コロナ禍で広がるビューティ企業の支援・寄付への取り組み 海外ビューティ通信シンガポール編

 世界に目を向けると日本とは異なる美容トレンドが生まれている。そこで、連載「海外ビューティ通信」では、パリやニューヨーク、ソウル、シンガポールなど、7都市に住む美容通に最新ビューティ事情をリポートしてもらう。

 世界各国で猛威を振るう新型コロナウイルス。4月7日から6月1日までサーキットブレーカー(ソフトロックダウン)中のシンガポールでは、スーパーマーケット、薬局など生活に必須な業種を除き小売店の営業が禁止されている。コスメショップ、エステ・ネイルサロン、百貨店は約2カ月閉店を余儀なくされており、当地のビューティ業界にとって大きな打撃となっている。(本文中の円換算レート:1シンガポールドル=75円。この記事はWWDビューティ2020年5月14日号からの抜粋です)

 コロナ禍の今、ロレアルやクラランス、ロクシタン、LVMH、資生堂、コーセーなどグローバルビューティ企業の多くが対策に乗り出す中、当地のローカルビューティ企業もCSR活動(企業の社会的責任)に積極的に取り組んでいる。

 国内では唯一シンガポール科学技術研究庁と共同開設したラボで研究を行う総合美容メーカーのEstetica(エステティカ)は、3月から生産ラインの一部をハンドサニタイザーの製造に切り替え、2000本以上を生産。現在、オンラインでの購入者に50mL容器入りのハンドサニタイザーを配布している。同社は1980年に創業し、ベストセラーのアイマッサージャー「インテリジェント アイ リバイタライザー」や「アイ リペアカプセル」などアイケアを中心としたスキンケア製品を展開している。当地のエステサロン市場ではトップシェアの地元有力企業であり、CSRに対する意識は高く先陣を切って取り組んでいる。

 またヘアケアブランド「Verdure Hair(ヴァージャ・ヘア)」は、4月のオンラインショップの売り上げの5%を、共同募金の「The Courage Fund(カレッジ・ファンド)」に寄付した。このファンドにはDBS銀行やシンガポールテレコムなど地元有力企業のほか多くの個人も寄付を行っている。4月末時点で募金額は約1150万シンガポールドル(約8億6000万円)に上り、医療従事者やボランティア、感染者の家族への支援金として活用されている。ヴァージャ・ヘアの主力製品「ヘア・フォール・コントロールシャンプー」は、ヒアルロン酸やビタミンB3、イチョウ葉エキス、ショウガの根、ラベンダーやオレンジピールオイルなど天然有効成分を豊富に配合した無香料シャンプーで、シリコン・パラベン・サルフェートフリーの優しさが抜け毛や薄毛に悩む中高年層から支持を集めている。昨年は「ハーパーズ バザー ヘア アワード」をはじめ3つのアワードを受賞するなど、注目度が高まっている企業だ。

 そのほか、スーパーフードスキンケアの「Sigi Skin(シギ・スキン)」は、3月からオンラインショップでの購入者にサージカルマスク2枚を無料で配布する取り組みを行っており、4月末時点で800枚以上を配布した。

 このようなビューティ企業の取り組みは報道やソーシャルメディアで紹介され、注目を集めている。生産ラインを生かしたり、寄付を行ったりと方法は多様だが「すぐにできること、役立つことは何か」を考えCSRを果たそうという思いは各企業で同じだ。外出制限中の消費者も、前代未聞の難局に各企業が行った対応を注視しているはずである。新たなファン獲得にもつながり得るのではないか。

田嶋麻里江 : ライター。幼少期を過ごしたシンガポールに移住して14年目。ラジオDJ、バイオリン奏者を経て、当地の情報をジャンル問わず発信中。著書に「世界一の学力がつくシンガポール式算数ドリル」(平凡社)他。在外ジャーナリスト協会会員

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連載「今、デザイナーができること」Vol.15 勝井北斗&八木奈央「デザインで“よりよい日常”を描き出し、今や未来を楽しめる提案をしたい」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、2001年に「ミントデザインズ(MINTDESIGNS)」を設立し、ファションの新たな可能性を提案し続ける勝井北斗デザイナーと八木奈央デザイナーが登場。

MINTDESIGNS

勝井北斗デザイナー、八木奈央デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A. ゆっくりとした日々を過ごすうちに、学生時代、1つの課題を1カ月かけてじっくり取り組んでいた日々を思い出した。これまでを振り返りながら「ミントデザインズ」の在り方を再考するいい機会になるだろう。ただし、デザインすることが“より良い日常を描き出す事”だと信じる姿勢は変わらない。今、そしてこれから先も日常を楽しめるような提案を続けていく。

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「髪型変えたのにメイク変えないのおかしくない?」 ヘアサロンでこの一言は世界共通で刺さる

 タカ・オザワ(TACA OZAWA)メイクアップ&ヘアアドバイザー兼ビューティカラーリストは、海外でヘアカラーリスト、およびヘア&メイクアップアーティストとして活躍してきた経験を生かし、現在日本において、“ヘアサロンにおけるメイクの重要性”を伝える活動を始めている。彼のキャリアを知れば、なぜ“ヘアサロンにおけるメイクの重要性”を認識するに至ったかがよく分かる。また、海外で働きたいと考えている美容師やヘア&メイクアップアーティストにとっては大いに参考になる情報が含まれているので、そのキャリアをここでひもとく。

WWD:キャリアのスタートは?

タカ・オザワ(以下、タカ):1996年に日本で美容師としてキャリアをスタートし、サロンワークを行いつつ、ヘアプロダクツメーカーのレッドケン ジャパン(REDKEN JAPAN)のヘアカラー講師として全国を回りました。2002年にカナダ・トロントへわたってカラーリストとして活動し、06年にメイクアップアーティストに転向しました。

WWD:なぜトロントに?

タカ:本当はNYに行きたかったのですが、アメリカはビザの取得が難しく、また私が英語を話せないという問題もありました。そこで地理的にNYに近く、ビザ取得のハードルが比較的低く、しかも英語が勉強できるという理由でトロントを選びました。約5年間、カラーリストとしてヘアサロンで働きながら、NYから来るアーティストの手伝いなどをしていたのですが、やはり英語が苦手なことで大変な苦労をしましたね。“ピグメント”や“アンダートーン”など、専門用語の説明が特に難しかったです。似合う色を説明するのはカラーリストにとって1つの“武器”なのですが、それが奪われてしまい、結果的に“納得してもらえる素晴らしいカラーリングをする”というゴールしかなくなってしまった感じです。あとベースとハイライトの色を聞き間違えてしまうなど、本当に大変でした。

WWD:言葉以外で大変だったことは?

タカ:最初の頃は、ブロンドヘアのカラーリングが難しかったですね。同じブロンドでも、その中に何種類もあって、いろいろな色が隠れているんです。ブロンドなのにピンクっぽさが内側から見えている“ストロベリーブロンド”など、たくさん見ないと分からないので、目のトレーニングを重ねるまでは大変でした。あと、日本では明るさのレベルを10~15段階で使い分けていたのですが、トロントでは30段階くらいじゃないと追いつきませんでした。特にラテン系の人の髪は、オレンジからブロンドへと変わる“壁”のコントロールが難しく、“ラテンを制すればどの髪もいける”という認識に至りました。

WWD:メイクアップアーティストに転向した理由は?

タカ:トロントで働き始めて5年くらい経ったときに、念願だったNY行きのチャンスが来ました。NYのトップサロンの1つ「カトラー サロン(CUTLER SALON)」がソーホーにインターナショナルのサロンをオープンするため、オープニングスタッフを募集したんです。当時のアメリカでアーティストビザを取得できる条件は、5人くらいの著名人からの推薦レターと、雑誌に載った証拠100ページ分くらいを用意することでした。でも、用意できなかったんです。なぜ用意できなかったか……。その理由を自分なりに分析してみたところ、トロントでカラーリストとして働くことに慣れ、“俺はノースアメリカで1番うまい”などと思い上がっていた自分に気付いたんです。カラーリストを目指したときに抱いていた、“人をきれいにしたい”という初心を忘れていたんですね。そこで全てをリセットし、カナダでメイクの勉強を始めました。

WWD:どのように勉強した?

タカ:カナダで知り合ったメイクアップアーティストに、個人的に授業料を払って教えてもらいました。しかし、結構な額を払って教えてもらっていたので、生活が苦しくなり始め、どうしようかと考えていたときに、そのアーティストから「ブローを教えてほしい」と頼まれたんです。そこでブローを教えることを、メイクを教わる対価にすることを思い付いたのですが、私はカラーリストなのでブローはできません。ですので、他のサロンでブローを教えてもらい、教わったことをそのままアーティストに伝える、ということを始めました(笑)。また、たまたま同じ時期に、他のアーティストからヘアカットを教えてもらえる機会もあったので、図らずも3つ同時並行で学ぶことになりました。

WWD:ファッションウィークに関わり始めたきっかけは?

タカ:メイクを教わっていたアーティストが、ファッションウィークの仕事を紹介してくれたんです。メイクアップアーティストとして初の本格的な仕事がファッションウィークだったので、さすがに緊張しましたね。でもバックステージの仕事をしていくうちに、メイクとヘアが両方できるということもあり、“バックステージにおけるヘア&メイクの最終チェック”という独自の重要なポジションを任されるようになりました。

WWD:その後は?

タカ:メイクアップアーティストとして仕事をしていく中で、世界的なモデルエージェンシーであったフォード・モデルズ(FORD MODELS)の人と知り合う機会があったんです。そこで「雇ってほしい」と伝えたところ、「メイクのポートフォリオが少ないから、もっと作ってきて」と言われました。翌日から半年くらい無給で、アパートの自分の部屋をフォトスタジオにし、撮影のためにカメラマンから撮り方を教わり、インターネットでモデルを探してポートフォリオを作る日々が続きました。そのかいあって、フォード・モデルズの専属アーティストとして雇ってもらうことができました。その後、「シュウウエムラ」のカナディアンナショナルメイクアップアーティストになることもできました。

WWD:メイクアップアーティストとして活躍の幅が広がりましたね。

タカ:そうですね。その後もカナダをベースに、日本に一時帰国などもしていたのですが、世界的なファッションスタイリストのパトリシア・フィールドが主催するイベントのヘア&メイクをする仕事が回ってきました。その際、本人に「あなたのところで仕事がしたい」と直訴し(笑)、数日間かけてポートフォリオをメールするなどしたところ、なんとスポンサーになってくれることになったんです。それで念願のNYに行くことになり、今度はアメリカでのアーティストビザ取得の条件も満たすことができました。メイクを勉強して本当に良かったと思いましたね。

WWD:パトリシア・フィールドのもとでの仕事はどうでした?

タカ:実は、パトリシア・フィールド側の事業の都合で、その仕事はなくなってしまったんです。しかし、落ち込んでいるときに、NYのトップサロンの1つ「ルイス・リカーリ(LOUIS LICARI)」を紹介してもらう機会があり、そこで働くことになりました。NYで働いたことで、1つ分かったことがあるんです。カナダにいたときは、“オンリーワンはナンバーワンになれない人の言いわけ”だと思っていました。でもNYはどこかのナンバーワンがビザを取って集まっているので、オンリーワンだけが生き残れるんです。「自分のオンリーワンは?」と自身に問いかけたときに、それはキャリアのスタートからずっと取り組んできたヘアカラーと、途中から力を注いできたメイクだと思いました。それで、2つを合わせて“ビューティカラーリスト”と名乗るようになりました。その後、NYとトロントと東京の3都市で活動し、コレクションシーズンにはNY、パリ、ミラノにおいてバックステージのヘア&メイクをこなすようになり、現在に至っています。

WWD:“ヘアサロンにおけるメイクの重要性”に気付いたきっかけは?

タカ:カナダでメイクを覚えたときに、たくさん数をこなして早く上達したかったのですが、メイクアップアーティストの仕事はそれほど多くはなかったんです。そんなときに、知人から「ヘアサロンで自分の顧客にメイクをすれば?」というアドバイスをもらい、それ以来、サロンのお客さまに必ずメイクをするようになりました。「髪型変えたのにメイク変えないのおかしくない?」というセリフは響きましたね。サロンワークを始めたときは、日本人のお客さまは1人もいなかったのに、最終的には9割が日本人のお客さまになりました。今でもカナダに帰ってサロンワークをするときは、すぐに予約が埋まります。NYではさらに、他のカラーリストのお客さまにも「今日これから出かけますか?メイクさせてください」などと声をかけ、カラーリングに合わせたメイクをしていました。

WWD:喜んでもらえましたか?

タカ:喜んでもらえていることは、お客さまを見ていれば分かります。ヘアをやっているとき、お客さまは普通に背もたれにもたれて座っているのですが、メイクのときは大半が鏡の近くまで乗り出してくるんです。さらに、施術を終えたときの言葉も変わってきました。ヘアだけのときは「ありがとう!」だったのですが、メイクをするようになってからは「楽しかった!ありがとう!」になりました。体験型に変わったんですね。カナダでは、ヘアとメイクと、施術後のポートレイト撮影を1つのパッケージにして提案していました。それは評判を呼び、一時期は「タカのサロンでメイクしてもらうと帰りに男性に声をかけられる」という噂が出回ったくらいです(笑)。

WWD:日本でやりたいことは?

タカ:現在、日本ではサロンワークとヘアメイクアップアーティストとしての活動のほか、講演やセミナーにも積極的に取り組んでいます。日本の美容室では二極化が進んでいますが、中間にいる美容室は上の方の“高付加価値サロン”に向けてステップアップする術を模索中です。その差別化メニューとしてメイクが最適だと経験から確信しているので、そのことを伝えていきたいですね。

WWD:現在は新型コロナで大変な状況だが、どのように過ごしている?

タカ:自粛期間中は、ムービー編集ソフトを勉強する時間に費やしています。今後、発信する全てに動画が必要なのは分かっていましたが、学ぶのに時間がかかる内容ですので、その意味でよいタイミングでした。あとオンラインアプリを活用したメイクコンサルティングなども行っていましたね。

WWD:ポストコロナには、まずはどのような活動から始める?

タカ:まずはカナダとアメリカにいらっしゃるお客さまのところに帰りたいです。日本では、メイクオーバー動画の制作と同時に、美容師のための眉毛デザインのハウツーを広めていきたいですね。あとはパリとドバイのメイクイベントでパフォーマンスする予定もあるので、今まで自粛で抑えられていた分、精一杯楽しんで仕事がしたいです。

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次のKビューティトレンドはビーガンコスメ? 日本にも続々上陸

 これまでクッションファンデーションやティントリップなど、さまざまな美容トレンドを生み出してきた韓国で、ビーガンコスメが注目を集め始めた。英調査会社ミンテル(MINTEL)は、注目すべき3つのKビューティスキンケアトレンドの1つにビーガンを挙げ、韓国のドラッグストア・オリーブヤング(OLIVE YOUNG)でビーガン化粧品の2018年の売上高が前年比で約70%増加したと紹介している。

 ビーガンコスメは特に、ウエルネス意識の高いジェネレーションZ〜ミレニアル世代から支持を得る。植物由来成分がベースで肌にやさしいというイメージがあること、また動物愛護の観点からクルエルティーフリー(動物実験をしない)が注目され、幅広い消費者に好まれている。インスタグラムでも「ビーガン化粧品」のハッシュタグに2万件もの投稿が集まるなど、その関心の高まりがうかがえる。

 ビーガンをうたう韓国コスメブランドも続々登場している。2017年に誕生した「ディアダリア(DEAR DAHLIA)」は、18年春に日本にも上陸した。ダリアの花エキスなど植物由来成分を使用し、合成香料など8つの有害とする成分を避けた処方だ。またパウダーコスメには紙製のパッケージを採用するなど環境にも配慮する。発色豊かなメイクアップ製品がそろい、人気商品の「パラダイスドリームベルベットリップムース」は、リップティントのようなロングラスティング処方が特徴だ。

 ビーガン認証を取得するブランドも増え、「ボナジュール(BONAJOUR)」、はイギリスの団体であるビーガンソサエティー(THE VEGAN SOCIETY)で、またライフスタイル製品を販売するLFから昨年誕生した「アッテ(ATHE)」は、フランスのビーガン認証機関イブ(EVE、EXPERTISE VEGANE EUROPE)でそれぞれ認証を受けた。

 またビーガンブランドは、クリーンビューティの要素を満たすことが多い。クリーンビューティは「WWDビューティ」5月14日号でも取り上げ、健康や環境に害のない成分を使用し、製造から販売まで環境や社会、動物に配慮された美容製品とそこでは定義づけた。まだアジアでは聞き慣れない言葉だが、欧米を中心に拡大している。

 韓国でも成分解析アプリ「ファへ」の登場などをきっかけに化粧品成分への注目は高まっており、クリーンビューティとの親和性は高い。環境に配慮した生分解性ラメを採用する「アンリシア(UNLEASHIA)」や、クレンジングウオーターの「レデュイール(REDUIRE)」も、ビーガン製品であるとともにクリーンビューティともいえるブランドで、どちらも日本への配送を行っている。また昨年11月に誕生した「セラムカインド(SERUMKIND)」も、クリーン&ビーガンビューティブランドとうたい、2月にはニューヨーク・ファッション・ウイークで「プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)」のバックステージでスキンケアの公式サポートを行うなど海外志向も強い。

 さらにビーガンスキンケアの「ベージック(BEIGIC)」も6月22日から日本で販売する。コーヒービーンエキスを商品に使用し、「ルーセントオイル」は美容誌やオンラインランキングでの受賞により品切れが続く時期もあったという人気商品だ。リサイクル可能なガラス容器は、その洗練されたデザインからSNSで早くも話題となっている。

 韓国はこれまでアジアの美容トレンドをけん引する存在だった。その韓国でビーガンコスメ市場が広がれば、アジア、そして日本でもビーガンコスメやクリーンビューティトレンドが広がるかもしれない。

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次のKビューティトレンドはビーガンコスメ? 日本にも続々上陸

 これまでクッションファンデーションやティントリップなど、さまざまな美容トレンドを生み出してきた韓国で、ビーガンコスメが注目を集め始めた。英調査会社ミンテル(MINTEL)は、注目すべき3つのKビューティスキンケアトレンドの1つにビーガンを挙げ、韓国のドラッグストア・オリーブヤング(OLIVE YOUNG)でビーガン化粧品の2018年の売上高が前年比で約70%増加したと紹介している。

 ビーガンコスメは特に、ウエルネス意識の高いジェネレーションZ〜ミレニアル世代から支持を得る。植物由来成分がベースで肌にやさしいというイメージがあること、また動物愛護の観点からクルエルティーフリー(動物実験をしない)が注目され、幅広い消費者に好まれている。インスタグラムでも「ビーガン化粧品」のハッシュタグに2万件もの投稿が集まるなど、その関心の高まりがうかがえる。

 ビーガンをうたう韓国コスメブランドも続々登場している。2017年に誕生した「ディアダリア(DEAR DAHLIA)」は、18年春に日本にも上陸した。ダリアの花エキスなど植物由来成分を使用し、合成香料など8つの有害とする成分を避けた処方だ。またパウダーコスメには紙製のパッケージを採用するなど環境にも配慮する。発色豊かなメイクアップ製品がそろい、人気商品の「パラダイスドリームベルベットリップムース」は、リップティントのようなロングラスティング処方が特徴だ。

 ビーガン認証を取得するブランドも増え、「ボナジュール(BONAJOUR)」、はイギリスの団体であるビーガンソサエティー(THE VEGAN SOCIETY)で、またライフスタイル製品を販売するLFから昨年誕生した「アッテ(ATHE)」は、フランスのビーガン認証機関イブ(EVE、EXPERTISE VEGANE EUROPE)でそれぞれ認証を受けた。

 またビーガンブランドは、クリーンビューティの要素を満たすことが多い。クリーンビューティは「WWDビューティ」5月14日号でも取り上げ、健康や環境に害のない成分を使用し、製造から販売まで環境や社会、動物に配慮された美容製品とそこでは定義づけた。まだアジアでは聞き慣れない言葉だが、欧米を中心に拡大している。

 韓国でも成分解析アプリ「ファへ」の登場などをきっかけに化粧品成分への注目は高まっており、クリーンビューティとの親和性は高い。環境に配慮した生分解性ラメを採用する「アンリシア(UNLEASHIA)」や、クレンジングウオーターの「レデュイール(REDUIRE)」も、ビーガン製品であるとともにクリーンビューティともいえるブランドで、どちらも日本への配送を行っている。また昨年11月に誕生した「セラムカインド(SERUMKIND)」も、クリーン&ビーガンビューティブランドとうたい、2月にはニューヨーク・ファッション・ウイークで「プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)」のバックステージでスキンケアの公式サポートを行うなど海外志向も強い。

 さらにビーガンスキンケアの「ベージック(BEIGIC)」も6月22日から日本で販売する。コーヒービーンエキスを商品に使用し、「ルーセントオイル」は美容誌やオンラインランキングでの受賞により品切れが続く時期もあったという人気商品だ。リサイクル可能なガラス容器は、その洗練されたデザインからSNSで早くも話題となっている。

 韓国はこれまでアジアの美容トレンドをけん引する存在だった。その韓国でビーガンコスメ市場が広がれば、アジア、そして日本でもビーガンコスメやクリーンビューティトレンドが広がるかもしれない。

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長引くおうち時間に寄り添う「THREE」の売れ筋トップ3

 外出自粛を余儀なくされている中、家での時間が増えることでスキンケアを充実させたり、増えるオンライン会議で新しいメイクアップを試したりで、化粧品を買った人は多いのではないだろうか。植物由来成分を使用するなどホリスティックビューティを提案する「THREE」は、直営店をはじめ全国の百貨店が休業となっこともあり、ECの売り上げが増加しているという。売り上げトップ3は、クレンジングオイル「バランシング クレンジング オイル R」(185mL、4200円)、ハイライト&チークベース「シマリング グロー デュオ」(4500円)、ネイル「ネイルポリッシュ」(7mL、1800円)だ。そのほか、手洗いが推奨されていることから「ハンド&アーム クリーム AC R」(50g、3000円)や、「THREE ハンド&アーム ウォッシュ AC」(250mL、2600円)がスキンケアカテゴリーで人気に。「ハンド系がここまで上位になったことはなかった」(齋藤未奈「THREE」PR)と語る。

 クレンジングオイルはもともと大人気でリピーターが多い製品だ。2位の「シマリング グロー デュオ」は、オンライン会議で血色感のある顔色を演出するのに最適な製品。「ネイルポリッシュ」は家にいる時間が長くなる中で、セルフで楽しめるアイテムだ。

 また、カラーにも特徴がある。「4月29日に発売したサマーメイクアップコレクションの売り上げは前年を上回って推移する。中でも明るい色が好調だ。家にいるからこそ、新しい色に挑戦してみたい、明るい色で気分を上げたいというのがあるのではないか」と齋藤PR。サマーコレクションのリキッドアイシャドウ「アルカミストツイストフォーアイ」ではイエローやオレンジが、「ネイルポリッシュ」ではグリーンやゴールドが人気だという。同コレクションで発売したブランド初の4種のリップパレット「ピークパフォーマンスリップクアッド」は、ポイントメイクで3位に入った。

 ホリスティックケア(スキンケア)、ポイントメイク、ベースメイクのそれぞれのカテゴリーで人気トップ3(ホリスティックケアはトップ5)はーー。

【HOLISTIC CARE】(スキンケア)

【POINT MAKEUP】

【BASE MAKEUP】

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長引くおうち時間に寄り添う「THREE」の売れ筋トップ3

 外出自粛を余儀なくされている中、家での時間が増えることでスキンケアを充実させたり、増えるオンライン会議で新しいメイクアップを試したりで、化粧品を買った人は多いのではないだろうか。植物由来成分を使用するなどホリスティックビューティを提案する「THREE」は、直営店をはじめ全国の百貨店が休業となっこともあり、ECの売り上げが増加しているという。売り上げトップ3は、クレンジングオイル「バランシング クレンジング オイル R」(185mL、4200円)、ハイライト&チークベース「シマリング グロー デュオ」(4500円)、ネイル「ネイルポリッシュ」(7mL、1800円)だ。そのほか、手洗いが推奨されていることから「ハンド&アーム クリーム AC R」(50g、3000円)や、「THREE ハンド&アーム ウォッシュ AC」(250mL、2600円)がスキンケアカテゴリーで人気に。「ハンド系がここまで上位になったことはなかった」(齋藤未奈「THREE」PR)と語る。

 クレンジングオイルはもともと大人気でリピーターが多い製品だ。2位の「シマリング グロー デュオ」は、オンライン会議で血色感のある顔色を演出するのに最適な製品。「ネイルポリッシュ」は家にいる時間が長くなる中で、セルフで楽しめるアイテムだ。

 また、カラーにも特徴がある。「4月29日に発売したサマーメイクアップコレクションの売り上げは前年を上回って推移する。中でも明るい色が好調だ。家にいるからこそ、新しい色に挑戦してみたい、明るい色で気分を上げたいというのがあるのではないか」と齋藤PR。サマーコレクションのリキッドアイシャドウ「アルカミストツイストフォーアイ」ではイエローやオレンジが、「ネイルポリッシュ」ではグリーンやゴールドが人気だという。同コレクションで発売したブランド初の4種のリップパレット「ピークパフォーマンスリップクアッド」は、ポイントメイクで3位に入った。

 ホリスティックケア(スキンケア)、ポイントメイク、ベースメイクのそれぞれのカテゴリーで人気トップ3(ホリスティックケアはトップ5)はーー。

【HOLISTIC CARE】(スキンケア)

【POINT MAKEUP】

【BASE MAKEUP】

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連載「今、デザイナーができること」Vol.14 赤坂公三郎「憧れを作り続けること。サステナブルな環境作りが大事」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、米ニューヨークを拠点とする「コウザブロウ(KOZABURO)」の赤坂公三郎デザイナーが、クリエイション環境の変化を語る。

KOZABURO
赤坂公三郎デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A.ファッションデザイナーとして、憧れを作り続けることだ。ウイルスによって自然環境だけではなく、安全や経済面でもサステイナブルな環境が求められるようになった。自分もその環境を整え、クリエイティブな物作りを続けていきたい。今は一人でスタジオ作業を行い、コラボレーターとはビデオや電話でのみ連絡を取り合っている。はっきりしない状況が続いているため、安直な行動は危険だと考えている。まずは事態を理解するために情報を集め、よりよい将来を切り開くためにできることを模索していきたい。

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「ヴォーグ ジャパン」の“新たな一歩” 環境や多様性を唱える新プロジェクトの行く末

 「ヴォーグ ジャパン(VOGUE JAPAN)」が新たにスタートした「ヴォーグ チェンジ(VOGUE CHANGE)」は、ダイバーシティー&インクルージョン(以下、D&I)やサステナビリティ、ワーク&ライフを3つに軸を置いたプロジェクトだ。「ヴォーグ ジャパン」のウェブサイト特設ページでコンテンツを発信しているほか、誌面でも毎月連載を実施。今後は特集を企画しているという。渡辺三津子「ヴォーグ ジャパン」編集長が「新しい一歩」とコメントする同プロジェクトは、どのようにして立ち上がり、そしてコロナ禍の中で今後、どこに向かっていくのか。「ヴォーグ チェンジ」のコンテンツを統括する名古摩耶「ヴォーグ ジャパン」エグゼクティブ・デジタル・エディターに聞いた。

 「ヴォーグ チェンジ」は日本主導のプロジェクトだが、発足の背景の1つに世界26エディションの「ヴォーグ」編集長たちが2019年末に出した共同声明“ヴォーグ バリューズ”がある。声明の内容は、ファッション業界でも取り上げられるようになったサステナビリティやD&Iの課題に対し、「ヴォーグ」としてもより主体的に責任を持って取り組んでいく、というもの。「ヴォーグ」全体としての今後目指すべき方向性を示したとも言える。

 さらに、「ヴォーグ」を発行するコンデナストは19年に、アナ・ウィンター(Anna Wintour)米「ヴォーグ」編集長をリーダーとするD&I社員協議会と、コンデナスト・インターナショナルのウルフギャング・ブラウ(Wolfgan Blau)=グローバル・COOをリーダーとするサステナビリティ委員会を設立。社外だけでなく、社内に向けてもD&Iやサステナビリティに向けて取り組む姿勢を明らかにしている。「日本でも、フェミニズムやフェムテックといった性にまつわるトピックをはじめ、ダイバーシティやサステナビリティに関する記事はパフォーマンスが非常に良かった。また、それらの記事を読んでくれるのは従来の『VOGUE』のファンではない新規の方が多く、コンテンツとしてもビジネスとしても新しいポテンシャルを感じていた。そこに“ヴォーグ バリューズ”やコンデナストの姿勢も影響し、日本独自のプロジェクトとして『ヴォーグ チェンジ』が発足した」と名古エグゼクティブ・デジタル・エディターは経緯を話す。

 そうして生まれた「ヴォーグ チェンジ」は月50本程度を目標に、新しい記事を発信している。グローバルで制作した記事の翻訳版も一部含まれるが、多くが「ヴォーグ チェンジ」のために企画されたものだ。中でもジェンダーやメンタルヘルス、セクシュアルウェルネスにまつわる記事の反響が良く、今後はオンラインを含めイベントや動画など、より立体的な展開を視野に入れているという。「コアな人にも取材をしつつ、同時にあまり専門的になりすぎないよう、ライトな記事とシリアスな記事はバランスを取っていくつもり。いずれにしても、SNSなどを介して共感してもらい、おのずと会話が生まれるような記事作りをしたい。そうすることで、D&Iやサステナビリティに対する人々の関心がさらに高まったら良いなと考えている」と語る。

 ただ、コンテンツの制作においては、名古エグゼクティブ・デジタル・エディターは慎重な姿勢を見せる。「『ヴォーグ チェンジ』で扱うトピックは、現時点では教科書となるものが存在しない。文化的な背景が違うと、言葉遣い1つでニュアンスが全く異なってしまうこともある。新しいスタンダードを作りたい、という意気込みももちろんあるが、言葉遣いを間違えることで誰かが排除されてしまうことは避けたい」。

 「ヴォーグ チェンジ」単体でのマネタイズについてはどう考えているのか。「もちろん、やるからにはマネタイズは視野に入れている。『ヴォーグ』として受けきれなかったクライアントのニーズもあり、何か新しい取り組みが『ヴォーグ チェンジ』を通じて実現できたり、新規のクライアントを『ヴォーグ』の読者に紹介することができたりすると考えている。実際にローンチ前にはさまざまなクライアントにコラボレーションを提案いただいたり、提案していたりもしており、手応えも感じていた。ただ、新型コロナウイルスの影響で、クライアント側としても今はビジネスとしての見通しが立てづらい状況にある」という。

 「今後はファッション業界やクライアントのニーズ、そして読者が求めるメディアの在り方も変わってくると思う。『ヴォーグ チェンジ』が扱うテーマは日本の市場の中でスタンダードとなるようなトンマナが決まっていないものでもあるため、外部機関とコラボレーションしながら作り上げていくのがあるべき姿なのではないかと考えている。失敗することもあると思うが、学びながら進んでいくつもりだ」。

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ファッション通信簿Vol.54 斬新、奇抜でワイルドすぎる?「メットガラ」の歴代ファッションを米「WWD」が辛口ジャッジ!

 米「WWD」の人気企画「ファッション通信簿」では、ストリートからパーティー、レッドカーペットまで、海外セレブたちのファッションを厳しくチェック。A+、A、A-、B+、B、B-、C+、C、C-、D+、D、D-、そしてFAIL(失格)の13段階評価で格付けし、それぞれのファッションポイントを勝手に辛口ジャッジ!

 第54回は、これまでに開催された「メットガラ(MET GALA)」からマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)、ジャレッド・レト(Jared Leto)、リル・キム(Lil’ Kim)、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)、ケイティ・ペリー(Katy Perry)、ジャネール・モネイ(Janelle Monae)、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)、マドンナ(Madonna)が登場。毎年5月に開催されるファッション展覧会のオープニングイベント「メットガラ」では、セレブたちの斬新で奇抜なファッションから目が離せない。2020年は新型コロナウイルスの影響で無期限延期となってしまったが、そうとなれば今回は米「WWD」の辛口評価とともに歴代のファッションを振り返って楽しむのはどうだろうか。

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【動画】平均年齢87歳 メンズ最長老らが語るファッションのゆくえ

 「出張インタビュー」3回目は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、初めてオンライン版に挑戦します。お迎えするのは、日本におけるファッションイラストレーターの草分け的存在であり、人気キャラクター“アイビー坊や”の生みの親でもある穂積和夫さん89歳と、今なおメンズファッションのバイブルとして愛される「TAKE IVY」(婦人画報社)の仕掛け人であり、「ヴァン(VAN)」創始者の石津謙介さんの長男であり、服飾評論家の石津祥介さん85歳です。

 柳井正ファーストリテイリング会長兼社長による「『ユニクロ』の原点は『VAN』」発言の真意とは?また、“開拓者”である穂積さんが口にした「ファッションイラストレーションは20世紀で終わった」「同じように“コロナショック”によってファッションデザイナーの時代も終わってしまうのか」が意味するものとは?――見どころ満載です!なにより90歳近いお二人が、初めてビデオ会議システムによる動画インタビューを快諾してくださったことに最大限の謝意と敬意を表します。

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名門レナウンの破綻 昭和のビジネスモデルを温存したツケ

 レナウンの経営破綻を「コロナ倒産」と表現することに違和感がある。同社の業績は30年近くにわたって低迷してきた。数年おきに人員整理と事業縮小を繰り返しても収益性が回復することはなく、赤字とわずかな黒字を行ったり来たりしていた。消費増税と暖冬に加えて、親会社・山東如意科技集団の子会社への売掛金を回収できない異常事態によって2019年12月期は67億円の最終赤字に陥っていた。コロナは引導を渡したに過ぎない。

 レナウンの凋落を振り返って感じるのは、企業が変化しないことのリスクである。

 同社のビジネスモデルは、大まかにいえば30年くらい変わっていない。現在の主力ブランドは「ダーバン(D’URBAN)」「アクアスキュータム(AQUASCUTUM)」「シンプルライフ( SIMPLE LIFE)」「エレメント オブ シンプルライフ(ELEMENT OF SIMPLE LIFE)」「インターメッツォ(INTERMEZZO)」「エンスウィート(ENSUITE)」「アーノルドパーマー タイムレス(ARNOLD PALMER TIMELESS)」など。百貨店や量販店向けのブランドが大半で、顔ぶれは1990年代とほとんど同じなのだ。

主力ブランドが高齢化 新ブランドも開発できず

 平成の時代、ファッション業界では2つの大きな潮流があった。一つはSPA(製造小売り)の台頭。製造から販売までを一気通貫管理することで、中間コストをカットし、価格競争力を高める。店頭の客の反応を商品企画に素早く反映させる。2000年以降のショッピングセンター(SC)の開業ラッシュにのって、SPAは業界の主流になった。もう一つはECの浸透。こちらは説明不要だろう。コロナ危機を受けてますます重要性が増している。

 レナウンはどちらの潮流にも乗れなかった。SC向けの「アーノルドパーマー タイムレス」に全体をけん引するほどの力強さはない。売上高に占めるECの割合は3%。そもそも自社ブランドは顧客が高齢化しており、ECを利用する人たちが欲しいと思う商品がない。若い世代を狙ったブランドを育てようと試みてもうまくいかず、この10数年は既存事業を守るだけになっていた。結果として昭和のビジネスモデルが温存され、過去の遺産を食いつぶす状態だった。

 レナウンはかつてグループ売上高3000億円の日本最大のアパレル企業だった。1960年代には“レナウン・ワンサカ娘”のテレビCMで一世を風靡し、70年代以降もアラン・ドロン(Alain Delon)や高倉健を広告塔に起用してブランドイメージを高めた。米人気ゴルファーを起用した「アーノルドパーマー」では、傘のマークによってワンポイントマークの一大ブームを作った。90年代には、のちに多額の負債の要因になる英ブランド「アクアスキュータム」を約200億円で買収した。5月に米国本社が経営破綻した「J.クルー(J.CREW)」を日本に持って来たのもレナウンだった。

 進取の気性に富んでいたレナウンの社風は、長い低迷によって現状維持に傾く。いまレナウンの社内の良い時代を経験しているのは50代以上の社員だけ。それ以外の大半の社員は悪い時代しか知らない。過去の成功体験にこだわりすぎる企業は問題だが、成功体験を知らない縮小均衡の企業からはチャレンジ精神が失われる。

「保守的な選択をしてきてしまった」

 経営陣もそのことは自覚していた。09年から10年間にわたって社長を務めた北畑稔氏は「お客さまの変化が想定以上に早いのに、その時々の商品や企画で保守的な選択をしてきてしまった」と反省の弁を述べたことがある。北畑氏の後任として19年5月に社長に昇格した神保佳幸氏は「負けグセがついている社内の閉塞感を変えたい」と就任会見で話していた。

 10年にレナウンが山東如意の傘下に入った際、中国企業によるショック療法で経営が変わると期待されたが、目に見えるほどの変化はなかった。「アジアのLVMH」を目指すとした山東如意は近年、欧米ブランドの相次ぐM&A戦略が仇となって財務状況が急速に悪化した。レナウンをサポートするどころか、対立する場面が目立つようになっていた。19年末、レナウンは山東如意の香港子会社から売掛金の回収が滞る異例の事態になり、大赤字を計上した。今年3月の株主総会では山東如意の動議によって社長の神保氏、会長の北畑氏の続投が否決された。東証1部上場企業とは思えない迷走のところにコロナ危機に見舞われ、白旗を上げざるをえなくなった。

 レナウンと同様に老舗アパレルとして括られるオンワードホールディングス、ワールド、TSIホールディングスなどは、痛みを伴うリストラを断行しながらもデジタル時代に向けた自己変革に取り組んでいる。それらに比べると、レナウンはあまりに旧態依然として、ビジョンに欠けていたと言わざるをえない。

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帰宅直後の“顔洗い”にも使える 天然由来成分の石けんを味方に

 手洗い、うがいに加えて、帰宅後すぐに顔を洗うこともウイルス対策の一助となるのだとか。また在宅ワークで、石けんでオフできるライトなメイクアップにシフトしている人も増えているのではないだろうか。石けんに含まれる界面活性剤がウイルス除去に期待できるという話もある。今回は、中でも天然由来成分で作られた石けんをピックアップして紹介する。

薬用植物として用いられてきた藍を使用

 「アムリターラ(AMRITARA)」は6月8日に、“タデ藍”を使った「インディゴ バランシング ソープ」(2750円)を発売する。藍は、葉をちぎってもそこから再び根を生やすほど生命力の強い植物で、古くから薬用植物として解毒や解熱のために利用されてきた。同製品に使われているのは徳島県で栽培される“タデ藍”という品種。最近の研究では、抗炎症作用があるといわれるトリプタンスリンや、抗酸化物質ポリフェノールの一種のケルセチンを含むことが分かってきた。

 また、作り方にもこだわりがある。50℃前後の温度でじっくり熟成させるコールドプロセス製法を採用しており、一般的なホットプロセス製法(釜たき製法)に対して、必要最低限の熱だけを加えるため美容成分が壊れにくいという特徴がある。滑らかで少し青みがかかった泡が肌をすっきりと洗い上げ、大人の揺らぎ肌にアプローチする。

20%も海塩を含有。汚れを浮かせ、つるりとした肌に

 天然海塩を使ったコスメブランド「スフィア(SPHERE)」の「ソルト・ソープ エナ」(3260円)には、20%もの海塩が含まれている。配合している海塩はオーガニック認証のコスモスナチュラルを取得しているのも珍しいこと。天然海塩をふんだんに使うことで、血行促進や抗菌、抗炎症、収れん作用が期待できるほか、肌が持つ自然治癒力を高める働きも。泡立てネットを使い、ぬるま湯を少しずつ加えれば、もこもこの濃密泡を作ることができる。顔全体にのせて、30秒~1分ほどパックしてから洗い流すのがおすすめだ。

国産シルクから抽出したシルクプロテインを配合

 表面に刻印されたスマイルマークが印象的な「だいじょうぶせっけん」(1815円)。肌が弱い妻のために、夫が石けんを開発したことが製品化のきっかけになった。キー成分は、国産シルクから手作業で抽出するタンパク質のシルクフィブロイン。フィブロインのアミノ酸組成は人体の組成と似ていて、保湿力に優れた成分といわれているものだ。成分は、オリーブ油、パーム油、ヤシ油、水酸化ナトリウム、加水分解シルク(フィブロイン)とシンプル。洗顔はもちろん、デリケートな部分の洗浄にも使うことができる。

 いずれのアイテムも防腐剤や香料を使っていない。選ぶ際の基準にしてもいいかもしれない。

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ステラ・マッカートニーが新型コロナを語る サステナブルなビジネスの重要性

 新型コロナウイルスが全世界で猛威を振るう中、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)へのインタビューが実現した。地球環境、チームとのつながり、創作活動やビジネスから家事や4人の子どもの世話に至るまで――ステラはいま何を考えて、どのような生活を送っているのだろうか?

WWD:気分はどう?

ステラ:2つのことを感じているわ。私の個人的な感情と、もうひとつはもちろんビジネスのこと。私はいま2つの人生を生きている。4人の子どもの母親であり、妻でもある。一日3回の食事を作るのも大好きよ。子どもたちと都会ではなく自然の中で生活するのが好き。馬がいるから隔離生活でも平気よ。

もちろん、新型コロナウイルスによって多くの命が失われていることも、人びとが大変な思いをしていることも心から悲しく思う。英国の国民保険サービス(National Health Service)の最前線で働く人や、緊急事態の分野に従事するすべての人に敬意を抱いている。他者に対する思いやりがあれば、みんなが同じ気持ちでつながることができる。この現実は本当に重くて、簡単に片づけられる問題ではないわ。この状況をとても危惧している。一方で、私には世界中にたくさんの従業員を抱えているビジネスウーマンとしての一面もある。もちろんほかと同様に、私のビジネスにも影響は出ているわ。私たちが大切にしていることのためにビジネスを成功させたいと常々思っている。でも今、「全員が初めて、いろいろな意味で一つにつながった」と思うでしょう?重要なことだわ。

WWD:隔離を通してそのようなつながりを感じるなんで不思議だ。

ステラ:そうね。家族が多いから個人的にはそれほど孤独ではないわ。仕事面では、私たちの業界ではチーム作業によってお互いの創造性を高め合っているから、初めの数週間は本当に興味深いものがあった。デバイスを通じた仕事環境を整えて、これまでとは違う形でチームを動かさなければならなかったから。でも今はチームのみんながつながりを感じている。世界中のチームとも普段以上に強くつながっている。楽しいし、これからも続けていきたい。でも今後新たに普通の生活に戻ったとき、私たちの生活にどのような影響が出てくるのかとても気になる。

チームのみんなが精神的にも感情的にも大丈夫であることを常に気にかけている。普段の私にそんな時間はないし、ただ毎日の仕事に追われているだけだった。でも今は心配だから、みんなの様子を確認するだけのために毎週電話する、みたいな感じよ。イタリアのチームは外出禁止で、食べ物を買いに行くことしか許可されていない。そんな厳しい生活が私たちにどんな影響を及ぼすのかなんてわからないわ。

WWD:そういう根本的な部分は地域によって変わると思うが。

ステラ:そうね。クリエイティブであり続けると同時に、状況が違うそれぞれの地域や、隔離されている人とそうでない人たちなど、対応は本当に大きく異なる面もある。イタリアは活動拠点として重要な位置にあるから、できることとできないこと、いろいろなやり方など多くの話し合いをしたわ。サステナブルな働き方をするには先を見据えて行動しないといけない。サプライヤーや素材の生産現場に対する責任もあるから、製造のプロセスを稼働させて事前に多くの生地を作っている。大切なサプライヤーたちに敬意と誠意を持って対応したいと思っている。

WWD:隔離生活も家族と一緒の場合と1人で行う場合とでは全く別物になる。それでも仕事面でのストレスはあると思うが。

ステラ:私はクリエイティブな家庭で育ったの。そして、クリエイティブであることに孤独は付き物よ。ビートルズ(The Beatles)が解散したとき、私たちはスコットランドの農家に引っ越したんだけど、周りには本当に何もなかった。母(リンダ・マッカートニー)と父(ポール・マッカートニー)はアルバムを作っていたけど、そのときの父のアルバム「マッカートニー(McCartney)」は最高傑作だと思うわ。この経験は私のものの考え方や仕事、家族、友人関係など人生そのものに大きな影響を与えた。

私の友人の大多数はアーティストかクリエイティブな分野の仕事をしている人たちで、彼らのほとんどが孤独な環境で働いている。名前を挙げると、画家のデイヴィッド・ホックニー(David Hockney)に近況報告をしたときに彼は、「いつも以上に絵を描いている」と言っていた。何かが生み出されるのはそうした孤独な瞬間であって、チームワークに移行するのはその後よ。父は一人でアルバムを書き、その後次のステップに進んでいた。技術的な処理や製品化、アートワーク、そして最後は何万人もの人びとの前でツアーを行うようにね。そしてそれはファッション業界でも同じよ。

一人の時間とチームとの時間

WWD:ひとりでクリエイティブな活動を長く続けたいというふうにも聞こえるが。

ステラ:たくさん電話をしているから、普段よりもいそがしく感じるの。そのせいで創作活動や孤独から離れているから、バランスを取りたいと思っている。たぶんすべてに通ずる答えはそれね。

WWD:ほかのデザイナーたちはチームでの創作活動について語ってくれた。あなたの場合はやはり単独で進めるというふうに聞こえる。

ステラ:私の名前がブランド名になっているから、すべては私の考えや信念、創造性が源になっている。私にはお互いに刺激し合えるチームがいるけど、私たちはみんなその源をスタート地点にして創作活動を行っている。ファッション業界にいる人はみんな時間がないと文句を言っているから、私は個人の時間とチームでの時間のバランスを取ることが大切だと思っている。

むしろ今のような状況になる前からすでに、春夏コレクションに向けてそうした働きをしてきた。新しい生地を購入しないで春夏を作れるか?すでにあるものをどう活用できるか?もう何年間もそうしていて、それが私の働き方であり心の動き方でもあるの。今あるものにどうやって新しい命を吹き込むか――すべてがアップサイクルという試みを2シーズン前のランウエイで行ったわ。私たちのブランドにとってとても興味深い経験になった。

WWD:あなたが着ているトレーナーにはなんて書いてある?

ステラ:“ウィー アー ザ ウエザー(We Are The Weather)”と書いてあるわ。小説家のジョナサン・サフラン・フォア(Jonathan Safran Foer)とコラボレーションしたカプセルコレクションなの。サステナブルな生地を使用して製作したもので、コレクション名はジョナサンの気候変動危機をテーマにした小説に由来している。私がやってきたことは今の状況にぴったりな気がするわ。私のキャリアで積み上げてきたもの全てが今にふさわしいと感じる。

WWD:そのことと、先ほど話してくれたことを踏まえると、生地に関してはほかのブランドよりも先を行っていると思う?

ステラ:私が使用しているビスコース生地は、サステナブルな管理態勢を整えた生産地の原材料から作られている。態勢を整えるのに3年かかったわ。長い時間をかけた唯一の供給源であるからこそ大切にしたい。今はビジネス全体を見なければいけないし、どちらにしてもそうするけど、その必要性はさらに高まっている。もし生産拠点が全てイタリアだったら、EC向けの製品をどう手配するのか、各マーケットの動向やロックダウンの状況なども注視しなければいけないし、その点に関してはみんな同じだと思う。

WWD:グローバルマーケットではそれぞれに違いがある?

ステラ:マーケットごとに状況は異なる。でも、世界の人びとがいま購入しているのは予想通り生活必需品やクラシックなものよ。私たちのブランドにはタイムレスでアイコン的な“ファラベラ(FALABELLA)”のバッグや、“エリス(ELYSE)”のシューズのような主要製品があってよかった。多くのブランドでも同じだと思う。人びとがマインドフルネスにより意識を傾けるように願うわ。顧客の意識が高まれば、何かしらのムーブメントも起きる。それがファッション業界のあるべき姿だと思うわ。

WWD:洋服やアクセサリーの需要が少しでもあるとは驚いた。人びとに購買意欲があると思っている?

ステラ:たくさん買うのではなく、厳選して買うということよ。春夏コレクションを製作していたときにすでに「どうしてこんなにたくさんの商品を作っているのか?」と考えていた。廃棄物の多さはファッション業界にとって大きな問題よ。だから私は廃棄物の削減やその活用法に大きな関心があるの。「ステラ マッカートニー」では、ほかのどのブランドよりも廃棄量を抑えていると思う。生産管理を上手にやって、さらに効率化していきたい。

「ファストファッションの行く末は火葬か埋葬のどちらかだ」と言うのに今ほど適した時期はない。貨幣価値に換算すると、年間1000億ドル(約10兆円)もの生地や資源が無駄になっている。大量生産する必要がないのは明らかよね。人びとの購買意欲が落ちていることに私も共感する。今あるものを再利用するというのは私が常々考えていることであって、とくに新しい考えではない。だからこそ私の作る、時を感じさせないクラシックな製品に価値があると思う。誰かの人生とともにあり、その後も別の誰かの人生に受け継がれていくようなものを作るにはどうしたらいいか――私は何かをデザインするとき、それを考えるところから始めるの。リサイクル、再利用、中古販売やレンタルを可能にするためにも、どうやってトレンドに頼らないデザインを生み出すか?そういったことに全く偏見はないし、新しい発想を取り入れていきたい。

WWD:「余計なものはない方がいい」という価値観の中で、どのような成長の見通しを描いている?

ステラ:私たちは巨大ブランドではないけど、そこには本当の意味での成長がある。ブランドがあって製品がある。人は必要なものが壊れたら新しいものを買うか、それに飽きて違うものを求めたりもする。新しいものを欲しがるのはいいことだけど、よりよい方法である必要がある。そこで企業としてできることは、供給源や製造方法に配慮したいいブランドであること。「ステラ マッカートニー」はその点において最高よ。すぐにでも買って大丈夫。

環境問題について学ぶ必要性

WWD:ありがとう。あなたはアイルランド出身の職人だ。

ステラ:その通り!私は何かを禁じたりしないし、人は何かを買うことを禁じられたりするべきでもない。でも人は今後さらに、その土地に根差したいいものをオンラインで買うようになると思う。それが二酸化炭素の排出量削減にもつながる。

環境に配慮した倫理的な行動を取るということは、ビジネスで成功を目指してはいけないということなのか?というジレンマを常に抱えている。でも今は、みんなが私のビジネスモデルを見習うべきだと強く思う。みんながそうすれば議論は必要ない。でも今は従業員を雇い、イタリアに工場を持って、世界中の農家とともに健全なビジネスを行うことが可能だという成功例を示す必要がある。意識の高いビジネスをすることは可能なのよ。

WWD:世界中で外出が規制されたことで空気や水がきれいになったが、その背景には厳格なロックダウン態勢が敷かれていた事実がある。これを楽観的か悲観的か、どちらに捉えている?

ステラ:環境にもたらされたいい影響をとても楽観的にとらえている。環境汚染はすぐに改善されることがはっきりした。もちろん厳しい行動規制を望んだりはしていないけど。

WWD:それは誰も望んでいない。

ステラ:環境問題についてもっと議論して学ぶ必要がある。さもないと後で苦しむことになる。新型コロナによって命を落とした人や大切な誰かを失ったことで痛みや苦しみを経験した人は、そこから何かしらの見返りを得る必要がある。失われた命に対して権力者たちが敬意を払い、環境に配慮した政策決定を行うなら、こうした悲劇も無駄にはならないと思う。

WWD:公衆衛生のプロトコルと環境に対するそれは合致しない部分もある。私たちは常に手を洗っており、水の使用量は増加している。使い捨て製品の需要も高まった。ニューヨークではビニール製手提げ袋が禁止になって間もないが、現在その規制は保留になっている。「スターバックスコーヒー(STARBUCKS COFFEE)」は休業に入る前、顧客が持参したタンブラーやマグにドリンクを提供するサービスを一時的に中止していた。

ステラ:使い捨てプラスチック製品については技術的な話になる。この問題については長年意識を傾けてきた。完全に無害な物質に分解できる使い捨て製品を作る企業に注目してきたが、いまは世界的に需要が高まっていることもあり、使い捨てのカトラリーが注目されている。「ステラ マッカートニー」では、洋服のドライクリーニングを避けたり、洗濯回数を減らすこと、洗濯機の利用を控えめにすることなど、水への取り組みを何年も前から行っている。ファッション業界だけで水の使用量の話をするのは馬鹿げている。手洗い以外にも水の使用量を抑える方法はいくらでもあるし、全ての業界で日々気を付けていくべき問題だと思う。

WWD:環境と公衆衛生問題は二分化されている?それとも、突き詰めて大局的に見れば一つの問題だと思う?

ステラ:突き詰めて大きく捉えれば一緒だと思うわ。究極には動物愛護の考えがあり、食肉用の動物にまつわる各プロセスは疫病の温床でもある。食肉業界は健全できれいな業界とは言えない。地球全体が動物の飼育や食肉としての処理などに罪悪感を抱いていると思う。誰かがこのことについて注目しない限り、問題はなくならない。全てはつながっているのに、誰もこのことについて議論しないことの方が興味深いわ。

WWD:なぜ?

ステラ:なぜなら、毎年何十億もの動物を殺しているという事実に皆はいい気分がしないからよ。そこには罪悪感があるから話したがらない。間違いだとわかっているからこそ向き合いたくないのね。私たち全員が考えなければならないことよ。私はベジタリアンだから当てはまらないけど、地球上の大多数の人は責任を持って議論するべきだと思う。私は前向きなタイプだから、「できないなら完全にやめなくてもいいけど、消費量を抑えていいものを買って」と伝えたい。個人レベルでの消費や需要が食肉ビジネスに影響をもたらすから、それぞれが消費量などの面で行動を変えていくべきだと思う。

22年前に母が亡くなってから、彼女のベジタリアン食品会社の運営にも携わっている。30~40年前に企業したベジタリアン向けの食品ブランドだけど、年々成長を続けている。ベジタリアン人口が増加したことで競合する会社も増えて、母も喜んでいると思う。消費者の嗜好が変わってきたことで、外食チェーンのビジネスにも変化が見られる。これが新しいライフスタイルに向けた変化であればいい。

WWD:お母さんの会社を監督しているの?

ステラ:家族みんなでやっているファミリーブランドよ。私はパッケージを担当している。

WWD:それは素晴らしい。どのくらいの間会社をやっている?

ステラ:会社がいつ設立されたか知らないの。確認しようと思っていたことを忘れていたわ。リブランドするときにパッケージに記載したくて(リンダ マッカートニー フーズは1991年の創業)。

子どもたちに伝えていること

WWD:あなたはご両親のしつけや家庭の主義に忠実な生活を送っているが、お子さんはどうか?あなたの考え方に疑問を投げかけた子はいる?

ステラ:疑問を感じていると思う。まさに私がそうだったから。でも今はまだベジタリアン人口が多くないとはいえ、そういう人もまわりにたくさんいるはずよ。驚いたことに、友人みんながベジタリアンでなくとも、今は昔よりもずっとその考え方に精通している人が多い。子どものころ両親に「なぜ自分たちはベジタリアンで、お肉を食べられないの?」と尋ねたら、「お肉を食べるか食べないかは自分で決めることだから、食べてもいい。でも私たちは死んだ動物を食べたくないからお肉を食べないんだ」と言われたの。私の子どもたちも全く同じ質問をしてきたから、私も「やりたいことは自由にやりなさい。あなたの選んだことを尊重するけど、私はこういう理由でベジタリアンなのよ」と、同じように答えたわ。子どもたちの目を見ればわかる。お肉を食べないスタンスの家族の一員だということを世界の人が知っているとわかっていれば、週末にこっそりチキンカツを食べに行こうとは思わないわよね。

要するに子どもは美しいほどに自然と共鳴していて純粋無垢だから、「見て、ニワトリが生きている。そのニワトリがフライにされる。それを食べたいと思う?」と言えばわかるのよ。肉料理が食卓に並ぶまでの実際の過程を目にすれば、だれも食べたいとは思わない。

WWD:新型コロナウイルスがファッション業界に永続的にもたらす影響は何だと思う?

