ミラノとパリの区別、やめたいと思います エディターズレターバックナンバー

※この記事は2020年5月29日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

ミラノとパリの区別、やめたいと思います

 下のリンクの記事でも言及していますが、ファッション業界の友人の「そもそも『オシャレになりたい人』のために存在していたハズなのに、いつの間にか『オシャレな人』しか存在できない業界になってしまった」という言葉を、とっても重く受け止めています。

 確かに。私がこんなカッコだからかもしれませんが(苦笑)、初対面の人、特に業界以外の方とお会いすると、必要以上に謙遜されてしまいます。常に聞くのは「私は、全然オシャレじゃないんで……」という一言。みんながオシャレである必要はないし(そもそも、「オシャレ」ってナンダ?とさえ思う今日この頃です)、「オシャレな人としか付き合わない」なんて、これっぽっちも思っていません(むしろ、ちょっとプレッシャーですw)。不要な謙遜は、上述の通り、業界が「オシャレな人」のためのものになってしまったからかも?と思っています。

 そして、門外漢の方にそう思わせる主因に違いない、巨大なファッション・システムの片棒を担いでしまったと反省するのです。「マストハブのバッグ10選」「知っておくべきトレンド」「今さら聞けない、あのニュース」……。何気なく発してきた言葉の数々は、彼らにはプレッシャーだったのかもしれません。だいぶ克服したつもりですが、誰かとお会いすると発動しそうになる“頭から足の先まで一瞥する視線”は、業界外の皆さんには、もはや恐怖そのものです。改めて自戒するとともに、どうしたらいいの?と考えています。

 答えの1つは、「当たり前の区別さえ疑うこと」と思うようになっています。今、会社では、「デジタル・ファッション・ウイークを、どうやって取材して、コンテンツ化していこう?」というミーティングを開催しています。これまでのようにパリやミラノには赴かず、時差のある日本から、デジタルの世界にアップされる、つまり、ついにエンドユーザーと全く同じタイミング、同じ方法で向き合うコレクションは、どうやって取材してコンテンツにしていくの?という会議です。そこでは、これまでの当たり前の「区別」さえ疑っています。「デジタルだから、パリコレもミラノコレも関係なくない?」「20年春夏の在庫も積み上がっている中、本当にみんな21年春夏を発表するの?21年春夏の提案を絞り込むなら、もう一回、20年春夏を見せるブランドだってありえるんじゃない?」などと考えています。となると、「パリコレリポート」とか「ミラノ詳報」「21年春夏トレンド10選」なんて言葉は形骸化!?結論はもう少し先になりそうですが、ウェブにおいてはミラノやパリの区別をなくそうとしています。

 大胆でしょうか(笑)?でも迷った時にいつも思い出すのは、身近な友人の言葉。「ミラノブランドと、パリブランドって違うの?『ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)』は、どっち?『グッチ(GUCCI)』は、『ルイ・ヴィトン』の仲間でしょ?」です(笑)。

 そうですよねぇ。別にエンドユーザーには、「ルイ・ヴィトン」がパリで、「グッチ」がミラノなんて、どうでも良いですよねぇ。買おうとしている洋服が20-21年秋冬メインなのか、20年プレフォールなのか?だって、ど~でもいい話です。下のリンクで「グッチ」のアレッサンドロ・ミケーレが主張する通り、音楽の名前を付けてもいいかもしれない。「グッチ」シンフォニー・コレクションの次は、「グッチ」ラプソディー・コレクションです!!なんて記事が書けたら、ちょっと愉快です(笑)。

 この「区別」を意識しなくなれば、エンドユーザーの心的負担になっているであろう「ファッション界のルール」とか「今さら聞けない決まり」も消滅するのでは?もう一度、「オシャレになりたい人」が歩み寄ってくれる契機になるのでは?そう思っているのです。

 1年前、メイン・コレクションのランウエイにプレ・コレクションを混ぜたマイケル・コースは、「シーズンなんて気にしているのは、業界だけだ。消費者は、『やだ~、ジャケットはメインなのに、パンツはプレだわ。取り替えなくっちゃ!』なんて思わないだろう?」と教えてくれました。マジこれ(笑)。そろそろ「当たり前の区別」さえ、疑うべきだと思うのです。

FROM OUR INDUSTRY:ファッションとビューティ、関連する業界の注目トピックスをお届けする総合・包括的ニュースレターを週3回配信するメールマガジン。「WWD JAPAN.com」が配信する1日平均30本程度の記事から、特にプロが読むべき、最新ニュースや示唆に富むコラムなどをご紹介します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在9種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

The post ミラノとパリの区別、やめたいと思います エディターズレターバックナンバー appeared first on WWD JAPAN.com.

ローラが自身のブランド「ステュディオ アール スリーサーティー」に込めた思いとは 「諦めない気持ちがあれば実現できる」

 モデルのローラはこのほど、サステナビリティを意識したライフスタイルブランド「ステュディオ アール スリーサーティー(STUDIO R330)」をスタートさせた。100%自己資金で運営する。第1弾はスポーツブラやTシャツ、ヨガマットなどのワークアウトウエアを発表。今後はカテゴリーを限定せずにさまざまなアイテムを提案する予定だ。今回あらためてローラにブランドに込めた思いや立ち上げまでの苦労をメールで聞いた。

WWD:ブランドスローガンである“essentials for a good life”に込めた思いとは?

ローラ:どんなに時が経っても良質でずっと長く使いたいと思えるもの、毎日のライフスタイルがわくわくするようなものをクリエイティブに、そして環境にやさしい形で作っていきたいという思いを込めました。

WWD:環境問題に関心を持ち始めたきっかけは?

ローラ:7~8年前にスーパーで買い物をしているときに、ふとオーガニックのものとそうでないものがあり疑問を抱きました。食品をきっかけに、少しずつ環境問題について勉強をするようになりました。

WWD:LAに拠点を移してから環境意識に変化はあった?

ローラ:LAと行き来するようになってから、環境のことや普段着ているお洋服のこと、食、運動することの大切さなど、日本にいたときよりも考えるようになりました。

WWD:素材選びで大変だったことは?

ローラ:素材選びは想像していたよりも大変でした。環境に配慮された素材はまだまだ少なくて、自分たちで一から作る必要がありました。それには1年以上かかりましたが、諦めない気持ちがあれば実現できるということを学んだので、また次のステップに進むのが楽しみです。

WWD:デザイン上でこだわったことは?

ローラ:シルエットは自分で着てみたりモデルさんに試してもらったりしながら、何回もやり直しました。もちろん機能性にもこだわり、こういう場面でこういう機能があったら便利だなと想像しながらデザインしました。グラフィック面の落とし込みでは、私も大ファンである写真家のハーブ・リッツ(Herb Ritts)の作品をフィーチャリングしたコレクションが実現することができうれしかったです。

WWD:環境意識を高めていくには、ファンとどのようなコミュニケーションが必要だと思う?

ローラ:自分もブランドもメディアの一つだと考え、分かりやすく、一つずつ順番に丁寧に伝えていくことを心掛けていきます。あとは、普段の生活の中で小さいことからでも変化を起こしていくことを呼びかけていきます。自分たちが犯してきた過ちが原因で、次世代の人たちが生活できなくなる可能性があることを受け止め、しっかりと危機感も持ちながら楽しく変えていこうと伝えていきたい。続けていかないとどんどん悲しい未来に近づいてしまうから。

WWD:プロジェクトごとに販路や生産背景はどのように選択していくのか。

ローラ:「ステュディオ アール スリーサーティー」はいろいろなライフスタイルアイテムを展開していきます。チームでプロジェクトごとに取り組んで内容を打ち合わせしてから、次に生産背景、アイテムによっては販路も替えていきます。これからの時代は柔軟に答えを見つけながら徐々にシフトチェンジしていくことが大切だと思います。

WWD:生産背景などはどこと組んでいる?バッカーは?

ローラ:今回のワークアウトウエアはサーキュラーエコノミーを促す取り組みで知られリサイクルポリエステルを提供する日本環境設計とタッグを組みました。また、次回のデニムプロジェクトは、世界で最もエシカルでサステナブルなデニムを生産するといわれ、最新のデニム製造の設備を備えたOEM会社のSAITEX INTERNATIONALとタッグを組みました。バッカーはいません。

WWD:販路はどのように広げていく?

ローラ:販路はECとポップアップストアのみで日本で先行販売します。いずれプロジェクトによっては卸事業も考えていきたいと思っています。また近々LAで環境が整い次第、グローバル展開も予定しています。

WWD:今後はどんなアイテムが登場する?

ローラ:サステナブルなデニムコレクションや、オーガニックコットンを使用した限定コレクション、コラボレーションアイテムも展開予定なので、楽しみにしていてください。

The post ローラが自身のブランド「ステュディオ アール スリーサーティー」に込めた思いとは 「諦めない気持ちがあれば実現できる」 appeared first on WWD JAPAN.com.

スピック&スパンの2020-21年秋冬  “断捨離マインド”に沿ってニット&デニムを切らさず提案

 スピック&スパン(SPICK & SPAN)は“レガシーの再構築”をキーワードに、クラシックやプレッピー、アウトドア、ブリティッシュテイストの定番アイテムを現代的なシルエットや素材でアップデートする。

 8月の秋冬立ち上がりは、強化アイテムのブーツと花柄のワンピース、デニムのセットアップとベストなどの組み合わせで、残暑の時期から“見た目”の秋冬らしさを提案していく。特にブーツはロング、トレッキング、チェルシータイプまで、ベストはウール、ニット、ボアまで、さまざまなバリエーションや素材で打ち出す予定だ。

 さらに9月後半にかけてはツイードや人工皮革のセットアップなどを、10月の冬物本格投入の時期には“タウン&カントリー”をキーワードに、フェイクファーのアウターやタウンユースできるネイティブ柄のアイテムなどを追加していく。

 久松鉄也ディレクターは「リアルクローズで手に取りやすい価格帯のアイテムがそろっている」という理由から、今季「ジャスト(JUST)」「セカンドフィメール(SECOND FEMALE)」などのコペンハーゲンブランドを多く買い付けたという。セレクトブランド全体ではメインよりもプレ・コレクションに比重を置き、立ち上がりからの鮮度アップを目指す。

 また新型コロナウイルスの影響で、シーズン立ち上がりの予算を前年同期比の約半分に圧縮。品番数も約7割に抑え、暖冬が続くなかアウターの投入比率などを見直した。物質的にも気分的にも「断捨離が進んでいる」と予測し、オリジナルの人気デニムブランド「ファイブ アンド ハーフ(5 1/2)」の定番品やカシミヤを混ぜたニットなど、シーズンを通して長く着られてスタイリングの幅も広い軽衣料を強化していく。

 一方でグループ全体では、臨時休業期間を含む3~4月のEC販売は前年同月比155%と好調で、特に同グループのEC化率は30%と他社に比べて高い。これを踏まえて、先物買いやトレンド感のあるアイテムは「まずECで先行受注会を開催し、デジタルでもお客さまの気持ちを盛り上げながら、受注数などの反響を店頭の品ぞろえや奥行きに柔軟に生かしていきたい」と同ディレクターは語る。

 今後はオリジナル商品の国内生産比率アップを視野に入れ、グループ全体でプロパー消化率を上げていく方針だ。

村上杏理:1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

The post スピック&スパンの2020-21年秋冬  “断捨離マインド”に沿ってニット&デニムを切らさず提案 appeared first on WWD JAPAN.com.

「サムソナイト」史上、最強・最軽量のスーツケース“コスモライト”の魅力


 世界中のトラベラーやビジネスパーソンから支持を集める「サムソナイト(SAMSONITE)」の“コスモライト(COSMOLITE)”シリーズ。ブランド史上最軽量でありながら最強の耐久性をかなえ、その特性をサムソナイト社の誇る革新的な技術やデザインが支えている。ビジネスシーンからトラベルまで幅広く活躍する同シリーズは、2008年の発売以来ロングセラー商品としてその名を世界中に馳せている。

わずか1.7キロと
“指1本で持てる”軽さを実現

 “コスモライト”シリーズの最大の特徴は、わずか1.7キロ(「スピナー55」サイズの場合)と指1本で持ち上げられる軽さでありながら、衝撃やゆがみに対する優れた耐久性を実現しているところ。これらをかなえるのは、特殊素材“カーヴ”だ。“カーヴ”は車のバンパーやアイスホッケーのシューズにも使われるもので、純度100%のポリプロピレンの粒を溶かし、シート状に加工して引き延ばしカットしたものを編み上げ、何層にも重ねて圧縮することで作られている。この驚異的に軽く、強い素材を用いることにより、日常環境下だけでなく極度の温度下においても極めて高い衝撃耐性を発揮する。

機能的な設計で
どんなシーンでも活躍

 外装だけでなく、内装にもこだわりが詰まっている。シンプルかつミニマルな設計でありつつ、収納に便利なポケットや中身をしっかりホールドするクロス型のベルトを装備。スーツケースの片面は全面的に閉められるようにディバイダーを施し、長旅でも荷崩れしにくいようデザインされている。そのほか360度回転する4輪ホイールやTSAロック(米国運輸保安局認証のロック)、スマートなモノチューブハンドルを装備し、快適な旅をサポートする。

出張慣れしている
「WWD JAPAN.com」編集長が
お試し

写真の中のスーツケースは“コスモライト スピナー 86 ブラック”

 実際に出張の際に“コスモライト”を使用した村上要「WWD JAPAN.COM」編集長は「実際に使ってみると想像よりはるかに軽量。なぜ、もっと早く出合わなかったのかーーと後悔するほどだった。コレクション取材では各都市を転々としながら仕事、つまり“転戦”するため、パッキングとアンパッキング、空港でのチェックインとピックアップを繰り返すが、耐久性も抜群だった。洋服は派手だが、旅のお供のラゲージはブラックベースが好み。そんな“コスモライト”は、普段身につけているバッグやアクセサリーにも負けないデザイン性の高さも有している」とコメント。

バリエーション豊かな
カラーとサイズを展開

左から“コスモライト スピナー 86 レッド”、“コスモライト スピナー 81 シルバー”

 “コスモライト”シリーズの丸みを帯びた独特のフォルムは、貝殻の強さに着想を得て開発している。また、さまざまなシーンにも合うように、豊富なカラーとサイズバリエーションでそろえる。サイズは2~3泊程度の旅行に適する36リットル(55 x 40 x 20cm)、4~7泊程度の旅行に適する68リットル(69 x 46 x 29cm)、1週間以上の長旅に適する94リットル(75 x 51 x 31cm)、123リットル(81 x 55 x 34cm)、144リットル(86 x 58 x 36cm)の5つで、カラーはそれぞれブラック、レッド、シルバー、アイスブルー、オフホワイト、アルミニウムの6色を展開する。(サイズにより展開色は異なる)

PHOTOS : KOJI HIRANO

問い合わせ先
サムソナイト・ジャパン
0800-12-36910

The post 「サムソナイト」史上、最強・最軽量のスーツケース“コスモライト”の魅力 appeared first on WWD JAPAN.com.

スタージュエリーが新コンセプトストアで合成ダイヤモンドを採用した理由とは?

 横浜・元町発ジュエラーのスタージュエリー(STAR JEWELRY)は、6月24日に開業した商業施設ニュウマン横浜内に新コンセプトストア「エスジェイエックス ダブリュー(以下、SJX W)」をオープンした。すでにあるブランド「SJX」はメンズ・ユニセックスのジュエリーブランドでアスリートや著名人に人気が高く、そこから派生したコンセプトストアの「SJX W」は高感度の女性に向けた実験的な店舗だ。スタージュエリーが創業当時からこだわっているクラフツマンシップにフォーカスし、店舗内にはアトリエを併設してさまざまなカスタマイゼーションに対応するほか、初の試みとして合成ダイヤモンドを使用したジュエリーを販売している。

 2018年末ごろからTVのワイドショーなどでも取り上げられ注目されている合成ダイヤモンドは、天然ダイヤモンドと同じ組成と性質を持ち、天然物より手に届きやすい価格帯だ。アメリカではダイヤモンド大手のデビアス(DE BEERS)が合成ダイヤモンドのブランド「ライトボックス・ジュエリー(LIGHTBOX JEWELRY)」を立ち上げるなど、市場は徐々に広がりつつある。日本では、京都の老舗ジュエラーの今与が昨年末、銀座に合成ダイヤモンド専門ブランド「シンカ(SHINCA)」の店舗を出店するなどの動きがあるが、多くの日本のジュエラーは合成ダイヤモンド市場への参入にはちゅうちょしている。このような状況で、日本における主要ジュエラーの一つであるスタージュエリーが合成ダイヤモンドを採用した理由について梅次紫穂スタージュエリー社長室 室長に聞いた。

WWD:「SJX W」で合成ダイヤモンドの使用を始めた理由は?

梅次紫穂スタージュエリー社長室 室長(以下、梅次):「SJX W」のコンセプトである“ラグジュアリー&サステナビリティ”をかなえるために投入した。ラボ的なストアならではの新しいラインアップに挑戦したかったという点もある。クオリティーは天然ダイヤモンドと変わらず、価格が抑えられるため、デザインの幅が広がると同時に、消費者にさまざまな選択肢を提案できると考えたから。

WWD:「SJX W」では、天然ダイヤモンドを使用したジュエリーも販売するようだが?

梅次:天然ダイヤモンドと合成ダイヤモンドの混在を防ぐために、合成ダイヤモンドのジュエリーには一つずつ刻印を付けている。

WWD:スタージュエリーでも合成ダイヤモンドを使用する可能性は?

梅次:現時点では、合成ダイヤモンドの使用はコンセプトストアの「SJX W」だけで、同ブランドならではの“実験”の一つだと考えている。

日本のジュエリー市場ではまだ一般的ではない合成ダイヤモンドだが、スタージュエリーのような大手が参入することにより、その認知度アップにつながる可能性がある。天然ダイヤモンドと合成ダイヤモンドが混ざること懸念するジュエラーが多い中、あえて両方を扱うというスタージュエリーのアプローチは革新的だ。天然ダイヤンドと18金や10金、合成ダイヤモンドと10金という組み合わせで、どちらの素材にも値頃感と選択肢の幅を持たせているのが興味深い。「SJX W」は、消費者の価値観に合わせて選べるさまざまなダイヤモンドジュエリーを提供している。

The post スタージュエリーが新コンセプトストアで合成ダイヤモンドを採用した理由とは? appeared first on WWD JAPAN.com.

老舗ニッターがブランド始動 干場義雅と目指す“究極の普通”

 新潟県の老舗ニットメーカー、第一ニットマーケティングは7月1日に、日本貿易振興機構(ジェトロ)新潟とブランドプロデューサーの干場義雅との3者協業でファクトリーブランド「トレンタ・セッタンタ(30/70)」を始動する。“究極の普通”をコンセプトにしたセーターは、ウィメンズ&メンズ全10型をブラック1色のみで提案。シンプルで美しいシルエットが際立つコレクションは、これまでOEM(相手先ブランドの企画生産)では実現が難しかったという高品質な商品を、約2分1の価格で購入できるのも魅力だ。ブランドのこだわりやプロジェクト立ち上げの狙いなどを聞くために3人のキーマンを訪ねた。

贅沢な着心地を楽しめる、
シルク・カシミヤの“黄金比”

 「トレンタ・セッタンタ」のブランド名は、シルク30%、カシミヤ70%の混紡率に由来する。この“黄金比”で混紡した高級素材をスムース編みにすることで、厚みがあって形状保持ができるニットウエアが完成する。襟の見え方や袖口の幅などもミリ単位で計算したというコレクションは、自宅でイージーケアできる点もポイントだ。さらにニッティングだけでなく、紡績・染色・風合い出しの工程も全て国内メーカーが担当。職人たちの技術がこの一枚に詰まっている。価格はスタンダードなクルーネックセーターで4万3000円。「この贅沢なクオリティーでこの価格が実現できるのはハウスブランドならでは」だという。

世界レベルの品質を新潟から

 新潟県の見附市および五泉(ごせん)市は、日本製ニットの生産シェア30%を占める企業集積地帯だ。しかし、そのほぼ全量がOEM供給だという。国内外の有名ブランドから高い技術や品質を評価されながらも、取引先のブランド名を公言できないことが多いため、知名度向上のきっかけや発信力の強化が課題になっていた。

 織物製造会社を前身にした第一ニットマーケティングも、1987年から国内アパレルやライセンスブランドのOEM生産を主体に事業を拡大。自社ブランドも手掛けていたが、「売り場は百貨店が中心。立ち上げてすぐは反応があるが、継続的な知名度の広がりにはつながりにくかった。一方で、輸入品やファストファッションに押されてOEMの受注は年々減ってきている」と伊藤幸夫・同社執行役員営業1部部長は振り返る。

 そんな中でブランドスタートのきっかけになったのは、飯田康久ジェトロ新潟所長が偶然、新潟伊勢丹の売り場で新潟のニットメーカーの商品を購入したこと。「こんなにも高い技術を持つニットメーカーがOEMしかやっていない」という驚きと興味から、新潟の主要産地のニット組合に“ファクトリーブランド化”の必要性を打診し、最終的に第一ニットマーケティングが応じて、ジェトロ新潟との本格的なプロジェクトが動き出す。

 さらに飯田ジェトロ新潟所長の声がけでブランドプロデューサーには干場義雅が参画。デザインのディレクションからブランドの発信までを担当している。地域活性化、ブランドプロデューサー、モノ作り――3分野のプロフェッショナルがタッグを組み、構想から約8カ月をかけて製品化。ファクトリーブランド「トレンタ・セッタンタ」が誕生した。

“ブランド化”で
知名度&発信力の強化を

 “究極の普通”をうたう「トレンタ・セッタンタ」だが、良質なセーターとはどのようなものか。干場ブランドプロデューサーは「厳選された良い素材を使い、丁寧に編み、多様化する現代人の生活に合うようにデザインされているものだ」と考える。それらを個人で探すのは至難の業だが「第一ニットマーケティングという良質なセーターを作る知られざるメーカーが新潟にはある。その素材を最大限に感じていただきたい思いで、色や柄はあえて排除。黒の無地だけに絞ったセーターで、極上の心地よさを楽しんでもらいたい」と思いを語る。

 一方、飯田康久ジェトロ新潟所長は、「新潟県は他県から見ると雪・米・酒のイメージが強い。しかし五泉にはウィメンズに強い、見附にはメンズに強いニットメーカーが多くある」。中にはラグジュアリーブランドに製品を供給している工場もあるが「“守秘義務”があるため、このブランドのニットを自社で作っていることは発信できない」。それを踏まえた上で「世界に向けてアプローチしていくには、“ファクトリーブランド化”で知名度&発信力を強化することが重要だ」とプロジェクト立ち上げの経緯を語る。さらに「ビジネスのみの一定の成功だけでなく、地方にも魅力的なメーカーがあることが広く認知されることで、人手不足の解消やアパレル産業の発展につながってほしい」と先を見据える。

 また同プロジェクトは、新潟県と連動した地域活性化の一環でもあり、花角英世・新潟県知事も「新潟の良質なニットを世界に向けて発信し、ビジネスチャンスの拡大、知名度向上につなげてほしい」と期待を寄せている。

極上素材を引き立てる
ミニマルワードローブ

 「トレンタ・セッタンタ」は、ブランド公式サイト内のECストアと干場ブランドプロデューサーが手掛けるECのセレクトショップ「ミニマルワードローブ」で販売。今後はオンラインを軸に、セレクトショップへの卸や見本市への出展を予定している。

TEXT : ANRI MURAKAMI

問い合わせ先
株式会社プリママリエリアジャパン
0258-66-6678

The post 老舗ニッターがブランド始動 干場義雅と目指す“究極の普通” appeared first on WWD JAPAN.com.

現代版カリスマ販売員は立川にいる ママ業とも両立 「マウジー」なとりか

 「WWDジャパン」6月29日号では、凄腕の販売員15人を特集した。その中の1人、「マウジー」ルミネ立川店の販売員“なとりか”こと、田中梨花さんはブランドの顔である “オフィシャルスタッフ”。“オフィシャルスタッフ”はわずか5人のみが持つ称号で、元祖カリスマ販売員の一人森本容子が立ち上げた「マウジー」の、いわば“現代版カリスマ販売員”の一人だ。

 かつてカリスマ販売員といえば、渋谷109やルミネ新宿といった都心の有力ファッションビルの店舗に配属され、ブランドと店舗に並外れたパワーと売り上げをもたらした。現代版のカリスマ販売員は、ちょっと違う。都心から少し離れたルミネ立川店に勤務しながら、インスタグラム(@natorika)を平日に1日1回更新する。フォロワーが3万人もいるのでDMも少なくはないが、会社の確認が必要なので、コメントに必ず答えるようにしている。「販売員は、“憧れだけど向き合ってくれる存在”。そこがモデルとは違う。返すコメントが一言だったとしても、知らない人であれば必ずアカウントを見てどういった人なのか、どういったアドバイスを求めているのかを考えます。接客するときと同じです。店舗だと顔も服も見えるけど、SNSだと見えないので」。

 こう語るなとりかにとって、実はインスタは単なるコミュニケーションツールではない。実際に売り上げを立てる強力な武器なのだ。なとりかのインスタ投稿は「マウジー」の公式通販サイトと連動していて、投稿写真のすぐ横にはアイテム写真と購入ボタンが並び、サイトの閲覧者がなとりかの着こなしを見て購入すると、その売り上げが「マウジー」ルミネ立川店の評価にも組み込まれる。売上金額は月平均で約150万円だが、広告効果などを含めるとその数倍から10数倍にまで膨れ上がる。「マウジー」の運営母体であるバロックジャパンリミテッドも販売員を後押しするため、こうしたネット通販売り上げの一部をインセンティブ(奨励金)としてなとりかにフィードバックしている。子どもとの時間を重視するなとりかは、平日の10時〜17時、土日は休みという勤務で、実は時給制のアルバイトだ。「それでも“オフィシャルスタッフ”の手当もつくし、インセンティブもある。すごく恵まれている実感があります」。

 なとりかの1日の仕事は、インスタ投稿の準備から始まる。子どもを学校に送り出す前までに掃除や洗濯などの家事、そしてヘアとメークなどの準備をほとんど済ませると、20〜30分の通勤電車の中でインスタのコメント返信や投稿の下書きなどを行う。店ではなるべく接客に集中する。緊急事態宣言解除後、6月3日に約2カ月ぶりに再開した「マウジー」ルミネ立川店には、三密を避けるため事前のSNS露出や店頭に出るスタッフの数を減らしていたにもかかわらず、顧客が殺到した。「てんてこ舞いだったけど、うれしかった。こんなにも待ってくれてたんだって」。接客時には、客の服装や持っているアイテム、キャラクターなどを踏まえてきめ細かくアドバイスする。「人によって求めていることは違う。重視しているのは、着こなしや着用するシーンとか、悩んでいることにきちんと答えてあげること」。17時に店を出ると、再びインスタの投稿やコメント返信を行いながら、遅くても18時までには子どもを学童に迎えにいく。

 なとりか自身が中学生のときから『マウジー』ファン。高校を卒業後にアルバイトで販売員の仕事に就き、出産で一時期中断したものの、ずっと「マウジー」の販売員を務めてきた。インスタを接客にも活用することになったのは偶然だった。鍵付きで使っていたアカウントを、あるときに顧客に着こなしを見せるために公開したところ、翌日そのアイテムが店頭で売り切れた。「それから本社にも運用を相談するようになってぐんぐん伸びていった」という。バロック自体が販売員のインスタ活用に積極的で、今では週に1度、本社に集まって投稿用の撮影会を行っている。

 小学生の子どもがいるなとりかは、仕事に使える時間が限られている。「基本的に家にいるときにはインスタ、というよりスマホをほとんど見ません。できる限り子どもの顔を見て、向き合っていたいんです」。インスタ投稿には、ときに子どもも入れる。バックグラウンドも含め自分のキャラクターを出すことが、顧客の共感にもつながるからだ。「結果としてインスタ投稿がインセンティブを得ることにつながっていますが、お金のためだったら続いていない。実は少し前、販売員をこのまま続けていけるのか悩んだこともあったんです。持ち直せたのは、販売員の多くがそうだと思うのですが、お客さまが喜ぶ姿をダイレクトに感じられるから。インスタも、お客さんとのコミュニケーションツールとして使っているから続けていけるんです」。

The post 現代版カリスマ販売員は立川にいる ママ業とも両立 「マウジー」なとりか appeared first on WWD JAPAN.com.

小島健輔リポート 商業施設はこのままでよいのか テナントとの共存共栄を問う

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。新型コロナウイルスで小売業が多大な打撃を受ける中、出店先であるショッピングセンターを運営するデベロッパーとの関係にあらためて注目が集まっている。

 緊急事態宣言下の長期休業や客数激減では最低保証家賃の減免が求められ、イオンモールや丸井、三井不動産、イトーヨーカ堂など大半の大手デベロッパーは休業中の最低保証賃料を全額免除し、他のデベロッパーも部分的な減免や個別対応を行ったが、根本的な課題に踏み込んだわけではない。コロナ休業という緊急事態に特別対応しただけで、デベロッパーとテナントの共存共栄という建前に隠された課題は残されたままだ。

建前に隠された4つの課題

 テナント事業者にとっては、独立した路面に出店するか、集客や管理が期待できる商業施設に出店するか、という二択になるが、テナント出店はメリットとデメリットを熟慮する必要がある。

メリット(1)安定した集客が期待できる

メリット(2)保守管理の手間とリスクが省ける

デメリット(1)家賃と管理費・共益費など賃料負担が重い

デメリット(2)売上金預り制のため日銭が入らない

デメリット(3)営業時間や休日、陳列やセール時期などが規制される

デメリット(4)営業の継続が保証されない

 こうして見るとメリットよりデメリットの方が多いが、「安定した集客が期待できる」という必須命題と天秤にかければ、いくつデメリットがあってもやむを得ないと考えるテナント企業が多数派だ。

 路面の独立店舗を構えれば独自に集客しなければならないし、保守管理から金銭出納まで自ら行うか専門業者に委託する必要がある。逆にいえば、独自に集客できるなら高い家賃や管理費・共益費を払ってまで商業施設に入居する必要はない。ディスカウントストアやカテゴリーキラーなど大型店は独自に店舗を構えるのが当たり前で、商業施設に入居する場合もデメリット項目のほとんどを回避している。

 テナント出店のデメリットを検証し、その圧縮や回避の方策を考えてみよう。

商業施設の賃料はなぜ高いのか

 商業施設の賃料は家賃に加え、管理費や共同販促費から駐車場協力金まで多岐にわたる共益費があり、施設によっては共益費が結構な額になる。

 商業施設の賃料は、家賃と共益費を分けて徴収する「個別徴収」と、一括で徴収する「総合賃料」がある。日本ショッピングセンター協会(以下、SC協会)が毎年刊行している「SC白書」の最新版(2019年を集計した20年版)によれば、テナント売り上げ対比の平均賃料負担は、個別徴収の家賃が物販10.1%/飲食10.5%、共益費が2.2%、合わせると物販12.3%/飲食12.7%、総合賃料では物販11.9%/飲食12.5%だった。ざっくりとした水準は物販店で家賃が10%、共益費が2%ほどだが、テナント側のデータを見ると賃料負担はこれらの数字より一回り重い。

 アパレルテナントの家賃負担率は、立地タイプにもよるが18年の集計で14.1〜15.7%、共益費負担率は2.5〜3.1%、合計では16.6〜17.5%にも及ぶ。SC協会の統計値と差が出るのは、アパレルテナントは好立地の高コストな商業施設に出店が偏っているためと思われるが、SC協会の統計は契約値回答を集計したものかもしれない。

 テナント出店では最低保証付き歩合家賃が主流で、契約上は売り上げの10%でも、売り上げが落ち込む月の家賃負担は最低保障に引っかかって20%にもなることがある。結果として、年間の売り上げに対する家賃負担は10%を大きく超えてしまう。コロナ休業中は売り上げがゼロになり、その前後も大きく売り上げを落とすテナントが多かったが、激減した売り上げから最低保証家賃を徴収されてはほとんど残らずマイナスになるケースもあり、減免を求める声が広がった。多くのデベロッパーは休業中と前後の売り上げ激減期間の最低保証家賃を減免したが、コロナがなくてもテナントには大きな負担になっていたから、この機会に最低保証家賃の見直しを求めるテナントが増えている。

 管理費についても過剰な保守管理や警備、後方サービスが必要かどうか、共益費・共同販促費についても有効に使われているか批判もある。商業施設のLCC(格安航空会社)ともいうべきオープンモール型の低コスト商業施設などは家賃も管理費・共益費も安いから、デベロッパー側もフルサービスか限定サービスか、管理費・共益費のあり方を再検討するべきだろう。

賃料負担の不平等も高止まりの要因

 同じ商業施設に出ているテナントでも、単位面積(坪)あたりの賃料は数倍、施設によっては10倍も違う。月坪10万円を負担しているテナントもあれば、同1万円を切るテナントもあるとしたら、不公平に過ぎよう。それが販売効率にスライドするものなら当然だが、現実はそうとは限らない。

 ダウンタウンの商業施設では上層階ほど客数が減るから加速度的に単位賃料は安くなるが、郊外のモール型商業施設では奥行きが深いほど同じくらい加速度的に単位賃料が安くなる。モールに接したブロックしか使わないテナントには定価を適用するが、2番目、3番目、ユニクロのように4番目のブロックまで奥深く使ってくれるテナントには単位家賃を大きく割り引いても採算が取れる。奥のブロックは倉庫ぐらいしか使えず、他に借り手がないからだ。よって核店舗やカテゴリーキラーは一般の小型テナントの何分の1かの賃料で出店できるし、人気の大型ファッション店もそれに次いで優遇されている。

 それは合理性のあることだが、そんな大型店舗の面積比率が高すぎると、さすがに一般テナントの賃料が割高になり過ぎ、専門店のバラエティも限定されて集客力もかえって落ちる。

 問題は合理性の怪しい格差で、その時々の「人気相場」や開業スケジュールに追われての駆け引きで異常な賃料レートが決まったりする。外資系の著名テナントなどユニクロの3掛け、4掛けの販売効率なのに、ユニクロより優遇されているケースが少なくない。

 導入当初は人気で集客しても、販売効率がテナント平均の半分にも届かないとしたら、本当に人気があったといえるのだろうか。そんな外資系テナントに限って突然、日本から撤退したりする。業界の“空気”に流されて真価を見誤り、他のテナントとの不公平を招いたという誹りは免れない。

 外資系ブランドの優遇は百貨店でも再三言われてきたことだが、長期の推移を見ていると、人気(=販売効率)の消長で歩率レートは結構変動しており、今世紀に入って10ポイントも動いたブランドもある。百貨店は坪あたりの歩率賃料収入でバランスをとっているが、商業施設では人気と賃料が長期に乖離する傾向が指摘される。そんな不公平のしわ寄せが一般テナントに及んでいるとしたら、是正されるべきだろう。

 ほぼ一律適用している大手駅ビルを除けば、料レートは人気や交渉で大きく動く水もので、定価などあって無いのが実情だが、それでは不公平が広がってしまう。一時の風評に流されることなく、販売効率で平等に評価する基準を堅持するべきだろう。

売上金預かり制はデフォルトではない

 コロナ危機では休業期間が長引いて売り上げが激減し、資金繰りに窮するテナントも少なくなかったが、地方や郊外の低コスト商業施設やロードサイドの独立店舗が多かったチェーンは資金繰りに窮することがなかった。営業を継続できた店舗が多かったことに加え、毎日の売り上げが日銭となって入ったからだ。対して都心の商業施設や郊外でもモール型の大型商業施設中心に出店していたチェーンは大半の店舗が長期間休業したことに加え、日銭が入らず売上金の回収が遅れて資金繰りを圧迫した。

 商業施設では月の前半の売り上げから固定賃料や固定共益費を差し引いて月末に、月の後半の売り上げから歩合家賃や変動手数料などを差し引いて翌月15日にテナントに振り込むケースが多く、平均22.5日、回収が遅れる。月末締めの百貨店では倍の平均45日も遅れるから、資金繰りはさらに圧迫される。

 商業施設の売上金預かり制はデフォルトだと思われているが、欧米の大手チェーンは商業施設出店でも売上金を直接収納しており、売上金の回収期間は1週間から2週間程度に収まっている(キャッシュレス決済比率による)。米ギャップ(GAP)がコロナ休業に際して大手デベロッパーに対する家賃の支払いをストップできたのも、直接収納だからだ(当然に告訴されているが)。わが国でもファーストリテイリングの売上金回収期間は10日に満たないから、海外のみならず国内でも直接収納している店舗が大半だと推察される。

 商業施設でも核店舗やスーパーマーケットは直接収納であり、カテゴリーキラーや人気の大型アパレル店も直接収納しているケースが少なくないと推察される。売上金預かり制はデフォルトではなく、預かり期間やキャッシュレス決済手数料の上乗せも含め、コロナ危機を契機に見直されるべきだろう。

定期借家契約の不平等

 デメリットの最後に「営業の継続が保証されない」を挙げたが、その背景には00年3月に導入された定期借家契約がある。

 定期借家契約導入によって、当時の普通借家契約では基準家賃の50カ月分といわれた差し入れ保証金は10カ月分の敷金に減額されたが、定借期間が終了すれば退店を求められても止むを得ず、その一方で定借期間内にテナント側の意思で退店すれば少なからぬペナルティー(敷金の全額没収や1年分の基準家賃徴収)を要求されるという不平等が指摘されてきた。

 定借期間も郊外商業施設では5年または6年、ターミナルの駅ビルなどでは3年または4年と短く、定借期間満了で退店を求められては内装投資の償却もできない。定借契約が更新されても、更新後の契約期間は半分程度に短縮されるケースも少なくない。

 アパレル店の場合、退店事例の半分前後が定借期間満了によるもので、うち3分の1は売り上げ不振や収益低迷でないのに退店を強いられている。逆に定借期間内に退店した場合、ほぼ6割のケースでペナルティーが要求されており、踏んだり蹴ったりと言いたくなるほどテナントにとって過酷なのが定期借家契約の実態だ。

 定期借家契約になってテナントに有利になったのは差し入れ保証金(敷金)が5分の1になったことぐらいで、売り上げ対比の実質家賃負担率は定借導入後4.5ポイントも上昇した。デベロッパー側はイニシャルコストの切り下げをランニングコストで回収したわけだ。

 定期借家契約はテナント側には厳しいが、デベロッパーにとっては新陳代謝を促して新鮮なテナントに入れ替えていく打ち出の小づちでもある。そんなデベロッパー側のメリットと、内装投資の償却もできないで追い出されるテナントの不利益のバランスに配慮が必要ではないか。

共存共栄のサステナビリティを問う

 コロナ危機で痛感したと思うが、商業施設の現状はテナントにとって安心して営業できるものとは言い難く、路面の独立店舗や郊外のLCC型商業施設へのシフトを検討する契機となったアパレルも少なくないと思われる。

 デベロッパーにとっても過剰なテナント交代は一時的な費用がかさむだけでなく、売り上げや家賃収入を不安定化することもある。アパレルの出店意欲が高かった時代はともかく、コスト倒れで出店意欲がしぼみ、既存テナントの退店でECに顧客が流れていけば、館の集客力も陰っていく。

 多産多死のアパレル業界は値引きや売れ残りのコストを価格に転嫁し、百貨店や商業施設はテナント入れ替えや運営のコストを実質賃料に転嫁し、双方のコスト転嫁が商品を割高にして顧客を遠ざけてきた。顧客とて新しい店ばかり期待するわけではなく、慣れ親しんだ店とのサスティナブルな関係も求め、近場の店舗がなくなればECに流れる。地方や郊外の百貨店が雪崩打つように閉店して“ブランド難民”となった顧客がECに流れていく様を見れば、リアル店舗の過剰な流動化が店舗からECへのシフトを加速させているという指摘も無視できない。

 過剰に供給して値引きや廃棄を肥大させ、過剰に入れ替えてブランドや店舗も廃棄していく多産多死の流動化は業界コストも社会コストも浪費する。コロナクライシスで現代文明が壁に当たったのを機会に、商業施設とテナントの関係もサスティナブルな在り方を模索すべきではないか。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

The post 小島健輔リポート 商業施設はこのままでよいのか テナントとの共存共栄を問う appeared first on WWD JAPAN.com.

人気DJのハニー・ディジョン、BLMとトランスジェンダーについて語る 「人種差別を解体するのは白人がやるべきこと」

 毎年6月の「プライド月間(Pride Month)」では、LGBTQ+(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、ジェンダークイアなどの性的少数者)の権利について啓発するイベントなどが開催されるが、今年は「黒人の命は大切(Black Lives Matter以下、BLM)」運動と融合しているケースも多く見られる。

 BLMは、5月25日に米ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性のジョージ・フロイド(George Floyd)氏が白人の警察官に首を押さえつけられて死亡したことを受けて、世界中で起きている抗議デモだ。黒人や有色人種の人々のための人権運動ではあるが、その中でもLGBTQ+の存在が見落とされがちなことは以前から指摘されており、最近では「全ての黒人の命は大切(All Black Lives Matter)」という包括的なスローガンも目にするようになった。

 ニューヨークとベルリンを拠点とする人気DJで、2019年にはコム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)と共にアパレルブランド「ハニー・エフィング・ディジョン(HONEY F—ING DIJON)」を立ち上げた黒人のトランスジェンダー女性、ハニー・ディジョン(Honey Dijon)に、BLM運動とインクルーシビティー(包括性)などについて米「WWD」が聞いた。

WWD:新型コロナウイルスの世界的流行やロックダウン(都市封鎖)による影響はあったか。

ハニー・ディジョン(以下、ディジョン):何もかもがいきなり止まったのでおかしな感じがしたが、私がアーティストとして伝えたいことは何も変わっていない。もうすぐ発売となる新しいアルバムでは、もともとこれまでよりも政治的なメッセージを込めるつもりだったし、制作に当たってはたくさんの黒人女性やクイアの人、そして伝統的な民族音楽家と組んだので、とてもタイムリーな作品になった。性的指向についてもいろいろ触れているため、6月15日にアメリカの最高裁判所が職場におけるLGBTQ+への差別的な扱いを違法とする判決を下したことを踏まえると、いっそう興味深く聴いてもらえると思う。

WWD:ファッション関係の仕事への影響はあった?

ディジョン:今はみんな「ファッションの役割とは?ファッションの意味って?」というような問いかけをしているので、ファッション業界にとって面白い時期だと思うし、コロナ後の世界における業界のあり方や人種差別への取り組みについて本気で考える必要がある。もう以前の世界には戻れないし、戻ったところでいいことがあるわけでもない。またひたすらショッピングをして、大量消費しろとでも?一方で、誰しも毎日服を着なくてはならないので、バランスが大切だ。

WWD:業界としても、社会としても、私たちは“快適でないこと”に慣れなくてはいけないのかもしれない。

ディジョン:アメリカ人は快適じゃないことを嫌うから前途多難かもしれないが、個人的には今後の変化を楽しみにしている。かつて公民権運動が起きたことによって啓発的でパワフルな音楽やアートがたくさん生まれたし、エイズ危機が起こった1980年代当時には、ニューヨークで素晴らしいアートが次々に誕生したと読んだことがある。インターネットが登場する前、人々は外に出て、誰かと出会い、面白いことに参加したり、何かを一緒に創り出したりした。私がクラブカルチャーを好きなのもこのためで、アーティストやミュージシャンがクラブで出会い、作品を生み出していく感じが最高だと思う。80〜90年代はカルチャーに変動が起きた時代だが、現在もそうした転換期にあると感じる。

WWD:現在あなたはベルリン在住だが、アメリカで起きていることをどう見ている?

ディジョン:(人種差別は)人道上の問題だということをみんな忘れがちではないだろうか。新型コロナウイルスは国境や人種、社会階層に関係なく誰でも感染する可能性があるので、ある意味では平等だ。しかしその後には(フロイド氏の事件に抗議する)暴動が起きて、アメリカの真の姿があぶり出された。人種差別が深く根付いているし、それを土台としてつくられた国だということが白日のもとに晒された。ヨーロッパはアメリカのそうした姿を見て、自らの過去における人種差別を省みることとなった。まさに世界を変える出来事だと思う。

WWD:あなたは最近ベルリンで行われたBLM運動に参加しているが、以前には黒人社会におけるトランスフォビアやホモフォビアについて話している。BLMとLGBTQ+の権利についての考えを教えてほしい。

ディジョン:ジェンダー、人種、セクシャリティー、社会的不公正は、さまざまなところで交差する。BLM運動においても「シスジェンダー(生まれ持った性別に違和感のない人。トランスジェンダーの対義語)の命は大切」ではなく、「全ての命は大切」と掲げている。ゲイの人の命ももちろん大切であり、自分にとって好ましくない属性の持ち主をこうした運動から排除してはならない。

実は同性愛者の権利運動でも、世間的に印象が悪くなるなどの理由で、最初はドラァグクイーンの参加は歓迎されなかった。こうしたことを考えると、理解を深めるための対話は常に続けていく必要がある。例えば、なぜブラックカルチャーにおいてクイアがこれほど忌避されたのか。私は教会の教えなど宗教的な理由もあるのではないかと推測しているが、(黒人の人々が感じている)どうしようもない無力感もあるのかもしれない。奴隷制があった時代、黒人は人間としての権利や尊厳を剥奪され、女性であれば強姦されるなど、あらゆる残虐な行為にさらされた。その後も社会的に権力を持つ側になることはなく、常に抑圧されてきた犠牲者だったので、同じグループ内でさらに弱い相手を抑圧してしまうのかもしれない。いずれにしても、アメリカは本当にたくさんの傷を癒す必要があるし、それはBLM運動内においても同じことだ。

WWD:「プライド」は祝祭的なものでもある。現在の社会的な混乱が落ち着いたら何を祝いたいか。

ディジョン:BLMや「トランスジェンダーの黒人の命は大切(Black Trans Lives Matter)」運動がトレンドで終わるのではなく、変化の始まりであってほしいし、不公正や差別を解体するものであってほしい。

私は、子どもの頃に教えられた“恐れ”に引きずられたり、私でない誰かが決めた定義に従ったりして人生を送りたくない。トランスジェンダーであること、また黒人であることの意味を自問したりもするが、小説家で公民権運動の活動家でもあったジェームズ・ボールドウィン(James Baldwin)が言ったように、私たち黒人が「ニグロ」という(被差別側の)人種をつくったわけではない。社会が黒人やトランスジェンダーに対して押し付けた定義は、私自身を何一つ表わしていないのに、それでネガティブな気持ちにならないようにするにはどうすればいいと思う?私はいつも、誰かがそう言ったからといって、それが本当なわけではないと言うようにしている。

WWD:あなたの気持ちや立場を理解するための助けとなる、本やアートのお薦めはある?

ディジョン:あなたたち(白人)を教育するのは、私の仕事ではないと思う。自分の無知や偏見の根がどこにあるのかを探したり、何をすればいいのかを考えたりするのは、あなたたち自身がやるべきことだ。人種差別を解体するのは黒人の仕事ではなく、白人の仕事。それはジェンダーについても、全く同じことだ。

WWD:みんなが自分で考えるようにするには、どうすればいいと思うか。

ディジョン:まず相手の言葉に耳を傾けて、その人が体験してきたことを知り、暴力的な行為や抑圧と闘うこと。とても気まずい話題だし、難しいことだけれど。

WWD:希望はあると思っている?

ディジョン:トランスジェンダーである私たちは、みんなを啓発できると思う。ただ自分らしくありたいだけなのに、世界中から「それは間違っている」と否定されて、肉体的にも精神的にも、そして社会的にも傷つけられる痛みに耐えながら、私たちはジェンダーを変えている。そうした逆境にも折れない強さは、世の中で最も美しいものの一つだ。私たちは、どんなことがあっても自分らしく生きようという勇気を持っているし、それは誰にとってもパワフルで勇気づけられるメッセージだと思う。

The post 人気DJのハニー・ディジョン、BLMとトランスジェンダーについて語る 「人種差別を解体するのは白人がやるべきこと」 appeared first on WWD JAPAN.com.

ゲームカルチャー解体新書Vol.1 今、ゲームに注目する理由

 約15年にわたり、ファッションに軸足を置きながら、セールスやPR、企画立案の立場で国内外のブランドビジネスに関わらせていただいています。ファッション業界に携わっている私が、ファッション業界をはじめ、ゲーム業界で活躍している方々、ゲーム好きのゲストとの対談を交えながら、「ファッション × ゲーム」の可能性、新しい価値を提供することができたら。そんな想いと、「WWDJAPAN.com」編集長の村上さんのサポートがあり、この新連載をスタートさせていただきました。

ゲーム=デジタルネイティブ ファッション=アナログネイティブ

 まず、ゲームタイトルによって変わるので一概に言えませんが、20歳を超えると動体視力の低下が顕著に表れ、e-sports選手はアスリートの中でも最も選手生命が短いと言われています。また一般的には、「引きこもり」だとか「オタク文化」などと言う定説が浸透し、世間体や親子関係(特に親)の問題もあってか、日本国内においては成熟した産業になりきれない。e-sports大会の賞金額を比較しても、世界とは雲泥の差がある。こうしたe-sports業界の背景については、次回以降の対談で紐解いていきたいと思います。しかし、どうでしょう。賞金額などは別として、この業界特有のイメージのアップデートは、それほど難しくないのでは?海外はもちろん、私の周りにいるファッショニスタ、ミュージシャン、タレントら各業界には、ゲームをこよなく愛する多くの方々が存在しています。ファッションとの親和性はとても高く、ゲーム業界から生まれるスターが複数のフィールドで活躍する可能性は十分にある。そのフィールドの1つが、ファッションを中心とした業界ではないかと思うのです。

 さらに“アナログ最前線市場”のファッションは、今回の地殻変動によって、デジタル強化が生き残りの必須条件となっているのは周知の通り。ファッションが人に与える高揚感や自己表現、そして、外見だけでなく内面(心理)にも影響を与え、この恩恵を受けた沢山のファッションユーザーの間でも、ファッションは消費のプライオリティからランキング落ちしています。

 ブランド自体も、セレクトショップをはじめとした各取引先がこれまでのように買い付けてくれるか分からない。いや、かつての取引に戻る事はないと思う。生産数は激減し、工賃のチャージアップにより、急激なインフレが起こり、値付けは変えざるを得ないでしょう。

 結果、自走するにはブランド、そして各店舗は、それぞれに顧客を獲得し、顧客のために商品やサービスを提供する関係を構築する必要があります。でも、ファッションが急にデジタルシフトをすると、モノを押し付けるような「商品推し」なプロモーションや、ニッチな世界観の作り込み、クーポンやマークダウン戦略をしてしまうのが関の山です。 デジタルネイティブのゲーム業界が、ファッション市場にとっても、新しいドアの鍵を握っているのではないか。そして、そのドアの向こう側に登場するキーマン達は、今その時を待っていると信じてやみません。「ファッション業界 × ゲーム業界」。それぞれの立場にいる方々が抱えている問題、やりたい事などを語り、ここから生まれる面白いプロジェクトも随時発信していきたいと思います。次回Vol.01は、ゲームカルチャー協会の松岡雅幸さんとの対談を予定しています。

戸簾俊広: ジェムプロジェクター代表:2009年に国内外のファッション・ライフスタイルブランドのブランディング、PR、セールス、コンサルティングを手掛けるブランディングカンパニーGEM PROJECTORを設立。現在は、地方創生プロジェクトや会員予約制のテンポラリーレストランの立ち上げに向け奮闘する一方、「受信者から発信者へ」をテーマにしたオンラインサロンを運営

The post ゲームカルチャー解体新書Vol.1 今、ゲームに注目する理由 appeared first on WWD JAPAN.com.

ゲームカルチャー解体新書Vol.1 今、ゲームに注目する理由

 約15年にわたり、ファッションに軸足を置きながら、セールスやPR、企画立案の立場で国内外のブランドビジネスに関わらせていただいています。ファッション業界に携わっている私が、ファッション業界をはじめ、ゲーム業界で活躍している方々、ゲーム好きのゲストとの対談を交えながら、「ファッション × ゲーム」の可能性、新しい価値を提供することができたら。そんな想いと、「WWDJAPAN.com」編集長の村上さんのサポートがあり、この新連載をスタートさせていただきました。

ゲーム=デジタルネイティブ ファッション=アナログネイティブ

 まず、ゲームタイトルによって変わるので一概に言えませんが、20歳を超えると動体視力の低下が顕著に表れ、e-sports選手はアスリートの中でも最も選手生命が短いと言われています。また一般的には、「引きこもり」だとか「オタク文化」などと言う定説が浸透し、世間体や親子関係(特に親)の問題もあってか、日本国内においては成熟した産業になりきれない。e-sports大会の賞金額を比較しても、世界とは雲泥の差がある。こうしたe-sports業界の背景については、次回以降の対談で紐解いていきたいと思います。しかし、どうでしょう。賞金額などは別として、この業界特有のイメージのアップデートは、それほど難しくないのでは?海外はもちろん、私の周りにいるファッショニスタ、ミュージシャン、タレントら各業界には、ゲームをこよなく愛する多くの方々が存在しています。ファッションとの親和性はとても高く、ゲーム業界から生まれるスターが複数のフィールドで活躍する可能性は十分にある。そのフィールドの1つが、ファッションを中心とした業界ではないかと思うのです。

 さらに“アナログ最前線市場”のファッションは、今回の地殻変動によって、デジタル強化が生き残りの必須条件となっているのは周知の通り。ファッションが人に与える高揚感や自己表現、そして、外見だけでなく内面(心理)にも影響を与え、この恩恵を受けた沢山のファッションユーザーの間でも、ファッションは消費のプライオリティからランキング落ちしています。

 ブランド自体も、セレクトショップをはじめとした各取引先がこれまでのように買い付けてくれるか分からない。いや、かつての取引に戻る事はないと思う。生産数は激減し、工賃のチャージアップにより、急激なインフレが起こり、値付けは変えざるを得ないでしょう。

 結果、自走するにはブランド、そして各店舗は、それぞれに顧客を獲得し、顧客のために商品やサービスを提供する関係を構築する必要があります。でも、ファッションが急にデジタルシフトをすると、モノを押し付けるような「商品推し」なプロモーションや、ニッチな世界観の作り込み、クーポンやマークダウン戦略をしてしまうのが関の山です。 デジタルネイティブのゲーム業界が、ファッション市場にとっても、新しいドアの鍵を握っているのではないか。そして、そのドアの向こう側に登場するキーマン達は、今その時を待っていると信じてやみません。「ファッション業界 × ゲーム業界」。それぞれの立場にいる方々が抱えている問題、やりたい事などを語り、ここから生まれる面白いプロジェクトも随時発信していきたいと思います。次回Vol.01は、ゲームカルチャー協会の松岡雅幸さんとの対談を予定しています。

戸簾俊広: ジェムプロジェクター代表:2009年に国内外のファッション・ライフスタイルブランドのブランディング、PR、セールス、コンサルティングを手掛けるブランディングカンパニーGEM PROJECTORを設立。現在は、地方創生プロジェクトや会員予約制のテンポラリーレストランの立ち上げに向け奮闘する一方、「受信者から発信者へ」をテーマにしたオンラインサロンを運営

The post ゲームカルチャー解体新書Vol.1 今、ゲームに注目する理由 appeared first on WWD JAPAN.com.

藤原ヒロシと「タグ・ホイヤー」の第2弾コラボは“テクノロジーの針を少し逆に戻した”現代風ビンテージ

 「タグ・ホイヤー(TAG HEUER)」は、藤原ヒロシの「フラグメント デザイン(FRAGMENT DESIGN)」との第2弾となるコラボレーションモデル“タグ・ホイヤー × フラグメント デザイン キャリバー ホイヤー02 クロノグラフ”を7月下旬に500本限定で発売する。今回ベースにしたのは1960~70年代の”フォーミュラ1“コレクションに使用されている“Cケース”だ。ケースサイズは44㎜と、“ホイヤー カレラ”をベースに仕上げた前回モデルの39㎜に比べて大きめだが、前回同様、ビンテージウオッチからインスピレーションを得て、藤原流に再解釈した。2018年に第1弾コラボモデルを発売した際には、店頭にブランド史上初の行列ができ、ショーケースに並ぶ前に完売してしまうなど、歴史的な反響があったという。完売必至の第2弾コラボの制作背景を藤原に聞いた。なお、取材は5月の緊急事態宣言下にリモートで実施している。

WWD:前回は1963年の“ホイヤー カレラ”のオリジナルモデルをベースにしていましたが、今回は?

藤原ヒロシ(以下、藤原):前回は僕のワガママというか、小さいサイズ(39㎜)をケースから作ってもらいました。そのときに、次回は大きいモデルを作るという約束だったので、今回は既存モデルをカスタムしていったんです。最初に指定されたモデルがいくつかあり、その中から僕が選んだのが、“フォーミュラ1”コレクションの“Cケース”(44㎜)というモデルでした。ケースはそれを流用して、中身のフェイスのデザインを変えていった感じです。

WWD:具体的にはどこを変えたのですか?

藤原:クロノグラフが2つのモデルは、現行では販売していないのですが、ビンテージの「タグ・ホイヤー」のモデルではあるんですね。そこからインスピレーションを得て、よりスポーツビンテージライクにしました。オリジナルモデルと見比べると、違いがはっきり分かると思います。

WWD:前回はレザーストラップとNATOストラップでした。今回スチールブレスレットを採用した理由は?

藤原:僕はこういうジュビリーブレスというビンテージっぽいブレスが好きなので、実は前回もスチールブレスを付けたかったのですが、時間がなく実現できなかったんです。今回は前回できなったことをやらせてもらいました。

WWD:デザイン面でもっともこだわった部分はどこですか?

藤原:ブレスレットと全体のスポーツビンテージみたいな感覚です。でも本当のビンテージにはならないように、例えば裏ぶたを赤いサファイアにしたりすることで、(オリジナルモデルが発売した)60年代の未来というか、ビンテージの近未来というか、現代風にアレンジしました。

WWD:その微妙なニュアンスはどのようにして表現するのですか?

藤原:「タグ・ホイヤー」もそうだし、時計はテクノロジーなのでそもそも近代的なものじゃないですか。どんどん新しくなっていくものの針を少し逆に戻す……そういう感覚は、僕の得意分野かも知れません。

WWD:改めて、実物を見た感想を教えてください。

藤原:イメージ通り、きれいに仕上がりました。サイズ以外は前回同様、自由にやらせてもらい、僕がイラストレーターで書いたデザインを忠実に再現してもらいました。僕は大きいサイズの時計をあまり着けませんが、今どきの時計が好きな人にはいいと思うし、一般的には着けやすいと思います。

WWD:デザインには別の案もあったのですか?

藤原:最初に2案デザインを提出したので、2つのフェイスのサンプルが上がってきました。もう一つのデザインは微妙な色の違いです。同じ黒でもアクセントにほかの色が入っていたりして、もう少しビンテージ感が強かったので、よりシンプルなモデルを選びました。

WWD:今後の「タグ・ホイヤー」とのプロジェクトは?

藤原:決まっていないです。ひとまず、第2弾まで。

WWD:(新型コロナウイルスの影響で)自宅で自粛していると、腕時計をする機会が少なくなりませんか?

藤原:どうでしょう。少し話は逸れますが、先日、時計ディーラーの友人と話すと、その人はもう時間を合わさないと言っていました。(時計の針を)常に10時10分にして、ブレスレットとして使っているみたいです。一方で僕は、普段から腕時計で時間を確認することが多いので、時計を時計として使うタイプです。

WWD:(自粛中ということもあり)自宅での時間の確認方法を教えてください。

藤原:実は自宅にある時計は、目覚まし時計だけですね。今は、ユーチューブやネットフリックスで好きな時間に好きなモノを見られるから時間の観念がずれてしまいがちですけど、僕は常にテレビをつけているので、それで時間を確認することが多いかな……「『ミヤネ屋』、2時か」みたいな感じです(笑)。

The post 藤原ヒロシと「タグ・ホイヤー」の第2弾コラボは“テクノロジーの針を少し逆に戻した”現代風ビンテージ appeared first on WWD JAPAN.com.

7月1日からプラスチック製レジ袋有料化 マイバッグ無料配布や風呂敷推しなど各社の動きをチェック

 改正された「容器包装リサイクル法」に基づき、7月1日から各種小売店で使われているプラスチック製のレジ袋が有料化される。コンビニやスーパーなどへの影響が特に大きいが、ファッションやビューティ企業と関連のある店舗ももちろん有料化の対象だ。この機会にエコにフォーカスした販促を打ち出す企業もある。1日を前に、改めて有料化の意図をおさらいすると共に、各社の施策を紹介する。

 今回有料となるのは、小売店で商品を購入した際に提供される、持ち手の付いたプラスチック製レジ袋。「(プラスチックに関しては)廃棄物・資源制約、海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化などの課題もある」(経済産業省)ことから、有料化となった。ただし、1.フィルムの厚さが50マイクロメートル以上で繰り返しの使用が可能な場合、2.海洋生分解性プラスチック配合率が100%の場合、3.バイオマス素材(化石燃料でなく動植物に由来する有機物である資源)の配合率が25%以上の場合は有料化から除外される。

 アパレルやビューティ業界ともつながりの深い小売店でいえば、百貨店は食品フロアでプラスチック製レジ袋の使用率が高い。三越伊勢丹ホールディングスは1日から、国内グループ百貨店全店で食品用のプラスチック製レジ袋を順次廃止する(取引先ショップがプラスチック製レジ袋を提供する際は有料)。その代わりに、グループ共通デザインの黒い無地の有料紙袋(大サイズ50円、小サイズ30円)を導入。FSC認証紙を使い、従来の紙袋よりも地厚にし、はっ水加工も施した。伊勢丹のアイコンとしておなじみのタータンチェック柄などのマイバッグ(900円)も同時に発売する。なお、食品フロア以外では1日以降も従来通り紙袋を無料で提供する。

 そごう・西武は食品に限らず、全15店の全売り場でレジ袋を有料化する。バイオマス素材を30%含むプラスチック製レジ袋は食品用が3~8円、一般用が5~70円。FSC認証紙の紙製レジ袋は一般用が10~50円、特選が100円。

 松屋はプラスチック製レジ袋を3~10円に有料化する。同時に松屋銀座本店で推しているのが“元祖マイバッグ”としての風呂敷だ。7階の呉服売り場に風呂敷を15サイズ約100種(550~2万7500円)そろえ、持ち手として使えるリングなども別売りで打ち出す。ジーンズのバックスタイルのようにポケットが付いたデニム地の風呂敷(1万3750円)などがおすすめ商品。

 SPAメーカーや専門店では、アダストリアが1日から、店頭で商品を購入した客に計50万枚のマイバッグを配布する「REBAGシュウカン」キャンペーンを実施する。同社は14年からマイバッグの利用促進・レジ袋の削減を目的に、レジ袋(紙製、プラスチック製問わず)の包装を辞退した客に自社EC「ドットエスティ」や店頭で使用できるポイント10ポイントプレゼントしてきた。その結果、年々レジ袋の辞退は増え、20年2月期までに累計で171万枚のレジ袋が削減できたという。同社が扱うプラスチック製レジ袋はフィルムの厚さが50マイクロメートル以上のため、有料化はしない。

 しまむらは5月から、プラスチック製レジ袋をバイオマス素材を25%以上含むタイプに順次切り替えてきた。それによって、今回の有料化の対象からは外れる。また、「今後のさらなる制度変更を見据え」、一部サイズではプラスチック製に代えて紙製レジ袋を導入。7月1日以降もレジ袋はプラスチック製、紙製共に無料で提供する。

 また、「H&M」や「ユニクロ(UNIQLO)」「ジーユー(GU)」といったグローバルSPA、「アース ミュージック&エコロジー(EARTH MUSIC & ECOLOGY)」を運営するストライプインターナショナルなどは、18年末以降、プラスチック製レジ袋に代えて紙製レジ袋の導入と有料化を進めてきた。

 レジ袋有料化の影響が最も大きいといっていいコンビニ業態はセブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの大手3社がプラスチック制レジ袋を1枚3円(セブンイレブンはサイズによって違いあり)とすることを発表している。また、有料化を前にレジ袋削減の啓もうとして、さまざまな取り組みも行われてきた。JR東日本は「スノーピーク(Snow Peak)」、日本環境設計と組んでマイバッグを企画し、6月16日から駅内のコンビニ「ニューデイズ」などで500円以上の購入客に50万個を配布した。「ナチュラルローソン」はメルカリと組み、伊坂幸太郎や吉本ばなな、筒井康隆の小説を印字し付加価値を付けた、バイオマスプラスチック50%以上配合の“読むレジ袋”を6月24~26日に無料配布。両社とも既に配布は終了している。

The post 7月1日からプラスチック製レジ袋有料化 マイバッグ無料配布や風呂敷推しなど各社の動きをチェック appeared first on WWD JAPAN.com.

キーマンたちに直撃 “スーツに見える作業着”が秘める、ファッションとしての可能性

 オアシススタイルウエアが企画・販売する、“スーツに見える作業着”「ワークウエアスーツ(以下、WWS)」が好調だ。企業の制服といった法人の売り上げと、消費者による個人の売り上げ双方を伸ばしている。中でも個人は「アバハウス(ABAHOUSE)」での取り扱いを皮切りに「アーバンリサーチ(URBAN RESEARCH)」や「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」など、有力セレクトショップとの取り組みを続々実施。ファッション業界からも注目を集め始めている。作業着として始まった「WWS」には、ファッションとしてどのような可能性を持つのか。同ブランドの卸先の中でも関係性の深いベイクルーズグループ内で、同ブランドとの取り組みを推進している北野浩規「417エディフィス(417EDIFICE)」商品開発マネージャーと栗原潤J.Sワークス取締役の2人と、樋口麗香「WWS」ディレクターと共に、その可能性を探る。

コロナ禍の中でも急成長
水道工事業発の「WWS」とは?

 「WWS」は、水道工事業を行うグループ会社が長年培ってきたノウハウを生かし、オリジナルの生地“アルティメックス(Ultimex)”から生まれる機能性と、フォーマル要素を併せ持つ。その2つの側面と、アパレル業界へのアプローチをはじめとするさまざまな施策を組み合わせることで、企業の制服といった法人の売り上げと、消費者による個人の売り上げの双方が大きく伸長。第一四半期(2020年3月1日~5月31日)の売り上げは前年同期比で332%を達成し、コロナ禍の中でも急成長を遂げている。

初の別注商品を制作した
「417エディフィス」が考える
「WWS」の可能性

 約1年前、「WWS」が初となる別注商品制作の取り組みを行ったのが、ベイクルーズグループの「417エディフィス」だ。同ショップの北野浩規商品開発マネージャーは「『417』として新規顧客の獲得を目指し、機能性や利便性の軸で、何か新しいことはできないかと考えていた。そんな中で水道工事業発の服で“スーツに見えますが作業着です”という、お客さまにダイレクトに刺さるであろうコンセプトを持つ『WWS』に可能性を感じ、取り組みを決めた」と経緯を語る。そうして生まれた別注商品は、実際に30~40代を中心とした新規顧客の獲得に一役買っているという。「オリジナルの生地により、シワになりにくく、洗えるという2つの点がお客さまに刺さっている」とも分析する。現在はANA(全日本空輸)とのトリプルコラボ商品の発売も控えているが「コロナもあって、お客様のマインドも変わっている。ショップとしてもお客さまのライフスタイルに寄り添った商品企画をしていくつもりだ。その中で、業種・年代を問わずに選ばれる『WWS』とは今後、一定のコミュニティーに強く刺さるような商品開発ができると考えている」と期待を見せる。

いい意味で“素朴”
さまざまな切り口に期待

 ベイクルーズグループでは、「ジャーナルスタンダード(JOURNAL STANDARD)」も「WWS」との取り組みを決定。男女兼用の別注商品を7月にウェブで先行受注形式で、8月には店頭で販売する予定だ。同ショップを運営するJ.Sワークスの栗原潤取締役は取り組みの経緯について「機能やサイズ感、トレンドなど切り口を変えて、これまでにもセットアップは多く取り扱ってきた。そういった中で何か違う切り口でセットアップやワークウエアを提案できないかと考えていた。『WWS』はいい意味で素朴で、間口が広い。その素朴さを残しつつ、何か切り口を足せばセットアップの取り入れ方も多様化するのではないかと考えた。その第一弾として、『ジャーナルスタンダード』では『WWS』との新たな取り組みとして“男女兼用”をテーマにした別注商品を加え、提案することにした」と説明する。今後の取り組みについては「1回だけでは伝わらないと思っているので、ディテールなどを変えながら、一緒に取り組みを続けていきたい。ただ、変にいじり過ぎてもいけない。この素朴さをベースにしつつ、バランスを取りながら取り組んでいくのがキモだと思っている」。

ファッション業界一筋の
ディレクターが考える
「WWS」の未来

 「WWS」のファッションとしての可能性を広げたのが、樋口麗香ディレクターだ。インポートブランドの卸など、18年にわたりアパレル業界一筋で働いて来た彼女は「WWS」のどこに可能性を感じたのか。「長くファッション業界で働く中で、ファッションはもっと身近な存在であるべきと考えるようになった。その中で、『WWS』という、仕事とファッションを繋げる服を、もう少しだけスタイリッシュに見せ、広げていくことができるのではないかと考えた」と語る。そうして彼女は「417エディフィス」を皮切りに、別注を軸としたセレクトショップとの取り組みを拡大させた。「『WWS』は男女問わず、困っている人たちのための服であってほしい。今後は女性視点から作る、機能系スーツを拡充したいと考えている。スーツの定義や仕事の幅が広がる中で、私たちとしては機能の面をシンプルに伝えつつ、ファッションの要素を盛り込むなどして発展させていく」。

問い合わせ先
オアシススタイルウェア
営業・広報窓口
suhara@oasys-inc.jp

The post キーマンたちに直撃 “スーツに見える作業着”が秘める、ファッションとしての可能性 appeared first on WWD JAPAN.com.

胸が大きな女性の悩みに光を当てたブランド「オーバーイー」 “街角の花屋”のような接客で悩みを共有

     胸が大きな女性のためのファッションブランド「オーバーイー(OVERE)」を運営するエスティームの代表を務めるのは、学生時代から自身の体形にコンプレックスを抱えていたという和田真由子さんだ。ブランドのモノ作りやライブ配信での接客術について、「WWDジャパン」6月29日号の販売員特集で掲載しきれなかった和田さんのインタビューを紹介する。

     和田さんは2016年にクラウドファンディングでブランドを立ち上げ、胸の大きな女性に向けたシャツを製作し、ジャケットやワンピースなどの商品も増やしていった。現在はオンラインでの販売を中心に、銀座に試着専用サロン(3月から休業中、7月に再開予定)を構えるほか、全国各地の商業施設でポップアップストアを開いている。また新型コロナウイルス感染拡大を受けて、インスタグラムのライブ配信を通したデジタル接客も強化中だ。

     ブランドコンセプトは“Hope you have a lovely day!(素敵な一日を!)”。この“ラブリー”はイギリス英語で日常的に使われ、「素敵な」「うれしい」「楽しい」「いいね」など幅広い肯定的な意味を持つ。この言葉のように、経営者でありながら自らも店頭に立つ和田さんもとても“ラブリー”な人で、多くのファンが付いている。

    WWD:ブランドを立ち上げた経緯は?

