サステナブル化粧品原料で注目を集めるファーメンステーション ごみを出さない循環型ビジネスモデルを提唱

 「発酵で楽しい社会を!」をミッションに、2009年に発酵技術で循環型社会を構築していくことを目指して設立されたファーメンステーション(FERMENSTATION)。岩手県奥州市にある使用されていない余剰水田を活用し、そこで作られたオーガニック米から自社の工場でオーガニック認証を取得したエタノールを作り、サステナブル原料として提供している。昨年12月にアイスタイルが主催した「ジャパン ビューティテック アワード 2019(JAPAN BEAUTYTECH AWARDS 2019)」で、“未利用資源×発酵でつくるサステナブル化粧品原料”として評価され特別賞を受賞し、国際連合工業開発機関(UNIDO)からも「開発途上国・新興国の産業開発に資する優れたサステナブル技術」として認定されるなど、今注目を集めている企業だ。

 ファーメンステーションの特徴は、ごみを出さない循環型ビジネスモデルにある。米を発酵させてオーガニックエタノールを作るときに出た残り粕(米もろみ粕)にはセラミドが多く含まれており、それを石けんやエキス化して化粧品の原料としたり、ニワトリや牛の餌にしている。またそのニワトリや牛の糞を畑の肥料として活用するなど、一切の資源を無駄にしない仕組みだ。原料となる米はJAS有機認証を取得し、そこから作られたエタノールもUSDA(アメリカ合衆国農務省)やエコサートコスモスのオーガニック認証を取得するなど、しっかりとしたエビデンスを持たせている。また米以外にも、果物カス(リンゴ、バナナなど)、茶カスなど多様な素材からエタノールを製造することができるのも特徴だ。

 もともと原料の提供からスタートし、それを使用して自社製品の開発・販売を行ってきた。そしてその事例をもとに最近はOEM・ODM事業、大手企業向けに未利用資源を活用したソリューション提供、国内外の人に向けたサステナツアーを行うなど、ビジネスの幅を広げている。「昨年はJR東日本と組んで、リンゴシードルの搾り粕(未利用資源)を活用したアロマ製品の製造、発酵物の飼料への活用などさまざまな取り組みを実施した。原料から製品の製造まで一貫して手掛ける会社は国内には本当に少なく、大手企業が持っている未利用資源を活用できるのも当社の強み。サステナビリティへの意識が高まる中で、何から始めたらいいか分からないという企業からの相談も増えている」とファーメンステーションの酒井里奈代表は語る。

 一方で「ただサステナブル製品なだけでは売れない、機能的にも満足度が高くなければいけない」とも考えている。「エタノールというと刺激の強さやケミカルな感じだからといって敬遠する人もいるが、それは石油由来のエタノールの印象。もともとエタノールの成分特徴としては、滅菌や防腐作用がある上に水にも油にも溶ける優秀な原料。弊社で製造しているオーガニックエタノールは刺激を感じにくく、臭いも他に比べて抑えられている。そのため化粧品にも使いやすくなっているし、香水やヘアケアなどにも使用できる。国内で原料からオーガニックエタノールを作っていて、その工程をトレースできる企業はほとんどなく、完全なサステナブル原料といえるのは弊社のものくらいだと思う」。

 10年以上サステナブルへの意識を持って活動してきた酒井代表は今後について、「昨年から急速にサステナブルがトレンドとなり、弊社への問い合わせも増えている。これまで取り組んできたことがようやく評価されるようになってきてうれしい。ただ、ブームで終わらないようにしっかりとビジネスとして成長させていきたい。今後は海外への原料提供など、サステナブル原料のグローバルカンパニーを目指したい」と意欲を見せる。

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「美容室が自分で作って自分で売れば不正流通はなくなる」 「アッシュ」吉原会長が語るPB開発の真意

 「アッシュ(ASH)」を中心に美容室チェーンを300店舗以上展開するアルテ サロン ホールディングスは2月14日、同社初となるユニセックスのヘアケア&スキンケアブランド「エニック(ENNIC)」を発売した。まずは同社が展開する全国の美容室各店舗で取り扱う。ここでは、吉原直樹アルテ サロン ホールディングス会長に、同ブランドの開発意図や製品の特徴、今後の展開を聞いた。

WWD:「エニック」の特徴は?

吉原直樹(以下、吉原):「エニック」は“大地に還る”をコンセプトにした美容室発のコスメです。原料の一つ一つを選び抜き、肌や髪に必要のない成分や大地に還らない成分は可能な限り配合していません。界面活性剤は、天然成分による発酵の力で丁寧に手作りしている“そほろはす”(高い生分解性を持つ界面活性剤)を採用し、大人から赤ちゃんまで使えるえるコスメになっています。ブランド名の由来は、「en(=円、縁)」と「nic(=オーガニックの一部)」を掛け合わせた造語で、人と人、人と地球環境をつなぎサステナブルな社会の実現への貢献を目指す姿勢を表現しているんです。

WWD:オーガニックということか?

吉原:よくそう聞かれますが、日本ではオーガニックが“ファッション”になってしまっている。だからオーガニックにはこだわっていません。それよりも私たちがこだわったのは“自然に還る製品”、つまり超ナチュラルな製品です。“自然に優しいものは自分たちにも優しいはず”をモットーに製品作りを進め、それが結果としてオーガニックに結びついた。そういう意味では深い部分で真のオーガニックだと思います。最近は“売れるから”という理由でオーガニックありきで製品を作るメーカーも見受けられますが、「エニック」は哲学が先にある。ニワトリが先か卵が先か、という話なんですが、違いはあります。

WWD:サステナブルは意識した?

吉原:美容室はケミカルの力を借りてお客さまの髪を美しくする施術をしていて、ケミカルを完全に否定することはできません。それならば持続可能な社会に貢献しなければいけない、という思いはありました。「エニック」で採用した界面活性剤“そほろはす”はインドで生産されている、ヨーロッパをはじめ世界で注目されている次世代の界面活性剤。植物油を原料に、化学合成ではなく酵母を使った発酵プロセスにより作られるため、高い生分解性を有しています。生産者はインドで製造しており、積極的に貧困層を雇用して技術を伝授し、雇用のないところに雇用を生み出しているなど、そこまで考えて採用したものなんです。

WWD:アイテムのラインアップは?

吉原:ヘアケアライン4アイテム、スキンケアライン3アイテムの計7品です。ヘアケアラインでは、天然洗浄成分“そほろはす”やシルク由来洗浄成分など、天然由来成分にこだわったアミノ酸系シャンプー「シャンプーLB」、天然由来コンディショニング成分が潤いを与えるノンシリコンの「トリートメントLB」などを展開しています。スキンケアラインでは、厳選した7種の精油を配合したダブル洗顔不要の「ホットクレンジングゲル」、8種のオーガニック植物エキス(保湿成分)を配合した「トリートメント ローション」などをそろえています。

WWD:アルテ サロン ホールディングスにとっては初となるスキンケアを含んだユニセックスのプライベートブランド(PB)となるが、そうしたブランドにした理由は?

吉原:美容室での店販の基本は、“(スタッフが)自分で使って良いモノをお客さまに伝える”ということです。そう考えると、スキンケアもあるのが自然だし、男性のスタッフやお客さまも多いので、メンズでも使えるユニセックスであるのが自然。ヘアケアの方が売れるという見解もありますが、そうした考えから、美容室のPBでは単発で終わってしまうブランドが多い。「エニック」は瞬発的に売ろうという気はなく、3年、5年、10年と少しずつ広がり、お客さまに長く使ってもらいたいと考えています。

WWD:「エニック」の開発には、美容室の店販品の流通に対するメッセージも込められていると聞いたが。

吉原:昔は美容室で売っている商品は、施術で使っている高い品質の商品が、他には流通していないことに魅力があったが、今は美容室で売っている商品が、インターネットや安売りの量販店でも買える時代。しかも、へたをすると1~2割安い。メーカーがいくら管理してもイタチごっこで、止めても止まらない。そのこと自体を批判する気はないのですが、私たちには技術をサポートする製品が必ず必要で、“自分たちが本当に自信とプライドを持って取り扱える商品は何か?”を突き詰めると、最後は“自分で作るしかない”というところに行き着く。美容室が自分たちで作って自分たちの店で売れば、不正流通はほぼ防げます。今後は美容室以外でも、百貨店やセレクトショップなど、“そこに置いてあることで美容師もプライドを持てるショップ”での販売は検討していきたいと考えています。

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ユナイテッドアローズの「ロエフ」に見る、長い夏を乗り切るスタイル

 近年、大人の女性のためのブランドが増えています。ユナイテッドアローズ(以下、UA)が2019年秋冬からスタートしたブランド「ロエフ(LOEFF)」もその一つ。現在、UA六本木店と原宿店の社内のグループ店と、エストネーション(ESTNATION)、ジャーナルスタンダード レサージュ(JOURNAL STANDARD L'ESSAGE)などに卸しており、4月下旬には初の直営店が六本木の東京ミッドタウンにオープンするそうです。

 これまでエイチ ビューティ&ユース(H BEAUTY&YOUTH)や「スティーブン アラン(STEVEN ALAN)」のデザインを手掛けてきた鈴木里香「ロエフ」ディレクター兼デザイナーが生み出す等身大のコレクションは、“40~50代になっても着続けたい服作り”をベースにしていて、ワークウエアから着想したトラディショナルで男前なスタイルに定評があり、20年春夏からはメンズもスタートしています。

 多くのブランドは春夏と秋冬の年2回、展示会を開催することが多いのですが、近年は夏が長くなり、ともすると10月でもまだ暑く、もはや“亜熱帯化”している日本において、年間でどのようなMDを組むのかはファッション業界の課題になっています。そこで“樹海と乗馬”をテーマにした20-21年秋冬シーズンの展示会で鈴木ディレクター兼デザイナーにそのことについて尋ねると、「自分自身、昨年は暖冬で一年中半袖やTシャツで過ごしていました。だからシーズンの立ち上がりはTシャツを提案したんです」とのこと。Tシャツにジョッパーズ風のサイドが膨らんだパンツを合わせ、ストールを肩にかけたスタイルを提案していました。

 Tシャツは大人になると似合わなくなるとして避ける人も増えてきますが、鈴木ディレクターがさまざまなTシャツを試してたどり着いたというそれは、少し厚地の生地で透けず、程よい襟の大きさとフィット感で上品な印象です。それにジュエラー「アキオ モリ(AKIO MORI)」に別注したシルバーの2連のネックレスを合わせて“大人感”をさりげなく表現しています。ストールで温度調整ができるので、シーズンの立ち上がりはこのくらいの軽装でもよさそうですね。ほかにも、さらっとした素材で快適だけど、秋らしい落ち着いたアースカラーのワンピースやトップス、定番の綿シャツ、デニムなどが並んでいます。

 シーズン中盤になると厚手のコートの代わりにポンチョを提案。「コート風にもストールにもなるポンチョは気候に合わせて着脱しやすい」とのこと。パールのネックレスや漆塗りのゴールドのアクセサリーを加えることで、重たいカラーになりがちな秋冬のスタイルに華やかさをプラスし、メリハリが出ますね。単なるカジュアルではない、大人のカッコよさがプラスされます。

 さらには「フラテッリ ジャコメッティ(F.LLI GIACOMETTI)」のロングブーツやフラットなレザーシューズ、ベストやハーフパンツを合わせた“乗馬スタイル”も今シーズンのテーマ。「“樹海や乗馬”がイメージソースですが、実際には公園や森にいても馴染むような服、そして自分が心地良いけれど人に会いたくなる“きちんとした服を”意識しました」と鈴木ディレクター。ほかにもリサイクルポリエステルのパンツや再生カシミヤで作ったニットなどのサステナブルなアイテムや、得意とする大人のワークウエアもありました。長い夏を乗り切る大人のスタイルとして参考になりそうです。

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仕事が絶えないあの人の、“こうしてきたから、こうなった” 美容室のサブスク展開の鈴木みずほジョシー代表編

 転職はもちろん、本業を持ちながら第二のキャリアを築くパラレルキャリアや副業も一般化し始め、働き方も多様化しています。だからこそ働き方に関する悩みや課題は、就職を控える学生のみならず、社会人になっても人それぞれに持っているはず。

 そこでこの連載では、他業界から転身して活躍するファッション&ビューティ業界人にインタビュー。今に至るまでの道のりやエピソードの中に、これからの働き方へのヒントがある(?)かもしれません。

 第7回目に登場するのは、美容室のサブスクリプション(定額制)サービス「メゾン(MEZON)」を運営するジョシー(JOCY)の鈴木みずほ代表。音楽配信や映画などさまざまなジャンルで“サブスク”によるサービスが増える中、「メゾン」が提案するのは提携の人気美容室をどこでも利用し放題の定額サービス。「髪に対して向き合えば人生が変わる、自信につながる」——鈴木代表は自身の原体験からそう断言します。ウェブ広告の会社員を経て起業をし、やりたいこととその思いに真正面から向き合い進んできた注目の経営者に迫ります。

WWD:以前はサイバーエージェントグループにお勤めだったのですね。

鈴木みずほ(以下、鈴木):不動産会社での仕事を経て、2012年に第二新卒で入社しました。転職エージェントに“成長できる会社”という条件で紹介してもらったのが縁です。でも正直なところ、最初は気が進みませんでした(笑)。当時のIT業界といえば華やかなイメージが強かったので、変な先入観を持っていて。それでもなぜ入社を決めたかというと、チャンスが与えられる会社であることを面接を通じて感じたからです。主力であったウェブ広告のサービスについて、私が感じていたマイナス面を面接担当者に正直に伝えたら、「それを考えるのが鈴木さんの仕事だからね。頑張って」と。入社も決まっていない相手にそう言葉をかけてくれる会社っていいな、ここなら必ず成長できるはず、と入社を決めました。最初の1年は営業職、その後の4年半は通信会社やデータ保有会社などと事業提携をしてウェブ広告の新しいサービス作っていました。新規事業開発はやらなくてはならないことも多く多忙でしたが、やりがいを感じていました。

WWD:手応えを感じながらも“独立”の2文字が頭にあったのでしょうか。

鈴木:会社には、いずれ起業をして辞めることを宣言して入社しているんです。退社したのは28歳です。小学生の頃から、祖父や父のような経営者になりたいと漠然と考えていました。その思いが特に強くなったのは、中学3年生のとき。父の会社の経営が傾き、生活が一変しました。それまでは何不自由なかったのがそうでなくなって。すると会社も家庭の雰囲気もとても変わっていきました。経営を立て直すためにもがく父の姿を見て、「人生を懸けてチャレンジできる仕事っていいな」「経営するってなんて面白い仕事なんだろう」と。子どものくせに、直面している家庭の状況をものすごく客観的に捉えていましたね(笑)。経営者が成長し続けない限り、会社の状況や周りの人の人生にここまでの影響を与えてしまうということや、良くも悪くも世の中にインパクトを与えられることに興味を持ちました。

美容室で自信をもらっている

WWD:2年前に起業して立ち上げた「メゾン」はどのようなサービスですか?

鈴木:美容室の定額制サービスです。「アフロート(AFLOAT)」や「ガーデン(GARDEN)」「ケーツー(K-two)」「アピッシュ(apish)」など約400店舗の人気美容室で、プランによってシャンプー、ブロー、ヘッドスパ、トリートメントを定額で受けることができます。通える回数が決まったチケットプランを除けば、通い放題のプランは全部で3つ。平日にシャンプー・ブロー通い放題の1万6000円、全日シャンプー・ブロー通い放題の2万5000円、全てのメニューを通い放題の3万5000円のプランです。ユーザーは、提携美容室の中からその日の予定に応じて好きなところを選んで通うことができます。

WWD:なぜこのサービスを始めようと思ったのでしょうか。

鈴木:私の原体験がもとになっています。前職の頃は、表参道にある美容室に月に4〜5回通っていました。銀座や恵比寿で予定があったとしても、わざわざ表参道へ移動しなくてはならない。自分が行動する動線上に美容室が寄り添ってくれたらいいのに、と思ったんです。美容室は国内に25万軒と、コンビニの5倍もある。行きたいときに行きたい場所に美容室があるという状況をつくり出すことはできるんじゃないか——そう思いつきました。

月に何度も美容室に足を運ぶ私は、ただきれいにしてもらっているだけじゃなくて自信をもらっていたように思います。当時、大事な商談やプレゼンの前に美容室に行くと商談の成立率が上がることに気づきました。周りの女性に聞くと、3〜4カ月に1度しか美容室に行っていないことを知り、それはすごくもったいないと感じて。ならば、気軽に美容室に立ち寄るライフスタイルをつくろうと、サブスクリプションサービスを立ち上げました。

WWD:コンビニ感覚で美容室に通えるのですね。

鈴木:美容室が増え続ける一方で、お客さまの数はほぼ変わっていません。何が起こるかというと、結果的に美容室同士でお客さまを奪い合ってしまう。カット・カラーで3カ月に1度しか接点を持てないのではなく、日常的にシャンプー・ブロー・ヘアケアで来店してもらうことで美容室側に新たな役割を作ることができれば、美容室の売り上げも伸びるだろうと考えました。

WWD:なるほど。美容室の稼働率がぐっと上がりますね。

鈴木:美容室が抱える「集客」の悩みは大きく2つあると考えています。1つ目に、平日の稼働率。どんなに人気の美容室でも平日の昼間が埋められないことも多いと聞きます。カット・カラーは2〜3時間かかってしまうので、平日に行ける人は限られますよね。シャンプー・ブローのメニューなら最速30分で終えられます。「メゾン」利用者の内訳を見てみると、平日の12〜18時に利用する働く女性が最も多いんです。

2つ目は、リピート顧客をつくることの難しさ。クーポンサービスのシステムで集客せざるを得なくなってくると、お客さまにとっては”クーポン価格”が魅力であって、“人”ではなくなってしまいます。2回目に来てくれることはなく、より手頃なお店へ行ってしまう。一方、「メゾン」を利用してシャンプー・ブローで何度も美容室に通っていると、自然とスタイリストさんと仲良くなるんです。定額制のシャンプー・ブローで来店したお客さまが「今日は○○さんにカットもお願いしようかしら」と、アップセールスにつながっているという報告を多く受けています。クーポンで選んでいるのではなく“信頼”で選んでいく——そんな理想の形のお手伝いをしていきたいですね。

WWD:美容室側の金銭的なメリットはどのようなものなのでしょうか。

鈴木:お客さまにご利用いただくと、「メゾン」からは一定の割合を美容室へお支払いするような仕組みになっています。例えば1か月間毎日利用いただくと、美容室側に30日×単価分の収益が上がります。美容室は赤字のリスクがなく、利益を上げることが可能です。そういった仕組みにしたのは施術をしてくれる人たちに一番還元したいという思いからです。自分たち、提携先、お客さま、すべてが笑顔になれる“三方よし”の精神ですね。このビジネスモデルは、前職の新規事業開発の部署での経験が生きています。新規事業の立ち上げ時は、文字通り鳴かず飛ばず。自分たちの利益だけを追求していて、全くうまくいかなかった。でも誰もが幸せになるようなビジネス設計をすると車輪が回り始めたんですね。今のサービスを考える際、初めからこのビジネスモデルでいくと決めていました。

WWD:それぞれの美容室はスムーズにこのシステムを受け入れてくれたのでしょうか。

鈴木:はい。今も新たに美容室を開拓していますが、新規で提携してくださる確率は96%以上です。その理由は、カット・カラーの集客ではなく、今までにないプラスの価値を提供できているからだと思っています。

でも私たちが大事にしているのはオーナーさん以上に、実際に施術してくださるスタイリストさんがいかに「メゾン」のサービスを理解してくださるか、ということ。スタイリストさんは売り上げを追っているので、1回の来店でいくらのもうけが出るかという発想になるんですね。クーポンを利用する新客の来店では、カット、カラー、パーマをすれば2万

円ほどの売り上げとなります。ただ、再来店の確率はスタイリストにより差が生じます。分かってはいるのだけど、目の前の2万円を魅力に思ってしまいがちです。なので、私たちが勉強会を開催し、中長期的な視点でお客さまを育てて行くのが「メゾン」です、という風に自分たちの言葉で伝えるようにしています。今後はユーチューブチャンネルも活用して、自分たちの思いや「メゾン」を利用してくださっているサロン側からのコメントなどを発信していきたいと考えています。

自分たちのサービスに自信を失いかけたことも

WWD:起業してからこれまでピンチはありましたか?

鈴木:3期目を迎えるまで、正直ピンチというピンチはなかったかもしれません。もちろん数字が思うように伸びなかったことはありますが、それを苦労とは思っていなくて。でも、去年の12月は苦しかった。いろいろな人に事業のアドバイスをいただくなかで、自分の事業に自信を持てなくなったことがありました。

そんなとき、足を運んだのはやはり美容室。そこで思い切って髪をショートにしました。髪を切ったら、考え方まで削ぎ落とされた気がしました。「このサービスで本当に幸せにしたい人って誰だったっけ?」とあらためて考えたときに、このまま進んではダメだ、と。関わってくださる人たちや私が幸せにしたいと思う人たちのためにも、私自身が自分たちの事業を誰よりも信じよう。そう意思を固めました。髪の毛が変わると、気持ちや人生まで変わるんだと身をもって実感しました。

だからこそ、髪を委ねる“人”が大事だよ、ということを伝えたいです。いろいろな美容室にクーポンを使って行くのもいいですが、美容師さんは言わば人生の伴侶。心から任せられる美容師さんと出会って、人生をリデザインしてもらうことで好転していくはずです。髪は素材美なので、たとえスッポンポンになっても付いてきます(笑)。そこが美しく自分にしっくりくれば、自分らしく生きられると思うんです。

WWD:ヘアにおいて女性を見て思うことはありますか?

鈴木:そうですね、日本の女性は髪へのプライオリティーが低いと感じます。髪よりも、ファッションやメイクといった外側の部分にお金を掛けている印象です。単純に髪をきれいにという話ではなくて、髪型を変えることで人生をデザインできるんです。私たちみたいなサービスサイドがそれを啓発していくことで、素材美を磨くことを推進できたらと思います。

WWD:次にどのようなことを仕掛けていきたいですか?

鈴木:ジョシーの存在価値は、“人に自信を提供すること”にあります。今、メンズ向けのサービスも絶賛準備中です。ただ、ヘアに固執するのではなくあらゆる形でアプローチできたらと思っています。その次に何をするかはあえて決めていません。たとえ今決めたことを3年後に実行しても、まったく必要とされていない可能性もある。その都度感じたことの中で、今ならこれだ!というサービスを堂々と発表したいと思っています。

WWD:今いる場所から新たなキャリアを積もうと考えている人にメッセージをお願いします。

鈴木:後輩や周りの女性たちから「会社を辞めようと思っているけれど、踏ん切りがつかない」という相談を受けることがあるのですが、そういうときには「会社を続けた方がいいよ」と伝えています。ドライに聞こえるかもしれませんが、本当にやりたいことなら体が先に動いているはずです。今は資金も比較的集まりやすく、起業もしやすい環境かもしれません。けれど、もし女性が起業という選択を考えるのであれば、よく考えた方がよいと思います。結婚、出産とライフステージが変わり、さらに会社をつくり組織を持って責任範囲が広がるとなると、本当に大変だからです。じっくり考えて、それでも自然と体が動いてしまうほどの熱量が溢れる何かで新しいことにチャレンジできたら、それはすごく幸せですよね。私自身ももがいてきたからこその、正直な気持ちです。

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時短=手抜きではない!「子育て業務効率化」を考えてみた  働くママのざっくばらん“本音”トークVol.3 ファッション編

 「仕事は業務効率が求められるのに、育児は数値化できない“手間・暇・愛情”という言葉でまとめられる」。こんなの過去の話だと思っていたけど、ママになってみると似たような世間の風潮を感じることが少なからずあります。何より「育児の効率化」=「手抜き」ではないのに、正解がない子育てでは「怠けているだけかも?」と自己嫌悪に陥ることもしばしば。ママ連載第3回のテーマは、「子育て業務効率化」について。ズボラな元「WWDジャパン」記者のママ2人が、「基本的に家事全般が面倒」というスタンスで、すでに実践している&試してみたい家事時短の術を考えます。

村上杏理(以下、あんり):突然だけど、子育てしながら仕事をしていると毎日があっという間に終わるよね。

一井智香子(以下、ちかこ):仕事があるのはありがたいけど、ママになってやることが格段に増えた。

あんり:正直、「WWDジャパン」の編集部だったときは、今より人生で忙しいことってあるのかな?と思っていた。でも子どもができて、臨機応変に対応しなくてはいけことが多くなって、スケジュールを立て難いのが大変。

ちかこ: 1日24時間の限られた時間で育児&仕事をやりくりするのは、忙しさの種類が違うよね。とはいえ、いつもどこかで楽したいと思っているから(笑)、家事を最大限に効率化する必要がある。根っからにズボラな性格だからこればかりはなんとかしたい!

あんり:ママになって、「名もなき家事」の大変さを実感する日々。ごはんを作るだけでも、1日3セット。独身時代のように、忙しいときは面倒だから食べないという選択肢はもうない。

ちかこ:そうなんだよね。ご飯作りが一番厄介!掃除や洗濯は流れ作業でできるけど、ご飯を作るのは、献立から買い出し、調理まで圧倒的にステップが多い。お総菜に頼っちゃうことも多いけど、味が濃くて子どもが食べてくれないことも。

あんり:私たち色々理由を付けているけど、ただ単に面倒くさいんだよね(笑)。掃除や洗濯は、1日やらなくても他人にはバレない。私は娘が入園前だから昼寝以外、ほぼ自由時間はなし。でも、急にぐずったり体調を崩したりしても原稿の締切は厳守できるように、色々先回りして進めたい。

ちかこ:急なトラブルに備えて前倒ししたいから、ますます効率化できることは進んで実践したい!

子ども部屋を分けて、ダサいおもちゃを“隔離”!

あんり:その通り。わが家では掃除効率化のひとつとして、おもちゃ部屋とリビングを分けた。娘が生まれてすぐは、リビングの色味になじむおしゃれなおもちゃを探していたけど、カラフルでちょっとダサいくらいのモノの方が子どもは楽しそう。部屋を分けることで、わんわんやアンパンマン、私が嫌いなピンク色のモノもOKにした(笑)。今はミニーマウス一色だけど、リビングに転がっているおもちゃを一日中片付けてる、なんてことがなくなったからすごく楽。

ちかこ:娘ちゃんの部屋、ちょっとした児童館みたいになってるもんね(笑)。基本的に雑なんだんけど、マイルールはある。いわゆる“こじらせ”女子だから、面倒だと思う家事が多いのかもな。

あんり:だからこそ気づけば私たち、現代の“新三種の神器“とも言える「ドラム式洗濯機・食洗器・電気鍋」をお互いにいくつか愛用しているよね。

ちかこ:ズボラ主婦の典型(笑)。

大容量のドラム式洗濯機で、“乾かない”ストレスから解放

あんり:わが家は半年前に、25万円くらいのドラム式洗濯機を新調して、洗濯をとりまく環境も変えた。

ちかこ:最新の洗濯機はうらやましいな。天候を気にして洗濯物を取り込んだりする手間は、地味に大変。

あんり:以前は、洗濯自体は午前中に終えても、そこから仕事を優先して、結局干すのは午後。乾かなくてもう一度洗うというのを繰り返していた。でも今は7kgの洗濯物が一気に乾くから、おしゃれ着以外は干すのを止めた。多少傷むのは早いけど、割り切っている。これだけで自分でも驚くくらいストレスが減って、最新家電の凄みを感じたよ。

ちかこ:あんりちゃんの家には、食洗器もあるよね。

あんり:食洗器もすごく便利!でも無駄に几帳面で、洗剤残りや特有の匂いが気になるから、結局半部くらいは手洗いしている。

ちかこ:じゃあ、あんまり意味ない?

あんり:普段の生活よりも、大人数で食事をするときに、ゲストに「洗いモノ気にしないで、たくさん食べて飲んで!」と言えるから気が楽。

ちかこ:ただの良い人(笑)。あんりちゃん、来客者に振る舞うご飯と酒の量がいつも炊き出しのようだもんね。

「心の余裕」を生む、“ほったらかし電気鍋”

ちかこ:ところであんりちゃんに一緒に家電量販店に付き合ってもらったけど、 “ほったらかし電気鍋”で話題の「ヘルシオ ホットクック」を買いに行ったでしょ?あれ、本当に買ってよかった。もっと早く買ってもよかった(笑)。

あんり:そうだったね。そもそもなんで「ヘルシオ ホットクック」に手を出したんだっけ?

ちかこ:ある友達に「家事は尽きないけど、時間の余裕が心の余裕を生む」という格言とともに勧められて、即購入を決意した(笑)。その子がインスタグラムに「ホットクック」をアップしたら、周りのママ友8人が購入したらしいよ!私もその一人ね。

あんり:それは明言!子どもにイライラしているときの根本的な原因は、私も100%何かの業務が滞っているとき。

ちかこ:早く寝かしつけたいのに、子どもが寝ないとかね。気持ちが伝わるのか、そんな日に限って全然寝ない。

あんり:で、「ホットクック」の使い勝手は?

ちかこ:材料を刻んで調味料と一緒に鍋に入れるだけで、色々な料理を勝手に作ってくれる。その間に保育園のお迎えに行けるし、洗濯物も取り込めるし、子どもが遊びたいときに待たせて愚図られることもない。

あんり:「ホットクック」のような“電気調理鍋”と、ティファールの「クックフォーミー」のような“電気圧力鍋”って、どっちも流行っているけど、全然違うモノなんでしょ?

ちかこ:全然違う。“電気調理鍋”は完成までに少し時間は掛かるけど、材料を入れた後は、放置できる。“電気圧力”は、“圧力”をかけるステップだけが自動だから、その前後の焼いたり、煮詰めたりは手動。そんな細かいタイムスケジュールをこなすのは今は無理だな。

あんり:でも幼少期に、母親が圧力鍋を大爆発させた瞬間を目の当たりにした身からすると、料理好きのママなら“電気圧力鍋”も便利そうかもと思う。肝心の味は?

ちかこ:大爆発とか普通トラウマにならない!?まぁそれは置いておいて、イマイチなレシピもあったけれど、煮込み料理はおすすめだよ。1時間ほったらかすだけで、2日目までとはいかないけど、1日半目のコクがあるカレーが出来上がる(笑)。野菜や肉がトロトロに柔らかくなって感激した!息子がお腹を壊したときに煮込みうどんを作ってみたけど、たくさん食べてくれたよ。離乳食にも使えそう。

あんり:そう言われると逆に、あまり美味しくないモノが何なのか気になる。

ちかこ:炊き込みご飯はイマイチだったな。レシピによって、いわゆる“家庭の味”と違うモノがある。でも無線LANでつなげば、新しいレシピを提案してくれたり、予約調理をセットしておけば帰宅するタイミングでできたてを食べられたりなど、全体的にとても満足。

あんり:私は毎日4時起きで、娘が起きる8時までが仕事のコアタイム。ママになると午前中の時間の使い方が勝負だから、それはポイントが高い。昔はみんなで朝方3時くらいまで飲んで帰宅してたけど、人間って変われるんだね。

ちかこ:あの頃が懐かしいよね……(遠い目)。でも午前中に業務の目途が付くと、午後から気が楽になる。それに子育てが絡むと、また一気にスケジュールが乱れちゃうんだけど……。

あんり:乱される前提で、めちゃめちゃ効率を求めている。

ちかこ:今はできないことも多いけど、ママになってからは締め切りの前日までには原稿を渡したいと思って仕事するようになったよね。

あんり:同感。かつて、編集部にいるママたちが午前中にものすごい早さで仕事を片付けている隣で、コーヒー飲みながらスロースターターを切っていた自分に喝を入れたい。「その仕事、あと2時間巻けるぞ!」ってね(笑)。

ちょっと気になる便利家電は、サブスクがお得!?

ちかこ:結果的に「ホットクック」は、5万円近くしたけど買ってよかった。でももし使ってみて自分の生活スタイルに合わなければ、この値段は高いって思ったかもしれない。だから今、ちょっと定額で試せる家電のサブスク(=サブスクリプション。定額制のレンタルサービス)に憧れている。

あんり:家電にもサブスクがあるんだね。特に気になるモノは?

ちかこ:スマートスピーカー。あったら便利そうじゃない?もう少し子どもが大きくなったら活躍しそうかなと。

あんり:「アマゾン エコー」は、知り合いの家で使わせてもらったことがあるんだけど、特に水仕事をしているときに重宝しそう。子どもが好きな音楽をすぐにかけてあげたり、その子自身もアレクサに話しかけて反応を楽しんだりしていて。使ってみたくなった。色々な家電と連動できるのもいい。

ちかこ:そうそう!洗い物中で手が離せない時、子どもへの「ちょっと待って」は小さなストレスだからね。それが解消されるのは魅力。ただ最低貸し出し期間が1年とかの家電も多い。あと数千円プラスして自分のモノになるなら、買った方が手っ取り早いのかな?

あんり:でも数千円の差は主婦には大きい!そんなこと言ってたら、次こそSNSで炎上しちゃうよ。第1回目の連載の内容が、転載されたヤフーニュースで平和に議論されていて、お互い胸をなで下ろしたじゃない。

ちかこ:私たちズボラ母は、子育て業務効率化の前に、家計簿をつける必要があるかもね(笑)。

一井智香子/(いちのい・ちかこ)1986年神奈川・逗子生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業後、三越伊勢丹に入社。伊勢丹新宿本店メンズ館1階の紳士雑貨でアシスタントバイヤーを務めた後、2011年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、主にメンズファッションを担当。ピッティ、ミラノ、パリメンズコレクション取材を始め、セレクトショップや百貨店、ファッションビルのビジネス動向を取材。現在はフリーランスとして、ファッションやライフスタイル系の記事執筆を手がける。1男児の母

村上杏理/(むらかみ・あんり):1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

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「エルメス」の香水を成功に導いた初代専属調香師が語る新たなメゾン「クヴォン・デ・ミニム」での仕事

 2004から17年末まで「エルメス(HERMES)」の初代専属調香師として活躍し、「地中海の庭」「ナイルの庭」など名香「庭」シリーズや「エルメッセンス」コレクションを生んだ人物として知られるジャン・クロード・エレナ(Jean-Claud Ellena)。彼の就任後、同メゾンの香水売り上げは拡大し認知度も高まった。エレナ調香師は「エルメス」を離れてから「フレデリック マル(FREDERIC MALLE)」の仕事を再開し、19年にフランスのビーガンフレグランスブランド「クヴォン・デ・ミニム(LE COUVENT DES MINIMES)」のオルファクティブディレクターに就任。初めて調香師を監修する形で作り上げた香水が昨秋日本に上陸し話題だ。4月には同ブランドから新作の発売も予定している。“香りの哲学者”“究極のミニマリスト”と評されるエレナ調香師に、「エルメス」を離れてからのことと新しい仕事について聞いた。

WWD:「エルメス」の専属調香師から離れ、「フレデリック マル」や「クヴォン・デ・ミニム」で再び調香の仕事に戻ったいきさつは?

ジャン・クロード・エレナ調香師(以下、エレナ):2018年1月4日に長年仕事をした「エルメス」を去り引退生活に入りました。しかしその2日後、友人であるフレデリック・マルから電話があり「自由になったのなら私と一緒に仕事をしてほしい」と言われたのです。一息つきたかったのでそのときは「また今度」と言いましたが、春になると徐々に調香の仕事が恋しくなってきて、どんなものを作ろうか考えられるように。そして10月、今度は「クヴォン・デ・ミニム」のゼネラルマネジャーであるマリー・キャロライン・ルノー(Marie-Caroline Renault)から電話がありました。

WWD:彼女からはどんな依頼が?

エレナ:私が住む小さな村まで来てもらったのですが、彼女はひどく緊張しながら、「電話をしていいかどうか迷ってこんなにも時間が経ってしまった。自分はフレグランスのプロではないからあなたの力が必要だ」と言ったのです。ですから私にできることはクリエイションを届けることだけで、マーケットのテストをしてほしくないということや、「エルメス」のときと同じような仕事の仕方、つまり何をしても自由という白紙の状態を保ちたいという希望を話しました。

WWD:実際に創作活動は思うように進んだか?

エレナ:「エルメス」のときと違うのは、ブランドを周知していくためにたくさんの種類のフレグランスが必要だということでした。私はクリエイションに非常に時間がかかるタイプなので、たくさんのものを同時にはできません。すると彼女は、「あなたが一緒に作業をする調香師を選ぶことはできるでしょう」と言ったのです。だから私はディレクターとして調香師を監修するという、私にとって初めてのスタイルで香水を作り上げることにしたんです。

WWD:調香師はどのように選んだ?

エレナ:まずパリへ行って香料会社とそこに所属する調香師たちに会い、どういう作業をしてもらいたいのか説明しました。それからサンプルを作ってもらい、最終的に3つの香料会社、4人の調香師と一緒に仕事をすることになりました。作業の工程はとてもシンプルで、サンプルを出してもらって電話やメールで修正点を伝える――。その繰り返しです。

WWD:調香師へのディレクションはどういうふうに行ったか?

若い調香師たちはマーケティングの人間としか仕事をしたことがないケースが多く、マーケティングの人間はそのときの流行や傾向を伝えて調香師を引っ張っていこうとします。私の場合はクリエイションに集中するので、トレンドやモードを避けて技術的な話だけをします。何が多くて何が足りないのか、そして美学的な観点も求めます。また「この香りで何が言いたいのか?」を問いました。

WWD:「クヴォン・デ・ミニム」はどういうブランドだと思うか?

エレナ:「クヴォン・デ・ミニム」で好きなのは、ルイ14世に仕えた植物学者のルイ・フュイエ(Louis Feuillee)と南仏にあるミニム修道院にまつわるユニークなブランドストーリーを持っているところです。ルイ・フュイエは17世紀に修道院の神父、冒険家、地質学者として世界中を旅して回り、植物学の祖としても知られています。

WWD:ファーストコレクションはどのような内容になったのか?

エレナ:ルイ・フイエは旅をした先々から植物や動物のスケッチ画を持ち帰り、ルイ14世に献上しました。インスピレーション源を追い求めて持ち帰るという生き方に、私は非常に共感を覚えたのです。そこから着想してファーストコレクション「シンギュラー オーデパルファム」は動物をモチーフにした5つの香りを作りました。ワシや雌ライオンの個性を表現した香りで、自分にふさわしいものを選べるという提案です。「クヴォン・デ・ミニム」はビーガンフレグランスですが、香水業界では何年も前から動物由来の香料を使わなくなってきていて、ビーガンでフレグランスを作るのはそれほど難しいことではありません。ウッディー系やフローラル系、アンバー系と、多くの人に楽しんでもらえるようなコレクションにしました。

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「モンクレール」に新風吹き込む「アリックス」マシュー・ウィリアムズの揺るぎない精神

 「モンクレール(MONCLER)」が世界中のクリエイターと協業する「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS以下、ジーニアス)」に2019-20年秋冬コレクションから参加しているのが「1017 アリックス 9SM(1017 ALYX 9SM以下、アリックス)」のマシュー・ウィリアムズ(Matthew M. Williams)だ。1月のメンズ・コレクション期間中には、両者による「6 モンクレール 1017 アリックス 9SM(6 MONCLER 1017 ALYX 9SM)」の発売を祝したイベントがイタリア・ミラノの直営店で開かれ、若い世代を中心に大勢が来場して深夜まで盛況だった。

 「アリックス」はウィメンズブランドとして15年に設立され、17-18年秋冬シーズンからメンズも始動させると、ストリートウエアの寵児として瞬く間に脚光を浴びた。アイコニックなベルトのバックルやボディーバッグなどキャッチーなアクセサリーと、インダストリアルなムードをにじませたシャープなウエアが高い評価を受け、「マッキントッシュ(MACKINTOSH)」や「ナイキ(NIKE)」との協業や、キム・ジョーンズ(Kim Jones)率いる「ディオール(DIOR)」メンズ・コレクションのチームに参加するなど引く手あまたである。なぜ、ウィリアムズのもとにラブコールが届き続けるのだろう――話を聞くと、彼の揺るぎないデザイン哲学が見えてきた。

「僕は直感を信じ、
ベストを尽くすだけ」

WWD:「ジーニアス」参加のきっかけや経緯を教えてください。

マシュー・ウィリアムズ(以下、ウィリアムズ):レモ・ルッフィーニ(Remo Ruffini)会長兼最高経営責任者(CEO)から、「ジーニアス」 プロジェクトに参加してくれないかというアプローチを受けたんだ。僕自身、何年にもわたって「モンクレール」のファンだったから、彼らと仕事ができることはとても光栄なことだった。「モンクレール」はデザインやマーケティング、リテールのとらえ方に関して先進的な知識と考えを持っていたからね。

WWD:「6 モンクレール 1017 アリックス 9SM」のデザインでは「モンクレール」というブランドをどう解釈して表現した?

ウィリアムズ:「アリックス」のファスナーやバックル、オーバーダイ加工といった核となる要素と、「モンクレール」のアイコニックなダウン素材や、厳しい寒さにも耐えられるテクノロジーを融合して発展させたんだ。

WWD:ディテールやインダストリアルなムードは「アリックス」のコレクションにとても近いクリエイションだと感じたが、協業だからこそできた新しいチャレンジは?

ウィリアムズ:新たなファブリックであるナイロンなどを使ったデザインはチャンレジだったし、とても面白かった。ほかにも、2つの異なるDNAを持つブランドをマッチさせるためにたくさんの挑戦ががあったが、結果にはとても満足している。お互い学んだことは多かったと思う。

WWD:協業前と協業後で「モンクレール」に対する意識は変わった?

ウィリアムズ:さきほど言った通り僕はずっと「モンクレール」のファンで、クラフツマンシップは高く評価していた。「ジーニアス」に参加して彼らからチームやサプライヤー、アーカイブや研究を紹介してもらって、その思いはますます強くなった。レモ会長をはじめ、ファンだったブランドと仕事ができたことは素晴らしい経験だったよ。

WWD:「マッキントッシュ」「ナイキ」「ディオール」などタイプの異なるブランドとのプロジェクトに参加し、自身のクリエイションに変化はあった?

ウィリアムズ:自分で感じる変化は特にないんだ。なぜなら僕のデザインプロセスは常に一貫しているから。でも、それぞれのプロジェクトでサイジングやスタイル、クオリティーが全て違っていたから、そういう点ではさまざまな経験ができたとは思っている。

WWD:今後「アリックス」をさらに成長させるためには何が必要だと考える?

ウィリアムズ: 特に何かにこだわることは考えていないんだ。自分が好きだと感じた直感を信じて、毎日ベストを尽くすだけさ。

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日本発ロリータランジェリーやサニタリーショーツに注目が集まる 「パリ国際ランジェリー展」

 世界中の下着ブランドが出展する2020年「パリ国際ランジェリー展(SALON INTERNATIONAL DE LA LINGERIE)」が1月18〜20日、フランス・パリのポルト・ド・ベルサイユ見本市会場で開催された。”サステナブル”と”ボディーポジティブ”のメッセージが明確に示された同展では、会場設営に使用する資材にも配慮がされ、エシカルブランドを集めたエリア「オーガニック(O.R.G.A.N.I.C.)」を新設。また、起用するショーモデルの体型や年齢に多様性を持たせるなどの動きが見られた。

 2019年12月から続く地下鉄のストライキが影響して今回は来場者数減となったものの、毎日行われる3つのファッションショーやトレンドセミナー、トークセッションは全て予定通り催され、各スタンドでは活発な商談が行われた。来場者の内訳は34%がフランス国内、66%がフランス国外からだった、国別入場者数のトップ10はヨーロッパの国々とアメリカだ。今までランクインしていた日本はトップ10外になった。日本からの出展は「クコネ(KUKONE)」「ケープラスワンパーセント(K+1%)」「美人工房(BIJINKOBO)」「ランジェリーク(LINGERIQUE)」「ルイグラマラス(RUI GLAMOROUS)」の5ブランド。美成産業による「クコネ」は、日本の“カワイイ”文化をロリータテイストのランジェリーで表現するブランドとして同展でデビューした。ニッチなカテゴリーではあるが、受注もありヨーロッパにおける確かな需要を確信したようだ。また、114(イイヨ)が展開する「ケープラスワンパーセント(K+1%)」は、スタートアップのブランドを集積した新エリア「ミレニアルズ(MILLENIALS)」に出展し、サニタリーショーツとコーディネートできるブラジャーを提案し、独自のコンセプトが注目を集めていた。

キーワードは
“インクルーシブ”
“エンパワーメント”
“ボディーポジティブ”

 主催するユーロヴェット(EUROVET)は同展で、インクルーシブかつサステイナブルなブランド支援に注力することをあらためて宣言した。展示会場の設営・運営においても、使用するカーペットを2万平方メートル削減(約5トンの原油を節約)し、休憩エリアでは中古の家具を設置したり、メインエリアにはリサイクル可能な木材を使用、印刷物は再生紙を用いてパリから約40kmの場所で印刷など、あらゆる施策が行われた。同展のポスターは、年齢や体形、肌の色などが異なる女性のビジュアルで、ダイバーシティーとインクルーシブを推奨するメッセージが示された。また、全てのファッションショーで多様体形や年齢のモデルが登場。2021-22年秋冬トレンドセミナーでもキーワードとして“インクルーシブ”“エンパワーメント”“ボディーポジティブ”が挙げられ、今後のランジェリー業界におけるトレンドになることを感じさせた。

香港で開催されていた
素材展を深センへ移転

 また、ユーロヴェットは同展と同時開催される下着と水着の素材展「アンテルフィリエール パリ(INTERFILIERE PARIS)」も主催しており、中国最大級のニットウエア展示会である「中国ニット・イノベーション・デザインウイーク(CHINA KNITTING INNOVATION DESIGN WEEK)」の主催者とパートナーシップを組んだと発表した。それに伴い、これまで香港で開催されていた「アンテルフィリエール 香港」を深センへ移して4月9〜11日に開催する予定だ。下着と水着の2021年春夏コレクションを披露する「ユニーク バイ モードシティ(UNIQUE BY MODECITY)」と「アンテルフィリエール パリ」は、6月27〜29日にポルト・ド・ベルサイユ見本市会場で開催される。それとは別にメンズファッション・ウイークやオートクチュール・コレクションなどに来場するファッション関係者に向けた新たなプレゼンテーションの場「スウィムクチュール(SWIM COUTURE)」が、6月27日にシャイヨ-宮で催される。美しさの基準や消費スタイルが多様化する中、見本市にさらなる発信力と存在意義が求められる。

川原好恵:ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルス分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身

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スウォッチ グループの「バーゼル・ワールド」電撃復帰はありえるか!?

