巣ごもりで下着とルームウエアが記録的売り上げ 各社ECが好調

 新型コロナウイルス流行の影響で多くの店舗がクローズし、ECが伸びているのは周知の通りだが、下着やルームウエアにもその動きが顕著に表れている。自宅で過ごすのに楽なノンワイヤーブラやハーフトップを選ぶ女性が多い。

 リラックス感のあるブラジャーの代表格ともいえる「ワコール(WACOAL)」の“ゴゴチ”は、ワコールウェブストアでの4月1〜21日の売り上げが前年同期比2.4倍と好調。東京都知事が週末の外出自粛を要請した3月25日の翌日は、ワコールウェブストアで“ゴゴチ”シリーズの売り上げが前年同日比4倍以上、27日は6倍以上を記録した。緊急事態宣言が発令された4月7日の翌日は7倍以上と記録的な数字になった。このように、消費者のマインドの変化が日々の売り上げの推移に如実に表れている。ワコールウェブストアでは、「ウンナナクール(UNE NANA COOL)」の売り上げも絶好調。

 快適な下着のイメージが定着しているトリンプ・インターナショナル・ジャパンが展開する「スロギー(SLOGGI)」も、公式オンラインストアの3月の売り上げが前月比の約2倍だ。

 以前から好調だった就寝時用のブラジャーも人気で、ワコールウェブストアでは“ナイトアップブラ”の売り上げが急伸長している。「ピーチ・ジョン(PEACH JOHN)」の“ナイトブラ”も好調だ。「ワコール」の“ナイトビージェル”や「ピーチ・ジョン」の“ボムバストクリーム リッチ”などバストケアアイテムの売り上げがともに伸長している。自宅で過ごす時間が長くなり、巣ごもりボディーケアの需要によるものだろう。

オンライン飲み会で
“見せるルームウエア”が人気

 ルームウエアは巣ごもり消費の代表的な商材で、各ブランド好調だ。ルームウエアはもちろんのこと、ベッドリネンやトラベルグッズなども展開するライフスタイルブランドの「プライベートスプーンズクラブ(PRIVATE SPOONS CLUB)」は、4月1〜15日の売り上げが前年同期比の約3倍だった。同ブランドの実店舗は都内2店舗で休業中だが、蜷川実花やディズニーとのコラボ商品の後押しもあり、売り上げをECで補っている。

 オンライン飲み会などによる“見せるルームウエア”の需要が高まっており、「ピーチ・ジョン」は4月1〜15日のルームウエアの売り上げは前年同期比2倍、「キッドブルー(KID BLUE)」の4月6〜12日は前年同期比2.5倍といずれも好調で、目的買いも多いという。

 「ジーユー(GU)」では、4月6〜12日のキッズ用ルームウエアの売り上げが前年同期比4倍になった。価格の見直しを行ったことも好調の要因だが、休校などで子どもが家で過ごす時間が増えたためと思われる。

 巣ごもり生活が長引き、各社SNSなどを使った販促に力を入れている。ナイトブラとバストケアコスメのセット販売や“見せるルームウエア”など新たな消費の傾向に着目しつつ、新型コロナ終息後における需要の掘り起こしが必要となるだろう。

川原好恵:ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルス分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身

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「ファンドを作りデザイナーを直接支援」 英国ファッション協議会の辣腕トップが語るコロナ渦中の産業支援のあり方

 ロンドン・ファッション・ウイークを運営する英国ファッション協議会(British Fashion Council以下、BFC)が、新型コロナウイルス対策に乗り出している。公式サイト上で新型コロナウイルスに関する英国政府からの最新情報や、ファッション事業者に向けたアドバイスを掲示。デザイナービジネスやファッション産業、学生をサポートするための基金を設立し、早い段階で政府首脳に直接アプローチし、アパレル産業が直面する課題を伝えてもいる。こうした施策をリードしているのが、BFCのキャロライン・ラッシュ(Caroline Rush)CEOだ。「BFCは生命線として、デザイナービジネスが危機を乗り越えるための支援をする」と力強く意志を表明するラッシュCEOに、ポストパンデミックのファッション産業のあり方を聞いた。

「パンデミックは業界の未来を形作る機会。私たち皆に役割がある」

WWD:新型コロナウイルスの影響は?

キャロライン・ラッシュCEO(以下ラッシュ):全ての困難には、好機というものが伴う。その意味で、未曾有の危機の中でいま考えるべきなのはファッションサイクルのこと。一度立ち止まって、私たちの業界がよい方向に変われる方法について考えてみたいと思っている人は多いはずだ。メンズウエアとウィメンズウエア、両方のデザイナーたちがよりフレキシブルに動くことができるよう、ロンドンで開催される向こう4回のファッション・ウイークはジェンダー・ニュートラルにする。買い付けのスケジュールにも影響が出るだろうが、現実的にも、多くのデザイナーが6月までにコレクションを完成できないと考えている。

このパンデミックは間違いなく人々の価値観や考え方を変え、サステナビリティや気候変動にどう向き合うかについて大きな衝撃を与えた。私たちの業界の未来を形作る機会として捉えるべきで、私たち皆に役割がある。私たちが生きる世界がいかに壊れやすいものかということや、環境を保全するために行動しなければならないということを示してくれた。

こうした中で私たちのような団体は、情報や知識をシェアするだけではなく、ポジティブな変化やよいニュースを発信する重要な役割もある。「アースデー(Earth Day)」の4月22日、私たちはインスティチュート・オブ・ポジティブファッション(Institute of Positive Fashion)の新しいウェブサイトを立ち上げた。狙いは、内側からポジティブな変化を起こすためのツールや解決方法を企業に身につけてもらうこと。環境、コミュニティー、クラフツマンシップという3つの分野にまたがるビジネスのツールとリソースとして、すべての人に無料で開放している。

WWD:BFCが現在直面している最大の課題は?

ラッシュ:物ごとに見通しがつかないということ。だからこそ、新型コロナウイルスの大きな打撃に苦しむイギリスのビジネスやクリエイティブ業界に対し、BFCがコラボレーションやプロフェッショナルな援助を提供し続けることが今まで以上に重要だ。先行きが見えない中、私たちBFCはアパレル産業の生命線であるデザイナービジネスが危機を乗り越えるための支援を行っている。

ファッションに携わる人々のほとんどが今は仕事をすることができず、危機に直面している。店は閉まり、オーダーはキャンセルされ、隔離により消費者からの需要はほぼないに等しく、クリエイティブ業界のフリーランサーたちも仕事がない状態だ。このようなときには、連帯感がより大切になる。またボランティア、物品の寄付、特別なサービスの提供なといった善意の行いもより重要になる。危機の今、大きなブランドは、小規模なブランドが生き抜くのを助ける役割がある。

私たちが3月に立ち上げたデザイナービジネス支援のための基金「BFCファンデーション・ファッション・ファンド(BFC Foundation Fashion Fund)」のような行動はこの問題に対する一つの答えだ。しかしより大きなスケールで、より多くのことがなされなければならない。よって、私たちはクリエイティブ・インダストリーズ・フェデレーション(Creative Industries Federation)を支援し、デーズド・メディア(Dazed Media)のCEDであり共同創立者であるジェファーソン・ハック(Jefferson Hack)と一緒にイギリスのクリエイティブ業界に働きかけ、政府の追加的な施策を求めることでフリーランサーを支援するという活動も行っている。

「新型コロナ後はデザイナーやクリエイターたちがサポートし合い、より強いコミュニティー意識が芽生えるだろう」

WWD:ロンドンは新しい価値観を提案する新進デザイナーを生み出す都市だが、今後ファッションはどのように変化していくと思うか?

ラッシュ:私たちが現在対峙している危機は、間違いなく長期間にわたる文化的なインパクトをロンドンやその他の都市のファッション業界に与えるだろう。しかし、私たちの業界は立ち直る強さを持っているし、この困難に立ち向かうためにイギリスのファッション業界は一丸になろうとしている。新型コロナウイルス後は、デザイナーやクリエーターたちがお互いをサポートし合い、より強いコミュニティー意識が芽生えると思う。そしてそれは世界を変えるきっかけとなる。

経済のレベルでは、もうすでに消費者の要求や行動に変化が出ている。この後数カ月は、ブランドは規模の小さいコレクションを発表するだろう。回復までに長い道のりが待っていることは間違いない。そして、ファッション業界は消費者の欲求が平常に戻るまで待たなければならない。しかしながら、業界関係や消費者の行動の変化に伴い、ブランドが方向性を変えるという動きも見られる。私たちの仕事は、未来を見据え、消費者の需要が戻るまでデザイナーたちがコレクションを作り続けられるようにデザイナービジネスとファッション業界を支えることだ。

WWD:BFCは公式サイトで新型コロナウイルス情報をいち早く紹介したり、基金を創設したりするなど行動が早かった。

ラッシュ:危機が始まったとき、英国はイタリアやフランスやなど他のヨーロッパ諸国より1~2週間ほど状況が遅れていたため、より早い対応や、他のマーケットで起こったことから学んだことを実行する機会があった。早い時期からデザイナーやファッション業界全体にアンケートを送り、フィードバックを照合して英国政府からの最新情報やアドバイスを共有した。また状況の変化に素早く対応し、政府との意思伝達経路を確立して、双方向の対話の調整を実現した。これはとても大切なことで、このおかげで諸々の措置を講ずることができたと同時に、業界がどのような問題に面しているかを政府に正確に伝えることができた。

WWD:「BFCファンデーション・ファッション・ファンド」について最新情報は?

ラッシュ:若手支援のNEWGEN、BFC ファッション・トラスト(BFC Fashion Trust)、BFC /ヴォーグ デザイナー・ファッション・ファンド(BFC/Vogue Designer Fashion Fund)、JD.COM協賛によるBFC /GQ デザイナー・メンズウエア・ファンド(BFC/GQ Designer Menswear Fund Supported by JD.COM)など、私たちが手掛ける主導的行動は、人材発掘やその育成という本来の目的を変更し、BFCエデュケーション基金(BFC Education Foundation)の準備金と共に、大半はデザイナービジネスの支援に、そして一部を学生に割り当てる助成金という形で100万ポンド(約1億3400万円)以上の緊急資金を捻出した。クリエイティブに携わる次世代の人材のための基盤をつくり、この難しい局面においてファッションビジネスを救済することを可能にするためだ。

100万ポンドという額はいいスタートを切れたと思うが、必要な支援の規模はこれよりもずっと大きいもの。そこで私たちは業界や個人、政府に助けを求めている。私たちのパートナーである、セレクトショップ大手のブラウンズ(BROWNS)、コーチ(COACH)、デポップ(DEPOP)、クリアペイ(CREARPAY)などの企業はすでに基金に追加の寄付をしている。ここ数週間でより多くの寄付を確保することになるだろう。

資金を素早くビジネスに投入することを重視しており、助成金はすぐに利用可能になる。第1回目の申請の受け付けは終了しているが、寄付金が50万ポンドに達するごとに申請の受け付けを再開して、この危機で打撃を受けた多くのビジネスを支援する。資金は従業員の雇用、諸経費や事業存続に使うことができる。

「最優先事項は私たちの業界の人々の安全と生活の保障」

WWD:6月のメンズはキャンセルしたが9月のウィメンズについてはどのように進めていくのか。

ラッシュ:6月のロンドン・ファッション・ウイークについては、デザイナーたちに作品発表のプラットフォームを提供し、コンセプト説明や積極的な活動の場を与えるため、デジタルというオプションを検討している。9月に世の中がどのような状況になっているかまだ想像できないが、状況に応じて変更するということは余儀なくされることはあり得るだろう。目下、物理的なファッション・ウイークの開催は不可能。現在の最優先事項は私たちの業界の人々の安全と生活を保障すること。そしてそれが商品やコレクションを新しい方法で見せることを含むのであれば、真剣に取り組まなければならない。

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人気美容師も参加する“部屋でヘアを楽しむ”新プロジェクト「#部屋WeGo」がスタート おうち時間をポジティブに!

 ヘアケアブランド「パンテーン(PANTENE)」は、外出自粛が続く中で少しでも髪を通して前向きになれるように、新プロジェクト「#部屋WeGo」をスタートさせた。同ブランドは、これまで“あなたらしい髪の美しさを通して、すべての人の前向きな一歩をサポートする”を理念に掲げ、一人一人の個性の尊重について考えるきっかけづくりを「#HairWeGo さあ、この髪でいこう。」キャンペーンを通して展開。同キャンペーンは過去に“画一的な就活ヘア”や“地毛証明書をはじめとした髪型校則”など、髪にまつわる問題に着目し、メディアやSNSを通して社会を前向きに変えるきっかけをつくってきた。

 そうした問題提起に対して、一般の人だけではなく美容師の間でも議論が生まれ、社社会全体で大きな話題となった。特に美容師は、髪にまつわる悩みや葛藤で、前向きな一歩を踏み出すことができない顧客の声を直に聞く機会が多いからこそ、このキャンペーンに強く共感し、多くの想いを発信していた。そうした経緯から、今回、「パンテーン」は美容師と共にプロジェクトを行う。

 今、新型コロナウイルスの流行により、多くの人が一日を自宅で過ごすことが当たり前になる中、一人一人が髪を通して前向きになり、おうち時間を少しでも明るく過ごせるようにという願いから、“髪のチカラ”を信じるという共通の想いを持つ全国の美容師とタッグを組んだ。ブランドメッセージ「#HairWeGo」を、今だけは「#部屋WeGo」と#(ハッシュタグ)を変更して「#部屋WeGo」プロジェクトをスタート。今だからできる「お部屋で楽しむヘア」、「お部屋でできるヘアケア」や「ちょっと前向きになれるヘア」を全国から幅広く募集し、日本中のおうち時間を髪から前向きに、かつ楽しめるプロジェクトを美容師と共に展開していく。

“こんなときだからこそ、
ヘアで前向きになろう”

人気サロンが打ち出す
「#部屋WeGo」は?

 今回のプロジェクトに賛同してくれた人気ヘアサロン「シャチュー(SHACHU)」、「ゴールド(GOALD)」、「ラフ フロム ガーデン(Laf from GARDEN)」「アース(EARTH)」、「レコ(LECO)」の5サロンにはプロジェクトスタートを前に、「#部屋WeGo」プロジェクトへの想いを語ってもらうとともに、それぞれのサロンの個性を生かした「#部屋WeGo」なヘアを提案してもらった。身近なものを使用してすぐにできるヘアアレンジ&スタイリングなのでぜひ参考にして、プロジェクトに参加してほしい。

あなたもぜひ「#部屋WeGo」
プロジェクトへ参加してみよう!

 「#部屋WeGo」プロジェクトは美容師だけではなく誰でも参加可能。「お部屋で楽しむヘア」や「お部屋でできるヘアケア」「ちょっと前向きになれるヘア」など、自分のお気に入りのヘアをプロジェクトハッシュタグ「#部屋WeGo」をつけてSNSに投稿して、日本中のみんなと共におうち時間を楽しもう。他の人が投稿した「#部屋WeGo」も参考にして、こんなときだからこそいろいろなヘアに挑戦してみよう!

問い合わせ先
パンテーンカスタマーサービス室
0120-021-327

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サステナから成分まで 新トレンド“クリーンビューティ”の5つの課題

 欧米の美容市場ではジェネレーションZやミレニアル世代など若年層を中心に、“クリーンビューティ”のトレンドが起こっている。クリーンビューティとは肌や環境に優しい成分を使用し、動物実験をせず(クリエルティーフリー)、社会や環境に配慮した美容製品を指す言葉だ。このトレンドとともに、さまざまな製品が見直され始めている。

 例えば環境配慮といえば、サステナビリティが重視されるようになった。ファッション業界では早くから環境への影響が指摘されてきたが、化粧品はまだまだマイクロビーズやプラスチック、使い捨ての化粧落としシートのような使用後のリサイクルや環境への影響が懸念される製品が数多くある。また、使用される成分が環境や人体に悪影響を与えないか、児童搾取など労働問題を伴うものでないのかなど、消費者の目は厳しくなっている。

 そんなクリーンビューティのトレンドの中でも、特に注目される課題がある。これまで当たり前のように使用していたアイテムを見直すきっかけとしても、以下の5つのトピックスを紹介したい。

(1)デオドラント

 デオドラントには成分や容器の課題がある。セフォラ(SEPHORA)では独自のクリーンビューティ基準で選んだ「クリーン アット セフォラ(Clean at Sephora)」のカテゴリーがあるが、その中でもデオドラントは目立った存在として分類されている。

 成分にはいくつかの懸念がある。デオドラントには塩化アルミニウム(塩化AI)が含まれることが多いが、これは肌への刺激性や乳がん発症のリスクを懸念する声が上がっている。科学的に危険性が裏付けられている訳ではないが、乳房に近い脇の汗腺に塗布することに少なからず懸念を抱く消費者が増えているようだ。また肌への刺激性が懸念される合成香料なども広く用いられている。

 日本でもそういった懸念に対応する企業が出てきた。「サボリーノ」などを扱うスタイリングライフ・ホールディングスBCLカンパニーはフランス発「ゼットエマ(Z&MA)」を展開。パラベン、鉱物油、合成香料など12の成分を使用せず、原材料の栽培から流通までを明確にし、エシカルな発信でジェネレーションZ世代にアプローチするブランドだ。

 またアプリケーターの多くがプラスチックで出来ており、そのリサイクルも課題のひとつだ。デオドラントのD2C(Direct to Consumer)ブランド「マイロ(MYRO)」は詰め替え式で販売している。従来よりもプラスチックを約50%削減し、100%天然香料。またビーガン処方でグルテンや鉱物油を含まず、臭いの原因となるバクテリアをプロバイオティクスで中和するという。

 それでいて価格は約10ドル(約1100円)と手頃で、詰め替えはサブスクリプション(定期購入)でも提供している。そんな画期的な「マイロ」は昨年8月にシードエクステンションラウンドでテニス選手のセリーナ・ウィリアムズ(Serena Williams)らから資金調達を行った。現在はアメリカ国内のみで販売している。

(2)日焼け止め

 米ハワイ州はサンゴ礁保護の観点から、2021年から紫外線吸収剤オキシベンゾンとオクチノキサート配合製品の販売を禁止する。日焼け止めに配合されるこういった環境に悪影響を与える成分を規制する流れは世界で広まっている。パラオ政府は1月からサンゴ礁に有害な10成分を含む日焼け止めの輸入や販売、持ち込みも禁止した。またカリブ海のオランダ領ボネール島やメキシコ(自然保護区域のみ)でも規制が行われる。

 このような流れから、サンゴ礁に優しい“リーフフレンドリー”を押し出すブランドや製品が登場している。オーストラリアの「エブリデー フォー エブリバディ(EVERYDAY FOR EVERYBODY)」は、海に囲まれた国で生まれた背景からも、サンゴ礁保護に積極的だ。日焼け止めにはオキシベンゾン、オクチノキサート、PABAを使用せず、そのほかパラベンや香料などの成分も不使用だ。国外ではアメリカや香港、シンガポールに配送しており、日本での販売にも期待したい。

 なお、既存ブランドでは「コパトーン(COPPERTONE)」や「ニールズヤード レメディーズ(NEAL'S YARD REMEDIES)」、「メルヴィータ(MELVITA)」などがリーフフレンドリーな日焼け止め製品を発売している。

 しかし、日焼け止めが悪なのではない。日焼けは皮膚がんのリスクを高めるため、紫外線防御は欠かせない。アメリカの「スーパーグープ(SUPERGOOP)」は創始者のホリー・サガード(Holly Thaggard)が紫外線による皮膚がんの蔓延を食い止めると言う目標を掲げており、子どもたちのため5つの州の学校に日焼け止めを提供している。製品は厳格なEUの基準に基づいた成分を使用しているほか、動物実験された成分は使用せず、オキシベンゾンなども不使用だ。日本からもリボルブ(REVOLVE)の国際発送で購入可能だ。

(3)ネイルポリッシュ

 ネイルポリッシュは有害な成分を含みがちな製品といわれている。アレルギー症状を引き起こす懸念のあるトルエン、フタル酸ジブチル(DBP)、ホルムアルデヒド等は広くポリッシュに用いられる成分だ。またこれらは環境への影響も指摘されている。

 そんなネイルポリッシュにも、変化が訪れている。コティ(COTY)のネイルブランド「サリー ハンセン(Sally Hansen)」は昨年11月にクリーンラインを発売した。ビーガンであり、パラベンや硫酸塩、ホルムアルデヒドなど消費者が有害と感じる16の成分を使用しない。マーケティング担当を兼任するセリア・トンバラキアン(Celia Tombalakian)副社長は米「WWD」の取材に対し「(クリーンラインに)信じられないほどの反響がある」と、その注目度の高さを語っている。

 またカリフォルニア発のネイルポリッシュブランド「ハビット コスメティクス(HABIT COSMETICS)」は有害な10成分を使用せず、ビーガンかつクルエルティーフリー(動物実験をしない)処方を採用。サステナブルな竹のキャップに、ブラシや内部キャップは再生プラスチックを使用するなど環境配慮がなされ、日本からも購入が可能だ。。ポリッシュのボトルは洗いにくさや成分の付着により環境汚染が懸念されるといい、アメリカ国内のみ展開する「コート(COTE)」の場合はガラスボトルをリサイクルのために回収し、協力した人には次回購入時に10%オフとなるクーポンを付与している。

(4)生分解性

 環境に悪影響を与えるとなりうるものの中で目立つのはパッケージだが、実は多くのグリッターも問題だ。グリッターの多くはプラスチックだが、このマイクロプラスチックは下水処理場でも処理しきれず、海に流れ出ることが指摘されている。歯磨き粉などに含まれる研磨剤がその代表だが、アイシャドウのグリッターも、そのまま流れ出たら海洋の生態系に影響を及ぼしてしまう。

 そんな中、韓国の「アンリシア(UNLEASHIA)」は“国内最大の大きさ”とうたう大粒のグリッタージェルを販売している。このブランドで用いられるグリッターはすべて、微生物によって分解され自然に返る生分解性プラスチックを使用している。またビーガン処方であり、動物愛護団体PETAが認証するクルエルティーフリー製品だ。包装材などにも環境配慮が行われているという。

 「アンリシア」は日本向けにECモール「キューテン(QOO 10)」で販売しており、日本セールス担当のパク・ユミン氏は「自分をありのままに自由に表現し、製品を購入する際にも倫理的な消費を重視するZ世代がターゲットだ」と語っている。韓国では一般消費者からアイドルのメイクアップアーティストにまで用いられているそうだ。

 また韓国といえばシートマスクが人気だが、このシートも使い捨てで環境によいとはいえない。アモーレパシフィックが韓国内で発売する「ステディー(STEADY:D)」は“クリーンマスク”と称し、成分への配慮だけでなく生分解性のシートを使用している。

(5)詰め替えパッケージ

 生分解性のように自然に返す配慮も重要だが、パッケージはそもそもゴミを増やさない配慮も大事になってくる。そこで最近注目を集めているのが詰め替え式のリップスティックだ。「エルメス(HERMES)」のメイクアップ「ルージュ・エルメス」も詰め替えパッケージで注目を集めた。

 アメリカ発「ケアーワイス(KJAER WEIS)」はサステナビリティを念頭に作られたアイテムだ。パッケージは何度も使用できるシルバーのコンパクトで、リップやチーク、またベースメイクからマスカラに至るまで詰め替えが可能。もちろん成分は合成香料やパラベン、シリコーンなどは使わず、使用する成分をリストで提示している。ブランドは「レフィルのパルプ素材のパッケージも外箱もリサイクルが可能。今年はさらにレフィルシステムに機能を追加しようとしている」と、まだまだ改良を行う予定を明かした。日本では「リボルブ」のECサイトで購入でけいる。

 またカナダ発「イレート コスメティクス(ELATE COSMETICS)」はパッケージに竹を使用する。竹は成長が速く、しなやかで丈夫なことから持続可能な素材といわれる。ブランドが使用する竹はフェアトレードメーカーと協力する中国産だ。また公式サイトの全ての製品ページにパッケージとリサイクルに関する記載がされ、再利用も促している。国際発送も行なっており、日本からも購入できる。

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気鋭デザイナー、イリス・ヴァン・ヘルペンが見据えるファッションのデジタル化と未来

 オランダ人クチュールデザイナーのイリス・ヴァン・ヘルペン(Iris Van Herpen)は、3Dプリントや3Dデザインテクノロジーを活用したウエアで知られる。毎シーズン、オートクチュール・ファッション・ウイークでショーを行なっているが、2年前からはサイバースペース(コンピューターやネットワーク上の仮想空間)活用の準備を開始。7月に向けて2020-21年秋冬コレクションの制作と同時に、より多くの人がその異世界的なクリエイションに浸れる“没入型バーチャルリアリティー(VR)体験”を手掛けているという。ファッションの感動をデジタルの世界にもたらすことはできるだろうか?彼女が考えるファッションの未来とは?

米「WWD」(以下、WWD):「イリス ヴァン ヘルペン(IRIS VAN HERPEN)」はハイテクなインスピレーションと最先端のテクニックで知られているが、物理的なショーが主なコミュニケーションツールであり続けている。それはなぜか?

 イリス・ヴァン・ヘルペン「イリス ヴァン ヘルペン」デザイナー(以下、ヴァン・ヘルペン):私はダンス経験者なのですが、その物理的な緊張感や立体的な側面は私の作品を象徴するものであり、作品のおける原動力でもあります。そして、物理的なランウエイショーでは非常に美しく表現することができるのです。今のところ、そういったプレゼンテーションを続けていくけれど、未来にとってサステナブルではないから、ファッション業界はショーを減らす必要があると考えています。その点、デジタル・プラットフォームは異なる可能性を秘めています。

WWD:ほかに物理的なショーで好きなところは?

ヴァン・ヘルペン:本当に好きなのは、人間的な側面や物理的に皆が一緒にいることが生み出すインパクト。それは、ライブコンサートのようなものです。どのように音楽を感じるかということは、ファッションショーを見たときに実際どのように服を感じるかということに似ています。それは化学反応のような相互作用であり、もちろんバーチャルリアリティーとは異なるでしょう。一方、デジタルの世界には、現実を一変させるための大きな可能性とある種の創造性や自由があるので、私はそこを探求していきたい。フィジカルとデジタルは、互いを高め合い、補完し合うことができると思います。

WWD:7月のオートクチュール・ファッション・ウイークは中止になった。デジタルでの実験には絶好の機会だが?

ヴァン・ヘルペン:今は、さらにデジタルの世界に踏み込む興味深いとき。私の作品は、現実世界ではすでにそこに取り組んでいて、極限まで物質性に挑んでいます。一方、バーチャルの世界では、動きや透明感、複雑な動きをディテールまでとらえるのは本当に難しい。でも、それは実現しつつあります。技術は進化を続けているので、そのための一歩を踏み出すには本当に良い瞬間だと感じています。

WWD:現在開発中の没入型VR体験とはどのようなものか?

ヴァン・ヘルペン:新しいコレクションと並行して同じアイテムのVR体験を制作しています。ただ正直なところ、このような方法に取り組むのは初めてなので、本当に実験のようなもの。物質性、感情、そして私の作品にとって重要な3次元性を再現する実験です。

WWD:クリエイションにおけるテクノロジーの活用についても教えてほしい。

ヴァン・ヘルペン:クリエイションは、さまざまな要素のミックスで成り立っています。例えば、ディテールは手でスケッチするものもありますが、その他は「マヤ(MAYA)」や「ライノ(RHINO)」というソフトを使って3Dでデザインします。技術的なファイルは「イラストレーター(ILLUSTRATOR)」で作ることが多いですし、「グラスホッパー(GRASSHOPPER)」も活用しています。特にこれらのソフトはデザインの初期段階で用いることが多いですね。そして、よく「ハンドメードなのか?3Dプリントなのか?」と聞かれるのですが、現在のところ、その答えもミックスと言えます。異なるプログラムを用いた過程ではあるのですが、最終的には手仕事でもあるので。

WWD:デジタルショーは、ある意味ファッションを民主化するものと考える?

ヴァン・ヘルペン:観客の多くは、ウェブサイトやインスタグラムでしか私の作品を見ていません。だから、誰もが作品の立体感や真のエモーショナルな部分を体験しているわけではないのです。(デジタルによって)それらをより多くの人々に届けることができるという可能性には、とてもワクワクしています。

WWD:新型コロナウイルスの大流行による影響を受けて、デジタルフォーマットは広く普及すると思うか?

ヴァン・ヘルペン:今は皆にとって本当に重要な瞬間で、生産方法や旅の仕方、ショーや撮影への取り組み方など私たちの選択に変化をもたらすでしょう。そして、サステナビリティへの注力は、今後ますます強まっていくと思います。

感情や職人技はデジタルで伝えられるか?

WWD:物理的なファッションショーのエモーショナルな部分をデジタルの世界にもたらすことはできる?

ヴァン・ヘルペン:突き詰めるとイエスですが、時間は必要。例えるなら、新しい楽器を習うようなものでしょう。新しいツールには常に探求が必要であり、自分の言語を表現できるようになるまでには時間がかかります。ただ、いずれはバーチャルリアリティーの中でも服の持つエモーショナルな面を伝えられるようになると感じています。

WWD:では、クラフツマンシップはどうか?

ヴァン・ヘルペン:デジタルは、クチュールアトリエの美しいプロセスを表現するための本当に素晴らしいプラットフォームになると思います。今私たちがやっていることは、アトリエでの過程を撮影してビデオで共有しているだけなので、ある意味限られています。しかし、そのプロセスには多くの愛と感情が込められていて、それを観客の皆と共有できるなら最高ですよね。特にオートクチュールの場合は、一つの作品の完成までに長い時間や幅広い職人技と専門知識が必要。そして、「イリス ヴァン ヘルペン」のコレクションは建築と科学と生物学のコラボレーションなのですが、その部分を表現したり共有したりということは、まだあまりできていません。その一部を、目の前で出来上がっていく服を見ることができるようなVR体験に持ち込むことができればいいなと思っています。それに、まだまだ多くの人はクチュールがどのように作られているかを知りません。これらの新しいツールを取り入れることで近い将来、もっとたくさんのことを共有できるようになると信じています。

WWD:インスピレーションや新たな可能性を得るために、他にどんな業界に注目している?

ヴァン・ヘルペン:インスピレーションもコラボレーションも、さまざまな分野から来ています。建築は私たちがよく一緒に取り組む業界ですが、そのほかにも大学やハイテク企業、生物学者、科学者ともコンタクトを取っていますよ。これらのミックスがコレクションに生かされるのですが、このような継続的な対話はモノ作りの過程の中で本当に重要な部分です。

WWD:未来に向けて、ファッションはどこに進んでいると考えるか?

ヴァン・ヘルペン:個人的には、ファッションはもっと周りの世界と絡み合うことができるし、広い範囲での協業を実現できると信じています。私たちは、サステナビリティへの大きな一歩を踏み出すために、科学やテクノロジーとのコラボレーションを視野に入れるべきです。私自身が示したいのは、オートクチュールはファッションにおいて本当に重要な要素だということ。オートクチュールはサステナビリティの実験室として、未来の新たな変化の可能性を見つけるための開発と実験の源となり得るのです。また素材開発や生産においても、今以上の多くの可能性を秘めていると思っています。業界のスピードがその進歩の妨げになっているのではないでしょうか。だからこそ、この“立ち止まる”瞬間は、より持続可能な未来のための新たな素材や製造技術を見つけるために、実際私たちが協力し合うことができるということを示す上で大切。私は、皆がこの瞬間を受け入れ、企業間やブランド間のコラボレーションの機会や代替案を探し始めることを願っています。ファッションは、もっとコミュニティーのようになるべき。そうすることが、サステナビリティの中で前進していくことにつながると思います。そして、自分たち自身が変わるだけではなく、みんなで一緒に対話をしていくべきだと考えています。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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それぞれの思いの詰まったマスクで登場 業界に力強いエールPart4

 「WWDジャパン」4月20日号、「WWDビューティ」4月23日、30日合併号では、新型コロナウイルスによる感染拡大で一人、一社では立ち向かえない未曾有の状況下にある今、互いに励まし合い、知恵を共有し合おうという特集を企画した。表紙では、ファッション&ビューティ業界の皆さんにオリジナルデザインのマスクを着用した写真で参加いただいた。さまざまなデザインマスクとともに力強いメッセージをぜひ読んでほしい(URLはマスクの詳細や予約・購入先へ遷移します。完売または販売中止になっている場合もあります)。


 「WWD JAPAN.com」はファッション&ビューティ業界を応援すべく、週刊紙の「WWDジャパン」と「WWDビューティ」に掲載した新型コロナウイルス関連ニュースを無料開放します。記事やコラムから未曾有のピンチを克服するヒントや勇気を感じ取ってくだされば幸いです。

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「SHIRO」が感染拡大から1カ月でアルコール配合の新製品 一部生産を止めて増産中

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、コスメティックブランドの「シロ(SHIRO)」は、手指を清潔に保ち、潤いを与えて保護する“ハンドリフレッシングシリーズ”を拡充した。4月20、23日にはそれぞれ、アルコール配合量を80vol%(体積あたりの濃度)に増やし、消毒用エタノールの代替品として手指消毒に使用できる(医薬品・医薬部外品ではありません)ミストとジェルを相次いで発売。香りは、オリジナルブレンドの精油が織りなす「チャクラーサナ」と、清潔感のある石けんをイメージさせるブランド人気ナンバーワンの「サボン」の2種だ。“ハンドリフレッシングシリーズ”は、SNSでも注目が集まり瞬く間に完売したが、現在は予約受付中。製造準備が整い次第、順次発送予定だ。4月以降は、自社工場での既存品の生産を一部ストップして、“ハンドリフレッシングシリーズ”の拡充・増産に取り組んでいるシロの今井浩恵社長に聞いた。

WWD:新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、いち早く“ハンドリフレッシングシリーズ”を拡充・増産する理由は?

今井浩恵社長(以下、今井社長):感謝の気持ち、です。このような状況になってすぐに思い浮かんだのは、医療機関や老人ホームなどで働いている友人や、日頃お世話になっている運送会社の従業員の皆様のことでした。「何か、自分たちにできることをしたい」と思いました。自社の従業員も含め、「大切な人たちを失うなんて、絶対イヤ」と強く思いました。単純にこれ以上、誰にも悲しい思いをして欲しくなかったのです。

WWD:感染拡大から約1カ月が経とうとした時、まずはアルコールを65vol%配合した「チャクラーサナ ハンドリフレッシュナー」を発売した。このように素早くアクションできたのは、自社工場で製造しているおかげ?

今井社長:自社工場があることでスピーディに製造できたのはもちろんですが、実現したのは、原料の生産者や運送会社など、取引先の皆様のご協力があってのこと。心から感謝しています。皆様に尽力していただいたおかげで、アルコール65vol%配合の「チャクラーサナ ハンドリフレッシュナー」は、企画から1カ月以内という短期間で発売できました。その後「もっとアルコール濃度が高い製品が欲しい」というお客さまの声を受け、アルコール濃度を80vol%まで高めたミストとジェルも発売しました。香りの処方は、化粧品の開発を続けて20年以上のベテラン従業員が、たった一回の処方でベストなものを提案してくれました。容器は、新型コロナウイルスの影響で調達が難しくなっています。他の既存品に使う予定だったボトルを使用し、一刻も早くお客様のもとへお届けできる体制を整えました。

WWD:化粧品ブランドにとって、ブランドイメージを表現する手段でもあるパッケージは妥協できないところだが、今回は例外だった?

今井社長:本来なら、このようなことは「絶対にやらないこと」のひとつですが、今回は特別でした。化粧品の製造において、一番時間を要するのは容器です。もしそれを待っていたら、今回のように一番必要な時に発売することはできませんでした。一刻も早くお客様のもとにお届けしたいという思いから、すでにある容器を活用する決断を下しました。今年3月、ルミネエスト新宿店に新業態のデジタルストア「シロ セルフ(SHIRO SELF)」を併設オープンし、この店舗では紙箱なしの製品をご購入いただくと、価格の3%をお値引きする“エシカル割”という取り組みを始めました。大切な資源を無駄にしないためのこの取り組みは、SHIRO オンラインストアでも導入しています。たくさんの方に認知していただけるよう、発信を続ける予定です。無駄を出さないことは、大事な価値観だと考えています。このような背景からも、今回は、別の製品のボトルを使うことも自分の中で納得できました。

WWD:製品に対する反響は?

今井社長:4月10日にアルコール配合量80vol%のミストとジェルの予約受付を開始してからは、オンラインストアへのアクセスが集中。常にサーバーがダウンしてしまい、お客様にはご迷惑をおかけしました。予想以上に多くの方に注目していただいていることを実感し、現在はサーバーを強化し、より快適にお買い物をお楽しみいただける体制を整えています。オンラインストアでは、発売から20日の時点で、およそ20万本ものご注文をいただいております。現在は欠品でご迷惑をおかけしておりますが、自社工場では現在も、主要製品の製造を一部ストップしてミストとジェルの生産を急いでいます。予約は継続して承り、お客様にお届けできるタイミングを順次お伝えする予定です。業界では今、多くのブランドが製品の寄付など素晴らしい取り組みをしていますが、私たちはメーカーとして、自分たちにできることに尽力し、必要とされる限り永続的に製品をお届けすることで、お客様や社会に貢献したい。今必要な製品を作り、すぐにお届けすること。これが、お客様の「安心」の助けになればと思っています。

問い合わせ先
シロ
0120-275-606

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小島健輔リポート エシカル&DX急進で過剰供給も終焉 コロナ後のアパレル業界

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。新型コロナウイルスの感染拡大は予断を許さず、ゴールデンウイークとともに緊急事態宣言が解かれるか不透明だ。ファッション業界は「コロナ後」を見据えた変革を迫られている。

 コロナパニックによる店舗の休業が長引くにつれ、アパレル業界は売り上げが激減しても固定費や仕入代金の支払いに迫られ、多くの事業者が資金繰りに窮して存亡の危機に瀕している。コロナパニックがいつ収束するのか読めない中、業界も消費者もカタルシス後の世界へ突入しようとしている。

秋冬は新旧継ぎ接ぎの品ぞろえに

 壊滅した春夏商戦に続く秋冬商戦は、春物の残品に秋冬の新作を継ぎ足す新旧継ぎ接ぎの品ぞろえで戦う籠城戦になりそうだ。その理由は以下の4つだ。

(1)仕込みが大幅に圧縮される

 アパレル業界は販売機会がECや一部の店舗に限られたまま春夏物の在庫を大量に抱え、売り上げが激減して春夏物の仕入れ代金支払いにも窮しているから、秋冬物の仕込みどころではない。仕入れ資金も限られコロナパニック収束の時期も読めないから、秋冬物の仕込みは大幅に圧縮するしかない。

(2)新しいトレンドが期待できない

 国内・欧米ともコレクションや展示会がことごとく中止になったから、一部のオンラインコレクションを除いて秋冬の新しいトレンド提案はほぼ皆無で、新しいトレンドが生まれる状況にない。他人との接触を控えておしゃれを忘れ、収入も蓄えも目減りした消費者に新たなトレンドに飛びつく意欲があるとは思えない。

(3)春物残品が秋冬になじむ

 今春物はナチュラルカラーのゆる抜けシルエットがトレンドだったから、新たなトレンドも出てこない今秋冬ではアウターやボトムなど大半の春物商品が無理なく品ぞろえになじむ。晩夏・初秋では新作に春物残品を合わせて販売するのは珍しいことではなく、春物在庫を抱えて多くの店がそれを行う今年の秋口では違和感もないはずだ。

(4)持ち越し継ぎ足しは異例ではない

 アパレル業界ではシーズン中の消化が必定と思われているが、現実はそうでもない。紳士服など前シーズンの売れ残りに新作を継ぎ足す“鰻のタレ”型品ぞろえが定着しているし(既製スーツの持ち越し率は3割を超える)、商社やOEM(相手先ブランドの生産)業者が生産地に抱えた未引き取り在庫に多少の手を加え、翌シーズンに“新作”として投入するのも珍しいことではない。そんな実態がコロナパニックで表に出るだけだ。

新旧・新古の垣根がなくなり過剰供給も終わる

 新作を売るはずの通常のアパレル店が持ち越し品と新作品の継ぎはぎになれば、オフプライスストアやリユース店との垣根も低くなる。

 巣ごもり生活やリモートワークで傍目を気にせず一段とカジュアル化し、お財布も少なからず傷ついた消費者もおしゃれの意欲は盛り上がらないから、今年の春物や去年の秋冬物でも気にならないし、よほどのファッショニスタかガチなギョーカイ人でもない限り見分けもつかないだろう。新旧を問わず、気に入る商品が手頃に買えればよしとするに違いない。

 現代文明の先が見えなくなったのだから、おしゃれな人はビンテージ品に走り、むしろ積極的にオフプライスストアやリユース店をあさるだろうし、感度の高いブランドショップやセレクトショップもデッドストックやユーズドをミックスして通な顧客に応えようとするだろう。まさに新旧・新古の垣根がなくなるのだ。

 新旧ミックスの品ぞろえが広がり新旧・新古の垣根もなくなれば、新規の生産・調達も激減し、慢性化していたアパレルの過剰供給もようやく解消に向かう。新作の企画・開発よりデッドストックやユーズドとの編集MDやリミックス・スタイリングが競われ、散々うたわれてきたエシカルなリサイクル消費が現実になり、過剰供給が支えてきた新品市場は急速に萎縮していく。

DXとC2Mが急進しサプライが一変する

 コロナパニック下で大半の店舗が休業してECが救世主となり、濃厚接触が敬遠されてリモートワークとリモート接客が必定となったのを契機に、販売のECシフトとOMO※1はもちろん、企画・生産から物流までデジタルシフトが一気に進む。

 これまでのように販売の半年前後も前から生産して在庫を積めば、トレンドや天候だけでなく類似商品の供給にも左右されるから、AI(人工知能)でどう予測しても需給ギャップを埋めきれるものではない。リードタイムが長くロットが大きいほどリスクも大きくなるのは必定だ。

その結果が供給量の過半が売れ残る惨状となっていたが、それもコロナパニック後には終わる。小売りチェーンやSPA(製造小売り)からメーカーや商社、OEM業者まで、春夏物の大量残品やキャンセル品を抱えて秋冬の仕込み資金も枯渇し、リスクの大きな先物仕込みができなくなるからだ。

 秋冬物の仕込みが停滞しても小売り段階では春物残品との継ぎ接ぎで品ぞろえし、新旧・新古の垣根のないエシカル消費に移行すると前述したが、このカタルシスを契機に企画・生産のデジタル化も加速し、リードタイムの革命的短縮と受注先行C2M※2による無在庫化が一気に進む。仕込み在庫も流通在庫も加速度的に圧縮され、アパレル業界は長年のギャンブル体質からようやく解放されるが、その過程で膨大な無駄とロスが支えて来た多くの企業と雇用が消えていくのは避けられないだろう。

 カタルシス後の大変革を主導するのは恐らく、店舗に過剰投資して余力のない小売りチェーンやSPAではないだろう。2000年の定期借家契約導入を契機に、普通借家出店の差し入れ保証金で首が回らないナショナルチェーンがことごとく置き去りにされ、新手のチェーンがSPA化して世代交代が急進したことが想起される。企画・生産段階や物流のデジタルトランスフォーメーション(DX)に集中投資してオン・デマンドなサプライ態勢を提供するのは、デジタル・プラットフォーマーに変貌する専門商社やVMI※3コントラクター/ベンダーになるに違いない。

※1.OMO(Online Merges with Offline):ネットと店舗の垣根を超えた融合を意味し、モバイルフォンをキーツールとしてウェブルーミングとショールーミングを駆使するニューリテール戦略

※2.C2M(Customer to Manufactory):ネットやショールームで受注してからデジタル生産や3Dプリンタで素早く生産して“個客”に届けるパーソナル対応の無在庫販売手法。F2C(Factory to Consumer)ともいうが、個客から生産へという方向に意味があるゆえC2Mと捉えたい

※3.VMI(Vendor Managed Inventory):あらかじめ定めた棚割りに基づいてベンダーに補給と在庫管理を委任する取引形態

店舗販売の無人化とリモート接客が急進する

 コロナパニックが収束しても、店舗販売はもう元には戻らないだろう。接客にせよ精算にせよ、これまでのような濃厚接触が容認されるとは思えないからだ。

 レジで対面するだけで緊張感が走り、汚染されたキャッシュなど触りたくもないし、カードの手渡しもパスワード入力もはばかられるから、一切の人的接触と入力操作が不要なタッチレス決済に移行するしかない。コード決済もタッチレスだがスマホの操作が必要で、格段にスピーディーな近接通信(NFC/FeliCa/Bluetooth)か生体認証と画像解析AIによる自動精算※4が普及するのは時間の問題だ。「アマゾンゴー(AMAZON GO)」が懐かしいスチームパンクとなるのに2年もかからないだろう。

 精算さえ接触が忌避されるのだから、ソーシャルディスタンスどころか個体空間さえ踏み越えて濃厚接触する対面販売が生き残るとは到底思えない。リアル店舗でも、近接通信ログインでAIがエントリーを受け付けてレコメンドし、マスクを装着した販売員がソーシャルディスタンスを保ってようやく接客することになるのだろう。濃厚接触が不可避で互いに労力を要するフィッティングは、ECのようなバーチャルフィッティングでは代用できず、基準ボディーによる擬似フィッティングや局所カメラを使った近接リモートフィッティングに移行すると思われる。

 チャットやビデオを駆使してリモート接客するECが当たり前になれば、実店舗でもITを介した近接リモート接客に移行するのは難しくないから、店内接客のリモート化も進むのではないか。人とパーソナルに濃厚接触するのが店舗販売の魅力という認識は、コロナパニックを契機に捨て去るしかなくなった。

※4.自動精算:決済と精算は別のプロセス。引き落とし口座(ID)を認証すれば「決済」は可能だが、何をいくつ購入したのか検証して金額を確定しないと無人「精算」はできない

「人」「店」「在庫」 三大コストの圧縮が急進する

 これまでの過剰供給と過剰消費が支えてきた過剰な人、過剰な店、過剰な在庫という三大コストがコロナパニック下のリモートワークやエシカル消費で露呈し、行動と接触の規制がもたらす消費と経済の萎縮で綱渡りの資金繰りを強いられたのだから、コロナパニックが収束しても三大コストの圧縮は加速こそすれ止まることはないだろう。

 店舗からECへのシフトが加速し、店舗運営も物流倉庫運営も自動化・省人化が進み、企画・生産のDXとリサイクルMDで新規商品の供給も流通在庫も減少していく。少子高齢化が進み所得も消費も萎縮していく中、無理にあおって水ぶくれした経済がエシカルな適正規模に縮小していくのは自然の摂理と悟るべきだ。

 人も店も在庫も腹八分目で手元資金にゆとりがある企業は、この危機を乗り越え次のチャンスに乗ることができるが、目一杯手を広げてキャッシュフローがタイトな企業はこの危機を乗り越えられない。人材、顧客、取引先は事業の三大リソースでありコロナ危機下でも最大限の維持に努めるべきだが、本当に必要なコストと不要なコストの仕分けはいずれ避けられないと腹をくくるべきだ。

文明破たん後のサバイバル消費にどう向き合うか

 大友克洋の「AKIRA」の予言通り、2020年の東京オリンピックが延期(中止もあり得る)に追い込まれ、映画「アウトブレイク」や「コンテイジョン」を地で行くパンデミックSFを実体験させられている人々にとって現代文明の破たんは現実であり、マスクや消毒品、トイレットペーパーや食材を求めて列に並び、果てはマスクや消毒剤を自製までしている。これがサバイバル社会やディストピア社会でなくてなんだと言うのだろうか。

 古くは「ブレードランナー」や「未来世紀ブラジル」、「時計じかけのオレンジ」「マッドマックス」から「風の谷のナウシカ」「少女終末旅行」まで幾度も描かれた、戦争や内乱、飢饉や疫病などで文明が破綻した後のサバイバル社会やディストピア社会を今、誰もが容易に想像できるに違いない。コロナパニックが収束しても、この実体験はウイルスのように人々のDNAに染み付き、ライフスタイルと消費を根底から変えてしまうだろう。

 いつ社会のインフラが止まり生活の基盤が崩れても生き残れるよう、エコミニマル&エシカルなサバイバルを誰もが心の底で決意したかもしれない。不要不急の贅沢をあおる百貨店や中途半端な割高ブランドなど存在場所がなくなる一方、ライフラインを支える公共サービスや医療はもちろん、食品や医薬衛生品など生活必需品を提供する小売業者やサプライヤーは供給維持のサステナビリティ責務を痛感したのではないか。

 ならば、美しきエシカル消費をうたう一方で不要不急のトレンドと付加価値をあおって膨大な需給ロスを廃棄してきたアパレル業界は、どう悔い改め、サバイバル消費時代の存在価値を見出せばよいのだろうか。夢を作り夢を貪ってきたアパレル業界も、この機会にシリアスな現実を直視するしかないだろう。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

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柳井社長の知られざる一面とは? ユニクロを22年間追い続けた記者に聞く(後編)

 「WWDジャパン」4月27日&5月4日号はユニクロ特集です。今回の特集は、ユニクロをブレイク前夜から22年にわたって追い続け、「ユニクロ取材はもはやライフワーク」と語るジャーナリスト、松下久美さんに監修いただきました。松下さんは2010年に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)という本も出版しています。松下さんに今回の特集の読みどころを聞くインタビューの後編(前編はこちら)では、松下さんだからこそ知る柳井正ファーストリテイリング会長兼社長の人となりや、ユニクロの課題に迫ります。

WWD:今回の特集で、柳井社長やキーマン7人の取材に同行し一番驚いたことは、誰もが同じ内容を各自の言葉で話されることでした。それが、企業理念がはっきりしているということなんだと思います。

松下久美クミコム代表(以下、松下):今回あらためて思いましたが、皆さん謙虚ですよね。例えば、必ず「お客さま」という。「客」や「お客」とは絶対言いません。店舗スタッフのことも「お店のみなさん」と呼んでいましたし。それも一つの柳井イズムなんだと思います。誠実さ、謙虚さが根付いている。柳井さんは怒るときも敬語ですしね(笑)。それと、もともと経営理念や原理原則を大切にしてきた企業ですが、特に今は、柳井さんから後継チームへの事業承継のタイミングなので、みなさんそれを強く意識して実践されているんだなと感じました。柳井さんは「(後継者は)リーダーシップがあり、チームを作れるかどうか。スターはいらない」とおっしゃっていましたが、自分のようなカリスマはいないから、力を合わせてチームで経営してね、そして、誰が経営していくにせよ、組織・人材作りをしっかりしてね、ということを社内で徹底して伝えているのだと思いました。

WWD:柳井社長のクリエイティブに対するリスペクトの深さも強く印象に残りました。経営者や商売人という見られ方が強いですが、数字だけを見るビジネスマンでは決してないんだと実感しました。

松下:なかなかそれが世に理解されないんですよね。そういう思いから、前回「WWDジャパン」でユニクロを特集した2018年5月7日号では、「柳井正の真善美」という企画を組みました。ファーストリテイリングはカジュアルチェーンとして成長した企業ですが、祖業は仕立て服など高級品も扱う紳士服専門店。服の素材、仕立て、メンズ服のルール、時代性などについて、柳井さんにはその時代に培われたものがあるはず。雑誌も好きだったようですし。あと、学生時代に世界一周をして各地の街や美術館を見て、世界の文化に触れている。それが柳井さんの血となり肉となっているんだと思います。そして、自分にないものを持っている人をリスペクトして、その才能をユニクロで最大限に発揮してもらいたいという強い思い入れや情熱があると思ってきました。

WWD:ユニクロの世界戦略におけるクリエイティブディレクター、佐藤可士和さんや、元「ポパイ(POPEYE)」編集長でユニクロのグローバルクリエイティブラボ東京 クリエイティブディレクターの木下孝浩さんのインタビュー中に出た柳井社長とのエピソードを聞くと、まさにそういった印象を受けました。

松下:他方、外部からきた人材がフィットしないケースも過去にはいくつかありましたし、去っていった人もたくさんいます。でも、ユニクロを辞めた玉塚(元一デジタルハーツホールディングス社長。元ファーストリテイリング社長)さんや、澤田(貴司ファミリーマート社長。元ファーストリテイリング副社長)さんも、今も柳井さんとは親交があります。他にも、辞めた元社員と外部で会った際に、「頑張っているそうだね」って柳井さんが声を掛け、握手をしてくれて感激したという話も聞きました。今は大きな会社になったのでやや違ってきているとは思いますが、かつては一般社員とも近しい付き合いをしていたようです。私も「ユニクロ進化論」を上梓した際に、内容はともかく、「これはあなたの仕事の一つの集大成だ」と労い、「帯も書いたのに」と言っていただきました。出版前に原稿を見せるのははばかられたので、「ユニクロ本を書きます」とだけ伝えてあったのですが、帯を書いてもらっていたら、売れ行きが10倍違いましたよね、きっと。惜しいことをしちゃいましたかね(笑)。柳井さんは厳しい方ですが、その厳しさの裏に思いやりや人間味がすごくあるんですよね。あとは、ユニクロに対する強い愛情を感じますね。

WWD:コロナショックを受け、「店舗を閉鎖していない国や地域の方が少ない」と柳井社長は話していました。コロナショックをユニクロはどう切り抜けていくと松下さんは考えていますか?

松下:「今は商売を始めてから一番厳しい状況ではないか?」と尋ねたら、柳井さんは「どこが厳しいの?」とおっしゃっていましたよね。あれをやせ我慢と捉える人もいるでしょうが、本当にビジネスチャンスだと考えているんだと私は思います。1990年代後半や、リーマンショック後もそうでしたが、低価格業態は生活防衛意識が高まる不況の時に大きく伸びます。ただ、不況に伸びるとか売り上げを拡大すると表現すると拝金主義みたいに聞こえますが、1枚1900円とか3900円の服をお客さま一人一人に買っていただき、その「ありがとう」が積み重なって売り上げは伸びていくもの。お客さまのお役に立てることを次なるビジネスの原動力へと変えていこうとしている会社だからこそ、こういう厳しい状況下で伸びると思うし、これからどんどん成長していくアジアの中間層も、ユニクロの成長ポテンシャルだと思います。

WWD:一方で、松下さんは「昔に比べると今のユニクロはやんちゃさが少し足りない」「最近は『一勝九敗(注:柳井社長の自著のタイトル)』していない」と感じている部分もあると、特集の最初の構成会議では話していました。

松下:組織が大きくなり、やらなければならないことが増えて、その課題解決に専心しているからだと思います。売上高は国内他社に比べてもともと大きな会社でしたが、以前は驚くような仕掛けが定期的にありました。私がもう一度やった方がいいと思っているのは、05年に行った「セレクロ」。三田真一さんなどのスタイリストを起用し、彼らが選んだ「ユニクロ」商品を、期間限定で青山のイベントスペースで販売するという雑誌「リラックス(RELAX)」との共同企画でした。あと、かつては新商品を発売する度に、記者会見も行っていたんですよね。デニムのプレゼンテーションに藤原紀香さんが登場したり、ブラトップに吹石一恵さんが登場したり。今の「ユニクロ」なら会見を開かずともメディア側は取り上げるし、UGC(ユーザー生成コンテンツ)の時代なので、プレス向けに新商品発表をするというのは違うと感じているのかもしれませんが、記者としてはもっと打ち出してほしいと思います。雑誌、新聞、テレビなどのメディアとインスタグラマーとでは注目ポイントも異なりますしね。

WWD:確かに、「UT」などでは話題性のある仕掛けの発表も多いですが、「ユニクロ」はそういうものよりも、本質追求、質実剛健といった印象が強いです。

松下:炎上が起こりがちな時代なので、ヤンチャなことが仕掛けづらいということも分かります。でも、たとえばサステナビリティに関してだったら、「ユニクロが手掛けたらサステナビリティでこんなことができた!」とか、バイオテクノロジーの力によってこんな素材からもサステナブルな服が作れるんだ」みたいな驚くようなことも見せてほしい。もちろん、今のように商品や売り方を実直にサステナブルにしていくことが商売の本筋だと思いますし、カプセルコレクションを出しても売り上げ・収益への貢献は少ないと思います。でもファッションって、そういう“ノリ”みたいな部分も大事じゃないですか。ユニクロだからできることって、たくさんあると思うんですよね。“LifeWear”を掲げ、本質の追求をしているので、そういった方向にはなりづらいのかもしれませんが。

WWD:お客さまを全ての中心に据え、そこから出る要望や不満をもとに商品や販売手法をアップデートしていくという考え方が、ユニクロの強さなんだと今回実感しました。

松下:昔のユニクロは、各品種の商品を決め打ちして半年~1年かけて大量生産し、少品種・大量販売するという形でした。トレンド重視で短サイクル型の「ザラ(ZARA)」とは異なるSPAのあり方を築いてきました。ただ、ユニクロ型だと急ブレーキはかけられないので外れることも多いんですよね。だから、お客さまの声をもとに商品やサービスを作っていく手法を本格的に取り入れて、D2C型をリアルとECとのハイブリッドで実現しようとしているんでしょうね。桑原(尚郎グループ上席執行役員)さんの取材中に、日に何百件も何千件もカスタマーセンターに届く声や、従業員の声の全てに目を通しているという話が出ましたね。お客さまのところで起こっていることが現実であり、一番の答え合わせの場、自分たちの通信簿なんだ、という考え方です。お客さまが第一というのがユニクロの軸。ただし、1998年の原宿店出店以降に売り上げが急拡大したのをきっかけに、システムや部門を継ぎ足し継ぎ足ししてきた過去がある。それに加えてもう一つ、現実に即してしょっちゅう組織改編する風土もあります。それゆえ、どこか対処療法的だったり属人的だったりするんですが、それでもみんな優秀だから乗り越えられてきてしまったところがあるんでしょうね。それが今、物流やサプライチェーン改革などで大きな課題になっている。それらを変革し、ビジネスの全体設計をもっとシンプルにして、基幹部分と、柔軟にクルクル変えられる可変部分とをうまくデザインし、物流量や業務をなるべく平準化するようにしないと、無理・無駄が出てしまい、欲しい時に欲しいものが買えるという、お客さま満足の基本が実現できなくなってしまいます。お客さまの声やニーズを起点に、商品やサービスを最高の形で届けるといった意味で、柳井さんは「エンド・トゥ・エンド」という言葉をよく使いますが、まさにそこがキモなんじゃないかなと思っています。

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外出自粛でオシャレペット服が売れている?

 “巣ごもり”ファッションに注目が高まる中、ペットのための服も見逃せない。インスタグラムで活躍する“ワンちゃんインフルエンサー”のボビー・ビリー(Boobie Billie)は、カメレオンのごとくどんなスタイルも着こなし、その自信に満ちた姿と遊び心を忘れないユーモアで人々の心をつかんでいる。最近の“巣ごもり”ファッションでは、「プラダ(PRADA)」「キャロリーナ ヘレラ(CAROLINA HERRERA)」「ナイキ(NIKE)」を着こなした。それがリアルかフォトショップだったかはさておき、ペット服が急成長中の市場であることは事実だ。近年では、トム・ブラウン(Thom Brown)やドナテラ・ヴェルサーチェ(Donatella Versace)がこの分野に取り組み、プロモーションのためにそれぞれの愛犬であるヘクター(Hector)とオードリー(Audrey)を起用している。

 また犬はファッション界に無縁の存在ではなく、最近も「バハ イースト(BAJA EAST)」や「レラ ローズ(LELA ROSE)」のランウエイショーや、犬用セーターなど提案した「モンス(MONSE)」2019年プレ・フォール・コレクションのルックブックに登場。さらに、ここ数年の間にエッセンス(SSENSE)やブラウンズ(BROWNS)、ザ・ウェブスター(THE WEBSTER)などのショップもデザイナーブランドのペット服や小物の需要増加に着目してオンラインに専用ページを設けた。

 ここではバイヤーやデザイナーへのインタビューをもとに、外出制限のかかる現在の商況や最新のスタイルを紹介しよう。愛らしいビジュアルで、ストレスのたまる日々に少しの癒やしを届けられたらうれしい。

1. ブリジット・チャートランド(Brigitte Chartrand)
=エッセンス ウィメンズウエア・バイインング部門 バイス・プレジデント

 エッセンスの顧客は70%以上が18〜34歳のため、いかにミレニアル世代がペット、特に犬のための消費を増やしているかに着目した。また、「#SSENSEInterns」のハッシュタグともに従業員の犬をインスタグラムに投稿したときも盛り上がりを見せたことから、2019年12月にペット服の発売を始めた。多くの人が在宅勤務になって愛するペットや家族と過ごす時間が増えているから、2月末から現在までペット服の売り上げは増加中。皆、気持ちを高めることに関心を持ち、多くの人が犬を家族に迎えることを考えているし、オーナーの数は増えていくと思う。私も犬を飼おうかと考えているくらい!

2. ホリー・ハーディング(Hollie Harding)
=ブラウンズ ノンアパレル・バイイング・マネジャー

 私たちはクリスマスに向けて気分を高める楽しいものを顧客に提案したくて、ギフトセレクションと一緒にペット服のカテゴリーを探求することにした。ペットのためのギフト購入は広がりつつあり、「バーバリー(BURBERRY)」や「ヘロン プレストン(HERON PRESTON)」をはじめとする多くのブランドが手掛けている。ペット服の販売は、イーストロンドンの店舗での期間限定イベント「ペット宮殿」と同時にスタート。デジタルクリスマスカード用にペットのポートレートを撮影して顧客に楽しんでもらう企画だったけれど、反響の大きさから年が明けても継続することにした。

3. ロール・エリアード・デュブレイル(Laure Heriard Dubreuil)
=ザ・ウェブスター創業者兼社長

 私たちのミッションは顧客のライフスタイルのあらゆる面に寄り添うこと。だから、ペット服や小物を取り扱うことはごく自然だった。ペットは生活の中でかけがえのない存在であり、飼い主自身の服と同じ品質のものをペットにも提供することは重要。すでに2年以上このカテゴリーに取り組み続けていて、売り上げや流通も安定している。そして、私たちの顧客にとって犬が唯一の相棒であることを考えると、今後どんどん売り上げが伸びても驚きはない。

4. カリーナ・ツェルニク(Karina Tselnik)
=ガーメントリー(GERMENTORY) オペレーション・マネジャー

 私たちの顧客は、自分の服がどのように作られているかに非常に高い関心を持っている。またペットのことも深く愛していて、ペットのニーズに応えると同時にサステナブルなライフスタイルを支援し続けられるようにしたいと考えている。ペットと家で過ごす時間が増えるにつれて、あらゆるライフスタイルグッズ同様に売り上げは伸びている。飼い主との時間が増えて、ペットにとっても夢のような時間になっているんじゃないかな。

5. スーザン・アレキサンドラ(Susan Alexandra)
=アクセサリーデザイナー

 動物が生きがいの一つである私にとって、ペットのためのアイテムを手掛けるのは当たり前だった。私にとってのミューズは、チワワとパグのミックスのピジョン(Pigeon)。この子を今さらに素敵にするために必然的なステップでもあったの。立ち上げは本当に好評で、売り上げも素晴らしかった。“巣ごもり”中の人々は自分のペットたちがもっと素敵に見えるようにと思っているようだ。確かにロックダウン中に唯一外に出るのは犬の散歩をするときだから、理にかなっているね。

6. マーティン・アリ(Martine Ali)
=ジュエリーデザイナー

 ペット用品を手掛けることは当初から考えていた。まだブランドが軌道に乗っていなかった頃に参加したLAでのイベントで、ある女の子が一通り商品を見た後、犬の首輪はないのかと尋ねたことがあったの。当時は正直あまりいい気分ではなかったけれど、今なら理解できる。犬たちは飼い主自身の延長線上にあり、飼い主と同じくらいかっこよく見せる必要があるから。商品の売れ行きは今のところすごく好調。困難なときに自分にお金を使うのは躊躇するかもしれないけれど、誰か(“誰か”というのはもちろん自分のペット)のために使うなら全く別の話で、心が満たされているように感じられる。特に犬の散歩なら社会的に受け入れられる今は、自分と自分の相棒のためにカッコよく決める努力をすべき時。

7. クリスチャン・コーワン(Christian Cowan)
=「クリスチャン コーワン」デザイナー

 私は実際に犬を飼っているし、他の飼い主と同じように愛犬のマンゴー(Mango)に夢中。美しく着飾ったオーナーと、機能性重視の素敵とは言えないハーネスをつけた犬が並んでいるのを見ると残念な気持ちになるし、自分のワンちゃんをもっとおしゃれにしてみたら?と思ってしまう。ドッグウエアの発売は今までで一番衝撃的だった。人気商品になるとは期待していたけれど、まさか一日に数百着売れるとは思いもしなかったからね。犬の力はすごい!家族をつくるよりも仕事を選ぶ人が増えるにつれ、犬を飼うことが注目されるようになっているのだと思う。そうなると皆、ありったけの関心とお金をそこに注ぐようになる。

8. “A”
=「69」匿名デザイナー

 「69」はみんなのためのものであり、そこには犬も含まれる。生きていくことを助けるブランドだ。

9. アレキサンダー・ストゥッテルハイム(Alexander Stutterheim)
=「ストゥッテルハイム(STUTTERHEIM)」創設者

 長年にわたって多くのドッグオーナーから、犬用のレインコートを作ってほしいとのリクエストをもらっていた。雨から彼らの身を守るだけでなく、悪天候の中でもカッコよく決めるためだ。“ウラジミール”レインボー・ドッグコートは発売と同時に爆発的にヒットし、数日でほぼ完売した。もちろん生産を続ける予定で、将来的には高機能で新しいスタイルの開発を考えている。私が理解しているのは、犬たちはこの非現実的なパンデミックを全く知らない中でも飼い主に心休まる時を与えているということ。実際みんなが犬を飼っていたら、きっと収束後の世界はより優しく、いいところになると思う。

10. スコット・ステューデンバーグ(Scott Studenberg)
=「バハ イースト」創設者兼クリエイティブ・ディレクター

 コレクションのデザインをするとき、私は周りから多くの刺激を受ける。自分の愛犬のために(「バハ イースト」のシグネチャースタイルである)“グラムレジャー”を作るのは、時間の問題だった。“犬は人間にとって大親友”という認識は今、かつてないほど広まっている。外出自粛中の飼い主たちは人間との交流が減り、犬たちが圧倒的に親友のポジションを担っているからね。自分の犬をとことん甘やかして、散歩を心から楽しむ絶好のチャンスなんじゃないかな?

