小島健輔リポート 「第2波が来ればアウト」コロナ休業明けの再起動体制を問う

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。大半の小売店が営業を再開したものの、新型コロナウイルスの脅威は過ぎ去ったわけではない。現時点の課題は何なのか。

 コロナ流行の第2波が危ぶまれる中での緊急事態宣言解除で商業施設の休業も明け、アパレル販売は再起動したが、ようやく眠りから醒めた売り場の品ぞろえは魅力的とは言い難い。休業前の品ぞろえからリフレッシュできないまま再開した店舗も少なからず見られるからだ。加えて、コロナ感染の危機は去ったわけではなく第2波の兆候も見られるから、顧客と従業員の感染防止に細かく配慮した運営を強いられ、コロナ以前のような効率は当分、望めそうもない。

在庫消化の努力は尽くしたのか

 休業を余儀なくされていた間も刻々と商品は陳腐化していたわけで、営業している地方や郊外の店舗、ECの出荷倉庫に移すなり、地方や郊外に店舗がなければ臨時の催事会場を確保したり、ECにしても販売スタッフによるSNS発信を広げたりチャット接客やビデオ接客を導入したりと、やるべきことは山積していたはずだ。多くのスタッフが自宅待機になる中、幹部は時間も体もいくらあっても足らなかったのではないか。それでも処分しきれない在庫はバッタ屋に叩き売るしかないから、ギリギリまで奮闘されたに違いない。

 資金繰り最優先にエクセルで予算組みしながら、秋口に持ち越せる在庫、休業明けまで店舗に残す在庫、地方店や郊外店に回す在庫、ECで値引き販売する在庫、二次流通に放出して換金する在庫、と商品を仕分けなければならない。データ上だけでなく実品を見て触って議論して仕分けていく作業が、休業で空調も止まった店舗や倉庫で延々と続くのだから、マスクを外せないまま汗だくの作業になったに違いない。

 仕分け予算の基準となる資金繰りも、固定家賃の減額や免除、支払猶予など家賃交渉や仕入代金支払いのヘッジ、雇用調整助成金の申請手続きと支給タイミング、銀行との融資枠交渉などで二転三転するから、仕分け直しや在庫の再移動も生じる。そんな奮闘もコロナ感染におびえながらだから、ストレスは想像に余りある。経営トップから各分野の幹部まで、いざ感染となって戦列を離れても任務を託せる代行者の設定も不可欠だったはずだ。

 そんなリスクと苦行を社員に強いるわけにはいかないとステイホームさせ、リモート会議と資料作り、外部とのメール交渉に終始して休業明けを迎えたアパレル企業も少なくなかったのではないか。ようやく眠りから醒めた売り場を見れば、その会社が休業期間中、どう動いていたか一目瞭然だ。

在庫状態の格差と危ぶまれる“正価離れ”

 再開業したファッションビルや駅ビルの店頭を一周して在庫内容を検証したところ、手頃なアパレルチェーンの多くはローカル店舗が営業していたことも下支えし、何とか品ぞろえを夏向きにリフレッシュできていたが、大都市に店舗が集中してほとんどの店舗が休業していたセレクトショップや高感度ブランドはECに回しても消化しきれず、春物と初夏物のセールが売り場の大半を占めていた。

 百貨店ではレナウンのブランドが処分セール一辺倒なのは致し方ないにしても、三陽商会のブランドや春のオケージョン商品が多いプレタ系のブランドも休業前からの在庫が目立ち、百貨店自営のセレクト売場は休業前の在庫状態をそのまま引き摺っていた。大御所から若手までデザイナーブランドの大半は、休業中に売り場に入って在庫を引き上げた形跡さえない。再開業してもブランドイメージをはばかって値下げ訴求するブランドも限られるから、積み上がった在庫を一体どう換金するつもりなのか危ぶまれる。

 値下げすれば地方や郊外の店舗で処分できた手頃なブランドはともかく、アウトレットモールも全て休業する中ではベターレンジ以上のブランドはECしか処分の方法がなく、新規投入の夏物で店頭の顔を作ったブランドも後方のストックや倉庫に春物と初夏物在庫を大量に抱えていると推察される。

 百貨店アパレル各社は行き場を失った在庫の換金を急いでおり、営業再開と同時にセールに入るブランドも少なくない。セール時期正常化に固執してきた業界もこの惨状には抗し得ず、百貨店側も五月雨式の早期セール開始を容認しているが、これを契機に百貨店客の“正価離れ”が加速することは避けられない。これまでブランドイメージの毀損を恐れて二次流通に放出してこなかったブランドも、今回は背に腹は変えられず大量に放出しており、正価流通からオフプライス流通へ百貨店ブランドは分水嶺を越えてしまった。

 外資系ではLVMH系ブランドの一部やインディテックス(INDITEX)系ブランドは春物在庫を引いて夏の顔に切り替えていたが、ケリング(KERING)系主要ブランドやイタリアのプレタブランドは休業前の在庫を引きずったままで、ウインドウディスプレイまで休業前のままというブランドもあった。休業期間中のリモート・マネジメントもともかく、本国から VMDスタッフが来日できないまま放置されているケースもあるようだ。コロナクライシスを契機にローカル分断が急進する中、ローカルスタッフへの権限委譲が問われたのではないか。

感染防止で様変わりする店舗運営

 営業を再開しても感染リスクを抑えるべく細かく配慮した運営を強いられるから、これまでのような販売効率はもう望めない。もとより入店客数が少なかった郊外店などはともかく、多数の顧客が訪れて販売効率が高かったターミナルの店舗など、3密を避けた入店制限や試着室の利用制限で販売効率が低下するのは避けられない。

 入店にあたっては体温チェックが不可欠だが、大型店では手持ちの非接触体温計で一人一人、測っていては渋滞して入店待ちの列が延々と伸びてしまうから、カメラとサーモセンサーを使った多人数対応の体温検知システムが必定だ。数万円〜十数万円の手頃なシステムが売り出されているから、大型店は導入を急ぐべきだろう。各店舗で入店を待たされる時間が重なればショッピングの時間も体力も浪費され、買い回れる店舗も少なくなってしまうから、館全体の問題として考えたい。

 店内でもソーシャルディスタンスを確保しマスクやフェイスガードを装着しての接客は意思疎通に手間取るから、意外と時間を要する。実際に接客されてみると、マスク越しで聞き取れないので聞き直したり、聞こえる距離まで近寄ってしまうから、かえって冷や汗ものだ。試着もブースを間引いたり、使うたびに触る部分やハンガーを逐一、アルコール消毒する必要があるから、ピーク時の販売効率はかなり落ちる。ましてや第2波が現実となれば、前回の本リポートで指摘したような試着品の隔離や消毒という厳戒態勢を取らざるを得なくなり、試着がネックとなって販売効率はさらに落ちる。

 マスクとフェイスガードを装着してのピリピリした接客は神経も体力もすり減らすから、これまでのシフト組みでは販売スタッフが疲弊してミスも多くなる。休息回数を増やし交代時のクロス時間を長めに取り、十分に休ませないと、疲労で防染作業が疎かになる。院内感染の多くは気を抜いた後方の休息室で起きたといわれるから、バックヤードでのマスク装着と朝夕の消毒は徹底されるべきだろう。

 万一、感染が発生すれば再び休業をしいられるから、失うものはさらに大きくなる。現場任せにしないで、会社として防染ルールと手順を徹底し、十分な装備を支給するべきだ。

破綻が危ぶまれるのはどこか

 アパレル販売はほぼ2カ月間の休業を強いられ、売り上げが消えた一方で固定費や買掛金、中間納付消費税(前年の売り上げで先行徴収される)や従業員の休業補償など出費は止められず、行き場のない商品の価値は刻一刻と減価していくという地獄を見た。メディアはそんなアパレル業界の惨状を「コロナ禍のアパレル24社『余命』ランキング」(ダイヤモンドオンライン)などと突き放して書き立てているが、その計算は売上減少による運転資金の枯渇であり、休業による落ち込みが大きいほど、休業が長引くほど、手許の現預金が少ないほど危ないということになる。

 上場アパレル各社の売上減少率と運転資金の逼迫度を検証すると、(1)都心の百貨店や駅ビル、ファッションビルなど休業期間が長い店舗の比率が高く、(2)日銭が入らず売上金の回収期間が長い消化取引やテナント出店の比率が高く、(3)棚卸資産の回転が遅く、(4)買掛金の支払いサイトが短い――という4条件がそろうほど危険度が高くなる。ダイヤモンドオンラインが「ユナイテッドアローズは余命3カ月」と槍玉にあげたのには理由があったわけだ。実際、同社の20年3月期決算における売掛債権回転日数は26.3日(うち商業施設売上金の未収期間は25.9日!)、棚卸資産回転日数は124.8日、買掛債権回転日数は51.0日、運転資金回転日数は100.1日だった。同社に限らず、駅ビルやSCといった高コストで日銭が入らない商業施設頼りの危うさを痛感したのではないか。

 この4条件が揃っても、一方的に発注をキャンセルしたり引き取りを翌年!まで伸ばしたり、買掛金の支払いサイトを伸ばせば余命は確実に伸びる。コロナ危機に瀕して、実際にそんな暴挙を断行したセレクトチェーンもあった。

 引き取りや支払いの遅延が広がれば、運転資金の逼迫は川上へ逆流していく。川上に押し付けた未引き取り在庫や支払いの遅延はサプライチェーンの体力を削ぎ、業界の開発力を根底から毀損してしまう。アパレルチェーンやアパレルメーカーもともかく、OEM(相手先ブランドの生産)業者やテキスタイルコンバータ、縫製工場など生産を支えるバックグラウンドの破綻が危ぶまれる。

第2波が来て再休業となれば皆、アウトになる

 ブランド力のあるアパレル企業の場合、手許の現預金が枯渇しても超過債務にならない限り、資本蓄積や収益力評価による借り入れが可能だから即、「余命」が尽きることにはならないが、アパレル各社のバランスシートは長年の販売不振で損耗が進んでおり、過半の企業は休業があと2〜3カ月も続けばアウトだった。飲食業界やイベント業界、ホテル・旅館・旅行業界などはアパレル以上に逼迫していたから、感染リスクが残る中も緊急事態宣言を解除せざるを得なかった。

 感染リスクが残る中の営業再開だから、気を抜くと感染者が広がりかねないし、地域によっては第2波も始まっている。大都市圏で第2波が広がれば再休業は避けられず、それが2カ月にも及べば過半のアパレル企業が破綻する。負債の連鎖を考えれば、過半どころでは済まなくなるかもしれない。

 待ちに待った再開業だが、甘く見るとカタルシスどころかジェノサイドになる。前回の本リポートで指摘したような防染対策を「神経過敏だ」とか「不安をあおる」とか否定的に見る意見もあるようだが、第2波が来れば本当に業界が絶滅してしまう。売上回復も必要だが、第2波を許せば皆、アウトになる。店頭の売り上げは多少犠牲にしても気も手も抜かず防染を徹底し、再び休業に追い込まれることがないよう隠忍自重してほしい。

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「パナソニック ビューティ」で“おうち美容” 新しくなった“導入美顔器イオンエフェクター”で素肌力アップ

 自宅で過ごすことが増え、スキンケアやセルフケアに費やす時間が増えたという人も多いのではないだろうか。ゆっくり肌と向き合うことができる分、美容家電を活用してワンランク上のスキンケアを目指してみてはいかがだろう。

 美容家電をリードするブランド「パナソニック ビューティ」は、心地よさと効果の高さを両立させた高機能な製品を多数展開している。温冷美容の“スチーマー ナノケア”をはじめ、新しくなってパワーアップした新イオンエフェクターなど、“おうち美容”を底上げする人気美容家電に注目だ。

“スチーマー ナノケア”で基本の
ケアを底上げ 
フェイスラインは
“温感かっさ”でアプローチ

 トラブルの少ない美しい肌を目指すためには、スキンケアの基本となるうるおいの質を高めて肌の土台が整えることが大切だ。温スチームと冷ミストの温冷美容で肌にうるおいを与える“スチーマー ナノケア EH-SA9A”は、ナノサイズの温スチームが肌の角質層まで浸透し、微細なミストが肌を引き締めることでキメの整ったハリとうるおいに満ちた肌に導いてくれる人気美容家電だ。温冷が自動で切り替わる5つのコースを備え、メイクのりをよくする皮脂ケアコースや、肌の揺らぎが気になるときに最適なバリア肌コースなど、悩みや目的に合わせて選べ、おうちにいながらまるで本格エステのようなスキンケアができる。さらに、温スチームによってディープクレンジングも可能で、いつものクレンジングでは落としきれない毛穴の奥の汚れまですっきりと落とし、肌を柔らかく整えてスキンケアの効果も高める。
 
 フェイスラインが気になる場合には“ドレナージュ※1美顔器 温感かっさ”でのケアが効果的だ。4つのカーブが頬や目元などケアしたい部分にフィットし、まるで指のようなタッチと約37と40℃から選べるほっとくつろぐ温感と心地よいリズムでフェイスラインにアプローチする。“スチーマー ナノケア”と一緒に使うことで肌のふっくら感、もちもち感※2がアップし、より高い実感を得られる。

新イオンエフェクターで
いつものケアにもっとうるおいを

 肌のうるおいやハリ不足など悩みに積極的にアプローチしたい場合は、導入美顔器でのスペシャルケアがおすすめだ。パワーアップして新登場した“導入※3美顔器 イオンエフェクター〈高浸透※3タイプ〉”は、手塗りでのケアよりも美容成分の浸透性を高めてくれるので、肌にさらなるうるおいとハリ感を与え乾燥小ジワも※4も目立たない理想の素肌へ導いてくれる。プレケアと導入を行う2つのヘッドが特徴で、最初にプレケアヘッドを使用することで角質層に通り道を作り、浸透しにくいヒアルロン酸やコラーゲンなど分子の大きい美容成分を浸透しやすくする。そのあとにイオンヘッドで導入ケアを行うことで、より効果的に化粧品の成分を肌の角質層まで届けることを可能にした。シートマスクの上から使用すれば、忙しい朝など時間がないときでも時短ケアが可能に。
 プレケア、保湿、ブライトニング、マルチ、スキンクリア、クールと保湿から急速冷却の引き締めまでできる6つのモードから肌の状態に合わせて選択できるため使い方も簡単。紫外線が強くなるこれからの季節はビタミンC、ビタミンC誘導体と保湿成分を一度に浸透させる新搭載のマルチモードが最適だ。プレケアモードでケアしたあとに、ビタミンC、ビタミンC誘導体を含む化粧品と併せて使うことでうるおいのある明るい肌を目指せる。

新イオンエフェクター
 愛用の声続々

※個人の感想です。効果には個人差があります。

ライブ配信で小田切ヒロが
レクチャー 
ゲストに
GENKINGが登場!

 「パナソニック ビューティ」と「WWD JAPAN.com」は6月4日にライブ配信を行った。ヘアメイクアップアーティストの小田切ヒロ、モデルの鈴木友菜、スペシャルゲストにGENKINGを迎え、“スチーマー ナノケア” “ドレナージュ※1美顔器 温感かっさ”“導入※3美顔器 イオンエフェクター”を使ったセルフケアの方法を紹介した。GNKINGは普段から「パナソニック ビューティ」の美容家電を愛用しており、仕事の現場にも欠かさず持っていくという。小田切もヘアメイクの現場で使用しており、「スチーマーを使用すると肌のクオリティが変わり、メイクのりも良くなります。さらにイオンエフェクターを使うとうるおいと生命力があふれる肌に仕上がり、ベースメイクも崩れにくくなります」と語り、効果に信頼を寄せているという。
 さらに、GENKINGは「おうちでの時間が長い今だからこそ、スチーマーや美顔器を使ってより念入りなスキンケアをして気分をあげてほしいですね」と述べ、小田切も「美容家電を取り入れて、ワンランク上のおうち美容を体験してみてください」とコメント。本格エステのようなスキンケアをかなえる最新の美容家電で、おうち美容を充実させてみてはいかがだろうか。

※1ドレナージュとはエステの手技の名称
※2角質層がうるおうことによる
※3角質層まで
※4効能評価試験済み

問い合わせ先
パナソニック

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「パナソニック ビューティ」で“おうち美容” 新しくなった“導入美顔器イオンエフェクター”で素肌力アップ

 自宅で過ごすことが増え、スキンケアやセルフケアに費やす時間が増えたという人も多いのではないだろうか。ゆっくり肌と向き合うことができる分、美容家電を活用してワンランク上のスキンケアを目指してみてはいかがだろう。

 美容家電をリードするブランド「パナソニック ビューティ」は、心地よさと効果の高さを両立させた高機能な製品を多数展開している。温冷美容の“スチーマー ナノケア”をはじめ、新しくなってパワーアップした新イオンエフェクターなど、“おうち美容”を底上げする人気美容家電に注目だ。

“スチーマー ナノケア”で基本の
ケアを底上げ 
フェイスラインは
“温感かっさ”でアプローチ

 トラブルの少ない美しい肌を目指すためには、スキンケアの基本となるうるおいの質を高めて肌の土台が整えることが大切だ。温スチームと冷ミストの温冷美容で肌にうるおいを与える“スチーマー ナノケア EH-SA9A”は、ナノサイズの温スチームが肌の角質層まで浸透し、微細なミストが肌を引き締めることでキメの整ったハリとうるおいに満ちた肌に導いてくれる人気美容家電だ。温冷が自動で切り替わる5つのコースを備え、メイクのりをよくする皮脂ケアコースや、肌の揺らぎが気になるときに最適なバリア肌コースなど、悩みや目的に合わせて選べ、おうちにいながらまるで本格エステのようなスキンケアができる。さらに、温スチームによってディープクレンジングも可能で、いつものクレンジングでは落としきれない毛穴の奥の汚れまですっきりと落とし、肌を柔らかく整えてスキンケアの効果も高める。
 
 フェイスラインが気になる場合には“ドレナージュ※1美顔器 温感かっさ”でのケアが効果的だ。4つのカーブが頬や目元などケアしたい部分にフィットし、まるで指のようなタッチと約37と40℃から選べるほっとくつろぐ温感と心地よいリズムでフェイスラインにアプローチする。“スチーマー ナノケア”と一緒に使うことで肌のふっくら感、もちもち感※2がアップし、より高い実感を得られる。

新イオンエフェクターで
いつものケアにもっとうるおいを

 肌のうるおいやハリ不足など悩みに積極的にアプローチしたい場合は、導入美顔器でのスペシャルケアがおすすめだ。パワーアップして新登場した“導入※3美顔器 イオンエフェクター〈高浸透※3タイプ〉”は、手塗りでのケアよりも美容成分の浸透性を高めてくれるので、肌にさらなるうるおいとハリ感を与え乾燥小ジワも※4も目立たない理想の素肌へ導いてくれる。プレケアと導入を行う2つのヘッドが特徴で、最初にプレケアヘッドを使用することで角質層に通り道を作り、浸透しにくいヒアルロン酸やコラーゲンなど分子の大きい美容成分を浸透しやすくする。そのあとにイオンヘッドで導入ケアを行うことで、より効果的に化粧品の成分を肌の角質層まで届けることを可能にした。シートマスクの上から使用すれば、忙しい朝など時間がないときでも時短ケアが可能に。
 プレケア、保湿、ブライトニング、マルチ、スキンクリア、クールと保湿から急速冷却の引き締めまでできる6つのモードから肌の状態に合わせて選択できるため使い方も簡単。紫外線が強くなるこれからの季節はビタミンC、ビタミンC誘導体と保湿成分を一度に浸透させる新搭載のマルチモードが最適だ。プレケアモードでケアしたあとに、ビタミンC、ビタミンC誘導体を含む化粧品と併せて使うことでうるおいのある明るい肌を目指せる。

新イオンエフェクター
 愛用の声続々

※個人の感想です。効果には個人差があります。

ライブ配信で小田切ヒロが
レクチャー 
ゲストに
GENKINGが登場!

 「パナソニック ビューティ」と「WWD JAPAN.com」は6月4日にライブ配信を行った。ヘアメイクアップアーティストの小田切ヒロ、モデルの鈴木友菜、スペシャルゲストにGENKINGを迎え、“スチーマー ナノケア” “ドレナージュ※1美顔器 温感かっさ”“導入※3美顔器 イオンエフェクター”を使ったセルフケアの方法を紹介した。GNKINGは普段から「パナソニック ビューティ」の美容家電を愛用しており、仕事の現場にも欠かさず持っていくという。小田切もヘアメイクの現場で使用しており、「スチーマーを使用すると肌のクオリティが変わり、メイクのりも良くなります。さらにイオンエフェクターを使うとうるおいと生命力があふれる肌に仕上がり、ベースメイクも崩れにくくなります」と語り、効果に信頼を寄せているという。
 さらに、GENKINGは「おうちでの時間が長い今だからこそ、スチーマーや美顔器を使ってより念入りなスキンケアをして気分をあげてほしいですね」と述べ、小田切も「美容家電を取り入れて、ワンランク上のおうち美容を体験してみてください」とコメント。本格エステのようなスキンケアをかなえる最新の美容家電で、おうち美容を充実させてみてはいかがだろうか。

※1ドレナージュとはエステの手技の名称
※2角質層がうるおうことによる
※3角質層まで
※4効能評価試験済み

問い合わせ先
パナソニック

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「シャネル」初のオンライン発表 カプリ島でのバカンスを思い描いた2021年プレ・スプリング・コレクション

 「シャネル(CHANEL)」は6月8日、2021年プレ・スプリング(クルーズ)・コレクションを公式ウェブサイトとソーシャルメディアで発表した。同コレクションは、もともと5月7日にイタリア・カプリ島でのランウエイショーで披露予定だったもの。新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受けて計画の変更を余儀なくされたため、パリ・カンボン通りにあるスタジオに小石が敷き詰められた地中海風のビーチを再現して撮影とデジタルでの発表を行った。

 コレクションのテーマは“Balade en Mediterranee(地中海めぐり)”。6月初めに行われた撮影では、モデルのミカ・アルガナラズ(Mica Arganaraz)らがパステルカラーの夕陽を背景に歩く姿の映像とルック写真を撮り下ろすとともに、フォトグラファーのカリム・サドリ(Karim Sadli)が黄金に輝く太陽光を再現したセットで異なる印象のイメージを捉えた。

 一対一のアポイント制でソーシャルディスタンシングを尊重し行われたメディア向けのプレビューで、ヴィルジニー ・ヴィアール(Virginie Viard)=ファッション・コレクション・アーティスティック・ディレクターは、「私はいつだってカプリ島に行くことを夢見ていた」とコメント。そして、彼女の前任者であり師として仰いでいた故カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)氏が、映画監督ジャン・リュック・ゴダール(Jean-Luc Godard)による1960年代の名作「軽蔑(Le Mepris)」で使用された同島のマラパルテ邸を97年に撮影したことに触れ、「彼の写真集を再編集して小さな展覧会を開くこともできたかもしれない。私は彼とつながる何かを持っているのが好き」だと話す。

 ヴィアールはロックダウン期間の大半をフランスの田舎で過ごし、5月4日にスタジオに戻ってから3週間をかけてチームと一緒にコレクションを制作した。その背景について「残っていたボタンや糸など使えるものはすべて再利用し、在庫のある毛糸でニットを編んだ。それが時間の節約につながった」と明かす。生み出されたコレクションは、ツイードスーツとスパンコールが施されたビキニトップのルックをはじめ、スポーティーなビキニトップにアシンメトリーなニットスカートやカプリパンツを合わせるなどカジュアルなムードが強調されたもの。「誰かがカプリ島にバカンスに出かけるような軽やかでかなり小規模な発表にするつもりだった。エレガントで洗練されていてながらもよりシンプルで、新しいアイテムと過去のコレクションのジャケットを組み合わせるようなね。もしお気に入りの『シャネル』のアイテムを持っていれば、それはいつでも活躍するもの。常に新しいものを買う必要はない」と説明する。

 さらに、彼女は厳選した過去のコレクションのアイテムにも新たな命を吹き込んだ。例えば、フレアジーンズをカメリアモチーフがプリントされたパネルでカスタマイズしたり、ツイードジャケットに同素材でアクセントを施したジーンズを合わせたり。「工場が在庫のある生地を使えるようにすることで、誰にとってもシンプルにすることを試みた。工場は簡単に閉鎖しうるものなので、私たちが誰も見捨てることなくすべての生産者を大事にしているということを知れたのは、とても感動的で心強かった」と話す。

 また、オンラインでの発表について、ブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)=ファッション部門プレジデントは「『シャネル』の歴史においてショー以外でコレクションを発表したのは今回が初めてであり、新たな発表方法だ」とコメント。「ショーを開催できなかったのは残念だが、それが許される状況ではなかった。しかし10月には、無観客や少人数でもランウエイショーを復活させたいと考えている。ショーは、やはりコレクションのストーリーを伝える最高の方法。それは物語の始まりであり、その後の店舗展開において非常に重要だ」と続ける。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

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アパレル販売員の新しい働き方、“フリーランス販売員”mikaiさんの仕事術

 ショップスタッフのマッチングサービスとして、2019年1月からサービスをスタートさせた「メッシュウェル(MESHWell)」。昨年末の時点で登録者数は500人を超え、19年12月の月間マッチング数は300件、年間では1200回以上になった。約4300時間の勤務時間を提供し、中には月収50万円を稼ぐ販売員も現れている。国内で販売職といえばメーカーや小売店、あるいは派遣会社に所属して働くのが一般的で、いまだにフリーで販売職をしている人は一握りといっていいだろう。ちなみに海外では優秀な販売員はフリーランスで働くという実例もある。今回はメッシュウェルで活躍しているフリーランス販売員にインタビューし、まだ謎が多いフリーランス販売員の働き方や接客術などを聞いた。

―新型コロナで自粛期間中はどんなことをされてましたか?

mikaiさん(以下、mikai):それまで忙しかったメッシュウェルのスケジュールがほとんどなくなったので、自宅でイラストを描く仕事や以前から興味のあった動画配信の準備をしていました。先々の不安もありましたが、自分を見つめるいい機会になりました。

―通常の働き方を教えてください。

mikaiさん:勤務しているのはセレクトショップが多いです。一日を時系列で追うと、午前中に新宿にあるセレクトショップに入り、お昼ごろに上がって移動して、14時からは六本木の別のセレクトで勤務する、というような感じです。エリアでは新宿、銀座、六本木が多いですね。まれに同じ日に新宿で別の店舗で勤務することもあって、そのときには1店舗目で接客したお客さまが2店舗目にも来店されて「何でいるんですか?」と驚かれました(笑)。

―給与は?

Mikai:基本的にはメッシュウェルのサイトに自分の働きたい時間帯と時給を出しています。それを見てショップから依頼が入るという流れなので、働いた分だけ稼げるという方式です。複数店舗で勤務するときは移動距離に応じて、勤務時間帯を少しだけずらしていただけるように相談しています。多いときには朝昼晩で3店舗で働くこともあり、銀座と六本木を往復したこともありました。同じメッシュウェルを通じて働いている方でも、私のように3店舗を周る方もいれば、隙間時間で働く方もいて、皆さん違う働き方をしています。

―1日に違う店舗で3回も勤務となると体力も必要ですね。それに新宿で出会ったお客さまはさぞかし驚いたでしょうね(笑)。そうすると服装とかはどうされるのですか?

mikai:同じものでも問題なさそうなショップの場合はそのままですが、テイストが違うときは持っていくこともあります。制服が用意されている店舗もありますし、あとはアクセサリーやシューズ、メイクを変えています。基本的にはどの店舗に立っても違和感がないようなスタイルを心がけています。

―ということは、その日のスケジュールはある程度ご自身で調整されるのですか?

mikai:そうですね。場合によっては前日に決まることもありますが、基本的にはその月の頭にはスケジュールが決まっています。特に繁忙期は1カ月前にはスケジュールがほぼ埋まってしまいます。

―では店頭ではどんな仕事されていますか?

mikai:基本的には接客以外の業務はしないことになっていて、接客だけに向き合って仕事をしています。

―そうなんですね。さまざまなエリア、ブランド、ショップで働けるのは楽しいですか?

mikai:そうですね。地域によってもブランドによっても客層は変わるので、それを肌でダイレクトに感じられるのは企業に所属する販売員ではできない体験だと思います。学生時代にアルバイトで販売をしていたのですが、その時点で企業に所属して販売の仕事をすることが性格的に合わないと自分でも感じていたので、その後グラフィックの仕事やECの仕事、オンラインスタイリングなど、いろいろやってきたことを生かしながらこういう形で仕事ができるのはうれしいです。少ない時間ですが店頭に立ち、接客して、お客さまに喜んでいただけて、ショップからも評価していただけることで、自分を肯定的に捉えられるようになりました。

―フリーランスで販売をするまでの経緯は?

mikai:大学時代に販売のアルバイトをしていた頃はどちらかというと接客よりも服そのものに興味があり、接客業は向いていないと思っていたんです。

―過去の取材でも服が好きでこの仕事をしているタイプの方がいました。

mikai:例えばOL層に人気のファッションビルでは、単純に服が好きで買いに来たというお客さまより、用途があって探しに来た方や何となく服が欲しいという方の方が主流で、接客しても話が合わないなと思うこともありました。それでも服が好きな方が来ることがあって、そのときは盛り上がってましたね。今は自分に似合うものを探しに来ているお客さまを接客することにも面白さを見出すことができるようになっていますが。

―その後、大学卒業してからは?

mikai:いろんな仕事をしていたのですが、今につながるのはECサイトの商品撮影の仕事です。スタイリングから撮影までを任されたのですが、そこで服を自分以外の誰かにスタイリングすることの楽しさに気が付いたんです。とはいっても、スタイリストになるのは違うと思って、次に始めた仕事が大手通販サイトのオンラインスタイリングでした。

―もしかして、あの1年で終了したサービスですか?

mikai:そうです。でも、そこでの経験が今でも一番役に立っています。特に自分がなぜこのアイテムを選んだのか、お客さまからのオーダーを踏まえて伝わるように言語化しなくてはいけません。さらには、そのアイテムをどうやって着て欲しいのかも言葉で伝えるので、だいぶ鍛えられました。お客さまに分かりやすく伝えるために、パーソナルカラーや骨格診断とか、そういった資格の知識も勉強しました。

―顔が見えない分、説得力のある知識と文章力を要する仕事だったのですね。

mikai:オンラインは文字だけのやり取りなので、顔が見えない分、お客さまも要望をズバッと書いてこられます。任意ですが返品理由も書いてこられるので、私たちはそれも確認して、次に送る商品を考えていました。その後にパーソナルスタイリストやショッピング同行の仕事も始めて、さらに接客に対する見方が変わってきたんです。

―それはどんなところでしょう?

mikai:私は服のことならずっと話していられることが分かりました。パーソナルスタイリストもショッピング同行も、基本はお客さまが似合うものが欲しいから依頼してくるものなので、これなら似合うのではと考えながら会話することに楽しさを見出したのです。ちょうどオンラインスタイリングの仕事が終了するタイミングでメッシュウェルのサービスが始まったので登録して、これを機にフリーランス販売員としてどれくらい働けるのか試すような感じでした。すると思った以上に依頼もたくさんいただけ、ショップからも良い評価をいただけたのでモチベーションが上がりました。

―メッシュウェルは接客以外の業務はしない分、接客販売のプロとして割り切って仕事ができるのですね。とはいっても、毎日売り上げを作るのも難しいかと思いますが…。

mikai:始めた頃は売れなくて申し訳ない気持ちにもなりましたが、今は基本的に売り上げは考えないようにしています。今はオンラインストアがあるので、店で試着してオンラインで買おうと思っている方がたくさんいらっしゃいます。接客していて「荷物になるからオンラインで買うわ」と言われたこともあります。店頭になければ基本オンラインで買うのではないでしょうか?だからこそ、接客ではショップやブランドを好きになってくれる人を増やすようにしています。

―例えば店からの帰り道で、「今日、あの店員さんに良いアドバイスもらったから、家に帰ったらポチろう!」というポジティブな後押しをするような……。

mikai:私のような立場のショップスタッフから見ても、店頭での売り上げだけを重視する考え方は、業界的に変えていった方がいいと思います。

―本当にその通りです。ところで接客のスキルアップはどうされているのですか?

mikai:依頼先の接客力がある販売員の仕事ぶりを見たり、私自身、服を買いに行くのが好きなのでいろんなショップで接客を受けて勉強したりしています。自分の接客を反省することもあります。

―販売職は企業に所属してする仕事と思っていましたが、フリーランスでも成り立つということが分かりました。

mikai:私の場合、会社勤めが本当に苦手で、過去には当たり前のことができなくて「なんでそんなことできないの」と怒られてきました(苦笑)。注意力散漫と言われる反面、想像力が豊かだと褒められることもありました。フリーランス販売員の場合、自分の経験や得意分野であるスタイリング技術を生かして働くことができます。お客さまに似合うものを探したいという気持ちに集中して接客することもできますし。

―その一つの道に長けたところ、そしてそれ以外のことがからっきしダメな感じは、まるで職人のようですね。

mikai: そうですね。以前、職人みたいだと言われたことがあります(笑)。

苫米地香織:服が作れて、グラフィックデザインができて、写真が撮れるファッションビジネスライター。高校でインテリア、専門学校で服飾を学び、販売員として働き始める。その後、アパレル企画会社へ転職し、商品企画、デザイン、マーケティング、業界誌への執筆などに携わる。自他ともに認める“日本で一番アパレル販売員を取材しているライター”

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「ギャルソン」古着転売で書類送検 何が違法だったのか

 コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)社の社員が「コム デ ギャルソン(以下、ギャルソン)」の古着3点を仕入れ警察署の許可なく転売したとして、古物営業法違反の疑いで書類送検されたと各種メディアが報じている。同社員はネットオークションなどで「ギャルソン」の古着を購入し、古着店やネットで転売したことで5万7000円の利益を得た容疑で書類送検された。

 ネットオークションやフリマアプリなどを利用した物品の売買が一般消費者にも浸透している昨今において、自分が購入した物を他人に販売する「転売」という行為は一般的に行われている。それでは、書類送検されたギャルソン社員の「転売」行為はどこが問題だったのか。そのポイントは転売行為が「営業」に当たるかどうかだと小松隼也弁護士(三村小松山縣法律事務所)は言う。「『営業』に当たるかどうかは、継続的に繰り返し行われているかという点が問題になる。本件はこれが認められたため『古物営業である』と認定されたのだろう。古物業に対する規制は、古物の中に盗品が紛れ込むことを防止するための法律。営利目的で中古品を扱う場合は、警察署に古物商の許可を得る必要がある」。

 反復継続性の有無だけでは依然として個人でネットオークションやフリマアプリを利用している消費者との区別がはっきりとしない。これについて小松弁護士は、「一度流通市場に乗った物を仕入れて、それを転売する行為が規制対象」だと話す。「ネットオークションやフリマアプリはあくまで『不要になった私物』の売却のみを行っているという前提なので、『仕入れ、転売という連続性』がなく、古物業の規制対象である『営業』になっていないものが大多数である」と説明する。

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中

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「ロンハーマン」のEC、オープン1週間で何が売れた?

 ロンハーマン(RON HERMAN)のオンラインストアが好調だ。ロンハーマンはこれまで実店舗主義を貫いてきたが11年目の今年ECを開設した。開設初日の5月28日は、緊急事態宣言が解除されて実店舗が営業を順次再開したタイミンでもあったが、“3密”を避けて買い物を楽しめることもあり、一時アクセスが集中してつながりにくい状況になることもあった。想像をはるかに上回る反響があり、うれしく思っている」と同社はコメント。満を持してのオープンに、顧客からの期待も高い。オンラインストア開設1週間の売れ筋を聞いた。

 「オーラリー(AURALEE)」の別注Tシャツ(1万2000円)は、大人が気兼ねなく着られる上品さと初夏の気候にフィットしたことからヒット。パンツインしてキレイに見えるシルエットや裾の丈感も特徴だ。さまざまなブランドが“完璧”だと考える白Tシャツを集めた“パーフェクトTee”企画の商品として発売したが、実店舗は投入直後に臨時休業。「買いたくても買えない。オンラインストアがオープンしたら即買いたい」という声が多かったという。「オーラリー」との別注アイテムは、オンラインストア限定色もあるワンピースやノースリーブニットなども上位にラインクインした。


 ロンハーマンでは定番アイテムの動きが全体的に好調だという。特にオンラインストアでは19年から展開している「RHヴィンテージ(RH VINTAGE)」の定番スエット(1万8000円)が支持された。「もともと人気の商品だが、おうち時間が長いことでさらに反響があったのでは」と推測する。2着目として同じ商品を色違いで購入するケースもあるという。


 「ユニオン ランチ(UNION LAUNCH)」の別注2パックT(1万8000円)は、1位の「オーラリー」と同じく、“パーフェクトTee”企画の一つとして打ち出した商品。袖を通すと分かる上質な素材感や細部にまでこだわったディテールが大人の女性に支持された。実店舗で臨時休業前から販売していたが購入できなかった人が多く、「オンラインストアのオープン前に、多くの問い合わせをいただいた商品の一つだった」という。

 現在オンラインストアでは、コーディネートや商品画像とともにバイヤーのおすすめポイントなどを紹介。8月末の本オープンに向けて、さらに段階的に機能を追加していく予定だ。

村上杏理:1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

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ハンドジェルが絶好調の「ヴァイタルマテリアル」 チャリティープロジェクトで利益を還元

 2014年にデビューし、国内外の有名セレクトショップやライフスタイルストアを中心に販路を広げてきたライフスタイルブランド「ヴァイタルマテリアル(VITAL MATERIAL)」。オーガニック・ナチュラル原料を使用し、製法にもこだわった同ブランドのアイテムの中でも、ハンドジェルは新型コロナウイルスの感染拡大前から人気だったが、緊急事態宣言が発令された4月7日後の約1カ月で例年の10倍以上を受注し、自社ECと「オンワード クローゼット」を合わせると数万本の販売実績となった。その利益を保育施設へのアルコールハンドジェル寄付につなげるなど、社会貢献活動にも注目が集まる。現状と今後の取り組みについて、同ブランドを展開するキングスロードの小林陽輔社長に聞いた。

WWD:ハンドジェルを寄付するに至った経緯は?

小林陽輔社長(以下、小林):新型コロナ感染症が拡大する中、社会を支える多くの機関や施設を少しでも応援したいと思い、「新型コロナウイルス感染予防プロジェクト(#CONNECTTOTHEFUTURE)」を始めました。弊社ブランドの中でも、予防対策として需要の高いサトウキビ由来のアルコールでできたハンドジェルと、口腔ケアに役立つ歯ブラシを使い、ゆかりのある22のブランドやアーティストとコラボレーションした商品を生産して販売しました。この企画で得た弊社ECサイトでの販売益の全額を使って、大容量サイズ(300mL)のアルコールハンドジェルを生産し寄付します。「ヴァイタルマテリアル」のハンドジェルはローズとレモンの心地よい香りが人気の理由の一つですが、寄付するハンドジェルはより多くの人・場所で使っていただくため、あえて無香料としています。プロジェクト第1弾となる4月26日から5月17日までの活動報告を近々HPで発表する段取りで、7月中旬には1500〜2000本を特定警戒都道府県の保育施設に寄付できる予定です。

WWD:今回、生産地を日本からイタリアに変更した理由は?

小林:ハンドジェルは「ヴァイタルマテリアル」デビュー時から支持されてきた商品で、これまでオーガニック・ナチュラル原料にこだわり、日本生産を貫いてきました。ただここにきて、アルコール原料に対して出荷規制が出されていて原料調達が難しくなり、日本生産が厳しくなったんです。そこで前職で取引のあった信頼できるイタリアのオーガニック認証工場にお願いすることとしました。6月末くらいから出荷されるイタリア生産の商品にはAIABオーガニック認証取得の表示が入ります。現在、イタリアと日本間の空輸は減便でかなりコスト高になっていますが、これからさらに必要とされるものなのにお客さまに届けられない状況は避けたいと思い決断しました。

WWD:新ブランドも発売されましたね?

小林:今年2月に天然由来成分100%のオーラルケアシリーズ「アンド ヴァイタルマテリアル(AND VITAL MATERIAL以下、アンド)」を発売しました。これは「ヴァイタルマテリアル」ブランド全体に共通するコンセプトですが、毎日使うからこそ持っているだけでテンションが上がるものにしたい、ファッション感度の高い人に使ってほしいと思い、原料だけでなくデザインにもこだわっています。「アンド」は旅をテーマに歯磨き粉、歯ブラシ、デンタルフロス、マウスウオッシュ、マウスフレッシュナーを展開しています。「ヴァイタルマテリアル」同様、卸先は国内外のセレクトショップやライフスタイルショップがメイン。厳選したナチュラル&オーガニック原料を使用するのはもちろん、貝由来のアパタイトによるホワイトニング効果が期待できるほか、歯ブラシは竹炭毛を使用しています。

WWD:今後の新たな展開は?

小林:7月に衣類ケアブランド「サブリ ヴァイタルマテリアル(SUBLI VITAL MATERIAL)」をスタートさせる予定です。アイテムは洗剤、柔軟剤、ルーム&ファブリックミストの3アイテムを3つの香りで展開します。一般発売に先行して、洗剤と柔軟剤(各60mL)が「エル・ジャポン」7月号とのセットで数量限定のスペシャルボックスとして販売されました。日本の軟水と海外に多い硬水の両方で使える処方にしており、旅先での使用だけでなく海外への輸出も視野に入れています。「ヴァイタルマテリアル」のハンドジェルは「ドレステリア(DRESSTERIOR)」や「アクアガール(AQUAGIRL)」などのファッションブランドとのコラボも決定しています。

WWD:チャリティー活動も継続していく?

小林:先にお話しした「新型コロナウイルス感染予防プロジェクト」は多くの方に賛同していただき、すでに人気ファッションブランドや男性誌とのコラボが決定して、6月以降第2弾、第3弾と行っていく予定です。緊急事態宣言が解除され、徐々に外出が増えると思いますが、それには除菌やオーラルケアなどの予防が重要であり、それを行うための製品は不可欠。現在、アルコールアレルギーの人にも使っていただけるハンドジェルや、マスクを洗う洗浄液、マスクの臭いを和らげるスプレーなどの新製品開発にも取り掛かっています。新しい生活様式の中で必要とされるものをしっかり届け、社会にも貢献していきたいと思います。
TEXT:YOSHIE KAWAHARA

問い合わせ先
「ヴァイタルマテリアル」
03-6205-5256

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ミラノの有力ギャラリー、ニルファーのオーナーが自宅を披露 巣ごもり生活はテラスで楽しむ

 イタリア・ミラノの「ニルファー・ギャラリー(NILUFAR GALLERY以下、ニルファー)」は、インテリアからアート作品まで幅広く紹介する有力ギャラリーだ。同ギャラリーは1979年、ニナ・ヤシャー(Nina Yashar)が設立。毎年開催される「ミラノサローネ(MILANO SALONE)」では、その独特な世界観とともに存在感を放っている。今年は新型コロナウイルス感染拡大で「ミラノサローネ」が中止になった。オーナーのヤシャーにロックダウン中の巣ごもり生活について聞いた。

WWD: ロックダウン中の一日のスケジュールは?

ニナ・ヤシャ―=ニルファー代表(以下、ヤシャー):ロックダウン中は、信じられないほどリラックスした日々を送っている。ベッドで朝食後に、オンラインでピラティスのコースを受けて、仕事を始める。自宅は2階建てで、私は大きな寝室と広いテラスがある2階で過ごしている。天気がいい日は、テラスで仕事をするわ。予想もしなかったことだけど、毎日約6時間、電話をはじめスカイプやZoomを使ってスタッフとミーティングをしてスマートワークを実践している。自宅のリビングルームやテラス、ダイニングルーム、私のスタジオやクローゼットなどいろいろなところに変化がつけられるのが楽しく、それが私のノマド的な一面を満足させている。

WWD:週末はどのように過ごしているか?

ヤシャー:週末は読書をしたり、夫と一緒にフラワーアレンジメントをしたり、友人と電話で話たりしている。私の一番の楽しみで必ずするのが、夕暮れ時のテラスでのアペリティーボ(食前酒)。

WWD:ロックダウン中に新たな趣味や関心を持ったことは?

ヤシャー:もちろん。毎日の瞑想は欠かせない。それをして、ネガティブなことに押しつぶされないよう平常心を保っている。自分の時間が増えたので、クラシックを聴きながらお茶を飲んでリラックスできる喜びがあるし、長らく感じていなかった完璧な雰囲気の中の深い安らぎを感じる。また、古代文明について学ぶことに熱中している。全く関心がないと思っていた量子物理学についても読んでいる。

WWD:ロックダウン期間中の楽しみは?

ヤシャー:屋外での生活を再発見した。天気のいい日は、テラスで過ごすようにしている。今までは日ごとにバラの花が開いていくのを見たことがなかったが、自然の法則で花開く様子を見ることは信じられないくらい素晴らしい経験で、感謝の気持ちと満足感を与えてくれる。

WWD :多くの人が自宅で過ごしているが、家の中のデコレーションのアドバイスは?

ヤシャー:春は花を飾るのが大好き。花は喜びと幸せを与えてくれるし、家と住人に色鮮やかでポジティブなエネルギーを与える。エネルギーに満ちた植物も部屋に雰囲気をプラスしてくれる。

WWD:新型コロナウイルスによるロックダウンが人々の心にどのように影響していると思うか?この状況とどのように向き合っているか?

ヤシャー;強制された隔離状態にあるにもかかわらず、一日中誰にも会わず一人でいることに対する適応力に自分でも驚いている。まず気付いたのは、自宅をよく知らなかったということ。そして、誰にもじゃまされることなく集中できるので、思考がいつもより明瞭であるという点。私の会社における組織や、将来のクリエイティブなプロジェクトについて革新的な行動ができる。1時間じっくり一人のデザイナーと話しをすることもある。25人以上のデザイナーと仕事をするが、私にとってこのロックダウンの時期、彼らとブレーンストーミングしたり将来のプロジェクトを話し合う時間を持つことはとても大切だ。特にクリエイティビティーにとってそれは重要なこと。だからこのロックダウンは、私自身の将来におけるスピリチュアルでプロフェッショナルなゴールを見つめる機会になった。

WWD:自分にとっての家の定義は?

ヤシャー:自宅はミラノのリソルジメント地域にあり、30年間夫と娘と住んでいる。私にとって家とは、私が愛する多くの要素と私の個人的な愛情が出合う場所。特殊な2階建てのペントハウスで、部屋が続いている。そのユニークさとテラスの多さが気に入っている。テラスからの景色をたのしんだり、天気がいい日は多くの植物の世話をしたりしている。この家の改装は、私の親しい友人でジュエリーデザイナーのジャン・カルロ・モンテベッロ(Gian Carlo Montebello)に頼んだ。なぜなら、トップの建築家には頼みたくなかったから。壁や天井にはペルシャのシンボルやモチーフが彫られたパステルカラーのフレスコが施されている。30年経ってもとってもユニークだと思う。以前よりも家のことを愛しているし、私にぴったりの家だと思う。

WWD:お気に入りの部屋は?その理由は?

ヤシャー:家の角にある私のワードローブ。なぜなら守られていると感じるし、空想にふけりたい時にこもる場所だから。この部屋全体に、私が心から愛する「プラダ(PRADA)」の古代遺跡(ANTICHE ROVINE)素材が施されている。これはミウッチャ・プラダ(MIuccia Prada)が2013年に、17世紀に建てられたパリの個人邸宅で私行った展覧会「スポット」のために提供してくれた。展覧会が終わって、すっかりこの素材を気に入ってしまったので自宅に持ち帰ってワードローブのドア全体に使い、読書ができる小さな場所をその片隅に作った。そこでは「ニルファー」のコレクションの中で私が大切にしているアンティークカーペットや、オットー・シュルツ(Otto Sxchulz)によるアームチェア、ジオ・ポンティ(Gio Ponti)による小さなコーヒーテーブル、ハンス・アウネ・ヤコブソン(Hans Agne Jakobsson)のものなどを置いていて、素材と色彩的調和を保っている。

WWD:快適な環境づくりおける最も大切なことは? 

ヤシャー:それぞれの人の個性と必要を反映した環境であること。今、家で過ごす時間が長いので、部屋のオブジェの位置を変えたりして新たな家庭環境をつくるいい機会だ。

自身の空間を自分らしくすればするほど、穏やかな気持ちで過ごせる。私は、家具と異なる文化や時代のデザインを組み合わせて意外性のある空間をつくるのが理想だ。

WWD:新型コロナウイルスは人々の生活にどのような変化をもたらしたか?

ヤシャー:このような状況で、世界はビデオなどデジタルやテクノロジーを駆使した新しいツールを通じて外の世界とつながることができると分かり始めた。これが新型コロナウイルス終息後の新しい波となるだろう。人々はかつて考えていなかった多くのことができると分かった。それは物理的ではないが、人々を近づける方法だ。重要なのは、ロックダウン後に企業がビルやオフィスに多くの費用を使っているが、それら多くが無意味になるだろうということ。さらにスマートワーク化が進むだろう。これは地球規模の環境汚染を考える上ではよいことだ。車を使う人も減るだろうし、2時間かけて通勤する人も減るだろう。人々のライフスタイルはより質の高いものに変わるはずだ。自宅で仕事をし、趣味をはじめ、ロックダウンで発見した自身にとってプラスになることに時間を多く使えるようになる。

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#敦子スメ「新月・満月」ノート 疲れの出やすい今回の満月(6月6日)は古くより伝わる民族の知恵を取り入れたアイテムでセルフケア

 この連載では、新月・満月の流れを最大限に引き出すためのサポートをしてくれるコスメやインナーケアアイテムも紹介していきます。第12回は6月6日の満月とおすすめコスメについてお伝えします。

今回の満月(6月6日)はいて座

 緊急事態宣言が解かれ、いろいろな変化を経て迎える今回の満月(6月6日)はいて座で起こります。取り巻く環境も変わり、生活スタイルや人間関係も変化した人が多かったのではないでしょうか。私自身も、宣言が解除されてからは何となく気が抜けたような、でもまだ完全に終わったわけではないという微妙な時期を過ごすのに、最初はペースがつかめずに慣れませんでした。

満月は“ものごとが形になるとき”や、“たまってきたものが溢れ出すとき”といわれていて、満月が近づくと心身両面に倦怠感を感じる人もいます。新型コロナへの対策はきちんととっておきながらも、このときさらに見直しておきたいのが自分へのアフターケア。ようやく今の生活に慣れたところで前の生活への逆戻りになっていく今、体は対応しようと頑張って、満月あたりに疲れを感じる人も多いかもしれません。

今回の満月コスメ

 今回はいて座の満月ということで、古くから伝わる英知や民族の知恵で作られたコスメをピックアップ。まず、オーストラリアのアボリジニの文化から生まれた「ジャナーク(JANARK)」の「リリースバスB」は、体に活力を巡らせる花のエネルギーが数種類ブレンドされた入浴剤。やる気のなさや体のだるさに効果的。リモートワークから通勤への切り替えなど変化の多いときに、体に疲れが溜まるのを防いでくれます。体に停滞感を感じるときにおすすめです。

 「アムリターラ(AMRITARA)」の「ローズアムリタウォーター」は、アイヌ民族が愛したといわれる、抗酸化作用に優れたハマナスの花の成分がたっぷり。ローズの香りで幸福感をアップさせ、紫外線の強いこの時季の肌の乾燥を防ぎます。自粛疲れを無理なくリリースさせる、自然のコスメの力を借りてみませんか?

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巣ごもり生活でドラッグストアのセルフカラー剤が伸長 マツキヨ、トモズの売り上げトップ3

 新型コロナウイルスの影響を受けて、3~5月はセルフヘアカラー剤が好調だった。通っているサロンの休業や、外出自粛ムードからヘアサロンに行くことを我慢した人も多く、その中でも、ヘアカラーをしている人は根元の伸びが気になりセルフヘアカラーに挑戦した人もいるようだ。SNSではセルフヘアカラーに関する投稿が増え、矢口真里や香里奈、藤田二コル、指原莉乃など女性芸能人によるセルフカラーに関する投稿が話題を呼んだ。

 今回、セルフヘアカラー剤の主戦場であるドラッグストアのマツモトキヨシとトモズのセルフヘアカラー剤の売れ行きを調査。普段からセルフカラーを行っている人がまとめ買いをしたり、外出自粛要請から数週間経ってヘアサロンに行けない人がセルフカラーに流れたりしたようで、ファッションカラーは2社とも2ケタ伸長した。一方でグレイカラー(白髪染め)のセルフカラー剤は店によってばらつきがあるようだ。

売り上げ1位は両社ともに手軽さが好評の「花王 リーゼ泡カラー」

 マツモトキヨシでは、ファッションカラーとグレイカラーともに4、5月はそれぞれ前年同月比で2ケタ伸長となった。「ファッションカラーはもともと前年を上回る高水準で推移していたが、学校の休校期間の延長ととともに売り上げが上昇した。特にブリーチ剤や一時着色料の売り上げが伸長している」と担当者は話す。例年夏休みなど長期休暇になるとファッションカラー剤の売り上げが伸びる傾向にあるが、今年はコロナ禍によってそれが前倒されさらに長期化した。

 一方でグレイカラーは、「外出自粛要請が出ていた3月は前年を下回る水準で推移していたが緊急事態宣言発令後は比較的中価格帯の商品を中心に売れている。特にカラートリートメントやマニキュアの売り上げが伸長している」という。

マツモトキヨシの売り上げトップ3 ※5月28日時点

ファッションカラー編

グレイカラー編

 トモズでは3~5月の3カ月間ファッションカラーは前年同月比で2ケタ伸長、グレイカラーは4月がやや伸長したが3月5月は前年を割る結果となった。マツモトキヨシと同様にファッションカラーやブリーチ剤の売り上げが好調だ。一方で白髪染めに関しては、担当者は「新型コロナの感染拡大によって外出が減り、一時着色料の売り上げ低下や、男性向けの白髪染めのカテゴリーの売り上げ低下がみられた」と話し、白髪染めは対人的なエチケットとして利用している人が多数いることが分かった。ただそのような中でも白髪用のカラートリートメントや高価格帯の商品は好調だという。

トモズの売り上げトップ3 ※5月28日時点

ファッションカラー編

グレイカラー編

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マルジェラ時代の「エルメス」も集積 コメ兵の新店、新宿ウィメンズ館はオンライン接客に手応え

 ブランド品リユース大手のコメ兵は6月5日、新宿にウィメンズアイテムを扱う新店「KOMEHYO SHINJUKU WOMEN」(以下、ウィメンズ館)を公式オープンした。地下1階から地上4階までの5層で、売り場面積は1400平方メートル。これまでのコメ兵店舗よりもファッション性を意識しており、リユース店というよりも、一般的なセレクトショップのような感覚で人気ブランドの商品を探すことができる。新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、オンライン接客を強化している点もポイント。既にオンライン接客で高額商品に動きが出ているといい、販売の“ニュー・ノーマル”としても注目だ。

 公式オープン前日の4日にウィメンズ館を訪れると、自撮り棒を付けたスマートフォン越しに、マスク姿の男女の販売員が接客を行っていた。スマホの画面に映っているのは、コメ兵の上顧客という女性。これまでも非常に高額なジュエリーなどの購入履歴がある客だという。販売員は客とやり取りしながら、新店舗の店内や品ぞろえについてどんどん紹介していく。その奥でも、スマートフォンを片手にイヤホンを装着した販売員が、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」と「シュプリーム(SUPREME)」のコラボレーショントランクを画面越しに客に見せていた。しゃべっていたのは中国語だ。日本国内に住む中国系の富裕層が彼女の顧客だという。

 「今朝のオンライン接客で、さっそく30万円の商品の取り置きが決まった。オンライン接客はコロナショック渦中の今だけのものではなく、今後増えていくと考えている」と話すのは、コメ兵の吉田浩之マーケティング統括部営業企画部長。「中古品でもコメ兵なら(真贋や傷などの面も)安心と言っていただける」ように信頼を積み重ねてきたことと、販売員一人ひとりの顧客管理力・接客力があってオンライン接客は成り立っている。中古品購入に対する心理的なハードルは、「メルカリ(mercari)」などフリマアプリの隆盛でマス層の消費者の間でもかなり低くなってきた。加えて、コロナショックで「価値観が変わってきていると感じる。節約志向や、『多くは買わないが、買うなら本物がいい』といった考え方が広がっている。モノを大切にするという価値観もこれまでより認められるようになってきた。当社がやってきたことが、時代にマッチしてきた」と吉田部長は手応えを語る。

 もともと、ウィメンズ館は書き入れ時のゴールデンウイーク前には開業する予定だった。それが新型コロナで6月にズレ込み、「全体の2割ほどを占めていたインバウンド(訪日外国人客)による売り上げが欠け、国内客も外出は減っている」。そうした向かい風はあっても、時代の大きな流れはコメ兵の背中を押している。そんな中でオープンしたウィメンズ館は、「バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」の向かいという新宿東口の一等地。新宿3丁目にあった以前の店舗は2月で閉めた。ウィメンズ館と同じ区画には、17年にオープンしたコメ兵のメンズ館や19年オープンのジュエリー&ウオッチ館もある。3館合わせた総売り場面積は約3000平方メートルだ。

 新宿はリユースショップの激戦区でもある。ウィメンズ館のはす向かいにも別のリユース店があり、ウインドーにブランドバッグが並ぶ。それら他店との差別化のポイントはファッション性だ。コメ兵の強みである「エルメス(HERMES)」「シャネル(CHANEL)」「ルイ・ヴィトン」といったラグジュアリーブランドのバッグに加えて、新宿ではウエアを充実し、館の顔である1階から展開。各階にマネキンを配し、スタイリングで商品を表現する。「ブランドバッグのリユース店としてコメ兵の認知は高いが、ウエアも扱っていることを知らないお客さまも多い。高額バッグは主軸商品だが、一般的なお客さまにはウエアの方が手に取りやすい。ウエアの客層はバッグより若い」。ウィメンズ館で、ウエアの中でも力を入れているのが1980~2000年代前半の「シャネル」。全国のコメ兵で最大規模の取り扱いといい、約100点をそろえる。

 ファッション性の打ち出しとして、高感度層に人気の“ビンテージ・シャネル”(コメ兵では30年以上前の商品を指す)のバッグを集めたコーナー(3階)や、旬のテーマを表現するポップアップスペース(1階入り口横)も設置。オープン時はポップアップスペースで、マルタン・マルジェラ(MARTIN MARGIELA)時代の「エルメス」を集積しており、話題性は高い。富裕層を含む40代以上といった客層だけでなく、おしゃれ好きの20~30代にも間口が広がりそうだ。

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客単価倍増にSNSでの口コミ拡散 老舗タオルメーカーが見出したZoom接客の可能性

 Zoomをはじめとするビデオ会議・通話サービスを用いた接客手法は、コロナ禍での店舗休業中の一時的な対応策のようにも思われた。しかし、政府の緊急事態宣言が解除され、店舗が再びオープンした後も、この接客手法を続けている企業がある。今治タオルの中でも、環境と安全に最大限に配慮したモノ作りを行っている老舗タオルメーカー「イケウチオーガニック(IKEUCHI ORGANIC)」だ。同社は4月25日から“オンラインZoomストア”と称してZoomやFaceTime、ビデオチャットなどでの接客をスタート。5月25日に店舗を再びオープンしてからも、“オンラインZoomストア”を継続している。「イケウチオーガニック」が、店舗営業再開後もZoom接客を続けるのはなぜなのか。“オンラインZoomストア”を率先して実施してきた益田晴子ストアマネジャー兼京都ストア店長に話を聞いた。

 「イケウチオーガニック」は4月12日までに東京、福岡、京都の全店舗を休業。電話やメール、SNSのDMなどでの接客対応にシフトしていた中で、アパレルメーカーの「オールユアーズ(ALL YOURS)」のZoom接客を参考に、“オンラインZoomストア”をオープンした。「電話やメールなどで対応はしてきたが、お客さまからも顔を見て話したり、商品を見たりしたいといった要望が多かったため、何かできないかと考えていた中で、Zoomを使った接客に至った。コロナ以前から今治の本社と東京のオフィスや各店舗で、Zoomを使った会議をしていたため抵抗はなかった」と益田店長は経緯を話す。

ポイントは「共通言語をどこまで作れるか」

 そうして始めた“オンラインZoomストア”は主に、土曜と日曜、1組40分~1時間を目安に1日5~7組を接客(店舗再開後は1日2組)。当初は益田店長が1人で担当をしてきたが、傾向や問題点をある程度把握し、既に東京店、福岡店の店長も“オンラインZoomストア”に参加するべく準備を進めているという。「共通言語をどこまで作れるのかは大きい。既に当社のタオルを使っているお客さまの場合は、品番をお伺いしてそれよりも柔らかいモノ、硬いモノといったオススメの仕方をしている。まだ当社の製品をまだ知らないお客さまに対しては、誰もが想像できるようなモノに例えるように努めている」と語る。

 また、商品がタオルであるという特性上、接客の際は相手の暮らしについて尋ねることも多いという。「タオルは日常的に、あまり意識されることなく使われるモノ。そのため『どんなタオルが好き?』と聞いても、明確な答えが出てくることは少ない。『柔らかいモノがいい』と言っても、人それぞれで心地よい柔らかさが違うこともある。小さい頃からどういうタオルを使って過ごしてきたか、といった暮らしの話を聞くことも多い。気が付いたらお客さまから人生相談を受けていたこともある(笑)」。

 肝心の反響はどうなのかというと、いずれの日も予約枠は埋まっており、客単価は店舗での接客を受けた来店客の約2倍に昇る。そのほか、ユーザーのニーズやオンラインストア(EC)の不具合や不足点の洗い出しにも活用できているという。ユーザー層の変化も特徴的で、当初は「イケウチオーガニック」のもともとの顧客が中心だったが、SNSでの口コミなどを受けて、徐々に新規客が増加していった。「私たちがお客さまの家にお邪魔しているような感覚で、今使っているタオルを見せてくれたり、タオルが置いてある洗面所までカメラで見せてくれたりと、初めてのお客さまでも結びつきが強くなる。代表の池内(計司)も時間が空いている時に接客に参加するので、VIP感があるという声もいただいている。また、タオルという、日常では意識することのないモノについて40分~1時間、接客を通じて考えることに特別感を感じてくれているようだ」と分析する。

 緊急事態宣言が解除された後も、来店客が移りこまないように工夫しつつ、“オンラインZoomストア”を続けている。「東京や福岡、京都の店舗のほかに、“Zoomストア”という新たな入り口が一つできたような感覚。その入り口は開けておくことができるのであれば、常に開けておきたい。現在は予約の仕方や取り方をよりスムーズにできればと考えており、お客さまにカルテを事前に書いてもらうことなどを検討している」と益田店長。

 「オンラインでも、オフラインでも、お客さまとの関係においては“人”が大切。私たちとしては『この人が勧めてくれたモノを買いたい』『この人のオススメなら、安心して買える』と思ってもらえるよう、お客さまに寄り添いたい。今後もお客さまが気持ち良いと思ってくださるタオルを届けていきたい」。

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マスク姿だからこそアイメイクを楽しもう! 人気3ブランドのメイクアップアーティストがアドバイス

 新型コロナウイルス感染対策のため厚生労働省が発表した“新しい生活様式”では、マスク着用が求められています。日常的にマスクをすることで唇が隠れてしまうため、SNSではリップメイクの楽しみが半減したという声も……。そこで、ぜひ力を入れたいのがアイメイクです。6月4日号の「WWDビューティ」では実際に売れ行きが伸びているというアイメイクについて取り上げていますが、企画内で紹介している「NARS」「シュウ ウエムラ(SHU UEMURA)」「アディクション(ADDICTION)」のメイクアップアーティストからもコメントを入手。マスク姿のアイメイクについて、ポイントを教えてもらいました。

鮮やかなカラーやグリッター入りを気分やファッションに合わせて
伊藤貞文「NARS」グローバルアーティストリーディレクター

 こうする!と型にはめてしまうとストレスになり兼ねないので決め事はしませんが、アイシャドウやアイライナーなどは、色鮮やかだったり、キラキラしたグリッターの入っているアイテムが気分を高揚させてくれるのではないでしょうか。朝の気分や、その日着たい洋服に合わせて、アイシャドウなら指でラフにちょっとだけ色をまぶたに加えてみてはどうでしょう。なるべく自然光の入るところでメイクアップをすることをお勧めします。リップは、色付きリップバームの「アフターグローリップバーム」で。シアーな色付きなのでマスクをしてもしなくても邪魔にならないですね。

今こそアイメイクの復活をポジティブに楽しむ時期!
梁 裕和 「シュウ ウエムラ」アトリエ アーティスト

 マスクの装着を基本の姿とする新生活様式ではアイメイクの需要が益々加速していますが、今こそアイメイクの復活をポジティブに楽しむ時期だと思います。特にマスク着用時のメイクでは、“カラー”と“テクスチャー”をうまく活用し、失われやすい血色や透明感をアイメイクで補填すると良いです。今回、アイシャドウがリノベーションしますが、アジア人の肌に映えるビルダブル&ブレンダブルな100色のテーラーメイドカラーと、 光をトッピングするような感覚で使用できる3Dプリズマティック(新テクスチャー)を含めた6つのテクスチャーがそろうので、きっと今までにない新しいアイメイク体験を楽しんでいただけると思います。

カラーアイライナーを活用しアイメイクアップを楽しんで
國京寛一「アディクション」メイクアップアーティスト

 マスク着用が“基本の姿”となることにより、アイメイクアップに注目されるのは間違いないと僕も思います。そこで、簡単に挑戦できるカラーメイクアップの提案として、「ザ カラーシック アイライナー」をおすすめします。繊細なラインが引きやすいだけではなく、指でぼかせばまるでアイシャドウのように広げることもできます。ライン使いをする時は、下まぶたにアイシャドウなどのパウダーをつけておくことで、崩れ防止にも。

 また、これから発売になる「ザ カラー リキッド アイライナー」は、フェルトタイプで狙い通りのラインが描きやすい点がポイントです。全10色あるので、その日の気分で好きな色をチョイスして、さらにアイメイクアップを楽しんでいただきたいです。

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ファッション業界のスローダウン、人種差別問題の今後は?元「ランドロード」川西遼平が語る 【下】

 ニューヨーク発のメンズブランド「ランドロード ニューヨーク(LANDLORD NEW YORK)」の川西遼平が5月末でクリエイティブ・ディレクターを退任した。同氏は6月上旬に日本に帰国し、新しいプロジェクトの発表に向けて準備をしている。

 ロンドンとニューヨークでの15年間の海外生活を終えた川西に、コロナショックで変化が必要とされているファッション業界のシステムや、コロナ禍で体験したアジア人差別、そして今全米で抗議運動に発展している人種差別問題についても語ってもらった。今回は、Q&Aの形式でお伝えする。【上】はこちらから。

コレクション発表のスローダウン宣言
“もっと実験的な試みを行うよい機会なのでは”

WWD:川西さんはニューヨーク・メンズ・ファッション・ウイークでショーを発表し続けて来た。この新型コロナウイルスの影響を受けて、アメリカファッション協議会(CFDA)と英国ファッション協議会(BFC)が「ファッション業界のリセット(The Fashion Industry’s Reset)」という共同声明を発表したが、これを見てどう感じたか?