    和田真由子・エスティーム代表 以下、和田:学生時代に玄関の鏡に映った自分の姿を見て「胸が目立って、太って見える。これでは外に出られない」と、何を着たらいいのか分からなくなってしまい、外見や内面への自信を失って引きこもりを経験しました。これまで、「なぜ洋服で人生を諦めなければいけないのだろう」「なんで私に似合う服はないのだろう」と感じてきたことを周りの友人に話したら、「実は私も」と共感を得たんです。みんなが同じような悩みを抱えていたことに気がつき、16年にクラウドファンディングを通してブランドを設立しました。

    WWD:商品はどのように製作したのか?

    和田:最初はとても苦労しました。アパレルの知識のない中で洋服の作り方が分からず、OEM会社の方と試行錯誤で最初のシャツを完成させました。またお客さまと「一緒に“オーバーイーサイズ”を当たり前にしていきたい」という思いがあり、ツイッターで欲しい色や柄について積極的に質問したりして、本当のニーズをデザインに盛り込むようにしています。

    第一声は「いらっしゃいませ」
    よりも「こんにちは」

    WWD:販売で気をつけていることは?

    和田:今まで洋服選びに困ってきた人がお客さまに多いので、オンラインには細かい情報を載せるようにしています。サイズはバストを基準に表記していますが、そうすると丈感などが見落とされることも多いので試着モデルの身長なども記載しています。また、洗濯の表示も分かりやすさを徹底しています。サイズに関する悩みを全て排除したいので、通販でのサイズ交換と返品のサービスは当初から導入していました。

    WWD:代表の和田さんも店頭に立つことがあるが、対面での接客で心がけていることは?

    和田:店頭では“街角の花屋”のような接客を心がけています。第一声は「いらっしゃいませ」より「こんにちは」。まずは洋服のことではなく、人と人とのコミュニケーションを大切にするようにスタッフと共有しています。胸が大きいということは“ぜいたくな悩みだ”と思われてしまうこともあり、なかなか言い出しづらいけれど、会話を通して悩みを共有していきたいんです。お客さまから「スタッフが優しく対応してくれてうれしかった」という声をいただき、リピーターになってくださる方も多くいらっしゃいます。また、店頭で出会ったお客さま同士でお茶をしたり買い物をしたりとコミュニティーができているほか、お客さまがポップアップストアの販売スタッフとして応募してくださることもあります。

    WWD:接客をしていてやりがいを感じることはどんなとき?

    和田:お客さまが試着室から目を輝かせて出てくる瞬間です。この悩みを抱えている人たちにとって、これまで服を選ぶ基準は“着られるか”“着られないか”で、試着室は試練の場所だったんです。けれど、「オーバーイー」の試着室は洋服を楽しむ体験の場にしたい。購入する服だけを試着するのではなく、全部を着ていただいても大歓迎です。お客さまの選択肢を増やせることにもよろこびを感じています。「オーバーイー」をきっかけに、ファッションからメイクなど、今まで自然と諦めていたことに再チャレンジする人も多くいらっしゃいます。

    ライブ配信では些細なコメントも
    声に出して読む

    WWD:インスタグラムではライブ配信を行なっているが、どのように発信している?

    和田:普段SNSはツイッターをメインに運営しており、インスタグラムは全く更新できていない状態でした。コンテンツを作ったり、素敵な写真をアップすることよりも、ライブ配信をやってみようと昨秋から開始しました。配信のタイミングは新作発売の直前で、発売日当日に安心して買っていただけるようにしています。時間は一般的に仕事が終了する時間を考慮して午後8時頃。

    配信時にはサイズの参考になるよう、着用者の身長とバストサイズに加えて、骨格診断のスタイルを固定のコメント欄に明記して、口頭でも繰り返しお伝えします。また、些細なコメントでも全て声に出して読むよう心掛け、何度も同じ質問が来てもきちんと回答するようにしています。事前に質問箱を設置し、お客さまの懸念点を把握しておくのもよかったです。

    WWD:新型コロナウイルスの影響はどのように受けたか?

    和田:素材を韓国で手配して中国で生産していることもあり、2月の商品から納期遅れが発生し、6月に入ってからようやく是正されてきました。また3〜4月に予定していたポップアップストアが中止になり、3月中旬からは銀座の試着専門店も休業しています。

    WWD:「オーバーイー」での今後の目標は?

    和田:3年目の今年は新しいことを始めるのではなく、コアな部分にもう一度立ち返りたいと思っています。これまでポップアップストアを立て続けに開いてきて、キャパオーバーになることもありました。ブランドとして提供したい体験をよりよく届けられるように、PDCAを回して一つ一つ見直しているところです。スタッフも“Lovely day(素敵な一日)”を過ごして働けるように、ブランドをブラッシュアップしていきたいです。

    The post 胸が大きな女性の悩みに光を当てたブランド「オーバーイー」 “街角の花屋”のような接客で悩みを共有 appeared first on WWD JAPAN.com.

グローバルアパレル専門商社イーアンドジェーがポストコロナのファッション企業サポートを強化

 グローバルアパレル専門商社のイーアンドジェー(E&J)は、新型コロナウイルスの影響で大きな変化の時を迎えている今、ファッション企業の新しいビジネスモデル構築をサポートするパートナーシップ拡大に力を入れる。

 イーアンドジェーの創業者の宮永えみり社長に事業の狙いを聞いた。

国内300ブランドの
サプライチェーンを手掛ける

WWD:イーアンドジェーのこれまでの歩みは?

宮永えみりイーアンドジェー創業者兼社長(以下、宮永):ファッションデザイナーである夫とともに2001年に東京で設立し、OEM(相手先ブランドの生産)を経て、ODM(相手先ブランドの企画生産)事業を拡大し、現在、中国、シンガポール、アメリカにオフィスを構えてグローバル企業に発展しています。創業以前の1994年に設立した中国の自社工場は、協力工場と共に現在まで累計5000万着以上のニットやジャージー製品を生産しました。カンボジアとミャンマーでもニット工場と提携し、アジアの生産基盤を築いています。

WWD:これまでの日本のファッション企業とのビジネスの実績は?

宮永:アジアの生産背景を生かし、丸紅など十数社の商社と連携しながら国内アパレルのサプライチェーンを担ってきましたが、2014年の丸紅ファッションリンクとの提携を契機にOEMとODM事業をさらに拡大し、これまで300以上のブランド開発に携わりました。中でも、ストライプインターナショナルの「アースミュージック&エコロジー(EARTH MUSIC & ECOLOGY )」やマッシュスタイルラボの「スナイデル(SNIDEL)」のブランディングには早期から総合的に携わり、現在の成長に貢献しました。日本のビジネスは18年連続で増収増益です。

グローバルネットワークで
事業拡大

 宮永社長は1994年上海大学国際商業学院を卒業後、2014年中欧国際工商学院でEMBAを取得し、社長業を務めながらアメリカ・シリコンバレーのデ・アンザ・カレッジ(De Anza College)でビジネスとコンピューター情報システムを学んだ。中国で独資法人と現地法人2社を設立して、アジアのサプライチェーンを管理しているほか、商業施設の開発やギフトショップ「ヨミー(YOMMY)」を手掛けるなど多角化し、eコマース事業も拡大中だ。15年、シンガポールに会社を設立して、三カ国貿易と東南アジア市場拡大を実現した。16年、ハワイの不動産投資を通じてアメリカ市場に進出し、現在はニューヨーク・マンハッタンに居を構え、19年に設立したアメリカ法人E&J GLOBAL INC.から全社を統括する。

従来の繊維商社の領域を超えた
ブランディングが強み

WWD:イーアンドジェーの強みは何か。

宮永:この約20年間、従来の繊維商社の事業領域を超えたきめ細かなブランディングを国内アパレル企業と300ブランド以上手掛けた実力と信頼。そして、これらの実績に裏打ちされた企画、生産、営業、販売、プロモーションなどブランドビジネスに必要な総合力を持っていることです。われわれはグローバルなネットワークやマーケティング力など豊富な経験とノウハウを用いて、時には新規ブランド開発に一から携わり、SPAブランドからコレクションブランドまで多くを成功に導いてきました。市場の変化の兆しを早期に察知し、時代のニーズに適したソリューションを導き出す提案力や企画力には自信があります。

WWD:今後、日本のファッション企業とともに目指していることは?

宮永:新型コロナの影響で商環境が大きく変わろうとしている今、グローバル化やデジタル化による次世代型の成長戦略を日本のファッション企業とともに構築したいと思います。困難な時代ですが、解決策は必ずあります。当社も新しい一歩を踏み出す改革で、20年以上生き延びてきました。2020年は、新しいファッションビジネスのはじまりの時です。

問い合わせ先
イーアンドジェー
email@globalej.com

The post グローバルアパレル専門商社イーアンドジェーがポストコロナのファッション企業サポートを強化 appeared first on WWD JAPAN.com.

求む!リモートでは味わえない“空気感” エディターズレターバックナンバー

※この記事は2020年5月29日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

求む!リモートでは味わえない“空気感”

 緊急事態宣言が全国解除となった今、約2カ月ぶりに対面での取材を行いました(もちろん感染の第2波、第3波を考えて極力リモートでの取材を継続中ではありますが、取材先の希望に沿って対応していきます。取材時はソーシャルディスタンスも保っています)。そこで感じたのは、やはり直接お会いして話を聞けるっていいなということです。リモート取材時に物足りないと思っていた空気感がビシビシ伝わってくるのです。モノ作りや経営に対する姿勢や思いがダイレクトに響いてきます。在宅勤務中に多くの皆さんにリモート取材にご協力をいただきましたが、画面越しだとその方の雰囲気や取り巻く空気みたいなものが伝わりにくく、もどかしさを感じていたんです。

 対面取材だと取材の合間の余談も楽しめます。余談って結構大切で、そのときの取材には直接関係なくても、情報の蓄積となって別の切り口での企画で役立つことが多いのです。時間が許す範囲であえて取材とは異なる話題を投げかけたりもします。だからついつい取材時間が長くなりがちなのは反省すべき点ではあります……。もちろん、リモート取材でも余談はあるのですが、やはり空気感がまるで違うのです(笑)。

 ビューティ業界はここにきてオンライン発表会が増えてきました。開催する側だけでなく出席する側も不慣れな部分が多いので、これからブラッシュアップされていくと思います。私自身は集中してプレゼンが聞けたのでオンラインのよさを感じました。しかし、やはり無機質な感覚はどうしても拭えないんですよね。これまでの発表会はブランドの世界観を表現した会場で、参加している時間はどっぷりとその雰囲気に浸れます。それがオンラインでは遠く及びません。ここでもやはり空気感です。将来的にはVRなどを使った発表会が普通になれば、それも解消される気がするのですが、今は空気感の有無とどう折り合いをつけていくかが私自身の課題でもあります。

BEAUTY ADDICT:メイクやスキンケアはもちろんのこと、ヘアケア、フレグランス、オーガニック、インナービューティ、美容医療、イベントまでさまざまなジャンルから、注目トピックを配信するメールマガジン。ビューティアディクト=美容大好き人間に向けた、今流行りのモノやコト、知っておきたいトピックスを厳選してお届けします。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

The post 求む!リモートでは味わえない“空気感” エディターズレターバックナンバー appeared first on WWD JAPAN.com.

日本発の老舗スニーカーブランド「ムーンスター」が“コミュニティーブランド”へと進化

 福岡県久留米市発のムーンスター(MOONSTAR)は、147年の歴史を持つ老舗シューズメーカーだ。子ども靴や上履きをはじめとするスクールシューズ、スニーカー、ウオーキングシューズ、ワークシューズ、婦人靴、紳士靴など幅広いカテゴリーのシューズを手掛ける同社が大切にするのは、“使われてこそ 価値のあるものづくり”という思い。

 6月27日には、自社のモノ作りの哲学を体現した旗艦店「オルソー ムーンスター(ALSO MOONSTAR)」を福岡市・薬院にオープンしたと同時に、作り手と使い手をつなぐオウンドメディア「インユース(In use)」を公開した。創業150周年を前に、リアルとデジタルの両軸で“人、地域、文化とつながるコミュニティーブランド”を目指すブランドのルーツと魅力を探る。

福岡・久留米で続く
“丈夫で長く履ける靴作り”

 ムーンスターの歴史は1873年に、創業者の倉田雲平が立ち上げた足袋店「つちやたび」として福岡・久留米で始まった。西南戦争の軍事用足袋の受注を契機に大量生産を開始し、戦後は「月星」の名前でスポーツシューズやヴァルカナイズ製法(加硫圧着方式)の革靴を開発。50年代には定番商品となった上履きの生産、70年代には海外シューズブランドのライセンス契約などを経て、日本有数の総合履物メーカーに成長した。その後も技術に磨きをかけ、147年にわたり丈夫で長く履ける靴作りを続けている。

ムーンスターが発信する
“使われてこそ価値のあるもの”
という思い

 ムーンスターは創業150周年に向けた、「SPA化の拡大」「大人・シニア市場の拡大」「海外展開の拡大」の3つの成長戦略を掲げている。市場競争力を高めるため、“Made in Kurume”の国産でのブランディングを強化中だ。猪山渡ムーンスター社長に今後の展望を、同社のブランディングや商品企画に携わる宝蔵寺誠さんと、松永健太さんにブランドの魅力を語ってもらった。

作り手と使い手が
価値観を共有し、
“使うこと”について
考えていく場所「インユース」

 6月19日に公開した「インユース」は、ムーンスターのモノ作りや、その周辺にある価値観を丁寧に共有し、“使うこと”について考えていくオウンドメディア。作り手と使い手がつながることで、“暮らしを豊かにするものとはどういうものなのか”を見つけていく。コンテンツはムーンスター の価値観を共有する仲間と一緒に制作し、順次更新される。

モノ作りの哲学が詰まった
旗艦店でコミュニティーを築く

 ムーンスターは6月27日、同社の旗艦店「オルソー ムーンスター」を福岡市・薬院にオープンした。店名の「オルソー」は英語の “〜も”“また”“さらに”という意味の副詞や接続語。手間を掛け佇まいの美しい靴を届けることで"使用者に寄り添い主役を引き立てる"というムーンスターの思想をあらわしている。

 コンセプトは「惜しみない手間。」国産を中心に据えた旗艦店として、ムーンスターが積み重ねてきたモノ作りへの真摯な姿勢を表現するため、日本建築の基盤である大工・左官・石工の職人たちによる本質的な空間を目指している。店舗を形づくる素材は特別なものではないが、先人たちの経験や技術にならい、一つ一つの素材に職人が丁寧に手間を掛けている。そこにムーンスターの歴史と技術を受け継いだプロダクトを組み合わせることで、特別な佇まい。

 同店では、本社のある久留米で生産されるヴァルカナイズ製法の“Made in Kurume”をはじめ、限定品や足回りに関連したセレクトアイテム、靴を製造する過程で出た廃材をリサイクルした雑貨などが並ぶ。また、同社とゆかりのある作家やブランドによる企画展やイベントなどを開催するほか、モノ作りが体験できるワークショップなども行っていくなど、シューズショップを超えたライフスタイル提案を行い、コミュニティーを築いていく。

 猪山渡ムーンスター社長は「日本のスニーカーの発祥の地、久留米の本社工場で生産された商品の一部には“Made in Kurume”と表示をしている。その当社が147年にわたり築き上げた誰にもまねできない一足をご覧いただける拠点が、国家戦略特区として注目され、アジアのゲートウエイでもある福岡に持てたことに大きな意義を感じている。当社に上履きや子ども靴のイメージをお持ちの方にも、新しいムーンスターを見つけていだけるような拠点にしていきたい」と語る。

INFORMATION
ALSO MOONSTAR

オープン日:6月27日
営業時間:11:00〜20:00
住所:福岡市中央区薬院3-11-22
電話番号:092-401-0781


問い合わせ先
ムーンスター カスタマーセンター
0800-800-1792

The post 日本発の老舗スニーカーブランド「ムーンスター」が“コミュニティーブランド”へと進化 appeared first on WWD JAPAN.com.

二子玉川から全国へ発信!ビームスのスタッフビデオ投稿「クロチャンネル」に注目

 「どうも~クロチャンネルで~す!」。どこか癖になるユーチューバー風のあいさつと屈託のない笑顔で新商品の紹介動画を投稿するのは、ビームス 二子玉川の黒澤亜美さんだ。ビームスのオウンドメディア内のスタッフビデオ投稿コンテンツで、異色の存在感を放っている。

 同じ店舗に勤めるスタッフのビデオ投稿にゲスト出演したことをきっかけに、1年ほど前に「クロチャンネル」を始めた。今では週に1回のペースで、これまでに約50本を投稿している。どうせやるなら見ている人に楽しみながら洋服のことを知ってほしいと、ユーチューバーのコメントや早送りの仕方、テロップの出し方などを研究した。撮影は、閉店後の店内でほかのスタッフにiPhoneを渡し、5分ほどで終了。なんとNGはほとんどない。

 担当売り場の「ビームス ボーイ」の新商品や人気が高い定番商品を、解説を交えながら紹介する。「『ビームス ボーイ』の洋服にはこだわりのあるものが多い。例えば、何年代のミリタリーアイテムから着想を得ているなどといった商品の背景を伝えたり、別注アイテムであればどこがポイントかなどを説明したりする」と黒澤さん。ただし、動画も接客の延長だと考え、「ビデオだから特別ではなく、商品の特徴やおすすめポイントを店頭でお客さまに伝えるのと同じ感覚で取り組んでいる」と続ける。

 撮影した動画は無料アプリの「VLLO」で編集し、サムネイルは無料お絵描きアプリの「アイビスペイントX」で作成している。ユーチューブを観て、見よう見まねで覚えた独自の編集や手書きの文字などに親近感が湧くと好評だ。動画を投稿する際のポイントは1分~1分半にまとめること。「移動中の電車の中でもデータ容量を気にしないで手軽にサクッと観てもらえるように、長くても2分以内に収めるようにしている」。動画には同じ店舗のスタッフをゲストとして呼ぶこともあり、バリエーションも豊富だ。1時間かからないほどの編集作業で、1本の動画が完成する。

 黒澤さんはビームスのコンテンツ内でスタイリングのスナップ投稿も行っているが、ビデオの反響はそれ以上だ。「動画を観ていただいたお客さまから接客してほしいという声をいただき、とてもありがたい。SNSで知ったビームスのない地域のお客さまから、二子玉川店にお問い合わせをいただくこともある」と、スナップでは分からない人柄にも興味を持ってもらっている。

 新型コロナウイルスによる店舗の臨時休業中には、ビームスのユーチューブコンテンツである「ビームス アット ホーム ビデオ(BEAMS AT HOME VIDEO)」に「クロチャンネル」の出張版「韓国語講座」も投稿した。「コロナを機にますます店頭だけではなく、オンラインを通しての発信が大切になっていくと思う。今後はインスタライブなど、生配信にもチャレンジしたい」と意気込む。

 6月29日号「WWDジャパン」の販売員特集では、黒澤さんのほかにもたくさんの“人間力”あふれる販売員を取材している。

ビームス公式オンラインの“ビームスビデオ”投稿を飛び出した出張版「クロチャンネル」

The post 二子玉川から全国へ発信!ビームスのスタッフビデオ投稿「クロチャンネル」に注目 appeared first on WWD JAPAN.com.

ウォルマートで「打倒アマゾン」に執念を燃やす男 ベゾスとの因縁も 鈴木敏仁のUSリポート

 アメリカ在住30年の鈴木敏仁氏が、現地のファッション&ビューティの最新ニュースを詳しく解説する。今回は小売業の巨人・ウォルマートのEC戦略を解説。新興EC企業を相次いで買収するウォルマートの狙いとは?

 ウォルマート(WALMART)が中古ファッションECのスレッドアップ(THRED UP)と提携した。ウォルマートのサイト内にスレッドアップのページが追加され、およそ約7万5000アイテムがすでに出品されている。35ドル以上の買い物で送料は無料、返品はウォルマート店内で可能という条件はウォルマートに準じている。

 ざっと見る限り、婦人服、バッグ、アクセサリー、子供服、プラスサイズ、シューズといった一般的なカテゴリー分類なのだが、取り扱われているブランドをみると興味が湧いてくる。「コーチ(COACH)」「グッチ(GUCCI)」「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「ザラ(ZARA)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」など、ウォルマートに存在し得ないブランドがずらりと並んでいるからだ。試しに「ルイ・ヴィトン」で検索したところ最高価格は2099.99ドルだった。低価格をうたって競合をなぎ倒してきたディスカウントストアの雄・ウォルマートとしてはありえない商品である。

 ウォルマートにとってこのスレッドアップはマーケットプレイスのセラーの1社という位置づけとなる。

 アマゾン(AMAZON)で商品検索するとプロパーと中古が混在して表示されることは、皆さんご存知だろう。アマゾンのマーケットプレイスはそもそも中古本からスタートしており、マーケットプレイスと中古販売は相性がよく、珍しいものではない。ただアマゾンの中古は家電や雑貨が中心で、衣料は少ない。有名ファッションブランドも当然ない。

 そういう意味でウォルマートとスレッドアップのパートナーシップは画期的といえる。

転機はジェット・ドット・コムの買収

 おそらく10年以上前であったならば両社が組むなどということはありえなかっただろう。

 ウォルマートのビジネスモデルの骨格は効率化による低価格戦略にあり、マーケティングやブランディングにリソースを集中させるような戦略を取ることはなかった。このオペレーションに主軸をおく小売企業と、若年層や都市生活者をターゲットとするファッション企業が組むのは難しい。

 この戦略が大きく転換したのがジェット・ドット・コム(JET.COM)の買収である。

 ジェット・ドット・コムはマーク・ロリー(Marc Lore)という業界では有名なアントレプレナーが2014年に創業した企業で、ウォルマートが買収したのは翌々年の16年、買収総額は33億ドルだった。わずか2年間でこの額は今考えても目が覚めるような買収案件だ。

 ロリーはこのジェット・ドット・コムの前におむつのネット販売を大成功させて、そのビジネスを10年にアマゾンに5億4500万ドルで売却している。あまり報じられていないのだが、売りたくないロリーに対してアマゾン創業者兼CEOのジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)が脅すように買収攻勢をかけて、投資家にロリーが説得されて嫌々売ったらしい。そのためロリーはアマゾンを嫌っており、対アマゾンを旗印として改めて創業したのがジェット・ドット・コムなのである。

 ジェット・ドット・コムによる最初の資金調達ラウンドは14年末で8000万ドルを獲得した。その後数回のラウンドを経て最終的に2億2500万ドルを調達しているのだが、サイトがオープンしておらず、売り上げゼロの構想段階でこの調達額は過去に例がないと言われていた。投資企業によるロリーの手腕に対する評価額と言い換えてよい。ジェット・ドット・コムのサイトオープンは15年7月。ウォルマートによる買収はその翌年、ウォルマートCEOのダグ・マクミロン(Doug McMillon)とロリーが偶然出会い、意気投合して買収へと進んだと言われているのだが、おそらく打倒アマゾンが共通テーマだったのだろう。

 買収された後にロリーはEC事業の総責任者となった。ウォルマートのEC戦略はこのとき以降すべてロリーが統括してきたのだが、最初に明言した戦略は店舗とサイトは異なる道を行くということだった。店舗は今まで通り低価格を主軸としながら、ネットは全方向に拡大してゆくと掲げていた。

 ここでロリーが打った手がD2Cブランドの買収だ。モドクロス(MODCLOTH)、ボノボス(BONOBOS)、ムースジョー(MOOSEJAW)など10社弱を手に入れているのだが、すべてウォルマートのイメージとは相容れない若年層、高所得層、大都市生活者を対象とした企業である。ところがどれもいまだに黒字化していない。赤字を補填している黒字の店舗営業サイドとの確執があったりして売却プレッシャーがかかり、昨年10月にモドクロスを売却し、その後も売却のうわさはずっとくすぶっている。

 そのためD2Cの買収は単独で見ると失敗したようにみえるのだが、注目すべきはシナジー効果である。新興ネットブランドを傘下に抱えることによってウォルマート・ドット・コムのイメージが変わってきているのだ。スレッドアップがウォルマート・ドット・コムの中に入って売ることを決めたのも、実はこういった背景がある。

ウォルマートの実店舗の規模を利用する

 ウォルマートはこのジェット・ドット・コムを5月末に閉鎖している。33億ドルで買収した企業が4年後には消えてなくなった。その理由はロリーも含めたジェットの人材がウォルマートに吸収されたことと、既述のようにウォルマート・ドット・コムが進化してジェットが持っていた顧客層やブランド層を取り込めるようになったからだ。

 要するにジェットはウォルマートの“血肉”になったのである。

 私はロリーがジェットをテコにしてウォルマートのEC事業を手中に収めたのだと理解している。アマゾンに対抗するにはウォルマートの規模を利用する方が手っ取り早い。

 ちなみにウォルマートはこのコロナ渦で急増したEC需要をほぼ順調にこなしきっている。ロリーは店舗網を持っていることが強みだとしてストア・ピックアップに力を入れてきた。コロナ禍で人の接触が少なくなるという意味でストア・ピックアップ(とくに店員が車のトランクまで商品を運んでくれる「カーブサイド・ピックアップ」)にスポットライトが当たっており、この数年強化してきたことが全て成果となって表れているのだ。ロリーがいなかったらウォルマートはここまでうまく運べているかどうかは分からない。

 彼は買収したD2Cブランドは全てロングテールだと説明している。スレッドアップもロリーの構想上はウォルマート・ドット・コムのロングテールということだろう。見えないところでウォルマートのEC戦略は着々と進化を続けているのだ。

鈴木敏仁(すずき・としひと):東京都北区生まれ、早大法学部卒、西武百貨店を経て渡米、在米年数は30年以上。業界メディアへの執筆、流通企業やメーカーによる米国視察の企画、セミナー講演が主要業務。年間のべ店舗訪問数は600店舗超、製配販にわたる幅広い業界知識と現場の事実に基づいた分析による情報提供がモットー

The post ウォルマートで「打倒アマゾン」に執念を燃やす男 ベゾスとの因縁も 鈴木敏仁のUSリポート appeared first on WWD JAPAN.com.

「アジア人は男らしくない?」 ファッション業界のゲイのアジア人が考える“男らしさ”

 BLM運動で世界で人種差別への意識が高まり、くわえて6月がLGBTQ+の「プライド月間(Pride Month)」であることから、欧米では人種的にもマイノリティーであるゲイのアジア人への注目が集まっている。彼らはゲイ(Gay)とアジア人(Asian)をミックスした“ゲイジャン(Gaysian)”という白人目線の造語でひとくくりにされ、同じゲイコミュニティーからも“男らしくない”というレッテルを貼られてきた。ファッション業界のゲイのアジア人を中心に、白人中心的な“男らしさ”の定義をより多様にしようという動きが強まっている。

 ニューヨーク発のブランド「プライベート ポリシー(PRIVATE POLICY)」の共同創業者ハオラン・リー(Haoran Li)は、ゲイだけではなく、メディアでのアジア人男性全体の扱いがステレオタイプを生んでいると考える。映画「ティファニーで朝食を(Breakfast at Tiffany's)」で日系人男性ユニオシ(Yunioshi)を白人俳優ミッキー・ルーニー(Mickey Rooney)が軽蔑的に演じたように、欧米はアジア人男性をネガティブに描いてきた。差別を受けているLGBTQ+であることにくわえ、このようなネガティブなアジア人男性のステレオタイプが“ゲイジャン”という言葉には隠れている。

 新たな男性性を追求する香港拠点のブランド「ポンダラー(PONDER.ER)」の共同創業者アレックス・ポー(Alex Po)は「男くさいスポーツマンだけが男性ではない。繊細で傷つきやすいから女性的なわけでもない」とコメントした。アジア人は物腰が柔らかだというステレオタイプがあるが、それを女性的だと決めつけてはいけない。もう一人の創業者であるデレック・チェン(Derek Cheng)は「周りに比べソフトで繊細な男の子といわれた僕たち2人をイメージして服をデザインしている」と言い、欧米社会の男性性の定義とは違うソフトな“男らしさ”をデザインで表現している。「ピンクを着ているとゲイって思われそうだから着られない?そっちの方が“男らしくない”よね」と自分らしくいられることが一番の“男らしさ”だと語った。彼らは世界中の男性や男の子のためにも男性性の定義を広げる必要があると考える。

 ファッションジャーナリストの益井祐は、そもそも歴史的にアジアにおける“男らしさ”は西洋に比べ柔軟だったと語る。ジェンダーの定義も多様で、アジアではヒゲや筋肉は西洋のように必ずしも男性であるために必要とされていない。益井自身もジェンダーにとらわれないストリートスタイルで知られるが、1990年代の日本のファッションでは中性的な“フェミ男”が登場し、体にピチッとフィットしたTシャツや長めのヘアスタイルがはやっていた。そして最近でも韓国や中国の男性アイドルは中性的な顔立ちで、ヒゲをそっているのが主流だ。「だから、アジア出身のデザイナーや服飾の学生はジェンダーレスなコンセプトをデザインに難なく取り込めるのではないか」とコメントし、「ザンダー ゾウ(XANDER ZHOU)」が2019年春夏コレクションで男性モデルにシリコーン製の腹部を着けて妊娠しているように見せた例を挙げた。

 プーマ ジャパン(PUMA JAPAN)のクリエイティブ・アンド・デザイン部で部長を務める市川穣嗣は、そもそも“ゲイジャン”という言葉でひとくくりにされ、個々の多様性が可視化されていないことが問題だと考える。日本のゲイ男性向けのミスターコンテスト「ミスター・ゲイ・ジャパン(MR GAY JAPAN)」のクリエイティブ・ディレクターも務める市川は、「この国のゲイの人々にも表に出て声を上げる機会を持ってほしかった」とコメントした。東京でも開催されたBLM運動の行進に言及し、「50年前に黒人トランス女性のマーシャ・P・ジョンソン(Marsha P. Johnson)がストーンウオールの反乱(Stonewall Riots)をリードしなければ現在のLGBTQ+の権利は存在しなかった」と声を上げることの重要性を強調した。今まで、存在を無視されてきたゲイのアジア人たちがきちんと声を上げ、可視化されることが、白人中心だった“男らしさ”の定義を広げることにつながるのだ。

The post 「アジア人は男らしくない?」 ファッション業界のゲイのアジア人が考える“男らしさ” appeared first on WWD JAPAN.com.

東京ヴェルディと機能服「ミノトール」が異業種タッグ ファッションの力でクラブの伝統を世界へ発信

 スポーツクラブの東京ヴェルディと泉栄一デザイナーのメンズブランド「ミノトール インスト(MINOTAUR INST)」は、eスポーツ用のアパレルを共同製作し、「ミノトール インスト」の公式オンラインストアで6月29日から購入予約を受け付ける。アイテムはスポーツライン“ミノトールジム(MTRGYM)”の半袖Tシャツ(1万2000円)と長袖Tシャツ(1万5000円)の2型。素材はペットボトルを再利用したもので、優れた吸湿速乾性を備えており、泉デザイナーが得意とするミニマルなデザインと都市生活を快適にする機能性を融合させている。取り扱い店舗は「ミノトール インスト」の直営店と、同ブランドの卸先である海外のセレクトショップを予定しており、「チームのグッズではなく、あくまでファッションアイテムとして売っていきたい」と泉デザイナー。そう意気込む理由は、シンプルなTシャツの胸元に映える東京ヴェルディのロゴに特別な思いがあるからだった。

両者をつないだデザイン界の巨匠

 サッカーで有名な東京ヴェルディは、2019年にクラブ創立50周年を迎えた。1993年のJリーグ発足当時は多くのスター選手が所属し、初代チャンピオンに輝くなど華々しい歴史を築いてきた。しかし05年のJ2降格や親会社の撤退、有名選手の流出が相次ぐなど、チームの成績も経営も苦しい時期が続いた。そして節目となる50周年を機に、大きくリブランディングを実行する。主力のサッカーに加え、新規参入した野球やバスケットボール、eスポーツチームなど所属する17競技のチーム全てが東京ヴェルディの名を掲げる、総合型クラブへと舵を切った。指揮をとるのは熊本浩志アマダナCEOで、チームのクリエイティブセンター長としてまずは全チームをつなぐ新たなロゴとユニホームのデザインに着手した。同氏が起用したのは、デザイン界の巨匠であり、泉デザイナーも敬愛するネヴィル・ブロディ(Neville Brody)だった。泉デザイナーは「若い頃からDJをやっていたので、レコードや周辺のカルチャーを通じてネヴィルは当然知っていた。熊本さんからの依頼に即答したものの、彼のタイポグラフィーやロゴを使うということにはプレッシャーもあった。僕にとってはそれぐらい大きな存在」と述べる。

“オールヴェルディ”で売上高100億円目指す

 熊本クリエイティブセンター長のリブランディングの成果は着実に実を結んでおり、ユニホームの売り上げは3.7倍に跳ね上がり、グッズの売り上げも倍増した。サッカークラブの売上高は、現在所属するJ2のリーグの平均が15〜16億円であるのに対して、19年度は19億円。楽天が運営するヴィッセル神戸のJリーグ史上最高売上高の114億円にはまだまだ及ばないものの「“オールヴェルディ”で100億円を超えたい」と熊本クリエイティブセンター長。そのためのエンジンの一つとして「もっとファッションのイメージを付けていきたい。“東京”を掲げるからにはファッションは切り離せない」と続けた。「ミノトール」の販路であるフランスやスペインでの販売が実現すれば、ネヴィル・ブロディが手掛けたロゴが付くウエアを通じて、東京ヴェルディの知名度は広がるかもしれない。

 スポーツチームがファッションを通じて知名度を広げるマーケティングは、フランスのパリ・サンジェルマンFC(PARIS SAINT-GERMAIN FC)が有名だ。日本でも渋谷・明治通り沿いにベイクルーズグループが運営する公式ストア「PSG ストア トウキョウ」を運営するなど、ファッション事業にも積極的だ。

“デジタルアスリート”のための服

 また、eスポーツのウエアというのも今回の協業のポイントだ。東京ヴェルディは、観戦者の高齢化が進むプロサッカービジネスの将来を危惧し、16年にeスポーツチームを結成した。市場はまだ小さいものの、若年層ファンの取り込みと海外進出に可能性を感じており、事業の一つして現在注力している。熊本クリエイティブセンター長は「eスポーツってスポーツなの?という議論が日本ではまだある。事業として参入しているメーカーもあるが、選手たちが袖を通すユニホームには正直ピンとこなかった」と振り返る。しかし泉デザイナーと企画を進める中で出たキーワード“デジタルアスリート”という言葉に光明を見出した。「とてもしっくりきた。選手はもちろん、昼夜パソコンと向き合っている僕たち全員も“デジタルアスリート”じゃないかと。筋肉質なスポーツ選手が似合うスポーティーなものではなく、普段でも着られるデザインであるべきだという結論に至った」。泉デザイナーも「機能服は得意だし、eスポーツはもともと興味があった。欧米のようにカルチャーとして定着してほしい」と期待する。東京ヴェルディは今後、歴史あるサッカークラブと新進のeスポーツチームを“オールヴェルディ”として運営することで、eスポーツの競技としての地位向上を目指している。

 新型コロナウイルスの影響という予想外の事態に見舞われたものの、リブランディングは奏功し始めている。中断していたJリーグも再開され、スポーツの活気が徐々に戻ってきた。あとはスポーツチームを名乗る以上、最も効果的なPRにつながるのは本業の成績だろう。東京ヴェルディの勝負はこれからだ。

The post 東京ヴェルディと機能服「ミノトール」が異業種タッグ ファッションの力でクラブの伝統を世界へ発信 appeared first on WWD JAPAN.com.

この夏、大活躍しそうな新トレンドのドライシャンプー 中野製薬のブランド「セトル」から誕生

 ヘアケアメーカーの中野製薬から4月に誕生した新ブランド「セトル(Settle)」。 “美容室の店販を活性化させる”という目的で、新たな価値を創造するブランドとしてスタートし、第1弾として「ドライシャンプー」を販売している。ドライシャンプーはもともと海外で人気のアイテムで、“ 洗い流さないシャンプー”のことだ。日本でもこの1~2年で美容感度の高い女性を中心に話題となっている。「セトル ドライシャンプー」の特長は、頭皮の余分な皮脂や汚れを取り除き頭皮環境を整えるとともに、根元をふんわりとさせるスタイリング剤の機能も併せ持つところ。スプレータイプで拭き取り不要なので、仕事終わりやスポーツ後などのスタイリング剤としても気軽に使用できる。また、仕事中にリフレッシュしたいときや頭皮のニオイが気になるとき、ヘアカラーやパーマをした日のシャンプー代わりに使用することもできる。

美容師だからこそのしっかり
とした提案で
新たな店販の価値を
つくることができる

 海外のサロンで働いていたときは、ドライシャンプーはスタンダードなアイテムとして認知されていましたが、日本では一部の美容感度の高い人は使ったことがあるものの、まだまだ。だからこそ、美容師が“ドライシャンプー”の説明をしっかりとすることで、興味を持ってくれるお客さまも多いです。「セトル ドライシャンプー」は、ヘアカラーを絡めるとおすすめしやすい。特にハイトーンカラーの場合、その日にシャンプーしてしまうとヘアカラーの褪色が早くなってしまうので、「今日はドライシャンプーだけにすればカラーの持ちもよくなる」と伝え、実際にカラー後に使って説明しています。ほかにも“髪の制汗剤”といったイメージで話すことが多いです。香りがよく、頭皮のニオイケアにも使えるので、「汗をかいたときとかにこれがおすすめだよ」と伝えています。サイズ的にも持ち運びしやすいので、これからの季節はビジネスでもプライベートでも常に持っていたいアイテム。

スポーツ後やディナー前に活躍
これからの季節に
持ち歩きたいアイテム

 これまでにドライシャンプーは使用したことがあり、とても便利だけれど、毛先が乾燥する印象でした。この「セトル ドライシャンプー」は、スプレータイプでしっかりと噴射されるので、頭皮に使うときはとても便利。実際に使用してみると、頭皮のベタつきを抑えてくれるだけではなく、根元にボリュームが出るのも実感。気にしていた毛先が乾燥してきしきしすることもなく、さらさらな髪に。2種ある香りも、両方ともくせが無くて好きな香り。これからの汗ばむ季節は、ぜひ持ち歩きたい。スポーツの後や、ディナー前の化粧直しのタイミングなどに活躍しそう。

さまざまなシーンで活躍する
ドライシャンプー

 スタイリング剤としても根元のボリュームアップなどにも使えるので、仕事終わりのスタイリングやスポーツの後、夏場でニオイが気になるとき、アウトドア、ヘアカラーやパーマした日のシャンプー代わりなど、幅広いシーンで使用できる。香りは“ナチュラルフローラル”と“フルーティーフローラル”の2種があり、気分によって使い分けることもできる。

植物由来の美容成分を配合

 保湿効果の高いシュガースクワラン※1、ワサビノキ種子エキス、ダイズ種子エキス、シアバター※2といった植物由来成分を配合し、髪や頭皮だけでなく全身にも使用できるので、ボディーシート感覚で使うことも可能だ。また、皮脂吸着パウダーが皮脂や汗を吸着しベタついた髪や頭皮をさらさらにし、ベタつきのなくなった根元はふんわりとボリュームアップする。

※1スクワラン「 シュガースクワラン」は日光ケミカルズの登録商標です ※2シア脂

問い合わせ先
中野製薬
0120-075570

The post この夏、大活躍しそうな新トレンドのドライシャンプー 中野製薬のブランド「セトル」から誕生 appeared first on WWD JAPAN.com.

美容・ファッション界も“アフターデジタル”の時代に 知っておくべきOMOとは?

 近年、デジタル化が進む中でO2O(Online to Offline)という言葉が多く聞かれるようになった。これはオンラインからオフラインでの行動を促進することで、ウェブで配ったクーポンを消費者がリアル店舗で使用するなどといったことが当てはまる。

 しかしその一歩先にいるのが中国で、中国では新しいデジタル化が進んでいる。それがOMO(Online Merges with Offline、オンラインとオフラインの融合)だ。O2Oがデジタルとリアルという2つの“場所”を行き来するという概念であるのに対し、OMOではその境目がなく、消費者がサービスを受けたり購買したりすることのすべてがデジタル化されるのだ。

 日本でもOMOはデジタルトランスフォーメーション(DX、Digital Transformationn)の高まりの中で注目されている。一部ではすでに変化が訪れており、ファッション界や美容業界も例外ではない。そこで著書「アフターデジタル」の中で中国のOMOについて解説している藤井保文・ビービット東アジア営業責任者に、日本で必要なデジタル化の方法を聞いた。

WWD:藤井さんは著書「アフターデジタル」の中で、中国を例にOMOについて解説しているが、中国のOMOはどう進んでいる?

藤井保文(以下、藤井):中国は今、全ての支払いがモバイル上で行われている。移動やシェアリング、フードデリバリーやレストランまで、全ての行動がオンライン化しつつある中で、デジタルと融合してない“純粋なリアル”と言うものがなくなってきている。その状態が進化すると、デジタルの中にリアル全体が内包される形になる。

WWD:日本でもそのようなOMOが実現される可能性はあるのか?

藤井:日本の場合、企業構造がデジタルとリアルで分かれているので、うまくいかないということになっている。しかし今後は「リアルがデジタルに内包される」ことに対応できる企業が勝っていくのではないか。

WWD:リアルとデジタルの融合に関し、データの取得が話題に上がることが多い。

藤井:日本の企業はデータを得ることが先に来てしまっている印象だ。しかし本来、そのデータからどういう体験価値をつくるのかという目標を先に置かなければいけない。集めたデータを体験に還元することで、さらにユーザーが滞留し、より多くのデータが蓄積するというのが正しい流れで、やみくもにデータを保持することは、リスクがある上にコストも掛かる。

WWD:活用するために有益なデータとはどういうものか?

藤井:今までは属性データの時代で、年代や職業などで区切っていた。しかし、実際には会社員や主婦、20代や40代と同じ属性であっても一人一人ニーズは違うので、属性データではあまり活用できない。

そこで先ほど話した中国のように、食事から移動まで何でもデータ化するという「行動データ」の時代になってくるのではないか。個人が求めるものは、その人のキャラクターやモード(状況)によって変わるはず。例えばアスリートモードのときに、ビジネスアイテムをレコメンドするといったズレが、行動データがあれば減ってくる。

WWD:行動データを取るには、これまでのような顧客接点では難しい。

藤井:例えば5年に1度だけ買い物に来るとか、基礎化粧品しか買わない、というデータでは不十分だ。最適な提案はユーザーの自己実現やペインポイント(困っていること)に寄り添うことで、そのためには継続的かつ高頻度で、そしてリアルタイムにデータを取得する必要がある。ユーザーに高い価値提供やソリューションを提供するというふうにならないといけない。

接客とデジタル両方が必要 
中国の成功事例

WWD:メーカーは物を作って売るだけでなく、継続的なサービス提供が必要になってくるのか?

藤井:著書内でも解説しているが、現在はメーカー、サービサー、プラットフォーマーの3つのレイヤーがある。サービサーは配車やフードデリバリー、コンテンツ配信など、プラットフォーマーは楽天やアリババなどを指す。時価総額などを見ても分かるが、現在は消費者と接点を持てるサービサーやプラットフォーマーが強い。なので、そもそもデジタル対応するというときに、自社はどのレイヤーで戦うべきかと考える必要がある。

WWD:その中で、メーカーが実際にできることは何なのか?

藤井:顧客接点の利便性を高める、オフライン・オンラインの選択ができるといったEC対応や、接客におけるデジタル化というものはすでに多く事例があるので、それをまねることで実現が可能だ。

しかしメーカーからサービサーに上がろうとすると、プロダクト中心の売り方は変える必要がある。中国の平安保険は保険会社でありながら、遠隔医療プラットフォーム「ピンアングッドドクター」を運営していて、このサービスを軸に保険の営業を行い、ユーザー体験を向上させている。

※平安保険:1988年中国・深センで創業した保険会社。保険事業から保険銀行投資へと拡大して金融全般、さらには生活サービスにまでビジネスを広げている

WWD:メーカーがサービスを展開せずとも、プラットフォーマーやサービサーと提携してデータを活用する方法もあるのでは?

藤井:中国でも、新興の「ラッキンコーヒー」や個人店にお客を奪われたスターバックスが、アリババと提携してデータを活用するという事例がある。しかしこの手法はメーカーとして生きる選択肢だ。データは結局サービス側にあり、データを活用するため統合するのには大きなコストと時間が掛かる。

WWD:メーカーにとって理想的なデータの取得とはどのようなものか?

藤井:そもそも消費者は高頻度で服や化粧品を買わないし、複数のブランドで購買する。頻繁に買わないところにデータを渡そうとは思わないはずだ。D2Cブランドはライフスタイルの提案や世界観みたいなものを売っているという点で理想的で、消費者の関心は商品以外に及ぶ。サービサーとメーカーのハイブリッドのような形を目指すのもありだと思う。中国の平安保険はこれに近い形だ。

営業マンは押し売りをせず、ユーザーに便利なアプリの説明を行う。そうしてアプリのサービスを使ってもらい、営業機会や内容が営業マンに伝わるという仕組み。保険や金融商品の質ではなく、サービスからの顧客流入が成長要因だ。

平安保険の事例で注目すべきは、同社が第三者からのデータは使わず自社データのみで回していること。利用目的が明確であれば、1社のデータだけで十分に戦えるということが分かる。

WWD:平安保険の営業マンは、アパレルや美容業界で言うところのショップ店員や美容部員になる。

藤井:その通りで、美容部員やショップ店員のような属人的な関係性・技術だけでは、顧客が店に来たとき以外の状況が全くわからない。しかし普段からサービスを使ってもらえれば、その人のニーズがつかめる。OMOはオフラインをないがしろにするものではなく、中国でもオンライン・オフラインの利点と欠点を理解し、相互補完の活用をしている。

私は顧客接点を3つの接点から説明している。パーソナライズされた接客はハイタッチ、大勢に対して配信したりテンプレートの対応をするのがロータッチ、デジタルで便利さやお得感を出せるのがテックタッチ。平安保険の場合はテックタッチだけでなく、営業マンが真剣に相談に乗ったり、丁寧にアプリの使い方を教えたりというハイタッチがあるから伸びた。

WWD:つまりデジタル化を進めるにあたって、リアルでの接し方も変わってくるということか?

藤井:顧客接点の「上から見た接点」の図だと、テックタッチは広く接点が持てるので、一番外側にある。しかし中心はハイタッチ、つまりリアルな人を介する。ショップ店員や美容部員は、歴史もあるし、技術もあるプロ。だからこそ、自社サービスに参加してもらうきっかけを与える役割が担える。例えば多様な機能が用意されたサービスだと、ユーザーが最適なサービスを見つけ出せない場合があるので、サポートを人が行うということもできる。

WWD:これまでの話を総合すると、単に“デジタルを活用する”だけでなく、全体的な売り方の変革が必要になりそうだ。

藤井:そもそも、消費者にとってはデジタルとリアルの区別ってあまりない。例えばアレクサを通じて買い物するとき、音声を認識する・商品を検索する・発送する技術などが絡んで顧客体験をつくるが、ユーザーが気にするのは「買えるかどうか」だけ。社会の構造とメーカーの構造が違う形になってしまっているが、企業側はオフラインとオンラインのチャネルでどう売るかを考え、KPIを連携した方がいい。今あるものに加えてデジタルを導入するという考え方ではなく、大きな視点から企業の仕組みそのものについて考えるべきだ。

The post 美容・ファッション界も“アフターデジタル”の時代に 知っておくべきOMOとは? appeared first on WWD JAPAN.com.

「エストネーション」で年間1億5000万円を売るスペシャリストにその極意を聞く

 エストネーション(ESTNATION)六本木店には年間1億5000万円を売る販売員がいる。6月29日号の「WWDジャパン」の販売員特集で掲載しきれなかった青木栄治さんのインタビューを紹介する。

 青木さんを「WWDジャパン」で取り上げるのは今回が2回目。1回目はエストネーションで初めてシニアセールススペシャリストというポジションができた2013年で、年間1億円以上を売る販売員として紹介した。そして19年、シニアセールススペシャリストとしてのトータル売り上げが10億円を突破した。4~5年にわたって希望していた海外コレクションの買い付けにも、15年から年2~4回同行するようになる。店頭の販売員が買い付けにも同行するのは、「エストネーション」としては異例のことだ。近年の売り上げ平均は1億5000万円で、多い年は1億8000万円を売る。客単価は17万円で、一度に320万円を売ったこともあるという。

 前職を含めると販売員歴は20数年になる。「企画やPR、MD、マネジングなども経験してきましたが、自分に向いているのは販売員だと気付きました」と、穏やかな口調で青木さんは言う。初対面でも構えさせない不思議な安心感があり、丁寧な話し口調にもユーモアを交える。あらゆる分野の引き出しの多さが光るが、嫌味がない。

 顧客は約80人。そのうち密な関係を築くのは25人で、企業の社長やタレントなどが名を連ねる。近年は紹介も増えている。シーズンの始まりには各顧客向けにコーディネートを組む。顧客は予約制のプライベートルームへとやって来る。「時間が限られている方が多く、その時間内で接客を組み立てます」。顧客に向けた商品がコーディネートされている。


 顧客の希望に添うのはもちろんだが、「未経験の新しい扉をノックします。こちらの提案を信用して買っていただける関係性があります。これからはやる商品も必ず提案します。購入いただいた商品がその後いい結果を生み出す打率の高さがあるかもしれない(笑)」と話す。ポイントは、「正しい情報を的確に伝えること」。ブランドやデザイナーの背景はもちろん、取材中の雑談でも、ブランドのマニアックな人事情報までを把握していることに驚かされた。「情報をアップデートしていないとお客さまに伝えられない」。情報を得るのは業界紙からインスタグラムまで幅広い。加えて、「買い付けに同行するようになり、1年先を見ることができるようになり、それが生きていると感じます」。顧客の求めるものとエストネーションとしての提案を合致させるセレクトがディレクター陣からも好評だが、もちろん、特定の顧客向けにも買い付ける。青木さんの顧客向けの買い付け予算は5000万円で「100%に近い消化率」だという。

 顧客のクローゼットを把握しているのも強みだ。時には顧客のクローゼットを“仕分け”して二次流通に乗せ、その売り上げはポイント化、もしくは現金で顧客に還元している。このサービスは現在試行期間中だというが、今後はさらに広げていく予定だ。

コロナ前とコロナ後の変化

 「『コロナよりも餅を詰まらせて亡くなる人が多い』とおっしゃって足を運んでくださる顧客さまもいます。こちらも細心の注意を払いながら接客しています」と話す。

 「コロナ禍でクローゼットを整理する方が増えています。街を歩いていても服が捨てられている光景を何度も目にしたし、顧客さまのクローゼットの整理のお手伝いも増えて、あらためてお客さまの分母を増やす必要があると感じました」。

 店を再開してからの入店者数はコロナ前の約6割にとどまるものの、「リアル接客の醍醐味は、意外性のある提案。コロナで客足が少ない分だけ、ゆっくり提案できるとも思っています」。パンデミックで気付いたのは、「いいサービスをするためにはストレスフリーであることが大切だということ。接客の見直しのいいタイミングだった」。以前は、仕事用の携帯に連絡が入ると休みの日でも店まで駆け付けた。「人の洋服を選ぶことが好きで遊び感覚でした。でも時間をしっかりと分けることも必要だと気付きました」。

 青木さんが長年販売員を続けるモチベーションに“販売員の地位向上”がある。エストネーションでも、買い付けにも行く販売員として若手のモチベーションアップにもつながっている。「販売のスペシャリストを目指して入社する人も増えた」と笑顔を見せる。ただ販売するのではなく、その経験やデータを有効活用した企画や事業開発にも取り組んでいる。前述した買い取りサービスもその一つだ。「販売するだけではなくその後のサービスがあるかないかも責任の一つだと考えています。サステナビリティはファッション業界全体の課題になっていますが、いち販売員としてできることから取り組んでいます」。

The post 「エストネーション」で年間1億5000万円を売るスペシャリストにその極意を聞く appeared first on WWD JAPAN.com.

「太っている人が着たい究極の服」ができるまで SNS世代が仕掛けるブランド誕生までの軌跡 後編

 スニーカーのキュレーションメディア「足元倶楽部」や、メンズファッションのキュレーションメディア「SNS世代」をインスタグラム上で運営する株式会社いいねは6月20日、アパレルD2Cブランド「カロリイ(CARORIE)」をローンチした。同ブランドが“bigger”と呼ぶ、体の大きい人に向けて、ストレッチ性や速乾性があり、かつシワになりにくい生地で作られたベーシックアイテムをそろえる。第一弾のアイテムはTシャツ(1万6000円)とカットソー(1万8000円)、シャツ2型(各2万8000円)、ボトムス2型(各3万円)の計6型。現在、公式サイトで受注販売中で、9月以降順次配送する。同ブランドには身長175cm、体重100kgと、自身も“ヘビーウェイト”ないいね社長である小林稜氏の、並々ならぬこだわりと熱意が込められている。しかし、小林氏はファッションに関する専門知識は全く持たない“素人”だ。「本当に分からないことだらけだった」と語る彼が、ブランド立ち上げまでに辿った軌跡を追ったコラムを、前後編に分けてお届けする。(前編の記事はこちら

 知人に紹介された振り屋との取り組みが決まり、実際にサンプルの作成に進むことになった。しかし、そこでもさまざまな試行錯誤があったようだ。特に最初に作ったサンプルはうまくいかなかったという。「1stサンプルはデザイン性を強くしたのですが、結果的に上級者向けで、ショップで試着しないと分からない服、ネット上で売るのが想像できない服になってしまいました」と小林氏は問題点を話す。そこで今度はアイテムをベーシック路線にシフト。チーム体制も一新し、振り屋が依頼していたパタンナーも交えて綿密に打ち合わせを行い、次のサンプルの作成に当たった。しかし、仕上がった2ndサンプルでは、サイズ感の問題が浮上した。「ネック部分や極端にサイズ感を変えて見たところ、デカすぎて僕が着たら甚平のようになってしまいました」と苦笑交じりに反省する。そこで、3rdサンプルではサイズを調整。実際に販売するモノとほぼ同じ、6型の商品が仕上がった。「周囲のブランドを手掛けている方々からは『(サンプルを)3rdまで上げたのか』と驚かれました(笑)。“bigger”のための服として、生地も大量に使っていることもあり、価格も当初想定していた価格よりは上がってしまいました。でも、僕としては妥協できなかった」と語る。

 そうして3月末、小林氏が「太っている人が着たい究極の服」と呼べるモノが完成した。しかしそんな折、新型コロナウイルスの影響で、物流などさまざまな面が不透明になり、4月に予定していたブランドのスタートも一度保留になってしまう。ただ、小林社長は何もせずにコロナの収束を待っていたわけではなかった。「自粛期間中はサンプルを毎日着用し、毎日洗うことで生地感などに変化が出るのかなどを調べていました」と語る。「でも、生地は全然くたらないなど、ポジティブなギャップが非常に多かった。改めて自信が持てたし、モチベーションも上がりました」と振り返る。

 アイテムの機能性やデザインを自身で着て確認する傍ら、インスタグラムアカウントでの発信や、EC構築サービスを使ってのサイト開設など、着々と準備を進めていく。「インスタ上では、『カロリイ』の服だけでなく、僕が思う“bigger”のファッションなどについて、飾らずに発信していくつもりです。ブランドのSNSアカウントは一方通行になりがちですが、『カロリイ』では、フォロワーとコミュニケーションを取り、“bigger”にとって有益な情報を発信していければいいなと思っています」。

 小林氏はSNS上でのメディア運営を行っており、インフルエンサーとのコネクションもある。そういったリソースはどのように活用するつもりなのかと尋ねると、意外にも「あまり活用する気はないんです」と話す。「もちろん今まで自分が培ってきたコネクションなどは活用できるのかもしれません。でも、そういった人たちを巻き込む、といよりは、『カロリイ』のアイテムに興味を持ってくれたり、共感してくれたりした人と、何か一緒に取り組めれば、程度に思っています」。

 そうこうするうちに政府の緊急事態が東京でも解除され、ブランドローンチの準備も徐々に再開。6月20日、ブランドを始動することとなった。しかし、これで終わりではない。「ブランドをローンチして、やっとスタートラインに立った感覚です」と小林社長。「これから売れない理由や売れる理由を分析したり、ネットやリアルの場でお客さんのフィードバックを得たりしながら進んでいくつもりです。『カロリイ』はもちろんビジネスとして考えていますが、作って共感したいという気持ちが強いです」。

The post 「太っている人が着たい究極の服」ができるまで SNS世代が仕掛けるブランド誕生までの軌跡 後編 appeared first on WWD JAPAN.com.

イギリスのフェムテック企業3選 生理痛からセックス、更年期の悩みを手助け

 世界中でフェムテック(女性が抱える健康問題をテクノロジーで解決するサービスやモノ)市場が急成長している。イギリスでは主にベンチャー企業やスタートアップが多く、昨今では企業数と投資額は伸び続けているという。さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響により、ウエルネス分野や生活の質(Quality of Life)の向上への関心がますます高まっていることから、フェムテック市場の拡大が予想される。ロックダウン前に渡英して取材した、女性の体に関するタブーや悩みをテクノロジーで解決しようと取り組む、イギリスの企業3社を紹介する。


オーガニック生理用品と
“CBDオイル” 「オーネ」

 イギリスのフェムテック市場では、生理用品を扱う企業が大半を占めている。2018年に立ち上げられたスタートアップ企業「オーネ(OHNE)」もその中の一つで、100%オーガニックコットンのタンポンと、ホルモンバランスを整えて生理痛を緩和する効果が期待できるCBDオイルを扱っている。公式オンラインで単体の販売と、生理サイクルに合わせてタンポンを届ける定額制サービスを行っている(配送はイギリス国内のみ)。大麻草から抽出されるCBDオイルは昨今、美容製品として販売される機会が増えており、イギリスでは生理痛緩和のために開発されたのは同社のオイルが初めて。オイル数滴を浴槽に入れて入浴したり、直接下腹部に垂らしてマッサージしたりすることで効果が期待できるという。同社は地球環境に配慮し、生産の過程はすべて水力発電を使用。包装やアプリケーターは再生プラスチックのみを使用している。

 同社を立ち上げた共同創始者のニッキー・ミケルソン(Nikki Michelson)とリア・レムフリーペプロー(Leah Remfry-Peploe)は幼なじみで、起業のきっかけは自身の経験からだという。ミケルソンは20代半ばで甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが異常に働き、更年期障害のような症状を引き起こす病気)と診断された。「10代の頃は肌に問題があり、気分の浮き沈みがありました。 そのときに服用した医療品のCBDは画期的な薬でした」と語った。レムフリーペプローは「地獄のような月経期に体に起こっていること、どうコントロールすべきなのかを、私たちはもっと知る必要があると思います」という。ニッキーはザンビア共和国で社会事業に携わっていた経験があり、同社の売り上げの一部をザンビア共和国の女性たちに清潔な生理用品、衛生的なトイレ環境、生理に関する教育が向上するための支援金として寄付している。

セクシャルヘルスの音声ガイド
「ファーリー」

 音声ガイドアプリ「ファーリー(FERLY)」は、セクシュアル・セルフケアの練習や、女性が自身の体を理解して心と体がつながるマインドフル・セックスを実現するためのオーディオガイドを提供している。個人アカウントを作成すると、官能的なストーリーを受け取り、日記を付けるスペースがあり、セルフプレジャーを探求する機会をユーザーに与えている。共同創始者ビリー・クインラン(Billie Quinlan)とアンナ・フシュラク(Anna Hushlak)は、女性起業家をサポートするグローバルな組織団体「ウーマン・オブ・ウエアラブル(Women of Wearable)」が昨年発表した、「フェムテックで活躍する100人のイギリス人女性」で名を連ねた。

 性的暴行被害の経験を持つ共同創始者の2人は、女性の精神的・感情的な健康を変革するために同社の立ち上げに至ったという。クインランは「イギリスの女性の45%は実際に外陰部のことを理解していません。51%が性交中に痛みや不安を感じており、世界の3人に1人が性的暴行の被害者とも言われています。これら高い数字は女性がセックスについて理解したり、考えたりすることに対する世間とのギャップがあるからだと思います」と起業の理由になった社会の問題点を語る。「現代社会で人々は、上流を泳ぐ魚のような人生を歩んでいますが、セクシュアリティーに関しては、快楽と喜びに満ちた健康的で甘い時間であるべきなのです。女性の快楽とセクシュアリティーを巡るタブーを破り、心身ともに健康で、女性であることの喜びを自身で発見するための手助けを目的に、サービスを提供しています」。商品を通して肉体的なサポートを提供する企業とは異なり、感情面にアプローチするというのが同社の特徴である。

更年期障害の症状に向き合う 
「カンディ」

 イギリスのフェムテック関連企業で高い投資金を得たのが、17年に立ち上げられたスタートアップ企業カンディ(KANDY)である。起業から1年で、2500万ポンド(約34億円)という莫大な資金を調達した。同社は生理によって健康被害を訴える人々を助けるために治療学の研究・開発をする臨床検査事業。特に、閉経期症状の治療に専念し、ホルモン補充療法に代わる非ホルモン性代替薬(NT-814)を開発したことで、大きな注目を浴びた。ほてりや夜間の目覚め、睡眠障害、情緒不安定など、閉経期の複数の症状に対処するために役立つ薬である。

 閉経期の移行時には女性の75%に更年期障害のさまざまな症状が現れ、1~2年、中には10年以上続く場合もあるという。創始者のメアリー・カー(Mary Kerr)は「これらの症状は生命を脅かすことはありませんが、日常に影響を与え、心身ともに衰弱させ、社会生活や家庭内で問題が引き起こされます」と説明する。同社の指針について「最大の課題は、何百万人もの女性の更年期障害が日常的にどれほど影響を与えているのかについて、広く理解の欠如を克服することです」と語った。

The post イギリスのフェムテック企業3選 生理痛からセックス、更年期の悩みを手助け appeared first on WWD JAPAN.com.

「太っている人が着たい究極の服」ができるまで SNS世代が仕掛けるブランド誕生までの軌跡 前編

 スニーカーのキュレーションメディア「足元倶楽部」や、メンズファッションのキュレーションメディア「SNS世代」をインスタグラム上で運営する株式会社いいねは6月20日、アパレルD2Cブランド「カロリイ(CARORIE)」をローンチした。同ブランドが“bigger”と呼ぶ、体の大きい人に向けて、ストレッチ性や速乾性があり、かつシワになりにくい生地で作られたベーシックアイテムをそろえる。第一弾のアイテムはTシャツ(1万6000円)とカットソー(1万8000円)、シャツ2型(各2万8000円)、ボトムス2型(各3万円)の計6型。現在、公式サイトで受注販売中で、9月以降順次配送する。同ブランドには身長175cm、体重100kgと、自身も“ヘビーウェイト”ないいね社長である小林稜氏の、並々ならぬこだわりと熱意が込められている。しかし、小林氏はファッションに関する専門知識は全く持たない“素人”だ。「本当に分からないことだらけだった」と語る彼が、ブランド立ち上げまでに辿った軌跡を追ったコラムを、前後編に分けてお届けする。

 「太っている人のための服を作ろう」。彼がそう考えたのは、昨年の10月、メンズファッションのメディア「SNS世代」を立ち上げてしばらくしてからのことだ。仕事上、ファッション系インフルエンサーとの交流も多かったが、どこかファッションを楽しみ切れていないという気持ちがあったという。「服に興味を持ち始めたのは約5年前。自分でメディアを立ち上げた頃でした。それ以降、古着やデザイナーズなど、さまざまな服を着てきました。でも、丈が長すぎたり、ボタンが閉まらなかったり、摩耗しやすかったり、ストレッチがきかなかったり……。太っているが故に、気になるポイントがいくつか出てきました。オーバーサイズの服もありますが、太っている人と一口に言っても体型がさまざまなので、ただサイズが大きければ良い、というわけでもない。自分の中で完璧だと思える服は、まだ世の中にないなと感じていました」と当時を振り返る。

 中でも小林氏が作りたかったのが、“品の良い服”だ。「太っている人のための服で調べると、なぜかアメカジ系の服が多い。でも僕が作りたかったのは、品の良さをベースに、どこかしらに可愛らしさが感じられるような服。“清潔感”や、“太っていないように見える”といったこともキーワードとして考えていました」。

 ブランド立ち上げを決意してからは、怒涛の日々を過ごすことになる。まず、知人のデザイナーに相談を持ち掛けた。「僕はファッションにこだわりはあるけれど、知識はない。ブランドを始めるには、誰かに助けてもらうしかないと最初から考えていました」。ブランド名やコンセプトの決定に始まり、生地の選定やパタンナーの選定など、ブランドを作る上での必要なプロセスなどを知っていく。そんな中で、「カロリイ」というブランド名も決まった。「多くの“bigger”たちに愛されるような、チャーミングかつキャッチーな名前にしたいとずっと考えていました。また、『カロリイ』はラテン語で“熱”という意味もあります。個人的に、ファッションに対してのこだわりには、“熱量”がベースにあると思っていて。“カロリイ”は、人が摂取し、消費するものでありつつ、ファッションとも結びつくのではないかと思い、名付けました」と説明する。

 その後も、知人やその周囲のファッション業界人、D2Cブランドの関係者、そしてブランドのターゲットである“bigger”たちに日々相談しながら、ブランドの戦略や作るアイテムについての考えを固めていく。「中でも『カロリイ』にとっては、ターゲットが命。体の大きい人たちが何を求めているのか、服に対してネガティブに感じていること、どういった機能があれば嬉しいか、などは一通り聞きました」。そういったヒアリングと同時並行で、生地や縫製工場、パタンナーを探し続けていたという。「生地はさまざまな生地展を巡り、縫製工場やパタンナーさんは紹介ベースで自分の目で見に行きました。後はやりたいこと、やろうとしていることを包み隠さず話し、一緒に取り組めるか否か、相談を続けていきました」。

 そんな中で辿り着いたのが、とあるファッション業界で働く知人に紹介された振り屋(注文をもらい、工場に生産を依頼する企業)だ。国内のデザイナーズブランドを多数手がけているというこの振り屋との取り組みを決めた経緯について「僕が用意できるのは企画書やイメージ、あとはイメージを伝えるための私物や写真。それを全部、自分の熱量と共にぶつけてみたところ、フィーリングが合い、一緒にモノ作りをすることになりました」と小林氏。そこからは商品のラインアップ決めに始まり、デザイン画の作成、トワル組み(立体化したデザインをトルソーに着せてシルエットなどの確認を行うこと)、サンプルの作成と進むことになる。

 以降は、実際のモノ作りの工程に進むことになる。「お客さんとダイレクトにつながるD2Cモデルでやっていこうとする中で、中途半端なモノを作ったら、お客さんに伝わらなくなってしまう。妥協は許せませんでした」と小林氏。トワル組みでは、通常使われるシーチングの生地ではなく、より具体的にイメージできるよう、実際に使う生地を使用。サンプルに関しても、通常は1度サンプルを作った後、修正を加えて商品化するという流れが多いが、「カロリイ」では3度のサンプル作成を経ることになる。(後編に続く)

The post 「太っている人が着たい究極の服」ができるまで SNS世代が仕掛けるブランド誕生までの軌跡 前編 appeared first on WWD JAPAN.com.

「太っている人が着たい究極の服」ができるまで SNS世代が仕掛けるブランド誕生までの軌跡 前編

 スニーカーのキュレーションメディア「足元倶楽部」や、メンズファッションのキュレーションメディア「SNS世代」をインスタグラム上で運営する株式会社いいねは6月20日、アパレルD2Cブランド「カロリイ(CARORIE)」をローンチした。同ブランドが“bigger”と呼ぶ、体の大きい人に向けて、ストレッチ性や速乾性があり、かつシワになりにくい生地で作られたベーシックアイテムをそろえる。第一弾のアイテムはTシャツ(1万6000円)とカットソー(1万8000円)、シャツ2型(各2万8000円)、ボトムス2型(各3万円)の計6型。現在、公式サイトで受注販売中で、9月以降順次配送する。同ブランドには身長175cm、体重100kgと、自身も“ヘビーウェイト”ないいね社長である小林稜氏の、並々ならぬこだわりと熱意が込められている。しかし、小林氏はファッションに関する専門知識は全く持たない“素人”だ。「本当に分からないことだらけだった」と語る彼が、ブランド立ち上げまでに辿った軌跡を追ったコラムを、前後編に分けてお届けする。

 「太っている人のための服を作ろう」。彼がそう考えたのは、昨年の10月、メンズファッションのメディア「SNS世代」を立ち上げてしばらくしてからのことだ。仕事上、ファッション系インフルエンサーとの交流も多かったが、どこかファッションを楽しみ切れていないという気持ちがあったという。「服に興味を持ち始めたのは約5年前。自分でメディアを立ち上げた頃でした。それ以降、古着やデザイナーズなど、さまざまな服を着てきました。でも、丈が長すぎたり、ボタンが閉まらなかったり、摩耗しやすかったり、ストレッチがきかなかったり……。太っているが故に、気になるポイントがいくつか出てきました。オーバーサイズの服もありますが、太っている人と一口に言っても体型がさまざまなので、ただサイズが大きければ良い、というわけでもない。自分の中で完璧だと思える服は、まだ世の中にないなと感じていました」と当時を振り返る。

 中でも小林氏が作りたかったのが、“品の良い服”だ。「太っている人のための服で調べると、なぜかアメカジ系の服が多い。でも僕が作りたかったのは、品の良さをベースに、どこかしらに可愛らしさが感じられるような服。“清潔感”や、“太っていないように見える”といったこともキーワードとして考えていました」。

 ブランド立ち上げを決意してからは、怒涛の日々を過ごすことになる。まず、知人のデザイナーに相談を持ち掛けた。「僕はファッションにこだわりはあるけれど、知識はない。ブランドを始めるには、誰かに助けてもらうしかないと最初から考えていました」。ブランド名やコンセプトの決定に始まり、生地の選定やパタンナーの選定など、ブランドを作る上での必要なプロセスなどを知っていく。そんな中で、「カロリイ」というブランド名も決まった。「多くの“bigger”たちに愛されるような、チャーミングかつキャッチーな名前にしたいとずっと考えていました。また、『カロリイ』はラテン語で“熱”という意味もあります。個人的に、ファッションに対してのこだわりには、“熱量”がベースにあると思っていて。“カロリイ”は、人が摂取し、消費するものでありつつ、ファッションとも結びつくのではないかと思い、名付けました」と説明する。

 その後も、知人やその周囲のファッション業界人、D2Cブランドの関係者、そしてブランドのターゲットである“bigger”たちに日々相談しながら、ブランドの戦略や作るアイテムについての考えを固めていく。「中でも『カロリイ』にとっては、ターゲットが命。体の大きい人たちが何を求めているのか、服に対してネガティブに感じていること、どういった機能があれば嬉しいか、などは一通り聞きました」。そういったヒアリングと同時並行で、生地や縫製工場、パタンナーを探し続けていたという。「生地はさまざまな生地展を巡り、縫製工場やパタンナーさんは紹介ベースで自分の目で見に行きました。後はやりたいこと、やろうとしていることを包み隠さず話し、一緒に取り組めるか否か、相談を続けていきました」。

 そんな中で辿り着いたのが、とあるファッション業界で働く知人に紹介された振り屋(注文をもらい、工場に生産を依頼する企業)だ。国内のデザイナーズブランドを多数手がけているというこの振り屋との取り組みを決めた経緯について「僕が用意できるのは企画書やイメージ、あとはイメージを伝えるための私物や写真。それを全部、自分の熱量と共にぶつけてみたところ、フィーリングが合い、一緒にモノ作りをすることになりました」と小林氏。そこからは商品のラインアップ決めに始まり、デザイン画の作成、トワル組み(立体化したデザインをトルソーに着せてシルエットなどの確認を行うこと)、サンプルの作成と進むことになる。

 以降は、実際のモノ作りの工程に進むことになる。「お客さんとダイレクトにつながるD2Cモデルでやっていこうとする中で、中途半端なモノを作ったら、お客さんに伝わらなくなってしまう。妥協は許せませんでした」と小林氏。トワル組みでは、通常使われるシーチングの生地ではなく、より具体的にイメージできるよう、実際に使う生地を使用。サンプルに関しても、通常は1度サンプルを作った後、修正を加えて商品化するという流れが多いが、「カロリイ」では3度のサンプル作成を経ることになる。(後編に続く)

The post 「太っている人が着たい究極の服」ができるまで SNS世代が仕掛けるブランド誕生までの軌跡 前編 appeared first on WWD JAPAN.com.

