを純度高く表現できている。

WWD:毎シーズン登場するおじさんモデルは誰?

ルカ:トニーのこと?よく見てるね!彼は仲の良い友達で、ファーストシーズンのショーから起用しているんだ。クールでチャーミングでセンシュアリーだから、ブランドの象徴なんだ。

WWD:26歳でいろんなことに興味があると思う。休日は何をしている?

ルカ:今は仕事ばかりだね(笑)。ファッションデザインが好きなというのはもちろん、それ以上に、今が頑張りときだと思ってるから。本当にフリーなときは、ビーチで1日中本を読んでるかな。

WWD:今後ブランドの展望を教えてください。

ルカ:ブランドをもっと成長させたい。あと、ショーもやりたい。さらに先のことを言えば、ビスポークにチャレンジしたいと思っている。プレタポルテはあくまで量産できる服。個人の好みをそのまま反映できるビスポークで、よりスペシャルな服が作ってみたい。あとは自分の店を持って、ブランドのはハッピーな世界観を伝えながら、それに共感する人が集まる場所を作りたい。でもまずは、目の前の仕事に打ち込んでいくよ。

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「セックス・エデュケーション」出演俳優の日常 オラを演じるパトリシア・アリソンのファッション日記

 ネットフリックス(NETFLIX)の大人気ドラマ「セックス・エデュケーション(Sex Education)」に出演し、オラ役を演じるパトリシア・アリソン(Patricia Allison)は今をときめく俳優の1人。セックスをテーマに性教育やクィア・アイデンティティを包括的に扱う学園物語「セックス・エデュケーション」に出演したことをきっかけに話題を集めている。最近では、ヴェネチア映画祭や同ドラマ待望のシーズン3のオンラインプレミアに参加し、「ミュウミュウ(MIU MIU)」を着用した。そんなパトリシアのヴェネチアでの“ファッション日記”を写真とコメントでお届けする。

WWD:「ミュウミュウ」のルックのお気に入りポイントは?

アリソン:一番好きなのは、ブルーの「ミュウミュウ」のスーツにあしらわれたスタッヅが、私のヘアースタイルにぴったり合っているところ。スカートもすごく気に入っていて、履き心地もよかったし、“無敵”って気分だった。

WWD:ファッションはどんなスタイルが好き?

アリソン:ファッションにハマった最初のころは、ビンテージアイテムや両親のクローゼットから借りたオーバーサイズの洋服をよく着ていた。そこからいろんなテイストや着こなしを楽しむようになったかな。自分で選んだアイテムやブランドのファッションを通して、自分に“しっくり”くる感覚がとてもワクワクする。「ミュウミュウ」は中でも、いつでも私らしさを表現してくれる存在。

WWD:ヴェネチアではどんなひとときを過ごした?

アリソン:「ミュウミュウ」のショートフィルム「MIU MIU WOMEN’S TALES(女性たちの物語)」を観て、トークセッションにも参加して、とっても楽しかった。毎日いろんな「ミュウミュウ」のアイテムを着て過ごしたよ。素敵なティードレスや猫柄のトップスに合わせたレザーのスカートがお気に入り。ヴェネチアは本当に素敵な都市だったので、また絶対訪れたい。

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「ディオール」の“メダリオンチェア” 吉岡徳仁と佐藤オオキの再解釈は?

 「ディオール(DIOR)」は9月5~10日、イタリア・ミラノ市内で“メダリオンチェア”をテーマにした展示を行った。“メダリオンチェア”とは、クリスチャン・ディオール(Christian Dior)がファッションショーのゲスト用に選んだ椅子。回想録でムッシュ・ディオールは、「落ち着きがあり、シンプルかつクラシックでパリらしい」と述べている。リボンをあしらった楕円形の背もたれを持つ椅子は「ディオール」初のパリのブティックに置かれたほか、メゾンのコードとして香水のボトルなどにも影響を与えている。今回の展示では、世界中のクリエイターが再解釈した“メダリオンチェア”を展示。日本からは、吉岡徳仁とネンドの佐藤オオキが参加した。2人の作品に対する思いを紹介する。

 吉岡は、“人の感覚を超越すること”を模索しながら抽象と現実の間にあるオブジェを制作し続けている。“メダリオンチェア”に関しては、「光を素材そのものへ転換した。境界や外観の概念を超えて夢見ることへ誘うインビテーションだ」と述べている。彼が好んで用いるガラス素材を用いた作品は透明感と優美な起伏の融合からレトロフューチャリスティックな雰囲気を醸し出している。シンデレラのガラスの靴を想起させるエレガントなチェアだ。