川西遼平(以下、川西):ニューヨーク・ファッション・ウイークは、2020年春夏シーズンからメンズ・ウイークを縮小し、メイン会場の設営もなくなっていた。振り返ってみると、ブランドや主催者側に利益があったかというと正直難しかったように思う。

私自身もコレクションデビューをした当初は、ショーを行うことばかりに力を注ぎ、ビジネスの部分はあまり意識していなかった。しかし、継続して年2回ショーを開催するようになってからは、ショーを行う意義を疑いながらも続けてきた。会場のサポートを受けていても、ブランドの負担はある。卸先の店舗数やブランド認知度はショーを行うごとに増えていったが、その後の消化率を上げるためのアフターケアまでは人員的な問題もあり難しい状態だった。

CFDAとBFCの共同声明を見て、そもそもなぜショーが必要なのか、今までのビジネスモデルのやり方が本当に正しいのかということをあらためて考えさせられた。コレクション制作は、自分のアイデアに基づいたリサーチからデザイン、サンプル作りまでに半年近くかかる。そうして、ショーや展示会を行い、実際にお客さんの手元に届くまでに1年近くかかってしまい、鮮度の落ちたものを提供しているようにも感じる。デザイナーが一から新しくシステムを構築するのは難しいかもしれないが、小さな規模でモノ作りを行なっているデザイナーは、もっと実験的な試みを行うよい機会なのではと思った。

深刻視される人種差別問題
“疑い続けることが重要だと思う”

WWD:川西さんの、コロナ禍のニューヨーク・ハーレムで「スエットが防御服になった」という表現に驚いた。今欧米では新型コロナの影響でアジア人差別が増えているという話を聞く。5月末からは、アメリカ・ミネソタ州ミネアポリスの警官による黒人男性の暴行死事件に対する抗議運動が始まり、人種差別が問題視されている。今後はどのように状況が変わっていくと想像するか。

川西:この新型コロナウイルスでは3月上旬頃から、アジア人への視線は少しつらい印象だった。地下鉄内で咳をしたときの周りの反応は、かなり過敏になっていた。路上を歩いていても、「コロナコロナ」と揶揄されるような体験もした。ニューヨーク社会は従来、人種に関係なくコミュニケーションをとっている街だが、この状況下では人種への差別意識を強く感じることに幻滅した。このような社会的に不安な状況の中でも、人種の違いで他者に攻撃的な行動を起こすということが2020年にあるという現実、過去と何も変わっていないということに目の当たりにしたことは残念だ。

そこから2カ月以上たち(5月下旬)、徐々にではあるが、季節も変わり、再び外に出られるような空気感は街全体にある。今の段階では自分の周辺で、アジア人というくくりでの差別はあまり感じなくなってきた。ただ、今アメリカ国内で大きな問題となっている警官による黒人男性の暴行死事件については、過去のアメリカの歴史を繰り返している状況だ。差別がスマートフォンなどで撮影され、それをSNSで拡散し、デジタルとフィジカルでの抗議運動のデモが行われている。SNSの発展もあり、今後は以前よりも個人間でこのような問題を監視できるような状態になると想像できる。しかしSNSでの個人からの発信にも偏向的な側面もあり、大衆メディアからの発信も同様だ。正義を建前にSNS内外での欧米内の同調圧力も生まれている。“正義”という概念が一番正義じゃない状況を生んでいるようにも感じる。もちろん、連帯は重要なことだが、今起こっていることをきっかけに誰かが使い方を誤れば、危険なツールになり得るということもあらためて認識した。現状には、疑問を持つ。誰かの思想を鵜呑みにせず、疑い続けることが重要になると思う。

黄色人種、黒人に限らず人種や出身国などで個人を判断する価値観が変わらない限り、根本的には変わることがないと思う。

今後、海外へ出て行く人へのアドバイス
“強い意志を持ち続けること”

WWD:ロンドンとニューヨークでファッションを学び、ニューヨークではメンズブランド「ランドロード」を成長させ、現地でコロナ危機も体験した。長い海外生活での経験を踏まえて、今後海外で留学や就業を目指す人に何かアドバイスできることはあるか?

川西:個人的な経験をもとにすると、海外生活で僕が学んだことはポジティブなことよりもネガティブなことが多かったと思う。18歳まで日本で過ごし、15年前にロンドンへ留学して最初に感じたことは、社会全体から自分がアジア人、日本人というくくりの中で判断されるということだった。日本にいる間は、日本人ということを特別意識する必要は当然なかったが、多様な人種で社会が形成されているロンドンでは、最初に他人から判断される基準は人種だったように思う。

しかしそこから、日本人、アジア人、黄色人種という自分が持つ身体性やアイデンティティーからコミュニケーションが生まれ、その意味と自己認識を確立した上でモノ作りができるようになった。当たり前のことを別の視点から再認識できる環境が、海外生活の醍醐味なのではないか。その点はニューヨークでも同じ。しかし、同時にそこでは今も起こっているような人種差別の問題が生まれている。

仕事をすることに関しても、わざわざお金を払ってビザ申請を行い、労働する権利を手に入れるとことから始まる。当たり前だが、自分の国で行うより何倍も面倒だ。それでも海外留学や海外で働くことを目指すのであれば、個人の強い意志なしでは難しい。どんなことがあっても自分の意志を貫きたいという強い気持ちを持ち続けることが大切だと思う。いつの間にか15年もの月日が流れ、過去に自分が夢に見て、やりたかったことはなんとかほぼほぼ達成できたように感じる。ただこのコロナ禍で移民排除の政治方針などを含め、僕の海外生活は、意志よりも疑問が勝ってしまった。

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「ユニクロ原宿店」を隅々までパトロール! カルチャー発信の手法や見どころを解説

 「ユニクロ(UNIQLO)」は6月5日に、JR原宿駅前の商業施設「ウィズ原宿」内に「ユニクロ原宿店」をオープンする。若者をメインターゲットにする同店では、リアルとバーチャルを融合した体験型の店舗を目指している。開店に先駆けて、見どころを一足早くレポートする。

店の顔「UTポップアウト」には3メートル級ビリー像が

 原宿駅前に面した1階、「イケア(IKEA)」隣のスペースには、「この店の顔」である「UTポップアウト」を配した。外側から店内奥の大ディスプレーに映し出された映像や、ティッカー(メッセージが表示される赤い電光掲示板)、メタル調のマネキンやガラス張りの天井などで、ハイテク感やフューチャリスティック感を醸し出している。店のシンボル的存在としてオープン時にそびえるのが、現代美術家の村上隆がこの店のために作り上げた、ポップアイコン、ビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)の3メートル級の像だ。「ユニクロ」とビリー、村上とのトリプルコラボTシャツを着用した真っ白なビリー像は、肉感的かつイノセントなイメージに仕上がっている。世界に一つ、ここでしか見られない。ファンの聖地的な存在になるのか、注目される。

 原宿は、1998年に「ユニクロ」として首都圏初の都心型店舗を出店した街であり、「UT」も2007年に1号店を出店した場所。「UTストア」は12年に営業を終了したが、「UTポップアウト」は当時を彷彿とさせつつ、さらに進化。Tシャツはガラスケースに入り、ミュージアムのような雰囲気も。Tシャツだけでなく、新たにライフスタイルグッズの取り扱いを開始。ステーショナリーや豆皿、バンダナ、ステッカーなどを販売する。来店記念として手軽に買えるグッズがあるのは、若者層には特にうれしい施策だ。

地下1階にはカスタマイズブースや「スポティファイ」コラボも

 「UTポップアウト」から中階段でもつながる地下1階には、ユニクロのカジュアルウエア、スポーツウエア、デニムなどに並ぶと共に、いつでも、どこでも、誰でも、自分だけのTシャツが作れるサービス「UT me!」などのサービスも充実。カジュアルウエアのコーナーは、原宿を意識したストリートムードいっぱいのコーディネート。オーバーサイズのTシャツやブルゾンなどで全身をコーディネートする。

 カルチャー訴求に欠かせない音楽施策も用意。ここでしかできない体験として、音楽配信サービスの「スポティファイ(Spotify)」と協業し、スペシャルブースを展開。CHAIやCHELMICOといったアーティストの特別選曲のプレイリストをその場で聞いたり、ダウンロードしたりできる。アーティストは定期的に変わっていく予定。

240台のモニターが並ぶ「スタイルヒント原宿」は進化途上?

 「UTポップアウト」に並ぶ目玉売り場として、地下1階のエスカレーターを降りた正面の独立スペースには、着こなしアプリ「スタイルヒント(StyleHint)」と連動した売り場「スタイルヒント原宿」を展開する。「未来の服のライブラリー」をコンセプトにした同売り場では、壁面に240台のモニターがズラリ。モニターでは、消費者がアプリに投稿したルックが次々と切り替わる。その中から、好きな商品のビジュアルをタッチすると、色違いやサイズ展開、在庫、そして、「ユニクロ原宿店」のどこにその商品があるのか、マップが表示される。QRコードを読み取ると、店内マップが自分のスマートフォンに表示されてより便利に使える。

 内覧会時には、「スタイルオーディション」というスタイリングコンテスト企画を行っていたためか、ルック内の商品と、その商品に合わせた別のルックとコーディネート写真は見られるが、別アイテムを探すことはできず。ちょっと拍子抜けしてしまうかも。

サステナビリティコーナーも設置、学生と協業しリサイクルも

 サステナビリティについても積極的に伝える施策をしている。地下1階階段下のメインのコーナーでは、大型の古着回収ボックスの周辺に、東レと組んで再生ペットボトルから作り上げたドライEXのポロシャツや、再生する際にできたペレットや再生糸なども陳列。さらに、ユニクロの人道支援やコミュニティ支援などの取り組みも紹介している。

原宿店の新商材は生花や観葉植物、充実の書籍もチェック

 地下1階の吹抜け部分では、「ユニクロ パーク横浜ベイサイド店」からスタートした生花のワゴン発売もある。原宿では新たに多肉植物やミニサボテン、コーヒーの樹など、小型観葉植物も取り扱う。一束390円、3束990円とユニクロ価格。鉢植えは390円と990円を予定している。

 店内の随所で、書籍を販売・展示している点も新しい。新書や中古がミックスされ、ファッションのバイブルといわれる「チープシック」や、「アンアン(an・an)」「オリーブ(olive)」「ポパイ(POPEYE)」「ブルータス(BRUTUS)」などの雑誌、葛飾北斎やアナ・スイ(ANNA SUI)など「UT」関連のアートブックなど、ファッション、カルチャー、アートの要素を色濃く反映している。

松下久美:ファッション週刊紙「WWDジャパン」のデスク、シニアエディター、「日本繊維新聞」の小売り・流通記者として、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)

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連載「今、デザイナーができること」Vol.32 前田華子「ファッションの楽しさを届け、笑顔を増やすお手伝いを」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、2012年春夏にデビューし、ニューヨーク・ファッション・ウイークで発表を続けている「アディアム(ADEAM)」の前田華子デザイナーが登場。

ADEAM
前田華子

Q 不安が続く状況下で、ファッションデザイナーが人々にできることは?

「アディアム」は新型コロナウイルスの影響を最も受けたニューヨークにもオフィスがあるため、スタッフの健康を一番に考え、リモートワークに切り替えた。コレクション制作は少しペースを落とし、パタンナーや縫製スタッフにトルソーなどを自宅へ持ち帰ってもらいながら、進めている。このパンデミックの影響で変わってしまったことは多いが、今自分たちにできることを、一歩ずつ進めていきたい。

そういった不安な日々が続く中で、前向きな気持ちを持ち続けることは本当に大変なこと。デザイナーとして、今自分ができることは、ファッションやアートの楽しさを届けて、少しでも笑顔を増やすお手伝いをすることだと思う。この状況でも、クリエイティブなモノ作りを続けて、みなさまにも楽しんでもらえるようなことができないか、アトリエのスタッフとアイデアを出し合った。その中から生まれたのが、ぬりえと「あつまれ どうぶつの森」のゲーム内でダウンロード可能なバーチャルの洋服だった。本当にささやかな活動だが、少しでもご自宅で過ごす日々を楽しんでもらいたいという気持ちで始めた。

今後はチャリティーへの参加も計画している。次回の2021年リゾート・コレクションから、売り上げの一部を寄付する活動などの取り組みを進めるべく準備中だ。

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オーガニックとクリーンビューティって何が違うの?

 「WWDビューティ」では5月28日号で「オーガニック・ナチュラルコスメ」を特集しました。今号の前に、5月14日号で「クリーンビューティ」を特集したのですが、よく聞かれるのが「クリーンビューティとオーガニックは何が違うの?」ということです。「クリーンビューティ」は近年登場した概念で、明確な定義や認証制度はないものの、弊紙ではブランドへの取材を通して、①健康や環境に害のある成分を使用しない、②製造から販売まで環境への配慮がなされている(サステナビリティ)、③動物実験の不実施や労働環境など社会に配慮している、と定義しました。つまり、オーガニック原料使用の有無にかかわらず、環境配慮など前述の項目を満たすブランドや商品、概念をクリーンビューティとしています。このクリーンビューティの概念は、サステナビリティや地球環境に対する意識の高まりから米国を中心に拡大し、世界中にトレンドが広まりつつあるもので、新しいカテゴリーであることから若年層の支持が高くD2Cブランドが目立つという特徴があります。

オーガニックは持続可能な農業生産方法の一つ

 一方オーガニックは、狭義には農薬や化学肥料を使わず有機肥料によって生産された農産物と、それらを原料に使った化粧品や食品などを指しています。有機農業は、環境保護やアニマルウエルフェア(動物福祉)に貢献するとともに、持続可能な農業生産方法の一つとされています。欧米やオーストラリア、ニュージーランドにはオーガニック化粧品の認証団体や機関が多く存在し、認証機関によってオーガニック成分の含有率や使用制限のある成分など厳しい審査基準が設けられています。フランスの国際認証機関「エコサート(ECOCERT)」が最も有名で、ほかにオーストラリアの「ACO」やアメリカの「USDA」などがあります。

 オーガニック認証においては、世界的な統一基準の策定を目指して欧州の5つのオーガニック認証団体「BDIH」(ドイツ)、「コスメビオ(COSMEBIO)」(フランス)、「エコサート」(フランス)、「イチェア(ICEA)」(イタリア)、「ソイル・アソシエーション(SOIL ASSOCIATION)」(イギリス)が国際NPO協会を設立し、2010年に統一基準「コスモス(COSMOS)」を策定しました。17年1月からはこれら5団体の基準は終了し「コスモス」に移行しています。「コスモス」の基準では、植物原料の95%以上を有機農法によって作られた原料と定めており、そのほかの主要な目標の中には、有機農業による生産物の使用を促進し、生物学的多様性に配慮すること、責任を持って天然資源を使用し環境に配慮すること、人間の健康・環境を尊重し、汚染物質を出さない方法で加工・製造すること、グリーンケミストリーの概念を組み込み発展させることなどが盛り込まれています。こうした基準が存在するため、欧米では認証基準をクリアしている商品以外がパッケージに“オーガニック”と表示することはできません。

エシカルやサステナも混同して使われがちなワード

 日本では、食品は農林水産省が認定する有機JAS認定マークがありますが、オーガニック化粧品を認定する公的な機関はありません。そのため、ほんの数パーセントしかオーガニック成分を含まず、海外ではオーガニックと認められないような商品でも“オーガニックコスメ”として安価に市場に出回っています。ここ数年ナチュラルブームやボタニカルブームがあり、なんとなく肌と地球にやさしそうというイメージが独り歩きしてオーガニックの本来の定義があいまいになり、消費者の混乱を招いています。

 オーガニックは本来、有機栽培原料を用いた化粧品を指しますが、オーガニックブランドの多くは地球環境と人、健康への配慮が根底にあるため、原料の栽培方法にとどまらず、フェアトレードやクルエルティフリー、女性のエンパワーメント、児童労働問題、雇用創出や地域活性化などに取り組むブランドが多く、エシカルであること、サステナブルであることとも密接に結びついています。こうしたことから、オーガニックがエシカルやサステナブルと同義のように使われることも多々あり、そこから来る混乱もあるようです。消費者への訴求効果を狙い、環境に配慮しているように見せかけることを「グリーンウオッシュ」といい社会問題化していますが、化粧品にもそうした製品は数多く存在します。

 日本国内のオーガニック市場は、2000年代に入って輸入が盛んになり、多くの海外ブランドが上陸しました。当初、オーガニック化粧品のほとんどを海外ブランドが占めていたのは、日本ではオーガニック栽培が可能な農地がそもそも少ないこと、そのため国産のオーガニック原料の調達が難しいこと、また化学合成成分の保存料の使用量を最低限に抑えて化粧品の中身を安定させる高度な技術とノウハウを持った製造工場が限られていたことなどが要因です。

クリーンビューティの機運はオーガニックブランドの追い風になるか

 現在では国産オーガニックブランドもかなり増え、自然派・オーガニック化粧品の国内市場規模は前年度比4.9%増の1415億円(2018年度、矢野経済研究所)と、毎年4~5%程度の成長を続けています。オーガニック化粧品は大量生産が難しく、コストがかかることから一般化粧品と比べて価格が高く、中小規模での展開が大半で、ビジネスの急激な拡大は構想として持っていないところがほとんどです。昨今のサステナビリティに対する意識の高まりやクリーンビューティのトレンドを見ると、企業の倫理観や姿勢に目を向けて購入する消費者がこの先増えていけば、オーガニック・ナチュラルブランドにとっては追い風になるのではないでしょうか。

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ウィズコロナ時代に注目すべきは、“究極のストレスフリー”なベースメイク

 巣ごもり期間中「売れなかった商品」の上位にファンデーション、UVケア、口紅がランクインしたというニュースがあった。 世の中のあらゆる商材には、外出先での行動や他者とのコミュニケーションを前提とした「外向き」の製品と、自宅で使用し自身のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)に関与する「内向き」の製品がある。メイクアップは「外向き」の側面が強く、外出の機会が減ると、需要が減少するのは当然でもあるだろう。特に今回は、外出時は常にマスク着用という、特殊な条件下にあったことも関係している。

 新型コロナ禍を経て、今後化粧品はどのように変化していくのか?こと「製品」にフォーカスして考えると、消費者の価値観、開発の視点、ともに最も変わるのは「ベースメイク」の分野ではないかと考えている。日本をはじめとするアジア各国の女性にとって、ベースメイクの主役であるファンデーションは、外出時に欠かせないアイテムであり、一方でこれまでと全く同じものは使いにくいと思うからだ。

素顔では外出できない大人の女性たち

 経済活動が本格化すると、ベースメイクもいったんは、コロナ前と同じ状況に戻るだろう。職場環境やメイク習慣にもよるけれど、同僚や取引先と会う際に「素顔」でいるのは、いささかハードルが高い。仮にプライベートな場面であっても、誰かと会うときにスッピンでいるのは、よほど気を許した相手でない限り、本人が落ち着かないと思う。

 その一方で、今後数年にわたり、新型コロナウイルスの流行継続が指摘されている。また今回の流行で、世界的に感染症予防に関する意識が浸透した点も見逃しにはできない。特に日本においては、季節性インフルエンザや風邪が流行する季節になると、これまで以上に、マスク着用が習慣化するのではないかと思う。ほんの少し前まで、接客や重要な商取引の場面において、マスク着用は失礼にあたるという風潮があったけれど、今後は「着用しないほうがマナー違反」という意識に変わるかもしれない。

良くも悪くも気づかされた、ファンデーションの“存在感”

 冬から初夏にかけて続いた長期のマスク着用期間に、自身も強く感じ、周囲の女性からも頻繁に聞いたのが「マスクにファンデーションがつくことの不快感」だ。衛生用品であるが故に汚れへの生理的な不快感もあったように思う。では、コロナ後に必要とされるファンデーションは、落ちにくく、フィット感に優れていれば良いかというと、そんなに簡単な話でもない。

 まず前提として、女性は素肌の上にファンデーションを塗り、さらにその上をマスクで覆っている。男性はピンと来ないかもしれないが、マスク内の湿気でヨレる→マスクとこすれる→マスクにつく」という3重の不快感を、常に感じている状態にある。マスクをしない時にはあまり意識しなかった、肌の上に、ファンデーションという異物が乗っていることを、否応なく意識させられた体験であったはずだ。

 “外向き”の製品であるファンデーションは、これまで、仕上がりの美しさを求められていた。しかし、長期に渡るマスク着用により、ファンデーションは肌の最も近くに寄り添うもの、それ故に、快・不快に直結するものという、もう少し感覚的な“内向き”の側面がフォーカスされたのではと思う。

多くの女性が、強制的に“メイク習慣”を変えた3カ月

 もう1つ、この期間にほとんどの女性が直面したのが、マスク着用時にベースメイク(特にファンデーション)をどうするかという問題だ。特にマスクの供給が逼迫していた時期は、使い回しを考えて、何らかの試行錯誤をした女性も多かったのではないか。

 たとえば、ファンデーションを普段より薄めに塗る、額など部分的に使う、いっそのことマスクの下は何もつけず、アイメイクだけ華やかに演出するなど、試した方法は人それぞれ違うだろう。少なくとも、これだけ多くの女性が「強制的に普段のメイク習慣を変える機会」は、これまでなかったはずだ。

 その結果、肌色、顔全体に塗るという、これまでのファンデーションの常識から少しだけ解放され、「そうでなくても案外キレイに見える方法がある」という、ベースメイクの新しい方法にたどり着いた女性も一定数いたのではと思う。個人的な話しで恐縮だが、私自身はこの時期ファンデーションをやめて、トーンアップ下地のみを使ってみた。薄づきだが肌の均一感が高まり、オンラインの取材であれば、遜色なくメイク感が演出できる。その時に抱いたのが「あ、これ『リモート環境でも、ある程度仕事はできる』という感覚に近いな」という感想だった。本来は直接会って話したり、ファンデーションをきちんとつけるのがベストだけれど、違う方法でもやっていけるという感覚だ。

 もちろん、特にベースメイクに試行錯誤はせず、メイク習慣を変えなかった方も沢山いるだろう。1つだけ確実にいえることは、これまでと同じ“外向き”なファンデーションは、マスク着用の季節になるたびに、販売数の減少を余儀なくされてしまう。

 逆の視点で考えると、ここにこそファンデーションが「新たなステージ」へと進化するヒントが隠されているようにも思う。より薄く、肌との一体感に優れ、異物感を感じることなく、心地良い。一言で表現するなら「究極のストレスフリー」だろうか。そのためには肌色である必要もない、ファンデーションの枠を越えた次世代ベースメイクに進化する可能性もある。以下に(自粛期間中に使ってみて)次世代ベースメイクの価値観に近いと思ったものを、いくつかあげてみたい。

薄膜感が感動的な新カテゴリー「マルチユースリキッド」 「THREE」

 あまりの薄膜感に感動したのが、6月10日発売の「THREE」の「ソーラーティンティドグローフロー」だ。UV ケアとしても、ベースとしても、化粧直しにも活躍する、ファンデーションの概念を越えたマルチユースなリキッド。素肌を透かしながら均一感を高め、ノンケミカル処方ならではの負担感のない仕上がり。紫外線吸収剤を使用せず、自然由来の紫外線散乱剤のみで SPF50+の紫外線防止効果が頼もしい。肌がホッと息をつけるような使用感と機能性を両立した、ストレスフリーな次世代ベースメイクの代表といえる。

植物の力を結集した、スキンケアのような使用感 「ITRIM」

 塗布した瞬間、肌を包む精油の深い香り。限りなくスキンケアに近い、保湿力豊かな使用感の「イトリン(ITRIM )」の「エレメンタリー エッセンシャルEEクリーム」。「EE」とは、肌を均一に仕上げる(Even)とスキンケア効果(Effect)のこと。植物オイルと植物由来のパウダーをブレンドしてかなえる塗布膜は、実に軽やかでファンデーションをつけていることを忘れてしまいそう パールの光沢感とは一線を画す、肌が潤うことで生まれる自然なツヤ感も美しい。スキンケア効果に軸足を置いた、大人のためのベースアイテムだ。

下地の枠を越え、“きちんと感”のある端正な肌を演出 「コスメデコルテ」

 下地のカテゴリーでありながら、適度なメイク感を演出するのが、「コスメデコルテ(DECORTE)」の「AQ ラスティングUV プライマー」。下地ならではの薄膜で肌に寄り添い、自然にトーンアップ。ナチュラルな艶を演出しながら「きちんと感のある」端正な仕上がりで、オンラインの取材時に重宝した製品でもある。肌トーンが明るい人はこれ1品で仕上げても良いし、下地として使う場合はファンデーションの使用量が減るはず。ファンデーションよりマスクにつきにくいこともあり、外出自粛期間中に最も活躍した製品だった。

内側からにじみ出るような艶と血色感 「SUQQU」

 内側からにじみ出るような艶と体温が息づくような血色感を演出する、「スック(SUQQU)」の「ブルーミング グロウ プライマー」は本当に不思議な下地だ。ほんのりピンク色でカバー力はほとんどないのに、使うと使わないとでは「ライブな肌の質感」に各段の差がつく。マスクにもつきにくく、平常時であればこの下地+少量のファンデーションで自然な質感に仕上がるはず。色ではなく光を巧みに操り、大人の女性を「もともと素肌が美しかったかのように」見せる、次世代型ベースメイクと呼ぶにふさわしい1品だ。

 コロナ禍は、私たちの生活や行動様式に変化をもたらした。その経験から得た肌へのストレスや発見に対し、各メーカーの開発技術に心から期待したい。そもそも化粧品は、香りや感触など、言葉にしにくい感覚を表現することを追求してきたアイテムでもある。特に日本のものづくりは、この目に見えない繊細な事柄を表現することに、とても長けていると思う。

 まだまだストレスが続くことが予想される今、「究極のストレスフリー」をかなえる次世代ベースメイクの登場を、いち女性として心から願っている。それは、社会で活躍する女性にとって、肌に寄り添う頼もしい味方となってくれるはずだから。

宇野ナミコ:美容ライター。1972年静岡生まれ。日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、ウェブなどで美容の記事を執筆。スキンケアを中心に、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、美容医療まで担当分野は幅広く、美容のトレンドを発信する一方で丹念な取材をもとにしたインタビュー記事も手掛ける

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【動画】「オーシャントーキョー」の高木琢也代表が語る“ウィズコロナでこれからの美容師・美容室に必要なこと”

高木琢也(たかぎ・たくや) / 「オーシャントーキョー」代表:1985年7月14日生まれ。2013年9月に「オーシャントーキョー」設立。15年3月には月間技術売り上げ1200万円を達成。「ホットペッパービューティー」主催のヘアコンテストでは、17、18、19年と3年連続でメンズ部門のグランプリを獲得。現在は渋谷、原宿、大阪に8店舗を展開する PHOTO : YOHEI KICHIRAKU

 新型コロナウイルスは全国の美容室、美容師にも大きな影響を与えた。緊急事態宣言が出され、営業を続ける美容室もあれば、自主的に休業を選ぶところもあるなど、それぞれで対応も分かれた。このようなコロナ禍でこれからの美容室、美容師に必要なことは何か。業界内外で注目を集める「オーシャントーキョー(OCEAN TOKYO)」の高木琢也代表に語ってもらった。

 新型コロナについて初めて取材に答えるという高木代表。「これからの美容師の在り方」や、「オーシャントーキョー」ではどのような対策を行ってきたのか、新卒採用は行うのか――など、今気になることを聞いた。「これからは本物の美容師しか選ばれない」「美容師は原点に戻ろう」「美容室はパワースポットであるべき」など、多くの美容師、美容学生に響く内容となっている。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.31 濵田博昭「ファッションシステムの歪みを見直す」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、2020年秋冬シーズンに自身のブランド「ポートヴェル(POTVEL)」を「ニューレーベル(NULABEL)」として再スタートさせた濵田博昭デザイナーが登場。

NULABEL

濵田博昭

Q.今、デザイナーができることは?

A. 今最も影響を受けているのは小売業の人たちだ。その波はブランドにも必ず影響を及ぼし、生地屋や縫製工場にも広まっていくだろう。しばらくマーケットは回復しない。そんな今こそ、ファッションビジネス全体が変化するべきだと思う。

これまでも既存のファッションシステムには疑問を抱いていた。スケジュールや発表形式、場所、タイミングなどストレスを感じる部分も多かった。その歪みはみるみる大きくなり、マーケットやエンドユーザーの感覚から乖離していった。エンドユーザーとよりよい関係を築いていくため、どんな方法でアプローチできるかーーこれを最優先に考え、実行しなければならない。

個人としてはデジタルを活用してこれまでより多くの人とコミュニケーションをとるようにしているし、卸先のショップと一緒にインスタライブを行うなど新たな活動にも挑戦している。展示会や発信方法にもデジタル化を進めていくだろうし、ルックの表現なども変わっていくだろう。

クリエイション面もアップデートが必要だ。ミーイズム(自己中心主義)的なクリエイションや強い力を持ったデザインはこれからも残していくべきだが、独りよがりであってはならない。自分に求められるデザインを明確にし、卸先と密に連絡をとりながら今以上の答えを探していきたい。

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「略奪は悪いことだが、問題の本質はそこではない」 暴徒化する抗議デモに理解を示す米社会

 米ミネソタ州ミネアポリスで5月25日に、黒人男性のジョージ・フロイド(George Floyd)氏が白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件を受けて、全米で抗議運動が起きている。当初は平和的に行われていたデモが、全米に広がるにつれて一部の参加者が暴徒化しているものの、アメリカでは「店の破壊や略奪行為はよくないことだが、その気持ちは分かる」として一定の理解を示す人もいるという。数百年にわたって構造的に行われてきた黒人差別に対する積もり積もった怒りや無念さが、フロイド氏の事件をきっかけに爆発したと見ているからだ。

 大規模なデモが行われたロサンゼルス・フェアファックス地区に住む米「WWD」のブース・ムーア(Booth Moore)西海岸部門エグゼクティブ・エディターによる記事を紹介する。

 私が住むフェアファックス地区で5月30日に行われた抗議運動「Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)」は、とても平和で素晴らしいものだった。さまざまな人種や年齢の人たちが抗議の声を上げ、スローガンを掲げ、膝をついて連帯を示した。新型コロナウイルスに感染するリスクがある中、大勢の人々が運動を支援するために集まったのだ。

 黒人デザイナーが連帯して支援し合うための組織、「ブラック・デザイン・コレクティブ(Black Design Collective)」のケヴァン・ホール(Kevan Hall)創設者は、「アトリエの屋根からその光景を目にして、この若者たちが未来を変えていくと確信した」と語った。

 しかし、ある瞬間から雰囲気が変わった。デモ隊が商業地区の中心に近づくにつれて交通の妨げとなったため、警察が出動。大声で怒鳴り合う様子があちこちで見られ、参加者が市バスを乗っ取って屋根に上るなど混乱が大きくなっていった(バスの運転手は無事だった)。現場には大勢の武装警官が配備され、参加者を1カ所に集めようと人々を威圧し始めた。緊張感が高まり、ついに──タガが外れた一部の参加者がパトカーを破壊し、警察は応戦のためゴム弾を発射。大混乱の中、放火や店の略奪行為が始まった。

 その勢いはあっという間に広がり、当日の夕方にはロデオドライブの「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」やその近くにある「ヴィヴィアン・ウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD)」「アディダス オリジナルス(ADIDAS ORIGINALS)」「ナイキ(NIKE)」などの店が襲撃され、「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」の店の看板には今回の事件で殺されたフロイド氏や、数年前にやはり人種差別の犠牲となったサンドラ・ブランド(Sandra Bland)氏の名前が書きつけられた。

 ホール創設者は、「こういう展開になってほしくなかった。混乱に乗じて略奪することは、フロイド氏の殺害をきっかけに起きたムーブメントを乗っ取り、そのメッセージを台無しにしてしまう」と懸念を表した。

 ビンテージショップ「ザ・ウェイ・ウィー・ウォー(THE WAY WE WORE)」のドリス・レイモンド(Doris Raymond)=オーナーは、「店が組織的なグループに襲われ、4万5000ドル(約480万円)相当の商品が盗まれた。犯人らはさまざまな人種だったが、こうした略奪行為が人種差別をさらに助長することを考えるととても腹立たしい。それも彼らの狙いの一つだと思う」と述べた。

 混乱に乗じて略奪行為を働く者がいるにせよ、その根底には社会的な不均衡や経済格差に対する怒りがある。新型コロナウイルスの犠牲者のうち半数以上が黒人であるなど、命にかかわる問題で人種間の格差が浮き彫りになった矢先にフロイド氏の殺害事件が起き、くすぶっていた怒りの炎に油が注がれてしまったという側面があることを忘れてはいけない。

 「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」のヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が運営者の一人であるシカゴのセレクトショップ、RSVPギャラリー(RSVP GALLERY)も略奪の被害に遭ったが、ヴァージルは「それで痛みが癒やされるなら、持っていっていいよ」と自身のインスタグラムのストーリーに投稿した。

 フロイド氏が殺害されたことに抗議するデモが激化する中、私は襲撃された店舗などの写真をインスタグラムに投稿したが、デザイナーのジャスミン・ショクリアン(Jasmin Shokrian)から「問題の本質から目をそらさせてしまう」との指摘を受け、考えさせられた。ソーシャルメディア上では、フロイド氏が殺害されたことよりも、店への略奪行為に対する怒りの声のほうが多いように感じる。まるでブランドもののハンドバッグや限定品のスニーカーのほうが、黒人の命よりも価値があると言っているようだ。

 元NBAのスター選手で、現在はビジネスマンであり活動家でもあるカリーム・アブドゥル・ジャバー(Kareem Abdul-Jabbar)は「ロサンゼルス・タイムズ(LOS ANGELES TIMES)」紙に論説記事を寄稿。同氏は、「抗議行動が理解できないって?あれは瀬戸際まで追い詰められた人々の姿だ。この国では人種差別が制度的に行われており、黒人は教育機関や司法制度、職場などのあらゆる場所で差別されることに慣れている。私たちはずっと、人々や政治の意識を変えるべく新聞や雑誌に寄稿したり、テレビ番組に出演して説明したり、世の中を変えるという政治家に投票したりしてきたが、差別的な状況はほとんど変わっていない」と訴えかけた。

 1991年、黒人男性の故ロドニー・キング氏がロサンゼルス市内を運転中にスピード違反を起こし、車から降りて無抵抗だったところを4人の警察官(白人3人、ヒスパニック系1人)に激しく暴行された。この様子が偶然撮影されており、テレビで放送されたことからロサンゼルス市警に対して強い批判が湧き起こったものの、後の裁判で警察官が4人とも無罪となったため、ロサンゼルスで大規模な暴動が起きた。このときはロサンゼルスのみでのことだったが、今回の抗議デモは全米で行われている。今度こそ、何かが変わるのかもしれない。

 ストリートウエアブランド「ハンドレッツ(THE HUNDREDS)」のボビー・キム(Bobby Kim)共同創業者は、店が破壊されて略奪に遭ったにもかかわらず、自身のインスタグラムに「君たちがうちの玄関先で暴動を起こしたとしても、僕は君たちと共に立つ。絶対に抗議することをやめてはいけない」と投稿して連帯を示した。しかし、同氏は逆に反発を受けることになってしまった。複雑な話だが、同氏はアジア系アメリカ人で有色人種ではあるものの、ビジネスのオーナーとして成功しており、店が多少の損害を受けたとしても問題がないぐらい経済的に恵まれているからだ。

 それでも、同氏は抗議運動を支持するという。「誰かを肉体的に、もしくは経済的に傷つける行為を容認はしないが、こうしたデモがもっと頻繁に起きていないことにむしろ驚く。黒人社会は30年以上にわたって差別撤廃を礼儀正しく訴えかけてきているし、それ以前には何百年もの間、苦難を耐え忍んできた。今回の抗議運動に対して知らないふりをしていればいずれ過ぎ去ると思っているアメリカ人もいるようだが、そうはいかないだろう」と話した。

 同氏はまた、「人種差別と消費主義には密接な関係がある。今回の暴動では主にラグジュアリーブランドのハンドバッグやスニーカーなどが略奪されているが、それは現代の消費社会ではそうしたものに最も価値があるとされていて、持っていないと“劣った人間”だと見なされるからだ」と説明した。しかし、希望はあると同氏は強調する。「最近のこうした抗議行動を見ていると、以前よりもアライ(当事者ではない支援者)が多く、幅広く連帯していることに心を動かされる。もはや黒人社会と世界の対立ではないし、多くの人は人種差別を黒人だけの問題だとは思っていない。自分たちにも関係がある人権の問題だと、ようやく気づいたのだろう」。

 その言葉を裏付けるかのように、5月31日には何百人ものボランティアがロサンゼルスに集まり、破壊された街の清掃活動を行った。その一人であるフード・ジャーナリストのジャッキー・イアドニーシ(Jackie Iadonisi)は、「私は破壊や略奪行為は間違ったことだと思うし、伝えようとしているメッセージを損なうものだと思う。とはいえ、その気持ちは理解できる。平和的に行われた抗議行動が誰からも注目されないまま消えていき、しばらくしてまた事件が起こって再び抗議することになるのを、私も幾度となく目にしてきた。こんなことを言いたくはないが、今回は物が破壊されたり燃やされたりして、ある意味ではよかったのかもしれない」と語った。

 イアドニーシは、人種や年齢もさまざまなボランティア活動の参加者らと共に掃除をしながら、こう話した。「正義が公正に行われていれば、こんなことは起きなかった。これまでも警察官らがきちんと逮捕されていれば、抗議運動など必要ないのだから。でも体制側は正義を行うのではなく、街が燃やされて破壊されるほうを選んできた」。

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世界のメイクアップアーティストが提案する“マスクメイク”10選

 マスクを着用する機会が増え、アイメイクの注目やニーズが高まっている。首都圏でも緊急事態宣言が解除されたが、しばらくはマスクを着用することが必要となるだろう。そんな中、世界中のメイクアップアーティストに、マスクに似合うアイメイクアップを提案してもらった。

1 フルヴィア・ファロルフィ(Fulvia Farolfi)/「シャネル(CHANEL)」メイクアップアーティスト

 どのアイシェイプ(目の形)でも似合うアイメイクを選んだわ。優しい発色の美しいルックだが、とても簡単で誰でもできるはずよ。これをベースに、グリッターやアイライナーなどを加えて、好きにアレンジして!

2リサ・エルドリッジ(Lisa Eldridge)/「ランコム(LANCOME)」グローバルクリエイティブ ディレクター

 ブラックやグレーのスモーキーなカラーで目元を強く演出し、その上にメタリックなブロンズカラーをまぶたの中央と下まつげをなぞるように入れた。黒いペンシルライナーで粘膜を埋め、漆黒のマスカラでドラマチックに仕上げたわ。

3エリン・パーソンズ(Erin Parsons)/「メイベリン ニューヨーク(MAYBELLINE NEW YORK)」グローバルメイクアップアーティスト

 2000年にはやったアイブロウがインスピレーション源。私も20年前、こんな眉毛だったのよ!目元のメイクは1960年代に活躍したスーパーモデル、ペギー・モフィット(Peggy Moffitt)へのオマージュね。そして実はこのマスクも、メイクよ!黒いペイントとパウダーを使って描いたの。

4ピーター・フィリップス(Peter Philips)/「ディオール(DIOR)」メイクアップクリエイティブ&イメージ ディレクター

 スモーキーなキャットアイを提案。ソフトマットなヌードカラーをアイホール全体にのせ、目頭と目尻にダークなトーンをなじませた。中央にはきらびやかなゴールドをのせて奥行きを出した。マスクは目の下に当たってパンダ目になってしまう可能性があるので、目の下に色をのせすぎるのは厳禁!

5パット・マクグラス(Pat McGrath)/「パット・マクグラス ラボ」創業者兼最高経営責任者

 ドラマチックな目元を選んだわ。新作のアイシャドウパレットを使い、ローズカラーにバーガンディーを重ね、ビビッドなマゼンタを中央に少しだけのせれば魅惑的な目元の完成よ!

6フランソワ・ナーズ(Francois Nars)/「NARS」創業者

 マスクを着用していると目元しか見えないので、上手く目の魅力を引き出して。今回は目元をなるべく大きく見せるために、大胆なスモーキーアイを提案した。

7ヘクター・エスピナル(Hector Espinal)/「フェンティ ビューティ バイ リアーナ(FENTY BEAUTY BY RIHANNA)」グローバル メイクアップ アーティスト

 フリーダム(自由)や強さ、色をたたえたルックを作った。今こそ色で遊びながらメイクを楽しみ、さらに強いアイラインやカラーで(精神の)力強さを表現して、気分やモチベーションを上げるべき!

8ギルバート・ソリーズ(Gilbert Soliz)/「マーク ジェイコブス ビューティ(MARC JACOBS BEAUTY)」グローバル メイクアップ アーティスト

 4 月に咲く花で、「純粋」「平和」「至福の喜び」の花言葉を持つデイジーやスイートピーをイメージしたパープルメイクはいかが?

9リンダ・カンテロ(Linda Cantello)/「ジョルジオ アルマーニ ビューティ(GIORGIO ARMANI BEAUTY)」インターナショナルメイクアップアーティスト

 このルックはシンプルで、誰でもできるくらい簡単だわ。同時に、セクシーでしょう?

10サー・ジョン(Sir John)/「ロレアル パリ(L'OREAL PARIS)」ブランドアンバサダー

 マスクを着用する機会が増え、目元にフォーカスがいくようになったので、強い目元のメイクを作った。目の形をナチュラルに強調しながら、まぶたの中央にきらめきをおいた。肌も目元メイク同様に重要で、マスクを着用していても、肌を保湿することは必須ね。

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「ちょうどいいレベル感のコメントが受ける」 コーセー、BCが商品紹介画像投稿「スタッフスタート」を導入した理由

 コーセーは、実店舗の販売スタッフがメイクやスキンケア商品の紹介画像を投稿できるアプリケーションサービス「スタッフスタート」を、総合美容情報サイト「メゾン コーセー」に導入した。同アプリケーションサービスはこれまでアパレル業界で800以上のブランドで活用されているが、化粧品業界では初めてだ。新型コロナウイルス感染拡大を受け、一時的に百貨店など商業施設は休業に追い込まれて、販売員や美容部員は自宅待機を余儀なくされた。緊急事態宣言が解除となり商いは再開されたが、以前に戻るというわけではない。新しい日常を模索する中で、販売やマーケティング方法も変わっていく必要がある中で、コーセーはなぜ「スタッフスタート」を始めたのか。これからの期待についても、同社の杉崎洋デジタルマーケティング戦略部ダイレクトビジネス課課長に聞いた。

WWD:導入しようと思った経緯は?

杉崎洋デジタルマーケティング戦略部ダイレクトビジネス課課長(以下、杉崎):実は新型コロナとは関係なく、約1年前から構想していたことだ。昨年12月に東京・銀座にオープンした弊社のブランドを横断して集積するショップ「メゾン コーセー(MAISON KOSE)」と同名のウェブサイトの立ち上げを機に、目玉コンテンツとして考えていた。

WWD:なぜBC(ビューティ・コンサルタント)の活用なのか?

杉崎:来店してもらえば、接客でさまざまな情報をお伝えすることはできるが、今の時代、多くの人が店舗に行く前にいろいろ情報収集している。BCの知識は、SNSなどの一般の方の口コミよりはブランドについても商品についても詳しい。一方で、美容ライターさんやインフルエンサーたちよりは身近な人だ。そういった人の情報が求められているのではないか。ちょうどいいレベル感がBCだと思った。

WWD:今回、バニッシュ・スタンダードが手掛けるアプリケーションサービス「スタッフスタート」との取り組みだ。同サービスは、アパレル業界とはすでに800件以上もが提携する。

杉崎:実は10年ぐらい前にこういったことができないかと考えていた。ただスタッフを出すというのが難しく断念していた。アパレル各社が「スタッフスタート」を導入していることは以前から知っており、化粧品でもできないかと思っていた。アパレルで実績があり、投稿した記事のパフォーマンスを瞬時に把握できることが魅力だった。

WWD:参加しているBCはどういう基準で選んでいるのか?内容への注文はしているのか?

杉崎:現在、全国に約3000人いるBCから数十人が参加している。その人たちは、昨年、一昨年にBCの全国表彰で選ばれた方にお願いしている。最初なので、主力製品を中心に投稿してもらっているが、内容に関しては特に指示しておらず、義務と感じてしまうと楽しいコンテンツになっていかないと思っている。ただ前向きになれるような投稿を意識してもらっている。今はマスクをすることが日常となり、目元メイクなどが注目される。今後はシーズンなどをうまく投稿にも反映させていきたい。

WWD:BCさんの顔出しというのは、社内でも議論があったのではないか?

杉崎:その通りで、10年前であれば絶対あり得なかった。ただ時代が変わり、SNSなど個人が情報を発信することを含めさまざまな情報が行き交う中で、リスクが平準化されたと感じている。会社、BC共にていねいに説明した。基本は顔は出すが、ショップ名は出さず、ニックネームでの記載だ。

WWD:化粧品であるゆえに難しい点はあったか?

杉崎:アパレルと違うのは、化粧品には薬事法があるということだ。一般の人が使った感想を言うのは問題ないと思うが、われわれは企業として薬事法を守らなければならい。なので投稿内容は一度確認することにしている。だからこそ信頼性のあるBCからの情報を提供している。

WWD:始めてみてどうか?販売にはつながっているのか?

杉崎:まず、このように取材依頼などで声が掛かることが多く、反響があると感じている。始めたのが、新型コロナ感染拡大の影響でおうち時間が長くなっているタイミングでもあり、ニーズがあるのではないかと期待しているし、自宅待機を余儀なくされているBCにとってもモチベーションアップになっているだろう。販売はまだ始まったばかりで、これからだと思う。心をつかめるコンテンツが重要だろう。

WWD:このサービスをどう発展させる?

杉崎:現在サービスはBCのおすすめアイテムを投稿して、どういった使い方がいいかなどを発信している。新型コロナにより、化粧品各社ではチャットカウンセリングが盛んになってきている印象だ。弊社としても、もっとリアルタイムでBCからお客さまにお伝えすることも必要だと感じている。また、今後は動画で簡単にテクニックを表現することもできるのかもしれない。さらに現在は、商品からつなげてBCの投稿が見れるようになっているが、今後はブランドの世界観を発信できるような環境づくりも必要だと思っている。

また、これは新型コロナよりも前から思っていたことだが、まずはスターBCが出てくることが一つのゴールだろう。ゆくゆくはインセンティブも考えたい。そうなることでスターBCに人が集まっていくるのではないか。こういうのが得意なスターBCが誕生すれば、店頭の接客だけではない評価基準を作っていきたいと考えている。

WWD:将来像は?