ステラ:わからないわ。私が最も恐れているのは、私たちが普通だと思っている状態にただ戻ること。でも、今後は別の方向に進むことを願っている。みんなは常に自分自身やチームを急かしてしまう私を見て笑っているけど、変化を起こすための行動を取り続けなければ私がやることは成功しない。

いま、業界やビジネスに携わる人たち全員が立ち止まって、物事を別の面から考え直す必要がある。みんないいアイデアを出して競争で勝ちたいと思っているし、先の未来を予測しようと躍起になっている。世界の状況は変わってしまったけど、ファッション業界にいれば新型コロナウイルスの有無にかかわらず日々そういう風に考える必要がある。それが私たちの仕事よ。でも、人びとのお金に対する考え方は変わったと思う。より注意深く投資をして、物理的にも精神的にもこれまでとは違う買い方になると思う。

WWD:規模は小さくなると思うが、春夏コレクションについての今の考えを聞かせてほしい。

ステラ:今回のことで春夏コレクションの製作が一時中断となったが、ブランドとしてはただ全てをキャンセルするのではなく、なにか別のアクションを起こすべきだと感じる。他のブランドと差をつけるためにも、今まで以上にクリエイティブな働きかけが必要ね。いろいろ考えながら洋服やアクセサリーの製作をしている。数カ月間の自粛生活を通じて、その間におしゃれをしていなかった人たちの意識がファッションに向くこともあるだろうし、買い物を楽しむ人も出てくると思う。

またサステナビリティの話に戻るけど、新しい生地をオーダーせずに春夏コレクションを製作したいと考えている。大量に購入したすでに手元にある生地から何かを作る。私たちはほかのファッションブランドとは違うわ。

WWD:その通りだ。

ステラ:私は環境に配慮したサプライヤーと提携している。それがブランドとしてのコアな価値観であり進むべき方向でもある。そうした意味では私たちはラッキーね。2019-20年秋冬シーズンのアップサイクルのコレクションのラストに発表したコートのデザインは、店頭で5シーズンくらいは通用する。そういうアイテムはすべてリミテッド・エディションになっている。つまり、ファッションビジネスにおいてサステナブルであれば、今回のような出来事が起きても頭一つ抜けている状態にいられるということ。私が頼りにしているのはサステナブルな素材であって、ほかの人たちとは違うわ。

WWD:あなたのポリシーは実践的なビジネスになる。

ステラ:そうね。そしてサプライチェーンとのコミュニケーションにもつながる。私が仕事をしたいと思える合皮のサプライヤーは、ソフト・ビーガンレザーとフェイクファーを一緒に開発した2社しかない。私は自分自身の小さなネットワークを頼りにしている。環境に及ぼす影響のうち60%以上は原材料の生産段階で発生している。つまり、状況をいい方向に大きく変えられるのもこの部分なのよ。そのシーズンで生地を使わなかったとしても、売ったり捨てたりしないで次のシーズンに再利用するの。

WWD:新型コロナウイルスでショーのシステムに変化はあると思う?

ステラ:その話はもう20年くらいしている気がするわ。そうよね?

WWD:はい。でも、今回の危機が決定打となってリセットされると思う?

ステラ:私たちがしているのは新しいものを生み出して、さまざまな方法で関心を集め、人びとの気持ちや考えを反映していく仕事よ。だから常に新しい手法を取り入れることができる。ファッションショーは古いと考えて、ショーの在り方にみんなが疑問を呈している。答えを見つけるのは難しいけど、私たちは今回の危機によってそうすることを余儀なくされると思うわ。でも、きっと新しいエキサイティングなアイデアが出てくることは確かね。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.13 有働幸司「ファッションシステムが変わる。“新たなスタンダード”を提案するとき」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、自身の「ファクトタム(FACTOTUM)」のほか、さまざまな企業との協業も行ってきた有働幸司デザイナーが今後の物作りのあり方を語った。

FACTOTUM

有働幸司デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A.新型コロナウイルスの感染拡大で、さまざまなブランドや企業が展示会やイベントを開催できず、小売店も臨時休業を余儀なくされている。その経済的影響はファッション業界にとって深刻で、今後はさらに厳しい状況になっていくことも予想される。未曾有の事態は、人々の価値観や嗜好を変えてしまうかもしれない。でもファッションデザインに携わる身として、ただおびえているわけにはいかない。たとえ経済が厳しくなったとしても、その環境でどのような服を提案すべきかを考え続けている。従来のファッションシステムの中に答えがあるとは必ずしも思わない。システムが変わる可能性があり、資本主義社会がいかに不安定であるかを目の当たりにした今だからこそ、ファッションデザイナーは発想を転換し、“新しいスタンダード”を提案するタイミングだと思う。着た人の気持ちが前向きになり、生活に幸せが生まれて、地球や社会に優しい服作りがこれからは必要になるはずだ。

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インスタ&動画映えで海外コスメマニアが熱視線 クリーンビューティの魅力

 欧米、特にアメリカを中心に、クリーンビューティトレンドが拡大している。そして特に、環境問題や社会課題に関心が高いZ世代やミレニアル世代が注目しているというが、実際にどのような現象が起こっているのか。

 クリーンビューティは近年登場した概念だ。明確な定義や認証制度はないものの、健康や環境に害のある成分を使用せず、環境や社会、動物に配慮された美容アイテムを指すことが多いが、「WWDビューティ」5月14日号では、①健康や環境に害のある成分を使用しない、②製造から販売まで環境への配慮がなされている(サステナビリティ)、③動物実験の不実施や労働環境など社会に配慮している、と定義して特集を組んだ。その中でも触れているが、この背景には近年のウエルネスやビーガンへの関心、動物愛護などエシカルな意識の高まりがある。

 クリーンビューティはインディーブランドが多く、オンラインを活用したD2C(ダイレクト・トゥー・コンシューマー)の形で成長するところも多い。そのためブランドは、SNSでの発信やコミュニケーションに積極的だ。例えば昨年6月にユニリーバ(UNILEVER)が買収した「タチャ(TATCHA)」はインスタグラムで114万フォロワー、資生堂が昨年10月に買収した「ドランクエレファント(DRUNK ELEPHANT)」は97万フォロワーを持つ。

 多くのブランドは製品の効能や成分へのこだわり、サステナビリティ、エシカルな活動などを発信しているが、スキンケアブランドの「グロウ レシピ(GLOW RECIPE)」は一風変わった投稿を行った。ユーチューブで登録者419万、インスタグラムで210万フォロワーを抱える美容インフルエンサー、キャスリーン・ライツ(Kathleen Lights)は自身の動画で、同ブランドの製品の香りに苦言を呈した。これをきっかけに同ブランドは香りの配合を改良し、その動画をインスタグラムに引用投稿して新処方を告知。また、さらなる改善案も募った。批判を受けた事実までも明らかにする透明性や、改善を怠らない姿勢が、ファンの心をつかんでいる。

 ブランドによってはユーチューブやティックトック(TikTok)など動画メディアの活用も盛んだ。「バイオサンス(BIOSSANCE)」はクリーンビューティに関する知識を伝える「クリーンアカデミー(The CLEAN ACADEMY)」を自社サイトとユーチューブで展開している。また「トゥルーリー ビューティ(TRULY BEAUTY)」はティックトックで41万フォロワーを抱え、ホイップ状のボディーバターを紹介している。今後はこういった“動画映え”のアイテムも注目を集めそうだ。

消費者はクリーンビューティに何を期待する?

 クリーンビューティの消費は、“大義第一”なだけではない。インスタグラムの美容に関するハッシュタグ「#skincareaddict」(173万投稿)「#365inskincare」(13.1万投稿)「#itgtopshelfie」(10.6万投稿)などを見ていくと、棚にずらりと並んだアイテムの中に、いくつものクリーンビューティ製品が並ぶ。「ファーマシー(FARMACY)」や「グープ(GOOP)」「クレイヴ ビューティ(KRAVE BEAUTY)」「ヴァースド(VERSED)」「セイ ビューティ(SAIE BEAUTY)」「ユース トゥー ザ ピープル(YOUTH TO THE PEOPLE)」など、複数のブランドから色とりどりのパッケージが選ばれている。

 またメイクアップ製品でも複数ブランドのアイテムを集めるのがはやりのようで、バスルームの棚や「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」の人気レザーバッグ“ザ ポーチ”などに、コスメを詰め込んだ写真が定番化している。ハイブランドのコスメも人気だが、同じくらい「コーサス(KOSAS)」のリップバームや「ライラ B(LILAH B)」のリップ&チーク、「イリア(ILIA)」のマスカラなど、クリーンビューティのコスメも目立っている。

 前述のように、クリーンビューティブランドはオンラインから成長する若いブランドが多い。そのため成分や効能だけでなく、オンライン上でも目を引くトレンドを意識したパッケージやブランディングが特徴だ。美容ブログから始まり、SNSで火が付いてユニコーン企業(評価額10億ドル超え)まで成長した「グロシエ(GLOSSIER)」のような現象が、クリーンビューティでも起こっているのは興味深い。

 もちろん、見た目だけが評価されているわけではない。若い世代はより環境問題や動物愛護にシビアだといわれている16歳の女優ミリー・ボビー・ブラウン(Millie Bobby Brown)が立ち上げたティーン向けコスメブランド「フローレンス バイ ミルズ(FLORENCE BY MILLS)」は、消費者からのよくある質問として、動物実験やサステナビリティに関して事細かに回答している。環境や社会に配所していながらデザインや性能・効能を我慢しなくていいことが、若者の間で広がっている要因なのだ。

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福岡発の名店「マギークープ」が署名活動に加わった理由 「前シーズンの商品は旧作という考え方には疑問」

 5月14日に緊急事態宣言が39県で解除され、ファッション小売業も感染拡大防止に努めながら少しずつ営業を再開している。とは言え、客の間に以前のような消費マインドが戻ってくるのにはまだまだ時間がかかりそうだ。ブランドやショップにとっては苦しい時が続く。そんな中で、「ユナイテッド ヌード」日本法人の青田行社長らは、「業種を限らない消費の活性化策」などを政府への要望として掲げ、署名活動を5月8日に立ち上げた。福岡発の名店セレクトショップ「マギークープ(MOGGIE CO-OP)」の三浦ふさこ社長、三浦直之オーナー兼バイヤーも、同署名活動の発起人グループに名を連ねる。イメージを大切にするセレクトショップのビジネスで、こうした活動を行うは難しい部分もあったはず。2人に話を聞いた。

WWD:「マギークープ」の現在の営業状況は?休業によって、春夏物販売の山場が飛んでしまったが?

三浦ふさこ社長(以下、三浦社長):4月8日から福岡3店、東京2店を休業していましたが、5月15日から福岡2店、東京1店の路面店は営業を再開しています。春夏のコレクションはすてきなものが多くて、本来は店頭で確実に売れていくものでした。このコレクションを埋もれさせてしまうという点がすごく残念で、もったいなく感じています。店舗休業中もECは行っており、ブログなどで紹介した商品がECで売れるという流れはありました。でも、そのように紹介するものしかお客さまの目に触れさせることができないというのが本当に残念で。20-21年秋冬物に関しても一部のブランドからは「(コロナの影響で)生産ができなくなったのでキャンセルさせてほしい」という連絡が入っています。連絡のないブランドでも同様の可能性はあるかもしれない。秋冬物も素晴らしいものばかりだったので、商品にならないということが非常に残念です。

三浦直之オーナー兼バイヤー(以下、三浦オーナー):路面店は15日に再開しましたが、どれくらいのお客さまが来てくださるか未知数です。署名活動の発起人である青田社長もおっしゃっていますが、お店を再開したから「ハイ、もう大丈夫」とはならないですよね。経済が回り始めるのはそこからまた時間がかかる。

WWD:署名活動の発起人グループとなったのはどういった考えから?

三浦オーナー:ファッション業界は、他の業界に比べて声を上げている方があまりいない。横のつながりが薄い業界だからだと思います。取引先のメーカーやブランドとはつながりがありますが、小売業同士だとあまりつながっていないからだと思います。そういった中で、声を上げたい、どんどん発信したいと思っていても、「どうやって?」という部分もある。それで青田社長やセールスレップのイーストランド島田昌彦社長から署名活動の話があって、是非一緒にとなりました。

WWD:署名活動には政治的な部分も絡んでくる。イメージを売る商売として危惧する部分はなかった?

三浦社長:お客さまからクレームなどは全くありません。むしろ、オンライン署名サイトの賛同者のお名前のところに、私たちからはお声掛けしていない顧客の方の名前がどんどんあがってきて、本当にありがたいなと思っています。そういった顧客の中には、自営業で自主的な休業をされていた方もいますし、医療現場の最前線で働かれている方もいる。ファッション小売業を主体としている活動なのに、そのように賛同していただけることには感謝の気持ちでいっぱいです。だからこそ、われわれの業種だけではなく、できるだけ公平にあらゆる業種にとって支援となるような要望をしています。

WWD:5月11日には、青田社長らは自民党2議員と面会し、政府への要望を直接伝えた。その内容が今後補正予算などに反映されるかどうかはまた別問題だが、声を上げれば事態は徐々に動くということを感じた人は業界内にも多いだろう。

三浦オーナー:声を上げても何も変わらないだろうと思っていた人は多いと感じます。だから、今回の件は業界にとっていいきっかけだと思います。コロナショックはファッション業界に大きな被害をもたらしましたが、これまでは国もファッション小売業の実際の仕組みや流れをそんなには分かっていなかったし、金融機関にもわれわれのビジネスモデルが理解されていないと感じる場面は多かった。(半年分を一度に発注する)在庫の持ち方も、何度説明しても他業界と違うため、伝わりづらいと思ってきましたが、そういった業界特有の仕組みをこの機会に広く伝えることができるなら、ここがスタートになっていくと思う。アパレルは産業規模として小さくはないものです。われわれの産業について、政治家や省庁、金融機関の人に知ってもらういい機会になり得るのでは。

WWD:中小規模のファッション小売りは、独立独歩の意識が強く、政治に寄っていくようなことをよしとしない人がこれまで多かったと思う。

三浦オーナー:「初めて政治に興味を持った」「世界情勢や世界の中の日本を考えるようになった」といった声は周りでも聞きます。もともと僕達は選挙には必ず行っていましたが、今回のようにわれわれの業界のことを知ってもらおうと声を上げていくなら、権利であり義務としてちゃんと普段から政治家も選ばないといけないと感じています。コロナショックであらためて実感しましたが、ファッションビジネスは世の中が平和ででないと成り立たない。だからこそ、いい世の中であるようにと自分たちも参加していかなければならないと感じています。

WWD:販売機会を逃した春夏の在庫について、業界では大きな問題になっている。それらは今後どうしていく?

三浦社長:一定程度、セールはやらざるを得ないと思っています。ただ、春夏が終わったら在庫は全てキャリー品として扱うべきかは疑問です。次シーズン以降に新作として売ってもいいんじゃないかと思う。もともと、「シーズンが過ぎた商品は旧作」という考え方が好きではありません。ファッションビジネスは、「前シーズンの商品は古い」という風潮が強すぎる。シーズンが変わっても、いついつに出たいいものとして売っていきたい。常々そう思っていましたし、そういう価値観への理解が広がっていけばと思っています。

Editor’s Voice
「WWDジャパン」では、コロナショックに立ち向かうためにこれまでのファッション業界の常識や当たり前を取り払い、未来ある産業を作っていこうと動いているビジネスパーソンやクリエイターを取材しています。知恵を結集し新しいファッションビジネスを作っていくため、ご意見を press@infaspub.co.jpにお寄せください。取材希望の自推他推も受け付けております(取材を確約するものではありません)。

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新鋭ラッパーHIYADAMがジュエリーブランド「アンボアハンデン」を立ち上げ サンプリングで生み出すウィットなジュエリー

 1996年生まれの新鋭ラッパーHIYADAMが、ジュエリーブランド「アンボアハンデン(ANVORHANDEN)」を立ち上げた。ブランド名は、ドイツ語で存在や実在を意味する“VORHANDEN”と、英語で否定を意味する接頭辞“UN”を単数の“AN”に替えて組み合わせた造語。「欲しいと思うジュエリーがなかった」という実体験から、主張しすぎず生活になじみやすいリアリティーのあるアイテムをシーズンレスに展開するという。ファッションアイコンとしても注目を集めるHIYADAMが生み出す次世代のジュエリーブランドを、彼の経歴を振り返りながら探る。

WWDジャパン(以下、WWD):ラッパーになったきっかけを教えてください。

HIYADAM:母親の影響で幼い頃からブラックミュージックを聴いていて、R&Bが好きだったんですけど母親に「歌うのがへただからラップをしたら?」と言われたんです。それで中学生の頃から友人たちとラップを始めたんですが、日本一のフリースタイル高校生ラッパーを決める「BAZOOKA!!!高校生RAP選手権」の第1回と第2回をテレビで見て、「どうすれば出られるんだろう、俺の方がうまいのに」と思ったんです(笑)。それで軽い気持ちで第3回のオーディションを受けたら出場が決まり、優勝しました。

WWD:当時はかなりストリートテイストの服装でしたね。

HIYADAM:同世代の中では洋服に対する意識は高かったと思います。ただ、ブラックカルチャーが好きな1人の子どもとして彼らに憧れてまねしていただけなので、それをファッションとしては捉えていませんでしたね。

韓国のラッパーKid Milliによるヒット曲「WHY DO FUCKBOIS HANGOUT ON THE NET」をリミックスしたミュージックビデオ。「ラフ・シモンズ」や「マーティン ローズ」がリリックに用いられている

WWD:では、ファッションに目覚めたのは?

HIYADAM:上京してからのここ4年くらいです。自分で情報を得るようになったのもありますが、19〜20歳くらいからモデルとしての仕事をもらうようになって、モデルやファッション関係の友人が増えたんです。

WWD:ステレオタイプにとらわれず、数カ月で髪型やスタイルが大きく変わりますよね。

HIYADAM:ヒップホップって、時代を塗り替えたカニエ・ウェスト(Kanye West)やリル・ナズ・X(Lil Naz X)のように、いろいろなラッパーが音楽を吸収して進化させていくからおもしろいと思うんですよね。だから、人と違うことをすることでヒップホップ自体を新しくしていかなきゃいけない、みたいなのが僕の精神にもあって、それがファッションにも表れているんだと思います。それに、もともと人と同じことをするのが嫌いな性格だから、どんなファッションをしたら差別化できるかと考えてたどり着いたのがモードなラッパーだったんです。

NASTY MEN$AHがディレクションした「Brain」のミュージックビデオ。ファッションウイーク中に訪れたパリの街で撮影された

WWD:ミュージックビデオはどれもアーティスティックですが、ディレクションされているんですか?

HIYADAM:NASTY MEN$AHという札幌にいた頃からの相棒と2人でディレクションしています。小さい頃は工作が好きで、いまだにプラモデルを作ることもあるので、何かを作ったり表現したりするのが根っから好きなんです。

承認欲求より自己実現欲求を刺激するブランドに

WWD:「アンボアハンデン」の構想はいつからありましたか?

HIYADAM:2018年ごろからで、リングもネックレスも自分が欲しいと思うジュエリーがなかったことが一番大きいです。いわゆる武骨な“ゴリゴリ系”のジュエリーに興味がなくて、いざ欲しいものがあったとしても高価で、安価なものはシンプルなデザインすぎてつまらない。だから価格を抑えてデザイン的に尖ったブランドを自分で立ち上げようと思ったんです。

WWD:ターゲットは?

HIYADAM:年齢や性別に関係なく着けてもらいたいですが、若い世代に刺さらないと意味がないと思っています。彼らの間で「1個は持ってるよね」と、スニーカーを買うような感覚で「アンボアハンデン」のジュエリーを楽しんで欲しいです。また、これまで若い世代にジュエリーが広く浸透しなかった理由に価格の高さがあると思っているので、メイド・イン・ジャパンの高品質ながらリアリティーのある価格帯にしています。

WWD:なぜシーズンレスに?

HIYADAM:ラッパーはほかのアーティストに比べ、レコーディングしてからリリースするまでのスピードが速いんです。自身のファッション観と流行も3カ月や半年で変化していくので、そのスピード感と温度感をブランドでも保ちたかった。展示会でオーダーを受けてから生産し、手元に届くまでを従来のような流れで行っているとフレッシュ感が損なわれてしまうと考えたからですね。ファーストドロップは6型で、毎月2〜3型ずつリリースしていく予定です。

WWD:インスピレーション源は?

HIYADAM:今一番自分が欲しいものと、日常にあるものの形をジュエリーとしてかっこいいものへと昇華させるイメージで、ヒップホップでいうサンプリング(過去の楽曲や音源の一部を引用し、新たな楽曲を制作すること)の手法ですね。よくも悪くも、悪ふざけを本気で突き詰めていきたい。自身の楽曲でも、3日考えて書いたリリックよりも10分で書いたものの方が評価されることも多いんです。深く思考しすぎると共感者がいなくなってしまうから、ライトな着地点を目指します。大切なのは時間じゃないです。

WWD:ブランドのシグネチャーアイテムをイヤーカフにした理由は?

HIYADAM:過去にメンズのイヤーカフが欲しいと思ったときに見つからず、ウィメンズのものを着けていたことがあったんです。そもそもイヤーカフを着けている男性があまりいないのは、単純に手に入らず選択肢にないからだと考え、新しいスタイルとして提案していきたかったんです。今回のデザインを「ナイキ(NIKE)」の“エア フォース 1(AIR FORCE 1)”のようにブランドの定番にしつつ、別のイヤーカフも作っていきたいと思っています。

WWD:ラッパーというと、派手なジュエリーを想像しがちですが。

HIYADAM:ヒップホップには派手に着飾る文化があり、今でも根強く残ってはいます。でも最近は、海外を中心に男性らしい色気を持つエレガントなラッパーが現れ始めています。彼らのようなセクシーな男性には、主張しすぎないチラ見せのフェティズムがある「アンボアハンデン」のようなジュエリーが必要になっていくはずです。

WWD:今後の展望は?

HIYADAM:欲求は、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求の5段階あるといわれています。この中で「アンボアハンデン」を、承認欲求よりも高度な自己実現欲求を刺激するようなブランドにしていきたいです。他人に認められるよりもなりたい自分になれる、そんな人生が変わるよう体験を提供したいですね。

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仕事が絶えないあの人の、“こうしてきたから、こうなった”山下慶子ディセンシア社長

 転職はもちろん、本業を持ちながら第二のキャリアを築くパラレルキャリアや副業も一般化し始め、働き方も多様化しています。だからこそ働き方に関する悩みや課題は、就職を控える学生のみならず、社会人になっても人それぞれに持っているはず。

 そこでこの連載では、他業界から転身して活躍するファッション&ビューティ業界人にインタビュー。今に至るまでの道のりやエピソードの中に、これからの働き方へのヒントがある(?)かもしれません。

 連載第9回目に登場するのは、敏感肌専門ブランド「ディセンシア(DECENCIA)」の山下慶子社長です。旅行代理店に就職したのち、商社などいくつかの企業に派遣社員として勤務。3社目の派遣先であったポーラ・オルビスグループの傘下である「ディセンシア」で正社員となり、11年後に代表取締社長に抜擢されました。「派遣先は自宅からの近さで決めました」「キャリア願望はゼロでしたね」——そう穏やかに語る山下社長のお仕事遍歴に耳を傾けました。

WWD:大学卒業後に中国への留学を経験されたのですね。

山下慶子氏(以下、山下):地元である九州の女子大学を卒業後、北京清華大学に語学留学をしています。周りには欧米のほかに華僑や北朝鮮からの学生もいました。育ってきた環境や価値観が異なる相手と先入観抜きでコミュニケーションをする中に、多くの学びと発見がありました。何よりも、「個」として自分や周囲と向き合える環境が楽しかったし、うれしかったですね。それまで生まれ育ってきた中で、日本人にありがちな同調意識にどこか閉塞感を感じていたんだと思います。留学当初の私は、中国語を全くしゃべれませんでした。けれど「周りの学生たちとなんとかして話したい」と思ったんです。そう思うと、めきめきと上達し始めました。目的が見えると飲み込みが早いんですね。仕事でもそうですが、物事を始めるときに「何のために?」という目的を明示することの大切さは、この留学時代から学んだように思います。

WWD:それからの進路はどのように?

山下:留学中に時間を共にしていたのは、大きな夢や具体的な志を持っていた仲間ばかりでした。私は在学中に心理学を専攻していたので、大学院に進むことも考えましたが、周りの学生と比べるとそこまでの明確なビジョンはなかった。いったん仕事に就いて自立しようと決め、約2年を経た2000年の夏に日本に戻りました。

けれどその頃はまさに、就職氷河期真っただ中。私は新卒でもなければ職歴もなくて、正社員での就職口はないに等しい状況でした。そんな中、当時はまだベンチャーだった大手旅行代理店の契約社員採用枠が目に留まり、「留学経験が生かせるかもれない」と応募してみることに。それが、地元である九州の営業所にエントリーしたつもりが、実際には関東の営業本部への応募でした。そのことに後から気が付きまして(笑)。上京するつもりはなかったけれど、「こんなご時世だし、ひとまず受けてみよう」と、面接を受けることに。ありがたいことに採用が決まり、営業チームの中でも中国人顧客向けのセクションに配属されました。上司や周りは中国人や台湾人など外国人ばかり。チケットを売るといっても、街でビラを配るというような宣伝ではなくて戦略的で合理的。プロフェッショナルとは?成果を出すとは?ということをとことんたたき込まれました。

WWD:なるほど。

山下:営業成績は良かったですし、お客さまに旅という充実した時間を提供するというその仕事にやりがいも感じていました。けれど4年が過ぎた頃、「チケットを売り続けること以外の人生を歩みたい」と思ったんです。同時に「自分の頭の中に浮かぶイメージを絵にしたい!」とクリエイティブな欲が発動しまして。帰宅してから朝4時までペンを持ち、翌朝9時に出社するという毎日を過ごすようになりました。すると、仕事よりも絵を描くほうが楽しくなってしまい、旅行会社を辞めることに決めました。

その後、商社やIT関連企業で派遣社員として実務経験を積みました。プライベートでは、留学時代の親友が帰国したことをきっかけにルームシェアを始めました。私以外の3人の住人がその後、音楽でメジャーデビューすることになり、それをきっかけにミュージシャンやデザイナーたちが日々集まってはお酒を飲み交わすような暮らしでした。家に帰ると、「私が一番フツーだなぁ」と思っていましたね(笑)。

WWD:プライベートを優先するため派遣社員という働き方を選んだのですね。

山下:はい、「定時って天国だなぁ!」と。ですから業界にこだわりはありませんでした。その後「ディセンシア」で派遣社員として働くようになったのも、家から近かったという理由からです。派遣会社にもよると思いますが、当時交通費は支給されなかったので自宅と会社の近さも重要なポイントでした。敏感肌に特化したスキンケアブランド「ディセンシア」の立ち上げメンバーとして携わることになりました。

目の前に来たボールは全て拾っていく

WWD:最初はどんなお仕事を?

山下:07年の1月に株式会社化した「ディセンシア」に、同月から勤務をスタートしました。ブランドは同年9月にデビューしています。研究員でもあった社長、ポーラから出向していた2名の社員と私という4人でのスタートでした。決まっていたのは「敏感肌の全ての人を幸せにする」というビジョンと、「フェイスクリームとボディークリームの2アイテムでデビューする」ということ。私は研究発表用のポスターなどの印刷をすることもあれば、今後の出店のために他ブランドの店舗リサーチをしてまとめることも。徐々に「山下さんの意見も聞きたいのでミーティングに入ってください」と声がかかるようになりました。派遣社員として4カ月間働き、その後正社員となりました。

WWD:業務範囲が広がり、社員になることに抵抗はなかったのでしょうか。

山下:仕事に携わっていくうちに、「ブランドの創業から関わり試行錯誤しながら前に進む、そしてそれがマーケットに発信されてお客さまのもとに届く——それってすごくクリエイティブだ!」と感じ始めていました。

同時にこの頃から「肌が荒れることで女性がどういう気持ちになるのか」「それがもし多感な時期であれば人格形成にどのように作用するのか」といったことをとことん考えるようになりました。成分などのスペックの価値だけではなくて、提供する全ての価値によって人生に寄り添えるようなブランドでありたい——そう強く思うようになっていました。

WWD:スタートアップで少数のチーム。やることは山積みだったのでは?

山下:私自身は目の前に来たボールは、全て拾っていくというスタンスでした。とりあえずやってみて、走りながら考えてもなんとかなる、という経験を重ねてきました。しかし、未熟で経験が不足していたことで判断力が追いつかず、悩む時間が多かったですね。リーフレット作成の際に初めて“校正”という行為をしましたし、撮影の段取りが分からないときには広告代理店の方にこっそりアドバイスを仰いだり。3年ぐらいは、壁にぶつかって学んでいくという日々でした。

WWD:苦労を重ねながらも無事ブランドデビューを迎えたのですね。

山下:はい。とはいえ、当初の売り上げは微々たるもので。私たちが思い描いていたことはうまくいかず、「この事業に未来はあるのかな」という不安にメンバー全員が苛まれながら、日々の膨大な業務をしなくてはならない。まるで、小舟が大海に浮いているように不安定な状態だったと思います。

一番つらかったのは、「山下さんにブランディングを任せたい」と言われたとき。どこから手を付けていいのか見当がつきませんでした。社外からしてみたら、私が「ディセンシア」の担当なのにその場でジャッジができない。社内のチームも、一枚岩になっていないので主観の意見が乱立する。担当としてこの先どうやって先に進めばいいのか、と途方に暮れました。今でこそ冷静に分析できますが、「『ディセンシア』って誰のためのもの?」「どういう風に付加価値を差別化するの?」という方向性がバラバラだったからなんですよね。だからこそ、「ディセンシア」にしかない力強いコンセプトを決めなくてはならないのに、なかなか進まない……。08年ごろですかね。

WWD:その状況をどのように打開されたのでしょうか。

山下:正直、もう辞めたかったんです。これ以上は私の力が及ばない——そう思っていたら、2代目の「ディセンシア」社長として小林(小林琢磨・現オルビス社長)が異動してきました。体制が変わったと同時に、「ディセンシア」は商品の差別化軸でいく、というこの先の方針が一気に決まりました。自分たちの“現在地”はここで、これからどうすべきか、ということをロードマップとして示してもらえたんですね。やがて私はCRM(顧客関係管理)の専属として、既存のお客さまのマーケティングを担当するようになりました。業務も多く残業もありましたが、明確な目標が見えたことで、精神的にはそれまでよりずっと楽でしたね。

WWD:手応えを感じたのはいつ頃でしょう?

山下:14年に黒字化をして以降、ずっと売り上げが伸びています。ありがたいですし、うれしいことなのですが手放しで喜べないんです。前年比200%で伸びていたときも、です。それには、創業当時の苦労が大きかったこともありますが、代わりのブランドは他にもいくらでもある、という緊張感は常にありますね。変化しないほうが怖いですし、「明日じゃなくて今やろう!」というストイックさは社風としてもあるかもしれません。

WWD:18年に社⻑になられました。ポーラ・オルビスグループで派遣社員から社長への抜擢は初だったと聞いています。そのときのお気持ちを教えてください。

山下:「マジか!」と(笑)。すぐに「ありがたいことだ」思い直しましたが、「自分は現場の人間だ」という気持ちが強かったように思います。当時の私はCRM統括部長をしながら、ビジュアルなどのクリエティブにも関わっていました。“人もお金も”という経営の器ではない——そう感じていました。けれども、「キャリア志向ではなかった私のようなロールモデルが出ることは、後に続く人の参考になるかもしれない」と。「やってみてダメなら、『ダメでした』と言えばいい」と、いただいたチャンスに腹をくくることにしました。

WWD:「ディセンシア」のプレステージライン「ディセンシー(DECENCY)」が昨秋デビューしました。

山下:伊勢丹新宿本店リニューアルのタイミングで出店をしましたが、好調なスタートを切ることができました。付加価値の高い敏感肌ブランドということで、滑り出しは好調ですね。お正月にECで発売したエントリーキット(1万6000円)は、販売計画数が早々に完売し、急きょ追加販売をしました。実際に手で試すことができない通販、なおかつ初めて使う商品で1万円を超える価格というのはハードルが高いと思うんです。それでもたくさんの方が期待感を持ってご注文いただけということは、一つの自信になりました。

WWD:業種や立場が変わっていく中でも変わらずに大切にしているルールはありますか?

山下:「この組織で上を目指すぞ!」というよりも、「自分はどうしたら役に立てるんだろう?」という視点はずっと変わらないですね。これまでに派遣社員も部長も経験していますから、いろいろな立場を理解できると自負しています。そのときの気持ちを忘れちゃいけないと、経営者となった今ますます感じていますし、役割としての社長をやっているだけだと割り切るようにしています。

そしてもう一つ大切にしているのは、多様性に対しての耐性です。留学やいろいろな場所で仕事をしてきたことで、“自分の常識は常識じゃない”ということを身をもって学べたように思います。

アフターコロナの世界をポジティブに描く

WWD:山下社長にとっての「仕事」とは?

山下:社会で生きていく上での“役割”ですね。とはいえ、役割や社会の前提というのは時代ごとに変わっていくと思うんです。感度を高く保ちながら、仕事を通して社会に貢献できたらと考えています。社会の前提が変化する、という意味では新型コロナウイルスもそうですよね。今は、これまでの価値観が大きく変わる転換点だと感じています。確かにつらく不安な状況ではあるけれど、このことを“引き金”として、持続的な経済や働き方を強制的に突き詰める機会になったと捉えています。在宅勤務の期間は皆が等しくリモートですから、時短で働く女性社員も遠慮がいらないわけです。スタッフの待遇や働き方など、より良い方向へと加速できるチャンスとしたいですね。

スキンケアということにつなげると 、敏感肌ってストレスや女性のライフイベントにも大きく関わっているんですよね。敏感肌を見つめることは、今の社会を見つめることだと考えています。すると「今後のサステナブルな女性の働き方って?」「アフターコロナの新たな敏感肌悩みって何だろう?」と、課題が浮かび上がってきます。

この先は、デジタル上でのお客さまとのつながりをより強化したいと考えています。実は去年から、お客さまと私が一対一で行う「100人インタビュー」という取り組みを始めています。エリアで区切り、これまで累計27人のお客さまと直接お話をしてきました。けれど今はこのような状況ですので、オンラインでチャレンジしています。沖縄から北海道まで、物理的な距離を超えてお客さまとコミュニケーションできる貴重な機会です。

WWD:最後に、キャリアチェンジを考えている人、そしてコロナ禍で苦境に立たされている人にエールをお願いいたします

山下:何歳であっても自分の可能性は“ここまで”と決め付けずに、チャレンジにワクワクしてほしいなと思います。私もこれからまたキャリアが変わるかもしれません(笑)。若いうちであれば、たくさんの人に会い、その中で出会った人の良いところはまねをして、悪いところは反面教師にして。その全てが学びになると思います。私個人の人生を振り返ると、どの会社に入るかということよりも、誰と出会って仕事をするのかの方が大きかったように思います。

コロナの影響で今は、「前に進みたくても進めない」「時間だけがあって不安」という気持ちもあると思うんです。けれどインプットに思い切り使うことのできる貴重な時間です。この状況を客観的に捉えながら前向きに過ごせるといいですよね。究極、生きているだけで丸もうけですから!

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連載「今、デザイナーができること」Vol.12 幾左田千佳「発表のサイクルを見直してアウトプットの質を上げていく」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は2007年に「レキサミ(REKISAMI)」、14年に「チカ キサダ(CHIKA KISADA)」を立ち上げてクリエイションを続ける幾左田千佳デザイナーが、既存のファッションサイクルに疑問を投げかける。

CHIKA KISADA

幾左田千佳デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A. 気軽に外出し、装うことができなくなり、ファッションを楽しむことが精神の豊かさに直結していたことをあらためて実感した。今のファッション業界はクリエイションの発表サイクルがとても短かい。インプットとアウトプットのバランスが悪いことにずっと違和感を覚えていた。自由に動けない今こそ発表サイクルを見直し、アウトプットの質を上げていきたい。次のコレクションはパリと東京で9月に発表を予定しているので、その方法も含めてセールスとコミュニケーションを取っていく。

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新型コロナ禍でも美容業界のサステナビリティは加速か クリーンビューティを取り入れる各社の取り組み

 近年SDGs(持続可能な開発目標)や企業評価の指標であるESG(環境・社会・ガバナンス)が注目を浴び、企業はサステナビリティ施策などを進めてきた。新型コロナ禍でもESGは優良な投資基準で、投資信託会社モーニングスターによると、世界の投資家は新型コロナ禍にあった1〜3月期の間もESGファンドに456億ドル(約4兆8336億円)を投入したという。

 これは新型コロナウイルスの影響で、雇用や労働者への手当てを含む社会課題が重視されたことが大きな要因だ。しかし環境問題の比重も依然として大きく、ロレアル(L’OREAL)のサステナビリティ計画「シェアリング ビューティ ウィズ オール(Sharing Beauty Will All)」を2013年に立ち上げたアレクサンドラ・パルト(Alexandra Palt)=エグゼクティブバイスプレジデントは、「新型コロナは生物多様性の損失に絡んでおり、気候変動問題や環境問題に取り組んでいかなければこの危機が繰り返されることがわかっている。政府や企業が古いシステムに戻ろうとすれば、社会、特に若者たちはそれを受け入れない」と、消費者の問題意識の高さを指摘する。また、「サステナビリティは消費者にとってより重要となる。(新型コロナの)危機の前からすでに優先事項だったからで、パンデミックはこの動きを加速させるだけだ」と語った。

 非営利団体のカーボンブリーフ(CARBON BRIEF)が発表したレポートでは、新型コロナが猛威を奮った2月の中国では、二酸化炭素排出量が年末年始の2週間と比較して、25%以上減少したという。こういった環境問題の改善は世界的に見られ、国際エネルギー機関(IEA)によると今年、世界の二酸化炭素排出量は前年比で8%減少するという。こういったニュースは、消費者も環境問題を自分ごと化する機会となっている。

 環境問題への意識の高まりに反して、出遅れているのが美容業界だ。イギリスの意識向上キャンペーン「ゼロ ウェイスト ウイーク(Zero Waste Week)」によると、化粧品業界は年間約1200億個のプラスチック含有パッケージを生産しているという。またカラー化粧品などは、リサイクルできないミラーや磁石などで作られるため、ほとんどが埋め立てで廃棄される。

 ユーロモニター(EUROMONITOR)によればアメリカで1年間(18年)に79億個のプラスチックパッケージが美容・パーソナルケア製品として棚に並んだといい、アメリカの環境保護庁は埋め立て廃棄物の3分の1は美容業界からのものだと指摘している。このようなプラスチックパッケージの問題のみならず、製造から運搬で排出される二酸化炭素や水の消費、配送ボックスやサンプルパウチに至るまで、課題は山のようにある。

 そういった中で、サステナビリティに対する消費者の目は厳しくなっている。美容業界に関するさまざまな問題を取り上げるインスタグラムアカウント、「エスティランドリー(@esteelaundry)」は度々サステナブルでないブランドをやり玉に挙げており、「パット・マクグラス ラボ(PAT MCGRATH LABS)」は配送用の過剰な緩衝材が無駄だと炎上した。また米美容専門店ウルタ(ULTA)は、従業員が自身のティックトック(TikTok)アカウントで製品の廃棄法を暴露。返品された商品は未使用のものであっても粉々にして破棄すると明かしたビデオが批判を呼んだ。

容器からクリーンビューティまで、企業の新しい取り組み

 企業もこのような課題に対し、続々と対策を打ち出している。資生堂はこれまで多くの環境配慮型パッケージを生み出しており、「ハク(HAKU)」は2011年から美白美容液「HAKUメラノフォーカス」でレフィル販売を行っている。これにより本体容器と比べてプラスチック量を60%(発売後1年間で約19トン)削減できるという。また「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」は美容液「コンサントレイリュミナトゥール」の容器を14年にガラスからプラスチックに変更したことで重さを90%減らし、1商品あたりの二酸化炭素を60%削減した。さらに15年から飲料用ペットボトルのリサイクルペット樹脂を「シーブリーズ(SEABREEZE)」のボディーシャンプー容器に使用。昨年4月にはカネカと共同開発の生分解性パッケージを導入。そして20年初夏には木材の再利用パッケージやレフィル商品を投入するなどして、環境保護を掲げる新ブランド「バウム(BAUM)」をローンチする。

 「WWDビューティ」5月14日号でも取り上げたが、欧米ではサステナビリティの意識の高まりやウエルネストレンドの成長に伴い、健康や環境に害のない成分を使用し、環境と社会に配慮したクリーンビューティのトレンドが拡大している。このトレンドは新型コロナ禍でも根強い支持を受けており、調査会社のNPDグループ(NPD GROUP)によると、今年の美容の売り上げが新型コロナの影響で14%減となっているのに対し、プレステージクリーンビューティは11%増となったという。

 クリーンビューティブランドの多くも危機感を持って取り組んでおり、「タタ ハーパー(TATA HARPER)」はマイクロビーズの代わりにフルーツベースの自然な角質除去剤を用い、「レン クリーン スキンケア(REN CLEAN SKINCARE)」は海洋プラスチックごみを使用したリサイクルプラスチック容器を採用する。また「オワ ヘアケア(OWA HAIRCARE)」は容器や輸送のコストを減らすため、水で戻せる粉シャンプーを販売している。

 しかし一方で、完全に廃棄をなくすことは難しく、クリーンビューティ専門店のクリード(CREDO)は「(消費者は)“廃棄物ゼロ”の美容製品を求めているが、それは大きな目標だとめつつ、完全にゼロにするのは難しい。美容業界で本当に廃棄物ゼロにすることは、不可能ではないにしても困難だ。化粧品の大半がプラスチック容器に入っており、リサイクルされるプラスチックは10%未満だ」と現状を語る。

 今後さらに高まっていく消費者と投資家からの環境問題とサステナビリティへの注目に、企業はどう応えていけるのだろうか。

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スワロフスキー・クリスタルの輝きを宿した 「エレガンス」の限定コンパクト


 フランス発コスメ「エレガンス コスメティックス(ELEGANCE COSMETICS 以下、エレガンス)」の「ラ プードル オートニュアンス」は登場以来、肌に透明感と輝きを与え続けてきたロングセラーのフェイスパウダーだ。同アイテムは今年誕生30周年。それを記念し、「エレガンス」はオーストリア発プレミアムクリスタルブランドである「スワロフスキー(SWAROVSKI)」のクリスタルを使用し、限定パッケージを開発した。スワロフスキー・クリスタルが限定パッケージにジュエリーのような輝きを添えて、30周年を祝福しているかのようだ。

30年変わらず肌に輝きを与える
「ラ プードル オートニュアンス」

 「エレガンス」のブランドの象徴ともいえる「ラ プードル オートニュアンス(以下、プードル)」は5色のペールカラーが肌に透明感や明るさを与えるだけでなく、毛穴をカバーして肌のきめを整えるフェイスパウダーだ。化粧くずれや、くすみ、てかりを抑えて美しい仕上がりが長時間続くため、多くの女性から高い支持を得ている。エレガント、フェミニン、ナチュラルなど、なりたい印象で選べる6種類のカラーバリエーションと上品で洗練されたフローラルムスキーの香りも魅力だ。

 この限定パッケージは、30年間女性を輝かせて感動を与えてきた「エレガンス」の「プードル」と、1895年創業と長い歴史を持ちながら革新的に進化し続けるスワロフスキー・クリスタルの輝きとが融合したもの。このクリスタルは企業向けにサービスを提供するスワロフスキー・プロフェッショナル事業部(以下、スワロフスキー・プロフェッショナル)が担当した。 「プードル」の30周年記念パッケージには、厳選されたクリスタルを用いて、「エレガンス」のロゴをウルトラファインロックスというファブリック状のクリスタルで施した。一つ一つ丁寧に仕上げられたクリスタルが輝くパッケージは、手にするだけで優雅で華やいだ気分になるとともに、「プードル」を使うことへの期待を高めてくれる。

世界で‟ただ一つ“を可能にする
スワロフスキー・プロフェッショナル

スワロフスキー・プロフェッショナルでは、「スワロフスキー」ならではの輝きと圧倒的なSKU数のクリスタルをそろえている。そのため、さまざまな業種のお客さまのニーズに合わせたクリスタルの選択やデザイン、そして、その輝きを最大限に生かす特別な技法によって世界で唯一のオリジナルアイテムの製作も可能だ。ファッションやジュエリー企業をはじめ、さまざまな業界でもスワロフスキー・クリスタルが使用されている。また、スワロフスキー・クリスタルはエンターテインメントの世界においても多くの著名なアーティストのステージ衣装やステージ装飾などに使用されており、その輝きはパフォーマンスを一層華やかに彩っている。

あらゆるビジネスを輝かせる
スワロフスキー・クリスタル

 スワロフスキー・クリスタルは、多くのファッションやジュエリーブランドだけでなく、「エレガンス」などの化粧品ブランドや「メルセデス・ベンツ(MERCEDES-BENZ)」「ビーエムダブリュ―(BMW)」などの自動車ブランド、飲料ブランドなどさまざまな業種でも使用されている。自動車のパーツ、化粧品や飲料のパッケージのデコレーションをはじめ、周年記念やインセンティブ向けギフトなど法人向けのギフト需要にも対応。スワロフスキー・プロフェッショナルではスワロフスキー・クリスタルを使った商品企画やデザインといった初期段階における提案から、パッケージを含むOEM、ODMまで幅広く手がけている。豊富なクリスタルのバリエーションとデザイン力、顧客のニーズに応える技術力と柔軟さにより、あらゆるビジネスに輝きを添えている。

クリスタル事業に関する問い合わせ先
スワロフスキー・ジャパン(スワロフスキー・プロフェッショナル事業部)
03-3262-3012

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連載「今、デザイナーができること」Vol.11 中嶋峻太&川瀬正輝「ファッションはコミュニケーション、社会と積極的に関わり貢献したい」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、「WWDジャパン」がファッション界の次世代を担う人として「ネクストリーダー」に選出した、「オールモストブラック(ALMOSTBLACK)」の中嶋峻太デザイナーと、「プロダクト オールモストブラック(PRODUCT ALMOSTBLACK)」の川瀬正輝デザイナーが登場。

ALMOSTBLACK
中嶋峻太デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A.このような状況でも取引先から注文があり、生産も滞ることなく進んでいる。2021年春夏シーズンは影響がさらに拡大することが予想されるので、取引先や生産者の負担が少しでも減るような仕組みを考えたい。僕もこれまで服に魅了され、幸せをもらってきた。だから顧客も含めて、「オールモストブラック」に携わる全ての人が幸せになれるように服を作り続けていきたい。

PRODUCT ALMOSTBLACK
川瀬正輝デザイナー

A.ファッションの魅力はコミュニケーションが生まれること。デザイナーは人と人がつながることでよりよい物作りが生まれる過程を体験できるし、自分自身も服を通じて社会とつながることができる。こんな状況だからこそ社会と積極的に関わり、貢献したい。少しでも人々を幸せにしたい。ファッションを通じて人々を前向きにし、今の状況を乗り越える手助けができると信じている。

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ヘアサロンの在り方が変わる 「アッシュ」吉原会長が提言「美容室は医療関連に次ぐ“第2フェーズ”である自覚を持つべき」

 大手ヘアサロンの中には、当初緊急事態宣言が解除される予定だった5月7日から営業を再開したサロンも多い。「アッシュ(ASH)」など300店舗超の多様な美容サロンを国内外に展開するアルテ サロン ホールディングスも、新型コロナ対策に細心の注意を払ったオペレーションを構築したうえで、全店(一部商業施設内の店舗を除く)で営業を再開した。しかし、全てがもと通りというわけではなく、予約のとり方や提供するメニューは限定的だ。徐々にもとに戻していく予定ではあるものの、吉原直樹アルテ サロン ホールディングス会長は、「これを機にヘアサロンの在り方は変わる、変えるべきだ」と話す。その言葉の真意を探ってみた。

WWD:営業再開を5月7日にした理由は?

吉原直樹(以下、吉原):理由というか、当初の計画通りに進めているだけです。そもそも美容室は休業要請の対象に入らず、「日常生活で必要」とされた業種。それでも感染のピークの時期を避ける形で、当社では4月9日から全店で休業をしてきました。ここ最近の感染者数の推移や、徹底した衛生管理を組み込んだ独自のオペレーションが完成したこと、それにお客さまの身だしなみを整える責任など、総合的に考えて再開を決めました。

WWD:美容室に休業要請を出すか否かで行政の判断は遅かった。

吉原:もたついていましたね。今も疑問に思うことは多いです。行政は美容業を公衆衛生の業種に位置づけているのだから、行政が衛生管理の指針を示すべきで、企業や個人に委ねるべきではないと思っています。そもそも美容所における衛生管理の要領は、戦後に結核などの伝染を防ぐために設けられたもので、ある意味今のような状況を想定したものといえます。そのことを組合あたりが適切にアナウンスしてくれたら、もっとスムーズに営業のお墨付きをもらえたとも考えらますね。

WWD:要綱には消毒なども規定されている?

吉原:店舗面積や美容器具の消毒などが規定されています。しかし伝染病がなくなるにつれ、次第に消毒の必要性の認識は薄れていきました。美容室にはファッションや技術といったクリエイティブな側面と、その土台となる公衆衛生という2つの側面がある。近年はファッションの側面のみがフィーチャーされ、公衆衛生の側面が置き去りにされてきました。批判するわけではありませんが、シャンプーをしない専門サロンが登場したことはその一例だと思います。髪はよく手で触るのでウイルスが付着しますが、シャンプーの界面活性剤によって大半のウイルスは流れるんです。われわれは今一度原点に立ち返り、美容室の在り方を変え、両側面のプロであることを自覚する必要があります。

WWD:たしかに、衛生に関して美容学校では勉強するけれど、就職すると技術の習得が優先になる傾向が否めない。

吉原:美容師は国家資格で、学科試験には衛生法に関する問題もあり、試験内容の3分の1程度は看護師の試験と同じなんです。そのレベルの国家試験を受けているということに立ち返らないといけない。今、看護師は命を懸けて新型コロナと闘い、社会的に称賛されています。そうした医療関連が第1フェーズだとすれば、美容室は第2フェーズなんです。さすがに“命を懸けて”は大げさですが、それでも感染していて症状のないお客さまが来店される可能性は十分あります。でもわれわれには、髪をさっぱりさせて衛生的になっていく気持ち良さ、きれいになっていく喜び、身だしなみを整えて心機一転する機会をお客さまに提供する義務があります。実際、“自粛が解除されてまず行きたい場所”に美容室を挙げる人も大勢います。そうした思いに対して、衛生面で完璧なオペレーションで応えることができれば、美容室の社会的地位が上がるターニングポイントにもなると思います。

WWD:使うたびにハサミやガウンを消毒するなど、完璧なオペレーションにはコストもかかるが。

吉原:だからこそ美容室には適正価格があり、闇雲な安売りはできないんです。公衆衛生に関する業種で営業するからには、公衆衛生の面で責任を持たなくてはいけない。そのために保健所から営業許可証をもらい、経営者が責任をとるようになっているんです。そこで1つ気がかりなのが業務委託サロンなどの形態では、1施設の中で責任をとれるのは1人だけであるにも関わらず、技術者個人が何人も集まって仕事をしているので、責任の所在があいまいな部分があると思います。個々のお店のスタッフ皆が一丸となって衛生面を徹底させ、お客さまに安心してもらえるシステムを作ることが、今は一番大切なのではないでしょうか。

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ヘアサロンの在り方が変わる 「アッシュ」吉原会長が提言「美容室は医療関連に次ぐ“第2フェーズ”である自覚を持つべき」

 大手ヘアサロンの中には、当初緊急事態宣言が解除される予定だった5月7日から営業を再開したサロンも多い。「アッシュ(ASH)」など300店舗超の多様な美容サロンを国内外に展開するアルテ サロン ホールディングスも、新型コロナ対策に細心の注意を払ったオペレーションを構築したうえで、全店(一部商業施設内の店舗を除く)で営業を再開した。しかし、全てがもと通りというわけではなく、予約のとり方や提供するメニューは限定的だ。徐々にもとに戻していく予定ではあるものの、吉原直樹アルテ サロン ホールディングス会長は、「これを機にヘアサロンの在り方は変わる、変えるべきだ」と話す。その言葉の真意を探ってみた。

WWD:営業再開を5月7日にした理由は?

吉原直樹(以下、吉原):理由というか、当初の計画通りに進めているだけです。そもそも美容室は休業要請の対象に入らず、「日常生活で必要」とされた業種。それでも感染のピークの時期を避ける形で、当社では4月9日から全店で休業をしてきました。ここ最近の感染者数の推移や、徹底した衛生管理を組み込んだ独自のオペレーションが完成したこと、それにお客さまの身だしなみを整える責任など、総合的に考えて再開を決めました。

WWD:美容室に休業要請を出すか否かで行政の判断は遅かった。

吉原:もたついていましたね。今も疑問に思うことは多いです。行政は美容業を公衆衛生の業種に位置づけているのだから、行政が衛生管理の指針を示すべきで、企業や個人に委ねるべきではないと思っています。そもそも美容所における衛生管理の要領は、戦後に結核などの伝染を防ぐために設けられたもので、ある意味今のような状況を想定したものといえます。そのことを組合あたりが適切にアナウンスしてくれたら、もっとスムーズに営業のお墨付きをもらえたとも考えらますね。

WWD:要綱には消毒なども規定されている?

吉原:店舗面積や美容器具の消毒などが規定されています。しかし伝染病がなくなるにつれ、次第に消毒の必要性の認識は薄れていきました。美容室にはファッションや技術といったクリエイティブな側面と、その土台となる公衆衛生という2つの側面がある。近年はファッションの側面のみがフィーチャーされ、公衆衛生の側面が置き去りにされてきました。批判するわけではありませんが、シャンプーをしない専門サロンが登場したことはその一例だと思います。髪はよく手で触るのでウイルスが付着しますが、シャンプーの界面活性剤によって大半のウイルスは流れるんです。われわれは今一度原点に立ち返り、美容室の在り方を変え、両側面のプロであることを自覚する必要があります。

WWD:たしかに、衛生に関して美容学校では勉強するけれど、就職すると技術の習得が優先になる傾向が否めない。

吉原:美容師は国家資格で、学科試験には衛生法に関する問題もあり、試験内容の3分の1程度は看護師の試験と同じなんです。そのレベルの国家試験を受けているということに立ち返らないといけない。今、看護師は命を懸けて新型コロナと闘い、社会的に称賛されています。そうした医療関連が第1フェーズだとすれば、美容室は第2フェーズなんです。さすがに“命を懸けて”は大げさですが、それでも感染していて症状のないお客さまが来店される可能性は十分あります。でもわれわれには、髪をさっぱりさせて衛生的になっていく気持ち良さ、きれいになっていく喜び、身だしなみを整えて心機一転する機会をお客さまに提供する義務があります。実際、“自粛が解除されてまず行きたい場所”に美容室を挙げる人も大勢います。そうした思いに対して、衛生面で完璧なオペレーションで応えることができれば、美容室の社会的地位が上がるターニングポイントにもなると思います。

WWD:使うたびにハサミやガウンを消毒するなど、完璧なオペレーションにはコストもかかるが。

吉原:だからこそ美容室には適正価格があり、闇雲な安売りはできないんです。公衆衛生に関する業種で営業するからには、公衆衛生の面で責任を持たなくてはいけない。そのために保健所から営業許可証をもらい、経営者が責任をとるようになっているんです。そこで1つ気がかりなのが業務委託サロンなどの形態では、1施設の中で責任をとれるのは1人だけであるにも関わらず、技術者個人が何人も集まって仕事をしているので、責任の所在があいまいな部分があると思います。個々のお店のスタッフ皆が一丸となって衛生面を徹底させ、お客さまに安心してもらえるシステムを作ることが、今は一番大切なのではないでしょうか。

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ポストコロナで中国のラグジュアリー市場が再活性化 各ブランドの戦略は?