 世界最大の時計企業であるスウォッチ グループ(SWATCH GROUP)が、3月4~6日の会期でスイス・チューリッヒで開催予定だった新作展示会「タイム・トゥ・ムーブ(TIME TO MOVE)2020」を中止しました。新型コロナウイルスによる影響です。これには僕も参加予定でした。

 スウォッチ グループは19年に世界最大の時計・宝飾見本市「バーゼル・ワールド(BASEL WORLD)」と決別し、昨年は日本から13人のジャーナリストを招いて、傘下の各ブランドの本社や工場をめぐるツアーを行いました。今年はそれを拡大して、日本から約40のメディアが参加する予定でした。

 そこでウルトラCとして期待されるのが、スウォッチ グループの「バーゼル・ワールド」への電撃復帰です。スウォッチ グループは新作発表の場を失い、「バーゼル・ワールド」は同グループに去られて以来ラブコールを送り続けています。そしてメディアやバイヤーにとっても願ったりかなったり。

 ……とはいえ気になるのは、じゃあその「バーゼル・ワールド」は開催されるの?ってことです。スイスを代表するもう一つの時計見本市「ウオッチ&ワンダー ジュネーブ(WATCHES & WONDERS GENEVA)」(4月25~29日)とひと続きで開催予定(4月30~5月5日)ですが、今月中にも各陣営が判断を下すと見られています。万が一にも両方中止になれば、時計関係者はほとんど全ての新作を目にすることができなくなってしまいます。

 もちろん写真や動画で情報は共有されるでしょうが、数百万円からときに数億円ともなる時計の質感や重さ、運針やミニッツリピーター(小さな鐘をハンマーで鳴らして時刻を告げる世界三大複雑機構の一つ)の音色を聞くことはできません。

 あれこれ書いたものの、僕にできることは残念ながら極めて少なく、渦中の一人としての実状を吐露するくらいです。そして各見本市が開催され、現地取材できた暁には、クイックかつビビッドに情報をお伝えしたいと思います。

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ロンドン・コレクションを斜め読み!前編 ブレグジットで分断された英国から出てくるクリエイション

 2020-21年秋冬シーズンのロンドン・ファッション・ウイーク(以下、LFW)も前半戦が終了。13~15日に発表されたブランドとイベントをピックアップしてダイジェストでお届けします。

2月13日(木)

「マーガレット・ハウエル」が50周年を記念したアーカイブ展

 日本でも人気の高い「マーガレット・ハウエル(MARGARET HOWELL)」は今年でなんと50周年。店舗で開催されたアニバーサリーパーティーへお邪魔しました。期間限定でマーガレット本人が選んだ、ブランドの歴史を語る上で欠かせない貴重なアーカイブを公開しており、スケッチやインスピレーション源となるムードボード、過去のキャンペーンイメージなどを展示しています。“50 YEARS OF DESIGN”という映像作品も上映していました。このアーカイブ展は日本でも開催予定だそうです。

2月14日(金)

期待の若手「ユハン ワン」でLFWがキックオフ

 ファッションショーの一発目は、中国出身でロンドンを拠点にする若手デザイナー「ユハン ワン(YUHAN WANG)」です。前シーズンは若手支援プログラム「ファッションイースト(FASHION EAST)」の合同ショーに参加していましたが、卒業して初の単独でのショー。当日には「LVMHプライズ」のセミファイナリストに選出されたというニュースも入ってきて、注目度がますます高まっている様子です。「シモーン ロシャ(SIMONE ROCHA)」らに次ぐロンドンの大人ガーリー枠の担い手ですが、得意なドレープの技術でボリューミーにならずに甘さを演出できているところで差別化できています。前回まではドレスが中心でしたが、コートやセットアップなど、アイテム幅も広がっており、今後も楽しみなデザイナーです。

「キコ コスタディノフ」の攻めと守りのよい塩梅

 前シーズンからオフスケジュールで発表している「キコ コスタディノフ(KIKO KOSTADINOV)」。「アシックス(ASICS)」とのコラボレーションでも話題で、日本にも男性ファンが多いブランドです。ウィメンズ・コレクションはデザイナーのキコのガールフレンドであるディアナ・ファニング(Deanna Fanning)とローラ・ファニング(Laura Fanning)の双子の姉妹が手掛けています。これまで“衣装感”が強くリアルに提案するのは難しいだろうな、と思っていましたが、今回は一歩リアルに歩み寄ってきた印象。ブランドのシグニチャーであるボールドな色使いと、パネルの切り替えテクニック(異素材の組み合わせ)はそのままですが、攻めと守りの塩梅を掴んできたよう。2人が得意とするニットウエアの強みも出ていて、トゲトゲしたニットをワンピースとレイヤードしているのが新鮮です。

透明性を備えた「リチャード マローン」

 「リチャード マローン(RICHARD MALONE)」もロンドンの若手の注目株の一人。17日開催の「2020 インターナショナル・ウールマーク・プライズ(2020 INTERNATIONAL WOOLMARK PRIZE 以下、IWP)」の決勝戦で唯一ウィメンズブランドでファイナリストに残っています。今季はIWPの審査対象のコレクションため、メリノウールを多く使っていることはもちろん、今回は素材の調達から生産までの透明性が審査の鍵になっているため、ブロックチェーンでトレーサブル(跡形などをたどれる)になっています。また後日、IWPのレポートで詳しく紹介します。

女王のスタイルから着想を得た「シュリンプス」

 人工ファーコートやパールのハンドバッグが看板アイテムの「シュリンプス(SHRIMPS)」。今季は英国王室の女王エリザベス2世のファッションスタイルやスコットランドのタータンから着想を得たコレクションです。今、イギリスはEU離脱“ブレクジット”やヘンリー英王子の“メグジット”(ヘンリー王子とメーガン妃の公務からの退任)など変化が大きい不安定な時期。特に“ブレクジット”ではEU離脱派52%、残留派48%という結果だったので国民の心を大きく分断してしまいました。「シュリンプス」をはじめ、改めて英国の良さにフォーカスを当てて、英国愛を伝えているブランドが今季は多い気がします。

2月15日(土)

ウィーン発「ペーター ペトロフ」のロンドンのデビューショー

 オーストリア・ウィーン出身の「ペーター ペトロフ(PETAR PETROV)」がロンドンでショーを初開催しました。クリーンでエレガントで好印象!これは「ジル サンダー(JIL SANDER)」「ザ・ロウ(THE ROW)」などと同じく、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)時代の「セリーヌ(CELINE)」ファンに受けそうな雰囲気です。しかし、全てマキシロング丈で想定プロポーションは背の高い欧米人向け。日本人の体型には難しそうだなと感じました。

サステナビリティの輪を広げる「フィービー イングリッシュ」

 サステナビリティで先進的な「フィービー イングリッシュ(PHOEBE ENGLISH)」はプレゼンテーション形式での発表です。見た目は超シンプルですが、話を聞いて驚きでした。「#NothingNew」というタイトルで、その名の通り、何も新しい素材がないんです。「シモーン ロシャ」や「マーティン ローズ(MARTINE ROSE)」などフィービーの仲のいいロンドンデザイナーたちから余った生地を回収して全てリサイクルしたものでコレクションを制作しています。サステナビリティの話題が広がっていても実際には取り組むことは難しい。でも、フィービーのように周りを巻き込むことができるデザイナーは稀有だと思います。

どこでも寝られる!?「トーガ」のダウンウエア

 日本を代表する「トーガ(TOGA)」は、テーラードをベースにアウトドアの要素などのミックスした安定のコレクションです。今季はふかふかしたダウンのパッファーが多く使われていて、リリース情報によると「どこでも寝られるように」という即席布団ようなの提案だそう(笑)。私が注目したのはバッグもシューズのアクセサリーの充実!ビッグなトラベルバッグ、フェザーのシューズなど手にとって確認したいものがいっぱい。後日、ライターのELIE INOUEさんによるバックステージレポートも上がりますのでそちらもお楽しみにお待ちください。

メンズ初登場の「モリー ゴダード」

 「モリー ゴダード(MOLLY GODDARD)」は図書館の中をレストランのように作り込んだ会場でした。テーブル席には、パンとバター、白ワインに水まで用意されていて、待ち時間に自由に食べられるんです。質素ではありますが、時間がなくランチをスキップしていた来場者たちには嬉しいサービス。自分のテーブルを探していると、前シーズンのフィナーレに登場したチュールドレスを着た来場者がいました。お姫様みたいで写真を撮らせていただきました。可愛い!肝心のコレクションでは、メンズが初登場!「モリー ゴダード」らしさは伝わらないですがキュートな印象。一方でウィメンズはカラーブロッキングニットにシグニチャーのギャザーを寄せたドレスを合わせた新提案。カジュアルな「モリー ゴダード」のドレスを着こなし方が伝わってよかったと思います。

ちょっとニクい「リチャード クイン」

 前回はオンタイムから1時間遅れてショーを行った「リチャード クイン(RICHARD QUINN)」は、今季も待ち時間は40分!開始前は会場にゲストのイライラを感じる空気が漂っていました。何故そんなに遅れるのかというと、歌手やオーケストラなどの生演奏を用意しているから。リチャードも“ブレクジット"などの影響からイギリスを意識したコレクションを発表しています。シグニチャーの花柄プリントは変わりませんが、全身にビジューを刺しゅうしたドレスはすごいの一言につき心を震わせます。でも、背中にはイギリスの国歌である「God Save the Queen」を文字って“God Save the Quinn”と自身の名前に変えていたり、歌手が歌った「ダンシング・クイーン」も、“クイン”に掛けていたりと(笑)ちょっとしたウィットも忘れないところがニクい。拍手喝采で、待ち時間の長さを忘れさせるファッションの魔法を感じたショーでした。

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「セリーヌ」出身の注目株「ピーター ドゥ」に学ぶ SNS世代に愛されるラグジュアリーブランドの作り方

 ニューヨーク発の「ピーター ドゥ(PETER DO)」は、デザイナーのピーター・ドゥがオンラインで出会った4人の友人と自宅のリビングルームで始めたウィメンズブランドだ。設立から2年目で1シーズンあたり130万ドル(約1億4300万円)を売り上げるブランドへと成長した。これまで発表した3シーズン合計では300万ドル(約3億3000万円)になる。その魅力はフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)が率いた時代の「セリーヌ(CELINE)」で培ったテーラーリング技術で実現する、タイムレスなリアルクローズにある。

 若手ながら「セリーヌ」と変わらない価格帯でも支持される理由は、制作過程からチームのランチの様子といった日常までをSNSで見せてしまう透明性の高さも一つにある。コレクションの制作過程をSNSで見せることによって、それにかかる手間隙やコレクションへの愛情をフォロワーが理解できるため、正当な価格として受け入れられているのだろう。また、服についての悩みを周囲に聴いて“問題解決”を重視したモノ作りも独特だ。

 2019年末、東京・青山のセレクトショップ「アデライデ(ADELAIDE)」で日本初となるポップアップを開くため来日したデザイナーのピーター・ドゥとセールス・ディレクターのヴィンセント・ホー(Vincent Ho)に、チームビルディングからブランドの将来像までを聞いた。

“チーム全員がオンラインで出会った友人”

WWD:バックグラウンドを教えてほしい。

ピーター・ドゥ(以下、ピーター):僕はベトナムの農場で育ったんだ。首都のホーチミンから1時間ぐらいかかるようなところ。14歳のときにアメリカのフィラデルフィアに移った。その後に進学したニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)では「LVMH グラジュエーツ プライズ(LVMH Graduates Prize)」で優勝し、「セリーヌ」のロンドンとパリのアトリエで2年以上の経験を積んだ。

WWD:今のチームは何人体制?

ピーター:チームは12人で、そのうちの7人が正社員で5人がインターン。少数精鋭で内製化している。みんなインターネット上で出会っているんだ。

WWD:メンバーとの距離が近いようだ。

ピーター:オフィスが大きなワンルームで、何もかもがそこで起きているしね。話したいことがあるときは、相手の名前を叫べばいいというのも便利。「僕のオフィスに来て!」って叫ぶんだけど、そんなものはなくて、ただ僕が座っているところに来るだけなんだけどね(笑)。本当にみんな仲がいいし、もはや一つの大きな家族のようなもので、毎週スタッフのために何か作っているよ。「マスターシェフ~天才料理人バトル!(MasterChef)」っていうテレビ番組で、秘密の食材が入っている“ミステリーボックス”っていうコーナーがあるんだけど、それと似たようなことをやるんだ。毎週水曜日にスタッフが持ってきた食材を持ち帰って家で料理を作り、それを木曜日に会社に持ってきてチーム全員でランチをする。その週にあったことを話し合うんだ。

ヴィンセント・ホー(以下、ヴィンセント):「ピーター ドゥ」は、僕を含めた5人の友だちでスタートした。ピーターの家のリビングルームでね。そこから2人増えて、その後12人に増えたんだ。全員が不可欠でそれぞれ重要な役割を担っている。インターンも僕たち“家族”の一員だと考えているので、全てのディナーに誘うし、受け入れられているんだなと感じてもらえるように努めている。これは大事なことだと思う。

WWD:二人の出会いはブログサイトのタンブラー(Tumblr)だと聞いたが?

ピーター:当時、僕のタンブラーには結構な数のフォロワーがいたんだ。ヴィンセントはたまたま見たか何かで連絡してくれた。

ヴィンセント:当時はスタートアップだった時代のファッションEC、モーダ・オペランディ(MODA OPERANDI)で働いていたんだけど、ピーターのタンブラーを見つけて、「僕はモーダ・オペランディで仕事をしている者だけど、ルックブックなどはある?君たちをうちのバイヤーに紹介しようと思うんだけど、どうかな」と連絡したんだ。でも、当時ピーターはまだ学生で……。

ピーター:そう、それで「僕はただの学生ですが……」と返事をしたのを覚えているよ。何が起きているのか、何をどうしたらいいのかも分からないような状態だった(笑)。それでとりあえず一緒にディナーに行き、それから友だちになったんだ。

WWD:「ピーター ドゥ」を立ち上げる前は2人とも「セリーヌ」で働いた。

ヴィンセント:ピーターはパリのデザインチームにいて、僕はアメリカの「セリーヌ」でセールスをしていた。何が売れていて何が売れていないのかを直接理解することができたんだ。ピーターがデザインしたものについても、顧客の反応を直接ピーターに伝えることができて、この「セリーヌ」時代の経験が今の「ピーター ドゥ」でも生きていると思う。僕たちはデザインとセールスの両方の面を理解しているからね。ブランドを立ち上げるに当たって、これはとても重要なことだと思う。

WWD:ピーターは「セリーヌ」と「デレク ラム(DEREK LAM)」で経験を積んだが、それぞれで何を学んだ?

ピーター:「セリーヌ」では、女性が毎日着られるような服を作るということをフィービーに叩き込まれた。素材や着心地にこだわって作り、日常的に着られるリアルクローズであると同時に、自分の子どもに譲って、その子がまたそれを着て……という永遠に残るようなモノ作りを学んだ。「デレク ラム」で僕はシニア・デザイナーだったから、キャスティングや営業などの「セリーヌ」ではやっていなかったことも担当した。こうした経験は「ピーター ドゥ」を立ち上げる際にとても役に立っているし、自分の準備が整った状態でブランドを設立することができた。

“服作りは「いかに問題を解決するか」から始まる”

WWD:インスピレーションはどこから得ている?

ピーター:まずは“いかに問題を解決するか”から始まる。それで周囲の人たちにいろいろ聞いて回るんだ。例えば秋冬コレクションなら「冬服で好きじゃないところは?」みたいな質問をすると「セーターやコートが重すぎる、そのくせあんまり暖かくない、肌に当たってチクチクする」というような答えが返ってくる。こうした具体的な悩みを解決しつつ、そのとき観ていた映画とか、アーティストとか、周りの人たちとかから得ている。人を観察するのが好きで、それでいろんなことに気づくんだ。だから、「このコレクションの着想源はモロッコです」という風にはならない(笑)。

「セリーヌ」や「デレク ラム」では抽象的なアイデアをもとに制作することがあったけれど、個人的には変だなと思っていた。自分が本当に感じたことがベースになっていないと本物ではないから、何かのレプリカみたいな服になってしまうんだ。それに日常的に着てもらうのが目的だからね。あと「こういうタイプの女性に着てもらいたい」という言葉も嫌い。そもそも、そのタイプの女性が買ってくれているとは限らない。「セリーヌ」ですらも「知的な女性をイメージして……」というようなことを言うけれど、実際に購入している中には僕らのようなアジア系の男性もいる訳で。もちろん、ブランドには女性像があっていいと思うけれど、「ピーター ドゥ」は“着たくなる、着心地のいい服を作る”ということが前提だ。

WWD:人気アイテムは?

ピーター:ごく普通のフィット感のいいパンツ(笑)。ブレザーやニットも売れている。あとカードケースも好評ですぐに完売した。
ヴィンセント:ぴったりフィットするパンツを見つけるのは本当に難しい。とてもシンプルなアイテムだけど、誰もあまり本気で考えないから人気なんだと思う。サンプルを借りていったセレブが後で、「これ、すごくいいから買い取りたい」と連絡してきてくれたときは本当に嬉しかった。無料で着用できるのに、わざわざお金を払いたいと思ってくれたということだから。

ピーター:僕らは商品をタダであげたりしないんだ(笑)。誠実じゃない感じというか、フェイクな感じがする。誰かに何かあげたとしても、本当に着てくれるかどうかは分からない。せっかく作ったものなのに、着られることもなく箱に入れっぱなしにしてほしくないんだ。

“「コンテンポラリーにすべき」にノーと言い続けた”

WWD:価格帯は高いが、支持を得られた理由は?

ヴィンセント:「ピーター ドゥ」は高価格帯の服を売っているラグジュアリーブランドだ。だから値段を理解して購入してくれる顧客のことを本当に大切に思っている。日本には「ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)」や「アデライデ」のような、強力な卸先と素晴らしい関係を築けている。ECも大事だし、SNSで「いいね」をもらうことも大事だけれど、それらは一面に過ぎない。今、ラグジュアリーブランドだと表明している新興ブランドは少ない。

「ピーター ドゥ」を立ち上げたときには、「もっと価格帯を下げてコンテンポラリーブランドにするべきだ」「その価格だったら『セリーヌ』で買うだろう」と多くの人に言われたが、僕らはそれに対してノーと言い続けたんだ。ピーターが伝えたいストーリーを表現するにはコンテンポラリーでは無理だった。いろいろ妥協しないといけなくなってしまうからね。

ピーター:それに、僕たちは長く残るものを作りたい。質の高いファブリックを使い、公正な報酬を払い、労働者の権利を守っている工場で生産したい。ニューヨークはコストの高い街で、僕たちは長時間働いているから、人件費も高い。こうしたことを積み上げていくと、価格帯を低く設定することはできない。ジャケットの制作には、縫製する人、手作業をする人、プレスをする人の3人がかりで2~3日かかるし、その後に手縫いが必要だけど多くの人は、そういう舞台裏を知らないからね。

WWD:ブランドのアイコンでもある特殊素材“スペイサー”はどう生まれた?

ピーター:学生の時にインターンシップを通じて、ベースを作っている工場を見つけて、服に使えるように共同開発したんだ。その工場は今でも“スペイサー”の改善を続けていて、シーズンごとにさらに薄くて軽いものを作ってくれている。これも、もともとは服作りにはたくさんの手作業が発生するけれど、それだけの手間暇がかかっていることをどうやったら伝えられるだろうと、論文を書いているときに思ったことから始まっている。シースルー素材にすればそれが伝わり、服づくりは大変だと分かってもらえると思ったんだ(笑)。ブランド運営もこんなに大変なんだと伝えたくてインスタグラムをやっている部分がある(笑)。“スペイサー”にはいろんな意味が込められていて、ブランドの透明性の象徴でもあるんだ。

WWD:インスタグラムもユニークだ。どのように運営している?

ピーター:僕が全てコントロールしている。僕はまだ誰もインスタグラムを知らなかった時代から使ってきていて、インスタグラムが本当に大好きなんだ。インスタグラムを更新するのは、僕にとってはすごく自然なこと。本当にたくさん写真を撮るから。今でも毎日100枚ぐらいアップしようと思ったらできちゃうぐらい。もう日々の暮らしの中に溶け込んでいるんだ。僕が何をしているのかが常にみんなに分かってしまうので、考えようによってはちょっと薄気味悪いけど……まあ、誰も僕がどんな見た目なのか知らないからね。

“素晴らしいコレクションを発表しているデザイナーは、表に出てこない”

WWD:メディアに顔を出さない理由は?

ピーター:僕の顔は、僕についてみんが知らないたった一つのことだから、それは僕だけのものにしておきたい。誰にも気づかれたりせずに、好きなレストランに行って、普通に食事したいし。「ピーター ドゥ」はたくさんの人たちの力で成り立っているから僕の顔という一つのイメージだけが目立つのは違うと思う。僕はデザイナーがセレブみたいになっていることに疑問に思っている。生き残るためにそれが必要なブランドがあることも理解しているけど。マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)やニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)は露出も本当に多いし、ファンもセルフィーを一緒に撮りたいと思っている。でも彼らはもっとプライベートにしていた昔のほうが、いいコレクションを作っていたんじゃないかな(笑)。素晴らしいコレクションを発表しているデザイナーは、あまり表に出てこない、プライベートな人が多いように思う。フィービーやエディ・スリマン(Hedi Slimane)がその好例で、ほとんど写真がない。

WWD:まさにSNS世代のPRができているブランドだ。

ヴィンセント:「ピーター ドゥ」は本当の意味で“ミレニアル・ブランド”だ。全員オンラインで出会っているし、バイヤーは僕らのことをネットで見つけたしね。SNSは、みんなの条件を平等にした。従来、ブランドが大きくなるには「ヴォーグ(VOGUE)」などの大手メディアに取り上げてもらうしかなかったけれど、今は誰もが自分のコンテンツを発信できるし、どのように見られたいか、どういうストーリーを伝えたいかを自分で決められる。ブランドの立ち上げ前、ピーターのインスタグラムの世界観に引かれて共感する人たちがたくさんいた。

WWD:今後の目標は?ファッションショーや店舗のオープンの予定はある?

ピーター: 20年の2月にシューズを発表し、年末までにはバッグも出したいと思っている。21年くらいにはファッションショーを開催して、3〜5年後にはニューヨークに店舗を開けたらいいなと考えている。とはいえ、物事は変化するから、きっちりとした計画に縛られることもないかな。

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変わるロシアのファッション “おそロシア”の先入観を払拭するため首都モスクワを取材

 ロシアほど疑惑に満ちた国がほかにあるだろうか。政治的な疑惑は数知れず、オリンピックが開催されるたびに国家ぐるみの大規模なドーピング疑惑が浮上する。2016年のアメリカ大統領選挙にロシアが干渉したとされるロシア疑惑はいまだ解明されぬままだ。「たやすく笑顔を見せることが低俗である」という文化が根付いているため無愛想な印象を抱かれており、映画などでもロシア人は冷徹に描かれることが多い。筆者も政治的印象と先入観だけで勝手に“おそロシア”観を持っていたが、だからこそ引かれる側面もあり、2020年春夏シーズンのメルセデス・ベンツ・ファッション・ウィーク・ロシア(MERCEDES-BENZ FASHION WEEK RUSSIA)に参加するため初めてロシアを訪れた。

 ロシアは世界最大の国土を有するものの、大半が極寒地域のため、人間が住むのに適しているとされるのは国土面積の23%だ。全体の国土面積は日本の約45倍、人口は約1億4500万人と日本を少し上回る程度である。18年度のGDPランキングによると経済規模は世界12位(日本は3位)。世界的な日本企業といえば三菱自動車、パナソニック(PANASONIC)、ユニクロ(UNIQLO)などの名が浮かぶが、世界的なロシアの企業は?と問われてすぐに答えられるだろうか。実際のところロシアは製造業が発展途上国並みで、国の経済を支えているのは輸出の60%以上を占める石油や石炭、貴金属といった天然資源である。ここ数年で小麦の輸出量は伸びたものの、微々たるもの。天然資源依存型の原始経済から脱却して経済や産業の近代化を進めようとするも、ソビエト連邦崩壊から約30年後の現在も数字的に大きな変化は見られない。

数々の巨大建造物の威圧感に驚き

 ソビエト連邦時代の名残りは経済だけでなく、首都モスクワ市内に多く見受けられた。まず驚いたのは、とにかく建築物が巨大であるということ。高層ビルは東京の方が圧倒的に多いものの、ここでいう巨大とは高さではなく、横幅や扉の大きさ、1フロアの高さなど全てがとにかく大きくて威圧感を覚えるほどだ。これはソビエト連邦時代の建築に見られる特徴で、国家の権威と共産主義の偉大さを表現し、労働者を鼓舞する意図があったためだという。特に、第2次世界大戦時に最高指導者として旧ソビエト連邦を主導したヨシフ・ヴィッサリオノヴィチ・スターリン(Joseph Vissarionovich Stalin)体制の時代に建てられた建築物は“スターリン建築”と呼ばれ、モスクワにある7つの代表的な建物は観光名所でもある。さらに、街中を歩いていると角を曲がるたびに銅像や絵画に出くわす。兵士の絵や肖像画などのほか、銅像に関しては大きいものから名も刻まれていない小さなものまでとにかく街中に溢れており、愛国心を強調する共産主義国家の意図が感じられた。

 巨大な建物と無数の銅像が並ぶモスクワ市内だが、車線と歩道が広く、木々も多いため都会ならではの息苦しさはなかった。しかし、公道が8車線あっても交通量が多く、常に渋滞がひどい。モスクワは首都であるにもかかわらず高速道路は一本もなく、インフラ整備の遅れが顕著である。ロシア企業家産業家同盟(ロシアの経団連に相当する組織)が2013年に発表した報告によれば、ロシアで活動する外国企業はロシアにおけるビジネス障壁として、50%が形式主義的な許認可手続き、42%が汚職、37%がインフラ整備の遅れを挙げている。インフラ未整備は経済成長促進を妨げる要因の一つとして政府も認識しているが、財源がネックとなって予算の優遇措置ができない状況が続いている。

若い世代の台頭で変化の予感

 このような経済問題や不安定な情勢、閉鎖的な貿易環境はロシアを拠点にするデザイナーにとって障壁である。しかしここ10年でロシアのファッション産業は変化をし始めている。その理由はポスト・ソビエトと呼ばれる、ソビエト連邦崩壊前後に生まれた若い世代の活躍にある。彼らを代表するのが「ゴーシャ ラブチンスキー(GOSHA RUBCHINSKIY)」や、世界の主要百貨店やショップにアカウントを持つ「ウォーク オブ シェイム(WLAK OF SHAME)」と「ヴィカ ガジンスカヤ(VIKA GAZINSKAYA)」だ。「ロシアのファッション産業は未開、もしくは開拓が始まった第一段階」と語るのは、11年に「ウォーク オブ シェイム」を立ち上げたアンドレイ・アルティモフ(Andrey Artyomov)だ。「ロシアは政治や経済的な問題でブランドや会社を立ち上げるのが容易ではないうえに、市場が小さいために成長の見込みが薄い。しかしここ10年で、世界がロシアのデザイナーに注目するようになった。さらに最も大きな変化は、ロシア人が自国の若手ブランドに強い興味を示すようになったことだ。僕がブランドを始めた8年前には、想像すらできなかった」。ロシア版「ドーバー・ストリート・マーケット(Dover Street Market)」と称されるコンセプトストア「KM20」の創業者オルガ・カルプット(Olga Karput)も、アルティモフの意見に賛同する。「09年にオープンしてから、ロシアの消費者の変遷を体感してきた。ファッションは上流階級者の娯楽ではなく、自身を表現する一つの手段であることや、アートとの結び付き、コミュニティーに属することの喜びなど、さまざまな面が多くの人に知られるようになった。具体的な変化といえば、性差が曖昧になり、『ラフ・シモンズ(RAF SIMONS』『マーティン ローズ(MARTIN ROSE』『ア コールド ウォール(A COLD WALL)』などのブランドを男女ともに支持していることだ」とカルプットは説明した。ロシアでは13年に同性愛宣言禁止法が可決されており、一般的には性差について寛容ではないとされているが、ファッションの分野においてはジェンダー・ニュートラルの思想が進んでいるようだ。これはメルセデス・ベンツ・ファッション・ウィーク・ロシアに参加してショーを開催したブランドにも見られた傾向である。

若い世代は自国の無二の魅力に気づくべし

 ロシアのファッション産業は開拓が始まったばかりだが、未来は明るいように思う。なぜなら、ロシアには他国にない独特の美意識と感性があるからだ。街中には美術館や劇場がたくさんあり、ロシア構成主義やロシア・アヴァンギャルドなど歴史の中で築かれた独自の美術様式が数多く存在する。バレエやオペラといった舞台芸術も盛んで、立派な国立劇場での鑑賞チケットは約1200円という安価で手に入り、国民にとって芸術鑑賞がいかに身近であるかがことさらに分かった。また、ロシアにおいて最大の宗教とされるロシア正教の教会の建築や内部の色彩は非常に独特である。文学においても、ドイツの国際市場調査機関の調査によると、ロシア国民は世界で2番目に読書時間が多いという。言語的思考が創造性に与える影響は大きいと筆者は考えており、ロシア語やキリル文字といった独自の言語を守り続けているのも強みになり得る。ファッション産業を成長させるには教育が必要だが、モスクワには5年前にイギリスの大学と提携してアート&デザイン英国学校「HSE大学」が設立された。

 独特の美意識や豊かな歴史といったクリエイションに必要な要素はそろっており、あとはロシアの次世代がその魅力に気付くことだけだと思う。そのためには、いったん国外に出て自国を客観視するのもいいだろう。「共産主義時代の影響で閉鎖的な思想や反移民感情がいまだロシアには残っている」とパリ在住10年のロシア出身の友人は話すが、上の世代や古い概念に対抗するパンクな精神を持ったポスト・ソビエトに期待したいものだ。今回初のモスクワ渡航で美術や歴史といったロシアのさまざまな魅力と現地の人々と交流を持ったことで“おそロシア”のイメージは一気に払拭された。現地まで実際に足を運んで体験することの重要さをあらためて感じた次第だ。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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ロンドンにアップサイクルの波 「ザラ」「H&M」のリメイクから「マルベリー」の中古バッグの買取まで

 ニューヨーク・ファッション・ウイークが終了し、ロンドン・ファッション・ウイーク(以下、LFW)が2月14日に始まりました。ヨーロッパでも新型コロナウイルスの影響は出ていて、各社がどう対応するべきか頭を悩ませていている印象です。三越伊勢丹のバイヤーをはじめ、「ヴォーグ・ジャパン」などのチームも出張を中止し、ファッションショーの日本人席に空席が見られました。また初対面の方との握手、久々にあった方とのハグやキスなどのあいさつをする機会も減っていて「警戒されてる!?」と思う場面も多々あります。

 さて、また新型コロナウイルスのことは別記事でもまとめるとして、今日はLFW初日に見えてきたサステナビリティの傾向についてお話します。LFWでは“ポジティブ・ファッション”というスローガンを掲げて、サステナビリティを意識したモノ作りをはじめ、多様性と平等性の尊重、職人技とコミュニティーの保護など、一言で言うと“世の中へ良い影響を与えるファッション”を参加ブランドが発信しています。

 その中でも増えているのが、アップサイクルやリサイクルという概念です。LFWのメイン会場である“180 ザ ストランド(通称ワンエイティー)”では、ポジティブ・ファッション・エキシビションという合同展示会が開催されていて、メッセージ性のあるコンセプトを思ったブランドが集まっています。そこで出合った新しいアプローチの3ブランドと、バッグを主力にする英国発の「マルベリー(MULBERRY)」の画期的な取り組みについて紹介したいと思います。

“ファストファッションからアイデアを盗み返す”

 アムステルダム出身のデュラン・ランティンク(Duran Lantink)は、2019年度のLVMHプライズのセミファイナリストにも選ばれていた若手デザイナーですが、彼のデザインプロセスは一味異なります。自身のブランド「デュラン ランティンク(DURAN LANTINK)」はアップサイクルをコンセプトにしていますが、今回彼が初めてワンエイティー内で展示した商品はなんと、元々「ザラ(ZARA)」や「H&M」「マンゴー(MANGO)」「ベルシュカ(BERSHKA)」などのファストファッションブランドで購入した服なんです。“ストーレン バイ デュラン(STOLEN BY DURAN)”というプロジェクトとしてファストファッションの服を再構築して、新しい一点ものドレスへと作り変えています。この「ザラ」のプリーツドレスできたドレスは、シャーリングを加え、ウエスト部分がセパレートになっています。

 デザイナーのデュランは「大量消費に疑問があるのはもちろんだけれど、ファストファッションはラグジュアリーからデザインを真似して作っているから、あえてファストファッションからアイデアを盗み返したいと思ってね(笑)。それに低賃金で働く縫製工場の労働者たちの仕事をリスペクトして、プラスの価値をつけて昇華できたらいいな」と言います。購入時のタグも洋服に付けていて少しドキッとします。彼の洋服はイギリスのブラウンズ(BRONWS)やリバティー(LIBERTY)などの有力店に並んでいますが、「日本のようなファッションへの理解が深い国でも商品を見せたい」と話していました。

不要な6足のスニーカーが世界で一つだけの靴に変身

 イギリス人若手シューズデザイナーのヘレン・カークム(Helen Kirkum)による「ヘレン カークム」はアップサイクルのスニーカーブランドです。古着のシューズを分解して、コラージュして世界に1足だけの靴を作っています。他と異なるのはブランドのオリジナル商品を販売していないこと。必ず受注やプロジェクトベースで商品を作ることをポリシーにしていて、これまでに「アディダス(ADIDAS)」「リーボック(REEBOK)」「ラコステ(LACOSTE)」や「マーティン ローズ(MARTINE ROSE)」などとコラボレーションの実績があります。

 個人客向けの“メイド トゥ オーダー”も受けており、不要になった6足のシューズを送ることで1足のシューズにリメイクしてもらえます。1000ポンド(約14万3000円)と高額ですが、捨てられない思い入れの強い靴がたくさんある方にオススメです。デザイナーのヘレンは必要以上のものを生み出さないという意識は強く、「絶対に同じ靴は2度と作らないわ。『このデザインと一緒にして』というオーダーも受けない」と話していました。

メンズもデビュー!「ナイキ」の靴をアップサイクルしたブランド

個人的に一番欲しいと思っているのは、「ナイキ(NIKE)」のユーズドシューズをアップサイクルした「アンクタ サルカ(ANCUTA SARCA)」です。若手デザイナーのサポートプログラム「ファッション イースト(FASHION EAST)」の支援ブランドの一つで、20年春夏にデビューしたばかり。前回はポインテッドトーの1種類の形がメインでしたが、今回の20-21年秋冬はブーツの種類も拡充され、メンズのシューズもデビューしていました。

「マルベリー」は客のバッグを引き取って再販

 また「マルベリー」はサステナビリティに注力していて、“メイド トゥ ラスト(Made To Last)(“長く使われるために作られたの意)というイベントをLFW中に開催しました。

 昨日スタートさせた“マルベリー エクスチェンジ”というプロジェクトは、客の所有する「マルベリー」のバッグを鑑定して引き取り、リペアして店舗で再販売するという企画。バッグを持ってきた客には新たなバッグを購入するために使用できるバウチャーを渡して、サーキュラーエコノミー(循環型の経済)を促します。

 鑑定士の人員確保の問題などから、まずはロンドンとニューヨーク限定での実施となりますが、将来的には日本での開催も計画したいとのことでした。

 また「マルベリー」は再生ナイロンの「エコニール(ECONYL)」を使った新モノグラムシリーズ“Mコレクション”を発売しました。模様にブランドの頭文字のMが隠れています。“SEE NOW, BUY NOW”で、もう店頭とオンラインですぐに購入できるそうです。

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ファッション通信簿Vol.47 英「BAFTA」の色鮮やかなレッドカーペットを米「WWD」が辛口ジャッジ!

 米「WWD」の人気企画「ファッション通信簿」では、ストリートからパーティー、レッドカーペットまで、海外セレブたちのファッションを厳しくチェック。A+、A、A-、B+、B、B-、C+、C、C-、D+、D、D-、そしてFAIL(失格)の13段階評価で格付けし、それぞれのファッションポイントを勝手に辛口ジャッジ!

 第47回は、2月2日に英ロンドンで開催された第73回「英国アカデミー賞(British Academy Film Awards以下、BAFTA)」の授賞式のレッドカーペットから、ルーニー・マーラ(Rooney Mara)、スカーレット・ヨハンソン(Scarlett Johansson)、ジョディ・ターナー・スミス(Jodie Turner Smith)、レネー・ゼルウィガー(Renee Zellweger)、アル・パチーノ(Al Pacino)、ゾーイ・クラヴィッツ(Zoe Kravitz)、エイサ・バターフィールド(Asa Butterfield)、フローレンス・ピュー(Florence Pugh)が登場。今回のファッション通信簿では、セレブリティーの美しく気品溢れるドレスが称賛される一方で、「苦しそう」「日没後に現れる魔術師」などの辛口コメントも容赦なく浴びせられた。

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【動画】2020年春夏バックステージから、今できるヘアメイクをピックアップ!

 現在開催中の2020−21年秋冬コレクションで最新作が披露されているが、実際の街にはリアルな20年春夏コレクションが並び始めた。春夏コレクションに合わせるヘアメイクはどうなのか?20年春夏コレクションバックステージから、日本デザイナーが手掛ける「サカイ(SACAI)」「アンリアレイジ(ANREALAGE)」 「マメ(MAME KUROGOUCHI)」をピックアップ。

 「サカイ」は、ブラックなスモーキーアイにリップバームで艶を演出し、アクセサリー感覚でつけたメイクと、クールでボーイッシュなスタイルのヘアを披露。「アンリアレイジ」は、“2次元の服”からイメージした、ナチュラルにデジタルに見えるメイクとおもちゃ箱にずっと入っていた人形からインスピレーションを得たヘアスタイルを作り、「マメ」はコレクションテーマ“エンブレイス”に合わせ、春の始まりのような内側からにじみ出るような艶のあるメイクと、タイトにフィットした部分もある柔らかな印象に仕上げたヘアを提案した。

 そのほか、池田ハリス留美子「M・A・C」シニアアーティストと、KUMIKO HIROSEメイクアップアーティストにマストハブアイテムを紹介してもらった。

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【動画】「常に4段のコスメボックスを持ち歩く」 Mattが語るメンズメイクの可能性

 「WWDビューティ」は1月24日に、セルフコスメにファーカスを当てたイベント「ビューティテイスト・トーキョー(BEAUTY TASTE TOKYO)」を東京・新宿のルミネゼロ(LUMINE 0)で開催した。午後の部のステージでは、アーティストのMattが“男子だってハマる、セルフコスメの可能性”をテーマとしたトークショーに出演した。常に4段のコスメボックスを持ち歩いているというMattが、メンズメイクの可能性や自身の活動について語った。

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フェムテックは “人生が豊かになる夢のある商品” 女性のためのセックストイから膣トレグッズまでそろえるアジュマ代表に聞く

 女性向けのセックストイや生理用品などを扱う専門店「ラブピースクラブ(LOVE PIECE CLUB)」を運営するアジュマは1996年に創業したフェムテック専門会社だ。現在は台湾発の月経カップ「フルムーンガール(FULLMOON GIRL)」や経血吸収型サニタリーショーツ「ムーンパンツ(MOON PANTS)」をはじめ、英国発オーガニックデリケートゾーンコスメ「イエス(YES)」などの海外のフェムテック商品の輸入代理店も務めている。

 創業当初からセックストイは男性が女性に使用する目的ではなく、女性目線のセレクトで選ばれており、創業時から繰り返し使える生理用品の月経カップを取り扱っている。現在は東京・本郷三丁目にショールームを構えているほか、昨秋には大丸梅田店の生理周期に寄り添った商品を扱う売り場「ミチカケ」にフェムテック専門店「ムーンド バイ LPC」を開いた。

 24年以上セクシャルウェルネスのマーケットを見てきたアジュマ創業者の北原みのり代表に、創業時の当初の話から国内外のフェムテックの傾向を話を聞いた。

WWD:どのようにスタートさせたのか?

北原:24年目になりますが、20代のときにこの社会で生きていくことって辛いと思っていたんです。性のことで困ったり、傷ついても情報がなくて話せる場所がない。だから自分でそういう場所を作ろうと思って「ラブピースクラブ」を立ち上げました。ピースは“平和(PEACE)”ではなく“個(PIECE)”。個人を愛しましょうという思いを込めています。

WWD:創業当初からセックストイを販売してきた?

北原:はい。アメリカに旅行へ行ったときに、フェミニストのセックスグッズショップを見て衝撃を受けました。日本の“大人のおもちゃ”は男性が女性に使う“オラオラ”したものばっかりで、自分には関係のないものだと思ってきたけれど、アメリカには女性が楽しめるセックスショップグッズがありました。これが私がやりたいことだと、思ったんです。形から全く異なり、男性器の形をしているのではなく、イルカの形だったり(笑)。素材もとても良くて、体に使うので安全なものを輸入販売したいと思いました。

WWD:取り扱い商品はどのように変わってきた?

北原:最初からセックストイと一緒に生理用品や避妊グッズなども扱ってきました。月経カップも24年前から販売しています。初めは全く売れなくて、自分でも使い方をよく理解していなかったんですが、天然ゴムのラテックス製で土に還るのでエコ素材のもので、ヨーロッパでは80〜90年代から出てきていたんです。また布ナプキンも早めに扱っていました。

WWD:ビジネスは小売りと卸の2軸だ。

北原:もともとオンラインで個人の方に販売してきましたが、女性経営者で興味を持ってくださる方が増え、10年前くらいから少しずつ輸入業を広めて生きました。

“生理ってずっと存在してきたのに、なぜ語られてこなかったんだろう?”

WWD:国内外でも“フェムテック”という言葉が広まりだして、マーケットはどのように変化していると感じるか?

北原:やっと今まで私たちがやってきたことに名前が付いたと感じました。去年の今頃まで“フェムテック”という言葉をパワーポイントで資料を作って説明してきたと思うと、本当にこの1年で空気が変わりました。昨夏に経血吸収型ショーツの「ムーンパンツ」を発売したときの反応は、一昨年に月経カップの「フルムーンガール」を出したときとは全く異なっていました。「こういうのが欲しかった!」というマーケットが少しづつできてきたと思います。反応も大きく、その波がどんどん膨らんでいる印象です。

WWD:特に昨年は生理にまつわる話題がSNSでも広がった印象だ。

北原:生理って人類が始まってからずっとあるものなのに、なんでこんなに語られてことなかったんだろうと思いました。いろんな世代の女性たちと生理について話すと、失敗したことはいないんですよね。皆「こういうものがあればいいな」と感じているけど、我慢してきたと感じます。現代女性は昔に比べて生理の回数が増えているので、生理用品にも選択肢が広がっていることはとてもポジティブなことだとおもいます。

WWD:“フェムテック”をどのように定義付ける?

北原:“フィメール+テクノロジー”で女性のテクノロジーという意味なので女性のセクシュアリティー、セクシャルヘルス、リプロ(不妊)や生殖に関わることももっと豊かで安心に安全に楽しめるようなものだと思っています。

WWD:“フェムテック”は5年後に世界で5兆円規模になるといわれていますが、その大きな可能性を感じられる?

北原:私が1990年代に出合いましたが、広まるには20年以上の時間がかかっているんですが、“フェムテック”の商品はとても便利で一度使うと戻れないです。地球にいる半分が女性で、彼女たちが性や生理のことで悩んでいるとしたらこのマーケットはどんどん広がって生きます。

WWD:繰り返し使える月経カップや経血吸収型パンツなど環境問題の部分でも時代が注目するタイミングだ。

北原:本当にそのタイミングが来たんだと思います。膣トレ関連の商品も大企業が投資をして作っているのとは異なり、クラウドファンディングで始まっているものも多い。輸入販売しているオーストラリアの生理用品では、売り上げの半分は女性の教育に寄付されるようなコンセプトになっていて、フェムテックの根底には社会を良くしたいというポジティブでエシカルな考えがあります。購入すると“人生が豊かになる”と信じられるような夢のある商品がフェムテックだと思います。

WWD:膣トレ(骨盤底筋のトレーニング)のアイテムも扱っている。

北原:出産した後や40〜50代の方で、膣の筋肉がゆるくなってきて尿漏れなどで困ってらっしゃる方たちもいます。今までも膣トレというと、“大人のおもちゃ”の一つで男性のために膣締めようっていう考え方がメインでした。でも、昨今は女性たちが開発して真面目にトレーニングする商品があります。

WWD:売れ筋の商品は?

北原:台湾発の経血吸収型の「ムーンパンツ」です。アイデアは約2年前から聞いていたんですが、ナプキンやタンポンのいらない生理用パンツがあると聞いて、「そんなものある訳ない」と思ったんです。でも、台湾って布の技術が発達していて、こんなに薄い生地なのに防水ができて、抗菌作用もあり、雑菌が繁殖しないためにすごく研究がされているんです。「フルムーンガール」も台湾の別会社なのですが、台湾の生理用品はとても進んでいます。

WWD:商品のパッケージもかわいいが、日本向けのデザインに変えてローカライズしていると聞いた。

北原:はい、「ムーンパンツ」も「フルムーンガール」も台湾版パッケージもかわいいんですけど、全部漢字になって“月経杯”って書かれると少し焼酎っぽい名前になってしまうので(笑)。10〜20代の方にも手に取ってもらえるようにかわいいパッケージを目指しました。

“性や生理について話せる
場所があることの大切さ”

WWD:大阪の大丸梅田店の新ゾーン「ミチカケ(MICHIKAKE)」にフェムテック専門店「ムーンド バイ LPC」を開いた理由は?

北原:私たちの販売するデリケートゾーンケア商品が百貨店で扱われるようになったのは約3年前から。商品があることで、コスメを買いに来たお客さまが販売員と生理やセックスの話を百貨店でできるようになったと実感しました。そういう場所があることは大切だと思って、大丸梅田店さんの話を聞いたときに絶対に出店したいと思いました。

WWD:「ムーンド バイ LPC」をオープンして見えて来た課題、発見はあるか?

北原: まだ“フェムテック”って言われても、性教育が全くない中でこの分野がなぜ必要なのか説明すること。このマーケットを作るにはお客さまと会話をしながら私たちも学ばなければならないと思います。また、一人車椅子のスタッフがいるのですが、彼女の話は本当に勉強になります。障害を持っている方の生理用品の開発はすごく重要だと感じました。

WWD:商品を手に取るときに相談できることは大事?

北原:例えば、性交痛の悩みは誰に話たらいいのか分からない。病院にいっても相手にされず、「ローションを使えばいい」と言われたり。でも痛みって我慢できないもの。クラウドファンディングで出て来た「オーナット」は男性側にクッションを付ける新しいタイプの性交痛緩和アイテム。この商品がいかに良かったか電話で30分以上語られたお客さまもいました。

WWD:海外ではどの国が進んでいるのか?

北原:今はアメリカやイギリスの女性たちがクラウドファンディングで立ち上げている商品が盛り上がっていて、ドイツはテクノロジーにも強く先進的です。アジアでは台湾。どの会社もまだ会社の規模は小さくて、オフィスも15〜20人くらいで小さいです。日本からもそういった企業家が増えるといいなとおもいます。

WWD:フェムテックは会社としても商品としても女性の働き方を変えていきそうだ。

北原:そうなんです。やっぱり実際にその商品を使用する女性が決定権の場に立つことで、商品の質は変わってきてると思います。こんな商品があるんだって気付きとか、豊かな感じになるなってことをこの数年で実感しています。フェムテックの分野で日本が遅れをとっているのは、女性が自由に発言できて、性に関してきちんと知識を持つ機会がないからだと思います。そういったところは解放できるように、組織の中も女性がもっと生き生き働けるような場所とか、性のことを真面目に商品化できるようなそういった機会が与えられるような職場が増えて、女性たちが希望を持って自分たちの場所を作っていけるといいなって思います。

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「#FR2」石川涼 × 異色の靴下ブランド 2人の異端児からネット時代のアパレル処世術を探る

 ネット発のソックスブランド「ソックスソックス(S〇XSOCKS)」をご存知だろうか? 2018年設立の同ブランドは、商品名や商品説明欄にはギャルのような言葉遣いや絵文字を多用するなど、他ブランドにはない異色の世界観を構築している。そんな同ブランドは、かねてから「ヴァンキッシュ(VANQUISH)」や「#FR2」を運営するせーのの石川涼社長に憧れを抱いており、以前「WWDJAPAN.com」で掲載したインタビュー記事で「#FR2」とのコラボレーションを熱望したところ、なんと本当にコラボが実現。2月24日まで東京・原宿の「#FR2ギャラリー」で「ソックスソックス」とのコラボポップアップを開催中だ。そこで今回、石川社長と「ソックスソックス」を手掛ける明石泰士氏にインタビュー。“業界の異端児”とも言える2人の考えから、ネット時代のアパレル処世術を探った。

WWD:コラボレーションが実現した経緯は?

石川涼せーの社長(以下、石川):ツイッターで僕のフォロワーから「この記事で石川さんについて書かれてますよ」ってDMが来たんだよね。それでコラボを決めた。

WWD:「ソックスソックス」とならコラボしてもいいと思った理由は?

石川:躊躇してない感じが良かった。個人的には今アパレル業界のほとんどの人たちがオーバーコンプライアンスになり、ダメな方向に向かっているなと感じていて、僕らはその状況を突っぱねるような形で進んできた。「ソックスソックス」の明石くんたちのような若い世代でも、突っぱねている人たちがいるんだと思って。もういないかと思っていたから。

明石泰士(以下、明石):ありがとうございます。確かに、僕が「ソックスソックス」を始めたのは、周囲の「かっこいい服を着て、かっこつけているのが良い」という環境をぶっ壊そうと思ったからでした。最近はそういった“逆張り精神”的なブランドが少なくなってきたようにも感じるんですが、石川さんはどのように思われているんですか?

石川:なんでみんな同じようなやり方をするんだろう、とは感じるね。どのニュースを見ていても、大体みんな同じことを言っている。今だとサステナブルとか、エシカルとかが主流だけど、僕から見たら「はぁ?」と思ってしまう。時代的にそういう風潮だとしても、同じ方向に進んでしまったら大企業が勝つに決まってる。自分たちの個性を探して磨きべきだし、周りと違うからみんなが欲しくなって結果的に売れるはず。

WWD:アパレルでは現在、暖冬や増税などの影響で不調な企業が多いが、2人の現状はどうか?

石川:暖冬なんか全然関係ない。ハッキリ言って、うちは前年からの伸びはヤバいし、「#FR2」では一日で7000万円以上売ったコラボもある。その前のコラボも4000万円分の在庫が100%プロパーで消化している。結局、お客さんが欲しがっているものを提供できているかが一番大事なんだよね。「暖冬とかで売れない」と言っている企業は、単にお客さんが欲しいと思うものが無いってだけ。

明石:僕らは石川さんとは違って数字とかを語れる規模にはないですのですが、そろそろ拡大していかないとなと考えています。ただ、自分たちの個性とビジネスのバランスのとり方が難しいとも感じています。石川さんはどうやってバランスを取っていますか?

石川:難しいよね。ただ、とにかくファンを増やし続けることが一番大切。あとは現時点でセールをしなければ売れないようなブランドは今後、なくなっていくと思う。そう考えると、常に買えない状況を作ることも必要になってくる。でも、単に商品数を絞ればいいという話ではなく、120人のファンがいたら100枚のアイテムを売る。次はファンを220人に増やして200枚を売ってと、徐々にパイを増やしていく。どの道一段飛ばしはできないから、今までやったことのない店に挑戦するとか、アイテムが売れて着たらどうすべきかとか、段階的に挑戦する方がいいと思う。

全ては環境 今は「ネットじゃない」

WWD:ファンを増やし続けるために、石川社長が意識していることは?

石川:今がどういう環境か、そのもとで消費者は何を欲しがっているのか、どういうモノの買い方をしているのかを常に分析することかな。例えばインスタが盛り上がってきた時には、インスタの中の人たちが何を求めているのかをずっと探してきた。離れた人ともコミュニケーションが日常的に取れる時代に、そのコミュニケーションの中心となるにはどうしたらいいかを考えた。今、僕らはそうなってきているし、今後は世界に向けてもっと拡大させていきたいと思っている。

明石:コミュニケーションは僕も重視しています。ポップアップ開催中の接客の際もそうだし、商品のデザインでもお客さんからの“突っ込み”を想定していたり。インスタも盛り上がって大分経っていますが、今の環境って石川さんはどう思われてるんですか?

石川:言っていい(笑)?はっきり言って、今はネットじゃない。みんながネットで何でも買える時代で、全ての情報も日常的にアクセスできるようになってしまったからこそ、本当に欲しいモノはネット上にはない。つまり、ネットで買えないモノが重要になってくる。今、「#FR2」は各国の観光地のど真ん中に店舗を出して、そこでしか買えないモノをお土産屋のパッケージで売っているんだけど、全店舗で当たっている。僕らがやっているビジネスは、観光地というお客さんがいる場所で、ある程度の認知があるモノを「そこでしか買えません」と言って売り切っている。あとは転売なりなんなりで、コンシューマーが勝手にネット上のインフラを使って売ってくれる。僕としては、このビジネスで世界に行けると思う。決して転売とかを推奨しているわけではなく、今の環境は誰にも止められない。だったら自分たちはどうしていくか、と考えただけ。

WWD:“土産屋”のさらに先を、石川社長はどう考えている?

石川:教えられないなぁ(笑)。ただ、今は消費行動の目的に服が上がらなくなってきている。今僕らがやっているのは、例えば京都に行って「何か京都っぽいモノを買って帰ろう」と思った時に、その中に「#FR2」が上がってくるかどうか、というところなんだよね。単に服というよりは、記念品に近いし、ステータスになるモノでもある。現時点では、そこしかセールと無縁な領域は無いと思う。

明石:でも、競合も“土産屋”ビジネスに参入してきた際には、また別のことをしなければならなくなりますよね?