杉崎:もっと全国のBCに参加してほしいと思う。北海道のテクニックが沖縄の人に響くのではないかと思うし、また逆もあるだろう。今のところ同サービスでお客とのやり取りは発生しないが、会社としては、こういったサービスが日常になり、普通に出勤するのように、投稿する。これが当たり前になってくると面白いだろう。

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創業38年の“看板屋”が仕掛ける、リアル店舗のコロナ対策テクノロジー

 緊急事態宣言が解除され、休業していた店舗が続々とオープンし始めている。しかしオープン後もコロナ前のようにはいかない。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、人の密集や密接を回避するための対応が求められている。そのためのサービス開発を進める企業の1つが、クレストだ。同社は街中や施設の看板、サイネージ、ウインドーディスプレイの製作施工を手掛ける“看板屋”として1983年に創業。現在も同事業を軸にしつつ、カメラを使った店舗解析システムの提供などを行っており、直近1年間のクライアント数は約800社、うち4割がアパレル企業だという。そんなクレストはこのほど、店舗内の混雑状況をデジタルサイネージ上やサイト上で知らせるサービスをスタートした。新たに開始した2つのサービスから、同社が考えるアフターコロナに向けたリアル店舗の在り方まで、阪本治彦・取締役兼リテールテック事業部長に話を聞いた。

 クレストのリテールテック事業では、店舗前のディスプレイやマネキン、VP(ビジュアル・プレゼンテーション)がどれほどの人に見られているかを計測・解析し、店舗・企業側にデータを提供する。「“見る”という行動はお客さまが購買する前のデータ。当社は店舗の前を何人が通り、何人が入店したのか、店舗の中をお客さまはどうやって歩いているのか、という行動データを取得し、店舗の売り上げ向上を助けている」と阪本取締役は説明する。そのデータを取得するために用いているのが、カメラ型センサーの「ゾービス(Xovis)」と「エサシー(ESASY)」だ。どちらもクレストが販売代理店を務めている。特に主力製品である「ゾービス」はもともと、スイスで空港に設置するために開発されたものだが、アパレル店舗などにも応用が可能だという。「来店客が商品棚のどこに注目しているのか、99%の精度でリアルタイムで識別できる。『エサシー』はより簡易的なモデルで、入門的な立ち位置だ。当社で作成したダッシュボード上では、それらのカメラで取得したデータを用いて、いつのタイミングでどの棚の注目度が高かったのかや、来店客が多いのは何時ごろか、といったことが分かる」と語る。

 取得したデータは実際にどのようにして活用できるのか。「あくまで一例だが、店舗のディスプレイなどのABテストが行える。単に入店数で計算するのではなく、店舗前の交通量も加味して入店率を測っているため、正確な計測が可能だ。実際に効果を上げている企業もいる」と阪本代表。さらには販売員の配置などにも効果的なようだ。「入店数を測ることによって、来店客がピークの時にエース級の販売員を配置するなど、最適なシフトが組める」。

 コロナ禍で立ち上げた混雑状況の把握サービスは、主力商品である「ゾービス」を活用したソリューションだ。1つの入り口につき「ゾービス」を1台配置することで、入店者数を来店者数をリアルタイムでカウントし、混雑状況をデジタルサイネージやサイト上で知らせる。同システムは現在、ホームセンターチェーン「カインズ」の浦和美園店に導入されており、アパレルをはじめ、複数の企業にアプローチをしている。「例えば飲食店などでも、カメラでお客さまの導線を全て把握できるため、座席の配置などにも活用できる。個人的には、小規模・中規模で、混雑状況を整備する人手がない店舗に向いたサービスだと考えている」。

 「アフターコロナのリアル店舗では、店舗の状況を客観的に見られるデータの重要性はさらに増すだろう」と阪本部長は予測する。「『これはコロナのせいだ』と言われている物事も、データを見ると実はコロナのせいではない、ということもある。感覚ももちろん大事な一方で、データがないと惑わされてしまうこともある。そういった意味で、人の感覚を補完するためのデータはあった方がいい。今後、コロナが去った後も同様のことがいつ起こるか分からない。その時に平常時のデータと緊急時のデータを比べ、判断を下すなど、さまざまな手法を取ることができる。常日頃からデータを取得していく必要性は増していくはずだ」。

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日本人デザイナーが見た、コロナの影響を最も受けたニューヨークの現状 元「ランドロード」川西遼平が語る 【上】

 ニューヨーク発のメンズブランド「ランドロード ニューヨーク(LANDLORD NEW YORK)」のクリエイティブ・ディレクターを務めていた川西遼平が5月末に退任を発表した。川西によるラストコレクションは2020-21年秋冬コレクションで、「ランドロード ニューヨーク」自体は今後も活動を継続するという。川西は6月上旬に日本に帰国し、新しいプロジェクトの発表に向けて準備中だ。

 新型コロナウイルスで最も被害を受けているニューヨークで暮らし、ロックダウンを体験した川西に、ニューヨークの現状や今考えていることを語ってもらった。

5月中旬のニューヨークの状況 
“治安が悪くなり、スエットが防御服になる”

 ニューヨークのハーレムにいる今現在(5月上旬)、この環境でデザイナーとしてできることは何もない。僕が個人としてできることといえば多少の寄付ぐらいだろうか。自分で何かプロジェクトをできないかなと模索している。

 コロナ以前の日常をベースとすると、ファッションデザイナーは“退屈な日常に刺激を与えられる存在”だったが、コロナ禍の状況では医療従事者をフロントラインの人と呼ぶように、デザイナーはフロントに立てない一般の “人々”側。生産態勢の整っている大きな企業は、マスクや除菌ジェルの生産などでフロントラインの人々を支えるものを生産可能だ。しかし、ふがいないことに個人規模の小さなスケールのデザイナーブランドとなると、社会に対する効果的な生産力を持つことは難しい。

 布のマスクを作ろうと考えたが、それでは十分とは思えず諦めた。日本ではマスクの効力そのものより、他人を傷つけない(感染させない)ための象徴として使用しているという話を聞く。僕が住んでいるニューヨークのハーレムは、実際この2カ月で治安の悪化が著しい。気分転換におしゃれな格好でスーパーに行こうと思っても、アジア人が派手な格好で外を歩くと目をつけられるので、上下スエットにサンダル姿で出掛ける。今までプロテクションの機能を持っていなかったスエットが、他者から傷つけられないための防御服として着用されるという変化は、考え方によっては面白いと思う。

生活の変化 
“日常の小さなことや物語を少し豊かに感じる”

 自分が行っていることといえば、週に数回、医療用のマスクを着けて買い出しに行き、スーパーの入り口で前の人との距離を取りながら30分ほど並んで、1回の買い物で可能な限りの重さの食品を両手に抱えて帰ること。また、ニューヨークでは家に洗濯機がないことが普通で、週に1回はランドロマットにも行く。家族3人分の大量の洗濯物(肩に内出血ができる重さ)を背負って、一番大きな洗濯機に全て詰めて洗い、5ドルのチップを払って乾燥して袋に入れてもらったものを受け取る。嫁と交互に食事を作り、交互に食器を洗う。これを書いてる今日は、どうしてもトンカツが食べたかったので僕が料理を担当。昨日は嫁の作った豆腐味噌汁だったので、さっぱりした食べ物よりもこってりしたものがいいなと思ったから。娘とはおままごとや、家の中の限られたスペースでのかくれんぼを無限ループで行っている。

 今までは仕事をして帰宅したら作業のように夕食をとっていて、次の日は何が食べたいなどと考えることもなかったが、日常の小さなことや物語を少し豊かに感じられるようになったのは面白いと思う。そのような変化をモノ作りに生かすことができれば、デザイナーとして後々、人々に何かできるかもしれない。

 5月下旬、前に比べると周りの飲食店も開き始め、持ち帰りでの食生活は少し豊かにはなってきた。いまだにロックダウン中ではあるが、路上には以前より人が増えてきた。僕自身も少し散歩に出るようになった。しかし、全体的な状況はあまり変化がないように思う。

ロックダウン中に考えたこと 
“限界に来ていた業界に、どのような変化が起きるのか”

 今まで退屈だなと思っていながらも、年に2回何か作ることで、何か変えようと考えていた日常が崩れた。この現状から、以前の日常を取り戻すことのようなモノ作りの姿勢が正しいのかどうかを疑う時間が増えた。

 環境問題を念頭に考えると、ファッション業界(コレクション発表)にはメンズで年2回、ウィメンズで年4回の過剰なモノ作りと、そのコレクションを消費させるための過剰なイメージ作りを行うという矛盾がある。止まることなく続いてきたシステムだったために、疑問を持っても、解決策を考える時間も人も足りない状況にあった。それに、このシステムは関係している人々の生活を支えていたので、なかなか変えることが難しかったのだと思う。

 ただ一度立ち止まって考えてみると、1960~2000年代のファッションという文脈の更新を劇的に行なっていた流れは別として、この20年間は“新しいモノ”を作ろうとする行為自体がシステムとして、消費を喚起するためだけに行われていたように感じる。

 今、過去を振り返り「本当に新しいものとは何なのか?」「本当に良いものとは一体何なのか?」という根本的な疑問を持つ。限界に来ていたファッションの表現形式、消費構造の限界が浮き彫りになった今、これから新しく訪れる日常とどう向き合うかが今後の課題になると思う。新しい個人のプロジェクトでは、何かを実践できるよう準備を進めている。また以前のような日常に戻ったときに、業界全体が何も更新されず従来通りに回り始めるのか、新しいシステムが徐々にでも構築されるのか、どのような変化が起きるのかを考えている。

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日本人デザイナーが見た、コロナの影響を最も受けたニューヨークの現状 元「ランドロード」川西遼平が語る 【上】

 ニューヨーク発のメンズブランド「ランドロード ニューヨーク(LANDLORD NEW YORK)」のクリエイティブ・ディレクターを務めていた川西遼平が5月末に退任を発表した。川西によるラストコレクションは2020-21年秋冬コレクションで、「ランドロード ニューヨーク」自体は今後も活動を継続するという。川西は6月上旬に日本に帰国し、新しいプロジェクトの発表に向けて準備中だ。

 新型コロナウイルスで最も被害を受けているニューヨークで暮らし、ロックダウンを体験した川西に、ニューヨークの現状や今考えていることを語ってもらった。

5月中旬のニューヨークの状況 
“治安が悪くなり、スエットが防御服になる”

 ニューヨークのハーレムにいる今現在(5月上旬)、この環境でデザイナーとしてできることは何もない。僕が個人としてできることといえば多少の寄付ぐらいだろうか。自分で何かプロジェクトをできないかなと模索している。

 コロナ以前の日常をベースとすると、ファッションデザイナーは“退屈な日常に刺激を与えられる存在”だったが、コロナ禍の状況では医療従事者をフロントラインの人と呼ぶように、デザイナーはフロントに立てない一般の “人々”側。生産態勢の整っている大きな企業は、マスクや除菌ジェルの生産などでフロントラインの人々を支えるものを生産可能だ。しかし、ふがいないことに個人規模の小さなスケールのデザイナーブランドとなると、社会に対する効果的な生産力を持つことは難しい。

 布のマスクを作ろうと考えたが、それでは十分とは思えず諦めた。日本ではマスクの効力そのものより、他人を傷つけない(感染させない)ための象徴として使用しているという話を聞く。僕が住んでいるニューヨークのハーレムは、実際この2カ月で治安の悪化が著しい。気分転換におしゃれな格好でスーパーに行こうと思っても、アジア人が派手な格好で外を歩くと目をつけられるので、上下スエットにサンダル姿で出掛ける。今までプロテクションの機能を持っていなかったスエットが、他者から傷つけられないための防御服として着用されるという変化は、考え方によっては面白いと思う。

生活の変化 
“日常の小さなことや物語を少し豊かに感じる”

 自分が行っていることといえば、週に数回、医療用のマスクを着けて買い出しに行き、スーパーの入り口で前の人との距離を取りながら30分ほど並んで、1回の買い物で可能な限りの重さの食品を両手に抱えて帰ること。また、ニューヨークでは家に洗濯機がないことが普通で、週に1回はランドロマットにも行く。家族3人分の大量の洗濯物(肩に内出血ができる重さ)を背負って、一番大きな洗濯機に全て詰めて洗い、5ドルのチップを払って乾燥して袋に入れてもらったものを受け取る。嫁と交互に食事を作り、交互に食器を洗う。これを書いてる今日は、どうしてもトンカツが食べたかったので僕が料理を担当。昨日は嫁の作った豆腐味噌汁だったので、さっぱりした食べ物よりもこってりしたものがいいなと思ったから。娘とはおままごとや、家の中の限られたスペースでのかくれんぼを無限ループで行っている。

 今までは仕事をして帰宅したら作業のように夕食をとっていて、次の日は何が食べたいなどと考えることもなかったが、日常の小さなことや物語を少し豊かに感じられるようになったのは面白いと思う。そのような変化をモノ作りに生かすことができれば、デザイナーとして後々、人々に何かできるかもしれない。

 5月下旬、前に比べると周りの飲食店も開き始め、持ち帰りでの食生活は少し豊かにはなってきた。いまだにロックダウン中ではあるが、路上には以前より人が増えてきた。僕自身も少し散歩に出るようになった。しかし、全体的な状況はあまり変化がないように思う。

ロックダウン中に考えたこと 
“限界に来ていた業界に、どのような変化が起きるのか”

 今まで退屈だなと思っていながらも、年に2回何か作ることで、何か変えようと考えていた日常が崩れた。この現状から、以前の日常を取り戻すことのようなモノ作りの姿勢が正しいのかどうかを疑う時間が増えた。

 環境問題を念頭に考えると、ファッション業界(コレクション発表)にはメンズで年2回、ウィメンズで年4回の過剰なモノ作りと、そのコレクションを消費させるための過剰なイメージ作りを行うという矛盾がある。止まることなく続いてきたシステムだったために、疑問を持っても、解決策を考える時間も人も足りない状況にあった。それに、このシステムは関係している人々の生活を支えていたので、なかなか変えることが難しかったのだと思う。

 ただ一度立ち止まって考えてみると、1960~2000年代のファッションという文脈の更新を劇的に行なっていた流れは別として、この20年間は“新しいモノ”を作ろうとする行為自体がシステムとして、消費を喚起するためだけに行われていたように感じる。

 今、過去を振り返り「本当に新しいものとは何なのか?」「本当に良いものとは一体何なのか?」という根本的な疑問を持つ。限界に来ていたファッションの表現形式、消費構造の限界が浮き彫りになった今、これから新しく訪れる日常とどう向き合うかが今後の課題になると思う。新しい個人のプロジェクトでは、何かを実践できるよう準備を進めている。また以前のような日常に戻ったときに、業界全体が何も更新されず従来通りに回り始めるのか、新しいシステムが徐々にでも構築されるのか、どのような変化が起きるのかを考えている。

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バックステージカメラマンが振り返る2020-21年秋冬ミラノコレのビューティ トレンドをトップアーティストに聞く

 2020-21年秋冬シーズンから少し時間が経ちましたが、コレクションのバックステージについて振り返りたいと思います。今季のミラノ・ファッション・ウイークは、前季に引き続きタイトなスケジュールかつ、新型コロナウイルスの影響により多数のブランドのビューティ取材がNGになったため、いつもよりも少ない数のバックステージの取材となりました。またミラノ滞在中に北イタリアでのコロナが拡大したため、個人的な判断でミラノからパリに帰国後はパリ・ファッション・ウイークの仕事を全てキャンセルしました。そのような理由から今季はミラノのみのバックステージとなりましたが、「ボス(BOSS)」「GCDS」「MSGM」の3ブランドのビューティルックをお届けします!

 また、メイクアップアーティストのダイアン・ケンダル(Diane Kendal)とヘアスタイリストのホリー・スミス(Holli Smith)に話を聞きながら、今季のトレンドのポイントをお伝えします。

 ダイアンは「目元をポイントにしたメイクが多いと感じるわ。60年代風の色使いも多いかな。肌は引き続きナチュラルに作り上げる傾向が強と思う」とコメント。目元にポイントを置いた場合、リップカラーはナチュラルに、逆に「フェンディ(FENDI)」「MSGM」「GCDS」などで見られた、リップがポイントの場合はシンプルなアイメイクでバランスをとっていました。また、ここ最近続いていますが、今季の「ボス」や「ヌメロ ヴェントゥーノ(N21)」のメイクに見られるように、目元をヌーディーカラーのアイシャドウで強調しつつ、しっかりメイクしているのにナチュラルに仕上がっているような、洗練されたメイクが多いように感じます。

 ホリーにトレンドについて聞くと、「今季になってショートにしてるモデルが多い気がする。ナチュラルでエアリーなスタイルのショート。ちょっと90年代風ね」と答えてくれました。今季のヘアスタイルは、プロダクトを大いに使った質感の表現が多いように思いました。これはルックのフォルムに合わせているようにも感じられました。クラシックでウエストを絞ったシルエットのルックには、スプレーやムース、ワックスなどで艶を出し、ウエットな質感はジェルを用いた演出。全体としては、トップとフロントのボリュームを抑えている傾向が強かったように思います。

景山郁:フリーランス・フォトグラファー。2003年からフォトグラファーとしてのキャリアをスタート。07年に渡米、09年より拠点をパリに移す。10年から「WWDジャパン」でパリ、ミラノなどの海外コレクションのバックステージと展示会などの撮影を担当。コレクション以外にもポートレート、旅やカルチャーなどエディトリアル、広告を手掛ける。プライベートでは動物と環境に配慮した生活をモットーにしている

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消費者は店に戻ってくる? コロナ後の“ニューノーマル”を生き抜くには

 イタリアやフランスなどを含む多くの国で外出規制が緩和されつつあり、小売店や商業施設も営業を再開し始めている。しかしオンラインで買い物をすることにすっかり慣れた消費者を、店舗に呼び戻すことは可能なのだろうか?コロナ後における小売店やブランドの“ニューノーマル(新たな日常)”について、専門家らの意見を紹介する。

 消費トレンド分析会社、WGSNインサイト(WGSN INSIGHT)のローラ・ソンター(Laura Saunter)=シニア・リテール・エディターは、「今後は販売員とのやりとりを最小限にしたいという消費者が増加する。そうした中で、ブランドや小売店は最高の買い物体験を提供するための工夫が必要となるだろう。特にデジタルと実店舗のシームレスな融合や効率的なオムニチャネルの展開、顧客を中心としたアプローチがカギとなる」と語った。また「ソーシャル・ディスタンシングを確保するため、一部のスーパーマーケットで行われているように、店内での動きを一方通行に制限する必要があるかもしれない。店内が混雑していない時間に来てもらえるよう、営業時間の変更もあるのではないか」と語った。

 コンサルティング会社アクセンチュア(ACCENTURE)のアンドレア・ルッツィ(Andrea Ruzzi)=ファッション部門 欧州担当マネジング・ディレクターによれば、新型コロナウイルスの発生前も小売業界は実店舗の改革に取り組んでいたが、その優先順位や方向性が全く変わったという。以前はパーソナライズされた接客やデジタルとの融合などが主な懸案事項だったが、現在は店内の衛生維持やソーシャル・ディスタンシングの確保、非接触型の決済方法の導入など、いかに顧客の安全を守るかが重視されていると話した。

 同じくコンサルティング会社PwCイタリア(PwC ITALIA)のエリカ・アンドレッタ(Erika Andreetta)=パートナー兼リテールおよびコンシューマー・コンサルティング・リーダーは、「短期的には販売員と顧客の安全確保が最優先事項となる。出入り口にサーモスキャナーなどの体温測定機器や消毒液を設置したり、マスクを用意したりすることのほかにも、販売員が担当する顧客の人数を考え直さなければならない。『ザラ(ZARA)』や『H&M』のようなマスブランドでも、一対一の接客が求められるようになる可能性がある」と指摘した。

 データ分析およびマーケティング会社ジャカラ(JAKALA)のパオロ・ペデルソリ(Paolo Pedersoli)=パートナーは、「店内に設置されている防犯カメラや室内向けの位置情報システム、ヒートマップなどで人の流れを観察すれば、各フロアで人が密集しがちな場所を洗い出すことができる。中長期的には、こうしたデータに基づいて店内のレイアウトを変更することを検討してもいいかもしれない」と提言した。

 小売業界向けのソリューション会社アプトス(APTOS)のニッキー・ベアード(Nikki Baird)=リテール・イノベーション部門バイス・プレジデントは、「レストランの予約アプリのようなものを利用して来店を予約制にすれば、客足をコントロールすると同時に、個別のサービスを提供できるようになる」と話した。

「安全な試着」が課題

 実店舗の存在価値の一つとして試着できることが挙げられるが、コロナ後の世界でこれをスムーズかつ効率よく行うためにはデジタルとの融合が重要になると、アクセンチュアのルッツィ=ファッション部門 欧州担当マネジング・ディレクターは言う。「顧客は試着したいアイテムを事前にオンラインで選び、店を訪れる日時を予約するという流れになるのではないか。その場合、顧客が最初にブランドの世界観に触れ、商品を目にするのはオンライン上ということになる。すでにその傾向はあるが、今後は質が高くエキサイティングなデジタルコンテンツを提供することがさらに重要になるだろう」。

 試着する場所そのものも、店頭から自宅へと変化すると予想する専門家もいる。安全性の問題で、試着室を使いたがらない消費者が増えるかもしれないからだ。一方で、自宅で試着した商品が大量に返品されるという懸念もある。

 ジャカラのペデルソリ=パートナーは、「試着の必要性がなくなることはない以上、いかにECが発展しようと店舗がなくなることはない。またラグジュアリーブランドの場合、全てがデジタル化されてしまうと、顧客はその値段に釣り合うだけの特別なサービスが受けられなくなるという面がある」と説明した。

デジタル化と同時に重要なのは「人間味」

 この危機的な状況によってデジタル化がいっそう進むことは間違いないが、どれほど未来的なツールが開発されようとも、買い物体験の核が“顧客と販売員のやりとり”にあることは変わらない。コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニー(BAIN & CO.)のフェデリカ・レバート(Federica Levato)=パートナー兼グローバル・コンシューマー・プロダクツ&リテール・プラクティス部リーダーは、「これからの販売員は、ただモノを売るのではなく、顧客を楽しませて引きつけるエンターテイナー的な役割を期待されるようになると思う」と述べた。

 中国では実際に店舗にいるような体験ができるバーチャルショールームや、インフルエンサーらがライブ配信をして商品の説明をする販売手法がすでに定着しているが、ほかの市場でも今後はそれが“ニューノーマル”となっていくかもしれない。例えば、デジタルプラットフォーム経由でブランドや小売店のECサイトに行き、そこにいる販売員と商品やトレンド、サイズなどについてオンライン上で直接話して、気に入ればそのまま購入できるという仕組みなどが考えられる。こうしたシステムを活用すれば、販売員が顧客により積極的なアプローチをしたり、実店舗への来店を促したりすることもできるだろう。

 ジャカラのペデルソリ=パートナーは、「コロナ後の“ニューノーマル”な世界で生き残れるビジネスにするためには、アプリを入れたり、どこかのテック企業と提携したりするだけでは駄目だと理解しなければならない。店舗の在庫管理、デジタルコンテンツ、EC、顧客データなどをうまく組み合わせ、スムーズに機能する“新たなシステム”を構築する必要がある。既存の組織構造ではできることには限界があるため、そうしたところから見直さなければならないだろう」と説明した。また「衛生上の問題から現金払いを嫌う消費者が増え、モバイル決済や非接触型決済の導入がいっそう進むことは想像に難くない。販売員が決済機器を持っていれば店内のどこででも会計することが可能になるため、レジカウンターが必要なくなり、そこに並ぶことによる感染リスクもなくなる」と述べた。

 PwCイタリアのアンドレッタ=パートナー兼リテール&コンシューマー・コンサルティング・リーダーは、「さまざまなデジタルツールが開発されて便利な世の中になったが、ファッション業界に関して言えば、いまだに売り上げの85%は実店舗によるものだ。人間が社会的な存在であり、他者とのつながりやエンターテインメント性を求める生き物である以上、今後もECより実店舗のほうが優勢であることに変わりはない」と話す。

 一方で、ベイン・アンド・カンパニーのレバート=パートナー兼グローバル・コンシューマー・プロダクツ&リテール・プラクティス部リーダーは、「ECの浸透率が35%を超えると、実店舗の売り上げを食うようになってくる。ラグジュアリー業界における現在のEC浸透率は12%程度だが、5年後には25〜35%になると当社では予想している。将来的に実店舗がなくなることはないにせよ、その役割は大きく変わるだろう。買い物をする主要な場所ではなく、実験ハブになるのではないか」との見方を示した。

 ジャカラのペデルソリ=パートナーは、「ブランド品やラグジュアリー製品には象徴的な価値があり、それには店舗やイベントでの特別な体験や、そのブランドだと分かるパッケージなどが寄与している。店で大切な顧客として扱われ、ゆったりとした時間を過ごすのは誰にとっても心地よい体験だ。そうした人間味や感覚的な部分を、テクノロジーで置き換えることはできない」と述べた。

 ラグジュアリーブランドはそもそも顧客に特別な体験やパーソナル化したサービスを提供することに慣れており、例えばアプリによる予約制などを導入して、今後も安全に店舗を運営していくことができるだろう。問題は中価格帯から低価格帯のブランドだ。同氏は、「現在のほとんど個性がない接客から、顧客ごとにパーソナル化した接客へと変えていく必要がある」と説明した。

 アクセンチュアのルッツィ=ファッション部門 欧州担当マネジング・ディレクターは、「アパレルブランドはこれまで、一等地や大規模な商業施設に出店したり、店舗数を増やしたり、より広く豪華な店にすることに注力してきた。しかし今回のパンデミックの影響でECがさらに台頭し、店舗から試着室やレジカウンターがなくなり、季節商品やいくつかの売れ筋商品を展示する場となった場合、果たして今までのように広い売り場は必要だろうか?」と疑問を呈した。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.30 中里唯馬「日常を豊かにする次世代の 新たな衣服の在り方を発信」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、2016年からパリ・オートクチュール・ファッション・ウィーク公式ゲストデザイナーとしてコレクションを発表している「ユイマ ナカザト(YUIMA NAKAZATO)」の中里唯馬デザイナーが登場。

YUIMA NAKAZATO
中里唯馬

Q 不安が続く状況下で、ファッションデザイナーが人々にできることは?

 こんなにも世界的に難しい状況下で、ファッションブランドとして社会に対して何ができるのだろうかと、自問自答を繰り返し、もどかしい思いを抱えながら過ごしている。そんな時に、世界中でミュージシャンたちが自宅から世界へダイレクトに音楽を発信している姿に感動し、私たちにも何かできることがあるのではないかと、前向きに考えるようになった。

 そうして辿り着いた1つの答えが「フェイス トゥ フェイス(Face to Face)」。このプロジェクトは、従来お客さまと直接対話を重ねながら採寸・デザインするオーダーメードの服作りを、自宅からスマートフォン1つで、世界中どこに住んでいる方でも無料で提供できるサービス。

 私たちは、1着1着手作業で服を制作しているため、そもそもたくさんの服を生産することはできないが、これらの新しい試み自体が、次なる時代の新たな衣服の在り方のヒントやインスピレーションとして多くの人に届けられたらと、このプロジェクトをスタートした。

 たとえ画面越しでも「少しいい服を着て接してみようかな」というちょっとした変化が周囲の人を明るくし、自分自身の日常も豊かになる。人と人との間にファッションがあり、そこを少しでも良くしていくことが、ファッションデザイナーにできる役割だと改めて感じている。

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元敏腕百貨店コスメバイヤーが語る、営業再開後の化粧品販売の先行きは?

 百貨店の営業再開が広がっている。一足早く全域で緊急事態宣言解除となった関西は百貨店に客足が戻りつつある。企業が本格的な再始動に向けて動き出す中、消費者のニーズはどう変化するのか。在阪百貨店で長く化粧品バイヤーを務めたのち、現在はビューティ関連のコンサルティングを中心に活動する曽田啓子氏に、化粧品販売の見通しを聞いた。

WWD:営業を再開した百貨店の化粧品売り場の状況は?

曽田啓子ビューティービジネスプロデューサー(以下、曽田):関西では高島屋大阪店が5月18日、大丸松坂屋百貨店が19日に一部再開し、阪急阪神百貨店をはじめ全店舗が21日には全面再開しています。宣言解除が東京などより一足早かったので店頭の状況も見えてきています。館の対応としては玄関前に体温測定のためのサーモグラフィーを設置したり、マスク着用と手指の消毒を呼びかけたり、入り口と出口の扉を分けたりするなどの対策をとっています。化粧品売り場の状況は、美容部員はマスク着用必須で、フェイスシールドを全員に支給している店舗もあります。テスターにはビニールをかけて自由に使用できないようにしているほか、対面カウンターにはビニールやアクリル板を設置。化粧品は肌に触れるものなので、接触感染、飛沫感染のリスクが高く、お客さまと販売員の安心安全を守るために苦心している様子がうかがえます。

WWD:今は集客を図るのもはばかられるが対応は?

曽田:プロモーションスペースを使ったイベントは休止と聞いています。代わりにニーズの高い衛生関連アイテムやアロマなど香りの商品をクローズアップするなどの対応も。現在は営業再開を待ちわびていた顧客が詰めかけていて、スキンケア商品のまとめ買いが起きています。すなわち顧客に関しては客単価が高く、売り上げが伸びていますが、新客の来店やメイクアップ商品の動きは鈍いようです。ハンドクリームや洗浄ジェルなどは売れていますが、客数が戻ってくるにはかなり時間がかかりそうです。

WWD:消費者のニーズに変化はあるか?

曽田:マスク着用で肌トラブルを抱える人が増えて敏感肌向けや保湿系のアイテムのニーズも増えているのではないでしょうか。そのほか目元のメイクの注目度は上がっていますし、香りや睡眠、免疫力や腸活関連のインナーケアなども同様です。ビューティで扱う品目を広げてあらゆる角度からウィズコロナに向けてアプローチをしていく必要があるでしょう。機能面での訴求も大切です。例えばマスクにつきにくい口紅やマスクの冷却スプレーなど。マスクありきのビューティは新カテゴリーとして強化ポイントになると思います。マスクに精油を垂らしたり、体調管理にハーブティーを活用したり、ビューティのあり方がよりライフスタイル寄りになっていくのではないでしょうか。そうした提案を続けて打ち出していくことが大切で、すぐには難しいですが、少しずつお客さまに戻ってきてもらえるよう取り組みを発信し続けることです。

「今必要なもの」と「いつかほしいもの」、段階を経た提案を

WWD:通常だと今の時期、UVや美白製品が注目ですが、家にいることが多い中で、新たなニーズをキャッチして発信を変えていく必要があるのか?

曽田:おっしゃる通り、例年今の時期に売れるのはUVや美白です。家の中にいるからニーズがない、ではなく、家の中やちょっとした外出時にもその需要はあるものです。近所の買い物に行くにもUVケアは必須ですし、フェイスパウダーなど軽めのベースメイクの提案があってもいい。やれることはたくさんあります。変わることの安心感と変わらないことの安心感のバランスを取りながら両方を伝えていく必要があると思います。

WWD:ウィズコロナの時代に、今後の百貨店が目指すべき方向性は?

曽田:外出自粛期間中、阪急と伊勢丹は店頭在庫以外の別在庫運用が奏功し、EC売り上げが大幅に伸びています。各百貨店ともオンラインの扱いをどう強化していくか、早急な対応が必要だと思います。化粧品販売にとってテスターが使えない、タッチアップができないという状況は致命的。今後はオンラインとオフラインの壁をなくし融合して顧客に新しい情報を発信していく必要があるでしょう。顧客カルテの一元化などの対応も重要な課題だと思います。

WWD:消費者の先を行く提案が求められる。

曽田:ステイホームで自分を見つめ直す時間が持てた人も多いと思います。“おうち美容”“攻めのメイク”といったキーワードも上がってきています。集中ケアやパーツケア、ジェルネイルに見えるネイルシールなどの人気も高まっています。発想を変えることで新たに脚光を浴びる商品も出てきているということです。必要なものと不必要なものがはっきり見えた期間でもあったので、今必要なものと、今は必要ではないけどいつかほしいもの――そのように段階を経て提案をしていくことが求められるでしょう。美しくなりたい、若々しくいたいという欲求はなくなるものではないですし、ベクトルの方向性が少し変わって内面に傾くかもしれませんが、ビューティへの情熱は変わりません。百貨店はラグジュアリーと高揚感を提供するという役割も担っているので、アーティストやブランドと一緒に未来を語ることは外さないでほしいと思います。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.29 林飛鳥「まだデザイナーが最前線に立つ時じゃない。自分のターンに全力を尽くす」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は「ネオンサイン(NEONSIGN)」の林飛鳥デザイナーが、これからのモノ作りのスタンスを冷静に語る。

NEONSIGN
林飛鳥

Q.今、デザイナーができることは?

A.東京がゴーストタウンになり始めた4月中ごろ、感染者の増加が止まらない状況を踏まえて店頭に立つ販売員へマスクを無料配布した。彼らの心労を少しでも緩和することと、他人へ感染させるリスクが高いという事実を再認識してもらうことが目的だった。しかし、医療専門家でもない自分がリスクを顧みずにとった行動でもあり、本当に正しかったのかどうか今でも疑問に思っている。

結論から言うと、自分にできることは何もない。しかしこれはネガティブな考えではなく、職業によって活躍できる分野は違い、今はまだデザイナーが最前線に立つタイミングではないと思っているだけだ。自分のターンが周ってきたときに全力を尽くす。それが一番の社会貢献になるはずだ。

コロナ禍にあっても僕自身がやりたいことや目的は変わらない。変えたところで良い作用も生まれない。ある程度のオンライン強化は必要だが、ファッションはオンラインだけでは絶対に成立しないからそこに執着する必要はない。焦らず、世の状況を読み解きながら適切なサービスを実施していく。

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“新常態”下の時計ビジネス 「モンブラン」はデジタルとコミュニティー力で困難を乗り切る

 「WWDジャパン」6月1日号は、時計特集だ。100年以上の歴史を持つ世界最大の時計見本市「バーゼル・ワールド(BASEL WORLD)」が事実上崩壊し、一方でジュネーブに新たな秩序が生まれようとしている。“激動”という言葉がぴたりと当てはまり、各社がそのうねりに対応すべくデジタル化、DtoC化などさまざまにアクションしている。0.25歩先いく時計業界にファッションが学べることとは?「WWD JAPAN.com」では紙面と連動して、経営トップの肉声を伝える。コンパニー フィナンシエール リシュモン傘下のモンブラン インターナショナルのニコラ・バレツキー(Nicolas Baretzki)最高経営責任者に話を聞いた。

WWD:新型コロナウイルス感染拡大の影響で、主たる大型時計見本市は全て中止された。「モンブラン(MONTBLANC)」への影響は?

ニコラ・バレツキー=モンブラン インターナショナル最高経営責任者(以下、バレツキー):コロナショックは世界中の生活とビジネスのあらゆる面に大きな影響を与えており、われわれをはじめとするブランド、小売、お客さまに混乱をもたらしている。見本市など時計関連の催事も軒並みキャンセルされ、海外渡航や大規模集会に制限がかかる中、リアルイベントと同等の“魔法”を別の方法で提供する必要がある。

WWD:その一つが、4月25日に初めてデジタル開催されたスイスの大型見本市「ウオッチ&ワンダー ジュネーブ(WATCHES & WONDERS GENEVA以下、W&W)」(旧「S.I.H.H.」)なのか?

バレツキー:その通りだ。われわれは「W&W」のデジタルプラットフォーム上で新作を公開している。全ての時計愛好家が「モンブラン」の新作時計について学べる優れた代替手段だ。またメディア向けには、国や地域ごとにビデオ会議ツールZoomを使った新作プレゼンテーションを実施している。日本でも、時計部門の責任者であるダビデ・チェラート(Davide Cerrato)がプレゼンターとなり5月13日に開催した。実機によるタッチ&フィールに勝るものはないが、これらのデジタルによる選択肢は“新しい生活様式”の中で非常に効果的だと感じている。

WWD:コロナショックで「モンブラン」が断念したこと、またそれに立ち向かうべく新たに発足させたプロジェクトなどがあれば聞きたい。

バレツキー:新型コロナは、われわれの健康とビジネスに前例のない課題を突き付けた。「モンブラン」にとっては従業員、卸先、お客さまの安全を守ることが最優先事項だった。その結果、店舗を閉鎖して、徹底した健康対策を実施した。工場もクローズしたため、新作の発売を一部延期した。同時にこの困難は、われわれのコミュニティーの強さを再認識させてくれた。店舗は閉鎖したものの、お客さまとはオンライン接客や電話、手紙でつながっている。もちろん、デジタル版「W&W」も素晴らしい手段の一つとなった。われわれはそこで出会い、時計製造にかける情熱を共有することができた。世界中のビジネスパートナーとお客さまからなる“「モンブラン」コミュニティー”の力があれば、この危機を一体となって克服できるものと信じている。

WWD:“今後、全ての時計ブランドがタイミングを合わせて新作を発表する必要があるのか?”という意見もある。

バレツキー:「W&W」は、多くの時計ブランドが一斉に新作を発表する強力なプラットフォームであり、今後もそれが変わることはないだろう。同時にわれわれは、この状況を新たな発想を生む好機ととらえ、できる限り多くのことを計画してトライするつもりだ。

WWD:具体的なアフターコロナの施策は?

バレツキー:国や地域ごとの商品体験の作成、デジタルおよびオムニチャネルの強化、そしてお客さまとのエンゲージメントの深化が挙げられる。より小規模でエクスクルーシブな、それこそ1対1の関係を構築していければと思う。

WWD:このような状況下でECは有効な選択肢だ。「モンブラン」の現状と今後の課題について聞きたい。

バレツキー:ECは日本はもちろん世界中で、コロナショック以前から非常に強力で急成長中のチャネルだった。引き続きデジタル分野への投資を行い、マーケティング戦略としてパーソナライゼーションを加速させたい。これによりEC売り上げが伸びるばかりでなく、実店舗への誘導も促進できると考えている。

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「少なくとも2、3年は消費は完全には戻らない」 国際政治学者の三浦瑠麗に聞く【下】

 新型コロナウイルス感染拡大に対する非常事態宣言が首都圏でも解除され、商業施設や街は少しずつにぎわいを取り戻しつつある。ただし、拡大第2波への懸念が広がっている自治体もあり、引き続き生活には不安が伴う。予防措置に手を尽くしつつ、いかに消費を取り戻し、経済を前進させていくか。国際政治学者で、テレビ番組のコメンテーターなどとしても活躍する三浦瑠麗・山猫総合研究所代表に、日本や世界の今後について聞いた。三浦代表は今回、コロナショックに苦しむアパレル小売りの事業者がスタートした署名・陳情活動を、政・官につなぐ役割を果たした人物でもある。(【上】はこちらから)

WWD:コロナショックをきっかけに、日本と世界はどう変わっていくと見ているか。

三浦瑠麗(以下、三浦):最新の抗体検査の結果を見れば、新型コロナウイルスによる東京での致死率は0.2%程度とインフルエンザとさほど変わりません。とすれば、新型コロナによる死者数は例年の肺炎全体の死者数にはまるで届きません。感染予防のために経済を止めることはかえって大きな被害を出すことになると思います。でも、一旦自粛に舵を切ってしまった世の中は、180度の転換がなかなかできません。自粛側に切ったハンドルをすぐには戻せないために、長期にわたって消費を冷やしてしまうことになる。日本経済はこれから少なくとも2、3年は苦しい状況になると見ています。アメリカ経済が回復しても、日本経済が回復するのは半年遅れでしょう。トランプ大統領は経済を再開したがっており、欧州各国ももはやロックダウン継続に堪えきれなくなっていますが、現実的に言って、今後2、3年は消費は完全には戻らないということです。

苦しい時期が続くとは言え、その中でいいことがないわけではない。例えばSDGsについては、倫理の面からも注目が集まると思います。人間が経済活動を停止したら突然環境がよくなったと報じられていますね。また、エシカルな消費もより広がるでしょう。ここ数年、スピリチュアルなものが関心を集めやすくなっていましたが、その傾向が今後5年ほど続くと思います。でも、長期的には恐らく大したインパクトを残さず、経済だけが大きく落ち込んだ時期として記憶されるのではないでしょうか。なぜなら9.11(2001年のアメリカ同時多発テロ)の直後は世界がガラリと変わると思われましたが、今はあまり跡を留めていないです。東日本大震災も、言われたほどには日本社会を変えませんでした。そういう点から考えて、本当の意味で消費のあり方が大きく変わるとは言い切れない。あくまで5年程度に留まる変化だと思います。

もちろん、もともと動きがあったものがスピードアップするということはあります。例えばリモートワークやペーパーレス化、印鑑をなくすといった動きです。不要なものを削って生産性を上げる、あるいは地球環境を守ろうという動きは新型コロナ禍をきっかけに加速していきます。ぜいたく品が今後は好まれなくなるというような悲観をする必要はありません。ただ、先進国の人々が内向きになり、経済が落ち込んでしまうと、中国経済の影響力が強くなります。今までもすう勢としてそうだったので仕方のない部分はありますが、中国型資本主義のビジネス慣行は西側(欧米や日本)とは全く違う。そうなると、日本企業が海外でやっていこうとしたときに、今までのような西側のルールでフェアに取り引きができなくなるかもしれない。日本がこれまで享受してきた西側の特徴、例えば人権や環境への配慮といった価値を守るための取り組みが今後必要になってきます。

その取り組みの手段として、一つはトップレベルの外交が必要です。もう一つは日本のビジネスパーソン一人ひとりの努力にかかっています。ここで諦めてしまっては、縮小しつつある国内のパイをめぐってしか競争ができなくなると認識すること。海外企業による買収が怖いからといって内向きになって鎖国しても、それは日本を健全にはしません。日本は少子高齢化で内需は今後弱くなる見込みしかないわけですから、やはり長期的に海外目線を持っていないとしんどい。例えば、感染リスクを恐れてインバウンドを忌避する流れが根付いてしまったら、それは自滅への道です。

WWD:ここ数年、インバウンドの売り上げに拠ってきた部分が大きいアパレル業界としては、反中国、反グローバルといったムードの拡大には危機感を覚える。

三浦:そこはバランスなんですけどね。日本は民主主義国家なので、やはり資本主義の原理だけでは動いてくれません。資本主義の論理を優先した結果、どこかでしっぺ返しがきてしまうのも困ります。トランプ現象もそうですし、欧州各国で排外主義の風が強くなったことにも表れています。民意を無視せず、同時に適切な知識を提供していかないといけない。現代のサプライチェーンは複雑です。一部を除いてはそう簡単に組み換えができないし、そもそも日本固有の文化や産品と思い込んでいたものが、実は外国人労働者の労働力によって供給されているといった場合もある。それは知識を得て想像力を働かせないと分かりません。今の生活を完全に諦めるのでない限り、海外とのつながりを絶つことはできないんだと伝えていかないといけませんよね。

WWD:「9.11も東日本大震災も世界を変えなかった」という話だが、コロナを機にさらに盛り上がっているサステナブルの意識も、一過性なのか。

三浦:テクノロジーの導入、環境意識の高まりなど、不可逆的な流れはもちろんあると思います。しかし全般的に見て、新型コロナ危機が大きく経済構造を変えるということはないと思います。例えば、途上国の労働力に頼りつつ、先進国が高付加価値の商品を作って消費者に売るという構造自体はなくならないし、アパレル商品は季節もので、今ある在庫が来年は無価値になるといったモデルも大きな枠組みとしては変わらないと思います。でも見せ方や伝え方に工夫の余地はありますよね。「ある工法が自然や生物を傷付けているので、それをやめました」といった、サステナブルであることを意識したメッセージなどのことです。サステナビリティとは直結しませんが、外出自粛で着心地のよさなどにもフォーカスが当たりました。そういったことも今後5年は重視されるんじゃないですか?でもそれも、結局は「今年は○○がトレンド」といった流行の話と大きく変わらない。だから根本的な変化とは言えないと思います。

WWD:落ち込んだ消費意欲を取り戻すために、何が必要だと考えているか。

三浦:いかに消費者に不要な罪悪感なしに、消費意欲を取り戻してもらうかが大切です。災害の後にはストーリー性があるものにお金を使いたくなるという傾向があります。作り手を助けているんだと考えるとみんな罪悪感なく消費できる。アパレル業界はこれまでも、女性のエンパワメントや児童虐待の問題など、社会性のある問題に取り組み、そうしたメッセージをキャンペーンなどに取り入れてきたと思います。今回明らかになった価値、ストーリーは何かということにフォーカスしていくことが重要ですよね。「私はこういう感覚を今身にまといたかったんだ」と思ってもらえることが大事だと思います。ファッション誌も今はどこもしんどいでしょうが、災害後は今まで誌面で言ってきたことが上っ調子に聞こえてしまうこともある。もともと資源を大量消費してきた業界が唐突に非常にエシカルな方向に振っても、世の中はついていきません。そこは寄り添い方の工夫というか、加減が大事なんだと思います。

消費の満足感は倫理的な充足感を含んでいます。今後はよいものを手にすることと、おトクであること、エシカルであることがセットになったときに、消費行動が加速していく。これこそがESG(環境、社会、ガバナンス)投資の本質です。現時点ではその経済合理性は少なくても、より多くの消費者がエシカルな側面を重視するようになれば将来的に理に適う。だから投資する。コロナで交流や接触を控えていることで、人肌が恋しくなって、人を思いやるということ自体が欲望の対象になっています。人を思いやりたいという衝動が、ひいてはESG投資を加速させる。人が恋しいという人間の自然な気持ちに寄り添っていけば、長期的に見ればお客さまは必ず戻ってくると思います。ただし、インバウンドはしばらく戻らないので、やはり日本人同士での助け合いや消費は意識的に喚起しないといけません。

WWD:コロナを機に、これまで政治に関心のなかった層の間でも政治意識が高まっている。

三浦:休業で多くの人に時間ができたことと、政治が自分事化したことが大きいと思います。政治とは利益配分なので、薄く広くしか配分を受けない人は関心がない。これまで、日々忙しくしている人にとっては、「政治って何をやっているの?」というのが普通の感覚だったと思います。新型コロナによって一律10万円給付のように配分を受ける対象が全ての人に広がったと共に、政府が対策に失敗したら自分にも被害が降りかかってくるということから、政治が自分事化しました。ところが、私の主宰するシンクタンク、山猫総研の調査では、失業不安を抱えている層はあまり政治化していないんです。経済が打撃を受ける中で、労働者の約半数は失業不安を抱えています。その人たちが野党を応援したり、与党に文句を言ったりしてもよさそうですが、その層の政治意識は高まっていない。つまり、今本当に困っていてもがいている人は政治化していないんです。多少残業代は減っても、そこまで生活に影響のないような人が政治化している。そんなふうに、比較的余裕のある人の声ばかりが政治に反映されてしまった結果、本当に困っている人の声が気付かれないことの方を私は懸念しています。

新型コロナ危機並みに国民の政治意識が高いというのも不健全です。危機になると政治意識が高まるというのは、大恐慌でファシズムが出てきた時代と同じです。国民が政治化すれば必ずしもハッピーな結末になるとは限らない。ファッション業界ではないですが、日ごろはお上に頼らない姿勢の方が健全なんです。もちろん対策について意見を言うことは重要です。せっかく多くの人が政治に関心を持ったのだから、今後も情報を収集し、声を上げていくことはいいと思います。とは言え、繰り返しになりますが政治は利益配分であり、ときに暴力なので、政治の領域を増やせば増やすほどいいかというとそういうものではありません。

WWD:新型コロナの話からは少し離れて、ファッション業界紙としては三浦代表の普段のファッションの楽しみ方についても聞きたい。

三浦:メディアに出る際もスタイリストさんは付けたことがなく、衣装は全て自分で調達しています。買い物は以前はデパートが中心でしたが、最近は路面店にも行くようになりました。行きつけのブティックだと好みに合いそうなものを取りおいていただけるので、効率がいいですね。買い物に出掛けた際は7~8着を試着して、合うものを全て買ってくるといった感じ。よく買うのは「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE & GABBANA)」「グッチ(GUCCI)」「ディオール(DIOR)」。大半は「ドルチェ&ガッバーナ」です。好きな理由は着やせするから(笑)。出るところは出て、締めるところは締めるデザインゆえだと思います。体形に合わないので、日本ブランドはあまり着てきませんでした。肩幅が入らない、肋骨部分が当たるといったことがイタリアブランドだとありません。あとは「エスカーダ(ESCADA)」も好きかな。ファッションとの出合いは兄が買ってきてくれた雑誌の「セブンティーン(SEVENTEEN)」ですかね。自分で服を買うようになったのは大学に入ってから。「エスカーダ」や「ダナ キャラン(DONNA KARAN)」を着るようになって、初めて自分の体形にフィットする服に出合い、「全然違う!」と感じました。当時から気に入らないものをたくさん買うよりは、気に入るものを少しだけ買いたいと思うタイプでした。

WWD:緊急事態宣言が明けても、すぐには以前のような売り上げは期待できない。アパレル業界関係者の多くが「本当に大変なのはここから」と口にしている。業界に向けてメッセージを。

三浦:ファッションは不要不急とされたことに、どうか気を落とさないでほしいです。不要不急という言葉は暴力的で、そういわれた製品を作っている人、売っている人の生活を度外視している。人が何のために生きているのか、何のために仕事を頑張るのかと考えると、おしゃれをして食事をし、大切な人と談笑する、そういったことが私たちを人間たらしめています。ファッションは不要不急と言われたら確かにそうかもしれませんが、それは本質ではないと発信していかなければならないと思います。仕事であれ趣味であれ、人間は誇りを持たないと生きていけません。だからどうかみなさんも誇りを忘れずにいてくださいとお伝えしたいです。私も買い物に行きますし、それが21年以降の経済を作っていく。バッシングされるようなことはしていないと胸を張っていただきたいです。

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使うたびに伝わる温もりを 父の日に贈りたい「ジレット」の温熱シェーバー

 6月21日は父の日。普段口に出来ない日ごろの感謝の気持ちを伝えたり、ギフトなどを贈ったりできる大切な一日だ。しかし、街中の広告やメディアに特集される母の日に比べて影が薄く、カーネーションのように代名詞的な贈り物がない父の日のプレゼントはどうしても悩みがち。でも、せっかくプレゼントするならお父さんが毎日使えるものを贈りたいと思うもの。使うたびにもらった時の嬉しさや家族の温もりを感じてもらえるような、毎日の習慣を特別な体験に変えてくれるような製品を。そんな心も温かくなる父の日に最適な製品が「ジレット」から登場した。

 「ジレット」の「ジレットラボ ヒ―テッドレーザー」は、まるでホットタオルで包みこんだように肌を温めながら心地良いシェービング体験を提案する世界初の温熱シェーバーだ。同製品は、昨年米・ラスベガスで開催されたビジネステクノロジーの祭典、コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)で「BEST OF CES 2019」を獲得したほか、米誌「タイム(TIME)」が選ぶ「2019年の発明品ベスト100」に選出されるなど、その革新的な技術が注目を集めている。加えてCESの「BEST OF CES 2019」受賞の理由の一つである自動加熱保護機能でやけどの心配もいらず、髭を剃るという毎日の習慣を特別な体験に変えてくれる。

世界初 温熱バーを
搭載した加熱式シェーバー

 「ジレットラボ ヒ―テッドレーザー」の最大の特徴である熱センサーを搭載した温熱バー。この温熱バーは、スイッチを押して1秒でシェービングに最適な温度まで上昇して、まるでホットタオルに包まれたようなシェービング体験を提案する。1時間の充電で最大6回まで連続使用でき、フレックスディスク テクノロジーが顔と温熱バーの密着を最大化し、最後のひと剃りまで滑らかで快適な剃り心地を可能にする。ケーブルの抜き差しや配線の手間がない磁気ドッキング型ワイヤレス充電で、無駄のない洗練されたデザインも魅力の一つ。男性の毎日に欠かせないシェービングの時間を至福のひと時へ導く「ジレットラボ ヒーテッドレーザー」は使うたびに感謝の気持ちや思いが伝わり身も心も温めてくれる父の日に最適な贈り物だ。

ホットタオルで
包みこまれたような心地よさ

問い合わせ先
プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン

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突撃洋服店・安田美仁子のアフターコロナを生き抜くヒント 初の著書出版

 老舗古着店「突撃洋服店」の創業者であり、古着表現作家の安田美仁子さんによる初の書籍「古着は、対話する。」(ギャンビット)が4月3日に出版された。フリーマーケットで商売の面白さにとりつかれたのを機に創業して35年。本書には、古着一枚一枚と向き合い、古着で表現することの可能性を広げてきた安田さんならではのシャープで深遠な言葉の数々と、撮りためた写真200点以上が収録されている。店名通り常に攻めの姿勢を貫き、個人のシンプルな思いや違和感、疎外感をビジネスの原動力にしてきた安田さん。古着を通して自身と対話してきた彼女の言葉には、未曽有の危機に直面した今を生き抜くヒントが隠れている。

――本書は安田さんがSNSで発信されたインパクトのある言葉と個性的な古着の写真で構成されていて、強いメッセージ性を感じました。本のタイトルや一つひとつの言葉に込めた思いは?

安田美仁子・突撃洋服店代表(以下、安田):私は昔から古着を擬人化して見てしまうところがあり、アメカジとか、ロンドンの音楽シーンとかにカテゴリー分けされた古着はとても不自由に見えてしまうんです。人間が一つのカテゴリーでくくれないのと同じです。ところが、商業的には人間や洋服をカテゴリー分けして語る方が便利なわけです。その結果、他人と同じような洋服を着ている人が多くなり、それは何か違うんじゃないかって、ずっと違和感を持っていました。

服と向き合うというのは服のことを考えるのではなく、服を通して自分の個性と向き合うことです。「古着は、対話する。」という言葉には服を知ることで自分を知る――そんな意味も込められています。

――古着一枚一枚と真剣に向き合ってきた中からあふれ出た思いや人生観が短い言葉で表現されていて、ストレートに心が動かされます。生き方や自己を考えるきっかけになったり、迷ったときにそっと背中を押してくれたりする言葉も多い。

安田:本を作るきっかけは、店のお客さまで本の編集者でもある方からの提案でした。今の時代、疲弊している人が多いので、若者のマインドを育てる本を作ってほしい、いい意味で無責任で、読み手に委ねる本を作りませんかと。

本作りにあたって最初に取り掛かったのは言葉を選ぶ作業でした。SNSから拾った言葉がA4コピー用紙にして800枚に及びました。そこから厳選した言葉を1冊にまとめたのですが、一番伝えたかったことは「物事はいろんな方向から見られるよ」ということです。

店には、世の中で疎外感を感じている人も多く来店されます。そういう人には、思っているより仲間はたくさんいるよと。ファッション好きでない人にも読んでもらっていて、ちょっとした安心感を持ってもらったり、気づきになればいいですね。

――「ファッションの同質化は思想の同質化につながる」とか「提供する側も常に季節によるマーケティングを意識する。そこを飛び越えたらもっと自由なのに」など、ファッション業界に対する違和感もつづられています。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な流行)によってファッション業界はどう変わると思いますか?

安田:まずビジネスのペースをスローダウンしなければならなくなった。これまでは春夏、秋冬といったシーズンに縛られていて、しかもスピードが求められてきましたが、その価値観が崩れてしまったわけです。スピード重視の枠組みでモノを作ることを考え直すきっかけになったと思います。そうなると、シーズンやスピードに関係なく求められるものは何かを考えないといけない。洋服に対する要求がより明確になっていくでしょう。

――5月14日、渋谷店は予約営業という形で再開されました(インタビューは5月中旬)。立地や家賃によっては店舗運営を見直さざるをえない企業も出てきています。

安田:もともと商業施設が多過ぎると思っています。これまでは大型の商業施設に入るメリットがあったわけですが、今回、商業施設の休業に伴い、多くのテナントが休業を余儀なくされました。そこから言えるのは、路面店のように自分のやり方で営業継続できる方がメリットが大きいということです。

突撃洋服店は都心の中でもあえて駅から離れた場所に出店しています。ただ、神戸店は新型コロナのあおりを受け、入居していたビルから撤退しました。今後はポップアップを展開するのかどうか、継続することを前提にいま考えているところです。

アフターコロナは人の流れが大きく変わります。例えばリモートワークが定着すれば、ムダに家賃の高いオフィスは必要なくなり、不動産に対する価値観も正常化されるでしょう。

――ECを強化する企業が増えています。

安田:ECに移行できる業種であれば、そこに重きを置けばいいのですが、突撃洋服店のオンラインショップはあくまで実店舗の補完的な位置付けです。人が接客をして商品の良さを伝える必要がある業種においては、本当に伝えたいことがあるのかどうか、誰が何を伝えるのかが大切になってきます。だから店のスタッフの気持ちが継続するような環境作りや教育がいっそう重要になってくるでしょう。

――アメリカでの買い付けも難しい状況ですが、品そろえをどのように維持していきますか?

安田:とりあえず、商品量を減らして厳選したものだけを仕入れていきます。そして、今まであったものとの組み合わせ方や見せ方に工夫を加えて編集するのですが、自分の中の発想を広げて新しさを見出すことを大事にしていきたいですね。

――どのように発想を広げればいいですか?

安田:アート的発想で見れば、脳って刺激されますよね。洋服に対しても、売れなくてもいい、見るだけで楽しくなるという発想を持てばいい。店の中にある商品は、季節や性別で区切らなくてもいいし、着られなくてもいいと考えれば、発想がもっと豊かになります。突撃洋服店では売れないかもしれないけど、店にあったらおもしろいという視点でときどき仕入れます。最終的には売れるのですが、そのムダがすごく大事だと思っています。

――最後に、今後の目標は?

