沖縄コスメLIST.1 「琉白(ルハク)」 有機県産素材を用いた本格処方のオーガニックコスメ

県内外で定評のある“沖縄コスメブランド”を紹介する企画の第1弾。初回で取り上げるブランドは、県産素材を採用しているのはもちろんのこと、高品質なオーガニックコスメでもある「琉白(RUHAKU)」だ。ブランドについて今泉小百合「琉白」ブランドマネージャーに取材した。

――:「琉白」を開発したきっかけは、ブランド創業者のパートナーの肌荒れが原因だと聞きました。

今泉小百合「琉白」ブランドマネージャー(以下、今泉):おっしゃる通りで、創業者のパートナーがホルモンバラスの乱れなどから、ひどい肌荒れに悩んでいた時に、出張で訪れた沖縄の離島で、月桃畑を営んでいるご夫妻とたまたま出会いまして。その時に「肌荒れには月桃が効く」と、ご夫妻から手渡された月桃ローションを試したところ、肌荒れがみるみる回復したという出来事がありました。その肌効果に驚き、感銘を受けた創業者が、月桃を軸に据えたエイジングケアを開発することを決め、そして「琉白」が誕生しました。

――:沖縄では以前から月桃に抗菌効果があるとして、月桃の葉でお餅を包むなど活用されていますが、実際に科学的見地から肌荒れへの効果が実証されたそうですね。

今泉:はい。琉球大学農学部の多和田先生にご協力いただき、抗菌作用や抗酸化作用が確認できています。加えて、2022年には富山大学医学薬学研究部の久米先生との共同研究において、月桃に含まれている“カルダモニン”という成分に炎症因子の量を抑制する作用も認められました。

――:民間療法として活用されていた月桃がエビデンスで実証されたのは、月桃農家の人たちにとってもうれしいニュースになりますね。ところで、「琉白」に配合されている月桃は、どこで採取されているのですか?

今泉:本島から海中道路でつながっている浜比嘉島で採取しています。月桃は沖縄のあちこちで自生していますが、提携している月桃事業者「日本月桃」は2002年から有機JASを取得していることから、ブランド創業時からこちらの月桃を採用させていただいています。月桃は肌荒れ予防のほか、エイジングケアも期待できることから、「琉白」の全ての商品に配合しています。

――:月桃のほかにも県産素材をたくさん採用されていますよね。

今泉:はい。トーンアップや引き締め効果には、シークヮーサーのエキスを採用していまして、こちらは国頭村本部町にある「たからのやま農園」のシークヮーサーになります。柑橘類を安定的に育てるためには農薬を散布することが一般的ですが、こちらの農園も有機JAS認定を取得されているため、採用させていただきました。

また、化粧水やシートマスクの保湿成分として海ぶどうから抽出したエッセンスを配合しています。海ぶどうは恩納村漁業協同組合から仕入れていますが、こちらの組合は高品質な養殖もずくやアーサを確保するために、サンゴの植え付けなど、積極的にサンゴ礁保全活動にも取り組んでいらっしゃる組合です。

頭皮や髪の保湿のために採用しているのはハイビスカスローゼルで、こちらは南城市にある沖縄長正薬草本社から仕入れています。無農薬にこだわって薬草・ハーブを栽培している農産者で、ハイビスカスローゼルは発売したばかりの新作ヘアケアシリーズに配合しています。

これらの素材のほか、海洋深層水やクチャ、ノニ、タマヌオイルなど、県産原料を積極的に採用させていただいています。

――:沖縄の美容成分をギュッと濃縮したような商品ばかりですよね。それと同時に、「琉白」はオーガニックであることにも尽力していますよね。

今泉:はい。弊社は2008年に、工場としては日本で初めてオーガニック認証を取得しているため、月桃ローションもオーガニック認定を受けています。月桃農家からいただいた月桃ローションそのものをお客さまに届けたい、という創業者の思いから、月桃ローションはもちろん、ほかの商品も余計なものは入れないレシピになっています。

――:では、今後、ブランドとしてはどのような展開を考えていらっしゃいますか?

今泉:沖縄にはリゾートホテルが次々と誕生しておりますので、美しい沖縄の自然を守っていけるサステナブルなホテルのアメニティーとして存在感をアピールしていきたいと考えています。そして、沖縄で「琉白」を知っていただいたお客さまが、沖縄旅行からお戻りになった後も琉白をお使いになることで、沖縄の記憶を思い出しながら幸せな気持ちで日頃のお手入れを楽しんでいただけたら、とそう思っています。

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YOSHIKIが凱旋帰国 会見で藤原ヒロシとの出会いや今後の展望を語る

イタリア・ミラノでの「メゾン ヨシキ パリ(MAISON YOSHIKI PARIS)」のデビューショーを終えたYOSHIKIが3月5日に日本で記者会見を行った。YOSHIKIは「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」のブラックスーツに胸元から赤いスカーフをのぞかせるスタイリングで登壇した。

会見冒頭でYOSHIKIは「世界でも有数のファッションの大舞台で自分のブランドがデビューできたことに感無量です」と感想を述べた。

「メゾン ヨシキ パリ」はミラノ・ファッション・ウイーク初日にショーを開催。デベロップメント・ディレクターを務めるクキ・ドゥ・サルヴェルトゥ(Kuki de Salvertes)やスタイリストのカーリーン・サーフ・ドゥ・ドゥズィール(Carlyne Cerf de Dudzeele)らといったパリを拠点とするチームで作り上げた37ルックを披露した。

「メゾン ヨシキ パリ」2024年秋冬コレクション

藤原ヒロシとは30年来の仲

コレクション発表後には「ヴォーグ(VOGUE)」を始めとする海外メディアが「メゾン ヨシキ パリ」のレビューを掲載。「圧巻のデビュー」といったポジティブな反応が寄られたことについては、「素晴らしいメンバーにチームに入っていただけたので、こういった結果が出せました」と振り返った。

また「ファッション業界では新人かもしれないが、音楽はどんなハイメゾンにも負けていない」と話し、今回のショーでは藤原ヒロシとの合作も含めた4曲を披露した。藤原ヒロシとYOSHIKIは30年来の友人だという。「僕が昨年『バカラ(BACCARAT)』との打ち合わせでパリに行った時に、偶然ヒロシさんもいらっしゃった。お互い似たような場所にいるのだからぜひ何かやりましょうと話し今回共同制作に至りました」といい、現在も新曲を共に製作中だと明かした。

今後のビジョンについて聞かれると、「引き続き、次のコレクションも準備中です。24時間以内にはまたパリに戻って打ち合わせをしていると思います。今はYOSHIKIはいったいどこに向かっているんだと思われるかもしれませんが、3年後にはこういうことだったんだと理解してもらえる気がします」と話した。

なお、同コレクションは、5月に公式サイトで予約販売予定。

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「クリニーク」創業家ドクターに聞く、シンプルスキンケアの哲学と次の研究分野

エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)傘下のスキンケアブランド「クリニーク(CLINIQUE)」は、1967年に米「ヴォーグ(VOGUE)」の対談で編集者のキャロル・フィリップス(Carol Phillips)が著名な皮膚科医だったノーマン・オラントラック(Norman Orentreich)博士に「美しい肌はつくりだすことができるか?」と問いかけ、その答えが「イエス」だったことをきっかけに翌年2人は共同で「クリニーク」を創業した。当時、皮膚科医が行う問診をヒントに独自の肌カウンセリングを開発。肌本来の健やかさを引き出すシンプルケアを提唱した。

現在も皮膚科学に基づくスキンケアと徹底したアレルギーテスト、100%無香料のポリシーを貫いている。今年1月には、フェイスラインの肌の緩みにアプローチするエイジングケアクリーム“スマート リペア アップ クリーム”(50mL、1万3200円)を発売した。「クリニーク」が初めてエイジングケア商品を発売したのは77年まで遡る。40年以上にわたり肌の老化について皮膚科学、皮膚生理学観点から研究を重ね、現在は11人の皮膚科医、63人の調合化学者、8人の臨床医、10人の科学者の専門家チームが低刺激で誰でも安心して使えるエイジングケア商品を提案している。共同創業者のノーマン・オラントラック博士の息子であり「クリニーク」顧問皮膚科医のデビット・オラントラック(David Orentreich)博士とジャネット・パルド(Janet Pardo)「クリニーク」製品開発 シニア ヴァイス プレジデントに、ブランド哲学や注力する研究分野について聞いた。

ブランドの心臓は
“3ステップスキンケア”

WWD:「クリニーク」は「美しい肌は作りだすことができる」とうたっている。そのスキンケア哲学は?

ジャネット・パルド「クリニーク」製品開発 シニア ヴァイス プレジデント(以下、パルド):「クリニーク」が誕生する以前から、オラントラック博士は皮膚科を受診する患者に対して3ステップのスキンケアを推奨していた歴史がある。シンプルな3ステップスキンケアがブランドの心臓であり魂だ。ステップ1でソープを使って汗や皮脂の汚れをきれいに落とし、ステップ2で角質をケアするふき取り化粧水をコットンにたっぷり含ませ拭き取り洗顔では落とし切れない古い角質を取り除く。最後のステップ3で肌に必要な潤いを乳液が補う。「クリニーク」では10種類以上のソープ、6種類のローション、2種類の乳液からスキンタイプに合ったものを選ぶことができる。皮膚を健全な状態にして、その上にスキンケア化粧品を付けることでその機能をより効果的に発揮させることができる。

デビット・オラントラック博士(以下、オラントラック):例えば、皮脂や古い角質などの汚れを洗い流さず、スキンケアもしていない状態で日焼け止めを塗ってもそれは機能しない。肌に不要なものを取り除いて潤いを与えた肌の上に塗るからこそ日焼け止めも機能を発揮する。皮膚科医であった父が3ステップスキンケアを推奨するようになったのは、患者の肌を観察して肌のトラブルがなぜ起こるかを理解したためだ。皮膚は実はとても活発で汗や皮脂を出したりするわけだが、表皮で何が起こり、ニキビやくすみができるのか。これらの問題にアプローチする成分としてサリチル酸が皮膚科では治療に使われていた。サリチル酸は炎症を防ぎ、微生物の繁殖を防ぐのにも有効で、アレルギーの原因にもならず、単純な構造なので副作用もない。

パルド:コットン1枚を使って肌の上を覆っている“障害物”を取り除く簡単なステップだけで、どんなに効果があるかを感じることができる。ベーシックスキンケア商品は長い歴史があるが既存のお客さまだけでなく新しいお客さまも魅了し続けている。現代では大気汚染などの懸念もあり、朝晩拭き取りローションを使うことは非常に重要になっている。1度使うと手放せなくなる人が多い。

ニキビや色素沈着
日焼けケアの商品群も充実

WWD:「クリニーク」の愛用者の属性についてどのように分析している?

パルド:利用者調査や他のプレステージブランドやマスブランドとの比較はもちろん行っているが、「クリニーク」はあらゆる年齢層から支持があることが分かっている。われわれは全ての年齢層に対して、ニキビや色素沈着、日焼けなどさまざまな肌悩みに対して解決策をもたらす商品群を抱えている。使ってみて違いを感じた結果、母から子へ、あるいは友人間でそれが共有され、「クリニーク」の肌へのアプローチがミレニアル世代やそのもっと上の世代などあらゆる層から信頼を得ている。

WWD:消費者ニーズの変化は?

パルド:ブランドの長い歴史の中で、ニキビケアの分野から新しいカテゴリーを作ったり、日焼け後のケアを充実させたり、色素沈着の対応する商品群もブランド誕生時にはなかったものだ。妊娠をコントロールするピルを使うようになって色素沈着を起こす人が出てきたという経緯がある。シワに対するニーズも増えている。それにはレチノイド(レチノールをはじめとするビタミンAを指す総称)が有効で、レチノイドは皮膚病に対して医薬品として効能がある物質だが、それをより安全に使うための研究開発も行った。最近では、レーザー照射と複合成分の塗布を比較するような臨床研究の結果も発表している。このようにニーズに対応する形で商品カテゴリーを拡充してきた。

慢性的なアレルギーの研究に注力

WWD:現在、注力している研究分野は?

オラントラック:「クリニーク」は安全性を最も大事にするブランドだ。アレルギーに対するサイエンスを進展させることに常に関心を持ち続けている。アレルギー反応には、ダメージを起こす何かがその裏にあるということだ。体には免疫反応という大事なシステムがあって、有害な作用を起こそうとするバクテリアに対抗するために免疫機能である炎症が起きる。その炎症を抑えることは恩恵もあるけれど皮膚組織に対して何らかのダメージを与えることにもなる。今、われわれが考えているのは、長く続く慢性的なアレルギーと皮膚の老化には関係があるのではないかということだ。老化と炎症という2つの現象に共通性があるのではという仮定から何か知見を得て、スキンケアに使えることがあるのではいかという研究を行っている。アレルギーを持つ人は年々増えており、さらにアレルギーを慢性的に持つ人はそうではない人と比べて老化が早く進んでいる。

パルド:「クリニーク」は55年間にわたりアレルギーテストを行ってきた。そんなブランドはほかにそうあるものではないので、この分野はわれわれがやらなくてはいけないと考えている。「クリニーク」は安全性と最も大切にしているが、同時に効果との両立にも力を入れている。鏡を見て効果を実感できるけど、肌に優しく炎症が起きていない。これを追求することでお客さまの期待に応えていきたい。

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「クリニーク」創業家ドクターに聞く、シンプルスキンケアの哲学と次の研究分野

エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)傘下のスキンケアブランド「クリニーク(CLINIQUE)」は、1967年に米「ヴォーグ(VOGUE)」の対談で編集者のキャロル・フィリップス(Carol Phillips)が著名な皮膚科医だったノーマン・オラントラック(Norman Orentreich)博士に「美しい肌はつくりだすことができるか?」と問いかけ、その答えが「イエス」だったことをきっかけに翌年2人は共同で「クリニーク」を創業した。当時、皮膚科医が行う問診をヒントに独自の肌カウンセリングを開発。肌本来の健やかさを引き出すシンプルケアを提唱した。

現在も皮膚科学に基づくスキンケアと徹底したアレルギーテスト、100%無香料のポリシーを貫いている。今年1月には、フェイスラインの肌の緩みにアプローチするエイジングケアクリーム“スマート リペア アップ クリーム”(50mL、1万3200円)を発売した。「クリニーク」が初めてエイジングケア商品を発売したのは77年まで遡る。40年以上にわたり肌の老化について皮膚科学、皮膚生理学観点から研究を重ね、現在は11人の皮膚科医、63人の調合化学者、8人の臨床医、10人の科学者の専門家チームが低刺激で誰でも安心して使えるエイジングケア商品を提案している。共同創業者のノーマン・オラントラック博士の息子であり「クリニーク」顧問皮膚科医のデビット・オラントラック(David Orentreich)博士とジャネット・パルド(Janet Pardo)「クリニーク」製品開発 シニア ヴァイス プレジデントに、ブランド哲学や注力する研究分野について聞いた。

ブランドの心臓は
“3ステップスキンケア”

WWD:「クリニーク」は「美しい肌は作りだすことができる」とうたっている。そのスキンケア哲学は?

ジャネット・パルド「クリニーク」製品開発 シニア ヴァイス プレジデント(以下、パルド):「クリニーク」が誕生する以前から、オラントラック博士は皮膚科を受診する患者に対して3ステップのスキンケアを推奨していた歴史がある。シンプルな3ステップスキンケアがブランドの心臓であり魂だ。ステップ1でソープを使って汗や皮脂の汚れをきれいに落とし、ステップ2で角質をケアするふき取り化粧水をコットンにたっぷり含ませ拭き取り洗顔では落とし切れない古い角質を取り除く。最後のステップ3で肌に必要な潤いを乳液が補う。「クリニーク」では10種類以上のソープ、6種類のローション、2種類の乳液からスキンタイプに合ったものを選ぶことができる。皮膚を健全な状態にして、その上にスキンケア化粧品を付けることでその機能をより効果的に発揮させることができる。

デビット・オラントラック博士(以下、オラントラック):例えば、皮脂や古い角質などの汚れを洗い流さず、スキンケアもしていない状態で日焼け止めを塗ってもそれは機能しない。肌に不要なものを取り除いて潤いを与えた肌の上に塗るからこそ日焼け止めも機能を発揮する。皮膚科医であった父が3ステップスキンケアを推奨するようになったのは、患者の肌を観察して肌のトラブルがなぜ起こるかを理解したためだ。皮膚は実はとても活発で汗や皮脂を出したりするわけだが、表皮で何が起こり、ニキビやくすみができるのか。これらの問題にアプローチする成分としてサリチル酸が皮膚科では治療に使われていた。サリチル酸は炎症を防ぎ、微生物の繁殖を防ぐのにも有効で、アレルギーの原因にもならず、単純な構造なので副作用もない。

パルド:コットン1枚を使って肌の上を覆っている“障害物”を取り除く簡単なステップだけで、どんなに効果があるかを感じることができる。ベーシックスキンケア商品は長い歴史があるが既存のお客さまだけでなく新しいお客さまも魅了し続けている。現代では大気汚染などの懸念もあり、朝晩拭き取りローションを使うことは非常に重要になっている。1度使うと手放せなくなる人が多い。

ニキビや色素沈着
日焼けケアの商品群も充実

WWD:「クリニーク」の愛用者の属性についてどのように分析している?

パルド:利用者調査や他のプレステージブランドやマスブランドとの比較はもちろん行っているが、「クリニーク」はあらゆる年齢層から支持があることが分かっている。われわれは全ての年齢層に対して、ニキビや色素沈着、日焼けなどさまざまな肌悩みに対して解決策をもたらす商品群を抱えている。使ってみて違いを感じた結果、母から子へ、あるいは友人間でそれが共有され、「クリニーク」の肌へのアプローチがミレニアル世代やそのもっと上の世代などあらゆる層から信頼を得ている。

WWD:消費者ニーズの変化は?

パルド:ブランドの長い歴史の中で、ニキビケアの分野から新しいカテゴリーを作ったり、日焼け後のケアを充実させたり、色素沈着の対応する商品群もブランド誕生時にはなかったものだ。妊娠をコントロールするピルを使うようになって色素沈着を起こす人が出てきたという経緯がある。シワに対するニーズも増えている。それにはレチノイド(レチノールをはじめとするビタミンAを指す総称)が有効で、レチノイドは皮膚病に対して医薬品として効能がある物質だが、それをより安全に使うための研究開発も行った。最近では、レーザー照射と複合成分の塗布を比較するような臨床研究の結果も発表している。このようにニーズに対応する形で商品カテゴリーを拡充してきた。

慢性的なアレルギーの研究に注力

WWD:現在、注力している研究分野は?

オラントラック:「クリニーク」は安全性を最も大事にするブランドだ。アレルギーに対するサイエンスを進展させることに常に関心を持ち続けている。アレルギー反応には、ダメージを起こす何かがその裏にあるということだ。体には免疫反応という大事なシステムがあって、有害な作用を起こそうとするバクテリアに対抗するために免疫機能である炎症が起きる。その炎症を抑えることは恩恵もあるけれど皮膚組織に対して何らかのダメージを与えることにもなる。今、われわれが考えているのは、長く続く慢性的なアレルギーと皮膚の老化には関係があるのではないかということだ。老化と炎症という2つの現象に共通性があるのではという仮定から何か知見を得て、スキンケアに使えることがあるのではいかという研究を行っている。アレルギーを持つ人は年々増えており、さらにアレルギーを慢性的に持つ人はそうではない人と比べて老化が早く進んでいる。

パルド:「クリニーク」は55年間にわたりアレルギーテストを行ってきた。そんなブランドはほかにそうあるものではないので、この分野はわれわれがやらなくてはいけないと考えている。「クリニーク」は安全性と最も大切にしているが、同時に効果との両立にも力を入れている。鏡を見て効果を実感できるけど、肌に優しく炎症が起きていない。これを追求することでお客さまの期待に応えていきたい。

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3月1日に発売した「ジーユー」×「アンダーカバー」 グローバルブランド目指しモノ作り引き上げ

「ジーユー(GU)」は3月1日、「アンダーカバー(UNDERCOVER)」との第3弾となるコラボレーション商品を発売した。2021年4月、10月に発売した第1弾、第2弾のコラボと比べて発注量を増やしているといい、従来のようにフルラインアップは一部店舗のみでの販売とはせず、国内全店で全21型を販売。海外は香港、台湾と、米ニューヨークの長期ポップアップ店舗で取り扱う。「23年9月にニューヨークで商品本部を立ち上げており、グローバル化を模索している。モノ作りの完成度の引き上げを目指す中で、『アンダーカバー』に再度協業のお声掛けをした」と、ジーユーの原田幸介メンズMDは話す。コラボやニューヨークの商品本部について聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):21年に発売したコラボ第1弾、第2弾の売れ行きはどうだったのか。
原田幸介ジーユーグローバル商品本部グローバルMD部メンズMD(以下、原田):好調だった。今回、発注量を増やしているのもそれゆえだ。ウィメンズよりもメンズの反応が良かったため、第3弾は品番をメンズに絞り、サイズ展開によって女性客にも楽しんでいただけるようにした。袖が取れる仕様のライダースジャケットやショーツにもなるパンツなど、長い期間着られるようなアイテムが多いが、好みに合わせて着丈やスタイリングをカスタマイズでき、お客さまがワクワクするようなデザインを追求した。その結果、今すぐ着られて、初夏まで使えるデザインが中心になった。

WWD:ニューヨークに商品本部ができたことで、「ジーユー」のモノ作りは具体的にどのように変わりつつあるのか。
原田:これまではニューヨークでの市場リサーチも東京から出張ベースで行っていた。ニューヨークに商品本部ができたことで、常に現地の情報がキャッチアップできるようになった。また、フィッティングもニューヨークで行うことができ、現地のモデルでサイズ調整ができている。長期ポップアップで出店していることで、お客さまからのフィードバックも常に得られるようになった。

「世界で売れる1つの商品を作る」

WWD:日本での反応とニューヨークでの反応は、具体的にどんな点が異なるのか。
原田:例えば、日本ではオーバーサイズシルエットが好まれるが、ニューヨークでは“ボディーポジティブ”の考え方のもと、身体のラインをきれいに見せるサイジングやシルエットが好まれる。このところカーゴパンツは日米でヒットアイテムになっているが、それもわれわれの考えていた推しポイントとは異なる点が支持されている。われわれは、シルエットの太さやカーゴポケットの立体感を追求してきたが、ニューヨークのお客さまには裾のコードで着こなしを変えられる点などが評価されている。(国や地域ごとに展開するデザインを変えるのではなく)カーゴパンツのように、世界で売れる1つの商品を作っていきたい。

WWD:グローバルブランド化に向け、特にデザイナーコラボを強化するなどの予定はあるのか。
原田:コラボを特段増やすわけではなく、今後も「ジーユー」と親和性があり、お互いにメリットがある場合はコラボを考えていく。「アンダーカバー」との協業第4弾についても現時点では特に予定はない。

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「アルマーニ」初の日本人メイクアップアーティスト上田裕美が語る、ショーのバックステージと目指すイノベーション

PROFILE: 上田裕美/アルマーニ グローバル メイクアップ アーティスト

上田裕美/アルマーニ グローバル メイクアップ アーティスト
PROFILE: (うえだ・ひろみ)大阪府出身。1年間の英文学留学でロンドンに魅せられ、23歳でイギリスに移住する。バックステージからファッションショーを見て、自分の情熱は美容にあることに気づき、ウエストミンスター大学に入学。メイクアップの基礎を学び、著名なメイクアップアーティストであるアレックス・ボックス、ダイアン・ケンダル、ペトロス・ペトロヒロスなどのアシスタントを務めた。2015年、写真家のデイヴィッド・シムズとのコラボレーションの機会を得て、メンズファッション誌「アリーナ オム プラス」のエディトリアルを担当したのが最初の飛躍の瞬間となった。以来、国際的なメイクアップ アーティストとして世界のトップフォトグラファーとコラボレーションを続けている。作品は、イタリア、イギリス、フランスの「ヴォーグ」「i-D」「デイズド」「アナザー」「マスターマインド」などの雑誌に掲載されている

「アルマーニ ビューティ(ARMANI BEAUTY)」は1月、新グローバル メイクアップ アーティストに大阪府出身の上田裕美を任命した。上田メイクアップアーティストは今後、15年間にわたり同ポジションを務めたリンダ・カンテロ(Linda Cantello)の後任として、商品開発やキャンペーンビジュアルの制作に携わる。1月23日(パリ現地時間)に開かれた「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ(GIORGIO ARMANI PRIVE)」2024年春夏オートクチュール・コレクションでは、ペインティング風の華やかなメイクを披露した。

「アルマーニ プリヴェ」のメイクは
1920年代からインスパイア

WWD:今回の「アルマーニ プリヴェ」のショーでは、デザイナーとどのようなやりとりがあり、どのようなテーマでメイクアップを仕上げたか?

上田裕美アルマーニ グローバル メイクアップ アーティスト(以下、上田):コレクションの2週間程前に、デザイナーであるジョルジオ・アルマーニと彼のチームから一枚のレファレンスの写真が届いた。それに基づき、さまざまなリクエストに対応できるよう、多様なメイクデザインやカラーレファレンスの写真を集め、それらをムードボードにまとめ、5つの異なるバリエーションをスケッチし、最終的にプレゼンテーションブックに落とし込んだ。ショーの数日前にコレクションを初めて確認し、その後、最終的に数人のモデルにメイクを施しどのルックがベストかを決定した。今回のクチュールコレクションはとても表現豊かなので、よりぜいたくなメイクを試すことができた。コレクションの色を取り入れたペインティング風のアイメイクは、1920年代からのインスピレーションを取り入れている。 肌は自然なままに保ちつつ、メイクは服の華やかさを引き立てている。さまざまなテクスチャーを組み合わせることで、ランウェイ上で光と影を演出した。

WWD:グローバル メイクアップ アーティスト就任の経緯やブランドとのやりとりで印象に残っているエピソードは?

上田:昨年の7月から、コレクションでゲストメイクアップアーティストとしてランウェイのメイクを担当させていただいた。前々回の「プリヴェ」が私にとって初めてアルマーニ氏と共に取り組むプロジェクトだった。その中で彼の堅実な美意識と卓越したリーダーシップを目の当たりにし、彼のような人と一緒に仕事をすることをさらに望むようになった。

WWD:「アルマーニ」での仕事とほかのブランドとの仕事で感じる違いは?

上田:「アルマーニ ビューティ」は個々の自然な美を引き出すことを重視し、肌に負担をかけずに素晴らしい表現を実現している。ほかのブランドと比較して、「アルマーニ」の仕事は顧客の個性を際立たせ、自然な美を尊重するアプローチが特徴的だ。

幼いころから“色”に親しみ
カラーセラピーを独学で身につける

WWD:メイクアップアーティストを志したきっかけや原体験は?

上田:幼いころからモノ作りやスケッチは好きで、就学期もカラーセラピーを独学で習得するなど、さまざまな面で色に関わることに進んで取り組んでいたように思う。大学では全く違った分野であるドイツ文学を専攻したが、卒業論文では「日本とヨーロッパの色彩景観条例の歴史について」をテーマに研究を進め、気づけば色に関わることに携わっていた。その後、ロンドンに移住してから、ファッションの学生との交流を通じて私はメイクアップアーティストとしてのキャリアを志すようになった。

WWD:グローバルメイクアップブランドのメイクアップアーティストに日本人が就任するのは近年では珍しいニュースだ。過去のどんな体験が糧となったか。

上田:メイクの勉強を始めてアシスタント業に携わるようになったころ、本当に楽しくて大きな夢に向かって情熱を傾けた。目標は大きく漠然としていたが、日々の小さな一歩を踏みながら着実に前進していくことが重要だと感じている。また、自分自身の道を模索し、周囲の環境に流されず、自分のペースでキャリアを築くことも重要だ。

WWD:クリエイティブのインスピレーション源となっているものは?

上田:時間があるときは、美術館や展示会に足を運び、また旅に出てさまざまな場所を訪れ、異なる文化に触れることを楽しんでいる。また、訪れた地での人々との交流や人間観察も、インスピレーションの源になっている。

商品開発ではカラーレンジの拡大、
機能性の向上を目指す

WWD:商品開発において継承したい「アルマーニ」のレガシーは?

上田:「アルマーニ ビューティ」は自然な艶のあるみずみずしい肌作りを提案した先駆者。さらなるイノベーションを起こし、改善改良を続けて多様性に対応する商品開発を続けていきたい。

WWD:エンドユーザーに注目してほしいメイクアップトレンドは?

上田:最新のメイクトレンドでは、みずみずしく艶のあるグレーズスキンをベースに、ナチュラルに骨格やパーツを強調したソフトグラムメイクが人気だ。肌を整えるために「アルマーニ ビューティ」のベースメイクアイテム“フルイド シアー”を使用し、その上にリキッドアイシャドウの“アイ ティント”のヌード系カラーやナチュラルカラーの“リップ マエストロ”を重ねると理想的な仕上がりになる。また、ワントーンで仕上げるメイクもトレンドで、顔の複数の部位に同じポップカラーを取り入れるスタイルが人気。チークカラーの“ルミナス シルク グロー ブラッシュ”と“リップ マエストロ”の色を合わせることで、より自然な印象のメイクを完成させることができる。

WWD:「アルマーニ ビューティ」で最も気に入っているアイテムは?

上田:バーム状クッションファンデーションの“パワー ファブリック コンパクト”。みずみずしいテクスチャーは薄い膜を張るように肌にピタッと密着し、ベタつかずサラッとした軽い付け心地が気に入っている。化粧直しがしやすいのもおすすめ。

WWD:今後の展望は?

上田:カラーレンジの幅を広げることやユーザーのニーズに応じた機能性の向上。目指す方向性は、フィニッシュテクスチャーのバリエーションを増やし、それをブランドイメージに一貫させること。現在、いくつかの選択肢を検討しており、今後に期待してほしい。

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百貨店化粧品売り場の春節期間の商況 売れ筋は「クレ・ド・ポー ボーテ」「エレガンス」

中国では訪日団体旅行の解禁以降、実質約4年ぶりに行動制限がない春節連休(旧正月)が終わり、国内百貨店の化粧品売り場でも中国人含む訪日客が散見された。各社の化粧品売り場では、最盛期の「爆買い」する姿は影を潜め、店頭体験を重視する買い方に様変わりしている。そこで、訪日客の客足が伸びている三越銀座店と西武池袋本店の化粧品売り場に春節期間(2月10〜17日)の商況を聞いた。

銀座三越店は春節に合わせ
店頭オペレーションを強化

銀座三越店化粧品売り場の商況は、前年の春節期間(1月30日〜2月5日)と比較すると92%増、19年の2月3〜10日と比較すると27%減だった。春節連休に合わせて、中国版インスタグラムRED(小紅書)でインフルエンサーによる旅行前の情報発信を強め話題化を狙った。店頭では、多言語スタッフの増員や、エアウェイトや日本人上位顧客に向けた来店予約などオペレーションを強化した。

売れ筋の「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」は、ベースメイクやスキンケアが活発に動き、売り上げは前年同期比150%増だった。中でも化粧下地“ヴォワールコレクチュールn“は根強い人気を誇る。「シャネル(CHANEL)」の売上高は同75%増で、スキンケアと化粧下地の“ル ブラン ラ バーズ レジェール“が人気を集めた。

春節に合わせてポップアップイベントを実施した「エレガンス(ELEGANCE)」の売上高は同500%増と大幅に伸長した。訪日客から人気のフェイスパウダー“ラ プードル オートニュアンス“を打ち出した施策が寄与した。

訪日客の購買行動にも変化が見られた。松原麻美 銀座三越 第三営業部 化粧品 バイヤーは「コロナ禍以前のような爆買いは見られず、自分自身が欲しいアイテムや家族から頼まれたアイテムなどを購入する傾向が強い。タッチアップやカウンセリングを希望するお客さまも多く、百貨店での化粧品購買の体験価値を求めるお客さまが目立った」と話す。

西武池袋本店の春節期間の商況は
コロナ禍前を上回る

西武池袋本店化粧品売り場の商況は同30%増、コロナ禍前の19年比は20%増だった。売り場では春節に合わせ、ポップに中国語を入れて商品を訴求。中国版SNSでは春節向けの記事発信を強化した。

春節前後では「ヘレナ ルビンスタイン(HELENA RUBINSTEIN)」と「ラ・メール(LA MER)」が高い伸びを見せた。黒川香利 池袋西武 リーシング本部リーシング一部 コスメ担当は「2つとも中国でも人気の高いプレステージブランド。若い年齢からエイジングをするためか高級クリームの購入が増加した」と述べる。

全体の売れ筋は「ディオール(DIOR)」。スティック型のフレグランス“ミニ ミス“や部分用美容液“カプチュール トータル ヒアルショット“がヒットし、売り上げは同25%増と好調に推移した。「シャネル(CHANEL)」は同8%増で、ハンドクリーム“チャンス クレーム マン“などが人気を集めるほか、ギフト需要を取り込んでいる。「クレ・ド・ポー ボーテ」は、同98%増と好調に推移。化粧下地とクッションファンデーションがともに好調を維持。特に化粧下地“ヴォワールイドラタンロングトゥニュ“は、SNSなどでも多数取り上げられ人気を集めている。

今年の春節連休は、「ツアーではない個人旅行者が多く、中でも友人同士など4~5人での移動が多い印象を受けた。以前は写真や動画を撮る人が多かったが、ここ最近は購入品を事前に決めてから来店されるお客さまが多い」(黒川氏)という。

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170年以上の歴史を持つ「バリー」 変革の出発点は「自分たちを恥じないこと」とCEO

ニコラ・ジロット/バリー最高経営責任者 プロフィール

フランス・アジャン生まれ。モンテスキュー・ボルドー第四大学を卒業し、現在はスイスのルガーノ在住。1997年にアイウエア小売店グランドビジョン・グループに就社。その後オークツリー・キャピタル・マネジメントの買収後のイタリアのアパレルブランド「コンビペル」を経て、スイス・チューリッヒの大手免税店ニュアンス・グループでチーフ・ファイナンシャル・オフィサーを務める。2023年にはスイスの旅行サービス大手ダフリーと合併したオートグリルの非常勤取締役に就任。15年にバリーに入社し、19年から現職 PHOTO:YUTA KATO

「人生は紆余曲折あって当然だ。肝心なことは向かうべき方向性を見失わないことだ」。ブランド改革最中の「バリー(BALLY)」のニコラ・ジロット(Nicolas Girotto)最高経営責任者(CEO)はそう語る。ジロットCEOは2019年に現職に就任。20年には若手デザイナーのルイージ・ビラセノール(Rhuigi Villasenor)をクリエイティブ・ディレクターに起用して20年ぶりにファッションショーを開催しブランドの存在感をあらためてアピールした。しかし、ラグジュアリーストリートを得意とするビラセノールのクリエーションはスイス発の老舗ブランドに挑戦的で新鮮なエッセンスを加えたものの、長期的なビジョンを描くことはできず、わずか2シーズンで退任となった。2024年春夏シーズンからは、「グッチ(GUCCI)」で経験を積んだシモーネ・ベロッティ(Simone Bellotti)をデザイン・ディレクターに迎え、ブランドイメージの再構築に取り組んでいる。このほど東京・銀座にオープンした旗艦店を訪れたジロットCEOに「バリー」が向かおうとしている方向性について聞いた。

WWD:2019年に現職に就任しリブランディングに着手した。見えていた課題は?

ニコラ・ジロット=バリーCEO(以下、ジロットCEO):就任直後に行った市場調査では、消費者の間で「バリー」の認知度は比較的高く、品質や卓越したクラフトマンシップなどポジティブな印象を持たれている一方で、実際に購入したいと思うデザイラビリティ(=望ましさ)に欠けていることが分かった。原因の1つは、ブランドのポジションが不明確なことだった。つまり、「バリー」とはどんなブランドなのかを伝えきれていなかった。ブランドのDNAを土台としながらそのポテンシャルを最大化するには、これまでの製品中心の考え方ではなく、「バリー」にしかないクリエイティビティーをしっかり届けることが重要だ。まさにここがシモーネに期待したい部分でもある。

「変革には時間がかかるし、忍耐力も必要だ」

WWD:あらためて「バリー」のブランドポジションを定義すると?

ジロット:ある顧客は「バリー」のことを「スイスのシックなユーティリティーブランド」と表現した。私たちがオフィシャルに使用している表現ではないが、核心を突いていると思う。エレガントでシックなデザインやインドアでもアウトドアでも通用する機能性、日常的に手に取れる価格帯のリアルなワードローブであることは私たちが大事にしている要素だ。特に品質、素材、価格のベストなバランスは常に意識している。ラグジュアリー産業の競合他社と比較すると、高品質な製品をフェアな価格帯で提供していることが強みだ。

WWD:22年には4年ぶりにクリエイティブ・ディレクターを立てルイージ・ビラセノールを任命したが、わずか1年で退任となった。その影響をどう見る?

ジロットCEO:彼のおかげで20年ぶりにファッション・ウイークに戻ってくることができたことは大きい。ブランドのクリエイティビティーやメッセージを強く発信する機会になったはずで、彼にはとても感謝している。2度のコレクションでは、彼のエネルギーやブランドに対する情熱を強く感じたものの、彼は自身のブランドに専念したいと考えていた。変革期である私たちも歩みを止めるわけにはいかないので、すでにチームの一員として携わってくれていたシモーネを次に任命したわけだ。どんなコラボレーションも人生同様にうまくいくときもあれば、いかない時もある。変革には時間がかかるし、忍耐力も必要だ。長期的なゴールに辿りつく過程では、いっときの痛みも伴う。もちろん、シモーネとは長いスパンで共にストーリーを描いていきたいと願っている。

WWD:シモーネ・ベロッティとはイメージの再構築に向け、どんなビジョンを共有している?

ジロットCEO:彼とはミーティーングを何度も重ねながら、「『バリー』とは何か?」というすごくシンプルな問いを議論した。「バリー」の長い歴史の中でもどんな部分が今の時代に響くのか、何を後世に残していきたいのかを話し合う中で、シモーネはすごくシンプルな答えを持ってきてくれた。それは、「自分たち自身を恥じない」ということ。違うブランドになろうとせず、スイスにアイデンティティーを持つ、クラシックなブランドであることを誇りに思うことから始めようという彼のビジョンはすごく気に入った。彼の最初のコレクションでは1923年に誕生したシューズ“グレンデール”を現代風にスタイリングしたり、スイスといえば誰でも思い浮かべるカウベルのモチーフで遊んだり(笑)。自分たちが何者であるかにすごく正直になれた気がしたコレクションだった。既存の顧客にも新しい顧客にも響くはずだ。

WWD:今後特に注力していくカテゴリーは?

ジロット:全カテゴリーに注力したいと思っているが、レディ・トゥ・ウエアの打ち出しはさらに強めていきたい。現在の売り上げ構成比は、40%がシューズ、40%がアクセサリー、残りがレディ・トゥ・ウエアだ。シューズに関する圧倒的なノウハウは強みだ。全てスイスのインハウスで製造していて他にはないモノ作りができる。アクセサリーも同様だ。

新コンセプトの旗艦店を銀座にオープン

WWD:このほど新たな旗艦店を銀座にオープンした。狙いは?

ジロットCEO:日本はグローバル売り上げの約10%を占める重要な市場だ。ブランドの新しいコンセプト、そしてシモーネによる最新のコレクションをお届する最初の店を、ラグジュアリーブランドが集まる銀座に構えたのは自然な流れだ。取り引きのある百貨店などのパートナーにも、私たちが日本市場を大切にしている姿勢を見せたい。

WWD:日本市場でのビジネスは伸びている?

ジロットCEO:昨年から比較して伸長しているものの、ここからさらに規模を拡大できるポテンシャルがある。ラグジュアリー業界の中でも日本はカギとなるマーケットだ。さらに伸ばしていくためには、ブランドの認知以上に消費者が実際購買する時の検討対象となる「考慮集合」に含まれる必要がある。現職に就任以降、数年かけて特にデジタル分野に注力し、中国大手EC「Tモール(天猫国際、T MALL)」や「JDドットコム(JD.COM)」にも出店してきたが、現在は広げたネットワークの質を上げていくフェーズに入った。今年は各都市でブランドのストーリーをより強く発信できる実店舗にプライオリティーを置き、出店を加速させていく計画だ。ブランドのストーリーを発信する重要な拠点である銀座店に投資していくことが、日本市場全体、もしくはアジア圏全体でのプレゼンスの底上げにつながると考える。

WWD:ストーリーを伝えるための具体的な工夫は?

ジロット:スイスのアイデンティティーを表現するために、内装はミニマルでありながら温かい雰囲気にこだわった。来店客には居心地のよいホームのように感じてほしい。什器の多くはスイスのビンテージ品だ。スイスのカルチャーを感じてもらうきっかけにもなるし、サステナビリティの観点からもすでにあるものを再利用することが望ましい。棚に飾った多くの書籍からは、世界の文化芸術や建築、クラフツマンシップに敬意を払う当社の姿勢を感じてもらえると思う。

WWD:一連の改革を通してすでに新たなイメージが確立し始めたと感じるビジネス上の変化はある?

ジロットCEO:まだ始まったばかりだ。人生は直線ではなく紆余曲折あって当然だ。肝心なことは、ブランドのデザイラビリティを上げるという向かうべき方向性を見失わないこと。この2年でブランドの存在感は増している手応えがあるし、プレスやバイヤーからはこれまでになかった反応をもらえている。正直ここまでのビジネス状況は、ローラーコースターのようだった(笑)。だからこそ、長期的な視点を忘れないように心がけている。現状に満足しているかと聞かれたら、答えはノーだ。まだ始まったばかりだし、やるべきことはたくさんある。

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「サードマガジン」に感じるスピリット【メルローズと私vol.2 スタイリスト・大草直子さん】

メルローズは「マルティニーク(MARTINIQUE)」「ピンクハウス(PINK HOUSE)」など個性的なブランドを運営し、昨年50周年の節目を迎えた。同社と関わりの深い人たちによる連載「メルローズと私」の第2回のゲストは、大草直子さん。エディターやスタイリストとしてさまざまな服と接してきた大草さんの目に、メルローズはどのように映っているのか。ブランド立ち上げ当初からゆかりのある「サードマガジン」ショールームで話を聞いた。

育ちの良さそうな若者が、
はみ出そうと冒険する

高校生のころ、一番好きなDCブランドが「ジャストビギ」でした。人気のスタジャンは10代の私には高価すぎるため、なかなか手が出ませんでしたが、学校のテストの点数が良いときに母におねだりしたのも良い思い出です(笑)。あれから約30年が過ぎた今、私の23歳の娘が「ジャストビギ」のスタジャンがY2Kアイテムとして若者に人気だと教えてくれました。確かに古着市場を見ると、当時の商品がけっこういい値段で売買されていてびっくりです。本物は時代を越えて伝わるんですね。

私なりにメルローズやビギグループを表現すると「育ちの良さそうな若者が、ちょっとはみ出そうと冒険する」――そんな感じでしょううか。品格があって着る人を最大限に美しく見せるけれど、その枠だけに収まらない何かがあるのです。

例えば青山の「プレインピープル」のお店に入ったとき、調味料や食器が真ん中に陳列されているのに衝撃を受けました。洋服屋さんなのに出汁を売っている!着るもの、食べるものを一つのライフスタイルの軸で表現しているのが斬新でした。一方「マルティニーク」は、セレクトショップといえば尖った流行やモードを打ち出すのが当たり前なのに、育ちの良さ、クラッシーさを感じさせる。母と娘で買い物ができるお店ですね。それがかえって新しいと思いました。昨年と同じことはしたくない、他と同じことはしたくない。きっと、これがメルローズが脈々と築き上げてきた矜持だと思うのです。新しいことに挑戦し続けるのは簡単なことではありません。エネルギーが必要だし、険しい道です。でも、そうした姿勢だから半世紀もファッション業界をリードする存在であり続けたのでしょう。

訪れるたびに刺激を受ける場所

象徴的なのが2018年にスタートした「サードマガジン」です。EC(ネット通販)と連動したショールーミングストアを代官山に設け、1人のお客さまを感動的な接客でおもてなしする。代官山の一等地の広いスペースなのに、商品をずらりと並べて売るわけでない。画期的な挑戦だと思いました。スタートから5年以上が過ぎても、しっかりとお客さまに支持されているのも素晴らしいところ。

私も商品リースでよく代官山の「サードマガジン」を訪れますが、仕事はすぐに終わらせて、つい自分の買い物に夢中になってしまいます(笑)。SNSやユーチューブが全盛ですが、ここはディスプレーを含めて次々に新しい提案が行われるのでライブ感があるんです。訪れるたびに刺激を受けます。

「サードマガジン」には、クリエイティブディレクターの中山彩子さんの強いメッセージがあります。メッセージとは、すなわち服にスピリットを入れ込むこと。これがあるかないかが決定的な差を生みます。メルローズの人たちは服の力を信じ、服をリスペクトしている。だからタイムレスな魅力を放つのでしょう。

問い合わせ先
メルローズ
03-3464-3310(代表)

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ベイクルーズ、虎ノ門ヒルズの新業態「セレクト」公開 エースバイヤーたちの力を結集

ベイクルーズは27日、東京・虎ノ門ヒルズ内に29日オープンする新業態「セレクト バイ ベイクルーズ(SELECT BY BAYCREW’S)」を関係者に公開した。セレクトショップ本来の目利きを前面に出し、社内外のキュレーターの審美眼によって幅広い商品を集めた大型店で、売り場面積は2800平方メートル。同社のクリエイションを国内外に発信する戦略店舗と位置づける。

ファッションから食、アート、スポーツまで

昨年10月に開業した複合ビル、虎ノ門ヒルズ ステーションタワーの2階と3階の2フロアで営業する。同社の既存のブランド・業態は「ミューズ ドゥドゥーズィエム クラス(MUSE DE DEUXEME CLASSE)」など一部に限られ、大部分はここだけの品ぞろえと編集を組む。

中心的役割を担うのはキュレーターと呼ばれる社内外のスペシャリストたちだ。社内から「ドゥーズィエム」の佐藤恵氏、「ジャーナルスタンダード(JOURNAL STANDARD)」のの松尾忠尚氏と高田麻紀氏、「シティショップ(CITY SHOP)」の片山久美子氏、「ノア(NOAH)」の中根吉浩氏、「エディフィス(EDIFICE)」の今野浩靖氏、メンズセレクションの統括責任者の栗原潤氏、社外からファッションディレクターの長尾悦美氏らが選ばれた。

メーンフロアの3階は、エスカレーターホールを囲むようなコの字型の区画。コンシェルジュが待機するレセプションのカウンターがあり、来店客を案内する。ビンテージ品を含めたアパレルや雑貨をそろえた「セレクト-A」「セレクト-B」が広い売り場を構えるほか、長尾氏が原宿の古着店「ベルベルジン(BERBERJIN)」の藤原裕氏をディレクターに迎えて作ったウィメンズのデニムショップ「ザニーム(THENIME)」には数十万円の希少なジーンズが並ぶ。また同社初のユニセックススニーカーストア「ヘリンボーン(HERRINGBONE)」は、ミタスニーカーズの国井栄之氏をディレクターに迎えた。同じく同社初のアートギャラリー「アートクルーズギャラリー」、名古屋発の自転車店「サークルズ トーキョー」など見どころが多い。

2階には朝8時から営業するブーランジェリー&カフェ「リチュエル(RITUEL)」、ホットドッグとユニークな土産物を置く「ザ スタンド」、資本業務提携を結ぶセレクトショップ「ヌビアン(NUBIAN)」の服飾雑貨を中心にした店舗が軒を連ねる。

2階の奥には「ミューズ ドゥドゥーズィエム クラス」の最大店舗がある。玄関、ウォークインクローゼット、リビング、キッチン、寝室など家に見立てた売り場構成で、顧客をゆっくりもてなす。

ビジネス街の虎ノ門に出店した理由

ベイクルーズの古峯正佳副社長は、虎ノ門ヒルズでの新業態出店を「街づくりへの挑戦」だと説明する。「杉村茂CEOをはじめ、当社にはずっと前からベイクルーズによる街づくりをしたいという目標があった。(商業地ではない)虎ノ門はまだ色のない街だからこそ、当社が寄与できることが多い」。

出店するにあたり目的地としてわざわざ訪れるに値する店舗にしようと考えた。それがキュレーターを前面に立てた売り場作りだ。「当社はブランドや業態の名前を立てたビジネスを全国で展開してきたが、『セレクト』ではそれを一旦壊して、当社が誇る第一線のバイヤーたちの力を結集した店を作ることにした」という。

本来のセレクトショップの姿へ原点回帰するだけでなく、スケール感や空間演出も追求した。服だけでなく、ベイクルーズが得意とするフード、新領域であるアート、スポーツ、ビンテージにも力を入れ、長く滞在できる店にする。

虎ノ門で働くビジネスパーソンや港区在住の近隣住民はもちろん、全国からファッションに関心の高い層を集客する。虎ノ門ヒルズ周辺には高級ホテルも多く、海外からの観光客やビジネスパーソンも少なくない。「セレクト」は海外に向けたショーケースの機能も意識する。「昔、僕たちがパリに行ったら必ずコレットを訪れたように、ファッションに関心の高い海外の人が東京に来たら必ず寄る場所にしたい」と話す。

アルバイトと含めて約80人のスタッフで運営する。上質な商品とサービスを知る客の期待に応えるため、全国からエース級の販売員を集めた。5年後には売上高30億円を計画する。

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ベイクルーズ、虎ノ門ヒルズの新業態「セレクト」公開 エースバイヤーたちの力を結集

ベイクルーズは27日、東京・虎ノ門ヒルズ内に29日オープンする新業態「セレクト バイ ベイクルーズ(SELECT BY BAYCREW’S)」を関係者に公開した。セレクトショップ本来の目利きを前面に出し、社内外のキュレーターの審美眼によって幅広い商品を集めた大型店で、売り場面積は2800平方メートル。同社のクリエイションを国内外に発信する戦略店舗と位置づける。

ファッションから食、アート、スポーツまで

昨年10月に開業した複合ビル、虎ノ門ヒルズ ステーションタワーの2階と3階の2フロアで営業する。同社の既存のブランド・業態は「ミューズ ドゥドゥーズィエム クラス(MUSE DE DEUXEME CLASSE)」など一部に限られ、大部分はここだけの品ぞろえと編集を組む。

中心的役割を担うのはキュレーターと呼ばれる社内外のスペシャリストたちだ。社内から「ドゥーズィエム」の佐藤恵氏、「ジャーナルスタンダード(JOURNAL STANDARD)」のの松尾忠尚氏と高田麻紀氏、「シティショップ(CITY SHOP)」の片山久美子氏、「ノア(NOAH)」の中根吉浩氏、「エディフィス(EDIFICE)」の今野浩靖氏、メンズセレクションの統括責任者の栗原潤氏、社外からファッションディレクターの長尾悦美氏らが選ばれた。

メーンフロアの3階は、エスカレーターホールを囲むようなコの字型の区画。コンシェルジュが待機するレセプションのカウンターがあり、来店客を案内する。ビンテージ品を含めたアパレルや雑貨をそろえた「セレクト-A」「セレクト-B」が広い売り場を構えるほか、長尾氏が原宿の古着店「ベルベルジン(BERBERJIN)」の藤原裕氏をディレクターに迎えて作ったウィメンズのデニムショップ「ザニーム(THENIME)」には数十万円の希少なジーンズが並ぶ。また同社初のユニセックススニーカーストア「ヘリンボーン(HERRINGBONE)」は、ミタスニーカーズの国井栄之氏をディレクターに迎えた。同じく同社初のアートギャラリー「アートクルーズギャラリー」、名古屋発の自転車店「サークルズ トーキョー」など見どころが多い。

2階には朝8時から営業するブーランジェリー&カフェ「リチュエル(RITUEL)」、ホットドッグとユニークな土産物を置く「ザ スタンド」、資本業務提携を結ぶセレクトショップ「ヌビアン(NUBIAN)」の服飾雑貨を中心にした店舗が軒を連ねる。

2階の奥には「ミューズ ドゥドゥーズィエム クラス」の最大店舗がある。玄関、ウォークインクローゼット、リビング、キッチン、寝室など家に見立てた売り場構成で、顧客をゆっくりもてなす。

ビジネス街の虎ノ門に出店した理由

ベイクルーズの古峯正佳副社長は、虎ノ門ヒルズでの新業態出店を「街づくりへの挑戦」だと説明する。「杉村茂CEOをはじめ、当社にはずっと前からベイクルーズによる街づくりをしたいという目標があった。(商業地ではない)虎ノ門はまだ色のない街だからこそ、当社が寄与できることが多い」。

出店するにあたり目的地としてわざわざ訪れるに値する店舗にしようと考えた。それがキュレーターを前面に立てた売り場作りだ。「当社はブランドや業態の名前を立てたビジネスを全国で展開してきたが、『セレクト』ではそれを一旦壊して、当社が誇る第一線のバイヤーたちの力を結集した店を作ることにした」という。

本来のセレクトショップの姿へ原点回帰するだけでなく、スケール感や空間演出も追求した。服だけでなく、ベイクルーズが得意とするフード、新領域であるアート、スポーツ、ビンテージにも力を入れ、長く滞在できる店にする。

虎ノ門で働くビジネスパーソンや港区在住の近隣住民はもちろん、全国からファッションに関心の高い層を集客する。虎ノ門ヒルズ周辺には高級ホテルも多く、海外からの観光客やビジネスパーソンも少なくない。「セレクト」は海外に向けたショーケースの機能も意識する。「昔、僕たちがパリに行ったら必ずコレットを訪れたように、ファッションに関心の高い海外の人が東京に来たら必ず寄る場所にしたい」と話す。

アルバイトと含めて約80人のスタッフで運営する。上質な商品とサービスを知る客の期待に応えるため、全国からエース級の販売員を集めた。5年後には売上高30億円を計画する。

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高級ホテルのスパで支持されるスキンケアブランド「ヴァルモン」が描く“美とアートの融合”とは?

PROFILE: ディディエ・ギヨン/ヴァルモングループ会長兼アートディレクター

ディディエ・ギヨン/ヴァルモングループ会長兼アートディレクター
PROFILE: オーストリア・ウィーンで画廊を経営する一家に生まれる。スキンケアブランド「ムステラ」を共同設立した父親の指導の下、コスメティクスの世界に触れて育つ。アートへの情熱も父親から受け継ぎ、父親と共に世界中の展覧会を見て歩いた経験を持つ。数十年にわたりコスメティクスの技術と知識を積み上げた後、飛躍的な成長を見込んだ「ヴァルモン」を1991年に買収。 アートへの情熱を人々と分かち合いたいと、2015年にヴァルモン財団を設立。ギリシャ、スイス・ヴェルビエ、スペイン・バルセロナ、イタリア・ヴェネツィアにある「レジデンス・ヴァルモン」でアートコレクションを公開している
スイスのラグジュアリースキンケアブランド「ヴァルモン(VALMONT)」は今年、設立40周年を迎える。そのルーツは1905年にスイスのレマン湖近くに設立された滞在型クリニックで、設立当時の顧客名簿にはココ・シャネル(Coco Chanel)やイングリッド・バーグマン(Ingrid Bergman)などが名を連ねた。その後、85年にスイスの豊かな自然と先端技術を駆使したスキンケアブランド「ヴァルモン」として販売を開始し、遺伝子工学とセルラーコスメティックをけん引する存在となった。エイジングケアのパイオニアとして、独自成分トリプルDNAやRNAリポソームを配合したスキンケア化粧品を発売し、世界中で愛されている。

スイス本国をはじめヨーロッパでは、ブティックでのトリートメントを中心に展開。日本ではギンザシックスの直営店のほか、コンラッド東京やフォーシーズンズホテル東京大手町など高級ホテルのスパを中心に展開し、百貨店の外商向け商材としての引き合いも多い。富裕層を中心に支持を集める同ブランドは、文化交流や社会貢献活動でも知られる。ヴァルモングループの会長兼アートディレクターのディディエ・ギヨン(Didier Guillon)は、自身のアートへの情熱を伝えキュレーター・アートコレクターとして収集する現代美術のコレクションを公開するため、2015年にヴァルモン財団を設立した。「ヴァルモン」が力を入れる文化活動について話を聞いた。

WWD:「ヴァルモン」が行う文化活動とは?

ディディエ・ギヨン=ヴァルモン・グループ会長兼アートディレクター(以下、ギヨン):「ヴァルモン」はブランドを化粧品の枠に限定せず、“美とアートの融合”をアイデンティティーマニフェストに掲げている。ヴァルモン財団はあらゆる形式で芸術を促進するという使命を持ち、世界中のアーティストによる企画展や芸術イベントを行っている。また、スパ「メゾン・ヴァルモン」では、スキンケア商品とフレグランスコレクションと共に現代アートが並び、目と心に喜びを与え想像力を掻き立てる空間でアール・ド・ヴィーヴル(暮らしの美学)を堪能することができる。

昨年11月に東京・ギンザ シックス(GINZA SIX)で開いた「タンザニアのアイボ展」では、「ヴァルモン」が設立40周年を迎えるブランドでありながら若い精神を持つことと、自由、未来、寛容さといったブランドの世界観を理解していただくことをテーマに企画した。ファッションブランドがファッションショーをするのと同じように、アートを通してブランドを感じてもらいたい。

WWD:「アイボ展」ではサステナビリティの取り組みも伝えていた。

ギヨン:始まりは末娘とベルリン動物園を訪れたことにさかのぼる。私たちは動物園の象徴だったゴリラに親しみを込めて“アイボ”と名付けていた。娘はアイボの悲しげな目を見て私に「アイボを檻から解放して自由にして」と懇願しことから、私はアイボをアートワークにして巡回展として世界中を旅させることにした。展示会場では「ヴァルモン」の最高峰プレミアムライン“レリクシール デ グラシエ”から生まれたミツバチの恵みを取り入れたコレクション“エッセンス オブ ビーズ”も展示。このコレクションはミツバチの保護に対するコミットメントを強化することを目標としている。

ヴァルモングループは社会貢献を大切にしている。これまでもアート展を通じで多くの人道的支援団体に寄付を行ってきた。19年に日本で開催した展覧会「ホワイトミラー」や昨年の「タンザニアのアイボ展」では非営利団体「子供地球基金」への支援を行った。サステナビリティに関しては、プロダクト面でリサイクルしやすい容器へのアップデートをおこなってきている。また、われわれはギリシャのイドラ島やバルセロナなど世界中にレジデンスを構え、特別なお客さまのためにフェイシャルトリートメントを受けられるツアーを行っているが、そこではプラスチックを使用しないことや海の清掃を行うなどの活動をしている。将来的には、現代アートで知られる瀬戸内海の直島にもレジデンスを作り環境保護活動を伝えるのもゴールの一つだ。

ホテル空間を通じて
ブランドの世界観を伝える

WWD:ビジネスの展望は?

ギヨン:ホテルのスパに主に導入しているが、観光客だけでなくローカルの人たちにどのように「ヴァルモン」の化粧品や世界観、そしてトリートメントを体験していただくかを考えている。新しいブティックを開くよりは、ステイケーション(遠くに旅行に行くのではなく近場のホテルで休暇を過ごす旅行のスタイル)も近年注目されているが、ホテルの空間を通じて「ヴァルモン」のラグジュアリーな世界観を旅してもらうコンセプトを重視している。日本の23年の売上高は前年同期比32%増と成長しており、日本のマーケットに大きな期待を持っている。

WWD:ラグジュアリー化粧品市場の動向をどのように見ているか?

ギヨン:最高級の原料を使った化粧品は、効率の良さが全く違う。すぐに変化を感じられることを経験し納得すれば、ブランドのファンになっていただけるだろう。化粧品でもファッションでもラグジュアリーブランドはそのような展開になっている。引き続き、われわれのお客さまに特化したアピールを続けていきたい。

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国内最大規模クイーポに聞く苦戦する中価格帯バッグ市場 「コーチ」以上ラグジュアリー未満に注目

業績悪化に苦しむサマンサタバサジャパンリミテッドのように、長らく2万円台後半〜5万円台程度(中心価格帯は3万〜4万円)の中価格帯商材を、「平場」と呼ばれる百貨店のいわゆる“バッグ売り場”で販売してきた国内のバッグメーカーは、社会の二極化や百貨店の海外ラグジュアリーへの傾倒などで苦境に陥っている。オリジナルブランド「ゲンテン(GENTEN)」のほか、「アナ スイ(ANNA SUI)」や「ランバン オン ブルー(LANVIN ON BLEU)」などのライセンスブランドも手掛ける国内最大規模のバッグメーカー、クイーポにとっても外部環境は厳しい。同社はここ数年で海外ブランドのインポートに乗り出したり、ライセンスブランドではマーケットインを徹底したりで苦境を乗り切ろうとしている。

果たして今、国内のバッグメーカーはどんな問題を抱えているのか?そして課題を解決して苦境を乗り切る術はあるのか?30代前半という若さも手伝い、既成概念にとらわれないチャレンジを続ける岡田孔明クイーポ常務取締役営業本部本部長に今のバッグ業界について聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):ここ数年で百貨店の平場、いわゆるバッグ売り場が減少し、国内バッグメーカーが販路を失っている。
岡田孔明クイーポ常務取締役営業本部本部長(以下、岡田):百貨店の平場は、5年で15〜20%減少している。結果、弊社では平場が主戦場だった「クレイサス(CLATHAS)」の取扱店舗が、2016年の119から22年には44まで減少した。残された平場も、ムーンバット(洋傘やレイングッズ、スカーフ、バッグなどの企画、製造、販売を手掛ける。ライセンスブランドも多数)や川辺(ハンカチやスカーフ、マフラー、バッグ、フレグランス、香水、タオルなどの企画や製造、販売を手掛ける。同じくライセンスブランドも抱えている)が幹事会社の役割を担い、同業他社のメーカーに声をかけて商品を調達して売り場を作っているケースが多い。

WWD:そもそも委託販売が多い百貨店の平場では目利きバイヤーが育たなかった印象だが、今は売り場ごとメーカー。となると平場の改革は難しそうだ。平場がここまで衰退した理由は?
岡田:ライセンスブランドが古いのではなく、コスメとインポート・ラグジュアリーの売り場が広がったことが大きい。同じく低層階にあったバッグ売り場が追いやられてしまった。

WWD:そんな中クイーポの場合、ライセンスブランドはどう生き残りを図っている?
岡田:徹底的なマーケットイン。データドリブンに、消費者が今欲しいものを形にしている。例えば「アナ スイ」の財布の場合、がま口とL字ファスナーで迷ったら、直前の実績が大きながま口を選ぶ。モチーフでも、売れている蝶々を選択。こうして、今求められているものを徹底的に作る体制に切り替えた。
もう一つは、一粒万倍日。2021年の春ごろ、「ゲンテン」のHPで一粒万倍日を特集したら盛り上がったのを皮切りに強く意識するようになった。今はさまざまな占い師が提案する色をあらゆるブランドで打ち出している。

WWD:ここ数年で、売れるバッグは変わってきた?
岡田:価格帯はそれほど変わっていない。商品は、コロナを経て、バックパックが一気に増えた。通勤はもちろん、デイリー使いにも便利。大きな変化は、特に地方では消費者が趣味や嗜好ではなく、実需に駆られてバッグを買うようになったこと。接客でも使用用途をお話になる買い物客が増えている。

WWD:海外ラグジュアリーでは、値上げが相次いでいる。
岡田:我々も昨春、上代を5%ほど上げた。とはいえ原材料費や人件費の上昇はカバーしきれてはいない。原価率は悪化している。加えてライセンスブランドでは、キャラクターとコラボレーションする機会が増えている。よく売れるがこの場合、私たちはライセンサーとキャラクターを管理している会社の双方にロイヤリティーを支払わなければならず、手元に残るお金はなかなか増えない。

WWD:厳しい話ばかりだが、ライセンスブランドは将来どうなる?
岡田:都心や主要都市では今以上に厳しくなると思うが、地方では絶対に残る。二極化が進んでおり、特に地方ではインポートバッグを買うことが難しくなっている人が増えている。インポートが高くなりすぎて中間層の離反が進んでいると聞くが、それでもラグジュアリーブランドが値下げするとは思えない。となると、新たな中価格帯バッグやライセンスブランドの出番。複数のブランドを取り扱う百貨店の平場には長らく、メーカーの社員が接客に立っていた。だから売り場全体での顧客管理が難しかった。こうした問題を解決できれば、地方ではまだまだライセンスブランドで戦える。

WWD:全国の百貨店で、バッグの平場が堅調なのは?
岡田:例えば東武百貨店船橋店は、ラグジュアリーに依存せず、国内のバッグメーカーによる商品をしっかり集積して実績を出している。熊本の鶴屋百貨店も同じ。百貨店ではないがバッグ売り場としては、東京デリカの各店舗は、各店の店長が裁量と責任を持っている。自分達の目で商品を選んでおり底堅い。

韓国、フランス、イタリアの
インポートブランドを相次ぎ導入

WWD:今クイーポは、ライセンスブランドのビジネスを維持しながら、海外ブランドのインポートにも挑戦している。ゆくゆくはインポートブランドが、オリジナルの「ゲンテン」、ライセンスブランドに匹敵する第3の柱になる?
岡田:そのつもりだ。まず最初に挑戦したのは、韓国発のファッションブランド「ジョセフ アンド ステイシー(JOSEPH AND STACEY)」の日本展開。韓国はこの5年でアジアのショーケースに進化した。多くの日本人が韓国ファッションを追いかけている。ただ、特徴のある韓国ブランドは少ない。そんな中プリーツとカラー、そしてメード・イン・コリアにこだわっている「ジョセフ アンド ステイシー」に興味を持った。最終的な決め手は、「ジョセフ アンド ステイシー」もプリーツバッグは一過性のトレンドと捉え、新たな商材開発に意欲的だったこと。バッグメーカーとしてのクイーポとタッグを組めると思った。
顧客を作る「ゲンテン」やライセンスブランドのビジネスではなく、浮気症なお客さまを相手に瞬発力で勝負することに挑んだ。ルミネやニュウマン、ラゾーナ川崎などの商業施設でポップアップに挑戦して、インフルエンサーとタイアップ。会社として、これまでできていなかったことに取り組んでいる。昨年4月の発売以来、予算は順調にクリアしており、百貨店からの引き合いも多い。ただ、単価は低い。常設店はコストがかかるので、もう少し様子を見る。

WWD:レザーバッグブランド「RSVP」は?
岡田:フランス・パリのボンマルシェの関係者に「感度の良いバッグブランドは?」と聞いたら、「RSVP」の名前が上がり、声がけした。今、バッグ業界では「『コーチ(COACH)』以上、ラグジュアリー未満」のバッグを探している人が多い。「RSVP」のクロスボディバッグは、10万円くらい。8万〜15万円くらいの中価格帯で、まさに「『コーチ』以上、ラグジュアリー未満」だ。

WWD:かつての中価格帯は、3万〜5万円くらいだった。
岡田:ラグジュアリーブランドの値段が上がりすぎて、中間層が頻繁に買うことは難しくなっている。百貨店各社は富裕層と訪日外国人客に支えられて好調だが、彼ら頼みになっていることに不安を抱いている関係者は少なくない。そこで、「『コーチ』以上、ラグジュアリー未満」をこぞって探すようになった。この価格なら、多くの皆さんに楽しんでいただける。

WWD:「『コーチ』以上」の心は?
岡田:ある程度の単価じゃないと、効率が悪い。

WWD:「RSVP」は、今春デビューだ。
岡田:伊勢丹新宿本店と阪急百貨店うめだ本店で4月から5月にかけてポップアップを開催する。「RSVP」は、期待してくださる百貨店で売っていきたい。

WWD:昨冬は、破たんした三崎商事から「ゲラルディーニ(GHERARDINI)」の事業を引き継いだ。
岡田:独自素材“ソフティ”を使ったバッグは、トートで6万円台〜。三崎商事は日本企画だけを販売していたが、クイーポは6月をメドにメード・イン・イタリーのラインを復活させる。トートで7万〜8万円台になるだろう。軽さと使い勝手で60〜80代に支持されている。確かに既存顧客は高齢だが、今後、この人口は増える。「ゲンテン」の“一本足打法”では不安があるので、しっかり育てたい。

WWD:今後も、新しいインポートブランドに挑戦する?
岡田:先が読めない時代なので、それぞれの素材のトッププレイヤーとのビジネスに取り組みたい。バッグは、素材が命。レザーではなく、例えば布帛など。ラフィアも考えているが、日本では春夏商戦に依存してしまう。どう取り組むべきか考えながら、新しいブランドを発掘したい。

WWD:最後に「ゲンテン」は?
岡田:今年で25周年を迎える。5万円程度のヤギ革のトートバッグを筆頭に定番で売上の8割を担っており、安定している。エコロジーブランドの先駆けとして、強くアピールはしないが、これからもモノの良さとファッション性を訴えたい。

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アートディレクター大島依提亜 知られざる映画ポスターの世界

PROFILE:大島依提亜/アートディレクター、デザイナー

(おおしま・いであ)映画のグラフィックを中心に、展覧会広報物、ブックデザインなどを手掛ける。国内外の名だたる作品のポスターやパンフレットを担当する。主な仕事は「パターソン」(ジム・ジャームッシュ監督、16年)、「万引き家族」(是枝裕和監督、18年)、「ミッドサマー」(アリ・アスター監督、19年)、「カモン カモン」(マイク・ミルズ監督、21年)、「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート監督、22年)、「ボーはおそれている」(アリ・アスター監督、23年)など PHOTO:HIRONORI SAKUNAGA

大島依提亜は、「万引き家族」(是枝裕和監督、2018年)や「ミッドサマー」(アリ・アスター監督、19年)など、数々の名作映画のポスターを手掛けるアートディレクターだ。映画の細部にまで向き合い、ユニークな手法で作品のムードをにじませたポスターは、映画界からも支持が高く、これまでに200作品近くを担当してきたという。「元々は大学で映画を学んでいました」と語る同氏は、なぜポスターデザインを行うようになったのか。知られざる制作の裏側と、ファッションとの意外な関係性についても聞いた。

挫折ばかりの大学生活
その後に訪れた転機

WWDJAPAN(以下、WWD):どんな経緯で映画ポスターを手掛けるようになったのでしょうか。

大島依提亜(以下、大島):最初は大学で映画作りを学んでいました。高校生の頃に単館系の映画が流行り、ジム・ジャームッシュ監督をはじめとしたインディーズのアートフィルムを見て、「スピルバーグは無理だけれど、こういう映画ならチャレンジできるんじゃないか」と感銘を受けたんです。

WWD:実際に学んでみてどうでしたか?

大島:自分に映画は作れないと悟りました(笑)。規模の小さい映画なら、監督と脚本家、撮影班、出演者と少ない人数で完結すると思っていたところ、実際には学生映画でも結構な人数のスタッフが当たり前でした。持ち前のコミュニケーション能力の無さを発揮したし、撮影で大遅刻をしてしまったりして、これは無理だと思いました。それなら脚本はどうかと挑戦したものの、これまた惨敗(笑)。800字で提出する課題に原稿用紙80枚を持ち込んだ時には、「フォーマットも守れないやつは無理だ」と突き放されました。面白ければいいじゃんと反発したけれど、たくさんの人と一緒に仕事するから、フォーマットはとても大事なのです。当時はとにかく若かったですね。

WWD:その後はどのような活動を?

大島:卒業後はデザインのバイトをやりました。当時はデジタルの過渡期で、Macを使えるだけで重宝がられました。雑貨に柄をのせる仕事や、コンサートのチラシを作る仕事など、現場で先輩の真似をして励んでいました。時給もよくて、週3回入ればご飯が食べられるくらいでしたね。

WWD:そのバイトのかたわらで、ポスターデザインにも挑戦されたのでしょうか?

大島:そうです。週に4回休みがあるのだから、何か新しいことをしようと、イラストやグラフィックの仕事を受けるようになりました。映画に関連したものもやりたいと生意気にも口にしていたら、配給会社からも依頼をいただいて。「アベック モン マリ」(大谷健太郎監督、1999年)という、大杉漣さんが出演し、劇場公開もされた作品でした。ポスターには劇中写真を使う計画のところ、画像の解像度が足りなくて、急遽イラストで表現することになり、それも描きました。これをきっかけに、2000年を過ぎたころから映画の仕事が徐々に舞い込むようになりました。

写真やフォントはどう決める?
ポスター作りの裏側

WWD:ポスター作りはどのように進めるのでしょう?

大島:邦画と洋画で全く異なります。邦画は、早いものだと公開の1〜2年前に打ち合わせを始めます。ポスターのために写真を撮り下ろすこともあります。「万引き家族」の写真はポスターのために撮り下ろしたものです。一方で洋画は、本国のポスターが先に完成しているから、そのイメージを受け継ぐのか、ガラリと変えるのかが焦点になります。

WWD:本国とイメージを変えた作品を教えてください。

大島:例えば「パターソン」(ジム・ジャームッシュ監督、2016年)でしょうか。本国ポスターは、メインキャスト2人の親密な様子を切り取っていて、恋愛映画の印象が強かったです。それもいいのだけれど、この作品の「何もないけれど、豊かな生活」という側面が、日本人の琴線にも触れると思い、別のアプローチに挑戦しました。本国と同様にベッドルームの写真を使いながら、地に足がついた生活のワンシーンと捉えて、コマ割りっぽいレイアウトで1週間の時の経過を表現しました。ベッドサイドの本も全て合成で変えています。1週間でこの量は読まないかもしれないけれど、1年あれば読むだろうし、その余白はいいかなって(笑)。僕らの世代は、ミニシアターブームのときにジャームッシュ監督をリアルタイムで知りましたが、今の子たちはそうじゃない。どんな世界観を伝えれば、より多くの人に魅力が伝わるのかを考えた結果、これに行き着きました。

WWD:ジム・ジャームッシュ監督の特集上映“レトロスペクティヴシリーズ”のポスターも作られていましたね。

大島:「パターソン」の仕事をした流れで依頼をいただきました。通常は数個の代表作を選んで数枚のポスターを作るところ、一作ずつ作らせてほしいとお願いしました。どの作品もポスターの余白を活かしながら、横位置で写真を置き、物理的にぼかした粒子感の強い文字を載せて、彼の作品に共通するオフビートな雰囲気を伝えています。最初にお話したように、ジャームッシュは、僕が映画にはのめり込むきっかけになった監督なので、自分のルーツと向き合うような、とても楽しい仕事でした。

WWD:逆に、本国ポスターのイメージを継続する場合は、どんな作業を行うのでしょうか?

大島:日本語表記に変えた時にタイポグラフィーやレイアウトをどうするかを考えたり、時には全体の色味を微調整したりします。例えばマイクミルズ監督の「カモン カモン」(2019年)は、ほとんどイメージを変えていません。

WWD:「カモン カモン」はパンフレットも素敵でした。

大島:ありがとうございます。ミルズ監督はグラフィックデザイナーやイラストレーターとしても著名で、以前からデザイナーとしても尊敬しており、せっかくなのでパンフレットに載せるイラストも描いていただきました。デザイン出しで一度だけフィードバックをもらい、それが的確なサジェスチョンだったことに感動しました。彼は基本に忠実で、その中から作家性が滲み出る方です。デザインのみならず、映画制作にも通じる揺るぎない姿勢なのだなと。僕の提案は力が入りすぎていて、「その方向も良いけれど、ちょっとこうしてみては?」とシンプルで的を射た意見をくれました。気が引き締まる、とてもいい経験でした。

映画の可能性を広げる
“オルタナティブポスター”

WWD:本国ポスターのイメージを受け継ぐ場合、他に挑戦したいアイデアが生まれたらどうするのですか?

大島:そういう時は、自分で勝手に作っちゃいます。いわば自主企画ですね。配給会社からOKが出ると、そのまま宣伝に使われることもありますよ。アーティストやデザイナーが独自で作るので“オルタナティブポスター”と呼ばれます。海外ではファンが作ったオルタナティブポスターが公式デザインに採用されることもあり、かなり浸透しています。日本でも少しずつ広がっている印象です。

WWD:「ミッドサマー」は、大島さんが手掛けたオルタナティブポスターも話題になりました。

大島:画家のヒグチユウコさんの絵を使ったものと、写真で構成したものの2種類を用意しました。配給会社のA24が気に入ってくれて、「シルクスクリーンで販売させてくれないか」と連絡が来ました。ローカルの販促で使われることはあっても、本国がそれを商品化して販売することは珍しいので、とてもうれしかったです。世界中で販売し、一瞬で完売したそうです。

WWD:「ミッドサマー」は日本語のフォントにも目を引かれました。

大島:あれは大正時代に使われていた活版文字を使いました。ボテッとした独特な字体がなんだかグロテスクだなと思って。文字がビジュアルに与える影響はとても大きいので、書体の選定やタイトルロゴはかなり重要です。作品の世界観を壊さないように、さまざまなアイデアを試します。「万引き家族」では、絵本作家のミロコマチコさんにタイトル文字を依頼しました。綺麗な文字では、温かいけどぎこちない映画の雰囲気を表せないと考えました。

「作品に触れるきっかけを増やせたら」

WWD:近年のSNSでは「日本の映画ポスターはつまらない」という声を見かけることもあります。大島さんはどうお考えですか?

