仕事が絶えないあの人の、“こうしてきたから、こうなった” 写真家・在本彌生編

 転職はもちろん、本業を持ちながら第二のキャリアを築くパラレルキャリアや副業も一般化し始め、働き方も多様化しています。だからこそ働き方に関する悩みや課題は、就職を控える学生のみならず、社会人になっても人それぞれに持っているはず。

 そこでこの連載では、他業界から転身して活躍するファッション&ビューティ業界人にインタビュー。今に至るまでの道のりやエピソードの中に、これからの働き方へのヒントがある(?)かもしれません。

 第8回目に登場するのは、雑誌「トランジット(TRANSIT)」や「ブルータス(BRUTUS)」のほか、カタログや広告などで活躍する写真家の在本彌生氏。その美しくも力強い写真に、業界内にもファンが多いことで知られています。外資系航空会社で乗務員として勤務後、36歳でフリーランスフォトグラファーに転身。「好き」という強い気持ちと行動力で道を開いた在本氏のキャリア変遷に耳を傾けました。

WWD:前職は客室乗務員をされていたのですね。

在本彌生氏(以下、在本):イタリアのアリタリア航空に勤めていました。イタリアの航空会社を選んだのは映画「ニューシネマパラダイス」がきっかけです。映し出されるイタリア・シチリア島の田舎町の風景だったり人情だったり、土くさい雰囲気に心をわしづかみにされました。映画館を後にする頃には「私、イタリアに呼ばれてる!」と本気で考えていましたね(笑)。大学3年の本格的に就活を考え始めたタイミングだったこともあり、「イタリアに行ける仕事をしたい!」とイタリア語講座に通うように。当初は、「ベネトン(BENETON)」などイタリアのファッションブランドや医薬品メーカーも調べてみたのですが、採用されてもすぐにイタリアに行けるわけではない経験者枠ばかりでした。そこで、航空会社への就職が働きながらイタリアに行ける一番手っ取り早い方法かも!と考えついたわけです。

WWD:なるほど。

在本:けれどアリタリア航空も経験者優遇でした。アリタリア(航空)にエントリーはしつつも、他の航空会社も受けることにしました。結果、アジア系の航空会社から内定をもらい、「まずはここで頑張ろう」と思っていた矢先に、アリタリア航空から欠員が出たという連絡を受けたんです。すぐにエントリーをして、ラッキーなことに入社が決まりました。

WWD:最短距離で夢をかなえたのですね!

在本:入社後、すぐにフライト訓練が始まりました。ルートは、東京→ミラノ、東京→デリー→ローマ、東京→モスクワ→ローマという3種類。一都市での滞在は、長いときには3日から6日近くになることもありました。そんなぜいたくな時間の与えられ方は、大人になってからはなかなかないですよね。私が初めに担当していたのは、ほぼ東京・デリー間。イタリアに行きたかったのに、経由地であるインドまでしか行けない(笑)。業務を始めて1カ月が過ぎた頃、フライトでローマまで行くことができました。降り立ったとき、全身が震えるほどうれしかったことを今でも覚えています。

WWD:経由地での滞在中はどんなふうに時間を過ごしていたのでしょう?

在本:フライトとフライトの間は体を休める時間と考えて、ホテルの部屋から出ない仲間もいましたが、私は出歩くのが好きでした。それまでの人生の中でデリーほど混沌とした都市は初めてで刺激的でしたし、多様すぎる文化に魅了されました。

デリーに深夜に到着すると、空港にウシが寝ていましたね。今はずっと近代的ですけど。それが“遅れている”とか近代的だとか、そういうことではないというのは感じていました。というのも、就職の前年にバブルがはじけて。人々の価値観が根底からひっくり返るような出来事が世界中で起きていたんです。就職して2年が過ぎた頃、このままずっと会社員として働くことに疑問を感じるようになっていました。月末に来月のシフトをもらって、一つのフライトが終われば手が離れる。そのルーティンに乗っかっていればお給料をもらえるわけです。仕事も嫌いじゃなかった。でも形として何も残っていかないんじゃないかな、と私は感じてしまって。そのことが心のどこかにずっと引っ掛っていたんです。

乗客の勧めで新橋のカメラ店に

WWD:何か転身となる出来事があったのでしょうか。

在本:フライト中にジャンプシートの前に座っていたあるお客さまとの出会いです。ジャンプシートに座ると、目の前にお客さまがいらっしゃる状態。しかもフライトは約12時間と長いので、自然と何らかのコミュニケーションを取らざるを得ないような環境です。ふと「なんか楽しそうに仕事してないよね?」と、自分の父親ほどの年齢の男性に言われました。それは決して嫌味な言い方ではなくて。私は「仕事を始めて5年になること」「何か形に残ることをしたいと思っていること」を話したんです。すると「こんなにいろいろな国に行っているなら写真を撮ったらいいよ。いま新橋のウツキカメラで、フジフイルムのティアラってコンパクトカメラが2万9800円で売ってるよ」と。「その値段なら買えるなぁ」なんて、私も妙にしっくりきてフライト帰りに新橋に行って、言われた通りにカメラを買いました。

WWD:まるで映画のような展開ですね。

在本:写真は以前からやってみたいという気持ちがあったんだと思います。今でこそスマホで気軽に撮れますが、当時はまずカメラを買わなくちゃならない。ましてや一眼レフなんてボーナスの1カ月分がかかる。「コンパクトカメラならフライトの邪魔にもならないし」と、とにかく始めてみました。最初はフィルム1本を1カ月で取り終わらないぐらいのゆるい付き合い方でした。それが数カ月すると、「現像も自分でやってみたい」「本格的に撮りたい」という思いがむくむくと湧いてきました。中古のライカM6のボディーとレンズ2本を手に入れ、「暗室入門」という本まで買っていました。当時のアパートのダイニングを遮光し暗室のようにして、仕事で行った先で写真を撮り現像するという生活を3年ぐらい続けていました。

WWD:写真のどんなところに引かれたのでしょうか?

在本:現像というのは、撮影したものをもう一回自分の目で確かめるという作業でもあるんです。私はそのプロセスが好きでした。「どんな気持ちでシャッターを切って、どう見てたんだろう」とか「私はこんな見方をするんだ」という発見も面白く新鮮でした。自分の気持ちと向き合って反すうする時間は、スケジュールをこなしてあわただしく時間が過ぎる客室乗務員の仕事ではなかなか味わえなかったことだったので。

WWD :写真を誰かに見せることもあったのですか?

在本: 実は写真をファイリングしてフライト時に持参していました。乗客の中でも、フォトグラファーって大きな機材や雰囲気で分かるんです。それで「私も写真撮ってるんです」とか言って、ファイルを渡したり。見せられる方も困ったと思います(笑)。とにかく誰かに見てもらって批判、批評してもらわないと前に進めないと、内心とてももがいていたんだと思います。実は、28歳のときに1年間休職をしています。その間に旅をしながら、先のことを考えていましたね。写真は好きだけど、それを職にするつもりや覚悟はなくて。このままいったら本当に定年まで会社員でいるのかな、と。

それから写真のワークショップに通うようになりました。3年ほど通ったワークショップが終わる頃「展覧会をやりませんか?」と声をかけてもらい、32歳で初めての個展を開いたんです。半年後に開いた2度目の個展に、「エスクァイア(ESQUIRE)」の編集者が来て、仕事をくれたんです。「南米特集」でアルゼンチンに飛びました。

WWD:客室乗務員とフォトグラファーの両立はどのように?

在本:撮影の仕事に合わせて休暇を取らせてもらっていました。誌面には当然フォトグラファーとしてクレジットが記載されるので、会社には事前に相談しました。すると返ってきたのは「君の人生なんだから、やりたいことをやりなさい。休みの希望は仕事に支障のない範囲で認めます」との答え。人事部長には感謝しかないですね。こうして、二足のわらじ期間が3年ほど続きました。海外での撮影となるとまとまった休暇が必要ですが、都内でのインタビュー撮影なら2時間ぐらいで終わるので、合間を縫って撮影の仕事を受けることもできました。

東京着のフライト後、イタリア人の乗務員たちは新宿のホテルに滞在するためそこまでバスが出るんです。私も同じバスに乗り、ホテルに荷物を預けたらすぐ近くのヨドバシカメラに行ってフィルムと印画紙を買って帰るという生活をしていましたね。

写真に投影できるのは
自分が経験してきたこと

WWD:フリーランスになることでの不安もあったかと思います。フォトグラファー一本でイケる!と感じた理由は何だったのでしょう?

在本:勢いもあるけれど、3年間の中で「エスクァイア」や「ニュートラル(NEUTRAL)」「スタジオ ボイス(STUDIO VOICE)」「流行通信」などの雑誌でコンスタントに仕事をさせてもらっていたことが大きいです。仕事の掛け持ちは、体力的にもさすがにきつくなってきていましたし。それまでに撮った写真とエッセイで写真集を出すことで区切りにしようと決め、会社を退職しました。

フリーランスになってからはもちろん収入面の浮き沈みはありましたが、食べていけるだけの仕事をさせていただいています。フォトグラファーとして独立したのが36歳で前職には14年も勤めましたから、当時も今も気持ち的にはまだまだ駆け出し。受けた仕事に対して120パーセントで返すのみです。技術的な知識は後から現場で身に着けた感じですから、学校で写真を学んだ人たちとは違います。ただ、写真に投影できるのは自分が経験してきてきたことで、それでしかない——。そう思えたら開き直れるんです。無理な仕事は、そもそも来ないですから(笑)。被写体としては、人でも物でも潜在的な美しさに魅力を感じます。本人さえ気づいていないような、放っておいても溢れ出る何かに心揺さぶられるというか。それは、カメラを手にした頃と今も変わっていないように思います。

※2004年創刊のトラベルカルチャー誌。08年に現在の「トランジット」に改名

WWD:前職での経験が生きていることはありますか?

在本:移動におけるフットワークの軽さですね。フォトグラファーとして世界中を訪ね歩くようになった今、キャビンアテンダントの頃に意図せずに出合ってきたインドやロシアなどの景色を見ることができたのは大きな財産だったと思います。それに接客業でしたから、いろんな人とコミュニケーションを取ることにもストレスがないですね。フォトグラファーって、サービス業の側面も大きいと思うんです。その人の美しいところや個性を引き出せるか、見せてもらえるか——。レンズ越しではあるけれど、(撮影は)対象者と一対一のコミュニケーションでもありますから。

WWD:在本さんにとっての「仕事」とは?

在本:生きること、ですね。写真が生活のための仕事というふうに区切っていないんです。なぜなら、私にとって写真を撮ること=心が躍る行為だと分かっているから。プライベートでしんどいことがあっても、現場でカメラを持ち、目の前の人や物に集中することで気持ちを切り替えることができる。写真を撮ること自体が楽しいんですよね。写真に限らず、落ち込んだときに何をしたら気持ちが落ち着いたり元気になるのか、という方法を知っているか知らないかというだけで、人生の舵取りが変わってくると思うんです。仕事でそれができている私は、幸せ者ですね。

何かしたいと思うことがあるなら、突き進んでみてはいかがしょう。私は36歳でフリーランスのフォトグラファーになっています。何事も遅いということはないと思う。後悔のないように生きないと、人生もったいないですから。

WWD:いま進めている企画はありますか?

在本:1年半くらいインドやバングラデシュに通っていて、伝統的な布工芸を取材しています。手仕事の美しさもさることながら、携わる職人たちのコミュニティーも奥深くて面白い。近いうちに形としてまとめたいですね。

WWD:最後に、新型コロナウイルス感染拡大が影響する今の状況下で思うことを教えてください。

在本:こんな事態を働き盛りのタイミングで経験することになった私たちです。ここまで蓄えてきた知恵と体力で乗り切りましょう。新しい時代を作る準備をしましょう。たった今私たちにできることは、とにかくウイルスを拡散しないこと。世界と自分に対して責任ある判断をすること。人間も動物も世界も自分だけでは回っていない——。そのことを念頭に置いて。知性、体力、精神力を育んで鍛え、次の段階に備えましょう。

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中国のロックダウンを生き延びたファッションインフルエンサー ライブストリーミングに活路

 新型コロナウイルスの発生地である中国・武漢市とその周辺地域で4月8日、2カ月半にわたったロックダウン(都市封鎖)が解除された。ショッピングモールは開店の準備をし、公共交通機関も運行を再開している。

 上海とニューヨークを拠点に活動するファッションインフルエンサーのウー・ジャイエ(Jiaye Wu)はロックダウンの約2カ月間を、武漢市にほど近い襄陽(じょうよう)市で過ごした。食料不足が起き仕事も減る過酷な状況の中、インフルエンサーとしてライブストリーミング配信に活路を見出した。それらは人生が変わるような経験だったという。

ロックダウンが宣告されてからの家族との生活

 例年の1月と2月には、ウーはファッション・ウイークに合わせて世界各都市を回る。しかし今年は新型コロナウイルスが急速に広がり旅行が禁止されたため、春節(旧正月)の期間を家族と過ごすことに決めていた。故郷である襄陽市が封鎖されるという知らせが入ったのは、家族と墓参りをしていたときだった。「ニュースを聞いて急いで家族を家に送り届けた。そうでなければホームレスになっていたかもしれない」とウーは当時の状況を思い出す。

 彼女の父は中国の鉄道会社で高い役職に就いている。会社はアウトブレイク(感染者の爆発的拡大)の間、緊急医療品や食料の鉄道輸送を管理した。「初めは車の運転も禁止されていたので、父は家から10kmの距離を歩いて通勤した。彼は街のために力を尽くし、落ち込んでいたと同時に疲れ果てていた。でもオンラインにはネガティブなニュースしかなかった」とウーは語る。

 全てのビジネスが停止したため、すぐに食料不足が発生した。「武漢が封鎖されているのを知ったとき、幸いなことに私たちはたくさんのインスタントヌードルを備蓄していた。母は私が過剰に反応しすぎだと言い、ロックダウンは2週間程度で終わるだろうと話していた。誰が10週間も続くと知っていたと思う?」。そして不動産管理会社が生活に必要な食材を各家庭に配達し始めるまでの2週間、家族は飢餓状態に陥った。「私は5キロ痩せた。食事を抜いたりインスタントヌードルを食べたり、春節の残り物で料理をしたりした」。

 ロックダウンは人々の心に大きな穴をあけたとウーは話す。「私の両親の世代は今までこれほど長い間部屋にこもることはなかった。母はイライラして家の中をぐるぐる歩き続けていた。本当は友達と麻雀でもしたかったんだと思う。私はというと、ビデオゲームをして遊んだりティックトック(TikTok)や「快手」(中国の動画共有アプリ)を見たりしていたから、時間はかなり早く流れた」と加えた。

配送システムとライブストリーミングを駆使

 ファッションブランドや中国の緻密な配送システムのおかげもあり、ウーはソーシャルメディアで存在感を発揮し続けた。「ルルレモン(LULULEMON)」とコラボして家庭で実践できるワークアウトを紹介したり、「アディダス(ADIDAS)」「プーマ(PUMA)」「ミュウミュウ(MIU MIU)」と“ステイホームファッション”をプロモーションしたりした。「私の実家は撮影にベストな環境ではなかったけど、母が近所の写真家から照明機材を借りてきて手伝ってくれた。さらに『プーマ』は“N95フェイスマスク”を、『バイファー(BY FAR)』は海外からバッグを送ってくれた」。

 3月18日、襄陽市は中国で初めてロックダウンを緩和した。ウーは健康状態を示すカラーコードで、都市の外へ出る許可が下りるグリーンと診断された。そして車で14時間かけて上海のアパートへ帰り、そこでまた普通の生活を始めるまで1週間一人で過ごした。

 ウーの仕事はかなり乱されていたが、ライブストリーミングで人気を得たおかげで収入は増えた。中国では現在、クオリティーの高いライブストリーミングを配信できるユーザーが不足している。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「バーバリー(BURBERRY)」などのブランドがオリジナルコンテンツを生み出すツールとして使い始めたので、ウーのようにファッションモデルとしてキャリアをスタートさせ、美術やデザインに関する専門的な知識を持っていることはアドバンテージとなる。

 ウーは自身の仕事について、「私の収入はブランドのマーケティング費用に依存している。イベントが全てキャンセルになってしまい、私は新しいチャンスを探していた。これまで中国のファッションインフルエンサーはウィーチャット(微信、WeChat)で読まれるようなコンテンツを生み出して稼いでいた。今私はライブストリーミングを通じて、マス市場の視聴者とラグジュアリーやデザイナーズブランドの架け橋になるようなポジションを築いている」と語った。

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画面に映る自分の姿にどきっとする人も! 花王がウェブ会議のおすすめメイクと環境を紹介

 花王はこのほど、在宅勤務をしたことのある20~50代の一般女性を対象に、在宅勤務時のメイクについて調査を行った。また、その調査結果をもとに今後ますます活用が増えるとされるウェブ会議におすすめのメイクも併せて紹介する。

 在宅勤務時のメイクについては、「勤務先にいるときと同じくらいする」と回答した人が40.1%だった。一方で、勤務先にいるときより「少しだけ軽め」「かなり軽め」が合わせて35.5%、「全くしない」が24.3%という結果に。そして、「少しだけ軽め」「かなり軽め」「全くしない」と回答した人に対し理由を聞いたところ、39.6%が「人に会わないから」、次いで「面倒だから」と回答。では、メイクをすると仕事上どのような効果があると考えられているのか。「オンとオフの切り替えができる」が63.5%と最も多く、メイクをすることで仕事モードになれる人が多いことが分かった。

 また、年代が若いほどウェブ会議の経験率が高い傾向があることから、ウェブ会議経験者に、画面に映る自分について気になることを質問。その結果、「太って見える」(57.1%)、「不健康に見える」(42.5%)、「たるみやほうれい線が目立つ」(40.3%)と続いた。ウェブ会議中はメイクの有無に関わらず、自分の姿に“どきっ”とするときがあると判明した。

 そこで同社は、在宅勤務時のウェブ会議におすすめの“少し軽め”のメイクを紹介。まずベースメイクは、うっすらと色の付く化粧下地やBBクリーム、CCクリームで肌トラブルをカバーしながら艶を与えるのがポイント。ウェブ会議時は、パソコンのカメラから映りやすい目の下や額、鼻筋、あごなど顔の正面部分を中心になじませると良く、特に目の下が整っていると肌は美しい印象に見えるという。

 チークは、血色を良く見せるために入れたはずが、画面上では肌の汚れやでこぼこした印象を与えることも。いつもより顔の側面~外側に入れることで、顔のたるみをすっきりと見せる効果がある。

 アイメイクは眉を描きすぎないことがコツ。アイブロウパウダーを眉の形をなぞるようにして色をのせる程度に。目元はアイラッシュカーラーでまつげを上向きにし、瞳に光を取り込むことでいきいきとした印象になる。アイシャドウは、濃いブラウン系やオレンジ系、カーキ系など黄みの強い色は画面上では影やくすみとして認識されやすいため、明るいベージュ系や少し青みのあるカラーがおすすめだ。

 口元は、色や透明感、手軽さの観点から色付きリップを推奨。赤やピンクなど血色感のある色をのせることで、全体的には軽いメイクに抑えながらも、ほどよくメイクをした印象に見せることができる。

 最後に、ウェブ会議をするときの環境も重要だ。上からの照明は顔が暗く映ったり顔に不要な影が落ちたりしがち。可能であれば、窓からの光を顔の正面で受ける位置にパソコンをセットし、顔全体に光が当たるようにする。パソコンと自身の間に白い紙を置くとレフ版のようになり、顔を明るく見せる効果がある。また、パソコンのカメラ位置にも注目。適度な高さの台にパソコンを置き、カメラ位置と目線の高さをできるだけ近くなるようにすると、画面に映る自分の姿を見て思わず“どきっ”とすることもなくなるそうだ。

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パリコレの最新ケータリング事情 絶品ヘルシーフードからトホホな配慮までつまみ食い調査

 みなさま毎シーズンお待ちかね(?)の“ベストケータリング賞”発表の時がやってまいりました!1月の2020-21年秋冬のパリ・メンズ・ファッション・ウイークでも、バックステージ取材中にケータリング調査という名目でつまみ食いの任務を遂行してきました。前季、予告なしに「キディル(KIDILL)」のケータリングについて書いたところ、末安弘明デザイナーから後日「まさかケータリングを評価されるなんて!」と驚きの声が届きました。狂おしいほどのスイーツ愛を持つ末安デザイナーは今季、かなり気合を入れてケータリングを用意されたようですが、残念ながら都合上伺えず……。末安デザイナーを含め、今後パリコレに参加予定の日本ブランドは、抜き打ちでケータリングをチェックさせていただきますのでどうぞ覚悟してください(笑)。それでは、今季バックステージ取材に行った5ブランドのケータリングを勝手にランク付けさせてもらいます。

最下位:BODE
ん?ケータリングはいずこに?

 ケータリングのスペースがなんとも寂しい感じの「ボーディ」。パリのケータリングとしてはおなじみのベーカリーレストラン「ル・パン・コティディアン(LE PAIN QUOTIDIEN)」のサンドイッチとパティスリーが置かれていたようですが、どうやら量が全然足りなかった様子。私がバックステージに到着したのはショー開始1時間前でしたが、ドリンクしか残っていない状態でした。バックステージではモデルがメイク&ヘアを施されながらケータリングを口にするのが通例です。合間にヘアメイクの担当者とスタッフもつまんだりするのですが、聞ところによるとほとんど何も食べられなかったとのこと。腹が減っては戦はできぬ!スタッフへの配慮として、ケータリングの質と量はブランド側が考えなければならない大切な要素です。まだショーを始めて2シーズン目なので、次回に期待します。

4位:TAAKK & DOUBLET
ケータリングの乱れは心の表れ?

 同点4位は、今季初のパリコレに臨んだ「ターク」と「ダブレット」です。どちらもスーパーやベーカリーで購入した数種類のサンドイッチ、スナック菓子、フルーツが並んでいました。ケータリングとしては無難で決して質が低いわけではありませんが、ちょっと散らかっているのが気になりました。ケータリングの乱れは心の表れ?デザイナーの2人はパリでのショーは初挑戦だったので、次回以降はもっと整うのかも。

 ちなみに、ファミリーレストランを模した「ダブレット」の会場内には、おいしそうなフードサンプルがたくさん飾られていました。もしもこれらがケータリングだったら、間違いなく“ベストケータリング賞”殿堂入りです!

2位:BOTTER
専用スタッフを配置する気遣い

 「ボッター」は「ル・パン・コティディアン」にケータリングを注文したようです。ショー開始は20時30分、集合は17時とディナー前ということもあり、スイーツ系のパティスリーが中心でした。ケータリングスペースを担当するスタッフがいたようで、なくなったら加えたり、ドリンクを注ぎ足したりしていました。ケータリングの内容というよりも、専用スタッフを配置する気配りに高評価です。

1位:RHUDE
LA流のヘルシーなおもてなし

 今季の“ベストケータリング賞”は「ルード」に贈呈します。用意されていたのはケータリング会社のル・ケータリング・パリジャン(LE CATERING PARISIEN)の健康的なベジタリアンメニューです。旬の食材を使った料理が定評で、メゾンブランドも顧客に持っています。

 この日はルッコラとナスがメインのサラダ、レンズ豆のサラダ、トマトとルックコラのサンドイッチ、黄色いケーキのように見えるのはブロッコリーが入ったキャロットケーキでした。「ルード」は、健康意識が高くウェルネス系のトレンド発信地であるロサンゼルスを拠点にしているということもあって、このような健康的なメニューだったのかもしれません。パリでのショーのためにケータリングについて調査した上で、ル・ケータリング・パリジャンを選んだのでしょう。その配慮が“ベストケータリング賞”の決め手となりました。今後ブランドが成長したら、もっと豪華なケータリングをつまみ食いできるかも。お腹を空かせて、またバックステージに潜入してきます!

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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大臣の失言で炎上したANAだけじゃない 縫製業のプロ団体も医療用ガウン生産を開始

 新型コロナウイルス感染症拡大を受け、航空会社の全日空を傘下に持つANAホールディングスが、減便で業務量が減っている社員を組織し、医療用ガウンの縫製に乗り出すと4月7日に報道された。これに対し、西村康稔経済再生担当相が報道番組で「CA(客室乗務員)さんも手伝う」などと職種を限定して発言したことで、SNSでは「女性差別的だ」といった批判が相次いだ。そういった差別の話とは別にファッション業界人として純粋に疑問に思うのは、「発注キャンセルなどで手が空いている縫製工場が手掛けた方が品質が保たれ、同時に縫製業の支援にもつながるのではないか?」という点だ。

 店舗の臨時休業、営業時間短縮によって、国内の衣料品縫製工場は今、非常に苦しい状況に置かれている。新型コロナショックによる発注キャンセルが相次いでいるほか、5月以降徐々に本格化するはずの秋冬の生産計画もほぼ白紙だ。バブル崩壊以降、日本の衣料品生産は中国を始め海外にほぼ移転しており、そうした海外工場と戦うために、残された国内工場も厳しいコスト低減にさらされてきた。体力のない中小企業が中心であり、今後2~3カ月以上今と同じような状況が続けば、資金がショートする工場は少なくない。

 「コロナショックを抜きにしても、去年10月の増税以降、消費意欲の減退に伴って売り上げは落ちてきていた」と話すのは、東北地方のある縫製工場幹部だ。とはいえ、2月までは中国の工場閉鎖による国内工場への振り分けなどもあって、1~3月の売り上げは前年同期比20%減前後で踏みとどまったが、「4月はそれどころではない。40~50%は落ち込むのではないか」という。「ANAの社員が医療用ガウンを作るという話が出ているが、縫製業のプロはわれわれだ。政府には休業補償などと共に、工場のラインを借り上げて医療用ガウンを作るなどの体制を整えてほしい」と続ける。

 そうした個々の縫製工場の嘆きや、経済産業省からの生産要請を受け、中小の縫製工場が中心となった業界団体である日本アパレルソーイング工業組合連合会が動き出した。「このままの状態では、縫製工場どこもが共倒れになる」と、同会の副会長で縫製工場ファッションしらいしを経営する白石正裕氏は話す。そこで、会に所属する工場で医療用ガウンを生産。ガウンの素材となる不織布は世界的にニーズが高まっているが、「生地の手当てを済ませ、滅菌や袋詰めなどの工程で取り組む先も整えた。まずは200万着を生産し、その後もニーズに応じて継続していく予定」という。4月10日に、試作品を経産省に持ち込んで検討を済ませたという。

 衣料用ガウン縫製で空いてしまったラインを埋めるというのももちろん大切だが、同時に、発注キャンセルなどのシワ寄せを、サプライチェーンの中で弱い立場の中小の縫製工場が被るという仕組み自体にも問題があるだろう。「発注キャンセル分は、満額とはいわないまでも一部は発注元のアパレルメーカーや小売り側に補償してほしい。でも、それが長年の商習慣になってしまっているので変えるのは難しい」と話すのは、関東圏のある縫製工場だ。実際、そのような補償を契約条件に盛り込んでいるような縫製工場はほぼないだろう。

 「店頭で商品が売れないことで、素材や製品などを工場で預かることになったが、この状態が今後数カ月続くのであれば預かるための倉庫代だって本当は払ってほしい」といった問題も同工場は指摘する。ただし、アパレルメーカーや小売りも苦しい状況にあるのは同じ。サプライチェーンのどの部門にとっても、同程度の痛み分けとなるようなポイントをどうにか探すほかはない。

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「ポストコロナのファッション」、英名門校セント・マーチンズの主任教授に聞く

 新型コロナウイルスが猛威を振るい、“異常”な状況下で人々の価値観に変化が生まれている。大切なものとは何か?幸せとは何か?――終息後の世界は、どう変わるのか。そのときにファッション産業は?これまで数多くのファッションデザイナーを輩出してきたロンドン芸術大学(University of the Arts London)のカレッジ、セントラル・セント・マーチンズ(CENTRAL SAINT MARTINS )のBAファッション学科で教えるサラ・グレスティ(Sarah Gresty)主任教授にメールインタビューを行った。

 同校の卒業生にはジョン・ガリアーノ(John Galliano)やアレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)のほか、「クロエ(CHLOE)」「セリーヌ(CELINE)」を人気ブランドに押し上げたフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)、クリストファー・ケイン(Christopher Kane)らがいる。

WWD:コロナウイルスのパンデミックによって学生に変化は?

サラ・グレスティ=BAファッション学科主任教授(以下、グレスティ):世界はロックダウン状態になり、私たちはパンデミックの事実に直面した。私たちは世界中で隔離された学生たちに向けてリモートで授業を続けている。2020年卒業の学生たちは卒業コレクションの制作をしていたが、彼らの企画案は、この隔離状態で限定された機器や材料への変更を余儀なくされている。

以前から多くの学生たちは廃棄物を再利用したり、ハンドクラフトの手法を用いてアップサイクルしたコレクションを制作していたが、ロックダウンしてからはすべての学生が想像力を駆使して、周りにあるものからエキサイティングなものを生み出そうと試みている。

WWD:セントラル・セント・マーチンズはファッション業界のニーズを見つめ、新しい価値観やクリエイティビティを提案するデザイナーを輩出してきた。

グレスティ:長年、私たちはファッション学科のカリキュラムにサステナビリティへの問題意識を組み込んできた。学生たちには、すべての事柄に対して疑問を持ち、デザインやクリエイティブ活動に取り組み、責任ある決断や選択をすることを奨励している。学生たちはファッション業界が地球に負担を与えていることに気付いていて、その問題に取り組むことで変化を起こそうとしている。

数年にわたり、私たち(学生、教員スタッフ、そしてプログラム)はファッション業界のシステムを再評価することに取り組んできた。そしてすでにたくさんの卒業生たちがこの業界に影響を与えたと思っている。ほんの数例を挙げるとすれば、フィービー・イングリッシュ(Phoebe English)、サラ・アーノルド(Sara Arnold)、ロッティングディーン・バザー(Rottingdean Bazaar)、マッティ・ボヴァン(Matty Bovan)などの名前が思いつく。

私たちは、現状のファッションシステムに危機感を持っているラグジュアリーブランドやスポーツブランドの多くとコラボレーションをしている。そして、彼らはデザインに循環型のアプローチが必要だということに気付いている。

「終息後は工芸や時間、他者や経験、所有物との関係を大切にするようになるのでは」

WWD:新型コロナウイルスの感染拡大によって、人々の価値観や考え方にどのような変化が起こっていると思うか?そして終息後はどのように変わっていくと思うか?

グレスティ:新型コロナウイルスは、私たちに消費について問い直すことを強いている。終息後は、工芸や時間、他者や経験、所有物との関係をより大切にするようになるのではないだろうか。たくさんの物を欲しがることはなくなって、自分が選んだものから特別な何かを感じることを求めるようになるだろう。

WWD:終息後にファッション産業はどういうものを提示できると思うか。

グレスティ:企業活動の透明性を示すトランスペアレンシー・インデックスは、どのブランドがシステムの改善に成功したのかを示しており、彼らの専門知識や経験は、同じように変化を望む人々にシェアされている。パンデミックによってさらにシェアされることでサステナビリティが加速していくのではないか。

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在宅勤務のメイク問題、オンライン会議は血色感がポイント

 目下首都圏において、在宅勤務が可能な職種では、リモートワークが強く推奨されている。私の周囲では、3月初旬から対面の取材や打ち合わせが少しずつ減り、現在はWEB経由のオンライン会議が大多数を占めるようになった。

 この生活が始まった頃は、オンライン会議用ツールの設定でアタフタしたけれど、慣れてくると「取材や打ち合わせは、遜色なく行えるのでは?」と感じている。そして「PCやスマホのモニター越しに人と話す」機会が増えるごとに(相手がほぼ女性なこともあって)、心の隅で感じていたことがある。「メイクも普段とは少々発想を変えたほうがいいのかも?」ということだ。

 PCのカメラからモニターを経由したやり取りになるため、当然、直接会う時より画像が粗くなる。ソフトフォーカスがかかった感じになるので、ファンデーションはきっちり塗らなくていい(逆に、肌のアラが目立たないから助かる)。その変わり、画像が粗いことで、いつもと同じようなチークとリップでは、「血色感が著しく低下する」印象なのだ。

 これは、モニターに映る自分自身はもちろん、相手の表情を見て感じたことでもある。オンライン経由で取材を行う場合など、相手の方もきちんとしたシャツを着用し、恐らくいつもと同じメイクをしているはず。なのに、顔色が少々冴えなかったり、カジュアルな印象に見えたりすることがある。

「きちんと感」を伝えるなら、リップとチークは2割増し

 社内会議だったらナチュラルメイクで差し支えないし、このイレギュラーな状態において「メイクなど二の次、とりあえず話しが大事」というのも、その通りだと思う。最近はZOOMやLINEを使った「オンライン自宅飲み」を楽しむ方も増えているそうで、プライベートな場面では、もちろんカジュアル万歳だ。なんなら画像が粗いことを逆手にとって、素顔でリラックスしてもいい。

 一方で、取引先と話すなど、仕事の場面である程度の「きちんと感」が求められる場合、ことオンライン経由の会議においては、「チークとリップは2割増しくらいで、ちょうどいいのでは?」というのが、個人的な感想である。

 発色が強すぎるチークは「おてもやん」と揶揄されがちだったけど、オンライン会議に限っては「ハーフおてもやん」くらいの血色感が、ちょうどいい着地点だと思う。具体的には、肉眼で見たとき「ホロ酔いの表情」くらい。ポイントは、最初からの濃い目に入れようとしないこと。まずはいつもと同じ量のチークを入れ、もうひと重ねするイメージだ。大人の女性が使うなら「クリームタイプ」「リキッドタイプ」のチークをおすすめしたい。肌との一体感に優れ、内側からじわっとにじむような血色感を演出するアイテムなので、失敗しにくいのが利点だ。

 リップはあえて濃く強調する必要はないけれど、赤、オレンジ、ピンクなど、唇に血色感を添えるカラーを選びたい。マットな質感だとコントラストが強調され過ぎることもあるので、ツヤ質感のほうが自然になじむはず。相手の方にも、やわらかな印象に見えると思う。

 というわけで、今回はオンライン会議に使えるのはもちろん「大人の女性が、自然に血色感を高める」という視点で、オススメのリップとチークを選んでみた。こんな時代だからこそ気分が上がるような色を、最新の夏コレクションからご紹介したい。

血色感を添え、気分を上げる「大人のリップ&チーク5選」

大人の肌に自然な艶と血色感を添える「アンプリチュード」

 滑らかなクリームが、肌の上で瞬時にパウダーに変わる、「アンプリチュード(AMPLITUDE)」のクリームチーク。適度な透け感のあるフレッシュなオレンジは、大人の肌をほんのり温め、イキイキとした血色感を演出してくれる。初心者でも失敗しにくい、絶妙の発色と質感が美しい。

肌なじみの良い、エキゾチックなテラコッタ「アディクション」

 「アディクション(ADDICTION)」のサマーコレクションは、インド南西部に位置する寺院の秘宝にインスパイアされたカラーがそろう。22のBurnt Clayは、エキゾチックな印象のテラコッタ。みずみずしいテクスチャーで、指先でそっとぼかすと、肌に溶け込むようになじんで、ヘルシーな印象が手に入る。

甘すぎない大人のチェリーピンク「スック」

 艶感のある自然な仕上がりが人気の「スック(SUQQU)」シマー リクイド ブラッシュ。この夏仲間に加わるのは、鮮やかなチェリーピンクだ。一見華やかな色だが、なじませるとほんのり血色感を添え、可憐な表情へと導いてくれる。肌に溶け込むようになじみ、甘すぎない「大人の可愛さ」を演出したい。

オニツカタイガーとコラボした、快活なオレンジ「シュウ ウエムラ」
 

 「シュウ ウエムラ(SHU UEMURA)」の夏コレクションは、オニツカタイガーとコラボした、スポーティなカラーたち。リップケースにスニーカーのストライプをあしらったサンライズ エナジーは、トレンドのフレッシュなオレンジにグロスのような艶を添えて。快活な印象の口元へと導いてくれる。

高発色×ジェルの艶、見た目もかわいいネコリップ「ポール & ジョー」

 キャップを開けた瞬間「可愛い」と思わず声が出そうな「ポール & ジョー ボーテ(PAUL & JOE BEAUTE)」のネコリップ。鮮やかなオレンジのネコをクリアイエローのジェルで包み、実際塗るとほんのり艶のある、果実のようにジューシーな発色。笑顔が似合う明るい印象の口元を演出してくれる。

在宅勤務時、メイクによる心理的な効果とは

 フリーランスの私は、これまでに自宅で仕事をする時、化粧をせずほぼ素顔で通していた(外出時にようやくジャージから着替え、メイクするという不精者でした……)。逆に今回のリモートワークで、オンライン会議のために「家の中でメイクする機会」が増えたわけだけれど、これが案外「日常のメリハリ」に役立っている。

 メイクをすると、気持ちが引き締まるというか、仕事モードのスイッチが入る感覚がある。そして1日の終わりにメイクをオフすると「はい、今日はここまで。あとは明日がんばろう」と、気持ちを切り替えるきっかけにもなった。

 これまで毎日出社されていた方は特に、在宅勤務中「仕事と生活の切れ目」が曖昧になることもあるのでは?また長期に渡って自宅待機を余儀なくされると、時々気分が塞ぐこともあるだろう。そんな時、メイクは女性にとって比較的手軽に気分を変え、オンオフをスイッチする、1つの手段になり得ると思う。一方では、最近オンライン会議用に「肌修正アプリ」も登場しているとか。「家の中にいてまで、きっちりメイクするなんて」という方には、これも素敵な選択肢の1つだ。家では素顔の状態で肌を休め、パックの時間を増やすなどして、この機会にスキンケアにいそしむ方法もある。このあたりは、その方のライフスタイルや嗜好によって違ってくるだろう。

 先行きが不透明で、イレギュラーな状態が続く中「自分に合ったツールを使い、自分にとって快適な方法で、なんとか今をやり過ごしていく」1つの手段として。メイクや美容が、気持ちやライフスタイルを支える一助になるなら、ぜひ取り入れて頂けたらと思う。

宇野ナミコ:美容ライター。1972年静岡生まれ。日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、ウェブなどで美容の記事を執筆。スキンケアを中心に、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、美容医療まで担当分野は幅広く、美容のトレンドを発信する一方で丹念な取材をもとにしたインタビュー記事も手掛ける

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花見に変わって桜の香りで癒されて 香水やハンドクリームなどチェリーブロッサムおすすめ3選

 新型コロナウイルス感染拡大により在宅を余儀なくされる中、桜を愛でる最高の時季も家で過ごさなければならなくなってしまいました。でも少しぐらい桜を感じたいーー。そんなときは、家の中や自分自身を桜やフローラルな香りで彩ってみては?見えないからと後回しにしていた香りの演出を始めるのにぴったりの3品を紹介します。

「JO MALONE LONDON」

 英国発ブランド「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」は、英国以外の国で初めて限定アイテムを発売。それが日本限定コロン「サクラ チェリー ブロッサム」(30mL 9240円、100mL 1万8480円、税込)です。はかなさや洗練された美しさの中に強さもある桜の花が咲き誇る光景からインスピレーションを得て、英国ブランドならではのひねりと意外性を加えて、繊細で軽やかで可憐な香りを作り出しています。それは、ローズやミモザの香りのレイヤーにベルガモットやマンダリンのフレッシュさをアクセントとすることで、ベースのムスクやウッディーノートが際立つパウダリーな香りです。

 「ジョー マローン ロンドン」は、コンバイン(重ねづけ)が得意なブランドなので、桜の季節が過ぎたら、ほかの香りを加えてみるのもいいかも。おすすめは、「イングリッシュ ペア & フリージア」。みずみずしいフルーティーな香りで、初夏に差し掛かる季節に爽やかな香りを漂わせられます。また、「ポピー & バーリー」を加えてフローラルで華やかさが演出できます。「サクラ チェリー ブロッサム」の余韻を残しつつ、気分をフレッシュにしてみては。

「LOCCITANE」

 「ロクシタン(LOCCITANE)」から出ている「チェリーブロッサム」シリーズ(1800〜5900円)は毎年2〜4月に人気のアイテムです。こちらの香りは、日本の桜ではなく、南仏プロヴァンス・ルベロンの町、アプトに咲くチェリーブロッサムで、チェリーエクストラクトのフルーティーな甘さとチェリーブロッサム、スズランなどをブレンドした、爽やかな春の香りです。オードトワレで自分に香りをまとうのもありですが、シャワージェルやボディーミルクもあるので、体からふわっと香るのも楽しそう。

 そして、同シリーズにはハンドクリームもあります。こんな状態でいつも以上に手洗いが重要視される中、手の荒れも心配です。「ロクシタン」によると今、全体としてハンドクリームの売り上げが伸びているとか。手荒れ防止に加えて香りで癒されたいという思いもあるのではないでしょうか?桜の季節の今、「チェリーブロッサム」で室内にほっとした時間を演出できます。

「CHLOE」

 「クロエ(CHLOE)」の「フルール ド パルファム オードパルファム」(50mL 1万1900円、75mL 1万4700円)も、2016年発売以来ファンが多いアイテムです。花ずい(花の雄しべと雌しべ)だけで作られたフレグランスで、ローズやバーベナに加え、チェリーブロッサムの花ずいをブレンドしていて、エレガントと官能性を兼ね備えた香りが特徴です。

 普通に手首や腰などにつけるのもいいですが、一度手のひらに吹き付けてから髪の内側からかきあげるように、髪に香りを移していくと髪にも香りが。リモートワークで煮詰まったとき、ちょっと髪を触ってみるとこの香りがふわっと広がります。

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美容師やセラピストに向け、サロン独自で金銭的支援の動き 新型コロナの影響で営業自粛などのため

 緊急事態宣言を受けて、ヘアサロンやエステサロンは営業自粛や時短営業などの対策を迫られている。しかし、いつ、どのような形で、どのような額の補償がなされるのか不透明なままで、経営者やスタッフは不安な日々が続いている。そんな中、スタッフや契約美容師に独自の支援を検討する企業も現れだした。

 東京・大阪を中心にシェアサロンなどを展開するミラーボールは、新型コロナウイルスによる店舗閉鎖などが起きた場合、雇用する正社員だけでなく、契約するフリーランス・業務委託契約の美容師にも休業補償を行うことを決定した。

 正社員の美容師の場合、基本給に加えて歩合部分に関しても、昨年の半年間の平均の歩合賃金を補償する(2020年5月末まで)。業務委託契約の美容師の場合、店舗閉鎖が1カ月間に及んだ場合は20万円の報酬を補償、2週間の場合は約10万円、1週間の場合は約5万円を補償する(5月末までで、過去の売り上げ実績により多少の変動有り)。また、希望者には無利息の融資を行うという。

 美容師、ネイリスト、ヨガインストラクターなど多様なプロが集まる複合型シェアサロン「クノア(Qnoir)」を展開するクノアは、経営難に直面する美容関連業界のフリーランスや経営者向けに、同サロンの4~5月の月額会費を無料で提供するフリーレントプランを実施する。

 同サロンは、家賃に比べて固定費を削減させた月額会費と、利用した時間に応じたスペース利用料を支払ってもらうモデルで持続可能な働き方を提案してきたが、4~5月は新規申し込みを対象に月額会費を無料とすることを決めた。月額会費はプランにより異なるが1万~5万円で、対象月はそれが0円となり低コストでの営業が可能になる。

 ハンドリフレクソロジーのサロンプロデュースなどを行うおてやすみは、ハンドマッサージのフリーパス(120分の施術で1万円、有効期限6カ月)を発行し、発行枚数に応じてセラピストの仕事案件を保証するとともに、1人1日1万円を支給する。

 「フリーパスの発行枚数にもよるが、生活に困っているセラピストを優先に1日1万円を支給し、できる限り全員に行き渡るように努めている。また、新型コロナショックによるシフトカットで収入が減った方、職を失う方が増えている状況を受け、全くの未経験者であっても講習を受けた後に、セラピストとしてサポートを受けながら仕事ができるようにするシステムも整えている」と同社担当者は話す。

 新型コロナウイルスの影響による自粛がどこまで長引くのか不明で、国や地方自治体による補償も固まらない中、金銭面で不安を感じているスタッフをサポートする独自の動きは今後も広がっていきそうだ。

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海外ビューティ通信モスクワ編 新型コロナ拡大で外出禁止令のモスクワ 市民生活をリポート

 世界に目を向けると日本とは異なる美容トレンドが生まれている。そこで、連載「海外ビューティ通信」では、パリやニューヨーク、ソウル、シンガポールなど、7都市に住む美容通に最新ビューティ事情をリポートしてもらう。

 この原稿を執筆している4月6日時点、新型コロナウイルスの影響でモスクワでは数々の規制が導入されている。まず外国人はロシア全土で入国禁止となり、国際線フライトが運航を停止した。感染者や濃厚接触者は感染症病院に収容され、最近入国した人々は全員14日間の自主的隔離となり、買い出しやごみ捨てなど一切の外出が禁止されている。モスクワではスポーツや娯楽イベントが中止となり、ミュージアムやジム、劇場などは閉鎖し、それに続いて学校が休校になり高齢者は自主的隔離となった。3月28日〜4月30日まで全国一斉に食料品店や薬局、公共交通機関など一部を除き企業は営業禁止となり、3月30日からモスクワをはじめ多くの地域で外出禁止となった。最寄りの食料品店や薬局での買い物、自宅から100m以内の範囲でペットの散歩をすることは許可されている。デパートや大型の公園は閉鎖、飲食業はテイクアウトかデリバリー以外すべて休業。飲食業界やイベント業界などからは倒産を懸念する不安の声が上がっている。この記事はWWDビューティ2020年4月9日号からの抜粋です)

 新型コロナウイルス禍による世界同時株安と並行して、石油生産への依存度の高いロシアはOPEC(石油輸出国機構)との減産合意の不成立が重なり、通貨のルーブルが約20%も急落した。この先国境封鎖が続けばさらなる下落が想定される。ルーブル安はこの先輸入品の価格が値上がりすることを意味する。国内に流通する大手化粧品ブランドは外国メーカーのものばかりで、また、そもそも一般的なロシア人は経済的に余裕がないため何にお金をかけるかを厳選するため、以前から化粧品類は家計において節約対象になりがちだ。そのため2020年のロシア化粧品市場の売り上げは、全体的な縮小が予測される。国民が受ける経済的なダメージは長期にわたり深刻になるだろう。

 新型コロナウイルス対策に話を戻すと、ロシアでもメディアやSNSでは隔離中や外出禁止期間中、できるだけ快適に過ごすためのアイデアが投稿されている。インターネット配信のコンサートや映画鑑賞と並んで飲食のデリバリーもその一つだ。レストランも配達に対応するところが増えており、店内での飲食が禁止となった今ではデリバリーは飲食業界の力の入れどころでもある。

 折しも今はロシア正教会の伝統行事で3月2日から始まった大斎期の最中だ。復活祭までの40日間は肉や乳製品の摂取が禁じられていて、特に信心深い正教徒に限らず、健康的な食生活を心掛ける意識の高い人々はこの時期このルールを守った食事制限を実践する。飲食店側も多くが毎年新作の期間限定メニューを発表するが、栄養バランスを考慮しヘルシーなだけでなく、最近はエキゾチックな食材が使われていたり食材の組み合わせがユニークだったりと、ロシアの伝統的な家庭料理にはない味を楽しめる。特に増えているのがアジア料理と中東料理だ。アジア料理ではエビの代わりに豆腐を入れたトムヤムクン、アボカドとマンゴーの生春巻きなどスタンダードな味の料理から、日本そばと野菜をソースで炒めた焼うどん風そばという創作料理も。中東料理ではひよこ豆をペーストにしたフムスや乾燥挽き割り小麦のブルグルなどがよく見られる。日替わりの菜食メニューを毎日届けるサービスもある。長期の外出禁止はつらいけれど、気を落とさず乗り切りたい。


 「WWD JAPAN.com」はファッション&ビューティ業界を応援すべく、週刊紙の「WWDジャパン」と「WWDビューティ」に掲載した新型コロナウイルス関連ニュースを無料開放します。記事やコラムから未曾有のピンチを克服するヒントや勇気を感じ取ってくだされば幸いです。

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佐藤仁美:通訳、翻訳家。2010年からモスクワ在住。ソチ五輪、FIFA W杯やアート・文化事業でのメディアコーディネーターをはじめ、ロシア関連番組制作に多数携わる。NHK「ちきゅうラジオ」などのメディアで現地情報を発信。 ロシア世界遺産踏破に挑戦中

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スマホの次の時代は“音声”だ 声のブログ「ボイシー」が目指す未来

 「ボイシー(Voicy)」は、2016年9月にスタートした音声メディアだ。同メディアでは、独自の基準をクリアした“パーソナリティ”がさまざまなテーマのもと、ラジオのように音声でコンテンツを配信している。その情報の有益性や“ながら聞き”できる利便性などから人気を博し、着実にユーザー数が増加。さらには日本経済新聞と提携してコンテンツの共同制作を行ったり、TBSイノベーション・パートナーズや中京テレビ放送、朝日放送グループのABCドリームベンチャーズ、文化放送などから資金調達を行ったりと、既存の大手メディアを巻き込んだ拡大路線を図っている。音声コンテンツは今後、どこに向かっていき、その中で「ボイシー」はどのように成長していくつもりなのか。緒方憲太郎Voicy代表に話を聞いた。

WWD:Voicyを立ち上げる以前は何をしていた?

緒方憲太郎Voicy代表(以下、緒方):もともとは公認会計士として働いていました。個人的にビジネスが大好きで、好奇心旺盛だったということもあり、いろいろな会社の裏側を見たいと思ったんです。その後は一度休職して世界を回る中で、アメリカでNPO組織を作ったり、オーケストラをマネジメントしたりといろいろな経験をしてきました。日本へ帰国してからは、トーマツベンチャーサポートでベンチャー企業の相談役というポジションでいろいろなビジネスを見てきました。

WWD:自分で起業をしようと考えたきっかけは?

緒方:いろいろな企業に関わっていく中で、成長する企業もあれば低迷する企業もありましたが、世の中に新しい価値を生んでいく企業もあって。そういった企業を見て、僕自身も新しい価値を生むことができる素敵なサービスを作って、素敵な組織を作ることに挑戦したいと考えるようになりました。次の時代がどうなるのかを考え、道なき道をいってみたいな、と。

WWD:中でも音声コンテンツに着目したのはなぜ?

緒方:スマートフォンの次の時代は、音声ではないかと考えたからです。スマートフォンの登場で、人と情報の接点は大きく変わり、PCの時代からスマホへと時代が変わった。これと同じように、今後はスマホから音声へと変わっていくと考えています。IoT(モノのインターネット化)が進むことで、あらゆるモノがネットに接続されていきますが、常に手が届く範囲内にあるわけではない。手を使わないで検索したり、デバイスに指示をしたりする必要が出てくるはずで、その方法として音声には大きな可能性がある。僕としても、スマートフォンの次の時代を日本から挑戦できるのであれば、人生を賭けてやる意味があるのではないかと思っています。

WWD:スマートフォンの次の時代を作るために、Voicyはどのようにアプローチをしていくつもりか?

緒方:大きく分けると2つで、音声の機能性と人間性があります。機能性の面だと、これまでは検索するためにデバイスに触れなければならなかった環境とは異なり、音声は“ながら聞き”に代表されるように、生活を止めることなくネットに接続し、情報を得ることができるということ。人間性の面は個人が活躍する現代において、改めて重視されている魅力や人間らしさは、声で表現できるということです。この2つを事業の柱にすることで、音声を軸としたインフラから社会文化まで作ることができると考えています。

コンテンツ軸ではなく人軸でサービスを設計

WWD:ネットラジオのような形態の音声メディアという点では「ポッドキャスト(PODCAST)」などと似ているような印象を受けるが?

緒方:それはよく言われます(笑)。ただ、サービスの軸が違います。「ポッドキャスト」はコンテンツ軸で作っている一方で、僕らは人軸で作っている。配信を聞いて、パーソナリティを好きになったり、理解したりすることを「Voicy」では重視しています。さらにSNS的な要素を入れて、人と人がつながるようにしていることで、コミュニティーの形成を行えるようにもしています。こういったこともあってか、主催イベントはもちろん、ツイッターなどのSNSでも大きな反響や熱量が生まれています。

WWD:パーソナリティには基準があり、誰でもなれるわけではない。その理由は?

緒方:特定のジャンルにパーソナリティが偏り過ぎてしまったり、パーソナリティが多すぎて聞く人がバラけてしまったりすることを避けるためです。また、人が配信を聞くための環境を整えることも大切で。話を聞くときに、「この人の話が面白い」と言われれば聞けますが、単に流れてきた話をちゃんと聞くのは難しい。音声は動画などと違い、すぐに面白いかは分かりづらい。でも、聞けば聞くほどジワジワ好きになってくるという特徴もある。だから僕らが本当にオススメできる、 一緒にサービスを作っていける人たちにパーソナリティになっていただいています。

WWD:パーソナリティになる人の基準は?

緒方:非公開ですが、声の良さではなく、その人の発信内容を見ています。というのも、単に声がうまい人が発信するという世界観だと今までだと変わらないな、と思って。「ボイシー」は音声を届けるというよりも、人の魅力を音声で届けることを重視しているので、基準としては「その人と会いたいか」「その人が飲み会を開いたら何人が来そうか」といった感覚に近いです。なので現状は、比較的インフルエンス力のある人がパーソナリティになるケースが多いとは思います。

WWD:ローンチから3年以上が経っているが、当初と現在でリスナー層に変化はあるか?

緒方:年齢層は20〜30代を中心に、40代も増えてきています。ビジネス好きの男性がメインだった当初に比べ、現在は男女比は6:4です。中には子育てしながら「ボイシー」を聞くお母さんもいます。徐々に生活の一部にし始めるリスナーさんが増えてきている印象ですね。パーソナリティの方も今まではファンが聞く、といったことが多かったのですが「ボイシー」を通じてパーソナリティを知った、というユーザーの方も増えてきました。

WWD:リスナー層の変化に伴い、配信するコンテンツなども変えていくのか?

緒方:当初は音声は読書に近い世界と考え、比較的ビジネス要素の強いコンテンツであったり、勉強になる内容だったりが多かったんですが、今後はめちゃくちゃ面白い番組など、エンタメ性のあるコンテンツを増やしていきたいですね。

WWD:ファッション誌などの中には、音声に注目しているところもある。そういったメディアと共に取り組めることがあるとしたら、どういったことがある?

緒方:個人的には、ファッションって考え方や世界観、ストーリーの部分が重要で、意外と見た目の要素があまり大きくないのかもしれないな、と感じています。そういった意味ではデザイナーがどういう思いで作っているのかといったストーリーは写真とキャプションよりも、音声の方が人々に伝わりやすいのではないかと思います。

WWD:提携や資金調達などを通じて、既存の大手メディアを巻き込んでいるが、その目的は?

緒方:イメージとしては、既存のメディア企業と一緒にテレビ網の音声版を作っている感覚に近いです。テレビ番組を作って広告を取る人もいるし、テレビ通販をする人もいる。僕らも同様に、「ボイシー」でプラットフォームやツールを作り、既存企業はそれらを活用して新しいビジネスを行ってくれればと考えています。今は、そのための先行投資の段階。スマホの次の時代を一緒にやりたいと言ってくれる人たちと、どんどん新しい挑戦をしたいと思っています。

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増永眼鏡が高田賢三と追求した日本の伝統美と技術力

 1905年創業、福井県の老舗アイウエアメーカー、増永眼鏡がデザイナー高田賢三をディレクターに迎えたコレクション「マスナガ デザインド バイ ケンゾータカダ(MASUNAGA DESIGNED BY KENZO TAKADA)」は、スタートして6年目を迎えた。ラインアップは充実度を増している。

「『マスナガ』の
ディテールは完璧だ」

 2014年のデビュー作は、いきなりパリの国際眼鏡展「シルモ(SILMO)」で優秀なアイウエアに贈られる「シルモ・ドール賞」を受賞し、評価は世界で高まった。創業以来100年以上受け継がれる増永眼鏡の伝統の技術力と、高田のフィルターを通した日本の美意識が絶妙に融合することで確固たるスタイルが完成している。高田は「まず快適であること、そして身に着けるユーザーが誇りに思えることが重要。『マスナガ』のディテールは完璧だ」と、増永眼鏡とのこだわりのモノ作りに自信をのぞかせる。

 20年春夏コレクションの特徴は、シートメタルやアセテートの肉厚な生地使いと、繊細な彫金技術から生まれる存在感だ。時代に左右されないビンテージスタイルと、歴史に育まれた熟練の職人による手仕事から生まれた掛け心地のよさは、まさに「マスナガ」コレクションの最高峰だ。価格は6万5000円

福井伝統の技術が宿る
「マスナガ」3シリーズ

 増永眼鏡は、ほかにもバリエーション豊かなオリジナルブランドを手掛けている。メード・イン・ジャパンの品質とタイムレスなデザインが特徴だ。注目したい3シリーズの一つは、増永眼鏡の創業年を冠した主力ブランド「マスナガ シンス 1905(MASUNAGA SINCE 1905)」。デザインから金型作り、表面処理まで、完成までの200を超える工程を一貫して自社で管理し、ハンドメードの高いクオリティーを実現する。「光輝(KOKI)」シリーズは1970年の大阪万博で企画され、松下館のタイムカプセルに収納した“カスタム72”の後継モデルとして誕生。精神、姿勢、技という増永眼鏡のポリシーを体現する。「G.M.S.」シリーズは1933年、昭和天皇が福井を訪れた際に献上された3本のラウンドフレームがルーツだ。2005年の復刻以来、クラシック感とモダンが同居するラインアップの充実を図ってきた。東京・青山の旗艦店をはじめ国内に約250店舗の販売先を有し、世界の販売網も約30カ国に広がっている。


問い合わせ先
増永眼鏡
03-3403-1918

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フェミニンにサバイバル気分 “くるむ”装いでおしゃれに体をプロテクト

 新型コロナウイルス感染症拡大を受け、3月に予定されていた2020-21秋冬「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」が中止されました。参加するはずだったブランドは急きょ無観客ショーやルック撮影に発表方法を切り替えましたが、そこで相次いで登場したのがサバイバル気分を帯びた、体を“くるむ”装いです。今を生き抜く意識をまとったルックは凛としてたくましい。でも、シルエットやディテールはしなやか。女性の多面性を引き出す効果も生んでいます。暗いムードの今こそ、新しい装いについて考えることで気分をリフレッシュしていきましょう。

 「ドレスドアンドレスド(DRESSEDUNDRESSED)」はトレンチコートを2枚重ねたかのような新スタイルを披露。いわゆる“襟抜き”で肩を落として着て、内側のコートをのぞかせ、タフ感と官能美を交わらせました。「ドレスドアンドレスド」以外も、今回の記事中で紹介するさまざまなコーディネートは、強さとフェミニンが交差し、これまでのジェンダーミックスの先を行く着こなしのヒントを感じさせます。

◆ふんわりキルティングでミリタリー&安堵感

 「ハイク(HYKE)」がポンチョ風アウターに仕立てたのは、ミリタリー系コートの裏地(ライナー)に使うようなキルティングの素材。軍装風の色味に加え、ハイカラーで全身を隙間なく覆って、緊張感を演出。本来ならば内側に着込むライナーを、あえて上から重ねる着方にも“非常時”のムードが漂います。薄手のキルティングは、量感を出しつつも、軽やかに映るユーティリティーアイテムです。

 写真2枚目の「ザ・リラクス(THE RERACS)」はフード付きのキルティングコートで、全身を朗らかな雰囲気で包みました。やや武骨なイメージを帯びた、アウトドア風のキルティングですが、やわらかい立体シルエットを組み立てています。危機に備える人たち“プレッパー(Prepper)”のような気分を醸し出しながら、優しいムードにまとめ上げました。

◆レザーで強さを演出 着こなしに相乗効果

 合皮を含むレザーは、“強さ”を印象づけるキーマテリアル。「タエ アシダ(TAE ASHIDA)」は、身頃にレザーを使った異素材ミックスのジャケットに、チェック柄のアシンメトリースカートを合わせました。ハーネス風のベルトがタフ感を上乗せします。ロングブーツはレザージャケットとの相乗効果を発揮。強さとレディー感を響き合わせています。

 写真2枚目の「ヒロココシノ(HIROKO KOSHINO)」は、つややかなレザーパンツの裾を、レザーブーツにイン。スレンダーなレッグラインを強調します。一方で、クラフト感を帯びたステッチ使いのジップアップブルゾンは、ラウンドシェイプのファニーなムード。クールなレザーパンツとのコーディネートで、相反するテイストを際立たせました。

◆“ロング×ロング”シルエットで凛としたムード

 マニッシュ感を濃くする動きが広がる一方、しなやかな強さを打ち出す試みも目立っています。「ミントデザインズ(MINTDESIGNS)」は白衣を連想させるような白シャツを軸に、クリーンで凜々しい装いを提案。ロングシャツにロングスカートという“ロング×ロング”のシルエットを組み立てました。首に巻いたスカーフを垂らして、さらに“落ち感”を強調しています。ウエスタン風のブーツで足元を引き締めました。

 細感と縦長イメージの相乗効果を狙うシルエットづくりを試したのは、写真2枚目の「マラミュート(MALAMUTE)」。ハイネックとロング丈のコンビネーションで、スリーク(しなやか)な着映えに導きました。テキスタイルプリンターで写し込んだ柄を全身に配して、全身のトーンを統一。芯の強い女性像を引き出しました。ほとんど肌を見せない装いは、プロテクション感も漂わせています。

◆マルチポケットでハンズフリー タフ感を印象づけ

 ミリタリーやワークウエアのムードをまとった装いも相次いで打ち出されました。目印はビッグポケット。「スリュー(SREU)」のアウターは、特大の張り出しポケットが目を引きます。パンツとのセットアップで、一段とタフ感を強めています。袖口をベルトで絞って、サファリ気分も添えました。正面に深くスリットが入ったパンツで、ブーツをチラ見せ。全身を覆いながらも、フェミニンを忘れないコーデです。

 写真2枚目「ノントーキョー(NON TOKYO)」の、ビッグポケットをフロントに4個も配置したスカートは、まるでミリタリーパンツのよう。ハンズフリーで過ごせそうなユーティリティー顔。でも、ケミカルなネオングリーンはハッピームード。ハードめデザインとポジティブ色をミックスしています。ロングスリーブのハイネックトップスに、ポインテッドトゥのスニーカーで縦長シャープに仕上げています。

 体をしっかり覆うシルエットで、他者に寄りかからない強さを提示。同時に、色やディテールではフェミニンな雰囲気を醸し出すという、新たなジェンダーミックスが盛り上がってきました。素材ではレザー、シルエットは“ロング×ロング”、ディテールでは“多ポケット”などが新スタイリングを印象づけてくれます。サバイバルを意識せざるを得ない時代のおしゃれにも向く装いといえるでしょう。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

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新型コロナが直撃する伊アイウエア産業の危機 業界トップが明かす視界不良

 新型コロナウイルの感染拡大が深刻なイタリアのアイウエア産業が、危機的状況を迎えている。イタリア政府が打ち出した経済支援策に対して、ジョヴァンニ・ヴィタローニ(Giovanni Vitaloni)=イタリア眼鏡製品メーカー協会(ANFAO)会長兼「ミド」会長は、アイウエア業界への早急な融資保証を働きかけた。

 「政府の早急な金融支援がなければ、アイウエア企業は大きな影響を受け、経済や雇用に壊滅的な損害が出る」と警鐘を鳴らす。「われわれのこの要望に対して、現時点で何の進展もない。早急に手を打たなければ行き場を失う。簡単な話だ。われわれは、待ったなしで資金が必要だ」。イタリア政府は、4000億ユーロ(約46兆円)の経済支援策を打ち出しているが、いまだに実行されていないという。

 2018年に約50億ユーロ(約5800億円)を売り上げたイタリア国内のアイウエア産業は、新型コロナウイルスの影響で状況が一変している。2月にミラノで開催予定だった世界最大級の国際眼鏡展「ミド(MIDO)」の中止が大きな痛手となった。

 ヴィタローニ会長が、「ミド」中止決定の経緯、アイウエア企業の現状や損害、回復に向けた方策などについて米「WWD」に語った。

WWD:「ミド」はいったん7月に延期とし、結局今年の開催は断念した。その理由は?

ヴィタローニ:「ミド」はイタリアのアイウエア産業のエンジンのような存在であり、中止の決定は痛みを伴うものだった。新型コロナウイルスの拡大が収まらず、7月の開催さえ難しい状況になったが、それ以上延期すると、秋にパリで開催される国際眼鏡展「シルモ(SILMO)」と時期が重なる。それで、いち早く来年2月初旬の開催とした。実り多い営業活動ができるように業界全体が一致団結している。

WWD:ANFAO会長として、今直面している問題は?

ヴィタローニ:状況は日々変化しているが、大きな問題はアイウエアの需要がゼロということだ。本来なら2月開催の「ミド」で新作を発表し、世界中から集まるバイヤーの注文を受けて生産する今が、年間のビジネスで最も重要な時期なのだが。今や工場の稼働は4月もストップしている。

WWD:生産活動が止まっている?

ヴィタローニ:一部海外に向けた需要はあるものの、全ての市場が停滞している。例えば、イタリアのアイウエア産業にとって第二の輸出国であるフランスの眼鏡店はすでに20日間休業している。また、輸出額の約25%を占めるアメリカも同様の状況だ。オーダーがないまま、今後の5週間をどうしのぐのかが問題だ。3月は各社の蓄えで乗り切れたが、4月は経営や雇用を守れるのかどうかが見通せない。特に中小企業の財務状況は心配だ。

WWD:イタリア企業の競争力が低下する?

ヴィタローニ:われわれは、健全な会社運営と堅実なサプライチェーンによって、これまでもあらゆる困難を克服してきた。この20年間、生産量の90%を輸出しており、メード・イン・イタリーの高い国際競争力を維持している。世界的に景気が不安定だった19年でも輸出は4%成長し、20年も2月まで好調を維持した。

WWD:今後の経済的損害の見通しは?

ヴィタローニ:中小企業の今年の売り上げは、前年比40~50%減の影響を受けるだろう。各社は新商品を販売する用意はできているが、倉庫に眠ったままだ。秋の新作発表に向けた準備もできている。各社は、今春発売予定だった商品をどうするか、新作の準備をどう進めるかの判断を迫られている。需要がいつ戻るのかにかかっていると思うが、状況が回復したときのことを見越して対策を考えなくてはいけない。バカンスシーズンとなる7~8月が立て直しの時期になるかもしれない。

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毎年恒例“桜コスメ”商況 今年も完売商品続出

 毎年1~3月は桜をモチーフにしたコスメが多数発売される。延期となったが、今年は東京2020オリンピック・パラリンピックの開催が予定されていたこともあり、“日本”をテーマにした商品開発が活発で、そのため桜がインスピレーションになっている商品が多く登場した。新型コロナウイルスの影響で買い物もままならない状況が続いているが、“桜コスメ”は納品分が即完売、再納品となっているモノもあるという。今春発売の“桜コスメ”で売れ行き好調アイテムとは――。

「初の日本限定品は納品、即完売」
ジョー マローン ロンドン

 英国のフレグランスブランド「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」が、初めて本国以外の国限定で発売したコロンが「サクラ チェリー ブロッサム」だ。桜をイメージしてローズやミモザのレイヤードにベルガモットやマンダリンでフレッシュなアクセントをつけた。先行発売した店舗では初日に初回納品分が完売。「公式オンラインでも納品しては即日完売を繰り返している。これまで発売した限定品の中でもニーズはトップクラス。予想を大きく上回って売れている」(同社広報)。桜が咲く春だけではなく、季節を問わず使える香りと、和紙を思わせるラベルデザイン、日本文化を取れ入れた風呂敷包みのギフトラッピングも好評を博している。

「ECは発売初日に初回分完売」
フローラノーティス
ジルスチュアート

 ライフスタイルコスメブランドの「フローラノーティス ジルスチュアート(FROLA NOTIS JILLSTUART)」は、桜の香りのリップティント「チェリーブロッサム ブルーミングリップティント」を3月6日に数量限定で発売した。同ブランドはデビュー以来“チェリーブロッサム”の香りのフレグランスやボディーケアアイテムを販売してきた。唇が染まるティント処方のアイテムは初めてだったため反響が大きく、SNSで拡散された。ECでは発売初日に初回分が完売した。

「ナチュラルかつインパクトを出せるアイシャドウパレットが人気」
シュウ ウエムラ

 「シュウ ウエムラ(SHU UEMURA)」が数量限定で2月27日に発売した「サクラ ヌード コレクション」は、美しくもはかなく散る桜から着想。ヌーディートーンをベースにワインやテラコッタカラーまでをセットした9色入りアイシャドウパレット、コーラルカラーをそろえたリップ、チークを展開する(2500~7400円)。一番売れているメインアイテムのアイシャドウパレットは、「ヌーディーメイクがトレンドの今、ナチュラルかつインパクトを出せるアイテムとして好評」(同社広報)。リップカラーは肌なじみのいいカラーの売れ行きが好調だという。

「人気アイテム1番人気を上回る
売れ行きの桜モチーフリップ」
ジョンマスターオーガニック

 NY生まれのオーガニック&ナチュラルブランド「ジョンマスターオーガニック(JOHN MASTERS ORGANICS)」は、人気製品のリップクリームから数量限定品「リップカーム チェリーブロッサム」を発売。ブランド初の桜をモチーフにした製品だ。ムラサキ根エキスによる淡い桜色と桜をイメージした甘酸っぱい香りが広がる。「リップカーム」はミツロウや植物油を配合し、潤いのある柔らかな唇に導くアイテムで、2007年の発売以来、男女を問わず幅広い年代から支持がある。「発売後1カ月の売れ行きは同シリーズ一番人気の『リップカーム オリジナルシトラス』の約2倍で、2018年に発売した限定品『同 パンプキンスパイス』と比べると約7倍売れている。ECでは1カ月経たないうちに予定数が売り切れた」(同社広報)という。

「サクラをイメージする
カラーが好調」
エチュードハウス

 韓国コスメブランド「エチュードハウス(ETUDE HOUSE)」は、「ハート ブロッサム コレクション」を数量限定で発売。アイシャドウパレットやリップカラー、マスカラ、チーク、UVベースなど7アイテムをそろえた(650~2000円)。売れ筋の6色入りアイシャドウパレットは、ベージュ系、ブラウン系、ピンク系、コーラル系の4種を展開。中でも桜のようなカラーが特徴的なコーラルとピンクが売れている。

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伝説のバイヤー、笠原安代が振り返る新入社員時代 コロナ後の世界にファッションができることは?