安田:6月からオンラインでのライブイベントを計画しています。本の中に登場する一つひとつの言葉の背景を話すことで、顧客以外の方にも共感してもらえると思うのでそこから広げていきたい。もともと古着から考えを拡張して表現することが好きなので、ジャンルを限定せず、いろんなことについて話すことにも挑戦していきたいですね。

橋長初代(はしなが・はつよ)/流通ライター:同志社女子大学卒。ファッション専門誌の編集を経てフリーランスのライターに。関西を拠点に商業施設、百貨店、専門店、アパレル、消費トレンド、ホテル、海外進出などの動向を「WWD JAPAN.com」「日経クロストレンド」などに寄稿。取材では現場での直感と消費者目線を大事にしている。最近の関心事は“台湾”と“野菜づくり”と“コロナ後のファッションビジネス”。「リモート取材が浸透すれば、もっと取材先を広げていきたい」

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大人がショートパンツをはくのは恥ずかしい? 少年風にならない着こなしワザを紹介

 キュロットやショートパンツの復活が目立ってきました。ボトムスではワイドパンツやロングスカートが長く“主役”の座に就いていましたが、2020年春夏はラグジュアリーブランドが相次いで、大人のスタイリングとしてキュロットやショートパンツを提案しています。たとえば、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」は透かし編みのニットトップスと合わせて、涼しげでエフォートレスなショートパンツ姿を披露。今回はパリとミラノのランウエイで発表された春夏コレクションのルックから、夏のコーディネートに役立つショートパンツの着こなしをキャッチしていきましょう。

ショートパンツでスーツ!足元は戦闘モードで

 ショートパンツのスーツは、“ショートパンツ=カジュアル”の思い込みを覆します。「ディオール(DIOR)」はチェック柄のサマースーツを提案。柄が上下でそろっているので、きちんと感が際立ちます。スクールガール風の若々しいムードもまとえます。脚のカバーに役立つのは、ミリタリー由来のコンバットブーツ。ゴツめの顔がタフ感を呼び込みます。秋冬シーズンのヒットが有望なので、夏のうちに“先食い”するのが得策です。

デニムショーツをシャツワンピでオブラート


 あえてバランスを崩すアシンメトリーはこの夏も勢いが止まりません。「ジバンシィ(GIVENCHY)」はデニムのショートパンツに、左右で異なる洗いをかけました。風合いや裾始末も不ぞろいでディテールにこだわりを感じさせます。そこに合わせたのは、ゆるっとしたオーバーサイズのストライプ柄シャツワンピース。正面だけウエストインして、後ろは長く垂らし、裾を遊ばせました。ヒップやももをさりげなくカバーできる自然体技です。

すっきりハーフパンツでニュートラルな大人デイリーに


 マニッシュなハーフパンツを提案したのは「トッズ(TOD'S)」。一見、タイトスカートのようにも見えて、ジェンダーフリュイド(流動的)な着映えです。膝小僧がちょうど隠れる丈感のキュロットは大人女性も取り入れやすいタイプ。レザーのブルゾンにバッグのストラップを響き合わせて、装いに深みを持たせました。足元は素足にローファーで、こなれ感をアップ。全体に中性的でニュートラル、シーズンレスなムードが今の空気感を印象づけます。

制服風ワントーンで強さとフェミニンが同居


 不穏な空気が濃い、今の時代感にぴったりの服に“制服”があります。上品なアレンジを加えた“インスパイア(派生)系制服”は、ぶれない強さと、凛とした雰囲気を醸し出せます。全体の色をそろえるワントーンとも、相性が抜群。「マックスマーラ(MAX MARA)」はトレンドのベージュで全身ワントーンに整えて、穏やかでいてタフなダブルミーニングの装いに。パンプスと同系色のハイソックスがロングブーツのようにも見えて、シャープなレッグラインを際立たせています。

“ボリューム×タイト=めりはり”の強弱方程式


 量感に変化をつければ、短め丈パンツルックにメリハリが加わります。「MSGM」はサイクリングパンツを思わせるストレッチ系ハーフパンツを披露。脚にぴったり沿う分、トップスは思いっきりボリュームアップ。ブラウスの襟や袖がドラマティックで華やかなムードです。アスレチック系のパンツは脚線を引き締まって見せる効果が大。トップスに女っぽさやゴージャス感を盛るのが、程よいずれ具合を生むポイントです。

 キュロットやショートパンツは足さばきがよく、夏に向けては頼れるボトムスです。トップスや靴で異なるテイストを添えると、男の子っぽく見えにくくなります。短め丈パンツが盛り上がる流れは秋冬以降も続く気配。タイツやロングブーツなどとの組み合わが打ち出されています。今のご時世に求められる、足早な外出にも重宝するので、短め丈パンツの着こなし技に磨きを掛けて損はないでしょう。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

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小島健輔リポート コロナ後の店頭販売はタッチレスのデジタル化が急務

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。新型コロナウイルスによって提唱された「新しい生活様式」によって、小売店の接客サービスはどのように変わるべきなのか。

 アパレル業界を追い詰めた緊急事態宣言による店舗休業もようやく終わったが、アパレルの店舗販売がもとに戻るとは思えない。コロナの感染リスクは依然残るし、濃厚接触を避けて生活慣習や購買スタイルが一変してしまうからだ。

 店舗販売の魅力は(1)実品を試着して確かめられる、(2)ヒューマンタッチの接客が得られる、(3)品ぞろえ全体を一覧できる、(4)商品を持ち帰れる――以上の4点だが、コロナ収束後もこれらが魅力となり得るのだろうか。ひとつひとつ検証してみたい。

(1)実品を試着して確かめられる → 実質ショールーム化

 実品の試着はフィットやサイズ、シルエットや着心地を確かめるのに不可欠だが、感染防止上は問題が多い。陽性者が試着したかも知れない服は感染リスクがあるから、一定期間隔離するか、紫外線(UH-C220〜260um)などで消毒しないと次の試着に使えない。事実、営業を再開した米国のギャップ(GAP)では試着室を使用禁止にし、返品された商品は24時間隔離してから売り場に戻している。

 隔離すればその間は試着に使えないし、不適切な紫外線などで消毒すれば焼けや変色という物性損耗も生じる。洗濯すれば消毒できるが、“商品”ではなくなってしまう。フィッティングルームも逐一消毒する必要があるから、利用後にアルコールで拭いたり紫外線ランプを照射することになる。

 かつては販売員が売り場で着用した商品を顧客に販売することは問題とされなかったが、2007年の「ピンキーガールズ(PINKY GIRLS)」事件(販売員が店頭で着用した服を新品として販売していたことが発覚して問題になった)を契機に、売り場で着用する商品は販売員に社販で割引購入してもらう業界慣習が定着した。近年はその購入費用負担が販売員の生計を圧迫し、高価格ブランドは外資系先導で新作品や制服を無償貸与・支給するようになった。高級ブランドのバッグなど、陳列商品はサンプルであって販売員が手袋をして取り扱い、購入する顧客には手垢の付かない新品をストックから出して渡す方式が定着している。

 そんな変化を顧みれば、コロナ後の接客販売では他の顧客が試着した商品は一定の隔離期間を置くか、殺菌消毒してから次の顧客が試着するようになり、高級ブランドバッグのようにお試し用のサンプルと販売用の商品を分けるようになっても不思議はない。売り場の陳列が試着サンプルだけになれば、もうショールームストアと何も違わなくなる。

 試着サンプルだけのショールームストアは理屈の上では合理的だが、試着用のサンプルをサイズを揃えて顧客の要望に応じてピックアップし、試着が終わったら検品し、必要なら再プレスして陳列かストックに戻すオペレーションは極めて煩雑だ。「ザラ(ZARA)」ではワンサイズ陳列型(他サイズは後方ストックから出し入れ)、「ジーユー(GU)」では全サイズ陳列型が実験されたが、いずれもオペレーションが複雑でかえって多数のサンプルや人員を要するなどしてうまくいかず、英国の「アルゴス(ARGOS)」などサンプルを置かないデジタルショールーム型以外は多店化に至っていない。

 隔離や殺菌消毒まで加わるとなると試着サンプルの運用はさらに煩雑になるから、試着のバーチャル化も進めざるを得ない。店舗販売の試着をデジタルでバーチャル化すればECと変わらなくなるから、実品の擬似フイッティングやリモートフィッティングなど、リアリティーをどう残すかが問われよう。

(2)ヒューマンタッチの接客が得られる → AI主導の店内リモート接客

 アパレルの接客ではソーシャルディスタンスは保てないし、フィッティングでは個人空間さえ保てず濃厚接触が避けられない。一般のサージカルマスク(飛沫拡散防止のBFE規格)や布マスクでは濃厚接触の感染防止は不十分だから、フェイスガードと接触感染を避ける手袋を装着する必要がある。

 防染力の高いPFE規格のマスクが望ましいが、サージカルマスクより1ケタ高価で大量入手も難しい。医療従事者用のN95を避け、中国規格のKN95などが選択されるのだろう。フェイスガードは意外と安価で供給も潤沢だから、多くの商業施設で見かけることになるはずだ。

 不要なおしゃべりや親密な接触は感染リスクを高めるから、一歩引いて必要な説明やアドバイスにとどめるしかなく、“おもてなし”というわけにはいかなくなる。マスクで顔の半分が隠れてしまうから、アイコンタクトでのコミュニケーションも必要になる。タブレットの小さい画面ではソーシャルディスタンスは保てず接触感染リスクもあるから、こまめに消毒するとともに、大型ディスプレーに映し出して接客するようになる。

 スーパーマーケットのレジのようにシールドフイルム越しに接客するわけにもいかず、フィッティングでは至近距離の濃厚接触が避けられないから、マスクとフェイスガードに手袋をしても感染リスクは払拭できない。何らかの店内リモート接客に切り替えざるを得ないのではないか。まさかそこまでと思われるかもしれないが、ワコールは強みとしてきたフィッティング接客が疎まれる可能性があるとして、顧客がセルフで3D採寸してタブレットで商品を選ぶ「3Dスマート&トライ」AI(人工知能)接客の導入を加速する。

 顧客としては店舗を絞り込まないで多数の店を買い回るリスクと手間は避けたいから、ウェブルーミング(事前にネットで品ぞろえや仕様を比較検討してから店舗を選択したり商品を取り置いたりする)の比重がますます高まる。ECやSNSの役割が以前にも増して高まり、ネットと店舗で顧客と在庫を一元管理・運用するOMO※1とC&C(クリック&コレクト)※2が必須となる。コロナ休業中に活躍したチャット接客やZoom、Teams接客など、リモート接客の仕掛けが実店舗に持ち込まれても不思議はない。

 不要な声掛けや接近はドン引きされるから、スマホの近接通信(NFC/Bluetooth)ログインでAIがエントリーを受け付けて商品をレコメンドし、AIが呼んだ販売員がソーシャルディスタンスを保って接客することになる。濃厚接触どころか直接的な接触も不可避なフィッティングは、基準トルソーやロボットトルソーによる擬似フィッティング(試着後の消毒も不要)、3Dカメラを使ったリモートフィッティングに移行するしかないだろう。

※1.OMO(Online Merges with Offline):ネットと店舗の垣根を超えた融合を意味し、モバイルフォンをキーツールとしてウェブルーミングとショールーミングを駆使するニューリテール戦略
※2.C&C:EC商品を店舗で渡したり店舗から近隣に宅配したり、店舗に取り置いてお試しや返品の利便を提供するOMOサービス

(3)品ぞろえ全体を一覧できる → EC連携の大型ディスプレイ

 ECではカテゴリーやアイテム、カラーやサイズ、トレンドやスタイリング、掲載からの時間経過や割引率などさまざまなファクターで検索・並べ替えが可能だが、実際の店舗のように品ぞろえ全体を一覧するのは無理がある。技術的には可能だが、スマホやタブレットの狭い画面に3Dで店舗の陳列空間を表現するのは非現実的だ。4K以上の大型モニターでないと実用性はないから、これだけは店舗販売のアドバンテージとして残ると思われるが、ECとテレビショッピングが融合すればアドバンテージを奪われる。

 空間の限られた実店舗では全てのオンシーズン商品を陳列できるわけではないし、ECのようにロングテールな旧シーズン品を置くスペースもない。現行商品や旧シーズンからの継続商品はもちろん、デッドストックのアーカイブ品まで自在に検索して一覧するには、ECと連携した大型ディスプレーによる3D表現が不可欠だ。

 ECと連携しての商品検索やレコメンド、商品情報や顧客レビューのディスプレイ表示はすでに一部のアパレル店舗で実現されているが、ECと同次元の単品表現とコーディネイトにとどまって品ぞろえは一覧できない。陳列空間の3Dモデリングは技術的には難しくないが、処理容量が大きく反応速度が問われるから、システムの処理速度に加えて通信回線かストアサーバのアップグレードが必要になるだろう。

(4)商品を持ち帰れる → C&C拠点化

 ECだと注文から入手までタイムラグがあるし、一定額未満の注文では送料も加算される。その点、C&Cによる店受け取りだと、店在庫を引き当てれば注文から1〜3時間後には受け取れるし、店から近隣地域(積み替えを要しない直行圏)に宅配しても、午後の早いうちの注文なら当日中に受け取れる。店受け取りなら送料は不要だし、近隣地域への店からの出荷も、運賃はハブ&スポークの全国区宅配業者の半額で済むから、政策的に無料にするか、無料となる注文金額のハードルを下げられる。同じ店受け取りといっても、「ユニクロ(UNIQLO)」のように店舗在庫を引き当てできず、EC専用の出荷倉庫から受け取り店舗へ配送している場合は、受け取りは翌日以降になる。

 C&Cを効率的に運用するには、地域の核となる大型店舗を物流と修理加工の拠点として在庫を積み、周辺店舗にルート便で補給して在庫を適正化あるいは店舗をショールーム化し、物流のタイムラグとコストを最小化して顧客利便と在庫効率を最大化する。そんなテザリングの仕組みもコロナ前は店舗家賃の高止まりで広がらなかったが、コロナ後は“3密”回避の入店制限で販売効率が下がり、家賃水準も見直されて大型店舗のデザリング拠点化も進むと思われる。

 大型商業施設デベロッパーの理解が進まないようなら、ファッションテナントの生活圏商業施設シフトが始まるかもしれない。店舗売り上げにEC受注品の店渡しと店出荷が加われば販売効率がかさ上げされ、周辺店舗への補給拠点ともなるからだ。

 店舗は販売だけでなくEC商品の受け取りやお試し、返品、店出荷というC&C拠点、大型店舗は近隣店への補給とローカル出荷の拠点という役割も兼ねるようになり、小型店舗はサンプル陳列のショールーム兼C&Cサービス拠点となるだろう。

決済はキャッシュレスとタッチレスが必須となる

 決済は店舗販売の必要悪で、ECに比べれば手間もかかるし感染リスクもある。現金の受け渡しはあまりに危険だからキャッシュレス化が急速に進み、クレジットカードやポイントカードの受け渡しや暗証番号入力も疎まれるからタッチレス決済に移行する。スマホの操作を要するコード決済より格段にスピーディーな近接通信(NFC/FeliCa/Bluetooth)決済、あるいは生体認証と画像解析AIによる自動精算が当たり前になるのに時間はかからないだろう。

 レシートやクーポン券などペーパーを手渡すのも感染リスクがあるから、プリンターを顧客側に向けて出力するか、近接通信でスマホに送ることになる。ショッピングバッグもエコではないし、手渡せば感染リスクがあるから、レジ前に置いたショッピングバッグにセルフで入れてもらうか、顧客のエコバッグに自分で入れてもらうことになる。セルフ化における防犯は、決済時にRFID(無線電子タグ)を自動で読み込んでストアサーバで売り消し、出口の床センサーで検証する方式が主流になるのではないか。

 感染防止対策も加わり、試着サンプルだけの陳列と擬似フィッティング用のロボットトルソー、AI装備のタブレット端末や大型ディスプレイが並び、フェイスガードとマスク、手袋で防護したスタッフが距離を取ってリモート接客するアフターコロナのアパレル店やランジェリー店は、いったい何屋に見えるだろうか。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.28 内田文郁「先の未来を想像できるよう表現を続けること」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、ビンテージウエアのバイヤーを経て、2014年に「フミカ_ウチダ(FUMIKA_UCHIDA)」を立ち上げた内田文郁デザイナーが登場。

FUMIKA_UCHIDA
内田文郁

Q. 不安が続く状況下で、ファッションデザイナーが人々にできることは?

 今できることは、先の未来を想像できるように表現を続けること。制限された環境は人の想像力を高めることができると思う。

 自分が自由で居れる大切な表現の一つにファッションというものがある。私自身も自分を保つために服を着ているんだと改めて感じ、それと同時に服を通しての人との交流にどれだけエネルギーをもらっていたことにも気付いた。

 大きな変化を受け入れて、どういうブランドでありたいのか、どのような服を作っていきたいのか、今、原点に戻って考える大事な時期になっている。新しい価値観を構築できるチャンスであるとポジティブにとらえ、今後の発表の方法などアプローチを再考したい。

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ドイツの“Gビューティ”はクリーンが人気 ベルリン発新鋭ブランドは新型コロナ禍でも前向き

 スタートアップ企業が集まるドイツ・ベルリン。ビューティ業界でも、ロレアル(L'OREAL)などの大手企業は(ドイツ)本社をデュッセルドルフに構える中、ベルリン発のブランドが次々と誕生している。中でも注目の新進気鋭なブランドには、いくつか共通点がある。(1)効能に科学的な根拠を持つ自然由来の成分を配合する、(2)サステナビリティに積極的に取り組む、(3)ドイツらしいデザインを物語るミニマリスティックなパッケージを特徴としつつ、カラフルな色や感性に訴えかける香りを採用する、(4)使いやすさを重視するーー。こういったこだわりは環境や健康に強い責任感を持つ若年層に強く響き、支持を得ている。

 また新型コロナウイルスは経済に大きな影響を与えているが、ベルリン発のビューティスタートアップは上記のようなこだわりを強く打ち出しながら、前向きな姿勢を保っている。ドイツでは少しずつさまざまな規制が緩和されてきており、ほとんどのサロンも営業を再開している。スキンケアやメイクアップ、フレグランス企業は、明るい未来に向けて着々と前に進んでいるようにみえる。

 ここでは、そんな“G(ジャーマン)ビューティ”の新星とも言うベき、ブランドや小売店を5つ紹介しつつ、それぞれに新型コロナ禍の影響についても聞いた。

アメイジングリー(AMAZINGLY)

 ベルリン発のオーガニック・ナチュラル化粧品専門店。2011年にオランダ人のフローリス(Floris)とイングリッド・ヴァン・オンナ(Ingrid Van Onna)が立ち上げ、自社ブランドに加え、国内外のナチュラル化粧品を数多くそろえる。立ち上げて数年はECでのみ展開していたが、17年にはベルリンに路面店をオープンした。

 ヴァン・オンナ創業者は「ドイツの化粧品市場は飽和状態ともいえる。国外のブランドの多くはドイツへの進出を簡単だと思っているが、現実はそんなに甘くない。マス市場は価格競争が起き、プレステージ市場はそこまで大きくない」とドイツの化粧品市場について語る。「しかし、厳しいレギュレーションのもとで作られたドイツ産の化粧品は海外でも高い評価を得ている。“メード・イン・ジャーマニー”は、かなりポテンシャルがある」。

 新型コロナは、17人の従業員を抱える同社にも大きな打撃を与えた。「店舗が閉まったとき、卸しの売り上げは75%ほど落ちた。その一方で、オンライン売り上げは25%増えた。そのおかげで解雇をせずにすみ、倉庫の従業員にはボーナスを支給した」。また、新型コロナ禍でもよく動いている製品はあるという。「ここ数カ月の間では、『FYIコスメティックス(FYI COSMETICS)』の美容液『スクワラン』と日焼け止め『プロテクティブ デイリー モイスチャライザー SPF 30』が爆発的に売れている。特に日焼け止めは紫外線だけでなくポリューションやブルーライトなどから肌を守り、デイリー使いにぴったり」。

エール(AER)

 100%ボタニカル成分を用い、ベルリンで手作りしているフレグランスブランド。「グッチ(GUCCI)」や「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」でフレグランスのディレクターを務めた経験を持つテッド・ヤンイン(Ted Young-Ing)とヘア・ビューティコンサルタントのステファン・ケール(Stefan Kehl)が18年に設立。ヤングイング創業者は「ドイツ人は流行よりも質を重視するので、ナチュラルな原料で作られた上質な化粧品を求める。『エール』では全て手作業で生産し、原料もなるべくドイツ国内で調達している」と語る。ラグジュアリーなガラスボトルのフレグランスはオンラインだけでなく、新型コロナの蔓延前はドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)などの実店舗でも取り扱われていた。

 「売り上げは正直激減した。2月ごろから新型コロナの影響を受け、3月は状況が悪化し、4月は底をつく状態に。売り上げのビジネスが卸なので、リテーラーが閉店している限りはわれわれのビジネスも止まっている。本当は新しい香りと新ブランドを発表する予定だったが、その計画も頓挫してしまった。今はこの状況を乗り越えられるように、既存ビジネスの存続に注力している」と厳しい現状を語った。一方で、「キャンドルやホームフレグランスが好調なほか、美しい香りのハンド消毒液を作り、売り上げをけん引している」という。

 ベルリンで起きている“アヴァンギャルドフレグランス”ブームをけん引する2人はポジティブに前を向く。「ベルリンでは今、インディペンデントな調香師や新規ブランドが多く頭角を現している。少しずつ他国からも注目を集めており、今後(ベルリンのフレグランス市場の)ポテンシャルは大きく花開くと思う」とケール創業者。

ギッティ(GITTI)

 全成分が天然由来で、そのうち55%が水というナチュラルなネイルポリッシュブランド。19年にジェニファー・バウム・ミンクス(Jennifer Baum-Minkus)が立ち上げ、処方はビーガン、パッケージもサステナブルな素材を用いている。「ドイツではクリーンでナチュラルな製品が人気で、クリーンビューティブランドが次々と誕生している。『ギッティ』はベルリン発だが、ネイルの色は世界中の文化からインスパイアされており、インターナショナルなブランドだと考えている」。

 バウム・ミンクス創業者は「この非常事態の中、チームのメンバー同士は今までよりも距離が近くなった。今は9人の従業員が在宅勤務しているが、完全にデジタルで仕事ができるように環境を整えた」と話す。また、新型コロナウイルス流行で健康に気を使う人が増える中、クリーンビューティのニーズも高まっていると感じているようだ。「今こそ、ノントキシック(無毒)な処方のネイルをみんな求めているわ。そして在宅でネイルケアをする人が増え、売り上げは伸びた」と話す。

メルム(MERME)

 元モデルでオーストリア出身のクレア・ラルストン(Claire Ralston)が手掛ける「メルム」は、人工成分や香料などを一切使わないスキンケアブランド。美容液からフェイスミストまで、ほとんどの製品は1つの原料だけで作るという究極のシンプルケアを提唱し、手頃な価格帯でも人気を集めている。「Gビューティは高品質とハイパフォーマンスでありながらもアフォーダブルなことで知られる。また、サステナビリティやエコフレンドリーな取り組みはインターナショナルな市場に影響を与える」と語るラルストン創業者。

 「新型コロナウイルスは世界を大きく変えた。われわれはこのグローバルな危機を乗り越え、より意識を高く持って協力的な会社でいようと努めている。メルムでは全てのオペレーションをデジタルにシフトし、従業員も在宅勤務をしている。ブランドのファンがさらに満足できるように、ビジネスの方針を見直し、新たなスタートを切った」と希望を口にした。

ケス(KESS)

 インクルーシビティーをうたう米国ブランドにインスパイアされ、あらゆる人が使えるメイクアップ製品をそろえる「ケス」。コンサートやイベントのチケット販売を行うイベントニム(EVENTNIM)が展開するブランドで、製品はいたってシンプルでありながらマルチな機能性を持ち、デイリー使いできることで人気だ。ビーガン処方で、パッケージもミニマル。ベストセラーの「ザ デュオ スティック」はチークとハイライトが一つになっており、スティックタイプで誰でも使いやすい。

 ヴィクトリア・シンフ(Victoria Schimpf)=コミュニケーションディレクターは「ドイツの消費者の目は厳しく、必ず成分や効能をチェックする。(成功するには)そんな彼らの信頼を得るのはマストだ」と説明する。現在はオンラインのみで展開しているため、店舗の臨時休業や閉店は行う必要がなかったという。またオンラインストアでは、ここ数カ月は継続してハイライターが人気だったという。「この厳しい状況の中、ベルリンの小規模なブランドは互いに支え合っている。みんな競合相手だが、競争は感じないわ」と、ベルリンのスターツアップカルチャーについて話す。

 新型コロナウイルスの影響でサステナビリティへの取り組みは加速すると予想されているが、それはビューティ業界においても間違いなく言えることだろう。Gビューティの中でもユニークなコンセプトや社会と環境に強い責任感を抱くベルリンのスタートアップは、次世代のビューティブランドと感じている。そんなベルリン発のGビューティブランドに、ぜひ注目してほしい。

Laura Dunkelmann(ローラ・ダンケルマン) : ドイツ・ハンブルク生まれ。ファッションジャーナリズムを学び、雑誌編集者に。現在「タッシュ(TUSH)」マガジンのビューティディレクターを務めながら、フリーランスエディターやビューティブランドのクリエイティブコンサルタントとしても活躍中

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就任から2年で売上高3倍に トップが語る「パコ ラバンヌ」好調の背景

 ヨーロッパを中心に、プーチグループ傘下の「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」の評価が高まっている。ジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)=クリエイティブ・ディレクターによるクリエイションがさえているだけでなく、バスティアン・ダグザン(Bastien Daguzan)=ジェネラル・ディレクターの指揮するリブランディングが功を奏し、売り上げは2017年から2年で3倍に伸びた。そして新たな一手として、パリコレ期間中の3月3日にはフォーブールサントノレ通りにテクノロジーを生かした新コンセプトの店舗をオープン。カンボン通りの旗艦店と百貨店のインショップ2店と合わせ、パリだけで4店舗態勢になった。3月中旬からは新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンの影響を受けて一時休業していたが、5月13日からアポイントメント制で同店と旗艦店の営業を再開。今、大きな変革期に立ち向かうダグザン=ジェネラル・ディレクターに、好調の背景やビジネスの現状から今後の展望までを聞いた。

――新店舗をオープンしたフォーブルサントノレ通りは、旗艦店を構えるカンボン通りにも近い。どのような違いがあるのか?

バスティアン・ダグザン=パコ ラバンヌCEO(以下、ダグザン):新店舗はカンボン通りの店を補完するもので、新たな方法での顧客体験をより重視した店になっている。今はアクセサリーやメンズなど商品ラインアップが拡大しているので、150平方メートルの店内はブランドの世界観に浸れる空間になっている。また従来のようなグローバルで統一された内装以上に調度品と「パコ ラバンヌ」ならではのオブジェを融合することによって、異なる小売りの在り方を探求するプロセスでもある。

――ヨーロッパでは約2カ月間店舗の一時休業が余儀なくされたが、ビジネスへの影響は?

ダグザン::3月中旬からヨーロッパでは店舗での販売をストップしていたが、その一方でオンラインは好調だった。新型コロナによる危機はどのブランドにも等しく影響を与えている。その中でまず私たちが向き合わなければいけないのは、小売り網と卸し先における20年春夏シーズンの過剰在庫だ。20-21年秋冬のオーダーに関しては前年同期に比べると伸びているが、新型コロナの影響で予算をカットしたクライアントもいてキャンセルが発生した。そして21年春夏に関して言うと、クリエイティビティーは維持しながらもソーシングやコレクションの規模など、これまでにないほど多くの問題を含めて取り組み方を再考する必要がある。セールスに関しては新たにオンラインショールームを準備しているし、従来型のランウエイショーというよりも、臨機応変なプレゼンテーションのような計画を進めている。

――最新の業績と伸張率は?

具体的な数字については明かせないが、一つ言えるのは17年から19年までの2年間で売上高が200%増になったということ。今年に関しては計画を見直すが、考え方としてはポジティブなままだ。特にオンラインでの売り上げが全体の50%を占めており、ブランドの成長を支えていることは間違いない。その背景には、より若い顧客の増加がある。

――現在の小売りと卸の割合は?そして、理想的なバランスとは?

ダグザン:現在も売り上げの大部分は卸だが、私たちはもちろん小売りを成長のチャンスととらえている。そのためこの半年間、ファッションとフレグランスを扱う自社ECの開設と新店舗や百貨店のインショップのオープンに取り組んできた。個人的には、この2つのチャネルのハイブリッドが現実的なオムニチャネルアプローチの上で有効な方法だと考えている。またブランドにとってのいい目標と見据えているのは、オンラインとオフラインのグローバルな小売り網で売り上げ全体の半分以上を生み出すこと。そのためにポップアップの戦略が重要であるのは明らかで、つまりそれは卸のネットワークの中で消費者に語りかけるとともに、ブランドの確固たる存在感を築いていくための方法だ。その結果によって、百貨店のインショップや単独店へと発展することができる。

――アクセサリーのラインアップも充実し、20年春夏にはメンズウエアもスタートした。商品開発についてはどのような考えか?

ダグザン:まずは、クリエイティブ・ディレクターのジュリアンとグローバルなクリエイションのプロセスについて深く建設的な話し合いをした。最初に決めたのは、ルック単位で考える前にアイテムを作るということ。そして、クリエイティビティーとより商業的なアイテムをどのように融合させるかを議論することが次のステップになり、消費者にとって価値のあるクリエイティブな提案を行うために私たちの関心を融合させる方法を生み出した。またリソースの配分に関する課題もあったので、新しいカテゴリーを本格的に始める前にウィメンズウエアにフォーカスすることに。その中で、アイコニックな商品を頂点に置いたピラミッドをつくり、クリエイティビティーの自由を探求するファッション性の高いアイテムからイージーウエア、アクティブウエアまでをそろえた。これらの柱ができたことによって、大幅なポジショニングの変更とソーシングの再配に加え、ウエア同様の方法でアクセサリーラインを探求することも可能になった。メンズウエアに関しては、ブランドとしてクリエイティブの新たな領域を開拓するための自然な流れだ。商品開発は長期的なプロセスであり、適切に行うためには次に進む前に明確な節目を定義することが重要だった。

――「パコ ラバンヌ」といえば、メタルパーツをつなぎ合わせたウエアやバッグの印象が強い。そういった象徴的なアイテムの重要性とは?

ダグザン:私たちの提案の中には“アイコンズ”と“エッセンシャルズ”という定番商品のカテゴリーがある。顧客はそれらの商品を求めて私たちのところに来てくれているので、新しいものを求め続ける既存のファッションシステムであっても、象徴的なアイテムを提案し続けるのは自然なことだ。「パコ ラバンヌ」のストーリーは長い旅路であり、ブランドとして毎シーズンのコレクションは新しい本ではなく、その中の新たな一章だと考えている。このような継続性があるからこそ、私たちは顧客の習慣との結びつきを強めるとともに、シーズンごとのクリエイティビティーを“アイコンズ”や“エッセンシャルズ”の中に組み込むことができる。また未来に向けた新たな意志を形にするため、自由なクリエイションを保つことにも配慮している。

――今は高い服を売るのがなかなか難しい時代だが、価格設定についてはどのように考えるか?

ダグザン:もちろん価格設定は重要。私たちは、17年から市場に出回るボリュームと効率性を高めるために価格帯を見直した。目指したのは、顧客にとっての適正価格を保ちつつ、クリエイティビティーを維持すること。また、より若い世代にも訴求したいと考えていた。その点において市場で正しい価値を持った商品でない限り、価格は明らかな障壁になる。最も難しいのは、提案と顧客にもたらす価値の妥当なポイントを見極めることだ。

――「パコ ラバンヌ」が属するプーチ(PUIG)グループには「ニナ リッチ(NINA RICCI)」や「ドリス ヴァンノッテン(DRIES VAN NOTEN)」もあり、全体的にアクセサリーよりもウエアに強い印象だ。グループ内での「パコ ラバンヌ」の位置づけとは?

ダグザン:「パコ ラバンヌ」らしさは明確だ。私たちは、ブランドのDNAに忠実なアイコニックな商品から大きな収益を生み出している。また、最初の拡大計画としてウエアに注力したが、現在はバッグやジュエリーといったアクセサリーが急速に成長していて、提案する商品、ボリューム、売上高のバランスがよくなっている。とはいえ、ビジネスの大部分を占めているのがウエアであることは変わらない。

――現在日本ではエドストローム オフィス(EDSTROM OFFICE)がセールスとPRを手掛けている。日本市場での拡大についてはどのように考えている?

ダグザン:日本では既存のパートナー(卸し先)と協力しながら、一歩ずつブランドを発展させていきたい。またオーガニックな販路拡大のため、パートナーたちと信頼関係を築いている。例えば、18年に私たちはドーバー ストリート マーケット ギンザ((DOVER STREET MARKET GINZA)とタッグを組み、日本の消費者に「パコ ラバンヌ」の世界観を体験してもらう素晴らしい機会を設けた。今後のステップとしては、オンラインまたはオフラインで消費者に直接アプローチすることが考えられる。しかし国際的な展開の前に、まずパリの新しい小売りモデルから私たちは学ぶ必要があるだろう。

――新型コロナ終息後の見通しは?

ダグザン:ファッションはこれからも私たちの身近なモノであるだろうけれど、スケジュールについてはアプローチを変えなければならない。実際、複雑なサプライチェーンのエコシステムの中で、時間を要するクリエイティブのプロセスとどんどん新しいものを求める流通のニーズの間には対立があるが、新型コロナのパンデミックの状況下でこのシステムはもはや有効ではなくなった。私たちは、そんなシステムを押し付け続けるよりもむしろ需要に適応しなければならない。さらに、ますます早期化するデリバリーに応えるという義務から脱して、よりタイムレスな方向へと移行する必要がある。私たちが考えなければいけないのは、長期的な価値、オーセンティシティー(真正性)、そして顧客エンゲージメントだ。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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“新常態”下の時計ビジネス 「ブライトリング」は「年に一度の新作発表にこだわらない」

 「WWDジャパン」6月1日号は「時計特集」。100年以上の歴史を持つ世界最大の時計見本市「バーゼル・ワールド(BASEL WORLD)」が事実上崩壊し、一方でジュネーブに新たな秩序が生まれようとしている。“激動”という言葉がぴたりと当てはまり、各社がそのうねりに対応すべくデジタル化、D2C化などさまざまにアクションを起こしている。0.25歩先を行く時計業界にファッションが学べることとは?「WWD JAPAN.com」は紙面と連係して、経営トップの肉声を伝える。スイスの時計ブランド「ブライトリング(BREITLING)」は、2019年に「バーゼル・ワールド」との決別を表明。今年は8月26~29日の予定で、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下の「ブルガリ(BVLGARI)」や、ケリング(KERING)傘下の「ユリス・ナルダン(ULYSSE NARDIN)」「ジラール・ペルゴ(GIRARD-PERREGAUX)」、さらに独立系ブランドと共に展示会「ジュネーブ ウォッチ デイズ(GENEVA WATCH DAYS)」を開く。ジョージ・カーン(Georges Kern)最高経営責任者(CEO)が見る時計業界の未来とは?

WWD:「バーゼル・ワールド」が事実上崩壊し、年に1度、各社がそろって新作を発表することに懐疑的な意見も出ている。「ブライトリング」の新作の見せ方に変化はある?

ジョージ・カーン=ブライトリングCEO(以下、カーン):新作発表については18年から、開催時期や場所を柔軟に決定してきた。それがバイヤー向けのローカルロードショーであり、メディア向けのブライトリング・サミットだ。これによりブランド、バイヤー、メディア、そして顧客の距離が縮まり、発表から発売までの間隔も短縮できた。顧客は、新作発表後すぐの購入を期待している。「ブライトリング」は“年に1度”にこだわらず、定期的に新作を発表するつもりだ。ブライトリング・サミットは新作のテーマと市場動向を考慮しながら開催時期と場所を決定しているが、現在は今秋と来春の開催に向けてさまざまなプランを検討している。

WWD:“コロナショック”により、高級時計の主たる購入者である富裕層にも変化があるはずだ。資産価値の高い時計にいっそう注目が集まるのでは?という予測もある。

カーン:コロナショック以前からラグジュアリー市場は大きな変化したが、今後はより“インフォーマル”で多様でサステナブル、目的意識が高くて意義深いことに重点を置くようになるだろう。「ブライトリング」は、かねてから海洋保護団体のオーシャン・コンサーバンシー(OCEAN CONSERVANCY)や国際慈善団体のクベカ(QHUBEKA)とパートナーシップを結び、海を守り、そしてアフリカの人々に自転車を届けてきた。また、世の中は少しスローダウンするはずだ。これは時計業界にとってポジティブなことだ。人々が、機械式時計などクラフツマンシップあふれるアイテムに真の価値を見いだすからだ。これらの社会変化に対応できないブランドは失速するだろう。

WWD:混迷の時代に「ブライトリング」が行う打開策とは?

カーン:バイヤー、メディア、顧客とのコミュニケーションを維持するため、また新作を紹介するために、4月16日に初めてウェブキャスト・サミットを実施した。私自身がプレゼンテーションを行い、現在もブランド公式サイト上で公開している。

WWD:女性向けのプロモーションを強化している印象だ。「ブライトリング」のアンバサダーユニット“スクワッド”を日本向けに女性で結成するとしたら、どんな人選になる?

カーン:スクワッドはシネマ、探検家、航空、スポーツなどさまざまなジャンルの人で構成されているが、必ずしもメンバーは有名である必要はない。しかし、彼らは間違いなく情熱を共有するプロフェッショナルたちだ。だからこそフォロワーは共感する。日本人女性によるスクワッドを結成するのであれば、同様のアプローチになるだろう。

WWD:新作として、女性向けの“ナビタイマー オートマッチック 35”を発表した。レディスウオッチの戦略について教えてほしい。

カーン:多くの女性を魅了することは重要なミッションの一つだ。雑誌、ウェブサイト、SNS、そしてスクワッドを通じてアピールしてきた。例えばシネマ・スクワッドでは、ブラッド・ピット(Brad Pitt)、アダム・ドライバー(Adam Driver)とシャーリーズ・セロン(Charlize Theron)が共演する。“ナビタイマー オートマッチック 35”の発売に際しては、中国人女優のヤオ・チェン(Yao Chen)を迎えた。彼女は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の親善大使も務める。彼女と共にアジアマーケットを刺激したい。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.27 志鎌英明「これまで以上に強い信念を持つ。私たちは止まらない」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、メンズブランド「チルドレン オブ ザ ディスコーダンス(CHILDREN OF THE DISCORDANCE)」を手掛ける志鎌英明デザイナーが今後のクリエイション活動について熱っぽく語る。

CHILDREN OF THE DISCORDANCE
志鎌英明

Q.今、デザイナーができることは?

A.コロナが猛威をふるい、世界中の取引相手から悲痛なメッセージが届く。事態は深刻だ。それでも私たちは止まらない。これまで以上に強い信念を持ち、勇気を与える服を作り続ける。

ファッションは人の心を華やかにする。人生を変えるほどの勇気や力を与えることもある。私がそうだった。ファッションと出会い、音楽やカルチャーに触れ、友人や仲間ができた。そしていつしかファッションを仕事とするようになった。これからも服に向き合い続けることが、業界への恩返しになると信じている。

今まさに次のコレクション作成を進めている最中だ。コロナが落ち着いたら、たくさんの人の前でランウエイをぶちかましたい。

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ジョー・マローンに聞く、「ザラ」とのコラボコレクションの裏側 「顔のにやけが止まらない」

 「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」の創設者であるジョー・マローンが手掛ける香水ブランド「ジョー ラブズ(JO LOVES)」と、ファッションブランド「ザラ(ZARA)」とのコラボレーションによるフレグランスコレクション「ザラ エモーションズ コレクション バイ ジョーラブズ(ZARA EMOTIONS COLLECTION BY JO LOVES)」が5月27日に発売された。全8種類の香りをそろえ、ユニセックスのオードパルファンとキャンドルを展開する。価格は1081~4536円で、一部を除く「ザラ」の店舗と公式オンラインショップで取り扱う。同じコレクションは日本に先駆けて昨年11月にヨーロッパ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランドで発売しており、SNSでは日本での発売を待望する声が上がっていた。ジョー・マローン氏に今回のコラボコレクションへの思いを聞いた。

WWD:「ザラ」とのコラボレーションのきっかけは?

ジョー・マローン(以下、マローン):「ザラ」から提案を受けて、コラボレーションがスタートしました。最初の打ち合わせから帰宅するとき、にやけるのを止められなかったことを覚えています。共同作業を始めて1年以上がたった今、共に作り上げてきたものに世界を変える可能性が見えるようになりました。それがとてもうれしく、いまだに頬が緩むのを止められません。

WWD:コレクショにはイランイランやベルガモット、オレンジフラワーにラベンダーなど多彩な香りがそろう。インスピレーション源になったものは?

マローン:私自身のワードローブです。特に鮮やかなひらめきをくれた洋服は、大きなベルスリーブの赤い刺しゅう入りの着物、くすんだ琥珀色のカシミヤ製タートルニット、ゴールドのスパンコールドレス、ビンテージジャケットなどです。身に着けていた頃の物語と気持ちをすぐに感じ取ることができたのです。こうしてフレグランスは各物語の秘められた声になりました。力強く印象に残る香りに仕上げています。今の時代を代表するファッションブランドの一つである「ザラ」は、最高の舞台を提供してくれました。

WWD:ファーストコレクションを、ユニセックス仕様のオードパルファンとキャンドルにした理由は?

マローン:コラボレーションを市場に発表するには、道理にかなっていてベストな方法です。誰もが好んでオードパルファンを使いますし、オードパルファンは身にまとうことも家の中にスプレーすることもできます。キャンドルはごく自然な流れでそれに続きました。

WWD:「ザラ」のフレグランスとしては史上初、セロハンやプラスチックを一切使わず、FSC認証紙を用いた外箱やリサイクルを考慮した透明なガラス瓶を使った。パッケージデザインはアートディレクターのエズラ・ペトロニオ(Ezra Petronio)が手掛けている。

マローン:私は環境に対して全ての人が責任を持ち、より積極的になる必要があると考えています。環境に優しい包装を作るにあたり「ザラ」とそのチームと協力できたことに感動しています。

WWD:香水としては非常に手に取りやすい価格になっているが、それを可能にしたものは?

マローン:「ジョー ラブズ」やほかのブランドと今回のコラボレーションでは、ビジネスモデルが大きく異なります。ですが、私が長年愛用してきたプレミアムな原料を世界最高の技術を持つサプライヤーの共に実現しました。何を作るかに関係なく、私は常に同じ誠実さを持って仕事に臨んでいます。

WWD:次のコレクションの構想は?

マローン:これは「ザラ」との長期間にわたるコラボレーションのスタートです。皆さんにお届けしたい素晴らしい香りの物語や、作りたい製品がまだたくさんあります。次のコレクションも、そして店舗で用意している全てのサプライズも気に入っていただけることでしょう。

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500万ダウンロードの人気の口コミアプリ「リップス」の松井友里氏に聞く“ヒットの秘訣”

 アップブリュー(APPBREW)が運営する美容系口コミサービス「リップス(LIPS)」は、開始から3年2カ月で500万ダウンロード、月間サービス利用者数(以下、MAU)は1000万人を突破し、月間PV数は2億PVを超えるなど、ますます人気となっている。さらに4月15日には約11億円の資金調達を実施。5月20日には「リップス」発のD2Cコスメブランド「ミオル(MEOL)」をスタートさせるなど、勢いは増すばかりだ。今回。「リップス」人気の立役者である松井友里代表に、同サービスの強みとこれからについてを聞いた。

WWD:サービス開始から3年2カ月で500万ダウンロード、MAU1000万人という数字から順調に成長していると感じる。

松井友里(以下、松井):2017年1月にサービスをリリースして、18年6月に100万ダウンロードを達成し、その後19年3月に300万ダウンロード、19年9月に400万ダウンロード、今年3月末に500万ダウンロード、MAU1000万人を超えました。18年12月にローラさんを起用したテレビCMを放送して、そこから認知度が高まって、半年で100万ダウンロードずつ伸びています。

WWD:今なお新規ユーザーが増えているが、何をきっかけで知ることが多い?

松井:ユーザーさんの 意見を聞くと、ユーチューバーさんの動画から知ってくれる人が多いです。初期の頃は有名なユーチューバーさんにPRを依頼していたのですが、最近はマイクロなユーチューバーさんに依頼して、そこから知ってくれてダウンロードしてくれている方も多くいらっしゃいます。あと、SEOにも注力し、“〇〇(商品名) 口コミ”で検索すると「リップス」のウェブページが上位に表示されるようになってきています。「リップス」はアプリのイメージが強いですが、ブラウザで見る人もここ最近は非常に増えています。

WWD:500万ダウンロード達成は想定していたよりも早かった?

松井:ほぼ計画通りです。ただダウンロード数よりもウェブも合わせたMAUの方を重視していて、MAUで国内トップを目指しています。現状、国内最大級の口コミサービスにもだいぶ近づいてきています。そうは言っても、やはりアプリユーザーの方がエンゲージメントは高いので、アプリユーザーも増やしつつ、全体のMAUを上げていければと考えています。

WWD:これほどまでに「リップス」が人気となった要因は何だと分析している?

松井:若者が普段から慣れ親しんでいるSNSのフォーマットでサービス展開できていることが大きいのではと感じています。いわゆるミレニアル世代の若い方々は商品を購入、選択する際に「身近な人からの口コミ」を強く意識する傾向にあります。また、情報を取得、消費するだけではなく発信することで、自分の発信したコンテンツを評価してほしい、誰かによい影響を与えたいと思っている方も多くいらっしゃいます。「リップス」は両方のニーズを捉えられたことが、多くの方々にご利用いただけている要因かなと思っております。

「リップス」内で多くのフォロワーを抱える
人気アカウントも誕生

WWD:公式インスタグラムのフォロワー数も63万と多い。

松井:そうですね。インスタグラムに関しては広告を一切打たずにオーガニックでここまでフォロワー数が増えたのですが、現在23歳の女性が運営しています。今は1日6投稿を目安にしていて、「リップス」内での人気の投稿をピックアップして転載しています。その運営担当者もコスメ好きなので、どんな投稿が伸びるのか、その分析に長けています。今後は広告も運用しながら、直近で75万、いずれは100万フォロワーを目指したい。

WWD:「リップス」自体のユーザー層は変化している?

松井:検索からのユーザーも増えてきたので、全体的には少し年齢層は高くなりました。アクティブに投稿しているのは20代の若い人が多いです。とはいえ年齢に縛られることはなく、美容に興味のある人に使っていただきたいです。

WWD:「リップス」内でフォロワー数が多い人だとどのくらいの数?

松井:「リップス」だと、36万フォロワーがトップです。でも、「リップス」内で30万くらいフォロワーがいる人でも、ツイッターだと6万フォロワーだったりする。他のSNSよりも多くのフォロワーを抱えたユーザーが誕生してきているのは、やはり「リップス」自体が大きくサービスとして成長してきていることもありますが、ユーザー同士のコミュニティーが活性化されていることも要因だと考えています。もちろん他のSNSとも連携している人がほとんどですが、「リップス」をメインにしている人は多く、製品データベースと投稿が紐づけられたり、文字制限がなかったり、画像を大きく表示できたり、投稿をストックしていく場所として使いやすいのだと思います。

WWD:タイアップ案件も増えてきている?

松井:増えてきています。最初はドラバラ系のブランドが多かったですが、昨年の末くらいからデパコス系も増えてきました。サンプリングは新客との接触機会を創出するということでずっと人気のプランなのですが、最近はコンテンツチームも体制を強化し、オリジナルの記事制作にも力を入れていて、実際に製品を使用してレビュー記事を書くというプランも人気になっています。5Gに対応した動画関連のプランも始めています。

WWD:“LIPS for Brand”というサービスも提供しているが?

松井:これはブランドに「リップス」内で公式アカウントを開設していただいくサービスです。現在この公式ブランド数が100ブランドを超えました。プランによっては分析機能が追加されて、競合製品と比較して口コミの推移がどうなっているかが分かるので、マーケティングツールとして活用していただいています。この上位版(プレミアムプラン)に加入しているブランドは基本的に継続して使用していただいていますので、さらに顧客満足度を高められるよう引き続き機能改善を実施していきたいと考えています。

WWD:現在は外部サイトの製品販売ページにリンクを飛ばしているが、いずれは自社ECも考えている?

松井:今のところは考えていないです。

D2Cコスメ「ミオル」など
新しい試みもスタート

WWD:今後の新しいサービスや施策は?

松井:アプリの「リップス」内でのコミュニケーションが活性化するようなものを仕込んでいきたいと思っていて、コミュニケーション軸とコスメを探すツールとしての利便性の軸の両軸を同時に強化していくつもりです。今は製品だけでなく、そこで色のパターンも見られるようになっているのでより探しやすくなっています。あとはそのユーザーに合ったレコメンドの精度を高くできるようにアルゴリズムを改善していきつつ、新たなコスメとの出合いの機会を創出していきたいです。

WWD:「リップス」発のD2Cコスメ「ミオル」をスタートさせたが、その狙いは?

松井:もともと「リップス」は美容を愛する多くの方々に利用していただいており、ユーザーさんを毎日見ている中で「人々の価値観やニーズは日々絶え間なく変化していくんだな」ということに気づきました。もちろんプラットフォームという立場から生活に少しでも役立つことを提供していきたいと思っていたのですが、もう一歩踏み込んで生活者の美容体験を向上させる役割を担っていきたいと思ったのがブランドを立ち上げるきっかけとなりました。

生活者の価値観の変化の瞬間を絶え間なく捉え、「ミオル」もユーザーと一緒に変化と成長を遂げるブランドでありたいという思いで、ユーザーの「欲しい」という声を徹底的に追求し、品質向上な使用と向上を目指すスキンケアブランドに育てていきたいと考えています。

WWD:「リップス」自体が大きく成長してきて、松井さんの役割も変わってきている?

松井:「リップス」は軌道に乗っているとはまだまだ言えないですが、ある程度は体制が整ってきたので、今は「リップス」も見つつ、新規事業の立ち上げをメインにやっています。アップブリュー自体がアプリ開発の会社なので、「リップス」で学んだことを生かしつつ、次の柱となるアプリも作っていかないといけないなと考えています。新規事業はまだ小さなチームでやっていて、新規プロダクトはテスト運営をして、さまざまなデータをとりつつ改善しているところです。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.26 青木明子「未来に向けた装いを提案し、希望をつくり出す」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、2015年春夏にデビューして以来、「LVMHプライズ」のセミファイナリストや「毎日ファッション大賞」の新人賞・資生堂奨励賞などに選出され、国内外で注目を集める「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」の青木明子デザイナーが登場。

青木明子/AKIKOAOKI

Q. 不安が続く状況下で、ファッションデザイナーが人々にできることは?

A.現在のような状況下だからこそ得られる新しい見識や、変化する時代について考えている。今できることは、未来に向けた人の装いを提案して、希望をつくり出すことだと思う。この先、どんなことが起きても柔軟に対応していきたい。

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“選択肢を広げたい” 女性エンパワーメントメディア「ブラスト」が生理用品ブランドを立ち上げ

 女性向けのエンパワーメントメディア「ブラスト(BLAST)」を運営するブラストは、生理用品ブランド「ナギ(NAGI)」を立ち上げ、5月28日に発売を開始した。

 商品の第1弾は、生理中にナプキンなしで使用できる吸水性のあるサニタリーショーツ。クロッチ部分が防水や防臭、吸収、速乾の機能を持つ生地の4層構造になっており、スタンダードタイプでナプキンの約3枚分(30mL)の吸水性能を持つ。使用後はぬるま湯に浸し、洗濯機で洗って繰り返し使用することが可能。デザインはスタンダード、スリム、フルの3型で、素材の調達から生産まで日本国内で完結したメード・イン・ジャパン。価格は5250〜5800円で、「ナギ」の公式オンラインサイトで販売する。

 商品開発では150人の女性の声を聞き、1年半以上をかけたという石井リナCEO(最高経営責任者)に、生理用品ブランドを立ち上げた理由や開発秘話を聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):生理用品ブランド「ナギ」を立ち上げるに至った経緯は?

石井リナ・ブラストCEO(以下、石井):2016年にブラストを立ち上げたのは、フェミニズムやダイバーシティーのムーブメントが起こっている海外と日本国内とのギャップを感じたことや、各国における男女格差を測る「ジェンダーギャップ指数」で日本が先進国の中で最下位という結果にショックを受けたことがきっかけでした。女性たちに制約があり、バイアスがかかっている日本の現状を知ってもらいたいという思いとともに、女性たちをエンパーワメントし、解放するために会社を設立したんです。メディアからスタートさせましたが、立ち上げ時からメディアとプロダクト、コミュニティーの3軸にしていきたいという考えがあり、ライフスタイルに寄り添ったサポートができるプロダクトを作りたいと思っていました。その中で、女性にとってすごく身近だけれど、まだポジティブな印象がない生理用品から取り組むことにしました。「ナギ」の名前は日本語の“凪”が由来で、「いつでも女性たちが凪のように穏やかに過ごせますように」という思いを込めています。

WWD:商品の第1弾に吸水ショーツを選んだ理由は?

石井:生理用品にはいくつかカテゴリーがありますが、日本でメジャーなのは紙ナプキンとかタンポンです。アンケートをとってみると7〜8割くらいの人が紙ナプキンを使っている状況で、タンポンや布ナプキン、月経カップはマイナーだということが分かりました。日本の女性はタンポンを使ったこともない人たちもわりと多く、膣の中に入れるタイプの生理用品は、日本の女性が億劫に感じてしまうものだということに気づきました。そこでプロダクトに選択肢を広げたいという考えや、私自身も使ってみて快適だったこともあり、吸水ショーツを作ることに決めました。

“自分の体をコントロールすることは自分の人生をコントロールすること“

WWD:商品作りはどのように進めたのか?

石井:一度「ブラスト」のメディアはコンテンツの更新をストップし、「ナギ」の開発に資金やリソースを集中させました。OEM(相手先ブランド製造)と組んで試行錯誤しながら作っていったのですが、私はずっと広告代理店やオンラインメディアで仕事をしてきたので、商品作りがこんなに時間がかかるということに驚きの連続でした。トライアンドエラーの時間はもちろん、染色に1カ月、サンプル作りに1カ月ということに「え、もっと巻けないんですか」と思ってしまうこともありました(笑)。一方で企画については、「ブラスト」をコミュニティー化していたので、一部読者の方たちに「ナギ」のサポーターとして、事前のモニターやアンケートに協力してもらいながら、声を拾っていきました。

WWD:商品のポイントは?

石井:「ナギ」のショーツは、吸水部分が消臭機能や制菌効果(菌を減らす効果)のある機能素材の4層構造でできています。私も海外の吸水ショーツをいくつか使用しましたが、吸収するのが遅かったり、消臭性、防臭力が弱かったりと感じることがあり、その点をアップデートしました。また、クロッチ部分をダムのような構造にすることで、端から伝え漏れしないように工夫。日本の機能素材を使い、国内の高い技術を持つ縫製工場で一つ一つ手で縫製しているという部分でも、高いクオリティーのプロダクトにできたと自負しています。

WWD:デザインへのこだわりは?

石井:私たちは“女性をエンパワーする”という思いで立ち上がった会社で、「自分の体をコントロールすることは、自分の人生をコントロールすること」という考えを持っています。そういう意味でも女性が主体性を持つきっかけになるようなデザインにしたいと思いました。従来の生理ショーツは、血の色が目立たないように黒やネイビーが多いと思いますが、黒だけではない明るい色も入れたかったのでブルーとパープルとオレンジの3色を用意しています。また、レースがあった方がいいのかなどアイデアもあったのですが、アンケートでは「生理用のショーツはシンプルなものが使いやすい」という声が多く挙がったので、今のデザインに着地しました。

WWD:販売方法はどのように考えている?

石井:自社ECとSNSをメインに考えていますが、バズワードになっているD2Cにハマろうというわけではないです。私たちと親和性があるセレクトショップやショップがあれば、卸で販売する可能性もあると思います。本当は、発売に合わせてポップアップショップを開きたいという考えもあったのですが、新型コロナウイルスの影響もあり、オンラインだけでのスタートになりました。

“社会の構造に目を向けるきっかけに”

WWD:日本でも複数の吸水ショーツブランドが出てきて、フェムテックの分野が盛り上がっていきそうです。

石井:「ナギ」はフェムテックが盛り上がっているから始めたということではなく、女性にとって選択肢の少ないカテゴリーに、選択肢を増やしていきたいという思いからスタートさせています。今、フェムテックが盛り上がっている理由は、女性たちの可処分所得の増加や、女性起業家、女性VCの増加、「#MeToo」などのフェミニズムのムーブメントがあると思います。今後、日本でももっと盛り上がっていくと思うし、いちユーザーとしても盛り上がって欲しいですね。私の周りの女性起業家たちも出産ラッシュだったりして、その人たちが「これが足りていない」と思うようなことを商品や形にしていくことがあると思いますし、私もそういうステージになったら思うことが増えていきそうなので、そういった課題や問題には取り組んでいきたいと思っています。

WWD:「ナギ」の商品を通してどのようなメッセージを伝えたい?

石井:もっと体を自分たちでコントロールすることに積極的になってもいいと思います。これまで生理用品は化粧品とは全く異なり、ワクワクして買うものではなく手に取りやすいところにあったから買うような感じがあると思います。でも、欧米の生理用品のスタートアップのデザインはすごいオシャレなものになっていたり、商品自体にも多様性がある。お客さまに「ナギ」を気に入っていただけるのはとてもうれしいことなんですが、例えば「ピル飲んでみようかな」とか、「アフターピルがドラッグストアで購入できないのは日本のジェンダーキャップのせいなのかな?」など、社会の構造に疑問を持つきっかけになったり、何か行動を起こすきっかけになるようなブランドにしていけたらうれしいです。

WWD:女性の間でも生理についてオープンに話すことに賛否両論があるが、石井さんはどう考えている?