大島:配給会社さんも僕たちもベストを尽くしてはいるのですが、万人に受け入れてもらうために中庸なものになってしまうこともあります。かつては劇場や雑誌など露出先が限られていたから、「これだ」というビジュアル1つを押し出すやり方が通用しました。しかし今はネットもSNSも広がり、露出先が多様化しているから、一つにこだわらなくて良い気もします。コアな映画ファンから、映画を全く見ない人、出演者が好きな人と本当にいろいろなレイヤーがいるから、それぞれに対して異なるビジュアルを用意するのが合理的だと思うのです。どれか一つでも面白いと思ってもらえて、SNSで拡散されたら、映画のヒットにもつながるから、チャレンジする価値はあるはずです。紙に印刷しなくても、デジタルのみで発信する手もあるので、予算的にも実現可能なはず。デザイナーの負担は大きいかもしれませんが、僕も可能であれば、異なるデザインをなるべく提案していきたいと思っています。

WWD:ファッションの仕事を担当されたことはありますか?

大島:デザイナーとして駆け出しの頃は、ファッションのカタログをよく作っていました。ユナイテッドアローズやベイクルーズなどのセレクトショップが多かったです。当時はSNSもなく、紙媒体がとても重要だったので、かなり実験的なデザインに挑戦していました。ページごとに紙の形状を変えたり、何度も折り畳んだ正方形に近い判型にしてみたり。海外ロケに行かせてもらうこともありました。

WWD:本当ですね、今のカタログにはない攻めたデザインばかりです。

大島:当時のカタログ作りの経験は、今のポスターやパンフレットのデザインにも生きています。「ミッドサマー」のパンフレットは、劇中に登場する聖典をモチーフにして、ページの端の形状に変化をつけました。これは、先ほどのカタログとリンクするアイデアです。当時とは時代背景も全然違うから、久しぶりに作ってみたら面白いかもしれませんね。

WWD:これからデザインしたい作品はありますか?

大島:挙げたらキリがありません(笑)。ここ最近は特に面白い映画がたくさんありますから。ポスターを作る一番の原動力も、映画の面白さをより多くの人に伝えること。これからも真摯に映画と向き合い、作品に触れるきっかけを増やすことができれば、デザイナー冥利につきますね。

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「眉毛もスタイリングしていいですか?」から始まるヘアサロンの新提案

ヘアスタイリング剤の領域で確かな実績を獲得してきたアリミノは、新ブランド「マークユー(MarkU)」を3月6日に発売する。同ブランドの最大の特徴は、ヘアスタイリング剤が2品、眉アイテムが2品というラインアップだ。具体的にいうと、ハードなのに毛先まで潤う“ジェルグリース”、熱ダメージをケアして毛先まで潤いと艶感を与える“ベースミルク”、眉の毛流れを整えて夕方までキープする“アイブロウワックス”、自眉と自然になじみ立体感を出す“アイブロウペンシル”の4品。ここでは、人気メンズサロン「フィフス(fifth)」の内田佳佑スタイリストと、今のメンズビューティをけん引する石川ユウキヘアメイクアーティストに、メンズトレンドと「マークユー」の特徴・使い方の提案などを聞いた。

内田スタイリストは、「マークユー」の特徴について「ヘアと同時に眉のスタイリングもできることが面白い。『眉の描き方が分からない』『眉が薄いのが悩み』など、お客さまから眉に関する相談は増加している。ヘアスタイリング剤でのケアやスタイル提案にプラスして、誰もが気になっている眉の提案もできる同ブランドは、メンズの身だしなみがより重要視される今の時代にとても強い」と語った。

ヘアスタイリング剤については、「“ジェルグリース”は髪とのなじみが良く、程よい艶感を出すことができる。“ベースミルク”を混ぜると、そこをより調整しやすくなる。“ベースミルク”は、軽めに仕上げたいスタイリングには最適。使い勝手が良いうえケアもしてくれるため、ダメージを気にする人が多い20〜30代男性には特におすすめだ。どんなに商品の性能が良くても、使うのはお客さまなので、普段使いしやすいモノでないと意味がない。単品での性能が良く、2品を混ぜて簡単にニュアンスや質感を変化できるのは、美容師としておすすめしやすいポイントだ」と話す。

また、トレンドとマッチしていることもポイントの1つだという。「今はトレンドとしてパーマをかける男性も非常に多い。動きのあるスタイルは“ジェルグリース”単体で作ることができるし、“ベースミルク”と混ぜて質感を調整してもいい。センターパートのワンカールスタイルだと、“ベースミルク”のみでも対応可能だ。パーマをかけるとパーマ残臭も気になりがちだが、清潔感のあるクリアインセンスの香りがパーマ残臭などもケアして、ニオイを気にならなくしてくれる。幅広いお客さまにおすすめでき、トレンドスタイルにもとても相性がいい逸品だと感じる」。

一方、眉アイテムについては石川ヘアメイクアーティストがコメント。「メンズカテゴリーにおいては、今ようやくスキンケアはポピュラーになってきたけど、メイクに関してはまだまだ“くすぐったさ”を感じる人が多い状況だ。その点、眉毛はごく簡単なお手入れで印象を大きく変えられるので、男性にとって日々の生活に取り入れやすいカテゴリーといえる」。

男性の、メイクに対するハードルを下げるのは、美容師やヘアメイクアップアーティストなど“プロ”の役割だという。「最近はSNSでの発信に注力するあまり、オフラインでの発信がやや弱まっているケースもある。ここはオフラインも含めてプロが一致団結して発信し、男性に『メイクは恥ずかしくない。やっていいんだ』と、背中を押してあげるべきだと思う。提案の仕方に関しては、男性にはロジックが好きな人が多い印象なので、例えば『眉頭を足すだけで、すごくキリリとした印象になれますよ。そうなると、ビジネスの場でも力強いプレゼンができますよ』といった感じで、ロジック立ててメリットを伝えてあげることが大事。タッチアップをする際は、『眉メイクをしてもいいですか?』というよりも、ヘアスタイリングの後で『眉毛もスタイリングしていいですか?』と提案する方がハードルが低い。つまり、『マークユー』がスタイリング剤が得意なメーカーから登場したことは、とても意味のあることだと思う」。

アイテムの使い方に関しては、「簡単に分けると、眉の毛量がある人には“アイブロウワックス”、毛量が少なくて“隙間”がある人には“アイブロウペンシル”がおすすめ。毛量が多いと、毛流れを作って均一に整えるだけで清潔感が出る。毛の隙間が空いていたり、眉頭の毛量が足りていなかったりする人には、毛を“描き足す”というよりは“毛一本一本の影を忍ばせる”イメージで、“アイブロウペンシル”を下から上に払うように動かすとうまくいく。カラーも、誰にでもなじみやすいアッシュ系の色なので、取り入れやすいと思う」という。

そして、美容室で眉の提案を取り入れるなら、早めに行うべきだとアドバイスする。「かっこ良くなる方法を10個知っている美容師と、3個知っている美容師なら、10個知っている美容師の方が絶対にいい。ヘアだけ仕上げて終わる美容師よりも、ヘアに合わせて『眉、少し足した方がかっこ良いですよ』とか、『ファッションに合わせてネイルもしていいかも』などと提案できる美容師の方が、『君はもっとかっこ良くなれる』というメッセージを送ることができる。美容室に限らず、われわれサービス業は、新しいこと提案しないと衰退していってしまう。そして他店が先に始めると、お客さまに『あそこではこういうサービスもやってくれたのに……』と思われてしまう可能性もある。スタートするに当たり、2アイテムから簡単に提案できる『マークユー』は、エントリーに適していると思う」。

問い合わせ先
アリミノ お客さま窓口
0120-488-712
受付時間/9:00~17:00(祝日、年末年始、夏季休業期間を除く月~金曜日)

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【インタビュー】“ツウ”な楽しみ方を知っている三吉彩花、韓国の奥を歩く

モデルとしてデビューし、ネットフリックスシリーズ「今際の国のアリス」のアン役で韓国でも一躍有名になった三吉彩花。2021年には独立映画監督デビュー、最近では映画「ナックルガール」で女性ボクサー、橘蘭役の顔も見せた彼女は、「ティファニー(TIFFANY & CO.)」の日本アンバサダーであり、韓国料理の“スンデグッ”にあわせて焼酎を一杯飲むという“ツウ”な楽しみ方を知っていると評判の韓国ラバーだ。最近、海外旅ドラマ「地球の歩き方」(制作:テレビ大阪、テレコムスタッフ)の撮影で韓国を訪れた三吉彩花に会い、撮影の裏話と共に彼女が惚れた韓国の魅力についての話を聞いた。

WWD KOREA(以下、WWD):映画「ナックルガール」公開後、どのように過ごした?

三吉彩花(以下、三吉): 仕事とプライベートの適切なバランスを保っています。 オン/オフを大切にするタイプなので、とってもありがたい今日この頃です。 今年は去年よりも韓国を訪問する機会が多くなりそうで、今から楽しみです。

WWD:韓国ではネットフリックスシリーズ「今際の国のアリス」のアン役で注目され、2021年には自身が監督した独立映画も公開された。 挑戦をやめない三吉さんが最近最も関心を持っている分野は?

三吉:強くてたくましい女性キャラクターとアクションに特に関心がありますが、「ナックルガール」で女性ボクサー、橘蘭を演じながら多くのことを学びました。 韓国の監督、作家さんと初めて一緒に仕事をした作品なので、より意味があったと思います。

WWD:23年だけでなんと11回も韓国を訪問したが、インスタグラムに「GENTLE HIGH SCHOOL」(注:「ジェントルモンスター」のポップアップ)の写真をアップしていた。普段は仕事以外では、韓国でどのように過ごしている?

三吉:ずっと食べたり飲んだり...(笑)韓国の友だちに会うと、ご飯を食べて2次、3次会まで行くこともあります。最近は3泊4日くらい長く滞在することも多いので、マッサージや漢方薬など、体をリラックスさせる文化にも興味を持つようになりました。良いところがあればおすすめを教えてください。

WWD:韓国で一番美味しかった食べ物を一つだけ挙げるとしたら?

三吉:“スンデ”が本当に大好きで、“スンデグッ”にチャミスルは絶対に外せません(笑)。お肉よりもお魚が好きなので、海鮮物やお刺身も好きです。

WWD:韓国に住むことが目標だと聞いたが、その夢はまだある?韓国で暮らしたいと思ったきっかけを教えてほしい。

三吉:仕事もあるので、1週間以上韓国に滞在することがよくあるのですが、そのたびに、ホテルに帰るよりも自分の家に帰りたいと思うようになったんです。 最近は大きく「目標」というよりは、これから韓国での活動も頑張って、機会があれば自分の空間を作りたいと思っています。

WWD:BIGBANGのG-DRAGONからTWICEまで、K-POPの大ファンだと聞くが、最近注目しているK-POPグループやお気に入りの曲があれば教えてほしい。

三吉:どのアーティストもそれぞれ魅力が違うのでいろいろ聴いていますが、最近はストレイキッズ(Stray Kids)やカード(KARD)、ビビ(BIBI)、ミラニ(MIRANI)の曲が特に好きで、毎日聴いています。

WWD:似ている様で違う韓国と日本だが、日本人として感じる、微妙に違う韓国文化は?

三吉:やっぱり韓国の方は喜怒哀楽がはっきりしていて、その点が好きです。表現の幅が広いというか、私も韓国に行くと、自分でも知らず知らずのうちにいつもより感情を表現する事ができている様な気がします。

WWD:「ティファニー(TIFFANY & CO.)」の日本アンバサダーでもあるあなたのファッション哲学は?これだけは譲れないというスタイルなどはあるか?

三吉:私のワードローブは黒が一番多いんです。 無難な黒でも、「ティファニー」のジュエリーを重ね着けしてきれいに着こなすようにしています。メンズライクなトムボーイスタイルも好きです。

WWD:では、メイクは?すっぴんでもマスカラは必ずするなど、ちょっとしたルーティンもある?

三吉:「肌」が重要だと考えています。 服を着たときに肌が出るのは当たり前なので、より健康的に見せたいと思っています。

WWD:1月13日に放送を開始した真夜中ドラマ「地球の歩き方」の撮影の為に、最近韓国を訪れたが番組について教えてほしい。

三吉:「地球の歩き方」は、ドキュメンタリーとドラマを組み合わせた新しい形式の番組です。 各国を訪れ、現地の文化を感じ、さまざまなハプニングを経験しながら、その国本来の魅力をありのまま伝えようとする番組です。

WWD:今回の旅は今までの韓国訪問とはかなり違ったのでは。韓国の「お母さんたち」と直接会ってたくさんの会話をしたと聞いた。

三吉:いい意味で衝撃そのものでした。実際、私が韓国のお母さんたちと話をする機会はほとんどないじゃないですか。なのに、今回会ってみたら、日本から来た私をまるで娘のように優しく接してくれる姿に恩返しをしたい気持ちになりました。

WWD:海女さんに会ったり、一般家庭で本物の家庭料理を食べたりと、韓国の本当の「情」を感じることができる時間だっただけに、印象に残ったことも多かったのでは。

三吉:そうですね。 ある日、ふと「日本から来た27歳の平凡な私をなぜそこまで良くしてくれるのだろう」と思ったんです。 お母さんたちが生きてきた人生と経験を聞いて胸がギュッと熱くなって、私に話してくれたことの意味を考えさせられました。 今回の撮影をきっかけに、私も他の人を温かく抱きしめることができる、器が広い人にならなければと思いました。

WWD: 今回新しく知った場所や、絶対また来たいと思った場所は?

三吉:撮影の中で出会ったおばさんたちにはまた会ってお礼を言いたいですし、特に済州島で会ったおばさんとマッサージをしてくれたノ・ウンヒ先生にはぜひ会いたいです。広蔵市場とカフェ「MOMO」は、私が韓国に来るたびに立ち寄る場所なので、おすすめの場所です。

WWD:今年新たに決心したことがあれば教えてほしい。

三吉:自分自身をもっと大切にし、発展を止めないこと。他の人に愛を与えるためには、まずありのままの自分と向き合う必要がありますよね。そうやって、もう少し客観的な目線で世の中を生きていきたいです。

WWD:最後に韓国のファンに一言お願いしたい。

三吉:「今際の国のアリス」や「ナックルガール」まで、作品を通じて韓国でもたくさん知ってもらえる機会ができたようで、本当に感謝しています。 これからもさまざまなコンテンツを通してお会いできるのはもちろん、ファンミーティングのように直接お会いできる日を楽しみにしています。

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【インタビュー】“ツウ”な楽しみ方を知っている三吉彩花、韓国の奥を歩く

モデルとしてデビューし、ネットフリックスシリーズ「今際の国のアリス」のアン役で韓国でも一躍有名になった三吉彩花。2021年には独立映画監督デビュー、最近では映画「ナックルガール」で女性ボクサー、橘蘭役の顔も見せた彼女は、「ティファニー(TIFFANY & CO.)」の日本アンバサダーであり、韓国料理の“スンデグッ”にあわせて焼酎を一杯飲むという“ツウ”な楽しみ方を知っていると評判の韓国ラバーだ。最近、海外旅ドラマ「地球の歩き方」(制作:テレビ大阪、テレコムスタッフ)の撮影で韓国を訪れた三吉彩花に会い、撮影の裏話と共に彼女が惚れた韓国の魅力についての話を聞いた。

WWD KOREA(以下、WWD):映画「ナックルガール」公開後、どのように過ごした?

三吉彩花(以下、三吉): 仕事とプライベートの適切なバランスを保っています。 オン/オフを大切にするタイプなので、とってもありがたい今日この頃です。 今年は去年よりも韓国を訪問する機会が多くなりそうで、今から楽しみです。

WWD:韓国ではネットフリックスシリーズ「今際の国のアリス」のアン役で注目され、2021年には自身が監督した独立映画も公開された。 挑戦をやめない三吉さんが最近最も関心を持っている分野は?

三吉:強くてたくましい女性キャラクターとアクションに特に関心がありますが、「ナックルガール」で女性ボクサー、橘蘭を演じながら多くのことを学びました。 韓国の監督、作家さんと初めて一緒に仕事をした作品なので、より意味があったと思います。

WWD:23年だけでなんと11回も韓国を訪問したが、インスタグラムに「GENTLE HIGH SCHOOL」(注:「ジェントルモンスター」のポップアップ)の写真をアップしていた。普段は仕事以外では、韓国でどのように過ごしている?

三吉:ずっと食べたり飲んだり...(笑)韓国の友だちに会うと、ご飯を食べて2次、3次会まで行くこともあります。最近は3泊4日くらい長く滞在することも多いので、マッサージや漢方薬など、体をリラックスさせる文化にも興味を持つようになりました。良いところがあればおすすめを教えてください。

WWD:韓国で一番美味しかった食べ物を一つだけ挙げるとしたら?

三吉:“スンデ”が本当に大好きで、“スンデグッ”にチャミスルは絶対に外せません(笑)。お肉よりもお魚が好きなので、海鮮物やお刺身も好きです。

WWD:韓国に住むことが目標だと聞いたが、その夢はまだある?韓国で暮らしたいと思ったきっかけを教えてほしい。

三吉:仕事もあるので、1週間以上韓国に滞在することがよくあるのですが、そのたびに、ホテルに帰るよりも自分の家に帰りたいと思うようになったんです。 最近は大きく「目標」というよりは、これから韓国での活動も頑張って、機会があれば自分の空間を作りたいと思っています。

WWD:BIGBANGのG-DRAGONからTWICEまで、K-POPの大ファンだと聞くが、最近注目しているK-POPグループやお気に入りの曲があれば教えてほしい。

三吉:どのアーティストもそれぞれ魅力が違うのでいろいろ聴いていますが、最近はストレイキッズ(Stray Kids)やカード(KARD)、ビビ(BIBI)、ミラニ(MIRANI)の曲が特に好きで、毎日聴いています。

WWD:似ている様で違う韓国と日本だが、日本人として感じる、微妙に違う韓国文化は?

三吉:やっぱり韓国の方は喜怒哀楽がはっきりしていて、その点が好きです。表現の幅が広いというか、私も韓国に行くと、自分でも知らず知らずのうちにいつもより感情を表現する事ができている様な気がします。

WWD:「ティファニー(TIFFANY & CO.)」の日本アンバサダーでもあるあなたのファッション哲学は?これだけは譲れないというスタイルなどはあるか?

三吉:私のワードローブは黒が一番多いんです。 無難な黒でも、「ティファニー」のジュエリーを重ね着けしてきれいに着こなすようにしています。メンズライクなトムボーイスタイルも好きです。

WWD:では、メイクは?すっぴんでもマスカラは必ずするなど、ちょっとしたルーティンもある?

三吉:「肌」が重要だと考えています。 服を着たときに肌が出るのは当たり前なので、より健康的に見せたいと思っています。

WWD:1月13日に放送を開始した真夜中ドラマ「地球の歩き方」の撮影の為に、最近韓国を訪れたが番組について教えてほしい。

三吉:「地球の歩き方」は、ドキュメンタリーとドラマを組み合わせた新しい形式の番組です。 各国を訪れ、現地の文化を感じ、さまざまなハプニングを経験しながら、その国本来の魅力をありのまま伝えようとする番組です。

WWD:今回の旅は今までの韓国訪問とはかなり違ったのでは。韓国の「お母さんたち」と直接会ってたくさんの会話をしたと聞いた。

三吉:いい意味で衝撃そのものでした。実際、私が韓国のお母さんたちと話をする機会はほとんどないじゃないですか。なのに、今回会ってみたら、日本から来た私をまるで娘のように優しく接してくれる姿に恩返しをしたい気持ちになりました。

WWD:海女さんに会ったり、一般家庭で本物の家庭料理を食べたりと、韓国の本当の「情」を感じることができる時間だっただけに、印象に残ったことも多かったのでは。

三吉:そうですね。 ある日、ふと「日本から来た27歳の平凡な私をなぜそこまで良くしてくれるのだろう」と思ったんです。 お母さんたちが生きてきた人生と経験を聞いて胸がギュッと熱くなって、私に話してくれたことの意味を考えさせられました。 今回の撮影をきっかけに、私も他の人を温かく抱きしめることができる、器が広い人にならなければと思いました。

WWD: 今回新しく知った場所や、絶対また来たいと思った場所は?

三吉:撮影の中で出会ったおばさんたちにはまた会ってお礼を言いたいですし、特に済州島で会ったおばさんとマッサージをしてくれたノ・ウンヒ先生にはぜひ会いたいです。広蔵市場とカフェ「MOMO」は、私が韓国に来るたびに立ち寄る場所なので、おすすめの場所です。

WWD:今年新たに決心したことがあれば教えてほしい。

三吉:自分自身をもっと大切にし、発展を止めないこと。他の人に愛を与えるためには、まずありのままの自分と向き合う必要がありますよね。そうやって、もう少し客観的な目線で世の中を生きていきたいです。

WWD:最後に韓国のファンに一言お願いしたい。

三吉:「今際の国のアリス」や「ナックルガール」まで、作品を通じて韓国でもたくさん知ってもらえる機会ができたようで、本当に感謝しています。 これからもさまざまなコンテンツを通してお会いできるのはもちろん、ファンミーティングのように直接お会いできる日を楽しみにしています。

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英国王室や天皇家が支持するダイヤモンド「ロイヤル アッシャー」が創業170周年 6代目が語る代々受け継がれる“輝き”

オランダ発ダイヤモンドジュエラー「ロイヤル アッシャー(ROYAL ASSCHER)」は今年、創業170周年を迎えた。同ブランドは、ジョセフ・アイザック・アッシャーが1854年オランダ・アムステルダムでダイヤモンドのカットと研磨を行う会社として創業。20世紀初頭には、世界最大のダイヤモンド原石である“カリナン”(3106カラット)のカットをはじめ、ロイヤル・アッシャーカットなどオリジナルのカットを開発し、ダイヤモンド・カッターズ・ブランドとして世界の王族から支持されるようになった。同ブランドは天皇家とも関係が深く、1921年に皇太子裕仁親王(昭和天皇)、53年に皇太子明仁親王(上皇階下昭仁)がオランダの本社を訪問。1980年と2011年には、オランダ王室から“ロイヤル”の称号を授与されている。170周年を記念するイベントのために来日した、アッシャー家6代目でロイヤル・アッシャーの指揮をとるマイク・アッシャー共同代表とリタ・アッシャー共同代表に話を聞いた。

代々に渡りダイヤモンドの究極の輝きを追求

WWD:「ロイヤル アッシャー」のブランド哲学は?

リタ・アッシャー=ロイヤル アッシャー共同代表(以下、リタ):われわれがカットするダイヤモンドは、他のダイヤモンドよりも美しく輝く。より美しく輝くダイヤモンドをカットするのがわれわれ一族のDNAであり、ブランド哲学だ。父が開発したロイヤル アッシャー カットを始め、代々、美しいダイヤモンドのカットを生み出してきた。われわれは5つのダイヤモンドのカットの特許を持っている。各面が完璧にカットされたダイヤモンドだけが特許を与えられる。

マイク・アッシャー=ロイヤル アッシャー共同代表(以下、マイク):原石の歩留まり(カットしたときの重量)を気にせず、ダイヤモンドの美しさにこだわってカットしている点。コストよりも美しさが重要。輝きや美しさを感じられないダイヤモンドには価値がないという考えからだ。

WWD:ロイヤル アッシャーが他のダイヤモンドジュエラーと違う点は?

マイク:他のダイヤモンドカッターは歩留まりを重要視するが、われわれは、ダイヤモンドの輝きにフォーカスしている点。他社は、ダイヤモンドを商品として販売するが、われわれは、6代に渡り、ダイヤモンドの輝きをどうやったら引き出せるか研究し続けてきた。極限までそれにこだわるのがロイヤル アッシャーだ。他社は歴史がないし、“ロイヤル”のタイトルを持っているのは、われわれだけ。

リタ:ダイヤモンドのカットや研磨に対する情熱と技術力は、どこにも負けない。革新を継続しながら、美しいダイヤモンドを提供し続けている。原石から魔法のような過程を経て生み出されるダイヤモンドの輝き。顧客もダイヤモンドを見れば、その魔法を感じるはずだ。

WWD:世界の王室から支持される理由は?

リタ:イギリス王室の王冠に飾られている“カリナン”をカットした偉大なダイヤモンドカッターだから。われわれが大切にしている品質の高さと美しさは、王室からも認められている。オランダのマキシマ王妃(Queen Maxima)の婚約指輪に使用されているオレンジのダイヤモンドは私の父が王室に販売したものだ。オレンジはオランダの王室を象徴するカラー。父はオレンジ色のダイヤモンドの原石を見つけてカットして、オランダのベアトリクス女王(Beatrix)に販売し、息子のウィレム=アレキサンダー国王(Willem-Alexander)に引き継がれ婚約指輪になった。

ビジネスと誇り受け継ぎ、ダイヤモンドの可能性を広げる

WWD:ダイヤモンドカッターとして創業したが、ジュエリー販売を始めた理由は?

マイク:リタが入社したのが大きい。女性が購入するのはダイヤモンドルースではなく、ダイヤモンドジュエリー。だから、リタがジュエリーのデザインを始めジュエリーとして販売するようになった。

リタ:国によって好まれるデザインは異なるけど、われわれは、主役であるセンターストーンにフォーカスしたデザインのジュエリーを提供している。今は、世界中のデザイナーと共にコレクションをデザインしている。

WWD:ダイヤモンドの9割以上がインドで研磨されているが、どこで研磨しているか?

マイク:アムステルダム、インドで研磨している。大きい原石は米ニューヨークでテクノロジーを駆使してカットしている。全てのダイヤモンドルースはアムステルダムに運ばれ、われわれ一族が品質の管理をしている。

WWD:現在何ヵ国で販売しているか?

マイク:25カ国以上。インドネシアでも販売を開始した。

WWD:注力していきたいカテゴリーは?

リタ:エンゲージメントリング。われわれのジュエリービジネスの75%がブライダルジュエリーだ。

WWD:日本市場における戦略は?

リタ:ダイヤモンドジュエリーのブランドとしてナンバーワンになること。あらゆる人に「ロイヤル アッシャー」のダイヤモンドの美しさを理解してもらい、ファンになってもらいたい。

われわれが持つダイヤモンドへの愛と情熱を消費者に伝えたい。ダイヤモンドを見ただけで、「ロイヤル アッシャー」と分かる、そのような商品を提供したい。われわれは歴史があるブランド。代々受け継いできたダイヤモンドに対する情熱と技術、それから生まれる輝きを、小売店に伝えるために、国内の全ての店舗を訪問する。父もそうだったが、小売店との関係性を大切にし、美しいダイヤモンドを扱うことの喜びを分かち合いたい。

WWD:今後、どのようにブランドを成長させていきたいか?

マイク:家族経営のビジネスは、次の代へ引き継ぐためのもの。引き継ぐのはビジネスだけでない。われわれが持つ誇りも引き継ぎ、先代よりも努力してより良い未来を築いていくことが重要だ。家族経営のビジネスは、自分の子どもを育てるように尊く、大切なもの。永遠の信頼がある。

リタ:商業的な利益だけを追求するのとは違う。家族で、未来を見据えて何がベストかとことん話合う。革新も大切。ダイヤモンドにおける美の限界を押し広げるのがわれわれの役目だ。

6代目として新しいカットの特許を取ろうとしている最中だ。そのうち、発表できると思う。

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「ヴェイン」は“第二の家”で素をさらけ出す 「かっこつけない」等身大のショー

榎本光希デザイナーによるメンズブランド「ヴェイン(VEIN)」は2月5日、全25ルックからなる2024-25年秋冬コレクションを発表した。榎本デザイナーは21年にメンズブランド「アタッチメント(ATTACHMENT)」を創業者の熊谷和幸デザイナーから引き継ぎ、2ブランド合同のショーを続けた後、2024年春夏コレクションからは「ヴェイン」単独での発表に切り替え、今シーズンは2度目の単独ショーとなった。

ラテン語で「あいさつ」がテーマ
会場にアトリエを選んだ理由

榎本デザイナーが今回会場に選んだのは、原宿に構えるアトリエだった。スタッフが日々服作りに励むスペースから、壁一枚を挟んで隣接したショールームを解放し、ゲストを招き入れる。代々木第二体育館や国立競技場で開催した過去のショーから一転して、今回は観客同士が身を寄せ合ったとしても70席ほどにしかならないキャパシティーだ。

その理由は、ショーのテーマ“ave(アヴェ)”にある。ラテン語で「歓迎」「敬意」を表し、気軽なあいさつにも使われる言葉に、榎本デザイナーは「服を介してコミュニケーションを取る楽しさ」を重ねたという。「あいさつは対人関係における1番最初のコミュニケーションであり、ショーはブランドにとって1番最初のあいさつ。第二の家でもあるアトリエでショーを開くことで、自分の素をさらけ出し、『ヴェイン』の親密感をゲストにも感じてほしかった」。

ショーは、黒いジャケットに同色のコート、ストレートデニムを合わせたルックでスタート。榎本デザイナーは「『ヴェイン』らしくなくて一番好き。クリーンでリラクシングな雰囲気のものを選んだ」という。今回のコレクションでは、カジュアルやストリートなどの定石から外れて自由になることを意識したという。ビンテージ加工を施した革靴や、裾のリブをダメージ加工したMA-1、ダメージ加工したフーディーが繰り返し登場したほか、大きくドロップした肩のラインが特徴のジップアップのニット、パワーショルダーのジャケットなどによって、エレガントなムードも加える。

ブランドコンセプトである「構造表現主義(structural expressionism)」も忘れない。洋服の構造をデザインするアイテムには、ストラップが左右の身頃間を横断するジャケットや、膝部分をカットオフして切り替えたジーンズやスエットパンツ、ドローコードで裾を絞り、形を変えるミリタリーパンツが並ぶ。トレンチコートのウエスト下部分のペンシルスカートや、ラップスカートタイプのバッグで新しい洋服の可能性を提案した。

等身大のクリエイション
「ドーンピンクは始まりの色」

榎本デザイナーは「『アタッチメント』を手掛け出してしばらくは、キャパオーバーになっていたが、最近は心の余裕が出てきた」といい、家族や友人と過ごす時間からインスピレーションを得たディテールも落とし込んでいる。例えば知人と開催したサッカーイベントの思い出を、1990年代のサッカーユニホームをサンプリングしたレースアップシャツで表現したほか、子どもを保育園に迎えに行く際に、多摩川から見える夕焼けを模したピンクカラーで再現。「これは“朝焼け”色でもある。“始まり”の意味を込め、『ドーンピンク』と名付けた」。

榎本デザイナーの「自由なスタイリングで」というオーダーには、スタイリストの髙田勇人が応えた。ニットトップスをモデルの体に巻きつけたり、くるぶし近くまでマフラーを垂らしたり。レザー地のストールを固結びして作った大きなコブに至っては、「僕らのノリ」と笑う。モデルの個性をスタイリングに盛り込み、同じアイテムでも複数の見え方が生まれるように演出した。

榎本デザイナーがフィナーレに登場し、小走りで会場を後にして間もなく、照明と音楽が突然落とされる。「初めて会う人とあいさつをした後、『……で、これからどうする?』と次の会話を切り出す緊張感を表現したかった」。19年のブランドスタートから5年目を迎え、新たに始めた“会話”には、デザイナーの「かっこつけない」等身大なクリエイションが詰まっている。

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未来に向けて「突き抜ける」【プラザスタイル 鈴木努カンパニーエグゼクティブ プレジデント】

PROFILE: 鈴木努/スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニー カンパニーエグゼクティブ プレジデント

鈴木努/スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニー カンパニーエグゼクティブ プレジデント
PROFILE: (すずき・つとむ)大手ファッション企業でブランド責任者や支店長、マッシュスタイルラボで執行役員などを歴任。2022年8月にプラザスタイル カンパニーに入社し、23年6月から現職 PHOTO : SHUNICHI ODA

スタイリングライフ・ホールディングスの社内カンパニーであるプラザスタイルは、ライフスタイルストア「プラザ」を展開し、世代を超えてファンを獲得している。2023年6月から舵取りを始めた鈴木努カンパニーエグゼクティブ プレジデントの下、増収増益と安定した業績を残すが、24年は攻めのフェーズとして「突き抜ける」とさらなる飛躍を宣言する。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

守りの姿勢から脱却し
24年は新事業領域を拡張

WWDJAPAN(以下、WWD):昨年6月にトップに就任して第一に取り組んだ課題は。

鈴木努カンパニーエグゼクティブ プレジデント(以下、鈴木):プラザは安定した売り上げが続いていたがゆえ、社内全体が守りの姿勢になっていた。そこで最初に社内の雰囲気を変えることに着手した。「失敗してもいい」「挑戦してもいい」というムードを作ることに力を注いだ1年だった。これまでの「プラザ」の枠を取っ払い、ただ商品を売るだけではなく、人々の暮らしをもっと楽しくハッピーにするお手伝いをするのが、われわれの役目であると社員には伝え続けている。もちろん一方通行に伝えるだけでは意味がないので、朝は全部署を回って笑顔で挨拶するなど基本的なことを大切に社員とコミュニケーションを頻繁に取るようにしている。また、働きやすい環境作りの1つとして日本ロレアルの「#髪色自由化プロジェクト」に賛同。昨春から販売員スタッフのヘアカラールールを見直した結果、スタッフの職場満足度が上がった。現在は満足度76%と高水準を記録しており、これは今の当社を物語る数字といってもいいだろう。

WWD:その中で23年の商況は?

鈴木:外出機会の増加で、メイクアップアイテムを中心に化粧品の売り上げが伸長した。また、記録的な猛暑の影響も後押しし、これまで外出自粛の影響で買い控えがあった日傘をはじめ、キャップやサングラスなどファッション雑貨の動きが顕著だった。その結果、プラザスタイル全体で23年4〜9月期の売上高は前年同期比12%増と伸長し増収増益で、コロナ禍前の水準までほぼ回復した。

WWD:23年は消費者の需要に変化があったか。

鈴木:プラザの強みはファッション雑貨からコスメ、フードまでライフスタイル全般に対応していることだ。その時々のニーズに合わせてMDを変えているが、いまは売り上げ全体の3分の2を占める化粧品の売り場を広げている。プラザでは化粧品の先行販売や限定品を多く扱っており、自分用に加え友人の分も購入する傾向が強い。また、再会する友人への手土産として選ぶ人も多く、プチギフトのニーズが高まっている。

WWD:時流が変わった中で24年に注力することは。

鈴木:23年は意識改革の土台作りを行ったが、24年は攻めのフェーズとして「突き抜ける」宣言をする。スタイリングライフグループは、成長戦略として新事業領域への挑戦を掲げている。プラザは一言でいうと仕入れビジネス。どこでも買える商品なら、消費者は1円でも安く他店舗やECで購入する。ならば、プラザでしか買えない商品を増やせば、おのずと足が向いてくれる。そこで、今年はプライベートブランド(PB)の開発に本腰を入れる。秋には初のPBとして化粧品とルームウエアのブランドをローンチする予定だ。ゆくゆくはブランド単体で商業施設などへの出店を狙うべく、ブランドネームには「プラザ」の冠を付けずに育成していく。もう1つの成長戦略の柱として、ライセンス事業を強化する。「バーバパパ」「スポンジ・ボブ」「ケアベア」「スージー・ズー」など10種のキャラクターライセンスを保有しているが、キャラクタービジネスはさらなる成長の可能性が期待できる。キャラクターの魅力を伝え、さらにはファンのタッチポイント創出のために各キャラクターのオフィシャルストアを構想している。年内にトライアルでキャラクターショップをオープンする予定だ。

WWD:事業ポートフォリオを再構築する。

鈴木:現在の売り上げ構成は、プラザの直営店事業とフランチャイズ事業で大半を占め、残りをライセンス事業と大きく偏っている。全体売り上げの30%をプラザ以外で賄うためにライセンス事業の強化に加え、海外ブランドのM&Aも積極的に挑戦したい。また、プラザの売り上げ構成比も30%はPBにしたい。さらに海外展開にも再度挑戦し、プラザスタイル カンパニーの10%を海外売り上げにするのが目標だ。

WWD:具体的な施策は。

鈴木:従来のプラザの売り場面積は約264〜330㎡というフォーマットがあったが、昨年10月に赤坂Bizタワー1階にオープンした新業態「プラザ ニューススタンド」は約83㎡とコンパクトながらも成功している。同様の広さであれば、地方百貨店や駅ナカなどあらゆる場所に出店のチャンスがある。また、送料のネックもありEC化率が低いという課題もあったが、「プラザ ニューススタンド」ではECで注文した商品を同店で受け取ることができる“クリック アンド コレクト”を導入した。この新サービスの普及にも努めていく。2月にはプラザのリブランディングを行い、新ミッションも発表する。社長就任2年目はPBとライセンスを軸に、10年先の未来に向けて突き抜けていく。

会社概要

スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニー
PLAZASTYLE

1966年創立。スタイリングライフ グループの雑貨小売事業を展開する。同年、米国スタイルのドラッグストアとして、東京・銀座のソニービルに日本初の輸入生活雑貨店「プラザ」(当時ソニープラザ)第1号店をオープン。「たのしさ 探そう 手渡そう。Always News」をスローガンに掲げ、買い物体験を通して消費者の楽しさをシェアするサポートを行う。現在は直営店事業、フランチャイズ事業、ライセンス事業を展開

問い合わせ先
スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニー
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未来に向けて「突き抜ける」【プラザスタイル 鈴木努カンパニーエグゼクティブ プレジデント】

PROFILE: 鈴木努/スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニー カンパニーエグゼクティブ プレジデント

鈴木努/スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニー カンパニーエグゼクティブ プレジデント
PROFILE: (すずき・つとむ)大手ファッション企業でブランド責任者や支店長、マッシュスタイルラボで執行役員などを歴任。2022年8月にプラザスタイル カンパニーに入社し、23年6月から現職 PHOTO : SHUNICHI ODA

スタイリングライフ・ホールディングスの社内カンパニーであるプラザスタイルは、ライフスタイルストア「プラザ」を展開し、世代を超えてファンを獲得している。2023年6月から舵取りを始めた鈴木努カンパニーエグゼクティブ プレジデントの下、増収増益と安定した業績を残すが、24年は攻めのフェーズとして「突き抜ける」とさらなる飛躍を宣言する。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

守りの姿勢から脱却し
24年は新事業領域を拡張

WWDJAPAN(以下、WWD):昨年6月にトップに就任して第一に取り組んだ課題は。

鈴木努カンパニーエグゼクティブ プレジデント(以下、鈴木):プラザは安定した売り上げが続いていたがゆえ、社内全体が守りの姿勢になっていた。そこで最初に社内の雰囲気を変えることに着手した。「失敗してもいい」「挑戦してもいい」というムードを作ることに力を注いだ1年だった。これまでの「プラザ」の枠を取っ払い、ただ商品を売るだけではなく、人々の暮らしをもっと楽しくハッピーにするお手伝いをするのが、われわれの役目であると社員には伝え続けている。もちろん一方通行に伝えるだけでは意味がないので、朝は全部署を回って笑顔で挨拶するなど基本的なことを大切に社員とコミュニケーションを頻繁に取るようにしている。また、働きやすい環境作りの1つとして日本ロレアルの「#髪色自由化プロジェクト」に賛同。昨春から販売員スタッフのヘアカラールールを見直した結果、スタッフの職場満足度が上がった。現在は満足度76%と高水準を記録しており、これは今の当社を物語る数字といってもいいだろう。

WWD:その中で23年の商況は?

鈴木:外出機会の増加で、メイクアップアイテムを中心に化粧品の売り上げが伸長した。また、記録的な猛暑の影響も後押しし、これまで外出自粛の影響で買い控えがあった日傘をはじめ、キャップやサングラスなどファッション雑貨の動きが顕著だった。その結果、プラザスタイル全体で23年4〜9月期の売上高は前年同期比12%増と伸長し増収増益で、コロナ禍前の水準までほぼ回復した。

WWD:23年は消費者の需要に変化があったか。

鈴木:プラザの強みはファッション雑貨からコスメ、フードまでライフスタイル全般に対応していることだ。その時々のニーズに合わせてMDを変えているが、いまは売り上げ全体の3分の2を占める化粧品の売り場を広げている。プラザでは化粧品の先行販売や限定品を多く扱っており、自分用に加え友人の分も購入する傾向が強い。また、再会する友人への手土産として選ぶ人も多く、プチギフトのニーズが高まっている。

WWD:時流が変わった中で24年に注力することは。

鈴木:23年は意識改革の土台作りを行ったが、24年は攻めのフェーズとして「突き抜ける」宣言をする。スタイリングライフグループは、成長戦略として新事業領域への挑戦を掲げている。プラザは一言でいうと仕入れビジネス。どこでも買える商品なら、消費者は1円でも安く他店舗やECで購入する。ならば、プラザでしか買えない商品を増やせば、おのずと足が向いてくれる。そこで、今年はプライベートブランド(PB)の開発に本腰を入れる。秋には初のPBとして化粧品とルームウエアのブランドをローンチする予定だ。ゆくゆくはブランド単体で商業施設などへの出店を狙うべく、ブランドネームには「プラザ」の冠を付けずに育成していく。もう1つの成長戦略の柱として、ライセンス事業を強化する。「バーバパパ」「スポンジ・ボブ」「ケアベア」「スージー・ズー」など10種のキャラクターライセンスを保有しているが、キャラクタービジネスはさらなる成長の可能性が期待できる。キャラクターの魅力を伝え、さらにはファンのタッチポイント創出のために各キャラクターのオフィシャルストアを構想している。年内にトライアルでキャラクターショップをオープンする予定だ。

WWD:事業ポートフォリオを再構築する。

鈴木:現在の売り上げ構成は、プラザの直営店事業とフランチャイズ事業で大半を占め、残りをライセンス事業と大きく偏っている。全体売り上げの30%をプラザ以外で賄うためにライセンス事業の強化に加え、海外ブランドのM&Aも積極的に挑戦したい。また、プラザの売り上げ構成比も30%はPBにしたい。さらに海外展開にも再度挑戦し、プラザスタイル カンパニーの10%を海外売り上げにするのが目標だ。

WWD:具体的な施策は。

鈴木:従来のプラザの売り場面積は約264〜330㎡というフォーマットがあったが、昨年10月に赤坂Bizタワー1階にオープンした新業態「プラザ ニューススタンド」は約83㎡とコンパクトながらも成功している。同様の広さであれば、地方百貨店や駅ナカなどあらゆる場所に出店のチャンスがある。また、送料のネックもありEC化率が低いという課題もあったが、「プラザ ニューススタンド」ではECで注文した商品を同店で受け取ることができる“クリック アンド コレクト”を導入した。この新サービスの普及にも努めていく。2月にはプラザのリブランディングを行い、新ミッションも発表する。社長就任2年目はPBとライセンスを軸に、10年先の未来に向けて突き抜けていく。

会社概要

スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニー
PLAZASTYLE

1966年創立。スタイリングライフ グループの雑貨小売事業を展開する。同年、米国スタイルのドラッグストアとして、東京・銀座のソニービルに日本初の輸入生活雑貨店「プラザ」(当時ソニープラザ)第1号店をオープン。「たのしさ 探そう 手渡そう。Always News」をスローガンに掲げ、買い物体験を通して消費者の楽しさをシェアするサポートを行う。現在は直営店事業、フランチャイズ事業、ライセンス事業を展開

問い合わせ先
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美容師に寄り添うDXでサロンの価値を高める【ミルボン 坂下秀憲社長】

PROFILE: 坂下秀憲/ミルボン社長

坂下秀憲/ミルボン社長
PROFILE: (さかした・ひでのり)1976年2月3日生まれ、千葉県出身。2001年に中央大学大学院の理工学研究科修士課程を修了後、同年にミルボンに入社。マーケティング部商品企画課や経営企画室マネージャーなどを経て、10年にミルボンUSAの社長に。帰国後18年に経営戦略部長に就任し「milbon:iD」の立ち上げに関わる。22年に取締役 経営戦略部長・コスメティクス企画・情報企画担当に就任、24年1月1日より現職 PHOTO : YOHEI KICHIRAKU

ミルボンは美容室向け化粧品メーカーの最大手であり、グローバル展開や化粧品事業への進出をいち早く遂行するなどヘア業界をけん引する存在だ。1月1日に、BtoBtoC型のオンラインストア「milbon:iD」を立ち上げた坂下秀憲氏が社長に就任。デジタルを活用し、美容師に寄り添った次世代サロンの提案に力を注ぐ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

美容室とともに
新しい経済圏を作っていく

WWDJAPAN(以下、WWD):社長就任で変えること、変えないことは?

坂下秀憲社長(以下、坂下):23年10月に社長就任を発表した時は美容業界内外から多くのメッセージをいただいた。その一つ一つに意気込みなどを添えて返信したが、共通して記した言葉が「ミルボンをミルボンらしく」だった。その言葉に多くの社員が賛同してくれること、好業績の中でバトンを渡されることに感謝している。新社長になったから変わるのではなく、時代の変化に合わせて変わっていく。ミルボンは創業以来、そうして成長してきた。

WWD:今のヘア市場をどう見ている?

坂下:人口は2008年にピークアウトしているのに、ヘア市場は今も緩やかに伸びている。なぜなら就業人口は増え、この10年でヘアカラーが一気に広がったからだ。弊社が取引先約1000店舗を対象に調査したサロン経営指数を見ると、美容室のカラー客比率は50%近い。カラーをすれば、トリートメントなどのサロンケアサービスが伸びる。弊社は店販のことを、知識や知見をともなっているから“知販”と呼ぶが、サロンケアが伸びると知販が伸びる。ただ、就業人口がピークアウトする今後、これまでと同じ成長は見込めない。

WWD:その時代の変化に対する施策は?

坂下:これまでヘアカラーやサロンケアは普及の時代だったが、これからは価値を高めていく時代。付加価値の高い提案をすることで、美容室でのサロンカラーの概念を変えていきたい。弊社の調べでは、ファッションカラーをしたお客さまの約66%は「メイクを変えたい」と思っており、実際に変えた人の約60%は「アイブロウを変えた」と答えている。サロンカラーをヘアカラーに限定せず、ヘアカラーから眉、そしてメイクへとつなげていく提案は、美容室でしかできない。

WWD:そこまでやり切れる美容室は、まだ少ない。

坂下:忙しい美容師は、既存のオペレーションを変えることが難しい。われわれの提案を全部やろうとすると、どうしてもカウンセリングの時間が長くなる。それをどう短縮して、サロンワークをスムーズに進めながら、価値のあるサービスを提供できるか。今カウンセリングの研究を進めている。

WWD:23年は、ヘアドライヤー「エルミスタ(ELMISTA)」やサプリメント「アラナス(ALANOUS)」など、新カテゴリーの商品発売も続いた。

坂下:今後も新ジャンルへの挑戦は継続する。10年先・20年先に幾つの成長ドライバーを持っているかが重要で、これが将来的に美容室での新たな売り上げを作っていくことになる。新しい事業全てが大成功とはならないかもしれないが、それはミルボンがやらなければ作れない市場であり、やるべき挑戦だ。

WWD:公式オンラインストア「milbon:iD」の進捗は?

坂下:20年6月にスタートし、登録者数が21年は17万人、22年は45万人、23年は67万人となった。スタート時の予想より1年半前倒しで、25年には100万人を突破しそうだ。「milbon:iD」が一般的なオンラインストアと違うのは、契約美容室がストア内にECサイトを出店し、ミルボン商品をお客さまに販売。売り上げは美容室に計上され、サイト運営や物流業務を弊社が受託するもの。そのため、美容師がお客さま一人一人に購入するためのIDを手渡している。導入した美容室は知販の売り上げが確実に上がっており、1回の購入数は2.9品、平均客単価は約1万3000円にもなる。「milbon:iD」を立ち上げたときの調査では、美容室のお客さまの知販購入率は約15%、そしてリピート率は約40%だった。低めの数字の理由は「シャンプーを買うタイミングが美容室に行くときではなかったから」。つまり、60%のお客さまを、底に穴が空いているバケツのごとく取り逃していたということ。その60%を小さくする役割を「milbon:iD」が担う。

WWD:全体的に好調のようだが、課題は?

坂下:「milbon:iD」含め業界全体のデジタルシフトを進めていく必要がまだまだあると感じている。弊社では全国の300人からなる営業部隊“フィールドパーソン”がそれぞれ担当する美容室に出向き、デジタル活用をサポートしている。美容室と共にDXを進めていきたい。

WWD:サロンカラーの価値を高め、知販の購入を上げる中心となるのは、ミルボンと美容室が協働展開する“スマートサロン”だ。

坂下:その通り。昨年スタートした、お客さまが手軽にサロン専売品を手に取り体験できるスマートサロンは、現在23店舗。美容室の賛同あっての話だが、24年は100店舗を目指している。店内の“DAGASHI(ダガシ)”と呼ぶコーナーでは、サンプルサイズの商品をトライアル価格で購入することができるが、それを入れると知販購入率は50%に上る店もあるなど、成果は確実に出ている。今後、全国100都市くらいに広がっていけば、美容室がお客さまにも新しい購入チャネルだと認識され、美容室の楽しみ方が変わり、ここを柱にいろいろな活動ができる。先々、美容室とともに新しい経済圏を作っていければと思う。

会社概要

ミルボン
MILBON

1960年、業務用ヘア化粧品の専売メーカーとしてユタカ美容化学が創立。65年、社名をミルボンに変更。2001年、東証一部に指定。04年にはニューヨークに連結子会社を設立するなど、積極的なグローバル展開を行う。17年にはコーセーとの合弁会社コーセー ミルボン コスメティクスを設立。23年12月期第3四半期の売上高は前期比5.4%増の341億5000万円となった

問い合わせ先
ミルボンお客様窓口
0120-658-894

TEXT:YOSHIE KAWAHARA

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美容師に寄り添うDXでサロンの価値を高める【ミルボン 坂下秀憲社長】

PROFILE: 坂下秀憲/ミルボン社長

坂下秀憲/ミルボン社長
PROFILE: (さかした・ひでのり)1976年2月3日生まれ、千葉県出身。2001年に中央大学大学院の理工学研究科修士課程を修了後、同年にミルボンに入社。マーケティング部商品企画課や経営企画室マネージャーなどを経て、10年にミルボンUSAの社長に。帰国後18年に経営戦略部長に就任し「milbon:iD」の立ち上げに関わる。22年に取締役 経営戦略部長・コスメティクス企画・情報企画担当に就任、24年1月1日より現職 PHOTO : YOHEI KICHIRAKU

ミルボンは美容室向け化粧品メーカーの最大手であり、グローバル展開や化粧品事業への進出をいち早く遂行するなどヘア業界をけん引する存在だ。1月1日に、BtoBtoC型のオンラインストア「milbon:iD」を立ち上げた坂下秀憲氏が社長に就任。デジタルを活用し、美容師に寄り添った次世代サロンの提案に力を注ぐ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

美容室とともに
新しい経済圏を作っていく

WWDJAPAN(以下、WWD):社長就任で変えること、変えないことは?

坂下秀憲社長(以下、坂下):23年10月に社長就任を発表した時は美容業界内外から多くのメッセージをいただいた。その一つ一つに意気込みなどを添えて返信したが、共通して記した言葉が「ミルボンをミルボンらしく」だった。その言葉に多くの社員が賛同してくれること、好業績の中でバトンを渡されることに感謝している。新社長になったから変わるのではなく、時代の変化に合わせて変わっていく。ミルボンは創業以来、そうして成長してきた。

WWD:今のヘア市場をどう見ている?

坂下:人口は2008年にピークアウトしているのに、ヘア市場は今も緩やかに伸びている。なぜなら就業人口は増え、この10年でヘアカラーが一気に広がったからだ。弊社が取引先約1000店舗を対象に調査したサロン経営指数を見ると、美容室のカラー客比率は50%近い。カラーをすれば、トリートメントなどのサロンケアサービスが伸びる。弊社は店販のことを、知識や知見をともなっているから“知販”と呼ぶが、サロンケアが伸びると知販が伸びる。ただ、就業人口がピークアウトする今後、これまでと同じ成長は見込めない。

WWD:その時代の変化に対する施策は?

坂下:これまでヘアカラーやサロンケアは普及の時代だったが、これからは価値を高めていく時代。付加価値の高い提案をすることで、美容室でのサロンカラーの概念を変えていきたい。弊社の調べでは、ファッションカラーをしたお客さまの約66%は「メイクを変えたい」と思っており、実際に変えた人の約60%は「アイブロウを変えた」と答えている。サロンカラーをヘアカラーに限定せず、ヘアカラーから眉、そしてメイクへとつなげていく提案は、美容室でしかできない。

WWD:そこまでやり切れる美容室は、まだ少ない。

坂下:忙しい美容師は、既存のオペレーションを変えることが難しい。われわれの提案を全部やろうとすると、どうしてもカウンセリングの時間が長くなる。それをどう短縮して、サロンワークをスムーズに進めながら、価値のあるサービスを提供できるか。今カウンセリングの研究を進めている。

WWD:23年は、ヘアドライヤー「エルミスタ(ELMISTA)」やサプリメント「アラナス(ALANOUS)」など、新カテゴリーの商品発売も続いた。

坂下:今後も新ジャンルへの挑戦は継続する。10年先・20年先に幾つの成長ドライバーを持っているかが重要で、これが将来的に美容室での新たな売り上げを作っていくことになる。新しい事業全てが大成功とはならないかもしれないが、それはミルボンがやらなければ作れない市場であり、やるべき挑戦だ。

WWD:公式オンラインストア「milbon:iD」の進捗は?

坂下:20年6月にスタートし、登録者数が21年は17万人、22年は45万人、23年は67万人となった。スタート時の予想より1年半前倒しで、25年には100万人を突破しそうだ。「milbon:iD」が一般的なオンラインストアと違うのは、契約美容室がストア内にECサイトを出店し、ミルボン商品をお客さまに販売。売り上げは美容室に計上され、サイト運営や物流業務を弊社が受託するもの。そのため、美容師がお客さま一人一人に購入するためのIDを手渡している。導入した美容室は知販の売り上げが確実に上がっており、1回の購入数は2.9品、平均客単価は約1万3000円にもなる。「milbon:iD」を立ち上げたときの調査では、美容室のお客さまの知販購入率は約15%、そしてリピート率は約40%だった。低めの数字の理由は「シャンプーを買うタイミングが美容室に行くときではなかったから」。つまり、60%のお客さまを、底に穴が空いているバケツのごとく取り逃していたということ。その60%を小さくする役割を「milbon:iD」が担う。

WWD:全体的に好調のようだが、課題は?

坂下:「milbon:iD」含め業界全体のデジタルシフトを進めていく必要がまだまだあると感じている。弊社では全国の300人からなる営業部隊“フィールドパーソン”がそれぞれ担当する美容室に出向き、デジタル活用をサポートしている。美容室と共にDXを進めていきたい。

WWD:サロンカラーの価値を高め、知販の購入を上げる中心となるのは、ミルボンと美容室が協働展開する“スマートサロン”だ。

坂下:その通り。昨年スタートした、お客さまが手軽にサロン専売品を手に取り体験できるスマートサロンは、現在23店舗。美容室の賛同あっての話だが、24年は100店舗を目指している。店内の“DAGASHI(ダガシ)”と呼ぶコーナーでは、サンプルサイズの商品をトライアル価格で購入することができるが、それを入れると知販購入率は50%に上る店もあるなど、成果は確実に出ている。今後、全国100都市くらいに広がっていけば、美容室がお客さまにも新しい購入チャネルだと認識され、美容室の楽しみ方が変わり、ここを柱にいろいろな活動ができる。先々、美容室とともに新しい経済圏を作っていければと思う。

会社概要

ミルボン
MILBON

1960年、業務用ヘア化粧品の専売メーカーとしてユタカ美容化学が創立。65年、社名をミルボンに変更。2001年、東証一部に指定。04年にはニューヨークに連結子会社を設立するなど、積極的なグローバル展開を行う。17年にはコーセーとの合弁会社コーセー ミルボン コスメティクスを設立。23年12月期第3四半期の売上高は前期比5.4%増の341億5000万円となった

問い合わせ先
ミルボンお客様窓口
0120-658-894

TEXT:YOSHIE KAWAHARA

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マーケティング力と商品力を武器に、海外事業へも本腰【msh 藤田智美社長】

PROFILE: 藤田智美/msh社長

藤田智美/msh社長
PROFILE: (ふじた・ともみ)東京理科大学薬学部卒業後、1999年に住商リテイルストアーズ(現トモズ)に入社。調剤、店舗を経て化粧品バイヤーを務める。化粧品全般のMD業務に加え、プライベートブランドの企画開発、ラグジュアリーコスメセレクトショップ「インクローバー」などの新規業態開発・運営、マネジメントと幅広い経験を積む。2020年4月にmshに入社し、同年7月から現職 PHOTO : SHUNICHI ODA

主力アイメイクブランド「ラブ・ライナー(LOVE LINER)」が2023年に15周年を迎えたmshは、藤田智美社長が就任した20年から売上高は順調に伸長する。23年は同ブランドと「ポケモン」のコラボ商品完売や、ニューヨーク発スキンケアブランド「スーパーエッグ(SUPEREGG)」の日本展開スタートなどニュースも続いた。24年は海外進出にも野心的に取り組む。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

真面目なモノ作りを続け、
日本のビューティ業界を盛り上げて世界へ

WWDJAPAN(以下、WWD):23年は「ラブ・ライナー」が話題を呼んだ年だった。

藤田智美社長(以下、藤田):全社の売上高は2年連続前年比15%増で成長を続けている。売り上げをけん引する「ラブ・ライナー」が15周年を迎え、シリーズ累計2200万本を突破(08年9月~23年5月末のシリーズ出荷実績)し、mshのマイルストーンとしても意義深い年だった。また、7月の「ポケモン」とのコラボレーションは2カ月足らずで23万本が完売するという驚きの結果となった。21年のリニューアルでリフィル対応になったことで、顧客が気に入った限定パッケージのまま中身を入れ替えられることも人気の後押しになったと分析する。ヘアメイクアップアーティストの河北裕介氏や、「ピーチ・ジョン(PEACH JOHN)」ともタッグを組み、好調だった。今後もファッションブランドや異業種と積極的に協業し、「ラブ・ライナー」のプレゼンスを高めていく。

WWD:日本のアイメイク市場をどのように分析するか。

藤田:各社、真面目にモノ作りをしていても、海外ブランドと競争力で負けてしまうことがある。特に韓国コスメの勢いが増しているが、負けずに日本のビューティ業界を盛り上げていきたい。「ラブ・ライナー」のアイライナーは職人が筆を作っており、まつ毛美容液もこだわりの設計だ。海外の人にも刺さる商品開発をしているので、世界に目を向けてプロモーションを行う。

WWD:ほかの好調ブランドは?

藤田:ベースメイクとスキンケアを展開するミネラルコスメブランド「タイムシークレット」も売り上げは好調で、「ラブ・ライナー」と同じく前年比10%増だった。

WWD:日本上陸した「スーパーエッグ」の立ち上がりはどうか。

藤田:発売してから半年以上経過して、ファッション系セレクトショップなど新たな販路にも挑戦し、知見がたまってきた。日本での認知獲得までに時間はかかるが、今年からさらに成長させていきたい。特に価格と効果のバランスが良い集中保湿美容液は日本市場で戦えるという自信がある。

WWD:今後も海外ブランドの輸入代理業務を拡大するのか。

藤田:日本にはないような発想で、市場にもマッチしているものがあれば積極的に取り入れる。世界各国にネットワークを構築中で、仲間ができれば弊社のブランドの海外進出の足がかりにもなる。15年かけて成長した「ラブ・ライナー」のような商品開発の時間軸は、スピード感が勝負の現在ではなかなか難しい。既存のブランドと並行して、海外ブランドを日本市場で育てて拡大させていく。前職ではMDをしたり新業態を始めたりと幅広い経験とノウハウを蓄積できた。それを生かしながら化粧品に限らず、雑貨や食品にもカテゴリーを広げていきたい。

WWD:SNSマーケティングではどのような成果が生まれているか。

藤田:従来からの得意領域だ。毎月100人規模でインフルエンサーを起用している。特に頻度が高いここ1年は、エンゲージメントの高い投稿や施策が蓄積できている。AIにバズを生む投稿を学習させて検証する仕組みも進めており、属人的な仕組みから少しでも業務効率を改善していきたい。オーガニック投稿では八田エミリさんが「タイムシークレット」の“スティックファンデーション”を紹介した動画が400万回以上再生された。突然、売れ行きに異常値が出て調べて発覚した。さまざまな要因があるので完璧に需要を予測することは難しいが、少しずつチャレンジしていきたい。

WWD:サステナビリティの具体的施策は?

藤田:「ラブ・ライナー」のリフィルは外装を小さくしたり、パッケージもFSC認証を取得した紙に変更したりするなど環境負荷を軽減する取り組みを続けている。22年3月〜23年11月はリフィルにより15トンのごみが削減(同社調べ)できた。売り上げも想定以上に伸び、リニューアルの目的も果たせている。「タイムシークレット(TIME SECRET)」もリフィル対応にし、リサイクルペットボトルを使った容器に変更した。このような取り組みは若年層や欧米の人たちにも受け入れられるだろう。小さなことから対応して環境を軸にしたハッピーを循環させたい。

WWD:24年、ビジネスで注力することは?

藤田:「ラブ・ライナー」の海外進出のため、まずは欧米展開の準備を進める。また、愛用者を増やしながらマスカラなどアイライナー以外のアイテムも育てる。コロナ禍でも成長できたのは、前職では競合関係だったバイヤーの知人や流通先が協力してくれたことや、多くのお客さまに支持してもらったおかげだ。今後も期待に応えられるような商品やブランドを発売し、売上高は2ケタ成長を続けていく。

※炭酸水素Na

会社概要

エムエスエイチ
msh

2008年にアイメイクブランド「ラブ・ライナー」を立ち上げ、化粧品や雑貨の企画・販売、輸出入、海外ブランドの輸入代理を手掛ける。ミネラルコスメブランド「タイムシークレット」やニューヨーク発のスキンケアブランド「スーパーエッグ」など、現在7ブランドを展開。社名は「make someone happy(いつも誰かをハッピーに)」の頭文字から取り、幸せが循環する社会の実現を目指す

問い合わせ先
msh
0120-131-370

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マーケティング力と商品力を武器に、海外事業へも本腰【msh 藤田智美社長】

PROFILE: 藤田智美/msh社長

藤田智美/msh社長
PROFILE: (ふじた・ともみ)東京理科大学薬学部卒業後、1999年に住商リテイルストアーズ(現トモズ)に入社。調剤、店舗を経て化粧品バイヤーを務める。化粧品全般のMD業務に加え、プライベートブランドの企画開発、ラグジュアリーコスメセレクトショップ「インクローバー」などの新規業態開発・運営、マネジメントと幅広い経験を積む。2020年4月にmshに入社し、同年7月から現職 PHOTO : SHUNICHI ODA

主力アイメイクブランド「ラブ・ライナー(LOVE LINER)」が2023年に15周年を迎えたmshは、藤田智美社長が就任した20年から売上高は順調に伸長する。23年は同ブランドと「ポケモン」のコラボ商品完売や、ニューヨーク発スキンケアブランド「スーパーエッグ(SUPEREGG)」の日本展開スタートなどニュースも続いた。24年は海外進出にも野心的に取り組む。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

真面目なモノ作りを続け、
日本のビューティ業界を盛り上げて世界へ

WWDJAPAN(以下、WWD):23年は「ラブ・ライナー」が話題を呼んだ年だった。

藤田智美社長(以下、藤田):全社の売上高は2年連続前年比15%増で成長を続けている。売り上げをけん引する「ラブ・ライナー」が15周年を迎え、シリーズ累計2200万本を突破(08年9月~23年5月末のシリーズ出荷実績)し、mshのマイルストーンとしても意義深い年だった。また、7月の「ポケモン」とのコラボレーションは2カ月足らずで23万本が完売するという驚きの結果となった。21年のリニューアルでリフィル対応になったことで、顧客が気に入った限定パッケージのまま中身を入れ替えられることも人気の後押しになったと分析する。ヘアメイクアップアーティストの河北裕介氏や、「ピーチ・ジョン(PEACH JOHN)」ともタッグを組み、好調だった。今後もファッションブランドや異業種と積極的に協業し、「ラブ・ライナー」のプレゼンスを高めていく。

WWD:日本のアイメイク市場をどのように分析するか。

藤田:各社、真面目にモノ作りをしていても、海外ブランドと競争力で負けてしまうことがある。特に韓国コスメの勢いが増しているが、負けずに日本のビューティ業界を盛り上げていきたい。「ラブ・ライナー」のアイライナーは職人が筆を作っており、まつ毛美容液もこだわりの設計だ。海外の人にも刺さる商品開発をしているので、世界に目を向けてプロモーションを行う。

WWD:ほかの好調ブランドは?

藤田:ベースメイクとスキンケアを展開するミネラルコスメブランド「タイムシークレット」も売り上げは好調で、「ラブ・ライナー」と同じく前年比10%増だった。

WWD:日本上陸した「スーパーエッグ」の立ち上がりはどうか。

藤田:発売してから半年以上経過して、ファッション系セレクトショップなど新たな販路にも挑戦し、知見がたまってきた。日本での認知獲得までに時間はかかるが、今年からさらに成長させていきたい。特に価格と効果のバランスが良い集中保湿美容液は日本市場で戦えるという自信がある。

WWD:今後も海外ブランドの輸入代理業務を拡大するのか。

藤田:日本にはないような発想で、市場にもマッチしているものがあれば積極的に取り入れる。世界各国にネットワークを構築中で、仲間ができれば弊社のブランドの海外進出の足がかりにもなる。15年かけて成長した「ラブ・ライナー」のような商品開発の時間軸は、スピード感が勝負の現在ではなかなか難しい。既存のブランドと並行して、海外ブランドを日本市場で育てて拡大させていく。前職ではMDをしたり新業態を始めたりと幅広い経験とノウハウを蓄積できた。それを生かしながら化粧品に限らず、雑貨や食品にもカテゴリーを広げていきたい。

WWD:SNSマーケティングではどのような成果が生まれているか。

藤田:従来からの得意領域だ。毎月100人規模でインフルエンサーを起用している。特に頻度が高いここ1年は、エンゲージメントの高い投稿や施策が蓄積できている。AIにバズを生む投稿を学習させて検証する仕組みも進めており、属人的な仕組みから少しでも業務効率を改善していきたい。オーガニック投稿では八田エミリさんが「タイムシークレット」の“スティックファンデーション”を紹介した動画が400万回以上再生された。突然、売れ行きに異常値が出て調べて発覚した。さまざまな要因があるので完璧に需要を予測することは難しいが、少しずつチャレンジしていきたい。

WWD:サステナビリティの具体的施策は?

藤田:「ラブ・ライナー」のリフィルは外装を小さくしたり、パッケージもFSC認証を取得した紙に変更したりするなど環境負荷を軽減する取り組みを続けている。22年3月〜23年11月はリフィルにより15トンのごみが削減(同社調べ)できた。売り上げも想定以上に伸び、リニューアルの目的も果たせている。「タイムシークレット(TIME SECRET)」もリフィル対応にし、リサイクルペットボトルを使った容器に変更した。このような取り組みは若年層や欧米の人たちにも受け入れられるだろう。小さなことから対応して環境を軸にしたハッピーを循環させたい。

WWD:24年、ビジネスで注力することは?

藤田:「ラブ・ライナー」の海外進出のため、まずは欧米展開の準備を進める。また、愛用者を増やしながらマスカラなどアイライナー以外のアイテムも育てる。コロナ禍でも成長できたのは、前職では競合関係だったバイヤーの知人や流通先が協力してくれたことや、多くのお客さまに支持してもらったおかげだ。今後も期待に応えられるような商品やブランドを発売し、売上高は2ケタ成長を続けていく。

※炭酸水素Na

会社概要

エムエスエイチ
msh

2008年にアイメイクブランド「ラブ・ライナー」を立ち上げ、化粧品や雑貨の企画・販売、輸出入、海外ブランドの輸入代理を手掛ける。ミネラルコスメブランド「タイムシークレット」やニューヨーク発のスキンケアブランド「スーパーエッグ」など、現在7ブランドを展開。社名は「make someone happy(いつも誰かをハッピーに)」の頭文字から取り、幸せが循環する社会の実現を目指す

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msh
0120-131-370

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目元に特化したニッチ商品を開発し、全世代の悩みに応える 【コージー本舗 小林義典社長】

PROFILE: 小林義典/コージー本舗社長

小林義典/コージー本舗社長
PROFILE: (こばやし・よしのり)1996年入社、副社長に就任。2009年より現職 PHOTO : YUKIE SUGANO

1927年創業のコージー本舗は、47年に日本初のつけまつ毛を商品化して以来、目元に特化した数々のニッチアイテムを世に出し成長を続けてきた。また国内外に自社工場を保有するため、OEM事業、ブランド事業、キャラクター事業の三本柱でビジネスを展開する。他メーカーには真似できない技術開発力を武器に2024年も飛躍を狙う。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

得意の目元アイテムをベースに
指原プロデュース「リリミュウ」も大きく伸長

WWDJAPAN(以下、WWD):23年の商況はどうだったか。

小林義典社長(以下、小林):コロナ禍で流通とのパイプ作りをさらに強化し、23年は各流通に合わせて先行販売や期間限定商品などを展開した。コロナが落ち着いた後の消費者ニーズの変化に対応した商品作りも行い、つけまつ毛や化粧雑貨、ネイルアイテムなどがバランス良く売れて24年3月期は前期比5%増で着地予定だ。中でもブランド誕生3年目を迎えた指原莉乃さんプロデュースのコスメブランド「リリミュウ(RIRIMEW)」が売り上げをけん引する。アイシャドウは幅広い年代に人気で、リップはブランドのアイコンといえるまで成長した。クリスマスコフレは毎年即完売し、「リリミュウ」単体では22年は前年比70%増、23年は同40%増と好調を維持している。

WWD:「リリミュウ」が支持される要因は?

小林:販売店にブランドやわれわれの思いに共感していただいたことが大きい。「プラザ(PLAZA)」と「ロフト(LOFT)」をはじめ、東京と大阪の「アットコスメストア(@COSME STORE)」のフラッグシップショップ、そして直近でスタートした「アインズ&トルペ」数店舗を含めた約300店舗での展開だ。これまでの当社は「誰もが目に届く場所で売る」ことを信条にした商材が多く、多店舗展開が主だった。しかし一方で、ブランド意図を伝えづらいというデメリットもあった。意図しない棚割りや売り場になることもあり、そのため「リリミュウ」は自分たちでしっかりとブランドの世界観を表現できる範囲での展開にした。

WWD:強みである目元商材の商況はどうか。

小林:目はマスクに隠れない部位のため、コロナ禍でもつけまつ毛の売り上げは落ちていない。中でも、理想的な二重まぶたを作ることができるブランド「アイトーク(EYE TALK)」から6月に登場した夜用目元美容液“アイトークセラム”は、保湿美容液成分を配合し、ステンレス製トリプルローラーで心地良くケアができると消費者から好評だ。1980年からのロングセラーを誇り認知度も高い「アイトーク」から登場した初の目元美容液ということで注目も大きかった。

WWD:消費者の目元悩みは変化している?

小林:ある調査によると、日本人は遺伝による二重まぶたや奥二重まぶたが多く、一重まぶたの人は3割ほどといわれている。そのため、当社商品で「一重まぶたを二重まぶたにする」というより、「なりたいまぶたの形に整える」という方向にモノ作りをシフトしている。そして目元の悩みは年代によって異なるため、それぞれの悩みに対応できる商品を展開する。例えば、若年層向けには二重の幅をはっきりさせられて、汗や涙などに強いウォータープルーフ処方など接着力に優れたアイテムを販売している。また年齢が上がるにつれて気になるまぶたの重みやたるみ、くぼみをリフトアップしてエイジングケアもかなうアイテムもそろえる。2月には大人世代に向けた新商品“大人のリフトアップアイテープ”を発売予定で、パッケージには目元の写真を大きく採用するなどまぶた全体をリフトアップする訴求をし、これまで「アイトーク」で獲得できていなかった層を狙う。

WWD:今のアイメイクのトレンドをどう見るか。

小林:ここ数年は韓流アイドルの影響が大きく、つけまつ毛に関しては束感のある商品が支持されている。これにより、当社の主戦場であるバラエティーショップでも韓国ブランドが棚を占める割合が増加した。日本ブランドが店舗奥に配置されていたりと今後の日本メーカーの生き残りにも関わっていると感じる。そんな海外ブランドの露出が高まっている状況で老舗メーカーがアピールするには、タッチポイントを増やすことが大切である。当社は実際に使わないと良さが伝わりにくいニッチ商品が多いため、SNSだけではなくリアルでのタッチポイント増加が重要。そのため、小売店とタッグを組み、店内の目立つ場所でのプロモーションや美容部員を配置して説明するなど協力が大事になる。

WWD:2024年の抱負やコージー本舗を物語る数字は?

小林:24年は、益若つばささんが手掛けるアイメイクブランド「ドーリーウインク(DOLLY WINK)」が15周年を迎えるほか、25年に「アイトーク」45周年、26年にオサムグッズ50周年、そして27年は当社100周年と周年記念が目白押し。これらを盛り上げていくことに加え、商品面では引き続き目元、そしてネイル周りも注力していく。また、トレンド感を取り入れた目元以外のアイテムを展開するブランド「スキューズミー(SQUSE ME)」のサブネームとして23年3月に「シェアロユー(SHARELOU)」を立ち上げ、ヘッドスクラブを販売してヘアケア市場に参入した。当社としても未開拓のカテゴリーであるため、ヘアケア商材にも力を入れていく。海外の売り上げは、現在は全体の1割ほど。海外は質の良い化粧雑貨の取り扱いが少ないため、当社の強みが活かせて伸び代があると考えている。来期の売り上げ目標は2ケタ増だが、まずはアイテムの質を高める点や販売機会損失を防ぐことを重視していく。

会社概要

コージー本舗
KOJI HONPO

1927年に小林幸司氏が頭飾品製造業として創業。47年に日本初のつけまつ毛を商品化したほか、49年に日本初のペンシル型眉墨を発売。54年にコージー本舗に社名を変更。72年に世界初となる人工毛を先細加工したアイラッシュを開発した。化粧品やアイラッシュ、アイメイク用品、ネイルケア用品、ファッション用品の製造販売・輸出入に加え、イラストレーターの原田治氏と共同制作で誕生したキャラクター商品・オサムグッズの版権事業を行う

問い合わせ先
コージー本舗
03-3842-0226

TEXT:WAKANA NAKADE

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目元に特化したニッチ商品を開発し、全世代の悩みに応える 【コージー本舗 小林義典社長】

PROFILE: 小林義典/コージー本舗社長

小林義典/コージー本舗社長
PROFILE: (こばやし・よしのり)1996年入社、副社長に就任。2009年より現職 PHOTO : YUKIE SUGANO

1927年創業のコージー本舗は、47年に日本初のつけまつ毛を商品化して以来、目元に特化した数々のニッチアイテムを世に出し成長を続けてきた。また国内外に自社工場を保有するため、OEM事業、ブランド事業、キャラクター事業の三本柱でビジネスを展開する。他メーカーには真似できない技術開発力を武器に2024年も飛躍を狙う。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

得意の目元アイテムをベースに
指原プロデュース「リリミュウ」も大きく伸長

WWDJAPAN(以下、WWD):23年の商況はどうだったか。

小林義典社長(以下、小林):コロナ禍で流通とのパイプ作りをさらに強化し、23年は各流通に合わせて先行販売や期間限定商品などを展開した。コロナが落ち着いた後の消費者ニーズの変化に対応した商品作りも行い、つけまつ毛や化粧雑貨、ネイルアイテムなどがバランス良く売れて24年3月期は前期比5%増で着地予定だ。中でもブランド誕生3年目を迎えた指原莉乃さんプロデュースのコスメブランド「リリミュウ(RIRIMEW)」が売り上げをけん引する。アイシャドウは幅広い年代に人気で、リップはブランドのアイコンといえるまで成長した。クリスマスコフレは毎年即完売し、「リリミュウ」単体では22年は前年比70%増、23年は同40%増と好調を維持している。

WWD:「リリミュウ」が支持される要因は?

