宮永えいとがyutori片石らから資金調達 月商1億円ブランドへ

 宮永えいとが代表を務めるCiiKは、第三者割当増資により3000万円の資金調達を行った。引き受け先は、アパレルブランド「ウィンダンシー(WIND AND SEA)」経営者の赤坂優氏が代表を務めるAAファンド、主にライフスタイルやエンタメ、スポーツ領域に出資するWベンチャーズ(W ventures)、そしてyutoriの片石貴展代表取締役だ。資金は、宮永がプロデュースするメンズコスメブランド「レタッチ(RETOUCH)」の新規プロダクト開発などに充てる。

 宮永はユーチューブチャンネル「大人男子ラボ」で約15万の登録者を持つインフルエンサーだ。スキンケアやメイク、ヘアなどの情報を発信し、今年1月には「レタッチ」をローンチした。過去に都内のヘアサロンで店長を務め、今もサロンワークを続ける現役美容師でもある。

 インフルエンサー自らが資金調達し、事業拡大するのは珍しい。「正直、お金がめちゃくちゃ欲しかったわけではない」と語る宮永に、真の目的と今後の展望を聞いた。

WWD:調達した資金の使い道は?

宮永えいと(以下、宮永):「レタッチ」の新規プロダクト開発や事業拡大に充てます。まずはヘア関係のプロダクトを増やす。これまでリップやBBクリームも作ってきましたが、ヘアバームは初回生産分5000個が完売し、急きょ追加生産するほど大きな反響でした。世の中の男性の身だしなみは髪から始まるんだと実感しました。

WWD:「レタッチ」の強みは?

宮永:僕自身が美容師でヘアの知見を持ってることに加えて、ユーチューブでユーザーのニーズをキャッチできること。動画を分析すれば、どんなトピックに興味があって、どこで離脱されて、どこで登録者が伸びているかが分かる。一種のマーケティングツールなんです。今後も動画やればやるほど、プロダクトの精度も高まります。

WWD:ECや百貨店のほか、全国のヘアサロンと組んで店販するビジネスモデルも奏功している。

宮永:美容師と横の繋がりがあるのは大きいです。中には1カ月で200個売ってくれる美容師もいます。お客さんにも求められるし、プロも使いやすい。これは僕ならではの商品提案力だと思います。

WWD:実売を考えると、自己資本でも十分賄えそうだ。

宮永:正直、めちゃくちゃお金が欲しかったわけじゃありません。僕は男性の身だしなみに課題を感じて、社会貢献できるブランドを本気で作りたいと思っている。でも1人の美容師であり、インフルエンサーだから、「レタッチ」には“インフルエンサーが出したブランド”という認知が少なからずあるんです。このイメージを払拭したい。そこでビジビネスのプロと組んで自分のビジョンを共有し、それを達成する環境を整えました。

WWD:名だたる投資家のサポートによって、ブランドに箔が付く。

宮永:そうです。それと、自分自身に発破をかけるためでもあります。美容の現場しか知らない僕は、世の中のビジネスがどう回っているか、どうやって資金調達するかは全く知らないし、数字も強くない。でもそれを言い訳にしていたら理想のブランドは作れません。今ここで本気でプレゼンして、一流のビジネスマンに認めてもらうことができたら、自分自信も成長する。その一心で行動しました。今回、ライフスタイルや見た目に関する事業に強い3人に仲間になってもらえて、本当に心強いです。

WWD:株主とのつながりは?

宮永:Wベンチャーズの東明宏さんは、僕も所属する「ゴウトゥデイシェアサロン(GO TODAY SHAiRE SALON)に出資されていて知り合いました。片石さんは、実は彼の弟さんの髪を切っていて、そこからつながりました。赤坂さんは片石さんからの紹介です。

WWD:今後の展望は?

宮永:プロダクト数を増やして月商1億円をコンスタントに達成することが当面の目標です。“大人男子の身だしなみをアップデートする”に関係することなら、どんどん挑戦していきたい。開発中の商品がたくさんあるので、まずはそれらを早く詰めてローンチしていきます。楽しみにしていてください。

株主が語る出資の決め手

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「エンダースキーマ」デザイナーに聞く「トッズ」コラボの裏側 ピタゴラ装置を使った映像撮影にドキドキ

 イタリア発の「トッズ(TOD’S)」は、柏崎亮が手掛ける東京発のフットウエアブランド「エンダースキーマ(HENDER SCHEME)」とコラボレーションしたカプセルコレクションを9月28日に発売する。22日にはミラノ・ファッション・ウイークでイベントを開催し、商品と動画を公開した。

 同カプセルコレクションはコロナ禍を経て、丸2年かけて制作したという。“TOD’S”のTとDを入れ替えた“DOT’S”と題し、ブランドを象徴するモカシンシューズ“ゴンミーニ”のペブル(ゴムの突起)を「エンダースキーマ」流に再解釈。ペブルを巨大化させた“マキシペブル”をソールに配置したシューズなどが目を引く。他にも「トッズ」の“オーボエ バッグ”から着想したショルダーバッグや、「トッズ」から贈られたワインからヒントを得て開発したバッグなど、両者のコミュニケーションからもアイデアが生まれた。トレンチコートやトラックスーツ、デニムなどユニセックスで着用できるウエア9型をはじめ、アクセサリー5型、バッグ4型、シューズ10型(メンズ5型、ウィメンズ5型)で構成している。

 「エンダースキーマ」はこれまで「アディダス オリジナルス(ADIDAS ORIGINALS)」や「ドクターマーチン(DR. MARTENS)」「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」などの著名ブランドと協業してきた。柏崎デザイナーに今回の「トッズ」との取り組みの感想や、遠隔でのモノ作り、“ピタゴラ装置”を使ってワンテイクで撮影した動画について聞いた。

——「トッズ」の第一印象は?

柏崎亮デザイナー(以下、柏崎):“ゴンミーニ”の印象が強かったです。履いたことはなかったのですが、実際に協業が決まってから足入れしてみると、履き心地を通して長く愛されるプロダクトであることが理解できました。

——コロナ禍の遠隔でのモノづくりは大変だったに違いない。協業をして印象的だったことは?

柏崎:物理的な距離や言葉の壁に加えて、コロナ禍での渡航制限もありましたが、アトリエでプロトタイプを制作することで解決することができました。プロトタイプは言葉やデッサンよりも情報量が多く、コミュニケーションにとても有効。また、両ブランドともにインハウスでプロトタイプを制作できる環境を持っていたことが強みになっていると感じました。

——イタリアと日本、職人技で違いを感じることは?

柏崎:多少の違いはあれど、プロダクトに対する愛情はそれぞれ深い。そこがクラフトマンシップに重きを置く両ブランドの共通項なのだと思いました。

アイコニックな“ゴンミーニ”を
「エンダースキーマ」流にリプロダクト

——「エンダースキーマ」の代表的なヌメ革使いは控えめだが、素材選びで気をつけたことは?

柏崎:意識的に控えたつもりはありません。ヌメ革はブランドを象徴する大切なマテリアルの一つですが、「トッズ」は僕たちのデザインやアイデア、クラフトマンシップに期待していました。素材を自由にセレクトした結果、このようなバランスになりました。

——シューズはペブルを大きくした“マキシペブル”が印象的だった。ドットに着目した理由は?

柏崎:初めから、アイコニックな“ゴンミーニ”を僕たちなりの解釈でリプロダクトしようと考えていました。でも、プロダクトを単品で作り込むとカプセルコレクションとしての統一感が出せないと考えて、“TOD’S”のTとDを入れ替えて、“DOT’S”とすることで、全体を包み込むことにしました。そうしてドッツ=ペブル、円環、ピリオド、ループなどの文脈をつないでいくことで、コレクション全体とプロダクトを構成していきました。

——シューズだけでなくウエアを制作した感想は?

柏崎:「トッズ」のプロフェッショナルたちと制作することで新しい領域に挑戦できたことはとても楽しく有意義でした。プロダクトもとても良いものに仕上がったと思います。

ピタゴラ装置を使った動画
ワンテイク撮影にハラハラドキドキ

——ピタゴラ装置を使った動画がユニークだった。制作する上でこだわった点は?

柏崎:コレクションに取り組み始めるタイミングで、動画でのプレゼンテーションになることが分かっていたので、プロダクト制作と同時進行でアイディアを固めていきました。ムービーの中に「TOD'S」「DOT'S」の解釈がたくさん散らばっています。プロダクトの特徴を活かした装置の作成や、音楽と連動したテンポの心地よさなど、かなり細かいところまで踏み込んで制作しました。

——動画のラストで、また始まりに戻る演出はコレクションと関連している?

柏崎:“点の連続が線になり、それが行き来することで円になる”というコレクションの副題的を、ドットの円を引用して表現しました。

——撮影はワンテイクのため、2日間かけたと聞いた。

柏崎:とにかくハラハラドキドキでした。装置自体の精度やモデルとの連動など、ライブ感が痺れましたね(笑)。60テイク以上かけました。OKが出ないまま1日目を終えて、最終日にOKテイクが撮れて、その後のスチール撮影を終了した高揚感は普段味わえないものでした。携わってくれたスタッフの方々にはとても感謝しています。大勢の人と、瞬間的な作品を共に作り出すことは普段あまりしないので、楽しかったですね。

——この協業を通じて、「エンダースキーマ」のどのような点を世界にアピールしたい?
柏崎:新しいクラフトの概念の種になるような何かを感じてもらえたらうれしいです。

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エディ注目の気鋭ミュージシャン 「セリーヌ オム」2022年春夏のBGMを手掛けたイジー・カミナとは

 「セリーヌ オム(CELINE HOMME)」が2022年春夏コレクションをデジタルで発表し、音楽はアメリカ・ロサンゼルス出身の26歳、イジー・カミナ(Izzy Camina)が担当しました。同ブランドをアーティスティック、クリエイティブ&イメージディレクターとして率いるエディ・スリマン(Hedi Slimane)にとって、音楽は“エディ=音楽”という方程式ができるほど切っても切り離せない関係性ですよね。そこで、最新コレクションを解き明かすためにイジー・カミナにインタビューを実施しました。さらに、エディが過去にピックアップしてきたミュージシャン3組と、エディとの仕事の後の活躍ぶりを、私的好みを交えて振り返ります。インスタグラムのフォロワーがまだ4000にも満たないカミナも、これからブレイク必至かもしれませんよ。

エディが愛したミュージシャン超私的3選

THE DRUMS

 日本にも何度か来日をしているニューヨーク・ブルックリンのバンドがザ・ドラムス(THE DRUMS)です。彼らは、エディが「ディオール オム(DIOR HOMME)」を去った後に出版した写真集“Rock Diarie”(2009)にモデルとして出演しました。08年に結成したザ・ドラムスは、09年にアルバム「Let's Go Surfing」でデビュー。ニューヨークの街中から生まれたとは思えない「Oh,Mama I Wanna Go Surfing」というキャッチーなフレーズと、サーフポップの軽やかなメロディー、そしてスマートでスタイリッシュな彼らのルックスが絶妙にマッチして、これまでのインディポップシーンとは一線を画すバンドに成長していきました。デビュー間もない無名な彼らのアー写を、エディが自ら撮影するほど溺愛したのも納得!

DIIV

 「サンローラン(SAINT LAURENT)」の2013-14年秋冬コレクションのキャンペーンでモデルを務めたのがニューヨークのバンド、ダイブ(DIIV)のザカリー・コール・スミス(Zachary Cole Smith)です。14-15年秋冬にはランウエイショーにもモデルとして登場しました。ダイブのノイジーなギターと浮遊感のあるヴォーカルは、あえてカセットテープで聴きたくなり、どことなくティーン時代のようなエモーションを感じる人は少なくないはず。メンバーの中でもスミスの存在感は圧倒的で、ミュージシャン・モデルのスカイ・フェレイラ(Sky Ferreira)と交際していたことも当時は話題でした。バンドはデビューしてから何かと紆余曲折ありますが、どんどん深みを増していく彼らの姿に私はこれからも目が離せません。

CURTIS HARDING

 デトロイトのシンガー、カーティス・ハーディング(Curtis Harding)は、エディが2013年にカリフォルニアのフェス「ビーチ ゴス(Beach Goth)」でミュージシャンを撮影した際にたまたま撮影されたことがきっかけで、15年の「サンローラン」のプロジェクト“SAINT LAURENT MUSIC PROJECT”に起用されました。ハーディングは往年のソウルシンガーを彷彿とさせるメロディーとパワーで、そこにインディーロックのガレージ感が融合した独自の音楽性が魅力です。彼が14年のデビュー時にエディと制作したムービーやアルバムのジャケットは、両者らしさがふんだんに詰め込まれた何度見ても色あせないビジュアル!その後は「グッチ(GUCCI)」とも協業するなど大活躍で、デビュー前から見出したエディの先見の明には脱帽です。

「セリーヌ オム」の音楽を手掛けた26歳にインタビュー

——まずはプロフィールを教えてください

イジー・カミナ(以下、カミナ):ハイ!私はシンガーで、自分の曲をパソコンで制作しているわ。生まれたのはロサンゼルスだけど、ニューヨークの近く、ニュージャージーで育ったの。複雑な子ども時代を送ったから大変だったけれど、いいこともあったわ。音楽を始めたのは高校生のころで、アプリでビートを作り始めたのがきっかけ。

——音楽との出合いはいつ?

カミナ:記憶にある限り、本当に小さな子どもの時からよ。私が覚えている一番昔の思い出は、ロサンゼルスにある父親のアパレル会社のワークショップでのものかな。「モスキートヘッド(MOSQUITOHEAD)」というブランド名で、ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)やジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)とかいろんなバンドのプリントTシャツを出していたの。だから、小さなころから素晴らしいロックアイコンのイメージにたくさん触れてきたというわけ。それが私と音楽が出合った初めての経験ね。

——作品を作るインスピレーション源や、影響を受けてきたアーティストは?

カミナ:世の中の状況と、自分の経験。さまざまなことからインスピレーションを受けるから、私の音楽もいろんなジャンルにまたがっているんだと思う。影響を受けたアーティストはたくさんいるわ。スージー・スー(Siouxsie Sioux)、エム・アイ・エー(M.I.A.)、コーン(Korn)、システム・オブ・ア・ダウン(System of a Down)、そして両親が聴いていたもっと昔のバンドとか。中学生のころはエム・エフ・ドゥーム(MF DOOM)やウータン・クラン(Wu Tang Clan)を、大学生になってからはゲサフェルスタイン(Gesaffelstein)なんかのエレクトロ系のアーティストも聴いていたな。今となってはあまり聴いていないアーティストもいるけれど、ジャンルを問わず聴いてきた積み重ねが今の音楽性につながっているのは間違いないわ。

——コロナの前と後で環境の変化は?

カミナ:幸運なことに、ほとんど変わってないの。もともと、自分のベッドルームで作業をしたり、録音したりしていたから。

——音楽を始めてから今までで、印象に残っているエピソードは?

カミナ:初めて高級なマイクで歌った時だと思う。自分の声を即座に嫌いにならなかったのは、あれが初めてだったから。

ショーの曲は「頭にこびりつくみたい」

——「セリーヌ オム」のコレクションに参加して、どんな気持ち?

カミナ:ショーには、深いインスピレーションを受けたわ。私の曲に対する反応は……どうやら、みんなの頭にこびりつくみたい!それがいいことなのかどうか、分からないけど。

——エディと会った印象は?

カミナ:初めて正式に会ったのは、ショーの撮影をしているとき。ロケ地まで飛んで行ったの。想像通りのクールで知的な人だったわ。

——エディは音楽との関係性が深いが、あなたから見てエディはどんな音楽センスがあると思う?

カミナ:過去のショーや、エディが撮影した有名なミュージシャンのポートレートなどを見れば、そこに答えがあるんじゃないかな。

——「セリーヌ オム」2022年春夏コレクションの印象は?

カミナ:今回のコレクションは、めちゃくちゃかっこよくてグラマラスだったし、タフだけど美しかった。私はもともと、自分の音楽でそういう感じを表現しようとしていると思っているから、自分の芯の部分ともマッチしていると感じたわ。

——自身のファッションのこだわりは?

カミナ:私の場合、髪の毛がクレイジーなほどボサボサしていて、どうしても注目を集めちゃうから、服は調和が取れたシンプルな感じが理想。色や柄、素材じゃなく、フィットやシルエットにこだわっているわ。サステナブルだから、ビンテージを買うのも好き。

——ファッションと音楽の関係性についてはどう考える?

カミナ:私にとって、アートは言葉を通じて表現できないことを、理解したり伝えたりするのを助けてくれるものなの。ファッションや音楽には、何かを伝えるための言葉や表現とは“別の言語”という側面もあるから。

——日本はどんなイメージ?

カミナ:実は、高校を卒業した後、東京の墨田区に数カ月ほど住んでいたことがあるの。日本というと、自然の美しさを思い出すと同時に、ホストファミリーとその飼い猫のパールと過ごした、温かくてハッピーな思い出がよみがえってくるわ。自転車であちこち訪ねて、美味しいものを食べて、地元のロックバーに行って、日本のカルチャーを学んだこととかね。また東京に行って、マユミとユリコに会いたいし、もっと地方や、北海道にも行ってみたいな。

——今はパソコンやスマートフォン上に情報があふれていて、若い世代はそのような環境で音楽を制作している。あなたはミュージシャンとして、その状況とどう向き合って活動していきたい?

カミナ:今の、この常に刺激や情報であふれている状態は嫌いだな。ありがたく思ってはいるけれど、あまりに急激に、手に負えないぐらい過剰になってしまった。個人的には、それに反抗するためにスマホの電源を切って、自然の中で長い時間を過ごすのが好き。マイペースでゆっくり動いていたら成功できないっていうのなら、私はそれで構わないわ。

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勢いを増す北欧発の人気ブランド「ガニー」 CEOが語るブランド戦略とは

 「みんなが『ガニー』ガールズのとりこだ」と語るのは、デンマーク・コペンハーゲン発のファッションブランド「ガニー(GANNI)」のアンドレア・バルドー(Andrea Baldo)最高経営責任者(CEO)だ。

 「ガニー」は2000年にカシミヤ製品を扱う店として創業し、09年にニコライ・レフストラップ(Nicolaj Reffstrup)とディッテ・レフストラップ(Ditte Reffstrup)夫妻がウィメンズブランドとしてリブランディングした。17年にはLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下の投資会社Lキャタルトン(L CATTERTON)が出資している。

 「ガニー」はSNSマーケティングに優れ、ブランド着用者の画像を集めたハッシュタグ「#GanniGirls」はインスタグラム上で7万件以上の投稿を誇る。これにより、ブランド特有のプリントやルーズなシルエット、ピーターパンカラーを好む女性たちのコミュニティーを築いている。

 バルドーCEOは18年にガニーのCEOに就任。ブランドのグローバル化のために尽力し、ブランドの成長をけん引してきた。「良いデザインを手の届く価格帯で提供することが重要だ」とバルドーCEOは好調の理由を語る。また、キルティングコートからクリスタルをあしらったニット、ラバーブーツ、ピーターパンカラーのシャツまで、あらゆるカテゴリーで“売れ筋”を生み出したことがブランド成功の秘訣だと付け加えた。

最重要市場は米国、そして中国へ

 「ガニー」を真のグローバルブランドにするためにも、現在の最重要市場は米国だという。米国はこの3年間で、本国のビジネスを上回る、ブランドにとって最大の市場になった。ローカライゼーションに重点を置き、ロサンゼルスのメルローズ・アベニューとニューヨークのマーサー・ストリートに出店。現地のチームを結成し、ショールームも立ち上げた。

 米国の次に狙う市場は中国だ。その足掛かりとして、まずはネッタポルテ(NET-A-PORTER)やエッセンス(SSENSE)といった第三者が運営するECサイトを通じて中国市場に参入。5月には中国最大手EC企業のアリババ(ALIBABA)が運営するECサイト「Tモール(TMALL)」に単独で出店した。

 「結果は驚くものだった。市場が整っていたため、われわれの予想をはるかに上回る成果を出すことができた。おそらく韓国やSNSにおける影響力の大きさが理由だと思うが、認知度が想定より高かった。この結果を受けて、やっと市場に直接進出することができる。この数字は次のステップである実店舗の出店を後押ししてくれる。実店舗出店は中期的目標だったが、現在は最優先課題だ」。

 バルドーCEOが着任して以来、共同創業者のニコライ・レフストラップは完全にサステナビリティと循環型社会に焦点を移し、事業のあらゆる側面において試行錯誤を繰り返しているという。原材料については、リサイクル素材やデッドストック素材を増やし、コペンハーゲンの店舗ではレンタルサービスを試験的に開始。生産後の衣服の寿命を延ばす方法を模索している。

 「われわれは、資源からより多くの価値を引き出せるようなビジネスモデルを構築する必要がある。経済的に成立させることは容易なことではないが、理想としては、同一の資源から価値を引き出す回数を増やしたい」とバルドーCEOは話す。「製品には残存価値があるのに、業界ではこれまで最初の取引にしか注目していなかった」。

 この目標をかなえる可能性を秘めているのがレンタルモデルだ。レンタルモデルを導入することで、ブランドは1つの衣服で複数の取引を行い、その後、中古市場で販売することで利益を得る機会をさらに得ることができる。他方、需要の創出は継続課題だという。「最大級の二次流通市場を誇るデンマークで試験運用を開始し、このモデルが機能する手ごたえを感じた。しかし、現時点では経済的に成立せず、数量も思うように増えていない。だからこそ、より多くのトラフィックを生み出すために他の市場への拡大を考えている」とバルドーCEOは説明する。

 最終的な目標についてバルドーCEOは、会計時に支払い方法を選択できるように、レンタル品、新品、中古品のいずれかを選択できるようにすることだと答えた。「顧客とこのようなやり取りを行うことが普通になるだろう。また、異なるビジネスモデルの間でバランスを取り、適切なコスト構造を構築できるかどうかはブランドにかかっている」と意気込む。

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【動画】三越伊勢丹バイヤーの仕事に密着  「服を選ぶ基準は感性と科学」 

 「ファッション業界人辞典」は、ファッション業界で働く人にフォーカスし、その仕事に密着リポートします。業界のさまざまな職業を紹介しながら、「実際、どんな仕事をしているの?」「どうしたらその職に就けるのか?」などの疑問を解決。これからの若者たちの指針になるような情報や、業界人が気になるあの人の素顔や過去を、日々の仕事姿や過去の映像・写真を通して発信します。

 第4弾は、伊勢丹新宿本店本館3階の婦人服の自主編集売り場「リ・スタイル(RESTYLE)」の神谷将太バイヤーに密着しました。ファッション業界の花形ポジションであるバイヤー、商品の買い付けやプロモーション企画、時には店頭にも立つという多様な仕事内容に迫りました。また、バイヤーという枠にとらわれずに、計20トンにも及ぶ廃棄寸前の「リーバイス(LEVI’S)」のジーンズ“501”を海外の業者から買い取り、リメイクして販売するプロジェクトについても聞きました。

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「推し時計、燃ゆ」 勝手連が本国スイスに公認され、コラボモデル販売に至るまで

 今回の「推し時計、燃ゆ」の主人公は、名古屋在住の中澤浩司さん(41歳)だ。スイスの時計ブランド「モーリス・ラクロア(MAURICE LACROIX)」の代表的モデル“アイコン オートマティック”の写真を2年半インスタグラム(@koji_nkzw)に投稿し続け、ついには本国から世界初の公認ファンクラブの運営を任された人物だ。さらに驚くべきは今秋、中澤さんが企画した日本限定ウオッチが発売されるという。“推し活”の最高型とも言える夢は、いかにしてかなえられたのか?

WWD:「モーリス・ラクロア」との出合いは?

中澤浩司(以下、中澤):スイス・バーゼルで開催されていた世界最大の時計見本市「バーゼル・ワールド(BASEL WORLD)」でした。もともとはバイヤーやメディア向けに行われていたイベントですが、近年は一般ユーザー向けにも情報が同時に解禁されていて、時計ファンは年に一度のタイミングで発表される新作に注目していました。そこで2018年にお披露目されたのが、“アイコン オートマティック”でした。それまでの“アイコン”はクオーツ式で、初の機械式モデルでした。

WWD:ビビビ!ときたわけですね?

中澤:はい(笑)。「バーゼル・ワールド」をリアルタイムで見るようになったのは10年ごろからなんですが、ビビビ!ときて購入したのは初めてでした。

WWD:これまでの時計遍歴について教えてもらえますか?

中澤:初めての本格時計は、「オリス(ORIS)」の“BC3”でした。04年のことです。その後、「オメガ(OMEGA)」の“シーマスター”、「ティソ(TISSOT)」「ラドー(RADO)」などを購入し、今では十数本をコレクションしています。価格は10万~20万円が中心で、ファッションアイテムとして取り入れています。1980~90年代のデザインに引かれるため、中古品も多いです。とはいえ、最近身に着けるのは“アイコン オートマティック”ばかりです。

WWD:何にそんなに引かれるんですか?

中澤:う~ん、ドンズバの答えになっていないかもしれませんが“人”かなぁ。時計って、狭く深いコミュニティーが特徴だと思うんですが、だからこそ人がとても大事で。もちろん実機も重要ですが、時計には歴史があるので、それをきちんと伝えるストーリーテラーの存在が欠かせません。“この人から買いたい”と思えるかどうかは、間違いなく分岐点になりますね。

WWD:その点、「モーリス・ラクロア」は合格したと?

中澤:はい。「バーゼル・ワールド」で“アイコン オートマティック”を見た直後に、日本の正規代理店であるDKSHジャパンに問い合わせました。電話対応してくれた方の印象が、とても良くて。それに続く連絡でも、つまり人が代わっても皆さん丁寧で。その年の10月に名古屋の百貨店に入荷したと聞きお邪魔した際も、販売員の方がとても熱心でした。

WWD:“時計縁”とでも言うべきものですね。他ブランドにはない、「モーリス・ラクロア」の魅力とは?

中澤:75年デビューと時計としては新興ブランドで、認知度も“もうすこしがんばりましょう”なんですが、全ての商品がスイスメードで、部品製造メーカーとしての出自を持つことから機能面も信頼できます。デザイン性にも優れ、それでいて中心価格帯が20万円前後とコストパフォーマンスも高いです。つまり、“バランスが良い”んだと思います。

WWD:初めての高級時計の候補として最適で、かつセカンドウオッチにもなり得るということですね。インスタグラムに“アイコン オートマティック”の写真を投稿する推し活を始めたのはいつから?

中澤:もともと時計をメインに投稿していたんですが、“アイコン オートマティック”を買ってから数カ月で「モーリス・ラクロア」一色になりました(笑)。インスタ映えする時計なんですよ。写真も動画も全て僕が1人で撮影していて、1日1回のペースでアップしています。当初1000弱だったフォロワーが、今では3000を超えるまでになりました。コメントやDMでブランドや新作モデルについて質問を受けることも多く、自分がかつてそうしてもらったように、きちんと対応することでコミュニティーを強化できているのかな?と思います。

WWD:「モーリス・ラクロア」から公認を受けた経緯について教えてもらえますか?

中澤:毎日“アイコン オートマティック”の写真をアップしていたので、そのうちに本国の公式アカウントにシェアされるようになりました。そんな関係が続く中で2019年の春に、僕が撮った動画を公式アカウント内で使いたいと相談されました。もちろん、即OKの返事をしました。その年の8月に、ステファン・ワザー(Stephane Waser)=マネジングディレクターが来日すると聞いて、初めてお会いしました。その場で、「実はアメリカに非公認のファンクラブがあるのだが、その日本版をオフィシャルとして運営しないか?」と打診を受けました。「モーリス・ラクロア」がファンクラブを公認するのは世界初とのことで、大変光栄でした。公認を得たことで、本来ならオフ会なども企画したかったんですが、新型コロナの影響でオンライン限定の活動を余儀なくされています……。

WWD:さらには、これまでの貢献が認められ、コラボモデル“アイコン オートマティック クラブジャパン エディション”を発売するに至りました。

中澤:ワザー=マネジングディレクターから「おまえになら任せられる」と言われ、天にも昇る気持ちでした!日本でお会いしたあと、「僕なら、より日本市場にフィットした商品が作れる」とメールで直談判していたんです。

WWD:コラボモデル製作において最も苦労した点、またこだわった点は?

中澤:まずは、ファンクラブに寄せられたコメントをさかのぼり、全て洗い出しました。分かったつもりになっている日本人の好みについて、あらためて学びました。そのうえで変更したのは大きく3点です。

1.デイト表示

 “アイコン オートマティック”には、3時位置にデイト(日付)表示がありますが、それをなくしました。「よりシンプル、かつソリッドなものを」というファンの声に応えた形です。実際のアクションは、シート状の文字盤でデイト表示をふさぐといった安直なものではなく、今回のコラボモデルのためにムーブメントに手を加えてもらいました。

2.文字盤

 従来モデルの文字盤は、小さなピラミッド状の意匠が連結する“クル・ド・パリ”を採用していますが、“アイコン オートマティック クラブジャパン エディション”では手の動きに合わせて、さまざまな表情を見せてくれるサンブラッシュ仕上げにしました。カラーも日本人に人気のダークブルー一択です。

3.ベルト

 “アイコン オートマティック”用に初めてラバーベルトを製作しました。他モデルのベルトを転用するのではなく、一から作りました。カラーにもこだわっていて、ブランドや売り場からはブラックやダークグレーを希望されましたが断固拒否(笑)。アクティブイメージのラバーベルトを上品に見せたくて、“クールグレー”にしました。キーワードやニュアンスを伝えるのではなく、きっちりパントーンで指定したんですよ。ステンレススチール製ベルトも付属するので、TPOや気分に合わせて付け替えてほしいですね。

WWD:すごい!形だけの、“なんちゃってコラボ”ではないんですね。最後に、中澤さんにとって時計とは?

中澤:“つながり”です。“アイコン オートマティック”との出合いもそうだし、それがきっかけで憧れのブランドとも協業できました。こうして「WWDJAPAN」から取材も受けています。これからも時計を通じて、世界中の人とコミュニケーションしていきたいですね。

<「推し時計、燃ゆ」とは?>
「推し、燃ゆ」が芥川賞を受賞し、“推し活”が豊かな生き方につながるとの認識が広まっている。そこで元来、推しの要素が強い時計の世界で、さまざまな人に“推し時計があることで得られる幸福感”や“そもそも、なぜ推しているのか?”などを聞き、時計の持つ“時間を知る”以上の価値について探る企画。

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オーナーは世界照準の22歳 eスポーツ強豪のリジェクトが本気のアパレルブランド

 プロeスポーツチームを運営するリジェクト(REJECT)は、メンズブランド「オールモストブラック(ALMOSTBLACK)」の中嶋峻太デザイナーをディレクターに迎えて、アパレルブランド「リジェクト」を立ち上げた。アイテムは16日に公式ECサイトで発売し、チームカラーのブラックで統一したモッズコート(税込2万9700円)やブルゾン(同2万4200円)、シャツ(同1万6500円)、カーゴパンツ(同1万7600円)、Tシャツ(同6930円)の5型からスタート。今後はグッズなども拡充する予定だという。初年度売上高の目標は5000万円。さらに同社はeスポーツを軸とした他の事業にも積極的で、9月には東京・本郷に合計4フロアの新たな拠点リジェクト ゲーミング ベースを開いた。eスポーツチームでは日本トップクラスの実績を誇る組織を率いるのは、若干22歳の甲山翔也代表取締役。世界を見据える若きリーダーは、ゲームを起点にビジネスの世界をどう攻略していくのだろうか。そして、その武器としてなぜファッションを選んだのか。甲山代表と中嶋ディレクターを新オフィスで直撃した。

ファッションで“バフ”をかけろ

WWD:アパレルブランドを立ち上げた経緯は?

甲山翔也リジェクト代表取締役(以下、甲山):20歳前後の若いスタッフがチームに所属しているんですけど、ゲームで結果を出して人前に出るようになると着る服も変わり、成長していく姿を見ていたことが大きかったです。ゲームだけしているときは何も気にしていなかったのに、顔出しでゲームの配信をし始めると美意識が急に高くなって、プロとして覚悟が出てくるのだなと気づきました。彼らのために何かできないかなと思ったのがきっかけです。

WWD:ではファン用のグッズというより、選手のためという考え?

中嶋峻太「リジェクト」ディレクター(以下、中嶋):出発点は、選手とスタッフをかっこよくしたいという思いでしたね。もちろん一般販売もしますが。最初にイメージしたのは、プロレスラーが入場時にマントを着て、リングに上がるときにバンって脱ぐ瞬間があるじゃないですか。それをeスポーツ選手が全員でモッズコートをフードまで被って入場し、座るときは脱ぐっていうのもかっこいいんじゃないかと。急にアパレルを販売しても売れないけれど、選手が着ていいイメージを作ることができれば、ファンはアイテムをきっと欲しくなるはずだと考えています。

WWD:中嶋ディレクターが参加した経緯は?

中嶋:eスポーツの分野にはもともと興味があったんです。ファッション的な角度からも今後伸びてくるだろうと。そんなときに、僕が生地のディレクションをしているスタイレム瀧定大阪にリジェクトのスタッフの知人がいて、アパレルブランド立ち上げを計画しているという話を聞きました。そのときは正直リジェクトを知らなかったんですけど、調べたら日本で断トツ1位のチームで、ぜひやりたいと手を挙げました。それで春ごろに甲山さんと初めて会い、企画が実際にスタートしました。

WWD:これまで接点がなかったeスポーツチームのオーナーとの協業で何を感じた?

中嶋:出発点がたまたまeスポーツへの興味だったというだけで、甲山さんと実際に会うと「この人と何かしたい」ってすぐに思ったんですよ。年齢が15歳も下なのに話している目線が同じだし、良い悪いの判断が早くてびっくりしました。それに甲山さんの実家が製造業ということもあって、生地や縫製のクオリティーに強くこだわる姿勢も信頼できたんです。品質には徹底的にこだわりながら、スタイレムでディレクションしている生地“トライアングル”を使うなどして、手が届きやすい価格に抑えることもできました。よくあるチームグッズではないけれど、やっぱりファンの人に買ってもらいたいですからね。

WWD:プロのファッションデザイナーと仕事をした印象は?

甲山:選手や会社のストーリーをとても上手く表現してくれました。例えば、モッズコートに刺しゅうしている座標は、僕が初めて事務所を立ち上げた京都のアパートの場所なんです。僕はオーナーとして所属選手の生き様を本当に尊敬していて、彼らのストーリーが僕のストーリーでもあり、会社のストーリーでもあるんです。それがデザインとして服になることで、これからチームがどんどんかっこよくなれそうだなと自信が付きました。僕自身も好きな服を着るとその日はずっと楽しいし、自分が強くなった気がするんですよね。ゲーム用語っぽく言うと“バフ”がかかるというか。

中嶋:それがまさにファッションの醍醐味ですよね。新しい服を買って着たら、今でもテンション上がりますもん。いい武器を手に入れた感覚みたいなものというか。だから、選手たちのテンションが上がる服を作りたいとはずっと考えていました。

甲山:僕はチームが世界で1位をとるために、選手たちには常に最高のデバイスを提供しています。そのデバイスの次に彼らに提供できるものは何だろうと考えたら、身に着けるものなんじゃないかという答えにたどり着いたんですよね。ゲームをプレーしてる人たちって、究極を言えばファッションに興味はないんですよ。でも、かっこいいものへの憧れはある。だからメタバースの世界にみんな魅了されて、5万円とか平気で課金するんです。その“憧れ”を、身に着けるもので表現できればいいんじゃないかって。彼らはユニホームを着ると“バフ”がかかるから、今回のアパレルでさらに強力な“バフ”がかかるとうれしいですね。

世界を視野に入れる若きリーダーの原点

WWD:リジェクト社の現在の規模は?

甲山:社員が20人で、プロ契約の選手は45人所属しています。トップチームとアカデミー組織があり、全員に給料を支払っています。トップチームの中には、年収1000万円の選手もいます。来年のチームの収益は約3億円を見込んでいますが、これぐらいの規模は世界では一般的で、日本の市場が急成長しているだけなんですよ。逆をいうとゲームを起点にした事業の実例がまだまだ少ないので、僕たちが始めようとしているアパレルブランドのような取り組みにもチャンスはあると考えています。

WWD:eスポーツの世界に参加したきっかけは?

甲山:大きなきっかけはなくて、自然にのめりこんでいましたね。小学生のときに親友にオンラインゲームを教えてもらい、小学生でも大人に勝てる世界が面白いなと。親にめちゃくちゃ怒られながら、1日3時間ぐらいプレーする毎日でした。中学生になってゲームをするためのパソコン“ゲーミングPC”の存在をしり、父親に頼んで頼んで2、3年がかりで買ってもらいました。“ゲーミングPC”のおかげで強くなり、高校生で初めて大会で優勝したんです。それから自然とプロを目指すようになっていました。

WWD:実際にプロ契約したのはいつ?

甲山:18歳のときです。ただプロ契約とはいえ、当時の平均月給って2〜3万円でした。でも僕は10万円のオファーで喜んだのですが、どうせなら自分でチームを作りたかった。だから当時のオーナーに「僕にチームをやらせてください」と逆提案したんです。それでチームを任されて、僕も含めて4人チームを結成しました。

WWD:すぐに実績を残せた?

甲山:実績も何も、オーナーが突然失踪したんですよ。4人の中には本業を辞めてプロ一本で活動すると決めて参加してくれたメンバーもいたのに、チームが発足して2、3カ月したらオーナーが給料を一度も支払わず失踪するという。信じられませんでした。チームも結成しちゃったし、プロのリーグにも上がっちゃったし、結果も残していたので後戻りができなかった。でも選手たちに給料を支払えないので、まずは僕が資金を集めようと19歳でオーナー業に専念することにしました。最初は自分の貯金を切り崩して、各選手に2万円ぐらいの給料を払ってましたもん。

WWD:その逆境からどう盛り返した?

甲山:当時はビジネスについて無知だったので、「スポーツチームにはスポンサーが必要だ」という思い込みで、何も知らないまま1人で謎のスポンサー営業を1年間やっていました。そうしたらウェブ系の会社が僕のプレゼンに共感してくれて、本当にスポンサーしてくれることになったんです。その会社もeスポーツ についていろいろ調べてくれて、グッズ販売やコンテンツ制作など、いろいろなかたちの収益モデルがあるというのを一緒に学びました。何も知らなかった自分にとっても、視座が上がるきっかけになりましたね。

WWD:今の規模にどのように拡大した?

甲山:世界大会でサウジアラビアに遠征したときに、投資会社のイースト ベンチャーズ(East Ventures)から会いたいと連絡が届いたんです。僕はまだ学生だったので「べんちゃーきゃぴたるって何?」という感じでしたし、警戒もしていて。でも実際にビデオ通話してみると「君のチームはこれからの時代を見れている」と褒められて、気分がよくなったところに「1000万円投資したい」とオファーが届きました。僕の年齢が若いことと、eスポーツが盛り上がっていたタイミングだったこと、それに日本では競合相手が少ないモバイルeスポーツに絞って実際に結果を残していたのも評価されたみたいです。

WWD:今年春には、複数社から国内最大規模となる約3億6000万円の資金を調達したが、今後の目標は?

甲山:日本でもeスポーツが盛り上がっていますけど、世界との差はまだまだ大きい。ビジネスの規模も、選手の待遇も、何もかもが圧倒的に違います。でも、ただ海外を追いかけるのではなく、日本は独自の路線で盛り上がっていくと予想しています。まずは新しく立ち上げたアパレルブランドや新オフィス、将来的にはゲーミングギアなどの事業を立ち上げて成長させながら、いつかはIT系の企業と組み、メタバースの世界でリジェクトを収益化するビジネスがしたいです。リジェクトがこの2年で急速に拡大したように思われていますけど、ゲーム界の変化の速さを考えるといたって普通のこと。人、お金、時代の流れが今は一気に変わっていますから。

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「エアリズムマスク」も手掛けた敏腕MDに聞く ユニクロ女性下着の歩みと展望

 圧倒的な存在感で国内女性下着市場でのシェアを伸ばす「ユニクロ(UNIQLO)」。今年2月にはユニクロ史上最高のリフトアップをかなえる「ワイヤレスブラ シェイプリフト」、6月には「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」とのコラボレーションのインナーウエアを発売し、9月17日には吸水ショーツを発売するなど話題も絶えない。これらを始め、昨年6月に発売して大ヒットした「エアリズムマスク」なども手掛けるのが炬口佳乃子ユニクログローバル商品本部ウィメンズMD部長だ。数々のヒット商品を世に送り出す敏腕MDに、ユニクロ女性下着の歩みを振り返ってもらいながら、展望を聞いた。

――はじめに「マメ クロゴウチ」とのコラボレーションの反響はどうだったか?

炬口佳乃子ユニクログローバル商品本部ウィメンズMD部長(以下、炬口):非常に好評いただきありがたい。私も発売日は販売応援で売り場に立ったが「マメ クロゴウチ」ファンだけでなく、同ブランドを知らなかったけれど、事前告知やメディアでの紹介を見て「世界観がすてきだったから」と来店してくださる方が非常に多かった。コラボ商品ではあったが、下着などデイリーに使うアイテムの価格を上げることは避けたかったため、ワイヤレスブラもブラトップも既存商品と同じ1990円にしたことも好調要因のひとつだろう。ある程度在庫を積んで販売したこともあり、リピート買いしてくださったお客さまも多かった。海外での反響も大きく、シンガポールなどでも発売直後に品切れが起こるほど。今回のコラボは“下着と洋服の境界線を超える”という発想からスタートしたのが最大のメリット。花火のように打ち上げて一瞬で終わるコラボではなく、商品そのものが評価され、幅広い世代の方に「長く愛せる商品に出合えた」と言っていただけたことは嬉しかった。

――現在の「ユニクロ」の中でのウィメンズインナーの位置付けは?

炬口:女性の下着はユニセックス化しにくいものであり、女性の体の変化を支えていける商品。ライフスタイルや年齢による体の変化などに合わせた下着はまだまだ提案をしきれていない部分も多く、その開発は重要だ。気に入ればリピートしていただけるので、当然伸び代も期待できる。日本国内ではユニクロの下着が認知されてきたが、海外ではまだまだで「ユニクロに下着を買いに行こう」とまでには至っていない。世界のお客さまに支持されるようにならなければと思う。

――MDとして次々とヒット商品を送り出しているが、その手応えは?

炬口:お客さまが求めているものをチームで追求していったことの結果だ。「エアリズムマスク」も同様で、お客さまからのマスクの要望にすぐに応える必要があり、たまたま私が担当しただけ。常識にとらわれず、新しいアイデアをぶつけられる環境にあるのは恵まれているし、R&Dチームのたゆまぬ努力は大きい。そのチャレンジ精神にサプライヤー(工場)が高い技術で応えてくれる循環がうまくいっている。社内でいくらアイデアを持っていても、それを形にしてくれるサプライヤーがいなければ実現しない。

ブラトップで「世の中になかったカテゴリーを作った」

――03年のブラジャー発売から現在までで、エポックメイキングだったと感じる商品は?

炬口:06年のブラトップの発売は大きい。当時ブラトップのような商品は一部の下着メーカーは扱ってはいたが「Tシャツのようにもっと手軽に着られるものを作ればラクなのではないか?」という発想で完成した。初めは馴染みがなかったかもしれないが、その便利さが口コミで全国にじわじわと広がり、幅広い年齢のお客さまに支持される商品となった。ブラトップに関しては、デザインをちょっと変えたものを新商品として出すというような商品開発ではなく、それまで世の中にはなかった新しいカテゴリーを作ることができたと思うし、それができるとこんなに世の中に広がるんだと実感した。お客さまに対し、日常の中の満足を提供することに喜びを感じた。

――11年にブラジャーをワイヤレスに一本化した経緯は?

炬口:ユニクロは03年にブラジャーを発売し、しばらくはワイヤ入りブラが主力だった。ただ、ユニクロの店頭では常時接客し採寸するのが難しい。さらにそのころから、世の中全体の流れが、バストを寄せて上げて男性の目線を気にするというよりも、自分自身のために美しく、心地いい状態であることを重視する方向へと移っていった。それを受け「着けていて快適」がこれからの主流になると判断し、ワイヤレスに一本化した。その延長に16年の「ワイヤレスブラ ビューティライト(現在の「ワイヤレスブラ 3Dホールド」)がある。カップに樹脂テープを内蔵することで、“バストメイクできるワイヤレスブラ”としてデビューし、「ワイヤレスブラ=ゆるい(機能性に劣る)」という概念を転換させた。

体に一番近い下着は、体にできることがたくさんある

――9月17日に発売する「吸水サニタリーショーツ」も大きな話題になっている。

炬口:発表会には想定を超える多くの方が来場され、これだけ高い関心を持っていただいていることに、私たちがハッとさせられた。女性誌だけでなく、テレビのニュースとしても取り上げられていたが、それは大変有り難く嬉しいこと。吸水ショーツを初めて使う人にはまだまだハードルがあるだろうが、間口が広がってお客さまの手に届きやすくなることで、ハードルは越えやすくなる。吸水ショーツは使うことで人生が変わると思う。そうした変化がユニクロだけでなく、多くのプレーヤー(吸水ショーツメーカー)の手で広がることを願っている。

――最近は、吸水ショーツや乳がん手術後などに便利な前開きインナー、マタニティインナーなどを、「フェムケア関連インナー」として打ち出すようになっている。その意図や今後の展開は?

炬口:吸水ショーツ、マタニティインナー、前開きインナーなどは、女性のライフスタイルの変化やウエルネスに寄り添うフェムケア特化商品ではある。しかし、それ以外でも実はブラトップが授乳ブラとして高く支持されていたり、「ウルトラシームレスショーツ」を妊婦さんが愛用していたりなど、通常商品も女性のライフシーンやバイオリズムに寄り添っていることがメディアの評価やリサーチによって浮き上がってきた。これはつまり、快適な日常着である“LifeWear”の一環として、われわれが20年前から下着で取り組んできたことに間違いはなく、しっかり認知されているということだ。今後もユニクロは、そういった価値を提供していくとあらためて伝えたい。まずは17日に発売する吸水ショーツがお客さまのニーズにあっているのか一つ一つ検証し、改良にも注力しなければならない。それと並行して、新しいニーズがあれば開発していきたい。

――これからチャレンジしたい商品は?

炬口:インナーに限らず、新しいカテゴリーを作ることにMDとして挑戦していきたい。「こういうものって今までなかったけれど、確かに面白い」と思える新しい価値の商品が生まれれば、今まで当たり前過ぎて意識さえしていなかった不便が解消され、生活がラクになる。そういった商品を作ることに、私はMDとしてやりがいを感じる。体に一番近い存在である下着は体に対して解決できることがたくさんあり、毎日身に着けるからこそ、下着が少しよくなれば生活全体が快適になる。そんな日常を支える相棒のような存在、一歩踏み出す背中を押してくれるような商品を作っていきたい。

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ユーチューバーかんだまがユナイテッドアローズとモノ作りに挑んだワケ

 ユナイテッドアローズ(以下、UA)は16日、人気ユーチューバーの“かんだま”こと神田麻衣をディレクターに迎えた新ブランド「マルゥ ユナイテッドアローズ(MARU UNITED ARROWS)以下、マルゥ」を公式サイトとECモール限定で発売した。25〜34歳の女性をターゲットに「消費者目線のリアルクローズ」を提案する。

 神田は、前職のバロックジャパンリミテッド(以下、バロック)に勤めていた2017年に自身のYouTubeチャンネル「かんだま劇場」を立ち上げ、ユーチューバーとしての活動を開始した。プチプラアイテムを組み合わせたコーディネートや着まわし動画が、20〜30代の女性を中心に支持を集め、現在は約32万人の登録者を持つ。神田とUAの池谷啓介営業統括本部プランニングディレクターに同ブランドを立ち上げた狙いやビジョンを聞いた。

WWD:「マルゥ」立ち上げの背景は?

神田麻衣(以下、神田):昨年末に前職のバロックを退社し、今年は少しのんびりしようかなと思っていました。ただ、最近自転車での移動が多く、おしゃれなジャージーが欲しくて、自分の生活雑貨ブランド「白黒商店」でジャージーを製作していたんです。そこで、シルエットや生地のバリエーションなど、改めて服作りの難しさにぶつかりました。困っていた私に、所属事務所から「UAさんが相談に乗ってくれるよ」と話があったんです。

池谷啓介UA営業統括本部プランニングディレクター(以下、池谷):実は僕は神田さんがYouTubeを始めた当初からフォロワーでした。丁寧な商品紹介や共感できるコーディネート提案など、独りよがりでない発信の仕方に感心していました。ちょうどコロナ禍で社としてもECやデジタル上のコミュニケーション力を向上させる施策を考えていて、神田さんのような方と商品開発ができたら面白いのでは、と思い立ったんです。

WWD:ファッションユーチューバーの中でも神田さんの際立っている点は?

池谷:視聴者への愛情のある伝え方だと思います。バズを起こして、一過性の売り上げを立たせるのではなく、神田さんとは本質的なモノづくりに取り組めると思いました。

神田:ありがたいですね。私はバロックに入社以前は全然ファッションに興味がありませんでした。でも、「マウジー(MOUSSY)」に出合ってファッションに目覚め、雑誌の好きなコーディネートを見つけては文字でその要素を書き出してみるなど、コツコツ学んできたタイプです。だからこそファッションの“カッコ良さ”や“可愛さ”を、噛み砕いて伝える力は強みだと自負しています。その手法の一つとして、プチプラアイテムと組み合わせたコーディネート提案があります。

池谷:「マルゥ」でも、着まわしやすさが大きなポイントです。自社ブランドだけで完結した提案はリアルではない。神田さんには是非、他のブランドともどんどん組み合わせて提案してほしい。

WWD:神田さんのUAに対するイメージは?

神田:高級感や大人、優等生。いろいろな意味で距離感が遠い。SNSでのコミュニケーションに対しても距離を感じていたのが正直なところです。

池谷:それは私たちも認識しているところ。だからこそ、神田さんと取り組むことでその距離感を縮めていきたい。神田さんとの会議で印象的だったのは、「スカートはビールっ腹をカバーできるようなシルエットに」といったリアルな意見です。これまでファッションは、カッコ悪い部分を隠して表現していましたが、赤裸々な悩みをベースに提案してくのもありかもしれないと思いました。神田さんを通すことで良い意味で「UAなのに言えること」が増え、社の多様性を高めたい。

悩みの多いアラサーにリアルクローズを提案

WWD:神田さんはこれまで「ファッションを楽しむ消費者側にいること」にこだわっていたと思うが、UAと組むと決めた理由は?

神田:実際に過去に同様の話をもらったことがありましたが、断っていました。でも、UAとなら、モノを見て買ってもらえると思いました。おそらく、バロックからブランドを出せば、すでに私を知っている人が多いので、売れたと思います。だけど、「この人だから買いたい」ではなく、「モノがいいから買いたい」と思ってほしいんです。モノづくりへの圧倒的な安心感があるUAとならば、それができると思いました。

WWD:あえてコミュニティーの枠から出て挑戦したということ?

神田:はい。なので正直、毎日めちゃくちゃ不安でいっぱいです。最近、変な夢もたくさん見ます。自分は満足しているけど、自己満足で終わってしまわないかが不安です。ただ、先日YouTubeで「マルゥ」誕生を発表した時には、ファンの方から予想以上に「応援する」といったコメントがもらえてうれしかったです。

WWD:神田さんの想像する“消費者”とはどんな人?

神田:郊外に住んでいるアラサーを想定しています。アラサーは体型やライフスタイルも変化が多く、悩みの尽きない年代です。周りも生活におけるファッションの優先順位が落ちて、服を買わない人も多い。そんな人たちに、「マルゥ」を通してファッションの高揚感を伝えたい。都会に住んでいるとさまざまなアイテムに挑戦しやすいですが、私が以前住んでいた八王子では派手すぎると浮いてしまう。「マルゥ」では、郊外での日常にも馴染むし、おしゃれを頑張りたくない人でも自然におしゃれになるアイテムを提案したい。

WWD:デザインでこだわった点は?

神田:私自身や周りのファッションに関する悩みをベースに考えています。例えば世に出ているパフスリーブ袖は、パフッとしすぎているものが多い。「マルゥ」では、仕事中や洗い物する時など袖をまくっても邪魔にならないボリューム感をパタンナーと相談して作りました。ほかにも、ワンピースは身長によって着こなし方がわからないといった悩みも多い。「マルゥ」のワンピースはサイドにスリットを入れ、段差を生み、高身長の方はパンツやミドルブーツと組み合わせてレイヤードを楽しめるようにしました。同時に159cmの私で長すぎない丈なので、低身長の方はすっぽりロング丈として着られる。切り替え位置を上に持ってくることで、スタイルアップもできます。ハリ感のある素材で体型カバーも叶えています。

池谷:当社のブランドも消費者の課題解決を商品開発の軸に置いていますが、神田さんのように特定少数に向けた開発はめずらしい。でも、神田さんが狙う層のニーズを拾うことで、共感の輪が広がり、マーケットが大きくなることを想定しています。

10年後も商品が消費者の手に渡り続けてほしい

WWD:神田さんのコミュニケーション力はどう生かす?

神田:一方的に世界観を提示するのではなく、消費者と共創する姿勢を「マルゥ」の強みにしたい。公式インスタグラムでは、どんどんコメントしてくださいと呼びかけています。アンケートを実施して、色展開に反映するなど商品を購入する以外の関わり方ができるような施策も考えています。まだ相談中ですが、生産過程も生配信したい。業界にいなければ、服作りの裏側ってなかなか想像できないですよね。あえて、モノ作りの現場を見てもらうことで、ファッションの楽しみ方が変わったり、商品への愛着が湧いたり、何かしらのきっかけになると思います。

WWD:「マルゥ」では、サステナビリティにどう取り組む?

神田:バロックでは廃棄予定の在庫を再販する事業に取り組んでいて、やはり私の問題意識は在庫です。まずは作りすぎず、適正価格で売り切ることに注力します。チームでは、“高みえ正直プライス”と呼んでいます。そして、着回しや商品の良さを私がきちんと伝えることで、長く楽しんでもらいたい。今後は環境配慮型素材も視野に入れて採用したいですし、UAの在庫を活用したモノ作りにも挑戦してみたいです。一つの会社で解決できる問題ではないと思うので、業界がもっとチームになってほしい。

WWD:今後どのようにブランドを成長させていく?

神田:個人的には、10年後もブランドを続けられていたらうれしいです。10年後にも「マルゥ」の商品を着てくれている人がいたり、家族や友人に引き継がれていたりするのが理想です。そのためにもカテゴリーを広げる前に、まずは“ダマベーシック”と呼んでいるシャツやジャケット、セットアップなどを中心にモノ作りに注力します。ただ商品を購入してほしいのではなく、おしゃれをすることの楽しさをさまざまなな角度で表現したい。「マルゥ」をいろんなアイテムと組み合わせて、「この格好している自分が好き」と思える経験を多くの人に提供したいです。

池谷:当社も神田さんの思いに共感しています。安心、安全なイメージだけでなく、改めてファッションの楽しみを発信するブランドとして育てていきたい。具体的な目標数値は非公開ですが、神田さんが持っているコミュニケーションのサークルが壊れないことを最優先させ、規模よりもお客さまとの関係性を深めていくことを重視します。

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マッシュルームレザーの生産拠点が日本に 「ダブレット」が組んだインドネシア発スタートアップ創業者が語る

 キノコの菌製の人工レザー“マッシュルームレザー”が環境への負荷や動物の権利といった問題を解決する新素材として注目を集めている。すでに有力ブランドが“マッシュルームレザー”を開発・運用する新興企業との協働に乗り出しており、特に米国の新興企業と組んだエルメスやアディダスやステラ マッカートニーなどはその成果を発表し商品化を進めているブランドもある。

 「日本に“マッシュルームレザー”の生産拠点を作る」――インドネシア発のマイセル/マイコテック ラボ(MYCL / MYCOTECH LAB)は、8月23日に開催された京都工芸繊維大学主催のオンラインレクチャー「スクール オブ ファッション フューチャー」に登壇し、日本に生産拠点を構えることを明かした。彼らはアジアでの生産拠点拡大を目指しており、中でも日本は「きのこの培養に関して非常に優れた自動化技術がある」と期待を寄せる。同社が開発したマッシュルームレザー“マイリー(Mylea)”は、東京のデザイナーズブランド「ダブレット(DOUBLET)」が2022年春夏コレクションで用い、ライダースジャケットやミニポーチを来春発売すると発表している。

 マイセルは2015年にインドネシアで創業し、地元のキノコ農家と協力してキノコの菌糸を天然接着剤として使用したバインダーレスボード“BIOBO”やキノコの菌糸体を用いたマッシュルームレザー“マイリー”を開発した。米クランチベースによると累計の資金調達額は83万3000ドル(約9080万円)。共同創業者でチーフイノベーションオフィサーのロナルディアス・ハータンチョ(Ronaldiaz Hartantyo)にオンラインで話を聞いた。

WWD:先日登壇したウェビナーで日本での生産拠点を開発すると明かしていたが、どこと組むのか。

ロナルディアス・ハータンチョ共同創業者兼チーフイノベーションオフィサー(以下、ロナルディアス):マッシュルーム関連のコンサルティング会社で長野県を拠点にしているサライ・インターナショナル(SALAI INTERNATINAL、 キノコプラントなどの栽培設備の輸出・輸入・販売、キノコなどの食品生産に関わるコンサルティングを行う)と組む。本格的に動き出すのは来年で、将来的には新会社を設立することになるだろう。当社の担当者がこれから日本に向かう予定だ。

WWD:なぜ、サライ・インターナショナルだったのか。

ロナルディアス:ビジョンやミッションに共通点を感じた。メールでのやりとりを経て、バーチャルなミーティングを行うようになり、今はサンプルや製品を交換しながら進めている。

WWD:具体的な計画は?

ロナルディアス:現在検討中だ。最終的にどのようなコラボレーションになるのか、ライセンス契約になるのか合弁会社を設立するのか――現時点でははっきりわからないが、2023年ごろの供給を目指している。

WWD:日本での生産拠点の候補地は?

ロナルディアス:現時点では言えない。サライ・インターナショナルの協力を得て、素材(原料となる農業廃棄物)が調達できる候補地を紹介してもらい、どの素材を使用するか検討した上で、その素材を調達できる場所にアプローチしていきたい。

WWD:マイコテック ラボは“マッシュルームレザー”の生産(オガクズなどの木質機材に米ぬかなど栄養源を混ぜて栽培する)に農業廃棄物を用いているが、具体的に何を用いているか。

ロナルディアス:森林廃棄物に加え、農業廃棄物は米、とうもろこし、サトウキビなどを用いている。

WWD:原料に農業廃棄物を利用する点が、他社とは異なる優位性だと感じる。改めてマイコテック ラボの優位性を教えてほしい。

ロナルディアス:効率性だといえる。廃棄物を利用して、さらに、マッシュルームレザーを作る工程で出る液体と個体の廃棄物も活用する。個体廃棄物は建材に、液体廃棄物はバイオプラスチック製造に用いる予定だ。生産工程における環境負荷の低減にも取り組んでいる。イノベーションでどう社会的にインパクトを与えることができるか、どう貢献できるかを考えながら、マイセリウムレザーを市場に供給できるように取り組んでいる。

WWD:菌糸体から作られた“マッシュルームレザー”が本革よりも優れていると話していた。

ロナルディアス:ポイントは3つある。1つ目は耐火性。2つ目は30~60日で成長する点。3つ目は、生産コストが安い点だ。

WWD:量産に向けた計画は?

ロナルディアス:2023年の生産目標は25万平方フィート(2万3225平方メートル)だ。現在はパイロットプラントで製造しながら、品質の標準化と最適化を行っている。また、ISOなどの認証取得に力を入れている。加えて、今、インドネシアに1万平方フィート(929平方メートル)規模の工場を建設中で11月に完成する予定だ。

WWD:量産する上で難しいと感じていることは何?

ロナルディアス:現時点で挑戦的なことは品質を標準化することだ。1枚のシートをラボで作るのは簡単だが、同じ品質のものを2000枚作るのが難しい。自社の標準を質量や衛生面など108の項目を決めて取り組んでいるが、キノコは生物的なものだから思うようにいかないね。人間に例えるといろいろうるさいタイプ(笑)。

WWD:森林廃棄物や農業廃棄物の利用についてのハードルはない?

ロナルディアス:これまでサトウキビやパイナップル、おがくずなど15種類の廃棄物を活用してみたが、問題なかった。それよりも現時点で挑戦的なのは品質の標準化だ。

WWD:加工に関しての課題は?

ロナルディアス:本革に比べて低い環境負荷で加工することができる。一例を挙げると、菌糸体は重金属のクロムを使わずになめすことができる。現在、セチャンという木材から作られたタンニン材を用いているが、さらに環境への負荷が低い方法があるかも探っていく。

WWD:そもそもあなたがサステナビリティに興味を持ったきっかけは?

ロナルディアス:大学生のころにエコキャンパス運動に参加したことだ。その後、建築家として自然保護やヴァナキュラー建築を手掛けるようになり、より深くサステナビリティについて学び、サステナビリティを推進するコミュニティーや運動を起こすようになった。私は、サステナビリティはトレンドではなく、必要不可欠なものだと考えている。次の世代のために世界を守るために、私たちはイノベーションと小さな習慣の変化で貢献することができる。

WWD:もともと建築家としてキャリアをスタートしたが、キノコが持つ素材としての可能性を感じて創業したと聞いたが。

ロナルディアス:建材、ファッション、バイオプラスチックの梱包材とビジネスのポテンシャルは高い。ファッションを優先して進めているのは、製品だけではなくコンセプトが重視されているから。消費者も自分が着ている服が何から作られているかを知りたいと思うようになっている。建材にする場合、軽くて丈夫なレンガを作ることができるが、建材は今、価格が重視されている(がアパレルはコンセプトが良ければ多少価格が高くても売ることができる)。

WWD:数あるキノコの中でもレイシを選んだ。

ロナルディアス:品種さえ同じであれば品質は変わらないが、育つ環境がポイントで、レイシは、いろんな気候に順応できるんだ。

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「ミンクス」が流山にセカンドブランドをオープン 岡村享央社長に新プロジェクトの狙いと現況を聞いた

 ヘアサロン「ミンクス(MINX)」は7月、セカンドブランド「ミンクスプラス(MINXplus)」をスタートさせ、1号店として千葉県流山市に「ミンクスプラス 流山おおたかの森美容室」をオープンした。ここでは岡村享央ミンクスワールド社長兼「ミンクス 青山店・銀座店」ディレクターに、セカンドブランドに込めた思いと1号店の現況を聞いた。

「WWDJAPAN」(以下、WWD):セカンドブランド「ミンクスプラス」とは?

岡村享央ミンクスワールド社長(以下、岡村):「ミンクス」グループでありながら、「ミンクス」とは異なったコンセプトを持つヘアサロンです。「ミンクス」には、経験を積んだ30代半ばくらいのスタッフも多く、彼らが「自分のお店を持ちたい」と考えるケースも少なくありません。しかし、長年一緒にやってきたスタッフが辞めてしまうのは寂しいし、スタッフにとっても、独立にはさまざまなリスクがともなうため、実現のハードルはかなり高いんです。そこで、独立したように店舗運営は任せ、かつ「ミンクス」とのつながりも持ち続ける“セカンドライン”を考えました。

WWD:セカンドブランドは初の試み?

岡村:初めてですね。独立しても良好な関係性を継続しているスタッフはいますが、「ミンクス」の名を冠したサロンを出店するのは初の試みです。これはスタッフからの要望で、「セカンドブランドを出すなら『ミンクス』の名前をつけたい」という意見が多かったんです。それによって集客やリクルート面でのリスクがぜんぜん違いますから。セカンドブランドは、長年当社に貢献してくれた幹部クラスのスタッフにセカンドステージを用意し、彼らの夢の実現をサポートするという目的で始めました。よって、可能な限り彼らの要望に応えたコンセプトになっています。

WWD;「ミンクス」との違いは?

岡村:「ミンクス」は東京の銀座・青山・原宿にこだわって出店していますが、セカンドブランドは全国展開を視野に入れています。だから、例えば「自分の地元に出店したい」といった要望も、今後は出てくるかと思います。1号店は流山でしたが、例えば九州や北海道でも可能性は十分にあります。ちなみに流山は、現在は同店のCEOを務めている花渕慶太が、マーケティングの末に「これから発展していく街なのでここに出店したい」と提案してきた場所なんです。私も実際に行ってみたのですが、自然と商業施設が共存する住みやすそうな街で、タワーマンションなどの建設が進んで若い家族連れも増えていて、発展性が見込めると判断して決めました。

WWD:「ミンクスプラス 流山おおたかの森美容室」はどんな店舗?

岡村:子どもが遊べるスペースなどもあり、「ミンクス」のブランディングに“地域性”をより強く持たせたような店舗です。流山周辺に住んでいる産休明けのスタッフが、同店での勤務を希望するなど、既にセカンドブランドならではのメリットも出始めています。花渕には「『ミンクス』でできないことをセカンドブランドでやってほしい」と言っているので、引き続き“ならでは”の取り組みを模索中だと思います。

WWD:オープンから1カ月の商況は?

岡村:好調ですね。お客さまの約半数が地元の方で、狙い通りに進んでいます。新客の大半が、「『ミンクス』は以前から知っていて、それが地元にできたから来た」という理由で来店してくれています。あと、お客さまの中には地元の美容師の方も多いようです。1カ月足らずで、予約サイトに70件以上の口コミが集まりました。口コミには「待ってました!」「期待以上でした!」といった内容が多く、うれしい限りです。このまま成長していけば、2店舗目の出店も大いに考えられます。「ミンクス」にも「ミンクスプラス」にも、共通して“地域1番店を目指す”という目標があります。これからも、お互いが得たノウハウを共有するなど助け合いながら、ミンクスグループの発展を目指していきたいです。

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柳井康治取締役に聞く「ユニクロがスポーツに力を入れる理由」 スウェーデン選手団との契約をパリ五輪まで延長

 ユニクロがスポーツを切り口にしたマーケティングや社会貢献に力を入れている。先日は、同社のグローバルブランドアンバサダーを務め、東京2020パラリンピックで金メダルを獲得した車いすテニスの国枝慎吾選手に、ファーストリテイリングと柳井正会長兼社長から報奨金1億円を贈ったことが話題となった。また、東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京大会)期間中に、ユニクロロゴのユニフォーム姿で活躍していたスウェーデン代表選手団の姿を記憶している人も多いだろう。それ以外にも、元サッカー日本代表内田篤人選手を起用した子ども向けサッカー教室などにも協賛している。スポーツ関連の取り組みを増やすことは、ブランド・企業のあり方や商品にどうつながっていくのか。柳井康治ファーストリテイリング取締役に聞いた。

WWD:東京大会ではグローバルブランドアンバサダーの国枝選手やスケートボードの平野歩夢選手の活躍が印象的だった。改めて大会を振り返ると。

柳井康治ファーストリテイリング取締役グループ上席執行役員(以下、柳井):ユニクロは長らく車いすテニスのツアーをサポートしており、国際テニス連盟とパートナーシップを結んでいる。それによってテニス競技だけは会場で観戦する機会があったが、観戦して感じたのは、選手の素晴らしいパフォーマンスは言葉や国境を超えて、人を興奮させたり、感情を揺さぶったりする力があるということ。ボランティアスタッフの方が大会運営を献身的に支えていたことも感動的だった。人が会場に出入りする度に丁寧に挨拶を繰り返していて、日本人として誇らしい気持ちになった。

WWD:スウェーデン選手団には公式ウエアを提供し、イベントなども一緒に行ってきた。大会前には「このプロジェクトを通して社会貢献のあり方を模索する」と柳井取締役は発言していたが、その意図は。

柳井:スウェーデンでは子どもたちにスポーツの楽しさを伝える“ドリームプロジェクト”というイベントを実施し、そこにアスリートにも来てもらっている。スポーツは言葉が通じなくても、障がいがあっても、それを乗り越えてエモーショナルになる瞬間を作り出すことができる。自分ではできなくても、プロのアスリートのすごいプレーを見れば感動や憧れが生まれる。子どもたちのそんな瞬間にユニクロの服が寄り添えるということは、われわれも国境や人種、性別といった差異を越えていけるということ。そこには非常に大きな可能性がある。

WWD:今はファッション小売業であっても、ただ服を売っていればいいという時代ではないということか。

柳井:ファッションの企業かどうかというよりも、何かしらの経済活動をする企業や団体である以上、自分たちの本業だけをやっていればいいということではない。環境問題や紛争などで、今は地球自体が存続できるかどうかというような状況にある。事業活動をする中で環境などには負荷をかけている。だからといって、生きていく以上それをやめるわけにはいかない。事業活動をしていくからこそ、その分地球や社会に貢献もしていく。一見矛盾しているようだが、その両方を成し遂げるために努力することが大切だ。

スウェーデン選手団のウエアはサステナビリティを追求

WWD:スウェーデン代表選手団との取り組みは、19年にパートナーシップ締結が発表された時点では22年の北京冬季大会までの予定だった。それがこの度、24年のパリ大会までの延長されることに決まった。

柳井:スウェーデン代表選手団や関係者とは、東京大会に向けて頻繁にやり取りを重ねてきた。コロナ禍前の19年には現地に行って採寸し、どんな機能が必要かを各競技団体に尋ねて回った。選手からニーズを聞き取るヒアリングセッションも何度も行った。実際に大会が開幕してからも、酷暑を受けて「半袖ではなくノースリーブにしたい」「他の競技の選手がかぶっていた帽子に変えてほしい」といった要望が出て、日々それに対応していた。そうしたやり取りに満足してもらえたことが、延長につながったと思う。

WWD:プロのアスリートに競技用ウエアやユニフォームを提供するという点で、技術的に苦労した部分もあったのでは。

柳井:02年のソルトレイクシティー冬季大会、04年のアテネ大会では日本選手団の公式ユニフォームを手掛けた経験があったし、われわれは普段からユニクログローバルアンバサダーであるアスリート6人と取り組んでいる。各ジャンルの一流選手である6人はウエアに対するこだわりも強く、高いレベルの要求が届く。彼らとやり取りを重ねてきたので、スウェーデン代表選手団から「こんなことまで気にするのか!」といったような要求が届いたということはなかった。例えば、トレーニングによって数ヶ月後に筋肉がどれくらい大きくなるかといったことは、選手よりわれわれの方がよく知っていたりもする。

 そういった中で今回最もチャレンジだと感じたのは、サステナビリティの面だ。スウェーデンオリンピック・パラリンピック委員会は、クオリティ、イノベーションと共にサステナビリティをキーワードとして掲げており、われわれもそれをどう実現するかを考え抜いた。単に再生素材を使えばいいというものではなく、縫製せずにボンディングにすれば布の端切れを減らすことができる。染色や裁断なども含め、総合的にサステナビリティをいかに達成するか。技術的には既に存在しているものだが、それらの組み合わせに腐心した。

WWD:そのようにアスリートの声を反映して生まれたデザインや技術は、ユニクロの日常着にはどう還元されるのか。

柳井:高温多湿の東京大会で快適に過ごすことができ、プレーもできるウエアを追求したことは日常でも役に立つだろう。また、「エアリズム」やスエットなどの既存商品も、トレーニングの際などにスウェーデン選手団に着てもらった。それにより、われわれの通常商品が選手のパフォーマンスを妨げないクオリティだということの証明にもなった。

 東京大会での取り組みに限らず、アンバサダーの声を生かした商品開発も行っている。代表的なのが、プロゴルフのアダム・スコット(Adam Scott)選手と開発した「感動パンツ」だ。薄くて軽くて伸縮性があり、シワにもなりにくいパンツがあれば、オフィスでも出張でもカジュアルシーンでも当然便利だとお客さまに思ってもらえる。「感動パンツ」は、スコット選手が求めたゴルフをしているときにビシっときまって見えて、スイングもしやすく、転戦するときにも畳んで持ち運びがしやすいパンツ、という発想が原点になっている。同様に、平野歩夢選手とは「ハイブリッドダウン」を一緒に作っている。スノーボードで1ミリでも高く飛べて、動きを邪魔せず、暖かいジャケットを追求したら、都会の生活の中でも役に立つアウターになった。

お客さまのことを考えれば、スポーツに対応するのは必然

WWD:スポーツ切り口のマーケティングは、今後も強化していくのか。

柳井:スポーツマーケティングを強化しているというイメージを持っていただくことはありがたいが、われわれはスポーツだけに特化しているわけではない。ユニクロには究極の普段着を意味する“LifeWear”というフィロソフィーがあって、お客さまの24時間365日に寄り添うことを目指している。今の時代は生活の中にスポーツが自然と組み込まれている。だから、お客さまの生活を支えようと考えれば考えるほど、スポーツにも対応することは必然となる。それを分かりやすく伝えるために、テニスならロジャー・フェデラー(Roger Federer)選手や国枝選手、サッカーなら子ども向けサッカー教室を一緒に行っている内田篤人選手と組む、という形になっている。

WWD:スウェーデン代表選手団との契約はパリ大会まで延びたが、日本を含む他国の選手団とも契約する可能性はあるか。

柳井:スウェーデン代表選手団とは、向かっていく先が一緒だったからよいパートナーシップになった。ユニクロだけが取り組みたいと思っても、またその逆でもうまくはいかない。われわれと組みたいと思っていただける内容と、われわれの気持ちが合致すれば、日本に限らずお受けしたい。実際、東京大会でもスウェーデンだけでなく、南スーダンの選手団に公式ウエアとしてユニクロを着ていただいた。南スーダン選手団は群馬・前橋で合宿をしていて、市役所の方からウエアの提供に関してお話をいただき、選手に店頭で商品を選んでもらった。パートナーシップは思いや志が一致することが大事で、それが重なるなら取り組みにつながると思う。

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大丸松坂屋は“ニューリッチ”をどう取り込む? 戸賀敬城「J PRIME」編集長に聞く富裕層商売

 大丸松坂屋百貨店は9月15日、2018年にスタートした富裕層向けメディア「J PRIME」を、30〜50代の若年男性富裕層向けに刷新する。新編集長を務めるのは、「メンズクラブ(MEN’S CLUB)」の元編集長で、現在はラグジュアリーブランドや自動車メーカー、セレクトショップなどのコンサルタントを務める戸賀敬城氏だ。歴史的な株高を背景に、コロナ渦中でも“ニューリッチ”と呼ばれるような若年富裕層の高額品消費は非常に活発。消費の二極化が進む中で、百貨店各社にとって富裕層市場は今後ますます重要になる。しかし、ニューリッチのし好や消費様式は旧来の富裕層とは異なる部分も多く、旧来型の外商の仕組みでは彼らの消費をつかみきれないという課題もある。大丸松坂屋は、ニューリッチとどうつながっていくのか。

 「われわれの外商会員データや外商催事に来場されるお客さまの定性データを見ていても、世代交代を感じる。オーナー企業の経営者が若返っていることや、IT関連を中心にコロナの中でも業績好調なベンチャー企業が多いことなどが背景にある」と話すのは、大丸松坂屋で「J PRIME」リニューアルを指揮する永井滋本社営業企画部部長。世代交代に伴い、富裕層の消費も変化している。スーツに代わって「ディオール(DIOR)」や「セリーヌ(CELINE)」などのスニーカーやロゴ入りパーカなどが売れているのはその代表例だ。

 それ以外にも、「コロナもあって、現代アートやスマート家電、ホームジム機器などへのニーズが高まっている」「以前は『食は女性のもの』というイメージがあったが、高級酒やそれに合わせるおつまみ、スイーツへの問い合わせも増えている」といった傾向がニューリッチ男性の消費として浮かび上がっている。時間に余裕があるというかつてのオーナー社長像とは異なり、「ニューリッチは自らバリバリ働いていて非常に忙しい人たち」。デジタルメディアによって、彼らとの接点拡大を目指す。

 従来の「J PRIME」は大丸松坂屋が運営しているとはうたってこなかったが、今後は大丸松坂屋発として打ち出し、ゆくゆくは店頭での集客や売り上げにもつなげていく。時計やファッション、食、アートなど、多ジャンルにわたって情報を網羅できるのも百貨店運営ならではの強みだ。また、例えばジェット機やクルーザー、不動産など、百貨店では扱っていない事柄やモノも、富裕層が欲する情報ならば取り上げていくという。

 富裕層メディアではあるが、「J PRIME」では読者をID登録で囲い込んだり、ECに直結させたりはしない。掲載商品やサービスに興味を持った富裕層は店頭や「大丸・松坂屋アプリ」、同社の外商顧客向けサイト「コネスリーニュ」に送客し、将来的に外商部門につなげていく。「ニューリッチの憧れの存在」という戸賀編集長とも密にアイデアを出し合って、今後は富裕層への物販以外のサービス提供の方向性も探っていくという。


「富裕層の進化に百貨店やブランドが追いついていない」

戸賀敬城/「J PRIME」編集長

 「ちょい悪オヤジ」ブームから約20年が経ち、僕が雑誌編集をしていたころのメイン読者は50〜60代になっている。一方で、30〜40代の富裕層も増えていて、ある高級車メーカーではオーナーの平均年齢が30代半ばというデータもある。「J PRIME」は雑誌と違い、現時点では広告出稿に依らない媒体作りを考えている。だからこそ、純粋に彼ら富裕層を満足させられるコンテンツ作りができる。

 仕事でラグジュアリーブランドや高級車の顧客イベントに参加すると、顧客から「(戸賀氏自身がSNSやブログで発信している)予約の取れないあのレストランに行きたい」などと相談されることが非常に多い。「J PRIME」でも、コロナの収束を見ながらレストランを貸し切るなどしてイベントを行い、そこで出た富裕層の声や要望をそのままコンテンツに反映させていきたい。いわばそこが編集会議の場だ。雑誌編集のノウハウを生かし、商品の背景のストーリーに光を当てて発信することで、売り上げにもつなげられると思っている。

 お金持ちはどんどん進化しているのに、百貨店に限らず、富裕層を対象とする小売りやメーカーの手法がそれに追いついていないとは強く感じる。例えば、顧客向けイベントでいまだに冷えたケータリングフードを出しているブランドがあるが、星付きレストランに行き慣れている顧客はそれでは満足しない。富裕層ビジネスをするうえでは、自社の商品だけでなく他社や他分野もしっかり勉強し、ニューリッチの世界に入っていくようにすべきだ。

 新世代富裕層の増加で、今後伸びると感じる市場はまず車。スポーツカーだけでなく、キャンピングカーやラグジュアリーなミニバンなどへのニーズが拡大するだろう。時計は5大ブランドはまだまだとんでもなく伸びるだろうし、ファッションではよりカルチャー色の強いブランドが支持されるようになる。メンズコスメもここから伸びると思っている。

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家族経営の伊ブティック「ルイーザヴィアローマ」が好調 CEOの“未来への投資”が富裕層に奏功

 イタリア発のファッションリテーラー「ルイーザヴィアローマ(LUISA VIA ROMA)」が好調だ。2020年のイタリアはコロナ禍でロックダウンを敢行したため店舗営業日数が半分だったが、20年度の年間売上高は前年比24%増の2億6000万ユーロ(約340億円)を達成。ECの売り上げが31%増という成長も後押しした。

 同店は1930年代に女性向けハットのブティックをフェレンツェで創業。その後ラグジュアリーブランドを取り扱うセレクトショップに転身し、1999年にECサイトをスタートした。大手ラグジュアリーECサイトとしては唯一、家族経営を継続している。現在は創業者の孫にあたる3代目のアンドレア・パンコネージ(Andrea Panconesi)=ルイーザヴィアローマ最高経営責任者(CEO)が経営理念を引き継いでいる。ラグジュアリーブランドから若手デザイナーズ、スポーツウエア、キッズウエア、香水やコスメなど計700ブランドを取り扱い、従業員は200人以上を抱える。

 企業として、環境保全や途上国の労働環境改善にも熱心に取り組んでいる。2018年からはユニセフ(国連児童基金)と共同でチャリティガライベントを年に1度開き、国際的なシンガーのパフォーマンスとサザビーズ(SOTHEBY’S)によるオークションで資金調達を行ってきた。7月31日にイタリア・カプリ島で開催された今年の同イベントでは、ケイティ・ペリー(Katy Perry)とジョン・レジェンド(John Legend)によるライブパフォーマンスに加え、オークションで1961年のフォーミュラ・ジュニア・レースカーが最高額となる約1億300万円で落札され、合計約6億5000万円の収益をユニセフに寄付した。

 競合ひしめくラグジュアリーEC市場の中で「顧客が納得する十分な透明性と未来への投資」が成長を続ける理由だとパンコネージCEOは語る。コロナ禍でのマーケットの変化や他社との差別化、ルイーザヴィアローマの今後について聞いた。

富裕層で増加する投資感覚の消費行動

——コロナ禍の昨年、売り上げや顧客にどのような変化が見られた?