“デニム不況”なんのその! 伊「リプレイ」好調続く

 ジーンズブランド「リプレイ(REPLAY)」を運営するイタリアのファッションボックス(FASHION BOX)の2019年度の売上高は、前年比10.3%増の2億6230万ユーロ(約312億1370万円)だった。特にEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は同30%増の2800万ユーロ(約33億3200万円)で、売上高の11%を占める。

 ファッションボックスは1981年の創業。2011年に日本法人を設立して百貨店約25、専門店やセレクトショップ約100、直営店8の計約130店舗で展開している。主要アイテムであるジーンズが売り上げの半分を占め、日本での平均単価は3万5000円ほど。エントリーモデルは2万円から用意し、一方でイタリア製やハンドメードによる8万円の限定モデルも扱う。

 デニムは久しく“冬の時代”が続いているが、勝てる秘訣はどこにあるのか?マテオ・シニガリア(Matteo Sinigaglia)=ファッションボックス最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。


WWD:ここ数年、“ジーンズ不況”を伝えてきた。その中にあって「リプレイ」は好調だ。その最大の要因は?

マテオ・シニガリア=ファッションボックスCEO(以下、シニガリア):19年度は全ての指標において前年度を大幅に上回ることができた。これまで「リプレイ」が取り組んできた長年の努力が結実した形だ。10年以降、われわれは“健康”“サステナブル”“クラフツマンシップ”を意識したジーンズ開発を行ってきた。ここにマーケットリサーチなどの販売戦略を結び付け、エンドユーザーと密につながることを目指した。ファッションボックスは世界50カ国以上で店舗を展開しており、売上高の89%を輸出が占める。19年度は全ての市場が成長したが、特に中東(49%増)、東ヨーロッパ(36%増)、アジア(10.6%増)、南ヨーロッパ(8.1%増)がけん引した。流通経路別では卸が14.1%増、小売店(既存店ベース)が6.4%増、ECが8%増だった。コロナショックにより20年は非常に厳しい年になると予想されるが、製品イノベーション路線を継続し、十分な投資をしながらブランド価値を顧客に伝えることに注力する。市場の回復に備え、事業を強化していく。

WWD:「リプレイ」の顧客層とは?

シニガリア:男女比は6:4。年齢層は25~40歳が中心だが、日本では45歳以上からも支持されている。

WWD:特に何が売れている?

シニガリア:機能とファッションを融合して、15年に発売した“ハイパーフレックス(HYPERFLEX)”が広く受け入れられている。また17年にスタートした経年変化感を選べる“エイジド(AGED)”もジーンズ愛好者に人気で、バラの刺しゅうがアイコンのセルフリバイバルライン“ローズレーベル(ROSE LABEL)”も女性客の注目を集め始めている。

WWD:EC化率は?

シニガリア:12%だ。日本も、ほぼ同等の約11%になっている。

WWD:日本では、「ブランドやシリーズごとに個体差があり、“フィッティングこそ命”のジーンズをECで販売するのは難しい」との声も根強い。

シニガリア:“ハイパーフレックス”が象徴的だが、「リプレイ」はどんな体形の人にもフィットしやすい伸縮性に富んだ“インテリジェント(知的)”なジーンズを開発することで解決策を示した。

WWD:コロナショックによる「リプレイ」への影響は?またイタリアの現在の状況は?

シニガリア:新型コロナは世界経済を減速させた。当然、「リプレイ」も例外ではない。影響は来年にまで及ぶだろう。とはいえ、イタリアは確実に回復に向かっている。しかし、夏季の収益の核となる観光業(ホテル、レストラン、美術館など)は引き続き多大な影響を受けるはずだ。

WWD:日本人ユーザーはデニムについての知識レベルが高い。また多くのブランドやビンテージについても熟知している。“プロ・コンシューマー”に対して、「リプレイ」はどうアプローチする?

シニガリア:確かに日本のユーザーはデニムについて独特な審美眼と文化を持っている。そんな彼らに“エイジド”やセルビッジモデルが人気だ。また日本向けに特別な商品も作っている。

WWD:「WWDジャパン」は、18年に「デニムだってサステナブル」という特集を組んだ。その後、サステナブルであることはデニム業界で当たり前になった。デニム担当としては“サステナブルの次”が気になっている。

シニガリア:「リプレイ」は10年から本格的にサステナブルに取り組む先駆的な1社であり、レーザー加工技術(“リプレイ レーザー ブラスト”)や天然顔料染め(“リプレイ ライフ”)、水使用量削減プロジェクト(“リプレイ ウオーター ゼロ”)を開発・推進してきた。サステナブルな試みは当初“対処型”だったが、これを“能動型”にシフトしている。つまり環境配慮型資源の優先使用だ。具体的には、リサイクルコットンとリサイクルポリエステルの混紡生地を採用した“ハイパーフレックス・リユース”を20-19年秋冬に発売する。現在、ジーンズの生産過程において廃棄物が出ることは避けられないが、われわれは資源およびエネルギーの回収、再利用に努めている。綿を糸に紡ぐ際には一般的に1割が失われるが、これも再利用する。また、リサイクルポリエステルはポリエステルを新規生産するのに比べてエネルギー使用量が少なく、結果として石油の使用や二酸化炭素の排出量を軽減できる。併せて、次のプロジェクトも始動させる予定だ。現時点では詳しく話せないが、高レベルの健康と主体的サステナビリティに引き続き取り組んでいく。

The post “デニム不況”なんのその! 伊「リプレイ」好調続く appeared first on WWD JAPAN.com.

英国デザイナー3人が決起、医療用ガウン自給の道を開拓できた背景

 新型コロナウイルスのパンデミックにより、英国では 感染者の増加で、病院やケアホームなどの医療現場では 医療用防護服(PPE)の確保が急務になった。3月下旬からの始まったロックダウン(都市封鎖)で制約された状況下、デザイナー3人が集まり、ボランティアでの医療用ガウン供給を目指してNPO団体「EDN(Emergency Designer Network)」を結成した。設立当初はデザイナー10人ほどの参加を想定していたが、 企業や工場、デザイナーやパタンナーなど、現在の参加者は大小合わせて約170に達し、 無償で医療用ガウンなどを供給している。

 パンデミックも収束に向かいつつある今は、今後起こり得る第2波を想定し、ストックを生産し続けたり、改良を目指した開発を行ったりするなど、支援を継続しているという。主要メンバーであるデザイナーのホリー・フルトン(Holly Fulton)、ベサニー・ウィリアムズ(Bethany Williams)、フィービー・イングリッシュ(Phoebe English)、PR兼仲介役のコゼット・マックリーリー(Cozette McCreery)の4人に、EDN結成のきっかけと支援の内容、そして今後の支援の形について尋ねた。

――結成の経緯は?

ホリー・フルトン(以下、ホリー):欧州各地でロックダウンが相次いで発表されていた3月中頃、PPE(医療用防護服)の生産を手伝ってくれないかと複数の病院や団体から連絡が入った。こんなに小規模なデザイナーに連絡が来るとはと、逼迫した状況であることをすぐに理解した。

ベサニー・ウィリアムズ(以下、ベサニー):同じ頃、私の生産拠点の一つであるイタリアの工場からも、国のためにPPEを作るラインに切り替えると連絡が入ってきていた。

ホリー:その後すぐにかつての恩師からも、PPEを作ってある病院を助けてもらえないか、 という連絡が入った。一度にこれほどの数の連絡が入るほど事態が深刻なのだと理解した。すぐにフィービー(・イングリッシュ以下、フィービー)とベサニーに声を掛けてEDNを設立した。名前もこのタイミングで自然と決まった。

コゼット・マックリーリー(以下、コゼット):これまで英国はPPEを主にトルコからの輸入に頼ってきたため、早急なストックの確保が必要だった。

ホリー:パンデミックのためにケタ違いの不足が生じて、国内での早急な生産が求められていた。サステナブルな生産を続けてきたフィービーの知識とネットワーク、ローカルでの生産が得意なベサニーに頼れば、迅速な流れを生み出すことができると思った。
※注:ベサニーは、 イタリアの社会改善プログラムへのサポートとしての生産以外は自身のブランドの生産をすべて英国内で行っている

――それぞれの得意分野でタッグを組んだ。

ホリー:2人に連絡した直後に、これはジョイントネットワークにして参加者を募り、ひとつのムーブメントにすることでより効果的に動けるのではないか、と思いついた。実際、EDNのようなことをプロジェクトとして立ち上げたいという声も聞こえてきていたし、私のインスタグラムの投稿のあとには、メディアも含めてすぐに反響があった。徐々に参加者が増えていき、現在は約170の企業や工場、デザイナーやブランドなどが無償の支援に参加してくれている。

有事には一丸となってチームワークを発揮する

――コゼットはどの時点で参加したのか。また、役割は?

コゼット:検査をしてないから正確には断定できないが、3月中旬に自分に新型コロナウイルスのような症状が出ていた。「シブリング(SHIBLING)」の休止以降は主にアドバイザーの仕事をしていて、ファッション・ウイークの間に行われるショーのサポートを含むいくつかの仕事をキャンセルせざるを得なくなり、心身ともにつらくなっていた。そんな中、インスタグラム上で支援を呼びかけるホリーの投稿が目に留まった。

――この時点で3月下旬、それはまさに英国でロックダウンが始まった時期だ。

コゼット:ホリーのことは知っていたので、症状の回復とともに連絡を入れた。仕事の予定もなくなっていたし、EDNにはPR的な役割が必要だと感じたので、自ら名乗り出た。PR以外にも、ホリーと事務的なことを分担し、政府や企業との仲介役も担当している。ただただ支援したいという気持ちで参加をしたけれど、きっとみんな同じ気持ちだったと思う。参加後は、デザイナー時代のつながりを通してさまざまな連絡が私に入ってきた。ユークス ネッタポルテ(YOOX NET-A-PORTER)やマッチズファッション ドットコム(MATCHESFASHION.COM)はそれぞれボランティアでEDNの配送を担当してくれたし、英アパレルブランドの「レイス(REISS)」やヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(Victoria and Albert Museum)も加わってくれた。多種多様の企業や団体、個人から支援を受け、EDNは各所をつなぐハブとなり、現在に至っている。

ホリー:EDNの活動を通して、予測不可能な状況においても、英国のファッション産業がいかに的確にそして素早く対応できるかということを政府に示すことができた。

過去のやり方を上書きして新しくスタートしよう

ホリー:EDNが現在支援している医療用ガウンに使う生地は、通常使用されているものと異なる生地だが、代用的に使える生地を探して完成させた。政府の認定を正式に受けたものではないが、病院側にも確認をした上で、代用品として届けている。

ベサニー:フィービーは多くのデータベースとコンタクトを持っているから、フィービーと「レイス」とで話し合いをして、英国内で材料を調達することに尽力してくれた。

その後、大きく分けて2つの方法で行っていくことに決めた。1つは、中小規模の工場と小規模(個人を含む)のデザイナーたち、もう1つは大型工場。「レイス」は、素材調達以外にも、工場と私たちをつなぐことにも大きく関わってくれた。

ホリー:EDNの活動を通して一番驚いたのは、実は、PPEや医療用ガウンとひとことで言っても各病院や施設ごとに規格がバラバラで、英国の中でスタンダードとなる規格が存在しなかったこと。

――英国内のどこにいても同じ医療サービスを受けられるという、英国の医療システム(NHS、国民保険サービス)のことから考えてみても驚きだ。

ホリー:ガウンの規格を統一する提案をして、型を作ることが最初の仕事だった。入手した見本からフィービーが型を起こし、それをベースとした。

ベサニー:驚くスピードでたくさんの工場が協力をしてくれた。

コゼット:PPEの生産に関する会議には政府からも参加をしてくれて、仲介に入ってくれた他の組織を通しながら話し合いを進めていた。政府は自国のサプライチェーンのことをあまり把握できていなかった。もちろん確認をとる場所やガイドラインが数多く存在するのは仕方のないことだけれど、今回はスピードが重要。弁護士と話し合い、PPEの生産は諦め、その代わりスクラブと呼ばれる医療用ガウンキットの生産を支援することにした。これは現在も生産中で、私も縫ったわよ!

ベサニー:政府の介入や承認なんて待っていられないくらい緊急の状況だったので、病院と直接やり取りをし、なんとかシステムを構築した。その後国内で、政府の介入や承認なしでも医療用ガウンを作ってくれるという工場を探した。

フィービー:当初はロンドン市内だけだった生産も、今はウェールズ、ダービシャー、スコットランドへと拡大して、大きな“ネットワーク”になった。

ホリー:サステナブルな視点も入れ、ガウンは使い捨てではなく再利用できるようにし、運搬方法ではカーボンフットプリントを抑えている。困難もあったが、英国内の生産者と医療関係者が直接話す機会を持ち、その話し合いの過程を見られたことには、デザイナーとしても刺激を受けた。

ベサニー:もともとファッション業界の人たちは短時間で物事を完成させることに慣れている。最終目的のためにひとつずつ問題を解決し、集中して働き続けることは得意なことだ。

フィービー:私たちの活動で注目すべき点は、全て自国で賄えているという点。従来はPPEを輸入に頼っていたのだから。今までは英国内で生産されていたものは一つもなかった。自国で生産できるということは、すなわち、無駄な待ち時間をカットできるということ。特に今回のような緊急を要する事態においては、よりスピーディーに、プロセスも簡潔に、自国で作れることが分かったというのは大きなことだったと思う。

ホリー:ゆくゆくはPPEを作れるように、現在は生産側と新作を目下開発中よ。

ロックダウン後の活動

――ロックダウンが終われば、EDNの支援も終了するのか?

コゼット:今後に向けては、ロックダウンの解除後も生産支援を続けることにしている。病院関係者と話し合い、いつ来るか分からない第2波に向けて、ストックを増やすために医療用ガウンを作り続けることにした。EDNは生涯続く組織ではない。ただ、英国内でPPEを生産していくことができるというレールは敷けた。今年の年末か、または来年の年始か……万が一同じような事態が発生したとしても、すぐに連絡の取れる確固たる場所がある。あとは「この時期にPPEが◯枚必要、生産よろしく!」とそれぞれが稼働するためのボタンを押すだけ。そうして仕上がったPPEを配送してくれるのは英国内の工場――輸入品ではない。

ホリー:ロックダウンは緩和されてはきたけれど、第2波を含む今後に向けて、開発も続けている。まずは医療用ガウン用の素材。NHS(国民保険サービス)の医療従事者からのヒアリングをもとにして、ワークウエアに特化した生地のキャリントン(CARRINGTON)というサプライヤーが素材の開発に協力してくれている。従来の素材は、着用時には熱がこもってとても暑くなることが分かったので、より快適に作業を行えるように熱を逃がすことのできるクール素材を開発中。これはICU(集中治療室)での実験に持ち込む段階まで進んでいる。

次にサステナビリティの視点から、可能な限り全てを再利用できる仕様にしている。従来のPPEの素材はほとんどがプラスチックで、全てがシングルユース(一度の着用で破棄される)。例えば1人の医師がAという部屋に入るときにPPEを着用し、処置が終わったら捨てる。でもその日に再度Aの部屋に行くことがあるなら、また新しいPPEを着用してまた捨てるという具合に、1人1日1枚で済むものではなく、着用するたびに破棄していたと聞いたのでこちらも再利用できる仕様を開発中。少なくとも10回は着用できるようなものを目指している。しかしながらPPEとなればそれなりの殺菌処理や熱処理が必要となるので、耐え得る強い素材や生産の方法を工場や企業と研究中。例えば、縫製だと生地の合わせ目にどうしても隙間ができてしまうので、より高度な防護の視点とより強度の高い製品を目指して、熱シールによる接着での継ぎ合わせを同時進行で開発していて、これには、普段は車の生産に携わる企業が尽力してくれている。

医療用ガウンは、20~30回の洗濯に耐えられるような物を目指して作っていて、こちらはファブリックアドバイザーに間に開発の全ての段階に携わってもらっていて、そのおかげで全てがスムーズに進んでいる。生地には医療ガウンを含むワークウエアに特化した、約200年もの歴史がある「ベルテックス(BALTEX)」という生地のサプライヤーに携わってもらっている。パターンには2種類、イタリア政府の認可を得たパターンと、英国内の2つの団体からOKをもらったEDN独自のパターンの2つを採用している。私たちの作ったガウンはとても好評で、パターンの形がよいせいか、着ていて気分がいいと人気が高いらしいのよ。写真の笑顔を見て!私たちに届く医療関係者からの感謝の手紙を読んで、私たちが役に立てているのだなぁと実感している。

これだけ多くの人と時間を費やしているのだから、最終的には英国のスタンダードをつくりたいと思っていて、NHSに正規採用されることを目指して力を尽くしている。NHS側に作業着を作るための知識があまりなかったことが分かったので、EDNを通した話し合いで解決したいと思っている。せっかく必要な各所がつながり合えていて、しかもみんなボランティアで協力してくれているのだから、大きなチャンスよね!自国生産となるとやはりコストの面での危惧はあるけれど、今後は政府がPPEの国内生産を新しい試みとして視野にいれてくれたらと願っている。

フィービー:パンデミックを通して、サプライチェーンがどれくらい相互依存をしているか、また今回のようなたったひとつの原因で、もろく崩れやすいことも理解できたはず。私たちの活動で注目すべき点は、全て自国で賄えているという点。プロセスも簡潔になり、よりスピーディーに、待ち時間なしでPPEが作れるようになった。

コゼット:有事においての自国の生産業の能力と迅速な連携を証明できた。今後の国内産業の発展にとって重要な功績を残せたと思っている。

ベサニー:何よりこのEDNに参加して分かったのは、ファッション産業の人たちの優しさ。そして英国内のデザイナーや生産に携わる人々、みんなが一つになれたこと。問題にぶつかっても冷静に解決をし、難しそうな問題も可能にしてしまう姿を見せられたこと。EDNだけではなく、例えばケリング(KELING)やLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)もPPEのサポートなどに動いてくれた。こうした動きが、パンデミックの時期に限ったことではなく、新しいファッション産業の考え方として根付いてほしい。

Shiho Koike Stitson:アパレルの営業職、PR、スタイリストのアシスタントなどを経て2004年にバーニーズ ジャパンに入社。ウィメンズPRとしてアパレルやアクセサリーをメインに、ビューティやブライダル、インテリアまで幅広いジャンルのPRを経験し、結婚を機に同社を退職。英国に移住し、フリーランスとしてPR、通訳、コーディネーターなどをしながら目下子育てにいそしむ。出産をきっかけに興味が高まったオーガニックな物やサステナブルなことをロンドンで探究中

The post 英国デザイナー3人が決起、医療用ガウン自給の道を開拓できた背景 appeared first on WWD JAPAN.com.

店舗販売員がデジタル上で月8000万円売る時代 「スタッフスタート」を活用した売り方の一歩先

 コロナ禍で店舗が休業を余儀なくされていたとき、販売員はどう過ごしていたのだろうか?――「自宅からでも販売員が『スタッフスタート(STAFF START)』を活用して商品を販売できていたかどうかで、その店舗の、引いてはブランドや企業の売り上げには大きく差が出ていた」と話すのは、実店舗の販売スタッフのオムニチャネル化を推進するアプリケーションサービス、「スタッフスタート」を運営するバニッシュ・スタンダードの小野里寧晃社長だ。

 “販売スタッフのオムニチャネル化”とはどういうことかというと、販売スタッフが着用したコーディネート写真をブランドのECサイトや各個人のインスタグラムなどのSNSに投稿するというもの。商品の下げ札に付いているバーコードを読み取るだけで、投稿写真に簡単に商品情報をひも付けることができ、購入につなげられる。ポイントとなるのは商品が売れた場合、売り上げの数パーセントがインセンティブ(成果報酬)として給与に加算されるのと同時に、その販売スタッフが所属する店舗の売り上げとして計上されるということだ。インセンティブのパーセンテージは、契約するブランドや企業によっても異なるが、最大で7%で設定しているところもあるという(一部、インセンティブも設けていない導入ブランドもある)。2020年4月にはこの「スタッフスタート」の評価システムが特許を取得した。

 現在、導入ブランド数は800を超え、「スタッフスタート」を活用して月額売り上げ最高約8000万円を記録する販売スタッフも出てきた。1回の投稿における売り上げ最高額は約600万円。コロナ禍で店舗が閉まっていた際には、自宅に商品を発送してコーディネートを投稿することで、ECの売り上げを伸ばしたブランドもあった。コーディネート写真の投稿数はコロナ前後比(19年11月から2020年1月と、20年2月から4月の各3カ月)で、284%に増加。同時に「スタッフスタート」経由の商品売り上げもほぼ2倍になった。

 16年9月にサービスをスタートして以降、「スタッフスタート」の導入数は年々増え、19年1~12月の「スタッフスタート」経由の流通総額は前年同期比3倍の約412億円。アダストリア、オンワードホールディングス、ベイクルーズ、フリークスストア、パルなど大手アパレルやセレクトショップを中心に導入されている。年内1000億円も視野にはいってきた。

 小野里社長は、「かつては実店舗とECサイトの在庫を一元化して、より実店舗に近いECサイトを作ろうとしていました。でも実際のところは、数億円かけて一元化しても店舗の販売員がECでの売り上げになることを嫌がり、ECサイトへの誘導をとめていた。そこで気づいたのは、『評価のオムニチャネル化』が重要であり、それが本当の意味での店舗とデジタルの一体化につながるということ。コロナ禍でさまざまなことがスピードアップし、販売員は店舗だけではなくデジタル上でも販売することで、本当の意味でのウェブとリアルの融合に近づいたのだと思います。同時にこのコロナ禍でも自宅で販売できたため、雇用を維持することにもつながった」と話す。

 この「スタッフスタート」が特徴的なのは、売り上げ上位ランキングや自分の順位がスマホでいつでも確認できることだ。「これによってモチベーションにもつながる。面白いのは、都心のショップスタッフより地方のスタッフの方が上位にいることが多いということです。というのも、トラフィックの多い都心の駅周辺の店などは次から次へと来店する顧客に随時対応しなければならず、一方、地方ではゆっくり接客できるので、その合間に『スタッフスタート』を活用して売り上げを伸ばすことができるのです」。地域性やトラフィックの多い少ないにかかわらず、自分の努力次第で結果が出せるというわけだ。「また自分の投稿によって売れた場合、プッシュ通知が来るようになっているためうれしくなる。上からの指示命令でなく能動的に動けるようになる」と小野里社長。売り上げの効果測定にかんしては、コーディネートなどのデジタル接客のみならず、SNSからの集客や売り上げ、店頭でのQRメモ経由(店頭で顧客が気に入った商品をQRコードに変換し、顧客のスマホへECサイトの商品URLを案内すること)の売り上げ全てが計測できるようになっている。

 では、実際に売り上げ上位ランキングのトップにいる人たちは、ほかの販売スタッフと比べて何かが秀でているのだろうか。「実はいたって普通の人たちです(笑)。キーワードは“共感”。消費者は実際に試着できない場合、なおさら自分の体形に合った人を探すので、ぽっちゃりしている人でも、コンプレックスがある人でも売れる。同じように悩んでいる人がいるのですから」と小野里社長。

事前に売れるかどうかを販売員が予想する“目利き”機能

 小野里社長から見た今のアパレル業界の課題は何だろうか。「なんといっても在庫問題。販売スタッフを起点としてアパレル業界をよくしていきたい。そこで“バイヤー機能”と“商品偏差値機能”を設けた。“バイヤー機能”とは、サンプル品を販売スタッフが売れそうか、売れなそうかをジャッジするというもので、スマホ上で簡単に評価できる。普段、顧客と一番接点の多い彼らの意見はAIよりも確かなのでは。これにより、発注の量を調整することで在庫ロスを少なくすることに貢献できるし、販売員にとっても“目利き”として評価されれば、その後のMD(マーチャンダイジング)などへのキャリアパスにつながるかもしれない」。

 一方、“商品偏差値機能”は、セールになっても売れない、つまり評価の低い商品を積極的にコーディネートに取り入れて投稿して売れた場合、販売スタッフのインセンティブも高くなるという仕組みだ。「食べログに例えると、よく売れる商品は4.5、セールになっても売れないものは2.5のように評価で分けることによって、販売スタッフが売りやすい商品ばかりを投稿することも少なくなります。商品を生産する前の“バイヤー機能”と販売後の“商品偏差値機能”により、できるだけ在庫の適正化を図れるようにしたい。“バイヤー機能”はすでに実装しており、“商品偏差値機能”は秋にスタートさせる予定」だという。

 コロナ禍では、ショップスタッフがライブコマースで商品を販売するブランドや企業も一気に増えた。ライブコマースの可能性をどう見ているのか。「動画は“過程や工程”を見せるのに有効なため、個人的にはコスメやトレーニングといった分野は動画で見せたほうが効果的で相性がよいと思っています。ただ、ファッションに関してはライブ動画にする必要性はあまり感じていません。くるっと回って服の後ろを見せたい場合はいいかもしれないですが、あえて時間拘束のあるライブにしなくてもよいのでは。“販売員のインフルエンサー化”でいえば、現在は圧倒的にインスタグラムが多いですが、ツイッターやユーチューブ、LINEの公式アカウントでも販売できるので、個々のキャラクターに合った売り方ができています」。

ファッション以外でも販売スタッフが評価されるように

 最近ではファッションのみならず、化粧品業界で初めてコーセーが「メゾン コーセー」で「スタッフスタート」を導入し、美容部員のメイクやスキンケア商品の紹介画像をサイトにアップしている。「今後は、ファッション、ビューティのみならず、ウエディング、美容室、書店、家電、ドラッグストア、ネイルサロン、ヨガ、ボディーメイクやトレーニングといった分野にも拡大させたいと考えています。例えば結婚式場でいうと、ブライダルプランナーがおすすめプランを投稿し、予約が成立すればその人の評価になるというもの」と小野里社長。

 今後は投稿場所を増やすべく、自社ECや個人のSNS以外にも、大手モールとの提携も進んでいる。現在では三井不動産が展開するECサイト「三井ショッピングパーク アンドモール(&mall)」上にも、そのブランドがテナントとして入っている場合、コーディネートを投稿できるようになっている。さらには今年2月に「メルカリ」ともコンテンツ提携し、メルカリ内のコーディネートから服を探す“コーデ機能”において、コーディネート画像から直接アパレル企業の自社ECサイトに移動できるようになった。

 「われわれは“ファッションテック”企業ではなく“スタッフテック”。常に販売起点でビジネスを考えています。“店舗をなくしちゃいけない、なくさせない、雇用も守る”――それが合言葉。これからも誰もやったことのないサービスを提案していきたい」と小野里社長。その考えのルーツとなるものは何なのか。「それはやっぱり人が好きで、販売員が好きだからなのだと思います。音楽でもファッションでも『自分が信じた好き』を信じ続けている人が諦めなくてよいようにサポートしていきたい。そして実際に商品を見たいし、行きたいし、感じたい。リアル、サイコーです(笑)」。

The post 店舗販売員がデジタル上で月8000万円売る時代 「スタッフスタート」を活用した売り方の一歩先 appeared first on WWD JAPAN.com.

伝説のクラブ「スタジオ54」の設立者が語る光と影 成功から投獄生活まで 後編

 米ニューヨークの「スタジオ54(STUDIO54)」は、多くの人がその名を耳にしたことのある伝説のナイトクラブだ。このクラブはブルックリン出身の若者2人イアン・シュレーガー(Ian Schrager)とスティーブ・ルベル(Steve Rubell)が1977年に設立。セレブリティーやアーティスト、デザイナーなどさまざまな人々が集う社交場として一世を風靡した。ルベリは89年に死去したが、シュレーガーは80年代にモーガンズ・ホテルグループ(MORGANS HOTEL GROUP)を立ち上げ、ブティックホテルの先駆けである「モーガンズ ニューヨーク(MORGANS NEW YORK)」や「ロイヤルトン ホテル(ROYALTON HOTEL)」などをプロデュース。現在はマリオット・インターナショナル(MARIOTT INTERNATIONAL以下、マリオット)と協業でホテル「エディション(EDITION)」を手掛け、自身の会社で「パブリック・ホテル(PUBLIC HOTEL)」を運営している。米「WWD」とのインタビューでシュレーガーは「スタジオ54」の成功と失敗、脱税の罪で投獄された経験などについて語った。ここでは、前編に続き後編を紹介する。

WWD: 「スタジオ54」におけるお気に入りの思い出は?

イアン・シュレーガー(以下、シュレーガ-):「スタジオ54」がオープンしたとき、米「ニューヨーク・ポスト(New York Post)」紙の一面に掲載されたことだ。ナイトクラブがニューヨークの新聞に掲載されることなど前代未聞だった。オーバーオールと麦わら帽子をかぶったシェールの写真が掲載されたよ。スティーブが朝5時に電話してきて、「やったぜ。『ニューヨーク・ポスト』の1面だ」と言ったんだ。オープン後間もなく開かれたビアンカ・ジャガー(Bianca Jagger)の誕生パーティーもいい思い出だ。デザイナーのエルサ・ペレッティ(Elsa Perretti)やモデルのパット・クリーブランド(Pat Cleveland)、デザイナーのロイ・ホルストン・フロウィック(Roy Halston Flowick)や彼の同僚だったジョー・ユーラ(Joe Eula)らがビアンカの誕生パーティーを開きたいと電話してきた。パーティーには約100人のセレブリティーが来た。裸体にペイントを塗りたくった人もいたよ。長い金髪の女性が馬に乗ってビアンカのバースデーケーキを持ってきた。彼女が馬から下りると、赤いドレスを着たビアンカがその白馬に乗った。たぶん、そのドレスは「ホルストン(HALSTON)」だったはずだ。そして、ビアンカが白馬に乗った写真は世界中に広まったよ。ふつうはクラブに動物なんかいないけど、われわれはパンサーやヒョウをスタジオに入れたりして、クラブの概念そのものが変わったんだ。毎晩こんなショーを開いて楽しんでいただけさ。

WWD: スタジオが持っていた中毒性に関して責任を感じるか?ある人にとっては単なる社交場が、他の人にとっては命取りになったが……。

シュレーガー:麻薬中毒のこと?私はスタジオで起こったことに対しては全く責任を感じていない。もし、スタジオのことで問題を抱えていた人がいたとしたら残念だけど。スプーンを持った男と月の小道具があったが、多くの人はそれがコカインの使用を暗示ていると思っていた。それは、アングラなナイトクラブが破壊的であるという先入観の一つに過ぎない。その小道具はコカインの使用の暗示でも何でもなかった。われわれはスタジオ内の麻薬使用とは一切関係がなかった。他の場所の方がよっぽど麻薬が蔓延していたと思う。

WWD: 脱税の罪に関しては?

シュレーガー:罪を犯したことは認めるが、われわれは、いわば拳銃を使えないギャングのようなものだった。スタジオを開いてから金がどんどん入ってくるようになった。スティーブが「ニューヨークマガジン(New York Magazine)」のインタビューを受けて、「われわれはマフィアよりも稼いでいるが誰にも言うな」という彼の言葉が掲載された。ばかなことをしたものだ。われわれがスタジオを始めたのは金もうけのためではなく、成功したかっただけだ。地道だったし、特に散財もしなかった。ただ、方向を間違って愚かなことをしたせいで破滅寸前だったというのは確かだ。

WWD: ビジネスを統括していた人物はいたか?

シュレーガー:いたが、われわれも経営に関わっていたから関係ない。われわれ全員の落ち度だ。クラブの天井に現金が隠されていたというのは、全くの作り話だ。私は車のトランクに現金を隠していた。警察にしょっ引かれたかもしれないし、盗難にあったかもしれないのに……。それくらい愚かだったから、逮捕されて罰せられたのは当然のことだ。そして、ニューヨーク中がそれを知ることになった。

WWD:刑務所はどうだったか?どうやって刑期を乗り切ったのか?

シュレーガー:ひどかった。刑務所ではたくさん本を読んだよ。デヴィッド・ハルバースタム(David Halberstam)の「最良の、最も聡明な人々(The Best and Brightest)」を読んだのを覚えている。そのとき、スティーブと私は刑務所内の大部屋にいて、ホテル事業を始めようと決めたんだ。

WWD: 13カ月間の刑務所生活で感じたことは?

シュレーガー:犯罪者らと一緒にいるわけだから、不安だったよ。スティーブと私は、ルフトハンザ(LUFTHANSA)強盗団の一人や、リドリー・スコット(Ridley Scott)監督の映画「アメリカン・ギャングスタ―(American Gangster)」に登場するフランク・ルーカス(Frank Lucas)と一緒だった。刑務所は本当にひどいところだ。人間性や個人としての裁量全てを奪われるから。普段当たり前の、自分でものごとを決断できるという自由はない。ずいぶんと苦しんだよ。刑務所の生活から得たものは何もない。人生が破滅する寸前の大失敗からは多くを学び、人間的に強くなった。その経験が倫理の基準やさまざまな考え方を変えた。でも刑務所に入らずにそれができたらよかったのにと思う。なぜなら、刑務所では全てを失うからだ。投獄された傷は今でも癒えないし、恥ずかしいと思っている。この後もずっとそうだろう。一番下の子どもにはまだ、(投獄されていたことを)話していないし、年上の子どもらにも長いこと話していなかったよ。

WWD:その経験がどのように今日の自分に影響しているか?

シュレーガー:法律やルールを守るのが当然のことだと思うようになった。素晴らしい人物はルールに沿ってものごとを行い、決して手抜きはしない。ビジネスを一緒にしているマリオットの職員をはじめ成功した人々はみんな正直で誠実だ。それは今の私の姿でもある。憂鬱なときは、投獄されていたときの自分を思い出すとすぐに気がまぎれるものさ。

WWD:今までやったことがないことでやってみたいことは?

シュレーガー:いまだに私はありとあらゆるものに関心があるんだ。ドキュメンタリーを撮影してからは映画作りには興味がなくなったけど。映画製作にはあまりにも多くの人が関わるからね。ブロードウエイの劇を手掛けてみたいと思っていたこともあったけど、今は全く状況が変わった。マリオットや自分のホテルを多く手掛けているからね。今でも20~30年前同様に、いそがしく働いているよ。自分の仕事を愛している。そうでなきゃ、成功できないからね。一生懸命やっているだけ。ファッション業界では、ノーマ・カマリ(Norma Kamali)がまさにそうだった。

WWD: 「スタジオ54」のような場所は現在も存在するか?

シュレーガー:もちろん、可能性はあるさ。ドイツの東ベルリン地区やスペインのイビサ島に似たようなクラブがある。スマートフォンで写真を撮れる時代だから70年代とは状況は違うが、時代が変わっても人間は変わらないよ。人間は常に楽しいと思う触媒を探している。ファッションは変化するが、車は車、飛行機は飛行機、冷蔵庫は冷蔵庫、機能性が進化しただけの話。人間は社交的な動物なんだ。「スタジオ54」を再現することは100%可能だと思うよ。

WWD:「スタジオ54」を再開する予定は?

シュレーガー:それは、過去に私が実現したこと。今は結婚し、5人の子どもがいて幸せな生活を送っているよ。

The post 伝説のクラブ「スタジオ54」の設立者が語る光と影 成功から投獄生活まで 後編 appeared first on WWD JAPAN.com.

美顔器の常識を塗りかえた名品 ウェアラブルEMS美顔器「メディリフト」

 これまで数多くのエポックメイキングな美容機器を開発してきたヤーマンが、ハンズフリーのウェアラブル美顔器という新ジャンルを切り拓いたのが「メディリフト」シリーズだ。年齢とともに気になる頬や口もと、口角などに現れるエイジングサインといった悩みに着目。通常はエステに通ったり時間をかけた入念なスキンケアを行うなどのケアが必要な悩みに対し、忙しい現代人のライフスタイルも考慮して、1回10分*1つけるだけの“ウェアラブルEMS美顔器”という新たなアプローチを生み出した。

 機能的な特徴は、顔の印象を左右する表情筋の衰えに対し、EMSの刺激により“適切な筋肉に適切にアプローチ”してリフトケア*2をかなえることだ。例えば「メディリフト」は、顔の表情を支える2つの筋肉「大小頬骨筋」と「咬筋」に着目。大小頬骨筋はトレーニングする低周波EMSで、食いしばりなどで日ごろ酷使しがちな、休ませるべき筋肉である咬筋は心地よく刺激する低周波EMSでケアする。トレーニング系とリリース系、2種の独自EMSを使い分けることでケアの最大効率をもたらす。「メディリフト アイ」と「メディリフト ネック」も同様に、センセーショナルな形状と機能が特徴だ。

*1:使用時間
*2:美容機器の装着によって肌を物理的に持ち上げてケアすること


ヤーマン設立から42年間の
“エポックメイキングヒストリー”

 1978年の設立以来、エステサロン用の業務用美容機器を作り続けているヤーマンは、“高度な機能性はそのままに家庭用に小型化する”という開発スタイルで自宅での本格エステを実現した。また、まだ体脂肪という概念がない頃に日本で初めて開発した体脂肪計をはじめ、この42年間、誰も足を踏み入れていない未知のエリアで革新的な製品開発を行い、新たな美容の分野を開拓してきた。ヤーマンの歴史は“人を綺麗にする発明”ともいえる。

 これまでの“エポックメイキング”な製品の一例を紹介すると、「プラチナゲルマローラー」は、2007年に発売し、「コロコロ」という愛称でヒットした。顔の上で転がして表情筋をケアするという新しさから“ローラー型美顔器”という新カテゴリーが定着し、今では多くの人がその存在を知るまでに至った。「ノーノーヘア」は、「抜かない、剃らない、ノーノーヘア~♪」のフレーズが広く認知された家庭用脱毛器。若年層から大人まで幅広い年齢層にファンを生み、シリーズ累計250万台以上を売り上げ、当時の脱毛市場に新カテゴリーを創出した。「フォトプラス」シリーズは、15年に登場したスティック状のRF美顔器。今や美顔器といえばこのスティック状の形状が定着しているが、同シリーズの発売を境にRF美顔器市場は拡大して いった。そして「メディリフト」シリーズは、専門知識がないと難しいとされる表情筋ケアを、“ウェアラブル”というアプローチを採用したことで誰もが簡単に行えるようにした。究極の“ながら”であることもニーズにマッチし、多くの人に受け入れられる美顔器となった。

「メディリフト」シリーズのご紹介

MODEL PHOTOS : SOUICHI ISHIDA
PRODUCTS IMAGE PHOTO : HIROKI WATANABE

問い合わせ先
ヤーマン
0120-776-282

The post 美顔器の常識を塗りかえた名品 ウェアラブルEMS美顔器「メディリフト」 appeared first on WWD JAPAN.com.

「アスタリフト」の“飲む紫外線ケア”を味方にポジティブで活動的な毎日を

 新たな生活様式が求められる今、常に向上心を持ち自分自身をより高めるために挑戦を続ける女性は、どんな状況下でも輝いている。スキンケアブランド「アスタリフト(ASTALIFT)」の「アスタリフト サプリメント ホワイトシールド」は“飲む紫外線ケア”として健康志向の女性たちに人気のアイテム。今回、“#staypositive_stayactive”をキーワードとし、アクティブな活動を趣味とするモデルやインフルエンサーたちに「アスタリフト サプリメント ホワイトシールド」の魅力、そして外出自粛中の現在もポジティブな気持ちをキープするための秘訣や行動をインスタグラム上で披露してもらった。注目のサプリメントを味方に、ワンランク上の紫外線ケアを今すぐ試してみて!

科学的実証に基づいて機能が
認められた“飲む紫外線ケア”

 今、美容フリークたちの間で話題の「アスタリフト サプリメント ホワイトシールド」は抗酸化作用を持つアスタキサンチンを配合し、“飲む紫外線ケア”として科学的実証により機能が認められている機能性表示食品だ。サプリメントには機能性関与成分であるアスタキサンチンのほかリコピンやビタミン、ポリフェノール、コラーゲンなど、女性にうれしい7種類の成分をバランスよく配合。紫外線の刺激から肌を保護するのを助けてくれるだけでなく、健やかな肌へと導いてくれる。1日2粒を目安に、外出前など習慣的に摂取することで体の抗酸化力のアップも期待できる。小粒のソフトカプセルと持ち歩きしやすい袋パッケージを採用し、好きなタイミングで取り入れやすいのもアクティブな女性たちにぴったり。

アクティブなモデルたちが
現在の過ごし方を披露!

 今回、さまざまな職業の女性たちが外出自粛中の現在、自宅などでチャレンジしている活動をSNS上で紹介してくれた。普段から美意識の高い彼女たちだからこそ、日々の紫外線ケアをサポートする「アスタリフト サプリメント ホワイトシールド」は必須アイテムだという。また近い将来、太陽の下でゴルフやサーフィンなどの活動的な趣味を行うために毎日の体づくりや、外出が難しい今だからこそポジティブな気持ちを保つための気分転換は重要なルーティン。そんな日々の大切な時間の中で、紫外線ケアが手軽に実現しやすいのも支持を集める理由の一つ。また、スキンケアなどでも信頼度の高い「アスタリフト」が提案する機能性表示食品という点にも、期待を寄せている女性が多いようだ。彼女たちの素敵なチャンレンジを参考に、肌ケアのヒントを探してみてはいかが?

アスタキサンチンの
抗酸化作用に着目

 長年にわたり、抗酸化についての研究を続けてきた富士フイルムは、ブランドの主力成分であるアスタキサンチンをさらに詳しく調べたところ、肌や体にダメージを与える活性酸素を除去する抗酸化の機能が期待できることがわかった。紫外線は長時間浴びると肌が炎症を起こし、シミやバリア機能の低下に影響があるほか、疲労や認知機能の低下、目のかすみなどにもつながる。日焼け止めを塗るだけでなく、サプリメントで内側からもケアすることでより効果的な紫外線対策が期待できるという。今なら、以下のトライアルサイトから7日分の「アスタリフト サプリメント ホワイトシールド」をお試し価格で体験できる。新たな“飲む紫外線ケア”として、これからの季節に向けて早速トライしよう。

問い合わせ先
富士フイルム
0120-241-946

The post 「アスタリフト」の“飲む紫外線ケア”を味方にポジティブで活動的な毎日を appeared first on WWD JAPAN.com.

ニュウマン横浜にビューティショップが続々オープン アルビオンの新業態や新ブランド「バウム」など

 ルミネは6月24日、横浜駅前の商業施設「ニュウマン横浜」を開業した。売り場面積は約1万3000平方メートルで、1~10階で構成。ファッションや飲食など115店舗がそろう中で、ビューティショップは15店舗がオープンした。新業態やエリア初など話題のビューティショップも多数含まれている。アルビオンの新業態「アルビオン フィロソフィ」や、横浜エリア初出店の「ディオール バックステージ ストゥーディオ」、「アットコスメ ストア」など6ショップを紹介する。

「アルビオン フィロソフィ」

 アルビオンはオープンラボやオリジナルのトリートメントサロンを併設した新業態ショップ「アルビオン フィロソフィ」をオープン。店舗面積は約230平方メートルで、「アルビオン(ALBION)」のほか、同社が展開する「イグニス(IGNIS)」「エレガンス(ELEGANCE)」「インフィオレ(IN FIORE)」を取り扱う。店内はラボ、ザ・ベッド、ギャザリングなどの8つのゾーンに分かれており、ラボでは肌測定や常駐する研究員が同社を代表する乳液の作り方などを披露する(1日2回実施予定)。トリートメントサロンとなるザ・ベッドは、「アルビオン」の最高級シリーズ“エクシア AL”を使った同店オリジナルのフェイス&ボディートリートメントを用意(コースは完全予約制で1万6500~11万円)。ギャザリングゾーンではビューティアドバイザーによるカウンセリングや展示イベント、ワークショップを開催する。そのほか、ラグジュアリーな空間で化粧品を試せる特別室やスキンケアアイテムを体験できるプライベート空間も備える。

 また、同店のアプリも開発した。アプリではトリートメントや肌測定の予約が可能のほか、事前に購入製品を申し込むことで待ち時間をなくすこともできる。オープン時は、トリートメントサロンやミストを使用したカウンセリング、肌測定は新型コロナウイルスの影響で休止するほか、店頭のテスターも販売スタッフに声をかけて使用することになる。同店について「当社が大切にするモノ作りと接客などを凝縮した店舗。ラボで蓄積したデータは今後商品開発にも生かしていく」(同社広報担当者)と語った。

「バウム」

 資生堂は6月に誕生したクリーンビューティブランド「バウム(BAUM)」を出店した。タカシマヤ ゲートタワーモールに続き2店舗目だ。店舗は“樹木の恵みと出会う場所”をコンセプトに、製品パッケージに使用している木材をイメージした印象となっている。同日にはアイルミネ、26日には新丸ビルにも出店する。

「ディオール バックステージ ストゥーディオ」

 パルファン・クリスチャン・ディオールは横浜エリア初となる「ディオール バックステージ ストゥーディオ」を開設した。アイパレットやティントリップバームなどオープン記念限定品や、最新のメイクアップ製品を扱う。横浜では初めてのリップ刻印サービスを提供する。またバックステージ アーティストがメイクアップアドバイスと共に、マッチするファンデーションやリップスティックのカラーの提案も行う。

「ウカ」

 「ウカ(UKA)」は3店舗目の直営店「ウカ ストア」をオープンした。コンセプトは“ウカ ファーマシー”。フロントには商品を試せるシンク付きのテスターコーナーを設けた。製品説明をしっかり伝えるため、ソーシャル・ディスタンシングをとりながらもベンチを配置して対面での接客も進める。店舗限定のネイルオイルやスカルプブラシなども販売する。

「ラ・ブルケット」

 スウェーデン発のライフスタイルオーガニックブランド「ラ・ブルケット(L:A BRUKET)」も横浜エリア初のブランドオンリーショップをオープン。白とグレーを基調としたシンプルながら温かさのある店内には6月4日に発売されたばかりの最新作ヘアケアアイテムも展開するほか、限定キットなども扱う。

「アットコスメ ストア」

 「アットコスメ ストア」も横浜エリア初となる。同店初のメゾネットタイプで、約330平方メートルの売り場面積に、カジュアル、ナチュラル、ラグジュアリーゾーンで構成。同店初の取り扱いとなる「NARS」「ローラ メルシエ(LAURA MERCIER)」を含む百貨店ブランドから、専門店や通信販売、ドラッグストア、バラエティーショップで扱うブランドまで幅広くそろえる。店舗やブランドを横断したオンラインのカウンセリング台帳を導入した。

The post ニュウマン横浜にビューティショップが続々オープン アルビオンの新業態や新ブランド「バウム」など appeared first on WWD JAPAN.com.

ユニリーバが“新ヘアケア戦略”をスタート 複数ブランドで細分化したニーズをカバー

 ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングは、新ヘアケアブランド「スガミ(SUGAMI)」を2020年1⽉からバラエティーストアの一部店舗で先⾏販売し、3⽉から一部のドラッグストアで販売した。また2月に、新ヘアケアブランド「メゾン ドュ テ(MAISON DE THÉ)」を一部ドラッグストアとeコマースで発売。さらにトータルビューティケアブランド「ラックス(LUX)」から新シリーズ「ビューティー アイディー バイ ラックス(Beauty iD by LUX)」を3⽉に発売した。ここまで短期間のうちに複数の新ヘアケアブランド・シリーズをローンチするのは異例のことだ。新型コロナウイルスの影響により、プロモーションや販売戦略は見直すとするが、さまざまなニーズが顕在する中で、複数のブランド発信の背景にはマーケティングに基づいた同社の“新ヘアケア戦略”があった。その戦略について、2人のアシスタントブランドマネージャーに聞いた。

WWD:短期間のうちに複数の新ヘアケアシリーズをローンチした経緯は?

芦田真知子ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング アシスタントブランドマネージャー(以下、芦田):ヘアケアに対する消費者のニーズは細分化が進んでいて、求めるものが共通ではなくなってきました。ドラッグストアを中心とした一般ヘアケア市場は、メガブランドが過半数のシェアを占めていた時期もありましたが、最近は大きなブランドが縮小化し、小さなブランドがシェアを伸ばしています。そうした状況下でユニリーバとして何ができるかを考えたときに、「ラックス」のような国民的ブランドを育てていくことは大事ですが、細分化したニーズをカバーしていくことも必要だという方針に至りました。それで、ターゲット別に複数の新ブランドを発売し、今までアプローチできていなかった個々のニーズに、ピンポイントで対応しようという試みをスタートさせました。

WWD:「スガミ」の特徴と戦略的な位置づけは?

芦田:「スガミ」は、スキンケア発想のプレミアムヘアケアブランドです。ユニリーバのポートフォリオで見ると、私たちが特にカバーできていないのが、ドラッグストアの市場の中で“プレミアム系”といわれる単価1000円以上のシャンプーです。市場のサイズに比べて当社がカバーできているサイズが小さく、逆にいえば可能性に溢れたカテゴリーでもあるのです。プレミアム系の購買層の行動を調べたところ、トレンドベースで買い物をしている傾向がありました。そこでトレンドベースで新ブランドを作り、美容感度の高いプレミアム系の商材を買っている人たちにアプローチしたいと考えました。

WWD:ラインアップも特徴的ですが。

芦田:ラインアップは「クレンジング シャンプー」「化粧⽔ ヘアミスト」「美容液 ヘアオイル」「保護 ヘアクリーム」の4アイテムです。ステップ1のシャンプー以外は、スキンケアのように髪に与え重ねていくステップですね。これまでにない新しいステップですが、ターゲットにしているのは美容感度が高く、常に新しいものにアンテナを張っている女性たち。次々と新ステップが追加されるスキンケアを躊躇なく試せる人たちなので、ヘアケアにおけるこの新ステップも受け入れてくれると読んでいます。

WWD:4アイテムのうち3アイテムが洗い流さないトリートメントというのは非常に珍しい。

芦田:“どのようにすれば素髪の美しさを最⼤限に引き出せるか”という視点で、これまでのヘアケアを本質的に⾒直した結果、“洗い流すトリートメントよりも、髪に良い成分がしっかりと残る洗い流さないトリートメントを重視し、それをスキンケアのように重ねる”というアプローチに行き着きました。

WWD:「メゾン ドュ テ」も“紅茶”をテーマにした個性あるブランドですね。

芦田:そうですね。「メゾン ドュ テ」のターゲットは“パッケージデザインや香りを重視して買い物をしている人たち”です。日本や韓国で“食べ物×美容”が流行っていて、フルーツをモチーフにしたフェイスマスクや、日本酒の成分を配合した化粧水などがシェアを伸ばしています。そうした中、当社では紅茶に含まれる成分“タンニン”に髪を補修する効果があり、実際にサロン市場のトリートメントに使用されていることに着目しました。“ティータイムのリラクセーションをヘアケアに”をコンセプトに開発したのが、紅茶発想のヘアケアブランド「メゾン ドュ テ」です。

WWD:香りはまさに紅茶そのもので驚きました。

芦田:コンセプトをターゲット層に的確に届けるため、グローバルのフレグランスチームも巻き込んで紅茶の香りを再現しました。紅茶の缶から着想を得た、まるで紅茶の茶葉が入っているような高級感のあるデザインにもこだわりましたね。発売と同時に、紅茶ファンの間のSNSでかなり盛り上がったようです。

WWD:「ラックス」からも新シリーズが登場しました。

古松尚実ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング アシスタントブランドマネージャー(以下、古松):新シリーズ「ビューティー アイディー バイ ラックス」は、「ラックス」初のカスタマイズヘアケアシリーズです。優しく洗うシャンプー1種、髪質に合わせて選ぶトリートメント3種、質感に合わせて選ぶエッセンス3種の全7アイテムを展開し、なりたい髪の仕上がりに合わせて9通りの組み合わせから⾃分に合う組み合わせを選ぶことができます。

WWD:カスタマイズやパーソナライズはまさにトレンドですね。

古松:昨年はヘアケアを含め、さまざまなカテゴリーでパーソナライズ化が進み、まさに“パーソナライズ元年”といえる年でした。そして20年は、パーソナライズをよりカジュアルな形で楽しめる“カジュアルカスタマイズ”が求められると考えています。昨年は美容感度が高く、ヘアサロンでしかヘアケアを買わないような方たちがパーソナライズヘアケアに注目していましたが、そのトレンドがマス化し、より多くの人がカジュアルに楽しめるようになるイメージです。ドラッグストア市場のプレミアム系で、そうしたトレンドに対応するために開発に至りました。シリーズの目標として、カスタマイズというトレンドをさらに広めていきたいと考えています。

The post ユニリーバが“新ヘアケア戦略”をスタート 複数ブランドで細分化したニーズをカバー appeared first on WWD JAPAN.com.

進化する幸せ産業(2)飲食業界編 連携し絆を深めるレストラン&バービジネス

 「新しい日常」が始まり、徐々に外食の機会も増えてきた。今までと違うのは風通しのいいテラス席が目立ち、席数を減らすなどソーシャル・ディスタンシングを保つ工夫がみられること。換気が悪そうな雑居ビルや地下の人気店を避けるなど、自分自身の意識もポストコロナで変わったようだ。日常生活に一番近い“幸せ産業”である外食事情は今、明らかに変化している。新たなる外食産業を表すキーワードは、顧客とのつながりを深め、広がるさまざまな“連携”なのではないかと感じている。

ピクトグラムを無償で提供し、業界全体の回復を目指したヒラマツ

 自粛要請が解除されつつある5月下旬に「HIRAMATSUスタンダード」なる独自の基準を掲げたのがヒラマツグループだ。「ポール・ボキューズ(PAUL BOCUSE)」などのミシュランスターレストランをはじめ、全国に33軒、パリに1軒のレストラン、賢島、熱海、沖縄、京都にオーベルジュ的なホテルを開業し、レストランウェディングを展開するなどして、業界をリードしてきた。「衛生管理」「ソーシャル・ディスタンシング」「換気」の観点から、ポストコロナに対応する環境やスタッフの態勢を徹底的に見直した基準だ。

 また、ソーシャル・ディスタンシングを保つ配席や消毒の徹底など、店としての対応を示すアイコン=ピクトグラムをほかの飲食店にも提供。飲食・サービス業の9つの安全対策の指針を示したポスターや、個々のピクトグラムを無料でダウンロードできるようにし、6月初旬には英語版も公開した。コロナ対策を明確に示すことで、業界全体が活性化することを目指している。

屋上開放、ドライブスルー導入など、連携することで促進

 昨年11月22日にグランドオープンした渋谷パルコ(PARCO)では10階屋上のROOFTOP PARKをイートインスペースとして開放した。全29店舗がテイクアウトメニューを用意し、寿司、タイ料理、ドイツ料理、串カツなどバラエティーに富んだラインアップで、顧客の好みに対応する。例えば「居酒屋 真さか」は、唐揚げや餃子も大豆ミートで作ったビーガン向け中華弁当を販売。「米とサーカス」では滋養のあるジビエ料理や昆虫食など、話題性のあるメニューも。今まで店内でしか食べられなかった讃岐うどんの名店「おにやんま」のカレーうどんなど限定メニューも多く、選択肢が広がった。館内で一定以上の買い物をすると飲食店の割引クーポンを配布するなど、施設全体の集客にも貢献している。

 横浜中華街ではドライブスルーを導入。事前予約することで、一定の時間帯に、観光バス用の駐車エリアを一般車両に開放し、各飲食店がそこまで届けるという仕組みだ。300店舗の情報をまとめたサイトに情報を順次アップし、現在は30軒以上の飲食店がドライブスルーに対応している。

 また「恵比寿新聞」と飲食店が企画し、こども弁当を300円で販売するプロジェクトもユニークだ。支援したい飲食店に一口3000円の寄付をすることで、間接的に休校中の子どもたちや子育て世帯をサポートできる仕組みを実現させた。当初10店舗だった参加店舗はエリアも拡大し、現在は「シブヤこどもごはんプロジェクト」として26店舗が賛同している。いずれも個の力だけではなく、連携することで施設や地域を活性化させた例といえるだろう。

居酒屋や中華 意外性のある業態で絆を深め、新たなファンも獲得

 中には業態をがらりと変え、結果、新たなファン層を得た飲食店もある。肉料理が評判のイタリアンバル「あつあつ リ・カーリカ」は6月末までランチ限定でカレー店として営業。メニューがないおまかせのみの渋谷の隠れ家イタリアンとして知られる「Konel」は「中華屋Konel軒」として期間限定のイベント営業で、常連客を楽しませた。現在は16時から18時まで早めの限定コースなどのニーズにも対応している。

 最高峰のハイボールを提供するバー「銀座 ロックフィッシュ」の店主、間口一就はレシピ本の著書も出し、メディアでの露出も多い。2月末ごろからハイボール列車などイベントも次々にキャンセル。テイクアウトメニューを強化し、フードメニューの片面が390円均一の居酒屋営業に切り替えるなど、瞬時に対応した。クラウドファンディングを立ち上げ、空間除菌脱臭機ジアイ―ノを設置、今まで通りに交流できるようアクリル板でカウンターを完全に仕切るなど、営業再開に先駆け、設備投資した。ランチ営業により、近隣のオフィスワーカーが立ち寄る機会を増やした。「試練に負けず進化し続けたい。『美味しいは経済をまわす』が信条です」と間口氏は語る。

 6月19日にオープンした「春水堂(チュンスイタン)渋谷マークシティ店」では鉄観音スパークリング、タピオカカルーアミルクティーなど台湾本場の茶葉の旨味を生かしたカクテルを開発。ティーカクテル1種とおまかせ前菜3種をほろよい茶酒セットとして、16時以降、1000円で提供する。タピオカミルクティー発祥の店だけに、女子高生など若年層が圧倒的だったが、オフィスビルが次々にできた今、渋谷は成熟した街となった。「オフィス内でランチをとる方が多いのか、テイクアウトの一括注文も増えています」と広報の工藤芽衣氏は語る。駅構内にあり、帰宅時の立ち寄りスポットとしての需要に応える。

 すでに定着しているファンの心をとらえつつ、意外性のある新形態、新メニューで新たな顧客とのタッチポイントを増やす。そんな取り組みに挑んだ飲食業がこれからさらに進化していく。そう、1ファンとして信じたい。

間庭典子(まにわ・のりこ)/フリーライター:婦人画報社(現ハースト婦人画報社)を退社後、ニューヨークへ渡る。現在は東京を拠点に各メディアに旅、グルメ、インテリア、ウエルネスなど幅広いテーマで執筆。著書に「ホントに美味しいNY10ドルグルメ」「走れば人生見えてくる」(共に講談社)など

The post 進化する幸せ産業(2)飲食業界編 連携し絆を深めるレストラン&バービジネス appeared first on WWD JAPAN.com.

1カ月半休業も営業再開後は順調 「アルバム」金内柊真のスター美容師への道 Vol.6

 ツイッターのフォロワー数14万超え、インスタグラムのフォロワー数11万超え、TikTokのフォロワー数9万超え、ユーチューブのチャンネル登録者数6万2000人超えの人気美容師・金内柊真。かつては芸能活動を行い、2018年8月にはアシスタントながら自身の著書「才能がなければその分努力すればいい」(KADOKAWA)を出版するなど、美容師の枠に収まらない存在として注目を集めている。昨年11月にスタイリストデビュー。今連載では、毎月の彼の売り上げの推移とともに、売り上げを伸ばすために何をやってきたか、また新人スタイリストならではの苦労などを紹介していく。今回は自主休業中の話や、5月28日からの営業再開後の話を中心に聞いた。

WWD:新型コロナの影響で「アルバム」は4月8日から5月27日まで全店で休業していた。これは美容室の中でもかなり長い休業だったが、どんなことをしていた?

金内柊真(以下、金内):サロンに関連したことだと、平日は毎日社内向けのオンライン講習があったので、それを受けていました。実際に家でウイッグを使ってカットの練習をしたりしていました。あと、個人的にSNSの発信を積極的に行っていて、中でもTikTokはすごく反響があり、期間中にフォロワーが2万ほど増えたんです。

WWD:今後はTikTokでも集客していこうと考えている?

金内:TikTokはインスタグラムにつなげるための入り口だと考えています。なので、TikTokでは美容師っていうよりかは、“金内柊真”にまず興味を持ってもらって、そこからヘアスタイルがメインのインスタグラムを見てもらい集客につなげていければと考えています。SNSもそれぞれの特性を考えて、投稿する内容は変えています。

WWD:自粛中は自分の髪はどうしていた?

金内:もう伸びっぱなしで、人生で初めて2カ月近く髪を切りませんでした。それで営業再開前日の5月27日に髪を切って、カラーをしました。でも自分で切ってあらためて感じたのは、「髪を切ることってやっぱり気分も上がる」ということです。実際に来店されたお客さまもけっこうばっさり切る人も多くて、その気持ちも分かります。

WWD:5月28日から営業を再開して集客はどう?

金内:やはり1カ月半以上休業していたので、僕の場合は予約がすぐに埋まってしまうくらいに順調です。衛生面にも気をつけて、席ごとにパーテーションを設けるなど、コロナ対策はしっかりとやっています。予約数も制限しているのですが、お店としてもすごく順調で、土日だけではなく、平日でも朝から夜までけっこう予約が埋まっています。最近は少し落ち着いてきましたが、再開後2週間ほどはすごかったです。

WWD:営業時間は短縮している?

金内:以前は23時まで営業していたのですが、今は21時までの営業に変更しています。

WWD:来店する人はリピートの人が多い?

金内:今回はリピーターの人を優先したいなと思って、「ホットペッパービューティー」での予約を開放する前に、一度でも僕を指名してくれたお客さまを対象にインスタグラムで事前に予約を受け付けました。それで半分くらい予約が埋まって、その後に「ホットペッパービューティー」の予約を開放したら残りの枠もすぐ埋まりました。

WWD:6月の売り上げ目標は?

金内:6月1~30日で現状だと200人ほど予約が入っているので、売り上げは180万円を目標にしています。コロナ前くらいまでは戻ってきています。

WWD:今回の新型コロナによって美容師の在り方は変わると思うか?

金内:美容師のやることは変わらないと思いますが、各美容室のスタンスは問われると思います。特にコロナ禍でスタッフに対してどういう対応を取ってきたかというのは、スタッフからはすごく見られているでしょうね。今後はそういったことがリクルートに影響してくると思います。

The post 1カ月半休業も営業再開後は順調 「アルバム」金内柊真のスター美容師への道 Vol.6 appeared first on WWD JAPAN.com.

フランス発ジュエラー「ブシュロン」のCEOがロックダウン中にしたこと

 フランス発ジュエラー「ブシュロ(BOUCHERON)」を率いるエレーヌ・プリ・デュケン(Helene Poulit・Duquesne) 最高経営責任者(CEO)は、新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウン中にフランス・ノルマンディの自宅で同社の指揮を執っていた。彼女はコロナ感染拡大の予兆が出てすぐに、リモートワークができるよう全てのスタッフにPCを調達。また、ヨーロッパでロックダウンが始まる前にジュエリーの在庫を主要市場であるアジアに贈った。プリ・デュケンCEOは、「3カ月間会社運営ができなかったとしても、(アジアで)在庫切れにならないようにした」と話す。また、彼女が行ったのはデジタル施策の強化だ。高級ブランドを扱うECサイト「ファーフェッチ(FARFETCH)」とタッグを組み販売をスタートさせた。日本では5月25日から、自宅にいてジュエリーのオーダーができる「ブシュロン リモート ショッピング サポート」を銀座店と心斎橋店で開始した。このサービスは、公式ウェブサイトにアクセスしメールやチャットでオーダーすることができるもの。クライアントサービスに電話すれば専任スタッフがショッピングをサポートし、希望する顧客には、スタッフが要望に合わせてビデオ電話で商品を提案するという内容だ。

 ロックダウン中も、プリ・デュケンCEOは、重役らとコロナ危機におけるマネジメントおよびコロナ終息後について頻繁にブレーンストーミングを行ったという。「『ブシュロン』は、女性が中心を担うジュエラーであることに気付いた。それを十分に発信できていない」とプリ・デュケンCEO。「ブシュロン」では同CEOをはじめクリエイティブ・ディレクターのクレール・ショワンヌ(Claire Choinne)も女性だ。「コロナ危機で、人と人のつながりというシンプルなことにフォーカスすることができた。スタッフや顧客は大丈夫かと思いやる気持ち、このように感情を大切にする面が『ブシュロン』のプラットフォームにはあると感じた」という。

 同CEOは、「ブシュロン」はとても誠実なブランドだと強調する。そんな彼女がロックダウンで感じたことは、VIP顧客との強い絆だ。「今までこれほど、VIP顧客とつながりを感じたことはない。ロックダウンが始まって10日間で、私をはじめ、担当営業はメールや『ワッツアップ(WhattsApp)』、『ウィーチャット(微信、WeChat)』などのSNSを通じてVIP顧客とコミュニケーションを取った。ビジネス目的ではなく、ロックダウン中どうしているか、家族は大丈夫かと思いやる気持ちからだ」。プリ・デュケンCEOからのメッセージを受け取って感動したという顧客も多い。「顧客から数日返答がないと気がかりでならなかった。私は、彼らとつながっていたいと心から思っていたから」。

 同CEOは、顧客とのこのようなコミュニケーションが絆をつくったと考える。コロナ感染拡大が収束すれば、安全確保を万全にして、パリ・ヴァンドーム本店でVIP顧客向けに小規模のランチやディナーイベントを開催する予定だ。ロックダウン中に、他者との気持ちのつながりの重要性を自ら感じ、それをチームに伝えて顧客との絆を深めたプリ・デュケンCEOのしなやかなリーダーシップに学べることは多いかもしれない。

The post フランス発ジュエラー「ブシュロン」のCEOがロックダウン中にしたこと appeared first on WWD JAPAN.com.

業界の光と陰を見た“元”インフルエンサー 華やかな舞台と決別しパリにショップを開いた理由

 ウィズコロナ時代の小売りはデジタル化が急速に進むと予想される中で、パリに新たなセレクトショップ「パラダイス・ガラージュ(PARADISE GARAGE)」がオープンした。インフルエンサーとして活躍したエステル・シェムニー(Estelle Chemouny)と、夫のエリー・シェムニー(Elie Chemouny)による店で、パリ1区のかつて「コレット(Colette)」が店を構えていた場所からほど近い位置にある。3月中旬オープン予定だったが、ロックダウン(都市封鎖)の影響により5月29日に延期となった。オープンから1週間後に店舗を訪れると、すでに地元パリジャンの客が店内で買い物を楽しんでいた。「ECサイトは立ち上げない」ときっぱりと言い切るエステルに、自身の経験から出店にいたるまでの経緯、コンセプトや実店舗にこだわる理由までを聞いた。

マウントを取り合う世界に「嫌気がさした」

——インフルエンサーとしての活動と店のオーナーに転身した理由は?

エステル・シェムニー(以下、エステル):17歳から9年間ロンドンで過ごし、ショップスタッフやバイヤー、フリーのパーソナルショッパーとして経験を積んだわ。特に深くは考えず自分のコーディネートを投稿していたら、ブランドからプロモートのために声が掛かるようになったのが6年ほど前からで、報酬を受け取るインフルエンサーという職業があることを初めて知ったの。一般人の私が無料で商品をギフトされ、さらにお金も稼げるなんて、こんなラッキーなことはあるのだろうかと次々と依頼を受けて、フォロワーもどんどん増えていった。ファッションショーに招待され、セレブリティーに挟まれてフロントローに座る機会も増えて、まるで注目されているような、価値のある人間になったという優越感があったの。でも時間が経つと同時に、それがいかに表層的で薄っぺらなものなのか、いかに本質に欠ける行為なのかと徐々に違和感を覚えていったわ。

——違和感とは具体的に?