 新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きを見せ始めている中国では、ラグジュアリー市場が再び活性化している。各ブランドは比較的手が届きやすい価格帯のアイテムで消費者を引きつけるか、またはより高価でアイコニックなハンドバッグで勝負するべきなのか――そのどちらの問いに対しても答えはイエスのようだ。

 中国では4月に都市封鎖が解除されて以降、「シャネル(CHANEL)」のショップに入店を待つ人びとが行列をなす様子は珍しいものではなくなった。しかし5月10日、同ブランドが翌日から販売価格を大幅に引き上げるといううわさがSNS上で広まり、中国全土の店舗では前代未聞の売上高を記録する事態となった。

 中国で人気のSNS型ECアプリ「シャオフォンシュウ(Xiaohongshu、小紅書、通称RED)」のユーザーたちは、北京、上海、広州、杭州の各都市で人びとが「シャネル」に殺到する様子を紹介した。あるユーザーの話では、店内の混雑により会計を済ませるのに1時間以上待ったということだ。

 ハンドバッグ専門のウェブサイトによると、同ブランドのバッグ“スクエア ミニ”はブラックラムスキンの価格が2995ドル(約31万7470円)から27.4%アップの3815ドル(約40万4390円)に、また“ミニ フラップ バッグ”は24.5%値上げされるという。

 情報筋によると、フランスでは5月7日に価格が引き上げられ、欧州のほかの都市では5月11日に、米国では5月25日にそれぞれ新価格が適用されるという。この件に関して「シャネル」からの回答はまだ得られていない。

 また「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は、3月に3%、5月はさらに5%と、過去3カ月間で2度の値上げを実施した。これにより、同ブランドで人気の高い“ポシェット・メティス(Pochette Metis)”のモノグラムバッグは、新型コロナウイルスの流行前と比べて150ドル(約1万5900円)ほど値上げされたことになる。

 「プラダ(PRADA)」と「グッチ(GUCCI)」では、現在のところ価格の改定を行う予定はないという。

 新型コロナのパンデミックにより、各ラグジュアリーブランドは欧州と北米の店舗で約2カ月間の休業を実施した。各社の株価は急落し、ニーマン マーカス グループ(NEIMAN MARCUS GROUP)やJ.クルー グループ(J.CREW GROUP)、トゥルー・レリジョン(TRUE RELIGION)では日本の民事再生法に当たる米連邦破産法第11条の適用を申請するまでの事態となった。

 一大ラグジュアリー市場でもある中国では国民の生活がゆっくりともとに戻り始めており、各ブランドは新型コロナで被った損失を取り戻すためのさまざまな戦略を実施している。

 「シャネル」や「ルイ・ヴィトン」が人気アイテムの値上げを実施したように、「ディオール(DIOR)」「グッチ」「プラダ」「エルメス(HERMES)」などのブランドでも中国マーケットを重視して、比較的手の届きやすい価格帯の商品を中心に大きな動きを見せている。

 「ディオール」のビューティラインでは、コスメ商品のアンバサダーとして女優のズーウェン・ワン(Ziwen Wang)を、スキンケアライン“カプチュール・トータル(Capture Totale)”の看板としてジンヤン・ウー(Jinyan Wu)をそれぞれ中国向けのキャンペーンモデルに起用した。

 「ディオール」はこれまでに販促の一環として、中国版ツイッターのウェイボー(微博、WEIBO)など、オンライン上で多くのフォロワーを抱える中国人セレブリティーたちをキャンペーンモデルとして積極的に起用してきた。フォロワー数で見ると、上位6人のアンバサダーが抱えるフォロワーを合わせただけでも合計2億5000万人に及ぶ。これにより、スキンケアや香水、アクセサリーなど低価格帯のカテゴリーでは、他ブランドよりも圧倒的に多い売上高を達成できることになる。

 一方で「グッチ」と「プラダ」は、中国の“520”という5月20日のネット・バレンタインデーに、定番のアイテムや低価格帯の商品にスポットを当てたキャンペーンを実施した。中国語では「5月20日」の発音と「あなたを愛しています」の発音が似通っている。“520”は、本来の2月14日のバレンタインデーや、織姫と彦星が年に一度だけ会うことが許されるという七夕の日ほどには重要視されていなかったが、新型コロナによって当初の計画が狂わされたこともあり、“520”は中国での愛にまつわる日として大々的に販促活動が行われた。

 「グッチ」はブランドのアンバサダーとして歌手のクリス・リー(Chris Lee)や女優のニニ(Nini)、人気アイドルで俳優のルハン(Lu Han)、女優のソン・ヤンフェイ(Song Yanfei)やそのほか4人を起用して、「グッチ」のモノグラムの製品にスポットを当てた屋外広告を打った。このキャンペーンを中国の主要なSNSに向けても徐々に展開し、SNSごとに少しずつ異なるビジュアルや切り口でエンゲージメントを高める狙いだ。このキャンペーンでキーアイテムとなるのは“ディオニュソス(Dionysus)”“1995 ホースビット(1995 Horsebit)”“GGモーマント(GG Marmont)”“オフィディア(Ophidia)”などのアイテムだ。

 「プラダ」がブランドの顔として起用しているタレントのツァイ・シュクン(Cai Xukun)とともに実施した“520”のキャンペーンは、オンライン上で功を奏した。ウェイボーでのツァイによるキャンペーン関連投稿には158万のいいねが付き、“#Prada520”のハッシュタグ数は4億3000万に上る。

 ウィーチャット(微信、WeChat)上の「プラダ」のミニプログラム・ストアでは、“520”のコレクションから3種類のバッグやサングラス、バックル付きの帽子、ブレスレットなど、2200人民元(約3万3000円)から1万3000人民元(約19万5000円)の価格帯で6つのアイテムが完売している。

 そして、両方の戦略を取り入れたのが「エルメス」だ。ひと月前に営業を再開した広州のショッピングモール、タイクーフイ(Taikioo Hui、太古匯)にある旗艦店では、レアアイテムとも言える“バーキン(Birkin)”のバッグを大量に入荷し、再オープン初日に少なくとも1900万元(約2億8500万円)の売り上げを記録した。また“520”のキャンペーンの一環として、ウィーチャットにミニプログラム・ストアも立ち上げ、シルクのスカーフやベルト、イヤリング、サンダル、ベビー用のぬいぐるみ、“ケリー(Kelly)”の財布などより手ごろな価格帯の製品にスポットを当てている。

 また「ルイ・ヴィトン」は、ライブ配信で有名な中国人のオースティン・リー(Austin Li)とタッグを組み、「シャオフォンシュウ」でフレグランスのコレクションを売り出した。近々さらなるキャンペーンも開始される予定だ。

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小島健輔リポート アパレルの過剰供給は終わる 「ポスト・アポカリプス世界」のアーカイブMD

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。新型コロナウイルスの感染被害の少ない地方では小売店の営業再開の動きが見られるようになった。だが、コロナショックは人々の価値観の根底から揺さぶり、これまでのような消費環境には戻らないかもしれない。

 コロナ・パンデミックは現代文明を緊急停止させて大恐慌以来という混乱を引き起こしているが、収束しても消費もライフスタイルも経済ももとには戻らないだろう。ならばポスト・アポカリプス世界の遺民文明・遺民消費へ、ファッション業界は根底から発想を切り替える必要がある。

ポスト・アポカリプスの世界

 「アポカリプス」とは壊滅的な災害や戦争によって文明が崩壊することを指し、「ポスト・アポカリプス」とは黙示録(アポカリプス)後の世界を意味する。古くは「タイム・マシン」や「メトロポリス」、「ブレードランナー」や「マッドマックス」、近くは「風の谷のナウシカ」や「少女終末旅行」などSFやアニメで散々描かれてきた世界だが、まさか現実になるとは誰もが思いもしなかっただろう。

 そんなポスト・アポカリプス世界に共通するのが、文明の遺産を修理して再生したり部品をつなぎ合わせて細々と生きていく遺民の姿だ。宮崎駿の描く世界はビクトリア朝スチームパンクが色濃いし、ウィリアム・ギブソン(William Ford Gibson)の名作「ニューロマンサー」に発するサイバーパンクは「ブレードランナー」や「マトリックス」などデジタル文明崩壊後の世界を描いている。はやりの異世界転生ものアニメ、コミックやネトゲも大概がスチームパンクだし、コスプレの多くやゴスロリもその産物だ。
それはSFの世界だけではない。1959年の社会主義革命以降のキューバでは50年代米国文明の遺物を修理して使い続けているし、経済が破綻した中南米のいくつかの社会主義国もキューバ化しつつある。

 私は文明論を語ろうとしているのではない。われらファッションビジネスがポスト・コロナ世界でたどるであろうエシカルなリメーク・リサイクルMDとアーカイブMDを語ろうとしているのだ。

クリエイションはすでにポスト・アポカリプスに染まっている

 毎シーズン、華やかに繰り広げられてきた世界のコレクションシーンだが、著名なエディターやジャーナリストは「××年代の○○スタイルをほうふつさせる」「××エイジの○○デザイナー作品へのオマージュ」などと解説することが少なくない。トレンド分析の専門家たちは「60年代スウィンギング・ロンドン」とか「90年代NYストリート」とか、過去のデザインやスタイリングと照らし合わせて次シーズンを占うのが常套手段だから、クリエイションはすでにポスト・アポカリプスとなって久しいのだろう。

 「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」など著名クリエイターではアーカイブが新作と並んで評価され、自らコレクションでリメイクすることもあるし、アーカイブをサルベージして販売することもある。「ブルーレーベル(BLUE LABEL)」など今や幻となった三陽商会のバーバリー派生ブランドなどアーカイブ商品として根強い人気を保っているし、「スターブリンク(STARBLINC)」なんてキュートな60年代レトロフューチャーをコンセプトとするブランドもあるぐらいだ。

 コレクションシーンは90年代初期、ストリートシーンも2008年までで新たなクリエイションはほぼ途絶え、以降は過去の作品をフィットを変えてリメークしたり分解・再構築して新作としている感があるから、バブル崩壊とリーマンショックを経て現代ファッション文明は創造力を失ったのかもしれない。ならば、世界のファッション産業とクリエイターが壊滅的な打撃を受けたコロナ・パンデミックが契機となってポスト・アポカリプスの世界に転じたとしてもなんの不思議もあるまい。

過去や外界との編集や合作が問われる

 クリエイションがポスト・アポカリプスの世界に転じたとしたら、新作の過去のソースへの依存が一段と強まるばかりか、過去の作品のデッドストックやユーズドが新作と同列に評価・選択されるのが当り前になる。

 時間というゆりかごで熟成されたデッドストックやユーズドと比較されれば、コスト優先の量産スペックで作られ薄味で割高になった近年の商品は分が悪い。非効率な流通で値引きと売れ残りのロスがたっぷり上乗せされた新作の価格は、かつての売価から大幅に値引かれたデッドストックやユーズドに太刀打ちできない。となれば、ブランドメーカーは新作の開発・生産を抑えてデッドストックやリメーク、ひいてはユーズドをMDに組み込むだろうし、小売店も新品と旧品(デッドストック)、古品(ユーズド)をミックスする品ぞろえに移行するだろう。

 「コム デ ギャルソン」は“アーカイヴ・コラボ・シンプル”を謳う「CDG」やドーバーストリートマーケット(DOVER STREET MARKET)でのさまざまな試みでポスト・アポカリプスを先取りしてきたし、自社のデッドストックをコーディネイト編集してセット販売するバロックジャパンのECサイト「アウネ(AUNE)」など、アーカイブMDは身近なブランドにも広がりつつある。

 ビンテージ商品はブランデーなど時間をかけて熟成するスピリッツの世界では当たり前だから、ファッションの世界でも熟成した頂点のブランドからビンテージ・リメークやプレミアム・アーカイブ、アプルーバル・ユーズドが広がっていく。そこで求められるのは、品ぞろえからスタイリング提案まで時空を超えた感性と編集力、品質管理力であることはいうまでもない。ポスト・コロナ世界で店舗販売がECに勝ろうとするなら、C&Cと並んで新旧・新古の編集ミックスが突破口となるのではないか。

 その一方で、化粧品や医薬品、ITやロボティクスなど、異分野との合作もこれまでになく広がっていくだろう。往時のようにファッション側が感性でアドバンテージを取るのではなく、異分野側のテクノロジーやプラットフォームに乗ることが多くなるのではないか。防染性能が疑わしいファッションマスクがブームとなるなど(ウイルス防止のPFE規格まではともかくVFE規格は満たさないと実用性がない)、いまだ異分野のテクノロジーやノウハウを軽んじる風潮が残るファッション業界だが、このままでよいはずがない。

 ファッションメーカーが異分野メーカーや消費者より高感度だという錯覚は、ポスト・アポカリプス世界では思い込みでしかないし、付加価値を乗せる根拠ともならない。文明の遺産を繕う遺民として、目線を同じくして手を携えるべきだろう。

※C&C(クリック&コレクト):EC商品を店舗で渡したり店舗から近隣に宅配したり、店舗に取り置いてお試しや返品の利便を提供するOMO(オンラインとオフライン一体の)態勢

アパレルの過剰供給もついに終わる

 この秋冬期では持ち越しの春物やデッドストックとの継ぎ足しMDが広がるから新商品の供給は大きく絞られ、慢性化していたアパレルの過剰供給もついに終焉する。

 深手を負ったアパレル業界には秋冬商品を仕込む資金的余裕がなく、失業は免れても大なり小なり所得が減少した消費者も不要不急のおしゃれにお金を回す余裕はないし、はた目を意識しておしゃれする意欲が短期に回復するとはとうてい思えない。おそらくは購入ブランドを一格も二格も落とし、新作にこだわらず値下げされた持ち越し品で間に合わせ、コロナ休業による在庫の大量放出でブランドのバラエティーが豊富になったオフプライス品やユーズド品をあさる人も一段と増えるだろう。

 それはこの秋冬に限らず、以降も旧品をリメークしたりデッドストックを品ぞろえに組み込むアーカイブMDや、ユーズドを組み込むリサイクルMDが一般のアパレル店舗に定着する一方、オフプライス流通が急速にメジャー化し、新商品の供給は30年前の12億点(19年は28.5億点だった)まで数年で戻るに違いない。一時的にはECがはけ口となっても、新商品需要の萎縮を食い止められるわけではない。

 過剰供給が成り立たせてきた生産〜流通段階の膨大な仮需も消え、在庫も店舗も会社も雇用も半分以上が泡と消えていく。もはや無理な夢を追うのは諦め、覚悟を決めて身を縮め、オフバランスで存続を図るべきだろう。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

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次代のファッションを考えるために、これまでとこれからの都市を考える

 ファッションの変化は常に都市の変化とともにあった。都市はあらゆる人々の交流を生み、さまざまな文化を育んできたが、ファッションはその象徴といえるだろう。ところが外出自粛要請により、人と人との都市での交流は大きく減少している。都市のあり方が変わるいま、その変化は必ず人々の生き方やファッションにも影響を及ぼすだろう。

 これからのファッションを考えるため、あるいはこれからのライフスタイルや他者とのコミュニケーションのあり方を考えるため、あらためてこれまでとこれからの都市について考えてみたい。そこで都市論を専門とする南後由和・明治大学情報コミュニケーション学部准教授に、これからの都市における他者との関わり方や都市が本来持つ価値について聞いた。

これからの都市に起こり得る二極化の動き

WWD:現在の都市はどのように見ることができる?

南後由和・明治大学情報コミュニケーション学部准教授(以下、南後):かつてアメリカのルイス・ワース(Louis Wirth)という都市社会学者はアーバニズム、つまり都市的生活様式の構成要素として、人口規模、密度、異質性の3つを挙げました。これら3つの要素が成立するうえでは、モビリティ(人やモノの移動可能性)が欠かせません。ですが、新型コロナウイルス感染症拡大に際しては、モビリティが制限されました。都市的生活様式の構成要素として、さまざまな創造的交配の恩恵をもたらしてきた人口規模や密度がマイナス要因に反転するという事態に直面しています。

WWD:日本の都市にはどのような特徴がある?

南後:日本の都市には、カプセルホテルや漫画喫茶など、何らかの仕切りによってひとりである状態が確保された空間の種類や数が、諸外国と比べて多いという特徴があります。何らかの仕切りには、目に見える物理的なものもあれば、モバイル・メディアを使用することによって立ち上がる、目に見えない仕切りも存在します。自著「ひとり空間の都市論」(ちくま新書、2018)では、それらの仕切りによって匿名性が確保され、家族や会社などの帰属集団から一時的に離脱した空間を「ひとり空間」と呼んで、住まい、飲食店・宿泊施設、モバイル・メディアに分けて考察しました。「ひとり空間」の多くは、都市に立地する諸施設を移動しながらネットワーク的に活用することを前提として機能してきました。例えば、狭小のワンルームマンションにおける生活は、さまざまな住宅機能を外部の諸施設に依存してきました。自宅からの移動が制限される現在の「ひとり空間」は、そのような移動に基づく都市の前提が成立し得なくなったという点で、「非都市のひとり空間」と言わざるを得ない状況下に置かれています。

WWD:どのように変化している?

南後:新書を書いた後、「ひとり空間」は、大きくは4つの型に分類できると考えるようになりました。1つ目は占有型です。住宅やホテルの個室など、ひとりで占有できるものです。病院の個室のような隔離の対象となる空間も含まれます。2つ目は半占有型です。これは漫画喫茶やカプセルホテルのような、「ひとり空間」ではあるけれども完全には仕切られていないものです。3つ目は共有型です。「ブックアンドベッドトウキョウ(BOOK AND BED TOKYO)」のような、趣味や好みを共有する人同士が同じ時間と空間に身を置き、みんなでひとりでいる状態を楽しむものです。新型コロナウイルスをめぐっては、半占有型と共有型が、密集・密閉・密接の「3密」というキーワードから連想されやすい空間になっています。

そして、4つ目は離接型です。スマートフォンやソーシャルメディアを介して、互いに離れている「ひとり空間」同士を遠隔で接続するあり方です。最近の身近な例はオンライン飲み会です。今後は仕事などの場においても、離接型の「ひとり空間」において、いかに創発を生む「濃密」さを持ったコミュニケーションが図れるか、いかに手作業や対面でのすり合わせに近い「緻密」さを実現するのかといった、技術的な試行錯誤が繰り広げられると思います。またZoomなどの画面越しに、これまで遠くて裏舞台だったプライベートな空間が近くの表舞台となり、お互いにのぞき見する・のぞき見されるような状況が生じるようにもなりました。プライバシーはもちろん、画面のフレームの中に何を入れ、何を外すか、すなわち「秘密」をいかに保持するかも問われています。さしあたり、離接型の「ひとり空間」では、創発を生む「濃密」さ、対面コミュニケーションに近い「緻密」さ、プライベートに関する「秘密」の保持という、先ほどの「3密」とは別の密が課題になると思います。

WWD:新型コロナウイルス終息後、現在の離散的なあり方に慣れた人々の行動はどのように変化する?

南後:新型コロナウイルスがいつ終息するかについては見通しが立っていませんし、安易に「ポスト・コロナ」などの言葉を用いて線引きすることには慎重になる必要があるでしょう(2020年4月17日時点)。とはいえ、相反するベクトルの動きが生じるのではないでしょうか。一方は、反都市に向かう動きです。リモートワークなどが定着すると、大都市の過密に対する反動として地方や農村に移動する人が増えるかもしれません。新型コロナウイルスが問題になる以前から多拠点居住型のライフスタイルは台頭していたし、都市部と比較して生活・運営コストは低いでしょう。人口密度に加え、地価や物価の高い都市部を敬遠する人も出てくるでしょう。東京一極集中に対する分散論も再び起きるでしょう。

WWD:もう一方はどのような動きがある?

南後:もう一方は、都市の実空間における対面コミュニケーションの価値の再評価に向かう動きです。これだけ移動が制限されて実空間における対面コミュニケーションができない期間が長く続くと、それらに対する欲求は相当蓄積されているはずです。オンラインでは代替できない都市の実空間の豊かさや対面コミュニケーションの固有性が再発見されるでしょう。これまでのシェアやコレクティブといった潮流もあらためて考える必要があるでしょうが、それらの可能性を完全に手放すという方向には向かわないと思います。

WWD:そのような変化が起こると、どのような課題が浮かび上がってくる?

南後:実空間における対面コミュニケーションの価値に関しては、1990年代にインターネットが普及した頃にも指摘されていたことです。東京一極集中の問題も、これまでも繰り返し言及されてきました。変化する、変化しなければと考えがちですが、それ以前から潜在していた兆しや問題をより丹念に見つめ直すことも重要です。変わるものと変わらないもの、変えることができるものと変えてはならないものを見極めることです。

あえて課題を挙げるとすれば、反都市の動きとして、都市部から地方や農村に移住する人が増えると、例えばこれまでは主に都市部に見られたジェントリフィケーション(ある地域の再開発などによって地価が高騰し、住民の階層が上昇する現象)が、地方でも起きる可能性があります。地域活性化というポジティブな側面もあるでしょうが、地価・物価が高騰し、もともとの地域の文化や生活の維持が難しくなるなどのネガティブな現象が生じることもあるでしょう。反都市に向かう動きも、かつての郊外やニュータウンがそうであったように、あくまで都市化の延長線上や都市化のプロセスに組み込まれたものとして批判的に捉える必要があります。

都市部に関しても、今はファッションのお店もそうだと思いますが、美術館や劇場、ライブハウスなどの文化施設は臨時休業を余儀なくされています。これらの文化施設は、ひとりでいる状態にも、みんなでいる状態にもなれる空間として重要です。ただ今後再開が許されても、その頃には施設の維持ができなくなっているかもしれません。すでに零細・中小企業の廃業や雑居ビルのテナントの撤退が始まっています。そうなると、それらの地域でも再開発によるジェントリフィケーションが起きて、これまでの街並みが変貌することにつながりかねません。

あらゆる境界の向こう側にいる人たちへの想像力

WWD:生活環境において、物との関わり方はどう変わるのか?

南後:新型コロナウイルスの問題が落ち着いても、人々の中に接触恐怖症のようなものが潜在的に残り続けるかもしれません。ペーパーレスやキャッシュレスなど、「○○レス」という手続きの簡略化が進んでいますが、タッチレスという非接触型の技術が発達するのではないでしょうか。日本には、もともと新品崇拝や新築主義のような清潔志向が見られますが、その傾向が強まるような気がします。一方で、ここまで物に触れることを抑制されると、逆に人々の触覚をめぐる感覚が研ぎ澄まされていくとも思います。そうすると、情報テクノロジーやメディアアートなどの分野で蓄積されてきたタンジブルなデザイン、すなわち触知可能なインタフェースに対する関心も高まるでしょう。人々の行動の変化と同様に、タッチレスとタンジブルという二極化した動きが表裏一体で進むのではないでしょうか。

WWD:では、人と人の関係性はどのように変化する?

南後:いま直面しているのは、「線引きすること」の難しさだと思います。補償の対象となる仕事とそうでない仕事、自粛要請の対象となる職種とそうでない職種、給付対象となる世帯とそうでない世帯など、このような線引きが政治レベルで行われているわけですが、それらの線引きによって人々の間で、さまざまな境界への意識が過敏になっています。例えば新型コロナウイルス感染症には、震災とは異なり、被災地とそれ以外という境界がありません。境界がないがゆえに、これまで漠然とやり過ごして意識してこなかった、社会に内在するさまざまな境界が顕在化しつつあるように思います。そこで危惧すべきは、分断です。国境封鎖や入国制限という措置は、一部では人種差別や排外主義を生み出しています。自国第一主義的なナショナリズムが活発化している国も見られます。さまざまな線引きによる分断に対して、自覚的あるいは批判的になる態度が求められています。

WWD:その分断に対して、どのような態度をとるべきか?

南後:例えば、移動せずに在宅勤務できる人がいる一方で、職場へ行かざるを得ない人たちがいます。世界的に活躍するファッションデザイナーもそうですが、これまではグローバルエリートとも呼べる、海外旅行などで国際間を移動できる人が強者とされてきました。ですが現在は、移動しなくてよい人が強者。構図が反転しています。移動しなくてよい人と移動せざるを得ない人の間で、移動をめぐる新たな格差が生じています。現在のところ、水・電気・ガスのライフラインは通っていますし、政府による緊急事態宣言や自治体の会見でも、交通や物流は動き、生活必需品は手に入るから安心するようにと伝えられました。ただしそれらは、医療関係者はもとより、献身的に働いてくれている人たちによって可能になっていることを忘れてはなりません。当たり前のものとされがちな日常生活のインフラを支えてくれている人たちへの想像力を失ってはいけません。感染症拡大防止のため、他者との物理的距離を保つことが重要とされていますが、社会的な諸関係の向こう側にいる人たちとの心理的距離を近づける態度が求められています。

都市は人々による「集合的作品」

WWD:ファッションを含むあらゆる文化活動にとって都市は苗床のような役割を持つ必要不可欠な場だ。あらためて見直すべき都市の価値とは?

南後:都市は人々による「集合的作品」として、時代ごとに姿かたちを変えてきました。親密なコミュニケーションや偶然の出会い、異質な他者との交わりや衝突によって、刺激や創発が生まれ、創造性に富んださまざまな芸術や文化を育んできました。それが都市という集住の形態の大きな特性であり、人々を惹きつけてきた魅力の源泉のひとつです。「もしわれわれが都市生活のための新しい基礎を築こうとするなら、都市の歴史的性格を理解し、そして、都市の原初の機能や都市から生じた機能、さらにまだ呼び起こせるかもしれない機能を識別しなければならない。長い助走を歴史のなかに得なければ、未来にむかって十分に大胆に跳躍するために必要なはずみを、われわれ自身の意識のなかにもつことはできないだろう」。これは、アメリカの都市研究家ルイス・マンフォード(Lewis Mumford)の「歴史の都市 明日の都市」(生田勉訳、1969、p.79)という本の一節です。新型コロナウイルスをめぐる一連の経験は、どこにどのように集まるかを含めた、都市の原初的なあり方について再考する契機といえます。マンフォードは都市を、これまで何百年と培われてきた「人類の文化の器(容器)」と呼びましたが、その器自体がこれまでいかに造られてきたのかについての認識を深めたうえで、これからいかに手を施し、次世代へと継ぐことができるのか。近代という枠組みを超えた文明史的な時間軸をもとに考え直す必要があります。

秋吉成紀(あきよしなるき):1994年生まれ。2018年1月から「WWDジャパン」でアルバイト中。

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丸山敬太×軍地彩弓対談 服を売らないファッションビジネスを考える(後編)

 丸山敬太「ケイタ マルヤマ(KEITA MARUYAMA)」デザイナーは、ココネが運営する着せ替えアプリ「ポケコロ」とコラボレーションし、キャラクターの着せ替えアイテムをデザイン・監修した。現在「ポケコロ」は累計1500万ダウンロード、1日あたりのアクティブユーザーは約20万人を超える。ユーザーは9割以上が女性で10代から60代まで幅広く、中でも10代が多くを占める。「服を作って売るだけがデザイナーではない」と語る丸山デザイナーと、今回のプロジェクトに丸山敬太を招へいした軍地彩弓gumi-gumiCEO 兼「ヌメロ トウキョウ」エディトリアル・アドバイザーの2人が、これからの“服を売らないファッションビジネス”について語った。今回はその後編。

WWD:「ポケコロ」で丸山さんが監修したアイテムを見たが、完成度が高かった。

軍地:「ポケコロ」のスタッフも私たちもお互いに新しい経験だった。社内デザイナーの方たちは、さまざまなテイストのアイテムを描ける力を持っている。そこに敬太さんが入ることでトータルコーディネートやディテールのバランスが変わってくる。たとえば色調をちょっと変えるだけでぐっと大人化する。敬太さんの服はただかわいいだけでなく、大人の洗練があって、そのニュアンスをスタッフの皆さんにも学んでもらえるきっかけにもなって、とても勉強になったと思う。

洋服を作っているからファッションデザイナーではない

丸山:「ポケコロ」のスタッフの方は、パーツごとにどういったものが人気なのかを熟知しているから、僕がやる新しさはそこしかなくて。服を作っているからファッションデザイナーではなくて、世界観を作れることが大事でそれがファッションデザイナーの仕事だと思っている。逆に言えば、ただ服を作っている人はファッションデザイナーだとは思っていない。

お客さまがデジタルの世界で何を求めているのかということを、スタッフの方からうかがいながら、どこまで過剰にして、どこをそぎ落とし、どこまで省略してどこまで追い込むかみたいなところをすごく考えたので、僕もとても勉強になった。本来12頭身みたいなモデルに着せているようなものを、3頭身の「ポケコロ」のキャラクターに合わせていくことって、やっぱりものすごく技術がいることだと思う。最初から3頭身の子にデザインする方が早い。でもそれって勉強になるし面白かった。それでちゃんとかわいくできるし、かわいくなるし、「ケイタ マルヤマ」らしさも出ている。

WWD:提案されたヘアに対してイメージが合わず、実際に丸山さんがヘアをデッサンしたこともあった。

軍地:たとえば、服とヘアスタイルとのバランスでも「この服にこのボリュームのヘアはないよね」とか、「このヘッドドレスはこのボリューム感ではないよね」とか。みんな各パーツを作ってきた人たちだから、まだまだそこが弱かったところを、敬太さんが入ることによってトータルコーディネートの考え方を学ぶきっかけになった。それって“ファッションとは何か”という究極の話になってくる。

デジタルに触れることでデザイナーの本質が浮き彫りに

WWD:ショーを通してモデルと服、ヘアメイクのバランス、演出といったトータルな世界観を考えてきたからこそかもしれない。

軍地:ファッションデザイナーならばやってきた工程をデジタルに置き換えるだけで、なるほどこういうことができるんだと。でもそれを、今の日本人のデザイナーの中で実際にできる人って数えるほどしかいない。正直、今の時点では敬太さんしかいない。だからこそ今回のキャスティングはすごくよかったんだと思う。「デザイナーとは何ぞや」といったときに、本質的なところがゲームやデジタル世界に触れることで、むしろはっきりとした。世界観を持つ人、オリジナリティーを構築できる人――デザイナーの定義が逆に浮き彫りになった。

丸山:最近、若いデザイナーたちのデザインを見ていると、すごく面白い世界観を持つ人たちもいっぱい出てきているんだけれど、それを形にしていくことが今の時代だとある意味で難しくなっていることもある。そのようなデザイナーたちが2次元の世界に挑戦して、それなりにちゃんと対価を払ってもらい、稼げるようなすべを見つけ、それをまた自分のリアルな世界に結び付けていくようなことができたら、面白いことが生まれるような気がする。

軍地:これまでのデザイナーのビジネスモデルというのは、ショーをやった後に展示会を行い、注文を受け、それを商品化してエンドユーザーに届けるという、モノ(服)を中心としたサプライチェーンで動いていた。敬太さんは最近では「GU」ともコラボして、完売するアイテムが続出するほど人気で、いろんな販売チャネルを持っている。これはいろんな人に応用した方がよいと思う。今の時代においてパタッと販売ルートが途絶えたときに、何か別のルートでちゃんとモノを回していけるのはすごく必要なこと。たとえば斬新な家具をデザインしてみてもいい。いろんなビジネスモデルを構築し、現金化できるチャネルを多く持つというのは大事なことだと思う。

新しい扉が開くことはすごく楽しい

WWD:今回の「ポケコロ」のようにデジタルの世界の人たちがファッション業界に興味を持ち、話を持ちかけたように、異業種同士のつながりや接点が増えたりすることで、デザイナーやヘアメイクなどを含めてこれまでと違う働き方ができるし、仕事の幅も広がるかもしれない。

丸山:そもそも“ファッション業界”っていう言葉自体ももういらないと思っていて、業界って何?って思ってしまう。よくファッション業界って言われるけど、どこまでをファッション業界とカテゴライズするのかをよく軍地さんとも話していた。そこに何かあるの?って(笑)。“業界”って言葉がナンセンスで、今どれだけみんながフラットに溶け合えるのかがすごく重要。僕は「ポケコロ」のことを知らなかったけれど、実際に一緒に仕事をするとみんな素晴らしい。「こんな人たちと今までやってこなかったんだ、つまんないな」って思っていて。新しい扉が開くということはすごく楽しいことで、その先に楽しみに待ってくれる人がいるっていうことが大事なこと。へんなこだわりみたないものを持ち続けるのってつまらない。これだけ時代が変わっていて、いろんなことが変化しているんだから、アフターコロナはいろんなみんな交じり合って、社会に望まれることをもっとかたちにしていくんだなということがクリアになった。

軍地:“ファッション業界”って自分たちで言っている瞬間にどこかで壁を作っていたり。

丸山:マウンティングっぽい、ちょっとそういうところもあったりするじゃない。実際あったと思う、自分も(笑)。比較的いろんな業種の方たちと仕事をしているから、それについて何か言うような人たちも中にはいるんだけど。

軍地:私がテレビでコメンテーターをやるとかに対して中には「ん?」て思う人もいると思うけれど、私にとってファッションは世界の一つだから、そこで“村化”していることの方がダサいと思っていた。「ネットフリックス(NETFLIX)」の「フォロワーズ(FOLLOWERS)」でも、あれだけのファッションブランドの服を借りるのはほぼ難しいとみんながあきらめたことだけど、私たちからすれば素直にできること。「ファッションの人って、もっと敷居が高いと思っていました」と必ず言われるけれど、そういう風に利用してもらえばいいと思う。ファッションビジネスのことを「ニューズピックス(NEWSPICKS)」で話したり、映画にファッション業界の強みを持っていったり、ファッションをよく知っている人間がいろんなところで重宝がられることはあると思う。

丸山:確かに村は村でそのよさを持っていることが大事。ほかにも村があって街もあって都市もあって世界もあることを忘れてはいけない。隣の村や世界とどうコネクトしていくのかがこれからもっと重要になっていくから、そういう意味でお互いを専門職のような個々の魅力を持っている同士と考えればいい。でも根底にある人間の喜びみたいなものはみんな同じで、それに対して何かをクリエイトするのも、根本はみんな同じ。それぞれの強いところをうまくシェアし合って、よりよいものを提供していくことが今回の仕事の意義だと思った。

WWD:「ポケコロ」内でも今後、そのような仕事の広がりがあったらよいと思うか。

丸山:今度は人気スタイリストにも入ってもらってコーディネートを提案してもらったり、レクチャーとかがあったりしても楽しい。イベントとかもその中でやって、誰かがその中でトークショーをやるとか(笑)。

軍地:デジタルでもみんながつながる場所を持てて、敬太さんのような普段気軽に会えないような人の話を聴けるような場所を作ってもいい。「ポケコロ」っていろんなコロニーや部屋に遊びに行って、挨拶したりほかの人の木に水やりとかをしたりもする。文字によるコミュニケーションで元気?大丈夫?とか声を掛け合える。人とのつながりのライフラインが意外とデジタルの中にある。

丸山:このコロナ禍のときに、こういうこと(ポケコロ)をやっている人とやっていない人では豊かさが違う。もうすでにコミュニティーができているから、自分のキャラクターにオシャレさせてデジタル上で出掛けることができる。その欲求を満たすことができるからそれだけでも救いだと思う。

軍地:コネクトし、つながりを持つということ。

丸山:SNSもそうだし、いろんなデジタルの力がこのような災いの中にあっても、人間らしくいられる支えになっている。

軍地:ZOOMにしてもライン電話にしても、デジタルのツールがあったらから私たちは孤独にならずにすんだ。

丸山:リアルに街にも出られなくなり、表参道のラグジュアリーブランドが一斉に閉店し、自分の店も閉めなくてはならなくなったときに、終わりなんだなと思っていたけれど、そうなってもこんな風にちゃんとファッションを楽しむ場所があるというのは、僕にとっても今回救いというか、ありがたいなと思えた。このコロナ禍に備えて「ポケコロ」をやっていたわけではないし、プロジェクトはだいぶ前から進んでいたけど、いいタイミングでこのお仕事をさせてもらっていると感じている。

軍地:このプロジェクトの副産物として「ポケコロ」のスタッフの方たちの目がキラキラしていたのは私の想像を超えていた。一度打ち合わせで「丸山邸」に来てもらったときも、みんなこの場所に来たことで気持ちが上がっていた。実際に店舗にあるリアルな服やバッグ、インテリアなどに触れ、その後、実際にアイテムに落とす作業をした。副産物ではあったけど、ファッションの力をこうやって伝えていけるんだと思った。スタッフの方たちの仕事はいつもより何工程も増えたと思うけれど、キラキラしたみんなの目がよかった。一方でお互いに“闘った感”もあって、最終的に異なる2つの業界が交じり合うってそういうことなんだなと感じた。

丸山:最終的にはそういうものが生き残っていける時代になるし、ユーザーにも伝わるんだなと。

軍地:敬太さんはこのプロジェクトに時間をかけていて、敬太さんが加わったことで修正するポイントも明らかに変わってくる。私が見ていて、服を作っている工程と何ら変わらないと感じた。デザインを起こして、トワルチェックして、サンプルでこれは違うなど、普段やっているのと同じに見えた。そういうことも含めてモノを作るという根源は同じ。その情熱をリアルでもデジタルでも同等にやっていかないといけない。デジタルだから、ゲームだからラクでいいでしょう、ということでは全然ない。その熱量を同じように同価値で保っていけるというのは今回の体験で得たこと。

ファストファッションでも雑誌の付録でもかける熱量は同じ

丸山:今回のプロジェクトや「GU」でのコラボを含めて、ずっと思っていたことだけど、ファストファッションだろうが、雑誌の付録だろうが、かける情熱はちゃんとかけないとダメということ。「単価が安いからこのくらいでいいや」とか、諦めみたいなものや、たかをくくった感じとか。計算で物事やっていく時代は本当に終わるので、もっと僕らモノを作っている人間は、そこに情熱を傾けていく。だからある意味いい時代に戻っていく、というか、変わっていく。

軍地:常に敬太さんと話している中で、服を作ることだけにこだわっていないのを感じる。そしてすごく本質的なことをやっている。最終的にモノを作るという本質的なことは何らブレていないし、最終的にユーザーに届けることも、私が雑誌を作っているときと変わらない。そういうところに立ち返っていくんだということを、今回このタイミングでより強く感じるというか。そして敬太さんは日本のデザイナーで一番多角的にやられている方だと思っている。

丸山:もうかってないんだけどね。誰かー!(笑)。

軍地:ドリカムの衣裳や企業の制服もデザインしているし、「GU」もそうだし。隅々まで「ケイタ マルヤマ」になっている。それは商品がかわいいから。結局モノを作る人はいいものを作り続けなきゃいけないという宿命があるから、それは大変だと思うけど、ある程度ビジネスでそれをサポートしていかなくてはいけない。

丸山:そこは大事(笑)!サポートしないとクリエイションがこの国からなくなり、クリエイションが死んじゃう。でも逆にクリエイターの人たちもそれに応えるための努力はしないといけなくて、自分がやりたいことのためだけにサポートしてもらう訳ではないから。その仕事に対して自分が何をどう返せるかということを真剣に考えないといけないんだけど、みんな勘違いしちゃう。自分のやりたいことをやるだけになってしまう。

軍地:私も東京のデザイナーに対しても「ショーをやっても売れてなくてはダメでしょう」とずっと言っている。

丸山:やりたいことをやるなら自分のお金、財力でやるべきだし、仕事ならば何でもその先にお客さまがいる。そのお客さまに、どれだけどう自分の世界観で喜んでもらえることを提供できるかっていうことが重要なことだから。

軍地:敬太さんのインスタグラムを見ていると、ファンとのつながりがしっかりしていると感じる。「GU」もしかり、今アップサイクルで作っているかごバッグもすぐ売り切れる。確実に広くファンを持っていて、すごく真摯にやりとりしている。

丸山:だから洋服を買わないファンも逆に増えていて。じゃあ何をしてあげたらいいのかと考えると、言葉を望んでいる人がいたりとか、いろんな人たちがいる。でもファッションという流れの中から僕を知ってくれて、そういうことを望んでくれる人が多いならばそれは一つの形になるだろうなとは常に思っている。ファッションデザイナーでやってきているから、それは生業としてやっていくわけだけど、興味を持ってくれて、投げかけてくれることに応えていくのが楽しい。

WWD:今回のプロジェクトや服を売らないビジネスの話は、これから出てくるデザイナーやクリエイターにも生かせる話だ。

丸山:あまりカテゴライズされず、わりといろんな仕事をしている僕がやると、若いデザイナーも含め、みんなやりやすくなるんじゃないかなと思っている。ブランドが毀損するのではないかという心配のハードルが少し下がるんじゃないかな。そんな風にどんどんやっていくのが自分の役割かなとも思う。

軍地:みんな「こうじゃなきゃファッションデザイナーじゃない」と縛られてしまっている。そして今、日本人デザイナーはリアルクローズに寄りすぎてしまって、ファンタジーが少なくなっている。

丸山:視野が狭くなってしまうのは僕も分かる。

軍地:日本のファッションの中にファッションドリームが絶えてしまった。日本からヨーロッパやアメリカに行ってファッションデザイナーを目指す人がいなくなってしまって、ファッション系の学生の目標がファッションブランドではないことも増えた。

丸山:トモ君(小泉智貴)とか、村上亮太君のこの間のショーは映像で見てすごく感動したんだけど、やっぱりああいう人たちが真面目に闘ってきているから、またよくなる気がする。

軍地:私たちよりもフラットな人たちがたくさん出てきているし。敬太さんみたいなデザイナーがたくさん出てきてほしい。

丸山:いっぱいいる。才能がある人はいっぱいいるんだと思う。

軍地:このプロジェクトが好評で第2弾があったときには、リアルとデジタル上で同じバッグを買えたり、デジタルの中からリアルに送客することもできたりしたらよいと思う。いかに、これからどうファンをつなぎとめるか。敬太さんも「ポケコロ」もファンを持っている。相互送客によってケミストリーが起きて、デジタルにはまっていた人にファッションを知ってもらったり、リアルしか知らない人が自分のアバターに敬太さんの服を着せて楽しんだりとか。お互いにとってウィンウィンだと思う。最後はユーザーがかわいい服にテンションを上げくれるのが、私たちの最終的な目標。それがこれからできるかなと思う。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.10 尾花大輔「目先の結果だけを追わず本質を見失わないこと」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、自身の愛称を冠した古着店のミスターハリウッド立ち上げから20周年を迎えた、尾花大輔「N.ハリウッド(N.HOOLYWOOD)」デザイナーが登場。

N.HOOLYWOOD
尾花大輔デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A.ビジネス的にも大打撃だし、不安な状況は僕たちも同じ。なのでファッションデザイナーだからといって無理に動くよりも、一人の人間としてできることをしたい。自宅で過ごす時間も増えたので、ブランドのこともアホなことも含めて考え、出口が見えるまでひたすら思考を巡らせている。物作りについても、今後は自分自身が好きで得意なことにシンプルに向き合って大きく方向転換していきたいと考えている。それが正しいのかどうかはまだわからない。でも、今は業界を問わず緊急措置しかできない状況だからこそ目先の結果だけを追わず、本質を見失わないように心掛けたい。

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自民党2議員にコロナに苦しむファッション小売業の現状を直接訴え 「ユナイテッド ヌード」青田社長ら

 シューズブランド「ユナイテッド ヌード(UNITED NUDE)」日本法人の青田行社長と、人気ブランドを抱えるセールスレップのイーストランド島田昌彦社長は5月11日、自民党の福田達夫、山田美樹の両衆議院議員と面会し、コロナショックによるファッション小売業への影響や、その支援策について要望を伝えた。青田社長らは8日に、ファッション小売業支援のためのオンライン署名活動をスタートしており、賛同の輪を広げている。「ファッション業界には小さくもないが大きくもないという規模感の企業が多いため、現状の支援策から漏れている」「業種を限らない経済活性化策が必要」(青田社長)などの考えを伝えた。

 青田社長らは署名活動と並行し、安倍晋三首相や小池百合子東京都知事へのメールでの陳情も行っていたが、「同様のメールは恐らくあらゆる業種から山のように届いている。僕らは会員規模の大きな業界団体などではない以上、(それだけでは埋もれてしまうと考え)もっと直接的にアプローチする術はないかと探った」。そこで、「自民党の中でも中小企業の支援活動にもともと注力されていた議員を探して、福田議員にたどりついた。また、山田議員は自民党経済産業部会長代理でもあり、議員になる前はエルメスジャポン勤務経歴もあって、業界の話を分かっていただきやすいと考えた」。

 両議員には、まずファッション小売業が置かれた現状を伝えたという。その場には、実際に政策立案に携わる経済産業省のクールジャパン政策課や生活製品課などの職員6人も同席。「他業界からの陳情は多いが、ファッション業界からはほとんど陳情はきていないと言われた」と青田社長。それゆえ、ファッション業界特有の問題が議論の俎上に上がりづらくなっていると危惧する。たとえば、家賃補助については国会で大きな焦点となっているが、自民党の補助案では最大で月50万円の支給。「それを批判するつもりはないが、現実問題として、われわれの業種は月坪単価8万~10万円といった物件で商売していることもある。家賃は1店でも数百万円規模となり、上限50万円の補助では厳しい」。

 家賃補助だけでなく、貸付支援などに関しても同様だという。ファッションビジネスは他業種とは異なり、半年分の在庫を一気に仕入れる仕組み。それゆえ、「セールスレップなどでは一度に数十億円の支払いが必要になるケースもある。しかし、今既にある貸付支援策は、最大で2億8000万円や、制度によっては上限5000万円といったことが多く、われわれのビジネスモデルや規模には合っていない。中小事業者向けの支援はわれわれよりももっと小さな企業を対象としており、それ以外では大企業向けしかない。しかし、ファッション業界には社員5~10人前後で売上高が数十億円という、そのどちらにも当てはまらないような規模感の企業が非常に多い」と話す。

 青田社長らが要望の軸として両議員に伝えたのは、「業種を限らない経済活性化策」だ。農業や漁業支援のための“お肉券”“お魚券”構想が大批判を浴びて頓挫したのは記憶に新しい。「活性化策がどこかの業界だけに偏り過ぎてはバランスを欠くし、根本的な消費マインドの底上げにはならない」。それよりも、消費者がファッションを楽しみたいと思えるような世の中全体のムード作りに迅速に取り組んでほしい、と伝えたという。「自分たちの業界に特化した活性化策を提案しないことを最初は(両議員も)不思議に思われたようだが、われわれの商売は店が営業再開したらそれでゴールではない。再開しても恐らく当分お客さまは来ない。消費をしようというムードが醸成されて、最後にお客さまが帰ってきてそこからスタートとなる。東日本大震災後を振り返っても、『(お金を)使える人は使っていこう』という強いメッセージを出していただくことが必要。そうでないと、いくら家賃補助をもらってもお客さまが来なくて意味がない。少なくとも今年中にそういったムードにしないと」と主張する。

 青田社長は政府や国だけでなく、同業者にも伝えたいことがある。ファッション業界の特に中小の事業者は、これまでどちらかというと群れを作らず、政治に寄っていくこともよしとしないムードがあった。「今回のように、声をあげて署名活動をすれば賛同してくださる人がいて、そうなると声が政治家にも届くんだということを業界全体が知ることが大事。『誰かがやってくれる』『国がやってくれる』『会社がつぶれたらファッション以外の業種に転職すればいいや』といった気持ちでは、変わるものも変わらない。文句を言うのではなく、自分ごととして状況を変えようとしないとダメ。企業規模の大小を問わず、ファッション業界が連帯して声を上げていくことが今は大事」と強調する。

Editor’s Voice
「WWDジャパン」では青田社長をはじめ、コロナショックに立ち向かうためにこれまでのファッション業界の常識や当たり前を取り払い、未来ある産業を作っていこうと動いているビジネスパーソンやクリエイターの取材を行っています。知恵を結集して新しいファッションビジネスを作っていくため、ご意見を press@infaspub.co.jp までお寄せください。取材希望の自推他推も受け付けております(取材を確約するものではありません)。

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男性もおうち時間でこっそりエイジングケア 使いやすい美顔器3選

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、家にいる時間が増えた。ステイホームという言葉が世界の共通言語になり、おうち時間に重宝する商品に注目が集まっている。このような状況で美容家電の需要も拡大中だ。

 今回紹介したいのは自宅で手軽に使える美顔器。女性が使うものというイメージが強いアイテムだが、メンズ美容が盛り上がりを見せつつある今、美顔器に手を出す男性も増えてきている。お金のかかるエステに行かずとも、また誰かに見られるのが恥ずかしいと思う男性も、自宅でエステ並のケアができるとなれば納得といった印象だ。

 ビジネス&プライベートにしろ、肌の良しあしは第一印象を左右し、その後の付き合いにも影響してくる大事な要因。新型コロナの影響で時間を持て余しているのなら、そんな重要ファクターにお金や時間を費やすのも悪くない。自分を変えるチャンスだと思って、美顔器を駆使してケアしてみてはどうだろう。

本格ボディーエステを自宅で手軽に

 外に出る機会が少なくなった今、家でこっそり美顔器を使ってエイジングケア、なんてのもいい。女性だけでなく男性たちにも需要が高まっており、アップグレードされた機器は男性でも使いやすい。進化の止まらない最新機器を3つほど紹介する。

パナソニック“イオンエフェクター EH-ST98”

 男性もキリッとした肌を手にする時代。であれば、パナソニックの“イオンエファクターEH-ST98”で極上のエステ体験をしてみてほしい。いつも使っているスキンケア化粧品の上に「イオンエフェクター」を当てていくだけ。そうすることで化粧品がより肌に浸透し、手塗りでは到達できなかった使用感を得られる。

 肌が乾燥しやすい人、シミやシワ、目の下のくま、たるみが気になる人などに効果を感じさせてくれる。それは2つのヘッドと6つのモードが搭載されており、肌悩みにあったアプローチが簡単だから。パナソニックが開発した技術で肌の奥深く角質層まで行き届き、みずみずしい潤いとハリ感を実感できるだろう。うっすらとゴールドがかった見た目もスタイリッシュな印象で男性が使っても違和感なし。女性へのプレゼントにも人気のようなので、パートナーとシェア使いにもオススメだ。

ヤーマン“フォトプラス プレステージS”

 毎回のケア方法を5つのモードからカスタマイズできるオールインワン美顔器、“フォトプラス プレステージS”。目立つ毛穴を薄くしたい、皮脂を抑えたいなど、男性の肌トラブルにも対応できる懐の深さがある。その理由は、肌を深部まで温めて美しさを引き出すRF(ラジオ波)をより効率的に肌へ届けるために独自開発された「RFリフトテクノロジー」を搭載しているから。独自技術「DYHP」を用いて肌を一時的に緩めて高分子の美容成分も浸透しやすくなった。

 ヤーマンの従来の既存の商品に比べて肌に触れるトリートメント面積が1.5倍も広範囲になっている。これによりエイジングケアにかける時間も大幅にカットできるため、忙しい人にもオススメだ。また10種類もの機能があり、美しい肌に欠かせない水分量・弾力・バリア機能が向上することが同社の実験で実証されている。顔がシュッとしてモチっとした肌が手に入ると、いいことだらけ。

MTG“リファモーションカラット”

 こちらは話題のフェイスケアを進化させる美容ローラー、MTGの“リファモーションカラット”。前後に動く可能式のローラー構造になっており、肌のあらゆる起伏にフィットするのが特徴だ。お酒を飲んだ次の日はとくに顔がむくみやすいが、そんなときにも活躍すること必至。広くやさしく肌をとらえ、深くつまみ流して筋肉までアプローチしてくれる。

 またハンドルに付けられたソーラーパネルが光を取り込んで、微弱電流「マイクロカレント」を発生させている。これが低刺激で肌や筋肉に優しく働きかける。また防水構造のため、バスタブ内でも使えるからありがたい。顔以外にもフェイスラインや肩まわり、二の腕やふくらはぎなど幅広い部分などに使用できる。リモートワーク中だったら一日中コロコロしていても大丈夫だ。

 ヤーマンの従来の既存の商品に比べて肌に触れるトリートメント面積が1.5倍も広範囲になっている。これによりエイジングケアにかける時間も大幅にカットできるため、忙しい人にもオススメだ。また10種類もの機能があり、美しい肌に欠かせない水分量・弾力・バリア機能が向上することが同社の実験で実証されている。顔がシュッとしてモチっとした肌が手に入ると、いいことだらけ。

辻野祐馬/エディター、ライター、動画ディレクター:女性メディアで活動する編集・ライター。ファッション、美容、ヘアアレンジ、恋愛などのジャンルを中心に執筆。色彩検定1級の資格を有し、カネボウメイクアップインスティチュート・スタンダードコースを卒業。特技はパーソナルカラー分析

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コロナ禍でアパレル業界は蚊帳の外? ファッションに政治は関係ない、はもう通用しない

 新型コロナウイルス感染症に関するニュースに触れる中で、「ファッション業界はなんだか蚊帳の外だ」と感じることがある。直近だと、東京都がゴールデンウイーク中に休業し、感染拡大防止に協力する理美容事業者に対して最大30万円給付するというニュースを耳にした際にそう思った。誤解しないでほしいのだが、「理美容事業者が給付金を得るのはおかしい」と言いたいわけでは決してない。理容室も美容室も、長時間にわたる近距離での接客が必須であり、ECで代替もできない。補償は当然だと思う。だが一方で、「それならファッションの小売りにもなんらかの補償があっていいんじゃないか」とも思うのだ。(この記事はWWDジャパン2020年5月11日号からの抜粋です)

 ファッション小売業は理美容事業者と同様、休業要請対象業種に入っていない。だが、多くの店は感染拡大防止のために補償なき自主休業状態にある。もちろん、苦しい状況に置かれているのはこの業界だけではないし、中小企業一般を対象にした雇用調整助成金や持続化給付金などはあるわけだから、「ファッション小売りは補償や助成の蚊帳の外」と騒ぐのはおかしいのかもしれない。しかし、どうもモヤモヤしてしまう。

 そんなことを考えていた矢先にニュースが飛び込んできた。それは、シューズブランド「ユナイテッド ヌード」日本法人の青田行社長や有力ブランドを抱えるセールスレップのイーストランド島田昌彦社長らが、業界内で有志を募り、東京都や国に対して一丸となって陳情を行っていくというもの。5月7日に明けるはずだった緊急事態宣言は月末まで延長され、補償なき休業は3週間強延びた。中小企業はいよいよ資金繰りがひっ迫してくる。「追加の補償や出口戦略についてはおいおい示す」といった政府の悠長な姿勢を待ってはいられない。そこで青田社長らは、「1.ファッション小売りを休業要請対象業種に加えること、2.資金繰り支援の速やかな審査や支給、3.雇用調整助成金の速やかな支給や上限額のアップ、4.賃料の一部負担」を要望として、国や自治体に陳情を進めている。
※特定警戒都道府県を除いて、緊急事態解除の動きが広がってきたことを受け、青田社長らは当初要望の1つとして掲げていた「ファッション小売りの休業要請対象業種への追加」を5月10日時点で取り下げ、代わりに店を開けてからの「ファッション業界も含めたさらなる経済活性化策」を要望に加えている。

 陳情の裏付けとしているのが、ファッション小売業のコロナ関連倒産件数の多さだ。帝国データバンクが発表した4月末までのコロナ関連倒産企業数109件を業種別内訳で見ると、1位が旅館・ホテル27件、2位が飲食店11件、3位がアパレル・雑貨小売り9件だと青田社長は指摘する。「観光業や飲食業への打撃が非常に大きいことは重々理解している。ただ、両業種にはコロナ収束後の需要喚起を目指した経産省の補正予算が、1兆7000億円規模で組まれている。一般的な家賃相場で言っても飲食業よりファッション小売りの方が賃料負担は大きい。また、数日分ではなく、半年分の在庫を抱えてしまっている点でも、ファッション小売りは厳しい」と続ける。

 今後はウェブ上で署名活動を行い、賛同者を募っていく。そんな話を聞きながら思ったのは、こうした業界一丸となっての働きかけは、本来は業界団体などが主導していくものではないのか?ということ。ファッション業界にも、日本アパレル・ファッション産業協会(以下、アパ産)などの業界団体がある。理容業などは、業界団体が自民党議員に近しいがゆえに補償対応などの動きが早いといった報道もある。アパ産も日本百貨店協会などと協議しながら、「事後でもいいので都と経産省に休業要請業種への指定などを申し入れていく」(事務局)というが、調整に手間取り、現時点では具体的な動きはない。東京都とアパ産は“ファッション都市、東京”のアピールを共に行ってきた経緯もあるのだから、もっと素早く何らかのイニシアチブを発揮する術もあったんじゃないか?大手企業中心の組織ゆえ危機感が薄いし、残念ながらかつてのような求心力はないと感じてしまう。とはいえ、業界団体ばかりにロビー活動を委ねるというのも違うだろう。

 弊紙3月30日号で、業界関係者にコロナショックに対するメッセージを求めた。その中で、DJのLicaxxxがクラブカルチャーへの打撃が大きいことに触れ、「カルチャーを失わないために、政治に関心を持ち声をあげよう」とコメントを寄せている。私が冒頭から述べている「ファッション業界は蚊帳の外」というモヤモヤも、結局はこれでしか解決できないように感じている。誰かに任せるのではなく、一人一人が世の中に意識を広げ、自分が置かれた状況を変えようとすること。青田社長らが行う署名活動もそうした動きの一つだ。「署名なんてかっこ悪い、客商売なのに補償を求めるなんてイメージが悪い」と感じる人もいるだろう。でも、考えていることは声に出さないと世間に伝わらないし、世間を説得していくためには、世の中を広く知り、自身も関わってく姿勢を見せることが必要だ。ファッションの販売に政治なんて関係ない、自分は関係ない。そんなふうにこれまで思っていた人も多いと思う。でも、私たち一人一人が意識を持って、投票や陳情などの活動で声をあげていかないと、今後もいつまで経ってもわれわれは蚊帳の外のまま。未曽有の不況がやってくるのはこれからといわれているが、そんな状況下で自身や自身の事業を守っていくためには、こういった意識が欠かせない。


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ウィズコロナでラグジュアリー商品の世界統一価格が進むのか 「マルベリー」が新価格戦略を導入

 英国ブランド「マルベリー(MULBERRY)」は5月20日から、同ブランドの商品を全世界で統一するグローバルプライシングを導入する。直営と卸を含めて、英国での販売価格を基準に各地の消費税や関税を考慮した統一価格に設定。現在ブランドの売り上げの約90%を占めるレザーグッズから適用し、順次カテゴリーを広げていく。

 ラグジュアリーブランドの内外価格差は近年、ブランドの公式ECや越境ラグジュアリーECモールの定着で目立つようになった。販路が増える一方で、価格の差が見えることがデメリットになることもあったが、リアル店舗とオンライン上、国内外での価格のばらつきをなくすことで公平性を確保することができる。

 また新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中長期的に海外旅行の機会が減ることが見込まれる上でも、同一価格になることは消費者とブランドにもプラスになる。

 現在「マルベリー」の国内の直営店は10店舗で、セレクトショップなど卸先件数は8件だが、現在世界的に直営ビジネスを強化しており、売り上げ全体の95%を占める。ティエリー・アンドレッタ(Thierry Andretta)=マルベリー最高経営責任者(CEO)に同一価格を導入する狙いを聞いた。

WWD:グローバルプライシングの導入を決めた理由は?