11. シルヴィア・ランカニ(Silvia Rancani)
=「ザ デニムドッグ(THE DENIM DOG)」 創設者

 ペット用品に挑戦しようと決めたのは、1年前。私はデニムの専門家であり動物愛好家でもあるので、その両方を生かしてレザーと上質なデニムを組み合わせた犬用アクセサリーラインを作ろうと考えた。ペット服や小物はまだまだ未知の世界で、大きな可能性を秘めている。人々は愛するペットのためにますます買い物をするようになっているし、品質を気にかけていて上質なアイテムのためにお金は惜しまない。その一方で、ペット用品を扱うことは決して簡単なことではない。商品開発の際に機能性において考慮すべき点はたくさんある。見た目だけでなく、機能性と安全性も同じように重要だからね。

 正直に言うと、売り上げはよくない。オンラインでの販売が中心だとしても、ブランド自体がまだ新しく、あまり確立されていないから。ただ、アメリカ市場ではいい反応があったし、ドイツとイギリスの顧客もいて満足している。

12. ザハラ・アハメド(Zahra Ahmed)
=「DL1961」 最高経営責任者

 私たちは2008年以来、環境に優しいデニムを開発してきた。ブランドの成長とともにキッズにもラインアップを広げたところ、友人や顧客からペット服を作ることは検討していないかと聞かれた。そして18年、ニューヨークを拠点とするデザインチームが(犬用の)“フィド ケイナイン トラッカー”ジャケットを手掛けたときには、大きな反響があった。ブランドの顧客や友人だけでなく、クリエイティブ・ディレクターの愛犬バー(Burr)さえもこのジャケットを気に入ってくれてね。近頃は、「DL1961」のジャケットを着こなした犬が私たちのオフィスを歩いている光景も珍しくなくなった。

 最近はペットと家で過ごす時間が増えたことの影響もあり、売り上げはかなり伸びている。「DL1961」では自分たちのことを犬をはじめとする動物愛好家だと考えているので、特にこういうときに家族の一員であるペットと一緒に時間を過ごせることに感謝している。

13. メラニー・カプラン(Melanie Kaplan)
=「ザ カンパニー ストアー(THE COMPANY STORE)」商品開発部

 「ザ カンパニー ストア」の顧客と従業員にとって、ペットは大切な家族の一員。そのため、ペット用品への参入はごく自然なことで、年々拡大している。私たちは常に顧客に喜びとつながりを届けたいと考えているので、着心地抜群のおそろいで着られるパジャマや、小物などを提案してきた。さらに、商品開発チームは来たる春夏に向けた新作コレクションに注力している。

 今私たちにできることは家の中に心地よさをもたらすことと、このつらい時期の裏にある幸せに焦点を当てること。お客さまを笑顔にするのは、“てんとう虫タオル”にくるまったフレンチブルドッグかもしれないし、愛する人たちと食卓を囲んでいるときかもしれない。それが何であれ、「ザ・カンパニー・ストア」はリアルな人(猫や犬も)との温もりを分かち合うためにある。

14. サブリナ・アルバレロ(Sabrina Albarello)
&カテリーナ・カレラ(Katerina Karelas)
=「ベリー インポータント パピーズ(VERY IMPORTANT PUPPIES)」創設者

 私たちは犬への愛情からペット服のブランドをスタートさせ、現在のトレンドを念頭に置いた新たなパーソナルラインを立ち上げた。現状の売り上げは減少している。前例のない事態を前にして、他のニーズの優先度が高まっているのは確かだと思う。一方、ソーシャル・ディスタンシングが重視され、散歩は社会的に許容される数少ない活動の一つ。ペットとより多くの時間を過ごし絆を深める中で、甘やかしちゃう人も間違いなくいるはず。

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化粧品は成分にも注目する時代へ クリーンビューティトレンドを後押しする5つの海外アプリ

 欧米の美容市場では“クリーンビューティ”のトレンドが起こっている。クリーンビューティとは、肌や環境に優しい成分を使用し、動物実験をしない(クリエルティーフリー)、サステナビリティに配慮するなどの要素を備えたブランド・製品のことだ。

 SDGs(持続可能な開発目標)の制定に代表される環境や社会への関心の高まりとともに、消費者は健康や環境、社会に影響を及ぼす化粧品の成分にも目を向け始めた。特にアメリカでは1938年以来、化粧品成分の規制に関する法律が変わっておらず、禁止されるのは12成分のみだ。例えば米ハワイ州でサンゴ礁保護などのために2021年から販売を禁じられる紫外線吸収剤のオキシベンゾンやオクチノキサートもアメリカ食品医薬品局(FDA)の規制の対象ではない。一方でヨーロッパ連合(EU)は世界で最も厳しい基準を設け、1300以上の成分の使用と動物実験を禁じる。それでも、懸念される成分すべてを規制しているわけではない。

 こういった成分への意識は、特にジェネレーションZやミレニアル世代など若年層をはじめ化粧品に興味を持つ人の間で高まっている。では、そういった人たちはどこで成分について学ぶのだろうか。

 その基準となるのはEUの成分規制とそのデータベース「コーシング(CosIng)」、アメリカのEWG(環境ワーキンググループ、Environmental Working Group)だ。EWGは健康的な環境生活を保護するため、食料や化粧品などの分野で研究、啓発活動を行う非営利団体で、最近では「レブロン(REVLON)」などがEWG認定マークをつけた化粧下地「フォトレディ プライム プラス」を発売した(日本でも発売予定)。多くのクリーンビューティブランドがEWGの基準を参考としている。

 そんなEWGは食品、化粧品の成分について簡単に知ることができるスマホアプリ「ヘルシーリビング(Healthy Living)」を出している。日本にも「コスメペディア(COSMEペディア)」や「ポーテ」など成分に着目したアプリがあるが、海外はその先駆けとなるアプリがいくつかある。今回はそういった成分分析アプリを紹介するとともに、それぞれの違いにも言及したい。

アメリカ 「EWG ヘルシーリビング」

 製品のバーコードをスキャンするか製品名で検索すると、製品の安全性について、化粧品成分の独自データベース「スキン ディープ(SKIN DEEP)」を基準とした結果が表示される。「アレルギーの懸念」「発がん性の懸念」「発育上の懸念」の3つのバロメーターがあり、緑、黄色、赤で危険度が分かるほか、成分一つ一つの危険度も見ることができる。多くのブランドや消費者が使用しているアプリで、これまでに130万回以上ダウンロードされており、オンラインデータベースは1時間あたり1000件以上参照されているという。

韓国「ファへ」

 韓国ではクリーンビューティという概念こそ広まっていないが、このアプリの登場によって化粧品成分に気を配る人が急増。化粧品成分情報や口コミがこのプラットフォーム上に集まり、アプリで高評価を得た商品が売れるという現象も起こっている。ランキング1位を獲得した商品は「ファへで1位を獲得」というマークがついて店頭に並ぶほどで、まさに“韓国版アットコスメ”だ。

 公式サイトによるとユーザー数は700万人以上、400万件以上のユーザーレビューが集まるという。成分の評価は韓国政府機関「食品医薬品安全処」やEWGのデータベース、書籍「大韓民国化粧品の秘密」など複数を参考にしている。

フランス「コンポ スキャン(COMPO SCAN)」

 2018年に生物学者のラファエル・ファイファー(Raphael Pfeiffer)と共同で作られたアプリ。化粧品専門家の知識を基もとに危険な成分を割り出しており、18年時で2万弱の製品が登録されている。また、有料アプリながら2018年時点で2万5000回ダウンロードされている。ユーザーが製品登録を行えるのも、ほかのアプリと異なる点だ。

カナダ「シンク ダーティー(THINK DIRTY)」

 2013年にローンチ。4500ブランド、140万アイテムを登録し、製品のバーコードをスキャンするか製品名で検索することで「ダーティーメーター」と呼ばれる10段階評価のスコアが表示される。

 生物・医学文献の引用や政府の規制リスト、EUの成分データベース、米FDAのガイドラインなど多くの情報を参考としており、参照文献へのアクセスリンクを貼るなど情報源が分かりやすい。クリーンビューティな化粧品の販売やサブスクリプション(定期購入)ボックスサービスも行なっている。

中国「美麗修行」

 1000万ユーザーが使用する中国の有名なアプリ。中国では熱心に成分を研究する“成分党”と呼ばれる消費者層があり、成分解析をコンテンツとする動画配信者も多く存在する。アプリには200万以上の製品が登録されており、成分の安全性や有効性、肌荒れを起こす可能性まで表示する。NMPA(旧CFDA、中国国家薬品監督管理局)の化粧品成分データを統合、また安全性表示はEWGのデータベースを参照している。

 韓国「ファへ」に似たユーザーインターフェイス(UI)で、口コミも投稿できるほか、似た製品同士の比較を行う機能や肌質とのマッチング機能といった独自のコンテンツもある。
上記のように、多くのアプリがEWGかEUのデータベースを参照しているが、果たして結果に違いはあるのだろうか。とあるグローバルブランドのリップスティックで比較検証をしてみたところ、その結果にはばらつきが見られた。

 「コンポスキャン」では合成香料など2種の危険成分、11種の注意成分と表示され、「美麗修行」では肌への影響が懸念される成分が2種、ニキビになりやすい成分が3種あると表示された。一方、「ファへ」では3種の危険成分、ベンジルアルコールなどアレルギーに関する10種もの注意成分が指摘された。2つのアプリが参照する「EWG ヘルシーリビング」ではアレルギースコアが危険レベルを指し、注意成分が10種挙げられた。

 また別のスキンケア製品で試したところ、今度はすべてのアプリで3種の注意成分を指摘する結果が出た。さらに別製品を試すと、今度は「美麗修行」が最も多くの危険成分を指摘。それぞれ参照データ・参考文献が異なるため、アプリ毎の見解が異なることも珍しくないようだ。

 このように、成分の“クリーン”には今のところ正解がない。クリーンビューティブランドを扱うアメリカ発の「グープ(GOOP)」や「クリード(CREDO)」が危険だと断じる成分の多くも、科学的に発がん性や健康への被害が証明されたものは多くないのだ。各アプリが表示した結果にしてもすべて正しいとは言い切れず、それぞれ独自の主張・見解をもっている。それでも自分の健康や地球の未来を考えたとき、少しでも懸念を減らしたいと考える人々の意識は今後も高まっていくに違いない。

 今回紹介したアプリはすべて日本のiOSからダウンロード可能なので、一度、手持ちの化粧品にどれだけ“懸念”が含まれているのかチェックしてみるのも良いかもしれない。

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「サンローラン」がパリコレ不参加 CEOとデザイナーが今後の方向性を語る

 「サンローラン(SAINT LAURENT)」が、2021年春夏シーズンのパリ・ファッション・ウイークでランウエイショー形式の発表を行わないことを明らかにした。新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るう中、同ブランドは2020年に予定していた全てのショーをキャンセルし、コレクションスケジュールの見直しも示唆している。

 フランチェスカ・ベレッティーニ(Francesca Bellettini)社長兼最高経営責任者(CEO)とアンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)=クリエイティブ・ディレクターが、今後のコレクションや広告キャンペーン、そしてロックダウン下における創造性の保ち方などについて語った。

WWD:今年のファッションショーを中止にした理由は?各国で今後ロックダウンが解除されていくことを想定すれば、全体と足並みをそろえた段階的なアプローチも可能だったと思うが?

ヴァカレロ:ファッション業界の流れに逆らっているのではない。受け身ではなくポジティブでいたいだけだ。もう何年も前から何かを変える必要があることはわかっていた。今がその時だ。全てが変わってしまったこの状況で、数年前に決められたスケジュールに合わせる理由が見当たらない。締め切りがあるからといってコレクションを急いで仕上げるなんてことはしたくない。今季は私の準備が整い次第コレクションを発表したい。

新型コロナウイルスのパンデミックにより、突如として私たちの習慣や行動、他者との関わり方が大きく変わり、穏やかな日常が一変した。

今年のコレクションスケジュールの見直しは、私たちの時間や生活の大切さを再確認したいという気持ちの表れだ。服を着ることよりも生活をすることに重点を置く。ペースダウンして今を生きてみると、組織にとらわれていた弱みの部分が明らかになる。ショーやショールーム、注文といった全体的なシステムのスケジュールは、ファッションそのものには関係ないことだ。

ベレッティーニCEO:今はどうするのが正解なのか誰にもわからない状況だ。今後の創作活動に不安があるという事実も無視されている。創造性を主とする私たちのブランドには、もともと大胆な決断力がある。このような状況で私たちの創造性が独断的な現在のスケジュールに左右されることがあってはならない。コレクションはアンソニーが適切だと感じる時に、それに見合う場所で独自の形式で自由に表現されるべきであって、ほかのことはその後の話だ。

今回の決断にあたって、お互いの意向をしっかり確認することが重要だった。世界各地で今回の危機への対策が行われているが、ただ静観するだけのアプローチでは成功しないだろう。最初からしっかりとしたコミュニケーションを図り、力強く明快な決断や規制を行うべきだ。

WWD:あなたの戦略と新しいスケジュールについて教えてほしい。例えば、メンズとウィメンズは合同なのか別々になるのか。

ヴァカレロ:メンズショーはすでに私たちのスケジュールに組み込まれている。業界のスケジュールとは関係ない。ただショーをするためだけのショーではなく、より個人的なものとして制作した。必要なのはショーではなく感情だ。私はいつもメンズとウィメンズのショーでその感情を作り上げようとしている。

今回のことは、今年起きた非常事態に対応する形で決断した。コレクション発表の戦略を変更しようと思っているわけではない。メンズとウィメンズは別々に発表して、それぞれでコレクションの世界観を伝えるつもりだ。何かを個人的に創造することが、今まで以上に重要だと思う。

ベレッティーニCEO:コレクション発表にまつわる戦略は、ファッションショーだけでなくショールームや店のことにまで及ぶ。今回決定したアプローチ法によって顧客との距離が縮められる。私たちはより長く続く体験や商品を提供したいと考えている。

過去4年ですでにコレクションの店頭販売期間を延長しているし、この戦略を拡大して実生活のニーズを反映するタイミングで目新しいアイテムを導入し、それに合わせたキャンペーンも計画している。

人びとがまた以前のような頻度で旅行するまでにはもうしばらくかかるだろうから、この密接型のアプローチ法でクライアントとの距離を縮め、卸売に対しても同じように働きかけていきたい。

WWD:将来のコレクション発表の頻度はどうなる?これまでと同様にシーズン毎のアプローチになるのか、もしくはシーズンに大きくとらわれない形のデザインやマーケティングを考えているのか?

ヴァカレロ:シーズン毎にデザインを完全に変えることはない。すべてがそれ以前のシーズンとのミックスになっている。常に同一の女性または男性が基礎となっている。ショーを見れば何が前シーズンから来ているのかがよくわかると思う。みんなを退屈させないためにも、常に数多くのデザインを発表するだろう。今まで以上に創造性を発揮するときだ。

私たちのコレクションに対するアプローチは常にシーズンレスだ。それぞれのコレクションにはタイムレスな「サンローラン」のデザインと新たなシルエットを融合しており、以前のコレクションの進化系だとも言える。

WWD:コレクションの形式については?「サンローラン」はケリング(KERING)内でもデジタルショールーム技術を特にうまく使いこなしていると聞いた。デジタルショールームとコレクション発表を融合させるのか、またはライブストリーミング配信を行うのか。現実世界に視覚情報を重複表示させる「拡張現実」型なのか、もしくは画面上でリアリティーのある視覚情報を投影する「仮想現実」型なのか。それとも映画やSNS形式を取るのか。

ベレッティーニCEO:あなたの言うデジタルショールームとは、おそらくストアでの買い物が簡単にできるアプリのことだね。コレクションの発表とそれは関連性がない。コレクション発表のイベントやその形式については、現段階では公表を控えたい。もちろん、伝えたいメッセージがある場合はそうする。

いま明らかにしておきたいのは、パンデミックの影響を考えた結果、今年のコレクション発表は公式スケジュールとは切り離し、時期も形式も独自の方法で行うのが適切だということだ。

WWD:では今回の新たなアプローチでは、VIPゲストやインフルエンサーらはどんな役割を果たすのか?

ヴァカレロ:前と同じだよ。過去4年間でゲストとは確実な関係を築いてきた。友人たちのサポート、そしてお互いが信頼し合うという、ご都合主義の関係とは相反するアプローチだ。私たちのVIPゲストは「サンローラン」のショーのためだけにファッション・ウイークを訪れていたから、こうなるとなおさら理にかなっていると言える。

WWD:ロックダウンで仕事のやり方に影響はあった?また、新しい形のコレクション発表を行う上で、あなたの創作活動のどういった面を進化させたい?近年は映画製作者と仕事をすることもあったが、映画から何か着想を得たりしたか?もしくは、チームとのやり取りがズーム(Zoom)に移行するなど、オンラインを駆使して仕事をすることで、別の意外なものが創作活動の源になったということは?

ヴァカレロ:当初はロックダウンによって多くの疑問が湧いた。議論したいことはあるのに何も存在していないみたいだった。状況は大きく変化しており、まるで何も知らないフリをしながらすぐ先の未来を以前と同じレンズを通して見ているみたいだ。

そうした考えが初めの頃に急速に生まれたことで、次回のショーやその発表方法も含めて多くのアイデアが浮かんできた。そのアイデアの中心には、時間の大切さを再認識し、自分たちの時間を再び自らでコントロールするという考えがあった。

私はこの数週間、好きな映画をじっくり見て、私の人生と共にある音楽を聴く時間を設けている。ロックダウン中の現実逃避のようになっているが、それ以上のこともある。映画や写真、音楽は素晴らしいインスピレーション源になるし、私がコラボレーションするアーティストたちはみんな私が心から称賛する人たちでもあるから。

WWD:近年のパリ・ファッション・ウイークにおいて、「サンローラン」のショーは主要な位置にあった。あなたは市の当局者とも密接に連動してきたが、今回の新たな形式においてパリのファッション業界で「サンローラン」が果たすリーダー的役割は考慮されているのか?もしそうなら、パリのブランドとしてどのように発展、推進していきたい?

ヴァカレロ:「サンローラン」のスピリットや考え方はパリジャンそのものであり、それが変わることはない。それが「サンローラン」とほかのブランドとの違いであり、私たちはパリを一都市としてもファッションの都としても重要視し続けていく。今までそうしてきたし、これからもそうしていくが、それはファッションショーに限ったことではない。自らスケジュールをコントロールすることを表明したのであって、パリを離れるとは言っていない。

ベレッティーニCEO:パリにはベルシャス通りに立派な本社がある。それに、ブランド初のアートプロジェクトでもある「サンローラン リヴ ドロワ(SAINT LAUREN RIVE DROITE)」のブティックや、イヴ・サンローラン美術館(YVES SAINT LAURENT MUSEUM)ではヴァカレロが厳選したベティ・カトルー(Betty Catroux)の展覧会も初めて開催されるなど、ブランドの世界観をパリから海外に向けて強力に発信してきた。

WWD:ベレッティーニCEOはフランスオートクチュール・プレタポルテ連合会(Federation de la Haute Couture et de la Mode以下、サンディカ)の婦人服プレタポルテ組合(Chambre Syndicale de la Mode Feminine)の会長でもある。「サンローラン」がパリ・ファッション・ウイークに不参加となることで、パリの街が持つ世界のファッション業界のリーダー的存在としての魅力に影響が出るかもしれないという懸念はあるか?今回の決定において、連合会との話し合いがあったなら教えてほしい。また、ほかのブランドにとってはどうだろうか?

ベレッティーニCEO:私は自分が婦人服プレタポルテ組合の会長であることを光栄に思っているし、この役割をとても真剣に担っている。しかし、サンディカでの私の役割が、ヴァカレロの決定の妨げになることはない。私はイヴ・サンローランのCEOであり、ほかのブランドに対する影響力はない。ほかの多くのCEOたちも業界の連合会でリーダーを務めているが、私たち全員が自身のブランドでの責務とファッション連合でのそれを切り離して考えている。

「サンローラン」が20年のショーをファッション業界のスケジュールに即して行わないからといって、私の役割やパリ・ファッション・ウイークの重要性に影響が出たりすることはない。とてもシンプルなことだ。パリは、すべてのデザイナーがショーを開催することを熱望している世界一の都市だ。

なにも今後パリ・ファッション・ウイークに参加しないわけではない。しかし今のこの状況では変化が必要だ。連合会の結束は固く、お互いを重んじたオープンな関係を築いている。サンディカ会長のラルフ・トレダノ(Ralph Toledano)とパスカル・モラン(Pascal Morand)とは今回の決定について事前に話し合いをした。彼らは完全に理解を示してくれた。

WWD:ファッション・ウイークの未来をどう考えている?各ブランドがそれぞれ新しい方向に向かうのか、それともファッションビジネスが元通りになるまでの一時停止期間のようなものなのか。

ヴァカレロ:ビジネスが“元通り”にならないことを願うよ。それでは意味がないし、何のためにもならない。物事には変化と発展が必要だ。ほかのブランドがどうするのかについては根拠もなく推測することはできないし、したくもない。

ベレッティーニCEO:今回の異常事態は私たち全員にとって多くのことを再考するきっかけになった。ファション業界で働くすべての人たちの間で興味深い議論が生まれているし、それぞれのファッション・ウイークを動かす組織の間でも同じことが言える。

ビジネスを単純に元の状態に戻すフリをするのはおかしい気がする。しかし、変えてはならないことがひとつある。ファッションの中心には創造性があり、それはインスピレーションと夢の源であるということだ。

WWD:ケリングの財務担当責任者は、全ての傘下ブランドが大幅なコストカットを行うと話していた。予算の削減は今年度のファッションショーを行わないことに関係しているか?ほかのケリング傘下ブランドも追従するだろうか?

ベレッティーニCEO:私たちは今年のファッションショーを行わないとは言っていない。それと、今回の決定とコストカットとに関係はない。

ケリング傘下のブランドはそれぞれが独自に決断を下しているから、ほかのブランドが同様の措置を取るのかどうかはわからない。私たちにとっては正しいことだが、ほかのブランドにとっても同じだとは限らない。

WWD:ケリングの財務担当者によると、秋冬コレクションの納品が最大4週間遅れる可能性もあるという。各ブランドでコレクションの規模が縮小され、ベストセラー製品とキャリーオーバーに注力するだろうという話だった。「サンローラン」はスケジュールの遅延にどう対応するのか?単品管理の項目数をどの程度カットすると想定している?

ベレッティーニCEO:事実として、世界中の店舗がこの数週間営業を自粛している。製造拠点も操業を停止しており、コレクションの在庫にも影響が出ている。実際には、買ったものをすぐ着用するという方向性にシフトしている。特に次のプレ・コレクション制作ではそれを考慮に入れる必要がある。各ブランドがそれぞれベストな方法を取るだろう。

WWD:では、コストカットによって広告宣伝費に影響はあった?今年も宣伝活動は維持していくのか?もしくはデジタルを駆使してより大きな動きを見せるのか?秋冬キャンペーンの撮影はまだ行っていないのか、もしくはそちらでも今回の戦略と共に新たな展開が見られるのか?

ヴァカレロ:秋冬キャンペーンの撮影はすでに行っている。ショーのイメージとはリンクさせていない。いつもはキャンペーンのイメージを事前に公表しているが、今回はコレクションが店頭に並ぶ頃になるかもしれない。

もちろん、今起こっている出来事がキャンペーンのイメージにも影響するだろう。私は現実を見る人間だから、SNSで目にするようなズームを撮った写真を使用することは避けたいね。「サンローラン」としてそれ以上のものを作り上げたい。

ベレッティーニCEO:広告やプロモーションはブランドイメージの維持やポジショニングにとって極めて重要だ。今年の広告キャンペーンは通常通りに行う予定だ。おそらくキャンペーンの開始はコレクションが店舗に並ぶ頃になるだろう。使用するメディアはそれぞれのマーケットの顧客に合わせてベストなものを選びたい。

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「コーチ」の名品から着想を得た“コーチ オリジナルズ”が誕生

 ニューヨーク発、1941年に創立されたグローバルブランド「コーチ(COACH)」は、アーカイブへの全く新しいアプローチといえるコレクション“コーチ オリジナルズ(THE COACH ORIGINALS)”を発表した。同コレクションは、2019年9月に行われたニューヨーク・ファッション・ウイークの期間中に、ニューヨークのマディソンアベニュー旗艦店にポップアップストアを開設しローンチ。ブランドの79年にわたる伝統とレザーのクラフツマンシップをたたえ、“リストア(RESTORED)”“リミックス(REMIXED)”“リメイド(REMADE)”をテーマに、ビンテージと新作のバッグをそろえた。

 “コーチ オリジナルズ”は、「コーチ」のアーカイブから着想を得て、素直に自分らしさを表現することへのこだわりから生まれた。「コーチ」のレザーのクラフツマンシップの伝統とオーセンティックなアメリカンスタイルに対するスチュアート・ヴィヴァース(Stuart Vevers)「コーチ」エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターの包括的でモダンなアプローチを融合。“リストア”‟リミックス”“リメイド”をテーマに、数々のバッグコレクションをラインアップする。

スチュアート・ヴィヴァースが語る
“コーチ オリジナルズ”誕生秘話

WWD:“コーチ オリジナルズ”が生まれた経緯は?

スチュアート・ヴィヴァース「コーチ」エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター(以
下、ヴィヴァース)
:“コーチ オリジナルズ”は2020年春夏コレクションで発表したアーカイブにインスパイアされたバッグのスペシャルコレクションの一環として、昨年秋にデビューした。春夏コレクションはニューヨークのオプティミズムとエネルギーとをベースにした「コーチ」の進化したビジョンを紹介するものだった。私は新しい方法でブランドの伝統を構成する部分を探り、アーカイブを新しい世代のものにしたかったんだ。

WWD:なぜこのタイミングだった?

ヴィヴァース:このとき、私は「コーチ」での6周年を迎え、新しいことを発表するのにぴったりのタイミングだと感じていた。これまで私が探ったことのなかったレガシーに目を向け、私が今感じていることと結び付けたいと思った。春夏コレクションとその中の“コーチ オリジナルズ”はリアルで鮮やかで、エネルギッシュ。今っぽさと、ニューヨークという街の在り方につながっている。

WWD:“コーチ オリジナルズ”のコンセプトを改めて教えてほしい。

ヴィヴァース:79年の歴史を誇るレザーハウスである私たちの伝統にインスパイアされたコレクションだ。これは、“ リストア”されたビンテージアイテムとアーカイブにインスパイアされて新しいレザー、カラーリング、シルエットで今の時代により合うように“リメイド”された新作バッグで構成されている。また、ビンテージのバッグをベースに、新しいスタイルを誕生させた“リミックス”バッグもある。

WWD:「コーチ」のアーカイブをどのようにアップデートした?“リストア” “リミックス”“リメイド”がテーマの理由は?

ヴィヴァース:これまで「コーチ」のためにデザインした全てのコレクションにおいて、アーカイブとの接点はあったが、こうした形でバッグを企画し、忠実にリメイクしたのは今回が初めてで、私にとってはオリジナルのフィーリングとスタイルを忠実に再現することが重要だった。私がコーチでデザインするときにはいつでも、今日自分が作り出しているものは明日にはアーカイブになるということを常に意識している。私はこのコレクションで今のお客さまにとって新鮮に感じられる方法で、「コーチ」の伝統を祝いたかった。バッグをリストアし、リミックスし、リメイドするというアイデアはここから来ている。コーチのアーカイブと交流するさまざまな方法を提案したかったんだ。


 “リストア”がテーマのバッグは、職人の手によってクリーニング、コンディショニング、リストア(修復)作業が施された真のビンテージ品となる。“リミックス”はビンテージバッグを組み合わせた新作で、それぞれ世界に一つしかない限定品だ。3つの“ディンキー”バッグを組み合わせた“トリプル ディンキー”やポーチやスリムなサッチェルバッグを合体させた“サッチェル ポーチ”など、新しいアプローチで完成したユニークなアイテムをそろえる。“リメイド”は、アーカイブのシルエットにインスパイアされながらも、ヴィヴァース=エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターの遊び心溢れる感性でリニューアルされた新作。ポップなカラーや現代的に昇華されたシルエットで、上品なビンテージテイストに仕上げた。さらに、「コーチ」初のクリエイティブ・ディレクターを務めたボニー・カシン(Bonnie Cashin)による象徴的なデザインにインスパイアされたバッグも並ぶ。

問い合わせ先
コーチ・カスタマーサービス・ジャパン
0120-556-750

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それぞれの思いの詰まったマスクで登場 業界に力強いエールPart3

 「WWDジャパン」4月20日号、「WWDビューティ」4月23日、30日合併号では、新型コロナウイルスによる感染拡大で一人、一社では立ち向かえない未曾有の状況下にある今、互いに励まし合い、知恵を共有し合おうという特集を企画した。表紙では、ファッション&ビューティ業界の皆さんにオリジナルデザインのマスクを着用した写真で参加いただいた。さまざまなデザインマスクとともに力強いメッセージをぜひ読んでほしい(URLはマスクの詳細や予約・購入先へ遷移します。完売または販売中止になっている場合もあります)。


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リモートワーク下の“自粛ファッション”を団地の公園で考える

 リモートワーク生活も、はや数週間。それなりにストレスも感じ、また春らしい陽気に誘われて、可能な限り一日に1度は外に出るようにしています。なにより、ずっと家にいると妻子に疎まれ、ワイドショーから流れる“夫源病”“コロナ離婚”なる言葉にいっそう居心地が悪くなります……。

 ただ、外に出ても“不要不急”に店に入るのははばかられ、結果として公園のベンチに落ち着きます。あらためて見てみると、公園のベンチはそもそもソーシャル・ディスタンシングされているんですね。ベンチに座っていると、たくさんのタクシー運転手や配送業者がトイレ休憩に立ち寄ることにも気付きます。「なるほど、彼らにとってはトイレの場所を把握することも重要なのだなぁ」と妙に感心。そんな風にあれこれ観察しながら、外出先でもスマホ一つでたいていの業務には対応できます。

 当初は、原宿に取材に行く、もしくは六本木にある編集部に出社する際の“いつも”の服装だったんですが、公園で“チェックのガウンに黄色のレザーショーツ”はどうにも悪目立ちします。なんといっても、ここは世田谷の住宅地。ママネットワークが張り巡らされており、公園で派手な格好の親父がコンビニ飯を食らっている姿は、決して小学生の娘のプラスになりません。

 そこで、なるべく目立たないことを心掛けます。しかしながら、僕のクローゼットには赤や黄色や緑の服しか入っておらず、結果としてジーンズにボタンダウンシャツ、コットンセーターという“置きにいった”コーディネートに落ち着きがちです。ピカピカに磨き上げたコードバン靴を公園に履いて行っても、土ぼこりにまみれるだけなので、もっぱら足元はスニーカーです。

 年相応なのだろうし、公園には溶け込みやすいのですが、いつもそれだと逆にストレスがたまってきます……。そんなことからも、“一日も早く日常が戻らないかなぁ”と、思いはそこに行き着くのでした。

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それぞれの思いの詰まったマスクで登場 業界に力強いエールPart2

 「WWDジャパン」4月20日号、「WWDビューティ」4月23日、30日合併号では、新型コロナウイルスによる感染拡大で一人、一社では立ち向かえない未曾有の状況下にある今、互いに励まし合い、知恵を共有し合おうという特集を企画した。表紙では、ファッション&ビューティ業界の皆さんにオリジナルデザインのマスクを着用した写真で参加いただいた。さまざまなデザインマスクとともに力強いメッセージをぜひ読んでほしい(URLはマスクの詳細や予約・購入先へ遷移します。完売または販売中止になっている場合もあります)。


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「おうちコーデ」を盛り上げよう 今こそ気兼ねなく自分のおしゃれを楽しむチャンス!

 外出を手控えざるを得ない状況を受けて、おしゃれの“おうちシフト”が進んでいます。楽ちんな着心地の服を選べるのはうれしいのですが、以前ほどは着替える必要がないこともあって、マンネリ気味になることも。でも、コーディネートを少し工夫すれば、着映えやバリエーションが格段にアップ。自宅ライフにも自分らしさや張りが加わります。街中や職場ではためらってしまいそうな、ややクセのある着こなしだって、人目を気にせず試せるのが自宅ルックのいいところです。

 たとえば、「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」の2020年春夏のランウエイには、“HATE”(嫌い)に打ち消し線を重ねたニットトップスが登場。“嫌うことをやめて、受け入れていこう”という、前向きなメッセージは、今の空気感を代弁するかのよう。おうちルックなら、こういう主張にも共感を示しやすくなります。マリンルックにデビューするのも、家でならハードルが下がります。今回はニューヨークブランドの20年春夏コレクションから、自宅での装いに取り入れたくなる着こなしをセレクトしてみました。気分転換を兼ねて、自分好みのおしゃれを楽しんでみませんか。

◆大胆なアートモチーフからパワーをもらう

 パンチの効いたビッグモチーフは、おうちルックに元気感を上乗せしてくれます。「コーチ1941(COACH 1941)」のランウェイに登場した水原希子さんが着たのは、身頃いっぱいに描かれたフェイスイラストが目をひくニットトップス。歌手・女優のバーブラ・ストライサンド(Barbra Streisand)の顔は、映画監督であり、政治活動家でもある彼女へのオマージュを感じさせます。

 自分の好きなミュージシャンやアーティストの肖像をまとうと、敬意が深まり、パワーまでもらえそう。Tシャツやスウエットで過ごすお部屋タイムにも、ワクワクした気持ちを呼び込めます。主役のビッグモチーフが目立つ分、残りのピースは割とシンプルで済むのも、コーデが楽な理由です。

◆ボーダーTはアクセサリー重ねづけで、うんとロマンティックに

 さっぱりとした見え具合のTシャツも、アクセサリーを添えるだけで、ぐっと華やぎが増します。Tシャツの着心地とレディーな雰囲気を両立させるアレンジです。「トリー バーチ(TORY BURCH)」はボーダーTシャツに、花コサージュとロングネックレスを重ね付けけしてドレッシーに格上げ。「シグネチャーロゴも正面で静かに主張します。

 カジュアル気分のTシャツや部屋着にも、アクセサリーをちょっと多めに盛れば、気分が上がります。おしゃれに手を抜かないと、自宅でもモチベーションを保ちやすくなるものだから、“アクセ盛り”をお試しあれ。

◆基本のシャツ×パンツはパステルトーンでポジティブに格上げ

 ゆったりしたサイズ感のシャツやパンツは、リラックスしたいおうちタイムにぴったり。ただ、素っ気ない雰囲気にまとまりやすいので、色で表情を出していきましょう。「シンシア ローリー(CYNTHIA ROWLEY)」は、オーバーサイズ気味のシャツをワイドパンツにかぶせる感じでバサッと着る組み合わせを提案。色をパステルトーンで整えて、フレッシュ感やフェミニン度をアップ。

 ポジティブ色を選ぶだけで、手抜きコーデから抜け出せます。上下それぞれ1枚ずつの“ワンツー”コーデだからこそ、色で工夫するのが賢いスタイリングです。

◆トレンドの透け感レイヤードで、涼やかにアップデート

 見栄えのする印象的なアイテムを1点だけ投入して、ムードを様変わりさせるのは、手軽に試しやすいアレンジです。透けるアイテムを使えば、さらに趣深い見え具合に。「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」は編み目のゆるいニットトップスを、キーアイテムに選びました。

 プリント服の上から重ねて、柄を透けさせる演出。編み目越しのレイヤードが涼やかな着映えに導いています。部分的なカットアウト(くり抜き)を施したウエアでも使える、サマーレイヤードのテクニック。手持ち服の上から、透けるアイテムを重ねるだけで、ムードが様変わりします。

◆ロマンティックなラウンジウエア風で、のどかにリモート

 ラウンジウエア風の薄い羽織り物なら、おうちならではののんびり気分を邪魔しません。エアコンの風除け・温度調節にも役立つから、リモートワーク環境でのお仕事ルックにも組み込めます。「アナ スイ(ANNA SUI)」はパジャマのようなフリルワンピースの上から、ノスタルジックなガウン風の薄物を羽織って、落ち感を印象づけました。

 締め付けレスな装いだから、仕事の能率も上がりそう。コンフォートとロマンティックを兼ね備えていて、ビデオ経由の息抜きトークや“家飲み”チャットにも使える着映えです。

 他人の目を気にせずに済むから、おうちルックはむしろ本当の意味で、自分好みのおしゃれが楽しめます。これまで見送ってきたテイストも、この機会に「お試し」や「実験」のつもりでトライできるのも“ステイホーム”のよさ。居場所が限られ、気分がふさぎやすくなる環境を逆手に取るつもりで、いつもよりちょっとだけ遊び心のあるテイストを取り入れて、服から気持ちを盛り上げてみませんか。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

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短期集中連載“STAY HOME PLAYLIST vol. 6” Dos MonosのTaiTanとMIRRRORのMeiが選曲

 ウイルスという、目に見えぬ敵と人類が戦い早数カ月。感染拡大を防ぐために不要不急の外出が制限され、1日のほとんどを自宅で過ごすようになり退屈な時間も増えたはずだ。そこで「WWDジャパン」では、ファッションを中心とした業界関係者にご協力いただき、ゆっくり過ごす際や仕事中、自宅で踊るときにおすすめしたい“STAY HOME PLAYLIST(おうち時間用プレイリスト)”の短期集中連載をスタート。いつもの音楽に飽きてしまった耳に絶えず新鮮な音楽を与えるべく、6日連続でお届けする。最終日となる6日目は、3人組HIP HOPグループDos MonosのラッパーTaiTanと、ラップユニットMIRRRORとしても活躍するモデルのMeiのプレイリストをご紹介。

TaiTan(Dos Monos)

――好きなジャンルと、最近よく聴いているアーティストおよび楽曲は?

からっとした音楽が好きで、坂本慎太郎と安藤裕子をよく聴きます。

――今回の“STAY HOME PLAYLIST”について。

これだけ地球規模の外圧にさらされると、未知の刺激には正直おなかいっぱい。だから最近は、肌に無理なくなじむ曲を聴いてます。今回はその中でも、美しい日本語を味わえる曲に絞って選んでみました(MONG HANGの「Sap Alan On The Tellial」だけ何語か不明ですが、美しいことには変わりありません)。ネットで正論と大喜利ばかり目にしていると身がもたないので、せめて音楽の世界くらいは言葉にほれてみるのはどうでしょう。部屋で、風呂で、寝室で、頭からゆっくり聴いてみてください。

――音楽を聴くこと以外に自宅ではどう過ごしている?

料理です。今、3人でシェアハウスをしてるのですが、板場はすっかりわたしのものに。毎日同居人に飯を振る舞ううちに、寮父の心が宿り始めてきました。それ以外は、超長風呂(朝夕のダブルヘッダー制)をしたり、積読解消をしたり。かつては人生でねじれの位置にあった“ていねいな暮らし”を図らずも手に入れてしまったことに戸惑いながらも、工夫して楽しんでいます

Mei(MIRRROR)

――好きなジャンルと、最近よく聴いているアーティストおよび楽曲は?

結構幅広く聴いていて、基本ラップやR&Bが多いんですが、最近は4つ打ちをよく聴いてます。でもやっぱりジャンルを絞らず聴くのが一番いい。最近よく聴いてるのはイヴ・トゥモア(Yves Tumor)、パーティネクストドア(PARTYNEXTDOOR)、テイ・シ(Tei Shi)など。

――今回の“STAY HOME PLAYLIST”について。

最近よく聴いてるアーティストから20曲を集めました。いろんな雰囲気が交ざってるプレイリストが好きなので、エレクトロニック系からオルタナティブ、落ち着いてるラップや激しいラップなど、踊る感じもバラードぽいのも味わえる流れにしています。そこまで有名ではないアーティストばかりですが、だからこそ聴いてほしいです。お気に入りの自分の曲「Re(intro)」も入れてみました(笑)。

――音楽を聴くこと以外に自宅ではどう過ごしている?

今はロサンゼルスにいるのですが、こっちは自宅待機期間が日本よりも長いです。映画とか自然のドキュメンタリーを見たり、ヨガしたり、まったりな毎日過ごしてます。たまに退屈って感じるけど、シンプルに楽しめることや今しかできないことがいっぱいあって、いい日々にしようとしてます。

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有力セレクトに聞く“巣ごもり”売れ筋ブランド 「エストネ」「バーニーズ」編

 新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の影響で、セレクトショップの売れ筋が変化している。各社では2月の春夏立ち上がりの時期に、外出自粛ムードによって来店者数が半減。4月7日以降、休業要請を受けた7都道府県の店舗ではオンラインショップのみの営業に移行している。従来EC販売のなかったブランドの拡充やクーポン配布キャンペーン、SNSでの商品紹介の強化など、試行錯誤が続いている。

 このような状況において売れ行きが好調なのは、窮屈な“巣ごもり”時間を豊かにしてくれる美容アイテムや、近隣の移動に便利なファッション小物だ。「エストネーション(ESTNATION)」と「バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」が、売れ筋やオンラインでの施策について現状を明かした。

厳しい商況下でも“香り商材”は絶好調

 「エストネーション」は秋冬物のセールをいち早く切り上げて、2月7日から春夏アイテムを早期投入。東京・六本木店では、「ザ ロウ(THE ROW)」の売り場を拡大し、クリーンなジャケットやワンピースが順調に動いた。

 ジュエリーでは、ギフト需要の高い2~3月だったこともあり「タサキ(TASAKI)」「ミズキ(MIZUKI)」「ヒロタカ(HIROTAKA)」「ジジ(GIGI)」などが好調。例年よりも地金のみのシンプルなデザインやパール、一粒ダイヤモンドなどを取り入れた普遍的なデザインが好まれたという。

 しかし、3月2日に小学校や特別支援学校などの全国一斉休校が実施された前後から、特に駅ターミナルの店舗で、子どもを持つ女性客の日中の来店が鈍化したが、3月中旬までは、ピンクやグリーンなどの春カラーのニットやシャツにボトムスを合わせた鮮度のあるコーディネート、春アウターやオフィス用のセットアップなど、「実需のアイテムが好調に推移したことで持ちこたえた」という。

 一方、厳しい商況下でも、アロマやフレグランスなどの“香り商材”の売り上げは前年同月比を大幅に上回っている。自宅で過ごす人が増えたことにより「バオバブ(BAOBAB)」のディフューザー(1万5000円前後)や、「バイレード(BYREDO)」のフレグランス(2万~3万円)など、インテリアに映える高単価の雑貨が好調に推移。さらに3月中旬以降は、「ロングルアージュ(LONGLEAGE)」のネイルケア(3000円~1万円)や、「マイセルーチェ(MYCELLUCE)」の美容液(3万円)など、化粧品やヘアケアなども売れているという。

 外出自粛要請後のオンラインショップでも、「ザ ランドレス(THE LAUNDRESS)」のルームスプレーや1Lのビッグボトル洗剤、「セレクトアルファ(SELECT α)」のオーラルケアなどの生活雑貨ですでに在庫切れの商品もあり、生活環境への意識の高まりが感じられる。

 またEC化率1割という同業態では、オンラインストアへの送客のため、クーポンや店頭スタッフのスタイリング紹介などのプロモーションを強化。一方、実店舗の売り上げの割合を大きく占める顧客には、「電話やメールなどの原始的なツールなどの基本的ツールによる商品紹介も積極的に行っている」という。

近隣散歩に便利な“ファッション雑貨”が人気

 「バーニーズ ニューヨーク」のオンラインストアでは、首から下げることができるオリジナルのIDケース(7000円)や、凝ったディテールが特徴の「ヨシノリ コタケ デザイン(YOSHINORI KOTAKE DESIGN)」のキャップ(9000~1万2000円)が好調だ。矢野考太郎コミュニケーションデザイン マネジャーは、4月の新生活やギフトのニーズと併せて「近所への散歩やランニング用に購入されているお客さまも多いのでは。実際に家の近所でも、そのような雰囲気の方を見かけることが増えている」と推測する。

 また初の試みとして4月14日に、店舗スタッフがカメラに向かって商品をおすすめする“接客動画”の配信を自社ブログやツイッター、インスタグラムでスタートさせた。「顧客とのつながりが自社の財産。リアル店舗の販売をフォローするような、デジタル強化の施策を早急に実施したい」と続ける。

 なお現在同社では、オンラインストアを除くスタッフは自宅待機中。自己研さんとして、各種検定試験の勉強や課題図書の読了などを促しているという。

村上杏理:1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

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それぞれの思いの詰まったマスクで登場 業界に力強いエールPart1

「WWDジャパン」4月20日号、「WWDビューティ」4月23日、30日合併号では、新型コロナウイルスによる感染拡大で一人、一社では立ち向かえない未曾有の状況下にある今、互いに励まし合い、知恵を共有し合おうという特集を企画した。表紙では、ファッション&ビューティ業界の皆さんにオリジナルデザインのマスクを着用した写真で参加いただいた。さまざまなデザインマスクとともに力強いメッセージをぜひ読んでほしい(URLはマスクの詳細や予約・購入先へ遷移します。完売または販売中止になっている場合もあります)。


 「WWD JAPAN.com」はファッション&ビューティ業界を応援すべく、週刊紙の「WWDジャパン」と「WWDビューティ」に掲載した新型コロナウイルス関連ニュースを無料開放します。記事やコラムから未曾有のピンチを克服するヒントや勇気を感じ取ってくだされば幸いです。

 なお、他のニュースはこれまで通り、有料会員限定記事とさせていただきます。購読は、こちらからお申し込みください。


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強さの源泉は「進化する企業姿勢」にあり! ユニクロを22年間追い続けた記者に聞く(前編)

 「WWDジャパン」4月27日&5月4日号はユニクロ特集です。今回の特集の構成を組み立てる上でカギになったのが、特集を監修したジャーナリスト、松下久美さん(元「WWDジャパン」記者でもあります)の「ユニクロは今、“第6創業期”とも呼ぶべき転換期を迎えている」という一言。松下さんはユニクロを22年間追い続けており、「ユニクロ取材はもはやライフワーク」(本人談)。定期的に取材分野が変わっていくことの多い業界紙や経済紙記者の間では、この長さは異例であり、2010年には「ユニクロ進化論」(ビジネス社)という本も出版しています。松下さんにユニクロとの22年間と、今回の特集の読みどころを聞きました。

WWD:そもそも、松下さんとユニクロの出合いは?

松下久美クミコム代表(以下、松下):1996年に日本繊維新聞というアパレルの業界紙に入社して、専門店や百貨店、量販店などをメインに取材を始めました。90年代後半から2000年代にかけての時期はジーンズカジュアル専門店が出店を加速して伸びた時期で、当時からファーストリテイリングの「ユニクロ(UNIQLO)」は売上高も店舗数も際立っていた。都心ではまだあまり知られていなかったけど、「ライトオン(RIGHT ON)」や「マックハウス(MAC HOUSE)」に比べても圧倒的に優良な地方チェーンがあるぞ、っていう感じでした。その頃はまだ山口県に本社があり、決算発表の時期にFAXで短信を送ってもらって、電話で取材をしていました。それが一番最初のユニクロとのやり取りの記憶かな。当時、FAX送付などの対応をしてくださっていたのが、今回の特集でもインタビューした柳井(正ファーストリテイリング会長兼社長)さんの後継者チームの中の一人、桑原(尚郎フロントエンド本部 本部長)さんです。本業がありつつ、広報も兼務している感じでしたね。

WWD:1998年に原宿店がオープンして「ユニクロ」は一気に全国区になりましたが、その前夜ですね。

松下:柳井さんに初めてお会いしたのは、原宿店のオープンの時です。バックヤードの段ボールに囲まれた中で、急きょ他紙と共同でインタビューができることになりました。その時から「『ギャップ(GAP)』『ザラ(ZARA)』『H&M』に並ぶ企業になりたい」と柳井さんはおっしゃっていて、志が高い企業だなと思いましたね。オープン当日に明治通り沿いに200人くらい行列ができて、メディア取材が殺到するようになった。原宿店オープンに合わせてフリースを看板商品として打ち出したんですが、それまではフリースって、主にスポーツブランドが手掛けていて、1万、2万円はする高い商品でした。それを1900円で出して、肌触りがよくてしかもいい色合いのものが多かったので、とても話題になりました。

WWD:価格設定だけでなく、売り方そのもの、ビジネス手法そのものが既存のアパレルとは異なり、業界にも世の中にも衝撃が走りました。

松下:アパレルの販売って、それまで数千枚からせいぜい数万枚を売る、というのが定石でしたが、ユニクロは「フリースを売る」となったら200万枚を仕込む。さらに、普通は前年の10%増、20%増といった具合に予算を組んでいくものなのに、翌年には850万枚、さらに次の年は2000万枚と、増産に次ぐ増産を行っていきました。部品として服を売り、人と同じ服を着ることに対する違和感をなくしていったこともそうだし、売れると思ったものに賭けて、大量のプロモーションで売り込んでいくという手法もこれまでとは全く違いました。SPAモデルゆえに低価格なのに利益率が高い。その構造を誠実に伝えて、商品に対する信頼を勝ち取っていくビジネスのやり方全体をとても面白いと感じていました。

WWD:原宿出店からの飛躍を、松下さんは今回の特集で“第3創業期”と呼んでいます。

松下:広島に1号店をオープンしてからの草創期、本格的にチェーン展開を始めた第2創業期を経て、ユニクロがどーんと伸びたのは、1つはこの“第3創業期”のタイミングでした。モノ作りに対しては、丈夫さという意味での品質は当時から割と高かった。ただ、デザイン面はまだ無骨で平面的な感じでしたね。それらを変えて、本質的に良い服を作ろうと、ユニクロは99年以降「匠プロジェクト」を発足させました。日本の素材工場や縫製工場の熟練の職人をユニクロが雇用して、中国の取引先工場に常駐させてより品質を高めていったり、「イッセイミヤケ(ISSEY MIYAKE)」や「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」などから企画やパターンの担当者を採用したり。そういう変化を見ていて、「ここは進化する会社なんだな」というのをすごく感じましたね。柳井さんも堅実さと大胆さを兼ね備えていたし、あとは玉塚(元一・現デジタルハーツホールディングス社長)さん、澤田(貴司・現ファミリーマート社長)さんのような、面白くて情熱的な人が集まっていました。

WWD:国内での知名度を得て、ユニクロは2001年のロンドン出店を皮切りに、海外にも出店していきます。

松下:私、ロンドン出店以来、海外出店の度に取材に行っていたんですよね。出張費用が下りなかったから、自費で(笑)。ニューヨークは06年にソーホーに出店したグローバル旗艦店が有名ですが、その前年にニューヨーク郊外のニュージャージーのモールに複数店出店していたユニクロ黒歴史がありまして(笑)。その時、現地プレスのみに向けて会見と内覧会が開かれていたんです。会見をやるみたいだという話はちらほら聞いていたけど、日本から来たメディアにはあまり見せたくないということなのか、現地のPR担当者がどうしてもはっきり教えてくれなくて。時間を見計らって、電車とタクシーを乗り継いで会場にたどり着いたら、もう会見は終わり間際。「ここまで来たのにこれじゃ記事にならない、どうしよう」って、そこから柳井さんに写真だけ撮らせてもらって、車寄せまで歩く間になんとかぶら下がりでコメントを取らせてもらいました。そうしたら、「松下さん、ここまでどうやって来たの?ニューヨークまでどうやって帰るの?」と。それで、「車、乗せてあげてよ」って、スタッフに言ってくださったんです。だったらと、図々しくも柳井さんの車に乗せてもらって、あらためてアメリカ進出の意気込みや、学生時代に世界を一周して感じた、アメリカへの憧れといった話を聞かせてもらいました。ここまで来てよかったな、と本当に思いましたし、柳井さんの心遣いにも感謝しましたね。

WWD:ユニクロが成長するタイミングを、自分の目でリアルタイムに見てきたわけですね。

松下:ユニクロを追いかけて海外に取材に行く度に、海外のマーケット情報もリサーチしていました。だからこそ、08年の「H&M」や09年の「フォーエバー21(FORWVER 21)」日本上陸の際にも、「ファストファッションといえば松下」というように評価してもらえて、記者としての強みが増えた気がしますね。ユニクロを取材する中で一つの視座ができて、それと他社を比べることができるようになった。「ユニクロについて本を書かないか」とお誘いを受けたのも、それがあったからだと思います。ただ、あの本は当初は3カ月くらいで書いてください、という依頼だったんですが、出版までに2年半くらいかかってしまった。書いているうちにユニクロがどんどん進化していくから、それとの追いかけっこをしていたような感じでした(笑)。

松下久美:ファッション週刊紙「WWDジャパン」のデスク、シニアエディター、「日本繊維新聞」の小売り・流通記者として、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)

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ワコールの「ウンナナクール」が絶好調 巣ごもり消費で下着やルームウエアが売れる

 新型コロナウイルス流行で外出自粛が続き、消費者の関心も家の中に向いて、ルームウエアや下着が売れている。

 ワコールの女の子を応援するインナーウエア「ウンナナク―ル(UNE NANA COOL)」が巣ごもり消費で絶好調だ。3月1日~4月20日のワコールウェブストアの売り上げは前年同期比2.2倍、ルームウエアやパジャマ全体は同1.8倍だ。好調アイテムはワンピースで同2.9倍、レギンスが同2.3倍。

 一方下着は、ノンワイヤーブラが同1.5倍、“パジャマブラ(ナイトブラ)”は同4.8倍だという。中には品切れの商品もあり、巣ごもりはインナーウエアメーカーにとって追い風のようだ。

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短期集中連載“STAY HOME PLAYLIST vol. 5” 嶌村吉祥丸とSEKITOVAが選曲

 ウイルスという、目に見えぬ敵と人類が戦い早数カ月。感染拡大を防ぐために不要不急の外出が制限され、1日のほとんどを自宅で過ごすようになり退屈な時間も増えたはずだ。そこで「WWDジャパン」では、ファッションを中心とした業界関係者にご協力いただき、ゆっくり過ごす際や仕事中、自宅で踊るときにおすすめしたい“STAY HOME PLAYLIST(おうち時間用プレイリスト)”の短期集中連載をスタート。いつもの音楽に飽きてしまった耳に絶えず新鮮な音楽を与えるべく、6日連続でお届けする。5日目は、フォトグラファーでギャラリーのキュレーターも務める嶌村吉祥丸と、DJでプロデューサーのSEKITOVAのプレイリストをご紹介。

嶌村吉祥丸

――好きなジャンルと、最近よく聴いているアーティストおよび楽曲は?

カネコアヤノ、フレデリック・フランソワ・ショパン(Frederic Francois Chopin)、ブライアン・イーノ(Brian Eno)、エイフェックス・ツイン(Aphex Twin)など、雑食です。

――今回の“STAY HOME PLAYLIST”について。

友人に教えてもらったり、撮影をきっかけに出会ったアーティストなど、最近家で聴いていた曲を並べてみました。自宅で音楽を聴く時間が増えた現在、音楽の持っている力をあらためて感じています。ジャンルを問わずにプレイリストを作成したので、その日の気分や天気に合わせて聴いてみてください。

――音楽を聴くこと以外に自宅ではどう過ごしている?

自宅では料理や掃除、筋トレをしています。また、哲学者やアーティストと一緒に既存の概念を再構築し、新たな概念体系を創るためのプロジェクトを進めています。写真を撮ることはできなくても、情報を収集したり連絡を取ることはできるので、考えることをやめず、自分にできることを模索し、実行し続けようと思っています。自主隔離はまだしばらく続くと思いますが、医療従事者の方々をはじめ誰かのために働き続けている方々に感謝と敬意を込めて。生きましょう。また再会できる日を信じて。

SEKITOVA

――好きなジャンルと、最近よく聴いているアーティストおよび楽曲は?

ふざけた顔して真面目な音楽と、真面目な顔してふざけた音楽、あと踊れる曲が好きです。最近は、キング・クルール(King Krule)の「Man Alive!」、デイビッド・オーガスト(David August)の「Reminiscence Of A Jewel」、YAMAANの「幻想区域」です。

――今回の“STAY HOME PLAYLIST”について。

実際に自分が作業しているときに聴いていた履歴からセレクトしました。ミックスではなくプレイリストということで、シームレスなものなど何パターンか作ってみた結果、DJmixよりもさまざまな領域をがっつり横断させてみました。DJ以上に横断していきますが、右肩上がりの集中力を発揮してもらえたら幸いです。と思いきや、ちょっとずつツッコミながら楽しんで、そのついでにお仕事をやっつけてもらえたらもっとうれしいです!

――音楽を聴くこと以外に自宅ではどう過ごしている?

今は事情があって外に出て働かざるを得ないタイミングもあるんですが、極力家にいる時間を増やすために結局はひたすら音楽を作っていますね。音楽をしていないときは、ゲームやネットサーフィンをしながらオンラインで友達と他愛もないおしゃべりをしています。外でやったら怪訝な目で見られるようなことも家の中だと平気でできるので、最高ですよね。僕はカメラがオフになってるのをいいことに、真面目なことを話しながらめっちゃヘン顔したりしてます。あと、理不尽なことがあったりしてムカついても2歩で布団に到着するのも最高!どうにもならないときは寝るに限りますね。

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コロナ禍の米ファッション小売業の生き残り策 鈴木敏仁のUSリポート

 アメリカ在住30年の鈴木敏仁氏が、現地のファッション&ビューティの最新ニュースを詳しく解説する。今回は新型コロナウイルスの危機に対する米ファッション小売業の対応をリポートする。

 アメリカが非常事態宣言を出したのが3月13日、最初にロックダウン(都市封鎖)を発令したのはカリフォルニア州の同19日。その後に続々と多くの州が追随し、これを執筆している4月24日の時点でロックダウンも1カ月を超えている。エッセンシャルな用事と健康のための散歩といった理由以外の外出禁止と、非エッセンシャルなビジネスは営業停止を求められている。法的拘束力を持っているので違反すると逮捕されることもある。

 エッセンシャルとは“必要最低限”や“必須”といった意味だ。食品や薬など生きていくために必要なモノを売るビジネスはエッセンシャルだが、それ以外は非エッセンシャルとなる。ただし人と人の距離を離すソーシャルディスタンスが目的なので、例えば外食ならばイートインは不可だが、持ち帰りや宅配は可能となっている。

 非エッセンシャルであるため、すぐに全店営業を中止し、その代わりにネット通販で注文を受け付けて、駐車場の車のトランクまで店員が運ぶ“カーブサイドピックアップ”のみで営業するのが家電量販店のベストバイ(BEST BUY)である。

 このエッセンシャルの線引きがけっこうあいまいなところもあり、州政府に強引に認可させる業界もあったりして面白いのだが、その話は本稿ではひとまずおいておく。ロックダウンの影響をもろに受けてしまったのはショッピングモールとそのテナントで、百貨店業界と衣料専門店業界は万事休すとなっている。

大手百貨店の破たん秒読み

 最初に破綻したのはローラ アシュレイ(LAURA ASHLEY)、次がトゥルー・レリジョン(TRUE RELIGION)だ。前者はもともと破綻が秒読み、後者は2度目。両社ともに財務が脆弱となっていたので、新型コロナウイルスだけを理由にするわけにはいかない。

 次に赤信号がともったのが百貨店業界である。真っ先に俎上に載ったのがニーマンマーカス(NEIMAN MARCUS )で、破綻は秒読みと報じられている。投資企業傘下にあり財務状況は分からないのだが、実はこの企業も以前から破綻のうわさがあるのでさほどの驚きはない。次が4月15日に社債利子の支払いでデフォルト(債務不履行)を起こしたJ.C.ペニー(J.C. PENNEY)で、破綻も視野に入れて債権者グループと協議中である。この企業も業績は長く不調なので来るときが来たといったところである。ロード&テイラー(LORD & TAYLOR)にも破綻が近いといううわさが出ている。

 私が軽い衝撃を覚えたのはギャップ(GAP)だ。4月上旬の時点で、夏物の仕入れはネット通販用のみで店舗用は出荷停止、秋物の仕入れはすべて延期としている。またアメリカの全店舗1億1500万ドルの家賃の支払いを停止して家主と契約について交渉を開始した。運転資金が枯渇しつつあり社債を発行しての資金調達を検討中としているのだが、ジャンク債となるようで調達コストはかなり高くつきそうだ。

 現在アメリカでは失業者数が人口の5分の1に達しており消費意欲は完全に減退している。ロックダウンが終わって営業を開始したとしても消費が戻るまでに時間を要することは確実で、状況は相当厳しいと言えるだろう。

ルルレモンやアバクロの取り組み

 一方コロナ渦以前の段階で、好業績で財務クッションを持っている企業はロックダウン解除後を見据えて少しでも売り上げを作って延命しようと努力しているのだが、そのカギは定番の強さと在庫マネジメントにある。

 高価格帯のスポーツウエアで知名度の高いカナダのルルレモン アスレティカ(LULULEMON ATHLETICA)は2015年に全商品にRFIDタグ(無線タグ)を付け、在庫管理の精度を上げている。そのため店頭在庫をほぼ100%把握できている。全店閉鎖の直後に一部の店舗をネット通販専用のフルフィルメントセンター化し、配送センターと組み合わせ、全商品を適正配分し、加えて店員も速やかに移動して可能な限り一時帰休を減らしたとしている。同時に100%可視化している現在庫を基本に予測を調整し、発注や仕入れ量を下げて適正化を図っている。取引ベンダーが多く介さない垂直統合型なので、在庫管理と予測技術による全体最適もスムーズに進んでいる。また、もともと季節性の少ないデザインコンセプトなので比較的ダメージが少ない。

 前述のようなカーブサイドピックアップをモールが主導して実施するという取り組みも始まっている。駐車場にピックアップ専用のスペースを用意し、客は各専門店のネット通販で買い、駐車場からパーキングスペースに割り振られている番号を連絡すると、店員が車のトランクまで持ってきてくれるという流れである。モールも専門店も表向きは営業していないのだが、店の中で店員がネット通販用の作業をしているのである。

 ユニークな取り組みをはじめたのがアバクロンビー&フィッチ(ABERCROMBIE & FITCH)だ。中古衣料ECのスレッドアップ(THREDUP)と提携し、ユーザーが中古衣料をスレッドアップに送って出品するとアバクロの商品券を提供する。金額は商品バリューによって決まるとしている。アバクロが今持っている在庫の処理とは無関係だが、失業者が急増して家庭内衣料在庫の現金化需要はこれから増えてくるものと予測でき、ロックダウン解除後を見据えた面白い戦略である。

 現在ほとんどの企業が在庫をさばくためにネット上で大幅な値下げ販促しているのだが、先行きの不透明感でほとんど動いていないという。となると、これから活躍するであろう業態が「TJマックス(TJ MAXX))」に代表されるオフプライスストアである。製造段階から店頭までの過剰在庫の受け皿となっている業態で、ロックダウン解除後には相当数のブランド商品が並ぶだろうと予測できる。先行き不透明なときに強いのはいつもディスカウント型リテーラーなのである。

 コロナショックを乗り切るために各社悪戦苦闘しているのだが、低迷していた企業には一気に引導が渡されてしまう、そんな状況となりつつある。

鈴木敏仁(すずき・としひと):東京都北区生まれ、早大法学部卒、西武百貨店を経て渡米、在米年数は30年以上。業界メディアへの執筆、流通企業やメーカーによる米国視察の企画、セミナー講演が主要業務。年間のべ店舗訪問数は600店舗超、製配販にわたる幅広い業界知識と現場の事実に基づいた分析による情報提供がモットー

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中国の将来有望株「エンジェル チェン」 ミラノコレを断念した後に実現したバーチャルショーの手応えは?