アンドレア・パンコネージCEO(以下、パンコネージ):実店舗の営業停止は避けられなかったが、その分ECサイトの売り上げが急増した。ECサイトの売り上げ比率は全体の90%から、95%となった。さらに、長年アメリカを最大のマーケットにしていたが、昨年はイタリアでの売り上げがアメリカを上回り、全体の66%をイタリアが占めている。

——イタリアでの売り上げが伸長した要因は?

パンコネージ:実店舗の顧客がECサイトに流れたことと、ロックダウン時でも配送の懸念が少ない自国イタリアのECサイトを利用したこと。加えて、パンデミックという初めての経験は、日常の営みや消費行動について改めて考える機会となり、消費者は洋服がどこで作られていて、どんな企業が売っていて、その企業はどんな社会貢献をしているのかという背景にまで目を向けた。ラグジュアリー商品を購入するとき、物を消費するだけでなく、ブランドや企業に“投資する”という感覚で消費するようになったのだと考えている。特に、富裕層を中心に見られる傾向だ。

——“投資する”感覚とは具体的に?

パンコネージ:大手ラグジュアリーECサイトを見比べてみてほしい。セレクションやサービスは似たり寄ったりで大差はない。もちろん、どこで購入したって届くのは同じ製品だ。配送に関しては、アメリカでに届けるには他の大手よりも1日長く日数がかかるものの、「ルイーザヴィアローマ」を選んでくれる顧客がいる。その理由は、家族経営で独立した企業のオリジナリティーを尊重し、十分な透明性に納得しているからだろう。同じ金額を使うのであれば、サステナビリティやエシカル、社会貢献に取り組んでいる企業を選ぶ方が、地球と社会の未来への投資につながる。4年前に始めたユニセフのためのチャリティガライベントは、「ルイーザヴィアローマ」の企業理念を象徴するものとして大きな反響があった。

——チャリティガライベントを始めたきっかけは?

パンコネージ:アイデアが思いついたのは、娘と孫について話をしていたとき。いつだって子供というのは“未来”であり、次の時代を担っていく存在である。より良い社会を作っていくためには、世界中の子供に必要なケアを届けることが、地球の未来に投資することだと考えついた。これは家族経営だからこそ思いついた考えなのかもしれない。目先の利益ではなく、遠い未来を考えた。結果的には、ソーシャルグッドな取り組みが他大手との差別化を図るきっかけとなり、売り上げの数字にもつながった。ユニセフにも貢献できるため、契約を延長して当初の予定よりも長くイベントを継続している。私は常に、因果応報を信じている。善良な行いをすればそれだけの報いがあり、その信念がビジネスの基盤になっている。

——ECサイトのさらなる成長のための、今後のデジタル戦略は?

パンコネージ:ブランドとのコラボレーションや独自のコンテンツ作りはこれまで通り継続する。特にコンテンツに関しては、ラグジュアリー製品の工芸から文化的要素、歴史にまで触れて、顧客に学びを提供することを大切にしている。私にとってラグジュアリーとは“教養”を意味する。ラグジュアリー製品についての理解を深め、品格を養えるようなコンテンツを発信していきたい。

——今後実店舗はどのような役割を果たす?

パンコネージ:ECが成長しているとはいえ、人々が集い、コミュニティを意識できる実店舗の必要性は高い。パンデミックを通して、多くの人がリアルな体験こそ最も高い価値があると実感したように、実店舗での体験を提供することは企業として欠かせない。そのため、フィレンツェ郊外にカルチャーハブとなるような新店舗をオープンする予定だ。コンセプトストアとしての立ち位置ではなく、アートや音楽といったカルチャーも体験できるスペースとなる。フィレンツェはルネサンス期に最も栄えた都市で、時代の文明を築いた。最先端のカルチャーを発信するだけでなく、この地の歴史と文化に触れて、顧客やローカルの人々の学びとなるような実店舗にしたいと思っている。フィレンツェの姉妹都市である京都には、教養を身に付けられる素晴らしいショップや施設がたくさんあり、インスピレーションを受けた。近日中にオープン予定の新店舗に日本からの渡航者を迎え入れて、フィレンツェやラグジュアリーについて学んでもらいたい。

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「バルミューダ」から新作コーヒーメーカーが登場 新商品で淹れたコーヒーで1日が始まりワインで終わる寺尾社長の素顔に迫る

 「バルミューダ(BALMUDA)」から新製品コーヒーメーカー“バルミューダ ザ・ブリュー(以下、ザ・ブリュー)”が登場した。寺尾玄バルミューダ社長兼チーフデザイナーから直々にそのプレゼンテーションが受けられるということで、東京・武蔵境のバルミューダ本社へ向かった。会場はオフィスの一角で、至ってリラックスした雰囲気。新作“ザ・ブリュー”などが置かれた空間で寺尾社長のプレゼンテーションが始まった。ここでは、新作の開発秘話や寺尾社長の素顔などを紹介する。

WWD:コーヒーメーカーを開発したきっかけは?

寺尾玄バルミューダ社長兼チーフデザイナー(以下、寺尾):“バルミューダ ザ・トースター”の第2弾として発売しようと考えたのが約6年前。頓挫しては復活したが結局、うまくいかず商品化はできないと思っていた。ところが、コーヒーマニアの太田剛平エンジニアが入社して流れが変わった。面白い方法で開発できればと思ったが結局中止。だが、太田君は自宅で研究を続けて新しい方法を見つけた。そしてテイスティングしてみたら「これは、おいしい」と商品化することにした。製品化まで約2年半かかり完成した今では、私自身、「バルミューダ」の製品の中で一番使うものだ。

WWD:どのような製品か?

寺尾:プロポーションへこだわり、縦長で幅はできるだけ狭くした。なぜなら、日本の家庭のキッチンは、奥行きはあるが幅がないから。今までキッチン家電を手がけてきたが、“ザ・ブリュー”は佇まいにエレガンスがあり、モダンクラシックの完成形だと思う。バリスタが使う“王道”の円錐型ドリッパー、真空二重構造のサーバー、ウオータータンクから構成されるオープンドリップ方式を採用。抽出のためにお湯を注ぐ注湯口が2箇所あり、1つはコーヒーを抽出するため、もう1つは最後に仕上げの加水をするバイパス注湯の役割を果たす。この2つの注湯口がストロングでクリアな味わいを生み出す。コーヒーの抽出は、適切な湯量と温度が大切。後半になるとコーヒーの雑味やえぐみ、渋みが出てくるからだ。それらが出ないタイミングで抽出をやめてお湯で濃く出たコーヒーをちょうど良い濃度に割るという方式だ。モードは、ホットがレギュラーまたはストロング、アイスの3つ。どんなコーヒーでも“ザ・ブリュー”で淹れるとその最高の味を引き出せる。

デザインと味のクオリティーの妥協は一切なし

WWD:開発するのに苦労した点は?

寺尾:商品化のスタート地点はビジョンから。家電の役割は誰もが簡単においしさなどの感動体験を提供するのが役割だと思っている。だから、理想形を思い描いてその再現性をひたすら高める。抽出するための穴の数から、各パーツの距離などベストな組み合わせに辿り着くまでに何度も実験を繰り返した。それは常に行っていることだが、“ザ・ブリュー”では、デザインと味のクオリティー両方を落とさず商品化するという点が一番のチャレンジだった。コストダウンは製品開発につきもの。だが、“ザ・ブリュー”は、どれも妥協できず貫き通した。

WWD:エスプレッソからサードウェーブまでさまざまなコーヒーがあるが?

寺尾:コーヒーは香ばしさや華やかさを味わえる飲み物。そのおいしさは熱を加えることでおいしくなるメイラード反応によるもので、香ばしいトーストや焼肉などと同じ。メイラード反応による香ばしさの記憶が人間のDNAに刻み込まれているから人々はコーヒーを欲するのだと思う。“ザ・ブリュー”では、さまざまなコーヒーの中でも誰もがおいしいと感じるピュアでポップなコーヒーを目指したつもりだ。

WWD:今後の予定は?

寺尾:今までの5年間はキッチン家電をつくってきて、“ザ・ブリュー”という完成形ができた。11月に携帯電話を発売予定だ。1日一番使うもので、より便利なものがつくれればと思っている。

宝物は「バルミューダ」なぜなら、ドラえもんレベルだから

WWD:典型的な1日のスケジュールは?

寺尾:1日は朝“ザ・ブリュー”のコーヒーで始まり、ワインで終わる。会社ではミーティングがほとんどで、それは試合のようなもの。いかに短く言い早く終わらすかが勝負だ。ほかデザインや文章などに時間を費やしている。

WWD:自身のファッションスタイルを表現すると?

寺尾:ミュージシャンっぽくあろうとしている。スーツは持っていないし、ネクタイも白と黒1本ずつ。

WWD:座右の銘は?

寺尾:ライフ・イズ・ショート。それが行動のもとになっている。母が亡くなったときに身をもって感じた。生きているから、おいしいものを食べることができるし、楽しい話もできる。

WWD:愛読書は?

寺尾:シャーロックホームズ。本を読まないと眠れないので、よく読む。私は、武蔵境のシャーロックホームズと呼ばれている。なぜなら、シャーロックホームズは現象を観察し推理して事件を解決する。われわれがしていることも同じで、事件の解決がビジョンの実現に置き換わっただけだ。

WWD:休日の過ごし方は?

寺尾:朝、コーヒーとIPA(ビール)を飲み、「今日も飲むぞ!」とスタート。午後はボクシングに行って、夜は赤ワインを飲む。ナパやボルドーが好き。飲む理由は、単に酔っ払いたいわけではなく、頭の強制終了が必要だから。そういう意味では、常にアルコール消毒しているかも(笑)。

WWD:料理は?

寺尾:週に3〜5回する。平日は夕飯、休日は昼と夜両方つくる。得意料理はペペロンチーニで76点くらい。たまに、包丁で手を切って痛い思いもするが腕は上がっていると思う。

WWD:尊敬するアーティストは?

寺尾:ミュージシャンだとキース・リチャーズ(Keith Richards)、ブルース・スプリングスティーン(Bruce Springsteen)、作家ではガルシア・マルケス(Garcia Marquez)やウンベルト・エコー(Umberto Eco)、アーネスト・ヘミングウェイ(Ernest Hemingway)。

WWD:自身の宝物は?

寺尾:「バルミューダ」。世の中にない欲しいものをつくれるから。ドラえもんレベルだと思っている。

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“かわいい系原宿女子”をけん引するビームス ボーイ 今さら聞けないあれこれを“おじさん系記者”が問う

 メンズに限って、ファッションメディアの仕事を20年以上続けてきた。つまり、ウィメンズは完全なる門外漢だ。そんな僕だがここ2、3年、ビームス ボーイがなんとも気になる。別件でビームスを取材した際、それとなく広報担当者に聞くと、3年前にディレクターが交代したという。変化がそれによるものなのか?そして“四十路男子”な僕にとって、近くて遠いビームス ボーイを知るために、伊野宏美ディレクターをインタビューした。

WWD:この3年ほど、“ビームス ボーイが(ポジティブに)変わった”と感じており、それは伊野ディレクターの就任と時を同じくする。意識的なアクションによるものなのか?

伊野宏美ビームス ボーイ ディレクター(以下、伊野):レーベルの特徴として、テイストを変えないことが大前提であり、私自身変えようとしたことはない。初代の窪(浩志)以降、私が4代目ディレクターとなるのだが、創設時の思いを継承している。

 ただ、“より分かりやすくしたい”ということはあるかもしれない。代替わりに伴って、スタッフも“ビームス ボーイとは?”を自問自答したし、レーベルの“人格”をあらためて外に向けて発信したいと考えている。

 おかげさまでビームス ボーイには熱狂的なファンが社内外に多く、あうんの呼吸で成立してしまっているところがある。それを可視化、言語化することに務めている。その一つの施策が小冊子「ボーイズ ルール」「ボーイズ ライフ」であり、一定額以上買い上げいただいた方にノベルティーとして渡している。製作にあたって過去の資料や写真を探り、“変わっていない”ことを再確認することもできた。

WWD:伊野ディレクターは、ビームス ボーイひと筋だと聞いた。

伊野:中学生のころからビームス ボーイで買い物をしていたので、ビームス ボーイ歴は社歴より長い(笑)。その間もビームス ボーイは変わっていない。私はずっとビームス ボーイが好きだし、ほかのスタッフにもビームス ボーイのことをもっと好きになってほしくて、それが小冊子作りの原動力ともなった。販売員時代からビームス ボーイの仕事に携わることは日々楽しくて、気持ちが高まりついつい早め出勤してしまい、スタバで誰に見せるわけでもないのに、その日のコーディネートについて手帳に書き出したり(笑)。考えてみれば、当時から伝えたい気持ちはあふれていたのだと思う。当時はそれがお客さまに向いていて、今は小冊子やウェブ、SNSなどでより多くの人に発信している。

WWD:ビームス ボーイは現在、原宿店のみ?

伊野:単独店舗としてはそうだ。そのほかは、複合店に収まる形で運営している。

WWD:顧客像について教えてほしい。

伊野:30代後半~40代が圧倒的。カジュアルに着られて、体型を問わないからか主婦層からの支持も厚い。それに続くのが20代前半だ。土地柄、美容師などが多く、また20代のころにビームス ボーイに通っていた方が母となり、娘と来店することもある。

WWD:客単価は?

伊野:1万5000円ほど。

WWD:店頭に顔を出すことも?

伊野:原宿店が明治通りを挟んでオフィスの目の前ということもあり、週1で顔は出すようにしている。

WWD:約30あるビームスのレーベルの中で、ビームス ボーイはどういう存在?

伊野:ビームス ボーイのコンセプトは、“女性がメンズ服を着る”というもの。服の背景にあるストーリーや、ヘビーデューティーの考え方などを女性に伝えることを大事にしている。個人的に、ビームス ボーイはビームスらしさを最も体現しているレーベルであると考えていて、例えばロゴもビームス創業時のフォントを継承している。アメリカにあこがれるスタイルを、今なお提案しているのがビームス ボーイだ。

WWD:“伊野版ビームス ボーイ”を象徴する3つのキーワードを挙げるとしたら?

伊野:重複となるが、ビームス ボーイの根幹はディレクターによって変わってはならないもので、あくまでレーベルとしての意見となるが3つある。

1.ルールを知って、ルールを破る

 体型がきれいに見えるとか、トレンドに沿っているとか、皆が着ているとかではなく、ビームス ボーイは独自の判断基準(ルール)を持っている。ビームス ボーイにとって服のルーツを知ることは必須条件であり、同時に喜びでもある。それによってスタイリングに深みが生まれるし、服への愛着も増す。ただ、それ以上に大事なのは“ファッションは楽しい!”ということ。だから、ルールを理解しつつもそれにとらわれず、自分の好きなように着てほしいし、それによって得られる服のパワーを伝えたい。ルールを破ることで、初めて発見できる自分らしさがあるはずだから。

2.お洒落はユーモア!

 ビームス ボーイの商品や服装は「面白い」と言われることが多く、「かわいい」ではない……(笑)。でも、それがわれわれにとって最大の褒め言葉。ビームス ボーイは1998年の創設当初からクセが強く、でもそれは“ファッションは楽しい!”を提案しているからこそで、それが色や柄などに自然と表れているのだと思う。ユーモアのある商品や服装によって自分らしくいられ、それによって周りもハッピーになる。この好サイクルに共鳴する方をファン化、コア化できている。また“高いから良い”でもなく、歴史ある名品や傑作だけを扱いたいわけでもない。チープでキッチュなアメリカンスーベニアもとても魅力的で、それをバッグやジャケットにちょこっと付けるだけで気分が高揚する。それでいいじゃない!という思い。

3.女性が着ることで際立つメンズ服の魅力

 性別でセグメントするのは時代的にナンセンスだと思うが、女性がメンズ服を着ることで、メンズ服の魅力を再発見できると信じている。例えば、女性がビッグシルエットの軍パンをベルトでぎゅっと締めてはく。男性ではありえない、しわやフォームが現れる。アイテムが本来持つ機能は十分に発揮できないかもしれないが、ファッション的には新たな可能性が付与される。ビームス ボーイは、女性がメンズ服を着ることがまだ斬新だった98年から、このような着こなしを提案してきた。不都合の中に生まれる面白さを“個性”ととらえ、まもなく四半世紀を迎えようとしている。

WWD:変わらないビームス ボーイを今後どのようにけん引する?

伊野:カジュアル服の楽しさを新たな世代にも発信してきたい。そのためには、アンテナを張り続けることが大事。ランウエイ的なそれとは違うがベーシック服にもトレンドがあり、逃さず拾っていかなくてはならない。

WWD:“老舗ラーメン店の味が変わらないのは、日々味を改良しているから”のように?

伊野:その通りだ(笑)。

WWD:原宿女子とはほど遠い、僕のような“四十路男子”もビームス ボーイに入店していい?

伊野:もちろん!ビームス ボーイにはカップル客も多く、男性客が売り上げの5%ほどを占める。最近は小柄な男性も多いので服を買う方もいるし、小物だけ購入する方もいる。また近年、「メンズサイズが欲しい」という声が高まり、ビームス ボーイ別注の商品をビームス ジャパンで販売している。

<インタビューを終えて>
 店頭取材時、オープン直前ということもあって20代の女性販売員たちが慌ただしく準備していた。娘ほど年の違う彼女たちと同等に話ができるのは、ひとえにファッションのおかげだ。ある1人が履いていた英国靴「サンダース(SANDERS)」の木型について話したり、別の1人が着ていたミリタリー由来の服についてオリジナルのステンシルプリントについて話したり。共有言語としてのファッションがあり、それが性別や世代を超越するパスポートとなる。思えば、今年91歳になる祖父世代の現役ファッションイラストレーター穂積和夫さんに仕事を依頼する際も、シアサッカーのジャケットに合わせるバミューダショーツの色について意見交換したり、「眼鏡は定番のウエリントン型ではなく、あえてラウンド型にしたい」などと話したりできる。これもファッションの力だ。「ルールを知りつつもそれにとらわれず、自分の好きなようにファッションを楽しんで!」、伊野ディレクターにあらためて背中を押され、今日もコスプレのような格好で取材に出掛けよう。

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「ファーと同じ」 「ネクストダイヤモンド ニューヨーク」社長に聞くこれからのダイヤモンドの選択肢

 ジュエリーブランド「ネクストダイヤモンド ニューヨーク(NEXT DIAMOND NEW YORK以下、ネクストダイヤモンド)」が日本に上陸した。ラボグロウンダイヤモンド(以下、ラボグロウン)と日本で常設店舗は初のダイヤモンドより輝くといわれるモアサナイトに特化したジュエリーを販売するブランドだ。8月末、松屋銀座本店(以下、松屋)1階にショップおよび公式ECサイトをオープン。同ブランドを率いるのは米ニューヨークを拠点に、さまざまなジュエリーブランドを運営している二宮美生ネクストダイヤモンド ニューヨーク社長だ。上陸に伴い来日した二宮社長に、ブランドをはじめラボグロウンとモアサナイトについて聞いた。

WWD:「ネクストダイヤモンド」を立ち上げたきっかけは?

二宮美生ネクストダイヤモンド ニューヨーク社長(以下、二宮):ジュエリー業界における新しい価値観を提供したいと思った。日本でエンゲージメントリングに使用される平均的な天然の大きさは0.3カラット、アメリカでは1カラット以上だ。天然より価格の安いラボグロウン、ラボグロウンよりも手に取りやすいモアサナイトを扱うことで、予算とエシカルという観点で消費者に選択肢を与え、若年層のブライダル需要や第二のエンゲージメントリング世代(アメリカで再婚が多い年代)といわれる50〜60代の女性のニーズに応えたい。

WWD:ラボグロウンとは、具体的にどのようなものか?

二宮:天然と全く同じ組成で、「ネクストダイヤモンド」が扱うものの主な製法は、CVD(CHEMICAL VAPORDEPOSITION)と呼ばれる化学気相蒸着法とHPHT(HIGH PRESSURE AND HIGH TEMPERATURE)と呼ばれる高温高圧法の2種類が主流。アメリカやインド、中国などで製造されており、約5年前から市場で出回り始めた。

WWD:扱うラボグロウンのグレード(4C)や価格、調達方法などは?鑑定書は付くか?

二宮:カラーは、無色〜ほぼ無色のD〜H、クラリティーはIF〜VS(ベリー・スライトリー・インクルーデッド)以上、カットはエクセレントかベリー・グッド、カラットは1〜7カラット。価格は天然の価格相場である週刊ラパポルト・ダイヤモンド・レポートと連動しており、天然の3分1程度。調達はインドやアメリカのメーカーから。インドはカッティングの技術が優れており独自のカットなどもできる。中国にもメーカーがたくさんあるが、小ぶりのものを製造しているメーカーが多いため扱わない。鑑定書は国際宝石学会(IGI)、または米国宝石学会(GIA)のものが付く。

WWD:デザインや製造はどこで行うか?

二宮:デザインはニューヨークで、360度どこから見ても美しいデザインにしている。製造は、アメリカ、日本、中国。日本の工房と提携してアフターサービスを提供する。

WWD:ラボグロウンの1カラットのリングの税込価格は?

二宮:プラチナ四つ爪リングが39万6000円から。地金はプラチナ以外に、ピンク・イエロー18金から選べる。

ラボグロウンより価格の低いモアサナイト

WWD:モアサナイトとは?

二宮:1893年に米アリゾナ州で発見された隕石の中の鉱物で、地球上でほぼ天然のものは存在しない。研究が進められ、1998年に米企業のチャールズ&コルバード(CHARLS & COLVARD)が開発に成功し特許を取得し製造を始めた。今は特許が切れてチャールズ&コルバード社以外でも製造されている。化学組成は、炭化ケイ素で硬度は天然・ラボグロウンに次いで高く、光の屈折率や分散度は、天然・ラボグロウンよりも高い。だから、欧米では天然やラボグロウンの代替としてエンゲージメントリングなどに使用されている。価格はラボグロウンよりも安い。

WWD:グレードや1カラットの税込価格は?

二宮:モアサナイトはダイヤモンドとは違うが「ネクストダイヤモンド」の基準でグレードを付けている。カラーはD〜F、クラリティーはVVS(ベリーベリー・スライトリー・インクルーデッド)、カットはエクセレントでラウンドブリリアントの場合はH&C(ハート&キューピッド)が確認できる。「ネクストダイヤモンド」の保証書が付き、1カラット、プラチナ四つ爪リングが19万2500円〜。

WWD:エンゲージメントリングの納品方法は?それ以外の商材はあるか?

二宮:受注してから納期は1〜2ヶ月程度。エンゲージメントリング以外にも、ファッションジュエリーも販売するが、それらは在庫を持つ。

消費者の価値観により市場が分散化

WWD:天然、ラボグロウン、モアサナイトのすみ分けをどのように考えるか?

二宮:天然とラボグロウンは、全く同じ組成で鑑定士が見ても見分けがつかない。天然は1gを採掘するのに1トンの土砂を掘り起こしている。一方、ラボグロウンは人と地球に優しい。ダイヤモンドにこだわる人は、天然かラボグロウンのどちらかを選択するだろう。モアサナイトはダイヤモンドではないが虹色の強い輝きがあり、ラボグロウンより安価。予算でこちらを選ぶ人もいるはずだ。消費者それぞれの価値観で、天然、ラボグロウン、モアサナイトを選べばいいと思う。ただ、正しい知識に基づいて選ぶことが大切だ。

WWD:「ネクストダイヤモンド」の戦略は?

二宮:アメリカ市場では約3年間でラボグロウンがメジャーになった。日本でもそのような動きが出てくると思っている。「ネクストダイヤモンド」を通して日本のジュエリー業界を変革したい。ECをメーンにLINE接客など気軽に相談できるサービスを提供したい。いろいろな企業とコラボレーションしながら、ラボグロウンの市場を作っていくつもりだ。ラボグロウンやモアサナイトがどのようなものかという啓蒙活動も行っていく。多様性が求められる時代だからこそ、異なる価値を提供するのは大切なこと。5年後にエンゲージメントリング市場でトップを目指したい。そのうち、日本でも「エンゲージメントリングの石は、何にした?」というような会話が当たり前になってほしい。

WWD:現在のラボグロウンの製造状況は?

二宮:DやIFを作れる技術はあり進化しているのは確実だ。大きさは、7〜8カラットまで。大きくなれば、その分内包物も増えるので、課題もある。

WWD:現在のラボグロウンの大きな市場は?

二宮:アメリカと中国だ。

WWD:今後のラボグロウン市場をどのように分析するか?

二宮:金の市場の成長率は、ここ数年では毎年15〜20%。ラボグロウンに関しては、2015年に1億5000万円の市場規模だったのが20年には1兆円を超え、約700倍に成長した。ある意味、天然はリアルファーと同じようなものだと思う。今では、エコファーが主流。だから、エシカルな考えを持つ消費者が増えるにつれ、あえてラボグロウンを選ぶ層が増加するはずだ。これからは、消費者の価値観によって、天然、ラボグロウン、モアサナイトそれぞれの市場に需要が分散すると思う。

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キーマンに直撃 松屋がラボグロウンダイヤモンドに注力するワケ

 松屋銀座本店(以下、松屋)は8月末に、ラボグロウンダイヤモンド(以下、ラボグロウン)に特化して独自のジュエリーブランド「エネイ(ENEY)」とブライダル需要に対応するラボグロウンに特化した「ネクストダイヤモンド ニューヨーク(NEXT DIAMOND NEW YORK、以下ネクストダイヤモンド)」2つのショップを1階にオープンした。同時に、各ECサイトもスタート。この2つのブランドで、売り場・EC合わせて通常のこの売り場面積の約1.7倍の年商が目標だ。プロジェクトのキーマンである古屋穀彦・松屋代表取締役専務執行役員 経営企画室長、経理部管掌、環境マネジメント部担当に聞いた。

WWD:ラボグロウンの存在を知ったのはいつか?それに対してどう思ったか?

古屋穀彦・松屋代表取締役専務執行役員 経営企画室長、経理部管掌、環境マネジメント部担当(以下、古屋):2019年に米ニューヨークの知人がジュエリーブランド「ニューヨークの贈り物」を運営しているGFM二宮美生 & カンパニー代表に出会ったのがきっかけだ。2020年2月に1週間「GFM」のポップアップショップを開催したところ好評だった。二宮さんから、ラボグロウンの話を聞いて興味が沸いた。それがどういうものか、研究を重ねて、新しい市場ができると感じた。

WWD:独自で「エネイ」というジュエリーブランドを立ち上げたきっかけは?

古屋:昨年の自粛期間中に、自粛明けに差がつく何かを考えたいと思っていた。店舗休業で、われわれも取引先も厳しい。今後の百貨店ビジネスはどうなるのかと考え、新しいチャレンジをするべきだと考えた。そこで、島田成一郎・松屋 事業推進部スタートアップ事業課長と話して、「自社ブランドを作ることにチャレンジする」という意見に合意した、ラボグロウンと出合い、それは、SDGsという時流の流れにも合っている、今後市場が広がる可能性も大きくチャレンジしがいがある。島田を中心とした現場が本気で、「いいブランドを作りたい」と動き始めたので、背中を押したような感じだ。チャレンジするなら、リスクがあっても勝算率が高く、市場が広まる可能性を持っているものがベストだと考えた。

WWD:「エネイ」を立ち上げた手応えは?

古屋:ビューティブランドの「セルヴォーク(CELVOKE)」などを手掛ける田上陽子さんにディレクションをお願いし、外部を巻き込めたのが良かった。今まで、“松屋オリジナル”的なものが多かったが、若年層にアピールするには、外部の力が必要だと考えた。ブランドのメディア発表後に行った一部顧客などを招いた販売会では予想の2.5倍を売り上げたので、期待以上の手応えを感じている。

WWD:「エネイ」のラボグロウンダイヤモンドの調達は?ラボグロウンを使用するメリットは?

古屋:「ネクストダイヤモンド」を運営する二宮社長と契約して入手する。“ハーフムーン”というシリーズは、石を真っ二つに割ったデザイン。天然だと躊躇するが、ラボグロウンだとこのような大胆なデザインにもチャレンジできる。

WWD:同時に「エネイ」と「ネクストダイヤモンド」2つのブランドを導入する理由と目的は?

古屋:ラボグロウンの市場を作って行きたいという志から。「エネイ」は、” エニー(ANY)”と“エナジー(ENERGY)”を組み合わせた造語だ。ファッション感度の高い女性にデザインでアピールし、使っているのがラボグロウンで、なおさらいい、かっこいいと思ってもらいたい。それで自然にラボグロウンのジュエリーブランドとして育っていけばいいと思う。「ネクストダイヤモンド」は、石が主役でデザインはベーシック。ブライダルなど、人生の節目に対応するブランドだ。「エネイ」と「ネクストダイヤモンド」2ブランドを展開することで、幅広い層にアピールできる。松屋の顧客は新しいものに対する関心が高いので、どちらも響くと思っている。

ラボグロウンによるジュエリー市場全体の活性化に期待

WWD:これら2つのブランドでラボグロウンに注力する理由は?同じ売り場にコーナーがある日本のジュエリー企業の反応は?

古屋:既存のジュエリーブランドは、いまだに、天然とラボグロウンが混ざることを懸念しているところが多い。松屋としては、天然の市場とラボグロウンの市場は別々で、それを消費者に理解してもらいつつ、ラボグロウンの市場を作っていくつもりだ。国内ジュエラーからは、「これら2つのブランドの導入によりジュエリー市場が活性化すれば」とポジティブに捉えられ、応援してくれている。

WWD:ラボグロウンを扱うメリットとデメリットは?

古屋:メリットは、他の百貨店と差別化できる点。また、消費者にとって選択肢が増えるという点。デメリットは、ほぼないと考えるが、天然の価値がラボグロウンの影響で落ちると思われるのは良くないので、天然とラボグロウンの価値、その違いを、きちんと説明していく。

WWD:ラボグロウンが天然と競合する可能性は?

古屋:「エネイ」も「ネクストダイヤモンド」も、新しい価値を提供するブランドだ。天然のオプションという選択肢だとは考えていない。それぞれのブランドの価値を理解して購入する顧客を増やすことにより、ブランドとして成長し、ジュエリービジネスが全体的に広がればいいと思っている。

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キーマンに直撃 松屋がラボグロウンダイヤモンドに注力するワケ

 松屋銀座本店(以下、松屋)は8月末に、ラボグロウンダイヤモンド(以下、ラボグロウン)に特化して独自のジュエリーブランド「エネイ(ENEY)」とブライダル需要に対応するラボグロウンに特化した「ネクストダイヤモンド ニューヨーク(NEXT DIAMOND NEW YORK、以下ネクストダイヤモンド)」2つのショップを1階にオープンした。同時に、各ECサイトもスタート。この2つのブランドで、売り場・EC合わせて通常のこの売り場面積の約1.7倍の年商が目標だ。プロジェクトのキーマンである古屋穀彦・松屋代表取締役専務執行役員 経営企画室長、経理部管掌、環境マネジメント部担当に聞いた。

WWD:ラボグロウンの存在を知ったのはいつか?それに対してどう思ったか?

古屋穀彦・松屋代表取締役専務執行役員 経営企画室長、経理部管掌、環境マネジメント部担当(以下、古屋):2019年に米ニューヨークの知人がジュエリーブランド「ニューヨークの贈り物」を運営しているGFM二宮美生 & カンパニー代表に出会ったのがきっかけだ。2020年2月に1週間「GFM」のポップアップショップを開催したところ好評だった。二宮さんから、ラボグロウンの話を聞いて興味が沸いた。それがどういうものか、研究を重ねて、新しい市場ができると感じた。

WWD:独自で「エネイ」というジュエリーブランドを立ち上げたきっかけは?

古屋:昨年の自粛期間中に、自粛明けに差がつく何かを考えたいと思っていた。店舗休業で、われわれも取引先も厳しい。今後の百貨店ビジネスはどうなるのかと考え、新しいチャレンジをするべきだと考えた。そこで、島田成一郎・松屋 事業推進部スタートアップ事業課長と話して、「自社ブランドを作ることにチャレンジする」という意見に合意した、ラボグロウンと出合い、それは、SDGsという時流の流れにも合っている、今後市場が広がる可能性も大きくチャレンジしがいがある。島田を中心とした現場が本気で、「いいブランドを作りたい」と動き始めたので、背中を押したような感じだ。チャレンジするなら、リスクがあっても勝算率が高く、市場が広まる可能性を持っているものがベストだと考えた。

WWD:「エネイ」を立ち上げた手応えは?

古屋:ビューティブランドの「セルヴォーク(CELVOKE)」などを手掛ける田上陽子さんにディレクションをお願いし、外部を巻き込めたのが良かった。今まで、“松屋オリジナル”的なものが多かったが、若年層にアピールするには、外部の力が必要だと考えた。ブランドのメディア発表後に行った一部顧客などを招いた販売会では予想の2.5倍を売り上げたので、期待以上の手応えを感じている。

WWD:「エネイ」のラボグロウンダイヤモンドの調達は?ラボグロウンを使用するメリットは?

古屋:「ネクストダイヤモンド」を運営する二宮社長と契約して入手する。“ハーフムーン”というシリーズは、石を真っ二つに割ったデザイン。天然だと躊躇するが、ラボグロウンだとこのような大胆なデザインにもチャレンジできる。

WWD:同時に「エネイ」と「ネクストダイヤモンド」2つのブランドを導入する理由と目的は?

古屋:ラボグロウンの市場を作って行きたいという志から。「エネイ」は、” エニー(ANY)”と“エナジー(ENERGY)”を組み合わせた造語だ。ファッション感度の高い女性にデザインでアピールし、使っているのがラボグロウンで、なおさらいい、かっこいいと思ってもらいたい。それで自然にラボグロウンのジュエリーブランドとして育っていけばいいと思う。「ネクストダイヤモンド」は、石が主役でデザインはベーシック。ブライダルなど、人生の節目に対応するブランドだ。「エネイ」と「ネクストダイヤモンド」2ブランドを展開することで、幅広い層にアピールできる。松屋の顧客は新しいものに対する関心が高いので、どちらも響くと思っている。

ラボグロウンによるジュエリー市場全体の活性化に期待

WWD:これら2つのブランドでラボグロウンに注力する理由は?同じ売り場にコーナーがある日本のジュエリー企業の反応は?

古屋:既存のジュエリーブランドは、いまだに、天然とラボグロウンが混ざることを懸念しているところが多い。松屋としては、天然の市場とラボグロウンの市場は別々で、それを消費者に理解してもらいつつ、ラボグロウンの市場を作っていくつもりだ。国内ジュエラーからは、「これら2つのブランドの導入によりジュエリー市場が活性化すれば」とポジティブに捉えられ、応援してくれている。

WWD:ラボグロウンを扱うメリットとデメリットは?

古屋:メリットは、他の百貨店と差別化できる点。また、消費者にとって選択肢が増えるという点。デメリットは、ほぼないと考えるが、天然の価値がラボグロウンの影響で落ちると思われるのは良くないので、天然とラボグロウンの価値、その違いを、きちんと説明していく。

WWD:ラボグロウンが天然と競合する可能性は?

古屋:「エネイ」も「ネクストダイヤモンド」も、新しい価値を提供するブランドだ。天然のオプションという選択肢だとは考えていない。それぞれのブランドの価値を理解して購入する顧客を増やすことにより、ブランドとして成長し、ジュエリービジネスが全体的に広がればいいと思っている。

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スパイバー、上場へ本格始動 カーライルなどから340億円を調達

 人工タンパク質素材のスタートアップのスパイバーは8日、投資ファンドのカーライルや官民ファンドであるクールジャパン機構などからの増資と事業価値の証券化で新たに340億円の資金調達を行ったと発表した。カーライルは第三者割当増資で100億円を出資し、クールジャパン機構とともに取締役も派遣する。スパイバーの資金調達はこれまでベンチャーキャピタルや取引先が主力だったが、有力なプライベートエクイティ(PE)ファンドであるカーライルの参加で、本格的にIPOに向けて動き出す。カーライルの渡辺雄介マネージングディレクターは「アパレル産業への強力なインパクトと共に、中長期的にも大きな市場をターゲットにしており、大きな可能性を感じた。経営基盤の強化に加え、海外進出への支援を行う」という。

 資金調達の内訳は投資ファンドのカーライルのほか、フィディリティインターナショナル(Fidelity International)やベイリーギフォード(BAILLIE GIFFORD)などの海外の機関投資家による出資のほか、官民ファンドのクールジャパン機構の追加増資で240億円。将来の事業価値を担保にした事業価値証券化で100億円になる。新たな増資は1株4500円で行い、最新の株式評価額は1330億円になる。

 今回の資本提携に対し、スパイバーの関山和秀取締役兼代表執行役とカーライルの渡辺雄介マネージングディレクターにオンライン取材を行った。一問一答は以下の通り。

WWDJAPAN(以下、WWD):資金調達の狙いは?

関山和秀スパイバー取締役兼代表執行役(以下、関山):タイの原料プラントが年内にも立ち上がり、米国の原料プラントの準備も順調に進んでおり、グローバルな垂直立ち上げのための資金だ。カーライルから出資だけでなく取締役の派遣も受けるのは、2〜3年内にIPOを検討しており、経営基盤の強化のためだ。

WWD:有価証券報告書によるとスパイバーは、この5年間、売上高はわずか2億円で、対して損益はずっと赤字。この5年累積赤字は160億円超に達する。PEファンドであるカーライルが出資を決めた理由は?

渡辺雄介カーライル マネージングディレクター(以下、渡辺):「ブリュードプロテイン(BREWED PROTEIN)」の商業化の進捗から、所有する技術、それらに付随する特許、さらには将来の市場規模まで、スパイバーの企業価値については徹底的に分析した。現在の生産技術やタイの原料プラントの進捗、米国プラントの規模、水面下で進んでいる世界規模でのブランドやアパレル企業との共同開発の状況などから見て、数年内の収益化はかなり有望だと分析している。かつ、人工タンパク質素材という革新的な素材の持つTAM(Total Addressable Market=将来獲得可能な市場規模)に関しても、繊維にかかわらず、プラスチックなどへの応用範囲も広く、しかもそこでのシェアを取れる可能性も高く、かなり大きい。日本でははじめての非バイアウト型のマイノリティグロース投資ということもあって、投資委員会でどう説明しようか迷ったものの、第一声は“素晴らしい!”と、かなりの高評価だった。

WWD:どう支援していく?

渡辺:まずはグローバルな事業展開に向けた支援だ。グローバルな投資ファンドであるカーライルはご存知の通り、シュプリーム(2020年にイグジット)やモンクレール(14年にイグジット)など、有力なグローバルブランド支援の実績があり、現在もゴールデングース(GOLDEN GOOSE)などの支援も行っている。出資先にとどまらず、幅広くさまざまなブランドとのコラボレーションなど、やれることは多いと感じている。IPOだけでなく、これまで培ってきた当社のグローバル展開とサステナビリティの知見を最大限に提供したい。

WWD:人工タンパク質素材に関しては、同業の米国のボルトスレッズ(BOLT THREADS)を筆頭に開発競争が激しくなっている。今後の展望は?

関山:スパイバーは人工合成タンパク質素材の分野では、タイと米国での原料プラントの着工や準備から、紡糸、ユーザーとの商品化に向けた共同開発といった商業生産から、研究開発から生産にまたがる圧倒的で多彩な特許網、さらには世界での標準化規格まで、あらゆる分野で世界でも他を圧倒している。タンパク質合成の分野では、先日SPAC(特別買収目的会社)上場を発表した、米ボストン発のギンコ・バイオワークス(GINKO BIOWORKS)のような強力なスタートアップが台頭しており、ユニコーン企業以上のレベルで競争は激化している。ただ、スパイバーの最大の強みは、タンパク質合成から、発酵による原料の生産、紡糸まで、合成生物学や遺伝子工学、高分子学など幅広い分野にまたがるコア技術を内製化し、超高速回転させて発展させられること。ラボレベルから量産に踏み出すときには大手素材メーカーとの協業や共同開発なども必要になってくるが、有力な技術や特許をどちらが持つかで事業の進捗が停滞したり、止まってしまうことも多い。その意味でも内製化している当社はかなりのアドバンテージがある。事業の垂直立ち上げのため、今後まだまだ大きな資金が必要になるが、カーライルとの提携で、2〜3年内の上場に向けての動きも整った。今後はさらに経営のスピードを上げていく。

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「ザ・ノース・フェイス」はなぜ「ロイカEF」を選んだのか 担当者が語る妥協なきこだわり

 環境負荷軽減を目指すファッション業界でサステナブルな素材に注目が集まる中、旭化成のリサイクルストレッチファイバー「ロイカEF」に多くの企業が熱視線を送っている。アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」を日本で運営するゴールドウインもそのうちの一社だ。同社はサステナビリティに関する長期ビジョン“プレイ アース 2030(PLAY EARTH 2030)”を5月に発表し、2030年までに環境に配慮した素材の使用率を現在の28%から90%へ引き上げを目標とし推進している。「ザ・ノース・フェイス」でも人気商品“バーブライトパンツ”を20年春夏シーズンから「ロイカEF」を使った環境配慮型の生地に切り替え、ほかの定番品も環境に配慮した素材に徐々にシフトしている。数あるサステナブルな素材の中で、なぜ「ロイカEF」を選んだのか。同ブランドの千葉弥生アウトドアアパレル企画担当に、その理由や背景を聞いた。

伸縮性や汎用性など
機能面のバランスが秀逸

 「ザ・ノース・フェイス」の万能パンツとして、登山やさまざまなスポーツに対応する定番品が“バーブパンツ”だ。2016年には、薄さと軽さにこだわった“ライト版”としてメンズ向けの“バーブライトパンツ”とウィメンズ向けの“バーブライトスリムパンツ”が登場。日常使いできるシンプルなデザインと、夏場のトレッキングや激しい運動にも対応する機能性で、多くの顧客から支持を集めている。そんな人気商品が、「ロイカEF」を用いた環境配慮型のストレッチ生地に昨年リニューアル。「定番品を徐々に環境に配慮した素材に切り替えており、“バーブライト”も変えたいと、『ザ・ノース・フェイス』から生地を取り扱う旭化成アドバンスに相談した」と、千葉は経緯を語る。

 リサイクル素材への切り替えは、従来の生地より光沢が強かったり、伸縮性が下がったりと品質の壁もある。しかし、千葉は「ロイカEF」を使った素材に「安心してシフトできた」と話す。「環境配慮型のストレッチ生地に変更しても、従来の“バーブライトパンツ”が持つ伸縮性や汎用性といった機能性は保ちたかった。しっかり伸びて表面が滑らかなもの、不要な光沢感もないもの、テクニカルなパンツ然としないもの——。妥協したくない部分がいろいろあった。『ロイカEF』は全体のバランスが優れていて、その全てをかなえてくれた」。

 機能性に加え、「ロイカEF」はデザイン面でもブランドのこだわりに貢献している。「“バーブライト”の一番の強みは、いい意味で見た目が“普通”なこと。通常トレッキングや激しい動きを想定したパンツは、膝部分にダーツや切り替えが入っているものが多い。でも“バーブライト”は、膝の切り替えがなく、ポケットの仕様も含めてシンプルでベーシックなデザインをとことん追求している。『ロイカEF』を使った素材は、そんなデザインの邪魔をすることもないし、機能性の高さも維持してくれた」。千葉自身も同パンツの愛用者で、“バーブライトスリムパンツ”を着用して3泊4日の登山を敢行したところ、「細いシルエットに見えるかもしれないが、はくと全くストレスを感じない。伸縮性が高いので動いても突っ張らず、登山靴やブーツにかぶせても、裾が上がってこなかった」という。

サステナブルな
ストレッチファイバー
「ロイカEF」とは?

 旭化成が開発した「ロイカEF」は、工場内で発生する残糸や未出荷品といった、従来は廃棄していた糸を原料として再利用し、新しい糸に生まれ変わらせたサステナブルなストレッチファイバーだ。環境への配慮はもちろん、優れたストレッチ性とキックバック性も兼ね備え、通常のスパンデックスと同様に扱うことができるため、汎用性も高い。国内外のアウトドアメーカーをはじめ、スポーツブランドや環境意識の高いファッションブランドが取り入れ、アウターからインナーまでさまざまなアイテムに採用されている。

女性の体の構造に合わせて、
不便に感じる部分は改善

 「ザ・ノース・フェイス」がシンプルなデザインと機能性を実現させる「ロイカEF」を選んだのには、市場の変化も関係している。現在、“バーブライトパンツ”と“バーブライトスリムパンツ”の購入目的は、アクティビティーとタウンユースでほぼ半々に分かれるという。「コロナ禍でワンマイルウエアと呼ばれるイージーパンツが売れているが、キャンプ人気の後押しでアクティブウエアの売り上げもここ1年半でぐっと伸びている。最近では、キャンプから始まり、ちょっと歩いてみよう、走ってみようと運動を始める人も増えている。そのため当社もアクティビティーと日常生活の境界線を越えて行き来できることを念頭に置き、日帰り登山での本格的な登山ウエアには足踏みしてしまうような方でも手に取りやすいデザインを増やしているところだ」。

 また女性層の増加も顕著で、「コロナ禍で女性客の売り上げも増加している。“バーブライトスリムパンツ”のような、汎用性が高い商品からまずは購入した方が多い印象だ。コロナ禍で初めて『ザ・ノース・フェイス』の製品を買ったという方も増えている。こうした中、企画メンバーの半数は女性なので、女性の体の構造に合わせて自分たちが不便に感じる部分はどんどん改善している。例えば、“バーブライトスリムパンツ”の前ポケットは、ファスナーを下から上に開ける仕様にしている。これは女性の腰骨が出ているため、バックのヒップハーネスを締めたときにファスナーが重なりやすく、長期縦走などをした際にあざになりやすいため、できるだけ重なりが少なくなるように改善した」。

 「ロイカEF」を用いた新商品の可能性については、「『ロイカEF』 を使用した生地の薄さと高い伸縮性は、登山やその他のアウトドアアクティビティー用のウエアにマッチする。全面に使うだけでなく、テクニカルなウエアの袖口や、ディテールなど、アイテムの機能性を向上させるためにポイント使いする可能性も考えられそうだ」と期待した。

問い合わせ先
パフォーマンスプロダクツ事業本部 ロイカ事業部 ロイカ営業部 テキスタイル担当
06-7636-3558

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500人以上が来場する出展無料のアート&音楽イベント「TOKYO LOVEHOTELS」 「日本の真面目すぎるアートイベントを変えたい」

 アーティストとして東京で活動するカリン ロー(Kalinlaw 以下、カリン)とロビン・ラステンベリエル(Robin Rastenberger 以下、ロビン)が立ち上げたアートイベント「TOKYO LOVEHOTELS(トーキョーラブホテルズ)」は、“アーティストのための自由な場所”を目指して2019年にスタートした。東京・原宿の「サンキーズペントハウス(SANKEYS PENTHOUSE)」をメイン会場に毎月開催し、出展者は作品の展示・販売などを無料で実施できる。他にないシステムが話題となり、新型コロナウイルスのパンデミック以前は20人前後の出展 ・出演者が集まり、入場料1500円ながら500人以上が来場していた。

 同イベントで扱うのは写真や絵画に加え、アパレルやジュエリーといった物販、ヘアメイクやネイル、クラフト教室などの体験型コンテンツまでさまざま。国内外からアップカミングなアーティストが集まり、これまでには「WWDJAPAN」のU30の若者たちにフォーカスした連載「ユース イン フォーカス(Youth in focus)」で追ったサウジアラビア出身の若者3人が立ち上げたストリートブランド「ウナストーキョー(UNAS TOKYO)」も参加している。

 オーガナイザーのカリンとロビンは、どんな思いでこのイベントを立ち上げたのか。コロナを経て、どんな未来を描くのか。2人に話を聞いた。

WWD:自己紹介をお願いします。

カリン:イギリスと日本のハーフで、東京には10年以上住んでいます。イベントオーガナイザー以外ではアーティストとDJをしています。アーティスト活動はTシャツにエアブラシでペイントをするアパレル作品がメインでしたが、今はキャンバスにもペイントしています。

ロビン:僕はスウェーデン出身で、「どこか遠くの世界に行きたい」と高校卒業後に日本へやって来ました。もう12年間住んでいます。普段はシンガーソングライターとモデルをしています。カリンとは元々「アメリカン アパレル(AMERICAN APPAREL)」で一緒にアルバイトをしていて、その後しばらく会っていなかったのですが、4年前にお茶をしたら、バイトの時以上に意気投合しました。

WWD:「TOKYO LOVEHOTELS」を始めた経緯は?

カリン:最初は自分が作ったアパレルを展示・販売する場所として始めました。ポップアップをずっとやりたかったのですが、主催者に出展料を払うのが難しくて、なかなか実現できなかったんです。その悩みをロビンに話すと、「売れるかわからない駆け出しのアーティストにとって、ポップアップの出展料を先払いするのは厳しいよね」と同じ悩みを持っていました。

ロビン:例えばライブハウスでは、出演にかかるお金は自分で負担し、お客さんがある程度集まったらようやく数10パーセントのキックバック(売上割戻)がもらえるようなシステムも少なくありません。日本にはまだまだアーティストが自由に表現する場所が足りてないんです。

カリン:そんな中、道玄坂に小さなイベントスペースを持っている知り合いから「そこでイベントをしないか」とチャンスをもらったんです。自分が作品のポップアップをして、ロビンが音楽のパフォーマンスをしたらどうかと考えて、話を持ちかけました。それから私たち以外にも興味を持ってくれた友人らが出演、出展するようになり徐々に大きくなっていきました。

ロビン:出展料なしのこだわりは、今でも続けているイベントの原点。“主催者”と“出展者”という上下関係はなく、僕たちはアーティストに場所を提供するだけです。自分たちの売り上げはチケット代からパフォーマーへの出演料を引いた分だけ。アーティストの売り上げには一切さわりません。アートに使うお金も残しておいてほしいっていう気持ちがあるから、チケット代も全然上げていない。本当にアートのためにやっています。

WWD:ユニークなイベント名の由来は?

カリン:初回の会場が道玄坂の“ラブホ街”だったのが由来の一つです。あとは、海外では日本のラブホテル文化がユニークなものとして知られていて、キャッチーだと思い採用しました。

ロビン:音楽やアートを通して、人々が“一夜の愛をシェア”するというイベントのテーマにもぴったりだよね。たまに本当のラブホテルと勘違いする人もいて、インスタグラムのDMで「一泊いくらですか?」って値段を聞かれたこともあります(笑)。

WWD:イベントのマスコットキャラがいると聞いたが?

カリン:よく知っていますね!プロスティ(Prostie)というマスコットがいます。ホテル暮らしをする、独立した現代の女性像を表現したキャラクターです。

ロビン:テーマも毎回異なるし、出展者のジャンルも多様なイベントだからこそ、特定の世界観を出したくて制作したキャラクターです。僕はゲーム作りが趣味なので、彼女をテーマにしたゲームも制作してウエブサイトで公開しています。最近、NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)としてプロスティのデジタルアートの販売も始めました。

多種多様なアートを求め、数百人が集まる空間に

WWD:今では数百人が集まるイベントになったが、どのように認知度を上げた?

カリン:最初は40人くらいの小さなイベントでしたが、徐々に口コミで広がり、色々な人から出演・出展したいと連絡が来るようになりました。反響を受けて、3回目から原宿の「サンキーズペントハウス」に会場を移して規模を大きくしました。ちゃんと人が集まるか不安だったけれど、100人以上集まり、オーナーからも「やるじゃん!」と言われロビンとすごく感動したのをよく覚えています。

ロビン:パンデミック直前には毎月の開催で500人以上が集まるほど大きくなっていました。出演者・出展者も常時20人ほどのラインアップで、クラブや飲食店、ギャラリーが融合したような面白い空間になって行きました。

WWD:どのような出展者が多い?

カリン:ジャンルは多種多様で、アパレル・ジュエリーなどの物販からヘアカット、メイクやネイルなどの体験型コンテンツ、フードやクラフト教室、写真や絵画などの展示・販売など本当に自由です。例えばジュエリーの販売ブースではその場で金属を削って制作するアーティストがいたり、タロット占いやヘナタトゥーを提供する人もいたりします。パフォーマンスもさまざまで、ライブ音楽だけでなくヴォーギング(アメリカの有色人種のLGBTQ+コミュニティにルーツを持つダンススタイル)のダンスパフォーマンス、華道や絵のライブパフォーマンスなどもあります。

ロビン:ただ、ジャンルレス過ぎてもイベントの色が伝わらないので、テーマを設けて、それに沿って出展者を決めることもあります。例えば“地球温暖化”をテーマにした回は、サステナビリティに取り組むアーティストやブランドを集めて、売り上げの一部をオーストラリアで起きた森林火災のチャリティに寄付しました。

WWD:来場者はどんな人が多い?

ロビン:年齢制限は設けていませんが、若い世代が中心ですね。クラブ目的でなくても楽しめるので、子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで遊びに来てくれています。

カリン:自分たちの周りから口コミで広がったこともあって、外国人や帰国子女などが多いです。パンデミック前は海外からの観光客にも人気で、「TOKYO LOVEHOTELS」の開催に合わせて旅の日程を調整してくれる人もいました。これからはもっと日本の人にも来てほしいですね。

パンデミックを乗り越え、世界的なアートイベントを目指す

WWD:新型コロナウイルスで風向きが変わった。

ロビン:本当に大きく変わりました。2020年はほとんどが休止期間になってしまいましたが、夏からは少しづつ再開しました。オンラインでやればという声もたくさんいただいたのですが、体験をメインにしているから、オンラインで伝わらないことも多い。そのため、政府と自治体の感染予防ガイドラインに従い、リアルでの開催にこだわりました。もちろん批判もありましたが、発表の場を失っていた多くのアーティストから感謝の声をもらいました。やって良かったと思っています。

カリン:ほかにも、ポッドキャストでの情報発信を始めました。ゲストにアーティストを招いて、活動について語ってもらい、人々に知ってもらえるプラットフォームになればと思っています。

ロビン:全編英語だし、かなりマニアックな話だけど、とっても面白いから興味のある人は是非聞いてみて欲しいな。

WWD:今後の展望は?

カリン:アート・バーゼル(Art Basel)みたいなイベントを目指しています。スイスのバーゼルとアメリカのマイアミ、香港で開催されるアートフェアで、ファッション・ウイークのアート版のような存在。特にマイアミでは、アートをアカデミックに発表する場でもありながら、イケイケなパーティも開催されるので、全世界から若者が集まります。海外と比べて日本のアートイベントは真面目なイメージが強く、若者が心から行きたい、かっこいいと思えるクールな場所にはなっていません。「TOKYO LOVEHOTELS」がアートを身近に楽しめる場になれたらうれしいです。

ロビン:ここに来れば東京のカルチャーとアートシーンが一度に味わえると国内外の人に認知されたい。そして、出展したアーティストや起業家、出演したパフォーマーがさらに活躍する機会を与えられるようなイベントになればと思います。

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Tシャツのグラニフが雑貨&出店を拡大、売上高3倍の300億円に 上場も視野

 グラフィックTシャツのグラニフ(GRANIPH)は、成長戦略をスタートする。商品をアパレルに加え、服飾雑貨や生活雑貨などにも広げ、店舗面積も従来の3倍に拡大し、スクラップ&ビルドで年20〜30店舗を出店する。EC化率も50%に引き上げ、5年後の2026年には売上高を現在の3倍の300億円に引き上げる。村田昭彦社長は「グラニフの最大の強みは、多彩なアーティストやクリエイター、キャラクターなどとのコラボレーションで生まれるグラフィック。一方で商品はノンエージ、ノンセックスの広がりがあり、顧客からの支持も高い。アパレル以外にも、販売する商品カテゴリーを広げることで企業価値を最大化する」と語った。2〜3年内の上場に向け、その準備にも入った。

 9月8日には、東京・原宿の旗艦店店をリニューアルオープンする。60坪強の店舗には、従来の主力アイテムであるTシャツやパーカーなどのアパレルに加え、スニーカーやマグカップ、スマホケース、クッションなど雑貨を加え、450アイテムを販売する。雑貨も商品単価は2000〜3000円が中心になり、アパレルとほぼ同じ。現在商品構成でほぼ100%を占めるアパレル製品の割合を5年後には50%に下げ、服飾雑貨や生活雑貨といった非アパレルの50%上乗せすを目指す同社の象徴的な店舗になる。村田社長は「この1〜2年をかけてサプライチェーンも含めたビジネスモデル全体を変えていく。これまではプリントまでして在庫にして売り減らすやり方だったが、今後は原型となるTシャツのボディをストックし、売れた分だけをプリントして追加していくやり方に変える。短ければ1〜2週間、長くても4〜5週間で追加生産する。Tシャツのボディも一度に大量に発注すればコストダウンにもつながるし、セールもやらなくても良くなる。販売するアイテム全体の7〜8割を追加生産型に切り替え、早ければ来春からはセールも止めたい」という。原宿店で試験的に先行販売したプリントスニーカーは1500足がすぐに完売したが、「プリントできる工場が少なかったが、試行錯誤して量産体制を整え、リニューアルオープン後は、定番アイテムとして販売体制が整った。今後拡充する雑貨でもこうした追加発注型のビジネスモデルで展開する」という。

 同社の直近の店舗数は124店舗(8月1日時点)。店舗は郊外の大型ショッピングモールや都心のファッションビル、路面店などさまざまだが、従来は15〜20坪(50〜70平方メートル)と小型店が中心だった。雑貨アイテムの拡充に伴い、今後は小型店をクローズし、年間20〜30店舗のペースで45〜60坪(150〜200平方メートル)の店舗を積極的に出店する。45〜60坪という店舗サイズは、ファッションブランドの標準サイズと重なる。「デベロッパーからは多くのお声がけをいただいており、今年度でも20店舗の出店はほぼ固まっている。サイズも大きいところだと90坪弱の案件もある」という。

 5年後の売上高300億円に対して、利益はEBITDA(償却前利益)で20%台を目指す。「自社ECサイトは10月にリニューアルオープンする。まずはUI/UX部分を使いやすく変えるが、2〜3年をかけてEC部門を内製化していく。ECのシステムも、店舗在庫をフル活用して店舗から消費者に発注できるような独自のシステムをフルスクラッチで開発し、リアルとECが融合したOMOを追求する」という。

 グラニフは2020年1月に三菱商事などが出資する投資ファンド丸の内キャピタルが買収し、オーナーになっている。村田社長は「社長就任から1年強が経ったが、いまだに顧客ロイヤルティの高さに驚くことが多い。グラニフの場合、例えば顧客同士で着ている商品がかぶっても、ネガティブにならず、『あ、それ好きなんですね』みたいに、逆にコミュニケーションが始まる。そんなブランドは稀有だと思う。この時代に5年で3倍というと野心的にも見えるかもしれないが、潜在的なパワーはそれ以上だ」と語った。

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石田ニコルと考える 電気自動車「日産アリア」とファッションのサステナブルな共通点

 電気自動車(EV)「日産アリア(ARIYA)」は、レジャーやスポーツに適したSUVタイプの新型車。快適なドライブだけでなく、サステナブルなライフスタイルを叶えるクルマだ。現在予約注文を受け付けている日本専用の限定モデル「日産アリア リミテッド(ARIYA limited)」は、大容量のバッテリーはもちろん、高速道路での同一車線内ハンズオフ走行や、駐車スペースからの出し入れの車外操作を可能とする先進的システムを搭載。同時に「ボーズ(BOSE)」の上級サウンドシステムや、枯山水をモチーフにした専用色のフロアカーペットなどを装備している。「バーガンディー/ミッドナイトブラック」など、「日産アリア リミテッド」限定の2色の2トーンボディーカラーも魅力的だ。
 サステナブルなライフスタイルを叶える「日産アリア リミテッド」とファッションには意外な関係性が存在するのではないか?そう考え、ファッションモデルで女優・タレントの石田ニコルと、横浜にある日産 グローバル本社ギャラリーを訪問。世界中の日産車のデザインを統括する田井悟(たい・さとる)エグゼクティブ・デザイン・ダイレクターと、「日産アリア」とファッションの共通点を考えた。

「粋」な外観と「間」な
車内で二面性を表現

 日産 グローバル本社ギャラリーで展示中の「日産アリア リミテッド」は、「シェルブロンド/ミッドナイトブラック」というリミテッド専用のツートンカラーが印象的だ。環境負荷が少ないためか勝手に思い描いていた、電気自動車の“優等生”的な印象は、軽やかに裏切られる。田井ダイレクターは、エンジンがないからこそ最初からフルパワーで走る電気自動車の「静かだけれど、ダイナミックに動く姿を形で表現したかった」と話す。サステナブルな車だからこそ、“車好き”以外のドライバーにも届けたいと願い、「車好きが好むパワフル」だけじゃない表現を意識した。
 「抑揚をつけるのではなく、なるべくシンプルに」。そう考え、日本の伝統にインスピレーションを得た。ホイールは折り紙、フロントのシールドには組子、ランプには行灯、そして、室内のカーペットには枯山水。日本の車メーカーとしての歴史とプライドを、最先端の電気自動車に注ぎ込んだ。石田ニコルは粋な電気自動車を「日本の伝統美が加わりスタイリッシュ。和洋が折衷しているからこそ、オシャレに感じます」と話す。
 室内は、電気自動車だからこそ、これまでエンジンが侵食していた足元の空間が格段に広くなった。外観が「粋」なら車内は「間」が特徴で、後部座席に座った石田も「前方の広さと“抜けている”カンジがスゴい!」と驚いた。

日本の伝統美は
「みんな好き」

WWDJAPAN(以下、WWD):そもそも、車やドライブは好き?
石田ニコル(以下、石田):車の中の空間、が好きなんです。友人とのドライブはもちろん、一人でSUVを走らせるのも好きですよ(笑)。プレイリストを作って、BGMを楽しみながらドライブしています。今は自分で運転する機会があまりないので、レンタカーやカーシェアリングのお世話になっています。
田井悟エグゼクティブ・デザイン・ダイレクター(以下、田井):今後車を買うなら、多分電気自動車になりますね(笑)。ご覧になった「アリア」はいかがでしたか?
石田:運転したことがなかったせいか、電気自動車をまだ身近に思えていなかったんです。大好きなゲームにはスタイリッシュで未来的な車が登場するのですが、「将来、こんな車が増えるのかな?」と思っていたくらいで。でも「アリア」は、日本の伝統美も表現しているせいか、親近感がわきますね。想像していたスタイリッシュさと、予期しなかった繊細な日本らしさ、いろんなものがミックスされてオシャレになってきたのは、ファッションと同じですね。
田井:仕事柄、コロナ前は世界中のモーターショーを訪ねていました。ファッションメディアやバイヤーの皆さんと一緒です。そこである時から、どの国でも、日本の要素が入り始めたのに気づいたんです。食べ物もそうでしょう?日本食の“格”は増すばかり。刺身がニューヨークのアメリカンレストランで出てきても驚かなくなりました。「繊細」や「健康的」などのイメージが浸透したのでしょう。今は「伸るか反るか」のギャンブルではなく、「みんな好きですよね?」という感覚で、日本的な要素が取り入れられています。
石田:ゲームの世界も同じです。海外の方にとって、アニメとゲームに溢れている日本はたまらない場所なんです。
田井:ゲームの世界は、めちゃくちゃ刺激になっているんですよ。世界中から何万人が集まって、着替えて、好きな武器を持って、同時に戦う。プラットフォームとしてモノ凄くて、「未来は、ここにあるに違いない」って思っています。

車でも「時代はサステナブル。
若い世代は地球のために選択」

石田:ゲームは没入できる世界観が大事ですが、「アリア」も周りの空気やライフスタイルを大事にしている印象です。
田井:車業界には「俺を見ろ!」という意気込みで、オブジェとしての車を作ってしまう感覚がありました。でも、僕は「アリア」は「景色」にしたかった。存在感はあるんだけれど、「俺が、俺が」じゃないカンジ。日本の伝統美は、そんなアプローチにもピッタリだったんです。
WWD:丁寧に作ったシンプルな洋服こそ、着る人の個性を引き出し、結果、長く愛されると考えるファッション業界に通じます。
田井:今までは異なる業界と分け隔てていましたが、これからは一緒。ファッションやゲームの世界で起こることは、車業界でも起こっているんです。
WWD:「アリア」はファッション業界同様、サステナブルにも真摯に向き合い生み出されている。
石田:私はサンゴ礁を守るための日焼け止めのほか、エコバッグなどサステナブルなアイテムをプロデュースしていますが、環境問題などをもっと深く学びたいと思い今年、ドイツのミュンヘンで開かれた次世代リーダーのためのグローバル・フォーラム「ワン ヤング ワールド サミット 2021(One Young World Summit 2021)」に参加したんです。改めてヨーロッパではサステナブルな生活が浸透していて、マイボトルから再生糸を使ったファッションまで、環境負荷が少ない選択肢の幅広さを感じました。私自身、買う物は、迷ったらサステナブルな方を選びたい。今は多くのファッションブランドが関心を抱き始め、オシャレに表現してくれるので嬉しいです。
田井:私たち日産も、社会に貢献するサステナブルというムーブメントを応援すべく、電気自動車という選択肢を用意したいと思っています。同時に「地球に良い」だけでなく、クルマとして、デザインとして楽しめるモノに仕上がるようこだわりました。これもファッションも同じだと思いますが、車業界にもいろんな考えがあります。その全てを叶える車の開発は、本当に難しいです。でも、時代がサステナブルなのは間違いありません。電気自動車についても、若い世代は「電気はガソリンより安い」や「燃費が良い」ではなく、地球のために選んでいる気がします。

「車は、いろんな世界の美しさの
間に存在する架け橋」

WWD:ファッション業界では、多くを捨てないように、タイムレスな洋服を生み出そうという流れがある。車業界は?
田井:バブルを経た世代には、モノは買って、捨てるのが当たり前という感覚がありました。そんな消費者に向き合ってきた業界として、「飽きられることを前提にモノを作ってきた」感覚は存在したのかもしれません。でも今は洋服同様、車を取り巻く環境も変わっています。電気自動車は間違いなく増えますが、同様にカーシェアも普及するでしょう。最近は、「シェアする時代にふさわしい性能って、なんだろう?」って考えますよ。衛生や更なる安全など、求められる性能も変わるでしょう。
WWD:レンタルやサブスクリプション、カスタマイズが広がり始めたのは、ファッション業界も同じです。
田井:直近では、カスタマイズの流れは間違いなく来るでしょうね。
石田:ゲームの世界も、カスタマイズです。スキン(ゲーム業界では「見た目の変更」の意味。「着せ替え」と同義)にお金をかけています。スゴい銃とかが出てくると、みんなが「うわぁ~」ってなるんです(笑)。お金をかけたスキンでゲームを楽しんでいますが、私には自然の中で楽しむダイビングも大事です。ゲームとは違う、「今」を見ているカンジ。このメリハリが良いんです。だからこそ、サンゴ礁を守る活動を続けながら、サステナブルな生活も心掛けたいです。私にとっての車やドライブは、2つの世界の美しさの間に存在する架け橋みたいな存在です。これからも楽しみたいと思います。
田井:ぜひ、「アリア」で出掛けてください。自画自賛ですが、静かなのにパワフルな、本当に新しいSUVなんです。知らないうちにいろいろサポートしてくれるから、運転が上手くなった気分になって、ますますドライブが楽しくなりますよ(笑)。

HAIR&MAKE:ICHIKI KITA
PHOTO:TSUKASA NAKAGAWA
STYLING:NATSUKO DEGUCHI
石田ニコルの衣装は、
ブラウス&パンツ:共に「デザイナーズ リミックス」税込2万9700円(コロネット03-5216-6518)
イヤリング:「リプサリス」同9680円(ロードス03-6416-1995)
ブーツ:「ダイアナ」同2万6950円(ダイアナ 銀座本店03-3573-4005)
問い合わせ先
日産自動車 お客さま相談室
(9:00-17:00)
0120-315-232

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石田ニコルと考える 電気自動車「日産アリア」とファッションのサステナブルな共通点

 電気自動車(EV)「日産アリア(ARIYA)」は、レジャーやスポーツに適したSUVタイプの新型車。快適なドライブだけでなく、サステナブルなライフスタイルを叶えるクルマだ。現在予約注文を受け付けている日本専用の限定モデル「日産アリア リミテッド(ARIYA limited)」は、大容量のバッテリーはもちろん、高速道路での同一車線内ハンズオフ走行や、駐車スペースからの出し入れの車外操作を可能とする先進的システムを搭載。同時に「ボーズ(BOSE)」の上級サウンドシステムや、枯山水をモチーフにした専用色のフロアカーペットなどを装備している。「バーガンディー/ミッドナイトブラック」など、「日産アリア リミテッド」限定の2色の2トーンボディーカラーも魅力的だ。
 サステナブルなライフスタイルを叶える「日産アリア リミテッド」とファッションには意外な関係性が存在するのではないか?そう考え、ファッションモデルで女優・タレントの石田ニコルと、横浜にある日産 グローバル本社ギャラリーを訪問。世界中の日産車のデザインを統括する田井悟(たい・さとる)エグゼクティブ・デザイン・ダイレクターと、「日産アリア」とファッションの共通点を考えた。

「粋」な外観と「間」な
車内で二面性を表現

 日産 グローバル本社ギャラリーで展示中の「日産アリア リミテッド」は、「シェルブロンド/ミッドナイトブラック」というリミテッド専用のツートンカラーが印象的だ。環境負荷が少ないためか勝手に思い描いていた、電気自動車の“優等生”的な印象は、軽やかに裏切られる。田井ダイレクターは、エンジンがないからこそ最初からフルパワーで走る電気自動車の「静かだけれど、ダイナミックに動く姿を形で表現したかった」と話す。サステナブルな車だからこそ、“車好き”以外のドライバーにも届けたいと願い、「車好きが好むパワフル」だけじゃない表現を意識した。
 「抑揚をつけるのではなく、なるべくシンプルに」。そう考え、日本の伝統にインスピレーションを得た。ホイールは折り紙、フロントのシールドには組子、ランプには行灯、そして、室内のカーペットには枯山水。日本の車メーカーとしての歴史とプライドを、最先端の電気自動車に注ぎ込んだ。石田ニコルは粋な電気自動車を「日本の伝統美が加わりスタイリッシュ。和洋が折衷しているからこそ、オシャレに感じます」と話す。
 室内は、電気自動車だからこそ、これまでエンジンが侵食していた足元の空間が格段に広くなった。外観が「粋」なら車内は「間」が特徴で、後部座席に座った石田も「前方の広さと“抜けている”カンジがスゴい!」と驚いた。

日本の伝統美は
「みんな好き」

WWDJAPAN(以下、WWD):そもそも、車やドライブは好き?
石田ニコル(以下、石田):車の中の空間、が好きなんです。友人とのドライブはもちろん、一人でSUVを走らせるのも好きですよ(笑)。プレイリストを作って、BGMを楽しみながらドライブしています。今は自分で運転する機会があまりないので、レンタカーやカーシェアリングのお世話になっています。
田井悟エグゼクティブ・デザイン・ダイレクター(以下、田井):今後車を買うなら、多分電気自動車になりますね(笑)。ご覧になった「アリア」はいかがでしたか?
石田:運転したことがなかったせいか、電気自動車をまだ身近に思えていなかったんです。大好きなゲームにはスタイリッシュで未来的な車が登場するのですが、「将来、こんな車が増えるのかな?」と思っていたくらいで。でも「アリア」は、日本の伝統美も表現しているせいか、親近感がわきますね。想像していたスタイリッシュさと、予期しなかった繊細な日本らしさ、いろんなものがミックスされてオシャレになってきたのは、ファッションと同じですね。
田井:仕事柄、コロナ前は世界中のモーターショーを訪ねていました。ファッションメディアやバイヤーの皆さんと一緒です。そこである時から、どの国でも、日本の要素が入り始めたのに気づいたんです。食べ物もそうでしょう?日本食の“格”は増すばかり。刺身がニューヨークのアメリカンレストランで出てきても驚かなくなりました。「繊細」や「健康的」などのイメージが浸透したのでしょう。今は「伸るか反るか」のギャンブルではなく、「みんな好きですよね?」という感覚で、日本的な要素が取り入れられています。
石田:ゲームの世界も同じです。海外の方にとって、アニメとゲームに溢れている日本はたまらない場所なんです。
田井:ゲームの世界は、めちゃくちゃ刺激になっているんですよ。世界中から何万人が集まって、着替えて、好きな武器を持って、同時に戦う。プラットフォームとしてモノ凄くて、「未来は、ここにあるに違いない」って思っています。

車でも「時代はサステナブル。
若い世代は地球のために選択」

石田:ゲームは没入できる世界観が大事ですが、「アリア」も周りの空気やライフスタイルを大事にしている印象です。
田井:車業界には「俺を見ろ!」という意気込みで、オブジェとしての車を作ってしまう感覚がありました。でも、僕は「アリア」は「景色」にしたかった。存在感はあるんだけれど、「俺が、俺が」じゃないカンジ。日本の伝統美は、そんなアプローチにもピッタリだったんです。
WWD:丁寧に作ったシンプルな洋服こそ、着る人の個性を引き出し、結果、長く愛されると考えるファッション業界に通じます。
田井:今までは異なる業界と分け隔てていましたが、これからは一緒。ファッションやゲームの世界で起こることは、車業界でも起こっているんです。
WWD:「アリア」はファッション業界同様、サステナブルにも真摯に向き合い生み出されている。
石田:私はサンゴ礁を守るための日焼け止めのほか、エコバッグなどサステナブルなアイテムをプロデュースしていますが、環境問題などをもっと深く学びたいと思い今年、ドイツのミュンヘンで開かれた次世代リーダーのためのグローバル・フォーラム「ワン ヤング ワールド サミット 2021(One Young World Summit 2021)」に参加したんです。改めてヨーロッパではサステナブルな生活が浸透していて、マイボトルから再生糸を使ったファッションまで、環境負荷が少ない選択肢の幅広さを感じました。私自身、買う物は、迷ったらサステナブルな方を選びたい。今は多くのファッションブランドが関心を抱き始め、オシャレに表現してくれるので嬉しいです。
田井:私たち日産も、社会に貢献するサステナブルというムーブメントを応援すべく、電気自動車という選択肢を用意したいと思っています。同時に「地球に良い」だけでなく、クルマとして、デザインとして楽しめるモノに仕上がるようこだわりました。これもファッションも同じだと思いますが、車業界にもいろんな考えがあります。その全てを叶える車の開発は、本当に難しいです。でも、時代がサステナブルなのは間違いありません。電気自動車についても、若い世代は「電気はガソリンより安い」や「燃費が良い」ではなく、地球のために選んでいる気がします。

「車は、いろんな世界の美しさの
間に存在する架け橋」

WWD:ファッション業界では、多くを捨てないように、タイムレスな洋服を生み出そうという流れがある。車業界は?
田井:バブルを経た世代には、モノは買って、捨てるのが当たり前という感覚がありました。そんな消費者に向き合ってきた業界として、「飽きられることを前提にモノを作ってきた」感覚は存在したのかもしれません。でも今は洋服同様、車を取り巻く環境も変わっています。電気自動車は間違いなく増えますが、同様にカーシェアも普及するでしょう。最近は、「シェアする時代にふさわしい性能って、なんだろう?」って考えますよ。衛生や更なる安全など、求められる性能も変わるでしょう。
WWD:レンタルやサブスクリプション、カスタマイズが広がり始めたのは、ファッション業界も同じです。
田井:直近では、カスタマイズの流れは間違いなく来るでしょうね。
石田:ゲームの世界も、カスタマイズです。スキン(ゲーム業界では「見た目の変更」の意味。「着せ替え」と同義)にお金をかけています。スゴい銃とかが出てくると、みんなが「うわぁ~」ってなるんです(笑)。お金をかけたスキンでゲームを楽しんでいますが、私には自然の中で楽しむダイビングも大事です。ゲームとは違う、「今」を見ているカンジ。このメリハリが良いんです。だからこそ、サンゴ礁を守る活動を続けながら、サステナブルな生活も心掛けたいです。私にとっての車やドライブは、2つの世界の美しさの間に存在する架け橋みたいな存在です。これからも楽しみたいと思います。
田井:ぜひ、「アリア」で出掛けてください。自画自賛ですが、静かなのにパワフルな、本当に新しいSUVなんです。知らないうちにいろいろサポートしてくれるから、運転が上手くなった気分になって、ますますドライブが楽しくなりますよ(笑)。

HAIR&MAKE:ICHIKI KITA
PHOTO:TSUKASA NAKAGAWA
STYLING:NATSUKO DEGUCHI
石田ニコルの衣装は、
ブラウス&パンツ:共に「デザイナーズ リミックス」税込2万9700円(コロネット03-5216-6518)
イヤリング:「リプサリス」同9680円(ロードス03-6416-1995)
ブーツ:「ダイアナ」同2万6950円(ダイアナ 銀座本店03-3573-4005)
問い合わせ先
日産自動車 お客さま相談室
(9:00-17:00)
0120-315-232

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オリラジ中田敦彦に聞く 原価率65%のサステナブル・アパレルブランド「カール・フォン・リンネ」の本気度

 オリエンタルラジオの中田敦彦は8月8日、アパレルブランド「カール・フォン・リンネ (CARL VON LINNE)」を自身のユーチューブ「中田敦彦のYouTube大学」で発表した。動画内ではアパレルの廃棄問題や低賃金問題を解説。植物学者の名を冠した同ブランドについては村松啓市をデザイナーに迎え「未来のために、知性の上に着る」をコンセプトに設計し、作り手の顔が見える国内生産とサステナブルな素材使いが特徴であると語った。シャツ、Tシャツ、パーカー、ニットセーター、コートの5型の原価率は驚きの65%。予約販売は一晩で完売したときく。なぜ中田氏がサステナブル・アパレルなのか?その真意を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD ):「カール・フォン・リンネ」を立ち上げた経緯を教えて下さい。

中田敦彦「カール・フォン・リンネ」オーナー(以下、中田):実は当初はサステナブルなアパレルは想定していませんでした。以前「幸福洗脳」というブランドを販売しており、その経験を踏まえて今度は“ちゃんとした服を作りたい”と考えたのが先です。

WWD:「幸福洗脳」は “「シュプリーム」はなぜ売れるの?”と疑問を抱いた中田さんがその解を探して2018年に立ち上げたブランドですね。「幸福洗脳」のボックスロゴTシャツなど、攻めたデザインでした。それに対する“ちゃんとした服”とは?