エステル:前置きしておくけど、これはインフルエンサーをビジネスとして経験した一人の人間としての個人的な見解であることを理解してほいの。誰かを傷つけたり、否定したりする意図は全くなくて、私の感情だと割り切って聞いてね。

私も当時は無料でギフトを受け取り、フォロワー数が増えることで注目され、投稿に対してリアクションがあることに優越感を覚えていたの。同世代や同じキャリアのほかの人たちよりも、自分は抜きん出ているような感覚を持っていた時期もあった。でも実際は、自分の経済力でブランドが提供してくれるバッグや洋服を購入することはできないし、飛行機もビジネスクラス以上に乗ることはできない。プロモートなしでそれができるインフルエンサーはとても少ないの。ファッション・ウイーク中は着せ替え人形のように何度も着替えるけれど、自分が本当に愛する洋服に身を包むことができず、洋服を通して“自分らしく”いることの意味を見失っていたの。もともと持っていた洋服のこだわりや自分のテイスト、一着に対する深い愛情が薄れつつあったわ。

——それでキャリアを変える決意をしたと

エステル:何より嫌気がさしたのは、インフルエンサー同士のマウントの取り合いや、年を重ねてもティーンエイジャーのように振る舞う態度、当たりさわりなくみんなに好かれるようにしていることだった。別にその人たちを否定したいのではないけれど、自分はもうそういう環境には身を置きたくないし、違う形で生きたいと思うようになっただけ。数年前から感じ始めた違和感が少しずつ私の心の中で亀裂となっていき、ようやくインフルエンサーとしてのキャリアを壊す覚悟ができたのよ。

デジタルシフトにはあえて逆行

——店名「パラダイス・ガラージュ」の由来は?

エステル:1970〜80年代ニューヨークに実在したナイトクラブ「パラダイス・ガラージ」に由来しているの。同時期に爆発的な人気があった伝説的ナイトクラブの「スタジオ・フィフティーフォー(Studio 54)」はセレブリティーが集まる豪華絢爛な場だったけど、「パラダイス・ガラージ」はアンダーグラウンドな雰囲気で同性愛者の間で人気に火がつき、アフリカ系やヒスパニック系など有色人種が混在する多様性に溢れる自由な場だった。着飾って行く「スタジオ・フィフティーフォー」に対して、われを忘れて踊ることを目的に行く「パラダイス・ガラージ」といった感じかな。30歳の私は実際には行ったことはないけれど、映画や写真などを見てそのインクルーシブな空間に引かれたの。

それに、ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivianne Westwood)が名もない頃、当時恋人だったマルコム・マクラーレン(Malcolm McLaren)とともに70年代前半にロンドンに開いた最初の店も同名だった。そこから彼女が、ファッションを通してカルチャーを築き上げてきた歴史に感銘を受けたのも由来の一つね。

——店を通してカルチャーを築いていきたいということ?

エステル:結果的にそうなればいいけれど、正直なところ展望を明確に描いているわけではないの。こういうと、ファウンダーとしてビジネス的な視点に欠けていると指摘を受けることは多々あるわ。でも私たちは、あくまで建設的に成長していきたいだけ。店が人々にいい影響を与えて、顧客と互いに刺激し合える強固な関係を築きたいというのが今の一番の願いなの。最初に展望を固めてそれに縛られるよりも、核となる部分を持ちながら、時代や顧客とともに柔軟に成長していきたいのよ。

——店のコンセプトは?

エステル:一生大切にしたいと思えるアイテムを提供して、みんなと一緒に驚きや感情を共有すること。ジェンダーの境界は曖昧だけど、基本的にはメンズウエアと小物を取り扱っていて、フランスの他の店では見つけられない品をそろえているわ。これはフランスに限ったことではないけれど、百貨店やセレクトショップの品ぞろえはトレンド一辺倒で、どこに行っても同じようなブランドばかりでしょ。私自身も、たくさんの商品が並んでいるのにほしい物が全然ないという感覚に陥ってしまっていたから、異なる路線のストアがあればいいなと考えていたの。

——扱う商品の特徴は?

エステル:全てハンドメードや小ロットで、年に1型か2型しか生産しないブランドばかりよ。派手なプリント柄やカラフルなデザインが多くて、ワードローブに一点あると存在感を発揮してくれるようなものね。フルコーディネートでももちろんうれしいけれど、手持ちのジーンズやスニーカーに合うようなアイテムといったように、一点買いを顧客には推奨しているの。たとえブランドや年代が不明でも、深く印象に残るような逸品を提供したいと考えているわ。価格帯は200〜500ユーロ(約2万4000円〜6万円)で、買いやすい価格に抑えている。アウターなどを除くと、シーズンという枠組みはなるべく設けたくないの。買い物目的ではなくても、顧客が何度も足を運びたくなるように、店内の家具と内装を1カ月ごとに一新するわ。

——オープン時のラインアップは?

今、取り扱っているのはカリフォルニア発の「ジェットパック(JETPACK)」や、台湾人デザイナーで南アフリカに拠点を置く「チュラープ(CHULAAP)」、日本の「ニポアロハ(NIPOALOHA)」などね。「チュラープ」は卸をしていなくて、猛烈アプローチをしたけれど何度も断られたの。だから夫と一緒に南アフリカに往復30時間かけて飛び、「2日間南アフリカにいるから絶対に会いたい」とアトリエに行き、説得してようやく承諾してくれたの。オープンして1週間で売れているのは「ニポアロハ」ね。男性はもちろん、女性の顧客も多く購入してくれているわ。

——ウィズコロナ時代、デジタルシフトする小売りが多い中でECサイトを運営しない理由は?

エステル:オンライン上で各ブランドの良さが伝わると思えないから。手に取ったときに感じられるハンドメードのぬくもりや上質な素材感は、オンラインでは分からない。これもビジネス的な観点から反対意見は多いし、今後はデジタルがますます重要になっていくというのも理解しているわ。でも私たちは実店舗のみで運営していくつもりよ。インフルエンサーとしてキャリアを積んだから、デジタルがいかにコミュニティーづくりや販売において重要なのかは誰よりも知っているわ。でもだからこそ、現実とデジタルのギャップが嫌だというのも正直なところなの。

——現在も個人のインスタグラムで13万以上のフォロワーを抱えるが、ビジネスには活用する?

エステル:インスタグラムを店のイメージを発信することに活用できればいいけど、戦略的にやりたいわけじゃない。これまでと同じように自分の好きなものや世界観、ライフスタイルを発信する上で、結果的に店の写真や取り扱いブランドの投稿が増えていくかもしれないわ。ただ、以前よりもSNSの投稿には慎重になっているのは事実ね。でもそれはフォロワーに物を買ってほしいからではなくて、「行ってみたい」と思ってもらえる店の魅力を発信できているかどうかを考えているから。

——今後インフルエンサーとしての活動は?

ロックダウン中の約2カ月間はさまざまな思いや不安が渦巻いたけれど、後悔はしていない。今後は、本当に信頼ができて自分が心から愛すると思えるものしか扱いたくないから、そういった仕事をする機会は少なくなるだろうし、インフルエンサーと呼べるほどの機能は果たさないんじゃないかしら。もしショーに招待される機会があったとしても、本当に好きなブランドのファッションショーしか参加したくないし、衣装も自分の服で行きたいわ。実は、過去に唇のヒアルロン酸注射をしたことがあるのよ。今思えば、自分の美の基準ではなく、メディアやSNSに植え付けられた考えに固執してしまっていたかもね。だから、ヒアルロン酸を全て出す施術を数日前に受けてたばかりなの。正直、今もとても喋りにくいわ(笑)。でも自分の中の違和感を脱ぎ捨てて膿を出し切ると、世間の基準なんてどうでもよくなって楽になった。自分の物差しで測った好きなものだけを、自信を持って「好き」と言えることが今はとても心地よく感じるの。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

The post 業界の光と陰を見た“元”インフルエンサー 華やかな舞台と決別しパリにショップを開いた理由 appeared first on WWD JAPAN.com.

リカルド・ティッシが語る 「バーバリー」オンライン発表の狙いとロックダウン中の過ごし方

 「バーバリー(BURBERRY)」は、2021年春夏コレクションを9月17日にオンラインで発表する。イギリスの大自然の中でショーを無観客で開催し、そのライブ配信を行う。なおロンドン・ファッション・ウイークは同月18〜22日に開催される予定だが、その方法はまだ明らかになっておらず、「バーバリー」の参加については現段階では未定だ。

 リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)=チーフ・クリエイティブ・オフィサーに、今回のショーの狙いや、ロックダウン(都市封鎖)中はどのように過ごしていたのかについて、米「WWD」が独占インタビューを行った。

WWD:9月のショーについて教えてほしい。

リカルド・ティッシ=チーフ・クリエイティブ・オフィサー(以下、ティッシ):実際にショーを行い、それをライブ配信する。現地にはモデルとスタッフしかいない状態だが、旅行をすることがほぼ不可能な中、世界中の人たちがショーを体験できる“空間”をつくりたかった。それが実現できることを、とてもうれしく思っている。

WWD:ショーのコンセプトやムードはどのようなもの?

ティッシ:最近は現実逃避することや、自分を創造的に表現する方法について空想していた。自然と一体化することの単純で純粋な喜びをまた感じたいと思うようになっていたので、イギリスの美しい大自然の中でショーを行い、クリエイティブな体験をみんなで楽しみたいと考えた。当ブランドの設立者であるトーマス・バーバリー(Thomas Burberry)も自然をこよなく愛していたので、ルーツをたどり、原点に立ち返るという意味もある。

WWD:実際のショーの代わりになるものはあると思うか。クリエイティブ面での工程において、また各シーズンのメッセージを伝えるために、ショーはどの程度重要か。

ティッシ:ファッション・ウイークをやめるべきだとは思わない。私たちが住むこの“新たな世界”に合わせて、再構築する必要があるだけだ。ファッションショーは、会場にあふれるエネルギーといい、始まるまでの期待感といい、ほかにはないエキサイティングで美しいものなのでなくならないでほしいと思う。

しかし世の中が変化しているので、新たな表現方法を見つけて適応しなければならない。私にとっては、服の生地やそれがどう動くのかなどをこの目で見て理解するといった、ファッションの物質性がとても重要なのだが、これも新たな方法で実現していきたい。

また、近年はファッションから“感情”が失われているように思う。私がキャリアをスタートさせた頃は、業界に本物の感情的なエネルギーが満ちていた。当時はマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)、アン・ドゥムルメステール(Ann Demeulemeester)、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)らが、むき出しの感情を注ぎ込むようにして服をデザインしていた。もちろん今でもさまざまなデザイナーからクリエイティビティーを感じるが、真の意味での独自性に少し欠けているのではないか。コレクションの本質を取り戻すことで、ファッションの純度をまた高められると思う。

WWD:誰もがショーにアクセスできるようにする理由は?

ティッシ:現在はつながることや連携すること、創作することがこれまでよりもさらに大切になっているので、誰もがショーを体験できて、“参加している”と感じられることが重要だと思った。また個人的にも、こうしたクリエイティビティーの民主化や、コミュニティーを大切にする精神は大切だと以前から思っていたからでもある。

WWD:自然が楽しめる場所で好きなところは?アウトドア体験で好きなものはある?

ティッシ:私はイタリアの小さな町で生まれ育ったので、自然とはとても深くロマンティックなつながりを感じていたし、世界中の美しい場所に行ってみたいと夢見ていた。その後、こうしてこの地球上にあるさまざまな素晴らしい場所を訪れる機会に恵まれて、とても幸運だと思っている。

私は何かを体験することがとても好きで、外に出ることは私のクリエイティビティーを大いに刺激してくれる。今回のショーでは、イギリスの自然を称えることが重要だと思った。イギリスは景観が本当に素晴らしいし、自然は「バーバリー」の伝統に大きな影響を与えているものだから、このテーマを探索するのはとても楽しい作業だった。

WWD:ロックダウンが解除されたら、自然の中に行きたいと思っていた?またロックダウン中は、どのように過ごしていた?

ティッシ:もちろんそう思っていたよ。幸運なことに、ロックダウン中は母と姉の一人とイタリア北部のコモで過ごすことができた。17歳で実家を離れて以降、これほど長く母と一緒にいたのは初めてのことだった。母とまた強い結びつきを得ることができて、本当に美しい時間だった。都会やそのせわしない日々から離れて過ごしたことでとても癒やされたし、いろいろとインスパイアされた。

あまり知られていないことだが、私には静かな時間が必要だ。私はにぎやかなタイプだと思われているけれど、静けさこそがクリエイティビティーを呼び覚ます。この数カ月間は、一度足を止めて自らを振り返り、また前に進むための準備ができてとてもよかった。

ロックダウンが解除されて、外出できるようになった今、周囲にあるものに対してより敏感になっていると思う。屋外にあるほんの小さなものに気づくようになったし、感謝するようになった。現在はロンドンに戻ってきているが、ジョギングの際には美しい庭や公園が以前よりも目にとまるようになった。ショーがとても楽しみで、わくわくしているよ。

The post リカルド・ティッシが語る 「バーバリー」オンライン発表の狙いとロックダウン中の過ごし方 appeared first on WWD JAPAN.com.

「エストネーション」ニュウマン横浜店がオープン 限定アイテムが続々

 エストネーション(ESTNATION)は6月24日に、横浜駅前の新商業施設、ニュウマン横浜に新店をオープンする。3~4階の立体フロアには、ウィメンズ&メンズのウエアやアクセサリー、コスメ、アンティーク雑貨などを幅広くラインアップ。インショップとして、「ニコライ・バーグマン フラワーズ&デザイン(NICOLAI BERGMANN FLOWERS & DESIGN)」が横浜エリアに初出店する。また同店のオープンを記念したコラボレーションアイテムもバリエーション豊富に発売する。注目のアイテムを一足先に紹介する。

セットアップで楽しめる「マディソンブルー」のシャツ&スカート

 中山まりこデザイナー兼ディレクターが手掛ける人気ブランド「マディソンブルー(MADISONBLUE)」には、定番の“Jブラッドリー”シャツをベースにした、デニム地のノースリーブシャツとミモレ丈のフレアスカートを別注。セットアップでワンピースのようにも楽しめるアイテムは、着回しが利くためコーディネートの汎用性が高い。

限定カラーのアートTシャツ

 エストネーションで毎シーズン続く、アーティストとのコラボプロジェクトからは、アメリカ人フォトグラファー、ピーター・サザーランド(Peter Sutherland)の作品をプリントしたアートTシャツが登場。横浜店限定カラーとしてベージュを用意する。

存在感のある「トムウッド」のリング

 ノルウェーのジュエリーブランド「トムウッド(TOM WOOD)」からは、スターリングシルバーに無色透明なロッククリスタルをあしらったリングを横浜店で先行発売。存在感のあるクリーンなデザインは、シンプルなコーディネートにアクセントを添える。

横浜をイメージした限定フラワーボックスも

 「ニコライ・バーグマン フラワーズ&デザイン」では、セイリングブルーのボックスに、鮮やかなオレンジやパープルのバラやカーネーションを詰めたフラワーギフトを用意。上質で洗練された大人の街、横浜を爽やかなカラーリングでイメージしたという。

 エストネーション横浜店では、買い物時にショッパーの受け取りを辞退するとメンバーズカードにポイントを付与。たまったポイントに応じてギフトをプレゼントする。また税込み1万円以上の購入で、ノベルティーのトートバッグを先着順でプレゼントする。

The post 「エストネーション」ニュウマン横浜店がオープン 限定アイテムが続々 appeared first on WWD JAPAN.com.

D2C専用のECシステムを開発 ファッションECの実力者が語る「D2Cブランド成功のルール」

 インフルエンサーの佐野真依子が手がけるD2Cブランド「トランク 88(TRUNC 88)」を運営するブランディット(BRADIT)はこのほど、D2Cブランドに特化したECシステム「ブランディットシステム」の提供を開始した。ブランディット(BRANDIT)は、マークスタイラーやライブコマース配信大手のCANDEEなどでEC部門のトップを務めてきた鍛冶良紀・代表取締役CEOが、昨年9月にCANDEEからスピンアウトして立ち上げたスタートアップ企業で、「ブランディットシステム」を機にECシステム事業に本格参入する。ファッションEC屈指の実力者である鍛冶CEOに、D2Cブランドの成功のカギを聞いた。

WWD:「ブランディットシステム」の特徴は?

鍛冶:最大の特徴は、在庫を極限まで効率的に運用することを目指したシステム設計だ。SKU単位で在庫の把握や原価、モールごとの手数料、販売開始日、配送データなどが一目で分かるようになっており、商品のSKU単位で粗利率を把握できる。アパレルに特化し、生産からEC販売、在庫管理、マーケティング分析、ロジスティックスを一元的に管理できるECシステムは、他にはあまりない。自社のD2Cブランド「トランク88」でこれまで培ってきたノウハウをすべてつぎ込んでおり、D2Cブランドのための究極のECシステムだと自負している。

WWD:クリエイターやインフルエンサー向けには、既存のBASEやSTORESなど安価で使いやすいECカートが人気だが。

鍛冶:インフルエンサーのSNSなどを通じてダイレクトにファンや消費者と繋がれるD2Cブランドは、今の時代にフィットするビジネスモデルだ。僕自身も「トランク88」の運営を通じて、裏側ではインスタの投稿のタイミング、投稿のいいね数や保存数などをかなり細かく見ながら、商品の販売日や供給量をコントロールしてきた。その一方で、D2Cブランドの運営者なら誰しも直面することだが肝心のECシステムが、そうしたきめ細かなマーケティングデータを運用面で反映できるかと言われれば疑わしい。多くのブランドは受発注や在庫管理は今もエクセルに手打ちで管理していることがほとんどだろう。特にファッションの場合、アイテムのバリエーションが多く、季節や時期で商品も入れ替わる。そこにさらに商品生産や管理も加わって、実はかなり複雑な業務フローになる。つまり、実はビジネスとして継続して利益を出すのが非常に難しい。

WWD:D2Cブランド運営のカギになるのは?

鍛冶:重要なのは、ロジカルな販売計画を立てて実行できるか、あるいは商品の企画から生産、販売までをPDCAをきちんと回せるかどうか、だろう。D2Cブランドの場合、インフルエンサーが顧客であるファンのことを一番良く理解している。彼女/彼らは直感的にファンが欲しいものを嗅ぎ分けつつ、その上で新しいトレンドや商品を企画する。それを支えるMDは当て勘や過去の経験ではなく、数字的な裏付けをもって販売を支えるべき。

鍛冶:例えば「トランク88」だったら、AとBを作るかで迷った場合、クリエイティブディレクターの佐野麻衣子はインスタライブでファンに直接聞いてしまうだろう。それが一番早いし正確からだ。ただ、それをどのくらいの数量を作って、どうやって売っていくか。それにはインスタ投稿のインサイト分析や初速の売れ行きをロジカルかつ丁寧に見ていくことが重要だ。「ブランディットシステム」は、インフルエンサーを含めたブランドのチーム全員が、商品に関わるすべてのデータや業務フローを共有・可視化し、検証して実行することに軸足をおいて設計している。

「トランク88」でも、インフルエンサーでありクリエイティブ・ディレクターの佐野麻衣子も、彼女自身はもともと数字に明るい方ではないものの、常に在庫や販売の数字のデータを常に共有している。

WWD:ターゲットは?

鍛冶:月商300万円から数億円のブランドを想定している。一つのアイテムのどう作り、どう売っていくのか、データをマイクロサービス化したことが、結果的にこのシステムに拡張性を与えることに成功している。今後はMD支援ツールや生産管理ツールなども順次開発して、載せていくことを考えている。

The post D2C専用のECシステムを開発 ファッションECの実力者が語る「D2Cブランド成功のルール」 appeared first on WWD JAPAN.com.

「ユニクロ トウキョウ」4階で展示 シュールでポップなラグのインスピレーション源とは?

 「ユニクロ(UNIQLO)」のグローバル旗艦店「ユニクロ トウキョウ」が6月19日、東京・銀座にオープンした。“ライフウエアのすべてをここに”をコンセプトにブランドの世界観を発信する同店舗では、1~4階のさまざまなエリアで新進気鋭のアーティストやデザイナー、スタイリストとコラボレーションし展示を行っている。参加しているクリエイターは、資生堂トップヘアメイクアーティストの原田忠やフラワークリエイターの篠崎恵美(エデンワークス)など計11人。4階のキッズ&ベビー売り場では、「スタジオ・ザ・ブル―・ボーイ(STUDIO THE BLUE BOY以下、ブルー・ボーイ)」のラグが展示されている。ラグは、曲線と直線が自由に組み合わされたシュールでポップなデザインで、ラグの概念を覆すインパクトがある。「ブル―・ボーイ」の正田啓介は以前、「WWD JAPAN.COM」などでアートディレクターやグラフィック・デザイナーとして活躍。現在は自身でラグやセラミックのクリエイションのほかさまざまなコラボを行っている。正田に「ユニクロ」とのコラボおよび、新作ラグについて話を聞いた。

WWD:「ユニクロ トウキョウ」とコラボした感想は?

正田啓介(以下、正田):5月初旬に連絡があった。多くの人が訪れる店舗に展示してもらい、作品を見てもらえることをとてもうれしく思う。昨年フランス・パリの小さなギャラリーの展示からはじまり、今年初めに東京で初の展覧会を行った。その次が「ユニクロ トウキョウ」と、展示のスケールがどんどん大きくなってきている。最初は、自己満足で作った小さなアートが、このような形でいろいろな人の目に触れることによって自分の意識も変わってきている。

WWD:「ユニクロ」から声がかかった理由は?

正田:SNSの影響だと思う。インスタグラムやツイッターで多くの反響があるので、それがきっかけだと思っている。

WWD:展示しているラグは?

正田:「ブルー・ボーイ」のアイコン的なウェーブのモチーフのラグを“エアリズム”のベッドリネンなどと展示している。新作を展示してもいいと思ったが、SNSで反響が大きかったラグに決定した。

WWD:新作のラグに関しては?

正田:以前のコレクションではニュージーランド産ウールを100%使用したが、新作ではウールとレーヨンを使用している。レーヨンを使用することで、光沢感が出るし、触感もシルクのようにスムーズになるから。また、タペストリーとしても楽しんでもらえる。

WWD:新作のラグのインスピレーション源は?

正田:今年1月に訪れた米ロサンゼルス(以下、LA)やサンフランシスコで出合った建築物。フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)が設計したマリン郡シビックセンターなどミッドセンチュリーの建築物に見られるアールデコの要素やウェーブがモチーフになっている。幸運なことにLAでは富豪のジェームズ・ゴールドスタイン(James Goldstein)の自宅を訪問することができた。LAの緑豊かな自然と彼の自宅に置かれた木製家具のコントラストに感動した。その家はロイドの門下生だったジョン・ラトナー(John Lautner)が設計したというから納得だ。

WWD:鮮やかな色使いはどこから?

正田:マイアミのサウスビーチにあるピンクやブルー、イエローなどのアールデコ建築が着想源だ。ジャンニ・ヴェルサーチェ(Gianni Versace)の元邸宅に使われていた3本のエメラルドグリーンのラインなどもイメージソースになっている。

WWD:最近では、お香なども製作しているが、今後の予定は?

正田:新型コロナウイルス感染拡大の影響で“おうち時間”が増えているので、お香立てやランチョンマット、玄関用マットなどを提案していく。また、トートバッグも製作する予定だ。これからも、いろいろなコラボレーションをしていくつもりだ。

The post 「ユニクロ トウキョウ」4階で展示 シュールでポップなラグのインスピレーション源とは? appeared first on WWD JAPAN.com.

スーツとネクタイ姿で抗議デモ 仕掛けた3人の黒人業界人がその理由を語る

 6月4日、ファッションやアートの分野で活躍する3人の黒人業界人による呼びかけで、ニューヨーク・マンハッタン北部(ハーレム)で抗議運動が平和的に行われた。これは5月25日に、米ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性のジョージ・フロイド(George Floyd)氏が白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件に対するものだが、一風変わっていたのは、参加者が全員スーツやネクタイなどを着て正装していたことだ。

 子ども連れで参加した父親なども見られたこのデモを企画したのは、スタイリストのガブリエル・ガーモン(Gabriel M. Garmon)、デザイナーのブランドン・マーフィー(Brandon Murphy)、そしてアートキュレーターのハロルド・ジェームズ・アレクサンダー・ワイト(Harold James Alexander Waight)だ。当日は1000人以上が集まるなど好評だったことを受けて、彼らはジューンティーンス(Juneteenth)と呼ばれる米国の「奴隷解放記念日」の6月19日にも、同じようにスーツ姿で抗議運動を行っている。

 なぜ“正装”でのデモを企画したのか、またファッション業界における構造的な人種差別や今後それをどう改善するべきなのかについて、米「WWD」が聞いた。

WWD:6月4日はミネアポリスでフロイド氏の葬儀が行われた日だが、ニューヨークでも抗議運動を実施しようと考えた理由は?

ガブリエル・ガーモン(以下、ガーモン):アトランタで行われていた抗議運動にインスピレーションを受けた。フロイド氏をはじめ、これまで命を奪われてきた同胞たちを追悼し、連帯を示す運動をニューヨークでもやりたいと思ったことがきっかけだ。

ブランドン・マーフィー(以下、マーフィー):スーツなどの正装で参加するように呼びかけたのは、黒人や有色人種に対する固定観念とは違うイメージをメディアで伝えたかったから。重苦しい社会情勢の中ではあったが、士気も上がったし、協力し合えば世の中を変えられると感じられてよかったと思う。

WWD:1960年代の公民権運動でも、活動家らはメディアでどう見えるかを意識してスーツを着用するなど、服装を武器の一つとして闘った。当時の写真には、完璧にドレスアップした黒人男性が白人の警察官に不当な暴力を受けている様子が多く残されているが、今回のデモはそうした歴史からも影響を受けているか。

マーフィー:公民権運動があった頃は、男性は三つぞろえのスーツを着て帽子をかぶっていたし、女性もドレスを着ているなど、今よりもドレスアップすることが当たり前だった。服装によって人の印象は変わるし、世論もそれによって変わってくるので、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(Martin Luther King Jr.)やマルコム・エックス(Malcolm X)といった当時の活動家からは多いに影響を受けている。今回の抗議運動は連帯を示すことはもちろん、インパクトのあるイメージを発信したいという意図もあったから。

ハロルド・ジェームズ・アレクサンダー・ワイト(以下、ワイト):正装することに関しては、「ドレスアップしなくてもいいのではないか」「スーツを着ないと尊重されないのはおかしい」という声もあった。しかしこれは、失われた命に対する私たちなりの敬意の表し方なのだ。表現方法は自由であるべきで、私たちの場合はそれがファッションだった。人は身なりで判断されることが多いが、今回は“スーツを着た人間”として見られ、真剣に受け止めてもらいたいと考えた。

ガーモン:正装しなくてもいいのではという意見は私も耳にしたが、私たちはファッションを愛しているので、自分を表現する手段として自然なものだ。またユニホームやそろいの服を身につけることで連帯が生まれるし、集団として効果的に意見を表明できる。

マーフィー:何か行動を起こすと、ポジティブな反応もあれば、ネガティブな反応もある。しかし信念を持って、自分が正しいと思うことを続けていくしかない。私たちは自分たちの声を社会に届け、変化を起こしたいと考えている。スーツを着ることで、これまでとは違う形でメディアに取り上げられるのであれば、それはいいことだと思う。今回のデモには高齢者や子どもも参加していたし、スーツやネクタイがない人のためにと余分に持参している参加者もいた。とても胸を打たれる光景で、こうして協力し合えばきっと変化を起こせると希望を持つことができた。

WWD:人種差別に対する闘いを支持すると表明しながらも、実際には黒人や有色人種の従業員がほぼいないなど、口先だけのファッションブランドやメディアが批判されているが、どのような変化が起きてほしいと思うか。

ワイト:企業は黒人や有色人種をもっと採用する、門戸をさらに開くと発表しているが、採用後の扱いが平等でないケースが多いことも問題だ。白人と同じ学歴や職歴があり、同じ職種に採用されたにもかかわらず、肌の色が違うというだけで給料が少ない。それが現実だ。企業やファッションブランドは、多様性を推進している体(てい)を装うために黒人を何人か採用してイメージアップを図るのではなく、真の意味で平等に扱う必要がある。

ガーモン:プライド月間(Pride Month、LGBTQ+の権利について啓発するイベントなどが開催される)に対する企業の態度がまさにそれだ。6月はレインボーフラッグ(LGBTQ+を象徴する旗)を掲げ、いかにも支持しているかのようだが、7月1日になった途端に旗を下ろして後は知らないふりを決め込む。企業は運動を継続し、本当の意味でのアライ(支援者)になることが重要だ。

マーフィー:ファッション業界では多数の有色人種が働いているのに、業界がそのことを認識していない。アシスタント・デザイナーやアシスタント・エディターなど、私たちはどれだけ頑張っても“アシスタント・何とか”な立場か、販売員にしかなれない。私がテーラリングのブランドで仕事をしていたときも、作業フロアにいる従業員の多くは黒人や有色人種なのに、上階のオフィスには白人しかいなかった。これではやる気を削がれるし、自分はファッション業界に受け入れられていないのではと疑問に感じてしまうので、経営側になったり、ブランドのオーナーになったりするための道筋が必要だ。これは公平性の問題で、人々の暮らしや人生がかかっている。ソーシャルメディアに「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」と投稿するだけでは十分ではない。

ワイト:「Black Lives Matter」がトレンドになってほしいわけではなく、本当に変化が起きて、それが定着してほしいと思う。ファッション業界は黒人や有色人種のさまざまなカルチャーを取り入れて利益を上げているのに、なぜ私たちのことをまるで背景か下働きのように扱うのかをよく考えてほしい。また、私たちはほかの人種に対して抗議しているのではなく、人種差別に抗議しているのだということも明確にしておきたい。

WWD:希望を感じるものは?

ガーモン:若い世代。今回のデモでは、ネクタイの結び方を教えてもらっている子どもの姿を見かけたが、私たちは彼らのために闘っているのだと思った。変化は一晩で起きるものではないが、子どもや若者を見ると希望を感じる。

マーフィー:黒人のデザイナーやクリエイターが連帯し、互いにサポートしている様子に心を打たれた。本気なのかどうかに多少の疑念は残るものの、大企業も誠意のこもった支援策を発表しているし、社会でも対話が続けられていることをうれしく思っている。

ワイト:未来に希望を感じる。過去は変えられないが、現在の行動で未来が変わるのだと思うと勇気が湧いてくる。またデモに参加できない人も、人種差別に反対する絵画や詩を発表したり、曲を作ったりして、みんな自分なりに行動している。そうした姿を見て、私は未来に対する希望を感じているのだと思う。

The post スーツとネクタイ姿で抗議デモ 仕掛けた3人の黒人業界人がその理由を語る appeared first on WWD JAPAN.com.

雨の日も使える!コンバットブーツにヒットの予感 ゴツさと量感で細見え

 秋に向けてヒットの兆しが見えている新顔シューズは、コンバットブーツに代表されるボリュームたっぷりのゴツめブーツ。背景にあるのは、“強い女”のイメージや、不安な時代の空気。アンフェアや不合理と戦いながら、今の時代を生き抜く女性像に、軍用シューズならではのタフ感がぴったりです。

 「ディオール(DIOR)」は2020年春夏パリ・コレクションで、ショートボトムスとゴツめブーツの組み合わせを提案。このように相反する印象の、フェミニンなスカートやキュートなミニボトムスとブーツを合わせるのがコンビネーションのコツです。おしゃれスナップを参考に、コンバットブーツの上手な取り入れ方を、夏のうちから先取りマスターして、梅雨のレインファッションにも取り入れていきましょう。

◆スカート・ワンピースに合わせてフェミニン×強さ

 秋元梢さんはラバーソールのコンバットブーツを履いて、「サカイ(SACAI)」の2020年春夏パリ・ファッション・ウイーク会場に来場。透ける袖のトップスに、ハイウエストのフレアシルエットのロングスカートを合わせ、とどめにタフな戦闘シューズをマッチング。シアー素材やフレアシルエットにぐっと緊張感がプラスされクールな装いが完成しました。

 2枚目のルックは「マーガレット・ハウエル(MARGARET HOWELL)」のショー来場者。ミニマルなノースリーブの白ワンピースに、スパイシーなブーツを引き合わせました。“上半身はたおやかに、靴はハードに”はおしゃれテクニシャンの得意技。腰にニットを巻いて、アクセントを添えました。夏場のシンプルなワンピースも、タフ顔のブーツを添えれば、スパイシーな着こなしに。大人女性でも取り入れやすいスタイリングです。

◆ジャケット×ミニボトムスで脚をきゃしゃ見せ

 ゴツめブーツは量感が豊かなので、コーデ全体のめりはりを演出できます。端正なテーラードジャケットや、コンパクトなミニボトムスと組み合わせて、トレンド感の高い着こなしに整えるのは、賢い組み立て方。写真1枚目はジャケットとミニボトムスでスクールガール風の雰囲気に。足元に戦闘モードのコンバットブーツを迎えて、スパイスをまぶしました。足元をハードに決めるだけで、自然な華奢感がアップ。脚線が細見えするおまけつきです。

 2枚目はジャケットとショートパンツのコンビネーション。ニュートラルカラーでまとめました。きれいめに整えつつ、足元だけはゴツめブーツではずしているのが、おしゃれエリートならではの隠し味的アレンジ。スーパースリーブ丈のシャツもアンバランスを印象づけて、遊び心を醸し出します。ショートパンツの裾がゆったりしているうえ、ブーツが豪快なので、シャープなレッグラインが引き立ちました。

◆ブーツインでスレンダー&ジェンダーレスなムード

 ゴツめブーツを目立たせるには、パンツの裾をブーツインするのが一番。「サカイ(SACAI)」の20年春夏パリ・ファッション・ウイーク会場で、モデルの高瀬真奈さんは、シアー素材のドット柄シャツとパンツのセットアップ姿を披露。パンツの裾はコンバットブーツに収めています。足首周りに適度なたるみを生んで、細感を際立たせるテクニックが参考になります。

 2枚目の写真は、夏らしいシンプルなTシャツ姿。パンツとのコーデはさっぱりして見えがちですが、コンバットブーツを取り入れれば、退屈に見えません。サンダルやスニーカーではイージーに見えすぎたり、物足りなく見えたり。でも、コンバットブーツに裾をインするだけで、こんなに新鮮な着映えにさま変わり。ジェンダーレスなたたずまいに整うので、ゆるっと見えがちなラフなコーデが凜々しく映ります。

 肌の露出をカムフラージュする効果が高いので、コンバットブーツはサマールックの相棒にうってつけ。手抜きに見えがちな装いにも、“強め感”を添えてくれます。秋冬にはさらに盛り上がりを見せそうなので、夏のうちから手なずけておくのが賢い先取りコーデです。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

The post 雨の日も使える!コンバットブーツにヒットの予感 ゴツさと量感で細見え appeared first on WWD JAPAN.com.

欧米で注目集める“定額レンタル服”をパリで体験 届いた服やサービスに見るビジネスの可能性

 新型コロナウイルスの影響で、ファッション業界の流通に大きな変化が起き始めています。中でも私が注目しているのは、コロナ騒動前から需要を伸ばしていたレンタルサービスです。未使用の中古品をレンタルで共有することで、衣類を循環させて生産を減らすという持続可能な新たなファッションビジネスだと近年うたわれており、昨年からいよいよレンタル事業を本格的に開始する企業も増えました。日本でもストライプインターナショナルの「メチャカリ」をはじめ、エディストの「エディスト クローゼット」、高級バッグに特化した「ラクサス」などがあります。パーティー用のフォーマルウエアだけではなく、日常着を定額制でレンタルするのがトレンドです。この潮流をつくったのはレント・ザ・ランウェイ(RENT THE RUNWAY)やル・トート(LE TOTE)、グウィニー・ビー(GWYNNIE BEE)などのアメリカのスタートアップ企業でした。中でも、11年前にサービスを開始したレント・ザ・ランウェイは現在約1100万人のユーザーを抱えており、世界中で売上高10億ドル(約1060億円)に達し、今もなお成長を続けています。昨夏には「アーバンアウトフィッターズ(URBAN OUTFITTERS)」「アメリカンイーグル(AMERICAN EAGLE)」「バナナ リパブリック (BANANA REPUBLIC)」などファションブランドも相次いでレンタルサービスを発表しました。

 アメリカ企業の成功を参考にし、フランスでもル・クローゼット(LE CLOSET)やパノプリー(PANOPLY)、テール・ミー(TALE ME)などの企業が続々と誕生しました。老舗百貨店のギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)オスマン本店では、パノプリーと協業したレンタルサービス専門コーナーが設けられています。

背景には自然環境への意識

 レンタルサービスが注目を集めることになった背景の一つに、環境問題への意識の高まりがあります。米新聞「ブルームバーグ(BLOOMBERG)」紙と「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」紙は2018年、「H&M」では未販売の衣類とアクセサリー計42億ドル分(約4876億円)が倉庫に山のように積まれ無駄になっていると暴きました。ファッション業界が環境汚染に加担する産業だと長年問題視される主な要因は、ファストファッションが生み出す過剰生産です。多くの企業がサステナビリティを指針に掲げて取り組む一方で、生産された衣類の大部分は倉庫もしくはクローゼットの中で眠っているという悪循環に陥ってしまっているようです。IFM(フランスのテキスタイル・モード・ラグジュアリーブランド産業の高等専門学校)の調べでは、環境および社会に悪影響を与える洋服の過剰消費を制限することで、中古衣料品市場(再販売、レンタル、リサイクル)が生み出す利益は10億ユーロ(約1221億円)に相当するという試算が出されました。

 このような矛盾を解消するために、使用されていない衣類をレンタルによって共有して寿命を延ばすという考えは、環境的な視点からも有意義であると言えます。さらに、新型コロナウイルスの脅威を経験したことで、人々の自然環境への関心は今後いっそう高まり、衣料品に対してサステナブルな選択を意識することになるでしょう。

 しかし、環境問題に関しては結果がすぐ表れないだけに、正しい結論を導き出すのは容易ではありません。昨今フランスでは、サステナビリティをマーケティングの手法として用いる欺瞞的なアピールである“グリーン・ウオッシング”を指摘する記事も話題になっています。環境に関する科学的根拠が出ていないレンタルサービスに対して、私はまだ懐疑的です。また、コロナ騒動の最中「レンタル品によってウイルスがまん延する」といううわさがアメリカで飛び交いました。これに対しレント・ザ・ランウェイは、徹底した清掃方法に則っていると主張する書簡を出しましたが、外出規制で衣類着用の機会が減ったことと、感染の不安からサービス利用者が激減したと想像できます。現に同社は3月末に、アメリカ国内にある5つの実店舗の従業員を解雇しました。外出規制が解除されたとしても、レンタル品に対する不安はなかなか払拭できないかもしれません。

フランスのレンタル服を体験

 このように情報はいろいろと溢れていますが、体験してみないと何もわかりません。そこで、パリ在住の私は実際にフランス企業ル・クローゼットの1カ月定額レンタルサービスを体験してみることにしました。まずはオンライン上でユーザー登録を行い、洋服の好みやサイズなど、10項目の簡単な質問に答えます。レンタルする洋服とアクセサリーの数によって3段階の料金設定があり、私は一番安い月額39ユーロ(約4700円)で2着の衣類と1つのアクセサリーをレンタルできるコースを選びました。どのコースでも返却時のクリーニングは不要で、月に何度でもレンタル品の依頼が可能です。

 注文から5日後、最初に届いたのはコットン素材の黒のトップスと淡いブルーのジャケット、ストーンが付いたリングでした。でも好みとは違ったため、一度も着用することなく返却しました。レンタル品はナイロン素材のバッグに入って届けられ、洋服を包む梱包紙などは使用されていません。ナイロン素材の品質は不明ですが、プラスチック製ではなく植物由来の繊維素材であるといいなと思ったのが、受け取って最初に感じたことです。2度目の配送で届いたのは、ジーンズとロングドレス、ネックレスでした。サービスを利用したのはまだまだ寒い時季だったため、最初のレンタル品同様、素材や丈感は寒い時季には適していませんでした。今回の体験で唯一着用したのは、ジーンズだけです。気に入ったら買い取ることもできますが、一度着用したら返却し、レンタル体験を終えました。

配送法とクリーニングに疑問

 サービスを利用して気になった点が2つあります。まずは配送に関して。レンタルサービスにおいて往復の配送は必須ですが、ビジネスが拡大すると同時に二酸化炭素排出量は増える一方ではないでしょうか?米「アマゾン(Amazon)」は、二酸化炭素量排出を実質ゼロにするカーボンニュートラル達成のために電動トラックを導入し始めたというニュースが記憶に新しいところです。レンタルサービスを行う企業は、環境への負荷が少ない車両での輸送でなければ利用者は疑問を感じてしまうはず。ル・クローゼットの往復の輸送は郵便局を利用したもので、電気自動車は導入されていません。

 もう一点気になったのは、クリーニングのサービスについて。私のように一度も着用せず返却された場合であっても衣類はドライクリーニングにかけられます。家庭での洗濯よりもドライクリーニングの方が多くのエネルギーを要し、溶剤は大気汚染を助長する有害な成分を含んでいることがほとんどです。レンタルサービスを行う企業は、非毒性で生分解性の洗剤と純水のみを使用するドライクリーナーとの提携であってほしいと感じました。

 今回は“環境的視点でレンタルサービスについて考察する”という目的でしたが、私の結論は、レンタルサービスが環境問題に対する最善策であるかどうかは“未知数”でした。倉庫や配送に再生可能エネルギーを使用し、包装を最低限にして廃棄物を出さない、クリーニングは水洗いか植物由来の溶剤のみを使用することなど、カーボンニュートラルを目指せば環境に優しいサービスだと言い切れるようになるかもしれません。

コロナ禍でどう変わるか

 ほしいと思っていた衣服を選択でき、購入するかどうかの最終決断として試着目的でレンタルを利用するのはとてもいいと思います。しかし、たとえレンタルサービスがサステナブルだという科学的根拠が出ても、個人的には今後利用しないと思います。なぜなら、レンタルした衣服には何の愛情も湧かなければ、それを着用して“自分らしくいられる感覚”を得られないからです。衣服は身を覆うだけが目的ではなく、感情やアイデンティティーと深いつながりがあると私は信じています。所有する衣服と時間を重ねることで生活、人生に深みが増していくもので、人生のあらゆる場面で衣服は重要な役割を持ち、人間性を構成する一部であると思っています。少なくとも私にとって、衣服はとそういう存在です。購入するよりも安くトレンドの衣服をまとえるとしても、私はこの先レンタルサービスとは縁がなさそうです。

 仏新聞「ル・モンド(Le Monde)」紙の取材に答えた「パノプリー」共同創始者アングリッド・ブロシャール(Ingrid Brochard)は、従来の消費スタイルから洋服レンタルのスタイルにくら替えする人が増えている理由について、SNSが背景にあると分析しています。「1、2回着用してSNSに投稿したら満足感を得られる。人々は実生活よりもSNSで人気がある方を好み、写真であれば洋服がレンタルか所有物であるかは見分けられないから利用者が増えている。洋服自体への関心や敬意は減り、自分自身への関心が増しているのだ」。

 とどまるところのないSNSの普及とともにレンタルサービスは成長していくのでしょうか。新型コロナウイルスによる外出自粛で売り上げを伸ばした企業もあれば、大きな打撃を受けた企業もあることは間違いないため、各社がビジネスを今後どのように広げていくのか引き続き注目していきたいです。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

The post 欧米で注目集める“定額レンタル服”をパリで体験 届いた服やサービスに見るビジネスの可能性 appeared first on WWD JAPAN.com.

企業はTikTokをどう活用する?人気クリエイターに聞く“TikTokの今”

 TikTok(ティックトック)はショートムービーの特性を生かして多様な表現ができるプラットフォームとしてZ世代だけでなく幅広い層から支持されており、アプリのダウンロード数も伸び続けている。また、昨今のデジタルコンテンツの需要の拡大でさらに存在感を強めており、新たなマーケティングの可能性を開くSNSとして注目されている。そこで、「WWD JAPAN.com」は6月30日に、TikTokのマーケティングの可能性を解説するオンラインセミナー「TikTokマーケティングセミナー supported by WWD JAPAN.com」を開催する予定だ。

 今回は、セミナーにゲストとして登壇してもらう人気TikTokクリエイターの南部桃伽さんとサラ・コールディさんにインタビューを実施。TikTokの今を聞いた。

トレンド感のある投稿で人気
ビューティ&ファッションが強みの
南部桃伽さん

WWD:フォロワーの傾向は?

南部桃伽(以下、南部):20代前後のトレンドに敏感な女性が多いです。

WWD:人気になったきっかけの動画は?

南部:海外トレンドをいち早く取り入れた動画がバズり(短期間で爆発的に拡散されること)、その後に地味な格好から一瞬でファッショナブルに変身する動画などがバズってフォロワーが増えました。

WWD:投稿の参考にしているものは?

南部:アメリカのシンガー・ソングライターのローレン・グレイ(Loren Gray)などのインフルエンサーや、ほかにもロシアや韓国など、海外のアカウントからトレンドをキャッチしています。海外に興味のあるユーザーが多いこともあり、TikTokのトレンドに国境はないですね。

WWD:投稿する際に工夫していることは?

南部:やっぱり“自分らしいオリジナリティー、クリエイティビティーを動画で表現すること”が大事です。特に背景は重要で、かわいい部屋だったり、テープライトを使って音源の雰囲気によって光を変えたり、カラーがある背景で撮ったり……。きれいな夕日や自然の背景などもバズる要素になると思います。

WWD:企業とのタイアップは増えている?

南部:私は2018年から始めたんですが、全体的にユーザーも増えていると感じているし、タイアップも年々増えています。最近だと「イヴ・サンローラン(YVES SAINTLAURENT)」のオリジナルエフェクトを使った動画で多くの “いいね”が集まりました。

WWD:タイアップの投稿を行うとき、どんなことに気を付けている?

南部:フォロワーやユーザーは広告色が強いものには敏感です。基本は企業様からの指定に応えつつも、いつもの投稿と大きくイメージが変わらないように自分らしさやを加えるようにしていて、音楽に合わせてポーズや表情をアレンジしています。広告でもフォロワー、ユーザーが私のいつもの動画投稿を見ている気分で最後まで楽しんでもらえるような工夫をしています。

WWD:例えばメイクアップ系のタイアップの場合、どういった投稿が効果的か?

南部:ただ製品を見せるだけでなく、実際に塗っている場面などユーザーが使用感をイメージできることが大切です。「かわいい」「欲しい」と思わせるような、見やすさとオシャレな編集で見入ってしまう工夫をすると、 “いいね”などの反応も増えます。

WWD:タイアップを行う際、難しいと感じることは?

南部:企業が求めることを実際にやってみると実は難しかったり、あまりよくない仕上がりになることもあります。簡単にできることもあれば、TikTokならではの難しさもあったり。企業側にはそういった部分の理解が大切ですね。あと、依頼するクリエイターの世界観、表現方法や個性、さらに最近のトレンドも加味していただいた上でクリエイターに任せていただければ、より良いものが作れる自信があります。

南部桃伽さんの投稿事例

“共感”や“親近感”で支持
幅広いファン層を持つ
サラ・コールディさん

WWD:フォロワーの傾向は?

サラ・コールディ(以下、サラ):20代前半の女性が多いですね。私のフォロワーの傾向は、オシャレが好きな子はもちろん、面白い投稿などでギャップを楽しんでくれる人が多く、フォロワーの層は幅広いと感じています。

WWD:人気になったきっかけの動画は?

サラ:音に合わせてファッションを変えるという新しい手法で投稿した動画が最初に大きくバズりました。今は人気の手法ですが、当時はほかになかったため注目を集めたのだと思います。あと、最もバズったのが独特な動きで朝の準備をしていく様子を撮影した動画で、この動画をきっかけにまねをしてくれる人やフォロワーが一気に増えました。

WWD:バズる動画の傾向は?

サラ:写真と違って動画ならではの変化を楽しめることがポイントですね。服装が音楽に合わせて変化したり、メイクをしていないパジャマの状態から一気に変身してギャップを楽しむシンデレラパターンなどです。飽きないテンポのよさ、何度も見たくなる中毒性が大切です。

WWD:TikTokで支持を集めるポイントは?

サラ:ただキレイ、オシャレなだけでなく、普段の日常をつなげて、ミュージックビデオ風の動画が“エモい”( “エモーショナル”を語源とし、感情が動かされるなどの意味を持つスラング)と感じています。こうした飾らない風景や姿などが今の“映え”だと思いますし、共感を得るために大切です。また、私の場合は“親近感”も大切にしていて、コメントなどでファンと交流することもあります。

WWD:企業とのタイアップは増えている?

サラ:この1年くらいで増えてきています。私の場合はファッション、ビューティ、ライフスタイルなど、ジャンルは幅広いです。普段の投稿でさまざまなジャンルに挑戦していることがその理由だと思います。

依頼の内容も変化しつつあります。これまではCM的な作りの要望が多かったのですが、最近はある程度クリエイターの表現に委ねてくれることが増え、PRっぽさのない面白いものが増えていると思います。

WWD:タイアップを行う際に気を付けることは?

サラ:自分らしさを表現することですね。作り込みすぎたり、いつもと違う表現だったりすると見ている側はそれをとても敏感に感じ取ってしまうので、要望に応えながらも私らしいコンテンツになるように工夫しています。

WWD:企業側がクリエイターとタイアップを行う上で大切なことは?

サラ:やっている側にしかわからないトレンドの機微があるので、私たちの意見や感覚とうまくコラボレーションできるのが理想です。あと、トレンドの移り変わりがとても速いのでスピード感が大切ですね。

サラ・コールディさんの投稿事例

The post 企業はTikTokをどう活用する?人気クリエイターに聞く“TikTokの今” appeared first on WWD JAPAN.com.

「繊維の追跡技術がアパレル生産の透明性を変える」 インドのスタートアップ企業トップが語るトレーサビリティー革命

 インド発のテキスタイルジェネシス(TEXTILEGENESIS)は、あらゆる繊維をトレーサブル(追跡可能)にする技術「ファイバーコインズFibercoins」を開発し、有力力テキスタイルメーカーから注目を集めている。ブロックチェーンの技術を用いて、繊維の製造から販売までの過程を追跡可能にする「ファイバーコインズ」は指紋のような役割を果たし、素材ごとの独自のIDを発行するという。すでにオーストリアの繊維大手レンチンググループ(LENZING GROUP)とも協業し、同社の新技術開発にも携わっている。

 テキスタイルジェネシスは、H&Mファウンデーション(H&M Foundation)が主催するイノベーションコンペ「グローバルチェンジアワード(Global Change Award以下、GCA)」をこの4月に受賞した。アミット・ガウタム(Amit Gautam)創業者にその技術について聞いた。

WWD:なぜ、トレーサビリティーの技術に注目したのか。

アミット・ガウタム創業者(以下、ガウタム):テキスタイルジェネシス創業以前に、サステナブル繊維生産において先導的なレンチング社と協業していた。ブランドやアパレル関係者との顧客会議を続ける中で、ファッション業界におけるセルロース繊維やリサイクルポリエステル、RWS(Responsible Wool Standard、羊と牧草地の福利に関するグローバル基準)などのサステナブル繊維のトレーサビリティーとその証明が決定的 な課題であることが次第に明確になっていった。有力ファッションブランドの大半が、これから3~5年の間に100%サステナブル繊維への切り替えを目標に掲げている。しかしながら、繊維の出所から販売までのトラッキングを行えているのはその5%以下。これを私は“透明性ギャップ(Transparency gap)”と呼んでおり、私たちの提供するトレーサビリティー技術「ファイバーコインズ」を通してこのギャップを埋めたいと考えている。

WWD:サステナビリティを追求するときにはトレーサブルで透明であることをまず実現すべきだといわれているが、それはなぜだと思うか?

ガウタム:衣料品や靴などのファッション製品はシンプルに見えて、実はそのサプライチェーンはグローバル規模であり、長く、しかも非常に断片化されたものだ。そのためバリューチェーンが不透明なものになりやすく、多くのサステナビリティに関する計画では素材、サプライチェーンのいずれにおいても、信用性を高めるためにますます透明性を重視する状況が生まれている。透明性とサステナビリティは相互に深くつながっており、透明性による裏付けがなければ、説得力のあるサステナビリティのストーリーは伝えられない。

有力アパレル・ファッションブランドが次の3~5年で100%サステナブルな繊維への切り替えを目標に掲げているが、衣料品に使用されている繊維のサステナビリティの証明さえできないのに、どうやってこの目標を達成するのか。トレーサビリティーによって裏付けされていなければ、信用性のあるサステナブルな道のりは伝えることができない。

多様なバックグラウンドを持った7人で開発

WWD:開発にかかった期間と、特に大変だったことは?

ガウタム:ベータ版を開発するのに約1年かかった。私たちのチームはファッションやテキスタイル産業、ブロックチェーン技術など多様なバックグラウンドを持った7人の専門家から構成されており、全員でこのプラットフォームを開発している。私たちの最も大きな課題は、この技術をどのようにアパレル産業に導入するかの情報を持ち合わせていなかったことだった。

WWD:「ファイバーコインズ」で、どのようにしてトレーサビリティーを実現するのか。

ガウタム:「ファイバーコインズ」は、アパレルのサプライチェーン全体においてテキスタイル製品の追跡と管理ができる技術だ。“デジタル・ツイン(現実世界のデータを用いてデジタル空間に現実と双子のようなコピー環境を再現する技術)”のようなもので、特定の繊維に対して作り、実製品の物流とともにサプライチェーンを通して転送、追跡できる。繊維内の化学物質やDNAマーカーを検証するためにランダムに実製品のサンプル監査を行い、デジタル上の情報と実際の製品がしっかりとリンクしているかを確認している。

WWD:実用化へのストーリーは?

ガウタム:実用化が可能なだけでなく拡大さえも可能だ。すでにいくつかの市場でテストを成功させ、商業向けのバージョンを今年の後半に導入開始予定だ。これは年間購入モデルとなり、より多くの関係者がこのプラットフォームを導入できるような「サービス」として価値付けようとしている。

WWD:あらゆる素材で可能なのか?

ガウタム:私たちのトレーサビリティー技術には多様な可能性があり、私たちは“テンセル”、モダールなどのセルロース繊維、ウールやカシミアなどの天然素材から、リサイクル合成繊維(ポリエステルやナイロンなど)までを対象としている。

WWD:現在の課題は?

ガウタム:現在のような新型コロナの影響下であっても、透明性とトレーサビリティーが重視されるべきであると信じるサプライチェーンパートナーを得ることだ。

WWD:あなたと同じようにトレーサビリティーを実現する技術で注目している企業とその理由は?

ガウタム:テキスタイル・エクスチェンジ(TEXTILE EXCHANGE)だ。アパレル産業におけるグローバルスタンダード組織であり、オーガニックコットン、RWS、リサイクルポリエステルなどサステナブル繊維の業界スタンダードを採用して、トレーサビリティーの確保に力を入れている。

WWD:他に注目しているサステナブル技術は?

ガウタム:シーチェンジテクノロジー(SEACHANE TECHNOLOGIE)。私たちと同様にGCAの受賞者で、排水から汚泥を取り除き、化学物質排出と温室効果ガスを削減する技術を開発した。

WWD:注目しているファッションブランドは?

ガウタム:「アームドエンジェルス(ARMEDANGELS)」「オールバーズ(ALLBIRDS)」「リフォーメーション(REFORMATION)」。

WWD:新型コロナウィルスはファッション業界にどのような変化をもたらすと思うか。

ガウタム:新型コロナによって欧米では需要が消滅し、アジアのサプライチェーンでは発注の停止・延期が相次ぐなど、ファッション業界は大きな混乱を目の当たりにしている。小売業界ではテコ入れが行われるだろうし、サプライチェーン関係者は効率化とキャッシュフロー管理の推進により注力していくことになるだろう。

アジアの途上国の衣料品生産における数百万の半熟練従事者の生活に直接的な影響が出るため、理想的なシナリオは、すべてのブランドが発注済みのオーダーに責任を持ち、いかなる発注も停止しないことだと思う。

WWD:ポストパンデミックの世界はどんな世界になっていると思う?

ガウタム:私たちはポジティブな側面を見つめたい。人々が人生のより大きな物事の重要性に気づき、必要なもののみ購入し、できるかぎりムダを減らし、自然が回復するよう、継続的につましくあることを信じている。

The post 「繊維の追跡技術がアパレル生産の透明性を変える」 インドのスタートアップ企業トップが語るトレーサビリティー革命 appeared first on WWD JAPAN.com.

2019年度TOP100ランキングから見る、世界のビューティ業界が拡大した2つの要因

 米「WWD」が毎年発表する「世界のビューティ企業ランキングTOP100社」の2019年版が明らかになり、「WWDビューティ」6月18日号でお伝えした。19年も18年に続き、1位ロレアル(L'OREAL)、2位ユニリーバ(UNILEVER)、3位エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)のトップ3は相変わらずの強さを見せつけた。日系企業では資生堂が5位と、アジアトップのポジションを保持した。ビューティ業界の好調は、2つのトピックスから見てとれる。また、今後に期待の初ランキング企業とは−−。

好調の要因1、スキンケアの伸長

 上り調子のビューティ業界をけん引したのは数年伸び続けるスキンケアなのだが、それを裏付けるように、ロレアルはドクターズスキンケアを扱うアクティブコスメティックス事業部が過去最高の伸長率を達成し、エスティ ローダーは約5年ぶりにスキンケアの売り上げがメイクアップを上回った。また、プロクター・アンド・ギャンブル(PROCTER & GAMBLE)の「SK-II」は20期(四半期換算)連続で2ケタ増を記録している。

好調の要因2、中国市場の成長

 スキンケアの好調に加え、業界の拡大の奏功は、やはり中国、およびアジア市場の成長と言えるだろう。ロレアルは18年からアジアパシフィックが最大の市場となり、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)はビューティの売り上げの45%はアジアが占めるほどになっている。TOP100のランキングからも、今年は中国企業が順位を上げ、さらに株価の騰落率ランキングにも複数ランクインするなど、Cビューティへの期待度が伺える。また、エスティ ローダーが韓国発「ドクター ジャルト(DR JART+)」を擁するハブ&ビー(HAVE & BE)を買収し、初めてアジア企業を傘下にしたり、ユニリーバが日本のスキンケア企業、レノア・ジャパンの株式70%を取得したりするなどアジアブランドの買収も目立った。

初ランクインの企業は北米から

 今回、初めてランクインした企業も多くあったが、中でも2つの企業をお伝えしたい。カナダ発のデシエム(DECIEM)と人気インフルエンサーが手掛ける米国発フーダ ビューティ(HUDA BEAUTY)だ。デシエムは原液にフォーカスし、低価格のスキンケアを展開する「ザ オーディナリー(THE ORDINARY)」をはじめとするユニークなコンセプトのブランドを複数抱え、「フーダ ビューティ」はSNSで多数のフォロワーを持つイラク系アメリカ人のフーダ ・カタン(HUDA KATTAN)がプロデュースするメイクアップが若年層にヒットし、急成長している。20年のランキングではどこまで順位を上げれるか、また日本への上陸も期待したい。

 今回のランキングは2019年の1年間のビューティの売り上げを計算したもので、20年から世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの影響は反映されていない。上期はその影響を大きく受けるのは間違いないが、新型コロナがいち早く収束に向かった中国では早速、“リベンジ消費”が話題となるなど市場が回復し始めているのも間違いない。ただ、業界全体が回復し以前のような成長に向かうまでにはしばらく時間が掛かると予想する。20年のランキングは、ウィズコロナの時代に変化する消費者のニーズをいち早く察知し柔軟に対応できるかで業績に明暗が分かれそうだ。

The post 2019年度TOP100ランキングから見る、世界のビューティ業界が拡大した2つの要因 appeared first on WWD JAPAN.com.

神戸のヘアサロン「スクリーン」が銀座に出店 距離を超えたワンチームになることへの挑戦

 2014年に岡山県出身の神谷翼代表とKAORIディレクターが兵庫県・神戸で立ち上げたヘアサロン「スクリーン(SCREEN)」。縁もゆかりもない土地で顧客ゼロからスタートしたが、抱えていた不安に反し大人の女性たちの支持を集めて、翌年には2店舗目の「シスター バイ スクリーン(SISTER.by SCREEN)」を開業した。そして今年5月には、新たに東京・銀座に3店舗目となる「スクリーン ギンザ メゾン(SCREEN GINZA MAISON.)」をオープン。新型コロナウイルスの影響は神戸での営業や新規オープンに暗い影を落としたが、6月に入り大幅に復調してきているという。銀座店では新規顧客を獲得し始め、かつて東京で働いていたときの神谷代表の顧客がうわさを聞きつけて来店し、約7年ぶりに再会を果たすこともあるそうだ。未知の土地・神戸でのオープンから6年を経て、再び新たな土地である銀座への出店を決め、スタッフを伸ばすために挑戦を続ける神谷代表とKAORIディレクターに話を聞いた。

WWD:神戸と銀座に店を構える理由は。

神谷翼代表(以下、神谷):僕は東京・青山のサロンで、KAORIは岡山のサロンで美容師をやっていましたが、結婚を機に2人でお店をすることにしました。神戸の居留地の街並みと大人の女性のファッショナブルさに衝撃を受けてしまって、「スクリーン」のスタートとして基本となる土台をこの場所でつくりたいという思いが強くなりました。もちろん、ゼロからスタートさせることへの不安は大きかったですし、神戸の大人の女性を素敵にしたいと思ったものの、大人の女性は変わるよりも今を維持したい人が多いではないかという勝手な美容師側の思い込みがありました。ですがふたを開けてみると、大人の女性が紹介やわざわざ調べて来てくれたりして、新鮮さや刺激を求めているとすごく感じました。ビジネス上や、保護者としての姿とか、大人の女性にはさまざまな制約がありますが、変わりたいと思っているところが解けてくると、もっと女性は自由になれるんです。大人の女性を素敵にしたいという思いから今回銀座に出店しました。

WWD:再びゼロからの土地で築き上げていくことになるが。

神谷:新規出店には不安はつきものですが、ぼくらには神戸での経験があります。応援してくれるお客さまがたくさんいて、そこでの経験が僕たちの背中を押してくれています。神戸のお客さまに銀座への出店を伝えると、涙ながらに「おめでとう」と喜んで応援してくれるんです。お客さまは業界の大会に挑戦するときには応援団みたいに、ぼくらの美容にかける思いを理解してくれているんです。髪の毛を切ることで素敵にしてくれるから「スクリーン」に来るだけでなく、「自分も何か新しいことにチャレンジしたいと思わせてくれる」とお客さまが言ってくれることもあります。一生懸命やってきた結果ですが、僕たちが挑戦することがひとつのサービスになっていたんだなと気づきました。

WWD:銀座店はどのようサロンを目指すか。

神谷:不安だらけのスタートで新型コロナウイルスの影響も大きかったけれども、こういう逆境も「スクリーン」っぽいかなと思います。お客さまはすごく心配してくれますけれど、不安が大きい分乗り越えられたらもっと大きな思いになるはずです。応援してくれるたくさんの神戸のお客さまのためにもくじけるわけにはいきません。

今回、銀座店には東京での経験がない神戸のスタッフが挑戦することになります。ぼくが神戸でサロンワークを始めたときに、(洗練されたお客さまが多い)東京でやってるみたいと思ったんです。スタッフが神戸でファッショナブルな大人の方からたくさん学ばせてもらったことは、絶対に銀座でも通用するはずです。神戸と銀座で何かを変えようとは一切思っていなくて、それぞれの生の情報をもって影響を与え合いたいですね。

去年はロシアやマレーシアなど海外でヘアショーなどの仕事をたくさんして、世界は広いようで狭いとあらためて感じました。だから、日本にあるヘアサロン「スクリーン」と考えられたらいいのではと。新型コロナの影響が大きかったので神戸をもとに戻すことも今は大事ですが、ゆくゆくはいろんなスタッフを神戸と銀座を行き来させたいですね。神戸と東京の間で流れをつくることが目標です。

WWD:オープニングメンバーはどうやって決めた?

神谷:銀座の店長は神戸の「スクリーン」を引っ張ってきてくれた橋本佳奈という女性スタッフを中心に、神戸で腕を磨いたメンバーを中心に構成しています。加えてぼくとKAORI、福井は神戸と銀座を半月ずつ行き来する予定です。

お客さまがわざわざ来店してくれる美容師を生み出す

WWD:神戸と銀座の行き来には交通費など経費面が大変そうだ。

KAORIディレクター(以下、KAORI):今のスタッフとなら新しいサロン展開の形をつくれるんじゃないかと思いました。ずっと神戸にこだわってやってきましたが、東京と神戸を点と点にするのではなく結んでいきたいです。神戸にある2店舗はすごく近所で、一日の中でもスタッフが行き来するぐらい、他店舗というよりは一緒のチームという感覚です。それが銀座と神戸という距離があってもできるかどうかが挑戦です。普通は、美容師は転勤もなければ出張もありません。サロンという居場所があって、お客さまをお迎えする立場なので、神戸と銀座を行き来することで新しい働き方ができると思います。銀座店の店長の橋本は6月の1週目は神戸でも働きましたが、彼女のスケジュールに合わせて来店するお客さまも多く、そんなお客さまがいてくれることがうれしくて毎日泣いていたぐらいです。自分を求めて来店してくれることのありがたさや、お客さまの愛情を感じられる働き方ではないでしょうか。こういったことに価値を見出して新しい何かが生まれる感覚があったので、交通費も投資だと思っています。

神谷:スタッフにとっては、東京に挑戦できる環境はプレッシャーでもあると思いますよ。自分とKAORIの2人でもう一回銀座でスタートすることは簡単かもしれないけど、それでは「スクリーン」じゃなくなってしまう。銀座にお店を出すということは、僕らだけではできないスタッフの可能性を広げることにもつながります。

WWD:物件へのこだわりも強かったと聞いたが。

神谷:どうしてもこの物件にしたくて、1月からおさえて4月のオープンを目指していましたが、新型コロナの影響もあってようやく5月中旬にオープンしました。もともと4カ月ほどは準備期間として仮家賃が発生しようとも、新しい挑戦、神戸の「スクリーン」をレベルアップするための期間だったので、これも投資の一つと考えて乗り越えることができました。

KAORI:直感でここがいいと思ったんですよね。神戸の2店舗と同じように、2人で図面を引いてCGを作ってこだわりました。何も手を入れていないゼロの状態がとても好きだったから、デザインをすることにも葛藤がありました。2人で作り上げていくことは男女の目線の違いもあって、毎日ぶつかり合ったことでいい化学反応が生まれたんじゃないでしょうか。女性目線では非日常的なところにこだわりました。女性は私生活とは遠い場所でもなじんでしまう感覚があると思います。非日常的だけど心地いいところを狙いました。

WWD:そんなスタイリッシュでクールな空間ですが、スタッフのみなさんはなんともアットホームで(笑)。

KAORI:アットホームさは人が出すものであって、サロンの空間は背筋が伸びるような場所がいいんです。最初は緊張するかもしれないけれど、空間とのギャップが私たちの雰囲気を感じ取ってもらいやすいと思います。また、このお店の雰囲気で選んで来てくれるお客さまは、求めているヘアスタイルのデザインも強いはずです。デザインを求めて来てくれたお客さまに対してて、この空間に見合う技術を提供しなければならないので、スタッフたちの背筋も伸びるのではないでしょうか。

WWD:最後に今後の目標を教えてください。

神谷:新型コロナの影響もあり、いろんなものがずれ込みましたが、自粛のため来店できなかったお客さまからも多く予約をいただき、昨年の6月よりも大幅に売り上げが伸びています。銀座店は新規のお客さまの来店だけでなく、かつての自分の東京の顧客や、神戸から東京に引っ越しをされたお客さまもうわさを聞いて来てくださることもあります。銀座店もきちんと安定させながら、スタッフにとっての挑戦になり刺激になることで、さらに可能性を広げていけたらと思っています。

KAORI:毎日マスクをして過ごす生活は人生で初めてで、女性にとって顔を隠して生活することは今までになかったことですよね。思う存分メイクができないということで、メイクとファッションの要素を表現できるヘアスタイルの重要性をあらためて感じました。色々とストレスがたまっている中で、髪で元気を与えていきたいですね。リップは塗れないかもしれないけれど、メイクをするようにヘアカラーを楽しんでもらいたいです。

The post 神戸のヘアサロン「スクリーン」が銀座に出店 距離を超えたワンチームになることへの挑戦 appeared first on WWD JAPAN.com.

ただの眼鏡屋やあらへんで! 月島の下町でトレンド最先端をゆく新店「ダウンタウン」

 レトロな風情を色濃く残す東京・月島の街。もんじゃ焼き店が軒を並べる名物通りの西中通商店街(通称もんじゃストリート)から東に外れて徒歩1分ほどの住宅街に、アイウエアセレクトショップ「ダウンタウン(DOWNTOWN)」が5月末オープンした。「緊急事態宣言」の解除(5月25日)から徐々ににぎわいを取り戻しつつある下町で、高感度なアイウエアを武器に新たなビジネスチャンスを模索している。

 直訳すれば“下町”の店名の通り、ノスタルジックな街並みに溶け込むような佇まい。昔ながらの駄菓子屋ほどのこぢんまりとした店内(24平方メートル)だが、内装はアーティストの「ノー・ヴァカンシー(NO VACANCY)」が手掛けたネオンサインが彩るクールな雰囲気だ。商品のラインアップも「マツダアイウエア(MATSUDA EYEWEAR)」「アイヴァン(EYEVAN)」「ジャック・デュラン(JACQUES DURAND)」など国内外の感度の高い眼鏡、サングラスをそろえる。ボストン型やウエリントン型など定番を押さえながら、アバンギャルドなフレームもラインアップする。

変貌する下町で高まるファッション需要に着目

 なぜ下町で、それも親和性のなさそうなハイエンドなアイウエアショップを開いたのか。「都心の眼鏡のセレクトショップはすでにオーバーストア。初めから出店の視野には入れていなかった」と原崇「ダウンタウン」オーナーは語る。月島は勝どきや晴海などオフィスタワーの開発が進むエリアにも近いことから、タワーマンションなどに若いパワーカップルが多く住む街に変貌しつつある。「この辺りに住む人は可処分所得が多いし、ファッションを楽しみたいという潜在的なニーズは大きいはず。銀座にも近いけれど、そこに構える店とは距離的にギリギリ(取り扱いブランドの)バッティングにならない。だから絶好の立地だった」。

 レコードプレーヤーから流れるジャズと、メガネのレンズを切り出す機械音が心地よく調和する空間。原氏の共同経営者で眼鏡技術者の中山勇佑氏が、視力検査、加工、調整まで全ての工程を担っている。メガネの聖地・鯖江を有する福井県出身の2人は小学生以来の付き合いだが、当初は選んだ道は違った。中山氏はアイウエアセレクトショップ「グローブスペックス(GLOBE SPECS)」でメガネ一筋のキャリアを歩んだ。かたや原氏はラグジュアリーブランドの婦人服の販売員を長く経験したのち、3年前に眼鏡業界に入ったばかりだ。

 2人が再び結びついたのは、「アイウエアショップはファッションとメガネのスペシャリスト、両方がそろってこそ本物の提案ができる」という考えで意気投合したから。「アイウエアショップは『メガネ一筋』のキャリアの方がやっているところばかり。僕(原氏)から見ると、ファッション目線の提案が物足りないと感じていた。かといってアパレルの店が付け焼き刃的にアイウエアの別注企画をしようにも、服と眼鏡では展示会から納品までのスケジュール感も全然違うから難しい。違う畑を歩んできた僕ら2人だからこそ提案できる価値があると思った」(原氏)。

 店名は、誰もが知るあの超大物お笑いコンビにもあやかっている。「ボケとツッコミではないけれど(笑)。阿吽の呼吸で、銀座からも足を運んでもらえるような話題性のある店を作れたらいい」。

コロナで人生観がリセット メガネは「自分探しの手段」

 数字の「2」が眼鏡のテンプル、「0」がレンズの形にも見えることから、「2020年=メガネの年」――。そんな縁起のよさに期待したものの、開業前に新型コロナが直撃。不安の中でのオープンとなったが、開店初日から近隣に住む家族連れが店を訪れ、手応えを感じている。「数万円のメガネフレームを試着し、購入を即決するようなお子さま連れのご夫婦方もいらっしゃって、正直驚いている」。

 店の外壁には「lookin' for the face(新しい顔を探そう)」と記した看板を掲げた。「メガネは、掛けるだけで普段と違う自分を発見したり、演出したりする力がある。今は大変な状況だけれど、一方であらゆる人の人生観、価値観がリセットされている。新しい自分が見つかることを期待して、メガネを手に取る人が増えているのかも。今、お客さまがお店に来てくださっているのは、古い街並みに新しい店ができたという『ちょっとした違和感』がきっかけかもしれない。だがゆくゆくはアイウエアの価値、投資する意味をこの下町中に広げていくという気概でやっていきたい」。

The post ただの眼鏡屋やあらへんで! 月島の下町でトレンド最先端をゆく新店「ダウンタウン」 appeared first on WWD JAPAN.com.