 上海を拠点にする「エンジェル チェン(ANGEL CHEN)」は、えセント・マーチンズ美術大学で学んだ中国人デザイナーのエンジェル・チェン(Angel Chen)が2014年に立ち上げたブランドだ。現在中国内外に50アカウント以上の卸先を持つほか、「H&M」や「M・A・C」とのコラボレーションも手掛け、最近ではネットフリックス(NETFLIX)の番組「ネクスト・イン・ファッション(NEXT IN FASHION)」に出演するなど認知度を高めている。

 そんな国際的な活躍を目指す彼女は、17年からミラノやニューヨークのファッション・ウイークでコレクションを発表してきた。しかし、2020-21年秋冬シーズンは中国内での新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、日時も会場も決まっていたミラノコレでのショーを断念。すぐにデジタルへと方向転換し、3月末にオンラインで開催された上海ファッション・ウイークでのバーチャル・ランウエイショーを実現した。準備期間は1カ月ほどしかなかったが、「ミラノでの発表をあきらめた時、すでにショーのためにCGポスターは完成していたし、私のテーマと今季の着想源であるアニメ映画『アキラ』のドラマチックで未来的なコンセプトはバーチャルでの表現にぴったりだと感じた。そこからすぐに監督やCGチーム、撮影チームを集め、実現に向けた話し合いをスタート。時間が限られていたので皆にとって大きな挑戦だったけれど、やってみる価値はあると思い進めた。私自身、もともとテクノロジーを取り入れるのが好きだし、すでにプロモーションのためにオンラインツールの新たな使い方やデジタルの可能性を探求していたこともあり、方向性を決めてからのプロセスは明確だった」と振り返る。

 渡航制限や外出自粛の状況下で最も困難だったのはキャスティングだった。「海外から来た場合は自宅やホテルに14日間待機しなければならず、中国人でも故郷や他の都市にいて上海に来ることができないモデルが多かった」というが、最終的になんとか上海にいた4人のモデルを起用。仕上がったコレクションを着せ、スタジオでクロマキー合成のための撮影を行った。そこに“夜の無人の闘技場”や“大爆発に巻き込まれる街”“柔らかな色合いで描かれた広い大地”などCGで制作した五つのシーンを組み合わせることで、現実にはあり得ないような空間の中での6分弱のショー映像が完成。異なるアングルやスローモーションを織り交ぜ、ダイナミックに仕上げた。

 ショーは、アリババ(ALIBABA)が運営する「Tモール(天猫)」のライブコマース・プラットフォームとブランドのインスタグラムなどSNSで配信した。延べ3万5000人以上が視聴したというアリババでの配信では、「観客とより親密につながるため、与えられた1時間の中でショーの映像だけでなく、『M・A・C』のアーティストを招いてメイクについて語ってもらうなどバックステージを見せるようなコンテンツも用意」するなど、短調にならないように工夫。またライブコマース機能を生かし、一般消費者向けにオンシーズン(20年春夏)商品の販売も行った。一方、バイヤー向けにはショールームから直接ビデオでセールスを行ったほか、ライブ配信中にもリアルタイムで質問に答え、その後オーダーを受ける体制を整えた。

 バーチャルショーを終えた今、物理的なコレクション発表に対する考えを尋ねると、「現在のような状況下では、バーチャルショーとライブ配信は、ブランドと観客を結びつけるいい方法だと考えている。ただ、コレクションは、スクリーン上だけではなく、実際に動く服を生で見たり、生地に触れたりすることで伝わるもの。なので、デジタル技術だけに頼るわけにはいかない」とチェン=デザイナー。「世界の状況が良くなった後、ライブ配信やCG、VRなどを組み合わせた物理的なショーは、より完成度の高いものになると信じている」と話す。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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“近未来の女性”をメイクとヘアで表現 2020-21年秋冬ロンドンのメイクアップリポート

 2月14~18日に開催された2020-21年秋冬シーズンのロンドン・ファッション・ウイーク(LONDON FASHION WEEK)に参加したブランドは、それぞれが打ち出す“都会的な女性”をメイクとヘアで表現していた。ナチュラル一辺倒だった前シーズンとは異なり、ラメを目元や口元に乗せて輝きを与えたメイクが斬新だ。今季バックステージ撮影を行った3ブランドのビューティの傾向を紹介する。

JW ANDERSON
“現実離れした気高く美しい女性”

 デザイナーのジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が「ヌーボー・シック(新しいシック)」と表現した今季の「ジェイ ダブリュー アンダーソン」は、テクスチャーとシルエットに焦点を当てたルックが並んだ。そのコレクションに合わせてメイクアップを担当したリンジー・アレキサンダー(Lynsey Alexander)は、「現実離れした気高く美しい女性」を表現したと、同ブランドの公式インスタグラムで説明している。使用したのは「M・A・C」の製品。完璧なベースメイクに力を入れて、セミマットな質感で毛穴もムラも一切ないマネキン肌になるように整えた。アイブロウで眉毛の隙間を埋めてブラッシングを施し、自然体だが力強く主張する太眉を作った。メタリックにきらめくケミカル糸のルックのモデルには、生地のテクスチャーに合わせて大きめのラメを目元にのせて、ドレスに負けない輝きを与えていた。唇本来の色を生かすためか、口元はほとんど色をのせず、プルプルとした質感のリップグロスが光る程度。アンソニー・ターナー(Anthony Turner)によるヘアスタイリングは、「ロレアル(L’OREAL)」のジェルで前髪をしっかりと固めて、ランウエイを力強く歩いても乱れることのないフューチャリスティックなイメージに仕上げた。

TOGA
“都会をサバイバルする強い女性”

 「トーガ」のメイクをリードした伊藤貞文「NARS」グローバルアーティストリーディレクターは、「ダウンやパッファーなどアウトドアウエアの要素を含んだルックに合わせて、都会をサバイバルする強くクリーンでモダンな女性」だとイメージを説明した。スキンケアで素肌を整えた後、下地やハイライトとして使える「ティンテッドグロウブースター」をファンデーションとして使用し、肌に自然なパールのツヤと明るさを与えた。コンシーラーで部分的にカバーするだけで、ベースメイクは極めてナチュラル。「ブローパーフェクター」で眉毛を自然に整え、カラーメイクはほとんど加えていない。「トーガ」が描く“女性の強さ”を表現するため、7人のモデルの目元に黒色のアイシャドウでペイントのようなメイクを施した。ヘアはロンドンを拠点に活動する、エージェント「ストリーターズ(Streeters)」所属の高橋詩織が担当。まるでくせ毛のような自然体なウェーブは、髪を巻くのではなく、毛束をコテの表面に当ててゆるいウエーブを少しずつ作る手法だ。毛先に向かってストレートになるビーチウエーブ風で、ランウエイではふわふわと軽やかになびいていたのが印象的だった。

CHRISTOPHER KANE
“都会的な近未来の女性像”

 エデンの園で繰り広げられる男性、女性、自然の三角関係を主軸に、性と自然をテーマにした「クリストファー ケイン」のコレクション。レースを使ったセクシュアルなルックが登場したが、ルーシア・ピエローニ(Lucia Pieroni)によるメイクは剥き出しの欲望ではなく、内側からにじみ出る色気を感じさせる仕上がりだ。「M・A・C」のファンデーションとコンシーラーで薄づきのナチュラルな肌はセミマットな質感に整えて、パウダーでハイライトを足していく。眉毛は下から上へと少し立ち上げるように流しながらアーチを描いた。ポイントとなったのは、目元と口元にのせた七色の大粒なラメ。ツヤツヤとした質感のベースやリップの上できらめく輝きは、PVCのカラーパーツを使ったアクセサリーやルックのディテールとリンクする。ヘアはグイド・パラオ(Guido Palau)がリードした。前髪のあるモデルは前に垂らして、その他はセンターパーツに分けて、「レッドケン(Redken)」の製品でツヤを与えながらしっかり固めていた。全体的に「クリストファー ケイン」らしい都会的でフューチャリスティックな女性像が浮かび上がった。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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休業中の春夏在庫はどうする? セレクト大手3社の対応を聞く

 新型コロナウイルスとの闘いが長期化するなか、有力セレクトショップの2020-21年秋冬展示会の在り方が大きく変わろうとしている。例年5月下旬~6月に開催されるメディア向け?のセレクトショップの展示会だが、各社が中止を検討中。メディア向けには資料を配布しての対応となりそうだが、サンプルや納期の遅れなどが予想されるなか、8月以降に販売する秋冬物のMDの再編成や商品の打ち出し方など、今後大きく変わるであろう消費者心理に合わせて臨機応変の対応が求められる(一部のプレコレクションは5月から打ち出しが始まる)。

 春夏の在庫問題や、秋冬展示会の方向性について、「エストネーション(ESTNATION)」「インターナショナルギャラリー ビームス(INTERNATIONAL GALLERY BEAMS)」は電話インタビューで、「バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」はアンケートで答えてくれた。

春夏の中軽衣料を、秋冬MDに組み込むアイデアも

 「エストネーション」は、20-21年秋冬展示会に代わって資料の配布を検討。“クラシック グラムール”をキーワードに、クチュールテイストのフェミニンなテイストや素材感に、1970年代のムードをミックスしたコーディネートやアイテムを出す予定だ。

 買い付けブランドはほぼ予定通りオーダー済みだというが、「メゾンやデザイナーズ系ブランドからは、1カ月以上の納期後ろ倒しも出てきている」と藤井かんなウィメンズ・ディレクターは話す。オリジナル商品は、すでに作り始めているモノは進行し、型数と在庫数を調整するという。

 課題は“20年春夏の在庫”だというが、同社では数シーズン前から、気候や気温にされないMDプランを組み、薄手のアウターやニットなどの中軽衣料を強化している。「20-21年秋冬でキャンセルが出た商品と差し替えたり、イベントを開催して在庫調整したりするなどまだアイデア段階だが、何らかの対応策を取りたい」という。

 店舗が臨時休業しているなか、EC展開を許可するメゾン系ブランドも増えており、「一時的な措置が、これを機に継続につながってほしい」と期待する。また「SNSやホームページの在り方も課題だった。時間がある今、オンラインから店舗までの誘導を考えて、お客さまがもっと実店舗に来店していただける環境をつくりたい」と、“エストネーションらしい”アプローチを模索している。一方で得意とする「密でパーソナルな対応ももっとできると感じている」と続ける。

 今後の買い付けについては、「サンプルを見て、触れるのがベストだが、実物を見なくても可能なことと、見なければ不可能なことがより選別されていくはず。もっとシンプルにすてきな提案ができるよう、ファッション業界特有のサイクルを見直す機会にしたい」と見据える。

「スニーカー脱却の好機、そのムードがなくなるのが不安」

 「インターナショナルギャラリー ビームス」は、20-21年秋冬展示会は中止するが、打ち出し方法は検討中だ。もともとサンプル数が少なく、丁寧なモノ作りにこだわるインディペンデントなブランドの買い付けが多いため、「サンプルは予定通り届く予定」と片桐恵利佳ディレクターは見込んでいる。

 ただ、商品の納期が遅れることが大前提のシーズン。「20年春夏のプレはスキップして、20-21年秋冬アイテムを12月に納品してほしい」などの交渉をしているブランドはあるという。しかし環境変化によるシーズンレスアイテムの需要が高まるなか、コートやダウンなどのアウターの売り上げが減り、「もともと1枚で羽織れるようなニットの買い付けを増やしていた」と片桐ディレクターは語る。中軽衣料を強化していたため、「多少のスケジュールのズレには対応できる」と捉えている。

 20-21年秋冬は“デイウエアだけれど人とは違うブランド”をテーマに、華やかさのあるアントワープの新鋭ブランドや、モード感のあるニットアイテムを買い付けた。「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」のメインアシスタントだった女性が手掛ける「メリル ロッゲ(MERYLL ROGGE)」や、ロロピアーナ(LORO PIANA)のカシミアを90%使用した「レタンヌ パリ(LETANNE PARIS)」などに注目している。一方、アクセサリーでは、「スニーカートレンドから脱却して、実績が取れなかったシューズをニットとともに強化したいシーズンだった。19-20年秋冬ごろから高単価のアイテムも動いてきており“いい物を買う”というムードがあったが、そのムードがなくなるのが不安」と続ける。

 また、在庫の少ないデザイナーズブランドの取り扱いが多く、自社ECへの展開が少ない同業態だが、臨時休業後は「EC売り上げが徐々に増えている」という。ただ「顧客性が高い店舗なので、SNSで打ち出すモノ、シーズンテーマとともに背景を持ってきちんと伝えるモノのバランスを見定めていきたい」と、オンラインでの施策を探っている。

 新型コロナウイルスの影響で「住まいや食に関わる時間が絶対的に充実するが、衣料はどこに行くのだろう?と漠然と考えている。今後は、シーズンが最適化されてモノの動きがスローになっていくだろう。循環する流れや仕組みをつくっていきたい」。

展示会中止を継続し、別アプローチを検討

 「バーニーズ ニューヨーク」は、20-21年秋冬展示会は中止するが、リリースのみの送付や、動画メディアを作成して共有するなどを検討中。年2回の展示会は見送り、異なるアプローチのプレゼンテーションを継続したい考えだ。

 シーズンのキーワードは未定だが、オーダーしたブランドの納品や売り上げ、在庫状況を考慮しながら、短サイクルでの発注を行い品ぞろえを確保していく。

 「環境問題に対して大きな課題があるアパレル業界にコロナ禍の影響が加わったことで、さまざまなことを見直さざるを得ない状況になってきた。過剰な在庫を持たないよう、MD構成も見直していく」と同社。

 今後、オールシーズンで着られるカットソーやシャツ、パンツなどの中軽衣料を強化し、短サイクル発注のシステムを確立したいという。

村上杏理:1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

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逆境の中で美容室「クク」をオープン 美容師・内田聡一郎と浦さやかが生み出すシナジー

 人気美容師の浦さやか氏が「フラワーズ(FLOWERS)」を退社(それに伴い浦氏が代表を務めていた「オトペ(otope)」は閉店)し、4月1日に内田聡一郎「レコ(LECO)」代表と共にヘアサロン「クク(QUQU)」をオープンした。2人は昨年から「テンサイズ」というユニットを組んで活動していた。当時の取材では「一緒にサロンをするつもりはない」と語っていた二人がなぜ一緒にやることになったのか。また新型コロナウイルスの影響があるこのタイミングでの新店オープンについてどう考えているのか、率直な思いを聞いた。

WWDビューティ(以下、WWD):今回、一緒にやることになった経緯を教えてください。

内田聡一郎(以下、内田):もともと昨年から「テンサイズ」というユニットを組んだり、一緒に活動することも多かったんです。ただ当時は一緒にビジネスをやろうとは思っていなかったんですが、浦さんから新しいことに挑戦したいという話を聞いて、「それなら一緒にやってみないか」と誘いました。それが昨年の秋ごろの話で、それからはとんとん拍子で進んで今回の「クク」オープンに至ったという感じです。物件も「レコ」の近くで探していたんですが、運よくすぐ見つかりました。

WWD:浦さんが新しいことに挑戦してみたいと思ったきっかけは?

浦さやか(以下、浦):美容師として20年やってきて、それなりにやりたいことはできていました。でもいつまでも挑戦したいという気持ちは持っていました。それで「フラワーズ」に15年務めたこともあって、一区切りつけて新しいことに挑戦しようと思ったんです。

WWD:「クク」のオープニングスタッフには浦さんが以前代表を務めていた「オトペ」のスタッフだった人もいますね。

浦:「オトペ」のスタッフには経緯を話して、どうするかスタッフに選んでもらい、そこで2人がついて来てくれました。基本的には美容室ってスタッフを連れて独立するのは許されないことなのですが、それを許してくれた「フラワーズ」の高柳(司)社長には本当に感謝しています。

WWD:「クク」に関しては基本的に浦さんが運営していく?

内田:そうですね。内装などのアウトラインは僕がディレクションさせてもらい、僕は「レコ」の方にしか出勤はしないので、実際の運営は浦さんに任せています。ただ、浦さん自身の個性が濃いため、そこに特化するとお客さまの層も限定されてしまうので、いい感じに薄めていってより多くの人に来てもらえるようにしようとは思っています。

浦:「オトペ」のころは世界観を強く打ち出さないといけないという思いが強かったのですが、「クク」では個性的なヘアだけではなく、スタイルの幅は広げていくつもりです。

WWD:サロン名「クク」の由来は?

内田:いろいろ2人で考えました。「レコ」のセカンドブランドなので、その並びも考えて、2文字がいいなと、それで他の美容室とかぶらないのがいいなと思っていろいろと調べて、クエスチョン×クエスチョンで略して「クク」なんです。

浦:“常に疑問を持って新しいことに挑戦し続けること”をコンセプトに、自分たちなりの最適解を出し、常に斬新であることをこの「クク」に込めています。

WWD:内装は白を基調としてシンプルな感じです。

浦:前の「オトペ」とは違ってスタイリッシュな雰囲気になりました(笑)。

内田:内装のテーマが実験室だったので、真っ白な世界を意識しました。ロゴはアルファベットのQを記号化したもので、電源スイッチをモチーフにしたデザインになっています。あと、ポイントはネオン管で作った“キミノメカラウロコ”という文字。これは外から見えるのですが、夜もずっとつけていて、「クク」のアイコン的な感じになっています。

WWD:“キミノメカラウロコ”はどういったメッセージを込めている?

内田:英語は僕らの雰囲気ではないなと思っていて、かつ外を歩いている人が見たときにすぐ分かりやすいのがいいと思って、カタカナでいろいろな言葉を考えました。その中で、最初は“メカラウロコ”っていうのが見た目的にも響き的にもいいなと思って、そこからお店に来た人に何か新しい気づきがあるようにしたいといいう思いを込めて“キミノメカラウロコ”になりました。

WWD:内田さんとしては2店舗目になりますが、当初の事業計画からしたら予想よりも早かったということはありますか?

内田:「レコ」をオープンしたのが2018年3月1日。もともと3年目で2店舗目は出したいと思っていたので、計画通りではあります。

WWD:「レコ」と「クク」のスタッフの交流は?

内田:幸い距離が近いので、レッスンなどは一緒にやります。場合によってはスタッフもシャッフルする可能性もありますし、来年の新卒は「レコ」と「クク」とで一括採用になります。もともとバラバラにやっていたので、交流がないとまったく別々のサロンが2つできるだけになってしまうので。どちらかのサロンが好きとかではなく、スタッフには2つのサロンを好きになってもらいたし、お互いのサロンにとっていい相乗効果が生まれるようになればと思っています。現に「レコ」のスタッフは、「クク」ができたことでモチベーションは高まっています。

WWD:浦さんとしては「クク」をどうしていきたいですか?

浦:私は頑固なところがあって、自分がいいと思うもの以外はあまり知ろうとしないところがあったんですが、内田さんと一緒にやることで、今いろいろなことに挑戦できています。すごくもめる部分もあるのですが、結果的にそれが私の幅を広げてくれているので、この「クク」では今までと違う部分を見せていけたらなと思います。

WWD:一方でこの新型コロナウイルスの影響がある中でのオープンは厳しいのでは?

内田:状況としてはかなり厳しいですね。ただ前々からオープン日が決まっていたので、4月1日にオープンしました。オープンして1週間ほどで政府から緊急事態宣言が出たのを受け、4月8日から休業していましたが、4月27日から営業を再開しました。ただ、今は予約も制限して、無理せずにできる範囲でやっていこうという感じです。

WWD:逆にこういった状況だからできることは?

内田:社内のことに時間をかけられるようになりました。スタッフ教育にも力を入れられるようになったので、今のアシスタントのスタイリストデビューは少し早められればいいなと思います。この状況が一段落したらスタートダッシュできるように、そのために何ができるかを考えていくしかないなと思います。

WWD:今後の美容室のあり方は変わっていくと思いますか? また今後の美容室には何が大切だと思いますか?

内田:間違いなく変わると思います。美容室に限らず全ての仕事の在り方や存在意義がチェンジする時代に入ると思います。これから大事なことは髪を切るというテクニカル的なことよりも人をデザインするというコンサルティング的な側面が強くなる気がします。

浦:今以上にお客さまにとって特別な存在になっていかなければ選ばれなくなると思います。個人技(技術も想像力も)が必要。個々にそれぞれを伸ばせる柔軟なサロンにしていきたいです。

WWD:最後に、全国の美容師に向けてメッセージを。

内田:未曾有の危機にさらされて誰もが不安になる今だからこそ、ポジティブに柔軟に変化していけたらいいですね。みんなで乗り越えましょう。

浦:今は1カ月先が想像できない状況なので、想像力を膨らませて柔軟に前向きにがんばりましょう。

■QUQU(クク)
オープン日:4月1日
住所:東京都渋谷区渋谷1-5-10 小笠原ビル1階

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Vol.6「独立してみたい景色を目指して」 Vol.6あなたは遊ぶのか?行動を変えるのか?

 突然の長期休暇じゃありません!!

 さて、しばらくコラムをアップするにあたり様子をうかがっていましたが、大変な状況になりましたね。緊急事態宣言の範囲が全国に拡大されてからしばらく経ちましたが、収束の気配は未だなく、国民の生命維持に全くの猶予無しの状況下で、政府と各都道府県知事の間の「調整」などが報道されたことは記憶に新しいですね。全く、何やっているんだとね。

 そこでね、今回はこれまでとはテンションを変えて、真剣に話したく。

 通称“アベノマスク”を始め、給付金のショボさとスピードの無さなど、国の対応には呆れるばかりか怒りを覚える人も少なくないですよね。私も、当然ながらその1人です。

 日本はさ、ほんと災害に弱い。東日本大震災などの教訓から何を学び、国民の税金をどこに効果的に投下して、来たる国難に対策を講じているのかがよく分かったよね。他国の外出禁止令のようなペナルティある「命令」ではなく、「要請」という言葉までの強制力しか持っていない法律下では、日本人は他国に類を見ない特有の「協調性」を発揮して、全国民が大きな危機感のもと自律行動をしなくてはと考えてしまいます。

 突然訪れた長期休暇じゃないんだよ。こんな難局の時に、ビーチに行ってみたりサーフィンなんてしたりしているやつは誰なんだよと。自分には感染症状が無くてもさ、もし自分がウイルスを持っていたら、どこかの誰かの生命を危機に陥れること、いい加減わかりなよ。それが近親者かもしれないし、友人や同僚かもしれないよ。アメリカやイタリアのように、更なる感染拡大を助長していることに気付きなよと。

 私は仕事柄、海外へ行く機会があるから、日ごろ思うことがあります。

 日本は先進国で、医療や公共施設は整備されて治安もよく、舗装された道路や街にはゴミが少なく住みやすい。少し行けばコンビニやスーパー、ドラッグストアが当たり前のように存在する。他人を思いやる精神を有していて、地震などの災害が起きてもパニックを起こさず、冷静かつ前向きに「これからをどうするのか?」を考えて行動できる。戦争という大きな過ちを反省して復興し、経済成長を遂げて、今がある。苦しい時代を一生懸命に生きて創ってくれた、先人たちのおかげで今があるんだと。

 私たちは今、その上に立っていて、これまでの努力や人の願い・想いを断ち切って良いわけがないと。大変な時くらいは、いつもと行動変えて我慢しましょうよ。平穏な日常が戻ってから遊びましょう。「行動しない」ということは、「意志もなく、何も考えずに、ポカンとしていること」と同じなんだということ。

 それともう一つ。政府やリーダーの対応への不満が噴出していますが、選んだのは私たちですよね。選挙権を有していながら、真剣に考えずに投票した方も少なくはないはずです。そもそも投票にすら行かない人は、真剣に反省する時だと思います。義務を果たしてから権利を主張することが大切だと思うのです。

 こんなことを考えていたら、19歳の女性がインスタグラムで代弁してくれていたのを見つけたので、画像を一部転載&ご紹介します。同感ですし、こういう若い世代のエネルギーが未来の日本に良い影響を及ぼすことを期待したいのです。

 では、我々ファッション業界はどうなのか?指くわえて眺めている人たちなんて、実際そんなにいませんよ。行政がスピードを持ってやれないことを、こんな時だからと行動に移しているので紹介します。少しでも多くの方々の助けになればと!早くコロナショックが収束してくれないと、ファッション業界も当然ながら大打撃ですから。

 ブランドサイドは展示会もできなければ、そもそも素晴らしいクリエイションの数々を世の中にお見せすることもできない。そもそも、ショッピングを楽しむ日はいつになるのかと。マスクもサニタイザーも手に入りにくいし、みんな困っている。「よし!じゃあ私たちでやっちゃおう!!」ということで、多くのブランドが自社で使用している上質な生地を使ってマスクを生産し、お世話になっているお客様に配ったり、オフィシャルECで販売したりしています。例えば「ヨシオクボ(YOSHIO KUBO)」「ファクトタム(FACTOTUM)」などは、〝らしさ″もあり、お客様への愛もありでステキです。ぜひオンラインを覗いてみてください。

 他には、「スタンプド(STAMPD)」などを扱うショールームI AMは、社員の提案で独自のルートで使い捨て用の3層構造サージカルマスクを輸入。利益を取らず、わずか2週間で数多くの人に届けています。私自身もこれで助かり、近親者や周りの困った人の一助となるべく、かなりの数をオーダーして配ることができました!!できる限り、多くの要望に応えて、不足を少しでも補いたいと、胸アツで話してくれました。今後もまだまだ続けてくれるはずです!!

 そして、今や世界の有名ショップ御用達の「ヴァイタルマテリアル(VITAL MATERIAL)」。マスクと同様に困っている消毒用のハンドジェルを使って、プロジェクト開始です。その名も「#CONNECT TO THE FUTURE」。以前から販売する消毒用ハンドジェルと口腔ケア用歯ブラシで、かねてより縁のある人気ブランドやメディア、著名人とコラボ。不足しているアルコール類を多くの方にお届けします。更に販売収益で増産し、保育施設など各施設に寄付するそう。この苦境を共に乗り越えるべく、少しでも社会の役に立ちたいと支援活動を続けるそう。私も、少し参加させていただきました。商品は、各コラボブランドのオンラインと「ヴァイタルマテリアル」のオフィシャルECで、4月28日の正午から5月17日まで受注販売予定です。

 ご紹介できたのは、ほんの一部。他にもたくさんのブランドが取り組みを行っています。

 ファッション業界には、やっぱり前向きでスピード感ある素晴らしい行動を起こせる方々がたくさんいるんだと実感しました。ここで一度、自分の足元をしっかり見る良い機会ですよね。

 遊びではなくて、真剣に、「これからをどうするのか」を考えて、一人一人の確固たる意志と自律ある行動によって、明日の生活を皆で取り戻しましょう!!

井上智和:1981年生まれ。東京生まれ東京育ちのCITY BOY。中央大学商学部を卒業後、三陽商会に入社し、店頭研修後に「バーバリー・ブラックレーベル」で販売トレーナー及びVMDを担当。3年目の終わりに「ラブレス」に異動しバイヤーに。国内外ブランドの開拓・買い付けをしながらセレクトショップの運営を学び、直近はバイヤーの他にプレス・販促・販売の長を兼務しながらリテール事業を経験。15年在籍の後に退社し、現在は「1H basix(ワンエイチ ベイシックス)」の名を冠して独立。ファッション・ライフスタイル領域のセレクトにて、アドバイジングやディレクション、買い付けを行なう傍ら、大人の本気遊びを体現し記事執筆を行う

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大手アパレル 新型コロナ禍で待ったなしのデジタル改革

 国内の大手アパレル各社は、新型コロナウイルスによって深刻なダメージを受けている。主戦場である百貨店やショッピングセンターの休業は致命的で、オンワードホールディングス(HD)、TSIホールディングス、三陽商会の3月の店舗売上高は、前年同月に比べて約3~4割も落ち込んだ。収束が見通せない中、各社は不採算店舗・事業にメスを入れると同時に、デジタルを軸とした起死回生への改革を急ぐ。(この記事はWWDジャパン2020年4月27日&5月4日号からの抜粋です)

 「これまで経験したことのない事態」(保元道宣オンワードHD社長)。「生き残るために、猛スピードで会社の仕組みを入れ替えなければならない」(上田谷真一TSIホールディングス社長)。
 4月上旬に開かれた2020年2月期の通期決算説明会で、大手アパレルのトップは“コロナショック”への危機感をあらわにした。オンワードHDは主販路の百貨店を中心とした商業施設の休業で、3月の店舗売上高は前年同月比約3割減。TSIも、3月の店舗売上高は同約33%減で、4月18日の緊急事態宣言の拡大以降は9割の店舗が休業している。三陽商会は3月の売上高が同45%減だった。

 これまで大手アパレルが生命線としてきたのは、全国の百貨店に張り巡らせた店舗網だ。近年は地方百貨店の衰退とともに、各社はEC販売の強化施策などデジタル化へと布石は打ってきたものの、収益構造は大きくは変わっていない。オンワードHDの20年2月期末時点でのEC化率は13.4%で、中核会社オンワード樫山の売上高に占める百貨店販路の割合は62%と大半を占めている。だがコロナショックにより、そのリアル店舗を前提とした収益構造が完全に機能不全に陥ってしまった。

不採算店舗・事業を整理 デジタルに集中投資

 この状況下で各社のトップは、デジタル改革の大幅なスピードアップの必要性を痛感する。「デジタルトランスフォーメーションをあらゆる事業領域で3倍速で推進する」(保元社長)「営業活動ができないからこそ、今期はやりたいと思ってきた事業構造の抜本的な改革に取り組む」(上田谷社長)。いずれも、不採算な店舗や事業を整理し、将来性のある店舗・事業に資本を集中。アフターコロナも見据えて、EC強化やリアル店舗との連動など、デジタル施策を推進する。

 オンワードHDは21年2月期に国内外で約700店舗を閉める。同社はすでに20年2月期の下期(9月~2月)で同数の店舗を閉鎖しており、通期では521億円の純損失を計上。前期・今期合わせて、国内外約3000あった店舗がほぼ半分になる計算だ。

 一方でEC売上高は21年2月期で前期比約1.5倍増の500億円、中長期で1000億円を掲げる。保元社長は「ゆくゆくはECの売り上げを(売上高全体の)半分以上にする。目指すのは優れた企画・生産能力を有するEC事業者」とまで言い切る。20年春夏にスタートしたEC専業ブランド「アンクレイヴ」 をはじめ新ブランドや、EC専用の商品開発などにも注力する。

 その上で重要となるのは「デジタルとリアルのベストミックス」(保元社長)。これまで同社は会員システム「オンワードメンバーズ」の強化に取り組んできた。20年2月期の会員数は前期比18%増の313万人。この会員システムを前提に、「リアルとEC に相互送客できるオムニチャネル機能を備えた、複数ブランドの集約型店舗」を展開する。

 TSIは、全社的な仕入れ抑制とともに、「デジタル」「少店舗」「プロパー(正価)販売」を前提とした収益性の高いビジネスモデルに投資を絞る方針。「ムダに作った服をムダに買ってもらう世界は(新型コロナが収束しても)戻ってこない」(上田谷社長)と考え、売上高よりも粗利益率の改善に重点を置く。20年2月期はわずか7000万円の営業黒字(前期比96. 9 %減)だったが、中期で売上高営業利益率5%を目指す。

 デジタルを軸とした事業開発・運営を全社横断で推進するため、SCM(サプライチェーン・マネジメント)や情報システム、マーケティングなどの機能を集約した専門部署を3月に新設した。また、海外の先進的企業との提携やノウハウを吸収する目的で、ファッション・テック企業に特化したシンガポールのファンド運営会社ライラベンチャーズにも、リミテッドパートナーとして2月出資を決めた。

 「店頭在庫と販売員をデジタル上でいかに活用するかを考える」(上田谷社長)。今後は英ヒーロー社が提供するウェブ上でのライブ動画接客システムを導入し、遠隔で販売員がスタイリング提案などを行う。店頭へのEC在庫の引き当てなどの仕組みも整備する方針。

黒字化計画もデジタル戦略に課題

 一方、4期連続の赤字(20年2月期は営業損益が28億円の赤字)に沈んだ三陽商会は5月から、新社長のもとで黒字化への2カ年計画を進める。新社長は三井物産OBで、かつてゴールドウインの再建を手掛けた大江伸治氏だ。

 再生プランの中身は、大胆な不採算事業の廃止、仕入れ抑制という「ムダの削減」と、ブランドバリューの底上げなどによる「収益力の向上」の2本柱。仕入れ額は期中に110億円の削減を計画。これまで各ブランドの事業部に任せてきた仕入れを本部で一元管理することで抑制する。21年2月期には全店の約15%にあたる約150店舗を閉める予定で、「すでに撤退交渉に入っている」。これらの施策で、減収を前提に粗利益率を改善する。

 20年2月期の売上高は688億円。計画では、21年2月期の売上高は新型コロナの影響などでいったん355億~440億円に減るが、22年2月期は550億円まで引き上げ、15億円の営業黒字を確保する。ただ同社は百貨店での売り上げが全体の62%と過半を占める。そのリアル店舗を大幅に減らす上、営業再開のめども立たない中での黒字化には、デジタル強化も急務だ。

 同社はEC運営代行のルビー・グループを18年4月に買収し、自社EC「サンヨー・アイストア」を改良するとともに、ブランド別ECを立ち上げるなど強化を進めるが、EC化率は20年2月期末時点で12.6%にとどまる。また、ニューラルポケット、アベジャと組み、AIによるMD、店舗運営改善などを主導してきたデジタル戦略本部(現在は事業本部、経営統括本部に移管)の慎正宗副本部長は2月末で任を退くなど、改革は足踏みしている。

【エディターズ・チェック】
“コロナショック”は、消費者の生活や価値観を根本から変える可能性がある。例えば、巣ごもり消費が浸透し、百貨店に客足が戻らないかもしれない。リモートワークが当たり前になり、「店で服を売る」というビジネス自体が縮小するかもしれない――。現時点では想像にすぎないが、オーバーストアやデジタル化の遅れなど課題が山積する大手アパレルの現状は、アフターコロナを生き抜く上で多くのリスクをはらむ。痛みに耐え、未来を見据えた改革を進める必要がある。


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短期集中連載“STAY HOME PLAYLIST vol. 4” 的場良平と須田恒平が選曲

 ウイルスという、目に見えぬ敵と人類が戦い早数カ月。感染拡大を防ぐために不要不急の外出が制限され、1日のほとんどを自宅で過ごすようになり退屈な時間も増えたはずだ。そこで「WWDジャパン」では、ファッションを中心とした業界関係者にご協力いただき、ゆっくり過ごす際や仕事中、自宅で踊るときにおすすめしたい“STAY HOME PLAYLIST(おうち時間用プレイリスト)”の短期集中連載をスタート。いつもの音楽に飽きてしまった耳に絶えず新鮮な音楽を与えるべく、6日連続でお届けする。4日目は、セレクトショップ「オフショア(OFFSHORE)」のマネージングディレクターで、ビンテージショップ「ラボラトリー/ベルベルジン アール(LABORATORY/BERBERJIN R)」のゼネラルマネージャーも務める的場良平と、DJでPRの須田恒平のプレイリストをご紹介。

的場良平

――好きなジャンルと、最近よく聴いているアーティストおよび楽曲は?

オールジャンルですが、サンダーキャット(Thundercat)の新作「It Is What It Is」をよく聴いています。

――今回の“STAY HOME PLAYLIST”について。

好きなサンダーキャットの新曲「Dragonball Durag」からまず決めて組んでみました。サンダーキャット自身も好きだという坂本慎太郎やフランク・ザッパ(Frank Zappa)、ジョージ・デューク(George Duke)などをセレクトしてます。その流れで、ギターがかっこいいザ・レモン・ツイッグス(THE LEMON TWIGS)や、イヴ・トゥモア(Yves Tumor)の新曲、バトルス(BATTLES)、そしてギターの神様ってことでジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)も選んでみました。最後に、続けて聴きたいと思ったエルトン・ジョン(Elton John)とトム・ヨーク(Thom Yorke)を加えていて、どちらも好きな映画から知った曲です。

――音楽を聴くこと以外に自宅ではどう過ごしている?

息子と遊んでます。

須田恒平

――好きなジャンルと、最近よく聴いているアーティストおよび楽曲は?

ヒップホップ、R&B、ソウル、ハウス。ジェイ・エレクトロニカ(Jay Electronica)、ジェネイ・アイコ(Jhene Aiko)、ジェイデン・カマストラ(Jaeden Camstra)、ブラストラックス(Brasstracks)、ブラッド・オレンジ(Blood Orange)、ヴィンス・ステイプルズ(Vince Staples)、FKJが好きです。

――今回の“STAY HOME PLAYLIST”について。

1970〜80年代のディスコソウルでまとめてみました。2000年代にヒットした名曲にサンプリングされた曲や、どこかで必ず一度は聴いたことのある名曲ばかりで、家にいても心地よいグルーヴ感から我慢できずに、ついつい踊り出しちゃうかも?また、年代は変わりますがニューヨークのプロデューサー・デュオ、ブラストラックスは本当いいです。最後は彼らの楽曲で締めました。

――音楽を聴くこと以外に自宅ではどう過ごしている?

料理をしたり、絵を描いたり、ビートを作ったりしてます。

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NPO団体ファッションレボリューションの衝撃レポート後編

 新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るうなか、アパレルのサプライチェーンでは何が起こっているのだろうか。サプライチェーンの労働者の支援やファッション産業の透明化を目指す英国のNPOファッションレボリューション(FASHION REVOLUTION)は、新型コロナウイルスによる、目を背け難いファッション産業のサプライチェーンの現実の姿を指摘している。前編では新型コロナウイルス対策のページから、過酷な状況に置かれているサプライチェーンの現状を紹介した。後編では、 アパレル企業の対応についての各国機関からの調査報告の一例と、ファッションレボリューションが企業に送った質問に対する回答を掲載する。

 ―プライマーク(PRIMARK)は、サプライチェーンの労働者に支払うための基金を設立すると発表しているが、工場側にすでに発注された製品、もしくはすでに製造に入っているアイテムを受け入れるかどうか、その支払いを行うかどうか、またはその発注に際して工場が事前に支払った原材料のコストを補償するかどうかに関しては言及しておらず、疑問が残る。

 ―H&M、ターゲット(TARGET)、マークス&スペンサー(MARKS & SPENCER)、「ザラ(ZARA)」を擁するインディテックス(INDITEX)、キアビ(KIABI)、「カルバン クライン(KALVIN KLEIN)」や「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」を擁するPVHは、すでに完成した製品とすでに発注された製品の受け取りと支払いを行う予定であることを公式に表明しているものの、支払いの時期については明言していない。労働者への補償が急速に必要であることを考えると引き続き注視が必要。

 ―テスコ(TESCO)やウォルマート(WALMART)などを含むいくつかのブランドはまだ回答しておらず、支払いに関する対応を行ったかどうかは確認できていない。

 ―「ニュールック(NEW LOOK)」は製造中の注文をキャンセルし、支払いが「無期限」に延期されることを示唆する手紙をサプライヤーに送り、「死活問題のため」と説明したが、そのほかの多くのブランド同様に、ブランドが直接雇用していない末端の工場関係者や労働者が直面している危機には補償が及んでいない。

 ―バングラデシュ政府は4月末に500億バングラデシュタカ(約6255万円)を補助金として提供する予定。しかしこの金額は労働者の賃金を1カ月だけ支払える額であり、しかも雇用主が2%の利息で返済しなければならないローンである。

 ―インド全土でのロックダウン開始後の問題は、 出稼ぎが多いため中心部で職を失ってホームレスとなり、公共交通機関で町や村に戻ることもできない労働者が多く、飢餓が新型コロナウイルスの脅威を上回る可能性があることが分かっている。また、病院に必要な緊急物資を作り続けなければならないとして操業を続けている工場もあるが、そこでは労働者の健康が脅かされている。

 ―約4万の工場が稼働するインドのタミルナードゥ州では、 寮のような場所での生活環境により、ソーシャルディスタンスをとること自体がほぼ不可能。しかも、作業がないということはすべての労働者が同時に部屋にいることを意味し、専門家は、工場閉鎖が密集した環境をつくり出していると警告をしている。

「ザラ」はサプライヤーへの支払いを明言、各企業・団体の回答は?

・ナヅマ・アクターAWAJ財団代表(AWAJ財団:アパレルのサプライヤーの労働を守るために2003年にバングラデシュで創立された財団)

 「労働者たちは、家族でこの先どのように暮らして行くのか、まったく予想できない状況にいる。万が一新型コロナウイルスに感染して治療を必要とする場合、どうしたらよいのかさえ想像もできないだろう。労働者たちのわずかな収入は普段でさえ生活をしておくのがやっとという金額である。このような危機に対処するための貯蓄などほとんどない」

・インディテックス

 「サプライヤーと協力することを約束しており、連携しながら公式ガイダンスに従って労働者を保護している。私たちは、製造された、または現在製造中のすべての注文がもとの支払い条件に従って完全に支払われることを保証し、サプライヤーに対するすべての責任を果たす」

・LPP(「リザーブド(RESERVED)」など5つのアパレルブランドを擁するポーランドの企業)

 「このような困難な時代においては、できるだけ多くの雇用を維持することが私たちの最優先事項であり、そこには当社の従業員だけではなく、サプライヤーの従業員も含まれる。バングラデシュでは影響が特に深刻であるという情報を得ているので、困難に直面しているサプライヤーをサポートするために全力を尽くしている。 私たちが義務を果たすべき案件は最優先事項として継続的に対応しており、生産中の注文品、すでに生産された製品に関しても代金を支払う予定だ。ただし、一部の支いは遅延する可能性がある」

・英国ブランドと取引しているベトナムの縫製工場幹部からのメール回答

 「私は英国ブランドのサプライヤーのマネジングディレクターだ。私たちの会社では8つの英国の小売業者に供給をしている。その8社すべてが一夜にして支払いを停止し、私はと言えば、自社のスタッフとベトナムの工場の従業員に最後の支払いを行うためにあちこち奔走をしている。アパレル企業とサプライヤーや工場の労働者の関係は完全に崩れていると分かってはいたが、このような緊急事態においてもここまでひどい扱いを受けるとは想像だにしていなかった。私たちが交わした契約は、彼らにとっては存在していないも同然のようだ」

 ファッションレボリューションはロックダウン後のサプライヤーとサプライチェーンの労働者への対応について、世界で活動を続ける各機関の調査報告をホームページ上で掲載するとともに、彼らが大手ブランドに送った質問状の回答も掲載しており、ロックダウンの間はこれらの情報のアップデートを随時続けていくという。

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ケータリングを制するものはバックステージを制する!? ロンドンコレでつまみ食い調査

 ファッション・ウイークの私の密かな楽しみといえば、バックステージでのつまみ食い調査です。2020-21年秋冬シーズンのロンドン・ファッション・ウイーク(以下、LFW)では、3ブランドのケータリングを勝手に取材してきました。前回は、調査を行なった4ブランド全てがイギリスのチェーン店「プレタ マンジェ(PRET A MANGER)」のケータリングという結果に拍子抜けし、「今季も同じ結果だったら記事化はできない……」なんて不安もありましたが、こうして記事を書いているということは……そうです、ケータリングに変化がありました(パチパチ)。前シーズンと同じブランドもありましたが、クオリティーが格段に上がっているブランドを評価しました。

3位(最下位):JW ANDERSON
前回は最高位も、変化が見られず……

 「ジェイ ダブリュー アンダーソン」は前シーズンと同じ「プレタ マンジェ」でした。サンドイッチやクロワッサン、マフィン、ヨーグルト、フルーツの幅広いバリエーションで、見応え・食べ応えたっぷりな内容です。ケータリングのメニューが定番化していて、おそらく今後も変わることはなさそう。前シーズンはベストケータリング賞を進呈しましたが、今シーズンは悩むところです……。

2位:CHRISTOPHER KANE
ソーシャルグッドな“ピュア飯”

 「クリストファー ケイン」が選んだのは、ロンドン市内に22店舗を構えるチェーン店「ピュア(Pure)」のケータリングです。ベーコンとアボカドのベーグルサンド、スモークサーモンのベーグルサンド、トルティーヤのラップサンドが4種ほどと、サラダをそろえていました。同じチェーン店といっても「プレタ マンジェ」と大きく違うのは、09年の創業以来「ピュア」はソーシャルグッドな企業であることのよう。包装紙やプラスチック製容器は90%再生可能、ケータリング用の段ボールは100%生分解性、店頭で余った残り物は全てチャリティー団体を通して寄付される仕組みを取り入れています。卵はゲージフリー(平飼い飼育)、コーヒー豆はフェアトレード認証、肉製品は飼養から販売まで一連の過程を高度な管理基準で保証されたレッドトラクター認証という徹底ぶり。バックステージに置かれたいたストローはプラスチックではなく紙製ストローでした。ちなみに、LFWを取材していた「WWDジャパン」の大杉記者も「ロンドンはどこに行っても紙ストローが出てきますね。プラスチックストローはほぼ見かけない」と口にしていました。自然や環境をコレクションのテーマにする「クリストファー ケイン」だけに、ブランドの考え方はケータリングにも表れていたようです。

1位:TOGA
雰囲気のよさが物語る、質のよさ

 前シーズンは「普通で無難に平均点」と評した「トーガ」こそ、最もクオリティーが上がったブランドでした。ロンドンにあるケータリング会社「ハムディンガーズ(Humdingers)」の、ヘルシーで女性ウケしそうな抜群のチョイス!といっても、ショー開始1時間前に到着したころにはすでにメインのフードは残っていませんでした。それだけバックステージで動くスタッフに好評だったということなのでしょう。メニュー表によると、スモークサーモンのベーグルサンドやトマトとバジルとモッツァレラチーズのベーグルサンド、クロワッサンやデニッシュなどのペイストリー、フレッシュフルーツを用意したようです。スモークサーモン以外は全てベジタリアン向けで、そのあたりの配慮もさすがです。ポテチを食べながら踊り出すモデルの姿からも、バックステージの雰囲気の良さが伝わってきます。「ハムディンガーズ」は見た目の美しさにもこだわるケータリング会社なので、ぜひとも写真に収めたかったし、つまみ食いもしたかったので残念ですが、来シーズンは早めに行って、ありがたくいただきたいと今から企んでおります。

 クオリティーが上がったという点と、モデルがダンスをしてしまうぐらいリラックスしたムードを考慮して20-21年秋冬のLFWの“ベストケータリング賞”は「トーガ」に贈りたいと思います。前述したようにバックステージの和やかな雰囲気がとても印象的だったので、そちらについてはコレクションリポートでご覧ください。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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全国の「在宅縫製職人」が作る医療用ガウン 仕掛け人に聞く

 医療用ガウンの不足を解消しようとする政府の要請に、奈良県で縫製工場を営むアパレルベンチャーのヴァレイ(上牧町)が名乗りを上げた。「ケイタ マルヤマ(KEITA MARUYAMA)」などの婦人服を手掛ける同社は、全国に組織する縫製職人のネットワークを活用し、2カ月で約10万枚の医療用ガウンを生産する。谷英希社長に今回の取り組みと事業にかける思いを聞いた。

――緊急事態宣言が全国に広がった4月16日、医療用ガウンの生産に乗り出すことを発表した。その経緯は?

谷英希ヴァレイ社長(以下、谷):2月末、経済産業省からアプローチがあり、繊維関係の有識者を集めたピッチを5月末に開催するので登壇してほしいという依頼があったのがきっかけ。7都府県に緊急事態宣言が出された4月7日には経産省の担当者から電話があり、医療用ガウンの生産を打診された。現場では、いま数百万枚のガウンが不足していて、本来使い捨てのガウンを数日間着続けている。物資が足りなくて医療崩壊してしまう状態だと聞き、二つ返事で引き受けた。

――6月末までに最低10万枚。普段は小ロット生産中心ようだが、大丈夫?

谷:職人1人で1日最低20枚、仮に月20日働けば約400枚は作れる。当社が全国に組織する「マイホームアトリエ」に登録する200人の在宅職人のうち、現在稼働可能なのが50人。そこに契約工場を加えれば、月産5万枚は可能だ。医療用なので通常だと衛生管理面の制約があるが、雨ガッパで代用するほどの緊急事態のため、参入のハードルは下がっている。ビジネスとしてはチャンスであり、少なくてもうちができない理由はないと思った。

――原材料の供給も逼迫している。

谷:弊社はユニチカから不織布を仕入れる予定だが、国内の在庫は現在、医療マスク用に供給されていて在庫がない状態だ。5月半ば過ぎには調達し、5月末に1回目の納品を目指している。国からの要請とは別に、弊社独自の医療用ガウンも製造販売する。撥水性のあるナイロン素材を使ったもので、4月末までに1万mを確保し、5000枚を供給したい。地方のクリニックにも届くよう、いま販売代理店を募集している。

――日本の縫製業を次世代につなぐことを経営ビジョンに掲げている。

谷:この取り組みでできる社会貢献は2つある。一つは医療現場に対して。実際にいくつかの医療機関にヒアリングしてその惨状を知り、医療崩壊の実態を実感した。本来助かるはずの病気が助からない事態になってはいけない。二つ目は全国の縫製職人さんに対して。アパレルからの発注は4月納品分で終わっていて、現状、5月以降の仕事の見通しが立っていない状態だ。職人さんの中には、子育てや介護などの事情で外に働きに行けない人や家計を支えている人が多い。しかも、フリーランスなので基本的な休業補償がなく、収入源の確保が大きな課題だった。

――新型コロナ感染が収束した後、業界はどう変化すると思うか?

谷:まず、僕たち経営者にできるコロナ対策は経済を回していくこと。経済活動が止まり、その結果、人が死ぬようなことは絶対避けないといけない。当社の場合は、職人さんに依頼する縫製の仕事をいかに作っていくかに尽きる。コロナ禍でアパレルは、特需を得られた企業とそうでない企業に二分されているが、現状に甘んじることなく、これまで通り常に先のことを見据えて動いている。コロナの感染拡大が収束すれば、アパレル生産はもとの中国やバングラディシュ、ベトナムに戻るだろう。アフターコロナ、ヴィズコロナ時代は、コロナと向き合い、自社の事業をどう運営していくかを考えた経営者だけが新たなイノベーションを起こせる。国ができることは何かを決断することであって、考えて実行に移すのは民間企業がすべきことだと思う。

――コロナ禍によってアパレルメーカーや縫製工場の廃業や倒産が増えることが予想されるが、どう乗り越えればいいのか。

谷:一般消費者が普通に買い物に行けて、アパレル業界が復興できるまでに2、3年はかかると思う。だから、弊社も猶予を少し与えられただけでピンチであることは間違いない。雇用調整助成金など国の支援制度や銀行の融資などを活用すれば、大きな蓄えがなくても半年は存続できるはず。ただ、その先は何も手を打たなければ淘汰されるだけ。誤解を恐れずに言えば、廃業したほうがいい場合もある。新たな価値を見出して事業展開していける企業でなければ、アフターコロナは生き残れないだろう。

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おこもりストレスケアに、目に見えない「香り」で気分も一新

 緊急事態宣言が各都道府県に拡大されて以降、全国各地で「家で過ごす時間」が増えた人も多いと思う。当たり前の行動が制限される今、誰もが何らかの形で、大なり小なりストレスを感じているのではないだろうか?

 私の周囲では比較的早い段階からリモートワークが進み、すでに自粛生活が2カ月近くなる。この生活が始まった頃は「もともと一人でこもって書く期間も多いし、あまり変わらないのでは?」と考えていた。実際はというと、打ち合わせも取材もオンライン経由、直接人に会う機会がほぼ皆無となり「わー、今日1日誰とも喋らなかった……!」という日もあったりして。フリーランスなこともあり、世界と隔絶された気がして「大丈夫、わたし!?」という気分に陥ることも。

 子育てをしながら在宅勤務中の友人や仕事相手は、口をそろえて「家族と四六時中一緒にいながら、仕事をこなすのはヘトヘトだ」と言っていた。三食の準備や家事に加え、お子さんと対話の時間が必要で、結局深夜にまとめて仕事をしているという。かと思うと、相変わらず出勤が続く接客業の友人は「通勤や職場での感染リスクはどうしようもないし、世の中の空気がピリピリしていて、1日終わるとぐったりしてしまう」と言っていた。

 週末も外出自粛が推奨され、家で過ごす時間が増えたこと。そして外出時は常にマスクを着用することもあり、職種に関係なく「ファッションも美容もズボラ化した」という話は、本当によく耳にする。正直、今はそれでいいと思う。イレギュラーな状態の中で、まずは日々の生活を営んでいくこと。そして仕事を進めていくにはエネルギーが必要で、メイクや美容は二の次で全然いい。

 その一方で、ストレスと向き合う時期に「美容の分野だからこそ、出来ることもあるのでは……?」と感じる場面もあった。具体的には「香り」による心理的な効果だ。
目には見えない分、感情に働きかける「香り」

 香りは嗅覚からダイレクトに脳に届き、感情に働きかける存在だ。特に植物から抽出された精油は近年、香気成分の研究が進み、心と体への働きが科学的に検証されている。不安を和らげたり、痛みを緩和にしたりするために精油は力を発揮し、何より家に居ながらにして、自然の息吹を感じられる点が魅力だ。
 
 精油でなくとも、好みの香りなら何でもいいと思う。「いい香りだな」と感じることは、シンプルに「快」の感情につながるからだ。しかも「頭で考えるより先に、感情が動く」のがポイントでもある。あれこれ考えた上で、前向きな結論をひねり出すのではなく「あ、いい香り」「なんかこれ好き」「癒やされる」、そんな単純な「快」の感情の積み重ねは、意外に大切だと思う(この時期はもちろん平時においても)。

 今回は香りにこだわりがあり、そして「おうち時間」が増えた現在のライフスタイルに寄り添うアイテムを、いくつかご紹介したい。定番の人気アイテムから、今後発売予定の新製品まで、実際に使って本当に良かったと思うものを選んでみた。

おこもり美容に最適な
「香り」のスキンケア&ホームケア
ポジティブな気持ちへと
導くルームフレグランス 
「ザ パブリックオーガニック」

 カラーズのライフスタイルブランド「ザ パブリック オーガニック(THE PUBLIC ORGANIC)」の「ホリスティック精油ディフューザー」は、精油の働きを科学的に検証したシリーズだ。「スーパーポジティブ」は、イランイランやゼラニウムの優美な甘さと、フランキンセンスのウッディーな香りがバランス良く調和した一品。この香りを嗅ぐと、幸福感をもたらすオキシトシンとβエンドルフィンの分泌量が増加するという。室内を満たす樹木のような深みと、華やかな甘みを両立した香りは、名前の通り前向きな気分へと誘ってくれるはず。

植物の恵みで透明感を高める
高機能化粧水 「インフィオレ」

 「インフィオレ(IN FIORE)」から4月18日に登場した、「ルミエル コンプレクス ボタニカルウォーター コンセントレ」。ノバラエキス、ホワイトティエキス、カミツレなど、厳選された植物を凝縮した、みずみずしい感触の化粧水だ。柑橘のような爽やかな香りと、活力を呼び覚ますスパイシーさ、そして青々とした植物が調和する複雑な香りで、初夏のハーブ園にいるような気分へと誘ってくれるはず。化粧水は毎日使うアイテムなので、好みの香りの製品を取り入れるのも1つの方法だと思う。メラニンのコントロール効果に優れ、透明感を呼び覚ます高機能化粧水は、これからの季節に活躍してくれそうだ。

不安定にゆらぐ肌と心の再生を 「ネロリラボタニカ」

 肌、心、土壌と地域の再生をコンセプトにした、ビーバイ・イーの「ネロリラ ボタニカ(NEROLILA BOTANICA)」。3月24日に登場した最新のアイテムは、敏感肌に向けた二層式の美容液だ。上のディープブルーのオイル層には、傷の治療に使われるブルーヤロウなどのオイル成分を。下のライトブルーの水層には、肌の再生を促すブルーグリーン・アルジーなどを配合。二層を振ってからなじませると、ハーブのビターな香りが顔回りを包み込む。爽やかさと深みを両立した薬効感のある香りを楽しみながら、肌に押し込むようにハンドマスクをすると、安心感を抱ける効果も。マスクの着用やストレスで荒れがちな肌に、心からおすすめしたい。

深みのある植物の香りで、
全身を包み込む 「ウカ」

 2019年に登場し、今回改めてその素晴らしさを再確認したのが「ウカ(UKA)」のオーガニックボディーケアシリーズである。特にボディーオイルの「ハグ」は、名前の通り、心地良い香りと深い潤いに抱きしめられているような感覚を抱ける名アイテム。不安を取り除くイランイラン、温かみのあるブラックペッパー、元気な気分へと誘うマンダリンオレンジの精油ブレンドは、大自然の力強いエナジーを感じられるはず。ベースオイルとして、化粧品原料としては貴重なシナラオイル(西洋アザミの種子から抽出したオイル)など良質な素材を厳選。全身しっとり滑らかに整え、穏やかな気分で眠りにつけそう。

アロマティックハーブが
香り立つヘアケア 「アユーラ」

 せっかくなので新製品も1つご紹介したい。6月1日発売の「アユーラ(AYURA)」の新しいヘアケアシリーズは、スキンケア発想で頭皮から美しい髪を育むのがコンセプト。「バランシングシャンプー」は濃密な泡立ちで頭皮の潤いバランスを整え、「バランシングコンディショナー(2種)」は、頭皮にも使用可能。凝り固まった頭皮をマッサージでほぐしながら、髪1本1本を滑らかに整える。印象的なのは、「アユーラ」のベストセラー入浴剤「瞑想風呂」にも通じる、アロマティックハーブの香り。ラベンダーやローズマリーが織りなすリラックス感のある香りで、洗髪後にふんわり漂う残り香を楽しみたい。

生活の中に「快」の感情を
呼び覚ますために

 前述の通り、香りは鼻から直接脳へと伝わり、記憶や感情に働きかける存在。私個人は樹木のような深い香りを嗅ぐと気分が落ち着くけれど、これは人によって違うはず。フローラル系の甘い香りが好みの方もいれば、柑橘系の爽やかな香りでリフレッシュしたい方もいるだろう。

 在宅勤務の人も、子育て中の人も、変わらず出勤している人も、それぞれの立場でストレスと向き合わなくてはいけないこの時期。少なくとも「香り」を生活の中に、何らかの形で取り入れると「フッと気持ちが和らぐ」「肩の力を抜く」手助けになると思う。重ねて「快」の感情を、無意識に呼び覚ましてくれるのがポイントだ。女性にとって、スキンケアやヘアケアは、毎日の習慣でもある。好みの香りを上手に取り入れて、ぜひひそのひとときが、癒やしやリフレッシュの一助になったらと思う。

宇野ナミコ:美容ライター。1972年静岡生まれ。日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、ウェブなどで美容の記事を執筆。スキンケアを中心に、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、美容医療まで担当分野は幅広く、美容のトレンドを発信する一方で丹念な取材をもとにしたインタビュー記事も手掛ける

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短期集中連載“STAY HOME PLAYLIST vol. 3” きなりとシャラ ラジマが選曲

 ウイルスという、目に見えぬ敵と人類が戦い早数カ月。感染拡大を防ぐために不要不急の外出が制限され、1日のほとんどを自宅で過ごすようになり退屈な時間も増えたはずだ。そこで「WWDジャパン」では、ファッションを中心とした業界関係者にご協力いただき、ゆっくり過ごす際や仕事中、自宅で踊るときにおすすめしたい“STAY HOME PLAYLIST(おうち時間用プレイリスト)”の短期集中連載をスタート。いつもの音楽に飽きてしまった耳に絶えず新鮮な音楽を与えるべく、6日連続でお届けする。3日目は、東京を拠点に活動するモデルのきなりとシャラ ラジマの2人のプレイリストをご紹介。

きなり

――好きなジャンルと、最近よく聴いているアーティストおよび楽曲は?

ヒップホップとR&Bで、最近のお気に入りはルーファス・デュ・ソル(Rufus Du Sol)の「BLOOM」です。

――今回の“STAY HOME PLAYLIST”について。

家でリラックスした状態で仕事がはかどるプレイリストを考えていましたが、最終的に家にいても楽しくなる曲が多くなってしまったかもしれません……。リラックスできるけど耳の中に入ったらそのまま流れていくのではなく、心地よく印象に残るような曲をセレクトしました。私にとって、鬱屈した日々に光を届けてくれる曲ばかりで、仕事だけでなくおうち時間もはかどったらうれしいです。

――音楽を聴くこと以外に自宅ではどう過ごしている?

最近は昔から好きだった詩集を引っ張り出して、ベランダで日光浴しながら読んでいます。言葉から受け取るパワーはすごいです!写真に載っているものが特にお気に入りです。

シャラ ラジマ

――好きなジャンルと、最近よく聴いているアーティストおよび楽曲は?

テクノ、ガバ、オルタナティブロック、エレクトロニック、ポストクラシック、ノイズ、民族音楽などが好きです。プライマル・スクリーム(Primal Scream)、ケミカル・ブラザーズ(The Chemical Brothers)、スチャッケ(Schacke)、芸能山城組をよく聴きます。

――今回の“STAY HOME PLAYLIST”について。

普段テクノDJのミックステープや1曲を延々とループするような聴き方をしているので、今回も大好きなテクノからスタートするプレイリストにしています。ただテクノ続きになってしまうと、普段テクノを聴かない人には退屈に感じてしまうかもしれないので、もう少し歌モノっぽい曲をやってる好きなバンドにつなげました。私が好きなバンドは1990年代初頭のものが多く、「ヒップホップという巨大なカルチャーの反対側で、同時期にこんな音楽があったの!?」と感動した3つのバンドからセレクトしています。今の私が好きなテクノに通ずるものを感じるので、テクノから90年代UK、USのバンドの曲の流れを聴いてもらえればと思います。

――音楽を聴くこと以外に自宅ではどう過ごしている?