 新型コロナウイルス感染症拡大で世界中が大混乱の中にありますが、時は春。新たな一歩を踏み出す人も多い時期です。ファッション業界に足を踏み入れたものの、コロナに伴う不測の事態に不安を感じていたり、「この業界に未来はあるのか?」と考え込んでしまったりしている新入社員、若手スタッフも少なくないと思います。そんなときに耳を傾けたいのが業界の頼れる先輩の言葉。ここでは、セレクトショップ「アクアガール(AQUAGIRL)」などを率いてきた伝説のバイヤー、ディレクターで、そのセンスや人柄に業界内でもファンの多い笠原安代さんに、自身の若手社員時代を振り返ってもらいました。先輩のキャリアの築き方を知ることは、これからファッションの世界で羽ばたこうとしている人にとって参考になるはず。同時に、コロナショックの中でファッション業界が果たす役割については、若手以外が聞いても励まされる内容です。

WWD:笠原さんは大学卒業後、大丸(当時)に入社して、出身地である神戸の大丸に勤めました。どんな新入社員で、どんな仕事をしていましたか?

笠原安代ファッションディレクター(以下、笠原):入社後すぐは婦人服のヤングカジュアル、半年後にはミセスカジュアルに配属されて、店頭で販売など行っていました。勉強しなければいけないことが山積みで、本当に大変でしたね。取引先ブランドの販売員の見よう見まねで接客を行っていましたが、特にミセスカジュアル売り場のお客さまは自分の母親とほぼ同世代でとても難しかった。今も研修では、「聞き上手になりなさい」「知ったかぶりはしない方がいい」と販売員に伝えていますが、それは私自身の経験から思うことです。入社2年目は、どういうわけか販促や宣伝、マーケティングのチームに異動することになりました。「購買行動を調べるために若い消費者を組織化してほしい」「母の日・父の日の販促は全社で何をするべきか」といったお題が次から次へと降ってくるので、ここでもまた目の前の仕事を一つ一つ解決することに必死でした。

WWD:日中は忙しく働きつつ、それが終わると大阪の上田安子服飾専門学校の夜間クラスにも通われていたと聞きます。それはどんな考えから?

笠原:服が好きで百貨店に入社したけれど、ファッションの知識がなさすぎました。販促の仕事では、さまざまな部署の先輩社員に話を聞いて情報を集めてくる必要があったんですが、知識という後ろ楯がないとダメだと痛感したんです。乗り越えるために本をたくさん読みましたし、服飾の専門学校にも通いました。上司や先輩が薦めてくれた本を読んだときは自主的に感想文を書いて渡すようにしていて、そうした中で師匠のような人にも恵まれました。専門学校は、自分から上司に「表層的ではないファッションの知識を得たい」と訴えて通わせてもらったものです。当時は会社が社員研修にかなりお金をかけていたので、そういう面でとてもいい時代だったなとは思います。

WWD:大丸に入社して間もなく、男女雇用機会均等法が制定(1986年に施行)されました。ファッション業界では最近もセクハラが問題になりましたが、笠原さん自身は女性として、理不尽な思いをしたことはありましたか?

笠原:大丸に入社したのは、実は男女の待遇差がなかったからなんです。当時の就職は高卒、短大卒、四大卒とで分かれていましたが、大丸は高卒と大卒との待遇差はあったかもしれないけど、男女の待遇差はなかった。私は特段フェミニストだったわけではないけれど、同じ職種なのに女だからというだけで男性とお給料が違うというのは、純粋に「なんで?」って。母親が公務員だったので、男女一緒に働くということが自分の中で自然だったんだと思います。当時は同業の百貨店でも入社時点から男女の待遇差があるところもあって、そういうところに入社してもきっとおもしろくないだろうなと考えたんです。私は転職したので、あのまま会社にいたらどうなっていたかは分からない。もしかしたら、「ガラスの天井」を感じることもあったかもしれません。ただ、当時の同期や年の近い先輩で優秀だった方は、女性も今役員などになっています。もちろん、キャリアの中で理不尽なことも目にしてきました。同じチームの後輩や部下からもセクハラで相談を受けることはあったし、その対応には心をくだいてきました。もしも今セクハラに悩んでいる人がいたら、一人だけで心を痛めずに、身近な先輩や上司に相談してほしい。「相談しろだなんて当たり前のこと、みんな分かっている」と思われるかもしれませんが、抱え込んでしまうのが一番よくないから伝えたいんです。最近、若いスタッフと話した際に、セクハラに直面した際には同期や年の近い人たちと(セクハラにあたる)LINEなどの画面を共有して、セクハラは許さないというムードを作るという人もいました。それもたくましくていいなと思います。とにかく、誰かに相談してほしい。これは女性に限った話ではありません。

WWD:確かに、男女問わずパワハラなどの問題もあります。

笠原:自分がどれだけ真面目に働いていても、変な人に当たってしまったら問題に巻き込まれる可能性はあります。だから誰かに相談することが大事。業種によらず、ビジネスはどうしても過去のデータに捕われがちで、見たことのないプランに対してOKはなかなか出ないものです。それを説得しようとする過程でのパワハラめいたことは、私も経験してきました。「お前は趣味でファッションやっているのか」と幹部に怒鳴られたこともある。私はそれをバネにして見返してやろうと思ってやってきましたが、そういうときに大事なのは武器と仲間ですね。武器はさきほど話したような知識や、それに裏打ちされた説得力。仲間は一緒にこれをやり切りましょうって頑張れるチームのこと。こうやって振り返ってみると、私の20代って結構暴れん坊だったなと思いますね(笑)。

WWD:その後、ミラノ駐在員やバイヤーを経て大丸を退社し、「アクアガール」(ワールド)のバイヤー、ディレクターに転身しました。夢をつかむために心掛けてきたことはありますか?

笠原:私は夢を大きく設定して、そこに向かって進んできたわけじゃないんです。タイミングごとに「これをやってみないか?」と私を導いてくださる人が出てきた。目の前のことに一生懸命取り組んで、自分自身の問題意識に集中していると次の扉が見えてきます。それをどんどん開けてきました。だから、ものすごく大きな夢があるわけじゃなくても、今ある仕事に真剣に立ち向かう中で道を切り開くこともできると知ってほしい。とりあえず、心掛けているのは来る依頼を拒まないこと。「えっ?」と思う内容の依頼もありますよ(笑)。でも一度やってみる。その依頼に直接応えることはできなくても、何か違う形につながるかもしれませんから。

WWD:バイヤーやディレクターという職種を目指す若手社員も多いです。どんなスキルがあると仕事をするうえで有利ですか?

笠原:今って、デザイナーや作り手が直接消費者とつながって、商品を売ることができる時代です。そんな時代において、バイヤーやディレクターの存在意義って何だろうとはよく考えています。私の答えは、作る人も買う人もよりハッピーになるように働くこと。そのために必要なスキルはコミュニケーション能力です。ではそのコミュニケーション能力とは何かという話になりますが、私が大切だと思っているのは、立場や経歴、職種などを超えて、あらゆる人にちゃんと伝える手段を持つこと。思いを形にしていく手段を持つことです。それをさらにかみ砕くと、説得力だったり、すぐに動き出せる行動力だったり、理不尽なときにも諦めない力だったり、礼儀正しさだったりします。コミュニケーション能力として、SNSやアプリに精通していることや、語学ができるといったことももちろん大事ですが、それだけではないと私は思う。これって、大丸での駆け出し時代に販促の仕事をする中で大切だと痛感したこととも重なります。

WWD:コロナショックの中で、「ファッションについて語るなんて不謹慎」といったムードも世の中にはあります。こんな状況下でファッションができることって、あるのでしょうか?

笠原:「アクアガール」時代の顧客受注会で、お医者さんや看護師さんなど、医療関係に従事するお客さまが夢のようにすてきな服を楽しんでいらっしゃったことが印象に残っています。(コロナ対応に限らず)戦っている人ほど美しいものを欲していて、それがあるからまた戦えるんだと思う。だから私はファッションが不謹慎だとは思いません。第一次世界大戦が終わった1920年代って、アールデコやモダンガールが生まれ、後のファッション史や美術史に大きな影響を残しました。当時モダンガール、モダンボーイと呼ばれて文化を作った人たちは、今でいうミレニアル世代やZ世代だったと思うんです。コロナショックによって、前年実績をもとにしたビジネス設計はもうできなくなりました。大変なことですけど、面白い時代とも言えるはず。もちろん大人は、「前年と比べられないなら一昨年と比べて」とか「家賃から逆算すると」とか言うでしょう。そういう冷静な視点も大切ですが、(コロナショックは)若い人が柔軟な思考で時代を塗り替えていくチャンスになり得ると思います。同時にそれは、若い人だけに限った話でもない。ムッシュ・クリスチャン・ディオール(Christian Dior)が自身のメゾンを開いたのは、第二次世界大戦後。40歳を過ぎてからです。年齢は関係ない。世界規模の危機のあとに美しいものが生まれてきたというのは歴史上の事実。だから、悲観し過ぎることなく、前向きでいたいと思っています。


【笠原さんが自宅待機中の若手社員に薦めるこの1冊】

「モードの体系」:「社会人2年目の私に、上司が薦めてくれた本。変化し続けるファッションの変化の理由を捉えることは難しくて不可解ですが、それゆえ私はファッションの魅力にはまっていきました」

【それ以外にも…】

「イヴ・サンローラン 喝采と孤独の間で」:「現代のファッションシステムを振り返り、今後のあり方を問う一冊。『アクアガール』バイヤー就任間もないころ、パリコレで隣席になったファッションジャーナリストの平川武治さんに薦められました」

「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか」:「経営におけるアートとサイエンスという考えを、社会人1年目から意識し実践することはファッションビジネスの未来を思考する一助になるはず」

「『感動』に不況はない」:「小林章一アルビオン社長に迫った本。リーマンショック後の不況の中で、ファッション業界が価格偏重になり悩んでいた時に読んだ本です」


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「エテュセ」がブランドリニューアル 新リップグロスが先行発売で人気獲得 、一部完売も

 今年ブランド誕生30年目を迎えた「エテュセ(ettusais)」は、ブランドリニューアルし、商品ラインアップ、デザイン、コミュニケーションを3月に刷新した。新たに“今から変わるよ。なりたい私に。”をブランドメッセージに掲げ、トレンドを反映した商品と季節やシーンに合わせたスタイルを提案する。また、アートディレクターには吉田ユニを起用した。

 第1弾商品として、新感覚グロスなどポイントメイク全15品が3月26日に、第2弾のベースメイクが4月23日に登場。ポイントメイクは3月12日に、プラザ、ミニプラ、ロフトで先行発売し、SNSを中心に話題となった。

人気アイテムは新リップグロス
一部店舗で完売も

 先行発売で人気を集めたのは、肌色にとらわれず、好きな洋服を選ぶようにチョイスできる新感覚グロス「リップエディション(グロス)」(全8色、各1200円)だ。イエローベース・ブルーベースなどの肌色を問わずナチュラルになじむシームレスフィニッシュを取り入れ、見る角度によって色が変化するハーモナイズカラーパールを配合することで自然に肌と唇を調和させる。さらにべたつきのないみずみずしいテクスチャーで唇に密着し、縦ジワが目立ちにくいふっくらとした唇に仕上がる。

 先行発売したプラザ、ロフトでは一日1000個を売り上げ、一部店舗では完売したカラーがあったほどだ。さらに、先行発売直後からインスタグラムやユーチューブでは多くのレビューや口コミが投稿され、注目度の高さがうかがえた。

※プラザ、ロフト 2020年3月12日~23日時点の店頭売上実績

74%の人がパーソナルカラーを意識
脱・無難なメイクを提案

 最近は、肌や髪、瞳など生まれ持った色から似合う色を導き出すパーソナルカラー(イエローベース・ブルーベース)を意識する人が増えている。「WWDビューティ」が女性42人に行ったアンケートによると、74%の人が自分のパーソナルカラーを意識していると回答した。一般的に、イエローベースであれば黄みがある暖色系、ブルーベースは青みがある寒色系が似合うとされており、自分に合ったカラーでメイクすることで、より魅力を引き出すことができる。
 
 しかし、パーソナルカラーに対する意識が高まっている一方で、92%の人が色選びの難しさや普段使わない色に対するハードルの高さを感じていると回答した。そこで、「リップエディション(グロス)」は肌色を問わず色がなじむ処方と、“ブナンな色じゃ、もったいない。肌色問わず、透けて色づく唇へ。”をコンセプトに、パーソナルカラーにとらわれない色選びやトレンドメイクへのチャレンジを提案する。

新リップグロスの
モニターアンケートを実施
73%が色の肌なじみ良さを実感

 トレンドメイクなど美容感度の高い女性42人に「リップエディション(グロス)」のモニターアンケートを実施したところ、使用感について73%の人が「色の肌なじみの良さ」を気に入ったと回答。鮮やかな赤や深みのあるブラウンも透け感のある発色で唇に自然になじみ、普段手に取らないカラーに挑戦しやすい点も好評だ。次いで潤い効果(66%)、カラーバリエーション(40%)が続き、使用感の良さも支持を集めた。さらに、90%の人がリピートしたいと回答した。

ベストセラーアイテムも
リパッケージ
充実のラインアップ

 「リップエディション(グロス)」のほかにも、累計出荷数450万個を突破した人気商品のマスカラ下地(全1種、1000円)や極細ブラシのニュアンスカラーマスカラ(全2色、各1200円)、固めずふんわりとなじむ眉マスカラ(全4色、各1200円)をそろえる。4月23日には、毛穴をカバーして化粧崩れを防ぐ部分用化粧下地(1200円)と透明感を高めるフェイスパウダー(1900円)を発売し、毎日のメイクがもっと楽しくなるような全17品をラインアップする。

※ラッシュバージョンアップシリーズ累計出荷数 2012年8月~2020年2月末時点
表示価格は希望小売価格です。


問い合わせ先
エテュセ
0120-074316(平日10:00~17:00)

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まだ、あなたが知らないニューヨーク最新トレンド ファッション界を襲う新型コロナウイルス The Pandemic Hits Fashion

 ニューヨークで活躍する名物クリエイティブ・ディレクター、メイ(May)と、仕事仲間でファッションエディターのスティービー(Stevie)による連載第7回。仕事とは別に、月に1、2度は新しいレストランを開拓しながら情報交換する2人。“You’d Better Be Handsome”は、2人がときにゲストを交えて、ニューヨークのトレンドや新常識について雑談する。今回は、新型コロナウイルスの影響で、レストランが全閉鎖になり、さらに自宅勤務体制となった2人とメイのクリエイティブ・エージェンシーでプロデューサーを務めるレイチェル(Rachel)とでズーム「ズーム(ZOOM)」ビデオを使って近況報告会。新型コロナウイルスで打撃を受けているニューヨークの街、そしてファッションビジネスをリポート。

メイ:この数週間、日を追うごとに状況が悪化している。ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ(Andrew Mark Cuomo)知事が言っているとおりになっていく…。3月頭には、スティービーとパリにいたのよね。ミラノではすでに騒がれ始めていたけど、まだあの時は対岸の火事的だった。パリ行きの飛行機も満席だったし。それが今では、セントラルパークにまでベッドが並べられて野戦病院化しているんだから。

スティービー:ホテルの朝食では、米「ヴォーグ(VOGUE)」編集長のアナ・ウィンター(Anna Wintour)とデザイナーのステラ・マッカートニー(Stella McCartney)が隣りのテーブルで楽しそうにおしゃべりしていた。

メイ:ホテルの朝食、なんて優雅!遠い昔のことのよう。ニューヨークは外食が禁止になって早3週間。ブティックまで閉鎖になるなんて夢にも思ってなかった。

スティービー:パリのヴァンドーム広場の店は、万が一の暴動に備えて板やプレキシグラスで覆われている。街の風景がガラリと変わってしまった。

メイ:ニューヨークの高級ブティックも、パリにならってすでにブロックしているらしい。外に出てないからニュースで見ただけだけどね。5番街やソーホーはもちろん、セフォラ(SEPHORA)まで。ニューヨークで暴動は見たことないけど、とうとうそんなことが起きるのか?

レイチェル:バーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)を抱えるニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)も破産しそうだし、ブルーミングデールズ(BLOOMINGDALE'S)を傘下に収めるメイシーズ(MACY'S)も13万人の従業員のほとんどに休暇を出したっていうから。ネッタポルテ(NET-A-PORTER)みたいな大手オンラインストアも、感染者が触れているかもしれない返品を扱うスタッフの安全性を考えて3月27日からアメリカ、ヨーロッパ、中東でのビジネスを停止しているし(現時点ではアジアでは停止していない)。ファッション業界は今後どうなる?

モデルたちも“セルフシュート”

メイ:それにしても、恒例のランチミーティングまで「ズーム」になるとは思ってもいなかった。先週まではテック系の人たちが使うアプリだと思って興味もなかったのに。

スティービー:いまやアメリカ中で、会議はもちろん授業、そしてバースデーパーティーからハッピーアワーまで「ズーム」でやっている。異常な状況だけど安全が第一だから。

レイチェル:ニューヨークでは、“ポーズ(PAUSE)”とも呼ばれている自宅勤務義務付けが3月22日からスタートし、ニューヨーク市の公立学校も3月16日から閉鎖に。個人的には、かわいがっているオフィスの植物たちが気になっているけど、考えないようにしている。

メイ:さらに人と会わない“ソーシャル・ディスタンス”令が最短で4月30日まで延長になったし。許可証がないと外に出られない完全な“ロックダウンして”にならないといいんだけど、このままだとそうなるかもね。

スティービー:ファッション業界への影響も計り知れない。人と会ったらダメだから、当然撮影も全キャンセルだし。モデルエージェンシーでも感染がけっこうあったみたい。

レイチェル:特にショーの頃は、ニューヨークの人たちもヨーロッパにいたし。でも、モデルエージェンシーも今は自宅で業務をしているわけでしょ?

スティービー:某モデルエージェントから聞いたところによると、撮影ができなくてもコンテンツが必要だから、モデルたちに直接商品を送って“セルフシュート”してもらっているらしい。

メイ:“セルフシュート”って、“セルフィー”とどう違うの?

レイチェル:商品がなにかにもよるけど、自分でヘアメイクもある程度やって、自宅で撮影すること。“セルフィー”よりはもう少し手が込んでいるというか、準備にも力が入っているってことかな?

スティービー:フォトグラファー、スタイリスト、ヘアメイクがいなくても、モデルだけでなんとかする、なんとかなってしまう。コロナが終わった後のファッション界に影響が出そう……。

メイ:撮影のセンスがあるかないかで、モデルたちの今後のキャリアに格差も生まれるね。

レイチェル:ヘアサロンやネイルサロンもずっと閉まっているから、このまま倒産するところも出てきそう。

スティービー:今後は「接触」や「触れ合い」、つまり“コンタクト(Contact)”の真逆にある「非対面」を意味する“インタクト(Intact)”がキーワードになっていくだろうね。握手やハグはしなくてもビジネスになるけど、髪に触らないでヘアカットはできない。

メイ:だとしたらマッサージとかも“インタクト”時代では厳しいカテゴリーになる?さみしいというか、不便極まりない。

ファッション誌の行方

スティービー:ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)財団が新型コロナウイルスに関する援助を行うために、1000万ドル(約11億円)を寄付すると先日発表した。

レイチェル:死者数が止まらないイタリアでもデザイナーたちが病院に寄付したりしている。ケイト・モス(Kate Moss)をはじめとするセレブリティーから寄付してもらった服やアクセサリーを販売し、その売り上げを新型コロナウイルスで闘う病院やWHOに寄付しているフランス発の中古品マーケットプレイス「ヴェスティエール・コレクティブ(VESTAIRE COLECTIVE)」なども話題だね。今後もそういった活動は増えていきそう。ただ家にいながらできることが絶対条件だから頭を使わないといけないけど。

メイ:中国はもちろん、イタリアの縫製工場なんかも停止しているし、店舗が閉鎖されているから、ブランドの収入が今後激減することは目に見えている。そうなると広告費も減るから、雑誌のビジネスは直撃されるわね。すでに「Wマガジン(W MAFAZINE)」は17人解雇したとか。でもデジタル部門のスタッフはキープしているらしい。分かってはいるけど、もう紙の時代じゃないってことだね。

スティービー: コンデナスト(CONDE NAST)が昨年6月にフューチャーメディアグループ(FUTURE MADIA GROUP)に「Wマガジン」を売却していて、業績悪化に歯止めが利かなくなっている。

レイチェル:ウイルスが広まることを懸念して、雑誌だけでなく全てがデジタルになっていく。今回のことで、普段は会費を払わないと読めない「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」や「ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)」をはじめ多くのニュース機関は、ニュースを無料で配信している。

メイ:米「WWD」で読んだところによると、コンデナスト・イタリアは、「ヴォーグ(VOGUE)」「GQ」など自分たちの雑誌のコンテンツを3カ月間無料で配信すると書いていた。

レイチェル:独自の視点からのニュースや読み物が面白い「ニューヨーク・マガジン(New York Magazine)」だけど、自宅勤務となった3月30日~4月12日号は、編集者が自宅からコンテンツを送って一冊作り上げたらしい。今後そういう手法が主流になっていくのかも?

スティービー:ファッション誌でもいわゆる普段の撮影はできないから、自宅で撮影したものを送ってほしいという依頼はいくつかの雑誌社からきている。僕のようなファッションエディターだけでなく、デザイナー、フォトグラファー、アーティスト、俳優、モデルなどなどに依頼がきているはず。

レイチェル:大手はなんとか持ちこたえられるかもしれないけど、インディー系の雑誌は本当に大変そう。次々と解雇されている話が入ってくる。広告収入が激減しているのがその理由。

メイ:ファッション撮影そのものに対して、新型コロナウイルス以前からいろいろな疑問が持たれていたよね。たくさんの服を国外から取り寄せたり、撮影のためにビーチに行ったり、動物を使ったり、ケータリングでたくさんのプラスチックゴミを出したり。

レイチェル:確かに、最近の撮影では「自分のマグカップ持参してください」とコールシートに書いてあったりするし、サステナビリティのことを考えていないプロダクション会社とは仕事を今後しないと言い切るフォトグラファーも珍しくないから。

“おうち時間の充実”が一気に加速

メイ:家ごもりの長期戦が決まった瞬間、まず取り掛かったのは家の掃除、というか断捨離かな。周りにそういう人が多くて笑えた。

スティービー:一日中、それも何週間も家で過ごすと分かった瞬間に、心地いいスペースを求めるのは当然のことなのかも。

レイチェル:オフィスに行かなくていい、お気に入りのカフェも閉まっている、映画館もやっていない、もちろんショッピングにも行けないし、ヨガ教室にも行けないとなるとやれることは限られてくる。

メイ:そうそう、ジョギングする人がいつもの数倍いるらしい。で、この際これまで買うかどうか決められなかった「ペロトン(PELOTON)」のバイクか、または「ミラー(MIRROR)」を買う人たちが増えそう。私のジムには、あのモニターからインストラクターが語りかけてくる「ペロトン」のバイクが何台もあったから使ったことはあって、リアルタイムで他の人と競い合えたりするのも楽しかったけど、何しろ初期投資が2245ドル(約25万円)と高額だし、ニューヨークのアパートって空間も限られているから、本気で買おうと思ったことはなかった。

レイチェル:自転車エクササイズのチェーン「ソウルサイクル(SOUL CYCLE)」が大ブレイクして久しいけれど、あのときサイクリングに魅了された人たちは、好きなインストラクターのクラスを好きな時間に自宅で受講できるなんて夢みたいという人たちもいるかも。サブスクリプションとして月々39ドル(約4200円)を払い続けるわけだけど。

スティービー:自分の姿が姿見に映る「ミラー」も画期的なデジタルワークアウトだよね。ルルレモン(LULULEMON)といった企業から、モデルでビジネスにも興味津々のカーリー・クロス(Karlie Kloss)までも投資していたのを覚えている。

メイ:これは要するに、鏡の中に映るインストラクターと自分が重なるってことよね?ヨガのポーズとかが上達しそうではあるけど。そんなに自分を見ていたいかな。私がカーリーだったらそうかもしれないけど。

スティービー:かなりナルシスティックなワークアウト法と言える。でも、ニューヨークにはナルシストなんていくらでもいるから。

レイチェル:おうち時間が続くと運動不足はけっこう深刻な問題よね。庭があるわけでもないし。公園もいつ閉鎖されるか分からないし、すでに山ほどあるエクササイズアプリやビデオがますます充実しそう。

スティービー:こんなに株価が最低記録を更新していくなかでも、「ペロトン」の株は買いだと言われているくらいだから。

メイ:自分だけのバイクだから、ウイルスの心配もしなくていいからね。同じ「ペロトン」でも、ジムの「ペロトン」はいま触りたくない。というか、ジムはもうとっくに閉まっているけど。

瞬時の判断が大きな差に

メイ:そういえば3月のパリではいくつかのショールームをスティービーと回ったけど、機転が利くスタッフがいるブランドは、まだ平和だったパリにおいても早々に服をビデオ撮影し、パリに来ることができなかったアジアのバイヤーたちに送るなどしていた。

スティービー:特にアジアのブランドは、一足先に新型コロナウイルスの影響を目の当たりにしていたからか、対応が早かった気がする。

メイ:あのときは、ふーん、そうなんだ、くらいだったけれど、日を追うごとに、ヨーロッパはビデオ撮影なんてできない状態に一気になってしまったから。

スティービー:パリのブランドのショールームでは、ファッション・ウイークの後にこれから「ビデオ撮影をしないと」とあたふたしていたから。

レイチェル:バイヤーからしてみたら、3Dの服を写真を見ただけでは買い付けできないよね。人が着たらどんなシルエットになるのか、後ろや裏はどうなっているのか、ディテールも見たい。

スティービー:ファッションだけではなく、全体の経済が今後どうなるのか。3月末の時点で、失業保険を申し込んだ人たちが米国内で665万人。あまりの数に言葉を失う。

レイチェル:ただこの中には、仕事が全キャンセルになって収入が完全にストップしてしまったスタイリストやメイクアップアーティストは含まれてないからね。ファッション業界のクリエイティブなフリーランスは、政府も守ってくれない。

メイ:でも今回は一時金が出るようで。動きが早かったよね。

スティービー:今回の緊急事態において、リーダーシップの大切さを学んでいる。ニューヨークも“エピセンター”(震源地)と呼ばれて、どうも日本のニュース番組でも毎晩自分たちの国のニュースよりもニューヨークの悲惨な状況を流しているようだけど、ニューヨークには人口約850万人が限られたスペースの中で生活しているわけだから、たとえばテキサスよりは感染者が多くなる。この人種も言葉も異なる人々をまとめるって不可能に近いけど、自分が感染しないことはもちろん、知らないうちに人に移さない、医療従事者に負担をかけないためにみんな真面目にこもっている。これはクオモ知事の熱いメッセージが届いたからだと思うよ。

メイ:そんな簡単に収束しないことも分かってきた。お家ごもりしているうちに、精神的にやられないように騙し騙しやっていかないとね。そういえば、この“ポーズ”や各地の“ロックダウン”で、カップルセラピストも大忙しのようよ。

スティービー:それ分かるな。いつも朝や夜だけしか顔を会わせないパートナーや子どもたちと24時間一緒にいたら仲良くなるか、喧嘩するか、2つに1つだね。

メイ/クリエイティブディレクター : ファッションやビューティの広告キャンペーンやブランドコンサルティングを手掛ける。トップクリエイティブエージェンシーで経験を積んだ後、独立。自分のエージェンシーを経営する。仕事で海外、特にアジアに頻繁に足を運ぶ。オフィスから徒歩3分、トライベッカのロフトに暮らす

スティービー/ファッションエディター : アメリカを代表する某ファッション誌の有名編集長のもとでキャリアをスタート。ファッションおよびビューティエディトリアルのディレクションを行うほか、広告キャンペーンにも積極的に参加。10年前にチェルシーを引き上げ、現在はブルックリンのフォートグリーン在住

レイチェル/プロデューサー : PR会社およびキャスティングエージェンシーでの経験が買われ、プロデューサーとしてメイの運営するクリエイティブ・エージェンシーで働くようになって早3年。アーティストがこぞってスタジオを構えるヒップなブルックリンのブシュウィックに暮らし、最新のイベントに繰り出し、ファッション、ビューティ、モデル、セレブゴシップなどさまざまなトレンドを収集するのが日課

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外出自粛中の海外ヘアメイクアップアーティストは今何している?

 新型コロナウイルスの感染拡大により、海外でも外出禁止令が発令されたり、職場や学校などの閉鎖、イベントの中止などが相次いでいる。ファッションショーや撮影などが延期・中止を余儀なくされる状況の中、海外のヘアメイクアップアーティストやビューティ業界人は自宅でどのように過ごしているのか?

 自宅で過ごす時間が増えた今、多くは体調維持のために健康的な料理を作ったり、本を読んだり、仕事をしたり、メディテーションなどで精神を落ち着かせたりしているようだ。また、SNSを活用し、ライブ動画でメイクアップのハウツーを配信したり、フォロワーからの質問に答えたり、さらには各自が自宅での活動の様子や医療関係者への感謝のメッセージなどを発信している。

ヴィオレット(Violette)/「エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)」グローバル・ビューティ・ディレクター

 気分を上げるためにも、今まで以上にメイクアップを楽しんでいるわ。毎日ではないけど、週に数日はメイク台の前に座って、その気分に合わせて好きなようにメイクを試しているの。この前は真っ赤なリップスティックに赤いチークを重ねて、ピンクのチークとハイライターを組み合わせたわ。

ピーター・フィリップス(Peter Philips)/「ディオール(DIOR)」メイクアップ クリエイティブ&イメージ・ディレクター

 “I(私)”を“We(私たち)”に置き換えると、“Illness(病気)”という単語も”Wellness(健康)”に変わる。みなさん、家でどうか健康でいてください。

ニコラ・ドゥジェンヌ(Nicolas DeGennes)/「ジバンシイ(GIVENCHY)」メイクアップ アンド カラー アーティスティック ディレクター

 今は田舎にあるアトリエにいます。小さな町だけどマスクが足りず、1000枚以上のマスクを10人で作ることになりました。布製なので完全にウイルスをブロックできないかもしれないけど、最低限スーパーなどに行けるように、少しでも手助けになれればうれしいです。合間にはリップスティックの新色や新しいテクスチャーを作っているので楽しみにしていてね。

サム・マックナイト(Sam McKnight)/ヘアスタイリスト

 今日は作業がはかどった日だったよ。今は焦らず、急がず、ゆっくり日々を過ごすようにしている。運動をして、家事をして、おいしい食事をとって、午後はひたすらガーデニング。オーディオブックやポッドキャストを聴きながらね。今からたまった仕事のメールや電話をしなきゃ。

リサ・エルドリッジ(Lisa Eldridge)/「ランコム(LANCOME)」クリエイティブ・ディレクター

 「感謝」という気持ちだけでは足りないけれど、24時間、命をかけて働いてくださっているナース、ドクター、病院、配送会社、食料品関係者に感謝の意を示したいわ。

エミリー・ワイス(Emily Weiss)/「グロシエ」創業者

 今日は何ができる?チームのみんなとズーム会議。熱めのシャワーを浴びて大好きなTシャツを着て、コーヒーを煎れる。霧が続いた後に差し込む日差しを眺める。大好きなレストランのゴーファンドミー(クラウドファンディングサイト)を支援する。水彩絵具を小さなビジネスから買ってポストカードにペイントし、週末に友人に送る。パンを一から作ることを学ぶ。結構難しかったけど、とても達成感を感じたわ!小さなことを一つずつやればいいの。気分が上がるものを一日一つやれば勝ちよ。他の人の気分も上げられたらなおいいわね。

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新型コロナで欧米にもマスク文化が根付く?

 欧米にはマスクを着用している人は病人と見られる文化があり、アジア諸国のように他者への配慮の意味も込めた日常的なマスクの着用という慣習が存在しない。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、西洋諸国にマスク着用が普及し始めている。

 アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)は4月3日、無症状の感染者によるウイルスの拡散を防止するため、すべてのアメリカ国民に対して外出時にマスクを着用するよう促した。アパレルブランドでは必要不可欠な業務の従事者に向けたマスクの製造をすでに開始していたが、その需要が一般の消費者にも拡大することになる。

 「アメリカン アパレル(AMERICAN APPAREL)」の創業者、ダヴ・チャーニー(Dov Charney)は、その後設立した自身のブランド「ロサンゼルス アパレル(LOS ANGELES APPAREL)」の工場で非医療用マスクを製造している。さまざまな色柄のマスクは3枚セットが30ドル(約3240円)でオンラインで販売されているが、チャーニーは「マスクを着用すれば安全、というわけではないことを周知するのが重要だ。友達同士で鼻と鼻をこすり合わせるエスキモーのようなキスをすることになるといけないからね。でも、顔をガードするアイテムは使うべきだ。Tシャツを使えば家で作れる。私はマスクをせずに公共の場には行かない。私は医者や科学者ではないが、マスクは重要なアイテムだ」と語った。

 新型コロナウイルスの危機に陥るすこし前からファッション界ではマスクが注目されていた。1月にはポップ歌手のビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)が「グラミー賞(Grammy Awards)」で「グッチ(GUCCI)」のアンサンブルにマスクを着けて登場したし、ラッパーのフューチャー(Future)とその娘やリアーナ(Rihanna)、カーディ・B(Cardi B)らもレッドカーペット上でマスク姿を披露している。彼らは日常的にマスクをしているわけではないが、埃が舞いやすい音楽フェスの常連だということも覚えておきたい。

 「ヒッキー フリーマン(HICKEY FREEMAN)」や「ハート シャフナー マルクス(HART SCHAFFNER MARX)」でも必要不可欠な業務に従事する労働者に向けた非医療用の個人向け防護具を製造している。両ブランドを擁するオーセンティック ブランズ グループ(AUTHENTHIC BRANDS GROUP以下、ABG)のナターシャ・フィッシュマン(Natasha Fishman)=マーケティング部長は、「私たちの文化では歴史的に見てもマスクの着用に抵抗感がある。なぜなら、これまでにパンデミックの対処法を考えた経験がないからだ。私たちは今、マスクの着用を徹底する上で極めて重要な局面にいる。もし国や州からマスクの製造を依頼された場合、ブランドのオーナーや小売業者はその政策に従うことをどう捉えるだろうか。マスクが生産されれば、それがアクセサリーとなりうる見込みがある。おそらくまずは無料サンプルとして配るが、労働者にとっては間違いなく必需品となるだろう。やがて、そのほかの人にとっても“賢い人は着用する”という流れになるのではないだろうか」とコメントした。

 ABGでは数週間のうちにいくつかのブランドで製品テストを行うことを検討しているといい、「利益優先ではないが、明らかな需要がある。その需要は医療従事者から始まり、必要不可欠な労働の従事者たちを経て、人びとの個性の一部につながる個人用防護具として流通するだろう」と語った。

 「マイケル スターズ(MICHAEL STARS)」の創立者スザンヌ・ラーナー(Suzanne Lerner)も米カリフォルニア州ホーソーンの工場で働く労働者たちのために500枚の非医療用マスクを製作した。ラーナーは「マスクはファッション性を持つようになると思う。Etsy(ハンドメード製品中心のショッピングサイト)やフェイスブック(Facebook)を見ればわかるわ。すでにデニムや花柄のものが登場しているの」とコメントしている。

 スザンヌはファッションマスクの製造やオンライン販売も考えているといい、商品購入者へのプレゼント形式、またはすでに「リフォメーション(REFORMATION)」「ヘドリー・アンド・ベネット(HEDLEY & BENNETT)」「ジョニー ワズ(JOHNNY WAS)」などのブランドが実施しているように売り上げの半分を寄付することを検討中だ。

 「ジョニー ワズ」のロバート・トラウバー(Robert Trauber)最高経営責任者は、同ブランドの海外工場で端切れを使用して製造した1万枚の非医療用マスクを地元医療機関に寄付した。「他人との距離を取るソーシャル・ディスタンシングや、握手やハグの代わりに腕を使って挨拶するのと同様に、マスクの着用も習慣化していくと思う。もし私が病気になったら『バーバリー(BURBERRY)』や『ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)』『ジョニー ワズ』のかわいいマスクを着ける」と語った。トラウバーCEOは将来的にマスクの小売り販売も計画している。

 市場にはあまり出回っていないものの、新型コロナウイルスの危機に直面する以前から、環境危機に対応した消費者向けの高機能マスクや衣類を製造しているブランドもある。

 高機能マスクを製造するヴォグマスク(VOGMASK)共同創始者のウェンドーバー・ブラウン(Wendover Brown)は、「有効なマスクを作るためには、マスクに使用するフィルターの性能テストを十分に行わなければならないが、それはすでに難しい状況だ。手作りマスクは液体の飛び散りを防ぐことはできても、ウイルスなどの小さな粒子を防ぐことはできない」と語った。

 同社が韓国ソウルで製造するマイクロファイバーとオーガニックコットンを使用した4層構造の排気バルブ付きマスクは、埃やアレルゲン物質、カビやその胞子をブロックすることが可能だが、流通に至るまでの検査項目が多岐にわたるため、製造を自動化することは困難だという。

 また同社のマスクには、アメリカ国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health)のN95規格が適用されている。ブラウンは「この状況下で人びとは市場に出回っているマスクに飛びついているが、自分がどのような機能を持つ製品を購入しているかを知ることがとても重要だ」と話している。健康とスタイルは複雑に結び付いているといい、同社はライセンスに合意した「マニッシュ アローラ(MANISH ARORA)」などのブランドのためにマスクを製造している。

 伊ブランドの「C.P. カンパニー(C.P. COMPANY)」は19年11月、“アーバンプロテクション(Urban Protection)”シリーズをリバイバルさせて、フードにN95マスクが装着されたジャケット“メトロポリス(Metropolis)”を再導入した。同ブランドのロレンツォ・オスティ(Lorenzo Osti)社長は「公害から身を守ることを目的として同シリーズを復活させた。もちろん当時は新型コロナウイルスのパンデミックなんて想像もしていなかった」と語った。なお、現在はデザイナーとサプライヤーが個人用防護具として同シリーズの製品を製造している。

 また同ブランドでは再利用可能なマスクの製造にも着手している。「マスクは今後私たちの日常生活の一部となるだろう。いまは試作品の段階だが、やがて製品の販売が決定するだろう。再利用可能なマスクは環境保護の観点からも非常に重要だ。中国では毎日1億1000万枚の使い捨てマスクが製造されているが、サステイナブルとは言えないから」と語った。

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“ヒットメーカー田中みな実”を大解剖! 「WWDジャパン」&「ビューティ」座談会

 「田中みな実さん愛用!」――今、最も女性消費者たちの心を動かすキラーワードの一つだろう。

 テレビドラマや雑誌、SNSなど、顔を見ない日はないほどの活躍ぶりを見せる、フリーアナウンサーの田中みな実(33)。一時期は「ぶりっ子」とやゆされ、嫌いな女子アナランキングの常連だった彼女も、今や多くの女性から支持を集めている。

 彼女がファッション・ビューティ業界に与えている影響は計り知れない。某大手アパレルブランドプレスは「田中さんが着てインスタで紹介してもらえれば、ヒット当確。うちの商品をプッシュするため、毎日事務所に“鬼電”しています(笑)」と話す。企業は自社商品を使ってもらおうと、連日ラブコールの嵐のようだ。

 そこで「WWDジャパン」「WWDビューティ」両部員は“田中みな実効果”が売り上げに貢献した商品を調査するとともに座談会を開催。彼女が業界のヒットメーカーたるゆえんについて語り合った。

(なお、新型コロナウイルス対策として、座談会は動画会議システム「ズーム(ZOOM)」で実施しました)

座談会参加者

益成恭子:「WWDジャパン」記者

本橋涼介:「WWDジャパン」記者

米山奈津美:「WWDビューティ」記者

浅野ひかる:「WWDビューティ」記者

本橋:……。(田中みな実の写真集「シンシアリー ユアーズ(SINCERELY YOURS...)」を食い入るように眺める)

米山:あの。もうビデオ会議始まっていますよ。

本橋:はっ!失礼いたしました。みなさま、この度はご参集頂きありがとうございます。田中みな実さんの写真集の“分析”に、すっかり夢中になっていました。

益成&米山&浅野:……。

本橋:それにしても、田中さんのお肌は20代のようにみずみずしいですね。やはり、コスメにも気を使ってらっしゃるのでしょうか?

浅野:はい。「ツヤ肌効果」のある商品が有名だったり、ベースメイクに定評があったりするブランドは、彼女のSNSなどでの紹介が売り上げにつながっているようですよ。

インスタライブ紹介で前年比約10倍売れたコスメも

米山:たとえば、アクロのメイクアップブランド「アンプリチュード(AMPLITUDE)」は、田中みな実さんのインスタライブ紹介で飛躍的に伸びました。定番ファンデーションの“ロングラスティングリキッドファンデーション”(9000円/30g)は前年比2.7倍、クリスマス限定のベースメイクキット(下地、パウダー、ブラシのセット)は前年比9.5倍の売れ行きだったそう。エキップの「スック(SUQQU)」もベースメイクに定評があるブランドですが、同じく田中さんが紹介した“オイル リッチ グロウ ルース パウダー”(6000円/15g)は、発売(2017年9月)からしばらくたっているにも関わらず、生産が追いつかないほどの人気に。

益成:新作だけでなく定番アイテムも「再爆発」させるパワーがすごいですね。田中さんの透明感のあるお肌には、淡い春服がよく似合いそうです。アパレルのヒット商品はどうでしたか?

本橋:ワンピースですね。彼女が写真集発売記念の握手会で着用した「セルフォード(CELFORD)」(マッシュスタイルラボ)の“ハンカチヘムワンピース”(2万3000円)は発売日、ルミネ新宿店にオープン前から行列ができたとか。「スナイデル(SNIDEL)」(同)は2020年春夏のビジュアルに、「マーキュリーデュオ(MERCURYDUO)」(マークスタイラー)はウェブマガジンに田中みな実さんをモデルに起用し、問い合わせが殺到しているそうです。

20~30代女性の共感を呼ぶ“親しみやすさ”

浅野:田中みな実さんといえばワンピースというイメージがあります。Vネックや裾のスリットにリボン。どれも可憐なデザインですね。

本橋:いずれも20代~30代の女性をターゲットとするブランドで、田中みな実さんと同年代。2020年春夏のリアルトレンドは「ニュアンスカラー」「透け感のある素材」がキーワードですが、彼女の柔らかい雰囲気もマッチしていて、広告塔にぴったりだったのでは。

益成:「セルフォード」といえば、石原さとみさんがテレビドラマ「高嶺の花」(2018年、日本テレビ系列)で着用し、話題になったワンピースがありました。

浅野:私は当時、前職でビューティ系ネットメディアの編集をしていましたが、当時の石原さとみさんの影響力はすごかったです。セルフメイクの情報発信にも積極的で、みんな彼女の唇の形にあこがれていました。ほかにも長谷川潤さん、水原希子さんなど、影響力のあるビューティアイコンはたくさんいますよね。

米山:その中で、田中みな実さんが今多くの人に支持されている要因は、「親しみやすさ」ではないでしょうか。今はSNSが発達して「共感」の時代とも言われますが、彼女は身長も高くない(153cm)し、ハーフモデルのように日本人離れした顔立ちでもない。だから女性にとって憧れの対象でありながら、等身大で自分ごと化しやすい。

本橋:なるほど。

浅野:一方で、私は(田中みな実さんの)美容へのストイックさのギャップに驚きます。私生活では、ビタミンの多い果物を意識して食べたり、お肉よりもお魚を意識して摂取したり。水は一日に3リットル飲むそうです。よく「毎朝スムージー飲んでいます」みたいな、綺麗な部分だけを発信するモデルは多いんですが(笑)、田中さんの場合は泥臭くて“本物感”があるんですよね。「おっぱいまでが顔」と考えて、ボディケアにも相当こだわっているようです。

本橋:ほうほう、ボディケアにも……。(写真集をまた眺める)

数万円の高級ランジェリーも売れる“説得力”

益成:写真集で着用しているのは「チヨノアン(CHIYONO ANNE)」というオーダーメードのランジェリーです。着用モデルの“ルナ”シリーズ(ブラジャー3万1000円~、パンティ1万8000円~)は刺しゅうデザインが美しく、問い合わせが増えているそう。(「チヨノアン」は)伊勢丹新宿本店でポップアップストアなども開催していますが、基本はEC販売で、インポートランジェリーにも迫るような高価格。よっぽど(田中みな実さんを)好きな人じゃないと買わないと思うので、それだけコアなファンが多いということでしょうか。

浅野:確かに、「MTメタトロン」のクレンジングジェル(5000円/200ml)も田中みな実さんが使ってヒットしたそうですが、これはサロン専売品。彼女自身に説得力があるからこそ、マニアックだったり比較的高価格だったりするアイテムでも、売れるのでしょう。

米山:エントリー層は1万円以下の化粧品、もうすこし頑張って近づきたい人は洋服。そして熱狂的、信者的なファンは数万円のランジェリーにも手を出すということでしょうか。

本橋:なるほど。ブームとは一概に言うけれど、マス(大衆)向けからニッチまで幅広く市場を動かせる「田中みな実パワー」、すごいですね!

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「声を上げるべきだった」元社員の後悔 連載ストライプ・ショック(2)

 2018年12月のストライプインターナショナルの査問会で報告されたのは、4件の事案についてだった。だがこれに限らず石川康晴社長(当時)が女性スタッフを個人的に食事やホテルに誘うことは社内では知られた話だったと関係者は口をそろえる。

 数カ月前までストライプの店舗で働いていた大友真奈さん(仮名)は、一連の報道に接して「とうとう表沙汰になったか」と思った。自身も石川氏からLINEを通じて、しつこく誘われたことがある。大友さんが見せてくれたLINEの履歴には、査問会に資料として提出され、朝日新聞などが報じた石川氏と女性スタッフのLINEと同じような文体の誘い文句や絵文字がたくさん残っていた。「誘われたのは私だけではない。同僚はホテルに呼ばれて、部屋まで入ったけれど、あわてて逃げ帰ったと言っていた。同じような経験を持つスタッフは他にもたくさんいると思う」。

機能しなかったホットライン

 大友さんの予想はおそらく正しい。査問会では石川氏の行為が役員規定のある項目に抵触するとされた。18条の6「役員が異性スタッフを個別に食事に誘うなど必要以上に接触することは原則禁じる」。役員規定の項目に「異性スタッフを個別に食事に誘う」といった文章はかなり異質だ。これは査問会の4件の事案とは別に、石川氏が過去に起こしたトラブルの被害者側の強い要望で16年に加えられたと元幹部は証言する。

 それにしても、なぜ社会的立場のある石川氏が、ここまで無防備にやりたい放題を繰り返していたのか不可解だ。発覚しても抑えられるというおごりがあったのかもしれない。

 査問会で俎上に載った4件の事案は、エリアの店舗を統括するスーパーバイザーなどに寄せられた情報だった。査問会の時点ですでに年月が経過したものも多かった。社内に放置されていたことになる。従業員がハラスメントなどに関して外部の弁護士事務所に直接相談できるホットラインを設けていたが、これも機能していなかった。

 石川氏は全国の自社店舗をこまめに視察していた。営業中だけではない。地方の店舗スタッフたちをレストランや居酒屋で慰労する姿を自身のフェイスブックによくアップしていた。グループ売上高1364億円の企業のトップが店舗の若い女性スタッフたちと膝を交え、仕事の悩みに耳を傾ける。時には出張先で石川氏の趣味であるランニングを地元の店舗スタッフたちと一緒に行う。はた目には親しみやすい現場主義の経営者として映り、フォロワーからはたくさんの“いいね”がついた。

 ストライプが扱う商品のほとんどは婦人服で、従業員も9割が女性である。石川氏は旧クロスカパニー時代の早い時期から女性が安心して働ける職場づくりに取り組んできた。子育て中の女性が働きやすいような社内制度を他社に先駆けて強化してきた。メディアにもたびたび登場して、女性が活躍する仕組みや女性の幹部登用について持論を述べきた。そうした活動が評価され、19年3月からは男女の人権尊重や政策立案への女性の参画などを目的とする、内閣府の男女共同参画会議の議員に抜擢された(セクハラ報道を受けて辞任)。

物言えぬ組織風土

 石川氏が発信する先進的な企業ビジョンや成長戦略は、ファッション業界のみならずビジネス界から注目された。16年3月には社名を変更して、事業領域を「ライフスタイル&テクノロジー」と定めた。東証一部上場を視野に入れて、IT系など異業種からも経験豊富な人材を集めるようになった。

 元東京本部勤務の社員だった庭山エリさん(仮名)も石川氏の掲げる理想に惹かれて異業種から転じた一人だった。だが、石川氏のセクハラのうわさが耳に入るのに時間はかからなかった。複数の会社でキャリアを重ねてきた庭山さんには、石川氏に意見できる幹部が少ないことが異様に映った。「それでも私が入社した頃はまだ石川さんに『それは違います』と言える幹部がいた。でも、徐々にそういった人は人事で降格されたり、逆に反発して退社してしまい、従順な人たちばかりになってしまった」。石川氏の暴走を許した背景には、そんな組織風土があると感じる。

 セクハラ報道の逆境の中でも懸命に頑張る元同僚や後輩たちの心情を聞き、庭山さんは後悔の念にさいなまれる。「私自身も物言えぬ空気に加担してしまったのではないか。現場が声を上げれば少しは変わっていたかもしれない。会社は今、絶対に変わらないといけない危機なのに……」。

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ジョルジオ・アルマーニが語る、新型コロナ後のファッション業界 「メインのコレクションにプレも含めて発表すれば十分だ」

 ファッション業界では季節を先取りした商品を販売することが慣例となっているが、新型コロナウイルスの影響でそれが変わるかもしれない。アパレルの縫製工場やサプライヤーが休業しているため、2020年プレ・フォールおよび20-21年秋冬コレクションの生産が遅れており、通常であれば6月から9月初旬にかけて店頭に並ぶところが、今年は9月下旬から10月の入荷となるブランドが多いのだ。

 また昨今はサステナビリティの観点から、コレクションごとに目まぐるしく商品が入れ替わることを批判的に見る消費者も増えている。今回の世界的な危機を受けて、ファッション業界は変わるのだろうか?イタリアのモード界をけん引する、ジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)に米「WWD」が聞いた。

WWD:あなたは以前からコレクションのショーを(拠点ではない)他国で派手に行うことに反対しているが、コレクションやショー自体をより小規模にすることにも賛成か?

ジョルジオ・アルマーニ(以下、アルマーニ):賛成だ。現在は、実際のニーズよりはるかに多くの商品が供給されている。

WWD:「ジョルジオ アルマーニ」は実験的にウィメンズとメンズのショーを同時に開催したことがあるが、今後その予定はあるか。その場合、開催時期をどうするのか。

アルマーニ:そうする可能性はあるが、まだその方式が本当にいいのかどうかを検討しているところだ。

WWD:コレクションのスケジュールが今後変わっていくとして、それを主導するのは誰だと思うか。デザイナーか、ファッション協会などか、それとも小売店か?

アルマーニ:ブランドが設定した枠組みを守りつつも、顧客のニーズや期待に沿ってスケジュールを立てていくべきだろう。

WWD:新型コロナウイルスの影響により、「ジョルジオ アルマーニ」は春夏物を9月まで店頭に置くと発表した。非常に大きな変化だが、これは卸先でも同様に行われるのか?世界的な危機を受けて、取引先の小売店などもこれに同意しているのか。

アルマーニ:全ての取引先が同意するとは思わないが、ファッション業界がここ数年で直面している問題を理解しているのであれば、当社の決断に同意してくれるだろう。

WWD:値下げについてどう考えているのか。

アルマーニ:店頭に「セール開催中」と大々的に貼り出すのではなく、顧客とより直接的かつパーソナルに、静かにやりとりする方法を考え出す必要がある。ECでも、現在とは違う方法を考えなくてはならないだろう。商品の数を絞り、顧客の季節的なニーズに合わせてコレクションを開くのが理想的だ。そうすれば値下げをしなくてすむし、するにしてもごく限られた範囲ですむ。

WWD:今年は在庫をどのように取り扱うのか。シーズンをスキップすることを考えているのか。

アルマーニ:プレ・フォール・コレクションをスキップするか、規模を最小限に縮小することを検討している。メイン・コレクションとプレ・コレクションは店頭に入荷する時期が異なるだけなので、メインのコレクションにプレも含めて発表すれば十分ではないか。

WWD:自宅隔離が長く続いており、それに伴って経済状況も悪化している。事態の収束後、消費者は自宅で着ていたスエットパンツなどに飽きて、より華やかな服を買うと思う?それとも、より派手さのないカジュアルなデザインを求めると思う?

アルマーニ:長く着られる服が求められると思う。

WWD:ジョルジオ アルマーニ社は、新型コロナウイルスの感染を抑制するための対策に多額の寄付をしているほか、イタリアの自社工場で防護服を生産することを発表している。事態が収束した後、支援の一環としてサプライヤーなどを買収することも考えているか。

アルマーニ:その可能性はあるかもしれない。当社のビジネスモデルにおけるバリューチェーンを全体的に見直す必要があることは確かだ。

WWD:弊誌に寄稿した公開書簡で、あなたはアメリカの百貨店に向けて「今回の危機はストレステスト(過大な負荷をかけて健全性を審査するテスト)のようなものだ。難局に直面するアメリカのアパレル小売りの皆さんに、心からの励ましを送りたい。連帯し、協力し合うことで、われわれはこの危機を乗り越えることができる」と語りかけた。彼らはそのアドバイスを生かしていると思うか。

アルマーニ:私の言葉がどれだけ届いたかは分からない。しかし、ファッション業界全体が非常に厳しい状況にある中で、よりよい解決策を見出すためには全員が協力し合う必要があるということを、大手百貨店や業界の中心的存在の企業などにもよく考えてもらいたいと思う。

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緊急事態宣言で苦渋の決断が迫られる美容室 渋谷の人気ヘアサロン「シャチュー」のみやちのりよし代表に今の思いを聞く

 4月6日、政府の緊急事態宣言の発表を前にいち早く4月7日から当面の休業を決めた、東京・渋谷の人気美容室「シャチュー(SHACHU)」。これまでも短縮営業や予約の制限、土日の臨時休業を行うなどの対応をとってきた。他の美容室の状況を見ながら判断する美容室が多い中、いち早く決断した「シャチュー」のみやちのりよし代表に率直な思いを聞いた。

WWD:政府の緊急事態宣言が発表される前にいち早く当面の休業を決めた。

みやちのりよし(以下、みやち):自分の中では早いとは思っていません。やはり僕も含めてスタッフみんな、「こんな状況で働いていていいのか」という不安がありました。どれだけサロン内で衛生面などに気を使っても、お客さまに「100%安全だから来てください」とは言えないし、経営者としてスタッフの安全を考えると、休業すべきと判断しました。

WWD:他の美容室の動向などはチェックしていた?

みやち:それは気にしていませんでした。美容室の経営者としてはまだまだ未熟ですが、スタッフやお客さまを危険な目に合わせるべきではないという思いが強かったです。美容師は人を喜ばせる仕事なので、それが人を悲しませることになったらダメですよね。

WWD:一部では100平方メートル以下の美容室は“利用制限”に含まれないとの話もあるが?

みやち:それでも緊急事態宣言が出されている状況で、危機感は持っておくべきで、“利用制限”に含まれないからといって営業をすぐ再開することは考えていません。たとえ経営で失敗してもやり直しはできますが、命に関わることは取り返しがつかないですよね。命を取り戻せる可能性は0%でも、経営は1%の可能性があれば努力次第で取り返せます。

WWD:休業中はスタッフの給料も保証する?

みやち:当面は100%保証します。自分で言うのもなんですが、「シャチュー」は本当にいいスタッフばかりで、一人も辞めてほしくないと思っています。だからできる限りの保証はしていくつもりです。

WWD:ただ経営者としては休業というのは厳しいのでは?

みやち:そうですね。助成金や融資はもちろん考えています。正直言うと、先行きが分からないので僕もかなり不安はありますが、これまでもうまくいかない経験はたくさんしてきたので、今回も絶対に乗り切れると思っています。それよりも、何度も言いますがスタッフとお客さまの安全を考えたときに、絶対に守りたいという気持ちの方が強いです。

WWD:休業中は何をして過ごす?

みやち:スタッフは自主的にウイッグを持って帰って、家で練習しています。僕もオンラインなどを通して他の美容師さんのためになるようなことを発信できればと考えています。こうした機会なので、あらためて何ができるか考えたいと思います。

WWD:休業の件はどう伝えた?

みやち:インスタグラムでの告知と、あとはお客さまに電話で一人一人に連絡させていただいています。休業期間中は僕から連絡させてもらい、今回の休業の経緯などを話しているのですが、お客さまから応援の言葉をもらって、本当にうれしかったです。だからこそこの危機を乗り越えて、またお客さまを喜ばせたいです。いろいろな意見がある中で、僕のこうした判断が、「英断」と言ってもらえることもあるのですが、そうした称賛を得たい訳ではなく、ましてや英雄になりたい訳ではありません。ただただ僕としてはこの新型コロナの事態が一刻も早く収束して、安心して暮らせる日常が戻ってくるのを祈るばかりです。美容師のみなさん、大変な時期ですが、がんばりましょう。

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店舗休業の欧米ブランド オンラインで深める顧客とのつながり

 新型コロナウィルス感染拡大の影響で店舗休業など営業活動が著しく奪われる中、ファッションブランドはソーシャルメディアを駆使し、消費者との新しいつながり方を模索している。自主隔離を強いられて家ごもりする顧客に、気分転換してもらいながらコミュニティーとのつながりを持てるようにと狙ったものだ。

 これまでソーシャルメディアは主に商品販促の場であったが、今やクイズやオンライン対談、スタイリング、クッキングやフィットネスクラス、色遊びや絵を描いたり手紙を書いたりなど、さまざまなコンテンツを提供している。

 「今日では、顧客とつながる新たな機会としてテクノロジーをうまく使うことがブランドにとって重要になってきている」と、コミュニケーションコンサルタントのマチルド・カーリー(Matilde Carli)は言う。

 マーケティングや広告を行うFSBグループ(FSB GROUP)のフィリッポ・リチェリ・ヴィヴァルディ・パスクア(Filippo Richeri Vivaldi Pasqua)執行役員は、「これまで以上に顧客の注目を集め、勝てる戦略を練るために企業は、最近のマーケティング戦略にあるような情に働きかけるやり方だけでなく、楽しくてインタラクティブ(双方向)な要素を取り込む必要がある。一方通行のコミュニケーションではなく、交流をつくり出すことが大事」と言い、「最終消費者がオンラインでしかアクセスできない今、彼らと長く固い関係を構築することが必須だろう。顧客を楽しませるような娯楽的要素を散りばめたストーリーを提供し、願わくは近い将来に再開するであろう店舗でつながりを深めることが大切だろう」と述べた。

 新型コロナ感染拡大の中、欧州のブランドの各社は純粋な気分転換から教育的な内容まで、さまざまな作戦を打ち出している。

「バルマン(BALMAIN)」

 すでにソーシャルメディアで活発に発信しているオリヴィエ・ルスタン(Olivier Rousteing)「バルマン」クリエイティブ・ディレクターだが、著名な友人や「バルマン アーミー(BALMAIN ARMY)」のメンバーらと協力し、ストーリーやインスピレーションや製作物を"#バルマンアンサンブル(#BalmainEnsemble)"(アンサンブルは仏語で"共"にの意味)とタグづけして共有している。

 2020-21年秋冬のメンズ・コレクションでは、ダンサーたちが一つの塊のようにつながって踊る壮観なダンスアンサンブルを披露するという先進的手法を取り入れ、動画はユーチューブ上で"#バルマンアンサンブル"のティーザーとしても使われた。

 今年75周年を迎える同ブランドのジ・アーカイブズ(The Archives)に先行して、同氏は590万のフォロワーを持つ自身のインスタグラムでビンテージのスケッチや画像も掲載している。

 同氏は自身や友人がミューズとあがめる人やインスピレーションを与えてくれるクリエイターたちにオンライン対談を持ちかける計画を立てており、「美容、アート、スポーツや友情を支えに、ステイホーム(家にこもる)期間中でもできる限り楽しく、生産的に過ごす方法」について語るという。初回は歌手のマルマ(Maluma)とのライブチャットで、4月1日(現地時間)に行われた。

 同ブランドは「将来『バルマン』のランウエイで使う曲のセレクションやショーのテーマ、布地、カットや色」などに関する提案なども大歓迎だという。

 ルスタンはスタイリストやデザイナーを招集し、家にこもる人々向けにクリエイティブ関連の課題を毎週出すことも計画していると言い、また気分転換に塗り絵として楽しめるモノクロのスケッチ画もアップする予定だという。

「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」

 「サルヴァトーレ フェラガモ」はソーシャルメディア上でブランドの歴史や豊富な物語を伝えることでファンとつながろうと、彼らを楽しませるための「トリビア(Trivia)」デジタルプロジェクトを始動した。過去の逸話やクイズなどを通じて、ファンはブランドの歴史や主要商品に関する情報を再発見したり、またテストを受けたりすることも可能だ。5章からなるプログラムは4月4日までの毎週水曜日と土曜日にインスタグラムで公開された。

「レッド ヴァレンティノ(RED VALENTINO)」

 この困難なときにこそブランドの熱心なファンとつながり続けることが重要だと「レッド ヴァレンティノ」は考えているようだ。同ブランドは、シャーロット・ファーマー(Charlotte Farmer)を含む3人のアーティストとコラボしたデジタルプロジェクトを発表し、デジタル書簡として参加者が自由に使える手紙のテンプレートを作成している。3人のアーティストが春夏コレクションの鮮やかなデザインを取り入れて作成したという切手の形のGIF画像を使っていて、手紙のデコレーションも可能だ。優秀な手紙の作品は、"#親愛なるREDへ(#DearestRED)"とタグづけされて同ブランドのインスタグラムにアップされる予定だという。

「MC2 セイントバース(MC2 SAINT BARTH)」

 最近マイアミにオープンしたばかりの店舗など、計43店舗を構えるイタリアのビーチウエアブランド「MC2 セイントバース」は、インスタグラムでスイムウエアやビーチバッグのテンプレートを提供した。顧客はそれらのテンプレートをダウンロードした後、カスタマイズしたパターンを使ってデザインすることができる。

 ブランド創業者でクリエイティブ・デザイナーのマッシミリアーノ・フェラーリ(Massimiliano Ferrari)は「私たちのお客さまの多くは子どもであるため、彼らに向けて発信したかった。「ヴェスパ(Vespa)」スクーター、「フィアット(FIAT)」の"チンクエチェント(500)"やアヒル、カニなどブランドの象徴的なデザインは、ビーチで過ごした天気のよい一日を子どもたちに思い起こさせるだろう。家から出かけられないこのときだからこそ自由に発想できる何かを与えたかった」と語り、「この計画は弊社ソーシャルメディアチームの発案だったが、大成功となった。多数の素晴らしいデザイン案が届いており、中には商品として使えそうなものもある。早速いくつかを商品化する方向で検討しており、販売から得られた利益は新型コロナ対策の費用に充てる計画だ」と述べた。同氏は「母親たちもとても喜んでいる。家で退屈している子どもたちを夢中にしてくれるからね」と言い、「もちろん最大の願いは、私たちの若いお客さまたちが一日も早くビーチを自由に走り回れるようになることだよ」と付け加えた。

「クローズド(CLOSED)」

 デニムのインディーズブランド「クローズド」は、ベルリンを拠点として活動するシーシー(She She)と共同でマインドフルネス瞑想のクラスをインスタグラムで3月末に開催したのを皮切りに、インスタグラムで提供するさまざまなクラスのスケジュールを掲載した。これらのクラスは当初ベルリンで開催される予定だったが、新型コロナ感染拡大の影響を受けて、オンラインでの開催となった。共同創業者のひとりであるゴードン・ギアーズ(Gordon Giers)は、「ブランドとして顧客とどうつながるのか、そしてつながった後どうするのかについて考える必要がある。もちろん可能な限りオンラインで商品の販売を続けたいが、最近ではもっとほかのことも大事になってきている。例えば、娯楽や息抜きとなることを提供するなど」と言い、「それだけではなく、私たちが一緒に働くフリーランスの人や長きにわたるビジネスパートナーなどのネットワークを支えたいと思っている。彼らにもぜひカメラの前に立って参加してもらいたい」と付け加えた。

 ベルリンで人気のレストラン「LOK6」のシェフ、ジュリア・ハイファー(Julia Heifer)が麦芽パンやジャム、バジルソースの作り方を教えるクッキングクラスや、シーシーのステフ・キューザック(Steph Cusack)によるビンヤサヨガまでクラスの内容は多種にわたる。自社のネットワークを生かし、ファンが楽しめる内容のコンテンツを"#ウィー・アー・クローズド・トゥゲザー(#WeAreClosedTogether)"とタグづけしてインスタグラムのチャンネルで提供している(タグは新型コロナの影響で強いられているソーシャルディスタンシングの状況にかけた言葉遊びで、closeには親密の意味もある)。

 プロトレーナーのパトリック・マシュケ(Patrick Maschke)による、隔離中も健康でいるためのフィットネスレッスンや、フランス出身ベルリン在住の画家ジョアーナ・デュメ(Johanna Dumet)による自身のスタジオツアーと独自の鮮やかな色と絵画タッチを使った猫の絵の描き方など、異なるゲストによる動画も毎日配信している。オーストラリアの作家でインフルエンサーでもあるコートニー・アダモ(Courtney Adamo)を招き、5人の子どもたちと隔離生活を過ごすためのヒントなども配信した。

「エコアルフ(ECOALF)」

 「エコアルフ」は3月末以降、国際的インストラクターによるヨガレッスンや子どもと大人の双方に向けたクッキングクラスなどを週替わりでインスタグラム上にてライブ配信している。バルセロナのシェフ、ホルディ・クルス・マス(Jordi Cruz Mas)によるフードロスを防ぐ方法についてのクラスなども開かれた。また同ブランドの環境問題への取り組みに基づき、毎週日曜日には持続可能性に関するトピックなどを提供し、それに関連するおすすめの本やドキュメンタリーなども紹介している。

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ファッション通信簿Vol.50 パリピスタイルで不安な時期も乗り越えられる?米「WWD」が大物セレブのファッションを辛口ジャッジ!

 米「WWD」の人気企画「ファッション通信簿」では、ストリートからパーティー、レッドカーペットまで、海外セレブたちのファッションを厳しくチェック。A+、A、A-、B+、B、B-、C+、C、C-、D+、D、D-、そしてFAIL(失格)の13段階評価で格付けし、それぞれのファッションポイントを勝手に辛口ジャッジ!

 第50回はパリス・ヒルトン(Paris Hilton)、ジジ・ハディッド(Gigi Hadid)、カニエ・ウェスト(Kanye West)、ベラ・ハディッド(Bella Hadid)、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)、ヘイリー・ビーバー(Hailey Bieber)、ニック・ジョナス(Nick Jonas)、リタ・オラ(Rita Ora)が登場。米「WWD」は大物ぞろいでも容赦がない。強烈な皮肉を交えたファッションチェックの評価はいかに?