石井:「ブラスト」の読者の方に会ったとき、生理の話をしたときに盛り上がって、「私はこうしてる」「日本にはこれが足りない」というような議論をしました。私自身は生理がかなり重く、冷や汗をかいたり、気を失って倒れてしまったこともありました。現在は低用量ピルを使い続けて、経血量もかなり減っているので、生理の時は「ナギ」1枚で過ごすことができます。周りにも「自分には何が合っているんだろう?」と情報を探して、ピルやコイルなど生理用品や避妊具を使うことで生活が楽になったという人も多くいます。なので、そのような情報交換したい人はもちろんいるだろうし、話ができる場があってもいいんじゃないかなと思っています。

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「キャンプファイヤー」がヘアサロン支援プロジェクト「こんどきってね」をスタート クラウドファンディングでサポート


 クラウドファンディング「キャンプファイヤー(CAMPFIRE)」は、ヘアサロン向けのサポートプロジェクト「こんどきってね」をスタートさせた。同プロジェクトは、新型コロナウイルスのために臨時休業や営業時間短縮を余儀なくされるなど、厳しい状況に置かれているヘアサロンを支援したいという思いから「キャンプファイヤー」、「ar」、「WWDビューティ」で共同で立ち上げた。加えてメインスポンサーとして、ホーユープロフェッショナルカンパニーが参加するほか、タカラベルモントなどのメーカーも協賛する。現在「キャンプファイヤー」ではヘアサロンのクラウドファンディングが増えており、「IJK 表参道」は1100万円以上、「ゴールド」は520万円以上を集めて話題となっている。

 今回の「こんどきってね」は通常のクラウドファンディングと同様に、ユーザーの支援金に対してのリターンを自由に決められることは変わらないが、集まった支援金に対して、協賛企業からのサポート分の10%が上乗されて支払わることが特徴だ。例えば100万円集まったとして、10万円が上乗せされて支払われる。この協賛企業からの支援金は設定期間が終了したプロジェクトから順次支払われる(ただし支援金には上限があり)。目標金額を達成しなくても、集まった分だけ支援金を受け取れるAll in方式での参加も可能だ。また、「キャンプファイヤー」が行っている「新型コロナウイルスサポートプログラム」の一環として、支援金振込時に掛かるサービス手数料が通常12%が0%となり、決済手数料5%のみで実施できる。

「こんどきってね」
プロジェクトへの参加方法

人気3サロンに聞く
“クラウドファンディング”を始めた理由

プロジェクトに協賛する
メーカーの思い

 ホーユープロフェッショナルカンパニーは今回のプロジェクトにいち早く協賛を決めた。同社の佐々木義広プレジデントは今回のプロジェクトに参加した経緯について、「新型コロナ禍によって多くのヘアサロンが苦しんでいる中で、弊社としても何か役に立てないかを考えていたところ、今回のプロジェクトを知り、すぐに参加を決めた。今のヘアサロンには金銭的なサポートが一番必要だと思うが、メーカーが直接寄付するのは難しく、こうしてクラウドファンディングに協賛するかたちでのサポートを決めた。現在も予約人数を制限するなど、縮小営業を続けているヘアサロンもまだまだ多い。こうして一つの大きなプロジェクトにすることで、より一般の消費者の認知も高まると思うので、規模の大小を問わず、多くのヘアサロンに活用していただきたい」とその思いを語る。

プロジェクト
協賛メーカー

 「こんどきってね」にはヘアサロンを支援したいという強い思いから、メインスポンサーとしてホーユープロフェッショナルカンパニーが参加し、タカラベルモントなどのメーカーが協賛している。


問い合わせ先
キャンプファイヤー

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新型コロナに苦しむアパレル小売業と政・官とを橋渡し 国際政治学者の三浦瑠麗に聞く【上】

 新型コロナウイルス感染症拡大に対する緊急対策として、経済産業省は観光業や飲食業の需要促進である「GO TOキャンペーン」に、ファッション分野の需要振興を組み込むための検討を開始した。「ユナイテッド ヌード(UNITED NUDE)」日本法人の青田行社長やイーストランドの島田昌彦社長が行ってきた署名活動や陳情を受けたものだが、両社長と政・官とを橋渡ししたのが、テレビ番組のコメンテーターなどとしても活躍する国際政治学者の三浦瑠麗・山猫総合研究所代表だ。三浦代表は新型コロナが経済に与える影響に対し、一貫して強い危機感を表明してきた。三浦代表に聞いた。

WWD:どのような経緯で、青田社長や島田社長と自民党の政治家や経産省の官僚をつないだのか。三浦代表自身の問題意識はどういった点だったのか。

三浦瑠麗(以下、三浦):島田さんとは個人的に数年前から知り合いでした。お二人に話を聞く前からファッション業界が新型コロナの影響で厳しいということは分かっており、経済を回すことの重要性をこの数カ月ずっと説いてきましたが、いざ家賃や展開店舗数などの詳細をお二人に聞いていくと、やはり全国一律では事情を捉えられないということが見えてきました。都心に店を構える事業者は賃料も高いですし、物件を解約する際も最短で半年前の申請が必要、定期借家も多いです。月に50万円、100万円といった家賃補助では話にならない。中小企業であっても、今出ている中小企業支援策のレベルではカバーし切れないような経費や売り上げ規模の企業がアパレルには多いんだということを発信しないと、政治には伝わらないと感じました。在庫を抱えているという点もこの業界の特徴です。2月のダイヤモンドプリンセス号の集団感染でまず初めにお店の客足が鈍りましたが、アパレル業界の在庫が一番多いタイミングでコロナが直撃したんだなと。

WWD:アパレルの業界内では、自主休業中の窮状について国に訴えたくても、どこにどう伝えればいいのか分からないといった声が多かった。

三浦:政治家に対してこれまでもアプローチしてきた業界、“お肉券”“お魚券”といった話が早期に出た業界とは違い、アパレルは非常にインディペンデントで、お上に助けてもらおうとは露ほども思っていない人たちの集まりなのかなと感じました。日ごろから政・官と密接な関係を保っていないがゆえ、窮状が伝わりづらい。私が代表を務める山猫総合研究所はロビイング団体ではないですが、政策に関してはシンクタンクとして積極的に発信しています。こうしたアパレル事業者の状況が政策に反映されればいいなと思い、青田さん、島田さんのお話を官僚や政治家の方々、牧原秀樹経産副大臣に聞いていただく場を設けさせていただきました。

民間で自力でやっていける業種ならわざわざ政治にアプローチする必要はないですし、アパレルは規制産業ではありません。規制産業は官や政と近くならざるを得ない運命を背負っています。規制をかける必要がなく、民間でやっていけるならそれはそもそもよいこと。ただ、例えば経産省主導のクールジャパン戦略などで、海外に日本の魅力を発信していこうという話になると、そこにはどうしても日の丸が立ちます。でも、グローバルに商売ができているアパレル企業は、海外に売り出す場合でも政・官のイニシアチブについていく必要がなかった。それゆえ、政・官とのつながりが薄かったわけです。だからといって、そういう企業を支援しなくていいかというとそれは違います。政治家や官僚が守るべき日本企業のイメージをもっと多様化してほしい。海外から多くの商品を仕入れているアパレル小売りもまた、日本企業です。海外から資材を仕入れているという点では、建設業だって同じですから。

WWD:緊急事態宣言を受け、アパレル小売業は休業要請のない中で自主的に休業に協力してきた。それに対する疑問も業界内では非常に多い。

三浦:コロナを機に、安全保障の観点から仕入れの多くを国内から調達しようという話は出てきていますが、グローバリゼーションは今後も続いていきます。豊かさを享受するわれわれの生活は、海外との人の交流、モノやサービスの取り引きで成り立っている。でも、どうしても高い服やおしゃれといった豊かさの部分、海外との取り引きが多い業種となると、不要不急と見なされがちで、すぐさま支援をしようと思われない状況に今はあります。ただ、こういう状況下でも縫製工場などへの支払いを怠らず、人件費も100%払っているようなアパレルの中小企業は少なくないと青田さんに聞きました。群れないアパレル小売りの世界でも、支払いや雇用面は日本の会社文化や国民性が根付いていて、しっかり社会を支えている。それなのに、なぜアパレルには注目が集まらないのかと業界の方も感じているでしょうし、今回私も強く思いました。

これまでの自立性が今回はアダとなった部分はありますが、でもそれは決して悪いことではありません。官僚の方々が政策作りをするうえで、青田さんや島田さんのような方のお話が伝わったことはハッピーな出会いだった。困っている人全てを救うということは恐らくできません。日本経済の底力を失わずにコロナ時代をどう生き抜くかという観点で、どれだけ人々の消費を喚起できる産業か、外貨を稼ぎ出せるか、そして優良な企業体であるかといった軸で支援策を定めていく必要があります。コロナの影響が出ているのは、経営状態が悪かったところだけではありません。これまで政府に頼らなかった人、もしくはリスクを取って先行投資をしていた人を直撃しています。小規模で拡大を考えず、新規投資をしていないから借金もないという事業者は、休業協力金や持続化給付金などで少なくとも数カ月はしのげます。でも、急成長している企業で「今年は五輪イヤーで観光客も多いだろうから、例年の1.5倍の買い付けをしておこう」といった先行投資をした事業者がリスクを負ってしまった。それは彼らが生み出したリスクではなく、政治の側が緊急事態宣言を出して人工的に需要を削いだことで生まれたものです。そこには当然何らかの手立てを講じなければなりません。

そうは言っても、国が在庫を全て買い取るようなことは無理です。感染を予防しながら経済を回していくしかない。そのフェーズにおいて個人的にいいのではないかと思う取り組みは、消費者が買い物に行く精神的な障壁を低くするために、政治家が実例を見せること。楽しんで買い物をしてお金を使おう、そして店を助けようという姿勢を見せて、買い物をしてもバッシングされない雰囲気を醸成していかないと、産業が空洞化した日本社会が残されてしまうだけです。表参道のブランドショップが今開いたからって、そこで買い物をしていたらバッシングされかねないと芸能人や政治家の方は思うでしょう。だからこそ、みんなが買い物をしてもいいんだと思えるように彼らにこそ店に行ってほしいですね。彼らのような、本来は安泰な立場にいる人たちがただ家にこもっているのではなく、服を買ったとインスタグラムにアップするだけで雰囲気は全然違います。お店を潰さないように、応援するハッシュタグなどを作ってもいいかもしれません。

あとはもはやこの時期になってしまった以上、セールの問題ですよね。正直、今までもセールの開始時期は早まっており、6月半ばには実質的にセールだったわけです。営業を再開して最初は正価で売るとしても、どこかのタイミングで業界内で協力し、抜け駆けにはならないようにセールをしていくのがいいと思います。アパレル分野は感染リスクはごく少ないと私は考えていますが、業界として予防措置のもとでセールを行って消費を盛り上げ、春夏在庫を少しでもお金に換えていくということが大事ですね。

WWD:大型連休後、街に人が増え、徐々に店舗が営業再開し始めたタイミングで、政治家からは「気が緩んでいる」という発言もあった。

三浦:本来行政はお願いをする立場ですが、「緩んでいる」と言われると消費者心理としては罪悪感を抱きかねない。そうなると買い物に行くことを隠したり、行かなくなったりと行動が変わってしまいます。本当に伝えないといけないのは、合理的な予防措置を講じましょうということです。コロナ対策は感染者をゼロにすることが目的ではありません。最近の研究結果を見ても、昨年の肺炎を死因とする死者数にコロナによる死者数はどうやっても届かないことが予測されます。肺炎が恐い病気だとしても、これまで高齢者の方に買い物を禁止したことはない。感染リスクだけでなく、総合的なリスクを勘案して、つり合いの取れた予防策を講じていくべきなんです。でも今は人々が非常に強い不安に襲われているので、科学的に理にかなっている範囲を超えた予防措置を取らなければならなくなっている。だから、店頭で販売員さんがフェイスシールドを付けたり、アクリル板を置いたりといった措置も致し方ないでしょう。私が心配しているのは、日本経済に長期的に影響を及ぼす消費者心理の冷え込みです。コロナの影響が長期化すれば、GDPはマイナス12%成長となるという予測もあります。それは第一次世界大戦後の世界恐慌のような歴史上の危機のレベルです。そうならないためには、政治家が誤ったメッセージを出さないように気をつける必要がある。

WWD:あらゆる業種業界が苦しい中で、アパレル業界の苦しさを世の中に正しく伝え、理解してもらうのはなかなか難しい部分もある。

三浦:行政に窮状を伝える際には、業界を超えた横の比較が大事です。他業界のことしか知らない人にも分かるように事情を伝えていく必要がある。アパレルの窮状について多くの話をうかがいましたが、どこが支援できるポイントなのかは業界と行政とのふれ合いの中で見つけ出していけると思います。ただ、そのふれ合いのとっかかりがないと難しいですよね。世間は、ひょっとするとアパレル小売りに対しては「今までかなり儲けてきただろう」と思っているかもしれない。でも、アパレルは特段利益率が高いわけではない。日本のGDPに占めるアパレル小売りの割合やインバウンドが減ったことでの首都圏・地方別の売り上げ推移などを数値化して、日本経済に与える打撃をイメージしてもらう工夫が必要です。緊急事態宣言が解除されてもアパレルの売り上げが大して戻らないとすれば、失業者も増え、そうなると行政も困るわけです。アパレルはこのところ人手不足で正社員化が進んでいたと聞きます。正社員が解雇されれば日本社会にもっと危機感が広がります。今までは、イメージを重視するあまり「苦しい」「辛い」なんてはしたないから口にしないという文化があったと思いますが、「全社員を雇用し続けるのはこれほどきつい」「このままでは6、7月には整理解雇しないともたない」といった現実をちゃんと発信しないと、行政の側がアパレルの窮状に気付いてくれません。

第二次補正予算の規模が思ったよりも小さいといった報道がされています。でも、声をあげることで物事は変わります。例えば、雇用調整助成金の上限額が8330円から1万5000円に上がりました。8330円では、パート、アルバイトの方しかカバーできません。東日本大震災の後に、補助金の不正受給が大きな問題になりました。日本はドイツなど他国に比べて不正を許さないという文化が強く、不正を抑える仕組みが大事になる。そうなると非常に面倒な書類や手続きが必要になり、結局受給が遅れていく。それでも、声を上げることで政府は失業者をなるべく増やさないように方針を変えました。声を上げることには意味があると感じますよね。

WWD:今後は業界として、普段から政・官との連携を意識するべきなのか。

三浦:行政の側はむしろ業界側の話を聞きたいんだと思うんですよ。今回のように政治家を交えずとも、官僚の方と日ごろから意見交換しておくことは大事だと思います。経産省というのは、規制が主目的というよりも産業振興のためにある官庁です。提案を持っていけば、政府が行っている施策もどんどんよくなる。例えばクールジャパン戦略についても、何か思っていることがあるなら声を届ければ、変わっていくものです。でも、官僚の方はごく少数の例外を除いて、どうしても人脈が限られます。青田さんたちも普段は全く官僚の方とのふれ合いがないとおっしゃっていましたね。だから陳情だけに囚われず、例えば官公庁の方をメンバーに招いて勉強会を開くのもいいし、ビジネスの調子がいい時から日本にはこんなにユニークな企業があるんだということを伝えておく。アパレルは企業の社会的責任や持続可能な開発についてこう考えているんだということなどを、官僚の方も聞きたがると思います。

日本は東京や大阪などの大都市が富の多くを生み出している一方で、地方から選出される地盤の強い政治家ばかりが政界の実力者になっていく社会です。これは民主主義の仕組みとして、ある意味仕方がないこと。その民主主義の感覚が資本主義の感覚とズレているからという理由で交流を怠ると、両方が疑心暗鬼になる可能性があります。自民党を例にとれば、彼らの出身母体には日本青年会議所がある。地方の名門地場産業の後継者が中心で、ファッションを扱っている方は少ないはずです。そうなると、想像力の問題としてどうしてもそちらに手厚い政策となります。だからこそ、資本主義の一翼を担ってきた側として、時折交流しつつ発信していけばいい。

WWD:大手企業を中心とした業界団体はあるが、世界からクールと言われるような中小のアパレル小売りを束ねるような組織はないため、なかなかまとまっていくことは難しい。

三浦:アパレルだからという理由で大きく一括りにされても、業態などによってさまざまな次元の問題があるので、事業者の方は困ると思います。倒産したレナウンの代表者が業界団体(日本アパレル・ファッション産業協会)のトップだったそうですが、それが象徴的だと感じましたね。今後五輪の開催時なども、大規模なショッピングセンターの方などの意見だけ聞いていると、都心の路面店はどうするのか分からない。そこについては、私は街並み単位で考えてもいいのかなと最近思っています。表参道、銀座など、それぞれの通りの商店会ごとに総意として「こうします」と伝えた方が、行政も支援に動きやすいと思います。島田さんや青田さんが、「このままでは表参道がゴーストタウン化してしまう」と危機感を表されていましたね。他の小売りや外食産業の方とも問題意識は共通しています。地域単位で業種を超えて調整していくことが大事かもしれませんね。

立地や業態などに合わせて、どのような問題があるのかを数値化するために情報を出し合い、必要に応じてまとまっていくという意識が大切です。都道府県の知事など政治化の方の発言を見ても、中小企業支援は5000万~1億5000万円規模の融資でなんとかなると捉えていらっしゃる方が多い。地方都市にもファッションが栄えているところがあり、女性が購買しなくなり、アパレルなどの中小企業の力が鈍ったら街並みそのものが消えてしまいます。それは首長として極度に恐れる事態のはずなのに、実態はなかなか知られていない。だからしっかりと自ら発信し、データを出していくことが必要なんです。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.25 坂部三樹郎「デジタル化が加速する中で自ら発信し、順応していく」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、自身が立ち上げたファッションスクール「me」の学長を務めるなど、ファッション教育にも携わる「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」の坂部三樹郎デザイナーが登場。

MIKIO SAKABE
坂部三樹郎

Q. 不安が続く状況下で、ファッションデザイナーが人々にできることは?

 2020-21年秋冬の展示会は新型コロナウイルスによる自粛と重なったため、受注会をECに切り替えた。受注会後は外に出る業務は少ないため、在宅などでも支障はない。

 このコロナ禍で多くの人がネットに集まり、デジタルの環境が整ってきている。これからブランドはECやSNSを駆使して、自ら発信することが重要になっていくと思う。「ミキオサカベ」ではECを本格的に強化し、インスタグラムを活用してアジアや世界に向けて情報を発信。今後、若手や店舗を持たない小さいデザイナーズブランドはECを起点に方向転換することで、新時代に順応していくことができるだろう。

 コロナの影響が続くのであれば、ファッション・ウイークはなくなるのかもしれない。グローバル化が進めばシーズンの捉え方も代わり、求められるものもますます地域ごとに細分化されていくと思う。

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破綻したJ.C.ペニーの長い苦闘の歴史 鈴木敏仁のUSレポート

 アメリカ在住30年の鈴木敏仁氏が、現地のファッション&ビューティの最新ニュースを詳しく解説する。今回はコロナショックに引導を渡されて経営破綻したJ.C.ペニーについて。

 前回の掲載時点(4月28日)で破綻が決まっていたのは、ローラ・アシュレイ(LAURA ASHLEY)とトゥルー・レリジョン(TRUE RELIGION)の2社だった。それからわずか1カ月間にJ.クルー(J.CREW)、ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)、ステージストア(STAGE STORE)、そしてJ.C.ペニー(J.C.PENNY)と4社が立て続けに破綻した。共通しているのは、必需品ではないために店舗が営業停止となったアパレルが主力だったことだ。どの企業も財務状況が脆弱で数年前からうわさが飛び交っていたのでサプライズではないのだが、百貨店のJ.C.ペニーだけは感慨が深い。

かつてはチェーンストアのパイオニア

 今となっては知らない方も少なくないと思うのだが、J.C.ペニーは1928年に1000店舗を突破したチェーンストアという小売り運営形態のパイオニアだった。シアーズ(SEARS)と並んで米小売業界の黄金期をつくった由緒正しき有名老舗企業である。いま日本に存在する大手小売企業のそうそうたる創業者は多くはこの企業を見て、その規模やオペレーションに驚き、日本でもそういう店を作りたいという情熱を駆り立てられた。

 もともとは非食品の雑貨ストアからスタートして、ショッピングモールが誕生した頃に核としての大型フォーマットを開発し63年にオープンさせた。これがゼネラル・マーチャンダイズ・ストア(GMS)と呼ばれた。ゼネラル・マーチャンダイズとは雑貨のことで、つまり大きな雑貨ストアだった。これに食品を加えて変化させたのが日本型のGMSだった。

 70年代からディスカウントストアが勃興し、GMSから雑貨が奪われて衣料中心へとシフトしはじめたのが83年のことである。ここからGMSではなくて百貨店業態に乗り換え始めた。ところがザ・リミテッド(THE LIMITED)やギャップ(GAP)といった衣料専門店チェーンが急速に力をつけていき、衣料品でも新興勢力に勝てることができずに今日に至るというストーリーである。

 この間に多くの経営者が携わってきているがけっきょく誰も変革することができなかった。最近ではターゲット(TARGET)からアップル(APPLE)に移ってアップルストアを立ち上げて大成功させたロン・ジョンソン(Ron Johnson)、ホームデポ(HOME DEPOT)で次期CEOと目されていたマーヴィン・エリソン(Marvin Ellison)と、業界では知名度の非常に高い優秀な人たちがCEOとなって指揮を執ったのだがことごとくダメだった。

 私の知る限り、その本質的な問題は組織が官僚化して硬直していたことにあった。それを誰も変えることができなかったのである。

 売上高は2016年から減収となり、最終利益は11年から赤字なのだが、なにより厳しいのは昨年度末の時点で自己資本比率が10%しかなくて、有利子負債の比率が45%に達している点にある。DEレシオは実に8倍で、冒頭で破綻しても驚きではないとしたのもお分かりいただけることだろう。

 破綻宣言の時点ですでにDIPファイナンスを調達しているので、しばらく事業を継続しながら破綻処理を進めていくことになる。現時点で分かっていることは846店舗を30%ほど減らして604店舗へと縮小させる計画で、次はおそらく不動産をREIT(不動産投資信託)として切り離しスピンオフして資金調達するだろうとみられている。その次が正念場で、存続して再建に向かうのか、または清算するのかだが、最優先債権者としての金融機関がトイザらス(TOYSRUS)に引導を渡した投資企業なので、清算による流動化を急ぐ可能性は高い。合意の締め切りとして設定されている7月14日に運命が決まる。

次に破綻する百貨店はどこか

 現時点で次に破綻の可能性が報じられているのはロード&テイラー(LORD & TAYLOR)で、親会社でカナダに本拠を置くハドソンズ・ベイ・カンパニー(HUDSON'S BAY COMPANY)にも赤信号がともっている。百貨店業界総崩れとなりつつあり、来年末までには総店舗数は半分まで減るだろうと予測する調査会社もある。そうなるとモール内に出店する他の専門店チェーンへの影響は避けられない。長期的にはおそらく家賃を下げざるを得なくなってモール運営企業の収益悪化は必至だ。

 アメリカはやっと規制解除で営業が再開し始めているが、失業率が跳ね上がっていて先行き不安で消費は冷え込んでおり、需要が戻るには時間がかかりそうだ。短期的には今膨れ上がっている春物の在庫をどうするかである。例年の5倍近い在庫が滞留しているとみられていて、各社は現在ネットで大幅な値下げセールを実施しているのだが簡単には動かず、おそらくしばらくはブラックフライデー状態が続くだろう。

 アメリカには衣料品の過剰在庫をさばくオフプライスストア(OPS)という業態があり、TJマックス(TJ MAXX)という年商400億ドルを超える優良企業も存在する。だが、こちらも店頭営業が停止状態なのと、店舗での宝探しが強みで繁盛していてネット通販をやっていないため、OPSというチャネルも閉じてしまっていて、過剰在庫が完全に行き場を失っているのが現状である。

 今年の衣料品市場はグローバルで15.2%減り、その40%をアメリカが占めるという予測がある。アメリカの衣料品業界はきわめて重大な局面にあるのだが、切り抜ける戦略戦術にも限りがある。しばらく苦しい状態が続くことになりそうだ。

鈴木敏仁(すずき・としひと):東京都北区生まれ、早大法学部卒、西武百貨店を経て渡米、在米年数は30年以上。業界メディアへの執筆、流通企業やメーカーによる米国視察の企画、セミナー講演が主要業務。年間のべ店舗訪問数は600店舗超、製配販にわたる幅広い業界知識と現場の事実に基づいた分析による情報提供がモットー

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髪の悩みは手遅れになる前に!メンズこそ自宅で頭皮エステ 頭皮マッサージ機3選

 全国の緊急事態宣言が25日に解除されたが、外出自粛もしばらくは続くことが予想される。そうした中でおうち時間が増えている今、自宅でケアできる美容家電に注目が集まっている。

 今回紹介するのは自宅で手軽に行える頭皮マッサージ機。頭皮ケアニーズの高まりを受け、近年男性美容市場でも盛り上がりを見せているアイテムだ。「頭皮が硬い」「皮脂などの汚れが気になる」「薄毛が目立つようになった」など、男性にとって髪に関することは悩みの上位に上がってくるのではないだろうか。髪の艶やコシが原因で発生する負のスパイラルはとても危険。外に出る機会が少なくなり、美容室でヘッドスパも受けられない今、家の中で頭皮マッサージ機を使ってケアしておくことも必要不可欠だ。

頭皮の状態を清潔にして薄毛予防!

 男性の中では少数派かもしれないが、美容室でヘッドスパなどをしてもらうと、いつもの髪とは見違えるほどサラサラ、かつボリュームのある髪になったと実感したことはないだろうか。しかし月に1回程度のケアでは、その実感を維持することは難しい。また、美容室に行くこと自体に壁を感じる人も多いだろう。だからこそ、自宅で誰でも扱える頭皮マッサージ機に注目してみてほしい。進化の止まらない最新機器を3つ紹介する。

“リファグレイス ヘッドスパ”

 髪の毛の悩みは男性にとって切っても切れない関係。手遅れになる前に、手入れ方法などで見つめ直す部分はたくさんある。1つ目に紹介するのは、MTGが展開する「リファ」ブランド家庭用ヘッドスパ、“リファグレイスヘッドスパ”。仕事の疲れで凝り固まっている頭皮に最適なアイテムだ。毎朝のタイミングやお風呂を出た後にスイッチを入れてブラシを生え際につけ、頭頂部へと向かって移動させるだけ。そうすることで、4本のクワトロ3Dローラーが頭皮を連続的につまみ上げる。そこにはエステの手技である母指回転揉捏法の動きが再現されており、絶妙な心地よさを引き出してくれる。1日5分程度行えば血流がよくなり、徐々に毛根へとしっかり栄養が行き届く。育毛を始めたい人や、ストレスを感じている人にも効果的だ。

パナソニック“頭皮エステ〈サロンタッチタイプ〉EH-HE9A”

 続いては、頭皮から首回りまでシャンプーをしながらリラクセーションヘッドスパができる“頭皮エステEH-HE9A”。簡単なボタン操作で極上のエステ体験が可能だ。5つのモードで頭部から首回りまで広範囲で使えるのもポイント。取り付けられた4つのブラシがそれぞれ独立した動きで回転し、まるで手の動きのようなハンドテクニックが再現されている。密着度が高いため、頭皮がグンと上に引き上げられるような感覚の気持ちよいヘッドスパ感も味わえる。パソコンの使用で眼が疲れていたり、肩凝りに悩んでいる人にオススメだ。顔まわりがスッキリとした印象になるため一石二鳥。男女兼用なのでパートナーへのプレゼントに選んでみるのもあり。

“スカルプDメカノバイオ”

 3つ目に紹介するのは“スカルプDメカノバイオ”。 2つ目に紹介したパナソニックの頭皮マッサージ機とデザインが似ているが、スカルプ系商品に定評のあるアンファーとの共同開発で製品化された特別な一品だ。頭皮のベタつきやニオイが気になる人に最適で、人間工学に基づいたスカルプDブラシが頭部の形状によりフィットするようになっている。接触面積が拡大してより頭皮にフィットするようになり、効果的かつ効率的にマシンの動きを頭皮に伝えてくれる。HighとLowと、動きに抑揚のあるスカルプDモードの3つのモードが搭載されており、シャンプー時になかなか動かしづらい頭頂部にも楽に刺激を与えることが可能。さらに先端に配されたブラシ一本一本の硬さが異なるため、心地よいマッサージ感覚が味わえる。業界のリーディングカンパニーであるパナソニックと、メンズ美容で高い支持を得るスカルプDが組んだスペシャルなアイテムだけに、機能性に加えて信頼性も十分だ。

 年齢とともに髪の毛のケアを考え始める人も多いのではないだろうか。頭皮ケアは早めの対策が肝心だ。家にいる時間が増えた今、思い切ってチャレンジしてほしい。

辻野祐馬/エディター、ライター、動画ディレクター:女性メディアで活動する編集・ライター。ファッション、美容、ヘアアレンジ、恋愛などのジャンルを中心に執筆。色彩検定1級の資格を有し、カネボウメイクアップインスティチュート・スタンダードコースを卒業。特技はパーソナルカラー分析

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吉川康雄が次にやろうとしているビューティとは? 「キッカ」終了の思いにも迫る

 2019年3月、「キッカ(CHICCA)」から吉川康雄ブランドクリエイターの退任が発表され、業界内外に衝撃を与えた。その後7月1日には、同年内のブランドの終了も発表され、今もなお多くのファンから惜しむ声が絶えない。素肌のような艶肌を作り出すソリッドファンデーションや、素の唇の色が透けるような“5分の2”発色のリップスティックなど数々の人気製品を吉川氏は生み出してきた。そしてナチュラルさの中にも色や輝きで遊び心を添え、メイクすることの楽しさや、使う人自身の美しさに気づかせてくれるプロダクトの数々には、吉川氏のこだわりと思いが詰まっている。

 現在、吉川氏はニューヨークを拠点に日本と行き来しながら多忙な日々を送っているという。同氏が運営するウェブメディア「アンミックスラブ(UMMIXLOVE)」では「その“きれい”のために必要なものを探している人たちへ。」をテーマに、美しくしなやかに生きる女性たちのインタビューや美容情報など“きれい”のヒントを発信している。また、美容ライターの長田杏奈氏、写真家の前康輔氏との共同著書「あなたは美しい。その証拠を今からぼくたちが見せよう」(大和書房)の出版も予定している。

 今回、ニューヨーク在住の吉川氏にスカイプで取材を実施。「キッカ」のブランドクリエイターとして感じたことや終了後の活動、さらにはこれからのビューティ業界への思いを語ってもらった。

WWD:「キッカ」のブランドクリエイター退任後、ウェブメディア「アンミックスラブ」の開設など多忙な日々を過ごしている。

吉川康雄(以下、吉川):「キッカ」をやっているときもとてもいそがしかったんですが、今は次のチャレンジや活動に向けていろいろと準備をしています。自分のキャパシティを完全に超えていて、やってもやっても終わらなくて……紅茶のスプーンで富士山を作っている感じです(笑)。

WWD:「キッカ」終了に向けて動き出したとき、どう思われましたか?

吉川:最後の1年くらいは、将来のことや次の契約のことも話し合っていて、「ここから離れなくてはいけないな」というのは感じていました。また、「キッカ」のクリエイションをしていく中で、これからの10~15年の間にビューティ業界を変えていかなければいけないと考えていました。美容というのは女性が生まれてから死ぬまで付き合うもので、人生の中で寄り添い、心地よいものであるべきであるのに、ビジネスサイドの都合が見えることで、女性が気持ちよいと感じられなくなってしまう。そこを変えなければいけないと。

 例えば、コンプレックスを刺激するような、人の心に刺さるショッキングな言葉を使ったプロモーション、ビジネスが多い。それは僕がこの業界に入ったときからそうだったし、今はもっとそういう傾向が強いと思います。だけど、それって人を幸せにしているのかな?と考えたとき、たぶん傷ついているだけでなんです。作り手のほうは毎回同じフォーミュラでちょっとリニューアルしたものを出して、新しい刺さる言葉で人の心をぐさぐさと傷つけて、また同じようなものを売り続けている。それが、やっぱり僕には賛成できなかった。

WWD:確かにコンプレックスに対するプロモーションは多いですね。

吉川:企業っていうのはお金をもうけたいし、ビジネスをするもの。でもそれって全然軽蔑することじゃなく素晴らしいことなんです。しかし、人の心を刺すようなビジネスが多いのも事実。それは美容業界だけじゃない。言葉でドキっとさせて、人を振り向かせる。だけどそのショッキングな言葉って、一番簡単なのは人を傷つける言葉。やっぱり美容の中では特に多かったし、人の心に蓄積してしまうんです。それって人が傷つくだけじゃなく文化的にもすごくレベルが下がってしまう。

自分がどこまでできるかわからないけれど、ビューティは背中を押してくれたり勇気を出させてくれたり、自分を助けたり、そういうものにしなくてはいけないと思っています。今新たに挑戦していることや活動もそこにつながっています。もう少ししたら具体的にお伝えできると思います。

WWD:最近では多様性(ダイバーシティー)というキーワードが台頭しているが、どう捉えている?

吉川:人種や肌の色が違っても皆抱えるコンプレックスは似たようなもの。全てを快く受け入れられる人なんてそういなくて。だけど、外国人は「そういうのないよね」というイメージを持ちがちですよね。でも、アメリカでもダイバーシティーって言葉がよく使われるっていうことは、まだ目標だからなんです。出来上がっているものじゃなく、そうなっていかなくちゃねっていうもの。言葉で言うのは簡単だけど、世界的に全員がそこに向かって頑張っている途中で、誰もまだたどり着いていない。だからそういう言葉がある。本当の意味で理解している人たちにそういう言葉は必要ないでしょ?

今は世界中の人がそこに行こうとしている途中。だから僕が提案するのは、次世代ビューティ。次世代がそうなっていけるようなベースをつくりたい。僕が今やめてしまったら、何もなかったようにただの流行で終わってしまいそう。次のはやりはなに?って。だからこそ今、時代が後戻りしないようにしっかりメッセージを伝えていきたいと思っている。世界とつながれるテクノロジーはあるけど、遮断してしまうことも簡単。だからこそ、流行で終わらせず、日本も世界と同じように変わっていけたらと思う。

WWD:メディア「アンミックスラブ」はインタビューが中心だが、どういった意図で立ち上げた?

吉川:僕は“自分を大切にする”ということを大事にしています。“自分を大切にすることの大事さに気づいている”と僕が感じた人たちに出てもらって、人それぞれ違うであろう独自のお話を聞きたいと思っています。有名な人だろうが無名の人であろうが、普通の会社員であろうが、全て横一列になって出てもらうサイトです。スタート地点の“自分を大切にしている人”に話を聞くというところ以外、あとは自由なんです。

WWD:撮影、メイク、インタビュー、全てを吉川さん自身が手掛けているんですね。

吉川:ヘアメイクの仕事って人と話ながらするじゃないですか。相手の緊張感を解いて、リラックスさせることも大切な仕事。そういう経験から引き出せることもあると思ったんです。昔はメイクしかしていなかったけど、そこから形が変わってきているように思います。だから今、自分の職業は何か?と聞かれたらちょっとわからないんですよね。自分でも自分の枠を決めつけていません。

WWD:発売予定の新著書「あなたは美しい。その証拠を今からぼくたちが見せよう」はどういった内容?

吉川:ライターの長田杏奈さんを「アンミックスラブ」でインタビューした際に話したことがきっかけでした。10代の若い女性たちがモデルや女優、タレントとしてデビューすると、透明感があるねと言われるけど、30代や40代の人は自分にはもう透明感はないと思っていて、 “透明感”って年を取るほど遠のいていく言葉だと思っている人が多い……。だけど僕が思うには、全ての世代にピュアネスがある、全ての女性に透明感がある。でも話しだけじゃなくて、それを証明しなくちゃいけない。じゃあビジュアルで証明しようということになった。それで僕と長田さん、カメラマンの前さんとこの本を作ろうということになりました。10~50代の女性たちのポートレートを通して、全ての女性にある美しさやピュアネスを伝えられたらと思いっています。

WWD:今後はどういった活動を行っていく?

吉川:書籍の発売イベントなどを予定していましたが、新型コロナウイルスの影響で中止になりました。夏ごろには日本に行く予定でしたが、今はどうなるか分からないですね。とりあえず今取り組んでいる新しいチャレンジと向き合うことが大きな課題です。しばらくはそこに費やすことになると思いますね。

WWD:新型コロナウイルスの影響が大きくなる中で感じていることは?

吉川:やっぱり安全を確保することがとても大切で、一人になる時間も増えていると思うんです。家族がいたら人間関係もよくも悪くも強調される。これまでシリアスに考える必要がなかったことがすごく見えてくる。だから自分にもっと目を向けるチャンスだと思います。コロナ禍以前なら仕事や遊びなど、いろんなことで気を紛らすことができたけど、今はそれができないから、ちゃんと考えようって時間なんじゃないかな。そう考えると長期になってもやることはたくさんある。みんながそう思えるといい。そしてそれが、自分を大切にすることなんだと思います。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.24 小泉智貴「ファッションの楽しさや喜びを世界中の人に届けていくこと」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、コスチュームデザイナーとしてさまざまなアーティストの衣装を手がける傍、2020年度「LVMHプライズ」のファイナリストにも選出された「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」の小泉智貴デザイナーが登場。

TOMO KOIZUMI
小泉智貴

Q. 不安が続く状況下で、ファッションデザイナーが人々にできることは?

 “ファッションデザイナーができること”ではなく、自分自身ができることは何かを考えて回答したい。「トモ コイズミ」には、一般向けのデザインがなく、皆さんに着て楽しんでもらうことはできていない。「LVMHプライズ」への挑戦をきっかけに、そういったデザインの制作も構想していたが、現在のような状況下であらためてそのことについて考えている。

 私が今まで行っていることは“見て楽しむファッション”で、実際には着ることができないけれど、ファッションの美しさや楽しさを雑誌やインターネット、または美術館などで見て感じてもらえることが1番の目的であり目標。しかし今回の危機をきっかけに、地球環境や“本当に必要なもの”について考える人が多くいると思う。また、現在はパーティなどイベントを開くことができず、着飾る楽しさを人と共有できる機会が減っている。そういった状況下で、直接の接触を必要としない、生産数が少ないので環境にも優しい、観て楽しむファッションの需要が増えいくかもしれない。自分にできる最大限のことは、そういった方法でファッションの楽しさや喜びを世界中の人に届けていくことだと思う。事態収束後の世界で通用し、意味のある、新しい仕組みやモノ作りができるように準備していきたい。

 現在は海外出張やイベントが延期になり、コラボレーションなどの打ち合わせも遅れが出ている。シリアスに考えすぎると気分が沈んでしまうので、今しかできないことをしようと、読みたかった本を読んだり、デザインのリサーチをしたり、刺しゅうやコサージュのテクニックの練習している。

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映画にアペリティーボでプライベートも充実 ニール・バレットの巣ごもり生活

 イタリア・ミラノを拠点に活動するファッションデザイナ-のニール・バレット(Niel Barrett)はイギリス・デボンのテーラー一家出身だ。彼は、ロンドンのセント・マーチン美術大学(CENTRAL SAINT MARTINS)と王立美術大学(RCA)でメンズファッションを学んだ。「グッチ(GUCCI)」や「プラダ(PRADA)」で活躍後、1999年に自身のブランドを立ち上げ、ミラノ・ファッション・ウイークでデビュー。メンズ、ウイメンズ、キッズなどのラインを手掛けている。バレットに新型コロナウイルス感染拡大によるミラノのロックダウン=巣ごもり生活について聞いた。

WWD:どのように仕事とプライベートを分けているのか

ニール・バレット(以下、バレット):私をはじめ全てのスタッフが在宅勤務だ。新型コロナウイルス感染がさらに続くのであれば、今後もいままで通り在宅勤務を行うことになるだろう。実際、私の日課全体が変わった。通常は、スタジオに行く前にトレーナーが来て午前7時30分にトレーニングをしていたが、今は、ベーシックメニューをもとにしたややハードなワークアウトを自主的に行っている。また、在宅勤務のためデザインチームとグループ会話を行い、その日に私が何をしたいのかを彼らに指示する。以前と比べて倍の、時には倍以上の時間がかかる。しかし、より詳細に考慮した結果そうなるので、ポジティブに向き合っている。午後6時半か7時には仕事を切り上げてオンラインで友人たちとアペリティーボ(食前酒)をするんだ。今までは、夜遅くまで仕事をしていたが、このような状況で自分が前向きに人間らしくいれること、そして、このような時間があることに感謝している。

WWD:このような状況でどのように仕事に向き合っているか?

バレット:幸運なことに、自宅は19世紀に建てられた古い建物で、テラスがあるので外でも仕事ができる。朝は自宅オフィスから外に出て、夕方には家の中に。屋外での創作はとても楽しい。

WWD: 新しく始めたことや趣味は?

バレット:ムービーナイトを始めた。私のインスタグラムでハッシュタグ“#MovieNight”をつけて発信している。俳優やインテリアデザイナー、建築家など、世界中の多くの友人からすすめてもらった素晴らしい映画を鑑賞して楽しい時間を過ごしている。私のもとには続々と映画リストが届いている。

WWD:在宅勤務で家族との過ごし方がどのように変わったか?

バレット:巣ごもり生活はパートナーのカルロと過ごしている。長い間、仕事もプライベートも一緒にいるので、いつもと変わらない。特に変化がない巣ごもり生活といったところだ。

WWD:巣ごもり生活で心がけていることは?

バレット:私たちが置かれている状況を受け入れてそれを最大限に活用する。人生の日々を信じることが大切。壁にぶつかって、ただ立ち止まって不満を言うだけでなく、壁を回避する方法を見つける必要がある。人生には試練と苦難がつきものだ。それを乗り越えるには、前向きな心と笑顔が必要だと思う。

WWD:おすすめのツールやアプリ、サービスは?

バレット:「フェイスタイム(Face Time)」や「ワッツアップ(WhatsApp)」「Zoom」そして「ハウスパーティー(Houseparty)」。どれも文字のやりとりだけでなく、リアルタイムでお互いの顔を見ながら会話ができるので素晴らしい。

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「ローカルで根強いファンがいるブランドこそ世界で戦える」 アジアブランドに特化したEC創業者が語るアジアの可能性

 日本人の若き起業家2人が2018年に立ち上げた、アジアブランドのみを販売するオンラインのセレクトストア、シックスティーパーセント(SIXTYPERCENT)は現在、韓国、インドネシア、ベトナム、中国、台湾などをはじめとするアジア15カ国のストリートブランドを取り扱っている。ブランド数は100を超えてさらに拡大中だ。コロナ禍の先では「シンプルで本質的なゲームに世界中のブランドが引きずり出されるだろう」と語る同代表の真部創業者。世界の人口の60%がアジア人で構成されていることから名付けた「シックスティーパーセント」を運営する2人は、これからのアジアのファッション市場をどのように見ているのか?

WWD:現在扱っている国で一番勢いのある国はどこか、そしてその理由は?

松岡那苗シックスティーパーセント最高執行責任者(COO)兼共同創業者(以下、松岡):一番勢いがあると感じているのは韓国ですね。やはり国を挙げて音楽とファッションに力を入れていることもありますし、韓国のデザイナーたちは口をそろえてK-POPの波がファッションの底上げに貢献していると言っているのが印象的でした。シックスティーパーセントも注文がアジアのみならずアメリカやヨーロッパからも頻繁に入っていて、欧米からの注文の約8割が韓国ブランドの注文ということもあり、K-POPから韓国ブランドを知る流れが浸透していると思います。

インドネシアやベトナムが東南アジアのハブに

WWD:シックスティーパーセントで扱っているアジア15か国の中で、売り上げが高い国の上位5カ国は?

松岡:韓国、インドネシア、ベトナム、タイ、中国です。シックスティーパーセントが制作したドキュメンタリーにもある通り、インドネシアやベトナムは現在、スケーター文化の浸透などによって、東南アジアのストリートカルチャーのハブとしての地位を確立しつつあります。とあるタイのデザイナーが「多くの学生が大学を卒業したらとりあえずストリートブランドを立ち上げる」と話しているくらいブランドが競争環境にあることが、東南アジアのみならず全世界で今アジアのブランドが注目されている理由になっているのではないかと思います。

WWD:インドネシア、ベトナムでは具体的にどのようなブランドが人気なのか?

松岡:「クルーズ(CROOZ)「テンクスインソムニア(THANKSINSOMANIA)」「アーバイン(URBAIN)」というストリートブランドです。「テンクスインソムニア」は、近年ミレニアル世代で人気になっているブランドで、インドネシアという土地ながら80%以上の売り上げがオンラインで、サイトに商品をアップすると1秒で完売するといわれています。「アーバイン」はストリートカルチャーメディアからスタートしていて、創立者が毎回ストリートカルチャーの重鎮(インドネシア人)をゲストに迎えてトークをする企画をインスタグラムで行っていて話題を呼んでいます。

WWD:サイト内での上位売り上げトップ3のブランドとその理由は?

松岡:1位が「メッケンチップス(MCM CHIPS)」、2位が「フライ(FREI)」、3位が「モアザンドープ(MORE THAN DOPE)」です。「メッケンチップス」はもともと韓国国内でカルト的な人気を誇るブランドで、新作ローンチの際、50人以上は常に店の前に列をなしています。販路をあえて狭めていて、日本での取り扱いはシックスティーパーセントのみであることもあり、日本のみならず世界からシックスティーパーセントにオーダーが集まっています。

「フライ」は、2018年の東京コレクションにも参加したブランドで「フライノック(FREINOCK)」のセカンドラインという位置づけ。超新星のゴニルがブランドのディレクターとして関与していることもあり、日本ではもともと知名度が高かったブランドでした。「モアザンドープ」は韓国発のビンテージストリートブランドとして、トップスタイリストのハ・ハンソル(Hanseul Ha)が立ち上げたブランドです。韓国のヒップポップアーティストが着用していることで有名になったブランドで、シックスティーパーセントがスタートして最初に入店したブランドだったこともあり、当初から根強いファンがついているのが理由です。

アジアは2025年に100兆円市場に成長

WWD:アジアのマーケットは実際にどのくらい伸びている、そして今後伸びる可能性があるのか?

真部大河シックスティーパーセント最高経営責任者(CEO)兼共同創業者(以下、真部):日本国内のファッション市場は成熟していますが、アジア全体でとしては成長市場です。また世界で見ると欧米や西欧のシェアが落ちてアジアや東欧がシェアを伸ばしています。そして全体の4割がアジアで、2025年にはアジアで100兆円を超えるといわれています。アジアのファッションやカルチャーが世界で評価されてきたことにより、今まではアメリカやヨーロッパのファッションを主に消費していたアジア人が、自国のブランドを消費する傾向にあります。そういった現象がアジア各地で起き始めています。

松岡:インドネシアなどは毎月飛躍的に売り上げが伸びています。もともとインドネシア、タイ、また韓国などはローカルブランドが多く、ローカルブランドをサポートする意識が強いため、国民のファッション意識が高まるほど、自国のブランドに対してお金を払うという考えが強くなっているようです。

WWD:なぜローカルブランドをサポートする意識が強い?

松岡:各国のデザイナーと話して感じた印象ですが、やはりどの国の人であっても、アジアはファッションの生産国であり、クリエイティブを引っ張っている国ではないという偏見を常に感じていて、それを覆したいと思っているのではないかということです。そういう意識はデザイナーのみならず、アジア各国の消費者にも根付いており、消費者もデザイナーも自国のブランドを盛り上げようという根強い反骨精神があると感じます。

WWD:日本にはまだ欧米への憧れは根強く残っていそうだが、何か価値基準などで感じることはあるか。それはストリートやスケート文化に特化したことか?

真部:確かにまだ欧米への憧れは根強いですが、ストリートやスケート文化に限らず、その価値基準自体も変わりつつあると思います。音楽などは分かりやすくそうです。

16年頃からヒップホップが世界で再ブレイクをしたときには、88risingなどアジア人のラッパーがUSチャートをにぎわしました。19年のコーチェラ(Coachella Valley Music and Arts Festival)にもPerfumeやBLACKPINKが出演するなど、欧米の音楽ファンもアジアの音楽シーンに注目し始めています。そういったアジア人アーティストたちがファッションアイコンとしても人気となり、ヒップホップやストリートシーンでいうと、そのうちカニエ・ウェスト(Kanye West)みたいな人もアジアから出てくると思うんですよね。そして、まだ欧米への憧れが根強く残っている層にも、欧米でアジアが注目を集めて逆輸入されることで、その層にもこれからどんどんアジアのカルチャーの消費が根付いていき、むこう5年くらいで価値基準が大きく変わると思います。

WWD:日本で人気のブランドは?

松岡:シックスティーパーセントの中でいうと、上に挙げた「メッケンチップス」や「モアザンドープ」などの韓国ブランドは人気が根強い印象です。韓国からいち早く情報を入手し、ブランドが発表する何日も前に新作発表日はいつですかという問い合わせを受けることがとても多いです。

WWD:日本の企業がアジア諸国に入り込む余地はあるか?その逆で、アジアのストリートファッションはどこまで日本に浸透すると思うか?

真部:余地はあると思います。今もなんだかんだアジア人ってアジア発のブランド好きだし、人気ですよね。サイズとかもちょうどだから買いやすいし、カルチャー的にもマッチするし。19年12月に「インナーセクト(INNERSECT)」という中国のストリートファッションの大きな展示会に出店した際、「#FR2」や「ガールズ ドント クライ(GIRLS DON’T CRY)」などの日本から来たブランドのブースに多くの人が列をなして集まっていました。ちゃんと世界に目を向けているブランドはこうやって多くの人に愛されていて可能性しかないなと感じました。もちろん簡単なことではないと思いますが。

そうやって海外で人気のブランドがでてくると、日本でも逆輸入で人気が出ると思います。今ってこれだけ情報が民主化していたらどこの国ブランドだからとかはあまり関係ないですよね。インスタとかでイケてるブランドを見つけたら、それがどこの国だろうとその場でポチって買えちゃうんで、どの企業も同じ土俵で世界を対象にビジネスができます。シンプルに顧客が欲しいかどうかだと思います。

WWD:コロナ禍における状況を聞きたい。売り上げはどのくらい変化があったのか?4月の昨対は?

真部:まだ立ち上げて1年強なので、昨年比ではあまり新型コロナの影響は測りづらいのですが、昨年対比では10倍以上にはなっています。たとえば、この4月は3月に比べて倍くらい伸びています。中でもアメリカやヨーロッパといった海外からのオーダーがかなり増えたのが印象的でした。

WWD:欧米からのオーダーが増えた理由は何か?

真部:オーガニック流入による購入が多かったので、長い自粛で余暇が増え、SNSとかをいろいろ調べていたらイケてるブランドを見つけたとかかもしれません。購入先を探していたらシックスティーパーセントが見つかったみたいな。サイトも英語対応で5カ国ほどの通貨で購入可能にはなっているので。3~4月は海外からの流入が倍くらいになりましたが、今はまだ日本を中心に展開しているので、基本的には8~9割は日本のお客さまです。日本以外での積極的なPRなどもまだ一切行なっていません。

自国でサプライチェーンを完結できるアジアブランドの強み

WWD:扱っているアジア15カ国の中には生産国もあるが、コロナ禍でサプライチェーンはどのような状況にあるか?

真部:確かに生産国が多いため、一部で生産のストップや入荷遅延によるキャンセルなどは見られましたが、今一番取扱高の大きい韓国のブランドも含め国内工場での生産が多いため供給側に大きな問題ありませんでした。国外での生産に依存することのリスクが浮き彫りになった今、自国でサプライチェーンを完結できるのはアジアブランドの強みだと思います。工場側も、国内メーカーの方が未払いリスクや受注キャンセルリスクなども低いので今後も取り引きに前向きですね。

WWD:自国でサプライチェーンを完結させる動きは強まると思うか?

真部:自国でサプライチェーンを100%完結させるというのは、仮に今回の新型コロナのような有事が自国で起こった場合に、自国で全て完結させていると全てストップしてしまうので、そういう意味ではリスクヘッジで生産国を分散させることは必要かと思います。ただし先進国のように海外で全てのポートフォリオを組むのではなく、自国の生産率が高い状態で、リスクヘッジとして海外でのポートフォリオを組むことができるのがアジアの強みになると思います。さらに、アジア間で分散させることで言語や地理的にも非常に連携しやすいということも強みになると思います。

WWD:新型コロナ禍で影響を受けたブランドの話などは出てきているか?

松岡:インドネシアを代表するストリートブランド「クルーズ」のデザイナーから聞いた話だと、インドネシアもみな店舗はクローズ状態で、またホールセールビジネスがストップしてしまっているのはマイナスポイントです。でもローカルブランドをサポートするという国民性が強いため、4月にオンラインセールを行ったところ、通常の20倍の売り上げを達成するなど、新型コロナ禍で逆にブランド自体の売り上げは伸びていて、よいインパクトも受けています。これまで一度もセールをしないというブランディングを行っていたことも関係するかもしれません。でもこの新型コロナの状況下では、誰もセールをすることでブランディングが落ちると危惧する者がいないから、ありとあらゆる戦略を今だからこそ立てられると聞きました。

シンプルで本質的なゲームに世界中のブランドが引きずり出される

WWD:アジアファッションの台頭はどのように変化していくと思うか。そして、今回の新型コロナ禍はどのように影響していくと思うか?

真部:新型コロナ禍で、ショーや展示会など古くからある業界の商習慣や百貨店やモールでの販売チャネルも全てが止まったため、オンラインを中心にどうやって顧客と直接つながり、どうやって顧客に直接支持されるか、シンプルに欲しいかどうかという、まさに“シンプルで本質的なゲームに世界中のブランドが引きずり出されているな”という印象です。そしてこの自粛の影響はまだまだ続くと思うので、そういう意味では、今までも業界ルールや既存の売り方にとらわれずにローカルで根強い人気を築いてきたアジアのブランドは強いです。

今はファッションだけでなく音楽など、アジアのカルチャーが世界で評価されており、今後さらに世界で浸透していくと思います。そして、今まではファッションや音楽ではアメリカやヨーロッパがメインストリームでしたが、そこにアジアが食い込むことで、アジア人自体が、よりアジアのファッションや音楽を楽しむ時代になると思います。なので、すでにローカルで根強いファンがいるブランドなどは、今はそれがアジア全体で広がる可能性を持っているということになります。そういった可能性のあるブランドを僕たちは集めており、シックスティーパーセントが、アジア人を中心に世界で愛されるブランドを生み出していくプラットフォームでありたいと思っています。

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伝説のクラブ「スタジオ54」の設立者が語る光と影 成功から投獄生活まで 前編

 米ニューヨークの「スタジオ54(STUDIO54)」は、多くの人がその名を耳にしたことのある伝説のナイトクラブだ。このクラブはブルックリン出身の若者2人、イアン・シュレーガー(Ian Schrager)とスティーブ・ルベル(Steve Rubell)が1977年に設立。2人はマンハッタン・ウエスト54丁目254番地のガロ・オペラハウスをナイトクラブに改装し、当時のクラブシーンに革新をもたらした。「スタジオ54」の外にはベルベット・ロープ(レッドカーペットやクラブの入口に置かれる区切りの綱)で「入場を拒否されないように」と願う何百人もが列をなした。「スタジオ54」の写真やファッション、小道具などを集めた展覧会「スタジオ54:ナイト・マジック」がニューヨークのブルックリン美術館で今年の3月13日に開幕した。7月5日まで開催予定だったが、新型コロナウイルスの流行で現在は休館している。ルベルは89年に死去したが、シュレーガーはブティックホテルのパイオニアとして知られ、マリオット・インターナショナル(MARIOTT INTERNATIONAL)との協業でホテル「エディション(EDITION)」を手掛け、自身の会社で「パブリック・ホテル(PUBLIC HOTEL)」を運営している。本国「WWD」のインタビューでシュレーガーは「スタジオ54」の成功と失敗、脱税の罪で投獄された経験などについて語った。

WWD:なぜいまだに「スタジオ54」はインパクトを持ち続けるのか?

イアン・シュレーガー(以下、シュレーガー):「スタジオ54」は、それ以前になかった3つのことを実現したまでだ。クラブに入ることができた人全てが完全な自由を謳歌できた。そんな場所はなかなかないものだ。「スタジオ54」では何でもあり、何をしでかしても大丈夫。誰もじろじろ見ないし、批評もしない。誰もが自分らしく楽しめる完全な自由があった。また、完全に守られた場所だったということだ。有名人であっても誰もサインをねだるようなやぼなことはしない。超有名人が隣に座ったとしても誰も気にしない、そんな場所だった。「スタジオ54」は誰にも邪魔されずにそれぞれが楽しい時間を過ごすことができる楽園だったんだ。一番重要なのは、それ以前にはあり得なかったような、ありとあらゆるタイプの人々が集まったこと。金持ちもいれば、そうでない人、老若男女、ゲイ、ストレート、黒人、白人もいた。あらゆるタイプの人が集まることが「スタジオ54」に熱気とエネルギーをもたらした。それは、金持ちの白人だけが集まる場所ではあり得ないことだ。自分とは背景が違う人たちと一緒にいられることが人々にとって興味深かったんだ。40年経った今でも人々は、まだ「スタジオ54」に興味深々だ。「ウッドストック(WOODSTOCK)」などの人生に影響を与えるようなイベントに何回か行ったが、「スタジオ54」ほどではなかったと思う。

WWD:以前になかったクラブに必要な要素をどうやって見つけたのか?

シュレーガー:新しいものや革新的なものをつくるときは、自分が好きだと思うことを実行するのみだ。地図があるわけじゃない。自発的にやりたいと思うことをやるだけ。ファッション・ピープルは、自分が着たいと思う服を着るだけ。それは、デザインがどうとか、金もうけをしたいとかということではない。自分の欲望の純粋な表現でしかない。私はストレートの人が集まる場所にいて快適に感じたことがない。なぜなら、気取っていて表面的だから。誰かに会って話したいと思って行ったのに、面白そうな人は誰もいない。だから、ダウンタウンのゲイクラブのようなエネルギーがある場所がパーティーにはもってこいだと考えたんだ。ゲイだけでなく、もっといろんな人々を集めて、誰もが夢見るような場所にすればいいと思った。

WWD:なぜファッションが重要な鍵になったのか?

シュレーガー:私は野球選手や陸上選手がスターだった時代に生きてきた。映画俳優が頂点だった時代からそれがロックスターに、そしてメディアを率いる人々に移った。私はそれら全てを見てきた。70年代のニューヨークでは、アメリカのファッションが確立し始めた頃でファッションデザイナーらが当時の映画スターのようなものだった。彼らが行く場所が超クールだと認められるようになり、文化の中心になったんだ。この現象は「WWD」や「W」を出版したジョン・フェアチャイルド(John Fairchild)氏による影響が大きい。

WWD:入場者の選定はどうやって行ったか?

シュレーガー:とても民主的だった。エリートだけが入れるようなクラブではなく、人種や信条、富に基づいた選定はしなかった。いろいろな人々が集まる場所にしたかっただけだ。女性に嫌な思いをさせないように徹底したケアを行っていたよ。自宅でプライベートパーティーをするときみたいに慎重だった。おしゃべりな人の隣にはおとなしい人を座らせたりね。ただ、公共の場なのでそれに対して文句を言う人もいた。「スタジオ54」では金持ちで権力がある人や有名人であることは何の意味も持たなかった。スティーブと私が「スタジオ54」でしたことは、法を破って、ある意味ばかげたことをしただけ。多くの人が「スタジオ54」の成功とそこで起こっていることに対して否定的だった。「スタジオ54」に入ることができず、それに対して怒る人が多かったからね。パーティーを盛り上げるために、ドアマンがさまざまなタイプのグループの人々を選んだ。まるで、サラダを作るようにね。スティーブはそれにものすごく長けていた。彼だけが、並んでいる人を怒らせずに入場を断ることができた。彼はとても感じよく、自然にそれができたんだ。クラブにふさわしい人を選んでいただけ。必ずしもすべてがそうだったとは限らないが、われわれの人選は成功だった。

WWD:だいたい何人くらいクラブに入場できたのか?

シュレーガー:データはない。金もうけのためじゃなかったから。外に人を並ばせることでクラブが混んでいると思わせていると受け取る人もたくさんいたよ。一度に数千人を入れることが可能だった。数千人がダンスフロアで一斉に、まるで大きな有機体のように動く様子は見もので、それを楽しむ人もいれば、そうでない人もいた。クラブに入るために大金をつぎ込む人もいたよ。セックスでも何でもあり。ドラッグはなかったと思うけど。妻が夫を差し置いてクラブに入り、その後別れたというカップルをいくつも見たよ。ありとあらゆる人たちがなんとしても入りたい、そんなクラブだったんだ。

WWD:前代未聞のクラブ作り上げたと気付いたのはいつか?

シュレーガー:この仕事を長くやっているからね。自然に成功したものもあれば、そうでないものもある。成功するには努力が必要。「スタジオ54」は自然な成功だった。われわれはオープン前からそれが特別なものになると分かっていたよ。オープン直前に、視覚的な刺激やスケールの大きさなど、全てにおいて最高レベルのセットをつくるという意気込みが、このスタジオを今まで誰も見たことがないものにしたんだ。オープン初日から毎日混雑していた。吹雪で50cmも雪が積もった日でもクラブの中は歩けないほど混雑していた。

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デザイナー経験者が米西海岸で手掛けるD2Cでの日本ブランド海外進出支援 「パリ出展以外の選択肢を提供したい」

 「日本のデザイナーが海外に販路を広げる際に、パリでの展示会やショーといった手法以外の選択肢を提供したい」。そんな考えから、米サンフランシスコと東京に拠点を置くデザインエージェンシーのbtraxが、ファッションブランドのグローバル進出支援を開始した。端的に言えば、D2C(Direct to Consumerの略、ECを軸にした顧客直結型ビジネスモデル)での海外、特に米国進出支援サービスだ。ただし、「今のD2Cブランドはユーザーに寄り沿い過ぎて、どれもがシンプル、タイムレスといった方向性になってしまっている。それではエモーションを刺激できない」と、btraxで同プロジェクトを手掛ける満汐国明は話す。そうしたD2Cの課題も同時に解決するあり方を目指しているという。

 1989年生まれの満汐はバンタンデザイン研究所を卒業後、江角泰俊が手掛ける「エズミ(EZUMI)」(当時は「ヤストシ エズミ」)に立ち上げから参加。2017年からは、江角がディレクターを務めていた「コスチューム ナショナル(COSTUME NATIONAL)」でデザイナーを務めた。「当時親交があった同世代の東京のデザイナーは、海外に販路を拡大するというと『売れるか分からないがパリでチャレンジする』という考えだった。それで『すごく売れた』といった話は聞かなかったし、売れたら売れたで『売掛金が回収できるか不安だ』となる。これでは苦しいだけだと思った」と満汐。

 デザイナーとしての自身のキャリアにも行き詰まりを感じていたという。「自分の強みを作り出すために、グローバルでブランディングができる人材になりたいと考えた」。そのために「ファッション業界以外の視点を混ぜる必要がある」と、19年4月に家族が駐在していた米国へ。注目したのがD2Cのビジネスモデルだ。「D2Cは、消費者の欲望を駆り立たせて商品を買わせるという従来の手法に代わって、ユーザーのニーズを引き出し、潜在的な課題を解決していくビジネス。(D2Cが提供する価値である)“体験”について勉強したい」とリサーチをする中で、btrax率いるブランドン・ヒル(Brandon K.Hill)最高経営責任者と出会った。

 今回立ち上げた日本ブランドの海外進出支援サービスでは、マーケティングや商品企画のコンサルテーション、ECサイトの構築、物流面の整備、プロモーション、カスタマージャーニーの設計など、商品を海外で売っていくために必要なあらゆる要素を包括していくという。「海外進出に適したやり方はブランドごとに異なるはず。ショールームに参加してバイヤーに見てもらうという、1つの形式だけをブランドに押し付けたくない」。

 btraxには満汐ともう一人ファッション畑出身者がいることで、ファッションならではの感覚や、生産面などの実情も加味した提案ができることが強みだ。「米国市場はやはり日本とはライフスタイルや趣味嗜好が異なる。潜んでいるユーザーニーズを調べ、プロダクトに落とし込むための商品企画の手伝いをする」。ただし、ユーザーの声に寄り過ぎることはしない。「ファッションブランドは世界観を作ることに長けている」。そうした世界観なしにユーザーの声に寄り沿い過ぎると、無味無臭な、よくあるD2Cブランドになってしまう。「D2Cがやりつくされている米国市場だからこそ、ファッションブランドが強みとする世界観が重要になる」と強調する。

 具体的に現在進行しているのは、「カポック ノット(KAPOK KNOT)」(双葉商事)という中綿アウターブランドの米国進出プロジェクトだ。同ブランドはカポックという植物の実の繊維(パンヤ)を中綿として使用し、「エシカルダウン」として打ち出している。19年末には、クラウドファンディングサイトの「マクアケ」を通して商品を販売した。20年9月から、米国に在庫を置いてECで販売する予定という。「アウターは外着だと考えられているが、室内に潜在的ニーズはないかと考え、ルームウエアとして打ち出すイベントを考えている」。もちろん、コロナショックで室内で過ごすことが増えていることも意識した企画だ。

 「老舗も若手も、もっともっと日本のブランドを世界に羽ばたかせることができると思っている」と満汐。特に、「これはどこにも負けないというアイテムがあるブランド」はbtraxのサービスで海外進出につなげやすいという。一方で、デザイナーブランドをはじめ、多くのファッションブランドはそのようなアイテム特化型ではなく、スタイリング全体の“面”で訴求している。「海外でも最初から“面”で見せようとするとコストもかかる。スタイリング訴求のブランドであっても、たとえばバッグなど、アイコニックな商品を持っているなら、まずはそれを出していく」。そんなふうに、ブランドごとに適した手法を考えていくという。

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「グッチ」のミケーレが「ショーは年に2回」と明言 「プレ・コレクションなんて言葉は、必要?」

 公式インスタグラムで発表した通り、「グッチ(GUCCI)」のクリエイティブ・ディレクターを務めるアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)が、コレクションの発表を年に2回まで絞り込み、シーズンやデジタル活用について、既成概念には一切とらわれない考えを示した。ミケーレは世界のジャーナリスト約20人が参加したオンライン・カンファレンスで、「地球が、私たちに変革を求めている。もう過去に戻ることは許されない」とスタート。これまで最大で年に5回開催していたファッションショーを減らし、従来通りなら9月末にミラノで発表する2021年春夏コレクションのショーは延期する。彼は「ダイアローグ(対話)」という言葉を繰り返し、ブランドの最高経営責任者のマルコ・ビッザーリ(Marco Bizzarri)やアトリエのスタッフ、何より顧客や消費者とのコミュニケーションを繰り返すことで、理想の発表方法を模索するという。「WWDジャパン」は、日本のメディアとして唯一参加。コレクションの発表方法にまつわる質疑応答をレポートする(業界や社会の未来予想図などについては、ファッション週刊紙「WWDジャパン」の6月8日号に掲載予定)。

Q.「年に2回」のファッションショーは、ミラノ・ファッション・ウイークでの発表ということなのか?