ただの眼鏡屋やあらへんで! 月島の下町でトレンド最先端をゆく新店「ダウンタウン」

 レトロな風情を色濃く残す東京・月島の街。もんじゃ焼き店が軒を並べる名物通りの西中通商店街(通称もんじゃストリート)から東に外れて徒歩1分ほどの住宅街に、アイウエアセレクトショップ「ダウンタウン(DOWNTOWN)」が5月末オープンした。「緊急事態宣言」の解除(5月25日)から徐々ににぎわいを取り戻しつつある下町で、高感度なアイウエアを武器に新たなビジネスチャンスを模索している。

 直訳すれば“下町”の店名の通り、ノスタルジックな街並みに溶け込むような佇まい。昔ながらの駄菓子屋ほどのこぢんまりとした店内(24平方メートル)だが、内装はアーティストの「ノー・ヴァカンシー(NO VACANCY)」が手掛けたネオンサインが彩るクールな雰囲気だ。商品のラインアップも「マツダアイウエア(MATSUDA EYEWEAR)」「アイヴァン(EYEVAN)」「ジャック・デュラン(JACQUES DURAND)」など国内外の感度の高い眼鏡、サングラスをそろえる。ボストン型やウエリントン型など定番を押さえながら、アバンギャルドなフレームもラインアップする。

変貌する下町で高まるファッション需要に着目

 なぜ下町で、それも親和性のなさそうなハイエンドなアイウエアショップを開いたのか。「都心の眼鏡のセレクトショップはすでにオーバーストア。初めから出店の視野には入れていなかった」と原崇「ダウンタウン」オーナーは語る。月島は勝どきや晴海などオフィスタワーの開発が進むエリアにも近いことから、タワーマンションなどに若いパワーカップルが多く住む街に変貌しつつある。「この辺りに住む人は可処分所得が多いし、ファッションを楽しみたいという潜在的なニーズは大きいはず。銀座にも近いけれど、そこに構える店とは距離的にギリギリ(取り扱いブランドの)バッティングにならない。だから絶好の立地だった」。

 レコードプレーヤーから流れるジャズと、メガネのレンズを切り出す機械音が心地よく調和する空間。原氏の共同経営者で眼鏡技術者の中山勇佑氏が、視力検査、加工、調整まで全ての工程を担っている。メガネの聖地・鯖江を有する福井県出身の2人は小学生以来の付き合いだが、当初は選んだ道は違った。中山氏はアイウエアセレクトショップ「グローブスペックス(GLOBE SPECS)」でメガネ一筋のキャリアを歩んだ。かたや原氏はラグジュアリーブランドの婦人服の販売員を長く経験したのち、3年前に眼鏡業界に入ったばかりだ。

 2人が再び結びついたのは、「アイウエアショップはファッションとメガネのスペシャリスト、両方がそろってこそ本物の提案ができる」という考えで意気投合したから。「アイウエアショップは『メガネ一筋』のキャリアの方がやっているところばかり。僕(原氏)から見ると、ファッション目線の提案が物足りないと感じていた。かといってアパレルの店が付け焼き刃的にアイウエアの別注企画をしようにも、服と眼鏡では展示会から納品までのスケジュール感も全然違うから難しい。違う畑を歩んできた僕ら2人だからこそ提案できる価値があると思った」(原氏)。

 店名は、誰もが知るあの超大物お笑いコンビにもあやかっている。「ボケとツッコミではないけれど(笑)。阿吽の呼吸で、銀座からも足を運んでもらえるような話題性のある店を作れたらいい」。

コロナで人生観がリセット メガネは「自分探しの手段」

 数字の「2」が眼鏡のテンプル、「0」がレンズの形にも見えることから、「2020年=メガネの年」――。そんな縁起のよさに期待したものの、開業前に新型コロナが直撃。不安の中でのオープンとなったが、開店初日から近隣に住む家族連れが店を訪れ、手応えを感じている。「数万円のメガネフレームを試着し、購入を即決するようなお子さま連れのご夫婦方もいらっしゃって、正直驚いている」。

 店の外壁には「lookin' for the face(新しい顔を探そう)」と記した看板を掲げた。「メガネは、掛けるだけで普段と違う自分を発見したり、演出したりする力がある。今は大変な状況だけれど、一方であらゆる人の人生観、価値観がリセットされている。新しい自分が見つかることを期待して、メガネを手に取る人が増えているのかも。今、お客さまがお店に来てくださっているのは、古い街並みに新しい店ができたという『ちょっとした違和感』がきっかけかもしれない。だがゆくゆくはアイウエアの価値、投資する意味をこの下町中に広げていくという気概でやっていきたい」。

The post ただの眼鏡屋やあらへんで! 月島の下町でトレンド最先端をゆく新店「ダウンタウン」 appeared first on WWD JAPAN.com.

「イケア」が都心出店を加速 背景に新型コロナによる“おうち時間”の増加も

 スウェーデン発インテリア「イケア(IKEA)」は、6月8日に初の東京都心店となるイケア原宿をオープンした。さらに年末には、渋谷の「フォーエバー21(FOREVER 21)」跡地に出店を予定している。今年2月には、渋谷に法人向け店舗であるイケア フォー ビジネスを開業するなど、都心への出店を加速している。


 今まで、イケアは、神奈川県・港北や千葉県・船橋など郊外の大型店が中心だった。家具だけでなく雑貨も取りそろえ、カフェやキッズルーム、駐車場完備の店舗はファミリー層の顧客が主体だった。都心への進出は、郊外ではアプローチしにくかった若い世代を狙ったものだ。この数年、イケアは新しい顧客層の獲得に積極的に動いていた。17年4月の自社EC開始を手始めに、積極的なミレニアル世代の取り込みに着手する。同年8月の時点で売上高に占めるEC比率は5%になり、数年以内に比率を20%に伸ばすという目標を掲げた。また、ミレニアル世代の心をつかむコラボレーションを続々と発表。「オフ-ホワイト ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」と「イケア」のアイコンショッパー“フラクタ”のコラボに始まり、19年にはアブローとのコラボ家具“マルケラッド”を発売するなど継続的に協業している。18年には、米ロサンゼルス発ストリートウエアブランドの「スタンプド(STAMPED)」とコラボし、スケートボードやキャップなども発売するなど、ミレニアル世代に響く施策を立て続けに打ち出してきた。アブローとのコラボは大成功を収め、「イケア」はミレニアル世代が注目するべきブランドのポジショニングを得た。


 市場環境もイケアの追い風になる。新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの人が自宅で過ごす時間が長くなった。消費者の関心は、ファッションや車などから"おうち時間"へ移っている。とはいえ、予算の関係で家具を新調するというケースはそう多くない。「イケア」は家具だけでなく、在宅勤務に役立つグッズをはじめ、アウトドア、キッチンなど、ライフスタイルに関連するものをほぼ網羅する。在庫さえあればECで購入可能だ。緊急事態宣言が解除され、徐々に店舗が開き始めたタイミングでのイケア原宿のオープンは、外出自粛で買い物に飢えた都心の消費者の注目の的になった。現在のところ、平日昼でも店内は大勢の客でにぎわい、レジには数十人もの長い行列ができている。同店では、一人暮らしの部屋など都心の小さいスペースに合う商材をそろえ、カフェや世界初のスウェーデンコンビニを併設するなど話題性もたっぷりだ。

 原宿店オープン直後の渋谷出店のニュースで、都心シフトを鮮明にした。原宿店は2層2500平方メートルだが、渋谷店は7層4800平方メートルと約2倍の広さ。2万平方メートルの郊外店には及ばないが、原宿店以上に家具や生活雑貨関連の品ぞろえが充実するだろう。原宿店も渋谷店も立地は抜群。家族だけでなく、都心在住のさまざまな消費者にアピールしそうだ。一方、日本のインテリア企業ニトリも17年ごろから、渋谷をはじめ新宿や池袋の百貨店内に続々と出店している。ニトリも郊外店中心だったが、都心に出店することで、都心のファミリー層や若い消費者の取り込みに成功した。それ以前は“わざわざ出かける”店だったのが、身近な店になり、家具から雑貨まで生活必需品を廉価で提供している。イケアの都心進出により、王者であるニトリや、あるいは無印良品とも競合する場面が増えていくことが予想される。

The post 「イケア」が都心出店を加速 背景に新型コロナによる“おうち時間”の増加も appeared first on WWD JAPAN.com.

【動画】「ミハラ」新店は謎キャラ“靴紐結べな君”との協業? 本人に出店理由を聞いてみた

 「メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA YASUHIRO)」を運営するソスウは、東京・神宮前にスニーカーが中心の新店舗「マイ フット プロダクツ(MY FOOT PRODUCTS)」を6月20日に開く。

 店内には同ブランドで人気のスニーカーを中心に、限定モデルやコラボレーションアイテムも並ぶ予定だ。オープンを記念して、ファイヤーペイントがあしらわれたスニーカー(3万8000円)を同店とオンラインストアで発売する。

 同店を手掛けたのは、三原康裕「メゾン ミハラヤスヒロ」デザイナーと親交が深いという“靴紐結べな君”だ。自称1972年生まれで福岡出身という、どこかで聞いたことのある出自や体形の謎だらけな“靴紐結べな君”にインタビューを行った。彼の意外な出店理由や、今後の壮大な計画とは。念のため、協業を依頼したという三原デザイナーにも話を聞いた。

■MY FOOT PRODUCTS
住所:東京都渋谷区神宮前6-14-10 ASM岩松ビル 1F
営業時間:12:00〜20:00
営業日:火・土曜日

The post 【動画】「ミハラ」新店は謎キャラ“靴紐結べな君”との協業? 本人に出店理由を聞いてみた appeared first on WWD JAPAN.com.

パタゴニアの次期CEOは誰? “責任ある企業”のトップに今求められるもの

 パタゴニア(PATAGONIA)のローズ・マーカリオ(Rose Marcario)最高経営責任者(CEO)が6月12日付で退任し、ダグ・フリーマン(Doug Freeman)最高執行責任者(COO)が当面の指揮をとると発表されたが、後任探しは難航しているのかもしれない。

 フリーマンCOOはパタゴニアに入社してから商品開発部に9年間勤め、次いで「オバマイヤー(OBERMEYER)」「ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)」「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」などのアウトドアブランドでもキャリアを積んだ人物だ。その後、2004年にアジア担当の調達部門マネジャーとしてパタゴニアに戻り、生産製造部門担当副社長を務めた後、13年にCOOに任命された。当時のケイシー・シアン(Casey Sheahan)元CEOはフリーマンCOOの就任に際して「このようなビジネスの重要な領域を監督するダグ(・フリーマンCOO)の能力を信頼している。彼は運営に関する幅広い経験だけでなく、ブランドへの深い理解や豊かな歴史を持っている」と評価していた。

 情報筋によると、マーカリオ前CEOの後継者に関する話し合いは数週間前から行われてきたという。シアン元CEO退任の際は、すぐにではなく、2週間をかけて引き継がれた。ブランドとして環境問題とその草の根運動に取り組んできた40年の歴史を考えると、パタゴニアの文化をよく知るベテランから後継者を選ぶことは妥当に思える。しかし今回の急な退任と後任の選定を急いでいないという予想外の発表は、同社が外部の人材に目を向けている可能性を示唆している。

CEOに求められるものは

 過去に行われた「WWD」のCEOサミット調査によると、経営者110人のうちの半数は、21年までにCEOには戦略的で実績のあるデジタル経験が求められるようになり、その役割は変わるだろうと考えていた。そして20年現在、すでに大きな変化が見られ、経営幹部の期待は高まっている。「パタゴニアのような社会的理念を持つブランドにふさわしい後任を探すことは簡単ではないだろう」と語るのは、ファッション界のサステナブルなベンチャー企業に出資する投資会社、アランテ・キャピタル(Alante Capital)のP・C・チャンドラ(P.C. Chandra)=アドバイザーだ。サステナビリティへの取り組みと経済対策の両立の大切さを説くと同時に、「パタゴニアがダイバーシティーを優先事項に掲げて次期CEOを探していることを願う」と述べた。マーカリオ前CEOの退任と直接的な関連性はないものの、元パタゴニアのスタッフなどは多様性の欠如を指摘している。

 雇用の機会を広げるために、職場環境の包括性を重視する団体と協業するなどの成果もあって、一般的にアウトドア企業における女性の比率は高い。「フォーチュン(FORTUNE)」誌の“最も多様性のある職場ランキング”によるとパタゴニアにおける男女はほぼ半々だ。今回の退任は急なものとみられたが実際には時間をかけて考えられてきたことで、「19年末から引き継ぎについては考え始めていた。今が次の世代にブランドを託すべき時だと信じている」とマーカリオ前CEOは語る。しかし記録的な売り上げだけでなく、パタゴニアを環境保全をはじめとする社会貢献活動の代名詞にした彼女の功績やリーダーシップを考えると、後任を探すのは容易ではなさそうだ。

The post パタゴニアの次期CEOは誰? “責任ある企業”のトップに今求められるもの appeared first on WWD JAPAN.com.

#敦子スメ「新月・満月」ノート 今回の新月(6月21日)は“居心地のいい環境づくり”がおすすめ

 この連載では、新月・満月の流れを最大限に引き出すためのサポートをしてくれるコスメやインナーケアアイテムも紹介していきます。第13回は6月21日の新月とおすすめコスメについてお伝えします。

今回の新月(6月21日)はかに座

 今回夏至と重なる新月のサインは、水の星座であり安心や心のつながり、仲間意識を示すかに座で起こります。今年は特に“家”や“居場所”“心を許せる人とのつながり”を重視するきっかけになるような出来事がたくさん起こった上半期でしたね。自分自身を見つめる時間も多くあり、これからどうしていきたいか、どんなふうに時代に対応していくか、そしてそれを誰と共有していきたいのかを皆が無意識に感じていたと思います。

 今年かに座の新月は2回起こる予定です(次回は7月21日)。一度目のかに座の新月におすすめしたいアクションは“居心地のいい環境づくり”。かに座は自分の安心感をとても大切に考えるサインです。安心感には、居場所もとても大きなキーポイントですよね。ステイホームで断捨離などをした人もたくさんいると思いますが、あらためてここでまた、自分のオフィスや家を居心地のいい場所にするために掃除と整理整頓をしてみるのはいかがでしょうか。

今回の新月コスメ

 リフレッシュに向いているという新月の日は、なんだか机の上や引き出しの中を無意識に片付けたくなるタイミング。今回は過去を振り返る“水星逆行”とセットでやってくるので、片付けをしながら昔のアルバムを見つけ「あ、懐かしい……」なんて振り返る時間が長めになってしまうかも。そんなことも水星逆行らしくていいのではないでしょうか。

 きれいに片付いた空間におすすめなのは「ティアレアーラ メディケア(TIARE ALA MEDICARE)」の「エネルギーミスト」。すっきりと片付いた部屋にシュッとスプレーしたくなるこのアイテムは、セージの香りが爽やかなムードを演出してくれます。リモートワークのさなかにも使いたくなるアイテムです。「おいせさん(OISESAN)」の「お浄め塩キャンドル」はその名の通り、燃しながら空気中の不純物を取り除いてくれるそう。フランキンセンスの香りが心地よく、お掃除後の空間にぴったりのアイテムです。

福本敦子(ふくもと・あつこ)/フリーランスPR・美容コラムニスト:コスメキッチンに14年間勤務後、現在はフリーランスPRとして活動するかたわら、ビューティコラムニストとしてイベント、SNSなど多方面で活躍。オーガニックに精通した知識を武器に、ライフスタイルに寄り添った独自のオーガニック美容論が、著名人やエディターをはじめ各方面から大人気。「#敦子スメ」は「読んだ瞬間試したくなる」と多くの反響を呼び、紹介した商品の欠品や完売も多数。2019年秋、初の書籍となる「今より全部良くなりたい 運まで良くするオーガニック美容本 by敦子スメ」を出版。発売前に増刷が決まるなど話題を呼んでいる。旅を愛し、占星術にも精通 instagram:@uoza_26

The post #敦子スメ「新月・満月」ノート 今回の新月(6月21日)は“居心地のいい環境づくり”がおすすめ appeared first on WWD JAPAN.com.

#敦子スメ「新月・満月」ノート 今回の新月(6月21日)は“居心地のいい環境づくり”がおすすめ

 この連載では、新月・満月の流れを最大限に引き出すためのサポートをしてくれるコスメやインナーケアアイテムも紹介していきます。第13回は6月21日の新月とおすすめコスメについてお伝えします。

今回の新月(6月21日)はかに座

 今回夏至と重なる新月のサインは、水の星座であり安心や心のつながり、仲間意識を示すかに座で起こります。今年は特に“家”や“居場所”“心を許せる人とのつながり”を重視するきっかけになるような出来事がたくさん起こった上半期でしたね。自分自身を見つめる時間も多くあり、これからどうしていきたいか、どんなふうに時代に対応していくか、そしてそれを誰と共有していきたいのかを皆が無意識に感じていたと思います。

 今年かに座の新月は2回起こる予定です(次回は7月21日)。一度目のかに座の新月におすすめしたいアクションは“居心地のいい環境づくり”。かに座は自分の安心感をとても大切に考えるサインです。安心感には、居場所もとても大きなキーポイントですよね。ステイホームで断捨離などをした人もたくさんいると思いますが、あらためてここでまた、自分のオフィスや家を居心地のいい場所にするために掃除と整理整頓をしてみるのはいかがでしょうか。

今回の新月コスメ

 リフレッシュに向いているという新月の日は、なんだか机の上や引き出しの中を無意識に片付けたくなるタイミング。今回は過去を振り返る“水星逆行”とセットでやってくるので、片付けをしながら昔のアルバムを見つけ「あ、懐かしい……」なんて振り返る時間が長めになってしまうかも。そんなことも水星逆行らしくていいのではないでしょうか。

 きれいに片付いた空間におすすめなのは「ティアレアーラ メディケア(TIARE ALA MEDICARE)」の「エネルギーミスト」。すっきりと片付いた部屋にシュッとスプレーしたくなるこのアイテムは、セージの香りが爽やかなムードを演出してくれます。リモートワークのさなかにも使いたくなるアイテムです。「おいせさん(OISESAN)」の「お浄め塩キャンドル」はその名の通り、燃しながら空気中の不純物を取り除いてくれるそう。フランキンセンスの香りが心地よく、お掃除後の空間にぴったりのアイテムです。

福本敦子(ふくもと・あつこ)/フリーランスPR・美容コラムニスト:コスメキッチンに14年間勤務後、現在はフリーランスPRとして活動するかたわら、ビューティコラムニストとしてイベント、SNSなど多方面で活躍。オーガニックに精通した知識を武器に、ライフスタイルに寄り添った独自のオーガニック美容論が、著名人やエディターをはじめ各方面から大人気。「#敦子スメ」は「読んだ瞬間試したくなる」と多くの反響を呼び、紹介した商品の欠品や完売も多数。2019年秋、初の書籍となる「今より全部良くなりたい 運まで良くするオーガニック美容本 by敦子スメ」を出版。発売前に増刷が決まるなど話題を呼んでいる。旅を愛し、占星術にも精通 instagram:@uoza_26

The post #敦子スメ「新月・満月」ノート 今回の新月(6月21日)は“居心地のいい環境づくり”がおすすめ appeared first on WWD JAPAN.com.

「ユニクロ」銀座の新店をパトロール ミュージアムのような店舗の見どころはココだ!

 「ユニクロ(UNIQLO)」は6月19日、東京・銀座に新グローバル旗艦店「ユニクロ トウキョウ」をオープンした。日本最大級(約4950平方メートル)の同店は、4月にオープンした「ユニクロ パーク横浜ベイサイド店」、6月5日に開業した「ユニクロ原宿店」と共に、「ユニクロ」のこれからを作っていく“戦略店舗”という位置づけ。どこを切っても同じ金太郎アメ型チェーン店ではなく、その街、その店ならではの仕掛けを多数盛り込んでいる点が特徴だ。老舗が軒を並べ、大人や海外観光客が集う街・銀座で「ユニクロ」が見せるものとは?同店の見どころをレポートする。

【外観&内観】コンクリートの構造むき出しにリノベーション

 同店があるのは銀座と有楽町の中間にある商業施設、マロニエゲート銀座2(旧プランタン銀座。さらにたどると読売新聞本社)の1~4階。古い建物を生かしつつ、内装をはがしてコンクリート構造むき出しにリノベーションしている。内外装を手掛けたのは、英ロンドンの美術館テート・モダンや北京五輪の鳥の巣競技場の設計で知られるスイス発の建築家ユニット、ヘルツォーク&ド・ムーロン(Herzog & de Meuron)。外装もコンクリートの柱や梁がモダンな雰囲気で、インターフェースデザイナー中村勇吾によるキューブ型のデジタル看板が主張する。同店のトータルクリエイティブディレクターは佐藤可士和。「以前の内装をはがしてダイナミックな空間を残した。そぎ落としていいものに、という考え方はユニクロのモノ作りそのもの」と佐藤。

【1階】“LifeWearスクエア”で「アートとサイエンス」発信

 1階は「ユニクロ」のフィロソフィーや旬の商品をギュッと凝縮した売り場。最大の見どころは“LifeWearスクエア”と名付けられた、フロア中央の吹き抜け空間だ。ユニクロのコンセプトであるLifeWear(究極の普段着)の「アートとサイエンス」を体感できる場として、オープン時は“エアリズム”を紹介。“エアリズム”の機能性(通気性やサラリとした肌触り等)を紹介する理科の実験風装置(これがサイエンス)の奥に、さまざまな“エアリズム”商品を取り入れたスタイリッシュなマネキン群がズラリ(これがアート)。その他、協業しているアーティストの作品や人となりについて知るコーナーがあったり、横浜、原宿の戦略店舗と同様に生花売り場があったりと、商品を売り場にギッチリ詰め込むのではなく、広さを生かして背景にあるストーリーを伝えようとしている点が同店の大きな特徴だ。

【2階】加茂克也が手掛けたヘッドピースのVMDを刮目!

 2階はウィメンズ売り場。「ユニクロ トウキョウ」では全フロアで、さまざまなクリエイターと組んだVMDを取り入れているが、2階の注目は今年2月に亡くなったヘアアーティスト、加茂克也のヘッドピースを飾ったビジュアルプレゼンテーション。加茂は「ユニクロ」展示会のヘッドピースを手掛けていた経緯があり、花のヘッドピースが「ユニクロ」のパステルトーンのウエアを魅力的に演出する。他は人気の花屋「エデンワークス(edenworks)」篠崎恵美や、アーティストのリー・イスミダなどとVMDで協業。各階のレジ前は、「ユニクロ」が注力するサステナビリティ関連活動や難民支援などを紹介するコーナーになっているが、2階でフォーカスしているのは女性のエンパワメントだ。ユニクロで働く世界の女性たちを紹介するパネルの中に、40歳でユニクロ日本CEOに就いた注目人物、赤井田真希がどーんといるのでツウは確認を!

【3階】アンバサダー紹介コーナーやスーツが充実

 3階はメンズ売り場。ここで注目したいのはユニクロのアンバサダーであるスポーツ選手6人にフォーカスしたコーナー。プロスノーボーダープロスケーターの平野歩夢やプロテニスの錦織圭、プロゴルファーのアダム・スコット(Adam Scott)などの着用商品やサインなどを集積している。「ユニクロ」といえばやはりカジュアルのイメージが強いが、同店は銀座という立地もあり、スーツやシャツのイージーオーダーである“オーダーメイド感覚”シリーズが充実している点も見どころ。このコーナーはハンガーも木製の「ナカタハンガー」でドレッシーなムード。ちなみに、“オーダーメイド感覚”シリーズを買うとこのハンガーも付いてくるそう。

【4階】銀座の名店群と「UTme!」でコラボ

 4階はグラフィックTシャツの「UT」とキッズ&ベビーが中心。エスカレーターを下りるとそこには「UT」のコラボアーティストを紹介パネルや関連書籍が。個人的には、社員私物を含むという「UT」のアーカイブコーナーが「このデザイン持っていた」「これは今売ってほしい」などさまざまに感じて面白い。オリジナルの柄をプリントできる「UTme!」のコーナーでは、銀座のそうそうたる老舗と協業。呉服店の「銀座もとじ」や、和菓子の「空也」、「松﨑煎餅」などのスタンプをTシャツやトートバッグにプリントできる。銀座といえば、雑誌社マガジンハウスのお膝元でもある。18年にファーストリテイリング入りした木下孝浩グループ上席執行役員の前職がマガジンハウスの「ポパイ(POPEYE)」編集長という縁もあるのか、モード誌「ギンザ(GINZA)」と組んだ銀座の歴史紹介コーナーもあり。EC限定商品の“エアリズム”シーツのコーナーにはベッドも置かれ、ライフスタイル型の提案を強化している。

The post 「ユニクロ」銀座の新店をパトロール ミュージアムのような店舗の見どころはココだ! appeared first on WWD JAPAN.com.

おしろい市場12年連続売り上げNo.1*の「ミラノコレクション」2021年は純白の輝きと天使に癒される

 カネボウ化粧品は12月1日、「ミラノコレクション」から「フェースアップパウダー 2021」を発売する。おしろい市場で12年連続売り上げNo.1を誇る人気製品で、毎年テーマを設けたパッケージデザインが特徴。21年は“知る幸せ”をテーマに、新たな幸せを見つける天使をパッケージとパウダーの表面に施した。

*インテージSRI おしろい市場 2008年1月~2019年12月 販売金額

美術品のような気品ある
デザインへのこだわり

 カネボウ化粧品から1991年にデビューし、21年で31年目となる「ミラノコレクション」は、伊・ミラノの格式ある建造物や美しい彫刻、ステンドグラスといった芸術的な世界観からインスパイア。現在、メインとなる「フェースアップパウダー」をはじめ、「オードパルファム」「ボディフレッシュパウダー」を展開している。毎年変化するパッケージデザインが特徴で、女神や天使などをモチーフにテーマを決めてから毎回デザイン制作を行っており、その美しさから“観賞用”と“使う用”に複数購入するファンも多い。

高機能パウダーがかなえる
上質な仕上がり

 「ミラノコレクション」の代表アイテムである「フェースアップパウダー」は、繊細でベールのようなきめ細やかさやつけたての美しさなど肌仕上がりには定評がある。産毛に逆らうようにパフで下から上に押さえると密着度がアップしてさらに崩れにくくなり、おすすめ。ちまたでは名画のような仕上がりになる“美肌パウダー”なんて呼ばれているほどだ。また、香料中には希少な2種のローズの天然精油をふんだんに取り入れており、奥行きのある上品な“プレミアムローズ”の香りが漂う。このように、細かい装飾を施した容器やキメ細かく精巧なパウダー表面など生産時間がかかるため、同製品は半年前からの事前予約に基づく限定発売という販売スタイルをとっている。

21年版はクラシカルな
図書館がモチーフ

 12月1日発売の「フェースアップパウダー 2021」は、クラシカルな図書館をモチーフに、知識を得ることで生まれる幸せを守護天使で表現。ドラッグストアやスーパー、化粧品専門店、オンラインで販売する「レギュラータイプ」(24g、9000円)と、百貨店や一部の化粧品専門店で展開するワンランク上の「グランデ(GR)タイプ」(30g、1万2000円)の2種をそろえ、現在予約を受け付けている。それぞれレフィルの付いたセット(レギュラーセットが1万5000円、GRセットが2万円)をラインアップするほか、11月1日には「ミラノコレクション オードパルファム2021」(30mL、7500円)、オードパルファムにミニボトルがセットになった「ミラノコレクションGR オードパルファム2021 ST」(1万円)も登場する。価格は全て編集部調べ。

商品に関する問い合わせ先はこちら
カネボウ化粧品
0120-518-520

The post おしろい市場12年連続売り上げNo.1*の「ミラノコレクション」2021年は純白の輝きと天使に癒される appeared first on WWD JAPAN.com.

アラタナ創業者の濱渦氏が「ホテルのD2Cブランド」を起業 すでに10億円を調達

 アラタナ創業者の濱渦伸次氏はこのほど、新たにホテルのD2Cブランド「ノットアホテル(NOT A HOTEL)」を立ち上げる。同名の新会社は4月1日付に設立、起業家で投資家の佐俣アンリ氏の率いるベンチャーキャピタルANRIをリードインベスターに、GMOベンチャーパートナーズ、SMBCベンチャーキャピタル、個人投資家などからすでに10億円を調達しているという。濱渦氏はアパレルECサイトの制作会社アラタナを2007年に宮崎県で起業し、15年にはスタートトゥデイ(現ZOZO)に売却後。今年3月31日付でZOZOを退社していた。なぜこのタイミングでホテルなのか。決め手は、ZOZO創業者の前澤友作氏からの一言だったという。濱渦氏に聞いた。

WWD:コロナ禍でホテル業などの観光産業は大打撃を受けている。なぜこのタイミングでホテル事業を?

濱渦:ホテルで起業をしようと決めたのは、昨年の年末あたり。昨年9月に前澤(友作ZOZO創業者)さんがZOZOを引退することになってから、僕もなにか新しいことをやりたいと思って、新事業を探し始めた。探すにあたって、日本の人口が少なくなる中でも産業自体が大きくなる分野を考えた。昨年の10月、11月だったかな、前澤さんに相談というか会って食事をしたときに、「起業するなら、かっこいいことじゃなくて好きなことをやったほうがいいよ」と言われ、それが決め手になった。観光産業は21世紀最大の産業になるとも言われ、当時はインバウンドも盛り上がっていて、何より僕自身が旅やホテルが大好きだったので。

WWD:4月の設立のタイミングはコロナ禍の最中。方針の変更は考えなかったのか?

濱渦:ホテルって、僕らがアラタナを創業したころのアパレル産業と似ているんですよ。10年前はアパレルのほとんどが自社ECサイトを持っておらず、業務フローもデジタル化されているとは言いがたかった。でも今はだいぶ変わってますよね?それに比べるとホテル業界って、アパレルに比べてテクノロジーが二週くらい遅れています。利益率は決して高くないのに、予約はほとんどが大手の予約サイト経由で、自社比率は2割以下。それに投資にも無駄が多く、例えば旅館の投資の半分は部屋ではなく共用部に使われていて、宿泊者よりも従業員の方が多い。テクノロジーで無駄を徹底的に省いたD2Cモデルならば、大きな商機がある。

WWD:新たなD2Cモデルなら商機があると?

濱渦:そうです。ブランド名の「NOT A HOTEL」には、そういった意味を込めました。従来のホテルとはまったく違う。予約やチェックインなどはすべてアプリで完結し、部屋に設置したIoT端末でテレビやエアコンの操作、問い合わせなどに対応し、極限までオペレーションにかかるコストを抑える。来年夏頃に8カ所のホテルを開業予定で、1ホテルあたりの部屋数は最大で10室以下、運営人数も2〜3人以下に抑えます。

ファッションブランドとのコラボも

WWD:どんなホテルになる?

濱渦:詳細はまだ言えませんが8つのホテルは、いずれも異なった建築デザイナーと協業し、さまざまなタイプを作ります。故郷の宮崎県や北海道。熱海、那須、あと東京の都心にも1室だけのタイプも。うち一つはファッションブランドとのコラボレーションも水面下で進めています。「NOT A HOTEL」の最大の特徴は初期投資やオペレーションを抑えることで少ない部屋数でもホテルが作れること。例えば都心の店舗やオフィス跡を居抜きでホテルにすることだって可能です。だからこそ、一つの世界観をデザインできるファッションにはとても注目していて、今後も積極的にコラボレーションや提携を行っていきます。

WWD:4月に設立し、すでに10億円を調達。どうやって資金を?

濱渦:当たり前ですが、実際に資金を集め始めたのは前職のZOZOを退社して、会社を設立した4月1日以降です。程なくして緊急事態宣言が発令され、新幹線を使った移動や顔を合わせた打ち合わせなどは一切できなくなりました。投資家との打ち合わせはほとんどがZoomやチャットなどのオンライン。ホテルのロケーションハンティングも現地でフォトグラファーに360度カメラや動画、ドローンを飛ばして確認しました。全部、まったく問題なかったですね。そもそもNOT A HOTELはオフィスを持っていません。シェアオフィスも借りてませんし、6人の社員がいますが、僕も含め全員ずっとリモートです。この前6月になってようやく全員で顔を合わせました(笑)。

WWD:登記や契約書など印鑑が必要な作業は?

濱渦:それも電子契約サービスの「クラウドサイン」などを使いました。郵便なども基本はすべて電子化していて、それが無理な場合は行政書士の事務所に送ってもらってます。とにかくアセット(資産)はできるだけ持たない。社員10人で上場まで行きたいと思っています。

WWD:今後は?

濱渦:5年で数万室にまで広げたい。スタートは直営のみですが、今後はシステムのみを貸与するリースや運営代行、フランチャイズなどのビジネスモデルをミックスしていく予定です。それもあって部屋に置くタオルやコスメ、シャンプーなどのアメニティは非常に重視していて、今はいろいろな有力繊維企業やコスメ企業と開発している最中です。ホテル業界のデジタルトランスフォーメーションを推し進めることで、ホテル業界の高収益化に貢献したい。予約の開始は早ければ6月ごろの予定です。楽しみにしてください。

The post アラタナ創業者の濱渦氏が「ホテルのD2Cブランド」を起業 すでに10億円を調達 appeared first on WWD JAPAN.com.

アラタナ創業者の濱渦氏が「ホテルのD2Cブランド」を起業 すでに10億円を調達

 アラタナ創業者の濱渦伸次氏はこのほど、新たにホテルのD2Cブランド「ノットアホテル(NOT A HOTEL)」を立ち上げる。同名の新会社は4月1日付に設立、起業家で投資家の佐俣アンリ氏の率いるベンチャーキャピタルANRIをリードインベスターに、GMOベンチャーパートナーズ、SMBCベンチャーキャピタル、個人投資家などからすでに10億円を調達しているという。濱渦氏はアパレルECサイトの制作会社アラタナを2007年に宮崎県で起業し、15年にはスタートトゥデイ(現ZOZO)に売却後。今年3月31日付でZOZOを退社していた。なぜこのタイミングでホテルなのか。決め手は、ZOZO創業者の前澤友作氏からの一言だったという。濱渦氏に聞いた。

WWD:コロナ禍でホテル業などの観光産業は大打撃を受けている。なぜこのタイミングでホテル事業を?

濱渦:ホテルで起業をしようと決めたのは、昨年の年末あたり。昨年9月に前澤(友作ZOZO創業者)さんがZOZOを引退することになってから、僕もなにか新しいことをやりたいと思って、新事業を探し始めた。探すにあたって、日本の人口が少なくなる中でも産業自体が大きくなる分野を考えた。昨年の10月、11月だったかな、前澤さんに相談というか会って食事をしたときに、「起業するなら、かっこいいことじゃなくて好きなことをやったほうがいいよ」と言われ、それが決め手になった。観光産業は21世紀最大の産業になるとも言われ、当時はインバウンドも盛り上がっていて、何より僕自身が旅やホテルが大好きだったので。

WWD:4月の設立のタイミングはコロナ禍の最中。方針の変更は考えなかったのか?

濱渦:ホテルって、僕らがアラタナを創業したころのアパレル産業と似ているんですよ。10年前はアパレルのほとんどが自社ECサイトを持っておらず、業務フローもデジタル化されているとは言いがたかった。でも今はだいぶ変わってますよね?それに比べるとホテル業界って、アパレルに比べてテクノロジーが二週くらい遅れています。利益率は決して高くないのに、予約はほとんどが大手の予約サイト経由で、自社比率は2割以下。それに投資にも無駄が多く、例えば旅館の投資の半分は部屋ではなく共用部に使われていて、宿泊者よりも従業員の方が多い。テクノロジーで無駄を徹底的に省いたD2Cモデルならば、大きな商機がある。

WWD:新たなD2Cモデルなら商機があると?

濱渦:そうです。ブランド名の「NOT A HOTEL」には、そういった意味を込めました。従来のホテルとはまったく違う。予約やチェックインなどはすべてアプリで完結し、部屋に設置したIoT端末でテレビやエアコンの操作、問い合わせなどに対応し、極限までオペレーションにかかるコストを抑える。来年夏頃に8カ所のホテルを開業予定で、1ホテルあたりの部屋数は最大で10室以下、運営人数も2〜3人以下に抑えます。

ファッションブランドとのコラボも

WWD:どんなホテルになる?

濱渦:詳細はまだ言えませんが8つのホテルは、いずれも異なった建築デザイナーと協業し、さまざまなタイプを作ります。故郷の宮崎県や北海道。熱海、那須、あと東京の都心にも1室だけのタイプも。うち一つはファッションブランドとのコラボレーションも水面下で進めています。「NOT A HOTEL」の最大の特徴は初期投資やオペレーションを抑えることで少ない部屋数でもホテルが作れること。例えば都心の店舗やオフィス跡を居抜きでホテルにすることだって可能です。だからこそ、一つの世界観をデザインできるファッションにはとても注目していて、今後も積極的にコラボレーションや提携を行っていきます。

WWD:4月に設立し、すでに10億円を調達。どうやって資金を?

濱渦:当たり前ですが、実際に資金を集め始めたのは前職のZOZOを退社して、会社を設立した4月1日以降です。程なくして緊急事態宣言が発令され、新幹線を使った移動や顔を合わせた打ち合わせなどは一切できなくなりました。投資家との打ち合わせはほとんどがZoomやチャットなどのオンライン。ホテルのロケーションハンティングも現地でフォトグラファーに360度カメラや動画、ドローンを飛ばして確認しました。全部、まったく問題なかったですね。そもそもNOT A HOTELはオフィスを持っていません。シェアオフィスも借りてませんし、6人の社員がいますが、僕も含め全員ずっとリモートです。この前6月になってようやく全員で顔を合わせました(笑)。

WWD:登記や契約書など印鑑が必要な作業は?

濱渦:それも電子契約サービスの「クラウドサイン」などを使いました。郵便なども基本はすべて電子化していて、それが無理な場合は行政書士の事務所に送ってもらってます。とにかくアセット(資産)はできるだけ持たない。社員10人で上場まで行きたいと思っています。

WWD:今後は?

濱渦:5年で数万室にまで広げたい。スタートは直営のみですが、今後はシステムのみを貸与するリースや運営代行、フランチャイズなどのビジネスモデルをミックスしていく予定です。それもあって部屋に置くタオルやコスメ、シャンプーなどのアメニティは非常に重視していて、今はいろいろな有力繊維企業やコスメ企業と開発している最中です。ホテル業界のデジタルトランスフォーメーションを推し進めることで、ホテル業界の高収益化に貢献したい。予約の開始は早ければ6月ごろの予定です。楽しみにしてください。

The post アラタナ創業者の濱渦氏が「ホテルのD2Cブランド」を起業 すでに10億円を調達 appeared first on WWD JAPAN.com.

ファッション・ビューティ業界で働くママたちの在宅ワーク 「本当にきつかった」でも「以前には戻れない」覆面本音トーク

 新型コロナウイルス感染拡大から緊急事態宣言を受け、多くの働くママ・パパはてんやわんやだったのではないでしょうか。子どもが家に居ながら、仕事もこなす。その状況は想像よりも大変です。緊急事態宣言が解除になった今も、子どもたちの学校などは分散登校や時短授業などで新しい学校生活がスタートしていますが元通りとはいきません。今回、緊急事態宣言中に、ファッション・ビューティ業界で働くママたちと覆面座談会を敢行。座談会中、子どもたちが乱入しながらもさまざまな本音のトークが繰り広げられました。在宅ワークのママたちの現状とはーー。

Aさん:海外ビューティブランドPR&コミュニケーションディレクター。家族構成は夫と小学2年生の娘、4歳の保育園年中の男の子。緊急事態宣言中は在宅勤務

Bさん:国産ビューティブランドPR。家族構成は夫と小学3年の息子。緊急事態宣言中は週1出勤

Cさん:ファッション系PR会社シニアマネージャー。家族構成は夫と小学4年の息子、保育園年中の娘。緊急事態宣言中は週1出勤

Dさん:セレクトショップ広報。家族構成は夫と保育園年長の娘、年少の息子。緊急事態宣言中は在宅勤務

WWD:家族構成は夫と中学1年の息子、小学3年の娘

WWD:急にリモートワークになったと思いますが、実際どうでしょうか?メリットはありますか?

Aさん:会社に行っていると、子どもたちのお迎えがあり、時間に制限があったので今はバタバタしなくてよくなったのは良かったです。あとは、これまで時短勤務の私の方が家事はメインでやっていたんですが、夫も今は在宅なので分担してやっています。今までの私の一番のストレスが料理だったので、それを夫がやってくれるのはストレスがなくなりました。絆も深まりましたし。ただ、緊急事態宣言が発令されて、子どももずっと自宅にいるとやっぱりストレスフルですよね(笑)。

Bさん:家だと電話もかかってこないですし、資料を作ったりというのは在宅の方が集中できますね。Aさんと同じように、夕方は焦って汗をかきながら子どものお迎えに行ってたんですけど、おしりの焦りがなくなったのはよかったなあと思います。あと、料理を作るのが好きなので、朝晩の品数は増えたかなあ。リモート前は、朝なんかはパン焼いて、ソーセージ焼いて、「早く、早く、早く」って「早く」を100回ぐらい言ってたんですけど(笑)。今は急がなくていいのでいいですね。

Dさん:急がなくていいっていうの分かります。メリットはやっぱり通勤の往復2時間が掛からないってことですよね。これまでは、週末に1週間分の食料の買い出しと、掃除で疲れてしまってたんですけど、平日にできるのはいいです。それに今まで週末は、月曜日のこと考えて遊びもそこそこだったけど、考えないで遊べる。週末の充実感ってあるなあと。

Cさん:同じです!おしりの焦りがなくなりました。ただ、職種的に電話がよく来るんですが、子どもが声を出した時に、「子どもがいて……」で済ませられる相手だといいんですが、済まされない相手だと困ります。本当に集中したいときや、邪魔されたくないときは、ネットフリックス(NETFLIX)とアマゾンプライム・ビデオ(AMAZON PRIME VIDEO)に頼っててテレビや映画を見せたりしてますね(笑)。申し訳ないですが、日中は、子どもとフェイス・トゥ・フェイスでも生返事になっちゃいます。あと、小学校に週1行くんですが、まあまあ宿題をもらってくるので。それがいつまで続くんだろう?とは思います。

子どもの勉強問題で親の責任重大に

WWD:分かります。普通だったら、学校の宿題って学校で習ったことの復習だから、子どもに任せてますけど、学校に行ってないから宿題って言っても、親が見ないといけない……。家にいても仕事をしてる訳で、その時間を確保するのは大変だなと。

Bさん:相手できないですよね。やっぱり子どもの勉強はストレスですね。おっしゃるように、親が見ないといけないですし。学校からも「するように」と指示をされていますからねえ。ほかの学校に通う子どもを持つママ友によると、「休校中に出た宿題も成績に加味します」って言われたらしんですよ。

全員:えーーー。怖い……。

Bさん:そうなると、回答が○になるまで何度もやらせないといけないじゃないですか。親の負担が半端なくて。習い事も、ピアノと公文やってるんですけどピアノはZoomで、結局練習も付きっ切りでやらないといけないし、日々のタスクを子どもにさせるのに、親がすごく労力を使わないといけないっていうのはありますよね。ただ反面、この子、こういうこと知らなかったんだ、とかが分かったのは良かったですね。

Aさん:習得のために、監視するという不毛な時間がありますよね。うちも上の子は小2でお勉強をしてもらわないといけないけど、そうすると下の子が何もすることがなくなっちゃって。お姉ちゃんの邪魔をしたりとか。私も、子どもに邪魔されるストレスがあって、仕事したいのにって。

それである時、すっごいストレスが溜まりすぎて怒鳴り散らして、「私無理」ってなって。夫と話して、一人の時間を持つことも大事だねって。それって小さいことでもよくて、スーパーに一人で行くとか。子どもたちも一緒にいると喧嘩になるので、娘だけ連れて、もしくは息子だけ連れて買い物行くとか。そういう時間を作らないと煮詰まっちゃうなあと。

ある日、子どもから「今日、お母さん、一度も怒ってないね」って言われて。今の私は怒ってばかりだから……。なかなか難しいですよね。

WWD:どう対応していいか分からないなあって思いますよね。

Bさん:学校がない分、親がどうしたかで子供が変わるだろうなと思うので、責任と重みを感じています。

WWD:小学校に上がったお子さんがいる家庭は、勉強問題がかなりあったでしょうね。小さいお子さんがいるDさんはいかがですか?

Dさん:子供が小さいので親に長時間、ほっとかれると気を引きたくて嫌なことをするんです。些細なことなんですけど、手をつねったり、パソコンを叩いたり、物を落としたりとか。それが重なると、心身ともにストレスフルになるというか。ただ、うちは年長と年少で歳が近ので2人で遊んでくれるからまだいいですけど、家のお隣さんなんかは、3歳と生まれたばかりの子がいて、赤ちゃんの面倒を見ながら仕事をするのは大変だなあって思います。

Cさん:リモート中は、家にいるけど働かないといけないから。子どもの相手できないですよね。個人的には、運動量が圧倒的に足りなくて太ったなあと。散歩っていってもたかがしれてますし。そういう感じだから、週1仕事に行くと、ものすごく疲れちゃって……。これ週5日には戻れないかもって思っちゃいますね(笑)。フルフル働いて、帰ってきて炊事洗濯、掃除と考えると。出来ないかも。

全員:分かります。週5日会社行くのはもうきついですよね……。

オンラインで夜でも友だちと話してストレス解消

WWD:その辺のストレス解消法はどうしてますか?

Bさん:Zoom飲みするのがストレス解消!

Cさん:いいな〜。まだデビューしてないんですよね。

Aさん:Zoom飲みいいですよね。普段は、夜とか飲み会とか行けなかったですから。

Bさん:海外の友達とこの前Zoom飲みしたんですけど、「なんだ、こんなに簡単だったんだ。会わなくてもいいね」って。すぐそこにいるような感じで話ができるのでいいよねって。

Cさん:私は、やっぱりビール飲んでゆっくりするとか。あと結構、寝てますね(笑)。移動しない分、平日もしっかり睡眠取れるようになりました。

Dさん:ストレスそんなにないんですけど。これまでユーチューブはあんまり見たことなかったんですけど、今、すごいお世話になってて。ヨガのチャンネルとか完成度が高くて、朝と寝る前にむちゃくちゃやってます。スタジオに行かなくてもいいのかなと思ぐらいです。

あと、洗濯が楽しい。会社に行ってるころは、外に干せないから浴室乾燥にしていたけど、すごくいい天気の日に、洗濯物をたくさん干すと洗濯物が喜んでいる感じがしてそれが意外にストレス解消になりますね。9時ぐらいに干して11時には乾く。その開放感が気持ちいいです。

WWD:ベランダでご飯を食べたりすると、ちゃんと日光に当たるって気持ちいいなあって思えますよね。ではリモートでの仕事はどうですか?

Dさん:今、就業時間が9〜16時(時短)なんですけど、一応、その時間で働いてくださいということになっているんです。でも15時50分ぐらいに「この資料作ってください」って指示が来て、翌朝の9時過ぎにはその資料を提出することがあります。明らかに就業時間内にやっていないことはみんな分かっていると思うんですけど、黙認してもらってます。部署は子どもがいる人が多いので、日中、子どもの面倒を見ながら仕事は不可能だとみんな分かってくれています。ありがたいなあと思います。

WWD:なるほどです。今後は、こうやって子どもが家にいて働くという状態になってくると就業時間ではない働き方が認められていくようになりそうですね。

Aさん:弊社は、コロナの前から、共有をしっかりしましょうって上司から言われていたので。それが苦手だった人も、こういう状況で共有をしっかりしてくれるようになり仕事はやりやすいですよね。みんなが意識できるようになったと思います。

今回のことで旦那の会社が緊急事態宣言解除後も在宅勤務を基本とすることになったんです。それを機に、私は逆にフルタイム勤務に戻すことにしました。今まで時短で、色々と悔しかった……。旦那が基本家にいることで、私が18時に必ずしも毎日保育園のお迎えに行かなくてよくなったのでフルタイムに戻しました。

3月にすぐに在宅勤務を可能となり、解除後も100%出社にはしないとしているので、フルタイムにできて涙が出るくらい嬉しかったですし、ライフスタイルが変わるきっかけになったと思います。

Bさん:コロナ禍で最初は、在宅勤務の推進だったのが、途中からノートパソコンが対応されたり、在宅勤務がしやすい環境が整いました。ただ、情報共有に課題があるなと思っています。

不便と思うのは、他部署の人に確認するのに、メールしか手段がないのはきついなと思っています。付き合いがある人とはライン、電話番号を交換していますが、全然知らない人もいるので。他部署の人と連絡取るのに、個人の電話はNGな場合があって。メールのみ。誰でも気軽に電話やチャットでつながれたらといいなと思います。電話で話した方が話が円滑に進むこともありますよね。

Dさん:弊社も電話ではなく、メールのやりとりなんです。でも、言葉のコミュニケーションが上手い人と、メールでのコミュニケーションが上手い人は別だと思うんですよね。メールでやりとりすると、この人何言ってるんだろう?と思うことがあって。メールだけだと、どんどんトンチンカンな方向に行っちゃう(笑)。

あとは、出社しないことで会社の情報が入りづらくて、いろいろ相談されても判断が自分でできないことが増えていると思います。

Cさん:私は、ミーティングがリモートでできるのはいいなと思って。今までは、クライアント先への行き帰りだけでも大変でしたが、今はそれがないので。なので、逆にミーティングがめちゃくちゃ入って……。19時半から会議と言われると正直、辛いなあと思う。1時間以上のミーティング2本続けたら、家庭が崩壊しそうになります(笑)

WWD:私のためにズラしてとは言いずらかったりしますよね。やっぱりコミュニケーションなんでしょうか?

Bさん:なので以前に比べて、CCに人を入れるようになりましたね。ここまで進んでいるよと教えるためにも。働いてます、アピールもしたりして(笑)

全員:重要、重要(笑)

子どもの手が戦力の一つ

WWD:通勤時間がなくなったとはいえ、子どもがいると時間に追われる生活は変わらないですよね。時短テクってありますか?

Aさん:これまでは会社に行かなければいけないことで、自分でやった方が早いと思ってお手伝いとかさせてなかったんですね。今は時間があるので、「テーブル拭くのはお姉ちゃんの仕事だよ、箸を片付けるのは息子の仕事だよ」とか。お手伝いさせることで、自分も楽になっていて時短になっているかも。

Bさん:うちも、子どもがお手伝いするのが当たり前になりましたね。一つの戦力になりました。

あとは、仕事をしながら家事もできるので、煮込んでいる間に仕事もするとか。仕事と家事を同じ時間軸でできるのはいいですね。よくないかもしれないけど、ずっと家にいて3食作らなくちゃいけないので、お惣菜を買ってくるとか、そういうことに罪悪感が逆になくなったと思います。バランスが取れるようになったなあと。

Cさん:うちの子は、朝、洗濯物を干すのと夕方のお風呂の掃除がお兄ちゃんの仕事。ベランダの植物の水やりが下の子。あなたの仕事よ、とするとそれをきちんとやってくれます。これでも少し楽になりました。

Dさん:食器を運んでもらったり、着替えも自分でやるとか。みなさんと同じように、これまで平日の朝は時間がないので、無理やり親がやっていたところ、自主的にやってもらえるようになったのでよかったです。

結果的に時短になったのは、朝食の後すぐに、昼食と夕食も一緒に作っちゃうんです。朝はまだ体力があるので集中してまとめて作っちゃうと楽だし短い時間でハイパフォーマンスなモノが作れると思いました。これまでは夕方、くたくたで帰ってきてから、夕飯を作りながら相手をしながらってなってたから。今は、夕方仕事が終わったら、散歩に行って、帰ってきて、お風呂に入れて、7時ぐらいからビール飲みながら、全員そろって夕飯食べる。そういうところを楽しんでるかなと思います。

WWD:みなさん、リモートワーク中に買ったものはありますか?

Aさん:時間があって片付けをするようになって、家具を買いました。

Cさん:ワンタッチ式テントを買ってみました。キャンプを想定して、無駄に窓開けて少し寒くしてみるとか(笑)非日常を味わえるみたいで子どもたちは喜んでます。

Bさん:緊急事態宣言中は公園にも行けなかったので、軽い、グローブ・バット・ボールのセットを買って運動したり、掃除に行き届くようになって「うちの絨毯こんなに汚かったけ?」と思って買い換えたり。あとは「あつまれ動物の森」ソフトを買って家族みんなではまっていますね。

Dさん:子どものおもちゃですかねえ。100均の水鉄砲とかから、ちょっと高いブロックとか。アマゾンプライム会員で、テレビで見られるようにするアマゾン・ファイヤー・スティックがすごくて!5000円ぐらいなんですけど、本当になんでも見られる。魔法のよう。夫も私も仕事で煮詰まっている時なんかは、「ドラえもん」とか見せてます。あとはトランポリン。本来の目的である「飛ぶ」という行為ではなく、子どもたちの格好のおままごとの場所になってしまいましたが(笑)。

 緊急事態宣言解除後、徐々に社会活動が復活してきており座談会参加者の4人も週1〜3日の出勤と在宅勤務となり、子どもたちは学校や保育園が始まりました。みなさん、「緊急事態宣言下は、夫、子どもたちが家にいながらの在宅勤務は本当に辛かった」と言います。宣言解除後、子どもたちが学校・保育園に行くことで、「仕事に集中できるようになった」「子どもたちもストレスが発散されていると感じる」という声が聞かれました。ニュー・ノーマルを模索する中で、今回のリモート勤務は働くママだけでなく、全ての働く人たちにとってライフ・ワーク・バランスを見直すきっかけになったのではないでしょうか。

The post ファッション・ビューティ業界で働くママたちの在宅ワーク 「本当にきつかった」でも「以前には戻れない」覆面本音トーク appeared first on WWD JAPAN.com.

ファッション・ビューティ業界で働くママたちの在宅ワーク 「本当にきつかった」でも「以前には戻れない」覆面本音トーク

 新型コロナウイルス感染拡大から緊急事態宣言を受け、多くの働くママ・パパはてんやわんやだったのではないでしょうか。子どもが家に居ながら、仕事もこなす。その状況は想像よりも大変です。緊急事態宣言が解除になった今も、子どもたちの学校などは分散登校や時短授業などで新しい学校生活がスタートしていますが元通りとはいきません。今回、緊急事態宣言中に、ファッション・ビューティ業界で働くママたちと覆面座談会を敢行。座談会中、子どもたちが乱入しながらもさまざまな本音のトークが繰り広げられました。在宅ワークのママたちの現状とはーー。

Aさん:海外ビューティブランドPR&コミュニケーションディレクター。家族構成は夫と小学2年生の娘、4歳の保育園年中の男の子。緊急事態宣言中は在宅勤務

Bさん:国産ビューティブランドPR。家族構成は夫と小学3年の息子。緊急事態宣言中は週1出勤

Cさん:ファッション系PR会社シニアマネージャー。家族構成は夫と小学4年の息子、保育園年中の娘。緊急事態宣言中は週1出勤

Dさん:セレクトショップ広報。家族構成は夫と保育園年長の娘、年少の息子。緊急事態宣言中は在宅勤務

WWD:家族構成は夫と中学1年の息子、小学3年の娘

WWD:急にリモートワークになったと思いますが、実際どうでしょうか?メリットはありますか?

Aさん:会社に行っていると、子どもたちのお迎えがあり、時間に制限があったので今はバタバタしなくてよくなったのは良かったです。あとは、これまで時短勤務の私の方が家事はメインでやっていたんですが、夫も今は在宅なので分担してやっています。今までの私の一番のストレスが料理だったので、それを夫がやってくれるのはストレスがなくなりました。絆も深まりましたし。ただ、緊急事態宣言が発令されて、子どももずっと自宅にいるとやっぱりストレスフルですよね(笑)。

Bさん:家だと電話もかかってこないですし、資料を作ったりというのは在宅の方が集中できますね。Aさんと同じように、夕方は焦って汗をかきながら子どものお迎えに行ってたんですけど、おしりの焦りがなくなったのはよかったなあと思います。あと、料理を作るのが好きなので、朝晩の品数は増えたかなあ。リモート前は、朝なんかはパン焼いて、ソーセージ焼いて、「早く、早く、早く」って「早く」を100回ぐらい言ってたんですけど(笑)。今は急がなくていいのでいいですね。

Dさん:急がなくていいっていうの分かります。メリットはやっぱり通勤の往復2時間が掛からないってことですよね。これまでは、週末に1週間分の食料の買い出しと、掃除で疲れてしまってたんですけど、平日にできるのはいいです。それに今まで週末は、月曜日のこと考えて遊びもそこそこだったけど、考えないで遊べる。週末の充実感ってあるなあと。

Cさん:同じです!おしりの焦りがなくなりました。ただ、職種的に電話がよく来るんですが、子どもが声を出した時に、「子どもがいて……」で済ませられる相手だといいんですが、済まされない相手だと困ります。本当に集中したいときや、邪魔されたくないときは、ネットフリックス(NETFLIX)とアマゾンプライム・ビデオ(AMAZON PRIME VIDEO)に頼っててテレビや映画を見せたりしてますね(笑)。申し訳ないですが、日中は、子どもとフェイス・トゥ・フェイスでも生返事になっちゃいます。あと、小学校に週1行くんですが、まあまあ宿題をもらってくるので。それがいつまで続くんだろう?とは思います。

子どもの勉強問題で親の責任重大に

WWD:分かります。普通だったら、学校の宿題って学校で習ったことの復習だから、子どもに任せてますけど、学校に行ってないから宿題って言っても、親が見ないといけない……。家にいても仕事をしてる訳で、その時間を確保するのは大変だなと。

Bさん:相手できないですよね。やっぱり子どもの勉強はストレスですね。おっしゃるように、親が見ないといけないですし。学校からも「するように」と指示をされていますからねえ。ほかの学校に通う子どもを持つママ友によると、「休校中に出た宿題も成績に加味します」って言われたらしんですよ。

全員:えーーー。怖い……。

Bさん:そうなると、回答が○になるまで何度もやらせないといけないじゃないですか。親の負担が半端なくて。習い事も、ピアノと公文やってるんですけどピアノはZoomで、結局練習も付きっ切りでやらないといけないし、日々のタスクを子どもにさせるのに、親がすごく労力を使わないといけないっていうのはありますよね。ただ反面、この子、こういうこと知らなかったんだ、とかが分かったのは良かったですね。

Aさん:習得のために、監視するという不毛な時間がありますよね。うちも上の子は小2でお勉強をしてもらわないといけないけど、そうすると下の子が何もすることがなくなっちゃって。お姉ちゃんの邪魔をしたりとか。私も、子どもに邪魔されるストレスがあって、仕事したいのにって。

それである時、すっごいストレスが溜まりすぎて怒鳴り散らして、「私無理」ってなって。夫と話して、一人の時間を持つことも大事だねって。それって小さいことでもよくて、スーパーに一人で行くとか。子どもたちも一緒にいると喧嘩になるので、娘だけ連れて、もしくは息子だけ連れて買い物行くとか。そういう時間を作らないと煮詰まっちゃうなあと。

ある日、子どもから「今日、お母さん、一度も怒ってないね」って言われて。今の私は怒ってばかりだから……。なかなか難しいですよね。

WWD:どう対応していいか分からないなあって思いますよね。

Bさん:学校がない分、親がどうしたかで子供が変わるだろうなと思うので、責任と重みを感じています。

WWD:小学校に上がったお子さんがいる家庭は、勉強問題がかなりあったでしょうね。小さいお子さんがいるDさんはいかがですか?

Dさん:子供が小さいので親に長時間、ほっとかれると気を引きたくて嫌なことをするんです。些細なことなんですけど、手をつねったり、パソコンを叩いたり、物を落としたりとか。それが重なると、心身ともにストレスフルになるというか。ただ、うちは年長と年少で歳が近ので2人で遊んでくれるからまだいいですけど、家のお隣さんなんかは、3歳と生まれたばかりの子がいて、赤ちゃんの面倒を見ながら仕事をするのは大変だなあって思います。

Cさん:リモート中は、家にいるけど働かないといけないから。子どもの相手できないですよね。個人的には、運動量が圧倒的に足りなくて太ったなあと。散歩っていってもたかがしれてますし。そういう感じだから、週1仕事に行くと、ものすごく疲れちゃって……。これ週5日には戻れないかもって思っちゃいますね(笑)。フルフル働いて、帰ってきて炊事洗濯、掃除と考えると。出来ないかも。

全員:分かります。週5日会社行くのはもうきついですよね……。

オンラインで夜でも友だちと話してストレス解消

WWD:その辺のストレス解消法はどうしてますか?

Bさん:Zoom飲みするのがストレス解消!

Cさん:いいな〜。まだデビューしてないんですよね。

Aさん:Zoom飲みいいですよね。普段は、夜とか飲み会とか行けなかったですから。

Bさん:海外の友達とこの前Zoom飲みしたんですけど、「なんだ、こんなに簡単だったんだ。会わなくてもいいね」って。すぐそこにいるような感じで話ができるのでいいよねって。

Cさん:私は、やっぱりビール飲んでゆっくりするとか。あと結構、寝てますね(笑)。移動しない分、平日もしっかり睡眠取れるようになりました。

Dさん:ストレスそんなにないんですけど。これまでユーチューブはあんまり見たことなかったんですけど、今、すごいお世話になってて。ヨガのチャンネルとか完成度が高くて、朝と寝る前にむちゃくちゃやってます。スタジオに行かなくてもいいのかなと思ぐらいです。

あと、洗濯が楽しい。会社に行ってるころは、外に干せないから浴室乾燥にしていたけど、すごくいい天気の日に、洗濯物をたくさん干すと洗濯物が喜んでいる感じがしてそれが意外にストレス解消になりますね。9時ぐらいに干して11時には乾く。その開放感が気持ちいいです。

WWD:ベランダでご飯を食べたりすると、ちゃんと日光に当たるって気持ちいいなあって思えますよね。ではリモートでの仕事はどうですか?

Dさん:今、就業時間が9〜16時(時短)なんですけど、一応、その時間で働いてくださいということになっているんです。でも15時50分ぐらいに「この資料作ってください」って指示が来て、翌朝の9時過ぎにはその資料を提出することがあります。明らかに就業時間内にやっていないことはみんな分かっていると思うんですけど、黙認してもらってます。部署は子どもがいる人が多いので、日中、子どもの面倒を見ながら仕事は不可能だとみんな分かってくれています。ありがたいなあと思います。

WWD:なるほどです。今後は、こうやって子どもが家にいて働くという状態になってくると就業時間ではない働き方が認められていくようになりそうですね。

Aさん:弊社は、コロナの前から、共有をしっかりしましょうって上司から言われていたので。それが苦手だった人も、こういう状況で共有をしっかりしてくれるようになり仕事はやりやすいですよね。みんなが意識できるようになったと思います。

今回のことで旦那の会社が緊急事態宣言解除後も在宅勤務を基本とすることになったんです。それを機に、私は逆にフルタイム勤務に戻すことにしました。今まで時短で、色々と悔しかった……。旦那が基本家にいることで、私が18時に必ずしも毎日保育園のお迎えに行かなくてよくなったのでフルタイムに戻しました。

3月にすぐに在宅勤務を可能となり、解除後も100%出社にはしないとしているので、フルタイムにできて涙が出るくらい嬉しかったですし、ライフスタイルが変わるきっかけになったと思います。

Bさん:コロナ禍で最初は、在宅勤務の推進だったのが、途中からノートパソコンが対応されたり、在宅勤務がしやすい環境が整いました。ただ、情報共有に課題があるなと思っています。

不便と思うのは、他部署の人に確認するのに、メールしか手段がないのはきついなと思っています。付き合いがある人とはライン、電話番号を交換していますが、全然知らない人もいるので。他部署の人と連絡取るのに、個人の電話はNGな場合があって。メールのみ。誰でも気軽に電話やチャットでつながれたらといいなと思います。電話で話した方が話が円滑に進むこともありますよね。

Dさん:弊社も電話ではなく、メールのやりとりなんです。でも、言葉のコミュニケーションが上手い人と、メールでのコミュニケーションが上手い人は別だと思うんですよね。メールでやりとりすると、この人何言ってるんだろう?と思うことがあって。メールだけだと、どんどんトンチンカンな方向に行っちゃう(笑)。

あとは、出社しないことで会社の情報が入りづらくて、いろいろ相談されても判断が自分でできないことが増えていると思います。

Cさん:私は、ミーティングがリモートでできるのはいいなと思って。今までは、クライアント先への行き帰りだけでも大変でしたが、今はそれがないので。なので、逆にミーティングがめちゃくちゃ入って……。19時半から会議と言われると正直、辛いなあと思う。1時間以上のミーティング2本続けたら、家庭が崩壊しそうになります(笑)

WWD:私のためにズラしてとは言いずらかったりしますよね。やっぱりコミュニケーションなんでしょうか?

Bさん:なので以前に比べて、CCに人を入れるようになりましたね。ここまで進んでいるよと教えるためにも。働いてます、アピールもしたりして(笑)

全員:重要、重要(笑)

子どもの手が戦力の一つ

WWD:通勤時間がなくなったとはいえ、子どもがいると時間に追われる生活は変わらないですよね。時短テクってありますか?

Aさん:これまでは会社に行かなければいけないことで、自分でやった方が早いと思ってお手伝いとかさせてなかったんですね。今は時間があるので、「テーブル拭くのはお姉ちゃんの仕事だよ、箸を片付けるのは息子の仕事だよ」とか。お手伝いさせることで、自分も楽になっていて時短になっているかも。

Bさん:うちも、子どもがお手伝いするのが当たり前になりましたね。一つの戦力になりました。

あとは、仕事をしながら家事もできるので、煮込んでいる間に仕事もするとか。仕事と家事を同じ時間軸でできるのはいいですね。よくないかもしれないけど、ずっと家にいて3食作らなくちゃいけないので、お惣菜を買ってくるとか、そういうことに罪悪感が逆になくなったと思います。バランスが取れるようになったなあと。

Cさん:うちの子は、朝、洗濯物を干すのと夕方のお風呂の掃除がお兄ちゃんの仕事。ベランダの植物の水やりが下の子。あなたの仕事よ、とするとそれをきちんとやってくれます。これでも少し楽になりました。

Dさん:食器を運んでもらったり、着替えも自分でやるとか。みなさんと同じように、これまで平日の朝は時間がないので、無理やり親がやっていたところ、自主的にやってもらえるようになったのでよかったです。

結果的に時短になったのは、朝食の後すぐに、昼食と夕食も一緒に作っちゃうんです。朝はまだ体力があるので集中してまとめて作っちゃうと楽だし短い時間でハイパフォーマンスなモノが作れると思いました。これまでは夕方、くたくたで帰ってきてから、夕飯を作りながら相手をしながらってなってたから。今は、夕方仕事が終わったら、散歩に行って、帰ってきて、お風呂に入れて、7時ぐらいからビール飲みながら、全員そろって夕飯食べる。そういうところを楽しんでるかなと思います。

WWD:みなさん、リモートワーク中に買ったものはありますか?

Aさん:時間があって片付けをするようになって、家具を買いました。

Cさん:ワンタッチ式テントを買ってみました。キャンプを想定して、無駄に窓開けて少し寒くしてみるとか(笑)非日常を味わえるみたいで子どもたちは喜んでます。

Bさん:緊急事態宣言中は公園にも行けなかったので、軽い、グローブ・バット・ボールのセットを買って運動したり、掃除に行き届くようになって「うちの絨毯こんなに汚かったけ?」と思って買い換えたり。あとは「あつまれ動物の森」ソフトを買って家族みんなではまっていますね。

Dさん:子どものおもちゃですかねえ。100均の水鉄砲とかから、ちょっと高いブロックとか。アマゾンプライム会員で、テレビで見られるようにするアマゾン・ファイヤー・スティックがすごくて!5000円ぐらいなんですけど、本当になんでも見られる。魔法のよう。夫も私も仕事で煮詰まっている時なんかは、「ドラえもん」とか見せてます。あとはトランポリン。本来の目的である「飛ぶ」という行為ではなく、子どもたちの格好のおままごとの場所になってしまいましたが(笑)。

 緊急事態宣言解除後、徐々に社会活動が復活してきており座談会参加者の4人も週1〜3日の出勤と在宅勤務となり、子どもたちは学校や保育園が始まりました。みなさん、「緊急事態宣言下は、夫、子どもたちが家にいながらの在宅勤務は本当に辛かった」と言います。宣言解除後、子どもたちが学校・保育園に行くことで、「仕事に集中できるようになった」「子どもたちもストレスが発散されていると感じる」という声が聞かれました。ニュー・ノーマルを模索する中で、今回のリモート勤務は働くママだけでなく、全ての働く人たちにとってライフ・ワーク・バランスを見直すきっかけになったのではないでしょうか。

The post ファッション・ビューティ業界で働くママたちの在宅ワーク 「本当にきつかった」でも「以前には戻れない」覆面本音トーク appeared first on WWD JAPAN.com.