小林:販売店にブランドやわれわれの思いに共感していただいたことが大きい。「プラザ(PLAZA)」と「ロフト(LOFT)」をはじめ、東京と大阪の「アットコスメストア(@COSME STORE)」のフラッグシップショップ、そして直近でスタートした「アインズ&トルペ」数店舗を含めた約300店舗での展開だ。これまでの当社は「誰もが目に届く場所で売る」ことを信条にした商材が多く、多店舗展開が主だった。しかし一方で、ブランド意図を伝えづらいというデメリットもあった。意図しない棚割りや売り場になることもあり、そのため「リリミュウ」は自分たちでしっかりとブランドの世界観を表現できる範囲での展開にした。

WWD:強みである目元商材の商況はどうか。

小林:目はマスクに隠れない部位のため、コロナ禍でもつけまつ毛の売り上げは落ちていない。中でも、理想的な二重まぶたを作ることができるブランド「アイトーク(EYE TALK)」から6月に登場した夜用目元美容液“アイトークセラム”は、保湿美容液成分を配合し、ステンレス製トリプルローラーで心地良くケアができると消費者から好評だ。1980年からのロングセラーを誇り認知度も高い「アイトーク」から登場した初の目元美容液ということで注目も大きかった。

WWD:消費者の目元悩みは変化している?

小林:ある調査によると、日本人は遺伝による二重まぶたや奥二重まぶたが多く、一重まぶたの人は3割ほどといわれている。そのため、当社商品で「一重まぶたを二重まぶたにする」というより、「なりたいまぶたの形に整える」という方向にモノ作りをシフトしている。そして目元の悩みは年代によって異なるため、それぞれの悩みに対応できる商品を展開する。例えば、若年層向けには二重の幅をはっきりさせられて、汗や涙などに強いウォータープルーフ処方など接着力に優れたアイテムを販売している。また年齢が上がるにつれて気になるまぶたの重みやたるみ、くぼみをリフトアップしてエイジングケアもかなうアイテムもそろえる。2月には大人世代に向けた新商品“大人のリフトアップアイテープ”を発売予定で、パッケージには目元の写真を大きく採用するなどまぶた全体をリフトアップする訴求をし、これまで「アイトーク」で獲得できていなかった層を狙う。

WWD:今のアイメイクのトレンドをどう見るか。

小林:ここ数年は韓流アイドルの影響が大きく、つけまつ毛に関しては束感のある商品が支持されている。これにより、当社の主戦場であるバラエティーショップでも韓国ブランドが棚を占める割合が増加した。日本ブランドが店舗奥に配置されていたりと今後の日本メーカーの生き残りにも関わっていると感じる。そんな海外ブランドの露出が高まっている状況で老舗メーカーがアピールするには、タッチポイントを増やすことが大切である。当社は実際に使わないと良さが伝わりにくいニッチ商品が多いため、SNSだけではなくリアルでのタッチポイント増加が重要。そのため、小売店とタッグを組み、店内の目立つ場所でのプロモーションや美容部員を配置して説明するなど協力が大事になる。

WWD:2024年の抱負やコージー本舗を物語る数字は?

小林:24年は、益若つばささんが手掛けるアイメイクブランド「ドーリーウインク(DOLLY WINK)」が15周年を迎えるほか、25年に「アイトーク」45周年、26年にオサムグッズ50周年、そして27年は当社100周年と周年記念が目白押し。これらを盛り上げていくことに加え、商品面では引き続き目元、そしてネイル周りも注力していく。また、トレンド感を取り入れた目元以外のアイテムを展開するブランド「スキューズミー(SQUSE ME)」のサブネームとして23年3月に「シェアロユー(SHARELOU)」を立ち上げ、ヘッドスクラブを販売してヘアケア市場に参入した。当社としても未開拓のカテゴリーであるため、ヘアケア商材にも力を入れていく。海外の売り上げは、現在は全体の1割ほど。海外は質の良い化粧雑貨の取り扱いが少ないため、当社の強みが活かせて伸び代があると考えている。来期の売り上げ目標は2ケタ増だが、まずはアイテムの質を高める点や販売機会損失を防ぐことを重視していく。

会社概要

コージー本舗
KOJI HONPO

1927年に小林幸司氏が頭飾品製造業として創業。47年に日本初のつけまつ毛を商品化したほか、49年に日本初のペンシル型眉墨を発売。54年にコージー本舗に社名を変更。72年に世界初となる人工毛を先細加工したアイラッシュを開発した。化粧品やアイラッシュ、アイメイク用品、ネイルケア用品、ファッション用品の製造販売・輸出入に加え、イラストレーターの原田治氏と共同制作で誕生したキャラクター商品・オサムグッズの版権事業を行う

問い合わせ先
コージー本舗
03-3842-0226

TEXT:WAKANA NAKADE

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トライアルから実購買へ、香りのカルチャー創造に挑戦【High Link 南木将宏CEO】

PROFILE: 南木将宏/High Link 最高経営責任者(CEO)

南木将宏/High Link 最高経営責任者(CEO)
PROFILE: (なんき・まさひろ)2019年に早稲田大学創造理工学部経営システム工学科を卒業。大学在学中にビジネスに興味を持ち、ベンチャー企業2社のインターンを経験。17年にHigh Linkを創業し、19年1月からカラリアを運営する。購買行動データの解析を強みに、香り領域における新たな価値創造と新事業開拓を進める

フレグランスのサブスクリプションサービス「カラリア(COLORIA)」を運営するHigh Link(ハイリンク)は、2019年にサービス開始以来、気軽に香水を試せる場を提供している。会員は累計60万人を超え、フレグランスブランドと消費者をつなぐ“香りのプラットフォーム”として存在感を増している。23年には、“理想の香りと出合う場所”にコンセプトをリニューアルし、より幅広い層にアピールし、市場の活性化を図っている。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

取引先と手を取りながら
香りのプラットフォームへと進化

WWDJAPAN(以下、WWD):23年度は、ブランドへ価値を提供する年だった。

南木将宏High Link最高経営責任者(以下、南木):以前の取引先は商社や卸業者が多かったが、ブランドと直接の取り引きを増やし、取扱いブランド数が22年の3倍になった。ブランドの認知度アップや、香りを知ってもらうきっかけづくりを目的とする国内のニッチや新興ブランドが増えた。

WWD:23年にリニューアルした理由と目的は?

南木:顧客基盤の拡大が目的だ。20~30代の女性がターゲットだったが、より幅広い層の消費者に楽しんでもらえるようにした。女性的なイメージから中性的なイメージに変更し、顧客ターゲットの拡大を狙った。また、取り扱いブランドの世界観が伝わるように品のあるデザインにし、コンセプトを“理想の香りと出合う場所”と定義し直した。

WWD:目に見えない香りをどのようにウェブメディアやSNSで発信し、サービス利用に結びつけているか?

南木:香りをインターネットで伝えるのは難しい。社内にフレグランススペシャリストがいるので、勉強会を開催して香りを伝える精度を上げている。スペシャリスト監修の元、自分の言葉で香りを表現している点がユーザーに刺さっている。SNSは、消費者が求めているものに高確率でヒットするように、データを元に運用している。

WWD:現在の会員数は?会員数を増やすために行っていることは?

南木:昨年3月に累計50万人を超えて、12月に60万人以上になった。強みであるSNS、メディアでの発信とプラットフォーム上での香りとの出合いを最適化させている。独自のレビューや香りのデータと掛け合わせて、ChatGPTを活用したAI香り選びコンシェルジュの機能開発などが代表例だ。データを活用した香りの体験が「カラリア」の強みなので引き続き注力するつもりだ。長く使い続けてもらえるようにホームフレグランスなどのラインアップも増やしている。取引先との共同販促などの新たな施策も会員数の増加に貢献している。

WWD:コロナ前後における売上高の推移は?

南木:創業時から継続的に成長している。会員数も伸び、継続率、客単価も伸長しているので、順調に推移している。

WWD:現在の課題と戦略は?

南木:香水との接点をつくるトライアルのポジショニングは確立できた。トライアルからフルボトル商品の購入をどのように実現するかに挑戦している。また、香水のサブスクから香りのプラットフォームとしての進化をどう実現するかも課題だ。もっと香りが身近なものになるように、香りを楽しむことで日常が彩られるような香りのカルチャーを作っていきたい。香水=「カラリア」から、香り=「カラリア」に進化していくことに注力していく。これらを実現するためには、ブランドと手を取り合っていくことが重要で、引き続きその取り組みを強化していきたい。

WWD:香りのDXをどのように実現するか?

南木:データとAIの活用をしながら、オンラインで香りの最適化を図る。顧客のデータを多く集め、どう活用するか、香りをどう表現するかが肝。香りのデータに関しては、最も多く、質の高いデータを保持していると思う。データとAIを掛け合わせて、さまざまなサービスを提供する。一方で、香りはリアルの体験も大事で、「カラリア」がリアルの香り体験に貢献できているかも重要だ。人流データを活用したOMOの実現に向けたプロジェクトを構想しており、それにより「カラリア」のフレグランス市場への貢献が見えやすくなるのではないかと考える。

WWD:日本のフレグランス市場をどのように分析するか?

南木:20代の女性のユーザーが以前と比べて増加しており、新たな消費者市場に流れてきている。こだわりのある消費者が増えてニッチフレグランスが盛り上がっている。ただ、このトレンドはコロナの影響などもあり一時的である可能性もあるので、根本的にフレグランスを楽しむというカルチャーを作っていく必要がある。

WWD:日本のフレグランス市場が成長するために必要なことは?

南木:香り文化が根付いていないので、消費者が香りを楽しむハードルを下げて、習慣として根付かせる必要がある。

WWD:今後の展望は?

南木:香水のサブスクから、香りのプラットフォームへと進化する。トライアルからフルボトルの購入まで楽しんでもらえるサービスに成長し、市場を盛り上げたい。データの提供や認知獲得など、取引先への価値提供も強化していく。

会社概要

ハイリンク
HIGH LINK

2017年設立。「わくわくで、あらゆる枠を超えていく」をフィロソフィーに掲げ、フレグランスのサブスクリプションサービス「カラリア」を19年にスタート。事業の中核である「香りの定期便」は約130ブランド1000アイテムを取り扱う。現在の会員数は60万人以上と、ユーザーを多く抱えるプラットフォームに成長している

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トライアルから実購買へ、香りのカルチャー創造に挑戦【High Link 南木将宏CEO】

PROFILE: 南木将宏/High Link 最高経営責任者(CEO)

南木将宏/High Link 最高経営責任者(CEO)
PROFILE: (なんき・まさひろ)2019年に早稲田大学創造理工学部経営システム工学科を卒業。大学在学中にビジネスに興味を持ち、ベンチャー企業2社のインターンを経験。17年にHigh Linkを創業し、19年1月からカラリアを運営する。購買行動データの解析を強みに、香り領域における新たな価値創造と新事業開拓を進める

フレグランスのサブスクリプションサービス「カラリア(COLORIA)」を運営するHigh Link(ハイリンク)は、2019年にサービス開始以来、気軽に香水を試せる場を提供している。会員は累計60万人を超え、フレグランスブランドと消費者をつなぐ“香りのプラットフォーム”として存在感を増している。23年には、“理想の香りと出合う場所”にコンセプトをリニューアルし、より幅広い層にアピールし、市場の活性化を図っている。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

取引先と手を取りながら
香りのプラットフォームへと進化

WWDJAPAN(以下、WWD):23年度は、ブランドへ価値を提供する年だった。

南木将宏High Link最高経営責任者(以下、南木):以前の取引先は商社や卸業者が多かったが、ブランドと直接の取り引きを増やし、取扱いブランド数が22年の3倍になった。ブランドの認知度アップや、香りを知ってもらうきっかけづくりを目的とする国内のニッチや新興ブランドが増えた。

WWD:23年にリニューアルした理由と目的は?

南木:顧客基盤の拡大が目的だ。20~30代の女性がターゲットだったが、より幅広い層の消費者に楽しんでもらえるようにした。女性的なイメージから中性的なイメージに変更し、顧客ターゲットの拡大を狙った。また、取り扱いブランドの世界観が伝わるように品のあるデザインにし、コンセプトを“理想の香りと出合う場所”と定義し直した。

WWD:目に見えない香りをどのようにウェブメディアやSNSで発信し、サービス利用に結びつけているか?

南木:香りをインターネットで伝えるのは難しい。社内にフレグランススペシャリストがいるので、勉強会を開催して香りを伝える精度を上げている。スペシャリスト監修の元、自分の言葉で香りを表現している点がユーザーに刺さっている。SNSは、消費者が求めているものに高確率でヒットするように、データを元に運用している。

WWD:現在の会員数は?会員数を増やすために行っていることは?

南木:昨年3月に累計50万人を超えて、12月に60万人以上になった。強みであるSNS、メディアでの発信とプラットフォーム上での香りとの出合いを最適化させている。独自のレビューや香りのデータと掛け合わせて、ChatGPTを活用したAI香り選びコンシェルジュの機能開発などが代表例だ。データを活用した香りの体験が「カラリア」の強みなので引き続き注力するつもりだ。長く使い続けてもらえるようにホームフレグランスなどのラインアップも増やしている。取引先との共同販促などの新たな施策も会員数の増加に貢献している。

WWD:コロナ前後における売上高の推移は?

南木:創業時から継続的に成長している。会員数も伸び、継続率、客単価も伸長しているので、順調に推移している。

WWD:現在の課題と戦略は?

南木:香水との接点をつくるトライアルのポジショニングは確立できた。トライアルからフルボトル商品の購入をどのように実現するかに挑戦している。また、香水のサブスクから香りのプラットフォームとしての進化をどう実現するかも課題だ。もっと香りが身近なものになるように、香りを楽しむことで日常が彩られるような香りのカルチャーを作っていきたい。香水=「カラリア」から、香り=「カラリア」に進化していくことに注力していく。これらを実現するためには、ブランドと手を取り合っていくことが重要で、引き続きその取り組みを強化していきたい。

WWD:香りのDXをどのように実現するか?

南木:データとAIの活用をしながら、オンラインで香りの最適化を図る。顧客のデータを多く集め、どう活用するか、香りをどう表現するかが肝。香りのデータに関しては、最も多く、質の高いデータを保持していると思う。データとAIを掛け合わせて、さまざまなサービスを提供する。一方で、香りはリアルの体験も大事で、「カラリア」がリアルの香り体験に貢献できているかも重要だ。人流データを活用したOMOの実現に向けたプロジェクトを構想しており、それにより「カラリア」のフレグランス市場への貢献が見えやすくなるのではないかと考える。

WWD:日本のフレグランス市場をどのように分析するか?

南木:20代の女性のユーザーが以前と比べて増加しており、新たな消費者市場に流れてきている。こだわりのある消費者が増えてニッチフレグランスが盛り上がっている。ただ、このトレンドはコロナの影響などもあり一時的である可能性もあるので、根本的にフレグランスを楽しむというカルチャーを作っていく必要がある。

WWD:日本のフレグランス市場が成長するために必要なことは?

南木:香り文化が根付いていないので、消費者が香りを楽しむハードルを下げて、習慣として根付かせる必要がある。

WWD:今後の展望は?

南木:香水のサブスクから、香りのプラットフォームへと進化する。トライアルからフルボトルの購入まで楽しんでもらえるサービスに成長し、市場を盛り上げたい。データの提供や認知獲得など、取引先への価値提供も強化していく。

会社概要

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2017年設立。「わくわくで、あらゆる枠を超えていく」をフィロソフィーに掲げ、フレグランスのサブスクリプションサービス「カラリア」を19年にスタート。事業の中核である「香りの定期便」は約130ブランド1000アイテムを取り扱う。現在の会員数は60万人以上と、ユーザーを多く抱えるプラットフォームに成長している

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ツバメの巣で再生・循環ブランド発信【エムスタイルホールディングス 稲冨幹也社長】

PROFILE: 稲冨幹也/エムスタイルホールディングス社長

稲冨幹也/エムスタイルホールディングス社長
PROFILE: (いなとみ・みきや)1974年生まれ、福岡県出身。19歳で起業し多角経営にて社長業を行うも「金を追って夢を追っていない自分」に気づき、世界15カ国以上を巡る自分探しの旅に出る。36歳のときマレーシアでツバメの巣に出合い未知なる成分と無限の可能性に気づき、自らの人生を捧げてツバメの巣で世界を変えようと決意。2011年から「ビース」ブランドを立ち上げ、ツバメの巣ハンターとしても活躍する PHOTO:YUKIE SUGANO

ツバメの巣で世界中に驚きと幸せを生み出すことを企業理念としているエムスタイルホールディングスは、100%天然アナツバメの巣を活用した健康食品、コスメブランド「ビース(BI-SU)」を展開する。希少なツバメの巣の品質保持はもちろん、地球温暖化、熱帯雨林の減少、絶滅危惧種の増加、これら環境問題の解決や自然保護活動にも積極的に取り組んでいる。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

循環だけでなく再生も考した
全人類のためのブランドを育成

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年はどんな年だったか。

稲冨幹也社長(以下、稲冨):ブランドを続ける中で、ジャングルの危機を伝えられ天然アナツバメの巣に触れられる体験型店舗が欲しいという思いがあった。そこで、23年3月にブランド初の直営店をギンザ シックスにオープン。当初は1年間限定オープンの予定だったが反響も良く延長が決定。ブランドコンセプトを世界に向けて発信する場としての地位も確立し、ブランディングとしても非常に飛躍できた。24年中にはアジアの旗艦店として京都・祇園店がオープンする予定だ。また、私の半生が描かれたルポルタージュ「ツバメの巣で世界を変える 命がけのツバメの巣ハンター 稲冨幹也」が発売された。中高生からの反響も大きく、気候変動など地球環境の危機に対して大人が果たす責任の重さを改めて実感した。環境問題の重大さに対し改めて自分を律する年でもあった。

WWD:マレーシアでは「国の宝」として保護されているツバメの巣の研究はマレーシア元首相マハティール・ビン・モハマド氏も注目する。

稲冨:世界的にもツバメの巣に関する研究は珍しく、原産国のマレーシアでも行っていない。22年に来日したマハティール氏に企業理念を賛同いただけたことは、日本国内で「ビース」に興味を持ってもらえる大きな転機となった。当社は売り上げ確保は二の次で社会循環型のモデルを作りたいとブランドを展開するが、ジャングルの危機的状況などの訴えに耳を傾ける人も増えたように感じる。例えば毛皮やダイヤモンドなどを求めるほどに地球が壊れてしまうことを人々は望んでいない。しかしそれらをあたかもいいモノのように見せるブランドも多いのが現実だ。商品を買うほどに環境が良くなったり動物が助かったりするという循環が必要であり、それを日本から発信できる世界を作り上げたい。

WWD:循環型社会のために手掛けることは?

稲冨:循環するだけではなく再生も考慮したリジェネラティブを加速する鍵は米国・ハリウッドにある。すでに現地に会社を設立し準備を進めている。ハリウッドは色褪せない名作など数多の“憧れ”を創造する場であり、商品を売ると同時にブランドの哲学も伝わりやすい。ただし、唾液を原料とするツバメの巣はすぐには受け入れられないため、まずはペット用ツバメの巣ブランド「ミラネスト(MIRANEST)」から攻めていく。今年はラスベガスやドイツなどの展示会に出展予定で、「ミラネスト」からツバメの巣を広め、そこから「ビース」につなげるという戦略を立てている。

WWD:「人・動物・自然」が共存する世界を目指し、10年以上前から、リジェネラティブの考えを持ち環境保全活動を行っている。

稲冨:ツバメの巣は一度使った巣は二度と使わないという習性があるため、天然アナツバメの巣は何も傷つけないサステナブルな食材であると同時に、人々に健康や美をもたらす素晴らしい原料だ。しかし原産地であるボルネオ島は乱獲や密猟問題、ジャングルの森林を切り開いてパーム油の原料となるパームヤシを植樹するなど生態系が崩れている。ツバメの巣を守るには健康なツバメが必要で、そのためには健康な自然が必要。21年から商品を1品購入するごとにボルネオ島に苗1株分の金額を寄付する活動を行っており、「ビース」を使えば使うほど地球が良くなるという循環を作っている。全てのブランドが原価率や売り上げを追い求め、犠牲の上に成り立つ社会であってはいけない。

WWD:17年に設立したツバメの巣研究所では大学と共同研究を行い多くのエビデンスを取得していることも同社の特徴だ。

稲冨:天然アナツバメの巣および、それに含まれるシアル酸(N-アセチルノイラミン酸)に関する研究を行い、その潜在的な能力を引き出している。これまで九州大学、麻布大学、熊本大学とタッグを組み、免疫やエイジングケアなど10以上のエビデンスを取ってきた。直近では、ツバメの巣によるミトコンドリアの機能向上に関する特許出願に至った。これはツバメの巣を食べると長寿遺伝子が増強する可能性が判明したことからで、皮膚のエイジングケアや疲労回復のサポートなどが期待でき、今後はプロテインに加えるなど幅広い展開も可能になる。すでに米国での試作も進めており、今秋までには商品を発売したい。このミトコンドリアの機能向上を生かし、宇宙食の開発を宇宙航空研究開発機構(JAXA)とも話を進めている。これらが実現すれば、「ビース」は美と健康だけではなく全人類のためのブランドに進化するだろう。

WWD:24年を象徴する数字はあるか?

稲冨:私の干支である寅年の10年に創業し、11年に「ビース」を立ち上げ、23年で12年が経過した。日本でツバメの巣市場を12年かけて創造してきた。改めて原点回帰し、これからの12年の方向性を昨年12月末から70日間マレーシアに滞在して考えようと思う。業績については、23年の売上高は27億円で24年は35億円を最低ラインに伸ばしていく。

会社概要

エムスタイルホールディングス
M-STYLE HOLDINGS

2010年設立、本社は福岡県。自然環境に一切負担をかけないサステナブルな理念を掲げ、稲冨代表自らマレーシア・ボルネオ島で採取した100%天然アナツバメの巣のみを活用した健康食品や美容コスメ「ビース」の製造・販売を行う。14年、香港に支社エムスタイルアジアを設立。16年にはペット用栄養補助食品を提供するブランド「ミラネスト」も立ち上げた

問い合わせ先
エムスタイルホールディングス
0120-128-213

TEXT:WAKANA NAKADE

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日本製の高品質とサービスを武器にグローバル化を加速 【エーグローバル 金松月代表】

PROFILE: 金松月/エーグローバル代表

金松月/エーグローバル代表
PROFILE: (きん・しょうげつ)中国・吉林省出身。中国で高校を卒業後、日本に留学。2007年に再来日し、通訳や経理・営業事務に従事。15年にアーティスティックアンドシーオーに入社し、経理部長を務める。その後海外事業を任され、17年に海外向け事業会社アーティスティックアンドシーオーグローバルを設立。取締役として2年で年商150億円を達成し、21年3月に代表取締役就任。23年9月、エーグローバルの代表取締役となる PHOTO :TAMEKI OSHIRO

岐阜県羽島市を拠点に、独自技術を搭載した美容機器の製造・販売を手掛けるエーグローバル。2023年9月にアーティスティックアンドシーオーグローバルからエーグローバルに社名を変更し、全世界へ向けてのさらなる販売拡大に向けてまい進する。10万円以上の高級美顔器を主力に、27年までに売上高200億円を目指す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

基盤を固め次のステップに踏み出す

WWDJAPAN(以下、WWD):あらためて社名変更の経緯は?

金松月代表(以下、金):エーグローバル(A. GLOBAL)のAはスタートを意味する。初心に戻り、あらためてグローバル企業としての展開を目指そうと社名変更した。もともとアーティスティックアンドシーオーという会社の中で、グローバル化を目指す事業会社としてアーティスティックアンドシーオーグローバルを設立した。今まで築いてきたものもあるので、もったいないという気持ちもあったが、すでに2年前に同グループから独立して資本関係も解消。23年8月には生産工場の買収も終え、新たな体制の下、7期目からリスタートすることにした。エンドユーザーは商品で判断するため、社名が変わっても問題はなく、皆さまに応援していただいている。

WWD:変化の多かった23年をどう振り返る?

金:メインの市場が中国であることに変わりはない一方で、23年は処理水を発端とする国際問題に影響を受けていることを痛感した。だからこそ新しいことに取り組む姿勢は今まで以上に必要だと感じた。

WWD:国際問題は美顔器の販売にも影響している?

金:新商品の発表会で現地の俳優やインフルエンサーを起用しにくかったり、情報を拡散しにくかったりした。中国では、国産品の流通を強化する流れがあるなど、今はいろんな要素が重なっている。ただ消費者は一時的に波に流されることはあっても、冷静になれば本当に良いものに戻る。高価格帯であっても選ばれる価値があることが重要だ。また、23年8月には中国で子会社を設立し、サービスの強化にも取り組んでいる。

WWD:中国で強化するサービスとは?

金:品質の高さだけでなく、サービスの面でもきめ細かな日本らしさを打ち出していく。当社の主力は10万円以上の高額美容機器であり、その価値をしっかり伝えるためにもアフターサービスを重視する。何かトラブルがあった時の対応だけでなく、自分たちからお客さまにアプローチするサービスを展開したい。中国ではこれまで100万台以上を販売しているが、主な販路が代理店経由のため、取得している購入者データはまだ7万人ほど。今後はそれらのデータを集積・分析し、下取りサービスなどもできるようにしたい。

WWD:10月には初めて中期経営計画を作成した。

金:17年の創業時はインバウンドが盛んな頃で、いろいろとタイミングも良く急成長してきた。今後は、基盤を固めながら、次のステップに踏み出す時と考え、中期経営計画作成に至った。

WWD:今後、注力する商品やサービスは?

金:まずは、サブスクリプションを充実させる。これまでもやってはいたが、一部の機種に限られていた。今年はいろんな機種から選べる本当の意味のサブスクを展開する。必要とする美容機器は季節でも変わるし、今の時代、所有するだけがいいとは限らない。SDGsの観点からも求められている。次にテレビショッピング。今年は社内にスタジオ設備を構え、そこから通販番組を生放送できる体制を整える。スタート時は地元のテレビ局とBSで放映する予定で、3月8日の国際女性デーに間に合わせたい。世の中の変化は激しい。時代の変化に対応するためにも、露出するツールやチャネルは多く持っていた方がいい。

WWD:貴社は「化粧品は食品、美容機器はサプリ」と表現するが、サプリである美容機器を毎日使ってもらうための施策は?

金:サブスクを充実させると同時に、IoTのバージョンアップを目指して開発を続けている。IoTの活用でよりお客さまの需要に合った提案ができ、満足度も上がる。忙しい現代人は1カ月先のエステの予約を決めるのは難しい。優れた美容機器は、いつもそばにエステティシャンがいるようなものだ。

WWD:EコマースやSNS関連での新しい動きは?

金:ライブコマースにさらに力を入れる。これまで、インスタライブが中心だったが、17LIVEでもモノが売れ始めるなど状況は少しずつ変わっており、若い世代向けの商品を中心に取り組みを行っていく。もちろん、TikTokも強化する。また、弊社は高価格帯商品が主力となるため、日本でも中国でも、百貨店を中心にリアル店舗を増やしていく。オンラインでしか問い合わせができないのではなく、何かあったら行ける場所があるのはとても重要。それが一番の信用になる。

WWD:23年は中期経営計画の初年度となる。その道筋は?

金:現在は売り上げの約8割を中国が占めるが、積極的に海外へ展開しながら全体の売り上げを伸ばしつつ、日本の売り上げを4割程度にまで引き上げたい。商品面では、ニキビケアなど若い世代向けのスキンケアシリーズを増やし、インナービューティ商品も年内に発売する計画で開発を進めている。美容というカテゴリーの中、美容機器を軸に、美容機器を使う人たちの生活の質を向上させるラインアップを増やしていく。それを実現するには、人にフォーカスすることが大切だ。私自身、自分で限界を決めずにやってきて今に至っている。社内メンバー全員がチャレンジし、可能性を見出してほしい。

会社概要

エーグローバル
A. GLOBAL

業務用美容機器製造・販売メーカーであるアーティスティックアンドシーオーの海外向け事業会社として、2017年にアーティスティックアンドシーオーグローバルを設立。日本国内だけでなく、中国や韓国でも日本発美容機器ブランドとして高い支持を得る。23年9月、社名をエーグローバルに変更すると共に、同グループからも独立。これまで通り美容機器の製造と販売を主軸に、全世界に向けて販売を拡大。新しいことに挑戦していく企業としてリスタートした

問い合わせ先
エーグローバル
058-325-9788

TEXT:YOSHIE KAWAHARA

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技・生・販の一貫体制で効率化と売り上げ拡大を実現【ファイントゥデイホールディングス 小森哲郎社長】

PROFILE: 小森哲郎/ファイントゥデイホールディングス社長

小森哲郎/ファイントゥデイホールディングス社長
PROFILE: こもり・てつお)大学院卒業後、外資系コンサルファームを経て、40代で「日本企業の経営革新に携わりたい」という思いを胸に経営者の道へ。その後は経営のプロとしてさまざまな業界でCEOを歴任。数々の会社の社外取締役も務める。21年よりファイントゥデイ社長兼CEO。23年の持株会社制移行に伴い、ホールディングスの代表取締役CEOも兼任 PHOTO : YOHEI KICHIRAKU

誰もが毎日を心豊かに、前向きに過ごすための日用美品の提供を目指すファイントゥデイホールディングス。2021年に資生堂のパーソナルケア事業を引き継いでファイントゥデイ資生堂を設立し、23年に社名から資生堂の冠を外して生産拠点や研究所の営業を開始。技術開発から生産、販売までの一貫したビジネスシステムで飛躍を目指す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

日本の美意識で育んだブランドを
地域のニーズや風土に合わせて展開

WWDJAPAN(以下、WWD):社名変更後は活発な動きがあった。

小森哲郎社長(以下、小森):23年1月1日付で持株会社制に移行し、ファイントゥデイホールディングスが事業開始した。同年4月に資生堂の久喜工場を前身とするファイントゥデイインダストリーズが当社の完全子会社となり、7月にグループ初となる研究所“ファイントゥデイ ビューティーイノベーションセンター”を豊洲に開所、12月に資生堂の子会社でありベトナム工場を運営するShiseido Vietnam Inc.を取得した。これにより、創業以来推進してきた技術開発から生産・販売に至るまでの一貫したビジネスシステムが整ったことになる。21年の会社設立当初は300人程度だった従業員も、今や3000人近くまでになっている。

WWD:パーソナルケア領域を手掛けるが、その概念とは?

小森:われわれがパーソナルケアと呼んでいる分野は、世の中ではトイレタリーと言われる。元々の事業の名前が資生堂ファイントイレタリーで、トイレタリーにファインがついていることからも分かるように、単なる消耗品ではなくちょっと高級感がある化粧品に限りなく近いコンセプトを掲げていた。われわれが提供しているのは、機能性を超え、情緒的価値まで含めた商品、使うことで前向きになるなどの行動変容まで起こさせるような商品だ。当社には、資生堂で育まれた美意識を持ち、長年化粧品に携わってきた人材が豊富だ。その力を発揮した化粧品的なアプローチやコミュニケーションができるのは強みだ。

WWD:今後、目指すところは?

小森:「世界中の誰もが、素晴らしい一日を紡ぎ、いつまでも美しく、豊かな人生を送れるようにすること」をパーパスに掲げている。その実現に向け歩んでいくと同時に、100年続く企業を目指している。化粧品企業における一事業から、1000億円以上の売り上げと高収益を出すパーソナルケアカンパニーとして、生産ラインの効率化やITの仕組みの変革、海外拠点の再編成など一つ一つ手掛けてきた。事業運営と組織づくりを、全員の力でコツコツ、スピード感をもって同時並行させてきたので、社内では自分たちの会社を“ビッグベンチャー”と捉えている。

WWD:小森社長自身、ファイントゥデイは社長として4社目。これまでの経験が生きている?

小森:業界が違っても、いい会社というのは「早く課題を見つけて早く手を動かす」という共通点がある。当社はそれを「自律的な課題解決のガバナンス」と呼んでおり、その方針を就任初日に全社員に伝えた。それぞれの問題は1人で解決できることではなく、部門を超え、国・地域を超えて解決する必要がある。普通、特別なことをやらないと社内の一体感は生まれないものだが、当社は乗り越えるべき課題がたくさんあり、日々それを共有し、チームを組み、知恵を出し合って全員で解決していく土壌ができている。それを支えているのが、日用品・化粧品企業をはじめ、自動車や航空、製薬業界など、あらゆる産業から来た豊かな人材で、それは財産でもある。人材の多様性が企業文化となり、事業面以外のESGも進みやすい。TCFDレポートの作成やエコバディス社のサステナビリティ評価で“ゴールド”を獲得したのはいい例だ。パーパス実現のためには、事業とESGを両輪で回すのが非常に重要であり、それが構造的にできているのが当社の特徴でもある。

WWD:新ブランド「プラストゥモロー(+tmr)」も発売する。

小森:ファイントゥデイとして初となるオリジナル新ブランドで、高価格帯のプレミアムヘアケア市場へ参入する。11月に全国のアットコスメストアで先行販売し、2月には一気に全国展開する。品質やパッケージデザインにこだわったのはもちろんだが、本体ボトルにリサイクルPETを採用したり詰め替え用パッケージに植物由来のプラスチックを使用したりするなど、事業とESGを両輪とするパーパス経営を体現する商品だ。

WWD:今後の海外戦略をどう考える?

小森:現在、中国、アジア太平洋地域で11の拠点があり、売り上げの半分以上を海外が占める。韓国や台湾など成熟した市場がある一方で、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピンなどもプレミアム商品人気が急速に進み、今伸び盛りだ。“パーフェクトホイップ”の「専科(SENKA)」とヘアケアブランドの「ツバキ(TSUBAKI)」は成長著しく、日本で大人気の「フィーノ(FINO)」も各市場に展開している。商品の良さをどのように伝えていくか、現地できっちりプランニングしていくことと、グローバルにモノを考える思考と体制が重要だ。「プラストゥモロー」をはじめ、新ブランドを海外で販売する可能性もあるが、いずれも日本でしっかり基盤を固めることが先決。日本の美意識で育んだブランドを、地域のニーズや風土等に合わせて展開するというのが、われわれの勝利の方程式だ。

会社概要

ファイントゥデイホールディングス
FINETODAY HOLDINGS

資生堂から「ツバキ」や「専科」、「ウーノ(UNO)」などのパーソナルケア事業(日用品事業)を引き継ぎ、21年7月に“ファイントゥデイ資生堂”として事業開始。23年1月1日付で社名を“ファイントゥデイ”に変更すると共に、持株会社制に移行。海外も含む全拠点、および技術開発・生産・販売の各機能がより一体となり、自律したメーカーとしていっそうの企業価値の向上を加速させる

問い合わせ先
ファイントゥデイお客さま窓口
0120-202-166

TEXT : YOSHIE KAWAHARA

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美容師をサポートして存在価値の向上に貢献する【プロテックス・ジャパン/ハホニコ 酒井良明CEO】

PROFILE: 酒井良明/プロテックス・ジャパン社長兼CEO、ハホニコ会長兼CEO

酒井良明/プロテックス・ジャパン社長兼CEO、ハホニコ会長兼CEO
PROFILE: (さかい・よしあき)1962年、愛媛県出身。美容師、ヘアケアメーカー勤務を経て、98年に化粧品OEM企画・製造メーカーのプロテックス・ジャパンを設立。翌年自社ブランド「ハホニコ」を立ち上げる。同年から現職 PHOTO:CHIE FUKAMI

化粧品OEM企画・製造メーカーのプロテックス・ジャパンは、原料開発から企画、製造、流通まで一貫して手掛け、プロフェッショナルからの信頼を長年にわたり集めている。傘下のヘアケアメーカーのハホニコはヘアサロン専売品にとどまらず、リテール商品もプロデュース。両軸で成長を続けている。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

身だしなみ文化をサポートし
美を通して世界に貢献

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年はどのような1年だったか。

酒井良明CEO(以下、酒井):ヘアケアという視点では、サロン業界で注目度の高い酸熱トリートメントが一般市場にも進出し、進化が続いている。酸熱トリートメントは使いこなせるサロンと、そうでないサロンがあるほど、取り扱いに技術が必要とされるものだが、最新の商材では誰が施しても良い質感に仕上げることができるまでに進化した。22年ごろから酸熱トリートメントの開発とブラッシュアップに力を注いできて、実を結びつつある。それを象徴したのがハホニコのヘアケア「レブリ」シリーズの好調だ。サロンメニューとホームケアが連動していて、プロからもエンドユーザーからも人気だ。

WWD:「レブリ」シリーズの特徴は?

酒井:毛髪はエイジングやケミカルダメージによって、痩せ細り、歪んでしまう。そんな毛髪に対して、表面的なケアではどうしても美しい髪には仕上がらない。そこで「レブリ(LEVULI)」シリーズでは、毛髪の歪みを緩和させ真円にしていく真円技術を採用した。毛髪内部から太らせるようなイメージをしてほしい。毛髪内部に栄養が補給されることでふっくらとして、表面のシワ、つまりはクセが治まる。死活細胞の毛髪にアプローチするトリートメントの革命だ。

WWD:酸熱トリートメントはこれからも進化する?

酒井:もちろんだ。多くの人にホームケアでも質の高い提案ができるように、今年はさらに強化していく。新たな原料と商品で髪質改善をプロと一般の双方に打ち出す。OEMでも酸熱トリートメントの需要が高まっているので、応えていきたい。

WWD:プロ向けと一般向けの商材の垣根は年々低くなっているように思うが、商品を作る上で意識していることはあるか。

酒井:これからの時代は商材を用いた上でプロにしかできない工程や技術に、さらに磨きをかけて存在価値を作っていく必要がある。対して、一般向けの商材は家庭で、セルフで、という限られた環境の中でもできる、かゆいところに手が届くような提案をする必要がある。この違いを生かして、プロによるケアとセルフケアとを上手く連動させた商品提案をしていきたい。

WWD:プロが介在するか否かは、確かに大きな違いだ。

酒井:美容師にしかできない技術があるので、そこを極められるような商品を作っていきたい。昨今は心理カウンセラーや美容医療に注目されることも増えたが、専門家のもとできれいを磨いてほしい。ヘアケア、さらには美容の専門家として、誰よりもその人のことを理解し、お手本となり、時に褒め、勇気づけるのが美容師。プロがいる人生と、そうでない人生とでは、幸福度は大きく違う。それにあった商品を提供しようと考えると、プロ向けと一般向けの商材ではおのずと違いが出てくる。

WWD:OEMについてはどうだったか。

酒井:全体の割合としてはヘアケアが依然として高いものの、スキンケアで、特にドクターズコスメの依頼が非常に増えている。カウンセリングを通じて悩みを改善できるようにドクターの要望に応じたスキンケアの開発を行っている。一般消費者の目利き力が上がり、優れた物のみが拡散される中で、こだわりの商品を作れることを評価してもらえた。ゆくゆくはハホニコからスキンケアを提案することも視野に入れている。というのも、プロ向けに関してはヘアケアに特化しつつも、一般の消費者には「ハッとして、ホッとして、ニコッ」というハホニコの社名に込めた思いを体現するのにスキンケアも欠かせないと考えているからだ。

WWD:23年は新たにペット事業をスタートさせたのも印象的だった。

酒井:1人の社員がきっかけでペット事業部を立ち上げた。ペット市場に目を向けると、決して人間には使わない成分を使った商品が横行している。例えばペット用のシャンプーは雑貨に分類されるため、成分表示が義務付けられていない。皮膚や毛にダメージを与えてしまう成分が含まれていることも。ペットを飼っている人にとっては大切な家族の一員にもかかわらず、作り手との愛情の差に疑問を持った。未知の市場ではあるが、ヘアケアを扱ってきたからこそ成分や商品の価値基準は分かる。たとえ売れなかったとしても、存在意義のある商品を作ることに意味があると思っている。

WWD:24年に取り組むことは?

酒井:世界中を見ても、これほど髪の毛を洗って、スタイリングをするのは日本人だけ。これほど自分でケアをして、スタイリングをして、身だしなみにお金をかける国民性は稀。そんな身だしなみ文化をサポートしていきたい。美しくなると心が穏やかになる。美意識が高くなるとそれだけ平和になる。美を通して世界に貢献し、リーダーシップをとっていきたい。

会社概要

プロテックス・ジャパン/ハホニコ
PROTEX JAPAN/HAHONICO

1998年創業。化粧品・医薬部外品の研究開発および製造を行い、ヘアサロンのOEMなどを手掛ける。99年には自社ブランド「ハホニコ」を立ち上げ、2002年にハホニコ販売事業部から株式会社に組織変更。ヘアサロン専売品や一般流通商品も販売する。09年、京都府に研究所および工場を、16年には愛媛県に原料栽培から製造まで取り組む森の国ファームファクトリーを設立

問い合わせ先
プロテックス・ジャパン
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TEXT:NATSUMI YONEYAMA

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“インフラ業”に注力し新たな一歩を踏み出す【サティス製薬 山崎智士代表取締役】

PROFILE: 山崎智士/サティス製薬代表取締役

山崎智士/サティス製薬代表取締役
PROFILE: (やまざき・さとし)1972年9月18日生まれ、東京都出身。アトピー性皮膚炎を患う子どもたちと関わり、「技術で皮膚を変え、皮膚が変わることで人生が変わる」、そんなきっかけを広く提供したいと99年12月にサティス製薬を起業した PHOTO : SHUNICHI ODA

ユーザー満足度を高める商品開発を主軸に800以上の通販・D2CブランドのOEMを手がけてきたサティス製薬は今年、新たなスタートを切る。個人でもオリジナルのスキンケア化粧品が作れるOEMサービス「ウィズ ブランド プロジェクト」を本格始動するほか、今年から“インフラ業”にも力を注ぐ。「1人でも多くの女性に“正しい綺麗”を届ける」ために、誰もが自分の理想とする肌状態を手に入れられる社会の創出を目指す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

設立25周年を迎える今年
ビジネスモデルを大きく変える

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年を振り返ると。

山崎智士代表取締役(以下、山崎):今年から新たな一歩を踏み出すために、準備に費やした1年だった。われわれは“製造業”の看板は変えないが、その周辺事業を“インフラ業”と位置づけ、今年から推し進める。そのリスタートに向けて、昨年は製造業の仕組み化をはじめ、私が経営との関わりを切り離す準備やインフラ構築に必要な投資資金の確保などに取り組んだ。

WWD:サティス製薬の“インフラ業”とは具体的にどういうことか。

山崎:これまでのOEMは、開発のスキルや製造設備、品質管理の機能を共有するシェアリングビジネスだった。これからはモノづくりの領域を広げ、顧客管理からコールセンター、配送などを含む“インフラ業”として、ブランド規模の大小に関わらずバックオフィスでサポートする。

WWD:なぜ“インフラ業”に踏み切ったのか。

山崎:サティス製薬は20年もの間、OEMとして多くのブランドと伴走してきた。その中でブランド生存率は20%と業界平均よりも高く、良い商品を作り出す優れた組織だと自負しているが、資金不足から休止したブランドも数多く見てきた。その要因は過剰在庫の影響が最も大きいが、顧客獲得コストの高騰によりタッチポイントを広げることが難しかった。また、バックオフィスにまつわる最低限の固定費も負担になっていた。そこで、われわれのインフラを通じてこれらの課題を解決し、ブランド存続におけるリスクを取り払いたいと考えた。昨年はその種まきが終わり、今年からはどのブランドでもユーザーとの接点を“コストゼロ”で実現することを目指す。サティス製薬の理念「1人でも多くの女性に“正しい綺麗”を届ける」に向けて、需要予測、在庫管理、調達リードタイムを最適化しながらブランド生存率を51%以上に引き上げたい。

WWD:酵素洗顔料「パパウォッシュ」を展開するイー・エス・エスのノウハウを生かす。

山崎:19年に子会社化したイー・エス・エスは通信販売を中心に酵素美容の商品を展開する。カタログ制作やコールセンター含め自社で全て運営し、インフラに関して約40年のノウハウがある。そして大きな財産でもある顧客リストは200万人にのぼる。しかし買収当初、火の車だったイー・エス・エスを立て直すために時間を擁した。昨年ようやく経営のメドが立ち、さらには同社のインフラを活用できる土壌が整った。今後、われわれのパートナーブランドにはこの200万人にリーチするサービスを提供する予定だ。

WWD:ユーグレナと資本提携した。

山崎:ここ数年、初心にかえり自分の手でモノづくりをしたいという思いが強かった。そのためには、私が好きで始めたこの製造業という仕事とそこに対しての執着を断ち切る必要があった。今回の資本提携を通じてインフラを中心に事業を促進し、伴走するブランドの生存率をさらに高めていく。

WWD:30万円から個人でオリジナルのスキンケア化粧品ブランドを作れるOEMサービス「ウィズ ブランド プロジェクト」を昨春にプレスタートし、今年から本格始動する。

山崎:「ウィズ ブランド プロジェクト」は、多くのブランドオーナーとともに、多様な価値観や肌悩みに寄り添う化粧品を作りたいと考えた。個人でブランドを立ち上げる人は、特にモノに対する熱量や思い入れが強い。これからの「きれいを作る」ブランドは、“人”が立ってくるスタイルになると予測する。最終的なゴールは、業界全体を巻き込むプロジェクトとして成長させ、賛同企業とともに消費者ニーズを満たすブランドを創出することだ。

WWD:今の化粧品業界をどう見ているか。

山崎:誠実に目の前の1人の人を「綺麗にする」ということに、今まで培ってきた技術や知恵をおしみなく出していくべきだと思っている。そのためには業界の空気を入れ替えないといけない。社内ではゲームルールを変えると呼んでいるが、業界のゲームルールはトップ企業の1社によって作られている。トップ企業と肩を並べるために、この20年はいかにブランドを大きく成長させるかということに汗をかいてきた。しかし、それだけではビジョンが描きづらかった。これからは、小さいブランドでメガブランドを全方位に取り囲み、シェアを削り落とすことが近道だと気づいた。小さいブランドを小刻みに出すのではなく、ダムから放水するように一気に世に出していく必要性がある。この3年はそこに集中する。30年までには、われわれのインフラを通じて小さいブランドを現状の800から1万まで増やすのが目標だ。セーフティーネットを強化しながら、24年はサティス製薬のビジネスモデルを大きく変える元年となるだろう。

会社概要

サティス製薬
SATICINE MEDICAL

化粧品のOEM(相手先ブランド生産)メーカーとして、800ブランドの開発・生産を手がける。2016年12月には国産の天然材を活用した原料開発で、世界初の植物ヒト型セラミドの開発に成功。埼玉県吉川市に本社工場、東京・江東区にラボを持つ。山崎代表はエンジェル投資家としての顔も持ち、スタートアップ企業のバルクオムやメデュラなどにも出資している

問い合わせ先
サティス製薬
03-5646-2434

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構造的な改革を推進し、新たな成長分野を開拓 【プレミアアンチエイジング 松浦清社長】

PROFILE: 松浦清/プレミアアンチエイジング社長

松浦清/プレミアアンチエイジング社長
PROFILE: (まつうら・きよし)慶應義塾大学経済学部卒業、コロンビア大学経営大学院でMBAを取得。外資系金融機関、戦略系コンサルティング会社を経て、伊ラグジュアリーブランド、米オンラインジュエリーブランドの日本法人、上場投資会社の社長を歴任。2009年12月にプレミアアンチエイジングを設立、化粧品開発販売事業を開始。20年東証マザーズ上場、現在に至る PHOTO:SHUNICHI ODA

相次ぐ新ブランド発表や新領域参入など攻めの姿勢で変革を続けているプレミアアンチエイジング。23年は中期経営計画「2024 -2027+Beyond」を策定し「Forever vivid 人の時間(とき)を、解き放つ。」を新たなスローガンとして制定した。創業時から一貫する「Uniqueな価値」から生まれる商品やサービスを通して、年齢に関係なく誰もがいつでも輝き新たなことにチャレンジできるという持続可能な社会の実現を目指す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

アンチエイジング分野の
リーディングカンパニーへ

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年は引き続き事業領域拡大や新ブランドを相次いで投入するなど躍進の年となった。

松浦清社長(以下、松浦):アンチエイジング分野のリーディングカンパニーとして、スキンケア事業とヘアケア事業に加え、23年1月からインナーケア事業への参入や、ベネクスがグループ入りし、リカバリー事業も展開。ベネクスのリカバリーウエアは、生活する上でのパフォーマンス向上に必要な“休養”に着目し、独自開発の特殊繊維で作られた休養時専用ウエア。トップアスリートをはじめ多くの著名人が愛用するなどリカバリー市場の開拓をけん引している。リカバリー事業領域への参入により、当社の目指す「Uniqueな価値」を提供する企業として事業成長の加速を実現することが狙いだ。ベネクスはもともと良質な商品を作っていたが、グループ入りによって、ファッション性や着心地の良さ、生地やデザインなどの改良を進めている。マーケティングが得意な当社とタッグを組むことで、アンチエイジング関連サービスのクロスセル促進やブランド力の強化、会員基盤の拡大などさまざまなシナジーが期待できる。リカバリー市場は30年に14兆1000億円規模になると予想され、中でも衣服の成長は大きな伸びが予測される。今後さらに旬な分野になると見込んでおり、市場リーダーとしての拡大を目指す。

WWD:主力ブランドの「デュオ(DUO)」は4年連続クレンジング市場売り上げNo.1(※1)を獲得した。

松浦:これは、すでに「デュオ」がお客さまに浸透・定着し、高い支持を頂いているからと受け止めている。こうした中、あらためて原点に立ち返り、お客さまにとって「ベストなクレンジング」でありたいと23年11月に「DUO YOUR BEST」というブランドメッセージと共に、新たにブランドアンバサダーとして、ご自身も「デュオ」の愛用者である新木優子さんを起用した。また、これまで「デュオ」のデジタル施策は認知度を上げるための展開が中心だったが、現在はブランドや商品価値を訴求する、従来とは異なるステージのマーケティングに舵を切っている。具体的には、実際に愛用して頂いている美容家やインフルエンサーに出演してもらい、美容感度の高い人たちに評価されている商品であることを発信している。

WWD:22年発売のヘアケアブランド「クレイエンス(CLAYENCE)」の状況は?

松浦:発売から1年にも関わらず、“クレイスパ カラートリートメント”がヘアカラートリートメントブランド別売り上げランキングNo.1(※2)を獲得。若年層の白髪悩みという新しいニーズに着目したカテゴリーのため、顧客の幅は広がった。また、当社の他ブランドとのクロスセルも可能な点が大きい。「クレイエンス」は「カナデル(CANADEL)」とターゲット世代が重なり、合わせ買いを促しやすい。そのほか、23年はインナーケアブランド「シントー(SINTO)」「エックス(X)」で機能志向食品市場に参入。また、23年8月には高濃度に特化したビタミンCのスキンケアブランド「シーマニア(C+MANIA)」をローンチした。いずれも育成ブランド群としてテストマーケティングを実施中だが、初動の良いスタートをきれている。

WWD:会社を象徴する数字について。

松浦:当社は昨年、27年までの成長戦略「中期経営計画 2024 -2027+Beyond」を発表。「Uniqueな価値にこだわりぬく。再び成長軌道へ」を掲げ、継続的な成長を果たすため成長の源泉となってきた「Uniqueな価値」に改めてこだわり抜くことが重要になる。24年は中期経営計画達成に向けた1年目となること、改めて原点に立ち返るスタートになること、そして「デュオ」は5年連続クレンジング売り上げNo.1を目指すことから、「1」を象徴とする数字にしたい。

WWD:「1」に向けた、24年の施策について。

松浦:24年は前期から引き続き構造的な改革に注力し、来期がスタートする8月からの再成長に結びつけていく。その要である一つが、全体売り上げの約65%を占める当社の柱である「デュオ」の存在。クレンジングバーム市場のパイオニアとしてブランド価値を再強化してポジションを固めると共に、市場そのものの成長をけん引する高付加価値の新商品開発を進める。また海外展開に今一度注力し、国内インバウンド市場との連動が期待される中国・台湾の中華圏と、シンガポールを代表する東南アジアにフォーカスする。中でも上海に現地法人を立ち上げた中国市場での売上拡大を目指し、今期中に新たな動きを発表できるよう、準備を進めている。そして引き続き、リカバリーウエア市場のようなアンチエイジングの新たな成長分野を開拓するためのM&Aにも力を入れていきたい。

※1 TPCマーケティングリサーチ㈱によるクレンジングブランド別シェアランキング調査 対象期間:2019年4月〜2023年3月/調査時期:2023年6月調べ
※2 「ヘアカラートリートメントに関する調査」(ブランド別売上)TPCマーケティングリサーチ㈱ 対象期間:2022年7〜12月 調査期間:2023年3月調べ

会社概要

プレミアアンチエイジング
PREMIER ANTI-AGING

2009年12月設立。肌が本来持つ自己回復に着目した「デュオ」をはじめ、高機能エイジングケアブランド「カナデル」、クレイスパ発想のヘアケア「クレイエンス」、メンズスキンケア「デュオ メン」など8ブランドを展開している。23年9月には中期経営計画「2024-2027+Beyond」策定し、新たなスローガンや新コーポレートロゴを制定した

問い合わせ先
プレミアアンチエイジング
お問い合わせフォーム

TEXT:WAKANA NAKADE

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“健康美容長寿社会”の実現を目指す【ヤマノビューティメイトグループ 山野幹夫代表】

PROFILE: 山野幹夫/ヤマノビューティメイトグループ代表

山野幹夫/ヤマノビューティメイトグループ代表
PROFILE: (やまの・みきお)東急エージェンシー入社後、ニューヨーク大学留学を経て、1999年にヤマノビューティメイトグループ代表就任。2002年に琥珀研究所を設立し、理化学研究所と共同研究を開始。世界で初めて琥珀の美容効果で特許を取得。琥珀の健康効果の共同研究を筑波大学、岩手大学と進める。17年に琥珀バイオテクノロジーを起業。著書に『琥珀革命 健康で美しくなる』(幻冬舎)がある PHOTO:YUKIE SUGANO

現代表の祖母であり美容業界におけるパイオニア的存在である山野愛子氏は、1971年にヤマノビューティメイトグループを設立した。どろんこ美容の理念を受け継ぎながら新しい美容法の研究を続け、健康美容長寿社会を実現するトータルビューティ企業を目指して全国約2400店のサロンでサービスや商品を展開する。海外事業では琥珀の研究開発から生まれた商品が好調だ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

ヤマノの原点であるどろんこ美容と
琥珀バイオテクノロジーを融合

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年は新型コロナウイルスが5類に移行し、エステサロンにも本格的に人が戻ったがどう振り返る?

山野幹夫代表(以下、山野):全国のフェイシャルケアサロンに化粧品や美容健康食品、美容メソッドを提供する代理店ビジネスは、23年5月期の売上高が前期比5%増だった。約2400店舗あるサロンのお客さまは60〜80代が主で、上は90代までいらっしゃる。コロナ禍では来店できなかったが、やっと再び通っていただいている状況だ。その一方で、30〜40代を中心とする新客数は同50%増と大きく伸長した。新客はサロンに通ってサービスに満足した結果、化粧品購入につながるが、今はまだ信頼関係を築いている段階。客数が増えているからといってすぐに売り上げにつなげようと焦るとトラブルになりかねない。われわれの代理店ビジネスは地域密着型であり、お客さまとの信頼関係をしっかり築いてきたからこそ55年も続いている。何十年も通っているお客さまの客単価は新客の10倍ほどにもなる。時間をかけて関係性を構築したい。

WWD:トータルビューティ企業を目指し、新サービスもスタートした。

山野:従来はファイシャルケアや美白ケアが中心だったが、現在は健康美容長寿社会の実現を目標に掲げている。顔と頭の筋膜をリラックスさせて快眠へと導く“天空の眠り 筋膜エステ”を独自開発し、23年に提供を開始した。時代のニーズに応えるメニューで非常に好評を得ている。24年には“自律神経エステ”、25年には“脳活性エステ”の開始も予定している。一つ一つの技術をエステティシャンがしっかり習得してお客さまに満足していただくことを最優先に、5年後、10年後には美容と健康の垣根はなくなると信じて進める。

WWD:代理店事業をけん引した商品は?

山野:22年10月にリニューアル発売したスキンケアシリーズ“薬用BIDOU(美道)”だ。創業者の山野愛子は「髪」「顔」「装い」「精神美」「健康美」の5つの美を整える「美道五原則」が真の美しさを引き出すと提唱し、ヤマノブランドはそれらを愚直に実行しており、内面と外面のトータルビューティを追求する“BIDOU”シリーズと筋膜エステは売り上げ増につながった。“BIDOU”シリーズは、優しい泥やヤマノ特許成分の琥珀を使った既存の人気シリーズを医薬部外品としてリニューアルしたものだ。リニューアル前と比べ、同シリーズの売上高は20%増と大きく伸長した。買いやすくするために価格を下げたので、販売個数はそれ以上に伸長している。最近は、創業当時から50年以上愛され続け、“白どろ”“黒どろ”の愛称で親しまれている元祖どろんこ商品“ドロンコクレー24オリジナル”の、インスタグラムなどのSNSを活用した販促にも注力しており好評だ。新規のお客さまも購入しやすい商品として売り上げを伸ばしている。

WWD:グループ企業である琥珀バイオテクノロジーは、琥珀の研究開発を担う。大学と共同研究も進めるが直近の成果は?

山野:当社と筑波大学との共同研究により、琥珀に顕著な抗ストレス効果があることが明らかになり、うつ病のような症状が抑えられることも分かった。また、琥珀エキスが歯周病の原因となる歯周ポケットの予防や改善、さらに骨粗鬆症の予防や改善に有用であると細胞実験などで明らかになり、現在特許を出願している。また、23年春から日本の琥珀研究の第一人者である岩手大学の木村賢一教授との共同研究を開始した。それに伴い、研究拠点を岩手大学構内に移し研究スピードは加速した。その成果を今後の商品開発につなげていく。

WWD:アジアを中心とする海外事業の商況は?

山野:23年11月期の売上高は前期比68%増と大きく伸びている。これまで琥珀を使った外国人向けの商品はインバウンド客を対象にしていたが、新型コロナの影響を受け壊滅的な状況になった。それなら自分たちから売りに行こうと、中国市場に強いビジネスパートナーの商社が現地に販売会社を設立し、協働で取り組んでいる。シンガポールやタイも順調に伸びており、海外事業は今期も同70%増を見込んでいる。

WWD:海外事業の成長要因と24年の戦略は?

山野:健康美容長寿社会を目指す商品展開は国内と変わらない。琥珀フェイスマスクや琥珀美容食品など、海外戦略商品に注力すると同時に、東南アジアでは日本でも展開する泥パックが支持されている。中国ではライブコマースでKOLと協業しECを強化している。今後、サロン発ブランドとしての認知を上げるため、中国国内で上海などに3店ほどフェイシャルケアサロンをオープンする計画だ。これからはメード・イン・ジャパンという安心感だけでは通用しなくなる。泥と琥珀、そして長い歴史の中で培った優れた技術を持つサロンから生まれたブランドという、他社と差別化したイメージを徹底して訴求しさらなる成長を目指す。

会社概要

ヤマノビューティメイトグループ
YAMANO BEAUTY MATE GROUP

化粧品や美容健康食品、美容メソッドなどを全国約2400店舗のフェイシャルケアサロンに提供する代理店事業、琥珀バイオテクノロジー社と理化学研究所、国立大学法人筑波大学および岩手大学との共同研究から生まれた“琥珀エキス”および“琥珀粒子パウダー”などを配合した自社商品のアジア展開を中心とする海外事業の2つをビジネスの柱に据える。22年に女子栄養大学と提携した「健康・美容コンシェルジュ」認定プログラム、23年には健やかな眠りに導く“天空の眠り 筋膜エステ”をスタートさせ、トータルビューティ企業へと進化を続ける

問い合わせ先
ヤマノビューティメイトグループ
03-3375-2424

TEXT : YOSHIE KAWAHARA

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“ビューティーグルーミングカンパニー”の基盤作り【シック・ジャパン 後藤秀夫社長】

PROFILE: 後藤秀夫/シック・ジャパン社長

後藤秀夫/シック・ジャパン社長
PROFILE: (ごとう・ひでお)MBA、米国サンダーバード国際経営大学院卒業後、1996年にジョンソン・エンド・ジョンソンでキャリアをスタート。営業・マーケティングを経験後、2005年から日本ロレアルで日本と台湾での事業部長の要職を歴任し、ターンアラウンドや事業拡大に貢献。17年にヘンケル ビューティーケアの日本兼韓国の代表としてコンシューマー及びプロフェッショナルの両事業を統括。22年8月から現職 PHOTO:SHUNICHI ODA

後藤秀夫氏は2022年8月の社長就任後、強みのウェットシェービング(水やお湯で肌を濡らしヒゲを柔らかくして剃ること)をはじめ、関連ケア商品を含めたトータルグルーミングを提供する“ビューティーグルーミングカンパニー”としての認知拡大を図るため中期経営計画を作成。改革1年目となる23年は、「Build New Foundation(新基盤を築く)」をテーマに、社内外に関わる基礎作りを実施した。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

“起業家精神”を標準化し新発想なモノ作りを実現

WWDJAPAN(以下、WWD):“ビューティーグルーミングカンパニー”に向けた成長への基盤作りとして2023年に注力したことは?

後藤秀夫社長(以下、後藤):シック・ジャパンはウェットシェービング業界のリーディングカンパニーだが、22年にシェービングビジネスを超えた“ビューティーグルーミングカンパニー”として成長する方針を立てた。当社の存在意義を改めて認識し、社員の意識改革に取り組むためパーパスを設定。「Make beauty grooming joyful(シェービング美容をより楽しく)」に定め、ビューティーグルーミングを通して一人でも多くのお客さまにワクワク感と幸せを感じていただける毎日を届けることを表した。

WWD:ビューティーグルーミングカンパニーを体現する環境作りを強化している。

後藤:どんなに良いパーパスを設定しても、目に見える変化がなければ社員も実感を得にくい。職場環境から改革していくことが重要であると、23年10月に当社初の大規模フルリノベーションを実施。商品テストなどを実施できるビューティーグルーミングスタジオ&ラボを完備するなど洗練されたモダンなデザインを採用した。環境変化は社員の意識改革にとって武器となり、すでに数字として結果も出ている。直近の社員のエンゲージメントスコアは7割以上がポジティブと会社満足度は高い。また、成長戦略として当社の強みであるシェービングを生かしながら、シェービング前後で使用するスキンケアやボディーケアなど新カテゴリー育成のポートフォリオを強化する。

WWD:スピーディーなモノ作りはラボがあるからこそ実現できた?

後藤:どれだけ柔軟かつ早く変化できるかが今の時代のリーダーシップのあり方だと思っている。オフィス内にラボが完成したことにより、さらなるスピーディーなモノ作りが可能となった。また、重要な企業カルチャーの一つに「Move forward(前進する)」を掲げ、失敗から学びを得ることやこれまでやったことのない新しいことへの挑戦を推奨している。ただ、国内においては28年間グルーミング市場でシェアNo.1(※1)企業という安定感から社員にあまり浸透していなかった。24年はカルチャートランスフォーメーションとして、挑戦する“起業家精神”を標準化させる取り組みを行う予定だ。この取り組みが広がれば、よりスピーディーかつ新発想なモノ作りにつながるだろう。

WWD:近年は医療脱毛や光エステなど脱毛関連市場は競争が激化。ウェットシェービング市場への影響は?

後藤:コロナ禍が落ち着いた23年度後半は、男性のウェットシェービングが前年同期比約10%増(※2)と伸長した。医療脱毛や光エステなど脱毛に関する選択肢が増えることで、男性にも「毛がない方が美しい」というビューティの価値観ができ上がりつつある。当社は21年にライフスタイルの多様性支援を目的にヒゲ・ボディーグルーミング習慣をサポートする商品群“スタイリングパートナー”を展開し、国内メンズボディーシェービング市場に進出。男性ボディーシェービングの売り上げも同約30%増(※3)となっている。2月27日には当社初の男性向けソープ付きボディー用シェーバー“モイスチャーソープシェーバー”を発売するなど、新規市場創造は積極的に行っていく。

WWD:女性のシェービングニーズについては?

後藤:女性は価値のあるものを購入する傾向になっている。「自宅でサロンのような質の高い仕上がりを目指す」をテーマに、21年に誕生した日本オリジナルブランド「サロンプラス(SALON+)」はフェイシャルシェーバー“サロンプラス トーンアップ フェイススムーサー”がけん引し、同約50%増(※3)と好調。同ブランドからは2月27日にスティックタイプの顔剃り専用オイルバーム“サロンプラス フェイシャルシェービングバーム”が登場予定で、これも市場にはなかったアイテム。同商品は社内ラボも活用し開発したもので、新市場創造の一翼を担っている。

WWD:24年はさらに新規創造や新市場開拓に注力するが、目標とする数字はあるか。

後藤:消費者がワクワク過ごすための商品作りには、まず社員がワクワクする職場環境が必須。そのため、現在のエンゲージメントスコアを8割超えに高めていきたい。当グループにとって日本はアメリカに次ぐ世界第2位の市場のため、日本ビジネスはプライオリティーが高く決定権もある。それにプラスしてエンゲージメント1位を獲れば、グループで世界トップのオフィスになる。そうなればシック・ジャパンで働くことを誇りに思う社員がさらに増え、高品質のモノ作りにもつながる好循環が生まれるだろう。

※1 28年連続国内ウェットシェービング販売シェアNo.1:インテージ SRI+カミソリ市場(ホルダー、ディスポーザブル、替刃)1995 年11月~2023年10月各年メーカー別累計販売金額
※2 インテージ SRI+カミソリ市場(ホルダー、ディスポーザブル、替刃)2022年7~12月および23年7~12月 メーカー別累計販売金額を基に同期間の比較
※3 インテージ SRI+カミソリ市場(ホルダー、ディスポーザブル、替刃)2022年1~12月および2023年1~12月 メーカー別累計販売金額を基に同期間の比較

会社概要

シック・ジャパン
SCHICK JAPAN

世界50カ国以上でビジネスを展開しているエッジウェルパーソナルケアグループの一員。「シック(SCHICK)」は国内ウェットシェービングの金額シェアで28年連続No.1を維持するなど日本市場におけるウェットシェービング業界をけん引。また、女性用カミソリ分野でも国内マーケットをけん引している。シェービングを中心としたパーソナルケア商品を通じ、人々にワクワク感と幸せを感じてもらえる毎日を提供することを存在意義とし事業を推進している

問い合わせ先
シック・ジャパンお客様相談室
03-5487-6801

TEXT:WAKANA NAKADE

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デニムのOEMが強み 香港事務所設立で販路も拡大【ドリームワークス 奥山哲朗常務】

PROFILE: 奥山哲朗/常務取締役COO兼ドリームターミナルリンク社長

奥山哲朗/常務取締役COO兼ドリームターミナルリンク社長
PROFILE: (おくやま・てつろう)1967年、愛知県名古屋市生まれ。中京大学体育学部卒。高校でも大学でもバスケットボールに打ち込んだ。90年、仙台の繊維商社に入社。2000年に単身で東京に事業部をつくり、以来東京で活動。11年にドリームワークス入社。13年に常務取締役に就任し、創業者の竹中章社長と二人三脚で会社を経営。22年にブランド事業を行うドリームターミナルリンク社長に就任し、現在に至る PHOTO : TAMEKI OSHIRO

ブランド名を受託して企画・製造を行うOEMと海外ブランドのライセンス展開の2軸で事業を展開するのが、ドリームワークス(DREAMWORKS)だ。創業者の竹中章社長がモノ作りと経営の基盤をつくり、2011年に奥山哲朗常務取締役COOが入社して、営業活動とブランド事業を推進。「ユニバーサルオーバーオール(UNIVERSAL OVERALL)」や「ロバート・ピー・ミラー(ROBERT P. MILLER)」などを国内外で販売する。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

基幹の「ユニバーサルオーバーオール」が
創業100周年

WWDJAPAN(以下、WWD):強みは?

奥山哲朗常務取締役COO(以下、奥山):デニムのOEMだ。一般的に手間暇がかかる素材で、扱いづらいとされているが、私たちは中国のデニムを扱う8工場と提携し、ファッション性の高いデザインのものもできるし、少量生産も可能だ。デザイン性やトレンド感の高いアイテムの提案が得意で、クイックな生産が優位性になっている。それでいて、価格は抑えられていると自負している。年に4回OEMの展示会をして新作を提案し、クライアントのリクエストに応える商品を提供している。総合アパレルや、ウィメンズのセレクトショップなど主に30社と取引している。

WWD:ブランド事業では基幹の「ユニバーサルオーバーオール」で渋谷に直営店も運営している。

奥山:今年創業100周年を迎えるシカゴ発のユニホームメーカーで、16年にグローバルな販売権を取得。企画・生産・販売を弊社が行っている。程なくデニムのオーバーオールがヒットして認知度も上がり、19年に渋谷店をオープン。国内200カ所に卸しており、人気も安定してきている。ブランド事業ではこの他に「ロバート・ピー・ミラー」のアンダーウエア以外をライセンス展開している。特徴であるパネルリブを使ったカットソーなどを展開しており、買いやすい価格も手伝って、この2、3年で急成長している。この2つはセレクトショップからの別注も多く、ブランド事業部の売り上げの8割を占めている。昨年からはパンツで一世を風靡した仏「ピカデリー」もライセンス展開している。他にも、バッグブランドのアパレル作りを手伝ったり、スポットでアイテムを作ったりもしている。

WWD:23年はどんな年だったか?

奥山:2月の大幅な円安にがくぜんとしたが、デニムの当たり年だったので、デニムの売上高は前期比30%増と好調だった。秋くらいから為替を反映した価格で取引できるようになり、ほっとしたという状況だ。23年12月期の売上高は約20億円。シェアはOEM事業とブランド事業とでおよそ半々。円安のダメージをデニムと「ロバート・ピー・ミラー」の好調ぶりがカバーした形で、前年同様の売上高を維持した。

WWD:24年の計画は?

奥山:まず、「ユニバーサルオーバーオール」創業100周年の記念イベントを本国のオーナーも招いて3月に都内で業界向けに行う。グローバル契約を結んでおり、すでに香港、台湾、中国、韓国には卸を始めている。これを拡大していきたい。インドネシアやシンガポールにも1件ずつだが卸している。昨年、香港に販売を目的とした事務所を設けており、現地で展示会も行う。アジア、そして欧州へと販路を広げたい。6月のコペンハーゲン・インターナショナル・ファッション・フェア(CIFF)への出展も検討中だ。欧州進出の足掛かりにしたい。本国は作業着をサプライヤーに卸すのみで、小売りはしていない。ファッションアイテムに関しては米国も私たちが販売権を持っている。ゆくゆくは米国でも展開したい。

WWD:国内の直営店を増やす計画は?

奥山:状況を見ながら、関西にもう1店舗をオープンしたいと考えている。10月に阪神百貨店にポップアップを出店したところ、ウィメンズがよく売れた。「ユニバーサルオーバーオール」が国内で火がついたのはウィメンズだったが、現状はメンズの方が売り上げシェアが高い。関西の店舗はウィメンズの打ち出しを強めたい。もともと作業服のメーカーブランドなので、今後はその原点に立ち返るようなラインも企画する。ヘリテージのあるブランドであることを大事にし、定番の開発に力を入れる。特にデニムのラインアップを充実させる。本国にあったデッドストックを買い取っており、100周年に向けて、それらと、一部をシカゴの古着とリメイクの店「コーン レンジャー」に依頼して作ったリメイクアイテムを販売予定だ。

異業種とのコラボも積極的に行っていく。TOKIOと取り組んでおり、彼らが福島県西郷村で行っているプロジェクト「TOKIO-BA」にユニホームを提供する。また、1月26日から公開中の劇場版「機動戦士ガンダム」ともコラボしている。映画の中に出てくる制服のデザインをアレンジしたものやプリントTシャツなどを発売する。

WWD:中期の目標は?

奥山:2年後に年商30億円を目指している。そのためには海外卸の強化が必須だ。先日タイのバンコクを訪れたが、若者がオシャレで市場として勢いを感じた。活気があるアジアマーケットで本格的に売り上げをつくり、土台をつくる。SNS発信やPRも強化していくつもりだ。OEM事業は、人材を採用して3チーム体制にし、取引先の幅を広げる。品質管理を徹底しながら、価格を抑える努力をすることで、価値と競争力を上げながら拡大したい。

会社概要

ドリームワークス
DREAMWORKS

2006年3月に竹中章が設立。量販店向けのOEMからスタートし、その後セレクトショップや総合アパレル向けにシフト。繊維製品、衣料品及び雑貨の企画、製造、輸入、販売、卸売業を行う。「ユニバーサルオーバーオール」や「ロバート・ピー・ミラー」「ピカデリー」などをライセンス展開し、日本国内だけでなく、アジアへの卸も始めている。渋谷に「ユニバーサルオーバーオール」直営店も運営する

問い合わせ先
ドリームワークス
03-6447-2470

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IPの付加価値を発信 ファッション×テクノロジーで突き抜ける【コネクトインターナショナル 由羽弘明社長】

PROFILE: 由羽弘明/コネクトインターナショナル社長

由羽弘明/コネクトインターナショナル社長
PROFILE: (ゆう・ひろあき)神奈川県横浜市出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、教育業界、ブランドビジネスを経験し、2013年にコネクトインターナショナルを設立。2017年からロンドンの会社とのジョイントベンチャーであり子会社のユアジャパンの代表取締役も務める

コネクトインターナショナルは、著名なタレントやインフルエンサー、キャラクターのIP(知的財産)を生かしたD2Cブランドの運営、オンデマンド・カスタマイズサービスの提供と、独自性のあるビジネスで存在感を示す。設立10周年を迎えた2023年は電通との新規事業「グッズラック」や新ブランドを始動。IPとファッション、テクノロジーの掛け合わせで独自価値を追求する。

ネトフリ「ワンピース」コラボで
IPの魅力を世界に届ける

WWDJAPAN(以下、WWD):これから掲げていく方針は?

由羽弘明社長(以下、由羽):事業はブランド、グッズ、カスタマイズが3つの柱。これらに通底する提供価値である「IP×ファッション×テクノロジー」の掛け算で、業界トップを目指していく。ブランド事業における弊社の強みは、IPの魅力を最大限に表現するマーケティングや商品企画を幅広く提案できること。取り扱うIPのファンコミュニティーによって、価格帯やアイテムで細かくターゲティングしなければならないのがこのビジネスの難しさ。IPのファンの嗜好をよく分析し、企画の的中率、お客さまの満足度を上げていきたい。

WWD:ブランド事業について。

由羽:俳優の新田真剣佑さんがプロデュースする「インクリム」と、世界規模で大きな話題になったネットフリックス制作による実写ドラマ「ワンピース」のコラボレーションが大きなトピックだ。2年前から温めてきた企画で、ついにこの2月に発売することができる。新田さんはロロノア・ゾロ役として作品に出演し、世界でファンを増やした。インスタグラムのフォロワー数が600万近い、今や日本トップクラスのインフルエンサーだ。「ワンピース」自体も世界累計発行部数が5億冊を超える、単一作者のマンガとしてはギネス世界記録を更新する作品。多くのファンを抱えるIPの掛け合わせで、国内のみならず、海外のファンにも響くはずだ。

WWD:ブランド運営で大切にしていることは。

由羽:付加価値やストーリー性だ。「インクリム」×「ワンピース」では、登場キャラクターをイメージしたモチーフ入りのTシャツや、劇中で新田さんが着用したピアスを再現したジュエリーなどデザイン性にこだわりながら、普段使いができるような工夫を凝らした。新田さんは作中でゾロのスタイルに忠実に、3連ピアスを着用するためにピアス穴を3つ開けたが、商品ではイヤカフになっており手軽に着けることができる。バーニーズ ジャパンや「アトモス」「GQ JAPAN」とのコラボレーションも決まっている。「アトモス」コラボはフィリピンやタイなど東南アジアでも取り扱われる予定だ。ファッション軸での感度の高い協業施策で、ファンの方たちに喜んでもらえるアイテムを届けたい。「インクリム」は、時代の新しい要素を取り入れるブランドにしていきたいと考えており、海の環境問題に関するSDGsの発信にも取り組む。海洋ごみ問題に対応するためのプラットフォーム「一般社団法人アライアンス・フォー・ザ・ブルー」と連携し、廃漁網をアップサイクルしたコースターをノベルティとして配布予定だ。

WWD:“ヒト消費”や“コミュニティー消費”の潮流に変化はあるか?