主に料理をしたり、大好きな漫画をたくさん読んだりしています。あとはインプットを大事にしていて、経済から哲学までジャンルを横断した知識を得るための勉強もしています。また、今後執筆の仕事ができるように文章をたくさん書きためています。

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アフターコロナ注目のウエルネストレンドは“アダプトゲン”と“ソロサウナ” ロンドンで体験取材

 新型コロナウイルス収束後、ますますウエルネス市場が成長しそうです。単に免疫力の高い健康体を手に入れるという目的だけでなく、精神面も康やかで心を満たす時間を持てることや、QOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)の向上を目指すという人間心理が働くのはでないかと思っています。2015年パリ同時多発テロ事件後、フランスではウェルネスやビューティ市場が急成長を遂げました。当時、知人のビューティジャーナリストは「手で肌に触れて感じて、丁寧に“自分をケアする”という時間が、不安を抱えるフランス女性に求められている。結果ではなく、心を落ち着けリラックスできる、その過程にこそ重きを置くようになった」と話していました。

 私自身、パリのロックダウンを経験してウエルネスの重要性に気付きました。自宅隔離中、常に外に向いていた意識は内に向くようになり、“自分をケア”する時間と心の余裕を持てたことがきっかけです。ウエルネス系で先進的なのは、私が住むフランスよりもイギリス。リサーチを進めていると、ウエルネス系ブランドで今話題になっているのが“アダプトゲン”という天然ハーブでした。2月に訪れたロンドンでは、アダプトゲン配合の粉末ハーブを手に入れ、サ活(サウナ活動)に夢中な女子の間で人気が高まっているという“ソロサウナ”を体験してきました。今回は、ロックダウン中に実践したアダプトゲンの摂取やソロサウナの体験記を紹介します(こういった製品は個人差があるので、あくまで個人的な体験記として参考にしてください)。

① アダプトゲン

 心身の健康を目的とした栄養補助食品を展開するウエルネスブランド「ワンダー ワークショップ(WUNDER WORKSHOP)」によると、アダプトゲンとは「ホルモンバランスを促進し、ストレスへの抵抗力や免疫力を高め、身体の機能を正常化させる働きが期待できる植物(ハーブ)」のこと。トラウマ、不安、肉体的疲労などのストレスを和らげるなど、人々の健康に関わる効果に導くとされることがたくさんあります。スキンケアにおいては肌荒れを抑え、くすみ肌、敏感肌などのトラブルを和らげるとされているようです。同ブランドはアダプトゲンとその他のハーブを配合した粉末状サプリメントを扱っており、初体験の私に勧めてしてくれたのが「ゴールデン・グロウ(Golden Glow)」という商品でした。アダプトゲンの他にマカ、ターメリック、シベリア高麗人参、ブラフミー(ツボクサ)、ブラックペッパーが入っており、見た目は黄色い粉末で漢方のような独特の香りがします。白湯に溶かして飲む方法だと結構味と香りが強いと感じたので、温めたアーモンドミルクやオートミール、スムージーに混ぜて取り入れました。ブランドのおすすめは、1日1回テーブルスプーン1杯分を4~6週間摂取し、その後2週間のブレイクを置いて効果を見るということだったので実践してみました。

 私は3月上旬パリコレ取材の終了頃から摂取をスタート。コレクション期間中なので睡眠時間は短く、食事時間もバラバラ、アルコール摂取量も多くなり、最初は何も感じられませんでした。ライフスタイルが徐々に通常通りに戻り始めたアダプトゲン摂取2週目からは、感覚値ですが朝の目覚めが良くなったのと、肌のハリを感じるようになりました。この頃、新型コロナウイルスがヨーロッパで一気に猛威をふるい始め、多くの旅程をキャンセルせざるを得ず、日々悲しいニュースに触れる中で、不安に襲われかなり落ち込み、精神面でアダプトゲンが助けになったかどうかは不明です。もしも摂取していなかったらもっと落ち込んでいた可能性はありますが……。

3週間目から違いを実感
PMSのイライラが軽減

 摂取3週目以降、最も違いを感じられたのは月経前症候群(PMS)によるイライラが軽減されたことです。もともと感情の起伏が激しい上に、月経前はホルモンバランスの影響で怒りっぽくなり気分が沈み、身近な人に迷惑をかけがちなのですが、今回の月経時期は激しい変化があまりなかったように思います。新型コロナウイルスの一件でそもそも気分は沈んでおり、PMSが重なると情緒不安定になり自分をコンロールできなくなるかもと不安になっていましたが、極端な落ち込みやイライラはなかったのです。私はメンヘラではありませんが、月経前は感情のコントロールを失うこともあります。女性は共感できるかもしれませんが……。どうか男性には大目に見ていただきたい。

 現在、摂取4週目を迎え、一旦2週間のブレイクを入れるためストップしようとしているところです。前途したように効果には個人差がありますが、私としては同じようにPMSで悩む女性に勧めたいです。イギリスではアダプトゲン配合の商品が増えており、アダプトゲンに特化した新ブランド「グロウン(Grown)」はオイル状の栄養補助食品やスキンケアとして取り入れるフェイシャルオイルなどを展開しています。ロンドン・ファッション・ウィーク中に多くの業界人が通っていたカフェ「グロウ バー(Glow Bar)」でも、粉末状のアダプトゲン配合のサプリメントが販売されていました。

② ソロサウナ

 ソロサウナを体験したのは栄養補助食品を展開する「グロウ バー」が18年にオープンしたロンドンのカフェ。淡いパステルカラーが基調のかわいい雰囲気と健康的なドリンクが楽しめるだけでなく、地下にはサウナを備えており、これがロンドナーの間でジワジワ人気が高まっているよう。設置されているサウナは1人用が2つ、2人用が2つと、独立型なのが特徴です。オンラインで事前予約制。カフェの入り口で予約した名前を伝えると地下へと案内され、脱衣場で備え付けのバスローブに着替えて準備を整えます。サウナ内は完全個室なので、全裸でも水着着用でもOK。色彩療法を取り入れており、サウナ内のライトを6色の中から選択できます。青は安眠、赤は循環促進、ピンクはデトックス、黄色は活気づけ、緑はリラックス、紫は落ち着きとされます。1人・2人用どちらもサウナ自体の広さは同じで、サウナを含む個室の部屋の大きさが少々異なるだけでした。個室に入るとバスローブを脱いで、サウナの中へ入ります。1回45分、室温55度が初期設定で自由に温度調整が可能です。個室内には水筒(飲料水を自由に補充可能)、アロマディフューザー、ミニスピーカーが備え付けられていました。

 ソロサウナは想像以上にとっても気持ちよく、最高の癒し時間でした。私はサウナやお風呂に入るとすぐにのぼせてしまう体質なので、個室内でサウナの出入りを繰り返しながら、たっぷり汗をかきました。サウナだけでも気持ち良いですが、完全に外の世界と遮断された一人の空間というのが今までに味わったことのない感覚だったのです。座る所に仰向けで寝そべって、脚を壁にもたれかけて上に上げ、深呼吸をすると体の力が一気に抜けて心からリラックスできました。一人用宇宙船に乗って、地球を離れた銀河彼方でプカプカ浮いているような、それくらいの解放感と良い意味での孤立感を感じられました。

創業者は元ファッション業界人
ホルモンバランスを崩しことを機にハーブを勉強

 「グロウ バー」創始者のサーシャ・サバパシー(Sasha Sabapathy)は、かつてファッション業界で働いていたイギリス人女性。22歳でニューヨークに移り、バリバリ仕事をしながら、ソーシャルライフを楽しむために毎晩のように街へと繰り出していたそうです。「当時はそれが自分のやりたいことだと思っていたけれど、どこか心が満たされない感覚も味わっていたのです。肉体的に体を限界まで押し込み、精神的にもストレスを受けていたことに気付いたのは数年経ってから。不安障害やうつ病を引き起こすコルチゾール(一般的にストレスホルモンの一つと呼ばれている)の分泌が多く、ホルモンバランスを崩していたにもかかわらず、当時は理由が分かりませんでした。友人に悩み相談するとアダプトゲンを勧められ、幼い頃に受けたことのある自然療法を思い出し、試してみる価値があると思ったのです。1カ月で確かな実感を得られた私はハーブについての勉強を始め、現代社会に生きる多くの人々と共有したいという新たな夢が生まれ『グロウ バー』の立ち上げた」とサバパシーさん。ちなみに前述した、アダプトゲンに特化した新ブランド「グロウン」の創始者もかつてはファッション業界人です。

 サバパシーさんの経験談のように、願望や行動とはうらはらに、自らが心身に疲れやストレスを与えてしまうことってありますよね。耐えられるストレスレベルは人それぞれですが、彼女が表現する“心が満たされない感覚”を味わうことがあれば、一度足を止めて休憩を挟んでみると、心身の変化を感じ取れるかも。自力では操作できない社会変化(新型コロナウイルスやそれに伴う経済状況など)が大きい現状においては特に、いつも以上に自分の内に目を向ける時間が必要だ感じます。大きな可能性を秘めたアダプトゲンとソロサウナが日本のウエルネス市場でも広がることに注目しています。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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「小さなブランドや店舗を守るための具体的な行動を」 井上雅人准教授に聞くポストコロナのファッション

 「WWDジャパン」4月20日号は、「コロナに負けるな、知恵を集めよう!」と題した緊急特集です。知恵を共有し合うことが現状を打破する第一歩になると信じて、業界内外の人・企業に総力取材。業界内外の難局打開の一助となることを願って、電子版をウェブで無料公開しています。

 企画の一環として、国内外の識者に新型コロナウイルス終息後の社会について取材。店舗が持つ価値について、本とファッションの京都のセレクトショップ「コトバトフク」の運営にも携わっている井上雅人・武庫川女子大学生活環境学部准教授に話を聞いた。

同じ価値観を持った人たちが共有できる場を残していくのは、自然や景観を守っていくのと同じくらい大事

WWD:井上さんは「コトバトフク」というセレクトショップの運営に関わっている。店舗の現状はどうなっている?

井上雅人・武庫川女子大学生活環境学部准教授(以下、井上):今のところ衣料店は休業要請が出ていないので(2020年4月22日現在)、行政の方針に従いつつ、散歩がてらで来られるような人に限って完全予約制でお店を開けています。来てもらう人には体温も測ってからの予約をお願いしており、店内では消毒の徹底や店員とのソーシャル・ディスタンシングなど、協力をいただきながら感染リスクを下げるよう細心の注意を払っています。また、店員に少しでも体調不良の兆しがある場合は、予約を受け付けていても来店をお断りしている状態です。

WWD:店舗が持つ価値についてどう考えている?

井上:著書「ファッションの哲学」の中でもこれからの店舗の役割について触れていますが、街の中で、同じ価値観を持った人たちが共有できる場を残していくのは、自然や景観を守っていくのと同じくらい大事です。私たちが目指しているのはアソシエーションです。人と人とがつながれる場所を目指しているので、そこに行くと自分が誰であるかわかるとか、自分と同じような人もいることに気づけるとか、場所の価値は大切にしたいです。自分がいままでどのように環境形成をしてきたのか、自分の場所とはなんなのかをあらためて思い直している頃ではないかと思います。大変な世の中ですが、最後の最後の気晴らしの場所として、自分たちの場所は守っていきたいと考えています。

WWD:事態の収束後も見据えて、店舗に関わる人たちはどのようなことを考えた方がいい?

井上:販売員が職場に復帰できる日が来たとき、自分たちの仕事が多くの人たちにとっての大事な場所を守る、大切な仕事であると思ってもらえるといいですよね。レイ・オルデンバーグ(Ray Oldenburg)というアメリカの社会学者は、誰でも受け入れて意見交換ができる居心地のいい場所を意味する「サードプレイス」というものを提唱しています。いまこそその価値を再考するタイミングなのではないかとは個人的に思っています。

小集団としての小さなブランドや店舗をどうやって守り続けるか?

WWD:そんな考え方を定着させるためには、客側からの理解も欠かせない。どうすれば理解してもらえる?

井上:価値観を共有して消費者を教育する場としても、店舗は重要な役割を持っています。考え方を共有するためには、ある種の教育が欠かせない。生産と消費という非対称的な分け方を解消して、普通の人が生産側にアクセスできる仕組みを作ることも理解を育む上では大事です。食の分野では、どこの、何は、どう育てられているからおいしいなどの重要性について、一定の理解を得られています。どこの、何を、どう着るべきなのか考えられる文化をつくるため、参考にすべきなのかもしれません。

WWD:店舗の価値は理解できた。しかし、一部の小さなブランドや店舗などは、新型コロナウイルスの影響により危機にひんしている。

井上:ファッションのいいところは、集合体がいっぱいあり、一つにまとまらないことです。それは自分らしさを失わず、しかも絶対に孤立しないことでもあります。大小さまざまな集合体が分散したり融合したりして常に入れ代わる。ファッションは、そういう自由さを形にしてきたました。だから今後も、どんな小さな集合体でも成り立つ社会をつくることが大事だと思います。なので、「小集団としての小さなブランドや店舗をどう守り続けるか?」は大きな課題です。業界全体としてはECにも早くから対応しているため、経済的には大きな変動はないと思いますが、小さなブランドはさらにやりにくくなり、淘汰もされるでしょう。うまく妥協点を見つけてほしいけれど、ファッション業界はマーケットの論理が強いので難しい課題です。利益追求の論理に負けないよう、そういうブランドや店舗を生き延びさせようとする行動――例えば好きなブランドの服をもう一着ECで購入する、好きな飲食店でテイクアウトするなどの具体的な行動を起こせるかどうかが大事です。そういう行動が、自分にとって大切な場所を維持するための有効な手段であることに気づいてほしいですね。

秋吉成紀(あきよし・なるき):1994年生まれ。2018年1月から「WWDジャパン」でアルバイト勤務中

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短期集中連載“STAY HOME PLAYLIST vol. 2” 岡本大陸と林陸也が選曲

 ウイルスという、目に見えぬ敵と人類が戦い早数カ月。感染拡大を防ぐために不要不急の外出が制限され、1日のほとんどを自宅で過ごすようになり退屈な時間も増えたはずだ。そこで「WWDジャパン」では、ファッションを中心とした業界関係者にご協力いただき、ゆっくり過ごす際や仕事中、自宅で踊るときにおすすめしたい“STAY HOME PLAYLIST(おうち時間用プレイリスト)”の短期集中連載をスタート。いつもの音楽に飽きてしまった耳に絶えず新鮮な音楽を与えるべく、6日連続でお届けする。2日目は、不定期に合同の音楽イベントを開催している「ダイリク(DAIRIKU)」の岡本大陸デザイナーと、「シュガーヒル(SUGARHILL)」の林陸也デザイナーのプレイリストをご紹介。

岡本大陸

――好きなジャンルと、最近よく聴いているアーティストおよび楽曲は?

ロックとブリットポップ、オルタナティブロックや、好きな映画で流れた曲です。Age Factoryとどんぐりずをよく聴きます。

――今回の“STAY HOME PLAYLIST”について。

小学生の頃に親父が車で流していた曲、好きな映画から流れる曲、学生時代にハマり今でも好きなロックと、同世代の尊敬するアーティストの曲をプレイリストにしました。僕の幼少期の話になるのですが、親父はよく車で吉田拓郎さんやザ・ビートルズ(The Beatles)をカセットテープで流しては口ずさんで運転してました。なので自然と好きになって、吉田拓郎さんの曲は今聴くと懐かしい気持ちでいっぱいにもなりますが、なんといっても心に突き刺さるリアルな歌詞が大好きです。また、よい映画を観た後に余韻に浸り、映画で流れていた曲が頭から離れなくなってずっと聴いてる曲、学生時代にとあるロックスターのスタイリングに影響を受けて聴くようになった曲と、同世代のかっこいいアーティストの曲を選んでいます。ぜひ聴いていただけるとうれしいです。

――音楽を聴くこと以外に自宅ではどう過ごしている?

映画を観たり、ケナー(KENNER)社もしくはハズブロ(HASBRO)社の昔の「スター・ウォーズ(STAR WARS)」のフィギュアが大好きで、通販やオークションサイトを眺めたりしてます。25歳になっても懐かしのフィギュアには目がありませんね(笑)。

林陸也

――好きなジャンルと、最近よく聴いているアーティストおよび楽曲は?

国や地域や年代を問わず、主にロックバンドの音楽を聴きます。それと友人の音楽ですね。最近は、アレックス・ターナー(Alex Turner)によるテーム・インパラ(Tame Impala)の「Feels Like We Only Go Backwards」のカバー、マック・デマルコ(Mac DeMarco)のKEXPでの「Still Together」、踊ってばかりの国の「全感覚祭 2018」でのライブをユーチューブでよく観ています。

――今回の“STAY HOME PLAYLIST”について。

自分が強く影響を受けたアーティストと、彼らが影響を受けたアーティストを織り交ぜています。さまざまな時代や地域などで生まれた、それぞれの音楽の中にある類似性を僕という軸を通してつなげてみました。ずっと続いている悲しいニュースで暗い気持ちにならないように、“恋や祈りや願い”がテーマです。

――音楽を聴くこと以外に自宅ではどう過ごしている?

タイミング的にちょうど次のシーズンの着想とデザインの時期だったので、基本的には部屋で調べ物や読書をしたり、絵を描いたりしています。それでも、打ち合わせやサンプルのチェックがオンラインになったので、家にいる時間は以前より増えました。ブランドのSNSでワードローブを紹介したり、バイクのメンテナンスをしたり、ギターを弾いたり、あとは写真家の岩本幸一郎さんがポラロイドを貸してくれたので写真を撮り始めました(本当に何もかもやる気がないときは、バイクのレストアの動画を延々と観ています)。

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“支援は不十分” 新型コロナが妊娠中、育児中、妊活中の女性に与える影響を「ルナルナ」が調査

 フェムテックの先駆けである女性向けの健康情報サービス「ルナルナ」は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける中での、育児中、妊娠中、妊娠を希望する女性の、悩みと不安について調査を実施した。アンケートには4月10~12日の期間に、「ルナルナ」「ルナルナ ベビー」のアプリ上で10~50代以上の1万129人の女性が回答。その結果から、働く女性は「職場でのサポートはなかった」と明かし、妊婦の約7割は現在のサポートを“不十分”と感じていると回答。また、休園・休校中の子どもを持つ多くの保護者たちが「子どもの精神的なストレス」に悩んでいるということが浮かび上がってきた。

 そこで「ルナルナ」は4月14日、新型コロナウイルス対策に関する情報をまとめた特設ページを開設した。厚生労働省や公益社団法人日本小児科学会などによるQ&Aを紹介し、予防策や専門家会議の見解、支援などを案内している。

 アンケート結果の要点を紹介する。

妊娠中の悩み
“支援は不十分” 優先的な消毒液やマスクの支給を

 9割以上の妊婦が自分よりも胎児への影響を気にしていることが明らかになった。「妊娠中に新型コロナウイルスの感染拡大が続いている現状について、不安なことはありますか」という問いに対し、1位が「感染した際の胎児への影響」(91%)という回答。「現在妊娠中で働いている方は、新型コロナウイルスの感染が拡大したことで職場で受けられたサポートを教えてください」の質問には、1位に「サポートはなかった」(30%)、2位は「在宅勤務になった」(19%)、3位「すでに産休に入っている」という結果となった。

 また、7割の妊婦が現状のサポートについて「不十分」と回答。特に必要だと感じているサポートは、優先的な消毒液やマスクの支給。そのほかにも優先的な感染予防策、休業やテレワークへの移行などを希望する声が上がり、職場も妊婦に対する対応が追いついていない状況が分かった。

育児中の悩み
“子どもの精神的ストレス”や“運動不足”を心配する声

 3月上旬から学校や幼稚園、保育園の多くが休業となっており、子育て中の女性たちの悩みも調査。アンケートの回答者は「就業状況にないため、普段と特に変わらない」(43%)が多かったが、就業中の人からは「親の仕事中は子どもだけで留守番をしている」「仕事を休んで自身が子どもをみている」という声もあった。

 その中でも悩みを抱えているのが、子どもの精神的ストレスや運動不足についてだ。ほかにも「食費などの増加による経済的負担」「外出する家族からの感染」「子どもの勉強の遅れ」なども上位となった。

妊活中の悩み
“予防薬や治療薬が開発されるまで
不妊治療の延期の推奨する”声明も

 日本生殖医学会は4月1日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて「妊娠中に使える予防薬や治療薬が開発されるまで、不妊治療の延期を選択肢として患者に提示することを推奨する」という声明を医師に向けて出した。この声明について知っているか、妊活や不妊治療中の女性たちに尋ねると「知っている」(47%)、「知らなかった」(52%)となり、妊娠を希望する女性の4割以上が認識しているという結果になった。

 「この声明を受けて、今後の妊活、不妊治療についてどのような判断をしたか」という問いについては、「妊活・治療を継続する」(48%)が最も多い回答になり、判断した背景は「自身で考えて結論を出した」(68%)、「パートナーと相談した」(54%)となった。妊活は時間に限りがあり、経済的な負担も大きいことから、妊活や治療の方針については医師からの指示よりも当人たちの気持ちを尊重した決断をしていることが分かった。

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ファッション通信簿Vol.53 レディー・ガガの歴史を振り返る 米「WWD」が世界的歌姫のファッションを辛口ジャッジ!

 米「WWD」の人気企画「ファッション通信簿」では、ストリートからパーティー、レッドカーペットまで、海外セレブたちのファッションを厳しくチェック。A+、A、A-、B+、B、B-、C+、C、C-、D+、D、D-、そしてFAIL(失格)の13段階評価で格付けし、それぞれのファッションポイントを勝手に辛口ジャッジ!

 第53回は、レディー・ガガ(Lady Gaga)が登場。ガガは世界保健機関(WORLD HEALTH ORGANIZATION、WHO)や「グローバル・シチズン(Global Citizen)」と連携して「ワン・ワールド:トゥギャザー・アット・ホーム(One World: Together At Home)」と題したバーチャルコンサートを企画した。現地時間の4月18日に行われた同コンサートにはガガ以外にも多数の有名アーティストが出演し、テレビや各種SNSでもライブストリーミング配信された。新型コロナウイルスと闘う世界中の人びとをエンターテインメントで勇気づけたガガだが、今回はそんな彼女の印象的なファッションの数々を米「WWD」がジャッジする。

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あさぎーにょがアパレルブランド始動 SNSでファンと作った“へんてこポップ”な服を販売

 ユーチューバーやアーティストとして活動するあさぎーにょが、アパレルブランド「へんてこポップ(HENTECO POP)」を立ち上げた。第一弾となる12型の春物アイテムを4月25日の21時から27日の21時までの3日間、公式ECサイト上で販売し、25日の発売前にはあさぎーにょが自身のインスタグラムアカウントで全アイテムを紹介するライブ配信を行う。これまでにもオリジナルアパレルの販売を行っているあさぎーにょだが、なぜ今、ブランドを立ち上げたのか。ブランドを今後、どのようにしていきたいのか。彼女の活動の軸である“へんてこポップ”の世界観と共にひも解いていく。

WWD:過去にもオリジナルアパレルの販売を行っていたかと思うが、なぜ今回ブランドを立ち上げたのか?

あさぎーにょ:もともとはファンの方とのコミュニケーションの1つとして、「オリジナル服」と称して服を販売していたのですが、徐々にファン以外の方の購入も増えてきいていました。そういった中で「オリジナル服」では分かりづらいかなと思い、私の活動のテーマでもある“へんてこポップ”をブランド名にして始めることにしました。

WWD:最初に服を売り始めたのはいつ頃?

あさぎーにょ:2018年の7月に発売したパジャマが始まりですね。その時は新曲をCDで売るのではなく、ミュージックビデオ(MV)内で私が着ていた衣装に、楽曲をダウンロードできるQRコード付きのタグを付けて販売しました。

WWD:“へんてこポップ”とは、具体的にはどのような世界観なのか?

あさぎーにょ:気持ち悪さと可愛さの中間である“へんてこ”と、色味のポップさとワクワクや元気を表現する“ポップ”を組み合わせて“へんてこポップ”と呼んでいます。ユーチューブを始めた当初はあまり意識していなかったのですが、動画を見てくれた人から「へんてこだね」「ポップだね」と言われるようになって。みんなが見つけてくれた、私らしさが“へんてこポップ”なんです。

WWD:4月25日から販売するアイテムの詳細は?

あさぎーにょ:今回販売するのは春アイテムなので、私の中の春のイメージである“花”をテーマにしました。個人的にイチオシのアイテムは、最近出した新曲「ふわり、春」のMV中にも着ていたフリルブラウスです。ファンの方からの反響が一番大きかったアイテムでもあるし、個人的にもすごくお花っぽい形に仕上がったなと思っています。

一足先に販売したアイテムは
サーバーダウン&即日完売

WWD:販売前の反響は大きい?

あさぎーにょ:徐々に反響が大きくなっているな、と感じています。実際、一足先に販売したトレンチワンピースは公開直後サーバーがダウンし、即日完売しました。“へんてこポップ”の世界観が、実際に身にまとえるモノとして届くのが良いのかもしれません。特にインスタのアンケート機能で、「生地はどっちの色がいいか」「販売時間はいつにしたらいいのか」を皆に聞いた時に、1万人以上の方から反応があって。期待をしてくれているんだな、と強く感じています。

WWD:服作りは、ファンと一緒に作っている感覚か?

あさぎーにょ:そうですね。色味や生地など、ファンの方に細かく聞いたうえで作っています。また、生地の買い付けの段階から「今から買い付けに行きます」といった近況報告もめちゃくちゃしています。これは服作りに限った話ではなくて、私の活動のメインは自分が何かにチャレンジする過程を発信することだと思っています。だから迷いや悩み、喜びなど全てを発信するようにしています。

WWD:活動を始めた当初から、そういった感覚は持っていた?

あさぎーにょ:そうですね。私は自分がワクワクすることに挑戦したいと考えて活動していましたが、その姿を応援してくれるファンの方も増えてきて。いつの間にか自分のスタイルが形成されていきました。だからこそ、アーティストとして活動できているんです。私はプロとしてメジャーデビューをしているわけではないけれど、本気で頑張っているのを応援したい、と言う人が、日々私の挑戦の過程を見て応援してくれている。それによって私の活動は成り立っているんだと思います。

WWD:本格的に服を作るようになったことで、自身の意識に変化はあった?

あさぎーにょ:よりファンの子を理解したいと考えるになりましたね。みんなが今何を着ているんだろう?とか、ファンの子たちが何を求めているんだろう?とか。動画でファッションの紹介をする時も意識するようになりました。

WWD:ブランドの今後の予定は?

あさぎーにょ:ファンの方の反応を見ていても、「夏や秋、冬は何が出てくるんだろう?」といった期待を感じているので、シーズンごとにアイテムを出していく予定です。夏は既に動いていて、生地の選定などを行っています。ただ、現状はブランドを有名にしたい、大きくしたいという考えはあまりなく、あくまでコミュニケーションを濃くする方法の1つとして続けていくつもりです。

WWD:どういったブランドにしたいと考えている?

あさぎーにょ:正直、「こうしたい」という考えはまだないです(笑)。みんなと一緒に作りながら、形成されていくのかもしれないな、という段階です。ただ、“へんてこポップ”という世界観を、ブランドとしてお店だったり、ショッパーのアイデアだったりと服以外のところでも表現できればいいなと思っています。

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パリコレ取材班が選ぶ私的ベストショーBGM 「スポティファイ」プレイリストも

 「WWDジャパン」3月16日号は、2020-21年秋冬のパリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)特集です。特集内ではパリコレで見られた2大メッセージやムードを打ち出したブランドのコレクションを紹介しているほか、日本から現地に出向いた編集長やバイヤー、スタイリスト10人に聞く気になるトレンドなど、1冊で今季のパリコレが分かる内容となっています。

 紙面ではファッションについてとことん触れましたが、ここでは、書ききれなかったショーのBGMを紹介。パリコレ取材班が、それぞれよかったと思うBGMを鼎談形式で語ります。この記事に登場した曲は、「WWDジャパン」の公式「スポティファイ(Spotify)」アカウントでプレイリストとしてまとめています。プレイリストを聴きながら記事をお楽しみください(プレイリストに収録した曲名は太字で表記しています)。

【鼎談参加者】
向千鶴 編集長:2004年からミラノとパリを中心にコレクションを取材しているベテラン。 ポジフィルムでの撮影も経験している49歳
ヨーロッパ通信員 藪野淳:コレクション取材7年目の33歳。普段はベルリンに住みながら、ヨーロッパのファッションネタ全般を取材している
ソーシャルエディター 丸山瑠璃:パリコレ取材2回目の24歳。SNS運用を普段から担当しており、SNSを駆使した情報収集力は編集部内でもピカイチ

藪野淳(以下、藪野):「WWDジャパン」の公式「スポティファイ」アカウントができたんだね。

丸山瑠璃(以下、丸山):そうなんです、ほかにもさまざまなアーティストがブランドに捧げたトリビュートソングをまとめたプレイリストやおうち時間用のプレイリストもあるので、是非フォローを(笑)。さて、みなさん今季のパリコレのショーBGMはどこがよかったですか?

向千鶴(以下、向):「トム ブラウン(THOM BROWNE)」のBGMがすごくポジティブで、今季のキーワードである“ラブ”を象徴していたよね。サミー・デイヴィスJr. (Sammy Davis Jr.)の「Beautiful Things」やニナ・シモーン(Nina Simone)の「Here Come the Sun」、そしてフィナーレはビートルズ(The Beatles)バージョンの「Here Comes the Sun」ととてもロマンチックだった。前回の「ディオール(DIOR)」もフィナーレがビートルズの「Across the Universe」で、苦難屈強の中で戦って勝ち取る平和の象徴としてビートルズの曲が使われることが増えているのかも。

藪野:ロマンチックさでいうと、「ニナ リッチ(NINA RICCI)」もよかったですね。ママズス&パパス(MAMAS&PAPAS)の「California Dreamin’g(夢のカリフォルニア)」をディナイアル(Denial)がカバーした曲など名曲のカバーが多かったですが、どれもブランドのふわっとしたシルエットや布のドレーピングに呼応するかのよう。夢の中にいるような浮遊感が印象的でした。

向:「ミュウミュウ(MIU MIU)」もデヴィッド・ボウイ(David Bowie)の「Lady Grinning Soul」やルー・リード(Lou Reed)の「Berlin」など、みんなに愛されるようなメジャーな曲を使っていたね。服も1970年代らしいドレスが多かった。

丸山:「WWDビューティ」3月26日号の表紙にもなっていますが、ヘアもフィンガーウェーブでクラシックなムードがマッチしていましたね。「ディオール(DIOR)」も70年代でしたよね。

向:今回の「ディオール」のフィナーレはミーナ(Mina)の「Se telefonando」。コレクションはマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)の昔の日記が着想源になったそうだけど、この曲は66年の曲で、マリア・グラツィアが青春時代を過ごした70年代とマッチしているよね。

藪野:デザイナーの青春時代の曲といえば、「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン(JUNYA WATANABE COMME DES GARCONS)」は説明不要なくらいブロンディ(Blondie)でしたね。ショーの冒頭は無音の演出でしたが、その後は「Heart Of Glass」や「Call Me」などブロンディのヒットナンバーが続きました。ヘアメイクのブロンドヘアと赤リップもまさにボーカルのデボラ・ハリー(Deborah Harry)で、アクセサリー感覚でつけるハーネスなど、服もロックなイメージ。ブロンディということは70年代末〜80年代初めですが、まさに渡辺淳弥さんが若い頃に聴いていた曲なのでしょうね。

そして、僕のベストは、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)。実は全部通して聴いたのは初めてかもというくらいちゃんと聴いたことがなかったのですが、気になるダークな雰囲気の曲をシャザムでチェックすると大体出てくるのはビリーの曲。「ヴァレンティノ」は弦楽器の生演奏とビリーの「all the good girls go to hell」などの音源を融合させていてすごくエモーショナルでした。

向:私は「スポティファイ」の「19年によく聴いた曲」プレイリストにビリーが出てくるくらい聴いているのだけど、ビリーの曲は大音量でみんな聴くよりもイヤホンをつけて1人で聴くのが似合うよね。でも「ヴァレンティノ」が弦楽器を加える間に管弦楽を挟ませることにより、みんなで聴く音楽にしてしまったのは素晴らしいと思った。

丸山:ビリーは兄のフィネアス(Finneas)とベッドルームで音楽を作るところからキャリアをスタートしているから、1人で聴くのが似合うのでしょうね。フェリペ・オリヴェイラ・バティスタ(Felipe Oliveira Baptista)による新生「ケンゾー(KENZO)」も「Bad Guy」をリミックスして使っていましたが、ブランドの鍵でもあるユース感を今取り入れるなら、ビリーがぴったりなのだなと思いました。今季のダークなムードにも通じていますが、ビリーも今の若者もとても現実的ですよね。アメリカでも広がる新型コロナウイルスの感染について、自身のインスタグラムで若者に外出しないように呼びかけていたのには心打たれました。

向:それでいうと、以前ビリーがコンサートでタンクトップで登場したのも良かったよね。彼女は普段体型を隠すようなぶかぶかな服を着ているけれど、肌露出ガールがビリーのファンから批判を受けているのを知り、「好きな格好をすればいい」と反論するためにタンクトップで登場したと聴きます。その姿勢に本当に頭が上がらない。

藪野:なるほど。ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)も、今シーズンについて「私たちは皆人間で、私はどんなカテゴリーやジェンダーも、サイズも気にしない。自分の好きなものを着ればいい」と米「WWD」で話していました。ビリーの姿勢と重なる部分がありますね。

それから「ジバンシィ(GIVENCHY)」も暗い曲を使っていましたね。マックス・リヒター(Max Richter)の「3つの世界:ウルフ・ワークス(ヴァージニア・ウルフ作品集)より」からの曲でしたが、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)の「ジバンシィ」は「クロエ(CHLOE)」時代から転じて、暗くエレガントだけど強い女性像。今季全体的にダークなムードでしたが、ファッション・ウイーク終盤の「ジバンシィ」で確信しました。

丸山:そのダークなムードで言うと、忘れてはいけないのが「バレンシアガ(BALENCIAGA)」。世界各地で起きている火災や洪水を連想させるような映像を天井に映した演出が印象的でしたが、BGMを手掛けたのは16年からデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)とタッグを組んでいる若きコンポーザー、BFRND。彼はトラックリストを公開しているのですが、オープニングの「Genesis」は角笛のような音が終末の訪れを警告しているようでしたし、途中の水に飲み込まれるような映像のときに流れた曲は「H2O」。空撮の連続映像から地球の映像に切り替わったときの曲は「New World」と、演出にぴったり。

向:ショーのBGMを手掛ける音楽家は普通、ショーの何日か前にイメージだけを伝えられることも少なくない中、BFRNDはコレクションの製作過程から何度もイメージのすり合わせ、一緒にショーを練り上げるそう。まさに“デムナトライブ”のひとりなのでしょうね。「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」もダークなコレクションでしたが、BGMはミッチェル・ガービック(Michelle Gurevich)の「Party Girl」。パーティーガールというのに暗い曲なのですが、キャピキャピした感じではなく夜の社交場に行くような危うさがありますよね。

丸山:ダークなムードは、新型コロナウイルスの拡大でよりいっそう際立ちましたよね。香港拠点の「アナイス ジョルダン(ANAIS JOURDEN)」は渡航制限の影響で見せるはずのコレクションが全てそろわなかった状態だったのですが、届かなかった分は急きょアニメーターにパターンを見せてヴァーチャルモデルがコレクションを着て歩く映像を制作し、会場のスクリーンに映し出しました。BGMはウォークス(VOX)が生演奏でフランク・オーシャン(Frank Ocean)の「Swim Good」をカバーしたのですが、電子的な歌声が映像にマッチしていました。

前回に続き終末後の世界を描いた「マリーン セル(MARINE SERRE)」もダークでしたね。BGMは、コレクションの着想源になったフランク・ハーバート(Frank Herbert)による小説「デューン/砂の惑星」の一説の朗読。曲ではないのでプレイリストには入れられませんが、その中には「月が友人となり、太陽は敵になる(The moons will be your friends, the suns your enemy)」という一説もあり、「トム ブラウン」の「Here Comes the Sun」とは真逆ですね。

藪野:夢の中にいるような浮遊感とダークなムードがコレクション同様、今季のショー音楽の2大要素といってもいいかもしれませんね。ほかはどこのBGMがよかったですか?

向:「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は、ウッドキッド(Woodkid)とブライス・デスナー(Bryce Dessner)が作曲した新解釈のクラシック音楽。国と年代を超えた民族衣装を着た200人の合唱団とのセッションで、歌でもあるけど刹那なアートパフォーマンスでもあり、2重にも3重にもメッセージがある。

藪野:「ルイ・ヴィトン」は前回もトランスジェンダーのアーティスト、ソフィー(Sophie)が歌う映像を背景に映し出していましたが、時代を汲み取りドラマチックな演出に生かしていますね。丸山さんは何がよかった?

丸山:「サンローラン(SAINT LAURENT)」が、モデルのウオーキングに合わせて動くスポットライトの演出はもちろん、演出とマッチした音楽もかっこよかったですね。かっこいい以上の音楽のボキャブラリーがなくて申し訳ないですが、16年からタッグを組んでいるフランス出身のDJでプロデューサーのセバスチャン(SebastiAn)が今回も手掛けています。セバスチャンが「サンローラン」のショーBGMやキャンペーンの音楽を手がける一方で、彼の新曲「Sober」のMVは「サンローラン」がプロデュースしていたりとお互いにサポートし合っている関係。アンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)が37歳でセバスチャンが39歳なので、同世代でフランスのカルチャーを盛り上げている存在なのかもしれません。

向:「サンローラン」は昔からカルチャー、特にサブカルチャーを育てていこうという姿勢があるよね。「サンローラン」はリアルクローズを売るアパレルメーカーではなくスタイルメーカー、スタイルを作るブランドだから、とにかくかっこよくないとだめ。70年代の「サンローラン」がエッジーだったように、今のエッジーさを追求するとクラシックなどではなくセバスチャンのようなエレクトロになるのかもしれないね。スタイルを作るといえばエディ・スリマン(Hedi Slimane)の「セリーヌ(CELINE)」もそうだけど、音楽とつながりの深いエディの選曲はどう思った?

丸山:BGMはソフィア・ボルト(Sofia Bolt)の「Get Out of my Head」。70年代の曲かと思ったら、なんと18年リリースなんですね。パリ出身でロサンゼルスを拠点にするインディーロックミュージシャンで、彼女が家のガレージで行ったイベントに「セリーヌ」のチームメンバーが来て、エディに紹介したのだとか。ショーのわずか3週間前に連絡が来て、2分30秒の曲を22分に伸ばしたそうです。当日会場にも若いミュージシャンの姿が多かったですよね。彼らに話を聞けばエディやチームのメンバーがバンドの“ギグ”に来たそうで。

藪野:「ディオール オム」時代からそうだけど、エディはショーやキャンペーンのモデルにも若手ミュージシャンを起用しているしね。

向:エディが選ぶインディーズの曲って同じフレーズと音を繰り返すものが多いよね。ずっと聴いていると呪術的というか、洗脳されやすくなる気がする(笑)。ずっと同じものを繰り返して染めていくみたいなところは、エディのクリエイションにもあるよね。「セリーヌ」はショーを通じて1曲だけを使っていたけれど、ルックごとに曲が変わった「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」はどう思った?

藪野:曲と曲をシームレスにつなげるわけでもなく、ルックが変わるタイミングでブツリと切って次の曲に切り替わるのは斬新でしたね。曲自体も「シャザム」の再生回数が1000回以下のものが多数。ジャンルもクラシックやポップスなどさまざまで、中には効果音のようなももありました。

向:ブツリと切れるBGM同様コレクションも、綺麗に仕立てるわけでもなく乱暴に形を作ってさまざまなパーツを積み上げるような手法。実はこれは植物など必然性のある形からインスパイアされていたそうだけど。これがリアルクローズになると、身ごろを違う素材にブツリと切り替えたような服になっているのが面白かった。

藪野:やはりコレクションと音楽の関係性は深いですね。

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パリコレはどうなる? ヨーロッパに浮上する“秋まで大規模イベント禁止”の可能性

 新型コロナウイルスが猛威を振るう中、ヨーロッパでは秋に開催予定のイベントにも暗雲が立ち込めている。現在(4月23日時点)、フランスでは7月中旬まで、ドイツやデンマーク、ベルギー、オランダでは8月31日もしくは9月1日まで、大規模イベントを禁止。さらにドイツの首都ベルリンでは、すでに10月24日まで5000人以上のイベントの禁止が決まった。これにより、6月28日〜7月2日に予定されていたベルリン・ファッション・ウイークは中止。期間中に開催予定だった大型合同展の「プレミアム(PREMIUM)」や「パノラマ(PANORAMA)」「ネオニット(NEONYT)」なども全てキャンセルとなった。また、夏の音楽フェスは軒並み中止になり、9月4〜9日に行われる世界最大級の家電見本市「IFA」も通常開催を断念。9月27日のベルリンマラソンも延期になった。ドイツでは4月20日から感染拡大防止のために導入した規制を一部緩和しつつも、感染リスクの高いイベント開催には慎重な姿勢を見せており、ファッションだけでなく毎年恒例のさまざまなイベントに影響が出ている。

 ヨーロッパの主要都市で開催されるファッションイベントを見ると、6〜7月のメンズとオートクチュール・ファッション・ウイークは中止や延期となり、ロンドンやヘルシンキなどファッション・ウイーク自体をオンラインに移行するケースも増えている。8月上旬に予定されるコペンハーゲン・ファッション・ウイークや大型合同展「CIFF」は、中止の公式発表こそないものの通常開催が難しいのは決定的で、代替案を検討している。一方、9月以降に関してはまだ決断は時期尚早で、状況を見ているところだろう。現状、フィレンツェのピッティ・イマージネ・ウオモは6月から延期し9月2〜4日に、ミラノ・ファッション・ウイークはメンズとウィメンズの合同になり9月22〜28日に行われる予定。その後、9月28日〜10月6日にはパリ・ファッション・ウイークが控えている。

 しかし、各国の感染拡大やコントロールの状況を見ると、ベルリンのような規制が他の大都市でも発令される可能性は高いように感じる。そうなった場合、5000人のボーダーラインでは個々のファッションショーは実施可能であっても、期間中に開かれる「トラノイ(TRANOI)」や「プルミエールクラス(PREMIERE CLASSE)」といった大型合同展は規制の対象になる。そして、たとえファッション・ウイーク自体を開催できたとしても、世界各国からの人の往来が自由になっているかや、“3密”になることが多いショーやイベント会場に万全の状態で人を集めることができるのかという問題もある。もちろん毎シーズン、生のショーが持つ力を体感している身としては、このまま新型コロナが収束に向かい、皆が安心できる形でファッション・ウイークが開かれることを切に願う。しかし、ヨーロッパの現状は決して楽観できるものではないのも事実。それぞれが秋に向けて、プランBを用意しておく必要があるだろう。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

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「新型コロナで生産国で数百万人が失業」 NPO団体ファッションレボリューションの衝撃レポート前編

 新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るうなか、アパレルのサプライチェーンでは何が起こっているのだろうか。サプライチェーンの労働者の支援やファッション産業の透明化を目指す英国のNPOファッションレボリューション(FASHION REVOLUTION)は、新型コロナウイルスによる、目を背け難いファッション産業のサプライチェーンの現実の姿を指摘している。前編・後編の2回に分けてリポートする。

 ファッションレボリューションのリポートは、「ロックダウンによって人々は洋服を見つめ直す時間も増え、このような状況は発足当時から進めてきた#LovedClothesLast 運動(ファッション産業における大量消費と大量廃棄を問題視し、最低限度の購入もしくは手持ちの洋服の手入れをすることで洋服をより長持ちさせることを奨励している運動)が加速するのではないかと考えている」とポジティブなコメントで始まりつつも、ロックダウンによりファッション業界の中に存在する賃金を含めた格差が拡大していると警鐘を鳴らしている。

 ロックダウンの影響ですでに何百万人もの工場勤めの人々が職を失い、社会的・経済的にこの危機を乗り越えることができないと予想し、あるバングラデシュの衣料品メーカーの声を紹介している。「いま世界で人が亡くなる理由は新型コロナウイルスが多いかも知れないが、ここで人が亡くなる理由はそれによって生じた貧困だ」――労働者に正当な補償が行き届かず、彼らの日常生活が脅かされていると指摘する。

ロックダウンによって生じたキャンセルはバングラデシュだけでも約15億ドル相当

 ファッション業界の支払いの流れもまた工場を苦しめているともいう。

 通常の支払いは、まずブランド側が工場に商品生産の注文を出すところからスタートするが、注文に対する代金が工場側に支払われるのは、完成した製品が工場から出荷されて数週間後または数カ月後で、工場側は材料などを立て替え払いしていることになる。しかし、今回のロックダウン後に多くのブランドがとった行動は注文のキャンセルのみで、すでに完成している製品の支払いは行っていないところがほとんどだという。ファッションブランドの多くは工場が負担した材料費、完成しているはずの製品、工場で働いた人の賃金などの責任については言及しておらず、工場に負担がのしかかっている。工場に残された道は、仕上がった製品を保管、または解体し、大勢の労働者を一時解雇するしかない。しかし、退職金を手にしているのはほんの一握りの労働者で、給付されたとしてもその額は給料の1カ月分未満だという。

 ブルームバーグ(BLOOMBERG)ニュースによると、新型コロナウイルスによるロックダウンにより、バングラデシュのおよそ1089軒の工場で生じた注文のキャンセル額は約15億ドル(約1600億円)相当といわれる。現在、アパレル企業の下請けの工場労働者の生活を保障する対策は全くといっていいほど手がつけられていない。

 ただし暗い側面ばかりではない。「いまこうして世界中の人々が一つの同じ課題を共に乗り超えようとしているという経験は、共感する気持ちを強めている」という。ロックダウンによってソーシャルメディアへのアクセス数が増え、SNSを通した意見交換の機会が増えているということは、「ファッションレボリューションがこれまで進めてきた#WhoMadeMyClothes (#私の服は誰が作ったの?)“” or 『』で括るという運動の声をさらに高め、 ファッションサプライヤーとその労働者たちを保護するよう強く求める絶好の機会」と考えているという。

 ファッションレボリューションは「もし私たちが何も行動せずに、新型コロナウイルスが終息に向かえば、ファッション業界はまたいつも通りのビジネスに戻るだけ。新時代のためにともに力を合わせ、利益よりも人間と地球の幸せを尊重する新しい潮流を一緒に築き上げよう」と訴える。そのために誰もが参加できる簡単な方法もホームページで紹介している。

1.大好きなブランドに手紙を書く。(サイトに雛形あり)

2.仕事を失ったメーカーを支える非営利団体に募金をする。(推奨される募金先についてはウェブ参照)

3.ファッションレボリューションに寄付をする。

 またファッションレボリューションはロックダウン後のサプライヤーとサプライチェーンの労働者への対応について、世界で活動を続ける各機関の調査報告をホームページ上で掲載するとともに、彼らが大手ブランドに送った質問状の回答も掲載しており、ロックダウンの間はこれらの情報のアップデートを随時続けていくという。

Shiho Koike Stitson:アパレルの営業職、PR、スタイリストのアシスタントなどを経て2004年にバーニーズ ジャパンに入社。ウィメンズPRとしてアパレルやアクセサリーをメインに、ビューティやブライダル、インテリアまで幅広いジャンルのPRを経験し、結婚を機に同社を退職。英国に移住し、フリーランスとしてPR、通訳、コーディネーターなどをしながら目下子育てにいそしむ。出産をきっかけに興味が高まったオーガニックな物やサステナブルなことをロンドンで探究中

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ファッション・ウイーク中止で変わるコレクション発表の形 世界的イベントプロデューサーに聞く現状とこれから

新型コロナウイルスの世界的感染拡大の影響により、6〜7月に開催予定だった2021年春夏メンズと20-21年秋冬オートクチュール・ファッション・ウイークの中止(ミラノメンズは延期)が発表された。今後2カ月以内に外出制限や渡航制限が緩和されたとしてもソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)は長期化するであろうヨーロッパの現状を考えると、物理的なイベントでコレクションを発表するのはまず不可能だろう。また、9〜10月に予定されている21年春夏ウィメンズ・ファッション・ウイークに影響を与える可能性も高い。そんな中、ショーやプレゼンテーションを手掛けるイベント会社は、現状にどう立ち向かうのか?「ディオール(DIOR)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」「ジャックムス(JACQUEMUS)」など数多くのブランドをクライアントに抱え、年間100近くのショーやイベントを手掛けるビュロー・ベタック(BUREAU BETAK)の創業者、アレクサンドル・ドゥ・べタック(Alexandre de Betak)に電話インタビューを行った。

--この状況下において、ファッション・ウイーク自体をデジタル化する動きが見られる。ビュロー・ベタックはショーやイベントの会場デザインや空間演出など物理的な面を手掛けている印象が強いが、デジタル化の流れにはどのように取り組んでいくか?

アレクサンドル・ドゥ・べタック(以下、ドゥ・べタック):幸い、私たちはイベントの内容充実を図るため、2016年にデジタルコンテンツに特化した別会社ビュロー・フューチャー(BUREAU FUTURE)を立ち上げていた。なので、ここ数年はデジタルの取り組みも増えていて、物理的なイベントで生まれる“生”の感情をデジタルでより上手く伝えることを目指している。

--毎シーズン、メンズ・ファッション・ウイークでは「ベルルッティ(BERLUTI)」や「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」「エルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)」、オートクチュールでは「ディオール」や「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR & ROLF)」などのショーを手掛けている。ファッション・ウイーク自体が中止になった今、クライアントのブランドとはどのように取り組んでいる?

ドゥ・べタック:こんなことになるとは予想だにしなかった。この状況の中で取り組んでいる全クライアントへの提案は、もちろんデジタルで実現可能なことだ。6、7月だけでなく、すでに秋に向けた話し合いを始めているブランドもある。ただし、私たちが重要だと考えているのは、デジタルのアプローチであってもエモーショナルな“生”の体験であるということ。いいショーやイベントは心を動かす。これまで人の記憶に残るような実体験を数多く手掛けてきたが、その知識をデジタルにも生かしていきたい。事前にレコーディングされたものをさほど面白いとは思わないので、生のエクスクルーシブなデジタル体験を考えている。今取り組んでいるプロジェクトの中には100%デジタルもあれば、フィジカルとデジタルのハイブリッドもあるが、私たちが実現したいのはプレゼンテーションにデジタル技術を組み合わせ、デジタルでもリアルタイムに観客と関わり合えるようなものだ。

--2月のパリコレ中には、イベント制作・運営におけるサステナビリティ認証ISO 20121(イベント運営が環境、経済、社会に与える影響を測定して管理する国際規格)を取得したことを発表した。ビュロー・ベタックが定めた基本方針には資材の再利用や廃棄物のリサイクル、ビデオ会議活用による飛行機移動の削減、カーボン・オフセット100%の実現などが含まれていたが、ショーやプレゼンテーションにおけるデジタル活用はサステナブルを推進するための一つの方法と考えるか?

ドゥ・べタック:デジタルは、サステナビリティのための一つのツールだと思う。私たちが発表した行動計画に基づきサステナブルなイベント制作を実現できた時、大きな負荷として残るのは“人々の移動”だ。例えば、もし海外の観客が現地に来ることなくデジタルで限りなく近い体験をできるようになれば、イベントはよりサステナブルになるだろう。

--新型コロナ収束後の世界では、イベントの組み立て方は変わるか?

ドゥ・ベタック:世界の人々の往来が再開して、大規模なショーが行われるようになっても、これまでと同じであるはずはない。さらに言うと、過去と同じことに対する望みやエネルギー、予算もないだろう。ヨーロッパやアメリカ、アジアでイベントが開かれるとしても、以前のように観客全員が世界から集結するとは思えない。今この時は、私たちのマインドを変える。だから、これまで長年視野に入れてきた変化にいよいよ取り組むべき時だ。残念ながら、他に選択肢はない。

--一方、物理的なイベントの重要性についてはどのように考えているか?

ドゥ・ベタック:テクノロジーを生かしたデジタル化が進むのは間違いない。しかし、リアルな世界で実体験すること全てはデジタルよりも確実にもっとエモーショナルであり、そこには大きなアドバンテージがある。だから、人々はすぐにまた物理的な体験を求めるようになると考えている。いうなれば、現在の生活と同じだ。今は皆、スクリーン上でパーティーやディナーを楽しんだり、ミーティングをしたりしているが、ベストを尽くしても物理的な体験ほど心が動くことはない。私たちは、感情を生み出すために五感や感受性に触れるあらゆる要素を使っているが、まったく同じことをスクリーン上で実現するのは格段に難しい。もちろんデジタルでもクリエイティブなことはできるし、最初のうちは興味深く感じる。ただ、そのワクワク感は永遠には続かないだろう。だから、これからは常にフィジカルとデジタルのミックスが欠かせなくなると思う。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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FIT発の注目バイオベンチャー 染色&加工いらずの人工タンパク質繊維を開発

 アメリカのウェアウール(WEREWOOL)は、ニューヨーク州立ファッション工科大学(Fashion Institute of Technology、以下FIT)発のバイオベンチャーだ。タンパク質のDNAから色や伸縮性、はっ水性を備えた生分解性の繊維を製造する技術で、スタートアップ企業の登竜門的アワード、H&Mファウンデーション(H&M FOUNDATION)が主催するイノベーションコンペ「グローバルチェンジアワード(GLOBAL CHANGE AWARD以下、GCA)」をこの4月に受賞した。

 GCAはファッション産業をよりサステナブルにシフトするための革新的かつ初期段階のアイデアを選考して、そのスケールの拡大を目的としている。過去に受賞した企業の技術はすでに実用化されたものも多く、投資家や有力企業が注目するコンペだ。なぜファッション大学の学生が人工構造タンパク質繊維の開発に至ったのか――ウェアウールの創業者の一人であるチュウイ・リアン・リー(Chui-Lian Lee)にメールインタビュー行った。

教授を巻き込み、コロンビア大学と共同研究へ

WWD:人工構造タンパク質に注目したのはなぜ?

チュウイ・リアン・リー創業者(以下、リー):2018年、共同設立者でFITの教授でもあるテアニン・シャイロ(Theanne Schiros)が運営する「バイオデザイン・チャレンジ」に参加して、動物愛護団体のPETA、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)、ステイ・ドッグ・キャピタル(Stray Dog Capital)が主催する「アニマルフリー・ウール・プライズ(Animal-Free Wool Prize)」に挑戦したことがきっかけです。この挑戦でバイオ技術に触れ、プロジェクトの指導者であるセバスチャン・コシオバ(Sebastian Cocioba)が、自然に存在すタンパク質(サンゴ、植物、皮膚など)が色、耐水性、伸縮性などの特性をもたらすことを教えてくれました。テキスタイルの開発者として、これらの特性を生かし、ファッション産業が抱える課題に応えるテキスタイルを作ろうと思いました。

WWD:開発するときに大変だったことは?

リー:2年間取り組んできたなかでの最大の課題は「バイオデザイン・チャレンジ」のコンペ後、資金を確保することでした。私たちはテキスタイル開発者といっても、アイデアを持っているファッション学校の学生2人と卒業直後の若者。テアニンが私たちのビジョンを信じ、支援とパートナーシップの輪を拡げてくれました。そしてこの研究を継続するため、コロンビア大学とのコラボレーションを開始したのです。
それ以来、研究を継続するための資金調達が大きな課題となっています。このアワードによって初めての助成金を得ることができ、GCAの受賞は私たちの状況を大きく変えてくれました。研究を加速するための資金に加え、業界内での認知や貴重なコネクションももたらしてくれました。また、KTH(スウェーデン王立工科大学)とアクセンチュアとのパートナーシップにより、H&Mファウンデーションが主導するイノベーション促進プログラムをこの先1年間受けることができることにも、とてもわくわくしています。私たちは多くを学び、より成長できるでしょう。

「私たちの技術はテキスタイル・サプライチェーンの最も有毒な工程を削減できる」

WWD:具体的にどのようなプロセスで布地にするのですか?

リー:現状、プロトタイプまでできています。まず、タンパク質のアミノ酸配列に特性を持たせるために手を加えます。その後、微生物を利用して繊維の原料を作り出します。環境にやさしい化学物質と押し出し工程により、「たんぱく質ドープ(protein dope、糸になる前の液状たんぱく質)」を極細繊維にします。これを使用可能な布地にするには、その繊維の繊度(デニール)をより細くする必要があり、これが達成できれば繊維を糸にして、織ったり編んだりできるようになります。

WWD:これらのプロセスによって環境への負荷は通常のテキスタイル生産と比べてどのくらい削減できるのでしょうか?

リー:まだ開発の初期段階にあり、この繊維のコンセプトを証明できたばかりなので、それらを表す数字を持ち合わせていません。サステナブルな素材を提供することで、ファッション産業が環境に与える負荷を最小化するのが私たちの目標です。私たちの手法では、固有の色などの特性をあらかじめこの繊維に持たせることができるので、大量の水や化学物質を使用する染色・仕上げ工程を削減することができるでしょう。ファッション産業における水質汚染は世界全体の20%を占めますから。この繊維技術を確立して最終的に産業レベルの製品とすることができた際には、業界で広く知られる環境負荷の計測ツール「ヒグ・インデックス(Higg Index)」や「ライフサイクル・アセスメント(Life Cycle Assessment)」などを用いて数値化し、生産のすべての段階で継続的に環境や社会への影響を減らしていくことができるでしょう。

WWD:色やはっ水性、通気性などの特性は、タンパク質の設計段階からどのように持たせるのですか?

リー:ここでは合成生物学によって開発されたものと同様のツールを使用していて、タンパク質のDNA配列をいじるのは新しい技術ではありません。食品、農業、そして医薬品業界でもすでに広く使われている技術です。DNAに手を加えることで、微生物がタンパク質となる特定のアミノ酸配列を作るように指示します。この構造が、細胞組織に耐水性や伸縮性、そして色を持たせるのです。私たちの繊維にも使用されているGFP(緑色蛍光たんぱく質)は、2008年にノーベル化学賞を受賞した下村脩博士が1962年にオワンクラゲのたんぱく質から発見したものです。この発見以来、人々はさまざまな色を出すためにさまざまな方法でアミノ酸配列に手を加えてきたのです。

WWD:実用化のメドとそのための課題は?

リー:今後5年のうちには市場に出したい。課題は産業レベルに拡大するにあたり、市場の需要量に応えながら、フットプリント(環境への影響)を最小化し、生産コストを効率化することです。

WWD:人工構造タンパク質では日本のスパイバーがあります。スパイバーは、タンパク質を合成して、微生物の発酵プロセスで培養した粉をもとにさまざまな素材を作っていますが、その技術とは異なるのですか?

リー:スパイバーは本当に素晴らしいですよね!人工構造タンパク繊維の革命者であり、その技術が可能であることを証明しただけでなく、商業的生産も可能にしつつある。スパイバーの繊維をまだ触ることはできていませんが、“ムーン・パーカ”はぜひ着てみたい!Mサイズがあればぜひ(笑)。私たちもスパイバーのような人工構造タンパク質を生み出す微生物発酵プロセスを利用しています。彼らの繊維はクモの糸の原理をベースにして、光沢と強度を持つ繊維に耐水性を持たせるよう手を加えています。一方、私たちはまだ初期段階ではありますが、現時点でもすぐに見える私たちの技術とスパイバーの技術の違いは、たんぱく質繊維に固有の色という特性を持たせるところで、テキスタイル・サプライチェーンの最も有毒な工程を削減できるというところです。

WWD:これまでの資金調達額は?

リー:25万ユーロ(約2920万円)でGCAが初めての助成金です!

「農業でも多くのイノベーションが生まれている」

WWD:ほかに注目しているサステナブル技術は?

リー:ファッション分野では、オレンジの皮からシルクのようなセルロース繊維を生み出すオレンジ・ファイバー(編集部注:イタリアのスタートアップ企業が開発しGCAを授賞)や、布地の染色・仕上げ工程から汚泥を取り除き、産業排水を処理する技術を開発することで減少する飲料水資源へのソリューションを提供するシーチェンジ・テクノロジーズ(SeaChange Technologies、編集部注:ウェアウールとともに今年のGCAを授賞)に興味があります。さらにもう一つの素晴らしいテクノロジーは、合成生物学を利用したカラリフィックス社(Colorifix)。ここは化学処理をせずに天然繊維および合成繊維の染色技術を開発しています。ファッション以外の分野では、農業において多くのイノベーションが生まれており、多くの企業が代替のシステム、すなわち精密農業を研究しており、ファッション産業と同様に、バイオ技術の分野で代替となる持続可能なタンパク源の研究に乗り出しています。多くの産業が急速に気付き始めているのはサステナブル技術に将来性があるということ、そしてこのマーケットには経済的にも非常に大きな可能性があるということです。

WWD:注目しているファッションブランドは?

リー:「ステラ・マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」「アイリーン・フィッシャー(EILEEN FISHER)」「パタゴニア(PATAGONIA)」などがサステナブル・ファッションのパイオニアであり、自分たちが及ぼす影響に配慮しながらも、利益を生み出せることを証明してきました。私たちの興味を引くのは、小さな新興ブランドが循環型の産業のためにサプライチェーンに配慮し、透明性を保ちつつ技術革新的なソリューションを取り入れているところです。「リフォーメーション(REFORMATION)」や「ガールフレンド コレクティブ(GIRLFRIEND COLLECTIVE)」などはリサイクル素材によるコレクションやリサイクルプラスチックをアクティブウエアに活用することで埋め立てられる廃棄物を削減しているし、「マギー マリリン(MAGGIE MARYLIN)」や「マラ ホフマン(MARA HOFFMAN)」などはオーガニックやエシカルに調達された高品質の素材で知られています。「H&M」「ターゲット(TARGET)」「ギャップ(GAP)」などでもサステナブル・ファッションがより身近になっていること、またSDGs(持続可能な開発目標)を目指して積極的に天然資源の代替素材を探求しているのもよいことだと思います。

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短期集中連載“STAY HOME PLAYLIST vol. 1” 今野直隆と蒲谷健太郎が選曲

 ウイルスという、目に見えぬ敵と人類が戦い早数カ月。感染拡大を防ぐために不要不急の外出が制限され、1日のほとんどを自宅で過ごすようになり退屈な時間も増えたはずだ。そこで「WWDジャパン」では、ファッションを中心とした業界関係者にご協力いただき、ゆっくり過ごす際や仕事中、自宅で踊るときにおすすめしたい“STAY HOME PLAYLIST(おうち時間用プレイリスト)”の短期集中連載をスタート。いつもの音楽に飽きてしまった耳に絶えず新鮮な音楽を与えるべく、今日から6日連続でお届けする。記念すべき1日目は、「マジックスティック(MAGIC STICK)」の今野直隆ディレクターと、「バル(BAL)」の蒲谷健太郎デザイナーのプレイリストをご紹介。

今野直隆

――好きなジャンルと、最近よく聴いているアーティストおよび楽曲は?

ヒップホップやテクノなど、ジャンルはあんまり分かっていないです。普段は「ミックスクラウド(MixCloud)」と「サウンドクラウド(SoundCloud)」を掛け流していますが、カール・コックス(Carl Cox)の1つが気に入ってます。

――今回の“STAY HOME PLAYLIST”について。

ヒップホップもテクノも、娘がよく聴いている「アナと雪の女王2」の「Into the Unknown」にテイクオーバーされ、その反動でゴリゴリしたのを聴いています。今回のプレイリストは、仕事に集中するときにヘッドフォンを着けてよく聴く楽曲をまとめました。ヒップホップくらいしか詳しくないですが、詳しくない人が作るプレイリストもおもしろいんじゃないでしょうか?「全然わかってないな」ってたたきはやめてください(笑)。

――音楽を聴くこと以外に自宅ではどう過ごしている?

仕事、「ネットフリックス(Netflix)」、シューズクリーニング、長風呂、娘とセッション。ゴリゴリしたのを聴きにコンタクト(Contact)へ行きたいですね。

蒲谷健太郎

――好きなジャンルと、最近よく聴いているアーティストおよび楽曲は?

ヒップホップ、R&B、ダンス、レゲエ、ジャズとなんでも聴きます。ウェストサイド・ガン(Westside Gunn)、エイサップ・ナスト(A$AP Nast)、プレイボーイ・カルティ(Playboi Carti)、ノレッジ(Knxwledge)、ファティマ・ヤマハ(Fatima Yamaha)、トム・ミッシュ(Tom misch)、フランク・オーシャン(Frank Ocean)……曲単位で聴くことが多いので切りがありませんね。

――今回の“STAY HOME PLAYLIST”について。

“Chillin’ at Home”というテーマで、新譜を中心に家でリラックスしながら聴ける感じをイメージして作りました。いろいろなジャンルからセレクトしていて、後半にかけて少しbpmは上がりますが、最後はまた落ちていきます。3時間半近くあるので、たっぷり楽しめるはずです。

――音楽を聴くこと以外に自宅ではどう過ごしている?

料理です。最近お菓子も作り始めました。

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新型コロナ禍の危機管理 リーダーに求められることとは?

 新型コロナウイルス感染拡大で都市の封鎖が相次いでいる。米国では経済活動再開に向けた動きが出ているものの一進一退の状態が続いており、こうした中で企業のリーダーは、事業計画や経営管理のあり方だけでなく、従業員の士気を保つにはどうすればよいのかといったことに頭を悩ませている。さまざまな業界のリーダーや専門家らにヒントやアドバイスを聞いた。

 企業などを対象に顧客や従業員満足に関するコンサルティングを行っているザ・リッツ・カールトン・リーダーシップ・センター(THE RITZ-CARLTON LEADERSHIP CENTER)のアントニア・ホック(Antonia Hock)=グローバル部門ヘッドは、「困難に直面している今、管理職やリーダーは日々、本音のコミュニケーションを図る必要がある」と言う。

 同氏は、「今、リーダーに求められる大切なことは、日々の業務の状況や事業がどの様に変化しているのかといった情報を共有し、今何ができるのか、どのように貢献すべきかを従業員に伝えること」と述べ、「方向性を示し、本心で伝えることが重要だ」と語った。また、「優秀なリーダーはチーム内のつながりや、オンラインでの新たなコミュニケーションのあり方を構築している。仕事に人間味を持たせること、チームの全員がつながりを感じられるようになることで、この困難な状況の中でも最良のパフォーマンスを引き出すことができる」と語った。

 小売業者にとっては顧客とのつながりを強めることも重要だという。ロサンゼルスのセレクトショップ、フレッドシーガル(FRED SEGAL)のジェフ・ロットマン(Jeff Lotman)=オーナー兼会長は、「これまで以上にコミュニティーが重要だ」と語り、「コミュニティーを非常に大切なものと考えており、ソーシャルメディアなどを通じて、ショッピングを超えた幅広い内容のコンテンツを提供している」と述べた。

 ビンテージファッションのECサイトを展開するスリリング(THRILLING)のシーラ・キム・パーカー(Shilla Kim-Parker)共同創業者兼最高経営責任者(CEO)も、「今、リーダーにとって最も重要なのは『どのように人の役に立てるか。事業にどう取り組むべきか、コミュニティーに何を返せるか』と問いかけること」と語る。

 同氏は、「弊社のミッションは、中小のビンテージストアの経営者に奉仕すること。休業が続き、事業の再開や損失からの回復が危ぶまれるなど、彼らは深刻な状況にある」と述べた。こうした状況に対応するため、スリリングでは5月31日までの期間、同社ECサイトでの販売委託料を免除することを決めた。またストア経営者の直近の現金収入の一助とするため、セーブ・ビンテージ(Save Vintage)コレクションを展開しTシャツなどを販売している。利益のすべては同社ECサイトで販売を行う100店以上のビンテージストアに渡されるという。

 キム・パーカーCEOは、「今は企業ブランドのEQ(心の知能指数)を高める必要がある。世界中の人々が危機に直面している今、コミュニケーションのあり方やメッセージの出し方を見直さなければならない。空気を読めない企業からは顧客が離れていくだろう」とも述べている。

 一方、リーダーは弱さを受け入れることも大切だという。ファッションスタイリストでTVパーソナリティーも務めるシンディ・コンロイ(Cindy Conroy)は、「会社やリーダーは強くあるべきだと思っているかもしれないが、このような困難な時期にはそうある必要はない」と言い、「弱さを認めることは、部下や従業員に対して正直であるということ。そうすると彼らも心を開き、リーダーがチーム運営のあり方や問題解決策について語ることにしっかりと耳を傾けてくれるだろう」と語った。

 同氏はまた、「管理職は失敗も歓迎するべきだ」と述べ、「私たちが今、未曾有の事態に直面していることにふれた上で、批判を含めてどのような意見でも歓迎する姿勢を部下に見せるべきだ。そうすることで困難に打ち勝てる真のチームとなるだろう」と語った。

 メンタルヘルスや依存症に関連した活動を広く行うジェイ・シフマン(Jay Shifman)も、「共感と弱さを受け入れることが重要だ」と言う。同氏は、「優秀なリーダーとは、従業員それぞれが最善を尽くすことを促せる人。上からものを言うようではだめ」と言い、「リーダーは弱さを認め、従業員に共感し、また彼らに投資すること。それを感じた従業員との関係は大きく動くだろう」と述べた。

 また、積極的に従業員の話を聞くことは意味のある強固な関係性の構築につながるという。SAPノースアメリカ(SAP NORTH AMERICA)のマット・ローカイティス(Matt Laukaitis)シニア・バイス・プレジデント兼消費産業担当ジェネラルマネジャーは、「聞く力が最も重要」と言い、「経験したことのない状況の中、従業員は不安を抱えながら新しいワーキングスタイルに取り組んでいる。今までのように職場でのコミュニケーションを図れず、自宅に一人で勤務している者も多い。従業員のメンタル面や健康面の状態を見守る必要があるだろう」と述べた。

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新型コロナの影響も3月の売り上げは221万円 「アルバム」金内柊真のスター美容師への道 Vol.5

 ツイッターのフォロワー数14万超え、インスタグラムのフォロワー数10万超えの美容師・金内柊真。かつては芸能活動を行い、2018年8月にはアシスタントながら自身の著書「才能がなければその分努力すればいい」(KADOKAWA)を出版するなど、美容師の枠に収まらない存在として注目を集めている。昨年11月にスタイリストデビュー。この連載では毎月の彼の売り上げの推移とともに、売り上げを伸ばすために何をやってきたか、また新人スタイリストならではの苦労などを紹介していく。今回は新型コロナウイルスの影響もあったというデビュー5カ月目(20年3月)を振り返ってもらった。ちなみに4月8日から「アルバム」全店で臨時休業となっている。

WWD:デビュー5カ月目(20年3月)を振り返ってみて、まず売り上げはどうだった?