中田:多くの人が着やすいデザイン、買いやすい価格の服、といった意味です。当初は価格とデザインのことしか考えていませんでした。その「カール・フォン・リンネ」にサステナブルの魂を入れたのはデザイナーの村松さんです。「幸福洗脳」で村松さんに作っていただいたニットのクオリティーの高さを覚えていたので、今回も依頼したところ「中田さんにはアパレル業界のサステナビリティの問題に挑戦してほしい」と逆提案を受けた。今年の5月の話です。

WWD:村松さんはなぜそのような提案を?

村松啓市「カール・フォン・リンネ」デザイナー(以下、村松):何かを作って世の中や購入者に届けるとき、今はやはりサステナビリティが非常に大切です。僕も長らくサステナブル・アパレルの活動を続けてきたけれど、多くのジレンマがあり、なかなかうまくいかない。中田さんとなら新しいことに挑戦できると思いました。

WWD:挑戦とは?

村松:アパレルの構造、システム自体への挑戦です。購入者が商品だけではなく、手に届くまでの構造自体を一緒に作り上げることを楽しむブランドです。オファーをもらってから1カ月考えて中田さんにぶつけました。

WWD:中田さんはどう受け止めた?

中田:主催する「ユーチューブ大学」を通じてこれまで気候変動問題や電気自動車、工業的な畜産業との関係などサステナビリティについてはいろいろ勉強してきました。欧米ではサステナビリティに取り組まない企業は淘汰されている。自動車産業で言えばガソリン車の法規制など外圧も多い。これからは従来の資本主義の原理だけではなく、サステナビリティ抜きには企業は投資を得られない。要するにサステナブルではない企業はどれだけいいものを作ってもゲームから退場せざるを得ない未来が見えている。だからサステナブル×アパレルビジネスの挑戦はおもしろそうだな、と単純に思いました。

WWD:おもしろい、の意味をかみ砕くと?

中田:この流れは数年遅れで必ず日本にもくる。だから挑戦してみたいと思ったんです。僕の肌感では今の日本にはサステナブル×アパレルの気配がまだありません。もちろん頑張っている方はいると思いますが僕に届いていないのだから、一般にはほとんど知られていないはず。アパレルに限らず日本の9割の人はSDGsや気候変動にピンときておらず、「一部のインテリが言っているだけ」と受け止めていると思う。僕はファッション感度は高くないけど発信力はあるから。村松さんのアイデアを翻訳し伝えられると思ったんです。

WWD:中田さんは「実験」という言葉をよく使いますが、サステナビリティの取り組みも「地球のため」というより、一つの「実験」でしょうか。

中田:志が高いのは村松さんであり、僕は発信力を生かしてサステナブルというカルチャーそのものを輸入するゲームや実験ができると考えました。ゲーム感覚というと、「サイコパス野郎が、遊び感覚でやっている」印象を与えるかもしれませんが、僕は気候変動に関しても、わが事としてとらえているんですよ。数年前では考えられなかった規模の水害などから気候変動の影響を肌感で受け止め「このままでは地球はマズイ、自分も何かやりたい」とは思う。かといって元グーグルCEOのラリー・ペイジ(Larry Page)やフェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)みたいに世界を動かせるかといえば、そこまでは勘違いしない。

中田が世界を変える、のではなく、中田は世界を変えるパーツのひとつ、です。音楽で言えば「ヒップホップってこういうものだよ」と日本に持ち込んだ人と、その後に出てきたラッパーは役割が違いますよね。わかりやすく“DA.YO.NE”から始まり、「今夜はブギー・バック」に進み、「メロディーと組み合わせると気持ちいいんだぜ」とわかってドラゴンアッシュ(Dragon Ash)の「グレイトフル・デイズ(Grateful Days)」となる。そこでジブラ(Zeebra)の「俺は東京生まれのヒップホップ育ち」を聴いて初めて、「ヒップホップはストリートのカルチャーなんだ」とわかりました。

コーヒーもしかりで文化は3段階ぐらいかけてじっくり伝わる。だとするとサステナブル1.0の今は「サステナブルって何だよ」「意味分かんねえ」って言われながらも誰かがまず発信することで「面白いじゃん」と少しでも伝わればいいかなと。僕は、ヒップホップで言うところの “DA.YO.NE”の立場。大騒ぎして知ってもらう役割はできる。門外漢の僕がアパレル業界に何か貢献を1ミリでもできたら、それは面白いゲームです。

服は新商品を出すこととサステナブルが相反関係にありますよね。そこもパーフェクトではなくベターを目指すべきでは?だって、原始時代に戻るわけにはいかない。人間は新しい服を着たいし、服で自分を表現したい。そういう生き物だし、そういう文化があるから、それを前に進めながらもサステナブルを目指すのが、現実的なサステナビリティだと思う。

WWD:このブランドを通じて成し遂げたいことは「サステナビリティを伝える、知らせる」ですね。

中田:あくまで僕は、ですよ。わあわあ言ったら、こうやって取材に来てくれるわけですからドミノの2つ目は倒れています。村松さんにはまた別の考えがあるでしょう。

アパレル業界から予想以上の好反応

WWD:村松さんへの反響はどうでしたか?

村松:僕は自分のブランドでサステナブルな活動を続けてきましたが、これまではすでにサステナブルにアンテナが立っている人にしか受け止めてもらえてこなかった。今回は中田さんを通じて、知ってもらえるきっかけができた。本当に反響が大きくて驚いています。価格を工夫したこともあり「メード・イン・ジャパンの服を初めて買った」というメッセージももらい嬉しかった。

意外だったのが、アパレル関係者からの好反応です。応援のメールが多く届きました。地球や社会環境に良くないことをしている自覚を持ちつつ動けていない人も多いようで、ユーチューブを見てハッとしたと。特に町工場の方たちとのプロジェクトへの応援メッセージは多かったです。工場からは「これまではいい物を作ってもそれを伝えることができなかった」と喜ばれています。

WWD:中田さんは反響を受けて思ったことは?

中田:僕、音楽業界でも門外漢で大騒ぎしたことが一度ありますが、ファッションと似ています。音楽をすごく好きな人は世の中の1割で、9割の人はスポティファイから流れてくる曲を何となく聴いている。今回はその9割の人に向けて話したつもりです。

だけど僕の想定よりも、服の買い方に対して選択肢のなさを感じていた人が多いとは思いました。極論すると全身「グッチ(GUCCI)」か「ユニクロ(UNIQLO)」かの2極化がすごい。だから6000円のカットソーを「鬼高い」、2万円のコートを「鬼安い」と、反響が乖離しています。「ユニクロ」のTシャツが安過ぎること、「グッチ」のTシャツが高過ぎることにもう一度目を向けて、「あれ、真ん中の選択肢はいつからなくなったんだっけ?」と議論が始まる手応えはありました。

WWD:「原価率65%」とのことですが、アパレルが本業なら65%で事業を成長させるのは難易度が高い。中田さんにとっては問題提起こそが第1目標だから儲け度外視でよい、のでしょうか。

中田:村松さんに丸投げしたら「中田さんが言う通りの、怖くない良質な服、サステナブルな服ができました」と鬼高い原価率の服があがってきた。それを僕のオンラインサロンのメンバーに見せたら全員が「高い」と白目をむいた。その反応を見て「いいものが高いことが今の日本では全く受け入れられないんだな」と実感しました。「ユニクロ」のクオリティーが1500円、2000円で買えることに慣れてしまっているから。

僕は「いい物は高いんだよ、当たり前だろ、誰が泣けばいいんだよ、工場か?生産者か?目を覚ませ」と言いたい。村松さんが笑い、工場の人が笑い、売ろうとしているお客さんを笑顔にするには経営者が笑わないしかないと知ったときに「ブランドをスケールしない」という答えが見えました。企業はより多くの顧客により多くの商品を売って、より多くの売り上げを得ようとする。株式会社であれば株主の利益を追求する。これが資本主義のルールですが、僕は上場していないし、お金はユーチューブで稼いでいる。ならば資本主義のルールを放棄する実験をすることに価値があると思いました。アンチ資本主義ですね。それをこの資本主義の権化みたいな男が手がける遊びです。

WWD:では「カール・フォン・リンネ」の未来は?

中田:売り上げではなく、その活動の知名度を高めたい。それは僕の信頼につながります。そして「この規模なら自分にもできる」と思った人が事業をスタートして第2、第3の「カール・フォン・リンネ」が生まれ、小規模かつコアファンを抱える企業が増えたらおもしろい。1社で「ユニクロ」に勝つ未来はないけど、1万人のファンを抱える1万社が1億の人口をカバーする未来だったらあり得る。

サステナビリティの取り組みとは

WWD:中田さんはデザインにはかかわらず、村松さんがすべて担当している?

村松:はい。「幅広い年齢層、性別や時代を問わず着てもらいやすいデザイン」という中田さんからの発注のもと私がデザインしています。どこでどのように作られている素材か、トレーサビリティに重きを置いて生地を選び、全アイテムのトワルを何度も丁寧に作り、品質とデザイン性の両方とも妥協せずに作っています。低コストで粗悪なもの、高品質だけど高価格のもの、高品質で適正価格だけどオシャレではないもの、低価格だけど作り手が低賃金のものなど「誰かの犠牲の上で誰かが泣く」のでなく、誰もが幸せに服を楽しめる未来へ世界を前進させたい。

WWD:トレーサビリティについて。たとえば工場の電力や水の使い方も把握をしているのでしょうか?

村松:自社の判断基準数値を持つわけではなく、あくまで工場からの申告制です。1着の服が完成するまでには多くの工程があり、多くの企業・物流を通ります。それらをすべてトレースすることは一部の大手商社の素材をのぞいてはほぼ不可能です。僕らメーカーも、工場もその仕組みをもっていない。であれば工場さんには正直に話してもらい、僕らはそれを動画などでそのまま消費者に伝えます。

WWD:取り組んだ工場を教えてください。

村松:敬称略でお伝えするとシャツは遠州織物の古山、染色はイワン、ニットは福島の木幡メリヤスと大阪の深喜毛織、コートは尾州の東伸、オーガニックコットンを使ったTシャツとパーカーはパノコトレーディングがそれぞれ生産しています。

WWD:生産工場名を明かすこと自体、アパレル業界ではまれです。

村松:どこで染めているか、どこで織っているかといった情報は生地の販売会社の手の内を明かすことなのでどこも言いたがりません。今回も「言いたくない」という会社が多かったけど長年信頼関係を築いている会社さんたちに無理言って門を開いてもらいました。

WWD:ここで言うリサイクルウールとは?

村松:廃棄されたウール製品やウールの繊維を作るときに出るくずを集めて再生したものです。デッドストックを使った製品は別にあります。

WWD:オンライン販売ですが、配送時に梱包など商品以外に取り組んでいるサステナビリティはありますか?

村松:梱包材についてはまだ対応していません。ひとつ、これは中田さんにもこの場で初めて話すのですが、僕がこれまで一緒に仕事をしてきた障がい者の方の就労支援活動との取り組みも検討しています。商品と環境に加えて、生産者も持続可能でありたく、正当な対価を支払う仕組みを作りたい。

ユーチューブの可能性はライブコマースにある

WWD:ユーチューブの可能性と課題について教えてください。

中田:可能性はライブコマースです。中国がまさに今、ライブコマースでとんでもないことになっています。大手企業がマスメディアに大金を払ってCM打ち盛り上げる空中戦ではなく、インフルエンサーそれぞれがライブコマースでそれぞれゲリラ戦みたいな形で莫大な売り上げを上げています。日本は浸透しておらず、まさにライブコマース1.0な状況。ユーチューブがもっとシームレスに商品販売まで直結できる進化をしてくれると可能性が広がると思います。

WWD:現在、ユーチューバーが得られる収益とは?

中田:広告収入とメンバーシップによるサブスクリプションに加えて投げ銭機能も強くなってきています。でも、動画上の商品をタップしたら購入ページにリンクするところまではいっておらず、「概要欄へどうぞ」となる。ここがシームレスになると大きい。時間の問題だとは思います。

WWD:ユーチューブ以外のメディア、プラットフォームで物販する可能性は?

中田:僕は、あらゆるプラットフォームで影響力を持つ人間は少ないと考えています。僕らもコンテンツです。コンテンツに最適なプラットフォームがあるとすると、僕は長くしゃべるユーチューブが一番向いていて、渡辺直美ちゃんはインスタグラム、有吉さんはテレビが向いているんだと思う。僕は完全にユーチューブ軍の人間として、“頑張れ、ユーチューブ”です。

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「アトモス」が多店舗EC管理ツール「CROSS MALL」を選んだワケ

 自社ECサイトに加えて、モール出店が増え、複数のネットショップを運営するときに煩雑になりがちな、商品情報の登録や在庫管理などの業務を、一元管理できるのがアイルが提供するクラウドサービス「クロスモール(CROSS MALL)」だ。日本屈指のスニーカーショップである「アトモス(ATMOS)」も、そのユーザーの一つ。巧みなデジタル戦略でEC化率の高さでも知られる「アトモス」は、なぜ「クロスモール」を使うのか。「アトモス」の運営元であるテクストトレーディングカンパニーのWeb/ECビジネス事業部 岡山暢祐部長と、アイルのCROSS事業部 本守崇宏マネージャーにその成功の秘訣を聞いた。

急成長のECの課題を
「クロスモール」導入で解決

WWDジャパン(以下、WWD):現在のECの取り組みの概要は?

岡山暢祐(以下、岡山):ECでの取り扱い商品数は約1万点で、EC化率は5割程度。最近はスニーカー以外にアパレルの取り扱いも始めている。通販サイトはメンズの「アトモス」とウィメンズの「アトモス ピンク」があるので、楽天市場に2店舗、楽天ファッション、ヤフーショッピング、ペイペイモール、マガシーク、ロコンド、ゾゾタウン、それに公式サイトが2つ、それにクロスモールで連携していないアイルミネがある。

WWD:近ごろの売り上げの傾向は?

岡山:主力ブランドの一つがネット通販モールでの扱いができなくなり、通販モールの売り上げは落ち込んだものの、自社ECが伸びているのでトータルではプラス。EC全体の売上の6,7割は自社ECでの販売で、そのうちの3〜4割がアプリ経由になる。

WWD:「クロスモール」の導入はいつから?

岡山:2010年から。当時は自社ECに加え、楽天やヤフーに出店したら、急に在庫管理が大変で慌てて管理ツールを探した。当時は取扱高も商品数も20分の1くらいの規模だったが、手作業では到底無理。売り残しや売り越しによる機会損失は、当時でも見過ごせない規模になる。その後、リアル店舗の出店数も加速しており、もしクロスモールを導入していなかったら、在庫管理がぐちゃぐちゃでできていなかったはず。

プロも唸る、夜間にリアル店舗の
在庫をECにも活用する方法

本守崇宏(以下、本守):テクストトレーディングさんは「クロスモール」を導入していただき11年になりますが、実はその間、一度フルフィルメント(運営代行)への変更を検討されたこともありましたよね?

岡山:はい。ただ、その際に大きな問題になったのが、在庫が最後の一点になったときに1店舗にしか在庫表示ができなくなること。それだけで機会損失が数千万円単位になることがわかり、取りやめになった。

WWD:今は、実店舗の在庫も管理できるアイルの販売管理システム「アラジンオフィス」も利用しているとか?

岡山:スニーカーの場合、在庫の管理がやや複雑で、製品の体積が大きいこともあって在庫すべてを必ずしも自社倉庫に置いておらず、一部引き取り前のメーカー倉庫にあるものも「確保」という形で在庫として扱う。そこに、さらにリアル店舗用、自社EC用、通販モール用の倉庫も加わって、在庫の場所が多岐にわたり、かなり複雑になる。そのためリアル店舗やメーカー在庫も含めた在庫の一元管理のため、2016年から「アラジンオフィス」を導入した。「アラジンオフィス」を使って、今はリアル店舗の閉店後の夜の時間に、店舗の在庫を全部ネット通販に見かけ上移動して、翌日の朝に店舗が開く前に、また店舗在庫へ戻すということをしている。社内では「夜間反映」と呼んでいるが、これで月に数千万円単位で売り上げが変わる。

「アトモス」がECで高成長を
達成できた理由とは?

WWD:ネット通販の担当者として、テクストトレーディングのECがうまくいっている理由をどう考えるか。

岡山:一番大きな理由は、圧倒的に商品力。ただ、数を多く売るにも仕組みが必要で、システムや倉庫など商品量に応じて作っていかないといけない。また、ちょっとした工夫でも売り上げは変わってくるので、そういった部分をきちんとできていることも大きい。あとはスピード感。スピード感はECにかかわらず当社が一番大切にしていることだが、ECでもどこよりも早く商品をサイトに出すことを心掛けている。他店でも同じ商品を取り扱っていることも多いわけで、早く出すほうがやっぱり売れる。商品情報の準備から画像撮影や加工、原稿など、1分1秒でも早く販売できるよう、作業に取り掛かっている。

WWD:アイルから見て、テクストトレーディングのEC運営で上手だと感じるところは?

本守:スピード感です。岡山さんがおっしゃるポイントもそうだし、新しいことを取り入れたり、逆にうまくいかないことを辞めたりする決断も速い。テクストトレーディングさんの要望に対応したことが、結果的に他の「クロスモール」ユーザーのニーズを先取りするということが本当に多い。

WWD:逆にテクストトレーディングから見たアイルの強みは?

岡山:先ほど本守さんがご指摘された通り、当社は上手くいかないときには、サービスやツールの使用をすぐに止めてしまうし、コストパフォーマンスへの要求もかなり厳しい。なので、おそらくEC関連では「クロスモール」のように10年以上も使い続けているサービスは他にない。それだけコストパフォーマンスの面でも使い勝手の面でもプロダクトの完成度が高いということかと。

本守:「クロスモール」は個別対応での開発をやっておらず、利用いただいているユーザーは全機能が使えるし、開発費は自社で吸収している。なのでテクストトレーディングさんのようにある種、ニーズや時代を先取りしている企業の要望に応えることが、結果的にプロダクトの完成度を高めることにも、コストパフォーマンスを上げることにも繋がっているのかもしれません。

複数のECモールの在庫を
一元管理できる
「クロスモール」の仕組み

 「クロスモール」は、東証一部上場企業のアイルが2009年にスタートした、複数のネットショップの在庫・受発注の管理ソフト。自社ECサイトから有力ECモールに出店する店舗まで、複数のECショップの在庫・受発注を一元管理できる。「楽天市場」「ゾゾタウン」「ロコンド」「マガシーク」など、ファッション企業でもネット通販モールへの多店舗出店が当たり前になっており、手動での在庫管理はほぼ不可能といっていい。商品データの一括入力や在庫の一元管理など、EC運営に不可欠な機能をすべて備え、商品管理の手間を大幅に軽減する。サービスから開始12年で1600社以上が導入しており、コストパフォーマンスもよく、一元管理ツールのデファクトスタンダードなサービスになっている。

PHOTO:YOHEI KICHIRAKU

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教えて!パタゴニアさん 連載第10回 ビジネスモデルを抜本的に変えて危機に強い企業へ 日本支社長が語る 【後編】

 アパレル製品の持続可能性についての議論が活発化している。サステナブルな製品、サステナブルな〇〇といったあいまいなキャッチコピーがあふれる中で、アパレル企業には何をもってサステナブルなのかを説明する責任が問われ始めている。製品はもちろん、そもそもアパレル企業が存続していくにはどうしたらいいのだろうかーー「アパレル企業はサステナブルではない」と言い切りながら、ジャパン社を運営し、同社のミッションステートメント“私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む”に取り組むマーティ・ポンフレー(Marty Pomphrey)日本支社長に、パタゴニアがこれから進む道を聞いた。

WWD:多くの外資系企業は、本国の方針をなぞる形で日本でのビジネスを展開している。パタゴニアが推進する“製品の循環性”の実現は、国によって制度が異なるため、独自の施策も必要な気がする。日本独自の施策を行う予定はあるのか。

マーティ・ポンフレー日本支社長(以下、ポンフレー):当社もある程度世界全体で一括集中されてはいるが、日本独自のビジネスモデルを作り上げたいと考えている。もちろん考え方などベストプラクティスは本社の方法を踏襲するが、われわれは日本で33年間ビジネスをしてきた実績があり、フォローしてくれているカスタマーもいる。日本のカスタマーは品質に対して要求が高い。米国とは異なる日本独自の方法を作り、楽しく行っていきたい。熱心なスタッフも多いので、日本市場に合った、日本モデルを作っていきたい。

WWD:そのために行っていることがあれば教えてほしい。

ポンフレー:実は日本は大きな移行期間の真っ最中にある。プロセスや構造を変えるために、そして効率化を図るためにシステムに投資しようと考えている。理由は、この12~18カ月の間、私たちは危機に強い会社になろうと取り組んできたことがある。危機というのは新型コロナウイルスもその一つだし、環境危機もそうだ。このような危機的状況は今後発生していくし、ビジネスを抜本的に変え、危機に対応できる企業になっていきたいと考えている。

WWD:もう少し具体的に教えてほしい。

ポンフレー:例えば社員は、個々のスキルをさらに広げていろいろな仕事ができるようにしたいと考えている。社員一人が複数のスキルを持つことで、いろんな状況に対応できるようになる。店舗は関東に集中しているが、関東に大地震が来ると店舗も社員も大打撃を受けてしまう。もっと地域的にバランスが取れたものにすることもその一つだ。今こうしたディスカッションを重ねている。

 システムや人材に投資をすることで効率を高めることで時間的余裕が生まれる。そうすると仕事のほかにアクティビズムに時間を費やすことができる。

WWD:複数のスキルを身に付ける環境作りには、コストもかかる。そこまで社員に投資できるのは離職率が低いパタゴニアならではのような気もする。

ポンフレー:離職率は非常に低い。会社と社員、お互い何を期待しているかを明確にしているからだし、われわれはお互いに投資をしている。社員に対する投資は私たちの優先順位ナンバーワンになっている。社員のスキルが上がればミッションのためにより多くのことができるようになるからだ。社員への投資は必須だ。

 われわれのマネジメント理念では、マネジャーは管理することを減らし、コミュニケーションをより深めることが求められている。これが私たちの戦略だ。マネジャーの仕事は社員が障害に直面したときにそれを取り除くこと。そうすることで第一線で意思決定ができる。

WWD:創業当時からストーリーを伝えることでファン作りをしてきているので、意思を持った人々が集まってきていると感じる。

ポンフレー:ファンが多いのは、創業者が先見の明がある人物だったから、企業としていいスタートが切れている。私たちは時間を費やして考えることが可能だ。一般的な企業は利益を求めて四半期ごとに売り上げ目標を掲げてそのための戦略を立てている。われわれは、長期的な戦略を持ちながら、短期的な課題にチャレンジしている。

WWD:“新しく作らないファッション”が求められていると感じる。パタゴニアは“ウォーン ウエア”で一つの答えを出しているが、売り上げや規模を大きくするのには限界があるとも感じる。

ポンフレー:“ウォーン ウエア”はアパレルビジネスのほんの一部だ。われわれは新品を作るときに、素材や生産工程をよりよいものにしていくこと、より長持ちするもの、環境負荷が低いもの、これまでよりも、よりよいものを作ろうと試みているが、将来的には新品の販売よりも古着の販売の成長率を伸ばしたいと考えている。パタゴニアのユニークなビジネスとしてプロヴィジョンズのフードビジネスがある。これを伸ばしていきたいし、ローカルビジネスとしても伸ばしていきたい。

 日本ではソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)のプロジェクトも行っていて、エネルギーのソリューションを活用したフードビジネスも行っていく。日本産の食品を広げていきたいし、日本での取り組みを全社的にも広げていきたい。

WWD:古着販売の成長率を伸ばすことについてもう少し教えてほしい。

ポンフレー:どちらかというと新製品のビジネスをスローにしようという考え方だ。そのためにビジネスの構造を変えて、意図的に新品の販売がスローになるようにしたいと考えている。パタゴニアのビジネスにとっても地球にとっても現実的な対策ではないかと考えている。成長という考え方も、自然な成長とはどういうことか――前とは異なるアプローチを考えている。

WWD:新しいアパレル製品を売らない、作れば作るほど環境に貢献するという点でプロヴィジョンズの拡大はポジティブだ。

ポンフレー:フードビジネスは、地球にいいことをしているので大きく伸ばしたい。地球にとっても日本にとってもポジティブなインパクトをもたらすものだ。意図的に成長を遅らせるアパレルとは異なるビジネスモデルだ。

 簡単なことのように聞こえるかもしれないが、パタゴニアのビジネスモデルは非常に難しい。私がパタゴニアに雇われたときにイヴォン(・シュイナード創業者)と面談があったが、そのときに「2つの帽子をかぶらなければならない、2つのことをも全うしなければならない」と言われた。1つ目はビジネスを行うこと、2つ目は地球を救うというミッションを成し遂げること。この2つをやっていかなければいけないと言われた。会社として私に期待されていることは利益を出すことだが、それだけでは十分ではなく、もう一つのミッションを遂行していくことも期待されている。

 (8月9日に)IPCCの報告書が出たが、何も変えずに今のまま進むと、目標にしている気温1.5度の上昇幅を大きく上回ってしまう。これまでの成長モデルではなく、より厳しいビジネスモデルを採用しなければならないと考えている。今までの考え方を変えないと、人類はこの危機から逃れられないし、ただ単に砂に頭をうずめて何もできないと嘆いていてはいけない。

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LVMH傘下の「ウブロ」がDJスネイクと初コラボ 虹色に輝く時計を発売

 LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下のスイスの時計ブランド「ウブロ(HUBLOT)」は、ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)やセレーナ・ゴメス(Selena Gomez)ともコラボ曲を発表するフランス人ミュージシャンのDJスネイク(DJ SNAKE)と初めて協業し、ブランドのアイコンモデルである“ビッグ・バン”をベースに“ビッグ・バン DJスネイク”を製作、9月3日に全世界で発売した。DJスネイク本人とリカルド・グアダルーペ(Ricardo Guadalupe)=ウブロ最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。

WWD:“ビッグ・バン DJスネイク”において、最もあなたらしさが表現できている部分は?

DJスネイク:ダイアル上に描いた世界地図だ。旅をして、さまざまな文化や音楽を学ぶことへの僕の情熱を表した。僕は音楽と向き合う際、ルールや既成概念は意識しない。自分の直感を信じ、自分らしいアプローチで音楽にする。“ビッグ・バン DJスネイク”のデザインに関しても同じことが言える。“僕にしか作れないもの”を実現するために最善を尽くした。結果として、「ウブロ」のアイコンモデルの上で僕の情熱が表現され、とても光栄に感じている。

WWD:パープルを主とするカラーリングに込めた思いとは?

DJスネイク:“ビッグ・バン DJスネイク”では虹のようにさまざまな色が介在し、それぞれが主張する。ある言語によるボーカル、そこに全く異なる文化の音を重ねることで生まれる僕の音楽のように表現した。

WWD:DJをプレーする際にも時計は着用する?

DJスネイク:もちろん、いつも「ウブロ」を着用している(笑)。

ミュージシャンとタッグを組む意味をCEOが語る

WWD:本コラボにおいて、DJスネイクに期待したこととは?

リカルド・グアダルーペ=ウブロCEO(以下、グアダルーペ):DJスネイクには、2018年からブランドアンバサダーを務めてもらっている。彼は本物のアーティストであり、彼の創造性には限界がない。だからこそ彼のイメージを忠実に具現化し、ひと目でそれと分かる時計を作る必要があった。時間はかかったが、成果はご覧の通りだ。

WWD:「ウブロ」は“アート・オブ・フュージョン”の哲学のもと、さまざまなミュージシャン、アーティストとコラボしている。

グアダルーペ:われわれのアクションは単に彼らのサインを裏蓋に刻んだり、文字盤にアートワークをプリントしたりするだけではない。例えば、村上隆とタッグを組んだ際には彼の代表作である“お花”を時計に組み込むためにムーブメントを全面的に作り直したし、リチャード・オーリンスキー(Richard Orlinski)との協業時には多面的な彫刻を表現するためにケースを再設計した。「ウブロ」がコラボレーションにおいて重要視するのは、彼らとブランド、双方の世界観を文字通り融合させることだ。

WWD:これまでの「ウブロ」の時計にはない、“ビッグ・バン DJスネイク”の特別性とは?

グアダルーペ:DJスネイクも話した通り、虹のような発色だ。チタニウムパーツに、本モデルのために開発した“ニュートンリング加工”を施している。これによって光の加減や見る角度によって、さまざまな視覚的効果が得られる。

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抱腹絶倒!? ビームス「SSZ」ディレクターが語るZINEに込めた偏愛とは? 音声配信「LOVE=好きの先の幸せ」Vol.3

 「LOVE=好きの先の幸せ」は、伊藤忠ファッションシステムを辞めて心機一転の川島蓉子ジャーナリストが毎回ゲストを招き、「LOVE=好き」がある人との対談を通して幸せを伝える音声番組です。

 今回のゲストは、「ビームス」のサーフ&スケートバイヤーも務める加藤忠幸「SSZ」ディレクターです。「SSZ」と言えば、長年発行し続けるZINE。加藤ディレクターが語る、ZINEに込める思い、モデルとして登場した息子さんとの撮影秘話、さらには設楽洋社長の愛らしい応援エピソードは、立ち会った広報まで大笑いするほど。笑い過ぎにはご用心ください。

川島蓉子:1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている

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プロスケートボーダーの四十住さくら選手を「ラルフ ローレン 銀座」でインタビュー 最新ウエスタンスタイルにも挑戦

 ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)は、東京・銀座の中央通りに構えた期間限定のコンセプトストア「ラルフ ローレン 銀座」の情報発信ステーション「RL NEWS STATION」から、さまざまな映像コンテンツをオンライン配信している。最新コンテンツのゲストは、プロスケートボーダーの四十住さくら選手。「ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)」のスペシャルサポーターを務める四十住選手が「ラルフ ローレン 銀座」を訪れ、8月末まで同店に設けられたスケートボードランプでライディングを披露。インタビューでは、練習中も頻繁に着用した「ポロ ラルフ ローレン」の魅力や、ブーツさえ初挑戦というウエスタンなプレ・フォール・コレクションに身を包んだ感想、そして、将来の夢などを語っている。

お気に入りの「ポロ スポーツ」のランプは、
「持ち帰りたいくらい(笑)」

 四十住選手は8月中旬、「ラルフ ローレン」が「ラルフ ローレン 銀座」で開催したプレスイベントに登場した。当日は、背面にさくら色で「SAKURA 1」と書かれた白いTシャツに、スエット、イエローのケーブルニットのコーディネート。全て「ポロ ラルフ ローレン」だ。四十住選手は「将来は、子どもにスケートボードの魅力を伝えたい。子どもが大好きだから、頑張っているみんなを応援したい。そして私も、みんなに憧れてもらえる存在になれたら」などと話した。イベントでは、自身も設計に携わった「ポロ スポーツ(POLO SPORT)」のスケートボードランプでライディングも披露した。「『ポロ』のランプを作ってもらえて、すごく嬉しい。サイズ感や高さもちょうど良く、とても満足。(『ポロ ラルフ ローレン』の洋服だけでなく)このランプも地元に持ち帰りたい(笑)」と話し、会場を沸かせた。「ラルフ ローレン 銀座」は8月まで、プロスケーターらが指導するスケートボードスクールを開催。四十住選手の活躍で、期間中の受講生の募集はあっという間に定員に達したという。

「『ポロ ラルフ ローレン』に支えていただき、
本当に嬉しかった」

 店内の「RL NEWS STATION」で行ったインタビューでは、「ポロ スポーツ」のブルゾンにブラックのパンツ姿で、普段のスタイルや、「ポロ ラルフ ローレン」との思い出などについて語った。「ポロ ラルフ ローレン」のスペシャルサポーターに就任した時を「こんなに大きなブランドにサポートしていただけて、本当に嬉しかった」と振り返り、以降はさまざまなアイテムを着用し練習していると仲間のスケートボーダーや家族から羨ましがられることも多かったと笑う。さまざまな洋服に袖を通してきた中でのお気に入りは、ポロベアのアイテム。インタビューでは、勝負カラーや、最近のスケートボードシーンなどについても話している。

 「ラルフ ローレン 銀座」1階のカフェ「ラルフズ コーヒー(RALPH’S COFFEE)」には、「ポロ ラルフ ローレン」の2021年プレ・フォール・コレクション姿で現れた。ニットカーディガンにネルシャツ、ピュアホワイトのコットンスカート&ブーツという「ラルフ ローレン」らしいウエスタン&ボヘミアンなスタイルだ。さくら色のロングヘアが、ピンクも混じる淡い色彩のカーディガンとマッチしている。Tシャツやポロシャツ、スエットなどの普段着とは全く違う装いについては、「スカートもあんまり履いたことがなく、ブーツはまだ履きづらいけれど(笑)、こんなスタイルでいろんなところに出かけてみたい」という。

 「ラルフ ローレン 銀座」独自の情報発信ステーション「RL NEWS STATION」では、今後もさまざまなコンテンツをオンライン配信。デジタルを通して、ブランドの世界観やメッセージをダイレクトに届ける予定だ。

PHOTO:TSUKASA NAKAGAWA
問い合わせ先
ラルフ ローレン
0120-3274-20

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プロスケートボーダーの四十住さくら選手を「ラルフ ローレン 銀座」でインタビュー 最新ウエスタンスタイルにも挑戦

 ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)は、東京・銀座の中央通りに構えた期間限定のコンセプトストア「ラルフ ローレン 銀座」の情報発信ステーション「RL NEWS STATION」から、さまざまな映像コンテンツをオンライン配信している。最新コンテンツのゲストは、プロスケートボーダーの四十住さくら選手。「ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)」のスペシャルサポーターを務める四十住選手が「ラルフ ローレン 銀座」を訪れ、8月末まで同店に設けられたスケートボードランプでライディングを披露。インタビューでは、練習中も頻繁に着用した「ポロ ラルフ ローレン」の魅力や、ブーツさえ初挑戦というウエスタンなプレ・フォール・コレクションに身を包んだ感想、そして、将来の夢などを語っている。

お気に入りの「ポロ スポーツ」のランプは、
「持ち帰りたいくらい(笑)」

 四十住選手は8月中旬、「ラルフ ローレン」が「ラルフ ローレン 銀座」で開催したプレスイベントに登場した。当日は、背面にさくら色で「SAKURA 1」と書かれた白いTシャツに、スエット、イエローのケーブルニットのコーディネート。全て「ポロ ラルフ ローレン」だ。四十住選手は「将来は、子どもにスケートボードの魅力を伝えたい。子どもが大好きだから、頑張っているみんなを応援したい。そして私も、みんなに憧れてもらえる存在になれたら」などと話した。イベントでは、自身も設計に携わった「ポロ スポーツ(POLO SPORT)」のスケートボードランプでライディングも披露した。「『ポロ』のランプを作ってもらえて、すごく嬉しい。サイズ感や高さもちょうど良く、とても満足。(『ポロ ラルフ ローレン』の洋服だけでなく)このランプも地元に持ち帰りたい(笑)」と話し、会場を沸かせた。「ラルフ ローレン 銀座」は8月まで、プロスケーターらが指導するスケートボードスクールを開催。四十住選手の活躍で、期間中の受講生の募集はあっという間に定員に達したという。

「『ポロ ラルフ ローレン』に支えていただき、
本当に嬉しかった」

 店内の「RL NEWS STATION」で行ったインタビューでは、「ポロ スポーツ」のブルゾンにブラックのパンツ姿で、普段のスタイルや、「ポロ ラルフ ローレン」との思い出などについて語った。「ポロ ラルフ ローレン」のスペシャルサポーターに就任した時を「こんなに大きなブランドにサポートしていただけて、本当に嬉しかった」と振り返り、以降はさまざまなアイテムを着用し練習していると仲間のスケートボーダーや家族から羨ましがられることも多かったと笑う。さまざまな洋服に袖を通してきた中でのお気に入りは、ポロベアのアイテム。インタビューでは、勝負カラーや、最近のスケートボードシーンなどについても話している。

 「ラルフ ローレン 銀座」1階のカフェ「ラルフズ コーヒー(RALPH’S COFFEE)」には、「ポロ ラルフ ローレン」の2021年プレ・フォール・コレクション姿で現れた。ニットカーディガンにネルシャツ、ピュアホワイトのコットンスカート&ブーツという「ラルフ ローレン」らしいウエスタン&ボヘミアンなスタイルだ。さくら色のロングヘアが、ピンクも混じる淡い色彩のカーディガンとマッチしている。Tシャツやポロシャツ、スエットなどの普段着とは全く違う装いについては、「スカートもあんまり履いたことがなく、ブーツはまだ履きづらいけれど(笑)、こんなスタイルでいろんなところに出かけてみたい」という。

 「ラルフ ローレン 銀座」独自の情報発信ステーション「RL NEWS STATION」では、今後もさまざまなコンテンツをオンライン配信。デジタルを通して、ブランドの世界観やメッセージをダイレクトに届ける予定だ。

PHOTO:TSUKASA NAKAGAWA
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アルカの辻愛沙子に聞く小売りや消費の未来 西武渋谷店に“スタンスを問う”D2C売り場がオープン

 西武渋谷店は9月2日、パーキング館1階に“メディア型OMOストア”をうたう「チューズベース シブヤ(CHOOSEBASE SHIBUYA、以下チューズベース)」をオープンした。半年ごとに変わるテーマに沿ってD2Cブランドを集積する売り場で、オープン時は「タイムリミット」をテーマに、環境に配慮したファッションやビューティ、食品など54ブランドをそろえる。D2Cの集積売り場は近年増えているが、「意味に出合い、意志を買う」売り場を目指すという「チューズベース」は、そのどれとも毛色が異なり、「社会に対して自分はこうありたい」といった打ち出しがはっきりしている点が特徴的。それもそのはず、売り場のコンセプト策定やクリエイティブ面を担ったのは、“社会派クリエイティブ”を掲げ、報道番組のコメンテーターとしても活躍する辻愛沙子アルカCEOだ。辻CEOに、売り場に込めた思いやこれからの消費のあり方を聞いた。

WWD:そごう・西武の担当者からSNSのダイレクトメールで熱烈なラブコールを受けて、今回の取り組みが始まったと聞いた。

辻愛沙子アルカCEO(以下、辻):最初は小売りの未来について一緒に考えてほしいとお話をいただきました。小売りの未来、つまり消費の未来を考えると、もちろんDX(デジタルトランスフォーメーション)などの機能面の進化は重要ですし、「チューズベース」でもそれは要の1つです。ただ、それとは別の話で、この1、2年で社会が急激に変わったと感じます。企業がESG経営やSDGsを強く打ち出すようになっていますが、そういった流れは企業だけのものではなくて、むしろ生活者からのボトムアップによって社会が変わってきている。

 そうした変化の中で、ブランドも「社会に対して何を届けるのか」ということを考えるようになっている。同時に、私自身を含め、生活者も“便利”“安い”“近い”といったこと以外の価値を消費に求めるように変わりつつあります。環境によいものとそうでないものが同じ価格で並んでいるなら、環境によいものを選びたい。なんなら、ちょっと高くてもそっちを買いたいという人が増えています。それなのに、小売りの世界は従来のままで、利便性や(テイストによる区分のような)トンマナによるカテゴライズが中心。例えば百貨店も、まず性別でフロアが決まって、そこからテイストで細分化されていきますよね。そういうカテゴライズではなくて、思想やスタンスでキュレーションされた売り場があったらいいなと思いました。バイブス近い人たちが集まっている、みたいな売り場です(笑)。

WWD:バイブスが近い人が集まる場所というのは、具体的に言うとどんなイメージか。

辻:北海道物産展とかは、北海道好きな人が集うものなので近いと思います。あとはニューヨークに住んでいたとき、日本食が食べたくなると日本のお店が集まっているエリアに行きました。そこに行けば見慣れた「チキンラーメン」があってほっとできて、しかも日本から来ている人が多い。みんな知らない人たちなんだけど、なんだか安心する。そんな感覚があります。国内でも、飲食店だと同じアイデンティティーやバイブスを持った人が集まっている場所ってありますが、商業施設にはいろんな人が来るし、それが多様性でもある。それは良いこと。ただ、私とは“ガワ”(見た目やファッション)が全く違って、マーケティング分類では絶対同じペルソナにならないような人が、実はバイブスは近いっていうことがあると思うんですよね。そういう人たちが集うお店って、個人でやっているセレクトショップとかではありますが、ある程度の規模の商業施設では私は見たことがないです。

“パーパスドリブン”な売り場があったら面白い

WWD:売り場が目指すあり方を、「意味に出合い、意志を買う」場所と表現しているのが印象的だ。

辻:目指したのは、未来の社会にはどんなものが必要かというパーパス(PURPOSE)を軸にして、ブランドや生活者、メディア、KOL(インフルエンサー)などが集う場所です。そこには、お客さま、そごう・西武、ブランドというようにさまざまな主語があるんですが、みんな見ている方向は同じで、同じパーパスを共有しているという連帯がある。そんな“パーパスドリブン”なお店が出きたら面白い。商品として、機能性やデザインが優れていることは前提です。その上で、大量生産・大量消費の社会の中でなぜこの商品を作るのかというスタンスを明確にし、お客さまはただ買うのではなく、これを買うことで社会に対してどんな意味があるのかを考える。そんなふうに、意味や意志を選び取っていく場所にしたいと思っています。

 ただし、説教臭い場所にはしたくない。売り場で商品からテーマに入るからこそ、「これがかわいい」とか「おしゃれ」とかが先に来て、堅苦しくならない。そこにこそ、百貨店やブランドができることがたくさんあると思います。学校とかで教える直接的な学びだけでなく、商業施設やブランドがいろんな切り口から社会に向き合うきっかけを作る。気づきの入り口のような場所になればと思います。

WWD:立ち上げ時のテーマは「タイムリミット」。「サステナビリティ」や「SDGs」といった最近よく聞く言葉ではなく、どこかフワッとした「タイムリミット」という言葉を選んだ意図は。

辻:繰り返しになりますが、テーマ設定はあくまでクエスチョニング(問いかけ)であって、それを選ぶか選ばないかはお客さまやブランドのスタンス次第です。「チューズベース」という名前の通り、「これが正解です」というアンサーベース(答えありき)の場所にはしたくない。ただ、「タイムリミット」という言葉を選ぶ際には分かりやすさとの葛藤はすごくありました。今回に限らず、「もっと説明的で分かりやすい言葉を使ってほしい」と(クライアントから)言われるケースはよくあります。でも、例えば「サステナビリティ」って言葉を出されちゃうと、もうそれが答えみたいで「はいはい大事ですね、以上、完!」みたいになってしまうんですよね。だから、「タイムリミット」という言葉で違和感を作りたかった。タイムリミットには誰にでもそれぞれの解釈があるからこそ、何を選ぶかにつながっていきます。

 誰だって、できれば環境に良いことをしたいと思っています。その方がいいことはみんな分かっている。それなのになぜできないのかということがすごく大事で、耳触りのいい、聞いたことがある言葉では伝わりきらないんです。そういう言葉で伝わるものなら、地球環境の問題は既に解決しているはずですから。そこに対して、こちらが答えを出してしまうと、みんな思考停止してしまう。と言うか、一人の人間や一つの企業が答えを出せるという発想自体が、傲慢だと思います。

カリスマ1人に背負わせるのは
“平成の価値観”

WWD:売り場から問いかける、という考え方は新鮮だ。ただ、日本人は社会課題などに対し、自分で考えて発信することに慣れていないともよく言われるし、SNS上ではそれをよしとしない空気もある。

辻:特に政治や宗教、社会のことについて、考えることを是としない空気感がこれまではなんとなくあった気がします。でも、議論することは当たり前だし、意見が違ったらそこで考えるっていうことがすごく大事。そのきっかけを作れたらと思っているので、私はメディアに出るときもSNSも、「チューズベース」のような仕事のアウトプットでも、問いかけることを大事にしています。私も分かんないからこそ、「みんなで考えようよ」って。「チューズベース」でブランド同士の連帯を意識しているのもそういう考えからです。

 主語が一つじゃないことが、今の時代はすごく大事。誰かをアイコンや象徴にして、そこに背負わせないということ。「そごう・西武が全部作ります」じゃなくて、集まるブランドそれぞれが語って、お客さまがそのストーリーを解釈して、どう選択していくか。最近、友人が“PURPOSEHOOD”(目的意識による連帯)という言葉を使っていていいなと思いました。誰か1人をアイコンにすると、その人が折れたときに全体がガタンと(ダメに)なる。1人をアイコンにするのは平成の価値観。象徴を作らず、主語を“WE”(私たち)にしていくことがこれからはすごく大切だと思います。

WWD:そういう考え方は、売り場にはどう反映したのか。

辻:ブランドそれぞれにちゃんと光が当たるような売り場になっています。分かりやすくはあるんだけど、分かりやすさだけを極めないというのが、(お客さまやブランドに)解釈を委ねるということ。だから、店の真ん中だけにスポットライトをバーンと当てる、みたいな売り場にはしていません。スクランブル交差点じゃないですが、店内は十字の形で回遊できるようにしました。出口も入り口も正解もなく、入った人がそれぞれ感じた正解を持ち帰って、家やほかの場所で思い返して、ちょっとずつ自分の中で咀しゃくしていったほしい。それで次に歯ブラシが切れた、化粧水が切れたというときの選択肢として、戻ってきていただければと思います。

 MD面の実務はそごう・西武の方が担当されましたが、テーマからブレたり、悪い意味で間口を広げたりしてしまうことはよくないと何度かお伝えしていました。ビジネスとして、どこまでテーマに対してストイックにいくかは難しい。でも、「タイムリミット」と掲げた下でお客さまが「あれ?」と思うような商品やブランドが並んでいたら、「ウソじゃん」となってしまう。それは「チューズベース」だけでなく、そのブランドにとってもよくない。最悪、炎上してしまいます。この1年でウオッシング(それっぽく装うこと)もすごく批判されるようになっているので、そういう議論はチーム内で喧々諤々と繰り返しました。

WWD:かなりゆとりのある商品陳列など、効率重視の百貨店とは大分違う店の作り方だと感じる。百貨店の中でこうした売り場を作るのは、大変だったのでは。

辻:一番しんどい部分は、チーム内のそごう・西武の社員の方に担っていただきました。私はベンチャー企業出身なので想像しかできませんが、大きな会社で新しいことをするのはすごく大変なんだと思う。ただ、会社の成り立ちというか、1980年代のセゾン文化を考えてみても、(西武は)渋谷の街を作ってきた企業だと思うんです。今ではもうグループが違う企業や業態も含め、渋谷には西武と兄弟みたいな商業施設がたくさんある。そうした下地があって、いろんな出自の人が集まっている会社だからこそ、ダイバーシティーが社内にあるのかなと勝手に感じていました。

 渋谷という街で「チューズベース」をやることの意義もすごく感じています。私は渋谷区生まれ、渋谷区育ちのレペゼン渋谷(笑)。この街にはカウンターカルチャーのDNAがありますが、それでも、大量生産・大量消費の流れの中で街がどこも似てきて、渋谷にも高層ビルが次々と建っている。それも便利ではあるんですが、この街とあの街、あっちのビルとこっちのビル、何が違うんだろうと思ったりもする。街は行政が作るものではないし、「この街はこうであれ」というように上から与えられるものでもない。「俺らがこの街を作っていくんだ」みたいなマインドが大事だと思うし、そういう意識が渋谷の街にはもともとある。それは「チューズベース」のあり方にも通じるものです。

スタンスを明確に、生活者を信じて

WWD:百貨店やアパレルといった業種は構造不況と言われ、コロナもあってなかなか展望を描きづらい。それでも、辻さんの話を聞いていると、やれることや可能性はまだまだたくさんあるように感じられる。レガシー的な企業や業界が未来を切り開くために、アドバイスを。

辻:何事も言うはやすしで、よそ者である私が簡単に言えるようなことはないです。業界で長らく仕事をされている方が、いろんなことを一番分かっている。それは前提として、それでも私から何かを伝えるなら大事だと思うことは2つ。1つ目はスタンスを明確にすることです。企業やブランドって個人とは大きさが違うだけで、根底は個人と同じだと思う。私は自身のスタンスを明確にし続ける人生を図らずも歩んできて、「怖くないいの?」と聞かれることもあります。(炎上などで)誰かを失うかもしれないと思うから、スタンスを明確にする前は怖い。でも、ブランドだったら明確にした先で本当のロイヤルカスタマーに出会えるかもしれない。利害関係の一致ではなく、向いている先が同じ者同士だから連帯していくという流れが今は本当に強まっているし、その流れに乗ると、いい化学反応が起こってもっといいアウトプットができるようになります。

 マス一強の時代ではないからこそ、スタンスの表明はすごく大事です。もちろん、企業としてスタンスを明確にしないことも1つの選択肢ではある。ただ、「スタンスを明確にしないというスタンスを、あなたは今取っているんですよ」ということには自覚的になるべきだとは思います。

 2つ目は、生活者を信じること。生活者はブランドや企業が思っている以上にいろんなことを考えていると思う。例えば環境によいブランドを選ばない人も、本当は買いたいのに、今はお金がないというだけかもしれない。買えない場合でも、ブランドのスタンスには共感してSNSでシェアしてくれるかもしれない。ブランドや企業が正解を提示しようとしたり、「分かりやすくしなきゃ」と考えたりするのは、生活者を信じていないから。それっておこがましいことです。言葉が雑になりますが、生活者も世論もバカじゃないと私は強く思っていて、信じているからこそ問いかけている。企業やブランドも同じように、スタンスを明確にして、生活者を信じることは大事だと思います。

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教えて!パタゴニアさん 連載第9回 “新品を売らない”店の展望を日本支社長が語る 【前編】

 「パタゴニア」が渋谷店内に開いた新品を売らないポップアップストア注目を集めている。このポップアップストアは「パタゴニア」製品を長く使用するためのプラットフォーム“ウォーン ウエア”を体現するもので、製品の修理を行ったり、買い取った中古品を修繕して再販売したりするもの。パタゴニアはこれまで“プロダクト・サーキュラリティ(製品の循環性)”が重要と考え、製品全ての寿命をのばすことを目標にしてきた。また、「サステナブルな製品はアパレル産業においてはありえない。そのためサステナブルカンパニーではなくレスポンシブルカンパニーであろう」として事業を行ってきた。製品の修理は1970年代から、中古品の販売は2013年に米国で始動し、中古品はこれまで30万枚以上を販売している。中古品の販売を米国以外で行うのは今回が初めてだ。マーティ・ポンフレー(Marty Pomphrey)日本支社長にその経緯と日本での展望を聞く。

WWD:日本で“ウォーン ウエア”のポップアップストアを開くに至った理由を教えてほしい。

マーティ・ポンフレー日本支社長(以下、ポンフレー):もっと早い段階で行いたいと考えていたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって予定よりも実現までに時間がかかってしまった。われわれの“サーキュラリティ(循環)”戦略で非常に重要な一部を占めている。

前提としてアパレル産業は環境によくないし、アパレル企業がサステナブルであることはあり得ない。われわれには、アパレル企業として責任を負っていこうという考え方がある。ある報告書によると、アパレル産業が排出する温室効果ガスは全排気量の10%を占めると推定されている。日本国内に目を向けると、日本で購入されたアパレル製品の68%が焼却されたり、埋め立てられたりする運命にあるという数字がある。アパレル産業の作って売って買って捨てるというリニア(線形)型のモデルはうまくいかないのは明らかだ。これからは、循環型モデルのビジネスしかあり得ない。“ウォーン ウエア”は“循環型”戦略の一部だ。われわれは製品の寿命を長くして、寿命が来たものに関してはリサイクルするなり責任ある形で処分したいと考えている。

WWD:初めてのポップアップストアを渋谷店に開いた。

ポンフレー:渋谷には若いカスタマーベースがある。“ウォーン ウエア”は古着なので(古着屋が多く点在する渋谷・原宿エリアでは)アピールすることができるし、若い人でも買える価格帯でもある。新しいカスタマーに「パタゴニア」を紹介するに適切な場所だと考えた。また、渋谷店はパタゴニアの店舗の中でも大きい方で、リペアする設備があるし、正しい形で“ウォーン ウエア”を紹介できる。

WWD:ポップアップストアを開いてみての反響を教えてほしい。

ポンフレー:圧倒的にポジティブな反応だ。8月20~22日の最初の3日間は予定の3倍の売り上げで、1カ月間このプログラムを維持するためにどれだけ在庫が必要かと考えるほどだった。さらに古着を投入していきたい。

この1カ月間は学びの期間だと考えている。どのようなモデルで“ウォーン ウエア”を広げていくのがいいか、どれくらいの需要があるのかを見極めたい。このビジネスを成功させ、将来的には“ウォーン ウエア”のオンリーストアを作りたいと考えている。

WWD:現在、世界を見渡しても“ウォーン ウエア”の単独店はない。新品が並ばないストア開発に力を入れていくのか。

ポンフレー:ストア開発は初期段階にある。小規模なビジネスだ。日本はリセールのチャンスが大きいと感じている。売り上げという意味ではなく、ブランドにとって大きなチャンスになるのではないかと感じている。現在日本には2つのリペアセンターがあり、55人の技術のあるスタッフがいる。日本は品質の高い商品の需要が多い。高い技術を提供する場は限られていると思うので、古着の販売ほどではないが、リペアも日本市場では大きなチャンスだと考えている。

WWD:ダメージがひどくて中古として販売できない製品の場合、捨てるのではなく複数のダメージの大きい製品を使って、新しい衣類に作り替えた“リクラフテッド”の販売を日本で行う予定はあるのか。

ポンフレー:今戦略を練っているところだ。

WWD:“リクラフテッド”は修繕技術だけではなくデザイン性も問われる。

ポンフレー:米国ではアイコニックな製品を担当している社内デザイナーがLAにいる優れた職人とコラボレーションしてLAで生産している。“リクラフテッド”も“サーキュラリティ”ストーリーの一部だ。“リクラフテッド”は衣類だけではなく、使われているファブリックの寿命を最大限に延ばすという考え方に基づいている。

WWD:日本で“リクラフテッド”を導入する場合、どのような人材がデザインを担当するのか。

ポンフレー:日本はクラフトマンシップが優れているし、そうした考え方も浸透している。リペアセンターのスタッフのスキルを考えても“リクラフテッド”はマッチングするのではないかと考えている。リペアセンターではすでに自分の服を持ってきてアップサイクルしているスタッフもいる。

今、考えているのは、リペアセンターをサーキュラリティセンターのようなものに変えていきたいということ。全ての製品をリペアするのではなく、技術力が問われるようなもののみを行い、カスタマーに修理方法を伝えてカスタマー自身が修理できるようにしたいと考えている。パタゴニア以外のリペアのコミュニティーとパートナーシップを組み、リペアしてもらうことも考えている。パタゴニアの才能あるリペアスタッフは、より技術力が問われるものに焦点を当てて作業することができるし、そうすることによってカスタマーに付加価値を提供できるのではないかと考えている。長期的にはそういうものにしたいと考えている。

WWD:パタゴニアは創業時からフォロワー作りが上手でそういったファンたちとコミュニティーを形成して新しいカルチャーを創出してきた。

ポンフレー:マーケティング、マーケッターという言葉は好きではない。「パタゴニア」はストーリーテラーだと思っている。ストーリーを伝えることで人々の感情に訴え、訴えたことが私たちのミッションステートメントの実現につながる行動を起こしてほしいと考えている。このストーリーを伝えることによって“サーキュラリティ”ビジネスにハイライトを当てる。リペアサービスはコストと時間がかかるが、そうしたサービスを提供していることを知ってもらい、われわれはただ単に新品を売るだけの企業ではなく、リペアサービスを提供していることを訴求したい。

WWD:パタゴニアはブランドの考え方を理解している顧客が非常に多いが、それでも買って必要なくなったら捨てる、といった顧客も一定数いるとも思う。“サーキュラリティ”実現には、顧客の協力なくしては不可能だ。

ポンフレー:まず必要なのはビジネスモデルに“買って捨てる”メンタリティーを変えることが含まれていなければならない。カスタマーには使わなくなったら店舗に持ってきてほしいと伝えること。われわれは製品寿命を延ばして、捨てられることは避けたい。カスタマーには繰り返し伝えていきたい。カスタマーは考えることも多いだろうし、たくさんの情報も入ってくる。時に注意力がそがれることもあるし、混乱することもあるだろう。私たちは一貫して明確なメッセージを伝えていきたい。

これが“レスポンシブルカンパニー”としての歴史を持つ企業であり、自信を持って製品を提供し、“サーキュラリティ”ビジネスを行っているわれわれがやるべきことだと考えている。われわれが求める“サーキュラリティ”ビジネスは他社にも参加してほしいと考えている。パタゴニアは小さな企業なので、大企業と手を組み、大企業とともに地球を救うために活動していきたい。

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教えて!パタゴニアさん 連載第9回 “新品を売らない”店の展望を日本支社長が語る 【前編】

 「パタゴニア」が渋谷店内に開いた新品を売らないポップアップストア注目を集めている。このポップアップストアは「パタゴニア」製品を長く使用するためのプラットフォーム“ウォーン ウエア”を体現するもので、製品の修理を行ったり、買い取った中古品を修繕して再販売したりするもの。パタゴニアはこれまで“プロダクト・サーキュラリティ(製品の循環性)”が重要と考え、製品全ての寿命をのばすことを目標にしてきた。また、「サステナブルな製品はアパレル産業においてはありえない。そのためサステナブルカンパニーではなくレスポンシブルカンパニーであろう」として事業を行ってきた。製品の修理は1970年代から、中古品の販売は2013年に米国で始動し、中古品はこれまで30万枚以上を販売している。中古品の販売を米国以外で行うのは今回が初めてだ。マーティ・ポンフレー(Marty Pomphrey)日本支社長にその経緯と日本での展望を聞く。

WWD:日本で“ウォーン ウエア”のポップアップストアを開くに至った理由を教えてほしい。

マーティ・ポンフレー日本支社長(以下、ポンフレー):もっと早い段階で行いたいと考えていたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって予定よりも実現までに時間がかかってしまった。われわれの“サーキュラリティ(循環)”戦略で非常に重要な一部を占めている。

前提としてアパレル産業は環境によくないし、アパレル企業がサステナブルであることはあり得ない。われわれには、アパレル企業として責任を負っていこうという考え方がある。ある報告書によると、アパレル産業が排出する温室効果ガスは全排気量の10%を占めると推定されている。日本国内に目を向けると、日本で購入されたアパレル製品の68%が焼却されたり、埋め立てられたりする運命にあるという数字がある。アパレル産業の作って売って買って捨てるというリニア(線形)型のモデルはうまくいかないのは明らかだ。これからは、循環型モデルのビジネスしかあり得ない。“ウォーン ウエア”は“循環型”戦略の一部だ。われわれは製品の寿命を長くして、寿命が来たものに関してはリサイクルするなり責任ある形で処分したいと考えている。

WWD:初めてのポップアップストアを渋谷店に開いた。

ポンフレー:渋谷には若いカスタマーベースがある。“ウォーン ウエア”は古着なので(古着屋が多く点在する渋谷・原宿エリアでは)アピールすることができるし、若い人でも買える価格帯でもある。新しいカスタマーに「パタゴニア」を紹介するに適切な場所だと考えた。また、渋谷店はパタゴニアの店舗の中でも大きい方で、リペアする設備があるし、正しい形で“ウォーン ウエア”を紹介できる。

WWD:ポップアップストアを開いてみての反響を教えてほしい。

ポンフレー:圧倒的にポジティブな反応だ。8月20~22日の最初の3日間は予定の3倍の売り上げで、1カ月間このプログラムを維持するためにどれだけ在庫が必要かと考えるほどだった。さらに古着を投入していきたい。

この1カ月間は学びの期間だと考えている。どのようなモデルで“ウォーン ウエア”を広げていくのがいいか、どれくらいの需要があるのかを見極めたい。このビジネスを成功させ、将来的には“ウォーン ウエア”のオンリーストアを作りたいと考えている。

WWD:現在、世界を見渡しても“ウォーン ウエア”の単独店はない。新品が並ばないストア開発に力を入れていくのか。

ポンフレー:ストア開発は初期段階にある。小規模なビジネスだ。日本はリセールのチャンスが大きいと感じている。売り上げという意味ではなく、ブランドにとって大きなチャンスになるのではないかと感じている。現在日本には2つのリペアセンターがあり、55人の技術のあるスタッフがいる。日本は品質の高い商品の需要が多い。高い技術を提供する場は限られていると思うので、古着の販売ほどではないが、リペアも日本市場では大きなチャンスだと考えている。

WWD:ダメージがひどくて中古として販売できない製品の場合、捨てるのではなく複数のダメージの大きい製品を使って、新しい衣類に作り替えた“リクラフテッド”の販売を日本で行う予定はあるのか。

ポンフレー:今戦略を練っているところだ。

WWD:“リクラフテッド”は修繕技術だけではなくデザイン性も問われる。

ポンフレー:米国ではアイコニックな製品を担当している社内デザイナーがLAにいる優れた職人とコラボレーションしてLAで生産している。“リクラフテッド”も“サーキュラリティ”ストーリーの一部だ。“リクラフテッド”は衣類だけではなく、使われているファブリックの寿命を最大限に延ばすという考え方に基づいている。

WWD:日本で“リクラフテッド”を導入する場合、どのような人材がデザインを担当するのか。

ポンフレー:日本はクラフトマンシップが優れているし、そうした考え方も浸透している。リペアセンターのスタッフのスキルを考えても“リクラフテッド”はマッチングするのではないかと考えている。リペアセンターではすでに自分の服を持ってきてアップサイクルしているスタッフもいる。

今、考えているのは、リペアセンターをサーキュラリティセンターのようなものに変えていきたいということ。全ての製品をリペアするのではなく、技術力が問われるようなもののみを行い、カスタマーに修理方法を伝えてカスタマー自身が修理できるようにしたいと考えている。パタゴニア以外のリペアのコミュニティーとパートナーシップを組み、リペアしてもらうことも考えている。パタゴニアの才能あるリペアスタッフは、より技術力が問われるものに焦点を当てて作業することができるし、そうすることによってカスタマーに付加価値を提供できるのではないかと考えている。長期的にはそういうものにしたいと考えている。

WWD:パタゴニアは創業時からフォロワー作りが上手でそういったファンたちとコミュニティーを形成して新しいカルチャーを創出してきた。

ポンフレー:マーケティング、マーケッターという言葉は好きではない。「パタゴニア」はストーリーテラーだと思っている。ストーリーを伝えることで人々の感情に訴え、訴えたことが私たちのミッションステートメントの実現につながる行動を起こしてほしいと考えている。このストーリーを伝えることによって“サーキュラリティ”ビジネスにハイライトを当てる。リペアサービスはコストと時間がかかるが、そうしたサービスを提供していることを知ってもらい、われわれはただ単に新品を売るだけの企業ではなく、リペアサービスを提供していることを訴求したい。

WWD:パタゴニアはブランドの考え方を理解している顧客が非常に多いが、それでも買って必要なくなったら捨てる、といった顧客も一定数いるとも思う。“サーキュラリティ”実現には、顧客の協力なくしては不可能だ。

ポンフレー:まず必要なのはビジネスモデルに“買って捨てる”メンタリティーを変えることが含まれていなければならない。カスタマーには使わなくなったら店舗に持ってきてほしいと伝えること。われわれは製品寿命を延ばして、捨てられることは避けたい。カスタマーには繰り返し伝えていきたい。カスタマーは考えることも多いだろうし、たくさんの情報も入ってくる。時に注意力がそがれることもあるし、混乱することもあるだろう。私たちは一貫して明確なメッセージを伝えていきたい。

これが“レスポンシブルカンパニー”としての歴史を持つ企業であり、自信を持って製品を提供し、“サーキュラリティ”ビジネスを行っているわれわれがやるべきことだと考えている。われわれが求める“サーキュラリティ”ビジネスは他社にも参加してほしいと考えている。パタゴニアは小さな企業なので、大企業と手を組み、大企業とともに地球を救うために活動していきたい。

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長濱ねるが東コレのSDGsサポーターに ベストコレクションは「ミカゲ シン」

 「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」は、2022年春夏シーズンに新設したSDGsサポーターにタレントの長濱ねるを起用した。長濱はNHK・SDGsキャンペーン「未来へ17アクション」への参加や、ファッション誌「with」の連載でSDGsについて勉強するなど、自身も持続可能な取り組みに関心があることからサポーター就任に至った。

 長濱は、「自分自身がファッションに精通して仕事をしてきたわけではないので、ファッション界に携われていることが純粋にうれしい。同世代で『もっとファッションのことを知りたい』という人たちの入り口が広くなるように役立ちたい」とコメントした。

 長濱はコレクション3日目までにリアルショー4本、オンラインショー3本を視聴した。「ショーを見て、自分が『着たい』『かわいい』と思う洋服が実はSDGsに配慮していて、ファッション業界でも当たり前になりつつあるのかなと感じました」。一番印象に残ったブランドは「ミカゲ シン(MIKAGE SHIN)」だという。「ショーの照明や音楽、生地の美しさが直に伝わってきて感動した」。さらに「ショーを通して、それぞれの作り手の思いがひしひしと伝わってきた。オンライン配信が主流の今だからこそ、リアルで見られることのぜいたくさ、喜びを感じた」と続けた。また実際にSDGsサポーターとしてショーを見て、新たな気付きがあったという。「今、持っている洋服を長く着たり、洋服を購入する際に『長く着られるかどうか』の選択を慎重にしたり。環境に配慮した服を買うのも一つの手ですが、持っている服を大事に着続けることは誰にでも始められること」と、日常の意識の変化に対する重要性を述べた。

 ショー会場で注目される衣装は撮影時、「ナオキトミヅカ(NAOKITOMIZUKA)」のシャツワンピースを着用した。ブラックを基調に、取り外し可能なメッシュ地の襟や、無数に伸びたひもの数々、赤のタータンチェックを差し色に仕上げている。

 長濱は、長崎県長崎市生まれの23歳。15年に女性アイドルグループの欅坂46のメンバーとしてデビュー。19年に同グループを卒業した。現在はテレビ・ラジオのMCやエッセイの執筆など、活動は多岐にわたる。

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コスプレ上等! スーツさえ非日常化する中、わが道をいくメンズブランドが10周年

 コスプレ上等!――そう言い切るのが2011年デビューの日本ブランド「アジャスタブル・コスチューム(ADJUSTABLE COSTUME)」だ。ファストファッションの隆盛(と衰退)、ECの定着、ジェンダーレスやサステナビリティといったキーワードの台頭など、ファッションを取り巻く環境はこの10年も激動だった。その中にあって、スタイルを貫徹するのが同ブランドだ。小高一樹デザイナーに10年の歩みについて聞いた。

WWD:10年の間に客層に変化はあった?

小高一樹「アジャスタブル・コスチューム」デザイナー(以下、小高):ブランドデビュー時、僕は37歳で、顧客は僕より少し上の世代(40~50代)が中心だった。「アジャスタブル・コスチューム」は特異なブランドであると自認しており、“らしさ”を出すためにはトータルでお買い求めいただく必要がある。となると、総額は15万~20万円ほど。経済的な余裕があることも、結果として顧客の条件だった。それがこの2、3年は20代前半の顧客が増えている。

WWD:その要因は?