ティエリー・アンドレッタ=マルベリーCEO(以下、アンドレッタ):「マルベリー」はオムニチャネル戦略を推進する中で商品をお客さまへ世界中どこでも同価格で提供し、オープンかつ透明性ある事業運営をグローバルの販売網にて行っていきたい。昨年11月に発売した「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」とのコラボレーションを皮切りにグローバルプライシングを一部的に実施し、ポジティブな評価を得ている。

WWD:これまで「マルベリー」の本拠地である英国と他国ではどの程度の内外価格差が発生していたのか?

アンドレッタ:「マルベリー」の内外価格差はもともと低く設定されていた。マーケットでは30%程度の差があるケースもあるが、当社では消費税、関税の差に留めてきた。

世界統一価格は今後、ファッション業界の標準になる

WWD:価格はどのようにコントロールするのか?

アンドレッタ:グローバル価格が英国価格と均一になるように、各地の消費税や関税を含めた価格に設定する。他のラグジュアリーブランド同様、為替、原材料及び人件費の変動を考慮した価格の見直しはシーズンごとに行っていく予定だ。全体の95%がD2Cモデルである今、価格のコントロールはとてもスムーズに進めることができている。

WWD:ファッション業界全体を見て、内外価格差を見直す動きは出てきているのか?

アンドレッタ:世界統一価格は今後、ファッション業界では標準になると考えている。私たち「マルベリー」は先駆者として、この取り組みをけん引していきたい。ウイルスの影響で、旅行者が減少していく中、国内及びデジタルでのショッピングが必要とされる。その中で世界共通の価格を提示することが今まで以上に重要になるだろう。

WWD:ウィズコロナ時代は店舗に足を運ぶ機会が減り、ECを含むデジタル強化が必須になっていきそうだ。

アンドレッタ:「マルベリー」はしっかりとしたデジタルとのオムニチャンネルの基盤があるため、カスタマーの動向に合わせて迅速にアクションを起こすことができる。社会への動きとしては、慈善団体「ナショナル・エマージェンシーズ・トラスト(National Emergencies Trust)」とのパートナーシップを結び、新型コロナウイルス影響へ向けた基金を立ち上げ、ローカルコミュニティーをサポートしている。本国イギリスにおけるオンライン売り上げの15%と、私たちのコミュニティーからの寄付を合わせ、現段階で7万5000ポンド(約990万円)を超える寄付金を集めた。また、自社工場では地元の病院のために繰り返し使用可能なPPE(医療用防護服)ガウンの生産を開始した。最前線でウイルスと闘っている医療従事者に向けて数週間で8000以上のガウンを納品した。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.9 落合宏理&森川拓野「希望が見えたときに明るくなれる服を」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は2016年からパリでの発表を続けている「ファセッタズム(FACETASM)」の落合宏理デザイナーと、今年初めてパリコレに挑んだ「ターク(TAAKK)」の森川拓野デザイナーがそれぞれの思いを語る。

FACETASM

落合宏理デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A.この状況でも「ファセッタズム」らしいアプローチを検討している。海外の展示会は未定だが、国内展は6月を予定している。でもまずは、大切な人を守ることを考えて行動したい。

TAAKK

森川拓野デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A.コロナ以前のファッションの考え方やスケジュール感、服の作り方など、業界全体が一度立ち止まって考える機会だと思っている。デザイナーは常に時代に寄り添う職業だ。この社会状況に希望が見えてきたときに、少しでも明るくなれるものを掲示したい。

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営業再開も縮小営業が続く美容室にこれから必要なことは?

 新型コロナウイルスは美容室にも甚大な影響を与えている。状況が大きく変化したのは、3月25日に東京都が週末の外出自粛要請が出してからだ。都内ではその週末は営業を自粛する美容室もあった。それまでは、「前年と比べても売り上げは大きく変わらない」と答えていた美容室も、この外出自粛要請が出されて以降はかなり客数が減少したという。4月7日に7都府県を対象に緊急事態宣言が出されて以降、休業要請は出なかったものの、都内を中心に自主休業を決断した美容室も多い。(この記事は「WWDビューティ」2020年5月7日号からの抜粋です)

 その後、東京都は4月28日の夜に急きょ、4月30日から5月6日まで自主休業をした美容室や理容室には1店舗15万円、2店舗以上だと30万円の給付金を支給することを発表。それまで自主休業していた美容室の多くが、この期間に営業を再開することを決めていたこともあり、今さら感があったのは否めないが、一方で「小規模な美容室だと、営業するよりは休業して、今回の給付金と雇用調整助成金を支給してもらった方が金額面ではいい。大きな規模の美容室だと今回の給付金だと全然まかないきれないが、少人数サロンだと活用できるので、自主休業を決めた」という店もあった。

 こうした状況下で営業している都内の店舗では、「お客さまは通常の半分ほど。営業してもそこまで売り上げにならない。ただ営業することで、自粛で家に閉じこもっていたスタッフの気分も変わる」「予約制限していてほぼマンツーマンでやっているので、できる人数は限られているが、お客さまからは髪をきれいにすることで気持ちもすっきりするという声をいただく」「しっかりと顧客を獲得できていたスタイリストはお客が戻ってきているが、顧客の少ない若手は苦戦している」「こうした状況がいつまでも続くか分からない。だからこそ少しずつでもどうすれば安全に営業をできるか模索していく必要がある」などの意見が聞かれた。新型コロナの影響はまだ続くと思われ、すぐに通常営業には戻れない中で、いかにサロンを継続させていけるか。雇用調整助成金や持続化給付金、融資などをしっかりと生かしつつ、経営者は支援情報を把握していくことが必要だ。美容室の新型コロナ対策については、東京都美容生活衛生同業組合の特設ページなど確認できる。

 また原宿、表参道、銀座といった都心の一等地に店を構える美容室では家賃が大きな負担となっている。現状、多く集客して営業することが難しく、人数を制限せざるを得ない。現在家賃の補助についても検討されているが、これまで通りの家賃ではやっていけないサロンも出てくる。また、都心のサロンにわざわざ行くよりは地元のサロンを選ぶ人も増えるかもしれない。これまでこうした一等地で店を持つことがブランディングにつながっていたが、この現状だとデメリットもかなり大きく、今後はブランドサロンの郊外への出店も増えていくのではないか。

サロン独自の取り組みで
ファンを増やす

 そうした中で新たな道を模索するサロンも出てきている。「IJK 表参道」や「ゴールド(GOALD)」などはクラウドファンディングを開始した。2店とも初日に目標額を達成するなど、多くの支援を集めている。これは両店ともしっかりとファンを獲得してきたからこその結果だ。また人気バーバー「ミスターブラザーズ・カットクラブ(MR.BROTHERS CUT CLUB)」は、“テレカット”サービスを4月28日から開始した。これはオンライン会議ツールのZoomを使って、スタイリストがヘアカットを無料で直接レクチャーするというもの。美容室に行くのに不安がある人とつながる仕組みをつくっている。インスタグラムなどでも最近は美容師が顧客向けにおうちでヘアを楽しむためのアレンジやセルフカット、セルフカラーなどをレクチャーする投稿も増えている。直接、顧客と会えない中でもいかにSNSなどを通じてコミュニケーションを取っていくか、それがファンを増やしていくことにつながる。

 またサロンワーク以外での収益化も考えなければいけない。そういった意味ではサロンのECが一番だ。現在、ミルボンは理美容室専売品メーカーのミルボンは、新型コロナウイルスの影響により休業や時短営業を行っているサロンの顧客に向けて、「オージュア」「ミルボン」のリピート購入に限って自宅への配送を開始するなど、新たな取り組みを行っている。対面販売が難しい場面は今後も出てくるかもしれない。今回の件をきっかけにメーカーはサロンECでの販売も認めるようになっていくかもしれない。

 今後は、“美容室に行くこと”が以前よりより特別なことになってくるだろう。そうしたときに選ばれる美容室、美容師になることが重要だ。それはヘアスタイルだけを求めていくだけではなく、せっかくならあの人に会いたい、手掛けてもらいたいという気持ちの中で、選ばれること。そのためには何が必要か。内田聡一郎「レコ(LECO)」代表は、「大事なことは髪を切るというテクニカル的なことよりも、人をデザインするというコンサルティング的な側面が強くなる気がする」、またその姉妹店「クク(QUQU)」の浦さやか代表も「今以上にお客さまにとって特別な存在になっていかなければ選ばれなくなる。個人技(技術も想像力も)が必要」と語る。難しい時代だからこそ、美容室経営者はスタッフと顧客のために何ができるかを考え、しっかりと取り組んでいくことが必要だ。


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丸山敬太×軍地彩弓対談 服を売らないファッションビジネスを考える(前編)

 丸山敬太「ケイタ マルヤマ(KEITA MARUYAMA)」デザイナーは、ココネが運営する着せ替えアプリ「ポケコロ」とコラボレーションし、キャラクターの着せ替えアイテムをデザイン・監修した。現在「ポケコロ」は累計1500万ダウンロード、1日あたりのアクティブユーザーは約20万人を超える。ユーザーは9割以上が女性で10代から60代まで幅広く、中でも10代が多くを占める。「服を作って売るだけがデザイナーではない」と語る丸山デザイナーと、今回のプロジェクトに丸山敬太を招へいした軍地彩弓gumi-gumiCEO 兼「ヌメロ トウキョウ」エディトリアル・アドバイザーの2人が、これからの“服を売らないファッションビジネス”について語った。今回はその前編。

WWD:5月16日にスタートする「ポケコロ」とのコラボレーションは、どういった経緯で実現したのか?

軍地彩弓gumi-gumiCEO兼「ヌメロ トウキョウ」エディトリアル・アドバイザー(以下、軍地):「ポケコロ」の担当者からファッションの観点で相談させてほしいと連絡があった。私自身がまだ「ポケコロ」を知らない状態から話を聞いたときに、「ポケコロ」を見て素直にかわいいなと思ったのが一つ。あとは、アクティブユーザーが1日約20万人もいること。ファッションビジネスのチャンスを同時に考えた。

WWD:「ポケコロ」の担当者からは、デジタルで洋服アイテムを作って売っている数では、日本において「ポケコロ」が一番多いかもしれないけれど、社内でファッション業界での経験を持つ人が全然いないのはどうなのかという疑問があったと聞いた。ファッションの経験、文化、センスを持つ人と話をすることが必要だと感じで軍地さんにお願いしたと。

軍地:「ポケコロ」にはコロニーという星があって、その中に一つ一つの部屋がある。そしてその中に“コロニアン”という自分のキャラクターがいる。自分(またはキャラクター)の着替えのほか、表側のコロニー、中のインテリアそれぞれ模様替えが可能で、家、ソファ、ベッドなどを含め、どんな部屋にしたいかを選ぶことができる。そうなるとライフスタイル丸ごとを表現できる人でないとまず無理だと思った。今、トータルの世界観でファンタジーを作れる人は、敬太さんしかいないと思い相談した。

丸山敬太デザイナー(以下、丸山):ここ数年ずっと思っていたのが、“服を作って売ることだけがファッションじゃない”ということ。僕がファションに興味を持ち始めたきっかけって、蔦谷喜一のぬりえブック「きいちのぬりえ」とか、紙でできた着せ替え人形。幼い頃に原風景の中で2次元のものに触れてきた。この話をいただく2、3年前にもゲームのコンテンツ「うたの☆プリンスさまっ(うたプリ)」のアイドルたちに洋服を作ることを実際にやっていて、それがものすごく面白かった。

キャラクターデザインを担当する方がファッションをデザインするのではなく、キャラクターをデザインした人とは別に、ファッションデザイナーが関わって服をデザインするのは、新しいことのような感じもするけど、逆に至極当たりまえのような気がして。この話をもらったときに「わあ、楽しそう」と思って引き受けた。

ブランドのバリューは毀損するのか、しないのか

軍地:本来、デザイナーとしてリスクもあることだと思う。最初に敬太さんに話を持っていったときも「お願いしていいのかな」という思いもあった。ブランドの毀損が一番怖いから、本来だったら「ムリだよ」と言われてもしょうがないと思っていたけれど、敬太さんはすんなり受けてくれた。ちゃんと考えられていると思うけれど。

丸山:基本は楽しそうかどうか。ただ、2次元なら何でもよいわけではなく、ブランドの世界観にマッチするかどうかを客観的に考えての決断。そして先のお客さま(エンドユーザー)のことを最初にきちんと聞いて、そこでやれそうだなと思わないと仕事は受けないようにしている。

軍地:どのブランドでも当てはめてできるわけではないし、ブランドの毀損になると言ってくるところもあると思う。でも私は今回のことでよっぽどのことじゃない限り、ブランドは毀損しないんだなと思った。

丸山:そう。むしろアコギなことをするとかだますとか(笑)、そういうことをしない限り、ブランドは毀損しないんだと思う。ただ、これをテキトーにやって、大して自分でもかわいいと思っていないのに「どうぞどうぞ」ってやっていったらブランドは毀損するけど。

軍地:敬太さんはすごくそこにこだわっているから、デザイナーはその努力をずっとしていくしかない。結局はデザイナーの責任になってくる。

丸山:そういうこと。

軍地:それはとても大変な作業だから、途中で「大変なことを頼んじゃったな」と思って……。私的には敬太さんが最初に「こうじゃない、こういう髪型じゃない」と一つ一つ言ってもらったのが目からウロコで、あとあと形になって見てみると、「なるほど、これでOK出しちゃいけなかったなんだな」と。

WWD:丸山さんは、取り組んでみて具体的にどういったことに面白さを感じたのか。

丸山:今回は過去のアーカイブのコレクションを再現してみて、やれることがとても自由で、その楽しさを感じた。「ポケコロ」をやっている人たちは、何が楽しいのかがリアルに分かってくる。実際、ドレスを自分のライフスタイルの中で着るシーンがなかったりする人の方が多い。僕もそういうファンタジーを作りたくてデザイナーをやっているから、デジタルの中で自分のキャラクターにいくらでも好きな服を着せることができる楽しさを実感した。

軍地:好きな服を選んで隣に挨拶にいってコミュニケーションをとったり、何度も着替えたりすることができる。

丸山:そう。コミュニケーションがすごくできるツール。ファッションはコミュニケーションの一つだと昔から思っていて、着ているものを通して会話のきっかけになったり話が膨らんだりすることがファッションの楽しさ。そういうことが逆にこのデジタルの世界の中では活発に行われていて、あらためてこういうところにファッションの本質みたいなところがつながっているんだなと思えた。それと同時に、これから可能性がある場所だなと思った。

軍地:デジタルの世界にもファンタジーがある。私がファッション誌の「グラマラス」「ヴィヴィ」「ヴォーグ ガール」を作っていたとき、ページを開いたときの、女の子の気分がふわっと上がるようなファンタジーをすごく考えながらハウツーにまで落とし込んで作っていた。今の女の子たちでいうと、それと同じような体験は何だろう?と。もちろんインスタグラムもピンタレストもあるんだけど、何かストーリーを伝えたり、ファンタジーの世界観を伝えたりすることにここ数年ずっと分断を感じ、自分なりに疑問があった。

WWD:実際に「ポケコロ」のユーザーに会ってどう感じたのか?

軍地:インタビューした際、ファッションと接点を持つこと、服を着替えることに対して女の子たちの目がキラキラしていたのが印象的だった。その情熱は私が「ヴィヴィ」を作っていた頃、女の子が熱狂していた時代と全然変わらない。リアルでは「ポケコロ」に着せるような格好はできないけど、自分のクローゼットを持っているようだと言って、中には課金で10万円くらい使う人もいる。「10万円あったら、まあまあいいバッグが買えるのでは?ずっと使えるし」と聞くと「違うんです。バッグ1つ買うとまずその分スペースが必要になるし、買った瞬間に安くなるからリスクにもなる。だけどデジタルの中では逆に価値が上がることもあるし、価値が落ちないんです」と言ったりしていて、モノの価値観の変化をまざまざと感じた。

モノの価値観がガラガラと音を立てるように変わっていく

WWD:とくに若い世代におけるモノの価値観が変わってきている。

軍地:たとえスマホが壊れても継続できるものであって、価値が毀損されず、逆に財産になる。そうなるとモノの価値観がガラガラと音を立てるように変わっていく。私たちはリアルでフィジカルなモノを売り買いすることにずっと注力してきた。デジタルの中にあるモノの価値を下に見ていたのかもしれない。実際に「ポケコロ」の画面を見たら分かるけれど、すごい再現力。そうなるとリアルとのクオリティーが近寄ってきて、2次元の世界と私たちのフィジカルの世界のどちらで提供しても、モノの価値ってそんなに変わらないんじゃないかと思う。

たとえば実際に「ケイタ マルヤマ」の50万円のドレスが買えなくても、「ポケコロ」の課金でクローゼットに置ける感覚、実際のドレスと同じように買った感覚を手に入れることができる。感情的な上がり感、エネルギーの総量的にはそんなに変わらない。

丸山:スマホやiPadといったデジタルのいろんなものが出現してからだいぶ経つけれど、今までリアルとデジタルは別のものという考え方があった。だけど、すでに変わってきていて、どちらを選ぶかというだけの話で、デジタルの中にしかいない住人がリアルの方に目を向けたり、その逆もある。今はその過渡期。交じり合ういい時期に来ていると思う。

僕がこういう仕事をさせてもらえたのは、ちょうどそのタイミング。「ポケコロ」で「ケイタ マルヤマ」を知った人が実際の商品を見てすごく素敵、欲しいと思ってくれる人もいるかもしれないし、その逆でずっと「ケイタ マルヤマ」を好きでいてくれた人が、デジタルの世界に入っていったときに、もっと気軽に体験できる喜びに目覚めていく。

軍地:自分のアイテムが増えていけば増えていくほどクローゼットの中身が増えていき、その中で服やバッグなどの組み合わせを考えるのは、毎日女の子がやっていることと同価値で普遍的なこと。実際にはその格好(ドレス)で会社には行けないけれど、かわいいものを着たい、組み合わせたいという着せ替え欲求は女の子の根源にあるのでは。

丸山:デジタルの世界では、現実にないようなアイテムを楽しめたりもすれば、「ケイタ マルヤマ」のように現実にあるものを楽しむこともできるし、どこにでも行けたりする。イマジネーションの中でいろんなことができるのは、ほんとにクリエイティブな遊びだなと思う。取り組んでみて楽しかったし、変な言い方かもしれないけれど「ケイタ マルヤマ」の世界観ってそういうものにハマりやすいファンタジーとかモチーフがある。僕自身、そういう物語を組み立ててモノを作っているから、何の違和感もなくやれた感じがする。

軍地:敬太さんの顧客は年齢層が上がってきているから、敬太さんにとってもチャンスだなと思うのは、10代の女の子が「ケイタ マルヤマ」をデジタル上で知ることで、ブランドを知るきっかけになる。「ポケコロ」は親子で楽しんでいる人も多いから、アイテムを贈り合ったりもする。実際にその若い世代の女の子たちもかわいいと思えるものを、世代を超えて表現できる人は敬太さんしかいないと思った。

丸山:モノを作っている人たちって楽しめると思うから、「ポケコロ」の部屋の家具デザインを家具デザイナーが担当したり、建物のデザインを建築デザイナーが手掛けたりとか。どんどん膨らんでいったら面白いなって思う。ヘアメイクアーティストなんて絶対入ってきていいと思う。僕なんかからすると、デジタルの中に本物のファッションが入っていくことは素敵なことだと思うから、いろんなデザイナーがいろいろやればいいのにと思う。

クリエイトする力のある人が生き残れる時代にしなければいけない

軍地:加茂(克也/ヘアメイクアップアーティスト)さんが生きていたらと思う。クリエイトする力のある人が生き残れる時代にしなければいけない。加茂さんみたいなゼロからすごいものを生み出せる人たち。右から左ではなく、ゼロからモノを作るというのは全然違うもの。クリエイターが生き残る道の2020年版を作っていかないといけない。私はクリエイティブを失ったら人間ではないと思っていて、そのクリエイティブやファッションを新型コロナウイルスで諦めるとかとかではなく、ファンタジーを継続させて、それをちゃんと商業活動に持っていけるように、われわれのような周りにいる人たちもサポートしていくべき。

WWD:新型コロナウイルスがここまで感染拡大する以前からこのプロジェクトは進んでいたというが、くしくもリアルで服を売れない状況になり、ファッションデザイナーのビジネスモデルの在り方を考えるきっかけにもなっている。

軍地:「ファッションデザイナーは何を売っているのか」ということに帰結していくと思う。敬太さんを見ると「ケイタ マルヤマ」の世界感にお客さまがついていている。世界感を強く持っていると、さまざまなビジネスに生かすことができる。洋服を売ることだけが出口になってしまうと、今後ビジネスモデルとして服を売るパイが小さくなっていったときに先細りしてしまう。

物理的にモノを買うことだけがファッションを手に入れる手段ではなくて、たとえばゲームの世界でファッションに触れる、そこにタダでなくて対価を払うということが普通になるといい。デジタルの世界は0円が多かったが、デジタルで素敵なファッションを手に入れることにも、これからは対価が払われる時代。5G時代になってリアルとデジタルが溶け合っていくときに、物理的に洋服を買わなくても、ファッションをデジタルのAIやARの中で着られるということも今後起きていく。そういうときのステップとして、ゲームやアプリからスタートするのはよいと思う。

丸山:実際に服を作らないデザイナーが出てくるかもしれない。

軍地:ファッション専門学校では、アニメのデザインだけをするとか、ゲーム衣裳のデザイナーを志望する学生も増えてきている。布を縫わないデザイナーは20代だと当たりまえのように出てきていて、それが交じり合っている時代だなと思う。

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ロンハーマンが満を持してECを始めるワケ 名物バイヤー根岸ウィメンズディレクターに直撃

 日本上陸から11年、これまで“実店舗主義”を貫いてきた人気スペシャリティストア、ロンハーマン(RON HERMAN)が5月28日にオンラインストアをオープンする。「ECをすれば必ず売れると分かっている。でもやらない」――以前、根岸由香里事業部長兼ウィメンズディレクターの言葉が印象的に残っている。今回なぜ、ECを始めるに至ったのか。

 オンラインストアの立ち上げは新型コロナウイルスの感染拡大が原因ではない。「実は約1年前から今年の8月末を目指してオンラインストアオープンに向けて準備していた。昨年10周年を迎え、この先の10年、そしてもっと先の未来を考えたときに、私たちらしく進化していくために必要だと考えた。どんどんテクノロジーが進化していく中では、実際に体験したい、触れたいという店でしか得られない“特別な体験”と、“利便性”を今まで以上に上手に使い分ける時代がやってくるだろうと話をしていた」と明かす。

 ロンハーマンを運営するサザビーリーグは2019年2月、米ロサンゼルスから「ロンハーマン」の事業を譲受している。ロサンゼルス・メルローズで40年以上も続く人気店だ。「この出来事によってさらに大きな視野を持つようになった。この先の未来に店を進化させながら守るためには、私たち自身が大切なものを崩さずしなやかに進化する必要があると感じた。いい進化とは大切な人や人を守り、強くしていくことだと思う」と語る。

 オンラインを始めると決める段階で、さまざまなセクションのスタッフにヒヤリングをし、話し合いを重ねに重ねたという。「どうしたらロンハーマンらしく、大切なものを崩さずできるか?どんなことをしたいか?お客さまはどんなオンラインストアだったら喜んでくださるか?――たくさんの疑問や質問を徹底的に話し合い、皆が納得した段階で動き出した」。

 ロンハーマンは一貫した“実店舗主義”で売り上げを伸ばしてきた。「店での体験・経験を何よりも重視してきたし、そこは変わらない。直接のご来店でしか得られない特別な体験や経験を提供することが私たちの根幹にある」と語る。

 そうした中、オンラインストアをつくる上で大切にしたのは、「“温度のあるECにしよう”ということ。ただ便利なだけでは意味がない。便利で快適で、機械的じゃない温度を感じられること――つくっている、関わっている人の情熱や思いが伝わるようなECにしたい。カスタマーサービスの強化やオンライン上でのコンテンツなど、大切な部分には惜しみなく手間をかける。そしてECがあるからこそ店舗との連動企画でもっと面白いことができたり、クリエイティブな部分の面白さも進化するはず」と意欲的だ。

 5月28日には、8月末のオープンに向けて動いていた内容の50%の機能でスタートする。「今は何よりも少しでも早く、“今の世の中で安心してお買い物ができる場所”をつくることが先決と判断した」。開設後は段階的にバージョンアップしていく計画だ。

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コロナの前後で変わること変わらないこと

 この原稿を書いている4月22日は、4月8日の緊急事態宣言発令から2週間が経過し、ちょうど折り返し地点になる。予断を許さない状況ではあるものの、在宅勤務や不要不急の外出自粛などのイレギュラーな生活のリズムにも慣れてきて、“コロナ後”のことを考える余裕くらいは出てきた。コロナの前と後で、ファッション産業は何が変わり、何が変わらないのか。(この記事はWWDジャパン4月27日&5月4日号からの抜粋です)

 まず間違いなく変わるのは、オンライン化とデジタル化のスピードだ。仮に緊急事態宣言が解除されたとしてもコロナが終息するまで当面の間、不特定多数のお客に対面して接客するファッション小売業は、自社の販売員を感染リスクに晒し続けることになる。販売員はできるだけお客と距離を取らねばならないし、話す時間も短くすることも必要になる。さらに、本来の接客以外のマスクの着用や感染予防のため消毒作業なども発生することが予想され、店舗の販売力低下は避けられない。

 だからといってネット通販単体で売れるというわけでもない。調査会社のNintは衝撃の調査結果を明らかにしている。3月と4月、アマゾンと楽天、ヤフーのファッションカテゴリの売れ行きは、まだら模様でむしろマイナスという結果になった。最有力のファッション通販モール「ゾゾタウン」はデータに入っていないものの、ファッションに関しては「巣ごもり消費」は限定的だと言える。

 ファッション小売業は、リアル(=店舗)とデジタル(=ネット通販)を相互補完する取り組みを加速させることが必要になる。店頭で見せて、ネット通販で売るという仕組みをより洗練させるためには、在庫連携やショールーミングなどのデジタルツールの活用はもちろんのこと、ルミネやパルコといったファッションビル側との連携も重要になるだろう。すでにファッションビルを運営する商業デベロッパー側は、短期的にはテナントであるアパレル企業への家賃減額などの支援を打ち出しているが、中長期的な支援としては従来の契約見直しも含めたシームレス化支援も必要になるかもしれない。

 欧州のモード産業に強い影響力を持つセント・マーチン美術大学やロンドン芸術大学の大家は口をそろえて「パンデミックがサステナブルファッションの潮流をさらに後押しする」としているものの、サステナブルファッションは一時的に大きく後退することになるだろう。今年いっぱいは後退した景気を揺り戻させるため、世界規模で政府主導によるなりふり構わない、あらゆる景気浮揚策が講じられるはずだ。日本政府もすでに100兆円を超える公的資金を投じ、休業補償とセットで大盤振る舞いの財政出動や金利の大幅緩和などを明らかにしている。企業側も急ブレーキをかけられ停滞した営業を再び上向かせるときに、経済活動の制限につながるサステナブルな発想は優先度が低くなる可能性は高い。

 最後は政治だ。思い返してみれば、2011年3月の東日本大震災後も政治への関心が一時的に高まった。SNS、特にツイッターでは4月8日の緊急事態宣言の前後から、あらゆる人が安倍首相や政治家に関して、政治的な投稿を始めているようにも見える。「WWDジャパン」でもこれまで政治的な発言を取り上げることが少なかったが、3月30日号でDJで編集者のLicaxxxの「カルチャーを失わないために、政治に関心を持ち、声をあげよう」という声を取り上げた。

 ただ、残念なことに多くの場合、公的資金の大半はもともと政治的に発言力の強い企業や産業に優先的に流れるだろう。東日本大震災の復興資金の多くは土木や建築、鉄道などのインフラに投じられた。大きな話題になった“アベノマスク”にしても、受注したのはこれまでの政府関連のユニホーム入札などで実績のあった大手商社だった。デジタル化投資にしても、新興企業だと楽天、それ以外でも東芝やNEC、富士通などの大手企業が受け皿になるはずだ。公的資金の受け皿が大手企業、あるいはその取引先である中小企業になり、この1年はそうした層が景気回復の担い手になると、ファッションも一時的にはいわゆるコンサバティブに振れることになる。一方、個人事業主やフリーのクリエイター、フリーター、さらにはいわゆるデジタルネイティブのZ世代が起業したスタートアップ企業などにまで資金が行き届かず、結果的に世代間格差が大きくなる可能性は高い。

 1年後、あるいは数年後にはその反動が、政治にまで波及し、既得権益を崩し、新たなムーブメントを生み出すかもしれない。本当のポストコロナの始まりは、そのときかもしれない。サステナブルファッションも、進化した形で再び降臨する可能性は高い。

 いずれにせよ、投じられるであろう莫大な公的資金の原資は、国債を筆頭にした未来からの借金になる。随分前から日本の国家予算は国債頼みの慢性的な赤字財政で、今後も大きな経済成長が期待できない。政府による財政出動が大きければ大きいほど、未来にツケを残すことになる。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.8 岩井良太「ささやかな高揚感でもいい。服で人の心を明るくしたい」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は「オーラリー(AURALEE)」の岩井良太デザイナーが、顧客から母校の学生まで、ファッションを愛する全ての人を思う言葉を紹介する。

AURALEE

岩井良太デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A.僕たちには洋服を作ることしかできない。医療系で直接役に立つことはできないし、洋服が今一番必要なわけでもない。でも自分自身、人と会う機会が減り自宅で過ごす時間が増えても、やっぱり気に入っている服を着て過ごしたいと思うし、好きな服を着たら少し気分が上がる。洋服は、人に見せたりSNSにアップしたりするためだけでなく、自分自身のために着るもの。そんな風に感じる人が僕以外にもいるはずだ。だからこんな状況でも今まで通りに、服を通して人の心を明るくし、ワクワクさせたり、ささやかな高揚感を与えられたりするのが僕たちデザイナーの仕事だ。


【自社での動き】

 インスタグラムの公式アカウントでスポティファイ(SPOTIFY)のプレイリストを週1回ペースで作成して公開したり、商品のディテールや取り扱い店を案内する期間限定のインスタグラムアカウントを開設したりと、顧客にデジタルでコレクションの世界観を伝える取り組みを開始した。また母校である文化服装学院の学生をサポートするために、生地の試作品や残反を寄付する準備も進めているという。


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ご近所への外出にはやっぱりスニーカー!“甘フェミ使い”のアレンジ技を紹介

 “巣ごもり”が続いていますが、買い出しなど「ちょっとそこまで」の足早な外出に欠かせないのは、やはりスニーカー。スニーカーは近頃、ランウエイショーでも見慣れた存在になっています。外出自粛が徐々に緩和することを願いながら、これから夏に向かって試したい、スニーカーを生かしたおすすめコーディネートを紹介。注目は“フェミニン度高め”な服とのミックスです。スニーカーが過剰な甘さを抑えつつ、若々しさやアクティブ感を添えてくれます。

 韓国出身デザイナーがパリで発表している注目ブランド「ロク(ROKH)」は、優美なスカートルックにスポーティーなスニーカーをマッチング。布をたっぷり使ったスカートが主役を張りながらも、ディテールの凝ったスニーカーが足元で程よく主張します。コンパクトなポロシャツとの相乗効果で“フィット&フレア”の好バランスコーデに。今回は海外のおしゃれスナップを参考に、差が付くスニーカーコーデのポイントをおさらいしてみました。

スリットからスニーカーをのぞかせて

 フェミニン濃度が高めのボトムスと言えば、スリット入りやアシンメトリーのスカート。ヒール靴で合わせるとオーソドックスな見え具合にまとまりますが、スニーカーを相棒に選ぶとヘルシーな着映えに仕上がります。

 深めのスリット入りのロングスカートは、夏場は涼やかにまとえるので重宝します。足さばきがよいのに加え、レッグラインを程よく露出し、女らしさを薫らせてくれます。そこに、あえてキャンバス地のスニーカーで合わせて、軽やかさをプラス。ゆるっとしたトップスとのコントラストも効いています。

 写真2枚目はアシンメトリーのスカートにスニーカーを合わせたパターン。イレギュラーなヘム(裾)が脚をシャープに見せています。裾先がとがったヘムにはモード感が漂いますが、スポーティーなスニーカーを引き合わせれば、気張らないテイストに落ち着きます。ドレーピーなトップスもドレッシーなだけに、足元に抜け感を添えるのがグッドバランスの肝です。

ドレッシーなワンピースをムードチェンジ

 ほぼ1枚で過ごせるので、夏の装いに重宝するワンピースやセットアップ。上品にまとまりやすいアイテムですが、スニーカーとのコンビネーションはこなれ感を呼び込んでくれます。

 構築的なシルエットが目を引くワンピースには、エレガント靴で合わせるのがセオリーですが、この日のチョイスはゴツめのスニーカー。図体大きめのスニーカーがドレスダウン効果を発揮。足元にボリュームを持たせることによって、きゃしゃ感も引き出す仕掛け。スニーカーの“1点投入”という鉄則を守った好判断です。

 ダイナミックな総柄の装いに、ドレッシーな靴を添えると、トゥーマッチの見え具合になりがち。そこでおすすめなのが“引き算”のアレンジです。写真2枚目のレトロなプリント柄のセットアップ風コーデは、全身をモチーフで埋め尽くしている分、スニーカーは無地のプレーンなタイプが正解。アイウエアと共に、ストリート感を加えて、ミックステイストにまとめ上げています。

ミニ丈ボトムスとのコンボ技で元気いっぱいに

 スニーカー特有の元気感や若々しさを、装いのスパイスとして差し込む使い方も効果的です。中でもミニ丈ボトムスとのコンビネーションは抜群。ジャケットやワンピースといった“非カジュアル系”のウエアにぶつけて、ずれ感を引き起こすコーデを組み立てられます。

 写真1枚目は、じわじわと人気が高まってきたミニ丈ボトムスに、テーラードジャケットをオン。ジャケットのきちんと感が利いて、ミックステイストのコーデに仕上がりました。足元にはハイカットのスニーカーを迎えて、アクティブな気分を呼び込んで。トップスの白とスニーカーの白が響き合う演出です。

 色のコントラストを生かしたコーデにスニーカーを組み込むと、全体にリズムが加わります。2枚目の写真は「バーバリー(BURBERRY)」のコレクション会場に現れたファッショニスタ。ポロシャツを上下に縫い合わせたかのようなユニークなワンピースはスポーツテイストでありつつ、深めのスリットが女っぽい。服のキーカラーに合わせたツートーンのボリューミーなスニーカーで、ポップで軽やかな気分を印象づけました。

 スニーカーをフェミニンルックに混ぜ込むスタイリングは、手持ちワードローブのご近所使いにも生かせそう。今どきの外出に求められるキビキビした足運びにも役立つ、出番が見込めるコーデ術です。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

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テレワーク拡大でホームフレグランス需要伸びる

 新型コロナウイルスの影響で在宅によるテレワークを導入する企業が増えている。経団連が行った「緊急事態宣言の発令に伴う新型コロナウイルス感染症拡大防止策 各社の対応に関するフォローアップ調査」(2020年4月14~17日に実施、406社回答)によると、実施している従業員の割合は限定的であるものの、97.8%の企業がテレワークに取り組んでいると回答した。こうした中、自宅で働く環境をよくしたり、外出自粛生活への不安などからくるストレス和らげたりする目的で、香り製品を購入する人が増え、ホームフレグランスの売れ行きが伸びている。(この記事はWWDビューティ2020年5月7日号からの抜粋です)

 香水の輸入販売大手のブルーベ・ジャパンでは、自社ECサイト「ラトリエ デ パルファム」の1~3月の売り上げが前年同期比50%増、4月はさらにプラスになる見込みだ。ホームフレグランスのカテゴリーは2~4月に同45.3%増で推移し、「ホームフレグランスは特に3月以降に伸びていることから、在宅勤務の影響が見られる」(同社広報)という。中でも米国発ビーガンフレグランスブランド「クリーン」の、石けんの香りから着想した清潔感のある“ウォームコットン”の香りが人気で、リードディフューザーやホーム&リネンスプレーが売れている。また、南仏発「パルファム ドゥ ラ バスティード」は、ホームスプレーのほかラベンダーが香るランドリーソープが好調だ。「心地よい空間づくりを求める人に、柔らかく優しく包まれているような香りの人気が高い」と同ブランドの広報担当は話す。

 多くの香水を取り扱う専門商社の川辺も、オンラインショップ「インターモード川辺」の2~4月のフレグランス売り上げが同120%増以上と伸長した。中でもキャンドルやリードディフューザー、ボディーウォッシュ、ハンドクリームなどさまざまなフレグランス商品を展開するモダンブリティッシュフレグランスブランド「ミラー ハリス」が、同260%増以上と大幅に拡大している。人気は、香水が紅茶の香りの“ティー トニック”や“ローズサイレンス”などの「親しみやすい香り」(同社広報)で、ディフューザーは森の中に生える露を含んだコケの香りをイメージした“モスケット”が最も売れている。「ライフスタイルに溶け込みやすい香りやアイテムが好調。香りを感じて心のバランスを整え、日常の中に幸せを感じるために使われているように見受けられる」という。

 バラエティーショップ向けの中低価格帯の商材を取り扱うフィッツコーポレーションでは、2~4月のEC売り上げが同10%増で推移。中でもホームフレグランスカテゴリーが同25%増とけん引しており、特にアマゾンでの売り上げが伸びている。同社は昨秋、自社ブランド横断で展開する新ライン「フィッツ ホーム フレグランス」を立ち上げて強化を図っており、ホームフレグランス需要拡大を受けて順調に売り上げを伸ばしている。同ラインの中でも、“ライジングウェーブ フリー ライトブルー”“レールデュサボン センシュアルタッチ”の人気が高い。「フルーティーフローラルとサボンという、空間になじみやすい爽やかな香りが2つの共通点」(同社広報)と分析する。「在宅勤務時のモチベーションアップや、オンとオフの切り替えを目的に購入する人も増えているのでは」と推測する。同社は4月22日から、「香りバトン」と題して社員が自宅での香りの楽しみ方や工夫を紹介するコンテンツを、自社オンラインストアや公式インスタグラムで配信している。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.7 藤田哲平「山ほどいる“軽い”デザイナーは1、2年後にいなくなるだろう」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、物怖じしない精神力とビジネスについての明確な視点を持つ「サルバム(SULVAM)」の藤田哲平デザイナーが、過渡期のファッション業界に物申す。

SULVAM
藤田哲平デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A.時代を反映するのと同時に、暗い状況下でも時代を明るくすることができる――それがファッションであり、僕たち服屋の仕事だ。今、特に日本に山ほどいる“軽い”デザイナーたちは1、2年後にはいなくなっているだろう。この社会状況でも生き残り、伝えていくのはデザイナーだけでなく、店も同様だ。自分の好きなことをして生きていけている僕らのような人間は、責任を負えないならやめるべき。どんな状況下でも服しか作れないからこそ、この仕事で食べている。だから今は、きれいごとではなく、対策よりも命そのものを守りたい。当たり前が当たり前ではないこと。自分を守り、大切な人を守ること――何よりこれだけだと思う。

 ただ、僕もマスクを生産して配布したいと考え、医療機関で使用されている素材を手配しようした。しかし医療的に効果のある素材は調達が困難という現実に直面し、ふがいない気持ちだ。自分でマスクを作って配布するなら、ある程度抗菌作用がある素材にこだわりたかった。今は、多くのブランドが残反でマスクを作り始めている。残反で作ったうえに販売までしているのは、正直、同じデザイナーとして嫌気がさす。止まっている縫製工場のためにと考えているのかもしれないが、「残反で作って売るなよ」という感じ。というのも、ブランドの価値が安くなってしまう気がするから、このビジネスはやめた方がいい。

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「孤高の美学」から「一致団結へ」 ミッドウエストのバイヤーが政府への呼びかけに参画・賛同した理由

 緊急事態宣言が31日まで延長されたことも背中を押し、ファッション業界にも、一丸となって都や国に働きかけようという動きが大きくなってきた。発起人の1人は、シューズブランド「ユナイテッド ヌード(UNITED NUDE)」日本法人の青田行社長。名古屋に拠点を構え、東京と大阪でもセレクトショップ「ミッドウエスト」を手がけるファッションコアミッドウエストの大澤武徳バイヤーも賛同し、業界の結集を呼び掛ける。大澤バイヤーに、「ミッドウエスト」を取り巻く環境と、政府へのアクションについて聞いた。

WWD:現在(取材は5月6日)の状況は?

大澤武徳「ミッドウエスト」バイヤー(以下、大澤バイヤー):名古屋と東京、大阪の店舗をクローズしている。売り上げは、例年の半分。オンラインは(前年同期比)150%くらいで伸びているが、落ち込み分をカバーするには至らない。ベテランスタッフは、SNSで接客してオンラインに誘導。「1点でも消化しないと」と頑張っているが、高額商品やデザイン性の高い洋服はまだまだ難しい。一方の中堅~若手は、動ける範囲内で動いてはいるが「どうしたらいいんだろう?」と悩んでいる。大手も含め今を「自己啓発の機会」と捉えているが、現実的には難しい点も多い。緊急事態宣言が1カ月延長され、双方の不安はさらに募っている。そこで、名古屋から営業を再開しようと思っている。まずは11日から予約制で。安全を守りながら、秋冬の商品を迎える体制を作り始めなければ。

WWD:だからこそ、青田社長たちのアクションに賛同・参画した?

大澤バイヤー:青田さんとは10日ほど前から、「延長されたら、より大変になるね」と話していた。補償のない今、業界は「ただ休んでいるだけ」の状態。じっとしては、いられない。金額的に十分な補償ではなくても、行動を起こして結果に繋がったとしたら、「政府が、自分たちを気にかけてくれている」と知ることができる。それは、ベテランから若手までの「悩み」を緩和するかもしれない。今は、小売も、メーカーも、工場も、みんな大変。あらゆる業界が大変。だから団結し、まとまって、何かができないか?と思っていた。

WWD:“一匹狼”がカッコいい的な「孤高の美学」も存在する業界だ。それでも今は、「団結」が大事?

大澤バイヤー:正直、僕もそういうタイプだったと思う。でも今は、「新しいことを、なにか、一緒にやりませんか?」と思っている。アフターコロナも、相当大変だろう。これを機に、色々協力していかないと。例えば今週から、37の県では店舗営業が再開できるようになってきた。地方のショップに、都心のセレクトがポップアップをオープンする。そんな協業を生み出したい。代わりに「ミッドウエスト」は地方から上京した先駆的存在として地方店の相談に乗る。神南の店舗の一角は、地方店のポップアップにしてもいい。地方の一番店のオーナーは、我は強いかもしれないけれど、話すと共感できる。異なる店舗が協力して別注品をオーダー、なんて試みもあるだろう。1つの地方店では10しか発注できなくても、複数の地方店と「ミッドウエスト」が「協力」すれば100発注できるかもしれない。それは、ブランドに対する小売店の「協力」になるだろう。地方のオーナーやバイヤーにはアツい人が多く、顧客も多い。政府への働きかけも、賛同してくれたら多くの署名が集まる。発信しなければ、忘れられてしまう。今はまず、協力して、意志を示すことが大事だ

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コロナ禍で見直されるドイツの発酵食品、ザワークラウト 海外ビューティ通信ベルリン編

 世界に目を向けると日本とは異なる美容トレンドが生まれている。そこで、連載「海外ビューティ通信」では、パリやニューヨーク、ソウル、シンガポールなど、7都市に住む美容通に最新ビューティ事情をリポートしてもらう。

 新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、ドイツでも3月22日から接触制限措置、いわゆるロックダウン状態となった。スーパーや薬局、散歩などの最低限の外出は許可されているものの、ほとんどの時間を家の中で過ごさなければならず、運動不足や不安からメンタルヘルスに変調を来す人も出てきている。健康管理のために自宅でできるワークアウトや食事など、免疫力を上げるためのさまざまな方法がインターネット上では紹介されている。(この記事はWWDビューティ2020年5月7日号からの抜粋です)

 ドイツでは、1600年代から受け継がれる伝統的な家庭料理の一つ、ザワークラウトが免疫力アップに効果的であると再評価を得ている。ザワークラウトとは、「酸っぱいキャペツ」という意味のキャベツの乳酸発酵食品で、ドイツではソーセージや肉料理のサイドディッシュとして定番だ。千切りにしたキャベツを塩に漬けて発酵させるだけのザワークラウトだが、健康上の利点が数え切れないほどあるとされ、“ドイツのスーパーフード”とも呼ばれている。

 ザワークラウトは1カップあたり27キロカロリーという低カロリーでありながら、葉酸、ビタミンB6、リボフラビン、チアミン、ビタミンKが含まれ、ビタミンCの1日の推奨摂取量の3分の1を有し、鉄、カリウム、マグネシウムといったミネラルも豊富だ。キャベツは生で食べるより発酵させた方が栄養価が高まり、消化力を高めて便秘を改善し、腸内のバランスを整えるプロバイオティクス(人間や動物の体にいい働きをする生きた微生物)効果も生まれるという。

 ザワークラウトは自宅でも簡単に作れるが、スーパーではさまざまなメーカーから缶や瓶、パックなどのパッケージで売られており、2ユーロ(約200円)前後と手頃である。中でも有名なのは、ドイツ南西部バーデン・ヴュルテンベルク州エスリンゲンに拠点を置くヘングステンベルグの商品で、置いていないスーパーはないと言えるほど国民的なメーカーだ。
 
 同社は1876年にワインビネガーメーカーとして設立され、その後ピクルスやザワークラウトなどの漬け物事業に乗り出し、1932年に世界で初めて低温殺菌された缶詰のザワークラウトを発売したことで知られる。創業者のリヒャルト・A・ヘングステンベルグ博士は“最高の品質を適正な価格で”を理念に掲げ、130年の伝統に培われたノウハウと厳しい原材料のチェック、最新技術による生産工程の管理を徹底し、国際標準化機構(ISO)による品質マネジメントシステムに関する規格ISO9001の認定も取得している。また、容器もリサイクル可能な材質にこだわり、地球環境にも配慮している点がエコ先進国のドイツならではだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大でベルリンでも外出制限が課される中、保存の利く缶詰や瓶詰、ジャガイモなどが陳列棚から一気になくなる買い占め現象が起きたが現在のスーパーの様子は通常に戻っている。免疫力アップにいいとして伝統食のザワークラウトが見直されているように、自由が制限された生活の中で多くの人がこれまで何気なくとっていた食事や健康のありがたさに意識を向け始めている。さらに進んで、環境や地球のことを考え直すきっかけになることを期待したい。


 「WWD JAPAN.com」はファッション&ビューティ業界を応援すべく、週刊紙の「WWDジャパン」と「WWDビューティ」に掲載した新型コロナウイルス関連ニュースを無料開放します。記事やコラムから未曾有のピンチを克服するヒントや勇気を感じ取ってくだされば幸いです。

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宮沢香奈:フリーランスライター兼コラムニスト。プレス、ブランドディレクターなどを経て、フリーランスとしてPR事業をスタート。その後、ライターとして執筆活動を開始。2014年に東京からベルリンへ拠点を移し、ヨーロッパを中心とした現地情報を多数の媒体で執筆中

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連載「今、デザイナーができること」Vol.6 末安弘明「絶対にここで終わらない。服を作ることが僕の全て」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、2019年からパリでの発表を続けている「キディル(KIDILL)」の末安弘明デザイナーが、苦境の中でもインディペンデントを貫く強い思いを語った。

KIDILL

末安弘明デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A.この1カ月で世界が一変してしまい、今後はこれまでとは全く違う状況になってくる。自粛ムードが強くなるにつれて活動ができない人が増え、生きるか死ぬかのギリギリの状況になり始めている。現状は政府からの十分な補助金も期待できず、「キディル」も来年に終了している可能性だって十分に考えられる。でも僕はファッションや音楽や映画や飲食など、あらゆる文化に影響を受け、救われながら生きてこられた。だから絶対にここで終わるわけにはいかない。“PUNK'S NOT DEAD”ではないけれど、同じ意志を持って活動している友人や仲間と共にできることは多くあるはずだ。このパンデミックであらためて気づかされたのだが、有名人が着ているとか、何億円売り上げているとか、そういうことでなく、僕は純粋に服を作って生きていくことが楽しいし、それが自分の全てだということ。その場所を守るために、自分たちから発信しなければならない。


【自社での動き】

 「ヴァイタルマテリアル(VITAL MATERIAL)」が立ち上げたプロジェクト「#CONNECT TO THE FUTURE」に参加し、品薄状態が続いているアルコールハンドジェルと口腔ケア用歯ブラシを製作。「ヴァイタルマテリアル」は販売収益でアルコールハンドジェルを増産し、保育施設など各施設に寄付する。5月17日まで「ヴァイタルマテリアル」の公式サイトで販売・受注を行っている。


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ロコンドがユーチューブで描く成長戦略、株価は年初来の最高値更新

 ロコンドの株価が上昇している。きっかけは人気ユーチューバーのヒカルとのコラボレーションだ。4月2日の夕方にヒカルのブランド「リザード(REZARD)」とコラボレーションしたシューズを販売すると、夜中にサーバーダウンになるなど祭り状態に。翌日の株価は一時期ストップ高となる17.02%も上昇。その後もシューズの追加や雨上がり決死隊の宮迫博之も巻き込んだテレビCM放映などのイベントを連発したことで、株価は上昇を続け、7日には一時、年初来で最高値となる1275円を付けた。ユーチューブは、ロコンドの成長を後押しする起爆剤になるのか。

 ロコンドが4月14日に発表した20年2月期業績は、商品取扱高(GMV、*返品後)が前期比29.5%増の182億円、売上高は同27.8%増の85億円と増加したものの、営業損益は8300万円の赤字(前期は9億8000万円の赤字)、経常損益は7700万円の赤字(前期は8億6200万円の赤字)、純損益は2億5600万円の赤字(前期は4億6400万円の赤字)だった。年初に掲げていたGMV225億円、営業利益トントンという目標は、暖冬に伴う消費不振と暖冬に伴う消費不振と昨年3月に買収したモバコレの減損などで、大幅な下振れを余儀なくされた。新年度である21年2月期も新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛は、主力アイテムのシューズ販売に大きな影響を与えており、田中社長も「4月は全般的に厳しかった」と語っている。

 にもかかわらず株価が上昇しているのは、田中社長が新事業の柱として位置づけるユーチューバーのヒカルを筆頭に、インフルエンサーとコラボレーションして立ち上げるD2C事業が、当初の想定以上に好調に推移しているためだ。

 ヒカルとのコラボアイテムは1万2800円と1万3500円のスニーカーと9800円のサンダルというわずか3型だったにもかかわらず、チャンネル登録者数380万人を要するヒカルが自身のユーチューブやツイッターなどで積極的にPR活動を行うと、ロコンドは2度にわたり、サーバーがダウン。さらにはお笑いの宮迫も絡んだテレビCMの有無も絡めたイベントに発展、田中社長自身もたびたび登場し、“祭り”状態になった。

 マッキンゼー出身で名門の米バークレーのMBA資格を持ちながら、人気ユーチューバーのヒカルとの掛け合いにも臆さず出演し、タブーとされてきた宮迫のテレビ出演にも手を貸す、こうした一連の活動こそが、“トリックスター”であるロコンド田中社長の真骨頂だ。自社で構築してきたITシステムや自社倉庫を無料、あるいは廉価で外部に開放するオープンプラットフォーム構想は、従来のビジネスモデルをディスラプション(破壊)する威力を秘めると同時に、ネット通販最大の課題である在庫を集め、本丸である通販サイト「ロコンド」の取扱高を伸ばす意味もある。ヒカルやスザンヌと取り組むD2C事業も、2018年10月に婦人靴卸の三鈴商事(今年3月に吸収)、今年4月には同じく婦人靴卸のサン・トロペを買収しており、シューズの企画生産機能を内製化してきた賜物と言える。

 ロコンドが背中を追いかけるファッションECの巨人ZOZOも創業者の前澤友作氏がツイッターで662万フォロワーを抱え、マスコミ以上に自身のSNSを情報発信の重要なツールとして活用していた。その前澤氏も昨年9月に電撃引退。ユーチューブで新たな成長戦略を描く、ファッションEC界の“トリックスター”、ロコンド田中社長は新たな道を切り開けるか。

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ニーマン・マーカスのCEOが語る 破綻後の計画

 米百貨店ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)やバーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)を運営するニーマン マーカス グループ(NEIMAN MARCUS GROUP以下、NMG)が経営破綻した。同社は日本の民事再生法に当たる米連邦破産法第11条の適用を5月7日に申請したばかりだが、2018年2月から同社を率いているジェフロイ・ヴァン・ラムドンク(Geoffroy van Raemdonck)最高経営責任者(CEO)が米「WWD」の取材に応じた。

 NMGは13年に、投資会社アレス・マネジメント(ARES MANAGEMENT)とカナダの公的年金運用機関であるカナダ・ペンション・プラン・インベストメント・ボード(CANADA PENSION PLAN INVESTMENT BOARD)によって60億ドル(約6360億円)で買収されたが、この際に約45億ドル(約4770億円)の長期負債を背負うこととなり、年におよそ3億ドル(約318億円)の利息を支払わざるを得ないことが経営に重くのしかかっていた。同社の売上高は年間50億ドル(約5300億円)程度のため、17年には身売りを検討するほど業績が悪化。新型コロナウイルスの影響による休業措置が追い打ちをかけたことは間違いないが、それがなくともいずれ経営は行き詰まっていたと見る専門家は多い。

 しかしヴァン・ラムドンクCEOは、「新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が起きなければ、破産法の適用を申請しなかっただろう。19年7月通期のEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は4億ドル(約424億円)で、20年度も新型コロナウイルスの感染が拡大するまでは同水準で推移していたため、利息を払うには十分なだけの利益を上げていた。これから成長軌道に乗るというところでパンデミックが起き、運転資金の確保や負債の返済ができなくなってしまった」と語る。

 同社は破産法適用の申請に当たり、債権者の過半数との合意のもとで6億7500万ドル(約715億円)のDIP融資枠を確保している。同氏は、「負債を株式に転換してNMGのオーナーとなることに、債権者の3分の2が同意してくれた。これは非常にポジティブなことだ。また破産の手続きをすることで、総額40億ドル(約4240億円)以上あった債務が7億5000万ドル(約795億円)程度に縮小される。債務がおよそ80%減となるため、かなり健全な財務状態となる。今年度はさらに収益を上げ、事業を成長させていきたい」と述べた。

 NMGは数年前から「百貨店をラグジュアリー・プラットフォーム化して高級志向の顧客を引きつける」戦略を取っている。債権団がこうした方向性について賛同していることから、ヴァン・ラムドンクCEOをはじめとする経営陣は少なくとも破産の手続きが一段落する今年の秋頃までは現職にとどまるという。

 同社はニーマン・マーカスを43店、バーグドルフ・グッドマンを2店、アウトレットのラスト・コールを22店運営しているが、新型コロナウイルスの影響によってその全店を休業している。また3月11日には、ラスト・コールの大半を閉店することを発表した。従業員は本社も含めて1万3700人ほど抱えているが、休業措置のためその3分の1を一時解雇しており、今後は閉店などに伴ってさらに750人程度を解雇する。

 なお、同社は早くからECにも注力しており、現在では売り上げの30%以上を占めている。3月には顧客や商品のデータが利用できるデジタル機器を4500人の販売員に配布し、店舗の休業中も顧客との緊密なコミュニケーションが取れるようにした。こうしたデジタル分野の強化に取り組んできたことが奏功し、ここ5週間で6000万ドル(約63億円)の売り上げがあったという。

 アメリカでは5月8日前後から半数近くの州で外出制限措置が緩和され、一部の小売店で営業が再開する。NMGの拠点であるテキサス州でも営業再開が許可されているが、同州内にある7店のニーマン・マーカスはいずれも休業を継続する。同氏は、「顧客の安全確保が第一なので、安心してショッピングを楽しんでもらえるタイミングを検討中だ。金銭的な問題のためだけに営業を再開するつもりはない」と説明した。

 経営上の判断で、休業からそのまま閉店となる店舗もあると思われるが、予想よりは少なくてすむと見られている。破産手続きを取ると、ほぼ罰則なしで店舗の賃貸契約を破棄したり、賃料の交渉が可能になったりするためだ。19年3月にニューヨークのハドソンヤード(HUDSON YARDS)にオープンしたニーマン・マーカスの旗艦店の業績について懸念する業界関係者も多いが、交渉の末に賃料が下げられたようだ。