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世界で愛されるベーシスト、サンダーキャットにロングインタビュー アーティスト、オタク、黒人としての価値観と人生観

 “超絶技巧”と評される類いまれなる演奏力と、その愛くるしいキャラクターから新旧隔てずにファンを持つベーシスト、サンダーキャット(Thundercat)ことステファン・ブルーナー(Stephen Bruner)。音楽一家に生まれた彼は、ベースを手にすると早々とその才能を開花させ、10代で人気バンドに加入しながら大物アーティストの後ろでベースを弾くなど、世界中を飛び回る売れっ子ベーシストになった。その後ソロに転身し、2017年に発表した3rdアルバム「Drunk」では持ち前の圧倒的なスキルに加え、妙にクセになるリリシストとボーカリストとしての顔を見せ、さらにはケニー・ロギンス(Kenny Loggins)やファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)ら豪華ゲストアーティストが参加し、衝撃的なアートワークとも相まって彼の名を世界に知らしめる出世作となった。

 そんなステファンが、4月3日に最新作となる4thアルバム「It Is What It Is」を発表するにあたり、この1月に来日した。彼が“サンダーキャット”になった理由やアルバムについてなどの音楽的な話はもちろん、胸に光る無数のネックレスをはじめとする黒人とジュエリーの関係などの話も聞いたのだが、どんな話題よりも目をキラキラとさせて雄弁に語ったのが、日本のアニメやマンガについてだ。彼のパーソナルな一面がうかがえるロングインタビューをお届けする。

「自分から“サンダーキャット”って名乗ったわけじゃないよ(笑)」

WWD:まずは、アーティストとして活動することになった理由から教えてください。

サンダーキャット:13〜14歳にはプロのミュージシャンとして活動していたから、10代の頃から何らかの形でアーティストだったとは思う。でもはっきり1人のアーティストとして活動しようと思ったのは、フライング・ロータス(Flying Lotus、音楽プロデューサー)の一言がきっかけかな。彼がアルバム「Cosmogramma」(2010年)で俺をフィーチャーしてくれて、「お前は1人のアーティストとして活動をするべきだ」と助言してくれたんだ。

WWD:それまでは、バンドに所属したりバックミュージシャンとして活動していましたね。

サンダーキャット:いろいろ活動、っていってもエリカ・バドゥ(Erykah Badu、ネオ・ソウル歌手)のツアーと、スイサイダル・テンデンシーズ (Suicidal Tendencies、ハードコアバンド)がメインだけど、最後のほうでソロ活動も始めたんだ。当然、スケジュールがバッティングすることが増えてね、ソロ活動を選ぶことにした。このことで1つすごく記憶に残っていることがあって、セルビアであったフェスで誰がブッキングしたか知らないけど、エリカ・バドゥとスイサイダル・テンデンシーズの両方が出演していて、しかも連続して出演するタイムスケジュールだったことがあるんだ(笑)。俺は連続して演奏することになったわけだけど、誰もパニックにならなかったし怒らなかった。これをきっかけにソロ活動に専念することを決めたんだ。

WWD:では、直訳すると“雷猫”のアーティスト名の由来は?

サンダーキャット:子どものころにアメリカのTVアニメ「サンダーキャッツ(ThunderCats)」が大好きで、自分で洋服を買うようになってからは「サンダーキャッツ」のTシャツばかり着ていたんだ。ちなみに制作していたのは日本のアニメーション会社ね。それで、俺の名前を知らない誰かが俺について話すとき、「あの『サンダーキャッツ』のTシャツを着たやつ」みたいに呼んでいたのさ。それから俺の友達が“サンダーキャット”って呼ぶようになったんだ。決して自分で名乗り始めたわけじゃないよ(笑)。

でも、エリカ・バドゥら大物たちと仕事をするまでは、全然定着しなかったんだ。影響力のある人たちが「やあ、“サンダーキャット”」って話しかけてくれたから広まったね。だからフライング・ロータスも「Cosmogramma」では、俺の本名じゃなくて“サンダーキャット”でクレジット表記してくれているよ。

WWD:そもそも、なぜベーシストとしての道を選んだのですか?

サンダーキャット:音楽一家で父親と兄がドラマーだから同じことをしたくなかったし、なぜか弦楽器に惹かれてね。それに気付いた父親がベースを買ってくれたのさ。実はあまり話したことがないんだけど、ベースを弾けるようになる前からよく絵を描いていて、美術系の学校に進学してアニメーターになることを考えていた。今でもよく描くし、音楽と同じくらい大好きなんだけど、父親が「音楽を選んだほうがいい」って言うからベーシストになったね。

WWD:あなたにとっての音楽面でのヒーローは?

サンダーキャット:たくさんいるけど、昔からずっと好きで敬愛しているのはジャコ・パストリアス (Jaco Pastorius、ベーシスト)、スタンリー・クラーク(Stanley Clarke、ベーシスト)、ジョン・マクラフリン(John McLaughlin、ギタリスト)、フランク・ザッパ(Frank Zappa、音楽家)、神保彰(ドラマー)、坂本龍一……本当に数えきれないからこれくらいにしておくよ。

通常のベースより音域が広い6弦ベースを使用している

WWD:ベースプレイの幅が広いのが特徴であり魅力だと思うのですが、フレーズはどう思いつくんですか?

サンダーキャット:ありがとう!5歳から30年ぐらいベースを弾いているけど、いつも練習を通じて思いつくかな。あえて障害物を作るというか、何かを違うふうにやってみるとか、自分自身にチャレンジすることで出来上がっていくことが多いね。

WWD:来日中でも練習を?

サンダーキャット:いや、日本にいるときはなるべく休むようにしているんだ。でもほかの国を訪れているときは曲を書いていることが多いね。ツアー中だと毎日演奏しているからそれが練習にもなっていて、ツアーをしていない時期は、ちゃんと練習の時間を取っているよ。

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94歳を迎えた森英恵 「シャネル」のサロンを訪れた初めての東洋人 情熱で突き進んだ人生の知られざる一面

 茨城県・水戸芸術館現代美術ギャラリーで2月22日~5月6日の会期で開催予定だった展覧会「森英恵 世界にはばたく蝶」ですが、開催早々に新型コロナウイルス感染拡大の影響により3月いっぱいまで中止となり、その後4月から再開したのもつかの間、5月10日までの休館が決定したことで同展覧会は終了となりました。森英恵デザイナーの軌跡をたどる展覧会を楽しみにしていた方に、オープニングの際に取材した内容をお伝えすることで、本展や森英恵デザイナーの知られざる一面をお伝えできれば幸いです。

 森英恵は島根県六日市町で開業医の父と母のもと、5人兄弟の次女として生まれます。兄が2人、姉と妹がいました。父は大阪大学の医者でしたが、そこに入院してきた女性に恋をして、退院後、女性の故郷である島根まで追いかけた男性が父、その女性が母だそうです。このロマンチックなお話は、オープニングにいらしたご家族が教えてくれました。母親の実家は地主だったため、父親は、医者、地主として島根に根付いたそうです。オーダーのスーツを着るセンスのよい父と、島根の自然の中で感性を育まれ、森英恵の代表的なモチーフである蝶もその自然がルーツなのだと後に語っています。厳格で教育熱心、そしてアートを愛するおしゃれな父。その影響で幼い頃から「装う」ということへの意識が芽生えたのでしょう。その後小学4年生のときに東京へ移住します。

 それから月日が経ち、東京女子大学を卒業した英恵氏は1948年、戦時中に知り合った森賢と結婚。新婚生活3カ月で夫の帰りを待つだけの生活に飽きてしまい、ドレスメーカー女学院に通い始めます。出産をし子どもを育てながらも、服作りにのめりこみました。卒業後の51年、新宿に「ひよしや」を開店。若者が集まる街で評判の存在になっていきました。ある日、日活の担当者が映画の衣裳を作ってほしいと訪ねてきて、そこから映画の仕事がどんどん舞い込みます。50年代の日本映画全盛期に数百本にものぼる映画衣裳をデザインし、オファーが絶えない日々。映画のシーンや女優それぞれの体形に合わせて服を仕立てることで腕が磨かれていったと後に語っています。

ココ・シャネルが
「あなたの黒髪には
オレンジが似合うわ」

 仕事に追われて1日2~3時間しか睡眠を取れず、“女ナポレオン”と呼ばれるような生活の中、次第に燃え尽きていきます。そんな折、1カ月の休みをとって61年にパリ行きを決意。ショーのモデルとして渡仏する仲のよかったモデルの松本弘子に同行したのでした。ちょうどオートクチュールの新作発表シーズンで、ショーを見てまわります。中でもココ・シャネル(ガブリエル・シャネル Gabrielle Chanel)に大きな刺激を受けた森英恵は、自分のためにシャネル・スーツをオーダーします。「シャネル(CHANEL)」のサロンを訪れた初めての東洋人だったそうです。

 ココ・シャネルに会ったとき、黒い髪にはオレンジが似合うと言われ、オレンジのジャケットスーツをすすめられます。ビジネスでも着やすいように黒がよかった森英恵ですが、「オレンジしかイメージが湧かない。オレンジじゃなきゃ作らない」と言うココ・シャネル。松本弘子に「ココに言われたら仕方がないわよ」と言われ、結局オレンジのブラウスにし、スーツは落ち着いたベージュのツイードをベースに黒や緑、オレンジのネップを散らした生地にしてもらったそうです。西洋人にとって日本人のまっすぐな黒髪はとても魅力的に映ったのでしょう。ココ・シャネルは森英恵の黒髪をとても気に入ったそうです。

 当時のことを森英恵は次のように振り返っています。「パリではココ・シャネルのコレクションが特に印象に残った。彼女の作品から、男性が作る服と女性が作る服の違いを強く感じた。男性デザイナーの作品は美しく、華やかな創造性を感じさせた。服の印象が強烈でモデルの顔が思い出せない。だが、シャネルのショーでは、あまり若くないモデルたちがシックに見えた。ドレスは体の線に沿うように作られ、スカートの丈は膝下。歩く姿は実にしなやかだった。服ではなく、中身の女がごく自然に引き立って個性的に見えた」(森英恵「この道」東京新聞 2007年8月13日掲載)。

 パリで活力を取り戻した同年、ニューヨークを訪れます。歴史深いヨーロッパとは対照的に若さと勢いのあるアメリカのモードも見てみたいと思ったのです。今のように気軽に海外に行けるわけではなかった時代です。経営面をサポートしていた夫も後押ししてくれました。しかしそこで目の当たりにしたのは、粗悪品として売られるメイド・イン・ジャパンのブラウス。本来、高い美意識と伝統を持った日本のよさを伝えたい――そこでニューヨークでの作品発表を決意します。4年の準備期間を経て実現し、65年1月に開催したショーでは、蝶のプリントを大胆にあしらったドレスで挑戦し、アメリカでのデビューは高い評価を得ました。またデザインしたドレスが米国の社交文化にマッチしていたことも、飛躍を後押ししたのでした。

 「1961年のアメリカへの旅は、いろいろな刺激を与えてくれた。長い和服の伝統がある日本で、洋服を作り続けても、行き詰まりは解消されない。ファッションの道を究めるには、世界に出て、西洋のデザイナーと同じステージで仕事するしかないと考えた。と同時に、日本に対するイメージを変えなければ、とも思った。日本は「安かろう、悪かろう」の品物を大量に作って輸出するだけの国ではない。「蝶々夫人」に描かれた、哀れで弱々しい女性像が、日本女性の典型だと思われたくない。「やるんだったら、アメリカだ」と帰りの機内でずっと考えていた(森英恵「この道」東京新聞 2007年8月21日掲載)。

 70年にはニューヨークで現地法人を設立し、76年にはフラッグシップショップとなるファッション・ハウスをオープン。手の仕事にこだわり続けてきた森英恵は、77年にパリにメゾンをオープンし、同年、東洋人として初めてパリ・オートクチュール組合の会員となり、2004年までパリでオートクチュール・コレクションを発表します。最後のショーではウエディングドレスを着用した孫の森泉と一緒にフィナーレに登場したのが印象的でした。

オペラ「蝶々夫人」での
日本人の描かれ方に
「冗談じゃない」

 パリ、ニューヨークと海外での経験を広げた森英恵でしたが、オペラ舞台「マダム・バタフライ(蝶々夫人)」を観たことは、そのキャリアに大きく影響を与えました。「蝶々夫人」は明治の長崎を舞台に、アメリカ海軍士官と結婚した若き日本人女性、蝶々夫人の悲恋を描いたオペラ作品です。

 「私にとって『マダム・バタフライ』は積年の思いが詰まった作品だ。初めて見たのは1961年。ニューヨークでの舞台だった(中略)。蝶々さんは操を立てていたアメリカの海軍士官に捨てられる。士官は正式に結婚したアメリカ人女性を長崎まで連れてきて、蝶々さんから子どもを受け取り、ラストで蝶々さんは自殺する。そういうストーリーなのだからしょうがないと言われれば、その通りだけど、当時の私は『失礼しちゃう』と抵抗を感じた。プッチーニの音楽は素晴らしい。でもなぜ日本女性の扱われ方がこうもひどいのか。冗談じゃない。こんな、哀れな、か弱いだけの女性像は日本の女じゃないと……。しばらくして私はアメリカのファッション界に進出した。意識的にデザインに取り入れたのが蝶だった。(中略)。あのオペラを見て反発し、それをバネに働いてきた私自身が、いつの間にか「マダム・バタフライ」と呼ばれる存在になっていた。だからこそ、これは私の仕事だと思って引き受けた(森英恵「この道」東京新聞 2007年6月27・28日掲載)。

 その後、浅利慶太演出の「蝶々夫人」をミラノ・スカラ座で公演する際に、その衣裳を森英恵が手掛けることになります。1904年にイタリアで初演されたた同作は、85年公演で初めて浅利が演出したオールジャパンによる制作として実現したのです。61年にニューヨークで観た蝶々夫人に憤りを覚えて世界を駆け抜けてきた森英恵にとって、日本人スタッフで手掛けた同作は、純粋で芯の強い日本の女性が表現され、長年の思いが晴れたといいます。

 そのような底知れぬバイタリティーと情熱で世界に知れわたるデザイナーになった森英恵。その歴史の中で、数々の映画衣裳、舞台衣裳、ユニホームを手掛けてきました。中でも、展覧会にも出品されていて、とても印象的だったのが美空ひばりの衣裳でした。

美空ひばりの
伝説の復活コンサートで
重さを抑えた衣裳をデザイン

 不死鳥と深紅の花のドレスは、89年にこの世を去った美空ひばりが88年に東京ドームで行った復活コンサートで着用したものです。森はこの公演のために、体力に限界のあった美空ひばりのために重くならないよう細心の注意を払い、できるだけ重さを抑えた2着の衣裳をデザインしました。デザイナーとしての力量が問われる大きな仕事だったに違いありません。深紅と黒とゴールド、この力みなぎる色で作られた衣裳は、病と闘いながらも力強く歌い上げた姿と共に人々の心に刻まれたことでしょう。実際の衣裳を見ると美空ひばりはとても小柄でした。画面でとても大きく見えたのは、その存在感と衣裳の見せ方の技量によるものだったのかもしれません。

 本展覧会で流れていた映像で忘れられない場面がありました。美空ひばりの没後30周年を迎えた2019年、NHKは「AIでよみがえる美空ひばり」として、AI技術によって美空ひばりを現代によみがえらせる挑戦を行いました。亡くなった後も04年まで毎年依頼を受けて美空ひばりの新しい衣裳を制作してきた森英恵は(京都にある美空ひばり記念館に2004年まで毎年新作が加えられていた)、このプロジェクトのために15年ぶりに新しい衣裳をデザインしました。

 そのメイキング映像で、白衣を着た森英恵は美空ひばりのためにデザインした衣裳の最終チェックをしていました。モデルが実際に衣裳を着用し、動きを見るために美空ひばりの歌を歌う仕草をしていたのですが、それをじっと見つめ、静かに目頭を押さえている姿がありました。「なんだか思い出しちゃってね」と小さな声で涙を浮かべていた様子が目に焼き付いています。プロとして、ファンに誠実でデザイナーに敬意を払う美空ひばりとの仕事は、森英恵にとっても幸せな時間だったといいます。きっとさまざまな思い出が胸に去来したのでしょう。そして現役でデザインをし、白衣でたたずむその姿はとても美しいものでした。

 最後に2011年12月に出版された別冊太陽「森英恵 その仕事、その生き方」(平凡社)に黒柳徹子が寄稿した「憧れずにはいられない女性」の最後の一文を紹介したいと思います。「先生がこれまで大きな病気をなさらず、現役で仕事を続けてこられたのは、有名になりたいとか、成功したいといった我欲ではなく、衣服をつくる仕事を愛し、『なんとか日本の美意識や日本人の素晴らしさを世界に紹介したい』という心からの献身があったからだと思う。そして、その姿は気高くて美しい。世界のどこへ着て出かけても恥ずかしくないエレガントな服。『ハナヱ・モリ』の一番の要素であるエレガンスは、森先生自身が持っているエレガンスなのだと思う。私は、先生が大好きだ」。

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#敦子スメ「新月・満月」ノート 今回の満月(4月8日)は他人との関わりを見つめなおすきっかけに

星占いとの出合い

 オーガニックコスメとの出合いや、コスメキッチン在籍中に占い師・ジョニー楓さんのイベントを担当したのをきっかけに星占いに興味を持ち、独学しました。現代では、占いとしてこれはラッキー、アンラッキーという区別に使われることもありますが、良い悪いではなく自然の流れとしての月の動きに、地球上で生活しているわたしたちは知らずに影響を受けています。この連載では、月の動きの中で活用できるものを知り、うまく生かしていただくための付き合い方をお伝えしていきたいと思います。新月・満月の流れを最大限に引き出すためのサポートをしてくれるコスメやインナーケアアイテムも紹介していきます。第8回は4月8日の満月とおすすめコスメについてお伝えします。

 暖かくなってきて、だいぶん気分が変わる人も多そうな今回の満月。天秤座で起こるこのアクティブな満月は、自分自身と人との関わりを見つめ直すきっかけになるかもしれません。というのも、太陽があるおひつじ座、月が位置する天秤座は“自分自身”と“他者との関わり”がテーマになりやすい対局の星座だからです。どちらもアクティブなグループに属する星座なので、このタイミングを機に上記のテーマについて考え直したり、意識したりするきっかけになる人も多いかも知れません。

 今回の満月コスメはそれにちなんで、シェアできるコスメ=パートナーや、家族と一緒に使えるようなユニセックスで日常的なものをセレクトしました。コスメを通して“これがよかったよね”なんて盛り上がって話すのは楽しいものだし、人とのつながりを新しくしたり、強めたりしてくれると思います。ぜひ身近な人と一緒に使ってみてください。

 「ウェリナ(WELINA)」の化粧水「クリアヴェリーモイスト」は男性ならばこれ一本でシンプルなスキンケアができる便利なアイテム。油分が適度に含まれているのでクリームなしでも満足感があります。女性なら肌の柔らかさをサポートしてくれるはず。日常のスキンケアにおすすめです。「ザ パブリック オーガニック(THE PUBLIC ORGANIC)」のリップクリーム「精油カラーリップスティック」は、高いクオリティーでありながら1本648円と価格が超良心的で、人にもプレゼントしやすいアイテム。家族4人分買ったとしても2000円台!肌にもお財布にもやさしいアイテムです。誰かとおそろいで使いたいおしゃれなパッケージもかわいくておすすめ。

 ハンドソープでおすすめなのは「イソップ(AESOP)」の「レスレクション ハンドウォッシュ」。しっかり香るので洗うたびにリフレッシュできるのと、女性も男性も関係なく使いやすい爽やかな香りとファンも多いパッケージが魅力。大容量なので遠慮なく使用できてうれしい。

 いかがでしたか?コスメを通して人との関わりを楽しむ、そんな満月になることを祈っています!

福本敦子(ふくもと・あつこ)/フリーランスPR・美容コラムニスト:コスメキッチンに14年間勤務後、現在はフリーランスPRとして活動するかたわら、ビューティコラムニストとしてイベント、SNSなど多方面で活躍。オーガニックに精通した知識を武器に、ライフスタイルに寄り添った独自のオーガニック美容論が、著名人やエディターをはじめ各方面から大人気。「#敦子スメ」は「読んだ瞬間試したくなる」と多くの反響を呼び、紹介した商品の欠品や完売も多数。2019年秋、初の書籍となる「今より全部良くなりたい 運まで良くするオーガニック美容本 by敦子スメ」を出版。発売前に増刷が決まるなど話題を呼んでいる。旅を愛し、占星術にも精通する instagram:@uoza_26

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新型コロナ下でもニトリが「34期連続増収増益」を実現する6つの施策

 「お、ねだん以上」のキャッチコピーで知られるニトリホールディングス(以下、ニトリHD)は、2020年2月期で33期連続の増収増益を達成した。その強さを支えるのは、「ユニクロ」や「無印良品」のような製造小売業に、物流とITを加えた「製造物流IT小売業」というビジネスモデルだ。世界的な新型コロナの感染拡大によるロックダウンや緊急事態宣言の発令などの逆風下でも、2021年2月期の連結業績は売上高が前期比1.7%増の6532億円、経常利益は同3.4%増の1133億円を計画する。既存店売上高は上期に同3.8%減、下期に同1.0%増、通期で同1.4%減を予想。設備投資額は250億円を見込む。ニトリを支える6つの施策を読み解く。

 「住まいの豊かさを世界の人々に提供する。」というロマン(企業理念)の実現に向けて、すべての工程にロマンを求めた結果、もともとの小売り=販売部分だけでなく、商品の企画から原材料調達、製造、物流、販売までを一貫して自社でコントロールすることを決意。

 さらに、「流通業の社会貢献のバロメーターである店舗数と客数を増やし続けていく」(白井俊之社長兼COO)一環として、2017年からグローバルチェーン展開を本格化。2032年に3000店舗・3兆円達成を目指している。近い将来の目標は、2022年度の1000店舗・1兆円だ。

 これらの目標達成に向け、2020年度(2021年2月期)の主要施策として、6つのグループ重点課題に取り組んでいくと白井社長。「①コーディネート提案の推進・O2Oの推進」「②グローバル事業展開と事業領域の拡大」「③商品開発・生産体制・品質管理体制の強化」「④国内物流拠点の再構築」「⑤全社業務の生産性向上」「⑥未来に向けた人材育成」の6つだ。

 1つ目の「コーディネート提案の推進」では、お客さまの暮らしをより豊かにするために、商品、売り場、コーディネートをさらに強化していく。「小さなところからでも気軽に、色、素材、柄を組み合わせられること、その人の暮らしまで感じられること、そして、お客さまにはこれらがわかりやすく、商品を選んでいただきやすい売り場にすること。これらの点を強化することで、らなる需要喚起ができると考えている」。

 コーディネート提案の推進に向け、さらに「O2Oを推進」していく。「お客さまからいただいた声をDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用することで、より一人ひとりに魅力を感じていただけるように準備している」。店舗とアプリの連携機能を強化し、お客さまからのデータを抽出するとともに、フィードバックを強化するなど、様々な施策を打ち出す。DXではAI画像検索なども導入。ワン・トゥ・ワン・マーケティングをさらに進化させ、「最高の提案ができる仕組みのさらなる高度化」を図る。

 2つ目の「グローバル事業展開と事業領域の拡大」では、各地域の市場特性と成長ステージに応じた施策を実行していく。

 中国では前期、改装により、上海の徐家匯店は旗艦店へと改装して中国ニトリのイメージを刷新。一方の上海の七宝(チーパオ)店では、日本のニトリのノウハウを中国で展開するための標準店作りを進めた。今期は着実な成長に向けて、ホームファッションの標準店実験を踏まえて、プロトタイプの水平展開に着手。地域に合った品ぞろえ、棚割り標準化と定量数の見直しによる坪当たり売上高の改善、EC事業の拡大などに取り組んでいく。

 台湾は新たな成長ステージに突入する。商品やテレビCMの共通化、ウエブ広告やSNSを駆使したニトリブランドの構築に注力。通販事業は前年比20%増を目標に拡大に取り組んでいく。アメリカについてはオムニチャネル戦略を推進する。「家具市場においてアマゾンなどの参入が本格化しているが、以前、顧客の90%が実店舗で購入している。一方、購買行動には大きな変化が生じており、通販サイトで商品を選んでから店舗で最終確認して購入するお客さまが増えていることを踏まえ、オムニチャネルの推進が必要不可欠だ。各商品の育成、ポップアップストア活用とEC機能による拡販に取り組んでいる」。

 3つ目の「商品開発・生産体制・品質管理体制の強化」では、ベトナムの自社工場では。ダイニングチェアを1日1000脚、ベッドマットレスは年間100万セット、ソファ年間20万セットの生産に取り組んでいく。

 グローバル品質管理体制については大きく3つを取り組む。一つは品質規定・基準のグローバル化は、これまで日本で築いた基準をグローバルに展開し運用を開始する。2点目は、海外品質活動の強化だ。「技術評価会」の海外化をはじめ、より効率的に適材適所で品質強化ができる体制を構築していく。3点目はサプライチャー指導・育成では、安定した品質の商品を継続して提供できるように、源流の取引先工場の指導・育成を強化していく。

 4つ目は、「国内物流拠点の再構築」だ。ニトリグループの強みの一つである物流機能については、国内拠点構想により、国内拠点の見直しを行いし、新DC(ディストリビューションセンター)設置に向けた準備を行っていく。2つ目は、店舗適正在庫と最適なリードタイムの実現だ。店舗への搬入方法や搬入頻度を改めて見直し、最適なリードタイムを見極めていく。

 5つ目の「全社業務の生産性向上」の課題について。ニトリグループ全体で、重複作業の統廃合、人員の見直し、業務全体の最適化を目的として、生産性向上の取り組みを行ってきた。物流センターに自動ピッキングシステム「オートストア」を導入したり、定型作業におけるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)化、ベトナムのバリアブンタウ工場におけるロボット導入などもある。「今後は専門部署を中心に、これまで以上に、生産性向上の取り組みを加速させる。また、デジタルトランスフォーメーション導入を視野に入れ、作業スピードアップ、省人化、自動化を進めていく」。

 6つ目の「未来に向けた人材育成」だ。「ニトリは『製造物流IT小売業』というビジネスモデルにより、多岐にわたる業務・職種が存在する。その中で自律的にキャリアに向かい、キャリアに向き合える環境を構築していく」。「タレントマネジメントプラットフォーム」を構築し、個々人の志向と、社内教育(ニトリ大学)を通じたキャリア開発を連動。「現在から未来を見渡したうえで、ニトリグループ全体にとって必要な人材育成に取り組んでいく」。

 2020年度は、国内では「ニトリ」で25店舗、「デコホーム」で20店舗の計45店舗を純増予定。海外では台湾で6店舗、中国では2店舗出店、米国で1店舗の計9店舗の純増を予定。国内外合わせて54店舗の増加を予定し、世界での期末店舗数は661店舗(国内586店舗、台湾36店舗、中国36店舗、米国3店舗)になる見込みだ。

 「とくに中国は経済が止まった感があるので、しっかりみていく。2019年度と2020年度は踊り場であり、足場を固め、20201年からしっかりと高速な出店ができるようにしたい」という。

 なお、大人向けの婦人服アパレル新業態「Nプラス(エヌプラス)」については、2019年度に関東を中心に4店舗と通販をスタートしたが、店舗数にはカウントしていない。今期6店舗を出店して10店舗体制とする。似鳥昭雄会長兼CEOの肝いり業態であり、「数年前から計画を立て、世界中を回って資料を集めて、勉強・研究してきた。日本にはないファッションの店だ。日本には30~50代のコーディネートブランドがなくて、まるっきり(市場が)開いている」と着目した理由を説明。「ファッションは大不景気だが、逆に欲しいものがないといわれている。トップスとボトムスを合わせても4000~8000円で、100%コーディネートできるもの。営業の成績にはまだあまり影響しておらず赤字だが、30店舗ぐらいで黒字になると思う」と見通しを語る。

 なお、ニトリグループの新型コロナウイルスの影響については、サプライチェーンの影響は、一時的な生産のストップ、出荷のストップがあったが、現在は大幅な遅延はない状態だ。地域別では、中国はすでにすべての取引先工場が稼働しており、稼働率も9割を超えている。東南アジアはいくつかの国で行動規制がかかるなど予断を許さない状況ではあるが、ベトナムの自社工場については現在、原材料の調達、工場の出荷は正常に行われている。

 「これまで築いてきたサプライヤーとの密な関係を生かし、情報を常に共有し、問題に対応するなどした結果、現在、大きな問題にはなっていない。引き続き、現地のグループ法人等を使い最新の情報を把握し、さまざまな取り組みを行っていく」と白井社長。「工場の生産管理体制の構築」や「産地の分散化」「売れている商品を中心に前倒し出荷を実現」「原材料・部材・資材を確実に確保するため、先行オーダーを実施」することなどを行っていく。

 消費の減退なども予想されるが、価格は今のまま据え置き、品質と機能の向上に努めたい考え。

松下久美:ファッション週刊紙「WWDジャパン」のデスク、シニアエディター、「日本繊維新聞」の小売り・流通記者として、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)

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SNSとポジティブに付き合うパーソナルスタイリスト大日方久美子の「#これが私の美しさ」とは?

 「自分らしい美しさ」を提唱する「ボビイ ブラウン(BOBBI BROWN)」は今春、豊富なカラーバリエーションを揃えた人気の美容液ファンデーション“インテンシブ スキン セラム ファンデーション SPF 40(PA++++)”発売5周年を記念したキャンペーンをスタート。「#これが私の美しさ」というハッシュタグとともに、女性が自分らしさを持って、個々の美しさを臆せず発信できる環境が広まることを願う。そこで「WWD JAPAN.com」は、自分らしい人生を歩み、輝く女性にインタビュー。自信を抱けるようになるまでの葛藤、確立したオリジナリティー、そして、「#これが私の美しさ」と言えるそれぞれの自分らしさに迫った。第4回目に登場するのは、パーソナルスタイリストの大日方久美子。インスタグラムにアップされる日々のスタイリングのみならず、彼女のライフスタイルに憧れる女性も多い。SNSと密に関わる中で見つけた「#これが私の美しさ」を教えてもらった。

WWD:インスタグラムで一躍注目されるようになりましたが、この道はどのように切り開いたのでしょう?

大日方久美子(以下、大日方):パーソナルスタイリストとして活動する前はアパレルの販売員をしていました。さらにその前は派遣で、クレジットカードの勧誘の仕事も経験しています。若い頃から接客の仕事が向いている自負していたのですが、どうせならハードルの高い仕事にチャレンジしようと考えたんです。みんなが敬遠しそうな職種でうまくいけば、きっと自信になるって。

WWD:ストイックですね(笑)。

大日方:カード勧誘の仕事で配属されたのは、多くの会社が入るビル内の銀行でした。そこは、1日1件新規開設ができれば十分という世界。いくら声がけをしても、「結構です!」と返される日々でした。数カ月経ったころ「会社の最寄りの銀行なら、多くの人が給与口座として利用しているはず」「給与口座とクレジットの引き落とし口座を同じにすれば便利なはず」——そう仮説を立てました。声がけの段階でそのメリットを伝えると、1日に10件、15件と成約につながっていきました。目的は同じでも、物事の捉え方と工夫次第で結果は大きく変わるんだと、身をもって学びました。

WWD:接客の仕事からはどのように今の仕事に?

大日方:大きなきっかけはインスタグラムです。初めてのセルフィーは、恥ずかしくてしょうがなかった。けれど、ここで頭をビジネスマインドに切り替えたんです。「1年間でフォロワーを1万人にする」という目標を立てたら恥ずかしさなんて消えちゃいました(笑)。それからは、「どの時間帯が見られやすいのか」「どんなスタイリングにみんな反応するのか」と、分析を重ねる日々。コーディネートを撮りためる中で、私のファッションのベースはエレガンスだと気づきました。エレガンスという軸に「ユニクロ(UNIQLO)」や「ザラ(ZARA)」といった手に取りやすいブランドをプラスすることで、すぐにマネできる!という点も意識するようになりました。8カ月を過ぎたころ、フォロワーは1万人を超えていました。

WWD:努力を重ねられる情熱はどこから?

大日方:こういう自分でありたい、という気持ちが人一倍強いのかもしれません。課題があると「じゃあどうする?」と挑戦できるし、ワクワクします。最近は、失敗したときの方がワクワクしているかもしれません(笑)。

WWD:個性を大切に考えポジティブなメッセージを発信する「ボビイ ブラウン」は、そんな大日方さんのイメージに重なります。

大日方:過去にはインスタに届く外見への誹謗中傷に悩みました。でも、私がインスタで伝えたいことは何なのか、誰に向けたいのかをとことん考え抜いたら、画面に映し出されたネガティブなコメントが“記号”にしか見えなくなったんです。私にとっては単なる記号ですから、意味を持たないわけです。すると心が揺れ動くことも減って、「私は私のことが好き。たとえあなたにノーと言われても関係ない」と考えられるようになりました。自分を大切にすること——それが、ここ数年でたどり着いた「#これが私の美しさ」です。

WWD:「インテンシブ スキン セラム ファンデーション」を使ってみていかがでしたか?

大日方:とにかくみずみずしくて、美容液のような感覚ですね。伸ばした後に手やスポンジで軽く押さえると、より端正な肌印象になるのが好きです。肌がキマるとファッションもより楽しくなりますね。

 「ボビイ ブラウン」は今春、ベストセラーの「インテンシブ スキン セラム ファンデーション」発売5周年を記念し、アンバサダーを通して、すべての女性が自分の魅力に気づき、自信に満ちて輝いて欲しいと願う「#これが私の美しさ」キャンペーンに取り組む。それぞれが考える自分自身の美しさを、「#これが私の美しさ」のハッシュタグと共に ソーシャルメディア(Instagram、Twitter)に投稿すると(4月30日まで)、合計1000人以上にプレゼントが当たるキャンペーンだ。「インテンシブ スキン セラム ファンデーション」は、和漢生薬の「冬虫夏草(フユムシナツクサタケエキス(保湿成分)」と、海洋プランクトンの一種「アルテミアエキス(保湿成分)」で構成されるアクティブエナジーコンプレックスにより、ツヤに満ちる生き生きとした肌印象へ導く。3月にはシェードが4色追加になり、さらに幅広い全17色へ。同シリーズのコンシーラーも新しいフォーミュラになって登場した。

問い合わせ先
ボビイ ブラウン
0570-003-770

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新型コロナの合間に展覧会 たくましい香港の文化産業【高橋瑞木の香港アート&テキスタイル 連載vol.4】

 日本に比べ、一足早く2月上旬から新型コロナウイルスの感染拡大で大きな影響を受けた香港。アートを筆頭にしたクリエイティブ産業にどのような影響を与え、沈静化後はどうなるのか。水戸芸術館現代美術センターのキュレーターを経て、現在は香港のCHAT (Centre for Heritage, Arts and Textile)で共同ディレクターを務める高橋瑞木氏による連載4回目をお送りする。

 欧州、アメリカに続き、日本でも新型コロナウィルスの感染が拡大している。香港は2月上旬から学校を閉鎖、多くの企業も在宅勤務となったため、3月半ばには一瞬緊張感もゆるみ、事態がこのまま収束するのでは、という期待もあった。だが、3月末に再び感染者数が増加し、香港政府より映画館やジムや運動施設の閉鎖が命じられ、香港への一層厳しい入国制限も実施されることになった。当然のことながら展覧会のオープニングやコンサートなども概ね延期か中止。この連載も本来なら毎月香港を中心にアジアのアートやテキスタイル事情をお伝えすることになっていたし、3月の香港は通常なら世界で最も権威あるアートフェア、アートバーゼル香港(ART BASEL HONGKONG)が大々的に開催されるため、1年のうち最も活気づく時期なのだが、開催の1ヶ月前にキャンセルが伝えられ、フェアはオンライン上で開かれることになった。このキャンセルに伴い、多くのイベントやパーティーも中止。例年とはうって変わって3月の香港は静寂に包まれてしまった。

 そんな中、実はCHATは自主隔離や入国制限の方針が厳しくなる前のギリギリのタイミングで春のグループ展「Unconstrained Textiles: Stitching Methods, Crossing Ideas(自由なテキスタイル:縫い合す方法、交差する思考)」をオープンすることができた。中国で制作していた新作や、ニューヨークからのシッピングが設置スケジュールに間に合うかどうか、ギリギリまでわからないことだらけだったが、意外にも輸送手続きはスムーズに進み、作品は無事ギャラリーに運び込まれた。作品設置やパフォーマンス、トークイベント参加のために来香予定だった7人のアーティストのうち5名の渡航はキャンセル。インスタレーションはZoomやWhatsAppを駆使しながら遠隔で作家と確認を取りながらおこなった。参加作家のひとり加藤泉は、日香港が日本を入国禁止指定国に指定する直前になんとか香港に滑り込みで到着。香港で入手したファブリックを用いた新作の絵画作品と最大8メートルを超す大型の絵画、そして屋上庭園に石と植物でつくるインスタレーションを設置した。

 各国で開催されるビエンナーレやトリエンナーレに引っ張りだこの香港出身のサウンド/ヴィジュアルアーティスト、楊嘉輝(サムソン・ヤン)は中国に古くから伝わる道教の八仙の物語に着想を得て制作したパフォーマンスをヴィデオインスタレーションに展開。パフォーマンスに登場するミュージシャンが着用したコスチュームはサムソンがデザインし、CHATのテキスタイルチームが作成した。展覧会ではコスチュームの展示に加え、コスチューム制作の際に出た余り布を使ってヴィデオを上映するテンポラリーのシアターを設営した。

 サムソンは引き続きCHATのテキスタイルチームとタッグを組み、限定発売のトレーナーをデザインすることになっている。この二人に加え、建築の装飾モチーフをテキスタイルのパターンに応用し、映像や平面作品、インスタレーションを制作している中国の若手作家ビ・ロンロン(毕蓉蓉、Bi Rongrong)は、LEDのエンジニアとコンピュータープログラマーと共同で制作したLED内蔵のかぎ針編みの作品や、H&MファウンデーションとHong Kong Research Institute of Textiles and Apparel(HKRITA)が共同で開発・運営している衣料リサイクル工場のニッティングの機械で制作した新作による、いわば「テキスタイルパターンの実験室」的空間インスタレーションを発表している。

 ひっそりと開催されたプレスとVIPの内覧会では、来場者はレセプションで検温をしてから入場。またサージカルマスクの着用も義務付け、もし来場者がマスクを着用していなければCHATが提供した(ちなみに現在香港ではアルコール消毒液やサニタイザーはコンビニでも購入でき、サージカルマスクも普段よりはるかに高額だがドラッグストアなどで入手ができる。トイレットペーパーはスーパーで問題なく買える)。

 開幕直後に香港の政府によって公共施設の臨時閉鎖が発表されたため、CHATも現在は臨時休館中だが、CHATに限らず香港のアート業界のたくましいところはすでに数ヶ月後を見据えた活動が始まっているところだ。直近では、ギャラリスト、非営利の文化施設、オークションハウスなど、アートインダストリーの女性たちが組織横断的に関わるプロジェクト「アートパワー香港(ART Power HK)が立ち上げられた。これは5月ごろになればコロナウィルスの感染がある程度収束しているだろうというある種の楽観的な予測に基づいたプロジェクトだが、現在のところ5月を「アートパワー香港」月間として、香港中で開催が予定されているアートイベントの情報を共通のデジタルプラットフォームでまとめて紹介するとともに、5月まではアーティストやキュレータートークのイベントをデジタルプラットフォームで展開していく。CHATも遠隔でヴァーチャルに参加できるアートプログラムを構想中のほか、この機会に常設展示のヴィデオツアーや、Zoomを使ったアーティストトークを企画中で、閉館中だがスタッフは大忙しでコンテンツづくりに励んでいる。ともあれ、非常時にもかかわらず、それぞれができることをやりつつ、商業ギャラリー、非営利の美術館にかかわらず、全体としてアート業界を盛り上げていこうと即時にプロジェクトを立ち上げる香港の機動力と結束力には感心するばかりだ。

 4月3日現在の香港は、とにかく人が集まる場所に行ったり、大勢での食事を抑制する雰囲気に包まれている。筆者が住む近所にはバーやレストランが集まる地区があり、週末の夜は遅くまで賑やかだったが、その喧騒も今は消えた。しかし、人々は特にパニックにもならず、現状を淡々と受け入れながら生活を送っている。とはいえ、ここ数年、イケイケドンドンのバブルだった香港の都市がまとっていた熱気も、去年の抗議運動に続いてこの新型コロナウィルスの問題で急速に冷却された。とりわけ、香港はアジアと欧米を結ぶハブ的な役割を果たしてきたので、香港外からの訪問客の激減がホスピタリティ産業に莫大な経済ダメージを与えているのは明らかだ。しかし、当分長引くであろう在宅勤務モードを見込んで、屋内エクササイズグッズの売り上げは好調のようだ。

 この新型コロナウィルス問題がひと段落したころ、この都市はどうやって復活を遂げていくのか、今はその様子を静かに見守りたいと思っている。と、ここまで書いたら外がなにやら騒がしい。窓を開けてみると、周りのマンション中から拍手が。「金曜日の夜8時、新型コロナウィルスと闘ってくれている人々に感謝の拍手を送りましょう」。すでにヨーロッパやアメリカではおなじみの光景が香港でも繰り広げられていた。うーん、このノリのよさ。香港のたくましさを垣間見たような気がした。予想外の展開になってしまったこの連載、次回は在宅で展覧会やアート作品を楽しめるコンテンツを紹介できればと思う。

高橋瑞木(たかはし・みずき)/CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)共同ディレクター:ロンドン大学東洋アフリカ学学院MAを修了後、森美術館開設準備室、水戸芸術館現代美術センターで学芸員を務め、2016年4月CHAT開設のため香港に移住。17年3月末から現職。主な国内外の企画として「Beuys in Japan:ボイスがいた8日間」(2009)「新次元:マンガ表現の現在」(2010)「クワイエット・アテンションズ 彼女からの出発」(2011)「高嶺格のクールジャパン」(2012)、「拡張するファッション」(2013、以上は水戸芸術館)「Ariadne`s Thread」(2016)「(In)tangible Reminiscence」(2017、以上はCHAT)など

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今、新型コロナウイルスで若者は何をして、何を思う?

 新型コロナウイルスの影響で、あって当然と思われていた“自由”と“安心”が剥奪された。今日すべきことが出来ず、来月には仕事が無くなるかもしれない。そして自分、家族、友人、恋人が無事に2021年を迎えられるかどうかすら危うい、サバイバルムードが世界中で日に日に強まっている。

 生活のために自粛したくても出来ず、上司の決定に従うしかないサービス業や接客業の従事者、4月の収入がゼロになりうるフリーランス、属するカルチャーを守るために身を削って奮闘する人々――生活の困窮や文化の消滅が現実味を帯びた今、若者は何を思うのか。政府やメディアからは「無自覚な行動が〜」と糾弾されるが、はたしてそれは本当なのか?インターネットの価値は発信力にある。今回の天災(はたまた人災)が、仕事とプライベートにどれほどの影響を与え、一連の騒動で何を学び、今後にどう活かすのか。そして、外出自粛の週末は何をしているのか。シンプルな4つの問いを、アンダー30の11人に投げかけた。

Yuki Yagi
1993年生まれ。「モンマルトル ニューヨーク」デザイナー

Q.仕事、プライベートの影響は?

A.住んでるアメリカ・カリフォルニア州は、3月19日から外出禁止令が発令されたため、それから自宅で仕事をしているし、誰とも会っていない。工場は止まり、フィッティングもフェイスタイム(FaceTime)で行ったりと、仕事への影響は大きすぎる。友達も何人か感染し、小学校の友達のお母さんが先週亡くなった。

Q.一連の騒動で何を学び、何を思った?

A.日頃からブランド活動の一環で寄付を行っているが、日々のニュースの中でホームレスシェルターやグループハウジングなどでマスクが足りていないと感じ、ウイルスの脅威から身を守れない生活を送っている人々のために、抗菌マスクを生産し寄付するプロジェクトを「ゴー ファンド ミー(gofundme)」で立ち上げた。※詳細はブランド公式インスタグラム(@montmartrenewyork)にて

Q.先週末、今週末は何をした?

A.毎週末一緒で、家での仕事がメイン。スーパーも行きたいけど、ソーシャル・ディスタンシング(他人と1〜2mの距離をとること)が叫ばれていてもマスクしてない人たちが多いので、アマゾン(Amazon)のサービスでやりくりしている。でも、家にいることで読めていなかった本などを読み返していいリサーチが出来ている面も。

Q.自由に外出できるようになったら何をしたい?

A.遠距離してる嫁と会いたい。あと、同僚や友達とご飯を食べたい。

松嵜翔平
1993年生まれ。俳優

Q.仕事、プライベートの影響は?

A.ディレクションを任されたファッション撮影は、大人数でやる予定だったのでバラしになった。今は違う方法をカメラマンと考えていて、それはそれとして、現状のベストみたいなものが出来上がるんじゃないかなと思ってワクワクしている。一方で、出演中の映画の撮影は一体どうなるのか、不安である。

Q.一連の騒動で何を学び、何を思った?

A.学んだことは……特に浮かばず、そもそも、なんでもかんでも学びにしようっていうのが、あんまり好きじゃない。総括するには、まだ早すぎるのではないだろうか?自分にとって一体なにが大事で、なにが嫌なのかってことは、大きな災害のたびに考えたりするが、“大事そう”とか“大事じゃなさそう”みたいな余白を大切にしていきたいと思って生きている。

Q.先週末、今週末は何をした?

A.午前中に起きて、だらだらと文章を書いたりギターの練習をしたり。部屋の大片付けもした。夜は料理を作って、友達とオンラインで飲み会。

Q.自由に外出できるようになったら何をしたい?

A.終息したら、ライブに行きたい。デートがしたいんだ僕は。

水谷優里
1993年生まれ。ビンテージショップ「ブロンシュ マーケット」オーナー

Q.仕事、プライベートの影響は?

A.海外(主にヨーロッパ)からビンテージを輸入し販売しているため、現地に買い付けに行けなくなり、仕入れも以前までと比べて困難になった。また、実店舗を持たずに移動式という販売方法のため、収益の大半を占めるポップアップ形式での売り上げが取れない厳しい状況。プライベートでも旅行が趣味なので頻繁に旅に出ていたが、当面の予定はキャンセルに。

Q.一連の騒動で何を学び、何を思った?

A.仕事のスタイルにより自信を持てた部分と、改善した方がいい部分が浮き彫りになったので、今後の会社の方針を決める際の指標ができた。また、多くの方が自宅での時間を過ごしていることで、SNSを使って顧客の方々やファンの方たちといつも以上に密接なコミュニケーションを取ることができたし、意見を共有したり、この機会だからこそ距離感を縮められたのが、不幸中の幸い。あとは、国の政治が頼りにならないことに今までで1番イライラした(笑)。でも同時に、国民の責任でもあることを自覚したので、次回から選挙の前はもっと慎重になろうと思った。

Q.先週末、今週末は何をした?

A.自宅の屋上を最大限に利用して、ランチ、読書、洗濯などをした。普段しない場所の掃除なども念入りに行えたし、家がきれいに保たれていつもより心に余裕ができた気がする。もともと毎日料理していたが、時間がある分、手の込んだ料理や見栄えなどにこだわるようになり、料理への意欲もいつも以上に湧いた。今は、自宅で暇を持て余す人たちを楽しませる企画などを考え中。

Q.自由に外出できるようになったら何をしたい?

A.なにも気にせず、両親や友達に会いたい!毎週末のポップアップで顧客やファンの方々と会話している時間がとても大事だったので、早く開催してみんなに会いたい!予定していた旅行に行きたい!

Meiji
1991年生まれ。フリーランス・エディター

Q.仕事、プライベートの影響は?

A.取材や撮影などが半分近くキャンセル。知人のフリーランスからは、1ヶ月で100万円単位で仕事がなくなったとも聞く。また、大切な命を自分のせいで失ってしまう恐怖から、プライベートでは一切友人に会っていない。楽しみにしていた引越しも見送り。あと、腰痛が発生しかけている。俺はウイルスを許さない。

Q.一連の騒動で何を学び、何を思った?

A.政治に対する世論の無意味さ。人間の自己防衛本能。他人を注意できない日本人の性質。どんな大切な情報でも響かない人がいて、無責任な一部の人間が大勢の自由な1日を奪っている、ということ。でも、そんな時でもやっぱり都市伝説はおもしろい。

Q.先週末、今週末は何をした?

A.自宅待機しながら、「どうぶつの森」で町おこし。「ノル(KNOLL)」のポロックチェアを購入(もちろんネットで)。 夜は流行りのオンライン飲み会を実施し、おもしろ動画をシェア。1番笑ったのは、「タイの空飛ぶ空芯菜」。

Q.自由に外出できるようになったら何をしたい?

A.友人や彼女と居酒屋へ。とにかく生ビールが飲みたい。グッドミュージックを聴いて、踊りたい。ウイルスに怯えることなく、自由に生活できる日が1日でも早く帰ってきますように。

Tomoyoshi Nomizo
1990年生まれ。アーキテクト、DJ

Q.仕事、プライベートの影響は?

A.イギリス・ロンドンは、 3月23日の緊急事態宣言をもって、現状で3週間をめどとするロックダウンに突入した。外出が認められるのは、必要最低限の買い物、1日1回のエクササイズ、医療上の必要、真に必要な通勤という目的に限られる。仕事や学校はそれ以前から段階的にリモートへと移行し、街はゴーストタウンになっている。イースターホリデーに予定していた旅行は白紙に。皮肉なことに、ロックダウン以降のロンドンはサマータイムも始まり、好天に恵まれ続け、日光浴したい衝動を抑える狂おしい日々が続いている。

Q.一連の騒動で何を学び、何を思った?

A.自分の今まで享受してきたライフスタイルが、いかに脆弱で、サバイバルに不必要なものであふれ、消費的で持続可能性が低かったかを痛烈に実感させられた。無駄や役に立たないものなどの、人間の生命維持に直接的に必要でないものの価値を否定しているわけではない。それらが成立する世界がいかに自由で豊かであったかを、逆説的に実感させられたということ。国によって対策はさまざまで、このような未曽有の事態にこそ、リーダーや政治家、そしてその裏にあるシステムのクオリティー、柔軟性、寛容性が露呈する。また、あらゆる情報が錯綜しており、個人レベルでも科学的思考をベースにした判断能力の重要性が増していると思う。映画や小説で描かれてきた、人類の危機に立ち向かう人々は、決して部屋にスエット姿のまま引きこもっていなかった。しかし、大多数が出来る新型コロナウイルスへの現状の最善解がそれしかないのは、シュール過ぎて現実がフィクションを超えていると思う。

Q.先週末、今週末は何をした?

A.ピアノで「戦場のメリークリスマス」を75%弾けるようになった。J・ジェイコブス著「アメリカ大都市の死と生」の原文を読破。マイルス・デイヴィスの全てのディスコグラフィーを、年代順にスポティファイ(Spotify)で聴く(未達成) 。お菓子作りにハマる(クッキー、ドーナツ、レアチーズケーキ)。テムズ川沿いを毎日ランニング。ユーチューブ(YouTube)でペンギンの動画を観ていやされる。

Q.自由に外出できるようになったら何をしたい?

A.太陽の降り注ぐ公園でコロナビールを飲む。家族や友人とのディナー。クラブやフェスで汗をかいて踊る。ジムのプールで思いっきり泳ぐ。サウナでメディテーション。ブダペストに行く。ロンドン動物園でペンギンを観ていやされたい。

ギーセン珠理
1996年生まれ。エディター&ライター・アシスタント

Q.仕事、プライベートの影響は?

A.フリーランスということもあり、もともとリモートワークでの作業が多いため仕事面ではさほどの支障はない。普段だったら休日にしか作らない手のかかったコーヒーをたしなんでから仕事にとりかかる毎日。一方のプライベートでは、友達とのご飯の予定はもちろん、生きる希望であった「レインボー ディスコ クラブ(RAINBOW DISCO CLUB)」も中止に……ツラい。

Q.一連の騒動で何を学び、何を思った?

A.日頃から思っている、“当たり前の日常”が結局1番の幸せだということ。大切な人にフラッと会えたり、みんなと1つの空間を共有することが今はただ恋しい!でも、普段だったら飲みに行ってる時間も、今は家にいるからこそ自分と向き合うキッカケになったり、逆にチャンスと考えて行動できるかが大切だなと思った。あとは政治。ここ数週間、この前代未聞の緊急事態に出したとは思えないような政策がポンポン出てきて、「大喜利ですか?」とツッコミすぎて正直疲れてしまった。だけど、これを機に「本当にこの政権に日本を任せて大丈夫なの……?」と政治に興味を持って選挙に行く人が増えるはずなので、ある意味でよかったのかなとも思う。SNSを通して思ったことも何個もあるけど、賢い人とそうでない人の差が顕著に現れていておもしろかった。

Q.先週末、今週末は何をした?

A.なにかと先送りにしていた断捨離を時間をかけてやった。自分が本当に大切だと思うものに囲まれて心が穏やかで幸せになり、家での時間もさらに楽しくなった。最近、ユーチューブの企画・編集も始めたので編集ソフトで遊んでみたり、イラストを描いたりしていると楽しくなってしまい、以前より睡眠時間が少なくなったのも事実。あと、外食に行けない今だからこそできると思い立ち、グリーンスムージーファスティングを5日間やることに。自分と向き合うべき今だからこそ、心も体も内からクレンジングするいいチャンス。

Q.自由に外出できるようになったら何をしたい?

A.公園に行って、裸足でフリスビーをしたり、寝っ転がって太陽を浴びまくったり、足を泥だらけにして伸び伸びと自然とたわむれたい!ディズニーランドにも無性に行きたい。

角田貴広
1991年生まれ。フリーランス・エディター&ライター

Q.仕事、プライベートの影響は?

A.取材がキャンセルになり、出張が取りやめになったり、編集関連の仕事へは影響が出ているが、もともとオンラインでの会議や取材も多かったので、なんの違和感もなく完全テレワークに移行した感じ。毎月ある関西での仕事のついでに実家に帰っていたが、とりあえず当分は帰らない予定で、ゴールデンウィークまでの旅行は全てキャンセル。ただ、もともと家の快適性を追求してきたので、ずっと家にいること自体はまったく苦ではない。

Q.一連の騒動で何を学び、何を思った?

A.ホテルベンチャーで企画・戦略の手伝いをしているが、ホテル市場は大打撃を受けている。これまで当たり前だと思っていた移動が制限されるだけで、いとも簡単に崩れてしまうほど脆い産業構造だったということを痛感している。移動に制限が出るようになったとき、ホテルや旅行はどうあるべきか。それを考え、すでにいろんな施策を始めたり、サービスを作り始めている。否が応でも、業界が無に帰せられたので、僕たちがこれからの時代を作っていくべきだと思っている。

Q.先週末、今週末は何をした?

A.かれこれ10日間くらい、買い物と散歩以外で自宅を出ていない。家でひたすら仕事をして、休んで、読書をして、料理をして、妻と会話をする日々。むしろ健康的な生活。めまぐるしく変化する情勢を見ながら、ホテルをはじめいろんな業界で今できることを考えて、つねに誰かに連絡をして、何かを作っている気がする。すごく生きている感じがする。

Q.自由に外出できるようになったら何をしたい?

A.海外を含めてキャンセルになったいろんな場所へ行きたい。安心な世界で旅に出て、インターネットにはない距離を感じたい。それから、みんなに会いたい。だけど、その日常が今までと全く一緒だとは思えないので、その覚悟を持ちながら、ただ今という日常を生きていたいとポジティブに思う。

Kotsu
1995年生まれ。DJ、グラフィックデザイナー

Q.仕事、プライベートの影響は?

A.DJ出演のキャンセル・延期が20件ほど。仕事とはいえクラビングは生活の一部なので、経済的、精神的に結構キツい(笑)。ただ、今まで放置していた古い雑誌や、ウエブの記事を見直したり、本を読んだり出来るようにはなった。

Q.一連の騒動で何を学び、何を思った?

A.結局バーチャルじゃない現場での時間は大切な時間だったってこと。音楽も聴覚だけじゃない。視覚や肌も含めた全身が包まれるような体験は何にも代えられない。そこで立ち起こる人間関係ですら、愛おしい。あと、音楽だけに関わらず、カルチャーを愛するコミュニティーの連帯力は改めて素晴らしいと思った。対話が大事。

Q.先週末、今週末は何をした?

A.友達や家族と電話。「コンタクト(Contact)」のDJ配信の視聴&ダンス。グラフィックの製作。ツイッターでの情報収集。

Q.自由に外出できるようになったら何をしたい?

A.みんなに直接会って、いつもありがとうと言いたい。

井崎竜太朗
1994年生まれ。フォトグラファー

Q.仕事、プライベートの影響は?

A.ゴールデンウィークに予定していた写真展が中止になった。今までに開催したどの企画よりも大規模で、気合いを入れていた分やりきれない気持ちになった。延期に向けて動いているが、会場の都合で難しいかもしれない。撮影の案件も複数が流れてしまっている。プライベートでは、大学の友人が4月に予定していた結婚式を延期せざるを得なくなった。日が近づいてくるにつれて葛藤する姿を見て、こちらも悔しかった。

Q.一連の騒動で何を学び、何を思った?

A.よりはっきりと、仕事がなければ、お金がなければ生きていけないということ。フリーランスである以上、厳しく捉えていた部分ではあったが、やはり世の現状から訪れる急な展開に動揺してしまう。非常な時でも冷静に分析して、判断できる度量の大切さを知り、屈さずに新しい行動に起こしたい。

Q.先週末、今週末は何をした?

A.オンラインで販売できるプロダクトを企画し始めたので、データを整理したりネットで情報をひたすらインプットした。担当のデザイナーとは電話で打ち合わせをして、今週には製作に入っていく予定。あとは、ワイドショーを見たりDVDで持っている「ハリーポッターシリーズ」を見返すなど。

Q.自由に外出できるようになったら何をしたい?

A.友人に会いたい。10代からの親友たちと、家に集まってボードゲームをしたり、喫茶店に行って他愛もない話をすることが日課で、それが足りない毎日は寂しい。気持ちのいい春の日差しを内から眺めるだけなのがもったいないが、何気なく街中を歩いて、見たり聞いたり、会える毎日を願っている。

未来リナ
1999年生まれ。モデル、ライフスタイルクリエイター

Q.仕事、プライベートの影響は?

A.予定されていた仕事は全て延期になり、打ち合わせなども電話になった。はじめの頃は、楽しみにしていたイベントや企画が中止になったことでショックを受けたが、世界の現状がもっとクリアに見える今、本当に全て延期されて正解だったと安心している。プライベートでの大きな影響は幸いなことにないが、友人の親戚などが何名か亡くなっていて、他人事じゃないという危機感を常に持つようになった。

Q.一連の騒動で何を学び、何を思った?

A.毎日膨大な情報が入ってきて、正直何が本当でどこまでがフェイクなのか、いくら考えてもキリがない。ただ、起こるべくして起きた出来事だと感じている。当たり前が存在しないことに改めて気が付き、関心と感謝の心を持ち直すきっかけになった。いつ何がおきても困らないように、保存食を普段から多めに常備しておくことの大切さも実感した。そして、世界を管理しているシステムや日本の政治・経済について、今よりもっと知識を増やすべきだと思った。

Q.先週末、今週末は何をした?

A.4月5日は、木星と土星が同じ位置に重なり合い宇宙エネルギーが高まる日ということで、コロナをはじめ、さまざまな苦しみを経験している人々・動物・地球全体にいやしパワーを送るための企画「世界同時瞑想」に参加した。何十〜何百万人の世界中の人々が、同時に愛と平和で光に包まれる世界をイメージするのは、とても不思議でパワフルな体験だった。あとは、大好きなお菓子作りや本、洋服の整理もした。

Q.自由に外出できるようになったら何をしたい?

A.できれば、母と兄弟全員で集まって、ゆっくりご飯でも食べながら語り合いたい。それから、海や山にもたくさん行きたい。お気に入りのカフェで、友人とランチをして話すのも楽しみ。毎日の何気ない日常生活がどれだけ幸せなことか、改めて実感できる日を待ち望んでいる。

喜覚崚介
1992年生まれ。「アダンス」デザイナー

Q.仕事、プライベートの影響は?

A.3月27日に自分のブランド「アダンス(ADANS)」の展示会を終えて以降、外出していない。もともと家で仕事してるのでそこまで問題は無いが、新規案件が進められず、売り上げにも影響が出ている。多分、ブランドを立ち上げてから最低の売り上げになりそう。地方の卸先は、今回の影響でオーダーができないところがあったり、展示会に来ていただけないところもあったりした。

Q.一連の騒動で何を学び、何を思った?

A.自営業の人は、こんなときにも国は頼りにならないので、自分の身は自分で守れるように貯えが必要だと感じた。ファッションは贅沢品だが、このような事態だからといって自粛しすぎず、人々にファッションを楽しむ普通の日常を思い出してもらえるきっかけになればと思っている。

Q.先週末、今週末は何をした?

A.ゲームをする。漫画を読む。小学生ぶりに絵の具で絵を描く。子供と遊ぶ。

Q.自由に外出できるようになったら何をしたい?

A.外でビールが飲みたい。

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なぜ彼女たちはドラァグクイーンになったのか? 写真家、ヨシダナギが美しさ、幸せの多様性を映し出す

 通説によるとドラァグクイーン(drag queen)の“drag”とは、“dress as a girl”の略語で、一般的に女装する男性をさす。近年では女性のドラァグクイーンも誕生し、アンダーグラウンドカルチャーという枠を超え、人間の多様性を世界に向けて表現するアイコンになりつつある。ショーでは最前列に座り、ファッションやビューティのキャンペーンにもドラァグクイーンが起用されている。また、ドラァグクイーン界のゴッドマザーと呼ばれるル・ポール・チャールズ(RuPaul Andre Charles)が出演するネットフリックスの番組「AJ & クイーン」も話題だ。

 これまでアフリカ大陸やブラジル・アマゾンをはじめとする世界中の少数民族や先住民族を撮影してきたヨシダナギが、フィルターを通してパリ、ニューヨークのドラァグクイーン18人に迫った作品集「DRAG QUEEN -No Light, No Queen-」(ライツ社)を4月30日に発売する。なぜ、なぜヨシダナギはドラァグクイーンに魅了されたのか?そしてなぜ彼女たちはドラァグクイーンになったのか?

 「実際にニューヨークとパリで出会った彼女たちの立ち姿には、言葉にできない美しさと強烈な存在感がありました。それは少数民族を見たときに感じたのとある種同質であり、複雑な歴史や自負を両肩に背負い受け入れた人間だけが発するものでした」と語る、ヨシダナギが見つめたドラァグクイーンとは。

WWD:少数民族や先住民族を撮り続けてきたヨシダさんがドラァグクイーンを撮影しようとしたきっかは?

ヨシダナギ(以下、ヨシダ):たまたま興味が湧いたアフリカ人を追いかけていたら、フォトグラファーとして5年が経っていた頃、周りからはそろそろ少数民族の写真以外も見てみたいと言われていました。ただ、彼ら以外に取りたいと切望する被写体がなく、モヤモヤしていました。そんなとき、広大なオーストラリア大陸を舞台に、3人のドラァグクイーンが旅をするロードムービー「プリシラ(The Adventures of Priscilla, Queen of the Desert)」を観て、なんてカッコいいんだろうと思ったんです。それからしばらく経ってふと、「ドラァグクイーンを撮りたい!」と思い立ちました。

WWD:具体的にはどういったところに魅了された?

ヨシダ:見た目だけではないカッコよさ、立ち姿が魅力的でした。生きざま、信念が刻み込まれている。人としての誇り、自信からくる迫力が美しい。それは立ち姿から匂い立つようで、少数民族や先住民族にも共通するものでした。外見だけではなく、人間としてのカッコよさです。

WWD:実際に彼女たちに会って感じたことは?

ヨシダ:私が思っていた以上に壮絶な人生を送っています。でも挫折を繰り返せば繰り返すほど美しくなる。傷ついたからこそ優しいし、気遣いもできる。普段人見知りの私でも、スムーズに撮影できました。彼女たちは朝が苦手なのでドタキャンもありましたが(笑)。ニューヨークは昨年2月、パリは昨年6月に撮影しました。

WWD :「少数民族を見たときに感じたのと、ある種同質である」とコメントしていたが、それはどういうことか?

ヨシダ:両者とも自由であるということ。そして自分を受け入れている。それは自分が育った国や民族の苦難の歴史を含めて。

WWD:それぞれ事情は異なると思うが、なぜ彼女たちはドラァグクイーンになったのか?

ヨシダ:この世の中に存在しているカテゴリー、枠は小さすぎる、決めつけられたくない――自己の表現として、自由になりたかったんだなと思います。性別も男でもない、女でもない、それが私。全てにおいて自由になりたかった。彼女たちと話して分かったのですが、とくにパリのドラァグクイーンは女の子にはなりたくない。ちやほやされるときだけ女子でよい(笑)。トランスジェンダーというよりは、ゲイの人が多くて9割。ストレートの女性もいます。ドラァグクイーン自体が自由で“ルールがないことがルール”。もともとカテゴリーを嫌うので、女性でも「やりたいならやれば?」という流れがここ10年くらいでできたようです。

WWD:撮影するドラァグクイーンをどのようにして選んだ?

ヨシダ:インスタグラムで地道に探しました。予算にはまるのが3~4万のフォロワー数を持つ人たちです。万国共通で、遅刻したり突然キャンセルしたりするため(笑)、多めに交渉しました。ニューヨークやラスベガスのショービズ界で活躍しているドラァグクイーンはギャラがケタ違いなので。

WWD::ドラァグクイーンから学んだことは?

ヨシダ:人間くさくて傷つきやすく、くじけつつも強くてたくましい。将来の自分に対してモヤモヤしている日本人に、彼女たちの生き方は学ぶところがあります。私たちはつい知らないうちに自分で限界をつくり、自分に当てはまるようなカテゴリーを探している。彼女たちは、「自分たちはどこにも所属しない」ということを身をもって表現しているので、説得力があります。私自身も時に「自分は何やっているんだろう?」思うことがあったのですが、自分は自分のままでいいんだと背中を押されたような感じでした。彼女たちは強さとユーモアで苦難を乗り超えていると実感しました。

WWD::撮影において、これまでと異なることは?

ヨシダ:少数民族を撮影するときは朝の逆光を狙い、大自然で撮影することで彼らのオーラを映し出していましたが、ドラァグクイーンは朝が弱く(笑)、そして基本屋内の撮影だったため、その写真がヨシダナギの作品として見えるのか?ヨシダじゃなくてもいいのでは?という不安もありました。でも撮影を通して「あなたはあなたでいいのよ」というメッセージを受け取ったことで、肯定できました。「自己流でよい。これが私の撮り方なんだ」と。ただ、どんな撮影においても、実物よりも劣化することは許されない。素敵な一瞬を切り抜くこと。そしてその人がすごく美しくカッコよく見えること。これは、私が撮影の際に常に心に留めていることです。

余談ですが、肉体感を演出するためにスポンジを入れたり、お尻を大きく見せたりして工夫しているところはまさにDIYだと思いました。ある意味、存在感で女性を超えなきゃいけない。まさにトランスフォーマーですね。「パリはオートクチュール文化だから衣裳は自分で作るの」と話すドラァグクイーンもいました。

WWD:彼女たちが背中を押してくれたと。

ヨシダ:「迷惑をかけなければ、何をやってもいい。あなたのドラマを生きなきゃ」と。素直でまっすぐ、そして愛情深い。「あなたもかわいいわね、でも私の方がもっとかわいいけど」と返してきますが(笑)。彼女たちは愛の詰まった人たちです。“ファンタジー” “ドラマ(タバコを持つだけでドラマが生まれる)” “イリュージョン”、これらがよく会話の中で出てきた言葉です。

WWD::表紙について聞きたい。

ヨシダ:どうしても撮影したかったパリのコリーヌに何度もアプローチをして、ようやくOKをもらえました。20年以上キャバレーで演じているのですが、「でもドラァグクイーンの一員よ」と。分かりやすい装飾性のある華やかさではないのですが、カッコいいんです。

作品集のタイトルにもなっている“No Light, No Queen”は、ニューヨークのドラァグクイーンが言った「私、照明がないと化けものだから」とユーモアで言ったことにピンときてコレだ!と思いました(笑)。光に照らされて華やかに立つドラァグクイーンたち、これからステージが始まるかのような表紙にしました。

WWD:最後にドラァグクイーンとはどういう存在だと思うか?