石川:そうだね。ただ、できないと思う。今から参入したところで場所が取れない。僕らが場所を取れたのは参入が早かった上、各地の地元企業と組ませてもらっているから。今年は宮古島とかハワイとかに出店する予定だね。

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「マイケル・コース」にキャメロン・ダラスやレッドベルベット、ドラマチックにNYコレを締めくくった「マーク ジェイコブス」 NYコレつれづれ日記 VOL. 5

 日々時差ぼけと寒さと戦うNYコレクション取材班ですが、気づけばあっという間に2020-21年秋冬ニューヨーク・ファッション・ウイークの最終日を迎えました。今季は「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」「トム フォード(TOM FORD)」「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」ら常連ブランドが不在だったに加え、「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」「ティビ(TIBI)」などがショー形式で発表しなかったせいか、ファッションウイークがかなり短いように感じています。そんな最終日はNYコレを代表する「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」から始まり、最後は「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」が華麗なるフィナーレを届けました。

「マイケル・コース」は眉毛を強調したヘルシーなメイクアップ

 最終日の朝は「マイケル・コース」コレクションのバックステージ取材から始まります。会場に着くとさすが「マイケル・コース」、豪華なモデルばかりです。中でもフレジャ・ベハ・エリクセン(Freja Beha Erichsen)はかなり余裕のある佇まいでベテランのオーラを醸し出していました。肝心のメイクですが、マイケルはナチュラルなメイクアップを好み、あるシーズンはすっぴんでモデルがランウエイを歩かせたことさえありましたが、今季も引き続き健康的なルックが印象的でした。ファンデーションは最小限にとどめ、アイライナーを目の周りにぼかすように入れて目元の陰影を演出し、チークにクリームカラーをなじませて血色感を出していました。でも実はコレ、リハーサルの前までは違うメイクだったんです。今回は会場が暗くて照明が真上から強く当たることで顔に影が出やすいことから、強めに入れていたシェーディングを血色感を演出するピンクのチークに変えたそう。こういう直前のハプニングもあるのがバックステージの醍醐味の一つ(!?)ですね。

レッドベルベットのジョイや
キャメロン・ダラス、
西内まりやがフロントロー

 バックステージ取材を終えて、そのまま「マイケル・コース」のショーを鑑賞。今季は“エクエストリアン(馬術)”や“ヘリテージ”からインスピレーションを受け、レザーのベルトやハーネスをアクセントにしたカシミヤのケープや千鳥柄のジャケット、ライディングブーツなどが登場。どれもクラシックでトラディッショナル、そして上品なムードが漂うアイテムでした。前シーズンのアメリカントラッドをテーマにしたコレクションに続き、マイケルはファストファッションの“悪”に気づき始めた若者に対し、どの時代でも着られるようなタイムレスなピースを打ち出しています。今季はそこに“シック”“コージー(着心地が良い)”で“イージー(着やすい)”がキーワードとして加わり、タイトなドレスやハイヒールは一切登場せず、着やすさ・動きやすさも重視したそうです。ランウエイを歩くモデルも豪華でしたが、フロントローもももちろんそうです。若い子に大人気のキャメロン・ダラス(Cameron Dallas)、K-POPグループのレッドベルベット(RED VELVET)のジョイ(Joy)、日本からは西内まりやが登場しました。

レッド・ベルベットのジョイ

キャメロン・ダラス

「マイケル・コース コレクション」ランウエイ

「マーク ジェイコブス」の
バックステージは100人以上の
モデルの支度でバタバタ

 続いて、「マーク ジェイコブス」のヘアメイクの取材へ向かいます。今回はモデルが90人以上、ダンサーが30人いるということで、全員分のヘアメイクをセットするのにバタバタしている様子でした。普通はショーが始まる3〜4時間前にモデルやスタッフが集合するのが普通ですが、「マーク ジェイコブス」は凝った演出を好むこともあり、8-12時間前が当たり前、今回も18:00と19:00(「マーク」はショーを2回、それぞれ別のお客さんに披露します)のショーのために、バックステージの取材は12:30に入りました。前回は61人全く異なるヘアメイクがとても印象的で「WWDビューティ」の表紙にもしましたが、今回は同じアイテムを使いながら人によって使い方を変えているそう。基本的には黒いアイライナーと赤のリップスティックを全員に用い、アイライナーをぼかす人もいればキャットアイにする人もいたり、リップも輪郭まできっちり塗るフルリップやティントのように中央だけに塗る人もいたそう。ダイバーシティー(多様性)が重視される今の時代において、みんな同じメイク、というのは通じなくなってきていますね。

「マーク ジェイコブス」のヘアメイク

「カルバン・クライン」がミレニアルズ向けに“映える”イベント開催

 「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」が2月13~15日に、ソーホーでポップアップイベントを開催するというのでお邪魔してきました。こちら、“CK ワン(CK ONE)”のアンダーウエアとジーンズ、香水の“CK エブリワン(CK EVERYONE)”の合同イベントなんですが、 “CK ワン”でこのようにカテゴリーを超えたキャンペーンを仕掛けるのは初めてだそう。1990年代にケイト・モス(Kate Moss)を起用し一世を風靡したCKのロゴが大人には懐かしいですが、ミレニアル世代にとっては新鮮!会場にはインスタ映えスポットを多数作り込んでいて、香水瓶やアンダーウエアに好きな文字や文章をプリントしてパーソナライズしてくれるサービスも支持されそうです。香水はパッケージに再生紙を利用したり、オイル使用を極力抑えるなど、今の時代の感覚に合わせた商品になっています。2月28日~3月31日には、渋谷スクランブルスクエアでも同様のイベントを開催するそう。

「トム ブラウン」がサムスンの
折りたためるスマホをデザイン

 「マーク ジェイコブス」のヘアメイク取材を終えて、今度は「トム ブラウン(THOM BROWNE)」とサムスン(SAMSUNG)のコラボイベントのために「トリー バーチ」がショーを行ったオークション会場、サザビーズ(SOTHEBY'S)へ。2月11日に発表したばかりの新作スマホ“ギャラクシー Z フリップ”は縦に折り曲げることができる画期的なデザインが特徴。それをトム・ブラウンがデザインしたということで、アイコニックなトリコロールのモチーフを外側に施したほか、画面の中のアイコンも「トム ブラウン」仕様になっています。スマホ以外にもイアフォンやスマートウオッチも登場し、3月発売予定とのことです。

ドラマチックなショーでNYFWを締めくくった「マーク」のマジック

 さて、ニューヨーク・ファッション・ウイーク最後のショー、「マーク ジェイコブス」の時間となりました。マークは以前大幅にショーを遅らせてエディターを怒らせたというエピソードがあり、以来きっちりオンタイムにショーを始めるため、30分前に会場に着くとすでに大勢のゲストが来場していました。日本からはけみおや松岡モナ、長谷川ミラ、けーしゃんらが呼ばれておりました。広大な会場の中に入ると、カフェのようにテーブルがいくつも並んでおり、テーブルを囲む椅子に座るスタイルです。19:00になった途端に会場が真っ暗になり、そこから爆音で音楽が流れ始めます。すると奥の方からモデルと一緒にダンサーが次々と異なる方向に歩き出し、踊り始めました。エモーショナルで時には激しい踊りで知られるコンテンポラリーダンスの振り付け師、キャロル・アーミタージュ(Karole Armitage)による演出です。右往左往に踊るダンサーの間をモデルが数人ずつに分かれて歩いてくるのですが、最初はどこに注目して見ればいいのか分からないほどインパクトのある演出です。洋服は過去、現在、未来の女性がテーマで、さまざまな年代のファッションをイメージしたルックが登場。柔らかなパステルカラーに染め上げた1960年代のAラインドレスやコート、70年代をほうふつとさせるパンツルック、さらに90年代を連想させるボディコンのバスチエとパンツは歌手のマイリー・サイラス(Miley Cyrus)が着用して登場しました。感情的な踊りと体の芯まで響き渡るような音楽が相まり、息を呑むようなドラマチックなショー。まるでランウエイショーを見ていることを忘れさせるのは、マークの“マジック”なのかもしれません。そんなドラマチックな演出で、マークはニューヨーク・ファッション・ウイークを締めくくったのでした。

けみお

「マーク ジェイコブス」のランウエイ

「マーク ジェイコブス」のランウエイ

「マーク ジェイコブス」のランウエイ

「マーク ジェイコブス」のランウエイ

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人気美容師も注目 美しいカラーヘアをかなえる新生「プロマスターカラーケア」誕生

 日本のヘアカラーを長きにわたりけん引するホーユープロフェッショナルのヘアカラー剤「プロマスター(PROMASTER)」。昨秋のヘアカラー剤リニューアルに続き、今年2月、ヘアケアブランド「プロマスターカラーケア(PROMASTER COLOR CARE)」をフルリニューアルする。集中ケアから、デイリー使いのカラー素材ケアへ。ヘアカラーを続ける女性の髪に、素材づくりの視点からカラーダメージを高補修するラインアップだ。

髪質や仕上がりに合わせて
4ラインを用意

 生涯ヘアカラーを続ける女性が増えている背景を受け、「プロマスターカラーケア」は色持ちのためのケアから、髪そのものの素材を整えるために補修するヘアケアへとフルリニューアルした。新テクノロジーにより、ヘアカラーを繰り返した髪を内側から表面まで補修し、均一な素材感へと導く。これによってヘアカラーの色持ちや髪の手触りはもちろん、色ムラや過染まりの抑制にもつながり、キレイなヘアカラーをもっと楽しめるようになる。シャンプー、トリートメントが2000円以下という使い続けやすい価格で、これまでサロンでのヘアケアメニューやサロン専売のホームケアを体験してこなかった人にもぜひおすすめしたい。今だけではなく未来の美しいヘアカラーへ導くヘアケアブランドの誕生だ。

人気ヘアスタイリストが語る
「プロマスターカラーケア」の魅力

ヘアサロンだけのスペシャルケア
「サロントリートメント」も
ラインアップ

 髪のダメージやカラーの色持ちが気になる人に向けて「プロマスターカラーケア」は髪のプロである美容師の手で施されるサロントリートメントも用意。カラーによるダメージを受けた髪を集中的に補修する濃密なトリートメント3種を丁寧に重ねて浸透させることで、髪を内側から美しく均一な素材感に導く。行きつけのヘアサロンで「プロマスターカラーケア」を見かけたらぜひ担当美容師にお問い合わせを。


PHOTO : KAZUMA TAKIGAWA
PHOTO(PRODUCT) : HIROKI WATANABE
TEXT : MAKIKO FUKUDA

問い合わせ先
ホーユーお客さま相談室
0120-416-229

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女性の悩みに寄り添うメディアコマース「ランドリーボックス」 代表が語るフェムテックの可能性

 昨年8月に開設された「ランドリーボックス」は、女性の健康問題をテクノロジーで解決するフェムテックに特化したメディアコマースのスタートアップだ。“あらゆる私に選択肢を”をキーワードにした女性の悩みに寄り添う記事コンテンツの提供と、関連商品の販売を行っている。ランドリーボックス代表の西本美沙は前職でドワンゴの広報を務めていた際に、同社のブログサービスを使ってセックストイに関する情報を綴った個人ブログをスタート。そのブログのきっかけで、フェムテックに出合ったという。彼女がフェムテックに注目した理由から「ランドリーボックス」の今後の展望などを語ってもらった。

WWD:「ランドリーボックス」開設の経緯を教えてください

西本:前職でPRを担当した際、いくつかのブログ立ち上げの広報に携わったことで、情報を発信することに興味をもちました。そこで個人ブログをやり始めて、ファッションやフードといった既存コンテンツに被らない分野で記事を書いていました。中でも特に読者の反応がよかったのがセックストイの紹介記事。いやらしい目線ではなく性の悩みを抱えた読者からたくさん質問がくるようになり、性の情報のニーズは大きいことに気づきました。そこで、メディアとして発信しようと思い立ち、5年以上前に「ランドリーボックス」の前身である「ランドリーガール」を立ち上げました。

WWD:「ランドリーガール」はどんなコンテンツを発信していましたか?

西本:悩み相談のようなコンテンツを発信し続けました。そんな中、「セックストイなどに興味はあるけど、きちんと説明を受けないと購入に踏み切れない」という意見を多くもらい、ユーザーの悩み相談と関連商品の販売を兼ねたリアルイベントを開催したところ、参加者の8割がアイテムを買ってくれたんです。そのときに「記事コンテンツとシームレスにつながったECは需要がありそうだ」と思い、EC機能も備えた新たなサイト「ランドリーボックス」として再スタートした流れです。

WWD:「ランドリーボックス」で扱うアイテムの選定方法は?

西本:本当におすすめできるモノしか販売したくないので、自分たちが使ったことのある商材しか基本的には扱いません。それに加えて、ドラッグストアや量販店などにあまり置かれていないものを意識的に選んでいます。

WWD:記事コンテンツの制作で大切にしていることは?

西本:会社として“あらゆる私に選択肢を”というビジョンを掲げています。環境や教育によって価値観はバラバラで、個人によって正解も異なると考えているので、メディアとしても「これが正しい!」と啓発するのではなく、読者一人一人に寄り添うようなコンテンツを作るよう心掛けていますね。現在ライターは15人くらいいて、プロの書き手から一般の主婦まで肩書きも全然違います。このおかげで、いろんな視点から書いたコラムが発信できています。

WWD:そもそも性や生理関連の商品に興味をもったきっかけは?

西本:セックストイを使い始めたのは、大学生のとき当時付き合っていた人とのマンネリ解消が目的でした。一緒にドン・キホーテに行って買いました。その人と別れてからもウェブサイトなどで定期的に商品をチェックしていたら、海外から可愛いセックストイを個人輸入したり、国内の新商品を試したりするようになりまいた。生理用品については、6年ほど前に月経カップを初めて使ったとき、その便利さに感動してその他のアイテムを調べるようになりましたね。もともと経血量がすごく多くて、ナプキンの取り替えなどにずっと悩んでいたんですが、月経カップを使うようになって本当に楽になったんです。そのころから、いろんな人に生理用品のメリットを知ってほしいと思っていました。

WWD:生理用品といえばナプキンかタンポンの二択というイメージだが、それ以外の生理用品にはどんなメリットがある?

西本:たくさんありますが、例えば月経カップのメリットの一つに経血量が視覚的に確認できることがあります。私は、経血量がいつもと異なることから病院に行ってみたら子宮内の異常があることを発見しました。経血量の変化は体調にも影響されますので絶対的な指標ではないですが、自分の体を知る一つの尺度にはなりますよ。そのほかのアイテムにもたくさんのメリットがあって、女性の生活を豊かにします。

WWD:メディア立ち上げから半年ほどだが、どれくらい成長している?

西本: PVやユーザー数は伸びています。記事数が増えているのでこれらの数値が上がるのは当たり前ですが、ミチカケ(大丸梅田店のフェムテック専用ゾーン)のオープンなどSNSでの話題も増え、メディア自体への関心も高まっていると思います。

WWD:今後、戦略としてやっていくことは?

西本:私たちはプロダクトを作っているメーカーではありません。メディアコマースという形を取っているのは、ユーザーさんとメーカーさんの商品をつなげたいからです。女性の悩みに寄り添った商品はどんどん増えて行くと思いますが、選択肢が増えただけユーザーはアイテム選びに迷ってしまう。そこで、一人一人のライフスタイルや体の悩みに合わせてマッチングできるようなプラットフォームを目指します。まずはコンテンンツとして商品の魅力を適切に発信しつつ、シームレスに購入できるユーザー体験の場を提供していきます。

WWD:リアルイベントなどは企画している?

西本:はい。実はすでにいくつかのイベントを開催してきました。昨年は私立高校と組んで女子高生向けのイベントを開催したほか、産婦人科の先生を招いて体のことを説明してもらい、その場で気になった商品を購入できるイベントも行いました。子どもから親世代まで正しい知識を得る機会を継続的に提供していき、ゆくゆくはコミュニティーづくりに発展させられたらと思います。

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「レモンイエローの囚人服」と対話で更生する受刑者たちの物語 映画「プリズン・サークル」

 突然だが、「囚人服」と聞くと、どういうものを思い浮かべるだろうか? 映画「刑務所の中」(2002年)で主演の山崎努が着ていたコンクリート塀と同化するようなグレー、または「怪盗グルーのミニオン大脱走」(2017年)でミニオンたちが着ていたブラック×ホワイトのボーダー、あるいは「ライフ・イズ・ビューティフル」(1997年)でアウシュビッツに収容されたユダヤ人たちが着ていたグレー×くすんだブルーのストライプかもしれない。

 いずれにしてもそれ自体は暗く鬱々とした印象を与え、アイデンティティーを抑圧し、囚人の象徴として着る者に恥辱感を植え付けるだろう。しかし、先日公開された「プリズン・サークル」で受刑者が着ているのは、レモンイエローやライムグリーンの服。これは「懲罰」というより「更生」のために用意された服なのだ。

 「プリズン・サークル」は、官民協働型の刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」(以下、島根あさひ)で行われている更生プログラムの受講生に2年間密着し、彼らが新たな価値観や生き方、他者と関わる別のすべを身につけていく姿を描き出すドキュメンタリー映画だ。

 2008年に開所した島根あさひは、受刑者同士の対話をベースに犯罪の原因を探り更生を促す「TC」(Therapeutic Community=回復共同体)なるプログラムを日本で唯一導入しており、ICタグと CCTV カメラが受刑者を監視する代わりに独歩が許され、語り合いが推奨されている。

 これまで「ライファーズ 終身刑を超えて」(2004年)「トークバック 沈黙を破る女たち」(2014年)と、アメリカの刑務所内部や受刑者、元受刑者たちを取材してきた坂上香監督も、「あんなに明るい雰囲気の刑務所は初めて見ました」と言う。「服装にしても、民間が入ることによって従来の暗いイメージを払拭したいという気持ちがあったそうです」。

 「彼らの改善・更正が少しでも進むように、明るめの色にしました」と語るのは、島根あさひの立ち上げに携わった元職員。確かに黄色は有彩色の中で最も明るい色で、太陽や光、希望といったイメージを喚起する。「われわれ民間事業者が見本を何種類か作り、最終的に法務省が決めました。服の製作で一番苦労したことは、ICタグをいかに外れないようにするか。受刑者が簡単に取り外せない仕組みになっています」。

 一般的な囚人服について補足すると、かつては冒頭で書いたような見た目の粗悪な作りのものが使われていたが、1957年に採用された国連のガイドライン「国連被拘禁者処遇最低基準規則」で「決して被収容者の品位を傷つけ、または恥辱感を与えるものであってはならない」とされたことで改善される傾向にあり、オランダ政府は1995年に「望ましい監獄実務に関するハンドブック」で「品位を保った衣類は被収容者の健康のみならず気力にも影響を与える」と記している。

 ちなみに近年アメリカでは「バットマン ダークナイト ライジング」(2008年)でアン・ハサウェイ(Anne Hathaway)が着ていたようなオレンジのツナギが多用されていた。それは鮮やかさによって脱走をより困難にするという意味もあった。しかし、刑務所を舞台にしたコメディードラマ「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」(2013〜2019年)の流行によりそれが過剰にもてはやされてしまったため、ブラック×ホワイトのボーダーに戻す刑務所が出てきたという。

 暖色の照明が灯る木調の所内でレモンイエローの普段着を、緑の葉が繁る庭でライムグリーンの作業着を着て、辱めにあうでもなく、過剰に疑われるでもなく歩き話すことができる島根あさひでは、更生に比較的前向きになることができそうだ。

 さて、囚人服の話は興味深い(縞模様についてはここでは書ききれないほど)のでつい長くなってしまったが、「プリズン・サークル」および島根あさひの核心は、更生プログラム「TC」にある。

 英国の精神病院で始まり、1960 年代以降、米国や欧州各地に広まったTCは、問題を抱える当事者を主体とし、コミュニティーのなかで相互に影響を与え合い、新たな価値観や生き方を身につけることで人間的成長を促すアプローチだ。島根あさひでは40名ほどの受講者が刑務作業や食事を共にしながら、半年〜2年の間に週12時間程度のプログラムを受ける。心理や福祉などの専門性を持つ民間職員のサポートもあるが、メインは車座(サークル)になっての受刑者同士の対話だ。

 作中では、窃盗や詐欺、強盗傷人、傷害致死などで服役する4人の若者たちが、対話の中で自分の犯した罪やその背景に潜んでいた幼少期の記憶などに向き合い、抑え込んできた感情やそれらを表現する言葉を獲得し、心を改めていく。

 ある者は、別の場では刑務官から番号で呼ばれ罵倒され、日々自分を守ることしか考えられなかったが、TCに参加し、名前で呼ばれ、尊重され、人間らしいコミュニケーションがとれる環境になってようやく、ため込んできた感情を吐き出し、自分の罪と向き合い、被害者のことを考えられるようになってきたという。

 TC出身者の再入率(出所した受刑者のうち一定期間内に再入所する者の割合)は1割弱で、島根あさひの非TC出身者が2割弱であるのに対し半分以下。さらに全国では約4割とされているのでその4分の1ほどということになる。なお、全国約4万人の受刑者のうち、島根あさひで収容できるのは犯罪傾向の進んでいない男性約2000人で、そのうち一度にTCを受講できるのは希望者の中で条件を満たした約40人程度のみ。

 厳罰化が叫ばれる昨今だが、私たちの社会が暴力や貧困から脱するためには本当の意味での更生、そのための対話がもっと必要なのではないだろうか。彼らの変化を見ると、彼らが自分とかけ離れた存在ではないこと、自分のかけていた眼鏡の色こそがくすんでいたことに気づかされる。

■映画「プリズン・サークル」
シアター・イメージフォーラム(東京・渋谷)にて公開中。名古屋シネマテーク(2月22日〜)、横浜 シネマ・ジャック&ベティ(3月7日〜)、フォーラム八戸(3月13日〜)、ホール・ソレイユ(4月3日〜)、川崎市アートセンター(4月4日〜)など全国順次公開

小林沙友里/ライター・編集者:1980年生まれ。「ギンザ(GINZA)」「アエラ(AERA)」「美術手帖」などで執筆。編集者としては「村上隆のスーパーフラット・コレクション」の共同編集など。アートやファッションなどさまざまな事象を通して時代や社会の理を探求

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小島健輔リポート D2C神話から“個客”実利のC2Mへ

 ファッションビジネスのコンサルタントとして業界をリードする小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。新しいビジネスモデルとして世界で脚光を集める「D2C」。次々に新しいD2Cのスタートアップ企業が登場しているが、その本質は何なのか。

 アパレルの需給ギャップが拡大して売れ残り品の廃棄がサスティナブルでないと批判を浴びる中、D2C(Direct to Consumer)ビジネスが注目されているが、D2Cなら需給ギャップや廃棄が発生しないわけでもない。需給ギャップも廃棄も発生しない本当にサステナブルなビジネスを目指せばC2M(Customer to Manufactory)※1に行き着くことになる。

※1.C2M…ネットやショールームで受注してからデジタル生産や3Dプリンタで素早く生産して“個客”に届けるパーソナル対応の無在庫販売手法。F2C(Factory to Consumer)ともいうが、個客から生産へという方向に意味があるゆえC2Mと捉えたい

直営店流通が壁に当たって

 ブランドの流通体制には卸流通と直販流通があり、それぞれに一長一短がある。D2Cは直販流通の抱える2つの課題を解決すべく、ECのメジャー化とともに注目されるようになった直販手法だ。

 卸流通は不特定多数の問屋や小売店に広く流す「開放型」、特定の代理店や直営販社を通して選別した小売店に流す「排他型」、代理店も直営販社も通さずブランドメーカーが選別した小売店やFC店に直接流す「直卸型」があり、販路を絞り直接に卸すほど価格やブランドイメージをコントロールしやすくなるが在庫負担も高まる。開放型や排他型では問屋や小売店の流通在庫が需給のクッションになるが、直接型ではブランドメーカーに需給調整機能が集中するからだ。

 ライセンシングは排他型卸流通の一種で、各国のマーケットにローカル適応して大きなマーケットを形成できるメリットがある。それはカネボウの「ディオール(DIOR)」が500億円、デサントの「アディダス(ADIDAS)」が400億円、三陽商会の「バーバリー(BURBERRY)」が600億円近く(小売規模1000億円)に達していたことからもうなずける。1990年代にはライセンシングを解消したりライセンシーを買収して直卸や直販に切り替えるのがビッグブランドのトレンドとなったが、マーケットが縮小したり経費倒れになることもあり、メジャーマーケットは直販流通、マイナーあるいは発展途上マーケットは代理店流通かライセンシングと使い分けるブランドが多い。

 さらにダイレクトなのがSPA(製造小売り)型の直販流通で、ブランドメーカー自ら多数の直営店を運営して顧客に直販する。価格もブランドイメージも自在にコントロールできるが在庫リスクも集中し、大規模になると需給調整に追われてラルフ ローレン(RALPH LAUREN)のようにプロパー店よりアウトレット店の方が多くなるケース(プロパー店の2.6倍)が米国では多々見られる。

 店舗の運営コスト負担も重く、近年の米国では直販流通で販管費が肥大したラルフ ローレン(販管費率52.7%/営業利益率8.9%)やPVH(販管費率45.7%/営業利益率9.2%)より、ギルダン・アクティブエア(販管費率12.7%/営業利益率15.0%)やヘインズブランズ(販管費率26.3%/営業利益率12.8%)のような軽コストの卸流通アパレルの方が高収益になるほどで、SPA型の直営店展開は壁に当たっている。

 そんなリスクを回避すべく80年代までは買取型のFC展開(直卸型)がブランド流通の主流だったが、販売の主戦場が駅ビルやSC(ショッピングセンター)など商業施設に移るとともにコストに見合わなくなり、SPA型の直販流通に移行していったのは記憶に新しい。規制が厳しい欧州では商業施設の開発が進まずいまだ路面店が主流で、買取型のFC展開から直営店展開へ移行しきれないままD2Cへ転じつつある。

 SPA型の直販流通が在庫とコストの負担で壁に当たる中、台頭していったのがD2Cといわれるネット(ECやSNS)販売のブランドビジネスで、在庫が多店舗に分散せず、販管費率が低く、とりわけ販売人件費の負担から解放されるメリットは絶大だった。

米国D2Cの疑問と課題

 米国でボノボス(BONOBOS)やエバーレーン(EVERLANE)をはじめ、眼鏡のワービーパーカー(WARBY PARKER)、女性下着のライブリー(LIVELY)、レザーグッズのクヤナ(CUYANA)、スニーカーのオールバーズ(ALLBIRDS)などD2Cのスタートアップが注目されるようになって久しいが、将来性を買われて買収されたり出資されることはあっても、大きく伸びてメジャーに躍り出るケースは限られる。先行したワービーパーカーこそ年商300億円の大台に乗り、ウォルマート(WALMART)が3億1000万ドルで買収したボノボスも年商1億ドルを超えたと見られるが、他社は業績を開示しないまま資本調達を競うばかりで、必ずしも先行きが見えない。

 1月10日に日本に上陸したオールバーズは18年に8000万ドルを売り上げたという程度しかアナウンスしないまま延べ7500万ドルを調達し、19年8月にワコールホールディングスが8500万ドル(うち5500万ドルは業績オプション)で買収したインティメイツオンライン(ライブリー)にしても、18年の売り上げは1149万ドルに過ぎず、358万ドルの営業損失を計上していた。コストの透明性をうたうエバーレーンにしても業績は公表しておらず、13年の1200万ドルから17年には4000万ドルに伸びたという売り上げもそれ以降は明らかにしておらず、1億ドルという数字が一人歩きして延べ1億2000万ドルを調達している。

 米国のD2Cにはもう一つ問題がある。それは小売店舗という中間流通費用を外したコストダウンを必ずしも顧客に還元していないことだ。D2Cを信奉する人たちからは「SNSで神話を作れば高い価格で売れる」という発言がしばしば聞かれるし、業績を開示しないまま高額な出資を募るのもいかがわしい。実際、この手のベンチャーには営業損失を資金調達で埋めながらイグジット(株式の売却)の機会を狙う会社も少なからず、米国のD2Cは株式公開前の投資ギャンブルみたいな資金マーケットと一獲千金を狙う起業家が結託したトラップも紛れ込んでいると疑いたくなる。

 それはともかく、米国のD2Cは小売店も直販店も介さずECとSNSで売り上げを稼ぐから、店舗運営コスト、とりわけレントと人件費の抑制効果は大きく、年商が1億ドルを超えれば加速度的に経費率が下がり、2億ドルまでくれば店舗で直販する半分までコストが下がる。実際、ルルレモン(LULULEMON)ではEC売り上げが1億ドルに達した12年1月期でEC部門の営業利益率が店舗部門を逆転し、4億ドルに迫った16年1月期では店舗部門の15.6%に対してEC部門は34.2%と倍以上の収益力を見せつけている。 

 逆にいえば年商1億ドルに到達するまではSNSでの広告費やシステム投資が先行して収益が苦しいわけで、営業損失を資金調達で埋めて一刻も早く1億ドルの壁を超えたいというのが共通した課題だと推察される。

 営業損益は売り上げ規模の拡大とともに改善されるとしても、逆に負担がかさんでいくのが在庫だ。前述したように直販流通では直販店にせよECにせよ在庫リスクの全てをブランドが負担するしかなく(わが国には商社やベンダーが分担するシステムがある)、在庫消化のペースは遅くロスが避けられない。ギャップ(GAP)は年間に4.34回転しているが、高収益を謳歌するルルレモンとて3.47回転しかしていないし、テイラード・ブランズ(TAILORED BRANDS、青山商事のような米国紳士服チェーン)は2回転に届かない。それはわが国の大手SPAとて同様で、国内ユニクロは2.43回転、良品計画(連結)は2.44回転しかしていない(米国企業は19年1月期、ユニクロは19年8月期、良品計画は19年2月期)。

 店舗を持たずECとSNSで販売するD2Cとて在庫の壁を超えられるわけはなく、シーズン前に企画して見込み生産し、売り減らしていく限りは同様な在庫負担とリスクが付きまとう。その壁を超えるのは在庫を抱えない受注生産のC2Mしかない。

C2Mの成功条件

 C2Mを従来のConsumer to Manufactory ではなくCustomer to Manufactoryとしたのは、C2Mの本質が特定個人の仕様発注に基づいて短納期生産する無在庫販売だからだ。その本質を外して不特定多数を対象にあらかじめロット生産した在庫を抱えてはメリットはなくなる。

 C2Mのブランド側にとってのメリットは、D2Cの一般的なメリットである(1)店舗の投資コストも運営コストも不要、(2)多店舗展開に伴う在庫の分散によるロスと物流費用からの解放、(3)顧客とダイレクトな関係が築ける、に加え、(4)製品在庫の資金負担とロスがない(素資材の負担とロスはある)、(5)製品在庫の保管コストと移動コストがない、が加わる。顧客にとっても(1)流通コストと在庫ロスがカットされた分、割安な価格で入手できる、(2)自分仕様の商品を待たずに入手できる、という大きなメリットがある。

 C2Mの成功例は中国レッドカラー社の「Cotte」(パターンオーダーのアウター)、わが国のオンワードパーソナルスタイル(パターンオーダーのスーツ/婦人パンプス)などまだ限られるが、成功させるには以下の4条件を満たす必要がある。

1.受注〜生産仕様設定〜生産〜納品〜再流通の全てをデジタル化してオンライン連携する

 生産仕様設定〜生産は現状のデジタル企画・生産システムで連携できるが、受注情報と生産仕様設定を直接連携するフォーマット、仕上がり製品を仕分けて物流に載せ納品後のアフターサービスや2次流通までトレースできる個品認識管理システムには工夫を要する。とりわけ法人や団体向けのリース(レンタルではない)では個品認識のトレーサビリティーが不可欠だ。

2.アイテムか素材を限定して生産のコストとロス、時間を最小化する

 デジタルにオンライン連携してもアイテムや素材が分散したり変動があっては手間もロスも設備投資も肥大するし、顧客ニーズへのマーケティングも分散して非効率化する。生産に限らず、マーチャンダイジングでもマーケティングでもアイテム軸か素材軸に徹するのが肝要で、アイテム軸に絞ってパターンオーダー化すれば、素材を広げても生産仕様設定も生産も製品物流も効率化できるし、素材軸に絞ればデザインが多様化しても素材調達が迅速でロスも限られる。マーチャンダイジングやマーケティングまで含めて私はアイテム軸を「エルメス型」、素材軸を「LV(ルイ・ヴィトン)型」と呼んでいるが、前者では「メーカーズシャツ鎌倉(鎌倉シャツ)」、後者では「プリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ(PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE)」や「アンテプリマ(ANTEPRIMA)」のビーズバッグも好例だと思う。

3.一定の広がりが期待できる顧客ニーズを特定し、かつ受注生産が成り立つ規模にとどめる

 アイテムや素材を限定して個人のニーズに応える受注生産は市場規模に限界があるが(グローバル展開すれば限界が広がる)、それを超えた拡大を図ると見込み生産に踏み出して在庫を抱えたり、素資材ロスがかさんで非効率化していく。事業規模を拡大するなら別のアイテムや素材による類似事業を横展開すべきで、一つの事業を限界を超えて伸ばそうとしてはいけない。

4.事業拡大に伴うコスト低減による損益分岐点が顧客ニーズ市場規模限界を下回る

 C2Mに限らず、ネット受注によるD2Cでは初期投資(市場開拓広告費を含む)と固定費の負担が重い半面、一定規模を超えると加速度的に販管費率が落ちて収益性が高まる。そのラインが受注生産の市場規模より高いと、採算点に至る前に受注が頭打ちになって行き詰まってしまう。狙いの絞り込み方次第ではその隘路に陥るリスクがあるから、当初のマーケティングと投資採算計画の精度が問われる。

 C2Mの要はパターン化された商品の受注生産による短納期無在庫販売であり、顧客コミュニケーションを重視すればショールーミング店舗での採寸やお試し(ゲージサンプル)も必要になる。D2Cがコンセプチュアルな“神話”で顧客を捉えながらも先行ロット生産で在庫を抱えるのに対し、C2Mは神話より実利で“個客”ニーズを捉えて受注生産による無在庫販売を成立させる。その違いを的確に認識し、“神話”創造の古典的ファッションシステムに陥ってコストと価格を肥大させることなく、コストを最小化して価格を抑え、“個客”の実利に応えるのがC2Mなのだと捉えてほしい。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

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読者が注目した今週の新作 「ミキモト」 × 「コム デ ギャルソン」など(2月14〜20日)

 「WWD JAPAN.com」が今週発売の新商品を「ファッション部門」「ビューティ部門」別にまとめてお届け。読者の注目度(PV)から1〜3位までをランキング形式で紹介。今週の「ファッション部門」では「ミキモト(MIKIMOTO)」と「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」のコラボレーションジュエリー、「ビューティ部門」では「コスメデコルテ(DECORTE)」の美白美容液「ホワイトロジスト」が最も注目された。

【ファッション部門】


【ビューティ部門】

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レジなしコンビニ「アマゾン ゴー」をNYで体験 便利だけど品ぞろえは改善点あり?

 2020-21年秋冬のニューヨーク・コレクション取材でNYに来ています。「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」の記者会見を前に、オフィス街のブライアントパーク付近をプラプラしていたら、「アマゾン ゴー(AMAZON GO)」を発見!ご存知の方も多いと思いますが、ECのアマゾンが開発したレジなしのコンビニ業態です。NY出張中に行ってみたい店の一つだったので、一体どんなものか早速パトロールしてきました。

 入店のために必要なのは、「アマゾン ゴー」のアプリ。アプリをダウンロードした上で、米国のアマゾンアカウント(アマゾン ジャパンのアカウントではダメな模様)とのヒモ付けを求められます。私はアプリも米国アマゾンのアカウントも持っていなかったので、その場でいそいそとダウンロード&作成しました。米国アマゾンのアカウント上で決済用のカード登録も済ませたら、準備オッケー!アプリ上で“KEY”という部分を押すとQRコードが出てくるので、それを自動改札機のようなゲートにかざせば商品が陳列してあるエリアに入ることができます。

 品ぞろえはサンドイッチやサラダ、ヨーグルト、カットフルーツ、ポテトチップスやグミなどのお菓子類、自分で注ぐタイプの「スターバックス(STARBUCKS)」のコーヒー、ペットボトル飲料など。私は日本のコンビニスイーツ的なミニチーズケーキやブラウニーみたいなものが食べたかったのですが、そういうものは残念ながら置いてなく。“ストロベリーバナナパフェ”なる商品が品切れになっていたので、「えー多分私が食べたいものに一番近そうな商品はコレな気がするのに……」と思いながら、気を取り直してあんずのヨーグルトを手に取りました。店内をグルっと一周して(一般的な日本のコンビニより断然狭い)、やはり気が変わったのであんずヨーグルトを棚に戻し、リュバーブ味のヨーグルトを手にゲートを出ました。

 出る時は自動でゲートが開きます。会計をする必要がないと頭では分かってはいるものの、なんだかちょっと万引きしているような気分。出た直後、「ああやっぱり夕方お腹が空いた時用にチョコレート買っといてもよかったかも」と思うも、ヨーグルトを持ったままもう一度入店したら、トラッキング用カメラが混乱して(そもそも「アマゾン ゴー」は、天井におびただしい数が仕掛けられたAI搭載のカメラが客をトラッキングし、何を手に取ったかを追う仕組みだそう)代金を2回請求されやしないかと思い、やめておきました。というのも、中国の無人コンビニ事情に詳しい方が以前、「中国の無人コンビニでは、買ってないものが買ったことになっている事態が頻発している」と話していたんですよね。

 ゲートを出たところにイートインスペースがあったので早速ヨーグルトを食べました。ナイフやフォーク、持ち帰り用紙袋、電子レンジなども設置してあるので、近隣のオフィスに勤める人には便利そう。実際、マンハッタンの中でもオフィス街のミッドタウン中心に出店しているので、ビジネスパーソンの朝食&ランチ需要がメインターゲットのようです。アプリによれば、現状の店舗数はニューヨークに8店、アマゾン本社のあるシアトルに5店、シカゴに7店、サンフランシスコに5店。オープン時間は店や曜日によって違いますが、私が行った店は平日は6時~22時でした。

 ヨーグルトを食べていたら、アプリと登録Eメール宛てにレシートが届きました。一度手に取り棚に戻したあんずヨーグルトのお代は請求されておらず、ひと安心。万一買っていない商品が買ったことになっていても、アプリのレシートから払い戻し申請ができるようです。しかしこの手法だと、買ったものを「買っていない」と言い張って払い戻し請求してくる悪い輩はいないんだろうかと思ったり。悪質な場合には、トラッキングデータを開示して戦うんだろうか。そのへんは謎です。

アマゾン傘下の「ホールフーズ」がレジなしだったらいいのに!

 以上が私の初「アマゾン ゴー」体験でしたが、会計なしですぐ出られるのは確かにストレスフリー!しかし、24時間365日ほしいものが手に入る日本のコンビニになれている身としては、もうちょっと品ぞろえを頑張ってほしいなと思いました。買いたかった“ストロベリーバナナパフェ”なるものが品切れだっただけでなく、結構品切れの商品が多かったんですよ。一時期日本にもあったパン屋「ドミニクアンセルベーカリー(DOMINIQUE ANSEL BAKERY)」のクイニーアマンや、こちらも有名店「エッサ ベーグル(ESS-A-BAGEL)」のベーグル、「マグノリアベーカリー(MAGNOLIA BAKERY)」のカップケーキなども扱っているようなんですが、これら“朝食想定”の商品は15時半の時点では全て品切れ。棚には品切れを知らせる茶色い札がいくつも立っていました。

 しかし、24時間いつでもほしいものが買えて当然という、日本人に根付いた(少なくとも私には根付いている)マインドセットこそが、コンビニの大量廃棄問題の元凶だとも思います。「朝食用商品は朝食時にしか売らないし、売り切れたら終わり。他にも食べ物は売っているんだから、お腹が空いているなら他の商品を買いなさい。それが嫌なら明朝まで我慢なさい。それがサステナブルなコンビニ運営というものです!」などといった殊勝なことを「アマゾン ゴー」が考えているのか、それとも単に日本のコンビニ並みのサプライチェーンがまだ構築できていないだけなのかは分かりませんが(後者だと思うけど)、資本主義の権化みたいな会社がやっている以上、より便利に、よりユーザーにとって使いやすく、そしてよりアマゾンが儲かるようにとサプライチェーンを猛烈に整えてくる日も近いんじゃないでしょうか。

 アマゾンといえば、米国のスーパー「ホールフーズマーケット(WHOLE FOODS MARKET、以下ホールフーズ)」を17年に傘下に収めています。「ホールフーズ」といえば、生鮮食品にお惣菜、生活雑貨、おみやげ、シャレたナチュラルコスメまでなんでもそろう最強のお買い物スポットですが、どこの店舗にいつ行ってもレジ待ちは長蛇の列。「ホールフーズ」にこそ「アマゾン ゴー」のレジなしシステムがあればいいのに……!そうなったら、あの豊富な品ぞろえでレジ待ちのイライラもなく、最強の店ができあがるはず……!!しかし、「ホールフーズ」の広大な店内にくまなくトラッキング用カメラを設置するのは、莫大な設備投資がかかりそうです。

 ちなみに、初「アマゾン ゴー」体験から数時間後、ミッドタウンで別の「アマゾン ゴー」を見付けたので再度入店してみました。店によって品ぞろえは少しずつ違うようで、こちらには私が求めていたミニチーズケーキなどのコンビニスイーツもあり、無事購入することができました。そうそう、この店にはパック入り卵も置いてありましたよ!さらに翌日、再度ブライアントパークそばの「アマゾン ゴー」に立ち寄ったところ、前日とほぼ変わらない時刻だったのに「ドミニクアンセル」のクイニーアマンや「エッサベーグル」のベーグルが結構置いてありました。……私が前日感じた品ぞろえに対する憤りを早くもかぎ取ったんだろうか(そんなわけない)。というわけで、品ぞろえに関してはいまいち法則性が見えません。

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【動画】ゆうこすが語るセルフコスメの魅力 「大人になったらセルフコスメがダメなんじゃないかと思っていた」

 「WWDビューティ」は1月24日に、イベント「ビューティテイスト・トーキョー(BEAUTY TASTE TOKYO)」を東京・新宿のルミネゼロ(LUMINE 0)で開催した。モテクリエイターのゆうこす(菅本裕子)は午前の部のパネルディスカッションに登壇。「WWD JAPAN.com」の村上要編集長やアイスタイルの吉松徹郎代表取締役兼CEOとともに、「セルフコスメの可能性を考える」をテーマにトークを繰り広げた。

 「大人になったらセルフコスメがダメなんじゃないかと思っていた」と話すゆうこすが「セルフコスメもデパコスも垣根のない」ショップ「アットコスメ トーキョー」に来店して感じたことやトレンドのあり方について語った。

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「けんかを売るつもりはない」「ホール2の閉鎖を決めた」 パリ見本市責任者にバッティング問題を聴く

 現在パリで開かれているファッション素材見本市「プルミエール・ヴィジョン(PREMIERE VISION以下、PV)」の3大トピックスといえば、新型コロナウイルスの影響、見本市の開催時期のバッティング問題、そしてサステナビリティだ。

 新型コロナウイルスの影響について企業関係者は「人の移動に制限がかかっているばかりか物流も止まっているので、すでに納期が遅れている取引先との調整を急いでいる」「リスクを分散させるために欧州でのサプライチェーン構築を再検討している」などと対応を語る。見本市が生地を紹介する場から調整の場になっている企業もある。

 PVの開催時期の前倒しは、特にイタリア企業にとっては大きな問題になっている。このままでは21年は2月の春夏展も7月の秋冬展も「ミラノ・ウニカ(MILANO UNICA)」と会期が重なるからだ。両方の企業に出展する企業は「なんとか会期がずれることを祈っている。とにかく待ちましょう」「二手に分かれることは難しく、どちらかを選べといわれたら――『ミラノ・ウニカ』だろう」と考え方はさまざまだが皆が困惑している。

 サステナビリティは、素材メーカーにとってもはや必須事項になっているが、特にフランスに目を向けると、廃棄禁止の法律がこの1月に成立されるなど、政治の力もあって加速している。

 3大トピックスについて、PVの責任者であるジル・ラスボルド(Gilles Lasbordes)=ゼネラル・マネジャー(以下、ラスボルド)に直撃取材した。

WWD;新型コロナウイルスの影響は?

ジル・ラスボルド=ゼネラル・マネジャー(以下、ラスボルド):今回1755社の出展申し込みがあり、そのうち110社が中国企業だった。しかし45社が、コロナウイルスの影響で出展がキャンセルになった。中国以外の企業のキャンセルはない(編集部注:韓国のアクセサリーメーカーが出展する予定のブースは空だった)。

PVとしては開催直前ではあったが、中国の出展企業には中国にとどまり、できるだけ欧州のエージェンシーでカバーできないかと提案した。キャンセルになった45社の多くは縫製カテゴリーの企業で、欧州にエージェントがなかった。そのため52社が並ぶ予定だったホール2の「マニファクチャ― オーバーシーズ」を閉めることを決断した。

また出展社だけでなく、中国から来ることができなかったバイヤーは多いと思う。中国はファッション業界にとって重要な国。また、大企業が社員の渡航を控えさせていることもある。

われわれは新型コロナウイルスの被害を今体験しているわけだが、中国は国を閉めるほどになっている。そのせいで、「インターテキスタイル(INTERTEXTILE)」など中国で開催予定の見本市に加え、欧州でも大きなイベントがキャンセルになるなど大きな被害を目の当たりにしている。そんな中でわれわれはよく切り抜けていると思う。

WWD:来場者数は?

ラスボルド:3日後にまとめてプレス向けに発表する予定だが、来場者が減ることは予想している。

「われわれはけんかを売る気はない。善意を持って皆が満足する方法を模索している」

WWD:21年からPVの時期を2月初旬と7月上旬に前倒しすると発表したことで、現状ではイタリアのファッション素材見本市「ミラノ・ウニカ(MILANO UNICA、以下MU)」バッティングすることになるが。

ラスボルド:日程に関してはフランスのモード研究所IFM(Institut Francais de la Mode)を通じて、バイヤーや出展社に大がかりな調査を行って意見を聞いた結果だ。日程を決めるにあたっては会場が取れるかどうか問題が大きい。結果的に21年に関してはバッティングする日程になった。細かい話だが、開催予定の前週には120万人規模の「マンガエクスポ(EXPO PARIS MANGA)」があるし、翌週の14日は(フランス共和国の成立を祝う)パリ祭がある。結果的にこの日程になった。

さらに詳しく言うと、7月に関しては21年はMUと同じ日程だが、22年と23年に関してはPVの後にMUが開催される予定で調整を進めている。あくまでも予定だが。一方、2月に関しては現在協議中だ。MUに加え、ドイツ・ミュンヘンの見本市「ファブリック スタート(FABRIC START、以下FS)」と重なっているためだ。

私たち見本市を運営する側は会場の制約がある。たとえば先週、MUとFSは同じ日程で開催されている。われわれは日程の変更や決定をするときに、通常1年ないし1年半前から他の見本市と透明性を大事にして話し合っている。日程のバッティングは誰の利益にもならないからだ。今後は日程がバッティングしないように決めていきたい。われわれはMUに対してもFSに対してもけんかを売る気はない。善意を持って皆が満足する方法を探さなければいけない。最も大事にしているのは市場とクライアントが何を求めているかだ。

WWD:いつから時期を前倒ししようと考えていたか。

ラスボルド:見本市を運営する者として開催時期は永遠の課題だ。常に考えているが、今回の件に関しては昨年の夏ごろから重要課題になっていた。

15年にも今回同様の調査を行っており、その結果プレ・コレクション用の「ブロッサムPV」を立ち上げた経緯がある。現状を更新するために調査したが、問題は非常に複雑で多岐にわたるため、全体を見て考えなければいけない。

「モード産業は時代の風の中にいないと生きていけない。生き延びるか、死ぬかだ」

WWD:仏政府はサステナビリティに力を入れている。1月末に開催されたサステナビリティサミット「チェンジ ナウ(CHANGE NOW)」でもサステナビリティ政策をリードするブリュヌ・ポワルソン=フランス環境連帯移行大臣付副大臣が登壇し、「廃棄禁止」の次は「洗濯フィルターの義務化」、そして「消費者に誰がどのように製造したかを見えるようにしたい」と話していた。トレーサビリティは素材の分野ではかなり重要だ。

ラスボルド:直接、彼女と話したことはないが、環境への責任に関してPVは積極的に考えて行動している。IFMの調査で分かったことは、欧州の2人に1人の消費者が環境に配慮した服を購入したことがあるとい結果が出たということ。

政府との話し合いは繊維連盟の仕事でPVの仕事ではない。政府の決定でこの1月から新品の廃棄を禁止する法律が成立されたが、この傾向はさらに強まるだろうし、それは消費者の期待に応えることでもある。だからモードもそれに応えなければいけない。

PVではそれをスマートクリエーションが担っている。われわれは各出展社が何に取り組んでいるのかが分かるように可視性を与えることを重視している。また、その方向に出展社を啓発し、さらにメーカーと消費者の双方に正しい情報を提供することが大事だと考えている。非常に複雑な問題なので、われわれの産業がどのように進むべきかを関係する皆と一緒に考えることが重要だと思っている。

フランスはモードのリーダーだし、リーダーの企業はいい例を示さなければいけないが、これは大変な仕事だ。モード産業は時代の風の中にいないと生きていけない。生き延びるか、死ぬかだ。

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パリメンズ10周年記念の「リンシュウ」が“透明なウエア”という新香水「1217」を発表

 デザイナーとしては28年連続、ブランド「リンシュウ(RYNSHU)」としても10年連続でパリ・メンズ・コレクションに参加する山地正倫周(やまじ・りんしゅう。以下、正倫周)はこのほど、初挑戦となるフレグランスを発売した。香水を監修したのは、山地のパートナーのRieco YAMAJI(以下、Rieco)。1月の2020-21年秋冬パリメンズでは、モデル全員に香水“RYNSHU 1217”を吹き付け、彼らをランウエイに送り出す。香水を“透明なウエア”と位置づけ、最後にセンシュアル(官能的)な香りをまとうことで、スタイルは完成するとの思いを込めた。「RYNSHU」のパリ・メンズ・コレクションで、Riecoには香水、正倫周にはコレクションとスタイルへの思いを聞いた。

ミステリアスなスズランの
香りをまとって

 「リンシュウ」の2020-21年秋冬コレクションのショー会場は、パリの中心部ヴァンドーム広場にほど近い高級ホテル。シャンデリアが煌めくバックステージでRiecoは、モデル一人一人に丁寧に“RYNSHU 1217”を吹き付けた。美容業界に精通するRiecoが、ブランド初の香水に選んだのは、スズランの香り。Riecoは「かつては媚薬だったミュゲ(スズラン)は、配合が難しいけれど、ミステリアスな香り。ジェンダーレスでもあり、『リンシュウ』のスタイルにぴったり」と話す。一般的な香水は、スプレーした瞬間のトップノートから、ミドル、そしてラストノートとさまざまな香りが順次立ち上がり消えていくが、“RYNSHU 1217”は、吹きかけたときに香る、スズランやムスク、フレッシュローズ、シトラスやウッドの絶妙なバランスの調香が、その雰囲気をずっとキープしたまま持続し続けるという、従来のパターンにとらわれない新しいタイプの香水。Riecoは、「初めてのフレッシュさがずっと欲しかった。トップノートがずっと香るフレグランスは今、少しずつ増えている」とこだわりを語る。香りをまとったモデルたちは、「年齢的には少年のハズなのに、一瞬で顔が引き締まる。改めて“透明なウエア”の力を感じた」と振り返った。

最新コレクションは
ジェンダーレスなフォーマル

 “RYNSHU 1217”が魅力を引き出した「リンシュウ」の2020-21年秋冬コレクションは、引き続き正倫周が追い続けるジェンダーレスなフォーマルの世界を探求。黒と、その対極とも言えるフーシャピンクをベースに、洗いをかけることで柔らかく仕上げたベルベットやシルクで仕上げたセットアップが続く。コレクションは、会場に振りまいた“RYNSHU 1217”の香りを体感してもらうべく、来場者の感覚を研ぎ澄ませる漆黒の空間でスタート。モデルは柔らかな素材、ピンクという色、そして、息を飲む装飾を堂々と着こなす。フィナーレには、正倫周とRiecoが揃って登場。正倫周の洋服、そしてRiecoの“透明な洋服”が揃うことで完成する「リンシュウ」のスタイルを物語るエンディングだ。

なぜ香水が必要なのか?
デザイナーに直撃

 デザイナーの正倫周はブランド初の香りに包まれたコレクションを、「改めて香水の持つ力を感じた。モデルのテンションが違う。ジェンダーレスなスタイルの極め付け、『リンシュウ』の新たな魅力として、長年挑戦したかった香水が発表できて嬉しい」と振り返る。デザイナーとして数十年、「リンシュウ」でも10年のキャリアを誇る正倫周は近年、かつてのロックから方向転換。現在はクチュール級のソフト・テーラードを探求し、「長く愛用できるアンティークになるものを目指す」。そんなスタイルに、Riecoが「ずっとフレッシュ」と話す香水はピッタリだ。

 Riecoは、「男性が身につけると、センシュアルだけどチャーミング。優しくて心地よい。それは、『リンシュウ』の洋服も香水も同じ」と言う。“RYNSHU 1217”によって、パリメンズに挑み続けるブランドがまた一歩前に進んだ。

問い合わせ先
RYNSHU
03-3402-5300

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けみおやKoki,が来場した「コーチ」やおもてなしが素敵すぎた「ガブリエラ ハースト」 NYコレつれづれ日記 VOL.4

 2020-21年秋冬ニューヨーク・コレクション5日目はあいにくの雨ですが、少し寒さが和らぎホッとしています。さて、5日目は来場者が豪華だった「コーチ(COACH)」や、おもてなしが毎回素敵な「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」などがコレクションをお披露目しました。

ケータリングとお土産が心にしみる
「ガブリエラ ハースト」

 ウルグアイ出身のガブリエラ・ハースト(Gabriela Hearst)が手掛ける「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」はエレガントで洗練されたデザインが人気のブランド。日本では「バーニーズ ニューヨーク(BARNEY’S NEW YORK)」などで取り扱いがありますが、バッグを含め、上質な素材使いやシルエットが大人の女性に人気のようです。そして同ブランドのショーの目玉の一つは、毎回ゲストに振舞われるケータリング!野菜たっぷり、いかにも体に良さそうな食事がテーブルの上に広げられ、皆お皿にとって食事しながらショーの開始を待ちます。この食事があるからか、「ガブリエラ ハースト」の会場にはショー開始時刻前に多くの人が集まり、ある意味ショーを時刻通りに始めるための良い作戦なのかもしれません……!そして今回はサステナにフォーカスしており、リサイクルしたラグから作ったトレンチコートやバッグ、過去の作品を解体して作ったコートなどが登場。会場にはリサイクルした紙で作られた置物が設置してあったほか、お土産は余ったカシミヤで作ったアイマスクとオフィスの再生紙で作ったノートが配られました。時差ボケに苦しめられているNY班にとってはなんともうれしいお土産なのでした……。

ゲストが豪華すぎた「コーチ」 
デボラ・ハリーも

 「コーチ 1941(COACH 1941)」の会場ではロックバンドが70年代に活躍したブロンディー(Blondie)の曲を大音量で演奏。そんなロックンロールな雰囲気の中をモデルが歩きました。ブランドの代名詞でもあるレザーを中心に用い、今季はクリエイティブ・ディレクターのスチュアート・ヴィアヴァース(Stuart Vevers)が持つポップカルチャーへの愛を表現。見ているだけで気分が上がるようなポップなパステルカラーに染め上げた柔らかなレザーのスカートやコート、ジャケットをカラーブロッキングするかのように組み合わせて提案し、その色合いはポップアートを連想させます。バスキアのイラストを施したバッグやコートなども登場し、またバッグもキューブ型や三角形型などジオメトリックなシェープが印象的でしたが、アートが大きなインスピレーション源だったのかもしれませんね。後半はカラフルなストライプや幾何学模様のアイテムを重ねたプレイフルなルックが連続して登場しました。BGMはロックでしたが、全体的に洋服は明るく遊び心にあふれるものばかりです。そしてフィナーレを迎えると会場中央から急に大歓声が沸き起こり、なんとブロンディーのデボラ・ハリー(Deborah Harry)本人が登場!バンドと一緒に熱唱し、会場を大いに盛り上げました。そのほかにもフロントローには昨日「アディアム(ADEAM)」にも登場したテニスプレイヤーの大坂なおみやけみお、K-POPグループのAOAのキム・ソルヒョン(Kim Seolhyun)のほか、20年春夏の広告にも登場するKoki,やマイケル・B・ジョーダン(Michael B Jordan)らの姿がありました。

「ロダルテ」はドラキュラが
着想源のヘアメイク

 「コーチ」のショーが終わると急いで移動し、聖バルトロメオ教会に到着。今回は教会が会場ですが、何か意味があるのか?と思いながらバックステージに入ると真っ黒のリップをしたモデルがたくさんいました。リードアーティストのジェイソン・カリアドス(Jason Kaliardos)によると、1992年の映画「ドラキュラ」に出演したウィノナ・ライダー(Wynona Ryder)がインスピレーション源だという。なるほど、だから教会なのかと思いながらヘアをセットしている部屋に移動。するとそこには生の花を編み込んだヘッドピースを急ピッチで作るスタッフがいて、大変そうでした……!生花なので事前に用意ができず、その場で作るしかないのですね......(お疲れ様です!)。ネイルもドラキュラを意識してリップと同じ色のダークカラーに塗り、爪切りで先を尖らせていました。ほかのショーでも赤リップやダークなリップを見かけましたが、ここ最近ずっと続いていた目元にフォーカスしたメイクからシフトし、いよいよリップにフォーカスしたメイクトレンドが復活しそうです。

マイケル・コース本人による
プレゼンテーション

 「ロダルテ」のバックステージ取材を早めに切り上げ、ブライアントパークの目の前にある「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」の本社オフィスへ。ショーは明日ですが、マイケルは毎回ショーの前日にプレスに向けてプレビュー(先行してお披露目)をしてくれるのです。他のデザイナーも現地のプレスには行っているみたいなのですが、私たちのようなインターナショナルプレスには、なかなかそういった機会がないのです。そんな中プレビューではマイケル本人が日本やイタリア、イギリスなどさまざまな国のエディターに直接、その時のコレクションのインスピレーション源だったり、こだわったシルエットや素材だったり、ショーの目玉だったりについて丁寧に説明してくれます。毎回思うのは、この話を聞いた後にショーを見ると、(聞いていない時と比べて)コレクションの理解度が全く違うということ。ショーの会場には(コレクションについて説明する)リリースが置いてあることもありますが、ないことも多く、想像でショーを解釈することも少なくありません。それも狙ってなのかもしれませんが、やはりデザイナーの思いを直接聞いてから見るショーは、考えることや想像がさらに膨らみます。そしてマイケルはテレビにも度々登場するような話上手な人なので、実はこのプレビューの話も結構面白く、コレクション期間中のちょっとした楽しみにもなっています。ショー前日にも関わらず笑いを交えてお話してくれる余裕ぷり、そして忙しいにも関わらず時間をとって直接私たちに説明してくれるマイケルにいつも脱帽してしまいます。ここでは残念ながらお写真は掲載できませんが、ショーのレポートは明日の日記で書くので楽しみにしていてください!