小高:ひとえにSNSによるものだ。“1920~40年代の、男が格好良かったころの服”を標ぼうする「アジャスタブル・コスチューム」が、同じくアメリカンクラシックを愛する理美容師の間で受け入れられ始めた。カリスマ的な人気を持つ彼らがSNSで発信してくれ、フォロワーが服装を真似するようになった。芸能人などではない、「それ、どこの服?」と店頭やDMで気軽に聞ける距離感も奏功し、ブランド認知度が高まった。SNSでの広がりは国内にとどまらず、海外のマニアなコミュニティーにも拡散していった。

WWD:それに合わせて販路も海外に拡大した?

小高:その通りだ。現在、国内外の売り上げ比率は4:6ほど。台湾、香港、中国(上海、北京)、韓国、タイ、ドイツ、スウェーデン、スイスなどに卸している。アメリカや英国の店舗とも交渉中だ。

WWD:クリエイションの着想源について教えてほしい。

小高:映画や、そのもとになった小説が多い。その後で史実を調べたり、資料や写真を集めたりする。古着やアンティーク生地から物語を創造することもある。例えば、今季のイチ押し素材であるオリジナルの“ワイルドスパンツイード”は、1900年代のフランスの貴族層がアウトドアレジャー用に作らせたフロックコートから着想し、糸から作った。これを着てどこへ出掛けたのか?、そのときの足元(靴)は?とイメージを膨らませる。

WWD:ニューノーマル下でスーツさえ非日常化するなか、「アジャスタブル・コスチューム」は次の10年もわが道をいく?

小高:そもそも「アジャスタブル・コスチューム」は、“非日常を表現しよう”とスタートした。名は体を表すではないが、ブランド名も「(アジャスタブル・)ウエア」や「(アジャスタブル・)クロージング」ではなく、「(アジャスタブル・)コスチューム」とした。コスプレの“コス”だ。つまりコスプレに対してポジティブであり、“コスプレでなにが悪いの?”“自分の気持ちを高めるためのファッション(コスプレ)でしょ?”という立場。それを各々アジャスタブル(調整)して自分なりに取り入れてほしいと、服を作り続けている。

 例えば、ヒットアイテムに“サイレンスーツ”というものがある。これは英国首相を務めたウィンストン・チャーチル(Winston Churchill)が発案したと言われる、スーツ生地のつなぎだ。「アジャスタブル・コスチューム」のファン、つまりコスプレ好きな方は本物志向も強い。一方で、“サイレンスーツ”はビンテージ市場でも出回らない幻の逸品だ。そこで「アジャスタブル・コスチューム」は資料や写真を徹底分析して、それに応えるものを作った。8万5800円と決して安くはないが、多くの方に満足いただいている。

 これからも自信を持ってコスプレを楽しんでほしい!

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ビームスが立ち上げたビーアットってなんなん? 半年後の“現在地”を社長に直撃

 ビームスが2021年1月、デザイン会社のフロウプラトウ(東京、千葉秀憲社長)との合弁として設立した企業がビーアットだ。4月には、ラフォーレ原宿の6階にビーアット スタジオ ハラジュクをオープンした。公式ホームページを見ると、「東京からまだ見ぬカルチャーを生み出すためのカルチュラル・アパートメンツ」とあり、さらに「メディアであり、スタジオであり、ラボであり、ショップでもある」と続く。う~ん、難しい……。ならばと、土井地博社長を直撃。今さら聞けない……と二の足を踏む業界関係者の代わりに、あれこれ質問してみた。

WWD:業界内には“ビーアットとは?”をつかみかねている雰囲気がある。ずばり、ひと言で言うと?

土井地博ビーアット社長(以下、土井地):クリエイターが集う場、それをつくる会社だ。スマホ一つで誰でも表現者になれる時代に、クリエイター同士、またクリエイターと企業をつなぐのがビーアットのミッションだ。

WWD:実は、事前に僕なりに答えを考えてきたのだが(笑)、それは“長年コミュニケーションディレクターとしてヒト・コト・モノ、またさまざまな企業・ブランドをつなげてきた土井地社長のアクションを最大化=マネタイズするための組織”だった。

土井地:おおむね正解でよいと思う(笑)。40年を超えるビームスの歴史の中で、コミュニケーションディレクターという肩書を持つのは、これまでに僕しかいない。僕自身、会社いちの“人たらし”を自負している。一方で、何かを自ら生み出すタイプではないことも自覚している。

WWD:ラフォーレ原宿が、本来ラフォーレミュージアム原宿である6階を長期レンタルするのは初だ。これもやはり土井地社長のコミュニケーション力があってこそ?

土井地:それはぜひラフォーレ原宿に聞いてほしいが(笑)、荒川信雄フォーレ原宿社長をはじめ、ビーアットのコンセプトに共鳴してくれたことに感謝している。

WWD:「レッツゴーアップ マ・フォーレ」という、ラフォーレ原宿の魅力をビーアットのスタッフが再発見するユーチューブコンテンツも製作している。

土井地:ユーチューブまでチェックいただき、大変ありがたい。御礼というわけではないが(笑)、おかげさまで好評を得ている。僕のような40代男性にとって、ラフォーレ原宿はいささか場違いに感じるかもしれないが、今も昔も原宿の情報発信拠点であるし、こんな状況でも日々にぎわっている。ファッション&ビューティ業界人であれば、定期的にチェックしておくべき商業施設なはずだ。

WWD:ビーアット事業は、ビームスという組織の中ではできなかった?

土井地:ビームスは長らく、実店舗を主とする小売業を生業としてきた。そのビームスが、次のステップに進むために参考にしたのがGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoftの米国巨大IT5社)だった。10年ごろから、現地を視察するなど研究を重ねてきた。それと前後するように、車やホテルなど服以外のビジネスにもタッチするようになった。その内、ビームスの冠がない方がスムーズに進行する事案も出てきた。これがビーアット設立のモチベーションだ。

WWD:土井地社長はビームスの執行役員も務めるが、今後ビーアットのような合弁会社を増やす予定はある?

土井地:現状として具体はないが、可能性は多いにある。僕には夢があって、それは“生活の中にビームスを息づかせること”だ。例えば朝起きて、その日にやるべき10のことの中にビームスが入っていたい。そのためには、服以外にもフィールドを広げなくてはならない。

WWD:ビーアットを走らせて約半年。目標地点には到達できている?

土井地:合弁会社を設立し、社長を務めるというのは、ビームスにとっても僕にとっても初めてのことだった。コロナの影響でラフォーレ原宿が閉館するなど、予期しない事態ともなったが、ここまでは“成功”と言える。また当初から、半年は“立ち上げ”ととらえ、地力を蓄える期間でもあった。秋からはクライアント仕事が増えていく予定なので、成果を見せたい。

WWD:“つなげる”を行う際、土井地社長が最も気を付けていることは?

土井地:“答えを導かないこと”だろうか。自分も含めてビックリしたいわけで、つまり答えなんて自分の中にはないはず。コミュニケーションの先に化学反応が起き、結果として答えが生まれるのだと思う。

WWD:タレント豊富なビームス軍団の中で、土井地社長の“これだけは人に負けない”を教えてほしい。

土井地:お話した通り、僕は“才能がある人”ではないが、“才能がある人”とコミュニケーションし、そこで得たものを第三者に効果的に伝えることは得意だ。また、インプットとアウトプットを常にセットで考えていることも特徴かもしれない。

WWD:ビーアットの今後について聞きたい。

土井地:アート、教育、福祉といった、日本でいまだ抽象的と考えられているものに積極的に働きかけ、コンテンツ化していきたい。また、都内の空き物件などでビーアット スタジオをサテライト展開することも考えている。

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D2Cアクセサリー「グレイ」が目指すサーキュラービジネスとは デジタル世代経営者が考えていること

 アクセサリーブランド「グレイ(GRAY)」は2020年1月に設立されたD2Cブランドだ。インフルエンサーの影響もあり、コスパの良いアクセサリーブランドとして人気上昇中だ。現在のインスタグラムのフォロワーは13万以上、売り上げは1年以内で月商5000万円を超えるなど急成長している。最近では、アイウエア「ジンズ(JINS)」とのコラボレーションを発表したばかりだ。オンライン中心にSNSなどデジタルツールを駆使することで、マージンや店舗運営などのコストを省くD2Cブランドが増えているが、ファッション、ジュエリーなど、まずはものありきで、それを起点にブランド構築をするケースがほとんどだ。ところが、「グレイ」はD2Cブランドとして成功するための計算された戦略に基づいて作られたアクセサリーブランドだ。しかも、ビジネス面だけでなく、サステナビリティの観点からも新たなビジネスモデルを構築しようとしている。同ブランドを率いるのは、恩地祥博BRH最高経営責任者(CEO)だ。彼は、米ニューヨーク留学から帰国後に知人の紹介でBRH元社長とスカイプで面接。約30分のインタビューでBHRのCEOに抜擢された。恩地CEOに、「グレイ」の立ち上げの過程や、今後の取り組みなどについて聞いた。

WWD:BHRの元代表と出会ったきっかけは?

恩地祥博BHR・CEO(以下、恩地):米ニューヨーク・ファッション工科大学(FIT)に留学中にデジタルマーケティングを手がけていた稲城ジョージさんのアシスタントをしていた。帰国して就職活動を始めたときに、知り合いのスタートアップ支援企業であるアーキタイプ(ARCHETYPE)の中嶋淳CEOに佐藤俊介BHR前CEOを紹介されてスカイプで約30分話したら、「CEOをやってみないか」と言われた。BHRは当時、複数のファッションブランドを展開していたが今では「グレイ」だけを運営。佐藤前CEOは現在、BHRの取締役兼会長を務めている。

WWD:スカイプのインタビュー30分でCEOに任命された決め手は?

恩地:実家が創業90年のうどん製造メーカーという環境で育ったせいか、小さい頃からビジネス運営に興味があった。そのせいか、大学1年生のときにSNSのコンサルテーション会社を立ち上げたが、コンサルよりもファッションがやりたいと思って1年後には社を畳んだ。それにより、まずビジネスの箱を作ることを学んだ。ニューヨークでは稲城さんのアシスタントをしながら、「ファーフェッチ(FARFETCH)」のマーケティング PRや委託販売サイト「ザ リアルリアル( THE REAL REAL)」のSNS担当などをしていた。私はデジタル世代であり、ほかの人とは違う経験を積んできたのでCEOに抜擢されたのだと思う。日本のファッション業界で経験がないから、ルールにとらわれず行動に起こせる推進力があると思われたのではと思う。知らないからこそ、できることはたくさんあるし、そうでなければ業界内で革命を起こせない。

WWD:企業運営のノウハウはどのようにして学んだか?

恩地:メンターがいなかったので、自分で経験して覚えるしか無かった。ウルトラOJTだった。人の真似をしたところで新しいことはできないから、当たって砕けろという気持ちで仕事に挑んだ。経営しているという意識は正直なく、細かいことを気にせずに、事業をどうしたら伸ばせるか考えてきた。

コスパ良くスタイリングで楽しむアクセサリー

WWD:アクセサリーブランドの「グレイ」を立ち上げた理由と目的は?

恩地: BHRでは、ブランディングの一環として、広告など社内でキャスティングからクリエイティブを制作することを行ってきた。そういう意味で、既にD2Cブランドを立ち上げるために必要な要素が社内にあったので、それを最大限に利用しようと思った。アパレルだとサイズをはじめ、いろいろとオペレーションが大変なので、すぐにものづくりができて販売できる小さなものから始めようと思った。また、マーケティングの観点から勝算があると思われるものがアクセサリーだった。

WWD:デザインは誰が担当?

恩地:FITで一緒だった女性デザイナーにクリエイティブは任せている。

WWD:ブランド名を「グレイ」にした理由は?

恩地:誰もが読めて言えるブランド名にしたかった。分かりやすく、人に伝えやすい名前がいいと思った。ターゲットは20~34歳のF1層と言われる女性が中心。“グレイ”は白と黒の間で、ブランドコンセプトには、感情の起伏を愛することや、コンプレックスを力にといった思いが込められている。

WWD:素材調達と生産は?

恩地:国内企業から素材の調達を行い、東京、山梨、埼玉などの下請け工場で生産している。

WWD:手に取りやすい価格帯を実現できるのは?

恩地:発注工場を絞って、大量発注することでコストを下げている。これは「グレイ」が売れているからできること。価格で勝負するためには1品番、納期を分けて1万個発注することもある。発注量を増やすことにより、取引先としての優先順位も高くなる。

WWD:D2Cブランドの一番の課題である認知度アップのために行ったことは?

恩地:われわれのオペレーションは、ほぼ全てデジタル上で行われる。インスタグラムなどのSNSを軸に、どれだけ露出できるか、コンテンツ発信できるかといったマーケティングに費用を費やした。もともと、インフルエンサーやモデルなどとのつながりが多いので、彼女らにジュエリーを着けてもらい投稿してもらう。ある意味、質より量が大切で50人以上に協力してもらった。毎月100人のインフルエンサーによる300のコンテンツをアップしている。それにより、約1年半で累計6万人、9万個以上のジュエリーを販売した。

WWD:他ブランドとの差別化は?

恩地:リングやイヤカフなどをはじめとするスタイリング売りをしている。コスパ良く、楽におしゃれをしたいという女性の心理に刺さっていると思う。ブランドが違うと、ゴールドの色味が微妙に異なるので合わせるのが難しい。重ね付けが可愛いけど、どこでそれらのジュエリーを見つけられるかという消費者の需要を捉えたのがスタイリング販売だ。同じブランドであれば、それら問題は解決できる。

100%受注生産のブランドを目指して

WWD:SDGsにおいてジュエリーブランドが第一に取り組むべきことは?

恩地:作る人、買う人両方に責任があると思っている。ジュエリーは嗜好品で生活必需品ではない。だからこそ、環境に悪いことはするべきでないと思う。将来的には在庫を持たず100%受注生産のビジネスをしたい。納期が5~10日程度だったら、消費者は待ってくれるはずだ。そうすることで、本当に必要なものだけ作るようにしたい。また、ジュエリーの再利用化=サーキュラーシステムの仕組みを作るために、自社工場を持ち、透明性を高くしたい。その資金集めのためにIPOを視野に入れている。そうすることによりシステムや物流などに投資をし、業界で新しい流れを作り、それが業界で当然になっていけばいいと思っている。サステナビリティを前提に自社のシステムを作っていきたい。だから、ビーコープ認証(環境・社会に配慮した企業活動を行なっており、ガバナンス、従業員、コミュニティー、環境、顧客から構成される認証試験の厳しい基準を満たす必要がある)を取るつもりでいる。

WWD:今後の戦略は?

恩地:芸能人やブランドなどとコラボレーションしてマスに対する認知度をアップしたい。また、ギフト需要が高いので、それを伸ばして行きたい。プロダクトを売るだけでは未来がないと思っているので、サブスクリプションサービスなどを通してコミュニティー作りをしていきたい。デジタルメディアでオンラインサロンのようなものを設けて、「グレイ」が好きな顧客同士がつながれる仕組みを作りたい。「グレイ」のデジタルメディアを通してリアルな人と人との出会いを作っていきたい。顧客のリアルな声を吸い上げるという意味でもコミュニティーの価値はある。ブランドと消費者が対等であるべきだと考えるので、消費者と一緒にブランドを作っていたい。ファッション業界を変えるのは新興企業だ。気合いは半端ないし、絶対にあきらめない、そういう気持ちで事業活動をしていきたい。

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カルバン・クラインは日本で今後どうなる キーマンが語る新アパレル事業や既存ブランド

 米PVHコープ(PVH CORP)傘下のカルバン・クラインは、日本でメンズとウィメンズを扱うアパレル部門を今秋立ち上げる。年内には日本公式ECも開設する予定だ。同社は、20年以上にわたって継続してきたオンワード樫山とのライセンス契約を2020年で解消し、ライセンスブランドの「CK カルバン・クライン(CK CALVIN KLEIN))」を20-21年秋冬シーズンで終了させていた。新たに立ち上げるアパレルブランドの狙いや、既存のライセンスブランドを日本でどう運営していくのかを、PVHジャパンの楠龍人シニアバイスプレジデント ゴートゥーマーケットに聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):日本で新たにアパレルブランドを立ち上げるが、なぜ日本で?また他のライセンスブランドは今後どうなる?

楠龍人PVHジャパン シニアバイスプレジデント(以下、楠):日本で立ち上げるのは、多種多様なコミュニティーと大きなビジネスの可能性を備えており、カルバン・クラインが急速に成長できる国だと期待しているから。他のライセンスパートナーとも、厳しいパンデミック状況下でも取り組みを継続できているので、連携を引き続き深めていきたい。

WWD:オンワード樫山時代の顧客はどう引き継ぐ?

楠:お客さまが身に付けたいと思える商品を提供し続けることで、既存顧客に満足してもらえるはず。ブランド価値を高めていくためには、お客さまとの関わりを維持するのが優先事項の一つだ。

WWD:日本市場における各カテゴリーの戦略は?

楠:カルバン・クラインは他のファッションブランドよりも幅広いカテゴリーを持っている。そのためマーケットのチャネルごとのお客さまに最適な商品を届けるには、チャネルごとのマーチャンダイジング戦略が非常に重要だ。例えば、「カルバン・クライン」は主に百貨店で、「カルバン・クライン ジーンズ(CALVIN KLEIN JEANS)」は若者が集まるファッションビルやショッピングモールに出店するなど、ニーズに合ったラインを適切な顧客グループにアプローチしている。マーチャンダイジング戦略に柔軟性を持たせることで、マーケットのニーズに迅速に対応することができる。

WWD:日本で今後打ち出す予定のプロモーションや販売戦略は?

楠:新アパレル事業では、日本の有名タレントを起用したキャンペーンを秋に開始するなど、プロダクトストーリーを伝えるためにさまざまな準備を進めている。日本の若年層の消費者は、純粋なショッピングよりも価値のある体験を重視し、自分と同じ価値観を共有するブランドを好む傾向がある。Z世代とのエンゲージメントや相互作用を最大限に広げるために、価値観を共有することのできるメディアや文化的なキュレーターと関わり、関連性のあるコンテンツを制作していきたい。

WWD:4月に発売したデザイナーのヘロン・プレストンとの協業はまさにZ世代を意識したものだったが、反響は?

楠:初のグローバルコラボレーションとして発売した“ヘロン・プレストン フォー カルバン・クライン(Heron Preston for Calvin Klein)”は、ブランドDNAの幅を広げて新製品の方向性を打ち出し、新規客と既存客との架け橋を作ることができて日本でも大好評だった。今後もブランドや商品ストーリーを伝えるための革新的な方法を常に模索していきたい。

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パリメンズ30年の「リンシュウ」がウィメンズに初挑戦 9月に東京で発表

 パリ・メンズ・コレクションに参加し続けて30年の「リンシュウ(RYNSHU)」は9月3日、2022年春夏ウィメンズ・コレクションを発表する。ウィメンズ・コレクションは、長い歴史の中で初の試み。手掛けるのは、「リンシュウ」の山地正倫周(やまじ・りんしゅう。以下、正倫周)デザイナーと、パートナーでもあるRieco YAMAJI(以下、Rieco)だ。美容業界に精通するRiecoはこれまで、ブランド初のフレグランス“RYNSHU 1217”などに携わってきたが、洋服のクリエイションは初めて。とはいえ、クチュールのような「リンシュウ」のウィメンズ・コレクションには、自身の経験が役だったという。

トップバレエダンサーとして、
舞台衣装の一通りを経験

 Riecoは、5歳でバレエをスタート。小学生の頃から全国大会に出場し、シニアデビュー以降はさまざまな大会でグランプリを獲得した。国際コンクールも含め、フランスやカナダへのバレエ留学など海外経験も豊富だ。バレリーナは、自分で舞台衣装をデザインしたり、チュチュを自力で製作したりが当たり前という。Riecoは、「小学生の頃からデザインをはじめ、高校に入るまでにはデザインから縫製まで一通りができるようになりました。だから、洋服のクリエイションには抵抗がありませんでした。クチュールに近い『リンシュウ』の製作過程を間近で見たときは、自分の過去を思い出したくらいです」という。
 そして近年、「リンシュウ」のクリエイションに参画。美容業界での経験を踏まえ、最初はスズランやムスク、フレッシュローズなどが香るフレグランス“RYNSHU 1217”のローンチに携わった。「最後にセンシュアル(官能的)な香りをまとうことで、スタイルは完成する」との思いを込めた香水のクリエイションは、「リンシュウ」を深く理解する契機になったという。自身のクラフツマンシップと、香水の開発を経て見出した“「RYNSHU」らしさ”の双方を自身のウィメンズ・コレクションにぶつける。

華やかで、心地よく、シンプル。
なかなか形にできないものを形に

 Riecoが考える“「RYNSHU」らしさ”とは、なんだろうか?そう聞くと、「華やかで、心地よく、シンプルなのに、なかなか形にできないもの。それを職人や工場と作り上げるのが、『RYNSHU』です」と語る。自身も正倫周がデザインするメンズ・コレクションのウィメンズサイズを着るようになって、「『RYNSHU』の洋服に袖を通すことで得られる“グッとくる”カンジ」を体感している。その“グッとくるカンジ”を、ヒールを履いたり、赤いリップを塗ったり、香りをまとったりで高揚し、前に進む女性の気持ちと重ね合わせた。「こんな時代だからこそ、『RYNSHU』の洋服が必要だと思っています。それをウィメンズ・コレクションで提供したいんです」と力強い。

パリメンズ30年のベテランが
「新しい目が開いた」

 正倫周は、パリデビュー30年という節目のウィメンズ・コレクションについて、「キリの良いタイミングでの新たな一歩」と話す。「Riecoとのクリエイションは、新しいイメージを作り上げる上で面白い。僕にはない女性ならではの発想、新しい発想に触れ、新しい目が開いた感覚(笑)」と話す。その思いは素直に、正倫周のポートレートの額にサードアイが開眼したイラストに仕上げ、9月3日のファッションショーのインビテーションにプリントした(冒頭のイラスト参照)。
 「RYNSHU」に改名して10年強。この間には自身も改名したり、コロナ禍では発表の場を東京に移したり、時流に即した変化を恐れない。正倫周は、「ウィメンズ・コレクションはもちろん、その発表方法も新しいチャレンジ」と新機軸を楽しんでいる。

PHOTOS:TSUKASA NAKAGAWA
問い合わせ先
RYNSHU
03-3402-5300

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「H&M」に古田泰子が提案したこと 「『トーガ』をそのまま持ち込んだ。その再現性には驚くべきものがあった」

 「H&M」は「トーガ(TOGA)」とのコラボレーション「トーガ アーカイブス × エイチ・アンド・エム」を9月2日に国内外で発売する。「トーガ」は個性的なデザインで知られるブランドであり、発売前の8月31日19時からH&Mが配信するライブイベントのゲストも俳優の滝藤賢一、 アーティストのコムアイ、 タレントの椿鬼奴、 女優のMEGUMIとファッション通で知られる“一癖”ある顔ぶれだ。創業から24年、インディペンデントな貫くデザイナーの古田泰子は、グローバル展開する「H&M」とどのように協業を進めたのか。発売まで2年をかけたというコラボの背景を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):「H&M」との仕事は楽しかった?

古田泰子「トーガ」デザイナー(以下、古田):はい。コミュニケーションが本当にスムースでした。パンデミックが始まる直前にロンドンで立ち上げのミーティングと食事会をしたのですが両チーム合わせて30人くらいだったでしょうか?結構な大所帯ですが、その時点ですでに長く一緒仕事をしているチームの感覚でした。

WWD:コラボレーションはどのようにして始まったのでしょうか?

古田:オファーをもらったときは驚きました。私たちは「H&M」の歴代のコラボレーションデザイナーより規模がずっと小さくて、インディペンデントだから。だから「まずは私たちがH&Mの企業背景を学び、実践したいことをプレゼンさせてください」と提案しました。それを受け入れてもらえるならやりたいと。

WWD:内容は?

古田:「露出のコントロールをするコレクション」です。これまで作ってきたワードローブ、たとえばベーシックなビジネススーツに切り込みを入れて肌を露出して違うものに見せることに特化したいと伝えました。返事はすべてOKでした。

WWD:「穴を開けて露出」は「トーガ」のコアバリューのひとつですが、全部ではないですよね。ウエスタンなど他にもいろいろ側面がある中で「穴」を選んだのはなぜ?

古田:切れ込みを入れたり穴を開けたりするデザインは「破壊的な構築」として捉えられることが多いのですが、私としてはちょっと違うのです。パンク的な発想というより「どう露出するか」の視点が大事です。オーガンジーを一枚重ねて露出をコントロールする提案は「肌の露出のコントロールを誰かに求められてではなく、自分で決める」という姿勢を着る人にもってほしいから。

WWD:「トーガ」は“女らしさとは”とか“女の強さ”を追求し続けていますが、それがまた一歩進みましたね。

古田:着る人をジェンダーの問題から解放したい。ジェンダーレスを一過性の流行のように思っている人がいたらそれは大きな間違いだと伝えたい。スカートに穴を開けるのは「スカートは女性が着るもの」という定義を更新したいからです。

WWD:「自分の肌の露出のコントロールを自分で決める」は刺さる言葉ですが確かに真意は伝わりにくい。理解を一気に深めてもらうには、「H&M」というステージは強力ですね。プレゼンでその真意は伝わったのでしょうか。

古田:感覚的にすぐに理解してもらいました。一過性の流行の話ではない、ことを共有できたのは嬉しかった。

WWD:以前古田さんは代官山より歌舞伎町の方がいろいろな人がいるから観察するのが好きだ、と言っていました。「H&M」は全世界に展開しているから服の向こうにはいろいろ人がいます。そういった背景も企業の強さと関係があるのでは?

古田:あると思います。私自身、「H&M」という企業を理解していなかったから自分なりに調べたのですが、社会的問題に気が付いたときの行動が迅速です。透明性への取り組みも早かった。ウイグルの問題に関してもうやむやにせず発言をしています。「大量生産企業だから」と発言を避けたり、否定したりするとファッション全体を否定することになります。グローバル企業には責任があり、大企業だからこそマイノリティーと向き合う機会が多い。マイノリティーの意見を聞き、取り組めるからこそファッションは面白いと私は思います。

今、モードとは自分の意志や考えを発信すること

WWD:コラボの制作過程でパンデミックを経験して見えたことも多いのでは。

古田:ブラック・ライブズ・マターをはじめ差別や分断といった社会的な問題が芋ずる式に表土に出てきて、それらの多くが世界共通の課題ですよね。家で過ごしていてもネットでそれらのニュースを見聞きして考えさせられました。洋服のブランドも洋服についてだけではなく、社会的なできごとに対してどんな意見を持っているかを世の中に提示するべきだと思います。その意見に共感をしてモノを購買する流れがありますよね。コロナ以前の消費だけの社会にはもう戻らないと思う。

さらに東京オリンピックでは日本と世界との人権問題の意識の違いが如実になりましたよね。いろいろなことが表面化されたことでその違いを知ることができてよかったと思う。ただ、出た問題をそのままに蓋をしちゃいそうな流れもあるので、ここで洋服のブランドには何ができて、どう伝えるのか、考えています。今は、自分を発信することがモードの一端となっていますから。

WWD:と、いいますと?

古田:私自身、「モードとはタブーの要素を引っ張り上げることである」という思考だった時があるけれど、最近は、「自分の意思や考えを発信すること」がモードなのかなと。そういった意味で「H&M」さんのメディアの発信の仕方など、学びは多かったです。

WWD:「トーガ」の魅力のひとつは着る人の体をきれいに見せるパターンでありつつ同時に攻めたデザインであるところ。それは24年の歴史の中で社内のパタンナーや縫製工場と積み重ねてきた成果ですが、そのパターンを「H&M」のパタンナーや工場にゆだねるのは難しくなかったですか?仕様書があればOK?

古田:「トーガ」がここまで来られたのはパタンナーと工場の努力の結晶です。だから仕様書だけでは再現できない。弊社のパタンナーが「H&M」のパタンナーに一型ずつ現物と仕様書を使って説明をしました。ただし世界中で販売するにあたり、バストダーツの長さやサイズレンジが「トーガ」と異なるのでそこはお任せしましました。変更点が生じたときは、どんなに小さなことでも「トーガ」がアプルーバルを出すまでは絶対に勝手には進めないから安心でした。

WWD:私が個人的に「トーガ」の服を捨てられない理由は生地の良さです。普段はオリジナル生地が多いですよね。今回の生地のポイントは?

古田:オリジナルをお渡しして再現してもらいました。再現の正確さは驚くものがありました。それどころか私たちがやりたくてもできなかったことが実現した例もあります。たとえば表裏を完璧に同一に染色したスカーフのプリントがそうです。私たちも20年以上トライしてきたけど難しかった。それを相談したら「できますよ」と簡単に言われちゃって。驚きました。

WWD:52型のラインアップは下着やTシャツ、ドレス、仕事用のスーツがそろい1人の女性のワードローブのようです。従来の「トーガ」ファンからすると好きでもなかなか手が出なかったよりチャレンジングなアイテムにもこの価格なら手が出せそうです。ブルマ(1299円)のや透けている全身透け散るレイヤードアイテム(1万6999円)とか。

古田:そうですね。家の鏡の前でコーディネートを悩んで楽しんでほしいです。

WWD:「H&M」らしさは意識をしましたか?

古田:まったく考えなかったです。それがこれまでのコラボレーションとは違う点ですね。これまでは基本的に相手の利点、「トーガ」にはできないことを取り入れていろいろなことを“一致させてゆく”コラボレーションでしてが、今回はモノづくりに関しては「トーガ」のブランド哲学をそのまま「H&M」に持ち込んでいます。発信の仕方や売り方にはもちろん違いがありますが。

WWD:では2021年らしさについては?

古田:バストやウエスト、肩の位置などには時代性が表れます。いつもはジャストウエストだけど、今は少し緩いほうがいい、肩は少し小さくてもいい、パッドは少し薄い方がなど感覚的で本当にちょっとしたことですが。

「サステナビリティとファッション」をどう定義する

WWD:「サステナビリティとファッション」をどう定義しますか。サステナビリティ先進企業の取り組みに触れて何か思うことがあれば教えてください。

古田:一過性のものではなく常に取り組まなくてはいけないものだと思っています。「トーガ」原宿本店は2007年からヴィンテージショップも併設しています。それは新しい服と古着の組み合わせを考えることを楽しんでほしいから。2010年頃展開していた「トーガ・オッズ&エンズ」は、「半端と端っこ」を意味し、半端物やガラクタ物、既存の大量生産物を集めてそこに加工やデザインを加えることで新しい価値を“再製造”したものでした。これだけ街中にものがあふれているのに、どうして自分たちはゼロから作っているのか、と向き合った結果生まれたものでした。

ただ「トーガ」自体で考えたらやはり“捨てられない服”を作ることが、私たちが実践し続けているサステナビリティだと思う。「無駄を作る側」の人間として、ファッションがデザイン性として必要なものであると伝えたい。今、若い世代は洋服を買うこと自体が罪で、買わないことが一つの意思表示にもなっていますが、罪ではない購買があること、意思表示ができるファッションがあることをちゃんと伝えたい。でもこのまま「トーガ」だけで発信していたら自分が死ぬまでも伝わらないかもしれない。だからコラボレーションができてよかったです。

WWD: 私はサステナビリティ・ディレクターとして、古田さんみたいな意志あるデザイナーが自分の感覚を存分に発揮して選んだ生地、生産方法がすでにサステナビリティなものであり、悩むことなく使える、そんな状態へアパレル業界を早くシフトしたいと思っています。

古田:今回のコラボレーションがまさにそうでした。生地はすべて「H&M」独自のサステナビリティの基準に基づいて選ばれたもので理想的でした。「これは土に還らないからこちらにしてください」という指示も出る。自分たちが同じことをすると価格がグンと跳ね上がったりしますが、企業努力によって安価に抑えられているから気兼ねなく使用できる。サステナビリティについてよく考えられた土壌の上でデザインをできるのは安心でした。

WWD:それは消費者視点でも同様ですね。手に取ったものに対して「これはサステナビリティか」と悩まなくていいのはラクです。

古田:そうですね。ただ、意識することは非常に大切。惰性で買い物をしない、商品の説明をよく読むといった時間の余裕はあってよいと思います。多くの人がそういった意識を持たないと流れは変わらないからこれに関しては“気にしすぎ”はないと思う。デザイナーに対しても「もっと気にしましょう」って言ってもいいと思いますよ。

WWD:「トーガ」と音楽は密接です。今回のコラボレーションに音楽をつけるとしたら何を選びますか?

コラボコレクションに音楽をつけるとしたら

古田:ロンドンでの撮影時にはスティーブ・ライヒ(Steve Reich)の「クラッピング・ミュージック・バレエ」と「カム・アウト」。人間が手をたたいたり、呼吸をしたり古田 撮影現場も、本当に今となったら、そういうのをちょっと意識してやっていたと思います。

WWD:ビジュアルのディレクションも古田さんが行ったのですか。

古田:撮影はロンドンで行い、私はオンラインでつながりながら意見を言いました。メンバー選出のときに、一度お願いしたかったスタイリスト、ジェーン・ハウの希望を出したら一発OKで嬉しかったです。フォトグラファーのジョニーとは何度か仕事をしたことがあり、彼がスタイリストのジェーンが最近よく仕事をしているのを見ていたから、聞いてみたら実現しました。

WWD:撮影場所に選んだ場所は、シティ・オブ・ロンドンにあるヨーロッパ最大の文化施設、バービカン。日常と非日常の間みたいで面白いです。

古田:バービカンの美術館や施設を丸一日、全部貸し切り、60人近いスタッフが参加していました。映画の撮影並みのスケールでたくさん撮影した中からたった一枚を選ぶ。フォトグラファーが「絶対これがいい」と言うのに対して、「H&M」からもものすごく強い指示が出る。相手がトップクラスと言えども、妥協なく強い指示が出ます。トップメゾンのキャンペーンビジュアルの1枚はこうやって作られるんだろうな、と実感しました。インディペンデントな我々とはスケールが違う経験です。

WWD:ビジュアルに対して出したリクエストとは?

古田:日常の風景に溶け込んでいるがオーガニック過ぎず、ダークな世界も映っている写真にしたいと伝えました。

WWD:いろいろなことが“あ、うん”ですね。それはトップブランドのクリエイションに携わる人たちからよく聞く話です。関わるスタッフの見えている景色が同じ、なんでしょう。

古田:そうですね。同じ意識を持っているから話が早かったです。

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セレクトリサイクル「パスザバトン」丸の内店が閉店 事業部長に聞くこれからの“もったいない”ビジネス

 「スープストックトーキョー(SOUPSTOCK TOKYO)」を運営するスマイルズによるセレクトリサイクルショップ「パスザバトン(PASS THE BATON)」丸の内店が9月7日に閉店する。第一号店の表参道店は6月末に閉店。京都店は、市の保護物件ということもあり、継続運営する。「パスザバトン」は個人の思い出の品物や愛用していたが必要なくなったものを使ってくれる人に渡す(バトン)をコンセプトにスタート。有名ブランドの古着から食器棚の奥に眠っていた器まで、さまざまな商品および、一部企業のデッドストックなども販売してきた。2019年からは、「パスザバトン マーケット(以下、PTBマーケット)」と称して、外でいろいろな企業の在庫を販売する市を開催。表参道店と丸の内店の閉店により「パスザバトン」のリブランディングを図る。今後の「パスザバトン」の方向性について、箕浦俊太スマイルズ パスザバトン事業部長に話を聞いた。

WWD:「パスザバトン」をこのタイミングでリブランディングする理由と目的は?

箕浦俊太スマイルズ パスザバトン事業部長(以下、箕浦):2009年に「パスザバトン」が設立されてから、個人レベルのリサイクルは浸透してきた。最近SDGsやサーキュラーエコノミーへの関心が高まり、企業のもの作りや既存の商流を見直すような世の中になった。「パスザバトン」でも、1部は企業のデッドストックなどを販売し、各企業の困りごとを解決する目的もあったが、店鋪内でそれをするには限度を感じていた。そこで19年に、店外で「パスザバトン マーケット(以下、 PTBマーケット)」を開催したところ、手応えを感じ、これからの方向性はこちらだと感じた。

WWD:「パスザバトン」表参道店が閉店、丸の内店も閉店するが、その理由は?京都店は?

箕浦:閉店というよりは、個人レベルのリサイクル事業をやめてみるということ。京都店は市の保護物件を借りていることもあり、京都の文化を世界に発信する場所として継続する。今後は、京都の企業との取り組みを強化していく。日本の伝統や四季の祭りごとを大切にしたいという想いがある。また、表参道店や丸の内店の売り上げの6割以上はリサイクル商品だったが、京都店のリサイクル商品の売り上げは3割と低く、お土産やギフト需要が多いという点からも、出品者に依存することなく維持できるのが理由だ。

WWD:19年に店外で、「PTBマーケット」を開催した理由は?

箕浦:店で企業の困りごとに向き合うには難しいと感じたから。半年に一度、一社の在庫を販売したところであまり意味がないと思った。だから、店の外である規模感を持って開いた。

WWD:個人対個人のリサイクル市場を作ってきたわけだが、それを、企業対個人のマーケットに移行する理由は?

箕浦:企業のもの作りのシステムを見直す必要がある。例えば、ECで返品されたものはB品として販売するしかない企業が多い。それらを消化する手段が「PTBマーケット」だ。企業と消費者両方の活動を見直し、一緒に考える場にしていきたい。

WWD:今まで「PTBマーケット」を4回開催してきたが、参加企業数などの推移は?

蓑浦:1回目は22ブランドが参加した。オンラインで開催した2回目「十勝第百貨店」は20社、同じくオンラインで開催した3回目「デッドストック陶器市 九州編」は17社が参加。4回目は42社が参加し、2日間で約3600人が来場し、2300万円を売り上げた。

販売だけでなく、発信や実験の場に

WWD:「PTBマーケット」における、収益の仕組みは?出展する条件や対象業種などはあるか?

蓑浦:出展料及び売り上げ歩合は、ファッションアパレル・雑貨が5万円で売り上げ歩合が20%、 食物販、お菓子などの軽飲食が2万5000円で売上歩合 25%、フードトラックが出展料 なし で売上歩合 10%。出展条件は「PTBマーケット」のコンセプトを理解し、共感してくれること。また、B品を販売するにあたり、コミュニケーションが取れるスタッフを配置できること。業種は限っていない。気付けていないものがあるかもしれないので、関心があれば連絡して欲しい。

WWD:「PTBマーケット」は企業の倉庫に眠っているB級品や在庫に光を当てるというイベントだが、消費者からの反応は?直近の来場者の性別や年齢層、平均単価は?

蓑浦:出展企業からは、消費者とのコミュニケーションが生まれるという声がある。4回目は入場料を300円に設定した。そうすることにより、お金を払っても入る価値があるかというハードルになった。事前に情報を入手して、「よし、行くぞ」という気持ちで来場してくれた人がほとんどだ。入場者からは、いろいろなブランドなどが一堂に会する場で知らないブランドに出合えたという声があった。4回目の来場者の6〜7割が女性で年齢別では30代が37%、40代が29%、20代が21%。平均客単価は3500円程度だ。

WWD:「PTBマーケット」の出展企業へはどのようにアプローチを行うか?

蓑浦:「PTBマーケット」の公式サイトで募集、受け付けを行う。4回目には企業による視察もあり認知度がアップしていると感じる。SDGsの意識が高まる中、10年以上にわたり各ブランドをリスペクトしながら“もったいない”と向き合ってきたのが「パスザバトン」だ。ある意味、経済効率性から反対の位置にある活動だが、最近では企業から「どこから、どう始めたらいいか」というような相談が増えている。企業によっては「PTBマーケット」を発信や実験の場として捉えてくれており、不要になったものの回収なども行っている。

出展者、来場者、主催者でシステムを変える

WWD:コロナ禍で消費者はコロナ前以上に慎重かつ、より良いものを求める傾向があるが、そのような状況下でのマーケット開催の結果は?

蓑浦:人は買い物好き。それは、コロナ前後で変わらない本能的なこと。4回目の開催で、十分な手応えを感じた。入場料を設けたが、1時間半待って入場する人もあり、イベントに共感してくれる来場者が増えて一体感が生まれた。

WWD:主催者、出展者、消費者、それぞれにおけるマーケットを開催する一番のメリットは?

蓑浦:出展者にとっては、在庫の消化チャネルになりつつある。物作りは続くわけであり、売れ残ったものを「PTBマーケット」で販売し、倉庫が空っぽになれば、また、物作りをする勇気が出る。過去の負を未来につなげるイベントだ。消費者にとっては、いいものを安く買えるので経済合理性にかなっているし、B品の理由などに触れることで消費行動への気づきにつながっている。主催者側としては、コロナ禍でも楽しく開催できた。社会的意義があるし、ビジネスとして成立しているので、これから大きくしていきたい。「PTBマーケット」を軸に“ニューサイクル コモンズ”と掲げて、既存のビジネスシステムを見直して新しいシステムを共感してくれる仲間と築いていきたい。出展者、来場者、主催者、会場、全てがスクラムを組んで、システムを変えていこうという思いがある。また、出展者同士の繋がりや、回収拠点の場を提供することで、偶発的な出合いを提供できればと思っている。いわゆるコミュニティー的な活動で、企業と消費者の垣根をなくすのが目標だ。

WWD:「PTBマーケット」開催予定と今後の戦略は?

蓑浦:年内は、10月9〜10日、12月11~12日に開催予定だ。22年には4~6回、規模を大きくして開催したい。本気で日本国内の倉庫を空っぽにする意気込みがあるので、行政と組んで地方でも行いたいと思う。

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1万人のサステナブルアンバサダーを育成する Z世代を牽引する若きリーダーYouth in focus vol.5

 ミレニアルズやZ世代と呼ばれる若者たちは今何を考え、ファッションやビューティと向き合い、どんな未来を描いているのだろうか。U30の若者たちにフォーカスした連載「ユース イン フォーカス(Youth in focus)」では、業界に新たな価値観を持ち込み、変化を起こそうと挑戦する若者たちを紹介する。連載の5回目は、サステナブルな社会の実現に向けて日本の若者たちと企業をつなげるプラットホームの運営や、企業、自治体、大学を連携させた、サステナブルプロジェクトの企画運営などを行う佐座槙苗SWiTCH代表理事(26)にフォーカスする。

 「人間と自然が共存できる仕組みを作りたい」――佐座は幼少期からそんなテーマが常に頭の中にあったという。高校卒業後は、海外の大学へ進学し、サステナビリティについて学びを深めた。2020年には、環境問題に声を上げる世界の若者たちが「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」(COP26)の疑似版として開催した「モックCOP26」に、グローバルコーディネーターとして参加。世界140カ国の代表学生らと気候変動政策に関する提言をまとめた。

 今年1月には、一般社団法人SWiTCHを立ち上げ、未来の主人公となる20代の若者たちが目指すサステナブルな社会の実現を、大人世代と実現するためのプラットホームの運営や、1万人のサステナブルアンバサダー育成を目指した教育普及活動などを開始した。SWiTCHは、ロンドン芸術大学(University of the Arts London)の学生で構成するデザインチームも抱え、企業とコラボして廃棄物を用いたアートやオブジェなどを製作する。過去には「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「スワロフスキー(SWAROVSKI)」、セントマーチン美術大学(Central Saint Martins)とのコラボプロジェクトも手掛けた。グローバルなネットワークを生かし、サステナビリティ分野における若きリーダーとしてZ世代を率い、日本のサステナビリティの動きを加速させる。

WWD:環境問題に興味を持ったきっかけは?

佐座槙苗SWiTCH代表理事(以下、佐座):これといって大きなきっかけがあったわけではありませんが、子どものころから自然と人間がどうしたら共存できるかに興味がありました。社会問題にも関心が高く、学生時代には発展途上国の支援プロジェクトなどにも積極的に参加しました。振り返ってみると、自分の中で常に世界の人権や環境問題、共存の仕組み作りが大きなテーマだったのだと思います。

WWD:学校教育の影響が大きかった?

佐座:そうですね。私は日本でインターナショナルスクールに通い、高校は東京のアメリカンスクールに通いました。クラスメートが国際的なバックグランドを持っていたので、日々さまざまな国際問題に触れてきました。幼少期は福島の自然に囲まれた環境で育ったので、自然に対する愛情はもちろんありますが、それよりも自然を取り入れた街づくりに関心があります。今後温暖化がさらに加速し、人口も増える中で自然とのバランスがとれた都市開発を実現しなければいけないからです。

WWD:高校卒業後は、海外の大学で環境問題を学んだ?

佐座:はい。カナダのブリティッシュコロンビア大学に進学し、都市と自然環境と経済の関係性について学び、その後ロンドン大学大学院でサステナブル・ディベロプメントコースを受講しました。ロンドン大学大学院は世界でもこの分野で歴史のある学校で、各国の環境省や国際機関から派遣された人など、世界中からハイレベルな学生が集まっていました。文化的背景の異なる人たちと多様性を保ちながらサステナブルな社会を実現する方法を議論でき、非常に良い環境でした。

WWD:世界中から集まった学生たちと意見を交わす中で、日本の現状はどう見えた?

佐座:日本にはたくさんの資源があり、リソースをうまく活用すれば循環型社会をいち早く実現できるポテンシャルがある。しかし、サステナビリティに関する情報量が圧倒的に少ないことが問題でした。去年、やっと脱炭素が取り上げられ、今までどこに向かえばいいのかわからなかった企業も、ひとつの大きな目標に向かってディスカッションが始まりました。循環型社会に向けたルートさえ分かれば、かなりのスピードで取り組めるのではないでしょうか。これから政府や企業、他業種がどうやって連携できるかが勝負だと思います。

WWD:今年1月に立ち上げたSWiTCHの具体的な活動内容は?

佐座:大きな柱は、これからの未来を担う若者と企業をつなげることです。日本のZ世代は、問題意識があっても企業との連携の仕方がわからなかったり、行動できる場が限られていたりする。循環型社会を実現するためには、若者が意思決定の場で発言できる環境を作り、これまでの縦割り式ではない柔軟な社会作りがカギになります。1月には、若者による提言をまとめることを目的に、学生を集めたフォーラムを開催しました。そこで見えてきた最大の課題は、知識のムラです。まずは、サステナビリティに関する知識の底上げを目指し、ゆくゆくはZ世代の環境アンバサダー1万人を育成します。加えて、日本企業に向けたコンサル事業や世界のサステナブルに関する情報発信、国内の事例を海外に発信するお手伝いもしていきます。現在、エレン・マッカーサー財団によるプロジェクトも受講していて、企業でのサステナブルな組織体制の作り方についても学んでいます。あとは、ロンドン芸術大学の学生によるデザインチームがあり、循環型の商品開発やアートプロジェクトも手掛けます。国内では、廃棄衣料品を原料としたファイバーボード“パネコ”の開発に携わりました。

WWD:そのほか、企業と今後取り組みたいことは?

佐座:今、循環型社会を体験できる展示スペースの製作を進めています。循環型社会とは、ゴミと汚染を排出しないデザイン、廃棄物を循環させ、素材として使い続けること、自然環境を再生させることの3軸から成り立ちます。さまざまな企業と連携して、この3軸を理解するための具体的な事例を集めた空間を作りたい。商業施設やカフェなどで仕掛けたいですね。ファッション業界に関しては、現在は服から服を作ることに集中していますが、“パネコ”のように服から違った価値が生まれる技術がもっと発展してほしい。マテリアル開発にも協力したい。

WWD:すでにたくさんのプロジェクトを手掛けているが、佐座さんのモチベーションは?

佐座:アプローチは確かにさまざまですが、私が成し遂げたいことは循環型社会に向けた基盤を作ることと、そのための教育の場を提供すること。まずはサステナビリティの情報や知識を一定のレベルに引き上げないと、次のステップに進めません。サステナブルな社会が、自分にとっても社会にとってもベターな選択肢であることを広めたいです。

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スノーピーク アパレルがコットン循環プロジェクト始動 ジーンズに込めた自然保護への“当たり前”

 スノーピーク(SNOW PEAK)は、アパレル事業でコットン製品を循環させる新たな取り組み“アップサイクル コットン プロジェクト”を2021-22年秋冬シーズンにスタートし、第1弾としてジーンズを発売した。シルエットはレギュラーとスリムの2型で、インディゴとブラックの2種類。価格は税込1万9800円で、サイズはメンズがM〜XXL、ウィメンズがXSとSをそろえる。

 同プロジェクトは“使い捨てではなく循環する洋服を”という考えのもと、タキヒヨーとタッグを組んで循環システム“ノーウエイスト(NO WASTE)”を採用。同システムはアパレル生産時の生地の裁断くずを粉砕して繊維に戻し、再び糸や生地に再生する仕組みで、“アップサイクル コットン プロジェクト”ではスノーピークの店舗に設置するボックスで回収したコットン製品を商品に再生する。コットン製であれば他社製品でも回収を受け付ける。スノーピークは企業全体で環境に配慮した取り組みに積極的で、アパレルでは2014年の事業立ち上げ当初から現社長の山井梨沙が中心となってさまざまなアクションを起こしてきた。19年に立ち上げた日本環境設計との再生ポリエステルやリサイクルダウンのプロジェクトに続き、いよいよアパレルで最も身近な素材であるコットンの循環に挑む。アパレルのキーマン2人に、その背景や思いを聞いた。

スノーピークが届けたい“当たり前”

WWD:“アップサイクル コットン プロジェクト”立ち上げの経緯は?

坂田智大エグゼクティブクリエイター(以下、坂田):日常からキャンプまで、老若男女が一番使っている素材がコットンだ。「スノーピーク アパレル」にとっても、コットンは毎シーズン糸から選ぶほど大事な素材。自然との距離感が近いスノーピークらしいコットンって何だろうと改めて考えたときに、リサイクルや循環という答えにたどり着いた。アイテムを製造するだけではなく、循環する流れも作りたかった。

清水友香里マネジャー(以下、清水):アパレル事業の立ち上げ当初から、オーガニックコットンの使用や環境負荷を考慮したはっ水溶剤を使うなど、自然環境への取り組みは常に意識してきた。2019年には日本環境設計と組み、不要になった服やテントをポリエステルに再生してホールガーメントのニットウエアを作る“ブリング(BRING)”も始めた。ただ、私たちにとって環境に配慮することが当たり前すぎて、世間にその思いを伝えきれていなかった。だから今回のコットンを循環させる取り組みでは、自然の大切さや私たちの考えを積極的に伝えるためプロジェクトとして発信していく。

WWD:タキヒヨーとの協業を決めた理由は?

坂田:タキヒヨーが、グアテマラでファストファッションブランドがデニムを安価で生産する際の落ち綿を反毛し、糸に戻して素材にする“ザ・ニューデニムプロジェクト(THE NEW DENIM PROJECT)”を行っていた。それをコットンでやりましょうと協力を依頼し、タキヒヨーの循環システム“ノーウエイスト”で実施することになった。同社は250年以上続く繊維商社で、生地に対する知識や技術、ノウハウを持っており、イメージの共有がしやすいのも決め手だった。スノーピークがアイテムを企画し、タキヒヨーに生地から製造までを一貫して担う仕組みだ。

WWD:第1弾のアイテムはなぜジーンズに?

清水:デニムは素材として耐久性があり、スノーピークの顧客であるアウトドア層にもなじみがある。それに、老若男女を問わず着用できるアイテムでもある。デザインはシンプルにし、シルエットはレギュラーとスリムを用意して幅広い客層に届けることを意識した。プロジェクトを浸透させるには、まずは商品がたくさんの人の手に渡らないといけないので、アイテムやシルエット、価格設定にもこだわった。

坂田:リサイクル素材や循環システムは、各工程にどうしても人の手が加わるので価格が高騰しがちだ。でも上代も含めて日常に溶け込むアイテムじゃないと、アップサイクルというつじつまも合わなくなる。タキヒヨーと工場の協力もあって、この価格が実現できた。

WWD:特にこだわった点は?

坂田:生地のストーリーを大切にしたかった。例えば、誰が何年前に使ったのか分からない、ある意味で粗野な糸を価値として捉え、ネップ感がある雰囲気のいいデニムとして生まれ変わらせたかった。ムードはもちろん、リサイクルしたコットンなので肌なじみがいいし、8番手の太い糸を使っているので色落ちがきれいに出る。履き込んでいくうちに手織りの生地のような柔らかさになるのも、この原料ならでは。グアテマラで糸を作り、岡山でロープ染色と織りの工程を経ており、排水に関してはこれから詰めていく段階ではあるものの、現段階では満足のいく生地に仕上がった。

トラブル続きでも諦めない社風

WWD:プロジェクトに期待していることは?

清水:環境に対してはもちろん、スノーピークの店頭でコットン製品を回収することに意味がある。スタッフがお客さまにプロジェクトの思いを直接話せるのが大きい。これまで私たちと接点がなかった方々が、不要なコットン製品を持って来店し、スノーピークを感じてもらったり、コミュニティーが広がるきっかけになったりするかもしれない。

坂田:回収したコットン製品を粉砕するまでに、付属する金属を仕分けする作業が必要で、これを身障者の福祉施設に仕事として依頼する。このようにさまざまな観点から持続可能な取り組みとして継続していきたい。

WWD:“ブリング”でも店頭でテントや服を回収しているが、成果は?

坂田:回収は上手くいっているが、ポリエステルはコットンよりも膨大な量を回収しないと自社回収分の再生ポリエステルのみで製品化するのが難しかった。だから“ブリング”では、僕たちが回収したポリエステルも一部しか使えていないのが現状だ。それに自社で完結する難しさも分かった。新潟の本社にホールガーメントの機会を1台導入して再生ポリエステルの製品を製造しているものの、1日に生産できるのは8着のみ。糸も撚糸から工夫する必要があるので、試行錯誤を繰り返している。ほかにもやってみて分かるトラブルが多い。

清水:それでも続けるのがスノーピークのいいところ(笑)。山井社長の性格でもあるが、例え市場への供給量が少なかったとしても諦めずにやり続けて新しい発見につなげていく。“アップサイクル コットン プロジェクト”も定番として今後も継続し、22年春夏にはTシャツやスエットも登場するので、どこかのタイミングで自社のみで全てが循環する仕組みにしたい。

坂田:コットンは回収量に対してどれぐらい製品化したのか可視化しやすいし、原料から顧客と一緒に作っていく仕組みも楽しいはず。第1弾のジーンズは総生産量1000本に対し、コットン製品を2.7トン回収する必要があった。最初はグアテマラの糸も使ったが、将来的には自社回収分の原料のみで生産したい。

WWD:社内全体で環境への取り組みを進める中で、アパレル事業で達成したい目標は?

清水:社員全員がまず言葉で説明できる状態にしなければいけない。先ほど言った通り、スノーピークのアパレル事業にとっては環境に配慮したもの作りが当たり前の感覚だったが、世間にとっては当たり前じゃなかった。だから、これまでの私たちの取り組みを伝えきれていなかった。社員もお客さまにも自分ごと化してもらうために、発信していくことが大事だと思っている。

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スノーピーク アパレルがコットン循環プロジェクト始動 ジーンズに込めた自然保護への“当たり前”

 スノーピーク(SNOW PEAK)は、アパレル事業でコットン製品を循環させる新たな取り組み“アップサイクル コットン プロジェクト”を2021-22年秋冬シーズンにスタートし、第1弾としてジーンズを発売した。シルエットはレギュラーとスリムの2型で、インディゴとブラックの2種類。価格は税込1万9800円で、サイズはメンズがM〜XXL、ウィメンズがXSとSをそろえる。

 同プロジェクトは“使い捨てではなく循環する洋服を”という考えのもと、タキヒヨーとタッグを組んで循環システム“ノーウエイスト(NO WASTE)”を採用。同システムはアパレル生産時の生地の裁断くずを粉砕して繊維に戻し、再び糸や生地に再生する仕組みで、“アップサイクル コットン プロジェクト”ではスノーピークの店舗に設置するボックスで回収したコットン製品を商品に再生する。コットン製であれば他社製品でも回収を受け付ける。スノーピークは企業全体で環境に配慮した取り組みに積極的で、アパレルでは2014年の事業立ち上げ当初から現社長の山井梨沙が中心となってさまざまなアクションを起こしてきた。19年に立ち上げた日本環境設計との再生ポリエステルやリサイクルダウンのプロジェクトに続き、いよいよアパレルで最も身近な素材であるコットンの循環に挑む。アパレルのキーマン2人に、その背景や思いを聞いた。

スノーピークが届けたい“当たり前”

WWD:“アップサイクル コットン プロジェクト”立ち上げの経緯は?

坂田智大エグゼクティブクリエイター(以下、坂田):日常からキャンプまで、老若男女が一番使っている素材がコットンだ。「スノーピーク アパレル」にとっても、コットンは毎シーズン糸から選ぶほど大事な素材。自然との距離感が近いスノーピークらしいコットンって何だろうと改めて考えたときに、リサイクルや循環という答えにたどり着いた。アイテムを製造するだけではなく、循環する流れも作りたかった。

清水友香里マネジャー(以下、清水):アパレル事業の立ち上げ当初から、オーガニックコットンの使用や環境負荷を考慮したはっ水溶剤を使うなど、自然環境への取り組みは常に意識してきた。2019年には日本環境設計と組み、不要になった服やテントをポリエステルに再生してホールガーメントのニットウエアを作る“ブリング(BRING)”も始めた。ただ、私たちにとって環境に配慮することが当たり前すぎて、世間にその思いを伝えきれていなかった。だから今回のコットンを循環させる取り組みでは、自然の大切さや私たちの考えを積極的に伝えるためプロジェクトとして発信していく。

WWD:タキヒヨーとの協業を決めた理由は?

坂田:タキヒヨーが、グアテマラでファストファッションブランドがデニムを安価で生産する際の落ち綿を反毛し、糸に戻して素材にする“ザ・ニューデニムプロジェクト(THE NEW DENIM PROJECT)”を行っていた。それをコットンでやりましょうと協力を依頼し、タキヒヨーの循環システム“ノーウエイスト”で実施することになった。同社は250年以上続く繊維商社で、生地に対する知識や技術、ノウハウを持っており、イメージの共有がしやすいのも決め手だった。スノーピークがアイテムを企画し、タキヒヨーに生地から製造までを一貫して担う仕組みだ。

WWD:第1弾のアイテムはなぜジーンズに?

清水:デニムは素材として耐久性があり、スノーピークの顧客であるアウトドア層にもなじみがある。それに、老若男女を問わず着用できるアイテムでもある。デザインはシンプルにし、シルエットはレギュラーとスリムを用意して幅広い客層に届けることを意識した。プロジェクトを浸透させるには、まずは商品がたくさんの人の手に渡らないといけないので、アイテムやシルエット、価格設定にもこだわった。

坂田:リサイクル素材や循環システムは、各工程にどうしても人の手が加わるので価格が高騰しがちだ。でも上代も含めて日常に溶け込むアイテムじゃないと、アップサイクルというつじつまも合わなくなる。タキヒヨーと工場の協力もあって、この価格が実現できた。

WWD:特にこだわった点は?

坂田:生地のストーリーを大切にしたかった。例えば、誰が何年前に使ったのか分からない、ある意味で粗野な糸を価値として捉え、ネップ感がある雰囲気のいいデニムとして生まれ変わらせたかった。ムードはもちろん、リサイクルしたコットンなので肌なじみがいいし、8番手の太い糸を使っているので色落ちがきれいに出る。履き込んでいくうちに手織りの生地のような柔らかさになるのも、この原料ならでは。グアテマラで糸を作り、岡山でロープ染色と織りの工程を経ており、排水に関してはこれから詰めていく段階ではあるものの、現段階では満足のいく生地に仕上がった。

トラブル続きでも諦めない社風

WWD:プロジェクトに期待していることは?

清水:環境に対してはもちろん、スノーピークの店頭でコットン製品を回収することに意味がある。スタッフがお客さまにプロジェクトの思いを直接話せるのが大きい。これまで私たちと接点がなかった方々が、不要なコットン製品を持って来店し、スノーピークを感じてもらったり、コミュニティーが広がるきっかけになったりするかもしれない。

坂田:回収したコットン製品を粉砕するまでに、付属する金属を仕分けする作業が必要で、これを身障者の福祉施設に仕事として依頼する。このようにさまざまな観点から持続可能な取り組みとして継続していきたい。

WWD:“ブリング”でも店頭でテントや服を回収しているが、成果は?

坂田:回収は上手くいっているが、ポリエステルはコットンよりも膨大な量を回収しないと自社回収分の再生ポリエステルのみで製品化するのが難しかった。だから“ブリング”では、僕たちが回収したポリエステルも一部しか使えていないのが現状だ。それに自社で完結する難しさも分かった。新潟の本社にホールガーメントの機会を1台導入して再生ポリエステルの製品を製造しているものの、1日に生産できるのは8着のみ。糸も撚糸から工夫する必要があるので、試行錯誤を繰り返している。ほかにもやってみて分かるトラブルが多い。

清水:それでも続けるのがスノーピークのいいところ(笑)。山井社長の性格でもあるが、例え市場への供給量が少なかったとしても諦めずにやり続けて新しい発見につなげていく。“アップサイクル コットン プロジェクト”も定番として今後も継続し、22年春夏にはTシャツやスエットも登場するので、どこかのタイミングで自社のみで全てが循環する仕組みにしたい。

坂田:コットンは回収量に対してどれぐらい製品化したのか可視化しやすいし、原料から顧客と一緒に作っていく仕組みも楽しいはず。第1弾のジーンズは総生産量1000本に対し、コットン製品を2.7トン回収する必要があった。最初はグアテマラの糸も使ったが、将来的には自社回収分の原料のみで生産したい。

WWD:社内全体で環境への取り組みを進める中で、アパレル事業で達成したい目標は?

清水:社員全員がまず言葉で説明できる状態にしなければいけない。先ほど言った通り、スノーピークのアパレル事業にとっては環境に配慮したもの作りが当たり前の感覚だったが、世間にとっては当たり前じゃなかった。だから、これまでの私たちの取り組みを伝えきれていなかった。社員もお客さまにも自分ごと化してもらうために、発信していくことが大事だと思っている。

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松本穂香が腐女子を熱演 「グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた⼄⼥の記録ッッ」とは

 女優の松本穂香が腐女子を熱演するWOWOWオリジナルドラマ「グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた⼄⼥の記録ッッ」が話題になっている。シリーズ累計発⾏部数8500万部を突破する国⺠的格闘漫画「グラップラー刃牙」(板垣恵介著、秋田書店)を人生で初めて読んだBL(ボーイズラブ)研究家の⾦田淳⼦が、「この作品、濃厚BLなのでは?」と発想したことから生まれた規格外エッセイを原案にしたドラマだ。同エッセイ「『グラップラー刃牙』はBLではないかと1日30時間300日考えた⼄⼥の記録ッッ」(⾦田淳⼦著、河出書房新社)の世界観そのままに、妄想に取り憑かれた一人の“BL愛好家”あかね(松本穂香)の壮絶な闘いの記録になっている。ここでは主演を務める彼女に、作品の魅力と「WWDJAPAN」読者へのメッセージを聞いた。

「WWDJAPAN」(以下、WWD):主演の話がきた時の感想は?

松本穂香(以下、松本):初めて題名を聞いた時、「何が何?」と理解が追いつかず笑ってしまったのを覚えています。題名から面⽩い予感がにじみ出ているし、監督は⼭岸聖太さんだし、「これは絶対面⽩い!」とワクワクしたのを覚えています。

WWD:脚本を読んだ時は?

松本:「すごくしっちゃかめっちゃかな世界観!」と思いました。もちろんいい意味で。「BL好きな⼄⼥の頭の中を具現化すると、こんなにもカラフルな世界になるのだなぁ」と楽しい気持ちになりつつ、膨⼤なセリフ量に圧倒されました。⼤変な撮影ではありましたが、とにかく楽しかったです。

WWD;撮影現場の雰囲気は?

松本:キャラが濃い役ばかりだったので、見ているだけで面白かったです。1カ月で全話撮ったので過酷でしたが、スタッフさんも含めて皆でいじり合いながら笑いの絶えない撮影だったので、それを感じさせないくらい楽しかったです。

WWD:撮影で大変だったことは?

松本:妄想シーンが多いのですが、とにかく妄想セリフが長いので、最初から最後まで一連で撮るプレッシャーがありました。噛んだら終わりという……。あと役の設定で、監督からは「刃牙のことを語るときは“じめっとした感じ”を入れてほしい」と言われました。「今かわいい感じだったので、もっと気持ち悪くいきましょうか」みたいな感じで(笑)。なので、笑うときもニターっとするとか、今まで意識したことのない表現を意識しました。でも、撮影が進むにつれて違和感がなくなっていきました。

WWD:自分にもオタクの要素はある?

松本:私にはないと思うのですが、学生時代に演劇部に入っていて、まわりがアニメ好きの子が多かったです。身近にいっぱいいたので、今回の撮影の際も「知らない世界ではない」と感じました。

WWD:松本さん演じる児島あかねはBLオタクですが、ルックスも個性的ですね。

松本:衣装や髪型で役柄を印象づける、というのはありますね。あかねはいつも重々しいバッグを持っていて、何が入っているのか不明なのですが、それがあかねの性格を表しているんです。あとパッツンの前髪も特徴的で、監督いわく「それが心の壁、シャッターを下ろしている表現」なのだそうです。あと「刃牙」の読者なら分かるネタで、“ごみ袋のような服”を着ている空手家のキャラがいるのですが、衣装さんが本当にごみ袋から作られたので、「WWDJAPAN」の読者の方にも注目してほしいです。

WWD:自身のヘアスタイルや美容、ファッションに対するこだわりは?

松本:髪は去年の夏にバッサリと短くしたので、当時は今よりも短かったです。一度ショートにすると、伸ばすのが面倒になりますね。特に「ショート似合うね」とか言われちゃうと、もうしばらくは伸ばせないです。肌はちょっとしたことで荒れてしまうので、フルーツを意識的にとるなど、インナービューティを意識するようになりました。メイクに関しては、保湿をしっかりして、メイクに入るまでの下地作りを大事にしています。ファッションは、普段は古着屋でシンプルな服を買うことが多いです。ワンピースが好きですね。でも家では中学生のときのジャージをいまだにはいていて、そこはあかねっぽいですね(笑)。

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名古屋最強の大型モールに搭載、話題のEC支援サービスの裏側をキーマン2人に直撃

 IT/DXコンサルのハブアンドスポーク(遠藤洋彦社長、東京都品川区)と、上場企業クルーズ子会社で大手ECモール「SHOPLIST」を運営・構築するクルーズECパートナーズ(工藤武尊社長、東京都品川区)など4社は、店頭の在庫販売を可能にするショッピングセンター(以下、SC)などの事業者向けECサービス「SCEC」を開発した。館内物流を担当する佐川急便を中核としたSGホールディングスグループのワールドサプライや、SCのコンサルティング全般を担当するトリニティーズとも連携し、7月12日からプラットフォーム提供をリリースした。「SCEC」を使用したECシステムの第一弾として、愛知県名古屋市の「mozoワンダーシティ」は8月15日、「mozoPLUS」をグランドオープンした。SCECの特徴やmozoワンダーシティにおける取り組みなどについて、ハブアンドスポークの遠藤洋彦社長と、クルーズECパートナーズの工藤武尊社長に聞いた。

ハブアンドスポーク、
クルーズECパートナーズら4社が
共同で提供

WWDジャパン(以下、WWD):「SCEC」とはどのようなサービスか。

遠藤洋彦(以下、遠藤):特徴は「超大型ECモールでの構築・企画・運用ノウハウを生かした、オン・オフラインでの細やかな業務/システム設計」「SC向けのモール型ECシステム・サービス」「店頭スタッフへの負荷軽減を第一に」「新たな生活様式への対応」「店頭在庫の24時間365日稼働」の五つだと考えている。まず一つ目については、自身の前職でのOMO経験と、SHOPLISTをはじめ相当数の実績があるクルーズECパートナーズの構築・運用ノウハウを盛り込んでいる。

工藤武尊(以下、工藤):一般的なECは、単一ブランドが構築したものやマーケットプレイスのような形のものがほとんどで、SCECのようにオフラインのSCモールをオンライン上に再現したような事例はほとんどない。SCECはオンラインとオフラインをまたいだモール展開が可能で、館内EC物流から自宅配送までを含めた物流サービスになっている。

WWD:大型ECモールについての知見が生きたのは、具体的にどのような部分か。

工藤:一例としてWMS(在庫管理システム)がある。今回のように店頭在庫を用いた超大型のECモールを考える場合、受注以降の在庫管理とピッキングなどのオペレーションをどのように管理運用していけるか、が念頭にあった。そこに対して、われわれはmozoワンダーシティ全体を一つの多層フロアの倉庫のように見立て、WMS上でのロケーション管理を館内のテナント区画に置き換える発想転換を取り入れた。例えば、テナント区画の館内移動があれば、物流倉庫における当該テナントのラックや巣箱(たたみ商品)が別ロケーションに移った状態と同じように考えた。これは自社物流を手掛けるクルーズならではの発想だった。

店舗の販売員のためEC販売の
仕組みを最適化
大型ECモールのノウハウを
フル活用

WWD:大型のショッピングモールのみを対象としてるのか。

遠藤:実はターゲットは非常に幅広い。道の駅のように、数店舗程度の事業複合体でも利用可能だ。地下街や商店街、ローカルのチェーン店を運営している企業などにも利用してもらいたいと考えている。商店街のような形になっていなくても、1キロ圏内に散らばっている商店をまとめてECモール形式を取ることも可能だ。

WWD:二つ目の特徴である、店頭在庫型のECシステムについて教えてほしい。

遠藤:一般的な日本の小売事業者では、店頭とオンラインで在庫が分かれているところが多い。そのため、企業全体では在庫があるのに、問い合わせや購入が偏在した販売チャネルでは在庫がなくなり、販売機会をロスすることが起こりやすい。この問題は、オンライン在庫を店頭と一体化すれば解消できると思われがちだが、全社的な在庫の一体化にも課題が多く、成功事例は限定的だ。いまだにEC事業部と店舗事業部で在庫の取り合うような企業もある。リアル店舗を活用したECサイトの場合には、さらに店頭スタッフのオペレーション変更も加わる。在庫を一体化すると、ECシステムへの商品情報以降の在庫登録、梱包出荷、返品・返金対応などの煩雑な業務が店頭スタッフに加わる。EC経由で販売した場合の、店頭スタッフへの評価も難しい部分だ。「SCEC」では、そういった点を考慮した設計になっている。店頭スタッフへの負荷を低減するため、店頭に立っていても使いやすいようにスマホに特化したUI、UXにしている。また、店頭スタッフが行う操作は商品登録と受注確定に絞っている。

工藤:重要なポイントは、ECの受発注システムを、店頭スタッフが扱いやすいように最適化したこと。ECモール運営企業による自社EC支援は数多くあるものの、当社の特徴は、これまで培ったノウハウはもちろん、所有するアセットもフル活用してECシステムを構築する、という考え方にある。ECに関して経験豊富なエンジニアを抱えており、今回の「SCEC」では店頭スタッフを起点にECシステムを再構築した。人がシステムに合わせるのではなく、システムをオペレーションに合わせて最適化している。その点は、導入先のmozoワンダーシティにも高く評価されている。

ECだから店頭在庫を24時間365日稼働、
販売員の作業もスマホ操作でラクラク

WWD:四つ目の「新たな生活様式への対応」とは。

遠藤:通常の自宅配送はもちろん、店舗での受け取り、コロナ禍でニーズの増えているSC館内の受け取りカウンターや受け取りロッカーのユーザー選択もシステム/業務設計ともに対応している。

WWD:最後の「店頭在庫の24時間365日稼働」とは。

遠藤:ECでは当たり前のことではあるが、24時間365日、SC各テナントの店頭在庫をフル活用できるのは大きい。コロナ禍では、店頭在庫の完全な非稼働在庫化などの事態も発生した。全館休館となるケースや、定常的に閉店時間を早める店舗が多くなっているので、店頭スタッフが販売業務の合間や、閉店後〜以前の営業時間までEC関連業務をすることで、店舗の生産性を上げることにもつながる。

WWD:開発期間と導入コストは?

工藤:国内SCの大部分は、長い歴史と大きな実績があり、館としてのアイデンティティーがしっかりと形成されている。そのためデザイン/サービスの独自要件が多くなる。そのため金額に関して一概には言えないが、それでも開発期間について平均的には半年程度と、スピード感を持った導入が可能だ。独自要件が少ないケースであれば、最短で3カ月の導入も可能だ。

遠藤:外部システムとの連携もスムーズにできる。例えば、オフラインのモールで既に使っている従業員管理システムや決済システム、会員システムなどと容易に連携できる。既存のポイントシステムと連携してオンラインでも使えるようにする、といったことも可能だ。

中京地区最強の大型モール
「mozoワンダーシティ」がSCECを
導入したワケ

 大型モールとしては初の店頭連動型ECを導入したのが、mozoワンダーシティを運用する三菱商事UBSリアルティだ。同社は日本最大級の総合型REIT(不動産投資信託)である日本都市ファンド投資法人の資産運用会社であり、都市を中心に約100カ所の商業施設を手掛ける、日本では異色のデベロッパーだ。日本初の本格的なリアル店舗連動型のネット通販モールはどのようにして生まれたのか。導入をリードした大島英樹・三菱商事UBSリアルティ都市事業本部 運用一部長は、「ショッピングモールにとって、ECをどう活用すべきなのかはこの数年の大きな課題だった。『SCEC』をベースにした『モゾプラス』は、店頭の在庫を活用しつつ、販売スタッフの負担をできるだけ軽減する設計にできたことが何よりも大きかった」と語る。「一口にショッピングモールといっても規模や立地などによって必要となる要件もさまざまだが、『SCEC』には、そうしたことにもスピーディーかつ柔軟に対応してもらえた。導入後のニーズや課題に柔軟に対応しながら、今後はmozoワンダーシティにとどまらず、当社で運用する他の商業施設にも適用を検討していきたい」。

問い合わせ先
ハブアンドスポーク
クルーズECパートナーズ
pr_group01@hubs-poke.jp

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「学生の頃からホテル好き」小山薫堂に聞くこれからのホスピタリティービジネス

 今年5月、東京・谷中にオープンしたホテル「ヤナカソウ(YANAKA SOW)」は、“住む”と“泊まる”の間、地域の人々や文化に触れ合う滞在型の新感覚ホテルだ。同ホテルは、ブランドデザイン企業であるオレンジ・アンド・パートナーズ(以下、オレンジ)とエアービーアンドビー(AIRBBNB以下、エアビー)がタッグを組んでプロデュース。コミュニティーに溶け込む民泊の楽しさを感じられるホテルだ。オレンジを率いるのは脚本家・放送作家、パーソナリティーなど多方面で活躍する小山薫堂。小山オレンジ社長に、「ヤナカソウ」について、今後のホスピタリティービジネスなどについて聞いた。

WWD:ホテルブランドを立ち上げようと思ったきっかけは?

小山薫堂オレンジ社長(以下、小山):以前からホテルを作りたいという思いがあった。高校の頃からホテルが好きで、大学受験のために熊本から上京して憧れのホテルに泊まるのが好きだった。大学時代はバブルだったので、当時できたばかりの「赤坂プリンスホテル」のスイートルームを借りて20人くらいでパーティーをしたこともある。30代後半に、実家が栃木・日光でホテルを運営している知人に、そのホテルに宿泊した意見を聞かれ、宿泊客の立場で話をしたところ、アドバイザーになってくれと言われて、しばらく携わったことがある。また、テレビ番組「東京ワンダーホテル」を見て、さらにホテルに興味が湧いて、いつかホテルを運営してみたいと思った。「エアビー」や積水ハウス不動産東京との出合いがあり、このプロジェクトが始まった。

WWD:コロナ禍でのオープンになったが?