 ミニマルなアプローチで世界的に評価されている佐藤も“メダリオンチェア”の素材にガラスを使用。背面、座面、脚は単一のパーツで構成されている。フューチャリスティックな印象の作品は、メゾンのシンボルカラーであるグレーやムッシュ・ディオールが好んだペールピンクで彩られている。背面を楕円形にくり抜くことで、“メダリオンチェア”のフォームを暗喩的に引き立たせている。佐藤は、「ムッシュ・ディオールとの長い会話」を表現したとコメントしている。

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宮永えいとがyutori片石らから資金調達 月商1億円ブランドへ

 宮永えいとが代表を務めるCiiKは、第三者割当増資により3000万円の資金調達を行った。引き受け先は、アパレルブランド「ウィンダンシー(WIND AND SEA)」経営者の赤坂優氏が代表を務めるAAファンド、主にライフスタイルやエンタメ、スポーツ領域に出資するWベンチャーズ(W ventures)、そしてyutoriの片石貴展代表取締役だ。資金は、宮永がプロデュースするメンズコスメブランド「レタッチ(RETOUCH)」の新規プロダクト開発などに充てる。

 宮永はユーチューブチャンネル「大人男子ラボ」で約15万の登録者を持つインフルエンサーだ。スキンケアやメイク、ヘアなどの情報を発信し、今年1月には「レタッチ」をローンチした。過去に都内のヘアサロンで店長を務め、今もサロンワークを続ける現役美容師でもある。

 インフルエンサー自らが資金調達し、事業拡大するのは珍しい。「正直、お金がめちゃくちゃ欲しかったわけではない」と語る宮永に、真の目的と今後の展望を聞いた。

WWD:調達した資金の使い道は?

宮永えいと(以下、宮永):「レタッチ」の新規プロダクト開発や事業拡大に充てます。まずはヘア関係のプロダクトを増やす。これまでリップやBBクリームも作ってきましたが、ヘアバームは初回生産分5000個が完売し、急きょ追加生産するほど大きな反響でした。世の中の男性の身だしなみは髪から始まるんだと実感しました。

WWD:「レタッチ」の強みは?

宮永:僕自身が美容師でヘアの知見を持ってることに加えて、ユーチューブでユーザーのニーズをキャッチできること。動画を分析すれば、どんなトピックに興味があって、どこで離脱されて、どこで登録者が伸びているかが分かる。一種のマーケティングツールなんです。今後も動画やればやるほど、プロダクトの精度も高まります。

WWD:ECや百貨店のほか、全国のヘアサロンと組んで店販するビジネスモデルも奏功している。

宮永:美容師と横の繋がりがあるのは大きいです。中には1カ月で200個売ってくれる美容師もいます。お客さんにも求められるし、プロも使いやすい。これは僕ならではの商品提案力だと思います。

WWD:実売を考えると、自己資本でも十分賄えそうだ。

宮永:正直、めちゃくちゃお金が欲しかったわけじゃありません。僕は男性の身だしなみに課題を感じて、社会貢献できるブランドを本気で作りたいと思っている。でも1人の美容師であり、インフルエンサーだから、「レタッチ」には“インフルエンサーが出したブランド”という認知が少なからずあるんです。このイメージを払拭したい。そこでビジビネスのプロと組んで自分のビジョンを共有し、それを達成する環境を整えました。

WWD:名だたる投資家のサポートによって、ブランドに箔が付く。

宮永:そうです。それと、自分自身に発破をかけるためでもあります。美容の現場しか知らない僕は、世の中のビジネスがどう回っているか、どうやって資金調達するかは全く知らないし、数字も強くない。でもそれを言い訳にしていたら理想のブランドは作れません。今ここで本気でプレゼンして、一流のビジネスマンに認めてもらうことができたら、自分自信も成長する。その一心で行動しました。今回、ライフスタイルや見た目に関する事業に強い3人に仲間になってもらえて、本当に心強いです。

WWD:株主とのつながりは?

宮永:Wベンチャーズの東明宏さんは、僕も所属する「ゴウトゥデイシェアサロン(GO TODAY SHAiRE SALON)に出資されていて知り合いました。片石さんは、実は彼の弟さんの髪を切っていて、そこからつながりました。赤坂さんは片石さんからの紹介です。

WWD:今後の展望は?

宮永:プロダクト数を増やして月商1億円をコンスタントに達成することが当面の目標です。“大人男子の身だしなみをアップデートする”に関係することなら、どんどん挑戦していきたい。開発中の商品がたくさんあるので、まずはそれらを早く詰めてローンチしていきます。楽しみにしていてください。

株主が語る出資の決め手

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