ヨシダ:今回18人を撮影しましたが18人の“自由の女神”だと思いましたね。「自由になろう、個性を認めよう」ということ。自分の美しさの物差しに当てはめず、自分と違うことは受け入れる。それがドラァグクイーン。そして自分が美しいと思うものを愛せればいいんじゃない?その姿勢が美しいということです。

【お知らせ】東京・西武渋谷店の催事場で4月21日から5月10日まで、個展「DRAG QUEEN -No Light, No Queen- photo by nagi yoshida」を開催予定。(※なお、新型コロナウイルスの影響により、延期・中止・変更・入場制限の可能性があります。ヨシダナギ公式HPや各会場の随時ウェブサイトを参照ください)

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「社長セクハラ査問会」の真相 連載ストライプ・ショック(1)

 「再調査を行う予定はない」――。ストライプインターナショナルの石川康晴氏のセクハラ報道による辞任を受けて3月6日付で就任した立花隆央社長は31日、WWDジャパンの取材申し込みに書面で回答。「一連のセクハラ報道に対して第三者などによる調査を行う予定はあるか」との質問に対して、冒頭のように答えた。2018年12月に行われた査問会ですでに結論が出ており、それを尊重するという主張だ。

 石川氏を辞任に追い込んだ「朝日新聞」や「週刊新潮」の報道内容について、ストライプはいまだに公式には認めていない。報道されたLINEによる食事やホテルへの誘いに関して、査問会では「従業員とのコミュニケーションの距離感が近すぎる」という理由で厳重注意した。それが現時点での同社の公式見解だ。石川氏の辞任もあくまでセクハラ報道による混乱の責任を取ったという理屈である。

厳重注意「二度とあってはならない」

 だが関係者の証言を集めると、「距離感が近すぎる」では済まされない実情が浮き彫りになる。

 18年12月の査問会で石川氏のセクハラとして報告されたのは、15年から18年にかけての4つの事案だった。地方の店舗で働く女性スタッフをしつこく食事やホテルに誘うLINEでのやりとり。ホテルの部屋に呼ばれて性行為を強要されたという生々しい証言。査問会で証拠を突きつけられた石川氏は性行為に関しては否認したが、何度も食事に誘ったり、ホテルの部屋に呼び寄せたことは事実だと認めた。

 査問会で下された処分は「厳重注意」だった。同社の役員規定では、査問会での処分内容は解職、降格、謹慎の3つのいずれかになる。しかし、オーナー社長である石川氏が解職や降格になれば、セクハラの事実が世間に知られ、4000人近い従業員が働く会社の存続自体が危うくなる。査問会は役員規定に基づく処分ではなく、いわば“政治決着”を選んだことになる。

 査問会の後の役員への報告の場で、社外取締役の一人は石川氏に猛省を促した。

 「石川さんは創業者かつオーナーであり、グループ経営をけん引する存在。(今後の会社にとって)一番大事なのはこれからも企業価値を長期的に伸ばしていくこと。今回の件で(役員規定通りに)解職、降格、謹慎を適用するのは難しい。厳重注意とするが、処分を非常に重く受け止めてほしい」「被害を受けた女性社員個人の問題にとどまらず、社内に知られれば女性社員のモチベーションが著しく下がる」「万が一、外に漏れれば、石川さん個人の評判だけでなく、会社が生き残れなくなる深刻な事態になる。絶対に二度とあってはならない」。

 この言葉を受けて、石川氏は「事実を認めて処分を受け入れる」「軽率な行動でたいへん申し訳ない」と述べた。

 査問会から1年3カ月後、社外取締役が恐れていた「万が一」が現実になった。査問会の事案がメディアに流れて、日本中がファッション業界のカリスマ経営者の不祥事を知ることになる。

「コロナ騒動による風化を考えているのでは」

 同社は3月31日付でハラスメントの防止策を発表した。コンプライアンス違反事項についてのアンケートを5月から毎月行い、それを踏まえて弁護士による研修を毎月実施する。従来から設けていた外部弁護士事務所への通報窓口の存在を従業員に周知する。また第三者を含めた監督機関を設置し、社外の有識者や社内の女性スタッフを参画させる。

 従業員が安心して働けるような再発防止策が必要であることは言うまでもない。だが同時に、当事者である石川氏によるセクハラの事実関係とそれを許してしまった組織風土を検証するのが常道だろう。そうでなければ、従業員と会社との信頼関係は保てない。

 東京本部勤務の箱崎薫さん(仮名)は、経営側の一連の対応に疑問を持っている。「(3月4日の報道後も同6日の石川氏辞任後も)社内はまるで何事もなかったような雰囲気でいつも通りに仕事をしていた。経営陣から社員向けのメッセージがようやく届いたのは3月23日。立花社長の名前で出された一斉メールだった。そこには石川さんに関する説明は一切なく、今後『取締役や管理職について問題があれば、直接、私(立花社長)に相談してください』と書かれていた。世の中が新型コロナで大騒ぎになっているうちに、いずれセクハラのことは風化すると考えているのではないか」と不信感を募らせる。

 石川氏の社長辞任から1カ月。「アース ミュージック&エコロジー(EATH MUSIC&ECOLOGY)」など知名度の高いブランドを展開し、学生の就職人気ランキングでも上位だった企業の不祥事は世に衝撃を与えた。石川氏の暴走を許した組織風土の問題点はどこにあったのか。前代未聞の危機を乗り越えて、同社は信頼を取り戻せるのか。関係者の証言から追う。

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小島健輔リポート 訪日客の消失を超えて アウトレットモール再拡大の条件

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。今回はアウトレットモールについて。新型コロナウイルスの影に隠れてしまっているが、4月は大手アウトレットモールの再開業や増床が控えている。

 4月10日に三井アウトレットパーク横浜ベイサイド(神奈川県)が倍に拡張して再開業し、16日には御殿場プレミアムアウトレット(静岡県)が第4期増床で国内最大の6万1000平方メートルになる。三井不動産のアウトレットパーク13施設、三菱地所・サイモンのプレミアム・アウトレット9施設に加え、後発のイオンモールもレイクタウンアウトレット(埼玉県)、ジ・アウトレット広島(広島県)に続き22年にはジ・アウトレット八幡東(福岡県)を開業する。新型コロナウイルスの世界的パンデミックでインバウンド売り上げが消失する中、日本のアウトレットモールはどうすれば再成長に転ずるのだろうか。

アウトレットモールの
売り上げは頭打ち

 19年11月のグランベリーパーク南町田(東京都)、20年4月の三井アウトレットパーク横浜ベイサイド(神奈川県)の再開業で日本のアウトレットモールは36施設から38施設に戻った。12年の三井アウトレットパーク木更津(千葉県)の開業で36施設、13年の酒々井プレミアム・アウトレットの開業で37施設、15年の三井アウトレットパーク北陸小矢部(富山県)の開業で38施設まで増えたが、17年2月のグランベリーモール(東京都)の閉鎖、18年4月の大洗リゾートアウトレット(茨城県)の通常 SCへの転換とジ・アウトレット広島の開業で37施設に減り、18年9月の三井アウトレットパーク横浜ベイサイドの閉店で36施設に減っていた。

 国内アウトレットモールは三井不動産のアウトレットパーク、三菱地所・サイモンのプレミアム・アウトレット、軽井沢プリンスショッピングプラザ(長野県)など売り上げを公表している23施設以外に、イオンモールのレイクタウンアウトレットとジ・アウトレット広島、沖縄アウトレットモールあしびな〜(沖縄県)、那須ガーデンアウトレット(栃木県)、千歳アウトレットモール・レラ(北海道)など売り上げ非公開の施設、マリノアシティ福岡(福岡県)や岸和田カンカンベイサイドモール(大阪府)、グランベリーパーク南町田やイオン系アウトレットなど通常SCとのハイブリッド型もある。全施設の売り上げを推計するのは限界があるが、三井不動産のアウトレットパークと三菱地所・サイモンのプレミアム・アウトレット、軽井沢プリンスショッピングプラザまででアウトレットモール総売り上げの88%を占めるから大勢は読める。

 アウトレットモールの販売効率はブランドの集積度に比例するから、大規模増床を繰り返す大手の大型施設に売り上げが集中する一方で、ブランド集積が限られる小規模施設は売り上げが減少しており、大手3社(三井不動産、三菱地所・サイモン、軽井沢プリンス)の占拠率は年々上昇している。これに現状では2施設220億円ほどと見られるイオンモールが八幡東の開業で第三勢力となるか注目されるところだ。

 19年の国内アウトレットモール合計売り上げ(上位26施設計、一部は推計)はマリノアシティの通常部分まで含めて18年比で2.6%増の7830億円。その他の小規模施設まで含め8280億円と推計される。20年はグランベリーパーク南町田(アウトレット部分のみ)が加わるが、2月以降のインバウンド売り上げ急減がそれまでの売り上げ増も相殺し、よくても19年並みと推計したい。

 21年は三井アウトレットパーク横浜ベイサイドの再開業、御殿場プレミアムアウトレットの増床が通年で寄与するが、21年7月に延期されたオリンピックは9割近くを占める大手施設の3月期決算には寄与しないから、19年の水準には届かない。結局のところ17年以降は頭打ちで、延期されたオリンピックが大手施設の売り上げに寄与し、ジ・アウトレット八幡東が開業する22年まで、合計売り上げの拡大は望めそうもない。

※マリノアシティ福岡は10月期、他は 3月期決算集計

地方はブランド難民需要が大きい

 インバウンド売り上げは消失しても、地方では百貨店やファッションビルなど名の知れたブランドをそろえる通常の商業施設が次々と閉店しており、ブランド難民が急増している。大沼が破綻した山形県に続いてそごうが閉店する徳島県も百貨店がない県になるなど地方に限ったことではなく、千葉県では16年9月のそごう柏店から18年3月の伊勢丹松戸店まで、わずか1年半で4店も閉店し、7店あった県内の百貨店が3店に減っている。

 99年のピーク時には331店もあった百貨店もリーマンショック以降は閉店が加速。2019年も伊勢丹の府中店と相模原店など9店が閉店して212店まで減り、今年に入っては2月の大沼破たんに続き、3月に三越の新潟店、東急の東横店が閉店し、8月末には西武の大津店、岡崎店、そごうの徳島店、西神店の閉店も決まっている。パンデミックによる売り上げ急減も加わって閉店する店舗がさらに増え、年内には200店舗を割り込むかもしれない。

 そんな事情で急増するブランド難民の受け皿となっているのがECとアウトレットモールだが、既知のブランドやデザインはともかく、着たことがないブランドや新デザインは一度、見て触って袖を通してみないと分からない。地方や郊外では多数のブランドをそろえた商業施設はもはやアウトレットモールしかなく、百貨店やファッションビルの代わりを立派に務めている。

 都会暮らしのファッショニスタならともかく、地方や郊外に住む大多数の人々にとって今シーズンのトレンドを追う必要はさらさらなく、前シーズンのキャリー品(シーズンを過ぎた在庫品)でもなんら困ることはない。周囲の人も去年の商品か今年の商品か分かる人など皆無だろうから、ブランド品はアウトレットで十分なのだ。

 高額なラグジュアリーブランドはともかく、百貨店や駅ビルで売られているブランドが値引き販売されるなら、外国人観光客が途絶えても国内の消費者が買ってくれる。百貨店などブランドをプロパー販売する商業施設が次々に消えていく地方や郊外ではアウトレットモールの需要は根強く、むしろネックとなるのはテナントと商品の不足だ。

店舗スタッフを確保できない

 テナント不足の原因は二つ。一つは商品が安定調達できず、店舗の運営固定費をカバーできないリスクがあること。一つは都市圏から離れたローカル立地では販売に従事するスタッフが集まらないことだ。

 前者については後述するが、後者については具体的な手を打って店舗スタッフを集めない限り、開店に漕ぎ着けることができない。若者が都市に出てしまって高齢化と過疎化が進むローカルでは、よほど人気のあるリゾート地でもない限り、販売職に就くような若者は集まらないし、運転免許と車がないと通勤さえ難しい。軽井沢でさえ現地採用が難しく、寮を用意して都市圏のスタッフを配転しないと必要人員がそろわないのだから、他は推して知るべしだろう。

 立地によってはモールを開発するデベロッパーが人材派遣会社や運営代行会社と契約してテナントの運営人員確保を支援するしかなく、従業員の生活施設も確保する必要がある。若者が車を所有しなくなり(経済的にできなくなり)、運転免許さえ持たなくなった昨今、免許と車がないと通勤できない立地はアウトレットモールに限らずスタッフ集めに苦労する。遠からずお客も免許と車を持たなくなり、公共交通機関のない商業施設には来られなくなる日が迫っているが、アウトレットモールは先んじてそんな時代を体験させてくれる。

突破口は
専用企画商品と
オフプライスストア

 供給量の過半が売れ残る(19年は52%が残った)わが国アパレル業界の実情では、アウトレット店への商品供給は潤沢に思えるかもしれないが、価格帯や販売チャネルによっては供給が限られるし、そもそも安定して供給される性格のものではない。

 グローバルなハイブランドなど、価格もイメージも高いブランドほど販売チャネルを絞り受注生産に徹しているから、ファミリーセール後のバラ残品ぐらいしか残らない。数年前のキャリー品など、さすがに魅力的とは言い難いものまでかき集めても、アウトレット店の品ぞろえを維持できないことが多い。ゆえに店舗を増やすことができず、目玉ブランドがそろわないアウトレットモールも増やせないことになる。

 百貨店や駅ビル、ファッションビルなどに多数の売場を展開するナショナルブランド(国内で知名度がある)はシーズンに半年前後も先行した見込み生産が大半で、多店舗間の在庫の偏在もあって期末セール後も一定の在庫が残る。昨年のヒアリング調査では、SPA型の小売チェーンで6〜9%、直営店展開のアパレルメーカーで11〜16%程度が残り、紳士服では20%以上残るケースもあった。

 量販店や衣料スーパーで売られるローカルブランドとなると、販売消化に応じた分納など発注数量が曖昧な取引が多く未引き取り在庫が頻発するが、知名度がないからアウトレットモールの商品とはならない(「タカハシ」などプライスライン訴求型オフプライスストア向き)。

 ナショナルブランドの供給は一定量が期待できるにしても常時、潤沢に売れ残るわけではなく、シーズンやアイテムによっては供給が途絶えることもある。アウトレット店とて店舗を構えれば相応の固定費がかかるから、売り上げがない時期があると採算が苦しくなる。とはいえアウトレット店の出店を控えると売れ残り品が増えたときは処分に窮するから、アウトレット店専用企画商品で供給不足を補うことになる。

 実際、アウトレット店の品ぞろえのうち専用企画商品がどの程度を占めているかだが、米国系某大手カジュアルSPAでは98%、米国系某著名バッグブランドでは80%以上といわれる。専用企画商品のタグや襟ネームには認識マークがついているから容易に識別できるし、二重価格表示になっていないので顧客も識別できるが、店頭で見る限り上記の比率に近い。

 国内のアパレルブランドでもアウトレット店を増やすほど専用企画商品の比率も高まる傾向があり、当社(小島ファッションマーケティング)のクライアント平均でも17年は13.3%だった専用企画商品が18年には20.2%に増え、19年はそれにアウトレット用仕入れ商品(他社の放出品)がわずかながら加わった。他社の商品を仕入れたのは小売チェーンに限られ、その比率も4.3%とまだ限られるが、アウトレットストアがオフプライスストアの性格も併せ持ち始めていることは注目される。

 それはアパレルメーカーのオフプライスストアにも言えることで、ワールドの「アンドブリッジ」の品ぞろえの3割強はワールドのアウトレット品が占めている。アウトレットストアは自社商品の処分、オフプライスストアは他社仕入れ商品の値引き販売と性格が異なるが、供給の不安定な売れ残り品や過剰在庫を安定して調達しようとすれば、互いに品ぞろえを補うのが合理的だ。

 前述したように地方や郊外ではアウトレットモールが百貨店や駅ビル、ファッションビルの代わりを務めており、値引き販売だけが魅力というわけではない。むしろ、好みのブランドや季節にあったアイテムがそろうことが重要で、潤沢な品ぞろえの中から欲しい商品が選択でき、かつ大幅な値引き価格で購入できることが望ましい。ならば、アウトレットストアもオフプライスストアも一堂にそろっていた方が便利ということになる。

 それこそがテナント不足で開発が限られるアウトレットモールの突破口になる。実際、欧米では両者をミックスしたアウトレットモールや、オフプライスストア主体にアウトレットストアも交じるパワーセンターが、立地を分けて値引き購入ニーズに応えている。

オフプライスストアの
取り込みが必須

 わが国のアウトレットモールは小規模施設やハイブリッド施設まで合わせて38で頭打ちで、そのうちグローバルブランドまでそろう人気モールは15足らず、国内ブランド中心のモールまで加えても2ダース余りで伸び悩みは否めないが、日本ショッピングセンター協会刊行の「2019SC白書」によれば、米国では10年の326施設から18年には394施設(平均総賃貸面積2万1777平方メートル)に増え、欧州でも248施設(うちEU内187、平均総賃貸面積1万9048平方メートル)まで増えている。加えて、米国ではパワーセンターが2288施設(平均総賃貸面積4万1071平方メートル)、欧州では米国のパワーセンターに相当するリテールパークが2325施設(うちEU内2307、平均総賃貸面積1万5570平方メートル)もある。

 アウトレットモールは大都市圏から一定距離離れたリゾートやローカルにあって日常のブランド消費には対応できないが、ディスカウントストアやホームセンターなどを核にオフプライスストアやアウトレットストアがそろうパワーセンターは生活圏にあって日常のブランド消費に対応している。パワーセンターにあるアウトレットストアは大衆的なナショナルブランドやSPAがほとんどだが、ハイブランドの売れ残りもそろう百貨店のオフプライスストア(自社商品の売れ残り主体のハイブリッド型)もあり、バラエティに富んでいる。消費者も両者をうまく使い分けているようだ。

 わが国でもようやくオフプライスストアの多店化が始まったが、グローバルなハイブランドもそろう大商圏型はアウトレットモールに、ナショナルブランドがそろう中商圏型は大衆ブランドのアウトレットストアとともに広域生活圏型パワーセンターに、ローカルブランドが絶対低価格でそろう小商圏型は近隣生活圏型パワーセンターに、といった棲み分けになっていく。

 アウトレットモールも大商圏型オフプライスストア(1500〜3000平方メートルと大型で、核店舗になる)を取り込めばブランドと品ぞろえのバラエティーが広がり、施設の新規開発も進んで、再び成長サイクルに転ずると期待される。逆にいうなら、大商圏型オフプライスストアの離陸こそ、わが国のアウトレットモールが再拡大に転ずる必須条件なのではないか。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

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同世代は何してる? アパレル企業で働く若手社員たち 第1回ジーユー編

 「WWDジャパン」4月6日号は毎年恒例の新入社員向け特集だ。今年はファッション基礎知識や業界マップだけでなく、アパレル企業で実際に活躍する若手社員にもフォーカス。人気SPAから総合アパレル、最大手ECまで全8社の若手を取材し、彼・彼女たちのリアルな仕事ぶりに迫った。ウェブではその一部を連載形式で掲載する。第1回はジーユー編をお届け。

 ジーユー入社4年目の松嶌晃輔さんは、新卒採用を担当する人事部の若手ホープだ。新卒採用企画の立案から企業説明会の運営、面接まで採用活動の全行程に携わる。毎年決められた採用フローをこなすのではなく「どの時期にどんな企画を催すか。企業の何をアピールすれば学生に興味を持ってもらえるか。そもそもどの採用プラットフォームを使うのが一番有効かを考え、行動しなければいけません。前年踏襲は通用しません」。

 業務の中で最もやりがいを感じるのは「説明会や面接で学生と交流し、企業に振り向いてもらう瞬間」だ。ジーユーに興味を持っていなかった学生が、僕の企業説明を聞いて目の色を変えて『ジーユーってすごいんですね!』と言ってもらえるときは本当にうれしい。新卒入社は人生において最も大きな選択の一つで、一人の人生にこれほど影響を及ぼす職種はほかにありません。それだけ責任も大きいですが、やりがいは格別です」。

 採用は企業とマッチする優秀な人材を獲得することが至上命題だが、中でも社会人未経験の学生をターゲットとする新卒採用は、より細やかなサポートが必要となる。松嶌さんは持ち前のコミュニケーション能力の高さと心配りでその期待に応える。「面接や説明会では学生に熱心に話を聞いてもらえますが、それに甘えるとつい言葉選びがおろそかになったり、態度がフランクになったりしてしまいます。それでは採用担当として失格ですし、企業の本当の魅力も伝わりません。僕は常に上司が隣に座っていると想定して業務に励んでいます」。

 松嶌さんは2018年2月から約1年半、店舗スタッフや店長職を務めたのち、自ら人事部配属を希望して現職に至った。人事部は決して人気の職種ではなく、縁の下の力持ち的なイメージがあるが、松嶌さんは「採用担当は企業の魅力を発信するフロントパーソン。企業が好きであればあるほど向いているし、僕はジーユーが大好きだからこの職種はぴったりなんです。1mmも後悔していません」と胸を張る。

 新卒採用活動の傍ら、全国の「ジーユー」店舗で働く学生スタッフのモチベーション向上を目的としたセミナー運営も担当する。昨年8月の同部への配属後、すぐに同イベントを請け負うことになり、何から手をつけていいのか分からなかったが「勉強会によってエンゲージメントが高まり、横のつながりも生まれてバイトが面白くなってほしいという一心でコンテンツを考案しています」。学生スタッフはアイテムや店舗オペレーションには詳しいが、ジーユーという会社がどんなメッセージを掲げ、どんな取り組みを行っているのかは知らない人が多い。これを受けて、「プレゼンや座談会でそれらを伝えるとともに、学生たちの仕事がどんな役に立っているのかを明確にすることでモチベートしています」。勉強会に参加した学生スタッフの中には、ジーユーで社員として働くことに魅力を覚えて新卒採用にチャレンジする人も多い。

学生時代はほぼ毎日スエット
「アパレルには興味が無かった」

 学生時代は「365日のうち360日はスエットで過ごしていた」と話すほどアパレルに興味がなかった松嶌さん。就職先としてもアパレル業界は全く考えていなかった。しかし、「世界一を目指す企業に勤めたい」という思いと「セカンドキャリアで通用する圧倒的な自己成長を実現したい」との2つの軸から同社に入社した「。本当はユニクロの説明会に参加するつもりだったんですが、直前に申し込んだので、ジーユーしか空きがありませんでした(笑)。でも、そこで出会った採用担当者の言葉に僕自身も人生を変えられました。『ジーユーはユニクロという最強の後ろ盾があり、それを利用して成長している。いわば、反則技を使っているようなものだ』と楽しそうに話していたんです。普通は学生にそんなことを話さないから、“この人は心から仕事を楽しんでいる。ジーユーってすごい会社かも”と直感しました」。

 圧倒的な自己成長を軸に据える松嶌さんの当面の目標は、「36歳でアメリカ事業のCEOになる」こと。「入社当初から公言しています。ジーユーの要職最年少記録は37歳で海外事業のトップだと耳にし、その記録を塗り替えたいんです。まずは目の前の業務に真摯に打ち込み、その後複数の部署を経験してスキルを圧倒的に磨き、この目標を達成します」。

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「バレンシアガ」に矛盾を感じ、「ロエベ」は「まばたきが惜しい」ほど感動 辛口な海外メディアのパリコレ評

 2020-21秋冬パリ・コレクションは特殊なシーズンだった。新型コロナウイルスの影響で中国をはじめアジアからの来場者の欠席に加え、展示会やイベント行事のキャンセルなどが相次いだ。それでもショー会場は混雑していたが、ショールームや街中は明らかに活気がなかった。目に見えぬ得体の知れない魔物のようなウイルスによって漠然とした不安が募り、人々の心とパリの街に暗い影が落ちる幕引きとなった。この世界に再び虹は架かるのだろうか?悲しみの裏にどんな喜びがあるのだろうか?自分の中に湧き上がるネガティブな感情と折り合いをつけることができない9日間であった。でもこんなときこそファッションは、どんな物事にも明るい側面があることを、苦しみの果てに希望があることを提示してくれる。多くのデザイナーが衣服を通じて明るい未来を示そうと試みたコレクションに対し、各国ジャーナリストは前向きに、時に辛らつに講評した。

DIOR
「服には不満」
「時代の精神を反映している」

 現代にはびこる問題は新型コロナウイルスだけではない。性差別と闘うフェミニストを象徴する、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)による「ディオール(DIOR)」のショーは、チュイルリー公園に設営したテント内で開催された。ショー前日の2月24日(アメリカ現地時間)、女性に対する性的暴行などで起訴されたハリウッドの大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン(Harvey Weinstein)に性暴力の有罪判決が下されるタイミングが重なって、キウリと#MeToo支持者は沸き立っていたようだ。多くの現代女性の気持ちを代弁する彼女に対し、仏ウェブメディア「ファッション・ネットワーク(FASHION NETWORK)」のゴドフリー・ディーニー(Godfrey Deeny)は「商業的で過去一番の出来とは言えないものの、時代の精神を反映した良いショー」だと評価した。対して、米新聞「ニューヨーク・タイムズ(THE NEW YORK TIMENS)」のヴァネッサ・フリードマン(Vanessa Friedman)は、「訴求は確信をついていたが、服には不満が残る。(衣服にプリントされるフェミニズムを訴える)言葉を書き換えただけで、ファッションにおいて女性エンパワーメントとは何かという問題意識を拡大してはいない。このタイミングにおいて、非常に大きな大きな一歩を逃した」とつづった。物足りなさを訴える女性のフリードマンと、出来を評価した男性のディーニーの間にある見解のズレは、社会の性差の問題がいまだ根深いことを示しているようである。

 「ヴォーグ(VOGUE)」のスージー・メンケス(Suzy Menkes)はキウリの声明を称えつつ「頭の良い若い女性を喜ばせる明確なコレクションではあったが、キウリ自身が何を感じ、何を伝えたいのかが曖昧だった」とコメント。同じく、米新聞「ワシントン ポスト(THE WASHINGTON POST)」の辛口批評家ロビン・ジバン(Robin Givhan)もこうつづる。「フェミニストの声を増幅しているが、キウリ自身の声は雲がかったままだ。社会が拒絶する、若者とは呼べない結婚適齢期を超えた女性たちの声には耳を貸さない。彼女たちこそ、高い目利きを持つ社会の征服者であるにもかかわらずだ」。今季の「ディオール」は性別や年代によって評価が分かれるコレクションであったが、フェミニズムの訴えかけには十分な影響力を持っている印象を受けた。

BALENCIAGA
「悲痛な光景」
「希望に満ちていた」

 「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は気候変動という深刻な問題を提起した。水を張った黒い湖がランウエイとなり、天井のスクリーンには雷や嵐の空模様が映し出された。強迫的で強烈な印象を与えたショーを、多くのジャーナリストは「アポカリプス(黙示録)」と表現した。これはキリスト教において、文明が退廃した後の終末的な世界観を表す言葉である。いくつかのメディアの取材に対してデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)は、「創設者クリストバル・バレンシアガ(Christobal Balenciaga)が教会に行くときに着用していた宗教服から着想を得た」と説明している。メール取材を行ったティム・ブランクス(Tim Blanks)は「ビジネス・オブ・ファッション(BUSINESS OF FASHION)」の記事でデムナの興味深い回答を記している。「ファッションはある種の宗教だと思う。宗教のように、なぜそうするのかという疑問は持たない。ただ気持ちが落ち着くからそうするのだ。(中略)世界は自らが招いた“脱工業化”による冠水で苦しんでいる。私は、人々がこの問題を一蹴した世界を隠喩的につくりたかった。水の上を歩くイエスを見た弟子たちが自身の目を疑ったように、いったい何が現実で何が幻想なのか、何を信じるべきで何を信じてはいけないのか、という問題を投げかけることを試みた。それらを美しく魅力的で、特殊なドラマのように仕上げたかった。だから会場を水で満たし、モデルをあちこちに歩かせた。魔法と危険が一緒になって、ワルツを奏でるといったアイデアだ」。

 各メディアは今季のショーを高く評価した。仏新聞「ル・モンド(LE MONDE)」紙のエルヴィール・フォン・バルドレーベン(Elvire von Bardeleben)は「終末的ではあったが、地球の美しさを映し出した映像とフィナーレのBGMが不安感を取り除き、希望に満ちていた」とコメント。辛口のジバンも「不安定な世界の真実と人間の内側の闇を見せてくれた。デムナは美しい死をもたらす代わりに、呼吸し続ける理由を与えてくれた」とつづった。一方で、厳しい見解を示すジャーナリストや世間の声もあったようだ。「ロブ(L’OBS)」のソフィー・フォンタネル(Sophie Fontanel)は感傷的になっていた。「(ショーは)悲痛な光景だった。なぜなら水没した光景は、ファッションがもたらした現実だから。ファッションは地位や虚栄への大きな関心によって世界を揺るがすもの。私がインスタグラムに投稿した動画に対して何人かは『(ショーで使用した水や物資の)無駄づかい』と言い、何人かは『素敵』と即座に反応した」。メンケスも、ショーの強いメッセージを受け取ったうえで、冷静な意見を述べた。「ショーは想像力と創造力の両方を感じさせる素晴らしいものだった。しかし、母なる地球に対するデムナの真の関心が、ランウエイに登場した100以上の衣服とどのように和解できるのかという疑問が残った(床の水を無駄なく排水する方法については言うまでもなく)。おそらく、環境問題に敏感なケリング(KERING)は、このショーの演出について塾考したのだろう。ともあれ、クリエティブに携わる人々はたとえ現代の環境問題を意識しても、高品質で高価な衣服を製造する義務があるという事実も存在する」。ファッションは消費を促す業界であるため、環境問題について語れば語るほど、矛盾と偽善的な行為が浮き彫りになるような気がした。「バレンシアガ」は、2030年までに飢餓を撲滅する国連世界食糧計画(THE WORLD FOOD PROGRAMME)の取り組みを支援するため、パートナーシップを18年から結んでいる。約15分のショーのために大量の水を使い、同コレクションの売り上げが上がり、命をつなぐために水を必要とする人々へ食糧が十分に届くことを願うばかりだ。

ALEXANDER McQUEEN
「魔法のように美しい詩」
「夢の消耗品にはならない服」

 政治や宗教、格差といったさまざまな問題が複雑に絡み合う欧州連合離脱(通称ブレグジット)がついに実現し、移行期間へと入った。ハリー王子とメーガン妃の王室離脱騒動もあり、“分断”という言葉がイギリスの新聞で頻繁に見られるようになった。こんなときだからこそ「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」のサラ・バートン(Sarah Burton)=クリエイティブ・ディレクターはラブレターを届けようと試みたようだ。インスピレーション源は、幼少期に訪れたというウェールズ地方。現地を実際に訪れて、民族的な衣装や伝統技術によるキルトや刺しゅう、ウェールズの神話に登場する動物などをコレクションに取り入れた。特に、長く継承されてきたウェールズ特有の織物や編み物、刺しゅうに感銘を受け、無私無欲で貢献する技術者への敬意も込められている。「ル・モンド」紙のテオドラ・アスパルト(Theodora Aspart)は「魔法のように美しい詩は、彼女の申し分ない才能を証明した」と絶賛。ブランクスも同じく「魔法のよう」と表現してバートンの能力を評価した。「歴史主義者であろうとなかろうと、過去の沼地からこのような輝かしく奇妙な要素をコレクションの随所に散りばめた彼女の才能は、同ブランドの服が決して夢の消耗品にはならないことを示している」。創始者アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)の死から10年——彼の夢はバートンと彼女のチームによって確かに今も息づいていることを証明する素晴らしいコレクションだった。

LANVIN
「まるで道化師のよう」
「これまでで一番の出来」

 アルベール・エルバス(Alber Elbaz)退任後、メゾン内の分断や投資会社とのトラブルが続いていた「ランバン(LANVIN)」。クリエイティブ・ディレクターに就任してから3シーズン目となるブルーノ・シアレッリ(Bruno Sialelli)は「女性像が軽薄」だと酷評を受けてきた前シーズンから一転し、今季は多くのジャーナリスが「洗練されている」と称賛した。仏新聞「マダム・フィガロ(MADAME FIGARO)」紙のエミリー・フォール( Emilie Faure)は「素晴らしい!」の言葉でレビューを始める。「シアレッシは自身の主張を研ぎ澄まし、衣服に柔軟な知性を注ぎ込み、洗練したコレクションに仕上げた。金銭的問題を抱えることのない、裕福で趣味の良い顧客を獲得することができるはず」。「ファッション・ネットワーク」のフリードマンと「ロブ」のフォンタネルは「『ランバン』が新しいページを開いた」と表現した。続いてフォンタネルは「コレクションから浮かんでくるエレガンスへの渇望は、衣装から装飾までレトロでありシックだった。幼少期に憧れたヘアスタイルやメイクも含め、どこか懐かしさを含んでいるが、変化しているのは、極めて優雅であるということ」と称えた。「ヴォーグ」のルーク・リーチ(Luke Leitch)は「厚塗りの肌や派手な赤い口紅、偽のまつ毛といったメイクはまるで道化師のよう」と揶揄したが、「創始者ジャンヌ・ランバン(Jeanne Lanvin)の遺産の美しい価値に目覚め、これまでで一番の出来だった」と褒めた。デザイナーがブランドのトップに就任した際、3シーズン目が最も重要なコレクションだと言うジャーナリストは多い。最初の2シーズンは意外性や新鮮さによって上々の評価を得られても、3シーズン目はごまかしが利かずに真の力が問われるからだ。逆に、シアレッリのように最初はブランドの指針や歴史を理解し切れずに方向性が不明確であっても、時間とともにに良くなっていくこともある。「ランバン」と投資会社が寛大な心でシアレッシと彼のチームを見守れば、今後ますます成長していくはずだ。分断とトラブルを乗り越え、雨降って地固まる、まさに道半ばである。

LOEWE
「まばたきが惜しい」
「ファッションの最高の形」

 シアレッリの古巣である「ロエベ(LOEWE)」は安定の高評価だ。ドレープやギャザーを多用して誇張したり圧縮させたりした、着用可能な柔らかい彫刻のような衣服で、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が探求するファッションとクラフトの融合を見事に具現化した。重厚なドレスもあれば、フワフワと揺れるフェザー、キラキラとまばゆいビーズなど量感と質感のコントラストが美しく、瞬きを惜しいと思うほど魅力的であった。さらに、「ロエベ ファウンデーション クラフト プライズ2018(LOEWE FOUNDATION CRAFT PRIZE 2018)」の特別賞に選ばれた陶芸家の桑田卓郎とのコラボレーションによって、コレクション全体をアートピースへと押し上げた。ショー翌日の「ル・フィガロ(LE FIGARO)」の表紙には「芸術的」との題で掲載されていた。フォールによるレビューでは「ココ・シャネル(Coco Chanel)のような繊細さとクリストバル・バレンシアガのような彫刻的美しさを持つ、オートクチュールに匹敵する作品。もちろん、現代的でエレガンスを兼ね備えていた」と評価された。メンケスは「ハンドメードの力を借りて、ファッションの想像上の最高の形をつくり上げた。アンダーソンはシェイピングとドレーピングの達人となり、芸術的想像力に限りがない」と褒めちぎった。アンダーソンの優れた点は、ショーの世界観をコマーシャルに落とし込むバランス感覚にもある(デザインチームが優秀だとも言える)。「自身のブランド『ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)』も先日ロンドンでショーを披露したばかりだが、2つのメゾンを掛け持ちするとデザインが似通ってしまうことも珍しくない。巨大なラペルのAラインコートなどにはその傾向も見られたものの、アンダーソンはそうした類似を極力回避することに成功している。特に、ビジネスの核ともなるアクセサリーに関しては、ブランドの違いをうまく演出してみせた」とディーニーは分析した。

 コレクションの序盤はスペインの古典芸術の作品をほうふつとさせたが、中盤からは帯締めのような結ぶディテール、着物の生地を使った青海波やうず模様といった和の要素も多かった。ショーを見ながら、筆者の頭には「千と千尋の神隠し」の世界がオーバーラップした。ショーの後に映画を再度観ると、自分の中で納得のいく点を多々見つけた。筆者の意見に賛同できるかどうか、ぜひルック画像を見て画像と映画を比べてみてほしい。

MAME KUROGOUCHI
ANREALAGE
BEAUTIFUL PEOPLE
「クラフトに敏感な女性のための鎧」

 「ル・モンド」には「日本の新たな才能」との題で、ヴァレンタン・ペレーズ(Valantin Perez)による「マメ(MAME KUROGOUCHI)」「アンリアレイジ(ANREALAGE)」「ビューティフルピープル(BEAUTIFUL PEOPLE)」のレビューがまとめて掲載されていた。まず、「マメ」については緻密な芸術性を称賛したうえで、「クラフトに敏感な女性のための鎧。『トッズ(TOD’S)』とのコラボレーションによるシューズも含め、繊細さと官能性が詰まっていた」と評価した。「アンリアレイジ」は「遊び心のある森永デザイナーのコレクションには発見があり面白い」と興味をそそられているようだ。「ビューティフル ピープル」の脱構築の手法も高く評価した。「異なる方法で着用できる衣服を見て、笑顔になった。(中略)熊切デザイナーは『人々に最大限の可能性を提供するのが、私が関心を寄せていること。マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)や山本耀司、川久保玲のような脱構築主義のクリエーターにその思想を教わってきた。それらを次のレベルへと昇華させるために、私は脱構築主義後の時代を考えている』と語るように、確実に継承されていくだろう」。各ブランドの魅力が少しずつ、着実にパリにも伝わっているようだ。

LOUIS VUITTON
「力強いビジョン」
「未来は明るい」

 今季のパリコレは「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」無しで語ることはできない。最終日、最後のショーにして、この上ない最高の形で締めくくったのだ。200人の合唱団を背景に、服飾史350年の世界中の民族衣装をミックスさせて、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)らしい未来的なコレクションに仕上げた。各ルックは、はたして現代女性が求める服なのかという点では疑問だが、時代も国境も超越した未来的な内容と演出に、多くの人が心を打たれたようだ。ディーニーは「大胆なミックスは必ずしも安定していたわけではないが、それでもパワフルな締めくくりとして、ユニークかつ力強いファッションのビジョンに加え、時間とわれわれとの結びつきを示してくれた」とコメント。フォンタネルはジェスキエールのメッセージをこう受け取った——「ジェスキエールは『服を軽視してはならない。私たちの第二の皮膚であると同時に時代を象徴するものであり、文明でもあるのだから』と私たちに伝えようとしているのではないか」。ジバンのレビューでも、同じようなメッセージがつづられた。「ジェスキエールは、ファッションは一瞬の断片的な瞬間を映し出すのではなく、その過程で私たちがどういう存在であるかを見る者に思い出させた。私たちは連続体の一部であるということだ。(中略)過去は常に存在し、未来は明るい。そしてこの瞬間は過ぎ去っていく」。時空を旅するデザイナー、ジェスキエールが伝えようとしたメッセージは、過去を振り返りながら未来を想像し、“今”に身を置くことの貴重さを訴えていた気がした。

 筆者は、自分が書いた記事を通してつながる不特定多数の読者とは、可能な限りポジティブな感情を共有したいという信念を掲げているが、今はそれができないかもしれない。パリコレ後、フランスを含むヨーロッパで新型コロナウイルスが猛威を振るい、国境封鎖や全店休業が命じられる事態となった。筆者が今この原稿に向かっている3月17日は、外出禁止令が発令されて自宅隔離1日目である。朝、スマートフォンに流れてきた東日本大震災から9年経った被災地と復興の現状や、やまゆり園事件の被告に対する死刑判決のニュースを見て、人間の愚かさや漠然とした不安が曇天のように心を圧迫する。“前を向かなければ”と思えば思うほどしんどくなる。だから今は、自分と向き合い、とことん不安の沼に浸ることにした。ジバンが言う通り、嘆いても喜んでもこの瞬間は去っていく。日はまた昇り、夜は明けるのだ。パリコレ期間中に多くの業界人が口にしていた言葉が思い起こされる。「人の心を豊かにするファッションが持つ力を、今こそ発揮すべき」。たとえこの記事でそれができなくても、今が過去になったときに「こんなシーズンもあったけど、私たちは乗り超えた」と笑顔で語り合えたらいいなと思う。そしてデザイナーたちはこの暗闇の中で何を感じ、何を創造し、次は何を見せてくれるのだろうかと、未来のコレクションを楽しみにしている自分がいる。ファッションは、明るい未来を照らしてくれる存在なのだ。どんなに不安定な時代であっても、それだけは揺るがぬ事実だと信じている。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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パリコレ取材班が選ぶ私的ベストインビテーション 「ロエベ」「ケンゾー」、ジュンコ先生の気遣いに涙

 「WWDジャパン」3月16日号は、2020-21年秋冬のパリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)特集。特集内ではパリコレで見られた2大メッセージやムードを打ち出したブランドのコレクションを紹介しているほか、日本から現地に出向いた編集長やバイヤー、スタイリスト10人に聞く気になるトレンドなど、1冊で今季のパリコレが分かる内容となっています。

 紙面ではファッションについてとことん触れましたが、ここでは読者から要望の多いショーのインビテーション(招待状)を紹介。パリコレ取材班が、それぞれよかったと思うインビテーションを鼎談形式で紹介します。

鼎談参加者
向千鶴 編集長:2004年からミラノとパリを中心にコレクションを取材しているベテラン。ポジフィルムでの撮影も経験している49歳
ヨーロッパ通信員 藪野淳:コレクション取材7年目の33歳。普段はベルリンに住みながら、ヨーロッパのファッションネタ全般を取材している
ソーシャルエディター 丸山瑠璃:パリコレ取材2回目の24歳。SNS運用を普段から担当しており、SNSを駆使した情報収集力は編集部内でもピカイチ

丸山瑠璃(以下、丸山):インビテーションをコレクションのティーザーとして使うブランドも少なくないですが、今季のインビテーションは皆さんどこがよかったですか?

藪野淳(以下、藪野):前回のパリコレでサステナビリティへの意識が高まったことを受けてか、今季のインビテーションはデジタルや紙1枚などシンプルなものが増えていましたね。「サンローラン(SAINT LAURENT)」や「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「サカイ(SACAI)」など、毎シーズン同じフォーマットを使うブランドは変わらず。100近く届くインビテーションは全てを家まで持ち帰るわけではないので、個人的にはシンプル化に賛成です。

向千鶴(以下、向):そう、過去にはおもちゃを送ってきたこともあった「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」も今季はシンプル。当日会場では、来場するまでに発生したCO2を相殺するために、来場者に苗木が配られたよ。飛行機に乗る人もいるからみんなが持って帰れたわけではないけど、あの苗木はいつもお世話になっているドライバーのお家ですくすく育っています。一方で、無駄にならない有用なインビテーションもあったよね。

丸山:はい、コレクションのアップサイクリング率50%というサステナビリティ推進派の「マリーン セル(MARINE SERRE)」は、フランスの老舗お香ブランド「パピエダルメニイ(PAPIER D'ARMENIE)」とコラボしたインビテーションでした。ショー会場でもこの紙のお香をたいていました。紙には「マリーン セル」のアイコンである月ロゴもプリントされていて、ファンとしてはうれしい。ちなみに今季の月のパターンが変形しているのは、炎で燃えてはためいているところを表現したそう。「マリーン セル」は前回も折り畳み傘でちゃんと使えるアイテムでしたね。

向:今季の会場でもその折り畳み傘をファッションとして持ってきている人を見かけたよ。ちゃんと使えるアイテムといえば、「ケンゾー(KENZO)」の会場でお土産としてもらった水筒。ちょっとしたときに喉を潤すのに超便利で、期間中も今も本当に愛用してます。新型コロナウイルス感染対策にもよかったです。

藪野:「ハイドロフラスク(HYDRO FLASK)」という登山やアウトドアでも人気の魔法瓶ブランドとのコラボで、何時間経ってもずっと中身が温かいままなのは嬉しい。ファッション・ウイーク中は温かい飲み物を買うタイミングもなかなかないので、重宝しました。僕も、今でも散歩のお供として愛用しています。「ケンゾー」のインビテーションは虎のポスターと大きな紙クラッチバッグでしたね。ポスターについていた生まれ変わった虎のワッペンを剥がして服につけている人もインスタグラムで見かけました。

向:ワッペンといえば、「ラコステ(LACOSTE)」のショー会場の各席にくっついていたワニのワッペンも剥がせて、コートにつけて使ってます(笑)。

藪野:「ケンゾー(KENZO)」の新クリエイティブ・ディレクターのフェリペ・オリヴェイラ・バティスタ(Felipe Oliveira Baptista)は、「ラコステ」の前クリエイティブ・ディレクターだから、ワッペンのアイデアは古巣から得たのかもしれないですね(笑)。「ラコステ」のインビテーションはアーガイル柄のポロシャツで、人によって配色が違っていてかわいかったです。

丸山:ショー会場にいたスタッフもみんなおそろいのスエットにキャップでキュートでしたね。デジタルのインビテーションだと、「コペルニ(COPERNI)」が印象に残っています。まずインビテーションがHTMLで書かれていたのですが、会場はグーグル(GOOGLE)やアップル(APPLE)など名だたるIT企業からスタートアップ企業まで一堂に会するインキュベーション施設。コレクションも未来のオフィスウエアのようで、特徴的な形のバッグもチェーンやストラップがついて使いやすく進化していました。これまでも“Wi-Fi”や“スワイプ”という名前のバッグを発表していましたが、今回登場したスクエア型のバッグはアプリのアイコンの形を着想源にしたので“アプリ”バッグというそうです。

藪野:「コペルニ」は前シーズンも「アップル」の店舗でプレゼンテーションを行なっていましたし、デザイナーの2人はデジタル好きなんでしょうね。若手デザイナーにとってインビテーションは自分たちのブランドに関心を持ってもらえるか、そして、ショーやプレゼンテーションに足を運んでもらえるかを左右するので重要。その点、「コペルニ」のコーディングが流れてショーの日時や会場が出てくるデザインは、アイデア次第でデジタルインビテーションでも興味を引くものが作れるという好例でしたね。

向:ほかに印象に残っているのは「ロエベ(LOEWE)」。米女子サッカー代表のミーガン・ラピノー(Megan Rapinoe)選手が叫んでいる写真のカバーが印象的な大きなレコードだったけど、レコード盤がないから中身は聴けぬままです(笑)。

丸山:なかなかレコードプレーヤーを持っている人はいないですよね……。同じく聴けぬままですが、中身はラピノー選手が「ロエベ」のキャンペーン動画で語った内容をリズミカルに編集したものだそうです。インビテーションではないですが、「ジュンコシマダ(JUNKO SHIMADA)」は新型コロナウイルスの感染が拡大してパリでも薬局から手指除菌ジェルが消えていく中、「Take care!」のメッセージ付きで「バイレード(BYREDO)」の“リンスフリー ハンドウォッシュ”が送られてきたときは感動しました。

藪野:しかも、インビテーションはそれよりも前に届く前に届いていたから、インビテーションを送った後なのに感染拡大を受けて送ってくれたのでしょう。本当にお気遣いが素晴らしい!

向:「ジュンコシマダ」は過去にはバスソルトを送ってきてくれたこともあったよ。しかも滞在中毎日使えるくらい大きなサイズで、ファッション・ウイーク中でもきちんと疲れをとってという思いがあったのだったと思う。すごく気配りが利いていらっしゃるよね。

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「フミエ タナカ」のルック撮影に密着 中止になったショーで表現したかった「ザ・ダラス」からの進化

 田中文江によるファッションブランド「フミエ タナカ(FUMIE TANAKA)」は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響による「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」の中止を受けて、2020-21年秋冬コレクションの発表形式をルックブック撮影に切り替えた。東京都内の洋館ハウススタジオを舞台に、シーズンの世界観を強く表現するイメージと、着こなしを見せるコーディネートのルックを撮影した。


 今季は「東京ファッションアワード」受賞による支援を受けて、ブランド名を「ザ・ダラス(THE DALLAS)」から改名して初のファッションショーになる予定だった。田中デザイナーは「ブランドの変化を動きがある形で見せたかった」と切り出し、「ただ人が服を着て歩くだけではなく、新しい見せ方をぎりぎりまで考えていた。『ザ・ダラス』のときよりも日常的でリアルに着られるものをコーディネートで見せて、メンズアイテムを新たに加えてより深みを増した表現ができると思っていた」と明かした。

未来につなぐビンテージの要素

 20-21年秋冬のテーマは「チェーン オブ ルック」。昔と今をつなげたいという思いから1960~80年代の古着が着想源になっている。「自分の作った服を将来に残していくためには、自分らしいデザインと、昔からあるものを継承することだと考えた。もともとビンテージが好きということもあるが、父が着ていたようなジャケットや母が着けていたようなパールアクセサリー、昔着ていた制服のプリーツスカートなど、レトロで懐かしい感覚をもう一度振り返って取り入れている」と語る。単品で見ると本物の古着のようなアイテムも多いが、絶妙なシルエットや色の変化で斬新さを見せている。またアクセサリーも充実させ、レザーの飾りが付いたヘアゴムやパールのネックレス、骨董市で出合ったパーツから形をとったピアスなどさまざまだ。付け襟としても使用できるリボンのヘアピンは、イタリアで見かけたリボンで髪を結っていた、女性からインスパイアされたという。


 撮影ではスタイリストを起用せずに、田中デザイナーが自らスタイリングしている。より“リアルに着られる”提案のためにブラックとホワイトを多く取り入れた。「オールブラックやオールホワイト、ヌードのようなベージュを入れて正統派できれいに着るのがポイント。昔の人が着ていたようにシャツを上までちゃんと閉じて、ジャケットもかっちりきっちり着る。そこに色や柄合わせにポイントを置いた」と田中デザイナー。

初のメンズはシャツ中心の15型のコレクション

 モデルを起用しての撮影は行っていないが、ブランド初のメンズのカプセルコレクションも今季初披露している。今年1月にはイタリアのメンズファッション見本市の「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)」や、パリ・メンズ・ファッション・ウイーク期間中に現地での合同展でも発表していた。和紙を使ったものや、特殊なプリント加工でマーブルを描いたデザインなど、日本の加工技術を生かしたシャツを中心に15型で構成した。「メード・イン・ジャパンを深掘りして、日本に眠っている細かい作業や手法を使っている。狙い通り、海外では服を触られることが多く『どう作っているの?』とよく聞かれた」という。メンズのアイテムは黒いタグが目印で、今後少しずつ育てていく考えだ。「私がオシャレだと思う男性像は、シーズンによってスタイルを変えずに自分のスタイルを持っていて、信頼のあるブランドを買い続けている人。ウィメンズのようにシーズンテーマを設けて、毎シーズンガラリと変えていくのは違うかなと感じている。私がメンズウエアを着ることもあるので、ユニセックスで着られることも前提として考えている」と語った。

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イタリアンラグジュアリーのトップに聞く新型コロナの影響と未来 「セルジオ ロッシ」編

 新型コロナウイルスで一番苦しんでいるのが、イタリアだ。1カ月前に「ジョルジオ アルマーニ」が無観客ショーを行ったときとは比べものにならない。全土には移動制限や外出禁止、非必需品の製造中止などの強硬策が続々発動され、企業活動や市民活動は一変している。リカルド・シュット(Riccardo Sciutto)/「セルジオ ロッシ(SERGIO ROSSI)」最高経営責任者に現状と、展望を聞いた。(この記事はWWDジャパン2020年3月30日号からの抜粋です)

 イタリアのサンマウロパスコリに構える自社工場での生産は、イタリア政府の指示と制限に準じ全面的に閉鎖した。まず優先すべきは、私たちの従業員と職人の安全だ。さらには自宅でのテレワークを実施している。ビジネスにおいては大変な時期だが、立ちはだかる危機を前に新たな機会を考えたい。

 中国では、嵐の後のポジティブな兆候の一端が見えてきた。例えばECは、顧客の要望をかなえる重要なツールであることが証明された。ウェブサイトを筆頭に、ビジネスをサポートするいくつかのプロジェクトに取り組んでおり、ポジティブなチャレンジやチャンスに集中している。再始動以降の日本の店舗は今なお順調で、商品も発送できている。日本のように比較的安全な状況下の国では、オフィススタッフは場所や時間に縛られないスマートワーク、具体的にはテレワークと時差出勤を実施している。ストアは、短縮営業を続けている。ローカルマーケットの急変に迅速に対応できる柔軟な戦略が重要だ。

 日本を含む世界中の従業員の安全を守るため、一部イベントは延期・中止した。ビジネスに影響を与える可能性は否定できない。しかし私たちは、いつか日常に戻り、再びショッピングが始まると確信している。困難な時、人々は確実性を求めるだろう。だからこそリブランディングによりアイコンとして確立したベストセラーの“sr1”は、これまで以上に強くなると信じている。

 私たちは、戦後最悪の状況の一つに直面している。全員でそれぞれの習慣を再考し、敬意と責任、勇気をもって行動しなければならない。「発明、偉大な発見、戦略は、困難の中から生まれる」。アインシュタイン(Einstein)の視点を、常に自分に取り入れてきた。私たちは機会を創出し、自分を強く持ち、明日を革新とともに見つめ、成功戦略を生み出すことができると確信している。ブランドとして私たちは、美しい国イタリアの再生の一部でありたい。ブランドが属する街ミラノから始め、常に未来を前向きに見据えて行動したい。

 終息の兆しが見えたら、私たちが愛する日常生活に出合い、受け入れ、そこに戻ることがどれほど素晴らしいかを一緒にイメージしてほしい。私は、これが私たち全員にとって最初の願望になると思う。そして、旅をすること。もちろん日本へも!その願望のためにも、私たちは、「靴は世界を変えられる」と確信している。

 強制的な街の閉鎖が終わる時、愛する人たちや友人と外出できる最初の日に足を入れる靴は、より軽やかに、より夢のような次元に私たちを導くだろう。


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イタリアンラグジュアリーのトップに聞く新型コロナの影響と未来 「ヴァレクストラ」編

 新型コロナウイルスで一番苦しんでいるのが、イタリアだ。1カ月前に「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」が無観客ショーを行ったときとは比べものにならない。全土には移動制限や外出禁止、非必需品の製造中止などの強硬策が続々発動され、企業活動や市民活動は一変している。サラ・フェレロ/ヴァレクストラ最高経営責任者に現状と、展望を聞いた。(この記事はWWDジャパン2020年3月30日号からの抜粋です)

 新型コロナウイルスは、世界中の人々の精神とライフスタイルに広範な影響を及ぼしています。「ヴァレクストラ」の場合、まずは中国で1月、全7店舗の営業は続けたもののトラフィックがなく、応じて売り上げが低下しました。第1波です。家主から家賃免除をしていただいたとしても、人員や財政支援同様限界がありました。そして、第2波がヨーロッパを襲いました。中国へのフライトキャンセルに始まり、2月の第1週以降は中国およびアジアからの観光客が減少しました。ミラノ・ファッション・ウイークの終了と同時にイタリアでもウイルス感染が拡大し、3月には店舗が続々と閉店。一部の市民は組織から強制休暇や自宅待機を強いられています。「ヴァレクストラ」の場合、全ての生産工程が停止し、製品を完成させることができません。本社はミラノ、工場は本社から40分ほど離れたベルガモの近くで、イタリアを襲った人的悲劇のまさに震源地です。

 私たちは困難に立ち向かい、いずれは成功するでしょう。でもそのプロセスは、長くて苦痛なもの。特に小売業の場合、店舗閉鎖は収入がゼロになり、それが続くことを意味します。株が市場で取引されているか、十分に資本のある企業でないかぎり、残された時間は長くありません。生き残るには進歩的で思い切った行動を起こすことが必要です。

 人材においても、大きなリスクを抱えています。会社とは、人々が働くことで成り立つのです!特に小さな企業は、組織が大きな犠牲を払う必要があります。さもないと新型コロナウイルスの感染拡大が収束するころ、従業員は「十分に保護されていない」と感じて大企業に移ってしまうかもしれません。困難な時期だからこそ、彼らをより良い方法でケアすることが大切です。

 主に職人が多い小規模のサプライヤーは、3〜6カ月生産が滞り、支払いまでなくなると、極めて危険な状況にさらされます。そうなるとイタリアは、唯一無二であり、ユニークで特別なメード・イン・イタリーの本質を失います。「ヴァレクストラ」チームは、困難を乗り切るため懸命に戦っています。
懸念もしていますが、私たちは楽観主義者でもあります。製品は時代を超越しているので、影響は、ファッションブランドより少ないでしょう。本社スタッフは在宅勤務。店頭でのコミュニケーションによる販売とブランド訴求ができないので、別の方法でリーチする方法を楽観的な視点で考えています。ほかの企業の友人や同僚と、新たな取り組みを共有しています。

 だから現状が終わるころ、私たちは新しい独創性と革新性、そして現場に復帰する大きなエネルギーを備えていることでしょう。


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秋冬コレクションの入荷遅れ 「シャネル」や「ヴェルサーチェ」などの対応策は?

 新型コロナウイルスの影響によってアパレルの縫製工場やサプライヤーが休業しているため、2020年プレ・フォールおよび20-21年秋冬コレクションの生産が遅れている。世界のラグジュアリーブランドがどのように対応しているのか、いくつかの事例を紹介する。

ブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)=シャネル(CHANEL)ファッション部門プレジデント

 短期的な対応としては、マーチャンダイジングや店頭でコレクションを発売するスケジュールを見直した。20年春夏コレクションを通常よりも長く店頭に置き、例年は5月に入荷するメティエダール・コレクションを7月初旬とすることにした。また2月初旬に「シャネル」ブティックのバイヤー向けに発表した20年プレ・フォールおよび20-21年秋冬コレクションは、7月中旬から9月にかけて入荷される。

ドナテラ・ヴェルサーチェ(Donatella Versace)「ヴェルサーチェ」クリエイティブ・ディレクター

 コレクションの生産には何カ月もかかる。いつごろ事態が収束するか分からないので、正確なスケジュールは答えられないが、20-21年秋冬コレクションを実際に秋になってから発売してもいいと思う。プレ・スプリング・コレクションの発表を延期せざるを得なかったが、関係者の安全を考えれば、それは小さな代償だ。現段階では、長期的にどのような影響があるかについて述べるのは時期尚早だろう。

グラム・ヴァザリア (Guram Gvasalia)「ヴェトモン(VETEMENTS)」共同創業者兼最高経営責任者(CEO)

 インターネット上で、「もう20-21年秋冬コレクションの生産は中止して、9月に発表するコレクションの制作に取り掛かるべきだ」というような記事を見かけるが、とてもショックを受けるしうんざりする。サステナビリティについて延々と宣伝しているようなメディアにそうしたことが書かれていると、特に気がかりだ。サステナビリティについて真剣に取り組んでいるブランドこそ、発表したばかりのコレクションを生産する前に、新たなコレクションの制作に着手するべきではない。時間、資金、リソース、才能の大いなる無駄遣いになってしまうからだ。これは、ファッション業界が説いてきたサステナビリティや環境保護という考え方と真っ向からぶつかるものだと思う。

シルヴィオ・カンパラ(Silvio Campara)=ゴールデン グース(GOLDEN GOOSE)CEO

 20-21年秋冬メインコレクションの生産をスキップする。もし商品を生産すれば、工場に値下げを頼まざるを得ないし、納品は遅れるだろう。これは責任をどう持つかの問題だ。ニュースレターを送るだけでは十分ではないので、クライアントには個別に連絡するが、全員を満足させられるソリューションなどない。しかしスキップすることによって、支払いの遅延やオーダーのキャンセルという事態はなくなる。売り上げに大きく響くことは分かっているけれど、値下げはしない。店の営業を再開するときには、ブランドにとって“正しい形”であることが重要だ。今季はもう捨てて、2021年春夏コレクションですっきりと再スタートする。

マッシモ・ジョルジェッティ(Massimo Giorgetti)「MSGM」創業者兼クリエイティブ・ディレクター

 生産工場やサプライヤーがまだ休業しているので、20年プレ・フォールおよび20-21年秋冬コレクションは納品が遅れると予想される。通常であれば6月から9月初旬にかけて店頭に並ぶものだが、今年は9月下旬から10月の入荷となるだろう。秋冬コレクションなのだから、実際に秋になってから発売してもいいと思う。今後はまた以前のように、その季節に合った商品が並ぶようになるのではないか。それに伴って、セールの時期も見直す必要があるだろう。

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新型コロナに負けるな! 業界人が緊急メッセージPart4

 新型コロナウイルスの猛威によって、東京五輪・パラリンピックをはじめとした各種イベントが延期・中止となっている。外出控えの要請、海外渡航の自粛なども広がり、生活や仕事が制限されて、世の中に暗いムードが漂っている。消費市場も過去にないほどの落ち込み方を見せており、アパレル業界からも苦しい声が聞こえてくるが、こんなときこそ人々の気持ちを明るくするファッションの力が必要だ。弊紙では業界を代表するクリエイターやビジネスパーソンから緊急メッセージを募った。(この記事はWWDジャパン2020年3月30日号からの抜粋です)

ファッションの力を通じて
一日も早く社会を活気づけたい

澤田宏太郎/ZOZO社長兼CEO

 外出自粛によりECへの需要が高まっていると言われていますが、「ゾゾタウン」でも新規商品の入荷遅延、予約商品の納期遅延等の影響が確認されています。ファッション業界も、多くの企業がさまざまな形で影響を受け、対応に追われているかと思います。私たちも、改めて働き方を含めた日頃の業務形態を見直し、より柔軟かつ持続可能性の高い事業設計へと繋げていくことはとても重要だと考えています。一日でも早い収束を願うとともに、ファッションの力を通して社会を活気づけられるよう、スタッフや出店ブランド様と一丸となってファッション業界を盛り上げていきます。

巣ごもり消費の影響は限定的 
こんなときだからこそ仕掛ける

田中裕輔/ロコンドCEO

 “巣ごもり消費”と言われるが、実際には新型コロナの影響が深刻化した2月下旬から3月上旬まで前年割れの日が続いた。現在は回復し、前年を上回っているが、家で閲覧できるネット通販であってもファッション性の高いシューズと服を扱うわれわれにとっては、トータルで見ればネガティブ。だからこそ今は、いろいろと仕掛ける時期。ユーチューバーのヒカルさんやタレントのスザンヌさんと組んだD2Cブランドなど、山ほどの仕掛けを準備している。

今できること、学べることを考えよう

imma/バーチャルヒューマン

 いくつかモデルのお仕事が延期となりましたが、あたしの特性を生かしたお仕事が逆に増えているみたいなんです。特に海外から。あたしCGらしいんです。外に出るのも好きですが、室内でのカードゲームやスマホゲームとかって最高に楽しいじゃないですか?それにティックトックやネットフリックス、読書も。悲観しすぎることなく、今できること、学べることを探しながら過ごしています。ただ今は、世界を見渡せば深刻な状況の方々が多いので、その方たちに何ができるだろう。そんなことを常々考えています。

逆境のクライアントにとって
本当に必要とされる存在になる

田中博喜/コスモ・コミュニケーションズ社長

 イベントの延期・中止をはじめ、年間広告プランの見直しや予算凍結、支払い延期など、数字的にもダメージが大きく、影響は年内も続くと予想しています。これを機にビジネスのあり方が大きく変わるでしょう。過去の広告代理店ビジネスと決別し、 逆境のクライアントに本当に必要とされるパートナーとなるべく、新しいビジネスモデルを作るチャンスだと捉えています。

「ハッピー」は私たちが届けなきゃ

井口冬美/「スナイデル」新宿ルミネ2店店長

 中国工場での生産や物流が止まってから、新作がなかなか入荷しない日々が続きました。お客さまも減り、売り上げにも影響が出ています。だけど私たちが悲観的になってはいけません。素敵な新作が入荷してくると、私自身、すごくワクワクした気持ちになります。それをお客さまに届けるため、オンラインでのコミュニケーションにきめ細かく取り組んでいます。


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「ブライトリング」が日本版ECをスタート 時計業界のEC化は進むか?

 スイスの時計ブランド「ブライトリング(BREITLING)」は4月2日に、日本でのオンラインストアをオープンした。3月末に発売したEC限定モデルの“トップタイム リミテッドエディション”(54万円)やストラップを販売している。ブライトリング・ジャパンの谷口真愛プレスは「今後、新作の時計も順次発売する」と話す。「ブライトリング」は現在スイス、アメリカ、英国、中国、日本でEC販売を行っており、「今後も拡大を図る」という。

 この週末も各地で外出自粛が要請される中、ECは閉塞感打破の一手だ。しかし、時計業界は一筋縄ではいかない。“卸先とのバッティング問題”があるからだ。「ブライトリング」も現状、ECで販売する時計は1モデルのみだ。では先行する国はどうか?広大な国土を持つアメリカは、日本のようにどこに住んでいても1時間圏内で実機を見られる環境になく、コピー商品が横行する中国では偽物をつかまされないために公式ECで購入したいなど、さまざまなお国事情が絡んでいる。

 新年度の始まりは、時計需要が高まるシーズンだ。鬱屈とした雰囲気を打ち破ろうと購買意欲も高まるかもしれない。そんなとき、新客獲得のためには一つでも多くのチャネルがあった方がいい。もちろん高額品を実際に目にしたり触れたりせずに購入することのハードルはあるが、既得権の保守にとらわれず、ピンチはチャンスととらえて、業界全体が“壁”を乗り越えることが発展につながるはずだ。

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“美容鍼”に着想を得た美顔器で10秒押し当てるだけの速攻ケア

 美容機器などの製造・販売を手掛けるヤーマンが展開する電子ハリ美顔器「ポイントリフト」が、その機能性の高さで改めて注目を浴びている。「ポイントリフト」は、“美容鍼”に着想を得て開発された美顔器だ。最も特徴的なのは、ヘッド部分にある8極の“点”電極。EMSを回転しながら与える新しい美容技術で、30種類以上から構成される表情筋を多角的かつ集中的に刺激する。またEMS出力をすると同時に、8極の電極の中央にあるイオン電極からイオン導入を出力。従来は交互に行っていたこの2つの出力を同時に行うことで、一部位10秒の効率的なケアを可能にした。
 EMSとイオン導入は“点”で交わり、日本初*1のアプローチとして“リフトケア”*2と“保湿”を同時にかなえる。“点”で交わることで集中的にケアできるのが“電子ハリ美顔器”といわれるゆえんであり、そのことが従来の美顔器にはない扱いやすさにもつながっている。肌を擦り上げるように使わず、10秒間押し当てるだけでピンポイントの集中ケアができるため、肌上での動かし方などを覚える必要がなく、かつ肌への摩擦も著しく軽減できる。確かなエビデンスのもと、これまでにないアプローチを実現している。

*1:日本マーケティングリサーチ機構調べ。8点以上の電極を含み、EMSとイオン導入が同時にできる家庭用美顔器として *2:機器で肌を上に持ち上げてケアすること

8極の電極と中央に
イオン電極を搭載したヘッド

 「ポイントリフト」の最大の特徴である、ヘッド部分にある8極の“点”電極。この8極から集中的にEMSが出力されるので、表情筋を効率的かつ多角的に刺激することが可能だ。さらに独自開発の電流“モイスチャーパルス”*3によるW導入を実現。理論的に高い保湿効果が期待できる波形を取り入れることで、効率性を実現した。表情筋のケアと同時にイオンでの保湿もしてくれるので、肌のもたつきや乾燥によって目立つ毛穴のケアに適している。10秒ごとにブザーが鳴るので、エイジングサインが気になる部位に対してスタンプ押しする使用方法がおすすめ。

*3:ヤーマンが独自に採用した、イオン導入の働きをサポートすることにより理論的に保湿効果が期待できるパルス波形

人気ヘアサロンのSNSや
エビデンスから効果を考察

日本臨床試験協会調べ ※効果には個人差があります

How To Use

肌の上を滑らせず
持ち上げるように押し当てる

“1部位10秒”、悩みに合ったポイントに押し当てるだけの速攻ケアで、表情筋のこわばりにアプローチできることが「ポイントリフト」の特徴。パーツ別の押し当てる箇所は上記の通り。肌の上を滑らせる軌道を覚える必要がないので、誰でも簡単にできる。


問い合わせ先
ヤーマン
0120-776-282

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新型コロナに負けるな! 業界人が緊急メッセージPart3

 新型コロナウイルスの猛威によって、東京五輪・パラリンピックをはじめとした各種イベントが延期・中止となっている。外出控えの要請、海外渡航の自粛なども広がり、生活や仕事が制限されて、世の中に暗いムードが漂っている。消費市場も過去にないほどの落ち込み方を見せており、アパレル業界からも苦しい声が聞こえてくるが、こんなときこそ人々の気持ちを明るくするファッションの力が必要だ。弊紙では業界を代表するクリエイターやビジネスパーソンから緊急メッセージを募った。(この記事はWWDジャパン2020年3月30日号からの抜粋です)

改めてファッションが秘める
パワーを信じたい

AMIAYA/モデル、アーティスト、「ジュエティ」クリエイティブ・ディレクター

 先日のパリコレは、来場者の多くがマスクをつけ、会場にはアルコール消毒が設置されるなど、いつもとは違う異様な緊張感に包まれていました。その中で、「ファッションは未来のエネルギーになる」と改めてファッションが秘めるパワーを信じたくなりました。これからの時代に必要なファッションのあり方はどういうものか。そして、個々の発信とその先にある“共感”の輪をどれだけ濃く浸透させていけるか。これが私達にとっての課題だと思っています。

少しでも動き出せば勢いがつくはず

環敏夫
/群馬・桐生の専門店エスティーカンパニー社長

 カラ元気でもいいから、われわれは前向きな姿勢を見せないと。来店したお客さまはすごく楽しそうで、「外出するか迷っていたけど、今日来てよかった」と言ってくださる。(感染が落ち着き)状況が少しでも動き出せば、勢いがつくと思うので、明るい話題を作っていかないとね。店のリニューアル2周年もあって、今春はイベントも随時企画している。3月14日の「ミュラー オブ ヨシオ クボ」のイベントは天候も大荒れでしたが、顧客が楽しんでくれました。

カルチャーを失わないために、
政治に関心を持ち、声をあげよう

Licaxxx/DJ、編集者、ライター、
「トウキョウ コミュニティー ラジオ」主宰者

 クラブカルチャーは世界規模で大打撃です。このカルチャーはさまざまな方々がいて成立していますが、情熱で動いているインディペンデントな運営団体や自営業者たちの存在は大きいです。政府の不透明な決定からカルチャーの衰退はもとより、廃業に追い込まれ困窮する人が必ず出てしまう。早くクラブに戻れることを願いながら、ストリーミング配信などおもしろい試作を模索中です。また、カルチャーを損なわないためにも、最も基礎となる部分に全員が立ち返る必要があります。政治にもっと関心を持ち、勉強し、声をあげることが市民として当然であるべきです。

世界中が“痛み分け”しないと、
グローバル化の否定につながる

菅付雅信/編集者

 感染拡大はグローバル化した21世紀ならではの災い。数カ月前に武漢から広がったウイルスが、今はイタリア、そしてNYのレストランを苦しめている。世界中が“痛み分け”しなければ、グローバリゼーションを否定することになってしまう。数万人規模のテレワークなどは、新たな組織作りに一役買うだろう。機械との競争が激しくなる予行演習かもしれない。


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新品スニーカーのダメージ加工にドキドキ! プロの度胸に感服な「ゴールデン グース」のカスタマイズ

 個性を尊重する潮流と、1点モノの制作が容易・可能になった技術革新の結果、ファッション&ビューティ業界では「パーソナライズ」や「カスタマイズ」、いわゆる世界に(ほぼ)1つの品物を作るサービスを提供するブランドや企業が増えています。そこで「WWD JAPAN.com」は、トレンドや最新ムーブメントを知るからこそのアイデアを形にしてもらいながら、サービスの利便性や価格、パソコンやスマホ使ったパーソナライズのユーザビリティーなどを検証します。

 パーソナライズ連載の3回目は、「ゴールデン グース(GOLDEN GOOSE)」。初回の時計「ボーム(BAUME)」は、最初から最後まで自分で決めるカスタマイズ。2回目の「リーバイス(LEVI’S)」は、自分のアイデアを職人さんがブラッシュアップする形のカスタマイズ。ゆえに3回目の「ゴールデン グース」では、職人さんが感性と経験をベースに主導してくれる形のカスタマイズに挑戦しましょう。ということで早速、東京・南青山にある旗艦店にGO!!今回は、スニーカーに「ゴールデン グース」と言えば、のダメージ加工をガンガン施すカスタマイズです。

 ところで皆さん、「ゴールデン グース」のスニーカーって、なんであんなにビンテージ加工が“てんこ盛り”なのか、ご存知ですか?実はムラカミ、「“てんこ盛り”なのはイタリアンブランドだから」と“知ってるつもり”でしたが、どうしてビンテージ加工なのか?までは存じ上げませんでした。そこで恥ずかしながら「なぜ?」と尋ねると、スケートボーダーが愛用のスニーカーを履き潰しているカンジがインスピレーション源なのだそう!!