小山:コロナ禍で予約が入らないだろうと想定していたが、ワーケーション目的やパーティーの貸し切りなどの予約が入っている。コロナ禍で旅行客は少ないが、宿泊だけでなく、別の用途があると感じている。「ヤナカソウ」は、滞在型ホテルで、街歩きを楽しんでもらう拠点のようなもの。谷中という場所は、東京にいながら、旅人の気分で遊べる場所。だから週末気分を変えるのに過ごすのにもぴったりだ。「ヤナカソウ」が地域の活性化に役立ってくれればうれしい。

WWD:どのようなターゲットを想定していたか?

小山:当初はインバウンド客を想定していたが、コロナ禍なので、東京都民の皆さんに泊まってほしい。部屋ごとに個性があるし、小旅行気分になれるはずだ。

WWD:谷中の後にオープンするとしたら?

小山:個人的には、葉山や逗子などの湘南が面白いし、このホテルのコンセプトに向いていると思う。特に葉山や鎌倉は街のサイズ感をはじめ、町やそこに住む人の面白さを掘り下げられる場所。あとは、瀬戸内もいいと思う。広島・尾道の瀬戸田に、「アマンリゾーツ(AMAN RESORTS)」の設立者であるエイドリアン・ゼッカ(Adrian Zecha)による「アズミ(AZUMI)」という旅館がある。瀬戸田の町自体、特に何かがあるわけではないが、この旅館ができたことで、町が変わる気がする。

WWD:ホテルのコンセプトや内装は?コラボレーションしたい建築家は?

小山:ホテルを作る土地によって変わる。ロケーション次第で、海辺の物件や古民家などさまざまな選択肢がある。商店街の空き家を改装したり、マンション一棟というケースもあるだろう。

WWD:「ヤナカソウ」のコンシェルジュのような役割の谷中ディガーは地域のコミュニティーとどのようにつながり、地域の活性化に貢献するか?

小山:谷中ディガーの役割は、地元の人が近すぎて見えないその土地の魅力を見つけること。外の視点から、その地の宝を掘り起こし、何を掛け合わせたら面白い化学反応が生まれるかを考えるのが仕事だ。誰にでも同じ提案をするのではなく、人によって紹介する場所を変えるべき。だから、人を見極めるセンスも大切。ファッションや持ち物から、その人がどういうものが好きか考えて提案するべき。毎回同じ提案だったら、ガイドブックや雑誌の情報で構わない。

一族の価値観が反映されたホテルが面白い

WWD:さまざまなタイプのホテルができているが、今後ホスピタリティービジネスはどのように変化していくと思うか?

小山:多様化していくだろう。ラグジュアリーを突き詰めたタイプのホテルや約20平方メートルのシティーホテルと呼ばれるビジネスホテルなど、さまざまな需要がある。例えば、部屋は20平方メートルでもホテルの中には大きな浴場があるとか、ベッドの寝心地が良いとか、こだわる点は幾つもあるはずだ。宴会などで稼いできた古いタイプのホテルがどう変わっていくか興味深い。料金設定と宿泊客の満足度のバランスも重要だ。ホスピタリティー・ビジネスの理想は「フォーシーズンス(FOUR SEASONS)」などだろうが、一方で、親子3代で運営するようなホテルがあって欲しいと思う。旅館はあると思うが、ホテルは思い浮かばない。一族の価値観で運営される小規模のホテルがあると面白い。イタリア・ベネチアなどでは20部屋程度のホテル、いわゆるオーベルジュがあり親子で守っている。そんなホテルが日本にもできるといいなと思う。例えば、イタリアンレストラン「キャンティ」の上にオーベルジュができるとか・・・。

夢は売れない詩人

WWD:放送作家、脚本家、社長、大学教授と幅広く活躍しているが、仕事の切り替えはどのように行なっているか?コロナ禍でオン・オフの切り替えに苦労する人も多いと思うが、アドバイスは?

小山:直近の締め切りのものからこなして切り替えていく。オンオフの切り替えはしない方がいい。私の場合はオン・オフの区別がない。通常、オンは苦しくて、オフは楽しいと思うと思うが、仕事も楽しむべきだ。当然苦しさを伴うのは仕方がない。オンの中にオフを求めながら作り、純粋なオフは作らないようにしている。

WWD:今後チャレンジしてみたいことは?

小山:詩集を作りたい。私は詩人になりたかった。中原中也の刹那的な生き方に憧れて、中学生のときに冊子を作ったことがある。タイトルは「孤独感」だった。中原も売れない詩人で、死後に有名になった。だから売れなくてもいいと思っている。WOWWOWの「W座からの招待状」の中で500本詩を作っていて、それに好きなものを追加して、売れない詩集を出したい。売れない方が価値があると思っている。

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グローバルボーイズグループINIが着こなす「アディダス2021秋冬コレクション」 ここでしか見られないオフショットも

 「アディダス(ADIDAS)」は、快適性と着こなしやすさを重視した「アディダス2021秋冬コレクション」を発売する。8月下旬に第一弾を、10月上旬に第二弾を順次販売する。同コレクションのイメージキャラクターには、今年6月にオーディション番組から誕生したボーイズグループINI(アイエヌアイ)を起用。ビジュアルではそれぞれのメンバーが自分らしい着こなしを披露し、アイテムの魅力をさらに引き出している。ここではコレクションの特徴や着こなしのポイント、撮影現場のオフショット、メンバーのコメントを紹介する。

Q:初の広告撮影の感想は?

ストリートで使える
スポーツウエア

「プリザーブ」

 8月下旬に発売する第一弾には、「プリザーブ(PRSVE)」と「ワーディング(WORDING)」の2つのコレクションが登場。「プリザーブ」は、ストレスフリーに着用できる快適性と、ストリートで使えるファッション性を兼ね備えたスポーツウエアで、今シーズンは東京を拠点にするデザイン事務所「MO’DESIGN」が手掛けたグラフィックをメインモチーフに採用した。メンズは、ミリタリーをモチーフにしたジャケットやゆったりしたシルエットのロングスリーブTシャツ、シーンを選ばないツイルパンツなどをラインアップ。ウィメンズは温かみのあるチュニックとロングスカートをはじめ、気取らずリラックスしたウエアをそろえた。

Q:ウエアのお気に入りポイントは?

レトロとモダンさを融合

「ワーディング」

 ストリートウエアに着想した「ワーディング」のテーマは”NEWTRO(NEW RETRO)”。現代社会に着想したグラフィックやモダンなシルエットを1990年代のレトロなテイスト融合させた。メンズは、薄手で着心地の良いパーカとトラックパンツなどベーシックなアイテムに、ベージュやオレンジなどのカラーを落とし込んだ。ウィメンズは、アウトドアテイストのジャケットにインターネットに着想したグラフィックを組み合わせたり、フリーススエットパンツに90年代風のレタリングをあしらったりと、モチーフを効かせたアイテムがそろう。

 同コレクションはスポーツデポ・アルペン、スポーツオーソリティ、ゼビオグループ、ヒマラヤなどのアディダス取り扱い店の店舗およびオンラインストアにて、8月下旬から順次販売される。気になる人はぜひチェックしてみよう。

PHOTOS:HIRONORI SAKUNAGA
問い合わせ先
アディダスお客様窓口
0570-033-033

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「ソニア リキエル」が再始動 新オーナー兄弟が語る今後の展望

 「ソニア リキエル(SONIA RYKIEL)」が新たなオーナーの下、再スタートを切った。同ブランドは創業デザイナーの退任後経営難に苦しんで身売りを画策したが買い手がつかず、2019年7月に一度は清算されたが、同年12月にファッションや小売り、デジタル業界で実績を持つフランス人実業家のダイヨン兄弟が買収。20年5月にインスタグラムなどソーシャルメディアの運用を再開し、10月には主要通貨に対応する新たなグローバルサイトで商品の販売も始めた。さらに今年2月には、ブランドの代名詞であるニットウエアを中心とした新作の21-22年秋冬コレクションを発表。ブランドを再び開花させるために取り組むエリック・ダイヨン(Eric Dayan)=プレジデントとミカエル・ダイヨン(Michael Dayan)=ジェネラル・ディレクターに買収の理由やこれからの展望を聞いた。

WWD:まず、2人のバックグラウンドは?

ダイヨン兄弟:2人とも実業家としての最初の経験は、(フランスなど7カ国で展開する大手会員制ファッションECサイトの)「ショールーム プリヴェ ドットコム(SHOWROOMPRIVE.COM)」。2006年の創設時から、アソシエイト・ディレクターとして、その発展に関わってきた。今でも取締役会のメンバーと株主ではあるが、それぞれの投資会社の事業に専念するために、17年に運営からは離れた。

WWD:「ソニア リキエル」はフランスを代表するブランドの一つだが、買収した理由は?

ダイヨン兄弟:まず「ソニア リキエル」は、その歴史やアイデンディティ、ブランド力によって、フランスのスタイルや精神を世界に伝えることができるプレーヤーになりうる。だから、なくなってしまうことは想像できなかったし、自分たちがメゾンコードと価値を守っていきたいと思った。「ショールームプリヴェ ドットコム」での野心的な経験の後に取り組みたいと思ったのは、「ソニアリキエル」の世界観や力によるところが大きい。

WWD:ブランドをどのように分析している?

ダイヨン兄弟:「ソニア リキエル」は、世界的に知られるアイコニックなブランド。フランスのノウハウやファッション、スタイルの象徴であり、フランスの文化的な遺産の一部と言える。そして、女性の解放に関する前衛的かつ現代的な価値を持つ、服に自由を求める女性のためのブランドでもある。そのスタイルを特徴付けるキーワードは、フェミニン、エレガント、ロマンチック、魅惑的、オーセンティック、大胆、自由、そして好奇心や独立心にあふれる姿勢。個性的でありながら、廃れることはない。世代を超えて愛着や愛情を持ってもらえるエモーショナルなブランドだ。

WWD:どのようにリブランディングしていくのか?具体的なアプローチの仕方やターゲット層は?

ダイヨン兄弟:私たちの優先事項は、ファッションとラグジュアリーの世界で「ソニア リキエル」を本来のポジションに戻すこと。そして、ブランドに対するニーズを再発見することだ。そしてコミュニケーションにおいては、ロイヤルカスタマーを安心させて呼び戻すと同時に、若い世代にもアプローチする。また、ソニア・リキエルという類稀なクリエイターの前衛的なメッセージを再び発信することも、これまで以上に重要だと考えている。

WWD: 21-22年秋冬は、ニットにフォーカスしていた。今後は以前のようにさまざまなウエアやアクセサリーを含めたフルコレクションを展開していくのか?その中で注力する商品カテゴリーは?

ダイヨン兄弟:21-22年秋冬コレクションでは、ブランドのクリエイションの核となるニットウエアに焦点を当て、それを再構築することを目指した。ニットは今後のコレクションでも中心となるが、レザーグッズ含め、他の商品カテゴリーも加えていく。具体的には、アイコニックなバッグを再構築し、ナイロンやレザー、ベルベットなどブランド特有の素材を使った新しいモデルを制作する。また、トータルルックを提案するとともに、ライフスタイルへのアプローチも行っていきたいと考えている。キッズウエアのライセンスも並行して進めていて、公式ECサイトでの提案を拡大していく予定だ。

WWD:再始動はECサイトからだったが、今後は直営店での小売やEC、卸売りなど、どのように展開していくのか?

ダイヨン兄弟:「ソニア リキエル」は、B2CとB2Bの双方で高いポテンシャルを持っている。直営では公式ECサイトに加え、ソーシャルコマース、マーケットプレイス、旗艦店、ポップアップショップなどで販売していく。年末には、パリの百貨店ル・ボン・マルシェ(LE BON MARCHE)にコーナーを開く予定だ。また、2月のコレクション発表後に世界20カ国への卸売りを始め、セレクトショップ100店舗に卸している。総売り上げの半分は海外が占めている。

WWD:日本市場をどのように考えているか?

ダイヨン兄弟:「ソニア リキエル」は、フランスのラグジュアリーメゾンの中でもいち早く日本に進出したブランドなので、その歴史を生かして展開していきたい。ブランドには、日本との関係性を象徴する何百ものアーカイブがある。ソニア自身も日本に強い愛着を持っていたし、彼女は日本で成功を収めた初のフランス人デザイナーだった。ブランドのDNAが日本人の心に響くものであると分かっている一方で、日本ではコミュニケーションが異なることも理解している。例えば、日本市場専用のインスタグラムページを作ることも考えている。また、日本市場で成功するためには、商品の供給、ディストリビューション、露出に取り組む必要がある。これまで共に取り組んでいたオンワードグループのような現地パートナーを見つけたい。今は、さまざまなグループとオープンに話を進めているところだ。

WWD:今後のビジョンは?

ダイヨン兄弟:私たちが目指すのは、ファッションとラグジュアリーの世界において、「ソニア リキエル」にふさわしいポジションを維持すること。そのためには、革新とともに驚きをもたらし、その価値を守り続けていくことが重要だ。フランス国内だけでなく、世界中でブランドを輝かせたいと考えているが、最高のロケーションで展開していくために、ディストリビューションは質重視でコントロールしていく。また、メンズラインとセカンドラインの「ソニアバイ ソニア リキエル(SONIA BY SONIA RYKIEL)」も再始動したい。いつか、ブランドのデザインコードとアーカイブで飾られた“ホテルリキエル”をつくる日がくるかもしれない。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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ファッションとウイグル問題 求められる姿勢とは?「”沈黙は金”ではない。ノーコメントはリスクだ」オルタナ森編集長

 「ファッション人は政治を語らない」。これまでは“常識”だったその考え方が、急速に変わりつつある。経営者たちは政治、倫理問題に対する意見を公で求められ、それがブランディングや企業価値へと直結し始めた。なぜこのような変化が起きているのか、企業人が求められる姿勢とは?最新号で「ビジネスと民主主義」をテーマに特集を組み、新疆ウイグル問題にも踏み込んだ「オルタナ」の森摂編集長に話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):サステナビリティ(持続可能性)を軸に幅広い業界を見ている森さんから、アパレル市場はどう見えますか?

森:確かに問題が多い業界だと思います。最大の課題は着られずに捨てられる服が多い、廃棄の問題でしょう。また、コットンは地球上で最も農薬を使う農作物です。真っ白なコットンボールを包みこむ「萼」(がく)を取り除くために大量の枯葉剤を使い、土壌汚染や労働者の皮膚・呼吸障害などの健康問題を引き起こしています。これにようやく目が向けられている状況です。

WWD:課題が可視化している背景をどう考えますか?

森:ミレニアル世代やZ世代の存在が大きいです。エデルマン・ジャパンによる「トラストバロメーター」(信頼性調査)によると、Z世代の87%が企業に(社会課題への取り組みなどの)「誠実さ」を求めています。だからZ世代が消費者、生活者の中心になると企業にはますます社会課題への取り組みが求められます。彼らは社会の中核、企業の管理職になりつつあります。ファッションはサプライチェーンが長いからCSRリスクも多い。最近では、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が記者会見で、新疆ウイグル問題に関して「政治的なことにはノーコメント」と発言し炎上しましたが、今は企業にとって「沈黙はリスク」です。

WWD:ファッションと政治は絡めない、がこれまでの“常識”でした。なぜ「沈黙はリスク」なのでしょう。

森:「ノーと言わないリスク」とも言い換えられます。社会的な不公平・不正義があったら、企業はそれに対してしっかりノーと言わないといけない。新疆ウイグル問題はアメリカを取るか、中国を取るか、という議論になりがちです。しかし真実は人権侵害があったのか否か。ないのであれば堂々と言えばいいのです。ただ監査に行くのが難しい場所もあります。であれば「ノーコメント」ではなく「これからしっかり調べて対応します」が正しい答えだったと思います。

WWD:「オルタナ」最新号では、「ビジネスと民主主義」と題して特集を組み、変わり始めている企業と社会の関係性を考察しています。

森:アメリカでもこれまでは「企業は政治的なことに口は出さない」姿勢が大半でしたが変わりつつあります。たとえば、今年3月に米国ジョージア州議会が可決した「投票制限法」に対して、コカ・コーラとデルタ航空のCEOが明確にノーと発言しました。デルタ航空のエド・バスティアンCEOは「この法律は受け入れられず、デルタの価値観と一致しない」とメッセージを出しました。

WWD:期日前投票時に写真付きの公的身分証の提示を義務付け、投票所に行列する有権者への水や食べ物の提供禁止などを盛り込んだ法律ですね。

森:企業経営者自身も、消費者や従業員に突き動かされています。「ウチの会社はなぜこう言った問題に無関心なのですか?発言しないのですか?」と社員から問われる。日本でその昔、「外国人には政治と宗教の話はタブー」だと教りましたが、実は日本人同士の方がタブーではないでしょうか。キナ臭い部分は一切タブーで、経営者がかかわっていたとしてもブランディングには絡めない。でもそのタブーを避けることこそリスクになりました。

青い柔道着をめぐる柔道界の問題

WWD:日本がグローバルビジネスにおける「ルール形成」の場に入れない一因でもありますね。

森:国際ルールが突然できて、決定の輪の中にいない日本が不利になるケースはあらゆる局面で見受けられます。最近、「青い柔道着と脱炭素」をテーマにコラムを書きました。日本人には青い柔道着は受け入れがたかった。だけど世界にその声が届かず「判定がしやすい」という理由で青の柔道着が採用されました。日本発祥のスポーツなのに、日本人が柔道着の色を決めるのに発言力を持てないとは。それも日本がルール形成の場で発言をしていないから起きるのです。

WWD:「白は日本柔道の伝統と精神の象徴だから」では通らなかったのですね。

森:ロジック(論理)やエビデンス(証拠)がないと通りません。日本企業にとってストレスフルな構造はこれからも続くと思います。日本の企業人は比較的「利益か環境・社会か」の二者択一で考える傾向にありますが、企業を守り成長させるためには「どちらか」ではなく「どちらも」です。また、欧米のサステナビリティの取り組みは、まず未来に起点を置いてからロードマップを描く「バックキャスティング式」(縄梯子方式)です。バックキャストでないと「脱炭素」は実現できませんから。ところが日本では一段一段、「段梯子」を登る「フォアキャスティング」の方が気質に合うので、限界があります。

WWD:「オルタナ」は2007年創刊。サステナビリティを早くから取り上げてきましたがなぜですか?

森:「オルタナ」は英語の「alternative(オルタナティブ)」から採りました。日本語では「もう一つの選択肢」という意味です。それまで日本経済新聞の経済記者として取材を続ける中で、「20世紀の資本主義」の矛盾や問題が山積していると感じていました。21世紀はそれを解決してよりよい資本主義になるべきだという思いでこの本のタイトルをつけました。サステナビリティはその中で重いウエイトを占めています。

売り上げや利益といった財務指標は企業にとって大事だが、もう一つのモノサシがあるーーという命題、それがオルタナティブです。氷山に例えると財務指標は水面より上に出ている部分。水面下はダイバーシティやブランド価値、人材力、プライド、そしてサステナビリティ。氷山の下をちゃんと取り組まないと全体が溶けてしまうと伝え続けています。

WWD:ファッションやビューティで注目している企業は?

森:「アヴェダ(AVEDA)」や「パタゴニア(PATAGONIA)」「ボディショップ(BODYSHOP)」などは1970年代からサステナビリティのメッセージを発信していますよね。動物実験を行わない「アヴェダ」が創業時から発している「美しさに犠牲はいらない」というメッセージはクリアです。この言葉は、全ブランドに共通する普遍のテーマだと思います。

【ウイグル問題とは】
中国のウイグル地区で生産されている“新疆綿”を巡る問題。「H&M」や「パタゴニア」などが人権問題から新疆綿の取り扱いを止めると発表したことに対して中国の国営メディアなどが激しく非難。一方日本のグローバル企業は「同地区で生産されている製品はない」(ファーストリテイリング)、「重大な違反は確認していない」(無印良品)と発表し、使用を継続。柳井正ファーストリテイリングの会長兼社長は4月8日の記者会見で「これは人権問題というよりも政治問題。政治問題にはノーコメント」と話し物議をよんだ。

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ファッションとウイグル問題 求められる姿勢とは?「”沈黙は金”ではない。ノーコメントはリスクだ」オルタナ森編集長

 「ファッション人は政治を語らない」。これまでは“常識”だったその考え方が、急速に変わりつつある。経営者たちは政治、倫理問題に対する意見を公で求められ、それがブランディングや企業価値へと直結し始めた。なぜこのような変化が起きているのか、企業人が求められる姿勢とは?最新号で「ビジネスと民主主義」をテーマに特集を組み、新疆ウイグル問題にも踏み込んだ「オルタナ」の森摂編集長に話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):サステナビリティ(持続可能性)を軸に幅広い業界を見ている森さんから、アパレル市場はどう見えますか?

森:確かに問題が多い業界だと思います。最大の課題は着られずに捨てられる服が多い、廃棄の問題でしょう。また、コットンは地球上で最も農薬を使う農作物です。真っ白なコットンボールを包みこむ「萼」(がく)を取り除くために大量の枯葉剤を使い、土壌汚染や労働者の皮膚・呼吸障害などの健康問題を引き起こしています。これにようやく目が向けられている状況です。

WWD:課題が可視化している背景をどう考えますか?

森:ミレニアル世代やZ世代の存在が大きいです。エデルマン・ジャパンによる「トラストバロメーター」(信頼性調査)によると、Z世代の87%が企業に(社会課題への取り組みなどの)「誠実さ」を求めています。だからZ世代が消費者、生活者の中心になると企業にはますます社会課題への取り組みが求められます。彼らは社会の中核、企業の管理職になりつつあります。ファッションはサプライチェーンが長いからCSRリスクも多い。最近では、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が記者会見で、新疆ウイグル問題に関して「政治的なことにはノーコメント」と発言し炎上しましたが、今は企業にとって「沈黙はリスク」です。

WWD:ファッションと政治は絡めない、がこれまでの“常識”でした。なぜ「沈黙はリスク」なのでしょう。

森:「ノーと言わないリスク」とも言い換えられます。社会的な不公平・不正義があったら、企業はそれに対してしっかりノーと言わないといけない。新疆ウイグル問題はアメリカを取るか、中国を取るか、という議論になりがちです。しかし真実は人権侵害があったのか否か。ないのであれば堂々と言えばいいのです。ただ監査に行くのが難しい場所もあります。であれば「ノーコメント」ではなく「これからしっかり調べて対応します」が正しい答えだったと思います。

WWD:「オルタナ」最新号では、「ビジネスと民主主義」と題して特集を組み、変わり始めている企業と社会の関係性を考察しています。

森:アメリカでもこれまでは「企業は政治的なことに口は出さない」姿勢が大半でしたが変わりつつあります。たとえば、今年3月に米国ジョージア州議会が可決した「投票制限法」に対して、コカ・コーラとデルタ航空のCEOが明確にノーと発言しました。デルタ航空のエド・バスティアンCEOは「この法律は受け入れられず、デルタの価値観と一致しない」とメッセージを出しました。

WWD:期日前投票時に写真付きの公的身分証の提示を義務付け、投票所に行列する有権者への水や食べ物の提供禁止などを盛り込んだ法律ですね。

森:企業経営者自身も、消費者や従業員に突き動かされています。「ウチの会社はなぜこう言った問題に無関心なのですか?発言しないのですか?」と社員から問われる。日本でその昔、「外国人には政治と宗教の話はタブー」だと教りましたが、実は日本人同士の方がタブーではないでしょうか。キナ臭い部分は一切タブーで、経営者がかかわっていたとしてもブランディングには絡めない。でもそのタブーを避けることこそリスクになりました。

青い柔道着をめぐる柔道界の問題

WWD:日本がグローバルビジネスにおける「ルール形成」の場に入れない一因でもありますね。

森:国際ルールが突然できて、決定の輪の中にいない日本が不利になるケースはあらゆる局面で見受けられます。最近、「青い柔道着と脱炭素」をテーマにコラムを書きました。日本人には青い柔道着は受け入れがたかった。だけど世界にその声が届かず「判定がしやすい」という理由で青の柔道着が採用されました。日本発祥のスポーツなのに、日本人が柔道着の色を決めるのに発言力を持てないとは。それも日本がルール形成の場で発言をしていないから起きるのです。

WWD:「白は日本柔道の伝統と精神の象徴だから」では通らなかったのですね。

森:ロジック(論理)やエビデンス(証拠)がないと通りません。日本企業にとってストレスフルな構造はこれからも続くと思います。日本の企業人は比較的「利益か環境・社会か」の二者択一で考える傾向にありますが、企業を守り成長させるためには「どちらか」ではなく「どちらも」です。また、欧米のサステナビリティの取り組みは、まず未来に起点を置いてからロードマップを描く「バックキャスティング式」(縄梯子方式)です。バックキャストでないと「脱炭素」は実現できませんから。ところが日本では一段一段、「段梯子」を登る「フォアキャスティング」の方が気質に合うので、限界があります。

WWD:「オルタナ」は2007年創刊。サステナビリティを早くから取り上げてきましたがなぜですか?

森:「オルタナ」は英語の「alternative(オルタナティブ)」から採りました。日本語では「もう一つの選択肢」という意味です。それまで日本経済新聞の経済記者として取材を続ける中で、「20世紀の資本主義」の矛盾や問題が山積していると感じていました。21世紀はそれを解決してよりよい資本主義になるべきだという思いでこの本のタイトルをつけました。サステナビリティはその中で重いウエイトを占めています。

売り上げや利益といった財務指標は企業にとって大事だが、もう一つのモノサシがあるーーという命題、それがオルタナティブです。氷山に例えると財務指標は水面より上に出ている部分。水面下はダイバーシティやブランド価値、人材力、プライド、そしてサステナビリティ。氷山の下をちゃんと取り組まないと全体が溶けてしまうと伝え続けています。

WWD:ファッションやビューティで注目している企業は?

森:「アヴェダ(AVEDA)」や「パタゴニア(PATAGONIA)」「ボディショップ(BODYSHOP)」などは1970年代からサステナビリティのメッセージを発信していますよね。動物実験を行わない「アヴェダ」が創業時から発している「美しさに犠牲はいらない」というメッセージはクリアです。この言葉は、全ブランドに共通する普遍のテーマだと思います。

【ウイグル問題とは】
中国のウイグル地区で生産されている“新疆綿”を巡る問題。「H&M」や「パタゴニア」などが人権問題から新疆綿の取り扱いを止めると発表したことに対して中国の国営メディアなどが激しく非難。一方日本のグローバル企業は「同地区で生産されている製品はない」(ファーストリテイリング)、「重大な違反は確認していない」(無印良品)と発表し、使用を継続。柳井正ファーストリテイリングの会長兼社長は4月8日の記者会見で「これは人権問題というよりも政治問題。政治問題にはノーコメント」と話し物議をよんだ。

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ベイクルーズ杉村CEOに聞く 独立系セレクト、ヌビアンと提携した理由

 ベイクルーズグループは、9月1日付での組織再編を予定している。それに先駆ける形で6月には、セレクトショップのヌビアン(NUBIAN)を運営するヴェイパース(東京、吉野誠社長)と資本業務提携を締結した。約40のファッションブランドを手掛けるベイクルーズにとって、独立系セレクトショップとして唯一無二のポジションを築くヌビアンとタッグを組む狙いとは。杉村茂ベイクルーズCEOに話を聞いた。

WWD:ヴェイパース吉野社長との出会いは?

杉村茂ベイクルーズCEO(以下、杉村CEO):吉野社長はコロナ以前から、ヌビアンをさらに成長させていくための方法を模索していたようで、経営課題などの相談に乗ったり、情報交換をしたりしたのが始まりだった。吉野社長は非常に真面目で、夢や希望を持っている人物だ。これまでは会社の総務・経理といった細かい業務もこなしてきたが、彼のさまざまなアイデアを生かし、よりビジネスのクリエイティブな部分に集中できる環境を整えたいと考えていたようだ。ヌビアンが、3坪(約10平方メートル)の小さな店でスタートし、卸売りという業界の仕組みを知らなかった吉野社長が一人で海外へ飛んで現地で現金で買った商品を販売していたといった話は、ベイクルーズの原点とも似ている。ファッションを基盤にするベイクルーズと、ヒップホップなどの音楽カルチャーを基盤にするヌビアン、スタンスの違う両者がそれぞれ持っているものを合わせることで何か面白いことができると感じ、興味を持った。

WWD:杉村CEOにとって、ヌビアンの魅力とは?

杉村CEO:“ラグジュアリーストリート”テイストの人気に火がついた約3年前頃から、4、5万円のTシャツを売るパワーのある店として注目していた。ヌビアンの最大の魅力は、圧倒的なお客さまへの影響力だ。同じテンションでうちのブランドが発信しても、集まるブランドや人は変わってくる。特に、われわれのメンズブランドはトラッドがベースだが、ヌビアンは音楽に根差した趣味嗜好の異なる客層を持っている。

WWD:ヌビアンと提携することで、ベイクルーズの課題だった若年層の獲得につながると考えた?

杉村CEO:まさにそうだ。正直、われわれが自社で“ラグジュアリーストリート”の店を作り、10年頑張ったとしても行き着けない領域にヌビアンはある。一方で、ヌビアンはわれわれと組むことで、われわれの人事や経理などのサポートを役立ててもらえる。互いにメリットがあるのではないかと考えた。

WWD:どのようなシナジーを期待する?

杉村CEO:ヌビアンにとっては、営業管理や財務管理などのわれわれのサポート部門が持つノウハウが役に立つはずだ。メーカーが祖業であるベイクルーズとして、ヌビアンに(オリジナルブランドを作る際の)モノ作りの背景も提供できる。ベイクルーズとしては、吉野社長との会話の中で、「次、こんなブランドが流行る」「こういう人がくる」といった、感度の高い情報を得ることができる。ヌビアンの持つマーケットに間接的に関われることはわれわれにとっても大きなメリットだし、ヌビアンの時代の捉え方が、今後のベイクルーズグループの成長につながると確信している。

WWD:ヴェイパースにはベイクルーズから役員などを出向させるのか。

杉村CEO:それはない。ベイクルーズグループとして、ヴェイパースをわれわれの色に染めるつもりは全くない。ヌビアンはヌビアンのまま成長してほしいし、その上でこちらがアドバイスできるところは手を貸していく。ヌビアンの若い会社ならではのチャレンジ精神を削るようなことがあってはならない。彼らが彼ららしい挑戦ができるようにサポートするつもりだ。

WWD:飲食事業などのノウハウも提供していく?

杉村CEO:まだ具体的な話は進んでいない。ただ吉野社長から提案したいアイデアはあると聞いている。その際にはうちのチームがバックアップできるだろう。

WWD:今後の展開は?

杉村CEO:吉野社長も事業を拡大したいという思いはもちろんある。今後5年でコロナ前の3〜5倍くらいに売上規模を拡大していきたいという話はしている。個性を保ったまま規模を大きくしていくためには、国内だけで出店を考えず、アジアなど海外への出店も視野に入れている。将来的に両社のリソースをドッキングした新規事業も始める。

WWD:ベイクルーズでは今後も資本業務提携やM&Aに力を入れる?

杉村CEO:さまざまな話はいただいているが、会社の規模を大きくするためだけのM&Aはしない。ベイクルーズにはないようなマーケットや魅力を持っている企業やブランドなど、うまく相乗効果が出せそうな相手とは検討していくつもりだ。

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「2030年アパレルの未来」から2年「日本のアパレルは極めてガラパゴス。それを強みに変えたい」ローランド・ベルガー福田氏

サステナビリティを考えるとき、ついてまわるのは「グリーンウォッシュ」という言葉だ。グリーンウォッシュ、グリーンウォッシングとは、環境へ配慮している印象を与える「グリーン」と上辺だけという意味の「ホワイトウォッシュ」を組み合わせた造語で、環境に配慮しているように見せて、中身はそうではなく消費者に誤解を与える主に企業活動を指す。具体的には広告や商品パッケージに製品と関係がないグリーンの色や写真を使うといったことだが、明確な基準はない。専門家は「グリーンウォッシュ」の基準をどう考えるのか。「2030年アパレルの未来 日本企業が半分になる日」の著者でもあるローランド・ベルガー 福田稔パートナーに、日本企業とサステナビリティの取り組みの進捗と併せて聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):福田さんはアパレルのサステナビリティの取り組みに関して数多く相談を受けるかと思いますが、コンサルタントとして「グリーンウォッシュ」か否かをどこで判断しますか?

福田稔ローランド・ベルガー パートナー(以下、福田):ローランド・ベルガーは戦略コンサルティング会社なので、「広告表現に不必要に緑を使っている」といった話ではなく、本質的な視点でグリーンウォッシュって何なの?と考えています。

WWD:「広告表現に不必要な緑」とは、商品と関係なく緑をパッケージ使用したり、企業のCSRリポートに関連性がない森林の写真を添えて環境に配慮をしているかのような印象を与えたりする行為ですね。ではコンサルタントとして「本質的な視点」とは?

福田:その会社が「ダブルスタンダードになっていないか」という視点です。消費者に対してはエコやサステナビリティな取り組みをアピールしながら、実は裏で大量廃棄をしているとか、ビジネスモデルは旧態依然とした大量生産、大量消費モデルである、といったことです。オーガニックコットンを打ち出しながら一方で環境負荷が高いカシミヤやアルパカを使用することも同様です。企業活動がダブルスタンダードになっているか否かがグリーンウォッシュであるか否かの判断です。

WWD:サステナビリティに関しては「できることから始めよう」という考え方もあります。「できることから始めた結果、ダブルスタンダードになる」ことはどう考えますか?

福田:企業によって取り組みのレベルにばらつきがあるのは仕方がないことです。サステナビリティが進んでないのであれば消費者に打ち出しもしなければいい。実態が違うのに見せかけだけやっているのはたちが悪い。そういった会社はグリーンウォッシュだと考えます。「できることから始めて」まだ課題が多い場合は、大手を振ってアピールするべきではないと思う。サステナビリティのレベルに1から10があるとしたら、1や2のレベルなのに5以上の会社であるかのような打ち出しをしたらグリーンウォッシュと言われても仕方がありません。自分たちの身の丈にあった一貫した発信をすることが大切です。「一貫性」、英語で言うと「integrity(誠実さや整合性の意)」の視点が重要だと思います。

WWD:企業が一貫性を失いがちなのはなぜでしょう。

福田:日本企業が弱い部分です。売り上げや利益、「儲かるか儲からないか」だけが判断理由となり、倫理的や道徳的など複数の側面から意思決定することが苦手です。五輪がまさにダブルスタンダードです。東京オリンピックからスポンサーが離れ始めたときにテレビコマーシャルを流さないと決めたのはトヨタだけ。他企業も見直している風ではありましたが結局予定通りテレビコマーシャルを流した。あの判断が日本と世界の差だと思います。企業経営においてサステナビリティを本気で実践するにはこのあたりの感覚、視点が求められます。

WWD:その差異はどこから生まれているのでしょう。

福田:最大の原因はこの国のリーダーシップと政策でしょう。欧州では政治が主導しグリーン中心の経済を作る動きが加速しています。サステナビリティに関しては10年以上前から進んできました。となるとアパレル産業にもサステナビリティへの取り組みが求められ、自然と意識が高くなってきました。日本は政治がまだまだ昭和的成長主義でカーボンニュートラルの取り組みも先進国の中で一番遅れています。

WWD:日本では政治、投資家、消費者、NGOなど企業に対するサステナビリティのプレッシャーが弱い?

福田:そこがコロナを経てだいぶ変わりました。特に、グローバル企業は投資家からプレッシャーを受けやすくなっています。ヨーロッパでは、EUタクソノミーに代表される企業がCO2排出を減らす設備投資を誘導する政策がどんどん出ている。逆にカーボンニュートラルに力を入れないと投資を受けられない。日本でも少なくとも上場企業は影響を受けています。消費者もコロナ禍でだいぶ変わりました。サステナビリティへの関心は、コロナ以前は低かったものが、今は欧米に近いくらい一気に高まっているという結果が定量調査で出ています。

WWD:日本の産業はガラパゴス傾向と言われますがアパレルもそうですね。

福田:極めてガラパゴスです。私はローランド・ベルガーで消費財全般を担当していますが、日本の消費財の中でアパレルが一番ガラパゴスで、サステナビリティの取り組みが遅れています。理由のひとつは、アパレルは“黒船”の影響を受けにくいから。どの業界も海外からの圧力は強く、携帯で言えば日本市場の売り上げに占めるiPhoneのシェアは50%以上あります。iPhoneによって日本のガラケーが駆逐されたのはご存じですよね。他方、グローバルの消費財領域における寡占状況を見ると、スポーツでは「ナイキ(NIKE)」が約17%、化粧品は「ロレアル(LOREAL)」が15%くらい。それに対してアパレルでの「ザラ(ZARA)」のインディテックスのシェアは全世界でも2.5%位しかない。そもそもアパレルはローカルが強く細分化された市場構造なので、グローバルからの外圧を受けにくいのです。

日本は川上から川下がそろう稀有な国

WWD:福田さんの著書「2030年のアパレルの未来 日本企業が半分になる日」は2019年発行ですが、今読むとコロナ後の今を予測していたかのような内容で驚きます。ご自分でも特に合っていたな、と思うのはどの部分ですか。

福田:市場の二極化と多極化でしょうか。コロナ禍でもラグジュアリーは案外強く、マスも底堅い。他方、中間のトレンド市場ではD2Cブランドが増える一方、従来型の一定規模のある中間価格帯ブランドが厳しくなっています。そしてそのスピードが加速している。もう一点、デジタル化の重要性も加速しています。DX(デジタルトランスフォーメーション)ができていない、EC化率が低い企業は軒並み厳しい。一方でイギリスの「ブーフー(BOOHOO)」など、AIやビッグデータといったテクノロジーを徹底活用するオンライン特化型のファストファションは急成長しています。

WWD:では、著書では予測しきれなかった部分はありますか?

福田:コロナを経て、サステナビリティの重要度が予測よりスピードアップしています。特に、加速化する気候変動、温暖化の影響が深刻です。国連の政府間パネルによる最新の報告では、温暖化のスピードが2018年の想定より10年ほど早くなり、人間活動による影響は疑う余地が無いことが記されました。本でも触れましたが、急に問題が見える化された印象です。

WWD:話が変わりますが福田さん自身について教えてください。なぜコンサルタントとしてアパレル分野を選んで仕事をしているのでしょうか?

福田:アパレルに思い入れがあるからです。学生時代は、この服はどういうバックグラウンドがあるか、モードとしてのファッションの意味は何かなど文化的・歴史的背景からの服飾を議論するのが好きでファッションデザイナーになりたかった。そのため大学を1年間休学して、昼間は憧れのセレクトショップでアルバイトをして、夜間は服飾専門学校に通いました。そこでは業界の裏も多く見聞きして、今もその違和感が自分の中にずっと残っています。コンサルタントは業界全体に働きかけることができるからその違和感を解決できるチャンスがあると思っています。

WWD:解決したいこととは?

福田さん:日本のアパレル産業は川上、川中、川下の全部がそろう稀有な国。他はフランスとイタリアくらいです。だけどその良さを生かせていない。川上の産地が生み出す生地や素材や川上・川中の職人が海外で支持されているが、川下の多くの国内アパレルは海外素材・生産に頼っている。需要と供給のねじれ、たすき掛け構造です。それを解消してつなげて日本のクリエイションを海外にもっと出してゆきたいと思っています。テキスタイル産業は弱っているとは言え、それでも年間3000億円以上を輸出しています。地場地場でよい企業があり、コロナもあり今後ローカル経済が注目されていく中で、エイガールズや第一織物のように、ローカルの雄の企業には人が集まる。それに対して完成品の製品輸出は500億円程度。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」のような国内生産で海外で売れるブランドを後10個以上作らないと。

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オイテル、トイレットペーパーのように生理用ナプキンが無料で提供される世の中に

 ウエルネスを事業領域とするスタートアップ企業のオイテル(東京都、小村大一社長)は、商業施設やオフィス、学校、公共施設などの個室トイレで生理用ナプキンを無料で提供するサービス「オイテル(OITR)」を開始した。8月下旬から、三井ショッピングパークららぽーと富士見のほか、横浜市、川崎市、東京都中野区、豊島区と連携し、同地域の公共施設などで順次導入する。

 同サービスは、デジタルサイネージ広告が流れるディスペンサーを個室トイレに設置。利用者は無料のアプリをダウンロードし、アプリを起動した状態でスマートフォンをディスペンサーにかざすと生理用ナプキン1枚を取り出せる。2回目以降は初回の2時間後から利用でき、25日を期間とし一人につき最大7枚無料で取り出すことができる。収益は企業から募った広告収入で、提供する生理用ナプキンとシステム運営管理費は同社が負担する。導入施設の生理用ナプキンの在庫は、災害時には備蓄品として活用してもらう。

 同サービスを発案した飯﨑俊彦専務事業本部長COOは、エイベックス・グループが運営する大人のカルチャースクール「エイベックス・ライフデザインラボ(avex life design lab)」をはじめ、飲食やインテリアなどさまざまな業態で新規事業のプロデュースを手掛けてきた人物。飯﨑専務は「残りの人生をどう生きるかを考えるなかで、ゼロからイチを生み出すスキルを活かして、社会に役立つ何かを生み出したいという思いが強くなった」と話す。

 中でも、依然として女性の正規雇用率が低いことや、女性特有の健康問題に対する社会インフラが整っていないことに着目した。飯﨑専務は「特に女性は生理用品の購入のために、男性よりも多く税金を支払っていることや、生理休暇が名ばかりの制度で、女性の働きやすい環境には寄与していないことなどに課題感があった。リサーチを重ねる中で、『なぜトイレレットペーパーは当たり前に常備されているのに、生理用品はないのか?』という不満を見つけ、ハッとした。より良い社会の実現のためには、違いを理解して補いあう仕組みが必要で、『オイテル』はそれに向け、必要不可欠な社会インフラだと確信した」という。

 ららぽーと富士見で実施した実証テストでは、同サービスへの需要の高さが証明された一方で、「『生理の貧困』には当てはまらないため使って良いのかためらった」というコメントもあった。飯﨑専務は「日本で『生理の貧困』とは、金銭的な貧困と解釈されているが、私たちは心理的なストレスも含めた広義の意味でこの問題を解決したいと思っている。例えば、急に生理になった女性がトイレットペーパーをあてがって、コンビニまで走らなければいけない事例もある。生理にまつわるさまざまなストレスから女性を解放し、不均衡を是正することが狙いだ」と強調する。

 今後は商業施設や大学などで導入を予定しており、初年度でディスペンサー3000台の導入を目指す。さらに、学校などの広告配信ができない施設に向けてボックスでの生理用ナプキンの提供や、アプリのダウンロードを必要としないディスペンサーの開発も進める。飯﨑専務は「ビジネスで社会課題を解決できないかという思いから始まった。『オイテル』を通して、企業が社会課題に貢献できるエコシステムを構築していきたい」と話す。

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西陣織の細尾が考える現代の美 伝統工芸と最新技術の協業から美を生み出す 【後編】

 西陣織で知られる細尾は、伝統工芸の西陣織を先端テクノロジーを用いて新しい織物を制作して、注目を集めている。昨年R&D部門のHOSOO STUDIESを立ち上げ、東京大学の筧康明研究室やZOZOテクノロジーズ、数学者やプログラマーなどと協業して織物の拡張を試みている。最新技術と協業から現代の“美”の表現を試みる細尾12代目の細尾真孝代表取締役社長に話を聞いた。

WWD:昨年、R&D部門のHOSOO STUDIESを立ち上げましたね。

細尾真孝代表取締役社長(以下、細尾):実は展覧会で発表した、数学者とコンピュータープログラマーと協働して三原組織を一切使わない組織を作ることを試みたプロジェクトや、東大とZOZOテクノロジーズと取り組んだ環境を織物で表現するプロジェクトもHOSOO STUDIESの一環です。それ以外にも現在約10のプロジェクトが走っています。

WWD:HOSOO STUDIESのメンバー構成を教えてください。

細尾:僕がディレクターを務め、そのほかにキュレーターとリサーチャーがいます。プロジェクトごとに大学機関や研究者、有識者やアーティストといった方々と協働しながらプロジェクトが走っています。

WWD:染色の探求も始めたそうですね。4月には京都・西陣の工房のそばに、古代染色の研究所を作られたとか。

細尾:古代の自然染色を研究するのが目的です。例えば、ニホンムラサキの根っこの紫根は、冠位十二階の紫の色を出していました。このニホンムラサキは絶滅危惧種ですが、辛うじて伊勢神宮の式年遷宮のために作られています。そうしたところと提携しながら、場合によっては自分たちで栽培したり作ったりできないかと考えています。

WWD:染色も奥深いですよね。

細尾:そうなんです。リサーチすると面白くて。もともと自然染色のものは漢方として用いられていた。だから、“服用”という言葉があるように、服に、用って、着ることは薬だったんです。服は大薬、中薬、小薬の三薬あり、小薬が塗り薬、中薬が飲み薬、そして、大薬は衣だったんですよね。もともと漢方で体にいいもの、これを染めたら体にいいんじゃないの?という考えがあった。リサーチするとここ200年ぐらい、特に産業革命以降に見落とされてきた知恵や美を見つけることができます。それをもう1回、掘り起こして現代に転換していくことができないかと考えています。

WWD:染色のテーマもやはり、美、ですか?

細尾:西陣のDNAは、美を上位の概念に置きながら、協業と革新をしてきたところにあります。フラットなコラボレーションとさまざまな協業によってイノベーションを生み出していく――長く続けていくための一つの方法論だったと思うんです。

ただイノベーション起こすための先進的なテクノロジーだけの話でも、実はないんです。やっぱり過去を振り返ることも大切にしています。リサーチだけではなく、実際に染める職人を招く、植物を栽培して育ててみる、山に入ってみる――そういうことを繰り返しながら、未来に対する有益なものをアウトプットしていきたいとも考えています。

国内での養蚕もスタートしています。産業革命以降、日本は養蚕業が輸出の主たるものでしたが、その後、米軍のパラシュート素材とか産業資材に振っていった。ここのポイントは、美のためではなくて資材に振ったという点です。その結果、何が起きたかというと、昔は、サイズが小さくても確度が高くて光沢がある美のために育てられていたけれど、だんだん、なるべく大きくて、糸が取りやすいという点が重視されていき、結局はブラジルや中国など人件費の安いところに移行して、日本で養蚕がほとんどなくなりました。

WWD:蚕は日本に残っているのでしょうか。

細尾:いわゆる農研機構や生物研究所で1000種類以上の種の保存はされています。その中から現代によみがえらすべく、取り組みを始めました。今回は「セヴェンヌ」という、東の「小石丸」、西の「セヴェンヌ」といわれるくらい、小さいんですが確度が高くて、めちゃめちゃ白い蚕を養蚕農家と提携して育てました。「セヴェンヌ」はもともとフランスのセヴェンヌ地方でロココ時代の王様が愛したものです。

WWD:さまざまに取り組まれていますが、ゴールは美、ということですよね。

細尾:今の時代にしかできない美を求めていきたい。私たちはモノづくりのビジョンに“More than Textile”と掲げています。織物の常識を超え続けていくという思いを込めました。西陣のDNAである究極の美を追い求めていくということでもありますが、その方法は時代によって異なってくると思うんですよ。150年前は、当時のハイテクノロジーであるジャカードを持ち込んでいたわけですが、当然、今も最先端のテクノロジーでしかできないアプローチがあるんじゃないかと思うんです。AIや機械学習などさまざまな技術を用いて、人が感動するようなものを作っていけるのか――それと古代から脈々と受け継がれている美と、全方位からやれることを全部やって美を求めていきたい。それこそがHOSOO STUDIESです。

WWD:研究したものを実際にHOSOO GALLERYで展示されています。

細尾:研究開発で終わっちゃって……とかよくあるじゃないですか。ではなくて、HOSOO旗艦店の2階のHOSOO GALLERYで年に2回行う企画展でまず提案していきたい。無理やりマイルストーンを作ることで、火事場の(馬鹿力)的な力を引き出していけるように思うんです。「あと1年あればもっといいものができる」ということって多いと思うんですが、多分、1年あっても同じことを言っていると思うんですよ。

WWD:確かに(笑)。STUDIESとGALLERYにそれぞれ役割があるんですね。

細尾:いろんな人が展示を見に来てくれて、その中でフィードバックとか、場合によっては、(展示を受けて)次のプロジェクトがまた走りだしたり。それができる一連の仕組みとしてHOSOO SUTUDIESとアウトプットの場としてのHOSOO GALLERYがあるんです。だから、STUDIESの中にキュレーターがいるのは、常にプロジェクトが展覧会になるということを想定しているからです。何かしら世の中に対して問い掛ける展覧会にしていきたいと考えています。

WWD:時代とともに美の概念自体も変わっていますね。ぜいを尽くすということでもなくなってきています。今、どういうものが美だと考えますか?

細尾:確かに概念は変わっていますね。昔はすごいお金持ちに見えるとか、いろいろあったと思いますけど、今は“調和”みたいなところが大切だと思っています。美を概念に置いて、美と、協業、革新がありながら調和する、ということなんじゃないかなあ。多様性を大切にするところはあるでしょうね。調和の部分においても、「環境と織物」展を通じて人間にとっての豊かさとは何か、人間とは何か、人にとっての美とは何かを表現しました。ラグジュアリーだけではなくて調和を含めて美、みたいな時代になっていますね。

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細尾が考える西陣織の継承 伝統工芸×最新技術で織物の未来を映す 【前編】

 西陣織で知られる細尾は、伝統工芸の西陣織に先端テクノロジーを用いて新しい織物を表現して、注目を集めている。3月22日~6月27日にHOSOO GALLERYで開催した「Ambient Weaving 環境と織物」展では、東京大学の筧康明研究室とZOZOテクノロジーズ(以下もカードも)と協働して“環境情報を表現する織物”“環境そのものが織り込まれた織物”を展示した。12代目の細尾真孝代表取締役社長が考える西陣織を継承することとは何かを聞いた。

WWD:西陣織を継承するためにテクノロジーを用いてさまざまなことに取り組まれていますが、その意図を教えてください。

細尾真孝代表取締役社長(以下、細尾):まずその前に、西陣織の歴史から話をさせてください。西陣織は1200年間ずっと、美を上位の概念に置いてきました。特に京都が都だった1000年の間は、天皇、将軍、神社仏閣に向けて、お金に糸目をつけないオーダーメードのものを作り続けてきました。オーダー元と対等な関係だったことも西陣の特徴のひとつで、すごく面白いですよね。

WWD:クライアントと対等とは。素晴らしいですね。

細尾:また、西陣は組織ではあったけれど、所属などは関係なく、あくまでフラットに職人たちが協業してきました。西陣と呼ばれる半径5km圏内のエリアに代々、染めをする職人さん、糸の準備をする職人さん、箔を織る職人さん、箔を切るスペシャリストであるカッターさんと呼ばれる職人さんがいる。これは、効率化のための分業ではなくて、究極の美を追い求めた結果での分業なんです。

WWD:美を追求した結果の分業は、いわゆる現代の効率化を求めた分業とは異なりますね。

細尾:はい。産業革命以降の大量生産・大量消費の中で、多くの物を多くの人に届けていくことで、恩恵を受けた部分もありますが一方で、人が幸せに、豊かになるために突き進んだ結果、物を作り過ぎて売れなくなって――ドーピングのようにマーケティングして、人々の欲望をかき立てて、どんどん捨てさせて。でもこれって限界ですよね。これからは“調和”が重要になってくると思うんです。

WWD:調和とは?

細尾:いろんな調和があります。例えば環境との調和。環境といっても何が環境なのか、何が自然なのかをもう一度捉え直すタイミングにきていると思います。つまり、東京生まれ東京育ちの現代っ子にとっては、都市やコンクリートの方が自然でしょう。じゃあ里山ってどうなの?人の手を入れないとできないですよね。手付かずの自然は果たして日本にどれだけあるのか――織物の歴史は9000年前に始まっていて、常に人とともにありました。ちなみにガラスは6000年前に始まっているので、織物はガラスよりも古いわけです。織物は常に、体と自然との間にあったものなんです。

織物で面白いと思うのは、ただ暖をとるだけだったら、毛皮や木の皮を巻いていればいいんですが、人は木を繊維状に分解して、撚糸して、糸にして、次に、それを織った。最初は体を織機にしながら織ってくわけです。美を求めていたんですよ。機能だけを求めたら必要ないことですよね。つまり、常に美を求めていくというところが人間たらしめているところで、その過程でテクノロジーが生まれています。

WWD:西陣織もジャカード機を導入して大きく変わりました。

細尾:はい。西陣織の転換期は150年前です。もともと西陣において紋織物は、経(たて)糸を上げ下げする中で緯(よこ)糸を入れて柄を展開しながらストラクチャーも織り込んでいた。そもそも西陣は1200年前、5〜6世紀に中国で発明された空引機(そらひきばた)が日本にやってきたことから始まりました。経糸の上げ下げに、高機(たかばた)の上に人が上がり、綜絖(そうこう)という経糸を上げ下げする操り人形のようなものを上げ、経糸が上がるとその間に下の人が織るという、人力で息を合わせながら紋織物を織っていました。上の人と下の人の息が合わなかったら全然織れないし、1日で織れるのが数mm程度。1年かけてようやく1反を織って、それを納めていた。それでも買い上げてくれるクライアントがいました。

150年前の明治の遷都で、国の体制ががらっと変わった。クライアントだった将軍はいなくなり、同じくクライアントの天皇家も東京に移った。誰もそんな高い織物が買えなくなったわけです。

そのときに西陣の命運を懸けて当時の最先端の織物の技術があるといわれていたフランスのリヨンに、3人の若い職人を船で派遣した。リヨンで何が起きていたか——1801年に1人の天才、ジョゼフ・マリー・ジャカール(Joseph Marie Jacquard)さんがジャカード織機を発明していた。パンチカードという穴が開いたボール紙を用いて、この穴が開いているところだけ縦糸が上がる仕組みを作った。人力で上げていた動きをプログラム化したわけですよね。これを何百枚も重ねて、人が一つ一つやっていたことが自動化されました。技術革新を起こすことによって、今まで1日数mmしか織れなかったものが1m、2mと織れるようになった。100年後には一般の高級帯として買えるようになり、一気にマスに広がりました。

WWD:機械化したことで効率化できました。

細尾:この話のポイントは、普通はマスに機械化・自動化したり、複雑な織物はやめて簡単に早く織れるようにしたりする方向に進むのですが、西陣は、美はそのままに、テクノロジーを新しく持ち込むことによって美をキープしつつ新しい社会の代謝に合わせたところです。

ご存じのとおり、ジャカード織機が発明されて、その後にジャカード織機にインスピレーションを受けて発明されたのがコンピューターです。初期のコンピューターはパンチカードですよね。だから、織物とコンピューターの相性はめちゃめちゃいいわけです。縦糸が上がるか下がるかが、コンピューターのバイナリーコードのゼロ・イチの世界ですし、当然、織物の縦横がビットマップの世界にもなった。何が言いたかったかというと、美を生み出すために人はテクノロジーを生み出していったということです。トヨタももともとは織機メーカーで織機を造っていましたが、動力の織機を造っていた技術を用いて車を造るようになりました。

WWD:先端テクノロジーを導入することが美や新しい技術の追求につながる、ということでしょうか。

細尾:そうです。織物の文脈で考えると、美が一番上位の概念にあって、その過程で、さまざまなテクノロジーを生み出しているんじゃないかなと思ったわけです。そういうこともあり、2017年から3人のコンピュータープログラマーと1人の数学者と、織物から生み出されたコンピューターの最先端の技術を使って、今まで人類が誰も生み出すことのできなかった織物を開発しようと試みています。

WWD:具体的にこれまでどういう織物を開発されましたか?

細尾:織物は平織り、綾織り、朱子織り、捩り織りとあります。平織り、綾織り、朱子織りは三原組織といわれていますが、この三原組織を一切使わない組織を作りました。また、織物はリピートして織られることが多いのですが、リピートがなく、斜めにも走っているような織物を作りました。普通ならばできないのですがそれをぎりぎりのところでコンピューターで計算しながら美しい織物を展開するというアプローチを試みました。おそらく9000年の人類の歴史の中で誰も生み出せなかった組織を、美の中に生み出したと思います。

WWD:なるほど。その後、「Ambient Weaving環境と織物」というタイトルでHOSOO GALLERYで環境と織物を表現しました。

細尾:環境情報を織り込もうというプロジェクトです。例えば、温度によって柄が変化していく織物。温度は目に見えない環境情報ですが、それとテキスタイルが連動していくものだったり、目に見えない紫外線によって硬化する織物など。あとは、植物が下から上に水を吸い上げる様子を糸化して可視化したものなどです。

WWD:イメージするのが難しいですね。

細尾:ぜひ見ていただきたいです。3日ぐらいかけて変わるんです。あれ、こないだ黄色だったのが変わった、みたいな変化も楽しめます。

WWD:言葉で表現するのが難しいですね。

細尾:そうですね。あとは、織物をコンピューター化したものもあります。一つは、PDLCという素材。弁護士事務所とかでボタンを押したらスモークがかかったりするあれです。あれを糸化しました。それを箔と織り、電気を通すとスモークが透明になり、オフにするとまたスモークがかかります。一本一本が基盤につながっていて、全部コンピューター制御しています。

WWD:突然透明になるってことですよね。

細尾:ちょっと変態チックになりますけど、いきなりヌードになったり、もできます。

WWD:つまるところ織物と環境で表現したかったことは?

細尾:先ほどお話ししたように、織物は常に人と自然の間にありました。今の電子制御の世界って実は、結構今の自然に近いと感じたというか。そういう意味で、これからの?現代の?自然や環境は何なのかっていうのを問いかけるような展覧会になっています。

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コスメオタクの“まえのん”こと前田希美が本気でビューティブランド立ち上げ 「今だからこそリップを楽しんでほしい」

 モデルや女優など幅広く活躍し、“まえのん”の愛称で知られる前田希美がディレクションするコスメブランド「エヌエム((NM))」が7月にデビューした。第1弾では、自然体で飾らないニュートラルな仕上がりのリップ(全4色、各税込3520円)とアイシャドウやチーク、ハイライターなどに使え、パウダー、クリーム、ラメの3種のテクスチャーをそろえたマルチカラー(全8色、各税込2750円)をそろえる。

 SNSではファッションやビューティなどの情報を日々発信しており、総フォロワー数は60万人を突破。その中で女性ファンは8割と、前田のスタイルに憧れを持つファンも多い。コスメコンシェルジュの資格を取得するほど大のコスメ好きでもある前田に、ブランドのこだわりを語ってもらった。

WWD:コスメブランドを立ち上げた経緯は?

前田希美(以下、前田):18年にファッションブランド「エヌウィズ(N WITH.)」を始めてから、自分の「これ、かわいい!」という感覚や判断に自信を持つことができたので、今なら大好きなコスメを自信を持ってお届けができると思い、立ち上げました。

WWD:もともと化粧品に興味があった。

前田:12歳の時からモデルの仕事をしていて、その時からプロのヘアメイクさんにメイクをしてもらうことが好きでした。撮影で気になったコスメは品番を控えてすぐ買いに行ったり、気になったコスメはすぐ試してみたり。コスメはずっと大好きです。

WWD:「エヌエム」は、自身の名前のイニシャルを付けたブランド名でもあり、コンセプトである“Nude Modern(ヌードモダン)”の意味合いも込められている。

前田:「肌になじむけど、おしゃれ」なアイテムを作りたく、“Nude Modern”をコンセプトに掲げています。その言葉の通り、“ヌード”には肌や色気、“モダン”にはトレンドやエッジの効いたおしゃれといった意味があります。「美しい生活に溶け込むような佇まいをつくる“ヌード”と“モダンが似合う女性に」という思いを込めています。それと、ブランドと一緒に私自身も成長していきたいので、未来を見据え、二段階先の“かわいい”をイメージしています。このコスメを使ったお客さまが「大人っぽくなったね」「きれいになったね」と言ってもらえるような、“上”のかわいさを意識しています。アイテムにもそれぞれ意味を持たせたネーミングをつけているので、そこにも注目してもらいたいです。

WWD:第1弾ではリップとマルチカラーアイテムをラインアップ。開発には1年以上かかったという。

前田:1日中メイクをしていると疲れてしまうことがあるので、軽い付け心地であること、それと肌から浮かず肌なじみのよい点にこだわりました。自分が欲しいと思えるアイテムを実現したかったので、自分で試して少しでも「なにか違う!」と思ったら、すぐ変更しました。色を優先すると質感が違ったり、質感を重視するとイメージした色と違ったり、バランスを取るのが大変でしたね。5〜6回は試作しました。

WWD:とにかく“肌なじみ”にこだわった。

前田:両アイテムとも薄付きになるように作りました。メイクに慣れていない人でも使いやすく、特にマルチカラーを使った目もとのグラデーションは、失敗しないと言い切れるくらい自信作です。指とブラシの両方で使えるので、発色の違いも楽しんでいただきたいです。また、“ブルベ”“イエベ”とった既成概念に縛られることなく、どんな人でも使いやすいカラー展開となっているので、気になった色はぜひチャレンジしてもらいたいです。

WWD:マスク着用が当たり前となったいま、リップをしない人が増えている中でなぜリップを展開しようと思ったのか。

前田:私はマスクをしていても、していなくても、リップは絶対付けているし、大好きなアイテムなんです。リップを付けていないだけで自信を持って外出ができないくらい欠かせないアイテムですね。メイクを完成させたときにリップがかわいいとモチベーションも上がるので、今だからこそ「楽しく過ごしてほしい!」という気持ちを込めて開発しました。ただ今回は、マスクに付きにくい処方を優先するのではなく、保湿効果のあるシアバターやホホバ種子油などを配合して、乾燥から唇を守る効果を兼ね備え、グロッシーな艶感を重視しました。

WWD:リップは税込3520円、マルチカラーは税込2750円とプレゼントでも喜ばれる価格設定だ。

前田:ギフトアイテムとしても選んでいただけるように意識しました。自分へのご褒美やプレゼントしても喜ばれるように、外箱のパッケージにリボンをあしらったりとパッケージにもこだわりました。

WWD:今後、作ってみたいアイテムは。

前田:秋口にはハンドクリームやリップバーム、マスカラを、クリスマスにはギフトに合わせたアイテムを用意する予定です。スキンケアの展開も考えていますが、そこには時間をかけてこだわりたいですし、シャンプーや柔軟剤、香水などといった香りもののアイテムも作ってみたいですね。とにかく「やってみたい」を優先して、“ブランドプロジェクト”として様々なカテゴリーに挑戦したいです。

WWD:今後の目標は。

前田:いまはオンラインのみの販売ですが、ポップアップやイベントなどアイテムを試してもらう場を設けて多くの方に「エヌエム」の魅力をお届けしたいです。

朝から夜まで1日を通して、「エヌエム」で始まって「エヌエム」で締めくくるような、ライフスタイルに寄り添える近い存在のブランドでありたいです。

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アトモス本明社長が語ったフットロッカーM&Aの本音 「スニーカーカルチャーの伝播」「新市場開拓」

 世界最大のスニーカー・スポーツウエア小売店、米フットロッカー(FOOT LOCKER)は8月2日、スニーカー専門店「アトモス(ATMOS)」などを運営するテクストトレーディングカンパニーを3億6000万ドル(約396億円)で買収すると発表した。創業24年、本明秀文社長が一代で築き上げたスニーカーショップに400億円近い値がついた。テクストトレーディングカンパニーの2020年8月期の売上高は175億円で、今期はコロナ禍でも190億円まで伸びている。そもそも、なぜ愛する「アトモス」を売却したのか?M&Aに至った経緯から今後の展望まで、本明社長の本音を聞いた。

「最終的には面白いか面白くないか」

ーー一夜明けての周りの反応は?

本明秀文テクストトレーディングカンパニー社長(以下、本明):まず何よりもメーカーが驚いている。これまでアトモスはスニーカーのカルチャーを売ってきた。一方、フットロッカーは世界最大のスニーカー量販店で、ビジネスモデルも客層も違う。だからアトモスもフットロッカーのように多店舗化して量販へシフトするのか?という問い合わせが多いが、そうじゃない。アメリカのようにショッピングモールに何千店舗も出店するビジネスモデルを日本やアジアで展開してもうまくいかない。僕たちはフットロッカーの力を借りて、これまでと変わらず、これまで以上のスピードでスニーカーカルチャーを根付かせたい。そうすることがシナジーをもたらすと思っている。

ーー売却の背景と具体的なお互いのメリットは何か?

本明:クオリティー面では、これまで日本には仕入れられなかった商品を、フットロッカー経由で日本でも販売できるかもしれない。掛け率(下代)も、アトモスより大量に仕入れるフットロッカーの方が有利だ。スケール面では、日本以外のアジアへの出店が最優先だが、その若い市場に対して量販店をただ出店してもスニーカーカルチャーは根付かない。だから僕たちの得意分野であるカルチャーをそこで売る。フットロッカーはやっぱり世界一のスニーカーの量販店だし、スニーカーならどんなものでも手に入る。ただ、これまではそこにコンセプトがなかった。だから量や仕入れに関してはフットロッカーの力を借りて、そこに僕たちがイベントや別注商品を仕掛けて“熱狂”をクリエイトしていく。生意気な言い方かもしれないが、フットロッカーも絶対に変わらないといけない。高齢化や地方の過疎化、都市の過密化が進めばこれまでのビジネスモデルは通用しなくなる。だからお互いの得意分野を生かして新しい市場を取りに行く。

ーー売却の決め手は?

本明:最終的には面白いか面白くないか。フットロッカーと一緒にビジネスができれば、「アトモス」を次の成長段階に進められると考えた。

ーー3億6000万ドルという評価額については?

本明:具体的な交渉はアメリカのパートナーであるジョン・リー(John Lee、元ユービックライフのオーナーで現在はアトモスUSAの共同代表)に任せていたので、ほとんど関わっていない。それと実は、まだフットロッカーから僕のジョブディスクリプションが届いていない。僕の価値はスピード感と判断力。「売れる」「売れない」を即決できる実行力にある。それが、組織が大きくなることで遅くなると意味がない。だからその辺りの制約についてはこれから話し合う。お互いにとって高い買い物だったか安い買い物だったかは、やってみないと分からない。

ーーこれまでの「アトモス」はどう変わる?

本明:「アトモス」「アトモス ピンク」「トーキョー23」の屋号はこれまで通り。スタッフもそのままで、関わり方も変わらない。

ーーフットロッカーの日本進出はあるか?

本明:聞いていない。

ーー売却益でやりたいことは?

本明:考えていない。僕が得意なのは、スニーカーの商売。全然分からない分野のことを仕事にしても成功できないし、そんなに世の中甘くない。だけどやっぱり面白いから辞めないわけで、その面白さは僕たちの企画が世の中に受け入れられたとき。たとえ失敗しても、受け入れられなかった原因が何だったかを分析し、反省するのも面白い。

ーー次の目標は?