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けみおやKoki,が来場した「コーチ」やおもてなしが素敵すぎた「ガブリエラ ハースト」 NYコレつれづれ日記 VOL.4

 2020-21年秋冬ニューヨーク・コレクション5日目はあいにくの雨ですが、少し寒さが和らぎホッとしています。さて、5日目は来場者が豪華だった「コーチ(COACH)」や、おもてなしが毎回素敵な「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」などがコレクションをお披露目しました。

ケータリングとお土産が心にしみる
「ガブリエラ ハースト」

 ウルグアイ出身のガブリエラ・ハースト(Gabriela Hearst)が手掛ける「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」はエレガントで洗練されたデザインが人気のブランド。日本では「バーニーズ ニューヨーク(BARNEY’S NEW YORK)」などで取り扱いがありますが、バッグを含め、上質な素材使いやシルエットが大人の女性に人気のようです。そして同ブランドのショーの目玉の一つは、毎回ゲストに振舞われるケータリング!野菜たっぷり、いかにも体に良さそうな食事がテーブルの上に広げられ、皆お皿にとって食事しながらショーの開始を待ちます。この食事があるからか、「ガブリエラ ハースト」の会場にはショー開始時刻前に多くの人が集まり、ある意味ショーを時刻通りに始めるための良い作戦なのかもしれません……!そして今回はサステナにフォーカスしており、リサイクルしたラグから作ったトレンチコートやバッグ、過去の作品を解体して作ったコートなどが登場。会場にはリサイクルした紙で作られた置物が設置してあったほか、お土産は余ったカシミヤで作ったアイマスクとオフィスの再生紙で作ったノートが配られました。時差ボケに苦しめられているNY班にとってはなんともうれしいお土産なのでした……。

ゲストが豪華すぎた「コーチ」 
デボラ・ハリーも

 「コーチ 1941(COACH 1941)」の会場ではロックバンドが70年代に活躍したブロンディー(Blondie)の曲を大音量で演奏。そんなロックンロールな雰囲気の中をモデルが歩きました。ブランドの代名詞でもあるレザーを中心に用い、今季はクリエイティブ・ディレクターのスチュアート・ヴィアヴァース(Stuart Vevers)が持つポップカルチャーへの愛を表現。見ているだけで気分が上がるようなポップなパステルカラーに染め上げた柔らかなレザーのスカートやコート、ジャケットをカラーブロッキングするかのように組み合わせて提案し、その色合いはポップアートを連想させます。バスキアのイラストを施したバッグやコートなども登場し、またバッグもキューブ型や三角形型などジオメトリックなシェープが印象的でしたが、アートが大きなインスピレーション源だったのかもしれませんね。後半はカラフルなストライプや幾何学模様のアイテムを重ねたプレイフルなルックが連続して登場しました。BGMはロックでしたが、全体的に洋服は明るく遊び心にあふれるものばかりです。そしてフィナーレを迎えると会場中央から急に大歓声が沸き起こり、なんとブロンディーのデボラ・ハリー(Deborah Harry)本人が登場!バンドと一緒に熱唱し、会場を大いに盛り上げました。そのほかにもフロントローには昨日「アディアム(ADEAM)」にも登場したテニスプレイヤーの大坂なおみやけみお、K-POPグループのAOAのキム・ソルヒョン(Kim Seolhyun)のほか、20年春夏の広告にも登場するKoki,やマイケル・B・ジョーダン(Michael B Jordan)らの姿がありました。

「ロダルテ」はドラキュラが
着想源のヘアメイク

 「コーチ」のショーが終わると急いで移動し、聖バルトロメオ教会に到着。今回は教会が会場ですが、何か意味があるのか?と思いながらバックステージに入ると真っ黒のリップをしたモデルがたくさんいました。リードアーティストのジェイソン・カリアドス(Jason Kaliardos)によると、1992年の映画「ドラキュラ」に出演したウィノナ・ライダー(Wynona Ryder)がインスピレーション源だという。なるほど、だから教会なのかと思いながらヘアをセットしている部屋に移動。するとそこには生の花を編み込んだヘッドピースを急ピッチで作るスタッフがいて、大変そうでした……!生花なので事前に用意ができず、その場で作るしかないのですね......(お疲れ様です!)。ネイルもドラキュラを意識してリップと同じ色のダークカラーに塗り、爪切りで先を尖らせていました。ほかのショーでも赤リップやダークなリップを見かけましたが、ここ最近ずっと続いていた目元にフォーカスしたメイクからシフトし、いよいよリップにフォーカスしたメイクトレンドが復活しそうです。

マイケル・コース本人による
プレゼンテーション

 「ロダルテ」のバックステージ取材を早めに切り上げ、ブライアントパークの目の前にある「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」の本社オフィスへ。ショーは明日ですが、マイケルは毎回ショーの前日にプレスに向けてプレビュー(先行してお披露目)をしてくれるのです。他のデザイナーも現地のプレスには行っているみたいなのですが、私たちのようなインターナショナルプレスには、なかなかそういった機会がないのです。そんな中プレビューではマイケル本人が日本やイタリア、イギリスなどさまざまな国のエディターに直接、その時のコレクションのインスピレーション源だったり、こだわったシルエットや素材だったり、ショーの目玉だったりについて丁寧に説明してくれます。毎回思うのは、この話を聞いた後にショーを見ると、(聞いていない時と比べて)コレクションの理解度が全く違うということ。ショーの会場には(コレクションについて説明する)リリースが置いてあることもありますが、ないことも多く、想像でショーを解釈することも少なくありません。それも狙ってなのかもしれませんが、やはりデザイナーの思いを直接聞いてから見るショーは、考えることや想像がさらに膨らみます。そしてマイケルはテレビにも度々登場するような話上手な人なので、実はこのプレビューの話も結構面白く、コレクション期間中のちょっとした楽しみにもなっています。ショー前日にも関わらず笑いを交えてお話してくれる余裕ぷり、そして忙しいにも関わらず時間をとって直接私たちに説明してくれるマイケルにいつも脱帽してしまいます。ここでは残念ながらお写真は掲載できませんが、ショーのレポートは明日の日記で書くので楽しみにしていてください!

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「外食は控え、食事は一人で」通達 現地のファッション業界人香港リポートVol.2

 新型コロナウイルスの影響でクローズしていた中国国内の製造業が2月10日から一部製造を再開した。前回に続き、現地の大手メーカーの営業兼MDに香港と中国本土で何が起こっているのか、現地リポートしてもらった。

 2月8日、中国から香港に入国する際には14日間の強制隔離検疫が適応されるというニュースが流れたが、一説にはその直前に5万人もの中国本土の滞在者が香港に入国したといわれる。香港では実際に毎日国境を越えて中国本土のオフィスや学校に通う人が少なくない。また平日は家族と離れて中国に単身赴任で、週末だけ香港で過ごすというケースも多く、私自身もかつて1年間、週に3日間は中国本土の工場付近のホテルに滞在し、香港と半々のような生活をしたことがある。このような人々が急激に香港になだれ込んで香港での感染リスクが高くなったと推測される。

 前回のリポートでも登場したマスクや消毒剤、紙製品、そして一部の食料品不足はより深刻化し、「香港には潤沢に生活必需品の備蓄があるはずだが、人々が政府を信用しておらず買いだめに走るのだ」という声もある。引き渡し条例に反対するデモに続き、国境封鎖の決定に時間がかかったことなど、新型コロナウイルスに対する政府の対応についても社会的な不満と不安がさらに高まった状況だ。

 幼稚園から日本でいう高校までは3月2日まで授業再開が不可となり、同じく2月いっぱいは自宅勤務を決定した企業も多い。街なかはというと、他者との接触を避ける目的で特に外食産業はことさら、厳しい状況を迎えている。週末は毎週といっていいほど、家族や親しい人たちとで飲茶を楽しむ文化があり、人気店は行列必至が通常だが、今では空きテーブルも目立つほどになっている。密室での会食を禁止とした会社もあるという。このような状況下でありながら、かつてはマスク着用をしていなかった香港在住の欧米人ですら、今週からは着用する人が増えたように見られる。

 先週の時点では、2月10日に弊社の中国の工場は再開予定ということで、広東省中部のドンガン市の2拠点は同日再開したが、それよりさらに北の工場は現状、17日までは再開不可能だろうとの見通しだ。企業が業務を再開するには中国政府にリポートを提出し、規定の条件をクリアすれば可能とのことだ。従業員の健康管理に関して、「従業員全員分のマスクを支給できるか?」 という、現在の中国では非常にハードルが高い項目もあるらしく、そのために多くの企業が再開不可能になっているようだ。再開した弊社工場では、従業員には他者との接触を避けるよう、以下の内容が通達された。「会議は開催せず、なるべく電話かウィーチャット(微信、wechat)などで済ませる。外部の人間を社内に入れない。食事は一人で済ませる。外食は避け、自宅に他人を招かず、訪問もしないこと」など、寂しくなるような内容だが、これが現実だ。香港オフィスでは通常、国際宅配便のピックアップ担当者の姿を社内で見かけるが、サンプル等の出荷物の置き場所を各フロアのエレベーターホールに移動させ、彼らが社内に入らないようにするなど工夫している。

 また、ウイルス問題による交通封鎖や規制により従業員が帰省先から勤務先に戻れず、人員を確保できていないという面もある。帰省先で情報交換し、よりよい待遇の工場へと転職する人は例年でも多く、旧正月明けは何人の従業員が戻るのかを読めず、生産に打撃を与える場合がある。今年はさらにコロナウイルスの影響があり、いっそう予測が難しい状況だ。再開した弊社工場でも、従業員は半数程度でかろうじて営業再開となっている状況だ。まだ資材サプライヤーの様子などは見えてきていないのが現状だ。今後の出荷品の納期は非常に難しいと言わざるを得ない。広東省東部のスワトウ市の下着工場のオーナーと電話で話したが、「田舎町ということもあり、マスク姿が少ない。危機感があまりないようにも感じるが、ただ単に物資不足だから仕方ないという諦めの境地でもある」ということだった。たまたま彼の工場には武漢出身の幹部メンバーが多く、幸いにも現地での全員の生存は確認できたが、いつ彼らがスワトウに戻ってこられるかは全く分からない。

 周囲に手作り好きが多いせいか、マスク不足と着用ストレスから、“自作マスク”がちょっとした流行になっている。購入できないからと自分で作る場合もあるが、お気に入りの生地で作る人もいる。香港ではあまり浸透していないハンドメード布ナプキンを販売している香港人女性も、今はマスク作りで大いそがしという。

 少しでも気持ちを上げることは、免疫力を高めるために大事なことだとつくづく感じる。

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ファッションビジネスはクローゼット起点への転換で更にパーソナルに ファッションフリークOL「WWDジャパン」につぶやく

 1992年生まれのファッションフリーク女子が、ファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。渋谷のファッションベンチャー企業に勤める等身大OL、Azuのリアルな目線を生かした「このニュースからはコレが見える」という切り口で、さまざまな記事につぶやきを添えます。

今日のニュース:P.6『ファッション市場「大転換」に挑む』

読み解きポイント:「デジタルシフトの準備期間は終わり。」

ニュースのポイント

 CEO特集の2020年のテーマは「大転換」。有力企業20社のインタビューから今後10年のファッションビジネスを展望する。まずは「流通革新」を切り口に、10年ごとにファッション流通がどのように変化していったかをまとめた。日本のトレンドは百貨店、量販店、ベーシックSPA、ファストファッションSPAと続き、現在はショッピングのデジタルシフトへ。この流れは欧米から10年遅れており、欧米ではすでにサステナブル経営が進んでいる。また、プロダクトアウトからマーケットインへと変わっていったビジネスアプローチの視点も、より顧客に寄り添ったクローゼット起点の発想へ進化していくと予想される。

Azuはこう読む!

 2019年はファッション業界でもデジタルシフト、DX=デジタルトランスフォーメーションといった言葉をたくさん耳にしました。既存の仕事や手法をただデジタル化するのではなく、考え方そのものをデジタルベースに刷新するのがデジタルトランスフォーメーション。2020年は5Gも始まるので、従来のネット接続よりもはるかによく繋がり、早くなります。消費者サイドもインターネット通信をより気軽に使うことができるようになるので、例えば動画コンテンツやAR、VRといった技術、IoTデバイスの多様化など、ショッピングにおけるデジタルシフトも一気に進むことでしょう。

 記事中では、アマゾンがけん引する「ショッピングの時間とお金の節約、パーソナル対応」や実店舗を持つチェーンによるオムニチャネル化などを、デジタルシフトの例としてあげています。体験型店舗などに加え、この事例が体現しているのは「モノ消費からコト消費へ」というよく聞く言葉。これらはすでに定着して、次はヒト消費(ヒトに起因する消費・つながり消費)と言われていますが、デジタルの活用はこの「コト」や「ヒト」と消費を繋げる役割もありました。

 ライブコマースで好きなインフルエンサーから商品を購入したり、サブスクリプションサービスでコミュニティに所属し定期的な消費をしたり、ここ数年はデジタルコミュニケーションを媒介とした消費が一気に普及しました。よりパーソナルな行動や感情を把握し、魅了することが大切になるのが次の10年。例えば、ある程度機械的に属性や趣味趣向を振り分けた後、機械では起こりえない不一致や違和感、ヒトの温度感をうまく作り出すような体験・サービスが望まれるのではないかなと思います。現に、ECサイトの的確なレコメンドに慣れてしまうと「わかる、好きだよ。でもつまらない、もっとドキドキしたいの!」と思ったり(笑)、逆にお店で「これはどうですか?」と差し出された、自分では絶対に手に取らないようなものに運命を感じたり、機械には導き出せない、自分も知らない正解ってありますよね。

 さらに、2020年代のビジネスアプローチに関しては「クローゼット起点への転換が必要」とあります。ファッションの中で「最も」と言っていいほどパーソナルなクローゼット事情に注目が集まるのは、ヒト消費の加速に伴う必然だと思います。既存のワードローブを活用したサービスはコーディネート提案アプリ「XZ」、コーディネート共有サービス「IQON」、プロのスタイリストが自宅のワードローブでスタイリングを組んでくれるサービス「STYLISTE」など多く誕生していますが、「すでに持っているものを活用する」という考えは一番わかりやすい「サステナブル」の実践方法なので、その考えも相まって、今後一層需要が高まるのではないでしょうか。

 個人的に「あったらいいな〜」と思うのはコーディネート共有サービス内でのフリマ的な機能。憧れの人のワードローブをまねするには、本人から買い取るのが一番手っ取り早いので(笑)。買い取りではないですが、すでに会員制のCtoCファッションレンタルサービス「HURR Collective」が2018年にロンドンでスタートしており、これはかなり試してみたいサービスです。日本では個人間のレンタルサービスはいくつかあるものの、まだファッションに特化したものはないので今年辺り出てくることを期待しています。どなたか!

 2020年の「大転換」はまだ予想されているだけ。ファッション業界だけではなく、業界を取り巻く業界だけではなく、社会の仕組みの一つとしてファッションを考えたときに、やらなければいけないことはまだまだ山積み。この現状をいかに転換していくか。そのヒントは、この数年でやってきたことの中にたくさん隠れている気がします。

Azu Satoh : 1992年生まれ。早稲田大学在学中に渡仏し、たまたま見たパリコレに衝撃を受けファッション業界を志す。セレクトショップで販売職を経験した後、2015年からファッションベンチャー企業スタイラーに参画。現在はデジタルマーケティング担当としてSNS運用などを行う。越境レディのためのSNSメディア「ROBE」(@robetokyo)を主催。趣味は、東京の可愛い若手ブランドを勝手に広めること。ご意見等はSNSまでお願いします。Twitter : @azunne

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「昔から、ランウエイコレクションは価格を度外視して自由に作りたいと考えていた」 by マーク・ジェイコブス

マーク・ジェイコブス

 昔から、ランウエイコレクションは価格を度外視して自由に作りたいと考えていた。その一方で、手の届く価格帯でファッショナブルな洋服を提供したいという思いもあった。誰のせいで失敗したのかを言うつもりはないが「 マーク BY マーク ジェイコブス(MARC BY MARC JACOBS)(以下、マークBY)」は正しい方向性だったと思っているし、特に初期の頃は素晴らしい出来だったと思う。「ザ マークジェイコブス(THE MARC JACOBS)」は、かつての「マークBY」をリニューアル、もしくは再始動したようなものだ。(「WWDジャパン」vol2087 2019年6月10日号掲載)自身のブランド「マークジェイコス」のディフュージョンラインとして登場した「マークBY」は爆発的な人気を呼んだが、2015年に終了。その後継とも言える「ザ マークジェイコブス」を立ち上げた理由を聞かれていわく

The WORDS
ファッション業界人の残した名言を日々の糧に。デザイナーやバイヤー、社長、編集長らの心に響く言葉をお届け。

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パリ素材見本市、コロナウィルスの影響で中国企業100社近くが出展取り止めか

 2月11日に開幕したパリの大型ファッション素材見本市「プルミエール・ヴィジョン(PREMIERE VISION以下、PV)」を、新型コロナウイルスが直撃した。1755社が2020-21年秋冬向けのテキスタイルを中心に糸、レザー、資材、図案、縫製などのカテゴリーに分かれて出展しているが、縫製カテゴリーは97社の出展者の大半が中国企業のため、会場のホール2を一つ丸ごと閉鎖した。その他のテキスタイルや糸、資材などでもブース自体のない場所が点在している。PVの運営当局は出展を取り止めた企業については公表していない。

ブースに生地サンプルがない

 中国のある有力テキスタイルメーカーのブースにはサンプルが一切なく、ブースに立つのは欧州の契約エージェントが2人。英国のエージェントの女性は「中国からスタッフが渡航できず、通常そろうはずのテキスタイルサンプルはない。急きょ中国から送られてきた見本帳で対応している」と話す。その他の出展がかなった中国テキスタイルメーカーのブースでも、サンプルの数は少なく、ブースに立つのは欧州のスタッフが目立った。

中国からの来場者の姿はほとんどなし

 来場者数も目に見えて少ない。中国からの来場者の姿はほとんどなく、アメリカやイタリアのメーカーも中国、香港、台湾のスタッフの渡航を取りやめるといった措置を取っているという。主催者であるPVの中国担当スタッフの姿もない。

 中国以外の企業も、多くの人が集まるトレードショーはリスクがあると渡航を取りやめたところも多いようだ。ある出展社からは「北欧ブランドが急きょとりやめた」とも聞いた。

PVとしての提案は「握手やハグは控えましょう」

 会場には「健康のために握手やハグは控えましょう」という看板が立てられ、また空きブースはないものの、出展を取りやめた企業のスペースを用いて、通常はほとんどない椅子とテーブルを置いたレストスペースが複数設けられている。

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【動画】「アーバン・ファミマ!!」のキーマンが語るコラボレーションの裏側

 アーバンリサーチ(URBAN RESEARCH)とファミリーマート(FAMILY MART)のコラボレーション店舗「アーバン・ファミマ!!」が2月12日、虎ノ門ヒルズ ビジネスタワーにオープンした。大手コンビニとアパレルの初めての取り組みということで、内覧会にもさまざまなメディアが来場し、注目度の高さがうかがえた。「WWDジャパン」はキーマンの一人、アーバンリサーチの齊藤悟事業支援本部 販売促進部シニアマネージャーを直撃。コラボレーションのきっかけや目的などについて聞いた。

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大坂なおみ選手が「アディアム」とコラボ!三越伊勢丹HDが事業終了する「アナ スイ」の行く末やいかに NYコレつれづれ日記VOL.3

 2020-21年秋冬のニューヨーク・コレクションが佳境を迎えております。日本では新型肺炎の感染が拡大していますが、NYでは市民の生活にそこまで大きな影響は出ていない模様。しかし、NYコレとしては大きな変化が……!中国のバイヤーやジャーナリストの姿をあまり見かけないのです。中国のバイイングパワーや生産パワーに拠っている部分が大きい昨今の世界のファッション産業、一体どうなっちゃうんでしょうか。などといったことも考えつつ、NYコレ4日目のダイジェストをどうぞ!

フィービーロスな大人女性も歓喜!絶好調「ザ・ロウ」の上質エレガンス

 4日目は、オルセン姉妹による「ザ・ロウ(THE ROW)」から日記スタート!こちらのブランド、伊勢丹新宿本店3階のバイヤーが「19-20年秋冬に伸び率が最も高かったブランド」にあげており、現在絶好調です。以前は「コート1着50万円から!」って感じでしたが、このところウエアも雑貨ももう少し買いやすい商品(バッグで10万円前後など)も出していて、クリエーションが素敵なのはもちろん、ビジネスの舵取りも巧みでございます。今季のショーは、ビバリー・ペッパー(Beverly Pepper)さんという、先日亡くなられたアメリカの女性アーティストの彫刻などが置かれた空間で実施。会場に漂うインテリジェンス濃度の高さは、確実にNYコレいちです!チャコールグレーやブラウンのワントーンで見せる、上質なリラックスエレガンスにうっとり。フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)が表舞台を去り、何を着ていいかが分からなくなっているかつての「セリーヌ(CELINE)」ファンにも、ドンズバではまるブランドだと思います。

「ザ・ロウ」2020-21年秋冬ショーから

“ギャル度”はNYで一番!「アリス アンド オリビア」であげぽよ~

 「ザ・ロウ」がインテリジェンス度ナンバーワンなら、「アリス アンド オリビア(ALICE + OLIVIA、通は“アリオリ”と略す)」は“ギャル度”ナンバーワン!こちらのプレゼンで見るべきは新作を身に着けたモデルではなく(いやそれも見るべきですが)、会場に詰め掛けた熱気あふれるファンのギャルたち。ギャルがアゲアゲな感じで写真を撮りまくっててー、モデルもそれに応えるように盛れる感じにポージングしてくれてー、マジ最&高!あげぽよ~!!な感じなのです。……って、まるで茶化しているかのようになりましたが、そうではなく、これこそ人をハッピーにするファッションの力だなと思うのです。「ギャルと『アリオリ』は地球を救う」だよ、マジで!

「アリス アンド オリビア」2020-21年秋冬プレゼンテーションから

グランドスラム優勝後に「アディアム」を着た大坂選手が見たい!

 エレガントな奥さま層に人気の「フォクシー(FOXEY)」の創業者ご夫妻のお嬢さまで、コロンビア大卒の才媛、前田華子さんによる「アディアム(ADEAM)」は、今回プロテニス選手の大坂なおみさんとコラボ!もちろん大坂選手も会場に駆けつけました。アスリートは姿勢がよく、たたずまいに無駄がなく、パワフルなオーラを放っていて本当に美しい!大坂さんとのコラボというからにはスポーティーなアイテムを作ったのかしら?と思いますが、コラボ商品は意外や非常にエレガントなドレス群。黒いレースをたたいた真っ白なドレープミニドレスなど、大坂選手の締まった体によく似合いそうです。是非グランドスラムで優勝してこちらのドレスを着ていただきたい!

「アナ スイ」先生ご乱心?よろしくお願いしますよ先生!

 20年3月末で三越伊勢丹ホールディングス(HD)がファッション事業を終了すると発表し、世の中をザワつかせた「アナ スイ(ANNA SUI)」。コスメは今後も継続とのことですが、「この先このブランドはどうなっちゃうのかしら!」などと思いながらショーを鑑賞。……が、ダークファンタジー&ゴスな照明により、服も化粧もほぼ見えず!ブランドの行く末を暗示しているかのように感じちゃったんですが大丈夫ですか?大丈夫じゃないですよね?帰りの地下鉄でヘアメイクがショーそのままのモデルを見て、初めて「ああ、こういう化粧だったんだな」と分かる始末。とは言え、熱烈なファンがしっかりといるブランドですので、アナ先生くれぐれもよろしくお願いしますよ!!

「アナ スイ」2020-21年秋冬のショーから

レッドカーペットの常連「オスカー デ ラ レンタ」にもう1パンチを期待

 本日のトリはアメリカンクチュールの「オスカー デ ラ レンタ(OSCAR DE LA RENTA、以下、オスカー)」。会場はブライアントパークにある公共図書館の回廊です。先日のアカデミー賞でも、スカーレット・ヨハンソン(Scarlett Johansson)女史などが「オスカー」を着用し、ゴージャスな美を振りまいていましたが、そんな伝統あるレッドカーペットブランドをディレクションするのは、初日にショーをした「モンス(MONSE)」を手掛ける(比較的)若いデザインデュオ。16年に彼らがディレクターに就任し、伝統あるブランドをモダンに昇華することを目指してきたと思いますが、やはり大胆に変えるのは難しいのかも?2年半前にショーを見た時はより挑戦的でモダンな方向へと模索していたように感じたので、今季の安心感のある(=ややコンサバ)華やかなドレス群を見て、もう1パンチほしいようにも感じました。色使いや柄はかなり派手で、その点はなかなか攻めているんですけどね。が、このブランドの顧客が求めるものはまさに安心感のある華やかさだと思うので、これが正しい姿なのかも。

「オスカー デ ラ レンタ」2020-21年秋冬ショーから

番外編:NYで最も混んでいた店はリセールの「ザ・リアルリアル」だという現実

 「ザ・リアルリアル(THE REALREAL)」と聞いて分かったアナタはかなりファッション小売り通!こちら、ラグジュアリーブランドのリセールECサイト(つまりECが主体のコメ兵みたいな感じ)なんですが、ソーホーに旗艦店もあって、通りすがりに立ち寄ってみました。土曜の午後だったというのもありますが、これがまあかなり混んでおりまして。今回のNY出張中、最も混んでいたお店は今のところブッチギリでここです。そんなところに、消費の潮流の今を感じました。ちなみにこの旗艦店、VMDが非常にシャレてます。店頭のスタイリングはちゃんとスタイリストが組んでいそう。コメ兵との最も大きな違いはそこだと思う(どっちがいい、悪いとかではないです)。

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D2Cはただの直販ではない タクラムの佐々木康裕ディレクターに聞く“その本質”とは?

 ここ数年でトレンドワードとなった “D2C(Direct to Consumer)”。かつてはスタートアップ企業が手掛けるD2Cブランドが多かったが、最近は大手企業もD2Cブランドをスタートさせるなど、大きな広がりを見せている。その一方でD2C=直販=中抜き構造(中間マージンを省く)と捉えている人もいるが、それはD2Cの一面でしかない。ではD2Cの本質とは何か。今回、ビジネス書「D2C 『世界観』と『テクノロジー』で勝つブランド戦略 」(NewsPicksパブリッシング)を1月に出版したタクラムの佐々木康裕ディレクターに話を聞いた。

WWD:まず佐々木さんが考えるD2Cの定義を教えてください。

佐々木康裕(以下、佐々木):D2Cはメーカー業であるとともに、メディア業でもあり、テック業でもあるのが特徴です。いかにデジタルを駆使して顧客とコミュニケーションを取り、エンゲージメントを高めていくかが重要で、単なる“中抜きのメーカー業”ではないということは理解しておいた方がいいですね。

WWD:最近は日本でも多くのD2Cブランドが誕生してきました。一方でただのトレンドではないかといった意見もありますが?

佐々木:そうは思いません。これからはD2Cという考え方がブランドを運営する上で基本原則になっていくと思っています。D2Cは、「デジタルでお客さまと直接つながって、意見を聞いて、求める以上のものを作る」というのが根本的な考え方です。これまでの「物を売るのがゴール」ではなく、開封体験、実際の使用方法、アフターケアなど購入後のストーリーまでを考えてお客さまと向き合うことが大切なのです。そういう考え方を持たないブランドが、中抜きのビジネスモデルだけをまねしてD2Cブランドというのは、本質的なところではD2Cとは言えない。

WWD:D2Cの強みは顧客データを収集できるという部分にあるといわれていますが、それは伝統的なブランドでもやっているのでは?

佐々木:D2Cの場合は毎日多くのフィードバックが得られるので、それをもとにすぐに改良できるのが強みです。ある意味でソフトウェア型の考え方で、製品も大きな部分は変えていなくても、細かい部分などはかなりの頻度でアップデートしているんです。そこがIT企業に近い部分で、伝統的なブランドだと時間がかかってなかなかできない。また購入動機や購入層などを知ることができるのでプロモーションに活用できたりしますし、SNS広告でも「どんな写真で、どんな時間帯、どんな内容の投稿が支持されているのか」も分かるので、データに基づいてしっかりとマーケティングができます。

WWD:日本では「GU」などはかなり顧客データを活用していますが?

佐々木:そういう意味では「GU」や「ユニクロ」はかなりD2Cに近い考え方のブランドだと思います。

WWD:少しうがった見方をすると、D2Cブランドは物のよさよりもデジタルマーケティング力で差がつくのではと思うのですが?

佐々木:「この時間に、こういう投稿をすると伸びる」みたいなことが分かるので、それをハックするだけで実際に数字が上がってしまうという現象は起きています。ただそれは他のブランドもすぐにまねするので、長続きはしない。もともとD2CブランドはSNSを使って安いコストで高いエンゲージメントを獲得して顧客化していくという流れが一般的でしたが、最近はSNSの広告費が高騰し、そうしたデジタルだけでの戦略では長続きしなくなってきています。そのため、今はD2Cでもリアル店舗を持つことが重要になってきていて、店舗に来た人を顧客にするという流れになっています。だからこそ品質がよくないと売れないし、生き残っていけないんです。

WWD:海外ではD2Cのユニコーン化(企業価値評価額が10億ドル以上で、未上場ベンチャー企業)が話題となっていますが、一方で「過大評価なのでは」という意見もあります。

佐々木:たしかにアメリカでは投資家から注目が集まって大量の資金が集まっている分、過大評価されているD2C企業もいくつかは存在すると思います。まだまだブームとして取り上げられることも多いので、それが落ち着いたらきちんとした評価になるのではないかと思います。ただ、だからといってD2Cというビジネスモデルが有効であることには変わりはありません。

D2Cはビジネスモデルであるとともにステージでもある

WWD:佐々木さんの著書では「D2Cブランドはある程度の規模になったら、従来のマスブランド的なアプローチになる」という趣旨のことを書いていましたが、そうするとこれまでのマスブランドと変わらなくなるのでは?

佐々木:D2Cはビジネスモデルであるとともに、ある意味では “早期に顧客を獲得して売り上げを伸ばしていく”というステージの名前でもあると思います。一定の規模、日本だと20~30億円ほどまでくると、さらなる成長を目指して店舗展開やテレビCM、小売りへの卸しといったマスへのアプローチが必要になってきます。直営店を増やして多店舗化していくことが成長にもつながっていきます。海外ではD2Cスタートアップでも将来的にどう小売りへ卸していくか、その戦略がないと投資が受けられないという話も聞きます。そのためスタートアップ企業はD2Cというステージからいかに早く抜け出して、マスブランドへ成長していくかも考えなくてはなりません。

WWD:そうなると既存ブランドと同じようになってしまい、お客さまが離れていくのではないですか?

佐々木:「知る人ぞ知る」みたいなニッチなブランドが好きな人は離れていくかもしれませんが、基本的にD2Cというのは“世界観”と“お客さまとのコミュニケーション”を大事にしているので、ブランドに対してのエンゲージメントが高く、規模が大きくなったから離れるというのは少ないのではないでしょうか。ただそれによって今までよりも質が下がるなどがあるともちろんお客さまは離れていくと思いますが。

WWD:もともと直販でやっていたものを卸すとなると、その分利益率も悪くなるのでは?

佐々木:D2Cブランドにとってはそれがすごくジレンマいなっています。アメリカでは、顧客データを共有するかわりに、流通側に渡すマージンをすごく低くするなどといった特殊な契約を結んでいるブランドもあると聞きます。あとはスケールメリットで、1個あたりの利益は減っても、数は売れるので全体としての利益は上がるという考え方ですね。

WWD:D2Cというとスタートアップ企業が行うビジネスというイメージでしたが、最近は大手企業でもやり始めています。

佐々木:たしかにナイキ(NIKE)やP&G、ウォルマート(WALMART)など大手企業もD2Cをやり始めていますね。それはD2Cというのが早期に顧客を獲得でき、かつ密度の高い顧客エンゲージメントを獲得できるビジネスモデルだからで、大手でもスタートアップでも変わらないと思います。ただ大手の場合だと、自社でD2Cブランドを立ち上げる以外にも、買収や提携といった選択肢もあります。

WWD:アップル(APPLE)は究極のD2Cだといわれていますが、どう思われますか?

佐々木:まさにそうですね。あの規模であれほど高い利益率はすごい。基本的には直営店か、かなり管理されたショップインショップでどこでも世界観が統一されている。さすがとしか言えないですね。

WWD:日本で注目しているD2Cブランドはどこですか?

佐々木:オーダースーツのD2Cブランド「ファブリック トウキョウ(FABRIC TOKYO)」です。代表の森(雄一郎)さんのD2Cビジネスへの解像度の高さ、資金調達額、規模感などは日本ではずば抜けているなと思います。「ファブリック トウキョウ」が成功すれば、D2Cのビジネスモデルがさらに注目されるので、とても期待しています。

WWD:日本でもさらにD2Cブランドは増えていくと思いますか?

佐々木:そうですね。先ほども言ったように、D2Cはブランドを始めるハードルを下げつつ、早期に顧客を獲得できるビジネスモデルなので、今後2~3年で今の何倍ものスタートアップが生まれると思います。

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編集長は先週何した? 卒業審査会シーズン 大阪通いでガラ空き新幹線に驚く

 みなさん、こんにちは。「WWDジャパン」編集長の向千鶴です。コロナウイルスの影響で、イベント中止のお知らせが連日届きます。特にインポートブランドが日本で開くグローバルイベントは中国から人を呼べないためほぼ中止で、店頭も大打撃です。香港の友人からは「人を誘う、集うという行為が非常に微妙でウィルス気疲れ症候群が発生している」とLINEが届き気持ちがふさがります。だけどふさいでいても仕方なし。「美味しい物を食べて、よい景色見て免疫力高めて優しくあろう(笑)」と互いを鼓舞してLINEを〆ました。他人事ではないですが、一番大変なのが中国であることは間違いなし。頑張れ中国!

2月3日(月)
新大阪行き新幹線はガラガラ

 セミナー登壇のため大阪出張のこの日、新大阪行き新幹線が空いていて驚きました。こちらは新大阪に着く直前の、のぞみの車内です。新大阪行きですし、京都で大勢が降車した後ではありますが、それにしても月曜日の朝9:30ですから、いつもなら出張者と観光客で混み合っていた気がします。海外からの観光客が激減していますね。これでは売り場はキツい…。最後の一枚はせめてもの和みのサービスカットです。

2月6日(木)
毎日ファッション大賞から
「アンリアレイジ」Tシャツ

 毎日ファッション大賞の事務局の方が来社され、第37回大賞を受賞した「アンリアレイジ(ANREALAGE)」と取り組んだTシャツを紹介してくれました。ボディーは同じく昨年、特別賞を受賞した日本環境設計によるもの。賞を授与するだけではなく、「形に残すことで一人でも多くの方に知ってもらい、環境問題にも関心を持ってもらえたら」とのこと。売り上げの一部はグリーンベルト運動に寄付されるそうです。こういったことは手間がかかるけど、大事ですよね。行動力あるのみです。ちなみに、Tシャツは毎日新聞社のオンラインストアで販売しています。

2月6日(木)
特集「メンズ2020-21年秋冬メンズ特集第2弾」
責了と今日のおやつ

 女がスラックスを履くように、男性がワンピースを着たって全くもって良いのです。男性が泣きたいときに泣ける社会になったら、日本はホントにもっと強くなれると思います。今日のおやつは丸久小山園の宇治抹茶を使ったグリコの高級ポッキー「バトンドール」。濃厚!

2月7日(金)
大阪文化服装学院の
卒業審査会

 今週2度目の大阪は羽田から飛行機で出張。伊丹空港行きJAL便は満席でマスク着用率98%。異様な光景でした。

 向かったのは、大阪文化服装学院の卒業コレクション。イタリア、スペイン、韓国など海外からの学校関係者も多数来日してフロントローに座り盛り上がりました。卒業作品を通じて知る若者たちの視点や興味は刻々と変わっていくから興味深い。今年は女性が強かった!テーマ設定の背景を聞くと「就職活動でアパレルの面接官が男性ばかりで違和感があった」といった話になります。若者は大人たちをホントよく見ています。

2月8日(土)
中部ファッション専門学校の
卒コレ審査

 愛知県は知立にある中部ファッション専門学校の卒業コレクションの審査会へ。会場は栄にあるイベントホールです。名古屋は大阪や東京よりも心なしかマスク着用率が低く、電車の中のピリピリ感も低めで少しホッとしました。ポートフォリオをじっくり見た後にショーで作品を審査。アイデアから始まり、服へと展開してゆく学生たちの頭の中をのぞくようで楽しいです。

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レア物スニーカーのリセール店がこんな場所にあるなんて! 「キス」で「コレット」の残り火に遭遇 NYの小売り事情をパトロール

 引き続き、ニューヨークに出張中です。アメリカ経済は現在非常に好調なはずですが、小売り関連のニュースだけ見ていると、米「バーニーズ ニューヨーク(BARNEY’S NEW YORK)」の破綻&買収、百貨店「メイシーズ(MACY’S)」の125店閉鎖&2000人削減など、「景気、全然良くないよね!?」と突っ込みたくなります。ただ、前回紹介したD2Cのように、小売りの中でもグングン存在感を増している分野があることは確か。小売業全体が苦しいのではなく、「バーニーズ」にしろ「メイシーズ」にしろ、変化&進化してこなかった企業がにっちもさっちもいかなくなっていると見た方がよさそうです。そんな視点で、NYのファッション関連の小売店を巡ってみました。

オゴれるものも久しからず? かつての最先端「アンソロポロジー」は今

 前回の記事で紹介した眼鏡D2C「ワ―ビー パーカー(WARBY PARKER)」の店へ行く途中、スペシャリティーストア(いわゆる高級セレクトショップ)の「ジェフリー(JEFFRY)」に寄り道しました。「バーニーズ ニューヨーク」が経営破綻した今、スペシャリティーストアって全体的にどうなんだろう?と思いながらの入店です。平日の昼間というタイミングもよくなかったんでしょうが、客は私以外にほとんどおらず。しかし店員さんは皆陽気で、ほどよく積極的な接客はグッド!陽気なのはアメリカの国民性と言えばそれまでですが、直前にチェルシーマーケットで立ち寄っていた「アンソロポロジー(ANTHROPOLOGY)」は、客はいないしセール品はズッシリ詰まっているし、その上、店員は挨拶もそこそこに作業に没頭しているか同僚とおしゃべりしているかという状況でした。価格帯が全く異なる2店なので、比べるのはナンセンスかもしれませんけども。

 「アンソロポロジー」って、ライフスタイル提案型SPAの先駆けとして、10年前くらいまでは日本の大手小売りもかなり注目していた店だと思います。そう考えると時代の流れって残酷ですね。でも、私が初めてNYで「アンソロポロジー」を見て憧れたころ(17年前)と、店頭の編集の仕方が大して変わっていないように感じるので、そりゃあライフスタイル提案が当たり前の時代になったら、埋もれちゃいますよね。などと考えながら直近の四半期決算の数字だけサラっと追ったところ、「アンソロポロジー」の業績は悪くないようでしたので、影響力は弱まりつつも苦境の底は打っているのかもしれません。

「ストリートウエアに未来はない」って本当? 「キス」は引き続き大人気

 お次はスニーカーヘッズに大人気のストリート系ショップ、「キス(KITH)」のソーホー店をパトロール!ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が昨年末に、「ストリートウエアに未来はない」なんて口にしてストリート界には激震が走りましたが、ひっきりなしに客が入ってくる「キス」を見る限り、私はがぜん未来を感じました。……少なくとも、「アンソロポロジー」と「ジェフリー」よりは未来を感じました。EC全盛時代に世界中からスニーカーヘッズ&私のようなおのぼりさんがこれだけ集まる店って、すごいですね。もちろんヴァージルは、こうした現時点での盛り上がりではなく、もっと大局を見て「未来はない」と語ったんでしょうけど。

 さて、2階奥のスペースに特に人が群がっているので何かなと思ったら、懐かしの「コレット(COLLETE)」がポップアップをしているじゃないですか!「コレット」といえば、17年末に惜しまれつつ閉店したパリの名店ですが、「キス」とストリートメディア「ハイスノバイエティ(HIGHSNOBIETY)」との三者コラボで、フーディやTシャツ、「ケースティファイ(CASETIFY)」のiPhoneケース、iPodsケースなどを売っていましたよ。「コレット」を閉める際、創業者の娘でクリエイティブ・ディレクターだったサラ(・アンデルマン、Sarah Andelman)が「今後は他社のポップアップイベントのディレクションなどを行っていく」と話していましたが、店はなくなってもこうやって魂は受け継がれていくんだな、と胸がアツくなりました。そして同時に、そりゃこっちの方が固定費かからないし、バズ(話題性)が重要な時代には売り方として効率がいいよね、などと下世話なことを思ったのでした。

「アメリカンイーグル」がスニーカーのリセール店とタッグ 日本にも広がる?

 さて、次に訪れたのは「アメリカンイーグル アウトフィッターズ(AMERICAN EAGLE OUTFITTERS、以下AEO)」のソーホー店。「AEO」は19年末をもって日本からは全店撤退したので、本国の雰囲気を一応見ておかねば、くらいの軽い気持ちで入店したんですが、店をずんずん奥に進んでいくとそこには衝撃の光景が広がっていました……!店の奥の広大なスペースが、プレミアムなスニーカーやTシャツ類のリセールショップになっていたんです。「AEO」の売り場にもまあまあ客はいましたが、リセールショップにいた客数はそれを遥かに超える量。話には聞いていましたが、アメリカのリセール熱って本当にすごいんですね。

 「この店、一体何なの?」「『AEO』がリセール業態も持っているのか?」など、次々と疑問が浮かび調べたところ、「フットウエアニュース(FOOTWEAR NEWS、以下FN)」(WWDと系列が同じメディアです)に記事が出ていました。それによると、このリセールショップは「AEO」が自前で手掛けているのではなく、ラスベガス発のリセールショップ「アーバン ネセシティーズ(URBAN NECESSITIES、以下UN)」が「AEO」と組み、19年5月に出店したもの。正直、「AEO」って、アメリカの(そこまでファッションに興味のない)一般的な若者が着ているイメージだったので、この2つにシナジーなんてあるのか?と思いましたが、「UN」創業者のジェイシー・ロペス(Jaysse Lopez)は、「『AEO』と話し合いを始めた時、確かに最初は合うのかな?と思ったけど、よくよく考えれば『AEO』はアメリカでもっともジーンズを売っている企業の一つ(それゆえスニーカーと親和性はある)。『UN』の店頭に来る客をよく観察してみたら、10人に4人は『AEO』の商品を着ていたんだよね」と、「FN」に語っています。ちなみにこの「UN」、創業は14年9月で、18年の年間売上高は2000万ドルだとか。

 「FN」によれば、「AEO」が店内でリセール品を売ることには批判もあるようです(リセール品を売ることで、「AEO」が「ナイキ(NIKE)」や「アディダス(ADIDAS)」といったブランド名を“利用”することは許されるのか、といった内容の批判)。「AEO」にとっては、「UN」とのタッグはなかなか挑戦的な判断だったんじゃないでしょうか。「小売りはもはや(既存の手法が)ブッ壊れているから、客の来店意欲を高める策を模索しないといけないんだよ」とロペスのインタビューは続くんですが、まさにその通りで、「AEO」は批判を恐れず模索しているんだな、と。模索せずやり過ごすと、「アンソロポロジー」「バーニーズ」「メイシーズ」のように取り残されるだけですから。

 日本で「AEO」と「UN」の取り組みに近い動きだと、ワールドが18 年に、ブランド古着のリセールショップ「ラグタグ(RAGTAG)」の運営会社を買収しています。そのうちワールドが運営する「タケオ キクチ(TAKEO KIKUCHI)」の原宿路面店に「ラグタグ」が併設される時代が来るのかも?

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元祖チャーリーズ・エンジェル降臨の「トリー バーチ」やジムでワークアウトが最新ランウエイ?の「クロマット」 NYコレつれづれ日記 VOL.2

 2020-21年秋冬ニューヨークコレクションの2日目、時差ボケがなかなか治らない編集部員2人です….!本日はバックステージの取材をはじめ、ビューティ編集部の北坂が1日のレポートをお届けします!

ラメが上品に煌めく「トリー バーチ」のロマンチックメイク

 本日はトリーバーチ(TORY BURCH)のバックステージからスタートです!朝7:00が私たちプレスのコールタイム(入り時間)とバックステージ取材は朝早いですが、モデルやスタッフはさらに入り時間が早くて大変ですね、、、。さて、今季は資生堂傘下の「NARS」とロレアル(L'OREAL)傘下の「レッドケン(REDKEN)」がヘアメイクを協賛していました。資生堂がトリーバーチの化粧品ライセンスを取得したので「NARS」が協賛するのは納得ですね。メイクは「NARS」のマットなブラウンシャドウの上に、新作のラメアイシャドウ「パワークローム ルース アイ ピグメント」を3色、その上に細いアイラインで目尻を跳ね上げていました。このラメのアイシャドウですが、箔のようにキラッキラのラメが目元にフィットするもので、今まで使ったラメのシャドウの中でも発色+ラメ感が最高ですね!(3月に日本でも限定発売するようなので早めにチェックすることをオススメします!)ヘアは耳周りをねじって後ろで止めた、とてもロマンチックなスタイル。バックステージでは最近ネットフリックスで公開されたドキュメンタリードラマ「CHEER」のスター2人を発見!元チアリーダーの私はちょっぴりテンション上がりました(笑)。そして注目のモデル、美佳さんもおりました!

「チャーリーズ・エンジェル」のルーシーやAMIAYAが来場した「トリー バーチ」

 そのまま「トリー バーチ」のショーを鑑賞。今季はアーティストのフランチェスカ・ディマティオ(Francesca Dimattio)の彫刻がインスピレーション源。彼女はポップカルチャーや歴史などから着想を得て、カラフルな陶器やフラワーピースなどを組み合わせることを得意とし、会場には彼女の作品が多く置かれていました。ちなみに今回はサザビーズが会場のため、入るのに荷物検査が行われ、会場には麻薬探知犬がいるなど、警備体制はこれまで以上に厳しい!洋服はレトロな小花柄のセットアップやワンピースなど、ロマンチックでありながらどこかノスタルジックな雰囲気も漂うものでした。シルエットは全体的にリラックスしていて、素材も歩くと風を孕むような軽やかな素材が多く、品がありながらフェミニニン、まさに「トリー バーチ」ガールそのものでした。そして多くのモデルがロングブーツを履いていて、これは久しぶりにヒットの予感が満々!会場には元祖「チャーリーズ・エンジェル」のルーシー・リュー(Lucy Liu)のほか、女優のジュリアン・ムーア(Julianne Moore)、人気双子モデルのブルスタイン(Blutstein)姉妹をキャッチ。日本からはAMIAYAがおそろいの花柄のドレスで登場し、カメラマンから引っ張りだこでした!

マネークリップドレスでカニエから電話?!