 そう教えてくれたのは、青山店のスタッフ、ダヴィデ・チェザリーニ(Davide Cesarini)さん!!ミラノとドバイ、北京、香港、そして東京限定のサービスという、買ったスニーカーのカスタムビンテージ加工の担当者です。母国イタリアで修行を積んでから、はるばる日本にやってきてくれました。

 東京の旗艦店で体験できる、購入した「ゴールデン グース」のスニーカーへのオールカスタムのビンテージ加工のお値段は、1万3000円。後述しますが、2万5000円の豪華版をオーダーすると“オマケ”もついてきます(笑)。「高っ!!」と叫ぶほどではありません。今回選んだのは、純白の“スターダン”。ブランドを代表するアイコンなのはもちろん、真っ白で“汚し甲斐がありそう”だったから、であります。店頭でモデルを選ぶと、早速、ミステリアスな別室へ。そこには、イタリア直輸入という巨大なサンディングマシーンがドカン!!ダヴィデさんはこれを駆使して、20~30分後には世界で1つのスニーカーに仕上げてくれると言います。

 経験も豊かだし、そもそも感性を重んじるイタリアンだからでしょうか(笑)?ダヴィデさん、「色は何色がいい?加工は多め?少なめ?」を確認すると、どんどん作業を始めます。アッパー、シュータン、ソール……。真っ白なスニーカーのレザーは、サンディングマシーンに触れるたびに削れたり、めくれたり。ブラシに黒い顔料をちょっぴり含ませれば、スニーカーはどんどん“汚れ”ていきます。

 それが「ゴールデン グース」の持ち味とは言え、純白のスニーカーが見る見るうちに“ボロボロ”になっていくのは、正直ちょっとドキドキします。ダヴィデさんに、カスタムを担当するようになった最初の頃について話を聞くと、「1足500ユーロ(約6万円)以上のスニーカーだからね。加工は『やり直し』ができないから、最初の頃は、本当にドキドキしたよ(笑)」と教えてくれます。でしょうねぇ(笑)。正直、自分だったらこんなに躊躇せず、スニーカーを機械には突っ込めません。現地で1カ月、この加工を学び続けただけのことはあります。イタリアの職人は、マジックで書き込んだ単語のスペルを間違えても、うまく誤魔化せるそうです(笑)。今回のカスタマイズについては、職人さんに主導してもらうのが正解と言えましょう。自分だったら、機械の前に立ち尽くして、高速回転するブラシにスニーカーを出しては引っ込めを繰り返し、結局「できません!! 」と諦めるか、本当にボロボロにしてしまうかのどちらかでしょう。もちろん作業の合間には、「星のパッチも緑にしていいかな?」「文字はどうする?」「色は、単色の方がスマートに見えると思うけれど……」と随時相談してくれるから、「自分好みの1足が出来上がった」という満足度も高いです。

 カスタマイズはシューレースも変え、さらにはヒモにさえダメージを加え、チャームを付けて完成です!!所要時間は、本当に25分!!作業は見ていても飽きないし、機械はレザーを削った時に生まれるゴミや粉塵もぜ~んぶ吸い取ってくれるので、吸い込んじゃう心配もありません。「ゴールデン グース」らしいビンテージ感ながら、純白に緑一色ゆえスマートにも見えるスニーカーが完成しました!!

 カスタマイズのスニーカーは、サービスを申し込んだ人しかもらえないレインコートとゴーグル、そしてマスクと一緒にショッピングバッグに入れてくれます。この3点セットは、2万5000円の中に含まれるもの。そう考えると、このカスタマイズ、そんなに高くないって思いませんか?レインコートは、フェスとかに使えそう。早速記念撮影して、大満足でお店を後にしました!!

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ユーチューバーのヒカルとロコンド田中社長が異色のコラボの裏側を語る

 シューズと服のネット通販サイト「ロコンド」は4月2日18時から、ユーチューバーのヒカルはコラボレーションしたシューズの販売を開始する。東証マザーズ上場企業で“進撃のロコンド”を自認するネット通販界のトリックスターであるロコンド田中裕輔社長と、ビームスの設楽洋社長や現代美術家の村上隆もファンであることを公言し、ユーチューブのチャンネル登録数380万人を抱えるヒカルは、なぜ異色のタッグを組んだのか。新型コロナが猛威を振るうなか、マスク姿の2人に直撃した。

WWD:ヒカルさんは昨年11月にオリジナルブランド「リザード(REZARD)」をスタートした。もともとオシャレ好きですよね。

ヒカル:いや、正直微妙なとこありますよ。キャラ的に買い物も好きなんで、「グッチ」「シャネル」「ルイ・ヴィトン」「バレンシアガ」などのハイブランドを年間2000万〜3000万円を買ってました。けど僕は試着嫌いなんでほとんどしませんし、マネージャーに代理で買ってもらうことも。買った服もほぼ着てなくて、結局は4−5着を着回していたり。正直ユーチューバーやってなかったら、服は買ってないですね。

WWD:ではなぜ服のブランドを?

ヒカル:ブランドを作った最大の理由は、ハイブランドが高すぎるから。僕はお金は持ってますが、やっぱり高いもんは高いですよ。それに着ないんだったら無駄じゃないですか。同じようなこと考えている人はけっこういるかな、と。ハイブランドはものがいい、着心地もいい。けど、もっと安くかったら欲しがる人がたくさんいるんじゃないかなって。何より僕も欲しかったので。

WWD:実際にやってみてどうでした?

ヒカル:想像以上に売れたことにびっくりというか、戸惑いました。服でお金を儲けしようと思っていなかったので、価格帯も本当にギリギリまで安くして、自主生産していたので。3カ月で1億円くらい売れてます。

WWD:ロコンドとコラボすることになった経緯は?

ヒカル:まあ、その辺で田中(裕輔ロコンド社長)に会ったからですね。

田中裕輔ロコンド社長(以下、田中):いやいや(笑)。シューズを作るなら、ということでお声がけいただきました。とはいえ、話をいただいたのはわずか1カ月前。すごいスピードで話が進みましたね。

WWD:反響は?

田中:いやー、すごいの一言です。こんなに反応があるなんて正直びっくりしてます。ユーチューバーのこと、あまり分かってなかったなあと。ヒカルさんはサーバーを落としたいと意気込んでて、それは止めてくれと(笑)。サーバーはかなり増強してるので、大丈夫ですが。

WWD:会見ではかなりの在庫を積んでいると明言していが、実際の数量は?

田中:それは秘密です。かなりの数量を作っているのは本当で、それを出すと株価に影響を与えかねないんで…。

WWD:今後は?

ヒカル:それは田中社長が全てを握ってます。僕は今回のロコンドで作った「リザード」のスニーカーは、かなりいいものができたと思ってます。だからすごく未来を感じていて、今後も「リザード」のシューズを作るならロコンドと思ってます。

WWD:ヒカルさんの中でブランドビジネスの勝利の方程式みたいなものは見えている?

ヒカル:まあ何となく。結局はニーズ似合ったものを作ることかな、と。今はモノが溢れているのでシューズでも数千円の安い量産型の商品は売れない。1万円でもいいものだった売れる。特にシューズの場合は履きやすい靴をいつも履いちゃうじゃないですか。今回の「リザード」のシューズが狙っているのもそこです。あとはどう広めるかになるが、そこは僕の得意分野ではあるので。

WWD:これまではユーチューバーがファッションブランド作ることは少なかった。それはなぜ?

ヒカル:ユーチューバーって基本、お金儲けがしたいんじゃなくて、楽しいことがやりたいんですよ。だからビジネスをする“大人”があまり周りにいない。なので誰から声がかかってコラボとかはあっても、自分からブランドを立ち上げるって人はいなかった。

WWD:ヒカルさんの成功で続く人は出てきそうですか?

ヒカル:僕が今後、さらに成功していったら後に続く人はいるかもしれません。そうなりたいとも思ってます。ただ、ユーチューバーだって、それぞれキャラや抱えているファンも違うので、誰もがデキるとは限らないとは思いますが。

WWD:アパレル企業がユーチューバーとコラボするために必要なことは?

ヒカル:金ですね。

ヒカル:というのは冗談で、ぶっちゃけ面白さですね。ユーチューバーは常に面白いコンテンツを作りたいと思ってて、時代の流れを見て「今これだ」っていう瞬間に、すごい勢いで突っ込んでいく。いいものを作ってるだけじゃダメで、いいものをどのタイミングで、どう伝えるか、をすごく重視しています。

田中:僕はヒカルさんと一緒に仕事をして思いましたが、正直普通の会社には無理だなあと。とにかくスピードが本当に早い。やると決めたら、すごい勢いでどんどん突き進む。ロコンドの場合は僕が全部決めらて、良くも悪くも軽く動ける会社なんで(笑)。

WWD:最後に新型コロナについてメッセージを。

ヒカル:僕もイベントができなくなったりして影響を受けています。今は世界的にも大きな問題になっていますが、早く収束することを願っています。今は明るいニュースが出にくい時期なので、何かしら明るいニュースを届けられればと思っています。

田中:冷静な危機感を持ちつつ、でも過度な自粛モードは控えたい。こんな時でも楽しいものは楽しい。そういったバランスが重要だと考えています。

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H&M財団の“発明賞”、今年はブラジル企業のラボで作るコットンなど

 H&Mへネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ以下、H&M)の創業家一族による非営利財団、H&Mファウンデーション(H&M Foundation)は4月1日、(研究室)での綿花栽培技術を開発したブラジル企業ゲイリー(GALY)を筆頭に、「グローバル・チェンジ・アワード(Global Change Award、以下GCA)」の受賞の5社を発表した。GCAはH&Mファウンデーションが主催するイノベーション・コンペで、過去に受賞したアイデアや技術にはすでに実用化されているものも多数あり、多くの有力企業や投資家も注目している。

 毎年5組を選出し、助成金100万ユーロ(約1億1900万円)を分配。H&Mファウンデーション、アクセンチュア(ACCENTURE)、スウェーデン王立工科大学(Royal Institute of Technology)が提供する1年間のイノベーション促進プログラムの支援を行う。

 今回は175カ国から5893のエントリーがあり、受賞したアイデアは下記の通り。

バイオテクノロジーを用いてラボで綿栽培

 アメリカを拠点に活動するブラジル発のゲイリー(GALY)は、バイオテクノロジーを用いて綿栽培を可能にする技術を開発した。従来のコットン生産に比べて温室効果ガスの排出量を大幅に抑えることができ、水と土地の利用を80%以上削減できる。また従来の方法の約10倍も早く栽培でき、価格は高品質なコットンの市場価格と同じレベルで提供できるようになるという。30万ユーロ(約3570万円)の助成金を手にした。

 ルチアーノ・ブエノ(Luciano Bueno)創業者兼最高経営責任者は「従来のコットン生産には大量の水と土地、非常に多くの種類の化学物質を含んだ高額な肥料を使用する。そしてかなりの量の温室効果ガスを排出する。コットンを苗からではなく細胞から、しかも広大な農場ではなく研究室で作り出せる。ラボ栽培のコットンは土壌や天候に関係なく育てることができ、私たちの地球の資源を消費することもない」とコメントを発表している。

タンパク質から繊維を製造

 アメリカのウェアウール(WEREWOOL)は、タンパク質のDNAから色や伸縮性、はっ水性を備えた生分解性の繊維を製造する技術で25万ユーロ(約2970万円)を手にした。サンゴ、クラゲ、イソギンジャク、カメ、カキ、牛乳から採取するタンパク質をDNAレベルで生地に組み込み、色、伸縮性、通気性、はっ水性のある素材を作る。

ブロックチェーン技術を使ってトレーサビリティーを実現

 ジェネシスインドのテキスタイルジェネシス(TEXTILE GENESIS)はブロックチェーンの技術を用いて、繊維の製造から販売までの過程をトレースする技術を開発して15万ユーロ(約1780万円)の助成金を得た。同社は「ファイバーコイン」と呼ぶデジタルクーポンを発行してその素材の出どころを証明する。「ファイバーコイン」は指紋のような役割を果たし、素材ごとの独自のIDを発行する。この技術は操作や変更、改ざんが一切できず記録された履歴は永久的に残るということで、どれだけ多くの回数使用されリサイクルされたとしても確かめることができるという。

汚泥を分離・洗浄して有害物をなくす

 アメリカのシーチェンジテクノロジー(SEE CHANGE TECHNOLOGIE)は染色や仕上げ加工で出る汚水処理の技術を開発して15万ユーロ(約1780万円)の助成金を得た。同社が開発したのは、強力なジェットエンジンを使用して水と有害な汚泥を分離し、汚泥を扱いやすい粉末状に変えるもの。分離したきれいな水は霧状にして排出されるか、もしくは再利用も可能で、このソリューションは既存のシステムとスマート・ガジェットを組み合わせたものだという。

CO2からポリエステルを製造

 フランスのフェアブリックス(FAIRBRICS)は、温室効果ガスからポリエステルを生産する技術を開発して15万ユーロ(約1780万円)の助成金を得た。CO2を閉じ込め活性化してポリエステルの粒子に変換し、通常のポリエステルと見た目も手触りも変わらないものができるという。

 GCAは“ファッションのノーベル賞”を目指して2015年に創設され、今回が5回目。ファッションをよりサステナブルに変革し、従来の基準を打ち破るような革新的かつ初期段階の5つのアイデアを選考し、そのスケールの拡大を目的としている。

 H&Mファウンデーションの役員でカール・ヨハン・パーション(Karl-Johan Persson)H&M会長は、「H&Mファウンデーションは新型コロナウイルスとの闘いを支援すると同時に、長期的なサステナビリティに取り組む起業家やイノベーターを支援し続ける。GCAにエントリーされるアイデアは毎年すばらしいものばかりで、いつも驚かされる。これらの革新的なアイデアは、それ自体がファッションに対する私たちの考え方に問いを投げかけてくれる。私たちは直線的な古い考え方を捨て去り、地球にポジティブに働くようなサステナブルなモデルへと、もっと早く近づかなければならない。受賞した革新的なアイデアが、私たちファッション業界が自らを改革することの一助となり、また、新たな解決策を見つけられるようなインスピレーションを他者にも与えることを願っている」とコメントを発表した。

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新型コロナで今年の新作発表を一切見送った“時計の王者”にファッションが学べること

 スイスの高級時計ブランド「パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)」が2020年の新作発表を見送った。同ブランドによると、「2月末に世界最大の時計見本市である『バーゼル・ワールド(BASEL WORLD)』が中止を決めたときは、国や地域ごとに披露する予定だった。しかしその後、新型コロナウイルスの感染拡大を受けてスイス本社もクローズし、スイス国内の物流も滞ってしまったため、新作発表を期限未定の延期とした」という。プレスリリースや画像配信も行わない、完全な新作発表の中止だ。

 衝撃的なニュースだが、同時に時計業界やファッション業界が妄信している“新作至上主義”へのアンチテーゼとも受け取ることができる。時計ブランドはこれまで、1~3月にスイスで新作を発表することを常としてきた。しかし同時期に数百~数千点の時計が発表されれば、そのほとんどは埋没してしまう。「パテック フィリップ」や「ロレックス(ROLEX)」のような人気ブランドにおいては、“新作発表の場がなければ新作は発表しない”という考え方があってもよいのかもしれない。

 2つのブランドに共通するのは“定番力”だ。“確実性”と言い換えることもできるだろう。「パテック フィリップ」の“アクアノート”や“ノーチラス”、「ロレックス」の“エクスプローラー”や“GMTマスターII”などがそれに該当する。数十万~数百万円の投資に見合うだけの認知度があり、仮に数年、十数年後に2時流通市場に回すとしても高値が期待できるブランドであり商品だ。

 現在のようなネガティブな雰囲気の中では、消費者は“確実性”を求める。一朝一夕に“定番”をつくることはできないが、“コロナショック”が新作頼みのブランディングを見直すきっかけにはなるはずだ。「パテック フィリップ」の決断には時計業界のみならず、ファッション業界も参考にできる点がある。

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「ジーユー」はD2C的? EC専業ブランド=D2Cだと勘違いしているファッション業界人へ

 ファーストリテイリング傘下の「ジーユー(GU)」が、消費者の声を商品企画に反映する取り組みを強化しています。「ジーユー シューズラボ(GU SHOES LAB)」という取り組みがそれで、パンプスに対する苦情(ECの商品レビューや店頭で寄せられた声など)をもとに開発した第1弾商品の“マシュマロパンプス”は、18年8月の発売後、約1年で170万足が売れました。通常、同ブランドでは「数万足売れたらヒット」だというので、いかに反響が大きかったかが分かります。手応えを得て、同取り組みではスニーカーやメンズのビジネスシューズなども開発。先日は、夏物のエスパドリーユシューズやスポーツサンダルも企画したと発表していました。加えて、靴以外のアイテム、たとえばバッグなどでも同様の取り組みを始めています。

 この「ジーユー」の取り組みに関連して、先日印象的な取材があったので紹介させてください。それは1月に行ったタクラム(デザイン関係に強いコンサル企業)の佐々木康裕ディレクター兼ビジネスデザイナーの取材。佐々木ディレクターは「D2C 『世界観』と『テクノロジー』で勝つブランド戦略 」という本も書かれており、日本でD2Cビジネスの話になると第一人者としてよく登場される方です。D2Cはファッションやビューティ分野でもバズワード化しているので今更説明不要かとも思いますが、Direct to Consumerの略。顧客直結型ビジネスなどと訳されます。

 その佐々木ディレクターに、当社のD2Cビジネスの番記者、「WWDビューティ」高山と「WWDジャパン」石塚がインタビューに行くというので同行しました(インタビュー全文はこちら)。その際に佐々木ディレクターは、「D2C以外のビジネスをしている人がD2Cについて一番驚く点は、(D2Cは)客のデータやフィードバックがとにかく大量に入ってくること」「D2Cとは、テクノロジーを駆使してその大量のデータを解析しながら、プロダクト、マーケティング、店作りに生かしていく手法」と話されていました。

 D2Cの具体例の一つとして佐々木ディレクターがあげていたのが、1月に鳴り物入りで日本上陸したサンフランシスコ発のスニーカーブランド「オールバーズ(ALLBIRDS)」です。同ブランドは「たとえば『購入した商品をこう使ったらこんなことが起きた』『この商品のここが気に入った』『こういうシーンで友人にプレゼントした』といったような大量の顧客からの声を集めて、商品を随時改善している。それゆえ、シグネチャーモデルのスニーカーでさえ、実は既に何十回も改善を重ねている」とのこと。そうしたプロダクト開発の手法は、「年2回ないしは4回新作を発表して、それで終わりのアパレルのモノの作りというより、出したものをどんどんアップデートしていくソフトウエア的な発想」と話は続いたんですが、皆さんこれを聞いてきて疑問に思いませんか?「それって『ジーユー シューズラボ』がやっていることとほぼ同じじゃないの?」と。

 その疑問をそのまま佐々木ディレクターにぶつけてみました。「『オールバーズ』を始めとしたD2Cブランド群は、『ジーユー』が行っているような消費者の声の反映以上に、深い何かをやっているんでしょうか?」と。答えはズバリ「やっていることはD2Cブランド群も『ジーユー』も変わらない」でした。「『ジーユー』は(問屋や小売店を挟む卸ビジネスではなく)自社店舗での販売であり、アプリもある。そういう意味で、D2Cビジネスの勘所をつかんでいる」んだとか。

 というわけで、ようやくこの記事のタイトルである「『ジーユー』がD2C的だ」という話につながるわけですが、D2Cって、佐々木ディレクターの言葉を借りれば「ビジネスモデルであると同時に、“早期に顧客を獲得して売り上げを伸ばしていく”というステージの名前」です。そのステージとは「日本の市場では売上高20~30億円前後」というのが佐々木氏の考え。他方、「ジーユー」の2019年8月期の売上収益は2387億円ですから、ケタが2つ違います。その巨艦をして、顧客の声を収集して改善を重ねるという、小規模ブランドの方が実践しやすいD2C的サイクルにトライするって、猛烈に大変なことだと容易に想像できます。「ジーユー」のアプリとか見ているだけでも、商品レビュー数多いですしね。

 とはいえ、もちろん「ジーユー」の売り上げのうち、D2C的に作っている商品はごくごく一部ですから、「ジーユー」=D2C的と言い切るのには語弊があります。あくまで、一部分を捉えてそういう見方もできる、という話ですので悪しからず。ちなみに、2月19日付の日経新聞には、「ジーユー」と「ユニクロ(UNIQLO)」の親会社であるファーストリテイリング柳井正会長兼社長のコメントとして、以下が掲載されていました。「顧客がほしいものをそう簡単にできるわけがない。(D2Cは)完全に趣味の商売だ」。確かに、売上高2兆円超えのファーストリテイリングと比べると、いって数十億~数百億円規模のD2Cブランドのビジネスは「趣味の商売」の域だよなと納得すると同時に、昨今世の中に広がるD2Cビジネスへの過度な期待(D2C神話)をぶった斬る冷静な目線は、ファッションビジネスの酸いも甘いも知り尽くす経営者の視点として重みがあるな~と思います。というか、ファーストリテイリングとして今まさに客の声をいかに収集し、分析し、企画や売り方に反映していくか、という部分にかなり腐心している(「ジーユー」だけでなく本丸の「ユニクロ」でもかなり強化している)からこそ、「客のニーズに沿った商品開発なんてそんな簡単にできるようなもんじゃないんですよ。それなのにD2Cって言葉だけが一人歩きして軽々しく言い過ぎですよ」という戒めのようにも私には聞こえます。

「D2Cに本腰入れます」
に感じるモヤモヤ

 さて、少し話の方向性が変わるんですが、D2Cがバズワード化したことで、ここ数シーズンは大手や老舗と呼ばれるようなアパレルメーカーや専門店企業からも「うちもD2Cを始めます」「D2Cに本腰を入れます」といった声をよく聞くようになりました。「デザイン面だけでなく、ビジネスモデルにおいてもトレンドに飛びつきがちなファッション業界らしい動き」などと揶揄する向きもありますが、時代に沿ったビジネスの手法をどんどん取り入れていこうとチャレンジすること自体は、私は悪いことではないと思います。

 ただ、大手や老舗のアパレルメーカー、専門店が「うちもD2C始めます」と言うとき、「それって単に、『インフルエンサーを起用してEC専業ブランドを始めます』っていうだけの意味で使ってますよね……?」と思ってしまうケースも多く、それにはなんだかモヤっとします。確かに、実店舗運営を前提にしてきた大手や老舗のファッション関連企業にとっては、EC専業でブランドを立ち上げるというだけで店舗運営コストがなくなります。加えて、インフルエンサーがSNSで発信してくれるから広告宣伝費も圧縮される。さらに直近でいえば、店頭がない分コロナリスクも減る。以上により、「D2Cってなんて合理的なビジネスモデルなんだ!」という思考になるんだと思います。

 それだけで十分満足しているというのならそれでいいんですが、老婆心ながらそれってもったいないな、と思いまして。前述のタクラム佐々木ディレクターの言葉を思い出していただきたいですが、顧客と直接つながることで大量に流れ込んでくるデータを解析し、インターネットサービスを作るようなマインドセットでフィジカルなモノ作り(ブランド構築)に挑む、というのがD2Cの本質なのに、販路をECにするとかインフルエンサーを起用するとか、そういう手段や表層の部分だけでD2Cを実践したと思い込み、満足しちゃうのはもったいないです。本質の部分はもっと先にあって、それをやればさらに見える景色があるかもしれないのに。

 余剰在庫、人材採用難など、近年のファッション業界はもとより問題山積で、そこに今回のコロナショックが追い打ちをかけています。そうした難局面へのアプローチ案の一つ、次の時代への展望の一つがもしかしたらD2Cなのかもしれません。だからこそ、いたずらにその表層のみを取り入れるのではなく、D2Cの本質をつかんで、ファッションビジネスをアップデートしていくようなことにつながっていけばいいなと、業界紙のいち記者として思っています。

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IT賢者と徒然対談 Vol.1 国内女性の半数が50歳以上になる2020年のファッション&ビューティとは?

村上要「WWD JAPAN.com」編集長(以下、ムラカミ):CKRさん、新年度が始まりました。「WWDジャパン」や「WWDビューティ」の記事を、IT賢者としての読み解いてもらう企画のスタートから1年が過ぎようとしていますが、本年度はコレを発展させて僕との徒然な対談、というかおしゃべりから、ファッション&ビューティ業界に新しい気づきや視点が提供できれば、と思っています。で、対談の1発目は、新たなディケイド(年代)に突入し、新型コロナウイルスが収束した後は新たな時代が到来しそうなので、2人で未来を語り合ってみたいと思うのですが、いかがでしょうか?

CKR:よろしくお願いします。徒然対談、了解です(笑)。こういうご時世ゆえ、未来予測は難しいですが、1つだけ、確度の高い予測があります!

ムラカミ:お、さすがIT賢者。なんでしょう(ワクワク)?

CKR:今年30歳の人は20年後、50歳になるんです!

ムラカミ:え、めちゃくちゃ当たり前なんですけれど……。

CKR:でもコレ、意外と重要なんです。毎年「何人が生まれて、亡くなる」とか、「何人が入国して、出国する」ということは、ある程度、見当がつくんです。そして、ここから導かれた「人口推計」を分析すると、見えてくることがあります。例えば2020年は、我が国の女性の2人に1人が50歳以上になります(50歳以上:3248万人、49歳以下:約3193万人)。また、42年には65歳以上が約4000万人となり、高齢社会のピークを迎えます。これは、かなり確度の高い未来なんです。

ムラカミ:なるほど。対談がアカデミックな方向に転びそうで、安心してきました(笑)。

CKR:「2020年、国内の女性の半数が50歳以上になる」。ここに大きな市場があるような気がします。昨年は、花王の“第二の皮膚”形成技術が、話題になりました。テクノロジーを活用したビューティ&ヘルスケアは、20年代、さらに盛り上がるのではないでしょうか。ムラカミさん、ここ数年、ビューティ&ヘルスケア業界で、気になる動きはありましたか?

ムラカミ:最近面白いな、と思ったのは、「ヘレナ ルビンスタイン(HELENA RUBINSTEIN)」がこの世代を“スパークリングブーマー“と呼んで、徹底リサーチ。高額スキンケアラインのプロモートに成功していることでしょうか?元々「テクノロジー」のイメージが強いブランドでしたが、10年前はオーガニック市場の隆盛に押され、かなり苦しかった印象です。それが奇跡のカムバックですね。

CKR:「ヘレナ ルビンスタインといえばマスカラ」のように、独自のポジションを持つブランドにとって、輝かしい時代の到来かもしれませんね。すでに消費者との間で「信頼」が形成されている気がします。アクティブな経験をしてきた世代は、好奇心が旺盛。「スキンケアしながら、シミやソバカスを隠す」のように複数の効果があれば、高額でも買ってくれそうです。「シンプルな取り扱いで、すぐに効果が実感できる」なら、テクノロジーとの相性も良いですね。エイジングケアをスタートしたい、30代後半にもリーチできそうです。

ムラカミ:そもそもファッションやビューティ業界は、「20代後半~30代前半」にとらわれすぎている気がしますから、「ヘレナ ルビンスタイン」のように「私たち、スパークリングブーマー世代のことを真剣に考えています!!」と意思表示してくれるのは「信頼」の源になりそうです。時々いるんですよ。「30代に向けて作っていますが、実際は、もっと年配の方が買っています。書いてほしくありませんが」って言う人。ハッキリ言って、年長者をバカにしていると思います。良くない!!テクノロジーと言えば、最近はヘルスケアに関するデータも入手しやすい環境が整いつつあると聞きました。

CKR:Apple Watchのように身に着けるデバイスによって、歩数、心拍数、睡眠情報などを簡単に計測できるようになりました。ジャイロスコープと呼ばれる姿勢や動きの速度を計測する装置や、心拍センサーが搭載されたことが大きいです。コンタクトレンズのように透明で柔軟性があり、不燃性、耐久性にも優れた充電池も、米国の大学で開発されました。2年以内の市販を目指すという情報もあります。「肌のかぶれは大丈夫?本当に欲しい?」という課題はありますが、繊維に電池が組み込まれ、コンピュータが衣服に溶け込む可能性もあるそうです。

ムラカミ:昨年は、リーバイス(LEVI’S)がグーグル(GOOGLE)とタッグを組んで、導電繊維を織り込んだGジャンを発売しました。袖口で通話や音楽再生などの操作が可能だそうです。開発に携わった方に話を聞きましたが、別に革新的なモノを作ろうと思ったワケではないそうです。むしろ「永遠に定番なGジャンが今後も定番であり続けるには、テクノロジーとの融合が欠かせなかった」と聞いて、納得したのを覚えています。テクノロジーと、それを介して得られるデータは今後「当たり前」になるのでしょうね。

CKR:ヘルスケアに関する技術進展で言うと、2003年にはヒトゲノム(ヒトの遺伝子情報のセット、タンパク質に変換される配列情報)が解析され、データとして扱えるようになりました。ヒト一人分の解析コストは、01年時点で約1億ドル(110億円)。それが17年には、たったの1000ドル(11万円)、10万分の1になりました。ITとデータを活用して生命科学にアプローチする市場は、今後さらに広がります。「健康、美しくなるために」という概念が、テクノロジーによって大きく変わりそうです。ゲノム解析技術は、新型コロナウイルスの感染経路の解明にも役立ちます。変異するウイルスの特徴、検出された場所を分析することで拡散の仕方を解明できるんです。また、投薬シュミレーションに活用することで、ワクチン開発の速度をあげることも可能です。解析速度は、5年ほど前に比べ、100倍以上向上したと言われています。新時代の幕開けです。

CKR Kondo : 大手通信会社に入社後、暗号技術/ICカードを活用した認証決済システムの開発に従事。その後、欧州/中東外資系企業向けITソリューションの提供、シンガポール外資系企業での事業開発を経験。企業とその先の利用者が必要とするもの、快適になるものを見極める経験を積み、ウェアラブルデバイスやFree WiFiを活用したサービスインキュベーションを推進。現在は、米国、欧州、アジア太平洋地域にまたがる、新たなサイバーセキュリティサービスの開発を推進中

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就任半年で黒字化 ピーチ・ジョン社長に聞く今後のアジア戦略

 1988年にカタログ1号を発刊した「ピーチ・ジョン(PEACH JOHN以下、PJ)」は、1990年代に欧米のトレンド感ある下着やオリジナルの下着を感度の高いビジュアルで紹介し、日本の女性たちに下着のおしゃれを楽しむことを提案してきた。「PJ」のカタログは日本版「ヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA’S SECRET)」とも呼ばれ、続々とヒット商品を生み出して日本の下着市場を大きく変えた。一方で「ヴィクトリアズ・シークレット」の親会社であるLブランズ(L BRANDS)は、同ブランドの業績悪化から20年2月にヴィクトリアズ・シークレットの株式55%を投資会社のシカモア・パートナーズ(SYCAMORE PARTNERS)に5億2500万ドル(約572億円)で売却した。ピーチ・ジョンは2006年にワコール(WACOAL)と資本業務提携し、翌年にはワコールホールディングス(HD)の子会社に。08年には香港に海外1号店をオープンし、海外進出も果たした。しかし近年は、消費者の購入方法や嗜好が大きく変化し、「ユニクロ(UNIQLO)」などの異業種による下着市場参入が増えて競争が激化したこともあり、減収が続いていた。その状況を打開するべく19年4月に就任した杤尾学ピーチ・ジョン社長に、現状と今後の戦略を聞いた。

 社長に就任してから約半年間で「PJ」と「サロン・バイ・ピーチ・ジョン(SALON BY PEACH JOHN以下、サロン)」のカタログを休刊、若年層をターゲットにした「ヤミーマート(YUMMY MART)」を終了。また、国内8店舗、海外2店舗を閉店するなど、マイナスの印象を受ける動きが続いた。その経緯に関して杤尾社長は、「社長就任後、今の問題点は何かを徹底的に分析した。カタログビジネスから今のマーケットに合うビジネスモデルの構築を目指した結果、“自社EC最優先”と“店舗の効率化”という結論に至った」と話す。就任早々に採算が取れない店舗を閉店したことで店舗効率は大きく改善し、ほぼ全店が19年7月以降は前年の売り上げを超え、第2四半期は黒字に転換した。ECについては、「自社EC、アマゾン(AMAZON)、ゾゾタウン(ZOZO TOWN)、ワコール公式ウェブストアと3つの販路がある。アマゾンは40代で定期購入者が多く、ゾゾタウンは安い下着を探す若い消費者、ワコール公式ウェブストアでは、『ワコール』ブランドよりも求めやすい『サロン』を求める顧客が多い。このように各サイトのターゲットに合わせて商品構成を変えて差別化し、全ての販路の売り上げが伸びている」と言う。商品は変えられないので、各チャネルに合った売り方を追求した結果だ。

 30年以上ブランドの顔であったカタログを休刊した理由については、「毎シーズン200万部発行して電話やファクスで注文をとる時代ではなくなった。カタログの製作には経費もかかるし、ECにシフトする必要があった。HP、メルマガ、ライン(LINE)などのデジタル広告を通して消費者に商品を知ってもらうきっかけをつくり、ECサイトに誘導することが売り上げにつながっている」と言う。カタログはあくまで“休刊”であり「いいカタログだったという声も多いので、必要性があれば発行する可能性もある」と加えた。

定番となる“バストメイクブラ”
のヒットが黒字化をけん引

 ピーチ・ジョンの親会社のワコールHDは19年3月期でピーチ・ジョンによる減損損失を約56億円計上している。19年4〜12月期のピーチ・ジョンの業績は、売上高が78億円(前年同期は80億円)、営業損益が1億6800万円の黒字(同2900万円の赤字)だった。20年3月期は、国内は黒字化を見込んでいるが、香港のデモおよび新型コロナウイルスの影響による中国市場の落ち込みが懸念される。

 ピーチ・ジョンの黒字化をけん引したのが、19年2月に発売した“ナイスバディブラ”(19年12月25日までに累計31万枚以上を販売)と同年7月に発売した“スマートブラ” (2019年12月25日までに累計 21万枚以上を販売)だ。時代を反映した“ラクで美しいバストメイク”を目指す着用感を大前提にした機能を持たせたのが好調の要因だろう。今年1月に発売した“いつでもジャストブラ”も好評で、機能とファッション性を兼ね備えたブラジャーという同社の強みをアピールした商品になっている。杤尾社長は、「これらの定番商品を一過性ではなく、写真、キャッチコピー、ポイント訴求などアプローチを替えながら、長く売れるよう工夫し、ロングセラーにしていく」と話す。今年1月には10代後半から20代前半の世代に向けた新ブランド「ガールズ バイ ピーチ・ジョン(GIRLS BY PEACH JOHN)」をスタートさせた。その理由に関して「従来の顧客の年齢が高くなってきており、若年層にアプローチできていないから。この新ブランドを通してこれらの層にも『PJ』を知ってもらい新客獲得につなげたい」と語る。

アジアで
グローバルブランドとして確立

 現在のピーチ・ジョンの課題に関しては、「中国市場の収益率をアップし、『PJ』をグローバルブランドとしてアジアで広げていくことだ。現在、中国、香港、台湾でビジネスをしている。中国最大手EC企業アリババ(ALIBABA)のプラットフォームを使えば、各地に実店舗を出店せずとも中国からアジア市場全体を狙える。日本市場でも改革は進めるが、最優先はアジアだ」ときっぱり。商品に関しては、日本で販売しているものと同商材で色など多少のアレンジを加えるという。杤尾社長は02年からワコールの中国ビジネスに携わり、上海に8年、北京に6年滞在した経緯があり、現地とのパイプも太い。17年に中国ワコール董事兼副総経理に就任していることもあり、現在は日本と中国半々の生活を送っている。「年間2億人の女性が下着を購入するというアリババ傘下の中国最大ECサイトである『タオバオ(TAOBAO)』の消費動向分析データを元にニーズを分析すれば。確実に売り上げが伸ばせるはずだ」。

女性目線で商品を作り
表現するのが「PJ」の強み

 杤尾社長は「カタログ休止や店舗閉店は、次のステージに進むための踊り場に過ぎない」述べる。「PJ」のブランドコンセプトは“元気・ハッピィ・セクシー”と創業当時から変わらない。「ブランドコンセプトを時代に合わせて表現することが重要。女性目線で商品を作り、表現するのがわれわれの強みだ。世の中の女性が欲しいと思うものをつかんでおり、その訴求力もある」と栃尾社長。ピーチ・ジョンは従業員の98%が女性であり、うち約30%がワーキングマザーだ。また、女性の管理職は全体の63%で、執行役員3人は全て女性、うち2人が子どもを持つ母親だという。

 最近の下着業界では、体形を問わず下着のおしゃれを楽しむ“ボディーポジティブ”が主流になりつつあるが、日本ではそれを表現することはなかなか難しい。それをリアルサイズモデルの募集やお笑いコンビのフォーリンラブとバービーとのコラボレーションで表現し、多くの女性の共感を得ているのも女性目線を貫くピーチ・ジョンだから。「女性主導で、下着業界のフロントランナーとしてトレンドを作って行くのがわれわれの使命だ。私の仕事はその基盤作りをサポートし、効率化することだ」。創業当時から女性による女性のためのビジネスを行ってきたピーチ・ジョン。これから、「PJ」がアジア市場でグローバルブランドとして成長できるかどうかに注目が集まる。

川原好恵:ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルス分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身

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新型コロナに負けるな! 業界人が緊急メッセージPart2

 新型コロナウイルスの猛威によって、東京五輪・パラリンピックをはじめとした各種イベントが延期・中止となっている。外出控えの要請、海外渡航の自粛なども広がり、生活や仕事が制限されて、世の中に暗いムードが漂っている。消費市場も過去にないほどの落ち込み方を見せており、アパレル業界からも苦しい声が聞こえてくるが、こんなときこそ人々の気持ちを明るくするファッションの力が必要だ。弊紙では業界を代表するクリエイターやビジネスパーソンから緊急メッセージを募った。(この記事はWWDジャパン2020年3月30日号からの抜粋です)

お客さまをいつも以上にHAPPYに!

設楽洋/ビームス社長

 店頭にわざわざいらしていただいたお客さまに対してはいつも以上にHAPPYになっていただけるように接客をし、店頭が煩雑でないことを逆に考え、時間をかけた丁寧なコミュニケーションをとるよう指導している。店舗スタッフがテレワークをする場合は、スタイリングやブログなど、ビームス公式ウェブサイトのスタッフ投稿コンテンツを使って、明るくHAPPYになれるような情報をどんどんアップして、自らPR活動できるような体制を積極的に取る。イベントができない分、数多くやっているスペシャルコラボの取扱店を広げるトライアルも行っている。全てのことを今まで以上に明るく元気に!ビームスの力の見せ所だ!

従業員やお客さまとの
関係を守るため、
セーフティネットをしっかり組む

山口絵理子/マザーハウス 
代表取締役チーフデザイナー

 生産地である6カ国のうち、半数以上が国レベルでの勧告で稼働停止中です。ストップしている工場の従業員に給与を払いながら、スタッフの健康・安全を死守するよう日々連携をとっています。それぞれがベストを尽くすこと、そして資金的にしっかりセーフティネットを組むことで、一緒に働いているスタッフや工場、そしてお客さまとの関係をしっかり守っていく。全社としてデジタルシフトを加速中です。また、デザイナーとしてはこれまで作ることが中心でしたが、届ける部分に目を向けるチャンスだと思っています。

自分自身や社会を見直す機会に

森康洋/カッシーナ・イクスシー社長

 経済を回すのは重要ではあるが、それらを支える「人」なしには成り立たない。色々な情報が入り乱れているが、惑わされず今は健康と安全を最優先すべきだ。国内の連帯のみならず、全世界、人類の連帯が試されている。当社は輸入ビジネスを行っているので、海外の取引先とお互いサポートし合っていく。今こそ自分自身や自分たちが住んでいる社会を改めて見直す機会。本当の敵はウイルスではなく、われわれ人類なのではないか。

勇気を持ち、想像力を働かせ、
#経済を止めるな

三浦崇宏/GO代表

 仕事は、社会の変化と挑戦への支援なので増えている。ぼくの立場で伝えたいことは二つ。まず「わからない」と言うことを恐れないでほしい。自分は「わかっていない」ことをきちんと認識していることこそが、今の時代の知性だ。そしてもう一つは「#経済を止めるな」。ネットを活用したライブや授業、宅配やホームパーティのように新しい、今の時代の消費行動がある。勇気を持って、想像力を働かせて、#経済を止めるな。


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新型コロナの影響が深刻なイタリアンブランドのジャパン社にアンケート 「今、できること」は3つ

 「WWDジャパン」は3月25日(小池百合子・東京都知事が週末や夜間の外出自粛要請の記者会見を開いた日)を締め切りに、イタリアンブランドのジャパン社やディストリビューターを対象に、新型コロナウイルスに関するアンケートを実施した。(この記事はWWDジャパン2020年3月30日号からの抜粋です)

 まず現状においては、ほとんど全てのイタリアンオフィスと工場が23日に閉鎖されたが、本国とのリレーションに問題はなく、日本の組織および店舗運営もテレワークや営業時間の短縮などは強いられているものの大きな混乱はないようだ。日本の店舗においては、自粛ムードに伴うトラフィックの減少などで売り上げは落ちているが、「営業できている日本と、ショップが開き始めた中国が大きな支え」。特に20日からの3連休は「顧客の来店が増えた」などの声が多く、トラフィックは日を追うごとに回復傾向が鮮明だった。ただ25日の不要不急の外出自粛を要請した会見で、28、29日は多くの商業施設が営業を自粛したため、回復基調が持続するかは不透明だ。

 2020年春夏の商品、商談に欠かせない20-21年秋冬のサンプルについては、イタリアの生産ラインが直前まで機能していたため、大きな混乱はない。ただ一部コラボラインは、航空便から船便での輸送に切り替えたため、発売が1カ月延期されるなど、若干の影響を与えている。問題は、20-21年秋冬の商品だ。一部ブランドはすでに「秋冬の納品は、若干遅れる見込み」と回答。ウィメンズに比して売り上げ規模の小さく、発表・受注・生産のタイミングが早いメンズにおいては、5月にお披露目予定だった21年プレスプリングを見送るブランドもある。イタリアでの生産再開が遅れると、問題は深刻化しそうだ。

 それでも各社は、「今、できることは何か?」を模索し、試行錯誤をスタートした。大きな流れは3つ。1つ目は、こんなときでもロイヤリティーの高い既存顧客に対するCRM(顧客関係管理)の強化だ。当面はデジタル施策、秋以降はリアルなプロモーションで「トラフィックに頼らず、顧客とのコミュニケーション強化を図る」ブランドが多い。商品を購入してくれた顧客へのスペシャルケアなども始まった。

 2つ目は、特に苦戦を強いられている店頭での販売員のモチベーション向上。いつも以上のキメ細かな提案を目指して個別に商品を提案するカスタマイズレターを送るなど、地道な努力を重ねている。気分転換や新たな発見を狙い、スタッフの店舗間異動や研修を実施するブランドもある。フランス系のメガブランドでは、スタッフのシフトを完全交代制(複数のグループに分け、時間・曜日ごとに総入れ替え)にすることで感染拡大を予防しながら、空き時間にeラーニングなどを導入する。

 3つ目はEC。日本で自社ECを持たないブランドは、オープンやリニューアルの前倒しに向けて始動。改めてECサイトやSNSをプロモートするなどのアクションがスタートした。


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国内669店舗 中古衣料「セカンドストリート」のゲオが世界戦略を加速

 ゲオホールディングス(愛知県、遠藤結蔵社長)傘下のゲオは、中古衣料売買の「セカンドストリート」「ジャンブルストア」を運営し、衣料品の2次流通マーケットをけん引する。同社が“リユース系リユース”と呼ぶ衣料、服飾雑貨、家具、家電などの売上高は、2019年3月期で前期比16.5%増の524億円となり、本業のCDなどのレンタルが右肩下がりとなる中で、同社の利益に大きく貢献している。

 国内に669店舗を抱える同社だが、海外戦略にも積極的だ。15年にはセカンドストリートUSA(2ND STREET USA)を設立してカリフォルニアに5店舗、ニューヨークに1店舗をオープンした。さらに17年にはマレーシアにセカンドストリートトレーディングマレーシア(2ND STREET TRADING MALAYSIA)を設立して、3店舗を運営する。海外事業を統括する久保幸司ゲオ常務取締役に話を聞いた。

WWD:2019年2月にアメリカ6店舗目となるセカンドストリート ノーホー店をニューヨークに出店した。アメリカ事業は順調?

久保幸司ゲオ常務取締役(以下、久保):順調だ。アメリカには日本型の編集を行う2次流通店が、つまり競合がない。さらに日本ブランドなどを中心に高価格帯のアイテムをそろえる古着店もなく、これが受けている。ただしアメリカに進出する日本の2次流通企業は増えており、われわれが今後郊外に出店していった場合、状況は変わるかもしれない。

WWD:アメリカでの客単価は?

久保:約60ドル(約6480円)だ。日本は郊外型店舗が中心であり、それらをならすと約3000円になるので倍以上だ。アメリカの同業他社の客単価は35~45ドル(約3780~4860円)でこれに比べても高く、また彼らの中には仕入れ値を定価の3割と決めている店も多い。しかしセカンドストリートUSAでは、日本で培った目利きのノウハウを生かして買い取り品にプレミアム価格を付けることもあるし、その逆もある。結果として、ファッション好きに支持される高感度なブランドを集められている。

WWD:アメリカ1号店であるセカンドストリートUSAメルローズ店がオープンして1年ほどは日本から古着を輸出しており、現地での“クローズドサークル”を目指していたが買い取りはできている?

久保:当初セカンドストリートの認知がなく苦戦したが、アメリカにはそもそもリユース文化が根付いており助けられた。初動こそ遅れたが、順次オープンしたカリフォルニアの1~3号店では現地買い取り品で商品をまかなえている。

WWD:アメリカでは、どういったアイテムが売れている?

久保:日本と変わらない。なぜならユーザーは、店舗で売られているものを買い取りに持参する傾向にあるからだ。

WWD:アメリカ戦略の今後は?カリフォルニアのドミナントは完了という認識でよいか?

久保:いや、まだだ。カリフォルニアのドミナントは続ける。では、なぜニューヨークに出店したのかと思うだろうが、理由は2つある。1つ目は、東海岸で重衣料に挑戦してみたかったから。2つ目に、西海岸のライバル企業が東海岸で成功しているからだ。あくまで検討段階だが、中央部のシカゴやテキサスもリサーチ中だ。

WWD:18年に1号店がオープンしたマレーシアのその後についても聞きたい。

久保:19年9月に3号店であるセカンドストリートBU店がオープンした。セカンドストリートトレーディングマレーシア設立時の目標通り、20店舗オープンを目指す。

WWD:マレーシアでの売れ筋は?

久保:やはり“メード・イン・ジャパン”は人気だ。ただし高価格という難点もある。そこで現地の消費者が新たな価値として認めたのが、「ユニクロ(UNIQLO)」など“日本企業による服”だ。厳しい日本人の基準をクリアした服であれば、中国やベトナム製であっても優れていると判断される。

WWD:それを販売するゲオも日本企業であり、それらが一体となってブランド化されている?

久保:ありがたいことに。また、マレーシアでは小売り以上にディーラーへの卸がビジネスの主であり、7割を占める。古着はベール(小分けして袋詰めされた状態)で売買するが、現地ディーラーに「セカンドストリートのベールは質が良い」と好評だ。

WWD:次なる世界戦略のステージは?

久保:台湾だ。19年8月に現地法人、セカンドストリート台湾(2ND STREET TAIWAN)を設立した。台北にドミナント出店を予定している。20年3月期中のオープンを目指していたが、新型コロナウイルス拡大の影響もあり、夏ごろにスライドしそうだ。代わりに4月24日から7月31日まで、ポップアップショップを台北市内の商業施設「微風南山(BREEZE NAN SHAN)」内にオープンして、テストマーケティングを行う。台北には21年3月までに2、3店舗を作りたい。アジアにはまだまだ伸びしろを感じており、タイやカンボジアも視野に入れている。“現地法人を作ってドミナント出店”という流れで拡大していきたが、実はそれをまとめる組織や人材がなかった。そこで4月1日から私が海外3法人を統括することになった。ますます海外戦略を加速させたい。

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“生きることとは?”を問いかける 「ハイパーハードボイルドグルメリポート」の上出遼平氏が書籍に込めた思い

 2017年にテレビ東京で始まった深夜番組「ハイパーハードボイルドグルメリポート」は、「廃墟に暮らす元人食い少年兵」「マフィアの晩餐会」「カルト教団の村」など、“ヤバい世界のヤバい奴らのヤバい飯”をテーマにした“自称グルメ番組”。メディアが通常立ち入らないような世界中の“ヤバい”エリアを取材し、食を通じて各地に生きる人々のリアルを伝えるその番組は、当初は深夜の単発放送ながら大きな衝撃を与え、熱狂的なファンを獲得した。

 構想から3年半――3月19日にこの番組の書籍「ハイパーハードボイルドグルメリポート」(朝日新聞出版、税抜1800円)が出版された。番組企画から取材、編集まですべてを手掛けたテレビ東京ディレクターの上出遼平氏が執筆し、危険地帯取材の裏側や、番組本編に収まりきらなかったエピソードを多数収録。「書籍化にあたり番組の劣化版にだけはならないように心がけたら、番組よりもおもしろくなった」と語る上出氏に話を聞いた。

WWD:番組「ハイパーハードボイルドグルメリポート」を初めて見たときに僕もかなり衝撃を受けました。なぜ今回、書籍にしようと思ったんですか?

上出遼平(以下、上出):映像は伝わる情報量が多いので、あくまで視聴者は受動的に見ます。僕としては、本当は誰かをこの旅に連れて行きたいという思いがあって、でもそれは物理的にはできないので、疑似的に体験してもらうしかない。それには受け手側が能動的に感情を動かしたり、想像力を働かせたりする必要があります。そのためには書籍が最適な伝達手段だと思って、今回の出版に至りました。この本には、テレビでは伝えられないエピソードや現地での僕の心情や葛藤を率直につづっています。一見露悪的なだけの番組に見えるかもしれませんが、「そんなヤバい薄汚い世界の先に僕はこんな美しいものを見てきた」ということを伝えられればと思っています。

WWD:これまで番組では多くの場所にロケに行っていますが、この本では4カ所に絞って書かれています。それはどう選んだのですか?

上出:基本的には僕がロケに行くんですが、どうしても難しいときは、別のディレクターにお願いしています。なので、この本では僕が実際に行った4カ所(リベリア、台湾、ロシア、ケニア)に絞って話を書いています。現在僕を含めて、4人のディレクターがこの番組に関わっているのですが、番組に台本があるわけでなく、撮影するものが決まっていないので、現場に行ってみないと何が起こるか分からない。自分で考えなければならず、かなり過酷なロケで、自分の好奇心で撮影を進められるモチベーションの高い人にしか任せられません。

WWD:番組では世界のヤバい(危険な)ところに行って、そこで現地の人が何を食べているかを取材しています。似た番組はほかにもあったと思うのですが、「ハイパーハードボイルドグルメリポート」ならではの特徴は?

上出:現地の人を主役にしたところですかね。他の番組では現地に行く日本人の旅人が主役ですから、主人公である旅人を、ディレクターやカメラマンが撮影するという作りです。その中で現地の文化や現地の人々は主役ではなく“舞台”になります。一方、この番組は僕が一人でその国へ行き、現地のコーディネーターと二人でロケを進めます。カメラを回すのもディレクションするのも僕、被写体は現地の人々です。だから主役は現地に暮らす人々。そして大勢で行くよりも、マンツーマンで話した方が、彼らは本音で話してくれやすい。それがこの番組では重要なんです。

WWD:取材に行くときに恐怖心はありますか?

上出:ゼロではないですが、一番大きいのは日本を出国するときで、現地だとアドレナリンが出ているのでそこまで恐怖心はなく、それよりも撮ってこなきゃという思いの方が強い。もともとこんな番組の企画書が通るとは思ってもいなかったので、やり始めた使命感はあります。企画書には「僕が一人でテレビクルーが入れなかったところに行って、生きて帰ってきます。自信があります」と書いていたんですが、普通だとそんなの通らないですよね(笑)。

 ただ「撮ってこなきゃ」とアドレナリンが出て、どんどん進んでいったときには、逆に意識的に恐怖心を持たないといけないなと思っています。危なくなりそうな場面では「ここは怖がらないといけない場面だな」とスイッチを入れるんですが、そのバランスは難しくて、怖がりすぎてもダメなんです。世界共通で「びびっているやつが襲われる」のは常識なので。内心はびびっていても、ポーズとして堂々としていることが重要なんです。ただ本の最後に「この旅は絶対に真似しないでください」という一文を入れたんですが、これはぜひ守ってほしいです。

WWD:書籍の中でも、特にリベリア編では危険なところに入っていく場面があります。正直、そこまで危険を冒さなくても番組は成立するのではと思う部分もあるのですが。

上出:それしか僕にはできないっていう思いがあります。そこで一歩踏み出せるかどうかが“僕”か“僕じゃないか”っていう。圧倒的な映像センスがあるわけではないので、人が行っていない場所に行くしかないし、それは僕の存在意義に関わるもの。みんなが絶対に行くなという場所に何があるのか、もしかしたら誰も撮れなかったものが撮影できるかもしれないというテレビディレクターとしての欲みたいなものもやはりある。ほんの少しですが、「それで死んでも仕方ない」という気持ちもあります。ただ、そんなときは頭をフル回転させていています。防弾チョッキも着ているし、最低限取られていいものしか持っていかない。いつでも逃げられるようにといろいろと考えてもいます。もちろんそこまでやってもまったくもって完璧な対策ではありませんが。

WWD:上出さんはヒゲが特徴的ですが、やはり海外でなめられないためですか?

上出:そうですね。日本人って幼く見られがちなので、ヒゲがないとなめられるんです。ヒゲって世界共通で、大人の象徴として見られるんです。スキンヘッドにしているのは、その方が合理的だからで、湯の出ない場所だと髪の毛が邪魔なんですよね。僕は潔癖なので、毎晩きれいに洗えないとストレスがたまる。あと服は厳選して1セットだけ持って行っています。行き先によって変わりますが、基本は襟付きの長袖シャツ、長ズボン、色はグレーで素材は破れにくい乾きやすいナイロンと決めています。靴は走りやすいもの。ロストバゲージが怖いので飛行機で荷物は預けず、機内持ち込みできる範囲でしか持っていかないので、機材優先で自分の洋服は最低限です。

WWD:基本的に現地ではずっと撮影していると本に書かれていましたが、躊躇することもありますか?

上出:カメラはずっと回していて、1回のロケで数百時間分の素材になります。さまざまな葛藤はありますが、躊躇することはないです。躊躇しないように努めていると言ったほうがいいかもしれません。まずは撮ることが重要で、僕が見ただけだと意味がない。撮ってから使うかどうかを考えます。人って最初に接触するときのリアクションが一番リアルなんですよね。

WWD:今後は国内での撮影も予定していますか?

上出:やりたい気持ちはあるんですが、まずは海外からだと思っています。できるだけ日本の日常から遠い所に行こうと思っていて、それが遠ければ遠いほど、自分たちと共通点があったときのインパクトが大きい。例えば、ロシアのカルト教団の少年が言っていることに自分の思っていることと共通点があれば、その衝撃は大きくなります。

WWD:これまで、ロケには行ったけど放送しなかったこともありますか?

上出:何本かありますね。この本の帯にあるQRコードから番組完全未公開エピソード「“海上の楽園”モルディブ・ゴミ島飯」編が見られるんですが、これはうまくいかなかった典型的な作品です。本当は世に出さないつもりだったんですが、書籍のおまけとしてはいいかなと思って出すことにしました。なぜ未公開だったのか、そこも興味深く見てもらえるいいですね。

WWD:書籍には飯と登場人物の写真が掲載されていませんが、その意図は?

上出:読んでくれた人がせっかく文章から想像してくれたものに対して、余計なことをしたくなかったからです。

WWD:この本を読むと「生きることとは何か」を考えさせられます。上出さんは生きることについてどう感じていますか?

上出:いろいろな世界を見てきて、飯を食うのに大きな意味はないというか……。食うことは生きることで、生きることは食うことで、さらに生きることは死ぬことでもあって、どれも当たり前にそこにあるものだと感じるようになりました。生きることも、死ぬことも、肩肘張って問いかけるものではなく、ただただ当たり前のことだと思います。日本だと命は尊いとだけ教えられますが、死ぬことについての話をあまり聞かない。死は見えないものになってしまっているんです。生も死も全てをフラットに見つめないと、真っ当に生きることもできません。

 少し話はそれてしまいますが、この本の最後にパンク・ロックバンドのヴォーカルのイノマーさんの死に立ち会った話を書かせてもらいました。イノマーさんは18年から口腔底癌を患って闘病していたんですが、昨年12月19日に亡くなりました。そのときに僕は初めて人が息をひきとる瞬間に立ち会ったんですが、死んでいく瞬間が分かったというか、その死が当たり前のように受け入れられたんです。そこで死ぬことってこういうことかというのが多少実感できました。でもまだよく分かっていない部分の方が多いですが。

WWD:この本はどんな人に読んでもらいたい?

上出:僕が子どものころに読んだ「十五少年漂流記」や「エルマーの冒険」のような冒険譚でワクワクした気持ちを、この本を通して若い人に感じてほしいと思っています。だけどそれだけではなく、それこそ老若男女を問わずいろいろな人に読んでほしいですね。文章は全て僕が書いているんですが、分量的には放送していない部分のことの方が多く、番組を見たことがない人でも楽しめますし、この本を読むことが間違いなく旅そのものになるはず。内容も量もかなり濃く、製本も細部までこだわったので、自信を持っておすすめできる一冊になりました。

WWD:上出さんがテレビディレクターとして意識していることは?

上出:個人の強い思いで作った番組じゃないと視聴者に深くささらないなということです。それこそマーケティング発進で作った番組だとそこが弱い。やはりお金を払ってでも見たいと思ってもらえる、強烈に支持されるコンテンツ作りが必要だと思います。

WWD:最後に新型コロナウイルスの問題が深刻になっていますが、テレビディレクターとして感じることは?

上出:海外でのロケが困難な状況ですから、番組作りには大きな支障があります。僕たち制作スタッフの移動が誰かを害するかもしれない以上、不用意な行動はできません。けれど、報道活動が自粛されるのはとても危険な状況です。国民が政府の発表に依存することに慣れてしまっては、たくさんのことが手遅れになってしまいます。もしかしたら、大きなリスクを背負って(それは自分の安全だけでなく、他者の安全を害する可能性も含めて)、行動しなければならないこともあるかもしれません。経済はもちろんですが、一度でも報道が死んでしまえばさらなる悲劇を招くかもしれません。

 以上は僕が少なからず抱く報道人としての心持ちですが、一方“テレビディレクターとして”ということで言えば、茶の間に笑いを届けるのは大きな使命だと思います。家にいても退屈しない、その助けになるものを一日中無料で流せるなんて、僕たちにしかできません。テレビ局にはこれまでに作ってきた膨大なアーカイブがありますので、恐れず再放送すればいいと思います。3年前の放送をそんなに細かく覚えている人も少ないでしょう。ここで力を蓄えて、事態が収束したらまた思い切り動き出せばいいと思います。

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「リチャードソン」にまつわる5つのこと

 アンドリュー・リチャードソン(Andrew Richardson)が1998年に創刊したニューヨーク発インディペンデントマガジン「リチャードソン(Richardson)」が、旗艦店「リチャードソン トウキョウ(Richardson Tokyo)」を東京・原宿にオープンした。当初は3月28日のオープンを予定していたが、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響から店内の一部什器が間に合わず、25日夜には東京都が週末(28・29日)の外出自粛要請を発表したことで急きょオープン日を30日に変更するなど、想定外の対応に追われる中での船出となった。

 「リチャードソン」は不定期刊行で、一時期休刊もあったため、創刊からこれまでに発行したのはわずか9号と極めて少ない。しかし、セックスというレンズを通してアートやカルチャーを表現し社会を切り取るその独自の世界観から、多くのカルト的ファンを生み出してきた。そして、雑誌名を冠したオリジナルアパレルも感度の高い人々を中心に支持を集め、もはやいちマガジンとして以上の地位を築いている。だが、日本では過激な描写ゆえに「リチャードソン」を単なるポルノ雑誌やストリートブランドの1つとして認識している人も少なくない。今回は、そんな「リチャードソン」の知見を深める5つのことをご紹介したい。

1.創刊のきっかけはマドンナと1人の日本人

 “Queen of Pop”ことマドンナ(Madonna)が1992年に発表し、その挑発的なビジュアルから論争を呼んだ写真集「SEX」。この写真集をフォトグラファーのスティーブン・マイゼル(Steven Meisel)と共にスタイリストとして手掛けたのがアンドリューだ。当時はグランジの誕生期だったこともあり、2人は「SEX」にグランジのマインドとセックスの要素を足すことを思いつきプロジェクトをスタート。しかし、その頃のスティーブンは「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」の広告で多忙を極めていたため、4〜6カ月近いプロジェクトの大半の作業をアンドリューが担ったという。その後アンドリューは、「SEX」には収録されなかった写真をはじめセックスに関する写真や文章、グラフィックを集めたスクラップブックを密かに制作していた。それを見たファッション誌「デューン(DUNE)」の林文浩編集長が雑誌の創刊を提案。それから紆余曲折を経て、カルチャー誌「デイズド&コンフューズド(Dazed & Confused)」のサポートを受けて1998年に「リチャードソン」が誕生した。

2.「シュプリーム」の創業者、ジェームス・ジェビアは大親友

 「シュプリーム(SUPREME)」の創業者、ジェームス・ジェビア(James Jebbia)とは30年来の大親友だ。ジェームスが1994年に「シュプリーム」を設立する前に、セレクトショップ「ユニオンNYC(Union NYC)」でオーナーを務めていた頃からの仲で、スタイリストだったアンドリューが頻繁に洋服を借りていたことから親しくなったそうだ。その後、「シュプリーム」は「リチャードソン」創刊号に広告を出し、アンドリューが「シュプリーム」のカレンダーをディレクションするなど緊密な関係は続き、2003年には「シュプリーム」から「リチャードソン」の第3号「A3」の表紙をプリントしたTシャツが発売された。このコラボを機に、誌面の写真を洋服にプリントしたブランド化を思いつくも、このときから「リチャードソン」は7年間の休止期間に入ってしまい、アイデアはお蔵入りに。なお、日本で初めて「リチャードソン」を取り扱ったのは「シュプリーム」だ。

3.日本はブランドスタートの決定因子

 2010年に7年ぶりとなる「A4」をリリースするにあたり、東京・代官山の「ボンジュール レコード(BONJOUR RECORDS)」にポップアップをオープンし、先述のアイデアを具体化。このポップアップでアンドリューは、日本のフォトグラファーやアーティスト、美容師らが大勢訪れて「リチャードソン」のカルチャーを深く理解し購入する姿を目の当たりにし、「これはブランド化を真剣に考えるべきだ」と気付いたそうだ。それから「リチャードソン」に注力するべく、すでに軌道に乗っていたスタイリストとしての仕事を全てやめたという。また、ブランドを立ち上げるにあたり参考にしたのは、1990年代の「ヒステリックグラマー(HYSTERIC GLAMOUR)」や「ダブルタップス(WTAPS)」に代表される“裏原スタイル”で、同じように高品質なアイテムを生産するべく“Made in America”にこだわっている。

4.ジュンとの関係について

 今回の「リチャードソン トウキョウ」のオープンは、ジュンとのパートナーシップによって実現した。何を隠そうジュンは「ボンジュール レコード」の運営元であり、日本で古くから「リチャードソン」の成長を支えてきた存在だ。2018年に「リチャードソン」が「ボンジュール レコード」にポップアップをオープンしたタイミングでアンドリューとジュンの佐々木進社長がミーティングを行ったところ、「リチャードソン」のオンラインストアでの売り上げがアメリカに次いで日本が高かったことから東京に店舗をオープンしたかったアンドリューと、ブランドのさらなる飛躍を信じていた佐々木社長との間でトントン拍子に話が進み、東京に店を構えることが決まった。ちなみに「リチャードソン トウキョウ」は世界3店舗目となる旗艦店で、1店舗目はニューヨークに、2店舗目はロサンゼルスにある。

5.紙を通して表現する意味

 世界的に雑誌不況といわれる中、「リチャードソン」は紙を通しての表現にこだわっている。その理由について「『リチャードソン』は定期発行誌でも、情報誌でも、カタログ誌でもない。カルチャーを表現するための、アートプロジェクトのようなもの。社会のその瞬間や時代を反映して意見を表現するためには、雑誌という形態がどうしても必要で、オンラインではできないんだ。その価値を理解してくれる人たちに向けて作っているから、『リチャードソン』はなくならない。他の雑誌は商業として情報を伝えるものだから、役割が全く違うんだ」と話す。近く最新号「A10」の発行を控えているとのことなので、新型コロナウイルスが終息したら「リチャードソン トウキョウ」に足を運ぶことをおすすめしたい。

■Richardson Tokyo
住所:東京都渋谷区神宮前4-27-6
営業時間:11:00〜20:00
定休日:不定休

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日本発のサニタリーショーツを開発 ナプキン不要でサステナブルに貢献

 女性が1回の生理期間中に使用する生理用ナプキンの枚数は20~25枚といわれている。日本女性のほとんどは、生理期間中はナプキンやタンポンを使用しているが、最近は“第3の生理用品”ともいわれている月経カップも話題。近年は、台湾発の「ムーンパンツ(MOON PANTS)」やアメリカ発の「シンクス(THINX)」など海外を中心に選択肢の一つとして、ショーツ本体が吸収するナプキン不要のサニタリーショーツも使用されている。そして今夏、日本人のヒップサイズに合わせたメード・イン・ジャパンのサニタリーショーツが「ガールズリープ」から登場予定だ。開発したマーキット代表の宮口真由美氏に誕生の経緯から、性への問題点についてまで聞いた。

WWD:なぜナプキン不要のサニタリーショーツを開発するに至ったのか教えてください。

宮口真由美(以下、宮口):小学生の娘のために生理用品の準備を始めようとしていたところ、アメリカ人のママ友が「アメリカには便利なショーツがある」とサニタリーショーツを教えてくれました。取り寄せてみたところ、一番小さいXSサイズでも日本では大人のMサイズ相当。日本の子どもにはサイズが大きすぎて、使用をあきらめたことがありました。その後、娘が通っているバレエ教室の友達が「レッスン中に(生理の血で)タイツを汚してしまったから」という理由で大好きなレッスンを長期間休んでしまったことがあったんです。生理で女の子がつらい思いをするのは心が痛く、「前に取り寄せたあのショーツが日本にあれば、娘も娘の友達もこんな思いをせずに済むのに」と考え、もともとレディースアパレルの企画・生産会社を経営していたのでレディースインナーのバイヤー経験を生かして商品開発をスタートしました。現在は、クラウドファンディングサービス「マクアケ」で4月27日までクラウドファンディングを行っており、一般販売は2020年8月ごろの予定です。

WWD:日本には海外製のサニタリーショーツも展開されていますが、「ガールズリープ」のサニタリーショーツの特徴は?