本明:ここまで来たら、スニーカー業界での世界制覇。今のアメリカのスニーカーブームは原宿から始まったカルチャーだと思う。「フライトクラブ(FLIGHT CLUB)」創業者のダメニー・ウィア(Damany Weir)が、僕の「チャプター(CHAPTER)」(本明社長が最初に始めた店でスニーカーを並行輸入して販売していた)のビジネスモデルをアメリカに持って帰った。自分たちだけでやろうとするとすごく時間がかかることを、今度はフットロッカーの力を借りながらもっとスピードを上げて、少し違った形でアジア中に広げていく。アジア各国に3店舗ずつぐらい「アトモス」を出店するとか。僕たちが育てたスニーカーカルチャーを多くの若者に伝えていきたい。

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東京五輪の“表彰台ジャケット”を手掛けたのはどんな人? アシックスと組んだ廣川玉枝に聞く

 8月8日に閉会式を控え、東京2020オリンピックもいよいよ終盤戦だ。開幕からこれまでを振り返り、アスリートが競技をしている瞬間と共に、晴れ晴れとした顔で表彰台に上がるシーンを印象深く思い出す人も多いだろう。メダルラッシュに湧く日本選手団をいっそう輝かせているのが、選手が表彰台で着用している朱赤のジップアップジャケットだ。同ジャケットは大会パートナーのアシックスが提供しているが、同社と組んで特徴的な生地のデザインを手掛けたのは廣川玉枝。自身のブランド「ソマルタ(SOMARTA)」も手掛ける彼女に、今回のウエアデザインに込めた思いを聞いた。

WWD:オリンピックでは、どの国の公式ユニフォームをどのデザイナーが手掛けたかといった話が毎回話題になるが、今大会では廣川さんが製作に関わったアシックスの“ポディウムジャケット”(ポディウムは表彰台の意)がファッション業界内外で話題となっている。アシックスとはどのような経緯で取り組みがスタートしたのか。

廣川玉枝「ソマルタ」デザイナー(以下、廣川):数年前にアシックスからお話をいただき、“ポディウムジャケット”や陸上、テニスの競技用ウエアのジャガードメッシュのテキスタイルデザインを共同開発することになりました。東京の夏は湿度も気温も非常に高い。アシックスは選手の体力の消耗をできるだけ軽減できるウエアを追求しており、メッシュ状の編みで通気孔の開いたニットのテキスタイルを作ることになりました。ウエアが暑いため自身で穴を開けて通気性を上げているという陸上選手のエピソードを聞き、身体を保護しながら呼吸できる皮膚そのもののような編み地を開発することができないかと考えました。

WWD:皮膚のような編み地というのは、「ソマルタ」が2007年春夏のデビュー以来作り続けている無縫製ニット“スキンシリーズ”に通じるものだ。

廣川:「ソマルタ」を立ち上げる前、企業(編集部注:イッセイ ミヤケ)に属していた時から、ニットデザイナーとしてさまざまな編み機を使い、編み地の研究をしてきました。ニットは伸縮によって体の動きに付いてくるので、布帛(編み地ではなく織り地のこと)とは違って、生地を編むと同時に服の形をデザインすることができます。テキスタイルのデザインで自由度が高いニットは、スポーツウエアに応用できるのではないかと以前から思っていましたが、実際にスポーツウエアを手掛けたのは今回が初めてです。「ソマルタ」の“スキンシリーズ”と“ポディウムジャケット”は編む方法など技術的には似ていますが、“ポディウムジャケット”は編み地が表と裏を一体で編む2重構造になっているので嵩高性(ふくらみや弾力があること)があり、異なる点はほかにもいくつかあります。アシックスのスポーツ工学研究所が蓄積してきた機能性やスポーツウエアに必要な仕組みと、われわれの編みの知見や経験が一緒になって初めて実現しました。

WWD:具体的に、アシックス側からはどんな研究内容が提供されたのか。

廣川:アシックスは体の中で体温が上昇しやすく、汗をかきやすい部位などを長年研究しています。その「ボディマッピング」に基づき、体の発汗ゾーンを意識しながら、汗をかきやすい場所は編み地の穴(通気孔)を大きくし、発汗よりも紫外線からの保護を意識するべき場所は穴を開けずに編み地を詰めるなどして、テキスタイルを設計しています。モノ作りにおけるマニアックな話になるのですが、大きさの異なる穴を近くに配置すると生地が破れやすくなるので、どういう編み立て設計にすれば穴の大きさが違っても破れないのかなどを、試作を繰り返して検証しました。また、競技によって選手の体形は全く違います。どんな選手の体にも通気孔の位置が合うように、サイジングやグレーディングにも気を配りました。

WWD:スポーツウエアとして機能面は非常に大切だが、同時にかっこよく見える、美しく見えるという面もファッションとしては欠かせない。

廣川:体というものがすでに美しい形なので、発汗など体の持っている機能に沿って編み地をデザインしていけば、体そのものの強さ、美しさは自然と引き出されます。「ソマルタ」の“スキンシリーズ”も同様の考え方で作り続けていますが、今回、アシックスから提供されたより科学的な、人体工学に即したデータと照らし合わせることで、改めて納得した部分は大きいです。

WWD:今回の経験を生かして、「ソマルタ」でもスポーツウエアを作る計画はあるか。

廣川:スポーツウエアを意識した服をデザインすることはできても、われわれの力だけでは本格的な機能性も備えたアスリート向けのスポーツウエアを作ることは難しい。アシックスは長年アスリートにとっての優れた機能性を考えて、糸から開発を行っています。だからこそ、今回のように一緒に取り組んで開発することができれば、今までにないプロダクトが生まれる可能性があると思いました。

「選手に表彰台に一緒に連れていってもらった」

WWD:数年前に依頼がきたときはどんな気持ちだったか。

廣川:以前、国立近代美術館でやっていた1964年の東京オリンピックのデザインに関する展覧会を偶然見る機会がありました。前回の東京オリンピックは、今では巨匠と呼ばれているような日本を代表するデザイナーや建築家が力を合わせて作り上げたものだったのだと知り、とても感動しました。自分もいつかそういう仕事をしてみたいという夢を持っていましたが、今回の大会ではアシックスからお声がけいただいたことで、われわれもそこに加われることになり非常に光栄に感じました。

WWD:廣川さん自身はスポーツはするのか。

廣川:スポーツは好きですが、小さいころからあまり得意ではありません。“ポディウムジャケット”は選手が表彰台に上る機会があって初めて多くの人目に触れるものです。連日のメダルラッシュのニュースを見るたびに驚き、選手がコロナ禍の厳しい状況下でも日々練習を続けてきたことを知り、心が揺さぶられました。日本や各国の選手が人生をかけた戦いに挑む姿には、大きな勇気と活力をもらっています。スポーツが苦手な私でも、アシックスと組むご縁に恵まれて、そして何よりも選手の頑張りがあったからこそ、“ポディウムジャケット”を表彰台の上で見ることができました。表彰台に一緒に連れて行ってもらったようですごく感動しています。

WWD:特に印象的だった競技や選手は。

廣川:どの選手も印象的ですが、兄妹で金メダルを獲った柔道の阿部詩選手、競泳の大橋悠依選手はなかでも記憶に残っています。世界中の強豪選手が居並ぶ中で金メダルを獲った背景には、計り知れない努力の積み重ねがあるんだと思います。特に女性選手の活躍にパワーをもらいました。選手のインタビューなどを聞いていると、既に次のパリ大会を意識するなど、常に前を見ている人ばかりです。そこには私も刺激を受けますし、子供たちが自分の国で、世界中の選手が力を尽くす場面を目撃できたことは、未来に向けての大きな財産だと思います。

WWD:8月末には東京コレクションも行われる。「ソマルタ」はここ数年、東京コレクションには参加していないが、今後の活動は。

廣川:11月に、大分・別府で行われる芸術祭に招待されています。「廣川玉枝 in BEPPU」という名称で、服飾の力を生かし、地域の祭りを作ることをテーマにしています。別府以外でも、各地でさまざまなプロジェクトに関わることが多くなってきました。各地でさまざまな人に出会って、一緒にモノ作りができるのはとても楽しいこと。最近、自分のことを“ファッションデザイナー”ではなく、“服飾デザイナー”と名乗っています。ファッションという言葉には、「(過ぎ去っていく)流行を語る」といったニュアンスがどうしてもあるように感じています。でも、服だっていいものを作れば、すぐに古びてしまうことはないと思う。ブランド立ち上げ以来、研究開発を続けている“スキンシリーズ”もその一つです。いいものを丁寧に作り、少しずつ時代に残していきたいと思っています。

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東京五輪の“表彰台ジャケット”を手掛けたのはどんな人? アシックスと組んだ廣川玉枝に聞く

 8月8日に閉会式を控え、東京2020オリンピックもいよいよ終盤戦だ。開幕からこれまでを振り返り、アスリートが競技をしている瞬間と共に、晴れ晴れとした顔で表彰台に上がるシーンを印象深く思い出す人も多いだろう。メダルラッシュに湧く日本選手団をいっそう輝かせているのが、選手が表彰台で着用している朱赤のジップアップジャケットだ。同ジャケットは大会パートナーのアシックスが提供しているが、同社と組んで特徴的な生地のデザインを手掛けたのは廣川玉枝。自身のブランド「ソマルタ(SOMARTA)」も手掛ける彼女に、今回のウエアデザインに込めた思いを聞いた。

WWD:オリンピックでは、どの国の公式ユニフォームをどのデザイナーが手掛けたかといった話が毎回話題になるが、今大会では廣川さんが製作に関わったアシックスの“ポディウムジャケット”(ポディウムは表彰台の意)がファッション業界内外で話題となっている。アシックスとはどのような経緯で取り組みがスタートしたのか。

廣川玉枝「ソマルタ」デザイナー(以下、廣川):数年前にアシックスからお話をいただき、“ポディウムジャケット”や陸上、テニスの競技用ウエアのジャガードメッシュのテキスタイルデザインを共同開発することになりました。東京の夏は湿度も気温も非常に高い。アシックスは選手の体力の消耗をできるだけ軽減できるウエアを追求しており、メッシュ状の編みで通気孔の開いたニットのテキスタイルを作ることになりました。ウエアが暑いため自身で穴を開けて通気性を上げているという陸上選手のエピソードを聞き、身体を保護しながら呼吸できる皮膚そのもののような編み地を開発することができないかと考えました。

WWD:皮膚のような編み地というのは、「ソマルタ」が2007年春夏のデビュー以来作り続けている無縫製ニット“スキンシリーズ”に通じるものだ。

廣川:「ソマルタ」を立ち上げる前、企業(編集部注:イッセイ ミヤケ)に属していた時から、ニットデザイナーとしてさまざまな編み機を使い、編み地の研究をしてきました。ニットは伸縮によって体の動きに付いてくるので、布帛(編み地ではなく織り地のこと)とは違って、生地を編むと同時に服の形をデザインすることができます。テキスタイルのデザインで自由度が高いニットは、スポーツウエアに応用できるのではないかと以前から思っていましたが、実際にスポーツウエアを手掛けたのは今回が初めてです。「ソマルタ」の“スキンシリーズ”と“ポディウムジャケット”は編む方法など技術的には似ていますが、“ポディウムジャケット”は編み地が表と裏を一体で編む2重構造になっているので嵩高性(ふくらみや弾力があること)があり、異なる点はほかにもいくつかあります。アシックスのスポーツ工学研究所が蓄積してきた機能性やスポーツウエアに必要な仕組みと、われわれの編みの知見や経験が一緒になって初めて実現しました。

WWD:具体的に、アシックス側からはどんな研究内容が提供されたのか。

廣川:アシックスは体の中で体温が上昇しやすく、汗をかきやすい部位などを長年研究しています。その「ボディマッピング」に基づき、体の発汗ゾーンを意識しながら、汗をかきやすい場所は編み地の穴(通気孔)を大きくし、発汗よりも紫外線からの保護を意識するべき場所は穴を開けずに編み地を詰めるなどして、テキスタイルを設計しています。モノ作りにおけるマニアックな話になるのですが、大きさの異なる穴を近くに配置すると生地が破れやすくなるので、どういう編み立て設計にすれば穴の大きさが違っても破れないのかなどを、試作を繰り返して検証しました。また、競技によって選手の体形は全く違います。どんな選手の体にも通気孔の位置が合うように、サイジングやグレーディングにも気を配りました。

WWD:スポーツウエアとして機能面は非常に大切だが、同時にかっこよく見える、美しく見えるという面もファッションとしては欠かせない。

廣川:体というものがすでに美しい形なので、発汗など体の持っている機能に沿って編み地をデザインしていけば、体そのものの強さ、美しさは自然と引き出されます。「ソマルタ」の“スキンシリーズ”も同様の考え方で作り続けていますが、今回、アシックスから提供されたより科学的な、人体工学に即したデータと照らし合わせることで、改めて納得した部分は大きいです。

WWD:今回の経験を生かして、「ソマルタ」でもスポーツウエアを作る計画はあるか。

廣川:スポーツウエアを意識した服をデザインすることはできても、われわれの力だけでは本格的な機能性も備えたアスリート向けのスポーツウエアを作ることは難しい。アシックスは長年アスリートにとっての優れた機能性を考えて、糸から開発を行っています。だからこそ、今回のように一緒に取り組んで開発することができれば、今までにないプロダクトが生まれる可能性があると思いました。

「選手に表彰台に一緒に連れていってもらった」

WWD:数年前に依頼がきたときはどんな気持ちだったか。

廣川:以前、国立近代美術館でやっていた1964年の東京オリンピックのデザインに関する展覧会を偶然見る機会がありました。前回の東京オリンピックは、今では巨匠と呼ばれているような日本を代表するデザイナーや建築家が力を合わせて作り上げたものだったのだと知り、とても感動しました。自分もいつかそういう仕事をしてみたいという夢を持っていましたが、今回の大会ではアシックスからお声がけいただいたことで、われわれもそこに加われることになり非常に光栄に感じました。

WWD:廣川さん自身はスポーツはするのか。

廣川:スポーツは好きですが、小さいころからあまり得意ではありません。“ポディウムジャケット”は選手が表彰台に上る機会があって初めて多くの人目に触れるものです。連日のメダルラッシュのニュースを見るたびに驚き、選手がコロナ禍の厳しい状況下でも日々練習を続けてきたことを知り、心が揺さぶられました。日本や各国の選手が人生をかけた戦いに挑む姿には、大きな勇気と活力をもらっています。スポーツが苦手な私でも、アシックスと組むご縁に恵まれて、そして何よりも選手の頑張りがあったからこそ、“ポディウムジャケット”を表彰台の上で見ることができました。表彰台に一緒に連れて行ってもらったようですごく感動しています。

WWD:特に印象的だった競技や選手は。

廣川:どの選手も印象的ですが、兄妹で金メダルを獲った柔道の阿部詩選手、競泳の大橋悠依選手はなかでも記憶に残っています。世界中の強豪選手が居並ぶ中で金メダルを獲った背景には、計り知れない努力の積み重ねがあるんだと思います。特に女性選手の活躍にパワーをもらいました。選手のインタビューなどを聞いていると、既に次のパリ大会を意識するなど、常に前を見ている人ばかりです。そこには私も刺激を受けますし、子供たちが自分の国で、世界中の選手が力を尽くす場面を目撃できたことは、未来に向けての大きな財産だと思います。

WWD:8月末には東京コレクションも行われる。「ソマルタ」はここ数年、東京コレクションには参加していないが、今後の活動は。

廣川:11月に、大分・別府で行われる芸術祭に招待されています。「廣川玉枝 in BEPPU」という名称で、服飾の力を生かし、地域の祭りを作ることをテーマにしています。別府以外でも、各地でさまざまなプロジェクトに関わることが多くなってきました。各地でさまざまな人に出会って、一緒にモノ作りができるのはとても楽しいこと。最近、自分のことを“ファッションデザイナー”ではなく、“服飾デザイナー”と名乗っています。ファッションという言葉には、「(過ぎ去っていく)流行を語る」といったニュアンスがどうしてもあるように感じています。でも、服だっていいものを作れば、すぐに古びてしまうことはないと思う。ブランド立ち上げ以来、研究開発を続けている“スキンシリーズ”もその一つです。いいものを丁寧に作り、少しずつ時代に残していきたいと思っています。

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“香水砂漠”と呼ばれる日本の香水市場を変えようとする国税局出身の風雲児

 オブジェやネオン菅が店内を彩り、まるでアートギャラリーのような内装で化粧品·雑貨フロアに少し異様な存在感を醸し出すのは、ビオトープインク(BIOTOPE INC.)が手掛けるニッチフレグランス専門店の「ノーズショップ(NOSE SHOP)」だ。2017年8月に新宿ニュウマンに1号店をオープン以来、東急プラザ銀座、池袋パルコ、グランフロント大阪、ニュウマン横浜、渋谷のミヤシタパークと順調に店舗網を拡大している。国内唯一のニッチフレグランスのセレクトショップとして世界中の新進気鋭のフレグランスを取り扱い、未成熟な日本の香水市場で異彩を放っている。

 そんな「ノーズショップ」を率いるのは、自らフレグランスマニアと称する中森友喜ビオトープインク社長だ。中森代表は「日本人の鼻感度を上げる」というミッションを掲げ、“香水砂漠”とも呼ばれる日本の市場を変えようとしている。「ノーズショップ」は個性的な香水を取り扱うだけでなく、香りに抵抗がある日本人がもっと気軽に香水を楽しんでもらえるように、さまざまな工夫を凝らす。“香りのテーマパーク”を目指して“香水ガチャ(香水のカプセルトイマシーン)”を作ったり、実験室やアートギャラリーのような空間にこだわったりするなど、従来の香水売り場にとらわれないアプローチで新風を吹かせる。

 新型コロナウイルスの影響で、日本でも香りの消費の仕方が変わりつつある。おうち時間が長くなり自宅やプライベートを彩る香りを楽しむ人が増えているが、果たして日本の香水市場は“砂漠”状態から脱却できるのかーー。日本の香水業界を変えるべく、固定観念にとらわれず次々と新たな仕掛けを打ち出し、風雲児として注目を集める中森代表に、香水市場の現状について聞いた。

WWD:そもそもなぜ日本の香水市場は拡大しないのか。

中森友喜ビオトープインク社長(以下、中森):日本の香水市場はヨーロッパの10分の1程度の規模とされている。さらに“香水砂漠”と揶揄されるほど、マーケティング予算をいくらかけても芽の出ない非効率的で“ダメ”なマーケットと評されていた。ただ、それは旧来の売り方が悪かったから。商材そのものと売り方が、日本のマーケットの特性と時流に合致していなかったせいだと考える。

香水の評価軸には、香りの良し悪しだけではなく、強度や持続時間などいろいろある。マス向けの香りは、生産の安定性や原価率の低減を考えて合成香料をふんだんに使用する傾向にあり、その結果強い香りが市場を占めることに。その強くて長く続く香りが日本の消費者にそもそもマッチしなかったのだろう。

また売り方についても、これまではブランドロゴや広告頼りの“ほったらかしセルフ”の売り方か、懇切丁寧すぎる重厚感のあるカウンセリング販売のどちらかしかなかった。そこで「ノーズショップ」では、高度な知識をもったフレンドリーなスタッフが必要な時に声をかけ、接客が不要な人には製品の前に置いてあるテスターを嗅ぎながら丁寧な製品説明を読んで自分で納得できる、セミセルフ方式を採用した。

WWD:そんな“難しい”日本市場に、ニッチなフレグランスで勝負しようと思った理由は。

中森:マーケティングの大家コトラー氏の書籍の中に、裸足の国で靴を売る話が出てくる。ある国に靴を売りに行ったセールスマンAが空港に到着するなり、誰も靴を履いてない状況を見て、この国の靴のマーケットはゼロだと見積もって撤退したが、セールスマンBは誰も靴を履いていないからこそ、ここには靴の巨大マーケットがあると見積もったという。

その話と同じように、日本では香りを身につける文化が普及していないからこそ大きなマーケットが眠っていると思った。ただ、ヨーロッパの香水文化をそのまま紹介することがマーケット拡大に寄与するとは考えておらず、日本に根ざした広げ方で時間をかけて浸透させる必要がある。「香水」そのものはフランス発の文化の一部だったとしても、ヨーロッパが香りの先進国で日本は香りの後進国、という安直な二元論は受け入れがたい。食文化でそれぞれの国の違いがあるように、日本にももともと香りの文化があり、香りとの接し方も他の国とは違うのだ。

正直成功する確証はなかったが、「自分が日本の香水市場を変えなきゃ」という使命感が強く、事業の立ち上げを決心した。最初は商談にも苦労したし、商業施設からも相手にされなかった。ただようやくポップアップを開催できた時に、お客さまから「こんなお店が欲しかったんです!」というような声をたくさんいただいて、「間違ってないかもしれない」と不安が確信に変わった。そこでルミネをもう一回説得したところ、ニュウマン新宿店が1号店になった。

「他の人がやっていないことに挑戦している」を基準に香水ブランドをセレクト

WWD:ニッチフレグランスの定義は。

中森:ニッチフレグランスとは“クラフト香水”とでも言えるような、小ロットかつハイクオリティーで生産される、作り手の強いこだわりが詰まった新興系のフレグランスを指す。希少な原料を使用したり、少量生産で販路も限定されていたりすることもあって、高価になることが多い。

これまで日本の香水市場は一般的に2000円未満の低価格帯、2000~5000円未満の中価格帯、5000円以上の高価格帯という3つのカテゴリに分類されていたが、「ノーズショップ」は平均価格1万5000円以上の超高価格帯という新たなカテゴリーを作った。現在、世界12カ国から約40ブランド、600アイテムの製品を取り扱う。

WWD:「ノーズショップ」はニッチフレグランスの専門店だが、中でも一番 “ニッチ(変わり種)”な香水は?

中森:イタリア人のアレッサンドロ・グアルティエーリ(Alessandro Gualtieri)が手掛ける「ナゾマット(NASOMATTO)」。ブランド名は「狂った鼻」という意味だが、アレッサンドロも本当にちょっと狂った人で(笑)。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS )」の香りなども作っている有名なクリエイターだが、自身のブランドはとてもコンセプチュアル。例えば日本で死の香りを嗅ぎたいからって、富士の樹海の香りを嗅ぎに行ったり。樹海の香りを嗅いだ次の日には、スクランブル交差点の香りを嗅ぎに行ったのだとか。

WWD:今は海外でも知名度が上がり、売り込みも多いはず。取り扱う香水の基準は。

中森:これまで日本にわれわれのような店舗がなかったので、ありがたいことに海外で非常に有名になり、メールや大使館経由、SNSなどで世界中から提案をいただいている。提案がたくさんあるので、今は断ることのほうが多いほど。そんな中で選ぶ際に大事にしているのは、ニッチフレグランスの定義そのものの中にも内包される「新しいことにチャレンジしている」か。

例えば「ニコライ(NICOLAI)」というフランスのブランドは、ゲラン(GUERLAIN)一家のパトリシア・ドゥ・ニコライ(Patricia de Nicolai)という女性が手掛けている。彼女は1980年代後半に、フランス調香師協会の新人賞を女性で初めて獲ったのだが、調香の世界はもともと男性社会だったので、彼女は性別と名前を隠して作品を出品した。そのストーリーがセンセーションを巻き起こし、以来彼女は女性調香師もが活躍できる香水業界の時代を築いた人として評価されている。
 

まずは“香りの民主化”を掲げ日本の香水市場の発展を目指す

WWD:「ノーズショップ」で“香りの民主化”を掲げているが、それはどのように実現するのか。

中森:まずは香水のハードルを下げることから始める。香りを得意としない人が多い日本では、エントリー層にきちんと訴求していくことが大事。エントリーユーザーに対して、専門知識や歴史をいきなり説明しても抵抗感を生み出すだけなので、もっと楽しく気楽に香りに触れてもらいたい。“香水ガチャ”もそういう思いから生まれたもので、日本独自の文化であるガチャガチャやゲームの要素と、香りを掛け合わせた。今後は無人店舗や移動販売車など、ほかの形態での販売にも挑戦してみたい。

民主化を言い換えると、より身近に、より安く、より役に立つに、ということだと思うが、単に香水ユーザーを増やすことを目指しているわけではない。香りのクリエイター(発信者)と上質な鑑賞者(受信者)の両方を育てていきたい。そうでないと一時的に市場を広げられたとしても、市場を発展させることはないだろう。その目標を考えたときに、「ノーズショップ」はまだ工程の1%も達成できていないかもしれない。ただ、百貨店や商業施設の中にも香りを扱うショップが増え、インターネット上でも香りの製品を販売したり、香りの情報を発信する人たちが少しずつ増えたりしている現状を見ると、わずか数年前に「香水は日本では売れない」と言われていた社会的な評価を覆すことができたのは、小さいながらも輝かしい実績だ。そこは民主化の第一歩を踏み出せたのだと思う。

WWD:香水のカプセルトイマシーンやユニークな店頭ディスプレーはリアル店舗の取り組み。コロナで店舗の休業を余儀なくされる中、どのようにオンラインでも香りを売ったのか。

中森:香水のカプセルトイマシーンも一種のエンターテインメントと捉えているが、オンラインでもエンターテイメントを届けられるように、いろいろ考えた。店頭で香水を試せなくなったので、お試しサイズやムエットを販売して自宅に届けた。するとこれが成功して、地方の人などこれまでなかなか店頭に来れなかったお客さまにもリーチできるようになり、店頭の休業で一番打撃が大きかった昨年の4~5月のEC売り上げは前年同期比15倍伸びた。最終的には全体の売り上げを見ても今年は前年比50%増の成長を達成できる見込みだ。

「一過性のブームとして絶対終わらせたくない」

WWD:中森代表は国税局やファッションベンチャーなど多様な経歴の持ち主。

中森:国税局で財務や税務などのバックグラウンドを持っているので、失敗しないビジネスづくりがマインドセットの根底にある。またこれまでのファッションの経験ではLA発「キットソン(KITSON)」など、海外のブランドを日本でブームさせる仕掛け役を担ってきた。ただニッチフレグランス事業は、一過性のブームでは絶対終わらせず、香水の一つの文化の担い手として継続させる必要があると思っている。だからあまり派手なプロモーションで世の中にどんと訴えかけて、すっと消えていくようなブームのつくり方はしたくない。

WWD:海外では、これまで主流だった異性を意識したマーケティングや、ウィメンズ・メンズフレグランスなどジェンダーを縛る売り方が見直されるようになっている。多様化が進んでいる印象だが、日本はどうなのか。

中森:「ノーズショップ」ではそういったコミュニケーションを避けているが、SNSやメディアを見ていると日本ではまだまだ“モテ香水”が人気なんだと思う。市場に一定のニーズがあるのであれば、そういうアプローチで販売したいという企業があることも一定の理解はできる。ただ、“モテ香水”という概念は、身に付ける人の個性はもちろん、受け手側の感性さえも機械的に一つの解に押し込めてしまうのだと個人的には考えている。

一時期、“香りマーケティング”といって、ホテルやアパレルショップなどで香りを放出してセールスを上げようという仕掛けがはやったが、あれも「提案」ではなく消費者への感性の「押し付け」であり、売り手側の倫理観が問われるやり方だと考えていた。香りで個性を演出することはアリだとしても、感性の押しつけになるレベルのものはいかがなものか。そういったメッセージの企業やブランドのものを選ばないのも消費者側の責任かもしれないが、まずは売り手側が率先して変わることが必要だろう。

WWD:“香りの民主化”を達成した日本の香水市場の未来はどんなもの?

中森:“香りの民主化”の未来には、有名ブランド香水のサブスクや、以前にはやった紳士服のセミオーダーのような“カスタマイズ風”香水サービスはメインストリームにはいないと思う。「ノーズショップ」は今後も世界中からユニークなブランドを紹介するセレクトを続けていくことを前提にして、今後は、国内で香りのクリエイターと上質な鑑賞者が育つ仕組みを作っていきたい。作り手だけではなく、それらの作品を適切に評価できる鼻と知識をもった鑑賞者の育成も非常に重要。

分かりやすく言えば、香りを作る・鑑賞することが一つの趣味の領域として成立している社会を作ってみたい。その作品がCtoCで流通·論評できるプラットホームがあってもいいかもしれない。そのためにまず必要なのは、香りづくりのツール。つまり原材料(香料)と、それらを混ぜたり保管したりする機材だ。そして次に必要なのが知識。われわれは、これらのツールと知識の提供に加え、クリエイターの交流ができるような仕組みを築き、「香りって面白い」という喜びを社会に提供していきたい。

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“香水砂漠”と呼ばれる日本の香水市場を変えようとする国税局出身の風雲児

 オブジェやネオン菅が店内を彩り、まるでアートギャラリーのような内装で化粧品·雑貨フロアに少し異様な存在感を醸し出すのは、ビオトープインク(BIOTOPE INC.)が手掛けるニッチフレグランス専門店の「ノーズショップ(NOSE SHOP)」だ。2017年8月に新宿ニュウマンに1号店をオープン以来、東急プラザ銀座、池袋パルコ、グランフロント大阪、ニュウマン横浜、渋谷のミヤシタパークと順調に店舗網を拡大している。国内唯一のニッチフレグランスのセレクトショップとして世界中の新進気鋭のフレグランスを取り扱い、未成熟な日本の香水市場で異彩を放っている。

 そんな「ノーズショップ」を率いるのは、自らフレグランスマニアと称する中森友喜ビオトープインク社長だ。中森代表は「日本人の鼻感度を上げる」というミッションを掲げ、“香水砂漠”とも呼ばれる日本の市場を変えようとしている。「ノーズショップ」は個性的な香水を取り扱うだけでなく、香りに抵抗がある日本人がもっと気軽に香水を楽しんでもらえるように、さまざまな工夫を凝らす。“香りのテーマパーク”を目指して“香水ガチャ(香水のカプセルトイマシーン)”を作ったり、実験室やアートギャラリーのような空間にこだわったりするなど、従来の香水売り場にとらわれないアプローチで新風を吹かせる。

 新型コロナウイルスの影響で、日本でも香りの消費の仕方が変わりつつある。おうち時間が長くなり自宅やプライベートを彩る香りを楽しむ人が増えているが、果たして日本の香水市場は“砂漠”状態から脱却できるのかーー。日本の香水業界を変えるべく、固定観念にとらわれず次々と新たな仕掛けを打ち出し、風雲児として注目を集める中森代表に、香水市場の現状について聞いた。

WWD:そもそもなぜ日本の香水市場は拡大しないのか。

中森友喜ビオトープインク社長(以下、中森):日本の香水市場はヨーロッパの10分の1程度の規模とされている。さらに“香水砂漠”と揶揄されるほど、マーケティング予算をいくらかけても芽の出ない非効率的で“ダメ”なマーケットと評されていた。ただ、それは旧来の売り方が悪かったから。商材そのものと売り方が、日本のマーケットの特性と時流に合致していなかったせいだと考える。

香水の評価軸には、香りの良し悪しだけではなく、強度や持続時間などいろいろある。マス向けの香りは、生産の安定性や原価率の低減を考えて合成香料をふんだんに使用する傾向にあり、その結果強い香りが市場を占めることに。その強くて長く続く香りが日本の消費者にそもそもマッチしなかったのだろう。

また売り方についても、これまではブランドロゴや広告頼りの“ほったらかしセルフ”の売り方か、懇切丁寧すぎる重厚感のあるカウンセリング販売のどちらかしかなかった。そこで「ノーズショップ」では、高度な知識をもったフレンドリーなスタッフが必要な時に声をかけ、接客が不要な人には製品の前に置いてあるテスターを嗅ぎながら丁寧な製品説明を読んで自分で納得できる、セミセルフ方式を採用した。

WWD:そんな“難しい”日本市場に、ニッチなフレグランスで勝負しようと思った理由は。

中森:マーケティングの大家コトラー氏の書籍の中に、裸足の国で靴を売る話が出てくる。ある国に靴を売りに行ったセールスマンAが空港に到着するなり、誰も靴を履いてない状況を見て、この国の靴のマーケットはゼロだと見積もって撤退したが、セールスマンBは誰も靴を履いていないからこそ、ここには靴の巨大マーケットがあると見積もったという。

その話と同じように、日本では香りを身につける文化が普及していないからこそ大きなマーケットが眠っていると思った。ただ、ヨーロッパの香水文化をそのまま紹介することがマーケット拡大に寄与するとは考えておらず、日本に根ざした広げ方で時間をかけて浸透させる必要がある。「香水」そのものはフランス発の文化の一部だったとしても、ヨーロッパが香りの先進国で日本は香りの後進国、という安直な二元論は受け入れがたい。食文化でそれぞれの国の違いがあるように、日本にももともと香りの文化があり、香りとの接し方も他の国とは違うのだ。

正直成功する確証はなかったが、「自分が日本の香水市場を変えなきゃ」という使命感が強く、事業の立ち上げを決心した。最初は商談にも苦労したし、商業施設からも相手にされなかった。ただようやくポップアップを開催できた時に、お客さまから「こんなお店が欲しかったんです!」というような声をたくさんいただいて、「間違ってないかもしれない」と不安が確信に変わった。そこでルミネをもう一回説得したところ、ニュウマン新宿店が1号店になった。

「他の人がやっていないことに挑戦している」を基準に香水ブランドをセレクト

WWD:ニッチフレグランスの定義は。

中森:ニッチフレグランスとは“クラフト香水”とでも言えるような、小ロットかつハイクオリティーで生産される、作り手の強いこだわりが詰まった新興系のフレグランスを指す。希少な原料を使用したり、少量生産で販路も限定されていたりすることもあって、高価になることが多い。

これまで日本の香水市場は一般的に2000円未満の低価格帯、2000~5000円未満の中価格帯、5000円以上の高価格帯という3つのカテゴリに分類されていたが、「ノーズショップ」は平均価格1万5000円以上の超高価格帯という新たなカテゴリーを作った。現在、世界12カ国から約40ブランド、600アイテムの製品を取り扱う。

WWD:「ノーズショップ」はニッチフレグランスの専門店だが、中でも一番 “ニッチ(変わり種)”な香水は?

中森:イタリア人のアレッサンドロ・グアルティエーリ(Alessandro Gualtieri)が手掛ける「ナゾマット(NASOMATTO)」。ブランド名は「狂った鼻」という意味だが、アレッサンドロも本当にちょっと狂った人で(笑)。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS )」の香りなども作っている有名なクリエイターだが、自身のブランドはとてもコンセプチュアル。例えば日本で死の香りを嗅ぎたいからって、富士の樹海の香りを嗅ぎに行ったり。樹海の香りを嗅いだ次の日には、スクランブル交差点の香りを嗅ぎに行ったのだとか。

WWD:今は海外でも知名度が上がり、売り込みも多いはず。取り扱う香水の基準は。

中森:これまで日本にわれわれのような店舗がなかったので、ありがたいことに海外で非常に有名になり、メールや大使館経由、SNSなどで世界中から提案をいただいている。提案がたくさんあるので、今は断ることのほうが多いほど。そんな中で選ぶ際に大事にしているのは、ニッチフレグランスの定義そのものの中にも内包される「新しいことにチャレンジしている」か。

例えば「ニコライ(NICOLAI)」というフランスのブランドは、ゲラン(GUERLAIN)一家のパトリシア・ドゥ・ニコライ(Patricia de Nicolai)という女性が手掛けている。彼女は1980年代後半に、フランス調香師協会の新人賞を女性で初めて獲ったのだが、調香の世界はもともと男性社会だったので、彼女は性別と名前を隠して作品を出品した。そのストーリーがセンセーションを巻き起こし、以来彼女は女性調香師もが活躍できる香水業界の時代を築いた人として評価されている。
 

まずは“香りの民主化”を掲げ日本の香水市場の発展を目指す

WWD:「ノーズショップ」で“香りの民主化”を掲げているが、それはどのように実現するのか。

中森:まずは香水のハードルを下げることから始める。香りを得意としない人が多い日本では、エントリー層にきちんと訴求していくことが大事。エントリーユーザーに対して、専門知識や歴史をいきなり説明しても抵抗感を生み出すだけなので、もっと楽しく気楽に香りに触れてもらいたい。“香水ガチャ”もそういう思いから生まれたもので、日本独自の文化であるガチャガチャやゲームの要素と、香りを掛け合わせた。今後は無人店舗や移動販売車など、ほかの形態での販売にも挑戦してみたい。

民主化を言い換えると、より身近に、より安く、より役に立つに、ということだと思うが、単に香水ユーザーを増やすことを目指しているわけではない。香りのクリエイター(発信者)と上質な鑑賞者(受信者)の両方を育てていきたい。そうでないと一時的に市場を広げられたとしても、市場を発展させることはないだろう。その目標を考えたときに、「ノーズショップ」はまだ工程の1%も達成できていないかもしれない。ただ、百貨店や商業施設の中にも香りを扱うショップが増え、インターネット上でも香りの製品を販売したり、香りの情報を発信する人たちが少しずつ増えたりしている現状を見ると、わずか数年前に「香水は日本では売れない」と言われていた社会的な評価を覆すことができたのは、小さいながらも輝かしい実績だ。そこは民主化の第一歩を踏み出せたのだと思う。

WWD:香水のカプセルトイマシーンやユニークな店頭ディスプレーはリアル店舗の取り組み。コロナで店舗の休業を余儀なくされる中、どのようにオンラインでも香りを売ったのか。

中森:香水のカプセルトイマシーンも一種のエンターテインメントと捉えているが、オンラインでもエンターテイメントを届けられるように、いろいろ考えた。店頭で香水を試せなくなったので、お試しサイズやムエットを販売して自宅に届けた。するとこれが成功して、地方の人などこれまでなかなか店頭に来れなかったお客さまにもリーチできるようになり、店頭の休業で一番打撃が大きかった昨年の4~5月のEC売り上げは前年同期比15倍伸びた。最終的には全体の売り上げを見ても今年は前年比50%増の成長を達成できる見込みだ。

「一過性のブームとして絶対終わらせたくない」

WWD:中森代表は国税局やファッションベンチャーなど多様な経歴の持ち主。

中森:国税局で財務や税務などのバックグラウンドを持っているので、失敗しないビジネスづくりがマインドセットの根底にある。またこれまでのファッションの経験ではLA発「キットソン(KITSON)」など、海外のブランドを日本でブームさせる仕掛け役を担ってきた。ただニッチフレグランス事業は、一過性のブームでは絶対終わらせず、香水の一つの文化の担い手として継続させる必要があると思っている。だからあまり派手なプロモーションで世の中にどんと訴えかけて、すっと消えていくようなブームのつくり方はしたくない。

WWD:海外では、これまで主流だった異性を意識したマーケティングや、ウィメンズ・メンズフレグランスなどジェンダーを縛る売り方が見直されるようになっている。多様化が進んでいる印象だが、日本はどうなのか。

中森:「ノーズショップ」ではそういったコミュニケーションを避けているが、SNSやメディアを見ていると日本ではまだまだ“モテ香水”が人気なんだと思う。市場に一定のニーズがあるのであれば、そういうアプローチで販売したいという企業があることも一定の理解はできる。ただ、“モテ香水”という概念は、身に付ける人の個性はもちろん、受け手側の感性さえも機械的に一つの解に押し込めてしまうのだと個人的には考えている。

一時期、“香りマーケティング”といって、ホテルやアパレルショップなどで香りを放出してセールスを上げようという仕掛けがはやったが、あれも「提案」ではなく消費者への感性の「押し付け」であり、売り手側の倫理観が問われるやり方だと考えていた。香りで個性を演出することはアリだとしても、感性の押しつけになるレベルのものはいかがなものか。そういったメッセージの企業やブランドのものを選ばないのも消費者側の責任かもしれないが、まずは売り手側が率先して変わることが必要だろう。

WWD:“香りの民主化”を達成した日本の香水市場の未来はどんなもの?

中森:“香りの民主化”の未来には、有名ブランド香水のサブスクや、以前にはやった紳士服のセミオーダーのような“カスタマイズ風”香水サービスはメインストリームにはいないと思う。「ノーズショップ」は今後も世界中からユニークなブランドを紹介するセレクトを続けていくことを前提にして、今後は、国内で香りのクリエイターと上質な鑑賞者が育つ仕組みを作っていきたい。作り手だけではなく、それらの作品を適切に評価できる鼻と知識をもった鑑賞者の育成も非常に重要。

分かりやすく言えば、香りを作る・鑑賞することが一つの趣味の領域として成立している社会を作ってみたい。その作品がCtoCで流通·論評できるプラットホームがあってもいいかもしれない。そのためにまず必要なのは、香りづくりのツール。つまり原材料(香料)と、それらを混ぜたり保管したりする機材だ。そして次に必要なのが知識。われわれは、これらのツールと知識の提供に加え、クリエイターの交流ができるような仕組みを築き、「香りって面白い」という喜びを社会に提供していきたい。

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取材拒否のブランド「シオタ」に聞く、成功のヒント

 6月にセレクトショップ担当となって展示会をぐるりと回り、気になったブランドがあった。ワークパンツを主とする日本のファクトリーブランド「シオタ(CIOTA)」だ。デビュー2年目ながらベイクルーズはエディフィスとジャーナルスタンダードで、ユナイテッドアローズはユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシングとスティーブン アランで扱い、ほかにシップス、ジュンのアダム エ ロペ ワイルド ライフ テイラー、パルのブルームアンドブランチなどもラインアップする。売れる理由はどこにあるのか?荒澤正和ディレクターに話を聞いた。

WWD:2022年春夏シーズンから取材、リースを断っているとか?

荒澤正和「シオタ」ディレクター(以下、荒澤):偉そうにするつもりはなく、純粋にマンパワーの問題だ。時間は有限で、僕のすべきことは服を作ること。優先順位をつけると、どうしても手が回らなくなってしまう。

WWD:では、なぜ今回取材を受けてくれた?

荒澤:「面白い記事にしてくれる」と言ってくれたからだ(笑)。

WWD:あらためてプレッシャーがかかるが……、ブランドの自己紹介からお願いしたい。

荒澤:デビューは19-20年秋冬シーズンで、商品構成はメンズとウィメンズが半々。当初35歳以上をターゲットにしていたが、顧客には20~30代が多い。中心価格帯はパンツだと2万円台後半で、アウターだと6万~8万円だ。

WWD:「シオタ」の最大の特徴は、自社一貫生産のファクトリーブランドであることだ。一方で、同様のブランドは過去にもたくさんあった。なにゆえ売れている?

荒澤:こんな話がある。落語家の立川談志がタクシーに乗った際、運転手が「芸人は楽でいいね、テレビに出て面白おかしく話しているだけで金が入ってくるんだから」と絡んだ。それに対して談志師匠は、「その通りだよ。だったら、なんであんたはやらないんだ?」と返したとか。「シオタ」も同じというか、スビンコットンを使ってパンツを作っている“だけ”とも言える。スビンコットンの良さをユーザーに知ってもらいたくて、多くの企業・ブランドに参入してほしいとも思っている。スビンコットンの評判が広まれば、「シオタ」もいっそう売れるからだ。

WWD:確かに全てのコットンアイテムに、希少価値が高い超長綿のスビンを使っていることも「シオタ」の特徴だ。荒澤ディレクターにとって、スビンコットンの魅力とは?

荒澤:はき心地の良さに尽きる。僕はビンテージ「リーバイス(LEVI'S)」のコレクターでもあるのだが、35歳ぐらいからごわごわしたジーンズをはくのがつらくなった。それはユーザーも同じだと思う。20年のキャリアの中でさまざまなコットンを見てきたが、費用対効果を考えた際、スビン以上のものはないというのが現在の見解だ。

WWD:そのスビンコットンを使ったジーンズは「シオタ」のキーアイテムだが、ブランド立ち上げ直前まで商品構成に入っていなかったとか?

荒澤:ジーンズは好きだし得意と自負していたが、「リーバイス」という圧倒的な存在もあり、作らなくてもよいのでは?と考えていた。しかし、シオタの工場でサンプルを作ったところ、あまりのクオリティーの高さに“作るしかない!”と考えをあらためた。ジーンズ市場をレッドオーシャンと見る動きもあるが、スビンコットンを使うことで光が見えた。値段は高くとも、はいて気持ちのいいジーンズを訴求したかった。

WWD:「シオタ」のジーンズの価格は?

荒澤:人気の本藍染めのダークブルーが3万5200円、そこに加工をくわえたミディアムダークブルーとライトブルーがそれぞれ3万9600円だ。決して安くはないが、「シオタ」以外では出せない価格だと思う。

WWD:というと?

荒澤:ほかのブランドや工場で作った場合、1.5倍ほどの価格になるだろう。

WWD:「シオタ」が値段を抑えられているわけは?

荒澤:ひとえに社長の中野の心意気だ。ファッション業界には“原価率ルール”がある。例えば、1000円でジーンズを作って4000円で売ったら原価率は25%だ。ただし、1000円で作ったジーンズには魅力がないかもしれない。魅力がなければ、いくら安くても売れない。また、得られるもうけは3000円だ。一方で、5000円かけて作って1万円で売るジーンズがある。原価率は50%だが、もうけは5000円だ。そこには2000円の差があり、「シオタ」は後者を選ぶ。見るべきは、率ではなく額。簡単な理屈であり、長いこと唱えてきたが業界内では理解してもらえなかった。中野が初めての理解者だった。

WWD:今後の展開について聞きたい。

荒澤:作り手として、商品が売れるのは素直にうれしい。だが過剰になると、それは一過性のブームになってしまいかねない。そのため、売り上げトップ2のワンウオッシュジーンズとベイカーパンツの販売をこの秋冬からやめる。

WWD:売り上げにも理想形があるということか?

荒澤:「シオタ」の売り上げは小売価格で7億円を突破し、黒字化もできている。当面、20億円を目標とするが、それ以上だと僕の目の届かない商品が増えてしまい、それは「シオタ」の目指すものではない。

WWD:勢いそのままに、10月に初のオンリーショップを東京・代々木上原に出店する。

荒澤:直営店は「シオタ」を立ち上げた当初からの目標だった。スタッフも増員する予定で、人数×7億円というのが理想的なビジネスモデルだ。

WWD:デビュー2年目での出店は予想通り?

荒澤:いや、もう2~3年はかかると思っていた。コロナもあり、いっそう不透明だった。しかし、不動産との良縁もあり決断した。モノづくりでいえばテーラードも得意なので、「シオタ」の別ラインでジャケットやスーツを作ることも考えている。

■シオタ(仮)
オープン日:10月予定
住所:東京都渋谷区元代々木町23-11

 「シオタ」の服はカジュアルだが上品さを損なわず、女性客にも受け入れられている。これは荒澤ディレクターのキャリアによるものだろう。また、職人気質な荒澤ディレクターと、それに呼応してイメージを具現化する工場、“餅は餅屋”の理念を理解し合えるビジネスパートナーの存在があってはじめて成立する。いずれも目からうろこの要素ではないが、三位一体となって走り続けることが強みだ。“基本に忠実に”、そんな基本的なことの重要さをインタビューを通じて感じた。

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取材拒否のブランド「シオタ」に聞く、成功のヒント

 6月にセレクトショップ担当となって展示会をぐるりと回り、気になったブランドがあった。ワークパンツを主とする日本のファクトリーブランド「シオタ(CIOTA)」だ。デビュー2年目ながらベイクルーズはエディフィスとジャーナルスタンダードで、ユナイテッドアローズはユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシングとスティーブン アランで扱い、ほかにシップス、ジュンのアダム エ ロペ ワイルド ライフ テイラー、パルのブルームアンドブランチなどもラインアップする。売れる理由はどこにあるのか?荒澤正和ディレクターに話を聞いた。

WWD:2022年春夏シーズンから取材、リースを断っているとか?

荒澤正和「シオタ」ディレクター(以下、荒澤):偉そうにするつもりはなく、純粋にマンパワーの問題だ。時間は有限で、僕のすべきことは服を作ること。優先順位をつけると、どうしても手が回らなくなってしまう。

WWD:では、なぜ今回取材を受けてくれた?

荒澤:「面白い記事にしてくれる」と言ってくれたからだ(笑)。

WWD:あらためてプレッシャーがかかるが……、ブランドの自己紹介からお願いしたい。

荒澤:デビューは19-20年秋冬シーズンで、商品構成はメンズとウィメンズが半々。当初35歳以上をターゲットにしていたが、顧客には20~30代が多い。中心価格帯はパンツだと2万円台後半で、アウターだと6万~8万円だ。

WWD:「シオタ」の最大の特徴は、自社一貫生産のファクトリーブランドであることだ。一方で、同様のブランドは過去にもたくさんあった。なにゆえ売れている?

荒澤:こんな話がある。落語家の立川談志がタクシーに乗った際、運転手が「芸人は楽でいいね、テレビに出て面白おかしく話しているだけで金が入ってくるんだから」と絡んだ。それに対して談志師匠は、「その通りだよ。だったら、なんであんたはやらないんだ?」と返したとか。「シオタ」も同じというか、スビンコットンを使ってパンツを作っている“だけ”とも言える。スビンコットンの良さをユーザーに知ってもらいたくて、多くの企業・ブランドに参入してほしいとも思っている。スビンコットンの評判が広まれば、「シオタ」もいっそう売れるからだ。

WWD:確かに全てのコットンアイテムに、希少価値が高い超長綿のスビンを使っていることも「シオタ」の特徴だ。荒澤ディレクターにとって、スビンコットンの魅力とは?

荒澤:はき心地の良さに尽きる。僕はビンテージ「リーバイス(LEVI'S)」のコレクターでもあるのだが、35歳ぐらいからごわごわしたジーンズをはくのがつらくなった。それはユーザーも同じだと思う。20年のキャリアの中でさまざまなコットンを見てきたが、費用対効果を考えた際、スビン以上のものはないというのが現在の見解だ。

WWD:そのスビンコットンを使ったジーンズは「シオタ」のキーアイテムだが、ブランド立ち上げ直前まで商品構成に入っていなかったとか?

荒澤:ジーンズは好きだし得意と自負していたが、「リーバイス」という圧倒的な存在もあり、作らなくてもよいのでは?と考えていた。しかし、シオタの工場でサンプルを作ったところ、あまりのクオリティーの高さに“作るしかない!”と考えをあらためた。ジーンズ市場をレッドオーシャンと見る動きもあるが、スビンコットンを使うことで光が見えた。値段は高くとも、はいて気持ちのいいジーンズを訴求したかった。

WWD:「シオタ」のジーンズの価格は?

荒澤:人気の本藍染めのダークブルーが3万5200円、そこに加工をくわえたミディアムダークブルーとライトブルーがそれぞれ3万9600円だ。決して安くはないが、「シオタ」以外では出せない価格だと思う。

WWD:というと?

荒澤:ほかのブランドや工場で作った場合、1.5倍ほどの価格になるだろう。

WWD:「シオタ」が値段を抑えられているわけは?

荒澤:ひとえに社長の中野の心意気だ。ファッション業界には“原価率ルール”がある。例えば、1000円でジーンズを作って4000円で売ったら原価率は25%だ。ただし、1000円で作ったジーンズには魅力がないかもしれない。魅力がなければ、いくら安くても売れない。また、得られるもうけは3000円だ。一方で、5000円かけて作って1万円で売るジーンズがある。原価率は50%だが、もうけは5000円だ。そこには2000円の差があり、「シオタ」は後者を選ぶ。見るべきは、率ではなく額。簡単な理屈であり、長いこと唱えてきたが業界内では理解してもらえなかった。中野が初めての理解者だった。

WWD:今後の展開について聞きたい。

荒澤:作り手として、商品が売れるのは素直にうれしい。だが過剰になると、それは一過性のブームになってしまいかねない。そのため、売り上げトップ2のワンウオッシュジーンズとベイカーパンツの販売をこの秋冬からやめる。

WWD:売り上げにも理想形があるということか?

荒澤:「シオタ」の売り上げは小売価格で7億円を突破し、黒字化もできている。当面、20億円を目標とするが、それ以上だと僕の目の届かない商品が増えてしまい、それは「シオタ」の目指すものではない。

WWD:勢いそのままに、10月に初のオンリーショップを東京・代々木上原に出店する。

荒澤:直営店は「シオタ」を立ち上げた当初からの目標だった。スタッフも増員する予定で、人数×7億円というのが理想的なビジネスモデルだ。

WWD:デビュー2年目での出店は予想通り?

荒澤:いや、もう2~3年はかかると思っていた。コロナもあり、いっそう不透明だった。しかし、不動産との良縁もあり決断した。モノづくりでいえばテーラードも得意なので、「シオタ」の別ラインでジャケットやスーツを作ることも考えている。

■シオタ(仮)
オープン日:10月予定
住所:東京都渋谷区元代々木町23-11

 「シオタ」の服はカジュアルだが上品さを損なわず、女性客にも受け入れられている。これは荒澤ディレクターのキャリアによるものだろう。また、職人気質な荒澤ディレクターと、それに呼応してイメージを具現化する工場、“餅は餅屋”の理念を理解し合えるビジネスパートナーの存在があってはじめて成立する。いずれも目からうろこの要素ではないが、三位一体となって走り続けることが強みだ。“基本に忠実に”、そんな基本的なことの重要さをインタビューを通じて感じた。

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「推し時計、燃ゆ」 ギムレット片手に絵を描くことが僕の愛で方

 今回、「推し時計、燃ゆ」がフォーカスするのは、都内在住の会社員マエノマサトさん(36)だ。推し活の内容は、時計を子細に観察して描写すること。それもオリジナルの画風“ステインアート”で、だ。

WWD:ツイッター(@serain_stainart)で日々、絵の進捗状況を公開していますね?

マエノマサト(以下、マエノ):日中は仕事で、また子どもが生まれたばかりなので育児もあり、1日に描ける時間は30分ほどですが、コツコツ進めてはアップしています。

WWD:1枚の絵を描き上げるのにかかる時間は?

マエノ:1~2週間くらいです。

WWD:マエノさんの画風は、何と呼べばいいんでしょう?

マエノ:“ステインアート”です。僕の造語なんですけどね(笑)。建築を学んでいた大学時代に思い付いた手法で、ステイン(染み)のように濃淡で見せるのが特徴です。

WWD:なるほど、だからアカウントにも“STAINART”と入っているんですね。では“SERAIN”とは?

マエノ:“偶然”を意味する英語SERENDIPITYの頭の3文字と、STAINの末尾の3文字を組み合わせたものです。偶然見つけた染みや、ふと見上げた空に浮かぶ雲が何かに見えて、ちょっと幸せな気持ちになった経験ってありますよね?そんな感覚を具現化する作品を描けたらと、ステインアートを模索しています。

WWD:造語好きなのですね(笑)。ずっとこの推し活を続けているんですか?

マエノ:いえ、大学院卒業後に10年ほどのブランクがあって、再始動したのは今年の2月です。そして3月に、ステインアート専用のアカウントを作りました。

WWD:時計に特化しているのはなぜ?

マエノ:構築的なデザインが、建築に通じるところがあると思うんですよね。

WWD:最初にアップした作品が、今日も着用している「オーデマ ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」の“ロイヤルオーク”ですね。

マエノ:雑誌やネットで見て、ひと目ぼれしたモデルでした。僕は小柄なので小さめの時計を探していたんですが、あまり流通していなくて……。そんな折、中古販売店で37mmのこちらと出合い、ちょうど第1子の妊娠が分かったタイミングでもあったので、運命的なものを感じて購入しました。

銀座のバーで筆を走らせる至福の時間

WWD:今日の待ち合わせは、東京・銀座にある「バーエス」でした。

マエノ:現在は緊急事態宣言に伴い休業中ですが、コロナ前は仕事帰りに月2回ほど訪れていました。ステインアートを再始動してからは、1人でお邪魔してカウンターに座って、ギムレットかバーボンのソーダ割りを飲みながら絵を描くことも。クラシックバーも好きなんですが、こちらは良い意味でカジュアルで、普段使いできるところが気に入っています。とはいえ本格的なカクテルも作ってくれて、食事もおいしいんですよ。

WWD:ステインアートに使う道具もお持ちいただきました。

マエノ:主に使うのは、この3本です。まずシャーペンで下書きをしてから、「コピック(COPIC)」の0.03mmでベースを描きます。その後、「ステッドラー(STAEDTLER)」「トンボ鉛筆(TOMBOW)」と、だんだん太いペンに持ち替えて濃淡を表現していきます。ステインアートは下書きに一番時間がかかるんです。全工程の7割くらいかな。その際に、濃淡のあんばいを考えるからなんですけどね。今後は、カラフルな作品にも挑戦してみたいです。

WWD:描きたい時計と欲しい時計は異なる?

マエノ:最初は一緒でしたが、今は“純粋に描きたい”時計も増えてきました。絵を描く際には、可能な限り時計を見るようにしています。こういう状況なのでネットでが多いですが、チャンスがあれば実機も見ます。僕にとっては、時計の購入を検討することと描くことはニアリーイコールなんです。描いているうちに、その時計の特徴が分かってきます。

WWD:SNSでの反響は?

マエノ:おかげさまで、フォロワーからのコメントが増えています。描いてほしい時計のリクエストを受けることもあって、一番人気は「ロレックス(ROLEX)」の“コスモグラフ デイトナ”です。「絵を買いたい」という声もいただき、将来的に個展を開催することも考えています。

知らず知らずのうちに引かれていた偉大な時計デザイナーの意匠

WWD:通勤時には、「オメガ(OMEGA)」の“コンステレーション”を着けていましたね。

マエノ:29歳のときに買った、僕の“ファースト高級時計”です。学生時代から、“大人になったら、きちんとした時計を着けなくては”と考えていて、貯金やボーナスを充てて百貨店で購入しました。当時はまだ時計の知識もあまりなくて、クオーツモデルなんですが、購入直後はうれしくてオンオフ問わず、ずっと着けていました。もちろん今も現役です。

WWD:決め手は何だったんですか?

マエノ:デザインですね。その後の“ロイヤルオーク”検討中に気付くんですが、“コンステレーション”も「天才」と称される時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタ(Gerald Genta)がかつて関わったモデルなんですよね。構築的なデザインに引かれた結果、天才の意匠に吸い寄せられていました。

WWD:マエノさんにとって時計とは?

マエノ:最高レベルの芸術品。それは建築でも到達できない領域だと思うし、絵でも表現できない。だから引かれるんでしょうね。近づこうとするんだけど、実物には到底かなわない。

WWD:そこに機能まで付いている。

マエノ:その通りですね(笑)。

WWD:今後、狙っているモデルはありますか?

マエノ:クラシックなモデルかな?ゴールドで、ベルトもレザーとか。ブランドで言うなら、「パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)」でしょうか。もう1人子どもができるとか僕自身の昇進とか、人生の節目で検討できればと思います。

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「推し時計、燃ゆ」 ギムレット片手に絵を描くことが僕の愛で方

 今回、「推し時計、燃ゆ」がフォーカスするのは、都内在住の会社員マエノマサトさん(36)だ。推し活の内容は、時計を子細に観察して描写すること。それもオリジナルの画風“ステインアート”で、だ。

WWD:ツイッター(@serain_stainart)で日々、絵の進捗状況を公開していますね?

マエノマサト(以下、マエノ):日中は仕事で、また子どもが生まれたばかりなので育児もあり、1日に描ける時間は30分ほどですが、コツコツ進めてはアップしています。

WWD:1枚の絵を描き上げるのにかかる時間は?

マエノ:1~2週間くらいです。

WWD:マエノさんの画風は、何と呼べばいいんでしょう?

マエノ:“ステインアート”です。僕の造語なんですけどね(笑)。建築を学んでいた大学時代に思い付いた手法で、ステイン(染み)のように濃淡で見せるのが特徴です。

WWD:なるほど、だからアカウントにも“STAINART”と入っているんですね。では“SERAIN”とは?

マエノ:“偶然”を意味する英語SERENDIPITYの頭の3文字と、STAINの末尾の3文字を組み合わせたものです。偶然見つけた染みや、ふと見上げた空に浮かぶ雲が何かに見えて、ちょっと幸せな気持ちになった経験ってありますよね?そんな感覚を具現化する作品を描けたらと、ステインアートを模索しています。

WWD:造語好きなのですね(笑)。ずっとこの推し活を続けているんですか?

マエノ:いえ、大学院卒業後に10年ほどのブランクがあって、再始動したのは今年の2月です。そして3月に、ステインアート専用のアカウントを作りました。

WWD:時計に特化しているのはなぜ?

マエノ:構築的なデザインが、建築に通じるところがあると思うんですよね。

WWD:最初にアップした作品が、今日も着用している「オーデマ ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」の“ロイヤルオーク”ですね。

マエノ:雑誌やネットで見て、ひと目ぼれしたモデルでした。僕は小柄なので小さめの時計を探していたんですが、あまり流通していなくて……。そんな折、中古販売店で37mmのこちらと出合い、ちょうど第1子の妊娠が分かったタイミングでもあったので、運命的なものを感じて購入しました。

銀座のバーで筆を走らせる至福の時間

WWD:今日の待ち合わせは、東京・銀座にある「バーエス」でした。

マエノ:現在は緊急事態宣言に伴い休業中ですが、コロナ前は仕事帰りに月2回ほど訪れていました。ステインアートを再始動してからは、1人でお邪魔してカウンターに座って、ギムレットかバーボンのソーダ割りを飲みながら絵を描くことも。クラシックバーも好きなんですが、こちらは良い意味でカジュアルで、普段使いできるところが気に入っています。とはいえ本格的なカクテルも作ってくれて、食事もおいしいんですよ。

WWD:ステインアートに使う道具もお持ちいただきました。

マエノ:主に使うのは、この3本です。まずシャーペンで下書きをしてから、「コピック(COPIC)」の0.03mmでベースを描きます。その後、「ステッドラー(STAEDTLER)」「トンボ鉛筆(TOMBOW)」と、だんだん太いペンに持ち替えて濃淡を表現していきます。ステインアートは下書きに一番時間がかかるんです。全工程の7割くらいかな。その際に、濃淡のあんばいを考えるからなんですけどね。今後は、カラフルな作品にも挑戦してみたいです。

WWD:描きたい時計と欲しい時計は異なる?

マエノ:最初は一緒でしたが、今は“純粋に描きたい”時計も増えてきました。絵を描く際には、可能な限り時計を見るようにしています。こういう状況なのでネットでが多いですが、チャンスがあれば実機も見ます。僕にとっては、時計の購入を検討することと描くことはニアリーイコールなんです。描いているうちに、その時計の特徴が分かってきます。

WWD:SNSでの反響は?

マエノ:おかげさまで、フォロワーからのコメントが増えています。描いてほしい時計のリクエストを受けることもあって、一番人気は「ロレックス(ROLEX)」の“コスモグラフ デイトナ”です。「絵を買いたい」という声もいただき、将来的に個展を開催することも考えています。

知らず知らずのうちに引かれていた偉大な時計デザイナーの意匠

WWD:通勤時には、「オメガ(OMEGA)」の“コンステレーション”を着けていましたね。

マエノ:29歳のときに買った、僕の“ファースト高級時計”です。学生時代から、“大人になったら、きちんとした時計を着けなくては”と考えていて、貯金やボーナスを充てて百貨店で購入しました。当時はまだ時計の知識もあまりなくて、クオーツモデルなんですが、購入直後はうれしくてオンオフ問わず、ずっと着けていました。もちろん今も現役です。

WWD:決め手は何だったんですか?

マエノ:デザインですね。その後の“ロイヤルオーク”検討中に気付くんですが、“コンステレーション”も「天才」と称される時計デザイナー、ジェラルド・ジェンタ(Gerald Genta)がかつて関わったモデルなんですよね。構築的なデザインに引かれた結果、天才の意匠に吸い寄せられていました。

WWD:マエノさんにとって時計とは?

マエノ:最高レベルの芸術品。それは建築でも到達できない領域だと思うし、絵でも表現できない。だから引かれるんでしょうね。近づこうとするんだけど、実物には到底かなわない。

WWD:そこに機能まで付いている。

マエノ:その通りですね(笑)。

WWD:今後、狙っているモデルはありますか?

マエノ:クラシックなモデルかな?ゴールドで、ベルトもレザーとか。ブランドで言うなら、「パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)」でしょうか。もう1人子どもができるとか僕自身の昇進とか、人生の節目で検討できればと思います。

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「アミリ」が日本に本格上陸 “新世代ラグジュアリー”のデザイン哲学

 LA発のファッションブランド「アミリ(AMIRI)」は、2021-22年秋冬シーズンに日本への本格上陸を果たした。これまでも伊勢丹新宿本店メンズ館や阪急メンズ東京、エストネーション、アディッション アデライデなどで扱われていたが、現地パートナーは不在だった。今季からスタッフ インターナショナル ジャパンがディストリビューターとして参画し、国内ビジネスに本腰を入れる。

 同ブランドは、CEO兼クリエイティブ・ディレクターのマイク・アミリ(Mike Amiri)が2014年に設立した。“ラクジュアリーのニュージェネレーション”を掲げ、ほぼ全ての工程をハンドメイドで行うパッチワークジーンズや、72時間以上かけてロックバンド風のグラフィックを編み込むカシミアニットなど、クラフツマンシップとLAのオーセンティックなカルチャーを融合したスタイルを提案。ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)やビヨンセ(Beyonce)ら数々のセレブを顧客に持ち、現在、世界で130以上のアカウントに卸している。

 今年3月には若手クリエイターの発掘を目指すアワード「アミリ プライズ(AMIRI PRIZE)」を始動させたマイク=クリエイティブ・ディレクター。独自のアプローチで業界の発展を目指す彼に、ファーストシーズンから変わらないデザイン哲学や次世代クリエイターへの思いなどを聞いた。

WWD:2021-22年秋冬コレクションのテーマは?

マイク・アミリ(以下、マイク):このコレクションは、DTLA(ダウンタウン・ロサンゼルス)時代の初期に思いを馳せたものだ。DTLAは、工業ビルに次々とアーティストが入居し、現在のアートコミュニティーの基盤を築いた時代で、コラボレーティブでフリーダム、そしてイノベーティブなムードに街が包まれていた。それにリスペクトを込めて、フォーマルとインフォーマルを遊び心たっぷりにミックスした。

WWD:具体的にどんなデザインにその思いを込めた?

マイク:高級素材とデイリーなテキスタイルを並列して使ったところかな。ストリートとギャラリーが隔てなく扱われるDTLAの多様性を表現している。他にも、スニーカーとスーツの組み合わせやラグジュアリーなニットアイテム、ゆったりとしたジーンズなど、ドレスアップの精神を大切にしながら、ナイトライフのロマンスや快適さも重視した。

WWD:夜のストリートシーンを切り取ったデジタルショーはとても「アミリ」らしかった。どんな思いを込めて制作した?

マイク:洋服と同様に、LAのダウンタウンの文化と歴史にリスペクトを込めた。ダウンタウンはLAの中でも急成長したアート・ファッションのエリアで、ブランド創設時に最初のスタジオを開いた場所でもある。この場所で始まる、クリエイティブでユニークな体験を想像した。

WWD:ジーンズで10万円〜、Tシャツで4万円〜と高価格帯でありながら支持される秘訣は?

マイク:「アミリ」のコレクションの根幹には、品質の良さとクリエイティビティー、そして信頼がある。これらを一貫して生活者に届け、ブランドの世界観を多様なカテゴリー・ストーリーへと発展させることが鍵だと思う。それに、自分たちのルーツを大事にすると同時に、常に新しさに挑戦する姿勢も必要だ。

WWD:日本市場は拡大している?

マイク:シーズンを追うごとに成長している。製品の流通をコントロールし、厳選したラグジュアリーショップだけに卸しているが、需要に追いついていない状況だ。アジアのどこかに直営店を開けないかも検討している。

WWD:日本のパートナーにスタッフ インターナショナル ジャパンを選んだ理由は?

マイク:同社はさまざまなブランドでディストリビューションの実績を持つ。彼らと組むのは自然な流れだった。日本進出においては、彼らの専門知識とマーケットの分析力、文化的な理解がとても頼りになった。

WWD:設立10周年の2024年に向けてブランドをどう運営していく?

マイク:組織を成長させながらも、ファーストシーズンに抱いていたエネルギーとマインドを維持してブランドを継続していく。そして、真のラグジュアリーブランドとしてもっと生活者を魅了していきたい。

若手育成に本腰
「よりオープンなファッション業界へ」


WWD:今年3月に若手クリエイターを発掘するアワード「アミリ プライズ(AMIRI PRIZE)」をスタートした理由は?

マイク:SNSを通じて若手クリエイターからクリエイションやビジネスのアドバイスを求められることも多く、彼らがファッションビジネスのさまざまな課題に直面しているのを目の当たりにしてきた。個別で対応することもあったが、何か大きな働きができないかと考え、次世代に投資するプラットフォームを作ろうと決意した。

WWD:アワードの副賞は?

マイク:賞金10万ドルの授与と技術指導だ。「アミリ」はインディペンデントな立場にあり、新進気鋭のデザイナーたちを柔軟に手助けできる。資金だけでなく、例えばテーラリングの知識を提供するなど、ブランドの軸を見つけようと努める人たちの一助になる働きをしたい。

WWD:次世代の育成は業界の課題だ。

マイク:そう。ファッション関係者は、もっと業界全体を潤すことを考え、オープンで包括的なマインドを持つべきだ。自分のビジネスが成功しても「自分1人の力でここまで来たのではない」と自覚しないといけない。そうするだけで、アクションにつながり、今よりも多くのチャンスが生まれるはず。生活者は単に商品を買うだけでなく、自分の考えと共鳴するブランドを求め始めている。業界自体も変化しないといけない。

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「アミリ」が日本に本格上陸 “新世代ラグジュアリー”のデザイン哲学

 LA発のファッションブランド「アミリ(AMIRI)」は、2021-22年秋冬シーズンに日本への本格上陸を果たした。これまでも伊勢丹新宿本店メンズ館や阪急メンズ東京、エストネーション、アディッション アデライデなどで扱われていたが、現地パートナーは不在だった。今季からスタッフ インターナショナル ジャパンがディストリビューターとして参画し、国内ビジネスに本腰を入れる。

 同ブランドは、CEO兼クリエイティブ・ディレクターのマイク・アミリ(Mike Amiri)が2014年に設立した。“ラクジュアリーのニュージェネレーション”を掲げ、ほぼ全ての工程をハンドメイドで行うパッチワークジーンズや、72時間以上かけてロックバンド風のグラフィックを編み込むカシミアニットなど、クラフツマンシップとLAのオーセンティックなカルチャーを融合したスタイルを提案。ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)やビヨンセ(Beyonce)ら数々のセレブを顧客に持ち、現在、世界で130以上のアカウントに卸している。

 今年3月には若手クリエイターの発掘を目指すアワード「アミリ プライズ(AMIRI PRIZE)」を始動させたマイク=クリエイティブ・ディレクター。独自のアプローチで業界の発展を目指す彼に、ファーストシーズンから変わらないデザイン哲学や次世代クリエイターへの思いなどを聞いた。

WWD:2021-22年秋冬コレクションのテーマは?

マイク・アミリ(以下、マイク):このコレクションは、DTLA(ダウンタウン・ロサンゼルス)時代の初期に思いを馳せたものだ。DTLAは、工業ビルに次々とアーティストが入居し、現在のアートコミュニティーの基盤を築いた時代で、コラボレーティブでフリーダム、そしてイノベーティブなムードに街が包まれていた。それにリスペクトを込めて、フォーマルとインフォーマルを遊び心たっぷりにミックスした。

WWD:具体的にどんなデザインにその思いを込めた?

マイク:高級素材とデイリーなテキスタイルを並列して使ったところかな。ストリートとギャラリーが隔てなく扱われるDTLAの多様性を表現している。他にも、スニーカーとスーツの組み合わせやラグジュアリーなニットアイテム、ゆったりとしたジーンズなど、ドレスアップの精神を大切にしながら、ナイトライフのロマンスや快適さも重視した。

WWD:夜のストリートシーンを切り取ったデジタルショーはとても「アミリ」らしかった。どんな思いを込めて制作した?

マイク:洋服と同様に、LAのダウンタウンの文化と歴史にリスペクトを込めた。ダウンタウンはLAの中でも急成長したアート・ファッションのエリアで、ブランド創設時に最初のスタジオを開いた場所でもある。この場所で始まる、クリエイティブでユニークな体験を想像した。

WWD:ジーンズで10万円〜、Tシャツで4万円〜と高価格帯でありながら支持される秘訣は?

マイク:「アミリ」のコレクションの根幹には、品質の良さとクリエイティビティー、そして信頼がある。これらを一貫して生活者に届け、ブランドの世界観を多様なカテゴリー・ストーリーへと発展させることが鍵だと思う。それに、自分たちのルーツを大事にすると同時に、常に新しさに挑戦する姿勢も必要だ。

WWD:日本市場は拡大している?

マイク:シーズンを追うごとに成長している。製品の流通をコントロールし、厳選したラグジュアリーショップだけに卸しているが、需要に追いついていない状況だ。アジアのどこかに直営店を開けないかも検討している。

WWD:日本のパートナーにスタッフ インターナショナル ジャパンを選んだ理由は?

マイク:同社はさまざまなブランドでディストリビューションの実績を持つ。彼らと組むのは自然な流れだった。日本進出においては、彼らの専門知識とマーケットの分析力、文化的な理解がとても頼りになった。

WWD:設立10周年の2024年に向けてブランドをどう運営していく?

マイク:組織を成長させながらも、ファーストシーズンに抱いていたエネルギーとマインドを維持してブランドを継続していく。そして、真のラグジュアリーブランドとしてもっと生活者を魅了していきたい。

若手育成に本腰
「よりオープンなファッション業界へ」


WWD:今年3月に若手クリエイターを発掘するアワード「アミリ プライズ(AMIRI PRIZE)」をスタートした理由は?

マイク:SNSを通じて若手クリエイターからクリエイションやビジネスのアドバイスを求められることも多く、彼らがファッションビジネスのさまざまな課題に直面しているのを目の当たりにしてきた。個別で対応することもあったが、何か大きな働きができないかと考え、次世代に投資するプラットフォームを作ろうと決意した。

WWD:アワードの副賞は?

マイク:賞金10万ドルの授与と技術指導だ。「アミリ」はインディペンデントな立場にあり、新進気鋭のデザイナーたちを柔軟に手助けできる。資金だけでなく、例えばテーラリングの知識を提供するなど、ブランドの軸を見つけようと努める人たちの一助になる働きをしたい。

WWD:次世代の育成は業界の課題だ。

マイク:そう。ファッション関係者は、もっと業界全体を潤すことを考え、オープンで包括的なマインドを持つべきだ。自分のビジネスが成功しても「自分1人の力でここまで来たのではない」と自覚しないといけない。そうするだけで、アクションにつながり、今よりも多くのチャンスが生まれるはず。生活者は単に商品を買うだけでなく、自分の考えと共鳴するブランドを求め始めている。業界自体も変化しないといけない。

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吉泉聡デザイナーが説く「まずやってみる」エヴォーキング・モデルの重要性 音声配信「LOVE=好きの先の幸せ」 Vol.2

 「LOVE=好きの先の幸せ」は、伊藤忠ファッションシステムを辞めて心機一転の川島蓉子ジャーナリストが毎回ゲストを招き、「LOVE=好き」がある人との対談を通して幸せを伝える音声番組です。

 今回は、吉泉聡タクトプロジェクト代表/デザイナーと対談。次の世界を生み出すために取り組む新しい価値観に迫るプロジェクト、その時重要な考えをカタチ化した「エヴォーキング・モデル(evoking model)」というステップ、その一例となったメリヤスを使ったニット展などについて伺いました。

川島蓉子:1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている

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吉泉聡デザイナーが説く「まずやってみる」エヴォーキング・モデルの重要性 音声配信「LOVE=好きの先の幸せ」 Vol.2

 「LOVE=好きの先の幸せ」は、伊藤忠ファッションシステムを辞めて心機一転の川島蓉子ジャーナリストが毎回ゲストを招き、「LOVE=好き」がある人との対談を通して幸せを伝える音声番組です。

 今回は、吉泉聡タクトプロジェクト代表/デザイナーと対談。次の世界を生み出すために取り組む新しい価値観に迫るプロジェクト、その時重要な考えをカタチ化した「エヴォーキング・モデル(evoking model)」というステップ、その一例となったメリヤスを使ったニット展などについて伺いました。

川島蓉子:1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている

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吉泉聡デザイナーが説く「まずやってみる」エヴォーキング・モデルの重要性 音声配信「LOVE=好きの先の幸せ」 Vol.2

 「LOVE=好きの先の幸せ」は、伊藤忠ファッションシステムを辞めて心機一転の川島蓉子ジャーナリストが毎回ゲストを招き、「LOVE=好き」がある人との対談を通して幸せを伝える音声番組です。

 今回は、吉泉聡タクトプロジェクト代表/デザイナーと対談。次の世界を生み出すために取り組む新しい価値観に迫るプロジェクト、その時重要な考えをカタチ化した「エヴォーキング・モデル(evoking model)」というステップ、その一例となったメリヤスを使ったニット展などについて伺いました。

川島蓉子:1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている

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有力セレクトショップがラブコールを送る 実力派ディレクターの榎本実穂とは何者?

 今秋新たに、「リヴィントーン(LIVINGTONE)」と「ミオズモーキー(MIOSMOKEY)」の2ブランドがデビューする。手掛けるのは、セレクトショップのバイヤーやファッションブランドのクリエイティブ・ディレクターとして活動してきた榎本実穂だ。業界でもファンの多い彼女による新ブランドということもあり、2021-22年秋冬のデビューコレクションからユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)やエストネーション(ESTNATION)、シティショップ(CITYSHOP)、高島屋のスタイル&エディット(STYLE&EDIT)など多くの有力店がこぞって買い付けた。エストネーションでは両ブランドのコレクションが並ぶポップアップストアを8月18日から9月1日まで開き、「リヴィントーン」単独のポップアップもステュディオス(STUDIOUS)で10月に予定している。業界に支持される榎本実穂はどのような人物なのか?これまでのキャリアや新ブランドについて掘り下げながら、話を聞いた。

原点は人とは異なるものを身に付けたい
"あまのじゃくなファッション"

 榎本のルーツはファッション好きな家族からの影響だ。「専門学校に行ったわけではないが、ファッション業界に入ったのは服が好きな母のDNAだと思う。小学生の頃に母と姉と一緒に行った新宿のフリーマーケットで、アメリカの古着を漁っていたのが原体験。4歳上の姉からアメトラブームを教わり、古着に夢中になった。ただ、人とは異なるものを身に付けたいというあまのじゃくさはあった。中学生の頃には『ナイキ(NIKE)』の"エアマックス(AIR MAX)"が流行っている中で、あえて"ACG"(ナイキのスニーカーモデル)を履いていたり、ローファーはみんなが履いていた『ハルタ(HARUTA)』ではなく、タッセル付きの『リーガル(REGAL)』を選んでいたりと、コワイ先輩に目をつけられる対象でもあった(笑)。流行りは知っているけれど、あえて選ばずに『それいいね』といわれたい気持ちが強かった」と振り返る。

 最初に勤めた外資系のファッションブランドでモノ作りやビジネスの一連の流れを学び、「もっと多くのブランドを見てみたい」とセレクトショップに転職。バイヤーとして買い付けを担当したほか、プライベートブランドのシューズ作りにも携わった。「たくさんの洋服に触れる中で、170cmの身長がある自分の体型は日本人の標準体型とは異なり、海外ブランドの服の形がしっくりくることに気が付いた。そこで 『日本にも大人が着られるエレガントでセンシュアルな、インポート見えするブランドがあったら』と思い立ち、勤めていたセレクトショップを退職して、一からブランドを手掛けることになった」という。年4シーズン、6年間手掛けた同ブランドでは、日本にありそうでなかった絶妙なデザインやシルエットに加え、榎本がセレクトショップで培ったMD力、価格のバランスで多くのバイヤーに支持を得た。

 20年4月に、これまで手掛けてきたブランドのクリエイティブ・ディレクターを退任し、フリーランスに転身。榎本がバイヤー時代から親交のあったファッションショールーム2社と新ブランドを立ち上げることが決まった。「今からブランドをスタートするのであれば、価格とデザインのバランスがとれた"買いやすさ"を重視するモノ作りではなく、『これだ』という少数精鋭の服を生み出したかった」と話す。

本気の"デニムトラウザー"と
性の垣根のないファッションの提案

 オン トーキョー ショールーム(ON TOKYO SHOWROOM)と手掛ける「リヴィントーン」は、ジーンズを"デニムトラウザー"として昇華させたブランド。いわゆるファイブポケット(5つのポケットのある一般的なジーンズ)ではなく、デザイン性のあり、ドレスアップできるジーンズを目指した。着想源はロンドンで自身を撮影した1枚の写真。「前のブランドでは、インスピレーショントリップとして、さまざまな国へ旅行に出掛けていた。ロンドンのショーディッチエリアに、グラフィティがたくさん描かれたリヴィントン通り(Rivington Street)があり、そこで撮った1枚の写真がお気にりだった。70年代の古着のジーンズに毛皮のジャケット、『サンローラン(SAINT LAURENT)』のハイヒールを合わせていた私のファッションが、街の雑多な雰囲気に溶け込んでいた。この、いい意味でのミスマッチ感をジーンズを主役に表現したいと思った」。榎本がジーンズを作るのは今回が初めて。「私自身ジーンズが大好きでリスペクトがあったからこそ、これまで手を出せなかったアイテム。カジュアルなジーンズはたくさんある中で、私は主役になるようなドレスとしてのジーンズを本気で作りたいと考えた」と話す。「リヴィントーン」では、ジーンズの名産地である岡山・倉敷で、デニムのプロ、パタンナーたちと時間をかけて6型を作り上げた。刺し子を使ったハイウエストパンツや、大胆に裾を折り返したハーフパンツ、ウエストをドローストリングスにしたワイドパンツなど、いわゆる"普通"のジーンズはない。

 ショールームのクオン(kuon)と立ち上げた「ミオズモーキー」は、ウィメンズとメンズの垣根のないファッションを提案するブランド。同じく、ブランドコンセプトはロンドンでの1枚の写真がきっかけとなった。「ロンドンでふらっと入ったギャラリーで、1967年に撮影された『ノッティングヒル カップル』という写真に目を奪われた。カリビアンブラック(カリブ海諸国から英国に入った移民)の男性と白人女性のツーショットで、当時は政治的な問題で世には出せなかった写真だった。それを撮ったのが"スモーキー(Smokey)"の愛称で知られるロンドンのノッティングヒル在住の写真家。彼の作品は、仲間たちの仕事の休憩中や冠婚葬祭の場面をドキュメンタリーのように切り取っていて、カリビアンらしい原色使いのファッションと、英国らしいクラシックがミックスされた60年代スタイルが素敵だった。その被写体になったカップルが現代で幸せに暮らしていて、ワードローブをシェアしていたら…という想像をコレクションにした」と榎本。榎本自身もメンズの服をよく着用しており、「いつからか、探究心がくすぐられ、サイズが合っていなくてもメンズの服を選ぶことが増えた。"メンズ"だから、"ウィメンズだから"という洋服の選び方ではなく、男性も女性も自由にファッションを楽しんでほしい」と話す。そうしたブランドの理念を受けて、メンズとウィメンズの両方の売り場で販売する店舗もある。一般的なメンズでも、ウィメンズでもないオーバーサイズのジャケットやコートなど、着方を着る人に委ねた自由度のあるウエアがそろう。

"らしさ"を大切に
業界と共存していきたい

 今後について榎本は、「市況を考えることも大事だが、アイデンティティーは揺るがないように、"らしさ"を追求していきたい」という。現在に至るまで、古着とハイブランドをミックスした自身のファッションを"雑食"と榎本は表現する。「リヴィントーン」のルックでは自身のビンテージの服などの私物を合わせてコーディネートし、「ミオズモーキー」では自身のミックス感覚を頼りに、性別を超えたファッションを表現した。数々のスタイルやブランドに触れ、身に付けてきたファッション玄人の提案は、時代の空気感を捉えながらも普遍的。少し挑戦的なスタイルがファッション好きの心をくすぐる。

 環境や人種の問題など、さまざまな社会問題については「このコロナ禍で、いずれはゴミになるものを生み出すのではないか?ということは考えた。ただ私ができることは大量生産ではなく、普遍的なモノ作り。まずは国内でしっかりモノ作りをすることで、国内の工場や職人たちと取り組んで行きたい。ファッションビジネスに関わっている人間として、業界と共存できるようにしていきたい」と強い思いを持つ。

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中京地区最強モール「mozoワンダーシティ」が館直結のECモールを作ったワケ

 中京エリア随一の巨大ショッピングモールである「mozoワンダーシティ」は8月15日から、館内の商品を販売するネット通販サイト「モゾプラス(mozoPLUS)」をスタートする。大型ショッピングモール「ららぽーと」などを運営する三井不動産の「アンドモール」、ファッションビル「ルミネ」を運営するルミネの「アイルミネ」を筆頭に、大型ショッピングモールやファッションビルが運営するネット通販サイトは少なくないが、「モゾプラス」が出色なのは完全に館内商品販売に特化していることだ。

 「mozoワンダーシティ」は、総合商社である三菱商事(51%)と金融大手のUBSの合弁会社である三菱商事UBSリアルティが所有・運用している。同社は日本最大級の総合型REIT(不動産投資信託)である日本都市ファンド投資法人の資産運用会社であり、都市を中心に約100カ所の商業施設を手掛ける、日本では異色のデベロッパーだ。日本初の本格的なリアル店舗連動型のネット通販オールはどのようにして生まれたのか。ショッピングモールの今後をどう見るのか。同社の商業施設運用部門を率いる大島英樹・三菱商事UBSリアルティ都市事業本部 運用一部長に聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):緊急事態宣言など、コロナ禍で、規模の大小にかかわらず、商業施設は厳しい運営を迫られた。

大島英樹(以下、大島):当社は、表参道のジャイル、キュートキューブ原宿など全国の都市部を中心に約100の商業施設の運用を手掛けていると同時に、海外投資家を中心に構成される資産の運用会社で、全国の都市部を中心に約100の商業施設を保有・運用している。われわれの投資家、特に海外投資家が注目しているのは、コロナ禍よりも大型モールを取り巻く厳しい環境だ。米国ではネット通販の台頭などで、多くのテナントが退去した“デッドモール”の存在がクローズアップされるなど、小売りセクターに対してややアゲンストな状況が続いている。ただ、日本の場合は状況は大きく異なる、というのがわれわれの見方であり、投資家には日本のモールは公共交通機関から比較的アクセスがいいこと、入館者数などはそこまで減っていないことなどを丁寧に説明してきた。

WWD:ECの急成長による、SCへの影響は日米にかかわらず共通の課題だ。

大島:その通りだ。商業施設の運用に携わる当社にとって、この数年、ECにどう対抗するのかは大きな課題だった。コロナ禍に突入し休業を余儀なくされる中ではあったが、行き着いた結論の一つが、ECに対抗するのではなく、共存・共栄を図ることだった。

WWD:「モゾプラス」の導入の背景は?