金内柊真(以下、金内):3月に関しては、東京都の外出自粛要請が出る前までは順調で、売り上げは221万円で、客数は200人でした。3月は卒業シーズンだったこともあり、高校卒業をきっかけにブリーチを希望するお客さまが多かったです。ダブルブリーチするお客さまも多く、その分単価も上がり、2月は8100円だったのに対して3月は1万1000円でした。あらかじめインスタグラムで、「黒染めしている人や初めてハイトーンにする人はハイブリーチのメニューを選んでください」とアナウンスしていたのもよかったと思います。

WWD:3月は新型コロナウイルスの影響はどれくらいあった?

金内:地方からのお客さまはほとんどいなかったですが、3月25日の東京都の外出自粛要請が出るまでは通常と変わらないくらいのお客さまが来てくれていました。ただその要請が出て以降はかなりお客さまの数は減少しました。でも、こればかりは早く事態が収束することを願うしかないですね。今はお客さまの安全第一です。

WWD:サロンでの新型コロナ対策も行っていた?

金内:スタッフの検温、マスク着用、換気、手洗い、こまめな消毒、座席を離すなど、一通りのことはやっていました。検温して37℃以上だと自宅待機になりますし。お客さまのマスク着用での施術もOKにしていたのですが、ヘアカラーだと汚れてしまう可能性があり、そこはしっかりと説明するようにしていました。

WWD:お客の新型コロナに対する反応は?

金内:みなさん危機感はあるけど、自粛ムードがある中で、「髪だけでもきれい」にしたいというお客さまが多かったです。やっぱり髪をきれいにすることでお客さまの気分も高まるんですよね。あらためて美容師の仕事の魅力について考えさせられました。

WWD:4月8日から「アルバム」全店で臨時休業をしているが、現在どのように過ごしている?

金内:ずっと勉強したいと思っていた本格的な動画編集を主にやっています。
なかなか時間が取れずに挑戦できなかったことであり、かつこれからの自分に生かせると思うので、ユーチューブ(YOUTUBE)などに積極的に投稿しています。あとは、定期的なインスタライブやインスタグラムでのコメント返信など、離れていてもお客さまに楽しんでいただけるようなコンテンツ作りを考えています。

WWD:新型コロナの先行きが不透明だが、金内さんの今の思いは?

金内:今はただ、事態が収束することを心から願っております。一日でも早く今まで通りの日常を取り戻すために今僕にできることは、自宅で力と熱意を充電することだと思っています。また、お客さまの元気な姿をまた見られることを楽しみにしています。


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 なお、これまでの「『アルバム』金内柊真のスター美容師への道」連載記事は、有料会員限定記事とさせていただきます。購読は、こちらからお申し込みください。


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編集長が語る 特集「コロナに負けるな 知恵を集めよう」について

「インディーズの群像たれ」

 「ファッションを通じた新しいライフスタイルの提案を」。ファッションビジネスの場でこれまで何度も何度も使われ、もはや陳腐とも言えるこのフレーズがこれほど実感を持つときが来るとは。この一カ月で私たちの生活も街の景色も一変しライフスタイルは激変しました。(この記事はWWDジャパン2020年4月20日号からの抜粋です)

 新型コロナウイルスとの戦いは長期戦になりそうです。収束はしても終息はせず、人との距離を置き続ける環境はもはや新しい常態であり、生活と経済への影響はこの先1年、いや数年続くのかもしれない。実際、米ハーバード大学をはじめ複数の研究機関・研究者が全世界的な終息には時間がかかるという未来予測をしています。その中にあって「コロナの脅威が去った後には、消費爆発がやって来る。それまで耐え忍ぼう」なんて掛け声は安易には掲げられません。初めて体験するこの奇妙な常態を少しでも快適に、明るく過ごすためにまさにファッションとテクノロジーを通じた新しい暮らし方、生き方の提案が待たれています。

 「WWDジャパン」4月20日号は「コロナに負けるな 知恵を集めよう」と題して一冊丸ごと新型コロナウイルスと向き合うファッション業界の現状と未来について特集しました。課題は山積みでいずれも一人、一社では到底解決などできない。だけど諦めず、知恵を集めて希望的ストーリーを描くための土台を作ろう。それこの特集の主旨です。

 取材は20人の記者が12のチームに分かれて進めました。「店頭」「サプライチェーン」「在宅勤務」「テクノロジー」「デザイナーの声」「ラグジュアリー」「デジタル活用が進むショー演出」「世界の業界人の声」「東京五輪」「巣ごもり消費」「アフター・コロナの消費予想」「識者の長期視点」「ファッションロー弁護士による悩み解決」です。どこも課題が山積みですが中でも4月7日に開いた特集キックオフ会議の空気が重苦かったのがアパレルメーカーや工場といった供給側、サプライチェーンのチームでした。今は店頭も非常に苦しい。それでも臨時休業で社員の命を守り、オンライン販売や顧客主義でしのごうという策もあリます。だけど、商品を供給する側に打開策はなかなか見当たりません。臨時休業で動きが止まった店頭から行き場のない在庫が逆流し、メーカー在庫を圧迫しています。積み上がる在庫と工場への相次ぐキャンセル。開くことができない展示会と先が見えない企画内容など、八方ふさがりです。グローバルサプライチェーンも国境閉鎖の前に分断を余儀なくされています。

 ファッション産業のサプライチェーンを構成している企業の多くは中小規模です。止まった店頭の余波を、体力のない中小企業だけが受け止めることになれば、業界全体が沈む。大手メーカーが工場に対して発注済製品の引き取りを一方的に拒否した、などという話も聞きますが、それは悪しき慣習などという言葉では済まされてはならないでしょう。今はまごうことなき非常事態。業界がこの厄災を乗り越えるためには互いに“痛み分け”の姿勢が必要です。

 ファッションビジネスは他産業より参入障壁が低いこともあり、独力でビジネスを立ち上げる個人事業主も多い。独自でありたい、牛の尾より鶏の口でありたい、そんなインディペンデントな姿勢の集合体こそがファッションビジネスの活力であるはずです。10日に小池百合子都知事が発表した東京都の休業要請に応じた中小・個人事業者に支給する「感染拡大防止協力金」の対象に衣料品店や靴店は含まれませんでした。「社会生活を維持する上で必要」とされているという判断ですが、この判断には口惜しい思いの個店が大多数でしょう。ファッション業界とは本質的には「社会生活を維持するには絶対的には必要ない」ものを勝手に作り続けて、提案し続けるインディーズの集まりだと思う。彼ら彼女らをツブせば文化が廃ります。

 本号の表紙を制作するにあたり、デザイナーズブランドやアパレルメーカーの関係者にオリジナルデザインのマスクを着用した写真での参加を募りました。マスクは今やすべての人の必需品であり、目にすることが多いアイテム。デザインを通じて世の中に少しでも元気を分けられたらと思います。送られてきた写真の多くには「自分たちは数人で経営している小さな会社。自分たちが今できることはマスクを作ることだからミシンを踏み続けている」とメッセージが添えられていました。本号表紙と裏表紙のマスクが百花繚乱なように、人の数だけ個性あり。異なる価値を持つインディーズの群像というファッションビジネスの基礎を損なってはいけない。そう思います。

 メディアアーティスト落合陽一氏の言葉を借りるなら、これからはアフター・コロナではなく“ウィズ・コロナ”。人と人が距離を置かざるを得ない新しい暮らしの中でファッションは何が提案できて、どう届けるのか。私たちファッション関係者は今こそ、全力で夢想したい。幸いにも夢想を後押ししてくれるテクノロジーが今はあリます。そして抑圧や不便さはクリエイティビティーを刺激するフックであることは歴史が証明しています。ファッションの社会貢献は新しい暮らし、新しい生き方の提案にあるはず。企業のリーダーだけではなくファッションを仕事を選んだひとりひとりが「今こそ我の出番」と“ウィズ・コロナ”の生活を豊かにするために夢想し立ち上がるときだと思います。


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巣ごもり生活にヒントを与える東急ハンズのおすすめアイテム

 新型コロナウイルスの拡大予防で緊急事態宣言が発令され、一気に在宅勤務が広まった。ゴールデンウイーク明けまでは在宅勤務という人も多いだろう。スーパーマーケットやドラッグストア以外の多くの店舗が閉店しているということもあり、ECで買い物をせざるを得ない状況だ。

 ここでは、各種日用品やアイデアグッズを幅広くそろえる東急ハンズ(TOKYU HANDS)の“巣ごもり”おすすめアイテムを紹介する。(いずれの商品も東急ハンズのウェブサイトで購入できる。品切れの可能性もあり。)

 在宅勤務でダイニングやリビングルームを仕事場にしている人も多いことだろう。本来、食事やくつろぎの場にPCやスマートフォン、ノートやペンといった仕事に必要なものを持ち込み仕事しなければならない状況だ。これら仕事グッズの収納グッズがあれば、あっという間に片付けができる。

 「ソニック(SONIC)」の“ユートリムブリッジ A4”(4900円)はマグネット付きなので立てて使うことができ、ワークスペースを即つくれる優れものだ。13インチまでのノートPCやタブレット、A4サイズの書類の収納をはじめ、スマートフォンやケーブルなどを収納できる小さなポケット付き。上部に取っ手がついているので持ち運びも簡単だ。「デルフォニックス(DELFONICS)」の‟インナーキャリング 縦型 A4”(3000円)はコットンキャンバス性のリュックで、外側と内側に9個のポケット付き。衝撃を吸収するウレタン入りなのでPCやタブレット、スマートフォン、ケーブル、文具などを分けて収納でき、バッグインバッグとしても使用できる。文房具のほか、コスメや小物をシンプルに収納したい人には、東急ハンズオリジナル“ライフスタイルツール ボックスM”(2000円)がおすすめだ。散らかりがちなモノを立ててボックスに分類できるので、必要なものがすぐに取り出せて、使用しないときはシンプルな箱に早変わりする。マグネットが埋め込まれているので固定できるし持ち運びも簡単だ。

長時間の在宅勤務に疲れたら

 自宅の椅子で長時間仕事をするのは疲れるものだ。その疲れを和らげるクッションなどの人気が高まっている。ちょっと休憩したいときにも役立つのが、「ゴーウェル(GOWELL)」の“低反発クッション 腰ラクーン”(3600円)だ。本格派低反発ウレタンクッションでありながらコンパクトで軽量。クッションとしてだけでなく、首に着けたり快眠枕にしたりと、さまざまな使い方ができる万能クッションだ。巾着袋付きなのでコンパクトに収納もできる。慣れない自宅の机と椅子での仕事で、肩凝りなどの疲れも出やすい。そんなときに、手軽に首や背中、足裏などの凝りをほぐせるのが「ラ・ヴィ(LA-VIE)」の“どつぼ”(1200円)だ。コンパクトなサイズで持ち運びにも便利なのもうれしい。在宅勤務による運動不足を解消するのに重宝するのが「アルファックス(ALPHAX)」の“ユラミンゴ”(2800円)だ。フラミンゴのように片足立ちで体幹を鍛え、疲れやすい、むくみやすい、冷え性などの悩みの解消に役立つ。

家中で楽しめる話題のゲーム

 一日中自宅で過ごし、家族団らんの時間が増えたという人も多いはずだ。そんな家族におすすめなのが、「幻冬舎(GENTOSYA)」の“キャット&チョコレート 非日常編”(1500円)。与えられたお題の劇的なピンチを限られたアイテムでどう切り抜けるかを即興で発表するゲームで、内容は恋愛からミステリー、SFなどさまざま。劇的なピンチが想像力をかき立てて家族全員で盛り上がれるというものだ。「テンヨー(TENYO)」の“脳ブロック ヘキサモンド”(1000円)は、3色グラデーションの透明なピースをケースにはめていくパズル。何百~何万通りもバリエーションがあるが、その1つのパターンにたどりつくのも至難の業で、時間を忘れて夢中になれる。

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販売員のリモートワークはどう取り組む? 買い付けやインスタグラム運営に携わるアンフォロー編

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言を受けて、百貨店やファッションビルをはじめとする店舗が臨時休業中だ。店頭に立てず勤務ができない販売員は「突然、1カ月の休みがてきてしまった」と嘆いている。オフィス勤務社員のリモートワークでさえも難しい状況だが、販売員への仕事を創出している企業もあった。その事例を紹介する。(この記事はWWDジャパン2020年4月20日号からの抜粋に加筆しています)

アンフォロー

 国内外の新進気鋭のデザイナーズブランドを扱うベイクルーズのセレクトショップ、アンフォロー(UNFOLLOW)は買い付けやVMD、PRなどの業務を販売スタッフの適性に合わせて任せている。村田生平ディレクターは「年功序列の人材登用ではなく、完全実力主義で成長したマルチプレイヤーによる少数精鋭の店舗運営を意識している。普段から販売スタッフが展示会に参加し、商品発注に関わっているため、実店舗を休業しても大きく仕事内容は変わっていない」と話す。

 在宅勤務期間中に村田ディレクターと販売員は、LDHアパレルの「フルビーケー(FULL BK)」が開催したバーチャル展示会に参加。ビデオ会議アプリを使ってデザイナーのDJ DARUMAが商品説明を行い、セールス担当が商品をカメラに移して紹介するスタイルで行われた。「店舗営業中は店を離れずらい若い販売スタッフまでがリモートで展示会に参加することができた。彼らがブランドチームから直接話を伺えることはリモートならではの良さがあった」と村田ディレクター。

 またインスタグラムの運営なども販売スタッフが担っており、店舗が閉まっている現在も約10人がローテーションを組み遠隔で投稿などの作業を行っているという。

販売員の声
“他部署の仕事で視野が広がる”

 「現在の深刻な状況下でも難しいと感じることはなく、販売員の仕事で培った顧客目線で仕事に臨むことができた。他部署で仕事をすることで自身の視野が広がる新しい発見があり、また『現場ありき、顧客ありき』ということに改めて気づかされた」(高田侑毅/アンフォロー大阪店スタッフ)


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「オークリー」旗艦店オープン、福井に工場建設 伊ルックスオティカの日本の投資は実を結ぶか?

 「シャネル(CHANEL)」や「ブルガリ(BVLGARI)」など多くの有力ブランドのアイウエアを手掛ける、世界最大のアイウエア企業ルックスオティカグループの積極的な日本への投資が続いている。しかし新型コロナウイルスの影響で、4月下旬に東京・渋谷で予定していた「オークリー(OAKLEY)」初のグローバル旗艦店のオープンは5月上旬に延期となり、福井県に建設中の工場の工期も左右されそうだ。日本のビジネスの状況を日本法人ルックスオティカジャパンのフランチェスコ・アルクーリ(Francesco Arcuri)=ゼネラル・マネジャーに聞いた。

WWD:新型コロナウイルスの影響は?

フランチェスコ・アルクーリ=ルックスオティカジャパン ゼネラル・マネジャー(以下、アルクーリ):イタリアやその他の地域のルックスオティカの生産工場は一時的に操業を停止しているが、中国の工場は通常の製造レベルに戻っており、eコマースも引き続きグローバルで稼働している。日本において、社内は可能な限りリモートワークを取り入れ、接客も停止し、ミーティングはすべてオンラインで行っている。また、緊急事態宣言発令中は、「レイバン(RAY-BAN)」「オークリー」「アラン ミクリ(ALAIN MIKLI)」の直営店を一時的に休業とした。

WWD:「オークリー」の新店は、ブランド初のグローバル旗艦店として力を入れている。

アルクーリ:オークリーストア渋谷店は、幅広い商品ラインアップだけでなく、ブランドの世界観を強く表現したストアだ。スポーツを愛する人々のためにデザインされ、従来の店舗の概念をはるかに超えた体験型の空間だ。東京を象徴する渋谷のスクランブル交差点からほど近いロケーションにおいてエデュケーショナルなエンターテインメントスペースとして機能し、テストやテクノロジーのショーケース、ライブストリーミングイベント、アーティストとのコラボレーションなどさまざまな企画を予定している。

WWD:傘下の福井めがね工業のモノ作りに対する評価は?

アルクーリ:福井めがね工業は、高い職人技、デザイン、上質な素材で世界中に知られる伝統的なメイド・イン・ジャパンの卓越性と品質を象徴している。金属素材のデザインや彫金技術において多数の熟練職人を擁する福井めがね工業を通じて、日本のモノ作りの伝統のノウハウ、文化、および感性をルックスオティカグループが共有できることは有意義だ。福井の新工場の竣工は今夏を予定している。今後も鯖江への投資を継続し、ルックスオティカのビジネスモデルに沿って卓越した生産の柱を構築していく予定だ。イタリアのアゴールドやカドーレにある当社の工場と同様、福井めがね工業だけでなく、幅広い独創性、創造性、職人技を持つ鯖江地区の多数の中小規模の生産者とモノ作りの文化を共有し、必要なサポートをしていきたい。

WWD:昨年は、伊勢丹新宿本店1階のアイウエアコーナーにルックスオティカが開発したデジタルプラットフォーム「バーチャルオプティカルストア」をアジアで初めて導入した。デジタル強化の状況は?

アルクーリ:ルックスオティカは、デジタル化に多くの投資を行っている。企業向けには、「マイルックスオティカ(MyLuxottica)」というウェブサイト上で商品ラインアップの確認や発注ができるプラットフォームをすでに運用しており、顧客も活用している。また、伊勢丹新宿本店のバーチャルオプティカルストアは、当社が手掛けるブランドの豊富な商品を店頭で閲覧でき、バーチャル上での試着・オーダーを可能とした。在庫の有無にかかわらずバーチャル試着が可能で、バーチャルミラーリング技術による高解像度のリアルタイムレンダリングによってAR(拡張現実)で眼鏡フレームが表示され、実際に顔に掛けているかのようなリアルな着用感をさまざまな角度から確認することができる。顧客や消費者とのコミュニケーションのためのデジタルプラットフォームを開発することにより、市場におけるオペレーションを進化させている。ルックスオティカグループ内の抜本的な技術革新により、眼鏡事業全体のデジタル化の機会を提案でき、業界全体に利益をもたらすプロセスの革新につながるものだ。

WWD:現段階で新型コロナの影響の先行きは不透明だが、今後計画していることは?

アルクーリ:昨年は「レイバン」4店舗と「オークリー」1店舗をオープンするなどエキサイティングな1年だった。2020年も「オークリー」3店舗と「レイバン」1店舗のオープンなど直営店の拡大を予定している。主要百貨店との戦略的パートナーシップも進めており、伊勢丹新宿本店1階と銀座三越1階に続き、阪急うめだ本店でも消費者との接点を持てるアイウエアコーナーを手掛ける予定だ。国別の売上高は非公表だが、卸売が中心の日本のルックスオティカ全体に占める売り上げ構成比率は約2%。特に、オプティカルフレームについては今後も大きなビジネスチャンスがあると捉えている。

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急速なデジタル化に後れを取る仏百貨店 O2Oに活路見出すセレクトショップ

 3月17日よりロックダウン(都市封鎖)が続くフランスでは小売業界のデジタル化が急速に進んでいるが、百貨店は大きく後れをとっている。プランタン(PRINTEMPS)は雑誌「アンチドート(Antidote)」と提携したメディア型ECサイトを3月上旬に開設したばかりだし、ギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)のECサイトは長年リニューアルされておらずデザインも機能も古めかしいままだ。昨年オープンしたシャンゼリゼ通り新店はECを設けず、さらに実店舗の売り上げ悪化により今後社内統合される予定だという。2017年に開設されたLVMHグループ傘下のボン・マルシェ(LE BON MARCHE)のECサイトの売り上げも期待値には及ばず、フランスでは英米大手ECサイトが優勢だ。(この記事はWWDジャパン2020年4月20日号からの抜粋に加筆しています)

 一方で、昨年1月にパリに新店をオープンしたネクスト・ドア(THE NEXT DOOR)や、若年層とLGBTQIA+に支持されるランセイン(L’INSANE)はターゲットを絞り、オフラインでのコミュニケーションを密にすることで独自路線を見出し、生き残りをかける。開店5周年を迎えたトム・グレイハウンド・パリ(TOM GREYHOUND PARIS)は、ロックダウンを予期して急遽ECサイトを制作し、店舗営業停止日に運営を開始した。今後コンセプトを定期的に変えて編集型のECサイトを展開する予定だ。

 コロナショックを機にさまざまな物事が淘汰されていく中で、小売りが生き残っていくために今後求められるのはコミュニティー力とO2O(Online to Offline)だろう。消費者がお金を費やす対象が時間・人・信頼へと変化し、誰が働いているか、誰にお金を落とすか、誰とつながれるかという“人”検索で店を選び、そこで費やす時間が重要視される傾向になると思う。ここでいう“人”とはスタッフだけでなく顧客も含まれ、顧客同士の交流を増やすこともコミュニティー強化に繋がる。つまり小売りは、資本主義ではなく顧客第一主義で消費者と有機的な信頼関係を築くことが、結果的に売り上げへと影響するのではないだろうか。そのヒントを探るためパリの小売各店に調査を行なったが、5月11日までのロックダウン延長が4月13日に決まり、対応に追われる多くの百貨店やセレクトショップから回答は得られなかった。そんな中でも回答してくれたセレクトショップ2店は、新たな可能性を信じて好機へと変えるために挑戦を続けていた。

トム・グレイハウンド・パリ

回答者:ダヴィッド・カン=ゼネラル・ディレクター

Q.外出制限期間中、ECサイトは機能しているか?

A.ロックダウンが命じられる直前にスタートしたばかりのECサイトは、活発に機能している。

Q.ECサイトからの注文はどのように配送している?

A.残念ながら運送会社が限られているため、遅延など配送の問題は発生している。業務を行っている運送会社と協力しながら、通常通りとはいかずともなんとか配送できている。

Q.2020年春夏コレクションをどう販売していく?

A.3月17日をもって実店舗の営業を停止しているため、ECサイトやSNSを通じて20年春夏コレクションのプロモーションに徹している。

Q.現在、最も懸念していることは何?

A.20年春夏コレクションのセレクションには非常に自信があるが、実店舗を開けられないため、消費者に商品をどれだけ提示できるかという点。可能な限り全ての商品をECサイトに掲載し、多くの人と共有できるよう努めている。

Q.この危機にどう立ち向かい、どう乗り越える?

A.現状を受け入れ、まずは前を向くこと。前例のないさまざまな方法で働き続けることが重要だと思う。先を見据えて、今は世界中の消費者の興味を引くビジュアル作りに注力し、ECサイトがより活発になるようにしたい。ビジュアルのコンセプトは、社会状況や潮流によって変えていく。現在発信しているキーワードは“私たちはパリにいます”“素晴らしい春夏の服を用意しています”“でも自宅に閉じ込められています”といった事実。そこで、パリのアパルトマンのシックで素敵なインテリアをビジュアルに使用して、“Quarantine in Paris(パリの検疫期間)”をテーマにしたコンテンツ作りに成功した。このコンテンツに注目を集まれば、ロックダウン解除後には20年春夏コレクションについてもっと知りたいと、多くの人が実店舗とECサイトに訪れてくれることだろう。

ランセイン

回答者:リン・ゼイン創始者兼バイヤー&ローラ・ダルモン=バイヤー

Q.外出制限期間中、ECサイトは機能しているか?

A.ランセインは非常に小さな家族のような構造のため、とても柔軟性がある。この局面を顧客を含めて私たちコミュティーが無益に過ごすことのないよう、新たなプロモーションや注文予約制度、マーケティングキャンペーンを立ち上げた。公式サイトに設けているブログのコンテンツを見直し、定期的な更新でフォロワーとコミュニケーションを密に取り合い、自宅隔離中にそれぞれの考えを磨いてアップデートできるようにしている。ロックダウン直前に2020年春夏コレクションの商品を撮影する機会があった。ECサイトは最新コレクションの状態を保ち、顧客は限定品も注文することができる。

Q.ECサイトからの注文を、どのように配送している?

A.チームと顧客の安全が最優先事項だ。可能な限り細心の注意を払い、フランス政府とWHOが推奨する規則と衛生手順に厳格に従い配送の処理を進めている。配送の準備は、店舗の近くに住むスタッフが防護具を着用して外部との接触を一切なしにして進めている。商品は、通常時には経由する仲介業者を介さず、直接運送会社で手続きを済ませてソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の規定に沿って行っている。

Q.2020年春夏コレクションをどう販売していく?

A.ロックダウンと同時に最新コレクションの販売を開始し、在庫の一部はすでに売れている。注文予約制度と、コンテンツ作成の組織をさらに強化しているところ。新型コロナウイルスの危機が迫っている頃、私たちはブランドに出していた注文をキャンセルせずに全て履行することに決めた。ほかの多くの小売店がキャンセルしたことを考慮すると、ほぼエクスクルーシブの状態で提供できると考えたからだ。売り上げの大部分を占めるアジア市場は、ヨーロッパに比べて非常に活発だ。SNS上での顧客の存在は大きかったが、ロックダウン中にさらに強調された。そのためインスタグラムやフェイスブック、ウィーチャット(微信、WeChat)といったプラットフォームでさまざまなキャンペーンやお知らせを発信している。

Q.現在、最も懸念していることは何?

A.最も懸念する事柄の一つは、実店舗の将来。ランセインは最初から、コミュニティーとの密なコミュニケーションの中から有効なアプローチやイベント、展覧会、ポップアップを選択してきた。ファッションは単に衣服というだけではなく、あらゆるインスピーレーションから生まれた抽象的で具体的な芸術表現の一部でもあるという考えを持っているからだ。そのため、私たちを待っている回避できない危機の時期、いうならば“アフターコロナのトラウマ期”を利用して、コミュニケーションの大部分をデジタル化することにますます注力する予定だ。ほかにも、若手ブランドがこの危機にうまく対処できるのかという懸念もある。われわれは若手ブランドの支持者だが、オープンから1年ほどしか経過しておらず、影響力が強いとはまだ言えない。私たちの美学と価値観を共有するブランドを可能な限りサポートするつもりだが、脆弱なブランドは生き残るのが厳しいだろうとも思う。

Q.この危機にどう立ち向かい、どう乗り越える?

A.われわれは独自の美学で魅力をもつ非常にニッチな商品を提供するプラットフォームとして、この危機を乗り越えられると信じている。私たちの顧客は衝動的に買い物を楽しむというよりも、情熱的な鑑定家のように自身の目を信じる慎重な買い手が多い。彼らとともに店も成長することで、進化の曲線を描き続けられると思っている。もちろん未来は不明瞭であり、消費者の購買意欲をコントロールすることはできない。それでも、私たちの強みは常に前向きで意欲を維持することだから。


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ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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コロナ危機に「中国小売業」はどう立ち向かったか 上海在住コンサルが報告

 新型コロナウイルスが発生した中国だが、現在は感染拡大がひとまず落ち着き、市民生活が平常に戻りつつあるという。この間、中国のファッション小売業はどのようにして危機に立ち向かったのか。上海在住のVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)コンサルタントの内田文雄氏が報告する。

上海での2週間の自宅隔離生活

 私は中国・上海に拠点を構えてVMDの仕事をしています。春節前の1月中旬にはいったん日本に帰国し、そのままニューヨークとロサンゼルスにマーケットリサーチの出張に出ました。その間、中国では新型コロナウイルスの感染が拡大し、湖北省武漢市を中心に緊急事態宣言で都市封鎖が断行されました。そのため私は中国には戻れず、1カ月半ほど実家のある神戸で過ごすことになりました。

 神戸に滞在した2月、世界中で少しずつ感染者が増えていきました。このままでは中国に戻れなくなるという強い不安から、隔離生活を覚悟で中国に戻ることを決意しました。当局の指示に基づき、上海の自宅で3月8日から22日までの2週間の隔離生活を過ごしました。

 3月23日に2カ月ぶりに上海の繁華街に出て驚きました。いつもは自動車で渋滞している道路がガラガラで、満員のはずの地下鉄の乗車率も3割程度。移動制限で上海に戻ってこられない人たちや、在宅勤務を強いられている人がそれだけ多かったのです。以前はマスク姿の人をほとんど見かけなかった中国で、ほぼ100%の人がマスクをつけている光景にもびっくりしました。

 私がコンサル契約するクライアント(アパレルメーカーや小売企業)もコロナのダメージが甚大でした。チェーン展開しているブランドは、ほとんどの店舗を一時的にクローズ。従業員も自宅待機からリモートワークへ移行しました。またビジネス形態もオフライン(実店舗)からオンライン(ECなど)に軸足を変えていきました。

 オフラインのコンサルを生業としている私自身もがまんの日々が続いていました。それでも4月中旬から事態収束の兆しが見え、実店舗が復活し始めたため、少しずつ仕事を再開しています。

値引きしないブランドが値引き——「アビレックス」

 ここからは中国のファッション小売業の動向を紹介しましょう。

 まずはアメカジブランド「アヴィレックス(AVIREX)」。中国全国(特に中国の華北、華東、西南地区)に18店舗を展開しています。感染が深刻だった2月中旬から3月初旬でも、成都のイトーヨーカ堂と大連の大連百年城の2店舗は営業を続け、それ以外のほとんどの店は休業を余儀なくされました。この営業していた2店舗に関しては、3月の売上高で前年実績をクリアしています。休業した店舗も、感染被害が少ないエリアでは順次営業を再開し正常化に向けて動き出します。

 オンライン(Tモール)の売上高は前年同月の実績を大幅に上回りました。これは「アヴィレックス」のみならず、他の中国、外資アパレル、小売企業も同様です。自宅にこもってやることがないため、ネットショッピングで暇をつぶす需要が大きかったようです。

 ではオフラインでどのような活性化策を打ったのでしょうか。これまで「アヴィレックス」はブランド価値の維持のために値引きの手法はとっていませんでした。しかし2月20日から4月6日まで初めてセールを実施しました。販促テーマは“コロナと戦おう!”です。対象商品は全商品(19年秋冬、20年春物)、2点お買い上げで30%オフ、3点お買い上げで40%オフでした。

 各店舗のスタッフがウィーチャット(微信、WeChat)を駆使し、お客のグループチャットを作って情報発信を繰り返しました。営業する店舗には多くのお客が詰めかけ、一人で何点も買う人もいたようです。プロパー販売を維持しているブランドが特別に期間限定の割引き策を打って、来店者数、客単価、セット率も向上させることに成功しました。販促期間中、売り上げの8割以上がウィーチャットで集まったお客によるものだったそうです。

店内イベントを再開――「ニコアンド」

 アダストリアの「ニコアンド(NIKO AND…)」は、昨年12月に中国大陸で初めてとなる旗艦店を上海に開きました。オープン1カ月後にコロナの影響をもろに受けた形になりましたが、店舗自体は一度も休業することなく営業していました。

 店舗は上海の繁華街、淮海路の路面店です。コロナ蔓延がピークの2月は通りに道行く人がいない状況が続き、売り上げは計画を大きく下回ってしまいました。それでも3月以降は街に人が戻ってきたため徐々に回復し、4月に入ると週末も平常時の客数が回復して計画も達成しているようです。

 日本の「ニコアンド」は45日サイクルでさまざまな店内イベントを行うことで知られています。上海の旗艦店も日本と同様の手法を取り入れています。ただ、しばらくは店内イベントや広告宣伝を中止したり、商品発注を抑制したりとがまんの日々が続きました。4月に入って日を増すごとに客足が戻ってきていることを確認し、10日から新たな店内イベントもスタートしています。コロナが収束に向かうことを想定し、5月初めの労働節連休に向けたイベントの準備をしているようです。

インフルエンサー起用で3日間12億円の売り上げ­——「馬克華菲」

 今年ブランド設立20周年を迎える「馬克華菲(MARK FAIRWHALE)」は、20〜30代の顧客を多く持つストリートブランドです。このブランドはSNSやライブ配信など、最新のデジタルマーケティングを使って消費者に訴求することで知られています。コロナ禍でも打開策を発信し続け、ファッション業界のみならず小売業界全体からも注目されています。

 残念ながらコロナ禍では、衣食住の衣(ファッション)が消費者からは一番遠い存在になってしまいます。どのアパレル企業もオフライン(実店舗)が稼働しないため、春節休暇タイミング(1月末)で在庫をさばこうとしていた19年冬物、そして新たに入荷した春物在庫が滞ってしまいました。「Tモール」などのオンラインサイトだけでは在庫処分ができず、さらに夏物の納品や秋冬の生産計画すら修正をせざるを得ない状況に陥りました。つまり在庫を換金する方法を検討して即実行する判断が求められたわけです。

 そんな中、「馬克華菲」大きくは2つの策を実行しました。一つは3月初めに実施した「臨時個人委託代理店策」、もう一つは3月末に行った「KOL(キー・オピニオンリーダー、いわゆるインフルエンサー)による3日間72時間限定割引き策」です。

 1つ目の臨時個人委託代理店策は一般的なオフライン店を運営する代理店施策ではなく、SNSを介して在庫販売をしてくれる個人を募集し、その個人のネットワークを利用して、オフライン上で多くのお客にブランドを紹介してもらい、在庫を売ってもらう方法です。名乗りを上げた個人は、在庫リスクを負わない委託販売で売った上代の10%ほどが利益として受け取れます。自宅待機を余儀なくされる中、個人の時間とネットワークを有効活用できるわけです。ブランド側も粗利益や粗利益率が下がっても在庫がさばけ、換金できる。双方にメリットがある手法です。

 2つ目のKOLによる3日間72時間限定割引き策は業界に大きなインパクトを与え、ニュースになりました。結論からいうと、3日間で8000万元(12億円)を売り上げ、大成功を収めました。臨時個人委託代理店策は文字通り個人が担う策でしたが、こちらは著名なKOL数人とブランド本部スタッフがタッグを組み、3日間休みなしのぶっ通しのライブ放送で商品のことを喋り続け、その場で視聴者の反応を見ながら価格も決めていくというもの。私もライブ放送をリアルタイムで見ていましたが、お祭り的なイベントのように感じました。

 実はKOLがオンラインで販売をしている間、同時進行で中国全土800の各店舗のスタッフがティックトック(TikTok)や快手(中国の動画共有アプリ)などで、自分の顧客に対して商品を紹介して販売していました。

 つまり一方は全国向けの広い範囲で、もう一方は各地域店舗単位の狭い範囲で、同時に集中して売り込んでいたわけです。「顧客とのつながりを大事にしている策」といえるでしょう。

 「馬克華菲」は、毎年11月11日の「独身の日(W11=ダブルイレブン)」でもアリババの販売順位がベスト5(メンズ部門)に入る人気ブランドです。今回の3日間で8000万元という結果は「独身の日」の3倍を売り上げたことになります。まるで「3日間限定の一人W11」を開催したような結果になりました。3日間の視聴者数350万人、新たなブランドの会員増加数10万人。やることが大胆かつ巧妙、ブランドの客層の若者が好むSNSを駆使した新しい販売方法――まさに“新零售(オンライン、オフラインの融合)”を地でやっています。

仕入先の日本の収束が心配――「R.G.F.」

 「R.G.F.」は上海の旧租界にある人気の雑貨&カフェです。2月から上海市政府当局の指導によってリアル店舗は休業しましたが、3月中旬になるとカフェから店を再開します。

 同店の人気は100%輸入の雑貨です。仕入れは日本60%、欧米20%、インド20%。「日本の良いもの、埋もれた匠が製作した商品を中国の消費者に理解して使ってほしい」というコンセプトのもと、2015年にオープンし、年々売り上げを伸ばしています。オフラインでたくさん売るというのではなく、オンラインのためのショールームの意味合いです。

 2〜3月のオフラインの休業期間中は中国全土で在宅隔離者が増えたため、オンラインでの売り上げが前年比1.5倍になりました。割引き販促を行なっていないにもかかわらず、この結果です。

 現状は堅調な「R.G.F.」ですが、5月以降については不安があります。輸入先である日本、欧米、インドなど各国でコロナの感染拡大が収束しないことです。また中国への輸送がいまだ麻痺している上に、国外からの飛行機が週一便だけなど減便されています。オンラインの商売では在庫確保と商品の安定供給ができないと販売チャンスを逃してしまいます。

 「R.G.F」のオーナーの馬さんは現状と今後について、以下のように答えてくれました。

 「今の中国は落ち着きを取り戻しつつある。むしろ友だちも多くいる日本が心配だ。他国のことなので言い辛いけど、短期間でも構わないので強めの非常事態宣言を行い、感染者が増えない策を打ってほしい。中国もまだまだ完全な状態ではない。第2次、第3次で感染者が増える可能性もあり、国民一人一人が自己防衛するという意識が強い。日本の状況が早くよくなって、オーダーしている商品が入り、商売が継続できるようになってほしい」

 「今回の中国起点のコロナの中、最初に国として支援をしてくれたのは日本だった。今の中国人はそのことに非常に感謝している。この関係が将来もずっと続いてほしい」

「ようやく服を買う雰囲気になってきたのだ」

 私がいつもと違う姿の上海の街を見たのは3月23日。街行く人全員がマスク姿でした。こんな光景を見るのは、中国の仕事を始めて30年近くで初です。

 3月初旬、上海市内の商業施設が徐々に営業を再開し始めました。ただ実態は「開店休業」状態。入り口ではガードマンが客一人一人の検温を行い、マスクを着用しないと入館はできませんでした。

 3月中旬になると少し変化します。上海の中心部、地下鉄直結ターミナル、オフィスビル併設の商業施設(iapm、IFC、港滙広場など)は、マスクは必須ですが、検温はなくなりました。

 4月に入るとさまざまな規制がなくなり、週末になると客足も増えて、少しずつ平常時に戻りつつあるように見えました。しかし実際には物販店は開店していても買う客は少なく、みんな買い物する気分には至っていないようでした。

 この頃の商業施設の入店客数は、見た目では平常時の60%くらい。お客がお金を落とすのは、上層階や地下にあるレストランやカフェがほとんど。子供は学校も休校が続き、親は自宅でのテレワークが長引き、そのうっぷんを晴らすように、週末は親子連れで近郊の公園や商業施設の飲食店へ、そして日常品購入のためにスーパーマーケットに足を運んでいました。

 4月18日の土曜日、私は自宅近くの商業施設「龍之夢購物中心」に行きました。あと2週間、5月1日からは労働節の5連休。休みを前に気分も高まり、明らかにこの2カ月の状況とは異なり、活気が戻ってきました。

 2週間前、1階にある「ザラ(ZARA)」は閑散としていて、レジ待ちも試着のフィティングルーム待ちも皆無でした。それが今日のぞいてみると店には客があふれ、20人程度のレジ待ち、50人以上の試着待ちの行列ができていました。

 「ようやく服を買う雰囲気になってきたのだ」と実感しました。私にとっても本当にうれしい状況です。衣食住の食・住が満たされ、ようやく服に興味が向き始めたのです。

 今の上海は平常時に戻ったと確信しました。「人が人を呼ぶ」と言いますが、今日の「ザラ」を見て「まさにそれだ」と思いました。「もうがまんせずに服を買ってもいいんだ!」という買物気分の連鎖反応です。

 このまま気温の上昇とともに、入店客も売り上げも上昇してくれることを期待します。

 日系ブランドの地道な販促活動、オンラインでの割引販売とはいえ驚くべき売り上げを達成するブランドがあったり、上海市内の商業施設がにぎわいを取り戻したりしたことは、マーケット回復の兆しが見え出した証拠だと思います。

 1月末から4月中旬までの長くも短い約2カ月半という時間で、完全自宅待機、外出禁止状態から、上述のような服を買う余裕ができる状態まで上海は回復しています。

 日本も4月17日から緊急事態宣言が全国に広げられ、オフラインのさまざまな業種の悲鳴が上がっているようですが、もう少しの辛抱だと思います。事態収束のためには、国民一人一人のさらに厳しい自覚が必要だと思います。

内田文雄(うちだ・ふみお):福岡県福岡市生まれ。ワールドで22年間のVMD経験、1993年に上海交通大学留学、上海駐在を経て、その後はアジア事業で海外を飛び回る。2005年ユニクロへ転じ、海外の大型店などのVMDを手がける。2011年、独立して上海に拠点を移す。中国のアパレル、小売企業に対しての実務指導、セミナー講演を行う

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楽園か失楽園か? 「クリストファー ケイン」が描く三角関係の世界

 2月にロンドンで披露された「クリストファー ケイン(CHRISTOPHER KANE)」2020-21年秋冬コレクションのバックステージで、デザイナーのクリストファー・ケインは「なぜだか分からないんだけど、今季は“三角形”が要になった」と笑いながら説明していた。性や自然界をテーマに置く同ブランドは今季、男・女・自然の三角関係を図形で表現した。三角形の幾何学模様のコートがファーストルックを飾り、三角ブラのスリップドレスやショルダー部分を三角形にカットしたニット、三角形のポケットを施したコートやAラインドレスなど、各ルックに三角形を見つけることができる。艶やかなサテン地は肌を覆っていても色気を醸し出し、黒のレースやPVCの透き通る生地は露出度高めだが、全体的に下品さは感じない。

キリスト教の思想とリンクする三角形のアイデア

 ケインは着想源について「生意気でセクシーな三角ビキニや下着を見かけたところから始まった。三角形は自然界において最も強力な形状であり、“神の目”という意味もある」と語る。三角形はキリスト教絵画において、三位一体を表す一つのシンボルである。ケインは宗教的な内容については言及しないが、BGMで「エデンの園(The Garden of Eden)」のフレーズが繰り返し流れ、プレスリリースにアダムとイブの名称が出てきたことから、三角形はキリスト教の思想とリンクしていると考えられる。

 ショー後の囲み取材で、ジャーナリストのティム・ブランクス(Tim Blanks)は熱心に彼の言葉を引き出そうと宗教的な話を進めていた。深入りできるほどキリスト教に馴染み深くない筆者だが、“原罪”がコレクションの背景にあるのではないかと解釈した。“原罪”とは、キリスト教において、アダムとイブが神の教えに背いて禁断の果実を食べてしまったという人類最初の罪。欲望に負けた結果、禁断の果実の一口と引き換えにエデンの園を追放されるが、それは人間が自我を持ち、考え、選択し、行動する自由を手にしたことを表す。

女性が自分自身に誇りを持てる衣服

 男と女と欲望の三点が結ばれる三角形は、ケインにとって人類の根源的な欲求を示すモチーフであると同時に、コレクションでは女性の強さの象徴として示されていたように思う。女性性を打ち出すといっても、男性を誘惑するような性ではなく、女性であることを気負わずに自分自身に誇りを持てる衣服のように。モデルは必要以上の厚化粧をせず、少し不機嫌そうな顔で力強く長いランウエイを歩いていたのが印象的だった。

 ケリング(KERING)から独立した後のケインは明らかに自信をつけ、独自の世界観を表現できている。アダムとイブが楽園を追放された後のように、ケインは自我を持ち、考え、創造しているのだ。ショーの最後は、女性の官能的な声で「夢こそ地球上で最後の楽園(Dreams are the last paradise on earth)」というフレーズが流れた。ブランドの行く末が楽園か失楽園かを決めるのは、彼の夢にどれくらいのエンドユーザーが追随するかにかかっている。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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コロナショックから回復しつつある中国の化粧品市場 新たなトレンド“半顔メイク”が浮上

 新型コロナウイルスの感染者数が減少している中国。発生地とされる武漢市も都市封鎖が4月8日に解除された。2カ月以上の外出禁止期間が終了し、少しずつ“通常営業”に戻りつつあるようだ。一部報道によると事業の営業が再開されるとともに「経済のV字回復」や「リベンジ消費」が始まっているとされている。ビューティ業界ではここ数年、中国市場がグローバル企業の売り上げをけん引し拡大路線を続けており、そんな中での新型コロナは、業績に大きな打撃を与えた。現在、中国のビューティ市場もV字回復を果たしているのかーー。日本の化粧品ブランドの中国進出をサポートする日本美粧協会のカスタマーサクセス担当でもあり、同法人が主宰するチャイナ コスメティック ラボ(CHINA COSMETIC LAB)の主席研究員を務める秋山美雪氏に、新型コロナによる中国市場の影響についてヒアリングした。

 秋山主席研究員は「中国国家統計局が発表した最新のデータによると、今年1月から2月にかけて、化粧品市場の小売り総売上高は387億元(約5805億円)で、前年同期比14.1%減少した。しかし、中国国内の化粧品売り上げの30%を占めるTモール(TMALL)では3月の美容関連商品の売り上げが前年同月比で50%増加した。また、(日経ビズゲートの報道によると)3月8日のアリババ(ALIBABA)の『女王祭』イベントでは、売り上げが倍増したブランドアイテムは2万点に登るとも言われている。すでに“リベンジ消費”は始まっていると考えられる」と話す。実店舗の休業でECで買うしかなかったり、日本に渡航できず日本の製品を越境ECで買うしかなかったために数字が伸長しているとも考えられるが、それにしても大きな伸びであることは明らかだ。

 今回のパンデミックは売れ筋製品やトレンドにも影響を与えた。「新型コロナの流行前までは“口紅経済”と呼ばれるくらい、中国の化粧品市場では口紅がヒットアイテムだった。しかしマスクの着用により口紅を付ける機会が減少した。目元にフォーカスを置いた“半顔メイク”が流行り、口紅の代わりにアイシャドウをはじめとするアイメイク製品が台頭している」。今後、新型コロナは収束しても完全な終息ではないことから、外出が可能になったといえども、マスクの着用は手放せなくなると予想され、アイメイクの需要はさらに高まると予想する。また、スキンケア製品やシャンプーなど、自宅でできるセルフケアアイテムが売り上げを伸ばしたといい、「3月の中国のオンラインの売り上げは、スキンケアの購買人数が約7000万人になり、前月比で21.33%増加した」。

 これらの売り上げの“仕掛け”には、元々強さを発揮していたライブ配信やECなどデジタルの力も大きいようだ。外出が禁止されている間、デジタルを駆使した販売戦略が加速した。「『婦人節』では上海の商業施設『新世界城』が38時間におよびライブ販売を行い、上海ファッションウイークはアリババと協業して3月24~30日にARランウエイなどを使ったファッションショーのライブ配信を行って251万人が視聴した。また、中国スマートフォンメーカーの錘子科技はCEOがライブ販売を行い、1億1000万元(約16億円)以上を売り上げ、抖音(中国版ティックトック)史上最高記録を達成した」。営業再開した実店舗でもライブ配信を行いオフラインへの送客を図る店舗もあるようだ。

 外出禁止が解けた今、「実店舗についても、営業を再開しはじめており、上海では営業時間も通常に戻った店舗が多いようだ。杭州では消費者にクーポンを配るなど(オフラインの)消費を促したケースもあり、少しずつ回復傾向にある。化粧品関係の工場の稼働率もほぼ100%回復している」と秋山主席研究員は語る。

 だが一方で市場全体を見ると、新型コロナの影響で破産に追い込まれたり、飲食店や中小企業などいまだに営業再開がかなわない店舗もある。市場全体の完全回復までの道のりはまだ時間を有するとされるが、少しずつコロナショックから脱却している動きが見られる中で、今後の消費動向にも期待が掛かる。アフターコロナで先をゆく中国の動向は、全世界が注目しているところだろう。

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ロックダウン状況下を生きる在仏日本人デザイナーやヘアスタイリスト6人の今

 新型コロナウイルスの感染拡大を阻止するため、フランスでは3月17日正午からロックダウン(都市封鎖)が開始され、外出が規制された。外出が認められているのは非常に限られた範囲内で、花の都と呼ばれるパリでさえゴーストタウンと化した。外出規制は5月11日まで延長され、その後も国境封鎖、飲食店や公共施設の営業停止は継続で再開の目処は立っておらず、イベントや集会は7月中旬頃まで禁止。ロックダウン直後から精神面への影響や家庭内暴力など、2次、3次被害も報告されており、目を背けたくなるニュースが多い。

 しかし暗く長いトンネルの中でも、フランスの人々は出口の光を見失ってはいない。立ち止まって周りを見渡し、足元を見つめ直し、新しい時代へと向かう準備を進めている。このような状況下でフランスにとどまる日本人の多くは、異文化の中で学ぶことがあったようだ。職業や家庭環境の異なる6名の在仏日本人に、ロックダウン中の生活や今の思いについて聞いた。

シュンスケ・タケウチ(41)/「ルイ・ヴィトン」メンズ3Dデザイナー
「当初は他人事だったが、映画のようなことが現実に起きるんだなと」

Q.仕事への影響は?

A.2月中旬に行く予定だった日本出張が直前でキャンセル。ちょうど2021年春夏コレクションのリサーチが終わって、ファーストサンプルのデザイン&型出しの段階でテレワークになった。今はボティーやシーチング、パターン用紙などを自宅に持ち帰り、在宅でできる範囲の仕事を進めている。内容はいつもと変わりなく、デザインを考えたり、トワルを組んだり、パターンを引くなど。チームでチャットやビデオミーティングで毎日連絡を取り合っている。ただしデザインを進めてもイタリアの工場が停止しているため、量産もプレのセカンドサンプルも、発注していた生地もストップしている状態。チームはこの期間に有給休暇や代休を取って、週2〜3日だけ仕事をしている。

Q.在宅仕事がはかどるコツは?

A.いつまで続くか分からずスケジュールが立てられない状況で、必要な道具や材料が身の回りにないため仕事モードの切り替えが難しい。しかしあまり深く考えないように、好きな曲を大きめの音量で流しながら仕事している。また、気持ちを引き締めるために仕事中は家の中でもきれいな靴を履くようにしている。

Q.自宅でどのように過ごしている?

A.ユーチューブ(Youtube)やネットフリックス(Netflix)を観たり、部屋の片付け、料理してワイン飲んだり、いつもと変わらない。窓が大きく眺めがいいのが救い。

Q.ロックダウン解除後、仕事面で生じる問題は?

A.解除された後も問題はあると思う。6月の21年春夏パリメンズがキャンセルになったため、今量産中のものとプレが止まっていてデリバリーが大幅に遅れるだろう。会社の売り上げが落ちるため予算がカットされ、僕の部署にも何かしら影響が出ると思う。それに対応しながら、与えられた範囲内で作っていくしかない。

Q.今後、自身が身を置く業界や仕事環境に変化はあると思う?

A.変化があるかどうかは分からないが、変わらないといけない。年に2回のコレクションと2回のプレコレクションのサイクルが、今の時代に合ってるのか疑問に感じる。常に周りの変化に対応していくしかないのでしょう。

Q.現在、最も懸念していることは?

A.新型コロナウイルスがいつまで続くのかということと、世の中の経済にどれだけ影響が出てくるのか。あと運動ができておらず、筋力がどんだけ落ちるのか。

Q.ロックダウン状況下で学んだことは?

A.当初は他人事だったが、映画のようなことが現実に起きるんだと感じた。近所では毎日20時になると誰かが音楽を流したり、みんなで拍手している。仕事のことばかり優先的に考えるのではなく、この状況でも冷静に、前向きに対応できる気持ちの余裕を持つことが必要なんだと思った。

アサミ・マエダ(34)/ヘアスタイリスト、既婚
「人に触れないと成り立たない職業の私が今、社会の役に立てること」

Q.仕事への影響は?

A.2月末のミラノコレクションでロックダウン寸前のイタリアに滞在していたため、パリコレ中に予定していた撮影が数件キャンセル(帰仏後、2週間隔離を求めるクライアントの分のみ)。日本やアジアからのクライアントも全てキャンセルになった。新型コロナウィルス収束までの撮影の見通しがなく、5〜6月に予定されていた「カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)」や全仏オープンの仕事は延期となり、6月のパリメンズもキャンセルになった。

Q.自宅でどのように過ごしている?

A.早寝早起きで、生活のリズムをできる限り変えないよう心がけている。暖かくてなってきたためバルコニーで朝食や昼食を取る時間が増えた。初めのうちは仕事道具や着物、洋服、身の回りの物の整理などをしていたが、最近は一日数本の映画鑑賞と、夫婦ともに料理が好きなためこの機会に手間がかかる料理にも挑戦している。そのほか趣味のガーデニングや、日本やアメリカ・ヨーロッパの友人とオンラインカフェやアペリティフをして気分転換している。

Q.ロックダウン解除後、仕事面で生じる問題は?

A.毎日手を動かす仕事のため、仕事のスピード感やカット、スタイリングの技術など、休んだことによって感覚的に鈍っている部分を徐々に取り戻していけたらと思っている。今後の課題としては、ファッション業界・美容業界に従事する者として、将来的に同じ状況に陥ったときにいかに仕事をストップさせず、社会に貢献していくのか解決策を見出すこと。

Q.今後、自身が身を置く業界や仕事環境に変化はあると思う?

A.今後さらに紙からウェブ媒体への仕事の移行が進み、撮影形態の多様化、細分化が予想される一方で、一件の撮影に当てられる予算は削減されている。今後さらにそれが加速し、人員が整理されて少人数での撮影が増える中、撮影全体のクオリティーの低下が心配。これら環境の変化に柔軟に対応するため、ウェブやネット関連の知識を身につけていくことが自分の課題。一緒に働くモデルやスタッフの方々や仕事に対して柔らかく誠実に向き合うことは、これまで通り大切だと思っている。

Q.現在、最も懸念していることは?

A.フランスは外出制限4週間目を迎えるが、収束の兆しが具体的に見えないことによりファッション業界が大打撃を受け、自身の職業を目指すきっかけになった雑誌や広告、カタログなどの紙媒体の仕事が減少すること。春に予定していた日本帰省がキャンセルとなり、日本での神前式の日程を変更せざるを得ないこと。

Q.ロックダウン状況下で学んだことは?

A.ファッション業界・美容業界の人間として社会にどう貢献できるのか――人に触れるという行為でしか成り立たない職業の自分がいま、社会の役に立てることは何なのかをあらためて考えるきっかけになった。次にメディアやSNSとの付き合いや向き合い方。自分の頭や心で今起きていることを考え、感じ、想像し、行動に移すことの大切さを学んだ。全世界が直面している問題のため、各国や地域による温度差や個人の見解や選択の違いをたくさん感じて受け止められたこと、またそれを柔軟に話し合える環境に感謝するとともに、学びを感じた。プライベートでは、毎日工夫しながら穏やかに過ごせる日々の幸せをあらためて感じている。

ブノワ諒子(34)/翻訳家兼ショールームセールス 既婚、息子(3)
「どんな状況下でもチャンスはある。変化に柔軟に対応していくこと」

Q.仕事への影響は?

A.翻訳業は基本テレワークのため、普段と変わりなく自宅で翻訳作業をしている。翻訳依頼は3月末あたりから徐々に減り、4月に入ってからかなり少なくなった。ショールームセールスの仕事も5月のプレ・コレクション、6月の21年春夏コレクションがなくなることが予想されるため収入はかなり減るだろう。パンデミックの前に、大きなプロジェクトの翻訳作業を完了しておいたのが幸い。

Q.在宅仕事がはかどるコツは?

A.息子の保育園が3月16日から閉鎖となり自宅で世話をしているため、仕事が普段よりはかどらない……。集中したいときは、夫に頼んで近所へ散歩に一緒に出かけてもらい、一気に仕上げている。

Q.自宅でどのように過ごしている?

A.基本的に生活のリズムは普段と変わらない。仕事量が減ったこともあり、空いてる時間はとにかくヨガ。インストラクターの友人が、インスタグラムで毎週水曜日にライブ配信しているヨガコースに参加したり、「デイリー・ヨガ(Daily Yoga)」というアプリで毎日1〜2時間ヨガをしている。ほかにも自宅の整理、読書、息子とお菓子作りを行っている。買い物は「ドライブ」というシステムを利用している。事前にオンラインで購入した商品を、指定された日時に車で取りに行くシステム。生鮮食品はなるべく地元の小規模なビオショップを利用して、大きいスーパーは避けている。

Q.ロックダウン解除後、仕事面で生じる問題は?

A.翻訳業は普段からテレワークのため、再開するにあたって特に問題はない。ファッション・ウイークでの仕事は今後どうなるか今の段階では見極められないが、徐々に翻訳業に専念していくつもり。

Q.今後、自身が身を置く業界や仕事環境に変化はあると思う?

A.今回の非常事態で、多くの人が自分の仕事のあり方を見直す機会になったと思う。私は基本的にテレワークのため、仕事方法には特に大きな変化はなかったが、フリーランスとして仕事をしている分、収入面にかなり影響が出ることを痛感した。反面、ロックダウン中に翻訳技術を向上させるために勉強したり、リサーチする時間が取れたりして、今後のモチベーションになった。どんな状況下でもチャンスはあるし、変化に柔軟に対応していくことが大切だと思う。

Q.現在、最も懸念していることは?

A.ロックダウンもすでに4週間が過ぎ、毎日息子の世話をしながら自宅で過ごすのに疲れが出始めた。この状態がいつまで続くのか今の時点で見通しがつかず、仕事量がいつから従来と同じ状態に戻せるかを懸念している。

Q.ロックダウン状況下で学んだことは?

A.日本人として、フランスや隣国イタリアの楽観的なラテンのメンタリティーから学ぶことは多いが、今回は裏目に出てしまったと思う。ただ、コミュニティー内にいるお年寄りの代わりに買い物をする若者など、さまざまな形でボランティアに関わる人たちの報道を見て、危機的な状況下でのフランス人の結束力を垣間見た。

黒谷愛(30代)/画廊ディレクター秘書 パートナーと同棲中
「認識することで、少しずつ自分の心が喜ぶことを探していけるようになった」

Q.仕事への影響は?

A.新型コロナウイルスの影響で、3月末から4月頭に参加を予定していた2つの大きなアートフェアが延期となった。最終的に1つは取り止めに、もう1つは6月上旬(変更の可能性あり)に延期が決まった。ロックダウン後、飛行機の減便により、以前より予定していた絵画の輸送が困難を極めた。3月末日までは自宅でテレワークを行い、4月1日から現在までは一時的失業のため一切の業務を行っていない。テレワークを行っていたときは、取引先の関係者とのコミュニケーションを重要視した。3月13日(金)までは通常の業務を行い、週明けにはいつもの通りに出勤をするつもりでいたため、締め切りがある業務の数々、特に必要な情報の獲得を取引先の力も借りて、迅速に行うようにした。

Q.自宅でどのように過ごしている?

A.主には家事をし、ほかの時間は読書をしたり、画集を見たりしている。テレワークを行うパートナーとともに、いつもと変わらない生活リズムで過ごしている。ロックダウンから最初の2週間は、生気を失ってしまったかのように、何かをしたいという感情を持てなくなってしまっていた。それがなぜなのか、理由はいまだに分からない。「これだけの時間がある」「今まで多忙でできなかったことに取り組めるよい機会」と頭では分かっていてもだ。以前から翻訳をしたいと思っていた本を取り出してきても、もっと知りたいと思っていた画家の画集を開いてみても、熱意を持つことができなかった。ただ無為に時間が過ぎることを望んでいたように思う。自身のこの状況をパートナーや友人、同僚に話したとき、程度の差はあれ皆が似たようなストレスを抱えていることが分かり、心が楽になった。認識するという行為はここで大きな手助けとなり、それから少しずつ自分の心が喜ぶことを探していくことができるようになった。

Q.ロックダウン解除後、仕事面で生じる問題は?

A.ロックダウン中に手をつけることができないでいた業務処理に追われると思う。また、6月には重要な展覧会やアートフェアが控えている。中止にならず、開催してほしい。長期間の静寂から急激に状況が変化すると予想し、今はしっかりと英気を養いたい。

Q.今後、自身が身を置く業界や仕事環境に変化はあると思う?

A.業界を問わず、世界規模の深刻な経済危機が待っていると考えている。どのようなことが起こるのか、今では現在のことでさえも分からないため、推測することはできない。とにかく現実をしっかりと直視し、希望を持って、頑張っていくしかないと思う。

Q.現在、最も懸念していることは?

A.この大混乱の後、文化事業並びに文化産業が社会でどれだけ必要とされるのかということ。フランス政府は、アートギャラリー、公共アートセンター、芸術家支援のために緊急基金(予算約2億4000万円)を設立した。ギャラリーに対する支援の基準を緩和し、延期されたアートフェアの参加ギャラリーに対する助成金は、すでに生じた経費を処理できるように支払われることが決まっている。しかしながらドイツやイギリスに比べると遅れを取っているように思われ、不安を感じている。ドイツのモニカ・グリュッター(Monika Grutter)文化大臣は早期段階から「現在の状況下で、文化は良き時代においてのみ享受される贅沢品などではないと認識しています。ある一定期間、文化活動を諦めなければならないとすれば、それがどれほどの損失であるかも、われわれは理解しています」と意思表明を行っている。彼女のこの言葉に、私は光をもらった。私たちは文化や芸術だけで生きていくことはできないけれど、それらを通じてそれぞれが美しいと感じた何かは、心の糧になる。きれいと思う印象が、3文字の“きれい”から無限に心の中で広がる経験を、社会が過小評価しないことを祈っている。

Q.ロックダウン状況下で学んだことは?

A.前向きに捉えて、新型コロナウイルスによって世界は新しい世界を描くチャンスを与えられたのではないかと思う。社会レベルでは、私たちはもっと謙虚に人間としての営みを立て直していく必要がある。個人レベルでは、各人が立ち止まり、考えるという行為を取り戻していくことが求められていると私は考えている。

小川慶(40)/シェフ 既婚
「自身のケアや家族との時間も、仕事と同じくらい大切なことだと感じた」

Q.仕事への影響は?

A.ホテルの厨房で働いているが、ホテルが営業停止のため出勤できなくなった。

Q.自宅でどのように過ごしている?

A.お菓子作りや料理をして、新しいレシピの試作に取り組んでいる。自分なりに時間を決めて、1時間やったら休憩するという形で、ダラダラとやらないようにしている。仕事仲間とは週に1回ビデオ会議をしている。

Q.ロックダウン解除後、仕事面で生じる問題は?

A.あると思う。今後、お客様と接するときは今まで以上に気を使わなければならないし、調理時はマスクや手袋を常時つけて、衛生面で徹底した配慮が必要になるだろう。

Q.今後、自身が身を置く業界や仕事環境に変化はあると思う?

A.よりいっそう地球環境を第一に考えなければならないが、それはよい変化だと思う。プラスチック問題や食材の廃棄問題は特に考えるべき課題。また、衛生面に関してもさらに注意を払わなければならないと思う。

Q.現在、最も懸念していることは?

A.飲食業界の低迷。特に個人でレストランを経営している方々は、今この時点で収入がなく家賃などを払わなくてはならない厳しい状況。ロックダウン解除後、経営が成り立たなくなるレストランがたくさん出るのではないかと心配している。

Q.ロックダウン状況下で学んだことは?