19日に開業する銀座の「ユニクロ トウキョウ」 「2020年代のアパレル小売業をこの店から変える」と柳井会長

 ファーストリテイリングは、「LifeWearの全てをここに」をコンセプトにする日本最大級のグローバル旗艦店「ユニクロ トウキョウ」を6月19日に開業する。前日の18日に記者会見と内覧会を行った。

 「ユニクロ トウキョウ」はトータルクリエイティブディレクターを佐藤可士和が、内外装をスイス発の建築家ユニット、ヘルツォーク&ド・ムーロン(Herzog & De Meuron)が手掛ける。1~4階の4フロアで売り場面積は吹き抜け部分も含めて約4950平方メートル。ウィメンズ、メンズ、キッズ、ベビー商品を品ぞろえする。

 会見に登壇した柳井正・会長兼社長は、同店や4月に開業した「ユニクロ パーク横浜ベイサイド店」、6月5日にオープンした「ユニクロ原宿店」の出店を機に、「本当に必要な商品を世界と一緒に共鳴して作る。マーケティングを超えたソーシャルな存在になりたい」と発言。「2020年代の世界のアパレル小売業を変える、あるいは、アパレル小売業ではなくなる。本当に世界に必要とされる新しい企業や産業を作りたい」と続けた。

 記者会見での柳井正会長兼社長のコメント概要は以下の通り。

 コロナから元気になる、そのためにこの店がある。店はお客さまのためにあるので、ぜひ、千客万来にしていきたい。それによって日本が元気になる。そういった力になれればと思う。

 吹き抜けが特徴的なこの店は、グローバルフラッグシップストア(旗艦店)だ。東京・銀座はコロナによって街全体の元気がなくなっていたが、これが再生すればありがたい。この店は、ユニクロの最先端の売り場だ。お客さまに来ていただき、買い物してもらって、よかったなと思ってもらうことが大事だと思う。「ユニクロ パーク横浜ベイサイド店」「ユニクロ原宿店」、そしてこの銀座のグローバルフラッグシップストアの3店舗で元気にしたい。

 われわれは情報製造小売業、デジタルコンシューマーリテールを目指している。お客さまに情報をお届けして、買い物してもらう。本当に必要な商品を世界と一緒に共鳴して作り、今後はコマーシャルな(意図の)マーケティング(を行う)だけではなく、マーケティングを超えたソーシャルな存在になりたいと思っている。今はソーシャルな時代だ。20年代の世界のアパレル小売業を変える、あるいは、アパレル小売業じゃなくなる、そういうあり方にもっていきたいなと思う。

 そのためには、コロナ後、人々のライフスタイルがどのように変わるのか、20年代の世界はどういうものなのかを想像しながら、会社自体を変えなければならないと思っている。その答えがこの店の中にあればと思う。

 歴史的に時代を先導したアパレル小売業の中には、マークス&スペンサー、シアーズ、ウォルマ―ト、リミテッド、ギャップ、「ザラ(ZARA)」、H&Mや、スポーツメーカーのナイキ、アディダスなどがある。それらを超える、新しい業態を作りたいと思うし、究極の普段着、本当にいい服、新しい価値を持つ服を創造して、新しいいい空間で売っていく。LifeWearの世界を具現化していきたい。

 さらに、記者との質疑応答の概要は以下の通り。

――コロナでお客さまを呼べない時代が続く。行動変容が起こるが、お店の役割は変わっていくのか?

柳井正・会長兼社長(以下、柳井):お客さまのためになる店は栄える。その店がある意義があって、そこで働く人が使命感を持っていて、いい商品を売っている。行ってよかったなという体験ができる。そういう店が生き残るのではないかと思う、逆にいえば、それ以外の店は今回のコロナでほとんどダメになるという気がしている。コロナで時代が変わって、流れが速くなった。これまで10年かかったことが1年間で過ぎる次の世界になっている。コロナは20年代を象徴するような出来事で、20年代はコロナとその再起の時代になる。再起の時代を象徴するようなお店を作りたかった。

――本来なら今は東京五輪の直前で、世界が東京に注目するタイミングだった。当初思い描いていたグローバル旗艦店からの変化はあったのか?

柳井:確かに言われている通り五輪は延期となったが、コロナはそんなに続くわけがない。最長で1年ぐらいだと思う。コロナが起きた中で、このような旗艦店を作る人はいないと思うので、不幸だけど幸運だと思う。ここは東京・銀座、日本を代表するハイストリート。その中でも端にある。東京駅から人の流れが銀座や日本橋につながる、そのきっかけになれれば。このエリアの再編のきっかけになりたい。ここは恐らく、銀座で最後の大型物件だと思う。いままで(館に)人が来なかったというのは、優れたコンテンツやメッセージがなかったからと思う。それを発信することで、お客さまに来ていただいて、できるだけたくさん買いものをしていただきたい。

――在宅勤務が増え、普段着のニーズが高まっている。ユニクロに追い風がきているか?

柳井:追い風が着ていると思うが、それを予想していたということでなく、われわれのような考え方が、世界の中心になっていくんじゃないかなと思う。究極の普段着を世界で売りたいなと思っているので、そのために原材料、資材、製造、物流、小売り、マーケティング、お客様とのコミュニケーション、従業員とのコミュニケーションをダイレクトにできる新しい会社、新しい業態を作ることをやっていきたい。

――先ほど「ザラ」などの名前を挙げて、それら時代をつくってきた業態とは違うものを作りたいという発言があった。どのように無二の店になっていくのか?インディテックスにはまだ売上高で1兆円近い差がある。

柳井:売上高は問題ではない。社会にとって本当にいい、プラスになる、もっとソーシャルな関係が構築できる小売業、あるいは、新しい業態が、10年や20年に一度出てくる。新しい産業を作り出すという気持ちでやっている。

――コロナによってライフスタイルはどう変わっていくか。

柳井:日本は先進国の中でも特に安心な国だったが、コロナによって安心な国ではないんじゃないかと思い始めた。それとステイホーム期間があったことで、生きることについてや家族、人生など、そういったエッセンシャルなものを考える時間になったと思う。そういうことをきっかけに人は変わっていくと思う。コロナを克服するだけではなく、社会・経済の課題を解決していく。そのために自分の人生をどう設計していくか。超えられない問題や課題を解決していくこととはどういうことなのか、本当に大事なものを世界中の人が考えたはず。一つの時代の転換期になるんじゃないかと思う。本を読んだ人も多いと思うので、歴史的なこと、世界的なこと、あるいは日本とはどういう国なのか、そういうことがよく考えられる期間だったと思う。

松下久美:ファッション週刊紙「WWDジャパン」のデスク、シニアエディター、「日本繊維新聞」の小売り・流通記者として、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)

The post 19日に開業する銀座の「ユニクロ トウキョウ」 「2020年代のアパレル小売業をこの店から変える」と柳井会長 appeared first on WWD JAPAN.com.

データを活用し、消費者の潜在的なニーズを捉えてD2Cブランドを展開するユイクの狙いとは?

 3月19日、D2C事業をメーンとするユイクが設立された。もともとはインターネット広告を中心とした事業を行うバレットグループ内にあったD2C事業部が、今回グループ会社としてそこから独立した形だ。限りなくデータドリブンな観点から本質的にユーザーが欲している製品を創造するD2C事業を目指し、現在はコスメブランド「ヴィーナススキン(VENUS SKIN)」と悩み解決型ECブランド「キレイノワ(KIREINOWA)」などを展開する。今回、同社の萩原渉代表に、自社の強みとこれからの展望を聞いた。

D2Cに特化した2つの事業を軸に
成長を目指す

WWD:あらためてユイクがグループ会社として独立した経緯は?

萩原渉ユイク代表(以下、萩原):広告事業をメーンにしていたバレットグループでD2C事業を行っていたが、さらにその事業を拡大させていくために分社化した。分社化することで、バレットグループの強みである見込み顧客となるユーザーの広告一次接触情報(性別、年代、趣味嗜好、よく閲覧するサイトやニュースなど)データと、すでに製品を購入いただいたお客さまのデータベースを掛け合わせることで、よりニーズの高い製品を世の中に広められるのではないかと考えている。またデータを活用すれば、「こういう製品が欲しかった」というお客さまの潜在的なニーズに対してアプローチしやすく、結果としてファンになってもらいやすい。

WWD:ユイクの企業理念は?

萩原:「人とモノと技術を結び、育てていく」を理念として掲げている。一つの製品を作ってお客さまに届けるまでには、OEM工場や物流などさまざまな人たちの思いや技術が詰まっている。私たちはそんな思いと技術を結んで、生産者もお客さまもお互いに感謝し合えるような製品を提供することを目指している。ユイクという企業名も“結ぶ”と“育てる”を組み合わせて作った造語“結育”に由来する。

WWD:現在手掛けている事業は?

萩原:スキンケアコスメブランド「ヴィーナススキン」を中心としたブランディングプロダクト事業とお悩み解決型ECブランド「キレイノワ」を中心としたデータプロダクト事業の2つを展開している。ブランディングプロダクト事業業は普遍的に続く価値のある製品を開発し、顧客と継続的なコミュニケーションを取って、ファンを増やしていくことを心掛けている。主にサブスクリプションでサービスを提供していく。もう一方のデータプロダクト事業は、流行や時代のニーズを捉えたスピード感のある製品開発を行っている。主に悩み解決型の製品展開で、単品購入が多い。

WWD:D2Cといっても、さまざまなジャンルがあるが、この2つの事業はどのような経緯でスタートした?

萩原:両方ともキーワードの検索数が大きく増えているところに着目してスタートした。月間にどのくらい検索されているか、昨年と比べてそのキーワードの成長率がどのくらいかなどを重要視している。

WWD:売り上げ計画は?

萩原:ブランディングプロダクト事業はまだスタートしたばかりなので初年度は約5億、データプロダクト事業は年間で約15億円、会社としてはその他の事業も合わせて今期は売り上げ24億円を見込んでいる。現在はデータプロダクト事業の方が売り上げは多いが、23年度までにはブランディングプロダクト事業の売り上げ比率を7割くらいまで高め、より継続的に顧客と関係性を築ける企業を目指す。

働きやすい環境づくりで
社員のエンゲージメントを上げる

WWD:バレットグループは、2020年度日本版「働きがいのある会社」においてベストカンパニー賞を、「WOMAN‘S VALUE AWARD 2019」のICT部門において優秀賞を受賞するなど、働く環境の向上にも注力しているが?

萩原:まず前提として会社が社員を大切にしていないと、それがお客さまに伝わってしまい、購入しようという気持ちになりにくいと考えている。だからこそ社員が働きやすい環境であることは何より大切だ。

WWD:女性の働きやすさに関しては意識していることは?

萩原:産休を取りやすい環境づくりは意識している。やはり働きながら子供を産むというのはかなりの覚悟だと思うので、そういった社員を応援してあげたいし、若い社員にも安心して働いてもらいたい。フレックス制も導入しており、今後は男性も育休がとれるようにしていきたい。

WWD:最後に今後の目標は?

萩原:使っていること自体が環境保全やサステナブルにつながる製品づくりをやっていきたいと考えている。例えば「ヴィーナス」シリーズのボトルを生分解性のプラスチックにするなど、お客さまが普通に使っているものが環境保全につながって、「いいことしている」と自分を褒めてあげられるような製品づくりを心掛けていきたい。

ユニークな制度が
働きやすさにつながる

 昨年からインターンとして同社で働き、今年4月に新卒社員として入社しました。弊社はユニークな制度が多く、個人的にはシエスタ制度がお気に入りで、昼休みの1時間とは別に15分の昼寝が認められていて、作業効率もアップします。ほかにも社員同士で誕生日を祝い合うなど行事が多く、人を大切にしている会社だと感じています。今はリモートワーク中ですが、福利厚生として家具のレンタルサービスのレンタル料金の半分を会社が負担してくれたり、リモートワーク手当として1日5時間以上勤務すると500円支給してくれたり、さまざまなサポートを用意してくれているのもうれしいです。

ユイクが展開する2つのコア事業


問い合わせ先
ユイク
03-6403-5249

The post データを活用し、消費者の潜在的なニーズを捉えてD2Cブランドを展開するユイクの狙いとは? appeared first on WWD JAPAN.com.

まだ、あなたが知らないニューヨーク最新トレンド BLMが雑誌とブランドを裁くSurviving BLM

 ニューヨークのファッション業界で活躍するクリエイティブ・ディレクター、メイ(May)と、仕事仲間でファッションエディターのスティービー(Stevie)による連載第10回。普段は、新しいレストランを開拓しながら情報交換する2人だが、ロックダウンが始まった3月からは、Zoomミーティングに切り替えた。6月8日から少しずつビジネスが再開しつつあるニューヨークではあるが、レストランの屋内でランチができるのは秋頃になりそう。“You’d Better Be Handsome”では、トレンドに敏感なレイチェル(Rachel)を交えて、ニューヨークのトレンドや新常識についてトーク。今回のテーマは、避けては通れない話題、ミネアポリスから全米へ、そして世界各地へと広がりを見せるBLM(Black Lives Matter=黒人の命は大切)や人種差別に対する抗議運動と、それがファッション業界にどう影響しているのか、そしてどう対応していくのかについて。

スティービー:ニューヨーク市も6月8日から待ちに待った再開第1段階に入って、街が動き出してきたけれど、毎日あちこちで抗議活動が行われているし、ムーブメントはどんどん大きくなってきている。

メイ:最初のころに暴動が起こったことで、コロナのロックダウンのときにはただ閉めていただけの店やレストランまで、ガラスを割られないように木の板を張ったりして、なんだかマンハッタンは悲しい景観よ。

スティービー:今回のミネアポリスの事件は、結果的に人種問題のティッピングポイントとなったね。今まで我慢してきたことが溢れ出したという雰囲気。沈黙は暴力とまで言われている今、当事者だけが訴えてもこれまでと同様、変革はないことにみんな嫌気がさしたのだと思う。デモに参加しているのも、ニューヨークでは黒人よりも白人が多いように見える。

メイ: 今回のことでいくら賛同してもそれは行動として伴わなければダメで、この件に関連して、これまでの行いを改めたり、責任をとって辞任に追い込まれたりするケースもある。ファッション界もかなり揺さぶられている。

人種差別の指摘を受け、
編集長ら続々辞任へ

メイ:日々、関連ニュースが入ってくるけど、雑誌のトップが辞任に追い込まれているのには驚いた。まずはコンデナストの「ボナペティ(Bon Apetite)」の編集長辞任かな。

スティービー:辞任したというか、辞任に追い込まれたアダム・ラポート(Adam Rapport)は、元「GQ」のファッションディレクターだから、食の雑誌に移ってからもファッション業界とのつながりが強い人だった。16年前のハロウィンで、プエルトリコ人を装って顔を茶色く塗ったときの写真が今回浮上。追い討ちをかけるように、「ボナペティ」のビデオチュートリアルには白人しか起用されていないといった告発が出てきて辞任につながった。

レイチェル:16年前って、今とは価値観が違ったときだし、気の毒な気もするけど、その写真をきっかけに、コンデナストにおける雇用も指摘され始めた。黒人のスタッフの人が、白人スタッフより仕事が多いのに給料が低いとか。どんどん出てきている。「ボナペティ」の料理チュートリアルは、自粛中かなりお世話になっていたんだけど、確かに白人しか出ていなかったかも?

メイ:続いて2010年に発足したブログ「マン・リペラー(MAN REPELLER)」で大人気になったリアンドラ・メディン(Leandra Medine)も辞任。ファッションショーでもいつもフロントローで、おしゃれスナップの常連だったのにね。裕福な層ばかりを相手にしているコンテンツは以前から問題視されていたけど、今回のムーブメントに対する彼女の賛同コメントに対しては、400件以上の不満不平のメッセージが。さらに「マン・リペラー」で受けた人種差別などを元スタッフが続々とツイート。同じ頃、アメリカでは人気のウェブマガジン「リファイナリー29(Refinery 29)」の編集長、クリスティーン・バーベリック(Christine Barberich)も辞任した。このウェブマガジンは、特に最近はダイバーシティーにもフォーカスしていたように外からは感じたし、ややフェミニスト的な立ち位置にあったのにもかかわらず、内部は違ったってことかな。#BlackAtR29というハッシュタグまでできてしまったらしい。こちらもマガジン生き残りのための辞任てところかな。

スティーブン:「ビジョネア(VISIONNAIRE)」の創設者として、その後「Vマガジン」をやりながらも「ハーパーズ バザー(Harper's BAZAAR)」のクリエイティブ・ディレクター、そして現在は米「エル(ELLE)」のクリエイティブ・ディレクターであるスティーブン・ガン(Stephen Gan)も、黒人スタッフやモデルに対しての差別を指摘されている。

レイチェル:この手のニュースはしばらく続きそうよね。他の雑誌やブランドでも、黒人スタッフは幹部であっても給料が同じポジションの白人よりも大幅に低かったなどの指摘も出ていて、米「ヴォーグ(VOGUE)」編集長のアナ・ウィンター(Anna Wintour)もこれまで黒人スタッフにちゃんと対応してこなかったとかなりたたかれているし、本人もそれについて謝罪をしている。

スティービー:さらに驚かされたのは、その謝罪について元「ヴォーグ」エディターで黒人のアンドレ・レオン・タリー(Andre Leon Talley)がインターネットラジオの「シリウスXMショー(Sirius XM show)」上のインタビューで、「アナはイギリス人で、植民地の環境から抜けられないし、抜けることはない。彼女のコメントそのものが、白人の特権だということが分かっていない」と厳しくコメントしている。先月にタリーが発表した自伝「The Chiffon Trenches」でも、アナ・ウィンターに受けたひどい扱いについて細かく書かれていたけど。

メイ:このタイミングで、「ハーパーズ バザー」は153年の歴史のなかで初めての黒人というか、白人以外の編集長の就任を発表。サミラ・ナサール(Samira Nasr)は、ニューヨークでは知られた人で、もとをたどれば「ヴォーグ」のグレース・コディントン(Grace Coddington)のアシスタントで、「エル」や「インスタイル(In Style)」「ヴァニティ・フェア(Vanity Fair)」などでファッションディレクターを経て就任した。キャリア的にも適任で、レバノン人の父とトリニダードトバゴ出身の母のもとに、カナダで生まれたという経歴も、ダイバーシティーが叫ばれる今、有利に動いたのかも。若返った感じも雑誌にはプラスなはず。

勝敗を分けるブランドの対応

スティービー:今回のムーブメントは、黙っていることが罪と繰り返し言われているから、ブランド側も気をつけながらも、自分たちの立ち位置をはっきりさせるためにメッセージを発信しているし、寄付も積極的に行なっている。ただ、それまでの態度や行動が伴っていないと逆に告発されてしまうという、ソーシャルメディアはまるで公開裁判のよう。

メイ:ブランドの多くは、黒人差別をなくす努力をするという声明を発表すると同時に、BlackLivesMatter(黒人の命は大切)基金をつくり、黒人差別と闘う団体に寄付をしている。例えば人気コスメブランドの「グロシエ(GLOSSIER)」は、100万ドル(約1億円)を寄付すると発表。50%は黒人差別を撤廃する団体へ、残りの50%は黒人が経営するビューティビジネスに助成金として配る。発表したのが5月30日でジョージ・フロイド(George Floyd)氏の死から5日以内と決断が早いのがポイント。

スティービー:アディダス(ADIDAS)は、これからの4年間で米国の黒人コミュニティーに対して、1億20万ドル(約106億円)を寄付すると約束。毎年50人に大学進学の費用を全額出すとも。今後、米国内での30%の新しい雇用は、黒人またはラテン系の人にするという声明も出している。

レイチェル:ソーシャルメディア上では、ダイエット プラダ(DietPrada)をはじめ、ある意味の活動家たちが、「セリーヌ(CELINE)」、サステイナブルなビジネスで知られる「リフォメーション(REFORMATION)」、全米で展開されるライフスタイル系「アンソロポロジー(ANTHROPOLOGIE)」といったブランドにおける反黒人的な文化を内部告発をもとに次々に発信しているし。それによって「リフォメーション」のCEOが辞任に追い込まれることにもつながった。

メイ:一方でナイキ(NIKE)やツイッター社は、“ジューンティーンス”と呼ばれる6月19日を記念日にすると発表。この日は1865年 に最後の奴隷制度が廃止された記念すべき日で、“フリーダムデー”とも呼ばれているらしい。行動力の早さにリスペクトが集まるわけだね。

アメリカだけの問題ではない
人種差別

スティービー:今回のことに至る前にも、黒人やアジア人に対する差別を指摘されていたブランドもあるよね。今年の頭に、「プラダ(PRADA)」が、架空の生物をイメージしたというキャラクターの人形がブラックフェイス(黒人に扮して顔を黒く塗る)表現だと批判されて問題になったのは記憶に新しい。すぐにその人形を撤去して謝罪し、今後人種差別がないようにスタッフをトレーニングすることと、ダイバーシティーオフィサーを外から雇うことを約束して終わったけど、数カ月後の今だったらそれじゃ済まなかったかもね。

レイチェル:「グッチ(GUCCI)」も昨年、ネックの部分が黒人の口に見えるデザインのタートルネックセーターを発表して、このアイテムは“レーシストセーター”というニックネームがつけられてしまった。

スティービー:「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE & GABBANA)」がキャンペーン上で、中国人モデルにパスタを箸で食べさせるシーンが炎上したのも記憶に新しい。

メイ:自分とは異なる視点からものを見ている人たちがたくさんいるということを認識し、普段から人種差別に対する感覚を鍛錬しておかないと、気づいたときにはすでに遅し、みたいな。今はなんでもネットに載って世界中に配信されるわけだし。セカンドチャンスがもらえるとは限らない。同じようなミスを犯した政治家もたくさんいるけど……。ファッションブランドも、高いプライスを付けて付加価値を売っているわけだから、みんな厳しい目でチェックしている。

レイチェル:イタリアに限らずだけど、ブランドは世界中で売られるわけだし、そこを意識してデザインしないと危険。逆に言えば、アジアにも黒人や有色人種に対しての差別はあるし。そういう部分も指摘され始めるかも?

スティービー:そういえば「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」は落書きされたロスの店の看板を、そのままインスタグラムにアップしたり、そういう繊細なセンスは印象に残る。

レイチェル:おーって思ったのは、韓国の人気グループBTSは、ファンたちにBlackLivesMatterに寄付することを提案し、すでに100万ドル(約1億円)を集めて、このまま200万ドル(約2億円)に届く勢いらしいよ。BTSの人気は世界的だけど、そのあたりの行動力というか、リーダーシップが素晴らしい。

メイ:インスタだけで、200万人の“いいね”があるから、一人1ドル(約106円)寄付すれば200万ドルなんて一瞬で集まる。すごい影響力!

急ピッチ、ハリウッドの意識改革

メイ:テレビと映画業界も、BlackLivesMatterで揺れている。

レイチェル:衛生・ケーブルTV放送局のHBOが、映画「風と共に去りぬ(Gone with the Wind)」をプラットフォームから削除したのが話題になっている。これが人種差別的な映画だとは考えたこともなかった……。時代背景そのものが人種差別だらけだから。

スティービー: 1989年から放送されていた番組「コップス(COPS)」もキャンセルになった。毎回本物の警察が、怪しげな人を逮捕するシーンを放映していたわけだけれど、本当のところ悪いことしたかどうかも分からないのに、警察が武力を行使しているシーンを映していた。こんなに警察の暴力が問題になっている今、不要な番組であることは間違いない。

メイ:ちなみにロスの抗議運動にはいろんなセレブも参加していたみたいで、ちょっと気になった。

レイチェル:最初の方だと思うけど、ハリー・スタイルズ(Harry Styles)、ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)、マドンナ(Madonna)もいた。みんなマスクとサングラスをしていたらそんなに目立たないから、ちょうどいいのかも?

スティービー:こんなときなのに、何もしていない黒人セレブもたくさんいるけど。政治的になりたくないのか、ビジネスに影響が出るのか、そのへんのことはもう少し時間が経ってからじゃないと分からない。

メイ/クリエイティブディレクター : ファッションやビューティの広告キャンペーンやブランドコンサルティングを手掛ける。トップクリエイティブエージェンシーで経験を積んだ後、独立。自分のエージェンシーを経営する。仕事で海外、特にアジアに頻繁に足を運ぶ。オフィスから徒歩3分、トライベッカのロフトに暮らす

スティービー/ファッションエディター : アメリカを代表する某ファッション誌の有名編集長のもとでキャリアをスタート。ファッションおよびビューティエディトリアルのディレクションを行うほか、広告キャンペーンにも積極的に参加。10年前にチェルシーを引き上げ、現在はブルックリンのフォートグリーン在住

レイチェル/プロデューサー : PR会社およびキャスティングエージェンシーでの経験が買われ、プロデューサーとしてメイの運営するクリエイティブ・エージェンシーで働くようになって早3年。アーティストがこぞってスタジオを構えるヒップなブルックリンのブシュウィックに暮らし、最新のイベントに繰り出し、ファッション、ビューティ、モデル、セレブゴシップなどさまざまなトレンドを収集するのが日課

The post まだ、あなたが知らないニューヨーク最新トレンド BLMが雑誌とブランドを裁くSurviving BLM appeared first on WWD JAPAN.com.

足し算の美容に違和感 D2Cブランド「セン」の余白を作るスキンケア

 D2Cブランドの運営やサポートを行うTO NINEが、6月21日に新ブランド「セン(SENN)」をスタートさせる。1アイテムで手入れが完了するスキンケア製品をOEM会社のサティス製薬と開発し自社サイトで直販するというが、一般的な“スキンケアブランド”とは異なるという。

 増田智士CEO(最高経営責任者)は「これまで当社では2つのブランドを出してきたが、いずれも価値観を基準にしたブランドづくりを行ってきた。『セン』もこれまでの足し算をする美容に課題を感じ、“レス イズ ビューティ(Less is beauty)”という考え方を提唱している」と語る。

 同社が展開するアパレルブランド「ケイ(KEI)」では服のサイズという常識を疑問に感じ、企業の都合にユーザーが合わせるのではなく、ユーザーの都合に寄り添うオーダーシャツを展開。結婚指輪の「イワイガミ(IWAIGAMI)」では、従来の結婚式のあり方に課題を見つけて、いつでも・どこでもできる結婚式スタイルを提案している。

 現在の美容業界では、スキンケアに複数アイテムを使用することが多く、消費者は多くの製品を試している。その分、何を使えばいいのか分からないという不満も生まれた。そこで「セン」は本当に必要なものだけを1本で提供し、心にゆとりを持てるトータルビューティブランドを目指している。

 唯一の製品となる「ウォーターオイルバランサー」は全9種(各6400円)。2層式で、油層は肌質(普通・乾燥・混合)に、水層は肌悩み(ハリ・シミ・毛穴)に対応している。さらに、追加で肌解析キットがつけられるため、現在の肌状態を客観的に詳しく知ることができるという。

 製品は使う前に振って混ぜることで、大小の油分粒子が発生。小さい粒は引き込みオイルとして、大きい粒は潤いを守るフタとして働く。使用する成分の99%が天然由来だ。また香りにもこだわり、クロモジやユズ、白檀といった「セン」が持つ和のテイストとマッチする素材を用い、専門調香師が世界観を表現したという。

 D2Cブランドを数多く手がけるサティス製薬の山崎智士社長との出会いからスタートし、約2年をかけてブランドづくりをしてきた。長い時間を要したのは製品づくりだけでなく、コミュニケーションや世界観づくりなど、細部までこだわったためだという。その世界観作りも一風変わっている。

食事や瞑想など余白のあるスタイルを提案

「僕たちは“レス イズ ビューティ”という考え方を伝えたいと思っていて、プロダクトブランドではなく“価値観ドリブン”。製品はあくまでもアウトプットの一つの形だ」と増田CEO。

 美容はスキンケア製品を使うだけでなく、食事や睡眠、心の状態など複合的な要素が絡む。「セン」は生活自体をよりよくし、自分の心を落ち着けるため、メディテーションやシンプルな食事の情報、音楽やコンテンツなどを得られるプラットフォームともなる。売って終わりではなく、むしろ売ってからがスタートというブランドの在り方だ。

 そのためブランドづくりの過程では、岐阜県の美濃焼の工房に行ったり、鎌倉の寺で禅を体験したりと「セン」の世界観を広げる体験を社員全員で行ったという。

 吉岡芳明COO(最高執行責任者)は、「時間はかかるが、作り手全員が世界観を理解している必要がある。今後はユーザーにもイベントなどで体験を届けたい」と構想を語る。

 ローンチ前にはユーザーを限定し、オンラインで行う「ホームリトリートプログラム」を実施。自宅でヨガや食事瞑想などを行ってもらう中で、日常の中の余白という贅沢を感じる体験だ。こういったイベントは製品を売るために行うのではなく、価値観を共有するためのものだという。

 また開発の2年間ではユーザーアンケートを何度も実施し、肌悩みや美容の悩みをじっくりインタビューしたという。世の中には7〜8割の完成度で世に出し、ユーザーの意見を取り入れて改良を続けるアジャイル型の製品もある。D2Cブランドの強みを生かした手法だが、「セン」は完成を目指した。

 吉岡COOは「いずれの手法にしても、ユーザーのことを深く知ることで改善していけるが、ローンチしてからだと関係性をより深めながらスピードも保つことは難しい。僕らは2年間を費やしたが、ゆっくりつくっていたというよりは、早いサイクルで改善し続けた2年間だったといえる」と答える。デジタルのスピードを用いるからこそ、細かなところまでブランドをつくり込めたのだ。

 ローンチ後もペースは崩さず、半年は月の販売個数を制限する。正式ローンチを12月に予定し、それまではユーザーとの関係を少しずつ広げていくのだという。また24日からは新開業するニューマン横浜でポップアップイベントを行い、幅広い顧客との出会いから意見をすくい上げると話す。

 くしくも新型コロナの影響で、在宅による時間のゆとりを経験した人も多い。ウェルネス分野も多くの注目を集める中、「セン」のような余白を生むブランドにも共感が集まりそうだ。

The post 足し算の美容に違和感 D2Cブランド「セン」の余白を作るスキンケア appeared first on WWD JAPAN.com.

足し算の美容に違和感 D2Cブランド「セン」の余白を作るスキンケア

 D2Cブランドの運営やサポートを行うTO NINEが、6月21日に新ブランド「セン(SENN)」をスタートさせる。1アイテムで手入れが完了するスキンケア製品をOEM会社のサティス製薬と開発し自社サイトで直販するというが、一般的な“スキンケアブランド”とは異なるという。

 増田智士CEO(最高経営責任者)は「これまで当社では2つのブランドを出してきたが、いずれも価値観を基準にしたブランドづくりを行ってきた。『セン』もこれまでの足し算をする美容に課題を感じ、“レス イズ ビューティ(Less is beauty)”という考え方を提唱している」と語る。

 同社が展開するアパレルブランド「ケイ(KEI)」では服のサイズという常識を疑問に感じ、企業の都合にユーザーが合わせるのではなく、ユーザーの都合に寄り添うオーダーシャツを展開。結婚指輪の「イワイガミ(IWAIGAMI)」では、従来の結婚式のあり方に課題を見つけて、いつでも・どこでもできる結婚式スタイルを提案している。

 現在の美容業界では、スキンケアに複数アイテムを使用することが多く、消費者は多くの製品を試している。その分、何を使えばいいのか分からないという不満も生まれた。そこで「セン」は本当に必要なものだけを1本で提供し、心にゆとりを持てるトータルビューティブランドを目指している。

 唯一の製品となる「ウォーターオイルバランサー」は全9種(各6400円)。2層式で、油層は肌質(普通・乾燥・混合)に、水層は肌悩み(ハリ・シミ・毛穴)に対応している。さらに、追加で肌解析キットがつけられるため、現在の肌状態を客観的に詳しく知ることができるという。

 製品は使う前に振って混ぜることで、大小の油分粒子が発生。小さい粒は引き込みオイルとして、大きい粒は潤いを守るフタとして働く。使用する成分の99%が天然由来だ。また香りにもこだわり、クロモジやユズ、白檀といった「セン」が持つ和のテイストとマッチする素材を用い、専門調香師が世界観を表現したという。

 D2Cブランドを数多く手がけるサティス製薬の山崎智士社長との出会いからスタートし、約2年をかけてブランドづくりをしてきた。長い時間を要したのは製品づくりだけでなく、コミュニケーションや世界観づくりなど、細部までこだわったためだという。その世界観作りも一風変わっている。

食事や瞑想など余白のあるスタイルを提案

「僕たちは“レス イズ ビューティ”という考え方を伝えたいと思っていて、プロダクトブランドではなく“価値観ドリブン”。製品はあくまでもアウトプットの一つの形だ」と増田CEO。

 美容はスキンケア製品を使うだけでなく、食事や睡眠、心の状態など複合的な要素が絡む。「セン」は生活自体をよりよくし、自分の心を落ち着けるため、メディテーションやシンプルな食事の情報、音楽やコンテンツなどを得られるプラットフォームともなる。売って終わりではなく、むしろ売ってからがスタートというブランドの在り方だ。

 そのためブランドづくりの過程では、岐阜県の美濃焼の工房に行ったり、鎌倉の寺で禅を体験したりと「セン」の世界観を広げる体験を社員全員で行ったという。

 吉岡芳明COO(最高執行責任者)は、「時間はかかるが、作り手全員が世界観を理解している必要がある。今後はユーザーにもイベントなどで体験を届けたい」と構想を語る。

 ローンチ前にはユーザーを限定し、オンラインで行う「ホームリトリートプログラム」を実施。自宅でヨガや食事瞑想などを行ってもらう中で、日常の中の余白という贅沢を感じる体験だ。こういったイベントは製品を売るために行うのではなく、価値観を共有するためのものだという。

 また開発の2年間ではユーザーアンケートを何度も実施し、肌悩みや美容の悩みをじっくりインタビューしたという。世の中には7〜8割の完成度で世に出し、ユーザーの意見を取り入れて改良を続けるアジャイル型の製品もある。D2Cブランドの強みを生かした手法だが、「セン」は完成を目指した。

 吉岡COOは「いずれの手法にしても、ユーザーのことを深く知ることで改善していけるが、ローンチしてからだと関係性をより深めながらスピードも保つことは難しい。僕らは2年間を費やしたが、ゆっくりつくっていたというよりは、早いサイクルで改善し続けた2年間だったといえる」と答える。デジタルのスピードを用いるからこそ、細かなところまでブランドをつくり込めたのだ。

 ローンチ後もペースは崩さず、半年は月の販売個数を制限する。正式ローンチを12月に予定し、それまではユーザーとの関係を少しずつ広げていくのだという。また24日からは新開業するニューマン横浜でポップアップイベントを行い、幅広い顧客との出会いから意見をすくい上げると話す。

 くしくも新型コロナの影響で、在宅による時間のゆとりを経験した人も多い。ウェルネス分野も多くの注目を集める中、「セン」のような余白を生むブランドにも共感が集まりそうだ。

The post 足し算の美容に違和感 D2Cブランド「セン」の余白を作るスキンケア appeared first on WWD JAPAN.com.

マスクでも平気?在宅勤務時の電気代も節約?  “クール系コスメ”で極暑を乗り切る

 6月に入り25度以上の夏日、さらには30度以上の真夏日が続くところも。在宅勤務が続き、一日中クーラーを稼働させたいけれど電気代も切実な問題……。そんなときにぜひおすすめしたいのが“クール系コスメ”だ。スキンケアはもちろん、ボディーケア、フレグランス、そして外出時のマスクまで全方位で“ひんやり”させて、じめじめとした湿気のある梅雨、そして日差しの強い極暑を乗り越えたい。

VECUA HONEY

 「ベキュアハニー(VECUA HONEY)」の「ワンダーハニーシリーズ」から毎年人気の夏限定アイテムが登場しているが、7月1日発売のボディー用ジェルクリーム「フローズンボディソルベ」(190g、1400円)はクール感がひと味もふた味も違い、なんと冷凍庫で凍らせられる新感覚のシャーベット状ジェル。冷凍しても凍結しない新感覚処方のため、冷凍・冷蔵・常温と好みのクール度を選べ、暑さでほてった肌や日焼けした肌を滑らかな“シルキースキン”に整える。同シリーズからは同日に、「コロコロローラー美容液 クール」(60mL、1600円)も登場し、清涼感のある美容液でスキンケアをしながらローラーでマッサージもできる“ながら美容”を楽しめる。オンラインショップや「ベキュアハニー」店舗で購入可能。

SHIRO

 香りでも爽快感を得たい人には、「シロ(SHIRO)」から登場した発売10年目を迎える限定フレグランス「アイスミント」を。ベルガモットやライム、レモンなどの柑橘系精油とメントールを配合し、みずみずしくてフレッシュな爽快感のある香りの「ボディミスト」(50mL、1800円)と「ボディローション」(190mL、2300円)がそろう。肌につけたときの気化熱で、す―っとした心地よさを感じることも。「ボディミスト」は持ち運びやすいサイズでいつでも手軽にリフレッシュ可能。「シロ」オンラインストアと全国の店舗で販売している。

FREEZE TECH

 コスメで涼しくなった後は、マスクを着けていざ外出……、と言いたいところだが、夏の暑さに加えてマスクの着用は、熱中症のリスクを高める恐れもあるという。そこで、外出時もぬかりなく“ひんやり”したい人は、クーリングウェア「フリーズテック(FREEZE TECH)」から6月25日に発売される夏用マスク「フリーズテック 氷撃エチケットマスク」がおすすめ。特殊な冷感プリントを採用し、汗や湿気などの水分に反応すると、マスク生地自体の温度が低下。さらに風があたることで冷感を感じやすくなる。紫外線カットや遮熱効果があり、通気性が良く熱がこもりにくいのも特徴だ。全国の一部ドラッグストア、バラエティショップ、GMS、量販店、ブランドサイトで数量限定発売。

ORBIS

 一日の終わりには「オルビス(ORBIS)」から6月22日に数量限定で発売される「ナイトタイムパック 涼美人 2020」(50g、2667円)でスペシャルケア。2012年から毎年発売している、食べる(飲む)発酵素材を配合した「ナイトタイムパック 酵美人(こうびじん)」シリーズの夏限定アイテム。塗って寝るだけというシンプルな使用法で、シャーベット状のジェルはメントール配合で心地よいひんやり感。また、キューカンバーエキスとコラーゲン配合で潤いのある滑らかな肌へ導いてくれる。全国の「オルビス」直営店舗と通信販売で購入可能。

The post マスクでも平気?在宅勤務時の電気代も節約?  “クール系コスメ”で極暑を乗り切る appeared first on WWD JAPAN.com.

おしゃれなあの人のビューティライフを拝見! ファッションディレクター・二ノ宮和佳子編

 世界的な新型コロナウイルスの流行によって私たちの生活は一変し、今までにない習慣や行動を余儀なくされている。緊急事態宣言が解除され、終わりの見えない出口にやっと一筋の光が差してきたが、日々刻々と変わる状況の中でこれまでとは異なる“新たな日常”を理解し、共に過ごしていかなければならないはずだ。そんなガラリと変化した暮らしの中でも、ポジティブに自分らしい生活を心がけているファッション業界人のビューティ事情、ライフスタイルにフォーカス。

今回は、ファッションディレクターそしてモデルとしても活躍する二ノ宮和佳子さん。ファッショナブルでヘルシーさが魅力の彼女に、自宅時間が増えた今、美しさを保つためのポイントやこだわりを教えてもらった。

【SKINCARE】

顔だけでなく首やデコルテまで
念入りにマッサージ

 まず水洗顔をしたら、「KOBAKO」の「スチーム洗顔タオル」で蒸しタオルを当てた後、たっぷりと化粧水をなじませて首やデコルテまでマッサージ。朝夜共に「ヒト幹細胞培養液」が配合された「アクティバート」の導入化粧水を愛用しています。日によって乾燥や疲れが出ているときは同ブランドのシートマスクでパックも。最後はオイルをなじませ、またマッサージを繰り返しながらリンパを流して肌を整えます。夜はこれらに加えて、「ファミュ」のスリーピングマスクを仕上げに塗り込んでいます。

【FOOD】

ステイホーム中は
息子と一緒に手料理を

 自宅で過ごす時間が増え、息子と一緒に楽しめる餃子やピザをよく手作りするようになりました。このときはそれぞれ包み方を変えて焼き餃子、水餃子にチャレンジ!自分たちで一生懸命作った料理って、なぜかよりおいしく感じる気がします(笑)。また、料理をする上でお皿選びはとても重要。以前から好きな陶芸家・二階堂明弘さんの器がオンラインで販売されて、今回はタイミングよく購入することができました。器が素敵だと、料理をするのがさらに楽しくなりますよね。

【GOODS】

“おうち時間”が多いからこその
こだわりアイテム

 「イウエン マトフ」のサテンパンツはウエスト部分がゴムなのと、シワになりにくい素材で過ごしやすいのがポイント。サラッとはけるのはもちろん、すっきりとしたシルエットと女性らしいニュアンスカラーが特徴的で、シルバーのジュエリーなどを合わせて自宅の中でもコーディネートを楽しんでいます。また、お花を飾ることが以前よりも多くなりました。きれいな花たちは空間を華やかにしてくれるだけでなく、このような状況の中でも前向きな気分にしてくれます。デザインのインスパイアにもなり、より仕事がはかどるのもうれしいです。

【MAKEUP】

アイシャドウやリップの
さまざまな色を楽しんで

 最近はアイシャドウやリップなどカラーモノをいろいろと試して、毎朝メイクを楽しんでいます。下地は2種を使用。まず、「クレ・ド・ポー ボーテ」のUV下地を全体に塗った後、目の周りなど乾燥する箇所には「ローラ メルシエ」の下地をプラス。アイメイクは「THREE」のパレットをよく愛用しています。今回は、春らしいグリーンをアイホール全体に、二重幅の下の方には「セルヴォーク」のシアーなレッドを重ねて華やかな印象に仕上げました。リップも1色使いではなく、その日の気分に合わせ複数のカラーを重ね塗りしています。

「WWDビューティ」編集部からのコメント

朝と夜のケアで使っている「アクティバート」は“次世代のエイジングケア成分”と名高いヒト由来幹細胞培養液が配合されている玄人向けブランド(私も大好きです)。また「アスレティア」は今春デビューしたばかりの“クリーンビューティ”ブランドで、環境に配慮した取り組みも積極的に行っています。心、体、環境に配慮した製品を使用していてビューティ上級者という印象です。(E・M)

The post おしゃれなあの人のビューティライフを拝見! ファッションディレクター・二ノ宮和佳子編 appeared first on WWD JAPAN.com.

「略奪」ばかりに注目するメディア 抗議デモをどう報じるべきなのか

 米ミネソタ州ミネアポリスで5月25日に、黒人男性のジョージ・フロイド(George Floyd)氏が白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件を受けて、世界中で抗議運動が起きている。大半は平和的に行われているにもかかわらず、新聞やテレビなどのメディア(米「WWD」も含め)には“略奪”の文字が踊り、店のショーウインドーなどが破壊された街の様子が繰り返し報じられた。

 しかし事件から数週間ほど経った今、ある変化が起きている。抗議運動の規模は拡大しているものの、メディアは(そもそもデモの参加者によるものとは限らない)略奪や破壊行為にフォーカスするのではなく、抗議運動をあるがままに伝え始めている。すなわち、人種差別に反対する人々が平和的にそれを訴える様子と、デモの参加者によって撮影された警察の不当な暴力行為に関する問題を報じているのだ。時間が経つにつれて、メディアは本当に報道するべきことが何であるかにようやく気づいたのかもしれない。

 ニューヨーク大学(New York University)のポーラ・チャクラヴァルティ(Paula Chakravartty)=メディア・カルチャー・コミュニケーション学部准教授は、「メディアは事件の本質を伝えるより、人々の注目を集めることを優先する傾向がある。それは今に始まったことではなく、こうした抗議運動を報道する際のパターンとなっている。例えば1991年に黒人男性の故ロドニー・キング(Rodney King)氏が4人の警察官(白人3人、ヒスパニック系1人)に激しく暴行され、それを発端にロサンゼルスで大規模な暴動が起きたときも、メディアは略奪や破壊行為を重点的に報じた。結果として、それが話題の中心となってしまった」と語った。

 略奪行為は、抗議運動が起きる根本的な要因の一つである人種差別やそれに伴う経済格差に対する強い不満や怒りから行われることが多い。今回も被害に遭ったのは主にラグジュアリーブランドの店だったが、それは高級なバッグや靴が格差や不平等を象徴する品々だからだ。しかし、略奪を行ったのは本当にデモの参加者だったのだろうか。

 ミネソタ州セントポール市のメルヴィン・カーター(Melvin Carter)市長によれば、抗議デモに関連して逮捕された40人のほとんどが州外から来た人たちだったという。同氏は、「フロイド氏の死を悲しみ追悼する人々がいる一方で、それに乗じて破壊行為をしようとする別のグループがいる」と述べた。

 ジョン・ハリングトン(John Harrington)=ミネソタ州公安局コミッショナーは、「抗議運動に便乗して混乱を巻き起こせと白人至上主義団体がインターネット上に投稿し、メンバーを扇動していることについて調査している。逮捕された40人の中にも、そうした団体や組織犯罪グループとつながっている者が何人かいた」と話した。

 またネバダ州ラスベガスでは、3人の男が抗議運動に紛れて火炎瓶を店舗などに投げ込んだとして送検されたが、同州の連邦地方裁判所によれば、彼らは内戦や社会崩壊を望む極右過激派運動「ブーガルー(Boogaloo)」に関わっている疑いがあるという。同州のニコラス・トルタニッチ(Nicholas Trutanich)連邦検事は、「暴力的な扇動グループが平和的に行われている真摯な抗議運動を乗っ取り、全米で過激な活動を繰り広げている」とコメントした。

外出禁止令と警察の横暴

 こうした暴動が起きているという過剰な報道によって、社会にマイナスの影響がある公共政策が定められてしまうことがあると専門家らは指摘する。

 ニューヨーク市は破壊行為や略奪などを防ぐため、6月1日に夜間外出禁止令を発動した。当初その時刻は23時だったが、暴動が収まらないとして翌2日にはこれを20時に繰り上げた。ニューヨーク市警は通常よりも多くの警察官を配備して警戒に当たったが、デモの参加者に対して警棒を振るったり、マンハッタン橋を渡っているデモ隊を制止して橋から動けなくなるようにしたり、医療従事者などのエッセンシャルワーカーをも引き留めたりするなど、“外出禁止令”という権限をかさに着て不当行為をする警察官らの様子を映した動画がソーシャルメディアで拡散されるにつれて、外出禁止令は害のほうが大きいのではないかという声が上がり、一週間もしないうちに解除されることとなった。

 弁護士や法律家からなる人権団体、全米法律家ギルド(National Lawyers Guild)のエレナ・コーエン(Elena Cohen)=プレジデントは、「夜間外出禁止令は役に立たなかった上に、抗議運動をシャットダウンし、デモの参加者やエッセンシャルワーカーを非人道的に扱う口実に使われた」と説明する。同ギルドに所属する弁護士らが法律関係のオブザーバーとしてデモに参加した際は、役割を明らかにするための緑色の帽子をかぶっていたにもかかわらず、警察に身柄を拘束されたという。ニューヨーク市法務部は、抗議運動に対する警察の不正行為を調査の上で適切に対応すると声明を発表しているが、ニューヨーク市警の広報部はコメントを差し控えるとした。

“略奪”にフォーカスすることの問題点とは

 店の破壊や略奪にばかり注目してしまうと、大半の抗議運動は平和的に行われているという事実が見えなくなってしまうことも問題だ。

 政治団体アメリカ民主社会主義者(Democratic Socialists of America)のメンバー、ジュリア・コールドウェル(Julia Caldwell)が参加した抗議運動は、100〜200人程度がスローガンを唱えつつプラカードを掲げて歩く平和なものだったという。警察官の姿がほぼ見当たらなかったことが特徴的で、それも平和的にデモをすることができた理由ではないかとコールドウェルは話した。「武装した警察官に監視されると、それだけで緊張するものだ。通常は目にすることのない軍レベルの武器を身に着けた警察官がその場にいると、逆に公共の場の安全が脅かされる感じがする」。

 全米法律家ギルドのコーエン=プレジデントは、デモにおける略奪行為ばかりを強調すると、大半は平和的に行われている抗議運動について誤解を招いてしまうと同時に、民主主義の歴史において市民的不服従(市民としての反抗)が果たしてきた役割への理解を損なうことになると説く。同氏は、「アメリカ社会は路上で人々が抗議することで変化してきた。抗議運動はときに無秩序に見えるかもしれないが、真の変化はいつもそうして起きてきたのだ。また今回のムーブメントによって、これまで行ってきた黒人に対する不当な暴力行為について、警察が今度こそ責任を取らざるを得ない可能性があることを、権力者らは分かっているのだと思う。そうしたこともあり、抗議運動は『(暴力を使ってでも)止めなければならない略奪者』という文脈で報道されたのではないか」と分析した。

 実際に略奪や破壊行為をしているのが抗議運動の参加者なのか、それとも無関係の武装市民(白人至上主義者など)なのかをメディアが明確にしないまま報道したことも、“抗議運動”と“略奪”を結びつけることに一役買ってしまった。

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校のヨギタ・ゴヤル(Yogita Goyal)文学部英文学科およびアフリカン・アメリカン研究部門教授は、今回の抗議運動の初期における報道の多くは“警察の視点”によるものだったと話す。「取材しているジャーナリストやリポーター自身も警察から不当な行為を受けていることがカメラに写されていたのに、『警察の不当な暴力行為に抗議する』という運動の内容についてはフォーカスされず、議論もされなかった。略奪や破壊行為ばかりが話題となっていた」と述べた。

 デモの参加者が完全武装した警官隊に飲み物のボトルを投げたり大声で叫んだりする動画も確かにあるが、警官隊がデモの参加者を背後から押し倒して地面に押さえつけたり、警棒で激しくたたいたりしている動画の本数のほうがはるかに多い。こうした警察による暴力行為が明らかになってきた以上、当初は破壊行為や略奪ばかりを取り上げていたメディアに対してより批判的になるべきだと同教授は言う。「“略奪”というセンセーショナルな言葉には強い力があるのに、メディアはあまりにも無造作に使ってしまっている。どの言葉を選ぶのか、またそれを繰り返し使うことは、(そうと意識していなくても)政治的な行動だ。略奪の光景ばかりを繰り返し報じることは、人種差別や抗議運動の本質から、そして警察による暴力行為という問題から目をそらさせてしまう」。

The post 「略奪」ばかりに注目するメディア 抗議デモをどう報じるべきなのか appeared first on WWD JAPAN.com.

進化する幸せ産業(1)観光業界編 安全と健やかさを追求する生活圏内でのコンパクトな旅

 新型コロナで世の中は一変した。自分自身のフリーライターとしての生活も、だ。私がメディアに発信するのは旅やグルメ、ウエルネスなどのいわゆる“幸せ産業“がテーマ。世の中が平穏だからこそ成り立つビジネスだ。命をつなぎ、生活を維持するエッセンシャルワーカーと違い、幸福感をもたらす消費を促す情報は不要不急といえるだろう。

 緊急事態宣言発令前にすでに全ての撮影は延期、各出版物は大幅な内容変更やキャンセルとなり、打ち合わせもインタビューも全てオンラインに。今までとは違うネットワークを活用した情報発信となった。
そんな中、各業界のリーディングカンパニーが想像力と瞬発力で難局を乗り越えようとしている。そこでライターとしての体験や、各業界の現場の声なども含め、進化する幸せ産業について短期連載でリポートしたいと思う。今回は観光について。

移動のロスを省き、生活圏内の魅力を再発見するマイクロツーリズム

 まず、幸せ産業の代表といえるのが観光業界だろう。なにしろ海外渡航がままならず、感染防止の観点から、都市部から山間部への移動がはばかられる状況だ。

 3月早々から、リモートワークを応援する長期滞在プランや接触を回避したサービスなどを提案してきた星野リゾートが、ポストコロナに掲げたのが「マイクロツーリズム」という概念。自宅から1時間以内でアクセスできる近隣の施設で、移動による感染リスクを避けた小さな旅だ。2020年3月に同社が山口県長門市に開業した「界 長門」には中国地方からの集客を強化するなど、地元を再発見するご当地プランを全国各地の施設で提案している。

 また、星野リゾートは品川や横浜などの都市部とのアクセスもいい川崎に作った街を楽しむカジュアルホテル「OMO03川崎」や、輪泊など自転車を楽しめる駅構内のホステル「BEB5土浦」など、若い世代に向けたリーズナブルな宿も次々と開業。より身近な旅を選ぶニーズに応えている。

東京湾を見渡す都心のラグジュアリーリゾートが竹芝桟橋にオープン

 東京オリンピック・パラリンピックに向け、インバウンドの富裕層を想定した都市中心部のホテルもオープンラッシュだ。東京・港区海岸に4月27日にオープンした「メズム東京、オートグラフ コレクション」は部屋の中でのチェックイン、ディナーも部屋での食事が可能など、3密の不安がない巣ごもりプランが話題だ。まだ開業前の春に内覧したのだが、ルーフバルコニーからは東京湾や桂離宮が見渡せて、都心にいるとは思えない解放感が得られた。また、7月からは船による送迎プランも開始。いつも働いているエリアで滞在しながら、ラグジュアリーな非日常を感じられるだろう。このホテルがある竹芝は、劇団四季のシアターなどある「ウォーターズ竹芝」もオープンした開発中のエリア。ホテルに隣接する竹芝桟橋は大島や小笠原諸島などへの玄関口であり、伊豆諸島の島魚を漬け込んだ島鮨専門店などもある。通過地点にせず、滞在することでまだ見ぬ東京を肌で感じることができる。

2組限定の鎌倉の古民家オーベルジュで「食・寝・浴」を極める

 都心から1時間程度の鎌倉も首都圏からアクセスのいいデスティネーションだ。歴史と文化を感じる街並みは観光地としても見どころが多いが、あえて巣ごもり滞在を選びたい。

 鎌倉宮からほど近い、築160年以上の古民家をリノベーションした「鎌倉古今」は1晩2組限定のオーベルジュ。敷地内には山形発のオーガニックレストラン「アル・ケッチァーノ」の奥田政行シェフがプロデュースした「レストラン ココン(RESTAURANT COCON)」があり、鎌倉野菜をふんだんに使ったイタリアンを堪能できる。オープンキッチンを囲むカウンター席のみで、プライベートダイニングのような交流が楽しい。ワインだけでなく、日本酒や宇治茶(きわめて高級な!)とのペアリングにもはっとする。古民家や蔵をそのまま生かしたメゾネットタイプの2部屋で、エアウィーヴ社の寝具、ケヤキ材と伊豆石に囲まれた露天感覚のマイクロバブルバスなど、「食・寝・浴」の3方向からのアプローチにより、心身を解き放つ。

心身の健やかさと洗練を両立させたウェルビーイングなホテル

 ユニークなのはこの6月、東京・立川市にオープンしたばかりの「ソラノ ホテル(SORANO HOTEL)」だ。心身ともに健康で満たされた状態を指す“ウェルビーイング”をコンセプトとし、温泉水を使用したインフィニティープールやSPA、パーソナルトレーニングを受けられるジムを併設するなど、健康を維持するための滞在を実現する。昭和記念公園に隣接し、全室パークビュー。一番小さな部屋でも52平方メートル以上で、7平方メートル以上のバルコニーがあり、なかには20平方メートル以上のバルコニーを備えたドッグフレンドリーな3部屋も。都心から少し離れたエリアだけに、ゆったりと過ごせる間取りが特徴だ。

 また、1部屋3人で滞在し、3Dボディースキャナ計測により姿勢や体組成をチェック後、パーソナルトレーナーが3人でのセミプライベートセッションで指導し、体を整えるプランも。ヘルシーな食事をとりながら、これからのウエルネス計画について語る合宿のような滞在になるだろう。「ソラノホテル」が位置するのは屋内外をつなぐホールやオフィス、ショッピングセンターなどがある複合施設「グリーンスプリングス」内。空と大地をつなぐウェルビーイングタウンで過ごし、心と体の健康を目指したい。

今後、注目されるのはWhereよりもHowを重視するコンパクトな旅

 ポストコロナの観光は「どこへ向かうか」よりも「どう過ごす」が重視されそうだ。「鎌倉古今」に滞在し、日帰り圏内だった古都の魅力を再発見した。早朝の鎌倉宮境内を歩き、市場で旬の野菜を買い込む。なんといっても自宅から快速で片道1000円程度。移動にかかる時間や費用を宿泊費に回せば、今までよりもグレードアップした旅が望めるのだ。前出の星野リゾートの星野佳路社長は「今だからこそ、観光が果たせる役割がある」と語る。「フードロス問題に取り組む“牧場を救うミルクジャム”の生産や、観光業と農業の人材交流など地域産業との連携もそのひとつです」。

 マイクロツーリズムは、都市間の感染拡大を防止しつつ、地域との交流を深め、地域経済活性化に貢献することにもつながる。今年はコンパクトな旅で質を上げ、心身共に健やかに過ごせるウェルビーイングな滞在で英気を養おう。それが地域を元気にすることにもなるのだ。

間庭典子(まにわ・のりこ)/フリーライター:婦人画報社(現ハースト婦人画報社)を退社後、ニューヨークへ渡る。現在は東京を拠点に各メディアに旅、グルメ、インテリア、ウエルネスなど幅広いテーマで執筆。著書に「ホントに美味しいNY10ドルグルメ」「走れば人生見えてくる」(共に講談社)など

The post 進化する幸せ産業(1)観光業界編 安全と健やかさを追求する生活圏内でのコンパクトな旅 appeared first on WWD JAPAN.com.

「グッチ」「LV」でキャリアを積んだ2人が起業 PRの極意は“白黒つけず、グレーで受け止める”

 ラグジュアリービジネスに長く携わってきたベテランPRの2人が新会社、オープンドアーを設立した。主な事業内容は企業のコミュニケーションのサポートで、現在はLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)グループなどのCSR(企業の社会的責任)関係で活動している。ラグジュアリーブランドのPRについて、特にマネジャー職の永遠の課題であるチームビルディングついて2人に話を聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):新会社設立を聞いて、“え、あの2人で!?”と驚いた業界関係者は多いと思います。 これまでそれぞれにラグジュアリーブランドのフロントに立ってきて、特にメディア関係者にとって存在感が大きかったからです。お2人は2009年からの7年間は、グッチジャパンのマーケティング&コミュニケーション部で一緒に働いていたんですよね。

根道美奈オープンドアー プレジデント(以下、根道):私はグッチジャパンに2回にわたり、トータル15年間在籍しました。トム・フォード(Tom Ford)がクリエイティブ・ディレクターを務めていた1回目の在籍時には、菅原さんは広告代理店で「グッチ」(GUCCI)」を担当していたから、知り合ってからは20年くらいになります。トムの退任で一度やり切った感もあり、05年の夏に退職してニューヨークへ留学しました。

菅原秀子オープンドアー エグゼクティブディレクター(以下、菅原):同じタイミングで、私はグッチジャパンにPRコミュニケーション・マネジャーとして入社しています。フリーダ・ジャンニーニ(Frida Giannini)の時代ですね。

根道:NYでMBAを取得して帰国した2009年にお誘いいただいて再びグッチジャパンへに入社し、マーケティング&コミュニケーション・ディレクターに就任して、以降2016年までの7年間、菅原さんとは同僚でした。

WWD:その後16年に根道さんは、ルイ・ヴィトン ジャパンにバイス・プレジデントとして入社し、「グッチ」のアソシエイトディレクターになっていた菅原さんとは、いわばライバル関係になったわけです。そこで見たモもの・思ったことについてはこの後で話していただきますが、まずは一緒に会社を立ち上げた経緯を教えてください。

根道:私は昨年10月に、菅原さんは今年の1月にそれぞれ退職しました。で、私から「一緒に会社をやらない?」と声をかけたら「やる!」と二つ返事が返ってきた。すごくカジュアル(笑)。計画していた訳ではなく………。

WWD:菅原さんは返事をする前に “何の会社?”とは聞かなかったのですか?

菅原:聞かなかったです(笑)。それぞれ思っていたことはあるけど、第一声は「一緒にやらない?」だけ。その後も長時間話し合うというより、すぐに「コミュニケーション戦略をお手伝いするPR会社を作つくる」で一致しました。

WWD:20年以上同じ景色を見てきた2人の “あうん”の呼吸ですね。話は行きつけのご飯屋さんで進んだとか。

菅原:西麻布のね。別の会社にいたときも、連絡は取りあっていました。でも私たちが“友だち”かと言えば、なんか違う。旅行もするけど公私混同はしない距離感です。

WWD:オープンドアーの事業内容は?

根道:ブランディング、PRコミュニケーション戦略、CSR活動の支援を3つの柱としています。ファッション、アート、カルチャー、ホスピタリティーなどあらゆるライフスタイル分野で企業のブランド価値、社会的存在価値を高めるサポートをしたいと思っています。

菅原:商品に関わるPRも大事だけど、特に力を入れたいのがCSR。企業活動においてCSRは年々重要になっていますが、日本には専任のポジションを設けている企業はまだ多くない。そこを私たちがサポートできると考えています。

根道:現在は、LVMHグループの女性をサポートするCSRプログラムのお手伝いしています。什器などのデザイン・製作を行う会社ワークスタジオが開発した、廃棄衣料を原材料とした建築材の板のブランディングとコミュニケーションも担当しています。

「伝統と革新」は簡単じゃない

WWD:ヨーロッパのラグジュアリー企業に長く身を置いて得たこととは?

菅原:大きなイベントに携わったり、社会貢献を学んだりと、楽しい仕事でした。企業理念として多くのラグジュアリーブランドが掲げるのが「伝統と革新」。だけどその両方の実現は本当に難しいです。革新だけに向かってしまうこともあれば、伝統に固執してしまうことも。難しいけど両方ないとブランドは続かない。だからこそそこに携われる“快感”がありました。結局はブランドや企業など、担当している仕事を“愛して”いないとできないのだと思います。ドライに見えるかもしれないけど、外資でも最後は誠意や愛情。愛がないと、革新だけに走りがちですから。

WWD:同時に歴史ある企業やブランドの場合、伝統への固執も前進を妨げますね。

根道:バランスですよね。素晴らしいブランド、好きな会社だからこそ、“変えたくない”と思っちゃう。グッチジャパンに2回目に入社した直後、当時の上司に言われたのは、「あなたが多少冒険して失敗しても揺らぐブランドではない。だから安心しなさい」でした。私の失敗で大切なブランドに傷をつけてしまったらどうしよう、と心配して、勇気が持てないときだったから背中を押されました。

WWD:「グッチ」時代に2人が一緒に手掛けた仕事で思い出深いものは?

根道・菅原:漫画「ジョジョの奇妙な冒険」とのコラボレーションでしょうか。11年と12年に実現した雑誌「シュプール」の表紙とジョジョのオリジナルスト—リーの別冊(小冊子)で、グローバルでのウインドー展開にまで発展しました。あれは “「グッチ」らしさ“ 漫画らしさ”の両方を壊さずに新しさを見出せたと思います。

WWD:漫画の登場人物が「グッチ」を着ているなど大胆なコラボでした。こういったプロジェクトが始まるきっかけは雑誌の編集部や代理店との会話だと思いますが、PRマーケティング担当としてメディアとの仕事で意識していたこととは?

根道:どんな話でもまずは耳を傾ける、でしょうか。「ジョジョ」のときも、先方は最初「無理ですよね」と言いながら話を持ってきました。私も「本社に通すのは難しい」と思ったけど、頭の半分では面白いと思ったから「今回実現しなくても次につながるかも」とイタリア本社へ掛け合いました。これはラグジュアリーに限りませんが、PRの仕事は一人では生み出せないから、最初に「たぶん聞いてもらえない」と周囲に思われたら仕事が広がりません。

菅原:それを聞いて、代理店時代にクライアントから「あなたはうちのブランドのことわかってないわね」と言われることが多くて、悔しかったことを思い出しました。先輩たちが同じことを言われているのを見ても「そうじゃない。こちらは3年後のことを考えているのに」と歯がゆかった。だから私も逆の立場になったときはまずは聞く、を意識していました。そういう姿勢でいると周囲が面白い話を持ってきてくれますよね。とか言って私自身、何年も同じブランドを担当する中で「自分が一番よく知っている、だから他の人の意見を聞かなくてもわかっている」と考える時期がありましたけどね(笑)。

WWD:PRの仕事は、社内外の人や組織をつなぐ仕事でもあります。

根道:ひと昔前は外資のPRコミュニケーションは社内でも聖域っぽいというか、「本国やクリエイティブ・ディレクターがこう言っているから」で押し通す、みたいなところがあり、それが重要でもあったけど、今は店やMDの動きを踏まえてPRがとるべき戦略も変わります。小売業であればMDとリテールとPRコミュニケーションがバランスよく機能したときにうまくいきます。

菅原:自分の部署の業績だけを考えていたらその3者が一体にはならないから難しい。かと言って“仲良し”では進歩しない。営業は売り上げ目標があり、コミュニケーションはイメージを保ち、とそれぞれに使命がある。だからそこには必ず議論が生まれます。「ブランドのためよかれ」と思っての議論を続けながら、今とるべき「革新」を選びとってゆくのだと思います。

グレーをグレーのまま受け止める

WWD:マネジャーとしてチームを束ねる仕事をする中で意識していたこととは?

根道:手柄を独り占めせず、本社のスタッフにチームの誰がどんな仕事をしたのかを伝えることは心掛けていました。「評価された」と思うことがやりがいとなり、次につながりますから。

菅原:私は本来「背中を見て」というタイプ(笑)。でもあるとき根道さんに「それじゃダメ」と言われた。「言わずとも気づいてよ」もダメなんだと。確かにコミュニケーションの仕事は些細なことでも直接話すことが本当に大切で、誰かが困ったときに、大きな声でSOSを出せば一気に進むようなチームワークを大切にしてきました。

根道:ファッションの仕事は全部が白と黒ではなく、「これがかっこいいことなのか、かっこ悪いことなのか」など話しながら答えを導き出してゆく部分が多い。だから部下から話しかけられたらよほどのことがない限り「後で」とは言わずに、その場で聞くようにしていました。話しかけにくい上司では、グレーな課題が入ってこなくなります。

WWD:グレーが大事なのはファッションの特性かもしれないですね。かっこいいとか革新的とか、あるいは白黒などつけられないけど新しいものを作っていく世界だから。

菅原:“規定だとNGだけど、やりたいからいったんグレーで受け止める”ことが本当にたくさんある。グレーを作ると時間はかかるけど、グレーの中で模索すると結果として “花丸”になることが多いです。

WWD:PR業を目指す若者に一言。

根道:PRの仕事は一時期人気の職業だったけど、最近は大変と思われているのか、そう人気でもなくなっている。この仕事はとても楽しくて夢があるからぜひ目指してほしいとは思います。

WWD:いずれフリーランスのPRのプラットフォームのようなものもつくりたいとか。

根道:まだ構想段階ですが、出産や結婚、介護などの理由で働くことから離れざるをえなかった優れたフリーランスをサポートする仕組みをつくれたらな、と思っています。

The post 「グッチ」「LV」でキャリアを積んだ2人が起業 PRの極意は“白黒つけず、グレーで受け止める” appeared first on WWD JAPAN.com.

新たにファッション・ウイークを始動 独フランクフルトは国際的なファッション都市になれるか?

 世界最大級の国際見本市の主催企業であるメッセフランクフルト(MESSE FRANKFURT)と、ベルリンでファッションの大型合同展を運営するプレミアム・グループ(PREMIUM GROUP)は、これまでベルリン・ファッション・ウイーク中に開催していた合同展の「プレミアム(PREMIUM)」「シーク(SEEK)」「ネオニット(NEONYT)」を2021年夏からフランクフルト・アム・マイン(通称フランクフルト)市に移転する。それに合わせて、それぞれが手掛けるファッションのテクノロジーとサステナビリティにフォーカスした2つのカンファレンスも開催地を移し、新たにフランクフルト市と同市が属するヘッセン州主催によるフランフルト・ファッション・ウイークがスタートする。デジタル化とサステナビリティを二大テーマに掲げ、合同展、カンファレンス、ランウエイショー、イベントを融合したファッション・ウイークを目指す。

 プレミアム・グループが主催する「プレミアム」は大手からデザイナーズブランドまでメンズ&ウィメンズの500ブランド以上が一堂に会する総合展で、「シーク」はコンテンポラリーカジュアルやストリートウエアを中心に300ブランドが出展。また、メッセフランクフルトによる「ネオニット」はサステナブル・ファッションに特化し、200を超えるブランドが参加している。これらの合同展はこれまでベルリン・ファッション・ウイークの柱として、ヨーロッパを中心に世界からバイヤーの誘致に貢献してきた。同ファッション・ウイークには毎シーズン7万人以上が参加し、街に2400万ユーロ(約29億円)の経済効果をもたらしていたという。今回の移転によりベルリンが受ける影響は大きい。

 ただ、ドイツ語圏のデザイナーズブランドのランウエイショーを中心とするメルセデス・ベンツ・ファッション・ウイーク・ベルリン(MBFWB)は今後も継続する意向を示している。新型コロナウイルスの影響により7月は見送りとなったが、来年1月は予定通り開催予定。これまでパリ・メンズ・ファッション・ウイークと時期がかぶることも問題の一つだったため、21年夏以降は新たな日程での開催を模索する。また、ドイツ発のファッションEC「アバウトユー(ABOUT YOU)」が主催する一般消費者向けのアバウトユー・ファッション・ウイークや、パノラマ・ファッションフェア・ベルリン(PANORAMA FASHION FAIR BERLIN)による270ブランド以上が集まる大型合同展もベルリンにとどまる予定だ。

ファッション・ウイークにふさわしい街は?