 ヴァン・ラムドンクCEOは今後の見通しに関して、「ここ数年ほど取り組んできた戦略を引き続き進めていく。負債が大幅に減ったため財務上の自由度が格段に上がったが、それをどのように事業に投じていくのかについて発表するのは時期尚早だ」と話した。

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この危機にロングセラー、既存製品をアピールするビューティ業界の狙い

 新型コロナウイルス感染拡大、緊急事態宣言を受け、さまざまな経済活動がままならない状況が続いているが、ビューティ業界も同様だ。春に企画されていた新製品発表会やイベントも中止を余儀なくされた。どの業界もデジタルの駆使は必須だが、ビューティ業界もしかり。インスタライブ配信を始め、オンラインキャラバン、オンライン発表会、さらには自社CSRのPRまでデジタルで発信する。また、ファッション業界でも強まるデジタルでの接客を取り入れる企業も出てきた。まずはやってみようという意気込みを感じる。そういったデジタル活用で新しい試みに挑戦しているビューティ業界だが、並行して実施しているのが、ビューティ業界の強みの一つであるロングセラー製品のPRだ。リアルが稼働しない今をどう生き残っていくのか。

 コロナ禍で施策の多くが厳しくなった中、実は新製品の発売延期が続々と明らかになっている。資材の調達が難しくなっていたり、状況を鑑み今が発売時期ではないと判断したりしての延期だ。デジタルを駆使するにしても、発売される新製品がなければどうしようもないと思いがちだが、そこで打ち出しを強めたのが、既存品のPRだ。

 ビューティの多くのブランドは、コロナ以前からロングセラー製品のPRには長けていた。これまでもシーズンに1つは、ロングセラー製品を戦略製品とし、テレビCMや雑誌広告、インフルエンサー活用、イベント、キャンペーンなどさまざまな施策を打ち、既存客に加え新客を獲得し顧客の裾野を広げる活動を続けてきた。実際、売り上げの多くをロングセラー製品で占めているところも多い。ここへきて、ロングセラーだけでなく既存品の発信を強めるブランドが増えてきたのだ。

「おこもり」「マスク」のキーワードが後押し

 これまでは新製品のリリースが届くことはあったが、大きなキャンペーンでもない限り、既存品のリリースが編集部に届くことは少なかった。家で過ごすことが中心になった今、「おこもり」「マスク」というキーワードがビューティ業界には追い風にもなっている。「お家美容で役立つおすすめスキンケア」「マスクに合うアイメイク人気製品をピックアップ」などをキーワードにしたリリースが続々と届いている。

 例えば、「THREE」は、PRが「コンディショニング ミスト SQ(A)」と「同(R)」の2本のミスト化粧水セット(4500円)を、「A=Activeに過ごしたいとき、R=Relaxしたいときと使い分ける商品で、集中とリラックスの切り替えがしづらい……まさに自宅で仕事をするときの必需品!」とおすすめ。

 「シュウ ウエムラ(SHU UEMURA)」はブランドを代表するアイテムの一つ「アルティム8∞ スブリム ビューティ クレンジング オイル」(150mL、4600円)の使い方の工夫をブランドのアーティストが発信。「マッサージ+深呼吸でカシミヤテクスチャーを堪能してリラックス度アップ」「贅沢に8プッシュ。至福のリラックスタイムを」などと伝えている。

 「ジョルジオ アルマーニ ビューティ(GIORGIO ARMANI BEAUTY)」は、「オンラインでも理想の自分に。」としてメイクアップ製品を紹介。ブランドの人気製品のファンデーションから「パワー ファブリック コンパクト」(8700円)や、リキッドアイシャドウ「アイ ティント」(3900円)などを提案した。

 そのほか、資生堂が展開する「ドルチェ&ガッバーナ ビューティ(DOLCE&GABBANA BEAUTY))」はアイシャドウパレット「ドルチェ&ガッバーナ フェリンアイズ インテンスアイシャドウ クアッド」(7800円)の全8種から、資生堂アソシエイト トップヘアメイクアップアーティストの豊田健治氏がおすすめする春夏のアイメイクなどを紹介。プロ目線の発信も今ならではだろう。

 また面白いところでは、「クリニーク(CLINIQUE)」は1〜2月に発売になった新製品のクリニーク iDシリーズの「ドラマティカリー ディファレント モイスチャライジング トーンアップ ジェル」(6500円)や、「イーブン ベター ラディカル ブライト セラム」(30mL 9000円、50mL1万4000円)などの紹介とともに、メールの最後には、PRチームの自己紹介も記載されていた。特技や趣味、好きな食べ物、おこもり美容などを紹介していて、なんだかクスっとするなかに温かさも感じられ、会うことができない中、こういった取り組みも引きつける要素になっているだろう。

メディアが取り上げやすいコンテンツに

 こういったリリース発信は、多くのメディアが取り上げるのに最適な材料になっている。こぞって、「お家美容」と題したスキンケアやメイクアップのハウトゥーや、製品ピックアップ紹介が紙媒体だけでなくウェブ、SNSのコンテンツで増えている。また、こういった施策には、ミニサイズがつくプレゼント企画や、お得な定期便企画を盛り込んでいる場合もあり、その特典がメディアの引きになっているところもある。定期便企画は、「シュウ ウエムラ」の「アルティム8∞ スブリム ビューティ クレンジング オイル」や「ランコム(LANCOME)」の人気NO,1美容液「ジェニフィック」などで行われており、いずれもロングセラー製品のPRと共に企画されている。

 さらには、メディアとのタイアップ企画も進行しており、既存品を活用しながらも、新鮮に映る取り組みは、コロナ収束後の戦略にも新たな施策として加わりそうだ。一方でブランド側は、リリース配信に留まらず、これらを活用したインスタライブなども並行して行い、PRに加えECへの導線もしっかり確保している。インバウンド需要などの落ち込み、リアル店舗の休業などで前年売り上げの達成は厳しい状況ではあるが、今の危機を乗り越えるため、そしてその先に向けた取り組みは確実に進んでいる。

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ビューティ業界の武器、接客をデジタルで可能に コーセーやオルビスが美容部員を軸に新たなオムニチャネル戦略

 新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言を受け休業を延長する商業施設も多く、ビューティ企業も同様だ。営業を行っている店舗においても、感染防止のためマスク着用、消毒の徹底、タッチアップの自粛を継続する。ビューティ企業において、接客は最大の武器だっただけに、その基盤が揺らぐ今の状況に頭を抱えている企業も少なくないだろう。その打開策はやはり、デジタルの活用にほかならない。これまでもデジタル上での相談窓口はあったが、今回の特徴は店頭の美容部員と顧客を結びつけていることだ。この新たな“接客”はコロナ後にも一つの“接客”の形として定着するのではないだろうか。

コーセーは美容部員が商品の紹介画像を投稿

 コーセーは、実店舗の販売スタッフがメイクやスキンケア商品の紹介画像を投稿できるアプリケーションサービス「スタッフスタート」を総合美容情報サイト「メゾン コーセー」に導入した。バニッシュ・スタンダードが手掛ける同アプリケーションサービスはこれまでアパレル業界では800以上のブランドで活用されているが、化粧品業界では初めてとなる。

 店頭の美容部員がメイク画像、スキンケアアイテムの紹介画像の投稿などを公開。「年代(20、30、40、50、60代)」「肌質(普通肌、乾燥肌、脂性肌、混合肌、敏感肌)」「肌色(ブルーベース、イエローベース)」「まぶたのタイプ(一重、二重、奥二重)」の情報を記載することで、顧客は自分の肌の特徴や顔立ちに合った美容部員のメイク投稿を参考に商品を選択することが可能だ。スキンケアアイテムも、それぞれの肌質に合った商品の使用感やポイントをレビューし情報を提供、購入につなげる。

 実際の美容部員が出ることで、美容部員にファンがつくことも考えられ、美容部員のモチベーションアップにもつながる。芸能人やモデル、インフルエンサーではない、身近な存在の美容部員の“言葉”に共感を得てもらいファンを獲得。そのファンがコロナ後に店頭に足を運ぶことも予想される。

有人チャットサービスを導入したオルビス

 オルビスは、サイバーエージェントの子会社のエーアイシフトが提供する有人チャットサービスを導入し、自社EC内のAIチャットサポートでビューティアドバイザーによる有人チャットサービスを期間限定で展開している(実施期間は未定)。外出自粛が続く中、いつものように店頭で相談しながら買い物ができない顧客に向け、オンライン上で気軽にビューティアドバイザー(BA)に質問、相談することを可能とした買い物体験を提供するというものだ。

 BAは休業中の店舗から募集をかけて有志を募り、東京、大阪、福岡と全国から手が挙がった。休業中のBAにとっても、自宅にいながらお客の質問に答えるといった“接客”は、顧客との新しい形の結びつきを生み出しているといい、こちらもモチベーションアップにつながっている。

 また同社はGW限定でインスタストーリーズで予約フォームを案内してZOOMのオンラインカウンセリングを実施。オンラインカウンセリングに最初は緊張していた顧客も会話が弾むに連れ積極的な質問にもつながり、また子どもを持つ人からも好評だったことから、今後の実施も検討していくという。また同社では今後、BAの活躍の場の創出など露出を増やしていくことも検討し、スターBAを作っていく考えだ。

 こういったデジタルを活用した“接客”は、今後、緊急事態宣言が解除されたとしても、コロナが終息するとは言いがたく、日常をソーシャル・ディスティングスにしていく中で、美容部員を軸とした新しい形のオムニチャネル戦略として一つの導線になりそうだ。さらにはファッション業界では多く存在するスター販売員のビューティ版、スター美容部員がこういったデジタルの“接客”から生まれてくることにも期待したい。

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まだ、あなたが知らないニューヨーク最新トレンド ポストコロナライフPost Corona Life

 ニューヨークのファッション業界で活躍するクリエイティブ・ディレクター、メイ(May)と、仕事仲間でファッションエディターのスティービー(Stevie)による連載第8回。“You’d Better Be Handsome”は、2人プラス、トレンドに敏感なレイチェル(Rachel)をときに交えて、ニューヨークのトレンドや新常識について雑談する。引き続き、新型コロナイルスの影響で街が閉鎖されているニューヨークからリポート。自宅勤務大勢となってすでに1カ月、さらに4月16日にはこの態勢が5月15日まで延期になり、前回同様ズーム(ZOOM)を使っての近況報告会。ポストコロナのライフスタイル、また打撃を受けているシェアビジネスについてトークする。

スティービー:元気?引きこもり生活、その後どう?

メイ:家中掃除しようとか、これを機にデトックスしてみるか、とか、いろいろアイデアは湧いてくるけど、なんだかあっという間に時間が過ぎていってしまう。

レイチェル:ニューヨーク州は、自宅待機要請がさらに1カ月延びて5月15日までになったしね。ビジネスの再開もシティ以外のところかららしいし。普段ならテイクアウトですむ食事もぜんぶ買い出しに行って、列に並んでから入店し、戻ってきて消毒してから調理して片付けるわけだから、けっこう時間がかかったり。

スティービー:これまで当たり前だったルーティーンが突然なくなったわけだから無理ないよ。正直失業した知人も日々増えているし。フォトエージェンシーAは、75%人員削減したらしい。

メイ:大手アーティストエージェンシーBも、3分の1カットしたらしい。早く私たちの定期ランチが復活するようになるといいな。

レイチェル:ニューヨーク市の公立学校はもう9月の新学期まで学校閉鎖が決まったし。9月に学校が開かないことを想定して、大学とかはオンライン授業の準備をしていたりするらしい。

スティービー:オンライン授業って大学生には可能かもしれないけど、小学生がどこまでアプリを使って勉強できているか微妙だよね。ずっとそれに付き合える大人がいるのは、ほんの一部の子どもだけ。まだ外に出て働き続けている人たちもたくさんいるわけだし。ますます格差が広がりそう。

日々レベルアップするセルフシュート

メイ:前回も盛り上がったけど、モデルたちのセルフシュートがどんどんレベルアップしているよね?

レイチェル:「ザラ(ZARA)」がモデルに服を送って、セルフシュートさせたシリーズとかもよかったよね。

スティービー:いろいろなシーンで、セルフプロデュースする能力が問われているという感じはする。それぞれが家にいながらモニターを通して撮影をする、という企画があるんだけど、結局モデル本人がメイクアップアーティストの指示に従って自分でメイクしたり、ヘアを整えたりしないといけないから、本人にセンスがあることがキャスティングの大前提になってくる。

レイチェル:いまはポルノ業界でさえ、セルフシュートしているらしいし。「ヴァイス(VICE)」で読んだ記事だけど、あの業界では大手のヴィクセンメディア(VIXEN MEDIA)は25万ドル(約2700万円)分の機材やプロップを提供することで、自宅で制作するよう働きかけているらしい。

メイ:さすが!スケールが大きい。

スティービー:病院への寄付など、ファッション業界の中でもいくつか動きがある。例えば、クイーンズにあるエルムハースト(ELMHURST)病院への寄付金を募るために、著名フォトグラファー187人が「ピクチャーズ フォー エルムハースト(PICTURES FOR ELMHURST)」というプロジェクトを立ち上げた。これはオークション形式ではなく、150ドル(約1万6000円)均一で、プリントを発送するというチャリティー。サインは入っていないらしいけど、イーサン・ジェイムス・グリーン(Ethan James Green)、ジャック・ダヴィソン(Jack Davison)ら、アート系のファッションフォトグラファーなど気になる人がたくさん。

レイチェル:「Vマガジン」は、夏号のマルチカバーを手掛けたフォトグラファーデュオ、イネス・ヴィヌード(Inez & Vinoodh)がライブでカバーガールを紹介するイベントを開いたり、相変わらず雑誌はあの手この手でコンテンツ作りに励んだりしている。

メイ:なんでもオンラインだからね。家にいながら、すごいインストラクターのワークアウトクラスも受けられるし、ニューヨーク近代美術館(MoMA)は無料でオンラインコースを提供してくれるし、本はキンドル(KINDLE)やオーディブル(AUDIBLE)でいくらでも読めるし、レシピは限りなくあるし。そうそう、私もとうとうティックトック(TIKTOK)のアカウントを作ってみた。あくまで見る側としてだけど。

レイチェル:子どもたちも学校がないから、コンテンツ作りに精が出るわけよね。見る側もたくさん時間があるし。セレブリティーも時間があるから、最近あまり聞かなかったカメオ(CAMEO)とかも盛り上がっている。

メイ:カメオってどういうシステム?

スティービー:セレブリティーやスポーツ選手にお金を払うと、自分だけのためのビデオメッセージをくれるというシステム。リンジー・ローハン(Lindsay Lohan)は1メッセージ、200ドル(約2万2000円)らしいよ。

レイチェル:カイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)みたいに自分でコスメブランドをやっていたりする人は、ハンドサニタイザーを作って医療関係者に寄付したり。こういうときって早くやった方がかっこよく見える。ただあまりそのことを宣伝してはいなくて。チャリティーをクールにさくっとできるというのは上級者よね。

“ソーシャル・ディスタンス”時代のビジネス

メイ:サステナビリティの観点からも、スペースが足りない大都市では特にこれまではよいとされてきたシェアビジネスだけど、新型コロナウイルスの影響で“ソーシャル・ディスタンス”が強いられている今、誰かと空間や物をシェアすることは難しい。他人に近づいてはいけないわけだから。食材を買いに出掛けてもスーパーでは入場制限があって、外には6フィート(約1.8メートル)間隔で人が並んでいるし。

スティービー:以前から僕は他人とシェアすることに興味がなかったから、シェアビジネスの業績が落ちてきているのを不思議に思わない。そもそも人間は、所有したいという欲望を持って生まれてきているわけで。シェアオフィスのコーヒー飲み放題や素敵な景色のテラスに一瞬誘惑されることがあっても、知らない人たちと共有するよりも、自分たちのオフィスが安全ということが今回証明されただけ。

レイチェル: ルームメイトがいて楽しいときもあったけど、やっぱり自分だけのアパートに勝るものはない、というのと同じ原理ね。シェアビジネスの代表格と言えばウィワーク(WEWORK)。一時はフェイスブック、アマゾンとまで比較されるほど勢いづいていたけれど、オフィスでの感染が気になるときにシェアオフィスの未来は明るくない。

メイ:おしゃれなインテリアと便利なロケーションで、一時は飛ぶ鳥も落とす勢いがあったオフィススペース貸しのウィワークだけど、昨年夏に上場にも失敗して、創業者のアダム・ニューマン(Adam Neumann)がそれでも1.7ビリオン(約2兆円)をソフトバンクから受け取って辞任したことでウォール街の話題をかっさらった。

レイチェル:余談だけど、ウィワークの共同創業者でアダムの妻レベッカ(Rebekah Neumann)は、実はグウィネス・パルトロウ(Gwyneth Paltrow)のいとこだとか。ビジネスへの嗅覚が鋭い家系なのかもね。

スティービー:ウィワークに関する記事が「ファストカンパニー(FAST COMPANY)」誌に特集されていたのを最近読んだけど、ソフトバンクの孫氏の投資に応えるために無理してスピード出店していたらしい。

レイチェル:私たちのオフィスの向かいにもウィワークがあって、その先のブロックにもあるし。ある意味スターバックスよりもよく見かけるようになっていたから。

メイ:フリーランスやスモールビジネスオーナーが多いニューヨークには、シェアオフィスは素晴らしいアイデアだけど、需要と供給のバランスが素人から見ても悪かった。

ポストコロナについて考える

スティービー:ニューヨークで複数のレストランを経営する有名シェフ、トム・コリッキオ(Tom Colicchio)は、飲食店の75%は復活できないと言っている。ポストコロナライフはどうなるのか?
レイチェル:アパレルもすでに春夏物のセールが始まっているし。というかノードストロム(NORDSTROM)に関してはもう終わったらしい……。破綻したニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)は、普段は絶対に割引しないコスメまで25%オフになっているし!

スティービー:中国ではファッションブティックも再開しつつあるよね。韓国もかなり普通に戻っていると聞いている。アメリカも1日でも早く復帰したいトランプと、あっという間にまた蔓延してしまうのでは?と懸念する州知事の間で毎日争われている。

メイ:私たちの“普段”が戻ってくるのはまだまだ先のことになりそうだし、前とまったく同じ生活が戻ってくるわけではなさそう。ポストコロナライフに向けて、みんな準備をし始めている。ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ(Andrew Mark Cuomo)知事は2段階に分けて再開に着手することを発表した。人との接触が少ない業種から。様子を見ながら、その2週間後に次の業種というふうに。

スティーブン:このままだと秋のファッション・ウイークもバーチャルになりそうだね。すでにショーはしないと決めているデザイナーもニューヨークでは多い。

レイチェル:そういえば、ニューヨークでは公式に結婚もできるらしい、もちろんバーチャルで。当人たちと結婚ライセンスを発行する担当者との間で、ということらしい。

メイ:バーチャルでウエディングパーティーをしている人たちがいるのは知っていたけど。

スティービー:実際にはズームでお見合いパーティーとか、こんなときでも出会いを求めて動いている人たちもたくさんいるみたいだから。

メイ:外に自由に出られるようになっても、ますますソーシャルメディアやオンラインに頼る自分たちになっているのは確実よね。ジムとか行かなくても、家でやればいいやみたいな。

スティービー:ビジネスの業態は、ポストコロナでは大きく変わっていくのは確実。今回培った知識や経験のなかで生かされることもきっとあるはず。

新型コロナで勝ち組の自転車、負け組のカーシェア

スティービー:シェアビジネスと言えば、いちばんに思いつくのは車や自転車の共有。

レイチェル:特に都市部では、車や自転車の駐車料金が車そのものよりも高かったりするから。

メイ:いまどきマンハッタンでもブルックリンでも、月々の駐車料金が500ドル(約5万4000円)はするし。

スティービー:以前チェルシーに住んでいたときは車を持っていて、駐車場を借りていたこともある。そこも今はコンドミニアムになってしまって、車を所有することがますます困難になっている。

レイチェル:ニューヨークに住んでいると車を持つよりも、必要に合わせて家の前まで来てくれるウーバー(UBER)やリフト(LYFT)をその都度呼ぶ方がよっぽど便利。でも去年から渋滞税がかかるようになって一気に料金が上がってしまったけど。

メイ:シティバイク(CITI BIKE)もすごく増えて便利になっているけど、オフィスが徒歩圏の私はアカウントを作らないまま。

スティービー:新型コロナになって、誰かの汗がついているかもしれない自転車のシェアってどうかなって思うけど。

レイチェル:でも地下鉄に乗るよりは安全かも。ちなみに自転車店は新型コロナウイルスの流行で大繁盛しているみたいよ。走っている車も少ないし、自転車で街を走るのは快適かもね。

スティービー:一方ウーバーやリフトの相乗りシステム“プール”や、そもそも相乗りが主なヴィア(VIA)は相乗りのサービスを3月中旬から停止しているよ。

メイ:エンタープライズカーシェア(ENTERPRISE CAR SHARE)やジップカー(ZIP CAR)は、ニューヨーク市がストリートパーキングにも場所を確保していて、メンバーになると年会費および時間単位で8ドル(約870円)前後、または1日単位70~80ドル(約7600~8700円)を払うというシステム。この金額には、車のレンタル料金のほか、保険料も入っている。ときどき使うならそれで十分よね。

レイチェル:あるときまではジップカーしかなかったけど、大手レンタカー会社のエンタープライズがこの分野に乗り込んできたわけ。

スティービー:カーシェアも思っていた以上に浸透せずに、撤退する企業も出てきたよ。BMWの車に乗れるということで話題となったリーチナウ(REACH NOW)を吸収したカートゥゴー(CAR2GO)も今年2月末で事業を畳んでいる。

メイ:ちなみに今車を買うと、“タッチレス・デリバリー”をしてくれるところもあるらしい。要するに商品である車にはまったく触れずに、置いていってくれるというシステム。いろんなことがすごいスピードで日々進化していっているのを肌で感じる。

メイ/クリエイティブディレクター : ファッションやビューティの広告キャンペーンやブランドコンサルティングを手掛ける。トップクリエイティブエージェンシーで経験を積んだ後、独立。自分のエージェンシーを経営する。仕事で海外、特にアジアに頻繁に足を運ぶ。オフィスから徒歩3分、トライベッカのロフトに暮らす

スティービー/ファッションエディター : アメリカを代表する某ファッション誌の有名編集長のもとでキャリアをスタート。ファッションおよびビューティエディトリアルのディレクションを行うほか、広告キャンペーンにも積極的に参加。10年前にチェルシーを引き上げ、現在はブルックリンのフォートグリーン在住

レイチェル/プロデューサー : PR会社およびキャスティングエージェンシーでの経験が買われ、プロデューサーとしてメイの運営するクリエイティブ・エージェンシーで働くようになって早3年。アーティストがこぞってスタジオを構えるヒップなブルックリンのブシュウィックに暮らし、最新のイベントに繰り出し、ファッション、ビューティ、モデル、セレブゴシップなどさまざまなトレンドを収集するのが日課

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連載「今、デザイナーができること」Vol.5 山岸慎平「自分が得意とすることで少しでも楽しめる何かを作りたい」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、2018年から海外でコレクションを発表している「ベッドフォード(BED J.W. FORD)」の山岸慎平デザイナーが、不安やもどかしさを抱えながらも前に進もうとする正直な思いを明かした。

BED J.W. FORD
山岸慎平デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A.個人的には、無力な気持ちにさせられた。自分の得意なことやできることが、今は何の役に立つのかと真剣に考えている。誰かを勇気づける歌もうたえず、気持ちを和らげるような面白いことも言えないが、せめて楽しみにしてもらえるようなことを微力ながら一つでもいいから作りたい。デザイナーである前に一人の人間として、無力なまま終わりたくない。


【自社での動き】

 映像を用いた企画や、国内でのイベントを計画しているという。また商品についての質問があれば、インスタグラムの公式アカウントや山岸デザイナーの個人アカウントで受け付けている。「店舗スタッフの代わりになれるとは思っていないが、少しでも店や顧客の力になりたい。サイズ感や生地、縫製、コーディネートなど、何でも聞いてほしい。個人としてできることは少ないが、だからこそできることを大切にしたいと思う」。


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ECですべてを済ませたい!子育てママに“ちょうどいい”ネットショップを求めて 働くママのざっくばらん“本音”トークVol.5 ファッション編

 新型コロナウイルスによる外出自粛要請で、日々の買い物をオンラインで済ませることに拍車がかかる4~5月。特にファッションに関して「子どもを気にせず、お店で納得がいくまで試着」なんて道のりが、まだまだほど遠い。元「WWDジャパン」記者のママ2人が、子どもができて、そして今この状況下で一変した、服の買い方&選び方について語ります。

村上杏理(以下、あんり):私たちの対談も早いもので3回目。ついに先日、インスタグラムのダイレクトメールで、初の共感メッセージが届いたよ!!

一井智香子(以下、ちかこ):すごい!この“ズボラ対談”を読んでくれている人がいるか不安だったけど、反響があるってやっぱりうれしいね。どんな人から届いたの?

あんり:東京のパーティドレスブランド「ホウガ(HOUGA)」デザイナーの石田萌さんから。連載の内容に「親としてすごく共感しました」って。面識はなかったけれど、彼女自身が、子育てする中で着たいドレスがなくなってきたことがブランドをスタートしたきっかけみたい。

ちかこ:オンラインショップを見ると、アレンジすることで子どもと共有できるドレスもあるんだね。小学生くらいの娘がいたら着せたいな。

あんり:うちの子も好きなテイスト。特にこのピンクのドレスはよろこびそう。不意に届いたうれしいメッセージに、連載頑張ろうって思ったよ。

“在庫なし”で逆に信頼感が増した!?「ゾゾ マット」

ちかこ:ところでオンラインと言えば、新型コロナの影響で、各社がECでさまざまなキャンペーンをしているよね。10%オフや送料無料など、普段から気軽に買い物に行けないママには、ある意味ありがたいよね。

あんり:私はずっと気になっていた「ゾゾ マット(ZOZO MAT)」を試してみた。申し込んで1週間くらいで、ツイスターゲームのマットみたいシートが到着。もともとは娘の足を家で計測できたら良いな、と思ったんだけど、マットに足を数分間置く必要がある。1歳児には無理だと気づいたよ。

ちかこ:じっとしてもらうのはうちの子も絶対困難。それは寝ている間にしか不可能だね(苦笑)。で、計測結果は?

あんり:24センチだと思っていた足のサイズが、25センチだった(笑)。この計測結果を元に、おすすめのシューズを紹介してくれるんだけど、私は「ニューバランス(NEW BALANCE)」のCM996だったよ。

ちかこ:1cmもサイズが違ったのはインパクト大きいね!購入してみた?

あんり:うん。でも結局、他社のオンラインショップで購入することに。

ちかこ:え?なんで?

あんり:おすすめしてくれたCM996は、欲しいカラーの在庫が1個もなかった(笑)。こんなユニークなシステムを開発してくれたことに敬意を表して、微力なりとも売り上げに貢献したいと思ったんだけどな。

ちかこ;消費者側からすると便利なシステムをありがとう!って感じだけど、企業側に立つと商機を逃していてもったいないね。

あんり:ただ、在庫を積んでいない商品でもおすすめしてくれるのは、計測結果にウソ偽りがなくて逆に信用できた。購入した靴は、今まで小さめサイズに慣れていたから体感では正直ちょっと大きい。けど、靴の中で指がしっかり伸びていて、足が喜んでいる感じ。

ちかこ:結局、靴の“ピッタリ”って自分の思い込みが大きいよね。それを客観的に、しかも手軽に計測できるのは便利。

あんり:平均と比べて、自分の足の指の形や甲の高さがどうなのか。分かるだけでも、おもしろかったよ!しいて言えば、「ゾゾ」からのおすすめシューズは見られるけど、サイト内で自分が「かわいい!」と思った靴が自分の足に合っているかどうか、逆方向の紐づけはされていない。それがあってもっと対応アイテムの幅が広がれば、“ポチっちゃう”人が増えると思うな……。

オーバー30特有(!?)セレクトショップECへの安心感

あんり:ところで、ちかこは最近、何か買った?

ちかこ:今、セレクトショップのECアウトレットをサーフィンするのにハマっていて。「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」のアウトレットでワンピースを買ったよ。あとキャップも。

あんり:ロング丈のワンピースとかロンTとか、シーズン関係なく着られて、子どもとの外遊びにも使えるモノは、お得に買えるとうれしいよね。

ちかこ:子どもが生まれて、着るものがシンプルになったから、トレンドを気にしすぎることもなくなった。世間では、オーバーサイズでネックが詰まったTシャツがずっと流行っているおかげで、去年買ったTシャツを今年も着られそう。

あんり:私も「ユニクロ ユー(UNIQLO U)」のメンズサイズのロンTを、5枚大人買いしたよ。2000円くらいだから、娘に服を引っ張られてもイラっとしない(笑)。並ばなくて済む無人レジを使うのすら面倒で、すべてオンラインショップで購入している。

ちかこ:私も簡単に買い物に行けないときは、「ザラ(ZARA)」「ユニクロ(UNIQLO)」「ジーユー(GU)」で回していたときがあったな。便利だけれど、結局1シーズンしか着ないことに抵抗が出てきて。最近では「長く着られるか?」をよく考えて買うようにしている。

あんり:世間では、サステナブルが叫ばれているしね。私も最近のテーマは「脱人間中心」。超簡単に言うとモノゴトを人間中心で考えないこと。これを心に留めておくと動植物にまで優しくなれるよ。

ちかこ:話のスケールが地球規模(笑)。壮大だけど、同感。今、洋服も日用品もゴミをあまり出したくない。

あんり:でも話を戻すとさ。子連れだと試着するのもままならないから、大手セレクトショップのオンラインショップは、見る時間が格段に増えた。

ちかこ:やっぱりセレクトショップ世代だからかな?安心感が違う。EC専門の“ちょうどいい”日本ブランドや、トレンドを上手くミックスした激安韓国ブランドもたくさんあるけど、生地や縫製まで画像で捉えるのは難しいよね。

あんり:それは分かるな。セレクトのオンラインショップを覗けば、「何かある」感がある。モデルのルックとアイテム画像だけのサイトは、自分の顔面&体型とギャップがありすぎて、“ポチる”のが不安。だからベイクルーズのスタッフスナップやビームス(BEAMS)のフォトログなどに載っている、似たような背丈の人の着用画像は重宝するんだよね。

ちかこ:昔は全く見なかったけど。私もベイクルーズのオンラインショップはよく使うよ。特に「ジャーナルスタンダード(JOURNAL STANDARD)」は妊婦のときに物凄く役立った。それをプレスの方に伝えたら、ワンピースやオールインワンは妊婦の需要も多いとか。ホーム雑貨もよく見るんだけど、最近一番テンションが上がった買い物が、息子の「トミカ」を大量に収納できる棚。こんなのも売っているんだって嬉しくなった。届くのが楽しみ!でも家具や雑貨も、オンラインだとサイズ感が不安だよね。

あんり:それは、うちらがズボラだからだよ。サイズ表はきちんと載っているのに、計るのが面倒。サイズの指標として、隣に「ホープ」のタバコとか置いて欲しいな。

ちかこ:同感(笑)。ところで、あんりちゃんのごひいきサイトは?

あんり:ご近所用のカジュアル着はベイクルーズ、仕事にも使える綺麗めの服はユナイテッドアローズ、カルチャーTシャツと「フェニカ(FENNICA)」の民藝品を見たいときビームス、という具合に使い分けている。

ちかこ:使い分けの方向性が一緒!「ユナイテッドアローズ」はアマゾンペイが使えるから面倒な登録が必要ないのも地味にうれしかったな。私は「こども ビームス」もたまにチェックしているけれど、子ども服で活用しているオンラインショップはある?

あんり:基本はお下がりだから、定期的に見るのは「ユークス(YOOX)」くらい。「マルニ(MARNI)」や「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」のキッズのセール品をチェックしている。

ちかこ:すぐにサイズアウトする子ども服も、できたらセールで買いたいよね。私はアメコミ系キャラクター物が充実している「H&M」はついのぞいてしまうよ。

あんり:うん。でも娘のなかのトップブランドは結局「しまむら」。先日も店で「これほしい!」と泣きわめく娘に根負けして、変な(失礼!)ドレス型のパジャマを買ったよ。

ちかこ:うちの息子も1番のお気に入りは、お下がりでもらった「ランドリー」の電車コラボTシャツ。着た時の息子のテンションが全然違う。朝嫌がらずにスムーズに着てくれれば、母はもはや何でもいいです(笑)。

あんり:理想は雑誌「ミルク」のような世界観。でも母子で好みを共有できるのは、あと10年くらい先かもね。トホホ。

一井智香子/(いちのい・ちかこ)1986年神奈川・逗子生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業後、三越伊勢丹に入社。伊勢丹新宿本店メンズ館1階の紳士雑貨でアシスタントバイヤーを務めた後、2011年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、主にメンズファッションを担当。ピッティ、ミラノ、パリメンズコレクション取材を始め、セレクトショップや百貨店、ファッションビルのビジネス動向を取材。現在はフリーランスとして、ファッションやライフスタイル系の記事執筆を手がける。1男児の母

村上杏理/(むらかみ・あんり):1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

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ECですべてを済ませたい!子育てママに“ちょうどいい”ネットショップを求めて 働くママのざっくばらん“本音”トークVol.5 ファッション編

 新型コロナウイルスによる外出自粛要請で、日々の買い物をオンラインで済ませることに拍車がかかる4~5月。特にファッションに関して「子どもを気にせず、お店で納得がいくまで試着」なんて道のりが、まだまだほど遠い。元「WWDジャパン」記者のママ2人が、子どもができて、そして今この状況下で一変した、服の買い方&選び方について語ります。

村上杏理(以下、あんり):私たちの対談も早いもので3回目。ついに先日、インスタグラムのダイレクトメールで、初の共感メッセージが届いたよ!!

一井智香子(以下、ちかこ):すごい!この“ズボラ対談”を読んでくれている人がいるか不安だったけど、反響があるってやっぱりうれしいね。どんな人から届いたの?

あんり:東京のパーティドレスブランド「ホウガ(HOUGA)」デザイナーの石田萌さんから。連載の内容に「親としてすごく共感しました」って。面識はなかったけれど、彼女自身が、子育てする中で着たいドレスがなくなってきたことがブランドをスタートしたきっかけみたい。

ちかこ:オンラインショップを見ると、アレンジすることで子どもと共有できるドレスもあるんだね。小学生くらいの娘がいたら着せたいな。

あんり:うちの子も好きなテイスト。特にこのピンクのドレスはよろこびそう。不意に届いたうれしいメッセージに、連載頑張ろうって思ったよ。

“在庫なし”で逆に信頼感が増した!?「ゾゾ マット」

ちかこ:ところでオンラインと言えば、新型コロナの影響で、各社がECでさまざまなキャンペーンをしているよね。10%オフや送料無料など、普段から気軽に買い物に行けないママには、ある意味ありがたいよね。

あんり:私はずっと気になっていた「ゾゾ マット(ZOZO MAT)」を試してみた。申し込んで1週間くらいで、ツイスターゲームのマットみたいシートが到着。もともとは娘の足を家で計測できたら良いな、と思ったんだけど、マットに足を数分間置く必要がある。1歳児には無理だと気づいたよ。

ちかこ:じっとしてもらうのはうちの子も絶対困難。それは寝ている間にしか不可能だね(苦笑)。で、計測結果は?

あんり:24センチだと思っていた足のサイズが、25センチだった(笑)。この計測結果を元に、おすすめのシューズを紹介してくれるんだけど、私は「ニューバランス(NEW BALANCE)」のCM996だったよ。

ちかこ:1cmもサイズが違ったのはインパクト大きいね!購入してみた?

あんり:うん。でも結局、他社のオンラインショップで購入することに。

ちかこ:え?なんで?

あんり:おすすめしてくれたCM996は、欲しいカラーの在庫が1個もなかった(笑)。こんなユニークなシステムを開発してくれたことに敬意を表して、微力なりとも売り上げに貢献したいと思ったんだけどな。

ちかこ;消費者側からすると便利なシステムをありがとう!って感じだけど、企業側に立つと商機を逃していてもったいないね。

あんり:ただ、在庫を積んでいない商品でもおすすめしてくれるのは、計測結果にウソ偽りがなくて逆に信用できた。購入した靴は、今まで小さめサイズに慣れていたから体感では正直ちょっと大きい。けど、靴の中で指がしっかり伸びていて、足が喜んでいる感じ。

ちかこ:結局、靴の“ピッタリ”って自分の思い込みが大きいよね。それを客観的に、しかも手軽に計測できるのは便利。

あんり:平均と比べて、自分の足の指の形や甲の高さがどうなのか。分かるだけでも、おもしろかったよ!しいて言えば、「ゾゾ」からのおすすめシューズは見られるけど、サイト内で自分が「かわいい!」と思った靴が自分の足に合っているかどうか、逆方向の紐づけはされていない。それがあってもっと対応アイテムの幅が広がれば、“ポチっちゃう”人が増えると思うな……。

オーバー30特有(!?)セレクトショップECへの安心感

あんり:ところで、ちかこは最近、何か買った?

ちかこ:今、セレクトショップのECアウトレットをサーフィンするのにハマっていて。「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)」のアウトレットでワンピースを買ったよ。あとキャップも。

あんり:ロング丈のワンピースとかロンTとか、シーズン関係なく着られて、子どもとの外遊びにも使えるモノは、お得に買えるとうれしいよね。

ちかこ:子どもが生まれて、着るものがシンプルになったから、トレンドを気にしすぎることもなくなった。世間では、オーバーサイズでネックが詰まったTシャツがずっと流行っているおかげで、去年買ったTシャツを今年も着られそう。

あんり:私も「ユニクロ ユー(UNIQLO U)」のメンズサイズのロンTを、5枚大人買いしたよ。2000円くらいだから、娘に服を引っ張られてもイラっとしない(笑)。並ばなくて済む無人レジを使うのすら面倒で、すべてオンラインショップで購入している。

ちかこ:私も簡単に買い物に行けないときは、「ザラ(ZARA)」「ユニクロ(UNIQLO)」「ジーユー(GU)」で回していたときがあったな。便利だけれど、結局1シーズンしか着ないことに抵抗が出てきて。最近では「長く着られるか?」をよく考えて買うようにしている。

あんり:世間では、サステナブルが叫ばれているしね。私も最近のテーマは「脱人間中心」。超簡単に言うとモノゴトを人間中心で考えないこと。これを心に留めておくと動植物にまで優しくなれるよ。

ちかこ:話のスケールが地球規模(笑)。壮大だけど、同感。今、洋服も日用品もゴミをあまり出したくない。

あんり:でも話を戻すとさ。子連れだと試着するのもままならないから、大手セレクトショップのオンラインショップは、見る時間が格段に増えた。

ちかこ:やっぱりセレクトショップ世代だからかな?安心感が違う。EC専門の“ちょうどいい”日本ブランドや、トレンドを上手くミックスした激安韓国ブランドもたくさんあるけど、生地や縫製まで画像で捉えるのは難しいよね。

あんり:それは分かるな。セレクトのオンラインショップを覗けば、「何かある」感がある。モデルのルックとアイテム画像だけのサイトは、自分の顔面&体型とギャップがありすぎて、“ポチる”のが不安。だからベイクルーズのスタッフスナップやビームス(BEAMS)のフォトログなどに載っている、似たような背丈の人の着用画像は重宝するんだよね。

ちかこ:昔は全く見なかったけど。私もベイクルーズのオンラインショップはよく使うよ。特に「ジャーナルスタンダード(JOURNAL STANDARD)」は妊婦のときに物凄く役立った。それをプレスの方に伝えたら、ワンピースやオールインワンは妊婦の需要も多いとか。ホーム雑貨もよく見るんだけど、最近一番テンションが上がった買い物が、息子の「トミカ」を大量に収納できる棚。こんなのも売っているんだって嬉しくなった。届くのが楽しみ!でも家具や雑貨も、オンラインだとサイズ感が不安だよね。

あんり:それは、うちらがズボラだからだよ。サイズ表はきちんと載っているのに、計るのが面倒。サイズの指標として、隣に「ホープ」のタバコとか置いて欲しいな。

ちかこ:同感(笑)。ところで、あんりちゃんのごひいきサイトは?

あんり:ご近所用のカジュアル着はベイクルーズ、仕事にも使える綺麗めの服はユナイテッドアローズ、カルチャーTシャツと「フェニカ(FENNICA)」の民藝品を見たいときビームス、という具合に使い分けている。

ちかこ:使い分けの方向性が一緒!「ユナイテッドアローズ」はアマゾンペイが使えるから面倒な登録が必要ないのも地味にうれしかったな。私は「こども ビームス」もたまにチェックしているけれど、子ども服で活用しているオンラインショップはある?

あんり:基本はお下がりだから、定期的に見るのは「ユークス(YOOX)」くらい。「マルニ(MARNI)」や「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」のキッズのセール品をチェックしている。

ちかこ:すぐにサイズアウトする子ども服も、できたらセールで買いたいよね。私はアメコミ系キャラクター物が充実している「H&M」はついのぞいてしまうよ。

あんり:うん。でも娘のなかのトップブランドは結局「しまむら」。先日も店で「これほしい!」と泣きわめく娘に根負けして、変な(失礼!)ドレス型のパジャマを買ったよ。

ちかこ:うちの息子も1番のお気に入りは、お下がりでもらった「ランドリー」の電車コラボTシャツ。着た時の息子のテンションが全然違う。朝嫌がらずにスムーズに着てくれれば、母はもはや何でもいいです(笑)。

あんり:理想は雑誌「ミルク」のような世界観。でも母子で好みを共有できるのは、あと10年くらい先かもね。トホホ。

一井智香子/(いちのい・ちかこ)1986年神奈川・逗子生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業後、三越伊勢丹に入社。伊勢丹新宿本店メンズ館1階の紳士雑貨でアシスタントバイヤーを務めた後、2011年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、主にメンズファッションを担当。ピッティ、ミラノ、パリメンズコレクション取材を始め、セレクトショップや百貨店、ファッションビルのビジネス動向を取材。現在はフリーランスとして、ファッションやライフスタイル系の記事執筆を手がける。1男児の母

村上杏理/(むらかみ・あんり):1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

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コンサルティング会社、ローランド・ベルガー福田氏が示す、今企業がとるべきアクション

 新型コロナウィルスによる外出自粛要請がどのくらい続くかによって、アパレル、化粧品への影響は計り知れないのと同時に、なかなか見通しが立たないのが現状だ。短期(新型コロナ拡大の状況下)、中期(外出自粛解禁直後)、長期(収束、ポストコロナ)で、どのようなアクションをとるべきなのか。「2030年アパレルの未来 日本企業が半分になる日」(東洋経済新報社)の著者であり、ドイツを本拠とする経営戦略コンサルティングのローランド・ベルガー日本法人 パートナーでもある福田稔氏に聞いた。

WWD:新型コロナウイスル感染拡大により、アパレルの消費にどのような影響をもたらすのか?

福田稔ローランド・ベルガー パートナー(以下、福田):まず、中長期的にみて、人々の価値観において、次の6つの価値志向が強まると思う。①安全・安定志向、②節約志向、③本質追求志向、④家中充実志向、⑤家族志向、⑥社会協調志向。これでいうとアパレル消費に対してダイレクトにプラスに働く要素がなく、むしろ節約志向でマイナスに転じてしまうことが多くなり、今後の見通しは厳しい。衣服そのものの消費額が減ってくると予想され、一時的にリベンジ消費があったとしても、ポストコロナではもとには戻らないだろう。以前の9割になるのか、8割になるのかも、いつ収束するかによって変わってくる。

当社は今後の見通しを3つのパターンで仮に想定し影響を試算しており、シナリオA=6月に終息し、夏は消費が一時的に活性化、シナリオB=8月に終息し、秋は消費が一時的に活発化、シナリオC=10月に一旦終息するも、消費は年末まで冷え込みそのまま不況となる。インパクトを定量化したのは経営者に意志決定の参考材料を提供したかったからであり、刻々と変わる状況の変化に合わせてスピーディーに意志決定を行うことが求められる。

WWD:海外ではオンラインでアパレルやコスメの売り上げが伸びているところもあるが、日本もそのような動きにはならない?

福田:まずはEC化率とECを含めた全体の売り上げを分けて考えるべきで、EC化率は上がっても全体の売り上げは下がっている。大手セレクトショップなどでは、EC化率は伸びており、自粛生活が長くなればなるほどECによる購買は加速していく。3月のECの売り上げは昨対110~120%で伸びている一方、実店舗は同50~60%になっているため、全体の売り上げはマイナスだ。EC化率は上がっても不要不急のファッションに関しては当然消費意欲も下がるため、全体の消費は減っている。より百貨店チャネルに店舗が多い国内総合アパレルは大手セレクト以上に打撃は大きい。

WWD:デジタルを伸ばすには、それに比例して投資なども必要だと思うが、今何をすべきか?

福田:当然、消費者もオンラインシフトが進むので、それによりデジタルチャネルをめぐる企業間の競争が激しくなるだろう。デジタルマーケティングに投資した費用に対してどのくらいの顧客を獲得できたのか、一人あたりのCPA(Cost Per Acquisition=一顧客あたりを獲得するコスト)は今後デジタル広告にシフトすることにより上がるため、企業はそれを見据えた踏み込んだ投資が必要になる。これまでのネット投資と同じ延長線上でやっていても思った以上の効果が得られない。

D2C型のMDサイクルに変える

WWD:オンラインシフトに比重を置いた場合にやるべきポイントは何か?

福田:商品投入の仕方、つまりD2C型のMDサイクルに変える必要がある。これまでのように年間でシーズンを7~8に分けたサイクルで販売するだけではなく、いかに商品を連続的に出していくのかが大事になってくる。オンライン専門ブランドは毎日1商品投入することもあり、サンフランシスコ発のD2C型アパレルブランド「エバーレーン(EVERLANE)」は、ファストファッションではなくベーシックアパレルだが、週に3~5型の新商品を打ち出すことで、継続的にサイトに来てもらうようにしている。最初のロットはミニマムにする“多品種少量型”のシーズンサイクルで、顧客とインタラクティブなコミュニケーションを図っていくことが重要だ。

サプライチェーンではなく“サプライウェブ”という考え方

WWD:そのようなスピード感を持ったモノ作りには安定したサプライチェーンの構築が不可欠だ。

福田:今後はサプライチェーンのデジタル化が重要になってくる。サプライチェーンを特定の国や地域に寄せているとリスクがある。中国だけに頼らず分散化させ、東南アジアや国内といったシームレスなサプライチェーンを作っていくべきだろう。そもそも“サプライチェーン”という概念を変えていかないといけない。チェーンとはつまり“鎖”でつながっているということ。分断されてしまうとチェーンが機能しなくなる。“サプライウェブ”という考え方でシームレスにウェブでつながることが今後重要になってくる。香港の大手商社リー&フォン(LI & FUNG)は、モノ作りのデジタル化を早くから進めており、付き合いのある工場に投資して必要なものをデジタルで仕入れ、アメリカの企業に対してもサンプルもデジタルで依頼している。

WWD:今後、アパレル、化粧品企業がとるべきアクションとして御社のリポートでは短期(新型コロナ拡大の状況下)では①オンラインチャネルの強化とシフト、②デジタルを通じたブランドエンゲージメントの強化、③コスト削減、キャッシュポジションの見直しを挙げている。中でも②に関して、中国の事例では動画系SNSなどを通じたKOL(キーオピニオンリーダー)の口コミが購入の意志決定につながっている。今後、ライブコマースも進んでいくか?

福田:化粧品の方が、メイクアップのハウツーなどを説明するのにECやライブコマースと相性がよい。ただ国内のファッション分野でも5Gの時代になると、動画を活用したビジネスはこれから伸びていく。ファッションは、ライブコマースなら影響力のあるインフルエンサーを起用するのがよいのではないかと思う。今後さまざまなチャネルが増えていくだろう。

WWD:化粧品は、長期的には市場は回復すると思うか?

福田:日本の場合はインバウンドが大きな売り上げを占めていたため、インバウンドが戻らなければ市場はもとには戻らないだろう。

WWD:中期(外出自粛解禁直後)で取るべきアクションとして「解禁需要の刈り取りとシェア拡大」を挙げているが具体的にはどういうことか?

福田:アパレルではすでに発注した商品はあるが、秋以降は発注していない企業がほとんどだ。“自粛要請が解けた際に売るものがない”という状況になる可能性もある。柔軟に対応できるどうかは、在庫現状に合わせてサプライチェーンがクイックレスポンスできるかどうか、企業がどのくらいキャッシュを持っているのかなどにもよるため一概には言えないが、いかに迅速に対応できるかがカギだ。

日本でも“リベンジ消費”は起こるのか

WWD:新型コロナが収束しつつある中国は、“リベンジ消費”なる現象も起きているが、日本でも一時的にもそのような状況になるのか。

福田:どのシナリオパターンになるかによってリベンジ消費の額とそれが続く期間は変わってくる。シナリオAのように夏頃に人が街に出られるようになれば、それなりの売り上げが期待できるが、自粛解除が長くなればなるほど、当然リベンジ消費の期間は短くなり、シナリオCの場合は、それはほとんど期待できない可能性がある。街に出られれば、その分一時的にオフライン(実店舗)の売り上げは上がるだろう。

WWD:中期、長期的なアクションとしては、「社会的責任に基づく企業活動の見直し」を挙げている。サステナビリティの強化ということか?

福田:冒頭に述べた人々の価値観の変化で「安全・安定志向」と「社会協調志向」を挙げたが、今後間違いなく、消費者のサステナビリティへの意識は高まる。日本の企業はサステナビリティに対する活動のギアをもう一段上げていかないと消費者はどんどん離れていく。サステナブル・アパレル連合(SAC)に世界では200社以上の団体や企業が加盟している中で、日本では現在5社しか入っていない。各社が企業責任でベーシックな活動として、環境負荷の低減に努めるべき。もちろんグリーンウォッシュ(あたかも環境に配慮しているかのように見せかけること)ではいけない。

WWD:サステナビリティに取り組むことは、経済活動の制限になると思うか?コストや時間がかかるとして二の足を踏む企業も多いかもしれない。

福田:無駄な人を多く雇っていたり、無駄な在庫を抱えていたり、すでにある企業活動の中で無駄が多いことも事実だ。それらを見直すことで、サステナビリティに対する経営資源は捻出できるはずだ。それは経営者の意識にもかかっているだろう。欧米では、インフルエンサーを筆頭に消費者もその考え方にシフトしている。日本もそうなるだろう。

WWD:長期的(収束、ポストコロナ)に企業のとるべきアクションとして「組織、資源の本格的なデジタルシフト」を挙げている。これは具体的にはどのようなことか。

福田:DX(デジタル トランスフォーメーション)を推進する人がデジタル化に必要なアクションをきちんと理解していないと、DXはうまく進まない。日本全体の問題として言えるのは、意志決定者や推進者に50、60代のデジタルを苦手としている昭和世代が多いということだ。組織をフラットにしてデジタルネイティブ世代にDXを推進する権限と力を与えるなど、組織の構造改革や世代交代も必要だ。

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研究室で綿栽培 世界から脚光を浴びるスタートアップCEOに聞くその意義

 アメリカ・ボストンを拠点にするゲイリー(GALY)は、バイオテクノロジーを用いて綿栽培を可能にする技術を開発して注目を集めている。従来のコットン生産に比べて温室効果ガスの排出量を大幅に抑えることができ、水と土地の利用を80%以上削減できるという技術で、H&Mファウンデーション(H&M FOUNDATION)が主催するイノベーションコンペ「グローバルチェンジアワード(GLOBAL CHANGE AWARD)」をこの4月に受賞した。

 ルチアーノ・ブエノ(Luciano Bueno)=ゲイリー創業者兼最高経営責任者(CEO)は立ち上げの前は、世界最大の会計事務所デロイト・トウシュ・トーマツ、DELOITTE TOUCHE TOHMATSU)やベンチャーキャピタルでM&Aや投資を行ってきた人物。19年に「フォーブス(Forbes)」誌の「フォーブスが選ぶ30歳未満の30人」に選出されて同年渡米し、ゲイリーを立ち上げバイオテクノロジーを用いた綿栽培に着手した。なぜ、彼はコットンに目をつけたのか。ブエノCEOに聞く。

WWD:コットンに取り組もうと思ったのはなぜ?

ルチアーノ・ブエノ(以下、ブエノ):ブラジル・サンパウロで高校の学費を稼ぐために友人にTシャツを販売することから始め、その後、世界最大の会計事務所のデロイト(デロイト・トウシュ・トーマツ、DELOITTE TOUCHE TOHMATSU)で、「プラダ(PRADA)」「カルヴァン・クライン(CALVIN KLEIN)」「ザラ(ZARA)」を主なクライアントとして監査・コンサルティングに従事した。さらにその後、ベンチャーキャピタル事務所でM&A案件や投資などを行い、しばらくして、テキスタイル分野で最初の会社を立ち上げたがうまくいかなかった。けれど業界の裏側を知ったことで、実際どのように回っているのかを理解することができた。「フォーブス」誌の「フォーブスが選ぶ30歳未満の30人」に選ばれるなどして認めてもらい、EB-1ビザでグリーンカードを取得後渡米し、次に何をしようかと考えていると、食品分野で大きな動きがあることに気づいた。食品分野で何か大きな影響力のあることができないかと考えるようになり、原材料がカギになるという考えに至った。植物科学とバイオテクノロジーの学術分野で15年間取り組んでいるパウラ(・エルブル、Paula Elbl)と一緒にゲイリーをスタートさせた。

コットンに取り組もうと思ったのは、誰もがコットンが大好きだから。地球を犠牲にすることなくコットンを生産できたら素晴らしいと思わない?天然繊維こそが未来につながると私たちは信じている。

WWD:開発の進捗状況は?

ブエノ:まだ研究開発段階だが、最大の課題はうまく機能させることと、生産の拡大だろう。

WWD:どのように培養していくのか?

ブエノ:植物の幹細胞に直接働きかけ、最適な環境で培養して繊維へと変えていく。コットン栽培は通常180日間かかるが、約10分の1の18日間で成長する。さらに80%のリソース(水、土地、温室効果ガス排出)が削減でき、高品質なコットンになる。

WWD:培養プロセスをバイオテクノロジー初心者でもわかるように簡単かつ具体的に教えてほしい。

ブエノ:ここはわれわれの特許に関わるところなので、類推していただくしかないのですが、例えば、丈夫な子どもに育ってもらいたいと思って鉄分などの栄養を与えるのと同様に、培養コットンの細胞にも健全で強固になれる“最善の栄養”を与えている。

WWD:生産量拡大のための今後の計画は?

ブエノ:まずはコンセプトの証明を確実にする。そしてより大きな容器(バイオリアクター)へ拡大し、そして専用施設を建てる。

WWD:あなたが考える究極のサステナブルなファッション産業とは?

ブエノ:研究室で製造できる衣類――これがベストで、おそらく最もクレイジーな方法だろう。

WWD:現在の課題は?

ブエノ:ブランドを説得すること。「今、私たちのような取り組みに投資を行わないと、近い将来いろいろな意味で困るよ」と。今後はコットン生産に十分な土地がなくなるからね。

WWD:これまでの資金調達額は?

ブエノ:調達額は非公開だが、投資を募集している。

WWD:他に注目しているサステナブル技術は?

ブエノ:“クリーン・ミート(細胞培養による肉)”、自動運転、新たなバイオベース素材。素材に関しては、ファッションだけでなく家具や航空宇宙などの分野に影響を与えられるから。私の考えでは、全産業の制度を打ち破って変えられるポテンシャルがあるのは、イノベーションの中でもごく一部の分野だと思う。

WWD:注目しているファッションブランドは?

ブエノ:「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCON)」。ミニマリストでありながら常にトレンディーだから。

ゲイリーのコンセプトを表現した動画

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#敦子スメ「新月・満月」ノート 今回はさそり座で満ちる満月(5月7日)深くつながりたい対象はなに?