大島:名古屋地区及び中京地区にはこの数年で「ららぽーと」を筆頭に相次いで競合となる大型モールが開業してきたが、2009年に開業した「mozo」はコロナ禍に見舞われる前の2019年まではずっと前年を超える売上高を記録しており、実際には影響はかなり限定的だった。継続的なリニューアルなどで得てきた約20万人の会員基盤は強固で、現在でも中京地区屈指の大型モールであることは間違いない。

大島:開業10周年を迎える前の2018年ごろから、「mozo」の今後10年について徹底的に議論してきた。最大の危機感の一つは、“茹でガエル”になることであり、そこで直面したことの一つがECとの共存だった。そうした前提があったことがコロナ禍でのECの導入スピードをアップさせた。「モゾプラス」は、スタートアップ企業のハブ&スポーク、ECモール「ショップリスト」を運営するクルーズ傘下のクルーズECパートナーズ、不動産コンサルティングのトリニティーズとの共同プロジェクトで、昨年8月ごろから本格的な導入検討を始めた。構想段階から決めていたのは、オンラインのプラットフォームを、リアルな売り場の活性化に活用しつつ、「mozo」の顧客との接点を強化すること。それが「モゾプラス」の最大の特徴であるテナントの店頭在庫を活用するという結論につながった。

WWD:大型モールのECなのに、スタートアップ企業との協働は意外だった。

大島:それこそがわれわれの強みとも言える。100の施設を保有しているが、チェーン展開をしているわけではないから、導入に関してもまずは単館での導入が可能だ。スタートアップ企業と組んだ理由もそこにある。柔軟にこちらがわの要望を汲み取ってもらえるし、導入のスピードも早い。店舗在庫を活用する上で、最も重要なのは現場のオペレーション、つまりはテナントの販売スタッフの負担をできるだけ軽減することだが、実際のオペレーションに関しても細部に渡ってもきめ細かく設計できた。

WWD:ポストコロナの商業施設運営をどう見る?

大島:実はそれほど悲観してはいない。数年前から都市型、かつ小売業のボーダレス化をキーワードに資産ポートフォリオの入れ替えを進めてきた。小売業のボーダレス化とはすなわち、複合型の商業施設開発だ。商業施設だけでなく、ホテルやオフィスの単独運用を進めつつ、さらにはそれらを併設した複合商業施設の開発にも進出している。コロナ禍の中でも、インバウンドが強いエリアは厳しいものの、国内旅行需要のあるエリアでは少しずつ客足も戻っており、表参道や原宿、渋谷といった都心部のリースアップ(引き渡し)は比較的順調に進んでいる。当社の場合、資金力には余裕があり、むしろ攻め時とも考えている。

大島:「モゾプラス」を筆頭に、保有施設でカメラやAIなどを駆使した最新のツールやテクノロジーの試験導入も行っており、リテールテックという意味でも蓄積が進みつつある。こうした面でも大小様々で、かつバリエーション豊富な施設を保有するわれわれの強みも生きる。購買行動やデータを連携させるなどエリア単位でつなげるところはつなげ、逆に最新テクノロジーを商業施設の規模や性格に応じて導入する、といったことを今は行っている。標準型のリテールテックが登場するのはもうしばらくかかるかもしれないが、“リテール”の進化については一定の成果も見えてきたし、方向性も定まってきた。その意味で、今はある種の好機だと考えている。

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“原料オタク”が作る自宅キッチン発のシンプル化粧品 2年で売上高10倍へ

 高校時代に自身の肌悩みがきっかけで化粧品に配合されている成分に興味を抱き、自宅のキッチンで肌に負担の少ない化粧品作りを始めた石田彩ラピスラズリ社長。自身を「原料オタク」というほど配合成分にこだわりを持つ。2015年に誕生したスキンケアブランド「ラピスラズリ(LAPISLAZURI)」は、シンプルステップでありながら摩擦と紫外線から徹底して肌を守り抜くアイテムを展開。実直なモノ作りが口コミで広がり、売上高を2年で10倍にするという目標を掲げ成長を遂げようとしている。

WWDJAPAN(以下、WWD):学生時代から化粧品が好きで自分で作るようになったのか。

石田彩ラピスラズリ社長(以下、石田):高校時代から乾燥肌に悩まされ、化粧品でケアしても肌の調子が整わなくて……。今思えば、ケアの方法が適切ではなかったし生活習慣も乱れていたことも一因だと分かるんですけどね。その当時はどんな化粧品でケアしても全然ダメだったんです。いろいろな製品を試すうちにピリピリするコスメとそうじゃないものの違いは何か?と成分表を見出したんです。スキンケアの大半が水が最初に表示されているのを知り、水を中心に構成されているなら自分でも作れるのではないかって思ったんです。ここから“原料オタク”の道がスタートしました。

WWD:最初に作ったアイテムは化粧水だった。

石田:インターネットで検索すると化粧水は水とグリセリンで作れることが分かり試してみました。「生活の木」に原料がそろっていることも知りました。しかし保湿力を高めようとすると成分が調達しにくかったんです。なのでまずは原料が手に入りやすいリップクリームを手作りすることに。ミツロウを溶かして固めればよいので簡単。もちろん硬さ調節に回数を重ねました。それを使用したら荒れた唇の調整も良くなりました。保湿成分やミントなどを加えて友人にプレゼントしたら好評だったんです。買わせて欲しいとまで言われて。それからは趣味で作るようになりました。

営業職から転身 趣味を仕事に

WWD:その後「ラピスラズリ」を立ち上げることに。

石田:高校を卒業し半年後に結婚し、19歳で出産しました。子育てしながら働きやすい生命保険の営業職を4年ほど続けていましたが、子どもの体調不良などで休まざるを得ないことが度々あり、周りのサポートはあったのですがどこか申し訳なさを感じる部分もあって……。趣味で続けていた化粧品作りを仕事にしようと思うようになりました。24歳の15年3月に「ラピスラズリ」をスタートしたのですが、最初の製品を発売するとき第二子を妊娠中で臨月だったんです。大きなお腹でプレゼンテーションしたのを覚えています。

WWD:事業も一からのスタートだった。

石田:乾燥肌の一番の原因は紫外線なので、最初の製品は日焼け止め“LLサンスクリーン”にしました。OEMメーカーに協力を得て処方も含め自信を持ってオススメできる製品は完成したものの、ウェブサイトを作ることも頭にありませんでした。知り合いからアマゾンで販売できると聞き問い合わせしてなんとか発売できることに。初回で3000個を生産し、初月は100本売れましたが後が全く売れませんでした。初月は友人たちが購入してくれたんですよね。翌月以降は十数本しか売れませんでした。

初回生産分を売り切る

WWD:ブランドの転機は。

石田:初回生産分をクリアするため雑誌社へプレゼント企画に使ってほしいと連絡したり、ギフティングしたり、ブログやツイッターを立ち上げたりしました。楽天のスキンケア担当者にも連絡して委託販売も始めましたね。化粧品の消費期間は3年です。2年で3000個売らないといけないためと必死でした。そんなとき美容化学者でユーチューバーのかずのすけさんがツイッターで日焼け止めを紹介してくれて一気に盛り上がりました。在庫が8本になった時、10本まとめ買いがあったんです。そのときの感動は忘れません。OEMメーカーに追加生産の依頼をしたところ驚かれたのも覚えています。小規模のメーカーは大半が一度の生産で終えることが多いそうなんですよ。

WWD:ブランド誕生から7年が経過するが全ラインアップは6品と多くない。

石田:乾燥肌の最大要因は紫外線と摩擦。こだわっているのはラインアップと成分のシンプルスキンケアです。ラインアップに関しては、一般的には化粧水と美容液、乳液、クリームがスキンケアステップとするとこれらを塗布するたびに摩擦が生じます。多機能にして1本にした方が摩擦が少ないわけです。成分を見ると化粧水や美容液、乳液は水とグリセリン、セラミドが剤形を変えて配合してあります。同じ成分なら1本で済んだ方が肌にも消費者にもよいと思うんです。成分に関しては、天然由来にこだわるということではなく必要と判断したものを採用します。本当に「ラピスラズリ」を使うお客さまの肌に必要な成分か、という観点から一つ一つ自分の肌で試して精査しています。成分が多いと肌に合わない人が増え、肌荒れのリスクも高まります。その分、効く濃度をしっかり配合するのが重要です。原料や処方にこだわるあまり、今では生産を依頼していたOEMメーカーのサティス製薬の執行役員に就き、サティス製薬が運営する銀座美容外科クリニックの運営も担当しています。

WWD:成分以外のこだわりも貫く。

石田:製品は厚さ3cm以下の容器で作ることにも徹しています。郵便ポストに入るサイズなのですが、それなら配送料を抑えることが可能に。また製品の鮮度を保てるように1カ月で使い切れる容量にもしています。サブスクリプションも行っていますが、売り上げの85%が定期購入者によるものです。

WWD:今後のラインアップの拡充やブランドの成長については。

石田:今年5月にリブランディングし、スキンケアはほぼラインアップがそろいました。今後はインナーケアとベースメイクに取り組む予定です。既存製品のアップデートも欠かせません。これまでモノ作りから電話対応、発送、パンフレット作りまで一人で対応してきました。お客さまと密なコミュニケーションが取れるという利点がありますが、一方で限界もあります。近年はカスタマーサービスやPRも外部の力を借りています。今まではモノ作りに没頭するあまりブランドの露出は二の次でした。今後は乾燥肌や乾燥肌の人はなぜシンプルなスキンケアが良いのかなどの啓もう活動も積極的に行っていきます。その一環として7月29日19時〜インスタグラムでライブ配信を行います。今はブランドを大きく成長させる時期。販路の拡大なども視野に入れ、現在の年商2000万円を2年以内に10倍にする目標を掲げています。

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日本ロレアルがコロナ禍でも成長 成功の要は定期便とCXチームの立ち上げ

 世界ナンバーワンの化粧品専門企業のロレアル(L'OREAL)は他社同様に新型コロナウイルスの影響を大きく受けたものの、中国市場やドクターズコスメが好調で、早速2020年10〜12月期から復調している。日本事業を担う日本ロレアルの売り上げも、21年1〜4月期は前年同期比8%増と堅調という。

 中でも日本事業の成長をけん引するのは、日本ロレアルの中で最も売り上げシェアが大きいロレアル リュクス事業本部だ。「ランコム(LANCOME)」「イヴ・サンローラン・ボーテ(YVES SAINT LAURENT BEAUTE 以下、YSL)」「キールズ(KIEHL'S)」「シュウ ウエムラ(SHU UEMURA)」「ヘレナ ルビンスタイン(HELENA RUBINSTEIN)」などプレステージブランドを中心に扱う同事業部は、度重なる緊急事態宣言の発令や実店舗の休業で大きな打撃を受けた。しかし、以前から注力するDX(デジタルトランスフォメーション)戦略の促進やCX(カスタマーエクスペリエンス)専門チームの立ち上げ、定期便の導入などが功を奏し、21年1〜4月の売り上げは前年同期比4%増と前年をクリア。2月には日本のスキンケアブランド「タカミ(TAKAMI)」を傘下に収め、近年急伸するドクターズコスメトレンドやデジタルファーストのニーズに応える。そんな事業部を率いるフィリップ・アルシャンボー(Philippe Archambault)=シニアヴァイスプレジデントに、コロナ禍における戦略やポストコロナに向けた展望について聞いた。

WWD:2020年はコロナが大きな打撃となったと思うが、コロナ禍でも成長を続けられた要因は。

フィリップ・アルシャンボー日本ロレアル ロレアル リュクス事業本部長・シニアヴァイスプレジデント(以下、アルシャンボー):世界的なスキンケアブームの影響は大きく、ロレアルでも「ランコム」や「キールズ」などスキンケアが強いブランドは好調だ。もう一つの要因は少し意外なもので、フレグランスがよく動いている。(市場が小さい)日本においても、おうち時間が増えてプライベートを彩る香りを求める人が増え、「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」の“レプリカ”シリーズや「YSL」の“リブレ”などが売り上げをけん引した。ロレアル リュクス事業本部はプレステージブランドがメインなので百貨店の休業は痛かったが、EC施策を一気に加速させ、ダメージを最小限に抑えることができた。

WWD:化粧品業界の中でもロレアルはECに着手するのが早かった。

アルシャンボー:日本ロレアルは10年以上前からEC事業を始めており、そのノウハウを最大限に生かした。eBA(オンラインのビューティアドバイザー・美容部員)にも数年前から投資をしており、EC上のチャットだけでなく、個人・ブランドのSNSの投稿、ライブ配信など幅広い角度からアプローチし、お客さまが対面で美容部員に会えない中でも不便がないように考慮した。

人気製品の定期便がコロナ禍における“最大の武器に”

WWD:ECといえば、複数のブランドで展開する人気製品の“定期便”も好調のようだ。

アルシャンボー:定期便のようなサブスクリプションモデルはコロナ前から注目しており、定期便はコロナ禍において最強の“武器”になった。今回「タカミ」を買収したのも、サブスクリプションモデルが成功しているからだ。われわれがこだわったのは、あらゆる製品で定期便を行うのではなく、ブランドを代表するアイコン製品にだけ絞ったこと。例えば「ランコム」の“ジェニフィック”や「キールズ」の“クリーム UFC”、「YSL」の“ピュアショット ナイトセラム”など。ヒーローアイテムは幅広く支持されている製品のため、新規顧客が獲得しやすく、一方で既存客の満足度も高い。数年前まで日本ロレアルでは、メイクアップをフックにいかに若年層の新規顧客を獲得するかが大きなミッションだったが、高齢化などを鑑みて最近はリピート率が高いロイヤル顧客の育成にシフトしており、定期便はまさにこの戦略を後押しした。ECは店頭でのエモーショナルな体験やBAによる対面接客に代わることはないが、定期便は、お得なサービスや特典をつけることで“オンライン上のおもてなし”になったと捉えている。

WWD:色味やテクスチャーが画面越しでも伝えやすいメイクアップに比べて、スキンケアやフレグランスをデジタルで売るのは難しくないのか。

アルシャンボー:確かにメイクアップはSNSとの相性も良いし、トレンドや新作をアピールしやすい。ただスキンケアはオンラインカウンセリングやサンプリングを行うとコンバージョン率が圧倒的に高く、オンラインとの相性も決して悪くはない。また、18年に買収した「モディフェイス(MODIFACE)」をはじめグループ全体でAR技術にも大きな期待を寄せており、今は画面上で肌診断やコンサルティングが可能になっている。
 
フレグランスにおいては、アットコスメをはじめとする口コミサイトが大きく役立ったと思う。また「メゾン マルジェラ」はさまざまな価格帯・サイズを展開することによりオンラインでも気楽に試しやすい。特に“レプリカ”シリーズは具体的な思い出やエピソードが香りの着想源になっているために、オンラインであったとしても香りのイメージがつきやすいのではないか。

WWD:これら“デジタル接客”が若年層に刺さるのは想像できるが、年齢が上の顧客にもアプローチできているのか。

アルシャンボー:確かに数年前はマチュアな世代はデジタルに前向きではないイメージだったが、今は決してそうではない。SNSは若年層の方が好きだが、ブランドサイトやEC、定期便はマチュア世代にも人気だ。コロナで嫌でもデジタルを活用せざるを得なくなってから、特にこの傾向は強くなったはず。eBAには、ECで買い物するのを躊躇うお客さまに、その不安を払拭するためにも積極的にデジタル上でコミュニケーションを取るように勧めており、「デジタルは若い子のためだけ」というのは変わってきた。

顧客満足度アップにつながったCXチーム

WWD:最近CX専用チームも立ち上げたが、結果的にカスタマーエクスペリエンスは向上したのか。

アルシャンボー:販売拠点が多様化する中で、メーカーからするとオンライン・オフラインともに全てのタッチポイントでシームレスな体験を提供するのが難しくなっている。また大抵の会社は「EC」「(店頭)セールス」「マーケティング」などチームが分かれており、そもそも社内の“O+O”が実現できていないことも多々ある。そこでお客さまに真にOMOな体験を提供するためには社内でチームの架け橋となる存在が必要と感じた。CXチームは「カスタマーエクスペリエンス(お客さまの体験)」を一番に考える存在として、社内のあらゆるチームを結び、統一したメッセージや体験を提供できるように努めている。まだ立ち上げたばかりだが、顧客満足度はここ2〜3年で20ポイントほど上がっている。

WWD:ポストコロナのビューティ業界をどう見ているのか。

アルシャンボー:とてもオプティミスティックだ。すでにコロナが収束しつつあるほかの市場を見ていると、どこも大きな復調を成し遂げている。ポストコロナ時代においてビューティの需要は高まっている証だ。日本でもコロナが収束しても、コロナ禍で加速したO+Oのハイブリッド市場は継続すると思う。われわれの目先の課題は、いかにハイブリッドな市場に対応できるか。それのためのトレーニングだけでなく、キャリアパスもオンラインからオフラインに簡単にシフトできたり、両方を兼ね備えられたりできるように変えた。例えば今日伊勢丹新宿本店のセールスを監修するマネージャーが、明日は「ミーコ(伊勢丹のコスメEC)」を担当するとか。BAにも、通常の店頭の接客に加えてライブ配信で何千人のフォロワーの前での接客術を教えている。変化する消費者ニーズにスピーディーに対応し、社員全員がハイブリッドなマインドセットを持てるように注力する。

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タレントIMALU と「アイム ラフロリア」の原由記CEOらがフェムテックを語る 

 5月からstand.fmで配信中の「ハダカベヤ」では、タレントのIMALUとランジェリーブランド「アルバージェランジェリー」創立者のMEGUMI、広告代理店勤務のNATSUKOが身体や性の悩みを語り合い、リスナーの共感を集めている。そんな「ハダカベヤ」と渋谷に続き7月22日から池袋パルコでのポップアップを開催中のデリケートゾーンブランド「アイム ラフロリア」がコラボした。「ハダカベヤ」の3人と、「アイム ラフロリア」を手掛けホルモンバランスプランナーの資格を有する原由記メリアCEOは、デリケートゾーンケアについて語るライブ配信にも挑戦。それぞれの立場からフェムテックを啓もうする4人に話を聞いた。

WWD:「ハダカベヤ」は5月に配信をスタートした。リスナーからの反響は?

IMALU:規模は小さいながらも濃い反響をいただいています。共感してもらえたり、「勉強になりました」という声をいただいたり。女性リスナーばかりかなと思っていましたが、男性からの反応も想像以上にあって嬉しいです。

WWD:公に話す機会の少ない身体や性の悩みについてもオープンに語り合っている。トピックはどう決めている?

IMALU:ほとんど3人で決めています。最近起こった出来事やふとした会話から生まれることが多いですね。リスナーさんやフォロワーさんからリクエストをいただくこともあります。

MEGUMI「アルバージェランジェリー」創立者(以下、MEGUMI):気になったニュースなどがあればメンバーに共有して、「ハダカベヤ」で議題にするかを話し合うことも。ニュースをトピックスにする時は、より身近に感じてもらえる言い回しを3人で考えています。

WWD:「アイム ラフロリア」とのコラボが決まった経緯は。

MEGUMI:2016年に「アルバージェ ランジェリー」を立ち上げて間もない頃、松尾(亜美)さん(現在メリアで広報などを担当)にお問い合わせをいただきお会いしたのをきっかけにご縁が続いていました。松尾さんが「アイム ラフロリア」を手がけるメリアに転職され、何か一緒に取り組めないかとお話をいただきました。「アイム ラフロリア」の理念やコンセプトには共感する部分も多く、渋谷パルコのポップアップでのスペシャルセットの販売や「ハダカベヤ」とのコラボ配信が実現しました。

WWD:「アイム ラフロリア」の使い心地は?

IMALU:ローズの香りは好きなんですけど、強すぎるのは嫌。「アイム ラフロリア」はほんのり香って、テクスチャーも心地よいです。デリケートゾーンのケアアイテムはなんとなく持っていましたが、毎日使ってはいませんでした。改めてちゃんと「アイム ラフロリア」でケアしてみて、乾燥からくるかゆみだったということがわかりました。デリケートゾーンケアって、ちゃんとやれば結果が出るんですよね。

MEGUMI:これまでにもデリケートゾーンケアを使ってきましたが、「アイム ラフロリア」のローズの香りはメンタル面も上がりますよね。使い続けるためには香りは重要なポイント。IMALUちゃんがいったように、気品のある香りなので自分がひとつ上のレイヤーの女性になれるような自信をみなぎらせてくれます。下着ブランドとしてムレやかゆみといったお悩みをお客さまから伺うこともあります。素材や仕様などでできる限り解決したいとも思いますが、デリケートゾーンケアをお勧めすることもあります。「アイム ラフロリア」はよいサポーターになっています。

NATSUKO:フレッシュクリアシートは今まで本当に欲しいものだったので出合えてよかったと心から感じています。暑い季節や外出が続いてムレてしまう時や、「いざ!」と気合を入れたい時にはぴったりです。由記さん(原メリアCEO)も自分を高めるときに使うとおすすめと言っていましたが、コンパクトだし外出先でもリフレッシュできてとっても感動しました。これまではしっかりとデリケートゾーンケアをすることがなかったので、はじめはウォッシュと美容液を2日に1回程度使用していました。使っているうちに体の変化を感じたので今では日常使いになっています。

原由記メリアCEO(以下、原):個包装のデリケートゾーン用のシートって実はあまりないんですよね。デリケートゾーンにはもちろん全身にも使っていただけます。またローズの香りにも注目してもらえて嬉しいです。トップ、ミドル、ラストと香水のように香りを設計しているところがこだわりです。

MEGUMI:「アルバージェ ランジェリー」では試着の際に、「アイム ラフロリア」のシートをお客さまにお渡ししています。個包装なので使ってもらいやすいですし、試着室がローズの香りで満たされて気分が上がりますよね。

WWD:フェムテック・ケアを取り入れたい、でもなかなか踏み出せないという人も多い。

IMALU:女性ならではの悩みは、今後もなくならないと思います。ただ、フェムテックやケアを取り入れることで生活がガラッと変わる可能性はあるのではないでしょうか。私もまだまだ知らないことばかり。みなさんと一緒にいろいろなことを学んでいきたいです。

MAGUMI:フェムテックという言葉だけ聞くと、なんだか小難しく聞こえがちですが、私たち女性にとってはエッセンシャルなものだと思います。ライフステージによって生じるさまざまな体の悩みや心配事を解決してくれる救世主のような存在。まずは毎月必要になる生理用品や「アイム ラフロリア」のようにデイリー使いできるケアから始めてみるのがおすすめです。今までの生活がぐっと快適に変わるかもしれません。

NATUKO:私も「何を、誰に、どんな風に、聞けばいいのかわからない」と感じていました。そんな中で「これならできるかも」「楽しそうかも」と気になったモノを試してみると学びになるし、変化を感じることができればどんどんトライできるかもしれません。私もまだまだ「わからない」「怖い」と試していないことだらけですが、少しずつ学んで進んでいければいいなと思います。

原:新しいことってすごく不安ですよね。私も当初は「本当に使っても大丈夫なのかな」とフェムケアアイテムに抵抗がありました。最近はこだわりの成分が詰まった製品や海外のプロダクト、何十種類もの吸水ショーツなど、素晴らしいフェムケア・フェムテック商品がどんどん出てきています。まずは無理をせず、気になるアイテムを使ってみることをおすすめします。いざ使ってみたら「なんでもっと早く使わなかったんだろう」と思えるかもしれません。

意見や情報を交換して
自分自身で選択できるように

WWD:発信する側として心がけていることは。

IMALU:「ハダカベヤ」はみんなの意見交換の場として心がけています。いろいろな情報をここで得ても、最終的に何を選択するかは自分次第という考えでやっています。人の意見を尊重し、知らないことは知らないと言える平和なディスカッションを目指しています。いつもお酒を飲みながら配信しているので、緊張感なく楽しく会話ができたらいいなと思っています。

NATSUKO:とにかく素直な言葉で、「みんなの意見を共有しましょう!」と心がけています。メンバーが3人いれば3人の意見があって、リスナーの意見を聞くことができて、みなさんの選択肢が少しでも豊かになればと思っています。

原:メリアでも情報を発信することが多いので、正しい情報かどうか、お客さまやユーザーが求めている情報かどうかを常に考えています。また年齢や悩みによってそれぞれ求める情報が大きく異なるので、伝えるのは誰なのかを常に意識しています。

WWD:今後の展望は?

IMALU:私たちはフェムテックに関して、プロの知識があるわけではありませんが、「ハダカベヤ」の一つの軸として、みんなが気を使わずに話せる場を提供したいという思いがあります。「正しいか、正しくないか」ではなく、「こういうものがある、こういうやり方がある」ということを共有し合える場が理想です。今回のようにデリケートゾーンに関して詳しい方とご一緒して、プロの目線で身体の疑問や悩みに答えてもらえることは非常にありがたいです。

MEGUMI:私たちは一般人なので、IMALUちゃんを本当にリスペクトしています。タレントとして身体や性のことを公に語ることにはリスクもあると思います。でも、そうしてくれたから、私たちも自然体で発信できる。その環境に感謝しています。聞いてくれる方も徐々に増えてきて、いろんな方に知ってもらえることでその広がりが女性だけのものではない広がりを見せているのがすごく嬉しいです。カジュアルな場であることはもちろん、ジェンダーの垣根をゼロにして、フェムテックを男性も当たり前のように知っている世界にしていくことが課題だと思いっています。

原:初めて3人とお会いした時、本当にカジュアルにフェムテックやデリケートゾーンケアについて話していると感じました。「アイム ラフロリア」やデリケートゾーンケアは、カテゴリーとしてはすごくクローズドな分野だとも思います。それをメーカーとは違う視点で3人が発信してくれたり、みんなが話しやすく質問しやすい環境を作ってくれたりしていることは頼もしいですよね。

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タレントIMALU と「アイム ラフロリア」の原由記CEOらがフェムテックを語る 

 5月からstand.fmで配信中の「ハダカベヤ」では、タレントのIMALUとランジェリーブランド「アルバージェランジェリー」創立者のMEGUMI、広告代理店勤務のNATSUKOが身体や性の悩みを語り合い、リスナーの共感を集めている。そんな「ハダカベヤ」と渋谷に続き7月22日から池袋パルコでのポップアップを開催中のデリケートゾーンブランド「アイム ラフロリア」がコラボした。「ハダカベヤ」の3人と、「アイム ラフロリア」を手掛けホルモンバランスプランナーの資格を有する原由記メリアCEOは、デリケートゾーンケアについて語るライブ配信にも挑戦。それぞれの立場からフェムテックを啓もうする4人に話を聞いた。

WWD:「ハダカベヤ」は5月に配信をスタートした。リスナーからの反響は?

IMALU:規模は小さいながらも濃い反響をいただいています。共感してもらえたり、「勉強になりました」という声をいただいたり。女性リスナーばかりかなと思っていましたが、男性からの反応も想像以上にあって嬉しいです。

WWD:公に話す機会の少ない身体や性の悩みについてもオープンに語り合っている。トピックはどう決めている?

IMALU:ほとんど3人で決めています。最近起こった出来事やふとした会話から生まれることが多いですね。リスナーさんやフォロワーさんからリクエストをいただくこともあります。

MEGUMI「アルバージェランジェリー」創立者(以下、MEGUMI):気になったニュースなどがあればメンバーに共有して、「ハダカベヤ」で議題にするかを話し合うことも。ニュースをトピックスにする時は、より身近に感じてもらえる言い回しを3人で考えています。

WWD:「アイム ラフロリア」とのコラボが決まった経緯は。

MEGUMI:2016年に「アルバージェ ランジェリー」を立ち上げて間もない頃、松尾(亜美)さん(現在メリアで広報などを担当)にお問い合わせをいただきお会いしたのをきっかけにご縁が続いていました。松尾さんが「アイム ラフロリア」を手がけるメリアに転職され、何か一緒に取り組めないかとお話をいただきました。「アイム ラフロリア」の理念やコンセプトには共感する部分も多く、渋谷パルコのポップアップでのスペシャルセットの販売や「ハダカベヤ」とのコラボ配信が実現しました。

WWD:「アイム ラフロリア」の使い心地は?

IMALU:ローズの香りは好きなんですけど、強すぎるのは嫌。「アイム ラフロリア」はほんのり香って、テクスチャーも心地よいです。デリケートゾーンのケアアイテムはなんとなく持っていましたが、毎日使ってはいませんでした。改めてちゃんと「アイム ラフロリア」でケアしてみて、乾燥からくるかゆみだったということがわかりました。デリケートゾーンケアって、ちゃんとやれば結果が出るんですよね。

MEGUMI:これまでにもデリケートゾーンケアを使ってきましたが、「アイム ラフロリア」のローズの香りはメンタル面も上がりますよね。使い続けるためには香りは重要なポイント。IMALUちゃんがいったように、気品のある香りなので自分がひとつ上のレイヤーの女性になれるような自信をみなぎらせてくれます。下着ブランドとしてムレやかゆみといったお悩みをお客さまから伺うこともあります。素材や仕様などでできる限り解決したいとも思いますが、デリケートゾーンケアをお勧めすることもあります。「アイム ラフロリア」はよいサポーターになっています。

NATSUKO:フレッシュクリアシートは今まで本当に欲しいものだったので出合えてよかったと心から感じています。暑い季節や外出が続いてムレてしまう時や、「いざ!」と気合を入れたい時にはぴったりです。由記さん(原メリアCEO)も自分を高めるときに使うとおすすめと言っていましたが、コンパクトだし外出先でもリフレッシュできてとっても感動しました。これまではしっかりとデリケートゾーンケアをすることがなかったので、はじめはウォッシュと美容液を2日に1回程度使用していました。使っているうちに体の変化を感じたので今では日常使いになっています。

原由記メリアCEO(以下、原):個包装のデリケートゾーン用のシートって実はあまりないんですよね。デリケートゾーンにはもちろん全身にも使っていただけます。またローズの香りにも注目してもらえて嬉しいです。トップ、ミドル、ラストと香水のように香りを設計しているところがこだわりです。

MEGUMI:「アルバージェ ランジェリー」では試着の際に、「アイム ラフロリア」のシートをお客さまにお渡ししています。個包装なので使ってもらいやすいですし、試着室がローズの香りで満たされて気分が上がりますよね。

WWD:フェムテック・ケアを取り入れたい、でもなかなか踏み出せないという人も多い。

IMALU:女性ならではの悩みは、今後もなくならないと思います。ただ、フェムテックやケアを取り入れることで生活がガラッと変わる可能性はあるのではないでしょうか。私もまだまだ知らないことばかり。みなさんと一緒にいろいろなことを学んでいきたいです。

MAGUMI:フェムテックという言葉だけ聞くと、なんだか小難しく聞こえがちですが、私たち女性にとってはエッセンシャルなものだと思います。ライフステージによって生じるさまざまな体の悩みや心配事を解決してくれる救世主のような存在。まずは毎月必要になる生理用品や「アイム ラフロリア」のようにデイリー使いできるケアから始めてみるのがおすすめです。今までの生活がぐっと快適に変わるかもしれません。

NATUKO:私も「何を、誰に、どんな風に、聞けばいいのかわからない」と感じていました。そんな中で「これならできるかも」「楽しそうかも」と気になったモノを試してみると学びになるし、変化を感じることができればどんどんトライできるかもしれません。私もまだまだ「わからない」「怖い」と試していないことだらけですが、少しずつ学んで進んでいければいいなと思います。

原:新しいことってすごく不安ですよね。私も当初は「本当に使っても大丈夫なのかな」とフェムケアアイテムに抵抗がありました。最近はこだわりの成分が詰まった製品や海外のプロダクト、何十種類もの吸水ショーツなど、素晴らしいフェムケア・フェムテック商品がどんどん出てきています。まずは無理をせず、気になるアイテムを使ってみることをおすすめします。いざ使ってみたら「なんでもっと早く使わなかったんだろう」と思えるかもしれません。

意見や情報を交換して
自分自身で選択できるように

WWD:発信する側として心がけていることは。

IMALU:「ハダカベヤ」はみんなの意見交換の場として心がけています。いろいろな情報をここで得ても、最終的に何を選択するかは自分次第という考えでやっています。人の意見を尊重し、知らないことは知らないと言える平和なディスカッションを目指しています。いつもお酒を飲みながら配信しているので、緊張感なく楽しく会話ができたらいいなと思っています。

NATSUKO:とにかく素直な言葉で、「みんなの意見を共有しましょう!」と心がけています。メンバーが3人いれば3人の意見があって、リスナーの意見を聞くことができて、みなさんの選択肢が少しでも豊かになればと思っています。

原:メリアでも情報を発信することが多いので、正しい情報かどうか、お客さまやユーザーが求めている情報かどうかを常に考えています。また年齢や悩みによってそれぞれ求める情報が大きく異なるので、伝えるのは誰なのかを常に意識しています。

WWD:今後の展望は?

IMALU:私たちはフェムテックに関して、プロの知識があるわけではありませんが、「ハダカベヤ」の一つの軸として、みんなが気を使わずに話せる場を提供したいという思いがあります。「正しいか、正しくないか」ではなく、「こういうものがある、こういうやり方がある」ということを共有し合える場が理想です。今回のようにデリケートゾーンに関して詳しい方とご一緒して、プロの目線で身体の疑問や悩みに答えてもらえることは非常にありがたいです。

MEGUMI:私たちは一般人なので、IMALUちゃんを本当にリスペクトしています。タレントとして身体や性のことを公に語ることにはリスクもあると思います。でも、そうしてくれたから、私たちも自然体で発信できる。その環境に感謝しています。聞いてくれる方も徐々に増えてきて、いろんな方に知ってもらえることでその広がりが女性だけのものではない広がりを見せているのがすごく嬉しいです。カジュアルな場であることはもちろん、ジェンダーの垣根をゼロにして、フェムテックを男性も当たり前のように知っている世界にしていくことが課題だと思いっています。

原:初めて3人とお会いした時、本当にカジュアルにフェムテックやデリケートゾーンケアについて話していると感じました。「アイム ラフロリア」やデリケートゾーンケアは、カテゴリーとしてはすごくクローズドな分野だとも思います。それをメーカーとは違う視点で3人が発信してくれたり、みんなが話しやすく質問しやすい環境を作ってくれたりしていることは頼もしいですよね。

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「アッシュ」吉原会長がコロナ禍の美容室業界を総括 “アフターコロナ”で最も大切なこととは

 東京では4度目の緊急事態宣言が発令され、“ウィズコロナ”の生活がまだまだ続くことが示された。しかし、新型コロナウイルスワクチンの接種が進むなど、新たな局面を迎えていることも確かで、そろそろアフターコロナの生活の輪郭も描かなければいけない。緊急事態宣言により振り回された業種の1つ、美容室も予約制限などのオペレーションを確立させ、ニューノーマル時代のあるべき姿を模索し始めた。そこで、「アッシュ(ASH)」など300店舗超の多様な美容サロンを国内外に展開するアルテ サロン ホールディングスの創業会長で、“業界のご意見番”こと吉原直樹氏に話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):同じコロナ禍でも、昨年と今年で違うところは?

吉原直樹会長(以下、吉原):昨年の“コロナ初期”は未知のものに対する防御本能が働き、手術室でオペをするような格好で施術をするヘアサロンも現れるなど、今思えば過剰な取り組みも行われました。しかし実態が分かってからは、闇雲に恐れるのではなく、押さえるべきポイントが分かってきましたね。

WWD:そのポイントとは?

吉原:国立感染症研究所による濃厚接触者認定の定義です。明確な基準ができて、われわれは助かりました。スタッフから感染者が出たとき、濃厚接触者がいるかどうかが重要で、われわれは濃厚接触者を出さないことを第一に考えるべきなんです。

WWD:感染者を出さないことと同様に、濃厚接触者を出さないことも大事ということ?

吉原:そうです。というのも、当グループのように社員が約3000人いるような企業では、感染者が出ない方がおかしい。今のところ日本の総人口に占める感染者数の割合は0.5~1%くらいで、人口密集地なら1%を超えているでしょう。当社のように20代の社員が過半数を占めるような会社は、なおさらリスクが大きいので、30人が感染してもおかしくない状況にあるんです。

WWD:確かに、どんなに対策を徹底しても感染者は出てしまう。

吉原:当社でも昨年、感染者を出してしまいました。感染経路を追及すると、休日の活動の際に感染したことが分かりました。そこまで完全に防ぐことは、非常に難しいですね。でも濃厚接触者を出して1週間くらい閉めなければいけなくなったのは、「アッシュ」約128店舗の中で1店舗だけ。プライベートの管理には限界がありますが、店舗で濃厚接触者を出さない対策を徹底していたことで、最小限の影響に留めることができました。ちなみに、40代後半から50代の顧客が多い「チョキペタ」は、400人ほどの従業員がいて去年1年間で1人も感染者を出していません。プライベートでも会社の方針を守ってくれれば、感染者を出さない体制はできあがっていると思います。

有効な戦略を打てる店長の存在が明暗を分けたポイント

WWD:ヘアサロン業界の昨年の業績は?

吉原:緊急事態宣言が出た昨年の4~5月に休業したサロンは、年間の来店客数が10~15%減っています。例えばコロナ前に年間1万2000人の来店があった店舗だと、1000人減った計算になります。ほかの11カ月が毎月10%減くらいだったので、年間の客数が9900人ということになります。もちろん、店舗が首都圏にあるか郊外にあるかなど、諸条件によって異なりますが、おしなべるとこれが数字的な事実でしょう。

WWD:立地条件以外に、サロンの明暗を分けた要因は?

吉原:危機を乗り切れたサロンは、客単価が10%くらいアップしています。例えば、年間10回来店していたお客さまが、9回に減ってしまったけれど、1回の客単価が10%アップしたイメージです。以前の普段の施術に、トリートメントが加わった感じでしょうか。これは、顧客側に余裕のあるサロンで可能なことで、低価格を売りにしたお店では難しかったと思います。あと、そうした戦略を打てる店長やオーナーがいたかどうかも、明暗を分けたポイントだと思います。

WWD:乗り越えようという意志と発想が大事。

吉原:そうですね。あと小池百合子都知事の発言1つで大きく変わりました。マイナスの発言の後は顕著に売り上げが落ち、プラスの発言の後は上がりました。「行政の発言の影響力は大きい」と改めて感じました。

WWD:そのほかの要因は

吉原:ステイホームを強く意識しない、若年層の顧客が多い店舗の売り上げはあまり落ちていない傾向があります。イメージでいうと、ベテランスタッフの顧客が50人減った一方で、若手スタッフのお客さまが100人増え、客単価は低くなったものの、客数で補填できた感じです。当グループでも、ベテランが売り上げを落とした反面、主にインスタグラムで集客している若手スタッフは売り上げを落とさず、むしろ「セット面が空いたのでチャンス!」とばかりに頑張って、指名売り上げを伸ばしたスタッフもいました。

WWD:SNSで集客しているスタッフは多い?

吉原:コロナ禍で会社としてSNSを強化したこともあり、増えましたね。ただプラスの側面だけでなく、SNSで集客できるようになったスタッフがサロンを辞め、業務委託サロンに行ってしまう、という問題が業界で起きています。そうした働き方を否定する気はありませんが、彼らに一言アドバイスしておきたいのは、「瞬間的な集客力に頼ってはいけない」ということです。SNS集客のスターは次から次へと現れるので、今の状態がずっと続くとは限りません。“フォロワー=顧客”ではないことを理解しておく必要があると思います。

美容学校の勢力図にも変化

WWD:アフターコロナの美容師の働き方・美容業界はどうなるのか。

吉原:まず、マスクはしばらく外せないと思います。マスク生活が始まったことで、インフルエンザの感染率が顕著に下がったニュースが広まったことで、コロナ関係なしにマスクの必要性が明らかになりました。美容室はこの1年、改めて“衛生産業”としての側面を強調して運営してきたので、コロナ禍で生まれたマスクや消毒などの衛生基準はサロンの中で残ると思います。当グループでは、エントランスで顔認証と体温計測が同時にでき、それだけで受付けが済んでしまう機器の導入をテスト的に進めているのですが、そうした設備投資も重要ですね。

WWD:美容業界に関しては?

吉原;コロナ禍で美容学生の内定取り消しを行ったサロンもありましたが、そうしたサロンは企業としての姿勢が問われてきています。昨年4月に採用したのに、4~5月は給料を払わずに、「6月から来て」などとしたサロンも同様ですね。あと、美容学校の勢力図も変わっていくと思います。断捨離ができない老舗の美容学校は、生徒集めに苦労するようになっています。逆に“SNSフォロワー数の増やし方”など、時流に合った授業を柔軟に取り入れている新興の美容学校は人気が高まっています。

WWD:教育に関しては?

吉原:当グループでは、動画で予習と復習をし、リアルで技術チェックをするという“サンドイッチ方式”を取り入れています。どのサロンも、オンラインとオフラインの“いいとこ取り”を追求していくと思います。あとチェーンサロンは特に、幹部にデジタル専門職をおくことが重要になってきます。以前は“技術に長けたトップ”をおくことが重要だったのですが、今は違いますね。当社では役員にCMO(チーフマーケティングオフィサー)をおいているのですが、CMOの存在の有無で会社の格が変わってくると思います。

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日本でも配信決定の新生「ゴシップガール」 前作のスタイリングも手掛けた衣装デザイナーが語る前作との違い

 アメリカではHBO Maxで配信中のリブート版「ゴシップガール(Gossip Girl)」が今夏、日本でもU-NEXTで配信されることが決定した。リブート版でもオリジナル版同様、ニューヨーク・アッパーイーストサイドの高校生たちのゴシップとファッションセンスにあふれた生活が描かれている。

 新作のスタイリングを任されたのは、前作のスタイリングも手掛けたエリック・ダマン(Eric Daman)だ。彼に任された仕事は、現代の若者にも通じるようにニューヨークの上流階級の高校生のリアルなファッションを描くこと。その結果、劇中のファッションは、カチューシャやカラータイツといった服装から、ジェンダーフリュイドでミニマルに変化した。「ディオール(DIOR)」や「シャネル(CHANEL)」の登場頻度が減った代わりに登場するのは、「ボーディ(BODE)」や「クリストファー ジョン ロジャーズ(CHRISTOPHER JOHN ROGERS)」といったニューヨークの気鋭ブランドだ。拠点のロサンゼルスから今作の撮影のためにNYに滞在しているダマンに、米「WWD」がリブート版における衣装のこだわりについて聞いた。

WWD:「ゴシップガール」の世界に戻ってきて、率直な感想は?

エリック・ダマン(以下、ダマン):とてもわくわくしているよ。楽しく、ファンタジーにあふれるこの世界にいることは素晴らしい体験。大変な仕事だったことは確かだが、評価はとても高いようだ。エキサイティングな仕事場に戻ってきて正解だった。

WWD:リブート版「ゴシップガール」での仕事はどうスタートした?

ダマン:最初はとにかくインスタグラムなどSNSにどっぷり浸かるところから始めた。SNSリサーチすることは自分にとってあまり日常的ではなかったのだけど、新作のキャラクターたちにとっては重要なツールであって、それを理解するために必要なプロセスだったと感じている。前作はブログの時代で、今のSNSとは全く違う。だからその世界に深く潜って何が起きているのかを知ることは必要なことだった。インスタグラムは今の時代のスタイルとファッションの鏡だ。

WWD:現在のファッション業界がそうであるように、劇中では手が届きやすいインクルーシブなファッションを描くそうだが、どのようにアプローチした?

ダマン:例えば学校の制服をどのようにスタイリングするかだと思う。オリジナル版のブレア・ウォルドーフ(Blair Waldorf)はボタンを閉めてかっちり着こなしていたが、リブート版では着心地の良さを重視している。ストリートで見かける現在のトレンドにも、この世代の服装にも“ゆるさ”があると思う。だらしないというのではなく、1990年代後半〜2000年代初期の影響を受けて、少しオーバーサイズで“ゆるさ”があり、ミニマルなんだ。これはオリジナル版とは大きく異なる点だ。

 このファッションは特にこの世代にとって、簡単に真似できて共感を得られるものだと思う。3XLサイズのカレッジスエットにサイクルパンツを合わせて、規範をちょっと破るのが彼らにとっての制服なんだ。ジョーダン・アレクサンダー(Jordan Alexander)が演じるジュリアン・キャロウェイ(Julien Calloway)はまさにこのファッションスタイルだが、オリジナル版では制服スカートを履かせないなんて考えたこともなかったよ。当時は社会的規範の中でしか考えてなかったからね。だから制服をこんな風に着こなすなんて、パンドラの箱を開けるようなものだった。

WWD:ジュリアン・キャロウェイのスタイルはどう決めた?

ダマン:彼女は劇中で一番おしゃれなキャラクターではないが、ティーザーで各キャラクターを表す一言が発表されたとき、彼女に当てられた単語が“影響力(influence)”だったように、彼女はリーダーだ。彼女のキャラクターとスタイルを探していた時に見たのは、カイア・ガーバー(Kaia Gerber)、ソフィア・リッチー(Sofia Richie)、ヘイリー・ビーバー(Hailey Bieber)、そしてアダット・アケチ(Adut Akech)のインスタグラムだった。アダットのインスタグラムは本当に素晴らしくて、特にストリートウエアカルチャーの舞台裏を覗くことができるのが最高だ。服の合わせ方がすごく上手で、ジュリアンの人物像のベースにぴったりだ。

それに、ジュリアンの父親は音楽プロデューサーで、彼がブレイクしたのは2000年代初期ごろだろう。1990年後半の「VMA(MTVビデオ・ミュージック・アワード)」のレッドカーペットや、2000年代初期のデスティニーズ・チャイルド(Destiny’s Child)なども見ていて、それでたどり着いたのが「ラクワン スミス(LAQUAN SMITH)」だった。このブランドはまさに「VMA」やデスティニーズ・チャイルド、その時代のスタイルでブレイクしたのだが、コンテンポラリーなハイファッションでもある。ジュリアンのスタイルの基準を「ラクワン スミス」や「クリストファー ジョン ロジャーズ」「ウェールズ ボナー(WALES BONNER)」を着せて、その世界観で遊びを加えるようにしたのは正しい選択だった。

WWD:ウィットニー・ピーク(Whitney Peak)が演じるゾヤ・ロット(Zoya Lott)のスタイルは?

ダマン:ゾヤはNYに来たばかりで、ほかのキャラクターと違って高所得層じゃない。彼女はもっと社会問題や政治的なところに興味があって、ライターでアクティビストだ。それを服装で表すために私が選んだのは黒人がオーナーのブランドや本屋だった。彼女が持つトートバックはNYに実在する、黒人オーナーの書店レボリューション ブックス(REVOLUTION BOOKS)のもの。それに、黒人ビジネスを取り上げるサイト「ザ・メラニン・プロジェクト(The Melanin Project)」のグッズから、マルコムX(Malcolm X)をプリントしたスエットを着せた。服装で彼女がどんな人物なのか分かるように、その思想を反映したものにした。「アーバン アウトフィッターズ(URBAN OUTFITTERS)」で売っているようなバンドTシャツを着せればいいってものじゃない。

WWD:トーマス・ドハティ(Thomas Doherty)が演じるマックス・ウォルフ(Max Wolfe)の場合は?

ダマン:みんな彼とチャック・バス(Chuck Bass)を比べるのだけど、私は彼はセクシュアリティーにオープンで、資産のある大人びた男性だと捉えている。彼は男性という設定だけど、流れるような美しい生地の服を着る。ニューヨークのブランド「ボーディ」をたくさん着せたよ。この作品では、「ディオール」など自分が尊敬し愛するメゾンブランドだけじゃなくて、ニューヨークのデザイナーもコーディネートに混ぜたかった。

 彼に「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」のウィメンズのレースシャツをスタイリングしたのだが、彼が着るととてもセンシュアルで、かつ自信をもってさらりと着こなしていた。しがらみを超えて、ファッションにおけるジェンダーの意味を考えて議論して、ジェンダーのあり方を新しい方法で表現するのはとてもエキサイティングだった。同じことはジュリアンの衣装でもできた。彼女が父親の「セリーヌ(CELINE)」のシャツを着るという設定なのだが、彼女が着ると学校にも着ていけるオーバーサイズのシャツドレスになるんだ。服とは何か、ジェンダーとは何か、それらと私たちみんながどう関係しているかといった深い会話をするのは、この世代が特にしていることだ。服を通してこうした議論ができるのはこの作品が私にくれたギフトだと思う。

WWD:ブレアのカチューシャのような、そのキャラクターのアイコンとなるスタイルは今作でもある?

ダマン:全く同じではないが、スキンヘッドのジュリアンにはイヤリングをたくさんスタイリングした。イヤリングはいわば彼女のアイコンだ。髪がないからイヤリングが映える。ブレアのカチューシャでは色をコーディネートや彼女の感情に合ったものにしていたが、ジュリアンのイヤリングでも同じようにスタイリングするつもりだ。

WWD:衣装は自分で制作したか、もしくは買ったか?

ダマン:どちらもだよ。サンプルもたくさん作ったし、ショッピングもたくさんした。パンデミック後のNYでのショッピング体験は変わり果てたものになっていたけどね。ショップ内の品数もバリエーションも少なくなっていたし、購入点数も減った。しかも工場が閉まっていて、生産すらされないコレクションもあった。ショッピングするまでちゃんと自覚してなかったけど「コロナによる予期せぬハードルは、私たちにはどうしようもない」と思った。だがそれがきっかけでオンラインショッピングとリサーチをたくさんして、「マイテレサ(MYTHERESA)」や「ザ・リアルリアル(THE REAL REAL)」に辿り着いたり、ファッションとラグジュアリーが今必要とされているのか調べたりした。

WWD:ファッション的に、前作と今作で一番の共通点と一番の違いは?

ダマン:だいぶ違うと思うよ。両者の一番の共通点はファンタジーで、見る価値ある要素が満載だ。みんな大好きになるだろうし、インスパイアされて欲しい。これが私の仕事のいいところだから。そして、ファッションの役割がとても大きく、必見なものになるということも共通点だね。

 一番の違いは、人工的で華やかで誇張されたスタイルではなく、より社会や政治に影響を受けたミニマリストなスタイルになるということだ。服に主張や意見を忍ばせるのは、オリジナル版のストーリー、もしくはキャラクターでは無かったこと。ドラマはゴシップにあふれたまさに「ゴシップガール」的世界で、ファンは気に入ると思う。でも、セリーナ・ヴァンダーウッドセン(Serena van der Woodsen)が同じシーンで6回も違う「ティーブン デュエック(STEPHEN DWECK)」のネックレスで登場するようなことはない。無駄な要素は削り、街やこの世代で見られるようなミニマリストな感覚を楽しんだ。何かを“削る”という概念はオリジナルにはなかったね。

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ゲオが原宿のど真ん中にオフプライスストア コロナを逆手に1兆円市場にリーチ

 ゲオホールディングス傘下のオフプライスストア、ラックラック(LUCK RACK)は7月22日、東京23 区で初となる「ラックラック 東急プラザ表参道原宿店」をオープンする。運営するゲオクリアの川辺雅之社長に、思い切った出店のわけなどを聞いた。

WWD:オフプライスストアは日本では郊外型が主流で、ラックラックも横浜の港北インター近くに1号店を出店した。今回、一気に2段、3段飛ばしで原宿のど真ん中にオープンした印象だが、その理由は?

川辺雅之ゲオクリア社長(以下、川辺):コロナの影響が大きい。原宿・表参道エリアでの退店は多く、また商品がプロパーで売れないことで当社への問い合わせが増えている。これらはいずれもラックラックにとってチャンスであり、逆に平時であれば考えられなかった。実際、中長期計画にも原宿・表参道エリアへの出店は含まれていない。

WWD:とはいえ、いずれは同エリアへの出店を考えていた?

川辺:考えていないことはなかったが、それは店舗数が100(表参道原宿店が13店舗目)をクリアし、世の中の認知度がもっと高まってからの想定だった。

WWD:具体的に何年先を想定していた?

川辺:ざっと5年後だろうか。しかし物件は水物、縁だ。これを逃したら次はないかもしれないと思い、またベストな立地だったため決断した。

WWD:それほどオフプライスストアに可能性を感じている?

川辺:オフプライスストア先進国のアメリカには、年間売り上げが4兆円を超える業態もある。また同国のオフプライス流通はアパレル全体の15%に達しており、日本でも同様に発展した場合、その規模は1兆円を超える。しかし、日本での認知はまだまだ低い。そのため、発信力のある若年層にリーチすべく、表参道原宿店の出店を決めた。ラックラックの既存店にはないラグジュアリーブランドやデザイナーズブランドをそろえるなど、店づくりも工夫した。客単価も約2倍を見込んでいる。

WWD:ワールドやオンワード樫山、ビームスもオフプライスストアを運営するが、いずれもメーカーだ。一方で、メーカーでないゲオグループはオリジナル商材を持たない。商品はどう仕入れている?

川辺:供給元はメーカー7割、小売1割、仲介業者2割だ。2019年に1号店をオープンした際、取引企業は80だったが現在は250まで増えている。

WWD:その内訳は、ラックラック 東急プラザ表参道原宿店で扱う「バレンシアガ(BALENCIAGA)」や「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」などラグジュアリーブランドでも変わらない?

川辺:その通りだ。

WWD:各ブランドが旗艦店を構える原宿・表参道エリアへの出店で、まわりからのアレルギー反応などはなかった?

川辺:賛否が5:5といったところか。ただ、かつては1:9だったので、風当りの変化を感じる。サステナビリティーへの関心、および社会的ムードの高まりに後押しされている。

WWD:EC化についても聞きたい。

川辺:オフプライス商材は一点物であり、ささげ作業に手間がかかる。EC化には設備投資や人件費などの維持費、送料もかかる。総合的なジャッジから、現在は考えていない。もちろんオフプライスストアの認知が高まり、市場が活性化されれば話は別だ。

■ラックラック 東急プラザ表参道原宿店
オープン日:7月22日
時間:11:00~21:00
定休日:不定休
住所:東京都渋谷区神宮前4-30-3 東急プラザ表参道原宿4階

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「RMK」新クリエイティブディレクターにYUKIが就任 グローバル視点で相乗効果を生み出す

 メイクアップブランド「RMK」は、新クリエイティブディレクターにニューヨークを拠点に世界で活躍する日本人メイクアップアーティストのYUKI(ユウキ)を起用した。 2021年秋コレクションからプロダクト開発、キャンペーンのディレクションなどに携わり、ブランドの方向性を決める重要な役割を担っていく。「洗練さとストリートの“生っぽさ”の融合で、本物を提供する新生『RMK』を作り上げる」と意気込むYUKIに話を聞いた。

オファーは
人生に一度しかないチャンス

WWD:クリエイティブディレクターのオファーを受けたときの心境は。

YUKI「RMK」クリエイティブディレクター(以下、YUKI):予期しなかったことで、スリリングとエキサイティングを感じた。これまでのキャリアの幅広い経験値を評価していただいたと思う。アーティストとしてのフレキシビリティさとのバランス感も伝わったのだろう。実は、「RMK」は初めてファンデーションを購入したブランドでもあり縁を感じた。人生に一度しかないチャンスであり、「RMK」を通して伝えたいメッセージがたくさんあるため引き受けた。今後もNYでフリーランスの仕事をしながら「RMK」に携わるため、アーティストとしてのクリエイティビティとビジネスとのバランスをとっていきたい。

WWD:新生「RMK」に必要なものとは何か。

YUKI:「RMK」には“クリーンで上品なかわいらしさ”というイメージを持っていたが、ブランドに携わりそれをより強く感じるようになった。クリーンさや上品さは、年齢や性別に関係なくポジティブなものでありブランドの特徴として引き継いでいく。かわいらしさもブランディングとして重要なため、控えめにした“スパイスとしての甘さ”として残していく。甘さのパーセンテージを下げることでほかとのコントラストがつき、かわいらしさがぐっと前面に出てくる。そこに自分のスタイルやテイストをどう反映していくかが重要だ。流行に左右されず、周りの意見を受け入れつつも自分は自分という“温かい余裕”を持つ人。そんな、余裕がありリラックスしている“心地良い人”は性別問わず美しく、そんな人物像も意識しながら、クリーンや上品さにストリートカルチャーの“強さ”や“生っぽさ”を加えることで、新しい「RMK」が生まれるのではないか。

 新生「RMK」に重要なキーワードは、2つある。 1つは“リアル”。完璧なものよりも、ちょっとよごれている、ちょっと強いものが好きなのですが、それを「RMK」のカラークリエイションに落とし込んだ時に、完璧に作られた人形のようなファンタジーな美しさを提示するのではなく、デジタル時代にあえてコントラストをつけた生っぽいクリエーションを通じて、新しい世代のアジア人の美しさを世界に発信していきたい。もう1つは“オーセンティック”。ファッション的な流行りにのるクリエーションをするのではなく、突きつめて本物を提供する、そんなブランドであり続けなければならないと思っている。

WWD:“世界で最も影響力のあるメイクアップアーティスト”と呼ばれるパット・マクグラス氏のチームで学んだこととは。

YUKI:ヘアだけでなくメイクの経験値をプラスしたいと思いNYに渡ったが、ラッキーなことに仕事を始めるとすぐにパットのチームに入れることができ、そこからNYでのキャリアがスタートした。

 5年間パットの元で働いたが、彼女は人の能力を見極めるのが得意。「完璧な人は一人もいない」と言い、個々の適材適所を生かしながらみんなで一つのものを作り上げていく。今のチーム「RMK」にも影響を受けており、自分はチームの一員にすぎないと思っている。私が言ったことをメンバーが再現するような関係性では良い製品が生まれない。自分の意見をもとにチームがインスピレーションを受けて新しい意見が出て、その意見をもとにまたインスパイアされる……といったコラボレーションができれば必ず良いもの作りができると思う。

「世界は本当に広い」と実感

WWD:「RMK」の目指しているものとは。

YUKI:メイクアップは変身するものではなく、自分を輝かせるもの。例えばリップを塗って、「ちょっとそれ派手じゃない」と周りに言われても、「自分はこれが好き」という気持ちの高まりを大切にしてほしい。「そっちの方がクールだよね」と後押しするようなブランドになりたい。

 そして日本のマーケットだけでなく、グローバルにも発信していきたい。世界に目を向けたすてきな色や商品、クオリティー、使ってみたいと思える世界観、そんな大きい価値観でブランドが成長できたらうれしい。そのためにはまずは基盤作りから行わなければいけない。商品のポートフォリオ作り、リニューアル、チームとのコミュニケーション、意思疎通など。そして「世界は本当に広い」と私が実感しているからこそ、思考を世界に向けてほしいと思っている。グローバルな視点がチームにも伝われば相乗効果が生まれ、さらに新しさを感じる「RMK」に進化できるのではないか。

シックでコンテンポラリーな
21年秋コレクション

 8月6日数量限定発売の2021年秋コレクション「ROSEWOOD DAYDREAM」から「RMK」に携わっているYUKIクリエイティブディレクター。今回のコレクションはもちろん、今後の「RMK」として大事にしていくことは、「質の良いトレンドや技術を提案し、その人の本質に迫るクリエーションのアプローチを行なっていくオーセンティック、リラックス感や心地よさのあるレイドバッグ、生っぽさを取り入れることでいまのデジタル時代とのコントラストを作っていくリアル、ビューティブランドとして欠けてはいけない洗練さや上品さのソフィスティケーティッド、そしてこれまでの『RMK』の甘さのパーセンテージを下げて、スパイスとして入れるヒント・オブ・スウィートネス。これらは今後も大切にしながらもの作りを行う」と話す。

 秋コレクションはサウスウエストの乾いた風景から着想し、秋の1日の空をイメージした、異なる質感と色が織りなす4色のアイシャドウ、鮮明なラインでもスマッジでも自由自在に使えるアイペンシル、知的さやエモーショナルなムードと抜け感を与えるリップスティックなど7アイテム全24品をそろえる。「見た目の印象だけでなく、肌にのせたときのパフォーマンス力を意識して、全ての色は肌なじみにこだわった。一人一人の肌がきれいに見えるように、暖色系でもくすみカラーに仕上げるなど使いやすいカラーをラインアップしている」とコメントした。

2021年秋コレクション「ROSEWOOD DAYDREAM」イメージムービー
PHOTOS:TAKAO OHTA
問い合わせ先
RMK Division
0120-988-271

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【動画】サウジアラビア出身の若者3人による東京発のストリートブランド「ウナストーキョー」 Youth in focus Vol.4

 ミレニアルズやZ世代と呼ばれる若者たちは今何を考え、ファッションやビューティと向き合い、どんな未来を描いているのだろうか。U30の若者たちにフォーカスした連載「ユース イン フォーカス(Youth in focus)」では、業界に新たな価値観を持ち込み、変化を起こそうと挑戦する若者たちを紹介する。連載の4回目は、サウジアラビア出身の若者3人が立ち上げたストリートブランド「ウナストーキョー(UNAS TOKYO、以下ウナス)」にフォーカスする。

 同ブランドは、ゆせふとばする、ヤズの3人が2018年に立ち上げた。東京を拠点にモデルやアーティストとして活動する彼らが、それぞれの視点で吸収した東京のストリートカルチャーを、ファッションを通じて表現している。ポップな色使いが特徴のTシャツやパンツなどをECサイトを中心に販売し、同世代のクリエイターを巻き込んだ表現のプラットフォーム作りを目指して活動する。今回は、一時帰国中のヤズを除いた2人にインタビュー。動画ではサウジアラビアで活動するヤズの様子も撮影した。

WWD:自己紹介をお願いします。

ゆせふ:サウジアラビア出身で、高校卒業後の2012年にこれまでと違った環境で生活してみたいと思い立ち、東京に来ました。「ウナス」ではデザインを担当し、普段はモデルとして活動しています。

ばする:同じくサウジアラビア出身です。普段は大学院でシステムデザインを勉強していて、「ウナス」ではビジネスを担当しています。

WWD:2人の出会いは?

ばする:高田馬場の日本語学校で出会いました。授業の後は毎日2人で渋谷・原宿で遊んでいましたね。僕はサウジアラビアの小さな町で生まれ育ち、伝統的な服を着て過ごしていました。故郷の風景とは全く違う渋谷のストリートカルチャーに触れ、すぐに夢中になったんです。当時は日本語が全然話せませんでしたが、渋谷でスケボーしている人たちに憧れて、その界隈で徐々に友達が増え、スケボーカルチャー発のファッションにもハマっていきました。

ゆせふ:僕もサウジアラビアにいるときは、ファッションにあまり興味がなかったのですが、東京に来て好きな格好をして友人と写真を撮り合うようになりました。ストリートスナップを撮られたり、ブランドのモデルやミュージックビデオ、ファッションショーにも誘われるようになったりして、ファッションの世界に入って行きました。

WWD:特に好きなブランドは?

ゆせふ:「ステューシー(STUSSY)」「カーハート(CARHARTT)」「ゴルフ ワン(GOLF WANG)」をよく着ています。

ばする:僕は「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」です。以前、渋谷でモデルをやらないかとスカウトされたことがきっかけで知りました。そこから山本耀司さんのインタビューを見て、耀司さんのストーリーや考え方も含めてカッコいいなと思っています。

WWD:「ウナス」立ち上げの背景は?

ゆせふ:僕たちから見える東京のストリートカルチャーの魅力を発信したかったのが始まりです。古着屋にもよく通っていて、ビンテージのアイテムに触れる中で僕たちが着たいものを作りたいという思いが大きくなっていきました。

ばする:僕の弟のヤズも参加して3人で始めることになりました。ブランド名は、アラビア語で「人々」「コミュニティー」という意味です。「ウナス」を通して、クリエイターやアーティストが自由に表現できるプラットフォームを目指したかったんです。でも、ファッションの生産背景に関する知識はゼロ。一時期は知り合いのデザイナーさんの下で働かせてもらい、ほぼ自分たちで調べました。

ゆせふ:めちゃくちゃ大変でしたね。何から始めればいいかや、パターンの引き方などをインターネットで検索して、トライアンドエラーを繰り返しました。

ばする:僕は日本企業で働いた経験があり、日本でのビジネスコミュニケーションの取り方は学んでいました。その分、工場とのやり取りは比較的スムーズでした。

WWD:「ウナス」の魅力は?

ゆせふ:色鮮やかなカラーリングと高品質な素材です。セカンドコレクションで作ったTシャツには上質な平編みコットンを使用しました。セットアップはタブルクロスを使用しました。Tシャツにプリントしたタクシーのイラストは、ヤズが描いたものです。今後はインディペンデントで活動しているアーティストとのコラボも増やしていきたいですね。

ばする:セカンドコレクションのテーマは“ミドルクラス”。サウジアラビア人に対する「お金持ち」のステレオタイプを壊したかった。僕たちは全員“ミドルクラス”出身です。僕はマーケットリサーチのアルバイトで、ゆせふはフリーランスのモデルで稼いだお金を「ウナス」の制作費に充てています。

ゆせふ:“ミドルクラス”のアーティストを巻き込んで、応援できればいいですね。

WWD:次にやりたいことは?

ゆせふ:ファションショーやポップアップにも挑戦したいです。ファーストコレクション発表後、コミュニティー以外の人たちからも「ウナス」のビジョンに共感してれた人からの反応がありました。インディペンデントなアーティストやクリエイターが好きなことを表現できるプラットフォームになれたらうれしいです。

ばする:国籍関係なく、いろんな視点を持った人が自由に参加してほしいですね。「ウナス」を通して、どんどんクリエイティブな輪が広がっていくイメージです。今、サウジアラビアでもユースカルチャーが急成長しています。2019年の夏にサウジアラビアで初めて「ウナス」のポップアップイベントを開いたときも、かなりの人数が集まってくれました。東京を拠点にしながら、サウジアラビアのユースカルチャーも引っ張って行きたいです。

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「消費者も“共同生産者”として一緒に価値を作っていく」 MIYAVI、日比保史が語る100年後の地球

 「WWDJAPAN」は6月26日に、イベント「WWDJAPAN Circle MIYAVIと一緒に考えよう、100年後の地球 Supported by GUCCI」を東京・新宿のキースタジオ(KEY STUDIO)で開催した。「WWDJAPAN Circle」とは、社会的な課題や関心を読者やユーザーとともに考え、ムーブメントを起こしていく趣旨のもと誕生した企画。環境問題をはじめ、正解のないテーマを黒か白で結論づけるのではなく、前進するためのアイデアを皆で出し合うことを目指す。

 記念すべき第1回は「グッチ(GUCCI)」をサポーターに迎え、アーティストのMIYAVIと、国際環境NGOのキーマン日比保史コンサベーション・インターナショナル・ジャパン(CONSERVATION INTERNATIONAL JAPAN=以下、CIJ)代表理事兼CIバイスプレジデント(以下、CIJ代表理事)とともに、「100年後の地球」をテーマにトークを繰り広げた。トーク後はMIYAVIによるスペシャルライブも行われ、来場者を盛り上げた。

カーボンニュートラルから
サーキュラーエコノミーまで、
環境問題をアツく談論

難民支援での経験や
未来への希望を込めた5曲を熱唱

 トーク後は、MIYAVIによるスペシャルライブが行われ、「What's My Name?」「Tears On Fire」「Long Nights」「Holy Nights」「Day1(Reborn)」の5曲が披露された。MCでMIYAVIは、「世界各国を巡り、地球が抱えている問題を目の当たりにするたびに無力さを感じてきた。でも、ただ嘆くだけでなく、自分が思うメッセージを声を上げて叫び、行動していきたい」と思いを語った。また、自身の難民支援活動にも触れ、「難民の方たちの生き方からインスパイアされ、力をもらっている。明日が来ると信じられるから、また頑張ろう、この長い夜も乗り越えようと思うことができる。環境問題も同じで、今は大変だが、これを乗り越えれば明るい未来が待っていると次の世代に示すことが大事だと思う」と、経験を交えながら話した。そして、「どんな状況でも自分たちができることをする。そして、いつからでも始めることができると信じている。皆さんが今日のイベントを通じて何かに気付き、始まりの日になってくれればうれしい」と締めくくった。

“グッチ オフ ザ グリッド”コレクションを
見にグッチ新宿へ

 MIYAVIは、イベント終了後に「グッチ新宿」で開催していた“グッチ オフ ザ グリッド”の期間限定ショップ“グッチ ピン”を訪問。環境に配慮してデザインされた、「グッチ」初のサステナブル コレクションのウエアやバッグ、シューズなどを見て回った。

※期間限定コーナーはすでに終了
第1回「WWDJAPAN Circle」の
イベントの様子を公開

PHOTOS : TSUKASA NAKAGAWA
問い合わせ先
グッチ ジャパン クライアントサービス 
0120-99-2177

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女優・清野菜名が語るファッションと私生活 「ヴェルサーチェ」初の日本人アンバサダーに選ばれた26歳の素顔

 女優・清野菜名が、このほど「ヴェルサーチェ(VERSACE)」のアンバサダーに就任した。就任発表直後の撮影現場で、注目の26歳に直撃。私生活でもファッション好きで、スポーティーなウエアからビビッドで華やかなアイテムまで、さまざまなスタイルを着こなす彼女に、ファッションやコロナ禍での過ごし方、今ハマっていることなどを聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):「ヴェルサーチェ」のアンバサダー就任を聞いたときの感想は?

清野菜名(以下、清野):「ヴェルサーチェ」は、大人の女性が似合う特別なブランドというイメージだったので、話をいただいたときは驚きました。でも2021年プレ・フォールのキャンペーンビジュアルの撮影時にいろいろと試着して、私と同世代の女性も心ときめく服やバッグがたくさんあることを知り、ブランドへのイメージが変わりました。

WWD:キャンペーンの撮影はどうだった?

清野:ラグジュアリーブランドの撮影は初めてだったのですが、服やバッグをしっかり見せる必要があり、これまでの笑顔で元気に自分を表現する撮影とは全然違いました。バッグひとつをとっても、持ち方や角度が少し変化するだけで力強く見えたり、エレガントに見えたりと表情が違ってくる。どうポージングすればアイテムを素敵に見せることができるか、現場のスタッフにアイデアをもらいながら進めました。難しくもあり、刺激的な1日でした。

WWD:私服もおしゃれだが、普段ファッションで意識しているポイントは?

清野:アウトドアをはじめ、体を動かすことが好きなので、動きやすいパンツスタイルが多いです。服は直感で選ぶことが多く、自分の体にフィットしたものが見つけられたときはうれしいですね。今はさすがにしないけれど、昔は街で素敵な服を着た女性を見かけたら、「それはどこの服ですか?」と、声をかけて聞いたこともあります(笑)。自分が本当にいいと思うものだけを購入しているので、10代の頃に買った服でも、お直しに出してメンテナンスしながら、いまだに着続けているものもあります。

WWD:コロナ禍でライフスタイルや心境に変化はあった?

清野:何もしないことが嫌だったので、少しでもこの先につながることをしようと意識して過ごしていました。将来海外の作品に出たいという夢があるので、英語の勉強時間も増やしました。他にも、クリエイティブな趣味を新たに始めて、有意義に過ごしていました。例えば油絵でカラフルな抽象画を描いてみたり、脚本家の倉本聰さんがボールペンで点描画を描いていたのがとても興味深くて私もまねしてみたり。好きな映画やドラマを見る時間が増えたのもうれしかったですね。

WWD:今、ハマっていることは?

清野:一人キャンプをやってみたくて、ユーチューブ動画などを見ながら少しずつ知識を蓄えて、準備を着々と進めています(笑)。最近はたき火台を購入しました。とにかく自然が好きなので、家の観葉植物を毎日ケアして過ごしています。植物もひとつずつ性格が違うので、「この子はカーテン越し」「この子はしっかり日光を当てる」、抱っこして軽くなっていると「お水をあげなきゃ」という具合に(笑)、子どものように育てています。

WWD:最後に、「ヴェルサーチェ」のアンバサダーとして皆さんにメッセージを。

清野:ラグジュアリーからカジュアルなデザインまで、私と同世代の女性たちが心ときめく服やバッグがたくさんあります。その魅力をぜひ伝えていきたいです。

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“心の支えになるようなファッションを” 「トゥ エ モン トレゾア」がジーンズに特化した思い

 東京発のウィメンズブランド「トゥ エ モン トレゾア(TU ES MON TRESOR 以下、トレゾア)」は2020年、ブランド設立10周年を経て、ジーンズに特化したブランドへとリブランディングした。これまでも「トレゾア」はパールやビジューを装飾したジーンズがアイコンで、国内外で支持されてきたが、今回のリブランディングでは、着心地のよさと体が美しく見えるシルエットを追求したデザインに一新。エメラルドやアメジストなどの宝石の名前を付けた13型をそろえている。定番として長くはき続けられるようシーズンの概念をなくし、セールも行わない方針。“女性のためのセーフプレイスを作りたい“というデザイナーの佐原愛美の思いのもと、子どもや女性の人身売買をなくすために活動するNPO法人「かものはしプロジェクト」との取り組みを開始し、売り上げの一部を寄付する。

 昨年9月には、英セレクトEC「マッチズ ファッション(MATCHES FASHION)」でリブランディング後の商品をエクスクルーシブで発売し、日本では今夏、ビオトープを皮切りにエストネーション、APストゥディオ、伊勢丹新宿本店リ・スタイルで取り扱う。7月16日~8月2日まではエストネーション六本木ヒルズ店にポップアップストアをオープン。佐原デザイナーにリブランディングを行った経緯や、デニム作りのこだわり、ファッションから考える社会的問題について語ってもらった。

WWDJAPAN(以下、WWD):リブランディングを行った理由は?