 ファッション・ウイークというフォーマット自体の存在意義が問われる中、MBFWBもここ数シーズン迷走していたのは事実だが、昨シーズンはアンダーグラウンドカルチャーやクラブシーンに根差したブランドが参加するなどベルリンらしさが垣間見えた。また、個性的な街の雰囲気やクリエイティブなカルチャーに魅力を感じ、ファッション・ウイークへの参加を続けているブランドや関係者も多い。

 一方、ピーター・フェルトマン(Peter Feldmann)=フランクフルト市長は、これを機にフランクフルトを国際的かつ先進的なファッション&ライフスタイルシーンのホットスポットにしたいと考える。財政力が強みの同市とヘッセン州は、今後3年間で1000万ユーロ(約12億1000万円)の投資を計画。プレミアム・グループのアニータ・ティルマン(Anita Tillmann)=マネジングパートナーも以前からベルリン市の支援態勢には不満を漏らしており(ベルリン・ファッション・ウイークの公式サイトによると行政の支援は07年からの合計で1000万ユーロ強)、フランクフルト市とヘッセン州の投資が今回の移転の決め手の一つになったと言えるだろう。また、ハブ空港を擁する海外からのアクセスの良さやメッセフランクフルトが市街中心部に巨大な展示場を有していることなどを考えると、合同展の開催地としては優位性がある。しかし、ファッションの主要都市としての地位を確立できるかどうかはまた別の話。金融やビジネスの街として知られるフランクフルトと、ますます高い独自性が求められるファッション・ウイークの親和性は未知数だ。

 フランクフルト・ファッション・ウイークの詳細は9月に発表予定だが、いずれにしても事実上2都市への分散は理想的ではない。特にランウエイショーを行うブランドは、集客や露出、ブランディングなどのメリットとデメリットを考え、どちらに参加するかを悩むことになるだろう。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

The post 新たにファッション・ウイークを始動 独フランクフルトは国際的なファッション都市になれるか? appeared first on WWD JAPAN.com.

「ヴェトモン」CEOの目に映る「コロナ後のファッション産業」

 新型コロナウイルスの影響で私たちは2カ月以上もの間、これまでにない制限の中で毎日を送ることになり、生活の仕方、自分にとって大切なもの、誰と何を目的にどのように働くかなどについてあらためて考える機会を得た。ファッション産業に携わる人々も例外ではなく、ビジネスの方法やクリエイションとの向き合い方、ファッションシステムの在り方を再考する必要性に直面しており、多くの人々が議論を始めている。今回は、販路を限定した売り方やショーの開催時期を変える発表など新しい手法を戦略的に行ってきた「ヴェトモン(VETEMENTS)」のグラム・ヴァザリア(Guram Gvasalia)共同創業者兼最高経営責任者(CEO)にメールインタビューを行った。

WWDジャパン(以下、WWD):今、どんな生活している?

グラム・ヴァザリア=ヴェトモン共同創業者兼CEO(以下、グラム):私は週末を含めて毎日働いている。自分のしていることを心から愛するとき、それはその人自身の一部になる。だから、私は仕事と生活を区別する必要がない。喜ばしいのは、家にいることを楽しみ、自然を満喫できること。本を読んだり、瞑想したり、ピアノを弾いたりするのも楽しい時間だ。

WWD:新型コロナウイルスのパンデミックがあなたにもたらしているものは?

グラム:すべての物事には時期がある。外に出て人に会うための時期、家にいて自分自身をよりよく知るための時期――大切なのは、人生が私たちにもたらしてくれるものを受け入れて、実際的なレベルと精神的なレベルの両方で学びを得ること。すべてのことには意味や目的がある。でも往々にして、われわれ人間はいそがしすぎてそれが見えないことがある。

「これはなぜ「ヴェトモン」なのか? このデザインの背後にある目的と意味は何か?」

WWD:人々の価値観にどのような変化が起こっていると思う?

グラム:この世界で起こること全ては、私たちを良い方向か悪い方向に変える。今起きていることは、人々の価値観や考え方に大きな影響を与えるだろう。ただ、この経験から何かを学ぶ人がいる一方で、多くの人々はすべてが終わった後、すぐに日常に戻るだろう。季節は変わり人生は続いていくのだ。

WWD:ファッションは生活必需品として扱われない一方で、精神的に人々を元気づける役割もあるのではないかとも思う。「ヴェトモン」として何が提案できるか。

グラム:いつの時代も美は人間性において大切なものであり続けてきた。美とは、買って所有する必要があるものではない。それは特別な感情を心の中に生み出して、人生の良い点に目を向けさせるもの。だからこそ、花は人類の生活において大きな役割を果たしている。花が咲いているのを見るのは、最新流行のスニーカーを手に入れることより大きな喜びをもたらしてくれる。私たちはブランドとして、独自の美しさや意味を持ったプロダクトを作るための努力をしている。洋服をデザインするとき、2つの大きな質問を問いかけている。これはなぜ「ヴェトモン」なのか? そして、このデザインの背後にある目的と意味は何か?

WWD:今後、ラグジュアリーブランドやデザイナーズブランドは必要ないものとして淘汰されるか、それともいっそう存在感を増すか?

グラム:ラグジュアリーファッションはそもそも一部の人にとっては必要ではないもので、パンデミックによってそれが必需品になるということはない。ラグジュアリーファッションは、その他の人々にとっては必需品であり、そしてパンデミック後も必需品であり続けるだろう。ある人々にとってファッションは必要不可欠なもので、またずっとそうであり続ける。パンデミックが引き起こすかもしれないのは、人々が目を覚まして、流行に左右されない、長く着ることができる服を求めるようになるということ。本当に品質がいいものを少し買うことの方が、長持ちしないものをたくさん買うより賢明だ。ファッションはファストであることをやめ、もっとスローになるべきだ。

WWD:コロナ禍では顧客や消費者とのコミュニケーションが重要になってきている。

グラム:私たちは常にプロダクトの品質とデザインで顧客たちとコミュニケーションを取ろうとしてきた。製品そのもの、そしてそれらの美しさが顧客に訴えかけるべきで、大声で主張せずに伝えることこそがわれわれが達成できる真のコミュニケーションだ。ローキー(控えめ)でありながら、考え抜かれたマーケティング――私たちの主要なコミニュケーションツールはソーシャルメディアだ。インスタグラムは最終消費者と直接つながり、概念論や衣服に関してポストモダン的なアプローチを大切にするという、私たちと同じマインドを持つ人々とのコミュニティーを作るためにとても便利なツールだ。私たちは万人のためのブランドになるつもりはまったくなく、むしろ真に理解する人々のためのブランドであろうとしている。

WWD:デジタル・ファッション・ウイークをどう考えるか。ファッションショーに代わるものになり得るか。

グラム:生のファッションショーはさまざまな感情を生み出し、大きな感動を与える。実体験はショーのいい部分だ。とても高いクオリティーのものを食べるのと、同じものを写真で見るのには違いがある。長期的に見ると、通常のファッション・ウイークのスケジュールに戻ってショーを開催するのがいいのではないか。まだパンデミックが起こってから数カ月しか経ってないが、ジャーナリストやバイヤーと話していると、皆お互いのことを恋しがり、パリやロンドンやミラノで近況を報告し合うことを待ちわびている様子がうかがえる。

WWD:パンデミック収束後、どのようなニーズが生まれると思う?

グラム:消費者はいつでも高品質でイノベーティブで新しいデザインを求めている。衣服をデザインして生産することは、収束後も私たちのメインフォーカス。テーラリングとジャージー、両方のカテゴリーを顧客たちは期待しているだろう。

WWD:これを機にファッションシステムはどう変わると思う?

グラム:業界は変わらなければならないと私たちが説き始めてから3年が経とうとしている。メンズとウィメンズのコレクションを1度のショーで見せる試みを始めたり、1年に2度のコレクションを発表したり、ショーの開催時期を1月と6月のメンズとクチュールのファッション・ウイークに移して業界で一番早いデリバリーを実現したりすることで、私たちの考えを示してきた。3年前、私たちは業界の未来を予言し、今では私たちの戦略を実施して同じことを行うブランドが増えてきた。

WWD:直近の2021年スプリング・コレクションの製作で困っていることは?型数など通常と同じレベルでのコレクションを作る?

グラム:私たちは、21年春夏コレクションに取り掛かっている。コレクションの規模は世界情勢や、ショップがオーダーできる状況にあるかどうかによるだろう。これまでのところ、日本のパートナーたちはみな支援的でオーダーを計画してくれている。「ヴェトモン」は、プロダクトから始め、環境や私たちの消費者、そして世界全体に対して敬意を持ったコミュケーションまで、私たちの行うすべてのことについて力強い存在であり続ける。

WWD:最近オンライン買ってよかったものは?

グラム:ガーデン用の家具。もうすぐ夏が始まるからもっと外で時間を過ごすことができる。鳥の歌声を聴いたり、自然を満喫したりできる。

WWD:リモートワークで便利なことと不便なことは?

グラム:リモートワークをするとき、スケジュールがとても大切だということを学ばなければならない。通勤しなくてもいいので、多くの時間を節約できるのはいい点だが、一方不便なのは、ソーシャルな要素が欠けているというところ。「ヴェトモン」では、通常コンピューターの前で働いているチームはリモートワークがより生産的だと感じ、アトリエで衣服と接する必要があるデザインやや開発のチームにとっては困難なものになっているようだ。しかしながらリモートワークは、より多くの考える時間や素晴らしいプロジェクトを思いつくための時間をみんなに与えてくれたと思う。

The post 「ヴェトモン」CEOの目に映る「コロナ後のファッション産業」 appeared first on WWD JAPAN.com.

4つのオーガニックコスメブランドが真摯に取り組む海洋プラスチック問題

 「WWDビューティ」の5月28日号では、毎年恒例企画「オーガニック・ナチュラルコスメ特集」を企画した。2015年に国連機関で「SDGs(持続可能な開発目標)」と「パリ協定」が採択されて以降、サステナビリティへの関心は年々高まっている。そこで今号は、持続可能な農業生産法の一つとされるオーガニック(有機栽培)原料を用いる化粧品ブランドを取材し、製造から販売までサプライチェーン全体で取り組む環境対策について聞いた。

 その中の一つである海洋プラスチックごみの問題は、世界中で関心を集めている事例でもある。特にウミガメの鼻にストローが刺さった映像が広がったことで、一気にプラスチック製のストローが廃止されたことも記憶に新しい。ただ、現在も年間800万トンが海洋に流入しており、50年にはその量が海にいる魚の量を上回るという予測もされている。ビューティ業界は化粧品のボトルにプラスチックやガラスを使用することが多いため、海洋プラスチック問題に真摯に取り組んでいる。中でもオーガニックコスメブランドはその先陣を切っているといっても過言ではないだろう。代表的な4つのブランドの活動を追う。

製品原料にプラスチックビーズなどを使用しないパイオニア的ブランド「ヴェレダ」

 1921年創業のオーガニックブランドのパイオニアである「ヴェレダ(WELEDA)」は、天然由来成分に徹底してこだわっていることから、製品原料としてプラスチックビーズやシリコーンなどは使用しないというポリシーを持つ。プラスチック容器に関してもバイオプラスチックや再生プラスチックの割合を22年までに65%以上(18年時点は29%)にすること目標とする。

 また使用済みの容器は、リサイクル事業を手掛けるテラサイクルと協業し店頭での回収が日本でも始まっている。ガラス瓶も継続して使用しながら、プラスチックの利便性(輸送時のCO2削減など)を生かしつつマイナスの部分は企業努力でカバーし、今後も環境と人にとって最適な選択をしていく。

プラスチック廃棄を年間34トン以上削減する「ロゴナ」

 1970年代にドイツで初めてオーガニック食品を取り扱った店をルーツに持つオーガニックブランド「ロゴナ(LOGONA)」(2018年からロレアル傘下)は、高品質なオーガニック成分を使用し、自然由来成分による界面活性剤を開発する技術力に長けており、シャンプーやクレンジングなど洗浄系の製品の製造を強みとしている。消費者への透明性も重視しており、ドイツの化粧品ブランドとして最初に全成分表示を始めたことでも知られる。

 「ロゴナ」では自然療法士の国家資格を持つ創業者が唱えた「エコロジカルな経済活動が、世界をよりよくしていくために貢献する」という理念のもと、製造から物流、販売までサプライチェーン全体で環境に配慮する。プラスチック廃棄物削減にも力を入れていて、昨年からシャンプーを手始めに、100%リサイクルPETによるプラスチックボトルへの切り替えを進めており、ドイツでは年内にスキンケア製品のボトルが新しい容器に変わる予定だ。それに伴せて化粧箱も廃止する。プラスチック容器の使用に際しては、密閉性がないため中身が揮発することを前提としながら、化学成分による防腐加工をせずに安定を維持する処方の実現に技術をつぎ込むとともに、再生プラスチックの衛生面や安全性のテストにも時間をかけた。「ロゴナ」では100%リサイクルPETへの容器への切り替えにより、プラスチック廃棄を年間34トン以上削減する。

化粧品会社で初めて100%再生PETのパッケージを2002年に導入した「アヴェダ」

 米国発の「アヴェダ(AVEDA)」がリサイクル素材をパッケージに使い始めたのは1993年。可能な限り最高の品質を確保するためのベストな方法をテストし続け、徐々にシフトしていった。そうした取り組みが実を結び、化粧品会社として初めて100%再生PETのパッケージを2002年に導入した。さらに08年には、100%再生高密度ポリエチレンのボトルと100%再生ポリプロピレンのキャップを採用したのも、化粧品業界で初めてだった。今年1月には、100%再生高密度ポリエチレンのボトルを使用した、スーパーフードのパワーを実感できる新ヘアケアシリーズ「ニュートリプレニッシュ」を発売し話題を集めた。現在は全製品の約85%が再生PETのパッケージとなっており、今後は100%を目指す。

 店舗での使用済み製品の回収にも乗り出し、19年にテラサイクルのサポートを得て東京・表参道の旗艦店アヴェダ ライフスタイル サロン&スパ 南青山に回収ボックスを設置。今年2月からは、新宿ミロード店と伊勢丹新宿本店、そごう横浜店にも回収ボックスを設置し、資源の循環を推進するリサイクルプロジェクトを実施している。回収した製品容器は分別・再資源化し、プランターなどに再生して再利用する計画だ。

マイクロプラスチックの根絶を啓発する「トリロジー」

 ニュージーランドのオーガニックブランドでローズヒップオイルで知られる「トリロジー(TRILOGY)」は、化粧品のスクラブ剤として使われるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、アクリル樹脂、ナイロンなどの、直径が0.5mm以下のプラスチック粒子の使用に反対する運動を行っている。ニュージーランドは島国であることから、ナショナルアイデンティティーに不可欠な海の環境と健康とのつながりを訴える。植物は肌が必要とする全てを与えてくれるという信念のもと、エクスフォリエント(角質ケア)製品にマイクロビーズを使用しないことを約束している。州や国単位でのそれらの使用を禁止する世界的なビート・ザ・マイクロビーズ運動を支援し、「ジェントル フェイシャルエクスフォリエント」と「アクティブ クレンジング クリーム」は13年の発売以来「グッドスクラブガイド」に掲載されている。パッケージにはマイクロビーズ根絶を啓発するデザインを取り入れているのも特徴だ。本国では、海の清掃活動にも参加している。

The post 4つのオーガニックコスメブランドが真摯に取り組む海洋プラスチック問題 appeared first on WWD JAPAN.com.

小島健輔リポート 「ザラ」は1200店舗を閉めてもSPA首位を維持できるか

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。「ザラ」などを運営してSPA(製造小売り)のトップを走るスペインのインディテックスが最大1200店舗の店舗閉鎖を発表した。その本当の狙いとは?

 緊急事態宣言による休業要請も明けて都心でもほとんどの店舗が再開したが、その品ぞろえには大差があった。休業前の春物などどこかに引き上げて新規投入の夏物を全面展開する店から、休業前の在庫状態のままスプリングコートまで陳列しているゾンビみたいな店まで、驚くほどさまざまだ。

 そんな中、新規投入の夏物で大半を構成して鮮度が際立っていたのがインディテックス(INDITEX)の「ザラ(ZARA)」や「ベルシュカ(BERSHKA)」で、初夏物はコンパクトにまとめてセールしていた。路面店はゴールデンウイーク明けから営業を再開していたとはいえ、休業前に豊富にあった春物在庫はいったいどこへ引き上げたのだろうか。そこに発表されたのが、グローバルSPA(製造小売り)の圧倒的勝ち組とされてきたインディテックスの1200店という大量閉店だった。

ECが伸びてコロナクライシスのダメージを軽減

 インディテックスは6月10日に発表した20年2〜4月期(第1四半期)決算でコロナクライシスに直撃された業績を開示し、同時にこの危機を乗り越える2020〜21年の改革方針を公表したが、その骨子のひとつが21年までに1000〜1200店を整理するというものだった。

 20年2〜4月期の同社の売り上げは前年同期から44.3%減少したが、3月1日〜5月6日で57%減少したH&Mより傷は浅く、3〜5月累計で35.1%減少した国内ユニクロよりは傷が深かった。ファーストリテイリング全体でも4月9日発表の下方修正で3〜8月の売上を前年同期比13.8%減と予想しており、欧米主力の両社より格段に傷が軽かった。

 インディテックスのECは50%も伸びたが店舗売り上げは推計60%減少し、50%伸びたECは瞬間風速ながら全社売り上げの38%に迫ったと推計される。H&Mは3月1日〜5月6日に51エリア中46エリアで稼働したECの伸びが32%にとどまり、インディテックスとの格差が広がった。

 インディテックスのECは19年1月期で全社売り上げの12.2%(31.9億ユーロ/約4173億円)に達して、グローバルSPAのEC売り上げ首位を確立。20年1月期では店在庫引き当てのクリック&コレクト(C&C※1)に切り替えて13.9%(39.2億ユーロ/約4730億円)まで23%伸ばし、コロナパンデミックで大半の店舗が休業する中も売り上げを大きく下支えした。

 ちなみに、H&MのEC売り上げは18年11月期で300億SEK(3450億円、EC比率14.3%)、19年11月期で370億SEK(約4255億円、同15.9%)と推計されるが、各国のDC※2に在庫を積んで出荷する体制から店在庫引き当てのC&Cへ転換できておらず、在庫効率の改善には寄与していない。ファーストリテイリングのEC売り上げは19年8月期で2583億円(同11.2%)、国内ユニクロのEC売り上げは同期で832億円(同9.5%)、直近の20年8月期上半期で525億円(同11.3%)で、店在庫引き当てのC&Cに移行できておらず有明のEC専用倉庫から出荷している(中国では移行済み)。

 ECは全社売り上げに対する比率だけでなく、顧客利便や収益に直結する在庫効率や物流コストで評価すべきで、破綻したニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)は36%、J.クルー(J.CREW)は50%に達していた。

 インディテックスの売り上げは5月の51%減から6月は2〜8日の1週間で34%減(どちらもECを含む全社売り上げ)と、各国のロックアウト解除とともに急回復しているが、6月8日段階でも全7412店中22.5%の1669店がまだ閉まっている。フルに営業している54%の店舗では16%減まで売り上げが回復しているから、山は越えたとみてよいだろう。

※1.C&C:EC商品を店舗で渡したり店舗から近隣に宅配したり、店舗に取り置いてお試しや返品の利便を提供するOMO(オフラインとオンラインの融合)サービス
※2.DC(Distribution Center):棚入れ保管してピッキング出荷する物流倉庫で、仕分けてスルー出荷するTC(Transfer Center)とは区別して使う

コロナクライシスにも揺るがない財務体質

 インディテックスの今期第1四半期(4月末)在庫は26億2900万ユーロと前年同期より10.1%圧縮され、粗利益率も前年同期の59.5%から58.4%へ1.1ポイントの低下に抑えたが、買掛金は前年同期から4割近く圧縮されており、仕込みに急ブレーキをかけたことが読み取れる。最短2週間という短サイクル生産ゆえの芸当だ。同じファストファッションといっても、生産ロットが大きくリードタイムの長いH&Mが4月末で410億SEK(39.3億ユーロ相当)の在庫を抱え、粗利益率も2〜4ポイント下がると発表しているのに比べ、在庫コントロールも秀逸だ。

 売り上げの急減で売上債権回転日数は前年同期の12.85日から17.55日へ37%伸び、棚卸資産回転日数も前期の109.5日(年間3.33回転)から172.0日(年間2.12回転)へ57%も遅くなったのに、粗利益率の落ち込みが1.1ポイントというのは解せない。おそらくは行き場を失った春物在庫の多くを値引き処分しないで来期(あるいは今秋)に持ち越したのではないか。

 前期第1四半期の年換算3.33回転はインディテックスの季節的偏りであり、前期本決算の商品回転は在庫を前々期から16.5%も圧縮して5.01回転と、前々期の4.20回転から2割近く改善している。この水準は00年代初期に匹敵する画期的なもので、デジタル化の効果もともかく、各国のECをDC倉庫の在庫引き当てから店在庫引き当てに切り替えた効果が大きかったと推測される。

 今期第1四半期では売り上げが急減したため計算上の買掛債務回転日数も極端に伸びているが、前期決算ベースでも116.6日と長く、インディテックスが製品仕入れのSPAではなくアパレルメーカーに近い商品開発・調達体制であることがうかがえる。事実インディテックスは自ら生地を調達・染色整理加工して裁断し、付属も付けて工場に渡して工賃払い調達する比率が競合SPAより格段に高い。

 そんな商品財務体質ゆえ、通常運転の前期本決算では33.63日、26億ユーロの回転差資金があった。コロナクライシスに直撃された今期第1四半期で4億900万ユーロの損失を計上してもネットキャッシュは58億ユーロもあるから、コロナパンデミックの第2波が来ても資金繰りには十分な余裕がある。

 H&Mは19年11月期で売上債権回転日数が9.22日と短いものの、棚卸資産回転日数が125.0日(2.92回転)と長く、買掛債務回転日数が25.94日と短いため、108.28日の運転資金(690億SEK)を必要として、もとより資金繰りがタイトだった。コロナパンデミックによる売り上げ急落で4月8日に新たに9億8000万ユーロの回転信用枠を加え、4月末段階で現金、及び同等物、未利用信用枠の合計238億SEK(22.8億ユーロ相当)を確保しているが、インディテックスほど余裕はない。

1200店を閉める前向きな理由

 財務体質が盤石でも、インディテックスはコロナクライシスを契機に根本的な戦略転換を加速すると表明した。その骨子は(1)サプライチェーンから販売までのDX(デジタルトランスフォーメーション)、(2)販売と顧客利便のOMO※3、(3)根源的なサスティナビリティ――以上3点だ。それに伴って店舗の役割が根本的に変化するから1000〜1200店をabsorb(整理再編して吸収)するのであって、販売不振で店舗網を縮小するのではない。実際、インディテックスはリーマンショック時でも既存店売り上げを落とさなかったし(ギリギリ100%)、以降も通期で既存店売り上げが前年を割ったことはない。

 具体的には今後3年間に10億ユーロを投資し、18年に設計されたインディテックス・オープンプラットフォーム(INDITEX OPEN PLATFORM)に基づいて商品企画・生産・物流・販売を一貫するDXを加速する。年内に本社に6万4000平方メートルのオンラインスタジオを開設し、店在庫引き当てのC&Cを拡充して顧客利便と在庫効率を高めるOMOを確立し、EC比率を22年までに25%以上に拡大する中で、店舗の役割と配置を見直していく。

 撤収する店舗の数は全体の13〜16%に及ぶが、店舗面積では10〜12%、売り上げでは5〜6%、税引き前利益では3〜4%に過ぎず、その減損費用3億800万ユーロもすでに今期第1四半期に計上済みだ。一連の改革で売り場面積は年率2.5%増に抑制する一方、ECと合わせて売り上げは毎年4〜6%伸ばすと目論んでいるが、そんなペースではグローバルSPA首位の座は維持できない。アフターコロナ時代の急激なライフスタイル変化でカジュアル化が加速する中、ドレスアイテムの強みで成長してきた「ザラ」の頭打ちも予想される。

 店在庫引き当てのC&Cを販売の基盤とするにはマーケティングと物流のローカル化が必定だから、立地と規模、家賃負担や採算などから各店舗の役割を見直し、販売機能に加えてショールーム機能やC&C拠点機能、ローカル出荷やテザリング※4の拠点機能を分担する再編配置をすることになる。その結果として1000〜1200店舗が閉められると解釈するべきだ。

※3.OMO(Online Merges with Offline):ネットと店舗の垣根を超えた融合を意味し、モバイルフォンをキーツールとしてウェブルーミングとショールーミングを駆使するニューリテール戦略
※4.テザリング:地域の核となる大型店舗を物流と修理加工、EC注文品ローカル出荷の拠点として在庫を積み、周辺店舗にルート便で補給して在庫を適正化あるいはショールーム化し、物流のタイムラグとコストを最小化してC&C顧客利便と在庫効率を最大化する在庫運用手法

ロスと廃棄の課題を解決できるのか

 インディテックスの戦略骨子の最後の一つがサステナビリティだが、これだけは美しき環境保護はともかく、事業活動に伴う大量廃棄の課題を解決するには至っていない。

 毎週2回の短サイクルデリバリーを繰り返しても前期の商品回転は5.01回転にとどまり、H&Mの2.92回転、国内ユニクロの2.47回転よりは格段に速いとは言え、2週間ごとはともかく月ごとにフェイスを一新するには、かなりの売れ残り商品を店頭から引き上げなければならない。今回のコロナ休業でも、大量の春物在庫が店頭から引き上げられたはずだ。

 「ザラ」は毎週のオンライン各店発注に基づいてスペイン本社のTC(商品を棚入れ保管して出荷するDCではない)で自動仕分けし、補給分を保管せず全量を世界中の店舗に空輸あるいは陸送(一部、船積みもある)するシステムだから、本社のTCには製品在庫は存在しないし、各国にもEC専用の出荷センターはあっても店舗向けのDCは存在しない。その分、各店舗が後方ストックに売り場から下げた在庫を抱え、随時に編集して売り場に出したり、シーズン末のセールで消化している。それで消化し切れない在庫はアウトレット店舗(日本国内では4店舗)に集約して消化したり、タグを切り取って二次流通(バッタ屋)に放出したりしている。

 廃棄処分や二次流通への放出がどれほどあるか知る方法はないが、無視できない量であることは推察できる。アパレルビジネスのサステナビリティの根幹は売れ残り品の廃棄や二次流通への放出を最小限に抑えることで、顧客の価格信頼感にもつながる重要な政策だ。

 その解決策は需給ギャップの最小化であり、(1)企画から販売までのリードタイムを最短化する、(2)生産ロットを最小化する、(3)ギャンブル企画を最小化する――この3点が鉄則だ。ファッションビジネスでは顧客の目を引くトレンディなギャンブル企画も最小限は必要だが、比率を高めすぎると「J.クルー」のような悲劇が起きる。

 究極の解決策はパターンオーダーのスーツやシャツで広がりつつある受注先行のC2M※5無在庫販売だが、基本仕様と生産ラインの固定が必須で、多様なファッションアイテムの変化を追うファストファッションには適用が難しい。

 インディテックスがこれまで行ってきた努力は、生産面では(1)生機素材の先行集約調達と随時の染色整理加工(本社コンビナートに染色整理工場を持つ)による短サイクル対応、(2)売り切り御免に割り切った生産ロットのミニマム化(H&Mの10分の1)、(3)服種別の基本パターン標準化、(4)企画〜生産を一貫するデジタル化によるリードタイムの徹底した短縮、流通・販売面では(5)棚入れ保管して補給するDCを持たず各店発注での一発全量配分、(6)ウェブルーミング&ショールーミング双方向のOMOと店舗在庫引き当てのC&Cだ。

 業界最先端の仕組みを駆使して成長してきたインディテックスだが、コロナクライシスで顧客の購買行動が劇的に変化し、店舗の役割と布陣を一変させる必要に迫られた。

※5.C2M(Customer to Manufactory):ネットやショールームで受注してからデジタル生産や3Dプリンタで素早く生産して“個客”に届けるパーソナル対応の無在庫販売手法

既定路線の加速であってアフターコロナ時代に応えていない

 「ザラホーム(ZARA HOME)」と合わせて前期で全社売り上げの69.2%、税前利益の72.0%を占める主力業態の「ザラ」の強みは自社開発パターン、オリジナル素材、自社工場プレス仕上げで差別化するドレスアイテム(ビジネスウエア)であり、コロナクライシスによる長期の在宅生活やリモートワークで一変したライフスタイルが逆風になることは避けられない。拡大が見込めるカジュアルアイテムはH&Mなど競合SPAと差別化できる開発・生産体制ではなく、コモディティカジュアルはユニクロに遠く及ばない。

 今回発表された戦略は、これまでの店舗布陣と企画・生産体制をECを軸としたOMOにアジャストする既定路線を加速するだけで、商品も商品開発体制も物流体制も一変するわけではない。C&C利便と在庫効率を画期的に高めるテザリングの構想も打ち出されておらず、店舗布陣の再編がどこまで先を読んだものか疑念が残る。

 「ザラ」の商品はアフターコロナ時代の新たなライフスタイルとファッション価値に対応するものではなく、抜本的なリ・コンセプトが要求され壁に当たるリスクがある。アフターコロナ時代に受け入れられる新たなコンセプトを見出したとしても、これまでドレスアイテムを差別化してきた開発・生産体制をどう変えていくのかという難しい課題が残る。

 「ギャップ(GAP)」も「アバクロンビー&フィッチ(ABERCROMBIE & FITCH)」も「ヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA'S SECRET)」も、かつての成功をもたらしたファッション価値の変化に対応できなかった。その意味では、A.C.時代の覇者となるグローバルSPAは「ユニクロ」になる公算が高い。ファーストリテイリング(19年8月期、売り上げ2兆2905億円)がインディテックス(20年1月期、3兆4104億円)を抜き去る日は遠くないと思う。

ローカル分断に対応できるのか

 ブリグジッド(英国のEU離脱)から始まったローカル回帰と分断の構図はコロナパンデミックで決定的に加速され、1930年代の再現が危惧される世界状況だが、アパレルの世界でもローカル化が加速しており、グローバル展開のアパレルチェーンには逆風が強まっている。

 「ザラ」は各店発注だから品番やカラー、サイズの選択と数量は各店舗のマネージャーに任されるが(カントリーマネージャーというコントローラーがリモートでサポートする)、ラテンフィット仕様で生産された商品は日本人にはフィットしないアイテムもあり、日本企画があるわけではないから日本独自のローカルトレンドには対応できない。アパレルではないが、「ザラホーム」のベッドリネンにはフィットシーツがなく、コンフォーターカバーの内側にも留めひもは付いていない。単品コーディネイト企画になっているので、一つの柄色でトータルにそろえることもできない。日本人の生活慣習を真っ向から否定したマーチャンダイジングで、見た目はよいが値段も高く、売り上げも低迷している。

 ライフスタイルはもとよりローカルなもので、その上に花咲くファッションもローカルであらざるを得ない。ステイタスを競う高級ブランドはともかく、日常のライフスタイルを演出する大衆的ファッションでグローバルなチェーンが成り立った時代こそ特異だったのではないか。「ユニクロ」も地域によっては相当にローカル企画で対応している。

 インディテックスがいかに先端的な仕組みと努力で需給ギャップの最小化に取り組もうとも、スペイン発のラテン仕様で世界のローカルマーケットに対応するのは限界がある。「ギャップ」のようにフィットだけでもローカル対応するのか、適応しないマーケットは切り捨てるのか、根源的な課題が残る。ローカル回帰と分断が加速するアフターコロナ時代にどう対応するか、インディテックスはいまだ回答を見出していない。

The post 小島健輔リポート 「ザラ」は1200店舗を閉めてもSPA首位を維持できるか appeared first on WWD JAPAN.com.

小島健輔リポート 「ザラ」は1200店舗を閉めてもSPA首位を維持できるか

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。「ザラ」などを運営してSPA(製造小売り)のトップを走るスペインのインディテックスが最大1200店舗の店舗閉鎖を発表した。その本当の狙いとは?

 緊急事態宣言による休業要請も明けて都心でもほとんどの店舗が再開したが、その品ぞろえには大差があった。休業前の春物などどこかに引き上げて新規投入の夏物を全面展開する店から、休業前の在庫状態のままスプリングコートまで陳列しているゾンビみたいな店まで、驚くほどさまざまだ。

 そんな中、新規投入の夏物で大半を構成して鮮度が際立っていたのがインディテックス(INDITEX)の「ザラ(ZARA)」や「ベルシュカ(BERSHKA)」で、初夏物はコンパクトにまとめてセールしていた。路面店はゴールデンウイーク明けから営業を再開していたとはいえ、休業前に豊富にあった春物在庫はいったいどこへ引き上げたのだろうか。そこに発表されたのが、グローバルSPA(製造小売り)の圧倒的勝ち組とされてきたインディテックスの1200店という大量閉店だった。

ECが伸びてコロナクライシスのダメージを軽減

 インディテックスは6月10日に発表した20年2〜4月期(第1四半期)決算でコロナクライシスに直撃された業績を開示し、同時にこの危機を乗り越える2020〜21年の改革方針を公表したが、その骨子のひとつが21年までに1000〜1200店を整理するというものだった。

 20年2〜4月期の同社の売り上げは前年同期から44.3%減少したが、3月1日〜5月6日で57%減少したH&Mより傷は浅く、3〜5月累計で35.1%減少した国内ユニクロよりは傷が深かった。ファーストリテイリング全体でも4月9日発表の下方修正で3〜8月の売上を前年同期比13.8%減と予想しており、欧米主力の両社より格段に傷が軽かった。

 インディテックスのECは50%も伸びたが店舗売り上げは推計60%減少し、50%伸びたECは瞬間風速ながら全社売り上げの38%に迫ったと推計される。H&Mは3月1日〜5月6日に51エリア中46エリアで稼働したECの伸びが32%にとどまり、インディテックスとの格差が広がった。

 インディテックスのECは19年1月期で全社売り上げの12.2%(31.9億ユーロ/約4173億円)に達して、グローバルSPAのEC売り上げ首位を確立。20年1月期では店在庫引き当てのクリック&コレクト(C&C※1)に切り替えて13.9%(39.2億ユーロ/約4730億円)まで23%伸ばし、コロナパンデミックで大半の店舗が休業する中も売り上げを大きく下支えした。

 ちなみに、H&MのEC売り上げは18年11月期で300億SEK(3450億円、EC比率14.3%)、19年11月期で370億SEK(約4255億円、同15.9%)と推計されるが、各国のDC※2に在庫を積んで出荷する体制から店在庫引き当てのC&Cへ転換できておらず、在庫効率の改善には寄与していない。ファーストリテイリングのEC売り上げは19年8月期で2583億円(同11.2%)、国内ユニクロのEC売り上げは同期で832億円(同9.5%)、直近の20年8月期上半期で525億円(同11.3%)で、店在庫引き当てのC&Cに移行できておらず有明のEC専用倉庫から出荷している(中国では移行済み)。

 ECは全社売り上げに対する比率だけでなく、顧客利便や収益に直結する在庫効率や物流コストで評価すべきで、破綻したニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)は36%、J.クルー(J.CREW)は50%に達していた。

 インディテックスの売り上げは5月の51%減から6月は2〜8日の1週間で34%減(どちらもECを含む全社売り上げ)と、各国のロックアウト解除とともに急回復しているが、6月8日段階でも全7412店中22.5%の1669店がまだ閉まっている。フルに営業している54%の店舗では16%減まで売り上げが回復しているから、山は越えたとみてよいだろう。

※1.C&C:EC商品を店舗で渡したり店舗から近隣に宅配したり、店舗に取り置いてお試しや返品の利便を提供するOMO(オフラインとオンラインの融合)サービス
※2.DC(Distribution Center):棚入れ保管してピッキング出荷する物流倉庫で、仕分けてスルー出荷するTC(Transfer Center)とは区別して使う

コロナクライシスにも揺るがない財務体質

 インディテックスの今期第1四半期(4月末)在庫は26億2900万ユーロと前年同期より10.1%圧縮され、粗利益率も前年同期の59.5%から58.4%へ1.1ポイントの低下に抑えたが、買掛金は前年同期から4割近く圧縮されており、仕込みに急ブレーキをかけたことが読み取れる。最短2週間という短サイクル生産ゆえの芸当だ。同じファストファッションといっても、生産ロットが大きくリードタイムの長いH&Mが4月末で410億SEK(39.3億ユーロ相当)の在庫を抱え、粗利益率も2〜4ポイント下がると発表しているのに比べ、在庫コントロールも秀逸だ。

 売り上げの急減で売上債権回転日数は前年同期の12.85日から17.55日へ37%伸び、棚卸資産回転日数も前期の109.5日(年間3.33回転)から172.0日(年間2.12回転)へ57%も遅くなったのに、粗利益率の落ち込みが1.1ポイントというのは解せない。おそらくは行き場を失った春物在庫の多くを値引き処分しないで来期(あるいは今秋)に持ち越したのではないか。

 前期第1四半期の年換算3.33回転はインディテックスの季節的偏りであり、前期本決算の商品回転は在庫を前々期から16.5%も圧縮して5.01回転と、前々期の4.20回転から2割近く改善している。この水準は00年代初期に匹敵する画期的なもので、デジタル化の効果もともかく、各国のECをDC倉庫の在庫引き当てから店在庫引き当てに切り替えた効果が大きかったと推測される。

 今期第1四半期では売り上げが急減したため計算上の買掛債務回転日数も極端に伸びているが、前期決算ベースでも116.6日と長く、インディテックスが製品仕入れのSPAではなくアパレルメーカーに近い商品開発・調達体制であることがうかがえる。事実インディテックスは自ら生地を調達・染色整理加工して裁断し、付属も付けて工場に渡して工賃払い調達する比率が競合SPAより格段に高い。

 そんな商品財務体質ゆえ、通常運転の前期本決算では33.63日、26億ユーロの回転差資金があった。コロナクライシスに直撃された今期第1四半期で4億900万ユーロの損失を計上してもネットキャッシュは58億ユーロもあるから、コロナパンデミックの第2波が来ても資金繰りには十分な余裕がある。

 H&Mは19年11月期で売上債権回転日数が9.22日と短いものの、棚卸資産回転日数が125.0日(2.92回転)と長く、買掛債務回転日数が25.94日と短いため、108.28日の運転資金(690億SEK)を必要として、もとより資金繰りがタイトだった。コロナパンデミックによる売り上げ急落で4月8日に新たに9億8000万ユーロの回転信用枠を加え、4月末段階で現金、及び同等物、未利用信用枠の合計238億SEK(22.8億ユーロ相当)を確保しているが、インディテックスほど余裕はない。

1200店を閉める前向きな理由

 財務体質が盤石でも、インディテックスはコロナクライシスを契機に根本的な戦略転換を加速すると表明した。その骨子は(1)サプライチェーンから販売までのDX(デジタルトランスフォーメーション)、(2)販売と顧客利便のOMO※3、(3)根源的なサスティナビリティ――以上3点だ。それに伴って店舗の役割が根本的に変化するから1000〜1200店をabsorb(整理再編して吸収)するのであって、販売不振で店舗網を縮小するのではない。実際、インディテックスはリーマンショック時でも既存店売り上げを落とさなかったし(ギリギリ100%)、以降も通期で既存店売り上げが前年を割ったことはない。

 具体的には今後3年間に10億ユーロを投資し、18年に設計されたインディテックス・オープンプラットフォーム(INDITEX OPEN PLATFORM)に基づいて商品企画・生産・物流・販売を一貫するDXを加速する。年内に本社に6万4000平方メートルのオンラインスタジオを開設し、店在庫引き当てのC&Cを拡充して顧客利便と在庫効率を高めるOMOを確立し、EC比率を22年までに25%以上に拡大する中で、店舗の役割と配置を見直していく。

 撤収する店舗の数は全体の13〜16%に及ぶが、店舗面積では10〜12%、売り上げでは5〜6%、税引き前利益では3〜4%に過ぎず、その減損費用3億800万ユーロもすでに今期第1四半期に計上済みだ。一連の改革で売り場面積は年率2.5%増に抑制する一方、ECと合わせて売り上げは毎年4〜6%伸ばすと目論んでいるが、そんなペースではグローバルSPA首位の座は維持できない。アフターコロナ時代の急激なライフスタイル変化でカジュアル化が加速する中、ドレスアイテムの強みで成長してきた「ザラ」の頭打ちも予想される。

 店在庫引き当てのC&Cを販売の基盤とするにはマーケティングと物流のローカル化が必定だから、立地と規模、家賃負担や採算などから各店舗の役割を見直し、販売機能に加えてショールーム機能やC&C拠点機能、ローカル出荷やテザリング※4の拠点機能を分担する再編配置をすることになる。その結果として1000〜1200店舗が閉められると解釈するべきだ。

※3.OMO(Online Merges with Offline):ネットと店舗の垣根を超えた融合を意味し、モバイルフォンをキーツールとしてウェブルーミングとショールーミングを駆使するニューリテール戦略
※4.テザリング:地域の核となる大型店舗を物流と修理加工、EC注文品ローカル出荷の拠点として在庫を積み、周辺店舗にルート便で補給して在庫を適正化あるいはショールーム化し、物流のタイムラグとコストを最小化してC&C顧客利便と在庫効率を最大化する在庫運用手法

ロスと廃棄の課題を解決できるのか

 インディテックスの戦略骨子の最後の一つがサステナビリティだが、これだけは美しき環境保護はともかく、事業活動に伴う大量廃棄の課題を解決するには至っていない。

 毎週2回の短サイクルデリバリーを繰り返しても前期の商品回転は5.01回転にとどまり、H&Mの2.92回転、国内ユニクロの2.47回転よりは格段に速いとは言え、2週間ごとはともかく月ごとにフェイスを一新するには、かなりの売れ残り商品を店頭から引き上げなければならない。今回のコロナ休業でも、大量の春物在庫が店頭から引き上げられたはずだ。

 「ザラ」は毎週のオンライン各店発注に基づいてスペイン本社のTC(商品を棚入れ保管して出荷するDCではない)で自動仕分けし、補給分を保管せず全量を世界中の店舗に空輸あるいは陸送(一部、船積みもある)するシステムだから、本社のTCには製品在庫は存在しないし、各国にもEC専用の出荷センターはあっても店舗向けのDCは存在しない。その分、各店舗が後方ストックに売り場から下げた在庫を抱え、随時に編集して売り場に出したり、シーズン末のセールで消化している。それで消化し切れない在庫はアウトレット店舗(日本国内では4店舗)に集約して消化したり、タグを切り取って二次流通(バッタ屋)に放出したりしている。

 廃棄処分や二次流通への放出がどれほどあるか知る方法はないが、無視できない量であることは推察できる。アパレルビジネスのサステナビリティの根幹は売れ残り品の廃棄や二次流通への放出を最小限に抑えることで、顧客の価格信頼感にもつながる重要な政策だ。

 その解決策は需給ギャップの最小化であり、(1)企画から販売までのリードタイムを最短化する、(2)生産ロットを最小化する、(3)ギャンブル企画を最小化する――この3点が鉄則だ。ファッションビジネスでは顧客の目を引くトレンディなギャンブル企画も最小限は必要だが、比率を高めすぎると「J.クルー」のような悲劇が起きる。

 究極の解決策はパターンオーダーのスーツやシャツで広がりつつある受注先行のC2M※5無在庫販売だが、基本仕様と生産ラインの固定が必須で、多様なファッションアイテムの変化を追うファストファッションには適用が難しい。

 インディテックスがこれまで行ってきた努力は、生産面では(1)生機素材の先行集約調達と随時の染色整理加工(本社コンビナートに染色整理工場を持つ)による短サイクル対応、(2)売り切り御免に割り切った生産ロットのミニマム化(H&Mの10分の1)、(3)服種別の基本パターン標準化、(4)企画〜生産を一貫するデジタル化によるリードタイムの徹底した短縮、流通・販売面では(5)棚入れ保管して補給するDCを持たず各店発注での一発全量配分、(6)ウェブルーミング&ショールーミング双方向のOMOと店舗在庫引き当てのC&Cだ。

 業界最先端の仕組みを駆使して成長してきたインディテックスだが、コロナクライシスで顧客の購買行動が劇的に変化し、店舗の役割と布陣を一変させる必要に迫られた。

※5.C2M(Customer to Manufactory):ネットやショールームで受注してからデジタル生産や3Dプリンタで素早く生産して“個客”に届けるパーソナル対応の無在庫販売手法

既定路線の加速であってアフターコロナ時代に応えていない

 「ザラホーム(ZARA HOME)」と合わせて前期で全社売り上げの69.2%、税前利益の72.0%を占める主力業態の「ザラ」の強みは自社開発パターン、オリジナル素材、自社工場プレス仕上げで差別化するドレスアイテム(ビジネスウエア)であり、コロナクライシスによる長期の在宅生活やリモートワークで一変したライフスタイルが逆風になることは避けられない。拡大が見込めるカジュアルアイテムはH&Mなど競合SPAと差別化できる開発・生産体制ではなく、コモディティカジュアルはユニクロに遠く及ばない。

 今回発表された戦略は、これまでの店舗布陣と企画・生産体制をECを軸としたOMOにアジャストする既定路線を加速するだけで、商品も商品開発体制も物流体制も一変するわけではない。C&C利便と在庫効率を画期的に高めるテザリングの構想も打ち出されておらず、店舗布陣の再編がどこまで先を読んだものか疑念が残る。

 「ザラ」の商品はアフターコロナ時代の新たなライフスタイルとファッション価値に対応するものではなく、抜本的なリ・コンセプトが要求され壁に当たるリスクがある。アフターコロナ時代に受け入れられる新たなコンセプトを見出したとしても、これまでドレスアイテムを差別化してきた開発・生産体制をどう変えていくのかという難しい課題が残る。

 「ギャップ(GAP)」も「アバクロンビー&フィッチ(ABERCROMBIE & FITCH)」も「ヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA'S SECRET)」も、かつての成功をもたらしたファッション価値の変化に対応できなかった。その意味では、A.C.時代の覇者となるグローバルSPAは「ユニクロ」になる公算が高い。ファーストリテイリング(19年8月期、売り上げ2兆2905億円)がインディテックス(20年1月期、3兆4104億円)を抜き去る日は遠くないと思う。

ローカル分断に対応できるのか

 ブリグジッド(英国のEU離脱)から始まったローカル回帰と分断の構図はコロナパンデミックで決定的に加速され、1930年代の再現が危惧される世界状況だが、アパレルの世界でもローカル化が加速しており、グローバル展開のアパレルチェーンには逆風が強まっている。

 「ザラ」は各店発注だから品番やカラー、サイズの選択と数量は各店舗のマネージャーに任されるが(カントリーマネージャーというコントローラーがリモートでサポートする)、ラテンフィット仕様で生産された商品は日本人にはフィットしないアイテムもあり、日本企画があるわけではないから日本独自のローカルトレンドには対応できない。アパレルではないが、「ザラホーム」のベッドリネンにはフィットシーツがなく、コンフォーターカバーの内側にも留めひもは付いていない。単品コーディネイト企画になっているので、一つの柄色でトータルにそろえることもできない。日本人の生活慣習を真っ向から否定したマーチャンダイジングで、見た目はよいが値段も高く、売り上げも低迷している。

 ライフスタイルはもとよりローカルなもので、その上に花咲くファッションもローカルであらざるを得ない。ステイタスを競う高級ブランドはともかく、日常のライフスタイルを演出する大衆的ファッションでグローバルなチェーンが成り立った時代こそ特異だったのではないか。「ユニクロ」も地域によっては相当にローカル企画で対応している。

 インディテックスがいかに先端的な仕組みと努力で需給ギャップの最小化に取り組もうとも、スペイン発のラテン仕様で世界のローカルマーケットに対応するのは限界がある。「ギャップ」のようにフィットだけでもローカル対応するのか、適応しないマーケットは切り捨てるのか、根源的な課題が残る。ローカル回帰と分断が加速するアフターコロナ時代にどう対応するか、インディテックスはいまだ回答を見出していない。

The post 小島健輔リポート 「ザラ」は1200店舗を閉めてもSPA首位を維持できるか appeared first on WWD JAPAN.com.

シアー服は淡いトーンで! 人気セレクトショップ「ロンハーマン」の着こなしが絶妙

 今年も夏が長くなりそうで、涼しく過ごせる服はローテーションの軸に据えたくなります。“シアー(透ける)素材”はトレンド入りしていて、さまざまなブランドやショップが提案。シアー素材を取り入れたコーディネートの名手が、人気セレクトショップの「ロンハーマン(RON HERMAN)」です。透け感がちゃんとありつつ、ヘルシーでこなれた新鮮な演出が目をひきます。たとえば、写真は黒タンクトップにパステルピンクのシアーニットをレイヤード。程よい透け感が優しげムードを漂わせ、同時に品のよさも感じさせます。進化を重ね、従来のイメージを覆すような新シアー素材の奥深い取り入れ方を一挙、ご紹介します。

◆ほんのりシアー感でレディーライク 大人かわいいピンク

 ニット素材なのに透けるシアーニットは、大人女性に試してほしいマテリアルの筆頭格です。“透ける=レースやチュール”という思い込みを、素敵に裏切ってくれます。肌に張り付かない、ニットならではの“ふわっと感”が魅力の一つ。淡いトーンのきれい色を選べば、ハッピーオーラまでまとえそう。1枚目写真は、さりげないほんのりシアー感がピンクのやわらかい魅力を引き出しました。パープルのスカートとピンクのローファーでニアトーンのコーディネートに。

 2枚目写真はシアーなカーディガンの前を閉じて、ニットシャツ風に着こなした透けコーデ。下に着た白タンクトップが淡く透け見えて、アンニュイな表情に仕上がりました。ストライプ柄のスカートとタンクトップと白の響き合いが生まれています。カーデの裾をきっちりウエストインして、きれいめに。適度に透けていても、カジュアルには見えにくい点も、新しい手口。上品に取り入れられるシアーテクニックです。

◆肌の透明感を引き出す “におわせレイヤード”が新鮮

 素肌が透けて見える服の場合、穏やかに映る色の一つに、ヌーディーな色があります。健康的に見えるうえ、気負いのない雰囲気も帯びるので、ベージュ系のニュートラルな色合いは、サマールックにぴったり。タンクトップを透かして見せる薄物レイヤードのほか、チューブトップやキャミソールなどを使った“におわせレイヤード”も組み立てられます。シャツを羽織物風に着るコーデにも便利。1枚目写真は、色のトーンが近い、マニッシュなパンツで合わせて、フェミニンさを引き立てました。

 2枚目写真のブラウスは、下に着たタンクトップを、思いっきり透けさせました。イエローの色味が効いて、白タンクの爽やか感と交じり合って、オブラート風の着こなしに。ボリュームたっぷりの袖コンシャスのフォルムが、さっぱりして見えがちな夏ルックに程よい華やかさや動きを添えてくれます。

◆エアリーでノスタルジーな花柄シアー 甘さ控えめで着回し自在

 愛らしい小花柄も、シアー素材に写し込めば、繊細な見え具合に変わります。風が吹き抜けるようなシアー素材のマキシ丈スカートは、夏を心地よく過ごせる重宝ボトムス。ほのかに透け見えるレッグラインが程よい色香を漂わせます。オーバーサイズのメンズ風アウターとも好バランスを描き出します。

 2枚目写真は花柄のシアーシャツをジャケット風に羽織りました。シャツのジャケット転用は、布の薄さが生きて、夏でも快適に過ごしやすいアレンジに。デニムのオーバーオールの上から羽織って、若々しさとフェアリー感をクロスオーバー。色褪せた花柄が引き出す、どこか懐かしいノスタルジーなムードが、リラクシングな気分を上乗せしています。

 アメリカ西海岸テイストが持ち味のロンハーマンが提案する、淡いパステルトーンのシアー服の着こなし提案は、涼やかさとリラックス、上品なこなれ感を兼ね備えています。薄手で透けるアイテムはサマーレイヤードを組み立てやすく、コーデの幅が広がります。夏本番を前に早めの予行演習を始めてみては。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

The post シアー服は淡いトーンで! 人気セレクトショップ「ロンハーマン」の着こなしが絶妙 appeared first on WWD JAPAN.com.

スペイン風邪が流行したときのファッションは? 100年前の米国にタイムスリップ

 スペイン風邪(スペインインフルエンザ)は、第1次世界大戦の開戦から4年がたった1918年の春に猛威を振るった。当時の感染者は最終的に5億人を記録し、世界人口の約3分の1が感染したといわれている。学校や劇場、教会は全て閉鎖され、国民は家にいるよう指示された。ここでは米「WWD」のアーカイブから、小売業界に見られた新型コロナとスペイン風邪の奇妙な共通点を見てみよう。

 スペイン風邪が大流行した当時のアメリカでは、営業時間の短縮や入店人数の管理を行ったり電話注文を勧めたりした店舗もあったものの、ニューヨーク州シラキュースからアイダホ州アイダホフォールズまで多くの店舗は休業した。店側は商品の交換や返品を極力控えたという。公共の場でのマスクの着用は保健当局によって推奨され、中には当時の物価では高額だった5ドルの罰金とともに義務付けられた地域もあった。18年10月28日号のサンフランシスコに関する記事は「営業を停止する中、大型店舗のスタッフはマスク製作に乗り出した」と書いている。ミズーリ州のカンザスシティーでは、アドラーズ社が販売員向けにガーゼの“インフルエンザ対策マスク”を製作し、1枚5セントで一般向けにも販売した。

 そんな中、“インフルエンザ ベール”の販売も急増した。1918年10月16日号で当時ニューヨーク市の衛生局長であったロイヤル・S・コープランド(Royal S. Copeland)は、「街中でシフォンのベールをまとった女性を見かけることは素晴らしい。ニューヨーク市民の全員にこの新しい習慣を取り入れるよう要請するべきかもしれない。ベールは厚手で予防策としてほぼ完璧だ。この際スタイルは気にせず、この感染症に終止符を打とう」と語った。一方、同週の「WWD」には「帽子の色に合わせてベールを選んでいる」などスタイリングについても記されている。このほか、「スターン&スターン(STERN & STERN)」はメッシュ素材のベールの鼻と口の前に当たる部分をシフォンで切り替えにした“セーフティーファースト ベール”をデザインした。

 そして18年秋までは、多くの母親が子どもを連れて買い物に行くことを恐れたため、子ども服や既製服、スーツの売り上げが落ちた一方で、ブランケットや掛け布団、冬物の下着類の売り上げは伸びた。これは、新型コロナ禍に見られる“在宅ファッション”の先駆けと言えるのかもしれない。また当時のベールへの関心の高まりも、個人防護具(PPE)の要素を取り入れた現在のアクセサリートレンドに通じる。

 ファッション歴史研究家でFIDM ミュージアム&ギャラリー(FIDM Museum & Galleries)のキュレーターを務めるケビン・ジョーンズ(Kevin Jones)は、「ビクトリア朝やエドワード時代の大きなハットにはベール付きのものが多く、ベールをまとうことはファッショナブルだった。しかし、だんだんとハットのサイズが小さくなるにつれてベールはなくなり、第1次世界大戦中には全く見かけなくなった」とコメント。手袋の着用は依然、男女ともにエチケットだったことに触れつつ、「スペイン風邪を生き抜いた世代は、一度脱いだベールを顔を覆うことができるという完璧な口実とともにもう一度復活させた」と語る。

The post スペイン風邪が流行したときのファッションは? 100年前の米国にタイムスリップ appeared first on WWD JAPAN.com.

そして「父の日」 泣くな!「ステットソン」があるじゃないか

 小4の娘が反抗期に入ってしまった。いや、ママとは仲良しなので反抗期ではないのかもしれない。そういえば諸先輩方が「女児が父親と遊んでくれるのは10歳までだぞ」と口を酸っぱくして言っていたことを、こんな状況になって初めて思い出した……。妻のアドバイスも「今はそっとしておけ」なので、一日でも早く“対パパ専用反抗期”が終わってくれるよう祈るのみだ。

 そんなわけで、“今年の「父の日」は何も期待してはならない”と自分に言い聞かせた(ショックを受けないためにも……)。代わりに、自分への慰めかたがた買い物をすることにした。これがファッションの力だ(……たぶん)。何か夏らしいものをと考え、1865年アメリカ生まれの帽子ブランド「ステットソン(STETSON)」のパナマ帽を選んだ。冬に買ったビーバーフェルト製の“ウィペット”で、すっかり開眼してしまったからだ(下の動画でかぶっているのが、その“ウィペット”)。同じ“ウィペット”型のパナマ帽もあったのだが、ずっと憧れだったクラシックな“オプティモ”にした。最大の特徴は、折り畳み可能で旅を想起させる点だ。こんな状況下だから、せめて気分だけでも旅に出たい。

 着こなしは“スカ”のイメージで。とはいえ、“NO MUSIC, MY LIFE.”なので、あくまで想像だ。スーツはかつて、結納返しで東京・渋谷に3代続くテーラーで作ってもらった13年物。インには日本が世界に誇るアロハシャツブランド「サンサーフ(SUN SURF)」を合わせて、首元からはメード・イン・USAの白Tをチラ見せさせた。足元はハワイブランド「アイランドスリッパ(ISLAND SLIPPER)」のスエードモデル。やんちゃスタイルを少しでも上品に見せられたらと、時計は「カルティエ(CARTIER)」の“マストタンク”を着けた。これで娘にフラれてクヨクヨしている父親には見えないはずだ。

 そういえば、波平さんは劇中でよくハットをかぶっている。調べてみるとワカメちゃんは小3とのこと。波平さんも来年には僕と同じような末路をたどるのだろうか?そんなことを考える日曜の夕暮れなのだった……。

The post そして「父の日」 泣くな!「ステットソン」があるじゃないか appeared first on WWD JAPAN.com.

そして「父の日」 泣くな!「ステットソン」があるじゃないか

 小4の娘が反抗期に入ってしまった。いや、ママとは仲良しなので反抗期ではないのかもしれない。そういえば諸先輩方が「女児が父親と遊んでくれるのは10歳までだぞ」と口を酸っぱくして言っていたことを、こんな状況になって初めて思い出した……。妻のアドバイスも「今はそっとしておけ」なので、一日でも早く“対パパ専用反抗期”が終わってくれるよう祈るのみだ。

 そんなわけで、“今年の「父の日」は何も期待してはならない”と自分に言い聞かせた(ショックを受けないためにも……)。代わりに、自分への慰めかたがた買い物をすることにした。これがファッションの力だ(……たぶん)。何か夏らしいものをと考え、1865年アメリカ生まれの帽子ブランド「ステットソン(STETSON)」のパナマ帽を選んだ。冬に買ったビーバーフェルト製の“ウィペット”で、すっかり開眼してしまったからだ(下の動画でかぶっているのが、その“ウィペット”)。同じ“ウィペット”型のパナマ帽もあったのだが、ずっと憧れだったクラシックな“オプティモ”にした。最大の特徴は、折り畳み可能で旅を想起させる点だ。こんな状況下だから、せめて気分だけでも旅に出たい。

 着こなしは“スカ”のイメージで。とはいえ、“NO MUSIC, MY LIFE.”なので、あくまで想像だ。スーツはかつて、結納返しで東京・渋谷に3代続くテーラーで作ってもらった13年物。インには日本が世界に誇るアロハシャツブランド「サンサーフ(SUN SURF)」を合わせて、首元からはメード・イン・USAの白Tをチラ見せさせた。足元はハワイブランド「アイランドスリッパ(ISLAND SLIPPER)」のスエードモデル。やんちゃスタイルを少しでも上品に見せられたらと、時計は「カルティエ(CARTIER)」の“マストタンク”を着けた。これで娘にフラれてクヨクヨしている父親には見えないはずだ。

 そういえば、波平さんは劇中でよくハットをかぶっている。調べてみるとワカメちゃんは小3とのこと。波平さんも来年には僕と同じような末路をたどるのだろうか?そんなことを考える日曜の夕暮れなのだった……。

The post そして「父の日」 泣くな!「ステットソン」があるじゃないか appeared first on WWD JAPAN.com.

女性が主導する“ソーシャル・グッド”の取り組み ロンドンの香水ブランドやベーカリーで発見

 ロンドンという街は訪れる度に、先進的だと感じます。街の景観でなく、人々のマインドも。特に昨今強く感じるのは、フェミニズムの流れを受けた女性エンパワーメントの動きや、ソーシャル・グッド(地球環境や社会に対して良いインパクトを与える活動や商品、サービス)な企業が多いこと。ロンドン・ファッション・ウィークは“ポジティブ・ファッション”というスローガンを掲げ、ファッションが社会や環境に良いインパクトを与えられるよう力を入れています。ショップ巡りをしていると“Women Power”とプリントされたTシャツを頻繁に見かけ、街を散策中に女性やトランスエンダーの作家によるフェミニズム専門の本屋を市内に数店発見しました。それらソーシャル・グッドな取り組みを行う企業は、女性が先導しているという点も興味深いです。もちろん、ブランディングの手法として取り入れているという見解も否めませんが、少なくとも善行を積もうとしている姿勢には学ぶべきことがあると、個人的に思っています。2月中旬に訪れたロンドンで見つけた、ソーシャル・グッドや女性エンパワーメントに取り組む3つのイギリス企業を紹介します。

サステナブルな香水ブランド
SANA JARDIN

 サステナビリティの概念はファッションやスキンケア、さらにはフレグランス業界にも波及しています。イギリス発の香水ブランド「サナ ジャルダン(SANA JARDIN)」の創始者エイミー・クリスチャンセン(Amy Christiansen)は、香水の生産過程で原料となる花々が大量に廃棄される、業界の悪しき習慣を変えるべく立ち上がりました。彼女は約25年間、非営利団体で社会事業に携わってきたイギリス人女性です。女性エンパワーメントにも力を入れており、モロッコにある農場の収穫者として現地女性を雇い、収穫のスキルに加え、年間600トン廃棄処理される花々をエッセンシャルキャンドルへとアップサイクルし、商品に作り変えるスキルを教育しています。栽培や香水作りに関する知識と技術の不足により年に数回しか収入を得る機会がなかったモロッコで、雇用促進と経済成長のために非営利団体と提携して女性協同組合も立ち上げています。支援ではなく、経済的機会を与えることで循環型経済の実現を目指しているそう。

チャリティー活動に励むベーカリー
Lily Vanilli Bakery

 イギリスのフード業界で高い評価を受ける「リリー ヴァニリ ベーカリー(Lily Vanilli Bakery )」。創始者のリリー・ジョンズ(Lily Jones)が2008年、自宅のチッキンで焼いたケーキを小さなマーケットで売り出すと口コミで評判が広がり、ビスポーク専門の同ベーカリーを立ち上げました。イギリスの首相官邸やエルトン・ジョン(Elton John)、故アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)など著名人をクライアントに抱え、2011年にベーカリーをオープン。日曜日に週一度だけオープンしており、基本はビスポークケーキ専門のパン職人として活動中です。そんな彼女が数年前に立ち上げたのが、「ベイク フォー シリア(Bake for Syria)」というプロジェクトです。これは、シリアの戦争で故郷を離れ避難している子どもたちの生活を支援するための資金集めとして発足。世界中の著名なパン職人やシェフから寄付されたパンやレシピで、チャリティーイベントの開催やレシピ本販売を行っています。同じ仕組みで、オーストラリア森林火災にも支援金を送ったそう。 「自分が住んでいる場所から遠く離れた場所で起こっているからといって、私たちが無力だと感じるのは非常に悲劇的です。小さくても、出来ることをしたいと思って発足しました」と彼女は語ってくれました。

 私がベーカリーを訪れた日曜日は土砂降りの雨に見舞われましたが、お店は混雑していてひっきりなしにお客さんが入ってくる人気ぶり。常に進化したいという向上心の高い彼女は、季節の食材やインスピレーションを得て毎週メニューを変えるそうです。私がベーカリーで頂いたルバーブとブラッドオレンジのタルトはとても新鮮な食材の香りが鼻から抜けて、酸味と甘味のバランスが絶妙な美味しさでした!

ユーチューバー発のベーカリー
Crumbs&Doilies

 同じベーカリーでも趣向が異なるのがソーホーにお店を構える「クランブス アンド ドーリーズ(Crumbs&Doilies)」。創始者のジェマ・ウィルソン(Jemma Wilson)は、コンテンツマーケティング会社の会社経営を行う傍ら、06年から“カップケーキ・ジェマ(Cupcake Jemma)”の名でカップケーキを中心とする焼き菓子の作り方を紹介するユーチューブチャンネルを始めました。登録者数が100万人に達した13年にクラウドファンディングを通して、ベーカリーを開くための資金集めを開始。15年には念願のお店をオープンさせたのです。カップケーキ作りだけでなく、コミュニティー作りでも手腕を発揮する彼女のベーカリーで使用するのは有機食材で、コーヒー豆もフェアトレード認証を受けたメーカーのみ。「ベイク フォー シリア」のチャリティーに参加するほか、オーストラリア森林火災の支援金集めも行っていました。雇用しているのは9割が女性で、私がお店を訪れたときには店内は女性客で大盛況。出産を控えているジェマには会えずでしたが「妊娠を経験して“女性”であることの誇りを改めて実感している」と文面で語り、今後女性エンパワーメントに力を入れていくのかなと感じました。また、同店のあるカーナビー・ストリートは海洋保護の慈善団体「プロジェクト ゼロ(Project Zero)」と連携し、各店の照明電力は100%再生可能エネルギー、古紙配合率100%の再生紙に統一、使い捨てのプラスチックカップの廃止などにも取り組んでいます。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

The post 女性が主導する“ソーシャル・グッド”の取り組み ロンドンの香水ブランドやベーカリーで発見 appeared first on WWD JAPAN.com.

マスクから考えるコーディネイト 東京ブランドのマスクで8スタイルに挑戦!!

 緊急事態宣言や“TOKYOアラート”が解除となり、「新しい日常」が始まりました。その必需品と言えば、なんでしょう?

 そう、やっぱりマスクです。

 実は僕、マスクが本当に大嫌いでした。どれだけ意識しても数時間経てばニオイが気になるし、表情が出せない・読み取れないのもツマンナイ。だから花粉症がツラい時さえ、マスクをしない人だったんです。でも、さすがに今は、そんなワケにはいきません。でも着け慣れないせいか真っ白のマスクは無機質に思えて仕方なく、さまざまなブランドやショップが個性豊かなオリジナルマスクを発売してくれるのが嬉しいんです。で気づけば今は、洋服に合わせてマスクを変えるようになりました(笑)。根っからの“ファッション・バカ”なのです。

 そんな「新しい日常」が自分の中で定着してきた時、「いっそ、マスクからコーディネイトを考えてみるか?」という気持ちになりました。きっかけはセレクトショップの「ミッドウエスト」が、東京のデザイナーとコラボして緊急発売したマスクを紹介するインスタグラムのストーリーズを見つけた時。その中には僕の大好物、コレクションピース級のインパクト絶大マスクまであって、本当にワクワクしたのです(笑)。そこで早速、「ミッドウエスト」に連絡して、素敵なマスクをゲット(第1弾は即日SOLD OUTでしたが、7月頭には第2弾を発売するそうです!!)。手持ちも加えて、洋服に合わせたマスクではなく、マスクに合わせた洋服をクローゼットからチョイスして8パターン撮影してみました。撮影場所は、横浜ののどかな住宅街にある我が家の周辺(笑)。カメラマンと2人、私はマスク姿なので感染リスクも低い撮影に挑戦です!!コレからの季節にちょうど良い、「夏」をテーマにしてみました。

マスクの色柄&素材とリンクする洋服をチョイス

「ディスカバード」
バンダナマスク
価格:1650円
コレクション性:☆
快適性:☆☆☆

 さて、最初に挑戦するマスクは、「ディスカバード(DISCOVERED)」のバンダナ柄。白と黒の2色展開でしたが、今回は白を選んでみましょう。バンダナ柄のマスクを見たときにパッと思い出したのが、ラフ・シモンズ(Raf Simons)による「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」のショー会場でもらった巨大バンダナ。「同じ色&柄だから、コーディネイトも簡単じゃない?」と思い、久しぶりに使ってみました。うん、やっぱり良いカンジです。

バンダナ:「カルバン・クライン」
Tシャツ:「アンダーカバー(UNDERCOVER)」
ショーツ:「マムート(MAMMUT)」
ソックス:「ミッソーニ(MISSONI)」
スニーカー:「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」

「ヨシオクボ」
ジャージー素材マスク
価格:2750円
コレクション性:☆
快適性:☆☆☆

 同じ感覚で挑戦したのが、「ヨシオクボ(YOSHIO KUBO)」のマスクを使ったコーディネイト。通気性の良いジャージー素材でスポーティーだから、単純明快、「アディダス(ADIDAS)」の洋服と合わせました。こんな風に、色や柄、素材が同じ洋服を選ぶと自然にまとまりますね。こちらは、スポーツクラブのお供として愛用したいと思います!!

キャップ:「ディオール(DIOR)」
トップス:「アディダス(ADIDAS)」
ポロシャツ:「アーバンリサーチ(URBAN RESEARCH)」
ショーツ:「アディダス バイ カラー(ADIDAS BY KOLOR)」
ソックス:「シブリング(SIBLING)」
スニーカー:「バレンシアガ(BALENCIAGA)」

もっと簡単なのは、コレ 同じブランドでコーディネイト

「ハバノス」
カモフラ柄マスク
コレクション性:☆☆
快適性:☆☆

 もっと簡単なのは、同じブランドの洋服を着ちゃうこと、です(笑)。ブランドマスクが増えそうなこれから、このコーディネイトはますます簡単になりそう(笑)。「ハバノス(HBNS)」のカモフラ柄マスクには、同じく「ハバノス」のギンガムチェックシャツをコーディネイト。このシャツにはグログランのナイロンテープが縫い付けられており、こんな風にアーミーバッグを装着することができます。ここに花を刺したのは、ブランドのルックブックの安直なマネっこ(笑)。ちょっぴり緊張感漂うマスク姿ですが、ほっこりできるでしょう(笑)?