アレッサンドロ・ミケーレ(以下、ミケーレ):新型コロナウイルスの蔓延によるロックダウンやスローダウンに伴い、9月に2021年春夏コレクションを発表するのは不可能だ。未来に向かう道を示したい。例えるならそれは、「新しい酸素」。この高度なファッション・システムが次に繋がるための力、クリエイティブの力を見せられたら。クリエイティブの力こそ、未来への道しるべだ。プレスやバイヤーに集まっていただくファッションショーは、とっても楽しい。ただ、それを年に5回も開くのは、もはや不可能だろう。私を飲み込んでしまうような、とてつもなく巨大なマクロシステムと距離を置きたいと思っている。私たちは、過去に生まれた言葉に縛られ続けている。既成概念というワナから逃れる必要があるだろう。今を紡ぐため、過去に立ち返るのは大好きだ。でも、それと過去に縛られ続けることは違う。現代に即した、過去とは違うシステムが必要だろう。それを生み出すのは、クリエイティブの力だ。

Q.春に春夏コレクションを、秋に秋冬コレクションを発表というオンシーズン体制に移行する?ゲストをリアルな場所に招いてのファッションショーを開く予定は?

ミケーレ:「クルーズ」「プレフォール」「プレスプリング」「カプセル・コレクション」……。こんな言葉は、まだ必要あるのかな?ファッションショーやコレクションの呼称を変えたいと思っている。クラシック音楽の言葉を拝借するのはどうかな?音楽は神秘的で、時代を切り開く力を持っている。そして、人間にとっての力の源だから。シンフォニー、ラプソディー、マドリガル、ノクターン、オーバーチュア、コンチェルト、そしてメヌエット……。音楽は永遠に美しい。そして国境を簡単に超越するね。

Q.5月には2021年プレ・スプリング・コレクションをサンフランシスコで発表する予定だった。

ミケーレ:7月17日、かつて「クルーズ」と読んでいたコレクションをデジタルで発表する予定だ。今、ストーリーを構想中。7月はエピローグ、終章だ。次の未来の“種”を巻くものにしたい。2月のコレクションでは、素晴らしいファッションショーを生み出すスタッフにフォーカスした。フィナーレまで残っていたのは、モデルじゃなくてスタッフ。普通ならオカシイのかもしれない。でも未来とつながるには、時に逆転の発想が必要だ。あの物語を終わらせ、次を示したいと思う。

 長らく「グッチ」が参加していたミラノ・ファッション・ウイークは、従来6月に開催していたメンズは7月14~17日にデジタルで、さらに9月22~28日にはメンズとウィメンズの合同ウイークという形での開催を模索している。「グッチ」の9月のファッション・ウイークに参加しないという声明は、他のブランドの動向にも影響を与えそうだ。

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IT賢者と徒然対談 Vol.2 今提案すべき「商品のソフトウエア的な価値」とは? 3つの伝え方を伝授

ムラカミ:首都圏および北海道の緊急事態宣言も解除され、全国の店舗営業が再開しつつあります。「そろりそろり」という擬音が付きそうなくらい、各社とっても慎重です。接客が仕事にも関わらず「こちらから、話しかけてはいけない」なんてルールを課さねばならないショップスタッフには、心の底から同情してしまいます。

CKR:「接客」の「接」が大きく変わりそうですね。私は、顧客接点の新モデルである「OMO(Online Merge with Offline.日本語では『オンラインとオフラインの併合』という意味)」が崩れ始めると考えています。フィジカルなモノを効率的に届けるだけの発想は、限界を迎えるからです。

ムラカミ:確かに多くの識者が、これまでのファッション&ビューティ業界は「店舗と同じものが買える」「店舗に行かなくても買える」「買ったものがすぐに届く」「店頭で確認してから買える」など、失敗せず、いち早くモノを手に入れるための「便利」ばかりを追求してきたと警鐘を鳴らしています。武庫川女子大学生活環境学部の井上雅人・准教授はコロナ終息後の未来について、「これからは、人と人とのコミュニケーションを円滑にするために趣味や思想をわかりやすく表現できる『便利さ』にも目を向けたほうがいい」とおっしゃっています。


CKR:これまでの「便利」は効果が計測できるので、施策化しやすいんですよね。しかし本当に取り組むべきは、井上准教授がおっしゃる通り、お客さまに意味のある価値を届けることです。価値とは、商品とお客さまとの関係性。関係性とは、「こんな風になれる」「仲間としてつながる」など妄想できることです。コロナ禍がもたらしたこと、それは商品とお客さまの関係性の変化です。物欲が減るなど人の消費意欲が変わり、店舗の安心・安全神話も崩壊しました。今改めて、「消費する意味」を伝える必要があります。店舗はもちろんECまで、消費活動を通じて関係性を育む場として見直す必要があります。


ムラカミ:確かに。業界は「こんな風になれる」と妄想させることを放棄し、妄想できる人だけを相手にしてきてしまいましたね。先日、友人と話をしたのですが、「オシャレになりたい人」のために存在していた業界が、いつの間にか「オシャレな人」しか参加できない世界に変わってしまったと感じています。


CKR:コロナ禍は、ズレを見直すチャンスです。モノを、効率的にさばくだけの発想から離れましょう。中心に据えるべきはフィジカルな商品ではなく、商品のソフトウエア的な価値。信頼する人がオススメする情報や、購入後の自分が享受できる価値を届ける方が重要です。それが伝われば、ECでも店舗でも関係ありません。皆、必死になって探します。ソフトウエア的な価値は、どのように見つけ、伝えるのか?具体的に3つお話しします。1つ目は、モノそのものではなく、モノの周辺に意味を与えることです。「購入したモノが、今、いくらで売れるか伝える」「支払ったお金が、どんな社会貢献につながっているか伝える」「導電性繊維の服を通じて、今の健康状態を伝える」などが一例です。モノは目的ではなく、意味を与える手段になるということです。

先日、iPhoneSE PRODUCT(RED)を即買いしました。スマホの買い替え時期でもありましたが、支払ったお金が新型コロナウイルス対策に寄付される点に後押しされました。モノ周辺の「意味」に心動かされたのです。

ムラカミ:以前CKRさんは、Air Podsを激賞していました。アップル信者ですね(笑)。確かにアップルは、「商品を買ったら、オシャレなグループの仲間入りができる」という、商品以上の価値を提供してくれます。

CKR:2つ目は、モノが変化に適応できるデザインであることです。アプリやソフトウエアの世界は、アップデートを繰り返し、市場に適応していきます。「コーチ(COACH)」が、ビンテージバッグをリメイクし「コーチ オリジナルズ」を発売した発想もまさにコレです。気分を変えるためのリメイクは、ファッションならではの発想です。そして3つ目は、物理的なモノではなく、デジタルデータの販売に振り切ってしまうことです。提供する価値がデジタル化すると、物流コストや製造原価に悩む必要がありません。しかも国境を簡単に越えることができます。“マーケットのケタ”も変わります。VRイベント「バーチャルマーケット」に伊勢丹新宿本店や「ウィゴー(WEGO)」が出店してアバター用の衣装を販売する試みは先進的です。全ての生活シーンがデジタルに置き換わることはありません。しかし、自分自身をデジタル化するシーンが増えているのは事実です。ARフィルターをかけてZoomのスクリーンに映る自分は、完全にデジタル化しています。LINEスタンプで自分の気持ちを表現するシーンは、プロモーションから販売流通までオールデジタルですよね。デジタルだけで製造流通を完結させる仕組みこそ、トライする価値アリです。

ムラカミ:「あつ森」も一例ですね。

CKR:まさにです。今後はこのようなソフトウエア的発想で、価値を流通させるビジネスが増えるのではないでしょうか。

ムラカミ:ファッション&ビューティ業界が3つ目さえ自分たちのフィールドと認識することができたら、「モノありき」という考え方さえ打破できるかもしれません。将来的には、ムダなモノが減って、サステナブルな社会が近づくかも(笑)。

CKR:モノとの距離を考えることが、サステナブルの出発点かもしれませんね。ところで、デジタルテクノロジーが、未だ対応しきれてない領域があります。生理的な欲求や、安全欲求を満たすことです。コロナ禍でリアルの安心感がポッカリ抜けた今、デジタルで生理的欲求や安全欲求に応えることが期待されています。思考停止して考えてこなかった領域に、デジタルで対応するチャンスが到来していると言えそうです。たとえば安心感の伝え方。リアルの手触りに頼るのではなく、お互いの信頼関係で応えてみる。心地良く眠りたい欲求には、フカフカのベッドではなく、睡眠データの解析とノンレム睡眠を刺激する周波数で応えてみる。今なら、市場に受け入れられるかもしれません。

ムラカミ:先日、ボディーワーカーと「Zoom飲み」をしたんです。彼はこれまでマッサージやヘッドスパ、シンキングボウル、オーラソーマなどを組み合わせた“ビスポーク・リラクゼーション”を生業としてきたのですが、身体的接触が憚られる今さえ、そんなに落胆していませんでした。聞けばZoomなどを使って音や言葉で綴るヒーリングなどに取り組んでいて、なかなかの盛況だそう。人の心を解きほぐすことで身体的ストレスを軽減する、という発想と経験があれば、物理的接触が制限されても仕事できるんですね。彼が、「『肩こりを治す』みたいな人たちは、キツくなると思う」と話していたのが印象的です。

CKR:Zoomを使ったヒーリングは、斬新ですね。ファッション&ビューティは、慣れや飽きで感動がなくなった状態に、活力を与える力があります。しかもすぐに形にでき、生活に溶け込むポテンシャルを持っている。今こそ知恵をしぼり、新しい行動する開始するときではないでしょうか?

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連載「今、デザイナーができること」Vol.23 森永邦彦「ファッションを通して、“新しい日常”をつくる」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は2003年にブランドをスタートさせ、14年からはパリ・ファッション・ウイークでコレクションを発表し続ける「アンリアレイジ(ANREALAGE)」の森永邦彦デザイナーが登場。

ANREALAGE
森永邦彦

Q 不安が続く状況下で、ファッションデザイナーが人々にできることは?

 何が大切なのかを考えながら仕事をする日々が続いている。ブランドをはじめてから今まで異常なスピードで走り続け、立ち止まることが許されない世界にいた。しかし、今はじめて少し止まって、日常について、ファッションについて、ブランドについて、何を大切にしてこの先進むべきなのか、その答えを自分の中に種を植える作業をしている。

 これまで、「アンリアレイジ」のファッションは“日常を変える装置”だと信じて活動を続けてきたが、今は日常が非日常となり世界が変わってしまった。今ファッションを“日常を取り戻す装置”として、日常を取り戻さなくてはいけないとき。ファッションを通して、新しい日常をつくること。今の環境下でやれること、今私たちが作るべき服に対して真摯に取り組みたい。

 店舗が営業できない状況で、自分たちにできることはないかと考えはじめたのがZoomを使ったリモートショップ。ECで服を販売する中で必然的に欠落していたコミュニケーションを重視し、デジタルでの購入にフィジカルな体験を付加する試み。販売を行う場ではあるが、会えなくなってしまった顧客とコミュニケーションをとり続ける目的が大きい。一人40分間の完全予約制で、いつもより深い特別な接客ができて売り上げも好調だ。

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新たなビューティスタンダード、消毒、除菌、保湿を備えたハンドケアアイテム5選

 新型コロナウイルスの感染拡大によりマスク、手洗い、顔洗いが肝要とされる昨今。資生堂が手指消毒液の生産を開始、花王が消毒液を増産するなどというニュースもある中、ビューティアイテムで急激に販売数が伸びているものがある。ハンドケアアイテムだ。消毒除菌作用だけでなく、頻繁に行うことで荒れてしまう手を健やかに美しく整えるハンドクリームの売り上げが好調だという。改めて、感染症に抗うことを前提に考えると、外出先でのハンドケアは必須であると思わされる。それも、このところ多くのメーカーから発表が相次ぐ、ポータビリティー性の高いアイテムに注目したい。

 「シロ(SHIRO)」は4月、ハンドリフレッシュナーのシリーズを矢継ぎ早に発表しSNSでも大きな話題を集め、5月には新製品も発売した。「ヴァイタルマテリアル(VITAL MATERIAL)」の小林陽輔KINGS ROAD代表は「自社EC以外に『オンワード クローゼット』で販売しているが、連日売上高、販売数ともに上位にランクイン。取り扱いがスタートしてからの約1カ月の間で数万本の販売実績が出ている」と話す。

 今秋にも新型コロナの第二波が来るともささやかれる今、いわゆる自粛生活を余儀なくされた日々でどれほど“注目”されたのかを新製品を発表したメーカー各社に聞くと、これからのハンドケアが、美容における新たなスタンダーとなり得る存在であることが伺える。

目指すのは、50%以上のアルコール濃度で肌にやさしい処方
「ヴァイタルマテリアル」

 「自然から生まれた植物を五感で感じて欲しい」との思いから誕生したブランド「ヴァイタルマテリアル」。2014年のデビュー時から展開するハンドジェルは、エタノール配合で、外出自粛要請が出される前から多くの反響があった。「要請前の2〜3月の2カ月間で例年の約5倍、要請後の4月7日からの約1カ月間で例年の約10倍の販売実績」と小林代表はいう。さらに、「ハンドケアのカテゴリは消費者がブランドスイッチしやすい商材と考えているため、ブランドとして特に注力してきた」。

 とはいえ、除菌や消毒を最優先にすることで生じやすくなるのが肌荒れだ。「不活化効果が得られる50%以上のアルコール濃度でありながら、植物エキスや保湿成分を配合し敏感肌の方も使用できる処方組への変更を進めている」とし、発売以来、通年で売れ行きのいい主力アイテムの処方を変更しアルコール濃度を危険物にあたらないギリギリの59%まで増やす考えを示す。

 「今回の新型コロナの流行以降、消費者の中でウイルスの不活化に対しアルコール濃度を気にかけられていると実感している」と述べる一方で、製品の製造についての課題もあるという。「今後、国内でのアルコール原料などに出荷制限がかけられ続けられた場合に備え、緊急措置としてイタリアのオーガニック工場と連携し生産・輸入を進めている」

新製品の情報解禁後、問い合わせが殺到
「シロ」

 「シロ」は、アルコール成分を65vol%(体積あたりの濃度)配合した「チャクラーサナ ハンドリフレッシュナー」を4月2日に発売した。その背景には、こまめな手洗いと念入りな手指のケアが求められる昨今の情勢に加え、新型コロナについての情報が増えてきた中で、アルコール製品が不足している状況に不安を感じているといった顧客からの多くの声がある。また、より快適な毎日を送ってほしいという思いもあった。企画から約3週間というスピードで、「シロ」ならではのスキンケア効果を兼ね備えたハンドケアアイテムを発売した。

 「シロ」PR担当は「自社工場での一部の製品製造を止め、アルコール製品の製造に注力。お客さまへ少しでも多く、速く製品を届けられる体制に整えるための策だった。結果、発売から数日のあいだに売り切れとなり、ハンドケアへの関心、アルコール配合製品への注目度の高さを改めて実感している」と話す。その後の4月16日には、アルコール成分の配合率を80vol%に引き上げた「ハンドリフレッシュナー 80(2種)」を発表。シリーズ全てのアイテムは依然として高い人気で、品切れ状態。未だ再販のめどは立っていないという。

 毎日の暮らしが変化し続ける中、「店舗では、タッチアップの自粛など直接的な接触予防を継続。またレジへのパーテーション設置や会計時のカルトン使用の徹底など、感染拡大予防のための取り組みを強化していく」との考えを示す。発売から約20日間で、シリーズ全体の注文数はおよそ20万本に上った。さらに、5月15日には手肌の汚れをすっきりと落とし、心地よい香りを楽しめる2種の「クレイハンドソープ」を新たに発表し、予約の受付を開始。5月21日より、順次発送している。

清らかさがトップネイリストの考える美を支える
「ウカ」

 2019年に発売した「ウカ(UKA)」ハンドケアシリーズの一つ「ネイル&ハンドミスト プレップ」は、平時のおよそ30倍もの売り上げ数を記録した。現在は欠品中だが、6月中旬の再販を予定しているという。エタノールを高配合するミストタイプで、手だけでなく爪も清浄にすることで健やかにキープする。ネイルカラーを行う前に油分を除去する、ネイリスト発信のアイテムだ。殺菌や抗菌、消毒など清潔に保つための要素はハンドケアアイテムには不可欠と思える今、こうした考えは今後のビューティにおける一つのスタンダードになってくるかもしれない。

 小林麻衣ウカ広報も「これからは“清潔・消毒・除菌”が当たり前になり、素材やブランドにもこだわりが出てくるのではないか」との考えを示した上で、「性別や年齢に関係なく、除菌の後のハンドケアの需要は、今まで以上に高まるだろう」と述べる。「ウカ」は、夏にオーガニックハンドジェルを、さらに秋にはハンドソープの発売を予定しているという。

豊かな香りで包む、ファインフレグランスブランドの提案
「モルトンブラウン」

 「モルトンブラウン」 (MOLTON BROWN)3種をセットにしたハンドクリームは、限定発売されるたびに人気となる商品で、4月30日に新たなセットを発売した。「今回の『ハンドケア コレクション』は発売日以前から問合せがあり、大変に好評をいただいている。5月売り上げランキングTOP5にはいる勢い」と藤本泉モルトンブラウンジャパン リージョナルマーケティングマネージャーは話す。

 ハンドケアアイテムの他にバス&ボディー、フレグランスなどのカテゴリで構成する「モルトンブラウン」は、ファインフレグランスグランドだ。「豊かな香りで生活に彩りを与えていくことを大切にしている。今後も、モルトンブラウンの強みである香りを楽しむハンドウオッシュ、ハンドケアのキャンペーンを実施するなど、カテゴリを強化していく予定だ。危機管理から来るケアだけではなく、その行為が心をも豊かにするアクションにつながるような製品提供を行っていきたい」。

保湿しながら抗菌するハンドクリームで伝える、古より続く叡智
「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー」

 ヨーロッパでは抗菌効果があるといわれる、ユーカリとやマヌカのエッシャルオイルや鎮静効果のあるスウィートオレンジのエッセンシャルオイルを豊かに配合した「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー」(OFFICINE UNIVERSELLE BULY)の「ドゥーブル・ポマード・コンクレット」。今年4月の売り上げは前年比約2倍だったことについて、前田亮介 オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー ジャパン ゼネラルマネージャーは、「抗菌効果のあるエッセンシャルオイルを用いた製品という点がコロナ対策として大きな伸びに繋がった」と分析する。

 ブランドが古よりフランスを代表する美容専門店だったことを思い出させるこのハンドクリームは、創業当時よりシンプルな製法を現在まで貫く数少ないアイテムの一つで、優れた保湿効果で人々の手足を守り続けてきたハンドクリーム「ポマード・コンクレット」とともにブランドのアイコン的アイテムに掲げる。

渡部玲:女性誌編集部と美容専門の編集プロダクションに勤めた後、独立。2004年よりフリーランスの編集者・ライターとして雑誌やウェブなどの媒体を中心に活動。目下、朝晩のシートマスクを美容習慣にして肌状態の改善を目指している

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新たなビューティスタンダード、消毒、除菌、保湿を備えたハンドケアアイテム5選

 新型コロナウイルスの感染拡大によりマスク、手洗い、顔洗いが肝要とされる昨今。資生堂が手指消毒液の生産を開始、花王が消毒液を増産するなどというニュースもある中、ビューティアイテムで急激に販売数が伸びているものがある。ハンドケアアイテムだ。消毒除菌作用だけでなく、頻繁に行うことで荒れてしまう手を健やかに美しく整えるハンドクリームの売り上げが好調だという。改めて、感染症に抗うことを前提に考えると、外出先でのハンドケアは必須であると思わされる。それも、このところ多くのメーカーから発表が相次ぐ、ポータビリティー性の高いアイテムに注目したい。

 「シロ(SHIRO)」は4月、ハンドリフレッシュナーのシリーズを矢継ぎ早に発表しSNSでも大きな話題を集め、5月には新製品も発売した。「ヴァイタルマテリアル(VITAL MATERIAL)」の小林陽輔KINGS ROAD代表は「自社EC以外に『オンワード クローゼット』で販売しているが、連日売上高、販売数ともに上位にランクイン。取り扱いがスタートしてからの約1カ月の間で数万本の販売実績が出ている」と話す。

 今秋にも新型コロナの第二波が来るともささやかれる今、いわゆる自粛生活を余儀なくされた日々でどれほど“注目”されたのかを新製品を発表したメーカー各社に聞くと、これからのハンドケアが、美容における新たなスタンダーとなり得る存在であることが伺える。

目指すのは、50%以上のアルコール濃度で肌にやさしい処方
「ヴァイタルマテリアル」

 「自然から生まれた植物を五感で感じて欲しい」との思いから誕生したブランド「ヴァイタルマテリアル」。2014年のデビュー時から展開するハンドジェルは、エタノール配合で、外出自粛要請が出される前から多くの反響があった。「要請前の2〜3月の2カ月間で例年の約5倍、要請後の4月7日からの約1カ月間で例年の約10倍の販売実績」と小林代表はいう。さらに、「ハンドケアのカテゴリは消費者がブランドスイッチしやすい商材と考えているため、ブランドとして特に注力してきた」。

 とはいえ、除菌や消毒を最優先にすることで生じやすくなるのが肌荒れだ。「不活化効果が得られる50%以上のアルコール濃度でありながら、植物エキスや保湿成分を配合し敏感肌の方も使用できる処方組への変更を進めている」とし、発売以来、通年で売れ行きのいい主力アイテムの処方を変更しアルコール濃度を危険物にあたらないギリギリの59%まで増やす考えを示す。

 「今回の新型コロナの流行以降、消費者の中でウイルスの不活化に対しアルコール濃度を気にかけられていると実感している」と述べる一方で、製品の製造についての課題もあるという。「今後、国内でのアルコール原料などに出荷制限がかけられ続けられた場合に備え、緊急措置としてイタリアのオーガニック工場と連携し生産・輸入を進めている」

新製品の情報解禁後、問い合わせが殺到
「シロ」

 「シロ」は、アルコール成分を65vol%(体積あたりの濃度)配合した「チャクラーサナ ハンドリフレッシュナー」を4月2日に発売した。その背景には、こまめな手洗いと念入りな手指のケアが求められる昨今の情勢に加え、新型コロナについての情報が増えてきた中で、アルコール製品が不足している状況に不安を感じているといった顧客からの多くの声がある。また、より快適な毎日を送ってほしいという思いもあった。企画から約3週間というスピードで、「シロ」ならではのスキンケア効果を兼ね備えたハンドケアアイテムを発売した。

 「シロ」PR担当は「自社工場での一部の製品製造を止め、アルコール製品の製造に注力。お客さまへ少しでも多く、速く製品を届けられる体制に整えるための策だった。結果、発売から数日のあいだに売り切れとなり、ハンドケアへの関心、アルコール配合製品への注目度の高さを改めて実感している」と話す。その後の4月16日には、アルコール成分の配合率を80vol%に引き上げた「ハンドリフレッシュナー 80(2種)」を発表。シリーズ全てのアイテムは依然として高い人気で、品切れ状態。未だ再販のめどは立っていないという。

 毎日の暮らしが変化し続ける中、「店舗では、タッチアップの自粛など直接的な接触予防を継続。またレジへのパーテーション設置や会計時のカルトン使用の徹底など、感染拡大予防のための取り組みを強化していく」との考えを示す。発売から約20日間で、シリーズ全体の注文数はおよそ20万本に上った。さらに、5月15日には手肌の汚れをすっきりと落とし、心地よい香りを楽しめる2種の「クレイハンドソープ」を新たに発表し、予約の受付を開始。5月21日より、順次発送している。

清らかさがトップネイリストの考える美を支える
「ウカ」

 2019年に発売した「ウカ(UKA)」ハンドケアシリーズの一つ「ネイル&ハンドミスト プレップ」は、平時のおよそ30倍もの売り上げ数を記録した。現在は欠品中だが、6月中旬の再販を予定しているという。エタノールを高配合するミストタイプで、手だけでなく爪も清浄にすることで健やかにキープする。ネイルカラーを行う前に油分を除去する、ネイリスト発信のアイテムだ。殺菌や抗菌、消毒など清潔に保つための要素はハンドケアアイテムには不可欠と思える今、こうした考えは今後のビューティにおける一つのスタンダードになってくるかもしれない。

 小林麻衣ウカ広報も「これからは“清潔・消毒・除菌”が当たり前になり、素材やブランドにもこだわりが出てくるのではないか」との考えを示した上で、「性別や年齢に関係なく、除菌の後のハンドケアの需要は、今まで以上に高まるだろう」と述べる。「ウカ」は、夏にオーガニックハンドジェルを、さらに秋にはハンドソープの発売を予定しているという。

豊かな香りで包む、ファインフレグランスブランドの提案
「モルトンブラウン」

 「モルトンブラウン」 (MOLTON BROWN)3種をセットにしたハンドクリームは、限定発売されるたびに人気となる商品で、4月30日に新たなセットを発売した。「今回の『ハンドケア コレクション』は発売日以前から問合せがあり、大変に好評をいただいている。5月売り上げランキングTOP5にはいる勢い」と藤本泉モルトンブラウンジャパン リージョナルマーケティングマネージャーは話す。

 ハンドケアアイテムの他にバス&ボディー、フレグランスなどのカテゴリで構成する「モルトンブラウン」は、ファインフレグランスグランドだ。「豊かな香りで生活に彩りを与えていくことを大切にしている。今後も、モルトンブラウンの強みである香りを楽しむハンドウオッシュ、ハンドケアのキャンペーンを実施するなど、カテゴリを強化していく予定だ。危機管理から来るケアだけではなく、その行為が心をも豊かにするアクションにつながるような製品提供を行っていきたい」。

保湿しながら抗菌するハンドクリームで伝える、古より続く叡智
「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー」

 ヨーロッパでは抗菌効果があるといわれる、ユーカリとやマヌカのエッシャルオイルや鎮静効果のあるスウィートオレンジのエッセンシャルオイルを豊かに配合した「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー」(OFFICINE UNIVERSELLE BULY)の「ドゥーブル・ポマード・コンクレット」。今年4月の売り上げは前年比約2倍だったことについて、前田亮介 オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー ジャパン ゼネラルマネージャーは、「抗菌効果のあるエッセンシャルオイルを用いた製品という点がコロナ対策として大きな伸びに繋がった」と分析する。

 ブランドが古よりフランスを代表する美容専門店だったことを思い出させるこのハンドクリームは、創業当時よりシンプルな製法を現在まで貫く数少ないアイテムの一つで、優れた保湿効果で人々の手足を守り続けてきたハンドクリーム「ポマード・コンクレット」とともにブランドのアイコン的アイテムに掲げる。

渡部玲:女性誌編集部と美容専門の編集プロダクションに勤めた後、独立。2004年よりフリーランスの編集者・ライターとして雑誌やウェブなどの媒体を中心に活動。目下、朝晩のシートマスクを美容習慣にして肌状態の改善を目指している

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新型コロナで増える法的悩み 「業界特化型の法律相談窓口」活用のすすめ

 東京都では新型コロナウイルスの感染者数が1ケタになる日も増え、政府は今日(5月25日現在)にも緊急事態宣言を全国的に解除する方針で検討に入った。“アフター・コロナ、ウィズ・コロナの世界”における戦略を考え始める企業もある一方で、緊急事態宣言下において休業要請対象に指定されなかった業界・業種については、今がまさに生き残れるかどうかの正念場という企業も多いだろう。ファッション小売りも休業要請対象外となった業界・業種の一つだ。

 そんな状況下において、新型コロナウイルス関連の法律相談も増えているという。ファッション業界のクライアントを多く抱える小松隼也弁護士(三村小松山縣法律事務所)によると、「新型コロナウイルスでM&Aや出資などの案件がストップしたといった相談は多い。また、海外のショールームや工場とブランド間の契約問題も多くなっている」と話す。ファッションローに詳しい海老澤美幸弁護士(三村小松山縣法律事務所)も、「会社側からも労働者側からも、労働関係の相談が増えている。解雇や雇止め、休業補償に関する相談や、雇用調整助成金のような制度に関する質問も多い」と続ける。

 ファッション小売りと同様に、休業要請の対象に含まれなかった美容室・理容室の関係者の悩みも深刻だろう。新型コロナウイルスを契機に複数の弁護士が有志で立ち上げた弁護団「美容室と美容師の法律相談室」では、5月末まで無料で法律相談を受け付けると発表した。同団体は、5月8日から先行して電話とメールで相談の受け付けを開始し、12日からLINEやウェブサイトなどを用いた法律相談窓口サービスを本格的に始動した。5月22日現在、「LINEの友達登録は60件程度、実際の相談は数十件程度寄せられており、雇用や業務委託、資金繰りや補助金、新規ビジネスに関することなど、幅広く相談が寄せられている」という。

業界特化型の無料相談窓口の利点

 日本弁護士連合会や、個別の法律事務所が独自に無料相談を受ける取り組みは以前から存在するため、そこに新規性はない。しかし「美容室と美容師の法律相談室」のように特定の業界に絞ることで業界特有の事例が集まりやすくなり、専門家側としてはノウハウの蓄積が容易になって、相談者としてはより実態に沿ったアドバイスをもらえる可能性が高くなるなど、双方にとってメリットがある。

 またファッションやアートの分野でも、弁護士が有志で集まり相談窓口を開設している団体は存在する。いずれも新型コロナウイルス問題以前から活動している団体だ。

 「ファッションロートウキョウ(FASHIONLAW.TOKYO)」は、海老澤弁護士が立ち上げたファッション業界関係者のための法律相談窓口だ。18年1月にスタートし、業界関係者が気軽に相談できる“シェルター”としての機能を果たすことを目指している。初回の法律相談は無料。19年からは小松弁護士も共宰として参加することで情報量が増えるだけでなく、海外案件まで広く対応することが可能になった。

 クリエイターやアーティストに対する法的な視点からのサポートを標榜しているのは、04年に発足した「アーツ&ロー(Arts and Law)」だ。作家とギャラリーの間の契約問題や、知的財産に関する相談など、アートに関連する法律相談を以前から無料で受け付けているが、現時点では新型コロナが原因となる相談は特段来ていないという。なお、同団体に所属する馬場貞幸弁護士(法律事務所エイチーム)は、「個人的には、事業や活動の停止や縮小に伴って今後は権利関係や契約関係の相談が出てくるのではないかと考えている」と話す。

 フリーランスに代表される個人事業主や中小企業が多いファッション業界や美容業界、アート業界では、何か問題が起きるまで弁護士とのコネクションがないことも多い。また、国内に約4万人いる弁護士の中から自分と合う弁護士を探そうにも、費用の点や心理的な敷居の高さから気軽に探し回ることも難しい。上に紹介したような無料相談などを通じて、困ったときにすぐ相談できる“かかりつけ弁護士”を探すのも一つの手と言えるだろう。

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中

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巣ごもり名人に聞く 広告代理店PR・長谷川佑季は「マスクで社会貢献、名作家具のペーパークラフトにも挑戦」

 新型コロナウイルス感染拡大で4月7日に緊急事態宣言が発令され、在宅勤務や外出自粛で巣ごもりを余儀なくされている人が多い。行楽シーズンのゴールデンウイークでさえ、どこにも行かず自宅で過ごさざるを得ないという未曾有の状況だ。人に会えない、外出できない――こんなとき、どうすれば巣ごもりライフをエンジョイできるか?今回は広告代理店でPRを務め、海外ファッションスクールの卒業コレクションまでチェックするほどのファッション好きな長谷川佑季氏に聞いた。

WWD:これを機に買ったものは?

長谷川:新型コロナを受けてマスクがファッションの一部になるのではと考えて、NY発のサステナブルファッションブランド「コリーナ ストラダ(COLLINA STRADA)」の布マスクを買いました。実はこのマスク、1枚購入するとNYの医療従事者にマスク5枚が寄付されるんです。1万2000円と高額ですが、そのスキームに共感したのが購入の決め手ですね。あとはリビングで筋トレするためにヨガマットも手に入れました。これがあるとトレーニングの質が全然違うんです。

WWD:外出自粛をきっかけに新しく始めたことは?

長谷川:韓国のHip-hopやドラマにハマり、韓国語の勉強を始めました。また「フューチャー ラーン(FUTURE LEARN)」(英国発のオンライン教育プラットフォーム)を利用してIFM(Institut Francais de la Mode、フランスの服飾学校)の授業を受けたり、名作家具のペーパークラフトに挑戦したりと、インプットをメインにいろんなことにトライしています。

WWD:おうちでお気に入りの場所は?

長谷川:自宅の屋上ですね。ここで読書やストレッチをするのがすごく好きなんです。

WWD:新たに使い始めたツールやアプリは?

長谷川:「ピンタレスト(Pinterest)をこれまで以上に活用するようになりました。インテリアやワードローブ、女性像など世界中の投稿から理想的だと感じるライフスタイルをまとめています。

WWD:巣ごもり生活に役立つ知恵は?

長谷川:生活における一つ一つの行為を大切にすること。起床後に何を飲むか、どんな香りを付けるかなど、いつもと同じ行為を丁寧にすると、なんの変哲のない日々も充実してくると思います。

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ジュエリーブランド「カスカ」が偶然の出会いからオリジナルマスク  オンライン購入でプレゼント マスクだけの販売も

 ジュエリーブランド「カスカ(CASUCA)」は、ジュエリーのオンライン購入者にオリジナルマスクをプレゼントする。ブランドロゴをモノグラムにし、ブランドのイメージカラーのこげ茶色に白で施したものと、白字にブルーであしらったものの2種類。素材は伸縮性のあるライクラを使用。薄くて軽く、速乾性に富むので洗濯にも適しており、吸湿性が高いためこれからの暑い季節にもぴったりだ。

 このマスクが誕生したのは「カスカ」のデザイナーの安野ともことある女性の偶然の出会いから。安野がランチをしていた際、隣のテーブルで食事をしていた女性の「新型コロナウイルスの影響で工場の仕事がなくなり、代わりにマスクを作ったけど売れない」という話を聞き、声をかけたのがきっかけだった。「カスカ」と、群馬で1966年に創業したプリントと刺しゅう工場の協業で生まれたオリジナルマスクは、個数を限定せずオンライン購入者全員にプレゼントされる。

 また、「カスカ」ではマスクだけ欲しいという声にこたえて5月25日、オンラインストアで上記のマスク2枚セット(各色1枚)を2300円(送料込)で販売し、売り上げの一部を新型コロナウイルス感染症と闘う医療機関に寄付する。偶然の出会いから生まれたマスクには、安野の思いやりの心が込められている。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.22 皆川明「着る人には暮らしの喜びを、作る人には作る喜びと日々の糧を」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、25年以上に渡り、“1シーズンで役目を終えない服”を世に送り出している「ミナ ペルホネン(MINA PERHONEN)」の皆川明デザイナーが登場。

MINA PERHONEN

皆川明

Q 不安が続く状況下で、ファッションデザイナーが人々にできることは?

ファッションの表現、製造業がどのように変わり、求める人の気持ちはどう変化していくのだろう。また私たちはどのように変わるべきか、モノを通してどんな喜びがこれからの未来に必要かということを考えている。デザイナーは、ファッションを通して着る人、使う人には日々の暮らしの時間に喜びを作ることができ、モノ作りの人たちには作る喜びと共に日々の暮らしの糧を生み出すことができる。現在は販売する機会が限られる中、売り上げは下がるが、まず社員の生活を維持しながら継続できるよう日々、模索している。この事態が収束したときに、また関わる人たちと信頼を持って進んでいけるように考えていきたい。

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こんなときだから、子どもも一緒に楽しみながらビューティチャレンジ 働くママのざっくばらん“本音”トークVol.6 ビューティー編

 外出自粛という異例の春に欠かせない、マスク越しメイクのポイントは?子どもも旦那もステイホーム中、自宅でセルフボディーケアにも気合を入れる、ママ2人が本音で語ります。

 外出=マスク姿が定着した今春の注目ポイントは、なんといってもマスク越しに見える一部メイク。そして自宅でのセルフボディーケアも忘れてはならないけれど、気持ちに余裕がないのも否めない。旦那さんの在宅勤務に加え、子どもの休園・休校で今まで以上に自分の時間がない中で、それぞれの春を迎え入れるママたちのビューティ近況をお知らせします。今回はお互いが自宅で、子どもが近くにいてとてもにぎやかな雰囲気で初めてのリモート対談を実現。

ステイホーム中はコンビニコスメにネットショッピング

野島一美(以下、ひとみ):一斉休校から2カ月以上、毎日どう過ごしてる?

髙田翔子(以下、しょうこ):夫も在宅勤務になって、息子の保育園も登園自粛中だから24時間家族とべったり。家族が起きる前に、毎朝ウオーキングがてら空いている近所のスーパーやコンビニに行くときだけが唯一ひとりの時間。

ひとみ:そうなるよね。家の中で妻、母に加えて先生という役割が増えて、年齢別の子どもと一日中接するのがキツい(涙)。

しょうこ:子ども1人でも大変なのに、3人いるって単純に3倍ではないんだろうな。買い物はどうしてる?

ひとみ:食品以外はネットショッピングに頼ることが増えたかな。

しょうこ:検索したりカタログ見るのってウキウキしない?

ひとみ:そうなの!「エヌ オーガニック(N ORGANIC)」の7日間トライアルキットもその一つ。

しょうこ:念願の!香りのイメージが強いけどどう?

ひとみ:学校もなかったりしてメリハリをつけにくい生活続きで、柑橘系の香りに毎朝癒やされた。アロマ効果と無添加にこだわってるからか刺激が強くなくて、べたべたしないのも好印象。

しょうこ:なかなか買い物に行けないから、久しぶりにコンビニコスメをチェックしたらけっこう使えるアイテムが増えていたの。例えばファミリーマートの「カネボウメディア(KANEBO MEDIA)」の口紅。ファミマ限定の「チューリップレッド」は春らしいカラーで顔色もぱっと明るくなるの。ローソン限定の資生堂の「インテグレート(INTEGRATE)」のミニサイズマスカラも使いやすいサイズで優秀だった。

ひとみ:コンビニコスメにも限定品があるんだね。

しょうこ:ファミリーマートでは「ちふれ(CHIFURE)」の「ウォッシャブル コールド クリーム」も購入。600円台でマッサージにも毛穴汚れオフにも使えるこれが、コンビニにあると助かる。「ちふれ」はドラッグストアにあるのと同じサイズのスキンケアが置いてあるのがうれしい。

ひとみ:お値段も手ごろだし、実物を見て買えるのはいいね。

しょうこ:子どもと毎日ヤクルトを飲んでいるんだけど、そういえばスキンケアもあったなあとアマゾン(Amazon)で購入した「ヤクルト(YAKULT BEAUTIENS)」乳酸菌シリーズの「ラクトデュウ」のスキンケアは保湿力が高くて、使い始めてから肌の調子がすごくいい。

ひとみ:乳酸菌なら間違いなさそう。マスクをしながらコンビニでこれいい、とか思いながら試してるんだね(笑)

しょうこ:そう!しかも、マスクの下はすっぴん!あ、目元ケアには「エンビロン(ENVIRON)」の美容液を。エイジングケア専用の「アヴァンスDFP312セラム」はべたつかないのにハリと艶が出るの。

ひとみ:私は、乾燥しやすい目元にも「エヌ オーガニック(N ORGANIC)」が活躍!

いまだから試せる、目元も手元も初めての色使い

ひとみ:朝の幼稚園送りではすっぴんにマスクは定番で、たまに目元だけのメイクをしてたけど、いまは常にアイメイク勝負。

しょうこ:ウオーキング中は私もノーメイクだけど、午後子どもとお散歩するときは日焼け止め下地とパウダーの組み合わせが多いな。下地は「デュウ(DEW)」のスペリアプレベースコンセントレートを使ってマスク下の乾燥を防いでる。今もマスクをしてるときはアイメイクだけ?

ひとみ:マスクをしても目尻や頬骨の高い位置とかが見えるから、シミ消しと日焼け予防を兼ねて「ケシミンクリーム」を塗ってる。アイメイクは、マルチアイシャドウで余らせる色をあえて使って、普段つけない色を試して遊んでる。マスカラはウオータープルーフの方が、マスク越しでは目元が強調される気がする。

しょうこ:つい同じ色ばかり使いがちだけど、家にいる時間が長いとなにかと冒険ができるよね。普段ははげても目立たないカラーのネイルを選んでたけど、今はコンビニやドラッグストアで買ったペパーミントグリーンやラベンダー色も挑戦しやすい。今日はセブン−イレブンで売ってる「パラドゥ(PARADO)」のミニネイル(PL06)だよ。300円ながら発色がきれいで今欲しい色がそろっている。ひとみさんいつもきれいにネイルしてるよね。

ひとみ:毎回娘を連れてネイリストのママ友宅に通ってるの。

しょうこ:子連れ可はありがたいね。私なんて机にネイルを置いて、仕事の合間にパソコンを打ちながら乾かしてるし。

ひとみ:2月以来ネイルに行けてなくて、だから何年振りかな、やむなくセルフネイルに挑戦。「RMK」(EX34ターコイズ)でペディキュア。そしたら娘が「私もやりたい!」とうるさいから選ばせたら「シャネル(CHANEL)」の「ヴェルニ179」がお気に入りに!

しょうこ:2歳にして目が肥えてる!

ひとみ:どこで覚えたのか、ピンク色のマジックペンを爪に塗ったり、パパに剥がしてもらった小さいシールを爪に貼って遊ぶことがあって。マニキュアだとすぐには動けないから、その間歌ったり、誕生日ケーキのろうそくを吹くみたいに、爪にフーフーとか気をそらしながらなんとか完成!

しょうこ:なるほど、共同作業にすればおしゃれがしやすい!

ひとみ:現実は、次男(小4)の図工の宿題をしている横で娘とネイル。窓を開けてたから、マニキュア独特の匂いと新聞紙をびりびり破る音に加えて、音楽の課題にもなってる「パフ」をリコーダーで吹き出すもんだから、ご近所さんにしたら迷惑なわが家の共同作業だったと思われてると思う。

しょうこ:宿題も済んで、爪がきれいになったから文句なし!この前息子がたまたまテレビで「ネイリスト直伝、上手なネイルの塗り方~」を見てたせいか、「ママ、マニキュア塗った?やり方わかる?」って聞いてくるの。

ひとみ:ママのおしゃれに気遣う男子、将来モテルわ。

しょうこ:そうなってくれたらいいんだけど。

ひとみ:手元って年齢がもろに出るよね。週1回、子どもの小学校に宿題を取りに行ってるの。基本下駄箱でのやり取りなのに、先週あることでその場にいた先生に質問をしたら、自分のはげた爪と疲れた手元を見られたのがものすごく恥ずかしかった。

しょうこ:もしやイケメン教師?

ひとみ:残念!若い女性教諭。先生の手と自分のを比較したわけじゃないんだけど、あらためてハンドケアを怠ってたと反省。

しょうこ:手洗いや除菌ジェルをつける機会がぐっと増えて手が乾燥しやすくなってるしね。

ひとみ:それもありそう。毎晩寝る前はしっとり染み込む「ジュリーク(JURLIQUE)」、日中は「フロレナ(FLORENA)」のオリーブハンドクリームとでしっかり塗り込んでる。これね、ビーガンなの。

しょうこ:食事じゃなくて、コスメのビーガンね。まだあまり聞きなれないような気がする。

ひとみ:海外に住む友達が多いからつい影響されやすくて(笑)。

しょうこ:私は洗濯物を干すときや自転車に乗るときは「トワニー(TWANY)」のリフレッシュアロマハンドクリームが欠かせない。SPF32だから手元のうっかり日焼けが防げるの。

ひとみ:手洗い30秒とは言わないまでも、子どもはちゃんとやってくれる?

しょうこ:ハッピーバースデー×2に近づけるようには心掛けてる。

ひとみ:心掛け大事!うちの娘は肘までたっぷり泡ソープをつけて洗うから、私のほうが手洗い時間が短かかったりする。

しょうこ:そのうち、しっかり洗いなさいって娘に叱られたりして!

ボディーケアはセルフマッサージが必須

しょうこ:近所にゴッドハンドな整体サロンがあって、肩や首のこりがひどいから通ってたけど今は休業中。行きたいけど行けない。頭皮も乾燥しやすくて、地肌用のオイルでマッサージをしてるけど、家でできるマッサージ知らない?

ひとみ:ひたすら頭皮マッサージをしてる。親指以外の4本の指の第二関節を曲げてぐりぐりと押すのと、指2本で頭皮を摘まむ2パターン。ものすごく痛いけど、マッサージをすることで眼球が見開くっていうのかな(カメラ越しに実践してみせる)眼球が大きくなった感じがして、目元がすっきりするの。

しょうこ:前に美顔整体に行ったって聞いたような。

ひとみ:気になるエラ張りと小顔を目指して行ったら、口と顎のあたりをぐりぐりされることで頭痛が軽減したような気が!偏頭痛歴30年以上なので意外な結果に。あげ顔目当てで行ったら、一石二鳥ってこのことね。わずか15分で大満足!今は行けないけどね。

しょうこ:私はセルフの白髪染めにチャレンジ。一度始めると一生??って続けるかどうか迷って、カラーリングをやめて黒髪に戻そうかと思ってたとき見つけたのは花王の「リライズ(RERISE)」。お風呂でできるカラートリートメントやホームカラーリングもたくさん出ているけれど、悩みはお風呂が汚れることなんだよね。

ひとみ:思いもよらぬ場所に飛び散って、気づいたときには時間が経って落ちないことも。

しょうこ:「リライズ」は薄い褐色のクリームで色はつくけど他の製品に比べて汚れづらい感じ。家でケアするのには便利だな。黒髪メラニンの素で染めるという発想のカラー剤で、放置時間が短めなのも育児中の身に助かる。

ひとみ:自宅でできるケアって結構あるよね。つい楽な方を選びがちだったけど。

しょうこ:外に出られないし、考えざるを得ないよね。今はいろんな意味でそういう時間を与えられてる。

ひとみ:息子たちのサッカーやライフセービングコーチがしきりにユーチューブとかでトレーニング動画をアップしてくれるから、親子で見ながらゆる~く体を動かしてるよ。

しょうこ:うちの夫は息子を負荷にして筋トレしてる。

ひとみ:パワーあるね!うちの夫は18時の定時過ぎてから息子たちとの運動会が日課。

しょうこ:運動会とは?!

ひとみ:縄跳び、サッカーボールでトレーニング、家から小学校までの往復を歩いたり、走ったり。男同士だから全て点数制。雨の日でも毎日1時間はやってる。

しょうこ:18時にお父さんが家にいるのは、この生活ならではの醍醐味ね。

ひとみ:ちなみに、私は縄跳びが得意なの。軽いストレッチを含めて30分は跳ぶようにしていて、巣ごもり生活にはいい運動になるし、全身スリムアップも狙ってる。娘がいるから他の競技には参加できないけど、いまだに一種目のみ首位キープ中!

しょうこ:それはすごい!今度会ったら頭ぐりぐりのマッサージやってほしいな。

ひとみ:覚悟してね、美には痛みが伴う!

しょうこ:はい!次回は外で会えますように!

髙田翔子(たかだしょうこ):1982年東京都東村山市生まれ。大学卒業後、ビジネス・実用書出版社勤務を経てフリーライターに。主に女性誌、書籍、WEBでインタビュー、読み物記事などを執筆。肌年齢だけは20代の診断。旅と読書とお酒が好き。電車好き1男の母

野島一美(のじまひとみ):1976年東京都杉並区生まれ。幼少期を香港、NYで過ごす。大学卒業後はテレビ制作会社で報道映像資料編集等に携わった後、東京大学生産技術研究所で教授秘書に。結婚後はフリーのライターとして雑誌VERY(光文社)で育児・早期教育について等執筆。和太鼓にはまる2男1女の母

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有力セレクト2社の営業再開後の接客・売れ筋・MDを聞く ロンハーマン、エストネの対応策

 新型コロナウイルス感染症拡大を受けて臨時休業していたセレクトショップの店舗が、徐々に営業を再開しつつある。本来であれば春物が動く3~4月に臨時休業を余儀なくされ、季節をスキップするかのように初夏が到来。春夏の在庫問題や今後の納期遅れなどを念頭に、MDを再編成する必要も出てきている。ロンハーマン(RON HERMAN)とエストネーション(ESTNATION)に、営業再開後のMD、売れ筋、接客の課題などを聞いた。

ロンハーマンは春物を初夏MDにミックス

 ロンハーマンは、5月17日の名古屋店を皮切りに、カフェを併設する二子玉川店、福岡店などの営業を順次再開した。千駄ヶ谷店や商業施設の一部テナント店舗は休業が続いている。

 店頭では、3~5月に販売予定だったアイテムをミックスしてMDを再編成。コートなどの季節的に組み込めない商品を除き「これから活躍するアイテムや長く着られるアイテムがもともと多くそろえているのでこれらをミックスして提案していきたい」と広報担当者は語る。

 営業再開後の店舗で動きがいいのは、サマードレスやカットソー、シューズなど。別注品も好調で、ジュエリーは普遍的なアイテムとして需要が高まっているという。

 新型コロナウイルス感染予防や3密回避の接客のガイドラインには、全スタッフのマスク着用、定期的な検温、こまめな手洗い消毒の徹底などを盛り込んでいる。入店客と店舗スタッフの総数をカウントし、必要に応じて入場制限も行っていくという。今後の接客では「適度な距離を保ちながらも、必要なときにスムーズにお手伝いができるよう対応していきたい」と語る。

エストネーションは「プロパー商品のシェアを高めて、今後当たり前に」

 エストネーションは、5月16日の二子玉川店を皮切りに、20日から有楽町店、銀座店、福岡店などの営業を再開した。

 5~6月の店頭MDについては「当初から計画していた初夏MDがベースになる」と、藤井かんなウィメンズディレクターは言う。ただ、5月末に発売予定だったジャージー素材に特化したアイテム群は6月中旬にECと連動した打ち出しに変更するなど、企画や商品によっては約2週間から1カ月の後ろ倒しを計画している。

 3~4月に販売の機会を逃してしまったブラウスやブルゾンなどの定番品やシーズンレスアイテムの一部は、オリジナルを含め秋冬に向けてプロパーで再投入する。商品の納期遅れやキャンセルが心配されるなか、基本的にキャンセルをすることなく、シーズンレスで着られるアイテムを秋冬MDに柔軟に組み込んでいく。5月末には顧客対象のセールを予定しており「徐々にセールを押し出しつつ、在庫の消化、早急な現金化にもつなげたい」と語る。

 久々に営業を再開した二子玉川店では、オンオフで着られる華やかなデザインのワンピースが好調だという。また有楽町店や銀座店を含めて、営業再開でいち早く駆けつけてくれるのは、「再開おめでとう!とスタッフに会いに来てくれるお客さま」。感染予防のための細かなガイドラインは作成しているが、「接客や距離感の感じ方は人それぞれ。フリーのお客さまが増えてくればケースバイケースの対応が求められる」と課題を挙げる。さらに「これを機にECと店舗の統一を図れたら。一年を通して着られるもののシェアを高めて、それを当たり前にしていきたい」と語った。

 なお、ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)は5月14日の二子玉川店と柏店を皮切りに、関東では各業態22店舗を時短営業でオープンした(21日時点)。トゥモローランドも5月11日の吉祥寺店を皮切りに、関東14店舗を時短営業でオープンした(20日時点)。

村上杏理:1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

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連載「今、デザイナーができること」Vol.21 田中文江「誰かの幸せを想像してモノ作りを続けていく」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、2020年春夏に自身のブランド「ザ・ダラス(THE DALLAS)」を「フミエ タナカ(FUMIE TANAKA)」として再スタートさせた田中文江デザイナーが、今後のブランドのあり方を展望する。

FUMIE TANAKA
田中文江

Q.今、デザイナーができることは?

A.デザイナーの仕事に就いて25年。たくさんの人に出会い、いろんな時代を見てきた。今できることは、誰かの幸せを想像してモノ作りを続けていくこと。2020年春夏にブランド名を自分の名前に変えてからは、私自身が着たい服をデザインベースにしている。お客さまは、急速な変化を望んでいない。苦しい時期も来るかもしれないが、今まで通りのリズムで前に進んでいく。

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大手セレクト3社のGWネット通販で売れたもの

 新型コロナウイルス感染拡大を受けて、今年のゴールデンウイーク(4月25日~5月10日)は外出自粛を余儀なくされた人が多い。大手セレクトショップでは臨時休業する店舗が多いなか、ECにイベントやセールを集中させて集客や売り上げを補った。本来であれば“財布のひもが緩む”時期でもあるが、かつてない過ごし方を強いられたコロナ禍で売れたものは何か。ビームス(BEAMS)、ベイクルーズ グループ(BAYCREW'S GROUP)、エストネーション(ESTNATION)に聞いた。

 なお、ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)は同期間に限定したデータの算出が難しい点などから、トゥモローランド(TOMORROWLAND)は数字を含む情報の開示ができないという理由から、回答不可となった。

ビームスは、売れ筋上位をワンピースが独占

 ビームスでは、自宅や近所で着られるようなリラックスしたワンピース、半袖&ノースリーブのTシャツなどが好調に動いた。売れ筋上位4アイテムをワンピースが占め、全体的にオンよりもオフで着られるカジュアルなアイテムが人気を集めた。

 中でも「デミルクス ビームス(DEMI-LUXE BEAMS)」では、夏の人気ブランド「マリハ(MARIHA)」の“春の月のドレス”(2万7000円)がヒット。ウエストを細身にすることでAラインが美しく広がるワンピースは、1~3月にECで開催した予約会の反応が大きかったこと、サマードレス需要が高まるゴールデンウイーク前に発売できたことなどが売り上げ好調の要因となった。

 “おうち時間”が増える中、動きやすさと“きちんと感”を兼ね備えた「ビームス ボーイ(BEAMS BOY)」と「ラコステ(LACOSTE)」の別注ワンピース(1万8000円)も人気だ。毎年大好評だというアイテムは、メンズライクなポロシャツをIラインのロングワンピースに仕上げた一枚。パンツとのレイヤードも可能で、カジュアル志向の高まりから今季も売れ筋となった。

 お手入れしやすい点やさらりとした着心地から「ビーミング バイ ビームス(B:MING BY BEAMS)」のシルケット天竺フレアワンピース(6500円)も支持された。シンプルながら“あか抜けて見える”アイテムは、二の腕をカバーしてくれる袖のカッティングや程よいAラインのシルエットが特徴。好調の要因について同社は「価格・カラーバリエーション・素材などが、外出自粛中のニーズにマッチしたのでは」と見る。

 また連休中は送料無料キャンペーン、クラブ会員限定の15%オフ&トリプルポイントキャンペーンを実施。お得感のある施策が重なったことも購買の後押しとなった。ブランド別では、もともと根強い顧客がいる「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」や「パタゴニア(PATAGONIA)」「エイトン(ATON)」「マリハ(MARIHA)」などが、売れ筋にランクインした。

ベイクルーズは、アクセサリーやバッグなど雑貨が好調

 ベイクルーズグループでは、4月に低調だった夏物需要が暖かくなったゴールデンウイーク期間中に高まった。カットソーやワンピースを中心に動きがあり、今年は特に雑貨の反応が好調。アクセサリーやバッグ、シューズなどの売り上げが前年同期比を大きく上回った。

 中でも、家でイージーケアできるウエアが人気だ。微ストレッチで手洗いができる「イエナ(IENA)」のリネンライクキャミワンピース(1万8000円)は、毎年大人気の定番として仕様をアップデート。従来よりも肩ひもを少し短くし、よりすっきりと見えるように胸元の位置を上げた。

 気温が不安定な時期に温度調節できる“羽織りアイテム”では、「ドゥーズィエム クラス(DEUXIEME CLASSE)」のVネックロングカーディガン(1万9000円)がヒット。オンオフで使えて着回しが利くことやロングシーズン使用できる点が支持されるポイントとなった。

 同様の理由で好評だったのが「アパルトモン(L'APPARTEMENT)」で扱う「メゾンドバカンス(MAISON DE VACANCES)」のリネンストール(2万5000円)だ。大判のストールは、肩にかけたり首に巻いたりと用途が広い。昨年の人気色に新色を追加し、全4色で販売した。

 同社では5月7日まで、春物商品を含むアイテムを最大50%オフで販売し、11日まで60%オフのセール品を含む対象商品がさらに10%オフになるキャンペーンなどを実施。通常サービスの全国送料無料なども、リピート客や売り上げの獲得につながっているようだ。

エストネーションは画面映えするアイテムが好反応

 エストネーションでは、ECで画面映えするキャッチーなプリントやカラーの商品が動いた。ウエアではコペンハーゲン発の「ガニ―(GANNI)」のワンピース(3万3000円)が好調で、全体的にプリント素材やジャージーなど柔らかな質感のものが人気だった。

 認知度の高いデニムブランドも好調で、「アッパーハイツ(UPPER HIGHTS)」の定番デニム“ザ ステラ”のホワイト(1万9000~2万3000円)がヒット。程よいフィット感と美脚効果の高いパンツは、春夏らしいホワイトを中心に明るいカラーが動いた。

 連休中は夏らしい気温の変化とともに、雑貨では「チャコ(CHACO)」のスポーツサンダル(5000円)、「ヴィオラドーロ(VIOLADORO)」のレザーと天然素材を用いたカゴバッグ(2万4000円)などの需要がアップ。外出自粛の影響からか、足元はエレガントより履き心地がよいカジュアルなタイプの動きが顕著だという。一方バッグは、夏らしさと“きちんと感”を併せ持った2~3万円代の価格帯が人気。高価格帯のバッグは、認知度のあるブランドでも動きが鈍かったという。

 また、特別感のある企画商品として「プラン C(PLAN C)」のチャリティーTシャツ(9350~9900円)が好評だった。新型コロナウイルス感染予防に関するメッセージをプレイフルに伝えるプリントがユニークで、1枚購入ごとに2000円がミラノの聖パオロ&カーロ病院と特定非営利活動法人ジャパンハートに寄付される。

 同社では、ゴールデンウイーク期間中に春物を含む商品が最大30%オフになるキャンペーンを実施していた。

村上杏理:1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

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「シャネル」がアイコンバッグと革小物を最大17%値上げ その理由とは?