由羽:今後はより強まっていくと考えている。タレントの辻希美がプロデュースするアパレルブランド「アンジュシャルム」では23年12月に、「ファッションセンターしまむら」とコラボレーションし、「アンジュシャルムトゥールモンド」をスタートさせた。“トゥールモンド”とはフランス語で“みんな”を意味する言葉で、「アンジュシャルム」の世界観のアイテムを、ウィメンズからキッズまで幅広く、手頃な価格で届けられるブランドにする。「ファッションセンターしまむら」は辻さんのファン層にも親和性が高く、個人的にも期待値は大きい。

WWD:新ブランドの進捗、今後の立ち上げ計画は?

由羽:昨年5月にはヒップホップアーティストのオズワールド(OZworld)を起用した新ブランド「ヴォイス」を立ち上げた。オズワールドさんはNFTやAIなど、新たなテクノロジーに興味があるため、フィジカルとデジタルを掛け合わせた“フィジタル”のジュエリーブランドとして、新たなデジタル施策を仕掛けている。ローンチパーティーも1000人以上が集まり大盛況だった。ブランドを闇雲に増やす計画はない。既存の6ブランドのIPの世界観や付加価値を最大化することを、当面は優先したい。

WWD:新規事業は?

由羽:電通との共同事業で、新たなグッズ販売のECプラットフォーム「グッズラック」を昨年5月にローンチした。人気IPのファングッズを、注文を受けてからオンデマンド生産するため、在庫リスクなしで運営できる。またメインキャラのみならずマイナーキャラの絵柄も使い、劇中に登場する名シーンもデザインとして選ぶことができる、その網羅性とカスタマイズ性が強みだ。Tシャツやパーカ、トートバッグ、アクリルスタンドなど、さまざまな形でファングッズを届けられる。これまでにTVアニメ「ウルトラマン」や「東京リベンジャーズ」、サッカーゲームの「イナズマイレブン」などの企画を実現した。IPのファンの方々からも「こんなのが欲しかった」とX(旧ツイッター)で反響をいただいている。今後も新たに人気IPのラインアップを増やしていき、幅広いファングッズを提供できる見通し。テクノロジーを駆使したオンデマンド製造やカスタマイズが生み出す商品企画の醍醐味を、より多くの人々に体験していただきたい。

会社概要

コネクトインターナショナル
KONNEKT INTERNATIONAL

2013年設立。海外ブランド代理店事業、OEM 事業を柱としてスタートし、2015年には米アーティストのライセンスアパレルの製造、販売を開始。17年より、英YRStoreInc.とジョイントベンチャーでユアジャパンを設立、カスタマイズ事業を始めた。その後、香港、韓国、中国にも当事業の関連会社を設立。18年にD2Cブランド事業を始動。現在は辻希美プロデュースの「アンジュシャルム」や新田真剣佑の「インクリム」、AAAの宇野実彩子の「ラバンダ」など6ブランドを運営する

問い合わせ先
コネクトインターナショナル
03-5778-9852

TEXT:MAMI OSUGI

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堅調なヘアケア事業を基盤に、スキンケアを第3の柱に育成【I-ne 大西洋平社長】

PROFILE: 大西洋平/I-ne社長

大西洋平/I-ne社長
PROFILE: (おおにし・ようへい)1982年生まれ、兵庫県出身。2005年、立命館大学在学中にアパレルモバイル通信事業とインターネット広告代理事業の個人事業主としてY.B.Oを創業。07年3月にI-neを設立し、社長に就任 PHOTO:YUKIE SUGANO

ヘアケア用品や美容家電を中心に企画・製造・販売を手掛けるI-neは、ボタニカルライフスタイルブランド「ボタニスト(BOTANIST)」やミニマル美容家電ブランドの「サロニア(SALONIA)」、ナイトケアビューティブランド「ヨル(YOLU)」など、業界の常識を覆す商品を世に送り出してきた。6期連続で過去最高益を更新する中、新たな領域としてスキンケア事業にも注力する。25年12月期を最終年度とする中期経営計画では、約10の新ブランド投入を掲げてマルチブランド戦略を加速し、25年12月期の売上高550億円、営業利益率13%を目指す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

“ナイトケア”を訴求する
21年誕生の「ヨル」が急成長

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年をどう振り返る?

大西洋平社長(以下、大西):ヘアケアカテゴリーは、国内ドラッグストア市場において当社が展開するブランドの合計販売金額が企業別シェアで国内1位※1を獲得できた。競合ひしめくヘアケア市場で22年からさらにシェアを伸ばすことができたのは、大きな自信になった。

WWD:9月に発売した「ヨル」の“ディープナイトリペアシリーズ”や、10月の「ボタニスト」フルリニューアルは話題になった。

大西:「ヨル」の急成長はヘアケアカテゴリー全体の伸長に大きく寄与した。新シリーズを発売した9月には、ブランド別売り上げシェアで国内1位を獲得。21年のブランド誕生からわずか3年ほどで、売上高100億円が見えてきた。「ボタニスト」は、プレミアム価格帯のシャンプーに求められるのは「ライフスタイル自体のアップデート」であるとのインサイトに基づき8年目でリニューアルを実施。毛髪内部の空洞化リスクに着目しダメージをケアする処方を強化。環境に配慮した原料とパッケージに改良した。まだ伸ばせる余地があると実感している。

WWD:近年はヒット商品を次々に出している。

大西:特にヘアケアカテゴリーにおいては、ブランド開発のアイデア出しからスケールまでの段階ごとにゲートを作り、それぞれにKPIを設定する当社独自のブランドマネジメントシステム「IPTOS(イプトス)」の地道な運用と成功・失敗体験の蓄積が大きい。複数のブランドを展開し、経験値を積み重ねてブランドの垣根を越えて共有することでヒット率が上がっている。例えばAというプロダクトの売れ行きが想定より良くなかったとする。要因はブランドコンセプトが消費者に伝わりにくかったり、ブランドコンセプトとコミュニケーションに一貫性がなかったり、ブランドイメージと価格帯のミスマッチが起きていたりすることが考えられる。「IPTOS」を活用してこれらの改善を一つ一つ繰り返すことでヒットの再現性が高まる。

WWD:ヘアケアに次ぐカテゴリーである美容家電の商況は?

大西:「サロニア」はスタンダードラインのドライヤーとヘアアイロンの値上げを実施し利益率の改善を図った。商品別では「サロニア」の中では2万円台と高価格帯の“EMSリフトブラシ”や“ピュアブライトスチーマー”が非常に好評だ。買いやすい値段で訴求する「サロニア」ブランドも1万円以上の価格帯で勝負できると確信した。商品ラインアップはまだまだ拡充できるので、シンプルで機能性が高い商品によりブランドのさらなる成長を目指したい。高価格帯の美容家電については、新ブランドの立ち上げも視野に入れている。

WWD:23年は新スキンケアブランドの立ち上げも活発だった。

大西:炭酸泡美容の「ドクターシュワン(DR.SYUWAN)」は、当初予定の約2倍の初動売り上げと好結果だった。ECと一部の店舗で展開していたが、今年は実店舗でさらに拡販する予定だ。他にもメンズスキンケアブランド「マーフィー(MURPHY)」は、アマゾンのスキンケアギフトセットカテゴリーでベストセラーを複数回獲得。ECのみの販売ながら、成功体験を積み重ねている。今年2月には肌のバリア機能に着目したスキンアブランド「エンスィ(ENNTHY)」を発売する。社内での試用試験ではこれまでにないほど評価が高く、自分たちの思い入れが強い商品ができてうれしく思っている。スキンケアはノウハウがまだ少ないため、軌道に乗るまで少し時間はかかるだろうが、25年までにはスキンケア10ブランドで売上高50億円の目標が達成できそうだ。

WWD:人材育成への注力を経営戦略に掲げていたが進捗は?

大西:当社の強みであるマーケティングに通じた人材育成が要であることに加え、組織が大きくなるにつれベンチャー企業の良さが薄れてきている問題意識があった。中途人材を含め同じ目標を共有し競争力を高める企業風土の醸成が欠かせなくなっている。ここ数年はマーケッターや営業など職種ごとの当社独自の育成プログラム作成などに力を入れてるほか、各部門内に人事担当を設けるなど育成・評価システムが急激に進化している。今年は人事制度を大きくリニューアルする。意思決定をスピーディーにできる体制を整え、さらなる成長につなげたい。

WWD:24年に向けた戦略は?

大西:ヘアケアカテゴリーは、既存ブランド「ボタニスト」「ヨル」「ドロアス(DROAS)」で新ラインや新商品投入により成長率10%を目指すとともに新ブランドも予定する。美容家電カテゴリーは基幹ブランドの一つ「サロニア」の主力商品であるドライヤーとヘアアイロンの市場シェア拡大を図り中〜高価格帯の商品を拡充する。新たな注力領域であるスキンケアカテゴリーは22年に買収した「リンクフェード(WRINKFADE)」の定期購入客拡大と「ドクターシュワン」「エンスィ」の育成、新規ブランド開発を進める。

※1 ドラッグストア市場におけるヘアケアブランド別売り上げシェア(I-ne調べ)

会社概要

アイエヌイー
I-NE

2007年3月設立。トレンドハンティングチームやアイデア起案コンテストにより数千のアイデアを創出するなど、消費者の潜在的ニーズを商品開発に反映し「ボタニスト」などのヒットブランドを生み出す。アイデア→企画→検証→EC販売→本格展開をたどる独自のブランドマネジメントシステム「IPTOS」を運用し、新規分野や海外にも事業を広げる。20年9月、東証マザースに上場。23年に東証プライムへ市場区分を変更した。22年12月期の連結売上高は352億円。23年12月期の売上高は前期比17.7%増の415億円を見込む

問い合わせ先
I-ne
0120-333-476

TEXT : NATSUMI YONEYAMA

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コインパとimmaが渋谷&原宿をジャック! ドロップイベントの全貌をレポート

1月27日、アーティスト・コインパーキングデリバリー(COIN PARKING DELIVERY、以下コインパ)とバーチャルヒューマンimmaによるドロップイベントが開催された。渋谷区のどこかで、4回に分けアイテムのギブアウェイを行うイベントで、1月上旬から複数回、双方のインスタグラムにて告知されていた。配布されたのは、immaが手掛けるアパレルブランド「アストラル ボディ(ASTRAL BODY)」とコインパが手掛けるブランド「CPDHOOME」によるスマホリング“白井さんGAL Ring”とスエットパンツだ。

イベント当日、各ドロップ実施時間の15分前にコインパ、immaそれぞれのアカウントからドロップポイントが発表された。これらのポイントには合計4人のimmaとコインパがランダムで登場し、訪れたファン達に先着順で“白井さんGAL Ring”の、immaとのコラボ限定デザインがプレゼントされた。

1stドロップ会場となったのは原宿エリアの3つのポイント。ニューエラ原宿、ラルフローレン表参道、表参道のカルバン・クライン アンダーウェア原宿店それぞれの場所で、18時ちょうどにimmaが登場した。

2ndドロップではimmaが広告モデルを務める野村證券の渋谷支店にコインパ、渋谷のカフェ・エルールにimmaの姿が。ニューエラ原宿、野村證券渋谷支店の合計2カ所で“白井さんGAL Ring”を獲得したと言う男性2人組は「1つめをもらった後、また遭遇できないかと思い、カフェでストーリーをチェックしていました。次のドロップポイントが近くの場所だったので、すぐに来て2つめも手に入りました!」。惜しくもゲットならず!も、コインパが手掛けるキャラクター“白井さん”のグッズを持参した女性2人組は「RAMPAGEの長谷川慎さんをきっかけに、コインパーキングデリバリーのファンに。ラルフ ローレン表参道、渋谷の野村證券に行ったのですが、アイテムは手に入れることができませんでした」と悔しそうに語った。

3rdドロップポイントはオグラ眼鏡 渋谷本店前、渋谷WWW前にそれぞれにimmaが1人ずつ、オニツカタイガー渋谷裏には2人のimmaが現れた。

これら8カ所のドロップポイントの頭文字を集めると、今回のコラボスエットにもプリントされたコインパのお馴染みのステートメント“NOW ON REC”となる。

最終ドロップポイントである渋谷パルコには早い時間から人だかりが。時間になりコインパと4人のimmaが登場し、コラボスエットや“白井さんGAL Ring”、オリジナルステッカーをギブアウェイ。このステッカーの裏側にプリントされたQRコードからは、本コラボレーションアイテムを先行購入できるURLへとアクセスできる。

イベント終盤には日頃からimmaとも親交があるラッパー・オズワルド(OZworld)もサプライズ登場し、来場者はますますヒートアップ。

この日配布された限定スエットパンツは10着。ステージからimmaやコインパ、オズワルドが投げたり、じゃんけん大会をしてプレゼントされた。手に入れた2人組に話を聞くと「前回のコインパーキングデリバリーのイベントにも参加し、今日はこのイベントのために予定を空けていました。それぞれのドロップポイントにも行ったのですが、“白井さんGAL Ring”はゲットできず。最後にスエットパンツが手に入ってうれしいです」とコメント。一方で、「どんなイベントをやっているのか全く知らなかったのですが、面白そうな人たちがいるので立ち寄りました」と、偶然人だかりを見つけて立ち寄り、アイテムを獲得できたラッキーな人も。

コインパとimmaを発見するため、多くの人が渋谷区内を駆け巡った1日。大盛況となったイベントのストーリーを2人聞いた。

WWD:イベント開催の経緯とは?
コインパーキングデリバリー(以下、コインパ):今回はバーチャルヒューマンのimmaちゃんとコインパという、現実世界に存在しているのか不明瞭な2人によるリアルイベントだったので、当日来た人とネットのみで閲覧している人の間でどれだけ“ズレ”を作れるのか意識しました。
imma:コインパさんと出会ったのは3年ほど前のことです。私がディーゼル アート ギャラリーで“imma天”という展示をやった後、次のアーティストが彼だったので、その時に初めて会いました。そこから頻繁にコミュニケーションをとるようになり、考え方や今の時代にしかできない新しい楽しみ方などをたくさん話し合ったのですが、びっくりするほど考えていることが似ていて、とても刺激を受けました。長い間、今回のようなことをやろうと話していたんですが、実際にプロジェクトとして動き出したのは半年前くらいです。本当は昨年中に実施予定だったのですが、お互いそれぞれのプロジェクトに追われていたため、区切りよく2024の初動プロジェクトにしようということになりました。

WWD:実際にイベントを終えての感想は?
コインパ:テーマを知らなくてもたくさんの人が楽しんでくれたのが良かったと思います。
imma:私はいつもバーチャル活動が多いので、久しぶりのリアルでの活動となり、多くの人が声をかけてくれてうれしかったです。このイベントを初動として、今年はチャレンジの年にしようと決めました。私自身いろいろなことを準備しているのですが、あまり内面的な部分を発信していなかったことに気づいたので、今後は自分の考えや想い、そして目指す未来ややりたいことをもっと露出していこうと思います。もっとみんなと議論したいし、何かを与えることができる存在になりたいです!

WWD:ラストドロップで配布したスエットパンツのデザインには、どのような意味を込めた?
コインパ:女性が通勤中に感じていることや、彼女達の心を守ることをテーマに制作しました。
imma:裏テーマとして、ある意味が込められています。というのも、やはり何かモノをつくるには意味や意図を込めたいと思っていました。日本の90年代ファッションを探っている時に、スカートの下にスエットパンツを履いている女子高生のファッションを見ました。すごくかわいいなと思った一方で、痴漢や盗撮の悩みや、校則の厳しさから生まれたファッションだというのを知って、とても興味が湧いたんです。ちょうどその頃、会社のスタッフさんも同じ悩みなどを抱えていた時期で、日本特有のこの問題に疑問を感じて、そのものをコンセプトにしたいって思いました。なので、お尻にプリントされた“白井さん”の手は何かから守ろうとしている手で、手のひらがこちら側を向いているんです。

現在、「アストラル ボディ」公式サイトでは、本コラボレーションアイテムを発売中。一部の商品はすでに完売している。

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廃棄ゼロの型紙シンフラックス、ゴールドウインや「ダブレット」からコラボ製品続々

生産工程の生地廃棄ゼロを目指すデザインシステムを開発するシンフラックス(Synflux)の協働先が増えている。ゴールドウイン(Goldwin)の「ニュートラルワークス.(NEUTRALWORKS.)」は2月9日、「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」は3月1日、それぞれ1型ずつ製品を発売する。「ダブレット(DOUBLET)」は1月21日、2024-25年秋冬コレクションでテイラードのセットアップやデニムのセットアップ、コートなど7アイテムを発表した。今後、人気ブランドや有力セレクトショップのオリジナルブランドと協働した製品の発表も控える。

直線的なパターンから改良

ゴールドウインとの協働プロジェクト“シングリッド(SYN-GRID)”は今回が第2弾。第1弾は、「ニュートラルワークス.」は早い段階で、「ザ・ノース・フェイス」は発売から3週間で完売するなど好評だった。第2弾の今回は、アルゴリズムをアップデートしたことで、第1弾では直線的になっていたパターンを改良。運動性を担保するアームホールやネックラインなどの三次元形状の再現度は担保したまま、実現したい意匠や構造、着用感を損なうことなく可能な限り設計を最適化することができるようになったという。加えて、縫製箇所を複数提案できるようになった。

「ニュートラルワークス.」はアシンメトリーなアノラックを提案した。大坪岳人事業部長は「今回は縫製箇所やパネルの少ないアノラックを作りたいと考え、機能性や着心地などのクオリティを追求した。初めての協働だった前回は紆余曲折、さまざまなアプローチを試みたのに対して、今回は何ができるのかが明確だったため、迷いがなくソリッドな仕事になった。結果、廃棄率10%以下を実現しながら、クオリティの高いアノラックになった」と言う。今後の協働についても「“シングリッド”自体、アイテムや素材の種類、ストレッチの有無など検討余地や可能性が無限にある。何かに当て込んで“シングリッド”を活用するという発想ではなく、自分たちが作りたいデザインを実現する手法として“シングリッド”が適していれば採用することになるだろう。個人的にはダウンのような中綿入りのウエアなど表と裏がある(2~3枚の素材を使う)アイテムで挑戦してみたい」と前向きだ。

定番品の生産工程を最適化するツール

「ザ・ノース・フェイス」は定番品の生産工程での生地の廃棄量削減を目指した。ザ・ノース・フェイス事業一部ライフスタイルグループの相楽輝MDは、「デザインやパターンの根本的な部分は残しつつ、機能性を追求しながらパターンの形状を工夫した。結果、廃棄率を18%程度から9%に削減できた」と語る。生産工程の生地の廃棄量自体は半分に減った。「当初は縫製箇所が増えることを懸念していたが、縫製箇所は元の製品と同等で、元の製品と比較しても遜色ないデザインや着用のしやすさを実現した」と自信をのぞかせる。「目的はインパクトを持って環境負荷低減に取り組むこと。その第一歩として今回は量産することに決めた」と語る。「テクノロジーのノウハウや知見をシンフラックスと蓄積できてきている」といい、今後は「その経験を生かし、さまざまな製品でパターンの生成試験を試みる。われわれの代表的なアイテムの歴史やアイデンティティを継承しながら、環境への負荷を軽減する製品の実現に向けてその可能性を模索していく」と語った。

「ダブレット」との協働ではデザイン要素に

「ダブレット」は廃棄量を削減しながらデザイン要素のひとつとしてシンフラックスの技術を活用した。テーマは「回復」。フランケンシュタインやゾンビに扮したモデルが「ダブレット」の服を着ると健康になるというストーリーで見せた。シンフラックスとの協働アイテムは、フランケンシュタインをイメージして、大小のパーツをあえていびつにつなぎ合わせて、ボルトの刺しゅうを刺すデザインで表現。縫製箇所は増えたが生地は従来25%程度を廃棄していたものが14%に減った。井野将之「ダブレット」デザイナーは「フランケンシュタインのつぎはぎをデザインに取り入れた。切り替えを増やし左右のバランスを変わるように選択したことで、このデザインになった。切り替えなど無駄を増やした結果、廃棄量が減った」と語る。今回初めての協働だった。「アイデア次第で広がるテクノロジーだと感じた。例えば象にぴったりのパターンを作ることができる。新しいもの生み出すきっかけになるし、アルゴリズムで作るので人間のエゴがなくていい。ベーシックな定番品の切り替えを少しだけ増やして用尺が良くなるようにすることにも興味がある。試したいことがたくさんある」とコメント。シンフラックスの佐野虎太郎チーフオペレーティングオフィサー(COO)は「縫製する箇所を選択できるシステムにアップデートしたことで、より面白く切り替えてつなぎ合わせることを重視した」と振り返る。

次のフェーズは環境影響評価の実施と修理・分解可能性の模索

サステナブルファッションを掲げてシンフラックスを立ち上げた川崎和也最高経営責任者(CEO)は事業を進める中で「大量生産のシステムに100%依存してモノ作りを続けること自体に疑問を持ち始めている」という。そんな中で「僕たちができることは、企業がすでに有するリソースの再利用などを含め、素材やモノ、データなどをリサイクルして再設計し最適化すること。型紙設計は機能性やブランドのDNAなどと直結するため、いろいろな部門やサプライヤーが連携しないと廃棄ゼロを目指すことができない。そのきっかけにシングリッドを使ってもらいたい」と語る。また、「サステナブルな製品を作ることは犠牲が伴うという考えが浸透しているが、そうではない。われわれの技術は廃棄もコストも削減できる。環境配慮型素材を使うと上代が上がるが、型紙を最適化することで生地のコストは削減できるからだ」。現在は廃棄ゼロを目指したシステムを提案しているが、修理可能性や再資源化に向けても考慮する必要があるのではないか。「今後、修理可能性や分解可能性をシステムに搭載することも模索している」と川崎。さらに佐野は「型紙を改良することで生産工程にどのようなインパクトを出せるか、環境評価を行う予定だ」と語る。

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廃棄ゼロの型紙シンフラックス、ゴールドウインや「ダブレット」からコラボ製品続々

生産工程の生地廃棄ゼロを目指すデザインシステムを開発するシンフラックス(Synflux)の協働先が増えている。ゴールドウイン(Goldwin)の「ニュートラルワークス.(NEUTRALWORKS.)」は2月9日、「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」は3月1日、それぞれ1型ずつ製品を発売する。「ダブレット(DOUBLET)」は1月21日、2024-25年秋冬コレクションでテイラードのセットアップやデニムのセットアップ、コートなど7アイテムを発表した。今後、人気ブランドや有力セレクトショップのオリジナルブランドと協働した製品の発表も控える。

直線的なパターンから改良

ゴールドウインとの協働プロジェクト“シングリッド(SYN-GRID)”は今回が第2弾。第1弾は、「ニュートラルワークス.」は早い段階で、「ザ・ノース・フェイス」は発売から3週間で完売するなど好評だった。第2弾の今回は、アルゴリズムをアップデートしたことで、第1弾では直線的になっていたパターンを改良。運動性を担保するアームホールやネックラインなどの三次元形状の再現度は担保したまま、実現したい意匠や構造、着用感を損なうことなく可能な限り設計を最適化することができるようになったという。加えて、縫製箇所を複数提案できるようになった。

「ニュートラルワークス.」はアシンメトリーなアノラックを提案した。大坪岳人事業部長は「今回は縫製箇所やパネルの少ないアノラックを作りたいと考え、機能性や着心地などのクオリティを追求した。初めての協働だった前回は紆余曲折、さまざまなアプローチを試みたのに対して、今回は何ができるのかが明確だったため、迷いがなくソリッドな仕事になった。結果、廃棄率10%以下を実現しながら、クオリティの高いアノラックになった」と言う。今後の協働についても「“シングリッド”自体、アイテムや素材の種類、ストレッチの有無など検討余地や可能性が無限にある。何かに当て込んで“シングリッド”を活用するという発想ではなく、自分たちが作りたいデザインを実現する手法として“シングリッド”が適していれば採用することになるだろう。個人的にはダウンのような中綿入りのウエアなど表と裏がある(2~3枚の素材を使う)アイテムで挑戦してみたい」と前向きだ。

定番品の生産工程を最適化するツール

「ザ・ノース・フェイス」は定番品の生産工程での生地の廃棄量削減を目指した。ザ・ノース・フェイス事業一部ライフスタイルグループの相楽輝MDは、「デザインやパターンの根本的な部分は残しつつ、機能性を追求しながらパターンの形状を工夫した。結果、廃棄率を18%程度から9%に削減できた」と語る。生産工程の生地の廃棄量自体は半分に減った。「当初は縫製箇所が増えることを懸念していたが、縫製箇所は元の製品と同等で、元の製品と比較しても遜色ないデザインや着用のしやすさを実現した」と自信をのぞかせる。「目的はインパクトを持って環境負荷低減に取り組むこと。その第一歩として今回は量産することに決めた」と語る。「テクノロジーのノウハウや知見をシンフラックスと蓄積できてきている」といい、今後は「その経験を生かし、さまざまな製品でパターンの生成試験を試みる。われわれの代表的なアイテムの歴史やアイデンティティを継承しながら、環境への負荷を軽減する製品の実現に向けてその可能性を模索していく」と語った。

「ダブレット」との協働ではデザイン要素に

「ダブレット」は廃棄量を削減しながらデザイン要素のひとつとしてシンフラックスの技術を活用した。テーマは「回復」。フランケンシュタインやゾンビに扮したモデルが「ダブレット」の服を着ると健康になるというストーリーで見せた。シンフラックスとの協働アイテムは、フランケンシュタインをイメージして、大小のパーツをあえていびつにつなぎ合わせて、ボルトの刺しゅうを刺すデザインで表現。縫製箇所は増えたが生地は従来25%程度を廃棄していたものが14%に減った。井野将之「ダブレット」デザイナーは「フランケンシュタインのつぎはぎをデザインに取り入れた。切り替えを増やし左右のバランスを変わるように選択したことで、このデザインになった。切り替えなど無駄を増やした結果、廃棄量が減った」と語る。今回初めての協働だった。「アイデア次第で広がるテクノロジーだと感じた。例えば象にぴったりのパターンを作ることができる。新しいもの生み出すきっかけになるし、アルゴリズムで作るので人間のエゴがなくていい。ベーシックな定番品の切り替えを少しだけ増やして用尺が良くなるようにすることにも興味がある。試したいことがたくさんある」とコメント。シンフラックスの佐野虎太郎チーフオペレーティングオフィサー(COO)は「縫製する箇所を選択できるシステムにアップデートしたことで、より面白く切り替えてつなぎ合わせることを重視した」と振り返る。

次のフェーズは環境影響評価の実施と修理・分解可能性の模索

サステナブルファッションを掲げてシンフラックスを立ち上げた川崎和也最高経営責任者(CEO)は事業を進める中で「大量生産のシステムに100%依存してモノ作りを続けること自体に疑問を持ち始めている」という。そんな中で「僕たちができることは、企業がすでに有するリソースの再利用などを含め、素材やモノ、データなどをリサイクルして再設計し最適化すること。型紙設計は機能性やブランドのDNAなどと直結するため、いろいろな部門やサプライヤーが連携しないと廃棄ゼロを目指すことができない。そのきっかけにシングリッドを使ってもらいたい」と語る。また、「サステナブルな製品を作ることは犠牲が伴うという考えが浸透しているが、そうではない。われわれの技術は廃棄もコストも削減できる。環境配慮型素材を使うと上代が上がるが、型紙を最適化することで生地のコストは削減できるからだ」。現在は廃棄ゼロを目指したシステムを提案しているが、修理可能性や再資源化に向けても考慮する必要があるのではないか。「今後、修理可能性や分解可能性をシステムに搭載することも模索している」と川崎。さらに佐野は「型紙を改良することで生産工程にどのようなインパクトを出せるか、環境評価を行う予定だ」と語る。

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人材育成を目的に「b-ex財団」を設立 美容業界へ恩返し【ビーエックス 福井敏浩社長】

PROFILE: 福井敏浩/ビーエックス社長

福井敏浩/ビーエックス社長
PROFILE: (ふくい・としひろ)1969年東京都生まれ。米国ボストンの大学で経営を学んだ後、父が起業したモルトベーネに入社。2001年、父の急逝により社長に就任。早稲田大学大学院商学研究科でMBA(ビジネス専攻)を取得。「ロレッタ」「スロウ」「ハニーチェ」などヒット商品を生み出す PHOTO : YOHEI KICHIRAKU

b-exはミッションである「人生に、新しい美の体験を。」のもと、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指している。23年は“ブリーチ革命”“グリーン革命”“Z世代へのアプローチ”を推進しブランド育成を強化。また、経営の柱に掲げるSDGsへの新アクションも続々と行い、“アジアNo.1プロフェッショナル&クリーンビューティー企業グループ”へと着実に歩みを進めている。
(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

3つ目のカラー剤ブランドが
6月に登場する予定

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年に注力した取り組みは?

福井敏浩社長(以下、福井):22年から引き続き、ブリーチ剤の拡大を目指す“ブリーチ革命”、ゼロカーボン社会の実現を目指す“グリーン革命”、加えて“Z世代へのアプローチ”の3本柱で事業を推進した。1つ目の柱である“ブリーチ革命”については、21年発売の業務用ブランド「ビーブリーチ(B-BLEACH)」を中心に支持を集め、現在はブリーチ市場でシェア4位を獲得。さらに昨年は、髪の状態に応じてダメージを最小限に抑えるブリーチコントロールを可能にしたローブリーチ&脱染剤の2ウェイ機能搭載の“シークレンザー”を発売。サロンからは「コスパが良い」と評価され好調なスタートをきれている。ハイトーンカラーブームを追い風にブリーチのデザインは多様化し、ブリーチ剤を使い分ける重要性がさらに高まるなどブリーチ市場はさらに拡大の余地がある。

WWD:2つ目の柱の“グリーン革命”について新たな取り組みは。

福井:“グリーン革命”は、台湾発のゼロカーボンビューティを掲げる企業であるオーライトと資本業務提携を結び、環境に配慮した取り組みやノウハウを取り入れた商品開発を進めながら事業領域のさらなる拡大を図るというもの。「オーライト(O'RIGHT)」は直営の有楽町マルイ店をはじめ、京都高島屋S.C.T8店、主要都市でのポップアップオープンなど取り扱い店舗を増やしている。昨年2月からはテラサイクルジャパンと協働し、使用済み容器などをリサイクルする取り組み「b-cycleプログラム」を全国の取り扱いサロン及び有楽町マルイ店で開始している。“アジアNo.1のクリーンビューティーカンパニー”を目指す上でもポテンシャルを秘めた取り組みのため、一歩一歩丁寧な啓蒙活動を行っていく。

WWD:“グリーン革命”をはじめ、社内外への浸透を図るためにさまざまなSDGsアクションを実行している。

福井:“グリーン革命”の取り組みの1つとして22年には、サプライチェーンにおける労働実務のリスク管理をする世界最大プラットフォーム・セデックス(Sedex=Supplier Ethical Data Exchange)に参加する化粧品・日用品業界で発足した「化粧品&日用品業界バイヤー会員セデックスワーキングチーム」に参画。人権課題の改善に取り組んでいるほか、同年に「b-exが目指す未来」に向けて大切にしたいことを4つのbe(なりたい理想像・be=美)で表現し、実現への重要課題と成果目標を発表した。「be kind(みんなにやさしく)」「be borderless(もっとボーダーレスに)」「be healthy(心も体もヘルシーに)」「be smart(まいにちをスマートに)」と設定し、テラサイクルジャパンとのパートナーシップもSDGs推進の一環。そのほか、環境負荷低減として商品の倉庫間転送の手段に鉄道輸送を導入。大阪の拠点まで鉄道を利用することで、営業用貨物車に比べてCO₂排出が10分の1に抑制されるだけでなく、ドライバーの人手不足解消や労働時間軽減などにも貢献している。社員が活躍できる職場作りについては、女性の育児休業復職率100%と高く、これは現状維持を保つ。また、社内で要望が高かったLGBTQ相談窓口設置も推進。併せて、誰もが働きやすい職場環境作りを目指し、就業規則アップデートや男性社員の育児休業取得推進など、ダイバーシティについては24年から本格的に取り組んでいく。

WWD:3つ目の柱の“Z世代へのアプローチ”については。

福井:当社の売り上げをけん引するヘアコスメブランド「ロレッタ(LORETTA)」は発売から15年となり、ブランド愛用者も年齢層が高くなった。そこでZ世代をターゲットにした新ライン“ロレッタ エメ”を昨年4月にローンチ。「髪も心も、お気に入りの自分が続く」をコンセプトに、スタイリングを楽しみながら自分らしさを表現できるようにと、潤い・香り・ヘアスタイルの持続に着目して開発。第1弾は“ナイトトリートメント”や“ミストケアオイル”などのケアアイテムと、“グロスキープスプレー”や“オイルジェル”などスタイリングアイテム、第2弾はトレンドに合わせた質感と持続力を実現し、さらに髪へのなじませなど快適な使い心地を追求したスタイリングアイテムを発売。「ロレッタ」でも売り上げの高い“ジェル”が人気を集めている。

WWD:24年の新たな取り組みは?

福井:“Z世代へのアプローチ”は継続していく。今年は「スロウ(THROW)」「ティントバー(TINTBAR)」に次ぐ3つ目のカラー剤ブランドを6月に登場させる予定だ。新ブランドはZ世代をターゲットに設定。“Year of b-ex Color”をテーマに、3ブランドを通して当社のカラー剤ストーリーを語れるようなマーケティングを進めている。25年の創業50周年に向けてブランドをさらに育成し、売り上げ100億円を目指す。また、新たな取り組みとして「b-ex財団」を立ち上げる予定。例えば金銭面を理由に専門学校に通えない人や、学生のダブルスクール支援など、人材育成につながるサポートを行っていく。長年携わっている美容業界への恩返しを込めた活動になる。

会社概要

ビーエックス
B-EX

1975年に初代社長の福井耀氏がサロン向け美容製品メーカーとしてモルトベーネを創業。80年代後半から一般向け市場に進出し、現在は海外市場にも積極的に展開する。2015年の創業40周年を機に社名をビューティーエクスペリエンスに変更。16年に本社を世田谷に移転し、21年には社名を略称であるb-ex(ビーエックス)に変更した

問い合わせ先
b-ex
03-6757-7767

TEXT:WAKANA NAKADE

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ハードとソフトでサロンの美と健康を追求【タカラベルモント 吉川秀隆会長兼社長】

PROFILE: 吉川秀隆/タカラベルモント会長兼社長

吉川秀隆/タカラベルモント会長兼社長
PROFILE: (よしかわ・ひでたか)1949年大阪市生まれ。日本大学経済学部卒業後、自動車販売会社勤務。74年に祖父の吉川秀信が創業したタカラベルモントに経理担当で入社した後、デンタル・メディカル機器の営業および製品企画、理美容機器の営業を担当。85年に東京支社長に就任。89年に40歳で社長就任後、99年から会長を兼務している PHOTO : YOHEI KICHIRAKU

理容室・美容室の設備機器、エステ・ネイルサロンおよび歯科・医療クリニックの業務用設備機器や化粧品などを製造販売しているタカラベルモント。2023年は給湯機市場をはじめ、サロンの基盤であるインフラ整備にも注力。理美容機器業界をリードするメーカーとして課題解決や事業創造に取り組み、未来の健康に向き合い自分らしく生きるためのサポートを行う。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

2028年に掲げている
全体売り上げ1000億円を目指す

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年に特に注力したことは?

吉川秀隆会長兼社長(以下、吉川):コロナ禍の収束から業績は右肩上がりが続いている。23年は、サロンの水まわりアイテムに注力した。21年に開発したサロンのシャンプー台で施術する新体感メニュー「頭浸浴」は、リラックスできるほか、ヘアカラーの仕上がりも良くなるとリピート利用も多く、新たなサロン体験を創出した。当社の23年3月期の売上高は654億円だが、上期も順調に推移しており前年超えも期待できる。またグローバルにおいてデンタル部門の売り上げがけん引した。もともと歯科機器は日本国内からの輸出量トップを誇っているが、中でもイギリスを中心に歯科用椅子と治療用装置が一体になった歯科ユニットのシェアがNo.1。当社は在庫や備蓄能力が高く、海外マーケットでのシェアを獲得できている。

WWD:昨年10月には住友電設所有の給湯装置事業や冷凍サイクル事業を展開するスミセツテクノを買収。同企業をグループ化した狙いは?

吉川:スミセツテクノはベルモントテクノ京都としてタカラベルモントグループの一員となった。給湯装置事業や冷凍サイクル事業は継続していく。しかし、狙いは給湯機など生産能力の強化。なぜならサロンのインフラ整備は、お客さまの快適さや心地良さにつながるものであり、中でも給湯機は必要不可欠なもの。コロナ禍においては、価格高騰などの影響で給湯機パーツが品薄になり安定供給できないこともあった。また、海外では給湯温度が安定しないという事例も多々ある。そのため、サロン独自で給湯設備を整えるのはとても大変なことだった。美と健康を追求した設備や空間、経営、教育、さらにハード面の生産能力強化は、大きな強みだと言える。

WWD:“コミュニケーション”に着目したスマートデバイスミラーのローンチはサロンビジネスにどのような可能性を広げるか?

吉川:あらゆるシーンでDX化が進んでいる現代において、サロンのお客さまとスタイリストとのコミュニケーションの“DX化”として、23年10月に待望のAI搭載スマートデバイスミラー「エシラ(ECILA)」を発売。「エシラ」は、お客さまの要望や悩みを共有できるプロファイル、新たな一面を発見できる顔診断、カラーシミュレーション、写真・動画撮影などあらゆる機能を有している。これら機能を活用し、サロンの課題であった“お客さまとスタイリストとのコミュニケーションギャップ”を解消し、お客さまの好みやなりたいイメージを引き出すほか、スタイリストがより自信を持って提案できるサポートを行う。導入サロンでは「操作性が良くスマホ感覚で扱えるのも魅力」と評判は上々。新たなサロンビジネスの可能性を広げるアイテムとして期待されている。利用者データを蓄積することでより使いやすいものに進化させ、お客さまが異なる店舗を利用しても情報が共有される仕組みにしていく。

WWD:毛髪に関する研究も高い成果を挙げている。

吉川:化粧品研究開発部は、昨年12月に行われた「日本化粧品技術者会 学術大会」において毛髪に特化した研究内容を3題発表した。同大会前身の「SCCJ 研究討論会」も含めた過去10年間(12~22年)で、毛髪に関する研究内容が同一企業から同時に3題選出されたことは当社が初となる。研究では、これまで不可能といわれた毛髪を縦にきれいに切る技術を習得。これにより、働きが解明されていない“未知の領域”だった髪の中心部・メデュラの2つの構造を解明することができた。

WWD:サステナビリティの施策で注力していることは。

吉川:モノ作り企業としての持続可能な社会を目指し、これまでも事業を通じて社会や環境に対する活動を行っていたが、23年に改めて、人・地球環境・関わる産業と地域・ガバナンス・ウェルビーイングの5つの領域と6つのマテリアリティ(重要課題)からなる「サステナビリティポリシー」を設定した。サロンスタッフの働きがいと理美容業界の発展の両立、排水処理設備の設置、バイオマスプラスチックやリサイクル素材の採用など多岐にわたる活動を行っているが、昨年は廃棄レザーのアップサイクルプロジェクトとして創業の地である大阪・西成発のファッションブランド「NISHINARI YOSHIO(ニシナリヨシオ)」と協業し企画展を実施。当社のプロ用椅子の製造過程で生じる廃棄レザーを活用したTシャツやパンツなどを制作し、ファッションショーを行った。

WWD:24年に注力することは。

吉川:当社は25年大阪・関西万博にて大阪府・市の「大阪ヘルスケアパビリオン」に出展参加を表明。主力事業の美容と医療を融合した「未来のヘルスケアサロン」の実現のため準備を進める。また、化粧品事業においては、開発ならびに生産能力の強化を図る。国内では、化粧品工場を新設予定のほか、海外では、拠点があるベトナムでも、生産する予定。化粧品事業の売り上げアップを図り、28年に掲げている全体売り上げ1000億円を目指す。

会社概要

タカラベルモント
TAKARA BELMONT

1921年に鋳物工場としてスタート。31年に理容椅子の製造を開始し理容・美容業界に進出。56年にニューヨークに現地法人を構え、海外事業をスタート。67年に歯科・医療機器の製造を開始。73年に日本初の機器を使用したエステティックを紹介し、77年に自社化粧品ブランド(現ルベル)を立ち上げる。82年には基礎化粧品の発売をスタート。2021年に創業100周年を迎えた

問い合わせ先
タカラベルモント
06-7636-0856(広報室)

TEXT:WAKANA NAKADE

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高度な専門性を持つ“ナビゲーター集団“の強み【コロネット 七宮信幸社長】

PROFILE: 七宮信幸/コロネット社長

七宮信幸/コロネット社長
PROFILE: (ななみや・のぶゆき)1968年、東京生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、93年4月に伊藤忠商事入社。ロンドン駐在や伊藤忠のブランドマーケティング第五課長などを経て、2020年4月からコロネットに出向。同年7月から現職。趣味は、筋トレ、ファッション、読書、ゴルフ等 PHOTO:TSUKASA NAKAGAWA

七宮信幸社長は、コロナ禍を「ロケットスタートを切るための準備期間」と位置づけ、2023年を完全復活と変革の年として振り返る。前身のコロネット商会の創業70周年を迎える今年、改めて創業精神に立ち返るとともに、“高度な専門性を持つナビゲーター集団”として、世界の最高級品を消費者に届けることに努めている。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

70年前に立ち返り
「世界の最高級品を消費者に」

WWD JAPAN(以下、WWD):2023年はどんな年だったか。

七宮信幸社長(以下、七宮):ほぼ全ての事業が再開した1年だった。私が現職に就任した20年はまさにコロナ禍による混乱の真っ只中で、全てが止まっていたからこそ、収束のタイミングでロケットスタートを切るための準備期間を作ることができた。おかげで順調なスタートを切ることができ、さまざまな変革が進んだ。社内的には、本部機能を大阪から東京に集約することで人的資本を集中させた。また、人材確保や育成に注力し、新規プロジェクトにも着手した。

WWD:優秀な人材獲得のために何をしたか。

七宮:これからは、あらゆる働き手がプロ人材を目指してスキルを磨き、そんな人材に活躍の場を提供し続けられる会社だけが生き残る。私は就任当初から社員に「専門性の向上」を求めており、その道に長けた人材を積極採用している。社員の強みを最大限に発揮できるポジション作りを意識してきた。仮に適任が社内で見つからなければ、社外との協業から人材獲得まで柔軟に対応できている。多彩な専門家が集まり、私の現職就任以降にコロネットに入社した社員は、全体の4割に迫っている(販売員を除く)。今後も積極的な人材施策を取っていきたい。

WWD:23年に着手したプロジェクトは?

七宮:1つ目は、「エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)」のリージョナルパートナーとしてビジネスを開始したこと。今年から旗艦店の出店と、スモールレザーグッズやバッグといったアクセサリーの強化を進める。われわれは唯一無二でニッチ、きらりと光るブランドとのビジネスを得意としているので、今後も個性的なブランドと協業したい。また、広報部をマーケティング部として、自分たちで収益を創出するチームに作り替えた。広報部も専門性を高めれば、営業部経由で獲得したブランドのプレス業務だけでなく、セールスエージェントやアタッシュドプレス業務で自らブランドとの接点を作り、営業部がディストリビューションをサポートするという流れの創出が可能なはず。双方向の流れを生み出すことで間口を広げたい。

WWD:業績と好調だったブランドは?

七宮:23年3月期の売上高は、コロナ後のリベンジ消費やインバウンドの回復を受け、前期比31%増、税引後利益率は過去10年で最高だった。好調要因の1つは、取り扱うブランドを集約して提案する百貨店のメンズセレクトスペース。セレクトショップ並みのコーディネートの提案力が求められるため、当社の多様なメンズブランドが力を発揮している。また「ハンティング・ワールド(HUNTING WORLD)」は、店頭が非常に堅調だ。昨年は、「ビームス(BEAMS)」「ブルックス・ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」とコラボレーションした。デサントとの本格的なアウトドアアウターの協業プロジェクトも進んでいる。今年は、トロリーバッグなどのトラベル関連グッズに挑戦する予定だ。一方24年3月期の上半期については、売り上げは前年同期と比べて微減だった。理由は単価の上昇。原材料や為替も含めて20~30%、価格を上げざるを得なかった。しかし客単価は増えたため、売上総利益はプラス。下期の出だしは、気温が高かったことで重衣料の売れ行きがスロースタートだったが、巻き返して期末の予算達成を目指す。

WWD:価格の値上げについてどう考えるか。

七宮:日本経済全体として言えることだが、価格は基本的には上がっていかないと経済成長は見込めない。経済成長が見込めなければ、イノベーションやチャレンジは生まれない。価格が上がる背景、付加価値をお客さまに「説明」するだけでなく、「共有」できるかが重要だ。

WWD:24年の動きは?

七宮:今年は、前身のコロネット商会が大阪で創業してから70周年に当たるため、コロネット商会の「世界の最高級品を消費者に」という創業精神に立ち返る。この「消費者」は、もはや日本人あるいは日本に住む人に限らず、海外の消費者も含む。ジャパンブランドを海外に“ナビゲート”したり、ブランドのインキュベーション強化に取り組みたい。21年ごろから模索してきた動きは今年、形になるだろう。

WWD:昨今頻発するデザイナーの早期交代はどう考えるか。

七宮:メゾンブランドは、デザイナーの交代でビジネス自体が大きく変わるリスクをはらんでいる。しかし変革こそ、新たなパートナーシップや商圏が生まれるチャンスだ。他方「変革」には、過去を踏まえて「進化」させるものと、過去をゼロベースにして作り変える「革命」の2種類がある。前者に関しては、過去を知っていたり、経験していることが非常に重要だ。われわれの知見や経験を生かすことができる。後者の場合は、ゼロ地点からのスタートになるため、パートナー双方の最初の立ち位置が重要だ。その上で、どこを目的地としてナビゲートするかを決め、共有することも大切。ブランドが「どこに行きたいのか」を常に定性面と定量面の双方ですり合わせ、ナビゲートしていきたい。

会社概要

コロネット
CORONET

1954年に輸入販売代理店として創業。2003年に伊藤忠商事の子会社に。繊維製品の製造・輸入・卸売・販売を行う。「ランバン」「ペラフィネ」「ヤコブ コーエン」「ムーレー」「ミラ・ショーン」「フォルテフォルテ」「ハンティング・ワールド」「イザベル マラン」などラグジュアリーからデザイナーズまで幅広いブランドを取り揃えている。23年には「チカ キサダ」の幾左田千佳デザイナーをクリエイティブ・ディレクターに迎えて「ミラ・ショーン」の新ライン“ミラ ショーン バイ チカ キサダ”を始動。「エミリオ・プッチ」と日本国内における独占輸入販売代理店契約を締結するなど、ビジネスを拡充している

問い合わせ先
コロネット
03-5216-6511

TEXT:YU HIRAKAWA

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米アップルの元幹部も採用、グローバルブランド化に布石【ジンズHD 田中仁CEO】

PROFILE: 田中仁/ジンズホールディングス代表取締役CEO

田中仁/ジンズホールディングス代表取締役CEO
PROFILE: (たなか・ひとし)1963年群馬県生まれ。88年有限会社ジェイアイエヌ(現ジンズホールディングス)を設立し、2001年アイウエア事業「JINS」を開始。13年東証一部(現東証プライム)に上場。14年に群馬県の地域活性化支援のため一般財団法人田中仁財団を設立し、代表理事に就任。起業家支援プロジェクト「群馬イノベーションアワード」「群馬イノベーションスクール」を開始。現在は前橋市中心街の活性化にも携わる PHOTO:YUTA FUCHIKAMI

アイウエア大手のジンズホールディングスは、コロナ禍の収束に伴い業績は上向きつつある中で、「意志あるクリエイティブな仕事によって事業を創り上げること」を軸にした「第二創業」を掲げる。昨年6月には米アップルの幹部を招き入れ、グローバル化に向けた基盤作りにも着々と手を打つ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

本格的なグローバル展開を前に
「地域共生&クリエイティブ」で第二創業へ

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年8月期の純利益は前期比2.3倍の17億円。業績は回復してきた。23年を振り返ると?

田中仁CEO(以下、田中):今期から、第二創業を掲げている。かつてはジンズもアイウエア業界のチャレンジャーであり、「セットプライス」などの新機軸を生み出してきたが、そうしたビジネスモデルも今では新規性を失いつつある。ビジネスモデルを刷新し、グローバル展開を加速させるためにも、創業時の挑戦者たるスピリットを取り戻したい。

WWD:なぜ今、第二創業なのか。

田中:第二創業の意味は、単なる改良改善とも、社会の変革を促すイノベーションとも違う。では何か?私は「意志あるクリエイティブな仕事によって事業を創り上げること」だと考えている。毎日の仕事をルーティンな単純作業としていては進歩がない。誰もが、挑戦者として仕事のやり方をアップデートすること。これは店頭のスタッフも、本部や管理部門であっても同じで、日本、海外も問わず、だ。まさに全社員が取り組むべき課題になる。目的は、組織の力で大きく成長する企業へと生まれ変わること。本部主導、あるいはトップダウンのようなやり方では、創業期のような非連続な成長は難しい。目標は時価総額1兆円を掲げている。現在は大体1000億〜1200億円の間なので約10倍、「圧倒的な何か」を作り上げないと達成はできない。

WWD:6月には、米アップルで18年にわたりクリエイティブ・ディレクターを務めたポール・ニクソン氏をグローバル・チーフ・クリエイティブ・オフィサーとして迎えた。その役割と狙いは?

田中:これは、「『ジンズ』をグローバルなブランドにすること」に尽きる。先ほどの「第二創業」とも連動しているが、成長の大きな鍵はグローバル化の加速。そのために組織も考え方も、根本から大きく変えていく。ニクソン氏は「新しいカスタマージャーニー」「プロダクト」「コミュニケーション」という3つを管掌する。

WWD:24年8月期の海外出店は16とやや控えめな印象だが。

田中:現時点でも売り上げのことだけを考えれば、積極的な出店施策が取れないわけではない。実際に世界で最も売れているのは米国の店舗で、もちろん広大な米国には出店の余地もある。ただその前に、真のグローバル化のために米国の多様性に対応できるような組織や制度、ビジネスモデルといった基盤作りを、ニクソン氏とともに1〜2年をかけて行う。しっかりとした基盤を作り、本質的な強みを磨き上げれば1〜2年の遅れなどすぐに巻き返せる。

WWD:国内は?

田中:24年8月期は17店舗を出店する計画だが、それでも出店余地はかなりある。アイウエアは、例えばアパレルと比べても、ターゲットがエイジレスで、実際に「ジンズ」の店舗もロードサイドから都心のファッションビル、駅ナカ、繁華街の路面店など、多種多様なフォーマットがそろっている。今は「店舗の価値をどれだけ高められるか」「魅力ある店舗をどう作れるか」を軸に、出店していく。

WWD:14年に地元の群馬県前橋市に財団を設立し、地域の起業家育成など地方創生にも深く関わってきた。

田中:取り組み始めた当初はここまで深く長く関わることになるとは考えていなかった。今でも毎週末には前橋に行って、さまざまなプロジェクトに関わっている。経営にも、ものすごく大きな影響を受けている。行政は、いわば市民全員が企業経営で言うところの「ステークホルダー」で、企業のようにトップが指示を出せば動く、ということはない。誰もが当事者であり、もし施策を実行しようと思えば参加型の意志形成や多くの利害調整も必要になる。当初はそれに戸惑ったり、苦労もしたが、同時に経営に対する考え方は大きく変わった。振り返ってみれば、以前のジンズと私自身もトップダウン型で、実際この数年の停滞は、私の権限委譲が足りなかったためだと反省している。第二創業を掲げたのも、そうした組織や風土を変えたいという思いがある。

WWD:著書の「振り切る勇気」で「起業したことで、物事と真剣に向き合うことやフルスイングすることの大切さを学んだ」と述べている。最後に若者たちへのメッセージを。

田中:私から言えるのは、「自分らしい人生を生きよう」ということ。私自身は小さい頃から飽きっぽくて勉強も得意ではなかった。けれどもそんな私でも「商い」だけは、飽きずにやれてきた。仕事に限らず、スポーツでも音楽でも得意なことや好きなことを全力で、一生懸命に取り組むことは、本当に大事だと思う。第二創業でも「一人ひとりがクリエイティブに働くこと」を掲げているが、これからはどんな立場や職種・業種でも、クリエイターであるべきだ。そうすることで、その人自身や所属する企業・組織も爆発的に成長できる。少なくともジンズは、そう考えている。

会社概要

ジンズホールディングス
JINS HOLDINGS

1988年ジェイアイエヌ(現ジンズホールディングス)設立。2001年、福岡・天神に1号店をオープン。06年、大証ヘラクレスに上場。10年、海外1号店を中国・瀋陽にオープン。13年、東証一部(現東証プライム)市場に上場。17年、社名をジンズに変更。国内473店舗、海外240店舗を展開(23年8月末時点)。従業員数は3486人(23年8月末時点)

問い合わせ先
ジンズカスタマーサポートセンター
0120-588-418

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「グランドセイコー」を日本の美意識に基づいたラグジュアリーへ【内藤昭男 セイコーウオッチ社長】

PROFILE: 内藤昭男/セイコーウオッチ社長

内藤昭男/セイコーウオッチ社長
PROFILE: (ないとう・あきお)1960年11月9日生まれ、茨城県出身。84年に上智大学を卒業し、同年、服部セイコー(現セイコーグループ)に入社。セイコーオーストラリア社長、セイコーHD法務部長、常務取締役、セイコーアメリカ社長などを経て、2019年12月にセイコーウオッチの副社長に就任。21年4月から現職  PHOTO:TSUKASA NAKAGAWA

セイコーウオッチは「グランドセイコー(GRAND SEIKO)」を筆頭に「セイコー プロスペックス(SEIKO PROSPEX)」や「セイコー アストロン(SEIKO ASTRON)」「セイコー ルキア(SEIKO LUKIA)」まで幅広いブランドを擁し、人々の手元を彩っている。中でもジャパニーズ・ラグジュアリー・ウオッチブランドとしての確立を目指す「グランドセイコー」は2023年、イベントにも積極的で情緒的な価値観の発信にも尽力した。世界戦略の進ちょくはどうなのか?内藤昭男社長に聞いた。
(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

北米、アジアに続き、
欧州でもブランドを確立

WWDJAPAN(以下、WWD):「グランドセイコー(以下GS)」は今、北米市場を中心に「ジャパニーズ・ラグジュアリー・ウオッチブランド」として認知されつつある。

内藤昭男セイコーウオッチ社長(以下、内藤):「最高のモノを作りたい」という作り手の情熱は、ラグジュアリーブランドにとって欠かせない大事なもの。「GS」は1960年、「世界最高峰の腕時計を作り出す」という、先人の情熱から誕生した。服部真二セイコーグループ代表取締役会長兼グループCEOが2017年に「GS」を独立ブランド化させたのは、この歴史をふまえ、日本発のラグジュアリー・ウオッチブランドとして発展させるため。「GS」は過去数年、グローバル市場で着実にこの目標を達成しつつあり、さらなる成長を目指している。

WWD:次の目標とは?

内藤:「ラグジュアリーの本場」であるヨーロッパ市場で、ラグジュアリー・ウオッチブランドと認められることだ。そのためにわれわれはここ数年、さまざまな取り組みを行ってきた。20年3月にはパリのヴァンドーム広場に欧州初直営の「GS」専門店「グランドセイコーブティック」をオープン。22年にはスイス・ジュネーブで開催されるラグジュアリーウオッチの国際展示会「ウオッチズ・アンド・ワンダーズ・ジュネーブ(WWG)」に継続参加を見据えて初出展。「GS」としての参加を要請された。WWGには「出展するなら単発ではなく、日本発のラグジュアリー・ウオッチブランドとして長期的に出展したい」と伝え、私たちの熱意や本気度を理解していただいた。WWGへの出展以降、ヨーロッパの時計愛好家や高級時計市場関係者の見方が変わったと実感している。

WWD:ラグジュアリーにおける北米とヨーロッパの違いとは?

内藤:ひとことで言えば、「ラグジュアリー」の概念が違う。北米やアジアは「新しいモノ」に対して好意的で、新進ブランドでもラグジュアリーと認めてくれやすい。だがヨーロッパ各国においては、ラグジュアリーには歴史や伝統、独自の文化が不可欠で、その概念は国ごと微妙に異なっている。そのためには、国ごとにアプローチを変える必要がある。「GS」のブランドイメージをブレずに発信し続け、そのイメージを生かしてビジネスをするため、宣伝から流通、販売までの体制を変えた。各国の代理店に任せる形を改め、ヨーロッパ各国に現地法人を設立し、われわれの手で宣伝や流通・販売を行う直販体制を構築する。この体制を統轄する組織として、ヨーロッパにグランドセイコー・ヨーロッパを設立。直営ブティックに加え、各国の老舗・名門時計店への販路拡大にも取り組んでいる。

WWD:発信する「GS」ブランドのイメージも、これまでは「精度」や「仕上げ」などハードウエアにおける卓越性がメーンだったが、最近は情緒的な価値のアピールにも意欲的だ。

内藤:卓越した技術と共に製品が生まれた土地や文化、モノ作りに取り組む職人の情熱など、感性・情緒的な価値はラグジュアリーブランドに欠かせない。「GS」は、この部分をもっと追求し、技術面の優位性だけでなく情緒的なアピールを磨く必要がある。

WWD:具体的にはどのようなアピールを?

内藤:19年から「GS」のブランドフィロソフィーとして「ザ・ネイチャー・オブ・タイム」を発信している。「ありのままの時の移ろい」を愛でる日本人の感性や、人それぞれに「道を究めることでその本質に迫ろうとする」日本人の美意識、日本の風土や自然に基づいた商品企画やブランド訴求を展開している。

WWD:今後、「GS」で新しく考えている取り組みは?

内藤:ひとりの時計技術者のこだわりと情熱に始まり開発に10年を要した時計で、22年に「ジュネーブウォッチグランプリ(GPHG)」のクロノメトリー賞を受賞した“グランドセイコー KODO”のように、作り手の想い、内発的に生まれる商品企画を余裕を持って育て、カタチにできる体制を作りたい。日本と日本の時計に対する興味と評価は確実に高まっている。このチャンスを逃さず、どのマーケットにおいてもラグジュアリーウオッチの世界でトップ5に入るブランドを目指したい。

WWD:「GS」以外のブランドの23年のハイライトは?

内藤:オフィシャルタイマーを務めた世界陸上2023 ブダペストの影響も大きく、「プロスペックス」はグローバルにおける認知度が上がっている。普及価格帯市場はスマートウオッチの影響でマーケットは縮小傾向だが、多様な価値観が飛び交う現代を象徴するカジュアルウオッチの「5スポーツ」はスポーティなムードや温かみのあるデザインで好調だった。グローバル戦略を進める中で注力してきたブランドはこれまで、高価格帯に寄っていたかもしれない。独自の感性的価値があれば、手頃な価格帯で幅広い世代に共感していただけるブランドが育つのではないか?それぞれのブランドが違う形で花開く土壌を育てていきたい。

会社概要

セイコーウオッチ
SEIKO WATCH

セイコーは1881年、服部金太郎が時計の小売りと修理を生業とする服部時計店を創業し、外国商館から信用を得て発展するところから始まる。92年には小売業の成功を背景に精工舎を設立し、壁掛け時計の製造を開始。95年には懐中時計、1913年には国産初の腕時計“ローレル”を発売した。32年には現在のセイコーハウス銀座にあたる銀座四丁目時計塔を竣工。60年、「グランドセイコー」を発売。99年には独自の機構スプリングドライブを搭載した時計を発売した

問い合わせ先
セイコーウオッチお客様相談室
0120-061-012

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ブランドの“I am”を明確にグローバル戦略を加速【エキップ 赤堀真之社長】

PROFILE: 赤堀真之/エキップ社長

赤堀真之/エキップ社長
PROFILE: (あかほり・まさゆき) 90年に鐘紡に入社。カネボウ化粧品にて支店長を経て、2006年7月からエキップ取締役、経営企画部・国際部の部長を務める。10年10月からカネボウ化粧品 新規事業開発部 国際部 アジア営業GP部長、19年1月から花王 化粧品事業部門 事業企画・流通企画部長、トラベルリテール部長を経て、23年1月から現職 PHOTO : SHUNICHI ODA

花王グループがグローバル展開を強化する「G11」に選定する「RMK」「スック(SUQQU)」「アスレティア(ATHLETIA)」の3ブランドを擁するエキップは、国内外での成長が期待される。2023年に赤堀真之社長が新たに就任し、組織体制や海外戦略をより強固なものにアップデートしながら、創業30周年に向けてさらなる発展を目指す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

全方位で「夢を実現する」

WWDJAPAN(以下、WWD):社長就任後、どのような組織作りを行っている?

赤堀真之社長(以下、赤堀):エキップはカネボウ化粧品のアウトオブ戦略の一貫として「RMK」や「スック」をそれぞれ成長させてきた。そのためライバルといった感覚が強く、コミュニケーションが希薄だった。しかし前任の前澤洋介・現花王化粧品事業部門長兼カネボウ化粧品社長の舵取りによって、ここ数年で社内の融合が進み、雰囲気が大きく変わったように思う。就任後、オフィスの社員と面談をしたところ、「働きやすい会社」「社員が優しく思いやりのある良い人ばかりの会社」というコメントが非常に多かった。社名の由来である「仲間」に恥じないよう、前任者が培った風土を継承し発展させていく。

WWD:その中で23年の成果は。

赤堀:3ブランドともに市場の平均を上回る伸長ができた。国内市場は、消費が停滞していた約3年を経て、23年は大きな盛り上がりを見せた。インバウンドも拡大し、特にメイクカテゴリーが売り上げを大きくけん引した。対して、海外市場は処理水の問題の影響が大きく、下期は中国の越境ECや韓国のトラベルリテール市場で苦戦したが、そのような情勢の中でもタイや香港では、新商品をフックに好調に推移した。

WWD:各ブランドの業績は?

赤堀:「RMK」はブランドの強みであるベースメイクが好調で、2年連続、大型新商品を投入したファンデーションについては23年は前年比1.5倍に迫る勢いで伸長した。21年に就任したクリエイティブディレクターYUKIのもと、彼のクリエイティビティーを前面に押し出したカラーメイクも段階的に刷新しているところで、世界観をさらに強く発信していく。「スック」は20周年のアニバーサリーイヤーで、メイクレッスンやブランド理解を深める体験コンテンツなどの施策と新商品を多数盛り込んだ1年だった。初めて受注生産での限定商品を販売したところ、想定を超える結果で着地し、顧客からも大きな反響があった。ブランドの集大成ともいえる“ザ ファンデーション”も大きな山の一つとなった。「アスレティア」は、「アクティブなライフスタイルを応援する」という価値観をしっかりと打ち出すことができ、“癒やし”一辺倒の時代から、ブランドが目指す「よく動き、よく休む」というアクティブとリラックスの循環を重視する考えがバランスよく受け入れられるようになってきた。右肩上がりの成長線を描けているが、まだ伸びしろがある。

WWD:グローバル視点で見たときの各ブランドの強みや課題はどんなところか。

赤堀:国内に確固たる基盤があること。インバウンドが増える中で、国内で存在感のあるブランドは、訪日客を介して海外にも伝播していくだろう。国内の良いロケーションで存在感のあるビジネスを展開することが、アドバンテージにもなる。その上で、日本市場以上にグローバル市場では「突き抜けたもの」しか勝てなくなってきている。ブランドとしてのアイデンティティー、「I am」をきちんと伝えていかないと、媒介した人のイメージに左右されてしまう。ブランドメッセージを整理しながら発信することが必要だろう。売り上げのためだけでなく、ブランドとお客さまを主語にどんなメッセージを発信するのかを大切にしていきたい。

WWD:ローカルマーケットではどのように認知を取るのか。エリアに優先順位はあるか。

赤堀:タイ、台湾、さらに越境ECを足がかりに中国といった東アジアを中心に、東南アジア、欧州を含めてグローバル展開を進めていく。「日本」と「海外」という考え方ではなく、一つの市場の中に、日本や各国のマーケットがあるという視点にマインドセットしてビジネスを考える必要がある。日本のブランドを海外でどう再現するかではなく、まずは日本での存在感を高めて、世界観を伝達し、インバウンドのお客さまから中華圏のお客さまへと広げていきたい。

WWD:24年に注力することは?

赤堀:30年を見据えて策定された花王グループの中期経営計画「K27」の通過点としての24年は、さらにグローバル化を推進する。クリエイティブと品質に磨きをかけることはもとより、ブランドのアイデンティティーとプロダクトのUSP(強み)を海外市場のお客さまに分かりやすくコミュニケーションするノウハウを確立したい。1月には事業部制へと組織体制を変えて、意思決定のスピードアップと社員の参画を促す。また、来店頻度にこだわったKPIの策定も行う予定で、単に来店・購入を促進する施策ではなく、デジタルの活用や、双方向でのコミュニケーションによるエンゲージメントの育成が重要になる。26年11月の創立30周年に向けてリアル店舗とデジタルを融合した施策を強化し、お客さまの真のニーズに寄り添う体験を創出し、真のグローバルブランドへの成長を目指す。

会社概要

エキップ
E'QUIPE

1996年11月にカネボウ化粧品の100%子会社として設立、化粧品製造販売を行う。97年に「RMK」、2003年に「スック」をデビューさせ、その認知・存在感は国内にとどまらず海外でも高まっている。ベースメイク、メイクアップに定評のある2ブランドに加え、20年には17年ぶりの新ブランド「アスレティア」を発表し、アクティブでしなやかな毎日を後押しする

問い合わせ先
エキップ
info@eqp.co.jp

TEXT:NATSUMI YONEYAMA

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ブランドの“I am”を明確にグローバル戦略を加速【エキップ 赤堀真之社長】

PROFILE: 赤堀真之/エキップ社長

赤堀真之/エキップ社長
PROFILE: (あかほり・まさゆき) 90年に鐘紡に入社。カネボウ化粧品にて支店長を経て、2006年7月からエキップ取締役、経営企画部・国際部の部長を務める。10年10月からカネボウ化粧品 新規事業開発部 国際部 アジア営業GP部長、19年1月から花王 化粧品事業部門 事業企画・流通企画部長、トラベルリテール部長を経て、23年1月から現職 PHOTO : SHUNICHI ODA

花王グループがグローバル展開を強化する「G11」に選定する「RMK」「スック(SUQQU)」「アスレティア(ATHLETIA)」の3ブランドを擁するエキップは、国内外での成長が期待される。2023年に赤堀真之社長が新たに就任し、組織体制や海外戦略をより強固なものにアップデートしながら、創業30周年に向けてさらなる発展を目指す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

全方位で「夢を実現する」

WWDJAPAN(以下、WWD):社長就任後、どのような組織作りを行っている?

赤堀真之社長(以下、赤堀):エキップはカネボウ化粧品のアウトオブ戦略の一貫として「RMK」や「スック」をそれぞれ成長させてきた。そのためライバルといった感覚が強く、コミュニケーションが希薄だった。しかし前任の前澤洋介・現花王化粧品事業部門長兼カネボウ化粧品社長の舵取りによって、ここ数年で社内の融合が進み、雰囲気が大きく変わったように思う。就任後、オフィスの社員と面談をしたところ、「働きやすい会社」「社員が優しく思いやりのある良い人ばかりの会社」というコメントが非常に多かった。社名の由来である「仲間」に恥じないよう、前任者が培った風土を継承し発展させていく。

WWD:その中で23年の成果は。

赤堀:3ブランドともに市場の平均を上回る伸長ができた。国内市場は、消費が停滞していた約3年を経て、23年は大きな盛り上がりを見せた。インバウンドも拡大し、特にメイクカテゴリーが売り上げを大きくけん引した。対して、海外市場は処理水の問題の影響が大きく、下期は中国の越境ECや韓国のトラベルリテール市場で苦戦したが、そのような情勢の中でもタイや香港では、新商品をフックに好調に推移した。

WWD:各ブランドの業績は?

赤堀:「RMK」はブランドの強みであるベースメイクが好調で、2年連続、大型新商品を投入したファンデーションについては23年は前年比1.5倍に迫る勢いで伸長した。21年に就任したクリエイティブディレクターYUKIのもと、彼のクリエイティビティーを前面に押し出したカラーメイクも段階的に刷新しているところで、世界観をさらに強く発信していく。「スック」は20周年のアニバーサリーイヤーで、メイクレッスンやブランド理解を深める体験コンテンツなどの施策と新商品を多数盛り込んだ1年だった。初めて受注生産での限定商品を販売したところ、想定を超える結果で着地し、顧客からも大きな反響があった。ブランドの集大成ともいえる“ザ ファンデーション”も大きな山の一つとなった。「アスレティア」は、「アクティブなライフスタイルを応援する」という価値観をしっかりと打ち出すことができ、“癒やし”一辺倒の時代から、ブランドが目指す「よく動き、よく休む」というアクティブとリラックスの循環を重視する考えがバランスよく受け入れられるようになってきた。右肩上がりの成長線を描けているが、まだ伸びしろがある。

WWD:グローバル視点で見たときの各ブランドの強みや課題はどんなところか。

赤堀:国内に確固たる基盤があること。インバウンドが増える中で、国内で存在感のあるブランドは、訪日客を介して海外にも伝播していくだろう。国内の良いロケーションで存在感のあるビジネスを展開することが、アドバンテージにもなる。その上で、日本市場以上にグローバル市場では「突き抜けたもの」しか勝てなくなってきている。ブランドとしてのアイデンティティー、「I am」をきちんと伝えていかないと、媒介した人のイメージに左右されてしまう。ブランドメッセージを整理しながら発信することが必要だろう。売り上げのためだけでなく、ブランドとお客さまを主語にどんなメッセージを発信するのかを大切にしていきたい。

WWD:ローカルマーケットではどのように認知を取るのか。エリアに優先順位はあるか。

赤堀:タイ、台湾、さらに越境ECを足がかりに中国といった東アジアを中心に、東南アジア、欧州を含めてグローバル展開を進めていく。「日本」と「海外」という考え方ではなく、一つの市場の中に、日本や各国のマーケットがあるという視点にマインドセットしてビジネスを考える必要がある。日本のブランドを海外でどう再現するかではなく、まずは日本での存在感を高めて、世界観を伝達し、インバウンドのお客さまから中華圏のお客さまへと広げていきたい。

WWD:24年に注力することは?

赤堀:30年を見据えて策定された花王グループの中期経営計画「K27」の通過点としての24年は、さらにグローバル化を推進する。クリエイティブと品質に磨きをかけることはもとより、ブランドのアイデンティティーとプロダクトのUSP(強み)を海外市場のお客さまに分かりやすくコミュニケーションするノウハウを確立したい。1月には事業部制へと組織体制を変えて、意思決定のスピードアップと社員の参画を促す。また、来店頻度にこだわったKPIの策定も行う予定で、単に来店・購入を促進する施策ではなく、デジタルの活用や、双方向でのコミュニケーションによるエンゲージメントの育成が重要になる。26年11月の創立30周年に向けてリアル店舗とデジタルを融合した施策を強化し、お客さまの真のニーズに寄り添う体験を創出し、真のグローバルブランドへの成長を目指す。

会社概要

エキップ
E'QUIPE

1996年11月にカネボウ化粧品の100%子会社として設立、化粧品製造販売を行う。97年に「RMK」、2003年に「スック」をデビューさせ、その認知・存在感は国内にとどまらず海外でも高まっている。ベースメイク、メイクアップに定評のある2ブランドに加え、20年には17年ぶりの新ブランド「アスレティア」を発表し、アクティブでしなやかな毎日を後押しする

問い合わせ先
エキップ
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TEXT:NATSUMI YONEYAMA

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キングZOZO、「似合う」をいよいよ搭載【ZOZO 澤田宏太郎社長】

PROFILE: 澤田宏太郎/ZOZO社長兼CEO

澤田宏太郎/ZOZO社長兼CEO
PROFILE: (さわだ・こうたろう)1970年12月15日生まれ、神奈川県出身。早稲田大学理工学部卒業後、NTTデータに新卒入社。その後NTTデータ経営研究所、経営コンサルのスカイライトコンサルティングを経て、2008年5月スタートトゥデイコンサルティング代表取締役に就任。13年6月にZOZO取締役、19年9月から現職 PHOTO:TAMEKI OSHIRO

ZOZOは2022年3月期で商品取扱高(GMV)を5000億円の大台に乗せた後も、順調に成長を続けている。「MORE FASHION × FASHION TECH ~ ワクワクできる『似合う』を届ける ~」を掲げ、売るだけでなく独自の受注生産モデル「メイドバイゾゾ」など、新たな事業も軌道に乗りつつある。「似合う」の解明も進み、今年には実装に着手する。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

「似合う」の解明でファッションECは、新たなステージへ

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年を振り返ると?

澤田宏太郎社長兼CEO(以下、澤田):社長就任後に「ファッションのことならZOZO」と「MORE FASHION × FASHION TECH ~ ワクワクできる『似合う』を届ける ~」の2つを掲げた。ブランドの在庫リスクゼロを目指す「メイドバイゾゾ」、ブランドの実店舗の売上支援の「ZOZOMO」など、単に売るだけでなく「作る」「伝える」「届ける」に関する新事業を順調に拡大できた。中でも、最も手応えを感じているのが「似合う」の解明だ。22年12月に東京・表参道にオープンした「似合うラボ」で、テクノロジーとスタイリストの力を掛け合わせて1年以上運営してきた。ユーザーのリアクションはかなりよい。それ以上に、「似合う」についてかなり深い分析ができるようになった。

WWD:そもそも「似合う」に着目した発想自体、ZOZOらしい取り組みだった。

澤田:「似合う」という感覚は、いろいろな要素が複雑に絡み合って成立している。ロジックはかなり深いところまで解明できた。今はすでに、このロジックを生かしてZOZOのサービスにどう実装するか、というところまで来ている。今春には何かしらのアウトプットができそうだ。

WWD:商品単価は7四半期連続で、出荷単価は6四半期連続で上昇している。

澤田:商品単価は、じわじわと上がり続けているが、現時点では売れ行きに影響していない。今後については、どこまで価格上昇が続くと売れ行きに影響しそうか、社内では仮説を立ててシミュレーションもしているが、はっきりしたことは分からない、というのが正直なところ。ただ、今後も継続的な成長を続けるためには、より積極的な仕掛けが必要になる。

WWD:具体的には?

澤田:例えば、ユーチューブ向けの動画広告を打つと、10代後半から20代前半、つまりZ世代からのリアクションがとてもいい。実際にボリュームとしてもここはまだまだ深掘りできるし、「ファッション」を打ち出す限り、このゾーンの取り込みは数字以上に重要だ。あとはキッズ。取扱商品数は多いのにユーザーへの認知度が低い。ママ&パパ世代にきちんとアピールできれば、まだまだ深掘りできる。引き続き、ユーザーやマーケットをよりきめ細かく分析し、積極的にプロモーションを行う。

WWD:コスメは?

澤田:23年3月期で90億円、今期で100億円の大台は見えている。昨年には「口コミ」機能も実装し、順調ではあるが、今年はもう少し加速させたい。コスメは服以上に画像を見ただけでは売れない商材。次は300億〜500億円を目標に、そろそろコスメスタート時に導入した「ZOZOグラス」のようなテクノロジーを生かした仕掛けが必要だと感じている。サイトにアクセスして楽しめる部分で何か仕掛けられたらと思っている。

WWD:つくばの物流倉庫に100億円を投じた。つくばの物流倉庫「ZOZOBASEつくば3」が本格的に稼働した。意外だったのが、処理数を増やす以上に、効率化を重視していたこと。その狙いは?

澤田:投資額は大きいが、投資回収効率も高い。「ポケットソーター」やロボットなどの最先端のツールも導入し、自動化・省人化を進めた結果、人員数を3割ほど減らすことができた。現時点ではアルバイトの募集をかければ順調に集まるが、人手不足は構造的で慢性的な問題だ。それにモチベーションの維持など、人数も多いためマネジメントや運営の負担が大きい。なので省人化の効果は、3割という数字以上に、業務効率の改善面でポジティブな効果がある。

WWD:「物流2024年問題」への対応は?