宮口:最大の特徴は日本人のヒップサイズに合っていること。日本人は欧米の人と比べるとやはりヒップの形が異なります。サニタリーショーツは機能上、通常のショーツよりフィット感が重要なポイントになります。また、素材の選定にもこだわりました。肌に当たる面、吸水布、防水布、外面の4層構造になっていますが、特に肌の当たる面の素材は当初オーガニックコットンにこだわっていましたが乾きが遅く、着用していて不快感が残りました。そこから何度も試作を重ね、現在のコットンタッチで吸水速乾のポリエステル素材を採用することになりました。出血量が多い日や心配なときはナプキンやタンポンとの併用をおすすめしますが、「ガールズリープ」の吸水量は20cc程度なので、少ない日はこれ1枚でOKです。

WWD:サニタリーショーツをどんな人に使ってほしいですか。

宮口:これから生理用品が必要になる小学校高学年とそのママを対象に考えていました。しかし展示会などに出展してみると、会社勤めの20~30代女性も社内で生理用品を持ち歩くときにコソコソするなど苦労があると聞き、日本中に悩める女性はたくさんいるんだと気付きましたね。

WWD:海外ではサニタリーショーツの使用が少しずつ習慣となってきていますが、日本ではまだまだ普及していません。

宮口:日本のナプキンはとても高品質で便利です。たまに不便だと思うことがあってもそれより便利な商品もなく、またナプキンに戻ってしまっているのが現状かと推測します。しかし、サニタリーショーツはズレを気にしなくてよい、ゴミを削減できる、生理用品の持ち歩きが不要というメリットもあります。洗濯時はつけ置きが必要なのでひと手間はありますが、今はサステナブルが注目されています。この点においては、明らかに使い捨て商品より優れているので、サステナブルライフの広がりが「ガールズリープ」の普及を後押ししてくれるのではないかと思います。

WWD:日本において、性への問題点はなんだと思いますか?

宮口:“性差はあるけれども、その差に優劣はない”という考え方が定着していないことが1番の問題だと思います。日本では女性が性について語ることをタブー視する傾向が強い。もっとフラットに語ることができ、問題を男性とも共有できれば解決できることも多いのではと考えています。大丸梅田店に“女性の性と健康に関する売り場”の「ミチカケ」ができましたが、こういったことが増えてフェムテックがもっともっと盛り上がってほしいと思います。多くの企業が参入し、共に市場を切り開いていければ最高だと思います。ライバル大歓迎です!今は、“注目を浴びる存在=珍しいもの”の段階だと思います。消費する女性も起業する人も増え、フェムテックという特別な呼称がなくなるのが理想ですね。

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新型コロナに負けるな! 業界人が緊急メッセージPart1

 新型コロナウイルスの猛威によって、東京五輪・パラリンピックをはじめとした各種イベントが延期・中止となっている。外出控えの要請、海外渡航の自粛なども広がり、生活や仕事が制限されて、世の中に暗いムードが漂っている。消費市場も過去にないほどの落ち込み方を見せており、アパレル業界からも苦しい声が聞こえてくるが、こんなときこそ人々の気持ちを明るくするファッションの力が必要だ。弊紙では業界を代表するクリエイターやビジネスパーソンから緊急メッセージを募った。(この記事はWWDジャパン2020年3月30日号からの抜粋です)

逆境に強い私たち日本人は、
必ず耐え抜けると信じています

冨永愛/モデル

 イベントの延期や中止、特に3月に本の出版をしたので写真展やファンの方々とのイベントを中止にせざるを得なかったり、海外での仕事の予定も変更したりと、私にとっても大きな影響がありました。不安の中、少しでも明るく過ごせる時間を作りたいと思い、まず楽しみにしていてくれたファンの方々のために、インスタライブ配信の企画をしました。こんなときだからこそ、新たな取り組みのための準備期間にしようと思っています。この状況は必ず終わりがあります。そして逆境に強い私たち日本人は必ず耐え抜けると信じています。

さらに飛躍するための
契機にしたい

田中修治/オンデーズ社長

 4月の入社式や社内イベントの中止を決定しました。この厳しい状況をオンデーズがもう一段高いクオリティーのブランドに成長する「入口」にできるかどうかが問われています。今までなかなか手をつけられずにいた大きな課題から小さなものまで順に改善していくことで、コロナ不況が続く世界で生き残る確率は高くなります。終息後に業績を急回復させ、さらにその勢いを新たな成長へと繋げることができるよう今を大事に邁進します。

時化には時化の仕事がある

御手洗瑞子/気仙沼ニッティング社長

 漁師町の気仙沼には、「時化には時化の仕事がある」という考え方があります。悪天候の際に漁に出たら命を落としかねない、そんな時は網を繕って好天に備えよというものです。東日本大震災を経験し、自然はコントロールできないという認識もこの町にはある。新型ウイルスもコントロールできません。編み手さんたちには「この1年は時化かもしれないから、網の目を補強するような年にしよう」と話しました。技術を高め、どんな状況でも受注にバランスよく対応できるようにしていきたい。

こんなときこそ「利他的精神」で
社会にお返ししたい

軍地彩弓/gumi-gumiCEO 兼「ヌメロ トウキョウ」エディトリアル・アドバイザー

 文化服装学院の卒業制作発表ができなくなったとツイッターで知り、私のアカウントでリツイート。メンションしてくれた作品を #twitter_fashion_show のハッシュタグでアップしていきました。その後、学生の方からは「テレビCM制作会社の方など、いろんな人に届いた」とのご連絡がありました。リアル「FOLLOWERS」な出来事でした。(軍地氏はネットフリックスオリジナルシリーズの蜷川実花監督作品「FOLLOWERS」でファッションスーパーバイザーとしてスタイリングを統括)


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“採用”“離職”“出店”ヘアサロンが抱える悩みは皆無!? 未来を担うスタイリスト2人と代表が話すヘアサロン「コクーン」の在り方

 取材に行くとなんだか居心地のいい東京・表参道のヘアサロン「コクーン(Cocoon)」。10年続くサロンはおよそ5%といわれるほど厳しいヘアサロン業界で、「コクーン」は2009年のオープン以来顧客からの支持を集め今年12年目を迎えた。代表のVANさんをはじめ初期メンバー4人を中心に、現在は21人の美容師が働いている。さらに4月には新卒のスタッフが4人入社し、2店舗目となる銀座店を4月24日にオープンする。採用や離職、出店と多くのヘアサロンが抱える問題を感じさせない「コクーン」はどのようにしてつくられてきたのか。この居心地のよさはどこから来ているのか。代表のVANさん、ディレクターのSAKURAさん、店長の泰斗さんに話を聞いた。

WWD:SAKURAさんはディレクター、泰斗さんは店長を務めていますが、それぞれの役職はどのように決まったのですか。

SAKURA:役職があったから就いたのではないんです。年月が経つにつれ、例えばVANがいないときにVANの代わりを自分がやらなきゃという気持ちがすごく湧いて。これだけ長い時間一緒にいて経験を積んできたのだから、自分が一番VANの気持ちや思っていることを代弁できなくてはいけないと思ったんです。でも、最初はVANが話しているときと自分が話しているときの空気感は全然違って……、なかなかうまく伝わらなかったんです。でも繰り返し伝えていると、だんだんとみんなが聞いてくれるようになってきた感覚が自分の中でありました。そうやって自分のこと以外にお店のことを考えることが増えて、さらに自分が責任を持てるようになったとき、VANさんから役職を付けてやってみたらと言ってもらったんです。

泰斗:そうですね。毎年新卒の子が入ってきてスタッフが多くなっていく中で、長くいる分VANの思いを伝えたり、みんなをまとめる役割の必要性を感じて、責任感を持つようになりました。そして自分ができなくてはいけないと思うようになりました。そうやって意識して行動しているうちに、SAKURAと同様、結果的に店長という役割が付いたという感じです。

VAN:役職って一つの権力でもあると思っていて。売り上げが高いからとディレクターや店長にすると、自分本位に物事を進めたり、不必要に忖度した関係が生まれたりすることもあります。でも僕ら美容師という仕事は、役職でお客さまに慕われてはだめなんです。でも「店長にお願いします」とか、「オーナー(代表)にお願いします」っていう風潮が世の中にはどうしてもあります。音で判断してほしくないから先に役職を与えるのではなく、その仕事の中身、空気感を持って統率している人たちに必然的に役職が付いていくほうが、実質的に好ましいと思っています。

みんなが後輩の岐路に立ち会い、
請け負う採用

WWD:離職率が問題のサロン業界で、「コクーン」に入った人はほとんど辞めていないと聞きます。採用する際に気を付けていることはありますか?

SAKURA:「コクーン」は、全員で面接するのが習わしなんです。その理由はVANさんや上が決めたからということでは、メンターになった直属の先輩に責任感が湧かないから。直属の先輩が新入社員の岐路に立ち会うことで、その子が立ち止まったときに向き合ってあげられるはずです。だから素材がどうこうというよりは、請け負う側が美容師としていかにスタートを切らせてあげられるかが大事だと考えています。

VAN:僕が「この子」というと、それに引っ張られてしまうので、最後まで僕は誰がいいとは言いません。入社して初年度から僕のメインアシスタントになることは難しいわけだし、一番関わることの多い人の意見が大事なんです。あまり意見が割れることはないけれど、もし割れた場合はSAKURAや泰斗、ましてや僕ではなく、1~2年目の若手スタッフの意見を優先しますね。そうやって選んだ新人が今年は4月に4人入ってきます。

SAKURA:最近では「コクーン」というサロンのブランドイメージがついてきたことはうれしいですが、入ることがゴールではありません。自分がなぜ美容学校に行って、美容師になりたくて就活をしているのか、「コクーン」で働きたいというよりは美容師になりたいという思いが強いほうがよかったりします。だからスタートが「コクーン」じゃなきゃと思う必要はないんです。

WWD:中途採用はしないんですか?

VAN:「コクーン」を立ち上げて最初はスタイリストは僕1人で、SAKURAや泰斗が中途でアシスタントとして入ってきてくれました。3年目から新卒採用を始めて、それ以来中途採用のスタッフは数人です。経営効率的に中途採用はよいと思われるかもしれませんが、同じ美容師でも“ラベル”を「コクーン」に貼りかえただけでは絶対に中身は「コクーン」ではないし、サロンのチームワークも変わってしまう。今の「コクーン」のような関係は絶対につくれないです。

WWD:VANさんの前でこんなことを聞くのはなんなんですが(笑)、美容師の多くはある程度の年齢やキャリアになると独立する人も多いと思うんです。SAKURAさん、泰斗さんはどのように考えていますか。

VAN:どうぞどうぞ、なんでも聞いてください(笑)。

SAKURA:年齢を重ねたときに独立について考えたことはあったけれど、未来のイメージとしてそれしか知らなかったということもあります。これまで何を教わってきたんだろう、自分にとって何が大事なことなのだろうと考えたとき、今はぶれない軸が見えてきたタイミングだと感じています。自分の可能性を信じたいし夢もまだまだあって、すべてが軸の部分である美容師としての自分と、「コクーン」につながると思っています。これまでVANの撮影やセミナーなど、本当にたくさんの現場を見せてもらい、自分を推薦してくれることもたくさんありました。ここでは伝えきれないくらい、たくさんの愛情をもらって今の自分があると思っています。だから、自分だけの未来ではなく「コクーン」に対して影響力を持てたらうれしいんです。

泰斗:美容師を目指した時点では、独立して店を持ちたいと思っている人は多いはずです。僕もそうでした。けれど、「なぜ店を持ちたいのか」「何がしたいのか」を考えていくと中身が伴っていなくて。ただ漠然とそういうものだと思っていました。「コクーン」で働きだして美容師の在り方や仕組みを教わっていく中で、店を持つというのがどういうことなのか、自分のことだけを考えていては成り立たない、1人では難しいことだと知りました。今は店長として、これまでVANから教わってきたことや培ってきたことをみんなに伝え、それが受け継がれてだんだんと大きくなっていくチーム感に幸せを感じています。独立というよりは、「コクーン」のつながりやチームを大きくすることが目標です。

VAN:決して2人の考え方は2番手の考え方ということではないんですよ。組織図はピラミッドではなく、台形にしていくものだと僕は考えていて、タテにもヨコにも“つながっていく”ということが大事なんです。「コクーン=VAN」ではなく、みんなの「コクーン」でありたい。自分が死んでも続いていってほしいんですよ(笑)。

それぞれのステージを作るための銀座出店

WWD:過去には拡張移転はありましたが、今回初めて2店舗目の出店になりますね。このタイミングでなぜ?

VAN:新型コロナウイルスですよね……。実は、拡張するなど節目のときにはいつも世の中で何か起こるんです(笑)。立ち上げはリーマンショック、拡張移転は東日本大震災があった直後でした。でもそういうことではなく、2年も前から探していたので、偶然にもこのタイミングになりました。

WWD:あ、このタイミングというのは、そういう意味ではなく、11年目でということです(笑)。

VAN:そういうことですか(笑)。それは、役職の話と一緒で、これまでやってきたことがつながったことで、そういうところにたどり着いたということです。10年目や11年目という年数ではなく今だったんです。“店を出すから、人を入れる”という考え方は僕にはありません。多店舗展開が目的であればもっと早いタイミングで出店するはずです。新卒を採用するのも人が足りないからではなく、1年生が2年生、3年生になるためです。年数を重ねても下が入ってこなければ、いつまでも下級生のままなんですよね。人が辞めずにいてくれるのはとってもいいことですけど、卒業していく場所も必要なので、新たなステージを作るためにも銀座店の出店だったんです。

WWD:銀座という場所に決めた理由は?

VAN:もともとは表参道で探していました。銀座なんて全然思ってもいなかったんですが、SAKURAや泰斗が「銀座はどうですか?」と言ってきたんです。

泰斗:銀座は東京の東側の人が特に多く集まる場所だと思います。僕自身が浅草出身ということもあって、表参道以外を考えたときに銀座というのは自然な流れでした。東京の西側の表参道店があって、東に銀座店があるのはバランスがいいと思いました。また同じ土地に2店舗あるよりも、「コクーン」としての、つまりスタッフが生きる幅も広がると思いました。「コクーン」はワンジャンルではありませんし、どこでスタッフそれぞれの色が生きるかは分かりませんから。

VAN:銀座はあまり詳しくない土地だし、テイストが合うのか、客層も違うのではと思ったんですけど、同じタイミングでSAKURAも銀座を挙げてきて、みんなもあまり抵抗感がなかったみたいで。要はみんなの意見に僕自身が「なるほど!」と納得できたんです。それで1年ほどは銀座に絞って探していました。

WWD:銀座店はどのような雰囲気ですか。

VAN:銀座5丁目のちょっとレトロなビルの4階です。自分の唯一の趣味が内装だったりするんですけど、今回泰斗がトップとして立つことになったので、数年後の彼を自分なりに想像して作っています。みんなは「これが泰斗のイメージ?」って思うかもしれないけど、他の誰よりも泰斗を見てきて、自分の未来よりも描けています。今の泰斗だと意外に思うかもしれないけど、2年後、3年後にそれがなじんでくると思っていて、また一つ泰斗も周りのスタッフも大きくなるはずです。

WWD:4月で12年目に突入しますが、さらに10年後はどのような未来を想像しますか。

SAKURA:10年後も同じようなことが起こっていてほしいです。自分が経験してきたことは絶対違う出来事だけど、みんなも同じように壁にぶつかって、同じように経験を積み重ねていくはずです。今回のようなインタビューで伝えたい部分と同じことを、また10年後に考えている子が絶対いるはずだから、伝えつなげていくサロンであってほしいです。

泰斗:どれだけ大きなチームになっても、全員が同じように「コクーン」の考えを言えるようなつながりを持ちたい。“伝えつなげる”ということですけど、やりたいという人がいれば、全国にあってもいいんじゃないかなと思います。どこにあってもどれも「コクーン」で、結果的にみんなが同じように考えて同じ方向を向いていられるようにしていきたいです。

VAN:夢があっていいよね。そういう時はもう「VANさんがやっている『コクーン』」ではないです。すでにそれは始まっていて、ここからが「コクーン」の第2章です。銀座店は単なる店舗展開ではありません。今回の銀座店は1年目からいる泰斗らに任せています。ビジネスファーストであれば、自分でやったほうが簡単だと思うんです。もちろん年功序列っていうほど甘くはないけれど、一緒にやってきた彼らだからできる。イメージでは表参道はSAKURAが、銀座には泰斗がいてくれて、自分がメインではない。みんなのステージが一つ上にあがることになったと。10年前は僕の足元にも及ばないぐらいの差があったSAKURAと泰斗ですけど、僕は手を抜いているわけではないのに今では並び抜かれることがあるぐらいなんです。これから2人に続く人たちもいます。一方で、こういった感覚が僕の美容師としての寿命を伸ばしてくれているとも思っています。だからこそ、僕自身もサロンワーカーとしてみんなと切磋琢磨できる。「コクーン」とは、“美容師の、美容師による、美容師としての集団”であり続けていきたいですね。

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「アメリ」の黒石デザイナーが、「ボビイ ブラウン」のアンバサダーになった理由

 「ボビイ ブラウン(BOBBI BROWN)」は、ベストセラーのファンデーション「インテンシブ スキン セラム ファンデーション SPF 40(PA++++)」の発売5周年を記念し、全ての女性が自身の魅力に気づいて自信に満ちてほしいとの願いを込めた「#これが私の美しさ」キャンペーンを始動した。「アメリ(AMERI)」の黒石奈央子クリエイティブディレクターは、このメッセージを体現する4人のアンバサダーの1人に選ばれ、自身のブランド以外の活動に取り組んでいる。アンバサダーを引き受けた理由を聞いた。

WWD:他ブランドのアンバサダーを務めるのは初めてと聞いたが、なぜ、「ボビイ ブラウン」だったのか?

黒石奈央子クリエイティブディレクター(以下、黒石):「アメリ」の世界観の原点は、「ボビイ ブラウン」発祥の地、ニューヨークなんです。ファッション業界を志して世界を旅したとき、ニューヨークの自由なムードに刺激を受けました。「みんな、素直にファッションを楽しんでいるな」と思って。そこで「日本のファッションの魅力をニューヨーク、そして世界に」と志してブランドを立ち上げ、最初の目標を「ニューヨークにショップを構える」にしたんです。「ボビイ ブラウン」には、「自分を持った女性」という自分に近いイメージがありました。だから「どうしよう?」より、「面白そう!!やってみたい!!」が先行したんです。コスメブランドとのコラボレーションは初めてでしたが、ノベルティーまで作って楽しみました。

WWD:「インテンシブ スキン セラム ファンデーション」の感想は?

黒石:個人の肌を否定して覆い隠すのではなく、肌に寄り添いつつ、より良くしてくれるファンデーションですね。

WWD:悩みを、その人らしく解決するサポートをするブランドとして、「ボビイ ブラウン」と「アメリ」は近い気がする。

黒石:「アメリ」は、シルエットを最重要視しています。私自身が「背が低い」というコンプレックスを抱えていて、全ての商品は自分が着るし、さまざまな体型の女性に試していただきます。自分が着てみないと、その良さはわからない。着てみて「あ、カワイイ」と思えることが大事。思えないときは、「どこが可愛くないのか?」と考えます。それが、お客さまに支持されている一番の理由だと思います。

WWD:そのほかコレクションには、どんな「自分らしさ」を込めている?

黒石:お話しした通り、ファッションをカテゴライズせずに楽しむニューヨークのムードに刺激を受けていますから、ドレスからミリタリー、デニムまで、いろいろ提案します。細分化が進む、日本のファッション業界の流れには反しているかもしれませんね。お客さまに楽しんで欲しいので、1年前に売れた商品は敢えて作らず、違うものを提案することもあります。MDは「売れ筋を作って!!」と思っているかもしれませんが、私は「また、同じの出すの!?」って思っちゃう。実は1年前、初めて売り上げを思った以上に伸ばせなかった時があったんです。前年は超えましたが、私はもっと上を目指していた。理由を考え、「自分を超えられなかったから」と結論づけました。そこで今は、アイコニックな“バックコンシャスシリーズ”さえ大プッシュしなくなりました。お客様がいるので作り続けていますが、私は現状に満足せず、面白いものを探し続けたい。新しいアイテムが“バックコンシャスシリーズ”以上のヒット商品になれば、と思っています。2019-20年秋冬は、フレアのウールコートがよく売れました。自分を超えること。「#これが私の美しさ」ですね。

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新型コロナで悲観はやめよう、自信を持とう

 悲観するのはやめよう。こんな状況でも、ファッションとビューティは終わっていない。あるイタリアンブランドは3月20日からの3連休「トラフィックはまだまだ少ないが、顧客の来店は多かった」という。伊勢丹新宿本店は、世の中が自粛ムードまっただ中の3月上旬にビューティの催事を開催。感染拡大予防への配慮も欠かさなかったイベントは、予算比6%増で終了した。担当バイヤーは数字に安堵しつつ、「お客さまのビューティへの熱意を感じた」と消えていなかった購買意欲に喜んでいる。私たちが提供する商品やサービスは、こんなときでも幸せを提供できる宝物なのだ。(この記事はWWDジャパン2020年3月30日号からの抜粋です)

 知らないからと言って、恐れるのはやめよう。新型コロナウイルスについては、知らなくて当たり前。だから世界は苦しみ、戦っているのだ。未知だから、正解はウェブの世界にだって存在しない。ウェブだけに依存せず、情報源を選びながら、話し、考えよう。デジタルの編集長ではあるが、今回ばかりはSNSから離れたくなっている。私には、ウイルスの感染以上にネガティブムードのまん延が恐ろしい。私事だが3月上旬、感染者と同じ日に同じジムに通ったがために、メディアが「濃厚接触者1406人」と報じた1人に属してしまった。幸い健康観察期間は無事に終了したが、期間中に時々ジムと、そのジムが入店する商業施設の名前でSNSを検索すると、全くの誤報とネガティブツイートがあふれ出る。「横浜オワタ……」「(営業を続けた商業施設と、2週間後に再開したジムに対して)これ以上コロナをバラ巻かないで」。感染症とSNSは、相性が良すぎるからこそタチが悪い。

 気を強く持とう。多くの死者はもちろん、工場閉鎖や外出禁止など最も過酷な犠牲を強いられているイタリアの「ヴァレクストラ」や「セルジオ ロッシ」のCEOから、御年83歳のコシノヒロコ先生まで、この1週間で話を聞いた人々は、状況が好転する“いつか”を信じ、今できることを着実にこなすことで歩みを止めない意味を説く。私たちが後ろ向きでどうするのだ?今週号で特集した東京のデザイナー、春にイベントやポップアップを計画していたビューティブランドは、メガプランの中止や延期に落胆せず「じゃあ、今できることはなんだろう?」と考えている。取材して知る限りでは、4月中旬は、リアルの代替手段であるデジタルイベントがラッシュの予感だ。秋には早くも例年以上のイベントが計画され、すでに会場の争奪戦が始まっている。ちなみに「WWDジャパン」も4月17日には、秋に延期したトレンドセミナーの代替手段であり、発表の機会を失ったデザイナーやビューティブランドが新作を見せる場であり、せっかくならエンドユーザーさえファッションやビューティの楽しさを感じ取ってくれるかもしれないデジタル番組の配信を検討している。

 将来を妄想しよう。未知の病が既知の存在となってコントロールできるようになったとき、私たちの社会、そして産業は、きっと大きく変わっているハズだ。今を見つめ、未来を予想し、私たちの将来をワクワク妄想・空想しよう。当たろうが、外れようが構わない。妄想した人間こそ、新たな未来を好意的に迎え、スタートダッシュできるハズだ。私は、鎖国さながらに国境を封鎖する一国主義的抑え込みの反動からインクルージョン(包摂・包括性)とダイバーシティー(多様性)の流れはますます加速すると思っている。危機を乗り越えた暁のイタリアは、復活するだろう。“同情票”じゃない。こんなときだからこそ世界の人々が価値を再認識した家族愛、地縁、互助、そして自然への感謝。それらの全ては、イタリアの礎だ。一方でランウエイショーを頂点としてきたリアルイベントは、過渡期を迎える。テレワークで加速するデジタル・トランスフォーメーションが新たなテクノロジーを生み出した暁には、存在意義すら問われるようになるかもしれない。情報を選別できずに右往左往する人と、取捨選択しながら自分らしく生きる人の違いは、この一件で一層明らかになった。残念ではあるが、あらゆるディバイドは拡大する。そのどちらを、どう狙うか?そんな思考回路は、ビジネスの成否を分ける。間違いないのは、いよいよ「生活を豊かにするブランド」だけが生き残ることだ。世界の76億人が、程度の差こそあれ、一斉にストレスを感じた出来事は前代未聞、もしくは第2次世界大戦以来だろう。戦後「ディオール」は、到来する豊かな生活の片鱗をニュールックで示したからこそ、今なお君臨している。同様に新たな時代の新しい豊かな生活を夢見せられるブランド・産業だけが勝ち残る。

 最後に、ちゃんと言おう。感染拡大を防ぐことは大事だが、ビジネスを続けることも同じように大事だ。だから私たちは、自信を持って言うべきだ。「ファッションとビューティを売っています。不要不急の商材かもしれません。それでも、待っている人が大勢います。価値があるのです」と。


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新型コロナと戦うミラノの今を現地ジャーナリストがレポート

 「ジョルジオ アルマーニ」が無観客ショーを開催したのは、2月23日。それから1カ月で、惨禍がここまで広がるとは想像だにしなかった。

 ドゥオモ広場、スカラ座、エマヌエレアーケード、マンゾーニ&モンテナポレオーネ通り。人っ子一人いないミラノは、ゴーストタウンそのもの。迷彩服の機動隊員もマスクを装着している。最近は、毎日600人以上が亡くなっている。当初は3月18日まで、それが25日まで、さらに4月3日までと、戒厳令の期限が延期されるばかりのミラノ。「あと何日」と指折り数えながら日々を暮らす市民たち。それがまた、15日までとさらに先送りされた。

 自宅から外出するときは、その理由と行き先、その他を明記した申告書を作り、携行しなければならない。公園や通りでの運動も、今は禁止。散歩も不可で、自宅の周囲のみ。2人以上の歩行も禁止だ。破った者には206ユーロ(約2万4700円)の罰金が科される。開いているのは、新聞スタンドと薬局、八百屋やスーパーマーケットのみ。日用品の買い物は可能だが、一度に10人くらいしか入店させないので、外に並ばなければならない。人と人の間は1 mの間隔を空ける必要があり、スーパーマーケットの外には長い行列ができる。

 いうまでもなく、商店も学校もデパートも休業・休校している。教会も扉を閉め、ミサはライブストリーミング。仕事もスマートワーキング、デジタルを使っての自宅勤務だ。介護の仕事に就く人など、通勤が不可欠な人のために地下鉄は走ってはいるが、 利用者は極端に少ない。

 周辺の住まいは大方が空だ。空港や列車の駅が閉まるかもしれないと察知するや、ミラノだけで即座に2万人近い人々が街をあとにして、思い思いの場所に出かけてしまったのだ。 市内のホテルは95%が空室。レストランはわずかであっても収益を得ようと、苦肉の策で宅配を始めた。アフリカ大陸からの移民の男性たちが、背中に大きなビニールの箱を背負い、自転車に乗って右往左往している。

 街に残った人々は、ときにインターネットを通じて示し合わせ、決めた時間にバルコニーに出て歌ったり、拍手をしたりしている。過酷な勤務に身を投げ打ってくれている医師や看護師たちへの感謝を表明する行動だ。しかし、その回数も減ってきた。人々の忍耐が試されている。

 4月半ばから開催するはずだった国際家具見本市は6月に延期になった。それとて「期待できるのか、否か?」という意見は少なくない。6月に開催予定だったミラノの美術の見本市は9月に延びた。6月のピッティは予定通りとのこと。ミラノのメンズ・コレクションは9月のウィメンズ・コレクションと一緒にやるか、あるいはストリーミングにするかという考えの間で揺れているらしい。

 ファッションブティックは、散々だ。それでなくとも先行きは不透明だったところ、今回のウイルスで休業を余儀なくされ、仕入れた春夏の商品は店内の倉庫に眠ったまま。支払いはしたものの、その回収方法がないという状態だ。次シーズンの商品を購入するとなれば、当然のことながら躊躇せざるを得まい。「一回、コレクションを休んだらどうか?」という声もなくはない。予定されていたシューティングは、ほとんどがキャンセルになった。

 新聞の広告は、ファッションではなく、食品企業が目立つ。数少ないファッションの広告でも、例えばアルマーニは服もバッグもなく言葉だけで、この状況を憂い、感染者や病院 関係者を見舞う長文を一ページで掲載した。

 イタリア経済の10 %以上を支えるファッション産業は、長い年月をかけて完璧なシステムとして構築した、巨大な機械のようなものだ。その機械たるファッションの実態に、突如としてブレーキがかけられたような唐突さ がある。何兆円という損害につながる今回の出来事は、目に見えない相手との戦いである。グローバリゼーションがもたらした反グローバリゼーションの現実であり、今後、とてつもなく大きな経済構造の変化が表出するだろう前兆だ。たとえウイルス禍が収まったとしても、その先には、果てしなく続くさらなる試練が待っている。


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在宅勤務で活躍した「WWDジャパン」スタッフのベストバイアイテム

 新型コロナウイルスの感染が拡大していることを受け、東京都から不要不急の外出を控えるよう呼びかけがあるなど先週末は街から人が消えました。弊社でも3月から在宅勤務が推奨となり、自宅での作業が増えました。未曾有の事態となった今、各自できることを心がけ、そして長い時間を過ごすことになる「おうち時間」の充実は必須です。「WWDジャパン」スタッフたちのテレワーク期間中に活躍したアイテムをご紹介します。

じっと向き合う液晶からアイケアも大事に

 展示会やイベントも中止・延期になり、日中から自宅でパソコンに向かいっぱなしでスクリーンタイムが必然的に増えてしまう……。スマホやPCから発せられるブルーライト対策としてメガネ“ゾフ ピーシー(ZOFF PC)”を生活に取り入れました!こちらは購入してすぐに使える完成品で、フレーム+度なしのPCレンズセット。店頭では、好きなフレームにPCレンズを入れてカスタマイズもできるらしいので、落ち着いたら店頭でも買い物したいな。(編集制作部 福本沙耶)

初のサブスクに挑戦 外出自粛中に大活躍

 ニューヨークにあるD2Cのショールーミングストア「ショーフィールズ(SHOWFIELD’S)」で発見したオーラルケアのサブスクリプション「クイップ(QUIP)」。たまたま普段から聴いているポッドキャストでクーポンを配信していたので、思い切って昨年末に購入してみました。電動の歯ブラシは高価・持ち運びしづらいというイメージがあったのですが、「クイップ」はおしゃれなデザインでコンパクト、電池式なので海外出張でも問題なく持っていけました。2分間振動し、洗い上がりも抜群です。そして先週、ちょうどレフィルが届きました。歯ブラシのヘッド、電池、フロスの中身、歯磨き粉が3ヶ月に1回送られてくるのですが、外出自粛している今、改めてその利便性に気づかされました。(「WWDビューティ」編集記者 北坂映梨)

不安を癒す生活の中の造形美

 食器類は使わないときも見て楽しめるものを選びます。陶造形作家、すずきたもつさんが制作したマグカップは、素材の質感や落ち着いた色合いがお気に入り。形こそシンプルですが、置くだけで机の上の雰囲気が変わる力強さもあります。使っているときも眺めているときも、穏やかな気持ちになれるアイテムです。外出する機会も減り、ニュースを見れば気がふさぐことが多い今、家の中の癒やしはとても大事ですよね。(編集制作部 等々力稜)

引きこもり専用“神”調理器具、胃袋だけでも外出気分

 外出する機会が減る中、少しでもテンションを上げようと、これを機に気になっていた低温調理器を購入しました。購入にあたってはデザイン、ブルートゥース対応、アプリ連動、価格、操作性など複数の検討ポイントを考慮。使用してみると、時間と温度を設定するだけのシンプルな操作にもかかわらず、今では常備食となったジューシーな鶏ハムから、週末にはサーモン、ラムラックやローストビーフまでさまざまな料理ができるようになり、さらには段違いにクオリティーが上がりました!もはや必須アイテムです。(ビジネスプランニング部 工藤寿志)

鬱屈ムードを吹き飛ばす!春気分なカレッジ調パーカ

 昔かたぎで、かつ紙媒体である「WWDジャパン」も製作する僕は“出力紙に赤字を手書きしてスキャンして送信する”など、なにかとオフィスの方がはかどる作業が多く、結果として毎日出社しています……。僕みたいな人は案外多いようで(?)、僕の使う電車はいずれも“混んでるな”と思うくらいの乗車率。つまりは変わらぬ日常を過ごしているのですが、当然、世の中の閉塞感はひしひしと感じており……。そんな鬱屈したムードを打破してくれるのが、やはりファションだと思うわけです!というわけで、春気分をアゲるパーカを購入しました。ジャーナルスタンダードでバイヤーを務めた宮川治さんが2019年8月に東京・三軒茶屋にオープンしたセレクトショップ「スライダーストア」のオリジナルで、「チャンピオン(CHAMPION)」のアメリカ企画の“リバースウィーブ”ボディーにカレッジ調のショップロゴをのせています。そのプリントにもこだわりがあってイエロー部分がラバープリント、ブルー部分が発泡プリントになっています。とはいえ最大のポイントは左の袖口。「チャンピオン」のロゴマーク(通称“目玉”)をバンズを模した刺しゅうで挟んで“エッグバーガー”にしています(笑)。すでに2度完売しており、僕も3回目の入荷情報を得て、すぐに電話でキープしました!(「WWDジャパン」編集部 三澤和也)

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東急東横店の売り場一筋35年 「ここは仕事場ではなく、私の人生そのもの」

 100年に一度と言われる再開発が進む渋谷。相次ぐ大型商業施設の誕生の中、東急東横店が3月31日、85年の歴史に幕を下ろす。

 2013年に東館が先立って営業を終了。西・南の2館体制で営業を続けてきたが、地下1階の食品売り場「東急フードショー」など一部を除いて閉店する。両館は取り壊され、跡地には渋谷スクランブルスクエア2期棟(27年に開業予定)が建つ予定だ。

 1934年、渋谷駅直結のターミナル型百貨店として開業し、「便利よく、良品廉価、誠実第一」をスローガンに、沿線居住者に便利な生活を提案することを使命に掲げてきた東急東横店。デパ地下の原型となった食品ゾーン「東横のれん街」や演劇や落語を公演してきた「東横劇場」など、文化発信の中心でもあり続けた。

 「当店は、一般的な百貨店のような“ハレの場”とは少し違うかもしれない。でも渋谷を行き交う人々にとって大切な場所であり続けられたのならとてもうれしいこと」。そう語るのは、西館1階の化粧品・アパレルなどの複合売り場「渋谷スクランブル」を担当する喜納範子主任。

 販売員へのあこがれから東急百貨店に入社して35年、東横店の現場一筋で勤めてきた。幼少期までさかのぼれば、ランドセルなど入学セット一式をそろえ、両親にクリスマスプレゼントを買ってもらった記憶もよみがえる。「仕事場ではなく、人生そのもの」と語る東急東横店がその役目を終えるにあたって、これまでを振り返ってもらった。

WWD:どうして百貨店の販売員に?

喜納範子渋谷スクランブル主任(以下、喜納):贈り物が好きだったからです。当時は贈り物といえば百貨店。真新しい包装紙で、心を込めて商品をお包みし、何かの人の役に立てたら、人の喜びに携われたらと入社を決めました。今はシールタイプになっているギフト包装のリボンも、私の入社当時(1980年代後半)は一つ一つ、人の手で縛っていましたね。

WWD:当時の東横店の売り場は、どんな様子でしたか?

喜納:それはもう、キラキラしていました。一つのフロアに20人くらいが一度に採用されるすごい時代。最初に私たち新人が配属される売り場も「好きなところ選んでいいよ」と言われて。私はもちろんギフトが主役の、ハンカチなどを扱う服飾雑貨を選びました。売り場は店を開けてから閉めるまで「並べれば何でも売れる」というくらいのすごい熱気で、とにかく回転が命。ちょうど今くらいの時期(3~4月)は、入学式や職場のご異動など人生の節目となる行事も多い時期でしたから、現場はごった返していたのを思い出します。

WWD:特に思い出に残っている出来事はありますか?

喜納:入社して5年ほどしてからのことでしょうか。たまたま私が通りかかったアクセサリー売り場で、店員さんがすごく困った様子でした。対応していたお客さまは、40代くらいの女性の方。耳をそばだてていると、ご要望が「包装」と聞いて、腕の見せどころとすぐに対応を替わりました。しかし差し出されたのは、他の階で買った大きな商品と、小さな化粧箱のアクセサリー。これを一緒に包んで渡したいという、ちょっぴり無茶なご要望でしたが(笑)、なんとかご満足いただける形にできました。大切な方への贈り物とのことで大変喜んでくださり、後日にはわざわざ手紙もくださりました。当店では、お客さまからいただいた感謝の声は、ハートのバッジとなって名札に付けられます。お客さまからの感謝の言葉の一つ一つは、今でも私の勲章です。

話し相手はお客さまから販売員へ 
変わらぬ「信頼」の大切さ

WWD:長く販売の仕事に携わり、思うことは?

喜納:単純な理由で選んだ仕事だったけれど、今振り返ると「天職だったな」と思います。10年前から、責任者として化粧品フロアを担当してからより強く感じることがあります。お客さまが皆、私たちの言葉の「信頼感」に価値を感じてくださっているということです。駆け出しのころは商品知識の説明ばかりしていましたが、今はお客さまの悩みや要望に寄り添い、それを解決してあげるにはどうしたらいいか考えます。だからこそお客さまは、「なじみの販売員さんから買いたい」と言ってくださるのです。

WWD:現在の主な仕事は?

喜納:従業員の就業管理業務や研修などのバックアップ。話す相手はお客さまから、娘・息子ほど歳が離れた販売員に変わりました。失敗して落ち込む若い子たちに、どう前を向かせてあげるか。相手がお客さまでも販売員でも大事なのは、言葉や態度を通じて相手に与える「安心感」「信頼感」ですね。

WWD:閉店が近づき、長年のお客さまと思い出話にふけることも増えた?

喜納:中には、1950年代に当店の周囲を往復していたロープウエー「ひばり号」に乗ったことがあるという、年配のお客さまもいらっしゃいますね。当時の思い出を楽しそうに話してくださいます。ですが、「閉店前に家族でもう一度お買い物を」というお客さまそれほど多くはない印象です。でもそれが逆に、“東横店らしい”のかなとも思いますね。

WWD:というと?

喜納:当店は「百貨店」ではありますが、ハレの場というよりも、日常に溶け込んできたというか。お店の中を待ち合わせとして使ったり、電車までの暇つぶしに使ったりという方も多かったのです。私は人生の半分以上を東横店で過ごしてきましたが、ひとたび館の外に出れば、迷ってしまいます。それほど渋谷の街は大きく生まれ変わっています。しかし街が移り変わっても、人の流れはそれほど変わらぬもの。通勤通学など、日常の往来のルートとして使っている方も多いので、毎日お顔を拝見して、こちらから一方的に知っているなんて方もいます。そういう方のお顔が急に見えなくなると、「どうしているのかな」と勝手に心配したりなんかして(笑)。そんな日々が終わってしまうと考えると、やはり寂しいですね。

WWD:閉店当日をどのような思いで迎える?

喜納:東急の正面入口に、閉店までの日数をカウントダウンするポスターがあります。数字が1ケタになったとたん、急に寂しさがこみ上げてきました。私は、今では4人の子どもに恵まれています。育休や時短勤務など、周囲の理解や協力があったから続けてこられましたし、寂しさ以上に感謝の気持ちでいっぱい。子どもたちにいつも教えているのが、3つの心をもつこと。常に前向きでいようという「明るい心」、何事にもワクワクできる「楽しむ心」、そして涙を見せない「強い心」を持つこと。これは東横店の現場で学んだことでもあります。でも(3月31日は)泣かないでいられるか、ちょっぴり心配です(笑)。

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「変わることは楽しい」 “ファッション×ビューティ”だから提案できる新たな可能性をバーニーズ ニューヨークのスタッフが実感

 「WWD JAPAN.com」がサポートする“ファッションとビューティのクロスオーバー”をテーマにした新プロジェクトが始まった。第1回目はバーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)、「ベアミネラル(BAREMINERALS)」、ヘアサロン「ダブ(DaB)」の3者がコラボレーション。3月8日の国際女性デーに合わせて一般向けにトレンドセミナーを行う予定だったが、残念ながら新型コロナウイルスの影響でイベント自体は中止となってしまった。ただ、打ち合わせを重ねて準備してきたことを何か形に残しておきたいという思いもあり、今回この場を借りてイベントを実現した。

 今回のイベントでは、鈴木春バーニーズ ニューヨークMD部 ウィメンズチーム シニアバイヤーが、“Free For ALL”をテーマに考えたファッショントレンドに合わせて、メイクを「ベアミネラル」のYuyaメイクアップアーティストが、ヘアを「ダブ」表参道店のMIYOKOディレクターが手掛けて、トータルで20年春夏のトレンドを提案するというもの。モデルはバーニーズ ニューヨークのスタッフが務めた。

 ファッションが春夏に変わり、それに合わせてメイクもヘアも変わったスタッフは一様に表情に笑顔と明るさが浮かぶ。「こんなにも変化があることに驚きました」と声を弾ませた。またそれを見ていた、「ベアミネラル」や「ダブ」のスタッフも、ファッションチームがこんな風にメイクとヘアを楽しんでくれることに感動。ファッション×ビューティだからできる新たな可能性を感じられた。

「ドリス」に負けないヘアとなじむメイク

WWD:1人目のモデルを務めてくれたのはバーニーズ ニューヨークのアシスタントバイヤーの柳原三希さん。まずファッションのポイントを教えてください。

鈴木春シニアバイヤー(以下、鈴木):今季の「ドリス ヴァン ノッテン」はデザイナーのクリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)と協業をしたのですが、ラクロワの特徴でもある柄と柄を掛け合わせるコレクションを今っぽく融合させて、ドットと花柄で組み合わせました。(新型コロナウイルスが流行している)こういうときだからこそ、“ファッションを楽しんでもらいたい”という気持ちでコーディネートしました。それでいてバーニーズ ニューヨークらしく落ち着いた雰囲気にするためにジャケットを上に合わせています。こうすることで取り入れやすいスタイルになると思います。

WWD:なるほど。ではメイクのポイントは?

Yuya:今回、女性のお2人はファッションとメイクの連動を意識しました。2人ともファンデーションはイエローをベースにしたんですが、それぞれ別々のアプローチをしました。柳原さんの場合はファッションの柄が特徴的だったので、それが引き立つように考えました。カラーメイクは強く出すぎないように、肌色のイエロートーンに近くてなじみやすいオレンジ系カラーのワントーンで統一し、ファッションがより際立つようにしました。

WWD:ヘアは事前に実際に美容室に行ってもらいました。以前とかなり変わりました。

MIYOKO:柳原さんからは「お任せ」ということでした。一つは服に負けないヘアを意識したんですが、ただ服より目立つのはやり過ぎ。その間のバランスを考えました。全体にパーマをかけて、ポイントでカラーを入れています。「お任せ」の場合、私が重視するのはその人のファッション観や気分。だから私がやりたいことを押し付けるのではなく、一緒に作っていく感じでした。

WWD:柳原さんは実際に変身してみてどうでした?

柳原三希:最近はヘアもメイクもシンプルにすることが多かったので、ここまで変わるとすごくテンションが上がりました。初心に戻れるというか、「変化することは楽しいんだ」と思い出せました。

気分によって変化するヘアと魅せるメイク

WWD:次の林さんは一見シンプルな衣装ですが。

鈴木:この服はジャージー素材で着心地もよく、着ていてラクというのが今季バーニーズが提案する“Free for All”をまさに表現しています。ひもを結んだり、垂らしたりと、雰囲気を変えて着ることができるのもポイントです。この「コグザビッグスモーク(COGTHEBIGSMOKE)」というブランドは、ジェットセッターである日本人デザイナーが、エフォートレス、サイズレス、シーズンレス、エイジレス、トレンドレス、シーンレスをテーマに、ファッションを楽しむ上で生じるさまざまな制限から解放してくれるジャージー素材のドレスやジャンプスーツ、トップスを展開しています。

WWD:一見シンプルですが、自分でシルエットを変えられるのはおもしろいですね。ではヘアのポイントから教えてください。

MIYOKO:衣装に合わせて、ヘアも気分によって変えられるようにしました。グラデーションでピンク系のカラーを入れているので、普段のダウンスタイルとまとめたときとで印象が変わるようになっています。今回は自分でまとめた感じにしつつ、ラフ感ときっちり感があるようにしています。

WWD:続いてメイクのポイントは?

Yuya:カラーメイクが引き立つように、肌色のイエロートーンと真逆のブルートーンにあたるローズ・ピンク系カラーで、アイ、チーク、リップをワントーンで統一しています。そうすることで肌色に明るさや透明感が出るんです。

WWD:林さんの感想は?

林夏未:普段はあまり時間がなくて、ヘアもメイクもいつも同じ感じになってしまっていたんですが、メイクを変えるだけでもチャレンジになるし、すごく新鮮です。変わることで自信にもつながりますね。

ちょっとしたことで清潔感が出るメンズメイク

WWD:最後は男性の星野さん。まずはファッションのポイントからお願いします。

鈴木:フランス発の新進気鋭のブランド「カサブランカ(CASABLANCA)」のシルクシャツをメインに総柄のアイテムを組み合わせました。シルクシャツの柔らかい素材感と色味の雰囲気からボトムもカシミアタッチの肌触りのスエットパンツをチョイスしました。また全体が柔らかくなり過ぎないようにクラークスのシューズで締めています。

WWD:今回ヘアはご自身でということで、メイクのポイントは?

Yuya:清潔感が出るように、スティックタイプのファンデーションで目の周りのクマを隠したり、整えたりしました。肌の色も全体に明るくしました。最近、男性の方でもファンデーションをする人が増えていると思います。その点、スティックはご自身でも使いこなしやすいアイテムではないでしょうか。

WWD:星野さんは実際にメイクをやってみて、どうでしたか?

星野悠人:“メイクをしている”感じがしないくらい自然なのですが、それでいてファンデーションだけでもかなり顔色も違って見えるし、引き締まった印象になりした。まだやったことがない人にもおすすめしたい。こうしてプロに教えてもらうことで、普段の接客の際にもつなげられると思います。

WWD:最後に鈴木さんから感想をお願いします。

鈴木:私たちも普段はこうしてプロの方に教わる機会がないので、今回やってみていい勉強になりました。ファッションもヘアやメイクと組み合わせると洋服がより際立ったりと、新たな発見がありました。実際に体験したスタッフにとってもいい経験になったと思いますし、接客にも影響するのではないでしょうか。ぜひまた機会があればやりたいですね。

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「漫画の面白さを伝えていくことが『りぼん』の使命」 小学生のときから愛読者、相田編集長が65周年で思いを語る

 集英社が発行する少女まんが雑誌「りぼん」が8月3日に、創刊65周年を迎える。その65周年プロジェクト「りぼんのりぼん」では、ポップアップストアを東京・原宿で開いたり、インスタグラムフィルターを配信したり、ロゴをフォント化したラインスタンプを販売したり、さまざまな企画を実施。小・中学生をターゲットに、「有閑倶楽部」「ちびまる子ちゃん」「愛してるぜベイべ」など多くの人気まんがを生み出してきた「りぼん」は、65年が経ち老若男女のファンを獲得する。そのファンの一人として子どものころから「りぼん」を愛読していたという、相田総一編集長に65周年について、また「りぼん」への思いを聞いた。

WWD:65周年を迎え、ポップアップを開き反響などいかがだったでしょうか?

相田聡一編集長(以下、相田):今回、ポップアップを開いたのは、「りぼん」の雑誌自体の価値を高めたいという思いからです。昔の愛読者、また現在の小・中学生の読者に、再度、魅力を感じてほしい。そのきっかけになればと考えました。その結果、小学生のころから読んでいただいていた人が、大人になっても応援していただいているんだということを実感しました。作品の力、伝統の力を再認識しました。

WWD:改めて、競合他誌がある中で「りぼん」の強みを教えてください。

相田:難しいんですが……。描いてくださっている作家さんたちが「りぼん」のことを好きで、幼少のころに「りぼん」から影響を受けていて、好きでいてくださる方が、そのまま「りぼん」に集まって描いてくださっているということだと思います。ここで描くことを喜んでいただき、結果として伝統が続いていると思います。編集者の方からどうこうというのでなくても、作家さんたちから「りぼん」らしさだったり、「りぼん」はこうありたいだったり、自発発生的に生まれてきているなと思います。それがずっと長い間、形は変わっていても、根っこの部分でつながっているから強いと実感しています。

WWD:今回、65周年を振り返るだけじゃなく、オリジナルグッズなどを制作し物販もしています。その意図とは?

相田:雑誌離れが進む中で、雑誌の力、雑誌の魅力、雑誌文化の原点じゃないですが、そういったところに引き戻したいという思いがありました。例えば、「りぼん」のロゴマークや「りぼんちゃん」といったキャラクター、アイコン的なものでも、読者の方の記憶を呼び戻せるのではと思っていたのですが、そういったものを商品展開するアイデアを頂いたときに、「なるほど、今までにない切り口で『りぼん』の魅力を伝えることができる、記憶をひも解くことができる」と思ったんです。

WWD:記憶をひも解く中で、今の時代を感じる生理用品、ムーンパンツなどのフェムテックアイテムも置いてあるのは?

相田:かつての読者の方にちゃんとささってほしい。一方で、紙面の中ではできないこと、例えば時代の流れであるフェムテックと「りぼん」を結びつけることなどは、ショップという形を取ったらできるのではないかと考えたんです。また、フェムテックは母から子どもに伝えていくことが重要で、母娘で知るきっかけになったらという思いもありました。

WWD:よく聞かれると思いますが、相田編集長は男性で大人です。少女漫画の「りぼん」を作る上で、面白さ、難しさ、驚きはなんでしょうか?

相田:実は僕自身が子どものころ、「りぼん」に触れていたんです。男性ながら、普通に面白がって読んでいた部分もあって、本当に面白ければ、ターゲットはちゃんと子ども向けの作品であっても、年齢とか性別とか問わず楽しんでいただける可能性はあると思っています。昔の「りぼん」はそういうものでした。「ちびまる子ちゃん」をはじめ、僕らの世代の男性でも「りぼん」の漫画、世界を知っている人は多いと思います。コアなターゲットは小・中学生の女の子であるけれども、作品の力で幅広い読者も引っ張れる。そこを考えると少女漫画の可能性はもっと広がるのではないかと。でも男性だからという難しさよりは、僕ら男性でも面白いと思ってもらえるモノを作っていくことでしょうか。いろいろ矛盾してますけど(笑)。

WWD:なるほど、なんか分かります(笑)。ブレないコアがあり、そこから幅広い層に響いていくということですよね。そういったことからも、現在、部数も伸びていますね?

相田:「りぼん」はここ数年、好調を維持しています。しかし一般的にみて、雑誌離れが進んでいるのは確かで、少女漫画全体の売り上げは厳しい状況です。それもあって、こういったポップアップなどで、雑誌に立ち返ってもらいたい、雑誌に少しでも戻ってきてほしいという思いもあるんです。ただ、大人になってもずっと読み続けてほしいというよりも、今の小・中学生に「りぼん」を通過(読んで育って行って)してほしい。ラインアップも充実しているし、読んでもらえると面白いと思ってもらえると自信を持っています。

WWD:好調とはいえ、デジタル化の波、雑誌離れの加速、さらには新型コロナウイルスといった予期せぬ状況など、出版業界にたくさんの課題がある中、今後どうしていきますか?

相田:まず、新型コロナの影響を受け、われわれとしては出版物・コンテンツを予定どおり読者の方々へお届けすることを第一義に、努めてまいりたいと考えております。それを踏まえた上で、雑誌に触れることが少なくなってきている中で、一度、読んでくれた小・中学生を離さない努力をしなければと思っています。子ども向けのファッションやビューティブランドさんともコラボして付録を作ったり、興味関心の高そうな企画を充実させています。今の時代、本屋に行くことも少なくなっていて、ユーチューブなどほかに興味を持つようなことが増えていると思うんです。でも漫画とユーチューブが比べられているというよりは、単純に漫画に触れられることが減っているのではと。だから、まずは漫画を知ってもらうこと。ユーチューブとかで漫画の試し読みなどもしてますし、それで知ってもらって読んでもらえたら、絶対面白いと思ってもらえると思います。少女漫画、もっと言えば漫画文化自体が停滞してしまうところがあり、そこは「りぼん」がやらないといけないと。原点、基本の作品を通して漫画の面白さを伝えて行きたい。使命だと思っています。

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【動画】古着なくしてファッションは語れず! 原宿に22年間立ち続ける“ビンテージマスター”に聞く

 「出張インタビュー」第2回の訪問先は、原宿の“とんちゃん通り”で22年間営業を続ける古着店の「ベルベルジン」です。開店以来店頭に立ち、店長兼ディレクターとして働く藤原裕さんに話を聞きます。「WWDジャパン」「WWD JAPAN.com」の読者の中には、「私、古着は着ないから……」という人もいるかもしれません。しかし多くのラグジュアリーブランドがビンテージをデザインソースにしていますし、トレンドでもあるリメークアイテムにも古着は材料として使われています。「ディオール(DIOR)」メンズ アーティスティック ディレクターのキム・ジョーンズ(Kim Jones)や、ファッション業界との関わりも強いデヴィッド・ベッカム(David Beckham)も来日時にベルベルジンを訪れます。

 ベルベルジンはバーニーズ ニューヨークに請われてポップアップイベントを行ったり、2019年11月には渋谷パルコにも出店しました。同店にとっては、これが商業施設初出店でした。藤原ディレクター自身もロサンゼルス発祥のジーンズブランド「ヤヌーク(YANUK)」のアドバイザーを務めるなど、「22年前には考えられなったビジネスパートナーを得ています」。

 インタビューでは“定点観測”から見える古着の流通、価格、人気商品の変遷について聞き、古着を着たことがないという人にもお薦めのアイテムや、さらには350万円(!)のスーパービンテージジーンズも登場します。

【エディターズ・チェック】
インタビューが終わって撮影機材を片付けている際に、藤原ディレクターに「独立は考えないんですか?」と尋ねると、「たまに聞かれますが考えていません(笑)。僕は起業家タイプじゃないし、山田さん(山田和俊ベルベルジン オーナー)に恩義を感じているので」と答えました。スマートさとか合理性とかからは程遠いかもしれませんが、ファッションにもこういう男くさい世界が残っていてほしいなと感じました。

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まさかの理由でアーティストに転身!! Chocomooの「#これが私の美しさ」とは?

 「自分らしい美しさ」を提唱する「ボビイ ブラウン(BOBBI BROWN)」は今春、豊富なカラーバリエーションを揃えた人気の美容液ファンデーション“インテンシブ スキン セラム ファンデーション SPF 40(PA++++)”発売5周年を記念したキャンペーンをスタート。「#これが私の美しさ」というハッシュタグとともに、女性が自分らしさを持って、個々の美しさを臆せず発信できる環境が広まることを願う。そこで「WWD JAPAN.com」は、自分らしい人生を歩み、輝く女性にインタビュー。自信を抱けるようになるまでの葛藤、確立したオリジナリティー、そして、「#これが私の美しさ」と言える自分らしさに迫った。3回目は、イラストレーターのChocomoo(チョコムー)。当初目指していたのは、トリマー(!!)。それが、思わぬ理由で諦めざるを得なくなってアーティストに転向という異色の経歴の持ち主だ。専門的な勉強をして来なかった彼女は、どうやって自分への自信を深めたのだろうか?

WWD:トリマーになろうと思ったらネコアレルギーでまさかの挫折(!)、アーティストの道を歩むことになったと聞きました(笑)。

Chocomoo:そうなんです(笑)。昔から絵を描くのは大好きでしたが、高校や専門学校は、美術とは無縁なところ。絵を仕事にする人は、そういう勉強をしてきた人と思い込んでいました。でもアメリカを旅した時、名前も、学歴も関係なく、私の絵が売れたんです。「そんなコト、あるんですね」とギャラリーの方にお話したら、「アメリカは、アートに対して寛容だよ」と教えてくれました。そこで「仕事にできるかもな」と思ったのが、今の原点です。以降イラストをブログにのせたら、コメントがもらえるようになって、自分の世界がどんどん広がって。自分の可能性を教えてくれたニューヨークからは、街のど真ん中にある世界最大の百貨店、メイシーズ(MACY’S)からフェイスブック経由で仕事のオファーまで来たんです。「騙されちゃいけない」と思ってイロイロ調べたら、どうやら、ちゃんとした方みたい(笑)。イベント全体のアートを手掛けさせていただきました。以降、メイシーズとは定期的にお仕事しています。担当者が「いつか、メイシーズのウインドーで何かしたい」と話した、私のインタビューを覚えてくれていたんです。いろんな意味でニューヨークは、私にとっての「アナザースカイ」みたいな場所ですね。

WWD:アメリカを知って、オープンになった?

Chocomoo:昔はコンサバというか、視野が狭かったかもしれませんね。ニューヨークに行って、確実に広がったと思います。例えばニューヨークでは、誰もがファッションや作品を気軽に褒めてくれるんです。そんな経験を重ねるうちに、「あ、得意分野って仕事にして良いんだな」と自信が持てるようになりました。アートの世界でも、無名のジャン・ミシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat)が、アンディ・ウォーホル(Andy Worhol)に絵を売っちゃう街ですからね。今までの考え方の枠を外れた話を聞いたり体験したりしたことで、私自身もかなりオープンになったと思います。

WWD:ポップで賑やかなイラストですが、モノクロです。こだわりの理由は?

Chocomoo:幼少期に書道を学んだせいか、それとも、ウォルト・ディズニー(Walt Disney)のモノクロアニメが大好きだったせいか、頭に浮かぶデザインには色が存在しないんです。昔は塗り絵も、色をつけるのではなく、アウトラインをひたすらなぞっていました(笑)。“未完の美”に魅了されるせいか、世界観は長年モノクロのまま。十数年間この作風なので、デザインは今後もこのままだと思います。モノトーンの作品については、実は、商品に落とし込みやすいという声をいただきます。

WWD:「ボビイ ブラウン」の“インテンシブ スキン セラム ファンデーション”も、あまり色を付けない製品です。

Chocomoo:ズボラなので、これまではクッションファンデを「ピャンピャンピャン」と付けておしまいだったんです(笑)。でも皮膚が薄いせいか、血管が時々透けるのには悩んでいました。このファンデーションは薄づきなのに、補正力がすごいですね。成分として含まれている漢方は大好き。慢性的な冷え性なので、「効く」と聞く漢方は、なんでも買ってしまいます(笑)。

WWD:最後に、Chocomooさんの「#これが私の美しさ」とは?

Chocomoo:仕事では「柔軟性」を大事にしています。1つの考えに固執してしまうと、周りの意見が聞けなくなる。マインドは常に柔軟でいたいんです。自分のスタイルは確立しているから、どんな意見も、楽しく聞けます。楽観主義で「なるようになる」と思っているから、コラボレーションも楽しいことばかりですね。人柄は、作品にも現れます。自分の芯を大事にするには、振り回されないけれど、人に対して優しく生きたい。これが私の美しさ、ですね。

 「ボビイ ブラウン」は今春、ベストセラーの「インテンシブ スキン セラム ファンデーション」発売5周年を記念し、アンバサダーを通して、すべての女性が自分の魅力に気づき、自信に満ちて輝いて欲しいと願う「#これが私の美しさ」キャンペーンに取り組む。それぞれが考える自分自身の美しさを、「#これが私の美しさ」のハッシュタグと共に ソーシャルメディア(Instagram、Twitter)に投稿すると(4月30日まで)、合計1000人以上にプレゼントが当たるキャンペーンだ。「インテンシブ スキン セラム ファンデーション」は、和漢生薬の「冬虫夏草(フユムシナツクサタケエキス(保湿成分))」と、海洋プランクトンの一種「アルテミアエキス(保湿成分)」で構成されるアクティブエナジーコンプレックスにより、ツヤに満ちる生き生きとした肌印象へ導く。3月にはシェードが4色加わり、さらに幅広い全17色へ。同シリーズのコンシーラーも新しいフォーミュラになって登場した。

問い合わせ先
ボビイ ブラウン
0570-003-770

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グッチのCEOが語る、新型コロナの影響と対応 「一時解雇などは考えていない」

 新型コロナウイルスによる危機に対応する中で、人々の暮らしや仕事の進め方が大きく変わろうとしている。

 グッチ(GUCCI)のマルコ・ビッザーリ(Marco Bizzarri)社長兼最高経営責任者(CEO)は、「正式なミーティングの回数を減らして、よりカジュアルな打ち合わせをするようにした。テクノロジーの進化のおかげでリモートワークでもチームと緊密に連携できているが、事態が刻々と変化しているので、堅苦しい会議をしていては間に合わない。素早く要点を共有して、柔軟に対応する必要がある。多くの仕事をこなしているという点は変わらないが、その方法が以前とは異なっている」と語った。

 「グッチ」「サンローラン(SAINT LAURENT)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」などを擁するケリング(KERING)は、新型コロナウイルスが中国で猛威を振るっていた2月の時点では中国で展開している店舗の半分を一時的に休業し、残りの半分も時短営業を行っていた。しかし現在は事態がやや沈静化しているため、中国本土にある店舗では客足が戻ってきており、明るい兆しが見えてきているという。

 一方で、ここ数週間はその他のアジア太平洋地域や北米、西欧で事態が急激に悪化。イタリアやアメリカなどでは生活必需品を取り扱っている店を除く全ての店を休業する措置が取られているが、「グッチ」は従業員を守るため、一部の店舗は政府からの要請に先立って休業に踏み切ったという。同ブランドは世界に487店を構えているが、休業している店舗での一時解雇などは考えていないとビッザーリ社長兼CEOは話す。「ブランドはその理念や価値観について語りがちだが、こうした難局においてこそ、それらを実行するべきだろう。ケリングおよびグッチは雇用の維持を重視しており、利益に響くとしても従業員を守ることを優先する」と述べた。

 新型コロナウイルスの影響でファッション業界が変化すると思うかという質問に対しては、「未来を予想するのは難しいが、物事を改善していくきっかけになると思う。事態の収束後は、まず消費者を支援する必要がある。大災害があった際や、2008年のリーマン・ショックと同様に、人々が浮かれている場合ではないと感じて社会がより真面目な空気になることも予想されるが、ファッションが喜びをもたらすものだということは変わらない」と答えた。

 今回の危機的な状況に対応するため、ショーなどのイベントをオンライン上で発表したブランドも多い。将来的には全てがデジタル化されると見る向きもあるが、ビッザーリ社長兼CEOは、現実世界とオンラインの双方の利点を生かしていきたいという。「テクノロジーの進化は、ファッション業界にさらに大きな影響を与えていくだろう。サステナビリティが重要だという考え方が定着し、仮想現実(VR)の活用がいっそう進む一方で、珍しくて目新しいものを求めるという人間の性質はそうそう変わるものではない。コレクションの発表方法が変化し、それに伴ってブランドの関係者やメディアが世界を飛び回ることは少なくなるかもしれないが、ファッションはクリエイティブなものであり、そのクリエイティビティーは守られるべきものだ。『グッチ』とファストファッションとの違いは、そうした部分にある」と説明した。

 イタリアは3月28日の時点で新型コロナウイルスの感染者が8万6500人に迫り、死者は8000人を超えるなど深刻な事態に陥っている。ビッザーリ社長兼CEOは、「後から『もっとこうすればよかった』と言うことは簡単だが、前例のない未曾有の危機にあってイタリア政府は迅速に行動しているし、よく頑張っていると思う。第2次世界大戦以降に起きた最大の危機だ。このような状況を想定して準備することなど誰にもできない」と分析する。母国を支援するため、同氏は自身の出身地であるエミリア・ロマーニャ州の都市、レッジョエミリアにある8つの病院の集合体である「AUSL IRCCS」に個人で10万ユーロ(約1180万円)を寄付している。

 新型コロナウイルス対策への支援として、ケリングは同社が擁する13のラグジュアリーブランドを代表して中国・湖北省の赤十字基金に750万人民元(約1億1250万円)を、イタリアの医療機関などに200万ユーロ(約2億3600万円)を寄付しているほか、中国から輸入した医療用マスク300万枚をフランスの医療機関に提供する。グッチは伊トスカーナ州の地域当局の要請を受けて、100万枚超の医療用マスクと5万5000着の医療用白衣を提供する。

 これに加えて、グッチは2つのクラウドファンディングを通じて200万ユーロの寄付を行うことを発表した。一つはイタリアのインテーザ・サンパオロ銀行(INTESA SANPAOLO)が運営するクラウドファンディングを通して、同国の国家市民保護局に100万ユーロ(約1億1800万円)を寄付する。もう一つは、フェイスブック(FACEBOOK)が行っているマッチングキャンペーン(主催企業が寄付金と同額を上乗せして寄付する仕組み)を通じて、世界保健機関(WHO)をサポートするために国連財団が設立したCOVID-19連帯対応基金(COVID-19 Solidarity Response Fund)に100万ユーロを寄付する。

 同社はまた、誰もがクラウドファンディングに参加できる専用サイトを設立したほか、「団結して共に危機に立ち向かおう(We Are All In This Together)」というメッセージをインスタグラムの公式アカウントなどに掲載し、ハッシュタグ「#GucciCommunity」を用いて寄付を呼びかけている。

 こうした取り組みに関して、ビッザーリ社長兼CEOとアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)=クリエイティブ・ディレクターは、グッチの社員に向けたレターを発表した。その中で、「私たちは今、新型コロナウイルス感染症のパンデミックという思いもよらなかった危機に直面している。この脅威に立ち向かうべく、パンデミックの影響を受けている人々や、最前線で尽力している医師や看護師などの医療専門家を支援していく」と表明。「グッチはオープンで自由な世界を目指し、誰もが仲間として参加できる“グッチ グローバル コミュニティー”を築いてきた。仲間である皆さん一人ひとりがチェンジメーカー(変革の担い手)となって、私たちと共に今回の危機に立ち向かっていこう」と語りかけた。

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デザイナー三原康裕が素材に込める思い

 大学卒業後にシューズデザイナーとしてデビューした三原康裕氏は、その後スニーカーやウエアラインを展開するなど第一線でファッション業界をけん引し続けてきた。三原氏が手掛ける「メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA YASUHIRO)」のコレクションに使用される裏地素材の一つに「ベンベルグ」がある。「ベンベルグ」は、旭化成が世界で唯一生産する再生セルロース繊維・キュプラのブランドであり、生分解性を持つサステナブル繊維でもある。素材としての「ベンベルグ」への信頼に加えて、環境問題に対して作り手としての強い責任感を持つ三原氏。プレスルームとアトリエで、その思いを聞いた。

 先日発表したばかりの「メゾン ミハラヤスヒロ」20-21年秋冬コレクション。異素材のドッキングや肩パッドなど、三原氏らしい“再構築”のディテールが光る。そんな最新コレクションのジャケットの裏地に「ベンベルグ」が使用されている。「コートやジャケットの場合は特に、袖を通したときの肌当たりや落ち感に(裏地の役割が)重要になってくる。『ベンベルグ』はしなやかで、程よい光沢感は表地として使用しても嫌味がない」と信頼を寄せる。

生分解性を持つ素材
「ベンベルグ」

 天然由来原料の「ベンベルグ」は、土に埋めると微生物の働きにより分解され、堆肥化される生分解繊維である。また、燃やしても有害物質の発生がほとんどなく、環境負荷も少ない。三原氏自身、学生時代に「ベンベルグ」を自宅の庭の土に埋め、生分解性をその目で確認したことがあるという。

 「ファッションの本質は退屈な日常を面白くするもの。環境に負担をかけない洋服だから買いましょう、というようなセールストークではサステナビリティは浸透しない」と語る三原氏。だからこそ、作る側はサステナビリティ重視と同様に、“かっこいい”“素敵”という素直な視点で選んでもらえる洋服を提案すべき、というのが同氏の考えだ。「その分、経済的、社会的、環境的にもうまく循環できるためのシステムを作らなくてはならない。安心感をセールストークにするのではなくて、何を買っても安心というようなレベルを目指すことを目標にしていかないとね」と語る。

作り手としての責任

 ファッションのトレンドは変化する。そのことに対し三原氏は、「流行すればするほど、速いスピードで消費されてしまう。サステナビリティという言葉がブームとしてもてはやされ、数年後に『こんなこと、そういえばみんな言っていたよね』ということになってはならない」と警鐘を鳴らす。

 「自戒を込めて言いますが、僕らファッション業界に身を置く者たちは、時代に翻弄されやすい。だからこそ環境問題への取り組みは、トレンドとはしっかり切り離さないといけない。時間をかけて、じっくり着実に進めていくべきだと思う」。そう話す表情に一人の作り手としての強い責任感をにじませた。

“心臓部”であるアトリエ

 アトリエには、素材やボタンの大量の見本のほか、インスピレーションをかき立てるビンテージミリタリーや本が並ぶ。「当時のミリタリーを見ていると、“実用”という観点だけでは説明できないデザインがある。明らかに“着飾るため”というデザインを見つけると、なんだかうれしくなるよね」とはにかんだ。

MOVIE DIRECTION:NORICHIKA INOUE
MOVIE:KENICHI MURAMATSU
PHOTOS:SHINJI YAGI
MOVIE PRODUCE:RYO MURAMATSU

問い合わせ先
旭化成パフォーマンスプロダクツ事業本部
ベンベルグ事業部ライニング営業部
03-6699-3805

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海外の売り上げ70%のアイウエア企業シャルマン新社長は「インターナショナルスタンダードを目指す」

 福井県鯖江市の大手アイウエア企業シャルマンの新社長に、本庄正享(ほんじょう・まさきよ)・専務執行役員兼シャルマンUSA社長兼CEOが3月26日付で昇格した。シャルマンは昨年、主力のオリジナルブランド「ラインアート シャルマン(LINE ART CHARMANT)」がデビュー10周年で、東京・銀座並木通りに唯一の直営店をオープンするなど節目の年となり、これを弾みにして今年を変化の年としたい考えだ。10年ぶりの社長交代でシャルマンは今後どう変わるのか。全体の売り上げの約30%を占めるアメリカの現地法人のトップを務めるなど、約70%に上る海外ビジネスの成長に長年携わった本庄新社長が目指す新しいシャルマンの企業像は、“インターナショナルスタンダード”だ。本庄氏に抱負を聞いた。

WWD:新社長としての使命は?