A.仕事環境と時間の価値について思うところがある。僕の職種は長時間労働で毎日仕事に追われて、個人の自由な時間がほぼなく、家族や自分のことに費やせる時間が持てなかった。しかしこの危機的状況で、自分自身をケアすることや家族との時間を共にすることも、仕事と同じくらい大切なことだと感じた。

ファビアーニ美樹子(34)/Galerie Mikiko Fabiani主宰アートディーラー 既婚、娘(2)
「夫と子どもがともに健康で、毎日笑顔でいてくれることが何よりも大切」

Q.仕事への影響は?

A.かなり出ている。付き合いのあるギャラリーは全世界でクローズし、アートフェアも軒並みキャンセルになり全てが停止状態。主人はリモートワークのできない立場で日々オフィスに出勤しており、ワンオペレーションで2歳児の育児と家事をせざるを得ず、私はテレワークでさえできない状態。

Q.在宅仕事がはかどるコツは?

A.子どもが起きる前にかなり早起きして仕事をしたり、おとなしく一人遊びかiPadに夢中になっているつかの間にメールを返したり、本当に基本的なことしかできていない。正直、未就学児や低学年の子どもがいる環境でのテレワークはパートナーの助けがなければ不可能ではないかと思う。

Q.自宅でどのように過ごしている?

A.子どもがストレスをためないように一緒に遊んだり、飽きないような工夫をしている。私が芸術教育学を研究していたこともあり、簡単な創作活動が中心。夫とは18時以降必ずアペリティフすることが日課。ただし、会話は新型コロナウィルス以外の話題に決めている。

Q.ロックダウン解除後、仕事面で生じる問題は?

A.他業種もしかりだが、アート業界はかなり厳しい状況になると思う。おそらく、投資目的としてお付き合いしている顧客層が、変化するのではないかと考ている。弊社は、プライマリー(画廊に所属するアーティストの作品の売買)はすでにオンラインでの作品販売に重きを置いており、路線は変わらない。セカンダリー(所属アーティスト以外の作品の売買)の顧客に関しては、前述したように変化が強いられるため、新たな顧客開拓が必要になるかもしれない。フランスはいつまでロックダウンが続くか分からず、先の見通しがつかず、展覧会などについては経費をできるだけ削った方法を検討している。

Q.今後、自身が身を置く業界や仕事環境に変化はあると思う?

A.アート業界の未来――アートフェアは難しい立ち位置になるかと思う。どのディーラーも口にしている通り、デジタル化が著しく進むだろう。ただアートと一言で言っても業界は幅広く、全てがデジタル化というのは不可能で、それぞれの判断がビジネスを左右するのではないか。私の仕事環境としては、プライベートビューイングというクローズドな形と、オンライン重視での作品販売という方法を変える必要がないと考えている。単にデジタル化と言えど、お客さまとのコミュニケーションの上で成り立つ信頼関係がこの仕事ではとても大事。その考え方は変えずにさまざまなコミュニケーションツールを使用しながら、デジタルな部分とアナログでしかできない部分を見極めて対応できればと思う。

Q.現在、最も懸念していることは?

A.どのように不況を乗り切るか、小さな会社のオーナーとして非常に不安。プライベートにおいては、いつまで続くか分からない状況下で子どもの成長に影響を与えていることがとても心配。

Q.ロックダウン状況下で学んだことは?

A.当たり前のことができなくなることで、自分の中にも変化があった。前述したように、仕事もまともにできない状況、さらには今後の見通しが立たない不安な環境でも、夫と子どもがともに健康で、毎日笑顔でいてくれることが何よりも大切だと感じた。こういった価値観を共有できる家族がいることが、何よりも幸せだと認識できたのはありがたいこと。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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販売員のリモートワークはどう取り組む? アプリのバーチャル接客を推進する「サマンサタバサ」編

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言を受けて、百貨店やファッションビルをはじめとする店舗が臨時休業中だ。店頭に立てず勤務ができない販売員は「突然、1カ月の休みがてきてしまった」と嘆いている。オフィス勤務社員のリモートワークでさえも難しい状況だが、販売員への仕事を創出している企業もあった。その事例を紹介する。(この記事はWWDジャパン2020年4月20日号からの抜粋に加筆しています)

サマンサタバサ

 営業を停止している「サマンサタバサ(SAMANTHA THAVASA)」店舗の販売スタッフは休業中だが、一部のスタッフは在宅で公式アプリを活用し、顧客に向けて商品提案を行っている。試着などができない不安を着用画像を送り解消しているほか、スタッフ1人1人に配布されているクーポンコードで割引の案内もしている。ブランド広報は「ショップスタッフのEC売り上げ貢献の可視化しリアルタイムで共有することで、スタッフのモチベーションになっている。一方で、“顔を見てお話ししたい”という顧客も多く、メッセージのやりとりだけではなく、ビデオ会議ツールなどを使用した接客などへもチャレンジしたいと感じた」とコメントしている。

販売員の声
“接客をすることモチベーションをキープ”

 「少しでも接客をすることで社会人としてのモチベーションをキープできている。本当に些細なことだが、こんなときだからこそ自分たちにできることを。店舗が再開できたときにはお客さまに安心して戻ってきていただけるよう、私たちも準備していきたい」(「サマンサタバサ」ショップスタッフ)

 「店頭に何度かネックレスを見に来てくださっていた方に、アプリを通して再度商品のご案内した。ECでの購入は迷っていたが、シークレットクーポンをお伝えすると特別感を感じてくださり、購入につながった。アプリを通して、着用画像などをお送りすることで、着用イメージをふくらましていただき、実際に試着できない不安解消を行えました」(「サマンサティアラ」ショップスタッフ)


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解雇や休業補償、発注キャンセル 新型コロナにまつわる悩みをファッションロー弁護士に一問一答

 「WWDジャパン」4月20日号および「WWDビューティ」4月23日号の特集「コロナに負けるな 諦めず、知恵を集めよう!」では、新型コロナウイルスによって浮き彫りになったファッション&ビューティ業界の課題に対して“法律”という切り口から解決策を探った。回答してくれたのは、ファッション業界に関する法律問題(=ファッションロー)に詳しい海老澤美幸弁護士だ。(この記事はWWDジャパン2020年4月20日号、WWDビューティ2020年4月23日号からの抜粋に加筆しています)

 本来、ビジネスにおけるトラブルを解決する手段の一つとして法律は有効だが、今回のような前例のないケースに既存の法律を当てはめようとしても、なかなかうまくいかないことも多く、専門家の間で見解が分かれることもある。しかしそれでも“法による解決”は確実に有効な一手であり、企業や労働者を救うカギになるだろう。本記事では、特に関心が高いと思われるトピックや、紙面で紹介しきれなかった課題を公開する。(※本情報は取材時点の情報となります。日々状況が変わっていますので、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。)

- 労務に関するQ&A -

Q:海外で頻発している一時解雇ってなに?

海老澤:一時解雇(=レイオフ)は、会社の業績が悪化した場合に人件費を減らすため、業績回復までの間一時的に解雇することをいい、米国などでしばしば行われています。この場合、再雇用が約束されてはいますが、「解雇」(会社の経営に必要な人員削減を目的として行われる解雇は「整理解雇」と呼ばれる)であることに変わりありません。

日本は世界的に見ても労働者保護に厚く、解雇のハードルが高い国です。労働契約法においても、客観的に見て合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められない解雇は無効と定めています。特に会社都合で解雇する整理解雇は厳しく判断される傾向にあり、次の4つの要件を満たすことが必要とされています。①人員削減の必要性があること、②解雇回避の努力が尽くされていること、③解雇される者の選定基準が合理的であること、④事前説明をして納得を得るための努力をすること。これらを満たすかどうかについて十分な検討をせずに安易に従業員を解雇すると、従業員から訴えられるリスクがあります。またパートやアルバイトといった非正規雇用についても、解雇する場合は4要件を満たす必要がありますのでこの点も注意が必要です。

Q:店舗で働くスタッフは休業期間中の給与は補償されない?

海老澤:会社に責任がある休業の場合、会社は従業員に対して休業手当を支払わなければならないとされています。また、これは正社員だけでなく派遣社員やパート・アルバイトなどの雇用形態にも適用されます。今回、新型コロナウイルスによる休業が“会社に責任のある休業”と言えるかにどうかついてはさまざまな意見がありますが、個人的には、新型コロナによる休業も“会社に責任のある休業”に当たるのではないかと考えています。

厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」によると、「不可抗力の場合は支払い義務がない」とされており、①その原因が事業の外部から発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることができあい事故であることの2点を満たさなければ不可抗力とはいえないとしています。また、判例などでは“会社に責任のある休業”の範囲はかなり広くとらえられており、例えば業績回復のための一時休業や原材料不足による休業なども会社に責任のある休業に含まれると考えられています。

今回、緊急事態宣言が出されているものの“休業要請”で強制力はなく、そもそも営業自体を続けることは制限されていません。この状況下でアパレルが営業し続けることは実際には難しい選択ではありますが、接客方法を工夫するなど営業継続の方法はあると思います。そうすると、今回の新型コロナによる休業は“会社に責任のある休業”と言わざるを得ず、休業手当を支払う必要があると考えられます。

- 企業間取引に関するQ&A -

Q:ブランド側から発注を受けて、工場では商品を作り終わっているのにキャンセルされてしまった。

海老澤:ブランドから発注を受けて工場が商品を生産する、いわゆる製造委託契約は通常、請負契約と整理できます。ブランドと工場との間に契約書があれば契約書に従うことになりますが、契約書の中で取り決めていない場合やそもそも契約書を交わしていない場合には、民法に従って判断することになります。請負契約において発注者であるブランドは、工場が商品を作り終わるまでの期間中はいつでも損害を賠償した上で契約を解除することができるとされています(民法641条)。今回のケースでは、工場が商品を作り終わっているということですから、ブランドは契約を解除(=キャンセル)することはできず、商品の代金を支払わなければならないでしょう。

また、下請法の適用が可能な場合には、工場が納入した商品の受領をブランドが拒むことは下請法違反に当たるので注意が必要です。受領拒否だけでなく、代金の支払い遅延や代金の減額も下請法違反です。そのほかにも、例えばブランドの指示で生産を延期し、裁断済みの生地を工場側の費用負担で預からせるような場合も下請法違反に当たる可能性があります。

なお、経済産業省が3月10日に「新型コロナウイルス感染症により影響を受けている下請事業者との取引について、一層の配慮を親事業者に要請します」というリリースを出していますので、発注側は普段以上に下請企業に対して配慮が必要となります。

- イベントや撮影に関するQ&A -

Q:イベントや撮影の中止・延期で仕事をキャンセルされたスタイリスト、フォトグラファー、ヘアメイクなどフリーランスを救う方法は?

海老澤:フリーランス(受注者)と発注者であるイベント会社や出版社などの間には請負契約が成立します。契約書がある場合は契約書に従いますが、契約書がないことも多いでしょう。その場合には民法に従い判断します。請負契約において、発注者は受注者が仕事を終えるまでの期間中いつでも契約を解除できますが、これによって受注者が被る損害を賠償しなければなりません。この場合、発注者が賠償しなければならない損害は広く認められており、受注者が本来得られるはずだった利益、例えばイベントや撮影が中止されなければ得られた利益なども含まれると考えられています。

もっとも、実際は仕事内容が曖昧なままスケジュールだけが広く押さえられているなど、契約が成立したと言えるかどうかが微妙なケースも少なくありません。こうしたケースでは、発注者から「契約は成立していないから支払わない」などと言われ、受注者が泣き寝入りせざるを得ない状況も多くみられます。また、契約が成立していたとしても、受注者が発注者に損害賠償を請求するなど、発注者に対して強い態度をとることはなかなか難しいのが実情です。そこで、受注者であるフリーランスの方々には、今回のことを契機にぜひとも契約書を作成し、キャンセル料の設定など、キャンセルされた場合の取り決めをしておくことをご検討いただきたいと思います。

Q:ファッション撮影でクラスターが起こった場合、責任はどこにある?

ファッション撮影を組んだ出版社が何らかの責任を負うのか考えてみましょう。ファッション撮影の場合、フォトグラファーやスタイリストなどの撮影スタッフと出版社との間には通常、業務委託契約が成立しています。業務委託契約の場合には、労働契約の場合とは異なり、原則として、委託者(出版社)は受託者(撮影スタッフ)に対して安全配慮義務違反を負わないものと考えられています。仮に出版社と撮影スタッフとの間に労働契約のような関係があれば別ですが、通常、撮影スタッフは仕事を断ることもできますし、独立して仕事をしているので、そういった関係は認められないと思います。

そうすると、撮影が原因でクラスターが発生した場合に、撮影スタッフが出版社に対して業務委託契約を根拠に責任を問うことは難しいと考えられます。例えば編集者が、自分が感染者だと分かっていて「クラスターを起こしてやろう」と思っていたり、明らかな症状が出ているのに無理やり撮影を組んで、このことが原因で撮影スタッフが感染したと言えるような場合は、その編集者に不法行為責任を、出版社には使用者責任を問える可能性はありますが、これはかなりまれなケースでしょう。そうでない場合には、出版社に責任を問うことは難しいということになるのではないでしょうか。次に、例えばカメラマンが感染していることを知りながらわざと撮影に臨み、これによりスタイリストが感染したような場合、スタイリストがカメラマンに対して不法行為責任を問える可能性はありますが、これもまれでしょうし、そもそも撮影によって感染したと証明するのはとても難しいのではないかと思います。


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YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中

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ファッション通信簿Vol.51 セリーヌ・ディオン2連発!米「WWD」がセレブのファッションを辛口ジャッジ!

 米「WWD」の人気企画「ファッション通信簿」では、ストリートからパーティー、レッドカーペットまで、海外セレブたちのファッションを厳しくチェック。A+、A、A-、B+、B、B-、C+、C、C-、D+、D、D-、そしてFAIL(失格)の13段階評価で格付けし、それぞれのファッションポイントを勝手に辛口ジャッジ!

 第51回は、ベン・プラット(Ben Platt)、セリーヌ・ディオン(Celine Dion)、デュア・リパ(Dua Lipa)、マシン・ガン・ケリー(Machine Gun Kelly)、キッド・カディ(Kid Cudi)、タンディ・ニュートン(Thandie Newton)が登場。「おばあちゃんのカーディガンではダンスフロアに立てない」などの痛烈ワードがセレブたちに襲い掛かる!

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ロンドンの奇才チャールズ・ジェフリーは世界を変えるか 伝統衣装からパンクまでを縦横無尽に取り込む無二の才能

 1990年生まれのチャールズ・ジェフリー(Charles Jeffrey)が手掛けるブランド「チャールズ ジェフリー ラバーボーイ(CHARLES JEFFREY LOVERBOY)」は、個性派がそろうロンドン・メンズ・コレクションの中でも異彩を放っている。

 同氏は2015年に名門セント・マーチン美術大学(Central Saint Martins)を卒業後、自身が学生時代に主催していたクラブイベント「ラバーボーイ」を冠したブランド名で16年春夏シーズンにコレクションデビューを飾った。17年には英国ファッション協議会(British Fashion Council)による若手デザイナー支援プログラム「ニュージェン(NEWGEN)」にグレース・ウェールズ・ボナー(Grace Wales Bonner)やリチャード・マローン(Richard Malone)、ニコラス・デイリー(Nicholas Daley)らとともに選出されると、ロンドンメンズの中でも存在感を徐々に増していく。祖国であるスコットランドの民族衣装からロンドンのパンク、ユースカルチャーまでを縦横無尽に取り込んで自らのストーリーに落とし込んだコレクションは、ほかにはない振り切った強さがある。「ニュージェン」の同期に比べると、プロダクションやビジネス面では正直なところまだ発展途上ではあるものの、天衣無縫な人柄と破天荒なクリエイションは、同質化が危惧される昨今のファッション界において唯一無二の個性であることは間違いない。少し大げさかもしれないが、ファッションを通じて混沌とした世界を明るい未来へと導く力を秘めていると思う。1月のロンドンメンズで20-21年秋冬コレクションを披露した直後に、ブランド立ち上げから将来についてまでを聞いた。

ド派手なショー演出は「観客への敬意」

――ファッションデザイナーになろうと思ったきっかけは?

チャールズ・ジェフリー(以下、ジェフリー):若い頃、SNSの「マイスペース(Myspace)」を通じてロンドンを見た時かな。バンドのザ・ホラーズ(The Horors )やクラブのブームボックス(Boom Box)、デザイナーのガレス・ピュー(Gareth Pugh)といったあらゆるカルチャーが一つの都市の中で融合していて、僕もその中の一つになりたいと思った。だからセント・マーチン美術大学に通い、スタイリングからコレクションを作っていく過程までさまざまなことを学んだんだ。

――ブランドの揺るぎない哲学は?

ジェフリー:どんな過程においても、オーセンティックであることを忘れないことさ。作品から溢れ出るエネルギーを人々が感じ取り、楽しんでもらえるような服作りを常に意識しているんだ。

――ショーでいつもユニークなセッティングに力を入れているのもそれが理由?

ジェフリー:そうだね。世界中からわざわざ見に来てくれる観客にはいつも感謝しかない。その人たちへの敬意を示すためにも、ショーの15分の間に最大6カ月間練り上げてきたクリエイションを詰め込んで、価値あるものにしないといけないんだ。演出やセットがあまりにも大掛かりだから、中には「服だけが見たい」という人もいるけれど、そういうリクエストにもちゃんと応えているよ。でも、ただ奇抜にしたり派手にしたりしているわけではなくて、全体的なビジョンや僕たちが伝えたいことをショーで表現しているつもりさ。

――では20-21年秋冬コレクションで伝えたかったことは?

ジェフリー:今回は、故郷スコットランドのオークニー諸島とグラスゴーへのリサーチの旅から着想を得たんだ。オークニー諸島の一つであるサウス・ロナルドジー島の小さな町を訪れた際に馬の祭りをやっていて、小さな子どもたちが馬に扮して砂浜を掘り起こしながら、人間と自然の関係を祝っていたのが興味深くてね。その後、グラスゴー美術学校(Glasgow School of Art)で見た、芸術家のメアリー・マクドナルド・マッキントッシュ(Mary McDonald Macintosh)の衣装や、スコットランド人画家のジョン・バーン(John Byrne)がリーゼントヘアのテディ・ボーイ(1950~60年代の不良少年の呼称)を描いた作品にも影響を受けたかな。これらをミックスした世界観を見てもらいたかったんだ。

――ショーはいつも大入りで、18年には「LVMHプライズ」のファイナリストにも選出されるなど順調に成長を続けているが、次のステップは?

ジェフリー:若い頃はよく他人と自分を比較して「もっと成功したい!」とずっと考えていて、世界でも40を超える卸先と取引できている現在はその願いをやっと叶えつつある状況さ。次はもっと会社を大きくするために、安定して成長させることかな。日本も重要なマーケットだから、早く行きたいんだよね。20-21年秋冬はロンドンを拠点にするデザイナーがパリコレに挑戦した例もあるけれど、僕は今季はロンドンがふさわしいと思ったから地元での発表を選んだ。でも、次はどこにしようかな。

――では最後に、ファッションデザイナーとしてブレグジット(イギリスのEU離脱)についてはどう考える?

ジェフリー:もう、マジで大っ嫌い!

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工場に支払いをしていない企業はどこ? 人権団体が調査結果を公開

 新型コロナウイルスの影響による休業措置が長引くにつれ、欧米のアパレルブランドや小売店は生産業者への発注を停止したり、発注分をキャンセルしたりせざるを得なくなっている。その結果、主にアジアの縫製工場などがしわ寄せを受けており、賃金の未払いや労働者の不当な解雇が相次いでいる。

 労働者の人権問題に取り組む米国の非政府組織(NGO)「ワーカーズ・ライツ・コンソーシアム(The Worker Rights Consortium以下、WRC)」は、縫製産業の労働環境を調査する「センター・フォー・グローバル・ワーカーズ・ライツ(Center for Global Workers’ Rights)」と提携し、サプライヤーに対するアパレル企業などの支払い状況を追跡した。WRCは、「危機的な状況が続く中で、ブランドや小売店が苦境に陥っていることは理解している。しかし、だからといってサプライヤーや労働者に対する義務を放棄していいことにはならない」とコメントした。

 調査の結果は以下の通り。

【支払いをすると約束している企業】

 アディダス(ADIDAS)、ナイキ(NIKE)、H&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ)、「ザラ(ZARA)」を展開するインディテックス(INDITEX)、「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」や「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」を擁するPVHコープ(PVH CORP)、キアビ(KIABI)、「ユニクロ(UNIQLO)」などを擁するファーストリテイリング、マークス&スペンサー(MARKS & SPENCER)、ターゲット(TARGET)

 なお「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」「ティンバーランド(TIMBERLAND)」「ヴァンズ(VANS)」などを擁するVFコーポレーション(VF CORPORATION)もこのリストに掲載されているが、本当に支払いがされるのかについてサプライヤーから疑念の声が上がっているとの注釈が付けられている。

【支払いに同意していない企業】

 ギャップ(GAP)、アーバンアウトフィッターズ(URBAN OUTFITTERS)、アパレルEC「エイソス(ASOS)」、「トップショップ(TOPSHOP)」や「トップマン(TOPMAN)」などを擁するアルカディア・グループ(ARCADIA GROUP)、ベビー用品店「マザーケア(MOTHERCARE)」、ネクスト(NEXT)、C&A 、ベストセラー(BESTSELLER)、J.C.ペニー(J.C. PENNEY)、コールズ(KOHL’S)、テスコ(TESCO)、ウォルマート(WALMART)

 アソシエイテッド・ブリティッシュ・フーズ(ASSOCIATED BRITISH FOODS)が展開する激安店のプライマーク(PRIMARK)も、当初は契約の不可抗力条項を適用して支払いを拒否しようとした。しかし多方面から厳しく批判されたことを受け、15億ポンド(約2010億円)相当の納品済みの商品と、3億7000万ポンド(約495億円)相当の生産中の商品に対する支払いをすると発表した。同社はバングラデシュやカンボジアなどの縫製工場の労働者に対する賃金支払いを支援する基金を設立することも発表したが、各国の支援策を考慮して補償額を調整するとしたため、「分かりにくい」と新たな批判を招いている。

 ファッション業界における環境や労働問題への意識啓発を行っているNGO「ニュー・ファッション・イニシアチブ(New Fashion Initiative)」のローレン・フェイ(Lauren Fay)=エグゼクティブ・ディレクターは、「縫製業に従事している女性はそもそも経済的に困窮している場合が多い。新型コロナウイルスの感染拡大は、ブランドや小売店に業績悪化や閉店などの被害をもたらしているが、それは労働者のホームレス化や飢餓というさらに深刻な問題につながる」と語った。

 こうした状況を懸念した活動家らによって、縫製業などに従事する労働者を支援するための資金調達を行っている団体や寄付先などの情報をまとめたウェブサイト「ガーメントワーカーCOVID-19リリーフ(Garment Worker COVID-19 Relief)」が立ち上げられている。

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#敦子スメ「新月・満月」ノート 今回の新月(4月23日)は“本当に好きなものはなに?” 感覚で自分が心地いいものを確認しよう

 この連載では、新月・満月の流れを最大限に引き出すためのサポートをしてくれるコスメやインナーケアアイテムも紹介していきます。第9回は4月23日の新月とおすすめコスメについてお伝えします。

今回の新月(4月23日)は牡牛座

 これまで経験したことのない大きな変化の中で、4月23日の新月は牡牛座で起こります。牡牛座は今の時代の一つのキーワード。牡牛座はもともと自分の五感を使って、本当に好きなモノ、心地いいモノ、引かれるモノを一つ一つ自分の感覚で確認しながら味わい尽くす星座。“自分の感覚で味わう”ということが大切で、“人から聞いたから”“はやっているから”ではなく“自分がどう感じているのか”を尊重できる星です。今、リモートワークや外出自粛などで、自分自身と向き合う時間も必然的に多くなっているのではないかと思います。

今回の新月コスメ

 そのタイミングを利用して、この新月でのおすすめは五感を使って自分の本当に好きなものを確認すること。味覚、聴覚、視覚、触覚、嗅覚を刺激するような新月コスメやビューティアイテムを取り入れてみて。“人から聞いたから”ではなく“自分がどう感じるか”と言いながら……ですが、私が自分で感じて良かったものをお伝えさせてください。味覚で言えば、おうちごはんにおすすめな「アムリターラ(AMRITARA)」の「自然栽培味噌 中辛口」。“飲む美容液”といわれるほど栄養分がたっぷり。大豆の味わい深さが体に染みます。この期間に料理をするタイミングは増えていて、調味料などにも凝ると楽しいです。

 触覚、嗅覚だと「ザ パブリック オーガニック(THE PUBLIC ORGANIC)」の「ホリスティック精油ピローミスト クオリティスリープ」は不安感などのストレスを軽減し、睡眠の質を上げるといわれるクラリセージ・ラベンダーなどの精油がたっぷり。「ウカ(UKA)」 の「ボディオイル ハグ」はイランイランが効いた甘い香りと、滑らかなオイルの伸びが特徴です。ゆっくりマッサージして、セルフケアをしましょう。髪に使うと心地よい香りが広がります。

星占いとの出合い

 私は、オーガニックコスメとの出合いや、コスメキッチン在籍中に占い師・ジョニー楓さんのイベントを担当したのをきっかけに星占いに興味を持ち、独学しました。現代では、占いとしてこれはラッキー、アンラッキーという区別に使われることもありますが、よい悪いではなく自然の流れとしての月の動きに、地球上で生活している私たちは知らずに影響を受けています。この連載では、月の動きの中で活用できるものを知り、うまく生かしていただくための付き合い方をお伝えしています。

福本敦子(ふくもと・あつこ)/フリーランスPR・美容コラムニスト:コスメキッチンに14年間勤務後、現在はフリーランスPRとして活動するかたわら、ビューティコラムニストとしてイベント、SNSなど多方面で活躍。オーガニックに精通した知識を武器に、ライフスタイルに寄り添った独自のオーガニック美容論が、著名人やエディターをはじめ各方面から大人気。「#敦子スメ」は「読んだ瞬間試したくなる」と多くの反響を呼び、紹介した商品の欠品や完売も多数。2019年秋、初の書籍となる「今より全部良くなりたい 運まで良くするオーガニック美容本 by敦子スメ」を出版。発売前に増刷が決まるなど話題を呼んでいる。旅を愛し、占星術にも精通する instagram:@uoza_26

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「他のアイテムを台無しにするモノは作らない」 ギョーム・アンリが語る「パトゥ」のデザイン哲学

 2020年春夏にギョーム・アンリ(Guillaume Henry)=アーティスティック・ディレクターによるコレクションで復活を遂げた「パトゥ(PATOU)」(旧「ジャン・パトゥ(JEAN PATOU)」)は、デビューシーズンから好スタートを切った。「カルヴェン (CARVEN)」を人気コンテンポラリーブランドへと押し上げたことで知られる彼が得意とするのは、“カワイイ”という言葉がしっくりくるウエアラブルなデザイン。その手腕は、「パトゥ」でも遺憾なく発揮されている。

 「フレッシュでフレンドリー、そして皆を笑顔にするような現実味のあるブランド」と「パトゥ」を表現するアンリ=アーティスティック・ディレクターのインスピレーション源となっているのは、自身の親しい友人や同僚たち。1914年に創業したメゾンのルーツであるクチュール的な要素を取り入れながらも、手の届く価格帯(タンクトップやTシャツは1万円台、ジャケット5万〜12万円台)と着こなしやすいデザインで新たな市場の開拓を目指している。「『パトゥ』のコレクションにおいて重要なのは、フィット感とウエアラビリティー。そして、アイテムのラインアップを絞り込むことを意識している。トゥー・マッチなことはしたくないし、的確で完成度の高いアイテムから成る小さなコレクションというアイデアを気に入っているんだ。だから、新しいシェイプのアイテムを作るときには毎回、既存のアイテムと並べた時に“新しさ”があるかを考える。例えば、新たにドレスを作るなら、すでにコレクションにはフィット感のあるミニドレスがあるから、ロング丈で流れるようなシルエットといったようにね。全てのアイテムに異なる命を宿すべきだと思うから、他のアイテムを台無しにするモノは作らない」。

 また、コレクション全体の10〜15%は、ピーコートやコンパクトなデニムジャケット、シルクブラウスなどシーズンを超えて提案するアイテム“エッセンシャル”で構成されている。「“エッセンシャル”は、いわば『パトゥ』らしさを分かりやすく表現したアイテム。シーズンが終わったからといって好評だったデザインさえも消し去ってしまうのは、もったいない。ケーキ屋さんを想像したら分かってもらえると思うけど、季節が変わって自分のお気に入りのケーキがなくなっていたら、悲しいでしょ?」とアンリ=アーティスティック・ディレクターは笑う。

環境への配慮や透明性への取り組み

 そういったサステナブルな考え方はデザインだけでなく、パッケージや生産背景にも反映されている。ショッピングバッグやボックスからハンガー、商品タグにいたるまでパッケージには、環境に配慮したリサイクル材料もしくはリサイクル可能な材料を100%使用。アイテムは全てヨーロッパ内で生産し、環境フットプリントの削減に努めている。さらに、商品タグにはQRコードがプリントされていて、スマートフォンのカメラなどで読み取るとそれぞれの商品の生産背景やストーリーを知ることができる。「僕たちにとって、消費者が自分の買うものについて知ることはとても重要。さまざまな業界で“透明性”への意識が高まっている。例えば、食品業界ではどこで誰が生産したか分かるものが増えているよね。それがファッションでまだ一般的になっていないのは、恥ずかしいことだと感じたんだ」。

 そんな時代に即したさまざまな取り組みを行う「パトゥ」は、数々のラグジュアリーメゾンを擁するLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)の傘下にある。しかし、そのブランディングは他のメゾンとは大きく異なる印象だ。コレクションの発表方法にしても、大きなランウエイショーではなく、シテ島にあるメゾンのオフィス兼アトリエでのプレゼンテーションを選んでいる。その理由は「ブランドのバックステージを見せるため」とアンリ=アーティスティック・ディレクター。「裏側を見せるのは刺激的だし、大掛かりなセットは必要不可欠ではない。言ってみれば、自分の家に皆を招待して食事をするような感覚だ」と続ける。その言葉通り、「パトゥ」にはアットホームな心地よさがある。今後についても「大きなブームを起こす必要はない。ステップ・バイ・ステップでブランドの魅力を広げ、成長させていきたい」と、業界のスピードに踊らされることなく慎重に歩みを進めていくようだ。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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販売員のリモートワークはどう取り組む? プロモーション担当へ配属した「マザーハウス」編

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言を受けて、百貨店やファッションビルをはじめとする店舗が臨時休業中だ。店頭に立てず勤務ができない販売員は「突然、1カ月の休みがてきてしまった」と嘆いている。オフィス勤務社員のリモートワークでさえも難しい状況だが、販売員への仕事を創出している企業もあった。その事例を紹介する。(この記事はWWDジャパン2020年4月20日号からの抜粋に加筆しています)

マザーハウス

 途上国で生産したバッグやジュエリーなどを扱う「マザーハウス(MOTHERHOUSE)」は、新型コロナウイルスの状況を素早く判断し、さまざまな施策を打ち出している。現在は仙台店を除く全国の店舗の販売員が在宅勤務中だが、山崎大祐・副社長やチーフマネジャーによるオンライン研修をはじめ、公式オンラインサイトでは平日の午前10時から午後6時の間、顔が見えるチャット機能を使ってデジタル接客を行っている。

 2月29日から臨時休業中の千葉・舞浜の商業施設、イクスピアリの店舗スタッフたちを、早期に本社勤務に切り替えて別部署に配属。イクスピアリ店店長の石川怜さんは、プロモーション担当として自由に外出できない子どもたちに向けた企画を立案した。デザイナーである山口絵理子社長が描いた絵本の挿絵をもとにぬりえを制作。「マザーハウス」の商品を生産する6カ国の名物・名所のイラストを使ったぬりえを送料無料でプレゼントし、データも公式サイト上で無料ダウンロードできるようにした。また小学生以下の子どもを対象にした「おえかきコンテスト」も企画。「夏といえば?」をテーマにイラストを募り、優勝作品は店舗のショッパーとして配っているコットンバッグの絵柄として採用する予定だ。

 さらに外出自粛要請の影響を受けて、商品の魅力をオンラインで発信するため動画コンテンツを拡充した。元々は本店スタッフで、3月にプロモーションチームに異動した安藤輝さんは、ユーチューブ上で「マザーハウス」のショッピングチャンネルを立ち上げ、自らナビゲーターとなって動画で商品のポイントを熱く語っている。

販売員の声
“会社が別部署での役割を用意してくれたことで安心できた”

 「勤務先のイクスピアリは休館になったが、会社が別部署での役割を用意してくれたことで安心できた。副社長の山崎らとのミーティングで『お出かけができない子どもたちが少しでも家にいる時間が楽しくなるように』という思いで、ぬりえ・絵本・書籍の無料提供を企画。店舗ではなかなか直接的に価値を届けられない子どもたちに発信でき、やり甲斐を感じた」(石川怜/「マザーハウス」舞浜イクスピアリ店店長)

 「ショッピングチャンネルは収録自体がすごく楽しく、スタッフ間でのリアルなやり取りをお届けできていると思う。お客さまから『日常の光景が動画で見られたので、お店に行っているような気持ちになれた。元気をもらえた』というメッセージをいただき、励みになった」(安藤輝/元マザーハウス本店スタッフ、現プロモーションチーム)


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英名門大学ゴールドスミス副学長が指摘「パンデミックはファッションの持続的変化への移行を引き起こす」 ポストコロナを聞く

 新型コロナウイルスが猛威を振るい、“異常”な状況下で人々の価値観に変化が生まれている。大切なものとは何か?幸せとは何か?――終息後の世界はどう変わるのか。そのときにファッション産業は?

 今回は、昨年までロンドン芸術大学(University of the Arts London)のロンドン・カレッジ・オブ・ファッション(London College of Fashion)で学長を務め、昨年秋にゴールドスミス大学(Goldsmiths)の副学長に就いたフランシス・コーナー(Frances Corner)教授に聞く。

 彼女は人権や環境問題と積極的に向き合い、仕組みから考え直した改善策を提案できるような学生を育てるため、ファッションだけではなく多彩な学部があるゴールドスミスに移っている。

WWD:新型コロナウイルスによって、人々の価値観や思考方法にどのような変化が起こっていると思いますか?そして終息後はどのように変化していくと考えますか?

フランシス・コーナー=ゴールドスミス大学副学長(以下、コーナー):新型コロナウイルスのパンデミックは、私たちの多くに人生において何が大切なのか考え直すことを促しています。私たちはスローダウンし、より少ないもので生きる術を学ぶことを求められています。「本当に必要なものはなんだろう?」――人々は自問しています。また私たちはこれまで以上に、他者とのつながりについて意識しています。このような思いや考えは、間違いなくファッションや私たちの買い物習慣にも広がることでしょう。ファッションが人々や環境に与える影響への意識が高まっていることを考慮すると、より多くの消費者がファッションとの関係を見直して買い物の頻度を少なくし、品質が高くサステナブルなものを求めるようになると私は期待しています。

WWD:そうした人々の価値観や行動の変化からどのようなニーズが生まれると思いますか?それに対してファッション業界が提案できることは?

コーナー:ブランドは、パンデミック以前から始めていた社会的意義のある事業――例えば、サステナブルなラインの販売や「H&M」や「アーバンアウトフィッターズ(URBAN OUTDITTERS)」など大手ブランドによる服のレンタルサービスなどを――で消費者の要求に応えられるし、そういう動きはさらに推進すべきでしょう。このパンデミックはファッション業界の持続的変化を引き起こす原動力を与えてくれると思います。

WWD;そもそも無理があったファッション産業は、これを機にどのように“最適化”されるべきでしょうか。

コーナー:パンデミックは業界が変化するための好機であり、ブランドがより良い方法でテクノロジーを使うチャンスです。すでにサステナブルな解決方法があるにもかかわらず、人々がファッションショーのために世界中から飛んでくることをどう正当化できるでしょうか。

ブランドはサステナビリティのための行動を後回しにしてはいけません。すでに多くの意義ある行動がとられていますが、気候変動という差し迫った問題を無視してはいけません。それが正しいことだからというだけでなく、消費者が行動を求めているからです。

労働者の権利も検討すべき大きな課題の一つです。この危機が何ごとかを明らかにしたとすれば、それは世界中の工場で衣服を作る人々に業界が依存しているということです。このような人々を守ることは極めて重要です。

また、このパンデミックによって大きな打撃を受けた個人事業主のメーカーや起業家などに対するより手厚いサポートがあればと思います。向こう数年で必要になるイノベーションを起こすのは彼らであり彼女たちで、そういう人たちが業界の最前線にいるのです。

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小島健輔リポート コロナパニックが引導を渡したファッション流通

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。収束の兆しが見えない新型コロナウイルスの感染拡大。ファッションビジネスへの大きな打撃を与え、各社はパラダイムシフトを急がなければ生き残れない状況になっている。

 新型コロナウイルスの蔓延で緊急事態宣言が発令され、商業施設の休業が広がって生活維持以外の消費はほぼ止まり、ファッション業界は冬眠状態に陥っている。いつ終わるか読めない氷河期状況の中、かろうじて生き永らえてきたゾンビなビジネスが次々に行き詰り、コロナ後の新消費秩序に対応できるビジネスモデルが模索されている。

深刻化するアパレルの売り上げ減少

 パンデミック(世界的な流行)が迫ってもまだ週末休業にとどまっていた3月の既存店売り上げを一覧すると、百貨店やドラッグストアのインバウンド(訪日客)売り上げはほぼ消滅し、大手百貨店はそごう・西武の前年同月比31.9%減から大丸松坂屋百貨店の43%減まで3〜4割減少。インバウンド依存の高かった三越銀座店は55.1%、大丸心斎橋店は63.1%も減少した。主要な駅ビルやファッションビルも軒並み3割から5割近く減少し、中でも衣料品の落ち込みが大きかった。米国商務省発表による3月の米国小売り売り上げは前月から8.7%減少し、閉店が広がったアパレルは50.5%も減少している。

 主要なアパレルでは百貨店やターミナル商業施設への依存が大きい三陽商会(44.0%減)やレナウン(46.5%減)、TSIホールディングス(34.6%減)、オンワード樫山(31.0%減)の落ち込みが大きく、オンワード樫山は休業が広がった4月12日までで56%減とさらに落ち込みが拡大している。緊急事態宣言で大都市店舗の大半が閉まり、16日には全都道府県に拡大されたから、4月計では8〜9割減まで落ちると危惧される。

 アパレルチェーンではコロナ以前から落ち込んでいた青山商事(41.2%減)やライトオン(39.1%減)を筆頭に、ハニーズ(28.9%減)やユニクロ(27.8%減)の落ち込みが目立つ一方、EC比率が高いアダストリア(国内EC比率20.5%)とユナイテッドアローズはECの伸びがカバーしてともに24.2%減と健闘。ユナイテッドアローズの既存店舗売り上げは40.2%減少しているから、23.9%伸びて全売り上げの25.3%を占めたECが16ポイントもカバーしたことになる。

 EC比率が半分前後を占める非公開アパレルチェーンでは、ECが大きく伸びて前年売り上げを確保したケースもあり、コロナパニック下のEC頼みが鮮明となった。送料負担やPBの失敗などで一時は勢いを失ったZOZOも勢いを取り戻し、1.38倍に拡張した物流拠点にアパレルの在庫が殺到してパンク寸前だという。

 緊急事態宣言後は都心商業施設の大半が休業して、営業できる店舗が2〜4割減ったチェーンも多く、後半には緊急事態宣言が全国に拡大したから、4月の既存店売り上げは1〜2割まで落ち込んでしまう。売り上げがそこまで落ち込んでも仕入れ代金の支払いや従業員の休業補償(助成金があるが申請から支給まで2〜3カ月かかる)など出費は止められず、資金繰りに窮するチェーンが続出すると危惧される。

 食品や生活衣料の比率が高い「無印良品」の良品計画は15.3%減(衣料・雑貨は29.6%減)、日用衣料のしまむらは12.1%減と落ち込みが小さく、自粛の反動で需要が伸びたアウトドア関連ではワークマンこそ17.7%増加したもののアルペンは15.6%、ヒマラヤは18.6%、総合スポーツのゼビオは25.8%減少した。

 都心立地でファッション性が高いほど落ち込みが大きく、郊外立地で日用性が高いほど落ち込みが小さく、EC比率が高いほど店舗売り上げの落ち込みをカバーしたと総括される。

引導を渡された百貨店流通

 未曾有の売り上げ減少が長引く中、これまで低迷しながらもなんとか継続してきたゾンビなビジネスモデルが堰を切ったように破綻に突き進んでいる。百貨店流通など、その最たる典型だ。長年の堕落と客離れによる業績の悪化に加え、休業が長引けば不採算店が増えて閉店が加速し、販路を閉ざされた百貨店アパレルの経営も行き詰まる。

 オンワードホールディングスは20年2月期に国内外の700店を閉め、今期はさらに700店を閉めて19年10月の3000店から店舗を半減する。中核会社であるオンワード樫山の百貨店売り上げ比率は09年2月期の74.7%から20年2月期の62.3%と、依存率の切り下げを徹底できず不採算店舗が経営を圧迫しているから、百貨店内店舗を大量閉店せざるを得ない。20年2月期決算では店舗撤収の減損や希望退職の特別損失、固定資産の減損や投資有価証券の評価損に加え、将来の利益が見込めないため繰延税金資産の取り崩しを強いられ、計521億2200万円の純損失を計上したが、これは百貨店軸の事業構造に最終的な見切りをつけ過去を清算したことを意味する。

 今後はECを基幹としたOMO※1に軸足を移し、店舗は運営効率のよいブランド複合の大型店に集約する一方、カスタマイズ事業とライフスタイル事業を拡大していくとしているが、16.8%まで伸ばしたECも自社EC比率は高いとはいえ、システム改修や物流、ささげなど外注依存も多く、画期的な無在庫C2M※2として期待されるカスタマイズ事業も採算点到達が遅れるなど、課題が山積している。

 それでも毅然として過去を清算したオンワードホールディングスは未来へ走り出しているが、「バーバリー(BURBERRY)」を失って以来、戦略なき迷走を続ける三陽商会は経営陣の交代を繰り返して組織と資産を消耗するばかりで、決算期を変更した20年2月期も当初計画に届かず26億8500万円の最終赤字を計上。最終赤字は4期連続で、利益剰余金31億8900万円を取り崩し、有価証券評価損26億2200万円も加わって純資産は66億円も減少した。もう後がないとして、1月1日に就任したばかりの中山雅之氏から三井物産出身の大江伸治氏に社長も交代し、仕入れを抑制して百貨店インショップ1050店中の不採算150店の撤退を断行するが、いまだ百貨店に売り上げの62.3%を依存し、ECも前期決算で25.2%伸びたとはいえ全体の12.7%を占めるに過ぎず(直近1〜2月では15.8%)、迷走を繰り返して企画・生産の人材も散逸した三陽商会の再建は前途多難と言うしかない。

 前世紀のピーク時には3000億円を売り上げてアパレルの頂点に位置したレナウンなど、減収減益とリストラを繰り返してタケノコ経営を続け、13年には山東如意科技集団の子会社となった。当時(14年2月期)の売り上げ748億6300万円が19年12月期(変則10カ月決算)には502億6200万円にしぼみ、営業赤字体質を脱却できないまま山東如意傘下企業への売掛金57億7900万円を貸し倒れ引き当てして77億9500万円の経常赤字に陥り、手持ち現金が45億2000万円減少して33億2000万円まで細って経営の継続に赤信号が付き、株主総会で神保佳幸社長と北畑稔会長が更迭される事態に追い込まれた。

※1.OMO(Online Merges with Offline):ネットと店舗の垣根を超えた融合を意味し、モバイルフォンをキーツールとしてウェブルーミングとショールーミングを駆使するニューリテール戦略

※2.C2M(Customer to Manufactory):ネットやショールームで受注してからデジタル生産や3Dプリンタで素早く生産して“個客”に届けるパーソナル対応の無在庫販売手法。F2C(Factory to Consumer)ともいうが、個客から生産へという方向に意味があるゆえC2Mと捉えたい

百貨店とアパレルの閉店連鎖はもう止まらない

 主要百貨店アパレルが次々と大量閉店すれば衣料品フロアが歯抜けになって客離れが加速し、採算もさらに悪化して閉店する百貨店が広がっていく。一部の百貨店は不動産業化して生き残るだろうが、それが可能なのは好立地の自社所有店舗に限られるから、百貨店の店舗数は数年で今の半分近くまで減少し、地方百貨店の破綻や大手百貨店の再編が雪崩を打つように進む。販路を失ったアパレルも採算規模を維持できず、ECへの転換が遅れたアパレルは多くが破綻し、阿鼻叫喚の終焉劇となる。

 振り返ってみれば1980年代以降、百貨店は壁に当たるたびに取引アパレルにリスクとコストを転嫁し続け、アパレルは採算を確保すべくそのたびに原価を切り下げたから、百貨店で売られる商品は法外に割高なものとなっていった。駅ビルやSC(ショッピングセンター)、ついでECに顧客が逃げ出したのは必然で、大手アパレルの商品を見るたびに、どうしてこんなに市場とズレた商品に消費者目線の倍も3倍もの法外な価格が付けられるのかと不思議に思ったものだ。全ての敗因はそこにあったと自覚するべきだろう。

 百貨店とアパレルが連携してロスとコストを押し付け、割高な流通にして顧客を裏切ってきたのだからいずれ総崩れになることは避けられず、コロナパニックがゾンビ化した百貨店流通に引導を渡すことになった。流通プラットフォームの盟主の堕落がサプライチェーン総体の破綻を招く典型的な破滅劇となったが、今や希望の星となったECが同じ轍を踏まぬよう祈るばかりだ。

商業施設にも見切りをつけるべきか

 百貨店に続いて高コスト化しているのが駅ビル、ファッションビルやSCなどの商業施設で、近年は最低保証家賃や共益費など家賃外負担に、館が包括加盟するキャッシュレス決済の手数料上乗せも加わり、売り上げ対比の不動産費負担は実質20%を超えるケースが増えている。2000年当時は百貨店より22ポイントも低かったが、アパレルの百貨店離れによる歩率低下と商業施設の不動産費高騰で、今や両者の格差は実質10ポイント前後(百貨店では光熱費やキャッシャレス決済手数料が不要)まで近づいている。

 ランニングコストだけでなく、店舗のイニシャルコストは法外に高い。定期借家契約が定着して以降、基準家賃の10カ月分程度の敷金で出店できるようになったが、駅ビルなどの3〜4年と短い定借期間では内装投資が償却できず、当てが外れて定借期間満了前に撤退しようものなら、基準家賃の6〜12カ月分ものペナルテイを課されることがある。

 18年の当社クライアント集計では年間152店の退店中、半分強の77店が定借満了によるもので、定借期間内退店比率も前年の25%から34%に増えていた。新規出店時には少なからぬ内装監理費や現場協力金なども課金されるから、トータルのイニシャルコストを定借期間内に償却できる見通しがない限り、出店はコストに合わない暴挙と腹をくくるべきだ。

コロナパニックでECが救世主に

 商業施設の不動産費を割高に感じさせるのが、自社運営ECの規模拡大による急速なコスト低減だ。人気ECモールの手数料率は売り上げが拡大しても低減せず、商業施設の不動産費と販売人件費を合わせた負担と大差ないが、自社運営ECは年商数億円で商業施設の販売コストを下回り、100億円を超えれば確実に10ポイント以上下回る。店舗販売だと売り上げを増やすのに出店投資と店舗運営人員が必要だがECではそれらが不要で、1人当たり売り上げは加速度的に効率化し、物流を抱え込まない限り人時生産性は店舗販売の10倍が望める。

 ECといっても自社運営とモール出店(実態は出品)とでは天と地ほども違う。プラットフォーマーの手のひらで便宜とコストのバランスをとって拡販できても、店舗をC&C※3利便の拠点とするOMOで優位に立つことはできないし、プラットフォーマーの都合に振り回されるのは百貨店や商業施設と大差ない。

 販売員不足に悩み家賃や人件費の負担で損益が苦しいなら、自社ECを“本業”として店舗はC&C利便のサービス拠点兼ミニマム在庫型ショールームと割り切って必要最小限に抑えるD2Cが合理的だが、店舗運営に慣れ親しんだ事業者は軸足を移すのをためらう。そんな躊躇を吹き飛ばしたのが接客販売という“濃厚接触”を避けざるを得ないコロナパニックで、店舗が休業や時短を強いられる中、ECが救世主となって主役が交代し、店舗はコストに見合わないお荷物と認識されたのではないか。

※3.C&C(Click & Collect):EC注文品を店舗で試したり受け取ったり店舗から出荷したりして顧客利便を高め、物流費を抑えて在庫効率を高めるOMO手法

エシカル消費がファッションビジネスを滅ぼす

 コロナウイルスの蔓延を断ち切るべく引きこもり生活が続く中、誰もが必然的にエコミニマルなエシカル消費を強いられているが、コロナパニックが収束しても元には戻らないかもしれない。

 多くの人々が所得が減り、資産も傷ついて将来への不安をトラウマのように抱える中、精進落としの消費や娯楽に走る人は限られ、収束後も大多数の人々は引きこもり生活で身に付いたエシカル消費を引きずると思われる。ならば不要不急でエシカルから最も遠い衣料・服飾消費の回復は最後の最後になるばかりか、元の水準に戻ることはもうないだろう。

 人々の過剰な消費と需給ギャップの無駄を前提に成り立ってきたファッションビジネスは身を削って存続を図るしかなく、法外なコストを引きずる百貨店流通はもちろん、商業施設の店舗もコストに見合うまで絞るしか生き残る術はない。クリックかモルタルか、デジタルかアナログかという議論にコロナパニックが結論を出した以上、全力全速で高コストなモルタル流通を仕舞ってデジタルシフトを急ぐしかないのは火を見るよりも明らかだ。

 コロナパニックを契機にファッション販売の主力がECに移って店舗のショールーム化とデジタル化が進み、販売員はデジタルに発信してリモート接客するバーチャルプレーヤーに変貌し、企画・生産はもちろん流通・販売まで一貫するデジタルシフトが急速に進んでファッションビジネスは一変するだろう。人の労働よりシステムが駆動するデジタルシフトの過程で、半分どころではない人々が振り落とされていくだろうが、もはや躊躇している余裕はない。人と店舗を基盤とした古き良きファッション流通は終焉の時を迎えたのだ。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

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不安定な時代に光と安らぎを 女性の身も心も優しく包み込む「トーガ」の衣服

 古田泰子による「トーガ(TOGA)」は2月に開催されたロンドン・ファッション・ウィークで、2020年-21年秋冬コレクションを発表した。会場として選んだのは、かつてビール醸造所だった施設オールド・トルーマン・ブルーワリー(The Old Truman Brewery)内にある倉庫のような広々とした空間。筆者がバックステージに到着したショー開始1時間前にはリハーサルもすでに終えていた。メイクアップとヘアスタイリングを済ませたモデルたちは楽しそうに踊っており、時間にも心にも余裕のある和やかな雰囲気だった。メイクを手掛けた伊藤貞文「NARS」グローバルアーティストリーディレクターは、最後のリタッチを加えている。ヘアを担当した高橋詩織はコーンロウのヘアスタイルに時間がかかっていたようで、本番ギリギリまでほぼ付きっきりであった。そこに古田デザイナーの姿は見当たらない。彼女はランウエイで、最終的な会場内の調整を行っていたようだ。

 来場者が入場し、バックステージでモデルが並び始めたころに古田デザイナーの姿をようやく確認できた。全てのルックを360度確認して、リボンを結び直したり、バッグやベルトの位置を調整したりして、モデル一人一人に声をかけながら、ランウエイへと送り出した。

不確実性が渦巻く時代に
“守ること”について考えた

 ショーはアンディ・ストット(Andy Stott)の楽曲「ボールルーム(Ballroom)」でスタートした。激しいドラムの音とエレクトロニックなBGMが流れる中、量感のあるルックが続く。風をはらんでパラシュートのように膨らむ袖、ふかふかのダウン、思わず触れたくなるフェザーやフェイクファー——「トーガ」らしいマスキュリンな強さはシャツやパンツスーツのルックで表現されているが、どこか慈しむような温かさの方が強く感じられた。艶やかなPVCは軽快に優しく揺れて、カットアウトされたニットドレスでさえも柔らかく体を包み込んでいるように見えた。ビッグサイズのパッファーのバッグや、ふわふわのフェザーが装飾されたサンダルなど、ディテールには無邪気な遊び心を加えて見る者の心をくすぐる。

 今季のテーマは“光・保護・不安定(Light Protection Instability)”の3語。「不確実性が渦巻く不安定な時代に、守ることについて考えを巡らせた。実存の疑いを表しているようなフランシス・ベーコン(Francis Bacon)の絵を見て、希望と安らぎで世界が満たされることを願った」とコレクションノートに古田デザイナーの言葉がつづられていた。

時代の空気を読み解き、
女性の心に寄り添う優れた洞察力

 イギリスが欧州連合(EU)離脱のための移行期間へと入り、王子夫妻による前代未聞の英国王室の離脱騒動に揺れ、さらには新型コロナウイルスの不安が世界中に広がり人種差別の風評被害へと発展する昨今。自分に不幸がいつ降りかかるかも分からないし、この世に“絶対”なものや“完璧な安らぎ”がないと否が応にも思い知られされる。しかしこんな時代でも幸いなことに、私たちには「トーガ」がある。時代の空気を読み解き、女性の心に寄り添う洞察力に優れた古田デザイナーが、時には背中を押し、時には一緒に闘い、時には私たちを優しく包み込んでくれるのだから。こんな時代だからこそ、希望を謳うブランドはより一層輝いて見える。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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美容室「IJK 表参道」のクラウドファンディングが2日で700万円超え そこに込めた思いとは

 髪質改善に特化した東京・表参道の美容室「IJK 表参道(IJK OMOTESANDO)」が、キャンプファイヤー(CAMPFIRE)でクラウドファンディングをスタートさせた。1日で目標金額300万円を達成し、2日で700万円を超えるなど、驚異的なスピードで支援を集めている。今回のクラウドファンディングでは、新型コロナウイルスによる影響で売り上げが大きく下がった美容室「IJK表参道」と同社の芝原俊輔代表が経営する「バー エルエム(BAR Lm.)」の支援を目的に、5月31日23時59分59秒まで支援を受け付けている。今回、どういった思いでこのクラウドファンディングを行うことにしたのか――芝原代表に話を聞いた。

WWD:まず、クラウドファンディングをやろうと思ったきっかけを教えてください。

芝原俊輔代表(以下、芝原):今回の新型コロナの影響もあって、「美容室に行きたくても不安。でも何か別の形で支援したい」というお客さまの声が多く、それなら昨年4月に美容室の拡張移転の際に一度やったことのあるクラウドファンディングを活用しようと考えました。

WWD:スタート1日目で目標300万円を達成し、2日で700万円以上とかなりのスピードで支援が集まっています。

芝原:前回のクラウドファンディングを行ったときの合計金額が約250万円だったので、今回は300万円を目標にしたんですが、正直ここまで早く集まるとは思ってもいなかったですし、ここまで多くの支援がいただけたことに驚いています。ありがたいことに応援してくれている人がこんなにいたんだとうれしくなりました。本当に感謝しかなく、必ずこの恩をお返ししたいです。

WWD:どうやって、ここまで支援してくれるファンを獲得してきたんですか?

芝原:普段からスタッフ全員が、いいかげんなことをせずに、目の前のお客さま、SNSのフォロワーに真摯に向き合ってきた結果だと思います。もともと美容室を作るというよりは、ブランドを作るという意識で本当に細かいところにまでこだわって経営してきました。「IJK」というブランド、そこで働くスタッフを応援してもらうにはどうすればいいかは常に考えてきました。今回のクラウドファンディングでこうして注目してもらえて、それにおごらず真摯にやっていくことでファンをさらに増やしていければと思います。

WWD:クラウドファンディングの紹介ページでは、「ここのまま店舗を休業することになると、美容室は1カ月で500万円、バーは1カ月で150万円の赤字」とか、美容室の家賃が160万円とかなり正直に書いていますが、そこには抵抗はなかったんですか?

芝原:スタッフにもお客さまにも何も隠すことはないです。スタッフには僕の毎日のスケジュールはしっかりと伝えていますので、いつもどこで何をしているかも分かっている。家賃が160万円というのも、一般的には高いかもしれませんが、それを知ってあらためて「IJK」というお店に価値を感じてくれるお客さまもいると思います。こうして正直にオープンにした方が、支援してくれる人にも思いが伝わる。僕は10年先を見据えているので、今は会社を存続させることが一番大事だと考えていて、できることは何でもやるつもりです。

WWD:クラウドファンディングのリターンの種類も美容室とバーを合わせて50以上とかなり豊富ですが、これはスタッフと考えたのですか?

芝原:基本的には以前のクラウドファンディングをやったときに人気だったリターンを中心に考えました。お店のオリジナルのシャンプー&トリートメントのセットや未来施術券、カット回数券など、基本は僕が考えたのですが、各スタイリストには一人一つ以上自分のリターンを考えるように伝えました。

WWD:クラウドファンディングをすることにあたってのスタッフの反応はどうでしたか?

芝原:スタッフも僕のことを信頼してくれているので、「一緒にがんばりましょう」という感じでした。

WWD:今回の新型コロナによって今後の美容室の在り方は変わると思いますか?

芝原:しばらくは厳しい状況が続くと思いますので、まずはどうにかして生き残ることを考えるのが一番重要。また美容室の低料金サロンと高単価サロンの2極化がさらに進むと思います。その中で高単価サロンを目指すには、求人が重要になってくるし、こうした状況だと、普段のスタッフとの関わり方が表面化する。いつもスタッフにはいいこと言っていても、こうした状況でスタッフを何人か辞めさせるとか、対応がひどい経営者だとなれば落ち着いたら、みんな離れていくと思います。弊社では今回のことがきっかけでスタッフの絆が深まりました。これからも絶対にスタッフやお客さまを守っていくつもりです。

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“巣ごもり”で売れている「ユニクロ」のアイテムとは?

 新型コロナウイルス感染の広がりで在宅勤務が長引いている。巣ごもり需要でルームウエアなどの動きがよく、外出自粛で、ボトムはパジャマで仕事をする人も多いのが現状だ。

 このような状況における衣料のニーズについて「ユニクロ(UNIQLO)」に聞いてみると、ここ最近、“感動ジャケット”(5990円)の売り上げが少しずつ伸びているという。在宅勤務でビデオ会議の際に、これ一枚羽織れば画面できちんと見えるというのが理由のようだ。すっきりしたシルエットとドライ機能やストレッチ性、軽量といった機能性の融合がこの商品の強みだが、今はこのような状況における利便性から売れているというのが面白い。

 そのほか、“感動パンツ”(2990円)や“ファインクロススーパーノンアイロンシャツ”(2990円)、“EZYアンクルパンツ”(2990円)なども好調だという。いずれもストレッチ性があり、“きちんと見えるのに楽”というのがポイントになっているようだ。下着では“ワイヤレスブラ ビューティーライト”(1990円)が売れている。淡々と業務をこなしがちな在宅勤務で、快適でありながらも程よい緊張感を与えてくれる商品が人気のようだ。

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従業員の信頼を取り戻せるか 連載ストライプ・ショック(3)

 大手SPA(製造小売り)の幹部が嘆く。「ストライプのおかげでファッション業界全体の評判が下がり、新卒採用も厳しくなるかもしれない」。

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言が出る前のコメントのため、現在は状況が様変わりしているが、ストライプインターナショナル前社長の石川康晴氏のセクハラ報道で業界にネガティブなイメージが広がったことは否めない。ただ、当のストライプの立花隆央社長は弊紙の取材依頼に書面で回答し、「現時点(3月31日)で人材採用への影響は出ていない」と述べている。

 ストライプは就職先として人気の企業だった。服飾専門学校の学生を対象にした「就職を希望する企業」のランキングでは毎年上位につけていた。広瀬すずがイメージキャラクターを務める「アース ミュージック&エコロジー(EARTH MUSIC&ECOLOGY)」などブランドの知名度だけではない。衣料品のサブスクリプション「メチャカリ」、他社ブランドを集めたECモール「ストライプデパートメント」、渋谷の店舗に宿泊施設を併設した「ホテルコエトーキョー」など、話題性のある新規事業に次々に参入。創業地の岡山県では文化・芸術やスポーツ、地場産業の振興にも積極的に取り組む。そんな石川氏の姿がメディアでたびたび紹介され、時代の寵児となっていった。低迷するファッション業界にあって、石川氏および同社を「ポスト・ユニクロの一番手」と持ち上げるメディアもあった。

 冒頭の大手SPA幹部は石川氏について「パブリックイメージが肥大化して、(社内では)誰も意見できない“裸の王様”になってしまったのではないか」と語った。複数の元社員や現役社員らの証言もそれを裏付ける。セクハラ報道に際し、各方面からガバナンスの欠如が指摘されたが、それ以前の問題として石川氏の専横ぶりが眼に余るようになっていた。

イメージと異なるワンマン経営

 銀座のストライプ東京本部。エレベーターから受付に続く長い廊下には、東京本部で働く約300人を一人ひとり紹介するポートレートが壁一面に掲示されている。石川氏は社長時代、「全ての従業員が個性的に生き生きと働く組織風土」を作りたいと話していた。同社を訪れる人は、役員から若手まで社員が笑顔でポーズをとるポートレートを見て、フラットで自由な社風を感じることだろう。

 異業種から転じた山野井朋子さん(仮名、元社員)も入社前はそんな雰囲気を想像していた。だが中に入ると、その落差に驚いた。「役職の人たちは石川さんの言いなりになっている。石川さんに気に入られない人は(仕事の)成果に関係なく降格されてしまうというのが社員同士の共通認識になっていて、実際に不可解な異動がたくさんあった。社員等級はG1からG9(常務執行役員)まで分類されていて、大きなミスを犯したわけでないのに3段階も降格する人もいた」。

 3段階降格で執行役員が次長クラスに退くケースもあったという。降格を不服として退職する管理職も少なくなかった。本部の管理職でさえも物言えぬ雰囲気なのに、若い販売員が石川氏の誘いを断るのは難しい。18年12月の査問会で問題になるまで、社員からのセクハラ情報が適切に処理されることはなかった。

実態を伴わなかった「ガバナンス強化」

 売り上げ規模の成長とともに、石川氏は東証一部への株式上場を公言するようになる。安定成長のために、ソフトバンググループと資本提携を結んでEC運営会社を設立したほか、ベトナムやインドネシアの企業も買収した。ガバナンスの強化に向けて、元ソニーCEOの出井伸之氏、元三越伊勢丹ホールディングス社長の大西洋氏らビッグネームを社外取締役に迎えた。サステナビリティ経営を協力に推進するため、競合他社に先駆けてSDGs推進室を設置した。

 見栄えのよい施策を次々に打ち出したものの、セクハラとその対応を見れば、それらの取り組みが地に足のついたものになっていたかどうかは疑問だ。有名な社外取締役の起用やSDGs推進などは、上場にふさわしい企業体制を作ることが狙いだったが、体質は“石川商店”のままだった。

 石川氏はセクハラ報道の責任をとって3月6日付で社長を退任し、表舞台から去った。それでも創業者である石川氏はストライプの株式を個人で40%、自身の関連会社の保有分を含めると過半を握る。オーナーとして社内に石川氏の影響は残るのか。立花隆央社長は「石川が経営に関わることはない。最終的な経営の決定権は社長である私のもと、新体制で行っていく。所有と経営を分離した体制になる」と否定する。

 今回のセクハラ報道は、特に販売の現場に大きなショックを与えた。「WWDジャパン」が集めた販売員の声は悲痛そのものだった。

 「接客をしていると、セクハラ報道のことを口にするお客さまもいてつらい」

 「この会社で働いていることがとても恥ずかしく、後ろめたくなった」

 「加害者(石川氏)についてどのような処分を行うのか明確にし、二度と同じことが起こらないようにしてほしい」

 現在、全国に広げられた緊急事態宣言によって店舗のほとんどが休業しており、販売員は自宅待機を余儀なくされている。今後についての不安はどの小売業も一緒だ。しかしストライプの従業員は「そもそも会社は信頼できるのか」という根本的な疑問を抱いている。石川氏のセクハラとそれを許してしまった組織風土の検証、そして従業員との信頼関係の回復なしに、新型コロナによる未曾有の危機を乗り越えることはできない。

(おわり)

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年2回の買い付け出張は今後も必要なのか? アナログなアパレル業界を変える米発オンライン展示会「ジョア」

 新型コロナウイルス感染症拡大が、世の中のあらゆる業種・分野にデジタル化を迫っている。アナログだと言われ続けてきたアパレル業界においてもそれは同様だ。オフィスワークをリモートに切り替えたり、実店舗で行ってきた接客をSNS上に移したりといったさまざまな動きが出ているが、アパレル業界におけるアナログ業務の最たるものの一つとして忘れてはならないのが、展示会での受発注作業だろう。コロナショックを背景に、この分野も急速にデジタル化が進んでおり、コロナ収束後もそれが元に戻ることはなさそうだ。トレードショーや展示会に出掛けてブランドを探し、オーダーシートを送って買い付けるというこれまでの業界のビジネスのあり方自体が、大きく変わろうとしている。

 数年前から、ネット上で絵型(ラインシート)を確認し、受発注できる「ターミナル・オーダー(TERMINAL ORDER)」などのオンラインショールームサービスは日本ブランドの間でもじわじわと広がっていた。各店のバイヤーからブランドに届いたオーダーシートを、営業担当者が人海戦術を駆使して集計するというのが業界の長年の通例だったが、こうしたオンラインサービスを使えば、煩雑な集計作業が軽減できる。同時に、地方個店のバイヤーなどにとっては、わざわざ毎回出張して展示会に足を運ばなくても発注できるというメリットがある。

 そうしたサービスの黒船として、このところ日本で急速に存在感を強めているのが米国発の「ジョア(JOOR)」だ。伊藤忠商事が2019年1月に10億円規模を出資しており、日本では同社が独占的な戦略パートナーとして、19年秋以降動きを本格化している。10年に創業した「ジョア」は「世界最大規模のBtoBオーダープラットフォーム」を標榜し、現在ファッション関連を中心に53カテゴリー8600のブランドをユーザーとして抱えている。

 たとえば、国内では「サカイ(SACAI)」「レリアン(LEILIAN)」「メディコム・トイ(MEDICOM TOY)」などが「ジョア」を導入。海外はラグジュアリーブランドがズラリと並ぶ。「ロエベ(LOEWE)」「ベルルッティ(BERLUTI)」といったLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON )傘下のブランドに加え、ケリング(KERING)、リシュモン(RICHEMONT)といったコングロマリットも導入済みだ。ラグジュアリーのイメージが強いが、一方で国内では大手バッグメーカーが導入するなど、ジャンルも裾野も広げている。

 小売り側では144カ国・地域に20万のユーザーがいるという。なかでも、米百貨店ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)や仏百貨店プランタン(PRINTEMPS)、パリの個店メルシー(MERCI)、ECのショップボップ(SHOPBOP)など有力28社は、自社の基幹システムと「ジョア」を連携させて、受発注や在庫管理、売れ行き傾向の把握などをよりスムーズに行っている。基幹システムと連携させた方が効率的だと判断させるほど、多くのブランドが「ジョア」を導入しているということでもある。

 こうしたサービスは、「ターミナル・オーダー」を含め各国に競合があるが、「ジョア」の強みは紹介してきたようにブランド側、小売り側共にユーザーが圧倒的に多いこと。「まずアメリカブランドに『ジョア』が広がり、その結果ニーマン・マーカスが導入を決めた。そうしたら、ニーマンと取り引きのある残りのブランドにも広がり、それらを目当てに別の有力小売りが加わるといった具合に雪だるま式にユーザーが増えていった」と、ジョアの森本匡史ビジネスデベロッピングマネジャーは話す。日本国内では基幹システム連携まで行っている小売りはまだないが、「4000弱の店が既にユーザーとなっている」という。

 注目したいのは、「ジョア」がSNSのような要素も持ち合わせている点。それによって、ブランド側もバイヤー側も「ジョア」上で新しいクライアントを探すことができる。実際に、卸販売を行っていないある国内ブランドが、直営店店長による店別の発注数量の取りまとめのために「ジョア」を導入したところ(そういった使い方をしている企業も実は多いという)、海外の小売店から「うちも買いたい」と連絡がきた。また、19年1月には決済機能も搭載。国内ブランドが海外の卸先を開拓しようとすると、「売ったはいいが売掛金が回収できない」という話をよく聞くが、そうしたリスクも防げる。

二酸化炭素をまき散らし、パリに集まるのは時代遅れ?