サンバイザー:「Y-3」
シャツ:「ハバノス」
ショーツ:「ミスタージェントルマン(MISTER GENTLEMAN)」
ソックス:「ルード(RHUDE)」
サボ:「サカイ(SACAI)」 × 「エンダースキーマ(HENDER SCHEME)」

「ディスカバード」
IF WE LIVE TRULYマスク
コレクション性:☆☆☆
快適性:☆

 もう一つのブランドコーデは、「ディスカバード」です。インパクト絶大の「IF WE LIVE TRULY」というタイポグラフィーが特徴のマスクなので、同じくタイプグラフィーが印象的な、2020年春夏のニットベストを合わせました。マスクの装着方法は、コレが正解だったのかしら(笑)?密着度が高く、飛沫を撒き散らす可能性は低そうですが、コレからの季節はキツいかもね~(笑)。でも、ついに営業再開が認められたライブハウスとかで、どうでしょうか?グルービーに盛り上がるには、良きマスクです。

キャップ:「カラー」 × 「ニューエラ(NEW ERA)」
ニットベスト:「ディスカバード」
ポロシャツ:「アーバンリサーチ」
ショーツ:「ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)」 × 「ビームス(BEAM’S)」
ソックス:「シブリング」
スニーカー:「ナイキ(NIKE)」 × 「ドーメル(DORMEUIL)」

マスクから感じるムードを 洋服で再現してみる感覚で

「フミエ タナカ」
刺しゅう入りマスクカバー
コレクション性:☆☆
快適性:☆☆

 弊社のLIVE配信プログラム「CATCH UP NOW!」に登場いただいた「フミエ タナカ(FUMIE TANAKA)」さんにはその際、とっても素敵なマスクカバーをいただきました。シースルー素材に繊細なボタニカル刺繍が特徴です。そこで、同じく透け感とボタニカルモチーフが特徴の「トーガ ビリリース(TOGA VIRILIS)」のセットアップを合わせてみました。なんて夏らしいんでしょうw!!男子もイケる、シースルー&ボタニカルなマスクコーデが完成です。

シャツ&ショーツ:「トーガ ビリリース」
ソックス:「ヌメロ ヴェントゥーノ(N21)」
スニーカー:「アディダス」 × 「クレイグ グリーン(CRAIG GREEN)」

「ポンティ」
オリジナルマスク
価格:2420円
コレクション性:☆☆
快適性:☆

 「ポンティ(PONTI)」のマスクは、控えめなオリジナルプリントと、ゴムひもの代わりに用いたコットンテープとメタルビーズが特徴です。テープとビーズにモノづくりへのこだわりを感じます。そこで、同じくモノ作りが信条の「ベルベスト(BELVEST)」のセットアップをチョイス!!「ボルサリーノ(BORSALINO)」の麦わら帽子と合わせて、自宅マンションのオレンジの壁を背にして撮影すれば、アラ不思議!!気分はスペイン・バルセロナ!!でした(笑)

帽子:「ボルサリーノ」
セットアップ:「ベルベスト」
Tシャツ:「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」
サンダル:「ビューティフル ピープル(BEAUTIFUL PEOPLE)」

「アンリアレイジ」
パッチワークマスク
価格:5500円
コレクション性:☆☆☆
快適性:☆☆

 そして「アンリアレイジ(ANREALAGE)」のナイロンマスクは、細かな三角形や四角形をパッチワークのように組み合わせダークトーンでまとめたノーブルなデザイン。目にした瞬間「ドレスアップだ!!」と決意したのです。そこで選んだのは、同じくナイロン素材のボンバーズにスパンコールを刺しゅうしてエレガントな「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」。マスクコーデが、こんなに高貴に生まれ変わるとは!!いつかこの姿でパーティに行きたいな。

サンバイザー:「ランバン(LANVIN)」
ブルゾン&ショーツ:「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」
ポロシャツ:「アーバンリサーチ」
ソックス:「ミッソーニ」
シューズ:「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」
手に持ったお財布:「トーガ ビリリース」

普段使いの白マスクは いっそ全身白でいかが?

「N.ハリウッド(N. HOOLYWOOD)」
メディカルマスク
コレクション性:☆
快適性:☆☆

 普段使いの真っ白マスクは、夏だし、全身真っ白で着てみたら?そう思い、「トム ウッド(TOM WOOD)」のデニムシャツと、「ユニクロ U(UNIQLO U)」のショートパンツを合わせてみました。うん、やっぱり爽やか!!夏にぴったり!!な気がします。一通り挑戦して気づきましたが、マスクコーデは帽子やネックアクセサリーと相性抜群ですね。反対にサングラスを取り入れるのが、難しい……。引き続き研究したいと思います(笑)!!

キャップ:「ジュン. J(JUNN. J)」
ショーツ:「トム ウッド」
ショーツ:「ユニクロ U」
ソックス:「エトロ(ETRO)」×「スターウォーズ(STAR WAR’S)」
スニーカー:「ボース(BOTH)」

 最後に、マスクコーデがもっと楽しくなるアクセサリーをご紹介しましょう。「シンパシーオブソウル(SYMPATHY OF SOUL)」のマスクフックです。「ジュエリーブランドなので、マスクを作る術がなく……」との想いから誕生したのが、この素敵なマスクフック。マスク着用時にはヒモを引っ掛け、このシルバーフックが後頭部に来るよう身につけます。で、普段はこうやってブレスレットとして楽しみましょう。ご好意に甘え、名前と媒体名を彫ってもらいましたw。5500円。コレさえあれば、毎日のマスクコーデは、それだけで楽しくなりますね。

The post マスクから考えるコーディネイト 東京ブランドのマスクで8スタイルに挑戦!! appeared first on WWD JAPAN.com.

美佳に次ぐ、新星モデルを発見 日系ブラジル人のマリーエル・ウチダに注目

 今年の2月に行われた2020-21年秋冬シーズンのファッション・ウィークでは、モデルの美佳さんをいろいろなショーで見かけました。今季が初挑戦だったロンドンでは、「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」「ヴィクトリア ベッカム(VICTORIA BECKHAM)」「バーバリー(BURBERRY)」といった主要ブランドでウォーキングを披露。その後のミラノ、パリでも「フェンディ(FENDI)」「サン ローラン(SAINT LAURENT)」など、2シーズン目にして大手メゾンに選ばれる活躍ぶりでした。また日本からはモデルのモトーラ世理奈さんが「シモーン ロシャ(SIMONE ROCHA)」のショーに登場。妖精のような独特の空気感をまとう彼女が、黒の毒っ気のあるドレスのルックを着こなしていて、ドラマチックな印象でした。会場の外でキャッチした私服姿もまた雰囲気が変わってかわいい!

切れ長の目のクール系美女
マリーエル・ウチダ

 ランウエイではついつい自分と同じアジア系の女性モデルに目が行きがちになる私が、今季気になったのは「マーガレット・ハウエル(MARGARET HOWELL)」のファーストルックを飾ったマリーエル・ウチダ(Maryel Uchida)さんです。

 最初は彼女の名前すら分からず、経歴や出身国をインターネットでリサーチしても、あまり情報も出てこなかったのですが、「ジェイ ダブリュー アンダーソン」のバックステージでキャッチすることができました!マリーエルさんは日本とブラジルのハーフの父とブラジル人の母を持つクォーターで、日本で生まれて3歳からはブラジルで育っているそう。14歳ときに母に連れられてコンテストに参加したことが、モデルのキャリアをスタートしたきっかけ。現在19歳で、この2月にランウェイデビューを果たしました。ファーストシーズンにして「プラダ(PRADA)」「クリスチャン ディオール(CHRISTIAN DIOR)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「ロエベ(LOEWE)」などのショーにも登場。切れ長の目元が印象的なクール系美女のマリーエルさん、有望株として今後の活躍に期待です!

強烈なかわいさに衝撃
エヴィー・ハリス

 またロンドンで個人的に私の印象に最も残っているのは、イギリス出身のエヴィー・ハリス(Evie Harris)です。「ジェイ ダブリュー アンダーソン」でブルーのドレスをまとった彼女が登場したとき、強烈なかわいさに衝撃が走りました。前シーズンでランウエイデビューを果たした彼女は、「ジェイ ダブリュー アンダーソン」で初のショーにしてファーストルックを飾り、私の中で印象に残っていました。その後のパリでは「シャネル(CHANEL)」「ルイ・ヴィトン」のショーや「ヴァレンティノ(VALENTINO)」「ロエベ(LOEWE)」の広告に抜擢され、モデルキャリアとして最高のスタートを切っているエヴィー。お人形さんのような美しさを、今後も見られるのが楽しみです。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

The post 美佳に次ぐ、新星モデルを発見 日系ブラジル人のマリーエル・ウチダに注目 appeared first on WWD JAPAN.com.

マッシュの「トーン」がEC売り上げ12倍 ライブ配信強化で

 マッシュビューティーラボが手掛けるプライベートブランド(以下、PB)「トーン」が、コロナ禍の影響を受けず快進撃が続いている。ライブ配信を強化したことで、4~5月のEC売り上げが前年の12倍と伸長。今期(2020年8月期)の売り上げ目標13億円(前期は約8億5000万円)も射程内に入ってきた。

 同社も全国の緊急事態宣言により4月以降店舗の休業を余儀なくされた。そこで、強化したのがインスタグラムを活用したライブ配信だ。小木充マッシュビューティーラボ副社長は「普段、店舗が売り上げを作ってくれているがそれがかなわないときこそ、本社スタッフが力を発揮する番」と考え、「トーン」を含めて1日3回のライブ配信を約束した。PR担当者やブランドのトレーナーなどが製品の特徴や使用方法などを紹介すると、次第にその製品がECで売れるという構図ができてきた。それは同社の本社スタッフに店舗出身者が多いため現場の声を理解している点が大きい。単に製品を紹介するだけでなく、アレンジ方法などを伝えられているのが消費者の心の琴線に触れ購入につながったようだ。

 実際に4~5月の店舗売り上げは全体の10%程度。ECは12倍となった。単月でみるとECと店舗の合算で4月度の売上高は前年同月比25.4%増の9600万円、5月度が同35.5%増の1億1000万円でECが店舗売り上げを上回るほど貢献している。ちなみ店舗はメインで展開するセレクト業態「メイクアップキッチン」9店舗のほか、全国の「コスメキッチン」「ビーブル バイ コスメキッチン」で展開している。

 「トーン」は18年2月に誕生。「ターゲット層は幅広く、高品質で適正価格、使いやすい製品(アイテムや色調)である“ファーストオーガニック”を掲げてスタートした。ナチュラル志向、サステナブルに関心が高い人にも発信できる仕組み作りを当初からしていた」という。小木副社長は管轄する「コスメキッチン」でも環境に配慮した取り組みを早い段階から行っているが、モノ作りへの信念を「トーン」で証明したかったという。化粧品は基本的に使用期限が製造から3年だが、一般的に残り3カ月になると廃棄するケースが多い。そこでたどり着いたのが「究極のクリーンビューティとはBtoCで100%の消化率を達成すること」だった。デビュー時に130SKUあったカラーメイク製品を作る際にも全ての色を売りきるカラー展開にしたという。動きが鈍いカラーがあると、イベントやライブ配信で紹介することを徹底した。4~5月では毎週土曜のライブ配信で特別キットを数種類販売(4000~1万円)。キットにはノベルティーも加えているのが特徴で、モバイルバッテリーも兼ねるコンパクトミラーを組み込んだ。「カラーアイテムのキットは売れ行きが鈍いのが通説であったが、キット製品を使用したメイクのハウツーを紹介したこともありどれも即完売」とうれしい悲鳴を上げる。

 こうした取り組みを行った結果、デビュー時の製品は99.2%の消化率を達成した。「残りの0.8%も6月10日にオープンしたブランド初の直営店のあべのハルカス近鉄本店のためにあえて確保しているもので、実際は消化率100%を実現できている。同店の初日の売上高は約160万円で過去最高の実績となった」。新製品の投入も闇雲に行わず、タイミングや製品構成のバランスを鑑みているという。こうしたことは、既存製品への注目度にもつながり、メイクアップ製品ではマットタイプのリップグロス「ペタル エッセンス カラー バター」の5製品やゴールド×イエローのアイシャドウ「ペタル アイシャドウ」(03)など、スキンケア製品では「ブースター セラム」がベストセラーに。「やむを得ず完売したものも再入荷すると口コミで一気に広がりニュース性が高まる」。

 緊急事態宣言が解除された今、全ての店舗が再開した。今後は「EC売り上げの下げ幅を少なくするのが目標。それには、コロナ禍で実施していた毎日のライブ配信を続けること、ライブ配信で個店レベルの情報も発信することで店舗への誘導をかけること」を推し進め、OtoOを実践して成果を上げていく。

The post マッシュの「トーン」がEC売り上げ12倍 ライブ配信強化で appeared first on WWD JAPAN.com.

【動画】ビームス卒業生がコロナショックで考える これがオレらの生きる道

 今回の「出張インタビュー」のゲストは、2017年にオープンした大阪・中津のセレクトショップ「イマジン」の谷篤人ディレクターと、同じく17年デビューの日本ブランド「テンボックス(10匣、TENBOX)」の大森“Pigu”憲一ディレクターです。“クリエイティブかつフリーダムに見える2人の新型コロナ対策は?”に始まり、2人がくしくもビームス卒業生ということで“組織と個人のメリット&デメリット”について、さらには取材依頼時には知らなかった“両者の初コラボレーション”について聞きます。

 インタビュー中にコラボTシャツのサンプルが工場から届き、初タッグを発展させて“11匣”のレーベル化がほぼ決定するなど、スピード感満点のクリエーションの一端を垣間見ることもできました。

The post 【動画】ビームス卒業生がコロナショックで考える これがオレらの生きる道 appeared first on WWD JAPAN.com.

ビューティ業界が黒人差別に対して立ち上がるも課題は山積み 大手企業の人種構成を公表

 5月末にアメリカで黒人男性ジョージ・フロイド(George Floyd)氏が白人の警察官に押さえつけられて死亡した事件から、全世界で人種差別に対する抗議や意思表明が行われている。

 ビューティ業界でも多くの企業やブランドが「#BLM」などのハッシュタグをつけて投稿をしているが、新たな動きが広がっている。中でも注目を集めているのが、自身も黒人でメイクアップブランド「ウオマ ビューティ(UOMA BEAUTY)」の創業者であるシャーロン・シューター(Sharon Chuter)が始めた「#pulluporshutup」運動だ。ビューティブランドや企業に社員の人種構成を公表するように求めたもので、専用のインスタグラムアカウント@pullupforchangeでは参加したブランドや企業の投稿を集めている。シャーロンは相次ぐビューティ企業の人種差別に対する投稿を見て、ただトレンドに乗って意思表明をするのではなく、きちんと自社の現状を公表することによって本気で向き合ってほしいという思いでスタートさせた。有色人種の構成率は企業やブランドによってさまざまだが、白人の割合が圧倒的に多いブランドは、「今後はより多様な組織づくりに励みます」といった反省のメッセージとともに投稿をしている。

大手企業の経営陣の多様性を公表

 また、米「WWD」は世界の大手ビューティ企業の取締役および役員における有色人種の人数を公表した(2020年6月7日時点)。どれも業界トップのグローバル企業だが、アジア企業である資生堂以外は、有色人種が占める率は極めて低いことが分かる。

ロレアル(L'OREAL)
取締役:15人中0人
役員:21人中1人

ユニリーバ(UNILEVER)
取締役:23人中9人
役員:13人中5人

エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)
取締役:16人中3人
役員:14人中2人

プロクター・アンド・ギャンブル(PROCTER & GAMBLE)
取締役:12人中2人
役員:35人中11人

資生堂
取締役:13人中13人
役員:16人中15人

コティ(COTY)
取締役:12人中1人
役員:3人中0人

LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)
取締役:15人中0人
役員:12人中0人

バイヤスドルフ(BEIERSDORF)
取締役会:12人中1人
役員:9人中4人

シャネル(CHANEL)
取締役会:2人中0人
役員:無回答

L ブランズ(L BRANDS)
取締役会:9人中2人
役員:9人中0人

具体的な改善策を提案する企業も

 企業が次々と#pulluporshutupチャレンジに参加したり、このように人種構成を公開されたりする中で、早速改善のために動き出した企業も。エスティ ローダーは社内メモで今後黒人の従業員の雇用率を上げると約束した。全てのクラスの社員において、米国の人口の約13%を占める黒人の割合と同様に、今後5年までには黒人の雇用率を13%にすると宣言した。同社は一対一による面談やアンケート調査、ディスカッションなどを行い、改善策を模索する。そのほか多様な消費者に対応する販売員トレーニングなどを行い、多様な肌の色のための製品を展開し、また原料やパッケージは黒人によるビジネスからの調達を倍増する。採用のプロセスにおいても今後はナショナル ブラック MBA アソシエーション(NATIONAL BLACK MBA ASSOCIATION)と協業し、今後2年間で有色人種の雇用率を倍にする。今後3年では人種や社会的立場による差別をなくし、誰もが教育を受けられるようにさまざまな団体に合計1000万ドル(約円)を寄付する。またこれらの取り組みについて、半年に1回は進捗を公表するという。

 小売りも声を上げた。専門店のセフォラ(SEPHORA)はニューヨークのデザイナー、オーロラ・ジェームズ(Aurora James)が掲げた「15パーセント プレッジ(15 Percent Pledge)」イニシアチブに参加すると表明した。これは小売り店に対して、黒人によるブランドを15%扱うように求めたもの。セフォラは今後、店内スペースの最低15%を黒人経営のブランドに割くと約束した。黒人経営ブランドの現状の扱いや在庫の比率を報告し、それに責任を持ち、次なるアクションを明確にするという、ジェームズが提示した3つのステージ全てに取り組む。同社は黒人経営のビジネスを資金面でも支援するほか、女性が経営するブランドの支援プログラム「アクセラレイト(ACCELERATE)」を活用して来年は有色人種の女性にフォーカスするという。

 ここ数週間でこのような動きが一気に出てきたが、その結果“白人至上主義”とされてきたこれまでのビューティ業界の人種差別問題が浮き彫りになった。今まで当たり前のように有色人種の雇用や扱いにバイヤスがあったことは、多くの人にとって驚きであるとともに、納得のいかない事実でもあっただろう。化粧品は直接肌や髪といった外面、そして内面にも働きかけるからこそ、ビューティ業界におけるダイバーシティーは必須といっても過言ではない。まだ課題は多く残るが、新型コロナウイルスが多くの命を奪い、医療従事者に負担をかける中、ビューティ業界はいち早く殺菌ジェルを生産したり、支援を始めたりした。同様のスピード感で、今後は人種やジェンダー、年齢、社会的立場などに関係なく平等なコミュニティーを構築することに期待したい。

The post ビューティ業界が黒人差別に対して立ち上がるも課題は山積み 大手企業の人種構成を公表 appeared first on WWD JAPAN.com.

人気フェイスマスク「ルルルン」初の化粧水は外から内から潤いチャージ

 2011年のデビュー以来シリーズ累計販売枚数10億枚※1を突破しているフェイスマスクブランド「ルルルン(LULULUN)」から、ブランド初となる化粧水「ルルルンローション クリア」「ルルルンローション モイスト」「ルルルンプレシャスローション リッチ」が6月15日、ウェブでの先行発売に続き、7月1日から全国のバラエティストアにて発売される。デイリーに使えるフェイスマスクとして人気を博してきた「ルルルン」ならではのこだわりが詰まった注目アイテムに迫る。

※1 2011年7月〜2019年9月の累計販売枚数

好みの仕上がりや
肌タイプから選べる3種

 肌バランスを整えてさらりと潤す「ルルルンローション クリア」と、ヒアルロン酸の約2倍の保湿力を持つリピジュア※2などの高保湿成分でしっとりと潤す「ルルルンローション モイスト」。着目したのは、水分量の要ともいわれる肌内部の構造=タイトジャンクションだ。肌の細胞同士の密着が強まりタイトジャンクションが強化されることで、角層のバリア機能が向上。それにより紫外線やアレルゲン、微生物など外的刺激から肌を守ると同時に、水分が蒸発しにくい肌となり乾燥を防ぐ。そこで、タイトジャンクションに働きかけるビタミンD様作用を持つシャクヤク花エキスを共通配合。バリア機能を高め、外から内から潤いをチャージする。

 「ルルルンプレシャスローション リッチ」は、年齢を重ねていくにつれて失われるハリや弾力といった“肌密度”に注目した。肌の内側※3からふっくらとしたハリを与えるオリーブ葉エキスやベルガモット果実エキス※4など、厳選した植物由来成分を配合。とろみのある感触で肌を満たしながら、弾むような艶肌へと導く。

※2 保湿成分
※3 角質層まで
※4 ともにハリツヤ成分

たっぷりと使える
ビッグボトルに注目

 「いくらフェイスマスクが好きでも、365日マスクというわけではない」「化粧水をパシャパシャ使いたい日もある」——— 。「ルルルン」が新たなカテゴリーとして化粧水を誕生させたのは、こうしたユーザーの声からだという。そこで、「気分やシーンに合わせてもっとスキンケアのバリエーションを楽しんでもらいたい」と化粧水の開発をスタートさせた。フェイスマスクの代わりとしてはもちろん、フェイスマスクを使った手入れの前後のスペシャルケアとしてもおすすめだ。

 たっぷりと手に取り、フェイスマスクをしたかのような潤いで肌を満たして欲しいという願いから、ボトルは気兼ねなく使える500mL(「ルルルンプレシャスローション リッチ」は400mL)という大容量。キラキラと輝くオーロラデザインの「ルルルンローション クリア/モイスト」と、洗練感のある「ルルルンプレシャスローション リッチ」。肌悩みや気分に合わせて選びたい。


問い合わせ先
グライド・エンタープライズ
0120-200-390

The post 人気フェイスマスク「ルルルン」初の化粧水は外から内から潤いチャージ appeared first on WWD JAPAN.com.

顔立ちを美しく見せる首もとの筋肉“胸鎖乳突筋”にアプローチするウェアラブル美容機器

 ヤーマンは5月、装着するだけで表情筋にしっかり刺激を与えるウェアラブルEMS美容機器「メディリフト(MEDILIFT)」から、ネック専用の美顔機器「メディリフト ネック」を発売した。同製品は10分間着けるだけで、顔立ちを美しく見せる首もとの筋肉“胸鎖乳突筋”にアプローチ。気になる首もとからのケアで美しさを目指す、首もと専用美容器となっている。

毎日10分つけるだけ、
“ながら美容”で首からの美をかなえる

「メディリフト ネック」の
使い方



問い合わせ先
ヤーマン
0120-776-282

The post 顔立ちを美しく見せる首もとの筋肉“胸鎖乳突筋”にアプローチするウェアラブル美容機器 appeared first on WWD JAPAN.com.

ハリ感・毛穴・くすみケアにも マイクロニードル「ショットモード」で“攻め”のケア

 美容成分を繊細な針(ニードル)状に成形しシート状にした「マイクロニードル」は、先進型スキンケアとして話題を集めている。数あるマイクロニードルの中でも、高い水準とこだわりで注目されているのが、異業種である精密加工技術を生かしたニッシャの「ショットモード(SHOT MODE)」だ。「貼る、美容注射」をコンセプトとし、肌内部※1に美容成分をダイレクトに届けるためのベストな設計に加えて、パッチ形状の異なる3種のラインアップであらゆる悩みにパワフルに応える。

※1 角質層まで

高濃度の美容成分を
肌に届ける
マイクロニードル技術

 「ショットモード」はヒアルロン酸※2などの美容成分そのものを、0.1ミリレベルの微細な針状に成形したスペシャルケア用のパッチ。肌に貼ると高濃度の美容成分が5時間かけて角層内で溶け出すことで、角層最深部まで行き渡る。「ショットモード」の大きな特徴はマイクロニードルの形状だ。太めの直径に成形することで、肌に貼付する際に折れにくく、美容成分を確実に肌内部※3へ届けることができる。またフラットな先端形状のため、突き刺さるような痛みはほとんど感じない。夜のお手入れ時、いつも使用している化粧水の後に気になる箇所に貼るだけで翌朝、肌の潤い密度が上がったようなハリ感を得ることができる。

 「ショットモード」を手がけるのは、医療機器やタッチパネルなど精密で機能性に優れた製品をグローバルに供給するニッシャ。1929年の創業以来培った高精度の加工技術が、マイクロニードルの開発に生かされている。

※2 保湿成分
※3 角質層まで

肌悩みに合わせて選べる
3種をラインアップ

 「ショットモード」はヒアルロン酸をベース成分とし、肌悩みに合わせた異なるキー成分とパッチ形状の3種をそろえる。「GF3」には美容注射でも採用されている3種の高分子ペプチド※4や、高い保水力を持つプロテオグリカン※5を配合。皮膚が薄くダメージの受けやすい目尻や目の下、口元に貼って集中的にケアする。  

 「BT-X」は表情に現れるダメージに着目して開発されたアルジルリン※6などを配合した独創的なパッチ形状で、つい力が入りがちな眉間や小鼻の毛穴ケアに最適だ。1回分1シートあたりのニードル本数は業界最多の5000ショット。美容成分をたっぷりと隙間なく肌へと届ける。

 コンパクトな円形パッチの「C6」は、よりピンポイントでのケアが可能だ。高純度の安定化ビタミンC誘導体※7を6%配合し、日焼け後や乾燥したときのくすみ、部分的な肌荒れにアプローチする。

 パッチを貼る前には化粧水をたっぷり使って保湿をすることがポイント。肌の中の水分量を高めることで、美容成分をより確実に溶け込ませることができる。ワンランク上のお手入れで、肌をアップデートしたい。

※4 ヒトオリゴペプチド-1、ヒトオリゴペプチド-13、ヒトオリゴペプチド-5(全て保湿成分として)
※5 保湿成分
※6 アセチルヘキサペプチド-8 (保湿成分)
※7 リン酸アスコルビルMg(製品の抗酸化剤)


問い合わせ先
ショットモード
0120-707-822

The post ハリ感・毛穴・くすみケアにも マイクロニードル「ショットモード」で“攻め”のケア appeared first on WWD JAPAN.com.

美容のプロも絶賛!梅雨でもまとまる”レア髪”をかなえる「リファ」のストレートアイロン

 いま、美容室業界で「どんな季節でも、しっとりとまとまるストレートアイロンがある」と話題になっている。それは、美容ローラーで有名な「リファ」から昨年発売された「リファビューテック ストレートアイロン」だ。“日本のプロフェッショナルの技をテクノロジーで再現すること”をコンセプトに新技術を搭載し、ダメージを与えずに驚くほどしっとりやわらかい髪“レア髪”に仕上がると多くの美容師から支持を集めている。湿気が多く髪の毛が広がりやすい梅雨時期のスタイリングにぴったりな商品の秘密を探ってみた。

梅雨でも“レア髪”にまとまる秘密は
独自の特殊プレート

 “レア髪”とは、サロン帰りの驚くほどしっとり柔らかい、表面はしっかり乾いているのに内部には水分がギュッと詰まった質感のこと。この“レア髪”は、ストレートアイロンから出る熱と髪の水分量を、スタイリストの目と手の感覚で完璧にコントロールするプロの技が生み出している。その技をテクノロジーで再現するのが「リファビューテック ストレートアイロン」独自のプレート構造だ。ヒーターを低反発コートと高密度炭素で挟んだ三層構造の”カーボンレイヤープレート”を採用。濡れた髪に使っても、髪を傷める原因となる水蒸気爆発※2を起こしにくい。通常のプレートの場合は、何度も強く押し付けると髪をつぶしてしまう恐れがあるが、”カーボンレイヤープレート”は低反発コートが髪に優し密着し、髪を傷めずにスタイリングが可能だ。キューティクルを傷つけずにスタイル が作れるから、湿気で髪が広がりやすい梅雨時期でも1日中しっとりまとまる“レア髪”ストレートがかなう。

※1 未処理毛(カラーやパーマなどを1度も施したことがない毛髪)に水を噴霧してから使用。「リファ―ビューテック ストレートアイロン」のカーボンレイヤープレート無しとカーボンレイヤープレートあり、それぞれ180℃設定して50回(10日間相当)使用した後、分析走査電子顕微鏡にて毛髪断面を観察
※2 水が非常に温度の高い物質と接触することにより帰化されて発生する爆発現象のこと

美容師も絶賛!
どんな髪型でも
しっとりまとまるレア髪へ

 サロン帰りのような内側に水分を含んだしっとり柔らかい“レア髪”が作れる「リファビューテック ストレートアイロン」だからこそ、どんなアレンジもダメージをケアしながらアレンジを楽しめる。ウエーブをつくる、毛先だけカールさせるなど、しっとりしているレア髪だからこそ、動きを付けてもまとまるのが特徴だ。長門政和「エアー ギンザ(air-GINZA)」店長は、「カラーやパーマでダメージが蓄積されていくので、毎日のケアを行うことが大切。『リファビューテック ストレートアイロン』なら、水蒸気爆発を起しにくく髪を傷めにくい。きっと仕上がりに違いを感じることができるはず」と話す。プロの美容師も絶賛するアイロンで梅雨でもまとまるレア髪を実感してみてはどうだろうか。


問い合わせ先
リファ
0210-467-222

The post 美容のプロも絶賛!梅雨でもまとまる”レア髪”をかなえる「リファ」のストレートアイロン appeared first on WWD JAPAN.com.

アクティビスト紗栄子が語るマスク寄贈や社会支援活動 「信念があるから、ネットの批判は気にしない」

 モデル、タレントの紗栄子は5月14日、自身が代表理事を務める一般社団法人Think The DAY(以下、TTD)を通じて、医療用防護マスク2万枚を医療従事者に寄贈した。同時に、オリジナルTシャツと布マスク(セットで6600円)をTTDのサイト上で発売。その利益全額で医療用ガウンなどを購入し、6月8日から医療従事者に寄贈している。紗栄子は2010年に出身地の宮崎県で発生した口蹄疫以降、東日本大震災や熊本地震など、災害の度に寄付や義援金の呼びかけなどを行ってきた。それに対して当初は「売名」などといった心ない声も聞かれたが、継続することで世の中の受け取り方もかなり変わってきている。今や、社会を変えていく“アクティビスト”と呼ぶべき存在感を発揮している彼女に、支援活動や今後について聞いた。

WWD:マスク2万枚の寄贈やTシャツのチャリティー企画を行った経緯や意図は?

紗栄子:私が支援活動を続けていることが認識されてきたからか、インスタグラムにたくさんの声をいただくようになっています。今回は医療従事者の方から届いたダイレクトメッセージで、マスクが医療現場にまだまだ足りていないことや、安全が確保されていない中で皆さん患者さんのために働かれているといった状況を知りました。それで、私にも何かできることはないだろうかと思ったんです。そうは言ってもマスクの調達方法については全く知識がなくて、調べていく中でマスクの種類などは勉強しました。もちろん、政府の調達ルートに民間の動きが干渉してはいけないので、その点は注意しながらの動きです。医療従事者の方たちは非常にお忙しい中でも、どこの病院に何が必要かをタイムリーに連絡してくださり、ニーズをつかむことができた。あとは、芸能関係者で支援活動を進めている方にも連絡を取って、マスクの手配について相談しましたね。一緒にお仕事をしたことが全くない方でも、私のこれまでの支援活動を見てくださっていて、知恵を貸していただけた。皆さんのご厚意があって、工場や商社を紹介いただき、実現しました。

WWD:行動力や周りを巻き込む力が想像以上だ。

紗栄子:それが取り得なんです(笑)。これをやろうって思ったら止まれない性格なので、スタッフや家族には振り回してごめんねって思っています。世の中には優しい人が多くて、本当はみんな何か支援をしたいと思っている。でもみんな忙しいから、いい支援方法が見つけられていない。支援方法を提示して、その内容がしっかりしていれば賛同してくださる方はたくさんいる。今回、チャリティー企画をやってみてそう感じました。こうした企画を整えることはできる人がやればいいし、私はこれまでの経験でそれができた。今後は支援を必要とする現場と、支援をしたいと思っている人をつなぐプラットフォームのような存在になっていけたらと思っています。芸能関係の仕事をしていて、求心力を持たせていただいているからこそそうした活動がやりやすいですし、そのことに感謝しています。

WWD:チャリティーTシャツはどのように手配したのか。

紗栄子:Tシャツを作るにあたって、以前の私だったらデザインや価格、生産のスピード感、量産できるかどうかといったことしか意識しなかったかもしれません。でも今は、作り手のこともちゃんと理解して、敬意を持って関わっていきたいと思っています。過酷な労働環境で作られた商品では、もう嬉しくない。「誰かを支援したい」という気持ちでチャリティーに賛同して、Tシャツを手に取ってくださる人にとっても、優しい商品を作りたかった。それで、仕事でつながりがあったマッシュスタイルラボにどこならそういった商品が作れるのかを相談して、繊維商社の豊島を紹介していただきました。豊島の(オーガニックコットン普及プログラム)“オーガビッツ”という、バングラデシュで栽培されたオーガニックコットンを使ったTシャツがベースになっています。

マスクの寄贈とTシャツのチャリティー企画を行うとスタッフに告げたのは5月7日の朝でした。サイト上でTシャツの受注を開始したのがその1週間後です。サイトを構築してくださった方や豊島の協力があったからこそ、短期間でそれが可能になりました。サンプルの物撮り画像をまずはサイトにアップして、2日後に私の着用画像も追加したんですが、ドネーションの気持ちというより、ファッションとして気に入って買ってくださる方が多かった印象です。でも、別にそれはどっちだっていいんです。今後はライフスタイルECを立ち上げたいと思っているんですが、誰かのためになる選択をすることが当たり前になっていて、それをわざわざ伝える必要もないといった状況になっていけばいいなと思っています。

Tシャツの受注は10日間で締め切りましたが、想像以上の売り上げで、利益で医療用ガウンを買うことができました。商品は6月上旬にうちの倉庫に届いて、中旬に購入者に届く予定です。利益全額を医療物資購入に充てていて、私の活動資金には一切していません。サイト運営にかかる費用なども自分の持ち出しでやっています。でも、それだと私の芸能活動がダメになったら支援活動も続けられなくなってしまう。今後はEC運営などのビジネスと、支援活動、芸能活動という3軸で、支援活動を残りの2軸でまかなうという形にしていきたい。それがサステナブルな事業のあり方だと思っています。

WWD:そもそも、社会支援活動を行うようになったきっかけは?

紗栄子:まとまった金額を寄付したのは11年の宮崎県の口蹄疫からですが、ライフワークとして、災害被災地や養護施設、老人ホームへの支援を10年ほど続けています。ベルマーク運動や赤い羽根共同募金などにも幼いころから関わってきました。困っている人がいたら助けたいと思うことが私にとっては当たり前だし、そう思えるのは育ってきた環境や教育のおかげ。だから、親やこれまで関わってきた人には本当に感謝しています。支援活動は以前は個人として行っていましたが、昨年10月に一般社団法人のTTDを設立しました。きっかけは昨年9月に千葉県を襲った台風15号です。台風直後、被災地にいるインスタグラムのフォロワーさんから連絡をもらったことをきっかけに、自分でも必要な物資を手配して現地に運びましたが、全く足りなかった。それでインスタグラムで物資を募ったら、2日間で4トントラック15台分ほども集まったんです。

団体や企業からの支援物資しか受け付けない自治体も多いですし、個人として活動を続けていくよりも団体にした方がいいと判断し、TTDを設立しました。メンバーにはプログラマーの方や税理士さんなどがいて、住んでいる場所もバラバラです。被災地支援でいつも感じてきたのは、行政が支援に動き出して、物資が現地に届くまでに、必ず1~2日間は水も食料もないといった期間が生まれること。このタイムラグを民間のTTDが埋めていくべきだと考えています。そこで、何かが起こってから寄付を募るというよりも、予防のための寄付や寄贈をしてもらって、被災地でタイムラグなく動き出せるようにする準備を進めていました。3月に公式サイトをローンチして活動を開始しようと思っていたんですが、新型コロナウイルスの感染拡大でその動きは一旦止めて、今回のマスク寄贈やチャリティーTシャツの動きを進めました。

WWD:以前は支援活動や寄付に対し、「売名」などと言われることもあった。

紗栄子:そういった言葉を気にすることはもうないですね。信念を持ってやっているので、何を言われても何とも思わない。もちろん傷付きますよ。でも、(ネット上の書き込みなどに対し)鈍感力を身につけていくことが今の時代はすごく大切だなと強く感じています。それは私だけでなく、子どもたちもそう。今はネットでどんな情報でも見ることができるから、誰のどんな言葉を大事にするべきか、それを精査できるスキルを身につけてほしい。厳しくても自分のことを思って言ってくれている言葉と、ただ人を傷付けたいだけの言葉は全く違いますから。本来なら環境や教育によってそういったスキルやリテラシーを身につけていくべきだと思います。でも今はまだそういう状況ではないので、個人や家庭、企業のレベルで、スキルを鍛えていかざるを得ないですね。

ネット社会の悪い部分が今まさに浮き彫りになっていると思います。でも、ネット上のやり取りは本来とても温かいものでもあります。今回の支援活動でも、ネット上で多くの方の優しさに触れました。それで支援がつながり、助かった方もたくさんいる。ネット社会だけが悪いわけじゃないし、報道だけが悪いということでもない。いろんなことを見直すタイミングにきているんだと思います。一人ひとりの生活についても、人と人の関わり方、社会との関わり方についてもそうです。私自身は今回の自粛期間中、宮崎にいたんですが、今後の自分のビジョンをしっかり考えて、進むべき道を見つけられました。日常を取り戻していく中でも、この気付きはしっかり持っていきたいです。

WWD:支援活動自体に対する世間の考え方も、10年前に比べるとかなり変わってきた。

紗栄子:それは強く感じますね。今は経営者の方でも声を出して支援を行っている人がすごく多いです。表に出る人間が言葉に出し、行動で示していくことはムード作りにつながる。母親として、誰かの善意が批判の声でつぶされることのない世の中になってほしいと思います。批判されるリスクを抱えながらも発信している人は、みんな同じように考えているんじゃないですか。私が過去に行ってきた支援活動においても、みんなに(被災地の状況などを)知ってもらいたくてSNSに投稿した結果、アプローチのタイミングがまずくて誤解を呼んでしまったことが何回もありました。その都度学んで、どうするべきかを身につけてきた。世の中の受け止め方が変わっていくきっかけの一つに自分がなれていたらいいんですけどね。支援してくださる方には誠実でありたい。今後は寄付金がどこでどのように使われたのかや、収支についても公表していきたいと思っています。

WWD:芸能人やインフルエンサーなどの間でも、最近は自分の考えや意思を表明し、動こうとする人が増えてきた印象だ。

紗栄子:芸能活動の王道ラインに乗っていると、さまざまな契約関係もあって(意思を表明することで)各所に迷惑をかけることがあります。これまではタレント本人を守るためにも「何も言わないように」と(事務所側はタレントに)言ってきたと思う。でも今はSNSで(消費者と)ダイレクトにつながって、考えを伝えることができる時代。タレントも意思を持っている人間で、その思いを発していかないと生き残ることができなくなっている。そうは言っても、芸能界はまだまだ声を発するのが難しい世界。だからこそ、もっともっと変わっていってほしいと思っています。もちろんそれは、タレント個人がリスクを抱えるということでもある。守ってくれる存在がなくなって、迷惑もたくさんたくさん掛けるかもしれませんが、フレキシブルに発信や発言ができたらと思って私は事務所を離れ、フリーになりました。

WWD:5月29日に「コスメキッチン(COSME KITCHEN)」(マッシュホールディングス)のインスタライブに登場し、販売を盛り上げるなど、ファッションやビューティ企業のサポートも行っている。

紗栄子:自粛期間中は、ものを買うことや経済を回すことが悪いことのように思われている時期もありましたが、買い物をすることは悪いことではないはず。インスタライブ中に「ジェラート ピケ(GELATO PIQUE)」のオーガニックコットンのパジャマを羽織ってみて、気持ちいいなと感じました。ファッションは物欲を満たすというだけでなく、心の健康を保つという側面も持っています。状況や環境によって、今はファッションを楽しむことができる人とできない人がいますが、できる人のことを批判して潰してしまうのはよくない。どんな業種も今は大変でしょうが、ファッション業界も新型コロナの影響は本当に大きかったと思います。働かれている方は厳しいこともあると思う。でも、ファッションを必要としている方はたくさんいるので、それを思い出して負けないでくださいとお伝えしたいです。私としても、微々たる力ですが業界をサポートできればと思って、インスタライブなどに出させていただいています。

WWD:今後立ち上げを目指しているというライフスタイルECはどんなものになる?

紗栄子:今急ピッチで開発を進めています。実は農業などの第一次産業にも以前から興味があるんです。農産物の販売会などに私がいると集客の面でお手伝いができるので、食育も兼ねてそういう場に子どもと一緒にお邪魔して、農家さんとはお付き合いを重ねてきました。自分自身でも畑をやりたいですし、自身や地域の農家さんが作った有機栽培などの野菜をECの定期購買でお届けしたい。自分の畑で採れた素材でファッションアイテムを作ることも考えています。植物療法学を学んでいるので、植物の力を生かした化粧品なども作っていきたいですね。モノ作りが好きなので、今は作るということを自分のライフワークに取り入れようとしているところです。オリジナルだけでなく、メーカーから仕入れる商品も含めて、売り上げの一部を寄付や寄贈にまわすようなECの形を今構想中です。

支援活動は人のために行うものですが、活動の中で自分自身も社会や人とのつながりによって生かされていると再認識します。だから、いただくものの方が実はすごく多いんです。私は人のために動くことができる自分を好き。そんなふうに、自己肯定にもつながります。ある被災地で支援した方たちが、今度別の場所で災害が起こった際に力を貸してくださったりもする。そうやって人の気持ちがつながっていく。機会があれば、みんなにも是非ボランティアや支援活動に参加してみてほしいです。

The post アクティビスト紗栄子が語るマスク寄贈や社会支援活動 「信念があるから、ネットの批判は気にしない」 appeared first on WWD JAPAN.com.

アクティビスト紗栄子が語るマスク寄贈や社会支援活動 「信念があるから、ネットの批判は気にしない」

 モデル、タレントの紗栄子は5月14日、自身が代表理事を務める一般社団法人Think The DAY(以下、TTD)を通じて、医療用防護マスク2万枚を医療従事者に寄贈した。同時に、オリジナルTシャツと布マスク(セットで6600円)をTTDのサイト上で発売。その利益全額で医療用ガウンなどを購入し、6月8日から医療従事者に寄贈している。紗栄子は2010年に出身地の宮崎県で発生した口蹄疫以降、東日本大震災や熊本地震など、災害の度に寄付や義援金の呼びかけなどを行ってきた。それに対して当初は「売名」などといった心ない声も聞かれたが、継続することで世の中の受け取り方もかなり変わってきている。今や、社会を変えていく“アクティビスト”と呼ぶべき存在感を発揮している彼女に、支援活動や今後について聞いた。

WWD:マスク2万枚の寄贈やTシャツのチャリティー企画を行った経緯や意図は?

紗栄子:私が支援活動を続けていることが認識されてきたからか、インスタグラムにたくさんの声をいただくようになっています。今回は医療従事者の方から届いたダイレクトメッセージで、マスクが医療現場にまだまだ足りていないことや、安全が確保されていない中で皆さん患者さんのために働かれているといった状況を知りました。それで、私にも何かできることはないだろうかと思ったんです。そうは言ってもマスクの調達方法については全く知識がなくて、調べていく中でマスクの種類などは勉強しました。もちろん、政府の調達ルートに民間の動きが干渉してはいけないので、その点は注意しながらの動きです。医療従事者の方たちは非常にお忙しい中でも、どこの病院に何が必要かをタイムリーに連絡してくださり、ニーズをつかむことができた。あとは、芸能関係者で支援活動を進めている方にも連絡を取って、マスクの手配について相談しましたね。一緒にお仕事をしたことが全くない方でも、私のこれまでの支援活動を見てくださっていて、知恵を貸していただけた。皆さんのご厚意があって、工場や商社を紹介いただき、実現しました。

WWD:行動力や周りを巻き込む力が想像以上だ。

紗栄子:それが取り得なんです(笑)。これをやろうって思ったら止まれない性格なので、スタッフや家族には振り回してごめんねって思っています。世の中には優しい人が多くて、本当はみんな何か支援をしたいと思っている。でもみんな忙しいから、いい支援方法が見つけられていない。支援方法を提示して、その内容がしっかりしていれば賛同してくださる方はたくさんいる。今回、チャリティー企画をやってみてそう感じました。こうした企画を整えることはできる人がやればいいし、私はこれまでの経験でそれができた。今後は支援を必要とする現場と、支援をしたいと思っている人をつなぐプラットフォームのような存在になっていけたらと思っています。芸能関係の仕事をしていて、求心力を持たせていただいているからこそそうした活動がやりやすいですし、そのことに感謝しています。

WWD:チャリティーTシャツはどのように手配したのか。

紗栄子:Tシャツを作るにあたって、以前の私だったらデザインや価格、生産のスピード感、量産できるかどうかといったことしか意識しなかったかもしれません。でも今は、作り手のこともちゃんと理解して、敬意を持って関わっていきたいと思っています。過酷な労働環境で作られた商品では、もう嬉しくない。「誰かを支援したい」という気持ちでチャリティーに賛同して、Tシャツを手に取ってくださる人にとっても、優しい商品を作りたかった。それで、仕事でつながりがあったマッシュスタイルラボにどこならそういった商品が作れるのかを相談して、繊維商社の豊島を紹介していただきました。豊島の(オーガニックコットン普及プログラム)“オーガビッツ”という、バングラデシュで栽培されたオーガニックコットンを使ったTシャツがベースになっています。

マスクの寄贈とTシャツのチャリティー企画を行うとスタッフに告げたのは5月7日の朝でした。サイト上でTシャツの受注を開始したのがその1週間後です。サイトを構築してくださった方や豊島の協力があったからこそ、短期間でそれが可能になりました。サンプルの物撮り画像をまずはサイトにアップして、2日後に私の着用画像も追加したんですが、ドネーションの気持ちというより、ファッションとして気に入って買ってくださる方が多かった印象です。でも、別にそれはどっちだっていいんです。今後はライフスタイルECを立ち上げたいと思っているんですが、誰かのためになる選択をすることが当たり前になっていて、それをわざわざ伝える必要もないといった状況になっていけばいいなと思っています。

Tシャツの受注は10日間で締め切りましたが、想像以上の売り上げで、利益で医療用ガウンを買うことができました。商品は6月上旬にうちの倉庫に届いて、中旬に購入者に届く予定です。利益全額を医療物資購入に充てていて、私の活動資金には一切していません。サイト運営にかかる費用なども自分の持ち出しでやっています。でも、それだと私の芸能活動がダメになったら支援活動も続けられなくなってしまう。今後はEC運営などのビジネスと、支援活動、芸能活動という3軸で、支援活動を残りの2軸でまかなうという形にしていきたい。それがサステナブルな事業のあり方だと思っています。

WWD:そもそも、社会支援活動を行うようになったきっかけは?

紗栄子:まとまった金額を寄付したのは11年の宮崎県の口蹄疫からですが、ライフワークとして、災害被災地や養護施設、老人ホームへの支援を10年ほど続けています。ベルマーク運動や赤い羽根共同募金などにも幼いころから関わってきました。困っている人がいたら助けたいと思うことが私にとっては当たり前だし、そう思えるのは育ってきた環境や教育のおかげ。だから、親やこれまで関わってきた人には本当に感謝しています。支援活動は以前は個人として行っていましたが、昨年10月に一般社団法人のTTDを設立しました。きっかけは昨年9月に千葉県を襲った台風15号です。台風直後、被災地にいるインスタグラムのフォロワーさんから連絡をもらったことをきっかけに、自分でも必要な物資を手配して現地に運びましたが、全く足りなかった。それでインスタグラムで物資を募ったら、2日間で4トントラック15台分ほども集まったんです。

団体や企業からの支援物資しか受け付けない自治体も多いですし、個人として活動を続けていくよりも団体にした方がいいと判断し、TTDを設立しました。メンバーにはプログラマーの方や税理士さんなどがいて、住んでいる場所もバラバラです。被災地支援でいつも感じてきたのは、行政が支援に動き出して、物資が現地に届くまでに、必ず1~2日間は水も食料もないといった期間が生まれること。このタイムラグを民間のTTDが埋めていくべきだと考えています。そこで、何かが起こってから寄付を募るというよりも、予防のための寄付や寄贈をしてもらって、被災地でタイムラグなく動き出せるようにする準備を進めていました。3月に公式サイトをローンチして活動を開始しようと思っていたんですが、新型コロナウイルスの感染拡大でその動きは一旦止めて、今回のマスク寄贈やチャリティーTシャツの動きを進めました。

WWD:以前は支援活動や寄付に対し、「売名」などと言われることもあった。

紗栄子:そういった言葉を気にすることはもうないですね。信念を持ってやっているので、何を言われても何とも思わない。もちろん傷付きますよ。でも、(ネット上の書き込みなどに対し)鈍感力を身につけていくことが今の時代はすごく大切だなと強く感じています。それは私だけでなく、子どもたちもそう。今はネットでどんな情報でも見ることができるから、誰のどんな言葉を大事にするべきか、それを精査できるスキルを身につけてほしい。厳しくても自分のことを思って言ってくれている言葉と、ただ人を傷付けたいだけの言葉は全く違いますから。本来なら環境や教育によってそういったスキルやリテラシーを身につけていくべきだと思います。でも今はまだそういう状況ではないので、個人や家庭、企業のレベルで、スキルを鍛えていかざるを得ないですね。

ネット社会の悪い部分が今まさに浮き彫りになっていると思います。でも、ネット上のやり取りは本来とても温かいものでもあります。今回の支援活動でも、ネット上で多くの方の優しさに触れました。それで支援がつながり、助かった方もたくさんいる。ネット社会だけが悪いわけじゃないし、報道だけが悪いということでもない。いろんなことを見直すタイミングにきているんだと思います。一人ひとりの生活についても、人と人の関わり方、社会との関わり方についてもそうです。私自身は今回の自粛期間中、宮崎にいたんですが、今後の自分のビジョンをしっかり考えて、進むべき道を見つけられました。日常を取り戻していく中でも、この気付きはしっかり持っていきたいです。

WWD:支援活動自体に対する世間の考え方も、10年前に比べるとかなり変わってきた。

紗栄子:それは強く感じますね。今は経営者の方でも声を出して支援を行っている人がすごく多いです。表に出る人間が言葉に出し、行動で示していくことはムード作りにつながる。母親として、誰かの善意が批判の声でつぶされることのない世の中になってほしいと思います。批判されるリスクを抱えながらも発信している人は、みんな同じように考えているんじゃないですか。私が過去に行ってきた支援活動においても、みんなに(被災地の状況などを)知ってもらいたくてSNSに投稿した結果、アプローチのタイミングがまずくて誤解を呼んでしまったことが何回もありました。その都度学んで、どうするべきかを身につけてきた。世の中の受け止め方が変わっていくきっかけの一つに自分がなれていたらいいんですけどね。支援してくださる方には誠実でありたい。今後は寄付金がどこでどのように使われたのかや、収支についても公表していきたいと思っています。

WWD:芸能人やインフルエンサーなどの間でも、最近は自分の考えや意思を表明し、動こうとする人が増えてきた印象だ。

紗栄子:芸能活動の王道ラインに乗っていると、さまざまな契約関係もあって(意思を表明することで)各所に迷惑をかけることがあります。これまではタレント本人を守るためにも「何も言わないように」と(事務所側はタレントに)言ってきたと思う。でも今はSNSで(消費者と)ダイレクトにつながって、考えを伝えることができる時代。タレントも意思を持っている人間で、その思いを発していかないと生き残ることができなくなっている。そうは言っても、芸能界はまだまだ声を発するのが難しい世界。だからこそ、もっともっと変わっていってほしいと思っています。もちろんそれは、タレント個人がリスクを抱えるということでもある。守ってくれる存在がなくなって、迷惑もたくさんたくさん掛けるかもしれませんが、フレキシブルに発信や発言ができたらと思って私は事務所を離れ、フリーになりました。

WWD:5月29日に「コスメキッチン(COSME KITCHEN)」(マッシュホールディングス)のインスタライブに登場し、販売を盛り上げるなど、ファッションやビューティ企業のサポートも行っている。

紗栄子:自粛期間中は、ものを買うことや経済を回すことが悪いことのように思われている時期もありましたが、買い物をすることは悪いことではないはず。インスタライブ中に「ジェラート ピケ(GELATO PIQUE)」のオーガニックコットンのパジャマを羽織ってみて、気持ちいいなと感じました。ファッションは物欲を満たすというだけでなく、心の健康を保つという側面も持っています。状況や環境によって、今はファッションを楽しむことができる人とできない人がいますが、できる人のことを批判して潰してしまうのはよくない。どんな業種も今は大変でしょうが、ファッション業界も新型コロナの影響は本当に大きかったと思います。働かれている方は厳しいこともあると思う。でも、ファッションを必要としている方はたくさんいるので、それを思い出して負けないでくださいとお伝えしたいです。私としても、微々たる力ですが業界をサポートできればと思って、インスタライブなどに出させていただいています。

WWD:今後立ち上げを目指しているというライフスタイルECはどんなものになる?

紗栄子:今急ピッチで開発を進めています。実は農業などの第一次産業にも以前から興味があるんです。農産物の販売会などに私がいると集客の面でお手伝いができるので、食育も兼ねてそういう場に子どもと一緒にお邪魔して、農家さんとはお付き合いを重ねてきました。自分自身でも畑をやりたいですし、自身や地域の農家さんが作った有機栽培などの野菜をECの定期購買でお届けしたい。自分の畑で採れた素材でファッションアイテムを作ることも考えています。植物療法学を学んでいるので、植物の力を生かした化粧品なども作っていきたいですね。モノ作りが好きなので、今は作るということを自分のライフワークに取り入れようとしているところです。オリジナルだけでなく、メーカーから仕入れる商品も含めて、売り上げの一部を寄付や寄贈にまわすようなECの形を今構想中です。

支援活動は人のために行うものですが、活動の中で自分自身も社会や人とのつながりによって生かされていると再認識します。だから、いただくものの方が実はすごく多いんです。私は人のために動くことができる自分を好き。そんなふうに、自己肯定にもつながります。ある被災地で支援した方たちが、今度別の場所で災害が起こった際に力を貸してくださったりもする。そうやって人の気持ちがつながっていく。機会があれば、みんなにも是非ボランティアや支援活動に参加してみてほしいです。

The post アクティビスト紗栄子が語るマスク寄贈や社会支援活動 「信念があるから、ネットの批判は気にしない」 appeared first on WWD JAPAN.com.

「ナイキ」がサステナブルで独創的なデザイン“スペース ヒッピー”発売 開発者が語る

 「ナイキ(NIKE)」は6月11日に、工場や消費者の廃棄物からプロダクトを作るナイキの実験的フットウエアコレクション“ナイキ スペース ヒッピー”を発売する。販売は「ナイキ」のオンラインストア「SNKRS」と青山のナイキラボ MA5で行う。これは、サステナブルな行動と大胆なデザインを融合させる試みで、従来同様のシューレースを使ったものやシューレースのないデザインを含む4つのスタイル(1万5400~2万1450円)をそろえ、それぞれユニークな美しさやフィット感を提供する。

 85~90%のリサイクルポリエステルを含む“宇宙ゴミの糸”と呼ぶ糸や、「ナイキ」の“ズームXフォーム”や“ナイキ フォーム”、“ナイキ グラインド ラバー”のスクラップを混合した“クレーター フォーム”を用いて炭素排出量を抑えている。

 開発を手掛けたノア・マーフィー・ラインヘルツ(Noah Murphy-Reinhertz)=イノベーション サステナビリティ デザイン リードに話を聞いた。

WWD:“スペース ヒッピー”を発売するにあたり、“宇宙ゴミ”という表現がとても印象的だったが、なぜ“宇宙ゴミ”と名付けたのか?

ノア・マーフィー・ラインヘルツ=イノベーション サステナビリティ デザイン リード(以下、ラインヘルツ):“スペースジャンク(宇宙ゴミ)”は、「ナイキ」の工場の床に落ちたスクラップ素材の愛称で、これを“スペース ヒッピー”の大胆なデザインに変身させている。先進的なランニングシューズを作るときには、そこで発生するゴミでさえ本当にテクニカルなものになるから。

“宇宙”と結びついたのは、ブレーンストーミングをするために、みんなでいろいろな素材を持ち寄ってそれぞれが違う素材を糊でくっつけたり、結び合わせたり、不思議な素材から何ができるかを考えていたときだった。誰かが、「もし私たちが宇宙にいたとすれば、自分でシューズを作ったり直したりしなくてはいけないよね。そんなときみんなならどうする?」と発言した。ちょうど、映画の「オデッセイ(The Martian)」を観たばかりで、しかもオレゴンで大規模な日食があった直後でもあったから、宇宙と結びついたいろんな発想が生まれたんだ。

そして「彼の宇宙ステーションがヤバイ状態になっているから、彼はジャガイモを育て始めているよ。自給自足しているけれど、でも宇宙なんだよね。なんだか、宇宙にいるヒッピーみたいだね」「それはおかしいね。絶対あるわけない」などと冗談を言って笑い合っていた。その直後に“Space Hippie”と書いたワッペンやTシャツを作ったんだけど、それが皆にとてもうけたんだ。それから5~6カ月間、精妙な宇宙技術と即興的なイノベーションの間の微妙な関係を考える中から、シューズの姿が浮かんできた。それがプロダクト作りにつながっていった。

“スペース ヒッピー”の製造工程を紹介する動画

WWD:“スペース ヒッピー”は「ナイキ」が取り組むサステナビリティを表現したプロダクトの一つだが、デザイン&作る工程で特に重視した点は?

ラインヘルツ:コンセプトはシンプルで、まず自分たちの足元を見つめた上で創意工夫を凝らし、炭素排出ゼロ実現の未来を目指して廃棄物をフットウエアやアパレルに変えていく、ということ。宇宙探索の世界ではこれを「ISRU(In Site Resource Utilization/その場の資源の利用技術)」と呼んでいるが、そのアイデアを地球でも応用しようとしている。“スペース ヒッピー”では、廃棄物の可能性を見出して直接人と関わるものを作っているし、素材をまず前面に打ち出して、見る人に直接語りかけられるようにしている。

“スペース ヒッピー”のフライニットの糸は、水のプラスチックボトル、Tシャツや糸くずなどの再生素材から100%作られていて、染色工程を省いているため、原料そのものの色や素材感が残っている。シューズの全てのパーツから物語が伝わり、炭素排出ゼロを実現するためのISRUのアイデアが強く伝わるようにしたいと考えた。

ソール素材の“クレーター フォーム”には、“ナイキ グラインド ラバー”を15%と“ズームXフォーム”の端材を100%リサイクルしたものを混ぜ合わせることで、これまで以上にサステナブルで、街を探索するときにも軽さと反発感を実感してもらえるはず。見た目も、青いパテにゴミからできた紙吹雪が散らされたように仕上げた。独創的かつ魅力的で、このシューズは何からどうやって作られたのだろうと思わせる仕上がりでしょう?

The post 「ナイキ」がサステナブルで独創的なデザイン“スペース ヒッピー”発売 開発者が語る appeared first on WWD JAPAN.com.

お客さまの“短時間できれいになりたい”をかなえる 美容師も満足する仕上がりのナプラのクイックカラー

 仕事や家事、子育てなど忙しい女性にとって、月に1回ほどという頻度の高いグレイカラーはときにハードルになってしまうことも。そんな多忙な女性たちに向けて、プロフェッショナルヘアメーカーのナプラは従来30分ほどかかるグレイカラーの放置時間を10分に短縮できる「エヌドット クイックカラー」と「ナシードカラー 〈クイック グレイカラー〉」を提案する。時短という点では、新型コロナウイルスの影響によってできるだけサロンでの施術時間を短縮したいという新たなニーズも満たし、サロンの効率化にもつながる。「クイックカラーはサロンとお客さま双方にとってプラスの効果を生む」という本田泰伸「ニュートラル プロデュースド バイ ガーデン(NEUTRAL produced by GARDEN)」統括マネージャーに話を聞いた。

10分の放置タイムで
白髪をしっかり染めあげる

従来のカラー剤に比べて短時間で白髪を染め上げるクイックカラー。放置時間が短いことはもちろん、染まりの良さも好評だ。「導入した当初はスタッフの人数が少なかったこともありクイックカラーというものがあると知って、効率化を考えました。従来のカラー剤では30分置いても染まりが甘いなと思うことがありましたが、クイックカラーはしっかり染まって10分あれば流せるので大きいです。今では約9割のお客さまにクイックカラーを使用しているため、もう当たり前のアイテムになっています。時短という側面だけでなく、染まりの良さという点からもおすすめです」と本田統括マネージャーは話す。グレイヘア用の「エヌドットカラー 〈クイック〉」は全21色、「ナシードカラー 〈クイック グレイカラー〉」は全30色と豊富な色展開により、ほとんどのお客さまに対応できる点も魅力だ。

きちんと染まることが
グレイカラーは一番喜ばれる

「お客さまにはクイックカラーで時短で染まるとアピールするのではなく、染まりやすいカラー剤であると話をしています。ダメージも少なくきちんと染まるので、当サロンでは『エヌドット』は仕上がりの良さからプラス料金を設定しています」と本田統括マネージャー。また、「グレイカラーをするお客さまにとって一番大事なことはしっかり染まるか。美容師にとって早く染まることは利点だと思いますが、ナプラのクイックカラーの染まりの良さはお客さまにとってもプラスです」と語る。

久しぶりの美容室だから
全部整えたいというお客さまも

5月1日から営業を再開した「ニュートラル プロデュースド バイ ガーデン」。「施術時間を短くしたいというお客さまはもちろんいます。営業再開から1カ月ほどたって、せっかくサロンに来たのだから全部やっていきたいというお客さまが多くなってきました。ただやはり時間は早めに仕上げてほしいというお客さまも多いですね」と本田統括マネージャー。サロンに割ける限られた時間の中でもカラーの放置時間が短縮できることで、デザインカラーやトリートメントなどプラスメニューも可能に。短時間でも顧客が望むメニューを我慢させることなくかなえることができるかという点は今後ますます求められる。

ナプラが提案する
2つのクイックカラー

「エヌドットカラー 〈クイック〉」は、L-システインがメラニンバランスをコントロールすることで明るさをキープした色味表現と、スピーディーに染め上げる染着力を実現。ダブルタンパク質が艶のある仕上がりをかなえる。5種のオーガニックハーブエキスと6種のハーブエキスを配合し髪をいたわり、透明感のある仕上がりに。「ナシードカラー 〈クイック グレイカラー〉」は、マカダミアナッツオイルとグレープシードオイルを配合し毛髪に浸透、潤いを保持し、手触りの良い滑らかな質感へと導く。さらに、6種類のオーガニックハーブエキスとハーブエキスを配合。豊富なカラー展開でお客さまのなりたいイメージをかなえる。

問い合わせ先
ナプラ
0120-189-720

The post お客さまの“短時間できれいになりたい”をかなえる 美容師も満足する仕上がりのナプラのクイックカラー appeared first on WWD JAPAN.com.

「80歳からはボランティア活動をしたい」佐伯チズ美容家が語った生涯と追い続けた信念

 美容家の佐伯チズ氏が6月5日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)により死去した。3月23日にALSの罹患を公表し、車椅子生活になったことを報告しつつも「今後も可能な限り活動を行う」とコメントを寄せてから、わずか2カ月半。日本で“美容家”の礎を築き、多くの女性に美を届けてきたレジェントは、多くの人に惜しまれながら76歳でその生涯を閉じた。2018年10月18日号の「WWDビューティ」の美容家特集で佐伯氏にインタビューを行った際、生い立ちから美容に目覚めたきっかけまで、予定していた取材時間を大幅に超過するほど語っていただいた。その時のコメントを引用しつつ、故人の功績を振り返る。

氏を育んだ環境と美容への目覚め

 佐伯氏は取材時、幼少期の思い出について「父は愛人のところへ行き、水商売をしていた母も別の男と恋愛をした。育ててくれたのは祖父母だった」とその生い立ちを振り返った。両親と縁の薄い暮らしの中で佐伯氏は自立心を育んだという。美容への興味をかきたてたのは、大阪北区の曽根崎でスタンド割烹を営んでいた叔母の存在だった。「銭湯で体を清めた後、美容室で髪を結い上げ化粧をして着物を着ると、婆が娘に変わった。その変貌を見て美容にはなんという力があるんだろうと思わされた」。

 高校卒業後はOLとして勤務していたが、美容への情熱が捨て切れず20歳の時に牛山美容文化学園(現ハリウッド美容専門学校)に入学し、美容師免許を取得。美容室で働いた後、67年に結婚したばかりの夫や恩師である牛山喜久子校長の勧めもあり、当時、日本初の直営サロンを作ろうとしていた「ゲラン(GUERLAIN)」に就職する。美容師免許を持っていた佐伯氏は「技術者からトレーナーまでなんでもこなした」といい、フランス本国から日本人で唯一のディプロマを授与されるほど活躍した。その後、84年に最愛の夫と死別し絶望を味わいつつも奮起。88年に「ディオール(DIOR)」に入社しインターナショナル・トレーニング・マネージャーに就任。定年まで勤め上げたのちにサロンを開き、“美肌師/美容家”としての活動をスタートさせた。

美容家としての信念を最後まで貫いた佐伯チズという生き方

 美容家としての活動は定年退職後の60歳からと遅咲きだが、その活躍は多くの人が知るところだ。メディア出演や書籍出版、スクールの立ち上げなどさまざまな活動の中で、手軽にビューティアップがかなう美容テクニックの数々は仕事や子育てに追われる女性たちから支持され、年齢を超越した肌の美しさと気品のある佇まいは見る人を引きつけた。また、口から放たれる前向きな言葉は多くの女性たちに勇気と自信を与え、美容本以外にも「願えば、かなう。」(講談社2006年)、「ひとり涙の法則夢追いの法則」(大和書房07年)など多くの人生哲学本を発行。女性の生き方の道しるべにもなった。

 佐伯氏は「ゲラン」在籍時に「人を美しくするには偽物ではだめ。本物でなければならない」と感じたという。1人でも多くの女性たちの肌や心に美を注ぎ込み、一人一人の人生に輝きを与えたいという信念は、美容家としての活動の柱だった。その姿勢はALSを公表した際の動画で「もっと自分を大切にね。自分らしくなるのよ」と涙を流しながらファンに訴えた姿からも分かる。

 18年の取材では「75歳から80歳まではこれまでにできなかったことを行う5年間にしたい」と語り、全国各地で「美肌塾」と題したセミナーを精力的に行っていた。また、その後のプランとして「80歳からは憧れのオードリー・ヘプバーン(Audrey Hepburn)のようにボランティア活動を行いたい」と目を輝かせていたが、その夢はかなわなかった。しかし、7月には遺作となる書籍「夢は薬諦めは毒」(宝島社)が発売になるという。偉大な美容家は病に侵されながらもその信念を胸に、最後の最後まで女性の美と人生を応援し続けた。

The post 「80歳からはボランティア活動をしたい」佐伯チズ美容家が語った生涯と追い続けた信念 appeared first on WWD JAPAN.com.

オーガニックコスメブランドが取り組む環境対策 CO2排出削減に向けてグリーンエネルギーへの転換進む

 「WWDビューティ」の5月28日号では、毎年恒例企画「オーガニック・ナチュラルコスメ特集」をお送りした。2015年に国連機関で「SDGs」と「パリ協定」が採択されて以降、サステナビリティへの関心は年々高まっている。そこで今号は、持続可能な農業生産法の一つとされるオーガニック(有機栽培)原料を用いる化粧品ブランドに取材し、製造から販売までサプライチェーン全体で取り組む環境対策にフォーカスを当てた。

 世界が抱える環境問題はさまざまあるが、地球全体の気候を大きく変える気候変動を引き起こす地球温暖化は優先すべき課題とされている。16年に発効し今年が実施初年となる「パリ協定」でも、CO2をはじめとした温室効果ガス排出削減の長期目標として、気温上昇を2℃より十分下方に抑えるとともに、1.5℃に抑える努力を継続することが盛り込まれている。

自然エネルギーの活用

 石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料は、燃焼させてエネルギーを得る際に大量のCO2を排出することから、オーガニック化粧品を展開する企業でも“エネルギー供給の低炭素化”あるいは“電源の非化石化”を進める動きは活発だ。メイクアップブランドの「ナチュラグラッセ(NATURAGLACE)」や国産オーガニックスキンケアの「チャント ア チャーム(CHANT A CHARM)」を製造・販売するネイチャーズウェイは昨年、名古屋にある本社と工場で使用する電力を自然エネルギー(再生可能エネルギー)100%由来の電気に切り替えた。

 また、エスティ ローダー グループの「アヴェダ(AVAEDA)」も早期に再生可能エネルギーの活用に乗り出した。アメリカ・ミネソタにある本社の屋根に太陽光パネルを試験的に設置したのは12年のことだ。今では、本社敷地内の約1万4500平方メートルの広さに2900の太陽光パネルを設置して、38キロワットのオフィス電力をまかなっている。主要工場においては、06年から100%風力発電で製造。さらに電力使用による温室効果ガス排出量を、風力発電会社からのクレジット購入により米国内でオフセット(相殺)している。

製品輸送時のCO2排出量削減

 これらの企業はエネルギー供給源を見直すほかにも、さまざまな視点からCO2排出量削減に取り組む。ネイチャーズウェイでは省エネルギー推進のため、整理整頓、清掃を徹底して製造不良発生件数を削減することに努めている。製造工程ではいったん加熱乳化を行いその後冷却するという一般的な化粧品の製法を避け、処方設計の工夫により一部製品を非加熱で製造する。また、工場、本社、物流倉庫間の輸送に、排ガスを25%削減するトラックを導入し、オンラインショップではCO2発生量の少ない紙を緩衝材に使用している。「アヴェダ」では製品を各国に輸送する際、空輸よりもCO2排出量の少ない船便の使用が基本だ。

 輸送時の環境負荷には多くのブランドが注意を払っており、スイス生まれの老舗ブランド「ヴェレダ(WELEDA)」では、一部の製品でボトルをガラス瓶からプラスチックに変更した。海洋プラスチックごみが問題視されている中で、なぜ?と思えるが、重量が軽いプラスチックの方が輸送時のCO2排出を含め環境負荷が少ないと判断してのことだ。同ブランドは現在スイス、フランス、ドイツなどの重要拠点のオフィスおよび製造工場において、太陽光発電、風力発電などを中心とした100%グリーンエネルギーを使用。事業活動全体で総合的に負荷を低減する選択を模索している。

植林でカーボンオフセット

 植林によるCO2削減に取り組む企業もある。ビーバイ・イーが展開する国産エシカルヘアケアの「凜恋」は、10年からボトル売り上げ1本につき1円を森林の増加や環境保全などを行う団体に寄付している。20年5月時点で累計植林本数は1523本になり、年間のCO2吸収量16.8トンを実現した。

 森林の減少は地球温暖化の要因となるもので、森林開発による大規模プランテーションで生産されるパーム油を使わないなど、原料調達に配慮することで地球温暖化対策に取り組んでいる企業も多く見られた。

環境配慮は投資対象に

 今回の特集で取材した環境経済学の専門家、馬奈木俊介・九州大学大学院工学研究院教授によれば、欧米では石炭火力発電によるエネルギーを使う企業への融資を行わない取り決めがあり、環境スコアを上げようとしない企業は融資対象から外すという流れになっているという。上記のように、日本の企業を含めて多くのオーガニック関連企業が環境保全に対応した取り組みを行っているにも関わらず、それが周知の事実とは言い難い。今後、サステナビリティを意識した事業展開を加速していく中で、融資を受ける場面も出てくるだろう。そうしたことも踏まえ、企業は自社で取り組んでいる環境対策をどう“見える化”し、社内外に発信していくかも課題となりそうだ。

The post オーガニックコスメブランドが取り組む環境対策 CO2排出削減に向けてグリーンエネルギーへの転換進む appeared first on WWD JAPAN.com.