澤田:ZOZOはユーザーと物流会社の間に立っているわけで、現在の物流の抱える問題を、きちんとユーザーや消費者に伝えた上で、ZOZO・物流会社・消費者の3者にとって最適な解決方法を提案していく立場だ。こうした問題は、小さな積み重ねが大事になる。「つくば3」でトラックの待ち時間の短縮をしたり、昨年は「置き配」をデフォルト設定にした。

WWD:「物流2024年問題」は、ファッションやビューティ業界全体としても取り組むべき課題だ。アパレルやコスメ企業との取り組みは?

澤田:まだ検討を始めた段階だが、アパレル企業とはいわゆるミルクラン方式(巡回集荷)の共同配送ができないか、と思っている。今はZOZOの倉庫に製品を入庫する際に、アパレル企業がそれぞれの自社倉庫からバラバラに配送している。トラックは帰りにカラで戻ることになり、効率が悪い。ZOZO側でトラックを手配し、巡回して集荷するようにできればかなり効率的だ。もちろんブランド側にもそれぞれの事情があり、すぐに実現できるわけではないが、これはわれわれが声を上げないと動かない。こうしたことを積み重ねていく。

会社概要

ZOZO

1998年に輸入レコードの通販を目的にスタート・トゥデイ(現ZOZO)を設立。2000年1月に輸入レコードのオンライン通販を開始、04年12月「ゾゾタウン」スタート、07年12月東証マザーズに上場、12年2月東証一部(現東証プライム)に変更、19年9月にヤフー(現LINEヤフー)の傘下入りを発表。23年3月期の業績は商品取扱高5443億円、売上高1834億円、営業利益564億円、経常利益567億円、純利益395億円。従業員数は1677人(平均年齢33.2歳、23年9月時点)

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キングZOZO、「似合う」をいよいよ搭載【ZOZO 澤田宏太郎社長】

PROFILE: 澤田宏太郎/ZOZO社長兼CEO

澤田宏太郎/ZOZO社長兼CEO
PROFILE: (さわだ・こうたろう)1970年12月15日生まれ、神奈川県出身。早稲田大学理工学部卒業後、NTTデータに新卒入社。その後NTTデータ経営研究所、経営コンサルのスカイライトコンサルティングを経て、2008年5月スタートトゥデイコンサルティング代表取締役に就任。13年6月にZOZO取締役、19年9月から現職 PHOTO:TAMEKI OSHIRO

ZOZOは2022年3月期で商品取扱高(GMV)を5000億円の大台に乗せた後も、順調に成長を続けている。「MORE FASHION × FASHION TECH ~ ワクワクできる『似合う』を届ける ~」を掲げ、売るだけでなく独自の受注生産モデル「メイドバイゾゾ」など、新たな事業も軌道に乗りつつある。「似合う」の解明も進み、今年には実装に着手する。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

「似合う」の解明でファッションECは、新たなステージへ

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年を振り返ると?

澤田宏太郎社長兼CEO(以下、澤田):社長就任後に「ファッションのことならZOZO」と「MORE FASHION × FASHION TECH ~ ワクワクできる『似合う』を届ける ~」の2つを掲げた。ブランドの在庫リスクゼロを目指す「メイドバイゾゾ」、ブランドの実店舗の売上支援の「ZOZOMO」など、単に売るだけでなく「作る」「伝える」「届ける」に関する新事業を順調に拡大できた。中でも、最も手応えを感じているのが「似合う」の解明だ。22年12月に東京・表参道にオープンした「似合うラボ」で、テクノロジーとスタイリストの力を掛け合わせて1年以上運営してきた。ユーザーのリアクションはかなりよい。それ以上に、「似合う」についてかなり深い分析ができるようになった。

WWD:そもそも「似合う」に着目した発想自体、ZOZOらしい取り組みだった。

澤田:「似合う」という感覚は、いろいろな要素が複雑に絡み合って成立している。ロジックはかなり深いところまで解明できた。今はすでに、このロジックを生かしてZOZOのサービスにどう実装するか、というところまで来ている。今春には何かしらのアウトプットができそうだ。

WWD:商品単価は7四半期連続で、出荷単価は6四半期連続で上昇している。

澤田:商品単価は、じわじわと上がり続けているが、現時点では売れ行きに影響していない。今後については、どこまで価格上昇が続くと売れ行きに影響しそうか、社内では仮説を立ててシミュレーションもしているが、はっきりしたことは分からない、というのが正直なところ。ただ、今後も継続的な成長を続けるためには、より積極的な仕掛けが必要になる。

WWD:具体的には?

澤田:例えば、ユーチューブ向けの動画広告を打つと、10代後半から20代前半、つまりZ世代からのリアクションがとてもいい。実際にボリュームとしてもここはまだまだ深掘りできるし、「ファッション」を打ち出す限り、このゾーンの取り込みは数字以上に重要だ。あとはキッズ。取扱商品数は多いのにユーザーへの認知度が低い。ママ&パパ世代にきちんとアピールできれば、まだまだ深掘りできる。引き続き、ユーザーやマーケットをよりきめ細かく分析し、積極的にプロモーションを行う。

WWD:コスメは?

澤田:23年3月期で90億円、今期で100億円の大台は見えている。昨年には「口コミ」機能も実装し、順調ではあるが、今年はもう少し加速させたい。コスメは服以上に画像を見ただけでは売れない商材。次は300億〜500億円を目標に、そろそろコスメスタート時に導入した「ZOZOグラス」のようなテクノロジーを生かした仕掛けが必要だと感じている。サイトにアクセスして楽しめる部分で何か仕掛けられたらと思っている。

WWD:つくばの物流倉庫に100億円を投じた。つくばの物流倉庫「ZOZOBASEつくば3」が本格的に稼働した。意外だったのが、処理数を増やす以上に、効率化を重視していたこと。その狙いは?

澤田:投資額は大きいが、投資回収効率も高い。「ポケットソーター」やロボットなどの最先端のツールも導入し、自動化・省人化を進めた結果、人員数を3割ほど減らすことができた。現時点ではアルバイトの募集をかければ順調に集まるが、人手不足は構造的で慢性的な問題だ。それにモチベーションの維持など、人数も多いためマネジメントや運営の負担が大きい。なので省人化の効果は、3割という数字以上に、業務効率の改善面でポジティブな効果がある。

WWD:「物流2024年問題」への対応は?

澤田:ZOZOはユーザーと物流会社の間に立っているわけで、現在の物流の抱える問題を、きちんとユーザーや消費者に伝えた上で、ZOZO・物流会社・消費者の3者にとって最適な解決方法を提案していく立場だ。こうした問題は、小さな積み重ねが大事になる。「つくば3」でトラックの待ち時間の短縮をしたり、昨年は「置き配」をデフォルト設定にした。

WWD:「物流2024年問題」は、ファッションやビューティ業界全体としても取り組むべき課題だ。アパレルやコスメ企業との取り組みは?

澤田:まだ検討を始めた段階だが、アパレル企業とはいわゆるミルクラン方式(巡回集荷)の共同配送ができないか、と思っている。今はZOZOの倉庫に製品を入庫する際に、アパレル企業がそれぞれの自社倉庫からバラバラに配送している。トラックは帰りにカラで戻ることになり、効率が悪い。ZOZO側でトラックを手配し、巡回して集荷するようにできればかなり効率的だ。もちろんブランド側にもそれぞれの事情があり、すぐに実現できるわけではないが、これはわれわれが声を上げないと動かない。こうしたことを積み重ねていく。

会社概要

ZOZO

1998年に輸入レコードの通販を目的にスタート・トゥデイ(現ZOZO)を設立。2000年1月に輸入レコードのオンライン通販を開始、04年12月「ゾゾタウン」スタート、07年12月東証マザーズに上場、12年2月東証一部(現東証プライム)に変更、19年9月にヤフー(現LINEヤフー)の傘下入りを発表。23年3月期の業績は商品取扱高5443億円、売上高1834億円、営業利益564億円、経常利益567億円、純利益395億円。従業員数は1677人(平均年齢33.2歳、23年9月時点)

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ZOZO
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データ分析を駆使し、感性と数値を融合【マークスタイラー 秋山正則社長】

PROFILE: 秋山正則/マークスタイラー社長

秋山正則/マークスタイラー社長
PROFILE: (あきやま・まさのり)1959年生まれ、神奈川県出身。82年、國學院大学経済学部卒業後、ニコルに入社。セレクトショップを主な取引先とするOEM会社を経て、99年エクシブに入社し「ココルル」企画生産部長、常務取締役に。2001年フェイクデリック(現バロックジャパンリミテッド)で「マウジー」「スライ」の立ち上げと運営に携わる。06年にマークスタイラーに入社し、09年から現職 PHOTO:SHUHEI SHINE

2023年は「守りから攻めへ」を経営テーマに掲げ、アパレルメーカーからデータマーケティング企業への変容を目指したマークスタイラー。データを駆使し、PRや販促策とも連動した独自のMDは、新たな成長をもたらす起爆剤となりそうだ。SNS時代こそのビジネスモデルと若い人材の力で変革を目指す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

独自の商品計画“MMD”を横展開

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年をどのように振り返るか。

秋山正則社長(以下、秋山):24年2月期の売上高は、目標を下回る334億円(前期比6%増)で着地する見込みだ。当社が強みとする顧客売り上げがけん引したことで、コロナ禍中も業績はそこまで落ちなかったが、コロナが明けてからはマス向けのブランドを運営する大手企業に伸び代を持っていかれてしまった面は否めない。外出制限が緩和して実店舗の売り上げは早々に回復したが、ECがやや伸び悩み、回復スピードは想定に届かなかった。

WWD:回復途上の中でも手応えを感じた点はあるか。

秋山:達成したことは大きくは3つある。1つ目は、2年前から注力してきたマークスタイラー流の商品計画(MD)のロジック、“MMD”が完成したこと。店頭とECそれぞれで、商品投入とPR・販促策まで連動した統合システムだ。「リゼクシー(RESEXXY)」「ジェイダ(GYDA)」で先行導入し、数シーズンにわたって検証を重ねてきた。23年中に他ブランドでも横展開を想定していたが、やや遅れている。感性とデータ分析との融合を実現し、24年は横展開を進めていきたい。2つ目は、SNSのデータ解析ツールを導入し、PRと販促の効率を高めたこと。インプレッションやエンゲージメントを徹底的に分析し、起用するインフルエンサーや投稿内容、投稿タイミングなども細かく決め込んでいる。商品がどういう経路で売れたかが可視化できたことで、打ち手が講じやすくなった。3つ目は人材採用だ。マーケティングが整っても、デザイナーがいなければ意味がない。その点、23年はデザイナー採用が非常に順調に進んだ。われわれはファッションが好きでこの仕事を選んだ人間の集まり。会社としてその熱い思いを全うするしかない。引き続き、今後3年はデザインやマーケティングで人材採用を強化する。昨年、当社はアパレル企業からデータマーケティング企業へ変わると宣言したことで、ITやAI関連の企業から売り込みが増えたことはありがたい。採用と関連する話では、販売社員の処遇は既にコロナ禍中に見直したが、ここからさらに上げるためにシミュレーションを重ねている。月5日の在宅ワーク制度や時差勤務の導入、子育て支援制度の充実など、働きやすさ向上のための改革も行った。

WWD:23年の成果を受け、24年に注力するポイントは何か。

秋山:課題は主に2つある。1つは原価高騰を受けてのASEAN生産の拡大だ。23年2月期に5%だったASEAN生産比率を24年2月期は10%まで高めることを目標にしているが、欧米のSPAもASEANに移行しており、8%ほどで着地する見込み。工場との業務提携なども視野に入れながら、26年2月期までに30%にまで高めたい。2つ目は卒業生向けブランドの開発だ。成長した既存ブランド顧客に向けた次のブランド開発が当社は手薄だった。そんな中、21年秋に立ち上げた「エモダ(EMODA)」の卒業生向けレーベル“ベクム(VEQUM)”は好調に推移している。よりモード色が強く一格上の価格帯で、「エモダ」が出店していない商業施設でのポップアップストアも積極的に行っている。同様に、卒業生向けブランド開発を3つほど進めるほか、「アングリッド(UNGRID)」などでブランド内新カテゴリー開発を進める。若い層に向けた低価格業態も構想がある。

WWD:コロナが明け、世の中や業界の価値観も大きく変わっている。

秋山:企業がどう売りたいかではなく、お客さまがどう買いたいのかをより深く考えるべき時代になった。われわれから「これがかわいい」を押し付けるのではなく、お客さまと一緒に進んでいくあり方だ。多様化するお客さまのニーズを把握し、ITやデジタルを積極的に活用し成長していくことは、ファッション業界全体の課題だと感じる。他業界や他企業のマーケティングパッケージをそのまま応用することには意味がない。われわれに合わせてカスタマイズする必要がある。

WWD:カスタマイズしていくために、具体的にどのように客の声を汲み取っているのか。

秋山:優良顧客にご協力いただいて、なぜその商品を買ったのかといった直接的な購入動機に加え、購入前後の心理や購入後の保管方法、そのブランドの何を支持しているのか、どんな暮らし方をしているのかといったことも積極的にヒアリングし、当社だけのデータを集めている。買う前から買った後の行動心理まで全てを含めて、着たいと思わせる要因を作らないといけない。その際、数値が専門のマーケッターは顧客像や売れ筋の分析は細かく提示できるが、論理だけで服については詳しくない。その逆で、デザイナーは服のことはよく分かっていても、数値に疎い。各部署がプロ化しているがゆえに横の連携を失っているともいえる。感性と数値の両立ができる人材を採用していきたいし、社内でも育てていく。強固なロジックがある一方で、遊ぶところは遊ぶというような会社のあり方が理想だ。僕自身、服が好きでこの業界で40年以上も働いている。服は人の気持ちを変えられる。ファッション好きが集まる会社であり続けたい。

会社概要

マークスタイラー
MARK STYLER

2005年設立。「マーキュリーデュオ」や「ムルーア」「エモダ」といったブランド群でヤングウィメンズ向けのファッション市場をけん引。15年から中国系投資ファンド、トラスター・キャピタル・パートナーズ・ジャパン・リミテッドの傘下。15ブランドで155店舗を持つ(23年2月末現在)。23年2月期の売上高は前期比6.4%増の315億円、営業利益は同135.9%増の11億円だった

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マークスタイラー
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TEXT:RIE KAMOI

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データ分析を駆使し、感性と数値を融合【マークスタイラー 秋山正則社長】

PROFILE: 秋山正則/マークスタイラー社長

秋山正則/マークスタイラー社長
PROFILE: (あきやま・まさのり)1959年生まれ、神奈川県出身。82年、國學院大学経済学部卒業後、ニコルに入社。セレクトショップを主な取引先とするOEM会社を経て、99年エクシブに入社し「ココルル」企画生産部長、常務取締役に。2001年フェイクデリック(現バロックジャパンリミテッド)で「マウジー」「スライ」の立ち上げと運営に携わる。06年にマークスタイラーに入社し、09年から現職 PHOTO:SHUHEI SHINE

2023年は「守りから攻めへ」を経営テーマに掲げ、アパレルメーカーからデータマーケティング企業への変容を目指したマークスタイラー。データを駆使し、PRや販促策とも連動した独自のMDは、新たな成長をもたらす起爆剤となりそうだ。SNS時代こそのビジネスモデルと若い人材の力で変革を目指す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

独自の商品計画“MMD”を横展開

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年をどのように振り返るか。

秋山正則社長(以下、秋山):24年2月期の売上高は、目標を下回る334億円(前期比6%増)で着地する見込みだ。当社が強みとする顧客売り上げがけん引したことで、コロナ禍中も業績はそこまで落ちなかったが、コロナが明けてからはマス向けのブランドを運営する大手企業に伸び代を持っていかれてしまった面は否めない。外出制限が緩和して実店舗の売り上げは早々に回復したが、ECがやや伸び悩み、回復スピードは想定に届かなかった。

WWD:回復途上の中でも手応えを感じた点はあるか。

秋山:達成したことは大きくは3つある。1つ目は、2年前から注力してきたマークスタイラー流の商品計画(MD)のロジック、“MMD”が完成したこと。店頭とECそれぞれで、商品投入とPR・販促策まで連動した統合システムだ。「リゼクシー(RESEXXY)」「ジェイダ(GYDA)」で先行導入し、数シーズンにわたって検証を重ねてきた。23年中に他ブランドでも横展開を想定していたが、やや遅れている。感性とデータ分析との融合を実現し、24年は横展開を進めていきたい。2つ目は、SNSのデータ解析ツールを導入し、PRと販促の効率を高めたこと。インプレッションやエンゲージメントを徹底的に分析し、起用するインフルエンサーや投稿内容、投稿タイミングなども細かく決め込んでいる。商品がどういう経路で売れたかが可視化できたことで、打ち手が講じやすくなった。3つ目は人材採用だ。マーケティングが整っても、デザイナーがいなければ意味がない。その点、23年はデザイナー採用が非常に順調に進んだ。われわれはファッションが好きでこの仕事を選んだ人間の集まり。会社としてその熱い思いを全うするしかない。引き続き、今後3年はデザインやマーケティングで人材採用を強化する。昨年、当社はアパレル企業からデータマーケティング企業へ変わると宣言したことで、ITやAI関連の企業から売り込みが増えたことはありがたい。採用と関連する話では、販売社員の処遇は既にコロナ禍中に見直したが、ここからさらに上げるためにシミュレーションを重ねている。月5日の在宅ワーク制度や時差勤務の導入、子育て支援制度の充実など、働きやすさ向上のための改革も行った。

WWD:23年の成果を受け、24年に注力するポイントは何か。

秋山:課題は主に2つある。1つは原価高騰を受けてのASEAN生産の拡大だ。23年2月期に5%だったASEAN生産比率を24年2月期は10%まで高めることを目標にしているが、欧米のSPAもASEANに移行しており、8%ほどで着地する見込み。工場との業務提携なども視野に入れながら、26年2月期までに30%にまで高めたい。2つ目は卒業生向けブランドの開発だ。成長した既存ブランド顧客に向けた次のブランド開発が当社は手薄だった。そんな中、21年秋に立ち上げた「エモダ(EMODA)」の卒業生向けレーベル“ベクム(VEQUM)”は好調に推移している。よりモード色が強く一格上の価格帯で、「エモダ」が出店していない商業施設でのポップアップストアも積極的に行っている。同様に、卒業生向けブランド開発を3つほど進めるほか、「アングリッド(UNGRID)」などでブランド内新カテゴリー開発を進める。若い層に向けた低価格業態も構想がある。

WWD:コロナが明け、世の中や業界の価値観も大きく変わっている。

秋山:企業がどう売りたいかではなく、お客さまがどう買いたいのかをより深く考えるべき時代になった。われわれから「これがかわいい」を押し付けるのではなく、お客さまと一緒に進んでいくあり方だ。多様化するお客さまのニーズを把握し、ITやデジタルを積極的に活用し成長していくことは、ファッション業界全体の課題だと感じる。他業界や他企業のマーケティングパッケージをそのまま応用することには意味がない。われわれに合わせてカスタマイズする必要がある。

WWD:カスタマイズしていくために、具体的にどのように客の声を汲み取っているのか。

秋山:優良顧客にご協力いただいて、なぜその商品を買ったのかといった直接的な購入動機に加え、購入前後の心理や購入後の保管方法、そのブランドの何を支持しているのか、どんな暮らし方をしているのかといったことも積極的にヒアリングし、当社だけのデータを集めている。買う前から買った後の行動心理まで全てを含めて、着たいと思わせる要因を作らないといけない。その際、数値が専門のマーケッターは顧客像や売れ筋の分析は細かく提示できるが、論理だけで服については詳しくない。その逆で、デザイナーは服のことはよく分かっていても、数値に疎い。各部署がプロ化しているがゆえに横の連携を失っているともいえる。感性と数値の両立ができる人材を採用していきたいし、社内でも育てていく。強固なロジックがある一方で、遊ぶところは遊ぶというような会社のあり方が理想だ。僕自身、服が好きでこの業界で40年以上も働いている。服は人の気持ちを変えられる。ファッション好きが集まる会社であり続けたい。

会社概要

マークスタイラー
MARK STYLER

2005年設立。「マーキュリーデュオ」や「ムルーア」「エモダ」といったブランド群でヤングウィメンズ向けのファッション市場をけん引。15年から中国系投資ファンド、トラスター・キャピタル・パートナーズ・ジャパン・リミテッドの傘下。15ブランドで155店舗を持つ(23年2月末現在)。23年2月期の売上高は前期比6.4%増の315億円、営業利益は同135.9%増の11億円だった

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TEXT:RIE KAMOI

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女性事業部長を2倍に、組織を活性化【バロックジャパン 村井博之社長】

PROFILE: 村井博之/バロックジャパンリミテッド社長

村井博之/バロックジャパンリミテッド社長
PROFILE: (むらい・ひろゆき)1961年生まれ、東京都出身。84年立教大学文学部を卒業後、中国国立北京師範大学への留学をへてキヤノンに入社し、中国での支店開設などに携わる。97年に日本エアシステム(現日本航空)でJAS香港社長に就任。2006年にフェイクデリックホールディングス会長兼社長に就任、07年にフェイクデリックホールディングスなど3社を統合しバロックジャパンリミテッド設立。08年から現職 PHOTO:SHUHEI SHINE

中国事業に早くから注力してきたバロックジャパンリミテッドは、中国のゼロコロナ政策で、2022年は足踏み状態となった。コロナの収束と共に23年は回復基調に乗ったが、中国市場の完全回復はもう少し先になりそうだ。今後は国内外で店舗のスクラップ&ビルドを進めていくと共に、手薄だった分野での新ブランド開発も進める。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

チャレンジ精神ある若手を登用

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年は女性登用が目立った。

村井博之社長(以下、村井):事業部長クラス以上で、女性登用を進めている。現在、女性の事業部長は4人、販売統括部長も含めれば5人だ。社員の8割が女性であることを考えれば決して多くはないが、まずは大きな一歩。25年2月期に向けて、この人数を倍にしたい。もともと女性がパワフルな会社であり、販売や企画、PRなどの現場で高い能力を発揮している人材は非常に多い。マネジメント層にも女性が入ることで、試行錯誤をしながら物事を前進させる力が会社として強くなったと感じている。コロナ明けの社会は前に戻るのではなく、これまで経験したことのない世の中になる。そこに迅速に対応できるスピード感のある人、やる気があってチャレンジの意志が強い人をどんどん登用していきたい。植田みずき(常務執行役員)やバロックチャイナ統括の女性幹部はいるが、そういった会社の創成期をけん引してきたメンバーではない、この10年前後で入社した女性社員の抜擢は、23年が一番多かった。

WWD:女性登用による活性化は、どんな成果を生んでいるか。

村井:成長率が大きく、25年2月期に向けて大幅拡大を考えている「スタイルミキサー(STYLEMIXER)」の事業部にも、昨年4月に女性事業部長が就任した。事業部長がチームで一番若く、経験豊富なMDやデザイナーが後輩を盛り立てている。「スライ(SLY)」の事業部も今、同様のチーム編成だ。「スタイルミキサー」は郊外SCへの出店が主だったが、23年3月にリニューアルした原宿の旗艦店「ザ シェルター トーキョー(THE SHEL'TTER TOKYO)」でも売り上げをけん引し、出店先として都心の可能性も出てきた。来期の売上高は大幅増を見込む。

WWD:中国事業はコロナで苦しんだ期間が長かった。

村井:中国は日本や米国に比べて立ち直りに時間はかかったが、いよいよ回復してきた。ただ、都市によって回復具合には差がある。地方都市では一旦店舗数を減らし、北京や上海、天津、杭州、深圳では出店するという、スクラップ&ビルドを進める。モノ作りの面ではASEANでの生産比率を約20%にまで高め、中国に偏っていたサプライチェーンを是正してきた。ただ、中国は販売拠点も多く、日本からの距離も近い。パンデミックが収まったことで、改めて最適なサプライチェーンを構築する。

WWD:中国も国内ブランドが成長して市場環境が大きく変わっている。

村井:中国において、「日本のブランドだから」というだけでは購入の大きなモチベーションにならない。とは言え、当社のブランドは中国で既に一定の規模や認知度がある。一時期は中国に約300店を出店していたが、コロナによって採算性が悪化した店舗を閉鎖し、現在は約270店に縮小した。コロナを経てデベロッパーも勝ち組、負け組が明確になった。これからは従来以上に出店先を精査する。

WWD:24年の消費をどう予測するか。

村井:国内はリベンジ消費が一巡し、特にわれわれが対象としている若年層向けでは、消費は堅実になっていく。人口も減っていく。当社のブランドは決してマス向けではなくニッチだ。ニッチブランドを手掛ける企業として、こうした状況の中でどう収益性を担保していくかを考える必要がある。従来手薄だったゾーンでも積極的なブランド展開を進める。例えば40代向けのマーケットだ。海外は、既に基盤整備が済んでいる中国や米国事業を主力にしつつ、新たな形で事業を広げていきたい。「エンフォルド(ENFOLD)」が22年秋に、新世界百貨店と組んで韓国進出しているのが先行例だ。24年は海外事業についての種まきの時期。「マウジー(MOUSSY)」「スライ」以外のブランドも、順次中国に上陸させていく。

WWD:ニッチな新ブランドとは、具体的にどんなものか。

村井:今までは売上高10億円以下のブランドには積極的に取り組んでこなかった。ただ、嗜好は多様化しており、規模の大きなブランドを目指そうとすると、エッジの利いたデザインや世界観を得意とする当社らしさが生かせない。極端なことを言えば、利益が出ていれば売り上げは10億円でもいい。10億円ブランドが10個あれば100億円だ。ブランドを立ち上げたいという声は社内で非常に多い。20年にスタートした「へリンドットサイ(HERIN.CYE)」で昨年は初の実店舗を新宿ルミネ2に出店し、9月にはEC専業の新ブランド「ミエル クリシュナ(MIEL CRISHUNANT)」をローンチした。

WWD:長い夏や暖冬など、気候変動の影響も年々拡大している。

村井:CO2排出量は、スコープ1、2(店舗やオフィスなど、自社による直接排出と、電力使用などによる間接排出)で30年までに21年度比で50%削減、スコープ3(取引先工場など事業に関連する他社の排出)で衣料品1点あたりの排出量を30年までに20%削減する。作り過ぎも問題だ。30年までの目標として最終残在庫の廃棄ゼロ、焼却ゼロも掲げた。サステナビリティのために何に取り組むか、われわれの中での理解が徐々に深まり、1つ1つアクションプランを達成していく。

会社概要

バロックジャパンリミテッド
BAROQUE JAPAN LIMITED

2000年にフェイクデリックとして設立し、「マウジー」「スライ」が“平成ギャルブーム”をけん引し大ヒット。08年にバロックジャパンリミテッドに商号変更。13年に中国の靴小売り大手ベル・インターナショナルとの合弁会社バロックチャイナを設立し、中国出店を加速。16年に東証1部(現プライム)市場上場。23年2月期の売上高は前期比0.5%減の588億円、営業利益は同21.9%減の21億円

問い合わせ先
バロックジャパンリミテッド広報
03-5738-5775

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女性事業部長を2倍に、組織を活性化【バロックジャパン 村井博之社長】

PROFILE: 村井博之/バロックジャパンリミテッド社長

村井博之/バロックジャパンリミテッド社長
PROFILE: (むらい・ひろゆき)1961年生まれ、東京都出身。84年立教大学文学部を卒業後、中国国立北京師範大学への留学をへてキヤノンに入社し、中国での支店開設などに携わる。97年に日本エアシステム(現日本航空)でJAS香港社長に就任。2006年にフェイクデリックホールディングス会長兼社長に就任、07年にフェイクデリックホールディングスなど3社を統合しバロックジャパンリミテッド設立。08年から現職 PHOTO:SHUHEI SHINE

中国事業に早くから注力してきたバロックジャパンリミテッドは、中国のゼロコロナ政策で、2022年は足踏み状態となった。コロナの収束と共に23年は回復基調に乗ったが、中国市場の完全回復はもう少し先になりそうだ。今後は国内外で店舗のスクラップ&ビルドを進めていくと共に、手薄だった分野での新ブランド開発も進める。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

チャレンジ精神ある若手を登用

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年は女性登用が目立った。

村井博之社長(以下、村井):事業部長クラス以上で、女性登用を進めている。現在、女性の事業部長は4人、販売統括部長も含めれば5人だ。社員の8割が女性であることを考えれば決して多くはないが、まずは大きな一歩。25年2月期に向けて、この人数を倍にしたい。もともと女性がパワフルな会社であり、販売や企画、PRなどの現場で高い能力を発揮している人材は非常に多い。マネジメント層にも女性が入ることで、試行錯誤をしながら物事を前進させる力が会社として強くなったと感じている。コロナ明けの社会は前に戻るのではなく、これまで経験したことのない世の中になる。そこに迅速に対応できるスピード感のある人、やる気があってチャレンジの意志が強い人をどんどん登用していきたい。植田みずき(常務執行役員)やバロックチャイナ統括の女性幹部はいるが、そういった会社の創成期をけん引してきたメンバーではない、この10年前後で入社した女性社員の抜擢は、23年が一番多かった。

WWD:女性登用による活性化は、どんな成果を生んでいるか。

村井:成長率が大きく、25年2月期に向けて大幅拡大を考えている「スタイルミキサー(STYLEMIXER)」の事業部にも、昨年4月に女性事業部長が就任した。事業部長がチームで一番若く、経験豊富なMDやデザイナーが後輩を盛り立てている。「スライ(SLY)」の事業部も今、同様のチーム編成だ。「スタイルミキサー」は郊外SCへの出店が主だったが、23年3月にリニューアルした原宿の旗艦店「ザ シェルター トーキョー(THE SHEL'TTER TOKYO)」でも売り上げをけん引し、出店先として都心の可能性も出てきた。来期の売上高は大幅増を見込む。

WWD:中国事業はコロナで苦しんだ期間が長かった。

村井:中国は日本や米国に比べて立ち直りに時間はかかったが、いよいよ回復してきた。ただ、都市によって回復具合には差がある。地方都市では一旦店舗数を減らし、北京や上海、天津、杭州、深圳では出店するという、スクラップ&ビルドを進める。モノ作りの面ではASEANでの生産比率を約20%にまで高め、中国に偏っていたサプライチェーンを是正してきた。ただ、中国は販売拠点も多く、日本からの距離も近い。パンデミックが収まったことで、改めて最適なサプライチェーンを構築する。

WWD:中国も国内ブランドが成長して市場環境が大きく変わっている。

村井:中国において、「日本のブランドだから」というだけでは購入の大きなモチベーションにならない。とは言え、当社のブランドは中国で既に一定の規模や認知度がある。一時期は中国に約300店を出店していたが、コロナによって採算性が悪化した店舗を閉鎖し、現在は約270店に縮小した。コロナを経てデベロッパーも勝ち組、負け組が明確になった。これからは従来以上に出店先を精査する。

WWD:24年の消費をどう予測するか。

村井:国内はリベンジ消費が一巡し、特にわれわれが対象としている若年層向けでは、消費は堅実になっていく。人口も減っていく。当社のブランドは決してマス向けではなくニッチだ。ニッチブランドを手掛ける企業として、こうした状況の中でどう収益性を担保していくかを考える必要がある。従来手薄だったゾーンでも積極的なブランド展開を進める。例えば40代向けのマーケットだ。海外は、既に基盤整備が済んでいる中国や米国事業を主力にしつつ、新たな形で事業を広げていきたい。「エンフォルド(ENFOLD)」が22年秋に、新世界百貨店と組んで韓国進出しているのが先行例だ。24年は海外事業についての種まきの時期。「マウジー(MOUSSY)」「スライ」以外のブランドも、順次中国に上陸させていく。

WWD:ニッチな新ブランドとは、具体的にどんなものか。

村井:今までは売上高10億円以下のブランドには積極的に取り組んでこなかった。ただ、嗜好は多様化しており、規模の大きなブランドを目指そうとすると、エッジの利いたデザインや世界観を得意とする当社らしさが生かせない。極端なことを言えば、利益が出ていれば売り上げは10億円でもいい。10億円ブランドが10個あれば100億円だ。ブランドを立ち上げたいという声は社内で非常に多い。20年にスタートした「へリンドットサイ(HERIN.CYE)」で昨年は初の実店舗を新宿ルミネ2に出店し、9月にはEC専業の新ブランド「ミエル クリシュナ(MIEL CRISHUNANT)」をローンチした。

WWD:長い夏や暖冬など、気候変動の影響も年々拡大している。

村井:CO2排出量は、スコープ1、2(店舗やオフィスなど、自社による直接排出と、電力使用などによる間接排出)で30年までに21年度比で50%削減、スコープ3(取引先工場など事業に関連する他社の排出)で衣料品1点あたりの排出量を30年までに20%削減する。作り過ぎも問題だ。30年までの目標として最終残在庫の廃棄ゼロ、焼却ゼロも掲げた。サステナビリティのために何に取り組むか、われわれの中での理解が徐々に深まり、1つ1つアクションプランを達成していく。

会社概要

バロックジャパンリミテッド
BAROQUE JAPAN LIMITED

2000年にフェイクデリックとして設立し、「マウジー」「スライ」が“平成ギャルブーム”をけん引し大ヒット。08年にバロックジャパンリミテッドに商号変更。13年に中国の靴小売り大手ベル・インターナショナルとの合弁会社バロックチャイナを設立し、中国出店を加速。16年に東証1部(現プライム)市場上場。23年2月期の売上高は前期比0.5%減の588億円、営業利益は同21.9%減の21億円

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バロックジャパンリミテッド広報
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主要ブランドが絶好調「数字」に捉われず価値を追求【マッシュHD 近藤広幸社長】

PROFILE: 近藤広幸/マッシュホールディングス社長

近藤広幸/マッシュホールディングス社長
PROFILE: (こんどう・ひろゆき)1975年8月6日生まれ、茨城県出身。98年にグラフィックデザインを手掛けるスタジオ・マッシュを設立、99年にマッシュスタイルラボに社名変更。2005年にファッション事業部を立ち上げ、ビューティ、フード、スポーツ&ウェルネスなどに事業を拡大。12年にマッシュホールディングスを設立し、現職 PHOTO:TAMEKI OSHIRO

マッシュホールディングスは2023年8月期、ファッション事業の主力ブランドの「ジェラート ピケ」が300億円、「スナイデル」が200億円、「ミラ オーウェン」が100億円、「リリー ブラウン」が50億円と、それぞれ節目の数字を踏み超えた。創業から25年。マッシュグループを国内ウィメンズ市場のリーダー的存在に育て上げた、近藤広幸社長の次なる一手とは。 (この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

“ハッピー”を作る熱意を原動力に

WWDJAPAN(以下、WWD):23年は創業25年という節目の年だった。

近藤広幸社長(以下、近藤):ファッション事業では主力ブランドが軒並み節目の数字を超え、手応えを感じられる1年だった。誕生から15年目を迎えた「ジェラート ピケ」が300億円の大台を突破した。武器になったのはコラボレーション。特に、「ポケモンスリープ」との協業は、ポケモンになりきれるかわいらしいルームウエアで大きな話題を作れた。単に売り上げという“数字”目的では、実現しなかった協業だ。これまでも、おうちの中での時間をハッピーにしたいという思いを熱意を持って伝えてきたからこそ、相手先さまと手を携えることができてきた。今後は、海外でもブランドの魅力を伝え、新たな成長のエンジンにしたい。

WWD:「リリー ブラウン」(以下、リリー)と「ミラ オーウェン」(以下、ミラ)の両ブランドが、ともに売上高が前期比22%増と好調だ。

近藤:それぞれのブランドの強みと届けるべき価値に立ち返り、力強く息を吹き返すことができた。「リリー」は、売上高がコロナ前のピークを超える54億円と絶好調。21年夏のリブランディング後、“ヴィンテージ フィーチャー ドレス”というコンセプトに回帰しながら、トレンドを加味したモノ作りを進めたことが結果につながっている。売上高が100億を超えた「ミラ」も、“ネクストベーシック”“ロープライスラグジュアリー”というブランドコンセプトに立ち返り、生地から縫製、パターンまで、価格に対するモノの良さを改めて追求したことが、好成績につながった。数字は確かな手応えとなり、社員の自信と日々の仕事に向かうビタミン剤になっている。

WWD:ブランドを育てる上で大切にしていることは。

近藤:ブランドコンセプトを大切にしつつ、まずは売上高25億円に到達すること。市場での存在感とそれを支えてくださるファンが生まれ、ブランドとしてやるべきことが明確になってくるフェーズだ。だが数字にとらわれすぎると大事なものを見失う。売上高を大きくすることがすべてではなく、「何を届けたいか」がはっきりしていなければお客さまはついてこない。

「ミラ」は当初より売上高200億円を目標に掲げている。規模を拡大すれば、スケールメリットによりさらに値ごろで質の良い商品を届けられる。ブランドの価値を追求する上では理にかなっているし、スタッフもさらなる高みを目指して燃えている。一方、「リリー」はむやみに店舗を増やしてしまうと、ブランドの個性が薄まってしまうだろう。50億円を達成した今、どういったベクトルに向かっていくべきなのかを見極めている。

WWD:メンズ事業の進捗は。

近藤:メンズ事業の合計売上高は「バブアー」などのライセンス事業を含めると、72億円。そのうち、当社のオリジナルブランドである「ジェラート ピケ オム」と「アウール」が同30%増の55億円だ。オリジナルブランドだけで100億円を目指したい。メンズ事業の成長とともに、ブランドの入れ替わりが少ない百貨店メンズフロアの景色を変えたいという思いがある。実際、お客さまの潜在需要は大きい。ブランドがしっかり独自性を発揮できれば、有力な選択肢の1つになれる。

WWD:飲食事業も初の営業黒字となった。

近藤:フード事業は売上高34億円。次の目安となる50億円に向けてさらに進化していく。当社初となるフード業態、「ジェラート ピケ カフェ」の立ち上げから10年。苦労することもたくさんあったが、“ウェルネスデザイン”を掲げるマッシュグループにとって、飲食はなくてはならないものだと信じて続けてきた。かつてビューティ事業の黒字化にも、7年を費やした。今回も「諦めの悪い」僕たちが、覚悟を持って、粘り強く貫いた成果だと思っている。

WWD:資本提携を結んだ米国の投資ファンド、ベインキャピタルとのシナジーによる海外戦略は。

近藤:ここ数年はコロナの影響で守りに徹してきた部分が大きい。特に今後の海外戦略の足がかりとなるであろう中国は、これまで従業員の雇用を守ることに必死だった。今年はやや古びてしまった既存店舗の改装投資に力を入れる。現地のお客さまには、改めてブランドの世界観と魅力を思い出していただきたい。

WWD:24年8月期は売上高が前期比8%増の1230億円を見込む。

近藤:前年比のクリアは指針として分かりやすいが、成長を追い求めるあまり「何のために仕事をしているのか」が抜け落ちては、やるべきことがブレてしまう。ブランドを通してお客さまを常に喜ばせたいという気持ちは変わらない。変わりゆく社会を忠実に捉え、答え合わせをしながら、情熱を持ってモノ作りをしていく。24年はパリ五輪の開催もあり、明るいムードになる。世の中の気分を盛り上げる商品を作り、お客さまの元気や幸せを後押しする支援を続けたい。

会社概要

マッシュホールディングス
MASH HOLDINGS

1998年、グラフィックデザイン会社として設立。2005年に「スナイデル」を立ち上げファッション事業に参入。「ウェルネスデザイン」のスローガンの下、ビューティやフードにも裾野を拡大。23年8月期売上高は前期比11%増の1134億円。営業利益は非開示だが、98億円の黒字だった前期からは増益し、3期連続の増収増益を記録している

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TEXT:RIE KAMOI

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主要ブランドが絶好調「数字」に捉われず価値を追求【マッシュHD 近藤広幸社長】

PROFILE: 近藤広幸/マッシュホールディングス社長

近藤広幸/マッシュホールディングス社長
PROFILE: (こんどう・ひろゆき)1975年8月6日生まれ、茨城県出身。98年にグラフィックデザインを手掛けるスタジオ・マッシュを設立、99年にマッシュスタイルラボに社名変更。2005年にファッション事業部を立ち上げ、ビューティ、フード、スポーツ&ウェルネスなどに事業を拡大。12年にマッシュホールディングスを設立し、現職 PHOTO:TAMEKI OSHIRO

マッシュホールディングスは2023年8月期、ファッション事業の主力ブランドの「ジェラート ピケ」が300億円、「スナイデル」が200億円、「ミラ オーウェン」が100億円、「リリー ブラウン」が50億円と、それぞれ節目の数字を踏み超えた。創業から25年。マッシュグループを国内ウィメンズ市場のリーダー的存在に育て上げた、近藤広幸社長の次なる一手とは。 (この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

“ハッピー”を作る熱意を原動力に

WWDJAPAN(以下、WWD):23年は創業25年という節目の年だった。

近藤広幸社長(以下、近藤):ファッション事業では主力ブランドが軒並み節目の数字を超え、手応えを感じられる1年だった。誕生から15年目を迎えた「ジェラート ピケ」が300億円の大台を突破した。武器になったのはコラボレーション。特に、「ポケモンスリープ」との協業は、ポケモンになりきれるかわいらしいルームウエアで大きな話題を作れた。単に売り上げという“数字”目的では、実現しなかった協業だ。これまでも、おうちの中での時間をハッピーにしたいという思いを熱意を持って伝えてきたからこそ、相手先さまと手を携えることができてきた。今後は、海外でもブランドの魅力を伝え、新たな成長のエンジンにしたい。

WWD:「リリー ブラウン」(以下、リリー)と「ミラ オーウェン」(以下、ミラ)の両ブランドが、ともに売上高が前期比22%増と好調だ。

近藤:それぞれのブランドの強みと届けるべき価値に立ち返り、力強く息を吹き返すことができた。「リリー」は、売上高がコロナ前のピークを超える54億円と絶好調。21年夏のリブランディング後、“ヴィンテージ フィーチャー ドレス”というコンセプトに回帰しながら、トレンドを加味したモノ作りを進めたことが結果につながっている。売上高が100億を超えた「ミラ」も、“ネクストベーシック”“ロープライスラグジュアリー”というブランドコンセプトに立ち返り、生地から縫製、パターンまで、価格に対するモノの良さを改めて追求したことが、好成績につながった。数字は確かな手応えとなり、社員の自信と日々の仕事に向かうビタミン剤になっている。

WWD:ブランドを育てる上で大切にしていることは。

近藤:ブランドコンセプトを大切にしつつ、まずは売上高25億円に到達すること。市場での存在感とそれを支えてくださるファンが生まれ、ブランドとしてやるべきことが明確になってくるフェーズだ。だが数字にとらわれすぎると大事なものを見失う。売上高を大きくすることがすべてではなく、「何を届けたいか」がはっきりしていなければお客さまはついてこない。

「ミラ」は当初より売上高200億円を目標に掲げている。規模を拡大すれば、スケールメリットによりさらに値ごろで質の良い商品を届けられる。ブランドの価値を追求する上では理にかなっているし、スタッフもさらなる高みを目指して燃えている。一方、「リリー」はむやみに店舗を増やしてしまうと、ブランドの個性が薄まってしまうだろう。50億円を達成した今、どういったベクトルに向かっていくべきなのかを見極めている。

WWD:メンズ事業の進捗は。

近藤:メンズ事業の合計売上高は「バブアー」などのライセンス事業を含めると、72億円。そのうち、当社のオリジナルブランドである「ジェラート ピケ オム」と「アウール」が同30%増の55億円だ。オリジナルブランドだけで100億円を目指したい。メンズ事業の成長とともに、ブランドの入れ替わりが少ない百貨店メンズフロアの景色を変えたいという思いがある。実際、お客さまの潜在需要は大きい。ブランドがしっかり独自性を発揮できれば、有力な選択肢の1つになれる。

WWD:飲食事業も初の営業黒字となった。

近藤:フード事業は売上高34億円。次の目安となる50億円に向けてさらに進化していく。当社初となるフード業態、「ジェラート ピケ カフェ」の立ち上げから10年。苦労することもたくさんあったが、“ウェルネスデザイン”を掲げるマッシュグループにとって、飲食はなくてはならないものだと信じて続けてきた。かつてビューティ事業の黒字化にも、7年を費やした。今回も「諦めの悪い」僕たちが、覚悟を持って、粘り強く貫いた成果だと思っている。

WWD:資本提携を結んだ米国の投資ファンド、ベインキャピタルとのシナジーによる海外戦略は。

近藤:ここ数年はコロナの影響で守りに徹してきた部分が大きい。特に今後の海外戦略の足がかりとなるであろう中国は、これまで従業員の雇用を守ることに必死だった。今年はやや古びてしまった既存店舗の改装投資に力を入れる。現地のお客さまには、改めてブランドの世界観と魅力を思い出していただきたい。

WWD:24年8月期は売上高が前期比8%増の1230億円を見込む。

近藤:前年比のクリアは指針として分かりやすいが、成長を追い求めるあまり「何のために仕事をしているのか」が抜け落ちては、やるべきことがブレてしまう。ブランドを通してお客さまを常に喜ばせたいという気持ちは変わらない。変わりゆく社会を忠実に捉え、答え合わせをしながら、情熱を持ってモノ作りをしていく。24年はパリ五輪の開催もあり、明るいムードになる。世の中の気分を盛り上げる商品を作り、お客さまの元気や幸せを後押しする支援を続けたい。

会社概要

マッシュホールディングス
MASH HOLDINGS

1998年、グラフィックデザイン会社として設立。2005年に「スナイデル」を立ち上げファッション事業に参入。「ウェルネスデザイン」のスローガンの下、ビューティやフードにも裾野を拡大。23年8月期売上高は前期比11%増の1134億円。営業利益は非開示だが、98億円の黒字だった前期からは増益し、3期連続の増収増益を記録している

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地域に利益を還元しながら、社会をより良くする【シロ 福永敬弘社長】

PROFILE: 福永敬弘/シロ社長

福永敬弘/シロ社長
PROFILE: (ふくなが・たかひろ)1973年広島生まれ。大学卒業後、リクルートに入社。雑誌編集長やメディアプロデュース責任者などを経て、2014年にシロに入社。経営全般の戦略立案や、新規・海外事業の実行を担当。16年、専務取締役に就任。21年、社長に就任した PHOTO : TAMEKI OSHIRO

シロは2023年4月、創業の地である北海道砂川市にモノ作りと環境、観光をテーマにした付帯施設「みんなの工場」をオープン。同市の活性化を目的に、砂川市民と子どもたちを主役に進めてきた町づくり“みんなのすながわプロジェクト”にとって、シンボリックな存在が完成した。「みんなの工場」は全面ガラス張りで、同社が大切にする透明性を発信。今井浩恵会長は社会課題の解決と経済性の両立に挑む起業家としてアワードを受賞するなど、再び注目度が高まっている。福永敬弘社長に23年を振り返ってもらった。
(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

創業地の北海道・砂川で
市民と進める町づくり

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年は、念願の体験型複合施設「みんなのすながわプロジェクト」が形になった。

福永敬弘シロ社長(以下、福永):形になり、人流が生まれ、砂川市民のみなさんや行政から一定の理解を得られるようになった。とはいえ4月末のオープン以来、施設への来場者数は23万人。年間150万人の計画にはほど遠い。コンテンツの拡張など、やるべきことは多い。

WWD:当初から、「形になれば、理解していただけることがある」の一方、「形になって、新たに見える課題もある」と言っていた。

福永:市民の皆さんの反応は、間違いなくポジティブになった。いくら砂川市全体の活性化のためとは言え、オープン前の民間企業による施設は皆さんにとって「得体のしれないもの」。だがオープンして人流が生まれ、「みんなの工場」だけでなく、近隣のトンカツ屋まで含め、点ではなく線で潤ってきた。すると違和感や不安は払拭されていく。

WWD:一方の課題は?

福永:一番は交通インフラだ。駅から歩ける距離ではないのでシャトルバスを運行しているが、1時間に1本では足りない。レンタカーなどでの来場が増えれば、駐車場の拡充も必要だろう。砂川市だけではなく、鉄道会社との協議が必要になる。「みんなの工場」の雇用も課題だ。今は「シロ(SHIRO)」のブランド力で、従業員には砂川市に移住してもらっている。新規採用と異動をあわせて40人強、新卒も6人、砂川市で働き始めてくれた。われわれの「ふるさと納税」による税収アップで、砂川市の子どもの医療費が来年、高校生まで無料になるのは移住の一助になった。地域とブランドで町を共創する関係性が生まれつつある。今までの砂川市は、「旭川に行くとき、通過する町」。行政とは、こんな現状に歯止めをかけたいと話している。タッグを組んで、遊べて、滞在できる町にしたい。来年以降は、市内の砂川パークホテルの改装に着手する。年間6000万円の赤字ホテルに20億円を投資して、砂川市のコミュニティスペースに変える。町が変われば、付近の住民も変わるだろうし、新しい発想を持つ移住者が増える。周囲の飲食施設も変われば、砂川市に滞在する時間が楽しくなり、地元の充実は「みんなの工場」の雇用に寄与する。地元の牛乳を使ったソフトクリームなどの小さなソフトから、ホテルを筆頭とする大規模なハードまで。利益を地域に還元しながら、「シロ」の故郷から世の中、社会をより良くするビジネスに挑む。

WWD:訪れているのは、どんな人?

福永:約6万人が道外からだ。売り上げは、周辺人口は最も少ないのに全31店舗の中で「圧倒的1番店」。インバウンド的な特需はなく、ローレル時代からのファンも多い。

WWD:砂川を含め、23年の商況は?

福永:売上高は、前年比13.2%増。客数も同13%増で、年間のお買い上げ客数は300万人を超えた。過去数年は新規:リピートが65:35だったが、今年は逆転。リピーターが過半数を超えた。3年に及んだコロナ禍で接客できなかった状況が改善され、220SKUの中からニーズに合う商品をご案内できるようになったのが大きい。引き続きフレグランスの売り上げが過半数を占めており、むしろシェアは増加しているが、スキンケアやメイクアップも成長している中、フレグランスの勢いが上回っているだけのこと。日本の香水市場に風穴を開けた自負もあるのでネガティブには捉えていない。一方、23年はスキンケアで10、コスメティックで28アイテムを新商品として発売した。今後もプロダクトアウトを続けることで、フレグランスとスキンケア、メイクアップの理想的なバランスを探りたい。

WWD:23年は、「ふるさと納税」にも積極的だった。

福永:昨年は8億円の寄付額を集めた。砂川市の他、ラワンぶきを調達している同じ北海道の足寄(あしょろ)町、酒かすを頂戴している北海道夕張郡栗山町の3市町で、産地の素材を原材料に使っている商品を「ふるさと納税」の返礼品に選んでいただいている。砂川市の子どもの医療費と給食費が無料になるのは、われわれの「ふるさと納税」の返礼品による税収アップによるもの。「ふるさと納税」は大都市に集まりがちなお金を地方にまわし、行政の施策にまで反映できる可能性を感じている。

WWD:新たな販路では、アジアでの拡販にも意欲的だ。

福永:現在、海外売り上げのシェアは全体の2%弱。9月に実店舗を立ち上げた台湾、ようやく商標権が決着して越境ECがスタートした中国は、年間2億円前後の売り上げを見込んでいる。海外においては、さまざまな国々からオファーをいただいている。薬事などにもスピーディーに対応できるのは、工場を持つ私たちの強み。24年は、韓国やタイなどで本格的なビジネスが始まるだろう。

会社概要

シロ
SHIRO

自社内に製品の開発から販売まで全ての機能を持ち、創業当初からエシカルな信念に基づくモノづくりを続けている。国内外で見つけた素材の力を最大限に引き出すスキンケア、メイク、フレグランスを提案。日本全国に展開するほか、ロンドンや台湾に実店舗を構え、米国や中国ではEC販売を行う。製品に使う素材同様、厳選した食のセレクト「シロ ライフ」、素材のおいしさを伝える「シロ カフェ」、美しさを体感できるサロン「シロ ビューティー」などの業態も手掛けている。2021年6月から「みんなのすながわプロジェクト」を推進。23年4月には新工場と付帯施設を含む「みんなの工場」をオープン。今春、北海道の長沼町に一棟貸しの宿泊施設「MAISON SHIRO」の開業を目指す

問い合わせ先
シロ カスタマーサポート
info@shiro-shiro.jp

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進化したウェルネスビューティを未来へ 【マッシュビューティーラボ 豊山YAMU陽子社長】

PROFILE: 豊山YAMU陽子/マッシュビューティーラボ社長

豊山YAMU陽子/マッシュビューティーラボ社長
PROFILE: (とよやま・やむ・ようこ)2005年にマッシュスタイルラボのファッション事業の立ち上げに参加し、「スナイデル(SNIDEL)」「ジェラート ピケ(GELATO PIQUE)」「フレイ アイディー(FRAY I.D)」「リリー ブラウン(LILY BROWN)」といった主力ファッションブランドの成長・拡大に寄与。マッシュスタイルラボ取締役を経て、23年4月1日より現職。リテール企画本部長を兼任し、「コスメキッチン(COSME KITCHEN)」「ビープル(BIOPLE)」など小売業態の売り場編集力と企画力の底上げを図る PHOTO:YUKIE SUGANO

マッシュビューティーラボは「コスメキッチン」「ビープル」を柱に日本のナチュラル&オーガニック市場を長年リードしてきた。2023年4月にマネジメント層の人事を刷新。数々のファッションブランドを育てあげてきた豊山YAMU陽子氏が社長に就任。推進力のある新組織体制のもと、次なるステージへと向かう。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

「心地いいイノベーション」を推進し、話題性と消費者に届ける幸せを最大化

WWDJAPAN(以下、WWD):社長就任から半年以上が経過した。

豊山YAMU陽子社長(以下、豊山):当社は人の24時間を豊かにし、笑顔を届ける「ウェルネスデザイン」をグループスローガンに掲げており、大きな役割を果たすビューティ事業を担うことに身の引き締まる思いだ。その中でナチュラル・オーガニックビューティ業界の方々は、われわれと深くつながりながら、そのプレッシャーを取り払ってくれて感謝している。

WWD:就任時に感じた課題への取り組みは?

豊山:今、クリーンビューティなどさまざまな言葉が飛び交っているが、枠にとらわれない新しいオーガニックビューティを私たちが提案しなければと感じている。古来のオーガニックの素晴らしさを伝えるのも使命だが、その一方で、時代の流れと共にオーガニックの伝え方にも多様性が必要になっている。ファッション分野出身の私には、それを具現化することが期待されていると日々痛感している。私は「心地いいイノベーション」を得意としてきた。オーガニックという変わらない価値を届けつつ、話題性を作りお客さまに届ける幸せを最大化させたい。

WWD:2023年の業績を振り返っての感想は?

豊山:22年8月期の売上高は164億円(エコストアジャパンを含む。以下同)で、23年は172億円。24年は185億円を目標とする。その中で、「ビープル」が前年比10%増と順調に推移している。食品やサプリメントなどインナービューティを主力とする事業だが、コロナ禍を経験したことでインナーケアに対する人々の意識が高まった結果だと思う。また、インバウンドのお客さまがメイド・イン・ジャパンの食品を大量買いされるケースも目立つ。22年2月、屋号からコスメキッチンの名を外したが、「ビープル」はどんな店なのかお客さまにしっかり浸透した。サプリメントだとハードルが高いお客さまでも、ちょっとしたドリンクやお菓子などからインナーケアをスタートできる。そんなコミュニケーションができるのが「ビープル」の面白さ。最近は、出店依頼も多くいただいている。また、24年は世界有数のトラフィックを誇るターミナル駅構内へ「ビープル」の新業態を出店予定だ。東京には今、世界中から観光客が戻り、ビーガンなど多種多様な人も多い。そこでは、その人たちが気軽に買い物できる場所を提供するという新たなミッションを与えてもらった。

WWD:22年にブランド事業部を立ち上げ、プライベートブランドの見直しを図ったが、23年の売り上げ状況は?

豊山:「セルヴォーク(CELVOKE)」「トーン(TO/ONE)」は横ばいで、「スナイデル ビューティ(SNIDEL BEAUTY)」が前年比39%増と成長した。店舗限定商品が大きな話題となり、即日完売のニュースが何度も届いた。店舗限定は大変だが、お客さまからもデベロッパーからも期待は大きく、最近は海外からのオファーも増えている。そのようなステージに至ったことがうれしいし、苦労のかいがある。

WWD:23年7月、「トリロジー(TRILOGY)」との総販売代理店契約も話題になった。

豊山:契約後リローンチした際は、「肌を輝かせる、赤のオーガニック」というコンセプトを打ち出し、関わる全員でそのベクトルに向かうコミュニケーションを実現したことが功を奏した。主力商品である“ローズヒップオイル”は価格を少し下げたこともあるが、リローンチ後の9〜11月の売り上げは前年比354%増に。現在、マッシュグループ全体で、ブランドの理念に共感・リスペクトし、その歴史を重んじながら世に発信していくライセンス事業に力を注いでおり、「トリロジー」もその一つ。われわれは未来につながるウェルネスビューティを育てるのがミッションだと思っている。

WWD:デジタルとリアル店舗のバランスと施策は?

豊山:グループ全体で23年8月期のEC比率は33%。24年デジタルは最も注力したいポイントの一つだ。デジタルコミュニケーションは大きな課題で、優秀なスタッフをアサインして、変革するプロジェクトを昨年キックオフした。接客の熱量が届けづらいデジタルでは、起爆剤として価格商戦に手を伸ばしがちだ。それでは本来私たちが伝えたいことが伝わらないと気付き、売上高を上げると同時に、今後は目的を明確にしたPR訴求に切り替えていく。ウェルネスをキーワードに、ファッションとビューティをつなげた訴求をデジタルで挑戦したい。

WWD:24年のアクションは?

豊山:2月に「エッフェオーガニック(F ORGANICS)」をリニューアルするので、まずはそれを成功させたい。素晴らしいオーガニックスキンケアを作っていると自負しているので、現在シリーズで約9億5000万円の売り上げを25億円規模に成長させるため、多様性を備えたブランドに進化させる。また、20周年を迎える「コスメキッチン」はすでに確固たるイメージがあると思うが、新たなライフスタイルを発信する新生コスメキッチンとして、さまざまなチャレンジを行っていく。2月にリニューアルする「エッフェオーガニック」を皮切りに、新しい形のウェルネスビューティを提案する。

会社概要

マッシュビューティーラボ
MASH BEAUTY LAB

マッシュグループの傘下として2010年に設立。ナチュラル&オーガニックコスメのセレクトショップ「コスメキッチン」や「メイクアップキッチン(MAKEUP KITCHEN)」、コスメに加え食品やインナーケアアイテムをそろえる「ビープル」を運営する。「セルヴォーク」「トーン」「スナイデル ビューティ」などプラベートブランドも充実し、22年に発表した「ミティア オーガニック(MITEA ORGANIC)」ではファミリーマートと協業。「ミートゥデイ(ME TODAY)」「トリロジー」などと独占販売契約を締結している

問い合わせ先
マッシュビューティーラボ
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TEXT:YOSHIE KAWAHARA

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独創性ある本物の製品を武器に、グローバルカンパニーへ【ヤーマン 山﨑貴三代社長】

PROFILE: 山﨑貴三代/ヤーマン社長

山﨑貴三代/ヤーマン社長
PROFILE: (やまざき・きみよ)大学卒業後、ヤーマンに入社。マーケティング部門や海外部門を経て、1999年に社長に就任。日本で初めてミネラルコスメを市場に投入し、化粧品市場の新カテゴリーを開拓した。美顔器をはじめ、ヘアケアやオーラルケアなど幅広く美容機器を展開し、美容機器市場をリードするヒット商品を世に送り出す。メーカーとしてモノ作りに真摯に取り組み、効果実感を生み出すテクノロジーの開発を使命に掲げる PHOTO:SHUNICHI ODA

スローガンに「美しくを、変えていく。」を掲げるヤーマンは、美容機器を日常的に使用するという新しい美容習慣を提案し、ヒット商品を世に生み出してきた。世界40の国と地域で展開し市場を拡大する中、グローバルブランドとしてさらに成長するための拠点として、初の旗艦店「ヤーマン ザ ストア ギンザ(YA-MAN the store GINZA)」を2023年11月にオープンした。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

“ゴーインググローバル”の拠点が
昨年11月、銀座に完成

WWDJAPAN(以下、WWD):設立45周年の23年をどう振り返るか?

山﨑貴三代社長(以下、山﨑):11月に当社の全製品をそろえる初の旗艦店をオープンできた。長い間さまざまな場所を検討したが、世界から人が集う銀座、そして大通りに面した1階にこだわって物件を探し、われわれが目指す“ゴーインググローバル”の拠点となる場が完成した。1、2階で構成し、2階には顔専門のトレーニングジム「フェィス・リフト・ジム」を設け、長年の表情筋研究から生まれたメソッドを体感していただける。1階中央には、5148個のLEDをあしらった“美肌光ステーション”を設置。当社の美容機器に使用するLEDを全身で浴びることができる。

WWD:22年に研究開発拠点「表情筋研究所」を開設したが成果は?

山﨑:表情筋研究所は5年で100億円の投資が決定しており、昨年はスペースも2倍に拡張し研究者の数も増えた。さまざまな知見を持つ研究者がチームに加わり、検証実験環境も整備したことで、それまで外部に依頼していた細胞試験なども自社でできるようになり、研究スピードが上がった。美容機器のテクノロジーだけでなく、化粧品との融合など、機器と化粧品の両方を展開するわれわれにしかできない開発を進め、新たな潮流を作るのが使命だと思っている。旗艦店「ヤーマン ザ ストア ギンザ」のフェィス・リフト・ジムでは肌データを収集し、表情筋研究所にフィードバックして、そこから新たな研究開発につなげる。旗艦店オープン時に先行発売した、ウエアラブルLED美顔器“ブルーグリーンマスク”や、6月に発売した愛用スキンケア化粧品を最適な波形で浸透させるAI美顔器“ハケイ”は表情筋研究所の研究成果から生まれた。

WWD:商品やカテゴリーで、23年の売り上げをけん引したのは?

山﨑:美顔器は10万円以上の高価格帯のものが好調だ。美顔器市場全体を正確な数字で把握するのは難しいが、23年は、店頭は前年比30〜50%増で伸長している印象だ。化粧品にお金をかけるより美顔器に投資、という動きが見られる。22年はヘアケア製品やオーラルケア製品、メンズシェイバーなど、カテゴリーを横へ広げ順調に推移した。今後はこれをどう進化させ、深めていくかが重要だ。

WWD:目元のリフトアップにフォーカスした11月発売の美顔器も今までになかった製品として話題を呼んでいる。

山﨑:日本初※1の伸びる電極シートによる目元用美顔器“デザインリフト”は大変好評をいただいている。この製品は、高い伸縮性と通電性を両立した新素材「ストレッチフィットシート」を採用し、抜群のフィット感がEMS(電気刺激)で眼輪筋や側頭筋にアプローチするもの。高い技術力を持つ日本ならではの新素材と出合い、当社が独自研究により美容機器に応用し誕生した。「あっ!」と驚く提案をし続けていることがわれわれの強みだ。

WWD:“ゴーインググローバル”を掲げているが、海外事業の進捗は?

山﨑:23年6月に、ウエアラブルEMS美顔器“メディリフト プラス”が米国FDA(アメリカ食品医薬品局)の認可を取得し、秋にECやメディカルスパでの展開をスタートした。海外事業は、今後これがどう推移していくかが非常に重要になる。また中国では、Tモールの11月11日(独身の日)セールでブランド別美容機器部門販売実績2位を獲得した。処理水問題などの影響もあり中国ブランドに1位を譲ったが、中国では15年からブランディングに注力し今に至り、「美容機器を買うならヤーマン」との声を多くいただいている。今後は現地百貨店への出店などオフライン展開にも力を入れていく。国によって主戦場となるチャネルは異なるが、海外ビジネスは米国と中国がカギとなる。

WWD:サステナビリティ分野での取り組みはどうか。

山﨑:サステナブルな取り組みの一環として、旗艦店「ヤーマン ザ ストア ギンザ」では、当社製品以外も含めて使わなくなった美顔器やヘアドライヤーなどの美容機器の回収プログラムをスタートした。不要な美容機器を持ち込んでくれた人には、購入金額から割り引きするサービスを提供する。肌や髪の悩みは年齢により変化し、必要なケアや商品も変わる。このプログラムが使っている美容機器の買い替えや最新機種に興味を持つきっかけになればと願っている。

WWD:24年の目標と実現のための具体的な施策は?

山﨑:“ゴーインググローバル”を推進し、25年に売上高500億円を目指す。その達成のために一番重要なのは、メーカーとして全身全霊でモノ作りに取り組むこと。常にお客さまのニーズを深掘りし、メーカーとして提供するべき真実を追求し、“本物”を作り続けてお客さまに届けるのがわれわれの仕事だ。“本物”というのは、志と独創性溢れる製品のこと。24年も日本発の美容機器&化粧品メーカーであるわれわれにしかできない大型新製品を発表する予定なので、ぜひ期待してほしい。

※1 日本マーケティングリサーチ機構調べ。調査概要:2023年10月期、日本初であることの証明・検査調査

会社概要

ヤーマン
YA-MAN

1978年に設立。半導体検査装置の輸入・販売からスタートし、美容機器分野に事業を拡大。体内脂肪重量計をはじめ、特許技術を搭載した画期的な美容機器を開発。新しい美容習慣の創出を目指し、美容機器業界をけん引する。2007年にミネラルコスメブランド“オンリーミネラル”の販売を開始。20年には顔専門トレーニングジム「フェイス・リフト・ジム」をオープン、22年には研究開発ラボ「表情筋研究所」を本社内に開設した。23年11月に初の旗艦店となる「ヤーマン ザ ストア ギンザ」をオープン。同店を拠点に海外市場をさらに拡大する

問い合わせ先
ヤーマン
0120-776-282

TEXT : YOSHIE KAWAHARA

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売り上げ目標達成に向けターゲットとマーケットを拡大する【ベイクルーズ 杉村茂CEO】

PROFILE: 杉村茂/ベイクルーズ取締役CEO

杉村茂/ベイクルーズ取締役CEO
PROFILE: (すぎむら・しげる) 1962年8月22日生まれ。神奈川県出身。アパレルメーカーを経て84年にベイクルーズに入社。2003年、同社初の子会社ジョイントワークスの初代社長を務め、14年9月1日から現職。趣味はスポーツ観戦とスニーカー収集 PHOTO:YOW TAKAHASHI

ミドル層からの支持を基盤に成長してきたベイクルーズ。ここからさらにマーケットを広げファンの絶対数を増やしていくことが成長のカギになる。2024年は売上高前期比16%増の数字を掲げてビジネス規模の拡大を目指す。2月の虎ノ門ヒルズ ステーションタワーへの新たな大型店舗の出店は大きな挑戦だ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

成長のカギは
絶対的なファンの増加

WWDJAPAN(以下、WWD):今年2月には虎ノ門ヒルズ ステーションタワーに大型複合店舗のオープンを控える。

杉村茂取締役CEO(以下、杉村):ビジネス街である虎ノ門での大型店は当社にとってもチャレンジであり、最初の2〜3年は苦労する前提だ。目指すは全盛期のパリのコレットやミラノのコルソ・コモのように世界の業界人の目的地になる店。もちろん日本のお客さんにも買ってもらいたいが、世界の業界人が日本に来たときは必ず見にきて、感動してもらえる場所にしたい。今まで当社にいなかった層にお客さんになってもらうきっかけにもなる。アパレル以外にも、飲食やアート業態も出店する。服以外にも興味があるいろんな人が集まってほしい。

WWD:2023年9月に始まった45期の注力領域は?

杉村:この2年間、安売りしてお客さんをがっかりさせるのはやめましょう、結果として利益を出す構造を作りましょう、とスタッフに働きかけてきた部分は浸透した手応えがある。だから今度は規模を拡大するために、あえて売上高にこだわる。この2年間で培ってきた利益構造を前提に、売上高は前期比16%増を目指す。当社にとっては、かなりハードルの高い数字だ。ターゲットとマーケットを拡大して絶対的なファンの数を増やしていかないことには達成できない。店長たちには、今までの使い古した引き出しばかりではなくて、新しい引き出しをもっともっと増やしてほしいし、結果が出ればきちんと還元していく方針だと伝えている。

WWD:現場の工夫に加えて、経営側からはどんなサポートをしていくのか?

杉村:セールの抑制は浸透してきたものの、モノ作りの部分で在庫を残さない仕組み作りが必要だ。たとえば、無理に製品を作らずに生地や付属の在庫は残していいと伝えている。そのぶん、発注するタイミングや状況を慎重に見極めたり、別のブランドと連携して活用したりしてもらう。パンデミックや世界情勢など予想できない外的要因にも対応できる考え方が問われる時代になった。

WWD:市場がモノ消費からコト消費にながれている中で、ファッション市場のポテンシャルをどう見ている?

杉村:服を買う人たちみんながファッションを好きで買っているわけではない。そういう人たちにもっと服の楽しさやこだわりを伝えていこうと思えば、まだまだ可能性はある。当社は真ん中(ミドルマーケット)に偏りがちで、地方のショッピングセンター(SC)にはほとんど出ていない。そういうところに対しても、ベイクルーズなりの解釈でマーケットを広げることはできる。

WWD:24年に仕掛けていくことは?

杉村:手薄だったマスボリュームに向けては、伊藤忠商事がライセンスを持つ「アウトドアプロダクツ(OUTDOOR PRODUCTS)」の国内アパレルおよびブランドストア運営に関するパートナーシップ契約を締結した。春には東京・中目黒に路面店を出店予定で、そこを皮切りに駅ビルや郊外の大型SCに積極的に出店していく。もう一つは、アッパーマーケットへの挑戦だ。パリコレを経験している日本人デザイナーと組んで新ブランドを立ち上げる。海外でショーや展示会を開くことも見据えている。

WWD:23年はどんな1年だった?

杉村:44期(23年8月期)は、増収増益で過去最高の利益が取れた。この4年でECの売上高は100億円ほど増えた。とはいえ高い予算を掲げているのでそこには若干届かなかった。来客数も何も手を打たなければ自然には戻ってこない。いろいろ変えていく必要を感じている。店舗の人材獲得も深刻な課題だ。

WWD:業界全体で人材獲得が課題に挙がっているなかで、ベイクルーズが23年久しぶりにリアルで開催した入社式では、ファッション好きな若手が集まり熱気を感じた。

杉村:人材不足の部分では、店で一人前に仕事ができる人が少ないということ。バランスの取れたチーム体制や新人教育は引き続き課題だ。24年は新卒を23年の倍以上採用した。継続して採用を行っていると優等生ばかりが集まってしまう。学歴に関係なく多様な人材を入れるように意識している。人材が枯渇するとその業界はどんどん廃れてしまう。去年は役員以外の社員全員の給料を、月額2万円、年間で25万円程度、総額8億円賃上げした。プライドを持って仕事をしろと言っても、社員の生活水準をきちんと上げていかないと口先だけになってしまう。ある社員はランチに使える予算が限られていると言っていた。本社の前に出ているキッチンカーのランチも厳しいと。地方から1人で出てきて、自分で家賃を出して生活していたら、そうなるのはよくわかる。自分自身もそういう時代があった。でも月2万円給料が上がったら、お昼に食べたいものを食べられるくらいにはなる。すごく大事なことだ。働きがいはもちろんだが、一人一人の生活水準が上がるようなサポートは会社として必要だと思っている。

会社概要

ベイクルーズ
BAYCREW'S

1977年設立。アパレル、家具、飲食、フィットネス事業を展開。2016年に売上高1000億円を突破。17年に本社オフィスを渋谷キャストに移転。21年にベイクルーズとファッション事業のジョイントワークス、フレームワークス、JS.ワークス、ルドーム、ラクラス、家具事業のアクメ、飲食事業のフレーバーワークスを統合。他にラデュレジャポン、ウィルワークス、台湾ベイクルーズ、ル・プチメック、Foodies USA. Incを傘下に持つ。23年8月期の連結売上高は1389億円、期末店舗数は409店舗

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売り上げ目標達成に向けターゲットとマーケットを拡大する【ベイクルーズ 杉村茂CEO】

PROFILE: 杉村茂/ベイクルーズ取締役CEO

杉村茂/ベイクルーズ取締役CEO
PROFILE: (すぎむら・しげる) 1962年8月22日生まれ。神奈川県出身。アパレルメーカーを経て84年にベイクルーズに入社。2003年、同社初の子会社ジョイントワークスの初代社長を務め、14年9月1日から現職。趣味はスポーツ観戦とスニーカー収集 PHOTO:YOW TAKAHASHI

ミドル層からの支持を基盤に成長してきたベイクルーズ。ここからさらにマーケットを広げファンの絶対数を増やしていくことが成長のカギになる。2024年は売上高前期比16%増の数字を掲げてビジネス規模の拡大を目指す。2月の虎ノ門ヒルズ ステーションタワーへの新たな大型店舗の出店は大きな挑戦だ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

成長のカギは
絶対的なファンの増加

WWDJAPAN(以下、WWD):今年2月には虎ノ門ヒルズ ステーションタワーに大型複合店舗のオープンを控える。

杉村茂取締役CEO(以下、杉村):ビジネス街である虎ノ門での大型店は当社にとってもチャレンジであり、最初の2〜3年は苦労する前提だ。目指すは全盛期のパリのコレットやミラノのコルソ・コモのように世界の業界人の目的地になる店。もちろん日本のお客さんにも買ってもらいたいが、世界の業界人が日本に来たときは必ず見にきて、感動してもらえる場所にしたい。今まで当社にいなかった層にお客さんになってもらうきっかけにもなる。アパレル以外にも、飲食やアート業態も出店する。服以外にも興味があるいろんな人が集まってほしい。

WWD:2023年9月に始まった45期の注力領域は?

杉村:この2年間、安売りしてお客さんをがっかりさせるのはやめましょう、結果として利益を出す構造を作りましょう、とスタッフに働きかけてきた部分は浸透した手応えがある。だから今度は規模を拡大するために、あえて売上高にこだわる。この2年間で培ってきた利益構造を前提に、売上高は前期比16%増を目指す。当社にとっては、かなりハードルの高い数字だ。ターゲットとマーケットを拡大して絶対的なファンの数を増やしていかないことには達成できない。店長たちには、今までの使い古した引き出しばかりではなくて、新しい引き出しをもっともっと増やしてほしいし、結果が出ればきちんと還元していく方針だと伝えている。

WWD:現場の工夫に加えて、経営側からはどんなサポートをしていくのか?

杉村:セールの抑制は浸透してきたものの、モノ作りの部分で在庫を残さない仕組み作りが必要だ。たとえば、無理に製品を作らずに生地や付属の在庫は残していいと伝えている。そのぶん、発注するタイミングや状況を慎重に見極めたり、別のブランドと連携して活用したりしてもらう。パンデミックや世界情勢など予想できない外的要因にも対応できる考え方が問われる時代になった。

WWD:市場がモノ消費からコト消費にながれている中で、ファッション市場のポテンシャルをどう見ている?

杉村:服を買う人たちみんながファッションを好きで買っているわけではない。そういう人たちにもっと服の楽しさやこだわりを伝えていこうと思えば、まだまだ可能性はある。当社は真ん中(ミドルマーケット)に偏りがちで、地方のショッピングセンター(SC)にはほとんど出ていない。そういうところに対しても、ベイクルーズなりの解釈でマーケットを広げることはできる。

WWD:24年に仕掛けていくことは?

杉村:手薄だったマスボリュームに向けては、伊藤忠商事がライセンスを持つ「アウトドアプロダクツ(OUTDOOR PRODUCTS)」の国内アパレルおよびブランドストア運営に関するパートナーシップ契約を締結した。春には東京・中目黒に路面店を出店予定で、そこを皮切りに駅ビルや郊外の大型SCに積極的に出店していく。もう一つは、アッパーマーケットへの挑戦だ。パリコレを経験している日本人デザイナーと組んで新ブランドを立ち上げる。海外でショーや展示会を開くことも見据えている。

WWD:23年はどんな1年だった?