 世界経済が壊滅的なダメージを受けている時にも、ラグジュアリー市場では値上げが行われている。中国ではラグジュアリーショッピングの再開とともに、いくつかのブランドが価格改定を行った。中でも、その幅が大きいのは「シャネル(CHANEL)」だ。5月10日には、翌日から大幅に価格が上がるというウワサがSNSで広まり、北京、上海、広州、杭州の店舗に客が殺到した。また、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」も3月に3%、5月にさらに5%と、過去3カ月間で2度の値上げを実施した。

 「シャネル」は今回、ユーロ換算で5〜17%の値上げを行った。対象となったのは、アイコニックなチェーンバッグの“11.12”や“2.55”をはじめ、“ボーイ シャネル”“ガブリエル ドゥ シャネル”“シャネル 19”といった一部のハンドバッグと革小物(SLG)。シーズン商品のバッグと、プレタポルテ、シューズ、フレグランス、ビューティ製品は値上げを行わない。また価格改定は中国市場に限ったものではなく、数年前に設けた世界的な価格の一貫性を保つポリシーに従い、他の地域でもすでに実施しているか、もしくは今後行う予定だ。17%を超える値上げは、為替レートの変動を反映させたものになる。

 真の高級品を作るためには上質な素材や卓越した職人技などが欠かせないとはいえ、その価格設定は長年謎に包まれてきた。そして間違いなく、消費者の知覚価値が重要になる。その点、「シャネル」は「エルメス(HERMES)」と「ディオール(DIOR)」とともにピラミッドの頂点に君臨するが、消費者の認識はブランドごとに全く異なる。「シャネル」のバッグを所有することで分かるのは、豊かさ、シックで優れたセンス、健全な判断力、ファッショントレンドと融合したタイムレスな信頼性への評価といった、ラグジュアリー顧客が求める特徴が一つのアイテムの中で融合しているということ。もう一つの魅力は機能性で、非常に使いやすく、なおかつ丈夫である。これらは世界的な経済危機の中で2ケタの価格改定をした説明にはならないが、最も名高いラグジュアリーメゾンの一つにおける長年培われてきたブランド哲学と顧客からの献身と信頼への自信を物語っている。

価格は特別感とブランドの価値観を反映したもの

 「シャネル」に価格調査のための質問を送ったところ、企業としての素晴らしさを示す一例となるような迅速で前向きな回答を得た。まず今回の値上げは、世界中の消費を激減させた新型コロナウイルスによる休業の間に失われた収益の一部を取り戻すためではない。「今回の決定に現在の状況は一切関係ない」とし、むしろ値上げは現在進めている価格を見直す戦略の一環だという。同ブランドは通常、生産コストと原材料価格の定期的な上昇や為替レートの変動など、さまざまな市場の状況に応じて年に2回価格を調整している。値上げ幅の算出方法についての具体的な回答は得られなかったが、「『シャネル』のバッグの価格は、特別感だけでなく、私たちの価値観を反映させたものだ。『シャネル』のバッグを購入することは、名高い専門知識とフランスのデザイン、技術とクラフツマンシップを守るための揺るぎないこだわり、最先端の革新的な製品、そしてレザーなど原材料の確かな背景を伴う」と述べる。

 同ブランドは価格改定に新型コロナは関係ないと主張したものの、パンデミックの間接的な影響については次のように説明する。「私たちの工場やサプライヤーにとって厳しいこの時期に、彼らを最善の方法でサポートしていくことは『シャネル』にとって不可欠なこと。伝統と革新を兼ね備えた職人のノウハウは、大切にしなければならない。これは絶え間ない努力であり、アイテムの価格も彼らの卓越したノウハウを認めるものだ。この困難な時期においても、彼らにはユニークな職人として認められ続ける価値がある」。

 また、いかなる値上げも慎重に検討した上で実施されるものであり、ブランドがクリエイティビティーとクラフトの核となる水準を維持するために投資し続ける上で必要なものだと強調した。「他のラグジュアリーブランド同様、『シャネル』もサプライチェーンへの投資とサプライヤーの買収により、この上なく上質なレザーの供給を確保するための財政的な努力を行っている。これらの投資は、アイコニックなアイテムが長持ちすることを保証するとともに、顧客が期待する水準を維持するために不可欠だ」という。

 そして、そんな顧客は見識が高く、購入するあらゆるものに対してその背後にある価値を求めている。値上げに対するブランドの哲学的な正当化について尋ねたところ、「『シャネル』のバッグの価値と特別感は、多くの要素に基づいている」という。そこには、卓越したクリエイティビティー、レザーと装飾の素晴らしい素材、伝統的な職人技と革新的テクノロジーの融合、トレーサビリティーのための努力、古くからラグジュアリーレザーグッズの中心であるフランスやイタリアで生産されていることに裏付けられた品質などが含まれる。

アイコンバッグはプレタポルテにおけるジャケットと同じ

 それでも「シャネル」は、自分の購入するものをよく理解している顧客が“合理的”とみなすレベルの価格維持を模索している。「私たちの顧客は価格調整をよくチェックしていて、長年にわたり取り組んでいる(世界での)価格均一化のポリシーにも前向きな反応を見せている。彼らは『シャネル』のハンドバッグを買うとき、定番商品ではないとしてもそのデザインが本質的な価値を持ち、特別な感動を与えてくれると考えている。『シャネル』のレザーグッズにおけるこれらのアイコンバッグは、プレタポルテ・コレクションにおけるジャケットと同じであり、ブランドが誇る最上級のクラフツマンシップを表現したものだ」。その上で、同ブランドは信頼関係の構築が欠かせないとし、次のように説明する。「私たちは、ブランドのクリエイションが最高品質と究極のラグジュアリーというポジションにあり続けることにも細心の注意を払っている。そして、顧客の目と心の中で独自の地位を保ちたいと考えており、だからこそ希少性の高い素晴らしいアイテムを提供している。その全てが価値を高めている」。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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連載「今、デザイナーができること」Vol.20 ナカアキラ「社会が求める価値を見極めること」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、冷静かつ鋭い視点のビジネス感をもつ「アキラ ナカ(AKIRA NAKA)」のナカアキラ=デザイナーがコロナ収束後の価値観の変化を予測する。

AKIRA NAKA

ナカアキラ=デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A.今は、ウィズコロナ時代に価値を提供するためにさまざまなことを考えて学ぶこと。新しい市場での価値や、それを生み出すためのチームの再考や備えについてなど考えることは山ほどある。生産者と協力して連携を強めることも重要だがもちろん生き延びてこそなので、ブランド存続のために今この市場で何を売ろうという考えよりも、長いスパンで顧客と社会が求められている価値を見極めることが大事だと思う。ただこれは、コロナ危機の収束に要する期間も大きく影響されることではある。奇跡的に数カ月で収束すれば、人の価値観にさほど大きな影響は出ないだろう。しかし半年や1年を要するならば、マーケットも人も価値観が激変する。さらに数年単位で続くなら、洋服の立ち位置すら変わる可能性がある。ルームウエアの多様性や、アバターのような仮想空間においての装いまでファッションデザイナーは考えなくてはいけないかもしれない。ただ人の装いをデザインすることは、どんな社会が訪れても非常に重要なものだ。ブランドとしてそれぞれの社会を見つめてクリエイションし、その価値を還元していくことに変わりはないと思っている。

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巣ごもり名人に聞く 「巣ごもりで茶道を極める」 IT企業広報・石井佑莉奈

 新型コロナウイルス感染拡大で4月7日に緊急事態宣言が発令され、在宅勤務や外出自粛で巣ごもりを余儀なくされている人が多い。行楽シーズンのゴールデンウイークでさえ、どこにも行かず自宅で過ごさざるを得ないという未曾有の状況だ。「人に会えない」「外出できない」こんなときに、どうすれば巣ごもりライフをエンジョイできるか、今回はIT企業で広報を務める石井佑莉奈さんに聞いた。

WWD:自粛生活で新しく始めたことは?

石井佑莉奈(以下、石井):心のバランスを整えるために茶道を始めました。流派や点前作法、マナーなど細かいことは分からないのでオンラインで見よう見まねなのですが(笑)、楽しみながら挑戦しています。

WWD:巣ごもりを機に新しく買ったものは?

石井:器、茶せん、お抹茶などの茶道具一式。朝の目覚めの一服としてお抹茶を点てているのですが、そのときにお抹茶に合わせる和菓子は常備しています。精神統一をした後に、和菓子と共にいただくゆったりとした時間が至福のひとときです。また、お抹茶以外のドリンクとしては、トニックウオーターをよく買うようになりました。ZoomやLINEでのバーチャルお茶会の機会が増えた今、いろいろな飲み物を割って飲めるトニックウォーターは量や手軽さがちょうどよく、重宝しています。

WWD:巣ごもり生活で心がけていることは?

石井:一人暮らしだと情報が趣味嗜好に偏りがちなので、いろいろな人と話したり、なるべくあらゆる方向から情報をインプットするようにしています。

WWD:おすすめのアプリやサービスは?

石井:最近のお気に入りは和食レシピサイト「sirogohan.com」。食べることが好きなので、ご飯のレシピを探したり、眺めているだけでも幸せな気分になります。アプリはツイッターやインスタグラムをメインに使っています。また、「トランクホテル(TRUNK HOTEL)」がアップルミュージックにプレイリストを出しているのですが、家にいながらホテルのロビーにいるかのような心地よい気分に浸れるので、BGMによくかけています。

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巣ごもり名人に聞く 写真家・西村理佐は「プロジェクターで映画満喫、SNSとの距離は適切に」

 新型コロナウイルス感染拡大で4月7日に緊急事態宣言が発令され、在宅勤務や外出自粛で巣ごもりを余儀なくされている人が多い。行楽シーズンのゴールデンウイークでさえ、どこにも行かず自宅で過ごさざるを得ないという未曾有の状況だ。人に会えない、外出できない――こんなとき、どうすれば巣ごもりライフをエンジョイできるか?今回は写真家・映像作家として活動する西村理佐にその秘訣を聞いた。

WWD:外出自粛を機に買ったアイテムは?

西村:ブロジェクターを買いました。自宅の三角屋根を利用して斜めに投影し、寝転がって映画観賞するのがお気に入りです。最近観た映画は「スクール・オブ・ロック」(リチャード・リンクレイター監督、2003年米)。この年代ならではのユーモアセンスが面白く、何も考えずに楽しめるんですよね。あとはカメラ関係の機材が大好きなので、おもちゃみたいなジャンク品や中古品をネットで購入して遊んでいます。運動不足解消のためにフラフープも買いました。

WWD:これをきっかけに新しく始めたことは?

西村:はじめはできる限りの友人のクリエイティブ活動に賛同し、参加していました。それから、自炊欲をかき立てるためにバジルの苗を育てたり、家にエレドラがあったのでドラムを練習したり、興味を持ったカウンセリングの資料を取り寄せたりといろんなことにトライしています。体に摂取するものへの意識も変わったことで、毎日豆乳を飲み、塩分・糖分を摂りすぎない料理を作るようにもなりました。

WWD:巣ごもり生活に役立つ知恵は?

西村:過剰に考え込まないことですね。特に、SNS上に溢れる情報をなんでも鵜呑みにするのはよくない。ノイローゼになっちゃいます。私はSNSと距離を保つために、使用時間を減らしました。あとは、新たにルーティンを設けるのもオススメ。毎日決まった時間に寝る/起きる、絶対に〇〇を飲むなど、単純なルーティンでも日常生活にメリハリが出るんです。

WWD:2人暮らしは苦にならない?

西村:元からそうだったので気になりません。生活に必要なほとんどのことは一緒にやっていますよ。ただ、仕事や没頭したいことがあるときに自分の時間を作るーーこの意識はより強くなったかもしれません。

WWD:コロナを乗り越えるマインドセットは?

西村:まとまった時間はそれ自体が貴重です。平凡だと思うのではなく、ポジティブに過ごすことが一番だと思います。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.19 茅野誉之「今役立てることは少ない。少し先の未来に高揚する服を届ける」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、2014年に「チノ(CINOH)」を立ち上げた茅野誉之ザイナーが、ファッションデザイナーの役割を冷静に語る。

CINOH
茅野誉之


Q.今、デザイナーができることは?

A.現状、ファッションデザイナーとして世の役に立てることは少ない。ウイルスと共存しながら経済が動き始めたとき、気持ちを高揚させる服を届けることが使命だ。2021年春夏はパリでの発表を中止するため、海外バイヤーへの対応策を再考しなければならない。国内展に合わせて発信する方法もあるが、デザインの意図やディテール、素材が表層的にしか伝わらないのではと危惧している。考えうる状況をできる限り想定し、社員とブランドを守れるように動きたい。

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三足のわらじを履く美容師イラストレーターTAKUO 複数の仕事を両立させるコツは寝ないこと?!

 「WWD ビューティ」5月21日号では理美容室専売品メーカーを特集しました。理美容サロンと密接な関わりのある特集ということで、表紙のイラストに最適な人物として思い浮かんだのが、フリーランス美容師でイラストレーターとしても活躍するTAKUOさんでした。2018年4月にインスタグラムのアカウントを開設し、美容師の日常を描いた「#美容師あるある物語シリーズ」は同業者からたくさんの共感を集めています。ウエブメディアでの連載や、今年は初の書籍「美容師あるある物語」を小学館から出版し、さらにはプロフェッショナル向けトリートメントメーカー「ウルトワ(ULTOWA)」の1人として、活動の場を広げています。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いのTAKUOさんに、美容師になったきっかけや、3つの仕事を両立させるコツ、新型コロナウイルスによって受けた影響などを聞きました。

WWD:まずTAKUOさんが美容師になったきっかけを教えてください。

TAKUO:もともと美容師を目指していたのではなく、高校のときの友達が美容師を目指していて、専門学校のオープンキャンパスに付き添いで行ったことがきっかけ。そこでカットやワインディング(パーマをかける際、毛髪にロッドを巻く作業のこと)の実習を体験した時に、もともと手先が器用だったこともあり、ある程度できちゃったんです。それを見ていた専門学校の先生が僕に向かって「君は経験者かい?」とお世辞じゃない言葉をかけてくれたんです。それがきっかけで「おれって美容師向いているのかも」と単純な理由で目指すことに。どうせやるなら東京でバリバリやりたいと、福島県から東京の山野美容専門学校に入学しました。そうとう練習は頑張ったと思います。学校が終わってからも教室で練習したり、技術を教えてくれるサロンに行って練習をしました。やれるだけのことはやったと思います。就職も絶対に有名店に入りたいという一心で「ビュートリアム(BEAUTRIUM)」を受けて、入社が決まりました。下積みはとてもとてもつらかったですが頑張りました。

WWD:なぜフリーランス美容師に?

TAKUO:同じ会社の尊敬する先輩がフリーランスに転向したのをきっかけに、1年遅れて僕もフリーランスになりました。最初は稼げるからというささいな理由でした。そして、そのタイミングで結婚し、フリーランスになってバリバリ働いて充実した毎日だったんです。たくさんのお客さまを担当させてもらって、目標とする先輩がいて、仕事は順調でした。その一方で、家庭内はボロボロで離婚することになってしまって。離婚をきっかけに、こんなことを言うと怒られそうですが解放感から何か新しいことがしたくなり、子どものころから好きだったイラストを始めようと。僕は人と同じことをするのがとても嫌で、周りの美容師みたいにヘアスタイルをインスタグラムに載せるのが嫌でした。だから誰もやっていない自分にしかできないことをやりたかったんです。美容師とイラストレーターを合わせること、美容師の自分にしか描けないイラストを描こうと。それが美容師イラストレーターの始まりです。

WWD:美容師とイラストレーター、両立するコツはありますか。

TAKUO:とにかく寝ないこと(笑)。かなり不健康な生活で、寝るのは毎日朝7時とか(笑)。最初のころは、美容師もイラストも100の力でやっていました。次第にイラストの仕事が増えて、副業としてやっていたイラストが美容師の収入を超えるようになってきてからは、美容師3割イラスト7割ぐらいの比率になっています。複数の仕事をするメリットは、一つの仕事に執着しなくていいこと。美容師もイラストも好きなことだから、一番リラックスした状態でできるんです。その結果、パフォーマンスが上がっています。

WWD:イラストレーターとして「やっていける!」と思った瞬間はどんなときですか。

TAKUO:イラストで収入を得る前に、書籍出版の話をもらいました。インスタグラムを初めて半年ぐらいです。そのときのフォロワー数は2.2万ぐらい。イラストにとてつもない需要を感じた瞬間でした。それから連載の仕事や制作の仕事がたくさん入ってくるようになり、イラストでも食べていけるようになりました。

WWD:今回「理美容室専売品メーカー」特集の表紙を描き下していただきましたが、フリーランス美容師になってディーラーやメーカーとのお付き合いで変化したところはありますか。

TAKUO:フリーランス美容師は契約しているサロンによって異なりますが、僕が所属しているところはサロンが薬剤などを用意してくれます。なので、特別ディーラーやメーカーとの付き合い方が変わるということはそこまでありませんでした。人によってはディーラーと個人契約しているフリーランス美容師もいます。自分で使いたい薬剤があれば問屋などで自分で準備するときもあります。

WWD:最近では髪質改善トリートメントも手掛けていますね。

TAKUO:「ウルトワ」は3人で活動していて、開発・営業・広報&デザインの3つの役割ごとにそれぞれ動いています。僕は広報&デザインを担当しています。もともと開発を担当する原田が1人で立ち上げたメーカーですが、“デザイン・ブランディング・拡散力”に困っていると共通の知人から話を聞き、現在営業を担当している道脇と一緒に原田と会うことにしたんです。原田の製品に対する思いと物の良さから、「ウルトワ」を通じて僕らはお客さまの幸せを願い、美容師さんを全力でサポートをしていこうと活動しています。

WWD:新型コロナウイルスによって影響を受けたことは?インスタグラムのストーリーでのアンケートや、NYの美容師とのライブ配信が印象的でした。

TAKUO:現在、美容師とイラストレーター、「ウルトワ」の三足のわらじを履いて活動していますが、新型コロナウイルスで美容師と「ウルトワ」はかなり影響を受けています。売り上げでは70%近く減っています。イラストレーターも、“美容師イラストレーター”というように美容専門でイラストを描くことが多いため、多少なりとも影響は出ています。緊急事態宣言が発令されてから、ぼくのインスタグラムのアカウントで「あなたのサロンは休業しますか」というアンケートを取りました。8割以上のサロンが休業しないという結果でした。たしかに理美容室には休業要請は出ませんでしたが、得体のしれない感染症ということもあり、ぼくは休業派の意見でした。もちろん経営者の立場を知らないぼくが偉そうなことは言えませんが……ただDMにたくさんのメッセージが届きました。「コロナが怖いけど、うちのサロンは休業してくれません」「お客さんが来ないので客ハンさせられてます」「私は妊婦ですが、旦那のサロンが休業しないためすごく怖いです」こういった声を届けたくて、インスタグラムでこの思いを発信しました。もちろん賛否両論あって、炎上ですね(笑)。でも僕はあの発信を後悔していません。僕の発信で少なからず救われた命はあるのかなと。

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三足のわらじを履く美容師イラストレーターTAKUO 複数の仕事を両立させるコツは寝ないこと?!

 「WWD ビューティ」5月21日号では理美容室専売品メーカーを特集しました。理美容サロンと密接な関わりのある特集ということで、表紙のイラストに最適な人物として思い浮かんだのが、フリーランス美容師でイラストレーターとしても活躍するTAKUOさんでした。2018年4月にインスタグラムのアカウントを開設し、美容師の日常を描いた「#美容師あるある物語シリーズ」は同業者からたくさんの共感を集めています。ウエブメディアでの連載や、今年は初の書籍「美容師あるある物語」を小学館から出版し、さらにはプロフェッショナル向けトリートメントメーカー「ウルトワ(ULTOWA)」の1人として、活動の場を広げています。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いのTAKUOさんに、美容師になったきっかけや、3つの仕事を両立させるコツ、新型コロナウイルスによって受けた影響などを聞きました。

WWD:まずTAKUOさんが美容師になったきっかけを教えてください。

TAKUO:もともと美容師を目指していたのではなく、高校のときの友達が美容師を目指していて、専門学校のオープンキャンパスに付き添いで行ったことがきっかけ。そこでカットやワインディング(パーマをかける際、毛髪にロッドを巻く作業のこと)の実習を体験した時に、もともと手先が器用だったこともあり、ある程度できちゃったんです。それを見ていた専門学校の先生が僕に向かって「君は経験者かい?」とお世辞じゃない言葉をかけてくれたんです。それがきっかけで「おれって美容師向いているのかも」と単純な理由で目指すことに。どうせやるなら東京でバリバリやりたいと、福島県から東京の山野美容専門学校に入学しました。そうとう練習は頑張ったと思います。学校が終わってからも教室で練習したり、技術を教えてくれるサロンに行って練習をしました。やれるだけのことはやったと思います。就職も絶対に有名店に入りたいという一心で「ビュートリアム(BEAUTRIUM)」を受けて、入社が決まりました。下積みはとてもとてもつらかったですが頑張りました。

WWD:なぜフリーランス美容師に?

TAKUO:同じ会社の尊敬する先輩がフリーランスに転向したのをきっかけに、1年遅れて僕もフリーランスになりました。最初は稼げるからというささいな理由でした。そして、そのタイミングで結婚し、フリーランスになってバリバリ働いて充実した毎日だったんです。たくさんのお客さまを担当させてもらって、目標とする先輩がいて、仕事は順調でした。その一方で、家庭内はボロボロで離婚することになってしまって。離婚をきっかけに、こんなことを言うと怒られそうですが解放感から何か新しいことがしたくなり、子どものころから好きだったイラストを始めようと。僕は人と同じことをするのがとても嫌で、周りの美容師みたいにヘアスタイルをインスタグラムに載せるのが嫌でした。だから誰もやっていない自分にしかできないことをやりたかったんです。美容師とイラストレーターを合わせること、美容師の自分にしか描けないイラストを描こうと。それが美容師イラストレーターの始まりです。

WWD:美容師とイラストレーター、両立するコツはありますか。

TAKUO:とにかく寝ないこと(笑)。かなり不健康な生活で、寝るのは毎日朝7時とか(笑)。最初のころは、美容師もイラストも100の力でやっていました。次第にイラストの仕事が増えて、副業としてやっていたイラストが美容師の収入を超えるようになってきてからは、美容師3割イラスト7割ぐらいの比率になっています。複数の仕事をするメリットは、一つの仕事に執着しなくていいこと。美容師もイラストも好きなことだから、一番リラックスした状態でできるんです。その結果、パフォーマンスが上がっています。

WWD:イラストレーターとして「やっていける!」と思った瞬間はどんなときですか。

TAKUO:イラストで収入を得る前に、書籍出版の話をもらいました。インスタグラムを初めて半年ぐらいです。そのときのフォロワー数は2.2万ぐらい。イラストにとてつもない需要を感じた瞬間でした。それから連載の仕事や制作の仕事がたくさん入ってくるようになり、イラストでも食べていけるようになりました。

WWD:今回「理美容室専売品メーカー」特集の表紙を描き下していただきましたが、フリーランス美容師になってディーラーやメーカーとのお付き合いで変化したところはありますか。

TAKUO:フリーランス美容師は契約しているサロンによって異なりますが、僕が所属しているところはサロンが薬剤などを用意してくれます。なので、特別ディーラーやメーカーとの付き合い方が変わるということはそこまでありませんでした。人によってはディーラーと個人契約しているフリーランス美容師もいます。自分で使いたい薬剤があれば問屋などで自分で準備するときもあります。

WWD:最近では髪質改善トリートメントも手掛けていますね。

TAKUO:「ウルトワ」は3人で活動していて、開発・営業・広報&デザインの3つの役割ごとにそれぞれ動いています。僕は広報&デザインを担当しています。もともと開発を担当する原田が1人で立ち上げたメーカーですが、“デザイン・ブランディング・拡散力”に困っていると共通の知人から話を聞き、現在営業を担当している道脇と一緒に原田と会うことにしたんです。原田の製品に対する思いと物の良さから、「ウルトワ」を通じて僕らはお客さまの幸せを願い、美容師さんを全力でサポートをしていこうと活動しています。

WWD:新型コロナウイルスによって影響を受けたことは?インスタグラムのストーリーでのアンケートや、NYの美容師とのライブ配信が印象的でした。

TAKUO:現在、美容師とイラストレーター、「ウルトワ」の三足のわらじを履いて活動していますが、新型コロナウイルスで美容師と「ウルトワ」はかなり影響を受けています。売り上げでは70%近く減っています。イラストレーターも、“美容師イラストレーター”というように美容専門でイラストを描くことが多いため、多少なりとも影響は出ています。緊急事態宣言が発令されてから、ぼくのインスタグラムのアカウントで「あなたのサロンは休業しますか」というアンケートを取りました。8割以上のサロンが休業しないという結果でした。たしかに理美容室には休業要請は出ませんでしたが、得体のしれない感染症ということもあり、ぼくは休業派の意見でした。もちろん経営者の立場を知らないぼくが偉そうなことは言えませんが……ただDMにたくさんのメッセージが届きました。「コロナが怖いけど、うちのサロンは休業してくれません」「お客さんが来ないので客ハンさせられてます」「私は妊婦ですが、旦那のサロンが休業しないためすごく怖いです」こういった声を届けたくて、インスタグラムでこの思いを発信しました。もちろん賛否両論あって、炎上ですね(笑)。でも僕はあの発信を後悔していません。僕の発信で少なからず救われた命はあるのかなと。

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巣ごもり名人に聞く 「オリジナルドリンクと自家栽培で、より健康を意識」 フリーランスPR・翁安芸

 新型コロナウイルス感染拡大で4月7日に緊急事態宣言が発令され、在宅勤務や外出自粛で巣ごもりを余儀なくされている人が多い。行楽シーズンのゴールデンウイークでさえ、どこにも行かず自宅で過ごさざるを得ないという未曾有の状況だ。「人に会えない」「外出できない」こんなときに、どうすれば巣ごもりライフをエンジョイできるか、今回はフリーランスPR、そしてインフルエンサーとしても活躍する翁安芸さんに聞いた。

WWD:自粛生活で新しく始めたことは?

翁安芸(以下、翁):運動不足になりがちなので、ユーチューブやインスタグラムのライブ配信でのトレーニング動画を見ながらワークアウトを始めました。中でもエミ・レナータ(Emi Renata)さんのシリーズが大好きで、楽しく続けています。また運動の一環としてティックトック(TikTok)も始めたのですが、母と3歳になる娘と一緒に楽しく踊れてストレス発散になっています。

WWD:巣ごもりを機に新しく買ったものは?

翁:トマトとミント、バジルを購入して、自宅のテラスで育て始めました。娘と一緒に世話をするのが日課です。

WWD:巣ごもり生活で心がけていることは?

翁:毎日の起床や食事の時間、今日することなどのスケジュールを立てながら、生活のリズムをできるだけ崩さないように、心身共に健やかに過ごすことを意識しています。健康面では、常温の水を一日1~2リットル飲むことを習慣づけています。ほかにも、酵素ドリンクや自家栽培のハーブで作ったデトックスウオーターをはじめ、最近は自分で育てた酵母でドリンクを作って飲み始めました。

WWD:おすすめのツールやアプリは?

翁:重複しますが、ユーチューブやティックトック。ママ友や友人家族とは、ZOOMやHousepartyのアプリを使って気兼ねなくおしゃべりを楽しんでします。

WWD:デリバリーなどのサービスは利用する?

翁:先日、知り合いに紹介してもらったケーキのデリバリーサービス“Let Tokyo Eat Cake”でバナナキャロットケーキをオーダーしました。おいしいだけでなく、全額チャリティーに寄付される素敵な活動で、支援しています。

WWD:家族やお子さんとの過ごし方は変わった?

翁:私がやっているのを見て、娘が自然と掃除や洗濯を手伝ってくれるようになりました。まだまだ上手にはできませんが、楽しみながら一緒にやっています。また最近は暖かくなってきたので、ベランダにテーブルをセットしたり、マットを敷いてピクニック気分で食事やおやつの時間を過ごすことも増えました。

WWD:お子さんが自宅で楽しく遊べるように新しく買ったものは?

翁:レゴとパズル。テントやトランポリン、プレイジムなども今までより活用が増え、買ってよかったと思えるものです。あと掃除を手伝ってくれるようになった娘用に、ほうきとちりとりも購入しました。

WWD:お子さんが夢中になっていることは?

翁:スムージーやアイスクリーム作りにハマっていて、その日に娘が入れたい野菜や果物で毎日作っています。ほかにはレゴや、絵の具でのお絵描きですね。また、今はバレエ教室に行けないので、先生からの動画やユーチューブ動画を見て踊っています。

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巣ごもり名人に聞く 「デジタルを駆使して上手に気分転換」 インスタグラム広報・市村怜子

 新型コロナウイルス感染拡大で4月7日に緊急事態宣言が発令され、在宅勤務や外出自粛で巣ごもりを余儀なくされている人が多い。行楽シーズンのゴールデンウイークでさえ、どこにも行かず自宅で過ごさざるを得ないという未曾有の状況だ。「人に会えない」「外出できない」こんなときに、どうすれば巣ごもりライフをエンジョイできるか、今回はルームメイトと2人暮らしの市村怜子インスタグラム広報に聞いた。

WWD:自粛生活で新しく始めたことは?

市村怜子(以下、市村):オンラインフィットネスのサービスに入会し、自宅でストレッチやヨガを始めました。これまではホットヨガに通っていたものの、もともとあまり運動が好きではないのと、出張なども多くて続かず……。そのスタジオが休業したのと、デスクワークばかりで腰痛や肩凝りが以前より気になり始めたのをきっかけに、動画でレッスンを見ながら自宅で運動する方法に切り替えたところ、こちらのほうが向いていたのか、楽しくなって続いています。

ほかには、「マスタークラス(MASTER CLASS)」というオンラインクラスを受講し始めました。さまざまな業界で第一線を走っている著名人が自分の専門分野について教えてくれる仕組みで、例えば米「ヴォーグ(VOGUE)」誌の編集長アナ・ウィンター(Anna Wintour)はリーダーシップ、女優ナタリー・ポートマン(Natalie Portman)は演技、ボビー・ブラウン(Bobbi Brown)はメイクアップについて教えるという豪華なラインナップです。クラスといっても10〜20分くらいの動画を見るだけなので、いろいろな人たちのドキュメンタリーを見ているような感覚。「ネットフリックス(NETFLIX)」やアマゾンプライムなどもよく見ますが、映画やドラマよりも短いので、隙間時間に気軽に見られるのが気に入っています。会社の同僚も同じタイミングで始めたので、おすすめのコースを教え合ったりできるのも続いている理由です。

WWD:どのように気分転換している?

市村:料理を作るのは好きなのですが、毎日3食となると面倒になってしまう日もあるので、週に1、2回はデリバリーやテイクアウトを利用しています。通常営業ができない飲食店を少しでも応援したいという気持ちを込めて、チェーン店ではなく、普段通っている小規模のレストランにデリバリーをお願いすることが多いです。行ってみたいと思いながらも予約が取れず諦めていたお店がデリバリーをやっていることもあり、インスタグラムで常に情報収集をしています。

また、家にいる時間が長いので、自宅でも華やかな気持ちになれるように、できるだけ花を欠かさないようにしています。自宅用に花を届けてくれる花屋さんをインスタグラムで探してお願いしているのですが、季節の花材を束ねて届けてくれるので、自分では選ばないような花が入っていることも多く、花瓶との組み合わせや飾り方を考える時間が癒しになっています。リビングをはじめ、仕事部屋やキッチンなどいろいろな場所に飾っています。

WWD:巣ごもりを機に新しく買ったものは?

市村:「ヘイ(HAY)」で小さめのテーブルと椅子を購入し、仕事スペースをつくりました。2月末くらいから在宅勤務に切り替わり、しばらくはリビングで仕事をしていたのですが、“仕事スペース”に“通勤”することで切り替えができるようになりました。「ヘイ」の家具にはずっと憧れていたので、見るたびに気分が上がり、家での仕事も楽しくなりました。

WWD:巣ごもり生活で愛用しているアプリやサービスは?

市村:最近はインスタグラムでライブ配信をする人がさらに増えているので、“ながら時間”に見ていることが多いです。ゆりやんレトリィバァさんや宇多田ヒカルさんのように毎週同じ日にライブをする人もいるので、テレビのような感覚もあります。また、おうち時間が長くなると料理やインテリアにばかり興味が向いてしまうところがあるのですが、セレクトショップのバイヤーさんや海外のメイクアップアーティストなどのライブ配信も見ることで、ファッションやメイクに対するモチベーションを上げています。

WWD:ルームメイトとの過ごし方は変わった?

市村:お互いに在宅勤務になったこと以外あまり変化はありません。もともと、家にいるときは一緒にテレビや動画を見ることも多かったので、その時間が増えている感じでしょうか。料理は各自がして別々に食べるスタイルですが、デリバリーをするときなどは一緒に食べて、ワインを開けたりして楽しんでいます。一人暮らしで話し相手がいないと嘆いている友人もいるので、ルームメイトがいることのありがたみを感じています。

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変わるファッション業界とデザイナーたち 「ヨシオ クボ」 × 「ファクトタム」16年目の覚悟

 “コロナショック”によってファッションに対する価値観が大きく変わろうとしている中、多くのデザイナーズブランドが過渡期を迎えている。5月25日号の「WWDジャパン」では、30人のデザイナーのリアルな声を紹介している。彼らはクリエイションを変えるべきか、ビジネスを変えるべきか、もしくはこれまでのやり方を貫くべきかを思考しているはずだ。ともに2004年のブランド設立から16年目を迎えた「ヨシオ クボ(YOSHIO KUBO)」の久保嘉男デザイナーと「ファクトタム(FACTOTUM)」の有働幸司デザイナーも、5月25日号では今後のデザイナーズブランドに必要な物作りやビジネスについて対談している。ここでは、昨今話題になっているファッションサイクルの見直しについてや、ファッション業界の次世代を担う若者たちへの期待を語ってもらった。

「ファッションが悪者というレッテルを貼られないために」

WWDジャパン(以下、WWD):コロナの影響でファッション市場の規模は変化する?

久保嘉男「ヨシオ クボ」デザイナー(以下、久保):僕は市場規模自体は変わらないと思っている。嗜好品として高級品を買う人は買い続けるだろうし、SPAなどの安価な服も日用品として必要だ。ただし、内訳は大きく変わる。新品の比率は縮小するかもしれないが、その分二次流通が活性化して相対的には大きく変化しないと考えている。だからデザイナーは、二次流通でどう売買されるのかも今後は考えないといけない。

有働幸司「ファクトタム」デザイナー(以下、有働):企業やブランドの規模にもよるが、残るところと消えるところがはっきり分かれるだろう。でもファッションが悪者だとレッテルを貼られると、市場の縮小に歯止めが利かなくなってしまう。大手アパレルから小さいブランドまで、それぞれの規模に合った地球に優しい物作りを意識しないといけない。僕もこれが転換期。一つ一つていねい作ろうという意識は高まったし、これまで当たり前のように続けてきた無駄なことを断捨離したい。その分世の中に自分のアイデンティティーを発信することに注力し、15年間で培ってきた本当の強みを見せるときだと思っている。

久保:学校で服作りを学ばなくてもデザイナーになれる時代だからこそ、時間をかけたんだなと一目でわかるような服やアート作品に僕は引かれる。そういうクリエイティブな物がある一方で、何のコンセプトもなく作られた服もたくさんある。そういったものは“無駄”と考えられて、有働さんが言う悪者にされる原因の一つになる。いちファッションデザイナーとして刺激的な物作りに貢献したいし、これからも大切にしたい。

WWD:従来のファッションサイクルやシステムに懐疑的な声が上がっているが、本当に変わると思うか?

有働:変わってほしいとは思っている。コレクション発表のタイミングやセール開催時期についての議論は世界で起こっているが、全員で動かないと変えることはできない。ある程度の強制力も必要なので、国がセール期間を設定するぐらいでもいいかもしれない。クリエイションを発表する場ももちろん作ってはいきたいが、もはやシーズンという概念さえ懐疑的になっている。展示会ベースだとどうしても締め切りを意識してしまうから、新作の発表を1年ごとにするのか、もしくは受注生産のようなかたちをとっていくのかなどを考えたい。個人的な仕事のサイクルを見直して、アウトプットの質を上げていきたいとは思う。

久保:僕もショーを続けるうちに服がどんどん過剰になり、量を増やし過ぎたとあらためて考えている。16年目にもなるのに、自分がやりたいことを忘れていたかもしれない。だからこれからは、自分らしくない服は作らない。コレクションのために数を作って選んでもらうという従来の形式が正しいのかどうかも最近考えている。6月に予定していたパリでの展示会はできないだろう。でもデジタルシフトが加速すれば場所に対する価値がどんどんフラットになっていき、逆にリアルでのプレゼンテーションや実店舗で買い物する体験価値が見直される。従来のサイクルを好んでいる人たちはいるから、僕たちは今すぐ何かを変えることはない。

「勝ち負けを分けるのは、結局は情熱」

WWDジャパン(以下、WWD):デザイナーとして業界を15年以上見てきた立場から、今後のファッション界を担う、または志す若手にアドバイスするとしたら?

有働:僕や久保さんがブランドを立ち上げた15年前は情報も少なく、仕事の選択肢も今ほど多くなかった。でも今は働き方も多様化し、いろいろなことにチャレンジできる環境が若い人にはある。そんな中でもファッションを仕事として選ぶということは、相当な服好きだということ。だから諦めずに長く続けて、人にファッションのよさを伝えることがビジネスになっていく過程を体験するために、自分磨きを忘れないこと。僕も最初は右も左も分からない状態で、卸からスタートした。知らないことを知ったかぶりせず、バイヤーや知人にとにかく聞いて吸収してきた。ビジネスはセンスではなく、経験に基づくものだから。

久保:正しい。すごく正しい(笑)。ブランドを始める人の勝ち負けを分けるのって、結局は情熱だけ。昔は僕も何をしてでも有名になりたいと思うほど鼻息が荒かった。有働さんのビジネスの話と同じで、服作りも長く続けた方がうまくなる。日本のファッションを世界に認めさせる人が出てこないといけない。そもそも、シーズンごとのテーマって必要なのかと最近は考えている。日本の服飾学校でもテーマを決めて服を作る教育ばかり。テーマがなくても、服そのものに意志を宿らせてメッセージを発信できるデザイナーが結局は強いから、その域に達するまで辛抱強く続けてほしい。これはデザイナーだけじゃなく、PRやメディアにも同じことが言えるはず。受け取る人の熱量はそれぞれでいいけど、作り手の情熱は中途半端じゃ絶対にだめ。

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#敦子スメ「新月・満月」ノート 今回の新月(5月23日)は言葉やコミュニケーションを伴うパートナーシップの見直しを

 この連載では、新月・満月の流れを最大限に引き出すためのサポートをしてくれるコスメやインナーケアアイテムも紹介していきます。第11回は5月23日の新月とおすすめコスメについてお伝えします。

今回の新月(5月23日)はふたご座

 今回の新月が起こるのはふたご座です。ふたご座は12星座の3番目に位置し、“風”の星座と呼ばれており、軽やかなコミュニケーションが得意といわれています。テンポよく進んでいくことを好むとされ、そのほかにも情報、言葉、近距離の移動など、わりと私たちの生活の中で感じやすい分野と結びつきがあります。この新月はちょうど、愛や美意識の星“金星”が6月25日まで同じくふたご座で逆行中。好きなものや愛情関係に関して見直しながらの新月、というイメージが湧きます。ここはふたご座らしく、言葉やコミュニケーションを伴ったパートナーシップの再構築には最適かも!?自粛生活で身近な関係と向き合いやすいタイミングでもありますよね。日頃の思いをきちんと言葉にして伝えてみたり、お互いすれ違っているところは話し合う機会を設けたり……などを意識的に行うのもいいかも知れません。

今回の新月コスメ

 ここで面白いアイテムをひとつご紹介。感情面のケアで知られる自然療法のひとつ、フラワーエッセンスでは、あらゆる人間関係やコミュニケーションを改善することを目的に作られたアイテムもあります。「オーストラリアンブッシュフラワーエッセンス(AUSTRALIAN BUSH FLOWER ESSENCES)」の「リレイションシップエッセンス」(1日数滴飲んで使用します)は文字通りコミュニケーションや関係の改善を目的に作られたもので、家族、仕事仲間、パートナー、親子関係などさまざまな“関係”のコミュニケーション改善のサポートに効果的。相手に言いたいことの核心が全く伝わっていなかった、伝え方を間違えたまま接していた……などはよくあることだと思いますが、なかなか自分では気づきにくいもの。このタイミングでぜひ取り入れてみてください。また、ふたご座は呼吸器とも関連があるといわれており、涼しげで爽やかな香りもピックアップしたいところ。これから梅雨に向けてどんより重さも出てくるので、ティーツリーなどのすっきり系のアロマを取り入れるのもおすすめです。「ソープトピア(SOAPTOPIA)」のボディースクラブ「グッドラブ E」はユーカリ&ティーツリーの爽やかなアロマの香りが深呼吸にいざないます。新月はリフレッシュによいとされているので、爽やかな香りに包まれて日頃の垢を落とす……、などというバスタイムもいいかも。ぜひ試してみてください。
 
福本敦子(ふくもと・あつこ)/フリーランスPR・美容コラムニスト:コスメキッチンに14年間勤務後、現在はフリーランスPRとして活動するかたわら、ビューティコラムニストとしてイベント、SNSなど多方面で活躍。オーガニックに精通した知識を武器に、ライフスタイルに寄り添った独自のオーガニック美容論が、著名人やエディターをはじめ各方面から大人気。「#敦子スメ」は「読んだ瞬間試したくなる」と多くの反響を呼び、紹介した商品の欠品や完売も多数。2019年秋、初の書籍となる「今より全部良くなりたい 運まで良くするオーガニック美容本 by敦子スメ」を出版。発売前に増刷が決まるなど話題を呼んでいる。旅を愛し、占星術にも精通する instagram:@uoza_26

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みんな電力が空気を可視化 感染症対策の新サービス

 再生可能エネルギーを推進するスタートアップ企業のみんな電力は4月に、安全で安心な暮らしを実現する室内の空気環境を目指して空気環境対策の新事業「みんなエアー」を始動した。これは、オフィスや店舗内の空気を吸引して浮遊菌を採取し、人体に影響を及ぼすといわれるブドウ球菌やミクロコッカスなど19種類の浮遊菌の調査を行い、検査結果をもとに、紫外線殺菌照射装置「エアロシールド」を用いて空気環境の改善につなげるというもの。「エアロシールド」の殺菌効果は第三者研究機関の実証実験によって、実空間における浮遊菌減少が約7時間で89.6%と証明されたという。「“三密”であればあるほど効果が出やすい」というが、アパレル店舗でも感染予防対策として効果が期待できる。新型コロナウイルスの検知・除菌は可能なのか?ランニングコストはどの程度必要なのか。澤田幸裕・事業本部 ソリューション営業部 法人営業1チーム リーダーに聞く。

WWD:衛生的な空気は新型コロナウイルスの感染が拡大する今、誰もが必要としているものだが、ウイルスの検出も可能か?

澤田幸裕・事業本部 ソリューション営業部 法人営業1チーム リーダー(以下、澤田):ウイルスは小さいので検出するのが難しい。現在は菌の検査のみだが、今後PM2.5やほこりなども検査できる態勢に整えていく予定だ。医療向けのガイドラインによると、紫外線でウイルスが殺菌できるというエビデンス(科学的検証結果)もある。また米国で4月30日に、湿度80%の条件で紫外線を照射すると新型コロナウイルスを殺菌できるという発表もあった。紫外線の中でもUVC(波長が200~280ナノメートルの紫外線)に殺菌効果があり、「エアロシールド」はそのUVCを用いている。一方でUVCは生物全般に反応するため、人間に直接当たるとシミができたり、発がん性のリスクがあったりする。そのため人間に害のないところに設置している。

WWD:浮遊菌検査はどのくらいの頻度で行われるのか。

澤田:当社のサービスでは設置前と設置後、各1回の浮遊菌検査を行っている。すでにサービスを行った企業では、「エアロシールド」設置後30分で菌の数は10分の1に減ったという検査結果が出ている。

WWD:空気清浄機との違いは?

澤田:空気清浄機は網の目が大きすぎるため花粉までしか除去できず、ウイルスは空気清浄機では殺菌できないという結果がある。次亜塩素酸を出して殺菌するというサービスもあるが、次亜塩素酸で殺菌できるというエビデンスはまだない。また、次亜塩素酸がヒトの呼吸器内に入ったときに害がないというエビデンスもない。

WWD:紫外線による殺菌サービスはほかにはあるのか?

澤田:メンテナンスも含めたサービスは当社だけだと認識している。

WWD:広さや条件によって効果が変わると思うが、人が頻繁に出入りする店舗でどの程度の効果が見込めるのか。

澤田:現在調査中で、年内に1000エリアで実験してデータを作る予定だ。さらに、アプリで空気状態を可視化できるサービスを考えている。浮遊菌検査を行った地点を地図上で表示して空気検査状態が分かるようにするというものだ。「食べログ」の空気バージョンと考えてもらったら想像しやすいかもしれない。

WWD:展示会やイベントなど期間限定での導入は可能か。

澤田:工事をして機器を設置する必要があるので、期間限定のサービスは今のところないが、展示会場が導入を検討していただければ。

WWD:費用はどの程度かかるのか。

澤田:50平方メートルあたり1カ月1万4000円~でサービスを提供している。その費用に浮遊菌検査2回とソリューション製品の提供が含まれる。殺菌はもちろん、匂いを除去したり、逆に匂いを付けたりすることも可能だ。例えばアミューズメントパークでキャラメルポップコーンが売れているのも、実はキャラメルポップコーンの匂いを機器から流していたりするからだ。こういう匂いにしてほしいという要望にも対応できる。

WWD:そもそも「みんなエアー」は始めたきっかけは?

澤田:2年前にエネフォレストが製造する紫外線殺菌照射装置「エアロシールド」を取り扱うことになったのがきっかけだ。同社が提供する浮遊菌検査のサービスは、見えない空気を可視化できる点が面白いと思い、今年の1月から本格的にサービスの構築を始めた。

WWD:みんなエ電気のコンセプトである衣食住に関するすべての分野を“見える化”するというコンセプトと重なった。

澤田:ええ。今後もさまざまなことを“見える化”して生活者の皆さまによりよいものを選択していただければと思う。

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アパレル・出版25社に聞く、在宅勤務の本音 コミュニケーション不足がデメリット1位

 「WWDジャパン」5月18日号では「リモートワーク」を特集した。多くのファッション企業がリモートワークを導入して1カ月半以上が経ち、さまざまな“現実”が見えてきたであろう今、実践する中で感じた彼ら・彼女らの本音と改善策を探るため、アパレル・出版25社、計39人にアンケートを実施した。本記事では、在宅勤務のメリットとデメリット、コミュニケーションの工夫における声をランキング形式で紹介する。

メリット
1位 通勤時間の節約による時間の有効活用 14人
2位 自分の業務に集中できる 12人
3位 大人数での会議が開きやすい 5人

 メリットの1位は、誰もが感じているであろう「通勤時間の節約」だった。これまで移動にかかっていた時間を他の業務やリフレッシュ、家族との時間に充てられることが最大のメリットと思う人は一般的にも多いのではないだろうか。2位は2票差で「自分の作業に集中できる」。周囲や電話などに中断されることなく自分のペースで仕事ができるので、作業効率が上がるとの声がほとんどだった。3位には、オンラインを活用することで、会議室など場所を問わずカジュアルにいつでも集まれるといった、リモートならではの特徴を生かした“ミーティングの効率化”が挙げられた。またそれに付随して、「無駄な会議や打ち合わせが減った」「若手が会議後にホワイトボードを消して椅子を整えて消灯するといった煩わしさがない」「上座がないので、これまでよくいた“居るだけで何もしゃべらないけれど偉い人”は淘汰される」「上司の子どもが登場したり、おしゃれなインテリアが見られて、親しみを感じた」という声もあった。

 トップ3以外では「ランチが自炊できるので健康的」「紙などのコスト削減」「今後の働き方の多様化に対応する組織力ができた」「一人一人に災害や緊急時にも業務を継続させる応用力がついた」といった意見もあった。

デメリット
1位 コミュニケーション不足 17人
2位 商品や素材に触れることができない 6人
3位 申請書、経費関係など、印鑑が必要な場合に出社せざるを得ない 4人

 デメリットの1位は「伝わっていると思っていたことが伝えきれていなかったり、意思疎通が難しい」「すぐ相談したいときに連絡しづらい」「人の仕事から情報を受け取ることがなく、全体感を取り出しにくい」など、ダントツで「コミュニケーション不足」だった。出版社においては特に、「雑談から生まれる生きた企画やヒントが生まれにくい」という声が多かった。メリットの2位、3位とはある意味、真逆の答えで、人との関わりはある時はメリットにもなり、またある時にはデメリットにもなることが理解できる。人とどう関わりを築くかを考えさせられたのもリモートワークの特徴だ。2位は仕事内容にもよるが、商品やサンプル、素材に直接触れることができず、リモートでの判断には限界を感じるという意見だった。3位には社判捺印や承認、経理など、会社でないとできない業務が挙げられた。社会問題にもなっている捺印問題は多くの企業が価値観を変えざるを得なくなっているのではないだろうか。

 その他少数意見には、「みんなリモート会議がいそがしいから電話をかけても出ない。“ふとした瞬間”がいつなのか見えないので、小さなことでもしっかりアポを取らなければならず、逆にだるいときもある」「集中しないときは職場より作業効率が悪くなる」「仕事への関与率に個人差が大きい」「新入社員の教育が難しい」「業務のプロセスが見えない中、プロセス評価の若手をどう評価するか」「社外との商談は対面の方がよい」「自宅でのネットワーク&セキュリティ問題」などが挙げられた。

 デメリットを踏まえ、社内でのコミュニケーションの工夫についてはさまざまな回答があり、各社在宅勤務を円滑に行うための改善策を模索している様子が見られた。

 その中でも一番多かったのが「事前資料の作成」だ。事前に資料を共有して各自が内容を熟知してから会議に臨むことで、会議の趣旨をより明確にすることができ、短時間で終わらせることができるという声が挙げられた。実は弊社でも以前から言われていたことだが、リモートワークを機に一気に進んだことだった。次に多かったのが「朝礼・夕礼に業務報告することで、やっていることを可視化」。コミュニケーション不足や各自の進捗状況が見えないことも踏まえて、「一斉メールではなく、個人的にメールをして個々の状況の確認をこまめに行なっている」「“遊び”部分がいつもより減っているツケが数年後に返ってきそうだと感じるので、なるべく仕事と関係のないこともいつも以上に話すようにしている」という回答もあった。

 またオンライン会議においては、「画面での映り方のバランスが悪いとコミュニケーションする相手も気が散ると思うので、背景も含めて工夫」「同時にチャットも活用したり、音声以外でも内容が伝わるようにしている」「対面よりもテンションが低く伝わりがちなので、声のトーンをいつもより少し高めにして話す」という意見があった。

■アンケート回答者(五十音順、匿名希望者は記載なし)
石井 洋/「レオン」編集長
石切山 哲也/ビームス人材開発部係長
石平賢太朗/ワールド グループコミュニケーション推進室
五十川楓/ワールド グループコミュニケーション推進室
江端克之/レナウン執行役員事業部長
大竹智恵美/オンワードホールディングス人財ディビジョン・ダイバーシティ推進セクション課長代理
小笠原希帆/「フリーダ」ディレクター
國吉祐子/「アッシュ・ペー・フランス ビジュー」ディレクター 
小嶋奈南美/「ジルスチュアート」PR
塩谷薫/「オッジ」編集長
地下由佳子/「ウィズ」ファッション・読み物・web班
菅悦子/ベイクルーズグループ広報
関一暁/「アーノルドパーマータイムレス」戦略事業部事業部長
高田浩樹/「キャンキャン」編集長
竹田憲章/ダイアナ サプライチェーン推進部部長
田中智史/イトキン執行役員WEBビジネス部事業部長
永野優太/「ウィズ」編集者
福田太郎/ダイアナ 商品部バイヤー
朴里奈/ビームス社長室宣伝統括部
堀田覚/パル執行役員プロモーション推進部 部長
丸山花乃/「ヴィヴィ」編集者
三代彰郎/ジュン執行役員
森田聖美/「フィガロジャポン」「madameFIGARO.jp」編集長代理

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巣ごもり名人に聞く 「子どもとのリビングの快適共有術」

 新型コロナウイルス感染拡大で4月7日に緊急事態宣言が発令され、在宅勤務や外出自粛で巣ごもりを余儀なくされている人が多い。行楽シーズンのゴールデンウイークでさえ、どこにも行かず自宅で過ごさざるを得ないという未曾有の状況だ。「人に会えない」「外出できない」こんなときに、どうすれば巣ごもりライフをエンジョイできるかを業界関係者に聞いてみた。

 インテリア企業アクタス(ACTUS)のマーケティング部プレスとして活躍する関洋之さんは、妻と7歳の娘の3人で巣ごもり生活を送っている。リビングルームが仕事場兼遊び場であるため、子どもだけのスペースをテントで確保して心地よい距離感を保っている。妻が出勤するため、料理を担当し始めた関さん。仕事の合間に下ごしらえをすることでストレス発散にもなっているようだ。関さんはアクタスの広報ということもあり、巣ごもりに便利な自社アイテムをさまざまなシーンで活用している。

WWD:巣ごもり生活で心がけていることは?

関洋之アクタス マーケティング部 プレス(以下、関):リビングルームが仕事場と遊び場兼用なので、テントを出して子どもだけがこもれる場所を作った。そうすることで、お互い快適に空間を共有できている。オンライン会議などもしやすくなった。天気のいい日はベランダにテントを出して、今はやっているベランピングを楽しんでいる。在宅勤務中は子どもを構ってられないので、料理を手伝ってもらうなど一緒に過ごす時間をつくっている。ちょっと工夫するだけで特別感が出て子どもは意外と喜んでくれる。

WWD:巣ごもり生活で新しく始めたことや、はまっていることは?

関:妻が出勤する日もあるので、料理を担当し始めてはまっている。子どもがいるので、朝、昼、晩、また、毎日同じ料理が続かないようにする妻の苦労が分かった。自分が食べたいものを考え、仕事の合間に下ごしらえをすることでストレス解消にもなっている。外食ができない分、できるだけ丁寧に食事を作り、食べる場所(天気のよい日はベランダなど)や食べ方を工夫し、日々の楽しみにしている。

WWD:巣ごもりで子どもや家族との過ごし方がどう変わったか?

関:昼と夜の料理を子どもに手伝ってもらうことでコミュニケーションをとり、ちょっとした食育体験をさせている。

WWD:巣ごもりで新しく買ったもの、役立っているものは?

関:この春アクタスが、ノルウェー発アウトドアブランド「ヘリーハンセン(HELLY HANSEN)」と協業でスタートさせた「ランドノーム(LAND NORM)」のホーロー食器“エナメルオープンディッシュ”は、オーブン、直火、IHに対応しているので、調理してそのままテーブルに出せる点が便利だ。ふた付きなので、残ったらふたをしてそのまま冷蔵庫に入れられるので家事の時短になる。オフィスワークだと、1時間まるまる食事と休憩に使えるが、3食自宅で作ると、調理、食事、片付けで、その時間が終わってしまう。在宅勤務は通勤の時間は短縮できるが、他のいろいろなことに時間が取られると気付いた。また、家でオブジェ化していた“シューメーカースツール”をワークチェアとして使うことで、姿勢を正しく保つようにしている。

WWD:おすすめのツールやアプリ、サービスは?

関:ピクニック用のサンシェードやキッズ用のテント。リビングルームで、子どもと大人いずれもこもりたい時に便利。晴れた日はベランダで仮想ピクニック&キャンプを楽しめる。「モフト(MOFT)」のノートPCスタンドを使うと目線が上がり、PC作業が楽になる。特にローテーブルで作業する人にはおすすめだ。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.18 砂川卓也「ポジティブを感染させていく」

 業界の今後についても提言新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、2018年春夏シーズンにデビューした「ミスターイット(MISTER IT.)」の砂川卓也デザイナーが、今後必要とされるクリエイションについて語る。

MISTER IT.
砂川卓也デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A.デザイナーは、ポジティブな気持ちを感染させていくことができる。今はSNSで誰でも個性を発信できるが、何かを生み出すのは誰もができることではない。だからデザイナーとして、人々が前向きな気持ちになれる物作りを続けていきたい。リモートで簡単にコミュニケーションできる今だからこそ、人と実際に会う時間の貴重さを実感している。そんな大切なときに服を通じて会話が弾んだり、笑顔になったりするクリエイションができれば僕もうれしい。今後も服を作るだけではなく、商品をどのように届けたら喜んでくれるか、大切にしてもらえるかを考えて、デザインすることを続けていきたい。ブランドを立ち上げたときから、パーソナルに向けて服を作るということをクリエイションの出発点として考えてきた。その考えは全く変わらないし、むしろこれからより必要になるはずだ。

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まだ、あなたが知らないニューヨーク最新トレンド 免疫セレブたちに学ぶ Immunity Celebrities

 ニューヨークのファッション業界で活躍するクリエイティブ・ディレクター、メイ(May)と、仕事仲間でファッションエディターのスティービー(Stevie)による連載第9回。普段は、月に1、2度のペースで新しいレストランを開拓しながら情報交換する2人だが、自粛が始まった3月からは、ZOOMミーティングに切り替え中。“You’d Better Be Handsome”では、トレンドに敏感なレイチェル(Rachel)を交えて、ニューヨークのトレンドや新常識について雑談している。今回は以前から、なにかとキーワードになっていた“免疫ビジネス”についてトーク。ポストコロナにはますます伸びそうな予感。

スティービー:“ポストコロナ”と言われているけど、少なくともニューヨークでは、前と同じ生活にはしばらくは戻らないということが分かってきた。今後も第2波を懸念しながら経済活動に戻っていくわけだし。

メイ:私は、ずっとこもっているトライベッカのアパートに飽き飽きしてきた。どこか別の街に引っ越ししたいと最近考えてしまう。それにしても、マンハッタンの人たちは一体どこに行ったのか、というくらい人が少ない。周りにもハンプトンやコネチカットのセカンドハウスでカントリーライフを楽しんでいるという人たちが少なくない。

レイチェル:それに実家に滞在しているうちに、郊外の方が住みやすいという結論に至るニューヨーカーが増えているらしい。これを機に、ライフスタイルに関する価値観が変わっていくよね。

家ごもり期間中のスター、免疫セレブたち

メイ:こんなロックダウンの自粛生活において、そもそもライフスタイルが素敵な人たちはソーシャルメディア上でいつもより輝いているよね。

スティービー:ライフスタイルウェブマガジン&ショップ「グープ(GOOP)」を運営している、女優のグウィネス・パルトロウ(Gwyneth Paltrow)とか?

レイチェル:「グープ」は盛り上がっているよ。家で過ごすカジュアルだけどシックな服、こんなときだからこそデトックス、家でもできるワークアウト、オーガニックな料理など、今にぴったりのテーマが続々と出てくる。どれも体の中からきれいにして、外見も美しく、心もハッピーみたいな。

メイ:サプリとスキンケアの「グープビューティ(GOOP BEAUTY)」も人気よね。

スティービー:体の中からきれいになって、結果的に外見もきれいになる。インナービューティとかクリーンビューティ、ときにはセルフケアのカテゴリーにも入ってくるかもしれないけれど、共通項は“イミュニティ(免疫)”を強くするという話。

レイチェル:免疫にこだわるインフルエンサー的な、ライフスタイルリーダーというかセレブたちがすでに何人かいる。共通しているのは、自然体で、体の中からきれいそうなこと。ファッションもがんばり過ぎていないのがかえって今どきだし、化粧も濃くないけれど、それは素がきれいだから許される技。

メイ:すぐに思いつくのは、「ムーンジュース(MOON JUICE)」で一躍有名になったアマンダ・シャンタル・ベーコン(Amanda Chantal Bacon)とか?今日のインスタのストーリーでも、毎日8時間寝て、外を散歩して、瞑想して、寝る前にマグネシウムを飲むことで、ストレスを押さえて免疫力をアップしていると語っていたわ。

レイチェル:本人がきれいだから説得力がある。ちなみに「ムーンジュース」は、自宅でジュースを作るときに加えるパウダーで有名になった。パウダーを、あえて“ダスト”と呼んで、“ブレインダスト”“セックスダスト”などなど、キャッチーなネーミングとブランディングが成功した例。ホリスティックでありながらも効果も期待できる。

メイ:免疫セレブの元祖はミランダ・カー(Miranda Kerr)あたり?彼女は朝起きたら白湯を飲み、ココナッツオイルを食べて塗って、撮影中でも瞑想を欠かさないほど徹底していた。どこに行くにもクリスタルをポケットに忍ばせて。結局それらもすべて免疫力をつけて、内側から強くするということよね?