 この連載では、新月・満月の流れを最大限に引き出すためのサポートをしてくれるコスメやインナーケアアイテムも紹介していきます。第10回は5月7日の満月とおすすめコスメについてお伝えします。

今回の満月(5月7日)はさそり座

 5月はじめの満月は、7日にさそり座で起こります。私はオーガニックコスメに関わり勉強をし始めたころから、なんとなく星の動きは人の生活にも影響を及ぼしているのではないかな、またそれは人間にとってとても自然なことなのではないかと感じてきました。満月の日は出産が増えるなどの言い伝えが昔からありますが、今回の満月は、4月7日の天秤座の満月に発令された緊急事態宣言の“緊急事態措置を実施すべき期間”を終えた翌日の5月7日(結局31日まで延長されましたが)。偶然だとは思えませんね。オリンピックの延期が発表されたのは3月末の新月のタイミングでした。これはもう何らかのメッセージなのかなと思ってしまいます。今回のこの新月〜満月の期間に得た気づきやきっかけは、これから大切になっていきそうです。

 前回の新月ではこの期間を機に“本当に好きなものを見つけよう”というメッセージをお伝えしました。新月の行動が実るタイミングが満月ですから、今回もそのテーマの実りのような感じになるかもしれません。この満月が起こるのはさそり座。美川憲一の歌にもあるように、さそり座は好きな対象に一途に向かっていく星座。広く浅く、モテる、というよりもある程度対象に対し“絞り”が効いたイメージです。ここ数カ月で本当に深くつながりたい人やモノは何だったのか。そんな結果がそれぞれの内側で実るかもしれません。

今回の満月コスメ

 “深いつながり”を意味する蠍座はホルモンバランスや性などとも深く関わりがあります。そこでおすすめなのはホルモンバランスを整えてくれるアイテム。「アロメディカ(AROMEDICA)」の「フェミノール」は、日本のデリケートゾーンケア・アイテムのハシリといってもいいほどのロングセラー。イランイランやローズなど女性らしい香りのオイルローションです。「ブッシュフラワーエッセンス(BBUSH FLOWER ESSENCES)」の「セクシュアリティ」は飲むことで花々のエネルギーが感情に働きかけ、人との間に情熱を取り戻させる作用があるそうです。距離は取っても心のつながりはキープしたい今、試しに取り入れてみてはいかがでしょうか。

福本敦子(ふくもと・あつこ)/フリーランスPR・美容コラムニスト:コスメキッチンに14年間勤務後、現在はフリーランスPRとして活動するかたわら、ビューティコラムニストとしてイベント、SNSなど多方面で活躍。オーガニックに精通した知識を武器に、ライフスタイルに寄り添った独自のオーガニック美容論が、著名人やエディターをはじめ各方面から大人気。「#敦子スメ」は「読んだ瞬間試したくなる」と多くの反響を呼び、紹介した商品の欠品や完売も多数。2019年秋、初の書籍となる「今より全部良くなりたい 運まで良くするオーガニック美容本 by敦子スメ」を出版。発売前に増刷が決まるなど話題を呼んでいる。旅を愛し、占星術にも精通する instagram:@uoza_26

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連載「今、デザイナーができること」Vol.4 井野将之「工場に影響が出ないように僕たちが食い止めたい」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、2018年に「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ」のグランプリに選出された「ダブレット(DOUBLET)」の井野将之デザイナーの思いを紹介する。

DOUBLET

井野将之デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A.現在、最も難局に直面しているのが営業自粛中の小売業なので、何かできないかと毎日模索している。小売業の苦境の影響が、僕たちブランドのような卸業を通過して、生産側の工場へと及んでいくことに危機感を持っている。もし、その流れが工場まで届いてしばらく経過してしまうと、その地点から再びよい流れに押し戻すことはとても困難になる。ブランドはその間にいるので、なんとか僕たちで食い止めて押し戻したい。ファッションを通じてできることを考え、行動する必要がある。


【自社での動き】

 11万以上のフォロワーを有するブランドの公式アカウントを活用し、全国の卸し先店舗を一つ一つストーリー機能にリンクを付けて投稿。また“一日店長”として取扱店のアカウントで顧客からの質問に答えたり、トークショーに出演したりと、小売店をデジタルで少しでも支援したいという意思が伝わってくる。


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武骨なアメカジブランドがオンライン動画に活路 Zoomやユーチューブで客との距離縮める

 緊急事態宣言が延長され、店頭で買い物する機会はますます遠のいた。デジタルとは縁の薄い存在に見えた武骨なアメカジブランドも、新たなチャネル開設のためインスタグラムやZoom、ユーチューブを活用し始めた。硬派なビジュアルと熱いスピリットは動画との相性がいいのか、予想していた以上の効果を上げるブランドもあるようだ。アメカジブランドの取り組みを追った。

IGTVによりEC売り上げが3倍に!
毎週金曜日の新作“ドロップ”も好調

 2015年にスタートし、現在国内約60店舗、海外約40店舗に商品を卸す帽子ブランド「ザ エイチダブリュードッグアンドコー(THE H.W. DOG & CO.)」は、4月7日にインスタグラムの動画アプリIGTVで配信を始めた。弦巻史也代表は、「新型コロナウイルスの感染拡大により店舗を閉店せざるを得ない状況となり、来店いただけないお客さまに向けて動画による商品説明を行っている」と話す。

 “コロナショック”下で、毎週金曜日の19時に新作1~4型を発表する試みも始めた。自社ECにアップし、IGTVで解説する。中でも、ECのみで販売する黒に限定した“ブラキッシュ コレクション(BLACKISH COLLECTION)”は1分で完売するほどの人気で、「コロナの影響でオーダー品のキャンセルなどもあり、ブランド全体としてはマイナス成長だが、4月のEC売り上げだけ見れば前年同月比で3倍を記録した」という。帽子はフィッティングが重要で、また卸先のECとのバッティングを考慮し、「ECやインスタは、これまではあくまで実店舗に誘導するためのものだった」と言い、実際に原宿にある実店舗の売り上げが7~8割を占めたが、“コロナショック”を機にデジタルが“攻める装置”に変化した。

 アフターコロナを見据えては、2月に本格稼働させたばかりだったアトリエ仕事に尽力する。「自分の腕を磨くために構えた。1900年製のクラシックな測定器を使って、帽子をビスポーク(特別注文)する。帽子は英国発祥でその後、米国に伝わった。そのため、“帽子は欧米のもの”という考えが海外を中心に根強い。目標は日本を代表する帽子ブランドとして、そんな欧米の人からも認められること」と意気込む。

Zoom使ったオンライン接客サービスを導入し、
ユーチューブチャンネルも開設

 1996年にデビューし、東京・原宿と高円寺、京都、福岡に店舗を持つネイティブアメリカンスタイルのシルバーアクセサリーブランド「ファーストアローズ(FIRST ARROW'S)」は、4月末からウェブ会議システムのZoomを使ったオンライン接客サービス“F.A.コンシェルジュ”を開始した。利用者はまず、オフィシャルホームページ上の特設バナーをクリックして希望日時やIDなどを入力する。追ってブランドからZoom経由でミーティングの通知が届き、動画による対面接客が受けられる仕組みだ。すでに購入や修理の相談を受けており、「商品を見ながら話ができるため、数段スムーズになった」(伊藤代表)と言い、「サービス名の通り、コンシェルジュのようなサービスを提供したい」と続けた。

 4月21日には、ユーチューブチャンネル「ファーストアローズ オフィシャル」も開設した。伊藤一也代表はレースにも参加するビンテージの「ハーレーダビッドソン(HARLEY DAVIDSON)」や、1930年代に米国で生まれたカスタムカー“ホットロッド”など自身の趣味も披露して、「“こんな人間が『ファーストアローズ』というブランドを作っているんだ”ということを知ってもらいたい。視聴者を笑顔にしたい」と話す。今後は商品紹介はもちろん、国内外のイベントで好評の彫金をライブで見せることも予定する。

5月末に動画を用いたウェブ展示会を企画。
オンライン上でオーダーも受け付ける

 2005年スタートで東京・恵比寿と原宿、大阪に店舗を持つ、アメリカンビンテージをモチーフとするメンズアパレルブランド「ジェラード(JELADO)」は、4月14日にユーチューブで「ジェラード チャンネル」を本格始動した。後藤洋平代表をはじめとするスタッフが出演してブランドについて語ったり、主力アイテムであるジーンズについて全国の卸先から色落ちサンプルを取り寄せて、はき方や洗濯の回数による個体差を見せながら解説したりしている。

 “コロナショック”を受けての動きに見えるが、後藤代表は「1年ほど前から、海外ショップ向けの新たなアプローチ方法として翻訳機能を持つユーチューブでの配信を考えていた。ジーンズやレザーアイテムの場合、海外バイヤーの買うべき日本ブランドは決まってしまっており、新規で展示会に出展してもビジネスにつながりにくい実状がある。もちろん“コロナショック”が、スタートを早めるきっかけにはなった」と答える。ジェラードは現在全店舗を閉めているが、ユーチューブ効果もあり、4月のEC売り上げは10~15%増(前年同月期)となっている。

 また今後については、「5月の最終週に予定する2020-21年秋冬展示会から、動画を用いたウェブ展示会を企画している。ファッション業界のクラウド管理を行うSTRAWBERRY JAMSと提携してオンライン上でオーダーを受け付けるつもりだ」と話す。また、「ファーストアローズ」がスタートさせたZoomによるコンシェルジュサービスも導入する。「ユーチューブに積極的にスタッフを登場させるのは、人間性や体形を視聴者に知ってもらい指名を受けるため。現在は、そのためのトレーニング期間と言える」。

 いずれのブランドも代表自らがプロジェクトの先頭に立ち、また出演している点がポイントだ。後者については、近くて遠い存在である彼らが動画を通じて、肉声でブランドや商品について語ることは一般ユーザーにとって有益であり、ブランドにとっても不特定多数の視聴者に配信できることはメリットとなっている。レザー、ジーンズ、ビンテージなどをモチーフとする武骨なブランドの、“これまでに培ったイメージを毀損するのでは?”と危惧する人もいるかもしれないが、しかし新たな一歩を踏み出したブランドの代表者の表情は総じて晴れやかで、さらなる一手の創出についても余念がない。「まずは重い腰を上げる必要がある」(伊藤一也「ファーストアローズ」代表)、「今できることをやらなければならない」(後藤洋平「ジェラード」代表)、「ありがたいことに新たな試みに対して、すぐに結果に出ている」(弦巻史也「ザ エイチダブリュードッグアンドコー」代表)と先達たちが言うように、まずはトライしてみることの重要さを取材を通じて再認識した。

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モンクレールCEOが語る ロックダウンと今後の展望

 イタリアでは新型コロナウイルスの影響で3月9日からロックダウンが続いており、モンクレール(MONCLER)の2020年1〜3月期決算は売上高が前年同期比18.0%減となった。しかしレモ・ルッフィーニ(Remo Ruffini)会長兼最高経営責任者(CEO)は、同社の今後に自信があるという。スキルや才能、財政面での強みを生かし、CEO自身とチームのエネルギーを注ぎ込むことで“以前より強い企業”になっていくための長期的戦略を掲げている。

 ルッフィーニCEOは今回のインタビューで、新型コロナウイルスのパンデミックが収束した後のシナリオだけでなく、個人的な記憶や好きな音楽を取り入れた充電方法、そしてチームとのつながりの重要性も語ってくれた。

WWD:モンクレールの従業員専用の非公開インスタグラムアカウントの開設を思いついたきっかけは?

ルッフィーニCEO:ロックダウン中にみんなが考えていたと思うが、私はステイホームを意識するようになった当初から、顧客とのコミュニケーションだけでなく社内のコミュニケーションも重要だと考えていた。コレクションはもちろんのこと、サプライチェーンや物流を守ることは必須だ。しかし、それよりも先に維持しなければならなかったのはモンクレール従業員の士気、そして物理的に離れていても従業員同士のつながりを保つことだった。従業員がひとつになることが私たちにとっての基盤だ。今は再開の話でもちきりだが、現時点では家族の一員だと感じられるようなモチベーションの高いチームでいることが何より大切だ。

WWD:世界では多くの企業が従業員に休暇をとらせ、また何百万人もの人が職を失っている。だから、あなたの考え方はその対極にあると言える。ロックダウン当初は従業員たちが孤独を感じ、ブランドとのつながりを失うかもしれないと感じる可能性を危惧していた?

ルッフィーニCEO:私たちの持つ価値観が失われれば、非常に大きな損失となるのは明らかだった。私がまず真っ先に考えたのは、従業員の健康と給与を守るのが急務だということだった。しかし、モンクレールでは常に“社員の士気”がキーワードということもあり、3つ目の問題点は間違いなくそれだと思った。従業員の士気が足りなければ企業としての成長はない。この1カ月半の道のりは簡単ではなかったが、本当に難しいのは、イタリアのロックダウン措置が段階的に解除される5月4日からだと思う。そこで市場でのダメージを目の当たりにするだろうからね。政府がどのように対応し、市場には何が起こるか。私たちの仕事は、コレクションを届けるべく企業活動の再会に向けて準備をすることだ。しかし、消費者の考え方がどう変わっているかわからない。私たち企業に課せられた部分は努力できるが、市民や企業へのサポートなど、政府が行わなければならない部分も多い。でも、米国や中国をはじめとしたすべての政府がうまく対応しているようにも見える。消費者感情は政府の動きにかかっている。今回の危機で、企業は間違いを正し、適切な優先順位をもって現状に即した形をとる機会に恵まれた。私は自分たちを気の毒だとは思わないようにしているし、市場に柔軟に対応できることが大きな利点のひとつであると考えている。そして私たちは、以前とは違う新たな戦略を構築する。ただ先を急ぐのではなく、企業価値を見直し、過去を振り返りながら新しい未来を創っていく。

WWD:イタリアのジュゼッペ・コンテ(Giuseppe Conte)首相は4月26日、ロックダウンの規制を5月4日、18日、そして6月1日と段階的に緩和する方針を発表したが、これについてどう思う?

ルッフィーニCEO:私たちの健康に対する危機は経済危機と同様に大きなインパクトがあり、社会に対する大きなリスクも存在している。イタリア人のことをよく知っているならわかると思うが、私たちはもっと早くに活動を再開することもできる。うまくやれるし、健康に関する規則を守りながら必要な仕事に戻ることが可能だ。普段の8月は夏休みを取っていたが、6月にコレクションが発表される前の現時点で40日間も休んでいることを考えると、仕事量は膨大で私たちはリスクを抱えている状態だ。オンラインで働くのはとても簡単だが、私たちの業界では生地の手触りを確かめ、試作品を作って改良するなど、人の手を使う作業も当然ある。産業のそうした部分は会社で行う必要性がある。

WWD:ロックダウンが終わる前に生産拠点を再始動してもいいのか?

ルッフィーニCEO:それは4月27日から可能だ。輸出があるから、すでに4月の4週目からベネト州トレバゼーレゲの拠点を開けて試作品のデザインやリサーチ、開発を限られた人数で行っている。そこを第一にして少しずつ再開していく。従業員全員が同時に職場に戻れるとは思わない。私たち経営陣は落ち着いており、必要とされる優先事項や注意点を承知している。ウイルスの再流行が起きてはならない。規則に従って注意深く作業することを絶対的に最優先としなければならない。業界やそこで働く人びと、そして企業を守らなければならない。さもないと私たちにとってもイタリアにとってもよくない結果となるだろう。

WWD:一部マーケットでは店舗を再開している?

ルッフィーニCEO:中国、そしてドイツやノルウェーなどいくつかの欧州市場で再開している。イタリアでは政府の指示に従って18日から再開する予定だ。まずは生産拠点を再開することが重要で、店舗は安全が確保され次第オープンする。中国や韓国のような状況はヨーロッパでは難しいと思う。中国では日によっては昨年と同様の営業成績も見られるが、欧州やイタリアではそうはいかないだろう。中国には多くの現地顧客がいるが、ヨーロッパでの顧客は40%が旅行客だからだ。アメリカでは新型コロナ危機を打開するために必死の対応がなされているが、米国の店舗をオープンさせるのは最後になると予測している。

WWD:ところで、個人的な充電方法はある?

ルッフィーニCEO:私にはエネルギーがある。それを自分の中で見つけ出そうとしているし、仕事を再開するのに必要な士気も十分にある。この1カ月半の間に起こったことにある意味では満足もしている。うまく仕事を進めるやり方をチームから学ぶことで力をもらえた。会社とのつながりや大家族の一員であると感じられたことからも多くのエネルギーをもらえた。私もチームのみんなも再開の準備はできている。いつどのように再開するのかは私たちだけの問題ではないが、できるだけ早く活動を再開することをみんなが待ち望んでいる。

WWD:ロックダウン中に新しい自分を発見した?いつも以上に自分を見つめ直したということはあった?自粛生活の期間で驚きなどはあった?

ルッフィーニCEO:テクノロジーのすごさをあらためて認識したのは確かだ。私はテクノロジーが大好きだが、それが今回このような働きをするとは思ってもみなかった。オフィスにいるのと同じようにお互いを近くに感じながら仕事ができたからね。社員のつながりを保つために、その日の出来事をチームでシェアするプログラム「エナジープラン(Energy Plan)」を発足させたのだが、それがいい例だ。テクノロジーがみんなのエネルギーを生み出した。本社で働く700人の従業員が参加しており、5月からは世界中の従業員もこれに加わる。それから、社員の健康と給与を保証しなければと考えていたときに、彼らの存在そのものが私自身を守り、安心させてくれていることにも気が付いた。従業員たちは強く、それが私を助けてくれた。何かを与えようとしたときに、全てが自分に返ってくる。この気付きは現状においてなくてはならないものでもある。

WWD:今回のようなスマートワーキング(オンラインを活用した効率のいい働き方)は、長期的に行われるべきだと思う?

ルッフィーニCEO:これまでにスマートワーキングをネガティブに捉えたことは一度もないが、その方向に完全にシフトする機会がなかった。今は素晴らしいやり方だと感じている。デスクが隣り合わせの職場に全員同時に戻ることは難しいだろうから、5月もこの仕事のやり方を続けるつもりだ。子どもがいる人や年老いた家族の世話が必要な人にとっても助けになるだろう。

WWD:インスタグラムの非公開アカウントでは曜日ごとに異なるアクティビティーを発信しており、月曜日はみんなで“モンクレールでの最高の瞬間”をシェアしているそうだが、ルッフィーニCEOの“最高の瞬間”とは?

ルッフィーニCEO:この取り組みは多くの記憶が呼び戻されることもあって大好きなんだ。みんなも話しているように、証券取引所での上場初日のことは私にとっても非常に重要な出来事だった。昨年に初開催したイノベーションのためにアイデアを出し続けるイベント、ハッカソンや、「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」の立ち上げもそうだ。この取り組みはみんなに多くの活力を与えてくれるし、つながりを保つこともできれば記憶のアルバムにもなる。

最高の瞬間について最初に語ったのは私だった。数カ月前の話になるが、昨年12月に英国ファッション協議会(The British Fashion Council)が開催した「ザ ファッション アワード(The Fashion Awards) 2019」でビジネス・リーダー賞を受賞して帰って来たとき、チームのみんながカフェテリアで私を迎えてくれた。全く予期していなくて、大きなサプライズだった。受賞したとき以上に強く美しく心を動かされた。

WWD:非公開インスタグラムでは、毎週木曜日にルッフィーニCEOがゲストを招いてトークをするというが、どのようなゲストを呼んでいる?

ルッフィーニCEO:モンクレールには5つの基本的な価値観があり、ゲストとはその価値観について話をする。毎週100~200人がリアルタイムで視聴している。最初のゲストはイベント会社ヴィラ ユージェニー(VILLA EUGENIE)創業者のエティエンヌ・ルッソ(Ethienne Russo)だった。彼をトップバッターにしたのは、ちょっとクレイジーだからだよ(笑)。彼は「モンクレール ジーニアス」や「モンクレール グルノーブル(MONCLER GRENOBLE)」のショーで私たちに多くの感動を与えてきた。それからジャーナリストのニコラ・ポロ(Nicola Porro)、ルカ・デメオ(Luca De Meo)=ルノー(RENAULT)会長兼CEOも招いた。彼には素晴らしいマネジメント能力がある。トヨタ(TOYOTA)からフィアット(FIAT)に至るまで世界の自動車業界で経験を積み、現在は日本でのスキャンダル後のルノーを再建している。彼らとのトークによって人や価値観を深く知り、将来につなげていきたい。

WWD:ゲストを交えたトークや、従業員専用のインスタグラムアカウントそのものを一般公開することは考えている?

ルッフィーニCEO:私たちにとっての個人的なプロジェクトを公開したいとは思わないが、将来的に続けていくことはできるし、私たちのコミュニケーションの一部にもなり得るだろう。誰かを除外したりはしたくないが、今のところは私たち社員だけのものであり、外部とシェアすることはしないだろう。しかし、新たな展開があるかどうかは様子を見たい。

WWD:過去の広告キャンペーンのイメージをSNSに投稿するなど、コミュニケーションの手法にも変化が見られるが、それによって不確実な状況に直面している現在の世界の不安が軽減されると思う?

ルッフィーニCEO:外部とのコミュニケーションも社内と同じ方法を取っている。パンデミックによって全てのものが古くなり、タイミングを失ってしまった。かわいい女性がかわいいジャケットを着ても今の状況にはそぐわないということだ。過去にうまくいっていたことも価値観が変われば不適切となり、変える必要が出てくる。消費者が求めているものは変わった。製造が停止していたこともありキャンペーンを変更することはできなかったが、フォトグラファーのアニー・リーボヴィッツ(Annie Leibovitz)やブルース・ウェーバー(Bruce Weber)による過去のキャンペーンが現在の価値観にマッチしていると感じた。彼らは現在もまだ通用するし、一緒にいるというメッセージも感じられる。過去は私たちの未来だ。もちろん消費者に向けたコミュニケーションは、現在の価値観に合致した全く別の力強いものにするためにも再考が必須だ。困難な状況はこれからも続くだろうが、落胆している場合ではない。危機を脱する頃にはより強くなっているだろう。

WWD:20年1〜3月期決算の売上高についてアナリストと電話で話をした際にあなたは、必要であれば「モンクレール ジーニアス」のプロジェクトを再考することも視野に入れていると認めていた。とにもかくにも会社にとっての長期的ビジョンの必要性を強調していたが、それについて詳しく話してもらえるか?

ルッフィーニCEO:失ったものを回復させるのは当然だが、長期的戦略を見失ってはいけない。20年度の結果を改善する方法はあるが、長期的視野を持ってブランドを存続させていくことが重要だ。私には明確なビジョンがあり、それを進化させることはあっても変更することはない。この四半期の結果だけに目を向けるのはブランドにとってよくない。先を見据えて来年、再来年の「モンクレール」を考えていくべきだ。

WWD:では、最後にすこし軽い話題を。非公開インスタグラムで音楽のプレイリストを作成していたが、あなたにとって音楽とはどんなもの?

ルッフィーニCEO:音楽はとても大切だ。家に帰ったらすぐに音楽を流す。音楽には素晴らしいパワーがあるからね。古い音楽が好みだ。古い記憶には心が強く揺さぶられる。プレイリストにはお気に入りの2曲を入れた。ひとつはマイケル・ナイマン(Michael Nyman)の「Time Lapse」、もうひとつはウンベルト・トッツィ(Umberto Tozzi)の「Ti Amo」さ。

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元ライフスタイルメディア社長がフェムテック企業「メデリ」を立ち上げ 自身の不妊治療の経験から思いを語る

 女性向けライフスタイルメディアである4MEEEの社長を務めていた坂梨亜里咲氏が、社長退任後にフェムテック事業を行うメデリ(MEDERI)を立ち上げた。3月3日には、医師や専門家の監修のもとに妊娠や出産に関わるサービスを展開するウーマンウエルネスブランド「ウブ(UBU)」をスタートさせ、子どもを望む女性に向けたサプリメントとコーチングカードが届く定期ボックス「ウブ サプリメント」を発売した。発売に先立って行ったクラウドファンディングでは、目標額を超える総額260万円以上を集めた。

 同社の立ち上げのきっかは、坂梨氏の不妊治療の経験だった。20代後半に妊娠しにくい体だということが判明して、30歳の現在まで不妊治療に多くの時間を費やし、さまざまな問題を抱えながら自身のライフステージや思いと向き合ってきた。「不妊に関する日本人の知識はとても低い。産みたいのに産めない人がたくさんいるのではないでしょうか。私の経験は無駄なことではなく、一人でも多くの女性を自分が望む未来に導きたい」と語る坂梨代表に、フェムテック事業をスタートさせたきっかけや今後の展望を聞いた。

WWD:メディアの運営から、なぜフェムテック事業をスタートさせようと思った?

坂梨亜里咲(以下、坂梨):前職は女性向けライフスタイルメディアの4MEEEで社長を務めていたんですが、自分がこのメディアのターゲットではなくなったなと感じてから、ほかに熱中できる世界を作りたいと考えていました。そこで着目したのが自身の不妊治療の経験です。私は結婚を機に受けたブライダルチェックで妊娠にくい体だということ知り、人生最大の悲しみを経験しました。それから多くのお金と時間を費やし、不妊治療を3年間続けてきました。私の症状は重く、もっと早く気付ければよかったという後悔や経験から、フェムテック事業をスタートさせることを決意しました。

社名は、わたし(I)を愛でる(MEDERU)を組み合わせて“メデリ(MEDERI)”にしました。多忙な20代、30代の女性には自分を愛でる時間や自分と向き合う時間が必要だと感じたからです。

WWD:第一弾プロジェクトの「ウブ(UBU)」はどういったブランド?

坂梨:「ウブ」は医師や専門家が監修するウーマンウェルネスブランド。初めての経験の“初(うぶ)”や、産むことの“産(うぶ)”をブランド名に込めました。妊娠、出産のジャンルを担っていきたいと考えています。最初は妊よう力(妊娠して、出産することができる能力)を知るチェックキットに着手したのですが、さまざまなハードルがあり、手こずっていました。そんな折に取締役から「もう少し一般の人が日常に取り入れやすいものでもいいんじゃない?」とアドバイスを受け、第一弾はサプリメントになりました。思い返してみれば、私が妊娠準備を始めたときに真っ先に取り入れたのもサプリメントでした。

WWD:サプリメントはどういった商品?

坂梨:医師、助産師、管理栄養士の協力を得て作りました。サプリメントは実感を得るためのものではなく、赤ちゃんを迎え入れるための体内環境を整えるための葉酸、ビタミンD、ラクトリンを含んだものです。毎月、妊娠や出産にまつわる知識ブックと一緒に届けます。さらに、未婚女性、既婚女性、パートナーに向けたセルフコーチングカードも作り、知識を取り入れるためのサポートも行います。未来を届けている感覚ですね。まだ具体的に妊娠を考えていない人にも、自身の体と向き合うきっかけとして飲んでいただきたいです。

WWD:最初に取り組んだチェックキットの発売予定は?

坂梨:チェックキットの発売は5月を予定しています。このチェックキットは膣内フローラをチェックするもので、子宮や膣内にはたくさんの細菌が存在し、良性な乳酸菌が多いと妊娠率が高いことがわかっています。その菌の数と生活習慣などのアンケート結果と組み合わせ、妊よう力を診断します。現状は解析料金が高くなるため販売価格も高価ですが、そこをいかに安くできるかが今の課題です。

この検査は妊娠準備の初歩向けのキットになっていて、妊よう力の理解や自分の体と向き合うきっかけにしてほしいと思っています。まずは関心を持っていただいて、クリニックでさらに細かいチェックを受けてもらいたい。不妊にはさまざまな要因があり、膣内フローラだけではありませんが、自分の体を知ることの第一歩にしてほしいと考えています。

WWD:目標を超える額を集めて注目の高さがうかがえるが、今回クラウドファンディングを行った理由は?

坂梨:クラウドファンディングはPRやニーズの調査のほか、ブランドの思いを知ってもらうために実施しました。「ウブ」に共感してくれる人や企業を募集することも目的の一つでした。

WWD:メディアを運営していた経験があるが、情報発信はどう行っていく?

坂梨:4月1日に妊娠・出産にまつわる知識情報を発信するウェブメディア「ウブ プラス」をオープンしました。著名人へのインタビューを中心にコンテンツを構成し、20〜30代女性がこれから直面する初めてのライフイベントに寄り添うメディアとして情報を発信していきます。

WWD:今後はどういった展開を考えている?

坂梨:タイミング法の不妊治療、パートナーと性交渉をしている人や不妊に向けたプロダクトを製作していきたいです。ゆくゆくは手ごろな費用で卵子凍結をできるスキームを行っていきたいなと思っています。また、企業のモチベーション管理システムへの導入を視野に入れています。しかし、企業にヒアリングをしてみると「辞めた人の卵子はどうするんですか?」「卵子凍結は意外に高いからそれを福利厚生にするのは難しい」など壁があるなと感じました。なので、まずは一般消費者向けに展開し、ゆくゆくは企業向けのサービスも含めて「ウブ」「メデリ」を確立していきたい。活動に共感してくださるフレンドシップカンパニーも募集していきたいです。

日本人の不妊に関するとてもに低い。産みたいのに産めない人がたくさんいるのではないでしょうか。人生の判断軸になるものを20代、30代の女性に提供できたらと思っています。私の経験は無駄なことではなく、一人でも多くの女性をその人が望む未来に導きたいと思っています。

WWD:新型コロナウイルスが不妊治療にも影響を与えていると聞くが。

坂梨:4月1日に日本生殖医学会が不妊治療の延期を患者に提案するよう推奨する声明文を発表しました。私自身、昨年は治療をペースダウンしていましたが、今年の夏から本格的な治療を再開しようと考えていた矢先のことでした。 先日かかりつけ医と話したところ、新型コロナのことが要因で踏み込んだ治療がしばらくできなくなりました。 ショックで戸惑いもありましたが、母体から胎児への感染の可能性があるかもしれないと思うと恐ろしく、同時に納得もしたというのが本音です。

このような緊急事態を経験しあらためて感じたのは、自分の意向と合ったかかりつけ医を見つけることの大切さです。そして、これから妊娠準備においても自宅でできるケアが重要となること。私自身、不妊治療を受け
る者のひとりとして、オンライン診療、妊よう力にまつわるチェックキット、そしてそれぞれを掛け合わせた取り組みが鍵となるのではと考えています。

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アルコールに大麻!? アメリカの巣ごもりで伸びる“悪いもの”消費

 新型コロナウイルスの影響により各国で外出制限や店舗の休業措置が取られていることから、ECの利用率が大幅に伸びている。家の中で快適に過ごすためのルームウエアやインテリア雑貨などが売れていることは想像に難くないが、自宅にこもらざるを得ないストレスを発散するため、アメリカではアルコールや大麻といった“悪いもの”の消費が増えているという。

 米調査会社ハリス・インサイツ・アンド・アナリティクス(HARRIS INSIGHTS AND ANALYTICS)のリポートによれば、消費者の5人に1人が「新型コロナウイルスの影響によって以前よりもアルコール摂取量が増加した」と回答している。18〜35歳の若者に限定すると、それがおよそ3人に1人になるという。

 大麻やCBD(大麻草成分)、アルコール、アダルト関連テクノロジー分野への投資を専門とする米投資会社バイス・ベンチャーズ(VICE VENTURES)のキャサリン・ドカリー(Catharine Dockery)創業パートナーは、「セルフケアの手段としてこれらの商品を購入する人が増えている。ニコチンを含有するガム『ルーシー(LUCY)』なども、自宅を煙で汚すことなくニコチンを摂取できる商品として人気を集めている」と語った。なおアメリカの一部の州では、娯楽用の大麻も合法となっている。

 米バイオテクノロジー企業オーソゴナル・シンカー(ORTHOGONAL THINKER)のアレックス・スパイザー(Alex Speiser)最高経営責任者(CEO)は、「医療目的の大麻をオンラインで注文できるカリフォルニア州のスタートアップ企業メドウ(MEADOW)も、飛躍的に業績を伸ばしている。人々は新型コロナウイルスを怖れると同時に、自宅で過ごす時間が長くて退屈している。“悪いもの”を生活に取り入れることで気を紛らせ、ストレスを軽減しているのだろう」と分析した。

 同氏はまた、「08年のリーマン・ショックなどに端を発した世界的な大不況の頃から、心の健康に関する消費が急激に増加した。今回の危機的な事態の収束後も、そうした傾向がさらに進むことが予想される。今後は、幻覚をもたらすような非合法の薬物なども使用するサイケデリック療法も、対処法として認められるようになるかもしれない」と述べた。

 しかし気が沈むようなこの状況をうまく乗り切るには、互いに思いやりを持って支え合うことが一番だと専門家らは口をそろえる。ドカリー創業パートナーは、「世界中の人々が同じ恐怖や苦しみを味わっており、この苦境を乗り越えるためには協力し合うしかない。“悪いもの”を提供している企業は、誰もが精神的にも肉体的にも大変な思いをしていることを認識するべきだ」と説く。

 スパイザーCEOは、「パンデミックを経験したことで、人々の中で何が重要かの定義が変化している。幸せな人生を送るために最も重要なのは、心身ともに健康であることだ。これを機に、グローバルな大手ブランドばかりではなく、地元の小さな店や事業をサポートしようという機運が高まっているのも素晴らしいことだと思う」と話した。

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編集長は先週何した? リモートワークで脳内ドタバタ1カ月

 こんにちは。「WWDジャパン」編集長の向です。リモートワークを始めて約1か月。自宅で仕事だなんてラクそう、と思ったのは初日の午前中だけ。慣れないオンライン取材や会議で椅子に座りっぱなしなのに脳内は漫画みたいにバタバタし、一生忘れない桜の季節になりました。多くの働く人が今きっと同じですよね。ある意味、気づきに溢れたこの1か月を振り返ります。外出していないため、写真はどうしたって地味になるのですが!

3月第3週
ほぼ人がいないオフィスで
ARのカウズで遊ぶ

 弊社はこの前の週から在宅勤務が始まりましたが、私自身はこの頃はまだ時々出社していました。本来なら翌週からは東コレ。中止が決まった今、自分たちにも何かできないかとマスク姿で打ち合わせのために渋谷に出かけて静まり返る神南エリアに驚いたり、編集部がある六本木のビームスのウインドーに飾られた春色の服に励まされたり。そんな中、拡張現実(AR)で楽しむ小っちゃいカウズ(KAWS)にハマって、人がいない編集部で歩き回わりました。はたから見たらシュールな光景だったはず。アートは現物を所有するもの、という観念が崩れました。

3月第4週
満開の桜をバックにした表紙撮影

 厚労省から「3つの“密”を避けて外出を」というメッセージが出たのは3月23日のこと。4月6日号の特集「新入社員AtoZ」の制作チームは表紙撮影をスタジオではなく、早朝の屋外で短時間で行いました。結果「イッセイミヤケ(ISSEY MIYAKE)」を着て全力疾走する吉倉あおいさんの背後には満開の桜が!表紙を桜が飾るのは「WWDジャパン」史上初かも(笑)。理想は毎週「史上初」な絵作りです。

 特集を担当した24歳の美濃島記者が、「取材で会ったアパレル業界の同世代がみんなアツくて刺激をもらった」と話すのを聞いてさらに春を実感。でも今年の新入社員の多くは、自宅勤務が続いていますよね……。自分がジーンズメーカーの新入社員の時は、最初の数カ月はひたすら縫製・洗い工場でのお手伝いと物流での出荷・返品業務でした。体を動かす研修から得られるものは多かった。そういったことができずに家で学びを続けている今年の新入社員の皆さんは、さぞかしじれったいかと思います。

 でもこの経験はこれからの仕事に必ず役に立ちます! なぜなら多くの人が同じ環境に強制的に置かれている今、皆さんは消費者の気持ちが痛いほどわかる仕事人としてそのキャリアをスタートさせているから。リモートワーク・ネイティブの実感は今後必ず活きてきます。

4月第1週
特集「コロナに負けるな」に向けて
動き出す

 4月20日号の特集を急きょ「コロナに負けるな 知恵を集めよう」に変更することを4月6日に決定。この危機を乗り越えるヒントなんて見つかるのか?と手探りで始めて校了までは10日という短期間。編集部一丸、といっても何もかもリモートで怒濤の取材開始です。

 特に大変だったのは小売りチームで、4月7日に緊急事態宣言が出たことで、営業・臨時休業に関する情報が飛び交い、特集の内容も二転三転。新型コロナの感染の広がりと政府や企業の対応をウオッチしながらの制作は困難でしたが、週刊紙ならではとも言えます。

 同時に世界中の人が自宅にいるため、海外在住の人からもオンラインでサクッと話を聞かせてもらえる、なんて利点も。自宅の椅子にずっと座っているのに、国内外の大勢の人と常時つながっている、不思議な感覚です。取材はたくさんしましたがとにかく写真がない!というか、全部オンラインのキャプチャーになっちゃう。

 校了したのは17日。取材させていただいた方の多くは不安を抱えつつも、どこか清々としていたのが印象的でした。ルーティーンが突如断ち切られたことで「心のどこかで違うと思っていたことはやっぱり違ったと気づいた」。そんな感じでしょうか。断捨離の嵐の後は、テクノロジーの助けを借りながらよりシンプルで、そして人肌感ある豊かさへ向かいたい。そう思います。

4月第2週
初のユーチューブライブ配信が
楽しかった!

 17日には弊社初・人生初のユーチューブライブ配信をしました。予定していたトレンド&ビジネスセミナーを延期したため、同セミナー担当の販売部部長が急きょ企画。台本は手作りです。弊社スタッフとゲストの方が画面に次々と登場し、ファッションとビューティのトレンドや今思うことをざっくばらんに話しました。

 ぶっつけ本番だから最初はカメラのどこを見たらよいかも分からなかったですが、慣れてくると楽しい!配信中に入ってくるコメントにアドレナリンを出しつつあっという間に3時間が過ぎました。「料理や仕事をしながら3時間、ラジオ感覚で聴いていました」というコメントをもらい目からうろこ。やってみて分かることってたくさんありますね!すっかり楽しくなったので弊社はこれからユーチューブでガンガン盛り上がる所存です。

4月第3週
自宅の外壁工事に苦悶しつつ
「ユニクロ」特集完成

 在宅で週刊紙を毎週作るのは無理!かと思いきや結構できちゃう、ということがわかってきたこの頃。自宅を快適な仕事空間にするために工夫を始めました。が!突如(ではなく私が忘れていただけだけど)、自宅マンションの外壁工事が始まりました。

 唯一の屋外であるベランダの前に足場が組まれてビニールで覆われ、一日中「キュイ〜ン」と鳴り響く地獄(仕方ないけど)の在宅勤務。オンライン会議のマイクも工事の音を拾ってしまうため、基本ミュートで自分が話すときだけマイクをオン。なかなかの苦行だけど、漫画みたいでなんだか笑えます。

 そんな中、27日号「ユニクロ」特集を校了。元同僚でジャーナリストの松下久美氏と編集部の五十君記者の力作です。表紙に登場していただいた方の中には、元「ポパイ」編集長である木下さん(現グローバルクリエイティブラボ東京・クリエイティブディレクター)の姿も。

 実は今書いているこの編集長日記、しばらくサボっていたのですが「編集長日記を楽しみにしています」という木下さんからの伝言を真に受けて再開しました。木下さん、最後まで読んでくれていますか〜?

 この日記をアップする5月7日はゴールデンウィーク明けながら、引き続き自宅で過ごすなど多くの方が制約ある生活を続けているかと思います。どうぞ、お体を大切に。思いやりとユーモアと諦めない心を忘れずに頑張りましょう!

リモートワーク中は「WWDジャパン」は電子版で確認。最新号はこんな感じにインタビューが充実しています!

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オリヴィエ・ルスタン、ティックトックの将来性や魅力を語る

 動画アプリのティックトック(TikTok)は、Z世代の若者を中心に人気が広まった。これまで18歳以上の大人と呼べる層の人びとにとっては、一瞬で服装を魔法のようにチェンジしたり、難しそうなダンスや音声をおもしろおかしく加工した動画など、たった15秒ほどの即興風ショートムービーがどのように制作されているのかなど知る由もなかった。

 しかし今は、新型コロナウイルスの影響により世界中で外出自粛の流れが続いており、新しいコンテンツや笑いを求める人びとが増加している。そうした中で、もともとのティックトック・ユーザーの親世代やミレニアル世代にも同アプリの利用者が増えつつあるのだ。

 「バルマン(BALMAIN)」のオリヴィエ・ルスタン(Olivier Rousteing)=クリエイティブ・ディレクターや数々のインフルエンサーなど、ファッションおよびビューティ界の著名人がこの数カ月で次々とティックトック・デビューを果たしている。米調査会社のセンサー タワー(SENSOR TOWER)によると、ティックトックは現在世界で最もダウンロードされている動画アプリだという。

 ルスタンは6年以上前に、インスタグラムでよりプライベートな自身の様子を公開し始めて注目を集めた。そして、ルスタンはまたしてもラグジュアリーブランドのデザイナーとしてティックトック・ユーザーの先駆けとなり、フィッティング風景と共にダンスやワークアウトをする動画などを数々とアップしている。

 パリにいるルスタンは電話インタビューで、「インスタグラムではデザイナーとしての才能や編集力を表現できる。インスタグラムでは美が軸とされているからね。でもティックトックでは、どちらかというと演出や人との交流といった新たな美学に触れることができる。ファッションでは真面目な表現ができるけど、ティックトックでは私たちのおもしろい一面を見せることができる。ティックトックはみんなが使っているわけじゃないから新鮮だよ。数年前まではみんながみんなインスタグラム・ユーザーというわけじゃなかったけど、今では大多数の人が利用していて、多くのセレブがフォロワーを増やそうと頑張っている」と語った。

 しかしティックトックは、ファッション業界にとってインスタグラムと同様のマーケティングツールになり得るのだろうか?もしくは、外出規制の解除後はユーザーが減少し、動画アプリの「ヴァイン2.0(VINE2.0)」のようにいずれはサービス終了となってしまうのだろうか。

 ルスタンは、現状を見ると同アプリが私たちの消費活動を変えていくことになるだろうと考えている。いまや各ブランドがソーシャルメディアを利用したマーケティングに精通しており、新たなSNS戦略として取り入れることにあまり抵抗もないだろう。

 「今後ティックトックの利用者がさらに増えれば、ファッションショーのフロントローはインスタグラマーではなくティックトッカーで埋め尽くされるだろう。数年前に起こっていたことが繰り返されるようにね。私は必ずそうなると信じている。才能あるさまざまな人がより前線で活躍できるきっかけにもなると思う」。

 「ファッション業界は、最初は真面目に取り合わないかもしれない。でもそれで終わりになるとは思えない。ティックトックで動画を制作するのは大変だ。インスタグラムではただ素敵な写真を撮って加工するだけだ。でもティックトックでは20~60秒の動作が必要で、何もないところから何かを創り出さないといけない。これまでに発揮したことのない類いの才能が求められる。歌ったり踊ったり、ただかわいく見せる以外の才能を持っているか?ティックトックは完全に新しい次世代のSNSになると思う」。

 利用者の年齢層の幅は大きく広がっており、美容やファッションに関するアイデアや個人的なストーリーなど、見られるコンテンツも多岐にわたる。ティックトックの代表者によると、すでにブランドの動画をユーザーのフィードのトップに表示することのできる“トップ・ビュー(Top View)”や、ブランドがスポンサーとなり、ユーザーがそのブランドをテーマにしたコンテンツを投稿して話題に上らせる“ハッシュタグ・チャレンジ(Hashtag Challenge)”などの広告的な機能もあり、「コンバース(CONVERSE)」「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「ナイキ(NIKE)」などのブランドがこの機能を利用しているという。

 世界中で外出が自粛されている現在の需要は特に高いのかもしれない。しかし、状況が落ち着いた後もティックトックの人気が衰えることはないだろう。ビジネスへの可能性も秘めている同アプリが人びとにとってさらに身近なものとなり、クリエイターやインフルエンサー、マーケティングの専門家に受け入れられるのも時間の問題かもしれない。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.3 相澤陽介「ファッションは心を豊かにする。その気持ちを持ち続けたい」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、サッカーチームのクリエイティブ・ディレクターや多摩美術大学では客員教授を務めるなど、多岐にわたって活動する「ホワイトマウンテニアリング」の相澤陽介デザイナーが、ファッションに対して貫く信念を語る。

WHITE MOUNTAINEERING

相澤陽介デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A.シンプルに、ファッションは心を豊かにするものだという思いでデザイナーを続けてきた。今は、その気持ちをしっかり持ち続けることが重要だ。通常通りに戻るのであれば、引き続きショー形式での発表を考えている。しかしこの状態が続くようであればよりパーソナルな洋服が求められるようになるはずなので、それに対応できるように納期やデザインなど全ての面で変化が出るはずだ。


【個人での動き】

 相澤陽介氏はサッカー・J1リーグの北海道コンサドーレ札幌のクリエイティブ・ディクターを2019年2月から務め、ポスターやグッズのデザインを手掛けている。しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響でJリーグの試合の延期が続いていることを受け、今年度のクリエイティブ・ディレクターのギャランティーをチームの運営会社に全額返納した。


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ドイツ発「アリュード」のニットを巡る アルプス山脈の麓で体と心をほぐす旅

 ドイツ発のブランド「アリュード(ALLUDE)」から招待を受けて、2019年の12月にプレスツアーに参加してきました。同ブランドは1993年に高級カシミアニットブランドとして誕生し、現在はウィメンズ、メンズ、キッズラインをそろえています。ヨーロッパを中心に約700アカウントと取引し、幅広い世代の顧客を抱えるブランドです。今回のプレスツアーにはセールスと広報を担うイギリスのエージェント「ペーパー・マッシュ・タイガー(PAPER MACHE TIGER)」(日本のディストリビューターは三喜商事)のスタッフと、主にロンドンをベースにするインフルエンサーやジャーナリストの総勢約15名が参加しました。

 ミュンヘン空港で集合してまずは本社に向かいます。田園風景が広がる道を走ること約30分、インダストリアルな雰囲気の本社に到着しました。一見すると工場のようでしたが、あくまでオフィスとして使用されているそうです。ブランドのスタッフとカジュアルな雑談を楽しんだ後は、ミュンヘンの中心地にあるイタリア料理店「ザイツ(Seitz)」へランチに行きました。これまでドイツには何度か来たことがありますが、食についてはいつもあまり期待をしないようにしています(笑)。ビール好きにはたまらないかもしれませんが、ビールが飲めない私はこれまであまり楽しむことができなかったからです……。でも「ザイツ」はイタリア人シェフによる家庭的なイタリアン料理を楽しめるレストランで、予想以上にとってもおいしかったです!前菜はアーティチョークにブラータチーズがのったサラダで、メインはスキャンピ(クルマエビより大ぶりのエビ)のトマトソースショートパスタをいただきました。甘~いトマトとシーフードの出汁が効いたソースが絶品で、お皿に残ったソースをパンに付けてきれいに完食しました。

600色のカシミアの糸をそろえるクリニックへ

 レストランから徒歩1分の場所には、ブランドが運営する「アリュード・クリニック(Allude Clinic)」があります。2015年5月にオープンした同クリニックでは、専門家によるカシミアニット製品のクリーニングやアフターケア、補修のサービスを提供しています。カシミア30%以上を含む製品であれば洋服やブランケット、小物など何でも受け付けています。クリニックに直接足を運ぶか、オンラインでサービスを選択して製品を郵送することもできます(日本からは利用不可)。サービスは毛玉取りやボタン付け、穴の補修などで、約600色をそろえるカシミアニットの糸を使って、専門の技術者が全て手作業で行います。最も難しいのはグレーの色を合わせることで、いくつもの異なるグレーを組み合わせて糸を作り、穴の補修などを行います。大切にケアをして長く愛するといった、私が考える“ラグジュアリー”の概念と通ずるものがあってとても共感できました。

 クリニックを後にして車を約2時間走らせ、オーストリアのアルプス山脈の麓にある街キッツビュールに到着。「アリュード」の旗艦店に立ち寄った後、滞在するビオホテル「スタングルワート(Stanglwirt)」にチェックインしました。16世紀開業という歴史あるホテルは、幼少期に遊んでいたシルバニアファミリーのミニチュアの家が現実になったみたいで、なんだか懐かしさもあり興奮しました!今夜のディナー会場はホテル併設のレストランです。「ディナーはフォンデュだよ」と言われたのでチーズ・フォンデュを想像していたのですが、フォンデュとはチーズだけではなかったのです。日本の鍋のような感覚で、出汁をとったスープに好きな具材を入れるスタイルをフォンデュと呼ぶとのこと。チーズ・フォンデュのほかに、初体験となるビーフスープや野菜スープのフォンデュを食しました!日本のお鍋とは違い、一つひとつの具材を専用の串を使って鍋に入れ、煮立つのを待ちます。鍋文化に慣れていないほかのゲストたちは「食べごろが分からない」「待ってたら神経を使ってしまう」と戸惑っていました(笑)。デザートにはオーストリアで有名なカイザーシュマレンをいただきました。パンケーキを丸く仕上げず、焼き上がる前に一口大に崩して粉砂糖とジャムや、アイスクリームをつけて食べるスイーツです。でも、味はいたって普通のパンケーキでした(笑)。

世界が通常に戻ったら旅をしたい場所

 2日目はロープウエイでアルプス山脈を登り、スキー場へと向かいます。スキーはせずに雪山をハイキングし、山頂にある眺めのよいレストラン「スンブーエル(Sonnbuhel)」でアルプスを眺めならのランチです。夕方からは、まるでグリム童話の世界のようなキッツビュールの街でショッピングし、セレブリティーが多く訪れるというレストラン「チッソ(Chizzo)」でディナーをいただきました。なんだか至れり尽くせりなのですが、これは高級カシミアブランド「アリュード」のプレスツアーですので、念のため(笑)。

 帰国日の朝は早起きして散歩し、アルプス山脈の眺めを心ゆくまで楽しみました。自分の心臓の音が聞こえるほどの静寂に包まれる中で、たくさん深呼吸をしてマイナスイオンを取り込み、体内をデトックスできたようなすがすがしい気持ちでパリに戻りました。日本からはミュンヘンまで約11時間で、さらに空港からビオホテルまでは車で約2時間と長旅になりますが、世界を自由に行き来できるようになったら、旅をするには最高の選択肢の一つだと思います。今は新型コロナウイルスの感染拡大で今は世界中がストレスを抱えていますが、「アリュード」の高級なカシミアニットを巡る旅は心身ともに安らぎを与えてくれました。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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オンライン部活動も実施 「マナラ化粧品」のランクアップが取り組むリモートワークとは?

 東京都などに外出自粛要請が出てはや1カ月、今では全国に広がる。急にリモートワークをせざる終えない環境になった企業も多いだろう。普段とは異なった環境でどのように対応したらいいのか、まだまだ手探りの企業も多いのでは?そこで、コロナ以前から、ビューティ業界でもいち早く社員が働きやすい環境作りに取り組んできた、オリジナルブランド「マナラ化粧品」の開発および販売を行うランクアップが、この状況下で行っていることを紹介する。
 

病児シッター利用料は会社がほぼ全額負担

 もともと出張や災害時などにテレワークや在宅勤務ができるようにデータサーバーの整備やノートPCでの業務を行っていたランクアップ。そして、新型コロナウイルスの国内感染者数が20人以下という2月3日の早期から、テレワークや時差出勤、検温などの対策をスタートさせた。さらに、満員電車での出社が不安という社員のため「マイカー通勤」「自転車通勤」(3月2日~)に加え、「レンタカー通勤」「カーシェア通勤」対策(3月8日~)を導入したほか、小学校・保育園の休業で、家庭で保育をせざるを得ないママ社員のために「スーパーフレックス制度」を新設。例えば、通常8時半からの7時間勤務を、同制度では5~10時、20~22時などと分割して勤務することが可能になる。そして子どもの体調不良の対応としてテレワーク中に病児シッターを利用できる制度も導入し、利用料の1日約3万円を会社がほぼ全額負担し、社員負担は1回あたり300円のみで何回でも利用できるようにした。

 在宅勤務をはじめてからは、できる限り出社時と同じ環境で業務に取り組めるようにオンラインを活用している。また、在宅勤務時に従業員にアンケート調査を行い、回答の多かったコミュニケーション不足の解決策としてオンラインで朝礼を行い社内の情報共有の場や朝礼時にラジオ体操を取り入れている。同社広報部の小林みか氏は、「オンラインランチ会を開き、プライベートの話や在宅勤務の肩こり解消法、育児の便利グッズの情報交換などをしてコミュニケーションを図っている。出社では見られない、社員の子どもたちのようすをうかがえることはオンラインならでは。社員間のコミュニケーション活性化のため、今までは社内で活動していた部活(英語部、頭脳ボードゲーム部、手芸部など)をオンラインでも始めている。ランチ会はコミュニケーション費として一人1000円まで、部活動は部費として月1回一人2000円までを補助している。

“会える通販”としてオンラインセミナー実施

 「しかし、自粛ばかりでは何も進まない。当社がお客さまや社会に対してできることを常に考えている。その第一弾として、4月17日には『オンライン小顔講座』を開催した」。同講座は「マナラ化粧品」公式インスタグラムからライブ配信され、「気になるほうれい線を伸ばすマッサージ」「小顔になるツボの押さえ方」「眼精疲労に効くツボとは」などのコンテンツを用意。以前からランクアップは“会える通販”として、お客と直接会う機会を増やしており、昨年は1000人のお客と会い、さまざまな声を製品開発にもつなげている。そのため、外出自粛の状況でもお客との交流の場を保ちたいという思いからオンラインセミナーを実施するに至った。「あらゆる制度や取り組みはただ取り入れるだけではなく、社員が仕事を効率よくできるようにさらなる改善やバージョンアップに努め、さらにはお客さまに安心して製品をお使いいただける制度や取り組みを積極的に整備していきたいと考えている」と前を見据えた。

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「ブレードランナー」「マッドマックス」など、ディストピアファッションが注目の終末映画13選

 新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るうなか、世界の終末を思い浮かべる人もいるだろう。1982年に公開されたSF映画「ブレードランナー(Blade Runner)」は退廃的な近未来を描き、ラフ・シモンズ(Raf Simons)やアレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)、ガレス・ピュー(Gareth Pugh)らにインスピレーションを与えた。

 ここでは、マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)の「スリラー」のミュージックビデオなどを手掛けた衣装デザイナー、デボラ・ナドールマン(Deborah Nadoolman)がセレクトした、ディストピアファッションで注目すべき映画を紹介する。

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サラリーマンからLINEトップライバーになった健太郎 「視聴者との距離が近く“リアル”なコミュニケーションをかなえるのがライブ配信」

 サイバーエージェント(CYBERAGENT)が運営するモデル・インフルエンサー事務所「クープ(COUP)」に所属するライバーの健太郎。社会人生活を送りながら趣味でファッションのライブ配信を始め、今や6000人超の視聴者を抱え、LINEライブのトップライバーとして活躍し、「クープ」のライバーマネジメント部長も務める。学生のころからファッションに興味を持ち、2021年までに自身のブランドを立ち上げることを目標に日々活動している。そんな健太郎に、ライブ配信の魅力について聞いた。

WWD:元々はサラリーマンとして日中仕事しながら帰宅後にライブ配信をしていた。きっかけは?

健太郎:大学を卒業して不動産企業に就職し、営業をしていました。毎日忙しく、休みもほとんど取れなかったですね。そうやって仕事づけの日々が続き、気づけば1年があっという間にたっていました。1年たったくらいのときに、このまま働き続けて幸せなのか?と思うようになったんです。実はファッションブランドをいつか立ち上げたい、という夢を昔から持っていて、このままだとその夢から遠づくと思いました。

WWD:そこからライブ配信をはじめた?

健太郎:僕は洋服を作る勉強はしていなかったですし、作れる環境にもいない。成功するブランドは、製品力とブランド力のどちらも持っていると思うのですが、まずは自分の“ブランド力”、つまりは認知度をあげることから始めようと思いました。そこでたまたまツイッターでラインライブのことを知り、ユーチューブと違って編集能力やソフト、カメラは不要で、これなら自分もできる!と思い始めてみました。

WWD:どのように視聴者数を伸ばしてきたのか?

健太郎:最初は何を話せばいいのか分からず、あまり見てくれなかったですね(笑)。アプリが壊れているのか?と思うくらい、最初はなかなか視聴者が集まりませんでした。ただ続けることが大事だと思ったので、最初は毎日3〜4時間ライブ配信をしていました。1回見にきてくれたら抜けられないように、とにかくずっと話していました。すると少しずつ視聴者が増えていき、1週間で200人ほど、半年で1000人到達しました。1000人到達したところで同じくらいの規模のライバーとコラボし、相手ライバーの視聴者にも知ってもらうようにしました。1年たったころにはいまの事務所にスカウトされました。今もほぼ毎日配信続けています。

WWD:普段どのような内容を配信しているのか?

健太郎:企画もの以外は毎日その日の出来事だったり、たわいない会話が多いですね。視聴者のコメントを返しながら話すので、僕が一方的に話すというより、みんなで一緒に話している感じですね。なので話題を振ったら視聴者も答えやすいことだったり、共感してもらえることを意識的に話しています。これこそ、ライブ配信の魅力の一つなのではないでしょうか?ユーチューブは編集されたコンテンツを一方的に配信するイメージだとしたら、ライブ配信はリアルタイムで話が双方に行くので、視聴者と一緒に作るコンテンツイメージが強いです。だから視聴者から生まれる会話もあるし、視聴者からのアイデアを次の配信で試す・話すと伝えると、大体次の配信もみてくれますね。

WWD:洋服のコーディネートなど、ファッションについても日々配信している。視聴者のほとんどは女性なのでは?