杉村:44期(23年8月期)は、増収増益で過去最高の利益が取れた。この4年でECの売上高は100億円ほど増えた。とはいえ高い予算を掲げているのでそこには若干届かなかった。来客数も何も手を打たなければ自然には戻ってこない。いろいろ変えていく必要を感じている。店舗の人材獲得も深刻な課題だ。

WWD:業界全体で人材獲得が課題に挙がっているなかで、ベイクルーズが23年久しぶりにリアルで開催した入社式では、ファッション好きな若手が集まり熱気を感じた。

杉村:人材不足の部分では、店で一人前に仕事ができる人が少ないということ。バランスの取れたチーム体制や新人教育は引き続き課題だ。24年は新卒を23年の倍以上採用した。継続して採用を行っていると優等生ばかりが集まってしまう。学歴に関係なく多様な人材を入れるように意識している。人材が枯渇するとその業界はどんどん廃れてしまう。去年は役員以外の社員全員の給料を、月額2万円、年間で25万円程度、総額8億円賃上げした。プライドを持って仕事をしろと言っても、社員の生活水準をきちんと上げていかないと口先だけになってしまう。ある社員はランチに使える予算が限られていると言っていた。本社の前に出ているキッチンカーのランチも厳しいと。地方から1人で出てきて、自分で家賃を出して生活していたら、そうなるのはよくわかる。自分自身もそういう時代があった。でも月2万円給料が上がったら、お昼に食べたいものを食べられるくらいにはなる。すごく大事なことだ。働きがいはもちろんだが、一人一人の生活水準が上がるようなサポートは会社として必要だと思っている。

会社概要

ベイクルーズ
BAYCREW'S

1977年設立。アパレル、家具、飲食、フィットネス事業を展開。2016年に売上高1000億円を突破。17年に本社オフィスを渋谷キャストに移転。21年にベイクルーズとファッション事業のジョイントワークス、フレームワークス、JS.ワークス、ルドーム、ラクラス、家具事業のアクメ、飲食事業のフレーバーワークスを統合。他にラデュレジャポン、ウィルワークス、台湾ベイクルーズ、ル・プチメック、Foodies USA. Incを傘下に持つ。23年8月期の連結売上高は1389億円、期末店舗数は409店舗

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小売業からプラットフォーマーへ、24年はその準備の年【アダストリア 木村治社長】

PROFILE: 木村治/アダストリア社長

木村治/アダストリア社長
PROFILE: (きむら・おさむ)1969年生まれ、茨城県出身。90年に福田屋洋服店(現アダストリア)に入社し、店長などを経験。2001年に独立してワークデザイン設立。同社は07年にドロップ(トリニティアーツの前身)と経営統合し、11年にトリニティアーツ代表取締役社長に就任。16年にアダストリア常務、18年副社長を経て21年取締役社長、22年から代表取締役社長 PHOTO:SHUHEI SHINE

自社EC「ドットエスティ(.ST)」が好調で、アパレルECの勝ち組の代表格となったアダストリア。2024年も、「ドットエスティ」上の提供サービスを拡大し、アパレル小売業の枠を超えた成長を描く。約30ブランドを擁するマルチブランド戦略、積極的な海外投資、実店舗とECの両輪成長が独自性を生んでいる。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

「ドットエスティ」と実店舗の両輪で
過去最高業績を達成

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年3〜11月期は過去最高業績を達成した。特に何が寄与したのか。

木村治社長(以下、木村):通期の24年2月期でも、売上高が前期比11.3%増の2700億円、営業利益が同56.3%増の180億円、純利益が同59.1%増の120億円を達成できる見込みで、過去最高を更新する。円安、原料高で厳しい1年だったが、価格見直し(値上げ)を行うと共に、無駄な値引きを抑え、「適時・適価・適量」方針のもと、商品企画や生産のあり方、在庫管理の徹底に常に努めてきた成果だ。21年に素材開発部を立ち上げて以降、自社独自の素材開発により一層力を入れていることも利益確保につながっている。種まきを行った新ブランドや新事業は、芽が出たものも、まだまだなものもある。ただ、マルチブランド戦略のもと、それら全てがデータとして蓄積されているということは財産だ。生産面では、中国もコスト上昇している中でASEAN生産も広げ、計画生産によってコストを抑えている。来期以降はインド生産もトライしていく。

WWD:24年に注力するポイントは。

木村:23年は好業績を達成したが、客数はコロナ前と比較してまだ完全には戻っていないし、厳しい状況は続くかもしれない。大量に生産し、大量に売るという価値観自体が時代と合わなくなっている。引き続き、客数増よりも重点目標である利益確保のために品質やデザイン価値を高め、その分価格を上げる。例えば「ハレ(HARE)」「ジーナシス(JEANASIS)」は、客単価が2ケタ増のペースだ。単に値上げするだけではお客さまの心は離れてしまうが、1点1点どう付加価値を高めるか考えているなら、お客さまとの信頼関係は崩れない。

WWD:自社ECの「ドットエスティ」が成長をけん引している。

木村:「ドットエスティ」は引き続き注力事業の1つであり、会員数は1710万人を突破した。店舗スタッフによる投稿コンテンツ“スタッフボード”の効果が大きく、お客さまと店舗スタッフとのつながりが非常に強まっている。国内約1300の実店舗を持っていることとECが、当社の成長の両輪としてうまく回っている。社内インフルエンサーが増えたことで、インセンティブや教育制度も強化した。「ドットエスティ」は22年春に他社にも開放し、現在8社9ブランドを扱っている。他社へのオープン化により、当社のポートフォリオで手薄な部分を補完できており、購買層も広がっている。23年はJR九州と組んで、“スタッフボード”の人気店舗スタッフが登場する旅行企画も「ドットエスティ」上で行った。そういった地方創生企画も可能であり、ほかにも多様な切り口が「ドットエスティ」では考えられる。23年10月にはフリマサービスも開始した。ゆくゆくはお客さま同士での売買やイベント共有なども可能にし、「ドットエスティ」でカバーするサービスを充実させ、ID(会員登録)の価値をさらに高めていく。“スタッフボード”は自社でシステム開発しており、今後はベンダーとして他社に販売も予定している。ここまでデジタルに投資ができている企業は業界の中でも限られており、投資できている企業がここからさらに伸びる。

WWD:海外事業では台湾が絶好調だ。

木村:台湾は昨年、事業開始20周年を迎え、ローカル化も順調、トップも現地人材だ。23年は22店出店し、現在64店。来期も積極出店して一気に勢いに乗る。コロナ禍中も出店し続けた中国本土はまだ回復途上だが、今後も投資を続ける。23年4月にはタイのバンコクにも「ニコアンド(NIKO AND…)」を初出店し、順調だ。フィリピンにも子会社を2月に設立し、24年に出店を計画している。

WWD:ブランド別では、「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」が順調に伸びている。

木村:われわれの強みは、約30ブランドを展開するマルチブランド体制を採りつつも、主力の「グローバルワーク」「ニコアンド」「ローリーズファーム(LOWRYS FARM)」「スタディオクリップ(STUDIO CLIP)」の4ブランドでそれぞれ200億円以上、合計で1100億円超の売り上げがある点。これがあるからデジタルをはじめとした大型投資ができるし、社員の賃金も上げられる、サステナビリティも追求できる。この4ブランドはここからさらに成長させられる。「グローバルワーク」は現在の売上高が約500億円だが、1000億円規模を目指せる。国内は人口減で縦積みが厳しくなる以上、海外がますます重要になるし、会社全体としての成長ではM&Aも考えている。

WWD:コロナ禍中に、苦しくても投資をやめなかったことが花開いた。

木村:福田(三千男会長)が指揮を執っていた時代から、システムにも物流にも投資をしてきた。ファッションだけでなくライフスタイルブランドも手掛けていることで、当社には多種多様な大量のデータが蓄積されている。データ分析の担当者がDX部門にも、各ブランド内にも、マーケティングチームにもおり、分析内容を週次、月次、四半期といったターム別に落とし込み、改善している。データを分析し掛け合わせることで新しい事業につながる。ただの小売りから、新しいプラットフォーマーになっていく。24年はそのスタートの年だ。

会社概要

アダストリア
ADASTRIA

1953年に茨城県水戸市で福田屋洋服店として創業。93年にポイントに商号変更。2013年にアダストリアホールディングスとしてトリニティアーツなどをグループ化。15年にアダストリアホールディングス、ポイント、トリニティアーツを統合し、アダストリアに社名変更。主要ブランドは「グローバルワーク」「ニコアンド」など。2023年2月期は売上高が前期比20.3%増の2425億円、営業利益が同75.4%増の115億円だった

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小売業からプラットフォーマーへ、24年はその準備の年【アダストリア 木村治社長】

PROFILE: 木村治/アダストリア社長

木村治/アダストリア社長
PROFILE: (きむら・おさむ)1969年生まれ、茨城県出身。90年に福田屋洋服店(現アダストリア)に入社し、店長などを経験。2001年に独立してワークデザイン設立。同社は07年にドロップ(トリニティアーツの前身)と経営統合し、11年にトリニティアーツ代表取締役社長に就任。16年にアダストリア常務、18年副社長を経て21年取締役社長、22年から代表取締役社長 PHOTO:SHUHEI SHINE

自社EC「ドットエスティ(.ST)」が好調で、アパレルECの勝ち組の代表格となったアダストリア。2024年も、「ドットエスティ」上の提供サービスを拡大し、アパレル小売業の枠を超えた成長を描く。約30ブランドを擁するマルチブランド戦略、積極的な海外投資、実店舗とECの両輪成長が独自性を生んでいる。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

「ドットエスティ」と実店舗の両輪で
過去最高業績を達成

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年3〜11月期は過去最高業績を達成した。特に何が寄与したのか。

木村治社長(以下、木村):通期の24年2月期でも、売上高が前期比11.3%増の2700億円、営業利益が同56.3%増の180億円、純利益が同59.1%増の120億円を達成できる見込みで、過去最高を更新する。円安、原料高で厳しい1年だったが、価格見直し(値上げ)を行うと共に、無駄な値引きを抑え、「適時・適価・適量」方針のもと、商品企画や生産のあり方、在庫管理の徹底に常に努めてきた成果だ。21年に素材開発部を立ち上げて以降、自社独自の素材開発により一層力を入れていることも利益確保につながっている。種まきを行った新ブランドや新事業は、芽が出たものも、まだまだなものもある。ただ、マルチブランド戦略のもと、それら全てがデータとして蓄積されているということは財産だ。生産面では、中国もコスト上昇している中でASEAN生産も広げ、計画生産によってコストを抑えている。来期以降はインド生産もトライしていく。

WWD:24年に注力するポイントは。

木村:23年は好業績を達成したが、客数はコロナ前と比較してまだ完全には戻っていないし、厳しい状況は続くかもしれない。大量に生産し、大量に売るという価値観自体が時代と合わなくなっている。引き続き、客数増よりも重点目標である利益確保のために品質やデザイン価値を高め、その分価格を上げる。例えば「ハレ(HARE)」「ジーナシス(JEANASIS)」は、客単価が2ケタ増のペースだ。単に値上げするだけではお客さまの心は離れてしまうが、1点1点どう付加価値を高めるか考えているなら、お客さまとの信頼関係は崩れない。

WWD:自社ECの「ドットエスティ」が成長をけん引している。

木村:「ドットエスティ」は引き続き注力事業の1つであり、会員数は1710万人を突破した。店舗スタッフによる投稿コンテンツ“スタッフボード”の効果が大きく、お客さまと店舗スタッフとのつながりが非常に強まっている。国内約1300の実店舗を持っていることとECが、当社の成長の両輪としてうまく回っている。社内インフルエンサーが増えたことで、インセンティブや教育制度も強化した。「ドットエスティ」は22年春に他社にも開放し、現在8社9ブランドを扱っている。他社へのオープン化により、当社のポートフォリオで手薄な部分を補完できており、購買層も広がっている。23年はJR九州と組んで、“スタッフボード”の人気店舗スタッフが登場する旅行企画も「ドットエスティ」上で行った。そういった地方創生企画も可能であり、ほかにも多様な切り口が「ドットエスティ」では考えられる。23年10月にはフリマサービスも開始した。ゆくゆくはお客さま同士での売買やイベント共有なども可能にし、「ドットエスティ」でカバーするサービスを充実させ、ID(会員登録)の価値をさらに高めていく。“スタッフボード”は自社でシステム開発しており、今後はベンダーとして他社に販売も予定している。ここまでデジタルに投資ができている企業は業界の中でも限られており、投資できている企業がここからさらに伸びる。

WWD:海外事業では台湾が絶好調だ。

木村:台湾は昨年、事業開始20周年を迎え、ローカル化も順調、トップも現地人材だ。23年は22店出店し、現在64店。来期も積極出店して一気に勢いに乗る。コロナ禍中も出店し続けた中国本土はまだ回復途上だが、今後も投資を続ける。23年4月にはタイのバンコクにも「ニコアンド(NIKO AND…)」を初出店し、順調だ。フィリピンにも子会社を2月に設立し、24年に出店を計画している。

WWD:ブランド別では、「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」が順調に伸びている。

木村:われわれの強みは、約30ブランドを展開するマルチブランド体制を採りつつも、主力の「グローバルワーク」「ニコアンド」「ローリーズファーム(LOWRYS FARM)」「スタディオクリップ(STUDIO CLIP)」の4ブランドでそれぞれ200億円以上、合計で1100億円超の売り上げがある点。これがあるからデジタルをはじめとした大型投資ができるし、社員の賃金も上げられる、サステナビリティも追求できる。この4ブランドはここからさらに成長させられる。「グローバルワーク」は現在の売上高が約500億円だが、1000億円規模を目指せる。国内は人口減で縦積みが厳しくなる以上、海外がますます重要になるし、会社全体としての成長ではM&Aも考えている。

WWD:コロナ禍中に、苦しくても投資をやめなかったことが花開いた。

木村:福田(三千男会長)が指揮を執っていた時代から、システムにも物流にも投資をしてきた。ファッションだけでなくライフスタイルブランドも手掛けていることで、当社には多種多様な大量のデータが蓄積されている。データ分析の担当者がDX部門にも、各ブランド内にも、マーケティングチームにもおり、分析内容を週次、月次、四半期といったターム別に落とし込み、改善している。データを分析し掛け合わせることで新しい事業につながる。ただの小売りから、新しいプラットフォーマーになっていく。24年はそのスタートの年だ。

会社概要

アダストリア
ADASTRIA

1953年に茨城県水戸市で福田屋洋服店として創業。93年にポイントに商号変更。2013年にアダストリアホールディングスとしてトリニティアーツなどをグループ化。15年にアダストリアホールディングス、ポイント、トリニティアーツを統合し、アダストリアに社名変更。主要ブランドは「グローバルワーク」「ニコアンド」など。2023年2月期は売上高が前期比20.3%増の2425億円、営業利益が同75.4%増の115億円だった

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値引きに頼らないファッションビジネスへ脱皮【ストライプインターナショナル 川部将士社長】

PROFILE: 川部将士/ストライプインターナショナル社長

川部将士/ストライプインターナショナル社長
PROFILE: (かわべ・まさし)1972年生まれ、神奈川県出身。95年一橋大学社会学部卒業後、住友商事に入社。99年住商リテイルストアーズ(現トモズ)へ出向、2008年バーニーズ ジャパンへ出向、16年住商ブランドマネジメントに出向して社長就任、18年フェイラージャパンに出向して社長就任、22年9月住友商事に帰任し11月に退職。12月にストライプインターナショナルに入社、23年2月から現職。学生時代はラグビーに注力 PHOTO:SUGURU TANAKA

2023年2月に、住友商事出身で元フェイラージャパン社長の川部将士氏が社長に就任し、新体制となったストライプインターナショナル。創業者によるトップダウン型企業から、社員自ら考えて進んでいく組織へと脱皮を進めている。値引きを抑えることで、指標にしている営業利益率は想定以上のスピードで改善している。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

営業利益率5%を達成

WWDJAPAN(以下、WWD):社長就任から丸一年。手応えは。

川部将士社長(以下、川部):想定していた以上の手応えだ。外から見ていた以上に、自力のある会社だと感じた。収益改善を進める中で、売上高ではなく営業利益率を指標としているが、23年2〜10月期では5%台にまで高まった。業界内で高水準ではないが、前年同期は赤字だったことを考えれば、想定以上のスピードで利益が出せる体質へと変わっている。方針さえ明確になれば、ミッションをしっかりこなせる会社だ。売上高をかつての水準まで回復させることも将来的に考えてはいるが、中身が伴わない状態で売り上げだけ追求しても、うまくはいかない。

WWD:利益率改善には値引き抑制が効いているのか。

川部:ここ数年はかなりセール偏重の商売をしてきた。ファッションの会社として、最初にお客さまに伝えるべきは商品やブランドの魅力であり、できるだけ値引きせず売る努力をしよう、しっかり接客しようと社内で伝えてきた。同時に、仕入れもコントロールしている。需給のバランスの中で、最終消化のために値引きすることはもちろんあるが、安易なタイムセールはしない。その意識改革だけでも、粗利はかなり改善できた。

WWD:一丸となるため、まずは社内に向けたパーパスも策定した。

川部:「ファッションの力で笑顔輝くあしたを創る」だ。リーダー約30人に集まってもらい、4日間のワークショップで議論し決めた。私自身は横で見ていたが、社員からこの言葉が出てきたことで、やはり値引きに頼った商売ではなく、ファッションビジネスをやりたいという思いを強く感じた。われわれの服を着ることで、お客さまが前向きに生きていこうと思えるような、そんなブランドでありたいという思いがこもっている。

WWD:以前は創業者が引っ張るトップダウン型組織だった。

川部:経営層が変わった今、皆の意識を変えて、会社の新しい運営形態を作っていかなければいけない。今はあらゆることが猛スピードで変化していく時代であり、成功体験を持っている人が必ずしも正しいとは限らない。だからこそ、皆で挑戦を重ねるしかない。活力ある若い人たちがいかに挑戦していくかにしか答えはない。ただし、強力なオーナーシップの下、言われたことをこなす形で働いてきた社員が、自主自律で動いていく組織に変わるのは時間もかかる。だからこそまずパーパスを策定し、そこに向けて自分は何に挑戦するかを考えられるようにした。

WWD:23年は適時・適量・適価で売り切るといった商売の基本に改めて注力したが、24年の課題は何か。

川部:より戦略的に、会社をどう成長させていくかを考えていく。ファッションビジネスの軸は、クリエイション、カスタマーコミュニケーション、サプライチェーンの3つだ。ネットへの常時接続を前提に社会もビジネスも変わっていく中、その3つも変えていく必要がある。正直に言って、当社は業界の中でやや遅れている。マーケットへの挑戦権を得るために、まずは3領域で最低限のアップデートを行い、加えて他社との差別化も必要となる。

WWD:具体的に何から始めるのか。

川部:3つのボタンを同時に押すような気持ちだが、まずカスタマーコミュニケーション、いわゆるOMO領域が先行している。顧客とのコミュニケーションの軸であるブランドアプリ、SNS、LINE、自社ECサイトの4つで、強化すべき部分は多い。お客さまとつながる回数を増やさないと今はブランド力が落ちてしまう。LINE登録を店頭でしっかり促すなど、基礎的なところから進めている。その上で、次はクリエイションを強化。サプライチェーンマネジメントにも本格的に着手する。当社はモノ作りや物流において、商社や物流業者に任せっきりになってしまっている部分が大きい。全て自社で行うという考えはないが、流れを把握し、自ら課題を見出して解決していく組織になることが、SDGsの観点でも不可欠だ。昨年9月にサプライチェーン本部を立ち上げたが、流れを見える化し、パートナー企業と議論ができる形を作る。それが、原料高騰や物流問題対応にもつながっていく。

WWD:一部ブランドでは既に好循環も生まれ始めている。

川部:最大ブランドの「グリーン パークス(GREEN PARKS)」は業績も伸びている。端境期のMDコントロールが好調で、再現性のある成功事例を作ることができている。「アメリカンホリック(AMERICAN HOLIC)」も堅調だ。見直し中の「アース ミュージック&エコロジー(EARTH MUSIC&ECOLOGY)」は、チームの議論の中から新しい指針が出てきている。これらマスマーケット向け3ブランドとミドルマーケット向けの他のブランドとでは、9月に事業部も分けた。

WWD:24年度の数値目標は。

川部:営業利益率5%という、26年1月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画で掲げた目標は1年目で既に達成できたが、24年度は人材へのさらなる投資や、ECプラットフォームの刷新も進めるため、横ばいの見込みだ。会社としての基盤強化に投資していく1年にする。

会社概要

ストライプインターナショナル
STRIPE INTERNATIONAL INC.

1994年に岡山県でセレクトショップとして開業。95年にクロスカンパニー設立、99年に「アース ミュージック&エコロジー」を立ち上げてSPA企業に転換。2000年に東京本部を開設、12年にキャンをグループ化、16年に現社名に変更した。「アース」のほか、「グリーン パークス」「アメリカンホリック」「イェッカヴェッカ」などを擁する。23年1月期の売上高は前期比4.1%減の607億円、営業損失は10億円(前期は15億円)

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値引きに頼らないファッションビジネスへ脱皮【ストライプインターナショナル 川部将士社長】

PROFILE: 川部将士/ストライプインターナショナル社長

川部将士/ストライプインターナショナル社長
PROFILE: (かわべ・まさし)1972年生まれ、神奈川県出身。95年一橋大学社会学部卒業後、住友商事に入社。99年住商リテイルストアーズ(現トモズ)へ出向、2008年バーニーズ ジャパンへ出向、16年住商ブランドマネジメントに出向して社長就任、18年フェイラージャパンに出向して社長就任、22年9月住友商事に帰任し11月に退職。12月にストライプインターナショナルに入社、23年2月から現職。学生時代はラグビーに注力 PHOTO:SUGURU TANAKA

2023年2月に、住友商事出身で元フェイラージャパン社長の川部将士氏が社長に就任し、新体制となったストライプインターナショナル。創業者によるトップダウン型企業から、社員自ら考えて進んでいく組織へと脱皮を進めている。値引きを抑えることで、指標にしている営業利益率は想定以上のスピードで改善している。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

営業利益率5%を達成

WWDJAPAN(以下、WWD):社長就任から丸一年。手応えは。

川部将士社長(以下、川部):想定していた以上の手応えだ。外から見ていた以上に、自力のある会社だと感じた。収益改善を進める中で、売上高ではなく営業利益率を指標としているが、23年2〜10月期では5%台にまで高まった。業界内で高水準ではないが、前年同期は赤字だったことを考えれば、想定以上のスピードで利益が出せる体質へと変わっている。方針さえ明確になれば、ミッションをしっかりこなせる会社だ。売上高をかつての水準まで回復させることも将来的に考えてはいるが、中身が伴わない状態で売り上げだけ追求しても、うまくはいかない。

WWD:利益率改善には値引き抑制が効いているのか。

川部:ここ数年はかなりセール偏重の商売をしてきた。ファッションの会社として、最初にお客さまに伝えるべきは商品やブランドの魅力であり、できるだけ値引きせず売る努力をしよう、しっかり接客しようと社内で伝えてきた。同時に、仕入れもコントロールしている。需給のバランスの中で、最終消化のために値引きすることはもちろんあるが、安易なタイムセールはしない。その意識改革だけでも、粗利はかなり改善できた。

WWD:一丸となるため、まずは社内に向けたパーパスも策定した。

川部:「ファッションの力で笑顔輝くあしたを創る」だ。リーダー約30人に集まってもらい、4日間のワークショップで議論し決めた。私自身は横で見ていたが、社員からこの言葉が出てきたことで、やはり値引きに頼った商売ではなく、ファッションビジネスをやりたいという思いを強く感じた。われわれの服を着ることで、お客さまが前向きに生きていこうと思えるような、そんなブランドでありたいという思いがこもっている。

WWD:以前は創業者が引っ張るトップダウン型組織だった。

川部:経営層が変わった今、皆の意識を変えて、会社の新しい運営形態を作っていかなければいけない。今はあらゆることが猛スピードで変化していく時代であり、成功体験を持っている人が必ずしも正しいとは限らない。だからこそ、皆で挑戦を重ねるしかない。活力ある若い人たちがいかに挑戦していくかにしか答えはない。ただし、強力なオーナーシップの下、言われたことをこなす形で働いてきた社員が、自主自律で動いていく組織に変わるのは時間もかかる。だからこそまずパーパスを策定し、そこに向けて自分は何に挑戦するかを考えられるようにした。

WWD:23年は適時・適量・適価で売り切るといった商売の基本に改めて注力したが、24年の課題は何か。

川部:より戦略的に、会社をどう成長させていくかを考えていく。ファッションビジネスの軸は、クリエイション、カスタマーコミュニケーション、サプライチェーンの3つだ。ネットへの常時接続を前提に社会もビジネスも変わっていく中、その3つも変えていく必要がある。正直に言って、当社は業界の中でやや遅れている。マーケットへの挑戦権を得るために、まずは3領域で最低限のアップデートを行い、加えて他社との差別化も必要となる。

WWD:具体的に何から始めるのか。

川部:3つのボタンを同時に押すような気持ちだが、まずカスタマーコミュニケーション、いわゆるOMO領域が先行している。顧客とのコミュニケーションの軸であるブランドアプリ、SNS、LINE、自社ECサイトの4つで、強化すべき部分は多い。お客さまとつながる回数を増やさないと今はブランド力が落ちてしまう。LINE登録を店頭でしっかり促すなど、基礎的なところから進めている。その上で、次はクリエイションを強化。サプライチェーンマネジメントにも本格的に着手する。当社はモノ作りや物流において、商社や物流業者に任せっきりになってしまっている部分が大きい。全て自社で行うという考えはないが、流れを把握し、自ら課題を見出して解決していく組織になることが、SDGsの観点でも不可欠だ。昨年9月にサプライチェーン本部を立ち上げたが、流れを見える化し、パートナー企業と議論ができる形を作る。それが、原料高騰や物流問題対応にもつながっていく。

WWD:一部ブランドでは既に好循環も生まれ始めている。

川部:最大ブランドの「グリーン パークス(GREEN PARKS)」は業績も伸びている。端境期のMDコントロールが好調で、再現性のある成功事例を作ることができている。「アメリカンホリック(AMERICAN HOLIC)」も堅調だ。見直し中の「アース ミュージック&エコロジー(EARTH MUSIC&ECOLOGY)」は、チームの議論の中から新しい指針が出てきている。これらマスマーケット向け3ブランドとミドルマーケット向けの他のブランドとでは、9月に事業部も分けた。

WWD:24年度の数値目標は。

川部:営業利益率5%という、26年1月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画で掲げた目標は1年目で既に達成できたが、24年度は人材へのさらなる投資や、ECプラットフォームの刷新も進めるため、横ばいの見込みだ。会社としての基盤強化に投資していく1年にする。

会社概要

ストライプインターナショナル
STRIPE INTERNATIONAL INC.

1994年に岡山県でセレクトショップとして開業。95年にクロスカンパニー設立、99年に「アース ミュージック&エコロジー」を立ち上げてSPA企業に転換。2000年に東京本部を開設、12年にキャンをグループ化、16年に現社名に変更した。「アース」のほか、「グリーン パークス」「アメリカンホリック」「イェッカヴェッカ」などを擁する。23年1月期の売上高は前期比4.1%減の607億円、営業損失は10億円(前期は15億円)

問い合わせ先
ストライプインターナショナル
お問い合わせフォーム

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韓国発「ミュード」代表のレミが語る「約1000本のマスカラを試した私が、世界中の人が満足できるマスカラを作ったわけ」

韓国の人気インフルエンサーであるレミ(Raemi)が手掛けるメイクブランド「ミュード(MUDE)」がロフトや東急ハンズ、アットコスメストア、アインズ&トルペなどで日本展開をスタートし、好調な滑り出しをきった。レミが化粧品マーケティング会社で培ったノウハウから生まれた韓国アイドルのようなまつげをかなえる“インスパイア カーリング マスカラ”が代表アイテムで、若い世代を中心に高い支持を集める。世界各国のマスカラを使用する中で自身がこだわりぬいた“マスカラ愛”やブランドに対する思いをレミが語った。

WWD:自身が代表を務めるミュードメイトで「ミュード」を立ち上げたきっかけは?

レミ・ミュードメイト代表(以下、レミ):化粧品マーケティング会社に勤務していたころ、3年半で世界各国の1000個以上のマスカラを調査しました。インスタグラマーとしても活動していたのでそれをレビューすることも。約24万のインスタのフォロワーは、韓国はもちろんさまざまな国の人がいました。フォロワーの声に耳を傾けると、国ごとにマスカラに対する悩みがあることが分かりました。韓国と日本は、「冬にマスカラがにじみやすい」という声が、東南アジアのように四季がない国では「湿度が高いとカールがキープできない」といった声がありました。世界中の人が満足できるマスカラを作りたいと考え、独立することを決め2020年7月にミュードメイトを設立し「ミュード」を立ち上げました。

WWD:マスカラに着目した背景は?

レミ:私はもともとアイメイクに興味があり、中でもマスカラにはこだわりがありました。韓国のマスカラはスキニーなタイプが多く、日本はロングラッシュタイプが多かったので2つを重ねて使用するのも普通のことでしたね。使う際に選ぶ基準はにじまない、クレンジングで落ちやすい、毎日使っても健康的なまつげをキープできること。自分がほしいと思えるマスカラを開発したかったのです。また、他のメイクアイテムに比べてマスカラは一度気に入ると使い続け顧客化につながるアイテムだとデータ分析で理解していました。これらからマスカラは必須アイテムでした。

自信作のマスカラは100万個超販売

WWD:デビュー時に発売した “インスパイア カーリング マスカラ”は、各オンラインメディア・モールでの売り上げランキング1位を多数獲得した。

レミ:開発には1年半かかり、化学研究員の父親に協力してもらい成分開発にも力を入れました。メイクアイテムでもスキンケアのような効果が期待できる自然由来のフィトケラチンとビオチンを配合し、まつ毛も保護しています。もちろんカールのキープ力も抜群です。この商品は、マスカラのレビューをしていた私が自信を持って開発したことから、多くの人を魅了することができデビューから現在までで100万個以上売れ、ベストセラー商品となっています。

WWD:中心顧客層や年商は?

レミ:韓国は20〜30代ですね。韓国版セフォラと話題の店舗、シコル(CHICOR)などに約20店舗出店していますが、売り上げの70%がECサイトになります。売上高は20年が10億ウォン(約1億1000万円)、21年が30億ウォン(約3億3000万円)、22、23年が66億ウォン(約7億3000万円)。23年はオリーブヤングのオンラインを強化するなど、事業の精度を高めることに注力し、順調に推移しています。海外の売上高が約60%を占め、香港や台湾、中国など8つの国と地域で展開。1月にはベトナムに参入しました。

WWD:日本では昨年、伊藤忠商事と日本市場における独占輸入販売契約を結んだ。

レミ:20年7月にブランドを立ち上げ、翌月にはQ10に出店しました。21年に韓国企業経由で日本のバラエティーショップで販売したのですが、情報把握が難しく22年に休止することに。今回、伊藤忠商事とタッグを組むことで、新商品の展開がスムーズになりますし、日本の声を素早くフィードバックしてもらえる環境になりました。日本の中心顧客層は10〜20代と韓国と比べ少し若い世代に支持されています。30〜40代からはオフラインでも購入したいとの要望があり、バラエティーショップやドラッグストアでも展開しているので、反応に期待しているところです。

WWD:今後の展開は?

レミ:売上高のシェア66%を占めるマスカラは引き続き強化します。主軸の“インスパイア カーリング マスカラ” “インスパイア ロングラッシュ カーリング マスカラ”などの新色や、日本限定色などを発売する予定です。韓国ではクッションファンデーションを扱っていますが、リニューアルする計画もあります。スタート時に発売したリップアイテムはコロナ禍で足踏みをしてしまったので、1月に発売したマットな仕上がりですがパサつきや感想しにくい“ソフトブラーティント”で再攻勢をかけます。

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社長の「体当たり動画」も追い風? オーダースーツSADA、過去最高業績ねらう

佐田展隆/オーダースーツSADA社長

PROFILE:(さだ・のぶたか)1974年生まれ。一橋大学経済学部を卒業後、東レに入社。2003年に父が経営する佐田に入社し、05年に社長。PRのため自社スーツをまとってスキージャンプを飛ぶ、富士山に登る、東京マラソンを走る等のチャレンジをユーチューブで配信。「カンブリア宮殿」(テレビ東京)等メディア出演多数。著書に「迷ったら茨の道を行け」(ダイヤモンド社) PHOTO:SHUHEI SHINE

オーダースーツSADAは、全国に47店舗を有する注文服大手だ。初回限定1万9800円という手頃な価格でフルオーダースーツを製造販売する。3代目の佐田展隆社長はこれまでバブル崩壊による消費低迷、東日本大震災による自社工場(宮城県)の被災、そしてコロナ禍によるスーツ離れ――数々の困難に直面してきたが、2024年7月期は過去最高の売上高を達成する見込みだ。ライトネイビーのスーツに赤ネクタイの姿で体当たりの企画に挑戦し、スーツの魅力を発信するユーチューバーとしての顔も持ち合わせる。

WWD:リモートワークが進んだコロナ禍を経て、ビジネスウエア市場は大きく変わった。直近のオーダースーツの商況は?

佐田展隆社長(以下、佐田):コロナ前の売り上げ水準に回復しており、今期(24年7月期)は過去最高の売り上げを更新する見通しだ。振り返るとコロナ禍は本当に大変だった。スーツ自体の需要が激減してしまったのだから。昨年も猛暑によって9月まで苦戦したものの、10月以降は復調した。以降、1月まで前年売り上げをクリアし続けている。

WWD:好調の要因は?

佐田:顧客の平均単価が上がった。現在の購買平均単価は4万円強。原料高にともない商品価格を上げたことも一因だが、“スーツは勝負の場で着るもの”という認識がコロナ以降に浸透した。ビジネススーツ市場自体は縮小している一方で、顧客が「スーツを何のために着るか」を見直したようだ。コロナ前はとりあえず仕事で必要だから何着か持っておく。それがTPOをわきまえ、大事な相手と会うときの勝負服、一張羅としての意味合いを強めた。せっかく購入するのであれば、サイズや着心地、デザインに納得いくフルオーダーの一着を持っていたいという声を聞くようになった。高価なインポート生地を選ぶ方も多い。

実際、オーダースーツへの関心が高まっている。グーグルの分析データによると「オーダースーツ」という検索キーワードがコロナ前の倍に増えているという。弊社公式ホームページの10月アクセス数が前年同期比4倍、11月も2.5倍に急伸した。こうしたことが追い風になっている。

初めてのフルオーダーの着心地に驚く

WWD:コロナ前後で顧客層も変化した?

佐田:顧客の平均年齢が10歳以上若返った。現在のボリュームは30代から40代。初めてオーダースーツを作りに来てくれるお客さまが多い。スーツをあつらえた経験があると言う方も、よくよく聞くと(既成の型紙から作る)パターンオーダースーツであることがほとんど。当社のように一人一人の体形を細かく採寸し、着心地も好みにも合わせるフルオーダーを経験している方は本当に少ない。そんなお客さまが出来上がったスーツに袖を通すと、一様に着心地やクオリティに驚く。そしてリピーターになってくれる。45%のお客さまが3年以内に再びSADAでスーツを作る。年に2回来店してくれるコアなファンもおり、こうしたロイヤルリピーターをどれだけ増やせるかが今後の鍵になりそうだ。

WWD:オーダースーツSADAの強みは?

佐田:自社工場(宮城県と中国・河北省)だ。細かいニーズに柔軟に対応できるほか、パターンオーダーとほぼ同価格でフルオーダースーツを作ることができる。流れとしては、個人に合わせたオリジナルパターンをおこし、好みのゆとり幅に調整しながら細かく補正。そのパターンに合わせ自社工場で縫い上げていく。

ヌード寸法(服ではなく着用者自身の寸法)に対して、どのくらいのゆとりが好まれるかを把握するのが重要だ。一口にスーツを着るホワイトカラーといっても仕事内容によって体の動きは異なる。デスクワークが多いのか、外回りが多いのか、車を運転することも多いのか。丁寧なヒアリングを重ね、仮縫いしたスーツを試着してもらいながら肩や背中などパーツごとに細かくゆとりを確認していく。ここを緻密に行うことで体形にジャストフィットし、着心地の良さに納得してもらっている。SADAのスーツはプロ野球やJリーグなど27のプロスポーツチームに公式スーツを提供(24年1月11日現在)している。アスリートの皆さんはフルオーダーでなければ体形に合うスーツが見つかない。契約数を通しても評価をもらえていると思う。

社長がスーツを着て過酷な山登りに挑戦

WWD:社長自身も自社スーツを着て、スポーツから山登りまで数多くのアクティビティにチャレンジしている様子をユーチューブで配信している。

佐田:富士山登頂からスキージャンプ、スキューバダイビング、トライアスロンまで本当にさまざまなことに挑戦してきた。きっかけは全部、社員からの無茶振り(笑)。ちなみに今日着ているスーツは海に潜ったとき、何回も着用していたものなので、クリーニングしても塩が落ちきれていない。こうした挑戦を通して、スーツにゆとりがあれば山登りでも何でも問題なく動けることを私自身も実感している。昨年のモンブラン(4807m、ヨーロッパアルプス最高峰)登頂の際は、あまりの強風でアンダーウエアやアウターが必須だったが、寒さ対策さえ万全にしていればスーツでも余裕で山に登れる。

毎月1回のペースで山に登り、ユーチューブで配信している。これまで登った数は、日本百名山でいえば35座。百名山を完登するまで絶対に続けると決めている。年に1回は海外の山にも登っている。もともと学生時代にノルディック複合の選手だったので、基礎体力には自信があるし追い込まれる方が好きなタチ。スーツが似合う体形をキープするためにも体脂肪率は11%を維持している。基本、夕食では炭水化物を食べない。

会社の公式チャンネルも開設していて、そちらではビジネスマナーやスーツの着こなしの動画が人気だ。私のチャンネルはあくまでも、笑いを交えてオーダースーツの敷居を下げたいという思いから。店頭スタッフによるとお客さまから社長動画について話題に上ることも非常に多いらしく、たいへんだけど続けてよかった。

WWD:会社として、社長個人として、今年に成し遂げたいことは?

佐田:会社としては、2024年7月期に過去最高の売上高40億円を達成し、コロナ脱却を証明する年にしたい。創業100周年を迎えたメモリアルイヤーに成し遂げる意義も大きい。個人としては、アフリカ大陸最高峰のキリマンジャロ(5895m)登頂だ。標高5000メートル以上の山に挑むのは初めて。頂上でキリマンジャロコーヒーを飲むと決めている。実は昨年末に左腕を骨折してしまい手術をしてリハビリ中だが、問題なくやり遂げられる自信はある。

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社長の「体当たり動画」も追い風? オーダースーツSADA、過去最高業績ねらう

佐田展隆/オーダースーツSADA社長

PROFILE:(さだ・のぶたか)1974年生まれ。一橋大学経済学部を卒業後、東レに入社。2003年に父が経営する佐田に入社し、05年に社長。PRのため自社スーツをまとってスキージャンプを飛ぶ、富士山に登る、東京マラソンを走る等のチャレンジをユーチューブで配信。「カンブリア宮殿」(テレビ東京)等メディア出演多数。著書に「迷ったら茨の道を行け」(ダイヤモンド社) PHOTO:SHUHEI SHINE

オーダースーツSADAは、全国に47店舗を有する注文服大手だ。初回限定1万9800円という手頃な価格でフルオーダースーツを製造販売する。3代目の佐田展隆社長はこれまでバブル崩壊による消費低迷、東日本大震災による自社工場(宮城県)の被災、そしてコロナ禍によるスーツ離れ――数々の困難に直面してきたが、2024年7月期は過去最高の売上高を達成する見込みだ。ライトネイビーのスーツに赤ネクタイの姿で体当たりの企画に挑戦し、スーツの魅力を発信するユーチューバーとしての顔も持ち合わせる。

WWD:リモートワークが進んだコロナ禍を経て、ビジネスウエア市場は大きく変わった。直近のオーダースーツの商況は?

佐田展隆社長(以下、佐田):コロナ前の売り上げ水準に回復しており、今期(24年7月期)は過去最高の売り上げを更新する見通しだ。振り返るとコロナ禍は本当に大変だった。スーツ自体の需要が激減してしまったのだから。昨年も猛暑によって9月まで苦戦したものの、10月以降は復調した。以降、1月まで前年売り上げをクリアし続けている。

WWD:好調の要因は?

佐田:顧客の平均単価が上がった。現在の購買平均単価は4万円強。原料高にともない商品価格を上げたことも一因だが、“スーツは勝負の場で着るもの”という認識がコロナ以降に浸透した。ビジネススーツ市場自体は縮小している一方で、顧客が「スーツを何のために着るか」を見直したようだ。コロナ前はとりあえず仕事で必要だから何着か持っておく。それがTPOをわきまえ、大事な相手と会うときの勝負服、一張羅としての意味合いを強めた。せっかく購入するのであれば、サイズや着心地、デザインに納得いくフルオーダーの一着を持っていたいという声を聞くようになった。高価なインポート生地を選ぶ方も多い。

実際、オーダースーツへの関心が高まっている。グーグルの分析データによると「オーダースーツ」という検索キーワードがコロナ前の倍に増えているという。弊社公式ホームページの10月アクセス数が前年同期比4倍、11月も2.5倍に急伸した。こうしたことが追い風になっている。

初めてのフルオーダーの着心地に驚く

WWD:コロナ前後で顧客層も変化した?

佐田:顧客の平均年齢が10歳以上若返った。現在のボリュームは30代から40代。初めてオーダースーツを作りに来てくれるお客さまが多い。スーツをあつらえた経験があると言う方も、よくよく聞くと(既成の型紙から作る)パターンオーダースーツであることがほとんど。当社のように一人一人の体形を細かく採寸し、着心地も好みにも合わせるフルオーダーを経験している方は本当に少ない。そんなお客さまが出来上がったスーツに袖を通すと、一様に着心地やクオリティに驚く。そしてリピーターになってくれる。45%のお客さまが3年以内に再びSADAでスーツを作る。年に2回来店してくれるコアなファンもおり、こうしたロイヤルリピーターをどれだけ増やせるかが今後の鍵になりそうだ。

WWD:オーダースーツSADAの強みは?

佐田:自社工場(宮城県と中国・河北省)だ。細かいニーズに柔軟に対応できるほか、パターンオーダーとほぼ同価格でフルオーダースーツを作ることができる。流れとしては、個人に合わせたオリジナルパターンをおこし、好みのゆとり幅に調整しながら細かく補正。そのパターンに合わせ自社工場で縫い上げていく。

ヌード寸法(服ではなく着用者自身の寸法)に対して、どのくらいのゆとりが好まれるかを把握するのが重要だ。一口にスーツを着るホワイトカラーといっても仕事内容によって体の動きは異なる。デスクワークが多いのか、外回りが多いのか、車を運転することも多いのか。丁寧なヒアリングを重ね、仮縫いしたスーツを試着してもらいながら肩や背中などパーツごとに細かくゆとりを確認していく。ここを緻密に行うことで体形にジャストフィットし、着心地の良さに納得してもらっている。SADAのスーツはプロ野球やJリーグなど27のプロスポーツチームに公式スーツを提供(24年1月11日現在)している。アスリートの皆さんはフルオーダーでなければ体形に合うスーツが見つかない。契約数を通しても評価をもらえていると思う。

社長がスーツを着て過酷な山登りに挑戦

WWD:社長自身も自社スーツを着て、スポーツから山登りまで数多くのアクティビティにチャレンジしている様子をユーチューブで配信している。

佐田:富士山登頂からスキージャンプ、スキューバダイビング、トライアスロンまで本当にさまざまなことに挑戦してきた。きっかけは全部、社員からの無茶振り(笑)。ちなみに今日着ているスーツは海に潜ったとき、何回も着用していたものなので、クリーニングしても塩が落ちきれていない。こうした挑戦を通して、スーツにゆとりがあれば山登りでも何でも問題なく動けることを私自身も実感している。昨年のモンブラン(4807m、ヨーロッパアルプス最高峰)登頂の際は、あまりの強風でアンダーウエアやアウターが必須だったが、寒さ対策さえ万全にしていればスーツでも余裕で山に登れる。

毎月1回のペースで山に登り、ユーチューブで配信している。これまで登った数は、日本百名山でいえば35座。百名山を完登するまで絶対に続けると決めている。年に1回は海外の山にも登っている。もともと学生時代にノルディック複合の選手だったので、基礎体力には自信があるし追い込まれる方が好きなタチ。スーツが似合う体形をキープするためにも体脂肪率は11%を維持している。基本、夕食では炭水化物を食べない。

会社の公式チャンネルも開設していて、そちらではビジネスマナーやスーツの着こなしの動画が人気だ。私のチャンネルはあくまでも、笑いを交えてオーダースーツの敷居を下げたいという思いから。店頭スタッフによるとお客さまから社長動画について話題に上ることも非常に多いらしく、たいへんだけど続けてよかった。

WWD:会社として、社長個人として、今年に成し遂げたいことは?

佐田:会社としては、2024年7月期に過去最高の売上高40億円を達成し、コロナ脱却を証明する年にしたい。創業100周年を迎えたメモリアルイヤーに成し遂げる意義も大きい。個人としては、アフリカ大陸最高峰のキリマンジャロ(5895m)登頂だ。標高5000メートル以上の山に挑むのは初めて。頂上でキリマンジャロコーヒーを飲むと決めている。実は昨年末に左腕を骨折してしまい手術をしてリハビリ中だが、問題なくやり遂げられる自信はある。

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カテゴリーを問わず各消費者に合う香りを提案 【ブルーベル・ジャパン セルジュ・グレベール社長】

PROFILE: セルジュ・グレベール/ブルーベル・ジャパン社長

セルジュ・グレベール/ブルーベル・ジャパン社長
PROFILE: (Serge Grebert)仏パリのビジネススクールHEC経営大学院を卒業後に来日。20年以上にわたり欧米企業の日本国内における事業の開発、営業戦略、マーケティング、業務プロセス最適化、組織づくりなどに従事。日本在住歴は30年以上になる。2009年11月から現職 PHOTO:TSUKASA NAKAGAWA

「グッチ(GUCCI)」「バーバリー(BURBERRY)」などのファッションフレグランスを手掛けるブルーベル・ジャパンは、「キリアン パリ(KILIAN PARIS)」「メゾン フランシス クルジャン(MAISON FRANCIS KURKDJIAN」などのニッチフレグランス、「ペンハリガン(PENHALIGON'S)」「ロジェガレ(ROGER & GALLET)」といった老舗ブランドまで幅広く輸入販売している。香水だけでなく、ボディーソープやハンドクリームなどライフスタイル全般に関わる“香り”を提供する企業として業界をリードする存在だ。
(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

多様化、拡大するフレグランス市場 
香りのプロの育成とタッチポイントの強化が鍵

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年の日本におけるフレグランス市場の動向は?

セルジュ・グレベール社長(以下、グレベール):欧米に比べると、まだまだ日本におけるフレグランス市場のシェアは低いが、ファッション、ニッチ、ホームと全てのカテゴリーで伸長しており、絶好調だ。ギフト需要が多い商材だが、コロナ禍以降は自分で楽しむ需要も高まっている。“おうち時間”が増えた影響でホームフレグランスも伸びている。日本では、長い間、清潔感のあるフレッシュな香りの人気が高かった。代表的なフローラル系の人気は相変わらず高いが、最近、通好みの洗練された香りの市場が出てきて、個性のあるフレグランスも売れるようになってきている。ブランドで選び香水を購入する層もあれば、自分だけの香りを探す層もあり、多様化している。個性を求める層の増加により市場は拡大している。

WWD:若い消費者を中心にニッチフレグランスの市場が拡大しているが?

グレベール:ファッションもニッチも両方のカテゴリーの需要がある。消費者の需要がファッションフレグランスからニッチへとアップグレードするわけではなく、それぞれに顧客がいる。基本的に、好きな香りは変わらないものだ。以前は、オフィスなどではフレグランスは使いにくいという風潮があったが、それが変わりつつあり、男性も普通に香水をつけるようになった。また、日本では、香水をシーン別に使い分けする傾向がある。フレグランスに対する許容範囲が広がり、消費者の関心の高まりが見られる。次々と新しいフレグランスが登場し、まずは小さいサイズを購入して新しい香りの体験をしている人も多いようだ。

WWD:23年の売上高の伸長率は?

グレベール:前年比2ケタ増で、19年の売上高にほぼ戻った。フレグランスはインバウンド比率が低いため、あまり売り上げに影響はない。

WWD:現在販売しているフレグランスのブランド数は?

グレベール:約35ブランドだ。

WWD:23年に成長したブランドとその理由は?

グレベール:ファッションカテゴリーでは、「バーバリー」の“ゴッデス”が世界的に大ヒット。香りだけでなく、レトロなイメージのボトルも人気だ。憧れのブランドの代表格「ティファニー(TIFFANY & C0.)」も人気が高い。「コーチ(COACH)」では、メンズフレグランスが伸びている。ニッチでは、「キリアン パリ」や「フレデリック マル(FREDERIC MALLE)」が好調で前年比30%以上伸長した。いろいろな香りを試してみたいという人が増えて、ディスカバリーセットがよく動いた。「メゾン フランシス クルジャン」は、ボディーソープやボディークリームなどを発売し、好評だった。ストーリー性のある「ペンハリガン」も好調。香りには長いトレンドと短いトレンドがあるが、“いい香り”のものしか市場で長続きしない。ニッチフレグランスは、洗練されたまねできない香りが高い支持を得ている。

WWD:コロナ禍前後のECの売り上げの変化は?

グレベール:コロナ禍でECの売上高は30%以上伸長した。好調をキープし、さらに10%程度ずつ伸長している。市場が広がり、ECではリピート購入やディスカバリーセットの購入が増えている。

WWD:ECでフレグランスを販売するための施策は?

グレベール:購入者へ新たな香りの体験を促すためにサンプルを同梱したり、メンバーシッププログラムでプレゼントを用意したりする。また、継続的にフレグランスに関する情報発信なども行っている。

WWD:ここ数年の日本におけるフレグランス市場の動向を踏まえて、24年のフレグランス市場の予測は?

グレベール:ファッション、ニッチ、ホーム、全てのカテゴリーで伸長するだろう。ブランドが多くなり市場が活性化し、拡大している。アイテム数やカテゴリーが増え、販路も広がり、さまざまな香りにアプローチしやすくなった。そのため、勉強してファンになる消費者が増えている。

WWD:フレグランス業界における“ブレークスルー”を目指して、ブルーベル・ジャパンとして取り組むべき課題は?

グレベール:日本のフレグランス市場をどう広げていくかが課題だ。社内に“パルファム ソムリエール”という資格制度があり、香りのプロを育成している。現在社内に約50人資格を持ったスタッフがおり、使い方のアドバイスをするだけでなく、好みやライフスタイルをヒアリングして、各顧客に合う香りをすすめている。自社で展開するショップ“ジャルダン デ パルファム”などで気軽にフレグランスを試してもらえるようタッチポイントも増やしていく予定だ。

会社概要

ブルーベル・ジャパン
BLUEBELL JAPAN

1954年、ラグジュアリーブランドのアジアに特化したディストリビューターとしてブルーベル・グループが誕生。世界市場をけん引する有名ブランドをアジアの消費者に紹介してきた。日本、韓国、中国、香港、台湾、シンガポール、タイなどに現地法人を構える。ブルーベル・ジャパンは1976年に創設。複合的な小売りと卸売りネットワーク、ECサイトを擁し、ファッション、香水、化粧品などのビジネスをオムニチャネルで幅広く展開

問い合わせ先
ブルーベル・ジャパン 香水・化粧品事業本部
0120-005-130

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2024年はBtoBの強化を図る【アイスタイル 遠藤宗社長兼COO】

PROFILE: 遠藤宗/アイスタイル社長兼COO

遠藤宗/アイスタイル社長兼COO
PROFILE: (えんどう・はじめ)船井総合研究所、たしろ薬品などを経て、2007年コスメネクスト設立、アットコスメストア開業とともに取締役に就任しアイスタイルグループに参画。コスメネクスト社長を経て、21年7月から店舗・ECの運営を行うアイスタイルリテール社長に就任。アイスタイルグループの国内外のリテール事業全般を統括する。22年9月から現職 PHOTO : SHUNICHI ODA

リテールの好調で
スタート地点に回帰

アイスタイルの勢いが止まらない。既存店の成長に加え、関西に初上陸した旗艦店「アットコスメオーサカ」や、買収した老舗化粧品専門店シドニー7店舗が寄与し、直近の2024年7〜9月期の売上高は前年同期比35.3%増と四半期で過去最高の124億円を記録。リテールを中心にマーケティング支援やグローバルなど全セグメントにおいて増収を達成し、好調に推移している。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

WWDJAPAN(以下、WWD):23年6月期は過去最高の売り上げを達成した。

遠藤宗社長兼COO(以下、遠藤):この2〜3年はコロナ禍で店舗事業を中心に大きな影響を受けたが、やっと厳しかった時期を乗り越えたという感覚にある。コロナ直前の20年1月にオープンした「アットコスメストア」初の旗艦店「アットコスメトーキョー」は連日にぎわいを見せており、平日は約9000人、週末は約1万5000人と来客数が増加。買い上げ率は約40%で、月間の売り上げも平均約5億円まで伸ばしている。「アットコスメトーキョー」をフックに、会社全体が盛り上がっており、ようやくスタート地点に戻ってきた思いだ。

WWD:中でもリテール事業が好調だ。

遠藤:9月に関西初の旗艦店として、JR大阪駅直結の商業施設ルクア イーレ3階に出店した「アットコスメオーサカ」が好調で、館全体の盛り上がりにも貢献している。当社は「アットコスメ」の口コミ情報を利用して店舗やEC展開できるのが強み。ただブランドごとに商品を並べるだけでなく、プチプラからラグジュアリーコスメまで価格差のあるランキングをもとに豊富な品ぞろえで世界観を作ることができるのがリテール事業の好調理由の1つだろう。また、同店のオープンで近隣百貨店の売り上げが落ちることも無く、人流をつくりながら新マーケットを創出する役割を果たした。生活者とブランドをつなぐために地道にやってきたことがまさに評価されたと感じており、今後もチャンスがあれば主要都市に旗艦店を出店していきたい。

WWD:生活者とブランドをつなぐために具体的に行ったことは。

遠藤:社長就任から社内で言い続けているのは、ミッションである「Beautyの世界をアップデートしながら、多くの人を幸せにする」ために、どのような行動をしなければいけないかということ。当社のミッションを実現するには、生活者とブランドの双方を深く理解し、メディアの「アットコスメ」、ECの「アットコスメショッピング」、店舗の「アットコスメストア」の3つを密に連携させてビジネスをしていくことが重要になる。また、当然ながら持続的に事業成長させることが求められるが、これまでのアイスタイルでは、「かけたコストを必ず事業成長につなげる」という部分への意識が薄くなりがちな部分があったように思う。社長就任後、基本的な事業戦略はなにも変わっていないが、そういった部分の社員の行動指針や考え方をそろえることに注力してきた。

WWD:コロナ前後で消費者の買い方はどう変化したか。

遠藤:訪日外国人客の買い方は大きく変化した。これまでは日本で特定の商品の指名買いだったが、自身の悩みに対応する化粧品を求めるようになった。個人旅行も多く、団体での爆買いもほとんどない。また、業界の変化としては日本に進出したい海外ブランドも増加している。日本は米国、中国に次ぐ世界第3位の規模を誇るビューティ市場で、日本で支持される商品は良いモノという認識が根強い。今後は、そういったブランドの日本進出のサポートにもより力を入れていきたい。このほか20年に設立した、インフルエンサーマーケティングを行うアイスタイルミーでは「アットコスメ」のプラットフォームとSNSの双方を活用したプランニングはもちろんのこと、「アットコスメ」を全く介在させない純粋なSNSマーケティングのサポートも多くおこなっており、順調に成長している。

WWD:22年に業務資本提携を締結した米国アマゾンと三井物産との取り組みについて。

遠藤:昨年11月にアマゾンジャパン合同会社と協業し、Amazon.co.jp上に「アットコスメ ショッピング」をオープンした。まだ8ブランドの取り扱いではあるが、当初の狙い通りラグジュアリーブランドに参画いただき、まずはオープンというスタート地点に立つことができ安堵した。「アットコスメ」の特徴である口コミに加え、美容部員のレコメンドやアドバイスなども掲載し、アマゾンユーザーに新たな化粧品の購入体験を提供。この先も、ラグジュアリーブランドを中心に取り扱いを増やしていくほか、リアル店舗でのコラボレーションなども引き続き推進していく。三井物産とも海外での取り組みについて引き続きいろいろと可能性を検討している。

WWD:24年に注力することは?

遠藤:リテールやメディアの勢いでBtoC事業が順調な一方、BtoB事業の成長スピードが追い付いていない。今後は、これまで中心だったキャンペーン型の広告ではなく、より包括的なブランドのマーケティング支援事業を中心に据えたい。その準備に24年は注力する。花開くのは25年以降になると思うが、しっかりやり切りたい。

会社概要

アイスタイル
ISTYLE

前職で化粧品メーカーに勤務していた山田メユミ取締役の化粧品のメルマガへの大きな反響をきっかけに、コスメ・美容の総合サイト「アットコスメ」事業化のため、アクセンチュアに勤務していた吉松徹郎会長と山田取締役が共同で1999年7月に設立。2002年にEC事業、07年に店舗事業を開始し、ネットとリアルで事業を展開。12年に東証一部上場

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TEXT:WAKANA NAKADE

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ソフトとハードに磨きをかけ、唯一無二の商品力を発信【SK-II 西田文彦事業代表】

PROFILE: 西田文彦/P&Gプレステージ「SK-Ⅱ」事業代表

西田文彦/P&Gプレステージ「SK-Ⅱ」事業代表
PROFILE: (にしだ・ふみひこ)「日本発のイノベーションを世界に羽ばたかせるビジネスリーダーになりたい」という信念の下、国内医療機器メーカーの海外営業を経て2011年にP&Gに入社。一貫して「SK-Ⅱ」事業に携わり、シンガポール、日本、香港、台湾でのブランドマネジメントを経験。日本の「SK-Ⅱ」営業組織を統括した後、22年1月から現職 PHOTO:SHUHEI SHINE

主力商品の“フェイシャル トリートメント エッセンス”を中心に、世界中の女性から支持され続けるプレステージスキンケアブランド「SK-Ⅱ」を展開する。「秋田10年肌研究」をはじめとする同ブランドが誇る最先端の肌研究は進化を続け、2023年は第25回世界皮膚科学会で炎症老化にまつわる新知見を発表した。24年も進化の手を緩めず、スキンケアエキスパートとしてまだ見ぬエイジングケア領域を切り開く。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

“ドント・ストップ・ザ・モメンタム”を合言葉に
“No.1”ブランドを目指す

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年はどのような年だったか。

西田文彦「SK-Ⅱ」事業代表(以下、西田):一貫してプレステージスキンケアブランドとして“No.1”を意識した1年で、業績は非常に好調だった。21年から2年連続で新客2ケタ成長を実現している勢いを維持すべく、23年は“ドント・ストップ・ザ・モメンタム(勢いを止めない)”を合言葉に走り抜けた。ブランドの真骨頂である“フェイシャル トリートメント エッセンス”を柱とする多角的な施策が奏功し、さらに加速することができた。

WWD:具体的な要因は?

西田:特別な酵母を独自に発酵させた成分「ピテラ™」※1の優位性を丁寧に伝え続ける実直な姿勢が、お客さまの心に響いている。22年に開催したグローバルイベント「ワールド ピテラ™ デイ」を進化させ、23年は7月に「ワールド ピテラ™ マンス」として1カ月にわたる啓蒙キャンペーンを全国で実施した。その一環として東京・表参道でピテラ™の秘密を解き明かす五感体験型イベント「シークレットキーハウス」を2日間限定で開催し、多くの人に来場いただいた。ピテラ™の便益やサイエンスを再訴求することができ、新客のカウンターへの誘引にも寄与した。23年後半は「メゾン キツネ」とコラボレートした限定ホリデーコフレが大変好評だった。このように独自成分ピテラ™の魅力を発信する場を持つことや、思わず手に取ってしまう特別感のある商品を定期的に打ち出すことで、新客獲得のチャンスをまだまだ生み出せる手応えを感じている。

WD:2年ぶりの新商品発売も話題を呼んだ。

西田:これまでも世界最先端の皮膚科医と共同研究を重ねてきたが、23年はエイジング領域の新知見として炎症老化の引き金となる“エイジングの火種”※2を発表した。この新知見を基に開発したのが “スキンパワー アドバンスト クリーム”だ。発売4カ月で53※3のアワードを受賞するなど大きな反響をいただいている。また新商品の発売に伴い、全国のカウンターに設置する非接触型肌測定マシン「マジックスキャン」にも“エイジングの火種”※2を測定する最新機能を導入した。

WWD:ピテラ™の研究では新知見を発表し続けている。

西田:昨年は“肌調和研究”が進み、ピテラ™には乾燥やキメの乱れなどの肌悩みの要因となる肌の不調和を整える働きがあることを発表した。ピテラ™の無限の可能性を生かして商品開発や店頭カウンセリングにさらに磨きをかけられるのは当社の大きな強みだ。売り上げやランキングなど数値化される評価だけにとらわれず、スキンケアエキスパートブランドとして、R&D分野を含む価値ある情報と商品を届け、本当の意味で支持されるブランドを目指したい。とはいえ、他社と顧客を奪い合うつもりはない。当社独自の調査によると、「SK-Ⅱ」を含めて高価格帯プレステージスキンケアは世帯普及率(ある商品の100世帯あたりの保有数)がまだまだ低い。

つまりプレステージスキンケア商品に触れたことのない層がまだまだ多いということだ。伊勢丹新宿本店で「SK-Ⅱ」の最高級ライン“LPX”のポップアップショップを開催した際、予想をはるかに上回る新客に購入いただく一方で、「百貨店には頻繁に訪れ商品を購入するが、スキンケアは良いものに出合ったことがなく投資していなかった」という声も聞かれ、潜在的なニーズと購買力があるにもかかわらず、プレステージスキンケアとの接点がない人の多さを実感した。カテゴリー自体の普及率が低い中でシェアを奪い合うのではなく、カテゴリーの成長に貢献したい。潜在顧客とのタッチポイントを精力的に増やすことで、市場自体を活性化させることがわれわれの目指す“No.1”への近道だと信じている。

WWD:プレステージスキンケアを身近に感じてもらう施策は?

西田:オフラインでの体験と掛け合わせたSNSコンテンツの配信などだ。例えば肌測定マシン「マジックスキャン」の店頭体験動画や、ビューティ・インフルエンサー(美容部員、以下BI)との店頭からのライブ配信は反響が大きかった。「SK-Ⅱ」に興味がありながら百貨店のカウンターに行くハードルの高さを感じている層を取り込むには、オンラインで手軽に閲覧できるコンテンツを入り口として、魅力的な店頭体験を伝える必要がある。また数年前に発足した、全国の卓越した接客力を持つBIを集結させた選抜チームを派遣するポップアップのメガイベントも強化する。

WWD:24年に注力することは?

西田:ピテラ™の魅力をより幅広く発信する大型キャンペーンや、商品面での新たなイノベーションを控えている。店頭においては“共感型接客”をテーマにソフト面(BI)とハード面(肌測定マシン)の進化に磨きをかけていく。商品とカウンセリングの双方でイノベーションを起こし、スキンケアエキスパートとしてさらなる高みを目指す。

※1 特別な酵母の株を、独自のプロセスで発酵させ生み出した「SK-Ⅱ」だけの天然由来成分(『SK-Ⅱ』独自のガラクトミセス培養液-整肌保湿成分)
※2 ハリの低下や乾燥による小じわ、キメの乱れ、毛穴の目立ちを引き起こす乾燥状態
※3 2023年12月31日時点での雑誌・ウェブ等のメディア・SNSにおけるビューティアワード相当賞受賞総数

会社概要

エスケーツー
SK-II

1980年に、日本酒の酒造所の杜氏の手肌の美しさにヒントを得て、特別な酵母の発酵がもたらす唯一無二の成分「ピテラ™」(※1)を配合したスキンケア商品“フェイシャル トリートメント エッセンス”が誕生したのが「SK-Ⅱ」ブランドの始まり。1991年にマックスファクター傘下からプロクター・アンド・ギャンブル傘下に移った。その後、「SK-Ⅱ」商品の海外への販売を開始し、2016年8月に社名をP&Gプレステージ合同会社に変更した。現在、世界12の国と地域で展開する

問い合わせ先
「SK-Ⅱ」お客さま相談室
0120-021325

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多様なワクワク・ドキドキとつながるプラットフォーマー企業へ【デイトナ 佐々木聡社長】

PROFILE: 佐々木聡代表取締役/社長執行役員CEO

佐々木聡代表取締役/社長執行役員CEO
PROFILE: (ささき・あきら)1965年9月3日生まれ、北海道出身。古着店、アパレルメーカーを経て21年デイトナ・インターナショナル代表取締役に着任 PHOTO:YOW TAKAHASHI

2021年4月に代表取締役に就任した佐々木聡氏の指揮のもと第2創業期を迎えているデイトナ・インターナショナル。23年はさまざまなプロジェクトや子会社の発足のニュースが目を引いたが、そこにあるのは一貫して、多様な価値観を応援する企業でありたいという思いだった。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

デジタルとリアルを融合
お客さまとの全タッチポイントで満足度を高める

WWDJAPAN(以下、WWD):社長就任から3年弱、業績の変化と取り組んできたことは。

佐々木聡社長(以下、佐々木):売り上げは、この3年間順調に成長している。注力したことは、多様な「ワクワク・ドキドキ」を伝えるプラットフォームとしてのデジタルとリアルの融合だ。リアル店舗とeコマースとSNS、お客さまとのタッチポイント全てにおいて満足度を高めるために私たちはいるのだ、ということを軸にしてきた。

WWD:売上高が成長した要因は。

佐々木:顧客体験価値の最大化を全てのタッチポイントで改善、向上していくことを積み上げていった結果と思う。

WWD:就任時からどんな考え方で会社経営に取り組んできたか。

佐々木:広義の意味での「ファッション」とは何か、「豊かさ」とは何かを考え続けることが大事なポイントだと思っている。服だけにしばられずに、私たちは人々の生活をどう豊かにするかを社員と一緒に取り組んできた。社員もステークホルダーの皆さんも多様なメンバーがそろっている。だから面白いことができる。

WWD:マーケットや消費者の変化をどう見ているか。

佐々木:人の「好き」の細分化が非常に深まり、それが顕在化している。特に23年は、多様性を尊重することが大事であることが広く認識され、ポジティブな感覚を認め合うモチベーションが高まった年だったように思う。私たちはファッションの企業であると同時に人の「好き」を応援する企業でありたいと考えている。23年に始動し、個性的なアーティストや行政、企業とのコラボレーションを行う「フリークス ビレッジ」は、まさにその一例。何かが好きという感覚を軸に誰かとつながることはうれしい。私たちはモノのセレクトだけではなく、「好き」のセレクト業態を目指したい。ほかにもラジオ番組「ラジオフリークス」やサステナブルプロジェクト、映像事業(映画の配給・宣伝など)の「フリークスムービー」、そしてOMOソリューションの企画・製造・販売などデジタルDX事業を行う子会社のイノベーションスタジオの設立、ヨセミテ・ストラップの企画・製造・販売を行っているスモーキーサンデーを当社グループに迎えた。ユーチューブで「オカルト部」を作ったりも。多様な「好き」でコミュニティーを作ることがブランドになると考えているからだ。年齢・性別・国籍をまたいでつながることができる多様な「好き」をベースにセグメントすることが成長のキーだと思う。

WWD:精力的に多方面へチャレンジしているように見える。

佐々木:自分たちがドキドキ、ワクワクするものをお客さまにご提案、共有し、お客さまからも同じように共有いただいて、互いにリスペクトし合える時間を生み出していく会社でありたいと考えている。社員がさまざまな価値観にふれ、つながることで企業の枠を超えて新しいビジネスを生み出していける。23年12月の京成電鉄とのコラボレーションもそんな考えから生まれている。開業90周年を迎えた東京・上野にある廃駅、旧博物館動物園駅に「フリークス ストア」のポップアップストアを開き、京成電鉄のスカイライナーや限定ロゴのグッズを販売した。これは異業種コラボレーション「京成フリーク」の第1弾で、今後も複数の企画が進行している。

WWD:アイデアを形にするための組織体系の工夫は?

佐々木:組織体系は普通だが、横串を通したさまざまなプロジェクトを走らせて業務の壁を越える機会を作っている。業務・職種関係なく、他部門・他社の価値観をリスペクトすることが浸透しているので、新規事業を始めたときに、協力、応援しようという流れになりやすい。チーム編成もジェネラリストとスペシャリストと分けがちだが、横串を通したプロジェクトを走らせることや、人事制度も職種の枠を柔軟に超えられる仕組みにした。その方が風通しがよくなり、さまざまなケイパビリティを一人一人が備えることが今の時代に対応した職種や働き方を作っていくと考えている。チャレンジャーな企業であるためにはtoB、toCで分けたビジネスモデルや組織体制ではなく、もっと自由に社内のシナジーを生み出すことが大事だ。

WWD:24年はどんな年にしようと思っているか。

佐々木:今もいろいろなプロジェクトを準備しているが、今年は一段ギアを上げて行きたい。昨年面白かったのは「着る、名店スウェット」という企画だ。長野県の地元で愛される店や人にちなんだイラストのオリジナルスエットを着て応援しようというもの。ショップスタッフやお客さんが盛り上がって始めたものだが、かなり人気でテレビの取材も5社ほど来たり、他の市町村からも相談が来たりした。店舗や社員がさまざまなステークホルダーの皆さんの「好き」を、表現することが当社のミッションだと思っている。

会社概要

デイトナ・インターナショナル

1986年茨城県古河市に「フリークス ストア」1号店をオープン。90年デイトナ・インターナショナル設立。96年に渋谷店をオープンし全国へ展開。協業規格住宅「フリークス ハウス」、コワーキングスペース「アンドフリーク」、再エネ電力プロジェクト「フリークス電気」など幅広く⼿がける。2023年には、新ブランド「カウラム」、映像事業「フリークスムービー」、新プロジェクト「フリークスビレッジ」などを始動。グループ企業に「イノベーションスタジオ」や「スモーキーサンデー」など。従業員数は751人

問い合わせ先
デイトナ・インターナショナル
03-5770-8798
TEXT: MIWAKO ANNEN

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BtoB事業と海外を拡大し コミュニティーを世界へ【ビームス 設楽洋社長】

PROFILE: 設楽洋/ビームス社長

設楽洋/ビームス社長
PROFILE: (したら・よう)1951年4月13日生まれ、東京都新宿区出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、75年に電通入社。76年2月に家業の新光の新規事業として「ビームス」1号店を原宿に出店。83年電通を退社し、ビームスと新光の専務に。88年ビームス、新光、ビームスクリエイティブの代表取締役を兼任。2011年に持株会社化し、ビームスホールディングス社長に PHOTO:YOW TAKAHASHI

コミュニティーブランド化を図るビームスは2023年、その柱となる人施策を強化し、「一人一人が光る」をスローガンにスタッフのスター化を推進した。24年はこのコミュニティーの輪を広げ、BtoB事業、さらにはグローバル事業も巻き込んでいく。新物流センターにも注目だ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

人施策が絶大な効果に

WWDJAPAN(以下、WWD):23年を振り返ると?

設楽洋社長(以下、設楽):コロナ禍から行ってきた創意工夫が今、非常に効果を発揮し、売り上げ、客数共に伸び、過去最高益に近い数字が出ている。さらに、アジア圏のみならず欧米を含むインバウンドの売り上げが全体の1割に達し、海外進出への可能性も感じた。上期は売上高が前年同期比10%増で、EC化率は30%台に落ち着いた。

WWD:注力した施策と収穫は?

設楽:一つは「人施策」だ。店舗を中心としたスタッフの活躍で、オンライン、オフライン問わず絶大な効果を上げた。もう一つは「セール時期の変更・短縮」だ。業界を上げて取り組みたかったが調整の難しさもあり、自社単独で22年から行ってきたところ、昨年夏のセールでもプロパー販売が増え、微減収だが粗利は増えた。懐疑的だった幹部らにも、売り上げより利益、粗利を重視する意識が浸透したことは大きな収穫だ。三つ目が「BtoB事業」だ。年間400〜500案件ほどオファーがあり、小売りビジネスの粗利を超える収益性も含め、次の時代の布石になった。

WWD:コミュニティーブランド化への動きも活発化した。

設楽:各セクションで濃いファンのオフ会のような催しをしたり、人施策においては、コミュニティーを持っているスター社員の本を出版したり、出雲や日光に出店した「ビームス ジャパン(BEAMS JAPAN)」のゲートストアや地方店舗などで地域コミュニティーを作ったり。「フェルメリスト ビームス(VERMEERIST BEAMS)」20周年イベントには200人が来場。「ビームス エフ(BEAMS F)」45周年イベントではこんなにもスーツやジャケットをビシッと着こなす男性が集まるものなのかと驚きつつ、お客さま同士のつながりもできていた。「ビームス ボーイ(BEAMS BOY)」では企画会議に参加してもらったお客さまの声を反映した商品作りも実践。若手バイヤー主導の「フューチャー アーカイブ(FUTURE ARCHIVE)」も新世代のコミュニティーを生み出すなど、理想の形に近づいてきている。

WWD:24年のスローガンは?

設楽:「自ら熱源になれ!」だ。一人一人が進化し、お客さまにも取引先にも、スタッフ同士も経営陣も熱い思いを持った集団になりたい。店舗のスタッフは「ルミネスト認定会」で最上位のルミネストゴールドを獲得し、「スタッフオブザイヤー」で上位になるなどロープレにも前向きだし、SNS時代に入っても成果を出している。ビームスの自由かったつな社風が若手の熱量と相まっていい効果が出ている。

WWD:24年の大きなトピックスは?

設楽:次の時代のビームスのために、近代的なロジスティクスにすべく、物流センターを深川に移転する。面積は約1万坪で、世界初のロボティクス技術を使ったマテハン機器も導入する計画だ。色別、サイズ別で10万アイテム超、しかも、ファッションだけでなく家具やアートのような1点ものまで扱う難しさもあるが、自社物流で培ってきたノウハウに磨きをかける。

WWD:課題は海外事業とBtoB事業のさらなるブランディングだ。

設楽:海外は現地法人が8店舗を運営する台湾が先行している。ビームスは業界内では欧米、アジアで有名だが、一般の方にはアジア以外は認知度が高くないのでブランディングが必要だ。店を持つのが一番だが、セレクト業態は難しいので、海外バイヤーから評価の高い「ビームス プラス(BEAMS PLUS)」と「ビームス ボーイ」を欧米の展示会に出して、ブランドとして育てたい。また、台湾で現地企業とBtoBで協業するなど有機的につながる海外進出のビジョンが見えてきた。ビームスはとんがった面白いことをやる集団で、スポーツやマンガ、アートに強いスタッフも多い。それらをグローバル事業やBtoB事業に活用したい。人材育成の面でも、長い経験のあるスタッフに次の挑戦を促すいい流れができている。27校ある制服デザインのような、恒常的ビジネスのパートナー作りも重要だ。

WWD:基幹のtoC事業での課題は?

設楽:持続的なビジネスのためにも商品と価格のバランスは考えていきたい。極端な例だが、コラボ商品が発売日にメルカリで倍の値段で出品されているケースを考えると、その価値があるなら最初からその値段を付ければいいとも言える。お客さまの満足度を高めるこだわりがあり利益も出る、ビームスなりのリーズナブルのあり方を模索したい。

WWD:最後に、ファッション業界で働く人々にエールを。

設楽:日本を背負っているという思いで、一緒に日本を元気にしましょう!日本は歴史の中で培われた素晴らしいものがある。それを世界に送り届けるのはわれわれの役目だ。経済的な豊かさよりも文化やスピリチュアリティが重要になる時代の中で、日本自体がスーパーブランドになれる可能性がある。社内では「日本=ビームスになる」と言っている。48年前、たった6.5坪で「日本の若者の文化・風俗を変えるぞ」と言ってここまで来たのだから、それくらい言ってもいいでしょ(笑)。

会社概要

ビームス
BEAMS

1976年、段ボールを中心に扱う家業のパッケージ会社、新光紙器(現新光)がオイルショック直後に新事業「ビームス」を立ち上げる。82年ビームス設立。87年ビームスクリエイティブを設立。2011年にビームスホールディングス設立。売上高は23年2月期で831億円。30以上レーベルを展開し、期末店舗数は162店舗(うち、海外12店舗)。台湾と英国に現地法人を構える。従業員は2233人

問い合わせ先
ビームス
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INTERVIEW : KUMI MATSUSHITA

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藤原ヒロシが教える「正しい充電器の選び方」

藤原ヒロシといえば、ガジェット通で誰よりも早く最新のMacBookやiPhoneを手にしている印象が強いが、実は充電器にも詳しい。ガジェットを手に世界各地を飛び回る中で、これまでにさまざまな充電器を試してきたという。そんな藤原が日頃から愛用している「アンカー(ANKER)」と「フラグメント デザイン(FRAGMENT DESIGN)」のコラボモデル「アンカー プライム ウォール チャージャー(100W, 3 ports, GaN)フラグメント エディション(Anker Prime Wall Charger(100W, 3 ports, GaN)FRAGMENT Edition)」がこのほど発売した。最大100ワット(W)出力で3ポート搭載、1.8mのUSB-Cケーブルに「ラミダス(RAMIDUS)」の専用ポーチと、全てがちょうど良いサイズ感。ほとんど人は充電器のことを深く考えたことはないかも知れないが、実は奥が深いのだ。充電器を語らせたらちょっと“うるさい”藤原が、正しい充電器の選び方を教える。

――“充電器マニア”でもあるヒロシさんが、充電器に最も求めていることはなんですか?