 高額品を扱うラグジュアリーブランドが多数導入していることもあり、「ジョア」の2019年の年間流通総額(GMV)は卸ベースで120億ドル(1兆2900億円)、小売りベースで約3兆円と、類似サービスとはケタが2つほど違う。年々伸びていたところにコロナショックによるデジタルシフトも加わり、勢いはさらに加速中だ。ウィメンズの20-21年秋冬パリ・コレクションは多くのバイヤーが出張を取りやめたことで、「2~3月のGMVは前年同期の2.5倍になった。1~3月の結果から見積もると、2020年のGMVは4兆円に届きそう」と自信を見せる。

 コロナショックを別にしても、ファッション業界にはサステナビリティの意識が浸透しつつあり、「毎シーズン、飛行機で二酸化炭素をまき散らし、大勢のバイヤーがパリやミラノに集まるような業界の仕組みは時代遅れだ」といった批判も出ていた。「ジョア」さえあれば、もうパリやミラノに毎シーズン集まる必要はなくなる。ソーシャル・ディスタンシングが今後の世界の標準になるならば、この流れは必然だろう。そうなると、「ジョア」の存在が業界のビジネスのあり方そのものを変えていく可能性もある。

 ビジネスモデルとしては、「ジョア」はブランド側のみが月々の使用料を課金する仕組み。社内4人のユーザーが使用すると想定したミニマムプランで年間利用料は9999ドル(約107万円)。5人以上になれば利用料も順次増えていく。小売店側は無料で使用できるが、基幹システムの連携まで行うとなるともちろんその分の投資が必要だ。「日本では、今後2年間でまず導入ブランドを増やす。それによって自然と小売りも増えていくはずだ。その結果、セレクトショップなどで基幹システムを連携しようというところも出てくるはず」と、森本マネジャーは期待する。直近では、6月の伊ピッティ・イマージネ・ウオモやパリのメンズ・ファッション・ウイークに参加予定だった日本のメンズブランド群からの引き合いが高まっているという。

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NMB48の村瀬紗英が初の写真集「Sがいい」を出版 SNSの総フォロワー数130万超えの彼女の魅力とは

 大阪を拠点に活動するNMB48のメンバーの村瀬紗英が、4月22日にファースト写真集「Sがいい」(主婦と生活社)を出版する。発売前から予約が殺到し、すでに重版も決まっている。彼女のSNSの総フォロワー数は130万超えで、特に自身のコーディネートを毎日投稿しているアプリ「WEAR」はフォロワー数74万を超える。また、ファッションブランド「アンジービー(ANGEEBEE)」をプロデュースするなど、「#ムラセンス」と呼ばれるほどファッショニスタとしても注目を集める。美容への関心も高く、特に韓国コスメ好きだという彼女の魅力に迫る。

WWD:今回、初の写真集「Sがいい」を出版するが、そこに至った経緯は?

村瀬紗英(以下、村瀬): もともと4年ほどウェブマガジン「ar web」で連載を持たせていただいて、その流れもあって「写真集を出さないか」というオファーをいただきました。私も自分の写真集を出すことが目標の一つだったので、「やっと出せる」とすごくうれしかったです。

WWD:「ar web」で連載を持つことになったきっかけは?

村瀬:昔からファッションが好きでモデルの仕事がしたいと思っていて、それで「ar」編集部さんにごあいさつに行ったら、ちょうどウェブマガジンの「ar web」がスタートするタイミングで、そこでレギュラーが決まりました。今も拠点は大阪なので、撮影のタイミングで東京に通っています。

WWD:あらためて、NMB48に入ったきっかけは?

村瀬:母親の影響もあって、小学校4年生のときにファッション雑誌を読むようになり、それからずっと芸能界、特にモデルという職業に憧れを持つようになりました。それで中学3年生のときに母親から「大阪でNMB48の第2期生を募集しているからやってみたら」と言われて、オーディション受けたのがきっかけでNMB48に加入しました。私自身もモデルをやりたいとは思っていましたが、まさかアイドルをやるとは思っていなくて、そのギャップに周りの友だちにも驚かれましたね(笑)。最初は自分がダンスしているのを鏡で見るのも恥ずかしかったんですが、今ではライブでの自分の見せ方を研究するようになりました。

WWD:村瀬さんの強みは?

村瀬:ステージ上の表現力を褒めてもらうことは多いです。特にダンスはセクシーだったり、かわいいだったり、かっこいいだったり、曲に合わせてどうやって見せたらいいかを考えるようにしています。

WWD:ファッションアプリ「WEAR」のフォロワー数も74万を超えていてすごい人気。

村瀬:「WEAR」を始めたのは2016年6月で、当時はNMB48でファッションの仕事をしているメンバーがいなかったこともあり、私がその第一人者になれればと考えたんです。それでどうしたら「私がファッションを好きなこと」を伝えられるかと調べていたら、「WEAR」というアプリを見つけて、毎日更新していたらフォロワーも増え、こうしてファッションの仕事もできるようになりました。ファンの人から「投稿をコーディネートの参考にしています」という意見ももらったりして、すごく励みになりますね。今、「アンジービー」というブランドのプロデュースをさせていただいているのですが、それも「WEAR」がきっかけで声をかけてもらいました。ほかにもSNSだとツイッターとインスタグラムをやっていて、そっちではお知らせだったりプライベートなことを載せたりしてります。

WWD:ファッショブランドプロデュースは大変なのでは?

村瀬:大変ですが、着てくれている人を見るとうれしいです。「アンジービー」は18年11月からプロデュースしていて、私と同世代の女性に向けて作っています。本当はモデルの仕事をして、それから自分のブランドを持てたらと思っていたのですが、イメージしていたよりもはやい段階でやらせていただくことになりました。それまでデザインを考えたこともなかったのですが、私自身、身長が低いので、全体のバランスがよく見えるようなデザインを意識しています。これをきっかけに女性のファンも増えました。今は東京のラフォーレ原宿に店舗がありますが、大阪にも作りたいですね。

WWD:村瀬さん自身はどんな系統の服が好き?

村瀬:特にこのジャンルが好きというのはなくて、かっこいいものから、透け感のあるセクシーなもの、かわいらしものなど、その日の気分に合わせていろいろな系統の服を着ます。自分が気に入った服だと色違いで3着買ったりもします(笑)。好きなブランドは、「アメリ ヴィンテージ(AMERI VINTAGE)」で、すごくかわいいなって思います。

写真集は2泊3日のオール韓国ロケ
「100%満足できる作品」

 

WWD:写真集はオール韓国ロケだったが、どういった理由から?

村瀬:18年に韓国のオーディション番組「PRODUCE 48」に参加して、それで韓国がすごく好きになって、写真集を出すなら韓国で撮影したいとずっと思っていたんです。それでこの写真集を出版することが決まったときに、こんなイメージにしたいという資料を大量に担当の編集者さんに送りました。コンセプトは“韓国デート”です。撮影は2泊3日しかなかったんですが、おかげさまで100%満足できる内容になりました。

WWD:写真集では“ドSボディー”というキャッチコピーがつけられているが、その意味は?

村瀬:「ar」の編集長につけてもらったんですが、紗英のSだったり、強めなサディスティックのS、スレンダーのS、スマイルのSなどいろいろな意味が込められています。写真集を出すにあたって、撮影まで3週間ほどしかなくて、ジムに2つ通ったり、食事にも気をつけて急いでかなり体を絞りました(笑)。

WWD:どんな人に写真集を見てもらいたい?

村瀬:写真選びとかにも関わらせていただいて、私のやりたかったことを100%詰めたので、多くの人に見てもらいたいです。男性だけでなく、女性が見ても楽しめる内容になっていると思います。

WWD:メイクもまねされることが多いようだが、こだわりは?

村瀬:メイクは普段でもしっかりとするようにしているんですが、目だけだったり、リップだけだったり、ポイントで際立たせるようにしています。特にリップは派手めなことが多いです。「PRODUCE 48」に参加してからは韓国メイクにはまって、“陶器っぽい肌”を心掛けています。好きなブランドも韓国のものが多くて、「クリオ(CLIO)」や「3CE」などをよく使っています。

WWD:今後の目標は?

村瀬:小学校4年生のときから雑誌の専属モデルになりたいという夢があるので、それを目指したいです。あとは演技の方もやっていきたいです。

WWD:最後に新型コロナウイルスの影響でイベントや公演も中止になっているが、どう感じている?

村瀬:普段当たり前のようにファンのみなさんの前に立ってパフォーマンスできていた日々が、あらためてとてもありがたいことだったと感じ、また私自身もライブが大好きだったんだなと再確認しています。コミュニケーションを取る場所が今はSNSなどに限られてしまっていますが、毎日皆さんからのメッセージに支えられています。今はおうちでずっとギターを弾いています。あとは韓国語を少し勉強したり、配信サイトでドラマを見たり、ユーチューブで音楽を見たり……そんな感じです。最近はギターだけでなく、ドラムに挑戦したら反応がよかったので、エアーでドラムの練習もしたりしています(笑)。今ははやくこの事態が収束するのと、みなさんの健康を祈っています。

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次世代ソーシャルコマース「パルテ」が目指す「SNSで何でも買える世界」

 「パルテ(PARTE)」は、25~40歳の女性をターゲットとしたファッション特化型のショッピングSNSだ。同サービスは2018年4月にリリース。ユーザーが投稿したコーディネート画像から、気になった着用アイテムをすぐに購入できる仕組みで、現在は合計フォロワー数600万を超える、多数のインフルエンサーもユーザーとして参加している。3月にはパルをはじめとする複数ブランドとの提携のほか、グローバル・ブレインなどを引受先とする1億7500万円の資金調達を発表した。ECとSNSが融合した“ソーシャルコマース”の領域ではZOZOのコーディネートアプリ「WEAR」など、既に先行者がいる中で、後発である「パルテ」はどのように戦っていくつもりなのか。同サービスを運営するREGALIの共同創業者である稲田光一郎代表と北野あゆみ取締役に話を聞いた。

 「パルテ」では、誰でもコーディネートの投稿ができ、その投稿からアイテムの購入が可能だ。投稿の簡便性も特徴で、インスタグラムでの過去の投稿から画像や文章、ハッシュタグの引用が可能なほか、ハッシュタグから着用アイテムを解析し、購入リンクを付けることもできる。稲田代表は「インスタグラムにもショッピング機能はあるが、基本的に個人のアカウントでは販売リンクを紐づけることはできない。そのため、個人の投稿から気になるアイテムを見つけたとしても、ウェブで検索しなければ購入できなかったり、まとめ買いができなかったりと購入へのハードルも高かった」と説明する。

 また、現在投稿者の一部に向けてテスト的に運用している、インセンティブのサービスも特徴的だ。コーディネート内のアイテムの販売リンクにアクセスされるごとに、価格の数パーセントが投稿者側に支払われる仕組みを取っている。「従来のSNSでは、普段はファッション関係の投稿をしているのに、全然関係のないサプリのPR投稿してしまうなど、投稿者側のマネタイズも障壁となっていた」と稲田代表。インセンティブ制の対象となる投稿者の基準について、インフルエンサーへのアプローチなどを主に担当している北野取締役は「『パルテ』のユーザーは主婦が多く、キレイ目カジュアルな服装が人気なため、そういった世界観を実現でき、サービスをしっかりと使ってくれそうか否かを重視してお声がけしている」と説明する。インセンティブ制はインフルエンサーにも好評で、「今まで“いいね!”などでしか自身の影響力の指標が無かったが、どれだけアイテムが売れたかなどで自分の影響力がより明確に分かるようになったという声を頂いている」という。この仕組みがきっかけでユーザー数の増加が加速し、19年10月にはiOS版アプリのダウンロード数は10万を突破。年内には100万ダウンロードを目指す。

 3月にはパルをはじめとする複数のブランドとの提携を発表しているが、具体的には何を行う計画なのか。「『パルテ』経由で商品が売れた段階で、提携先のブランドからは一定額の報酬をもらう。その代わり『パルテ』側からは、サービスを通じた送客のほか、誰のどのようなコーディネートから、どのようなアイテムが売れたのか、このインフルエンサーはどのような商品を売るのが得意なのかといった、ブランドを横断したデータを提供する」と稲田代表。現在は大手企業を中心にアプローチ中で、「自社のECを伸ばしたく、かつインフルエンサーマーケティングうまく行いたいという企業には反応が良い」と手応えを感じているようだ。

 今後は提携企業・ブランドの開拓とサービスの拡充を行っていく計画だ。「ゆくゆくはコスメなど、商品のカテゴリーを拡充させていきたいとおも思っている。目指しているのは中国のSNS『RED(小紅書)』に近い。インスタでいいな、と思えるものを見つけても、結局グーグルなどで調べることになるのが大半で、現状はいい動線づくりとは言えない。『WEAR』もあくまで『ゾゾタウン』の売り上げを最大化させるサービスで、『ゾゾ』内のアイテムしか購入できない。そうではなく、何でも買えるサービスの方が、ユーザーとしても使いやすいはずだし、『パルテ』が実現していきたい世界だ」。

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米マッキンゼーがアパレル業界に7つの提言 新型コロナ危機を乗り越えるためのヒント

 新型コロナウイルスの影響で多くのアパレル企業が店舗を休業せざるを得ず、苦境に陥っている。大手コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニー(McKINSEY & CO.)が発表したリポート「危機的な状況下における北米アパレル業界の見通し(Perspectives for North America's Fashion Industry in a Time of Crisis)」によれば、この危機を乗り切るためには従業員を守り、手元資金を確保し、在庫を確認してサプライチェーンを見直し、デジタル化を推進し、消費者とのつながりを維持することが重要だという。以下にその詳細と、中長期的な展望を紹介する。

・従業員を守る

 事業を長期的に継続するには従業員を守ることが大切だが、今回の危機に当たっては、職場の安全対策や雇用条件について頻繁かつ明確に伝達してコミュニケーションをしっかり取ることが特に重要だという。それと同時に、店舗で厳密な衛生管理を行い、ECでの商品配送の際にも対人接触を避けている宅配業者を使うなど、顧客を守る姿勢を明確に打ち出すことも重要だ。

・手元資金の確保

 事業を継続するには、手元資金を確保する必要がある。その第一歩として調達部門と営業部門とからなるチームを編成し、支出を精査して、削減できる分野を細かくリストアップしていくという方法がある。また政府や自治体による支援策を利用して財務状態の健全化を図ることも検討したい。

・在庫管理

 棚卸しを行い、粗利の最大化や運転資金の確保のために何をするべきかを知り、サプライチェーンを見直すためのヒントを得ることが重要だ。まず春夏物の在庫を確認して、晩夏や初秋まで店頭に置けるものや、アウトレットに出せる商品を選り分けるとよい。保管スペースがあるなら、年末商戦の特価セール用に取っておくという選択肢もある。

 商品を補充する際には、サプライチェーンのことも念頭に置かねばならない。調達や製造などの上流部門は、発注量の減少のため苦難に直面している可能性が高いからだ。まとめて発注する、支払いに関して明確に連絡するといった方法によって取引先をサポートすることも考えたい。

・デジタル化の推進

 今後はデジタル化がいっそう加速することが予想されるが、ブランディングだけではなく、顧客との関係強化に活用することを勧める。デジタルマーケティングでのコンバージョン率を上げ、ECでの購入額の増加や再購入を促すと同時に、実店舗に誘導する効果も期待できる。

・顧客とのつながりを強化

 顧客とのコミュニケーションをただ維持するのではなく、そのブランドらしさや誠実さが伝わるようにすることが大切だ。倉庫で働く従業員に対する安全対策や、「こうした危機的な状況の中でも、一足の新しい靴が喜びをもたらしてくれる」というストーリーなど、相手の心に響くエピソードを共有してコミュニティーをつくることを意識するとよい。

 また、顧客の10%程度が売り上げ全体の60%を占めていることも珍しくない。個別にカスタマイズしたプロモーションや、新商品および限定品をいち早く入手できるといった特典など、得意客をつなぎとめるための施策にも力を入れることを勧める。

・中期的な戦略

 テレワーク、旅行の自粛、イベントなどのキャンセルや延期がしばらく続くことが予想されるため、調達や製造部門に大きな影響が出ることは想像に難くない。アパレル企業は春夏物の売れ行きを注視しつつ、秋冬物や年末商戦向けのマーチャンダイジングについてサプライヤーなどの取引先とも協議するべきだ。

 店舗の営業を再開する際には、本当に再開するべきかどうかを一店ずつ慎重に検討する。景気や経営環境によっては再開しないか、業態を変更してより価格重視の店として在庫整理に活用するといった選択もあり得るからだ。また、休業中に消費動向が変化している可能性があることも考慮しなければならない。ECで注文した商品の受け取りカウンターを拡充するなど、売り場を改装したほうがいいケースもある。

・長期的な展望

 アパレル企業は、従来のように価格重視のサプライチェーンから、危機に対してより柔軟に対応できるサプライチェーンへとシフトしていくことが予想される。新型コロナウイルスが“世界の工場”と呼ばれる中国で発生したことから製造工場が軒並み休業し、国外での生産に依存することのリスクが浮き彫りになったためだ。将来的には、多少のコスト高であっても国内もしくは近隣国での生産へと少しずつ切り替わっていくだろう。

 在宅勤務の経験者が増えたことで、事態が沈静化して出社が可能になった後もリラックスした服で通勤したいという意識が高まり、オフィススタイルのカジュアル化がさらに進むと思われる。

 自社商品のカテゴリーや品ぞろえを冷静に見直し、事態が収束した後の市場ニーズを的確に捉えられるかどうかを考えれば、今後どのように事業を運営していくべきかが自ずと見えてくる。資金に余裕がある場合は、(株価が落ちていることを利用して)アパレルブランドなどの買収を検討してもいいだろう。

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新型コロナで留学中止・延期になった学生へ 家でファッションを学べるコンテンツまとめ

 店舗休業や発注キャンセルなど、新型コロナウイルスはファッション業界に甚大なダメージを与えているが、業界で働く人々だけでなく、業界を志す学生にも大きな影を落としている。オンライン入学式やオンライン授業への順応もそうだが、SNS上には留学が中止または延期になったり、留学していたが一時帰国を余儀なくされた学生の不安と悲しみの声が広がっている。「学生生活は短いのに、なんで今?」と思うのは当然で、中には人生計画を練り直さなければいけない学生もいるだろう。とはいえ収束のめどが立たない今、家にいるしか自分たちにできることはない。しかしこんな状況でもファッションへの興味や関心はどうか絶やさないでほしい。そんな願いを込めて、家でファッションを学べる無料のオンラインコースやポッドキャスト、各種サービスなどを紹介する。もちろん留学先のカリキュラムや修了証、異文化で学んだ体験に代わるものではないが、モチベーションを保つきっかけになれば幸いだ。

Online Course

 オンラインコースプラットフォーム「フューチャー ラーン(Future Learn)」には、この記事でも紹介されたフランスの服飾学校、IFM(Institut Francais de la Mode)による、サイモン・ポート・ジャックムス(Simon Porte Jacquemus)やシドニー・トレダノ(Sidney Toledano)LVMHファッショングループ(LVMH FASHION GROUP)会長兼CEOらも登壇するコース「Understanding Fashion: From Business to Culture」のほか、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション(London College of Fashion)とケリング(KERING)が共同で制作したサステナブルファッションに特化したコース「Fashion and Sustainability: Understanding Luxury Fashion in a Changing World」が公開されている。この2つのコースは受講開始から数日間(コースによって異なる)は無料で動画を見ることができる。

 世界中の大学や機関と協力してオンラインコースを提供している「コーセラ(Coursera)」では、ニューヨーク近代美術館(The Museum of Modern Art, New York、MoMA)が「Fashion as Design」というコースを提供している。世界中から収集した70以上の生地やアクセサリーを通して、人々が何をなぜ着て、どう作られているのか、服は何を意味するのかなどをデザイナーや歴史学者から学ぶことができる。また、イタリアのボッコーニ大学(Universita Bocconi)は、「Management of Fashion and Luxury Companies」というコースを提供している。このコースはファッションは何か?という基礎をはじめ、ラグジュアリーファッション企業からファストファッション企業のビジネスモデルやマネジメントなどをケーススタディ形式で学べる。「コーセラ」は最初の1カ月間が無料で、購読解除はいつでも可能だ。

SHOWstudio

 フォトグラファーのニック・ナイト(Nick Knight)が主宰するサイト「ショースタジオ(SHOWstudio)」では、ニック・ナイトのディレクションのもと、キム・ジョーンズ(Kim Jones)やピーター・リンドバーグ(Peter Lindbergh)、ケイト・モス(Kate Moss)らエキスパートたちの動画インタビューやパネルディスカッションなどを掲載。そのほかカニエ・ウェスト(Kanye West)やリック・オウエンス(Rick Owens)による音楽のプレイリストを紹介するプロジェクト「Fashion MIX」や、スタイリストやアーティストがショーのベストルックを解説する動画シリーズ「Best in Show」などさまざまなプロジェクトが動いているが、中でも2002年にスタートしたプロジェクト「Design Download」は、「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」や「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」「マルタン マルジェラ(MARTIN MARGIELA)」「イリス ヴァン ヘルペン(IRIS VAN HERPEN)」など名だたるブランドのデザインパターンを無料でダウンロードでき、家で制作に励みたい服飾学生にぴったりだ。

Podcasts

 「ビジネス・オブ・ファッション(Business Of Fashion、BoF)」のポッドキャストでは業界をリードするプロの話を聞くことができるのが最大の特徴だ。ファッション業界人にインタビューするシリーズ「Inside Fashion」や、名物ジャーナリスト、ティム・ブランクス(Tim Branks)=エディター・アット・ラージによるコレクションの振り返り、「BoF」主催のセミナーイベント「BoF VOICES」からのアーカイブを主録している。新型コロナ禍の現在は「BoF」のインスタグラムアカウントで「#BoFLIVE」と題してデザイナーのチャールズ・ジェフリー(Charles Jeffrey)やヘアスタイリストのサム・マックナイト(Sam McKnight)、エマニュエレ・ファルネティ(Emanuele Farneti)伊「ヴォーグ」編集長らと共にインスタライブを行なっているが、このアーカイブもポッドキャストに収録されている。

 「ハイスノバイエティ(Highsnobiety)」のポッドキャストシリーズ「ドロップキャスト(dropcast)」では、「ハイスノバイエティ」のエディターたちが毎週ストリートファッションのニュースや発売アイテムの振り返り、今週何を買ったかといったトピックスについてカジュアルに話すのだが、出演者の本音を聞くことができるのが面白い点だ。「このスニーカーは俺だったら“drop(買わない)”するね」などと正直に話してくれるので、ストリートファッション界で何が今アツいのかが非常に分かりやすい。またマシュー・ウィリアムズ(Matthew Williams)といったビッグネームも時々参加するので、フレンドリーな雰囲気の中で彼らの話を聞くことができるのも特徴だ。

Google

 グーグルが提供する「Google Arts & Culture」は、家にいながら世界有数の美術館や博物館を巡り、収蔵されているアート作品を鑑賞することができるサービスだ。インスピレーション探しに美術館のバーチャルツアーに参加するのもありだが、ファッションに特化して学びたいならプロジェクト「We Wear Culture」がおすすめだ。このプロジェクトのページから美術館や博物館が収蔵する服飾のアーカイブやオンライン展示にアクセスできるだけでなく、ファッションのあり方を変えたスターやデザイナーについてのストーリーをまとめたトピックスページや、ベルサイユ宮殿から東京のストリートまでのトレンドをまとめたトピックスページを見ることができる。

YouTube

 ユーチューブを知らない人はいないだろうが、「youtube.com」のあとに「/fashion」を入れて検索すると、ユーチューブ上のファッションにまつわる動画がまとめられたチャンネルページにアクセスできることを知っている人は少ないかもしれない。19年に立ち上がったユーチューブの公式チャンネルで、ファッションショー、デザイナーやモデルへのインタビュー、クローゼットツアー、メイクのハウツーなどありとあらゆる動画がまとめられており、ファッション好きなら何時間も過ごしてしまいそうになるページだ。アカデミックな内容よりも動画として面白いものが多いので、勉強に疲れたらちょっと息抜きによさそうだ。

 今回は留学を志す学生、または留学していた学生を対象とし、かつ無料で体験できるものを紹介したため英語のコンテンツがほどんどになってしまったが、「WWD JAPAN.com」では4月17日17時からファッションとビューティを学べるプログラムをライブ配信する予定だ。もちろん日本語で、マーケット分析やトレンド提案、ヘア&メイクアレンジなどプロフェッショナルからファッション&ビューティラバーまで楽しめるセッションを用意しているので、ぜひのぞいてみてほしい。

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敏腕ディレクターに聞く!不透明なアパレル市場に立ち向かう秋冬戦略

 新型コロナの拡大の中で、国内アパレル市場は先行き不透明感を増している。「どんな服をどれくらい作ったらいいんだろう?」。これは特に2020-21年秋冬に向けて、各社の商品企画や仕入れに関わるMD担当者の共通の悩みだろう。

 このような状況下だからこそ、市場を知り尽くしたスペシャリストからヒントを得たい。「(2020-21年)秋冬コレクションの型数を大きく減らすつもりはありません。お客さまをワクワクさせられるよう、今できる準備をする」。そう語るのは、マッシュスタイルラボ企画部副部長で、「ミラ オーウェン(MILA OWEN)」を統括する井木秀香ディレクター。コロナショック直前(19年8月~12月)まで、同ブランドの既存店売上高は前年同期比22.4%増と好調を続けた。

 丹念な市場リサーチと企画力で女性のリアルトレンドをとらえ、30~40代を中心に支持を受けてきた。見通しの立たない状況下で、井木ディレクターが描く今後の商品戦略を聞いた。

WWD:現在、リアル店舗の状況は?

井木秀香「ミラ オーウェン」ディレクター(以下、井木):4月に入り、外出自粛や館の閉鎖により、店舗の営業自体が大きく制限されています。代わりに、お客さまにはご自宅でゆっくり買い物をしていただこうと、3~4月にかけて自社の全ブランド商品が11%オフになるECのキャンペーンを実施し、非常に好評を得ています(3月12日~4月13日で自社ECの売上高は前年同期比で約2.6倍)。しばらくはECでの接客・販売に力を入れて踏ん張りたい。コロナが落ち着き、店舗の営業が再開したら、館も巻き込んだ集客の施策を仕込みたいと考えています。

WWD:20-21年秋冬のMDスケジュールはどうなる?

井木:現状では「普段通り」です。新型コロナが夏に収束に向かっていくと仮定すれば、店頭の春・夏物の動きを見て、晩夏物以降の投入を後ろ倒しにすることはありえます。

WWD:秋冬シーズンに向け、現在の事業部の動きは?

井木:20-21年秋冬のコレクションのサンプル作成を進めています。当社は平時、シーズンごと4回に分けて展示会を実施していますが、今回はデジタル配信など違う形で披露しようと方法を模索しています。ただ商品企画では難しいと感じる面もありますね。普段のように取引先と膝を突き合わせて商談を行うことができないからです。そのため、よほど努力しなければ、モノ作りの“幅”が狭くなってしまうと感じます。

WWD:商品企画では具体的にどんな変化がある?

井木:人が集まる場所へ行くのは控える人が多いと思うので、たとえばオケージョンを意識した服などは、秋冬でもボリュームを多少抑えるかもしれません。コレクション全体に関しては、慎重を期して生産を絞り、「期初で様子を見て、期中に追加生産を掛ける」という選択肢もありました。ですが、いつもどおりの型数を仕込むつもりです。「ミラ」の根っこにあるのは、徹底した市場リサーチとペルソナ像の深堀りによる、毎シーズンのコンセプトの作り込み。必要以上に(型数を)減らせば、それが十分に表現できない。これは私たちにとって、とても怖いことです。

WWD:なるほど。

井木:この状況下では「何かを変えなければ」とばかり考えがちですが、自分たちの“変わらない強み”を見つめなおすことも大事だなと。そう気付かされた出来事が3月にありました。すでにコロナの影響も色濃くなり始めたころでしたが、新商品のオーガニックコットンを使用したニットと、ロング丈でビンテージサテン風のスカートが飛ぶように売れたのです。ニットは定番としてデビューシーズン(2014年)から作り続け、シーズンごとにアップデートしてきた、個人的にも思い入れのあるアイテム。適正価格で、然るべきタイミングにいいものを届ければ、必ず喜んでいただける。ですからこのような状況下でも、モノづくりの丁寧なプロセスは絶対軸ですね。

WWD:アフターコロナの市場トレンドをどう想像する?

井木:これまでの流れでいえば、エレガントなものが求められるはず。ロング&リーン(細長い)なシルエットが気分になりそうです。それをデイリーに着られるよう、「ミラ」らしくリアルクローズに落とし込みたい。ほかにも明るめなカラーを増やすなど、ワクワクしていただける準備をして、お客さまをお迎えしたいですね。

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アパレル販売員から独学で人気フラワーアーティストに リョウ・リレイに聞く仕事や美の向き合い方

 「ボビイ ブラウン(BOBBI BROWN)」はベストセラーファンデーション「インテンシブ スキン セラム ファンデーション SPF 40(PA++++)」の発売5周年を記念し、あらゆる女性が自身の魅力に自信を持てるようにという願いを込めたキャンペーン「#これが私の美しさ」をスタートした。キャンペーンの一環として、さまざまな分野で活躍し、このメッセージを体現した女性をアンバサダーに起用した。その一人に選ばれたフラワーアーティストのリョウ・リレイはファッション業界でキャリアをスタートし、独学でフラワーアレンジメントを学んだ後、独立。「洋服のコーディネートを組むように花をアレンジする」といったファッションの経験を生かした作品は幅広い層から高く評価され、現在はウエディングから、ファッションやビューティブランドのイベントのデコレーション、さらにはレッスンまで多岐に渡って活動する。そんなリョウ氏に、フラワーアレンジメントや美について聞いた。

WWD:フラワーアーティストを目指したきっかけは?

リョウ・リレイ=フラワーアーティスト(以下、リョウ):自分が結婚式を挙げるときに満足いくフラワーデコレーションが見つからず、自分でプロデュースしたのがきっかけです。

WWD:元々はファッション業界で働いていた。

リョウ:そうですね。元々ファッションが好きで、アパレルの販売職をしていました。お客さまに寄り添った商品提案を考えることがとても好きなんです。お花も一緒ですね。その人にとって一番似合う花の色や空間の色合わせを心がけています。洋服にしろ、お花にしろ、女性をより美しくする仕事がしたくて、この道を選びました。

WWD:全く別の業界に転職することにためらいはなかった?

リョウ:全くなかったですね。ただ、今までは値段が付いた“モノ”を売っていて、今度はデザインを売るということだったので、色々思考を変える必要はありました。でも、「何事もやってみないとわからないよね」という感じで、どうにかなるかと考えていました。

WWD:ファッションの仕事を辞めて、フラワーアレンジメントが仕事になるまではどのくらいかかった?

リョウ:全くのゼロからのスタートで独学だったんですが、幸い3カ月で仕事になりました。ウエディングから始めて、今は結婚式以外のディスプレーやイベントのデコレーションなどの仕事も増えています。

WWD:フラワーアレンジメントは華やかに見えて、大変なこともあるはず。ここまでモチベーションを保てたのは?

リョウ:お客さまの喜ぶ顔が見たいという一心だけでした。正直大変な仕事で体力的にもきつく、「好き」だけではやっていけない。自分がデザインしたブーケを渡したときに、新婦さんが泣いて喜ぶ顔を見るのがうれしくて、その感動があって18年も続けられたのだと思います。人の幸せに携われることこそ、幸せだと思います。

WWD:花の美しさとは?

リョウ:正面が美しいものもあれば、横から見て美しいものもある。それぞれ個性があり、美しい。あとは生命力。その力強さがお花そのものの美しさなのかなと感じています。また、お花を見たら癒されますし、お花を貰って不幸になる人はいないですよね?存在そのもので人を幸せにできる。それも魅力です。

WWD:今回「ボビイ ブラウン」のアンバサダーに選ばれた。

リョウ:今の年齢で選ばれたのはとてもうれしかったです。また、メイクの力に改めて気付かされました。自分でも毎日メイクしていますが、メイクを少し変えるだけで女性は別人になれる。外見だけでなく、中からも変わるパワーを与えます。そのパワーはきっと、周りの人もハッピーにできるのではと思います。

WWD:自分の中のモットーは?

リョウ:自分が楽しんで仕事をしないと、人には絶対に伝わらない。何事に対しても「これでいい」ではなく、「これがいい」というように考えています。昔からそういう性格でした。またスタッフには「100%自分が努力したものしか出さないで」と言い続けています。中途半端なものをスタッフが見せに来たときに「この商品に(店頭と)同じ金額を払える?」と聞くと、大抵みんな戸惑います(笑)。プロはお金をいただいているので、全力を注ぐのは当たり前です。

WWD:「ボビイ ブラウン」は今回、全ての女性に自身の魅力に自信を持ってもらうようなキャンペーンを打ち出している。なかなか自信が持てない女性に対してアドバイスするとしたら?

リョウ:自分の可能性は自分でしか決められないと思います。誰かが引き上げてくれるわけでもない。自分の可能性を自分で制限してしまうのは非常にもったいないですね。また何事もやらずに後悔するよりは、やってみて後悔の方が良いと思います。私も仕事を始めたときに未来のビジョンは決まっておらず、とにかくやるべきことをコツコツ続けてきました。大きな目標がなくとも、自分が今やりたいことに対して素直に進めば良いと思います。

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佐久間裕美子のNYリポート 新型コロナ禍を機にサプライチェーンを再考する

 アメリカ・ニューヨークは、3月中旬からロックダウンが始まり、食料品、医薬品を扱う小売以外の店舗は基本閉業。外食業界はテイクアウトのみ。経済再開は早くても5月以降の見通しだ。

 新型コロナウイルス感染がニューヨークでも広がり、もともとマスクを着用する習慣のなかったアメリカ人がマスクを求めて殺到すると、あっという間に医療従事者たちに行き渡るマスクすらもなくなった。が、それとほぼ同時に、国内で生産するブランドが「マスクを作ります」と宣言し始めた。今、「ギャップ(GAP)」「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」「L.L.ビーン(L.L. BEAN)」といったアパレル企業が、新型コロナの前線に商品を提供している。

 3月19日には、世界的なサプライチェーンから無駄をなくすために、サプライチェーンのプレーヤーたちの連合として2018年に設立された「ザ・ワールドワイド・サプライ・チェーン(THE WORLDWIDE SUPPLY CHAIN)」が、COVID-19イニシアチブをローンチした。PPE(PERSONAL PRPTECTIVE EQUIPMENT)と総称される医療従事者の防護服の需要に追い付くために、生産のインフラを持つファッション業界、またその他のグッズのメーカーと、病院や、病院で必要な資材を確保する支援団体をマッチングして、医療現場で働く人たちが物資の不足によってリスクを負わない状況を確保することが目的だ。ファッション業界の発注プラットフォーム「ジョア(JOOR)」が実際の売買を担当し、サプライチェーンの動きを可視化するためのデータベースは、オーガニゼーションツールのアプリ「エアテーブル(AIR TABLE)」が提供した。

 アメリカで日に日に深刻になる医療関係者が必要とする物資の不足は、今も緊張状態にはあるが、これまで医療機器の業界とは無縁だったファッション業界が、新型コロナの危機に迅速に対応し、対策に参加している姿は頼もしいというほかないが、一方で、業界の未来は明るくない。2月のことを思い出してみると、ウイルス自体がアメリカに上陸する前に、中国からの物流が遮断されたことで、じわじわとファッション業界のサプライチェーンに影響が出始めた。商品が届かない、パーツが届かないといったことによって店に出す商品がない、カタログやエディトリアルを撮影することができないという影響が出たのだ。その後、売る商品がなくなるのではという懸念は、病人が増える、病院の対応が追い付かないという状況と、「不要不急」に相当しない世の中のビジネスを全て止めるという決断に押し流された。

 人との接触を極力減らすオンラインでの商業は維持されてはいるが、業界全体の規模が縮小するのは必至である。こうした状況に最初に影響を受けるのは、特にファストファッションに代表される、複雑なサプライチェーンの末端に存在する途上国のワーカーたちである。すでに、欧米の企業からの注文を受けて生産を行う途上国の工場の多くが生産を縮小したり、一時停止したりしたため、バングラデシュのような生産国ではすでに大量の失業者が出ている。リーバイスのように、サプライチェーンに属する全プレーヤーに援助金を手当する企業も出てきているが、新型コロナ禍が去ったとき、現存するサプライチェーンのどれだけが生き残っているのか、またその後、どれだけの商材が必要とされるのかを想像するのは難しい。

 新型コロナ禍は、これまで肥大し、近年になって少しずつ持続性を取り入れてきたファストファッション業界の生産のサイクルを強制的にストップすることになった。環境メディアや言論の世界からは、新型コロナという歴史上の大事件をきっかけに、消費者も企業も、新型コロナ渦前の世界に存在していたファストファッションの商習慣と別れを告げるべきだという声が聞こえてきている。

 新型コロナ禍以前から、複雑になりすぎたサプライチェーンを一度壊し、消費者が求めるだけの商材を必要なだけ作り、それを売り切るというシンプルな仕組みを構築することの必要性が叫ばれてきた。「ザ・ワールドワイド・サプライ・チェーン」のような団体による生産のキャパシティーを持つ作り手と、買い手を結び、必要なものを必要な場所に届けるという試みが、今、新型コロナのおかげで人の生死を左右する現場で実践され始めている。新型コロナによって、世の中の価値観が書き換えられている。新型コロナが終息したあと、社会が持続性の低いファストファッション的習慣に戻らないことを祈るばかりである。

佐久間裕美子/文筆家:ニューヨークに22年在住。ファッション、カルチャーから、社会、政治にまたがる幅広いトピックについて書く。著書に「ヒップな生活革命」(朝日出版社)、「ピンヒールははかない」(幻冬舎)、「真面目にマリファナの話をしよう」(文藝春秋)

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エリザベス女王も選んだグリーンの装い TV会議で相手にも爽やかな空気を運んで

 イギリスのエリザベス女王は国民に呼びかけるメッセージ動画の中で、明るいグリーンの服を選びました。グリーンは植物の色であり、気持ちを落ち着かせる働きがあるといわれています。家ごもりの時間が長くなっても、自然ムードを象徴する緑をまとえば、気持ちが伸びやかになれそう。グリーンのトップスでテレビ会議に臨めば、相手にも爽やかな空気を運んでくれます。これまでグリーンに苦手意識の強かった人も、若々しさやサステナビリティ感を印象づけやすい色なので、この春夏は試し甲斐があります。

 「ルプコ(RPKO)」は異素材や色の濃淡を生かして、深みを帯びたグリーンルックに仕上げました。緑はドレープやタックから生まれる陰影と好相性を発揮するので、ディテールに凝った服を、いっそう趣深く見せてくれます。今回は国内ブランドの最新ルックから、おすすめのグリーンコーデをピックアップしてみました。

シャツワンピースで縦長シルエット

 自然体の気分をまとうなら、体を締め付けないシャツワンピースを候補に加えましょう。グリーン特有の伸びやかな雰囲気と、シャツワンピースの気負わないムードがしっくり調和。リラクシングな着映えに導いてくれます。

 「アンスリード(UN3D.)」は深いグリーンのシャツワンピースを、白いワイドパンツの上に重ねました。両サイドが切れ上がっているので、落ち感が強まる仕掛け。緑と白のコントラストがさわやかなムードを生んでいます。ウエストに太ベルトを巻いて、めりはりを印象づけました。

 写真2枚目の「ライフ ウィズ フラワーズ(LIFE WITH FLOWERS.)」は、スリーブレスワンピースとボトムスのセットアップでのコーデです。白地と組み合わせたチェック柄で涼やかなテイストに。盛り上がる英国調を思わせるグリーンのチェックはクラシックなムードも呼び込んでくれます。

ボトムスなら手持ち服になじみやすい

 グリーンは割と目立つ色なので、着慣れないうちは、ボトムスへの1点投入から始めるのがおすすめ。透けるタイプやくすんだトーンなら、手持ちのワードローブにも合わせやすいでしょう。

 「コンバース トウキョウ × ミュベール(CONVERSE TOKYO x MUVEIL)」のスカートは、レース仕立てでエアリーなたたずまい。透け感のおかげで、グリーンの爽やかさがさらにアップ。ジャケットとパーカでプレッピー風にアレンジしました。カーキの「コンバース」で軽快な足元に整えています。フェミニンなスカートと、ストリート寄りのパーカがずれ感を引き出しています。

 写真2枚目の「ユウミアリア(YUUMIARIA)」はグリーンのロングスカートですが、渋めの色味だから、ジェンダーレスな雰囲気。後ろ姿の裾に、スウェットTシャツを上下逆に縫い付けたようなリメイク風のトリッキーなデザインです。緑と白が互いに引き立て合うコントラストが効いています。

元気系グリーンで自然な脚長ルックに

 高発色のグリーンを、パンツに迎えると、チアフルな装いを組み立てられます。レッグラインを健康的に見せる効果も期待できそうです。

 「77 サーカ(77 CIRCA)」はグリーンパンツを主役に据えて、カラーブロッキングを組み立てました。ブルゾンはブルー、トップスの襟回りはイエロー、そしてサンダルはピンク。全体にポジティブな色合わせで、装いにエナジーを注ぎ込みました。緑と青は大自然を象徴するカラーだから、天然色コーデに仕上がります。

 グリーンの穏やかな雰囲気を逆手に取って、スリリングな着こなしを仕掛ける選択肢もあります。写真2枚目の「パメオポーズ(PAMEO POSE)」はグリーンのセットアップを軸に据えつつ、ストライプ柄生地で大胆な切り替えを施しました。インナーのビスチェとパールモチーフの巾着バッグでゴシックロマンティック気分を投入。チャレンジングなコーデを、グリーンのベースカラーがまとめ上げています。

 グリーンの効果はまるで「着るマインドフルネス(瞑想)」。コーディネートに組み入れれば、さわやかで涼しげな雰囲気がアップします。周りの人の気持ちもなごませるパワーがあるグリーンを生かして、大変な時期の装いに安らぎを寄り添わせてみてはいかが。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

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動画コマースの新潮流“触れる動画”、ファッション通販に新たな可能性

 ファッション業界でも拡大しつつある動画コマース。中でも「ティグ(TIG)」は、“触れる動画”テクノロジーとして注目を集める技術の1つだ。同技術は、動画内の対象物に情報を“ティグ付け”することで、視聴中に気になったモノ・コトの検索や購入を動画内で完結させる。2018年3月のローンチ以降、アパレル企業をはじめ導入企業数を増やしているほか、NTTドコモとライブ配信用の「ティグ ライブ」を共同開発したり、女性向け動画メディア「Cチャンネル(C CHANNEL)」とサービスを連携したりと、事業の拡大も行っている。“触れる動画”はファッションのネット通販に、どのような可能性をもたらすのか。「TIG」を開発・提供するパロニムの小林道生代表に話を聞いた。

WWD:パロニムを創業するまでは何をしていた?

小林道生パロニム代表(以下、小林):もともとは、ソフトバンクで映像伝送路の運用を8年ほど担当していました。その後、12年に会社を設立し、アドテクノロジーやデジタルマーケティング、ECなど、ウェブ周りのことを一通り経験していたのですが、その会社の新規事業として“触れる動画”の技術である「ティグ」を立ち上げました。16年にTIGの事業をスピンアウトさせる形で、パロニムを設立しました。

WWD:「ティグ」のアイデアは、いつ頃思いついたのか?

小林:ソフトバンクが08年に、iPhoneの独占販売を発表したころから何となくは考えていました。発表後に、社内で「コレ(iPhone)が世の中をどう変えていくインフラになるのか考えろ」と言われ、新規事業3000本ノックのような企画が実施されました。そこで僕は今の「ティグ」のベースとなる、動画に直感的にタッチするだけで情報を引き出せる、というアイデアを提案しました。でも、結局「アイデアはいいが、どう商圏を作るのかが分かりづらい」と言われ、2次面接で落とされてしまって。ビジネスとしての“出口”の部分を学ばないとなと考え、ウェブ上のビジネスの指標などを学ぶという目的も込めて12年に会社を立ち上げたんです。

WWD:“触れる動画”は通常の動画と比べ、どの程度の効果が出る?

小林:2~3分の動画の中に10カ所ほど“ティグ付け”はした方がいいといったノウハウなどもありますが、平均的に視聴完了率は大きく上昇しています。90%を超えるケースもある。また、“ティグ付け”先のサイトへ飛ぶ確率も約50%と、高い数値になっています。サイトへのコンバージョンと視聴完了率はよほどの失敗がない限り、かなり高い数字を出せるはずです。また、現状はサンプル数が少ないのですが、購買のコンバージョンも高いです。とある広告用の動画では、同じ内容で“ティグ付け”した動画とそうでない動画とで2倍以上の購買コンバージョンの違いが出ています。

「ノース・フェイス」の導入で
アパレル企業の利用が加速

WWD:現在、どのような企業が「ティグ」を導入している?

小林:アパレルや自治体、エンタメ、メディアなどさまざまな企業が導入しています。特にアパレルは、「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」の導入以降、一気に加速し、現在は60~70社ほどの導入企業数のうち4割以上を占めています。

WWD:「ティグ」はアパレル企業にどのような使われ方をしている?

小林:動画の“ティグ付け”のほか、「ティグ」が持つ複数の機能のうち、動画内で「どちらの道に進む?」といったストーリー分岐が起きる「ティグ ブランチビデオ」やカタログなどの静止画に“ティグ付け”を行う「ティグ マガジン」をメインに使っていただくことが多いです。また、今後はライブ機能がけん引役となって、アパレルや化粧品の企業、さらにはインフルエンサーの方にまで加速していくと考えています。

WWD:ライブ配信中もリアルタイムで“ティグ付け”を行えるのか?

小林:現状は動画に専用のCMSで“ティグ付け”をする形ですが、今後はスマホやタブレットにRFIDリーダーを接続することで、商品のRFIDタグを読み取り、既存の在庫情報などからデータを引き継いで即時“ティグ付け”をする形できるよう、開発を進めています。もしRFIDを導入していない企業であれば、バーコードやQRコードのリーダーで代替できるようにするつもりです。

WWD:ローンチしてから2年が経ったが、手応えは?

小林:悪い点と良い点があります。悪い点としては、SaaS型のサービスとしての成長の見込みが圧倒的に甘かったということです。当初の考えでは、YoutubeやAdobeのように、営業をかけなくてもユーザーが能動的にサービスを探し、契約してくれるようになるのでは、と考えていましたが、現実は厳しかった。“触れる動画”への反応は好評なのですが、使い方の模範例が分かりづらいことが大きな要因だと考えています。一方で良かったのは、想定以上に大手や有名企業・ブランドの利用数が多かったこと。NTTドコモさんの5Gコンテンツを通じてジャニーズの方に使っていただいたり、海外でロッテさんやヒュンダイさんに利用していただいたり。今年度の上期にも、超大手のコンテンツプラットフォームへの実装も決まっているので、さらに加速できればと思っています。

WWD:今後、導入を進めていきたい企業や領域などはあるか?

小林:小売り領域は、引き続き伸ばしたい分野の1つです。まだ詳細は公表できないのですが、近々発表予定であるLINEとの連携が起爆剤になると考えています。また、「ティグ」の良さは、調べようのないものを直感的、かつすぐに知ることができる点にあるので、ハウツー系や企業内での教材など、広義の意味での教育領域にも注力していきたいですね。既に東京理科大学と共同研究で、研修などのティグ動画化を行っていますが、習熟度がとても高い。動画のどの部分に、いつ触ったのかをヒートマップで分析することも可能なので、より効果的な教育ができると考えています。

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随時更新:新型コロナウイルス感染拡大に対する省庁・団体の支援策まとめ

 「WWDジャパン」4月20日号では特集「コロナに負けるな 諦めず、知恵を集めよう!」と題して、新型コロナウイルスによる業界への影響を取材し、今起こっている問題に対する解決策をさまざまな視点から探っていく。

 同特集では「法律」の観点からも解決法を探るべく、今まさに起きている「こんなときどうしたらいいのか」という疑問や悩みを、ファッション業界の法律問題(=ファッションロー)に詳しい海老澤美幸・弁護士にぶつけた。

 海老澤弁護士と話をする中で浮かび上がってきたのは、「各省庁や団体が救いの手を差し伸べていても、どこで確認すればよいか分からない」という一つの問題点だ。そこで本記事では、各省庁が公式サイトで発信している情報のうち、ファッションやビューティ、カルチャーに有用と思われるものをピックアップしリンク集としてまとめた。(※必ず最新情報を確認し、個別の事案については専門家や専門窓口へご相談ください。)

1. 資金繰りや経営環境の整備、給付金関連情報

経済産業省「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」(2020年4月13日時点)
資金繰りや経営環境の整備についてまとめたパンフレット。相談窓口なども記載されている

経済産業省「持続化給付金に関するお知らせ」(2020年4月13日時点)
新型コロナウイルス感染拡大により大きな影響を受ける事業者に対して支給される給付金に関するお知らせ

経済産業省「持続化給付金に関するよくあるお問合せ」(2020年4月13日時点)
新型コロナウイルス感染拡大により大きな影響を受ける事業者に対して支給される給付金に関するQ&A

一般社団法人全国銀行協会「新型コロナウイルスに関する会員行の対応について」(2020年4月13日時点)
全国銀行協会の正会員になっている銀行の対応状況一覧

日本政策金融公庫「新型コロナウイルスに関する相談窓口(国民生活事業)」(2020年4月8日時点)
個人企業・小規模企業への新型コロナウイルス感染症特別貸付に関する案内など

東京商工会議所「【解説動画公開】新型コロナウイルス感染症にかかる資金繰り支援策について」(3月27日時点)
国や東京都が実施している資金繰り支援策について解説した動画を公開

2. 休業や労務関連情報

厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」(2020年4月14日時点)
労働者を休業させる場合の賃金の支払いに対する考え方や、休暇の付与、労働時間の変更などについてのQ&A集

新型コロナウイルスに関するQ&A(労働者の方向け)(2020年3月25日時点)
保育園が臨時休園になった場合に伴う保護者の休暇取得支援など、労働者の視点に立ったQ&A集

3. テレワーク関連情報

厚生労働省「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」
テレワークの導入といった基礎的なことや「テレワーク時の費用負担について」「テレワーク時の労働時間の管理」といった労務管理、テレワーク時の労災などに関するQ&A集

4. 上場企業関連情報

金融庁「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を踏まえた有価証券報告書等の提出期限の延長について」(2020年4月14日時点)
有価証券報告書などの提出期限を9月末まで延長することを認めるリリース

法務省「定時株主総会の開催について」(2020年4月2日時点)
当初予定した時期に定時株主総会を開催することができない場合について

経済産業省「株主総会運営に係るQ&A」(2020年4月2日時点)
新型コロナウイルス感染拡大により開催形態の変更などを余儀なくされている株主総会運営に関するQ&A集

5. その他特定の業種に関連する情報

観光庁「ホテル旅館などの宿泊事業者向け支援メニュー」(2020年3月24日時点)
宿泊事業者向けの支援ページ。相談窓口一覧も

文化庁「新型コロナウイルスの影響を受ける文化芸術関係者に対する支援情報窓口」(2020年4月14日時点)
文化庁が発表した文化芸術関係の支援策まとめページ。文化芸術関係者が相談できるメールフォームも開設されている

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中

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ファッション&ビューティ人材最大手iDAは“最前線”に立つ販売員をどう守る?

 ワールド・モード・ホールディングス(以下、WMH)傘下のiDAは、登録者数約23万人を数えるファッションおよびビューティ人材の最大手だ。困難な状況下で、派遣販売員をどう守るのか?加福真介社長に聞いた。

WWD:iDAで実働する約6000人の派遣販売員のうち、半数にあたる3000~3500人が今なお店頭に立ち続けていると聞いて驚いた。

加福真介ワールド・モード・ホールディングス社長(以下、加福):それはきっと、東京や大阪など大都市を中心に考えているからだろうが、緊急事態宣言が出された都道府県はいまだ限定的であり、一方でわれわれは全国にネットワークを持つ。休業要請が出された都道府県以外ではショップが開店している現実がある。つまり“自宅待機中の保証”に加えて、“店に立ち続けることの不安解消”がわれわれのタスクであり、そのために派遣先企業と交渉を続けている。iDAは約1000社に販売員を派遣しており、派遣先企業の経営状況もさまざまだ。それでも販売員を守るため、保証の負担割合などについて個別に折衝している。また雇用を守るために派遣先企業と協力して、勤務エリアの変更やECの作業補助など業務のスライドを実施している。

WWD:助成金については?

加福:「出る」とは聞いているが、まだ始まったばかりの制度であるし、申請事業所もまだ少ない。少なくとも助成金を受け取った企業はないはずだ。しかしながら当然、WMHも派遣先企業も助成金をあてにしている。

WWD:世界中が暗いトンネルの中にいるとも言えるが、光明は?

加福:未曾有の“コロナショック”下で社員が一丸となっている。われわれは人を扱う仕事をしている。だから、きれいごとではなく“相手を思いやること”が重要であり、それが組織を強くすると信じている。先日、ある本社スタッフに「会社も苦しいはずだ。だから僕の給料を削って、その分を派遣販売員を守ることに使ってほしい」と言われて驚いた。派遣販売員への思いやりをありがたくも思ったが、スタッフにそんな風に思わせてしまったことに経営者としてショックを受けた。だから、その日のうちに全スタッフに「安心してくれ、皆の生活は絶対に守る!」とメールを送った。

WWD:人材業の“現在地点”について聞きたい。

加福:採用活動の手は緩めていない。現在の状況が長期化すれば、企業の倒産や失業者の増加は避けられないだろう。WMHは、企業の採用活動が通常に戻った際に人材不足とならないよう、優秀な人材の確保を命題とする。そして、ここで生きてくるのが全国に張り巡らせたWMHのネットワークだ。

WWD:他の人材会社にないiDAの優位性とは?

加福:登録者の報酬を増やすことをモットーとしている、しかし派遣先企業から見れば、登録者の賃金が高いと就業機会が減ってしまう。そこでiDAの利益率を下げている状態だ。同時に、販売員のスキルアップのための研修「iDAカレッジ」を主催したり、来日して働く登録者のために住居を紹介したり、家賃を一部補助したりしている。引き続き、ファッションおよびビューティ業界における販売員の地位向上に努めたい。

 WMHの具体的かつ多彩な“アフターコロナ”対策については、「WWDジャパン」4月20日号で詳しく伝える。同号は「WWD JAPAN.com」で無料公開するので、ぜひご覧いただきたい。

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佐藤繊維が銅の力で抗菌、和紙で速乾のニットマスクを販売

 山形県寒河江市を拠点にする紡績・ニットメーカーであり、地元でセレクトショップ「ギア(GEA)」を運営する佐藤繊維が、新型コロナウイルス感染拡大を受けてマスクの製造に踏み切った。同社のノノウハウを生かして速乾性のある和紙と、抗菌作用を持つ銅のシートを組み合わせた、何回でも洗って使えるオリジナルのマスクだ。2700円と安くはないが、13日に「ギア」の店舗で500枚を用意したところ、整理券全てがなくなり完売。ウェブ販売と店舗での販売を継続し、地元の人たちやマスク不足で困っている人たちに貢献したいという。佐藤正樹社長の思いとは?

WWD:なぜマスクに和紙を使用したのか?

佐藤正樹社長(以下、佐藤):今市場で販売されている洗えるマスクは、ほとんどが綿素材。雑菌が繁殖しやすく、ウイルスが残りやすい。綿は吸水性がある一方で乾きにくく、長く使用していると臭くなってしまう。そこでポリエステルで包んだ和紙を使用することで吸水性と速乾性をよくし、肌触りをよくするために3つの加工をして洗いをかけ、保湿効果も高めた。また、耳にかけたときに痛くならないよう、ポリウレタンを編み込むことでストレッチ性を持たせている。100回は問題なく洗濯して使用できる。

WWD:この立体マスクは縫製の箇所がない。

佐藤:一般的な布マスクはさまざまな箇所を縫製することで立体的にしているが、弊社は縫製を一切行わず、編みだけで立体形状を生み出しているため、顔に当てたときにすき間がなく、よりフィットするようになっている。

WWD:それらには佐藤繊維がこれまで培ってきたノウハウが生かされている。

佐藤:2000年から無縫製編みに着手し、体にフィットするニットウエアの開発を続けてきた。「無縫製であること」「立体的であること」「フィット感があること」――これらにこだわりを持っている弊社だからこそのマスクだと思う。

WWD:マスクの中に銅成分を加工したシートが入っている。これもほかのマスクにはない点だ。

佐藤:銅はもともと強い抗菌作用があるため、マスクに生かしたいと弊社特性の銅シートを開発した。このシートを和紙マスクのポケットの中に入れることで、抗菌、防臭効果が期待できる。この銅シートは銅化合物のコーティングを施した糸を使用し、それを天竺編みと呼ばれる薄く仕上がる手法を用いることで、シート装着時にも肌へのストレスを軽減することができる。

WWD:マスク発売後の反響は?

佐藤:ネットで購入するのが難しい地元の高齢者もいるため、店頭に人が集まるのは本来あまりよくないのだが、毎週月曜に店舗で整理券を配って販売することにした。13日の初日は朝5時から並んでいる人もいて、500枚用意したマスクはその日に完売した。ネットでは佐藤繊維とセレクトショップ「ギア」の通販で購入できるようにしている。

WWD:現在、社内ではマスクの製造にどれくらいのスタッフが関わっている?

佐藤:編み立てしているスタッフは15人ほど。販売に至るまでにはさらに15人ほどが関わり、総勢30人くらいがマスクで稼働している。ネットでの予約もほぼ埋まっている状態なので、できるだけ増産できる態勢をつくりたい。

WWD:マスク以外の商況は?

佐藤:実店舗は3月の売り上げは伸びていた。山形県は感染者ゼロ県として4県の中に残っていたため、他県から車でやって来る人たちもいた。しかし、若者が帰省する時期とも重なり、移動したりしたことで感染が拡大し、4月は来店もめっきり減ったため厳しくなると思う。「ギア」に併設しているレストランも夜は営業を中止し、昼のランチとテイクアウトのみを提供している。

WWD:佐藤繊維はニット紡績から編み立て、縫製、オリジナルブランドの開発、セレクトショップの運営まで、業界の川上から川下まで一気通貫でビジネスを行っている。新型コロナウイルスによる今後の影響をどう見ているのか?

佐藤:これから流通改革が起きるのではないか。必要以上のものを買う時代ではないし、中間に入っていたような業者も淘汰され、作る人、デザインする人、売る人といった必要最小限のパートナーシップで商売をするようになるだろう。オーダーする側と作る側のバランスが取れて初めて適正価格にもなり廃棄ロスも減るのではないか。

WWD:アパレルメーカーの状況は?

佐藤:在庫を抱える企業は倉庫を借り続けており倉庫の奪い合いにもなっていると聞く。また納品されても代金を支払えないアパレルメーカーもあり、店も淘汰されていくのではないか。紡績でいえば、糸は買うから製品は作らないでというメーカーもあれば、糸の購入さえもキャンセルしたいという声も聞く。工場の稼働が半分になったりすれば社員の給料も減ってしまう。ニット業界で言えば、注文を受ける側なので、なかなかコントロールが難しい。ニットの縫製、加工工場はこれまでにない厳しい状況だ。

WWD:今できることとは何か?

佐藤:厳しいときだが、だからこそマスクの生産といった新しいチャレンジもしながら、新たなビジネスの環境をつくることも大事だと思う。われわれに限らず、新型コロナの影響でこれまで生産だけをしていた人たちがマスクを作り、自分たちで販売まで行うようになった。それはこのような状況だからこそ踏み出した新たな一歩。それぞれがこの苦難を乗り越える環境をつくれるかどうかも大事だと思う。

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「ポストコロナのファッション」、サステナブルファッション研究の第一人者ロンドン芸術大学教授に聞く

 新型コロナウイルスが猛威を振るい、“異常”な状況下で人々の価値観に変化が生まれている。大切なものとは何か?幸せとは何か?――終息後の世界はどう変わるのか。そのときにファッション産業は?

 ファッションやテキスタイルにおけるサステナブルデザインを定義づけ、その方面の研究の第一人者として知られるケイト・フレッチャー(Kate Fletcher)=ロンドン芸術大学(University of the Arts London)のサステナブルファッションセンター(Centre for Sustainable Fashion)教授にメールインタビューを行った。

WWD:新型コロナウイルスによって、人々の価値観や思考方法にどのような変化が起こっていると思うか?そして終息後はどのように変化していくと思うか?

ケイト・フレッチャー=サステナブルファッションセンター教授(以下、フレッチャー):新型コロナウイルスのパンデミックによって、人々の価値観や思考方法は大きく変わりました。私たちが気づいたことは、私たちが望めば私たちはとても素早く、そして決断力を持って行動できるということです。(ロックダウンによって)人間はつながっているということ、生き抜くためには他者の行動に頼る必要があるということを感じさせました。

グローバライゼーションによるシステムが崩壊し、私たちは地形がとても大切だということにあらためて気づかされました。隣人(隣国)のこと、そしてローカルのサプライチェーンについても考えるきっかけにもなりました。

物事が変わるか?――多くの人たちが、感染のピークが過ぎ去り“正常”に戻ることがいかに大事かと話しています。しかし、環境活動家のグレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)も言うように、“正常こそが危機”なのです。

WWD:そもそも無理が生じていたファッション産業はこれを機にどのように“最適化”されるべきか?