健太郎:そうですね。なのであえてユニセックスのブランドだったり、オーバーサイズで女性も着られるアイテムを着るようにしています。「ヴァンキッシュ(VANQUISH) 」などの原宿系の服が好きなんですが、元「メンズエッグ」モデルの引地敬澄が手掛ける「キンクロスワールド(KINCROSSWORLD)」とコラボしたアイテムはすぐ完売しました。ちなみに寝る前の配信では「ジェラート ピケ(GELATO PIQUE)」を着ています(笑)。

WWD:今ライブ配信の人気が高まっている理由をどうみている?

健太郎:皆、よりリアルなコンテンツを求めているんじゃないですかね。インスタグラムの写真はいくらだって加工できるし、ユーチューブの動画も編集しているもの。生配信は編集できないのでごまかしが効かないし、視聴者とリアルタイムで会話しているので距離が近いのがいいですよね。ある意味人間味を感じるところが支持されるのだと思います。そして生配信の視聴者は熱心なファンの方が多いですね。他のSNSは“フォローする”ハードルがそこまで高くないですが、ライバーは本当にその人が好きだったり、応援したい気持ちがないとみないですよね。だから商品のプロモーション配信をすると、ほとんどの視聴者が買ってくれます。配信する側も、視聴者による課金を一番多く集めた人が雑誌の表紙を飾れたり、ファッションショーに出られたり、いろいろなメリットがあります。

WWD:新型コロナウイルスの影響は?

健太郎:視聴者数はかなり伸びています。特にお昼の時間帯は学生の視聴者が激増し、20〜30代の視聴者が多い僕にとっては新しい層にリーチできたと思います。ネガティブなニュースが続きますが、みんなと前向きになれる内容の配信を意識しています。

WWD:21年までにブランドを立ち上げる目標を立てている。

健太郎:僕が28歳になるまでにブランドを立ち上げたいですね。アパレル業界で働く友人にいろいろ教えてもらいながら、着々と準備を進めています。後はライブ配信も今年(4月)で4年目になるので、さらに自分のチャンネルを成長させたいです。

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おこもり美容に最適! 「フジミ」のカスタマイズフェイスマスクを1カ月使ってみた

 外出自粛でリモートワークが1カ月以上続いている人も少なくないだろう。時間的余裕が生まれる人も多いらしく、その時間を使って自宅でできる美容や運動に初めて挑戦しているといった声を聞くことが増えた。かくいう私もその一人。そこで今回、カスタマイズサプリ「フジミ(FUJIMI)」が話題のトリコが3月中旬に発売したカスタマイズフェイスマスク「ビューティ フェイスマスク(BEAUTY FACE MASK)」を約1カ月試してみた。
 
 そもそも「フジミ」とは、2018年からスタートしたカスタマイズサプリメントブランドだ。公式サイト上で生活習慣に関する質問に答えるだけで、ユーザーが必要とする成分を配合したオリジナルサプリメントを提供するサービスをで、これまでに約40万人の診断を行ってきたという。その派生として先月発売された「ビューティ フェイスマスク」は、ユーザーに日中の外出時間や、運動の頻度、肌トラブルが起きる頻度、睡眠時間など合計20の質問に答えてもらうことからスタート。その診断結果を元にして、その美容液はシートマスクを上部に内包したパックの中で2層に分かれており、ユーザーは、使用直前に美容液を混ぜてファイスマスクに浸透させる。香りは3種類から選択でき、パラベンや防腐剤、鉱物油、アルコールなど6つのフリーを掲げている。

簡単な質問に答えるだけで目標が分かる

 まずは20の質問に答えることから。私の場合、平均の睡眠時間はどのくらい?という質問には、「8時間以上」と回答。また、ほおに触れた時の肌の感触は?という質問には、「密着感がなく、カサカサ」と回答した。複数の質問に答えて、送信するとスキンバランスが「Dry」であると判明。自分の肌状態が正確に分かり、目指すべき理想ゾーンが分かるので参考になる。

 それから7日後、早速届いた製品を開封してみると――。上部のフェイスマスクにしみ込んでいる第1美容液には、“現在抱えている肌の課題にアプローチする成分”が処方されているという。私の美容液には、固くなった角質を柔らかくし、角質水分量を増加する効果が期待できるベタイン、保湿成分のヒアルロン酸Na、肌のバリア機能を高めるパンテノールなどが入っていた。対して下部の第2美容液は、“これからなりたい肌イメージに向けて導く成分”が処方され、鎮静効果の高いボタンエキスやカンゾウ根エキス、抗老化効果が期待できるツボクサエキスなどが配合されていた。香りはメディケイテッドティーツリーのほのかな香り。

 使い方はシンプル。まずパックを3つ折りにし、第2美容液を下から上に押し出すように強く握ってフェイスマスクに浸透させる。マスクを取り出し、装着して15~20分ほど待つ。シートは厚みがあるため肌にしっかりと密着するのでほかの作業もOK。美容液がふんだんに浸透しているため、はがす瞬間まで蒸発せずに残っていたのは好ポイント。5日に1枚のペースで続けたところ、肌のキメが整い、潤いを感じられるように!トーンもやや明るくなった気がしてその効果に満足。自分の肌悩みに特化している点、加えて私の場合は、「フジミ」のカスタマイズサプリメントも併用していることもあり、総合的なアプローチで肌質改善につながったようだ。

 同製品は、1箱6枚入りで、通常価格は6400円(送料別)。定期特別価格は4890円(送料無料)。

小竹美沙:1984年生まれ。女性誌やウェブマガジンで、ナチュラル&オーガニック&サステナブルなコト、モノ、人びとについて取材&発信中。2009年から恵比寿のファッションスクールのオフィシャルライターとして広報資料のライティングにも携わる

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フィリップ ・リムに聞くサステナブルな洋服づくり Vol.1  “人に捨てられない服”とはどんな服?

 環境に甚大なダメージを与えているファッション業界にとって、サステナビリティは言わずとも大きな課題となっている。再生可能な素材を使用したり、洋服の回収プログラムをスタートしたり、さらにはランウエイショーをカーボンニュートラルにしたり、各社さまざまな取り組みを行っているが、それでも問題は多く残る。

 今回はニューヨークをベースにするデザイナー、フィリップ・リム(Phillip Lim)にインタビューをし、サステナブルなものづくりや社内での取り組み、自身が勉強のために読んでいる本などについて聞いた。フィリップはザ・ウールマーク・カンパニー(THE WOOLMARK COMPANY)と協業し、100%天然、生物分解性、再生可能、ECO認証を得たトラリア産メリノウールを使用したサステナブルなアイテムを手掛けているほか、スワロフスキー(SWAROVSKI)と国際連合(UN)主宰のサステナビリティプロジェクトに参画したり、業界でもサステナビリティに積極的なデザイナーとして知られている。

WWD:今回の連載は、(読者に)サステナビリティをより身近に感じてもらえるように始めた企画。フィリップさんはさまざまなプロジェクトに参画したり、イベントに登壇したり、サステナビリティについて詳しいと思うので、いろいろ教えてください。

フィリップ ・リム「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」デザイナー(以下、リム):喜んで!最近ようやく皆がサステナビリティにてついて真剣に考えるようになったが、(自分を含め)課題はまだまだ山ほどあるよ。特にファッション業界はね。サステナビリティに取り組みたくても、どこから始めたら良いのかわからない人も多いよね。

WWD:まさにそうだと思います。ついサステナビリティが表面的なゴールになってしまったり、「とりあえずやらなきゃ」と焦る企業も。

リム:私もいろいろ取り組んできたが、それでも完璧ではないと思っている。そもそもサステナビリティの答えは1つではないし、正解も不正解もない。たくさんの問題が絡み合っているので、“キレイな”答えはないし、ついイライラしてしまうことだってあるよね。私たちも試行錯誤を繰り返す毎日で、シーズンによってサステナビリティに取り組める度合いが違ったりする。でも少しでも携わっていたら学ぶこともあるだろうし、それでいいんだと思う。途中で諦めるのが一番の失敗。

WWD:「3.1 フィリップ リム」ではどのようなことをしているのか。

リム:まず、SKU数を大胆に50%カットした。繊維やテキスタイルの研究開発にも力を入れていて、少しでも環境負荷が少ないものに代替できるものがあればそうしている。例えばナチュラルなウールやオーガニックコットン、トクシック(有毒)フリーな染料などね。素材もそうだけど、糸を紡いだり、編み込んだり、作業自体もサステナブルにできるように考えている。同業者に良く「サステナブルなサプライヤーを教えて」と言われるけど、私の状況はきっと他の人と違うだろうし、私の会社にとって良い取り組みは必ずしも他者にとって正解とは限らない。自分にあった方法を自分で探すことも大切。皆手っ取り早くサステナビリティに取り組める方法を手に入れようとしているけど、現実はそんなに甘くないよ。取り組もうとしていること自体は素晴らしいと思うけれど、サステナビリティは努力と時間がかかるもの。そんなに簡単にはいかないし、結構泥臭い戦いだと思う。

WWD:2月にスワロフスキーとUNとの協業を発表した。

リム:「ワン x ワン(One x One)」プロジェクトといって、私は科学者やエンジニアとタッグを組んで、洋服やアクセサリーに用いられるプラスチックに替わる素材を共同開発・試作している。100%海藻から作られる新しい素材で、太陽光によって光合成を行うので燃料などを使う必要がなく、余計な二酸化炭素も出さない。また2020年春夏から「3.1 フィリップリム」で使うプラスチックやプラスチック袋をリサイクルかつ生分解性のものにしている。包装ボックスも必ずリサイクルし、配送もなるべくコンパクトにして輸送に関わるエネルギーを削減しようとしている。

WWD:今まで慣れ親しんだ素材を変えたり、生産に時間やコストがかかったり、いろいろチャレンジもあるはず。それによって洋服づくりにおけるクリエイティビティーに影響はあった?

リム:クリエイティブなプロセス自体は変わっていないけれど、洋服を作る意味が変わった。サステナブルな素材を使ったとしても、美しい洋服を作りたい、というのは変わらない。いかに美しく機能性が高く、環境に負担のないものを作るかーー。例えば20-21年秋冬コレクションはメンズとウィメンズで同じ素材を使い回したり、1つのアイテムでもリバーシブル仕上げにすることによって何着も服を買わなくていいようにしたり。クリエイティビティーとサステナビリティは共存できるものだと思うよ。チャレンジがあるからこそ今までにないものが生まれたり、創造性を掻き立てられりするし。そして今はテクノロジーが発達しているから、新しい素材や生産方法をいくらだって生み出せる。

WWD:ファッション業界は大量廃棄が問題となっているが、捨てられない服をどう作る?

リム:創業当初からうたっているが、私の洋服づくりにおけるポリシーは1つ。毎日、そして長く着られるタイムレスなワードローブを届けること。どんなシチュエーションでも着まわせるような、ベーシックで上質なアイテムが好き。長く着られる服は捨てられない服。それこそサステナブルでしょう?

ーーVol.2 に続くーー

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コロナショックでお守りジュエリーが人気? ヒーラーが天然石の個性を読む「ラミエ」のリング

 US版の「WWD」に、面白い記事が出ていました。タイトルは「コロナショックでお守りジュエリーが人気」。内容をかいつまむと、「先行き不透明な状況下で、愛や友情の証やお守りのようなジュエリーに消費者はますますひかれるようになっている。小売業は現在末期的な状態だが、ジュエリーの売れ行きはそれに逆行している」といったものです。たとえば、「シドニー エヴァン(SYDNEY EVAN)」というジュエリーブランドでは、四つ葉のクローバーやイーブルアイ(中東などで信仰されている魔除けの目)などのラッキーチャームシリーズの売れ行きが過去2カ月で伸びているそう。「ロクサーヌ アスリーヌ(Roxanne Assoulin)」の、アルファベット入りビーズで、ポジティブなメッセージをつづったブレスレットも好評ということでした。

 そんな記事を斜め読みしつつ思い出したのが、中村恵美さんがデザインする「ラミエ(LAMIE)」というブランドのこと。中目黒の高架下にお店のあるジュエリーブランドです。コロナショックに至る前、春先に出掛けた展示会で出合ったブランドですが、そこの天然石のリングが、まさにお守りジュエリーのニーズにバッチリはまりそうなアイテムでした。アメジストやオパール、シトリン、ルビーなど、天然石そのものの形を生かし、ゴールドの地金にセッティングしているリングで、価格は3万~5万円台が中心。

 そう聞くと、「そういうリング、よくあるよね?」と思われる方も多そうですが、ここのリングは「ヒーラーに1つ1つ石を見てもらって、その石の個性を聞いている」(中村さん)という点が特徴。それぞれのリングに、「人との新しいつながりを作る」「傷を癒す」「人の役に立つ」「より自然体で過ごせる」といった石の個性の説明が付いています。人によっては「オカルトめいている、インチキっぽい」と感じるかもしれませんが、「絶対その願いがかなう」とうたっているものではありませんので悪しからず。とは言えジュエリーって、身に着けているうちに自然とその人だけの意味を持つようになって、ゲン担ぎにもなったりするものなので、こういう提案の仕方も面白いなと思いまして。

 誕生月や星座別に意味の込められたジュエリーも最近多いですが(そして昨今はやりの“パーソナライズ”需要でそういった商品はよく売れると聞きますが)、それらは誕生月や星座が同じ人ならみんな意味は同じ。一方、「ラミエ」のリングはたとえ石の種類が同じルビーであっても、個体によって一つ一つ意味が違うのがポイント。購入するときは純粋に石の色や形で好みのものを選ぶのもいいですし、石の持つ意味から決めるお客さんもいるそう。

 たまにパワーストーンなどの広告に、「恋愛成就」「金運が上がる」といった欲望丸出しな文字が躍っているケースがありますが、「ラミエ」はそういったものに比べると一歩引いているというか、客観的な感じの意味の石が多かった点にも好感を持ちました。先ほどあげた「人の役に立つ」もそうですし、あとは「スッキリできる、整理整頓できる」みたいな意味とかも。こちらはまさに今、室内の断捨離や人間関係の断捨離をしたいと思っている人にいいのかもしれません(笑)。

 というようにご紹介してきましたが、正直なところ冒頭で紹介したUS版「WWD」のような、「コロナショックでお守りジュエリーが人気」といった傾向は日本の市場では今のところあまり耳にしておりません。しかし、今後も先行き不透明な状況が続くのであれば、そういったニーズも徐々に目立ってくるのかも(こないのかも)。また、コロナショックとは関係なく、パーソナライズは今やジュエリー消費の外せないキーワードの一つなので、「ラミエ」のような提案は面白いし、好きな方も多いのではないかな、と思った次第です。

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ベッキー&ジェシカ姉妹が象牙を選ばない宣言 日本の象牙市場閉鎖を目指す

 環境保存団体「ワイルドエイド(WILDAID)」は、認定特定非営利法人「アフリカゾウの涙」と共に、日本の象牙市場封鎖を後押しすることを目的にした“#REDonNOSE”運動をスタートした。キービジュアルには、このほど「ワイルドエイド」のアンバサダーに就任したタレントのベッキーと妹でダンサーのジェシカを起用。

 野生のアフリカゾウはこの100年で3%にまで減少している。象牙の需要を満たすためだけに15分に1頭というペースで何万頭も殺されてきており、このままでは10年以内にアフリカゾウは絶滅するという。当時、象牙の消費大国であった中国や香港も2018年までには象牙の国内取引を辞めるなど、世界中で象牙販売禁止の機運が高まる中、日本では20年の現在でも国内取引が行われており、今や“世界最大級の象牙販売国”となっているそうだ。しかも、日本で取引される象牙の80%が印鑑として使用される。その為、何気なく消費されている程度で、ほとんど認知されていないのが現状だ。

 “#REDonNOSE”では、ベッキーとジェシカの鼻の上に、象の血と印鑑の朱肉をイメージした赤色のラインを引き、“#私は象牙を選ばない”宣言をしている。日本国内における象牙販売を止めるために賛同した2人に心境を聞いた。

WWD:改めて、#REDonNOSE運動のどのようなところに共感して参加したのですか?

ベッキー:幼いころから象牙の印鑑があることは知っていて、「象さん、大丈夫なのかな」と思っていたのですが、インターネットを使うようになって、象牙が取られている経緯を知りました。私の中で印鑑はいくらでも代わりになる素材があるのに、どうして象の命が奪われなくちゃいけないんだろうという疑問はずっとあったんです。そんな時にお話をいただいたので、私としては引き受けたというよりは「待ってました」という感覚でした。

ジェシカ:私は34歳にして初めてこの現実を知ったんです。「アフリカゾウの涙」というコマーシャルを見たときにすごく衝撃を受けて……。本当に小さな象牙の為に一匹殺されてしまうという現実を知りました。この現実を私なりにシェアすることでたくさんの人に知ってもらいたいと思ったんです。

WWD:ファッション業界では、毛皮やエキゾチックレザーの使用をやめる動きも目立ちます。象牙は日本では、いまだに世界最大の合法マーケットになっているとのことですが、そうならない為にそれぞれが何をしていくべきだと思いますか?

ベッキー:まず、この現実を知らない人があまりにも多すぎます。象牙の印鑑は運気が良さそう、ハイクラス、いい契約を結べそうと、まるで良い事みたいに思われているから。その裏側で起きていることを知るべきだと思います。その為に、私たち表に出る人たちが発信していくとか、活動を続けていくことが大事です。

ジェシカ:姉と同じですが、まずは発信していくこと。私は当時、CMを一つ見ただけで、印鑑を買いに行った時には、絶対に象牙は選ばないという気持ちに変わりました。売られている以上、押し付けることはできないけど、伝えていくことはできると思っています。

WWD:プライベートでもお仕事でも多くの動物と関わってきたと思います。動物とのエピソードを教えてください。

ベッキー:これまで犬、猫、ハリネズミ、猿、ウサギなどたくさんの動物を飼ってきましたが、動物と一緒にいると優しい気持ちになれたり、救われることも多いです。アフリカゾウのことも遠い国の話じゃなくて、自分が愛しているペットと同じように、「アフリカゾウにも家族がいるんだよね」と思いを馳せることが大事だと思います。

ジェシカ:犬と猫はペットという意識があるとイメージがあると思います。小さい頃からたくさんの動物を飼っていて、一番ハッとしたのが、亀を飼い始めたときなんです。はじめは正直、亀なんて感情もないだろうし、懐かないんじゃないかと思っていたら、どんな動物でも心があって、こんなに愛おしい、かわいいんだということに気付きました。地球環境にしても自分の家の中では空気清浄機を付けるのに、地球ってなると誰かやってくれるという意識になってしまいます。ペットのことも、遠い国のことも同じように、一人一人が地球全体で考える意識を持つことが必要だと思います。

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在宅勤務時は“香りのスイッチ”に精油を活用 集中とリラックスにおすすめの香りに最適な精油

 緊急事態宣言の延長に伴い、引き続きリモートワークを行う企業は多いでしょう。香りで気分をリフレッシュさせるアイデアはこれまでにもお伝えしましたが、今回はアロマテラピーでおなじみの精油と、“在宅勤務のオン・オフ”にクローズアップします。植物のパワーを凝縮した精油は鎮静や賦活などさまざまな作用を持つ成分で構成されていて、自律神経のバランス調整や “心のスイッチ”の切り替えに大活躍。お気に入りの香りや目的に合わせた精油を数本揃えておくだけで、手軽に気分転換ができるのです。「誘惑や雑音が多くて集中できない」「仕事を終えても落ち着かない」などの悩みを持つ人は、精油の力を取り入れてみて。

仕事モードに切り替える時は

 日本アロマテラピー環境協会(以下、AEAJ)が仕事に入る前のスイッチ精油として推奨しているのが、心身を活動モードにする“交感神経”を優位にすることが実験で確認されているグレープフルーツ精油やローズマリー精油。特に樟脳のような刺激的な香りがするローズマリーは、集中力と記憶力を高める頭脳明晰化作用があると言われています。ローズマリー精油は産地によって成分が異なるためいくつか種類がありますが、「ローズマリー・シネオール」が扱いやすくておすすめです。香りの刺激に弱い人は、精油を香らせながら小学生が100マス計算を行ったら誤答率が下がったという研究結果が出ているペパーミントやスイートオレンジも良いでしょう。

プライベートモードに切り替える時は

 仕事終了後に大切なのは、自律神経をリラックスモードの副交感神経に切り替えること。また、精神的な緊張感は筋肉も緊張させる上に、長時間のデスクワークや運動不足により血行が悪くなると、肩こりや腰痛が起こりやすくなります。パソコンを閉じてデスクを離れたら、リラックスできる香りを取り入れると良いでしょう。

 リラックスはアロマテラピーの得意とするジャンルです。心身を穏やかにする作用を持つ精油はカモミールローマン、スイートマジョラム、ゼラニウムなど多数あります。“疲れた心を癒やす“といわれるプチグレンやクラリセージ、寝付けない夜にも良いとされるラベンダーやベルガモットなど、それぞれの精油が持つ特徴と好みの香りを照らし合わせて選んでも良いでしょう。AEAJはリラックスモードへと導く精油として、ネロリやラベンダーなどを挙げています。

ディフューザーがなくても香りを楽しむ方法

 精油の香りをアロマデフィーザーやアロマランプで部屋全体に広がるのも良いですが、仕事中ならば、ティッシュに精油を1~2滴垂らし、デスクに置いておくだけでもOK。一気に気持ちを切り替えたい時は、沸騰したお湯を注いだマグカップに精油を1~2滴垂らして、蒸気とともに香りを立ち上げる方法もあります。リラックスしたい時はバスタイムを活用し、浴槽のお湯に3~5滴入れたり、湯を流して温めた浴室の床に数滴垂らしたりする方法もおすすめです。また、天然塩大さじ1杯に対し精油1~5滴の割合でアロマバスソルトを作れば、香りと塩の力で心身共にスッキリできますが、中には日光に当たると皮膚に炎症を起こす可能性(光毒性)がある精油もあるので、朝風呂派はご注意を。

 ちなみに、精油は高濃度の植物成分でできているため、皮膚への直接塗布や飲用は厳禁で、同じ部屋に6カ月未満乳児がいる場合は使わない方が良いとされています。そのほか、妊娠中の人は使わない方が良い精油もあるため、それぞれの精油の特徴については事前確認を行ってください。

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それぞれの思いの詰まったマスクで登場 業界に力強いエールPart8

「WWDジャパン」4月20日号、「WWDビューティ」4月23日、30日合併号では、新型コロナウイルスによる感染拡大で一人、一社では立ち向かえない未曾有の状況下にある今、互いに励まし合い、知恵を共有し合おうという特集を企画した。表紙では、ファッション&ビューティ業界の皆さんにオリジナルデザインのマスクを着用した写真で参加いただいた。さまざまなデザインマスクとともに力強いメッセージをぜひ読んでほしい(URLはマスクの詳細や予約・購入先へ遷移します。完売または販売中止になっている場合もあります)。


 「WWD JAPAN.com」はファッション&ビューティ業界を応援すべく、週刊紙の「WWDジャパン」と「WWDビューティ」に掲載した新型コロナウイルス関連ニュースを無料開放します。記事やコラムから未曾有のピンチを克服するヒントや勇気を感じ取ってくだされば幸いです。

 なお、他のニュースはこれまで通り、有料会員限定記事とさせていただきます。購読は、こちらからお申し込みください。


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小島健輔リポート J.クルーとニーマン・マーカス 新型コロナが幕引きした2つのマネーゲーム

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。米有力ファッションブランドの「J.クルー」が5月4日に破産法を申請した。大手百貨店のニーマン マーカス グループの経営破綻も秒読みといわれている。新型コロナウイルスの影響はもちろん多大だが、両社はそれ以前に大きな問題を抱えていた。

 コロナパンデミックによる売り上げ激減で日銭が止まり世界中の小売業者が資金繰りに窮しているが、早々と破綻に瀕しているのはコロナ以前から財務状況が逼迫していた企業だ。ニーマン マーカス グループ(NEIMAN MARCUS GROUP)とJ.クルー(J.CREW)の場合はマネーゲームの果ての自滅と言ったら厳しすぎるだろうか。

60億ドルのLBOが追い詰めたニーマン・マーカス

 米高級デパートチェーンのニーマン マーカス グループが連邦破産法11条(チャプター11)の申請準備を進めており、破綻は秒読みに入っている。新型コロナウイルスの感染拡大で全店舗を休業して日銭が入らなくなったのが直接の契機だが、LBO(レバレッジバイアウト)負債の支払い利息が営業利益の倍にも及ぶという経営難が続いていたことが根本的な要因だ。

 財務的混迷で19年7月期は第3四半期までしか決算内容を開示していないが、18年7月期の四半期進行から推計すれば通期売り上げは46億2000万ドルほど。第3四半期まで1億2818万ドル(売り上げ対比3.6%)の営業利益を稼いでいたが、そこから2億4512万ドルの支払い利息と福利厚生費を差し引かれ、8836万ドルの純損失に陥っていた。

 支払い利息は年間3億3254万ドル(売り上げ対比7.2%)と計算できるから、売り上げ対比3.6%程度の営業利益では半分しか補えず、年々、資本が擦り減って財務が逼迫していく。第3四半期末の長期負債は55億4377万ドルだから、支払い利息から逆算した利率は6.0%とジャンク債並みに高い。長期負債のうちLBO絡みは44億5649万ドルと長期負債の8割を占め、ほぼ年間売り上げに迫る。これではコロナパンデミックによる休業がなくても、いずれ行き詰まったことは想像に難くない。

 ニーマン マーカス グループはハワイ、フロリダを含む全米に平均店舗面積1万2500平方メートルのハイファッションデパート「ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)」43店舗、NYセントラルパークサウスにハイファッションストアの「バーグドルフグッドマン(BERGDOLF GOODMAN)」2館(計2万9360平方メートル)を展開し、ピークの15年7月期には51億ドルを売り上げていた。直近19年7月期の46億2000万ドルでも年間坪販売効率は2万4327ドルと、ノードストローム(NORDSTROM、フルライン店)の1万6226ドルを50%も上回り、メイシーズ(MACY'S)の7300ドルの3.3倍にも達するから、米国のデパートとしては突出して販売効率が高い。ECにも早くから注力して売り上げの36%に達しており、ノードストロームの33%、メイシーズの25%を凌駕している。

 16年7月期以降は業績が陰って収益力が低下し、膨大な借金の支払い利息を補えなくなった。16年7月期は4億600万ドル、既存店売り上げが5.2%減少した17年7月期は5億3200万ドルの純損失を計上。18年7月期は既存店売り上げが4.9%回復して2億5113万ドルの最終利益を計上したが、19年7月期は第3四半期までで売り上げが5.6%減少し、再び純損失が拡大していた。

 ニーマン マーカス グループは05年に投資会社のTPGキャピタル(TPG CAPITAL)とウォーバーグ・ピンカス(WARBURG PINCUS)が51億ドルで買収して非公開化し、13年に投資会社のアレス・マネジメント(ARES MANAGEMENT)とカナダ年金計画投資委員会(CPPIB)に60億ドルで売却している。16年以降の業績悪化でIPO(新規株式上場)の目論見が崩れ、13年にサックス・フィフス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)を29億ドルで買収したカナダのハドソン・ベイ・カンパニー(HUDSON’S BAY COMPANY以下、HBC)への売却を交渉していると伝えられる。ニーマン マーカス グループが連邦破産法11条を申請すれば資産が保全され負債が分離されるから購入する側の負担が軽くなり、売却交渉が進展すると見られる。

※LBO(Leveraged Buyout):売却される企業の資産や将来のキャッシュフローを担保として、買収する企業が金融機関などから資金を調達する買収手法。買収資金の返済は売却された企業が担うから買収側の負担は軽減されるが、売却された企業は前借金の利息と返済に縛られる奴隷売買に近い

30億ドルのLBOが招いたJ.クルーのギャンブル

 かつてはオバマ大統領夫妻御用達ブランドとして脚光を浴びたJ.クルーもコロナパンデミックで痛手を負い、親会社のチノスホールディングス(CHINOS HOLDINGS)が5月4日にJ.クルーの連邦破産法11条適用を申請。ヘッジファンドのアンカレッジキャピタル(ANCHORAGE CAPITAL)など融資団と有利子負債16億5500万ドルを株式に転換することに合意して4億ドルの新規融資を確保し、債務と支払利息を圧縮して事業を継続する。「メイドウェル(MADEWELL)」も引き継がれ、今や売り上げの過半を占めるEコマースに注力して早期の再建を図る。

 LBOによる負債に経営を圧迫されていたのはニーマン マーカス グループと同様だが、J.クルーは負債を返済すべくベーシックなプレッピーブランドからスタイリッシュなファッションブランドに変貌せんとしたギャンブルで膨大な不良在庫を抱え、かえって破綻を早めてしまった。

 20年1月期は既存店売り上げが2.0%伸びて総売り上げも25億4013万ドルと2.3%増加し、営業利益も前期の86万8000ドルから7149万7000ドル(売り上げ対比2.8%)と急回復したが支払い利息に圧迫され、最終赤字は前期の1億2008万ドルから7880万ドルに減少しても財務はさらに悪化した。長期負債は前期の16億7328万ドルから16億6030万ドルとほとんど減らず、支払い利息は1億3750万ドルから1億4669万ドルに増加し、売り上げ対比の支払い利息負担は5.54%から5.80%に肥大。支払い利息から逆算した利率は8.8%と、ニーマン マーカス グループの6.0%をさらに上回る。

 こんな高利の借金を抱えていては、よほど好調に業績が推移しないと経営が成り立たない。J.クルーの場合、生え抜きのジェナ・ライオンズ(Jenna Lyons)女史を起用してのスタイリッシュなファッションブランドへの変貌がいっときは大成功したものの結局は膨大な不振在庫を抱え、そのダメージから回復途上の病み上がりをコロナパンデミックが襲ったという悲劇だ。

 J.クルーのマネーゲームは97年、TPGキャピタルが88%の株式を約5億ドルで取得したところから始まった。TPGキャピタルは4000万ドルの赤字だったJ.クルーを再建して成長させるべく、03年にギャップ(GAP)の中興の祖でありながらオーナーのドナルド・フィッシャー(Donald Fisher)氏に解任されたばかりのミラード“ミッキー”ドレクスラー(Millard “Mickey” Drexler)氏を会長兼CEOに招き、米国ファッション史に残るサクセスストーリーが始まった。

 再建は順調に進んで06年には再公開を果たし、カジュアル業態の「メイドウェル」もスタート。08年にはジェナ・ライオンズをエグゼクティブ・ディレクターに起用してファッションブランドへの変貌を開始した。J.クルーのスタイリッシュな変貌は注目を集め、オバマ大統領夫妻御用達のブランドとなって人気が爆発。ファッションジャーナリズムは“カルト的人気ブランド”とさえ賞賛した。10年にはジェナ・ライオンズがJ.クルーの社長に就任し、絵に描いたようなシンデレラストーリーに見えたが、栄華の頂点で次のマネーゲームが仕掛けられた。

 10年11月、TPGとレナード・グリーン・パートナーズ(LGP)はJ.クルーの非公開株を30億ドルで購入して再び非公開化。ミッキーは株式所有比率を11.8%から8.8%に引き下げる代償として2億ドルの現金を手にし、TPGとLGPは以降、6億8500万ドルの配当と1000万ドルの手数料を得たが、カルト的変貌は予期せぬ結末を招く。

 急激なファッションブランド化はベーシック・プレッピーを支持してきた顧客を戸惑わせ、11年から14年の非公開下の急成長期に不振在庫が積み上がり、運転資金を圧迫して15年1月期には7億999万ドルを減損処理して5億8502万ドルの営業赤字に転落。続く15年度第1四半期は既存店売り上げが92%に落ち込んで不振在庫が再び積み上がり、またも5億3336万ドルの減損処理に追い込まれ、5億2059万ドルの営業赤字を計上して成功神話は崩壊した。長期債務は20億ドルに膨れ上がり、17年4月にはジェナ・ライオンズが退任。7月にはミッキーもCEOを退任して会長に降り、19年1月には会長も退任して役員会のアドバイザーに退いている。

 30億ドルでLBOを仕掛けたTPGとLGPは再上場も画策したが業績の急落で目処が立たず、17年には売却を目論んでファーストリテイリングも買収を検討したが、頂点を打って坂を下るブランドに50億ドル(負債15億6000万ドルを含む)という価格では折り合わず、紆余曲折を経てチノスホールディングスの手に渡った。

 18年には業績が底打ちして格付け会社のムーディーズ(MOODYS)が「ポジティブ」に格上げし、20年1月期には売り上げ対比2.8%の営業利益を計上するまで回復。3月2日段階では「J.クルー」182店、「メイドウェル」140店、アウトレットストア170店を展開していた。チノスホールディングスは好調な「メイドウェル」を株式公開して負債を減らそうと目論んだ矢先、コロナパンデミックが襲って全てをご破算にした。

LBOがビジネスをギャンブルにした

 ニーマン マーカス グループのケースでは、05年のTPGキャピタルとウォーバーグ・ピンカスによるLBOから13年のアレス・マネジメントとカナダ年金計画投資委員会への売却でTPGキャピタルとウォーバーグ・ピンカスはイグジットの収穫を手にしたが、ニーマン マーカス グループは多額の負債を抱え、アレス・マネジメントとカナダ年金計画投資委員会はジョーカーを引いた。J.クルーのケースでは、1997年のTPGキャピタルによるLBOから2006年の再公開、10年のTPGとLGPによる買収と再LBOから14年の売却、二度に渡るマネーゲームでTPGはイグジットの収穫を手にしたが、J.クルーは膨大な負債を抱え、最後にJ.クルーを手にしたチノスホールディングスはジョーカーを抱えた。

 両者ともTBGキャピタルがマネーゲームの収穫を手にし、ニーマン マーカス グループではアレス・マネジメントとカナダ年金計画投資委員会が、J.クルーではチノスホールディングスがジョーカーを引き、ニーマン マーカス グループもJ.クルーも事業の収益では金利も払えないほど膨大な負債を抱えて苦しんできた。ファンドを引き込んでのLBOがどれほどリスクのあるギャンブルか、結果が如実に示しているのではないか。

 加えてJ.クルーでは、ミラード・ドレクスラー氏が2億ドルのキャッシュに目が眩んでハイリスクなギャンブルに会社を引き込んだという指摘もあるかも知れない。壮大な野望がジェナ・ライオンズというシンデレラを生み、そして奈落に引きずり下ろした。「小売りの神様」と賞賛されアップル社の取締役まで務めたミラード・ドレクスラー氏は自ら仕掛けたギャンブルの栄光と挫折を演じ、コロナパンデミックとデジタルトランスフォーメーションが「小売りの時代」に幕を下ろした。

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業界内外に学ぶ「攻めの自粛」のヒント

 「WWDジャパン」4月20日号特集「コロナに負けるな」では、ファッション業界全体が新型コロナウイルスの渦中にある中で、今できること、未来へ向けた指針などについての知恵を紙面に集約しました。

 しかし、同号で掲載しきれなかった事例はまだまだあります。2月、無観客で開催したTGC(東京ガールズコレクション)の成果は?デジタル化に揺れるオンワードホールディングス(HD)が2020年春夏にスタートしたEC専業ブランドの進捗は?大手よりもさらに窮地に立たされる個店は、どう戦うべき?この記事では、「百貨店」「アパレルメーカー」「ガールズ」「フード」の担当記者が、コロナ禍の中で「攻め」の姿勢で挑戦している良例をピックアップします。

無観客開催で映像ショーの可能性を見出したTGC

 2月、スポーツや音楽ライブなどの中止が相次ぐ中で、TGC(第30回 マイナビ 東京ガールズコレクション 2020 SPRING/SUMMER)も、史上初の無観客&インターネット配信形式で開催しました。結果、ライブ動画の視聴回数は前回比約2倍の延べ190万を記録し、中国配信を含めると4倍という結果になりました。

 舞台裏を聞けば、無観客での開催決定から本番までの準備時間はわずか「90時間」(TGC PR)だったといいます。限られた時間でバックステージの中継や出演者インタビューなど、配信ならではの企画を準備。初の試みだった出演者とファンの生電話企画は特に好評だったそうです。

 「スナイデル」のショーではサステナビリティをテーマに壮大な地球環境を想起させる映像演出もありました。「(新通信企画の)5G時代に向け、『TGC』が映像を通じて表現できる可能性も広げていきたい」。デジタルに臆せず、まずは実行することで得られた手応えが大きかったようです。

“百貨店品質”のECブランドが未来の道標に

 商業施設の営業自粛で、大手アパレルもデジタルによる構造改革が喫緊の課題となっています。そんな中で耳にしたのが、オンワード樫山が2020年春夏にスタートしたEC専業ブランド「アンクレイヴ」が3月、4月とも「コロナ前に組んだ売り上げ予算をクリアした」(広報)という明るいニュース。3月11~17日に伊勢丹新宿本店で開催したポップアップストアも計画を上回る盛況だったようです。

 記者も昨秋の展示会で「アンクレイヴ」の服に触れたのですが、目の詰まった質感、生地のずしりとした重みに直感的に「いい服だな」と感じました。一方で中心価格帯は1万円台、アウターでも3万円という値ごろ感にびっくり。3月からの実売では、機能性と、着心地、見た目のよさを両立したセットアップ(ノースリーブブラウス1万2000円、パンツ1万4000円)トレンチコート(2万7500円)が人気のようです。またプロデューサーに宮井雅史氏を起用し、雑誌だけではなくSNSなどを駆使した、従来にないPR手法も結果につながっているようです。

 親会社のオンワードホールディングスは約3000あったリアル店舗を約半分に減らすという大胆な方針を打ち出し、アフターコロナを見据えて「企画・生産能力を有するEC事業者」(保元社長)を目指しています。しかし売り方や売る場所は変わっても、モノ作りという幹となる価値は今後も変わらない。コロナで服への消費マインドが冷え込む中でも「アンクレイヴ」が受け入れられたことは今後の道標になるはずです。

個店の活路は「おもてなし」「独自性」の追求

 潤沢な資金がある大手に比べて、個人経営のセレクトショップはさらにのっぴきならない状況が想像されます。記者も過去に取材した個店の存続を心配しましたが、今のところ杞憂に終わっています。

 彼らの強みは顧客のロイヤルティときめ細やかなサービス。北千住のセレクトショップ「アマノジャク(AMANOJAK.)」は緊急事態宣言(4/8)から完全予約制で営業し、以降は来店数に対する成約率は9割以上。4月3日から返品無料での試着サービスを実施している渋谷の「ワガママ トウキョウ」は買上げ率95%。いずれもブログやインスタライブで、商品の特徴や魅力を丁寧に紹介しています。来店時や取り寄せた時にギャップを少なくすることが重要です。

 そして、「今しか買えない」「ここでしか手に入らない」商品で、ファンの購買意欲を刺激しています。「アマノジャク」は「ミロック(MILOK)」「アタ(ATHA)」と協業し、それぞれのブランドの型を左右で融合させた長袖シャツ(全3種)を企画し、40枚以上をECで早々と完売。

 一方、デザインの攻めっぷりでは「ワガママ」も負けず。「レー(LEH)」の別注セットアップは、表裏に至るまでチャールズ・ブコウスキーの詩・至言を手刺繍。この服を「ピロット・ファイアー(種火)」と名付けた由来について、中村勇貴オーナーは熱っぽく語ってくれました。「ブコウスキーには『小さな種火を灯し、その火を絶やさないで。種火さえあればまた燃え上がるから』という至言があります。(コロナ禍にある)ファッション業界が、諦めずに種火を灯すことで、明るい未来を願っています」。

有名飲食店のレシピ公開にみる「真摯な発信」

 実はフード担当でもある記者。最近、在宅中は取材と称し、インスタグラムなどで「#おしゃれランチ」などといった凡庸なキーワードで検索しています(笑)。すると、いくつかの有名料理店が、生命線であるはずのレシピを公開していることにびっくりします。先の見えぬコロナとの戦いを前に、GW(がまんウィーク)は料理人たちに感謝し、秘伝のレシピに舌鼓を打って活力をもらいましょう
 こんなときにレシピを明かしてくれるのは、きっといい店・いい人のはずです。料理を作ってみて「おいしい!」となれば、コロナが明けたら実店舗を運んでみようという気になります。レシピ出し惜しみするよりも、視聴者とのエンゲージメントを作ることに価値があると、料理人も考えたのでしょう。

 巣ごもりで、消費者がSNSなどに流れるコンテンツと向き合う数も時間も増えています。たとえばインスタライブのファッション紹介でも、新作にこだわらず、過去のシーズンや他ブランドの服を使ったコーディネートなども積極的に発信してみては。こんな状況だからこそ真摯な姿勢で顧客と向き合うことで、関係をより深いものにできるはずです。

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連載「今、デザイナーができること」Vol.2 久保嘉男「今求められるものを具現化する。それがデザイナーの使命」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。今回は、10年前からパリで展示会を開いている「ヨシオ クボ(YOSHIO KUBO)」の久保嘉男デザイナーが、ファッションデザイナーのあるべき姿を語る。

YOSHIO KUBO

久保嘉男デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A.2021年春夏は海外での展示会の開催は現実的に難しいだろう。国内展示会に関しては、例年通り7月初旬を予定している。だから今は、物作りに実直に努めるのみ。この状況にならないと気付くことができなかったファッションやライフスタイル、求められるものをデザインとして具現化する。それがファッションデザイナーに与えられた使命だと考えている。


【自社での取り組み】

 過去のコレクションで使用した生地を使用したマスク(2200円)を製作して自社サイトで販売。通気性と伸縮性に優れたジャージー素材を用い、ブランドロゴも刺しゅうされている。ブラックに加え、新色のイエローも5月3日に追加販売した。


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中央アジア最大のファッション・ウィークをリポート カザフスタンの大自然と食を楽しむ旅

 新型コロナウイルスの騒動が広がる前の2019年12月に開催された「ビザ・ファッション・ウイーク・アルマトイ(VISA FASHION WEEK ALMATY)」に参加してきました。同イベントは、カザフスタン南東部の都市アルマトイで年に2回開催される中央アジア最大のファッション・ウィークとして知られており、私が参加するのは今回で2回目となります。日本からアルマトイまでの直行便はなく、仁川経由で約11時間、私が暮らすパリからはインスタブール経由で約8時間でした。通貨はテンゲ(100テンゲ=29円)で物価はかなり安め。ファストフードのセットメニューで300円程度、庶民的なレストランでのランチが600円程度です。今回滞在したホテル「リクソス(Rixos)」は一泊約18000円と、5つ星にしては安価です。

自然の宝庫だった

 1997年にアルマトイからヌルスルタン(旧名アスタナ)に還都し、最大都市であるアルマトイが文化や流行の中心地として知られています。地元の方々にカザフスタンの魅力を聞くと「大自然」だと多くの方が口にしていました。確かに、街中どこにいても天山山脈の支脈を望むことができる大自然の宝庫です。ファッション・ウイーク中には、最もメジャーな観光名所であるビッグアルマトイ湖に連れて行ってもらいました。中心地から30kmほど離れた、山々に囲まれた貯水湖は美しいエメラルドグリーン色。湖面はまだ凍っていましたが、その表情もまた絶景でした。湖から街へ戻る山道では、放し飼いにされているサモエド(シベリア原産の犬)に遭遇!人懐っこくスマイルがとても可愛くて、山の女神に会えたような幸せな気分でした。

 街はとにかく大きくて、どこへ行くにも基本的に車移動です。とは言っても、美術館や歴史的建築物などの観光名所はほとんどありません。街中には旧ソビエト連邦時代の社会主義国に特有の幾何学柄の巨大建築物や、近未来的な様式の高層ビルが建ち並ぶものの、通りは閑散としていました。買い物といえばショッピングモールや米百貨店のサックス・フィフス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)がありますが、カザフスタン特有のお土産品などは売られていませんでした。国の経済を支えているのは石油や天然ガスなどのエネルギー資源で、鉱物資源に恵まれた資源大国です。製造業や観光業には力を入れていないことが、街中の散策からも見て取れました。

野菜が極端に少ない食文化

 食に関しては多様な食文化を有しています。遊牧民としての歴史からか、畑を耕さないために野菜料理は極端に少なく、肉と乳製品、小麦粉が主です。珍しいのは馬肉を食べることで、馬やラクダのミルクも一般飲料のような感覚でした。国民の70%ぐらいがイスラム教を信仰していますが、豚肉も普通に食されています。「カザフスタン特有の伝統料理が食べたい!」とお願いして地元の方に注文してもらったら、まず出てきたのがマンティと呼ばれる餃子のような食べ物。肉汁たっぷりの牛挽き肉にコリアンダーと胡椒が効いていて食欲をそそる、前菜にぴったりのメニューでした。小麦粉を使った麺料理のバリエーションもとても多く、私が気に入ったのはラグマンと呼ばれるヌードルスープです。牛肉の出汁をベースとするスープにトマトとパプリカのペースト、クミンと少しのカレー粉が入っており、濃いめの味ですが油分は少なくてどんどん食べ進められました。麺はうどんのような太さと長さでしっかりコシがあるタイプ。もう一つ代表的な伝統料理が、ベシュバルマクと呼ばれる平たい麺の上に馬肉と玉ネギがのったメニューです。かつては手づかみで食べていたことから、麺はつかみやすいように平たい形状をしているとのこと。大きな鉄鍋で馬肉を煮込んで出汁をしっかりとり、味付けは塩胡椒だけとシンプルです。臭みもなくあっさりしていて、おいしかったです。カザフスタン料理はベジタリアンの方には食べられるメニューがとても少ないかもしれませんが、全体を通してなじみやすく食べやすいメニューが多かったです。

ファッションはまだまだ発展途上

 肝心のファッション市場はというと、ファッション・ウイークを催す国の中では最も後れていると感じました。ファッション・ウィーク中に披露されたのはわずか9ブランドで、ドン・キホーテに売られていそうな安価なスポーツウエアや、イブニングドレスを少し改良したような質です。生地や縫製のクオリティーに関しては、ジョージアやウクライナといったその他のファッション途上との差はあまり感じませんでしたが、クリエイションの質に関しては圧倒的に低い印象を受けました。前季のコレクションで目を引いたのは「ジェレプツォフ(ZHEREBTSOV)」という、ロック精神に溢れた奇抜なショー演出を行うベテランデザイナーでした。今季はブラック一色のコレクションで、クオリティーは最も高かったもののオリジナリティーを欠いており、過去のコレクションと変わり過ぎていて顧客はついてくるのだろうかと疑問に感じました。

 カザフスタンには伝統的なかぎ針刺しゅうや国旗にも描かれている幾何学的文様、民族衣装など、歴史と文化のインスピレーション源は溢れているはず。カザフスタンなどファッション途上国にはそのような独自の文化をモダンにアップデートしたクリエイションを期待したいところです。2度の渡航でまだ素敵なブランドは見つけられていませんが、彼らが自国の服飾文化や美意識に魅力を見出し、ほかでは見ることのできない独自性を発揮してほしいと願いつつ、今後も注目していきたいと思います。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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巣ごもりに便利な「イケア」の人気アイテム 在宅勤務からバルコニー活用まで

 5月末に予定されている初の「イケア(IKEA)」の都心型店舗イケア原宿のオープンを心待ちにしている人も多いことだろう。緊急事態宣言が発令されて自宅で過ごす時間が長くなったため、インテリアに自然と関心が向くはずだ。このような状況で気軽に手軽に“巣ごもり”を充実させてくれるアイテムを「イケア」に聞いてみた。

 「イケア」は家具や照明、キッチンアイテムまで幅広くそろえる。在宅勤務関連商品では、「WWDジャパン」4月20日号でも紹介した“ビッラン ラップトップサポート”(税込1799円。4月30日までの特別価格、通常価格は税込1999円)は、いわば即席デスクのようなもので、ソファやベッドなどさまざまな場所で使える。洗えるクッション付きなので快適で、安定感もある。“リッガド LEDワークランプ ワイヤレス充電機能付き”(税込7999円)は照明としてだけでなくランプベースに内蔵された充電器とUSBポートで一度に2つのデバイスを充電できるという優れものだ。
                          
 “リヴボイ ワイヤレス充電器”(税込599円)は、電源コードとアダプターを使って手軽にワイヤレス充電にアップグレードが可能。スリムなデザインなので携帯にも便利で、プチプライスなのもうれしい。部屋をすっきり片付けたいなら、“ロマ ケーブルマネジメントボックス ふた付き”(税込999円)がおすすめだ。電源や延長コードなどをボックスの中に隠したまま機器の充電ができる。本来はベッドで朝食を食べるときに使用する“ジューラ ベッドトレイ”(税込1499円)の人気も高まっている。狭い部屋でスペースがなくベッドで仕事をしたい人には重宝しそうだ。折りたたむとコンパクトになるので収納にも困らない。

休校、在宅勤務で保存容器やバルコニーアイテムが好調

 休校や在宅勤務で自炊が増えていることもあり、保存容器などのキッチンアイテムも好調だ。“イケア 365+ 保存容器”正方形3ピース(税込499円)は、しっかり密閉できるふたなので中身が漏れず、冷凍焼けも防げる。丈夫なプラスチック製なので弁当箱や残り物の保存にも最適だ。容器もふたも透明なので、中身が一目で見えて便利。新型コロナウイルス対策で毎日8~10杯の水を飲むのがいいといわれているが、自宅にいながらカフェ感覚で飲み物を楽しめるのが“ヴァルダーゲン ドリンクサーバー”(税込1999円)だ。冷たい飲み物専用で、屋外でも使用できるのでガーデンパーティーやピクニックにも使用できる。フルーツウオーターやアイスティーなど気分によって中身を変えてもいいだろう。

 自宅に非日常空間を作ろうと考える人も多いようで、バルコニー用の商品も売り上げが好調のようだ。“テルノー テーブル&チェア2脚”(税込4999円)は、折り畳み式の屋外用家具で、バルコニーにぴったりのサイズ。天気のいい日は外で食事という選択肢が増えそうだ。“ルッネン フロアデッキ”9ピース(税込2499円)を使えば、バルコニーやテラスをあっという間にグレードアップできる。パーツをはめるだけなので簡単にフロアデッキを作ることができる。

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「観光業や飲食業だけでなく、ファッション小売業にも補償を」 国や自治体に業界一丸で働きかけへ

 5月6日までの予定だった緊急事態宣言が31日まで延長された。ファッション関連の小売業は引き続き、休業要請対象外で補償のない“自主的な休業”を続けている。感染拡大防止のために休業が必要だと分かってはいても、終わりの見えない自主休業に疲弊の色は徐々に濃くなっている。一方他業種に目を向けると、観光業、飲食業などにはコロナ収束後の支援策として経済産業省の補正予算が約1兆7000億円規模で組まれ、東京都内の理美容業者に対しては、大型連休中の自主休業に対し最大30万円の都からの給付が発表された。そうした状況を受け、ファッション業界としても一丸となって都や国に働きかけていこうという動きが生まれている。

 発起人の1人となっているのは、シューズブランド「ユナイテッド ヌード(UNITED NUDE)」日本法人の青田行社長だ。青田社長は、国内デザイナーズブランドの営業を代行するブルーフィールドジャパンの社長でもある。「EC強化やSNSでの発信など、ブランドとしてやれることはやっているが、売り上げは落ち込んでおり、社員もみな不安な気持ちを抱えている。(『サカイ(SACAI)』などの営業代行を担当する)イーストランドの島田昌彦社長らと話し、小池百合子東京都知事宛てに陳情のメールを送るといった活動を始めた。今後、業界内で署名も集めて動きを広げていきたい」という。

 青田社長は、コロナショックに由来する倒産企業件数のうち、ファッション関連小売りの占める割合の大きさを指摘する。帝国データバンクが発表した2月から4月末までのコロナ関連倒産企業数109件を業種別内訳で見ると、1位が旅館・ホテルで27件、2位が飲食店で11件、3位がアパレル・雑貨小売りで9件だ。このようにコロナショックの影響が色濃い業界の一つであるのに、補償の話になるとファッション小売業はどこか蚊帳の外だと感じている。「観光業や飲食業への打撃が大きいことは理解している。両業種にはコロナ収束後の需要喚起を目指した経産省の補正予算なども組まれているが、おしゃれをして旅行をし、おいしいものを食べるというのは需要として3つで1つともいえるもの。一般的な家賃相場で言っても飲食業よりファッション小売りの方が賃料負担は大きく、半年後までの在庫を抱えているビジネスモデルだという点でも、ファッション小売りは厳しい」。

 このまま“自主的な休業”が続くのなら、「背に腹は変えられなくなって店を開ける企業も出てくる。資金繰りのためにセールを行う店もあるだろう。そうなったら、店頭に“3密”状態が生まれてしまう」と青田社長は危惧する。こうした状況を避けるために要望として掲げているのは3つだ。1つ目は休業要請の対象業種にファッション小売りも加えること。2つ目は賃料の補助。3つ目は雇用調整助成金の上限額の引き上げ。当初は東京都への働きかけを考えていたが、今後は他地域も巻き込んでいく考えという。

 待ったなしの状況ながら、もともと独立独歩の気風を好む中小企業が多い業界のためか、業界一丸となって自治体や国に働きかけていこうという動きは現状ほぼ見られない。「一匹狼を好む人が多いので、要望や不満を持っていたとしても音頭を取る人がいない。でも、取引先である地方の専門店などと話してみると、みな状況は同じで賛同すると言ってくれるので、声を上げていかなければ」。今後、署名フォームなどはウェブで公開し、賛同を募っていく。

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在宅期間をチャンスと捉えて仕事の“仕込み”期間に ワーク・ライフバランスのコンサルタントにインタビュー

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための外出自粛と共に今、企業の働き方が大きく変化している。在宅勤務となったことで初めてオンライン会議を行った人も多いだろう。慣れない環境だからこそ生まれる新たな課題に対し、どのように対応していくべきか不安に感じている人もいるはず。そこで、働き方改革のパイオニアであるワーク・ライフバランスのコンサルタントである桜田陽子氏に、在宅勤務やオンライン会議で増えている問題点と解決法、また生産性を上げるコツについて話を聞いた。

WWDビューティ(以下、WWD):現在、働き方にどのような変化が表れているか。

桜田陽子ワーク・ライフバランスコンサルタント(以下、桜田):長年の商慣習や社内の風土が壁となり、これまで働き方を変えられなかった組織がこの短期間で変化せざるを得なくなっています。現在、多くの組織で在宅勤務や時差通勤、リモートワークが広がっていますが、これまで“制度としては設計してあるが利用者がいない”という利用しにくい雰囲気があった企業や、“制度はあるが適用条件が厳しい”ために育児や介護など特別な理由がある人に利用が限られていた企業などが、あらゆる制度を拡大して活用しています。

今、社会全体が一同に働き方をシフトさせ、働く時間と場所の柔軟性が強制的に変化し、働き方そのものの構造や働く人の価値観、マインドが変化している大きな転換点といえます。また、これまでは台風や体調不良でも“出社する”ことが重視されていた企業も多かったですが、“出社をする=仕事をしている”ではない価値観へと変化していることに注目したいですね。

WWD:在宅勤務やオンライン会議で生産性をあげるコツについて教えてください。

桜田:在宅勤務では、①相手の状況が見えにくい②コミュニケーションがとり辛いことが課題です。上司、部下、同僚が何をしているか分からない環境のため、相談や報告のタイミングに悩むこともあります。また、上司は部下を管理しにくく、部下は同僚や上司にサボっているかと思われないか不安という感情も生まれやすいです。在宅勤務だからこそ、①予定を可視化して共有すること②コミュニケーションをとることを意識しましょう。①は、もし共有のスケジューラーを使用している場合、会議の予定だけでなく1人で行う作業時間も含めて入力すると互いに何をしているのかが確認でき、声をかけるタイミングが判断しやすくなります。毎朝オンライン上で短時間の朝礼を行い、予定を共有するのも有効ですね。②は、気軽に仕事の相談・雑談ができる時間(ランチ会など)や、進捗や状況など何でも報告・相談できる時間(チャット・オンライン会議)を設けると、一人で仕事を抱え込むという事態を回避することも。在宅勤務では、対面で気軽に相談できる時間を意識的に作ることが大切になります。

対面時の会議の課題がオンラインで顕在化

WWD:慣れない在宅勤務やオンライン会議により、増えている問題点と解決法は?

桜田:オンライン会議で「やりにくい」と感じることのほとんどは、対面の会議時にも発生していたはず。オンラインになることによって顕在化した問題といえます。その最も大きなものが、「一方的で双方向にならない」「なんだか盛り上がらない」ということ。画面越しは相手の反応がわかりにくいため、進行役が不安になったり説明が長くなったりしがち。話を聞いている人はうなづいたりOKサインを指で作って合図したりとリアクションを大きめにすると伝わりやすく効果的。もし人数が多い会議で「いつ発言したらいいかわからない」「発言しづらい」場合は、チャットを活用して質問を集めてもいいですね。全員が合意できるルールを設定しておくことが対面でもオンラインの会議でも重要です。

WWD:そのほか、オンライン会議で気を付けることは?