藤原ヒロシ(以下、藤原):持ち歩きしやすいように小さい方がいいな、とかかな。確実に必要なものだから、新しいものが出たらどんどん買って試していますね。「アンカー」は初期の“アトム(Anker PowerPort Atom、2018年発売)”シリーズが登場してから急激に充電が速くなったんです。テクニカルなことは分からないけど、サイズは小さいのにワット(W)数が急激に上がった。

――なぜ、充電器にこだわるんですか?

藤原:MacBookが僕の仕事道具だと思っているので、常にMacBookを持ち歩いていて、常に充電もしたかったりするから。逆にみんなパソコンにはこだわるのに、なんで充電器にこだわらないんだって(笑)。

――確かに、充電器を気にしない人は多いですね。

藤原:ほとんどの人が大きく捉えていないことでも、実は大きな問題って結構あるんです。僕が常々思っているのは、イヤホンを左右逆につけている人がいっぱいいること。最近は形そのものが右耳用、左耳用になっているけど、気にしない人がいる。でもそれって僕らにとっては冒涜なんです。レコーディングしているときに左右ちゃんと決めていて、逆にすると聴こえない音もある。だからイヤホンとかも、もっと右と左が分かるようにしておいてくれたらいいのになとか、いろいろ思うことがあったんです。それと充電器も似ていて、昔のiPhoneの充電器を気にせず最新の機種にそのまま使っている人が結構います。MacBookもAirからProに買い替えるとジャック(出力端子)は同じだからAirの充電器とケーブルをそのまま使えはするんだけど、実は充電ワット数が全然違う。

――今回コラボした充電器は100Wですが、100Wを選んだ理由は何ですか?

藤原:最近出た100Wの充電器が持ち歩けるサイズで、出力が一番大きかったんです。MacBook Pro(の充電ワット数)が65〜140Wなので、100Wあれば安心ですね。

――iPhoneの初期の小さい充電器は5Wみたいですね。

藤原:厄介なことにそれでも充電できないわけではないんです。すごく時間がかかるだけで。最近はMacBookもiPhoneもジャックがUSB-Cになったから、ケーブルは共有できるものもあるんだけど、充電器は共有できない。時間は大切じゃないですか。

――充電器に“100W”と大きくデザインした理由は?

藤原:イヤホンの左右をちゃんとつけて欲しいのと同じです。同じようなサイズで65Wもあるから。よくみたら違うけど、これならすぐ分かるじゃないですか。

――確かに充電器って全部同じような黒い塊が多いというか……。

藤原:そうなんです。

――商品には「ラミダス」のポーチが付属するんですね。

藤原:結局こういうのってかさばるので、充電器とケーブルがちょうど入るサイズにしました。(充電器にはポートが3つ付いているので)ケーブルをもう1本用意していただければ、MacBookとiPhoneを同時に充電できます。

――4本付属する結束バンドも「フラグメント」のロゴが入った特別仕様ですね。

藤原:実はこれも改良した方がいいんじゃないか?って言ったんですけどね。これは絶対間違えていると思う。(先端をコードに巻き付け、穴に通してマジックテープで留める仕様だから)穴に通して引っ張る方が長くないといけないと思うんだけど、穴に通した方が短いから気付くとたまに取れてしまうんです。

――よく細かいところに気付かれますよね。

藤原:やっぱり旅をするからじゃない?でもここは今回改良できなかったんです。まぁ「アンカー」はベルクロ屋ではないので、充電器に注力してくれれば大丈夫なんですけどね(笑)。

――ちなみに、旅へはどのような充電器のセットを持っていくんでしょうか?

藤原:充電器1個と海外用の変換アダプターですね。スーツケースにも充電器を入れているけど、ラウンジで使うには持ち歩かなきゃいけないので。ラウンジは変換アダプターがないと使えないことが結構多いんです。

――充電器に関して、旅で困ることはありますか?

藤原:飛行機もだけど、充電器そのものが重くて大きいと、コンセントに差していても知らない間に抜け落ちていることがある。だけど、これはコンセントの部分がラバーコーティングしてあって落ちないんです。すごい小さなことだけど、重要なこと。移動中に充電されているはずが、着いたらされていなかったとかもあるので。

――そもそもヒロシさんは、どれくらいの頻度でガジェット(PCやその周辺機器)を買い替えますか?

藤原:情報が出たらついつい買ってしまいますね。

――頻繁にMacBookやiPhoneを買い替えると、データ移行が億劫じゃないですか?

藤原:ちょっと億劫だけど、なんとなく使命感的に。僕が率先して買い替えなかったら誰が買い替えるんだって(笑)。

――どのくらい昔のデータまで保存しているんですか?

藤原:基本的には全てしているはず。上手くデータ移行できていないときもあるだろうけど、2000年以降は確実にありますね。

――いつからラップトップを使われているんですか?

藤原:PowerBook(MacBookの前身のラップトップ)を買ったのが89年か90年だったかな。

――当時は海外へもPowerBookを持って行っていたんですか?

藤原:持っていっていました。そのときは買ったときに付いている純正の充電器だけだったと思います。

――充電器が選べるようになったのはいつ頃からですか?

藤原:充電器のサードパーティが出てきたのは、やっぱりiPhoneが普及してきてからですよね。たまにあったけど、そこまでポピュラーじゃなかったし。iPhoneが普及して、家に充電器を忘れる人が増えて、コンビニで売り出したりとかしたんじゃないですか。今でもMacはMacの充電器を使っている人が多いかも知れないけど、めっちゃでかいんですよ。なのに(充電ワット数が)80W。だから僕はMacBookの純正の充電器は開けてもいないです。別に家ならそれも使えるんだろうけど、それにしても大きいし、家用にももっといい「アンカー」の充電器がたくさんあるので、そっちの方がいいです。

――そうなんですか!じゃあ今回のコラボは、純正よりもハイスペック……。

藤原:はい。旅をすると本当に荷物が多くなっちゃうから、MacBookはモニターが大きい方がいいけど、充電器みたいなものは軽ければ軽い方がいいし、小さければ小さい方がいいですよね。今は100Wで十分だけど、これからもしMacBookやiPhoneがどんどん進化したら、もっとワット数の大きい充電器が必要になって、なおかつサイズも小さくなったりするだろうね。

――ヒロシさんが「アンカー」を使い続ける理由は何ですか?

藤原:ワット数の高い充電器って、最初に「アンカー」から出て、そのあと他のメーカーからもちょこちょこ出てくるんですが、それと比べるとデザインが「アンカー」の方がかっこいいからです。他も買って試していましたが、最近は「アンカー」しか買っていませんね。充電器は本当にワット数によって全然スピードが違うんで。知らない人は時間を無駄にしますよってことです(笑)。

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「徹底した現場主義」が世界で評価【NUNO 須藤玲子の見果てぬ布の旅 vol.5】

PROFILE:須藤玲子/「NUNO」代表兼ディレクター、東京造形大学名誉教授(手前)

(すどう・れいこ)1953年茨城県石岡市生まれ。日本の伝統的な染織技術から現代の先端技術を駆使し、新しいテキスタイルづくりをおこなう。作品は、ニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館、ロサンゼルスカウンティ美術館、ビクトリア&アルバート博物館、東京国立近代美術館など、世界の名だたるミュージアムに収蔵されている。2022年第11回円空大賞受賞。主な書籍に『日本の布(1〜4)』(MUJI BOOKS 2018, 2019)、『NUNO: Visionary Japanese Textiles』(Thames & Hudson 2021)など。写真は桐生の兵藤織物での須藤氏

世界的なテキスタイルデザイナーの一人である須藤玲子「NUNO」代表兼ディレクターにとって、日本の繊維産地は非常に深い関係がある。1987年に「NUNO」のディレクターに就任以来、ずっとほぼ全てのアイテムを日本で作り、須藤ディレクター自身が自らの足で産地を歩き、文字通り彼ら/彼女らと一体となってモノ作りを行ってきた。まさに“共創”と呼ぶにふさわしいモノ作りのこれまでを語った。(文中敬称略)

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1987年以来、「徹底した現場主義」を貫く

須藤は1987年にNUNOのディレクターになったとき「できる限り全アイテムを日本生産にする」と心に決め、以来ずっとそのルールを頑なに守っている。さらに「工場や職人と協業し、チームワークでモノづくりを進める」という信条を抱いている須藤にとって、全国各地にある産地で布づくりを行う工場や職人は、かけがえのない存在だ。繊維工場の場合、いわゆる中小・零細企業が多く、社長=職人という場合も多い。徹底した現場主義を貫き、積極的に工場へ赴き、ずっと職人と直にやりとりしてきた。

実際には産地ごとどころか、工場ごとに得意分野があり、どんな機械を持っていて、どんな技術を持っているかは異なっており、いわゆる産地の外にいるとそれを把握するのは実はかなり難しい。須藤の凄みは、非常に高い解像度でそれらを把握していること。つくりたいテキスタイルに対して、須藤の頭のなかにのみ存在する“日本産地マップ”があり、「この人に頼めばできるはず」「この産地に相談してみよう」と算段しているのだ。

1998年のMoMAによる「日本素材の展覧会」の衝撃

1998年9月12日から99年1月26日にかけてニューヨーク近代美術館(MoMA)が開催した「Structure and Surface: Contemporary Japanese Textiles」は、日本の布づくりの偉大さとユニークさを世界に発信し、世界の繊維・アパレル関係者、アート、デザイン分野で高い評価を得た。加えて、これまで日本国内ですらあまり表に出てこなかった「産地企業」が名前付きで大きく前に出たことで、その後の日本の繊維産業に衝撃を与えた。

この展覧会は、須藤にも大きく、そして深く影響を与えている。実はこの展覧会の実施から10年前にさかのぼるある日、須藤の元を後に同展覧会担当キュレーターになるカーラ・マッカーシー(Cara McCarty)とマチルダ・マクエイド(Matilda McQuaid)が訪れた。聞けば、当時「イッセイミヤケ」「コム デ ギャルソン」などを通して、欧米で関心の高まっていた日本のテキスタイルにフォーカスした展覧会をしたいという。「私に案内役になって欲しいというんですよ。それなら、ということで北は青森から、南は沖縄まで、彼女たちを案内して回ったんです。当時はインターネットなんてない時代です。それこそ、産地ごとに組合の電話番号を調べて、その産地の工場を紹介してもらって、電話してアポを取り付けてカーラとマチルダと一緒に回って、ということを繰り返しました」と須藤は語る。

当時、須藤もキュレーターのふたりも、気力、体力ともに充実した30代で、「日本のテキスタイルのものづくりの現場を知り尽くしてやろう」という熱い野心に燃えていた。「当初は10年も続けるとは思いませんでしたけど(笑)」。このリサーチは須藤に単に産地ごとの特色やものづくりの知見をもたらしただけでなく、全国津々浦々に存在する職人やテキスタイル会社とのつながりも構築した。「京都には軽自動車に布を積んで、河原で染色したり、晒しをしたりする染色工場のCBU工芸の梅谷和夫さんや、当時最先端の加工技術だった『スパッタリング』をテキスタイルに加工してやろうという愛知県蒲郡市の鈴寅(現・積水ナノコートテクノロジー)、沖縄では八重山上布の作家など、色々な人に出会いました」。ハイテクから工芸、織物から編み物、シルクから綿、ポリエステルまで、バリエーション豊かで、様々な要素が絡み合って成立していた「日本の布」は、当時実は世界的にもユニークなポジションにあった。そのモノづくりの現場と直接つながったことは、須藤を唯一無二のテキスタイルデザイナーに押し上げる一因になったのだ。

現場との結びつきが新しいデザインやテキスタイルを生み出す

ただ、現場の産地企業の経営者や職人と、「最初からスムーズにやりとりできたわけではない」と須藤は言う。産地を訪れ始めた1980年代後半、工場のガードは堅く、簡単に受け入れてはもらえなかった。しかし諦めることなく、何度も依頼を繰り返す。「機械を理解することは、布を理解することと同じ。布がどのようにつくられるのか、その構造を知るためには、機械を知らなければなにも理解できない」。絶対に撮影しないと誓い、ようやく工場の扉が開くこともあったという。そうして時間をかけて全国各地の工場を訪れ、多くの職人との交流が生まれた。

機械を知ることで、新たな試みも提案できるようになる。その工場では扱ってこなかった素材を試したり、技術を転用するアイデアも持ち込める。職人たちにとっては布づくりのプロセスに過ぎないからと放り出されているサンプルが、デザインを触発することもあった。また、職人たちがどのような環境で布をつくり出しているのかを目の当たりにすることで、課題と同時に可能性も見いだせる。工場のこと、機械のこと、職人のことをきちんと理解した上での提案だから、聞く耳を持ってもらえる。ときには職人の方から「こういうつくり方はどうか」と提案を受けることもあるという。自らが現場に飛び込むことで培ってきた信頼関係があってこそ、である。

また、布以外の要素にも、産地の特色を積極的に採り入れている。たとえば大分県立美術館(設計:坂茂)の巨大なオブジェを制作した際には、大分の伝統工芸である竹編みの作家を訪ね、構造に転用。NUNOが編み出した折り紙プリーツを立体的に浮かばせている。「布を知ることで、その地域の文化や歴史、そして日々の生活が見えてくる」と須藤は言う。

「Found MUJI」店頭で「日本の布」プロジェクト、4冊の本にも

2013年にはアドバイザリーボードを務める無印良品で「日本の布」プロジェクトを立ち上げ、山形から沖縄まで数多くの産地を訪れ、その産地や工場の特性を活かした商品をつくり、東京・青山のショップ「Found MUJI」で展覧会を開催。4冊の本にもまとめた。

日本の布づくりの現場は、国際的な価格競争や後継者難など、厳しい現実と戦っている。着物産業を背景に技術を伝承してきた産地は、未来をどう描けばいいのか、模索している事項も多い。また、布は我々の生活に対してとても身近である存在でありながら、産地ごとの特徴や、布づくりの構造や仕組みはそれほど知られてこなかった。そのことに須藤は危惧を抱いている。打破すべく、展覧会などを通して布の成り立ちを積極的に紹介し、職人たちの姿を浮かび上がらせる。伝統的な布づくりを行ってきた産地の魅力を、現代の生活に通じるものとして引き出して商品化し、多くのひとの眼に触れるようにする。生産者と消費者をつなぐことで、ものづくりの未来を少しでも明るいものにしたいと願っているからこそ、いまなお全国の産地に赴く。

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2通りの突き抜け方で 飛ばし始めたヒットを、魂を揺さぶるホームランに【アルビオン 小林章一社長】

PROFILE: 小林章一/アルビオン社長

小林章一/アルビオン社長
PROFILE: (こばやし・しょういち)1963年生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、西武百貨店勤務を経て、88年にアルビオンに入社。「ソニア リキエル ボーテ」事業の立ち上げなど、ブランドビジネスに携わる。フランス勤務を経て、91年に取締役に就任。95年、常務取締役・マーケティング本部長に就任。副社長を経て、2006年から現職 PHOTO:TAMEKI OSHIRO

知名度も人気も高かったシリーズを廃し退路を断つ形で始めた新スキンケアシリーズの“フラルネ”、現状に満足せず大人気の中で刷新してきた“薬用スキンコンディショナー エッセンシャル”や“エクラフチュール”など、アルビオンは攻めの姿勢が続く。大胆な戦略の奥底にあるのは、小林章一社長がかつて体感した「魂が揺さぶられるような成功体験」と、そこから生まれた化粧品への愛だ。ここまで商品にこだわる小林社長の成功体験とは?そして、その感動体験をどう後に続く社員に広めようとしているのかを聞いた。
(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

「化粧品って、面白い!」
そう思える価値を提供したい

WWDJAPAN(以下、WWD):2022年に発売したスキンケアシリーズ“フラルネ”以降、かつてのコンフォート・ゾーンからの脱却を目指した商品開発に意欲的だ。

小林章一アルビオン社長(以下、小林):一昨年からの新しいチャレンジは、正直批判も多かった。けれど新規は確実に増えている。一つ一つの商品のブランド力を高め、最終的な肌実感はもちろん、アイデアの段階からワクワクする“突き抜けた”商品で新しい市場を開拓したい。アルビオンの“突き抜け方”は、大別すると2通り。1つ目は“フラルネ”のように、スタート時はおとなしくてもユーザーから評判がジワジワと広がり、スタッフとお店さまが一丸となって、その評価をより多くの消費者に伝えようと努力して成し遂げる突き抜け方。“フラルネ”においては、他社とは全く違う乳液の評判が広がりつつある中、ブライトニングシリーズを投入したり、新たなプロモーション施策に取り組んだりして、23年は大きく成長した。私たちが突き抜けていると思う商品を、より多くの消費者に実感いただけるようになった。2つ目は、“薬用スキンコンディショナー エッセンシャル”に代表される、すでに突き抜けている商品さえ「もっと突き抜けられる」と信じてアグレッシブに取り組むリニューアルだ。昨年は、美容液の“エクラフチュール”をリニューアル。独自の保湿成分“夢彩花エキス”(シャクヤク花エキス)など原料においても突き抜けた商品は、リニューアル以降、さらなる大きな結果につながっている。アルビオンのやり方では、突き抜けるのに時間がかかるかもしれない。スキンケアならなおさらだが、それでも構わない。夢中になって、魂が揺さぶられるような成功体験を味わうことで、関係者一同が「化粧品って、面白い!」と思えるような商品・ブランド価値の創造に取り組みたい。

WWD:自身に「魂が揺さぶられるような成功体験」がある?

小林:「ブルガリ」と作った“おしぼり”だ。“おしぼり界の「ロールスロイス」”を目指し、香水ではなく化粧水に浸したおしぼりを、4層構造のパッケージに収めて販売。世界中から注文が押し寄せ、2000万本を売った。輸入販売だけだと思っていた「ブルガリ」の香水ビジネスが広がり、「化粧品って、面白い!」と思った。「アナ スイ」の化粧品を立ち上げ、百貨店における化粧品の単日販売記録を樹立したのも、人生に一度あるかないかのサクセスストーリーだ。

WWD:振り返って、魂が揺さぶられるほどの成功に必要なものとは?

小林:当たり前を疑い、本気で「壊す」ことだ。その間に売り上げが下がっても構わない。本気で「壊す」のはとても難しいことだし、経営陣としてバックアップしきれていない反省もあるが、ヒットに恵まれてきた今なら失敗できる。今のヒットを将来のホームランにしたい。ヒットも打てないバッターには、ホームランは望めない。ただ今のアルビオンは、ヒットを飛ばし始めている。全体の8割に上るスキンケアとベースメイク商品は、1年でも、1日でも長く愛していただけるよう、1品1品を育てる。将来は手間暇をかけてリニューアルして、またみんなで一緒に育てる。育てるのが、アルビオンの文化だ。創業以来、時代の空気を吸ってきた。アルビオンらしく呼吸することで、あくまで作る商品は私たちらしく、そして唯一無二でありたい。

WWD:育て、突き抜けた商品が次々生まれた先にある理想像は?

小林:販売数量も大事だが、圧倒的な存在感を誇る会社だ。トヨタが年間約1000万台の車を販売する中、対するフェラーリは年間およそ1万数千台。でも多くの消費者にとって、その存在感はトヨタ以上だろう。

WWD:育てる商品を生み出すため、今後取り組むのは?

小林:会社が課す業務に割くのは、働く時間のおよそ半分。残りの半分で「やりたいこと」にトライできる環境を整えたい。「やりたいこと」は、予算も、期限も、目標も、発案者と組織の双方で確認しつつも個人の裁量に委ね、10回失敗した人を、何もしなかったから一度も失敗しなかった人より評価したい。「失敗しても良いから」「何をやってもいいから」「失敗もまた勉強だから」を表面的な言葉ではなく、全ての部署に通底している価値観や考え方にしたい。世に送り出そうとする商品について「売れ過ぎちゃったらどうしよう!?」なんて妄想できるくらい、提案から開発、商品化から販売に至るまで一貫してワクワクし続けられる会社でありたい。私は「みんなの給料を2倍にしたい」と思いながら日々の仕事に励んでいる。「やらされている」と感じるような仕事からは、突き抜けられる商品は生まれない。そしてアルビオンは商品のみならず、その流通から販売においても、存在感において一番になりたいと思っている。「化粧品業界でいい仕事がしたいなら、アルビオンだよね」と思ってほしい。

会社概要

アルビオン
ALBION

「日本一、世界一の高級化粧品メーカーを目指す」という夢を掲げて、1956年に創業。乳液先行の独自の美容理論を確立。主軸のスキンケアブランド「アルビオン」には、創業時から販売する乳液や、74年に誕生した“薬用スキンコンディショナー エッセンシャル”など、ロングセラー商品が多数存在する。そのほか「エレガンス」「イグニス」「ポール & ジョー ボーテ」「アナ スイ コスメティックス」などを手掛ける

問い合わせ先
アルビオンお客様相談室
0120-114-225
(10:00〜17:00/土・日・祝日除く)

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2通りの突き抜け方で 飛ばし始めたヒットを、魂を揺さぶるホームランに【アルビオン 小林章一社長】

PROFILE: 小林章一/アルビオン社長

小林章一/アルビオン社長
PROFILE: (こばやし・しょういち)1963年生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、西武百貨店勤務を経て、88年にアルビオンに入社。「ソニア リキエル ボーテ」事業の立ち上げなど、ブランドビジネスに携わる。フランス勤務を経て、91年に取締役に就任。95年、常務取締役・マーケティング本部長に就任。副社長を経て、2006年から現職 PHOTO:TAMEKI OSHIRO

知名度も人気も高かったシリーズを廃し退路を断つ形で始めた新スキンケアシリーズの“フラルネ”、現状に満足せず大人気の中で刷新してきた“薬用スキンコンディショナー エッセンシャル”や“エクラフチュール”など、アルビオンは攻めの姿勢が続く。大胆な戦略の奥底にあるのは、小林章一社長がかつて体感した「魂が揺さぶられるような成功体験」と、そこから生まれた化粧品への愛だ。ここまで商品にこだわる小林社長の成功体験とは?そして、その感動体験をどう後に続く社員に広めようとしているのかを聞いた。
(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

「化粧品って、面白い!」
そう思える価値を提供したい

WWDJAPAN(以下、WWD):2022年に発売したスキンケアシリーズ“フラルネ”以降、かつてのコンフォート・ゾーンからの脱却を目指した商品開発に意欲的だ。

小林章一アルビオン社長(以下、小林):一昨年からの新しいチャレンジは、正直批判も多かった。けれど新規は確実に増えている。一つ一つの商品のブランド力を高め、最終的な肌実感はもちろん、アイデアの段階からワクワクする“突き抜けた”商品で新しい市場を開拓したい。アルビオンの“突き抜け方”は、大別すると2通り。1つ目は“フラルネ”のように、スタート時はおとなしくてもユーザーから評判がジワジワと広がり、スタッフとお店さまが一丸となって、その評価をより多くの消費者に伝えようと努力して成し遂げる突き抜け方。“フラルネ”においては、他社とは全く違う乳液の評判が広がりつつある中、ブライトニングシリーズを投入したり、新たなプロモーション施策に取り組んだりして、23年は大きく成長した。私たちが突き抜けていると思う商品を、より多くの消費者に実感いただけるようになった。2つ目は、“薬用スキンコンディショナー エッセンシャル”に代表される、すでに突き抜けている商品さえ「もっと突き抜けられる」と信じてアグレッシブに取り組むリニューアルだ。昨年は、美容液の“エクラフチュール”をリニューアル。独自の保湿成分“夢彩花エキス”(シャクヤク花エキス)など原料においても突き抜けた商品は、リニューアル以降、さらなる大きな結果につながっている。アルビオンのやり方では、突き抜けるのに時間がかかるかもしれない。スキンケアならなおさらだが、それでも構わない。夢中になって、魂が揺さぶられるような成功体験を味わうことで、関係者一同が「化粧品って、面白い!」と思えるような商品・ブランド価値の創造に取り組みたい。

WWD:自身に「魂が揺さぶられるような成功体験」がある?

小林:「ブルガリ」と作った“おしぼり”だ。“おしぼり界の「ロールスロイス」”を目指し、香水ではなく化粧水に浸したおしぼりを、4層構造のパッケージに収めて販売。世界中から注文が押し寄せ、2000万本を売った。輸入販売だけだと思っていた「ブルガリ」の香水ビジネスが広がり、「化粧品って、面白い!」と思った。「アナ スイ」の化粧品を立ち上げ、百貨店における化粧品の単日販売記録を樹立したのも、人生に一度あるかないかのサクセスストーリーだ。

WWD:振り返って、魂が揺さぶられるほどの成功に必要なものとは?

小林:当たり前を疑い、本気で「壊す」ことだ。その間に売り上げが下がっても構わない。本気で「壊す」のはとても難しいことだし、経営陣としてバックアップしきれていない反省もあるが、ヒットに恵まれてきた今なら失敗できる。今のヒットを将来のホームランにしたい。ヒットも打てないバッターには、ホームランは望めない。ただ今のアルビオンは、ヒットを飛ばし始めている。全体の8割に上るスキンケアとベースメイク商品は、1年でも、1日でも長く愛していただけるよう、1品1品を育てる。将来は手間暇をかけてリニューアルして、またみんなで一緒に育てる。育てるのが、アルビオンの文化だ。創業以来、時代の空気を吸ってきた。アルビオンらしく呼吸することで、あくまで作る商品は私たちらしく、そして唯一無二でありたい。

WWD:育て、突き抜けた商品が次々生まれた先にある理想像は?

小林:販売数量も大事だが、圧倒的な存在感を誇る会社だ。トヨタが年間約1000万台の車を販売する中、対するフェラーリは年間およそ1万数千台。でも多くの消費者にとって、その存在感はトヨタ以上だろう。

WWD:育てる商品を生み出すため、今後取り組むのは?

小林:会社が課す業務に割くのは、働く時間のおよそ半分。残りの半分で「やりたいこと」にトライできる環境を整えたい。「やりたいこと」は、予算も、期限も、目標も、発案者と組織の双方で確認しつつも個人の裁量に委ね、10回失敗した人を、何もしなかったから一度も失敗しなかった人より評価したい。「失敗しても良いから」「何をやってもいいから」「失敗もまた勉強だから」を表面的な言葉ではなく、全ての部署に通底している価値観や考え方にしたい。世に送り出そうとする商品について「売れ過ぎちゃったらどうしよう!?」なんて妄想できるくらい、提案から開発、商品化から販売に至るまで一貫してワクワクし続けられる会社でありたい。私は「みんなの給料を2倍にしたい」と思いながら日々の仕事に励んでいる。「やらされている」と感じるような仕事からは、突き抜けられる商品は生まれない。そしてアルビオンは商品のみならず、その流通から販売においても、存在感において一番になりたいと思っている。「化粧品業界でいい仕事がしたいなら、アルビオンだよね」と思ってほしい。

会社概要

アルビオン
ALBION

「日本一、世界一の高級化粧品メーカーを目指す」という夢を掲げて、1956年に創業。乳液先行の独自の美容理論を確立。主軸のスキンケアブランド「アルビオン」には、創業時から販売する乳液や、74年に誕生した“薬用スキンコンディショナー エッセンシャル”など、ロングセラー商品が多数存在する。そのほか「エレガンス」「イグニス」「ポール & ジョー ボーテ」「アナ スイ コスメティックス」などを手掛ける

問い合わせ先
アルビオンお客様相談室
0120-114-225
(10:00〜17:00/土・日・祝日除く)

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組織の壁をなくし主体的な挑戦や変革を【ポーラ・オルビスHD 横手喜一社長】

PROFILE: 横手喜一/ポーラ・オルビス ホールディングス社長

横手喜一/ポーラ・オルビス ホールディングス社長
PROFILE: (よこて・よしかず)1967年東京生まれ。一橋大学社会学部卒業後、1990年4月ポーラ化粧品本舗(現ポーラ)入社。2006年フューチャーラボ社長や11年宝麗(中国)美容(ポーラ瀋陽)董事長兼総経理を経て、15年からポーラ執行役員商品企画部長、16年1月にポーラ社長に就任。20年1月ポーラ・オルビスホールディングス取締役グループ海外展開担当などを経て、23年1月から現職 PHOTO : SHUNICHI ODA

鈴木鄕史会長の意思を引き継ぎ社長就任1年が経過した横手喜一社長は、組織のリゾーム化を推進することを軸に舵取りをはじめ、グループ会社との連携を強めてきた。国内のみならず海外事業でも同様で、これまでの縦割りから水平の連携が取れる組織に変革。それら取り組みが長期経営計画「VISION 2029」のステージ1の最終年度であった23年の好結果に結びついた。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

トップダウンを飛び越えていく風土へ

WWDJAPAN(以下、WWD):23年の取り組みと成果、組織のリゾーム化の進捗は?

横手喜一社長(以下、横手):グループ全体を見る立場として、組織を一度バラバラに考えた後に融合するという取り組みを進めた。コロナ禍で人とのつながりや理解し合うことが希薄になったと実感する。われわれのビジネスはお客さまの気持ちを動かすことがベースになるため、人と人が向き合った時に生み出されるものをよみがえらせるのが狙いだ。

WWD:組織の壁を取り払い、つながり合える人間関係を再構築した。

横手:トップダウンではなくそれを飛び越えていけるような風土を浸透させたい。グループ全従業員約4100人、一人一人が持つ個性や強み、思いを存分に発揮し、そこから生まれる主体的な挑戦や変革がグループやブランドの未来を切り開く。個のエネルギーこそが組織を進化させるだろう。それは従業員だけでなく役員も同様で、昨年からグループ主要会社役員によるリーダーシップチームを組成した。異なる立場の相互理解やグループ共通課題の認識をあわせつつ、それぞれが持つ個の力を結集してグループ共通課題の変革や成長戦略を作る事を目的としている。そのためには、あえて幼少期からの自己紹介から始め胸襟を開いて議論できる場を作ることで、一人一人の個性と価値観が理解でき、考え方や発言に共感も生まれてきた。その上で、長期経営計画である「VISION2029」の達成に向け、バックキャスト志向で新中期計画策定にあたった。そのような1年だったと振り返っている。

WWD:現在のブランドポートフォリオで手薄に感じていることは?

横手:「VISION2029」の主戦略の一つに、新事業領域拡張がある。化粧品の枠組みとは異なる別の分野にビジネスチャンスを生み出すことを重視する。化粧品はお客さまを美しく、健やかに人生を豊かにする手段の一つであるが、それだけが全てではない。そのためには肌研究を長年続けてきた研究所発の新しい技術こそが人の生活スタイルを変容できるのではないか。研究領域もただ単に機能性を重視する従来の研究だけでなく、肌研究の知見を活かしたウェルビーイング領域や社会課題解決も含めた研究をテーマにしている。

WWD:若手社員の活躍も目覚ましい。

横手:この3年で若手社員を中心に約300件の新規アイデア提案があった。昨年は子ども向けブランド「スタスタ」や香水のサブスク「エラム(ERAM)」、オンラインのファスティングプログラム「リモファス」など事業化に進んでいるものもある。約300件の中から誕生したものに、研究所の新しい技術などを反映できたら面白い科学反応が生まれるだろう。

WWD:新価値を生み出すために人材の多様性を重視する。

横手:環境を戦略的に用意しないと熱意やスピード感をもった事業創出が実現しにくい。そのためにも、今後はグループ全体での人材採用の在り方を見直し、多様な人材を登用・育成していくための枠組みを作っていく。ブランドの垣根を越えた人材配置を積極的に行うことで、グループの持つ多様なブランドやカルチャーが学べ、多彩な経験値を得ることで、個性豊かな人材育成につながるだろう。

WWD:24年に注力すべきことは?

横手:まずは海外事業。成長のカギは重点市場である中国に変わりない。市場変化をダイレクトに捉える現地リーダーシップのもと、マルチブランドの強みを生かし、グループとして最適な戦略を市場や顧客の変化に対応しながら迅速に遂行し、業績最大化を実現できる組織体制へ移行を進める。その一環として1月に、中国に地域統括会社であるリージョンカンパニーを設立した。また、これまでポーラとオルビスの中国の現地法人だったポーラ上海とオルビス北京をホールディングスの完全子会社化とした。今後はグループが中国市場全体を捉えて、どのブランドで勝負するのかを考えるべき。現地に権限を渡しビジネスを組み立て資金配分をどうするのかも任せたい。昨年、その土壌を整えてきたので今年はそれを実行に移す時期だ。

 

一方で、海外に投資するには国内の事業基盤を盤石なものにする必要がある。「オルビス(ORBIS)」は商品力をフックに顧客構造がよりよくなってきたため、ブランドの魅力を再発信する。「ポーラ(POLA)」はSNSを含めたデジタル施策を強め、エステやカウンセリングを提案するサロン型ショップへ誘導し、より深い「ポーラ」のファンになってもらい継続率やLTV(顧客生涯価値)が上がるOMO施策を推進する。「スリー(THREE)」は23年11月に精油のみで構成したフレグランス“エッセンシャルセンツ”を発売した。今後は、精油を軸にフレグランスからスキンケアまで一気通貫する売り場を作り強化していく。

会社概要

ポーラ・オルビス ホールディングス
POLA ORBIS HOLDINGS

基幹ブランドを展開するポーラは1929年創業。女性が活躍する訪問販売を中心に事業を拡大し、89年に百貨店市場に進出する。現在、訪問販売はサロンを拠点とするビジネスに形を変えている。手掛けるブランドは「ポーラ」「オルビス」「ディセンシア(DECENCIA)」「スリー」「ファイブイズムバイスリー(FIVEISM × THREE)」「ジュリーク」「フジミ(FUJIMI)」など

問い合わせ先
ポーラ・オルビス ホールディングス
03-3563-5517

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組織の壁をなくし主体的な挑戦や変革を【ポーラ・オルビスHD 横手喜一社長】

PROFILE: 横手喜一/ポーラ・オルビス ホールディングス社長

横手喜一/ポーラ・オルビス ホールディングス社長
PROFILE: (よこて・よしかず)1967年東京生まれ。一橋大学社会学部卒業後、1990年4月ポーラ化粧品本舗(現ポーラ)入社。2006年フューチャーラボ社長や11年宝麗(中国)美容(ポーラ瀋陽)董事長兼総経理を経て、15年からポーラ執行役員商品企画部長、16年1月にポーラ社長に就任。20年1月ポーラ・オルビスホールディングス取締役グループ海外展開担当などを経て、23年1月から現職 PHOTO : SHUNICHI ODA

鈴木鄕史会長の意思を引き継ぎ社長就任1年が経過した横手喜一社長は、組織のリゾーム化を推進することを軸に舵取りをはじめ、グループ会社との連携を強めてきた。国内のみならず海外事業でも同様で、これまでの縦割りから水平の連携が取れる組織に変革。それら取り組みが長期経営計画「VISION 2029」のステージ1の最終年度であった23年の好結果に結びついた。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

トップダウンを飛び越えていく風土へ

WWDJAPAN(以下、WWD):23年の取り組みと成果、組織のリゾーム化の進捗は?

横手喜一社長(以下、横手):グループ全体を見る立場として、組織を一度バラバラに考えた後に融合するという取り組みを進めた。コロナ禍で人とのつながりや理解し合うことが希薄になったと実感する。われわれのビジネスはお客さまの気持ちを動かすことがベースになるため、人と人が向き合った時に生み出されるものをよみがえらせるのが狙いだ。

WWD:組織の壁を取り払い、つながり合える人間関係を再構築した。

横手:トップダウンではなくそれを飛び越えていけるような風土を浸透させたい。グループ全従業員約4100人、一人一人が持つ個性や強み、思いを存分に発揮し、そこから生まれる主体的な挑戦や変革がグループやブランドの未来を切り開く。個のエネルギーこそが組織を進化させるだろう。それは従業員だけでなく役員も同様で、昨年からグループ主要会社役員によるリーダーシップチームを組成した。異なる立場の相互理解やグループ共通課題の認識をあわせつつ、それぞれが持つ個の力を結集してグループ共通課題の変革や成長戦略を作る事を目的としている。そのためには、あえて幼少期からの自己紹介から始め胸襟を開いて議論できる場を作ることで、一人一人の個性と価値観が理解でき、考え方や発言に共感も生まれてきた。その上で、長期経営計画である「VISION2029」の達成に向け、バックキャスト志向で新中期計画策定にあたった。そのような1年だったと振り返っている。

WWD:現在のブランドポートフォリオで手薄に感じていることは?

横手:「VISION2029」の主戦略の一つに、新事業領域拡張がある。化粧品の枠組みとは異なる別の分野にビジネスチャンスを生み出すことを重視する。化粧品はお客さまを美しく、健やかに人生を豊かにする手段の一つであるが、それだけが全てではない。そのためには肌研究を長年続けてきた研究所発の新しい技術こそが人の生活スタイルを変容できるのではないか。研究領域もただ単に機能性を重視する従来の研究だけでなく、肌研究の知見を活かしたウェルビーイング領域や社会課題解決も含めた研究をテーマにしている。

WWD:若手社員の活躍も目覚ましい。

横手:この3年で若手社員を中心に約300件の新規アイデア提案があった。昨年は子ども向けブランド「スタスタ」や香水のサブスク「エラム(ERAM)」、オンラインのファスティングプログラム「リモファス」など事業化に進んでいるものもある。約300件の中から誕生したものに、研究所の新しい技術などを反映できたら面白い科学反応が生まれるだろう。

WWD:新価値を生み出すために人材の多様性を重視する。

横手:環境を戦略的に用意しないと熱意やスピード感をもった事業創出が実現しにくい。そのためにも、今後はグループ全体での人材採用の在り方を見直し、多様な人材を登用・育成していくための枠組みを作っていく。ブランドの垣根を越えた人材配置を積極的に行うことで、グループの持つ多様なブランドやカルチャーが学べ、多彩な経験値を得ることで、個性豊かな人材育成につながるだろう。

WWD:24年に注力すべきことは?

横手:まずは海外事業。成長のカギは重点市場である中国に変わりない。市場変化をダイレクトに捉える現地リーダーシップのもと、マルチブランドの強みを生かし、グループとして最適な戦略を市場や顧客の変化に対応しながら迅速に遂行し、業績最大化を実現できる組織体制へ移行を進める。その一環として1月に、中国に地域統括会社であるリージョンカンパニーを設立した。また、これまでポーラとオルビスの中国の現地法人だったポーラ上海とオルビス北京をホールディングスの完全子会社化とした。今後はグループが中国市場全体を捉えて、どのブランドで勝負するのかを考えるべき。現地に権限を渡しビジネスを組み立て資金配分をどうするのかも任せたい。昨年、その土壌を整えてきたので今年はそれを実行に移す時期だ。

 

一方で、海外に投資するには国内の事業基盤を盤石なものにする必要がある。「オルビス(ORBIS)」は商品力をフックに顧客構造がよりよくなってきたため、ブランドの魅力を再発信する。「ポーラ(POLA)」はSNSを含めたデジタル施策を強め、エステやカウンセリングを提案するサロン型ショップへ誘導し、より深い「ポーラ」のファンになってもらい継続率やLTV(顧客生涯価値)が上がるOMO施策を推進する。「スリー(THREE)」は23年11月に精油のみで構成したフレグランス“エッセンシャルセンツ”を発売した。今後は、精油を軸にフレグランスからスキンケアまで一気通貫する売り場を作り強化していく。

会社概要

ポーラ・オルビス ホールディングス
POLA ORBIS HOLDINGS

基幹ブランドを展開するポーラは1929年創業。女性が活躍する訪問販売を中心に事業を拡大し、89年に百貨店市場に進出する。現在、訪問販売はサロンを拠点とするビジネスに形を変えている。手掛けるブランドは「ポーラ」「オルビス」「ディセンシア(DECENCIA)」「スリー」「ファイブイズムバイスリー(FIVEISM × THREE)」「ジュリーク」「フジミ(FUJIMI)」など

問い合わせ先
ポーラ・オルビス ホールディングス
03-3563-5517

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美の創造と顧客に響く商品を生み出しグローバル展開を加速【コーセー 小林一俊社長】

PROFILE: 小林一俊/コーセー社長

小林一俊/コーセー社長
PROFILE: (こばやし・かずとし)1962年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、86年にコーセーに入社。91年に取締役マーケティング副本部長兼宣伝部長、2004年から副社長を務める。07年から現職。就任直後に「守りの改革」と「攻めの改革」を実行し、V字回復を実現。現在、「世界で存在感のある企業への進化」を掲げ、取り組みを加速している PHOTO:YUKIE SUGANO

包摂性の高い社会に向け、3G(グローバル、ジェンダー、ジェネレーション)を基盤に顧客層拡大を目指すコーセー。2023年、“大谷効果”で不動の地位を確立したパイオニアは今年、生産部、生産会社であるコーセーインダストリーズ及び生産子会社、商品開発、商品デザイン、購買、サプライチェーンの各部門を組織化し、商品本部を新設。グローバルでも存在感を発揮する企業を目指す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

プレステージブランドのシェア拡大へ

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年をどのように振り返る?

小林一俊社長(以下、小林):22年から継続する3Gを基盤とした取り組みの成果が表れ、好調な1年だった。23年を終え、26年に向けた中長期ビジョン「VISION 2026」まで残り3年、そして3人目の男性アスリートと契約するなど、総じて数字の“3”がキーワードとなる年でもあった。個人的には大好きな3つの野球チーム「WBC日本代表」「母校の慶應義塾高校」「阪神タイガース」が優勝したこともビッグニュースだった。

WWD:中でも昨年は “大谷効果”が際立った。

小林:3Gの柱の一つであるジェンダー領域の秘策として、米MLBロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手(当時ロサンゼルス・エンゼルス所属)を商品の広告モデルに起用した反響は想定以上で、年間を通じて大幅な売り上げ増に貢献した。大型プロモーションを仕掛けた“コスメデコルテ リポソーム アドバンスト リペアセラム”は爆発的ヒット。キャンペーン期間中には百貨店の「コスメデコルテ(DECORTE)」カウンターに来店する男性客も13倍と急増した。ハイプレステージかつ美容液という、意外性ある商材での起用が話題性を生んだのではないか。年末に飛び込んできた移籍の話にはびっくりしたが、まさかドジャースとは。当社のコーポレートカラーと同じ青がチームカラーでなにかの縁を感じる。今年も大谷選手との強力なタッグを組んで展開していく。

WWD:3人目の男性アスリートとの契約については?

小林:羽生結弦選手、大谷翔平選手に続く3人目の男性アスリートとして、バレーボール男子日本代表の髙橋藍選手とスポンサー契約を締結した。髙橋選手はヨーロッパで活躍するだけでなく、ASEANでも非常に人気がある。当社のグローバル戦略で掲げる新しい地域であり、今回契約するに至った。当社は1980年代からスポーツ支援を行っており、多様なアスリートを協賛してきた長い歴史がある。スポーツ総合誌『ナンバー』とコラボレートし、自社サイト「コーセー スポーツ ビューティ」を立ち上げたのは、美の創造企業としてスポーツと美の融合や人々の健康意識向上に貢献したい思いがあるからだ。

WWD:23年はヒット商品も多く生み出されている。

小林:「コスメデコルテ」の“AQ アブソリュート エマルジョン マイクロラディアンス”、「ヴィセ(VISEE)」の “ネンマクフェイク ルージュ”、「ワンバイコーセー(ONE BY KOSE)」の“セラムシールド”など、ハイプレステージからコンシューマーブランドまでヒット商品が豊作だったが、これからさらに23年に行った組織改革の成果が期待できる。モノ作りからプロモーション、売り場や話題作りまでそれぞれのブランド戦略を一気通貫して取り組める事業部制へと変革したことで、より魅力的なブランド、商品の構築につながってくる。ステップごとに担当者が替わるバトンタッチ方式ではなく、全員が一緒に走りながらパスを回すラグビー方式であることが大切だ。

WWD:モノ作りにおける変化は?

小林:世代交代が起き、若手が活躍している。彼らの発想は目新しく、独自の感性がある。例えば「ヴィセ」の“ネンマクフェイク ルージュ”は若手社員が担当しているが、カラーネームの“わがままな肉球”などの奇抜なネーミングには当初驚いた(笑)。だが、最近は私が口出しせず、サントリーの鳥井信治郎創業者の言葉ではないが、“やってみなはれ精神”で若手の挑戦を歓迎するようにしている。そうした風土が新世代の感性を生かし、尖った商品作りにつながっているのではないか。

WWD:組織変更と人事異動の狙いは?

小林:1月1日付で新たに商品本部を設置し、小林正典・常務 前マーケティング本部長が商品本部長に就任した。これは3Gの柱の一つ、グローバル戦略の一環で、グローバル商品開発体制を整えていくだめだ。現在韓国や中国ブランドの勢いが増し、日本参入も目立つ。彼らは世界各国に研究所や工場を展開し、最先端のノウハウや各国に対応する処方を持つODMやOEMの企業を上手く活用している。これまで自社内製にこだわってきたが、変化の早い世界に対応し、よりその地域のニーズに応えていくためにはそういった企業とも手を組み、グローバル外注も取り入れて、内作と外作をうまく使い分けながらグローバル商品開発体制を強化する必要があるだろう。

WWD:24年に向けた戦略は?

小林:化粧品業界は低価格帯と高価格帯の二極化が叫ばれる中、中価格帯はやはり日本では規模が大きく、昨年から回復もしてきており、まだまだ期待できるマーケットだ。ロングセラー化粧水“薬用 雪肌精”を初めて刷新し、3月に“薬用雪肌精 ブライトニング エッセンス ローション”の発売を控える「雪肌精(SEKKISEI)」を中心に、中価格帯市場で展開するプレステージブランドのシェアを上げていきたい。

会社概要

コーセー
KOSE

1946年に、小林孝三郎氏が化粧品の製造・販売を行う小林合名会社を創業。48年に小林コーセーを設立。60年代後半から香港、シンガポールなどアジア市場を皮切りに、北米、欧州にも積極的に進出。91年にCIを導入し、コーセーに社名変更。企業メッセージ「美しい知恵 人へ、地球へ。」をサステナビリティ方針とし、あらゆる活動に組み込むと共に、一人一人の美しさを大切にするアダプタビリティーの観点における価値提供を推進している。ブランドは「コスメデコルテ」「雪肌精」「アディクション(ADDICTION)」など

問い合わせ先
コーセー
03-3273-1511

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美の創造と顧客に響く商品を生み出しグローバル展開を加速【コーセー 小林一俊社長】

PROFILE: 小林一俊/コーセー社長

小林一俊/コーセー社長
PROFILE: (こばやし・かずとし)1962年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、86年にコーセーに入社。91年に取締役マーケティング副本部長兼宣伝部長、2004年から副社長を務める。07年から現職。就任直後に「守りの改革」と「攻めの改革」を実行し、V字回復を実現。現在、「世界で存在感のある企業への進化」を掲げ、取り組みを加速している PHOTO:YUKIE SUGANO

包摂性の高い社会に向け、3G(グローバル、ジェンダー、ジェネレーション)を基盤に顧客層拡大を目指すコーセー。2023年、“大谷効果”で不動の地位を確立したパイオニアは今年、生産部、生産会社であるコーセーインダストリーズ及び生産子会社、商品開発、商品デザイン、購買、サプライチェーンの各部門を組織化し、商品本部を新設。グローバルでも存在感を発揮する企業を目指す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

プレステージブランドのシェア拡大へ

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年をどのように振り返る?

小林一俊社長(以下、小林):22年から継続する3Gを基盤とした取り組みの成果が表れ、好調な1年だった。23年を終え、26年に向けた中長期ビジョン「VISION 2026」まで残り3年、そして3人目の男性アスリートと契約するなど、総じて数字の“3”がキーワードとなる年でもあった。個人的には大好きな3つの野球チーム「WBC日本代表」「母校の慶應義塾高校」「阪神タイガース」が優勝したこともビッグニュースだった。

WWD:中でも昨年は “大谷効果”が際立った。

小林:3Gの柱の一つであるジェンダー領域の秘策として、米MLBロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手(当時ロサンゼルス・エンゼルス所属)を商品の広告モデルに起用した反響は想定以上で、年間を通じて大幅な売り上げ増に貢献した。大型プロモーションを仕掛けた“コスメデコルテ リポソーム アドバンスト リペアセラム”は爆発的ヒット。キャンペーン期間中には百貨店の「コスメデコルテ(DECORTE)」カウンターに来店する男性客も13倍と急増した。ハイプレステージかつ美容液という、意外性ある商材での起用が話題性を生んだのではないか。年末に飛び込んできた移籍の話にはびっくりしたが、まさかドジャースとは。当社のコーポレートカラーと同じ青がチームカラーでなにかの縁を感じる。今年も大谷選手との強力なタッグを組んで展開していく。

WWD:3人目の男性アスリートとの契約については?

小林:羽生結弦選手、大谷翔平選手に続く3人目の男性アスリートとして、バレーボール男子日本代表の髙橋藍選手とスポンサー契約を締結した。髙橋選手はヨーロッパで活躍するだけでなく、ASEANでも非常に人気がある。当社のグローバル戦略で掲げる新しい地域であり、今回契約するに至った。当社は1980年代からスポーツ支援を行っており、多様なアスリートを協賛してきた長い歴史がある。スポーツ総合誌『ナンバー』とコラボレートし、自社サイト「コーセー スポーツ ビューティ」を立ち上げたのは、美の創造企業としてスポーツと美の融合や人々の健康意識向上に貢献したい思いがあるからだ。

WWD:23年はヒット商品も多く生み出されている。

小林:「コスメデコルテ」の“AQ アブソリュート エマルジョン マイクロラディアンス”、「ヴィセ(VISEE)」の “ネンマクフェイク ルージュ”、「ワンバイコーセー(ONE BY KOSE)」の“セラムシールド”など、ハイプレステージからコンシューマーブランドまでヒット商品が豊作だったが、これからさらに23年に行った組織改革の成果が期待できる。モノ作りからプロモーション、売り場や話題作りまでそれぞれのブランド戦略を一気通貫して取り組める事業部制へと変革したことで、より魅力的なブランド、商品の構築につながってくる。ステップごとに担当者が替わるバトンタッチ方式ではなく、全員が一緒に走りながらパスを回すラグビー方式であることが大切だ。

WWD:モノ作りにおける変化は?

小林:世代交代が起き、若手が活躍している。彼らの発想は目新しく、独自の感性がある。例えば「ヴィセ」の“ネンマクフェイク ルージュ”は若手社員が担当しているが、カラーネームの“わがままな肉球”などの奇抜なネーミングには当初驚いた(笑)。だが、最近は私が口出しせず、サントリーの鳥井信治郎創業者の言葉ではないが、“やってみなはれ精神”で若手の挑戦を歓迎するようにしている。そうした風土が新世代の感性を生かし、尖った商品作りにつながっているのではないか。

WWD:組織変更と人事異動の狙いは?

小林:1月1日付で新たに商品本部を設置し、小林正典・常務 前マーケティング本部長が商品本部長に就任した。これは3Gの柱の一つ、グローバル戦略の一環で、グローバル商品開発体制を整えていくだめだ。現在韓国や中国ブランドの勢いが増し、日本参入も目立つ。彼らは世界各国に研究所や工場を展開し、最先端のノウハウや各国に対応する処方を持つODMやOEMの企業を上手く活用している。これまで自社内製にこだわってきたが、変化の早い世界に対応し、よりその地域のニーズに応えていくためにはそういった企業とも手を組み、グローバル外注も取り入れて、内作と外作をうまく使い分けながらグローバル商品開発体制を強化する必要があるだろう。

WWD:24年に向けた戦略は?

小林:化粧品業界は低価格帯と高価格帯の二極化が叫ばれる中、中価格帯はやはり日本では規模が大きく、昨年から回復もしてきており、まだまだ期待できるマーケットだ。ロングセラー化粧水“薬用 雪肌精”を初めて刷新し、3月に“薬用雪肌精 ブライトニング エッセンス ローション”の発売を控える「雪肌精(SEKKISEI)」を中心に、中価格帯市場で展開するプレステージブランドのシェアを上げていきたい。

会社概要

コーセー
KOSE

1946年に、小林孝三郎氏が化粧品の製造・販売を行う小林合名会社を創業。48年に小林コーセーを設立。60年代後半から香港、シンガポールなどアジア市場を皮切りに、北米、欧州にも積極的に進出。91年にCIを導入し、コーセーに社名変更。企業メッセージ「美しい知恵 人へ、地球へ。」をサステナビリティ方針とし、あらゆる活動に組み込むと共に、一人一人の美しさを大切にするアダプタビリティーの観点における価値提供を推進している。ブランドは「コスメデコルテ」「雪肌精」「アディクション(ADDICTION)」など

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まだ見ぬワクワクとカルチャーを創出【ジュン 佐々木進社長】

PROFILE: 佐々木進/ジュン社長

佐々木進/ジュン社長
PROFILE: (ささき・すすむ)1965年生まれ。アメリカ留学後、四方義郎率いるサル・インターナショナルで国内外のショーの演出や選曲に携わる。89年にジュン入社。「アダム エ ロペ」や「アー・ペー・セー(A.P.C.)」のオンリーショップを立ち上げる。98年に常務に就き、2000年9月から現職 PHOTO:HIRONORI SAKUNAGA

アパレルからフード、フィットネスとジャンルに縛られない事業展開で生活者を刺激してきたジュン。今年は表参道の「モントーク(MONTOAK)」跡地での新プロジェクトやセレクトショップ「ビオトープ(BIOTOP)」の新規出店など、物販の先にある“カルチャーの創出”を目指して、攻めの施策を走らせる。
(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

目指すは、経済を越えた価値提供

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年はどんな年だった?

佐々木進社長(以下、佐々木):増収増益でまずまずの年だった。特に伸びたのは「アダム エ ロペ(ADAM ET ROPE)」「サロン アダム エ ロペ(SALON ADAM ET ROPE)」「ビオトープ」。コロナが明け、社会が快活なムードにあふれる中で、人々を楽しませる色や柄、デザインが支持された。ただ下半期はどのブランドも落ち込む傾向にあった。暖冬のほか、保守的なMDに逃げてしまったことも反省点だ。これを踏まえて、2024年は攻めのMDを増やす。

WWD:好調な「ビオトープ」は事業部を独立させた。新たな動きは?

佐々木:新規出店を計画している。立地も含めて、これまでと異なるアプローチになる。現在は東京・白金台、大阪・南堀江、福岡・大濠公園の3店舗で、いずれも非常に好調だ。商品、ロケーション、店舗デザインそれぞれに独自性があり、オリジナルレーベル「ヨー ビオトープ」も人気だ。産業全体でハイエンドとマスファッションの二極化が進む中、当社は高感度層をつかむ事業が手薄になっていた。「ビオトープ」の拡大は、ポートフォリオとしての価値もある。

WWD:婦人服の「ロペ(ROPE)」は2024年春夏にリブランディングする。

佐々木:「ジル サンダー(JIL SANDER)」などで経験を積んだディレクターを迎えて、クリエイティビティーをより発揮するブランドにする。当社の主要事業のうち“ロペ”と名のつくブランドが3分の2ほど占めている。ほぼ“ロペ”の企業だ(笑)。その本山である「ロペ」のあるべき姿を考えたとき、世界観の構築だけでなく、服作りの本質を追求し続けることが重要だと気づいた。時代の空気を読み、服のイロハを熟知し、コレクションに反映する。そんな姿勢を貫くブランドにしたい。展示会での評判は上々だった。これからもっと磨きをかける。

WWD:閉業から2年近く経つ表参道「モントーク」の跡地はどうなる?

佐々木:「モントーク」をプロデュースした山本宇一さん、「ザ・コンビニ(THE CONVENI)」などをディレクションした(藤原)ヒロシさんと共に、新たなプロジェクトをやる。さまざまな企業とクリエイターを巻き込む。原宿から表参道はかつて、独自の文化の発信地だった。今では世界中の一流ブランドが路面店を構えるラグジュアリーストリートになった。集客力もあるし、洗練されているし、どんな人も楽しめるが、“らしさ”が失われているのも事実。利益だけを考えれば他社に貸すのが一番だが、魂は売れなかった(笑)。経済を越えた文化を創出し、原宿を原宿たらしめるような場所を目指す。

WWD:ECやSNSでの成果は?

佐々木:リアル店舗に行けるようになった今、本当の商売力が試されている。コロナ禍にインフラ整備と情報システムに積極投資して、70点程度のレベルになり、売り上げも伸びた。ただし、自己評価は「発展途上」だ。というのも、CVR(コンバージョンレート)やアクセス数、ABテストなどの指標ばかりに気を取られて、ファッション屋としての姿勢が崩れてしまっていた。それでは、コンテンツやUX・UIもそれなりのレベルで満足してしまう。そうではなく、担当者それぞれの「本当に気に入った商品だから、絶対に届けたい」という思いを起点に、デジタルでどう表現するのかを考えるようにしたい。そのPDCAサイクルを回していくことで、真に商売力のあるECに近づくはずだから。

WWD:若手や女性の役員登用など、“攻め”の人事も見受けられる。

佐々木:一定の成果もある。特に「サロン アダム エ ロぺ」を統括する執行役員の原田(晴美ブランドイノベーション事業部サロン責任者)は、ポジションを与えたことで判断力やリーダーシップを発揮し、業績拡大に大きく貢献した。人事制度を整え、然るべき人材に然るべきタイミングで舞台を用意することの重要性を再認識した。常々話しているが、事業は人で決まる。社員一人一人に向き合い、活躍をサポートすることが経営の務めだ。

WWD:新卒社員が親睦を深める“同期会”や店長同士が交流する“店長会”など、横のつながりを生む施策も実施している。

佐々木:参加した社員からポジティブなフィードバックをもらい、離職率の低下など数字の成果も出ている。離職はどの企業も抱える課題で、賃金や労働環境などティップスはさまざまだが、究極はコミュニケーションにあると思っている。何かあった時に会社に相談できる上司がいるか、仕事の愚痴を話す仲間がいるか、あいつには負けないと心を燃やせるライバルがいるか。リモートワークで希薄になったこの関係性を、会社が率先して創出していく。また昨年11月には、リモートワークから原則出社に切り替えた。オフィスでの何気ない会話からアイデアが生まれ、逆に事業の課題を発見することもある。社員のつながりからファッションビジネスをアップデートし、人々の情緒を動かしていく。

会社概要

ジュン
JUN

現会長の佐々木忠氏が1958年に会社設立。同時に「ジュン」ブランドをスタート。69年にファッション業界初のフランチャイズチェーン1号店を構える。70年代の飲食業を皮切りにゴルフ場運営、ワイナリーなど事業を広げる。アパレルは現在「ロペ」「ロペピクニック」「アダム エ ロペ」「ビス」「ビオトープ」「ジュンレッド」「サタデーズニューヨークシティ」などを運営。2023年9月期は売上高549億円

問い合わせ先
ジュンカスタマーセンター
0120-298-133

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「ポール・スミス」のマーケティングに積極投資【ジョイックス 塩川弘晃社長】

PROFILE: 塩川弘晃/ジョイックスコーポレーション社長

塩川弘晃/ジョイックスコーポレーション社長
PROFILE: (しおかわ・ひろあき)1967年4月24日生まれ、大阪府出身。大阪大学卒業後、90年に伊藤忠商事に入社。「ポール・スミス」や「ランバン」「ザ・ダファー・オブ・セントジョージ」などに携わる。伊藤忠イタリー会社(ミラノ)社長、欧州総支配人補佐(ロンドン駐在)などを経て、2020年から現職 PHOTO:SHUHEI SHINE

英国を代表するファッションブランド「ポール・スミス(PAUL SMITH)」を筆頭に「ランバン コレクション(LANVIN COLLECTION)」「ザ・ダファー・オブ・セントジョージ(THE DUFFER OF ST. GEORGE)」といった海外ブランドを展開するジョイックスコーポレーションは、コロナ禍で抑制していたマーケティング活動を積極化する。2024年、塩川弘晃社長は攻めの姿勢を鮮明にする。
(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

メンズとウィメンズの
複合型店舗で新しい魅力を伝える

WWDJAPAN(以下、WWD):2024年の重点施策は何か。

塩川弘晃社長(以下、塩川):「ポール・スミス」の露出の強化だ。今年からの3カ年のマーケティング計画を組み、経営資源を投じていく。店頭、デジタル、イベントなどを通じた露出を増やす。ジョイックスコーポレーションの会社設立50周年(21年)、「ポール・スミス」導入40周年(22年)という節目がコロナに重なってしまい、思い切ったマーケティング活動ができなかった。改めて「ポール・スミス」の魅力を知ってもらうため、新規出店も含めてお客さまとの接点を思い切って広げる。

WWD:昨年秋には企画展「ポール・スミス ストライプを紐解く」を原宿で開催した。

塩川:グローバルで推進するマーケティング施策の第1弾だった。ブランドを象徴するストライプ柄をテーマにした企画展で、1970年代から続くブランド哲学をさまざまなインスタレーションを通じて表現したものだった。10日間ほどの会期ながら、大勢のお客さまが訪れ、ポール・スミス氏のクリエイションに触れてくれ、SNSでも拡散された。店頭だけでなく、ブランドの魅力を再発見できるようなイベントは大切だと痛感した。

WWD:23年春から「ポール・スミス」のウィメンズ事業をオンワード樫山から継承した。

塩川:ウィメンズの店舗を約20引き継ぐとともに、既存の大型店に関してはメンズ・ウィメンズのコンバインストアへと改装した。メンズ・ウィメンズ両方を手掛けることで相乗効果が生まれている。ウィメンズがあると、店舗が華やかになる。コンバインストアにすることで、カップルや夫婦で買い物をされるお客さまが目立つようになった。細身の男性がウィメンズを選んだり、オーバーサイズを好む女性がメンズを買ったりする事例も増えた。商品企画においても共通の素材や柄の採用が広がった。統一感のあるブランディングで、魅力を高められる。新規出店について商業施設のフロア環境や店舗面積で折り合いがつけば、コンバインストアを積極的に出していくつもりだ。

WWD:マーケティング活動やコンバインストア出店でどんな客層に訴求したいのか。

塩川:実は「ポール・スミス」は30〜40代前半のお客さまが手薄になってきた。極端な言い方をすれば、アパレルは40〜50代、革小物などの服飾雑貨は20歳前後が大きな山になっていて、間がぽっかり抜けている。ここに刺さるマーケティングができればマーケットシェアはまだ広がる。価値観が多様化している中で「ポール・スミス」に再び袖を通してもらえるようにするために何をすべきか。コロナ以降、販売促進についてデジタル化の大合唱になっているが、雑誌を参考にしている方も大勢いる。新しい顧客獲得のために社内で知恵を絞っている最中だ。

WWD:コロナ禍でOMO(オンラインとオフラインの融合)に力を注いできた。

塩川:リアル店舗とECの顧客IDを統合し、在庫も一元管理できる体制を整え、すでにPDCA(計画・実行・評価・改善)のサイクルを回している。さまざまなデータの証明の上で手を打つことができるようになった。例えば、コスト高騰に伴い、革小物を値上げしたら、ECの売れ行きに急ブレーキがかかった。データを突き詰めると、どうやら2万円という1つのバーがあることが分かった。ECの場合、お客さまは価格でフィルタリングをかけるので、2万円を越えた商品では検索に掛からなくなる。店頭では販売員が商品の価値を伝え、お客さまが納得して購入していただくことができるが、ECではなかなか難しい。しかし、そういった明確なデータが分かればMDで対応ができる。リアル店舗とECをシームレスに行き来できるようにし、お客さまの体験価値を高める。われわれはデータの解析によって、お客さまの深層心理に応えられる。OMOへの移行で改善点がたくさん見えてきた。伸び代は大きい。

WWD:「ポール・スミス」は店頭でのセールをしていない。それだけに精緻なMDが求められる。

塩川:リアル店舗は正価販売に徹し、残った商品は翌年アウトレットストアで売る。ブランドのファンをがっかりさせないため、線引きはしっかりしている。それだけに今シーズンのような暖冬は悩みの種だ。アパレル業界の常識では8月中旬に秋冬物へと店頭を一斉に切り替える。ポイント施策もあって一部の顧客は暑くても先物買いをしてくださるが、多くのお客さまにとってそれが望ましい姿なのか、よく考える必要がある。今や9月は暑いし、10月だって暑いのが当たり前。にもかかわらず売る側の都合で9月の店頭がコートで埋まっていていいのか。薄手のジャケットやブルゾンを探している方が多いのではないか。お客さま目線で考え、現実とズレが起こらないようにデータや事実をもとにロジカルに物事を捉えながら、お客さまをワクワクさせるMDを提案していきたい。

会社概要

ジョイックスコーポレーション
JOI’X CORPORATION

1971年設立。82年に英国ポール・スミス社と提携。その後、欧米の複数のブランドとパートナーシップを結び、現在日本に200店舗以上を運営する。2023年3月期の売上高は282億円。伊藤忠商事のグループ会社の一つ

問い合わせ先
ジョイックスコーポレーション
03-5213-2500

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新規事業の開発で新たな価値を届ける【ユナイテッドアローズ 松崎善則社長】

PROFILE: 松崎善則/ユナイテッドアローズ社長

松崎善則/ユナイテッドアローズ社長
PROFILE: (まつざき・よしのり)1974年2月22日生まれ。98年4月にユナイテッドアローズに入社。ユナイテッドアローズ渋谷店からキャリアをスタートし、店長職やBY本部長などを経て、2018年4月に上席執行役員に昇格し、同年6月に取締役常務執行役員に着任。20年11月に取締役副社長執行役員に就任。21年4月から現職 PHOTO:SHUHEI SHINE

粗利益率がコロナ前の水準に回復したユナイテッドアローズ。既存事業の利益構造の改善を進めつつ、今年注力するのは事業領域の拡大だ。テーマは「お客さまからの共感」。ファッションを軸にしながら、ゆくゆくは顧客の生活全般に携わることを目指す。新規事業開発専門の部署を立ち上げ、新たなアイデアの種を着実に育てていく年になる。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

複数のプロジェクトを始動させる
チャレンジングな一年に

WWDJAPAN(以下、WWD):26年3月期を最終年度にした中期経営計画では事業領域の拡大を掲げている。

松崎善則社長(以下、松崎):2024年は、新規ブランドの開発に力を入れて今までと違う価値をお客さまに提供するチャレンジングな年にしたい。来年度中(25年3月期)に複数のプロジェクトを始動させる予定だ。

WWD:1月には第1弾として、コスメブランド「ユナイテッドアローズ ビューティー(UNITED ARROWS BEAUTY)」を立ち上げた。

松崎:2年前に実施した社内公募で、複数人から上がった意見だったのでまず形にした。当社の課題である次世代へのアプローチにもつながることを期待したい。

WWD:セレクトショップ業態のコスメブランドは、販売接客の面でハードルが高いとも聞く。

松崎:今回は気分が上がると同時に日常使いできる、ちょうどいい価格帯を意識した。ECを軸に販売する計画で、売り場での販売スタッフの詳しい接客トークよりもパッケージやECでの商品説明である程度伝わるような売り方を考えている。今年は既存の主力事業以外でも積極的に増収を目指すが、コスメはすぐに大きくなるとは思っていないのでじっくり育てていくつもりだ。

WWD:業容拡大する上で、参考にしている企業は?

松崎:LVMHの衣食住を網羅するポートフォリオの広げ方はすてきだと思う。当社もセレクトショップと親和性のある分野にはどんどん出ていきたい。既にマンションの内装監修やリノベーションサービスを提供しているが、そこからの派生や生活雑貨を広げる可能性もある。

WWD:23年は粗利益率が過去9年で最高水準に回復した。

松崎:目指す方向にきちんと進められた。コロナが明けて想定以上にお客さまの来店回帰が強くなる中、セールで来店を促進するよりも、商品の正しい価値をいかに伝えて定価でお求めいただくかに注力してきた。それが顕著に結果に現れた。24年も引き続き、定価販売比率を上げることを目標にしていきたい。

WWD:一方で、課題として残ったことは?

松崎:供給量を抑制しつつ、売り逃しを防ぐこと。デジタルツールをうまく活用していかなければいけない部分だ。暖冬や為替など外的要因に出遅れの要因は求めていない。私たちの使命は、それでも欲しいと思ってもらう商品を作り続けることだ。

WWD:売上至上主義から脱却し量より質で勝負する方向なのか?

松崎:売上高は当社に対する支持のバロメーターなので、そこを減らしていく考えは全くない。ただ、在庫を積み上げて売り減らしていくような商売の仕方では、回り回って自分たちが苦しくなるだけだ。その意味でも商品の本来の価値を伝え、認めていただきながら売上高を増やす。当たり前のことだが、これまで経験則で進んできてしまった部分もある。そこを丁寧に見直してきた。23年は商品の改善を伴って値上げをしたが、結果的にきちんとプロパー販売比率が高まった。商品の価値を伝えられた手応えがある。

WWD:商品の改善とは具体的には?

松崎:オリジナル商品をセレクト商品に負けないレベルに高めることだ。たとえば、1万円のドレスシャツであれば畳み幅の変更や生地選び、色の表現の仕方など細部にわたる。工夫をちゃんと伝えるためにも販売スタッフの丁寧な接客があらためて重要だ。

WWD:コロナ以降、接客に求められることに変化は?

松崎:コミュニケーションを求めるお客さまが増え1人あたりの接客時間は増えた。マインドの変化を踏まえて、各店には「これまで以上に接客が重要だ」と日々伝えている。その中、「スタッフ オブ ザ イヤー2023」で当社の仲希望さん(「ユナイテッドアローズ 新宿店」勤務)がグランプリを取れたことはみんなのモチベーションになった。

WWD:顧客と密接につながっていくためにこれから仕掛けていくことは?

松崎:多面的に取り組んでいく。新規事業開発に加えて、中期の柱の一つであるデジタル戦略では、会員プログラムをリニューアルした。店舗やオンラインストアに多く接していただければいただくほど還元率が高くなる仕組みだ。購入金額に対してはもちろん、商品のお気に入り登録やレビュー投稿でもマイルの対象になる。お客さまとのタッチポイントを創出すると同時に、それをきちんとデータ化して情報集約し、的確な商品をお勧めができるようなデジタル化を進めていく。大きなテーマは変わらず、いかにお客さまの共感を得られるか。お客さまとともに、新しい価値を作っていくイメージで進んでいきたい。

会社概要

ユナイテッドアローズ
UNITED ARROWS

1989年10月設立。90年7月、原宿にセレクトショップ「ユナイテッドアローズ」1号店を開く。2002年3月東証二部、03年東証一部に上場、 22年東証プライム市場へ移行。主なグループ会社にコーエンなど。23年3月期の連結業績は、売上高1301億円、純利益43億円だった。従業員数は3915人

問い合わせ先
ユナイテッドアローズ
03-5785-6325

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新規事業の開発で新たな価値を届ける【ユナイテッドアローズ 松崎善則社長】

PROFILE: 松崎善則/ユナイテッドアローズ社長

松崎善則/ユナイテッドアローズ社長
PROFILE: (まつざき・よしのり)1974年2月22日生まれ。98年4月にユナイテッドアローズに入社。ユナイテッドアローズ渋谷店からキャリアをスタートし、店長職やBY本部長などを経て、2018年4月に上席執行役員に昇格し、同年6月に取締役常務執行役員に着任。20年11月に取締役副社長執行役員に就任。21年4月から現職 PHOTO:SHUHEI SHINE

粗利益率がコロナ前の水準に回復したユナイテッドアローズ。既存事業の利益構造の改善を進めつつ、今年注力するのは事業領域の拡大だ。テーマは「お客さまからの共感」。ファッションを軸にしながら、ゆくゆくは顧客の生活全般に携わることを目指す。新規事業開発専門の部署を立ち上げ、新たなアイデアの種を着実に育てていく年になる。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

複数のプロジェクトを始動させる
チャレンジングな一年に

WWDJAPAN(以下、WWD):26年3月期を最終年度にした中期経営計画では事業領域の拡大を掲げている。

松崎善則社長(以下、松崎):2024年は、新規ブランドの開発に力を入れて今までと違う価値をお客さまに提供するチャレンジングな年にしたい。来年度中(25年3月期)に複数のプロジェクトを始動させる予定だ。

WWD:1月には第1弾として、コスメブランド「ユナイテッドアローズ ビューティー(UNITED ARROWS BEAUTY)」を立ち上げた。

松崎:2年前に実施した社内公募で、複数人から上がった意見だったのでまず形にした。当社の課題である次世代へのアプローチにもつながることを期待したい。

WWD:セレクトショップ業態のコスメブランドは、販売接客の面でハードルが高いとも聞く。

松崎:今回は気分が上がると同時に日常使いできる、ちょうどいい価格帯を意識した。ECを軸に販売する計画で、売り場での販売スタッフの詳しい接客トークよりもパッケージやECでの商品説明である程度伝わるような売り方を考えている。今年は既存の主力事業以外でも積極的に増収を目指すが、コスメはすぐに大きくなるとは思っていないのでじっくり育てていくつもりだ。

WWD:業容拡大する上で、参考にしている企業は?

松崎:LVMHの衣食住を網羅するポートフォリオの広げ方はすてきだと思う。当社もセレクトショップと親和性のある分野にはどんどん出ていきたい。既にマンションの内装監修やリノベーションサービスを提供しているが、そこからの派生や生活雑貨を広げる可能性もある。

WWD:23年は粗利益率が過去9年で最高水準に回復した。

松崎:目指す方向にきちんと進められた。コロナが明けて想定以上にお客さまの来店回帰が強くなる中、セールで来店を促進するよりも、商品の正しい価値をいかに伝えて定価でお求めいただくかに注力してきた。それが顕著に結果に現れた。24年も引き続き、定価販売比率を上げることを目標にしていきたい。

WWD:一方で、課題として残ったことは?

松崎:供給量を抑制しつつ、売り逃しを防ぐこと。デジタルツールをうまく活用していかなければいけない部分だ。暖冬や為替など外的要因に出遅れの要因は求めていない。私たちの使命は、それでも欲しいと思ってもらう商品を作り続けることだ。

WWD:売上至上主義から脱却し量より質で勝負する方向なのか?

松崎:売上高は当社に対する支持のバロメーターなので、そこを減らしていく考えは全くない。ただ、在庫を積み上げて売り減らしていくような商売の仕方では、回り回って自分たちが苦しくなるだけだ。その意味でも商品の本来の価値を伝え、認めていただきながら売上高を増やす。当たり前のことだが、これまで経験則で進んできてしまった部分もある。そこを丁寧に見直してきた。23年は商品の改善を伴って値上げをしたが、結果的にきちんとプロパー販売比率が高まった。商品の価値を伝えられた手応えがある。

WWD:商品の改善とは具体的には?

松崎:オリジナル商品をセレクト商品に負けないレベルに高めることだ。たとえば、1万円のドレスシャツであれば畳み幅の変更や生地選び、色の表現の仕方など細部にわたる。工夫をちゃんと伝えるためにも販売スタッフの丁寧な接客があらためて重要だ。

WWD:コロナ以降、接客に求められることに変化は?

松崎:コミュニケーションを求めるお客さまが増え1人あたりの接客時間は増えた。マインドの変化を踏まえて、各店には「これまで以上に接客が重要だ」と日々伝えている。その中、「スタッフ オブ ザ イヤー2023」で当社の仲希望さん(「ユナイテッドアローズ 新宿店」勤務)がグランプリを取れたことはみんなのモチベーションになった。

WWD:顧客と密接につながっていくためにこれから仕掛けていくことは?