本庄正享シャルマン社長(以下、本庄):私の役割をひと言でいうなら、シャルマンの企業価値を上げること。自分の海外経験を生かしてインターナショナルスタンダードを目指したい。働き方改革や生産性の向上に取り組み、良い面は残して継承し、企業の色を変えていきたい。ささいなことが大きく変わるヒントになることがある。当たり前のことだが、権限と責任を明確にすること。海外の企業と比べて遅れている部分やマンネリ化もあった。トップが変わるときは変化のチャンスだ。

WWD:ビジネスのポイントとして考えていることは?

本庄:大きな柱である「ラインアート シャルマン」を活性化すること。国内外における高価格帯商品の中で支持は高いが、現在のビジネスにまったく満足していない。

WWD:昨年、銀座並木通りにオープンした直営店の位置づけは?

本庄:銀座並木通り店は、「ラインアート シャルマン」の全種類をそろえているだけでなく、独自のシステムを導入して、お客さま一人ひとりに最適なフィッティングとレンズを提供している。また、シャルマンのメッセージを世界に発信する拠点として、ブランディングを担う役割があると思っている。

WWD:12月期決算の結果は?

本庄:わずかながら増収増益だった。国内は苦戦したが、欧米が好調だった。現地法人の努力の結果だ。

WWD:新型コロナウイルス感染拡大の影響は?

本庄:シャルマンは中国・上海に販売会社、広東省とアモイに自社工場があるが、社員のほぼ全員が通常勤務に復帰しており、工場の稼働率は約80%に回復している。商品の供給は滞っていない。2月上旬までの売り上げは好調を維持したが、上海以外で営業活動ができていないことから、この1カ月の中国における売り上げは約20%減の影響を受けた。

WWD:7月に延期された国際眼鏡展「ミド(MIDO)」に出展するか?

本庄:まだ決めていない。新型コロナウイルス感染拡大の影響がいつまで続くか不透明だ。ヨーロッパの販売会社と協議しながら判断したい。

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店舗減少時代×ECシフトで化粧品ECはDtoCが加速 専門家が語る“成功のコツ”

 ここにきて店舗減少が進み、気軽に買い物する機会が減ってきている消費者にとって、ECは有益な販売チャネルだ。化粧品は他ジャンルと比較し市場規模が小さく、経済産業省が昨年4月に発表した2018年の化粧品・医薬品EC市場規模は6136億円(前年比7.21%増・EC化率5.8%)。衣類・服飾雑貨の1兆7728億円(同6.74%増・EC化率12.96%)と比較すると倍以上の開きがあるため、日本の化粧品ECは伸びしろのあるジャンルといわれている。その中でも近年注目を集めているのが、メーカーが直接消費者に販売するDtoC(Direct to Consumer)だ。「2025年、人は『買い物』をしなくなる」の著者であるEC専門家の望月智之いつも.副社長に、DtoC成功のコツについて話を聞いた。

 「メーカーのEC進出相談は、19年からかなり増えている。特にDtoCは会社の上層部にまで浸透し、それをどう活用するかという流れがある」と望月副社長。ECで売れている製品は実店舗と異なる点も特徴だ。「実店舗で売れている製品は、基本的にはCMを多く打っているような認知度が高い大手メーカーのものが多い。しかし楽天市場やアマゾン(AMAZON)で、ある月の売り上げTOP30を抜き出してみたところ、実店舗でも売れているアイテムは2製品しかなかった。また、実店舗の売れ筋は価格帯が安く、シャンプーだと400円程度だが、楽天市場だと2000円程度。良い製品をそれなりの価格帯で売りたいと思うならば、ECから始めるのは今の時代に合っている」(望月副社長)。

 しかし、自社サイトで販売を始めるのは人が通らない道に店を構えるようなもので、それなりにアクセスがあるサイトでないと消費者の目には止まらない。そこで望月副社長が推奨するのが、楽天市場やアマゾンなどのECモール内で上位に掲出される“デジタル棚”という発想だ。「実店舗の棚と同様に、デジタル画面の上位のスペースを押さえることは非常に重要。製品カテゴリーを検索したときにすぐに目に入り、ランキングに掲載され常によいスペースを確保することで、消費者は視覚から製品を認知していく。この場所を押さえることは広告を打つことより重要だが、さまざまなノウハウが必要になる」。

 望月副社長が“デジタル棚”成功事例として挙げるのが、ボタニカルライフスタイルブランドの「ボタニスト(BOTANIST)」だ。ECモールで2015年に発売を開始した同ブランドは独自の世界観とスタイリッシュなデザインが支持を集め、楽天市場のランキングで1位を獲得。昨今はドラッグストアなどの小売店でも取り扱われているほか直営店も展開しており、現在の売り上げは100億円を突破している。「WWDビューティ」3月26日号付録では、「ボタニスト」ヒットの立役者である伊藤翔哉I-NE取締役/販売本部本部長代理と、望月副社長が対談を実施。戦略的にECモールからスタートさせた「ボタニスト」の売り方のほか、DtoCで成功を収めるための手法、人材について語り合っている。

問い合わせ
いつも.
03-4580-1365

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「D2C」や「アパレル興亡」など 2020年1~2月出版のファッション関連書籍

 2020年1~2月に出版されたファッション関連書籍の新刊情報を紹介する。今回はアパレル業界のキープレーヤーを総覧できる書籍や、アパレル業界の栄枯盛衰を描いた経済小説などの5冊。それぞれに関連性の高いニュースやコラム記事を添えてあるので、紹介した書籍とあわせて読んでいただきたい。

「『イノベーター』で読む アパレル全史」
(中野香織、日本実業出版社)

 ビジネス面、クリエイティブ面のそれぞれでアパレル/ファッション業界に変革を起こした“イノベーター”人物列伝。前半はオートクチュールの祖チャールズ・フレデリック・ワース(Charles Frederick Worth)から始まるいわゆるデザイナー史的な人選が目立つが、中盤から後半にかけて本書独自の切り口が光る。傍流に位置付けられるバッグ、シューズ、フレグランスの分野で活躍した人々を扱った7章「グローバル・ニッチ市場で勝負するクリエイター」など、この類いの人物紹介で見落とされがちな領域までカバー。本書に紹介された業界のキープレーヤーは押さえておきたい。

「D2C 『世界観』と『テクノロジー』で勝つブランド戦略」
(佐々木康裕、NewsPicksパブリッシング)

 アパレルに限らずあらゆる領域で必ず耳にしたことがあるはずの“D2C(Direct to Consumer)”。本書ではそのD2Cブランドの独自性を、いくつかの事例と既存ブランドとの対比により記していく。本書を読めばビジネストレンドワードとして近年話題になっているD2Cの基本的な要素を理解できるはず。機能性より世界観を重視するビジネスモデルは今後も話題の中心にあると思われる。いまあらためて本書をもとにその戦略を把握しておいて損はない。

「アパレル興亡」
(黒木亮、岩波書店)

 史実を交えながら架空のアパレルメーカーの栄枯盛衰を描く経済小説。戦後から現在に至るまでのアパレル産業と日本経済の変遷がリアリティーと共に描かれている。一つのストーリーとして仕上げられているため、業界の時代背景をつかみやすい。入念な取材から得られた事実に基づく描写からそれぞれの時代の空気感を感じられるはず。当時の商習慣などにかつてのアパレル業界の姿が垣間見える。モデルとなった東京スタイルは現在休眠会社となっており、業界で残り続けることの難しさを感じさせるが、筆者いわく「アパレル業界は不滅で、人々の暮らしや社会の変化とともに、生々流転を繰り返す産業なのである」(「図書」2020年3月号、P.21)。事実は小説より奇なりといえば月並みだが、あらためてこの業界のダイナミズムの面白みに気付く一冊だ。

「三越 誕生! 帝国のデパートと近代化の夢」
(和田博文、筑摩書房)

 呉服店からデパートへと変化する三越の歴史を追う。本書では、株式会社三越呉服店設立時に百貨店化の方針を示した「デパートメントストア宣言」から、現在の日本橋三越本店である三越呉服店本館新館がオープンするまでの1904~14年の10年間を詳細に記述していく。「日本人の夢も未来も、そこに行けば、並んでいた!」という帯のフレーズが秀逸。国内外への文化・流行発信の一端を担うこととなる三越の百貨店化の歩みと、日露戦争を経て帝国化していく近代日本の歩みは重なる部分がある。三越の歴史を読めば、日本の近代と当時の文化が見えてくる。

「かわいい! 少女マンガ・ファッションブック 昭和少女にモードを教えた4人の作家」
(倉持佳代子・図書の家 編集、立東舎)

 少女マンガ誌のイラストは少女たちをファッションの世界に誘う一つの窓口として機能していた。1960年代前後に活躍した4人の作家にフォーカスした本書では、作家インタビューや研究者対談を掲載して少女マンガとファッションの関係に迫る。マンガの主人公が着ていたものと同じデザインの服をプレゼントする当時の企画など、興味深い記述が多い。300点超のイラストを全ページオールカラーで掲載。着せ替え人形カードを付録にするあたり、当時へのリスペクトを強く感じる一冊。少女マンガとコラボしたアイテムがランウエイを飾るなど、当時と異なるかたちでマンガとファッションは接近している。あらためてその関係性を考える一助に。

秋吉成紀(あきよしなるき):1994年生まれ。2018年1月から「WWDジャパン」でアルバイト中

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ティファニー、おまえもか…… エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年11月27日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

ティファニー、おまえもか……

 LVMHがティファニーと買収の交渉をしていると報じられた際、「いやいや、交渉を持ちかけるのはLVMHの自由ですが、ティファニー(TIFFANY & CO.)が合意するわけないじゃないですか」と勝手に思っていました。確かにLVMHは強大ですよ。これまでシャネルだってエルメス(HERMES)だってプラダだって買収されるのでは?と噂になったことがありましたよ。

 しかしこの度、ティファニー陥落です。182年もの歴史を持つアメリカン・ラグジュアリーブランドとしてインディペンデントにやってきたジュエラー、ティファニーがLVMH傘下に入るって、それはそれなんというか矜持がないじゃないですか!どうするんですか、LVMHをさらに強大にして!

 いえ、別にLVMHが嫌いなわけではありませんが、でも本当に一極集中になってしまうと言いますか、市場には多様性と競争が大事だと思うのです。

 取締役会とか株主というものは、ちょっと経営がうまくいかない時期があると早く高く売って儲けたいという気持ちになるのでしょうか……。

 2011年にイタリアンジュエラーの雄、ブルガリがLVMH傘下に入った際も「おいおい」と思いました。当時CEOだったフランチェスコ・トラーパニ(Francesco Trapani)氏は創業家一族としてブルガリの経営を任されていたわけですが、15年以上CEOを務めた後にLVMHに至るし、本人はLVMHのジュエリー&ウォッチ部門のトップに就くというウルトラCを見せました。本人はもはやブルガリからもLVMHからも離れ、投資会社に移りましたが、ブルガリ自体はその後事業効率が上がったようですし、安定しているように見えます(LVMHはブランドごとの売上高を開示していません)。

 ですから、LVMH傘下に入るって、ブランドにとっては良いことだったりしますし、多分相互ウインウインになることでしょう。しかし、ティファニー、おまえもか……。

 なんてことを考えながらティファニーの取締役会メンバーをチェックしていたら、なんとトラーパニ氏の名前が……!!そして、ティファニーのアレッサンドロ・ボリオーロ(Alessandro Bogliolo)CEOは1996年から2012年までトラーパニ氏と共にブルガリの経営に携わっていた人物でした……。なんだか、今回の買収の裏側が見えた気がしますね。

VIEWS ON WWD U.S.:米「WWD」の翻訳記事から、注目すべきニュースの紹介や記事の面白さを解説するメールマガジン。「WWDジャパン」のライセンス元である米「WWD」は1910年から続くファッション業界専門紙。世界中のデザイナーや企業のトップと強く繋がっており、彼らの動向や考え、市場の動きをいち早く、詳しく業界で働く人々に届けています。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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日本のモノ作り × テクノロジーで大手に勝つ 次世代スポーツD2C「テンシャル」の挑戦

 テンシャル(TENTIAL)は、月間100万PV超のスポーツメディア「スポシル(SUPOSHIRU)」とスポーツ用品のD2Cブランド「テンシャル」を運営するスポーツテック企業だ。同社は2018年2月にアスポールという社名で創業。19年4月にモバイルゲーム事業などを手掛けるアカツキからの1.3億円の資金調達とD2Cブランド「テンシャル」の始動を発表し、8月に第一弾の商品としてスニーカーの機能性インソールを発売した。今後は商品のラインナップをさらに拡充し、次世代のスポーツメーカーを目指す。なぜ、第一弾の商品がインソールだったのか?そしてどのように次世代のスポーツメーカーとなるつもりなのか。高校時代はサッカーでインターハイに出場、その後はプログラミングに目覚め、リクルートに史上最年少で中途入社するなど、異色の経歴を持つ中西裕太郎CEOに話を聞いた。

WWD:高校時代にサッカーでインターハイにも出ている中西CEOが、デジタルに興味を持ったきっかけは?

中西裕太郎テンシャルCEO(以下、中西):高校時代はサッカーに打ち込んでいて、大学にスポーツ推薦で進学するか、J2リーグでプロを目指すか悩んでいたタイミングで狭心症になってしまって。発症した時期的にセンター試験の申し込みなどが終わっていたこともあり、進学は諦め、半グレの状態でした(笑)。でも、周囲の大学生の友人に混ざって遊ぶ中で、「さすがに何もしないのはヤバいな」とも思っていました。そんな時に何かの動画でオバマ大統領(当時)が「プログラミングを学べ」と言っているのを見て、プログラミングで人生が変わるかもと思い、勉強し始めたんですよね。サッカーも学歴もなかったけど、プログラミングで本当に世界が変わった。その原体験を世の中に広めようと、ウェブキャンプというプログラミングスクールにジョインし、事業責任者として3年働きました。

WWD:起業を考えたのはいつ頃のことか?

中西:漠然と起業したいという気持ちはもともとありました。ウェブキャンプを辞めた際に、自分も起業をしようと考えたのですが、ふと「今の自分の経験でいけるのか」と疑問に感じて。周囲にも話を聞き、このまま起業しても頭打ちになるという結論に至ったので一度大きな企業に就職しようと考え、リクルートに入社しました。高卒だったし、当時はまだ21歳の中での中途入社だったのですが、役員の方にメッセージを送りまくり、たまたま声をかけてもらったのが実情です。

WWD:リクルート在籍時から、起業に向けて準備していた?

中西:そうですね。リクルートにいたこともあり、スポーツ選手のセカンドキャリアなど、スポーツ×人材領域での起業を考えていました。でも、やはり難しいという結論に至って。とはいえスポーツという軸はブラしたくない。そんな中で、お金を稼ぎ、スポーツの発展に寄与するような投資や寄付を行っている、ナイキなどの大手スポーツメーカーをインターネットの力でリプレイスするような事業をしたいと考えるようになりました。そのためにまずはネットでモノが売れるしくみを作ろうと考え、始めたのが「スポシル」というメディアです。リクルート時代から仕込んでいました。

WWD:「スポシル」単体でのマネタイズはできているのか。

中西:アフィリエイト中心ですが、マネタイズは出来ています。現在、月間で100万PV超程度で、数百万円の収益が上がっており、今後はメディアとして広告も取っていきたいと考えています。ただ、あくまで「スポシル」はどういう記事が読まれているのかやどういう検索ワードがヒットしているのか、何が売れているのか、といった社会の商流を分析するツールとしての位置付けにしています。従来は店員しか知らなかった消費者のニーズをウェブで集約し、モノ作りに生かす。これはテンシャルの強みでもあります。

WWD:「スポシル」でニーズを分析する中で生まれたのが、第一弾の商品であるインソールだったということか?

中西:そうです。僕らのユーザー層が30代以上だったこともポイントだとは思いますが、肩こりや腰痛に関する声が多かった。さらにはネット上ではケガの治療の情報はたくさんある一方で、ケガを予防するための情報は少ない。そういった問題を解決するためのツールの1つとして、インソールに辿り着きました。肩こりや腰痛などの主な原因と言われる“浮き指”を治す効果があります。また、スポーツメーカーの多くが、フットウエアやフットケアといった足の領域からスタートしていたこともインソールを第一弾の商品にした理由の1つです。

WWD:工場などはどのように手配したのか?

中西:プロスキー選手やプロサッカー選手が使用するインソールを製造している、BMZ社と共同開発しています。単にOEM先に発注するというよりは、製造側に積極的にコミットし、僕らの持っている日常的なユーザーの課題などのデータを繋ぎ合わせて素材の選定やチューニングを行っていきました。

手応えは上々
モノ作り × テックで大手と勝負

WWD:価格は7900円と比較的高いようにも思えるが、商品発売後の手応えは?

中西:確かにインソールに馴染みのない方だと高価に感じるかもしれないのですが、インソールは接骨院で作ると2万円くらいすることもあるんですよ。例えば農家の方は体の不調を治すアイテムにすごくお金をかけている。一方でインソールは半年以上使えるので、1日に換算すると数十円くらいになり、意外と安いんです。現状の手応えとしては広告費をほとんどかけていない状態で、300人近くのトップアスリートの方が使ってくれており、月に数百個は売れています。リピート購入が生まれるという確証も生まれました。今後は広告を出して、どれだけのCPA(顧客獲得単価)で広げていけるかを見るために、もう一度資金調達を行い、少し展開を広めて、反響を見て、また新しい商品を作る、というサイクルを繰り返して様子を見ていこうと考えています。

WWD:トップアスリートのほかは、具体的にどのような人が買っているのか?

中西:2パターンあります。1つ目は体が痛いといった課題を顕在的に感じている、30~40代の農家などの方。もう一つはスタートアップなどで働き、体のコンディションを整えることに気を付けている、感度の高い20~30代の方です。僕らもこの2つをターゲットにして、リアルなイベントに出たり、アスリートの方と一緒にコンテンツを作って発信したりしています。

WWD:今後の商品の種類を増やしていくのか?

中西:既に革靴用のインソールを発表しましたが、今後も女性のパンプス用やジュニア用のほか、4000円程度のエントリーモデルなどを現在制作中です。その次はビジネスマンに向けた靴下なども考えています。基本的には会社のフィロソフィーとして“人々のポテンシャルを引き上げる”ということがあるので、そのためのプロダクトや世界観を提供していくつもりです。

WWD:競合はやはり大手スポーツメーカーなのか?

中西:そうですね。中長期的にはミズノ(MIZUNO)やアシックス(ASICS)などと領域が被ってくると思います。また、僕らが勝手に競合と捉えているのはルルレモン(LULULEMON)。彼らは売上高は4000億円ほどでアシックスと同程度ながら、時価総額では8倍くらい差がついている。彼らはネット上でちゃんとモノを売っていて、広告費を限りなく少なく抑えているため利益率が高い。デジタルに強いメーカーとして競合になると思っています。

WWD:そういった競合と、どのように戦っていくのか?

中西:日本のモノ作りのポテンシャルと、テクノロジーを使えば、世界でも戦っていけると考えています。さまざまな工場を見たり、インソールを作ったりしていく中で、やはり日本のモノ作りのポテンシャルはまだまだあるなと感じています。そこに僕らがテクノロジーを持ち込み、ポテンシャルを引き上げる。例えば、腰痛などの悩みを持っている人の年齢や足のサイズ、課題などのデータをもとに、「このインソールを使ってこういう運動をすれば治りますよ」とったことを提案するなど、ユーザーと伴走していけるような会社にできればと思っています。

WWD:今後の計画は?

中西:2021年の6~12月をめどに、一気に加速する体制を作りたいなと思っています。プロダクトはある程度そろっていて、かつマーケットが見え、フィットしているので広告費を踏んでグロースしていく、という状態までは持っていきたいです。それまでの間には自社で構築しているECなどのバックエンドの枠は全て整っている状態にしたいです。

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戦略の時代に突入したインスタグラム 運用テクをインフルエンサーに直撃 1年で約19万フォロワー獲得のエヌケン編

 「WWDジャパン」の3月23日号では、インスタグラムを特集した。単なるSNSではなく、「モノを売る場」や「検索の場」となっているインスタグラムの攻略術を担当役員への取材やSNSのプロフェッショナルによる座談会、アパレル企業へのアンケート調査などから探った。本記事では特集内で行ったインフルエンサーたちへのアンケート調査の回答をピックアップ。認知度がほぼない状態から、インスタグラムを駆使してインフルエンサーとして活動するに至った人物たちに、普段使うアプリや投稿で意識しているテクニック、月々の企業案件数などを聞いた。最終回は、1年で約19万フォロワーを獲得した、本特集の座談会登場者の1人、エヌケンさんだ。

WWD:現在の職業と、普段のインスタグラムの投稿内容を教えてください。

エヌケン:IT系の会社員をしながら副業でライターやコンテンツの販売をしています。インスタでは「4年前の自分へのメッセージ」をコンセプトに参考になる生活の知恵や思考法について写真にテキストを入れた“ミニブログ”形式で発信しており、自分の経験全てをコンテンツにしています。

WWD:投稿頻度はどの程度でしょうか。

エヌケン:毎日投稿しています。

WWD:インスタグラムで戦略を立てる際に重要だと言われているインサイト(クリエイターやビジネスアカウントに切り替えることで見ることができる投稿分析機能)で重視している項目は?

エヌケン:インプレッションとリーチの数字の差や、フォロワー外への露出はどのくらいなのかを重要視しています。インプレッションが高いのにリーチが少ない場合、露出できているのにタップされてないということなので改善できます。例えば1枚目の写真のタイトルが弱かったり、写真の雰囲気とキャッチコピーがマッチしてなかったなどどんな投稿からも学ぶことはできるので、日々勝ちパターンを模索しています。フォロワー外への露出に関しては、フォロワー数以上にリーチさせることを毎回の投稿の目標数字としています。

WWD:投稿の際に画像加工などで使用するアプリはありますか?

エヌケン:写真加工はアプリを一切使わずiPhone搭載のフィルター機能だけです。写真への文字入れは「Phonto」というアプリを使用しています。

WWD:写真撮影時に使う機材などはありますか?

エヌケン:基本はiPhone 11 proの標準カメラで、料理の写真はキャノン(CANON)の G7 MarkⅡで撮影しています。

WWD:写真の画角やハッシュタグの付け方などで、投稿の際に意識している細かいテクニックはありますか?

エヌケン:文字を入れることを前提とした画角にしています。例えば商品紹介の場合は商品を端側に配置し、空いた余白の部分に文字をレイアウトします。ハッシュタグに関してはフォロワー10万人を越えたあたりから全く機能しなくなったので現在では一つもつけていません。

WWD:これまでに最もバズった投稿はありますか?

エヌケン:人気コンテンツである「買ってよかったもの」企画です。760万インプレッション、440万リーチ、 2.4万いいね、6.8万保存、161シェアで、この1投稿でフォロワーが1.1万人増えました

WWD:企業案件は1カ月にどの程度来ますか?また、月にどの程度受けていますか?

エヌケン:1ヶ月に20~30件ほどですが、新規ではほとんどお受けしていません。

WWD:企業案件の1投稿当たりの報酬について、これまでと現在で金額に変化はありますか?

エヌケン:内容にもよりますが1案件20万円~お受けしています。案件を受ける場合は企業から提案される額の2〜3倍こちらから交渉します。マーケ担当者から目標数字をお伺いしたのちに、私が企画を練って、しっかりコンバージョンさせるクリエイティブを納品致します。

WWD:インスタグラムに関して、外部支援(コンサルティングやセミナー登壇など)を行っていますか?

エヌケン:はい。      

WWD:外部支援の依頼は、最近増えていますか?

エヌケン:知り合いから依頼されることは多いですが、本業にコミットしたいためお断りしています。

WWD:インフルエンサーとして、今後描いているキャリアプランはありますか?

エヌケン:D2Cで商品開発について考えています。

WWD:現在活用しているインスタグラムの機能を理由と共に教えてください。

エヌケン:ライブ配信を毎週日曜の23時から行っています。なぜ日曜の23時かというと、月曜日が嫌だな、と思っているフォロワーの方とコミュニケーションをとることで明日も頑張ろうって勇気付けたいからです。

WWD:今後活用していきたいインスタグラムの機能があれば理由と共に教えてください。

エヌケン:質問箱です。フォロワー20万人の影響力を私だけのものにしておくのはもったいないので、世間が気になってることを質問箱を活用して、エヌケンがまとめることでフォロワーの問題解決に役立てればと思います。

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東京藝大を首席で卒業 “現代の美容のあり方”をテーマに創作を続けるアーティスト西澤知美の思考

 東京藝術大学(以下、東京藝大)および同大学院の先端芸術表現科をともに首席で卒業したアーティストの西澤知美。“現代の美容のあり方”をテーマに、メイク道具と医療器具を融合させて、メイク室を手術室へと変化させた空間インスタレーション「Natural Make Up」や、ビューラーと鉗子(かんし)を融合させた巨大彫刻作品などの作品などを制作している。なぜ美容をテーマにしようと思ったのか。彼女が制作の場としているアトリエで話を聞いた。

WWD:西澤さんは“美容”をテーマに創作を行っていますが、どういった経緯でそうなったんですか?

西澤知美(以下、西澤):もともと“物の表面性”みたいなことに興味がありました。それでメイクやスキンケアで顔の毛穴やシワなどの凹凸をなくして滑らかに見せることって、「立体的なものを平面的に見せていく作業」と捉えるとおもしろいなと思ったんです。あと、最近は化粧品が進化したことでシワやシミを消せるなど、医療との境界がなくなってきていて、化粧品を使うことがある種の医療行為にもなっている。そう考えると毎日化粧品を使うことって、肌の表面をきれいにするだけではなく、肌そのものを構築していることになる。それにすごく引かれて、肌の表面と内部との境界、美容と医療の境界を意識して作品を作るようになりました。ただ明確にこんな作品を作りたいというよりは、作っていくなかで、だんだんとこういったものが作りたかったんだと自分でも分かってくるんです。だから作品を作ることって、自分自身を知ることにつながっているんだと思います。

WWD:西澤さんご自身は美容には興味があったんですか?

西澤:興味はあったんですが、自分でしっかりとメイクをやるかというとそこまでではなかったです。ただ同世代の女性がすごく美容に対する追求心が強くて、それを客観的に見ていた感じです。新しい成分も出てきていて、いろいろな化粧品を使ってみたいという興味はあるんですが、今は化粧品買うなら制作費にしようという考えになってしまっています(笑)。

WWD:そもそもなぜ東京藝大の先端芸術表現科を志望したんですか?

西澤:高校生のころから「同世代の女性に共感してもらいたい」と気持ちがあって、最初はネイリストになろうと思っていたんです。それで高校3年生のときにネイリストのバイトをしたんですが、一つのことをやるよりはもっといろいろと表現したいという欲求が出てきて、それで調べたら東京藝大に先端芸術表現科という学科があるのを知って、それから予備校に通いました。現役では落ちてしまったので、1浪して入学しました。

WWD:先端芸術表現科ってあまり聞きなれないのですが、どんな学科なんですか?

西澤:ジャンルに捉われず、自分のアイデンティティーを掘り下げるという学科です。だから授業も写真や身体パフォーマンスなどいろいろ学びながら、さまざまなメディアで自分のやりたいことを表現してみるという感じでした。

WWD:首席で卒業ということですが、それはどうやって決まるのですか?

西澤:私がいた科では、基本的には卒展(卒業制作展)で全てが決まるんですが、先端芸術表現科は日本画や彫刻などと違って上手・下手とかではなく、みんなコンセプトや作る作品がバラバラで、また教授の評価も本当にバラバラです。だから一概には言えないのですが、「どれだけ自分の表現したいことが作品として、形に落とし込めるか」が大事なのかなと思います。その中で賞に選ばれた人が首席ということになるんですが、私は大学と大学院、両方の卒展で賞に選ばれました。

WWD:学部の卒業のときの作品はどういったコンセプトだったんですか?

西澤:「MY ROOM」という作品です。家具を一つ一つ解体して、自分が吐き出したガムやネイルチップ、コンタクトレンズ、エクステなど、身体から出た異物を素材として家具を再構築した作品です。ネイルチップやコンタクトって着けているときは体の一部だったのに、それを外したとたんに異物になることがおもしろいなと思い、この作品を作りました。

WWD:なるほど。大学院の修了作品の、手術室をモチーフにしたインスタレーション作品は、より美容への意識が強くなった印象です。

西澤:「Natural Make Up」というインスタレーションで、メイク室を手術室へと変化させた作品です。医療用鉗子をビューラーと溶接したり、メスがフェイスブラシになっていたり、手術用無影灯が女優ミラーになっていたりと全ての器具が美容用品と融合しています。全て私が溶接したり、組み合わせたりして作りました。この作品をベースにさらにいくつかの作品を加えて、15年2月には個展も行いました。

WWD:壮大な作品です。鉗子とビューラーを組み合わせた作品はかなり大きなものも作っていますね。

西澤:15年11月に行った個展「Cosmetic Inside Skin」の際に制作した「Neo Eyelash Curler」という作品で、全長150㎝あります。実際に鉄を削り、溶接して磨いた鉄の彫刻作品です。このときの個展では、美容液を薬品に見立てた「Blend under the skin」という作品や、MRIの背景をファンデーションとチークにした「MRI inside head」という作品、フェイシャルマスクを使った「Golden Lift」という作品なども展示しました。

WWD:どれもコンセプトがおもしろい。昨年はスプツニ子!さんとコラボして「Tokyo Medical University for Rejected Women(東京減点女子医大)」という展示を、ニューヨークと東京で行いました。

西澤:あれは18年に問題になった、医大入試の一律減点を背景にした作品です。スプツニ子!さんから“入試で減点されて落ちた女子たちが入れる学校”というテーマでなにか作れないかというところから始まりました。そこから構想を膨らませ、どういった作品にするかは私が考え、デザインしました。「そこでは女性学生がロボットを操作して、一般男性をエリートドクターに改造し、そのエリートドクターをドローンで各病院に出荷する」というストーリーの写真作品です。

WWD:なるほど。今も何か作品は作っていますか?

西澤:そうですね。6月末から一カ月間個展を予定しているので、それに向けて制作中です。

WWD:西澤さんの目標は?

西澤:これからも創作を続けて、多くの人に“アーティスト西澤知美”を知ってもらいたいです。あと自分の作品作りだけではなく、クライアントワークも行っていて、雑誌やイベントブースのアートディレクションも手掛けているので、機会があればどんどんやっていきたいです。

WWD:最後に新型コロナウイルスによる影響が広がっていますが、西澤さんが思うことは?

西澤:大げさに聞こえてしまうかもしれませんが、ここ数日、新型コロナに関するニュースを見るたびに、「私は全く症状がでていないだけですでに感染しているのでは」と思って生きています。いつどこで感染してもおかしくないし、感染しているのに気づかずにそのまま出歩き拡散してしまったら、恐ろしいなと。しかし一方で、生きていくためには、外に出なくてはいけないのも確かで、とても複雑です。いち早く経済が安定してほしいし、この事態も終息してほしいので、私は家か近くのアトリエにほぼひきこもっています。アーティストとして、展示のためにだけに作品を制作している訳ではないので、展示がなくなっても、手を動かして常に自問自答しています。今は新型コロナが終息したときに万全でいられるように、極力外には出歩かず制作を続けていくしかないのではと思っています。

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「前髪」はもはやメイクより大事! 若年層がこだわる理由とは?

 「若い女性たちにとって『前髪』は、ヘアスタイルというより、もはやメイクに近い存在なんです」。マンダムの新製品イベントでこの話を聞いた時、正直いって少々驚いた。若い女性たちが美容でまず関心を持つのは「メイク」というのは分かる。ヘアスタイルやアレンジによって「かわいい髪型」を演出したいのも理解できる。でも、なんで、「あえて『前髪』限定!?」と。

 これには、若い世代特有のコミュニケーション法が関係している。10代~20代の女性たちは、コミュニケーションツールとしてスマホを駆使し、SNSのアイコンやインスタグラムで日々の生活を発信するために、自撮りをする機会が多い。

 「マンダムが2020年に15歳~29歳の女性442人を対象に行ったインターネット調査によると、『SNS にアップ予定の写真を撮る直前に、確認したいポイントはどこか』という質問に対して、1位は『前髪が整っているか』の57.7%。2位は『髪型(全体)が整っているか』の48.0%。3位以下にようやく、ポイントメイクが崩れていないか、肌がテカっていないかなど、メイクに関する回答が登場します」(上水文マンダム広報担当)と語る。

 また、「写真を撮る直前にやってしまうこと」をたずねると、「前髪を整える」が断トツ1位の74.7%。2位に「リップや口紅を塗る」(56.3%)がランクインしているが、続く3位は「サイドの髪を耳にかける」(30.8%)、4位は「髪の毛先を整える」(28.3%)と、ここでもヘアスタイル関連の回答が上位を占めた。

 個人的な感覚だが、恐らく30代以降の女性が写真を撮る前にやることといえば、「リップをつける」「ファンデーションでテカリを抑える」など、いわゆる「メイク直し」ではないかと思う。一方でなぜ、若い世代において、こんなにもヘアスタイル……とりわけ「前髪」が重視されるのだろうか?

肌は加工できるけれど、
前髪は修正が難しい

 「若い女性たちの間では、スマホで写真を撮る際『ビューティー系アプリ』を使い、加工するのが当たり前になっています。肌を明るくしたり、目を大きく見せたりするなど、撮影後に顔はいくらでも加工できます。しかし髪だけは、加工するとどうしても不自然な印象になってしまうんです」と上水広報担当。

 なるほど。確かに直接対面で会うコミュニケーションの場合、肌の質感や髪全体の印象など「立体的な要素」が印象を左右するもの。しかしSNSのアイコンやインスタグラムの写真は「平面」であり、それゆえに髪……特に「前髪」の重要度が高まるという。

 「平面の顔写真では前髪の占める面積が多く、顔の一部として印象を左右するパーツです。しかも加工が難しいとなると、最も前髪が気になるのもうなづけます。同じ意識調査で『SNSにアップ予定の写真で、自分の映りを気にするポイント』をたずねると、やはり1位は『前髪が乱れていないか』(48.2%)という回答でした」(上水広報担当)

 映りを気にするポイントも、前髪が1位、髪型が2位と、ヘアスタイル関連の回答が上位を占めた。個人的に「表情がかわいく映っているか」よりも、髪型のほうが気になることが意外だったけれど、「表情に関しては、後々加工できるのはもちろんのこと、最近の女性は『キメ顔』といいますか、自分が最も美しく見えるお気に入りの角度があるんです」という上水広報担当の言葉に、再びなるほどと深く頷いてしまった。

「前髪コスメ」は、
美容業界のブルーオーシャンか?

 そんな若い女性たちの前髪へのこだわりにいち早く注目し、マンダムからこの春誕生したのが「ルシードエル(LUCIDO-L)♯髪のベタつきリセットスプレー」だ。2種類のパウダーを配合し、ベタつきやテカリの元となる汗や皮脂を吸着。夕方になるとべたついて、束になってしまう前髪をリセットし、サラサラの質感へと導くことを目的としている。

 朝のスタイリング時に束感予防として使うのはもちろん、トップをふんわり立ち上げるのにも活躍。70gの小型サイズで、バッグの中にポンと忍ばせやすく、外出先で自撮りをする前に手軽にスプレー出来るという、若い女性たちのライフスタイルに添ったアイテムだ。

 一方、本来はフェイスバウダーでありながら「前髪にも使える」として、口コミでブレイクしたのが「イニスフリー(INNISFREE) ノーセバム ミネラルパウダー」である。火付け役は、Kポップのアーティスト。2019年の夏に「ダンスの練習時に使うと、汗をかいても前髪が崩れにくい」という情報がSNSを通じて拡散し、ヒットにつながったという。18年のブランド上陸時から存在するアイテムだが、19年度は売り上げが1億3300万円増加し、成長率は493%というから驚きだ。こちらの製品も、持ち運びしやすい小型サイズで、外出先でも使えることが人気の理由という。

 このような前髪専用アイテムの登場や、本来はフェイスパウダーなのに前髪に使えることでヒットした製品が存在することから、確かに若い女性たちの間で「前髪コスメ」へのニーズが一定数あるように思う。

 ちなみに、この「前髪の話し」を身近な若い女性に振ってみたところ、一様に情熱的な反応で驚いた。我が家のアシスタント(19歳と22歳、ともに学生)は、「前髪、すごい大事です! 前髪が決まらない日は、1日ブルーなんです」「高校時代プリを撮る前には、みんな絶対前髪を直してました」「就活で強制的に前髪をまとめていた時は、本当に苦痛だったです」と、前髪エピソードが止まらなくなってしまった。仕事で会った代理店の女性(20代半ば)も同じく「前髪が決まらないと1日ブルー」といい、「前髪用のコスメがあったんですね! 帰りにドラッグストアに寄ってチェックします」と、メモを取っていたほど。

 いやはや、ごく身近な、狭い範囲の経験ではあるけれど、若い女性の前髪への熱量は、確かに私たちの世代とは違うらしい。そして、前髪用のプロダクトは現在のところ、まだまだニッチな存在であり、ある種ブルーオーシャンであるとも思う(フェイスパウダーを前髪に使っている人がいるくらいなので)

 今後前髪にフォーカスしたアイテムが増加するのか? はたまたビューティアプリの加工技術が進化して、より自然な前髪の演出が可能になるのか。若い女性をめぐる「前髪事情」から、しばらく目が離せない。

宇野ナミコ:美容ライター。1972年静岡生まれ。日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、ウェブなどで美容の記事を執筆。スキンケアを中心に、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、美容医療まで担当分野は幅広く、美容のトレンドを発信する一方で丹念な取材をもとにしたインタビュー記事も手掛ける

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マーク・ジェイコブス、新型コロナの影響を語る

 多くの有名デザイナーたちと同じように、マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)もまた新型コロナウイルスがビジネスにもたらす影響を案じている。彼が最も心配しているのは、彼にとって“チームであり家族”だという「マーク ジェイコブス」の従業員たちのこと。LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)傘下のブランドということもあり、少なくともこの先しばらくの間はサポートが得られるだろう。しかし、新型コロナウイルスによる影響が大きくなりつつある現状へ打開策はまだ見いだせていないという。「この先どうなるか予測が立たない。今後のビジネス戦略を考えてはいるけど、まだわからない」という。

WWD:突如として生活が一変したけど、どのように適応している?

マーク:みんなと同じように私も時間を持て余している。危機に陥った時の悲しみへの対処法は人それぞれだし、自分に打ち勝つ方法も千差万別。人の気持ちが分かる人間であろうと思っている。簡単なことではないけれど。

WWD:この騒ぎを最初は大げさだと思った?

マーク:大げさだとは思わなかったよ。どちらかというとこの世の終わりのような感じがした。私は悲観主義者ではないけど、考え方はとても現実的だと思う。周りの人と話してみると、自分の考えが悲観的過ぎて話が合わなかった。でも、自分がネガティブだとは思えないかな。

WWD:人びとは不安や恐怖を感じているが、親切な行動も見られる。

マーク:うーん、それについてはっきりとしたことは言えない。テラス付きのホテルの部屋で愛犬と一緒に過ごせて、周りに助けてくれる人たちもいるから平常心を保つのも簡単なんだ。私は明らかに恵まれているよ。

WWD:会社のことで何が一番気掛かりか?

マーク:チームのことだよ。家族のようなスタッフたちには、少なくとも数週間は会社が賃金を保証すると思って自宅で安全に過ごしてもらい、できる限りの安心感を抱いてほしい。それが一番だよ。あとは最高経営責任者のエリック・マレシャル(Eric Marechalle)と話をして、マスクを生産することで合意した。私と、私の右腕のような存在のニック・ニューボールド(Nick Newbold)、コレクション制作で指揮を執るダヌタ・デヌリー(Danuta Denuree)の3人で着手していて、素材の供給を待っているところだよ。エリックがアジア製造部門の担当者と連携して医療用品を手配する段取りを進めている。従業員の安全を保証して、ほかにも援助の手を差し伸べていきたい。そうすれば希望が持てる。

WWD:食糧支援団体に寄付したと話していたが?

マーク:寄付することが可能な立場にいるからね。自分が健康である限りは、ほかにも何かできることがあると思う。

WWD:ボランティアでの食料のデリバリーも考えているとか?

マーク:デリバリーに関しては、責任の負い方がわからないから少し難しいところもある。時間があるから、安全を確保できるなら行動するのは可能だよ。感謝祭の朝に夫ともやっているしね。

WWD:興味深い考えだ。

マーク:スポンサーやアルコール依存症プログラムなどから教わったことがある。自己中心的思考や被害者意識、恐れなどを抱かないためには、誰かのために何かをすることが大事なんだ。最高の方法だと思うよ。

WWD:「マーク ジェイコブス」のビジネスについて今どう考えているか?経営面と感情面の両方で。

マーク:もちろん集中して考える必要があるけど、危機を脱した後の方向性が分からないという気持ちも少しはある。いつ収束するのか、どれほどのダメージや影響を受けるのか分からないから。今後の方針は考えていくけど、正直今はまだその段階にはいない。

私はとても光栄な夢のような業界で仕事をしている。私の人生において、夫との関係の次に重要なのは仕事。だから私は自分を最優先にしているし、そのために生きている。それが変わることなんて考えたくないけれど、変える必要があるのだろう。全てを変える必要がある。最も大きな問題は教育不足にあると思う。教育にあまり価値を置いていないせいで、緊急事態の時にほとんどの人が対処不能に陥っている。

WWD:でも、こんな状況には誰も対処できない。

マーク:そうだね。でも人びとの行動や態度はどうか。実際、多くの人がトイレットペーパーを買い占めるなどの馬鹿げた行動を取っている。

「自分が選択したキャリアに負い目を感じたりはしていない」

WWD:楽観的であることは大切だと思う?

マーク:楽観的?これが“この世の終わり”ではないと思うし、そうあってほしいよ。何がどうなるかなんて全然わからないけど、多大な影響を受けることは確か。本当の意味での現実を受け入れるのは難しい。自分はその他の人びとと同じだと思う。朝は祈り、瞑想もする。そしていつも通り注意深く、他人にも親切にする。手袋をして、頻繁に手を洗い、人とは適度な距離を取るなど、やるべきことをするだけだよ。

WWD:祈りや瞑想から何を得たか?

ジェイコブス:祈りは私が実践している12のことのひとつで、瞑想もその一部。何かのイマジネーションに啓発されているわけではなく、冷静で高潔で役に立つ人間としてやるべきことをする。仕事であっても家にいるのであっても、それが私の毎日の課題だよ。

WWD: なるほど。そして事態が収束した後のビジネスの方向性は、まだ考えられる状態にはない、と。

ジェイコブス: 同じことになるけどけど、ただそのような考えが頭をよぎっただけだよ。なんにせよ、ビジネスは非常に難しい局面にある。先週、米「WWD」が掲載したあなたの記事には「新型コロナウイルスのパンデミックにおいて人びとが必要としているのは生活必需品だ。贅沢品は“欲しいもの”であって“必要なもの”ではないから、ラグジュアリーブランドは店を閉めるべきだ」と書いていたね。でも私の考えはそれとはすこし違う。私は、人びとが“欲しがるもの”も“必要なもの”だと考えている。もちろん贅沢品は食料や水のように差し迫って必要なものではない。でも私は自分が選択したキャリアに負い目を感じたりはしていないよ。

WWD:そんなつもりであの記事を書いたわけではなかった。

マーク:私は創造性が織りなすものはすべて、人びとが必要としている贅沢品だと考えている。いい本を読むこと、美味しい食事を摂ること、素敵な家に住むこと――生き抜くために最低限必要なもの以外はすべて贅沢品だよ。ある日、コールドプレスジュースを買いに行ったとき、そこで働いている若い店員と話をして、彼が恐れを感じていると聞いた。彼は休みや有給休暇を求めていたのではなく、「これが僕の仕事。誰かがサービスをしなければいけないことに気が付いた」と言っていた。あなたの記事にも書いてあったように、スーパーやテイクアウトのフードショップ、デリバリーの仕事をしている人たちは医療従事者と同じように、とても重要な仕事をしているということに目を向けて、感謝しないといけない。医療施設で治療にあたっているのとは違うけど、食料や薬を必要としている人びとにサービスをしているのは一緒だから。

WWD:この出来事によって、私たちの生活が永遠に変わるだろうと言う人が多いが、あなたもそう思うか?

マーク:そうだね。私たちの生活は永遠に変わるだろう。どのように変わるかは分からないし、そもそもそれがどういうことなのかもよく分からないけど。私もほかのみんなと同じような動きを求めているんじゃないかな。

WWD:その動きはどこから出てくると思うか?

マーク:このような時は、自分は守られていると信じるためにも神への信仰心を持つことが重要。恐れを抱いているときに信仰を持つのはすこし難しくもあるし、実践する習慣も必要だから、不特定多数の人に向けての話題としては適切ではないかもしれない。私は生活に困ることのない恵まれた場所で信仰心を簡単に持つことができる立場にいるから、できればこの話はあまりしたくない。

WWD::あなたは自分のことをよく分かっている。

マーク:多少はね。

WWD:恐れを抱いたことは?

マーク:もちろんあるよ。私はすごく怖がりというか、とても心配症なんだ。ただありのままを見るようにすれば不安に駆られることはない。つまり、いま私は窓の外を眺めていて、空は晴れていて、2匹の犬がベッドに寝そべっていて、あなたと会話をしている。これが私の現実だから、今のこの瞬間に恐れなど感じない。でも、未来について考え始めるとやはり怖いはと思う。

WWD:それは興味深い。

マーク:それがスピリチュアルの原理なんだ。現実以外のものにとり付かれて恐れを抱くこともなければ、「未来はすべてよくなる」みたいな風にも考えない。

WWD:つまり今を生きるということか。

マーク:自分自身が心身ともに健康であれば、電話で話をしたり、相手を励ましたり、どんな形でも他者に貢献することはできるからね。朝起きて、祈りを捧げて、正しい行いをするという、自分が教わったことを可能な限り実践するだけだよ。時に正しい行いとは、シャワーを浴びてテレビの前に座ることだったりもする。そして、今日の私にとっての正しい行いとは、あなたと話をすること。記事を書いて有益な情報をシェアする仕事は大切なことだよ。

WWD:ありがとう。

マーク:恐怖に陥り、パニックになりながら間違った情報に触れるよりも、価値のある役立つ情報を自由に得られる方がずっと素晴らしいと思うよ。

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先行き不透明な今だからこそ、パタゴニアから学びたい

 先日、パタゴニア(PATAGONIA)のレジェンドの一人、ヴィンセント・スタンレ(Vincent Stanley)=フィロソファー(哲学者)にインタビューする機会を得た。不安な状況が続く今だからこそ彼らから学ぶことは多い。とくに印象的だったのは、パタゴニアのビジネスには大量生産・大量消費から脱却するヒントがある、ということだ。

 パタゴニアの一番の強みは明確な企業理念を社員と共有して、それを皆が理解するよう努めている点だ。その結果、社員一人一人が自分の持ち場で企業理念にどう貢献するかを考え、理念という“基準”により、ある程度自分で判断ができ行動に移せるようになる。自分の行動に責任を持って何に貢献しているかを自覚するようになるし、それぞれのやりがいや自身の幸せにもつながる。先行きが不透明な今だからこそ、こうしたことは大切になってくるのではないかと思う。企業理念はあっても、十分なコミュニケーションが取れていないなど、それが生かされていない企業もあるのではないだろうか。

 ビジネスと家庭は同じという考え方も印象的だった。パタゴニアは家族や顧客とのコミュニティーを大切にしているし、今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受けていち早く行動した。日本でも全直営店22店舗を3月18~31日の期間臨時休業とした。マーティ・ポンフレー(Marty Pomphrey)=パタゴニア日本支社長は、「『パタゴニア』は常に私たちのパタゴニアコミュニティーを第一に考えて会社の方針を決定してきた。今回の状況においても、社員、社員の家族、そしてカスタマーの健康を守る最善の決断をするよう尽くす。そして、この状況を共に乗り越えられると確信している」とコメントを発表している。26日には臨時休業の延長と、非常食や自宅で簡単に調理できる食品ニーズの高まりを受けて、パタゴニアプロビジョンズの食料品の割引販売と送料無料サービスを発表した。

 もちろん会社の規模や体力などさまざまな理由から、パタゴニアのような決断をすることが難しい事業所は多いだろうが、こうした英断とその姿勢はきっと多くの人たちを元気づけたはずだ。

アパレルにおいて
消費ではなく満足感を得るには?

 彼らがほかの企業と異なる点は、新しいカルチャーを創出してきた点だ。インタビューでも新しい価値観について聞いている。ここでいう新しい価値とは、消費に頼らずに得られる満足感や幸せのこと。ファッション産業は、人々の欲望に頼ってたくさんモノを作って成長を続けてきたが、その代償として地球環境を破壊してきたし、それは気候危機の要因となっており、年々深刻化している。地球の容体は待ったなしの状況だ。私たちが今のままの生活を続けるには地球は一つでは足りない。

 パタゴニアが提案する新しい価値の一つに、服と着る人とのコミュニケーションがある。リペア(修繕)によりパーソナライズされて特別なものになっていくというのもその一つだし、着続けることで服とともに経験を積んでいくような感覚を持つこともその一つだ。新品を買わずにリペア&リユースを推進するプロジェクト「WORN WEAR 新品よりもずっといい」では、着ることや服のストーリーを紹介したり、リペアトラックを走らせて「パタゴニア」製品以外の製品でも無料でリペアをしたりしている。その結果、米国ではリペアした「パタゴニア」を着ることがクールというカルチャーが生まれている。

 今、多くの人がこれまでと同じ経済活動や消費を続けることはできないと気づき始めている。一方で、雇用は守らねばならないし、我慢はしたくないし、そう簡単には立ち止まれないし変われない。「仕方ない」「立ち止まったら終わり」という考えを持つ人も多い。

 新型コロナウイルスの影響で、多くの痛みを伴いながら、私たちはグローバリゼーションの中で築いてきた仕組みがいかに脆弱であるかに否応なく気づかされた。立ち止まらざるを得ない状況の企業も人も多い。そういう今こそ、変わるチャンスなのではないだろうか。活動が制限され、物流が止まったことで“限りがある”ことを知った。当たり前だったことが当たり前ではなくなった。その結果、地球の環境は改善しているという記事も多くある。大気中の一酸化炭素濃度や二酸化炭素濃度は低下しているという。

限りある資源を
どう生かし、環境を保護するか

 気候変動対策で企業がまず取り組むこととして、スタンリー=フィロソファーは「サプライチェーンの見直し」を挙げた。そして、サステナビリティに取り組む研究者や問題解決に取り組む企業の創業者も同じことを指摘する。

 どの工程がどれくらい環境に負担を与えているかを知って、最もインパクトがあるところから改善してみてはどうかというのだ。パタゴニアは1990年代から「サプライチェーンの大掃除」を始めており、その結果として使用する繊維の種類や取引する工場も減ったが、規制から生まれたイノベーションも多いという。

 パタゴニアは、多くの企業がこれから取り組もうとしていることを25年以上も前から始めている。まずは3月9日号のインタビュー3月19日に掲載したインタビューを読んでいただきたいし、より詳しく知りたい人には、創業者のイヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard)氏が書いた「社員をサーフィンに行かせよう パタゴニア経営のすべて」(ダイヤモンド社)にとても詳しく事例が紹介されているのでお薦めしたい。

 同著の中でシュイナード氏が語っている印象的な言葉を紹介したい。「商売を始めて35年、ようやく、なぜこんなことをしているのかがわかった。環境活動に寄付したいという気持ちにうそはない。だがそれ以上に私は、パタゴニアでモデルを確立したかった。我々のピトンやアイスアックスが他のメーカーのお手本になったように、環境経営や持続可能性について考えようとする企業がお手本にできるモデルを確立したかった」。パタゴニアはもともと、山を傷つけない登山用のギアの製造から始まり、アパレルに参入した。今は食品も手掛ける。その異色なビジネスモデルは今や有力企業やハーバード大学でもケーススタディーとして取り上げられる。

 パタゴニアのビジネスにある大量生産・大量消費から脱却するヒントを、今こそ理解して実践すべき時だ。

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戦略の時代に突入したインスタグラム 運用テクをインフルエンサーに直撃 林崎咲良編

 「WWDジャパン」の3月23日号では、インスタグラムを特集した。単なるSNSではなく、「モノを売る場」や「検索の場」となっているインスタグラムの攻略術を担当役員への取材やSNSのプロフェッショナルによる座談会、アパレル企業へのアンケート調査などから探った。本記事では特集内で行ったインフルエンサーたちへのアンケート調査の回答をピックアップ。認知度がほぼない状態から、インスタグラムを駆使してインフルエンサーとして活動するに至った人物たちに、普段使うアプリや投稿で意識しているテクニック、月々の企業案件数などを聞いた。第6弾は、林崎咲良さんだ。

WWD:現在の職業と、普段のインスタグラムの投稿内容を教えてください。

林崎咲良(以下、林崎):「ジョイントワークス(JOINTWORKS)」のコンセプター兼バイヤーとして働いています。インスタグラムではスタイリングやヘアメイク、アクセサリー、アート関連の投稿をしています。

WWD:投稿頻度はどの程度でしょうか。

林崎:週2~3回投稿しています。

WWD:インスタグラムで戦略を立てる際に重要だと言われているインサイト(クリエイターやビジネスアカウントに切り替えることで見ることができる投稿分析機能)で重視している項目は?

林崎:主に保存数を重視しています。見ている方の参考になっているか否かの指標になります。

WWD:投稿の際に画像加工などで使用するアプリはありますか?

林崎:インスタグラムの加工機能をメインに使っています。物を消す時とかにはAdobe Photoshopを使用します。

WWD:写真撮影時に使う機材などはありますか?

林崎:iPhone 11proを使っています。

WWD:写真の画角やハッシュタグの付け方などで、投稿の際に意識している細かいテクニックはありますか?

林崎:色の統一感は、インスタをパッと見た時の第一印象となるため重視しています。また、余白も作るようにしています。

WWD:これまでに最もバズった投稿はありますか?

林崎:こちらの投稿は、いいね!数が1500件、保存数が1000件、リーチが4万5000件、インプレッションが6万6000件ほどでした。フォロワーも約300増えました。

WWD:企業案件は1カ月にどの程度来ますか?また、月にどの程度受けていますか?

林崎:月に7~9件ほどで、受けているのは1、2件です。

WWD:企業案件の1投稿当たりの報酬について、これまでと現在で金額に変化はありますか?

林崎:特に変わっていません。

WWD:インスタグラムに関して、外部支援(コンサルティングやセミナー登壇など)を行っていますか?

林崎:いいえ。      

WWD:インフルエンサーとして、今後描いているキャリアプランはありますか?

林崎:迷走中ですが、外部支援やファッション・ヘアメイクの発信、素敵な作家さんやアーティストの方の情報発信はしていきたいです。また、個性の確立も行っていきたいです。

WWD:現在活用しているインスタグラムの機能を理由と共に教えてください。

林崎:URL機能(フォロワーが一定数以上のアカウントがスト―リーズに付けられる機能)は、今自分が携わっているブランドの宣伝ができるため活用しています。

WWD:今後活用していきたいインスタグラムの機能があれば理由と共に教えてください。

林崎:アンケートと質問機能は、フォロワーの方から何が求められているのか、どう見えているのかが客観的に分かると思うので活用していきたいです。また、動画やライブ機能も、フォロワーの方のニーズに合わせた配信ができればと考えています。

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マスクが手放せない今、肌を健やかに保つための4箇条 選び方から、スキンケア、メイクアップまで

 もはやマスクは肌の一部になってしまったのではないか、という日が続いています。新型コロナウイルスといった流行病だけでなく、今や一年を通して心配な花粉症にも悩まされる昨今、「肌荒れを訴える受診者が増えた」と津田攝子・津田クリニック副院長 皮膚科専門医。また、河合朝奈アヴェニュー六本木クリニック医師は、「肌に摩擦が生じるだけでなく、蒸れることで口腔雑菌が繁殖してしまうこともある」と述べ、津田先生は「マスクやゴムの刺激が引き起こす、カブレやニキビに悩む人が増えている」と言います。

 肌にトラブルを生じさせる可能性の高いマスクが、毎日の生活に欠かせないのなら、できる限り肌ダメージを最小限に留められる施策が必要です。そのためには、正しい知識を持つ先生に教示いただくのが近道。今回、2人の皮膚科専門の医師に指南を願い、マスク選びからスキンケア、メイクアップまで、美肌を保つために行うべき4つについて考えます。

1 肌の負担を極力抑えるためのマスクはどのように選び、着用するのが正解?

 マスクを着用するたびに私自身が感じるのは、とにかく暑いということ。その環境について、2人の先生は共に、マスクの内側は湿度が高くなることで口腔内雑菌が繁殖しやすくなることに注意を払ってほしいと呼びかけます。市販のマスクには、プリーツ型、立体型、ポリウレタン製などさまざまな形状があります。これらの中から選ぶ時、すべてのタイプに共通して気をつけたいのは、自分の顔のサイズにきちんと合ったものを選ぶこと。「鼻に頬、フェイスラインの隙間がなく収まり、それ以外は肌との接触する面積が小さく、ずれることがないものを選ぶことが大事です」と河合先生は説きます。

 今後ますますマスクの入手が難しい状況になることを考えると、自作する人も増加しそうです。その際の注意点として河合先生は、「ガーゼやコットンの天然素材の方が肌トラブルを引き起こしにくい」といい、津田先生は、「肌に摩擦刺激を感じないものであることが大切。真新しいガーゼで作る場合は、揉み洗いをして柔らかくしてから使いましょう。シルク混など肌触りのよい生地を選ぶのもおすすめです」と素材選びと素材の刺激をなくす工夫が重要であると示します。

2 “肌にやさしい”をうたい文句にするマスクは本当に肌にやさしい?

 近年、よく見かけるようになった“肌にやさしい”マスク。その種類は増加の一途で、就寝時に用いるタイプも登場しています。素材や用途は異なりはするものの、その多くが肌刺激を軽減させてくれるもので、オーガニックコットンやガーゼなど、素材を厳選しているものが目立ち、テクスチャーが柔らかいのも特徴です。

 「敏感肌向けに抗菌剤無添加のものもありますが、使い捨てることを守り、正しい使用であれば衛生面では問題ありません」と河合先生。また、このところ目にする機会がにわかに増えたポリウレタン製のものについて、津田先生は「蒸れに注意すれば、肌に刺激が少なく、洗える点でも優秀です」と話し、どんな素材でも、マスク内の温度が長時間上がり過ぎると蒸れを起こすため、肌はかえって刺激に弱くなり、肌荒れする可能性があるという見解を示します。暑い夏の季節は、これまで以上にマスク内の温度に注意を払う必要がありそうです。

3 マスクを着用した日のスキンケアで注力すべきこととは?

 マスクを着用することで肌は保湿されていると思っている人、意外に多いのではないでしょうか。しかし、それは全くの誤認。「吐息の水蒸気で充満された状態で、肌の水分も必要以上に蒸発しやすくなり、乾燥しやすい肌質にさせてしまいます」と河合先生はいいます。更に、マスクが接触するパーツは、皮脂が吸着されることで肌の油分が失われてしまう恐れもあるそう。肌に荒れやニキビなどのトラブルが生じてない場合は、しっかりではなく適度な洗顔を行い、水分と油分をしっかりと補うことを心がけましょう。加えて、マスクを着用することで生じてしまう、刺激に強い肌を育むために「バリア機能を高めることが重要」と津田先生。「蒸れによる影響だけでなく、マスクやゴムの当たる部分の摩擦や刺激がかぶれやニキビを誘発させます。刺激から肌を守り、バリアアップできる毎日のスキンケアは、極めて大切」と続けます。肌を清潔に保つことを心掛け、水分と油分を与えながらバリア機能を高めること。いつにも増して、自身の肌をしっかり確認することも肝要といえそうです。

4 マスクを着用する前のメイクアップの注意点は?

 マスクの内部は熱が篭りやすく、蒸れやすい。その一方で肌を乾燥させやすくする環境でもあります。当然、メーキャップは崩れやすくなります。その上で、2人の先生とも軽いメイクを勧めます。津田先生は、「素肌感のあるくらいがよいでしょう。ニキビなどがある場合はノンコメドジェニック処方のものを選んで」、河合先生は、「皮脂や汗で崩れにくいものを選ぶか、保湿力の高いベースメイクはパウダーを乗せる程度で仕上げて」といいます。マスクを着用すれば、顔の半分ほどは隠れてしまいますが、ノーメイクではあまりに頼りなくて不安。これから夏に向かって強さを増し続ける紫外線も気になります。パウダーファンデーションだけで軽く化粧直しができるくらいの軽いメイクを行いましょう。もしも鼻と頬や、ゴムの当たる耳元が赤くなった場合には、「摩擦を軽減させるために保湿クリームやワセリンを部分的に塗るのがよいですね」(河合先生)

渡部玲:女性誌編集部と美容専門の編集プロダクションに勤めた後、独立。2004年よりフリーランスの編集者・ライターとして雑誌やウェブなどの媒体を中心に活動。目下、朝晩のシートマスクを美容習慣にして肌状態の改善を目指している

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新型コロナでオンラインフィットネス需要拡大 ジム支援の取り組みも

 新型コロナウイルスの感染リスクが高い場所の一つとして挙げられたスポーツジムが臨時休業などの対応や消毒などの対策を強化する中、ライブ配信や動画コンテンツにより自宅でできるフィットネスサービスの需要が伸びている。

 厚生労働省は3月1日、新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けて、クラスター(小規模な感染者の集団)が次々と連鎖するのを防ぐための注意喚起を行った。換気が悪く不特定多数の人と接触する可能性のある場所や人が密集する空間を避けるように求め、その事例としてスポーツジムやライブハウス、ビュッフェスタイルの会食などを挙げた。

 これを受けて、3月初旬には多くのスポーツジムが臨時休業や一部プログラムの停止などの措置に踏み切った。政府の要請から3週間以上が経ち再開する施設も増えているが、消毒用アルコール設置や検温、プログラム参加人数の制限、消毒時間を確保するためのレッスン数縮小、休会・退会申し込みの即時受付などの対応に追われている。

 不要不急の外出を控える傾向が続く中、オンラインフィットネスサービスが脚光を浴びている。双方向型ライブ配信フィットネスサービス「ソエル(SOELU)」は、2018年3月のサービス開始から昨年12月に延べ受講数が10万回を突破し、国内最大級のオンラインフィットネスサービスに成長している。朝5時~深夜24時まで30~60分のライブレッスンを毎日100クラス開講し、ヨガやピラティスなど約200人の専門インストラクターがさまざまなプログラムを提供している。2月以降、新型コロナウイルスの感染拡大により入会者数が急増。会員全体の約30%が直近1カ月の新規入会だという。

在宅勤務を支援 法人向けにフィットネスアプリを無償提供

 在宅勤務による運動機会損失による運動不足解消を支援する取り組みも広がっている。フィットネス音声ガイドアプリ「ビートフィット(BeatFit)」では2月以降、ダウンロード数と会員数が大きく増加。既存会員のアプリ利用動向も、ランニングマシンなどを使うジムでの利用から自宅での筋力トレーニングや屋外でのウオーキング、ランニングなどに大きく比重が移っているという。そうしたことから、4月末まで法人向けにアプリを無償提供することを決定した。3月末までに法人会員となった企業の全従業員に無償アカウントを発行し、ウオーキングから筋力トレーニング、ヨガや瞑想まで600以上のコンテンツを提供する。

 休業や縮小営業などを余儀なくされたスポーツジムやフィットネスクラブを支援する動きもある。スポーツ向けAI動体分析サービスの開発・提供を行うスポーティップは、2月末~3月29日の期間・人数限定で、中小スポーツクラブや個人のパーソナルトレーナー向けに、AI運動アシスタントアプリ「スポーティップ フォー トレーナー」を無償で提供している。同アプリは動画撮影機能や、トレーニングメニューの作成や指導記録機能、チャット機能、動画解析機能、測定機能、リポート機能を備え、指導プランの追加による単価向上と、記録やフォローアップの手間を削減してトレーナーのコスト削減を支援するツールとして販売していた。新型コロナウイルス拡大を受けて、フィットネス習慣・参加率低下と、それに起因するスポーツジムの売り上げ減少を防ぐことを目的に無償提供を決めた。

 ビデオ配信型フィットネスサービス大手の「リーンボディ(Lean Body)」も3~4月の2カ月間、全国の提携スポーツクラブに動画コンテンツを無償提供する。提携スポーツクラブの会員は無料で有名インストラクターによるヨガや筋トレ、ストレッチやマッサージなど350以上のレッスン動画を利用することができる。フィットネス習慣の継続を支援する取り組みだ。

 日本はオンラインフィットネス先進国のアメリカに比べて狭い住宅環境などにより普及が進んでいなかったが、新型コロナウイルス拡大をきっかけに注目が集まっている。

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渋谷・新宿・銀座のファッションビルが一斉臨時休業、その舞台裏

 小池百合子・東京都知事の3月25日夜の自粛要請の会見を受け、この週末は渋谷や新宿、表参道、銀座などの主要な商業施設やショップが一斉に臨時休業する。ターミナル駅直結のルミネや渋谷スクランブルスクエア、駅から離れていても高い集客力を持つパルコ、有力セレクトショップが集積した渋谷の神南エリアや原宿のキャットストリートなどの路面店の多くも、感染拡大を防ぐためショップをクローズする。その舞台裏を追った。

 先陣を切ったのは、かつてのギャルの聖地「渋谷109」だった。臨時休業のリリースがメディア各社に一斉に届いたのは26日の午後2時。自粛は東京都などの当局にとって非常に便利な言葉で、法的に有効な通達を出したわけではなく、あくまで企業側に自主的な経営判断を求めるもの。商業施設を運営する商業デベロッパーからすれば、自らが休業を宣言すればテナント側に家賃の減額などの休業補償負担の可能性が出てくる。ファッションビルとして決して大きくない渋谷109でもテナントは大小含めれば数十社になる。わずかな時間でテナント側と交渉することは実質的に不可能であるため、運営会社SHIBUYA109エンタテイメントがどこよりも早く休館を宣言したのは、木村知郎社長の英断だったと言えるだろう。休業の理由も秀逸だった。「『渋谷109』の臨時休館を通して、当館をご利用してくださっている若い方々に、感染の予防と拡散防止の重要性をより感じていただきたい」(同社広報)。

 渋谷109の臨時休館宣言を受けて、大手ファッションビルや大手セレクトも休業へと動き出した。ユナイテッドアローズやビームス、ベイクルーズ、アダストリアなどの大手セレクトや大手SPAは昼過ぎまで、「ファッションビルや商業施設の判断を待って路面店をどうするかを決める」という姿勢だった。セレクト大手は、有力なセレクトショップが密集する神南エリアやキャットストリート、裏原宿などの路面店が強い渋谷・原宿に多数のブランドやショップを点在させており、有力なファッションビルの動向いかんで路面店の営業も決めることになる。ある有力セレクトは夕方前から、ファッションビルから都心店舗の休業の連絡を受け始めたと明かす。

 ルミネは、ルミネ新宿やルミネ有楽町など各店舗のウェブサイトを先行させる形で臨時休業のアナウンスを開始。メディア各社には午後6時半ごろに一斉にリリースを送った。ルミネ新宿やルミネエスト新宿、ルミネ横浜など都心の大型店は全館休業で、大宮店や荻窪店など都心から少し離れた店舗は食品フロアのみ限定的に開業する。パルコは渋谷と池袋、上野を臨時休館し、原宿を象徴するファッションビルであるラフォーレ原宿も休館する。表参道と銀座ではラグジュアリーブランドの路面店が休業も発表、高級ブランドが集積した銀座の象徴的な高級モール「ギンザシックス」も休業する。

 多くのファッションビルにとって休業は苦渋の決断だ。2年連続の暖冬とアパレル市場の低迷に、新型コロナショックが直撃。ファッションビル大手のルミネはすでに3月分の最低保証家賃の減額に動いている。新型コロナが急拡大しているイタリアやイギリス、米国の一部の都市のように街全体がロックダウンすればさらなる打撃になるとはいえ、“自粛”という曖昧な通達で休業し、痛手を被るのはファッションビルとその入居テナントであるアパレル企業だ。ある大手商業デベロッパーは「感染予防や感染拡大の防止が重要なのはもちろん理解できる。それなら政府や当局がはっきりと休業を強制すべきだ。自粛という曖昧な要請では、我々とテナントの間で休業の際の損失責任のなすりつけ合い発展しかねない」と指摘する。 “週末の自粛“が来週以降も続くことになれば、痛手はさらに大きくなる。

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“循環型”の先に見えるものとは? エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年11月13日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

“循環型”の先に見えるものとは?