スティービー:どんなに高いクリームを塗っても、体内が健康ではないと無駄になる。それに気づいた人たちが、免疫力を高めるためにさまざまな努力をしているのは確か。例えば、ハリウッドスターたちに大人気の「ドクター・バーバラ・シュトゥルム(Dr. BARBARA STURM)」のセラムのファンが多いけど、バーバラの人柄、ライフスタイルを含めてファンという人も多いはず。

メイ:免疫ビジネスの目的は、ハッピーでヘルシーな毎日、そして最終的にはエイジングケアであること。“素敵に年をとりたい”“年はできるだけとりたくない”は全人類の共通項だから。

免疫力に長期投資するコンシャス層

メイ:もともと盛り上がっていた免疫ビジネスだけど、新型コロナと共存していかないといけない今の私たちにとっては贅沢品ではなく必需品になっている。

レイチェル:とはいえ、真面目に瞑想を学んで、ヨガをして、数々のスキンケアやサプリを買うのはお金がかかりそう。そもそも、食事もワインもコーヒーもオーガニックがルールだろうし。

スティービー:新型コロナは、英国の王子からハリウッドスターまでかかってしまうわけだけど、普段から免疫力に投資をしている人たちは回復する率が断然高いよね。アメリカにおける死者は、圧倒的に低所得者層が多い。こんなところにも格差が出てきて驚かされている。

メイ:そもそも、美や健康にコンシャスな人々は、普段から定期的に運動したり、不足しがちな栄養素はサプリで補ったり、とっても気を使っているからね。どこの国も同じだろうけれど、ニューヨークのファッション業界の人たちも、パーソナルトレーナーから栄養士、エステティシャン、ライフコーチまで、心と体の健康に普段から投資している。

スティービー:そういえばスタイリスト仲間の女性も、去年かな、ファッションの仕事を辞めてエステティシャンになった人がいる。あとはファッションブランドで働いていたけれど、パーソナルトレーナーになった人とかね。

メイ:確かに、みんなの興味がそっちに動いているのは感じるよね!ジョアンナ・チェック(Joanna Czech)も人気のエステティシャン。ウェブショップでは、玄人ウケしそうなブランドを販売している。先出の「ドクター・バーバラ・シュトゥルム」「ヴィントナーズ・ドーター(VINTNER’S DAUGHTER)」「ビオロジック ルシェルシェ(BIOLOGIQUE RECHERCHER)」「アウグスティヌス・バデール(AUGUSTINUS BADER)」「111スキン(111SKIN)」などなど。ジョアンナ・チェックのウェブというかブログも、何気なく彼女のコネクションやライフスタイルが分かる感じでアピールしているし。

レイチェル:ほかにもスーパーモデルのエル・マクファーソン(Elle MacPherson)が、サプリのブランド「ウェルコ(WELLECO)」を展開していて、ソーホーにはお茶もできる店舗がある。「フェイスジム(FACE GYM)」のインゲ・セロン(Inge Theron)はビューティジャーナリストからスパオーナーになった人物。コンセプトがユニークで、カーリー・クロス(Karlie Kloss)をはじめとするモデルたちから崇拝されている。ほかにも、ニューヨークとフィラデルフィアにカルト的なスパを展開する「レスキュースパ(RESCUE SPA)」のオーナー、ダヌータ・ミエロック(Danuta Mieloch)とか、スタート地点はさまざまだけど、美しくなるためのワンステップとして免疫を高める健康法を提案しているのが共通点。

スティービー:それと美容だけじゃなく、ライフスタイルの中での美容を提案している気がする。ファッションにもそれなりにお金をかけている人たちが、大事なのはヘルシーな体とマインドだというところに行き着いている。

メイ:そう、それがこの免疫ビジネスの急成長を支えている、いろいろとお金と時間がかかるよね。それに継続しないと意味がないわけだし。だからサプリもオイルのパッケージもおしゃれになっていくし、免疫セレブたちが効くと言えば高くても売れるわけよね。

スティービー:免疫力アップは長期投資だから。でも、すればするだけ効果も出るというのも事実。

コロナ時代の勝敗を決める免疫力

スティービー:「ニューヨーク マガジン(New York Magazine)」のファッションジャーナリスト、エイミー・ラロッカ(Amy Larocca)は、今回のパンデミックで“ウエルネス”と“ウエルオフ(経済的にゆとりがある、という意)”は同じになったと書いている。

メイ:その記事には、ニューヨーク州知事の弟でもあるCNNのキャスターのクリス・クオモ(Chris Cuomo)が、今回新型コロナに感染して一躍時の人になったことも書かれていた。

レイチェル:家族に移さないために、クリスは地下室に自らを隔離してテレビ出演していたけど、あの家も実は超高級リゾート地イーストハンプトンにあるらしい。

スティービー:まったく風景が見えなかったから、マンハッタンにいると思っていた。どちらにしても、恵まれた環境にいたということだよね。小さなアパートに暮らしている人たちは、家族の誰かが感染しても、隔離して生活するのは難しいから。

レイチェル:彼の妻のクリスティーナ・クオモ(Cristina Cuomo)は、ウエルネス系のサイト「ザ・ピュリスト(The Purist)」の創設者。彼女もその後感染したけれど、健康のプロであるクリスティーナが経験と知識を最大限に生かし、食事療法、ホメオパシー、サプリ、サウナでの肺に効く運動、陽に当たる頻度など、日々のメニューを作り出し、二人とも順調に完治している。

メイ:健康があってこその仕事だから、CNNのキャスターならそれくらいのことはするよね。今回のロックダウン中に、ヨガや瞑想を生活に取り入れたり、デトックスしたり、せめていつもよりも肌の手入れに時間をかけた人たちは多いと思うけれど、それも家にこもれる立場にあったからのこと。

スティービー:いまは健康な人も、これからどうなるか分からない中、とりあえずは免疫力アップを目指すようになる。僕も毎日サプリはいろいろ飲んでいる。前から摂取しているけど、家の中にいる時間が多い最近はビタミンDを必ず飲むようにしている。死者が多かったヨーロッパの国々では、ビタミンDが不足していたというデータもすでにあるようだし。

メイ:これを機に健康に目覚める人も多いはず。政治家やテレビの言うことは信じられないし、誰がウイルスを持っているか分からない時代に、最後に頼れるのは自身の免疫力ということね。

メイ/クリエイティブディレクター : ファッションやビューティの広告キャンペーンやブランドコンサルティングを手掛ける。トップクリエイティブエージェンシーで経験を積んだ後、独立。自分のエージェンシーを経営する。仕事で海外、特にアジアに頻繁に足を運ぶ。オフィスから徒歩3分、トライベッカのロフトに暮らす

スティービー/ファッションエディター : アメリカを代表する某ファッション誌の有名編集長のもとでキャリアをスタート。ファッションおよびビューティエディトリアルのディレクションを行うほか、広告キャンペーンにも積極的に参加。10年前にチェルシーを引き上げ、現在はブルックリンのフォートグリーン在住

レイチェル/プロデューサー : PR会社およびキャスティングエージェンシーでの経験が買われ、プロデューサーとしてメイの運営するクリエイティブ・エージェンシーで働くようになって早3年。アーティストがこぞってスタジオを構えるヒップなブルックリンのブシュウィックに暮らし、最新のイベントに繰り出し、ファッション、ビューティ、モデル、セレブゴシップなどさまざまなトレンドを収集するのが日課

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ストリートファッションを記録し続けて35年 「ストリート」「フルーツ」編集長が見据えるコロナ後の原宿

 海外ストリートスナップ誌の草分けとして1985年に創刊した「ストリート(STREET)」はこのたび、創刊号から100号(85~97年)までを電子書籍化し、自社サイトで販売を始めた。電子書籍化のきっかけは、「『メゾン・マルジェラ(MAISON MARGIELA)』のチームが、『ストリート』のアーカイブを見るために来日し、文化学園図書館を訪れたといった話を耳にしたこと」と、同誌を運営する青木正一ストリート編集室代表は話す。80~90年代のムードは近年トレンドとして注目を集めていることもあり、「海外メディアでも取り上げられ、販売は順調な滑り出し」だ。国内外のストリートを文化人類学者のような目線で見続けてきた青木代表に、電子書籍についてや、コロナショックでストリートファッションがどう変わっていくかを聞いた。

WWD:「ストリート」を電子書籍化したのはなぜ?

青木正一ストリート編集室代表(以下、青木):35年分のデータのうち、フイルムで撮っていたころのデータが段ボール10箱分ほどあったが、それを記録用として電子化し始めた。その流れで、どうせだったらアーカイブとして電子版を発行しようとなった。若い人にストリートファッションを広く見てほしい。創刊号から100号までの全巻セット(3万円)が既に結構売れていて、購入者を見ると海外のハイブランドのデザイナーであることも少なくない。アーカイブをそのまま自分のデザインに落とし込むというより、空気を感じて、新しいものを作るためのインスピレーション源としてもらえたら嬉しい。80~90年代ファッションの記録は今すごく求められていると感じる。蓄積してきたデータを生かして、今後はファッション業界のプロ向け分析サービスのようなことも行っていきたいが、システムを作るのに時間がかかってしまってなかなか実現していない(笑)。

WWD:今、80~90年代ファッションが求められているのはどうしてだと思うか。

青木:数年間にわたって市場を席巻した“ラグジュアリーストリート”のトレンドから今は次に進もうとしている時期で、みな模索しているんだと思う。“ビンテージ”がこれからはキーワードとしてより強くなっていくと感じる。「どうでもいいもの」は今後は今まで以上に求められなくなる。「どこにでもあるデザインならいらない」「他にない、1点ものがほしい」という考え方の人が増えているように感じていて、それはまさにビンテージに通じる。昨年、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が雑誌のインタビューで「ストリートウエアに代わって、ビンテージが表現手法として広がる」といった趣旨の発言をしていたが、コロナショックでの意識変化もあって、そういったムードが拡大するように感じている。

WWD:コロナショックで街から人が消えて、ストリートファッション自体が今はなくなっている。

青木:現時点では確かにそうだが、若い人のファッション意欲はこれからも下がらないんじゃないかと思っている。原宿は店が休業し、人もいなくなったが、おしゃれな10~20代の子を見かけることがある。そういう子からは、「早く服が買いたい!」というムードを感じる。緊急事態宣言下でお金もしばらく使っておらず、デザイナーブランドの服など「いいものがほしい」という気持ちが盛り上がるんじゃないか。コロナショックの前から、男の子だけでなく女の子にも原宿っぽいファッションが戻ってきていると感じていたので、土台はある。景気悪化で、大手のメーカーや小売企業など、“どうでもいい服”をたくさん作って売ってきた会社はコロナショックで元気がなくなるだろうが、そうなると逆にストリートは盛り上がる。90年代に原宿ストリートファッションが花開いた時も、80年代のDCブランドブームがダメになった後だった。ロンドンのストリートスタイルが80年代後半以降に盛り上がったのも、「いい服が売っていないから古着屋で探そう」というマインドからだ。それと反対に、大手のファストファッションが全盛だった頃はストリートファッションがつまらなくなって、それで原宿のストリートスナップ誌「フルーツ(FRUiTS)」も2016年12月に休刊した。

WWD:「ファストファッションはファッションを民主化した」とも当時はよく言われたが?

青木:確かにファストファッションがファッションを一般に普及させた面はあるが、そのイノベーションは中小のデザイナーのクリエーションを破壊することで生み出したものだと思う。アイデアをコピーされる小さい規模のデザイナーにとってはたまったもんじゃない。ファッション業界を一つの大きな会社にたとえれば、クリエーション担当部署にあたるのが真剣にモノを作っている中小のデザイナーたちだ。その部署単体ではなかなかお金にならないが、彼らは新しい芽を生み出して、業界を前に進めている。だから、大きな企業は彼らを破壊するようなことはしないでほしい。コロナショックでも、アパレル産業や国には、そういった中小のデザイナーを守ってほしいと思う。そうじゃないと、ファッションという産業自体が弱くなってしまうと思う。

WWD:「フルーツ」も復刊を予定しており、その資金を作るために「フルーツ」のロゴ入りのドッグタグを現在販売している。

青木:4月から撮影を始めて6月に発行しようと思っていたが、コロナショックに重なってしまった。5月末から撮影しようと思っているので、発行は夏以降になりそうだ。紙の雑誌として発行するが、ウェブ版でも何かしらやっていきたい。復活号では、90年代の東京ストリートをけん引した「トライベンティ」とのコラボ企画も仕掛けたいと思っている。96年の創刊号で「トライベンティ」の特集を組んでいたので、それを今もう一度やってみるのも面白いなと思って。「トライベンティ」は「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」や「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」などと共に、二次流通市場で今価格が上がっていると聞く。それだけでなく、国内外の若手ブランドともコラボして、あえてコーディネートが難しいアイテムを作っていきたい。大喜利のお題のように着こなしが難しいアイテムを出すことで、ファッションが盛り上がっていけばと思っている。

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「グッチ」「バレンシアガ」に行列 外出規制緩和で店舗営業再開のパリをリポート

 フランスでは、約2カ月続いた外出規制が大幅に緩和されました。5月11日から外出規制措置に段階的解除が始まり、自宅から100km以内の移動許可や、飲食業をのぞく商店も営業を再開できるようになりました。しかし重症者数・死者数が多いイル・ド・フランス(パリ首都圏)は要注意を示すレッドゾーンに指定され、ほかの地域よりも厳しい規制が残っています。映画館や大規模な美術館、公園などは封鎖されたままで、中学校以上の学校再開も遅れている状況です。4万平方メートル以上の大型商店は営業再開が許可されていないため、プランタン(PRINTEMPS)やギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)のオスマン本店は引き続き閉鎖中。ブリュノ・ル・メール(Bruno Le Maire)経済・財務大臣によると、11日からフランス全土で飲食業以外の商店約40万(約87万5000人)が営業を再開し、その他の企業も在宅勤務奨励を続行しつつ活動の平常化を図るといいます。公共交通機関では11歳以上はマスク着用が義務化され、国民には週2000万枚のマスクが供給されています。政府は営業を再開する商店に、顧客同士の距離を1メートル以上保ち、入店時には消毒液の塗布やマスク着用を要請しています。これらに加えてLVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(以下、LVMH)やケリング(KERING)は、ブランドの旗艦店の営業再開に際し、各店に消毒専任の清掃者を配備して店内を常に清潔に保つと宣言しました。

「ザラ」や家電量販店に行列

 外出規制解除の初日となった11日のパリは冷たい風が吹き、雲がかかった天候で外出日和とはいきませんでしたが、街は少し活気を取り戻した模様でした。AFP通信や複数のフランスの新聞の報道によると、パリや地方都市では「ザラ(ZARA)」の店舗に顧客が殺到したようです。店の前で行列を作る光景がツイッター上でも話題となり、11日には「ザラ」がフランスのツイッターで一時トレンド入りするほどでした。各店の入り口には消毒液が常備され、マスクを着用していない場合は警備員が入店を断ります。ほかにも家電量販店のフナック(FNAC)も行列を作る盛況ぶりでしたが、多くの人が殺到しすぎたことで一部からは批判もありました。地元の新聞「ロブス(Lob’s)」紙は、顧客の大半は家電やスマートフォンの修理のために訪れたのだと報道しています。また、商店以外に人が集まったのは、セーヌ川沿いやサン・マルタン運河沿いです。レストランやバーは営業していないため、多くのパリジャンはワインを持って屋外での飲食で友人らとの再会に祝杯をあげていたようです。しかし政府が濃厚接触による第二波を警戒し、数日後には屋外での飲酒行為を禁止すると発表しました。

試着などの対策はそれぞれ

 私は商況を調べるため、外出規制が緩和された週の土曜日15日に街へと繰り出しました。シャンゼリゼ通りの消費者の3分の2が観光客だというこの大通りでは、まだまだ人影がまばらです。普段なら多言語が飛び交うシャンゼリゼ通りですが、この日聞こえてきたのはフランス語ばかり。それも訛りの交じったフランス語が多いことから、首都圏ではなくほかの地域から訪れているフランス人のようでした。凱旋門近くの「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の店舗は少しだけ顧客が列をなしていました。11日のAFP通信の報道によると、外出制限を終えた自分のへのご褒美や娘の誕生日プレゼントなどを買い求めて郊外からの顧客が訪れたものの、大盛況とまではいえない様子でした。シャンゼリゼ通りに昨年新店をオープンしたギャラリー・ラファイエットも、人影は少なめ。顧客よりも販売員の方が多く、時間を持て余しているようにも見られました。「ザラ」は商品の試着を禁止しているため試着室は開いていませんでしたが、ギャラリー・ラファイエットでは試着が許可されています。同店では「一度試着された商品は、陳列棚に戻していません」と注意書きが掲示され、商品は全て24時間の検疫を経て店頭に並んでいるとのこと。また同店は会員顧客向けにショッピングイベントを開いており、百貨店側が会員顧客に自宅と店舗までの送迎車を用意し、店内でパーソナル・スタイリストからのアドバイスを受けながら買い物ができる催しを行っているようです。同店のすぐ近くに構えるLVMH傘下の化粧品や香水を扱う専門店セフォラ(SEPHORA)は、比較的客数が多かったように思います。商品の試供は禁止されているため、試供品は全て透明のビニールテープで封印されていました。店員によると「普段なら使用後の返品は認められないが、試供が禁止されている期間は返金・交換を可能にしている」とのこと。

高級店ではマスクを無料配布

 ラグジュアリーブランドの旗艦店が多く軒を連ねるモンテーニュ通りでは、いくつかの店舗で行列ができていました。私が訪れた昼の時間帯に列を作っていたのは「グッチ(GUCCI)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」です。列はなくとも店内に入ると「ディオール(DIOR)」「セリーヌ(CELINE)」「ロエベ(LOEWE)」にも客がいました。ラグジュアリーブランドの旗艦店では、入り口に使い捨てのマスクが用意されています。そんな中で「ジル サンダー(JIL SANDER)」の旗艦店には良質なコットン素材のマスクが置かれていて、洗濯すれば繰り返して使用できるため、私の最近の必需品となっています。

 セーヌ川を渡って左岸、百貨店のボン・マルシェ(LE BON MARCHE)周辺は大変混雑していました。私は5年ほどこの周辺に暮らしていますが、一年で最もにぎわうクリスマス時期と同じくらいの盛況ぶりにとても驚きました。シャンゼリゼ通りとは違い、地元民が多かったようで、家族連れから友人、カップルまで世代もさまざまです。感染防止には十分注意しつつも、人に溢れて活気がある街の光景を見たのは久しぶりだったので、なんだかうれしい気持ちになりました。閉鎖中の百貨店の顧客がボン・マルシェに流れてきたことと、同店はもともと地元の顧客が多いため、これだけにぎわっていたのでしょう。もう一つは、ひと足先にセールを行っていたことも挙げられます。フランスのセールは毎年夏と冬の2回に、国が定めた日程で一斉にスタートします。今年の夏のセールはまだ日程が決まっていなかったのですが、ボン・マルシェは会員限定で先行セールを開催していたようです。ちなみに会員になるには、窓口でカードを受け取り、簡単な登録で完了します

セレクショトップにも客足戻る

移動に使った地下鉄ではマスク着用が義務化されており、違反者には罰金135ユーロ(約1万6000円)が科せられる

 小規模な商店や飲食店が多いマレ地区は、若者で溢れ返っていました。ブロークン・アーム(THE BROKEN ARM)やトム・グレイハウンド(TOM GREYHOUND)、レクレルール(L’ECLAIREUR)、メルシー(MERCI)などのセレクトショップの店内にも顧客の姿がちらほら。このエリアの場合は、商店よりもテイクアウトのみで営業を再開したレストランや惣菜店、ベーカリーなどにたくさんの列ができていました。ベンチのある広場でのんびりしているパリジャンが多く、のどかな光景は日常のシンプルな幸せを思い起こさせてくれます。

 外出規制措置の緩和で再び自由を手にして歓喜する人もいれば、第二波を恐れてさらなる不安を覚える人もいます。段階的な解除措置の第二段階は5月末までの状況を見て、6月初めに決定される見通しです。フランスを含め各国で重症者・死者数は減り続けているものの、小規模クラスターもすでにいくつか発生しています。街や経済活動が平常のリズムを取り戻すのには、まだまだ時間を要しそうです。

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営業再開から1週間のフランス 客足や売り上げは戻った?

 フランスでは全土で行われていた都市封鎖が5月11日から緩和され、生活必需品以外を取り扱う店舗もおよそ2カ月ぶりに営業を再開している。それから約1週間が経ったが、売り上げなどは回復しているのだろうか?

 百貨店のギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)、「ザラ(ZARA)」などを運営するインディテックス(INDITEX)、H&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ)など、およそ6万店が加盟するフランスの専門店連盟プロコス(PROCOS)のエマニュエル・ル・ロシュ(Emmanuel Le Roch)=ジェネラル・マネジャーは、「客足は前年の同時期と比べて30〜40%少なく、パリのほうが地方よりも状況が悪い。パリにはショッピングセンターが多く、それらがまだ休業中のためだ。一方で、来店した客の購買意欲は高い」と語る。

 各店舗では、ソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用、店内の消毒などの安全対策を講じての営業再開となったが、消費者もこれらを前向きに受け入れたという。高級百貨店のボン・マルシェ(LE BON MARCHE)では、入店可能な人数を10平方メートル当たり1人に制限した。また「ロエベ(LOEWE)」では、来店した顧客に販売員がトングでうやうやしくマスクを渡す光景が見られた。

 ギャラリー・ラファイエットは、シャンゼリゼ通り店と地方にある店舗の営業を再開したが、オスマン通り店は引き続き休業している。傘下の百貨店BHVマレ(LE BHV MARAIS)も営業を再開した。同社によれば、休業する前と比べて客足は20〜30%少ないが、客単価はむしろ高くなったという。売れ筋は生活雑貨、子ども服、メンズのスニーカーなどで、アパレルの売り上げはそれほど回復していない。なお、同社のECでは最大50%引きのセールを開催中だ。

 「グッチ(GUCCI)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」などを擁するケリング(KERING)では、地元の顧客を中心に予想以上の客足になっているという。フランソワ・アンリ・ピノー(Francois Henri Pinault)会長兼最高経営責任者(CEO)は、「パリの店舗では国外からの観光客が売り上げのおよそ半分を占めている。少なくとも1年程度はそれが戻らないことを覚悟しているが、雇用は維持するつもりだ」と現地メディアに語った。同氏はまた、「グッチ」のモンテーニュ通り店を訪問した際に、「営業を再開した店舗では予想以上の客足があり、日によっては前年の同時期より売り上げが増加している店もある。こうした現象がいつまで続くかは分からないものの、当社の傘下ブランドが地元の顧客にいかに愛されているかが証明されたと思う」と述べた。同社の販売員は、休業している間も顧客に電話をかけてコミュニケーションを取ったり、リモートでの新たな販売方法を検討したりしていたという。

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「ディオール(DIOR)」などを擁するLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は、営業再開に関してコメントを差し控えるとした。しかし情報筋によれば、同社が擁するビューティ専門店チェーンのセフォラ(SEPHORA)ではオンラインで購入した商品を店頭で受け取るサービスを開始したことが奏功し、高いコンバージョン率になっているという。また「ルイ・ヴィトン」のシャンゼリゼ通り旗艦店では入店を待つ顧客の列が見られたほか、5月16日にはベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼CEOがマスクを着用した姿で同ブランドのヴァンドーム広場店を訪れ、店内を見回る様子が目撃された。

 多数のフレンチブランドを取りそろえる小売店のレクセプション(L’EXCEPTION)は、「客足は休業前の半分程度だが、来店した顧客の購買意欲は高い。とはいえ、営業を再開したほかの店からは売り上げが50〜60%減少したという話も聞く。それでは店を維持できないので、これから数週間でいろいろ回復しない限り、フランスの小売業界は悲惨なことになる」とコメントした。

 プロコスのル・ロシュ=ジェネラル・マネジャーは、「フランスではロックダウン中に貯蓄額が大幅に増加した。外出規制が緩和されたとはいえ、レストランや映画館はまだ閉まっているので、その分ぜいたくな買い物をしたいと思う消費者も多いはずだ。しかし『買い物をしたい』という欲求が営業再開後の1週間で発散されてしまい、その後は売り上げが落ちた国もあるので、今後の推移を見守りたい」と話した。

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巣ごもり名人に聞く 「インテリアのプロならではの“ヒュッゲ”な空間作りと楽しむ工夫」 

 新型コロナウイルス感染拡大で4月7日に緊急事態宣言が発令され、在宅勤務や外出自粛で巣ごもりを余儀なくされている人が多い。行楽シーズンのゴールデンウイークでさえ、どこにも行かず自宅で過ごさざるを得ないという未曾有の状況だ。「人に会えない」「外出できない」こんなときに、どうすれば巣ごもりライフをエンジョイできるかを業界関係者に聞いてみた。

 デンマーク発インテリアブランド「フリッツ・ハンセン(FRITZ HANSEN)」でアジア地区ブランドマネジャーを務める相澤真諭子さんは、11歳の娘、6歳の息子、母と4人で暮らしている。「フリッツ・ハンセン」の家具がおかれた自宅は、まさに“ヒュッゲ(デンマーク語で、温かな心地よい雰囲気)”そのもの。巣ごもりで仕事や勉強に集中するために配置換えをするなど、インテリアのプロならではの工夫が見られる。室内でも親子で楽しめる運動やゲームなどのアイデアが盛りだくさんだ。

WWD:巣ごもり生活で心がけていることは?

相澤真諭子フリッツ・ハンセン アジア地区ブランドマネジャー(以下、相澤):生活のリズムが崩れないように毎日の時間割を週ごとに作り、その通りに起床、食事、仕事をし、そして、遊ぶようにしている。

WWD:巣ごもり生活を送るにあたり工夫したことは?

相澤:仕事と勉強部屋のデスクの配置を変えた。向かい合わない配置にすることで、仕事や勉強に集中できるようになった。1日3度の食事を自宅でするので、できる限り子どものリクエストに応えるようにしている。食卓で子どもが仕上げられるタコスや手巻き寿司など、一緒に作って食べる楽しみを分かち合ったり、金曜日はビュッフェと称してダイニングテーブルにおかずを置き、それぞれが食べたいものをお皿に盛ってリビングで食べたり、変化をつけている。タコ焼きも子どもに人気。


WWD:おすすめのツールやアプリ、サービスは?

相澤:ピアノがあるのに誰も弾かなかったが、巣ごもりを機にユーチューブの「かんたんピアノ」で子どもと連弾してゲーム感覚で楽しんでいる。デジタルに頼りすぎないように、日本らしい遊び、そして脳のトレーニングのために将棋を始めた。運動不足やイライラを解消するにはトランポリンがおすすめ。通りすがりに手軽に跳べるし、テレビを見ながら跳ぶこともできる。アクロバティックに跳ぶこともできて、大人も子どもも楽しく運動ができる。

WWD:今はまっているものは?

相澤:飲んだ翌日に体が楽なのでナチュラルワインにはまっている。ナチュラルワインは同じラベルでもボトルによって差があったり、ブドウが育った土地によってミネラルの味に個性があったりして味わい深い。

WWD:巣ごもりで重宝しているものは?

相澤:キャスパー・サルト(Kasper Salto)がデザインした多用途テーブルの“リトルフレンド”。軽量で持ち運びでき、高さも調整できるのでリビングやベッドルームではサイドテーブルとして、ダイニングやキッチンでは作業台として使える。また、これさえあれば、即席の仕事場ができる。

WWD:家の中のお気に入りの場所は?

相澤:家族みんなのお気に入りは“アルファベットソファ”のあるリビングルーム。いつもみんなで集まって会話が弾む。日中は子どもたちとにぎやかに過ごしているので、子どもたちが寝静まったら“エッグチェア”でゆったりと一人の時間を楽しんでいる。

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オールユアーズが考える「ZOOM接客がポストコロナに秘める可能性」

 オンライン接客が、コロナ禍での店舗休業中の対応策として普及している。中でもZOOMを用いた接客手法の可能性を追求しているのが、アパレルメーカーの「オールユアーズ(ALLYOURS)」だ。同社は3月26日に東京・池尻大橋に構える店舗を休業し、4月の半ばには木村昌史代表による「プライベートZOOM接客」(1人当たり40分~)をスタート。同時期に始めた「かんたん!質問箱」や昨年から実施している「自宅試着サービス」などと組み合わせ、オンライン上での接客を推進している。ZOOMをはじめとする、ビデオ会議・通話サービスによる接客にはどのような可能性があるのか。木村代表に話を聞いた。

WWD:「プライベートZOOM接客」と「かんたん!質問箱」を始めた経緯は?

木村昌史オールユアーズ代表(以下、木村):店舗を休業にして「これからどんなサービスを始めればいいんだろう?」と考えた時にまず、僕たちのお客さんのタイプを3パターンに洗い出してみました。1パターン目が商品を買うことはほぼ決まっているけれど、店舗で接客を受けて納得してから買いたい人。2パターン目はSNSなどで積極的にコミュニケーションを取りながら、オンラインストアで買える人。そして3パターン目が店舗には来るけれど、コミュニケーションはあまりしたがらない人。2パターン目の方は今までも質問やメッセージを随時受け付けていたので、その手法を継続しつつ、SNSで「いつでも聞いてください」と定期的に発信して対応しています。

問題は残りの2パターンで、ZOOM接客は1パターン目の方に向けて、質問箱は3パターン目の方に向けて始めました。質問箱に関しては、ある種チャットボット的な形式ですが、本格的なシステムを導入する資金がない点と、人員的な理由から、24時間以内に質問を返すような形にしています。

WWD:「自宅試着サービス」はどのように活用している?

木村:試着と購買の意思決定の場として考えています。先ほど話したオンライン接客の手法は、「自宅試着サービス」があるからこそできるんです。店舗での購入プロセスを考えると、最初にスタッフとのコミュニケーションがあり、そして商品を選定し、商品の説明を受けて試着に進む。後は試着をしながら購買の意思決定をしていく。一方で、オンライン接客は試着の手前までしかできず、なかなか購買の意思決定にまでつながらない。試着を気軽にできる制度を整えることで、オンライン接客でも気軽に最後の決済ができるようになると考えています。

WWD:ZOOM接客を受けているのは、普段は店舗に来られないような、遠方のユーザーが多いのか?

木村:都内や関東近郊の方と遠方の方、それぞれ半々くらいですね。都内の方は「『オールユアーズ』のことはメディアやイベントなどを通じて知っていて、製品のことをもう少し知りたい」という新規のお客さんが多いです。一方で遠方の方は既に商品をオンラインで何回か購入していて、店舗に行ってみたかったけど、都合がなかなか合わない人です。一番遠い所でサウジアラビアから、といった人もいました(笑)。ただ、ほとんどのお客さんが、ある程度オンラインストアの情報を読み込んでくれています。そのため接客の際、商品の説明は最低限にするか、オンラインストアには載っていない情報を伝える程度で、後はライフスタイルや趣味嗜好など、お互いのパーソナルなことを話すようにしています。僕らとしても商品を長く着続けてもらいたいという思いがあるので、接客の中である程度信頼してもらいつつ、お客さんの個性に合った商品を提案したいと考えています。

WWD:現在、ZOOM接客は木村代表が1人で担当しているが、その理由は?

木村:まずは間口を僕1人に絞り、お客さんにどういったことを聞かれやすいかや、どういう質問をするとベストなサイズを提案できるのかといった傾向を調べるためです。予約状況的にも、現状は1日に多くて5件程度なので1人で対応できます。ただ、ゆくゆくは販売スタッフにも任せていきたいと考えています。

オンライン接客は
「お客さんの家にお邪魔する感覚」

WWD:オンライン上での接客だからこそできるポイントは?

木村:僕がお客さんの家にお邪魔している感覚になれることは大きいですね。店舗だと、自分以外のお客さんが入ってくる可能性があるので体型の話やサイズの話がしづらかったり、ほかのお客さんに遠慮して満足のいく接客が受けられなかったりする。オンライン接客は自分のプライベートゾーンで話せるので、お客さんも最初からけっこう自己開示をしてくれ、深いところまで会話ができます。僕らはあまり意識していないのですが、お客さん的には特別扱いをしてもらっているような感覚になれるみたいです。後は接客を受けてすぐに購買の意思決定をする必要がなく、冷静に商品を試着・購入できたり、画面共有で商品のオーダーの仕方などを一緒に確認しながら案内できたりといった点もオンライン接客ならではかな、と。

WWD:ZOOMをはじめとするビデオ会議・通話サービスを用いた接客は、ほかのアパレル企業・ブランドも取り組むべきか?

木村:規模によって異なりますが、僕らを含め中小規模の企業・ブランドにはこのスタイルが合っていると思います。特に店舗が開けられない状況下での販売員のリソース活用という面では有効です。また、販売員が話したいセールスポイントは、お客さんが知りたいことでもあり、そういった内容がオンラインストアに載っていない状態を改善できるという側面もあります。ただ一方で、ある程度の規模も認知もあるような企業・ブランドでは、チャット接客などの方が効率がいい場合もあります。オンライン接客は美容室のような商売形態で接客人数が限られ、運用効率という観点では良くないので。

WWD:ZOOM接客は、新型コロナウイルスの収束後も続けていくつもりか?

木村:「オールユアーズ」としては今のところ、緊急事態宣言が解除されても、しばらくは店舗を開けないつもりです。オンライン接客の可能性をもっと追求していきたいですね。地方のお客さんのニーズがあることを考えると、コロナ収束後もリアル店舗と併用にするのが効果的だとも考えています。店舗を予約制でオープンするのもいいかもしれません。オンライン接客は、リアル店舗に来ることの価値をさらに上げる側面もあると思っていて。わざわざ移動コストをかけて来てもらったお客さんに「来てよかったな」と思ってもらえるような店舗にするためには、どのような設計にすれば良いのかを最近は考えています。

WWD:コロナ禍の下で、接客方法を含めさまざまな分野でデジタル化が進んでいるが、この状況をどのように見ている?

木村:変化に対応することも重要ですが、そもそもお客さんが何を求めているかを考える必要があると思います。オンライン接客も、方法だけ見ると新しく感じるかもしれませんが、接客におけるお客さんの「背中を押して欲しい」というニーズは変わらない。自分たちのお客さんの中に元からあるニーズをオンラインで60%でも70%でも満たすにはどうしたらいいのかを考えると、新しい方法が生まれてくるんだと思います。例えば、ファストファッション的なブランドは、時間をかけてオンライン接客をするよりも、時間をかけずにお客さんの疑問を解決し、商品を迅速に届ける方が良いはず。重要なのは「自分たちのお客さんがちゃんと見えているのか」だと思います。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.17 熊切秀典「輝かしい未来に向かってデザインを続けていくだけ」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、2007年にブランドを立ち上げ、2016年からパリでコレクションを発表する「ビューティフルピープル(BEAUTIFUL PEAPLE)」の熊切秀典デザイナーが登場。

BEAUTIFUL PEAPLE

熊切秀典

Q.今、デザイナーができることは?

輝かしい未来に向かってデザインをするーーそれがファッションデザイナーが出来る唯一の事だ。コロナという先が見えないトンネルの中でも、これは変わらない。今は直営店のクローズを余儀なくされているが、卸先からのオーダーキャンセルや取引先の廃業などは起っていない。まずはブランドが縮小し、スタッフや取引先に影響することがないよう、計画を見直していく。

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見慣れた白Tシャツを新鮮に着こなしたい! “異物ミックス”で脱ありきたりコーデ

 夏の訪れが年々早まるような感じがあり、早くもTシャツが街中での出番を迎えました。夏ルックの主役的存在で、見慣れた白Tシャツについても、このニューノーマル(新常態)の時代にふさわしい着方が登場。最大の見どころは、イメージの異なるアイテムとの“異物ミックス”。マンネリ感を避けつつ、白Tならではの清潔感やミニマルさを生かした新コーディネートはTシャツの常識を打ち破る快感まで呼び覚ましてくれそうです。

 ロンドン・ファッション・ウイーク中に開催された「マーガレット・ハウエル(MARGARET HOWELL)」のショー会場に訪れたファッショニスタは白Tシャツをノンシャランと着こしました。決め手は、Tシャツの上に乗せたネックレス。普段着イメージを帯びやすい白Tシャツを一気に格上げ。イヤリングとのハーモニーにも、リュクス感が漂います。今回は国内ブランドの今春夏ルックから、パンツ、スカート、ライトアウターと、それぞれのコーデ相手ごとに一工夫を加えるだけで、ありきたりを抜け出せさせます。そのポイントを探っていきましょう。

◆センタープレスのきれいめパンツで、凛としたTシャツ姿

 Tシャツにはイージーな印象があるので、きちんと感を備えたボトムスを選ぶのは、上手にバランスを取る近道。たとえば、正面にセンタープレス(クリース)があるパンツなら、文字通り折り目正しい見え具合に整います。

 写真1枚目の「ポステレガント(POSTELEGANT)」は涼しそうな素材のワイドパンツで合わせて、夏向きのTシャツ姿に。きれいめに見えているのは、くっきりしたセンタープレスのおかげ。Tシャツは袖を軽くロールアップして、軽快な印象に。長め丈のパンツを生かして、性別にとらわれない“ジェンダーフリュイド(流動的)”な着映えにまとめています。

 写真2枚目の「アーセンス(ARESENSE)」は落ち感のあるパンツスーツに、白Tを組み込みました。トレンドピースに復活したパンツスーツは、少し崩しめに着るのがこの春夏らしいスタイリング。だから、Tシャツは格好の相方に。裾を無造作にウエストインして、気取らない雰囲気に整えました。リゾート風のヌーディーサンダルをパンツスーツに合わせるのもニューノーマル流です。

◆“ムードあり”の女っぽスカートで合わせて、白Tを味付け

 飾り気の少ない、割とプレーンな見栄えの白Tシャツは、ムードを醸し出すスカートが好パートナーになります。ロマンティックやレディーライクなど、スカートの持ち味次第で使い分けるのが、着回しパターンを増やすコツです。

 黒レースのロングスカートを引き合わせたのは、30代以上の大人女性に大人気の「エブール(EBURE)」。裾が透けて、ニュアンスを帯びたレーススカートも、白Tシャツで合わせるとフェミニン度がダウンして、逆に抜け感が漂います。フラットサンダルで足元も伸びやかに整えて。

 白で統一すると、Tシャツもノーブルな印象に様変わり。写真2枚目の「ア ピューピル(A PUPIL)」は、白のプリーツスカートとワントーンコーデ。節度を感じさせるプリーツに加え、透かしレースもあしらってあるので、Tシャツ姿が繊細なムードに。オーバーサイズのTシャツでも、ストリートっぽく見えず、むしろ愛らしいたたずまいにまとまっています。

◆ライトアウターを重ねて、ふんわりリラックス&のどかな落ち感

 Tシャツだけでは気後れしそうな場面でも、薄手の羽織り物を重ねれば、味わい深いルックに仕上がります。汗ばむ季節になっても、初夏や梅雨時は温度変化が大きいので、ライトアウターは重宝するはず。

 「アングリッド(UNGRID)」は白Tシャツの上から、スポーティーな薄手アウターをパサッと羽織って、普段着イメージを払拭しました。軽い羽織り物ならではのエアリー感を演出。着丈が長めの分、縦長イメージがアップ。ダークカラーの柄スカートとのコントラストを利かせつつ、スニーカーの色と絡めました。

 温度が上がってきたら、アウターを“半分オフ”するのも、着方の選択肢に加えてみては。蒸し暑さを避けつつ、程よくくつろいだ風情を醸し出せます。写真2枚目の「グラフペーパー(GRAPHPAPER)」は白Tシャツの上にジャンパードレスをオン。ライトアウターを肩からずり落ちさせて、レイヤードに飾らないムードと自然な落ち感をまとわせました。

 一時のブームを超えて人気の続く白Tシャツだけに、着こなしのレパートリーを増やして損はありません。マンネリ化させないためには、きれいめアイテムとのマッチングやライトアウターとのレイヤードなど、さまざまな“異物”との相性を試すのが一番。シンプルだからこそ、ひねりがいがある白Tシャツを使って、自分好みのニューノーマルを発見してみませんか。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

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巣ごもり名人に聞く 「天体観測と家庭菜園で都会の中で自然に触れる」 アヤミジュエリー宗形あやみ

 新型コロナウイルス感染拡大で4月7日に緊急事態宣言が発令され、在宅勤務や外出自粛で巣ごもりを余儀なくされている人が多い。行楽シーズンのゴールデンウイークでさえ、どこにも行かず自宅で過ごさざるを得ないという未曾有の状況だ。「人に会えない」「外出できない」こんなときに、どうすれば巣ごもりライフをエンジョイできるか、今回は写真家の夫と2人暮らしの宗形あやみ「アヤミジュエリー(AYAMI JEWELRY)」デザイナーに聞いた。

WWD:自粛生活で新しく始めたことは?

宗形あやみ(以下、あやみ):家庭菜園、干し野菜、お菓子作り、裁縫を始めました。もともと仕事以外の日には都会を離れ、自然に触れる時間を大切にする生活を送ってきていたため、外出自粛になってすぐに心も体も自然を求め始めました。

春の暖かな気候なので、テラスの鉢植えを増やしてさまざまな野菜の種や苗を植えました。自らの手で野菜を育て始めると植物への愛着が以前より増して、今日一日食事をすることに感謝し、少しでも野菜をおいしく大切に食したいと思うようになり、野菜の皮や根っこも使って、時短料理用に細かく切った野菜を干すようになりました。太陽の光をたっぷり浴びた野菜は甘くておいしいです。畑で手にいっぱい摘んだカモミールは香りにも癒され、お茶の時間は心からほっとできます。

WWD:酵素シロップ作りも始めたとか。

あやみ:野菜やフルーツの発酵に興味を持ちました。白砂糖ではなくてん菜糖で酵素シロップ作りにも挑戦しました。数日後には発酵し、炭酸で割ったり、サラダのドレッシングなどに合わせたりして、発酵の様子を日々観察しています。外食をせずに毎日自炊をしているとお肉や乳製品、グルテンをあまり摂らない生活になりました。甘いものが食べたい日には米粉やお豆腐などを使った優しいお菓子作りを楽しんでいます。

WWD:縫製は何を作っている?

あやみ:布マスク作りに励んでいます。できる時間にできるだけ作って児童施設などに送っています。10年以上使っていなかったミシンを引っ張り出して、素人ながらも作るたびに上達してきました。でも、柄を合わせるのは難しいです……。

WWD:家族との過ごし方は変わった?

あやみ:一緒に食事をするようになり、頻繁にバーベキューをしています。飲食店が休業しなくてはならない状況のため、本来出荷されるべきおいしい食材が自宅でも手に入るようになって、北海道から届いた新鮮な魚介を炭火で焼きながら食べ、魚介出汁でお味噌汁にしたり、朝食には新鮮な山羊ミルクを飲んだりして、シンプルながらも本当においしい時間を会話とともに過ごすようになりました。

WWD:リモートワーク用に新しく買ったものは?

あやみ:日除けテントを買いました。リモートワークの休憩をテラスでとるようになり、最初は日傘を設置していたのですが、時間によって角度を変えたりといそがしく、ビーチ用の日除けテントを購入しました。風通しもよくリモートワークの息抜きになります。ヨガやお昼寝にも活用しています。

WWD:日の出と日の入りの日記をつけているとか?

あやみ:もともと天体観測が趣味だったということもありますが、日の出の時刻に起き、その様子を記録するようになりました。健康に一日を過ごせることに感謝し、季節を視覚的に感じられる瞬間はとても美しく、光の物理学を知ると宇宙への理解も深まり、今日生きる地球にいることを実感できます。そう感じることで今日一日をどのように過ごすかを想像し、以前よりも真剣に時間に向き合い、有意義に過ごせるようになりました。日の入りには一日を振り返り、明るい未来を願います。

WWD:巣ごもり生活に役立つアプリやサービスはある?

あやみ:日の出・日の入りの時刻などが確認できる日の出・日の入りアプリや、今、空にどのような星や惑星が見えるかがわかる星座表アプリはおすすめです。あとは、グッゲンハイム美術館(Guggenheim Museum)のアートブック・フリーダウンロードは、たくさんのアートブックが無料で見られるのでうれしいです。artnet.com は、オンラインで楽しめるバーチャルアートイベントのスケジュールを確認できて楽しいです。

WWD:リモートワークの便利なところと不便なところは?

あやみ:便利な点は、時間が効率よく使えるところです。自分のペースで進められるので生産性が上がりました。普段から机に向かう仕事でもないのですが、さまざまなことを明確化させて取り組めるようになりました。不便な点は、スタジオで行っていた撮影を各自の環境で自然光を利用するなど不十分な設備で行ったり、企画チームや職人とカメラ越しで話すことでしょうか。直接顔を見て話すのとは対話の質が異なると感じています。今は自分なりの工夫が必要になったことです。

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インテリア雑貨を扱う「スタジオ・ザ・ブルー・ボーイ」からお香が登場 アートディレクターの正田啓介の思い

 ラグやインテリアを扱う「スタジオ・ザ・ブルー・ボーイ(STUDIO THE BLUE BOY以下、ブルー・ボーイ)」は5月18日、初のお香をオンラインで発売する。香りは大地の強さを感じるパチュリをベースにした“アース トーンズ”と“根木白檀をベースにした甘く凛とした香りが夕陽を感じさせる“ゴールデン アワー”の2種類で、価格は30gが2900円、60gが3900円。当初は7月に発売予定だったが、外出自粛中の“おうち時間を充実させる”というコンセプトで前倒しで発売することになった。

 同ブランドのアートディレクションを手掛ける正田啓介は、「ブランドを始める前から毎日お香をたく習慣があり、お香を作ってみたいと思っていた」という。「ブルー・ボーイ」では日本国内の職人とともに製作したラグやセラミックを販売しているが、「ラグより価格帯が手頃で、常に購入した人の身に寄り添っていられるものは何か、“もの”ではなく“こと”で魅了できるものは何かと考えた結果、答えはお香だった」と話す。

 昨年の夏に「ブルー・ボーイ」のオンラインストアを始めたときから構想はあったが、コストやロットの面で折り合いがつく工場になかなか出合わなかったそうだ。正田は、「半ば諦めかけていたときに、子どもの頃、いつも身近に線香があり、祖母が線香の工場で働いていたのを思い出した。その工場は廃業していたが、つながりのあった栃木市で唯一の線香工場と出合うことができた」と言う。香りは彼と調香師で何度もやりとりを重ねて開発。2つの香りのメインである白檀は香りを楽しむだけでなく、リラックス効果があり、正田の外出自粛期間中に少しでも精神的に安定を与えられればと言う正田の思いが込められている。

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クリーンビューティって何?を解消する啓発活動 ブランドや専門店の取り組み

 アメリカを中心に欧米で拡大しているクリーンビューティは、健康や環境に害のある成分を使用せず、環境や社会、動物に配慮された美容アイテムを指す。しかし、“害のある成分”とはどのようなものだろうか。なぜオーガニックやビーガンではなく、クリーンビューティが必要なのか。クリーンビューティをうたう企業やブランドにはこういった疑問を解消し、知識を広めることが求められている。

 クリーンビューティは成分に加え、製造から販売に関するサステナビリティやエシカルなど、これまでの美容業界の多様な問題を解決するために生まれた概念といえる。そのため、まずは消費者に問題について知ってもらい、選択肢を与えることが重要だ。スキンケアブランドの「バイオサンス(BIOSSANCE)」は消費者や業界人に向けて知識を発信する「ザ クリーン アカデミー(The CLEAN ACADEMY)」を昨年10月に開始した。

 「ザ クリーン アカデミー」は自社サイトとユーチューブ上で配信する動画コンテンツで、「バイオサンス」がクリーンビューティカテゴリーのリーダーシップを確立するためのものだ。キャサリン・ゴア(Catherine Gore)社長は「クリーンビューティはそれぞれが独自に解釈しており、情報が錯綜していて混乱を招いている」と、現状の課題を語る。

 シーズン1では、ネットフリックス(NETFLIX)で人気のリアリティー番組「クィア・アイ(QUEER EYE)」に出演するジョナサン・ヴァン・ネス(Jonathan Van Ness)がホストとなり、ゲストを迎えてクリーンビューティに関してたびたび寄せられる質問や、グーグルの検索データに基づく疑問に答えている。ゲストは専門店のフォレイン(FOLLAIN)やアメリカの環境保護活動団体のEWG(ENVIRONMENTAL WORKING GROUP)などの専門家で、より詳しく、正しい知識を学ぶことができる。

 その内容は使用すべき成分と避けるべき成分、成分ラベルの見方など具体的なものが多い。「WWDビューティ」5月14日号でも触れたが、アメリカでは1938年以来、化粧品成分に関する規制が変わっていない。そのため広く使用される成分の中にも避けるべき成分があり、専門家たちが詳しく解説している。シーズン1は2万2000回再生され、1万件以上のコメントが付く反響となった。

 シーズン2ではさらに成分について深く解説する。クレンジングやアイケア、日焼け止めなど、スキンケア製品で使用される一般的な成分について語っている。これは害のあるものを指摘するだけでなく、クリーンな成分がどのように肌の美しさを導くかという点についても触れている。「消費者が美容製品をより理解できるようになれば、効果(効能)のためにサステナビリティを犠牲にする必要はなくなる」とゴア社長は語る。

 シーズン2で特徴的なのは、同業である「イリア(ILIA)」「ユース トゥ ザ ピープル(YOUTH TO THE PEOPLE)」「ヴェレダ(WELEDA)」「エイサー ビューティ(AETHER BEAUTY)」などのブランドがゲストで登場することだ。「ユース トゥ ザ ピープル」の共同創業者グレッグ・ゴンザレス(Greg Gonzalez)とジョー・クロイズ(Joe Cloyes)はこの協業に関し、「志を同じくするブランドと共に業界の変化をより早く生み出せるように挑戦しており、クリーンに関する教育に重点を置く。私たちは一緒に業界の変革に影響を与えていると確信している」と語った。

 クリーンビューティを定義し、発信しているのはブランドだけではない。専門店のクリード(CREDO)は2月、オフラインイベント「クリード ビューティ サミット(CREDO BEAUTY SUMMIT)」を米サンフランシスコで開催した。消費者を対象にした美容を楽しむイベントで、30ブランド以上、100人以上の創業者やブランドスタッフが集まり、製品の効能だけでなくクリーンビューティに関する啓発や知識の教育を行った。

 優しく、爽やかなニュアンスの言葉とは裏腹に、強いメッセージを持つクリーンビューティの拡大には、発信する企業や団体による啓発活動や認知拡大が必須になる。海外で広がるこういった取り組みはますます重要で増えていくのは間違いない。日本においてはまだスタートしたばかりにも見えるクリーンビューティ。今後、海外同様の啓発をどう行っていくかが、カギになりそうだ。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.16 蓮井茜「作り手の愛情を途切れさせない」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、「アカネ ウツノミヤ(AKANE UTSUNOMIYA)」の蓮井茜デザイナーが登場する。

AKANE UTSUNOMIYA

蓮井茜デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A.新型コロナウイルス感染拡大の影響はすでにファッション業界の広範囲にわたっており、長期に及ぶと感じている。私たちも次の展示会スケジュールや、イタリア製の生地も一部に使っているので商品の納期も確定できず、これまで予定通りに進めるのは困難になりつつある。そんな不安が続く状況で私にできるのは、たとえ手探りでも製作を続けること。コレクションは、多くの人との関わりがあってこそ完成する。その人たちがどれだけ愛情を持って仕事に取り組んでいるかを知っている。だから、その気持ちを途切れさせたくない。デザイナーとして、チームの一員としてポジティブに物作りを続け、みんなで手探りしながら前に進みたい。まずはコミュニケーションを大切にし、いつも以上に情報の共有や対策についての話し合いをしていきたい。音楽を聴いたり、花を飾ったりするように、洋服は人を豊かな気持ちにすると信じている。

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コロナ後を構想せよ

 「逃げるは恥だが役に立つ」「アンナチュラル」などで知られる脚本家の野木亜紀子さんが、5月10日放送の「あたらしいテレビ 徹底トーク2020」(NHK総合)で次のような主旨のコメントをしていた。今ドラマでキスシーンを描けば、見る人は「あっ、感染しちゃう」という反応になるのではないか、視聴者を物語に没頭させることが難しくなるかもしれない——。(この記事はWWDジャパン2020年5月18日号からの抜粋です)

 現代を舞台にしたドラマで新型コロナウイルスの存在がなければパラレルワールドになってしまい、作品からリアリティや共感が失われる。フィクションといえども影響は避けられないと危惧するのだ。

 当たり前だったことが当たり前でなくなる。エンタメの世界だけでなくファッションビジネスもいきなりニューノーマル(新常態)に放り込まれた。

 5月14日現在、特別警戒都道府県以外の地方の百貨店やショッピングセンター(SC)が少しずつ営業を再開し始めている。特別警戒区都道府県でもユニクロ銀座店(東京)のほか、玉川高島屋ショッピングセンター(同)、立川高島屋ショッピングセンター(同)、柏高島屋ステーションモール(千葉)もファッションフロアを含めた営業を再開した。14日夜の39県の緊急事態宣言解除を受けて、この動きはさらに加速する。

 営業再開は明るいニュースに違いない。しかし消費者の心理は、まだコロナにおびえている。マンツーマンによる丁寧な接客には感染リスクが潜むのではないか、陳列された服に袖を通すことは安全なのだろうか、客もスタッフもそんな心配が頭をよぎってしまう。特に手厚い接客サービスを価値としてきた百貨店には戸惑いが広がる。

 11日から高知大丸などの営業を再開したJ.フロント リテイリング(JFR)は、取引先のアパレルなどに接客サービスの新しい方針を伝えた。「当面の間、スタッフから積極的にお客さまに声をかけることはしない。ご要望があれば最小限のお手伝いをするにとどめる。適切な距離をとる。ご不便をかけるかもしれないが、まずはお客さまとスタッフの安全を第一に考えるべき状況だと考えている」(JFR広報担当)。

 政府の専門家会議が今月上旬にまとめた感染拡大防止のための「新しい生活様式」は、コロナとの戦いは否応なく長期戦になることを印象づけた。家庭や職場、食事などの場面で「密」を避けるための具体例として「外出時はマスク着用」「人との間隔は2メートル以上空ける」「食事は横並びに座って大皿を避ける」「買い物は電子決算や通販を利用」などを挙げる。専門家会議の提言がそのまま社会に受け入れられるかはともかく、第二波を警戒して疑心暗鬼にならざるを得ない。

 そもそも賑わい自体がよくないという考えは、小売業の常識を根底から覆す。大勢の人を店舗内に集客して、買い回りを促すことは誰も疑わない常識だった。今はこの当たり前の見直しを迫られている。店舗休業や制約によってファッション小売業の尻に火がつき、ECやライブコマースなど遅れていたデジタル化が進むことは必然だろう。

 三越伊勢丹ホールディングスはデジタル施策を前倒しで進めることを表明した。店舗とECをシームレスに自由に行き来してもらう基本方針は変わりないが、来店を伴わないEC単体の強化に乗り出す。客が自宅で販売員とチャットなどでコミュニケーションできる体制を作る。事前決済などによって一人の客に接する販売員の人数を減らしたり、店内の混雑状況をアプリで知らせたりする(P.7に詳細)。

 メディアではアフターコロナ、ウィズコロナなどの言葉が飛び交っているが、今後のファッション市場の予想は難しい。ただ、コロナへの不安が残る限り、もともと苦戦していたファッション市場はさらなる低迷を避けられないのは確実だろう。テレワークの浸透や外出の自粛などによる消費マインドの変化に加え、コロナ禍で多くの世帯は収入が減る。不要不急の支出は抑えられるし、消費にメリハリをつけることになる。

 コロナ危機を通じて多くの人が社会や暮らしの在り方を見つめ直した。従来から言われてきたデジタル化やサステナビリティへの動きは加速度的に進むことになる。歴史を振り返れば、社会の変革期に新しい消費者心理を捉えて、いち早く新しい枠組みを構築した企業がマーケットの覇権を握ってきた。バブル崩壊後のデフレ時代に現れたユニクロ、デジタルの浸透を先取りしたアマゾンやゾゾタウン。一方、対応できない企業は消費者から見放されてきた。

 今回のコロナはそれ以上の激しい変化を私たちの社会にもたらすかもしれない。ファッション小売業には変えるべきことと変えてはいけないことを見極め、新しい社会に向けたシナリオを描く構想力が求められる。そしてその戦いはすでに始まっている。

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聖地で生み出される最高級“便所サンダル”

 リモート生活が始まって約2カ月。髪の毛のセットをすることもなくなり、おうち時間の大半はパジャマで過ごしてしまっている……。とはいえ家の中にずっといては体に悪いだろうと、2駅分離れた公園ぐらいまでは歩いたりしている。ワードローブにはカラフルな服が多いため、悪目立ちしないよう日々チェンジして、結果として着こなしに気を遣っている格好だ(笑)。とはいえ、公園では風が吹けば砂埃が舞うので、足元はもっぱら2軍のスニーカー。しかし気温上昇に伴い、そろそろサンダルかな?と考えていた。

 通退勤がなくなった分、ネットショッピングには十分な時間ができた。あれこれ眺めていて、あるブランドに出合った。それが奈良県発の「ベンチ(BENCH)」だ。実はサンダルの季節のたびに気になっていたブランドで、公式ECの中でビビビ!ときたのが、手刺しゅうブランド「ケンダイ(KENDAI)」のワッペンを付けたモデル。でも、そこには“SOLD OUT”の文字……。あきらめきれずに特設フォームから問い合わせてみる。すると、「ちょうど今月から受注生産を開始する」との回答。なんでも聞いてみるものだ。さっそく1足オーダーさせてもらった。

 欲しいと思ったもの(=興味を持ったもの)は、きっちり調べたくなる。職業病かもしれない(笑)。奈良県はかつて履き物の街として栄え、今でも靴下や革靴産業にその名残がある。中でも“便所サンダル”“ベンサン”と呼ばれるPVC素材の一体成型サンダルの一大生産地だ。国内に3社ほどしかない主要メーカーは全て奈良にある。実家や田舎のおばあちゃんの家に必ずあって、その履き心地の良さや“ぜんぜん壊れないな”という丈夫さは誰もが体験済みだろう。仕上げ加工により抗菌効果も高く、それゆえの便所需要であり、ほかにも病院や学校などの公共施設で長い間親しまれている。

 その便所サンダルをアップデートしているのが「ベンチ」だ。藤澤豊生ディレクターは、東京でファッションPRや大手スポーツアパレルのデザインチームに所属したのち、2018年に同ブランドをスタートさせた。「便所サンダルの魅力を世界に発信していきたい」と意気込み、ジャーナルスタンダードやビームス プラネッツなど大手セレクトショップを中心に100店舗以上に卸している。「消化率は、ほぼ100%」だという。ちなみに主力アイテムの単価は7000円前後で、2019年の生産数は2万足だ。

 さて、届いたサンダルを履いてみる。そうそう、この感覚この感覚!懐かしく、そして安定のフィット感だ。艶感のあるブラックに虎の刺しゅうだから、モノトーンなセットアップスタイルの外しにだって良いと思っている。「ベンチ」を買い付け、また別注も行うジャーナルスタンダードの松尾忠尚ディレクターからは、「クッション性抜群のシャークソールの履き心地も格別!」と聞いているので、次はそちらにも挑戦してみたい。

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