フレッチャー:この危機を好機ととらえてファッション業界を見直すことがとても重要です。未来の業界のフォーマットがどうであれ、終息後も存在し続けるであろう根本的なシステムの問題について、決して目を背けないことが重要だとこのパンデミックは教えてくれます。今こそ、ファッション業界の変化を阻む最大の障害である成長論理の問題と向き合い、公平で正しく長期的で、地球環境を最優先した入念なアプローチを考案するべきときなのです。

ファッション経済を再構築するにあたり、まず物質的な要求を減らすことが必要となりますが、化石燃料や輸入に頼ることなく、原料や労働力といったファッションを表現するためのツールをローカルレベルで調達できるようにする必要があるでしょう。

今はこれまで以上に、古い方法や決まり切ったおなじみの“解決方法”に逆戻りしてはならない時です。私たちは困難や不確かなものに立ち向かいながら問題に寄り添い、そして変化をもたらすための新しい論理、地球の論理(アースロジック)をファッション業界のために作り上げなければならないと感じています。

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「マノロ ブラニク」「アレキサンダー・マックイーン」などが自宅で過ごす人びとにアプローチ さまざまなプログラムを開始

 新型コロナウイルスのパンデミックにより、“家にいよう(Stay Home)”という動きが浸透し、世界中で外出自粛の流れが続いている。そんな中で、欧州の各ファッションブランドがSNSを通じたクリエイティブなアプローチで消費者とのつながりを保とうとしている。

 「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」のデザインコンテストや、「ロエベ(LOEWE)」がインスタライブを通じて行うアーティストのスタジオツアー、英老舗セレクトショックのブラウンズ(BROWNS)がデザイナーや活動家、詩人やモデルたちを取り上げたシリーズ形式のコンテンツ「ファミリーアフェア」など、各ブランドの楽しいアップデートを紹介していく。

1. 「アレキサンダー・マックイーン」

 「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」では2つの取り組みを開始している。インスタグラムでのプロジェクト「マックイーン・クリエイターズ」では、投稿された写真を通じてブランドの代表的なデザインにスポットを当てつつ、フォロワーのクリエイティビティーも刺激している。

 ボンドストリートに位置する旗艦店のトップフロアで行われた展示会「ローズ(Roses)」のイメージ写真を公開し、自宅にある素材を使って制作した立体的な花の写真を公開するようフォロワーに呼び掛けた。同ブランドをタグ付けし、“#McQueenCreators”のハッシュタグを付けて4月14日までに投稿された写真の中から選出された作品が、後日オフィシャルインスタグラムで紹介される仕組みだ。

 また、音楽ストリーミングサービスのスポティファイ(SPOTIFY)には、過去のファッションショーで使用された音楽をストリーミングできる公式チャンネル「マックイーン ミュージック(#McQueen music)」を開設した。楽曲の編集を担当したのは、20年以上にわたって同ブランドのショーのサウンドトラックを手掛けるジョン・ゴズリング(John Gosling)だ。英女優フィービー・ウォーラー・ブリッジ(Phoebe Waller-Bridge)の姉で作曲家のイソベル・ウォーラー・ブリッジ(Isobel Waller Bridge)や、ロンドン・コンテンポラリー・オーケストラ(London Contemporary Orchestra)とのコラボレーションも計画中で、新たな楽曲やプレイリストの作成も行われる予定だ。

2. ブラウンズ

 ブラウンズはデザイナー、スタイリスト、詩人、プロデューサー、モデル、活動家らとのクリエイティブなつながりをまとめたコンテンツ「ファミリーアフェア」を創設した。担当チームが選んだクリエイターたちがキュレーターとなって隔週でストーリーを展開し、同社のSNSおよびウェブサイトでコンテンツを特集する。なお、同プログラムの始動者となるのは、詩人で活動家のカイ・アイザイア・ジャマル(Kai-Isaiah Jamal)だ。また同社は、英国ファッション協議会(British Fashion Council)のファッション基金(Fashion Fund)に対する新型コロナ支援を50%追加することも約束している。

3. 「ロエベ」

 LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下のスペインブランド「ロエベ」は、クラフト(工芸)やイノベーション、芸術的表現に光を当てたインスタライブでのイベント、「ロエベ エン カサ」を開始した。クリエイティブ・ディレクターのジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)のクラフト愛にちなんで、「ロエベ クラフト プライズ(LOEWE CRAFT PRIZE)」のファイナリストらの作品に焦点を当てている。このオンラインコンテンツでは、金細工やテキスタイルアート、生け花に至るまでを紹介する。同プログラムには木工アーティストのジュリアン・ワッツ(Julian Watts)や陶芸彫刻家のイリーナ・ラズモフスカヤ(Irina Razumovskaya)らが登場し、ワークショップやスタジオツアーなども開催される。

4. 「マノロ ブラニク」

 「マノロ ブラニク(MANOLO BLAHNIK)」は、ポジティブマインドを保ちながら自宅で創造性を高める事を目的とした「スマイル イニシアチブ」のプログラムを開始した。マノロ・ブラニクによるオリジナルの有名なデザイン画がダウンロード可能となり、色や柄を付けることで自由に楽しむことができる。このプロジェクトでは、英慈善団体、メンタルヘルス財団(Mental Health Foundation)とパートナーシップを結んでいる。

5. イタリア インディペンデント

 メガネ企業のイタリア インディペンデント(ITALIA INDEPENDENT)は、クリエイティブな事業家であり、ファッションアイコンとしても注目を集めるラポ・エルカーン(Lapo Elkann)によって創立された。同社はロックダウン下にある人びとに楽しみや幸せを届けるためのSNSプロジェクト「イタリア フォーエバー」を始動した。同社のインスタグラム公式アカウントでは、有名DJや音楽プロデューサーのステファノ・フォンタナ(Stefano Fontana)らがイタリア音楽のライブビデオを配信する。また、フォンタナと共にエルカーン本人やイタリアの人気芸能人、DJ、ミュージシャンなどのゲストも毎回登場する。

6. 「ジミー チュウ」

 「ジミー チュウ」は「チュウ スケッチ」と題したプロジェクトを発足させ、フォロワーに向けて靴のデザイン画を募った。クリエイティブ・ディレクターのサンドラ・チョイ(Sandra Choi)が選んだ10作品が同ブランドの公式チャンネルで公開され、フォロワーによる投票も行われる。上位5位までに選ばれたデザインはカプセルコレクションとして製作され、収益はジミー チュウ財団(Jimmy Choo Foundation)のチャリティーとして寄付される予定だ。

7. 「ナターシャ ジンコ」

 「ナターシャ ジンコ(NATASHA ZINKO)」は、アップサイクルのスパンデックス製マスクを手作業で製作し、宅配業者のシティスプリント(CITY SPRINT)やCNSで働く最前線の人びとに寄付する。自宅でマスクを作る様子を撮影し、着用法と共に紹介するムービーがインスタグラムに投稿された。マスクは25ポンド(約3350円)で販売もされており、同ブランドのウェブサイトで購入可能だ。売上金の半分は英国の国民保険サービス(National Health Service)の新型コロナウイルス救援基金に寄付される。

8. 「ケンゾー」

 「ケンゾー(KENZO)」とクリエイティブ・ディレクターのフェリペ・オリヴェイラ・バティスタ(Felipe Oliveira Baptista)は、「ケンゾーとのおうち時間(#stayhomewithKENZO)」と題したインスタライブイベントを開催している。アーティストらによる音楽のプレイリストから始まる同コンテンツは、クリエイティブなキャストらによって交代で配信される。水曜日はクリエイティブな授業形式、金曜日はライブ音楽配信、週末にはチャットも可能だ。

9. 「エレメ」

 中国人デザイナーのジンジン・ファン(Jingjing Fan)によって設立された仏パリを拠点とするアクセサリーブランド「エレメ(ELLEME)」では、アーカイブから人気デザインの“Baozi”を含む20デザインのバッグを25%割引で数量限定販売する。売上高の20%は、最前線で働く医療従事者のためのマスクや手袋、ゴーグルなど個人向け防護具の購入資金に充てられる。

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小島健輔リポート 新型コロナで余った在庫をどうするか 二つの選択

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるために発令された緊急事態宣言によって、都市部の店舗はほぼ休業。行き場を失った商品はどうなるのか。

 新型コロナパンデミックによる休業や客数激減で3〜4月という書き入れ時の売り上げが壊滅的に落ち込み、アパレルメーカーや小売りチェーンは行き場のない在庫を抱えて四苦八苦している。販売機会を失って抱えた在庫をどうすべきか、対策を検証して見たい。

売り上げの落ち込み以上に利益が吹き飛ぶ

 店舗売り上げは3月、4月と底割れして回復の時期も読めず、生活圏の店舗はともかく、ターミナルや繁華街の店舗の落ち込みは壊滅的だ。もとよりECに注力していたブランドやストアは、販売員のスタイリング投稿やチャット接客を拡大して売り上げを伸ばしているが、店舗売り上げの減少が大きすぎて焼け石に水で、もはや販売機会が期待できない春物などは多少のクーポンでは効かず、大幅値引きで処分を急いでいる。

 2月の売り上げは8月と並んで年間で最も低いため、多少は売り上げが落ち込んでも犠牲は少ないが(最低保証家賃負担は跳ね上がる)、3月は12月、1月と並んで最も売り上げ水準が高く、消費税増税で10月以降が落ち込んだ19年は百貨店衣料品で年間売り上げの9.74%、同婦人服も9.34%を占め、12月を上回って1月に続くピークとなった。ドレスアイテムやビジカジ(ビジネスカジュアル)のピークは3月だがカジュアルのピークは4月で、カジュアルチェーンなどは4月が春夏で最も売り上げが高いから、緊急事態宣言の直撃を受ける。

 売り上げのみならず3月、4月は9月、10月と並ぶプロパー販売期で粗利益率が高く、5月以降に緊急事態宣言が解除されても在庫処分のセール合戦になって利益は残らない。3月、4月の売り上げが飛んでは、春夏期は捨てたも同然なのが衣料品販売の現実だ。加えて、売れなくても最低保証家賃を天引きされては損益どころか資金繰りも苦しくなる。全ての商業施設デベロッパーがイオンモールのように一律撤廃することが望まれる。

先の損益か今の資金繰りか

 3月、4月の売り上げが飛んで残った在庫をどうするか、資金繰りの苦しい企業とゆとりのある企業で対策は二分される。

 資金繰りに窮する企業は在庫をたたき打って換金するしかなく、プロパー販売期としてはありえないほどEC中心に値引き販売する一方、二次流通業者に大量放出している。バッタ屋やオフプライスストアにとっては例年にない特需になっており、通常は限られる春夏のオンシーズンものが大量に放出されている。このパニックを契機に、放出に躊躇してきたブランドも方針を変えざるを得なくなっており、オフプライスストアの離陸期とも重なって流れが一変しつつある。

 資金繰りにゆとりのある企業は秋冬物の仕込みを抑え、春物を持ち越して秋冬の品ぞろえに組み込もうとしている。今春のトレンドは抜けナチュラルに流れて秋冬と大差ない色付けだったし、欧米も国内も秋冬コレクションが中止になって新たなトレンドを生み出すパワーがなく、初秋から秋にかけては春物残品を品ぞろえに組み込んでも無理がないと判断しているようだ。

 二次流通業者にたたき売ればオンシーズン物でも調達原価の半分前後になってしまうが、秋まで持ち越せばプロパーで売ることもできる。利回りを計算すれば1000%を超えるから、資金繰りにゆとりのある企業と窮する企業の明暗は極端だ。

衣料消費マインドは一変し9割が業界を去る

 3.11のときも消費マインドが長期間にわたって萎縮したが、当時をはるかに超える未曾有の世界的厄災に直面して誰もが生計も資産も傷つき、エシカルに人生観を変えざるを得なくなる。過剰消費と膨大な無駄が支えてきた現代文明そのものがエコミニマルに転換する契機となるやも知れない。トレンドやコンセプトで不要不急の買い替えをあおる一方でエシカルをうたうマッチポンプなファッションビジネスがサステイナブルなわけがなく、継続できる事業構造に抜本的に転換しないと破綻は避けられない。
人の労力に頼る労働集約型はもう無理で、資本集約型かシステム集約型に変わらざるを得ないが、その過程で9割の従業者を振り落とすことになる。商業施設デベロッパーやECプラットフォーマー、フィンテック事業者は10分の1の人員で10倍の利益を稼いでいるではないか。

 人が労力と知恵を凝らし、夢を創り、夢を貪ってきたファッションビジネスは、資本とシステムで稼ぐデジタルなプラットフォームビジネスに変貌しないと生き残れない。ECシステムを基幹として店舗が利便を補完するOMOが当たり前になり、半分どころか9割の人々が業界から去っていく現実をコロナパニックは突きつけたのではないか。

※OMO(Online Merges with Offline)…ネットと店舗の垣根を超えた融合を意味し、モバイルフォンをキーツールとしてウェブルーミングとショールーミングを駆使するニューリテール戦略

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

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伊「ヴォーグ」、史上初真っ白のカバーに込めた思い

 伊「ヴォーグ(VOGUE)」4月号は、同誌史上初めての真っ白の表紙と共に新型コロナウイルスのパンデミック特集を組んだ。エマニュエル・ファルネティ(Emanuele Farneti)編集長が、そこに込めた思いを語る。

 「白は何よりもまず尊敬の念を表す。そして、生まれ変わり。暗闇の後の明るさ。いろんな色の集まりでもある。白は自分を危険にさらしながらも戦い続けてきた人々の制服の色。考える時間と空間。そして沈黙を守ること。それはつまり、この時間と空間をアイデア、思考、物語、詩、音楽、思いやりの気持ちで満たすための色でもある。また、1929年の世界恐慌の後、洋服が一変して白になったことをほうふつとさせる。当時人々は白い服を着ることで純粋さ、未来への希望を表した。そして何よりも、白は降伏ではない。そこにあるのは埋められゆく空白のページと、新しい物語の始まりだ」。

 業界を揺さぶる緊急事態をうけて同号は無料ダウンロードを可能にした。特集の中には作成に加わったファッションデザイナーによる描き下ろしイラストもある。「ディオール(DIOR)」アーティスティック・ディレクターのマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)やミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」クリエイティブ・ディレクターのピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)、「グッチ(GUCCI」クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)、ドナテラ・ヴェルサーチェ(Donatella Versace)、マイケル・コース(Michael Kors)、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)、「ヌメロ ヴェントゥーノ(No.21)」クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・デラクア(Alessandro Dell'Acqua)、ジェレミー・スコット(Jeremy Scott)らが作成。さらに、ミケーレとピッチョーリは在宅勤務とクリエイティブ業の両立について誌面で語った。

 「『ヴォーグ』の存在は娯楽の為であるという人もいる。つまり、ページをめくる人に数時間の気晴らしを『ヴォーグ』は提供していると。それがどれくらい正しいのか、私は分からない。しかし私が確かに分かっていることは、この号で伝えるように、この雑誌は100年以上の歴史の中で戦争や危機、テロなどを経験してきたということだ。その中で、私たちは目をそらすことだけはしないという伝統を受け継いできた。一番素晴らしい例を挙げるとするなら、ナチスによる空襲の間に英国版の編集長を務めたオードリー・ウィザーズ(Audrey Withers)だろう。ウィザーズが身をもって伝えたように、受け身であることは現状への同意を意味する」とファルネティ編集長は語る。

 「ある程度仕上がっていたものをそのまま出版しようとしていた。そこには『ルウオモ・ヴォーグ(L'UOMO VOGUE)』とのコラボ企画もあった。しかし何人もの人が亡くなり、医師や看護師らは自身の命を危険にさらしている。世界はもう以前とは全く別のものになっている。そこから目をそらすことは『ヴォーグ』のDNAが許さないのだ。全てを白紙に戻してゼロから始めた」。

 中には普段から交流するアーティスト40人と1週間で仕上げた特集もある。協力したのは、スティーブン・クライン(Steven Klein)、デイビッド・シムズ(David Sims)、マート・アラス(Mert Alas)、マーカス・ピゴット(Marcus Piggott)、ジョー・マッケンナ(Joe McKenna)、ベラ・ハディッド(Bella Hadid)、ジジ・ハディッド(Gigi Hadid)ら。自宅での様子や、家族や友達とオンラインで繋がっている状態のホームスナップなどを掲載した。

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伊「ヴォーグ」、史上初真っ白のカバーに込めた思い

 伊「ヴォーグ(VOGUE)」4月号は、同誌史上初めての真っ白の表紙と共に新型コロナウイルスのパンデミック特集を組んだ。エマニュエル・ファルネティ(Emanuele Farneti)編集長が、そこに込めた思いを語る。

 「白は何よりもまず尊敬の念を表す。そして、生まれ変わり。暗闇の後の明るさ。いろんな色の集まりでもある。白は自分を危険にさらしながらも戦い続けてきた人々の制服の色。考える時間と空間。そして沈黙を守ること。それはつまり、この時間と空間をアイデア、思考、物語、詩、音楽、思いやりの気持ちで満たすための色でもある。また、1929年の世界恐慌の後、洋服が一変して白になったことをほうふつとさせる。当時人々は白い服を着ることで純粋さ、未来への希望を表した。そして何よりも、白は降伏ではない。そこにあるのは埋められゆく空白のページと、新しい物語の始まりだ」。

 業界を揺さぶる緊急事態をうけて同号は無料ダウンロードを可能にした。特集の中には作成に加わったファッションデザイナーによる描き下ろしイラストもある。「ディオール(DIOR)」アーティスティック・ディレクターのマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)やミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」クリエイティブ・ディレクターのピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)、「グッチ(GUCCI」クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)、ドナテラ・ヴェルサーチェ(Donatella Versace)、マイケル・コース(Michael Kors)、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)、「ヌメロ ヴェントゥーノ(No.21)」クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・デラクア(Alessandro Dell'Acqua)、ジェレミー・スコット(Jeremy Scott)らが作成。さらに、ミケーレとピッチョーリは在宅勤務とクリエイティブ業の両立について誌面で語った。

 「『ヴォーグ』の存在は娯楽の為であるという人もいる。つまり、ページをめくる人に数時間の気晴らしを『ヴォーグ』は提供していると。それがどれくらい正しいのか、私は分からない。しかし私が確かに分かっていることは、この号で伝えるように、この雑誌は100年以上の歴史の中で戦争や危機、テロなどを経験してきたということだ。その中で、私たちは目をそらすことだけはしないという伝統を受け継いできた。一番素晴らしい例を挙げるとするなら、ナチスによる空襲の間に英国版の編集長を務めたオードリー・ウィザーズ(Audrey Withers)だろう。ウィザーズが身をもって伝えたように、受け身であることは現状への同意を意味する」とファルネティ編集長は語る。

 「ある程度仕上がっていたものをそのまま出版しようとしていた。そこには『ルウオモ・ヴォーグ(L'UOMO VOGUE)』とのコラボ企画もあった。しかし何人もの人が亡くなり、医師や看護師らは自身の命を危険にさらしている。世界はもう以前とは全く別のものになっている。そこから目をそらすことは『ヴォーグ』のDNAが許さないのだ。全てを白紙に戻してゼロから始めた」。

 中には普段から交流するアーティスト40人と1週間で仕上げた特集もある。協力したのは、スティーブン・クライン(Steven Klein)、デイビッド・シムズ(David Sims)、マート・アラス(Mert Alas)、マーカス・ピゴット(Marcus Piggott)、ジョー・マッケンナ(Joe McKenna)、ベラ・ハディッド(Bella Hadid)、ジジ・ハディッド(Gigi Hadid)ら。自宅での様子や、家族や友達とオンラインで繋がっている状態のホームスナップなどを掲載した。

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「ジェイ ダブリュー アンダーソン」が示す新時代の女性像 アートのような“ヌーボー・シック”

 2月にロンドンで披露された「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」2020-21年秋冬コレクションのバックステージで、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)は「新しい部屋の入り口に立たされたとき、どのような姿で足を踏み入れるべきか?美しく登場するために何が必要かを考えた」と話し始めた。2020年代という新時代の幕開けを前に、一度立ち止まって過去を振り返ったようだ。アンダーソンが同コレクションを「ヌーボー・シック(新しいシック)」と表現すると、取り囲んでいた多くのジャーナリストが納得したようにうなずいた。

アート作品とのシンパシーを感じる
彫刻のようなシルエット

 アンダーソンは今季、ボリュームとムーブメントで新しいシルエットを探求した。裾にギャザーを入れてバルーン状に広がるドレス、折り紙のように生地を折り畳んでバックとウエストに膨らみを持たせたドレス、パフを入れた曲線を描くショルダーラインと鋭い直線のレザー素材の襟のAラインコートなど、複雑に入り組んだパターンと仕立てによって衣服と体の間で奇妙に生まれる。その空間には、彼が熱中する彫刻や陶芸といったアート作品とのシンパシーが感じられる。

 実際に、現存する物体から着想を得たルックもいくつかあった。「子どもの頃、ビール会社ギネス(GUINNESS)の広告にいつも目を引かれ、金と黒のタイポグラフィーが素敵だと思った。ビールの空き缶を押しつぶすと、そこに新たなフォルムが現れる感覚からアイデアを得た」と、ドレープとねじりを利かせたゴールドとシルバーのドレスについて説明した。そのほか、“パンチバッグ”と命名したバッグは、その名の通りボクシングのトレーニングで使用するパンチングボールから着想を得たという。

 BGMがフォー・テット(Four Tet)の「ベイビー(Baby)」に始まり、「サークリング(Circling)」へと変わるショー中盤では、衣服の量感はますます増していった。ケミカル糸で編まれたドレスは歩くたびに波打ちながらメタリックな輝きを放ち、ビクトリアンブラウスとフリルがふんだんに飾られた衣服は踊るように揺れ、マーメイドシェイプのコートやニットドレスの裾の動きにも心を奪われた。異なる素材とテクスチャーで彩られた今季の生地は「過去に使用したものと新しく制作したものを組み合わせたコラージュ」だとアンダーソンは説明した。彼が最も気に入っているルックはショールカラーのタキシードセットアップやバイアスカットのサテンのロングドレス、透け感のあるドレスだという。それらは比較的シンプルで、シルエットで遊ぶ装飾的なルックを際立たせる存在であった。

今季は「とにかく“楽観的”なものを」

 ビクトリア朝のシルエットや1920年代のきらびやかな装飾といったレトロな側面をあわせ持ちながらも、現代的で洗練されたコレクションに仕上がった今季は、アンダーソンなりに実験だったようだ。「(ランウエイのような)見知らぬ人々で満たされた空間をモデルが個別に歩いていくことで、その空間にどのように交じり合うのか、衣服がどのように作用するのかを想像した。“人々の森をすり抜ける”というアイデアから始まっている」。これは彼なりの言葉で、2020年という新時代に女性がどのように歩みを進め、時代を生きていくのかを想像したのだろうと筆者は解釈した。

 特異な視点を持つアンダーソンから発せられる言葉は難解であるが、今季の指針はとてもシンプルな言葉で伝えられた――「とにかく“楽観的”なものを表現したかった」。彼は新しい部屋の入り口に立ち、明るい未来への明快な道標を私たちに示してくれているようだ。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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下着のトレンドは快適からバストメイクに 下着メーカーならではの進化したフィッティングサービスと機能性が鍵

 日本政府による4月7日の新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を受け、首都圏や関西圏を中心に百貨店やファッションビルなどが休業を発表した。各社、さらなるウイルス感染拡大を防ぐため、実店舗からオンラインショップにシフトする策を講じているが、ブラジャーは商品を選択する上で接客と試着が重視される商材だ。最近ではSMLのサイズ展開のノンワイヤーブラやブラトップの需要が高まり、試着なしの購入が増えた一方で、大人の女性を中心に「このまま楽なブラジャーを着け続けて私のバストは大丈夫なのか」という不安の声が聞かれるようになった。その声に応えるために、昨年ごろから下着メーカーは、知見と開発力を生かしたバストメイクブラの開発や採寸・フィッティングのサービスに力を入れており、異業種から参入するメーカーとの差別化を図っている。

 ワコール(WACOAL)は、2019年11月に“ワコール史上最高メークの補整ランジェリー”として、「リュクス ボーテ(LUXE BEAUTE)」を発売した。着やせシルエット、谷間メーク、デコルテアップと補整力にフォーカスしたブラジャーで、インポート物のような洗練されたデザインも功を奏して3月末までに予算達成で推移している。市場では楽なノンワイヤーブラの提案が増える一方で、その高い機能性でバストラインを気にする女性たちのニーズに応えると同時に、本来のブラジャーの役割をあらためてアピールしている。

 また、同社が19年5月に導入した、3Dボディースキャナーを使って自分で計測できるサービス「ワコール 3D スマート アンド トライ(WACOAL 3D SMART&TRY)」は、現在8店舗に拡大している。4月1日には東京・伊勢丹新宿本店と三越銀座店、25日には鹿児島の山形屋、29日には伊勢丹新潟店に導入予定だ。今年3月末までの計測者は約1万5000人で、最初に導入した東急プラザ表参道原宿では20〜30代前半の客が65%以上を占めている。対面して採寸する恥ずかしさや試着の煩わしさを軽減することを目指したサービスだったが、「計測後は『ブロの意見やアドバイスが欲しい』という声が多く、予想以上に対面接客が求められている」という。それは、フィットネスにおけるパーソナルトレーナーの人気やナイトブラ(就寝時用ブラ)のヒットからも分かるように、幅広い年齢層でボディメイクやバストメイクへの関心が高まったためで、それらに対してよりパーソナルなアドバイスが求められていることが分かる。

「ピーチ・ジョン」の
バストメイブラが45万枚のヒット

 「ピーチ・ジョン(PEACH JOHN以下、PJ)」は、20年3月期は国内事業の黒字化を見込んでいるが、それをけん引しているのがいずれもバストメイクにフォーカスした2つの商品だ。19年2月に発売したメリハリのあるボディーラインを実現する“ナイスバディブラ”は、20年3月末までに販売数45万枚を突破、19年7月に発売したやせ見えと見た目体重を減らすことをコンセプトとする“スマートブラ”は20年3月末までに28万枚を売り上げた。これまでは、20万枚売れればヒット商品という認識の下着業界において、絶好調の販売枚数になっており、バストラインが気になり始める30代はもちろん、20代にもバストメイクのアプローチが響いている。

「トリンプ」は
年4回のフィッティングを推奨

 「トリンプ・インターナショナル・ジャパン(TRIUMPH INTERNATIONAL JAPAN以下、トリンプ)」は3月4日から「メジャーフォーミ―(#measure4me)たかが下着が、わたしを変える」というキャンペーンを開始している。“正しいブラジャーをつけることは、ボディーの快適さをもたらし、前向きな気持ちにもつながる”とうたい、かねてから推奨していた年4回のフィッティングをあらためて打ち出して、その大切さをアピールするというものだ。それに伴い、3月12日から東京・六本木ヒルズのヒルズカフェ/スペースで、同社のフィッティングエキスパートが無料採寸するサービスなどを含む体験型ポップアップカフェ「メジャーフォーミ― ポップアップ カフェ(#measure4me POP UP CAFE)」をオープン予定だったが、新型コロナウイルス感染予防のために開催は中止になった。

 「トリンプは」現在、新型コロナウイルス対策として全国で試着室での接客を中止しており、試着を希望する客には“インナーウエアの美しい着け方”を説明するリーフレットを渡している。洋服と違って下着は着用してに試着室から出られない上に、体に触れての接客となるためだ。

 下着メーカーの強みを生かした商品展開やさまざまな取り組みが実を結び始めた矢先の業務やサービスの縮小は残念だが、全ての業種が同じく厳しい状況下にある。営業が完全に再開された際に、さらに充実したフィッティングサービスやバストメイクブラを提案するための準備期間と考えたい。

川原好恵:ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルス分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身

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「ジバンシィ」、クレア・ワイト・ケラーの後任デザイナーは?

 「ジバンシィ(GIVENCHY)」のアーティスティック・ディレクター、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)が3年間契約を満了して退任することを受け、同ブランドの次期デザイナーが誰になるのかということに注目が集まっている。

 「ジバンシィ」は4月10日にクレア退任を発表したが、今後のクリエイティブ体制については後日発表するとしている。

 1998年からLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)の傘下にある「ジバンシィ」だが、さまざまなタイプのデザイナーらがこの数カ月間にLVMHからアプローチを受けたことを明かしており、水面下での動きがあったようだ。同ブランドはこの件について一切コメントしていないが、情報筋によると新デザイナーとの契約はまだ締結されていないという。

 新デザイナー候補として名前が挙げられているのは、「1017 アリックス 9SM(1017 ALYX 9SM)」のマシュー・ウィリアムズ(Matthew Williams)、「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」のジュリアン・ドッセーナ( Julien Dossena)、「グッチ(GUCCI)」デザインチームのダヴィデ・レンヌ(Davide Renne)、そして「ジル サンダー(JIL SANDER)」で洗練された女性らしいデザインを手掛けるルーシー・メイヤー(Lucie Meier)とルーク・メイヤー(Luke Meier)夫妻らだ。

 「ジバンシィ」はLVMH傘下のブランドとしては比較的小規模で、「ディオール(DIOR)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「フェンディ(FENDI)」などの陰に隠れがちではあるが、エッジの利きつつ気高く上品な魅力がある。

 英国人デザイナーのクレアは、2018年にメーガン・マークル(Meghan Markle)=サセックス公爵夫人(メーガン妃)のウエディングドレスをデザインし、18年にロンドンで開催された「ザ ファッション アワード(The Fashion Awards)」では「ブリティッシュ・デザイナー・オブ・ザ・イヤー・ウィメンズウエア(British Designer of the Year Womenswear)」を受賞した。また、米雑誌「タイム(TIME)」が19年に選出した“世界で最も影響力のある100人”にも名を連ね、ブランドと共に彼女自身も大きな注目を集めた。

 パリ・ファッション・ウイークで3月1日に披露された20-21年秋冬コレクションがクレアによる「ジバンシィ」のラストコレクションとなったが、彼女の退任、および別のクチュールブランドに移るのではないかという噂は数カ月前から囁かれていた。

 クレアは「世界的なオートクチュールに力を入れることは、私のキャリアでのハイライトのひとつよ。『ジバンシィ』の素晴らしいアトリエやデザインチームと共に、本当にたくさんの最高の瞬間を過ごしてきた。彼らの並外れた才能と献身的な姿勢は永遠に忘れない。表舞台で称賛されることのない製品やコミュニケーション、小売りに携わる影のヒーローやヒロインたち、そして世界各地のチームメンバーやパートナー、サプライヤーのみなさんに心から感謝を伝えたい」とコメントしている。

 「ジバンシィ」は、アーティスティック・ディレクターの退任、そして新型コロナの影響で工場が閉鎖されていることを理由に、ウィメンズのプレ・スプリング・コレクションの発表と20-21年秋冬のクチュール・コレクションの制作をしない。しかし、プレ・スプリングとランウエイを合わせた大規模なメンズコレクションの制作を予定しており、6月にショールームで販売する見通しだ。

 創業者のユーベル・ド・ジバンシィ(Hubert de Givenchy)が1995年に引退した後は、デザイナーとしてジョン・ガリアーノ(John Galliano)、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)、ジュリアン・マクドナルド(Julien MacDonald)らが活躍してきた。2005年にはリカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)がデザイナーに就任し、ゴスのテイストを取り入れた斬新なデザインを発表するなどして同ブランドに12年ほど在籍した。なお、クレアは1952 年のブランド立ち上げ以降初の女性アーティスティック・ディレクターだった。

 「ジバンシィ」でのクレアの功績として名高いのは、クチュールをランウエイに復活させたことだ。大きな変化を避けてメンズショーに注力していたティッシとは反対に、クレアはイギリス王室が主催する競馬レースイベント「ロイヤルアスコット(Royal Ascot)」など、メーガン妃御用達ブランドとしての地位も確立させた。また、ジュリアン・ムーア(Julianne Moore)、レイチェル・ワイズ(Rachel Weisz)、ガル・ガドット(Gal Gadot)、ミア・ゴス(Mia Goth)らのレッドカーペットでの衣装も手掛けた。

 クレアは「ジバンシィ」のブランドイメージに対して、取捨選択をしながらいいところを取り入れるアプローチ法を取り入れてきた。中性的なコレクション制作、黒と白を基調とした広告キャンペーン、そして若手ポップスターのアリアナ・グランデ(Ariana Grande)をアンバサダーに抜擢する一方で、20年春夏キャンペーンではマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)と英女優のシャーロット・ランプリング(Charlotte Rampling)という年齢層が高めのめずらしい組み合わせの2人を起用している。

 シドニー・トレダノ(Sidney Toledano)LVMHファッショングループ(LVMH FASHION GROUP)会長兼CEOは、「彼女のクリエイティブなリーダーシップ、そしてアトリエとチームとの素晴らしいコラボレーションのおかげで、メゾンはユーベル・ド・ジバンシィの理念、そして彼独自のエレガンスを再認識することができた。クレアの今後の活躍を応援している」と、彼女の最後の功績に感謝の意を表した。

 クレアは主に趣味よく控えめで上品なクチュールに精を出していたが、巨大な翼のようなバックパックなど、時に強靭で破壊的なテイストも取り入れた。また、18-19年秋冬のクチュールショーでは、その年に91歳で死去したジバンシィの時を超えたエレガンスと気品を称え、彼のアイコニックな創造性やテクニック、格言を反映したコレクションを捧げた。

 クレアの手掛けたウィメンズコレクションには、80~90年代をほうふつとさせるものや、ダメージ加工のデニム、最先端の仕立てからラッフルドレスに至るまでさまざまなスタイルが見られる。ファッションプレスの間でもクレアの人気は高く、特に彼女のクチュールショーの評価が高い。

 またクレアは、ランウエイでメンズクチュールを披露したり、19年6月には伊フィレンツェで開催されたピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)にゲストデザイナーとして参加するなど、メンズの存在感アップにも貢献してきた。しかし、レザーグッズなどほかのラグジュアリーブランドが利益を上げているカテゴリーに関しては大きな前進をもたらしていない。

 クレアは「ジバンシィ」のアーティスティック・ディレクターへの就任直後に、それまで在籍していた「クロエ(CHLOE)」での6年間について、「本当にやりたいことができたわけではなかった」と明かしている。クレアは「クロエ」で手掛けたコレクションでも大きな支持を獲得しており、ブランドの勢いを回復させるなど確かな実績を残している。なお、11年に「クロエ」に入る以前は、「プリングル オブ スコットランド(PRINGLE OF SCOTLAND)」でデザイナーを6年間務めていた。

 落ち着いた穏やかな話し方で笑顔の多いクレアはファッション業界の上層部でも人気が高く親しみやすいと評判だ。故カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)氏や「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)とも親交が深い。

 ニットやメンズウエアにおいては、トム・フォード期の「グッチ(GUCCI)」でシニア・ウィメンズ・デザイナーを務めた経験もあり、「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」や「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」にも在籍していた。

 43万9000のフォロワーを抱える自身のインスタグラムでは、「ジバンシィ」でのフィッティングや写真撮影の裏側をハイライトした投稿も行った。クレアの今後の動きについてはまだ明らかにされていない。

 今回、パリの代表的なクチュールブランドの重要ポストが空くこととなったが、ファッション業界はいま複雑な時期にある。新型コロナの感染拡大によって国際的なファッション・ウイークにも甚大な影響が及び、世界の新たな需要に向き合う必要に迫られているからだ。ラグジュアリーの消費活動はほぼ停止状態となったことで、ファッション業界の速すぎるペースやその他の弊害についても疑問の声が上がっている。

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スタンフォード大卒のボクが、グーグルではなくバロックを選んだ理由

 ジャスティン・カハンディング(Justin Cajanding)は、2019年9月にバロックジャパンリミテッドに外国人枠で入社した、米・ロサンゼルス出身の23歳。あのスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)らを輩出したことで知られる、スタンフォード大卒の肩書を持つ期待の新人だ。東京・表参道の旗艦店「ザ・シェルター トーキョー(THE SHEL’TTER TOKYO)」での販売員研修を経て、今年4月からは新規プロジェクトの立ち上げなどを担う「未来政策室」の配属となった。

 学生時代は、専攻の比較文学に加えてマーケティング、プログラミングなどを幅広く学び、就職活動では、あのグーグル社の選考も進んでいたというエリートだ。彼はどうしてバロックを選んだのか?

WWD:大学時代にどんなことを学んだ?

ジャスティン・カハディング(以下、ジャスティン):専攻は「比較文学」と「日本語」です。これらについて卒論を書き、学位を取得しました。そのほかにも政治経済哲学やコンピューター科学、プログラミング、日本や東アジアにおける経済論や経営管理など、学科の枠組みを超えて幅広く学びました。

WWD:中には、ファッション業界に直結する研究も?

ジャスティン:もともとファッションに興味がありましたが、スタンフォード大学には、ファッションデザインやファッション経営管理などに特化した学科がなかったので、関連する講座を自ら積極的に受講しました。たとえば大学院生向けの「日本のビジネス文化およびシステム」の学科の講座では、オムニチャネルを軸とした先進的な考え方の重要性を、日本のアパレル業界で応用する方法について教授と共同研究しました。特に日本が高く評価されている、実店舗における品質やサービスの水準を保ちながら、国内外の消費者に訴求する方法を模索しました。また、プログラミングのクラスでは、ビッグデータやテクノロジーが、アパレルをはじめとした非テクノロジー業界にもたらす影響を理解しました。

WWD:日本、バロックとの出合いは?

ジャスティン:大学3年時の交換留学で日本を訪れた際、教授にバロックをインターン先として斡旋してもらいました。かねてから日本で働くことに興味を持っていましたので、留学期間終了後にインターンシップとして働き始めました。

WWD:ご自身はどんなブランドが好きですか?

ジャスティン:僕を見てのとおり、ストリートブランドです(笑)。アメリカにいたころも、ブランドショップでよく買い物をしていました。正直、ショップはシンプルに「物を買うだけの場所」だと思っていました。でも日本では、店員は外国人にも優しくて、店を出た後は入店前よりも晴れやかな気分になるんです。言葉が分からなくても、日本が「おもてなし」の国と言われる理由が分かりました。

入社の決め手は社長からの直電

WWD:グーグル社の選考も進んでいたそうですが、バロック入社の決め手になったのは?

ジャスティン:(村井博之)社長からの電話で心を揺さぶられ、入社を決めました。「君はここで、どう成長したいんだ?自分のスタイルでやりたいようにやってくれていいから」という言葉に、チャレンジングな会社だと確信しました。アメリカの会社では上からどんどんミッションが課せられるから、考え方も課題解決の手法も型にはまってしまいます。でもバロックなら、自分らしく能力を生かせると思ったのです。

WWD:バロックの長所と課題はどう分析している?

ジャスティン:バロックは国内市場に満足せず、グローバルの舞台で戦おうと考えています。その熱意は社長の言葉からも伝わったし、ワクワクします。「マウジー(MOUSSY)」や「スライ(SLY)」のようなブランドには渋谷109から始まったブランドストーリーがありますし、商品の品質やおもてなしが強みです。それらの価値を海外の人が知らないのがすごくもったいないし、どうやって広めていくかが課題です。

WWD:自身の能力をどのように生かせると思う?

ジャスティン:バロックは日本で育てたブランドの哲学やイメージを海外に持ち込む方法を模索していますが、新しいマーケットに適応し戦っていくには市場分析が不可欠です。日本と欧米ではマーケティングの性質、攻略手法には大きなギャップがあります。その溝を埋めるために、僕が研究してきたマーケット分析の手法が生かせたらいいですね。

WWD:即戦力として期待されていますね。

ジャスティン:もちろん、自信満々ではないですよ(笑)。日本語はまだまだですし。「シェルター」で「アズール バイ マウジー(AZUL BY MOUSSY)」のメンズ服を売っていたときは、うまくいかなくて不安な日々が続きました。でもある日対応したお客さまが、わざわざSNSで僕を見つけてお礼のメッセージをしてくれて、折れかけた心を立ち直らせてくれました。今はウイルスのせいでこんな状況だけれど、店舗研修をしているときは中国、米国、などからの外国人客はすごく増えていることを肌で感じ、バロックがグローバルに戦える企業だと確信しました。休みの日には、大学のプログラミングマーケティングを学び直すために教科書を広げています。早く活躍できるよう、新しい知識も取り入れながら、自分をどんどんアップデートさせていきたいですね。

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クラフツマンシップが息づくモダンなバッグコレクション “大人”のための新しい「MCM」が登場

 ドイツ発ラグジュアリーライフスタイルブランド「MCM」の2020年春夏コレクションは、“From Munich Disco To Berlin Techno”がテーマだ。これは、1976年のブランド誕生から現在までの音楽史の重要な瞬間を称えながら、ブランドの軌跡をたどるというもの。「MCM」のダーク・ショーンベルガー(Dirk Schonberger)グローバル・クリエイティブ・オフィサーは、ミュンヘンのディスコ全盛期のスタイルやルックス、テクスチャー、ムード、アティチュードなどを、現在のベルリンで見られるコンテンポラリーなアートシーンやクラブカルチャーのスタイルに落とし込んだ。そんな「MCM」の最新コレクションから今回ピックアップするのは、ヘリテージやクラフツマンシップに根付いたシックなコレクションだ。若者に好まれる従来のパブリックイメージとは一線を画し、バランスと繊細さを兼ね備えたデザインには、モダンな雰囲気さえ漂う。大人のための新しいバッグコレクションを紹介する。

 つややかなパテントレザーからなめらかなプレミアムレザーまで、エレガントなレザーの質感に光沢感のある金具が都会的な印象を与える“ミラノ(MILANO)”シリーズは、イタリアのスタイルと建築に着想を得てデザインされた。全てのアイテムがイタリア製。同系色で主張し過ぎないようにあしらわれた“ハーフMCMロゴ” が特徴的だ。ワントーンはもちろん、グラデーションのモデルなど、色使いもユニーク。“モダンMCM”の象徴的なシリーズとなっている。

大人のスタイルにマッチする
“ソフト ベルリン”と
“クラックドレザー”

 ヘリテージブランドとして旅行用トランクを作ってきた「MCM」が、その技術はそのままに、現代のスタイルにアップデートしたシリーズが“ソフト ベルリン(SOFT BERLIN)”だ。丸みを帯びたシルエットや、透明なボディの内側にポーチポケットを配すアイデアなど、より洗練さとモダン性をもって旅行用トランクを再解釈。使い込むほどに現れる味わい深い質感を楽しめる。ブランドのアイコン的な柄“ヴィセトス”も主張し過ぎず、大人のスタイルにもマッチする。

 大人の男性にオススメしたいのが、カウハイドレザーにクラック加工を施した“クラックドレザー(CRACKED LEATHER)”だ。なめらかな風合いながら丈夫さも兼ね備えているため、日常使いから小旅行までさまざまなシーンで活用できる。コーディネートを問わず幅広く使える“クラシック”シリーズのトートバッグや、ミリタリーで使用される軍事用リュックサックの要素を取り入れた“ブランデンブルク”シリーズなどがラインアップする。

 今回フォーカスした“ミラノ”と“ソフト ベルリン”“クラックド レザー”シリーズに加え、スタッズがアクセントになった“パトリシア”シリーズや、アーカイブスタイルを近代的にアップデートした“エッセンシャル”シリーズも大人の女性に持って欲しい。

伊勢丹に常設コーナーをオープン

 「MCM」は昨年9月に伊勢丹新宿本店本館1階にウィメンズコーナーを、今年2月に同店メンズ館1階にメンズコーナーをオープンした。“ヴィセトス”を落ち着いたカラーリングに落とし込んだ上品なアイテムをセレクトするほか、「フェノメノン」とのコラボレーションライン“MCM バイ フェノメノン(MCM BY PHENOMENON)”の限定トートバッグを販売するなど、ココでしか買えない商品もそろう。ゆくゆくはレディ・トゥ・ウエアのコーナーも出店し、ブランドの世界観を見せていきたい考えだ。

※新型コロナウイルス感染拡大防止に伴い、店舗休業や営業時間・営業内容に変更の可能性があります。
事前に施設ホームページなどをご確認ください。

問い合わせ先
MCM 銀座 HAUS 1
03-5524-7177

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緊急事態下でも売り上げ維持 高級セレクト店「アデライデ」の“全力顧客主義”

 新型コロナウイルスの感染拡大で多くの小売店が苦戦を強いられ、2~3月の売り上げは前年比4割減、東京都の外出自粛要請が出された3月末には7割減という小売店もあったと聞く。そんな厳しい商況下の2~3月、東京・南青山の老舗セレクトショップ、アデライデ(ADELAIDE)の売り上げは前年比で微減、アディッション アデライデ(ADDITION ADERAIDE以下、アディッション)は売り上げを落とさなかったという。トラフィックが半減しているにもかかわらず、だ。長谷川左希子ディレクターに電話インタビューを行ったのは4月10日。東京都の休業要請を受けて8日から店舗は臨時休業に入ったにもかかわらず、在宅勤務中だという長谷川ディレクターの声は明るく前向きだ。逆風下でもしなやかに美しく奏でるアデライデの流儀を聞いた。

 売り上げを維持している要因は大きく2つある。1つ目はアデライデ、アディッションともに顧客売り上げが高い点だ。顧客向けの受注会での売り上げは全体の約35%を占める。「徹底した分析を行って買い付けている。ブランドのショールームで撮影した写真をすぐに東京のスタッフとシェアし、各スタッフは顧客の嗜好とトレンド傾向を分析したうえでフィードバックする。それを買い付けチームの分析と合わせてオーダーに反映させている。この徹底した数字管理と分析は母からたたき込まれたもので、入社して10年が経った今、生かされていると感じている」と長谷川左希子マネジング・ディレクターは話す。顧客と直接コミュニケーションをしながら買い付けているのかと想像したが実はそうではない。「高額品は顧客さまに意見を聞くことはあるけれど、ほとんどのお客さまは10年以上の方々で熟知している」と胸を張る。精度の高い買い付けの結果、毎シーズン、プロパー消化率は70~80%をキープしている。「売上高を上げるのではなく、消化率を高く持つこと、売り切れるかどうかを考えてシビアに買い付けている」。

 2つ目は、昨年12月に始動したeコマースとインスタグラムを用いた施策だ。ECは好調に推移しており、国内はもちろん2~3月は特に中国から多くのオーダーが入った。「ECは海外向けを強化したいと始めた。私たちは個性あふれる店だという自負がある。今、世界中からそういった店がなくなっている中で私たちのセンスや想いを発信したいと考えた」とEC開設の理由を語る。

「強みの“人ありきの接客”を
SNSを通じて行う」

 インスタグラムは公式アカウント(@selectshop_adelaideと@additionadelaide)に加え、長谷川自身が商品を着用して個人アカウント(@saki_tokio)を通じて発信している。特に新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛が広がった2月下旬以降、入店客数が減ってからはインスタグラムのストーリー経由でのECサイトへの流入や、個人アカウントへのダイレクトメッセージ、電話での問い合わせが売り上げにつながっているという。「公式アカウントはブランディングに沿ったビジュアル重視のイメージをアップしているが、個人アカウントはよりパーソナル。親しみやすさが感じられるような配信を心掛けていて、強みの接客を動画や写真を通じて行っている」のだという。顧客からは着回しの参考になると好評で、「提案したコーディネートとは別のものが見たいというリクエストもいただき、そこから購入につながることも多い」とも言う。

 インスタグラムは顧客向けだけではなく、SNSの特性を生かした商品を紹介することで新規客も増えている。「いわゆる一枚で華やかに“映え”るアイテムで、最近では『ロク』のプリーツスカートの反応がよかった」。この個人アカウントからの発信は、スタッフに強要はしていないが、店長や一部のスタッフも自主的に行っており、それぞれのセンスと個性がうけている。「私たちの個性を店頭だけで伝えるには限界がある。私たちの一番の強みは“人ありきの接客”で、それはこの先も変わらない。その“らしさ”をインスタグラムやECでどう表現するかに今、集中して取り組むことができている。これまでは、買い付けの出張や販売の合間に取り組んでいたが、今は外出できないからこそ、集中して考えることができて日々新しいアイデアが生まれている」。

 「テラスハウスがはやっているのは人に興味があるから。おしゃれしてポストするのではなく、どんな人で何を食べてどんな家具を使ってどういう生活をしているかに興味がある。食、ワイン、家具、アート、写真集など何か共通するものが好きだったらフォローしてもらえるし、アデライデの知名度も上げることができる。あらゆるツールを用いて私のストーリー、アデライデのストーリーを発信していきたい」。「お客さまは待っていても来ない」と近日中にLINEの公式アカウントも開設予定で、SNSを通じた発信の仕組みを強化する。「撮りためたストーリー用の動画や写真を投稿したり、各スタッフのブログを頻繁に更新していく。店頭に立たなくてもできる接客を模索している4月で落とした売り上げをカバーするために、5~6月の施策をスタッフ全員で考えているところだ」。

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伝統に新しい波を起こす日本舞踊家・花柳凜の「#これが私の美しさ」とは?

 「自分らしい美しさ」を提唱する「ボビイ ブラウン(BOBBI BROWN)」は今春、豊富なカラーバリエーションを揃えた人気の美容液ファンデーション“インテンシブ スキン セラム ファンデーション”発売5周年を記念したキャンペーンをスタート。「#これが私の美しさ」というハッシュタグとともに、女性が自分らしさを持って、個々の美しさを臆せず発信できる環境が広まることを願う。そこで「WWD JAPAN.com」は、自分らしい人生を歩み、輝いている女性にインタビュー。自信を抱けるようになるまでの葛藤、確立したオリジナリティー、そして、「#これが私の美しさ」と言えるそれぞれの自分らしさに迫った。トリ(最終回)を飾るのは、日本舞踊の最大流派「花柳流」の舞踊家として活躍する花柳凜。ロックバンドのツアーへの参加やオペラとのコラボレーションなど、従来の伝統芸能のイメージにとらわれることなく飛躍を続けている。

WWD:日本舞踊家の中でもこれまでにない取り組みに積極的な印象です。

花柳凜(以下、凜):物心つく前から祖父に踊りを教わっていて、2歳で初舞台を踏みました。扇子がおもちゃ代わりでしたね。10代後半で初めてディナーショーに呼んでいただいた際に、舞台ではない場所で表現する可能性を感じたんです。しばらくしてロックバンド「サカナクション」のミュージックビデオに出演したことをきっかけに、ライブツアーにも参加させていただくようになりました。ライブに来るファンの方は、拳を上げたり歌ったり、全身で感情を表現しますよね。日本舞踊しか知らなかった私には新鮮で、刺激的でした。最前列の方から「踊り子ちゃーん!」なんて声をかけてもらうこともありました(笑)。

WWD:伝統を重んじる文化の中で周りの反応は?

凜:「タレントになりたいの?」と冷ややかに言われることもありましたし、上の方からの呼び出しもありました。私は冷静に経緯を説明した上で「自分の名前が売れることはどうでもいい」「日本舞踊を多くの人に知ってもらいたい」と、率直な思いを伝えました。踊りが大好きだからこそ、日本舞踊をもっと盛り上げたい。私の中では、突飛なことをして伝統を「壊す」のではなく、「戻す」という感覚です。

WWD:「戻す」とは?

凜:日本舞踊の起源とされている出雲阿国(いずものおくに)の時代にさかのぼると、阿国の踊りはいわゆる民族舞踊に端を発したものでした。当時の舞台はきっと、かしこまった場所というより大衆が気軽に楽しめる娯楽だったはずです。だからこそ、その時代の空気を取り入れながら新しい波を起こしていきたい。私のことをライブやメディアをきっかけに知ってくださったお客さまが、少しでも日本舞踊に興味を持ってくれたらうれしいです。ただ、謙虚さを忘れてはいけないと思います。祖父は80歳で亡くなるまでずっと自分のことを「舞踊家としてまだ卵だね」と言っていました。謙虚であるためにはまず、自分を客観視して想像力を働かせることだと感じています。すると自ずと自分のみならず他の人の個性をも大切にできるようになると思うんです。私もまだまだですが、謙虚な気持ちで挑戦を続けたいですね。

WWD:凜さんの透明感のある肌も素晴らしい個性だと感じますが、「ボビイ ブラウン」が提唱する“自分らしい美しさ”というメッセージはどう感じますか?

凜:実は、小麦色の肌に憧れていた時期もあります。髪は少し茶色がかっているので、しっくりこない着物の色みもあります。けれど長所を見つけて伸ばすなど、上手に付き合っていけたらと思います。ブランドがこんな風にメッセージを発信してくれるのは、心強いですね。舞台上では肌を真っ白に化粧しますが、普段のメイクはナチュラルです。“インテンシブ スキン セラム ファンデーション”は、大げさではないツヤ感で肌を自然に整えてくれますね。

WWD:凜さんの考える「#これが私の美しさ」とは何でしょう?

凜:笑顔でいること、ですね。口角が上がると脳が錯覚するともいいますし、笑顔は周りに伝染しますからね。もちろん、舞台の上でニコニコするシーンはほとんどありませんが(笑)、見に来てくださったお客さまが劇場を後にしたときに、「来てよかった!」と笑顔になってくれることを願って、日々精進したいと思います。

 「ボビイ ブラウン」は今春、ベストセラーの「インテンシブ スキン セラム ファンデーション」発売5周年を記念し、アンバサダーを通して、すべての女性が自分の魅力に気づき、自信に満ちて輝いて欲しいと願う「#これが私の美しさ」キャンペーンに取り組む。それぞれが考える自分自身の美しさを、「#これが私の美しさ」のハッシュタグと共に ソーシャルメディア(Instagram、Twitter)に投稿すると(4月30日まで)、合計1000人以上にプレゼントが当たるキャンペーンだ。「インテンシブ スキン セラム ファンデーション」は、和漢生薬の「冬虫夏草(フユムシナツクサタケエキス(保湿成分)」と、海洋プランクトンの一種「アルテミアエキス(保湿成分)」で構成されるアクティブエナジーコンプレックスにより、ツヤに満ちる生き生きとした肌印象へ導く。3月にはシェードが4色追加になり、さらに幅広い全17色へ。同シリーズのコンシーラーも新しいフォーミュラになって登場した。

問い合わせ先
ボビイ ブラウン
0570-003-770

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「好きなブランドと相思相愛で働く」 お客から販売員、出産・引っ越しを経て復帰 アクシーズファム森本夏季

 郊外の大型ショッピングモールの中で、異彩を放つショップがある。福井発のアイジーエーの運営する「アクシーズファム(AXES FEMME)」だ。最近の傾向としてシンプルだったり、自然を意識した内装の店が立ち並ぶところに、パッと華やぐクラシカルでヨーロピアンビンテージ風の世界観の店装が目を引く。「アクシーズファム」は2002年にスタートしたブランド。フリルやリボンが好きな大人に向け、ロマンチックなアイテムを提案してきた。ブランドは今年で18年目となり、お客もショップスタッフも成長し、子どもを持つようになってからはキッズの展開もスタート。神戸ハーバーランドumie店の森本夏季サブのように、子育てをしながら店頭で活躍するスタッフも増えてきているという。そこで、ファンに支持されるブランドでの接客やママ販売員としての働き方について話を聞いた。

―「アクシーズファム」で働くことになったきっかけは?

森本夏季(以下、森本): もともと「アクシーズファム」が好きで島根県のゆめタウン出雲店のお客でした。それ以前は携帯電話販売の代理店に勤めていて、そこでも接客の仕事は楽しいと感じていたのですが、キャリアが長くなると現場を離れてマネジメント業務が増えてきます。それで転職をしようと探していたときに、当時の出雲店店長に相談したら「それなら、この店で働いたら?」とスカウトしていただいたのです。

―そうなんですね!「アクシーズファム」のどんなところが好きですか?

森本:もちろんかわいいお洋服を扱っていることではありますが、ショップスタッフとお客さまが接客を通じて信頼関係があるんです。とても近い関係作りができているといいますか……。

さらに、お客さまがお客さまを呼んでくる感じがあります。そんな連鎖があるのは、このブランド、この店だからだなという感覚があります。今考えると、私自身もお客時代は友人に「かわいいいから見てみて」と紹介していましたね。商品だけでなく、ショップスタッフもウエルカム精神があって、楽しい雰囲気がありました。働きはじめてからも、ショップスタッフの活気やお客さまに対してのウエルカム精神、スタッフ一人ひとりがかわいい商品を扱っていることへのプライドなどを見て、さらに好きになりました。

―ブランドの世界観だけでなく、それを届けるショップやスタッフなどの環境も含めて好きなんですね。

森本:そうなんです!ほかにも好きなところはたくさんあって。会社が前のめりになってスタッフに向き合ってくれます。今までいろんな業界で働いてきましたが、“企業に付き従うのがスタッフであり会社員である”という印象の企業が多かったので、驚きました。17年に結婚、出産し、夫の仕事で引っ越しもしたのですが、違う土地でもこの仕事をしたいと思っていたところ、会社は復帰までたくさん相談に乗ってくれて、新天地で安心して復帰することができました。

―現在はどういう働き方をされているのですか?

森本:私の場合は6時間の時短勤務で、土日は出られるときだけフルタイムで入ることもあります。この勤務体系も、会社とのいろいろな相談を経た結果です。最近は別店舗に勤務するショップスタッフから「これから結婚をしようと思っているのですが、働き方はどうされていますか?」と相談を受けることもあります。こればかりはケースバイケースなので、店長やマネジャーとよく相談するように伝えていますが、それまで築いてきたスキルを手放さないために会社もいろいろ考えてくれていることを自分も経験したので、安心して上長に相談するようにアドバイスしています。

―ブランドが好きなだから、続けたい方も多いのでしょうか?

森本:これは私の個人的な感覚ですが、ショップスタッフのほとんどが元お客さまやファンで、スカウトがきっかけで働き始めているのではないでしょうか。

―それはすごい!

森本:ほとんどのショップスタッフが「『アクシーズファム』以外のアパレルでは働けない」と思っているんじゃないかと思います。それくらい、根底に“このブランドが好き”という人が多いです。

―そうなると接客にはどんな影響がありますか?

森本:お客さまとスタッフ、店と会社の距離感はとても近いと思います。ただしお客さまも、年齢を重ねたり環境が変わることで“好み”が変化していきます。実際、お客さまから「もうそろそろ卒業かな」と言われたことがあります。そうなると、お客さまと親密になり過ぎて、新しいお客さまを開拓しているか?新規客を大切にお迎えできているか?と、目を向けるようになったのが4~5年前です。全てのお客さまに平等なのに、ファンばかりが優遇されるのは不平等ですし、誰にも気持ちよく買い物していただく、その時は買わなくとも再来店してもらえる店にするために、社内では「接客プロジェクト」というプロジェクトが立ち上がりました。参加スタッフは社内公募するということで、手を挙げました。

―そのプロジェクトはどういうものですか?

森本:私を含め、全国から店長やサブ、スタッフなど5名が参加しました。当時は接客に対する明確なマニュアルがなく、そのショップの店長から“口伝”のように接客を教えていたようなものでした。これを明確化して、「アクシーズファムの接客とはこういうもの」とハッキリした指針のようなものを作りたいと始まったプロジェクトでした。店長からスタッフに口伝するだけだと、必要なことが人によっては伝わっていなかったり、内容が変わっていったりして、正確な情報が先細りしてしまいます。それをなくして「お客さまに寄り添ったアクシーズファムらしい接客とはなにか」を考えたのです。現在はマニュアルもできて、それを浸透させていく手段の一つとしてロールプレーイングコンテストを開催しています。

―ロープレコンテストは練習にはなるけど、型にはまって個性が出せなくなるなど、賛否ありますが…

森本:確かに、ロープレで自分の良いところ、悪いところを気付けることもあれば、やり過ぎて自分らしさが分からなくなる場合もあります。だからロープレと仲良くなれたらいいと思っています。

―というと?

森本:接客は個性なので、そのスタッフの良いところをつぶしてまで、型にはめる必要なないと思うのです。一方で、改善した方が良い点もある。個人的には、個性は伸ばした方が良いと考えています。お蔭様でumie店はスタッフの個性が強いお店になりました(笑)。

―では、森本さんが接客で心がけていることは?

森本:お客さま軸で考えること。そして、また来たいなと思っていただける一言を残すことです。年代や性別に関係なく、その方に合った接客、その方のニーズに応えられるような接客をしています。「かわいい」という言葉一つとっても、どの程度「かわいい」のかは、表情やしぐさなどが入ることで全く違う印象に見えます。そういうところまでよく観察して、お客さまの気持ちを拾って、心に残る一言を伝えられたらと思っています。

―この仕事の醍醐味はなんでしょう?

森本:この仕事は、数ある職業の中でも花形だと思うのです。自分の望む着こなしで自分を演出してみせる仕事ってほかにはありません。さらに、商品はデザイナーや企画生産に携わる人たちが考え、縫製する人、運ぶ人など、いろんな方たちが携わって、最終地点である店舗に届きます。会社の色んな人の思いをのせて作られた商品を、最後にお客さまに届けることができるのはショップスタッフの特権だと思っています。洋服を買いに行くときって、怒っていないですよね?

―確かに。

森本:ほとんどのお客さまがワクワクした気持ちで買い物に来られます。そういう人たちをお迎えできる仕事って楽しいと思うのです。

―では最後に、これからの目標を教えてください。

森本:私にしかできないことをしたいです。自店のサブとしての仕事も大切ですが、これから結婚をする、子どもができた、といった人生の節目を迎えるスタッフの力になれればいいなと思っています。若いスタッフが多いので、積み上げてきたスキルをライフステージが変わることで捨てるのは忍びないことです。そういうことをなくしていければと思います。

苫米地香織:服が作れて、グラフィックデザインができて、写真が撮れるファッションビジネスライター。高校でインテリア、専門学校で服飾を学び、販売員として働き始める。その後、アパレル企画会社へ転職し、商品企画、デザイン、マーケティング、業界誌への執筆などに携わる。自他ともに認める“日本で一番アパレル販売員を取材しているライター”

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自宅にこもる消費者の心をつかむには? ストレスやデジタル下手への対応、“善行”がカギ

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、日本を含む世界各国で外出制限や自宅隔離などの措置が取られているが、これによって人々の考え方や消費動向が大きく変化している。

 ファッション業界のトレンド分析を専門とする米調査会社ファッション・スヌープス(FASHION SNOOPS)のミシェル・ロットバート(Michelle Rotbart)=カルチャー部門ディレクターは、「今回の危機的な状況に対応するための“新たな暮らし方”が事態の収束後も継続し、新たな常識となっていく可能性がある」と語る。

 今後はどのようにすれば、消費者の心をつかめるのか。同社が挙げた3つのポイントを紹介する。

・不安感やストレスへの対処

 外出が制限され、自宅にこもらざるを得ない状況の中で孤独感を深める人も多い。また先行きの不透明感によって不安にさいなまれることもあるだろう。こうしたことから、人の温もりが感じられ、安心感を与えてくれる商品やブランドに対して好感を抱く消費者が増加しているという。

 カレラ・クルニク(Carrera Kurnik)=同カルチャー部門エディターは、「スキンケアブランドの『キールズ(KIEHL'S SINCE 1851)』はアンバサダーがメッセージングアプリを使ってフェイシャルケアなどのアドバイスを行い、顧客とのつながりを維持している。インスタグラムでのライブ配信や、ソーシャルメディア上で消費者に参加を呼びかける“○○チャレンジ”などを行うブランドも多いが、いずれも顧客とつながることを目的としている。小さなことでもいいので、消費者の不安や孤独をやわらげるための工夫をすることが重要だ」と説明した。

・デジタルが苦手な顧客へのサポート

 現在、仕事のミーティングや学校の授業をはじめ、ワークアウトや仲間内での集まり、場合によっては結婚式までもがオンラインで行われている。その便利さから、事態が鎮静した後もこうした新たな習慣がある程度は残っていくと予想されるが、一方で「コンピューターは苦手」という人が取り残されていることも事実だ。

 ロットバート=カルチャー部門ディレクターは、「ブランドはデジタル化を推進すると同時に、そうしたサービスを使ったことがない顧客に対するサポートを提供するといいだろう」と述べた。

・正しい行いをすること

 他人に親切にしていたり、善い行いをしていたりする場面をとらえた動画がソーシャルメディア上で拡散され、人気となっているのは偶然ではない。先行きが不透明な中、そうした“人の温かさ”を感じさせるものが以前よりもさらに共感を呼ぶようになっているのだ。

 クルニク=カルチャー部門エディターは、「正しい行いをすることの重要性が再認識されている。企業が生産ラインを転用して医療用のマスクや殺菌効果のあるハンドジェルの生産に乗り出すといった大きな支援活動はもちろん、個人が地元のレストランをサポートするためにテイクアウトで利用するなど、誰もが自分にできることを考えて行動している。今後ますます、善行が人々の心に響く時代になっていくだろう」と予想した。

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