 ショー取材の合間には日本人ジュエリーデザイナーの奥田浩太さんのポップアップにお邪魔しました。巨大な1ドル札とマネークリップをドレス風に仕立てたルックが多くのセレブの目に止まり、話題の「コウタ オクダ(KOUTA OKUDA)」。お金をモチーフにしたシリーズはカニエ・ウエスト(Kanye West)も気に入って直接本人から電話があったとか?!ソーホーのギャラリーで開催中のポップアップでは過去の作品を見ることができるほか、グッズも購入が可能です。そんな彼にいろいろお話を聞いたので詳しくは後日アップする記事を楽しみにしていてください。

NYの街並みを一望できる高層ビルで発表した「シエス マルジャン」

 すっかりNYコレの常連になり、業界から評価が高い「シエス マルジャン(SIES MARJAN)」。今季はハドソン川含めニューヨークの街並みを一望できる高層ビルの上層階で発表。マンハッタンの情景をバックに、柔らかなシルクのドレスやセットアップを着たモデルが颯爽と歩きます。デザイナーのサンダー・ラック(Sander Lak)が得意とする捻りを効かせたドレーピング術は少ない印象でしたが、オーバーサイズのシャツやロング丈のニットなど、今季はさまざまなプロポーションで遊んでいたのが面白かったです。ユニークな素材は相変わらず健在で、今季も複数人の職人と協業。特殊な方法で植物をプリントした素材や金箔加工したかのようなニット素材などがウエアに華を添えました。

オフィスウエアがこんなに可愛くなる「ザディグ」

 フランス発「ザディグ エ ヴォルテール(ZADIG & VOLTAIRE)」が久しぶりにニューヨークに帰ってきました。スーツジャケットの2枚重ねやチェック柄のセットアップ、アーガイルセーターにカラードシャツなど、ちょっぴりレトロなオフィスウエアがたくさん登場。でも“古臭さ”を一切感じさせないのは、アイテムのバランスが絶妙だから。個人的にはオーバーサイズのかっちりジャケットに超ミニスカート、レザーのニーハイブーツの組み合わせがなんとも可愛く、真似したくなりました!とてもシンプルだけど、可愛かったですね。ここでもレザーのロングブーツがたくさん登場し、いよいよトレンドとして再浮上するのでは?と確信しました。

モデルが急に目の前でワークアウト?

 さまざまな体型のモデルを数々起用してきたインクルーシヴなスポーツウエアブランド「クロマット」はスポーツジムで発表。ジムを会場にモデルが歩いて登場するのかと思いきや、トレーナーを前に、本気でサーキットトレーニングとダンスを開始!汗だくになりながら運動をするモデルの周りをインフルエンサーやプレスが囲い、スマホで撮影するというなんともシュールな光景でした。でも実際に使っているところを披露するという、ある意味スポーツウエアの正しい見せ方なのでは?義足のモデルやプラスサイズのモデルももちろん本気でエクササイズをしていて、観客も一緒に盛り上がっていました。こういうの、本当にアメリカっぽいなぁと思っちゃいます。ちなみに帰り際にはトイレの後に使う消臭スプレーという、謎のお土産をいただきました(笑)。

全くマリファナ臭くなかった「パーム エンジェルス」会場

 数シーズン前にニューヨークで発表した際、会場中にマリファナ臭が充満したことが強烈な印象を残しましたが、今季は全くその気配はなし!そんな会場の様子が物語るかのように、今季はゴテゴテのストリートスタイルから一変、ウエスタンやインディアンをイメージしたアイテムを連発。カウボーイシャツやフリンジ付きのスカートやパンツ、スエードブーツ、ポンチョなどを、少しダボっとしたサイズ感で仕立ててストリートの要素を残し、可愛かったです。マリファナ臭はなくとも、スニーカー大好きなストリートキッズ(キッズなのかは怪しい)は相変わらずフロントローを埋め尽くしていました。

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セレブ集結!! 「トム フォード」がロスで最新ランウエイショー、フィナーレで視線を送ったのは、誰?

 2月上旬。いつもならムラカミは、「やっぱナマ足は寒いねぇ」なんて言いながら、ニューヨーク・コレクション取材のためメガロポリスをショートパンツで駆けずり回っているハズです。でも、今はロサンゼルス!!今年はちょっぴり寒いみたいですが、それでも最高気温は20度オーバーのロサンゼルス!!NYにいる五十君&北坂記者、寒空の下、お疲れ様でございます。

 なぜムラカミはLAなのか?と言いますと、目的の一つは、今週記事をアップするビューティイベントのため。そしてもう一つは、「トム フォード(TOM FORD)」の2020−21年秋冬ファッションショーのため、なのでございます。トム樣は昨年、アメリカファッション協議会(COUNCIL OF FASHION DESIGNERS OF AMERICA)、つまりアメリカのデザイナーで構成する組合のトップに就きました。20-21年秋冬は就任2シーズン目ですが、なんと会長は昨年、「今回は、NYファッション・ウイークではなく、ロサンゼルスに」と宣言してしまったのです。「え~、会長がNYを離れちゃうの?」なんて意見もありましたが、トム様は「NYファッション協議会じゃなくて、アメリカファッション協議会だから。それにアメリカン・ファッションとセレブリティの関係は、切っても切り離せないもの。アカデミー賞の時期は、ロサンゼルスで見せる方が『トム フォード』、そしてアメリカン・ファッションらしいじゃないか」と反論して2月7日、アカデミー賞授賞式の前々日にLAで有名な撮影スタジオ、ミルク スタジオ(MILK STUDIO)でランウエイショーを開催してしまったのです。まぁ正直、「俺なら、どこでやっても来る人は来てくれる」と言う自信(そして、ムラカミはノコノコやってくるw)とか、「SNSの時代、メディアが減っても、セレブがくれば大丈夫」という戦略もあったことは間違いありません。

 さて、そんなトム様の言葉通り、20-21年秋冬ウィメンズ・コレクションには、そうそうたる顔ぶれのゲストが大挙襲来!!です。

 ご覧ください。この面々。カイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)は会場でお化粧直ししていると「それは、(自分が手掛けている)『カイリー・コスメティクス(KYLIE COSMETICS)』なの?」とパパラッチに質問され、ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)の隣には、レネー・ゼルウィガー(Renee Zellweger)。デミ・ムーア(Demi Moore)がやって来たかと思えば、音楽界からはドクター・ドレー(Dr. Dre)やリル・ナズ(Lil Naz)、K-Popのティファニー・ヤング(Tiffany Young)とCL(随分貫禄がつきましたw)。経済界からは、アマゾンのジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)最高経営責任者(驚)!!初めて見ました!!ブランドによると、残念ながらトム・ハンクス(Tom Hanks)は仕事の都合で来場叶わず、だったらしいのですが、さすがは「トム フォード」。そしてアカデミー賞ウィークのロサンゼルス!!ショーが始まるまでご一緒だったライターさんは、始まる前から「アフターパーティーはあるの?みんな、来るの?」と大興奮。そして改めて「トム フォード」って、セレブに似合うなぁ、と痛感します。

 肝心のコレクションは、「トム フォード」らしくもロサンゼルスらしく、しかも、とっても今っぽい。サイコーでした。

 「ロサンゼルスで見ているから」と言うのも大きかったと思います。まずは序盤の、切りっぱなしのスエットのノースリーブに、総刺しゅうのスカートのルックで、ほとんどすでにノックアウト。その後も、ピタピタのロゴスエットにしっかり肩の入ったジャケット、パッチワークデニムのスカートとか、深いVネックが特徴のタイダイポンチョにスエットのジョギングパンツなど、「トム フォード」らしい官能的なセクシーさと、LAっぽいカジュアル、それに齢を重ねてきた最近のトム様が志向するピースフルな雰囲気が絶妙に入り混じり、「カッコいい!!でも、(8頭身じゃなくても)着られるかもしれない。もちろん、値段はさておき」という“うっとり”スタイルが続きます。アクセサリーは、大きなフェザーのイヤリングに、彫刻を施した柱のようなヒールのウェッジソール。大きなトートか小さなショルダー、もっと小さなiPhone&AirPodsケース。たった3つのアクセサリーでも、迫力の「トム フォード」らしさ、変わらぬクラシックへの敬意、そして、新しきに挑戦する意欲を感じるのです。

 メンズは、ミラノでも拝見した、明るいパステルに彩られたシルクサテンのスーツ。するとウィメンズも鮮やかなカラーパレットに一転。フューシャピンクやスカイブルーのざっくりニットに、同系色のスパンコールスカートという、これまたカジュアルとセクシーが絶妙に入り混じるスタイルに変わります。

 フィナーレは、シースルーのレース、ボンテージ、バストに大胆に走ったスリットがセクシーなブラックドレス。と思いきや、ラストは日本代表のモデル美佳ちゃんが、なんと純白のウエディングドレスで現れました!!BGMは、FugeesのKilling Me Softly With His Song。トム様ワールド、全開です。

 フィナーレのトム様は、今回も誰よりも演技派でクールでした。でも帰り際に目線を送った先には、ベルベットのジャケット姿の小さな男の子。彼がパートナーのリチャード・バックリー(Richard Buckley)と共に迎えた、子どもの姿がありました。数年前のインタビューで、「この僕が、オムツの交換で四苦八苦している。その時、現実っていうのはこんなモノで、それが素晴らしいと感じたんだ」と話してくれたことを思い出しました。あの時の価値観は、今も彼のコレクションに脈々と流れています。どんなにセレブがたくさんいても、どんなにセクシーでも、どんなにピカピカでも、ロサンゼルスらしい開放感と、育児真っ只中のリアリティ、そして、そこから日々感じる小さな幸せ。「トム フォード」のコレクションには、そんなバリューがたくさん散りばめられているのです。

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追記:【動画】世界チャンピオン長谷川裕也が語る“靴磨き2.0”

※※NHKは“新型肺炎に関するニュースなどのため”、「プロフェッショナル 仕事の流儀(靴磨き職人・長谷川裕也)」の放送を延期していましたが、3月17日夜10時からオンエアすることを決定しました。

 靴磨き世界チャンピオンで、東京・青山の靴磨き専門店「ブリフトアッシュ(BRIFT H)」のオーナーである長谷川裕也が2019年末に港区虎ノ門にオープンした、バー併設型の「ザ シューシャイン アンド バー(THE SHOESHINE AND BAR)」を訪問し、“靴磨き2.0”について聞いた。

 新メニュー“レザースニーカー磨き”(2500円)のビジネス的ポテンシャルとは?靴磨き世界チャンピオンに求められる“美しい所作”とは?さらに“どんなに疲れて帰っても、これだけはやっとけ”的超簡単ケア術についても教えを乞う。

 長谷川は、2月11日夜10時からオンエアされるNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」にも登場する。

■THE SHOESHINE AND BAR
時間:靴磨き11:00〜20:00、バー17:00〜23:00
定休日:日曜日、祝日
住所:東京都港区西新橋2-33-2先
靴磨き料金:2000~3000円
※毎週金曜日は長谷川が店頭に立つ

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「キャスパー」のお昼寝スポットで爆睡、「ワービー パーカー」でお買い物! 小売りの先端を行く街NYでD2Cを体験してみた

 2020-21年秋冬ニューヨーク・コレクション取材のため、現在NYに出張中です。正直、よほどのファッションオタクでもない限り、今の時代は「……NYコレクションって、やってたの?」ぐらいの温度感だと思います。しかし、小売業の最新事情をつかみ、日本市場の今後を予測するためにはNY視察は非常に重要!!……と言っても、NYに来るのは2年半振り、人生4度目で大してこの街に詳しいわけではないんですが、街を歩いて面白いと感じた小売り関連ニュースをざっとご紹介します。

広がるD2Cブランド集積売り場 魅力的な商品は少ない?

 NY到着日にまず向かった先は、チェルシーマーケット。古いクッキー工場を再開発して、食や物販のお店を市場風に集めている観光地です。お目当ては、“D2Cブランドのデパート”という触れ込みで19年末にオープンした売り場「ネイバーフッド グッズ(NEIGHBORHOOD GOODS、以下NG)」。説明不要かと思いますが、D2Cとはダイレクト・トゥ・コンシューマーの略で、平たく言えば「ネット起点で、顧客とガッチリつながってモノ作りをする(ゆえにECが主販路の)ブランド」のこと。日本でもD2Cがこのところやけに話題ですが、NYはD2Cの本丸だけに、新しい動きが多いのです。「NG」以外にも、D2Cブランドを試せる売り場がこのところかなり増えているようなので、出張中あちこち行ってみる予定です。

 で、この「NG」ですが、正直すごく魅力的だったかというと、そうでもなく……。ブランドごとに服や雑貨、お菓子などが陳列されており、一緒に背景にある思想やこだわりが説明されていたんですが、やはり実際の店頭ではモノ自体にそれなりの魅力がないと、いくらストーリーを説明されても心は動きづらいですね。そんな中でも、コスメのコーナーはパッケージなどにもこだわっていて、結構面白かったですが。D2C銘柄として有名なグルーミング製品の「ダラー シェイヴ クラブ(DOLLAR SHAVE CLUB)」も置いてありましたよ。

「ワービー パーカー」のち密なメールマーケティングがスゴイ!

 チェルシーマーケットを出てハイラインを南下し向かった先は、ミートパッキング地区の「ワ―ビー パーカー(WARBY PARKER)」です。こちらもD2Cの眼鏡ブランド。家で眼鏡を5本まで無料でお試しができ、気に入ったものがあればECで購入するという仕組みで有名ですが、実店舗もマンハッタンとブルックリンだけで既に11もあるようです。一体どんなものかと入店し、試しに数点かけてみたところ、これがとてもイイ!ごくごく個人的な感想ですが、日本の眼鏡SPAブランドの商品よりも素材に高級感があります(実際、95ドルなので日本の眼鏡SPAの中心価格帯より大分お高いんですけど)。で、店員さんと「どっちが似合う!?」「こっちのがいいんじゃない!?」「あなたにもっと合うフィッティング(鼻が低い人向け)があるわよ」などとワイキャイしていたら楽しくなってしまい、入店前は全く買う気がなかったのに購入してしまいました。

 眼鏡はもちろん、パッケージも付属の眼鏡拭きもかわいくて、気分がアガるんですよ。やはり、こういう風にモノ自体が素敵で、なおかつ店頭体験が楽しいと人はモノを買いたくなるんですね。店頭で購入する時も、ECと同様にEメールアドレス登録が必須で決済はカード。で、ここからがD2Cの本領発揮だと思うんですが、購入した日の晩にサンキューメールが届いたのはもちろんのこと、翌日には「あなたコンタクトレンズ使ってますよね?うち、コンタクトも出してるんでいかがですか?」といったメールが届きました。眼科医の処方箋を持っていなかったため、度入りレンズを入れずに眼鏡を購入した結果、恐らく「コンタクトのニーズあり」と判断されたんだと思いますが、その読み、当たっている……!この、顧客それぞれの生活に寄り添ってコマースしてくる感、さすがですね。こんなち密なメールマーケティングを繰り返されて、次から次へとニーズがありそうな商品を勧められたら、そりゃついついポチっちゃう日もあるよね、いやはや恐るべし。そんなことを思ったお買い物体験です。

上場も果たしたD2Cの最有力株「キャスパー」の術中にすっかりハマる

 さて、初日からあちこち動き周り、そろそろ時差ボケで苦しくなってきました。そこで向かったのはマットレスのD2C、「キャスパー(CASPER)」。わが編集部のD2Cの番記者(石塚)が「いやー、キャスパーとうとう上場ですよ」と出張前日に熱心に話していたので、NYで行くべきリストに加えていたのです。って言うと普通は店に行ったと思いますよね?しかし今回私が訪れたのは店ではなく(店も一応寄ったけど)、ブリーカーストリートの店舗に併設された、ウェブ予約制のお昼寝スポットです。こちら、「キャスパー」のマットレスや寝具で45分間のお昼寝or瞑想が可能なのです。日本との時差がマックスで辛くなる夕方を狙い、JFK空港からホテルに向かうタクシーの中で17時~17時45分の枠を予約していた私、グッジョブ!

 開始時間15分前にそこに着くと、受付でおしゃれパジャマブランド「スリーピー ジョーンズ(SLEEPY JONES)」のパジャマと、意識高い系スキンケアブランド「サンデー ライリー(SUNDAY RILEY)」の洗顔料や美容液のテスターを渡されます。洗面台付きの広い更衣室でパジャマに着替え、荷物をロッカーにしまったらいざベッドへ!指定の個室で布団に入り、電気を消したら3秒後には爆睡。40分後に自動で部屋のライトが点くと同時に目覚めましたが、なんということでしょう!さっきまで時差ボケであんなに辛かったのに、脳みそスッキリ爽快です!!

 再び着替えて受付でパジャマを返した後は、コーヒーや水、軽いスナックを自由に楽しめます。これでお代はしめて25ドルなんですが、時差ボケに苦しむ出張者や観光客にはかなりアリなんじゃないでしょうか!マットレスも枕もフカフカで、「次にマットレスを買い替える時は、『キャスパー』がいいかも!」という気持ちに十分なれました(実際のところ、日本からだとシッピング代がかさむので難しいと思いますけど)。マットレスって、合わない硬さを使うと背中が痛くなりますが、マットレス屋の店頭で一回本当に眠ってみることって、いくら厚かましくてもさすがにできません。かと言って、「ワ―ビー パーカー」みたいに家にサンプルが送られてきても、モノが大きすぎるゆえに扱い辛い。というわけで、自分が試しに行くというこの方式、かなりアリですね!

 パジャマが「スリーピー ジョーンズ」だったことを始め、空間の作り込みや演出にもすごく配慮していて、心をつかまれました。一言でいうと、かなり“映える”空間でした。こうしてミレニアルズ(私もギリギリその端くれです)は「キャスパー」の術中にはまっていくのですね。すごく納得。

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「ロンシャン」にのんやケンダル・ジェンナーが来場 「バーニーズ」の閉店セール風景が衝撃的すぎる! NYコレつれづれ日記 VOL.1

 2020-21年秋冬のニューヨーク・コレクションが6日に開幕しました。今季のNYコレは、「ラルフ ローレン(RALPH AUREN)」御大も「トム フォード(TOM FORD)」様も不在!トム様に至っては、アメリカファッション協議会議長でありながら、アカデミー賞に合わせてロサンゼルスで独自にショーを開催しちゃうなど、実に自由なお振る舞い!トム様さすがです……!!というわけで、ここでは、そんな寒風吹きすさぶ状況(実際の天候も猛烈に寒い)をものともせずNYで頑張っているブランドたちや、NYの街で気になったトピックスを「WWDジャパン」編集部の五十君&「WWDビューティ」編集部の北坂が交代でご紹介します。まずはNYコレ初日&2日目のダイジェストをどうぞ!

トップバッター「モンス」はもっと売れてもよさそうなのに……!

 今季のNYコレトップバッターは「モンス(MONSE)」。アメリカンクチュールの代表格「オスカー デ ラ レンタ(OSCAR DE LA RENTA、以下オスカー)」出身のデザイナーデュオが手掛けており、彼らは今、古巣である「オスカー」のディレクションも担っています。トレンチコートやテーラードジャケットなどのベーシックエレガンスに、パンクやブリティッシュの要素をミックスしてモダンに見せるという内容でしたが、体にびっちり沿うようなテーラリングの仕立ての良さは「さすが『オスカー』仕込み!」といった感じ。かわいいし、世の中のムードもエレガンスに回帰していて追い風だし、もっと売れても良さそうなんですが、NYコレ担当が長い北坂いわく「めっちゃ価格が高いんですよね……」。なるほどね。これがコンテンポラリーゾーンの価格にはまってくるなら個人的に着たいものがいっぱいです!

「ラグ&ボーン」はウォール街でのプロジェクションマッピングが大迫力

 「ラグ&ボーン(RAG & BONE)」は、ウォール街の旧証券取引所という、なんともNYらしい場所での発表。プロジェクションマッピングで投影される、SF映画のようなイメージや森林火災の映像などを背景にモデルが歩いてきます。演出のメッセージ性は強いですが、服自体はとてもリアルなのがこのブランドのいいところ。ローゲージニットの上にビッグサイズシャツを羽織るなど、さまざまなレイヤード術が目に留まりましたが、暖冬下の着こなしアイデアとして日本でもすごく参考になるんじゃないでしょうか。

「ラグ&ボーン」2020-21年秋冬のショーから 

レースドレスが人気の「セルフ-ポートレート」が強めエレガンスに転向?

 凝った作りにも関わらず、比較的お手頃な価格で伊勢丹新宿本店などで好調だと聞く「セルフ-ポートレート(SELF-PORTRAIT)」。パステルカラーのレースドレスのイメージが強いですが、今季は黒いエナメルのテーラードコートやタキシードジャケットなど、強めエレガンスからのスタート。「モンス」もそうでしたが、エレガンスの流れがより強くなることは今季の大きな傾向と言えそうです。冒頭のクールなエレガンスも素敵でしたが、やはり売れそう&個人的にも着たいと感じたのはベージュピンクのレースブラウスやサックスブルーのレースのトレンチコートなど。膝下丈のドレスに同素材のパンツを合わせたルックなど、ドレススタイルでのレイヤード術も新鮮。

「セルフ-ポートレイト」20-21年秋冬ショーから

「ロンシャン」では人気モデルの美佳が堂々のウオーキングを披露

 「ロンシャン(LONGCHAMP)」の会場には、女優ののんさんの姿が!そしてブランドアンバサダーを務めるケンダル・ジェンナー(KENDALL JENNER)の姿も!セレブの来場にショー開始前からウキウキしましたが、ショーが始まったら今度はモデルの美佳さんがランウエイに登場!!「トム フォード」にも出ていましたし、今季も美佳さんの大活躍は間違いなしですね。美佳さん以外もスーパーモデル大集合でアガるショーでした。服はセブンティーズボヘミアンの匂いを感じるレトロなスタイルがチャーミングでしたよ。

ブランドアンバサダーのケンダル・ジェンナー

「ロンシャン」のショーに登場した美佳

番外編:さらばバーニーズ 閉店セールにほしいものがない!

 会場移動中に、ダウンタウンの「バーニーズ ニューヨーク(BARNEY’S NEW YORK)」店舗に寄り道。米国のバーニーズが経営破綻し、ブランド管理会社に買収されたのは周知の通りですが、現在店頭では在庫処分のセール中です。このセール風景、なかなかに衝撃的でした。バッタ屋さんのバーゲン会場かのように赤札が貼られて、荒れた店頭。そして、「そもそもなぜこの商品を仕入れていたんだろう?安くなっていても全く魅力を感じない」的な謎な商品ラインアップ。……悲しや。マディソン街の旗艦店にはまだ行っていないので、NY出張中にそちらも見てきます。

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20年春夏のトレンド、進化系ジャケットはこう着こなす! 半袖やボタンレスが登場

 ジャケットのルールが変わりつつあるようです。こなれ感や抜け感が重視される中、あえて“きちんと感”に代表されるジャケットらしさを崩し、ゆるくアレンジする着方が勢い付いています。背景にあるのは、ジェンダーレスやヴィンテージなどが支持される流れ。さらに、ゆるいジャケットは風通しがいいため、“暑すぎる夏”にも涼しく着られる点でも広がりを見せそうです。

 たとえば、気負わず、リラクシングに着こなす新スタイリングを、「マーガレット・ハウエル(MARGARET HOWELL)」のルックは分かりやすく示しています。オーバーサイズ気味の着丈が落ち感を強め、ひだが印象的なスカートに合わせて、ジェンダーレスのミックステイストに。ジャケットなのに“ゆる感”という演出が今の特徴です。国内ブランドの2020年春夏コレクションから、新しいジャケット使いを読み取っていきましょう。

ゆるっとふわっと、
落ち感重視のリラックスコーデに

 シルエットに変化を加え、硬い印象を和らげる提案に注目です。“ジャケット=きっちり”を覆すことが大きなポイント。リラックス気分で羽織るのが新コーディネートの落とし所です。「アメリ(AMERI)」のジャケットは、2枚のジャケットを重ねたかのような、ややトリッキーな仕立て。ビスチェの上からカーディガン風にコーディネートしています。ナロー(細い)シルエットのスカートに加え、ジャケットがしんなりと落ち感を帯びていて、縦長シルエットを描きました。

 2枚目の「エブール(EBURE)」のジャケットはドロップショルダーがリラックスしたシルエットを印象付けています。米軍下士官から広まったCPOジャケットの進化版とも言えそうな、軽やかな見え具合のジャケットです。袖口をラフに折り返して、さらにこなれ感をアップ。ボトムスはプリーツスカートで、きれいめに印象付ければ大人女性も取り入れやすいでしょう。

テーラードもチャーミングに 
意外色のパンツルック

 端正なテーラードジャケットの人気が続いていますが、今春夏の新提案は、フラットサンダルをムードメーカーに迎えて、リラックス気分を添える着こなし。パンツにも“意外色”を配して、チャーミングに整えるのが新しい流儀です。「コトナ(KOTONA)」は、珍しい留め具で処理されたカシュクール風の打ち合わせのジャケットに、てろんとしたピンクのパンツで甘さと落ち感を注入してテイストミックスしています。

 2枚目の「サイ(SCYE)」は、マニッシュで爽やかな白ジャケットに、目を引く色使いを投入して、ミニマルルックにプラスアルファのアレンジ。ネイチャーがキーワードになる今春夏は、アイコンカラーであるグリーンのアイテムを取り入れるだけで、旬なスタイリングに仕上がります。ネオンオレンジのシャツを差し色で投入。“まとまりすぎ”を崩すアレンジが装いの鮮度を上げています。

“暑すぎる夏”に
半袖ジャケットで程よく脱力 
涼し気でイージー

 気負いを遠ざける流れを象徴するのが、半袖のジャケットです。見るからにのどかでイージー。オフの日使いに転用しやすいところも、使い勝手に優れています。世界規模の気象変調にも現実的な選択肢です。「ウジョー(UJOH)」が提案したのは、クールビズ中のおじさま方が着ていてもおかしくなさそうな半袖のジャケット。半袖といっても、ひじが隠れる五分丈だから、“省エネルック”のようなちぐはぐ感はありません。むしろ、夏でもきちんと感を帯びた装いに導きます、ゆるめパンツで合わせつつ、上品なブラウスを組み込むバランス感が進化形ジャケットコーデらしいところです。

 2枚目の「アキラ ナカ(AKIRA NAKA)」はボクシーな半袖ジャケットが涼しげ。襟がないのに加え、カシュクールの打ち合わせなので、東洋的な見え具合。ひじ丈の袖は、腕を細く見せてくれる効果も感じさせ、“やっこさん”のようなオーバーサイズの立体感が愛らしく朗らかなムードを引き出しました。

 人気が一段と浸透してきたジャケットだけに、ありきたりに見えない“ネクストアレンジ”を取り入れたいものです。今季の発展型コーデは、あえて持ち味を薄めるかのような“アンチジャケット”が見どころ。“きちんと感”のイメージを抜け出すと、さらにオン・オフ兼用しやすくなり、ジャケットの出番を増やせます。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

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“バーバリー・ショック”の後遺症が長引くわけ エディターズレター

※この記事は2019年10月31日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

“バーバリー・ショック”の後遺症が長引くわけ

 10月30日、三陽商会の岩田功社長の退任が発表されました。同日発表した2020年2月期(決算期変更に伴う14カ月の変則決算)が4期連続の営業赤字になりそうだという下方修正を受けて、事実上の引責辞任です。

 三陽商会は15年6月末、売上高の半分を占めていた「バーバリー(BURBERRY)」ブランドのライセンス契約が終了しました。世にいう“バーバリー・ショック”です。大きな穴を埋めるべく「マッキントッシュ ロンドン(MACKINTOSH LONDON)」をはじめとする後継ブランドの育成に取り組み、当初は18年12月期の営業損益の黒字化を掲げてきました。経営企画担当役員としてポスト・バーバリー戦略の立案に携わり、17年1月にトップに就任した岩田社長はデジタル関連企業のM&Aや若手・中堅社員の声を生かした組織改革に取り組んできました。しかし結果を残すことができず、経営責任を取らざるを得なくなりました。

 なぜ“バーバリー・ショック”の後遺症が長引いてしまったのでしょうか。

 最大の要因は三陽商会の主戦場である百貨店の低迷といえます。もちろん、同社も百貨店の市場縮小は織り込み済みでしたが、それが想定以上のスピードで進んでしまった。百貨店での販売規模を維持しながら、手薄だったショッピングセンターやネット通販(EC)などの新規事業を育てるシナリオに狂いが生じたのです。

 三陽商会は、真面目なモノ作りで発展したアパレル企業です。デザイナーやパタンナーといった技術者を社内で雇用し、かつてに比べれば減ったとはいえ国内自社工場も維持しています。1990年代以降、これらの機能を商社などにアウトソーシングするアパレル企業が圧倒的多数になる中、アパレル企業らしいアパレル企業といえます。近年、同社が売り出している“百年コート”はそんなクラフツマンシップの象徴です。

 三陽商会を支持していたのは、いわゆるミドルアッパー層。日本では分厚い中間層が大きなマーケットを形成してきましたが、昨今は欧米並みに所得の二極化が急速に進んでいます。三陽商会が提案する「中の上」の衣料品は、拠り所を急速に失っているのが現状です。人口ボリュームの大きい団塊世代はすでに70歳前後で、さすがに消費は先細りしています。一方、若い世代で「中の上」を求める消費者もいますが、彼らの多くは平成の時代に急成長したセレクトショップの服を買います。ECの影響云々よりも、「中の上」の市場縮小と、セレクトショップとの競争激化の影響の方が大きいと思われます。

 今月はじめに国内外の店舗の大量閉店計画を明らかにしたオンワードホールディングス、一度発表した希望退職者の募集を撤回したレナウンも、ほぼ同様の背景です。

 三陽商会は来年1月1日付で中山雅之新社長による新しい体制に移行します。きわめて厳しい状況を打破するためにどんな手を打つのか、注目されるところです。

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ファッション通信簿Vol.46 2020年「グラミー賞」のレッドカーペットを米「WWD」がめった切り

 米「WWD」の人気企画「ファッション通信簿」では、ストリートからパーティー、レッドカーペットまで、海外セレブたちのファッションを厳しくチェック。A+、A、A-、B+、B、B-、C+、C、C-、D+、D、D-、そしてFAIL(失格)の13段階評価で格付けし、それぞれのファッションポイントを勝手に辛口ジャッジ!

 第46回は、1月26日(現地時間)に米ロサンゼルスで開催された第62回「グラミー賞(Grammy Awards)」の授賞式から、ビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)、リゾ(Lizzo)、アリアナ・グランデ(Ariana Grande)、ロザリア(Rosalia)、リル・ナズ・X(Lil Nas X)、タイラー・ザ・クリエイター(Tyler, the Creator)、ビリー・ポーター(Billy Porter)、オービル・ペック(Orville Peck)が登場。セレブたちの豪華な衣装が評判となった今年の「グラミー賞」は、いつも辛口ワードを連発する米「WWD」から見ても全体的に高評価だったようだ。

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上質な素材とモダンなデザインが売りのサステナブルブランド「バイト ストゥディオズ」

 ファッションブランドにとってサステナビリティへの配慮が当たり前になりつつある昨今、まだ規模の小さな若手ブランドにおいてもそれぞれのスタンスで取り組みを行う例が増えている。2016年にスウェーデンのストックホルムとイギリスのロンドンを拠点に設立された「バイト ストゥディオズ(BITE STUDIOS)」もその一つだ。

 “By Independent Thinkers for Environmental Progress”の頭文字から名付けられた同ブランドが掲げる使命は、妥協することなくサステナブルでありながら洗練されたデザインのウエアを提案すること。それを実現するため、ウィリアム・ルンドグレン(William Lundgren)最高経営責任者(CEO)をはじめ、4人のメンバーが集まり立ち上げた。もともとアートやファッションも好きで「ずっと自分の信念を形にできることを探していた」と振り返るルンドグレンCEOは、大学でビジネスを学んだ後、社会問題解決に取り組むNGOで活動。ビジネスパートナーであるヴェロニカ・カント(Veronika Kant)最高執行責任者(COO)は、自動車メーカーのボルボ(VOLVO)でキャリアを積んだ。一方、コレクションのデザインを担当するのは、「イエンス ラウガセン(JENS LAUGESEN)」などで経験を積んだ後、自身のブランドを手掛けてきたエリオット・アトキンソン(Elliot Atkinson)=クリエイティブ・ディレクター。そして、フォトグラファーとして活動するスザンヌ・エルヴィ(Suzanne Elvi)=クリエイティブ・ディレクターがビジュアル面を監修している。

 「クリエイションは常に素材選びからスタートする」とアトキンソン=クリエイティブ・ディレクターが語るように、「バイト ストゥディオズ」にとって素材は重要だ。現在は全体の95%が環境負荷の低い素材で、オーガニックのシルクやコットン、ウール、リネンに加え、リサイクルポリエステル、パイナップルの葉やトウモロコシを原料にしたレザーのような生地も使用。「私たち独自の基準を満たしたものしか採用しないため、『プルミエール・ヴィジョン(PREMIERE VISION)』(パリで開かれる世界最高峰のファッション素材見本市)などで上質かつ可能な限りサステナブルな素材を調達するだけでなく、オリジナル素材の開発にも力を入れている」。

 一方、デザインする上でイメージするのは、「贅沢で美しいものに価値を見出し、自分の選択にこだわりを持つインターナショナルな女性。メレット・オッペンハイム(Meret Oppenheim)やサラ・ルーカス(Sarah Lucas)、ジリアン・ウェアリング(Gillian Wearing)、ドロテア・タニング(Dorothea Tanning)といった女性アーティストたちから影響を受けている。そして、絵画や彫刻からデザインをふくらませることが多い」という。そんな美学に基づき生み出されるコレクションには、シャープなテーラリングを生かしたオーバーサイズジャケットやワイドパンツ、トレンチコートを筆頭に、柔らかなシルクシャツやドレス、肌触りのいいニットやトップスなど、ワードローブの定番になるようなミニマルでモダンなアイテムがそろう。スタイルにアクセントを加える天然染料を用いたプリントやハンドメードのアクセサリーは、同じような考えを共有するアーティストや職人とのコラボレーションによるものだ。「大切にしているのは、自然に優しいだけでなく、着る人の体や肌にも優しい服を作るということ。だから、有害な染色や加工は用いていない。地球に負担をかけることなく美しい服を生み出すことができると信じている」。

 価格帯はジャケット680〜1200ポンド(約8万1600〜14万4000円)、コート790〜1300ポンド(約9万4800〜15万6000円)、ドレス350〜990ポンド(約4万2000〜11万8800円)、トップス180〜690ポンド(約2万1600〜8万2800円)、パンツ380〜520ポンド(約4万5600〜6万2400円)、スカート490〜690ポンド(約5万8800〜8万2800円)など。アイテムはポルトガルのポルトで生産している。

 新たな取り組みとして、19年9月には着古された同ブランドのアイテムを定価の20%で買い取り、修復やデザインし直した後、再度販売する取り組みをスタートさせた。これについて、ルンドグレンCEOは「商品を売った後にもブランドには責任があると考えている。買い戻すことは商品の循環の一部であり、顧客との関係を築いていくことにもつながる。私たちのコレクションはもともと長く着用してもらうことを念頭に作っているが、一度役目を終えた服にも新たな命を与えたい」と語る。ただ、ブランドの歴史が浅いのでまだアイテムを収集している段階。準備が整い次第、公式オンラインショップを通じて販売するという。

 販路はこれまで「ネッタポルテ(NET-A-PORTER)」と公式オンランショップのEC展開のみだったが、20年春夏シーズンからはロンドンの老舗百貨店リバティ(LIBERTY)での取り扱いも決まった。「ゴールは、No.1のサステナブルなデザイナーズブランドになること。私たちと同じような美学を持ったブランドは他になく、ユニークなポジションを築いていると考えている。現在、フランスやイギリスの有力店とも交渉を進めているが、店舗を絞りながら販売していきたい」。

 同ブランドは設立から3年にして、サステナブルなモノ作りで知られるスウェーデンのデニムブランド「ヌーディジーンズ(NUDIE JEANS)」をはじめ4社から出資を受けている。また、ヨーロッパでは「ヴォーグ(VOGUE)」や「ハーパーズ バザー(Harper’s BAZAAR)」「ファイナンシャル・タイムズ(Financial Times)」「ビジネス・オブ・ファッション(The Business of Fashion)」といったメディアにも度々取り上げられており、今後さらに注目を集めそうだ。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

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「SPUR」の視点が面白い エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年8月27日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

「SPUR」の視点が面白い

 最近、雑誌「シュプール(SPUR)」の編集の切り口が面白くて注目しています。最新の10月号で言えば、「“クラシック”は新しい 4 レディM:令和の女」という見出しが躍るファッションシューティングのページは、そうとは書かれていませんが雅子さまを想起させてドキッとしました。「スナップ・ジェンダーレス時代」というスナップページに登場するのはなんと、全員おしゃれな男子。7月のパリ・メンズのコレクション会場周辺で撮影しています。「生理について語るときがきた」ではタイトル通り、生理についてとことん掘り下げています。何気ない1枚の写真の背景に時事問題や社会問題が、しかも複数要素見え隠れしていて、それに気がつくとドキッとするのです(笑)。

 集英社の雑誌の中でもハイエンドな“モード”の部分を担い、ラグジュアリーブランドとのつながりも深い同誌ですが、ハイエンドを扱っていると陥りがちなとっつきにくさはナシ。むしろすごく人懐っこい“モード”です。その理由は、単に「着やすい服を扱っている」といった表層的な理由からではなく、「モードを人懐っこく扱うよ」というポリシーがあって具体的な戦略に落とし込まれているからなんだなと、五十嵐真奈編集長と話していると分かります。

 五十嵐編集長は、「機嫌がよい誌面、機嫌がよいモード」といった表現をしていますが、それが思いっきり実行されていたのが2018年3月号。なんと、誌面に登場するモデルがタイアップページを含めて全員笑っていました。ちょっとイッちゃっています!だって、撮影にはそれぞれテーマがあり、クリエイターにはビジョンがあるのに、“笑顔”という一見すると優しく実は難易度が高い強烈な制約をかけちゃうんですから。

 イッちゃっている、はもちろん褒め言葉です(笑)。簡単なようでハードルの高い制約。それが雑誌のポリシーにつながっているのですよね。制約はクリエイションの生みの親と言われますが、笑顔が制約になるとは……。もちろん登場する「笑顔」の種類は、「破顔」から「ほほ笑み」「目だけは笑ってない」までさまざまでしたがそれがまたおもしろかったです。

IN FASHION:パリコレもストリートも。ジュエリーもインテリアも。今押さえておきたい旬なファッション関連ニュースやコラムを「WWDジャパン」編集長がピックアップし、レターを添えてお届けするメールマガジン。日々の取材を通じて今一番気になる話題を週に一度配信します。

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化粧品は愛でるもの!? エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年11月20日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

化粧品は愛でるもの!?

 今の時期、化粧品業界はコフレの発売や2020年新色のお披露目が目白押しです。特にコフレは、百貨店で発売日当日に1時間待ちといったブランドもあるなど盛り上がりを見せています。コフレ発売の時期になると思い出すのが、かれこれ20年以上前になる学生時代、友人が毎年3~4ブランドのコフレを購入するのに付き合っていたことです。当時、さほど化粧品に興味を持っていなかった私にはコフレに色めき立つ友人の気持ちが今一つ理解できず、そんなに購入してどうするの?と質問ばかりしていました。友人いわく、欲しかった現行品が入っているだけでなく、コフレだけの商品やポーチもついていて、お得以外の何ものでもないとのこと。コフレのシーズンになるとポーチを変えるのが楽しみだったみたいです。

 時代は変われどコフレに対する女性の気持ちはいつでも同じで、毎年この時期は、コフレ狂騒曲と言わんばかりに百貨店などがにぎわいを見せます。編集部でも「〇〇ブランドのコフレを購入しようと思う」「〇〇は最後のコレクションだから記念に欲しい」とかコフレの話題が必然的に多くなります。「シュウ ウエムラ(SHU UEMURA)」がポケモンとコラボレーションしたホリデーコレクションでは、オンラインショップでの注文履歴がブランド側の不手際で無断でキャンセルされた問題で苦情が寄せられたのも、当然のような気がします。期間や数量限定という、女性が引かれる要素がふんだんに盛り込まれているからなおさらですよね。

 ありがたいことに編集部には各ブランドからコフレをはじめとする新製品を送ってもらう機会が多いのですが、それを見ながらコスメフリークのアルバイトの女性がうっとりした顔をしているのをよく目にします。彼女の口から出た言葉はこうです――「新作を何色も購入して愛でるのが楽しみなのです。使うのはその中の数本なんですけどね」。パッケージが凝っていたり、好きな作家などとコラボレーションしたりするのであれば愛でる気持ちは理解できるのですが、通常の新製品でもそうだとは……。化粧品の奥深さを感じ、まだまだ化粧品を通じての新たなビジネスチャンスがあるのではないかと思いを巡らせています。

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化粧品は愛でるもの!? エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年11月20日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

化粧品は愛でるもの!?

 今の時期、化粧品業界はコフレの発売や2020年新色のお披露目が目白押しです。特にコフレは、百貨店で発売日当日に1時間待ちといったブランドもあるなど盛り上がりを見せています。コフレ発売の時期になると思い出すのが、かれこれ20年以上前になる学生時代、友人が毎年3~4ブランドのコフレを購入するのに付き合っていたことです。当時、さほど化粧品に興味を持っていなかった私にはコフレに色めき立つ友人の気持ちが今一つ理解できず、そんなに購入してどうするの?と質問ばかりしていました。友人いわく、欲しかった現行品が入っているだけでなく、コフレだけの商品やポーチもついていて、お得以外の何ものでもないとのこと。コフレのシーズンになるとポーチを変えるのが楽しみだったみたいです。

 時代は変われどコフレに対する女性の気持ちはいつでも同じで、毎年この時期は、コフレ狂騒曲と言わんばかりに百貨店などがにぎわいを見せます。編集部でも「〇〇ブランドのコフレを購入しようと思う」「〇〇は最後のコレクションだから記念に欲しい」とかコフレの話題が必然的に多くなります。「シュウ ウエムラ(SHU UEMURA)」がポケモンとコラボレーションしたホリデーコレクションでは、オンラインショップでの注文履歴がブランド側の不手際で無断でキャンセルされた問題で苦情が寄せられたのも、当然のような気がします。期間や数量限定という、女性が引かれる要素がふんだんに盛り込まれているからなおさらですよね。

 ありがたいことに編集部には各ブランドからコフレをはじめとする新製品を送ってもらう機会が多いのですが、それを見ながらコスメフリークのアルバイトの女性がうっとりした顔をしているのをよく目にします。彼女の口から出た言葉はこうです――「新作を何色も購入して愛でるのが楽しみなのです。使うのはその中の数本なんですけどね」。パッケージが凝っていたり、好きな作家などとコラボレーションしたりするのであれば愛でる気持ちは理解できるのですが、通常の新製品でもそうだとは……。化粧品の奥深さを感じ、まだまだ化粧品を通じての新たなビジネスチャンスがあるのではないかと思いを巡らせています。

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ベルガモットの香りで免疫力アップ 肌のハリ低下を防ぐ可能性も

 香水やディフューザー、柔軟剤など生活に香りを取り入れる人が増えているが、その香りに風邪やさまざまな病気から身を守るための免疫力をアップする効果があるのをご存じだろうか。日本アロマ環境協会は香りがもたらす効果を科学的に証明しており、ベルガモット精油を嗅ぐことで期待できる3つの可能性を示唆している。 “免疫力の向上”、睡眠中に嗅ぐことで寝不足時でも“集中力低下を防ぐ”効果、そして“肌のハリ低下を防ぐ”働きがあることから、注目を集めている。

 ベルガモット精油は、女性が好きな香り3位(995人)男性が好きな香りでは1位(50人)にランクインしており男女共に人気が高いのも特徴だ(同協会調べ)。ヘルスケアの観点からも同精油に注目しており、枝伸彦・国立スポーツ科学センター研究員などの実験によれば、同精油を30分間嗅ぐことで免疫力がアップするという。研究では、アロマディフューザーで同精油を噴霧した空気を30分間嗅ぐと、ストレスを受けたときに分泌されるホルモンの低下することが確認され、「ディフューザーでベルガモット精油を微粒子化し吸引したことで、細菌やウイルスから体を守る唾液中の抗体の一種(SIgA)の分泌速度が増した。風邪やインフルエンザといった病原体は主に口や鼻から侵入するが、SIgAが多ければ多いほど感染症にかかりにくいといえる」と、枝国立スポーツ科学センター研究員は語っている。

 そのほか、4時間の短時間睡眠時に同精油を寝具につけたところ、香りなしと比べて起床時の集中力が向上し、肌のハリ実感も得られたことが分かったという。

 そもそも精油とは、植物の芳香成分を抽出した天然のオイルを指していて、選ぶ際は、“精油”あるいは“エッセンシャルオイル”と明記されていて天然成分100%であることがポイントだ。ほかにも、ラベルに植物の学名、原産地、栽培方法、抽出方法が明記されていることが望ましく、そこを参考にしてほしい。

 同精油を扱うおすすめのブランドを一部紹介する。「アルジタル(ARGITAL)」はイタリア・シチリア島生まれのオーガニックコスメブランドで、創設者フェラーロ博士が生み出した独自のGold製法により抽出したもの。植物が本来持っている香りを感じられる精油だ。

 ドイツ・ノイモンド社の「ノイモンド(NEUMOND)」は、自然原料のみの100%ピュアな精油を扱っている。月の満ち欠けにそって種まきや収穫を行うバイオダイナミック農法で栽培された植物や有機栽培、または野生の植物を使用しているのが特徴。有機栽培されたベルガモットから伝統的な方法で抽出していて、化学合成添加物や保存料は使っていないのもポイント。

 美容やリラクゼーションはもちろん、ヘルスケアの観点からベルガモット精油を取り入れてみてはいかがだろうか。

小竹美沙:1984年生まれ。女性誌やウェブマガジンで、ナチュラル&オーガニック&サステナブルなコト、モノ、人びとについて取材&発信中。2009年から恵比寿のファッションスクールのオフィシャルライターとして広報資料のライティングにも携わる

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ファッション通信簿Vol.45 2020年「SAGアワード」のレッドカーペットを米「WWD」がめった切り

 米「WWD」の人気企画「ファッション通信簿」では、ストリートからパーティー、レッドカーペットまで、海外セレブたちのファッションを厳しくチェック。A+、A、A-、B+、B、B-、C+、C、C-、D+、D、D-、そしてFAIL(失格)の13段階評価で格付けし、それぞれのファッションポイントを勝手に辛口ジャッジ!

 第45回は、1月19日に米ロサンゼルスで開催された第26回「全米映画俳優組合賞(Screen Actors Guild Awards、SAGアワード)」の授賞式から、ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)、ジェニファー・アニストン(Jennifer Aniston)、シャーリーズ・セロン(Charlize Theron)、リース・ウィザースプーン(Reese Witherspoon)、ゾーイ・クラヴィッツ(Zoe Kravitz)、マーゴット・ロビー(Margot Robbie)、ルピタ・ニョンゴ(Lupita Nyong’o)、グウェンドリン・クリスティー(Gwendoline Christie)が登場。シックなドレスを身にまとったセレブたちに下された評価は?

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週末お出かけスポット 映像とアートのフェスティバル、恵比寿映像祭など5選

 週末にオシャレして出掛けたいスポットをお届け。今週は映像とアートのフェスティバル、恵比寿映像祭「時間を想像する」やクラシックホテルに焦点をあてた企画展など5つをラインアップする。

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新型コロナウイルス蔓延の香港は今 現地のファッション業界人のリポート

 新型コロナウイルスが猛威をふるい、中国国内の製造業は2月9日まで休業している。ほとんどのファッション企業が中国で生産を行っており、春物の納期の遅れなどビジネスへの影響が懸念される。中国本土への容疑者引き渡しを可能にする条例の大規模な抗議デモに続き、新型コロナウイルス蔓延で香港の小売業は大打撃を受けている。現地の大手下着メーカーの営業兼MDに香港の現状をリポートしてもらった。

 1月29日の旧正月明けから多くの企業がひとまず31日までの在宅勤務許可・勧告を発令した。翌週も引き続き在宅勤務許可・勧告を採用する企業が多く、現状では「さらにもう1週間かも」と言われている。マスクや消毒剤などは日本と同じくモノがなく、どう情報が流れるのか、急にとある薬局や道端に行列ができ、マスクに群がる人人・・・。捨てられたマスクを拾って洗って再度売る行為も本当ににあるようで、購入したばかりという汚れたマスクの画像が飛び交っている。また、食料品を買いだめする人が多く、東日本大震災を思い出した。だが、まだおおよそ、マスクや消毒剤以外のものならば手に入る。

 病人が出たアパート名や政府指定のホテルなどの隔離施設といった情報が流れてくる日々。やたら、「ワッツアップ(WhatsApp)」のグループチャットが忙しく口コミで拡散されている。在宅勤務の人が多いため、バスや地下鉄は通常の2/3、ところによっては半分のイメージだ。週末は目抜き通りの尖沙咀(チムサーチョイ)の人通りも少なく、通常の半分程度。ショッピングモールやレストランはガラガラ。だが、香港内に数店舗あるドン・キホーテだけはいつもより少ないとはいえ混んでいる。ここにはまだモノがあるので安心した。デモのあとにこれかと思うと経済的にかなりつらいものがある。

資材サプライヤーがいつ稼働するかが鍵

 弊社の場合は、香港オフィスは旧正月休暇が1月30日までで、31日から通常出勤している。朝、出勤したら全社員の体温測定と記録、マスクが1日1枚支給され、オフィスでも基本マスク着用を徹底。妊婦は在宅勤務が許可された。在宅勤務希望者は上長と相談の上、許可が下りれば可能だ。2月4日からは全社員にラップトップPCを貸し出し、在宅勤務可能な環境を作るようにと指示が出た。中国の自社工場は1月29日より稼動開始予定だったが、広東省の規制もあり2月3日まで休業。それがさらに延長され現状では2月9日まで伸びた。10日に稼動できるかは今のところ分からない。

 10日から稼動できるといいのだが、それでも弊社の場合1週間の遅れがあり、納期に響く生産分もあると予測される。例えば、日本向けに3月末に出荷予定があるが、まだ資材生産が終わっていないため、どの程度納期遅れになるかは、いつ資材サプライヤーが稼動できるかが鍵になってくる。弊社が稼働できたとしても、資材サプライヤーが稼働できなければ何もできないから。社内的な優先順位もあるので、資材をめぐって熾烈な争いとなりそうだ。また企画途中の製品があるためサンプルルームが相当な混雑し、残業も多くなる。とはいえ、CSRの関係もあり、そんなに残業もさせられない。だから、コストにその分オンされてしまうだろう。弊社の場合、インドネシアやバングラデシュなどに生産拠点があるが、資材の多くは中国製で、中国の工場で検品まで済ませて各地工場へ送り込んでいるので同じく打撃を受ける。

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新規事業と海外&デジタル戦略で未来を担う アダストリアが初のオープンポジション採用

 アダストリアは2020年度、新規、海外およびデジタル事業の拡大に伴い、社会人経験者の中途採用を実施する。同社初のオープンポジションでの募集となり、応募後に経験や適正を鑑みて最適なポジションで選考を行う。同社は「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」や「ローリーズファーム(LOWRYS FARM)」「ニコアンド(NIKO AND…)」など、ファッションを軸に計20ブランド以上を国内外で展開し、海外市場の開拓やデジタル戦略の強化に舵をとっている。今回採用する人材には、新事業の立ち上げや海外店舗運営、デジタルを駆使して既存事業にシナジーを生み出す職務など、最前線での活躍を期待する。

感性と創造性を刺激する
カフェ併設型オフィス

 同社は17年から渋谷ヒカリエへ移転し、現在18~19、27~30階にオフィスを構えている。渋谷の街を一望できる広々とした空間は、同社のコーポレートメッセージ“Play fashion!”を体現している。「お客さまにファッションを通じてワクワクする気持ちを届けるというコーポレートスローガンです。これを達成するには、まず自分たちが仕事を楽しまなくてはならない。そのための工夫がこのオフィスには散りばめられています」(同社広報担当者)。27階には同社が運営する社員用カフェ「A CAFE」があり、社員のワーキングスペースやコミュニケーションの場としても機能している。配管がむき出しのインダストリアルな雰囲気と木目調のイスやテーブルが調和し、大きな窓から自然光が差し込む空間は、感性と創造力を刺激する。大きな棚には社員が持ち寄った書籍が並び、貸し出しは自由。PCや資料と向かい合って思索に没頭する社員もいれば、ソファーで和気あいあいとミーティングするグループもあり、活用法はさまざま。それぞれが自分らしく仕事を楽しみ、個性を発揮できる環境が整っている。

デジタルを活用し、
ファッションビジネスを変える

 デジタル分野においては、既存の国内事業や海外事業、新規事業をデジタル技術でけん引するとともに、アダストリアが蓄積してきたさまざまなデータを活用して、ビジネス全体にインパクトを与える人材が求められている。たとえばデータストラテジストやデジタルマーケターなどのポジションが想定される。アダストリアの自社EC「ドットエスティ(.st)」の会員数は1000万人を超え、国内外には約1400の店舗網を構えており、F1層(20~34歳の女性)に根強いファンを持つ。今後はこれらのリソースを結びつけ活用していくこともカギになる。今までになく便利でワクワクする買い物体験を作る――アダストリアはそんな未来を思い描いている。

海外大型旗艦店が誕生
 “ワクワク”は世界へ

 19年12月には若者を中心に高い人気を誇る「ニコアンド(NIKO AND…)」が中国・上海に最大級の旗艦店をオープンした。アパレルだけでなく雑貨や家具、音楽からフードコートレストランまで、「ニコアンド」の世界観が凝縮された空間だ。同社の海外事業の開拓は始まったばかりで、「ファッションって、楽しい」というアダストリアのメッセージはこれから世界へ広がっていくことになる。「われわれのビジネス領域においてデジタルや海外戦略をさらに加速させるための人材が必要です。新しい力に期待しているし、(新しい力に)任せてみたい」(同社人事部長)と力を込める。今回の募集における想定ポジションや応募の条件は、同社のホームページで公開している。

問い合わせ先
アダストリア人事部 採用担当
0120-328-911

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#敦子スメ「新月・満月」ノート 2月の満月(2月9日)は個性的な表情を作るメイクアイテムに注目

星占いとの出合い

 オーガニックコスメとの出合いや、コスメキッチン在籍中に占い師・ジョニー楓さんのイベントを担当したのをきっかけに星占いに興味を持ち、独学しました。現代では、占いとしてこれはラッキー、アンラッキーという区別に使われることもありますが、良い悪いではなく自然の流れとしての月の動きに、地球上で生活しているわたしたちは知らずに影響を受けています。この連載では、月の動きの中で活用できるものを知り、うまく生かしていただくための付き合い方をお伝えしていきたいと思います。新月・満月の流れを最大限に引き出すためのサポートをしてくれるコスメやインナーケアアイテムも紹介していきます。第3回は1月25日の新月とおすすめコスメについてお伝えします。

 前回の新月ノートで、顔をテーマに骨格美容をかなえる「フェイスポインター」を紹介しましたが、その流れで満月も、「顔」に関したテーマでお届け。その前に満月や新月の動きについて軽くおさらいすると、新月が種まきだとすれば、満月は収穫。新月付近で始めたことが、月のサイクルという自然の理によって、満月に実る、という流れが自然の秩序といわれています。

 新月で顔の筋肉の滞りを流して整えたあとは、注目したいのはメイクアップ。今回の満月が起こる水瓶座~獅子座のラインは集団から離れた自分、はたまた集団の中にいる自分という「自我」や「パーソナリティー」「自己表現」というテーマに置き換えてみてもいいかも知れません。誰かと出会って、話をする前の「印象」の元となるメイクアップ、獅子座というクリエイティブな満月のこのタイミングでは、今まで使ったことのないものや、少し遊びを入れてみても楽しいのかもしれません。

 2020年はすでに見ているだけで楽しいカラーメイクがたくさん出てきていますが、印象を決めるアイメイクに今回はフォーカス。「MIMC」から発売されたブルーのカラーマスカラ「ミネラルロングアイラッシュ03」は、つけてみるとバタフライのようなミステリアスで印象的な目元になります。普段黒のマスカラを使っている方もナチュラルに取り入れやすい「浮きすぎない青」で色のニュアンスを楽しんでみては?