 先日、スウェーデンのリセール会社セルピーを買収したH&Mが今度はレンタルサービスを開始します。“循環型”はサステナビリティを語る上で欠かせないキーワードで、つまり消費活動においては“捨てない”“再生する”“共有する”なのですが、H&Mはそれを強力に推進しています。

 今回は“コンシャス・エクスクルーシブ(CONSCIOUS EXCLUSIVE)”コレクション、つまりサステナブルな素材を駆使したドレス類が対象で、そもそもレンタルに向いている商材なので需要が多そうです。H&Mのドレスって意外と海外セレブがレッドカーペットで着ていたりするんですよね。サステナブルな素材を使っていても、1回着ておしまいではサステナブルだとは言い難いかもしれません。しかし、レンタルなら消費者にとって費用負担が減りますし、廃棄や処分に回さなくてすみます。徹底しているな〜と感じます――“H&M ザ・循環型”。

 そもそもH&Mは業界でトップクラスのサステナビリティ推進企業で、サステナブルな素材を使用した“コンシャス・コレクション”を展開するだけでなく、古着を回収して素材自体を再生したり、廃棄されるはずだった物を利用した素材を使ったりして、素材の面でも“循環型”を実現しています。

 “循環型”を追求していくと、そのブランドの商品がどう作られ、どう売られ、どう自然に還るのか、はたまた回収して再生するのかまで責任を持つことになっていきます。その過程において、リセールやレンタルを取り入れていくブランドは今後増えていくだろうと思います。

 これはもちろん消費者のニーズに応えることにもなりますが、これまで商品を購入してきた顧客のデータに加え、リセールやレンタルを利用する顧客と接点を持つ、そしてそのデータを得るということは、ブランドに新たな視座を与えることになるでしょう。その先にはどんなブランドの姿があるのか?ブランドと消費者の付き合い方も変わるはず。ブランディングの観点からもメリットは大きそうです。H&Mの進化に注目です。

VIEWS ON WWD U.S.:米「WWD」の翻訳記事から、注目すべきニュースの紹介や記事の面白さを解説するメールマガジン。「WWDジャパン」のライセンス元である米「WWD」は1910年から続くファッション業界専門紙。世界中のデザイナーや企業のトップと強く繋がっており、彼らの動向や考え、市場の動きをいち早く、詳しく業界で働く人々に届けています。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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戦略の時代に突入したインスタグラム 運用テクをインフルエンサーに直撃 Kazu編

 「WWDジャパン」の3月23日号では、インスタグラムを特集した。単なるSNSではなく、「モノを売る場」や「検索の場」となっているインスタグラムの攻略術を担当役員への取材やSNSのプロフェッショナルによる座談会、アパレル企業へのアンケート調査などから探った。本記事では特集内で行ったインフルエンサーたちへのアンケート調査の回答をピックアップ。認知度がほぼない状態から、インスタグラムを駆使してインフルエンサーとして活動するに至った人物たちに、普段使うアプリや投稿で意識しているテクニック、月々の企業案件数などを聞いた。第5弾は、Kazuさんだ。

WWD:現在の職業と、普段のインスタグラムの投稿内容を教えてください。

Kazu:フリーランスでSNSマーケティングやメディア運営、オンラインサロン運営などをしています。インスタグラムでは、ファッションを軸にスタイリングやポートレートの投稿をしています。

WWD:投稿頻度はどの程度でしょうか。

Kazu:毎日投稿しています。

WWD:インスタグラムで戦略を立てる際に重要だと言われているインサイト(クリエイターやビジネスアカウントに切り替えることで見ることができる投稿分析機能)で重視している項目は?

Kazu:いいね!数、保存数、フォロワー外リーチ数を気にしています。いいね数は共感数、保存数は参考・見返したいという思いからついていると考えていて、それぞれ重視しています。フォロワー外リーチ数では、既存フォロワー外にどれだけ見られたかの数値になるので新規獲得に繋がったかどうかの視点で見ています。

WWD:投稿の際に画像加工などで使用するアプリはありますか?

Kazu:Adobe Lightroomです。

WWD:写真撮影時に使う機材などはありますか?

Kazu:主に一眼レフで撮影をしていて、自分ではキャノン EOS Kiss X8iを持っていますが、カメラマンさんに撮っていただくことも多いです。

WWD:写真の画角やハッシュタグの付け方などで、投稿の際に意識している細かいテクニックはありますか?

Kazu:画角は、服が綺麗に見える角度を考えています。ハッシュタグは、自分の投稿はどのジャンルに属するのか、自分の投稿は“ファッション”であるということをインスタグラムのAIに理解させることと、SEO的に検索されそうなワードを考えています。

WWD:これまでに最もバズった投稿はありますか?

Kazu:スタイリングの投稿です。4500いいね!でした。

WWD:企業案件は1カ月にどの程度来ますか?また、月にどの程度受けていますか?

Kazu:毎日のようにきますが、受けるのは2,3ヶ月に1件程度です。

WWD:企業案件の1投稿当たりの報酬について、これまでと現在で金額に変化はありますか?

Kazu:フォロワー数の変動によって変わってきます。

WWD:インスタグラムに関して、外部支援(コンサルティングやセミナー登壇など)を行っていますか?

Kazu:はい。      

WWD:外部支援の依頼は、最近増えていますか?

Kazu:まだそれほど多くはないですが、相談されることはあります。今後増やせていきたいと思っています。

WWD:インフルエンサーとして、今後描いているキャリアプランはありますか?

Kazu:現在の仕事と相乗的に伸ばしていき、会社を建てたいと思ってます。

WWD:現在活用しているインスタグラムの機能を理由と共に教えてください。

Kazu:フィード投稿・ストーリーズです。IGTVなども興味はありますが、まだ踏み込み切れていません。

WWD:今後活用していきたいインスタグラムの機能があれば理由と共に教えてください。

Kazu:投稿に着用品を外部通販サイトに紐つけて、アフィリエイトができるようになったり、インスタライブに投げ銭機能があるといいなと思っています。

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「フェムテック」座談会 女性だけのことじゃない、社会に可能性広げる新市場

 「WWDジャパン」2月17日号、「WWDビューティ」2月20日号で、合同企画「フェムテック特集」を刊行した。“フェムテック”とは、フィメール・テクノロジーの略で「女性が抱える健康問題をテクノロジーで解決するサービスやモノ」を指す造語だ。ただ、今や女性だけでなく、またいわゆるテクノロジーだけではない広がりを持つフェムテック。特集を担当した「WWDジャパン」記者2人と、「WWDビューティ」記者2人とで座談会を敢行。取材を進めた彼らが今、時流とも言えるフェムテックをどう捉え、どう感じたのかーー。

座談会参加者

大杉真心:「WWDジャパン」記者

美濃島匡:「WWDジャパン」記者

竹田紀子:「WWDビューティ」デスク

浅野ひかる:「WWDビューティ」記者

福崎明子:「WWD JAPAN.com」デジタルデスク

福崎明子「WWD JAPAN.com」デジタルデスク(以下、福崎):昨年11月に、大丸梅田店が作った自主編集売り場「ミチカケ」を機に、“フェムテック”が動き出した印象です。今回、なぜ特集をしようと思った?

大杉真心「WWDジャパン」記者(以下、大杉):昨年5月18日号に行った「フェミニスト特集」の取材をしている時に、フェムテックという言葉が出てきて気になり出しました。女性が代表を務める企業で成長しているところは、フェムテックのリーダーであることも多かったのですが、ファッションを打ち出す「WWD」が取り上げるのは違うかなあとも感じていて。ただナプキンなしで使える経血吸収型の生理ショーツなど画期的な商品に出合い、実際に自分でも使ってみて感動したんです。その体験からフェムテックについて取材したいと思いました。

竹田紀子「WWDビューティ」デスク(以下、竹田):ビューティは女性の悩みを解決するという意味で近い業界です。これまでいわゆるフェムテックと捉えられがちな、デリケートゾーン周りの製品は多く発売されてきましたし、「WWDビューティ」でも再三、取り上げてきました。ただまだまだニッチな市場で、これだけで売り上げを伸ばしているブランドというのはない状況でした。でもパーソナルサプリの提案をはじめ、資生堂(SHISEIDO)のパーソナルスキンケアサービスの「オプチューン(OPTUNE)」や、花王の“第二の皮膚”技術「ファインファイバー」の製品化など、テックにつながっているアイテムは多く登場してきていますし、時代の流れだとも感じていました。

美濃島匡「WWDジャパン」記者(以下、美濃島):「ミチカケ」が出きて初めて市場を知り、さらにSNSでバズっていたりして、だからそういうブランドが支持され始めているんだろうと思っていましたが、実情は全然分からない中で特集に参加することになりました。

浅野ひかる「WWDビューティ」記者(以下、浅野):最初は正直、フェムテックってなんぞや?ってところでした。ビューティでは竹田さんが言うように、もともとデリケートゾーンケアや、それにまつわるオーガニックブランドもたくさんあり、脈々とあったカテゴリーだと感じていました。フェムテックと名前がついたことでより活性化、タブー視されていたジャンルが可視化されるのではと思い興味を持ちました。

福崎:取材を進めてみてどうでしたか?フェムテックといっても、何がフェムテックなのか、悩むところもあったのではないですか?

美濃島:正直、まだ結婚もしてないし、子どももいないし。なかなか課題を自分事化できないんです。月経カップとか、絶対に使うことはないし、使い心地とか分からない……。なんというかもどかしいところがありました。ただ、女性の社会進出が当たり前の今の時代に、晩婚化や出産の高齢化は高まっていることは明らかです。こういったことを知ることは価値がある、知ることで意識も変わるのではないかと思いました。

福崎:男性、特に若い男性ではそうですよね。きっと若い男性だけでなく、女性も生理一つとっても個人差があり、感じ方もさまざまですよね。

フェムテックの中でも定義が割れる

竹田:男性、女性ということでも感じ方に違いもありましたが、進めて行くうちに、みんなでフェムテックの「テクノロジー」ってなんなんだろうねえって話すようになっていたんですよね。テックに軸を置いている人からすると、デリケートゾーンケアや人工皮膚などとは考え方に隔たりがある。女性の問題を解決するという課題に重きを置いている人とは、ちょっと認識が違っているなあと。「フェムテック」という言葉自体も、まだまだ混沌としていると感じました。

浅野:どこから攻めるかですよね。クオリティーオブライフの観点から考えると、働き方、ライフステージの変化で取り入れ方も変わりますし。たくさんの問題をはらんでいて……。そういう意味で言えば、女性だけでもないですよね。

竹田:だから「フェムテック」という言葉はなくなるんじゃないかと個人的には思ったんです。フェムに留まらないジャンルである、とみなさん言っていたし。海外ではすでに投資家に対してもフェムテックとは使わないとも聞きましたし。ヒューマンウエルネスのジャンルの一つですよね。ロックの中にファンクがあるような(笑)。それもあって、タイトル、迷いましたよね。正直……。

大杉:そう。ある意味、“フェム”と限定しちゃうのは、ビジネスチャンスを失っているとも言えますよね。“フェム”(女性)と言ってしまったら、世界の人口の半分を遮断することになるし。でも、ヘルスケアというとまた違う気もするし……。何か違ういい言葉がないか、考えたいなあと思っているんです。次回の特集までには!

福崎:なるほど、確かに。今回の特集はフェムテックの中でも、女性の生理関連を中心に広げた内容であるけど、でも本来はもっと違うステージのことも含まれているから、言葉は変わっていくのが必然の流れなのかしら?実際、取材で面白かったこと、改めて認識したことはありましたか?

大杉:やっぱり、こんなのがあります!っていう商品・サービス紹介だけでは壁があると思いました。月経カップを扱うインテグロの神林美帆代表は「月経カップは使い方をマスターするのが難しく、ワークショップを開いて使い方を説明する機会を設けている」と話していました。確かに新しい分野で、商品自体もこれまでになかったモノだから、レクチャーやコミュニケーションは必要だと感じました。私も使い方を教わってから「そう使うのが正解だったんだ」と知ったんです。特に10〜20代の母世代はまだそういった新しい生理用品を使っている人は少ないし、子どもに教えられる知識を持った人も皆無だと思います。今のミレニアル世代以降が普通に使うようになってから、次の世代の子どもにも普及していくのかなと。

世代間ギャップを感じる問題

浅野:今回の取材を通して、社内でもいろいろ話しましたが、世代間ギャップがあることをすごく感じました。一つの話として、娘さんが生理痛の辛さの緩和にピルを頼んだら、親から反対を受けたというのを聞いて、びっくりしたんです。現在、30歳の私は親の世代がまだまだ理解のないことに驚きました。もっとオープンに話さないといけないと。

大杉:「ルナルナ」と東京大学医学部附属病院の甲賀かをり准教授の取材で、生理痛が辛い人は月経困難症という病気だと聞いて驚きました。私はピルの知識はありませんでしたが、ピルで生理痛が軽減されるということを知って。「フェムテック」企業のスマルナは、スマホ上のオンライン診療でピルを処方しており、(初診は病院に行かなければだけど)2回目からはピルの処方が郵送になるというのも画期的だと思ったんです。通院が面倒だったりとなかなか一歩踏み切れないことがオンラインでできるのはすごく便利。これにより、女性の働き方も変わると思います。

浅野:私もそう思いました。海外ではアフターピルも薬局で売っていたりしますよね。日本ではなんでないのかなあと思っていたんです。

美濃島:男性からすると、ただ20代から子どもを産んでいた時代と、今の出産の高齢化した時代では、一生の生理の数が全然違うということさえも驚きで。生理とは子ども産むための準備なんだということを知っておくべきだと。

福崎:母娘、女性間でもなかなかオープンに話をしないことだから、男性は特に知る機会さえもなかったですよね。

海外では福利厚生にフェムテック

竹田:私が、一番驚いたのはアメリカのフェムテック事情です。ミレニアル世代の獲得策というのもあると思いますが、会社の福利厚生として、卵子凍結や乳飲み子を持つ女性社員のための母乳のデリバリーなどの補助が含まれているんです。企業として、こういうことに取り組む姿勢を持っているアメリカって市場が拡大するはずだなあと。その裏には、日本のように医療制度が確立されていないってところもあるとは思いますが……。今回のビューティの特集では、小売りにおける売り方にフォーカスしたので取り上げなかったですが。

福崎:単に女性の福利厚生と考えがちですが、こういったことで女性の働き方が変われば、仕事の効率にもつながると思います。そうなると、チーム、さらには企業にとってプラスですよね。

大杉:そうですよね。会社の福利厚生として可能性があると感じました。今回、「フェムテック」を取り上げてよかったと思います。今後、福利厚生で取り入れているなど、働き方を含めて実際に活用しているところを取材していきたいです。

竹田:私も、参入企業を追いかけていきたい。いわゆる化粧品と比べると、まだまだニッチな市場なので、可能性が広がっていくと感じています。

浅野:まだスタートアップが多く、そういう意味で画期的な商品、サービスを追っかけていきたい。一方で、大手はどうなんだろう?今後、深く参入していくのでしょうか?気になるところです。

美濃島:社会背景をとらえたサービス・モノとして面白いと感じています。日本じゃまだこれからともいえそうで、ちゃんとみて取材していきたいです。今回、取材相手は圧倒的に女性でした。これって今までのファッション業界の圧倒的な男性経営者が多い中で、逆に偏っていると思いました。自分が男性なだけに、もっと男性目線のフェムテックニュースを追っかけていきたいです。

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新型コロナ対策で巣ごもりのデザイナーたち 何をして何を考えてる?

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、出入国制限や外出禁止措置、店舗や学校の閉鎖など、わたしたちの生活にも大きな影響が出ている。パンデミックが加速する中で、デザイナーたちはどのように過ごしているのだろうか?自宅作業をしたり、未来について考えたり、出口はすぐそこだと願いながら状況の改善について想ったり――この世界危機で、自分には何ができるのかを思案する人もいる。そしてもちろん世界中の人たちと同じように、新しい料理に挑戦したり、自宅で子どもに勉強を教えたり、ヨガや読書、映画鑑賞など、いそがしくあるために何かしら行いながら、それぞれクリエイティブな過ごし方を模索している。

 生活がガラリと変わってしまった今なおオフィスで働き続ける少数派が存在する一方で、多くのデザイナーたちが“#WFH”(working from home、在宅勤務中)というハッシュタグを付けてSNSに投稿をしている。新型コロナウイルスが猛威を振るう今、デザイナーたちは何を語るのか?

ヴァージル・アブロー
(Virgil Abloh)

 「私はスタジオをいくつか持っているから、すでにこうなる前からデジタルとフィジカルの両方を駆使して仕事をこなしてきた。アイメッセージ(iMessage)やワッツアップ(WhatsApp)、Eメールなどでコミュニケーションがしっかり取れれば問題はない。今のところ普通と違うのは、締め切りがはっきりしないことかな」

 「私はもともと楽観的だが、この状況の改善策は楽観主義と思いやりだと思うんだ。創造力、そしてデザインという専門的な仕事は逃げ場になる。このような緊迫した状況だからこそ本気の仕事ができるし、世界がさらに心温まる状況に変わっていくと信じている。いまは現状をリサーチながらいろいろ考えたいと思う。ユーチューブ(Youtube)はすごいよ。どんなトピックでも短いドキュメンタリーとしての学びがある。いまは大規模な小休止といったところかな。私たちの世界は動きが速すぎたから、今は休む時だと思えばいい。さまざまな面が映し出されている時なのかもしれない」

トミー・ヒルフィガー
(Tommy Hilfiger)

 「家族や友人とフェイスタイム(FaceTime)で会話をしたり、ニュースで逐一状況を把握しながら家族の安全を最優先にしている。あとはエクササイズをするか、妻のディー(Dee)とボードゲームのバックギャモンで遊ぶかだね」

アルベール・エルバス
(Alber Elbaz)

 「本当に別世界だよ。とても大変なニュースで溢れていて、みんなが困惑している。もちろんこんな状況には慣れていないから、みんな怖がっている。もとの美しい世界に戻れるように一生懸命頑張らないといけない」

 「街が封鎖状態に入って数日が経つけど、チームではなく個人で働くという新しい状況に適応しなければいけない。物事の本質に立ち返る時なのかも。事態が早く収束することを願っているし、そうなればもとの生活に戻れる。みんなで一緒に解決の道を見つけて、その方向に進めると信じているよ。私は短期的に見ると常に悲観的だけど、長期的に見れば楽観的なんだ」

 「デザイナーたちはアンテナみたいなもので、物事や感情、考えなどをピックアップしている。デザインの始まりはそこさ。新しいものの見方がファッションを変えていく」

ジョニー・コカ(Johnny Coca)/前「マルベリー(MULBERRY)」
クリエイティブ・ディレクター

 「デザイナーたちは常に走ったり飛び回ったりしているもので、立ち止まって考えることはない。私がやろうとしているのは洋服と靴の断捨離だよ。着るものと着ないものを分けて、クリーニングの必要性や、譲りに出すべきものをチェックする。いろいろなブランドの洋服を買うのが大好きだから、この機会に自分がどんな服を持っているのか確かめてみるよ」

カロリーナ・カスティリオーニ(Carolina Castiglioni)
/「プラン C(PLAN C)」
クリエイティブ・ディレクター

 「話し合いの結果、私たち家族はしばらくの間山ごもりをすることに決めたわ。今はひどく恐ろしい時だけど、同時にこの隔離期間がもたらすポジティブな面に感謝もしないといけない。私は自分の一日をすべて子どもたちに捧げているの。大変だけど学ぶこともたくさんあるわ。学校のビデオを一緒に見て、時には創造力を発揮しながら勉強している。私たちはみんな新しいことをするために共に学んでいるのね。午後は仕事をしてアクティブに過ごそうとしている。でもその前に、いつもテラスで太陽の光を浴びるようにしているわ」

ダナ・キャラン
(Donna Karan)

 「安穏を求めて米ニューヨークのイーストハンプトンにいるわ。肉体的にも精神的にも自分の習慣は維持するようにしている。朝晩の瞑想は欠かさないし、ズーム(Zoom)を通じてインストラクターのキラ・S・ラム(Kira S. Lamb)とピラティスもしている。ビーチを歩いて、写真を撮って、小石で色のパターンを作ったりもする」

 「『アーバン ゼン(URBAN ZEN)』のチームと毎日仕事もしていて、ECやインスタグラム、Eメールやビデオ会議などデジタル方式のコミュニケーションを通じて連携を取っているわ。コミュニケーション、絆、共同作業、創造力、コミュニティー、そして変化は、私のやること全ての原動力となっていく。今までにないくらい行動を促されている気がする」

 「ロドニー・イー(Rodney Yee)、コリーン・セイドマン・イー(Colleen Saidman Yee)、そして『アーバン ゼン』のセラピストたちと共に、ヘルスケアシステムにどう貢献できるかも考えている。学校が休校になった子どもたちやお年寄りなど、日々の食事に影響を受けている人たちを手助けできればと思って、地域の慈善団体ゴッズ・ラブ・ウィー・デリバー(God’s Love We Deliver)、フードバンク・ニューヨークシティー(Food Banks NYC)、ミールズ・オン・ホイールズ(Meals on Wheels)、サグ・ハーバー・フード・パントリー(Sag Harbor Food Pantry)に寄付もした。この世界も私たちの生活もまったく同じ状態には戻らないと思う。今こそしっかり考え、リセットをして、自然に感謝しながら未来に向けて変化を起こしていきましょう」

ダイアン・フォン・ファステンバーグ(Diane von Furstenberg)

 「家族がどこにいようと会話をしている。新しい本を読んで、散歩をして、日記を書いて……オーディブル(Audible)でニュースや本を聴きながらiPadでジグソーパズルもするわ。動けない時だからこそ、何かアイデアを思いつこうと必死よ。この状況から学べることは何なのかについても考えているわ」

オリヴィエ・ルスタン
(Olivier Rousteing)
/「バルマン(BALMAIN)」
クリエイティブ・ディレクター

 「私はひとりでオフィスにいる。コレクションの発表があるからひとりで仕事をしている。ウィメンズとメンズのリゾートコレクションにメンズのファッションショーもあるからね。チームのほかのメンバーとはフェイスタイムとワッツアップでコミュニケーションを取っている。大きな問題と言えばモデルのフィッティングができないこと。モデルに服を送るか、チームの誰かが試しに着てみるしかない。チームのメンバーには『何があったとしてもクリエイティブでいよう!』と言った。私たちはポジティブだ。チームのメンバーは若いし、世界中から集まっている。つながりを保っていれば大丈夫さ」

 「境界線を引かず、勝手な判断もしないという根本に戻る必要がある。ファッションはいま再出発の時にあり、そのシステムが問い直されている。ラグジュアリーの持つ意味は変わっていくだろうし、すべてのことが問い直されていく。準備を整えて、希望と新たなアイデアを提案していく必要があると思う」

プラバル・グルン
(Prabal Gurung)

 「ゆっくり立ち止まって自分の価値を問い直し、この経験を自分自身や自分のブランドにどう生かせるかを考えている。いまは回想や内省をするのに重要な時期であるべき。もう少し軽い話をすれば、いそがしくて読めなかった本をようやく読むことができる。ポッドキャストやテレビも見られる。ワークアウトは続けていて、昨夜はランニングをした。あとは、少なくとも1日1時間はポップやR&B、ボリウッドミュージックをかけて踊るという日々のルーティンも継続中。その後カラオケを出してきて大声で歌うんだ。まだ苦情は届いてないよ!」

 「母親が同じ建物に住んでいてよかった。彼女の安全を特に考慮して、2m弱の距離を保つように心掛けている。母親の手作り料理には癒されるし、アドバイスはいつもとても参考になる。私はとても社交的だから、平常心を保つためにも好きな人たちとはつながっている。メッセージ、電話、Eメールやインスタグラムのライブチャットなんかもする。フォロワーと考えやアイデアをシェアしているよ。運がよればフィリップ・リム(Phillip Lim)やティナ・クレイグ(Tina Craig)みたいな素晴らしい考えを持った仲間と話すこともできる。困難な状況に対する解決策がすぐには見つからない可能性があるからこそ、友人や同僚、業界のリーダーやすべての層の人たちとのコミュニケーションの場を持ち、考えをシェアすることが重要だと思う」

 「危機的状況に陥って学んだのは、人間が本来持っている感情や性質について。無関心や外国人嫌悪、恐れと共に、愛情や思いやり、共感の心に触れることもある。誰もが同じ状況にあり、ひとりではない。まずは僕たちの世界の脆さに気付き、恐怖を受け入れて助けを求めること。選択肢を与えられた大多数の人びとは正しい判別をする。僕たちは共感と愛情に溢れる心を持った人間だから」

マッシモ・ジョルジェッティ
(Massimo Giorgetti)
/「MSGM」創業者兼デザイナー

 「先週の金曜日に本や雑誌を買いこむと決めたけど、それまでは働いていた。ちなみに本はまだ一冊も開いていない。夫も在宅勤務中で、今はお手伝いさんもいないから私が家事をしているよ。毎日食器を洗い、掃除をしたら掃除機をかけて整理整頓もする。家事の面白さを発見しつつあるし、ある意味健康的だとも思える。何かを知ると同時に自分自身も知っていく感じ。いそがしくて今まで家での暮らしを楽しむ機会がなかった。今はそのいい機会だし、自分たちだけの広々とした空間がある素敵な家に住めることに感謝の気持ちも湧いてきている。もちろんみんながそうだとは限らないから、自分はとてもラッキーだってことには気付いているよ」

 「ヨガのオンラインクラスも毎日受講していて、精神統一ができる倒立をしょっちゅうしている。ヨガの後には15分ほど瞑想もしている。だいたいいつも早朝にヨガをするけど、今は家にいるから、例えば夕闇の中でヨガをする面白さも発見した。あとは、注文したランニングマシンがついに届いたんだ。これで1日30分走れる。体を動かすのは私にとって大事なことだけど、ジムが閉鎖されて、運動がどれだけ欠かせない習慣だったのかに気が付いたよ」

 「料理もたくさんしている。今は私も夫も肉や魚を食べないようにしているから野菜をたくさん料理して、ショウガとターメリックを入れた緑茶もいっぱい飲んでいる。これがこの時期のネガティブな雰囲気と闘う方法かな。あとは、そこまで質がいいわけでもないネットフリックス(Netflix)は見るのをやめた。代わりにアマゾンプライムビデオ(Amazon Prime Video)で『ナチ・ハンターズ(Hunters)』を見ている。『1917 命をかけた伝令(1917)』もまた見ると思う」

フィリップ・リム
(Phillip Lim)

 「今はただ存在して、息をするように心掛けている。私の料理本『More Than Our Bellies』に登場する全ての料理を作ってインスタグラムに投稿しているよ。私にとって食べ物は愛情そのもの。私は母親が恋しくて料理を始めたし、料理をしていれば、この状況を乗り切ることのできそうな愛に溢れた記憶も呼び戻せるから。キッチンでは食べ物と精神面で母親の存在を感じることができるから心地いい。面と向かって接する時間を持つのが難しい時だからこそ、みんなが大切な人とのつながりを感じるために私のレシピが役立てばいいと願っている」

スコット・ステューデンバーグ
(Scott Studenberg)
/「バハ イースト(BAJA EAST)」
共同創始者兼クリエイティブ・ディレクター

 「普段から在宅勤務をしているから、外出規制がかかってからも大きな変化はないよ。家ではテレビを見たり――リアリティー番組の『ラブ・アイランド・オーストラリア(Love Island AU)』のシーズン2とかね。愛犬と寄り添ったりCBDのお風呂に入ったりもする。マッチングアプリを再開したり、届けてもらったお花で毎日を明るく過ごしたり、この時間を自分のために使っている。仕事をするときはちゃんと着替えるようにしているし、毎日のコーディネートを写真に撮ってもいる」

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デジタルでは「未知の世界」に出合えない エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年8月21日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

デジタルでは「未知の世界」に出合えない

 最近、ウチのサイトで書籍に関するコラムがたくさんアップされるようになりました。良き。喜びです(笑)。特に良いのは、各々の記者(時にはアルバイトまでもがw!!)が、本を読み、中身を取材で得た知見や最近の興味、そもそもの志向とリンクさせることで“自分ごと化”していること。以前、このお手紙で「コンテンツのコンテクスト化」についてお話ししましたが、それがちゃんと実践されていて、嬉しくなっちゃいます。

 かく言う僕が今読んでいるのは、「現代地政学 国際関係地図」という100の地図を掲載した図版集。東西冷戦から最近の移民問題までを簡単な解説と地図で教えてくれる一冊です。同僚のように書評的コラムを書こうかとも思うのですが、「紙媒体では未知のジャンルを」と思うフシがあり、書店に行くとついついファッションやビューティ関連書籍以外をチョイスしてしまいます。

 「紙媒体では未知を」は、数年に及ぶデジタルとの関わりから意識するようになりました。デジタル、特にSNSに触れて、「この世界は自分のフィールド、もしくはその周辺を知るには便利だけど、未知のフィールド知るにはなんて不便なんだ!」と痛感したのがきっかけでした。

 「え!?ネットって、なんでも知ることができるでしょう?」。そう思う方は、多いかもしれません。でも、それは違います。SNSは、そもそも自分がフォローしている人が、「自分のフィールド」の人。そんな方々の投稿で構成されるタイムラインは、結果「自分のフィールド」です。そしていずれのSNSも、アルゴリズムが「自分のフィールド」を深く知るきっかけを提供する一方、「未知のフィールド」を学ぶ機会は奪っています。

 検索ツールも同様です。「自分のフィールド」は、さまざまな検索ワードが即座に浮かびますが、「未知のフィールド」はそもそもどんなキーワードを打ち込んで検索したらいいのかさえわからない。結果、やっぱり「未知のフィールド」には出合いづらいのです。というワケで、他者が情報を選別・編集してくれる新聞や雑誌、書籍にはまだまだ価値があると思っているし、むしろ、大勢がその価値を再考しているとさえ思います。

 だからこそ紙媒体は、自分とは全然違う世界の一冊を選びたい。そんな風に思っちゃうのです。次読もうと思っているのは、ケン・キージーの「カッコーの巣の上で」。映画は見ましたが、原作はそれ以上に悪魔の手術ロボトミーの狂気性と、アメリカの“しゃらくさい”カンジが漂っていると聞きます。ロボトミーにアメリカ臭、ファッション&ビューティとはあまりにかけ離れている気がしますが、それで良いのです(笑)。

 最後に、ちょっと強引にデジタルっぽい話をすると、インスタグラムにもたくさんの書評がアップされています。面白いのは、ハッシュタグの使い方。完全に目次としている人、備忘録がわりに明言をタグ化している人、さまざまです。こんなデジタルとアナログの融合もあるんですね。

FROM OUR INDUSTRY:ファッションとビューティ、関連する業界の注目トピックスをお届けする総合・包括的ニュースレターを週3回配信するメールマガジン。「WWD JAPAN.com」が配信する1日平均30本程度の記事から、特にプロが読むべき、最新ニュースや示唆に富むコラムなどをご紹介します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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読者が注目した今週の新作 「アナ スイ」の17年ぶりに復活したスキンケアなど(3月27日〜4月2日)

 「WWD JAPAN.com」が今週発売の新商品を「ファッション部門」「ビューティ部門」「スニーカー部門」別にまとめてお届け。「ビューティ部門」では読者の注目度(PV)から1〜3位までをランキング形式で紹介。今週は「アナ スイ コスメティックス(ANNA SUI COSMETICS)」の17年ぶりに復活したスキンケアが最も注目された。

【ビューティ部門】


【ファッション部門】


【スニーカー部門】

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戦略の時代に突入したインスタグラム 運用テクをインフルエンサーに直撃 Aki編

 「WWDジャパン」の3月23日号では、インスタグラムを特集した。単なるSNSではなく、「モノを売る場」や「検索の場」となっているインスタグラムの攻略術を担当役員への取材やSNSのプロフェッショナルによる座談会、アパレル企業へのアンケート調査などから探った。本記事では特集内で行ったインフルエンサーたちへのアンケート調査の回答をピックアップ。認知度がほぼない状態から、インスタグラムを駆使してインフルエンサーとして活動するに至った人物たちに、普段使うアプリや投稿で意識しているテクニック、月々の企業案件数などを聞いた。第4弾は、Akiさんだ。

WWD:現在の職業と、普段のインスタグラムの投稿内容を教えてください。

Aki:普段は保育園で働いていいて、「ラ モーメント(LA MOMENT)」というブランドのディレクターもしています。インスタグラムではファッションや購入品、使ってみて良かったモノについて投稿しています。主に美容情報が多いです。

WWD:投稿頻度はどの程度でしょうか。

Aki:投稿は週2、3回ほどで、スト―リーズは毎日更新しています。

WWD:インスタグラムで戦略を立てる際に重要だと言われているインサイト(クリエイターやビジネスアカウントに切り替えることで見ることができる投稿分析機能)で重視している項目は?

Aki:いいね!数と保存数のほか、インプレッション数はフォロワーさんが今何を求めているのかがはっきりと分かるので重視しています。

WWD:投稿の際に画像加工などで使用するアプリはありますか?

Aki:VSCOとインスタグラムの編集機能です。

WWD:写真撮影時に使う機材などはありますか?

Aki:基本はiPhone XSです。また、三脚を使って他撮り風に撮ることもあります。

WWD:写真の画角やハッシュタグの付け方などで、投稿の際に意識している細かいテクニックはありますか?

Aki:必ず一枚投稿にしています。文を読んでくれるフォロワーさんが多いので、みんなが明るい気持ちになれるような投稿文やハッシュタグを心掛けています。

WWD:これまでに最もバズった投稿はありますか?

Aki:2019年ベストコスメまとめの投稿です。いいね!が約1万件で、保存が約2万5000件、リーチが136万でした。

WWD:企業案件は1カ月にどの程度来ますか?また、月にどの程度受けていますか?

Aki:30件ほど依頼は着ますが、本業があるので月に5件ほどしか今は受けていません。

WWD:企業案件の1投稿当たりの報酬について、これまでと現在で金額に変化はありますか?

Aki:1年前は3万円程度でしたが、現在は美容系で8万円と上がっています。

WWD:インスタグラムに関して、外部支援(コンサルティングやセミナー登壇など)を行っていますか?

Aki:いいえ。      

WWD:インフルエンサーとして、今後描いているキャリアプランはありますか?

Aki:今年で本業を辞めるので、もう少しちゃんとSNSと向き合う時間を作りたいと思っています。ブランドはもちろん、やるならば何事も、私にしか出来ないことをやりたいです。

WWD:現在活用しているインスタグラムの機能を理由と共に教えてください。

Aki:スト―リーズ機能です。あらがたいことに毎日3万人以上の方が見てくださっているので、より皆さんが共感できるような親近感のあるスト―リーズを意識しています。そのおかげもあってか、信頼度も上がっているように感じています。

WWD:今後活用していきたいインスタグラムの機能があれば理由と共に教えてください。

Aki:ショッピング機能がもっと便利になればいいなと思っています!試着室の予約であったり、商品の受け渡しなど、全てインスタでやれたら便利だろうなと感じていますし、今の時代、それくらいインスタを開く頻度が高いと考えています。

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リクルートを経て「サカイ」に勤務 異色のパタンナーが広島で手掛ける「ナカガミ」が共感を呼ぶ理由

 「ナカガミ(NAKAGAMI)」は、パタンナー出身の中神一栄が出身地の広島で立ち上げたウィメンズブランド。元々は「ウェイ(WEI)」というブランドを2013年にスタートしていたが、19年春夏には自身の名前を掲げた「ナカガミ」も開始し、より“濃い”デザインを発信。今後は、「ウェイ」も「ナカガミ」に一本化していくという。実は中神は07~10年の3年間、パタンナーとして「サカイ(SACAI)」に勤務していたという経歴の持ち主。貴重な経験だが、そうは言っても「〇〇ブランド出身」といった冠が付くデザイナーはそれほど珍しくはない。中神が面白いのは、「サカイ」の前にリクルートの営業職なども経験していたという点。仕事に対する考え方が柔軟で、「ファッションなんだから、楽しく働かないと」と朗らかに話す中神に、じわじわと共感が集まっている。

 「サカイ」を退職したタイミングで広島に帰郷、フリーランスでパタンナー業をスタートした。そのうちにモノ作りへの思いが膨らみ、「ウェイ」を開始。「作ることは得意なんだけど、売るっていう過程があることをすっかり忘れていました」と話すものの、表情は明るい。肩ひじ張らない自然体なキャラクターが人を集めるようで、フリーランスになった前職時代の友人などが、営業や広報などをここ数シーズンは手伝うようになった。それによって、認知も少しずつ高まっている。

 「ウェイ」時代からバイヤーに好評で、シグネチャーアイテムとなっているのはランダムプリーツのスカート。手作業でシフォンやチュールにプリーツを掛け、転写プリントやラミネートプリントを施しているため、1つ1つ表情が異なるのがポイントだ。価格はシフォン素材が3万4000円、チュール素材が3万円。「プリーツ加工は大阪の工場にお願いしている。面倒なハンドプリーツでも断られず請けてもらえるのは、『サカイ』時代のつながりのおかげ」と感謝する。同工場以外にも、各地の素材産地や工場を積極的に訪問。「地方を拠点にしていても、クリエーションには関係がないと思う。工場に行くのも、東京から行くのか広島から行くのかだけの違いだし」。

 地方出張に合わせて、その土地の専門店も視察するようにしている。「見たこともないお店に、『うちのブランドを置いてください』ってアプローチするようなことは失礼だからしたくない」からだ。真摯な考え方に感心するが、本人は至ってマイペース。「実は好きなミュージシャンの地方でのライブ日程に合わせて出張を組んでいるですよ」と茶目っ気たっぷりに打ち明ける。

 「人間だからもちろんピリピリする時もあるけど、できるだけ楽しく働きたい。ファッションなんだから楽しくなくっちゃ」というのが中神の信条。そう聞くと、思わず自分の働き方はどうなのかと振り返ってしまうファッション業界関係者も多いはず。自身の会社、ナカガミラボラトリーでは、現在社員2人とアルバイトが働いている。「サラリーマンではなく自分で会社をやっているのは、楽しく働きたいからこそ」とも話す。商品に加え、こうした中神自身の姿勢も「ナカガミ」の魅力の一つだ。

 チャーミングな人柄には、中神のキャリアも関係していそうだ。バンタンデザイン研究所を卒業後、パタンナーとしてまず務めたのがOLが中心客層のアイアの「ルーニィ(LOUNIE)」。その後、ロンドンへの語学留学中に、「ピーター イェンセン(PETER JENSEN)」の門を叩いてインターンを経験。ロンドンから広島に帰った後は、リクルートで飛び込み営業を2年間勤めた。当時は同社がファッション分野にも領域を広げようとしていた時期といい、「編集職だと思って入社したら営業職だった」というずっこけエピソードはあるものの、そこで「人柄を買ってもらう」ことの大切さを知った。「お互いの人柄を知っている方が応援してもらえるし、こちらも気持ちが強くなる。相手が工場でもお店でも一緒」。それが今、地方訪問を欠かさない理由につながっている。

 「ナカガミ」「ウェイ」の他、タレント・アーティストの香取慎吾とスタイリストの祐真朋樹がディレクションするショップ、「ヤンチェ_オンテンバール(JANTJE_ONTEMBAAR)」と「ウェイ」とのコラボレーションラインも19年春夏から3シーズン続けて企画している。コラボの経緯を尋ねると、「知り合いの編集者さんがシグネチャーのチュールスカートをはいているのを見て、祐真さんが気に入ってくださった」。それで会うことになったといい、やはりここでもまた、商品の魅力と人柄でチャンスをつかんでいる。

 現在、「ナカガミ」はアッシュ・ペー・フランスの大阪の店舗や地元広島の専門店などに卸販売している。福岡の岩田屋本店などでは、今後ポップアップストアの予定もあるという。

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新型コロナの影響でバイヤー激減のパリコレ 日本からの参加ブランドはこの窮地をどう乗り切るか?

 2月24日から3月3日まで開催された2020-21年秋冬パリ・ファッション・ウイークは、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、中国や日本を中心にバイヤーの渡航キャンセルが相次いだ。また、中盤にはアメリカなどのバイヤーが立て続けに予定を前倒して帰国した。しかし、ブランドにとって展示会でのセールスや商談は次のシーズンのビジネスに直結するもの。特に卸を軸にしていればその影響は大きく、日本のブランドでも海外市場向けのセールスをパリのみで行っているところは多い。では、現地の展示会に足を運べず実際のアイテムを見られないバイヤーが多い中、具体的にどのようなことに取り組んでいるのか?パリでコレクションを発表した日本のブランドに3つの質問に対する回答を求めた。

質問1:海外卸先へのセールスの結果は?

質問2:パリに渡航できなかったバイヤーに対して、何かいつもと違う取り組みや配慮は行ったか?

質問3: 2019-20年秋冬や20年春夏と比べて、オーダーの傾向に変化はあったか?

ANREALAGE(アンリアレイジ)

1:アジア圏の国からの来場が減少したことで、展示会への来場者は先シーズンと比べて3割減少。欧米のバイヤーに関していうと、通常通り買い付けはあるものの、バジェットは昨対比で微減している。

2: 今シーズンのコンセプトとして、お客さま自身が組み立てて洋服を作ることが重要なので、組み立てのバリエーションやその際のシルエットを動画で提供している。

3:海外での展示会は、ここまで新型コロナの影響が深刻化する前だったので、オーダーの内容に変化は感じていない。象徴的なコレクションピースを中心としたピックアップが多いが、ボール型シャツやカットソー、ラッピングパンツといった定番アイテムにもオーダーが偏っている。

UJOH(ウジョー)

1:海外の各国の現状を見るとまだオーダーを締めにくく、新規アカウントもあるが、全体として微減になるか微増になるかはまだ分からない。まず、パリコレ中に感染が広がり始めた韓国はすでに出張していたバイヤーに何とか見てもらいオーダーをもらった。ちなみに20年春夏は日本製の不買運動中だったため、オーダーをスキップされたが、お客さまが「ウジョー」の春夏商品がないことについて文句を言ってくれたそうで、今回はこんな状況でも当日にオーダーを置いていってくれた。一方、シンガポールと台湾の取引先は中国からの旅行者の影響を受けるショップらしく、「ウジョー」のような海外でまだ認知が低いブランドは真っ先に影響を受ける対象だと感じる。オーダーについて現在まだ話し合っているところだ。

 また、今回からEUのセールスに強いショールームのタレント・トゥー・トレンド(TALENT TO TREND)と組み、ショーをやった効果もあってか、取引先は広がっている。フランスではプランタン(PRINTEMPS)などでの取り扱いが決まり、ドイツもアンドレアス ムルクディス(ANDREAS MURKUDIS)を含め3店になった。現地の外出制限などによりオーダー全部は回収しきれていないが、昨年クリスマス前にセールスとPRの強化とショーの準備をするために渡仏し、パリでのチャレンジに向けて準備してきたことが追い風になったと感じている。

2:独自の素材などディテールに凝ったアイテムが多いため、伝わりやすいように工夫した。具体的には、全てのアイテム撮影画像に加え、ショールックのアイテム別の詳細な説明、スタイリングの参考画像を用意。希望があれば、動画もこれから用意する予定だ。また、現地の状況に合わせて対応している。実は武漢には4年くらい付き合いのある取引先があるが、まだ自宅待機をしなければならず店を開けられない状態だそう。秋冬のオーダーができるように充実させた画像資料を送ったところ、とても喜ばれた。また、上海の取引先にはやっと先週春夏の商品を発送できた。現状は来店客が70%減の状態だというが、そんな厳しい状況下でも少し秋冬のオーダーができるようにと考えてくれている。上海は物流が動いているので、画像に加えて素材を添付したラインシートなどを作成して送る予定だ。

3:パリでショーを行うにあたり、よりデザイン性の高いアイテムを増やしたことで、それらのアイテムが受注につながった。

BEAUTIFUL PEOPLE(ビューティフル ピープル)

1:今回は渡航キャンセルによりショーに来られないバイヤーやプレスが多く、全体的には多少影響があった。中国のバイヤーが来られないことや経営難で閉店する店もあるほか、数量を抑えてオーダーするところもあるが、代わりに新規のオーダーも決まり、結果的にはあまり変わらないか微減の見通し。

2:毎回画像は送っていたが、いつもより多めに送ったり、異なる体型のスタッフの着用写真とモデル写真を両方用意したり。初めてテレビ電話を使ってアイテムを見せたり、ビデオの共有をしたりもした。「ビューティフル ピープル」の服は“サイドC(SIDE-C)”という独自のコンセプトで作られているので、それについての着せ替え動画や画像も販促用に撮る予定。その点もバイヤーに説明して、オーダーを受けている。

3:実際のアイテムの変化はあまり見えないが、アジア圏のバイヤーからの発注サイズは少々大きくなってきたと感じる。いつもは34、36をオーダーするところが36、38に変更するなど、ぴったりよりもややゆとりがあったほうが売りやすい傾向のようだ。海外で受注が多かったのは、やはり多様な着方で楽しめる“サイドC”やリバーシブルのアイテムだった。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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仏アイウエア企業ティリオスCEOが語る 高まる「ディオール」獲得への期待

 LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY- LOUIS VUITTON以下、LVMH)とイタリアの大手アイウエア企業マルコリン(MARCOLIN)との合弁会社ティリオス(THELIOS)のジョヴァンニ・ゾッパス(GIOVANNI ZOPPAS)最高経営責任者(CEO)が、昨年の業績と2020年の戦略について語った。

 昨年は「ケンゾー(KENZO)」「ベルルッティ(BERLUTI)」とLVMH傘下のブランドを次々に収めて体制を拡大しており、2019年の売り上げは前年と比較して40%増加した。「卓越した品質、物流、そしてブランド力のおかげで好結果となった。主力の『セリーヌ(CELINE)』と『ロエベ(LOEWE)』の好調に加え、新ブランドの『ケンゾー』と『ベルルッティ』も貢献した。『セリーヌ』のアビエータータイプのフレームなどイットアイテムが多かった」と振り返った。

 「今年は重要なステップアップの年になる」というゾッパスCEOが大きな期待を寄せているのが、21年にライセンスを獲得する「ディオール(DIOR)」だ。さらに「フェンディ(FENDI)」も加わる予定で、今年は有力ブランドを迎える組織体制の強化が重要な戦略となる。

 「『ディオール』は、ビジネス拡大の重要なポイントとなる。今年は、イタリアの生産拠点『マニファトゥーラ ティリオス(MANIFATTURA THELIOS)』を2万平方メートル拡張することにより、年間500万本の追加生産が可能となる。また、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)の子会社設立など体制を拡大する。ただ売り上げを拡大することが目標ではなく、ベストな販売先をセレクトしたい」と語った。「手堅い推移を見せている」と評する日本市場の販売代理店はヴィジョナイズで、同社は6月に東京・渋谷に開業する複合施設ミヤシタパーク(MIYASHITA PARK)2階に直営店アイスタイル(EYESTYLE)(約60平方メートル)をオープンする。

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上海生まれのShenはミラノ&パリコレをどう見た? 新型コロナウイルスの影響、ベストルック&スタイリング

 上海生まれで東京を拠点にモデルとして活動するShenは、2020-21年秋冬シーズンのミラノ・ファッション・ウイーク(以下、ミラノコレ)とパリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)に参加した。ミラノでは「MSGM」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」「ミッソーニ(MISSONI)」のショーに、パリでは「サンローラン(SAINT LAURENT)」「ノワール ケイ ニノミヤ(NOIR KEI NINOMIYA)」「トム ブラウン(THOM BROWNE)」「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」などのショーにゲストとして来場した。くしくも新型コロナウイルスの影響を受けたファッション・ウイークとなったが、大のファッション好きというShenが現地で感じたことは?パリコレ終了後に尋ねた。

WWD:多くのブランドのショーに訪れていたが、特に刺激を受けたコレクションや印象に残ったブランドは?

Shen:パリに来て見た2つ目のショー、「サンローラン(SAINT LAURENT)」がすごくよかったです。パンツはエナメルかなと思ったらラテックス素材なんですね。今まで「サンローラン」は黒のイメージだったので、今季出たくすんだパープルやイエローなど、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)らしい色使いも気になりました。昔から「サンローラン」が好きでよく買っていて、今回私服で参加して自分でスタイリングしました。もともとドレスを持っていたので、そのドレスに合ったシューズをパリの「サンローラン」で買いました。

初めて見た「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN以下、マックイーン)」のショーも印象に残っています。カイア・ガーバー(Kaia Gerber)が着ていた、開いた花びらのような形の袖のジャケットが気になります。ショーの後の展示会で細部までこだわって作っていることを知り、職人魂を感じました。スタイリングでは、シンプルなドレスにゴージャスなチェーンを体に巻きつけるように合わせていたのと、フェミニンなドレスにハーネスなどで強さを出したスタイリングが気になりました。このチェーンやハーネスはいろいろな服装に使えそうですよね。普段のスタイリングに取り入れていきたいです。ショーでたまたま隣に座ったのが大好きな韓国のインフルエンサー、アイリーン・キム(Irene Kim)で、「大好きです」って本人に伝えることができたのもすごくうれしかったです。

WWD:ショーを見る中で、気になったトレンドは?

Shen:「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン(JUNYA WATANABE COMME DES GARCONS以下、ジュンヤ)」と「マックイーン」のショーで見た、ジャケットにプラスアルファでバッグやをベルトを巻くスタイリングが気になりました。前回のパリコレにも来たのですが、前シーズンから少しずつネオンカラーが出てきているなと感じています。前回の「ジュンヤ」のショーでも出ていましたし、今季の「ボッテガ・ヴェネタ」でもネオングリーンがたくさん出てきていました。

WWD:各ブランドのショーでさまざまなスタイリングに挑戦していたが、特に気に入っていたスタイリングは?

Shen:「コム デ ギャルソン」でのスタイリングが好きでした。「コム デ ギャルソン」と「ジュンヤ」のショーの服は全て私物で、自分でスタイリングしました。ちょうど「ジュンヤ」の服と「デルヴォー(DELVAUX)」のミニバッグに入ったネオンカラーがマッチしていて、褒めていただけることが多かったです。

基本、黒のスタイリングが多いのですが、「マックイーン」では普段あまり着ない白のレザーコートを着用して、髪色にもマッチしていたので褒めてもらうことが多かったです。肩の部分の形で強さを出したコートだったのですが、「マックイーン」らしいシルエットを出すためにベルトをかなり強めに締めつけました(笑)。

「トム ブラウン」のワンピースもすごく好きでした。実はロストバゲージで一時このワンピースが行方不明になってしまい、ほかの服を着ることになったのですが、ショー前日に奇跡的に見つかって当日着ることができました。

WWD:ヨーロッパでは新型コロナウイルスの影響が出てきた最中で、特にミラノコレでは期間中に急速に広がった。コレクションを回る中で、何か影響はあった?

Shen:ミラノでショーを待っているときに、イタリア人のおじさんに中国語で話しかけられ、うれしくてしばらく話していたのですが、急に「あなたは感染していないよね?」と言われてその瞬間ちょっと冷めました(笑)。中国語勉強している人って中国が好きな人が多いので、まさかその人からそんな言葉が出てくるとは思いませんでした。でもファッション関係の人はみんな優しかったですね。ミラノで「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」が無観客ショーになって、フィナーレでアルマーニさんが中国人モデルをバックに写真を撮られていたのには勇気をもらいました。

それから、「マーチェン(MARCHEN)」という上海拠点のブランドのデザイナーと友人なのですが、パリでショールームを開こうと場所まで押さえていたのに、全部キャンセルしたそうです。「マーチェン」は上海ファッション・ウイークで発表していて、勢いのあるブランドで中国でも知名度が上がってきているので、新しいコレクションを見ることができなかったのはとても残念でした。デザイナーもコレクション同様かわいらしいんです。パリではウーバー(Uber)のドライバーによくキャンセルされましたが、これも影響なのかもしれません。

WWD:地元上海の友人や家族に影響はあった?

Shen:はい、基本みんな外出禁止。中国経済は旧正月に盛り上がるのですが、知り合いはみんな、飲食店もショッピングモールも旅行も全てキャンセルしていました。生活物資は「Tモール(天猫国際)」や「タオバオ(TAOBAO)」で注文して、配達員は集合住宅の門の中までは入ってこれないので、荷物が届いたら門まで取りに行っていたそうです。私は普段、東京に住んでいて、旧正月は上海に帰ろうとしていたのですが親から帰ってこない方がいいと言われ、今回は控えました。

WWD:そんな中、ミラノとパリに来た一番の成果は?

Shen:私はもともとファッションが好きでモデルを始めたので、最新のコレクションを真っ先に、そして手にとって見ることができたことが一番の収穫です。普段の生活だと刺激がなくなると怠けてしまうので、ここで刺激を受けてファッションが好きだと再確認できました。「デルヴォー」のショールームに、クロコ革に刺しゅう、フェザーも2種類使っているものすごくゴージャスな1000万円のバッグがあって、日本の社長さんがそれを説明しているときの「ファッションは夢を与える仕事だから。このご時世だからこそね」という一言がすごく印象に残っています。世の中暗めのニュースが多いですが、やっぱりファッションは楽しさや夢を与えるものだと思いました。

WWD:モデルやインフルエンサーとしての今後の目標、やってみたい仕事は?

Shen:モデルというと、服を着せられてショーに出たり撮影したりというのが一般的な仕事ですが、自分で自分のスタイリングをして、発信していくのもありだと思っています。海外ではインフルエンサーがファッション・ウイークに行くことが仕事として成り立っているけれど、日本はまだまだですよね。また、写真だけじゃなくて動画でもファッションの楽しさを伝えたいなと思っています。特に日本は面白さ重視のコンテンツのユーチューバーが多いですが、ハイファッションに特化したユーチューバーはいないですよね。中国にはファッションのヴログ(VLOG)をアップしているインフルエンサーがたくさんいるので、それを見て勉強しようと思います。それから、自分でもスタイリングをよくするので、スタイリストはやってみたいと思っています。でも現場の大変さは分かっているので難しいかも(笑)。

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今、知っておくべき注目のアーティストiri 成長を続ける彼女の現在地

 神奈川県逗子市在住の26歳のシンガー・ソングライターiri(イリ)。自宅にあった母のアコースティックギターを独学で学び、18歳でアルバイト先のジャズバーで弾き語りのライブ活動を始めた彼女が脚光を浴びるまでにそう時間はかからなかった。ヒップホップ的なリリックとソウルフルな歌声が話題を集め、2016年10月にアルバム「Groove it」でデビュー。シングル曲「Watashi」がNike Womenのキャンペーンソングに起用されたほか、「クロエ(CHLOE)」や「ヴァレンティノ(VALENTINO)」などのパーティーでパフォーマンスを披露するなど、ファッションシーンからも熱い視線を浴びる。

 17年にリリースした「会いたいわ」がTikTok週間楽曲ランキングで1位となり、今1月にリリースしたシングル「24-25」、そして3rdアルバム「Shade」に収録の「Wonderland」と、3曲がストリーミングチャートでロングヒット。3月25日に自身4枚目のアルバム「sparkle」の発売を控える彼女に、アーティストとして活動することになった経緯から、音楽性、ファッション観に至るまでを聞いた

WWD:音楽を始めたきっかけは?

iri:小学生のとき、学校のスクールカウンセラーに悩みを聞いてもらううちにその仕事に憧れを抱くようになり、誰かの心をケアする仕事に就きたいと思いました。それから音楽を聴き始めて、音楽に自分が支えられたことで、音楽も誰かの助けになると思い、高校生のときにシンガーを目指してボイストレーニングに通うようになりました。

WWD:当時聴いていた音楽は?

iri:ジャズやサンバなど母親が聴いていた音楽に影響を受けました。邦楽ではAIさんやMISIAさん、久保田利伸さんなどR & Bも聴いていました。

WWD:音楽活動の原点となったジャズバーでアルバイトを始めたのどういった経緯で?

iri:アルバイトを探していたときに、以前働いていたバイト先の人から紹介してもらいました。働きながらライブを観られるし、音楽も吸収できると思ったのがきっかけです。大学4年間はずっとジャズバーで働いていました。そこで弾き語りのライブをするようになりました。

WWD:本格的にアーティストを志したのはいつ頃から?

iri:大学4年生になり、周囲が就職活動を始めるときに、「NYLON JAPAN」が開催したオーディションを受けてグランプリをいただきました。それで今の事務所に所属して、音源もリリースできるようになりました。

WWD:当時周りが就職活動している状況に焦りは感じなかった?

iri:焦りはなかったです。シンガー以外の夢や、やりたいことがなかったので、オーディションに受からなかったらアルバイトをしながらでも活動しようと思っていました。オーディションでグランプリに選ばれて、小学生のころから続けていたボイストレーニングなど、これまでやってきたことに自信を持てました。

WWD:もともと弾き語りからスタートして、今のR & Bスタイルになったのは何かきっかけがあった?

iri:聞く曲が少しずつ変わっていったからだと思います。シンガー・ソングライターの七尾旅人さんが好きで、活動を始めた当初は弾き語りでゆったりとしたスタイルでした。でもあるとき、(七尾)旅人さんが(ラッパーやDJ、トラックメーカーとして活躍する)やけのはらさんと一緒に制作した楽曲を聴いたんです。その曲がきっかけで邦楽のヒップホップが好きになり、言葉遊びも面白いなと感じて自分にインプットしていったら今のスタイルになった、という感じですかね。

悩みを抜け出した先に
たどりついた新境地

WWD:自身4枚目のアルバム「sparkle(スパークル)」の意味は?

iri:前作のアルバム「shade」を発表したときは、自身の音楽性に悩んでいた時期で、収録曲もその心境を表現したネガティブな印象の曲が多かったんです。今作の「sparkle」では、自分が当時から悩んできたものを発散して、そういった悩みから抜け出してはじけていくという意味を込めて決めました。

WWD:どういうところに悩んでいた?

iri:セカンドアルバムを出すタイミングまでは、知名度を上げることに注力していました。当時はキャッチーな曲やあまり難しくhい構成の曲など、リスナーに届きやすく、わかりやすくという風に考えていたんですが、次第に「自分の色をもっと出したい」と思うようになり、自分がやりたいことと求められるものとのギャップに悩んでいました。

WWD:アルバム収録曲「24-25」では自身の年齢に対する思いについて触れていた。

iri:25歳になったときに、年齢に対して焦りがありました。もうアラサーになるんだっていう。タイトルもただ「25」のではなく、「24」という数字を入れたのは、セカンドアルバムを作った当時が24歳で、そこから1年間の悩みや葛藤について歌った曲だからです。

WWD:今回のアルバム「sparkle」を通して伝えたいことは?

iri:実は特にないんです(笑)。こちらの気持ちは曲にしてあるので、聴いてくれた方が自由に感じていただけたらと思います。

WWD:「sparkle」の収録曲ではさまざまなアーティストが楽曲制作に携わっている。

iri:4曲目の「coaster」でいうとSANABAGUNのドラムの(澤村)一平君から連絡があり、(OKAMOTO’Sの)ハマ君とトラックメーカーのSTUTS君の3人で曲を作ると言っていて、「歌ってくれない?」と誘われたのがきっかけです。一平君は、デビュー前の弾き語りのときにサポートで入ってくれていて、ハマ君は事務所の先輩、STUTS君は以前アルバムでご一緒したり、普段から親交があったりという関係性があった。結局STUTS君は自分のワンマンライブがあって、スケジュールの都合で参加できなくなり、一平君とハマ君に参加してもらいました。

WWD:楽曲はどのように制作している?

iri:基本的にはギターのメロディーを繰り返し演奏して思い浮かんだ歌詞を乗せたり、メロディーに合う歌詞を組んだりしています。イメージが湧くと早いのですが、いつも悩んでギリギリになります(笑)。イメージが湧かないときは友だちと遊んだり、音楽も全く聴かないなど別のことをしていますね。

WWD:「ナイキ」をはじめ「クロエ」や「ヴァレンティノ」でのパーティーでもパフォーマンスを披露するなどファッションシーンでも活躍が目立つが、自身のファッションへのこだわりはある?

iri:ライブ衣装はパキっとした色や、着心地がよくて動きやすいものを選んでいます。また、自分の曲の雰囲気にマッチするもの、テンションが上がるものも身に着けるようにしています。(あいみょんやRADWIMPSのスタイリングを手掛ける)スタイリストの服部昌孝さんが毎回、自分のポイントを押さえてくれています。

WWD:同年代で意識している人は?

iri:NYのフィメール・ラッパーのプリンセス・ノキア(Princess Nokia)はいいなと思います。彼女の音楽やファッションなどが好きでインスタグラムもよくチェックしています。

WWD:歌詞やスタイルから“若い女性の代表”として見られることに対してはどう思う?

iri:よく言われるんですが、私自身は特にそういった女性像をイメージして活動している訳ではないんです。そういった周囲のイメージとのギャップを感じることは多々ありますね。でも、ありのままの自分でいたいなとは思います。

WWD:最近のライブではチケットがソールドアウトすることが多いが、人気が高まっているのは感じている?

iri:大きな場所でやるのが目標という訳ではないですが、それでも多くの人に私の音楽が聴いてもらえるのは素直にうれしいです。

WWD:最後にiriさんにとって音楽とは?

iri:自分らしさを表現できるもの。人前で話すことや思いを言葉にすることが苦手で、歌詞にすることでいつもなら言えないことを吐き出すことができます。

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閉店後の渋谷パルコにロンドンバス! 36種類の職業を表現した「ミントデザインズ」の無観客ショー

 勝井北斗と八木奈央によるファッションブランド「ミントデザインズ(MINTDESIGNS)」は、「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO 以下、RFWT)」の中止を受けて、ショーを開催予定だった3月21日の午後9時45分に無観客ショーの動画を配信した。会場は東京・渋谷パルコ1階の歩行者専用通路であるナカシブ通り。渋谷パルコにはかつて「ミントデザインズ」の1号店があり、現在も小規模な店舗が入るブランドのホームと言える場所。さらに2007年にも、同館にあったパルコブックセンター内でショーを行ったことがあるゆかりの地でもある。今回は貸し切りの真っ赤なロンドンバスを歩行者専用通路に停車させて、閉店後の通路をランウエイにモデルたちが歩いた。

コレクションの出発点は
ロンドンの多様な人々

 今季のテーマは「Route 88(88番線)」。勝井と八木は学生時代を過ごしたロンドンのバスに乗る多様な乗客を思い浮かべてデザインをしたという。2人は昨年、「ミントデザインズ」を着用したさまざまな職種の人々を撮影する10年越しのプロジェクト「ハッピー ピープル(happy people)」の制作をロンドンで行った。母校であるセント・マーチン美術大学の講師やギャラリスト、画家、バーテンダーなどさまざまな職業に就く人々と触れ合って撮影を行ったことが、今季のコレクションの出発点となったという。

36種類の職業に就く人を
全36ルックで表現

 ショーに登場した36ルックのそれぞれには、バスの運転手やバスガイド、庭師、花屋の店員、学芸員、ファッション学生など職業のイメージがつけられていた。その彼ら彼女たちが夜遊びをしに行くという設定でスタイリストの入江陽子がコーディネートを組んだという。ショー前に演出家から「それぞれの職業を意識したポーズをしてほしい」と告げられると、モデルたちの顔に笑顔が溢れて各自がその役になり切って演技するなど、にぎやかな雰囲気に包まれていた。

久しぶりの男性モデルが登場
“初めてメンズウエアとしてデザイン”

 今季は久しぶりに男性モデルを採用した。「以前もコレクションでメンズモデルにユニセックスのウエアを着せたことがあったが、今回はメンズウエアとしてデザインしたものを発表した」という。ジャケットやパーカなどはメンズウエアのサイズを用意し、女性も着用できるようにユニセックスで提案。また、インスタグラム上で行ったモデルの一般公募から選ばれた3人も登場した。ファッション学生風のルックを着用したモデルのRISEはプライベートでも現役のファッションの専門学生で、今回が初めてのランウエイデビューだったという。

渋谷パルコへ出発進行!
バスの乗客となったモデルたち

 ショーのバックステージは、会場の渋谷パルコではなく表参道にある青山スタジオだった。モデルたちは資生堂チームによるメイクを済ませて、着替えを終えるとロンドンバスに乗って表参道から渋谷パルコへと向かった。今季のウエアは、古いロンドンの地図やバスをモチーフにしたプリントやスカーフが特徴的。“MINTDESIGNS”のロゴが入ったロンドン地下鉄のマーク風のバッジなども合わせている。

渋谷パルコでのショーを続行した
デザイナー2人の思い

 もともと使用する予定だった渋谷パルコでのショーを敢行し、「無観客ということ以外は変更なし」というが、「映像では見えない部分も多いため、映画のようなストーリー仕立てにして強い印象を残せるように工夫した」と勝井デザイナー。モデルがバスに乗り込む姿や車内で過ごすシーンを撮影し、プロローグとして動画に記録した。

 八木デザイナーは「本当は生で見てほしかった」と明かし、「渋谷パルコに突然バスが入ってきてファッションショーが始まったら、一般の人にも楽しんでもらえたと思う。渋谷パルコはこんな社会状況でなければ、外国人観光客や幅広い年齢層の人が集まる場所。今回はメンズも含めて多種多様な方に向けた服を作ったので、観客を入れることがかなわなかったのは残念だった」と悔しさをにじませる。

 新型コロナウイルスの影響でイベントの自粛ムードが続く中、「RFWT」の中止でもさまざまなブランドが創意工夫とともに新たな表現方法を見出している。18年目の「ミントデザインズ」は、東京のデザイナーズブランドの中でもベテランで、今回が37回目のコレクションだった。デザイナーの2人は、バックステージやバス、会場間を移動するイレギュラーな段取りでも普段と変わらない様子で取材にも対応し、安定したコレクションを披露していた。無観客でも“今できること”を見極めて、明るく豪華なショーを東京で披露する姿は頼もしかった。

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