松崎:多面的に取り組んでいく。新規事業開発に加えて、中期の柱の一つであるデジタル戦略では、会員プログラムをリニューアルした。店舗やオンラインストアに多く接していただければいただくほど還元率が高くなる仕組みだ。購入金額に対してはもちろん、商品のお気に入り登録やレビュー投稿でもマイルの対象になる。お客さまとのタッチポイントを創出すると同時に、それをきちんとデータ化して情報集約し、的確な商品をお勧めができるようなデジタル化を進めていく。大きなテーマは変わらず、いかにお客さまの共感を得られるか。お客さまとともに、新しい価値を作っていくイメージで進んでいきたい。

会社概要

ユナイテッドアローズ
UNITED ARROWS

1989年10月設立。90年7月、原宿にセレクトショップ「ユナイテッドアローズ」1号店を開く。2002年3月東証二部、03年東証一部に上場、 22年東証プライム市場へ移行。主なグループ会社にコーエンなど。23年3月期の連結業績は、売上高1301億円、純利益43億円だった。従業員数は3915人

問い合わせ先
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03-5785-6325

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24年も市場の2倍の成長率見込む【日本ロレアル ジャン・ピエール・シャリトン社長】

PROFILE: ジャン・ピエール・シャリトン/日本ロレアル社長

ジャン・ピエール・シャリトン/日本ロレアル社長
PROFILE: (Jean-Pierre Charriton)1966年3月13日生まれ、フランス・パリ出身。89年に仏EMリヨン経営大学院を卒業し、91年に仏ロレアル本社に入社。スキンケアブランド「ビオテルム」でキャリアをスタートする。タイや韓国、イギリス、アイルランドにおけるロレアル リュクス事業本部本部長を経て、2008年に「アルマーニ ビューティ」のグローバルプレジデントに就任。13年にアジア太平洋地域(APAC)ロレアル リュクス事業本部ジェネラルマネジャーに就任。21年11月から現職 PHOTO:SHUHEI SHINE

世界最大のビューティ企業、ロレアルグループ(L'OREAL GROUP)の日本法人である日本ロレアルは、昨年設立60周年を迎えた。2021年の「タカミ(TAKAMI)」買収で強固になったグループのポートフォリオに昨年「イソップ(AESOP)」が加わり、今年は「プラダ ビューティ(PRADA BEAUTY)」の日本展開も開始するなど勢いは加速する。“ワン・ロレアル・ジャパン”を掲げ、日本から世界への発信を高めてさらなる攻勢をかける。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

グローバルでの存在感を高めるべく
“ワン・ロレアル・ジャパン”を推進

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年をどのように振り返る?

ジャン・ピエール・シャリトン社長(以下、シャリトン):コロナ禍後のメイク復調とインバウンド客増加を原動力に、日本国内の市場全体が前年比1ケタ台後半の伸長率の中、当社はその2倍を上回る10%後半増で成長した。これはロレアルグループ内でも最大の成長率だった。特にラグジュアリーブランドを擁するリュクス事業本部は、「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」「シュウ ウエムラ(SHU UEMURA)」、21年に傘下に加わった「タカミ」がけん引し、過去25年で最高の業績を収め歴史的な年となった。

WWD:市場の2倍を超える成長率達成の要因は?

シャリトン:包括的なバランス戦略が奏功した。具体的にはチャネル戦略とカテゴリー戦略の2本柱だ。チャネル戦略は、体験を提供する実店舗と利便性のECをバランス良く成長させ、クロスオーバーさせていくことが欠かせない。オンラインでは「楽天市場」や「ZOZOTOWN」「Qoo10」など大手ECと連携し、自社ECだけではリーチできない潜在顧客を取り込めている。一方で、ロイヤルカスタマーが訪問する自社ECは、知的好奇心や商品リテラシーが高い日本の消費者が満足できる快適なサイトを目指し、恒常的に改善を図りコンバージョン(商品購入)率アップにつなげている。現在、最大部門であるリュクス事業本部のオン・オフラインの売上比率は50:50と理想のバランスで推移している。

WWD:2本柱のもう一方のカテゴリー戦略とは?

シャリトン:ラグジュアリーブランドからマスブランドまで、求心力のある商品で多様なニーズに応える盤石なポートフォリオを構築しているのが当社の強みだ。各ブランドの主力商品が好調で、例えばメイクカテゴリーでは「イヴ・サンローラン」のジャパンアンバサダーを務めるJO1とコラボレートして8月に発売したアイシャドウパレット“クチュール ミニ クラッチ”が大ヒット。23年第4四半期の国内百貨店市場のアイメイクカテゴリーで、売上高が1位になった。「メイベリン ニューヨーク(MAYBELLINE NEW YORK)」はマスカラ“スカイハイ”が23年のバラエティー・ドラッグストアカテゴリーのアイメイク部門で売り上げ1位※1を達成。「タカミ」のスター商品である“タカミ スキンピール”は、確かな商品力が顧客の心を捉えており、21年の買収当時と比べて現在約4倍まで売上高が拡大している。

WWD:商品のヒットに寄与したインフルエンサー施策の秘訣は?

シャリトン:「ヴォーグ ジャパン」で平野紫耀さんが所属するアイドルグループNumber_iを起用し、「イヴ・サンローラン」のフレグランス“リブレ”のタイアップコンテンツを仕掛けたところ、1日の売り上げが通常の50倍を記録した。予想以上の反響だったが、彼らのエッジィで若々しさ溢れるイメージと商品の世界観がマッチした好例だろう。

WWD:6月から展開している社内向けエンゲージメントキャンペーン“ワン・ロレアル・ジャパン”の狙いは?

シャリトン:日本はグループ内でも堅強な市場であり、珍しい存在だ。というのも日本発のブランドである「シュウ ウエムラ」「タカミ」があり、国内に研究開発機関のリサーチ&イノベーションセンターと生産工場がある。このような国は世界に5つしかない。日本市場を輝かせたい思いから同キャンペーンを実施した。“ワン・ロレアル・ジャパン”という大きな旗の下、本社や店舗、工場、研究所で働く全従業員が心を一つにして真摯に取り組む姿勢を示すものだ。社内の多様性にフォーカスしたオリジナルムービーを制作したところ、フランス本社やアジア諸国からも称賛の声があった。従業員同士はもちろん、従業員と顧客のエンゲージメントも高め、グローバルでの存在感を発揮したい。

WWD:サステナビリティ推進にも力を入れるが、現在の状況は?

シャリトン:昨年、女性管理職の割合は54%、女性社員の育休復帰率は100%を達成した。また21年に導入した男性の育児休暇は、当時の取得率33%から昨年は73%まで増加した。25年には取得率100%達成を目標に掲げる。環境保護面では22年にカーボンニュートラルを実現した。目標を3年前倒しで成し遂げたのは、われわれが本気で取り組んだ結果だろう。米テラサイクルとの協働により、「ランコム(LANCOME)」「キールズ(KIEHL'S SINCE 1851)」などで使用済みプラスチック容器の回収、リサイクルを行っているが、全ブランドへの導入を進めているところだ。また商品の廃棄管理に新たなトラッキングシステムを導入し、生産予測精度の向上と廃棄量削減に努めている。サステナビリティの領域には特に情熱を注いでいる。

WWD:24年の見通しは?

シャリトン:非常に明るい。24年も市場の2倍の速度で成長すると予測している。今春の「プラダ ビューティ」の日本上陸や、23年に買収し日本をトップ市場とする「イソップ」にも期待がかかる。チャネル戦略とカテゴリー戦略に磨きをかけてさらなる飛躍を目指す。

※1ロレアル調べ、インテージ提供による2023年1月1日~12月31日までのバラエティー・ドラッグストア店舗〈オンラインを除く〉における累計販売個数において

会社概要

日本ロレアル
NIHON L'OREAL

世界最大の化粧品会社であるロレアルが、小林コーセー(現・コーセー)と提携しサロン向け商品の開発を行う合弁会社ロレコスを1963年に設立。76年に一般向け商品の販売をスタートし、95年には本国フランス以外では初となる基礎研究所を茨城県つくば市に開設。96年にロレアルの日本法人である日本ロレアルを設立した。2009年、ロレアルが資本参加していた「シュウ ウエムラ」の株式を100%取得。グループ傘下に初めて日本発のブランドが加わった。21年には日本ロレアルが「タカミ」を買収し、傘下に入った

問い合わせ先
日本ロレアル
03-6911-8100

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グローバルを見据えた尖ったブランドづくり、 組織体制を構築 【カネボウ化粧品 前澤洋介社長】

PROFILE: 前澤洋介/花王 上席執行役員 化粧品事業部門長 カネボウ化粧品社長

前澤洋介/花王 上席執行役員 化粧品事業部門長 カネボウ化粧品社長
PROFILE: (まえざわ・ようすけ)1963年、東京都生まれ。立教大学卒業後、鐘紡(現カネボウ化粧品)に入社。カネボウ化粧品欧米マーケティング室欧米マーケティンググループ統括マネジャー、マーケティング部門国際マーケティンググループ統括マネジャー、スイスのKanebo Cosmetic Europe Ltd.代表取締役などを歴任。2017年エキップ社長、コンシューマープロダクツ事業統括部門化粧品事業部門プレステージビジネスグループ長を経て現職 PHOTO:TAMEKI OSHIRO

花王グループの化粧品事業部門トップに就任して1年、前澤洋介社長はパーパスドリブンな強いブランドづくりを進めてきた。昨年9月には、「センサイ」「モルトンブラウン」「キュレル」をグローバル化推進の“ファーストランナーブランド”と位置づけ、グローバルで存在感を高めるべく戦略を練る。 (この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

グローバル推進チームを組織
海外での攻勢へ準備着々

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年を振り返ると?

前澤洋介社長(以下、前澤):コロナの5類移行によるメイク市場の復調がめざましかった。コロナ前後の変化として、インバウンド消費が一時期のような大量買いから、自分に合ったものをしっかり選ぶ傾向へ変わり、国内のお客さまと同様の買い方になってきている。海外旅行者向けのトラベルリテールの好調も追い風になった。「モルトンブラウン」もホテルアメニティーを中心に高い伸び率を示している。

WWD:グローバル化の“ファーストランナー”として「センサイ」「モルトンブラウン」「キュレル」の3ブランドを選定した。その背景にある狙いについて。

前澤:グローバル市場で見てもユニークな強みがあるブランドたちだ。それぞれのブランドでグローバル化を推進する社内チームを組織し、世界に打って出る準備を進めている。当社は、グローバル重点ブランドのG11と、国内重点ブランドのR8といった形で、戦略によってブランドを棲み分けているが、これらは決してプライオリティーの度合いを示すものではない。ブランドごとに役割を明確にすることで、適切な商品開発、施策が可能になる。

WWD:「尖った」ブランドづくりの進捗は?

前澤:特に「カネボウ」「ケイト」は売り上げが好調なだけでなく、パーパスドリブンなブランディングが浸透している実感がある。「カネボウ」ではYouTubeコンテンツ「化粧愛。」や、役目を終えた化粧品を絵の具にアップサイクルしたものを活用し子供に向けたアートイベントを実施するなど、「希望」を発信するブランドとしての活動を継続して行っている。「ケイト」で実施している“KATE SCHOOL”や“KATE DANCE CAMP”は、メイクアップを通して自分と向き合い、自己表現するきっかけを提供するイベントだ。

WWD:ブランドの具体的な進化、成長を示すトピックは。

前澤:ベストコスメの受賞数が上期・下期とも過去最高を更新した。ベストコスメはゴールではなく、あくまでお客さまに知っていただくひとつのきっかけ。しかし、ベストコスメに値する商品が作れるかどうかは重要指標として追い続けたい。ここ1、2年で確実に受賞数を増やし、それを継続できていることは事業全体にとっての確かな好材料だ。23年の下期には「RMK」「カネボウ」「スック」「ルナソル」とプレステージ4ブランドで、非常にユニークなファンデーションも発売し、大きな話題を作ることができている。

WWD:5月に「カネボウ」から発売された紙パッケージのアイシャドウ“ブライトフューチャーボックス”はチャレンジングな取り組みだった。

前澤:ブランドメンバーの熱量があるからこそできた商品だ。アイシャドウを充填する皿から、内箱、外箱にいたるまですべてのパーツにFSC認証の紙を採用した。形状や寸法を保つのが難しい紙素材で、よくここまでのものを作ることができたと思う。「カネボウ」はすでに日本で認知度を広げ、お客さまから信頼される、非常に強いブランドになっている手応えがある。海外でもパーパスドリブンなブランディングで存在感を高めていきたい。

WWD:東南アジアのビューティ市場は急成長しているが、展望は。

前澤:とても伸び代がある。特にタイやインドネシアは潜在需要が大きい。タイではすでに当社のプレステージ、マスブランドともに展開しているが、非常に好調だ。インドネシアは現状プレステージのみだが、今後は積極的な展開を検討している。日本よりも日差しの強い東南アジア諸国では、肌ダメージのケアへの関心が高く、スキンケアやUVケアの市場は今後拡大する。引き続き、現地のお客さまのニーズと実直に向き合いたい。

WWD:サステナブル関連の取り組みは。

前澤:「ルナソル」と「スック」で完全予約・受注販売にトライしてきた。半年後の新作を予約していただくのは、シーズントレンドのあるカラーコスメではハードルが高いとも思われたが、お客さまの反応は大変好意的だった。AIによる販売予測も精度を高め、より無駄のない生産へとチャレンジを続けていく。これも現状「ルナソル」のみで実施をしているが、精度が上がれば他ブランドにも応用する。

WWD:8月には自社ECサイト「My Kao Mall」でアウトレット販売を開始した。

前澤:当初は値引き販売をすることに葛藤があったが、廃棄することに比べたら環境にとってもお客さまにとってもベターだと考え、販売に踏み切った。「サラ」や「バルカン」といったすでに終売、もしくは終売が決まっているブランドや商品を購入したお客さまの、「これが最後だから」と惜しんでいただくSNS投稿が数多くあった。これまで以上に長く、深く愛されるブランドを作っていかねばと、改めて気を引き締めた。

会社概要

花王・カネボウ化粧品
KAO KANEBO

1887年に後の花王の母体となる洋小間物商・長瀬商店を設立し、90年に国産石けんを発売。2006年にカネボウ化粧品を完全子会社化。18年に花王グループ化粧品事業の新成長戦略として“新グローバルポートフォリオ”を策定。グローバル戦略ブランドと国内を中心に重点育成するブランドを定めて投資を集中している

問い合わせ先
カネボウ化粧品消費者相談室
0120-518-520

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未来の経営リーダーの輩出を目指す【資生堂 魚谷雅彦会長CEO】

PROFILE: 魚谷雅彦/資生堂会長CEO

魚谷雅彦/資生堂会長CEO
PROFILE: (うおたに・まさひこ)1977年、ライオン歯磨(現ライオン)入社。米国コロンビア大学経営大学院でMBAを取得。クラフト・ジャパン(現モンデリーズ・ジャパン)副社長を経て日本コカ・コーラで社長、会長を歴任。2013年4月、資生堂のマーケティング統括顧問に就任。14年4月に社長CEO就任、23年から現職 PHOTO : HIRONORI SAKUNAGA

世界で勝てる日本発のグローバルビューティカンパニーを目指す資生堂は、「守り」から「攻め」に転じる躍動の年として昨年、中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」を策定し始動した。スキンビューティ領域を強化し新しい価値を提供するとともに、経営理念の「ピープルファースト」の考えのもと、創業の地から世界で活躍できるリーダーの輩出を目指す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

“ほとばしる”熱量を持ち
ビジネスの成長と変革を実現する

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年を振り返ると。

魚谷雅彦会長CEO(以下、魚谷):コロナ禍を経て、お客さまはより自身の肌や健康状態、ライフスタイルに合った商品を求め、質の高いカウンセリングを重視する傾向が強くなった。パーソナルビューティパートナー(PBP=美容部員)は知識と技能にさらに磨きをかけ、顧客満足度の高い接客へとつながっている。その中で「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」は、100年以上にわたる技術を生かした高品質な商品の開発と生産、顧客サービスが総合的に効果を発揮し、力強い成長を見せた。効果実感のある商品力は大前提だが、品質やデザインの細部に至るまでラグジュアリー感を大事に、サステナビリティ含めてブランド独自の世界観を打ち出せている。今後「シセイドウ(SHISEIDO)」とともに、資生堂の看板ブランドとしてさらに成長させていく。

WWD:中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」の重点領域として人財育成も推し進めている。その一環で、次世代を担う経営リーダーを育成する施設「Shiseido Future University」を昨秋、創業の地である東京・銀座にオープンした。

魚谷:日本も含めたグローバルで企業が永続的に成長するためには、多様性が重要だと考える。資生堂は日本で誕生し、考え方の根底に“日本”があるが、市場とお客さまは“世界”に広がっている。生活スタイルも違えば、言語も文化も違う。日本から海外の拠点に駐在員を派遣する時代もあったが、いまは世界中で資生堂のパーパスや企業文化、ピープルファーストの考え方、われわれの目指す姿に共感してくれる人が増え、仲間が集まっている。その仲間が力を発揮できる環境をつくるため、そして多様な価値観を持つ人たちに認められる企業になるためには、“ほとばしる”パッションとエネルギーを持ち合わせ、全体を包含できる突出したリーダーが必要だ。「Shiseido Future University」では、自らビジョンを描き、長期的な視点で企業価値を高め、変革を実現する経営リーダーの育成を目指す。

WWD:具体的には。

魚谷:国内外のグループ会社から選抜した次世代の経営リーダーとなる人財を中心に、オリジナルのリーダーシッププログラムを実施する。ビューティカンパニーにふさわしい美への感性や心の豊かさを育むため、150年にわたるDNAやヘリテージからインスピレーションを得られるようなスペースや、生け花や茶道などの日本文化を本質的に捉えるコンテンツも用意する。また、世界中から集まる参加者がフラットに交流できるスペースを設け、日本特有の自己主張をしてはいけない空気感や同調しがちな考えを壊したい。自分の意見が言い合えるようになれば化学反応が起き、新しい商品やサービスのアイデア、そしてイノベーションが生まれるだろう。事業も組織も多様化が進んでいるが、資生堂の“原点”を忘れないよう、創業の地である銀座からグローバルリーダーを輩出することに大きな意味があると感じている。

WWD:グローバルに活躍できる人財の投資を強める一方で、30年までに“スキンビューティ”領域で世界No.1を目指している。各市場をどのように捉えているか。

魚谷:スキンケアは、マイクロバイオームやダーマコスメ、サステナビリティなどの切り口で細分化が進んでいる。また、フレグランスも香りのみならず機能に着目した開発が行われるなどイノベーションが起きている。“スキン”の周辺領域でもあるインナービューティにおいては、もともとの東洋思想である医食同源、飲む・食べることで体や肌がきれいになるという思想がコロナ禍でより顕著に表れた。

WWD:そこで既存の化粧品ブランドを強化するとともに、ウェルネス領域展開への第一歩として、2月1日からインナービューティ事業を本格始動する。

魚谷:インナービューティに関しては、コラーゲンドリンクの“ザ・コラーゲン”を手掛けているものの、われわれは飲み物や食べ物の経験値が低い。カゴメが肌のことに触れた広告を打ち始めたのを見て、直感的にこれだと確信してカゴメの社長に直接ご相談して、2020年に共同研究を開始した。一方で、対症療法の薬ではなく体質改善に期待できる漢方にも興味があった。肌の調子を良くすることにつながるだろうとツムラに声を掛けたところ、共感を得てこちらも共同研究を進めている。両社とも、ビューティは踏み込んでいない領域であったが、「より良い社会を実現していきたい」という思いが一致して業務提携につながった。2月に立ち上げるインナービューティブランド「シセイドウ ビューティー ウエルネス」を通じて、2社と共同研究・開発した商品を日本国内で発売する。今後、他の食品系メーカーとの協業も視野に入れ、新たな健康美習慣を「Jビューティ ウエルネス」としてグローバルに発信し、新市場の創造を目指す。

会社概要

資生堂
SHISEIDO

1872年創業。スキンケアやメイクアップ、フレグランスなどの化粧品を中心とした事業のほか、レストラン事業など幅広く展開。自社開発やオープンイノベーション、戦略的M&Aなどを推進し、より健康的な肌を実現するスキンビューティ領域を強化。企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、本業を通じてより良い世界の実現を目指す

問い合わせ先
資生堂
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自社ECを生かした「クリック&トライ」を武器に【オンワードHD 保元道宣社長】

PROFILE: 保元道宣/オンワードホールディングス社長

保元道宣/オンワードホールディングス社長
PROFILE: (やすもと・みちのぶ)1965年9月13日熊本県生まれ。88年に東京大学法学部卒業後、通産省(現・経済産業省)に入省。2001年にNTT-Xに入社後、同社やオンワードなどが出資したコロモ・ドット・コム社長に就任。06年オンワード樫山(現・オンワードホールディングス)に転じ、15年3月から現職 PHOTO : KAZUO YOSHIDA

デジタルによって会社の姿を大きく変えているのが、老舗アパレルのオンワードホールディングスだ。グループ国内売上高に占めるEC化率は約3割。特筆すべきは、その約9割が自社ECであること。自前のデジタル基盤を生かしたOMO(オンラインとオフラインの融合)に保元道宣社長は自信を深める。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

経営効率をアップさせ
お客さまの満足度も高める仕組みを作る

WWDJAPAN(以下、WWD):24年2月期の連結営業利益の見通しが110億円。2008年のリーマンショック以降、最高益になる。

保元道宣社長(以下、保元):コロナ前から着手したグローバル事業構造改革によって、粗利益率が大きく改善して筋肉質になった。23年以降は売上高も上向いており、3〜11月期は主力の「23区」が前年同期に比べて17%増、21年にデビューした「アンフィーロ」が1.9倍、ペット用品の「ペットパラダイス(PET PARADISE)」が18%増だった。とはいえ、ようやく成長戦略のスタートに立ったにすぎない。大事なのはこれからだ。利益水準にまだ満足していないし、もっと上を目指さなくてはいけない。3年前に発表した2030年度に向けた中長期経営ビジョンの改訂版を春に出すので、具体的にはそこに盛り込む。グループ全従業員7315名が一丸となって前に進みたい。

WWD:売上構成のEC化率が国内で29%になった。

保元:自社EC「オンワード・クローゼット(ONWARD CROSSET)」を始めたのが09年。コロナ前は15%前後だったが、コロナ禍で一気に拡大した。コロナ前から構想していたOMO施策が、コロナ禍で実装に至った。当社の場合、お客さまがECで気に入った服を最寄りの店舗に取り寄せて試着できるサービス「クリック&トライ(C&T)」に成果が出ている。現時点でオンワード樫山の56%の店舗に導入されており、3〜11月の予約件数は約9万6000件にもなる。C&Tを利用するお客さまは取り寄せた服だけでなく、店頭でそれとコーディネートする服を買い求めるケースも珍しくない。シナジーが大きい。C&Tが機能するには、総在庫に占める自社EC向け在庫の比率が3割ほど必要だと、以前から考えてきた。それくらいの規模になれば在庫を自由に動かすことができる。当社はEC売上高における自社ECの割合が9割。ECを始めた当初から自社ECにこだわってきたのは、OMOを見据えた戦略だった。

WWD:なぜC&Tがこれほど早く浸透したのか。

保元:大都市の集客力のある店舗は、商品が手厚く配分される一方、人口が少ないエリアの店舗はどうしても品ぞろえが手薄になりがちだった。品番、サイズ、色の欠品が目立ち、お客さまをがっかりさせてしまう。でもC&Tで取り寄せれば、その不満を解消できる。販売員が薦めた服を取り寄せるケースも多く、来店機会の増加につながっている。あるいは「23区」の販売員が「ICB」の新作をお客さまに薦めることもある。エリアに「ICB」の店舗がないため、接点がなかったお客さまにもブランドを届けられる。当社では販売員をファッションスタイリストと呼んでいるが、まさにスタイリストとしてブランドの枠に縛られず接客できる。

WWD:OMO型複合店舗「オンワード・クローゼットセレクト(OCS)」もC&Tの拠点として機能している。

保元:百貨店やショッピングセンターで現在101店舗を運営する。ブランドの垣根なく、接客して販売する。自社ECをそのままリアル店舗にした感覚だ。地方都市の百貨店では、ブランド単独で出店していた店舗をOCSにまとめる場合もある。単独だと採算が取れなかったエリアがOCSにすると集客力がぐんと上がる。事業構造改革で撤退した地方百貨店にOCSで再出店するケースもある。エリア単位で店舗数は減っても、売り上げを伸ばせる体制ができた。当社の経営効率も高まり、お客さまの満足度も高まる。

WWD:「アンフィーロ」は今期に売上高50億円規模を達成する見通しだ。

保元:機能美をコンセプトに掲げ、“最愛ジョグパン”などのヒットを連発している。始まりはEC専用ブランドだったが、C&TやOCSを通じて実物に触れ、機能性とファッション性を気に入って購入されるお客さまが多い。ブランドの屋号を冠した店舗がないにもかかわらず、21年デビューからの短期間でこれだけの支持を得た。オンワードのOMO戦略を象徴するブランドだ。だいぶ認知も高まってきたので、この先にはブランドの世界観を表現する直営店が必要になるかもしれない。

WWD:OMOを社内に浸透させる秘訣は?

保元:全ての従業員に腹落ちしてもらうこと。OMOは長年のファッション業界の常識を変えるものだからだ。この2年間、私は全国の店舗の7割に出向き、OMOの重要性を説いてきた。商品企画、技能職、生産の各担当者にも直接説明し、たくさんの議論を重ねてきた。職種の壁を越えるのがDXの真髄かもしれない。お客さまの満足のために社内のベクトルを一つに合わせる。中国・大連の最新鋭のグループ工場と連携するオーダーメイドブランド「カシヤマ(KASHIYAMA)」もDXの賜物だ。デジタルの活用によってお客さまの体形にフィットした一着を短時間かつお手頃な価格で提供する。「ICB」や「五大陸」でも、ここのシステムを活用する。既製服が主力だった「五大陸」はスーツの8割がパターンメイドになった。当社は戦後に既製服への進出で現在の姿に発展したわけだが、再びカスタマイズが成長しているのも面白い。

会社概要

オンワードホールディングス
ONWARD HOLDINGS

1927年に樫山純三氏が大阪で樫山商店を創業し、戦後に日本を代表するアパレル企業に発展。中核会社のオンワード樫山は「23区」「ICB」「自由区」「J.プレス(J.PRESS)」「アンフィーロ(UNFILO)」などを展開。グループ会社には法人ビジネスのオンワードコーポレートデザイン、バレエ用品のチャコット、ペット用品のクリエイティブヨーコなどがある。2023年2月期連結業績は売上高1760億円、純利益30億円

問い合わせ先
オンワードホールディングス
03-4512-1070

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自社ECを生かした「クリック&トライ」を武器に【オンワードHD 保元道宣社長】

PROFILE: 保元道宣/オンワードホールディングス社長

保元道宣/オンワードホールディングス社長
PROFILE: (やすもと・みちのぶ)1965年9月13日熊本県生まれ。88年に東京大学法学部卒業後、通産省(現・経済産業省)に入省。2001年にNTT-Xに入社後、同社やオンワードなどが出資したコロモ・ドット・コム社長に就任。06年オンワード樫山(現・オンワードホールディングス)に転じ、15年3月から現職 PHOTO : KAZUO YOSHIDA

デジタルによって会社の姿を大きく変えているのが、老舗アパレルのオンワードホールディングスだ。グループ国内売上高に占めるEC化率は約3割。特筆すべきは、その約9割が自社ECであること。自前のデジタル基盤を生かしたOMO(オンラインとオフラインの融合)に保元道宣社長は自信を深める。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

経営効率をアップさせ
お客さまの満足度も高める仕組みを作る

WWDJAPAN(以下、WWD):24年2月期の連結営業利益の見通しが110億円。2008年のリーマンショック以降、最高益になる。

保元道宣社長(以下、保元):コロナ前から着手したグローバル事業構造改革によって、粗利益率が大きく改善して筋肉質になった。23年以降は売上高も上向いており、3〜11月期は主力の「23区」が前年同期に比べて17%増、21年にデビューした「アンフィーロ」が1.9倍、ペット用品の「ペットパラダイス(PET PARADISE)」が18%増だった。とはいえ、ようやく成長戦略のスタートに立ったにすぎない。大事なのはこれからだ。利益水準にまだ満足していないし、もっと上を目指さなくてはいけない。3年前に発表した2030年度に向けた中長期経営ビジョンの改訂版を春に出すので、具体的にはそこに盛り込む。グループ全従業員7315名が一丸となって前に進みたい。

WWD:売上構成のEC化率が国内で29%になった。

保元:自社EC「オンワード・クローゼット(ONWARD CROSSET)」を始めたのが09年。コロナ前は15%前後だったが、コロナ禍で一気に拡大した。コロナ前から構想していたOMO施策が、コロナ禍で実装に至った。当社の場合、お客さまがECで気に入った服を最寄りの店舗に取り寄せて試着できるサービス「クリック&トライ(C&T)」に成果が出ている。現時点でオンワード樫山の56%の店舗に導入されており、3〜11月の予約件数は約9万6000件にもなる。C&Tを利用するお客さまは取り寄せた服だけでなく、店頭でそれとコーディネートする服を買い求めるケースも珍しくない。シナジーが大きい。C&Tが機能するには、総在庫に占める自社EC向け在庫の比率が3割ほど必要だと、以前から考えてきた。それくらいの規模になれば在庫を自由に動かすことができる。当社はEC売上高における自社ECの割合が9割。ECを始めた当初から自社ECにこだわってきたのは、OMOを見据えた戦略だった。

WWD:なぜC&Tがこれほど早く浸透したのか。

保元:大都市の集客力のある店舗は、商品が手厚く配分される一方、人口が少ないエリアの店舗はどうしても品ぞろえが手薄になりがちだった。品番、サイズ、色の欠品が目立ち、お客さまをがっかりさせてしまう。でもC&Tで取り寄せれば、その不満を解消できる。販売員が薦めた服を取り寄せるケースも多く、来店機会の増加につながっている。あるいは「23区」の販売員が「ICB」の新作をお客さまに薦めることもある。エリアに「ICB」の店舗がないため、接点がなかったお客さまにもブランドを届けられる。当社では販売員をファッションスタイリストと呼んでいるが、まさにスタイリストとしてブランドの枠に縛られず接客できる。

WWD:OMO型複合店舗「オンワード・クローゼットセレクト(OCS)」もC&Tの拠点として機能している。

保元:百貨店やショッピングセンターで現在101店舗を運営する。ブランドの垣根なく、接客して販売する。自社ECをそのままリアル店舗にした感覚だ。地方都市の百貨店では、ブランド単独で出店していた店舗をOCSにまとめる場合もある。単独だと採算が取れなかったエリアがOCSにすると集客力がぐんと上がる。事業構造改革で撤退した地方百貨店にOCSで再出店するケースもある。エリア単位で店舗数は減っても、売り上げを伸ばせる体制ができた。当社の経営効率も高まり、お客さまの満足度も高まる。

WWD:「アンフィーロ」は今期に売上高50億円規模を達成する見通しだ。

保元:機能美をコンセプトに掲げ、“最愛ジョグパン”などのヒットを連発している。始まりはEC専用ブランドだったが、C&TやOCSを通じて実物に触れ、機能性とファッション性を気に入って購入されるお客さまが多い。ブランドの屋号を冠した店舗がないにもかかわらず、21年デビューからの短期間でこれだけの支持を得た。オンワードのOMO戦略を象徴するブランドだ。だいぶ認知も高まってきたので、この先にはブランドの世界観を表現する直営店が必要になるかもしれない。

WWD:OMOを社内に浸透させる秘訣は?

保元:全ての従業員に腹落ちしてもらうこと。OMOは長年のファッション業界の常識を変えるものだからだ。この2年間、私は全国の店舗の7割に出向き、OMOの重要性を説いてきた。商品企画、技能職、生産の各担当者にも直接説明し、たくさんの議論を重ねてきた。職種の壁を越えるのがDXの真髄かもしれない。お客さまの満足のために社内のベクトルを一つに合わせる。中国・大連の最新鋭のグループ工場と連携するオーダーメイドブランド「カシヤマ(KASHIYAMA)」もDXの賜物だ。デジタルの活用によってお客さまの体形にフィットした一着を短時間かつお手頃な価格で提供する。「ICB」や「五大陸」でも、ここのシステムを活用する。既製服が主力だった「五大陸」はスーツの8割がパターンメイドになった。当社は戦後に既製服への進出で現在の姿に発展したわけだが、再びカスタマイズが成長しているのも面白い。

会社概要

オンワードホールディングス
ONWARD HOLDINGS

1927年に樫山純三氏が大阪で樫山商店を創業し、戦後に日本を代表するアパレル企業に発展。中核会社のオンワード樫山は「23区」「ICB」「自由区」「J.プレス(J.PRESS)」「アンフィーロ(UNFILO)」などを展開。グループ会社には法人ビジネスのオンワードコーポレートデザイン、バレエ用品のチャコット、ペット用品のクリエイティブヨーコなどがある。2023年2月期連結業績は売上高1760億円、純利益30億円

問い合わせ先
オンワードホールディングス
03-4512-1070

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持続的成長のため、多様性とチャレンジの文化に磨きをかける【ワールド 鈴木信輝社長】

PROFILE: 鈴木信輝/社長

鈴木信輝/社長
PROFILE: (すずき・のぶてる)1974年8月23日生まれ。京都大学大学院法学研究科卒。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)やローランドベルガー、ボストンコンサルティンググループなどを経て2012年ワールドに入社。15年から常務執行役員。18年から専務執行役員。20年6月から現職 PHOTO:KAZUO YOSHIDA

ブランド事業だけでなく、デジタル事業、プラットフォーム事業へと業容を広げるワールドの鈴木信輝社長が目指す姿は「ファッションに関することなら何でもやる会社」だ。2024年はしばらく抑制してきた新ブランド・新業態の開発にも積極的に乗り出す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

選択と集中で筋肉質に
次を見据えた新ブランド開発に本腰

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年4〜9月期(上期)はコア営業利益が期初計画を5%上回った。

鈴木信輝社長(以下、鈴木):上期を勝負所と捉えて、ブランド事業ではトップライン(売上高)を取りにいこうと号令をかけてきた。コロナの5類移行で、ようやく通常モードで商売できたことが大きい。売り場のスタッフの士気が高まった。従業員にとっては厳しい3年間だったが、もう一度、前を向いて、お客さまの期待に応えようと皆が頑張った結果だ。

WWD:デジタル事業やプラットフォーム事業はどうか。

鈴木:デジタル事業はさまざまな方向で可能性を探ってきた。結果、ユーズドセレクトショップ「ラグタグ(RAGTAG)」や高級バッグのシェアリングサービスの「ラクサス」、オフプライスストアの「アンドブリッジ」を中心としたサーキューラー分野が想定以上の成長と収益拡大を果たした。一方でマスカスタムズ分野には見切りをつけた。「選択と集中」によってリソースを絞り込み、サーキュラー分野の成長を加速させていく。

長年培ってきた製造・販売・デジタルなどの仕組みを他社に提供するプラットフォーム事業は、人ありきのビジネスであり、先行投資と時間がかかる。それでもマネジメント基盤の整備や人材の強化によって上期は黒字化した。プラットフォーム事業は、クライアントの課題を解決する仕事。単純でありきたりのサービスでは付加価値を高められない。ワールドだから提供できる付加価値を追求していく。

WWD:24年度は何に取り組むか。

鈴木:26年2月期を最終年度にした中期経営計画「プランW」に基づき、25年2月期は「持続的成長と利益の証明」がテーマになる。昨年から攻めに転じ、結果も出せている。今年はさらにアクセルを踏み、コア営業利益で再上場(18年9月)後の最高益となる170億円以上を目指す。この数年、コロナ禍でたくさんのブランドを終息させざるを得なかった。従業員やディベロッパーの方々にも大きな傷みをお願いすることとなったが、本当に苦渋の決断だった。だが結果的に選択と集中が加速し、筋肉質な体質になった。継続しているブランドは明確な強みを持つものばかり。ワールド本来の多様性とチャレンジの文化を証明していく。

WWD:ブランド事業では新ブランド・新業態の開発に力を入れている。

鈴木:しばらく新ブランド開発が止まっていたが、昨年から再開した。婦人服では20〜30代向けの「ギャレスト」と「コードエー」を23年春に開始した。また12月にはOMO(オンラインとオフラインの融合)型の「アンタイトルギャラリー」の1号店を開き、「アンタイトル(UNTITLED)」だけでなく「インディヴィ(INDIVI)」「クード シャンス(COUP DE CHANCE)」「デッサン」などのECで扱う服を取り寄せて試着できるようにした。従来のように一気に出店するのではなく、ECとの連動で成長を見極めながらアクセルを踏む方法をとる。百貨店では既存ブランド以上に上質な婦人服を求めるお客さまの声が増えた。ここには「アンタイトル」から派生した「オブリオ」を24年春から本格化する。既存ブランドだが「シクラス」も感度の高いお客さまの支持が広がっている。ワールドとして手薄だった高価格帯も大きなポテンシャルがある。

WWD:既存ブランドの改革の成果は?

鈴木:「タケオキクチ(TAKEO KIKUCHI)」はコロナ前を上回る業績だ。今春からはアーカイブをアップデートした新レーベル「ザ・フラッグシップ」を販売する。世代を超えて長く愛されており、百貨店やファッションビル、ECだけでなく、台湾やタイでも人気がある。中期経営計画で掲げるマルチチャネル戦略のお手本といえる。近郊型SCに出店してきた「シューラルー」も広域型SCや駅ビルにも出店するようにした。従来のチャネル軸にこだわらず、お客さまとの接点を広げる。

WWD:MDの精度も磨かれてきたのか。

鈴木:ブランドごとにKPIは異なるが、それぞれ細かく設計している。仕入れ抑制はかなり浸透した。ただ、それだけではきちんと稼ぐことはできない。適時・適品・適量。地道なことの積み重ねだ。まずは定番商品を磨き上げる。マスターパターン一つとっても毎シーズン、ブラッシュアップする。新しい流行でヒットを作り出すことも大切だが、基本的な商品の競争力を高めないと持続的成長にはならない。

WWD:デジタル事業で注力するサーキュラー分野はどう強化するか。

鈴木:裾野が大きな領域だ。「ラグタグ」はブランド品のユーズドが支持されてきたが、低価格帯のカジュアルを売る「ユーズボウル」の出店を開始した。リユースに注目するブランドホルダーは多いが、仕組みを一から作るのは難しい。古着の回収、査定、単品管理、販売に至るオペレーションには独自のノウハウがあるからだ。そこでティンパンアレイの仕組みの外販を始める。「ラグタグ」はグループのサーキュラー分野の核になる。

リユースの成長には調達が欠かせない。現状21店舗の「ラグタグ」やオンラインを通じて買い取りを行っている。店舗を出店すると、オンラインの買い取りも増える。良い商品の確保は他社との競争である。買い取りに特化した拠点を出店することも検討中だ。

会社概要

ワールド
WORLD

1959年、神戸で婦人ニットの卸売業として設立。93年、小売業に進出。「アンタイトル」「インディヴィ」「タケオキクチ」「シューラルー」などのブランド事業を展開。ブランド事業のほか、デジタル事業、プラットフォーム事業と3つのセグメントを推進する。子会社としてブランド古着の買取・販売「ラグタグ」を運営するティンパンアレイ、子供服のナルミヤ・インターナショナルなどがある。2023年3月期連結業績(国際会計基準)は売上収益2142億円、純利益63億円

問い合わせ先
ワールド
078-302-3111(代表)

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持続的成長のため、多様性とチャレンジの文化に磨きをかける【ワールド 鈴木信輝社長】

PROFILE: 鈴木信輝/社長

鈴木信輝/社長
PROFILE: (すずき・のぶてる)1974年8月23日生まれ。京都大学大学院法学研究科卒。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)やローランドベルガー、ボストンコンサルティンググループなどを経て2012年ワールドに入社。15年から常務執行役員。18年から専務執行役員。20年6月から現職 PHOTO:KAZUO YOSHIDA

ブランド事業だけでなく、デジタル事業、プラットフォーム事業へと業容を広げるワールドの鈴木信輝社長が目指す姿は「ファッションに関することなら何でもやる会社」だ。2024年はしばらく抑制してきた新ブランド・新業態の開発にも積極的に乗り出す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

選択と集中で筋肉質に
次を見据えた新ブランド開発に本腰

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年4〜9月期(上期)はコア営業利益が期初計画を5%上回った。

鈴木信輝社長(以下、鈴木):上期を勝負所と捉えて、ブランド事業ではトップライン(売上高)を取りにいこうと号令をかけてきた。コロナの5類移行で、ようやく通常モードで商売できたことが大きい。売り場のスタッフの士気が高まった。従業員にとっては厳しい3年間だったが、もう一度、前を向いて、お客さまの期待に応えようと皆が頑張った結果だ。

WWD:デジタル事業やプラットフォーム事業はどうか。

鈴木:デジタル事業はさまざまな方向で可能性を探ってきた。結果、ユーズドセレクトショップ「ラグタグ(RAGTAG)」や高級バッグのシェアリングサービスの「ラクサス」、オフプライスストアの「アンドブリッジ」を中心としたサーキューラー分野が想定以上の成長と収益拡大を果たした。一方でマスカスタムズ分野には見切りをつけた。「選択と集中」によってリソースを絞り込み、サーキュラー分野の成長を加速させていく。

長年培ってきた製造・販売・デジタルなどの仕組みを他社に提供するプラットフォーム事業は、人ありきのビジネスであり、先行投資と時間がかかる。それでもマネジメント基盤の整備や人材の強化によって上期は黒字化した。プラットフォーム事業は、クライアントの課題を解決する仕事。単純でありきたりのサービスでは付加価値を高められない。ワールドだから提供できる付加価値を追求していく。

WWD:24年度は何に取り組むか。

鈴木:26年2月期を最終年度にした中期経営計画「プランW」に基づき、25年2月期は「持続的成長と利益の証明」がテーマになる。昨年から攻めに転じ、結果も出せている。今年はさらにアクセルを踏み、コア営業利益で再上場(18年9月)後の最高益となる170億円以上を目指す。この数年、コロナ禍でたくさんのブランドを終息させざるを得なかった。従業員やディベロッパーの方々にも大きな傷みをお願いすることとなったが、本当に苦渋の決断だった。だが結果的に選択と集中が加速し、筋肉質な体質になった。継続しているブランドは明確な強みを持つものばかり。ワールド本来の多様性とチャレンジの文化を証明していく。

WWD:ブランド事業では新ブランド・新業態の開発に力を入れている。

鈴木:しばらく新ブランド開発が止まっていたが、昨年から再開した。婦人服では20〜30代向けの「ギャレスト」と「コードエー」を23年春に開始した。また12月にはOMO(オンラインとオフラインの融合)型の「アンタイトルギャラリー」の1号店を開き、「アンタイトル(UNTITLED)」だけでなく「インディヴィ(INDIVI)」「クード シャンス(COUP DE CHANCE)」「デッサン」などのECで扱う服を取り寄せて試着できるようにした。従来のように一気に出店するのではなく、ECとの連動で成長を見極めながらアクセルを踏む方法をとる。百貨店では既存ブランド以上に上質な婦人服を求めるお客さまの声が増えた。ここには「アンタイトル」から派生した「オブリオ」を24年春から本格化する。既存ブランドだが「シクラス」も感度の高いお客さまの支持が広がっている。ワールドとして手薄だった高価格帯も大きなポテンシャルがある。

WWD:既存ブランドの改革の成果は?

鈴木:「タケオキクチ(TAKEO KIKUCHI)」はコロナ前を上回る業績だ。今春からはアーカイブをアップデートした新レーベル「ザ・フラッグシップ」を販売する。世代を超えて長く愛されており、百貨店やファッションビル、ECだけでなく、台湾やタイでも人気がある。中期経営計画で掲げるマルチチャネル戦略のお手本といえる。近郊型SCに出店してきた「シューラルー」も広域型SCや駅ビルにも出店するようにした。従来のチャネル軸にこだわらず、お客さまとの接点を広げる。

WWD:MDの精度も磨かれてきたのか。

鈴木:ブランドごとにKPIは異なるが、それぞれ細かく設計している。仕入れ抑制はかなり浸透した。ただ、それだけではきちんと稼ぐことはできない。適時・適品・適量。地道なことの積み重ねだ。まずは定番商品を磨き上げる。マスターパターン一つとっても毎シーズン、ブラッシュアップする。新しい流行でヒットを作り出すことも大切だが、基本的な商品の競争力を高めないと持続的成長にはならない。

WWD:デジタル事業で注力するサーキュラー分野はどう強化するか。

鈴木:裾野が大きな領域だ。「ラグタグ」はブランド品のユーズドが支持されてきたが、低価格帯のカジュアルを売る「ユーズボウル」の出店を開始した。リユースに注目するブランドホルダーは多いが、仕組みを一から作るのは難しい。古着の回収、査定、単品管理、販売に至るオペレーションには独自のノウハウがあるからだ。そこでティンパンアレイの仕組みの外販を始める。「ラグタグ」はグループのサーキュラー分野の核になる。

リユースの成長には調達が欠かせない。現状21店舗の「ラグタグ」やオンラインを通じて買い取りを行っている。店舗を出店すると、オンラインの買い取りも増える。良い商品の確保は他社との競争である。買い取りに特化した拠点を出店することも検討中だ。

会社概要

ワールド
WORLD

1959年、神戸で婦人ニットの卸売業として設立。93年、小売業に進出。「アンタイトル」「インディヴィ」「タケオキクチ」「シューラルー」などのブランド事業を展開。ブランド事業のほか、デジタル事業、プラットフォーム事業と3つのセグメントを推進する。子会社としてブランド古着の買取・販売「ラグタグ」を運営するティンパンアレイ、子供服のナルミヤ・インターナショナルなどがある。2023年3月期連結業績(国際会計基準)は売上収益2142億円、純利益63億円

問い合わせ先
ワールド
078-302-3111(代表)

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服が好きでたまらないファッション集団が活躍する会社に【TSI 下地毅社長】

PROFILE: 下地毅/社長

下地毅/社長
PROFILE: (しもじ・つよし)1964年12月28日、沖縄県生まれ。文化服装学院卒業後、97年上野商会に入社。2016年専務取締役執行役員商品本部長を経て18年に社長。TSIホールディングスでは19年6月に執行役員、20年5月に取締役営業本部長を経て21年3月から現職

多種多様な50以上ブランドを束ねるTSIホールディングスの下地毅社長は、大手アパレル企業では珍しいデザイナー出身の経営トップである。常々「ファッションの力を信じよう」と話し、現場を鼓舞してきた。今、改めて洋服屋としての原点に立ち返る。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

「好き」が生み出すエネルギーは
お客さまに必ず伝わる

WWDJAPAN(以下、WWD):14あった事業会社を段階的に統合し、22年秋に青山の本社オフィスに集約してから1年以上が過ぎた。

下地毅社長(以下、下地):人事、総務、システムといった部門も統合し、組織をスリム化できた。だが、それ以上の効果は人の交流だ。TSIが運営する50以上のブランドの担当者たちが密接に言葉を交わせるようになった。本社1階はショールームになっており、婦人服からアメカジ、ストリートウエアまでさまざまなブランドを並べている。そこには社内向けに運営する「アースカフェ」が出店しているので、日常的に従業員が集まる。自分が所属するブランドの軸だけで考えるのではなく、他のブランドから学ぼうとする気運が高まった。また人事の面でも社内公募制度を実施し、自発的な異動で挑戦の機会を提供した。TSIの多様性を人材活用の強みに転嫁する。

WWD:一丸となった上で2024年は何に取り組むのか。

下地:まずは低収益からの脱却だ。前期(23年2月期)の営業利益率は1.5%。これを当面は5.0%以上、その先には8%を目指す。販管費を抑制しつつ、しっかり稼ぐ。収益性が低いままだと、次の成長に向けた投資ができない。TSIにとって最優先課題だ。すでに業務の棚卸を始めている。それぞれの部署で収益性、業務内容、人員などを精査しているところだ。配置換えも積極的に行う。働き方も含めて大胆に変える。詳しくは4月に発表する新しい中期経営計画に盛り込む。

WWD:異なる事業会社が集結したTSIを束ねる旗印はあるのか。

下地:私たちは洋服屋というアイデンティティーを共有している。服が好きで好きでたまらないファッション集団であることがエネルギーだ。それはお客さまにも伝播する。スタッフには「縮こまらずに、どんどん面白いことをやってくれ」とよく話している。サンフランシスコの古着を着想源にした「セブンバイセブン(SEVEN BY SEVEN)」は、昨年9月の東京コレクションでランウエイショーを開いた。代々木上原に旗艦店を出店するタイミングで、多くの関係者に見ていただく機会を作った。デザイナー川上淳也さんのクリエイションへの熱が伝わるショーだった。外への発信だけでなく、スタッフのモチベーション向上にもつながる。他のブランドのスタッフも刺激を受け「次は私たちの番だ」と思っている。作り手が楽しんで、発信するエネルギーは推進力になる。

WWD:パーパスとして「ファッションエンターテインメント創造企業」を掲げている。

下地:ファッションは社会を変えていける、世の中をもっと楽しくできる。そんな思いが私たちの出発点だ。さまざまなテイストの婦人服からセレクトショップ、アメカジ、ストリートウエア、ゴルフウエア、アウトドアウエアまで事業領域は幅広い。持っていないのは子供服とテーラードスーツくらい。それぞれの領域の強い部分をより強くすれば、どこにも負けないファッション企業になれる。私自身が服が大好きなファッション野郎だし、ファションの力を信じている。

WWD:期待している領域はどこか。

下地:「アドーア(ADORE)」「ル フィル(LE PHIL)」「ヒューエルミュージアム(HUELE MUSEUM)」といったアッパーゾーンの婦人服がとても元気だ。コロナ収束後、思い切りおしゃれがしたいという女性の期待に応えている。デザイン性に優れた時代性のある服を、厳選した素材と計算されたパターンで提供する。知名度はまだまだだけど、きらりと光るものをお客さまも感じてくださっている。大量生産・大量消費の服とは明らかに異なる立ち位置で、高価格帯にもかかわらず売れている。「ヒューエルミュージアム」ではアート作品との協業など、新しい挑戦も続けている。

WWD:一方でけん引役だったゴルフブランドが失速している。

下地:確かに大黒柱の「パーリーゲイツ(PEARLY GATES)」は上期に減収になったが、コロナ禍の急成長の反動であって巡航速度に戻ったと見ている。ロイヤルティーが高いお客さまに支えられているブランドなので心配していない。「ジャックバニー」「ニューバランスゴルフ」「ピンアパレル」は順調に成長している。

WWD:サステナビリティへの取り組みは?

下地:アパレル企業といえども原料までさかのぼることが欠かせなくなる。農業ベンチャー企業のシンコムアグリテック社と資本業務提携し、インドのタミルナドゥ州で試験栽培していた綿花から初めて紡績糸が完成した。当社のブランドの中で製品化を進めている最中だ。今後は作付面積も増やして、オーガニックコットンの採用を広げる。また素材ベンチャー企業のフードリボンと組み、パイナップルの葉から抽出した繊維を使った服を開発している。フードリボンは沖縄やインドネシア、フィリピンなどのパイナップル農家に繊維を抽出する機械を貸し出し、量産態勢に向けて動き出している。これまで大量に廃棄されていたパイナップルの葉を服の素材に活用する。原料までさかのぼった取り組みは、ファッションの未来を考えるととても夢がある。

会社概要

TSIホールディングス
TSI HOLDINGS

旧東京スタイルと旧サンエー・インターナショナルの経営統合によって2011年6月に設立。主なブランドは「パーリーゲイツ」「ナノ・ユニバース」「マーガレット・ハウエル」「ナチュラルビューティーベーシック」「ハフ」「アヴィレックス」など。2023年2月期連結業績は売上高1544億円、純利益30億円。従業員数は4206人

問い合わせ先
TSIホールディングス
03-5785-0412

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服が好きでたまらないファッション集団が活躍する会社に【TSI 下地毅社長】

PROFILE: 下地毅/社長

下地毅/社長
PROFILE: (しもじ・つよし)1964年12月28日、沖縄県生まれ。文化服装学院卒業後、97年上野商会に入社。2016年専務取締役執行役員商品本部長を経て18年に社長。TSIホールディングスでは19年6月に執行役員、20年5月に取締役営業本部長を経て21年3月から現職

多種多様な50以上ブランドを束ねるTSIホールディングスの下地毅社長は、大手アパレル企業では珍しいデザイナー出身の経営トップである。常々「ファッションの力を信じよう」と話し、現場を鼓舞してきた。今、改めて洋服屋としての原点に立ち返る。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

「好き」が生み出すエネルギーは
お客さまに必ず伝わる

WWDJAPAN(以下、WWD):14あった事業会社を段階的に統合し、22年秋に青山の本社オフィスに集約してから1年以上が過ぎた。

下地毅社長(以下、下地):人事、総務、システムといった部門も統合し、組織をスリム化できた。だが、それ以上の効果は人の交流だ。TSIが運営する50以上のブランドの担当者たちが密接に言葉を交わせるようになった。本社1階はショールームになっており、婦人服からアメカジ、ストリートウエアまでさまざまなブランドを並べている。そこには社内向けに運営する「アースカフェ」が出店しているので、日常的に従業員が集まる。自分が所属するブランドの軸だけで考えるのではなく、他のブランドから学ぼうとする気運が高まった。また人事の面でも社内公募制度を実施し、自発的な異動で挑戦の機会を提供した。TSIの多様性を人材活用の強みに転嫁する。

WWD:一丸となった上で2024年は何に取り組むのか。

下地:まずは低収益からの脱却だ。前期(23年2月期)の営業利益率は1.5%。これを当面は5.0%以上、その先には8%を目指す。販管費を抑制しつつ、しっかり稼ぐ。収益性が低いままだと、次の成長に向けた投資ができない。TSIにとって最優先課題だ。すでに業務の棚卸を始めている。それぞれの部署で収益性、業務内容、人員などを精査しているところだ。配置換えも積極的に行う。働き方も含めて大胆に変える。詳しくは4月に発表する新しい中期経営計画に盛り込む。

WWD:異なる事業会社が集結したTSIを束ねる旗印はあるのか。

下地:私たちは洋服屋というアイデンティティーを共有している。服が好きで好きでたまらないファッション集団であることがエネルギーだ。それはお客さまにも伝播する。スタッフには「縮こまらずに、どんどん面白いことをやってくれ」とよく話している。サンフランシスコの古着を着想源にした「セブンバイセブン(SEVEN BY SEVEN)」は、昨年9月の東京コレクションでランウエイショーを開いた。代々木上原に旗艦店を出店するタイミングで、多くの関係者に見ていただく機会を作った。デザイナー川上淳也さんのクリエイションへの熱が伝わるショーだった。外への発信だけでなく、スタッフのモチベーション向上にもつながる。他のブランドのスタッフも刺激を受け「次は私たちの番だ」と思っている。作り手が楽しんで、発信するエネルギーは推進力になる。

WWD:パーパスとして「ファッションエンターテインメント創造企業」を掲げている。

下地:ファッションは社会を変えていける、世の中をもっと楽しくできる。そんな思いが私たちの出発点だ。さまざまなテイストの婦人服からセレクトショップ、アメカジ、ストリートウエア、ゴルフウエア、アウトドアウエアまで事業領域は幅広い。持っていないのは子供服とテーラードスーツくらい。それぞれの領域の強い部分をより強くすれば、どこにも負けないファッション企業になれる。私自身が服が大好きなファッション野郎だし、ファションの力を信じている。

WWD:期待している領域はどこか。

下地:「アドーア(ADORE)」「ル フィル(LE PHIL)」「ヒューエルミュージアム(HUELE MUSEUM)」といったアッパーゾーンの婦人服がとても元気だ。コロナ収束後、思い切りおしゃれがしたいという女性の期待に応えている。デザイン性に優れた時代性のある服を、厳選した素材と計算されたパターンで提供する。知名度はまだまだだけど、きらりと光るものをお客さまも感じてくださっている。大量生産・大量消費の服とは明らかに異なる立ち位置で、高価格帯にもかかわらず売れている。「ヒューエルミュージアム」ではアート作品との協業など、新しい挑戦も続けている。

WWD:一方でけん引役だったゴルフブランドが失速している。

下地:確かに大黒柱の「パーリーゲイツ(PEARLY GATES)」は上期に減収になったが、コロナ禍の急成長の反動であって巡航速度に戻ったと見ている。ロイヤルティーが高いお客さまに支えられているブランドなので心配していない。「ジャックバニー」「ニューバランスゴルフ」「ピンアパレル」は順調に成長している。

WWD:サステナビリティへの取り組みは?

下地:アパレル企業といえども原料までさかのぼることが欠かせなくなる。農業ベンチャー企業のシンコムアグリテック社と資本業務提携し、インドのタミルナドゥ州で試験栽培していた綿花から初めて紡績糸が完成した。当社のブランドの中で製品化を進めている最中だ。今後は作付面積も増やして、オーガニックコットンの採用を広げる。また素材ベンチャー企業のフードリボンと組み、パイナップルの葉から抽出した繊維を使った服を開発している。フードリボンは沖縄やインドネシア、フィリピンなどのパイナップル農家に繊維を抽出する機械を貸し出し、量産態勢に向けて動き出している。これまで大量に廃棄されていたパイナップルの葉を服の素材に活用する。原料までさかのぼった取り組みは、ファッションの未来を考えるととても夢がある。

会社概要

TSIホールディングス
TSI HOLDINGS

旧東京スタイルと旧サンエー・インターナショナルの経営統合によって2011年6月に設立。主なブランドは「パーリーゲイツ」「ナノ・ユニバース」「マーガレット・ハウエル」「ナチュラルビューティーベーシック」「ハフ」「アヴィレックス」など。2023年2月期連結業績は売上高1544億円、純利益30億円。従業員数は4206人

問い合わせ先
TSIホールディングス
03-5785-0412

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SNS映えが凄い! 小規模ながら高級志向の“滞在型リゾート”~ 1.南城市・「リヤドランプ」

大型リゾートホテルの開業が相次ぐ沖縄だが、その一方で、小規模ながら高級志向の「スモールラグジュアリーリゾート」のオープンも増えている。このタイプのリゾートは限られたゲストしか宿泊していないことから、プライベートな空間を堪能できるのが特長。しかもユニークな世界観を演出する場所も多く、沖縄ではなく、どこかほかの地に滞在しているような錯覚を覚えることもある。今回は、そんなリゾートのひとつ、沖縄本島・南城市に位置するモロッカンテイストの邸宅ホテル「リヤド ランプ」を紹介しよう。

“リヤド”とは「パティオ(中庭)をもつ邸宅」を意味するアラビア語だ。主にモロッコのマラケシュに多い宿泊施設で、古い邸宅を改装した後、モロッコの伝統的な建築に、現代的なモダンなインテリアのセンスを融合させているのが特徴だ。「リヤド ランプ」は、そんな“リヤド”にほれ込んだオーナー夫妻である中村裕二朗・綾さんが、2020年にオープンさせたリゾートだ。位置しているのは沖縄本島南部の南城市。くねくねと続く細い小道を抜けた、小高い丘の上に「リヤド・ランプ」はある。

駐車場に車を駐めたあと、まるで不思議な国のアリスに出てくるような小さな扉をくぐると、森のなかには階段が。その細い階段を上ったところに、突然、邸宅のようなベージュ色のホテルがあらわれて、思わずハッと驚く。

「実はこれもホテルに宿泊していただくゲストへの演出なのです」と笑うのは、オーナーの中村綾さん。「まずはこんな場所にリゾートがあるのだろうか……、と思うような小道を車で通っていただいて。そして、エントランスにある小さな扉をくぐりぬけた先に、非日常なモロッコ・リヤドの世界観が広がっている……このアプローチは私たちがゲストに高揚感を味わっていただくために当初から思い描いていました」。

館内に入り、ホテルの階段をのぼると、モロッコ装飾に彩られた中庭のような空間があり、開放感溢れるテラススペースには”知念ブルー“の海を一望できるインフィニティプールが鎮座。そこからの絶景に感嘆する。「この小高い丘からの眺望を見ていただいた瞬間に、日常のいろいろなことを忘れられる、と多くのゲストに喜んでいただけています」。

また、装飾はもちろん、建具やカウンターなど細部に至るまで、リヤドの世界観を踏襲しており、その完成度は驚くほどに高い。聞けば、館内装飾のほとんどをモロッコから輸入したという。「そもそも主人(中村裕二朗さん)が東京の桜新町でモロッコ料理などを提供するレストランと、モロッコ家具の輸入販売をしていまして。その時のつながりがあったことで、満足できるリヤドとして仕上げることができました」。

しかし、完成までは約6年を費やしたという。「モロッコの職人さんに手作りしていただいた装飾ばかりなので、全てに思い入れがありますが、作業的に最も時間を費やしたのは、モロッコ漆喰(タデラクト)を用いたカウンターやバスタブでしょうか。現地からモロッコ漆喰を取り寄せたのですが、現地と沖縄では湿度が異なるので、現地と同じ調合で塗ってもうまくいかず……。そこで、沖縄の左官職人さんに相談して、粉と水の配合を研究しつつバランスを調整。加えて、それを重くて硬い石で磨き上げなければならず、何人もの友人に手伝ってもらい、ようやく仕上げることができました」。

客室は全5室。モダンモロッコに仕上げた室内は、それぞれインテリアが異なるのが特長。滞在するたびに異なる部屋に宿泊するリピーターも多く、女性一人でのんびりするゲストも珍しくないとか。

「夕食には沖縄の産直野菜やスパイス、ハーブを用いたコース料理などを提供しています。また、日中はアルガンオイルやローズウォーターなどモロッコの素材をふんだんに用いたスパトリートメントを受けていただいたりと、館内でゆっくり過ごす方が多いですね。リヤドは館内のいろいろな空間で楽しんでいただけることが魅力。ゲストも5組さまだけなのでプールやテラス、パティオなど、お好きな場所でご自身の家にいるような感覚でお過ごしいただいています」と話す。

スペシャルな空間だからこそ、プロポーズや結婚記念日に利用するカップルも多い。特に夜間はモロッコランプの温かい光とムーディな影が館内を照らすので、なんともロマンティックなシチュエーションになるはず。

オープンして4年目だが、施設はさらに拡張を予定している。「施設内には山林もあるのでコテージを作ったり、屋上や庭を整備したりと、さらにアップグレードしていけたらと考えています。ただ、大々的にアピールするというより、『リヤド・ランプ』に宿泊していただいたゲストにさらなる癒しを提供できるよう、より良いリヤドに整えていきたいと考えています」。

■リヤド ランプ
沖縄県南城市知念字久手堅415 TEL:098-943-4294
Instagram @riadlamp
那覇空港から車で約40分、バスで約100分(東陽バス「斎場御嶽入口」より徒歩12分)

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あのマドンナの名曲が香水に 新フレグランス「アート ミーツ アート」の創業者が語る音楽への愛

フランス・パリ発フレグランス「アート ミーツ アート(ART MEETS ART以下、A.M.A)」の創業者であるタンギー・ル・ポーが昨年末に来日した。「A.M.A」はマドンナ(MADONNA)の名曲「ライク ア ヴァージン」やマーヴィン・ゲイ(Marvin Gay)の「セクシャル ヒーリング」といった名曲を香りで表現するブランド。日本では、ノーズショップ(NOSESHOP)で販売している。来日したル・ポーに話を聞いた。

WWD:今回の来日の目的は?

タンギー・ル・ポー「A.M.A」創業者(以下、ル・ポー):日本のパートナーであるノーズショップの麻布台ヒルズの店舗の視察やミーティングが目的。麻布台ヒルズがどのような商業施設か注目していたので来日できてうれしい。

WWD:ブランドを始めたきっかけは?

ル・ポー:長年ビューティ業界で働いてきたし、私にとってフレグランスは幼少の頃からとても身近なものだった。また、子どもの頃からピアノやギターなど音楽に親しんできて、今でもアマチュアミュージシャンとして演奏することもある。その2つの背景を組み合わせて、音楽から得られる特別な高揚感=“モジョ(魔法や魔術などの虜になるというスラング)”を香りで表現できないかと思った。「A.M.A」を立ち上げたのは自然な流れだった。

WWD:ブランドのコンセプトは?

ル・ポー:音楽の“モジョ”を香りで伝えること。フレグランスはある意味似ていると思う。その2つを組み合わせることで、ライフスタイルをより豊かに彩ることができると思う。私は生粋のパリっ子。パリには素晴らしいライフスタイルがある。それを香りで伝えたいという思いもある。同時に、世界中を旅してきて、各地特有の音楽や香り、言語といったものに触れてきた。それらが生み出す感情体験を香りに置き換えている。

「A.M.A」で自分の中の“モジョ”を解放してほしい

WWD:名曲をテーマにしたフレグランスだが、選曲はどのように行うか?

ル・ポー:それぞれの名曲に込められた感情を香りに置き換えられるか想像してみる。いくら有名な曲でも、香りが想像できなければ香水にはならない。

WWD:調香師とのマッチングはどのように行うか?

ル・ポー:調香を依頼するのは、世界最高峰の調香師ばかり。曲のムードに合う調香師にクリエイションを委ねる。コンセプトは説明するが、同じ曲でも、調香師の感性によって全く異なる香りになる。それがまた、面白い。

WWD:名曲をどのように香りに落とし込むか?音楽のコードと香調など対比させるようなフォーミュラはあるか?

ル・ポー:音楽にはコード、香りにはフローラル、ウッディ、シトラスといったような香調があるが、このコードはこの香調といったフォーミュラはない。香りによる音の表現は、調香師の感性次第で変化する。

WWD:ターゲットは?

ル・ポー:音楽とフレグランスに関心があり、ライフスタイルを謳歌している人々。「A.M.A」により、自分の中にある“モジョ”を解放してほしい。

WWD:日本戦略は?

ル・ポー:ノーズショップという素晴らしいパートナーに恵まれた。彼らと大切にブランドを育てていきたい。どこでも購入できるブランドにするつもりはない。

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「ミラノファッション×AI」の仕掛人、クリエイティブチームのトップが語る「AIとファッションの今後」

1月30日に開幕した今回の「ミラノ・ウニカ」は、大々的にAIを打ち出した。その仕掛人の一人が、ステファノ・ファッダ(Stefano Fadda)「ミラノ・ウニカ」アーティスティック・ディレクターだ。同見本市の重要なコンテンツの一つであるトレンドコンセプトの発信にAIを導入した。クリエイティブを最重視するイタリアで、その根幹をなすトレンドコンセプト設計に大胆なまでにAIを導入した理由や手法、今後について、聞いた。

ステファノ・ファッダ「ミラノ・ウニカ」アーティスティック・ディレクター

ミラノ工科大学建築学科を経て、「プラダ」のVMDやファッションショーの演出、トレンドアナリスト、クリエイティブ・ディレクターなどを経て、2015年から現職

AIを導入したワケ

WWD:なぜAIを?

ステファノ・ファッダ(以下、ファッダ):生産性の向上といった業務効率改善には、コスト削減などの面で実際に大きな成果を挙げている有力素材メーカーもある。だが、イタリアの繊維とファッション産業の大きな強みは、クリエイティブの部分だ。

WWD:経緯は?

ファッダ:8か月くらい前に、私の方からグーグルにコンタクトし、
「クリエイティブな分野でAIを使いたい」とオファーしたんだ。正直、その段階では繊維やファッションに限らず、クリエイティブな分野でのAI活用事例もなく、どう使っていくかは私自身もわかっていなかったし、グーグル自体、そうしたAIをイタリアでは公開していなかった。ただちょうどグーグル自身が新たな生成AIツール「BARD」を2024年に公開予定のタイミングだったため、そのプロトタイプでの協力を得られた。

WWD:実際、どのようにAIを取り入れたのか?

ファッダ:そもそも、テーマやコンセプトは、膨大な事前リサーチの結果を整理し、分析し、その上でデザイナーやブランドを触発するために発表する。3つのコンセプト、「リ・ジェネレーション」「デザイン」「インタラクティブ」という3つのコンセプトと、それぞれのコンセプトに3つのテーマ(リジェネ:ニットウエア/エンブロイダリー(刺繍)/ランジェリー、デザイン:クラシック/シャツ/プリント、インタラクティブ:テクノ/グラム/シャイニー)を設けた。テーマごとにカラーやテキスタイルのイメージを設定する。ここまでのやり方は、従来どおりで変えていない。重要なのは、そこだと考えていた。あくまでもAIは、クリエイティブな活動を支援するためのツールだ、という考え方だ。

実際どうAIをクリエイティブに活用?

WWD:では、どの部分にAIを?

ファッダ:実際にやってみたからこそ、わかったのだが活用に関してはいくつかのポイントがあった。テーマやコンセプトが、いわゆるプロンプト(AIに入力する指示)の役割を担った。まずAIは、テーマやコンセプトを反映したビジュアル作りの、基礎部分に使った。例えば従来のトレンド情報は「テクノ」というテーマに対して、「合繊のマットな光沢」のように細かいキーワードも設定しており、それに合わせてデザイナーやブランドにインスパイアするビジュアルを制作してきた。われわれのようなトレンドコンセプターにとっては、社会的な事象をテキストに落とし込む分析力とともに、こうしたビジュアル作りも重要な役割の一つだ。だが、AIを使うと、このビジュアルが思いもよらぬアイデアを出してくる。

従来のビジュアル制作では、どのようにブランドやデザイナーを触発するか、という点が重要なわけだが、ビジュアル制作のときのアイデアはどんなに優れたトレンドコンセプターであったとしても、どうしてもその人のキャリアや発想に左右されてしまう。AIは、この部分の枠を取り払うことができた。

とはいえ、この作業は思っていた以上に非常に大変だった。単にテーマやコンセプトをプロンプトとして打ち込むだけでは、良いものが出来ず、一つのビジュアルを作るのに100回以上、繰り返す必要があった。これは正直、とてもしんどい作業だった。

ビジュアル制作は、AIが出してきたアイデアをベースに、ピッタリ合うテキスタイルを探す、あるいは制作し、服を作り、撮影した。この部分でも、従来であれば、テキスタイル会社や縫製会社にこうしたテーマに合ったテキスタイルや服の制作を依頼し、それが最終的なトレンドコーナーに設置するスワッチサンプルになったりもするのだが、あまりにも突飛なアイデアであるため、単にアイデアイメージを渡すだけでは、テキスタイル会社や縫製工場の協力を得られなかった。実際の服は、手作業で作るようなことになった。

AIは「ファッションのクリエイティブ」をどう変える?

WWD:今後をどう見る?

ファッダ:正直、このやり方は賛否両論というか、当初は大きな反発があった。中には、「イタリアのクリエイティブを重視する文化を破壊する」というものもあった。これには明確に反論したい。テクノロジーの進化は、止められるものではない。われわれがやるべきことであり、重要なのは、「テクノロジーをどう活用するか」だ。今回取り組んでみてAIや生成AIはまだまだ未成熟のテクノロジーだとも感じた。それでも、クリエイティブな活動にとって、大きな可能性も秘めている。世界の繊維・ファッション産業にとってイタリアの果たすべき役割は、クリエイティブを軸に産業を発展させることで、われわれイタリアが先頭を切って挑戦することにこそ、意義がある。今回の冒頭のキーノートセッションに「AI」を掲げたのも、この私の取り組みと考え方に「ミラノ・ウニカ」の会長を始めとして賛同したためだ。

WWD:今後AIの導入は、繊維・ファッション産業にどう進んでいくのか。

ファッダ:繰り返しになるが、生産効率の改善のような部分では、大手素材メーカーのレダ(REDA)のように、実際にコスト削減に成果を挙げている企業もある。ただ、クリエイティブの部分ではアイテムやカテゴリーによって、AIとの相性の良し悪しはある。たとえば、プリント柄の生成なんかは、すでに取り入れている企業もあるほどだし、相性はいいと思う。けど、逆にボタンやファスナーといった服飾資材の相性は良くないかもしれない。そもそも生産のためのテクノロジー自体がかなり高度で複雑だし、服のデザインプロセスにおいても最後の方に決まるため、リードタイムが短い。先行するのは、やはりテキスタイルの部分だろう。

WWD:トレンド予測そのもの、つまりコンセプトやキーワード、カラー予測にも使えるのでは?

ファッダ:ノー(即答)。それはない。これは例えば、需要予測にAIが使えるか、という問いにも似ている。水面下では、これまで何度もメガIT企業が服の需要予測に取り組んでいるが、ことごとく失敗している。ある服一着をとっても、丈の長さ、色、細かな仕様があり、そもそも例えば黒色といっても、いろいろな黒色のバリエーションがある。つまりパラメーター(変数)が多すぎる。これはトレンド予測も全く同じことだ。ずっと先のことはもちろんわからないけど、少なくとも現在、あるいは近い将来まではかなり難しいと思う。

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休業から復帰のベラ・ハディッド、力を注ぐノンアル飲料事業と自身のメンタルヘルスについて語る

モデルのベラ・ハディッド(Bella Hadid)は、ライム病の治療に専念するためモデル活動を1年間休止していたが、実業家としての活動を本格化させているようだ。米「WWD」に、2021年から共同経営するノンアルコール飲料ブランド「キン ユーフォリックス(KIN EUPHORICS)」や自身のメンタルヘルスについて語った。

ベラは昨年、ソーシャルメディアで彼女が長年患う感染症の一種であるライム病や慢性疾患の治療と、不安障害などメンタルヘルスの問題について思いを綴っていた。インタビューでは闘病生活について「苦痛に満ちたものだった。点滴を打ちながらZoomミーティングすることもあった。再び仕事に復帰できるように自分の体を追い込もうとしたが、自分がワーカホリックだったことに気づき、今必要なことはただじっとしていることだと受け入れた」と明かし、アルコール摂取にも気を配るようになったという。

健康チャレンジ”ドライ・ジャニュアリー”とは?

欧米では1月に禁酒する健康チャレンジの取り組み“ドライ・ジャニュアリー(Dry January)”が広まっているが、「新年の31日間、体内からアルコールを完全に排除し、ポジティブで前向きなエネルギーで一年を始めることは自分自身と自分の精神のために非常に重要なこと」と語り、ベラ自身も「キン ユーフォリックス」を通じて実践しているとして“ドライ・ジャニュアリー”を勧める。さらにソーシャルメディアからも離れ、瞑想や読書に時間を費やしたといい、「人は競争やSNSの世界に身を置くと、本来の自分ではない“他人から見た自分”に依存してしまう。SNSから距離を置いたことは自分のために行った最高のことだった」と振り返った。

英市場調査会社IWSRや米マーケティング大手ニールセン・アイキュー(NIELSEN IQ)によると、低アルコールおよびノンアルコール市場は近年急速に拡大しており、米小売大手のターゲット(TARGET)も昨年12月、ホリデーシーズンに向けてノンアルコール飲料ブランドを集めたセレクションを販売。「キン ユーフォリックス」は参加ブランドの中で最高売り上げを記録し、米スーパーマーケットチェーンのスプラウツ・ファーマーズ・マーケット(SPROUTS FARMERS MARKET)でのローンチ成功に続き、3月からはターゲットで常時販売する予定だ。

ベラの実業家としての顔

スピリチュアリティをコンセプトに掲げる「キン ユーフォリックス」は、カラフルなデザインの缶ドリンク4種“アクチュアル サンシャイン”“ライトウェーブ”“キンブルーム”“キン スピリッツ”と、特製スピリッツ2種“ハイ ロード”“ドリーム ライト”をラインアップする。ビタミンC、サフラン、ターメリック、アダプトゲンなどを配合し、肝臓と神経系を保護しながら免疫系や炎症の軽減をサポートする。

「キン ユーフォリックス」はジェン・バチェラー(Jen Batchelor)最高経営責任者(CEO)により17年に創設。インスタグラムのフォロワーが6000万人を超える27歳のベラは、単なる広告塔としてではなく、投資家とのビジネスプランにまつわる会議にも参加し、同ブランドのビジネスの隅々まで関わっている。

パレスチナ出身の不動産開発業を営むモハメド・ハディッド(Mohamed Hadid)を父親に、オランダ出身の元スーパーモデルのヨランダ・ハディッド(Yolanda Hadid)を母親に持つベラは、「ファッションの世界は芸術的な面で成長できる。それが本当に好きだけど、自分の脳のビジネス的な面を使う機会はあまりない。私の両親は素晴らしいビジネスマンで、私にとって頭を使える場所にいられることは大きな喜びだ」と述べた。ベラの現在のキャリアの中心は「キン ユーフォリックス」であり、「来年か再来年には、あらゆる家庭に『キン ユーフォリックス』のドリンクが置かれるようにビジネスを広げていきたい。すでに30ページ以上の商品アイデアを書き溜めている」と語った。

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