福本敦子(ふくもと・あつこ)/フリーランスPR・美容コラムニスト:コスメキッチンに14年間勤務後、現在はフリーランスPRとして活動するかたわら、ビューティコラムニストとしてイベント、SNSなど多方面で活躍。オーガニックに精通した知識を武器に、ライフスタイルに寄り添った独自のオーガニック美容論が、著名人やエディターをはじめ各方面から大人気。「#敦子スメ」は「読んだ瞬間試したくなる」と多くの反響を呼び、紹介した商品の欠品や完売も多数。2019年秋、初の書籍となる「今より全部良くなりたい 運まで良くするオーガニック美容本 by敦子スメ」を出版。発売前に増刷が決まるなど話題を読んでいる。旅を愛し、占星術にも精通 instagram:@uoza_26

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鷲田清一「ひとはなぜ服を着るのか」を再び エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年8月20日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

鷲田清一「ひとはなぜ服を着るのか」を再び

  「いったいこの件はどう考えたらよいの?」。そんなモヤモヤとした気分になる“事件”が最近多いですね。ワイドショーを賑わしている、あいちトリエンナーレ問題や吉本問題、終わりが見えない香港・中国問題……。ファッションに近いところでは#Kutoo問題もそうです。

  「忖度」という言葉が象徴するように、守られてきた既得権益や悪しき慣習が明るみに出るのは良いことだけど、SNS上やワイドショーでこれらの事件について議論が交わされているのを眺めているとなんだかモヤっとします。少ない知識や感情を元に是か非か、正解か不正解かと黒白をつけたり、ましてや対象を糾弾して溜飲を下げたりしても解決はせず。“知りたいのは正解ではなくこの問題をどこからどう考えるかなんだよな~”とモヤっとします。

 そんな時に助けになるのが、学者や知識人の知恵です。特に哲学者や社会学者のモノの見方は行き詰まりがちな今の時代に風穴を開けてくれます。あいちトリエンナーレの企画展「表現の不自由展・その後」問題について朝日新聞に寄稿した、宮台真司・社会学博士の言葉を読んですっきりした人は多いのではないでしょうか?

 服の廃棄問題もそうです。服を作り、消費者の欲望を喚起し、売り、余ったらセールにかけて、それでも余ったら廃棄する。業界関係者の多くが疑いもせず半年に一度繰り返してきた、そして今も繰り返しているこのサイクルが、どうやら立ち行かなくなってきています。消費者は笛吹けど踊らず、地球には負担をかけています。だからと言って自分たちがやってきたことを即否定するのは難しく、考え方を変えることは簡単ではありません。

  この記事には、そんな風にファッションビジネスの課題に行き詰った時、何をどう考えたらよいか、ヒントをくれる本がいくつか紹介されています。ここでは記事の切り口上新刊のみですが、参考になるのはもちろん新刊だけではありません。たとえば1998年に初版が発行された哲学者・鷲田清一さんの「ひとはなぜ服を着るのか」はこの世界の古典とも言える存在であると同時に、今読んでもハッとさせられるフレーズがいくつも見つかります。ちなみに、鷲田清一さんの本は、新刊「生きながられる術」も面白いです。通勤のお供にいかがでしょうか?

IN FASHION:パリコレもストリートも。ジュエリーもインテリアも。今押さえておきたい旬なファッション関連ニュースやコラムを「WWDジャパン」編集長がピックアップし、レターを添えてお届けするメールマガジン。日々の取材を通じて今一番気になる話題を週に一度配信します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在9種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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「プラダ」の“ブラックフェイス”キャラクター問題に決着 NY市人権委員会がプラダと和解を発表

 米ニューヨーク市人権委員会(以下、NY市人権委員会)は2月5日、「プラダ(PRADA)」が2018年12月に発売したキャラクター製品がブラックフェイス(黒人に扮して顔を黒く塗る)表現だと批判された件について、プラダの米国法人(PRADA USA Corps.)と和解したと発表した。

 問題となったのは“プラダマリア(PRADAMALIA)”シリーズの「オットー(OTTO)」という黒いサルのようなキャラクターだ。人権派弁護士のチニア・エジー(Chinyere Ezie)が、ニューヨーク・ソーホー地区にある「プラダ」の店頭に陳列されていたこのキャラクターを目にして、「人種差別的で、侮辱的。私は怒りに震えている。『プラダ』は恥を知るべき」とフェイスブックに投稿したことが発端となった。プラダは「問題のキャラクターはブラックフェイスを表現したものではなく、不快な思いをさせる意図はなかった」と説明したが、NY市人権委員会は停止通告書を送り、プラダ社の調査に入っていた。

 NY市人権委員会が発表した和解の詳細は以下の通り。

・プラダ社のニューヨーク州の従業員及びミラノの経営陣は人権平等に関するトレーニングを受けること
・歴史的にファッション業界内で過小評価されてきた人々への奨学金プログラムの設立
・90日以内に決定権を持つダイバーシティ&インクルージョン・オフィサー候補を選定し、経歴を委員会へ提出すること。この人物は米国内で販売するプラダの商品や広告を検閲し、プラダの差別禁止ポリシーの運用も監視する
・19年2月にプラダが組織した多様性とインクルージョンに関する諮問委員会に3~5人のメンバーを最低6年にわたって配置し、定期的に委員会にその活動内容や進捗状況を報告すること
・多様性とインクルージョンに関する諮問委員会のメンバーでもあるファッション工科大学(Fashion Institute of Technology)のジョイス・ブラウン(Joyce Brown)プレジデントのコンサルティングを受けること など

 この和解について報じた「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」よると、NY市委員会はジョニー・デップ(Johnny Depp)をアイコンとするメンズ香水シリーズ「ソヴァージュ(SAUVAGE)」のCMが「文化の盗用」と批判を浴びた「ディオール(DIOR)」や、19年2月にバラクラバ帽風のトップスが黒人差別だと炎上し販売を中止した「グッチ(GUCCI)」ともプラダと同様の交渉を続けているという。

 NY市人権委員会の委員で人権団体NESRI(National Economic & Social Rights Initiative)のエグゼクティブ・ディレクターを務めるキャシー・アルビサ(Cathy Albisa)は、「この和解は政府が人種差別の苦しみから解放し、正しい方向に修復する強力な手段であることを証明した」と今回の和解を評価するとコメントしている。他方で、デザイナーのミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)や夫のパトリツィオ・ベルテッリ(Patrizio Bertelli)=プラダ最高経営責任者らミラノの経営陣に対してもトレーニングへの参加を課していることから、国外の企業や個人に対して強制力を持ったり活動を制限したりするほど強力な権力を一都市の機関が有していることが問題だとする声もある。

 ミウッチャは一連の騒動を踏まえて“文化的正解”について、「現代では誰でも他者を傷つける可能性があるが、どうやって全世界の文化を深く知り、文化間の差を理解することができるだろうか。“文化をリスペクトする”ということは、ファッションはもとより全ての根底にあること。『自分は誰かを傷つけていないだろうか』と考えるようになったのと同時に、何しても傷つく人は必ずいるからどうやってこの問題を解決すればよいか分からない。問題を起こさないよう、発言することをやめようという気にさえなる。しかしこれは自由の欠如にもつながることで、正しいことしか発言できなければ自由が失われてしまう。今こそ立ち上がって発言するべきだ」とコメントしている。

 ファッションローに詳しい三村小松法律事務所の海老澤美幸弁護士は、「NY市人権委員会は、昨年2月にも公共の場所で髪やヘアスタイルによる人種差別を禁止するガイドラインをリリースするなど、広い意味での“ファッション”に対して積極的に切り込んでいる印象だ」という。また、日本のブランドにとっても今回の件は他人事ではないと話す。「今回のNY市人権委員会の対応は、日本のブランドに対しても非常に大きなインパクトを与えるだろう。日本は多民族国家ではないことから、人種差別や文化の盗用に敏感とは言えない。また、ジェンダー・ギャップ指数が121位と低いことが話題になったように、男女差別に対する意識も高いとは言い難い状況だ。世界で活躍し、また世界を志向するブランドやデザイナーは、ぜひとも人種差別や男女差別をはじめとする“差別”について積極的に学ぶべきだと思う。また、スクリーニング機能を高めリスクを減らすために、商品デザインについて多くの社員の目を通すことは有用だろう。例えば、チャットグループなどでデザインを公開して意見を募り、『差別かも?』との声が上がったら再検討する、という方法も効果的だろう」。

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中

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「プラダ」の“ブラックフェイス”キャラクター問題に決着 NY市人権委員会がプラダと和解を発表

 米ニューヨーク市人権委員会(以下、NY市人権委員会)は2月5日、「プラダ(PRADA)」が2018年12月に発売したキャラクター製品がブラックフェイス(黒人に扮して顔を黒く塗る)表現だと批判された件について、プラダの米国法人(PRADA USA Corps.)と和解したと発表した。

 問題となったのは“プラダマリア(PRADAMALIA)”シリーズの「オットー(OTTO)」という黒いサルのようなキャラクターだ。人権派弁護士のチニア・エジー(Chinyere Ezie)が、ニューヨーク・ソーホー地区にある「プラダ」の店頭に陳列されていたこのキャラクターを目にして、「人種差別的で、侮辱的。私は怒りに震えている。『プラダ』は恥を知るべき」とフェイスブックに投稿したことが発端となった。プラダは「問題のキャラクターはブラックフェイスを表現したものではなく、不快な思いをさせる意図はなかった」と説明したが、NY市人権委員会は停止通告書を送り、プラダ社の調査に入っていた。

 NY市人権委員会が発表した和解の詳細は以下の通り。

・プラダ社のニューヨーク州の従業員及びミラノの経営陣は人権平等に関するトレーニングを受けること
・歴史的にファッション業界内で過小評価されてきた人々への奨学金プログラムの設立
・90日以内に決定権を持つダイバーシティ&インクルージョン・オフィサー候補を選定し、経歴を委員会へ提出すること。この人物は米国内で販売するプラダの商品や広告を検閲し、プラダの差別禁止ポリシーの運用も監視する
・19年2月にプラダが組織した多様性とインクルージョンに関する諮問委員会に3~5人のメンバーを最低6年にわたって配置し、定期的に委員会にその活動内容や進捗状況を報告すること
・多様性とインクルージョンに関する諮問委員会のメンバーでもあるファッション工科大学(Fashion Institute of Technology)のジョイス・ブラウン(Joyce Brown)プレジデントのコンサルティングを受けること など

 この和解について報じた「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」よると、NY市委員会はジョニー・デップ(Johnny Depp)をアイコンとするメンズ香水シリーズ「ソヴァージュ(SAUVAGE)」のCMが「文化の盗用」と批判を浴びた「ディオール(DIOR)」や、19年2月にバラクラバ帽風のトップスが黒人差別だと炎上し販売を中止した「グッチ(GUCCI)」ともプラダと同様の交渉を続けているという。

 NY市人権委員会の委員で人権団体NESRI(National Economic & Social Rights Initiative)のエグゼクティブ・ディレクターを務めるキャシー・アルビサ(Cathy Albisa)は、「この和解は政府が人種差別の苦しみから解放し、正しい方向に修復する強力な手段であることを証明した」と今回の和解を評価するとコメントしている。他方で、デザイナーのミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)や夫のパトリツィオ・ベルテッリ(Patrizio Bertelli)=プラダ最高経営責任者らミラノの経営陣に対してもトレーニングへの参加を課していることから、国外の企業や個人に対して強制力を持ったり活動を制限したりするほど強力な権力を一都市の機関が有していることが問題だとする声もある。

 ミウッチャは一連の騒動を踏まえて“文化的正解”について、「現代では誰でも他者を傷つける可能性があるが、どうやって全世界の文化を深く知り、文化間の差を理解することができるだろうか。“文化をリスペクトする”ということは、ファッションはもとより全ての根底にあること。『自分は誰かを傷つけていないだろうか』と考えるようになったのと同時に、何しても傷つく人は必ずいるからどうやってこの問題を解決すればよいか分からない。問題を起こさないよう、発言することをやめようという気にさえなる。しかしこれは自由の欠如にもつながることで、正しいことしか発言できなければ自由が失われてしまう。今こそ立ち上がって発言するべきだ」とコメントしている。

 ファッションローに詳しい三村小松法律事務所の海老澤美幸弁護士は、「NY市人権委員会は、昨年2月にも公共の場所で髪やヘアスタイルによる人種差別を禁止するガイドラインをリリースするなど、広い意味での“ファッション”に対して積極的に切り込んでいる印象だ」という。また、日本のブランドにとっても今回の件は他人事ではないと話す。「今回のNY市人権委員会の対応は、日本のブランドに対しても非常に大きなインパクトを与えるだろう。日本は多民族国家ではないことから、人種差別や文化の盗用に敏感とは言えない。また、ジェンダー・ギャップ指数が121位と低いことが話題になったように、男女差別に対する意識も高いとは言い難い状況だ。世界で活躍し、また世界を志向するブランドやデザイナーは、ぜひとも人種差別や男女差別をはじめとする“差別”について積極的に学ぶべきだと思う。また、スクリーニング機能を高めリスクを減らすために、商品デザインについて多くの社員の目を通すことは有用だろう。例えば、チャットグループなどでデザインを公開して意見を募り、『差別かも?』との声が上がったら再検討する、という方法も効果的だろう」。

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中

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財布の紐が固いママをどう攻略するか エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年12月12日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

財布の紐が固いママをどう攻略するか

 はじめまして。「HER OPINION」をスタートすることになった「WWD JAPAN.com」編集部のふくざきです。今の時代、働く女性、そして働くママが増えてきているのは周知の事実だと思います。そして今、若い女性から発信される“フェミニズム”が話題になるなど、女性の性を意識するニュースが多くなってきています。私自身、1人目を産んだ12年前は前の会社でしたが、一人もママがいなくて、今の会社に移ってきた来たときも、子どもを産んだ人はいたものの働き続けている人はおらず、本当にマイノリティーだと感じることがしばしばでした。

 今、弊社もやっとママが増えてきて、会社で“ママトーク”をすることも多くなってきました。嬉しい〜〜。そして周りも時代の流れとともに、ママを理解してくれるようになってきたと思います。このエディターズレターでは、ママが気になるだろう話題だけでなく、女性なら気にしてしまうあれやこれやをピックアップしてお届けします。そしたらきっと、男性にも参考になるのではないでしょうか。

 最初の話題は、社内でも盛り上がった、「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」が初めて発売したマタニティーウエアです。ダウンコートやフリースワンピース、パンツなど全6型。中でも1番気になったのは、ダウンコートです。ヘビーキャリアカバーをコートにつけることで赤ちゃんを抱っこしたままで着用できて、ベビーキャリアカバーは抱っこ紐に装着したり、ベビーカーに付けたりと複数の使い方ができます。こういう何通りにもなるマタニティーウエアってこれまでも無いわけではなかったですが、ザワっとしたのは「ザ・ノース・フェイス」から出たから。私が1人目を産んだ12年前だったら、ただ「7万8000円!高い!無理」と思ったでしょう。でもこれだけブランドの人気が高まった今だから、「7万8000円、高い!でも『ザ・ノース・フェイス』だからおしゃれに見えるし、いい素材使っているだろうし、何通りにも使えて抱っこが終わった後もずっと着れそうだし、高くないよね」って買っちゃう。これこそ、ブランディングですよね。高い人気の“今”に、明らかに独身時代よりも財布の紐が固くなっているママの心理を分かっている、くすぐる“売り(お得感)”がたくさんある。きっと売れます。でもママであっても女性だから、ずっと着続けるとは思えません。だからこのダウン、数年後にはメルカリで話題になりそうです。ママは賢くお買い物するので。財布の紐が固いママの心をどう動かすか。これってママアイテムだけじゃないですよね。

HER OPINION:ママ、女性に関連するファッション&ビューティ業界の話題をお届けします。今、働くママを含めた社会進出が進む女性に関わる情報が増えてきました。彼女らにまつわるニュースをピックアップすることで、彼女らを支える彼らにも役立つニュースを紹介します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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「店から始まったブランドなので、サービス業のマインドはいまだに抜けない」 by 尾花大輔

尾花大輔「N.HOOLYWOOD」デザイナー

 店から始まったブランドなので、サービス業のマインドはいまだに抜けない。昔はクリエイティブな人間を目指して、本当は聴きもしないバッハを朝から晩までずっと事務所で流してスタッフから文句を言われていた。でも、“クリエイティブぶる”のは自分らしくないと気付いた。ブランドが大きくなるにつれて、仕事をいかに循環させるかということを考えてきた。「N.ハリウッド」以外のデザインの仕事でも、専門分野のスペシャリストたちをいかに組み合わせて循環させるかということを第一に考えている。途中でつまずかないように、下準備するのが大好き。だって、真面目だから(笑)。(「WWDジャパン」vol2095 2019年8月5日号掲載)2000年にショップのミスターハリウッド、02年にブランド「N.ハリウッド」を立ち上げたデザイナーの尾花大輔。18年に行った東京でのファッションショーや、20年3月から始まる東京オリンピック・パラリンピックに向けた聖火リレーのユニホームのデザイン監修を行うなど、活動はますます多岐にわたっている。来年に控えた、自身の20周年を振り返っていわく

The WORDS
ファッション業界人の残した名言を日々の糧に。デザイナーやバイヤー、社長、編集長らの心に響く言葉をお届け。

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読者注目の2020-21年秋冬ベスト10ブランド ミラノ・メンズ編

 2020-21年秋冬ミラノ・メンズ・コレクションが1月14日に閉幕した。「WWD JAPAN.com」読者はどのブランドに興味を持ったのか?公式スケジュールブランドをルック掲載から24時間以内のセッション数(訪問数)が多かった順でランキング。公式スケジュールで発表したのは25ブランド以上。その中で上位10位にランクインしたブランドはこれだ!

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読者が注目した今週の新作 「オーラリー」 × ニューバランスのカプセルコレクションなど(2月7〜13日)

 「WWD JAPAN.com」が今週発売の新商品を「ファッション部門」「ビューティ部門」別にまとめてお届け。読者の注目度(PV)から1〜3位までをランキング形式で紹介。今週の「ファッション部門」では「オーラリー」とニューバランスのコラボアイテム、「ビューティ部門」では「メゾン マルジェラ」の新作フレグランスが最も注目された。

【ファッション部門】


【ビューティ部門】

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【動画】WWDJAPAN ENGLISH Vol.7 明日からすぐ使える簡単な接客英語

 「WWDJAPAN ENGLISH」は、世界に羽ばたきたい業界人に向けた英会話番組です。「WWD JAPAN.com」にアップした記事をRIZAP ENGLISH(https://www.rizap-english.jp/) 全面協力のもと、「こんなコトが英語で言えたら!!」「あの時、フレーズが浮かばなかった!!」という、業界人なら誰もが知りたいワンポイント英語を学びます。7回目は、日本語メインの初級編。

 5回目で紹介したユナイテッドアローズ(UNITES ARROWS)の月次売り上げに関する記事を受けて、今回はユナイテッドアローズのスタッフら、ショップ店員がすぐに使える簡単な英語を学びます。

 動画の下には、番組中に読み上げた英語を掲載します。

UAの11月度は増税後の落ち込みから持ち直し
UA’s sales are picking up after slump from tax hike

大手SPA、セレクトショップ、専門店の2019年11月の売上高(既存店ベース)は、気温が下がりきらなかったことで冬物衣料の動きが鈍く、前年実績を割り込んだという企業が目立った。
Among major SPAs, boutiques, and specialist stores, the same-store sales for November 2019 saw a sharp decline compared to the previous year's results. A delay in cooler temperatures this season caused a slump in the sales of winter apparel.

10月に続き、台風19号による店舗休業や増税後の反動などで落ち込んだ。

After a drop in sales in October due to store closures for Typhoon No. 19,as well as a strong reaction to the consumption tax increase.

ユナイテッドアローズ(UA)の小売りとECの既存店売上高は前年同月比1.6%増。
The same-store sales of United Arrows (UA), both in-store and online, increased 1.6% compared to last November.

引き続き「オン、オフ兼用できるキレイめカジュアルがウィメンズ、メンズともに売れている」(広報担当者)という。
“Fashionable and casual clothes that can be worn for both business and leisure are still popular among both women and men,” a spokesman said.

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「WWDビューティ ヘアデザイナーズ コンテスト」に入賞する秘訣は“4:3:3”

 第3回「WWDビューティ ヘアデザイナーズ コンテスト」の入賞者が決まった。第1回と2回は資生堂所属のヘア&メイクアップアーティストが連覇したが、今回は福岡のサロンオーナーがその3連覇を阻みグランプリに輝いた。

 同コンテストの最大の特徴は、審査の対象がヘアデザインだけでなく、メイクやファッションも含めた“トータルバランス”であることだ。そのため、ヘアサロン業界に多数ある他のコンテストとは審査の基準が異なっている。

 審査員を務めた原田忠資生堂トップヘアメイクアップアーティストも「ヘアデザイナーを対象にしたコンテストでは、ヘアに重点を置いてテクニックを見せたがる傾向が強い。しかしこのコンテストに関しては、テクニックを見せるより、テクニックをあえて強調しないところに力を入れながら、ファッションなどでトータルに表現することがポイント」と語っている。

 同じく審査員を務めた奈良裕也「シマ ハラジュク(SHIMA HARAJUKU)」アートディレクター兼クリエイティブスタイリストも「いろいろな美容系の審査員をしているが、このコンテストはよりファッションに近い作品が集まっていて、しかも第1回よりもそうした作品が増えていて良い傾向だと思う。今回の作品もすごく見応えがあって、とてもおしゃれな作品が多くて良かった。『WWDビューティ』のコンテストでしかできない作品がもっと出てくるといいなと、次回も楽しみにしている」と話す。

 コンテストの審査基準はさまざまだが、某大手美容ディーラーが主催するコンテストは、「審査対象は“ヘア”と“メイク”と“ファッション”で、その比重は全体を10とすると、ヘアが9で、メイクとファッションを合わせて1くらい」と担当者が話していた。その比重でいうと、「WWDビューティ ヘアデザイナーズ コンテスト」の場合はヘアが4、メイクが3、ファッションが3くらいだ。

 つまり、ヘアデザインが満点で、他のコンテストでは優勝できるレベルだったとしても、「WWDビューティ ヘアデザイナーズ コンテスト」では100点満点中40点でしかない。そう考えると、他のコンテストとは考え方を大きく変えて臨むことが必要だ。

 数年前から“トータルビューティ”をうたうコンテストは増えてきたが、それでも結果的にヘアを中心とした審査になっているケースは多い。それは、ヘアに特化して追求し、日本のヘア文化を作ってきた業界だからだ。その点、当コンテストは創刊40年以上になるファッションの「WWDジャパン」と、トレンドメイクとヘアを専門的に10年以上追い続けている「WWDビューティ」が背景にあるため、ある意味“アウトサイダー”だが、ヘア・メイク・ファッションを同じ深さでジャッジできる。

 第4回は、そうした背景と審査基準を踏まえた上での応募作品に大いに期待したい。


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高機能ドライヤーに新製品登場 タッチセンサー付きの「プロタッチ 1500」でサロンワークが変わる

 近年多くの製品が登場し、白熱するドライヤー市場に、また新しいドライヤーが誕生した。理美容室向けヘアケア商品の製造・販売を行うレイナカンパニーによる、タッチセンサー付きの「ドライヤープロタッチ 1500」だ。現場の美容師の使いやすさを考えて作ったという同製品。スイッチをオンにした状態でドライヤーを握ると作動し、スイッチを切らずとも手を離すだけで自動でオフになるという高感度のタッチセンサー付き。加えて1500Wとサロンワークに十分なパワフルな風量で、速乾性を持ちながら遠赤外線の効果が髪の内側から温めながらキューティクルを引き締め、毛髪内部に適度な水分をキープ。マイナスイオンが静電気と熱によるダメージを抑え、手触りの良い、艶やかでサラサラな質感に仕上げる。

「スピード感も仕上がりもかなえる
ノンストレスなドライヤー」

堀江昌樹/「ジェノ(JENO)」代表

「最近は特徴的なドライヤーが増えていて、場面ごとに使い分けることも増えている。でも『ドライヤープロタッチ 1500』は風量があると上に、艶感もおさまりもよくて、フィニッシュワークにも速乾性を求めるときにも、どちらにも使いやすいドライヤーだと感じている。毛量が多い髪やクセ毛もいい感じにおさまってきれいに仕上がる。タッチセンサー付きのドライヤーは初めて使用したが、慣れると使いやすく、日頃スイッチのオン/オフに一瞬でも時間を取られていることをあらためて実感した。コードが長いのと、フィルターのカバーが取り外しやすいのも実用的で気に入っている。ほこりがたまると風量に影響するため最低でも月1回は洗っており、メンテナンスのしやすさはサロン導入に欠かせないポイントだ。」

日本初の
TOUCHセンサーを搭載

持ち手部分に搭載したタッチセンサーで自動でオン・オフの切り替えが行われる。いそがしい施術中にスイッチの切り替えの必要がなく、サロンワークがよりスムーズに。

LINE-UP

 マイナスイオンの働きにより髪の摩擦ダメージを軽減し、まとまりやすく潤いのある仕上がりをかなえる「プロイオン1200」。3段階の温度切り替えに加え、押している間だけ冷風が出るクールショット機能を搭載。温風・冷風をこまめに切り替えられ、スピーディーな施術を助けてくれる。着脱可能なノズルも付属し、453gと女性でも使いやすい軽量タイプであるのも特徴。4200円という手頃な価格で、満足度の高い仕上がりがかなう同ブランドの人気商品だ。

PHOTOS : KOUICHI IMAI
TEXT : MAKIKO FUKUDA

問い合わせ先
レイナカンパニー
0120-017-616

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2021年春夏トレンド Z世代に向けた持続可能な“トライバル・ミックス” イタリア素材見本市が提案

 2月4日にイタリアで開幕したファッション素材見本市「ミラノ・ウニカ(MILANO UNICA)」に、イタリアを中心とした欧州企業477社が出展して2021年春夏向けのテキスタイルやファッション資材を提案している。

 同見本市はかねてからサステナビリティ追求に取り組んでおり、トレンド提案はもちろん、サステナブル素材を集めたエリアを設けて来場者にサステナビリティの重要性を訴えてきた。

 今回のトレンドエリアでは、これまで別々に提案していたトレンド素材とサステナブル素材を同じキーワードのもとに並べ、また、今回は初めて製品サンプルを並べたことで、見応えのある展示になった。

「サステナビリティとクリエイティビティーは両立できる」

 「クリエイションはサステナブルでなくてはならない。ようやく、両方を兼ね備える素材の数がトレンドのみを表現した素材の数を大きく上回った」とステファノ・ファッダ(Stefano Fadda)=アーティスティック・ディレクターは満足げに語る。

 同見本市がサステナビリティー重視に舵を切った当初のタイミングでは、トレンドエリアを作る際に「メーカーがサステナビリティをフォローしきれず400~500アイテム程度しかそろわなかった」と振り返り、回を重ねるにつれてサステナブル素材が増えて、今回約1500点のサステナブルでクリエイティブ(トレンドに合ったもの)な素材が集まったという。トレンドを捉えているがサステナビリティを満たしていない素材は500点程度で、「この調子でいくと、近いうちにクリエイティビティーとサステナビリティを両立させた素材で全てをそろえることができるだろう」と続ける。

「Z世代は素材の良さを見分けることができる」

 「21年春夏向けではZ世代がターゲット。高級でエクセレントな生地を若者向けの服に使うとしたら――例えば軽いウールでTシャツやスエット、ジーンズを作るような提案だが、そうした発想からトレンドを“カルチャートライブ5.0”とした。彼らは、未来のテクノロジー5.0(情報テクノロジーに続く次のテクノロジー)を洗練された形でファッションに投影すると同時に、行動レベルでは生まれたときから持つトライブ(種族)性に従っていると考えた」とファッダ=アーティスティック・ディレクターは言う。未来と過去、テクノロジーとクラフト、そして世界のさまざまな文化を結び付けた。

トロピカル・レイヴ・イン・メキシコシティー

 「若者のレイブパーティーとメキシコシティーの“死者の日”の祭りからイメージを広げた。蛍光色をキーカラーに、柄は、サイケデリックな柄やナチュラルなものをグラフィカルに表現するイメージ。そこに刺しゅうやクロシェ編みなどでフォークロア感を加えていく」。光沢感とマット感、クラシックな柄にアブストラクトな柄をのせるなどコントラストを利かせた表現がポイントになっている。「環境負荷の低い素材でこの色彩が表現できたのは驚きだった。最も研究されたのは軽量素材の3次元化で、マット織やジャカード織、透明やマルチカラーの基布に異なる編み組織や刺しゅう、ウキ編みで表現されている」とファッダ=アーティスティック・ディレクターは言う。

インディアン・チル・アウト・イン・ロサンゼルス

 「若いサーファーのロサンゼルスでのビーチ生活とネイティブアメリカンをミックスした。彼らはビーガンで、スピリチュアルな部分もある」とファッダ=アーティスティック・ディレクターは語る。水色やピンクといった透明感のある淡い色にラメやメタリックをアクセントに加えたり刺しゅうなどを施した、快適でリラックス感のあるテキスタイルが多い。柄はストライプやタイダイ染めなどのぼかし柄が多く、デニムはブリーチをかけたものが並んだ。ネイティブアメリカンのモチーフもナチュラルカラーで表現した。

ブリティッシュ・クラビング・イン・パプア

 「英国の伝統的なクラブとパプアの伝統をミックスした。クラシックな英国やイタリアの生地にメッシュや鳥の羽根やプリント、異なる色の葉っぱの刺しゅうを加えるイメージだ」。クラシックなウール地にメッシュやスパンコールなどを重ねてグラフィカルな装飾を加えた。柄はチェックのバリエーション、カモフラージュやアニマルといった自然モチーフで、色はフォレストグリーンやアーバングレー、そしてアクセントに赤を加えた。

 「Z世代は、ミレニアルズに比べるとブランドからの影響を受けない世代。ブランドの視点が入る前の素材の、段階で選んでもらいたと考えた。Z世代は品質の良い素材を選ぶ目を持っているし、ファストファッションであっても耐久性のある素材を選ぶことができる」とファッダ=アーティスティック・ディレクターは考える。

 「ミラノ・ウニカ」会長のエルコレ・ボット・ポアーラ(Ercole Botto Poala)=レダ(REDA)社長もZ世代について「環境問題に最も敏感な世代であり、地球環境意識を世界に広めた」とし、「『ミラノ・ウニカ』もそうした意識を共有している。今や環境保護は、企業や政治のあらゆるレベルの意思決定において最優先事項とされるべき段階に来ている。持続可能な未来をわれわれの子どもたちに保証するために責任ある行動をとらねばならない」と述べている。

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ファッション通信簿Vol.44 美しき戦士ゼンデイヤからオスカー像のようなジェニファー・ロペスまで 米「WWD」が8人のセレブを辛口ジャッジ!

 米「WWD」の人気企画「ファッション通信簿」では、ストリートからパーティー、レッドカーペットまで、海外セレブたちのファッションを厳しくチェック。A+、A、A-、B+、B、B-、C+、C、C-、D+、D、D-、そしてFAIL(失格)の13段階評価で格付けし、それぞれのファッションポイントを勝手に辛口ジャッジ!

 第44回は、1月12日(現地時間)に開催された第25回「クリティクス・チョイス・アワード(Critics' Choice Awards、放送映画評論家協会賞)」の授賞式から、ゼンデイヤ(Zendaya)、ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)、シンシア・エリボ(Cynthia Erivo)、シャーリーズ・セロン(Charlize Theron)、アンドリュー・スコット(Andrew Scott)、オリヴィア・ワイルド(Olivia Wilde)、マイロ・ヴィンティミリア(Milo Ventimiglia)、シアーシャ・ローナン(Saoirse Ronan)が登場。高評価が目立った一方で、“ヘンな赤い棒付きアイスキャンディー”、“おばあちゃんのベッドカバー”などの痛烈ワードも容赦なく浴びせられた。

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ダンスの枠を超えてライフスタイル強化 70周年「チャコット」の新たな成長戦略

 今年で創業70周年を迎えたダンス用品のチャコットは、ブランディングを方針転換する。これまでバレエ、社交ダンスやチアリーディングなどの分野で多岐に渡っていたブランド群を、「チャコット(CHACOTT)」の傘の下に集約。加えて、これまでは競技者向けの商品を主力としてきたが、ダンスになじみのない一般消費者との接点拡大に向け、商品と出店の両面を見直す。馬場昭典会長に今後の成長戦略を聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):事業を「チャコット」ブランドに集約するが、どのような体制になる?

馬場昭典チャコット会長(以下、馬場):プロ向けのラインとして “バレエ”、社交ダンスの“ダンス”、新体操・フィギュアスケート・チアダンスなどの“アートスポーツ”を用意する。加えて一般消費者もターゲットに、競技と日常の垣根を超えるアクティブウエアをそろえる“バランス”と、ビューティ用品の“コスメティクス”の計5つだ。

WWD:事業体制変更の狙いは?

馬場:ダンスで培ってきた専門性をコアバリューに、より開かれたマーケットで企業としての存在感を高めていくためだ。当社はバレエから社交ダンス、チアリーディングからコスメまで幅広く展開しているが、どの事業を切り出しても哲学や思想がしっかり現れるよう、ガバナンスを強化する狙いもある。今は企業として社会にどんな価値を提供できるのかを明確に示せなければ、生き残れない時代だ。私自身、会長に就任(2018年3月)してから、創業当時の文献に当たったり、創業者の土屋誠氏にお会いしたりして、ブランドのルーツを掘り下げた。われわれが社会に広く提案すべき価値は「女性の人生を芯から美しくする」ということだと再確認した。特に“バランス”と“コスメティクス”の2つは、一般消費者との新しい接点になり、今後の伸びしろとして期待している。コスメティクスに関しては秋に大きな宣伝を仕掛ける。

WWD:なぜ専門領域を超えて裾野を広げるのか?

馬場:一つに、競技者の減少。現在、バレエの競技人口はプロ・アマ合わせて約35万人ほどだが、少子化に伴い競技者の先細りは必然だ。一方で、より美しくなるために体を動かしたい、鍛えたいという一般女性が増えている。子どものころにやっていて再開する人、年を重ねてから初めてやってみるという人も驚くほど多い。バレエという文化に、多くの女性は潜在的な憧れがあるはずだ。

WWD:“チャコット バランス”は競合するアクティブウエアブランドとどう差別化する?

馬場:われわれには専門分野で培ってきたノウハウがある。バレリーナの開脚の可動域に耐える素材を徹底的に研究してきたし、デコルテをきれいに見せる首の空きの深さなども知っている。これらはすべてアパレルに生かせる。“チャコット バランス”ではバレエらしいチュール素材を日常使いできるデザインに落とし込んだスカートが売れ筋だ。コスメは口コミで広がり、競技者以外のユーザーが6割を超える。汗に強く、子供の肌にも使える安全性などが評価していただけている。他のブランドで売れている商品だからといって、うちでもやろうという発想はない。「ダンス」という太い根っこを強みとすることを、ぶらさずにやっていきたい。

WWD:出店戦略はどうする?

馬場:店舗の立地も、内容も変えていく。当社の直営店は32店舗(19年3月時点)。これまでは百貨店のインショップはスポーツフロアなどが中心だった。路面店も繁華街や駅から離れた立地で、目的意識をもったお客さまが来てくださっていたが、新規客の獲得が見込めるトラフィック型の店舗は少なかった。渋谷・公園通り沿いの本店も、どこか敷居が高い雰囲気で、一般のお客さまの来店が多いわけではなかった。そこで、もっとオープンな店構えの路面店を増やしていく。3月に関西に2店舗をオープンし、秋には名古屋の店舗を移設・リニューアルする。これらの店はコスメの試用やウエアの試着など、気軽な体験を重視したセミセルフ型の店舗として、今後の出店のモデルケースにする。高島屋玉川店のように、ベビーカーを引いているような方をターゲットとした地域密着型の店も重要だ。市場に合った形で、“コスメティクス”のラインだけを切り出した小型店舗の出店なども検討していく。

WWD:会社組織のあり方も変わる?

馬場:これまで縦割りだった組織に横串を通し、属人的だった知見を蓄積できるようにしていく。当社はバレエ教室へのセールスがルーツ。今も、各ブランドの営業担当者はダンス教室などに出向いて商品をおすすめしており、個人プレーが基本だ。市場での圧倒的なシェアは営業員1人1人の努力の結果だが、一方で彼らのノウハウが企業に蓄積されてこなかったという負の側面も生んでしまった。今は本社が渋谷、企画が三宿(世田谷区)、営業が青葉台(目黒区)と機能もバラバラで、ゆくゆくは集約したい。また、これまでは異なる事業部同士だった社員を隣同士の席にするなど、現場レベルでも工夫していくことが必要になる。

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ベルリン・ファッション・ウイークで際立ったブランド3選 この街で発表を続ける理由とは?

 世界では数多くのファッション・ウイークが毎シーズン開かれているが、昨年はオスロやストックホルムが開催を取りやめるなど、パリやミラノなどの主要ファッション都市以外のファッション・ウイークは岐路に立たされている。多額の予算や労力をかけてまで開催する必要があるのかどうかは確かに疑問。その在り方自体が問われている。

 そんな中、1月13〜16日には、ドイツの首都ベルリンでも2020-21年秋冬ファッション・ウイークが開催された。ベルリン・ファッション・ウイークは、15のショーからなるメルセデス・ベンツ・ファッション・ウイーク・ベルリン(以下、MBFWB)を中心としたもので、期間中には非公式のショーやプレゼンテーションと、「プレミアム(PREMIUM)」や「シーク(SEEK)」「パノラマ(PANORAMA)」「ネオニット(NEONYT)」などの大型合同展が催されている。

 実際取材したベルリン・ファッション・ウイークはというと、合同展にはヨーロッパ各国からブランドやバイヤーが集まっているものの、MBFWBはブランドも、バイヤー、メディア、インフルエンサーなどの観客も国際色に乏しく、ドイツ語圏(ドイツ、オーストリア、スイス)が大半。かといって、現地の若い才能を積極的にサポートしたり、サステナブルに特化したりという強い個性がファッション・ウイーク全体にあるわけでもなく、ここ数シーズンの苦戦は続いているように感じられた。事実、「ゲーエムベーハー(GMBH)」や「オットリンガー(OTTOLINGER)」といったベルリンを象徴するユニークな若手ブランドは、パリで発表を続けている。

 その一方で今季は、音楽イベントや展覧会にも使われている元火力発電所を改装した巨大空間「クラフトヴェルク ベルリン(KRAFTWERK BERLIN)」に公式会場を移転。迫力のある音響設備や45mのランウエイを用意するとともに、アンダーグラウンドやクラブカルチャーを軸にする「DSTM」や「ラスト エアーズ(LAST HEIRS)」も参加するなど、ベルリンならではの“個性”を打ち出そうとする動きも見えた。ここでは、MBFWBの中で際立った3ブランドを紹介するとともに、デザイナーたちにベルリンで発表する理由を聞いた。

ODEEH

 約10年前からベルリンでショーやプレゼンテーションを開催している「オデー(ODEEH)」は、名実ともにベルリン・ファッション・ウイークをリードする存在だ。同ブランドは08年にオットー・ドレグスラー(Otto Droegsler)とイェルク・エールリッヒ(Joerg Ehrlich)が設立。今季も2人が得意とする多彩なオリジナルプリントとリラックス感のあるシルエットを生かしたエレガントなコレクションを披露した。流れるようなシルクのドレスやセットアップが特に印象的だ。

 ベルリンで発表を続ける理由を尋ねると、「私たちのような比較的新しいブランドにとって、シーズンの始まりにコレクションを発表することは重要。ベルリン・ファッション・ウイークの時期にはまだバイヤーもオーダーに融通が利き、新たな販路の開拓につながっている」と2人。現在は、パリでプレ・コレクションのセールスを行った後、ベルリンでメインコレクションを発表し、デュッセルドルフやミュンヘン、ニューヨーク、日本でセールスを実施。その後、パリ・ファッション・ウイーク期間中にはカプセルコレクションを披露するなど、長いセールス期間を設けているという。「実際、過去にはパリコレでコレクションを発表したこともあるが、バイヤーにとってはもう買い付けの終盤で、ほぼ予算を使い切った状態だった。また、コレクションのイメージを早い段階で活用できることは、露出面での効果も高い」とコメント。彼らがアトリエを構えるのは南ドイツだが、「ベルリン・ファッション・ウイークに参加することで、国内に加え、海外からもますます多くのサポートを得ている」と続ける。

LAST HEIRS

 これまで4シーズンは非公式のプレゼンテーションを行なってきた「ラスト エアーズ」は今回MBFWBの公式スケジュールに加わり、ランウエイデビューを果たした。2017年設立の同ブランドは、音楽やファッション業界でさまざまな経験を持つクリエイティブチームで構成される。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」や「ナイキ(NIKE)」「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」などでキャリアを積んだマックス・デルナー(Max Doerner)とレア・ロス(Lea Roth)がクリエイティブ・ディレクターとしてチームを率いている。「ベルリンに対する忠誠心と、この街のクラブシーンに根差したブランドであることからベルリンでのショーを決めた」と2人が話すように、同ブランドの代名詞はクラブシーンやアンダーグラウンドなカルチャーから着想を得たスタイル。今シーズンは、パテントやパイソン柄、ハンドペイントなどを取り入れながらも、ワークウエアの要素やアーストーンを中心に用いることで、いつもよりも落ち着いた印象に仕上げた。

 ショーの感想を尋ねると、「(ドイツの)ファッション協会とも話し合い、クラフトヴェルクという私たちにとって最高のロケーションで初のショーを開くことができた。他の都市のファッション・ウイーク同様、MBFWBは半年に一度のドイツにとって重要なファッションイベント。特に今回のラインアップに入れたことがうれしい」と話す。その会場には、個性的な装いのファッションキッズたちが集結。他のショーとは異なる熱気を見せ、地元での人気をうかがわせた。ただ、同ブランドはドイツ市場だけを視野に入れているわけではなく、パリ、ミラノ、ロサンゼルスでもセールスを行っており、近々東京でも始める予定。「地球上でも最も重要なブランドの一つになることを目指している」。

NOBI TALAI

 2015年設立の「ノビ タライ(NOBI TALAI)」は16年からパリにコレクション発表の場を移したが、先シーズン、ベルリン・ファッション・ウイークに戻ってきた。パリから復帰した理由を聞くと、「当時はグローバルにブランドをアピールするため、パリで発表することが重要なステップだった。しかし、その時にもベルリン・ファッション・ウイークでのイベントには参加していたし、いつかは再びベルリンでのショーを開くと決めていた。約30年暮らしているこの街は、私にとってのホーム。チームやアトリエも、家族や友達も、重要なつながりも、全てがここにある」とノビ・タラエイ(Nobi Talaei)=デザイナーは語る。イラン・テヘラン出身の彼女は今季、祖母の遊牧民の家系としてのヘリテージと伝統的なクラフトに着目。シャープなテーラリングとグラフィカルなプリーツに、ペルシャシルクやキリム絨毯といった自身のルーツを感じさせる要素を掛け合わせた。

 ベルリンでのショー後には、ベルリンを含む国内数都市でのセールスを実施。パリ・ファッション・ウイークの時期に合わせ、プレとメイン・コレクションのセールスも行なっている。既存の販路は、ベルリンの高級百貨店カー・デー・ヴェー(KaDeWe)や数都市に店舗を構えるセレクトショップのアプロポス(APROPOS)などで、ドイツが中心。「今は直営販売の準備を進めているところで、まずはオンラインショップをオープンさせる。自分のビジョンを表現する旅はまだ始まったばかり。シーズンごとに成長し、近い将来、日本をはじめとするアジア市場にも参入できることを願っている」とグローバルブランドへの飛躍を目指す。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

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「世界中の若い女性たちに美に関する間違ったメッセージを送りたくなかった」 by カーリー・クロス

Karlie Kloss

 本当の私とはイメージが違うと思ったし、世界中の若い女性たちに美に関する間違ったメッセージを送りたくなかった。どのブランドと仕事をするか、そして社会にどんなイメージを見せるかについて私自身の意思で決定したあの瞬間こそ、フェミニストとして自分の力を信じる転機となったの。10代後半から20代前半のころは、断ったら仕事を失ってしまうと恐れていた。26歳になってようやく自信を持って自分の意見を言えるようになったわ。(「WWDジャパン」vol2091 2019年7月8日号に掲載)14歳からプロのモデルとして活躍し、「ヴィクトリアズ・シークレット」の広告塔である“エンジェル”を務めてきたが、2015年に契約を更新しなかったカーリー・クロス。“エンジェル”という華やかなポジションから退いた理由を英「ヴォーグ」に明かしていわく

The WORDS
ファッション業界人の残した名言を日々の糧に。デザイナーやバイヤー、社長、編集長らの心に響く言葉をお届け。

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マクロン仏大統領夫人愛用のアクセサリー「レ・ジョルジェット・バイ・アルテス」のアジア初の路面店が登場

 フランス発カスタマイズジュエリー「レ・ジョルジェット・バイ・アルテス(LES GEORGETTES BY ALTESSE以下、アルテス)」のアジア初の路面店が東京・青山の骨董通りにオープンした。

 オープンを記念して1月23日、セリーヌ・ギルメ(Celine Guilhermet)クリエイティブ・ディレクターが来日し同店舗でパーティーが開催された。ギルメ=クリエイティブ・ディレクターは、「ファッショナブルで洗練された日本に店舗を開けてとてもうれしい」とコメント。

 「アルテス」は2015年にアクセサリーメーカーとレザーメーカーとのコラボレーションで誕生。メタルを使用したアクセサリーと、レザーの最高の職人技を組み合わせたファッションジュエリーを提供している。両社ともフランスの無形文化財企業に指定されており、メイド・イン・フランスにこだわっている。

 ブレスレットやネックレス、イヤリング、ウオッチなどから構成される「アルテス」の特徴は、無限にカスタマイズできる点だ。6種類のメタルのフレームと交換可能なリバーシブルのレザーやビニールを組み合わせることで、幾通りにも着用できるというもので、現在約2万通り以上もの組み合わせが可能だという。フレームだけで着けることもできるし、レザーやビニールのパーツを買い足せば、気分に合わせてファッションとコーディネートも可能だ。定番デザインが約10~15種類あり、シーズンごとに新色が登場する。中心価格はバングルが7500~3万円程度、リングが6500~1万3000円程度、イヤリングが8500~1万4000円程度。リバーシブルのレザーやビニールパーツは600~4000 円程度だ。ギルメ=クリエイティブ・ディレクターは「それぞれの好みに合わせて自分だけのジュエリーにカスタマイズできる。だから、あらゆる人にシーズンや好みに合わせて楽しんでもらえるはず」と話す。

仏ファーストレディーのお気に入り

 エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領が経済大臣だった当時に工場を訪問した際に記念品として渡したバングルが、ブリジット・マクロン(Brigitte Macron)大統領夫人のお気に入りになり、彼女はさまざまなシーンで「アルテス」のバングルを着用している。また、フランスの伝統的技術を用いて作られているということもあり、エリゼ宮(フランス共和国大統領官邸)の公式ギフトの一つになっている。

 昨年、安倍晋三首相が訪仏した際には、明恵首相夫人にも「アルテス」のバングルがプレゼントされたという。

日本法人設立後、売り上げがうなぎ上り

 「アルテッセ」を輸入販売するルネッサンス・ラグジュアリー・ジャパン(RENAISSANCE LUXURY JAPAN以下、ルネッサンス・ラグジュアリー)は、17年にフランス本社が100%出資し設立した。今までは百貨店のポップアップイベント中心に販売をしてきたが、18年度の売り上げは前年の2倍、19年度は同50%増と急成長している。現在は、路面店および小田急百貨店新宿店と西武池袋本店に常設コーナーがある。クリステル・ベロア(Christelle Belloir)=ルネッサンス・ラグジュアリー社長は「日本市場に大きな可能性を感じている。ポップアップショップの開催でリピーター客がついてきた。手頃な価格とカスタマイズできること、そしてメード・イン・フランスの品質がわれわれの一番の強みだ」と言う。3月末には新コンセプトのECが立ち上がる予定だ。

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20周年を迎えた「マウジー」 高級デニムラインを国内に“逆輸入”する理由

 バロックジャパンリミテッドの「マウジー(MOUSSY)」は、2020年に設立20年を迎え、ブランドとしてさらなるステップアップを目指す。今秋には、これまで海外限定で展開してきた高級デニムライン“マウジー ヴィンテージ(MOUSSY VINTAGE)”を国内にも導入。東京・原宿のブランド複合型旗艦店「ザ・シェルター トーキョー(THE SHEL’TTER TOKYO)」も改装し、“マウジー ヴィンテージ”含め、「マウジー」のさまざまなラインがそろう場所として訪日外国人客にもアピールする。節目を迎えた「マウジー」は今後、どのように変わっていくのか。村井博之社長と深沢哲人副社長兼営業統括本部長に聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):この間の「マウジー」を振り返ると?