佐原愛美「トゥ エ モン トレゾア」デザイナー(以下、佐原):デビューした10年前はマイペースにジーンズを中心にした定番商品を販売していましたが、2016年に海外ショールームのトゥモロー※と契約したのをきっかけに年4回のコレクションを発表するレディ・トゥ・ウエア(プレタ・ポルテ)に切り替えました。シーズンごとにその時代のメッセージを発信できることに意義を感じていましたが、大量生産、大量消費のモノ作りには矛盾もある。シーズンの考え方やセールを無くしたいとリブランディングを決めました。

※トゥモローはミラノを拠点にする有名なファッションのセールスエージェンシー。ロンドンや香港などにもオフィスを構える

WWD:アイテムをジーンズに絞った理由は?

佐原:これまでアイコンだった「トレゾア」のジーンズは、無骨で荒っぽい1940年代のビンテージジーンズの形をもとに、パールやビジューなどデコラティブな刺しゅうをすることで、“男性的なアイテムを女性の視点で作り替えて“いたもの。でも、この10年で“男性が力強く、女性がかわいらしい“というイメージは薄れてきました。これまで培ってきた経験を生かして、女性の体やライフスタイルに寄り添うデザインを提案できれば、刺しゅうがなくてもフェミニンなジーンズが作れるのではと考えました。

宝石のように長く大事に
受け継がれるように

WWD:新たなジーンズのこだわりは?

佐原:もともとジーンズは炭鉱夫のために作られたもの。機能的な美しさがありますが、仕様は男性的なシルエットで作られています。「トレゾア」ではウエストがしまっていて、ヒップが膨らんでいる女性の自然な体の形に沿うような形を目指し、異なる女性たちの体型に寄り添えるように13型を作りました。それぞれのジーンズには宝石の名前を付けています。宝石が長く大事に受け継がれるものであることと、ブランド名がフランス語で“あなたは私の宝物“という意味であることにちなんでいて。ストレートのボーイフレンドデニム“ジ・エメラルド ジーン“をはじめ、フレアデニムの“ジ・アメジスト ジーン“、スキニーフィットの“ザ・ルビー ジーン“などがあります。今年新たに追加したリラックスフィットの“ザ・ラピスラズリ ジーン“などの4型にはオーガニックコットンを採用しました。ボタンホールと内側のステッチは、色を宝石の色に合わせているほか、ボタンとリベットも新しくオリジナルで作り変えました。

WWD:セールを行わないなど、販売方針も変化がある。

佐原:定番ものをセールなしで販売してもらうためには、お店と関係性を築いて、理解をしてもらうのが大事になります。まずはチーム作りからスタートしました。セールスはショールームではなく、グローバルで個人で優秀な方にお願いできることになり、しっかりと販売方針を話し合いました。セールをしないといっても美しくて、素敵な商品ではないと話にならないので、品質もデザインに時間や労力をかけて、何年経っても着ていたいと思えるモノづくりを意識しました。今後もたくさんのお店に扱ってもらうというアプローチではなく、限られたお店と密に連携して販売していきたいと思っています。

心の支えになってくれるような
“女性を安心させてくれる服”

WWD:“女性のためのセーフプレイスを作りたい“というコンセプトを掲げているが、その思いとは?

佐原:私も多かれ少なかれ、若いころから“女性だから“という理由で辛い経験をしたことがあります。その時にファッションの世界に浸ることで癒されたり、励まされたりと、ファッションが安心できる場所(セーフプレイス)になっていました。女性の市場が大きいファッション業界には、心の支えになってくれて、女性を安心させてくれる服がある。私はそのような服を作りたいと思っています。また、今回取り組みを開始したNPO団体「かものはしプロジェクト」は商業的性的搾取による人身売買を無くすために活動している本当の“セーフプレイス“を生み出すプロジェクト。人身売買や性犯罪は暗い話ですが、ブランドを継続していく中で、そういったことを少しでも多くの人に知ってもらうきっかけ作りをしたい。私は学生の頃からボランティアに参加して、個人的に数々のチャリティ団体と取り組んできましたが、一般の方たちが信頼できる団体を探すことは容易ではないと感じていました。この「かものはしプロジェクト」は私個人もサポートを続け、「トレゾア」のお客さまも安心して支援できる団体。02年にカンボジアでスタートし、現在は問題の根が深いインドでの子どもたちの人身売買問題に着手し、日本国内での活動もはじめています。ブランドをリブランディングしたことで、より社会的な問題とファッションを結びつけることができるようになったと思います。(※トレゾアはこれまでも社会問題を裏テーマにしたコレクションを発表してきた)

WWD:環境問題に関する考えは?

佐原:モノを作る責任を持ち、できることからやっていきたいと思っています。3割のデニムは、オーガニック繊維の認証であるGOTS認証のオーガニックコットンを使っています。実際に現地に行って確かめていないので、信頼できるのか断言することは難しいですが、コットンには農薬のこと、強制労働の人権問題などさまざまな課題がある中で関心が高まることで、少しずつコットン生産地の環境を変えていけるはずだと思います。

■Tu es mon Tresor POP UP STORE AT ESTNATION
会期:7月16日~8月2日
場所:エストネーション 六本木ヒルズ店
住所:東京都港区六本木6-10-2

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オリラジ藤森が“チャラ過ぎず、チル過ぎない”ゴルフウエアブランド始動

 インフルエンサーブランドを運営するGIVINは、オリエンタルラジオの藤森慎吾がディレクションするゴルフウエアブランド「アイリッシュマン(IRISHMAN)」を2021年秋冬シーズンに始動させる。“襟付きでジャストサイズ”が定番のゴルフウエアに、ビッグシルエットやクルーネックなどストリートウエアの要素をミックスし、日常使いできるアイテムを提案。ファーストコレクションは半袖ポロシャツ(税込1万2760円)やジャカードニット(同1万5620円)、クルーネックニット(1万4960円)、ニットパーカ(1万5950円)、キャップ(同6160円)など全18型で、7月28日から公式オンラインサイトで販売する。

 ブランド名は、藤森の「一番好きなゴルフ選手」であるローリー・マキロイ(Rory McIlroy)選手の故郷、アイルランドに着想したもの。「カッコ良すぎちゃダメ」と語るネーミング哲学から「人生で一番ハマっている」というゴルフの魅力、そしてウエアのこだわりまでを聞いた。

―ブランドターゲットは?

藤森:“ゴルフを真剣にやっていて、日常使いできるウエアが欲しい人”です。ゴルフを今から始める人にも着て欲しいから、買いやすい価格に設定しているつもりです。高かったらごめんなさい(笑)。

―ブランド名に込めた思いは?

藤森:単純にロゴの具合が良かったので即決しました。「I」が2つあってカッコ良くないですか?アイリッシュだけで「アイルランド人」という意味なんですけど、少し物足りなくて「マン」を付けました。アイアンマンっぽくて気に入ってます。

―そんな気軽に決めて大丈夫なのか?

藤森:コンビ名もそうですけど、最初からカッコ良い名前をつけちゃうと名前負けしちゃうんですよ。最初は「何それ?」って思われても、売れたら「カッコ良いじゃん」って認識される。「オリエンタルラジオ」も変な名前ですが、今は違和感ありませんからね。ちなみにパーフェクトヒューマンに被せたわけではないです。

セオリーじゃなくていい
今の精神状態に合ったウエア

―ウエアのこだわりは?

藤森:特にこだわったのは腕周りです。ゴルフウエアって腕がタイトなものが多くて、ジャストサイズで着たら誰でもピタっとしちゃう。分かりやすくいうと、デシャンポー(注釈:アメリカのプロゴルファー、ブライソン・デシャンボー(Bryson DeChambeau)選手)みたいな。だから、少しドレープが出るくらいゆとりある設計にしてます。身幅もピタッとさせるのがセオリーだけど、プレーしてるとだんだん上がって来ちゃうので、裾がストンと落ちるサイズ感にしました。

―ゴルフウエアとしては珍しいパーカも用意している。

藤森:パーカはすごく気に入ってます。「その格好でゴルフやんなよ!」と怒られることもあるけど、最近は増えてきているし、単純におしゃれ(笑)。薄くて軽い素材を使っていて、かなり動きやすいので、ぜひパーカを着てゴルフしてほしいですね。

―全体的にシンプルで大人なコレクションだ。

藤森:「藤森のブランドなのにこんなシンプルかよ」って思われるかもしれませんね。でもこれが今の藤森の精神状態なんです。レインボーカラーとか着られる状態じゃない。最近は朝5時半ごろに目覚めて「超朝型じゃん。年取ったな、こえ〜」って思いながらゴルフに出かけてます。チャラ過ぎず、チル過ぎない服がいいーー同い年くらいの人には分かってもらえるはずです。

―相方・中田敦彦もアパレルブランド「幸福洗脳」を手掛けている。何かアドバイスはもらった?

藤森:全くもらってません。あのブランドはなんか怪しげなロゴが入ってますし、全然別物です。でも、彼の行動力には影響を受けてます。昨年事務所を独立し、自由に活動できる環境になったのも大きいかな。(俳優やユーチューブなども)本当に楽しいから、どんどん挑戦したくなる。おかげで常に口内炎と戦ってますけど(笑)。

―ゴルフの魅力とは?

藤森:「自然が気持ちいい」「仲間と集まれる」って言う人が多いですよね。僕は「いいショットが打てると自分が気持ちいいから」です。今月はゴルフの仕事で地方に3回行っていて、ギャラなしでもOKなくらい楽しんでいます。

―今後の展望は?

藤森:最初は男性ものだけですが、最終的には女性を喜ばせたいんです。女の人に「かわいい」「おしゃれ」って思われないと認知度は広がりませんからね。そのために今、周りにゴルフ女子を集めたり、みんなにゴルフを始めてもらったりしています。まあ、女の子と回りたいだけなんですけど(笑)。

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京都が眼鏡で激アツ!? キャリア22年の眼鏡ライターが経営トップ4人の取材を総括

 “京都が眼鏡で活性化している!”として、東京からの進出組であるアイヴァンとグローブスペックス、地元で約30年商売を続けるローカル組のイアラ マーケティング スペシャリティズとグラッシーズ、4人の社長にインタビューを行った。東京・青山の骨董通りや大阪・堀江のように眼鏡店が集中するエリアとなった京都で、どんな化学反応が起こり、今後のアイウエアシーンにどんな影響を与えるのか?取材歴22年の眼鏡ライター藤井たかのが解説する。

かつて主力ブランドを失ったアイヴァンは、出店攻勢でオリジナル強化

 全国に28店舗を運営するアイヴァン(東京、山本典之社長)の、近年のブランド創設と出店ラッシュには目を見張るものがある。2013年の「アイヴァン 7285(EYEVAN 7285)」を皮切りに、17年に「アイヴォル(EYEVOL)」と「10 アイヴァン」を立ち上げ、18年には「アイヴァン」を復活させた。これに合わせて、東京・青山の骨董通りに「アイヴァン 7285」「アイヴォル」「アイヴァン」の3店舗、大阪に「アイヴァン 7285」の直営店をオープンした。今年5月には、4つのオリジナルブランドのみで構成する新業態ジ・アイヴァンを京都・祇園に開店した。さらに16年からの5年間でシープ アイヴァンなど、アイヴァンレーベルの眼鏡サロンを11店舗出店している。攻めの姿勢を崩さないアイヴァンだが、かつては「バーバリー(BURBERRY)」を失った三陽商会に近い状況に置かれていた。

 「アイヴァン」は、1960年代にアイビーファッションで一世を風靡したヴァンヂャケット(VAN)の眼鏡ブランドとして72年に誕生したが、2003年に活動を休止(18年に復活)。90年代以降のアイヴァン(旧オプティックジャパン)の主たるビジネスだったのが、89年から2018年までライセンス契約を結んでいたロサンゼルスの眼鏡ブランド「オリバーピープルズ(OLIVER PEOPLES)」(1986年創業)の製造・販売だ。「オリバーピープルズ」は2007年に世界最大のアイウエア企業であるイタリアのルックスオティカ(LUXOTTICA)に買収されるが、その後も日本での高い販売実績が評価され、例外的にアイヴァンが製造・販売を続けていた。ルックスオティカジャパン(旧ミラリジャパン)が「オリバーピープルズ」の製造・販売を行うのは19年1月以降だが、早い段階で屋台骨を失うことを見越したアイヴァンは、新たなライセンス契約先を探すのではなく、「アイヴァン」をリブランディングし、「オリバーピープルズ」に変わる主力ブランドとして打ち出した。また近年の出店ラッシュには、企業買収が活発化する眼鏡業界で、卸先である小売店の販売だけに頼るのではなく、自ら売るための場を構築する姿が見える。

 祇園に開店したジ・アイヴァンは、日本製の高品質なフレームを京都から発信するシンボリックな拠点だが、注目すべきは2階のギャラリーが「アイヴァン」の歴代モデルや広告などを展示するミュージアムになっていることだ。17年に眼鏡企業ボストンクラブが、オリジナルブランド「ジャポニスム(JAPONISM)」のミュージアムを、改装した自社ビル内に作り話題となったが、場所は本拠地の福井県鯖江市だった。アイヴァンは発祥の地ではない京都にアーカイブを展示しており、今後京都を軸に世界に向けてアピールする意気込みが感じられる。

コロナ禍でも“岡田無双”続く、さらに能ある鷹が爪を隠す?

 グローブスペックスは、イタリア・ミラノで開催される世界最大の国際眼鏡展「ミド(MIDO)」が、優秀なアイウエアショップに与える「ベストア・アワード」を17年、18年と2年連続で受賞する快挙を成し遂げた。岡田哲哉社長もテレビや雑誌にたびたび取り上げられ、業界では向かうところ敵なしの“岡田無双”状態だった。満を持して20年6月、話題の商業施設、新風館に出店。コロナショックが直撃したが、京都店はグローブスペックス23年の歴史のなかで単店の月間売り上げ最高を記録し、初年度は予算比20%増で着地した。京都店には、フランスの「アン・バレンタイン(ANNE ET VALENTIN)」や「ザビエル・デローム(XAVIER DEROME)」など、カラフルで突飛なデザインのフレームが並ぶ。今回の取材で「京都では派手な眼鏡が売れる」という話を何度も耳にしたが、新風館に近い三条の眼鏡店オーグリラコンテ(1986年創業)でも、近未来的でユニークな立体造形の「ファクトリー900(FACTORY900)」を壁一面にディスプレーしていた。出汁(だし)文化で知られる京都だが、実は「天下一品」などこってり味のラーメンを好む一面もあり、それは眼鏡も同様のようだ。

 グローブスペックス 京都店では、グローバルな接客にも注目したい。帰国子女の岡田社長にはニューヨークでの勤務経験もあり、英語も堪能だ。京都店出店にあたっては、海外で修行中の息子、雄さんを帰国させ店長代理とした。岡田店長代理は、アメリカで最も期待される次世代のデザイナーを表彰する「CFDA/ヴォーグ ファッション・ファンド・アワード」のファイナリストとなったアーレム・マナイ・プラット(Ahlem Manai Platt)のブランド「アーレム(AHLEM)」や、ビンテージフレームを修理してブランド展開する「ザ・スペクタクル(THE SPECTACLE)」のジェイ・オーウェンズ(Jay Owens)の元で学んだ眼鏡界のサラブレッドだ。岡田店長代理も岡田社長も、アメリカで眼鏡店を経営するために必要な技術資格「オプティシャン」を持つ。その意味では、インバウンドが消滅した今、グローブスペックス 京都店は本来のポテンシャルを発揮できていないとも言える。新風館のエースホテルが本格稼働して訪日外国人客が押し寄せた際には、外国語が飛び交うインターナショナルな眼鏡店として、さらにブーストがかかるはずだ。

若手を育てて世界へ、京都ならではの旦那衆文化が実を結ぶ

 新風館から徒歩5分の場所には、京都で27年間眼鏡ビジネスを続けるグラッシーズが運営するG.B.ガファス京都がある。社長の竹中太一さんは京都市中京区の出身で、1994年、京都・北山に同店の前身であるグラッシーズを開店した。90年代後半から2000年代初頭の関西では、クラブで眼鏡のイベントやファッションショーが行われるなど“アイウエアバブル”が起きたが、G.B.ガファスはそれをけん引したショップだ。当時、同店のオリジナルフレームを手掛けていたのが、いまや日本の眼鏡ブランドの代表格となった「イエローズプラス(YELLOWS PLUS)」の山岸稔明デザイナーや、「スペックエスパス(SPEC ESPACE)」の山岸誉デザイナーだった。2001年に福井県で創業した「イエローズプラス」は、特にヨーロッパで高い人気を誇り、フランスで75店舗、全世界で550店舗が販売する国際的ブランドに成長した。その山岸デザイナーに「自分のブランドをはじめなさい」と、背中を押したのが竹中社長だ。京都の旦那衆の姿そのままに若手デザイナーの育成に励んだ竹中社長は、デザイナーとの信頼関係によって鯖江産の別注モデルを次々と実現し、商品の差別化を図っている。

個性派の眼鏡を、どっしりローカルに根差した接客で売る

 京都・北白川で創業し、30周年を迎えたイアラ マーケティング スペシャリティズ(柳島邦門社長)のオブジェは、東京と大阪でも店舗を運営する。柳島社長は90年代、まだ無名だった「オリバーピープルズ」を最も売った男として業界で知られており、“今売れる眼鏡”と“これから売れる眼鏡”をセレクトして客のニーズに応えてきた。現在は、息子である柳島崇志オブジェ・大阪店長が父親譲りの審美眼で海外買い付けを行っている。店内には、銅を使った香港の新進ブランド「リガーズ(RIGARDS)」や、フレームの表面を燃やすという斬新な製法を持つドイツブランド「クボラム(KUBORAUM)」など、個性派の商品が並ぶ。その一方で、「トム フォード アイウエア(TOM FORD EYEWEAR)」といった“鉄板”人気のブランドも扱い、幅広い層を満足させている。ゆるやかに代替わりしながらも変わらない、地元客の“かゆい所に手を届かせる”接客術もあってのことだ。

 このように京都の眼鏡業界は、東京からの進出組と、約30年続くローカル店が入り混じった構図となっている。それぞれがそれぞれのスタンスで、すみ分けしながら共存しているのが特徴だ。ここ十数年、アイウエアの流行は“東京から地方へ”だった。しかし振り返ってみれば、DCブランドの眼鏡が巷にあふれた80年代を経て、ローカル眼鏡店が刺激的なアイテムを求めて海外買い付けを行い、90年代に日本全国で同時多発的にアイウエアブームが花開いた過去があり、その中心にはいつも京都があった。京都が再び眼鏡で活性化し、京都発信のトレンドが東京や海外に波及する日も近いかもしれない。

藤井たかの(ふじい・たかの)/眼鏡ライター:1976年、大阪府生まれ。大学卒業後、編集プロダクション勤務などを経てフリーランスに。年間1000本以上の眼鏡に触れ、国内外の見本市や工場、商品紹介などのアイウエア記事を担当する。自身のユーチューブチャンネル「メガネ流行通信」でも、世界の眼鏡トレンドやデザイナーインタビューなどを配信中。著書に「ヴィンテージ・アイウェア・スタイル 1920's-1990's」(グラフィック社)がある

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元「アウラアイラ」川島幸美が新ブランド立ち上げ “地球環境に貢献すること”をミッションに

 元「アウラアイラ(AULA AILA)」デザイナーの川島幸美は、D2Cブランド「リン(WRINN)」を2020年11月に立ち上げた。オークが生産・販売する。自社ECサイトを主販路に、全国29カ所の卸先で受注販売している。

 川島デザイナーは、「アウラアイラ」を19年の10月に退任。「約6年前パリで展示会をしていたころから、気候危機とファッションの関連性を認識し、MDを前提に大量生産するモノ作りの方向性に違いを感じていた。それでも学生時代はデザイナーになることが夢で、ファッションが好きな気持ちでここまで進んできた。自分にできることは、サステナブルなファッションの選択肢を増やし、一人でも多くの人に考えるきっかけを提供することだと思った」と話す。

 昨年6月には、オーガニックコットン製のワンマイルウエアセットを販売し、収益の一部をWWFに寄付した。アイテムは即日完売の好評を博し、ワンマイルウエアをさらに“テンマイルウエア”に発展させる形で、11月に「リン」を本格始動させた。

 「リン」は、「持続可能なファッションを通して地球の自然環境に貢献すること」をミッションに掲げる。ブランド名は「Wastes(ごみを出さない)」「Recycle(資源を無駄にしない)」「Improve(生産者の生活環境を改善する)」「Nature(土壌を守る)」「No more animals(動物の毛皮を使用しない)」という「リン」のモノ作りの軸となる5つのキーワードの頭文字を並べた。

 アイテムは、カットソートップス(8000〜2万5000円)、ブラウス(1万6000〜3万円)、ボトムス(1万8000〜4万円)、ワンピース(2〜4万円)、アウター(3〜8万円)など。素材はオーガニックコットンやリネン、麻などの天然繊維とリサイクル素材を積極的に採用している。オーガニックコットンは、「GOTS認証」取得のものや透明性を担保する豊島の“トゥルーコットン”などのほか、インドの綿花農家の支援を行う「ピース バイ ピース コットンプロジェクト」のコットンを使用し、原料生産者の生活改善に貢献する。

 川島デザイナーは「自分を大切にしたい、愛したいというマインドが確実に広がっている。ライフスタイルを見直して、無理のない生活や解放感、癒やしを求める気持ちに寄り添いたい」といい、着心地の良さを重視したアイテムに加えて、20-21年秋冬シーズンはファッションで個性を表現したい女性たちのためにスパイスを効かせたアイテムも提案していく。

 余剰在庫を削減するためにセールは行わないなど、サステナブルなモノ作りを追求しながらも、現実的な難しさも感じているという。「立ち上げ時はリサイクル素材100%で作りたかったが、生地の選択肢があまりにも少ないことに驚いた。特に秋冬はリサイクルカシミア以外のリサイクル素材がなかった。小規模ブランドにとって、現在のテキスタイルの供給状況は非常に厳しい。以前はカット賃がかかるために、生地を余分にオーダーしていたが、『リン』ではコストがかかっても増産しないことを徹底している。無駄を出さない視点で見直すべき商習慣がたくさんある。今後は工場の余った生地を活用したり、再生素材の選択肢を広げるために働きかけたりしていきたい」と話す。

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生地の専門家に聞くサステナビリティ(下) 環境に優しいテキスタイルを選ぶ10のポイント

 アパレルメーカーがサステナビリティなモノづくりへシフトするとき、最初にぶつかる課題がテキスタイルの選び方だ。そもそも何がサステナブルなのか、何を選んだらよいのか悩ましい。そこでテキスタイルのプロである梶原加奈子カジハラデザインスタジオ代表に、テキスタイルとサステナビリティの関係について、基本の考え方と最新事情を2回に分けて聞いた。後半はサステナブルなテキスタイルを選ぶ10のポイントの具体例について。

 

WWDJAPAN(以下、WWD):インタビュー前半でお伺いした「サステナブルなテキスタイルを選ぶ10のポイント」について具体例を教えてください。

梶原加奈子カジハラデザインスタジオ代表(以下、梶原):まず①「製品からのリサイクル循環システム」は、廃棄素材からのアップサイクルを指します。ポリエステル素材の循環が先行していますが、ここにきてコットン製の古着や木材パルプ、農業廃棄物、さらに段ボールなどから誕生する画期的なセルロース繊維が登場しています。「リフィブラ(REFIBRA)」「スピノバ(SPINNOVA)」「インフィナ(INFINNA)」などがそう。本格的な製品化はこれからですが、期待しています。ステイホーム時代では宅配用段ボールの需要が増えるでしょうから、段ボールから再生した繊維は夢がありますよね。羽毛の再利用を進める「グリーン ダウン プロジェクト(Green Down Project)」にも注目しています。

 ②「長く使える素材を開発する」は、機能性、防汚性、耐久性、修繕の促進を意味します。服のリペアシステムはもっと発展すべきだと考えます。③「リネン、ヘンプ、ペーパーヤーン」は、生育が早く、環境負荷がない素材群です。夏は涼しく冬は暖かく、抗菌性もある。特にペーパーヤーンは日本が古来使っている歴史があり、風合いも良いので、注目しています。日本の王子ファイバー、キュアテックス、備後撚糸などが展開しています。

WWD:技術革新がサステナブルな素材の広がりを進めているようですね。④「生分解性素材の開発」はその最たる例です。

梶原:はい、土に還る素材を指し、様々な企業が開発に取り組んでいます。例えば石灰石を原料にした新素材「ライメックス(LIMEX)」で知られるスタートアップ企業の子会社のバイオワークスは特殊な添加剤を加えて、ポリ乳酸の弱点である熱に強い糸を開発していますし、老舗のニット糸商社の三山は従来のポリエステルに比べ強度や耐熱性に優れていて、染色後の加工が可能な製品を開発しています。⑤「人工レザー」も先端技術と密接です。話題のマッシュルームレザーを始め、合皮の開発のことですね。写真は日本のウルトラファブリックス(ULTRAFABRICS、旧第一化成)のものでインディゴや炭を入れた合皮です。⑥「リサイクルコットン・ナイロン」は、コットンについては落ち綿、ガラ紡のリサイクル。ナイロンは漁網からのリサイクルした日本のリファインバース社の「リアミド(REAMIDE)」など海洋汚染の解決の一助となる素材が登場しています。

WWD:技術だけじゃない。サステナブルは「視点」「考え方」も重要です。

梶原:そうですね。⑦「ノンミュールジングウール」は、動物福祉を意識したときに選びたい素材ですが、羊の現状はもっと多くの人に知って欲しいと思っています。⑧「オーガニックコットン・ウール」についてはトレーサビリティーを重視しています。無農薬かどうかはもちろんですが、遺伝子組み替えの有無、有機綿か否か、農業や羊の飼育環境などを確認します。

 ⑨「水を使わないプリント」は、水質汚染をしないという理由から選びました。転写プリント、未染色、無水染色の開発などの方法があります。それと連動するのが⑩「草木染め」は、ご存じの通り天然染料を活用した環境に優しい染め方で岐阜の染工場、木曽川染絨の取り組みなどに注目しています。

アパレルはどこからサステナビリティ・シフトを始める?

WWD:アパレルメーカーはサステナビリティ・シフトをどこから始めたらよいでしょう?

梶原:いきなり出口の話になりますが、サステナビリティは「どうお客様に伝えるか」が大事です。何を作るかの前に、接客でどんな話をするかをイメージすることをお勧めします。その上で私は始め方について、6つのポイントがあると思います。①素材の背景を意識し、把握すること②無駄を出さない作り方や運営を考える③リサイクル素材、リサイクル企画の導入④土に還る素材や服飾資材の活用を推進⑤育成の良い素材を積極的に活用⑥水や電気使用を減らす技術に注目をする、です。
最新のテキスタイル開発は、理想段階のものも多数あり市場に降りてくるのはタイミング待ちです。だから新しいことだけではなく、長く製品を使う意識、長く使える製品を開発することも大事。キーワードはバランス。環境と経済活動のバランスをとりながら消費者に丁寧に伝えることが大切です。

WWD:出口の話は「オンワード クローゼット ストア(ONWARD CROSSET STORE)」のアドバイザーとして店頭で実践していますね。

梶原:「オンワード クローゼット ストア」では、“リライフカスタイマイズ”をテーマに、リサイクルやリペア&メンテナンス、カスタマイズなど含めたパーソナルケア型セレクトスタイルを発信しています。

WWD:①素材の背景を意識し、把握すること、と関連しますがこれまでのアパレルのモノづくりにはない知識が求められるから背景を知ることは重要です。

梶原:そうですね。認証ひとつにしても100%正しいか、正義かと言うかそうではない部分もあります。でも選択するにはまずは知らないと。知識は重要です。同時に私はやはり最後はデザインの力だとも思っています。

WWD:梶原さんは常々アートもチェックしていますがそれも関係していますか?

梶原:サステナビリティは明確な答えや定義がまだありません。だからこそ、最先端の開発コンセプトはアートとなりやすく、実験もアート的立ち位置から生まれます。生地の発想、きっかけもアートから生まれることも多いので、サステイナブルアートは常にリサーチしています。菌類を使ったデザインで知られるイタリア人、マウリツィオ・モンタルティ(Maurizio Montalti)や、2011年のミラノサローネで照明を発表して話題になったジョナータ・ガット(Gionata Gatto)とジョヴァンニ・インネラ(Giovanni Innella)の動きにも注目しています。

2020年春夏のテキスタイル市場のトレンド

WWD:最後に2020年春夏のテキスタイル市場の動向は?

梶原:テキスタイルデザインの全体傾向はナチュラル感です。オーガンジー系の薄地で透明感があり軽量なもの。細かなムラ感、シワ感があるもの。使い古したようなヴィンテージ感がある素材。スポーティーだけどエレガントなメッシュ、チュールは人気ですねナイロンも薄地で細デニール糸が主流です。デジタル社会の中で視覚的な発信に反応が集まりやすくなっており、視覚的効果が高いプリントや光沢感、特にシルバー素材のニーズが増えています。

 サステナビリティが先行した欧米ブランドを見ると2022年春夏では「サステナビリティは大事だがそれ以上に面白いものに立ち戻る」という姿勢が顕著です。「面白い生地があったらどんどん送って」というリクエストがあり、エモーショナルで刺激的なデザインが数多く出てきそうです。また新型コロナ境に販売先が中国に大きく振れており、中国が評価するもの、視覚的にもわかりやすいものが目立ちます。


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人気D2Cジュエリー「アルティーダ ウード」が合成ダイヤモンドを採用 ブライダルに可能性

 サザビーリーグが運営するジュエリーのD2Cブランド「アルティーダ ウード(ARTIDA OUD)」が合成ダイヤモンド(ラボグロウンダイヤモンド)を使用したジュエリーをローンチすると発表した。同ブランドのコンセプトは、“ありのままの姿が放つきらめき”。一つ一つ違う天然石の美しさを生かしたジュエリーを販売している。オンライン販売が中心なので、中間コストを可能な限り取り除き手に取りやすい価格で提供しており、着実にファンを増やしている。同ブランドが取り扱うのは色石がほとんどだが、ブライダルではダイヤモンドを使用したリングなどをカスタムメードで提供している。最近、合成ダイヤモンドを使用し始めるジュエリーブランドが増加しつつあるが、天然石にこだわる「アルティーダ ウード」がなぜ合成ダイヤモンドを採用するのか、同ブランドを率いる安部真理子サザビーリーグ営業統括ECブランド事業部ディレクター&デザイナーに話を聞いた。

WWD:合成ダイヤモンドを使用してみようと思ったきっかけは?

安部真理子サザビーリーグ営業統括ECブランド事業部ディレクター&デザイナー(以下、安部):1年半くらい前から考え始めた。というのも、合成ダイヤモンドの組成は天然ダイヤモンドと全く同じ。美しさも同じで価格は、天然の約3分1というので使ってみたいと思った。環境問題などに対する意識の高い若い顧客たちからの声もあり、天然と合成の選択肢を与えるのもありだと考えた。

WWD:「アルティーダ ウード」というと石の個性を生かしたジュエリーで合成のイメージはないが?

安部:確かにそうだが、天然ダイヤモンド=紛争といったイメージを持つ人も多く、ブライダルリングに関しても、そこにこだわるという意見もあるため、チャンスだと思った。特に若い消費者は天然であることに価値を感じず、環境に優しいものに対して価値を感じる人が多い。ブライダルでは求めやすい価格帯の5つのグレードのダイヤモンドを用意しており、価格は税込で11万〜24万円程度。合成ダイヤモンドを使用すれば、天然だと24万円のグレードのものが鑑定書付きで11万円程度で提供できる。だから、各消費者の予算やこだわりにより天然か合成か選べるようにできればと思う。

WWD:合成ダイヤモンドの調達は?

安部:日本の業者から調達する。日本でも合成ダイヤモンドを製造する会社が増えているようなので、もしかしたら、ゆくゆくは合成ダイヤモンドが一般的になってくるかもしれないと思う。色が付けられる点も利点で、希少性が高く一般の消費者には手の届かないカラーダイヤモンドも作ることができる。

WWD:合成ダイヤモンドを使用したラインはブライダルだけか?

安部:まずはブライダルからスタートし、合成ダイヤモンドとリサイクルメタルを使用したラインなどに拡大できればと思っている。

WWD:コロナ禍の業績は?

安部:1~5月の売上高は前年比50%増でオンラインが好調だ。ブランド立ち上げ3周年を迎えた4月に限定ジュエリー数百点を発売したところ1日で完売した。昨年に東京・渋谷松濤にオープンした多目的スペースの「ジ アナザー ミュージアム(THE ANOTHER MUSEUM)」は、コロナの関係でイベント開催はできないが、毎月10日アポイントメント性で運営をしており、予算を達成している。

WWD:売れ筋商材は?

安部:コロナ前と変わらず、リングとピアスが好調。また、パールの売り上げも伸びている。エンゲージメントリングに関しては、3~4本購入し、重ね付けを楽しむ顧客もいる。また、インドに学校を建てるチャリティープログラムの「アイ アム ドネーション」プロジェクトのチョーカーの人気が高まっている。

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生地の専門家に聞くサステナビリティ(上) 環境に優しい素材ってそもそも何?

 アパレルメーカーがサステナビリティなモノづくりへシフトするとき、最初にぶつかる課題がテキスタイルの選び方だ。そもそも何がサステナブルなのか、何を選んだらよいのか悩ましい。そこでテキスタイルのプロである梶原加奈子カジハラデザインスタジオ代表に、テキスタイルとサステナビリティの関係について、基本の考え方と最新事情を2回に分けて聞いた。前半は市場動向について。世界と日本のマーケットは環境配慮型素材へどれほどシフトしているのだろうか?

WWDJAPAN(以下、WWD):テキスタイル市場全体傾向としてサステナビリティ・シフトは進んでいますか?

梶原加奈子カジハラデザインスタジオ代表(以下、梶原):新型コロナのパンデミック以降、日本市場が急速にサステナビリティにシフトしてきたと、日頃の仕事を通して感じています。私は欧米のラグジュアリーブランドに日本のテキスタイルを紹介する仕事をしていますが、彼らはコロナ以前からサステナビリティへシフトし始め、GOTS認証など認証された日本の素材が求められる状況でした。特にケリング傘下のブランドは熱心でした。パリの大型素材見本市「プルミエール・ヴィジョン(PREMIERE VISION)」も19年春夏からサステナビリティ素材の発信に力を入れており、フランス市場の意識の高さが展示会にも影響していましたね。その流れで海外向けに販売している日本の繊維メーカーは2018年頃からサステナビリティを積極的に学び、生地開発に生かしてきました。

 アメリカは産業側より一般社会の方が動きが早く、環境問題をディスカッションする世論が企業を動かしたように思います。商談中も企業人としてより個人的な思いからサステナビリティを熱く語る人が多かった印象です。紙ストローへの切り替えも米国が早かったですよね。

WWD:コロナ以前の日本の業界のムードは?

梶原:日本の小売りやアパレルからは、ネガティブな見方が多かったですね。サステナブル素材の価格が高いことへの懸念や直接的に売り上げにつながるかの不安感、消費者がまだ理解していない、求められていないといった声が多く聞かれました。主に日本向けに開発している会社は、サステナビリティについて前向きではなく、少し遠い出来事のような雰囲気でした。

WWD:それがコロナで変わったと。

梶原:はい。新型コロナウイルス感染症の拡大によって各国が外出自粛制限をおこない、経済活動が停滞したコロナ禍では、環境改善に関するさまざまな報告が世界中から発信されました。その影響が大きかったと思います。NASAは、人工衛星による大気汚染の観測結果を発表し、中国湖北省武漢市が封鎖された後は、中国での大気汚染物質の二酸化窒素の濃度が低下したことや、大気汚染が深刻なインド北部ではエアロゾルが減少したことが伝えられました。

 大気汚染問題が深刻なロサンゼルスでも、今まで見えなかった景色が見えると話題になりましたよね。ロックダウンで可視化された環境改善を通して、人間の活動が自然環境に大きな影響を与えており、サステナビリティを考えていく必要が現実にあることを実感した人が多いと思います。社会が積極的に考え始めたことに伴い、企業が行動し、小売りやアパレルも動き始めました。

コロナを機に日本市場が動き出した

WWD:日本の繊維メーカーにはどのような動きが見られますか?

梶原:ほとんどの繊維メーカーがサステナビリティの考え方を開発に反映し始めています。特にサステイナブルなコンセプトがある糸、後加工の工程や溶剤での工夫が進んでいます。また、移動に伴う二酸化炭素排出・大気汚染の改善策として地産地消への意識が前向きです。日本で作る、産地の近場で作るなど、物を大きく動かさない方法を考えることもよく話題になります。

 同時に廃棄物を減らす意識が高まっています。無駄を作らない、残っているものを活用でする方法を積極的に考える企業が増えています。私は「ジャパン・テキスタイル・コンテスト(JAPAN TEXTILE CONTEST)」というテキスタイルコンペの審査員長を務めていますが、2020年のコンテストでは、サステナビリティを意識した素材の応募が増えました。開発の方向性として、サステナビリティを学び、方法を選んで企画する人が産地でも増えていると思います。

WWD:そもそも“サステナビリティな素材”とは何でしょう?

梶原:多面的な視点で考えると判断は難しい。環境のためにと考えても、別の方向から見れば資源を無駄にしている矛盾が常にあります。そのため、現時点で私は“サステナビリティを考える”という姿勢でいます。言い切れるものはないけれど、地球の未来のために考え、学び、挑戦をしていくべきだと思うからです。人間活動と自然の共存バランスを考えて、 100%の答えがなくても行動してみる事が大事です。

WWD:梶原さんは生地開発の仕事もしていますが、ご自身が開発する際に心がけていることは?

梶原:トレーサビリティの意識です。トレーサビリティとは、原材料の調達から生産、そして消費または廃棄まで追跡可能な状態にすること。私たちがどのルート、方法で素材を作っていくのか。事実を知って方法を選んでいくことを強化しています。納期や価格やロットなどの条件と照らし合わせると、一番良い方法を採用できないときもあります。でも、できる事を考え、少しの側面でもサステナビリティの要素を取り入れるバランスを大切にしています。

テキスタイルを選ぶ際の10のポイント

WWD:テキスタイルを選ぶ際はどんな点をチェックしますか?

梶原:私が注目している順番は次の通りです。

①製品からのリサイクル循環システム
②長く使える素材の開発
③リネン、ヘンプ、ペーパーヤーン
④生分解性素材の開発
⑤人工レザーの開発
⑥リサイクルコットン&ナイロン
⑦ノンミュールジングウール
⑧オーガニックコットン・ウールのトレーサビリティー
⑨水を使わないプリント
⑩環境に優しい草木染め

WWD:ありがとうございます。次回はこの点を詳しくお伺いします。


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京都が眼鏡で激アツ!? コロナ禍に開店したグローブスペックスは歴代の月間単店売り上げ最高を記録!

 “京都が眼鏡で活性化している!”として、5月26日に新業態「ジ・アイヴァン」を祇園にオープンしたアイヴァン(東京)の山本典之社長や、その京都で約30年眼鏡ビジネスを続ける「オブジェ」の柳島邦門イアラ マーケティング スペシャリティズ社長、「G.B.ガファス」「デコラ」の2業態を擁する竹中太一グラッシーズ社長のインタビューを掲載してきた。最後は2020年6月、エースホテルの上陸で話題となった商業施設、新風館に出店したグローブスペックス(東京)の岡田哲哉社長に話を聞く。

WWD:「グローブスペックス 京都店」にとっては、コロナショックが直撃した1年だった。

岡田哲哉グローブスペックス社長(以下、岡田):確かにその通りなのだが、京都店はグローブスペックス23年の歴史のなかで、月間の単店売り上げで過去最高を記録した。

WWD:勝因は?

岡田:20年1月にNHKで放送された「世界はほしいモノにあふれてる」に、僕が取り上げられたことが大きい。フランスへの買い付けの様子が再放送を含めてこれまで4回放送され、そのたびに大きな反響を得ている。再放送は京都店オープンの直前にもあり、行列ができ、入店まで2時間待ちとなることもあった。密にならぬよう入店制限も行った。行列は20年秋まで続き、結果としてインバウンドは失ったが、国内需要が伸びた。

WWD:コロナ前のグローブスペックスのインバウンド比率は?

岡田:約2割。イタリア・ミラノで開催される世界最大の国際眼鏡展「ミド(MIDO)」が、優秀なアイウエアショップに与える「ベストア・アワード」を17年、18年と2年連続で受賞させてもらい、それに伴い多くの海外メディアにも取り上げられ、東京・渋谷、代官山の店舗には外国人客も多く訪れていた。

WWD:京都店の初年度売上目標は達成できた?

岡田:特にオープン当初の3カ月が予算を大きく上回り、通年でも20%増で着地した。

WWD:来店客の構成は?

岡田:世代は20~50代と幅広く、男女比は半々ほど。

WWD:世界中から1年がかりで集めたというアンティークで構成された店内は“岡田ワールド”そのもので、新風館の話題性とも相まって観光地のように客が訪れている。

岡田:1926年に京都中央電話局として竣工された新風館の特徴を生かすため、建物と同じ100年ほど前の家具や装飾品をアメリカやヨーロッパから買い付けた。そこに、ほんの少し和の要素を加えているのがポイントだ。

WWD:京都店の成功はある程度予想していた?

岡田:いや、当初関西圏でのグローブスペックスの認知度は分からず、またかなりマニアックなラインアップのため、苦戦するかもしれないと思っていた。しかしそれは杞憂で、東は名古屋から西は広島まで多くの方が来店してくれている。驚いたのは、「関西に出店してくれてありがとう」と感謝されることだ。初来店時の期待度が東京より高いのが京都店のお客さまの特徴で、その期待に応えられると、次は友人や家族を連れてリピーターになってくれる。

WWD:コロナが収束してエースホテルが本格稼働すれば、インバウンド客を中心とした第2ブーストにも期待できるはずだ。

岡田:そのために外国語を話すスタッフを育成中だ。また、海外で眼鏡修行をさせていた息子を予定を早めて呼び戻し、京都店の店長代理とした。

WWD:京都店の売れ筋は?

岡田:京都の人には、“お洒落だが派手なものを好まず、シンプルで上質なものを長く使う”イメージがあった。そのため、アンティークフレームのような美しさを持つドイツブランドの「ルノア(LUNOR)」や「ゲルノット・リンドナー(GERNOT LINDNER)」を並べたが、蓋を開けてみると東京でもあまり動かないようなカラフルで突飛なデザインの眼鏡が売れた。

WWD:困難な状況下でECを始めた企業も多い。グローブスペックスは?

岡田:その意味では、むしろ逆を行っているかもしれない。僕は月に1度、京都店に立っているが、土日は朝から晩まで予約で埋まってしまうほど盛況だ。眼鏡は顔の中心に載せるアイテムで、良し悪しを自分では判断しづらい面がある。お客さまは自分の好みを理解して、見立てを行うコンシェルジュを必要としている。また、EC先進国であるアメリカでも、眼鏡は伸び悩んでいるというデータがある。そこには医療器具ならではの壁があると思う。

WWD:他エリアからの進出組が、京都でビジネスを継続的に成功させるのは難しいとも言われる。また、京都には30年近くビジネスを続ける専門店もある。

岡田:他店を意識することはない。出店地選びで大切なのは、グローブスペックスと相性がいいかどうかだ。京都は世界トップクラスの観光地であり、長い歴史がありながらも新しいものを巧みに取り入れている。京都の方のこだわりの強さも、当社にとっては追い風になった。

WWD:今後も京都のように、発信力の高い都市への出店を検討している?

岡田:可能性はもちろんある。詳細は差し控えるが、海外でもグローブスペックスに合いそうな街はいくつもある。ただし、店舗数を増やすことには意味を感じておらず、僕が求めるサービスのあり方を実現したい。

WWD:眼鏡ビジネスにおいて最も大事なことは?

岡田:楽しい“ファッションアイテムとしての眼鏡”と、視力補正など“機能としての眼鏡”、両輪のクオリティーを落とさないことだ。“デザインが良ければ、多少見えなくてもいい”とは誰も思わず、“よく見えれば、見た目は一切問わない”という人もいない。

藤井たかの(ふじい・たかの)/眼鏡ライター:1976年、大阪府生まれ。大学卒業後、編集プロダクション勤務などを経てフリーランスに。年間1000本以上の眼鏡に触れ、国内外の見本市や工場、商品紹介などのアイウエア記事を担当する。自身のユーチューブチャンネル「メガネ流行通信」でも、世界の眼鏡トレンドやデザイナーインタビューなどを配信中。著書に「ヴィンテージ・アイウェア・スタイル 1920's-1990's」(グラフィック社)がある

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ユナイテッドアローズ出身の大御所2人が新会社設立 「僕らに不満をぶつけに来てほしい」

 ユナイテッドアローズ(以下、UA)の“名物”社員の1人であった中尾浩規氏が同社を退社し、6月15日付けで新会社ユノマス(HUMANOS)を立ち上げた。栗野宏文ユナイテッドアローズ上級顧問をアドバイザーに迎えこれまでUAで扱ってきたインポート4ブランドのエージェント業務を中心に人材発掘やコンサルティングなど経験とネットワークを生かした事業を行う。業界で広く名前を知られる大御所2人は何を目指すのか。代々木にオープンしたまっさらな事務所で話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):取り扱いブランドは?

中尾浩規ユノマス社長(以下、中尾):ヨーロッパのブランドが中心で、イタリアからは「ラファエッレ カ ルーゾ(RAFFALE CARUSO)」、コモのネックウェア「フラテッリ ルイージ(FRATELLI LUIGI)」、ニットブランド「サラ(SALA)」。フランスからは白シャツだけの「ブリエンヌ パリ ディス(BOURRIENNE PARIS Ⅹ)」。いずれもエージェント業務で、ディストリビューターではありません。

WWD: UAで扱ってきたブランドですね。

中尾:そうです。いずれのブランドもUAで扱いながらビームスなど他社にもつなげてきたので仕事内容に変わりはありません。UAとは今後も業務委託を続けます。外からかかわることでより濃く、太い仕事ができると思います。

栗野宏文ユマノス アドバイザー(以下、栗野):ユマノスはイスパニア語で“人”を表します。ユマノスが何の会社かと聞かれれば「問題解決会社」。中尾さんは工場や生地屋、僕はデザイナーやメディアなどとのつながりが深い。それらを生かしたモノづくり、ネットワーキング、エデュケーションなどを通じて日本と世界の人々の生活を豊かにすることがミッションです。たとえるなら僕らはバンドのベースとドラム。そこにいろいろなギターやボーカル、パーカッションに入ってもらってセッションを行う感覚です。

中尾:展示会には服を見るだけではなく不満をぶつけに来てほしい。不満はすなわち改善ポイントですから。

WWD:日本の、特にメンズのセレクトショップの市場はこれまで、イタリアを始めとする生産地のファクトリーブランドを買い付けるだけでなく、そこに日本市場のニーズを反映したアレンジを加えることでブランド、市場ともに成長させてきました。

中尾:そうですね。私で言えば、イショナルが英国の「グレンフェル(GRENFELL)」を買収したときに担当し、日本市場を意識した企画をピッティ・イマージネ・ウオモに出したら他の国からも好評で、そのころから海外メーカーに対する日本独自企画をセレクトショップに提案する取り引きを始めました。八木通商では「マッキントッシュ(MACKINTOSH)」の再生事業に携わり、そのころからイタリアのファクトリーブランドとのモノづくりには深く関わっています。

栗野:日本の雑誌と小売りはレベルが高い。セレクトショップには毎日お客さんが来店し改善点を要求してくる。袖がもうちょっと長い方がいい、とかね。それを日々聞いて作り手にフィードバックしてゆく。そういった意味でセレクトショップという業態は服を売ることに関してベストとは言わないけれど、相当ベターな業態だと思います。

ただ、人とファッションの関わり方は激変期にあり、進化した日本のお客さんはアレンジだけでは満足しません。アウトドアやスポーツ回りの商材が売れているのは、命にかかわる商品であり機能が進化し続けないといけないから。お客さんはその進化に慣れてしまっている。お客さんはアレンジではなくいいメロディーを聞きたい、もしくはまったく新しい歌を聞きたいと思っている。セレクトショップが期待されていることはそこだと思う。その中にあって中尾さんはアレンジではない本質的な提案ができる人。歌で言えば作曲ができる人です。

「気づき」の力を磨くは服をたくさん着るしかない

WWD:中尾さんから見て日本のファッションカルチャーのおもしろさとは?

中尾:「気づき」があるところです。海外での会話はノーかイエスかだけど、ノーとイエスの間の「気づき」を楽しむのは日本独特だと思います。その「気づき」を普通に取り入れればまだまだ面白いモノづくりができる。暑い日に求める前に水を出してもらえると嬉しいのと同じですね。

WWD:「気づき」の力を磨くには?

中尾:現地・現物が基本。「着る」しかありません。モノが生まれる場所や店、現地に行って触って着る。不都合に気が付けば改善しようとする。トラックに乗れなければトラック運転手が務まらないと同じです。目的はシンプルに「お客さんのためになるモノづくり」です。例えば先日UAから発売した「デサント(DESCENTE)」と「ラム(HLAM)」の協業ラインがそう。あれはアレンジではない。根強いファンが多かった「ラム」のデザイナーのクリエイションとデザインの機能性をドッキングしたものを作ろうと提案し実現しました。お客さんは特殊なモノは求めていないんです。

WWD:これからやってみたいことは?

中尾: 日本でのモノづくりをやってみたい。日本の縫製工場、生地屋さんはヨーロッパのそれとだいぶ体制が違う。イタリアはナポリら出たとがない人たちの商品が世界に出て行ったように、もっと世界に出ていい。このままだと技術があるのになくなってしまう。実際、脱却しようとしている人たちが出てきている。

WWD:栗野さんの周囲には若手クリエイターが大勢いますね。栗野さんがつなぎたい、と思う若手はどんなクリエイターですか?

栗野:昨年から今年にかけてZOOMでつながれることから今だかつてないほど多くの審査員を引き受けましたからネタは相当たまっています(笑)。クリエイターに求めるのはユマノスの基本精神でもある利他心です。他責や「前例がない」という姿勢では前に進めない。最近のLVMHプライズの受賞者を見ても全員利他的です。誰かの幸せを望み、誰かの幸せの為に行動することが、結局は自らの幸福や利益につながる、という考え方です。利他心は健全なビジネスの根幹にあると思うから。

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「ミッソーニ」家長女が語る クリエイティブ・ディレクターを辞めた理由

 5月に「ミッソーニ(MISSONI)」のクリエイティブ・ディレクターを退任したアンジェラ・ミッソーニ(Angela Missoni)にメールインタビューを行った。以下はその一問一答。

――まず「ミッソーニ」のクリエイティブ・ディレクター退任の理由は?

アンジェラ・ミッソーニ=ミッソーニ社プレジデント(以下、アンジェラ):ミッソーニ社の中にも最近はいろいろ変化がありました。しかし今回の私の退任はコロナ・パンデミックがきっかけです。私自身の24年間のクリエイティブ・ディレクター人生を振り返り、休む間もなく仕事第一の生活で、プライベートでは、ずいぶんやり残した事が多くあったのを、このパンデミックの中で気付かされました。父オッタヴィオとともにミッソーニの創業者であった私の母ロジータも、ある時、「もう十分にやり切ったわ。これからは、セカンドライフを楽しむわ」と「ミッソーニ」を私に託し、自分のやりたい「ミッソーニ ホーム」に集中しました。私も人生の中で、まだやりたい事、刺激的だと感じる事や興味のある事もたくさんあるし、人生での私のプライオリティであるファミリーや友人たちともっとゆっくり時間を過ごし、セカンドライフを楽しみたいと思ったのです。

――「ミッソーニ」はあなたにとってどういうブランドですか?

アンジェラ:「ミッソーニ」は私の両親によって北イタリアの小さな町スミラゴで1953年に創設されました。巨大なブランドではありませんが、芸術作品と言ってもいいような、アーティザナルな存在です。世界のラグジュアリーブランドと肩を並べる唯一無二の存在です。またラグジュアリーブランドの中でも、常に先駆的でした。その成功のきっかけは1967年にフィレンツェのピッティ・ウオモで発表した「ヌードルック」です。それ以来、あっという間に世界中で愛されるイタリアンブランドになりました。常にファッション界のイノベーターであり続けました。私もそのファミリーの一員であり、クリエイティブ・ディレクターを24年間務めきった事は、私の誇りであり、喜びでした。

――今後、あなたは「ミッソーニ」においてどんな役割を担っていきますか?

アンジェラ:私のミッソーニ社でのタイトルは、プレジデントです。申し添えておけばミッソーニ家はミッソーニ社の株式の58.8%(残りはFSIというミラノ本拠のファンド)を保有しています。「ミッソーニ」は、上場していないファミリーブランドなのです。今後はあらゆる観点から喜んでアドバイスもしますし、手助けもします。例えば、ミッソーニの一番最近のコラボはアメリカの「パーム エンジェルス(PALM ANGELS)」とのものです。今夏商品が発表になったばかりです。すでに「パーム エンジェルス」は2018年の「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」というコラボプロジェクトでも大成功を収めていますが、そのリーダーであるフランチェスコ・ラガッツィ(Francesco Ragazzi)は、私のライフ・パートナーであるブルーノ・ラガッツィの甥っ子です。今回のコラボでまたファミリーの輪が広がったと思っています。

――24年間のクリエイティブ・ディレクターライフの中で、最も印象的なことはなんですか?

アンジェラ:最も印象的なことと聞かれても、私にとってはたとえ小さなイベントやショーでも、どれも大切で懐かしい思い出ですが、2003年のブランド創設50周年のイベントは、両親のオッタから受け継いだミッソーニ・スピリットを再現、継承できたという証として一つのエポックメーキングなショーだったと思います。

――日本でも、50周年のショーが代々木体育館で行われて、私も拝見しましたが、白い実験着風のガウンを着たスタッフがフィナーレに登場して、感動的だったのを覚えています。

アンジェラ:あれは将来デザイナーを目指す学生たちも含めて数千人を招待した大規模なショーでしたが、今でも鮮明に覚えています。日本は、「ミッソーニ」にとっては特別な存在です。父も母も、私も日本の伝統や文化に深く魅せられています。さらにインスピレーション源にもなっています。「ミッソーニ」はそもそもイタリアのラグジュアリーブランドで日本に本格進出した最初のブランドですから。

――後任のアルベルト・カリーリ(Arberto Caliri)はどんな人物ですか?

アンジェラ:アルベルトは15年以上私の下で私の右腕として一緒にクリエーションをして来たので、忠実に「ミッソーニ」ブランドを継承してくれると確信しています。今一番ふさわしい人物です。

――ミッソーニ社のCEOであるリヴィオ・プローリ(Livio Proli)についてはどうお考えですか?

アンジェラ:彼はとても優秀なオーガナイザーだと思っています。

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京都が眼鏡で激アツ!? 今年5月、祇園に出店したアイヴァンの新業態は「単店で勝機あり!」

 “京都が眼鏡で活性化!”として、現地で約30年眼鏡ビジネスを続ける2社の社長インタビューを掲載してきた。ここからは、その京都に進出する2社のトップに話を聞く。まずは全国に28店舗を運営するアイヴァン(東京)の山本典之社長だ。

WWD:オリジナルブランドの「アイヴァン(EYEVAN)」「アイヴァン7285」「10アイヴァン」「アイヴォル(EYEVOL)」のみで構成する新業態「ジ・アイヴァン」を5月26日、祇園にオープンした。

山本典之アイヴァン社長(以下、山本):主力ブランドの「アイヴァン」は3月に、旗艦店を東京・青山の骨董通りにオープンした。また骨董通りには、その「アイヴァン」から派生した「アイヴァン 7285」やサングラスブランドの「アイヴォル」の単独店舗もある。骨董通りにドミナント出店する一方で、全ブランドを集約したショップは不動産的にも東京では実現が難しいと感じていた。世界に向けて発信する際、代替都市は京都しか考えられず、2年ほど前から構想していた。

WWD:京都市によると2020年の外国人宿泊客数(日本在住の外国人も含む)は、前年比88.2%減の45万人だった。特にインバウンド消滅の影響が大きい京都、それも祇園を選んだ理由は?

山本:20年夏に訪れた、高級時計ブランド「ウブロ(HUBLOT)」の祇園ブティックでの体験がヒントになった。祇園のメインストリートである花見小路通もコロナの影響で人影はほぼなく、ことインバウンドは皆無だった。そんな中でも「ウブロ」には、京都で食事や観光をし、さらに「ウブロ」を買うことを一つのイベントとして捉える国内富裕層がいた。それを見て、インバウンドに頼らなくとも売り上げが立つと直感した。祇園には、ほかに高級カメラメーカーの「ライカ(LEICA)」の店舗があり、かつては「エルメス(HERMES)」の期間限定ショップもあった。京都・祇園という特別な場所で眼鏡を買う喜びが、ブランドの付加価値につながればと思う。

WWD:コロナは開店日にも影響した?

山本:いや、予定通りだった。「ジ・アイヴァン京都祇園」の内装はインテリアデザイナーの森田恭通さんに依頼したのだが、元の店舗である「マスターレシピ(MASTER RECIPE)」(フランフラン)も森田さんによるもので、そのため改装が最小限で済み、コストも抑えられた。

WWD:長い歴史を持つ京都では、“新参者の商売は難しい”と言われる。

山本:15年に、京都の中心地である河原町のファッションビル、京都バルに「アイヴァン リュクス」を出店した際にも言われた言葉だ。けれどコロナ前の19年には、年間売り上げ1億円を超えるまでに成長した。顧客の6~7割が京都の方で、そのほかに近県からも来店がある。この成功体験が祇園出店の原動力ともなった。アイヴァン リュクスの顧客は20〜30代が中心なので、今度はより大人に向けた店をつくりたかった。それが、ジ・アイヴァン京都祇園だ。

WWD:ジ・アイヴァン京都祇園は、単に広告ではない?

山本:もちろん違う。単店でも勝機を感じており、実際、初月売り上げは目標値に対して10%増だった。京都を含む関西圏の方に多く購入いただいている。彼らは車文化の中にあり、そのために“駐車場裏”とも言える立地をむしろ歓迎したほどだ(笑)。

WWD:ひと癖もふた癖もある京都で、どのように眼鏡ビジネスを続けていく?

山本:当社の商品は決して安くない。だから良いものを作って発信し、共感いただく。そしてファンとなってもらい、そのコミュニティーを大切にしていくしかない。当たり前のことを丁寧に、長く続けていきたい。祇園店のオープンに際して1688年創業の西陣織の老舗、細尾と協業して眼鏡ケースを作ったが、今後も京都に根付くさまざまなカルチャーとコラボレーションしていけたらと思う。

藤井たかの(ふじい・たかの)/眼鏡ライター:1976年、大阪府生まれ。大学卒業後、編集プロダクション勤務などを経てフリーランスに。年間1000本以上の眼鏡に触れ、国内外の見本市や工場、商品紹介などのアイウエア記事を担当する。自身のユーチューブチャンネル「メガネ流行通信」でも、世界の眼鏡トレンドやデザイナーインタビューなどを配信中。著書に「ヴィンテージ・アイウェア・スタイル 1920's-1990's」(グラフィック社)がある

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BLACKPINKのLISAとファッション 「ANDAM賞」審査員に挑戦した理由からビンテージショッピングまで

 フランス国立モード芸術開発協会が主催する2021年「ANDAMファッション・アワード(ANDAM Fashion Award以下、ANDAM賞)」のグランプリにビアンカ・サンダース(Bianca Saunders)が選ばれた。ファイナリストには「ゲーエムベーハー(GMBH)」「ウェールズ ボナー(WALES BONNER)」「エリア(AREA)」「ロク(ROKH)」「ルドヴィック デ サン サーナン(LUDOVIC DE SAINT SERNIN)」「カサブランカ(CASABLANCA)」が残っていた。

 「ANDAM賞」はマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)、ジェレミー・スコット(Jeremy Scott)、クリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)らを輩出した若手の登竜門。今年は特にBLACKPINKのLISAが審査員に加わったことで大きな注目を集めた。

 LISAのほか、中国の歌手クリス・リー(Chris Lee)やカービー・ジーン・レイモンド(Kerby Jean-Raymond)「パイヤー モス(PYER MOSS)」デザイナー、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)前「セリーヌ(CELINE)」クリエイティブ・ディレクターも審査員に招聘。審査員長を務めたセドリック・シャルビ(Cedric Charbit)=バレンシアガ社長兼最高経営責任者(CEO)はその理由について「審査員はさまざまな分野から構成されており、今日のクリエイティビティーを多面的に表す面々だ。これからを担う才能の発掘に、大きく役立つ」と明かしている。

 米「WWD」は、審査を終えたLISAに独占インタビューし、「ANDAM賞」の審査員を引き受けた理由や評価基準、パリとファッションへの情熱などについて聞いた。

WWD:「ANDAM賞」の審査員になることを同意したのはなぜ?

LISA:まず、今年の「ANDAM賞」に参加することができてとてもうれしく、光栄に思います。審査員の招待が届いたときはすごく驚きました。私はファッションの世界に入ったばかりだったので、最初は自分にとってかなり勇気のいるチャレンジになると思いました。でも同時に、エキサイティングな経験ができそうですし、この機会にたくさんのことが学べると思いオファーを受けました。

WWD:ファイナリストを決めるのは難しかった?候補者たちと彼らのビジョンのどこが一番の決め手となった?

LISA:本当に難しくて、選ぶのに何時間もかかりました!ポートフォリオを見るだけでは決断できなくて、最終的にアーティスト全員のSNSを見て決めました。アーティストそれぞれの作品のスタイルと特徴が全く違ったので、それぞれのブランドの特徴や世界観を理解することができました。自分の視野が広がる体験だったと思います。

WWD:評価は服とデザインによるものか、それとも価格やストーリー性を重視したか?

LISA:まず全体像をつかんで、それからデザインを細かく見ました。審査員一人一人にそれぞれの評価基準があったのだろうと思います。私はシンガー、そしてエンターテイナーとしての視点から評価しました。私はカジュアルな場では楽に着ることができて、さらにステージのパフォーマンスに適した服が大好きです。なのでステージにすぐ立てるような、自分のニーズを満たしてくれるブランドを選びました。

WWD:ポップカルチャーにおいて、若手ファッションデザイナーの役割は何だと思う?

LISA:ファッションとカルチャーは時間とともに常に変化しています。若手デザイナーの役割は、その世代のファッションとカルチャーをたくさん経験して理解し、今の時代に融合させることだと思います。今の時代はすでに有名で才能あるデザイナーがたくさんいますが、将来のファッション業界を担う若いデザイナーを評価し、サポートすべきだと思います。

WWD:LISAさんにとって、パリでの一番思い出深い出来事とその理由を教えて。

LISA:アイ・ラブ・パリ!初めて訪れたときからパリに心奪われました。そして訪れるたびにもっと好きになっています。「セリーヌ」のイベントでパリに来た時、ワークショップを訪れて職人の仕事ぶりを見る機会に恵まれました。細かくデリケートなタッチで職人が刺しゅうするのを見ました。それに、幸いなことにエディ(・スリマン、Hedi Slimane)と一緒に写真を撮ることができました。とても有意義な時間でした。

WWD:ファッションセンスは以前からあったもの?それとも時間をかけて学んだもの?

LISA:子どものころから服を着て遊ぶのが大好きでした。2019年にパリ・ファッション・ウイークに参加したことでファッションに対する興味が大きくなったと思います。ファッションはとても魅力的で楽しいものです。

WWD:BLACKPINKのスタイルを言葉で表現すると?そしてそのスタイルにどう対応している?

LISA:BLACKPINKのスタイルは私のスタイルとすごく似ています。というより、私そのものです。だから「BLACKPINKらしく見せるにはどうしたらいい?」と思ったり心配したりしたことは一度もありません。私たちBLACKPINKはスタイリストととても仲が良くて、コンセプトとスタイルについてたくさん話します。いろんなスタイルを試して何が私たちに合うのか、多くのアイデアを共有しているんです。

WWD:ファッションにおいて好きな時代、デザイナー、ブランド、スタイルアイコン、映画、写真は?その理由も教えて。

LISA:映画「ミッドナイト・イン・パリ(Midnight in Paris)」で主役が訪れる時代のファッションが大好きです。インターネットでビンテージのアクセサリーと服をよく探しています。

WWD:「セリーヌ」のような世界的ブランドとの関係やスタイリストとの仕事を通じて学んだことは?

LISA:私は歴史のあるグローバルブランドを尊敬しています。何よりも、エディが「セリーヌ」を受け継いで、大胆な変化をもたらしたことに一番感銘を受けました。「セリーヌ」のスタイルを若返らせ、新鮮かつファッション初心者でも挑戦しやすくメゾンをアップデートしたと思います。

WWD:普段の生活とパフォーマンスするときの服はどう違う?

LISA:普段は着やすい服と靴を着ていて、靴は大体テニスシューズを選びます。ステージでは曲と合った服が好きです。特に派手で大胆な服が好き。

WWD:スニーカーやバッグ、ファッションで何か集めているものはある?

LISA:限定品か、レアアイテムです。

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歌手からフェムテック起業家に 信近エリが開発した吸水ショーツ&吸水ブラの「リネ」

 シンガーソングライターとして活動してきた信近エリがフェムテックブランド「リネ(RINE)」を立ち上げた。新たな生理用品として注目されるナプキンやタンポンなしで着用可能な吸水ショーツに加え、授乳期の女性が母乳パッドを使用せずに着用できる吸水ブラレット(ノンワイヤーのブラジャー)を開発。着心地にこだわっているほか、環境に配慮した素材使い、ビジュアルは“シェアしたくなる“イメージを追求している。歌手として活動する傍ら、飲食店のマーケティングを経験するなど、異色バックグラウンドを持つ信近に、ブランドを始めたきっかけや、商品作りや資金調達での道のりを尋ねた。

WWDJAPAN(以下、WWD):これまでどのような活動をしてきたのか?

信近エリ・ネイト代表取締役(以下、信近):19歳でソニーミュージックからデビューし、エイベックスなどにレーベルは変わりながらも、シンガーソングライターとして活動を続けてきました。2017年にはスイーツ店の企画から携わり、SNSを活用したマーケティングや海外へのフランチャイズ展開も担当し、ビジネス目線のクリエイティブに興味を持ちました。

WWD:フェムテックとの出合いは?

信近:生理日が管理できるアプリの「ルナルナ」などを使ってきいましたが、“フェムテック“として意識して触れたのは吸水ショーツが最初でした。1年半前に存在を知り、オンラインで購入。最初はナプキンを付けなくていいことだけでとても快適で満足していたのですが、多くのブランドを試す中でもっと「普段の日と変わらないはき心地の吸水ショーツがあったらいいな」と思うようになりました。

試作品は46型!
はき心地や品質を“変態的に追求”

WWD:商品作りのこだわりは?

信近:これまで試してきた吸水ショーツは、はき心地や品質に改善の余地があると思うことがあり、これは“誰かが変態的に追求する必要がある“と約1年前に自分で作ってみることを決めました。はき心地の面では、ショーツのそけい部は圧迫してむくみ、赤みや黒ずみが気になるところなので、デリケートな部分を避けながら、お腹が冷えないような深めのカッティングをミリ単位で調整しています。また給水量の高さも「リネ」の強みです。本当は3月末に商品をリリースしたかったのですが、その直前で優秀な吸水素材が発表されて、そちらを採用するために発売を2カ月延期して6月になりました。そのおかげで、フルタイプは約110mLの経血を受け止めることができます。試作品は計46型も作っていて、妥協せず、満足いくショーツができました。さらに下着が上下でチグハグしないよう、吸水機能のないブラレットも一緒に提案しています。

WWD:授乳期の乳漏れに対応するブラレットも開発している。きっかけは?

信近:吸水量を上げるために、さまざまなナプキンを購入して構造を調べていました。そのリサーチ時に母乳パッドの存在を知り、使用する友人に話を聞くと、ズレたり、ムレたりと使い心地の悪さを感じでいること分かったんです。ネットで検索してみても吸水ブラジャーは出てこず、ニッチだけれど、必要としている人がいるのであれば作りたいと思いました。授乳中の友人ベースに試着してもらい、頂いた意見をもとに改善しています。出産祝いとなると、赤ちゃんに向けた商品が多いので、このブラレットを新しい出産祝いとしても広げていけたらと思っています。8月に発売予定です。

WWD:環境に配慮した素材も採用している。

信近:まずはオーガニックコットンを考えましたが、通気性、速乾吸収、機能性を考えると難しい素材。リサーチしていると、機能性にも環境面も優れたテンセルに出合いました。テンセルは木材を原料とし、吸水速乾性、抗菌防臭機能、伸縮性にも優れているといい、生分解性で土に還る素材です。ただテンセルではなく、防水素材は化学繊維を使用していて、細かいことを考えれば完全にサステナブルではありません。しかし、生理ナプキンの使用量を減らすことはできると思います。私たちは吸水ショーツを普及するべきだと考えました。

“吸水ショーツといえば”という
ブランドに成長させたい

WWD:ブランド名の由来は?

信近:生まれ変わりを意味する輪廻(りんね)からとっていますが、海外だと発音が難しいので“リネ“にしました。

WWD:5000万円の資金調達を行ったが、意識したことは?

信近:工場が決まり、ある程度商品を制作できる目処がついてから事業計画を作ってピッチに進みました。投資家には男性の方が多いので、生理やナプキンの説明から徹底して資料に織り込みました。

WWD:フェムテック市場の成長をどう見ている?

信近:認知度の高まりを感じていますが、実際に使用している人はそう多くない。吸水ショーツは「漏れそう」「洗うのがめんどくさそう」と踏み出せない人もいる。一つの選択肢として、もっと女性にとって身近なものになるように、使い方を発信していくことが必要だと思います。

WWD:「リネ」の今後の目標や計画は?

信近:“吸水ショーツといえば”というようなブランドに成長させていきたい。一緒に面白いお取り組みができたら、ポップアップやコラボレーションも考えたいですし、卸ももしご縁があれば検討したいです。また起業を経験し、いつか女性のビジネスコミュニティを作りたいと思うようになりました。資金がないからと、やりたいことを諦めてしまうのはもったいない。世の中のニーズに合わせて、事業計画を立てて協力を得られれば新しいビジネスを立ち上げることができるはず。一生懸命なだけじゃダメで、数字と成功できるイメージをきちんと提示することも大事。もっと多くの方にビジネスを身近に考えて欲しいですね。

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京都が眼鏡で激アツ!?  「G.B.ガファス」はローカルとしてローカル向けに商売

 京都が眼鏡で一躍、活性化していることは前回伝えた通りだ。第2弾は京都で27年、眼鏡ビジネスを続け、京都・東京・大阪・神戸で「G.B.ガファス」や「デコラ」を6店舗運営するグラッシーズの竹中太一社長に話を聞く。

WWD:2020年6月に、東京・渋谷と代官山に店舗を構えるグローブスペックス(東京、岡田哲哉社長)がエースホテルの上陸で話題となった商業施設、新風館にオープンし、21年5月には全国に28店舗を運営するアイヴァン(東京、山本典之社長)が新業態の「ジ・アイヴァン」を祇園に出店した。受け止めについて聞きたい。

竹中太一グラッシーズ社長(以下、竹中):京都はコロナ前、世界中のツーリストの行きたい都市であり、大きくクローズアップされた。実際、外国人旅行者も多かった。それゆえ、そこにビジネスチャンスを感じ、出店する流れは分かる。一方でわれわれのように、ローカルがローカル向けに行う眼鏡ビジネスもある。現在、G.B.ガファス京都のある中京区は僕の出生地であり、河原町や三条に比べたら人出は少ないが、そこには僕なりの物語がある。京都の人は豆腐ならあそこ、草履ならあそこ、とどこで何を買うかを代々受け継いでいる。この街では「100年くらいは老舗じゃない」がリアルで、当社も27年かけてようやく認知されてきた。「京都人は裏表がある」とも言われるが、隣同士が数百年単位で暮らしているからいさかいを起こしたくない。だから本音を押し殺す。それが指摘の理由だろう。人の出入りが激しい東京や大阪と違い、“変えるをしない”が信条になっている。コミュニティーの歴史が古く、ある意味で完結しているから、外から入ってきたものに厳しい一面もある。「京都(と名古屋)で商売が成功したら、どこでも成功する」なんて言葉もあるくらいだ。

WWD:コロナショックによるインバウンド消滅の影響は?

竹中:大阪の2店舗にはコロナ前、訪日外国人客の姿も見られたが、京都店の売り上げにおけるインバウンド比率は多かった時でも3%ほどで、影響はほぼない。

WWD:とはいえ、未曽有の状況下で何か対策は?

竹中:ここでも、慌てて“変えるをしない”だ。イタリア・ミラノで開催される世界最大の国際眼鏡展「ミド(MIDO)」や、フランス・パリの国際眼鏡展「シルモ(SILMO)」で、実際に新作を見て買い付けることはできなくなったが、定番アイテムを仕入れ・販売している。

WWD:“京都”というキーワードは、眼鏡ビジネスにおいてアドバンテージとなっている?京都と眼鏡の親和性について聞きたい。

竹中:商売を始めた27年前、当社は半分ほどをオリジナルアイテムで構成していた(現在は2割ほど)。そのため、足しげく眼鏡作りの本場でもある鯖江(福井県)に通った。京都-鯖江間は車で2時間半ほど、かつては“鯖街道”と呼ばれ、日本海で採れた鯖など海の幸を都に届けるルートだった。鯖江に出入りする中で、「イエローズプラス(YELLOWS PLUS)」の山岸稔明君や「エイチフュージョン(H-FUSION)」の山岸誉君、「ステディ(STEADY)の金子昌嗣君など、鯖江出身の若手デザイナーを発掘・応援することもできた。

WWD:東京・大阪・神戸にも出店するが、京都の間で品ぞろえや戦略に違いはある?

竹中:当社には「デコラ」という別業態があり、2業態間でカラーの違いを出している。G.B.ガファスは“トレンド”重視型で中心価格帯は4万~5万円、客層は30~40代。一方、デコラのキーワードは“ラグジュアリー”で中心価格帯7万~8万円、客層は50~60代だ。

WWD:G.B.ガファスの売れ筋アイテムを教えてほしい。

竹中:アセテートタイプならウエリントン、メタルタイプならラウンドの細型が人気だ。そこに旬のブランドや、アセテートをセルロイドに替えるなどの素材提案でG.B.ガファスらしさを出している。また、別注色も強化しており人気だ。

WWD:20年3月にはECをスタートした。

竹中:おかげさまで手応えを感じている。リモート販売の場合、「受け取り後は必ず近くの眼鏡店へ」と伝えている。全国津々浦々、どこの眼鏡店でも調整はほぼ無料なので。

WWD:眼鏡ビジネスにおいて最も大事なことは?

竹中:ぶれないこと。ここでも“変えるをしない”だ。京都で長く商売を続ける店にはそれぞれのスタイルがあり、他店をまねる必要がない。 

WWD:次の27年をどう迎える?

竹中:現スタッフの中から後継者が出て、ビジネスを承継してくれたらと思う。そして、27年後も店を続けていてほしい。そのためには、ゆるやかながらも確実な成長が必要だ。

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