桜田:オンライン会議は、PC画面に映る自分の姿が想像したより表情が暗く見えたりしませんか?例えば、私はトップスを明るめの色を選択し、画面越しでも暗く見えないメイクを意識しています。窓からの光の当たり方を意識した場所選びも大切ですね。また、アメリカの心理学者であるアルバート・メラビアン氏が、話し手が聞き手に与える影響を数値化した「メラビアンの法則」によると、話し手が聞き手に与える影響は「言語情報」「聴覚情報」「視覚情報」の3つから構成されるそう。それぞれの影響力は「言語情報」7%、「聴覚情報」38%、「視覚情報」55%の割合。つまり、コミュニケーションの中で視覚から入ってくる情報はとても大きいのです。オンライン会議では、相手からの見え方にも注意したいですね。

WWD:在宅期間中だからこそできる働き方や身に付けておくべきスキルがあれば教えてください。

桜田:新型コロナウイルスの流行が落ち着いても、働き方すべてが元通りに戻ることはないでしょう。急なビジネス環境の変化はいつ起こるかわからないからこそ、オンライン会議のスキルは身に付けておくべき。また、働き方が変化することで消費者のマインドは確実に変化しています。例えば販売の仕事なら、「オンライン会議を頻繁に行う人に向けた商品のコンセプト、販促方法、店頭での販売員のセールストークをどう変えたらいいか?」ということを在宅勤務しながらアイディアをストックできます。今感じていることを仕事に生かせるようにまとめるなど、「この状況を活用しよう!」と思えるといいですね。ぜひ、この期間をチャンスととらえ、仕事の“仕込み”期間にしましょう。

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それぞれの思いの詰まったマスクで登場 業界に力強いエールPart7

 「WWDジャパン」4月20日号、「WWDビューティ」4月23日、30日合併号では、新型コロナウイルスによる感染拡大で一人、一社では立ち向かえない未曾有の状況下にある今、互いに励まし合い、知恵を共有し合おうという特集を企画した。表紙では、ファッション&ビューティ業界の皆さんにオリジナルデザインのマスクを着用した写真で参加いただいた。さまざまなデザインマスクとともに力強いメッセージをぜひ読んでほしい(URLはマスクの詳細や予約・購入先へ遷移します。完売または販売中止になっている場合もあります)。


 「WWD JAPAN.com」はファッション&ビューティ業界を応援すべく、週刊紙の「WWDジャパン」と「WWDビューティ」に掲載した新型コロナウイルス関連ニュースを無料開放します。記事やコラムから未曾有のピンチを克服するヒントや勇気を感じ取ってくだされば幸いです。

 なお、他のニュースはこれまで通り、有料会員限定記事とさせていただきます。購読は、こちらからお申し込みください。


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連載「今、デザイナーができること」Vol.1 三原康裕「業界の不快な茶番劇が変わる機会になれば」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中で不透明な状況が続いている。そんなときに、ファッションは何ができるのか。生産者から販売員まで業界全体が不安を抱えている状況に、ファッションデザイナーたちは何を思うのか。日々変化する状況に対応しながら、それでもファッションの力を信じ続けるデザイナーたちの声を連載で紹介する。初回は、デザイナー歴24年で1月にはパリ・メンズ・コレクションにも参加した「メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA YASUHIRO)」の三原康裕が、「肥満する業界」に提言する。

MAISON MIHARA YASUHIRO

三原康裕デザイナー

Q.今、デザイナーができることは?

A.仕事の意味を見直すよい機会だと思っている。しかしファッションデザイナー全員が慈善的な人間だと勝手に決めつけないでもらいたい。そこまでIQの高い職業ではない。ファッションデザイナーはこんな状況でも“新しい何か”を考え続ける、偏愛の強いエゴイスト。世の中に必要不可欠なもの考える人々を称賛はするが、私たちは“ファッション”という純粋な狂気に従順だ。だから私もこんな状況でもいつも通り、日々の生活から生まれるエゴイスティックなクリエイションを続けている。それが私たちファッションデザイナーだから。1996年から“デザイナー”という仕事を続けているが、今の状況は確かに異常である。ただ、すでにテクノロジーの進化とともにファッションも肥満し、以前の世界とは変わり果ててしまっていた。ある時代から何か不愉快な世界になってしまったというか、もう取り返しのつかない状況になっていたのは多くの人も感じていたはず。だからある意味、いい機会はであると思う。このファッション業界の不快な茶番劇が変わる機会になればと願う。


【自社での取り組み】

 新型コロナウイルス感染対策への支援として、ブランドの公式サイトで支援機関のウェブサイトをシェアする試みを開始した。また、オンラインストアでアーカイブコレクションを初めて販売し、売上金の一部を支援金として寄付するという。


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“おうち時間”にお困りのアナタへ ネットフリックスで絶対に見るべきオリジナル作品4選

 動画配信サービスながら、クオリティーの高いオリジナル映画やドラマでファンの心をつかむ「ネットフリックス(NETFLIX)」。外出自粛を機に同サービスに登録したものの、何を見ればいいか分からないという人に向けて、絶対に見るべきオリジナル作品5選を紹介する。

ネットフリックス人気の火付け役!
「ストレンジャー・シングス 未知の世界」(シリーズ1、16年米。ザ・ダファー・ブラザーズ原作)

 世界中で社会現象を巻き起こしている連続ドラマ。1980年代の小さな田舎町を舞台として、12歳の少年の失踪事件に端を発するミステリーを描く。本格的なSFホラーでありながら少年たちの成長を描いた青春物語でもある。また80年代に多くのファンを魅了したSF映画へのオマージュも満載で、コアな映画好きも楽しめる作品だ。

ど迫力アクションに注目!
「タイラー・レイク-命の奪還-」(2020年米、サム・ハーグレイヴ監督)

 最強の傭兵タイラーが、誘拐された少年を奪還するという限りなく不可能なミッションに挑む映画。「アベンジャーズ/エンドゲーム」(19年米、ジョー&アンソニー・ルッソ監督)でスタント・コーディネーターを務めたサム・ハーグレイヴ(Sam Hargrave)によるド迫力アクションは必見だ。主演は「アベンジャーズ」シリーズのマイティ・ソー役で知られるクリス・ヘムズワース(Christopher Hemsworth)が務める。

地味な男子が“性の悩み”の処方箋を?
「セックス・エデュケーション」(シリーズ1、19年英)

 性の知識は豊富だが、目立たないタイプの高校生オーティス。彼が、ひょんなことから知り合った自由奔放な女子生徒メイヴと組んで、“性の悩み相談クリニック”を開く斬新なストーリーだ。タイトルを見ると下ネタ満載の爆笑コメディーが連想されるが、そんなイメージとは裏腹にホロリと感動させられる青春ドラマになっている。

地獄の支配者がLAで刑事事件を解決!
「LUCIFER/ルシファー」(シリーズ1、16年米)

 地獄の支配者であることに飽きてロサンゼルスに舞い降りた悪魔、ルシファー。彼が女刑事とタッグを組み、犯罪捜査官としてさまざまな事件を解決していく作品。ファンタジーやサスペンス、コメディ、家族劇などジャンルの融合したストーリーとキャラクターの魅力が人気。ルシファーを演じるトム・エリス(Tom Ellis)の色気にも注目だ。

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ファッション通信簿Vol.53 高評価がズラリ!80年代スターたちのファッションを米「WWD」が辛口ジャッジ

 米「WWD」の人気企画「ファッション通信簿」では、ストリートからパーティー、レッドカーペットまで、海外セレブたちのファッションを厳しくチェック。A+、A、A-、B+、B、B-、C+、C、C-、D+、D、D-、そしてFAIL(失格)の13段階評価で格付けし、それぞれのファッションポイントを勝手に辛口ジャッジ!

 第52回は、レニー・クラヴィッツ(Lenny Kravitz)、リサ・ボネット(Lisa Bonet)、ジャック・ニコルソン(Jack Nicholson)、マドンナ(Madonna)、シルヴェスター・スタローン(Sylvester Stallone)、ロブ・ロウ(Rob Lowe)、ブルック・シールズ(Brooke Shields)、ダイアナ・ロス(Diana Ross)、プリンス(Prince)が登場。80年代といえばパワーに満ちた、時にやりすぎとも言えるグラマラスなファッションが思い浮かぶかもしれない。新型コロナウイルスで世界中は混乱のさなかにあるが、そんなときこそセレブファッションの決定的瞬間を振り返りながら気を紛らすのもいいかもしれない。

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冬が長い北欧に学ぶ巣ごもり生活 日々の“ヒュッゲ”がキーワードに

 北欧では冬が長く家で過ごす時間が長い。だから、北欧の人々は自宅を快適な場所にしようと家具やインテリアにこだわる。今、新型コロナウイルスの流行で世界的に“巣ごもり”生活を強いられている状況だ。“巣ごもり”が得意なデンマーク人はどのようにこの時期を過ごしているのか、デンマーク発家具ブランド「フリッツ・ハンセン(FRITZ HANSEN)」のグローバルPR&コミュニケーションマネジャーを務めるリネ・ブロムクヴィスト(Line Blomqvist)さんに話を聞いた。

 デンマーク・コペンハーゲンでも日々状況が変化しており、自宅勤務がすでに1カ月以上になる。国境は5月中旬まで封鎖され、10人以上の集会は8月末まで禁止されている。そのため、夏のフェスティバルやマーケット開催は中止だ。デイケアや保育園が再開されるのという明るいニュースもあり、それに続いてレストランやバーの運営が再開されればいいなと思う。

離れているからこそ、つながりを大切に

 離れてチームで働くということはチャレンジだ。毎朝ビデオ会議を行い、できるだけ電話でも話すようにしている。同僚と一緒にいれば自然と生まれる交流がないのが一番つらい。一緒に仕事をしていれば彼らの表情や健康状態を知ることができるが、自宅勤務だとなかなか難しい。仕事自体が中心になって、コミュニケーションやちょっとしたおしゃべりが少なくなっている。だから同じ場所に一緒にいることがどれだけ大切かをあらためて認識している。そして、メールや電話にどれだけ人間的なニュアンスを込められるかと考えている。ビデオ会議はある意味で便利だが、限界がある。このような状況でも、日々の生活や仕事は続けなければならないので、計画の見直しや今後の商品発売について準備を進めている。新しい働き方でどのように効率的にそれを行えるか、努力するしかない。

 “ヒュッゲ”はわれわれの日常で不可欠なもの。“ヒュッゲ”とは一人でも誰かと一緒でも気分よいと感じる時間のこと。私にとって毎朝、お茶を片手にニュースを見て何が起こっているかを知るのが“ヒュッゲ”。今まで以上に、日々世界で起こっていることに関心がある。また、素敵なオブジェを見たりおいしいお茶を味わったりすることでも“ヒュッゲ”な気分になる。“ヒュッゲ”とは決して複雑なことではない。自宅にいなければいけない状況だからこそ、友人や家族と電話で話す時間をつくりつながることが大切。そしてたくさん笑うこと。それもヒュッゲ。また、気分転換に毎日、長時間散歩をしている。

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メイクは見てもらいたい派?自分で楽しみたい派? 編集部員のお家メイクの楽しみ方

 弊社のリモートワーク推奨から1カ月以上が経ちました。最初のころはそれでもまだ出勤することも多かったですが、緊急事態宣言を前にほぼ会社に行くことはなくなり、今では家で仕事することが当たり前。 ZoomやTeamsといったオンライン会議も慣れてきました。リモートワークで話題に上がるのが、ファッションやメイク。楽な部屋着やノーメイクといった人も多いのでは?オンライン会議の時だけ、ちょっと着替えたり、ちょっとメイクしたり……。「WWDビューティ」編集部員も同様のようですが、中には意外な答えをする人もいました。

 編集部員の多くの人は、リモートワークになってメイクをすることが少なくなったと言います。例えば、オンラインでの取材や会議の前に、ささっとメイク。そこで注意しているのが、リップだそうです。「オンライン会議だと、“映り”が勝負。そこで重要なのはリップ。目元は簡単に仕上げて、リップをしっかり引くと顔が華やかに映りいいんです」と言うのです。加えて、照明が当たったようなアプリを入れているという人もいました。そんな中、自宅なのにマスク姿の人がちらほら。その真意を尋ねると、「目元以外のメイクをしてないから」との返事。なるほど。ささっとのゆるいメイクができない、ちゃんとメイクしないと気が済まない人は、目元フォーカスで、後は隠すようです。

 そんな家でもマスクをする人もいるようですが、外出する際のマスクは今となっては必須ですよね。外に行くわけなので、ソーシャル・ディスタンシングとはいえ人から見られることも意識したりして。編集部員の一人は、「久々に外に行くとなると、これまで以上に気合いを入れてメイクをする」と答えていて、中でもマスクをすることからやはり目元に注力するそうです。

ブランドは既存人気製品のPRを強化

 そういった状況を受けてか、これまで長く続いたリップトレンドから、ここへきてアイメイクに注目が集まりはじめ、各ブランドからもアイ製品に力を入れた発信が増えています。ビューティ企業の強さは、このコロナより前から、新製品だけでなく既存品で戦略製品を決めて発信を強めることなんですが、このコロナでそれはより強くなっていると感じます。

 例えば、「NARS」は、発売から1年が経ち好評の「NARS ヴォワヤージュール アイシャドーパレット」(4500円)で、これまで1種のみの販売だったアットコスメ ショッピングでの取り扱いを全5色に増やしています。この状況で店頭に足を運べない人に向けた発信です。「M・A・C」は、各カテゴリーの人気トップ3アイテムを発表しました。リップに並んで、アイシャドウは王道ベージュと並ぶ人気がテラコッタ&バーガンディーカラーが好調とし、単色1位は「パウダー キス アイシャドウ デボーテッド トゥ チリ」(2900円、写真左中央)、2位は「エクストラディメンション アイシャドウ スウィート ヒート」(2900円、写真左上)、3位は「パウダー キス アイシャドウ ワット クラウト!」(2900円、写真左下)が挙がりました。パレットでは「スモール アイシャドウ × 9 バーガンディ タイムズ ナイン 」(5400円)が1位です。

 「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」は、春夏シーズンのピックアップ製品として既存の人気製品からスキンケアに加え、目元にフォーカス。オンライン会議などで気になる眉を整える「アイブロウ ペンシルY」(3200円)や、カールがへたらない「マスカラ ヴォリューム エフォシル カラーSP」(4400円)などをオススメしています。「レブロン(REVLON)」は、オンライン飲み会にはラフな血色感がカギとして「レブロン パーフェクトリー ナチュラル ブラッシュ」(1600円)が挙げられています。家が中心の生活の中でも、目元や頬をカラフルに演出しているようですね。

家の中で新しいメイクに挑戦でストレス発散も

 編集部員からは「普段は毎日外に出て人に会うことが多いので、奇抜なカラーは敬遠しがちだけど、こういう時だからこそ、家で思いっきり冒険したカラーを試している。例えばたくさんラメが入ったアイシャドウとか、これまでできなかったことが試せて楽しい」との意見もありました。さらには、「外に行けなくてフラストレーションが溜まっている。だからメイクぐらいはしっかり楽しみたい」と、今だからこそ、毎日違ったメイクでストレスを解消しているみたいです。今回、編集部員から上がった声を拾うと、家にいて誰かに見られることがない、オンライン会議だけだからということから、簡単に、でも目元だけは、口元だけのどちらかをきちんとしてメイクを済ませる派と、逆に今だからこそ、誰かに見られるからではなく、メイクを楽しみたい、チャレンジしてみたいと家にいながらにして、新しいメイクに挑戦する派に分かれることが分かりました。いずれにしても、メイクはやっぱり女性にとってパワーを与えてくれているものなんですね。

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総額3000円以下で手に入れたアメリカLOVEな3アイテム

 リモートワークが始まって、通勤にかかる往復2時間弱が“浮き”ました。ジョギングをしたり、語学学習をしたり、みなさんも有効利用しているかと思いますが、俗っぽさ丸出しの僕は、もっぱら「ヤフオク!」や「メルカリ」を探検しています。

 価格重視なら、送料込みがデフォルト化している「メルカリ」に軍配が上がりますが、僕が欲しいのは“MADE IN USA”など男好きする希少価値の高いものなので、「ヤフオク!」の方が充実している傾向があります。それに、ものによっては“えっ、こんな価格設定でいいの!?”と心配してしまうような超お買い得品が出品されています。じっくり時間をかけられるのも、リモートワークの恩恵です。

 そして、購入したのがこの3点。チェック柄のガウンは、いわゆる“ストア系ブランド”の「タウンクラフト(TOWN CRAFT)」のアイテム。こちらの記事で登場したのも、このガウンです。1970年代製とおぼしき品で、「メルカリ」で送料込みの2000円でした。「タウンクラフト」はアメリカの大手百貨店J.C.ペニー(J.C. PENNEY)のPB(プライベートブランド)として1927年に誕生しました。J.C.ペニーにはほかにワークブランドの「ビッグマック(BIG MAC)」や「ペイデイ(PAY DAY)」などのPBもありますが、「タウンクラフト」はあくまで“日常着”の位置付け。このガウンは、アメリカ映画で登場人物がTシャツの上に“引っ掛けて”自宅のポーチで瓶ビール片手に夕涼みしているイメージですね。

 お次は、オックスフォード地のボタンダウンシャツ。1986年にニューヨークで創業した「B.D.バギーズ(B.D.BAGGIES)」の“MADE IN USA”です。美品を「ヤフオク!」で450円で落札しました。送料が250円かかったものの、“チリ積も”でたまったTポイントや「ペイペイ(PayPay)」が使えたので実質200円ほどの買い物でした。やや肉厚な生地使いやボクシーなシルエット、決して上手とは言えない縫製など、とてもアメリカらしくて気に入っています。

 最後は、ニードルポイント刺しゅうを使ったアイテムを手掛ける米国ブランド「スマザーズ&ブランソン(SMATHERS & BRANSON)」のキーホルダーです。ニードルポイント刺しゅうって、1インチ(約2.5cm)幅を刺すのに約45分もかかるんですって。プレッピーが好きなモチーフの一つであるスカルをピンクで、あくまで愛らしく表現しています。価格も送料込みの640円と、とてもかわいかったです。

 そんなわけで、総額3000円以下でアメリカンなアイテムを3つも購入することができました!時間をかけてのネットショッピングもいいけれど、やっぱりあちこち歩いて店員さんとも会話をしながら買い物を楽しみたい。そのためには、まずは“#STAYHOME”なのだなぁと思うのでした。

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ベイクルーズが手掛ける「オリエンス シブヤ」は若手社員の“やる気”に満ちた店

 ベイクルーズグループのZ世代に向けた新ブランド「オリエンス ジャーナルスタンダード(ORIENS JOURNAL STANDARD、以下オリエンス)」は3月20日、渋谷・神南にショップ「オリエンス ジャーナルスタンダード シブヤ」をオープンした。メンバーはコンセプターの櫻井花ノ子(24)、プレスの大澤萌夏(25)、MDの長谷川アルファ(23)、VMDの五月女翔(26)の初期メンバーに、ショップスタッフとして前坪茜(25)と古川元気(27)が加わった6人。全員が初めての店づくりとなる。

 新型コロナ禍で自粛ムードの中、静かなオープニング(当面は臨時休業)となったが、「想像以上にバタバタだったけど、自分たちでできることは全部自分たちでやった。ネガティブではなく、文化祭の前日みたいな気分で取り組めた。プレッシャーよりも期待に応えたいという気持ちでメンバー全員が一致団結している」と、大澤プレスは希望に満ちた様子だ。店内は1階と地下1階の2層で、地下1階の半分にはプレスルームと事務所機能もそなえる。“中と外の境目をなくす”をテーマに、道路標識やガードレールなどをディスプレーした。五月女VMDは「スタッフの多くは、洋服に興味を持ったきっかけがストリートやSNS。コレクションやランウエイなどファッション業界の中で行われていることではなく、外で行われていることだった。そういう人たちが選んだものがどういった空間で映えるかを考えた」と説明する。

 オープンを迎え、ショップスタッフとして加わった前坪は社内公募で選ばれ、古川は同業他社からの転職。「前職は看護師。転職したタイミングで社内公募があり、ぜひやりたいと思って応募した。『オリエンス』は同世代で意見を出し合えている」(前坪)、「外から見ているとベイクルーズにはやりたいことに対して貪欲なイメージがあった。前の職場というよりも、普通はそれがなかなかできないことなのではと思う」(古川)。

 ベイクルーズグループの杉村茂社長は「どこかのブランドに配属されて数年経つと、自分たちの同世代のファッションではなく、急に大人っぽくなってしまう。だから“染まらないうちに”という考えがあった。『オリエンス』にはもちろん期待をしているが、だからといってすぐに売れるかどうかは分からない。当然、売れない可能性も高い。でもそこからどう修正し、そのためにどう苦労してエネルギーを使うかを、この年代で勉強してほしい。今はさまざまな仕組みや部署があり、どこかに頼るのが基本だが、自分たちで全部やれば全体が見えてくる。私自身も30年以上前からベイクルーズブランドに携わるが、みんな失敗をしながら成長してきた。今後も新規ブランドなど、次世代の若者たちに裁量を与え、投資してきたい」と話した。

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それぞれの思いの詰まったマスクで登場 業界に力強いエールPart6

 「WWDジャパン」4月20日号、「WWDビューティ」4月23日、30日合併号では、新型コロナウイルスによる感染拡大で一人、一社では立ち向かえない未曾有の状況下にある今、互いに励まし合い、知恵を共有し合おうという特集を企画した。表紙では、ファッション&ビューティ業界の皆さんにオリジナルデザインのマスクを着用した写真で参加いただいた。さまざまなデザインマスクとともに力強いメッセージをぜひ読んでほしい(URLはマスクの詳細や予約・購入先へ遷移します。完売または販売中止になっている場合もあります)。


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1990年代にブレイクした「ビューティービースト」が復活 20年ぶりに安藤大春とのコラボプロジェクトを発表した理由とは?

 東京のデザイナーズブランド「ビューティービースト(BEAUTY:BEAST)」の山下隆生と、「ミドラ(MIDDLA)」の安藤大春は、コラボレーションブランド「ニード(N.E.E.D)」を20年ぶりに復活させる。

 「ビューティービースト」といえば1990年代に東京やパリでコレクションを発表し、熱狂的なファンを抱えていたブランド。デザイナーの山下は2000年に「ビューティービースト」を休止した後、さまざまなファッション企業でメンズ、ウィメンズ、子ども服、スポーツウエアなどのディレクションを担当し、19年に「ビューティービースト」を再始動。「ミドラ」は「ドッペルゲンガー(DOPPEL GANGER)」や「レスザン(LESSTHAN)」などのブランドを手掛けた安藤が15年にスタートさせたウィメンズブランドで、東京ファッション・ウイークでコレクションを発表するほか、ミュージシャンの衣装制作なども行っている。

 山下と安藤の2人が「ニード」を立ち上げた00年には、東京・神宮前の店舗で数量限定でコラボTシャツなどを扱っていたが、今年からは洋服の販売だけでなく、デザインユニットとしてプロデュースやディレクション業などの活動を始める予定だという。山下と安藤にブランド再始動について聞いた。(インタビューは2019年12月末に実施)

ブランド名に込められた“永遠に続くクリエイティブ”

WWD:2人の出会いのきっかけは?

安藤大春「ミドラ」デザイナー(以下、安藤):もう20年以上前の話なのですが、僕が「ドッペルゲンガー」というブランドを1997年にデビューさせたときに東京コレクションで活躍されていた先輩デザイナーとして憧れていたのが、「ビューティービースト」の山下さんでした。そこで、何かご一緒したいとラブコールを送ったのがきっかけで、一緒にリメイクなどの限定商品を販売したんです。

山下隆生「ビューティービースト」デザイナー(以下、山下):共通の友人にメンズモデルの市野世龍がいて、紹介してもらったんですよね。僕自身も90年代にはたくさんクリエイターとつながりを持って実験的なことを試していたときで、そういったカルチャーがある中で安藤さんに出会いました。

WWD:2人のコラボブランド「ニード」とは?20年前はブランドではどういう活動をしていたのか?

安藤:SNSもスマートフォンもなかったので、ネットの掲示板を使って情報を拡散し、神宮前の事務所で商品を作って販売していましたね。

山下:「ニード」は“ネバーエンドネバーデッド(NeverEnd EverDead)”という意味。「ファッションへのクリエイティブな活動は永遠に続く、終わりのない活動であり死ぬこともない」と、クリエイションを続けていくという共通の認識がお互いにあり立ち上げました。

WWD:「ニード」を復活させる理由は?

安藤:この20年間は、フェイスブック上で「誕生日おめでとうございます」や「あけましておめでとう」というメッセージを送り合うだけの関係だったんです(笑)。でも、「いつかまた山下さんと何か一緒にお仕事がしたい」という思いはずっとありました。山下さんは著名ブランドのディレクションをされているのでお忙しいだろうと諦めかけていましたが、20周年ということで思い切ってお話がしたいとランチにお誘いしたんです。

山下:再会して「この20年間、どうしていた?」という話になって、よかったことも苦しかったことも共有したんです。そうしてお互いのをもとに新しいことを一緒に動かせていけたらと、今回このようなアクションをすることを決めました。

付加価値を生むブランディングをユニットとして手掛けていく

WWD:具体的にどのような活動をする?

安藤:「ニード」というデザイナーユニットとして、モノを作って売る以外のことをしていきたい。例えば、デザインやグラフィックの依頼を受けたいですね。その中でもミュージシャンやメイクアップアーティストなどを巻き込んだプロジェクトなどにも広げていきたいと思います。

山下:そう、洋服だけにこだわらずにユニットとしてさまざまな活動していきたいですね。例えばヘアサロンって国内にたくさんありますが、今ブランディングが必要になってきていると思います。「ビューティービースト」でもライセンスでヘアサロンを展開していますが、他業種のブランディングでは、これまで培ってきたアパレルでブランドを立ち上げるときの発想とすごくリンクしているんです。音響や内装などの空間演出を組み立てるという発想で、一つのブランドを構築していくことができます。僕らの仕事は付加価値を生むことなので、その「付加価値=ブランディング」としてブランドの差別化を提案したいと思います。

WWD:プロジェクトの第1弾は、どのようなことを考えている?

安藤:プロデュースについては未定ですが、これから相談を受けていきたいと思っています。「ニード」の商品としてはパーカとTシャツを作り、1月に渋谷パルコで販売しました。今日僕らが着ているのがそうなんですが、山下さんとメールでやりとりしながら制作したものです。

山下:モチーフに使ったのは、1990年代に「ビューティービースト」の代表的な柄として打ち出していたデジタル迷彩。方眼用紙で一マス一マス塗りつぶして描いていて、ピクセルを表現した迷彩柄です。

WWD:山下さんは去年「ビューティービースト」を復活させたが、今後の計画は?

山下:「ビューティービースト」は来年30周年を迎えるんですが、ちょうど90年代に20代を過ごしていた方たちが、今家族を持ち、独立したり、起業したりと、立派な大人の男性になっています。今のアパレルは、「ユニクロ(UNIQLO)」などクオリティーが高くてコストコンシャスな洋服がたくさんあるんですが、自分の個性を発信できるような洋服を探す動きも出てきています。そういった方々にアプローチして、対話を始めたいと思っています。僕らは90年代にコンセプト重視のモノ作りをしてきたので、コンテンツとしてはすごく自信があるんですよ。その頃はセレクトショップのバイヤーさんのおかげで表現ができて、店を探してショッピングをする楽しみたいなのがあったんですけど、2000年以降はインターネットの時代でスマートフォンの中で面白いことが起こっている。その中でコンテンツとしてうまく表現できるような、何かプラットフォームっていうのを模索したいと思っているんです。

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「九段ハウス」がオンラインアートサロン、LVMHジャパンのルレ社長がメッセージ

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、不確実性が増し、不安感が高まっている人々も増えている一方で、教養を磨いたり、心を豊かに、あるいは穏やかにするために、アートに対する注目度が高まっている。そんな中、kudan house(九段ハウス)を拠点に、街づくりにおける各種コンサルティングを手掛けるNI-WAが、“リモートで体感するアート”をテーマにしたオンライン型アートイベントを5月6日から開催する。

 東京大学大学院教授の横張真氏が提唱する「つくらない都市計画」をテーマに掲げ、「アート×街づくり」の可能性を探る。アートディレクターを務めるのは、ギャラリストとして多くのアーティストを世に輩出してきた吉井仁実だ。ゲストアーティストには写真家の篠山紀信、アーティスト・サイエンティストで、新入学生・在校生に向けた「家にいろ」のメッセージでも話題の慶應大学環境情報学部学部長の脇田玲教授らが参画。建築、ファッション、テクノロジー、カルチャー等の各界のオピニオンリーダーが登壇し、アートによるこれからの都市の在り方を表現するトークセッションなど、約30コンテンツを配信する。ファシリテーターはITジャーナリストの林信行と吉川稔NI-WA社長が務める。

 セミナーのトップバッターとして7日に登壇するLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン・ジャパンのノルベール・ルレ社長に、アートへの思いやイベントについて聞いた。

―今回、登壇されることになった経緯や決め手は何ですか?

ノルベール・ルレLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン・ジャパン社長(以下、ルレ社長):新型コロナウイルスの蔓延の影響で外出自粛を余儀なくされている今、誰もが閉塞感を感じています。そのなかでアートを通じて、世界に“何か”を発信したいという吉川さんの心意気に共感を覚えました。

―5月7日のオンラインセミナーではどんな話を予定している?

ルレ社長:街の景観の美しさ、アートを取り入れた街づくりについて。たとえば、弊グループのブランドの路面店を建築する際、ファサードに力を入れています。ファサードはブランドを表現する顔であり、アートそのものです。

―ルレ社長にとって、アートとはどんな存在ですか?

ルレ社長:私にとってアートは三つの要素を持っています。E:Esthétique(美的、審美的)、I : Intelligence(知性)、F:Future(未来)だ。

―好きなジャンルやアーティストは?

ルレ社長:建築家、特に、隈研吾氏、青木淳氏、谷口吉生氏だ。弊グループの店舗等の建築を手掛けてくださいました。

―最近は、アートとファッションの関係性がより深まっていますが、なぜだと考えますか?

ルレ社長:ファッションはメッセージを持っています。色、形、素材、すべてがそのメッセージを放っています。ファッションはアートなのです。

―今回のアートイベントの会場となるkudan houseではグループのイベントなども開催されていますが、その印象は?

ルレ社長:Kudan House にはイベント、パーティなどで何度かお邪魔しています。和と洋がうまく融合された古い建物を見事に蘇らせたモダンな空間だと思います。一歩建物にはいると時空を超えた不思議な感覚を覚えます。

―アートにまつわるイベントやプロジェクトなどの予定は?

ルレ社長:LVMHは2021年に日本で開催される “日本におけるフランス年” のイベントを応援しています。フランスのさまざまな文化活動、もちろんアートについても発信していきます。新型コロナウイルス感染の影響で、すべてが疲弊していますが、そのような状況下でも未来に対してオプティミストでありたいと考えています。

 なお、NI-WAの吉川稔社長は、「新型コロナウイルスの感染が拡大し、移動や外出が自粛される不自由な条件の下でも、テクノロジーの力によって交流する人々は増えている。デジタルコミュニケーションの急速な普及により見直される直接対面の価値など、ポストコロナに向けて、すでに人々の価値観や社会システムも大きく変化している。そこで、これまでのその場の臨場感や自分の目や耳で感じてきたアート体験を、デジタルコミュニケーションツールを活用してリモートで体感するという新たな取組みに挑戦したい」と意気込みを語る。

 開催期間は5月6日~31日。トークセッションの他、展示されたアーティスト作品を見られる館内のバーチャルツアーや、DJ、ミュージックライブなども配信する。1時間に1組だけを対象にしたVIP企画も予定する。また、6日にはオープニングイベントとしてオンラインレセプションパーティーも開催する(要事前登録)。

■つくらない都市計画
日程:5月6日~31日 ※6日にオンラインレセプションパーティーを開催予定。事前登録者を招待
場所:kudan house
住所:東京都千代田区九段北1-15-9
参加アーティスト:篠山紀信、脇田玲、田所淳、秋山ブク他(順次公開)
トークセッション登壇者:ノルベール・ルレ、遠山正道、伊藤羊一、水野学、山口周、小松成美、ヴィヴィアン佐藤、田中杏子、西田善太、林千晶他

松下久美:ファッション週刊紙「WWDジャパン」のデスク、シニアエディター、「日本繊維新聞」の小売り・流通記者として、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)

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ユニホーム会社が切り取った「リアルな現場服」スナップ 多彩な企業の社員がモデルに

 ユニホームアパレルの原田(山口県防府市、原田栄造社長)が、さまざまな業種の”リアルな現場”を切り取った写真を公開した。これらはすべて、同社の納入先の企業の社員たちが作業の現場で自社のユニホームをまとったモデルとして登場している。登場する企業は、土木や運送、パチンコ、物流などの約20社。本社や業種は多岐にわたっており、リアルな仕事現場の迫力が伝わってくる。同社は、山口県に本社を置く、法人のオーダー向けのユニホーム企業。一部の写真は、自社のカタログなどで細かなユニホームの仕様とともに公開している。

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94歳の誕生日を迎えたエリザベス女王のティアラの数々

 イギリスのエリザベス女王(Queen Elizabeth II)は4月21日、94歳の誕生日を迎えた。女王を象徴するのは、膨大なティアラのコレクション。その多くは100年以上前から英国王室にあり、最もよく着用しているものは祖母から受け継いだ。そして、コレクションの中には、ユージェニー・オブ・ヨーク王女(Princess Eugenie of York)やケンブリッジ公爵婦人キャサリン妃(Duchess of Cambridge, Kate Middleton)といった孫や義孫の結婚式の際に貸し出したものもある。67年に渡る在位の中で着用したティアラの数々を振り返る。

ガールズ・オブ・グレート・ブリテン&アイルランド・ティアラ(Girls of Great Britain and Ireland Tiara)

 ガールズ・オブ・グレート・ブリテン&アイルランド・ティアラは、エリザベス女王の着用頻度が高いことで有名だ。もともとは1898年、エリザベス女王の祖母であるメアリー王妃(Queen Mary)の女官が王妃に結婚祝いとして贈ったものだった。その後、1947年にエリザベス女王への結婚祝いとして受け継がれた。結婚式当日は身につけていなかったものの日常的に愛用し、英国と英連邦の紙幣に使われているいくつかの写真でも着用している。

ステイト・ダイアデム(State Diadem)

 ステイト・ダイアデムは1821年にジョージ4世(George IV)の戴冠式のために制作されたもの。ジョージ4世の死後、ウィリアム4世(William IV)の子孫であるアデレード王妃(Queen Adelaide)に受け継がれた。以来、女性の君主が身につける伝統になっている。エリザベス女王は1953年に、ウェストミンスター寺院での自身の戴冠式に向かう際に着用。現在も、国会開会式に向かい時に必ず身につけている。中央に飾られた4カラットのイエローダイヤモンドを含む1000個以上のダイヤモンドと約170個ものパールをあしらったデザインが特徴だ。

ブラジリアン・アクアマリン・ティアラ(The Brazilian Aquamarine Tiara)

 1953年のエリザベス女王の戴冠式に際し、ブラジルの人々から贈られたダイヤモンドとアクアマリンのイヤリングとレックレスセットに合わせるため、特別に制作したもの。王室御用達のジュエラー、ハウス・オブ・ガラード(House of Garrard)が手掛けた。

サファイア・ティアラ(The Sapphire Tiara)

 エリザベス女王の結婚を祝して父のジョージ6世(George VI)が贈ったダイヤモンドとサファイアのイヤリングとネックレスに合わせ、1963年に制作した。

バーミーズ・ルビー・ティアラ(Burmese Ruby Tiara)

 1973年にミャンマー(旧ビルマ)の人々から結婚祝いとして贈られたルビーを使い、ハウス・オブ・ガラードに依頼して完成させたティアラ。ハウス・オブ・ガラードによると、ビルマ文化ではルビーには悪と病気から身を守る力があると言われ、ティアラに装飾された96個の貴石には象徴的な意味が込められているという。

 また、希少価値の非常に高いそのルビーは、2008年からジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)元米大統領によるミャンマーへの制裁の一環として米国への輸入が禁止されていたが、16年にバラク・オバマ(Barack Obama)前米国大統領によって解除されたという歴史がある。こうした背景の中、エリザベス女王が昨年、バッキンガム宮殿で開かれたドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領との晩餐会の際に着用したことは、話題を集めた。

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プロモーションの主軸はデジタルに 体験に代わるデジタルコンテンツが鍵

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、イベントの大小にかかわらず延期や中止を余儀なくされ、新製品を発表する機会は失われた。緊急事態宣言は5月6日までとされているが、その後の状況も不透明で長期化することは間違いない。そこで各社が急ピッチで進めるのがデジタルプロモーションの強化だ。これまでもデジタルの強化は各社にとって課題として挙げられてきたが、この状況下で急務となった。一方で消費者もリモートワークや外出自粛によりオンライン活用が促進され、デジタル化の土壌はこれまでよりも整いつつある。今、デジタルを活用したプロモーション展開が大きく動き出した。

 その筆頭に来るのがライブ配信だ。ユーチューブやインスタグラムなどで簡単に始められることもあり、3月以降配信が増加している。「M・A・C」は、シニアアーティストの池田ハリス留美子がインスタグラムのライブ配信で新製品を使ったメイクデモを行った。製品の解説を交えながらプロならではのテクニックを披露し、ユーザーから多くのコメントや質問などが寄せられた。店頭などで実際に製品を試すことができない今、オンラインでいかに具体的に製品特徴を伝えられるかが重要だ。配信終了後には、ストーリー機能で使用した製品をピックアップしてECサイトへの誘導も行うなど、インスタグラム全体の機能をうまく活用している。

 「WWD JAPAN.com」でも、「NARS」とコラボレーションしたユーチューブライブを実施。メイクアップアーティストがZoom越しにインフルエンサーにメイクテクニックをレクチャーし、多くの反響を集めた。

 また、レビューが得意なインフルエンサーとのコラボレーションも効果的だ。特にメイクアップ商材などは、モデルによる広告ビジュアルだけでは消費者にとっては共感しにくく、リアルな使用例をインフルエンサーがレビューすることで消費者は実際の使用感をイメージしやすくなる。これまで以上に情報が溢れる中で、ただ拡散するだけではなく情報としての有用性も重視する必要があるだろう。

 顧客に対してはオンライン通話などを利用した美容部員との1対1のカウンセリングを行うことで、店舗に行けないフラストレーションの解消だけでなく、長期にわたる外出自粛によるブランド離れ対策にもつながる。オンラインカウンセリングは地方在住の百貨店や店舗などを訪れる機会が少ない顧客に対しても実施できるのも利点で、これまで以上に顧客との結び付きを強めることもできるのではないだろうか。

最新テクノロジーで新たな体験を創出

 リアルな体験に代わるデジタルコンテンツの提供も必須だ。例えば、スマートフォンで撮影した写真からAR(仮想現実)技術を応用し顔を検出し、アプリ上でメイクを再現できる「ユーカムメイク(YOUCAM MAKEUP)」だ。すでにECサイトを中心に活用が盛んだが、タレントやインフルエンサーが提案するトレンドメイクの体験など、コラボレーションによってタッチアップの代用だけでなく話題性の醸成、新規顧客の獲得にもつながる。「ユーカムメイク」を展開する台湾のテック企業パーフェクト(PERFECT)は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、コスメブランドや小売店向けのバーチャルメイクを使ったソリューションサービスを一時的に無料提供している。また、限りなくリアルな体験に近い形でブランドの世界観などをアピールできるVR(拡張現実)技術の活用にも可能性が広がる。

 今を耐えるための一時的な対策ではなく、これから先は間違いなくプロモーションの主軸になるであろうデジタル施策を今の段階で盤石にしておくことが、今後の明暗を分けることになるのかもしれない。

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それぞれの思いの詰まったマスクで登場 業界に力強いエールPart5

 「WWDジャパン」4月20日号、「WWDビューティ」4月23日、30日合併号では、新型コロナウイルスによる感染拡大で一人、一社では立ち向かえない未曾有の状況下にある今、互いに励まし合い、知恵を共有し合おうという特集を企画した。表紙では、ファッション&ビューティ業界の皆さんにオリジナルデザインのマスクを着用した写真で参加いただいた。さまざまなデザインマスクとともに力強いメッセージをぜひ読んでほしい(URLはマスクの詳細や予約・購入先へ遷移します。完売または販売中止になっている場合もあります)。


 「WWD JAPAN.com」はファッション&ビューティ業界を応援すべく、週刊紙の「WWDジャパン」と「WWDビューティ」に掲載した新型コロナウイルス関連ニュースを無料開放します。記事やコラムから未曾有のピンチを克服するヒントや勇気を感じ取ってくだされば幸いです。

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2020-21年秋冬コレクション、記者注目のブランドは? トレンド座談会番外編

 4月13日号「WWDジャパン」新トレンドブックでは、現地に赴いたコレクション担当記者たちが座談会を行い、2020-21年秋冬コレクションから読み解くムードと、ヒットを予感させる秋冬アイテムについてざっくばらんに語り合った。本記事はその番外編として、プレゼンテーション形式でコレクションを発表したブランドの中から、各記者に注目するブランドを聞いた。

パリ担当JY(以下、JY):個人的には復活を遂げた「パトゥ(PATOU)」が気になっています。フランス流の“カワイイ”というイメージで、デザインもリアリティーがある。アーティスティック・ディレクターは「カルヴェン(CARVEN)」を人気ブランドに押し上げたギヨーム・アンリ(Guillaume Henry)なのですが、再び彼の本領発揮という感じで期待大です。

ミラノ担当KM(以下、KM):ミラノでは毎シーズン“「マルニ(MARNI)」卒業生”がプレゼン形式でコレクションを発表します。まず1つは、ウィメンズとメンズのデザイン・ディレクターをそれぞれ10年以上務めたモリー・モロイ(Molly Molloy)とクリスティン・フォルス(Kristin Forss)、そして創業当時から同ブランドのスタイリングを20年以上手掛けたルシンダ・チェンバース(Lucinda Chambers)の3人による「コルヴィル(COLVILLE)。もう1つは、「マルニ」の創業者の娘カロリナ・カスティリオーニ(Carolina Castiglioni)による「プラン C(PLAN C)」です。今季は、「コルヴィル」を推したいな。昔の「マルニ」ファンにはたまらない色柄遣いながら、シーズンを追うごとに新たなテイストミックスに挑戦している。一方の「プラン C」は、ちょっとマンネリ気味。3人が知恵を寄せ合う「コルヴィル」と、カロリナが奮闘する「プラン C」という、方向性の違いが明確になってきた。「プラン C」は、「ヴァレクストラ(VALEXTRA)」とのコラボレーションも、ちょっと残念でした。

JY:「プランC」は日本では支持されているようですが、ヨーロッパではセールで結構残っている店もちらほら。「コルヴィル」は販路を絞っているということもありますが、よりファッション感度の高い層に支持されている印象です。

KM:日本は長年の「マルニ」ファンが「プランC」に流れたから、どこよりも早くファンのコミュニティーが出来上がった。たぶん今、日本はブランドにとって一番大きなマーケットなんじゃないかな?あと面白いといえば、老舗ブランド「ヘルノ(HERNO)」じゃない? メンズ、ウィメンズどちらもいい。

テキスタイル担当YH:「ヘルノ」はサステナビリティにも積極的に取り組み、トレーサビリティーを実現する最新企業と組んでコレクションを作ったりしていますよね。

KM:うん。サステナブルラインだけでも、リサイクルウールから再生ナイロンのエコニール、リサイクルダウンを使ったアイテムまで多種多様。それに加えて、メインラインでは高機能なアウターコレクション“ラミナー”やタイムレスなウールコートも取りそろえていて、バリエーションが圧倒的。「ヘルノ」のアウターで満足できない人はよっぽどのファッション・コンシャスだよねっていうぐらい、何でもそろっている。

JY:あと、SNSから火が付いたハンガリー・ブダペスト発のブランド「ナヌーシュカ(NANUSHKA)」も今後に期待したいブランドです。価格帯は他のコンテンポラリーブランドと同じくらいですが、どこかノスタルジックな雰囲気とサステナブルな考えを取り入れているのが魅力的。2020-21年秋冬は、エコール・デ・ボザール(Ecole des Beaux-Arts)という美術学校でミニショー形式のプレゼンテーションを行いました。会場内にはクラフト感のあるアートピースやヴィンテージライクの調度品を並べるという見せ方も上手ですし、ウエア、バッグ、シューズと幅広いアイテムを手掛けているので世界観もしっかり確立されている。最近では、その世界観を共有するメンズもスタートさせました。聞くところによるとベンチャーキャピタルから投資を受けているらしく、ここまでできているのは資金的な裏付けもあるからかと納得。

ロンドン&ミラノ担当MO:私も「ナヌーシュカ」は気になっています。ほかにもデンマークの「ガニー(GANNI)」やロンドンの「リクソ(RIXO)」など、エシカルなモノ作りに取り組む新興ブランドにも注目しています。

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おうちでシネマ 「アップリンク」代表のオススメ“在宅”映画4選

 新型コロナウイルス感染予防のための外出自粛により、自宅で過ごす時間=“おうち時間”をいかに過ごすかが重要となっている。読者の中には、「素敵な映画を見て有意義な時間を過ごしたい」「メジャーな映画も悪くないけど、コアな作品にも触れてみたい」と思う人も多いのではないだろうか?そこで今回は、数々の気鋭監督作を日本に紹介してきたミニシアターの雄、アップリンクの浅井隆代表に自宅で見られるオススメ作品4選をたずねた。同社が提供するビデオオンデマンド(VOD)サービス「アップリンク・クラウド」でも扱っているので、気になった人はチェックしてみよう。

「わたしはロランス」(2012年カナダ、グザヴィエ・ドラン監督)

浅井隆アップリンク代表(以下、浅井):カンヌ国際映画祭でグランプリ受賞歴もあるカナダ人監督、グザヴィエ・ドラン(Xavier Dolan)の作品。女性として生きることを選んだトランスジェンダーの高校教師とそのガールフレンドを軸とする物語なのですが、音楽の入れ方がとにかくカッコイイ。彼の作品をPVのようだと表現する人も多いですが、実は真逆。PVは音に合わせて映像をつける一方、ドランは物語の“ここぞ”という場面に登場人物の感情にリンクした音楽を入れているんです。イヤホンやヘッドホンをつけて、大きめの音で楽しんでほしいですね。

「ガザの美容室」(15年パレスチナ、アラブ・ナサール、タルザン・ナサール監督)

浅井:映画の舞台は、戦争状態にあるパレスチナ自治区の美容室。女性たちが集い、和やかなムードの美容室が、突如として屋外の戦火に巻き込まれていきます。それでも強く、しなやかに生きる女性の姿は必見です。パレスチナ自治区は戦争で国自体が隔離され、日本は今、新型コロナウイルス感染症で個人と社会が隔離されています。そんな今だからこそ、見る価値があると思います。

「顔たち、ところどころ」(17年仏、アニエス・ヴァルダ、JR監督)

浅井:映画監督のアニエス・ヴァルダ(Agnes Varda)とアーティストのJRが、旅先で出会った人たちとストリートアートを通して触れ合うドキュメンタリーです。劇中は、知らない人との出会いの連続。でも、気軽に外に出られず、人とのふれあいが少なくなったこのタイミングで見てみると、そういった人との出会いこそ生きていることを実感する瞬間なんだなと思い知らされます。村人たちの写真をとり、それをアートに仕立てていく工程もとっても面白い。見るだけで温かな気持ちになる作品です。

「聖なる呼吸:ヨガのルーツに出会う旅」(12年独、ヤン・シュミット=ガレ監督)

浅井:タイトルの通り、近代ヨガのルーツをたどる作品です。“アイアンガーヨガ”のB.K.S.アイアンガー(B.K.S. Iyengar)をはじめ、今のヨガの礎を築いた師匠たちの姿が見られます。在宅時間が増え、ヨガを自宅でやっている人が増えているようですが、実践だけでなく、ヨガのルーツと哲学を映画から学んでみるのも面白いかもしれません。字幕監修は日本ヨガの第一人者、ケン・ハラクマさんが担当しています。

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「セリーヌ」のショーに来た“エディ系男子”に突撃 「君たち一体何者なの?」

 エディ・スリマン(Hedi Slimane)による「セリーヌ(CELINE)」は2月末、2020-21年秋冬コレクションを男女合同のショー形式で見せました。ショーが男女合同になるということは……そう、“エディ系男子”がやって来ることを意味します。超スリムで容姿端麗だけど、ちょっと猫背で気だるそうな彼らを勝手に“エディ系男子”と私たちは呼んでいますが、一体彼らは何者なのか、そしてなぜエディはいつの時代でも彼らを夢中にしてしまうのか、疑問に思っている人は多いのではないでしょうか。ということで今回、「セリーヌ」の会場に来た“エディ系男子”にインタビューしてみました。

 ここで、エディと“エディ系男子”の関係についてちょっと振り返ってみましょう。エディが「サンローラン(SAINT LAURENT)」を手掛けていたときは、フロントローの前という超特等席に座り、あぐらをかいたり膝を立てたりしながら鑑賞する彼らを“ゼロ列目男子”なんて呼んでいたこともありました。エディは「サンローラン」を16年に去り、ロサンゼルスに移ってフォトグラファーとしての活動に専念したのち、18年に「セリーヌ」のアーティスティック、クリエイティブ&イメージディレクターに就任して、パリ、そしてファッション業界にカムバックしました。

 2年の“ギャップイヤー”を経て当時業界人が疑問に思っていたのは「エディはヒップホップ最盛期の今でも、若者を夢中にすることができるのか?」ということ。18年はストリートファッションシーンを率いるヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のメンズ アーティスティック・デイレクターに就任した年でもありました。ロックを軸に不変のスタイルを貫くエディに、昨今の若者が夢中になるのかが気になるところでしたが、エディの「セリーヌ」デビューショーに来たゲストは“ゼロ列目”こそなかったものの、やっぱり細身&ピタピタで期待を裏切りませんでした。そして20-21年秋冬の会場にもやっぱり同じスタイルの来場者がいました。しかしこちらはインディーズロックバンドやフランスのスター事情に無知なので、彼らの正体は謎のまま。ドキドキしながら彼らに声をかけ、後日必死でググりました。

 会場に入ってまず話しかけたのは、フロントローに座っていたフランス出身の俳優のアクセル・オリアン(Axel Auriant)。彼はフランスのドラマ「スカム フランス(SKAM FRANCE)」のスターです。このドラマの登場人物は実際にインスタグラムのアカウントがあり、ストーリーと連動して更新されるのをフォローして楽しめる人気ドラマです。エディの魅力を聞くと「もちろんエディのスタイルは大好きだ。パリに戻ってきてからフレンチロックスタイルを『セリーヌ』に持ち込んで、今やそれが『セリーヌ』のスタイルになっている。『サンローラン』のころからも進化していると思う」と話します。現在22歳という彼にさらに詳しく聞くと「『サンローラン(SAINT LAURENT)』時代に『イヴ(YVES)』をとってロゴも変えたことが印象に残っている。その後ザ・ストロークス(The Strokes)や、僕が子どものころから聴いているロックバンドと一緒に仕事をしていることを知ったんだ。だから僕はエディのカルチャーと一緒に育ったみたいなもので、ここに来られてとてもうれしいよ」とのこと。なるほど確かにファッション大国フランスではブランド名が変わるとなったら国民的ニュースになりそうですし、好きなロックスターと仕事をしていたなら夢中になるのも納得です。ちなみにオリアンは俳優でありながらプロのドラマーとしも活動しており、マヌ・ディバンゴ(Manu Dibango)ら著名ミュージシャンのコンサートにも参加するほどの実力派です。

 次に話しかけたのは、スコットランドのインディーズバンド、メディシン キャビネット(Medicine Cabinet)のメンバー5人の中で一番“エディ男子”っぽかったジョシュア(Joshua)。彼がエディに初めて会ったのはロンドンのアーセナル スタジアムで、ショーに来ないかと誘われたそうです。後で調べればエディはジョシュアと、メディシン キャビネットのメンバーの一人であるアナ(Anna)をロンドンで自ら撮影しているではないですか!バンドのインスタグラムのフォロワーは2000程度でまだ曲もリリースしていないのに、一体どこから発掘してくるのかと思ったら、バンドのライブに自ら出かけているのですね。さらに感心したのは、彼らの前に座っていたフランツ・フェルディナンド(Franz Ferdinand)のフロントマンのアレックス・カプラノス(Alex Kapranos)が5人に「バンドの名前は?」とフレンドリーに話しかけ、同じスコットランド出身ということで盛り上がって記念写真まで撮っていたこと。この写真はアレックスのインスタグラムにちゃんと投稿されていました。しかもメディシン キャビネットのアカウントもタグづけしています。アレックスはエディの長年の友人でもありますが、若手を積極的にサポートする姿勢に心温まりました。こうしてエディのコミュニティーは広がっていくのですね。

 赤いボーダーのトップスがフロントローでも際立っていたのは、イギリス発のロックバンド、レッグス(Legss)のフロントマン、ネッド・グリーン(Ned Green)。エディの魅力を聞くと、「とにかくタイムレスなこと。長いことやっているのにカムバックし続けるのは尊敬する」と話します。さらに「エディのチームの一人がバンドの演奏を見たらしく、エディが俺たちを撮りたがっているって連絡が来たんだ。それまでは誰なのか全く知らなかったよ。その後シューティングしたんだけど、それが10時間くらいかかって、あまりにも長かったから俺もバンドのメンバーもウイスキーでめちゃくちゃ酔っ払った。それから(エディと)仲良くなってショーに呼んでくれたんだ」と続けます。前述のメディシン キャビネットと同様、エディは目星をつけたバンドマンたちを自ら撮影するのですね。それにしても多忙極まりないのに撮影に10時間もかけるとは……相当な情熱です。最後にネッドに写真を撮らせてと頼むと「俺のバンドのメンバーだよ」と、隣に座っていた2人と一緒にポーズを決めてくれました。しかし実はこの2人は全然バンドメンバーではないことが後になって判明しました。

 そうこうしているうちにショーが始まると、「このルックは最高」「これはやばい」などと盛り上がる声が聞こえてきます。その方向に目を向けるとやっぱり“エディ系男子”2人がいました!ショー終わりに感想を求めると、「最高だった。感動したよ」と興奮気味。2人は若干酔っ払っているようでしたが、時刻は21時過ぎ。ショーの前に飲みたくなる気持ちも分かります。早速エディについて聞いてみると「正直、彼のチームの一人が俺たちのバンドのライブに来るまではエディについて知らなかった」とのこと。なお、彼らのバンド名はレッグス……って、こっちが本物のメンバーじゃないですか。このジェイク・マーティン(Jake Martin)とルイス・グレース(Louis Grace)がフロントマンのネッドと別々の場所にいたのは、もしかして一杯引っ掛けていたから?などと想像してしまいました。ちなみにレッグスは初のアルバムを昨年リリースしたばかりで、4月末時点のインスタグラムのフォロワーは1000ほど。エディの才能の発掘力、さすがとしか言いようがありません。

 今回はとにかく見た目が“エディ系男子であることを基準になりふり構わずゲストに話しかけましたが、共通していたのはやはり音楽でした。そして他ブランドのショーのゲストと大きく違うのは、エディ本人や「セリーヌ」チームのメンバーやが実際にライブに足を運んでいること。さらに、エディ自身がきちんと時間をかけて彼らを撮影していたことです。今回のショーBGMを手掛けたソフィア・ボルト(Sofia Bolt)も、家のガレージで無料で行ったライブにエディのチームのメンバーがなぜか来ていたところから楽曲提供まで話が進んだそうです。

 一般的にショーに来る著名人やインフルエンサーの人選は、フォロワー数や知名度が基準の一つになります。ゲストのフォロワー数が多いと、年に数回の貴重なプロモーションであるショーをより多くの人に見てもらうことが期待できるからです。ブランドのキャンペーンに起用されたことがあるような関係の深い人物から、意外な人選のインフルエンサーまでさまざまですが、ブランドにとって意外とも思えるゲストをたびたび見かけるのは、SNSを通じてそのフォロワー、つまり新たな層にリーチしたいから。もちろんこれもマーケティングとして一つの正解でしょう。

 一方で「セリーヌ」はフォロワー数に関係なく、世界観の合う人物を招待します。ショー後、会場の前には猫背で煙草を吸うミュージシャンのような“エディ系男子”たちの姿がありました。数字だけではなく、隅から隅まで自分の世界観に徹するこだわりこそ、エディの現在の肩書きが「アーティスティック、クリエイティブ&イメージディレクター」である所以なのでしょう。若手ミュージシャンはエディによる恩恵を受ける一方、彼らがショーの場にいることは会場のブランドの世界観を形づくる一助にもなっているのです。

 エディは若手にスポットライトを当てる姿勢について、英「ヴォーグ(VOGUE)」にこうコメントしています。「今のメインストリームカルチャーは数重視のSNSのアルゴリズムによってプロモーションされたものだ。オルタナティブな声には耳も貸さない。悲しいことにマスコミは無名のものを認める努力をしない。私がファッションや写真を通してできることがあるなら、喜んで力を貸そう」。

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