村井博之バロックジャパンリミテッド社長(以下、村井):19年からは尻上がりによくなってきている。しばらく不安定な時期が続いたものの、“膿出し”が終わってここ2年ほどは安定成長に入った。国内での売上高は約120億円の規模だ。グローバルでブランドを売っていくことには自信があるが、正直、日本市場で100億円の規模を維持できるかについては、自信が持てない時もあったが、ブランドが成長を続けながら無事に20周年を迎えられたことは望外の喜びだ。

WWD:高級デニムライン“マウジー ヴィンテージ”は、国内に先行して海外で投入してきた。その立ち上げ意図は?

深沢哲人副社長兼営業統括本部長(以下、深沢):16年に立ち上げた“マウジー ヴィンテージ”は、価格帯は3万~5万円。日本のデニム生地を使い、縫製も加工も日本という、メード・イン・ジャパンを追求したラインで、競合は、いわゆる“プレミアムデニム”と呼ばれるような海外のジーンズブランド群だ。立ち上げの背景にあったのは、「マウジー」ブランドのイメージを全体的により高めて、これまでとは出店立地も変えていこうという考えだった。日本ではこのタイミングでの導入となったが、先行する欧米では、米国の「サックスフィフスアベニュー」「ニーマンマーカス」「バーグドルフグッドマン」、英国では「ハロッズ」などの百貨店に卸販売している。中国には、19年に上海、北京、広州に“マウジー ヴィンテージ”の店舗をオープンした。

村井:海外の卸先は日本以上に現実主義。売れれば目立つ場所に置いてもらえるし、売れなければ隅に追いやられる。そんな中でもセールをせずに売れているのは、日本の素材、製造、加工にこだわり、メゾンブランドに引けをとらないようなクオリティーを目指して差別化できているからだ。広告宣伝にはほとんどコストをかけず、その分を商品開発費などに充ててきた。確かな品質やデザインが現地のインフルエンサーの目に留まり、口コミでじわじわ人気が広がっているようだ。

WWD:なぜ海外での販売が先行し、日本には逆輸入するような形になったのか?

村井:日本のファッション市場が、世界の中で特殊になってきてしまっているからだ。ファッショントレンドとして、欧米と中国は共通する部分があるのに、日本だけガラパゴス化しているということを強く感じるようになった。加工にこだわった高級デニムは日本に市場がないので、海外でまずは始めようとなった。しかし、訪日外国人客が増える中で、「日本発のブランドなのに、日本では“マウジー ヴィンテージ”を売っていないのはなぜだ」と今では言われてしまう。日本のファンからの要望もある。それで遅ればせながら、日本でも秋から販売することにした。

深沢:国内外で、「マウジー」のポジショニングが違うという背景もある。中国は市場が細分化されてないだけにラグジュアリーブランドも入っているモールに「マウジー」が出店していることもあるが、日本は渋谷109発の駅ビル・ファッションビル向けのブランドというイメージが今も強い。店舗の面積も中国に比べて日本は狭い。今後は中国と同様、海外ブランドとも競合できるような“グローバルトレンド”のゾーニングに持って行きたい。“マウジー ヴィンテージ”を導入するのもその一環だ。

WWD:より高価格帯のプレミアムなブランドへとゾーンを上げていく?

深沢:一律に上げていくというのではなく、「マウジー」の中でより細かくラインを分けていくようなイメージだ。現状では「マウジー」のメインラインや“マウジー ヴィンテージ”に加えて“スタジオウェア”、30代が中心対象のカプセルコレクションなどをブランド内で展開しているが、それぞれのラインで立地に合わせて単独出店していってもいい。また、“マウジー ヴィンテージ”にもメンズはあるが、メインラインでも秋からメンズを始める。それら全てのラインをまとめた旗艦店のようなショップを出す際は、国内なら男女複合のセレクトショップが入っているようなゾーニングをイメージしている。グローバルでも、市場に合わせてラインを切り出したり、業態を選択したりしてさまざまなチャンスをうかがっていきたい。

WWD:“マウジー ヴィンテージ”の来秋の国内の導入店舗はどこになるのか?

村井:東急プラザ表参道原宿の「ザ・シェルター トーキョー」は、東京五輪までは多数のポップアップを予定しているが、五輪後にリニューアルを予定している。そこで“マウジー ヴィンテージ”が買えるようにするとともに、自社ECでも販売する。来秋の販路はまずこの2つだ。「シェルター」のリニューアルにあわせて、「マウジー」のメンズや、名前を変えてあらためてローンチするカプセルコレクションも導入する。改装後の同店の屋号については現在検討中だ。

WWD:「マウジー」を細分化していくことで、ブランドが分裂してしまわないか?

村井:フルラインアップの店を急拡大するという考え方ではない。“マウジー ヴィンテージ”は、まず日本で買える場所をしっかり設けるというのが第一だ。「マウジー」というブランドに限った話ではなく、当社全体としても、約100億円規模の百貨店や海外への卸を行うハイエンドな事業と、約200億円規模の祖業でありかつて“マルキュー系”とよばれたゾーン、そして郊外モールも含めたマスマーケット層を狙う約300憶円規模の事業という幅の広い3つのビジネスを行っている。この3つがあることで、それぞれの事業分野から学ぶことは多い。1つのターゲットだけに向けたビジネスをしていたら、発想が狭まってしまう。国内で120億円という「マウジー」の規模は最も実験がしやすいともいえる。ここでの試行錯誤を、SC向けの「アズール バイ マウジー(AZUL BY MOUSSY)」のテコ入れにも生かしていく。

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それぞれの時計「トゥルーム」 モデル山田亮平&山本晃弘「アエラスタイルマガジン」ウェブ編集長の場合

 「トゥルーム(TRUME)」は、プリンター大手のセイコーエプソン(長野県諏訪市、碓井稔社長)が2017年にスタートした時計ブランドだ。ブランド名はTRUE(真実)とME(自分)を合わせた造語で、“真実の自分を見つけるための人生の羅針盤となるもの”との思いが込められている。今回は、新たな時計を探すモデルの山田亮平が、山本晃弘「アエラスタイルマガジン」ウェブ編集長兼エグゼクティブエディターに教えを乞う。

 山田は10年にデビューして、すぐに海外コレクションに挑戦。11年のニューヨーク・コレクションを皮切りにパリ、ミラノ、ロンドンの4大コレクションを相次いで歩いた。その後も「エルメス(HERMES)」や「プラダ(PRADA)」「ジル・サンダー(JIL SANDER)」などの日本開催のショーに出演したり、国内外の雑誌やブランドカタログで活躍している。

 一方の山本は、ビジネススタイルからリラックスカジュアルまでカバーするメンズファッション誌「アエラスタイルマガジン(AERA STYLE MAGAZINE)」(朝日新聞出版)の編集長を務めた後に独立。現在は、同誌のウェブ編集長などを務める。山田にいち早く注目し、起用してきた。スイスの2大時計見本市の取材も長年続けるなど、時計についての造詣も深い。

オン・オフを
思い切り楽しむ人にお薦め

 モデルと編集者という立場でしばしば接点のある二人だが、意外にもプライベートの買い物についてゆっくりと話す機会はなかったという。今回、山田が時計の購入を考えていて、アドバイスを求めていると山本が聞き、対談が実現した。

山田亮平(以下、山田):モデルって、現場でさまざまなスタイルに変身する仕事です。時計を着けて現場入りしても、仕事ではそれを外さなければならないので“時間を知るのはスマホ”となっていました。でも30歳を超え、“そろそろちゃんとした時計を”と思うようになりました。

山本晃弘「アエラスタイルマガジン」ウェブ編集長兼エグゼクティブエディター(以下、山本):時計は“時を知る道具”でもあるけれど、自分の嗜好やライフスタイルを表現するアイテムの役割も大きいです。山田君はデビュー当時から自分らしい表現を貫いてきたし、プライベートではキャンプと旧車が趣味なんだよね?そんなオン・オフを思い切り楽しむ人には「トゥルーム」をお薦めします。

山田:自然にあふれた新潟で生まれ育ち、キャンプは子どもの頃からずっと楽しんできました。26歳で運転免許を取り、キャンプに行くときにも使える車を購入しようとディーラーに行ったんですが、新車を前に“何か違う”と思ったんです。あれこれ迷って、子どもの頃に友だちの父親が乗っていた「フォルクスワーゲン(VOLKSWAGEN)」の“ゴルフ2”を選びました。今の車にはない“アジ”に引かれたんです。愛用歴は4年です。

※“ゴルフ”は、イタリア人工業デザイナーのジョルジェット・ジウジアーロ(Giorgetto Giugiaro)によって1974年に誕生。現在も世界中で売れ続けるコンパクトカーの傑作だ。2019年には8代目モデルが登場し、生産台数は累計で3500万台に到達。ちなみに“ゴルフ2”とは通称で、フルモデルチェンジして1983年に登場して92年まで製造された2代目を指す。山田の愛車は90年製

山本:山田君は見た目のかっこよさより、“アジ”のあるものが好きなんですね。使い込むほどに自分になじむもの、価値あるものに育てる楽しみがあるものというのか。

山田:ええ。かっこよすぎるもの、他人にかっこつけていると思われるものは苦手です……。これはモデル業にも通じることかと。当然、時計もそういったものは選びたくない。オリジナルな世界感のあるものが欲しいです。

山本:「トゥルーム」は、カーナビにも使われるGPS衛星からの電波を受信して世界のどこにいても、それこそ南米やアフリカの秘境でも、秒単位まで正確な時刻を自動的に表示してくれるから、アウトドアが趣味で、世界で活躍する山田君にぴったり。気圧・高度・方位センサーも内蔵されているし、現在地からあらかじめ登録した地点に戻るためのウェイポイント機能も付いています。ソーラー駆動だから電池交換の必要もない。それでいて、どこか“アジ”があるんです。

アウトドアでも使える
“LコレクションTR-MB7009”を選択

山田:僕が気になったのは“LコレクションTR-MB7009”です。ワイルドなルックスですが、着けてみると驚くほど軽量で視認性も高い。タフで、雨もへっちゃらなコーデュラバリスティックナイロンベルト製だからキャンプにも最適です。

山本:米国の名タンナー、ホーウィン(HORWEEN LEATHER)のクロムエクセルレザー替えベルトも付属するんだよ。

山田:えっ、そうなんですか!?経年変化も楽しめそうですね。

山本:ケースは強靭かつ軽量なチタン。ベゼルは傷付きにくいセラミック。本当にアウトドアにぴったりだね。クロムエクセルレザーのバーガンディーは黒やグレーとも相性がいいから、スーツやジャケパンスタイルの際にも活躍してくれそう。

「トゥルーム」は歴史ある
ファクトリーブランド

山田:実は「トゥルーム」のことは今回初めて知りました。どんなブランドなんですか?

山本:エプソンって聞くとプリンターを連想すると思うけど、そのルーツは実は時計で、70年以上も前に機械式時計を作るために長野県諏訪市に設立されたんだ。世界初のクオーツ時計を開発したのも、GPSソーラー時計を開発したのもセイコーエプソン。時計マニアにとっては常識なんだけど、同社がその技術をあらためて世の中に伝えるためにスタートさせたのが「トゥルーム」なんだ。

山田:長い歴史と伝統を持ったメーカーが作る、最先端技術を用いた時計なんですね。

山本:これまで裏方に徹してきたからあまり知られていないけど、時計作りの実力は世界トップクラス。他人とかぶりたくない、でも“本当にいいと思える時計”が欲しい人にお薦めできます。

ビジネスシーンにもフィットする
“LコレクションTR-MB8001”

山本:山田君の友だちには“平日はスーツ”という人も多いよね?そんな人に推薦したいのが、チタン製ブレスレット仕様の“LコレクションTR-MB8001”。

山田:この四角い付属品は何ですか?

山本:これは“エクスパンデッドセンサー”といって、UV・温度・加速度センサーが内蔵されているんだ。紫外線の量や周囲の温度、歩行数やそれに伴う消費カロリーを計測・表示してくれます。

山田:ランニングやウオーキングを楽しむ人にもよさそうですね。

山本:アレ、こっちも欲しくなってきちゃった(笑)?

PHOTO : KAZUO YOSHIDA,
TEXT : YASUHITO SHIBUYA(OFFICE NOMAD)

問い合わせ先
トゥルームお客さま相談室
050-3155-8285

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小島健輔リポート ハイブリッド化も挫折 百貨店はこのまま終わるのか

 ファッションビジネスのコンサルタントとして業界をリードする小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。市場縮小が続く百貨店は近年、売り場を定期借家賃貸のテナントに切り替える“ハイブリッド化”を推進してきた。だが、この手法にも暗雲が立ち込めている。

 インバウンドの失速に新型肺炎のパンデミックが追い討ちをかけ、マルイの京都店撤退や渋谷モディの混乱、渋谷スクランブルスクエアの東急百貨店の苦戦などでハイブリッド化も挫折が露呈したわが国の百貨店だが、このまま百貨店は終わってしまうのだろうか。

インバウンドの失速に
輪をかけたパンデミック

 2019年の百貨店売り上げは前年から2.25%(1322.9億円)減の5兆7547億円と2年連続の減少となり、国内客売り上げが2.5%(1387.6億円)減少する一方、インバウンド売り上げは3461.3億円と3年連続して増加するも1.9%増にとどまった。百貨店売り上げに占めるインバウンド売り上げシェアは前年から0.24ポイント上昇して6.01%となり、国内客売り上げは93.99%に低下した。

 近年の百貨店売り上げを下支えしてきたインバウンド売り上げとて、日韓対立による韓国人観光客の急減やコト消費への移行で伸びが鈍化しており、売り上げは25カ月連続の増加が19年1月で打ち止めになり、客数も19年6月で76カ月連続の増加にブレーキがかかった。客数はそれ以降7カ月連続、売り上げも10月以降3カ月連続して前年を割っており、19年トータルも客数は1.7%減、売り上げも1.9%増と前年の25.8%増から急減速している。

 高額ブランドなど「一般物品」こそ0.3%減の1880億円と横ばいだったが、近年のインバウンド売り上げを押し上げてきた化粧品など「消耗品」は10月から急失速して3カ月連続で減少し、年間でも4.8%増の1581億円と前年の37.2%増から急減速している。それに輪をかけたのが年明け早々の新型肺炎のパンデミックで、中国からの団体旅行が禁止されるなど期待の春節商戦も当てが外れ、百貨店経営陣は茫然自失の体をさらした。

 もとよりインバウンドは自助努力というより棚ぼたで、国際関係や為替による変動が激しく、今回のような事態も容易に想定されたはずだ。インバンドの失速もともかく、より本質的に経営を揺るがすのがハイブリッド戦略の挫折ではないか。

資本で稼ぐ不動産業への転換

 百貨店のハイブリッド戦略は人手が掛かって利益が残らない自前(商品仕入れ)の売り場を圧縮して人手の掛からない(商品仕入れのほぼ10分の1)定期借家賃貸(定借)のテナント売り場に切り替えるもので、人の労力と知恵で稼ぐ小売業から資本で稼ぐ不動産業への転換を意味する。粗利益率は半分近くに落ちるが販管費率はそれよりさらに落ちるから、営業利益は確実に増加する。それが可能なのは店舗不動産を所有している場合であって、賃借店舗では成り立たない。

 実際、閉店している百貨店は伊勢丹にしてもそごう・西武にしても賃借店舗ばかりで、所有している店舗はハイブリッド化して営業を継続している。ハイブリッド店舗の代表のように言われる大丸心斎橋店本館は自前の店舗を再建築したものだし、4階以上をテナント構成化した高島屋の立川店も127億円で購入した自前の店舗だ(高島屋が20年8月に閉店する港南台店は賃借)。

 「モディ」でハイブリッド化どころか全面定借テナント化を推し進め、14年3月期から19年3月期へ定借面積比率が12%から76%に拡大したマルイだが、小売事業の販管費は目論見通りに圧縮できても営業利益は目論見通りには拡大していない。16年3月期の106.58億円から19年3月期は114.21億円と、21年3月期目標の180億円に対する進捗率は10.4%にとどまっている。対して同社のフィンテック事業の営業利益は16年3月期の230.94億円から19年3月期は350.18億円と、21年3月期目標の420億円への進捗率は63.1%と順調で、両者の格差は大きい。

 「マルイ」の店舗は半分近くが自前所有だが「モディ」は全店が賃借店舗で、20年5月に閉店する京都店も賃借店舗だ。労働で稼ぐ小売業から資本で稼ぐ不動産業へ転換するといっても、資本が部分的にしか装備されていないのだから目論見通りの収益が得られないのも必然だろう。

 ハイブリッド戦略は自前の商売で稼ぐ力を失った百貨店が、過去の利益の蓄積たる不動産を賃貸することによって生き延びようとするランティエ(金利生活者)化でしかなく、自前所有の店舗という“財産”を欠いては成り立たないのは明らかだ。

ハイブリッド化は
売り上げ増につながらない

 営業利益以前に、渋谷モディなど売り上げ自体が低迷してテナントの歯抜け状態が指摘されているが、マルイの決算書・同説明書をどうひっくり返しても大きな売り上げの低下は見出せない。渋谷店の売り上げ(マルイとモディの合計)は19年3月期で124.7億円と8.2%伸びていたし、テナント入れ替えなどで売り場が歯抜けしだした今上半期(4〜9月)とて5.7%の減少に止めている。マルイとモディを分けて売り上げを発表していた17年3月期ではモディが60%を占めていたから、マルイに比べてモディの販売効率が極端に低いわけでもない。

 ちなみに渋谷店の販売効率は19年3月期で292.1万円/坪と新宿店の323.9万円の9掛けを維持しており、近隣の西武渋谷店(359万円/19年2月期)に比べると8掛けにとどまるが、販売不振で空床だらけになるほど低くはない。販売効率が188.5万円に留まる錦糸町店(自前所有)でも空床はまれだから、販売不振が歯抜けの理由とは思われない。渋谷も含めてモディは全て賃借店舗だから、大きな入れ替えか閉店の前兆と見るべきだろう。

 販売不振という点では、昨年11月1日に鳴り物入りで開業した渋谷スクランブルスクエア東棟の東急百貨店の方が深刻だ。地下2〜地上1階の食品や6階の化粧品はともかく、ファッションビル構成に下手に百貨店型の売り場を組み込んだ4〜5階は通過フロアと化している。

 昨年9月20日に65%を定借テナントにして本館を再建築開業した大丸心斎橋店にしても、9月こそ消費増税前の駆け込みもあって売り上げは48.8%も伸びたが10月は20.2%減、11月は13.1%減、12月も15.2%減と好調とは言い難い(9月20日に本館が開業して9月28日に北館が一時休業に入るなど、営業面積の変動も大きい)。インバウンド依存の高い化粧品や宝飾品、ラグジュアリーブランドは好調だが、心斎橋店の売り上げに占めるインバウンド比率は33.3%(9〜11月)と異例に高く、新型肺炎のパンデミックによる失速が危ぶまれる。

 そもそも自前売り場が販売不振で経費倒れになったのがハイブリッド化の契機であり、定借テナントに切り替えて運営経費は大きく圧縮できても、売り上げの減少に歯止めがかかるわけではない。アパレルなど同一カテゴリーならテナントビルの販売効率は隣接する百貨店の70〜80%になるケースが多く、ハイブリッド化して売り上げが増えるという皮算用はもとより成り立たない。

切り捨てられた
買取のグローバルブランド

 インバウンドもハイブリッド化も当座をしのぐ方策に過ぎないことが明らかな以上、原点に立ち返って長期的に存続できる事業構造を模索するしかない。ハイブリッド化などという中途半端な不動産事業化ではなく、高島屋の東神開発やJ.フロント リテイリングのパルコのような商業施設デベロッパーという選択もあるが、小売業としての選択はどうあるべきだろうか。それはわが国百貨店の40年にわたる退化の歴史を全否定するものではないか。

 百貨店が扱うブランド商材としてはローカルNB(いわゆる百貨店ブランド)に加えてラグジュアリーブランドからファクトリーブランドまでグローバルブランドがあるが、消化仕入れが定着したわが国百貨店ではラグジュアリーブランドのブティックやコンセは扱っても買取のファクトリーブランドはほとんど扱わなくなっている。消化仕入れで在庫リスクのないブランドお任せの商売しかできなくなった結果、買取が必要な商材から手を引いてしまったのが実態だ。

 そんな買取のグローバルブランドを扱っているのはわが国では百貨店でなくセレクトショップだが、駅ビルなど高不動産コストの店舗が大勢となる中、大手チェーンでは利幅の厚いオリジナル商品が6〜7割も占めるようになり、セレクト商材も調達が容易でマーケットに合った国内ブランドが主流となって、グローバルブランドの取り扱いは年々細っているのが実情だ。

 主要セレクトチェーンの合計売り上げは08年の2420億円から19年には5000億円超と倍増したと見られるが、そのうちグローバルブランド商材はせいぜい500億円程度にとどまる。19年の百貨店衣料品売り上げ1兆6834億円のうちラグジュアリーを除くグローバルブランド商材は最大でも同程度と見られるから、合計して1000億円程度でしかない。

 米国の大手デパートチェーン6社の合計売り上げは19年も18年の825.4億ドルから横ばいと見られるが、ローカルNB中心の中級デパート2社(メイシーズとディラーズ)が伸び悩むのに対してグローバルブランド中心の高級デパート2社(ニーマンマーカスとノードストロム)は堅調に売り上げを伸ばしている。高級デパート2社の18年の売り上げ合計204億ドル(2兆2240億円)のうちグローバルブランドは50億ドル程度と推察されるが、両社ではラグジュアリーブランドも大半がコレクション発注の買取商材であり、その内訳はつかめない。

 ノードストロムは大衆価格のセレクトSPAからハイエンドのラグジュアリーセレクトまで30を超えるセレクトショップ(他にカフェやスパなども)の複合体であり、わが国のセレクトショップが部分的に果たしている機能を遥かに大きなスケールで多様に展開している。米国ではわが国の百貨店が切り捨てた買取のグローバルブランドをスペシャルティデパートメントストアが担い、同質化と値引き合戦で疲弊するローカルNB中心の中級デパートと差別化してアッパー層を顧客化している。

エクスクルーシブな
セントラルバイイング&DB

 米国のスペシャルティデパートメントストアに共通するのがエクスクルーシブなセントラルバイイングと振り回し消化のDB(ディストリビューション)体制だ。

 わが国の百貨店はセントラルバイイングの体制がなく、消化仕入れはもちろん限られた買取も“個店帳合”にとどまり、店舗間の振り回しによる最適供給消化を図ることができないが、米国デパートのセントラルバイイング(本部による一括仕入れ)では品番単位のエクスクルーシブ(独占買取)が一般的であり、全米ないしは東部/西部/中南部/中北部の地域限定独占で店間移動と売価変更の自在性を確保し、最適な配分・補給・店間移動(DB)で最速消化を図っている。わが国でもセレクトチェーンでは“別注”と称して似たようなエクスクルーシブバイイングが行われているが、百貨店業界ではブランドメーカーの営業がDB機能を担っている。

 値入れを厚くしても最適なDBで消化歩留まりを高めないと最終の粗利益率は確保できない。個別帳合のわが国百貨店には多店舗運営のDB体制もスキルもなく、その大前提となる単品管理のPOSシステムも欠くから、エクスクルーシブにバイイングしても消化歩留まりを確保するすべもない。単品登録もDB体制もないのだから、ECも在庫を確保しないキュレーション型(組織的アフィリエイト)や中元・歳暮・ギフトにとどまり、店舗をECの顧客利便と物流の拠点とするC&Cにも手が届かず、致命的に出遅れている。

 これらの全てがそろったニーマンマーカスは35%、ノードストロムは30%を超えてECを伸ばしており、ウェブルーミングとショールーミングを駆使して店舗にECを取り込んで顧客利便と在庫効率を高め、EC専業者に対するアドバンテージを決定的なものにするOMO戦略を推し進めている。わが国百貨店との格差はもはや数年どころか数十年まで開いており、委託取引の誘惑に堕ちた1984年まで戻って全てをやり直すしか再生する方法はない。

 今さら死んだ子の歳を数えるような提言だが、それができないならハイブリッド化の果てに不動産業化していくしかない。その過程で10人中9人を振り落とし、百貨店アパレル業界を崩壊させることになるが、それでよいのだろうか。

※OMO(Online Merges with Offline)…ネットと店舗の垣根を超えた融合を意味し、モバイルフォンをキーツールとしてウェブルーミングとショールーミングを駆使するニューリテール形態

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

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編集長は先週何した? ステディ吉田社長、法律セミナー、LV御堂筋、須賀シュエの料理

 こんにちは。「WWDジャパン」編集長の向千鶴です。新型コロナウイルスがファッションビジネスに深刻な影響を与え始めています。春節が直撃し店頭は振るわず、中国の店舗の一時クローズや中国生産の納期見直し、来日イベントの中止、逆にオンライン売り上げの伸長といった情報が耳に届きます。こういう時こそ正確な情報提供を私たちも心掛けたいと思います。

1月27日(月)
ステディ スタディ吉田社長を訪問

 PR会社のステディ スタディを訪れ、「サニーサイドアップグループの傘下に入る」という衝撃的な話を吉田瑞代社長から聞きました。瑞代さん(と皆が呼びます)とサニーサイドアップの次原悦子社長は旧知の仲で方針が合致したこと、仕事の領域を広げるために決めたことと聞いて納得です。瑞代さんは引き続き社長を務めます。

 自分が作った雑誌や新聞の中でどうしても断捨離できないモノがありますが、それらの多くがステディ スタディがPR担当したブランドが表紙を飾っています。たとえば写真2枚目のフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)時代の「クロエ(CHLOE)」や、3枚目の「トーガ(TOGA)」もそう。今見ても新鮮なのはエポックメイキングなショーだったから。嗅覚鋭い瑞代さんの次の一手、追いかけさせていただきます。

1月28日(火)
初開催成功!
ファッションローセミナー

 ファッションローに関するセミナーを満員御礼で開催しました。「WWDジャパン」にとって新しいテーマであるファッションローは平川記者が2年くらい前からコツコツ育ててきて、昨年11月にウェブ連載開始→12月9日号で特集→今回のセミナーという流れで一気に盛り上げました。デジタル&紙&イベントの連動が今の「WWDジャパン」の強さなのです。

 参加者に満足してもらうことがひとつのゴールですが「 “やっちゃだめばかりの口うるさい法務”から、“ファッションローって大事みたいだから法務中心で社内研修しましょう”という雰囲気に特集をきっかけに変わった」という某社の話を伝え聞いてじ~~ん。業界紙冥利で泣けます。弁護士の皆さん、本当にありがとうございました!

1月29日(水)
LV御堂筋を昼も夜もがっつり取材

 「ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋」の内覧会取材のため1泊2日で大阪へ。店舗内外観などは先にあげた記事をぜひごらんください。何といっても「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」国内最大級の店舗ですから、じっくり見て回ると“こんな商品もあるんだ”と発見がたくさんあります。個人的に気になったアイテムを主にウィメンズからピックアップします。

1月30日(木)
「スカラボ・ヴィー」の
ポトフで温まる

 ランチは「ルイ・ヴィトン メゾン 大阪御堂筋」の7階にオープンしたレストラン「スガラボ・ヴィー(SUGALABO V)」へ。「ルイ・ヴィトン」がレストランを併設するのは世界初のことで、東京の紹介制レストラン「スガラボ(SUGALABO)」の須賀洋介シェフと取り組んでいます。船の機関室のような店内は実験器具みたいなオブジェもあり楽しく居心地よい空間。見惚れたのは、オープンキッチンで見せるスタッフの動きです。料理から盛り付け、サーブ、片付けまでが静かかつパーフェクトな連携でその所作に見惚れます。和とフレンチを融合した味はもちろん最高。ごちそうさまでした

1月30日(木)
最新号「2020-21年秋冬メンズ特集Vol1」校了と今日のおやつ

 さあ、2020-21年秋冬シーズンが始まりました。 “表紙の「ちゃんとした服」再び”の言葉、良くないですか?ニュース面にはマイケル・バーク(Michael Burke)=ルイ・ヴィトン会長兼CEOのインタビューも掲載しています。あんなこともこんなことも話してくれていますのでぜひ読んでください。今日のおやつはパリで買った「ボンヌママン」のマドレーヌ。定番です。

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ファッション通信簿Vol.43 10年間をプレーバック セレブたちの忘れがたきレッドカーペット・ファッションを米「WWD」が辛口ジャッジ!

 米「WWD」の人気企画「ファッション通信簿」では、ストリートからパーティー、レッドカーペットまで、海外セレブたちのファッションを厳しくチェック。A+、A、A-、B+、B、B-、C+、C、C-、D+、D、D-、そしてFAIL(失格)の13段階評価で格付けし、それぞれのファッションポイントを勝手に辛口ジャッジ!

 第43回は、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)、リアーナ(Rihanna)、レディー・ガガ(Lady Gaga)、アンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)、ビヨンセ(Beyonce)、エズラ・ミラー(Ezra Miller)、ミシェル・オバマ(Michelle Obama)、ルピタ・ニョンゴ(Lupita Nyong’o)が登場。過去10年間のアイコニックなレッドカーペット・スタイルを集めた今回のファッションチェックは、今までにない高評価のオンパレード⁈

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「カルティエ」「クロエ」を擁するリシュモングループ ミラノ発老舗バッグブランド「セラピアン」を改革

 「セラピアン(SERAPIAN)」は、1928年にイタリア・ミラノで創業した高級レザーブランドだ。2017年夏に「カルティエ(CARTIER)」「クロエ(CHLOE)」などを擁するリシュモングループ傘下に入り、新たなステージを迎えている。19年11月には日本初の直営店を大阪・阪急うめだ本店にオープンし、この2月にはギンザ シックスで1カ月間のポップアップを開くなど、今後も出店を控えている。

 ブランドの魅力についてジャコモ・コルテシ(Giacomo Cortesi)セラピアン CEOは「“ミラネーゼブランド”らしい洗練されたデザイン」と語る。ミラノの本社は、20世紀初頭に建てられた歴史的建造物であるヴィラ モーツァルトの中。「ミラノを拠点にし、ミラノでも最も美しいといわれるヴィラに本社を構えている。ショールームもあり、キャンペーン撮影も建築を背景に行っている。リシュモングループが『セラピアン』を買収した理由は、ブランドに美しい歴史があること。バッグは700種類以上、テキスタイルは3000種類以上のアーカイブがあり、セラピアン一家が運営してきた素晴らしいファミリーのDNAが残っている」と説明する。

創業者が生み出したアイコン“モザイコ”

 ブランドを代表する商品は、独自の編み込み技法で作られる柄“モザイコ(MOSAICO)”だ。ブランドの創業者であるステファノ・セラピアン(Stefano Serapian)が 1940 年代に生み出し、今もブランドの職人たちが手作業で生み出している。「セラピアン」の職人たちはレッド、イエロー、グリーン、グレーなど1人1人のパーソナルカラーを持っており、自分の色のレザーをサインとしてバッグに編み込んでいる。また、デザインは丸みのある形が特徴。「柔らかなレザーを扱いながら、ウィメンズもメンズも商品にフェミニンな要素が加わっていて、『セラピアン』は尖った商品は扱っていない」とコルテシCEO。

 また、「セラピアン」はビスポーク(注文品)でも有名だ。「私たちはビスポークのブランドといっても過言ではないほど、お客さまに合わせた商品を多く手掛けている。ミラノのショールームでは色の注文を受けるイージービスポークから、1からお客さまの好みに合わせた商品を作るフルビスポークも承っている。今後このサービスを日本でも広げていく」という。今後の出店については「リシュモングループでは投資をして積極的な出店計画を立てている。今後3年間、グローバルで30~50店舗のデジタルやショップインショップを含む出店を目指す」と語った。

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オレンジ派?グリーン派?パレット派?単色派? 春夏アイカラーの取り入れ方

 「WWDビューティ」1月23日号で2020年春夏ベースメイク&新色を特集しました。アイメイクのカテゴリーではカラフルなアイシャドウやマスカラ、アイライナーが数多く登場しました。色で個性を出すならば、暖色から寒色まで幅広く使うことができるのでやはり目元だと思います。色味では昨年の秋冬から“みかん色メイク”としてはやっているオレンジやイエロー、涼しげな目元をつくる春夏の定番グリーンやブルー系が豊富でした。暖色があれば寒色もある今季。そこで@wwdj_jpのインスタグラムで「今春もカラーメイクが豊富。どちらを使いたい?」と質問をしてみたところ、春の定番ミント・グリーン系アイシャドウが44%、秋冬から続きオレンジ系アイシャドウが56%という結果に。オレンジ系アイシャドウがやや高い支持を集めました。

 オレンジ系の中でも印象的だったのは「スック(SUQQU)」です。人気の4色アイシャドウパレット「デザイニング カラー アイズ」(新2種、うち限定1種、各6800円)にはアクセントカラーにオレンジとピンクをセットにした2種が登場しました。一見鮮やかですがひと塗りだと薄付きで、重ねるごとに発色していきます。4色使って色の重なりを楽しむもよし、単色で手軽に仕上げても春らしい目元になります。また、「ディオール(DIOR)」の「サンク クルール〈グロウ バイブス〉167」(7800円)は、オレンジ、イエロー、ピンク、パープルの4色をセットにした、華やかでいかにも春らしいアイシャドウパレットで、メイク上級者におすすめです。

 さらに「THREE」の「ディメンショナルビジョンアイパレット 07 HIDDEN PLACE」(6500円)はブルーとオレンジを含む4色がセットになったパレットで、旬のオレンジと春夏の定番のブルーの両方を取り入れることができます。「ルナソル(LUNASOL)」の「アイカラーレーション」(新3種、各6200円)にもオレンジとグリーンをセットにした「04 テラコッタルーフ」があり、そのほかイエローとブルーをセットにした「05 セレーンナイト」に注目です。昨秋大胆なコンセプト変更を行い、鮮やかな色がそろうようになった同ブランドですが、今季は取り入れやすさにも配慮がなされています。ちょっと離れていた顧客も戻ってくるのではないでしょうか。どのパレットもブラウンがセットになっており、鮮やかなカラーに重ねることでぐっと肌になじむように考えられています。

 このように重ね合わせたり、単色で使用したりさまざまなバリエーションを楽しめるのがパレットの魅力ですが、カラーアイシャドウは挑戦するのに勇気がいるのも事実です。そこで便利なのがシングルアイシャドウ。手持ちのアイシャドウと合わせて使うことで手軽に春らしさを演出できます。百貨店のコスメであっても価格は1200~4000円程度なので購入のハードルもそれほど高くないと思います。そこで「春らしいカラーアイシャドウが豊富な今春。挑戦するならどちらが欲しい? A.一度でたくさんのカラーが手に入るパレット B.チャレンジのハードルが低い単色アイシャドウ」という質問をしたところAとBでちょうど50%ずつの回答結果になりました。手軽に購入できるシングルアイシャドウの方が人気かと思いきやちょっと意外な結果でした。

 シングルアイシャドウで印象的だったのは「アディクション(ADDICTION)」の「ザ アイシャドウ L」(限定8色、各2000円)。新たに就任したKANAKOクリエティブ・ディレクターが舵を取った初のコレクションで、鮮やかな8色が並びました。アイシャドウが印象的なキービジュアルですが、何度も塗り重ねているそうです。実際には薄づきでシアーな発色なので一塗りしてほのかな発色を楽しむもよし、手持ちのブラウン系のアイシャドウに重ねづけして差し色にするもよしです。

 また「マリークヮント(MARY QUANT)」のアイコニックなアイシャドウ「アイオープナー」(全120色、うち限定8色、各1200円)がリニューアルしたのも個人的に注目です。季節限定カラーにはオレンジやグリーン、ブルーなどがそろっており、1200円で手に入るので魅力ではないでしょうか。

 本紙では紹介しきれませんでしたが、クリームタイプやリキッドタイプのアイシャドウはおさえてもいいかもしれません。「トーン(TO/ONE)」の「ペタル リキッド アイシャドウ」(新3色、各2900円)や「セルヴォ―ク(CELVOKE)」の「インフィニトリー カラー」(新9色、うち限定5色、各3200円)、「スック(SUQQU)」の「グロウ タッチ アイズ」(新3色、うち限定1色)、「ルナソル(LUNASOL)」の「グラムウィンク フロスト」(全5色、各3200円)など、クリームやリキッドタイプのアイシャドウも続々と登場しました。パウダーアイシャドウの下地に仕込めばほのかに色を感じられますし、ブラウンやベージュを重ねれば落ち着いた印象に仕上げることもできるので、日常使いのハードルも低いと思います。

 鮮やかなカラーのアイシャドウは、店頭でのタッチアップの結果購入するお客さまが多いそうです。目元はどこに色を入れるのか、どの色と組み合わせるのかのコツをつかむとかなり色を取り入れやすくなるので、挑戦したいけどなかなか手が出せない人には一度タッチアップをしてもらうことをおすすめします。

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「#KuToo 靴から考える本気のフェミニズム」や「死を招くファッション」など 2019年10~12月出版のファッション関連書籍

 2019年10~12月に出版されたファッション関連書籍の新刊情報を紹介する。社会問題にもなった「#KuToo(クートゥー)」運動の発起人による書籍や、ファッション産業が人体や環境に及ぼす悪影響に警鐘を鳴らす書籍などの6冊。それぞれに関連性の高いニュースやコラム記事を添えてあるので、紹介した書籍とあわせて読んでいただきたい。

「#KuToo 靴から考える本気のフェミニズム」
(石川優実、現代書館)

 ヒール靴やパンプス着用の強制に反対する「#KuToo(クートゥー)」。発起人である石川優実のツイートから始まったこの運動はドレスコードに潜む性差別を明らかにした。ファッションにおいて気付きにくくなってしまっている性差別の実態について、本書を一つのきっかけとして考えてみるのも意味あることなのではないだろうか。この書籍をめぐる反応を見ているとついつい世の中の生きづらさを感じてしまうが、「#KuToo」という問題提起の本質が揺らぐわけではない。本書のメインテーマとなるフェミニズムについて、誰しもが生きやすい社会について、「#KuToo」を契機に考えてみてほしい。

「アパレルに革命を起こした男」
(梶山寿子、日経BP)

 島精機製作所創業者である“紀州のエジソン”こと島正博会長の再評価の動きが高まっている。2019年9月にも島会長に注目した書籍「つながる力 世紀の発明家・島正博の源流と哲学」(合田周平、PHP研究所)が出版されているが、本書では島会長の先見性にフォーカスして生い立ちと共にその人生哲学に迫っていく。和代夫人など島会長を支えた周囲の人物に関する記述も多く、ストーリー性が高い内容になっていて読みやすい。たびたび挿入される口語調そのままの島会長の言葉からは人柄が伝わってくる。

「AFFECTUS vol.6」
(新井茂晃、AFFECTUS)

 オンライン連載のファッションエッセー「AFFECTUS(アフェクトゥス)」書籍化第6弾。「マルタン マルジェラ(MARTIN MARGIELA)」(現「メゾン マルジェラ」)の1989年春夏デビューショーを見ての1編や、エディ・スリマン(Hedi Slimane)が「セリーヌ(CELINE)」アーティスティック、クリエイティブ&イメージディレクター就任したことを受けて書かれた「エディ・スリマンが戻ってくる」など、コレクションやファッションショーの楽しみ方を教えてくれるバラエティー豊かなエッセー12編が掲載されている。敷居高く感じてしまうモードの世界を分かりやすく言語化したファッションの手引き書。

「ヨーロッパ服飾物語II」
(内村理奈、北樹出版)

 「ヨーロッパ服飾物語」(2016)の続編となる本書は、ルノワール(Pierre-Auguste Renoir)の絵画や「フィガロの結婚」などを題材に、アート、メディア、演劇や文学との関係からフランスにおける服飾文化を説いていく。モードの源流をたどることでファッションの世界の豊かさが見えてくるはず。西洋服飾文化史を専門とする著者は同時期に「マリー・アントワネットの衣裳部屋」(平凡社)を出版している。本書7章でもマリー・アントワネット(Marie Antoinette)をメインに取り上げているが、当時の王侯貴族の衣装や生活をさらに知りたい人はそちらもあわせて読まれることをお勧めしたい。

「死を招くファッション 服飾とテクノロジーの危険な関係」
(アリソン・マシューズ・デーヴィッド 著、安部恵子 訳、化学同人)

 美しい緑のドレスが人を死に至らしめる――ハッとするような事例が並ぶ負の服飾産業史。毒素を含んだ染料や可燃性の高い素材など、きらびやかな見かけとは裏腹に多くの犠牲を生み出してきたという事実を、豊富な図版と共に浮かび上がらせる。最終章では近年の事例にも言及。今年1月半ばにも生理用下着から有害物質が検出されたと一部で話題になったが、2013年の「ラナ・プラザ(LANA PLAZA)の悲劇」など、生命を脅かす危機はまだファッションと隣合わせにあり続けている。今後ここで言うファッションの犠牲者を増やさないためにも手元に置いておきたい一冊。

「ファッションの哲学」
(井上雅人、ミネルヴァ書房)

 「ファッションを考えることは、人間が現在どのような存在として考えられているのかを考えることでもある」(P.281)。人間の身体とそれを取り巻く流行現象に否応なく関わることになるファッション――その全体像は容易にはつかみづらく、概観するには多面的なアプローチが必要となってくる。本書では文化、デザイン、ビジネス、歴史などさまざまな切り口からファッションを分析していく。まずは気になる章から読み進めるだけでもこれまでとは違った認識を得られるのでは。ファッションは社会や人間を考えるための一つの視点を与えてくれる。本書をきっかけに、ファッションが持つ価値をあらためて考えてみるのもいいかもしれない。

秋吉成紀(あきよしなるき):1994年生まれ。2018年1月から「WWDジャパン」でアルバイト中

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ベルリンで見つけた “サステナブルっぽくない”サステナブランド4選 「ヴィクター&ロルフ」とのコラボも

 サステナブルファッションに特化した合同展示会「NEONYT(ネオニット)」がベルリン・ファッション・ウイーク期間中の1月14〜16日、現在は使われていないテンペルホーフ空港の格納庫で開催された。もともとサステナブルファッションの中でもハイファッションを扱う「グリーン ショールーム(GREEN SHOWROOM)」とストリート&カジュアルファッションを集めた「エシカル ファッションショー ベルリン」が一つになり生まれた「ネオニット」は、今回が3度目の開催。世界22カ国から過去最大となる210を超えるブランドが出展したほか、ファッション業界の未来を考えるカンファレンスやパネルディスカッションが開かれた。来場者数は公表されていないが、サステナビリティへの意識の高まりに伴い、使用する素材や生産背景に責任を持ったブランドを探すバイヤーは確実に増加しており、会場は賑わいを見せた。

 ただ、サステナブルファッションを取材する中で常々感じているのは、サステナビリティを実現するためにデザインを犠牲にしたり、価格を大幅に上げたりしてしまっては、消費者には受け入れてられるものは生み出せないということだ。展示ブランドの中にはまだ洗練に欠けるブランドが多いのも事実だが、年々良い意味で“サステナブルっぽくない”ブランドも増えている。ここでは、そんなファッション性、手ごろな価格、サステナビリティへの配慮の三拍子がそろったブランドやコレクションを4つお届けする。

VIKTOR & ROLF X CALIDA

 1941年にスイスで創業したアンダーウエアブランド「カリダ(CALIDA)」は、2018年に初めて「クレイドル・トゥ・クレイドル(“ゆりかごからゆりかごまで”を意味する完全循環型のモノ作り)」のシルバー認証を受けたTシャツを発売。その発展形として、20年春夏から「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR & ROLF以下、V&R)」との協業によるカプセル・コレクションをスタートさせる。スローガンは、過去に「V&R」のオートクチュール・コレクションで使われたフレーズ“I want a better world”をアレンジした“We want a better world”。“テンセルリヨセル”やストレッチ繊維の“ロイカ”、オーガニックコットンを用いた100%堆肥化可能なコレクションで、男性用のボクサーブリーフやトランクス、女性用のシームレスショーツといった下着類をはじめ、Tシャツ、スエットシャツ、スエットパンツ、ナイトウエアをラインアップする。デザインのポイントは、地球やバラ、木のモチーフと手書き風の文字やスローガンのプリント。ウィメンズには、肩や胸元にフリルがあしらわれているものもある。アイテムはハンガリーの自社工場で生産。価格帯は下着類12〜25ユーロ(約1400〜3000円)、Tシャツ49〜69ユーロ(約5800〜8200円)、パジャマ90〜160ユーロ(約1万〜1万9200円)などで、通常ラインと同程度になるという。第1弾は5月、スエットなどアイテムのバリエーションを広げた第2弾は10月に発売予定。スイスやドイツにあるヨーロッパ内の旗艦店とオンラインショップなどで取り扱い、オンラインショップは日本への発送にも対応する。

ARMEDANGELS

 エコ&フェアトレードにこだわったカジュアルウエアを提案する「アームドエンジェルズ(ARMEDANGELS)」は、これまでベルリンで同時期に開催されている合同展「プレミアム(PREMIUM)」に出展していたが、来場者にブランドのメッセージをより明確に伝えるため、今回から「ネオニット」に切り替えた。2007年にドイツ・ケルンで創業した同ブランドは、まだ学生だったマーティン・ホーフェラー(Martin Hoefeler)CEOが、自分で仕入れたオーガニックコットンTシャツにオリジナルプリントを施して販売したところからスタート。現在は、シャツやニット、スエット、ジーンズ、ワンピース、マフラーなど、メンズ&ウィメンズのウエアを幅広く手掛けている。素材は、GOTS認証を受けたオーガニックコットンや、オーガニックウール、リサイクルプラスチック、環境に優しいビスコース“エコヴェロ”などを使用。ポルトガルやトルコ、チュニジアで生産している。タイムレスでクリーンなデザインが魅力で、Tシャツ35ユーロ(約4200円)〜、ジーンズ100ユーロ(約1万2000円)〜といった手ごろな価格帯で提案。新たにビーツやローズマリーなど自然由来の染料で染めたカプセルコレクションも打ち出す。現在はドイツをはじめヨーロッパでの卸を中心に販路を築いており、直営はオンラインショップのみ(日本にも配送可能)。今後は北米とアジア市場開拓を視野に入れる。日本未上陸。

PINQPONQ

 ベルリンの街中でもよく背負っている男性を見かける「ピンポン(PINQPONQ)」は、カジュアルなバックパックで知られるブランド。デザインとサステナビリティの両立をミッションに掲げ、2014年にドイツ・ケルンでスタートした。毎シーズン、定番モデル6型のカラーバリエーションを中心にデザインをアレンジしたアイテムやボディーバッグを提案する。素材として用いているのは、使用済みのペットボトルを原料に台湾で作られたリサイクルポリエステル。アウトドアウエアなどの撥水加工に使われることの多かったPFC(フッ素化合物)ではなく、フッ素を含まない“ネオシード”で撥水機能を実現する他、染色は水の消費を抑えるソリューションダイ(溶液染色)を採用。生産は、独立機関のフェア・ウェア・ファウンデーション(FWF)によって労働環境が監督されたベトナムのパートナー工場で行っている。また、内側にノートパソコン収納部や整理整頓に便利な複数のポケットを配した、機能的な作りも好印象。価格帯は、定番のバックパックが90〜200ユーロ(約1万〜2万4000円)、ボディバッグが30〜80ユーロ(約3600〜9600円)。20-21年秋冬には、「ブルーサイン」(スイスに拠点を置くブルーサイン・テクノロジーズによる認証で、繊維産業のサプライチェーン各段階において環境、労働者、消費者にとって安全な化学物質と加工工程および製品に与えられる)の認証を受けたバッグを発売する他、スエットシャツやTシャツ、アウトドアジャケットなどのアパレルもスタートする。現在の販路は、ヨーロッパを中心に200店舗。日本ではプラス・コンテンポラリーがディストリビューターを務め、リバースプロジェクト(REBIRTH PROJECT)のオンラインショップなど20店舗で取り扱われている。

A-DAM UNDERWEAR

 今回2回目の参加となる「アダム アンダーウエア(A-DAM UNDERWEAR)」は2014年にオランダ・アムステルダムで設立。ポップでカラフルなプリントを用いたボクサーブリーフやトランクスをはじめ、遊び心あるモチーフの刺しゅう入りの靴下やスエットシャツ、トランクスと同素材のラウンジパンツ、水着など、メンズやユニセックスアイテムをそろえる。ベースとなる素材は、GOTS認証を受けたオーガニックコットン。靴下には伸縮性を持たせるために海洋ゴミや漁網などをリサイクルして作られる“エコニール”の糸をブレンドし、水着にはリサイクルポリエステルを100%使用している。デザイン面でも下着類はタグの内側に“IT’S WHAT’S ON THE INSIDE THAT COUNTS(大切なのは中身)”などユーモアあふれるフレーズがあしらわれていたり、靴下は洗濯するときに無くさないようにと履き口にボタンが付いていたりと、芸が細かい。価格はボクサーブリーフが19.95〜22.95ユーロ、靴下が9.95ユーロ(約1100円)、スエットが79.95ユーロ(約9500円)、水着が69.95ユーロ(約8300円)など。現在、オランダやドイツ、フランスなどヨーロッパを中心に約550店舗で販売されている。公式オンラインショップもあるが、ヨーロッパ内のみの発送というのが残念なところ。

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「自分の命は自分で」時代の“キラキラ”とは? エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年7月4日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

「自分の命は自分で」時代の“キラキラ”とは?

 西日本、特に九州の大雨は予断を許さない状況が続いています。7月2日には、気象庁が異例の記者会見。「非常事態」「深層崩壊」という言葉を繰り出し、「住民は、自らの命は自らが守らなければならない状況を認識して、早めの避難を」と呼びかけました。重たい言葉です。

 「命を守るため、一刻も早く逃げてください」ーー。先立ってNHKは東日本大震災を機に地震・津波に関するニュースの報道スタンスを変更、津波警報・大津波警報発令時の避難の呼びかけは語気が格段に強まりました。その訓練映像は、目にしたことがある方も多いでしょう。先日新潟県沖で発生した地震に際しても、発令されたのは津波注意報でしたが、NHKの報道には先日の気象庁の会見同様、重たさがにじんでいました。

 こういう報道を目にするたび、そして不安になるほどの雨、目の前で人が倒れるくらいの暑さを体感するたび、私たちは「地球、ヤバいかも」と実感し、決して少なくない消費者が「洋服なんて買ってる場合?」という志向に変化しています。正直、“服バカ”の僕でさえ、そう思うほどです。2020年春夏のメンズ・コレクションは、同じく「地球、ヤバい」と実感するデザイナーたちが、地球温暖化や海洋汚染、インクルージョンとダイバーシティーなどを強く、とても強く訴えました。

 けれど日本の展示会に行くと、なんだか呑気です。特にウィメンズは「今シーズンのテーマは、80年代の南仏で~」とか、実は心の中で「行ったことねーし。アナタは行ったことあるの?消費者は、知ってるの?」と思っているテーマから連想するスタイルを見せてくれます。キラキラしてます。素敵です。でも、「呑気にキラキラでいいのかな?」とも思います。結果、展示会場を出る時の感想はたいてい、「あんまりピンと来なかった」です。

 以前、異業種のPR、とは言えデザイナーともコラボするなど、ファッションとの距離は決して遠くない業界の住人に「ぶっちゃけ、ファッションの世界はどう見えていますか?」と聞いたことがあります。すると彼女は、「キラキラ、通じなくなってますから、ファッションは厳しいですよね」と言われてしまいました。ショックでした。でも、事実だと思います。

 キラキラが見せられる、キラキラで魅せられるのは、ファッション業界最大の武器だと思います。けれど、能天気なキラキラは、もはや消費者にとってマイナスイメージなのかもしれません。シリアスになりつつある世の中を、不安に思いながら生きる私たちが共感するキラキラとは何か?正直、それは「●●年代のナンチャラ」ではないと思うのです。

SOCIAL & INFLUENTIAL:社会情勢によって変化するファッション&ビューティ業界を見つめます。インクルージョン(包摂性)&ダイバーシティー(多様性)な時代のファッション&ビューティから、社会に届けたい業界人のオピニオンまで。ジャーナリズムを重んじる「WWD JAPAN.com」ならではのメルマガです。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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「自分の命は自分で」時代の“キラキラ”とは? エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年7月4日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

「自分の命は自分で」時代の“キラキラ”とは?

 西日本、特に九州の大雨は予断を許さない状況が続いています。7月2日には、気象庁が異例の記者会見。「非常事態」「深層崩壊」という言葉を繰り出し、「住民は、自らの命は自らが守らなければならない状況を認識して、早めの避難を」と呼びかけました。重たい言葉です。

 「命を守るため、一刻も早く逃げてください」ーー。先立ってNHKは東日本大震災を機に地震・津波に関するニュースの報道スタンスを変更、津波警報・大津波警報発令時の避難の呼びかけは語気が格段に強まりました。その訓練映像は、目にしたことがある方も多いでしょう。先日新潟県沖で発生した地震に際しても、発令されたのは津波注意報でしたが、NHKの報道には先日の気象庁の会見同様、重たさがにじんでいました。

 こういう報道を目にするたび、そして不安になるほどの雨、目の前で人が倒れるくらいの暑さを体感するたび、私たちは「地球、ヤバいかも」と実感し、決して少なくない消費者が「洋服なんて買ってる場合?」という志向に変化しています。正直、“服バカ”の僕でさえ、そう思うほどです。2020年春夏のメンズ・コレクションは、同じく「地球、ヤバい」と実感するデザイナーたちが、地球温暖化や海洋汚染、インクルージョンとダイバーシティーなどを強く、とても強く訴えました。

 けれど日本の展示会に行くと、なんだか呑気です。特にウィメンズは「今シーズンのテーマは、80年代の南仏で~」とか、実は心の中で「行ったことねーし。アナタは行ったことあるの?消費者は、知ってるの?」と思っているテーマから連想するスタイルを見せてくれます。キラキラしてます。素敵です。でも、「呑気にキラキラでいいのかな?」とも思います。結果、展示会場を出る時の感想はたいてい、「あんまりピンと来なかった」です。

 以前、異業種のPR、とは言えデザイナーともコラボするなど、ファッションとの距離は決して遠くない業界の住人に「ぶっちゃけ、ファッションの世界はどう見えていますか?」と聞いたことがあります。すると彼女は、「キラキラ、通じなくなってますから、ファッションは厳しいですよね」と言われてしまいました。ショックでした。でも、事実だと思います。

 キラキラが見せられる、キラキラで魅せられるのは、ファッション業界最大の武器だと思います。けれど、能天気なキラキラは、もはや消費者にとってマイナスイメージなのかもしれません。シリアスになりつつある世の中を、不安に思いながら生きる私たちが共感するキラキラとは何か?正直、それは「●●年代のナンチャラ」ではないと思うのです。

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読者注目の2020-21年秋冬ベスト10ブランド ロンドン・メンズ編

 2020-21年秋冬ロンドン・メンズ・コレクションが1月6日に閉幕した。「WWD JAPAN.com」読者はどのブランドに興味を持ったのか?公式スケジュールブランドをルック掲載から24時間以内のセッション数(訪問数)が多かった順でランキング。公式スケジュールで発表したのは23ブランド。その中で上位10位にランクインしたブランドはこれだ!

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人材を「育てる」カルチャーは働きがいに直結 ファッションフリークOL「WWDジャパン」最新号につぶやく

 1992年生まれのファッションフリーク女子が、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。渋谷のファッションベンチャー企業に勤める等身大OL、Azuのリアルな目線を生かした「このニュースからはコレが見える」という切り口で、さまざまな記事につぶやきを添えます。

今日のニュース:P.8『働きがいのある企業ランキング』

読み解きポイント:大切なのは「育てたい」と「育ちたい」の相思相愛

ニュースのポイント

 ファッション業界は“好き”が生かせる世界だが、労働人口の減少や価値観の多様化で仕事に対するアプローチも変化し、人材確保は業界最大の課題となっている。国内最大級の社員クチコミ数を有する「OpenWork」の協力でファッション業界における働きがいのある企業ランキングを作成。待遇の満足度、社員の士気、20代の成長環境、法令遵守意識など8つの項目の平均点を総合評価とした。

Azuはこう読む!

 社会人になってもうすぐ5年。勤めた会社は2社しかありませんが、どちらもとても濃い会社で私の社会人としての人格形成に大きく影響しています。1社目のセレクトショップでは8つの項目に則るならば「社員の士気」の大切さを学び、ファッションとITの領域で起業したベンチャー企業という2社目では「20代の成長環境」を得ることができました。

 記事中で表彰されている中で「働いてみたい!」と思ったのは、「20代の成長環境」が素晴らしいジーユーです。“全員経営” “完全実力主義”を実践し、20代にも店長や海外事業部などを任せることがあるそう。入社早々店長に抜擢するのは形だけなら簡単かもしれませんが、期待の人材が潰れないようにサポートする組織づくりがどれだけ大変か、想像に難くありません。「営業部と人事部、教育部で人材を常にウオッチし、才能を見逃さない仕組みができている」と断言できるなんて……惚れました!

 言ってしまえば20代なんてまだまだマネジメントされ慣れてもいないし、当たり前ですがマネジメントする側に立つには経験不足。自分がいきなり「人を動かす立場になれ」と言われても、きっと右往左往するに決まっています。若手に責任ある仕事を任せることができるのは、それだけ人を見る目があるベテランがいるからで、良い上司が良い部下を育て、その背中を見てまた良い上司が生まれていく……ジーユーにはその連鎖があるのだな、と思いました。

 年齢に関係なく実績次第でぐんぐん前に進める環境は、働くモチベーションを格段に上げてくれます。さらに、目標管理制度は「業績」と「人材育成・組織活性」の比率が半々に設定されているそうで、ただ「とりあえず数字だけ伸ばそう」という意識では上には上がれないことを明確に突きつけているのも魅力的。数字を達成するのは楽しいし快感ですが、その数字の意味を理解できていなければ、組織にとって必要な人材にはなれていませんからね。「育てる」カルチャーがあるかないかは、10年スパンで見た時に働きがいに直結していくと思っています。

Azu Satoh : 1992年生まれ。早稲田大学在学中に渡仏し、たまたま見たパリコレに衝撃を受けファッション業界を志す。セレクトショップで販売職を経験した後、2015年からファッションベンチャー企業スタイラーに参画。現在はデジタルマーケティング担当としてSNS運用などを行う。越境レディのためのSNSメディア「ROBE」(@robetokyo)を主催。趣味は、東京の可愛い若手ブランドを勝手に広めること。ご意見等はSNSまでお願いします。Twitter : @azunne

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アニバーサリーイヤーがもたらすものとは? 2019年に10周年を迎えた5つのビューティブランド

 2019年のビューティを振り返ってみると、アニバーサリーイヤーを謳うブランドが多くあったという印象があります。「ファイブイズム バイ スリー(FIVEISM × THREE)」の1周年を始め、「アットコスメ(@cosme)」の20周年、「ナーズ (NARS)」の25周年、「資生堂ギャラリー」の100周年など、周年と聞くとそのブランドの歴史を改めて知りたい、ブランドについて考えてみたいと思う人はきっと私だけではないはず、と思うのです。そう思うと19年は、とりわけて10周年を迎えたブランドが多くありました。10周年のブランドがデビューした09年ごろはどんな時代だったのでしょう。

 09年に誕生したブランドと言えば、「アディクション(ADDICTION)」や「THREE」が代表格。90年代後期からその兆しのあったアーティストブランドの誕生は、ビューティを取り巻く意識や生活環境への変化が見られるようになった時代です。また、今や確固たるものになったと言えるオーガニックやナチュラルコスメが注目されてきたのもこのころから。今、新しいスタンダードになりつつある“クリーンビューティ”の概念は、「10年前は、まだなかった」と角美千子rms beauty PRが言う通り、その言葉を聞いたこともありませんでした。この10年、大きく時代が変わりブランドも淘汰される中で、生き残ってきたブランドが、10周年にそれぞれに記念アイテムを発表しました。ブランドが打ち出したアニバーサリーイヤーを消費者はどのように受け止めたのでしょう。気になる反応などとともに、新しい10年がスタートした今、10年代の最後の年について考えます。

待望のベースメイクに投影するブランドのアイデンティティー

 「アールエムエス ビューティー(RMS BEAUTY)」が誕生した10年前、現在のナチュラルコスメとはそのイメージは大きく異なりました。“クリーンビューティ”という考え方が誰も常識になると思っていなかった時代であり、高品質でピュアな成分のみを使用して発色や質感を損なわないナチュラルコスメブランドをつくることは、不可能とされていたためです。「その常識を打ち破ったのが、創設者であるローズ・マリー スウィフト。化粧品が原因で体調を崩したことをきっかけに、ずっと健康で美しくあり続けることの手助けをしたいという強い思いから実現しました」(角美千子アールエムエス ビューティーPR)。

 ブランドデビューから10周年、日本上陸5周年を迎えた19年10月にはブランド初となるクリームファンデーションを発売しました。「保湿力の高いオーガニックオイルを豊富に配合した、まるでスキンケアのようなファンデーションです。とろけるように滑らかなテクスチャーが、少量でも肌にすっとなじみ、ナチュラルな仕上がりなのに、カバー力があると幅広い年齢の方から好評を得ました。素肌のような艶感を与えるので、ノーファンデ派の方にもご愛用いただいております」と10周年にふさわしいアイテムの発信が好調に推移する。「肌に優しく自然な仕上がりで長期的にみて健康的でなければ、『アールエムエス ビューティー』の目指す“クリーンビューティ”ではありません。肌本来の持つ力を活かすスキンケアのようなベースメイクはブランドのアイデンティティーでもあります。新たなクリームファンデーションの発売によって、その思いをもう一度伝えたかったのです」と語り、時代が追いついてきた“クリーンビューティ”を今後も発信する。

世界で活躍するメイクアップアーティストの感性と高い開発力を結集

 グローバルな経験と感性を持ったメイクアップアーティストをディレクターに迎えてデビューした「アディクション(ADDICTION)」。「自らの努力で魅力に磨きをかけ、美しくなることによって"幸せな人生"を引き寄せたい、と考える現代女性の価値観の変化に着目したことから始まりました」と松塚雅代アディクションPRは振り返る。その美への飽くなき探究心を持つ現代女性に向けたブランドは、「10年の間に誕生した名品ともいえるものから人気のカラーまでを、それぞれのコンセプトに合わせたコンパクトに詰め込むことで、まさに『アディクション』の10年を象徴するものとしてつくりました。インパクトのありながら、それぞれとても使いやすく便利な点が多く、多くのお客さまにご来店いただくことができました。タッチアップを希望される方が列をなす店舗のあるほどです」と語る。特に人気が高かったのは、「アディクション コンパクト 10 リミテッドエディション ザ コンパクト アディクション」と「アディクション コンパクト 10 リミテッドエディション アイコンシャス アディクション」でした。

 さらに、ブランド初のフレグランスも10周年を機に発売した。デビュー時より、「アディクション」を体言する香りをつくることはかなえたいことの一つであったとした上で、「世界的な調香師であるミシェル・アルメラック氏との出会いにより、理想とする以上の香りが出来上がり、10周年というタイミングで発売するに至りました。フレグランスは香ってみないとわからないこともあり、新規のお客さまも試香のためにご来店いただいておりました」と新客獲得に一役買いました。

ブランドを進化させる“ファインド ユア バランス”の新コンセプト

 ホリスティックビューティや地産地消などのキーワードで生み出されるスキンケアとメイクアップアイテムを携えて09年にデビューした「THREE」は言わずと知れた、ナチュラルコスメブランド市場成長の立役者です。19年のアニバーサリーイヤーは、10月と11月に限定アイテムを発売しました。渡邉裕一THREE マーケティングディビジョン ゼネラルマネジャーは「10周年にふさわしい豪華なパレットは、昔から『THREE』を使ってくださっていた顧客さまから、まだ『THREE』のメイクアイテムを使ったことがない新客のお客さままでとても好評でした」といい、「同じ時期に、オーラルケア(歯磨き粉、洗口液)など新たなカテゴリーを発表し、挑戦し続ける姿勢にブランドの面白さと期待感を感じていただけたと思います」という言葉からは、まだまだ勢いを感じます。

 11月に発売したパレットは、10周年を機に刷新したキーメッセージである“ファインドユア バランス”をテーマにしています。「THREE」の多面性を見せるメイクアイテムとして開発をスタートしたというもので、全顔を作れるメイクパレットはブランド初。そんな今回の10周年記念アイテムや色について「今まで人気のあったカラーに今の時代のニュアンスをプラスして展開することで、今までとこれからの『THREE』を表現した」と語ります。さらに、10周年を機にブランドブックとブランドを象徴する女性像のビジュアルも発表。「ブランドの本質とメッセージ、根底にあるフィロソフィーを表現し、ほかにはマネできない独自性を感じていただけたと思っています」と意気込みます。百貨店の売り場も11月から順次新カウンターデザインを採用して一新させたのは、より「THREE」らしさ、更なる進化を感じてもらえるような空間を表現したいという考えからで、ブランドの旗艦店であるTHREE AOYAMAも11月に全コンテンツをフルリニューアルしました。

ブランドとともに歩み続けるネイルオイルで回顧する

 “うれしいことが、世界でいちばん多いお店”をコンセプトに掲げ、ユニセックスのヘアサロンの「エクセル(EXCeL)」から、現在の「ウカ(uka)」へと大きくシフトチェンジしたのが10年前です。渡邉弘幸ウカ代表取締役CEOは、「新ブランド名とロゴ、ビジョン、それを象徴する商品としてネイルオイル、すべてを同時に発表しました」と回顧します。「ウカ」のシグネチャーであり続けるネイルオイルは、これまで毎年限定のアイテムを発売していますが、「10周年を迎えられた感謝の気持ちに、深い尊敬と愛情を込めた2本を追加しました。ブランドの歩みを振り返るという意味で、これまでのアイテムを『ウカ ネイルオイルをリミテッドエディション』として復刻しました」。ネイルカラーやボディーケアなど多くのアイテムを発表し注目を集める「ウカ」ですが、ネイルオイルの人気は変わらず高いと言います。今回、10本の限定セットを発売したことでブランドを象徴するアイテムであることを表現していました。

 「ブランドに対する応援の気持ちから、記念として購入してくださるお客さまが多くいらっしゃいました。また、ネイルオイルとともにご自身の思い出を聞かせてくださることもあり、励みになりました」と話し、10年という歩みが刻まれていると感じます。

ピンクに彩られたビューティツールに込めた思い

 母体となる、貝印の100 周年事業の一環という背景で09年にデビューした「コバコ(KOBAKO)」。永富千晴美容ジャーナリストをアドバイザーに迎えたビューティツールブランドで、第一線で活躍しているビューティアーティストとのコラボレーションアイテムも人気です。その「KOBAKO」が、19年4月から20年3月まで4回にわたってアニバーサリーアイテムを発表。中でも、ピンクをキーカラーにしたアイラッシュカーラー コレクションは注目度が高かった。「アニバーサリー一連のコレクションのテーマカラーにピンクを選びました。ブランドを続けてきた10年間で、どんな時でもお客さまから一番リクエストの多かったのがピンクだったことがその理由です」と竹内けい貝印 マーケティング本部 プロジェクトユニット コバコ プロジェクト ブランドマネージャーは話してくれました。ピンクにこだわることで顧客への感謝の気持ちを表すとともに、女性を象徴するカラーと言えるピンクをきっかけに新しいビューティーツールにトライしてほしいという願いも込めたと言います。

 「『KOBAKO』のアイテムを改めて知っていただけるよう、展開中のさまざまなカテゴリーを網羅。メイクツール、ネイルケア、ミラー、スキンケア、その中から人気のツールをピックアップしました」。20年1月までに発売した第3弾までは、いずれも反応はよくこれまで「コバコ」を知ることのなかった新客の獲得につなげることができたという。「特に、SNSの影響によって店頭に20歳前半の若いお客さまが増えたと感じています」と語ってくれました。

 10年を生き残ってきたブランドが発表したアニバーサリーアイテムは、次の10年に向け顧客・新客ともに満足させるアイテムがそろっていました。

渡部玲:女性誌編集部と美容専門の編集プロダクションに勤めた後、独立。2004年よりフリーランスの編集者・ライターとして雑誌やウェブなどの媒体を中心に活動。目下、朝晩のシートマスクを美容習慣にして肌状態の改善を目指している

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「グッチ」の持続可能なファッションショー エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年10月3日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

「グッチ」の持続可能なファッションショー

 2020年春夏もやはり「グッチ(GUCCI)」が面白いですね。ファーストルックから続いたオールホワイトのオーバーサイズユニホーム群に「うへ、何事?」と驚かされましたが、今季はターニングポイントとなるシーズンなのではないでしょうか。

 1600万が視聴したという中国版ツイッター、ウェイボーでのリアルタイム配信とは別に、今回の「グッチ」のショーではもうひとつ新たな試みがありました。国際規格「ISO 20121」に準拠したサステイナブルなショーだったということです。持続可能なイベント運営のためのマネジメントシステム規格で、2012年に開催されたロンドンオリンピック・パラリンピックで活用され、20年の東京大会でもこの規格に沿ったマネジメントシステムの導入が決まっています。

 米「WWD」の原文記事ではワンパラグラフであっさり触れているだけでしたが、折しも温室効果ガスの排出を相殺する“カーボンニュートラル”宣言をした直後のショー。シーズンごとの華やかなショーの開催って、サステイナブルの観点からするとどうなのだろうか?と私も少なからず疑問に思っていますが、それに対するひとつの回答でしょう。

 弊紙のサステイナブル担当は「招待状からしてシンプルになったところに違いを感じた」と言っておりましたが、確かに思い返してみれば「グッチ」のインビテーションはこれまでだいぶ“オブジェ”でしたよね。

 10月14日号「WWDジャパン」のミラノコレ特集第2弾ではこのショーをサステイナブルの切り口で詳報予定です。ショーのセットは捨てないのか?ショーによる温室効果ガスを相殺するために何をするのか?ショーを語る上での新しい視点が提示されそうです。

 ケリングはグループ全体でカーボンニュートラルを宣言しているので、今後「サンローラン」や「ボッテガ・ヴェネタ」なども導入することでしょうし、その他のブランドも追随することが予想されます。ライバルLVMHの猛追も始まりそうです。

VIEWS ON WWD U.S.:米「WWD」の翻訳記事から、注目すべきニュースの紹介や記事の面白さを解説するメールマガジン。「WWDジャパン」のライセンス元である米「WWD」は1910年から続くファッション業界専門紙。世界中のデザイナーや企業のトップと強く繋がっており、彼らの動向や考え、市場の動きをいち早く、詳しく業界で働く人々に届けています。

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渋野フィーバーに見るビームスの強さ エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年8月13日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

渋野フィーバーに見るビームスの強さ

 「AIG全英女子オープン」で優勝した女子プロゴルファー、渋野日向子選手のフィーバーがすごかったですね。8月5日は、深夜3時につけっぱなしのテレビから聞こえてきた歓声で目を覚ましました。見ると画面には、渋野選手のあのはじけるような笑顔が映っていました。その後、繰り返し放送された例の強気のパットと独特のかわいいガッツポーズを見て、多くの人が気になったのが「ビームス ゴルフ(BEAMS GOLF)」のポロシャツだったと思います。

 カラフルなデザインとコンパクトなシルエットがフレッシュな渋野選手に似合っていましたが、ギョーカイ人として最初の感想は正直“え?全英優勝選手の契約が大手スポーツメーカーではなく、『ビームス ゴルフ』なの?”ではないでしょうか。今後についてはわかりかねますが、スター誕生に立ち会ったビームスの嗅覚とグリップ力はすごい。ビームスは今やセレクトショップであると同時に企画屋集団でもあり、店舗以外に大小さまざまな仕掛けを打ち出し続けておりますが、こうやって大きな話題をつかむのも常に関心と人脈のアンテナを張り巡らしているからでしょう。

 9日金曜日に原宿のビームス本社に取材で訪れたところ、エレベーターホールの壁に渋野選手の笑顔の写真がずらりと貼られていてテンションがあがりました。ビームス内で大きな話題が立ち上がった時、設楽洋社長が自らSNSでバンバン発信することが象徴するように、ビームスのメンバーは個も社も発信力に長けています。エレベーターホールの写真も発信のひとつであり、得意のミーハー&お祭り心を目立つ場所で、タイミングよく、はっきりと情報共有することで、社内外の機運もグンとあがります。ミーハーはファッションビジネスの原点でコアですよね。

 ゴルフをする者から言わせてもらうと、特にウィメンズのゴルフウエアの選択肢は狭いです。“女子ゴルフ”は、なぜかキラキラとかカワイイといった形容詞が似合うキャラ立ったデザインが主流で、普段キラキラしていない者からするとコスプレみたいで食指が伸びません。ボーイッシュな「ビームス ゴルフ」のポロシャツを通じて“これならば、”とゴルフに関心を持った女性もいるのではないでしょうか?ただし、同じデザインのポロシャツは再販の予約が開始5分で完売だそうでしばらく手に入れることは難しそうです。

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週末お出かけスポット デジタルテクノロジーを駆使した作家、ジョナサン・チャプリンの個展など5選

 週末にオシャレして出掛けたいスポットをお届け。今週は、デジタルテクノロジーを駆使した作家、ジョナサン・チャプリンのアジア初個展や人体に楽譜を描くヤコポ・バボーニ・スキリンジの日本初個展など5つをラインアップする。

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成長鈍化したZOZO、ZOZOイヤーに巻き返しなるか

 ZOZO澤田宏太郎社長兼CEOの新年は、ほろ苦い幕開けだったはずだ。昨年9月12日に突然トップのバトンを創業者の前澤氏から渡された澤田社長にとって、19年10〜12月期はいわば経営者としてのデビュー戦。しかし、暖冬と増税、さらには前澤氏の”置き土産”とも言えるPGAツアーとバスキア展の大出費まで重なり、営業利益は前年同期比で42.0%減と、ZOZOにとって歴史的とも言える大幅減益を強いられた。1月31日のアナリスト向けの決算発表で”MORE FASHION”と”FASHION TECH”という経営の新基軸を宣言し、高感度ブランドの導入やテクノロジーを活用したリアル店舗支援などの方針を打ち出したものの、アナリストからは減益の理由となった暖冬への対応や具体的な巻き返し策に集中した。

 商品取扱高(GMV)の拡大に邁進してきた創業者の前澤流経営から、ZOZOの原点であった”ファッション”を軸に、リアル店舗支援なども絡ませて再成長を目指す澤田社長の新方針は、中長期的には間違っていない。大手アパレルやセレクトショップなどの多くのファッション企業にとって“ゾゾタウン支店”は、旗艦店をもしのぐ圧倒的な一番店でありながら、商品単価の下落が続き、「在庫処分のための、もはやアウトレットになっている」(ある有力セレクト)と悩みの種になっていたからだ。

 マスカスタマイズテクノロジーを軸にしたプライベートブランド「ZOZO」に加え、会員制割引サービス「ZOZOARIGATO」など、カリスマ前澤氏の従来の枠組みにとらわれない革新的なアイデアや施策は注目を集める一方で、多くのファッション企業の離反や反発を招き、カリスマならではのトップダウン方式は現場の士気の停滞につながっていた。就任からわずか3カ月で新基軸を打ち出し、社員の士気を鼓舞し続ける澤田社長ら現経営陣の奮闘ぶりには目を見張る物がある。

 とはいえ、10〜12月期の商品取扱高はわずか0.3%増にとどまり、4〜12月期の粗利益率は34.4%から33.1%と1.3ポイントも低下した。粗利率の低下は上昇するコストをGMVの増加で吸収できなかったという点で痛い。ZOZOは今年2月と10月の開設予定で大型物流倉庫を新設。物流施設は人件費の高騰も続いており、今後の商品取扱高の成長の鈍化は採算の急激な悪化を招きかねない。アナリストからは「これまで暖冬や増税の影響を決して認めてこなかったにもかかわらず、業績悪化の理由に認めたことは残念だ」という厳しい指摘も飛んだ。

 ZOZO澤田社長は“MORE FASHION”という方針を堅持しながら、これまでの成長を期待する投資家たちの期待にも応え続けなければならない。昨年12月にオープンした“ペイペイ(PAYPAY)モールZOZO支店”の好調は明るい材料だが、それを上回る成長や期待感を“ゾゾタウン本店”が見せる必要がある。澤田社長は「テクノロジーを絡めることで、ラグジュアリー・ブランドの導入や革新的なリアル店舗支援ツールの開発など、やれることは多い」と語る。2020年をZOZOイヤーにできるか。今こそZOZOの真価が問われている。

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ケリングがサステナビリティ活動の中間発表 2025年の目標達成に向けて順調に推移

 「グッチ(GUCCI)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」を擁するケリング・グループは1月30日、サステナビリティ活動の中間発表を行った。これは、2017年に発表した2025年をゴールとする次世代のサステナビリティ戦略「Crafting Tomorrow's Luxury - 未来のラグジュアリーを創造する」の進捗報告で、会場は、同グループがメインスポンサーを務めるフランス・パリのグラン・パレで開催中のサステナビリティサミット「チェンジ ナウ(Change Now)」のカンファレンスルームだ。

 チェンジ ナウは2年ぶり2回目の開催で、規模が急速に拡大した。有識者によるパネルディスカッションやスタートアップ企業の活動報告といったカンファレンスに加え、スタートアップ企業がブースを出展しパートナー企業や投資家などを探す場にもなっている。

 中間発表で登壇したマリー・クレール・ダヴー(Marie-Claire Daveu)チーフ・サステナビリティ・オフィサー兼国際機関渉外責任者は「堅調な進展を遂げ、地球温暖化を1.5℃未満に抑える道筋の基礎を築いている。頼もしい成果である一方で、今後数年でさらに前進するためには、やるべきことが膨大にある」と語る。

今回、発表された主な項目は下記のとおり。

1. グループ全体の環境への影響は、15~18年の間にEP&L(環境損益計算書)の原単位で14%削減され、25年までに40%削減するという目標の実現に向けて好調に推移

2. グループの直接的な事業活動で15~18年の間にGHG(温室効果ガス)排出量を原単位で77%削減

3. グループ全体の再生可能エネルギーの使用率は67%、少なくとも7カ国で100%を達成

4. ジュエリーや時計には、100%エシカルゴールドを調達

5. 主要原材料のトレーサビリティは88%

 また、フランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)=会長兼最高経営責任者のコメントも発表された。「私たちは、法的責任の範囲外の活動も含め、ケリングの事業活動が及ぼした影響について、透明性のある報告をすることに長年取り組んできた。サプライチェーン全体に対する高い目標を立て、サステナビリティに向けた進捗を記録することで、確実に気候変動対策と社会面の便益を進展させているのを確認することは欠かすことのできない取り組みだ。新たな10年のスタートにあたり、私たちの業界は大胆な行動を起こさなければならない。私たちが自社の脱炭素化の挑戦に効果的に取り組むためには、透明性と幅広い協力が重要だ」。

 ケリングのサステナビリティ戦略はグループのラグジュアリー・ブランドを包括しており、自社の事業活動とサプライチェーン全体について73の環境重要業績評価指標(eKPI)で測る。これには、店舗、事務所・倉庫、輸送、製造・加工、原材料の生産と最終製品まで含まれる。また、目標の3本柱はケア(配慮)、コラボレート(協業)、クリエイト(創造)で、25年のサステナビリティ目標へ向けたこれまでの主な成果は下記のとおり。

地球へのケア(配慮)

・15~18年の間でグループ全体の環境への影響をEP&Lの原単位で14%削減

・15~18年の間で自社の事業活動において、グループのGHG排出量の原単位を77%削減

・再生可能エネルギーの使用率は少なくとも7カ国で100%、ヨーロッパでは78%、グループ全体では67%を達成

・15~18年の間で科学的根拠に基づく目標(SBT)として掲げるGHG排出量50%削減に対し、原単位を36%削減

・最優先事項としてGHG排出を回避・削減し、毎年残りの排出量をオフセット(相殺)することで、グループとして18年現在、自社の事業活動とサプライチェーン全体において完全にカーボンニュートラルを実現

・18年1月に、環境保護、社会福祉、トレーサビリティー、化学薬品使用、動物福祉のベストプラクティスを進める「原材料および製造プロセスに関する基準」を開発しオープンソース化。グループはすでに68%の調整を達成

・宝石や時計に関して100%エシカルゴールドの調達を達成。25年までに他の主要な原材料についてもサステナブルな調達を100%にする目標に取り組んでいる

・25年までに主要原材料のトレーサビリティーを100%にする目標に対して88%を実現

・19年5月、業界では初となる動物福祉のスタンダードを策定

・民間企業として初めて「生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」と提携して、生物多様性科学を支援

・ラグジュアリー産業で初めて17年の結果を18年の統合報告で発表。また、企業の持続可能性の意義を投資コミュニティーと共有するために、19年11月に、特にグループのESG(環境・社会・ガバナンス)基準に焦点を当てた説明会を開始

人々とのコラボレーション(協業)

・18年の時点で、ケリング・グループのマネジャーの50%、全従業員の63%、エグゼクティブ・コミッティーのメンバーの33%、取締役の60%が女性。CAC40指数(ユーロネクスト・パリの株価指数)を構成する企業の中で、シニアマネジメントにおける女性の割合が最も高い企業のひとつに

・60近い国々の全ての従業員を対象に、先進的な育児休暇ポリシー(養子を含む父親、母親の育児休暇に関する規定)を策定し運用

・モデルの福利に関する憲章を策定して実施。18歳以上のモデルのみを起用

・マイクロローン、スキルトレーニング、教育を通じてサプライチェーンの地域の女性のエンパワーメントを支援

・サステナビリティとラグジュアリーファッションに特化した初めてのMOOC(大規模公開オンラインコース)をロンドン・カレッジ・オブ・ファッション(London College of Fashion)と共同で開発。コースを中国語にも翻訳。これまでに、150カ国から、3万3500人を超える受講者が無料で参加

・パリの服飾学校、IFM(Institut Francais de la Mode)で高等教育・研究センター「IFM - ケリング・サステナビリティ・チェア」を開設

・次世代の職人のサポートによりラグジュアリーのノウハウとクラフツマンシップを保持。19年時点で20を超えるプログラムを開設

新しいビジネスモデルとイノベーションのクリエーション(創造)

・中国語圏で前途有望なスタートアップやテクノロジーを発掘するため、プラグ&プレー(Plug and Play)と「K Generation Award」を中国で共催。また、世界中のスタートアップ企業にも投資

・ウオッチ&ジュエリー用にサステナブル・イノベーション・ラボ(SIL)を設立。マテリアル・イノベーション・ラボ(MIL)の規模を拡大し、3800のサステナブルな生地を所蔵

・持続可能な原材料への転換をサポートするため、エシカル・ゴールド・プラットフォームなどの融資メカニズムを構築

・サプライチェーンを通して、トレーサビリティーの技術、マッシュルームレザーや環境に優しい染色など環境への影響が少ない代替材料と製造プロセスなどを試行。19年末には金属を使わないなめし方法をコレクションの24%に採用

・素材の再利用と商品の提供に、リサイクルや再生利用のオプションを取り入れるための新しい方法に注力

・ファッション業界で初めて再生農業に関するパートナーシップを締結

・ステークホルダーに対して透明性を提供するために「デジタル EP&L」を立ち上げ、ラグジュアリー業界やファッション業界に対し、自らが環境に与える影響の複雑さについて理解を進めるための基礎データをオープンソース化

・業界全体で広がる循環性を支持する姿勢に対して、消費者が製品の使い方や寿命について理解するための国際的な調査を実施

・ファッション&テキスタイル業界における主要企業が、主な環境問題に関して結束するための「ファッション協定(Fashion Pact)」を創設。59の企業が調印し、約250のブランド、産業の30%以上が参加

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【動画】WWDJAPAN ENGLISH Vol.6 商品やショップがリニューアルしたら英語でどう説明する?

 「WWDJAPAN ENGLISH」は、世界に羽ばたきたい業界人に向けた英会話番組です。「WWD JAPAN.com」にアップした記事をRIZAP ENGLISH(https://www.rizap-english.jp/) 全面協力のもと、「こんなコトが英語で言えたら!!」「あの時、フレーズが浮かばなかった!!」という、業界人なら誰もが知りたいワンポイント英語を学びます。6回目は、日本語メインの初級編。新規顧客獲得のための商品のリニューアルやリブランディグした際に使える英語の表現を学びます。動画の下には、番組中に読み上げた英語を掲載します。

資生堂のプレステージブランド「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE以下、CPB)」は2020年2月21日、ブランドを代表するクリーム「ラ・クレーム」(6万円)をリニューアルする。

Shiseido's luxury brand, “Clé de Peau Beauté”, will renew the brand's leading cream, “La Crème” (60,000 yen), on February 21st, 2020.

ブランドのリピート率トップを誇る人気アイテムをパワーアップさせることで、さらなる幅広い層の新客の取り込みを狙う。

By improving upon their most popular items with the highest rate of repeat purchases, they are aiming to attract a wider range of new customers.

真皮が生まれ変わる力を高めるため独自成分のスキンイルミネイターリッチを新たに配合したほか、何百種類もの酵母から選び抜かれたエキスをブレンドしたセラファーメント(保湿)を含んでいる。

Their unique formula includes a Skin-Empowering Illuminator, which enhances the skin’s ability to regenerate, as well as CeraFerment (for moisture retention), blended with extracts from hundreds of different yeasts.

1982年の誕生(初代の製品名は「クレ・ド・ポー クリーム」)から7回のリニューアルを重ね、今回登場する「ラ・クレーム」は16年から4年ぶりの刷新。

Though this product has been renewed seven times since its initial launch in 1982 (initially called “Clé de Peau cream”), this new edition of “La Crème” will be the first update in 4 years, the last of which came in 2016.

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生理の体調不良で経済的損失が年間6828億円 フェムテック先駆け「ルナルナ」運営会社が福利厚生制度で低用量ピル服薬を支援

 「働く女性の8割以上が生理痛やPMS(月経前症候群)による仕事への影響を感じている」という結果が、フェムテックの先駆けである女性向けの健康情報サービス「ルナルナ」のユーザーアンケート調査で明らかになった。また社会経済への影響も大きく、生理痛やPMSなどの月経困難症による労働力の低下による経済的損失は年間6828億円といわれている(バイエル薬品が日本人女性約2万人に実施した調査結果)。

 「ルナルナ」や音楽配信サイト「music.jp」などを提供するエムティーアイ(MTI)は、こうした女性特有の症状による健康問題を改善してより働きやすい職場を目指すため、新たな福利厚生制度として、生理痛やPMSをやわらげる低用量ピルの服薬の支援を2月にスタートさせる。

 対象は生理痛やPMSに悩む女性社員で、オンライン診察を活用した婦人科受診と処方された薬代を同社が負担。同プログラムでは、「ルナルナ」とグループ会社のカラダメディカが提供する産婦人科向けのオンライン診療サービス「ルナルナ オンライン診療」を活用して、初診は来院が必要だが、その後はオンライン上で診療ができ、通院せずに低用量ピルの服薬が可能になる。

全社員に向けた
「女性のカラダの知識講座」を実施

 「低用量ピルの服薬支援プログラム」を開始するに当たりエムティーアイは、男性管理職や同プログラムへの参加を希望する女性社員を含む全社員に向けたセミナー「女性のカラダの知識講座」を実施した。東京大学医学部附属病院産婦人科の甲賀かをり准教授が登壇し、女性の体のしくみから、女性のライフスタイルの変遷、月経に関連した病気、月経困難症の治療に使われる低用量ピルについて説明した。

 講座を受講した宮本大樹・執行役員ヘルスケア事業部ルナルナ事業統括部長は「生理痛やPMSの知識はあっても、社会の変化と女性の体のメカニズムによるズレがあることは興味深かった。また、生理が病気か否かというところはセンシティブな部分だと思っていたが、“本人が困っていたら病気”ということを明確に教えてもらったことで、会社全体で共通理解を得るいい機会になった」と感想を述べた。

 同社の女性社員であるCARADA法人事業部の吉崎美帆さんは「生理休暇をとれる制度があっても、何もできないというほどの生理痛ではなく、痛み止めを飲んだりして乗り切っていた。それでも我慢して、しんどいこともあったので、先生が“困っていたら病気としてとらえていい”と話していたことで気が楽になった。(服用したことがなかった)ピルも試してみようかなと思った」と話した。

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ファッション業界を長年悩ませる「長い夏に何を売るのか問題」 いいかげん答えを出しませんか?

 「日本の長い夏」――。まるで文学作品のタイトルのようだが、アパレル各社は今、まさに「日本の長い夏」問題に頭を悩ませている。というのも、従来のアパレルのMDカレンダーだと、一年間は梅春(おおよそ1~2月)、春(同3~4月)、夏(同5~7月上旬)、初秋(同7月下旬~8月)、秋(同9~10月)、冬(同11~12月)といったシーズン分けになっている。しかし、今の時代にこのシーズン区分けに共感するような消費者は皆無だろう。1~2月はまだ冬、3~4月が春、5~9月が夏、なんなら10月までが夏、11~12月が秋ぐらいの認識が一般的だ。この、あまりにも消費者感覚とズレた既存のMDカレンダーが、アパレル各社の苦悩の象徴となっている。

「もう“8シーズンMD”でも間に合わない」

 MDカレンダーのズレは年間を通して問題ではある。しかし、なかでも一番悩ましいのが夏の部分だ。従来のスケジュールでは、7月のセールで春夏物を売り切り、その後は秋物を立ち上げるというのが定石だった。しかし、7月に秋物を売り出したって今や誰も見向きもしない。8月だってそうだ。ファッションに対する熱の高かった時代は、8月にウールコートが先物買いで売れたというが、今やそんな動きはよほどのファッションオタクにしか期待できない。そうした中で、セール終了後も延々と続く長い夏の期間に、一体何を売ればいいのかが、業界の共通課題となっている。

 といっても、これは昨日今日降ってわいたような問題ではない。私がこの業界に足を踏み入れた10数年ほど前だって、「長い夏に何を売るのか問題」は業界の共通課題だった。当時、百貨店の婦人服ブランドを取材していてよく聞いたのは、“秋色夏素材”というキーワード。夏物の薄手カットソートップなどにボルドーや深いグリーンを載せたアイテムを、8~9月に店頭投入する“晩夏物”でそろえることで、長く続く夏の需要をつかむという話だった。

 それから10年以上が経ったのにもかかわらず、当時とほぼ同じ問題で今もアタフタしている業界を見ると、「変化への対応が遅すぎやしないか……?」と感じてしまうのが正直なところ。しかし、名誉のためにいっておくと、アパレル各社だってこの10年間、ただ手をこまねいたわけではない。例えば、ユナイテッドアローズは「グリーンレーベル リラクシング(GREEN LABEL RELAXING)」業態を筆頭に、15年春夏から“8シーズンMD”を導入、業界内で話題となった。“8シーズンMD”は長い夏への対応を狙ってMDカレンダーを細分化したものだ(それ以前は6シーズン制だった)。夏を初夏(おおよそ3月下旬~5月上旬)、盛夏(同5月半ば~6月上旬)、晩夏(同6月下旬~8月上旬)の3体制(なんなら初秋の同8月半ば~9月までの4体制)にし、商品計画を組んでいる。

 “8シーズンMD”が奏功し、それがこの間の同社のウィメンズ好調の理由の一つにもなっているのだろうが、竹田光広ユナイテッドアローズ社長執行役員が「WWDジャパン」1月27日号のインタビューで語ったのは、「もう“8シーズンMD”でも追い付かなくなっている」という内容。昨今の台風、豪雨、暖冬などの異常気象が示すように、気候は猛烈なスピードで温暖化しており、日本の亜熱帯化が進んでいる。その変化にアパレル各社が対応しようとしても、気候変動のスピードの方が圧倒的で、対応が間に合わないというのが実情というわけだ。

「ユニクロ」も異常気象への対応に苦戦中

 「8シーズンで間に合わないなら、さらにシーズンを小分けにすればいいだけでしょ?」だなんて声が聞こえてきそうだし、それはその通りではある。そうした小分けの考え方を究極まで突き詰めていくと、オンワード樫山が推進するような“マスカスタマイズ”に行き着くのだろう。しかし、“マスカスタマイズ”とは思想を異にする小売店のビジネス、しかもユナイテッドアローズのような規模の大きなビジネスにおいて、シーズンをさらに小分けにし、天候動向も読みながら生産や投入の小回りをきかせていくというのは、想像をはるかに超えて難しいのだ。

 「ユニクロ(UNIQLO)」「ジーユー(GU)」を擁するファーストリテイリングも、まさにこの問題のハンドリングに苦心している。同社がここ数年、“有明プロジェクト”という名称でサプライチェーンの改革を行っているのは、まさに天候変動などにもこまめに対応できる、小回りのきくビジネスモデルを目指してのもの。それを同社のようなメガ企業が成そうというのだから並大抵ではないが、「ユニクロ」も19年9月以降、異常気象(暖冬)にかなり泣かされており、改革待ったなしというわけだ。

 さて、夏商戦の戦い方についての取材では、“秋色夏素材”というキーワードと共に、この10年間で耳にタコができるほど聞いてきたキーワードがもう一つある。それはセール時期に対する不満の声。「7月という、ようやく夏本番という時期にセールをしてしまうのはどうなのか。むしろここから夏物を売ろう!と精を出す時期じゃないのか」という声を繰り返し繰り返し耳にしてきた。これは正論以外の何物でもなく、業界としてセール時期を後ろにズラしていくよう努力すべきであることは自明。それなのに、それができない。セール時期の問題は、10年間で一進一退?いや、やや後退?というのが私の実感であり、ここでもまた、「変化への対応が遅すぎやしないか……?」と思ってしまったりもする。

 といっても、こちらについても業界はただ手をこまねいてきたわけではない。一時期はルミネと三越伊勢丹という業界の両雄がセール開始時期をそろえ、後ろ倒しにするような動きもあった。しかし、三越伊勢丹の業績悪化やそれに伴うトップ交代などもあって、気付けば立ち消えとなっていた。他社と協力し、全社一律でセール時期を後ろ倒しすれば業界にとってよい結果となるはずなのに、抜け駆けして早期にセールをするブランドや商業施設、ECモールがあるからと疑心暗鬼になってしまって協力ができない。結果、全体最適を得られない。経済学の有名な理論で、「囚人のジレンマ」と呼ばれるようなこうした状況ゆえ、「フランスのようにセール開始時期を法律で一律に定めるべき」といった声が今年も設楽洋ビームス社長を始め、多くの企業トップの年頭インタビューから聞こえてきた。

有力ショップは大人も着られるカットソーを充実

 なんだか業界に対するグチばかりのような文章になってしまったので、最後に20年春夏の展示会で出合った、「これは面白い!」と感じた長い夏を乗り越えるヒントを2つ紹介する。1つ目はセレクトショップの「エストネーション(ESTNATION)」から。夏の服といえば、Tシャツのようなガンガン洗えるカットソートップスが便利だ。しかし残念ながら、Tシャツは、「エストネーション」が対象とするような大人の女性よりも、若い世代の方が似合うアイテムの筆頭だ。では一体、大人女性は長い夏に何を着ればいいのか。「エストネーション」はそこで、素材はカットソーと同じ生地を使いながら、デザインによってエレガントなドレスやブラウスに見えるアイテム群を「エイトン(ATON)」「ボーメ(BAUME)」などの人気リアルクローズブランドと組んでカプセルコレクションとして作成している。セールを前にした買い控えが始まる6月から店頭に投入し、長い夏の期間に売っていくという。「エイトン」のドレスは5万5000円。

 夏を乗り越えるヒント2つ目は、こちらも人気ショップの「ロンハーマン(RON HERMAN)」から。「ロンハーマン」はTシャツとランニングトップスという大人が一枚で着るとどうにも“キマらない”夏のアイテムを、透け感のある極薄ニットとの重ね着でグレードアップさせていた。二の腕などの露出に抵抗がある大人女性でも、透けるニットを上に重ねれば程よい露出具合にコントロールできるのがポイント。見た目にも爽やかで、体形カバーも可能。そんなアイデアが詰まった着こなしアイデアだった。

 「WWDジャパン」1月27日号のCEO特集では、ファッション企業20社のトップインタビューを掲載する。デジタル化の進展やサステナビリティの高まりでビジネスモデルの「大転換」を求められる2020年代、経営者はどのようなビジョンを語るのか。登場企業はオンワードホールディングス、ワールド、ワコール、ジュン、ジョイックスコーポレーション、メルローズ、ユナイテッドアローズ、ベイクルーズグループ、ビームス、アーバンリサーチ、アダストリア、ストライプインターナショナル、マッシュホールディングス、バロックジャパンリミテッド、アイア、豊田貿易、ジンズ、カッシーナ・イクスシー、バニッシュ・スタンダード、アレフス(掲載順)。

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サステナ先進国ドイツのエキスパートに聞く、サステナブルファッションの今とこれから

 昨今ファッション業界でも「サステナビリティ」という言葉を頻繁に耳にするようになったが、その先進国の一つと言えるのがドイツだ。ベルリンでは、2009年からファッション・ウイーク期間中にサステナブルなハイファッションに特化した合同展示会「グリーンショールーム(GREEN SHOWROOM以下、GSR)」が開かれており、19年1月にはその発展形となる「ネオニット(NEONYT)」が発足。200を超えるブランドが出展する一大合同展になっている。そのキーパーソンは、GSRの共同創設者でもあるマグダレナ・シャフリン(Magdalena Schaffrin)「ネオニット」クリエイティブ・ディレクターだ。ドイツにおけるサステナブル・ファッションの第一人者である彼女は、現在を、そして未来をどう考えているのか?

 もともとデザイナーとして自身のブランドを手掛けていたシャフリン=クリエイティブ・ディレクターが、同業の友人ヤナ・ケラー(Jana Keller)と共に「GSR」を立ち上げたのは2009年7月のこと。「もともと自分のブランドでもサステナブルなモノ作りをしていたし、当時からドイツではある程度サステナビリティへの意識があった。加えて、10年前は、スタイルやファッション性を重視する“第2世代”のサステナブル・ファッションブランドが誕生し始め、より多くのファッション企業がサステナビリティへの取り組みを始めた頃でもあった。ただ、自分たちにふさわしい合同展はなく、“ハイファッション×サステナビリティ”をコンセプトにした展示会として、16ブランドを集めて『GSR』をスタートさせた。コンセプトを明確に打ち出すため、会場に選んだのは5つ星ホテルのホテル・アドロン。サステナブルブランドのアイテムを組み合わせたランウエイショーもベルリン・ファッション・ウイークの一部として当時から開催していた」と振り返る。

 その後、11年に数多くの合同展を運営するメッセ・フランクフルト(Messe Frankfurt)に同展の事業を売却。同社は「GSR」の開催に加え、すでに買収していた「エシカル・ファッションショー」の開催地をパリからベルリンに移し、サステナブルなカジュアル&ストリートファッションに特化する合同展として再始動した。15年1月からは両展のシナジーを高めるために同じ会場で開催してきたが、19年1月、2つが合同・発展する形で「ネオニット」としてリローンチした。「イベント名は、古代ギリシャ語とスウェーデン語で“新しい”を意味する『NEO(ネオ)』と『NYTT(ニット)』を合わせた造語。サステナビリティの考え方は、科学の進歩や革新的なテクノロジーによって急速に変化を続けている。時代に合わせてコンセプトを再考しつつ、常に発展させていくという思いを込めた」。そして、リローンチに合わせて合同展のコンセプト自体も見直した。「昔ながらのフォーマットでは、これから生き残ることはできない。今の合同展に必要なのは、コミュニティーが一堂に会する場を作り、相互的なコミュニケーションを促すこと。あらゆるビジネスは人と人との信頼関係の上に成り立っていると私は信じているし、ファッション業界にまつわるさまざまな問題を皆で考えていくことが大事だと思う。そのため、カンファレンスやネットワークイベントにも力を入れている」。

 1月14〜16日に開催された「ネオニット」では、社会問題や環境問題、最新テクノロジーなどを通してファッションの未来を考えるプレゼンテーションやパネルディスカッションなど50のプログラムを実施。出展ブランド数は210を超え、世界最大のサステナブル・ファッションの合同展になっている。もちろん出展するためには、展示するコレクションの最低70%が定められたサステナビリティの基準を満たす必要がある。「昨年は、(環境に配慮しているように見せかけることを意味する)『グリーン・ウォッシング』について深く考えさせられた。今は誰もが『私たちはサステナブル』と主張する時代。だからこそ、事前審査は非常に重要。サステナビリティの解釈は多岐にわたり、基準は常に発展しているので、最新の事実や知識に基づいた観点からチェックをしている。その中でも重視しているのは、社会的側面と環境的側面。完全に循環型のモノ作りを実現した製品に与えられる『クレイドル・トゥ・クレイドル(Cradle to Cradle以下、C2C)』認証も大きなトピックになって、『C2C』の商品を作るということは最初の段階から有害な化学物質や素材を一切使わないということを意味するので興味深い。まだ市場に出ている商品は少ないが、『カリダ(CALIDA)』や『ウォルフォード(WOLFORD)』『C&A』などが提案を始めている」。

この10年間で変わったこと、変わらなかったこと

 また、シャフリン=クリエイティブ・ディレクターも指摘するように、最近は「サステナビリティ」がトレンドや流行語のように扱われていると感じることも多い。そういった意識が広まるのは良いことであると同時に、安易に使われることは危険もはらんでいる。それに対して、「科学的な事実に基づいた評価や真の理解を広めていくことが解決策になる」とコメント。そして、サステナブル・ファッションの実現はまだ長い道のりにあることも付け加える。「今、サステナビリティに対する認識は確実に高まっていて、来年あたりまでそれが続くと思う。しかし、それによってファッション業界全体が変わるかは疑問だ。正直なところ、『GSR』を立ち上げた10年前の方が、将来に対して今よりもずっと楽観的だった」。当時は、10年の間に大半のブランドがサステナビリティに取り組むようになるとともに法律も整備され、業界が変わると考えていたという。「その予想通りにはならなかったけれど、たくさんの変化もあったのも事実。例えば、この大きな問題の解決は企業単位では難しいことに気付き、多くの企業が競争以前の協力の必要性を理解したことは最も大きな変化の一つ。その結果として、『ファッション協定(The Fashion Pact)』や『サステナブル・アパレル連合(Sustainable Apparel Coalition)』のようなイニシアチブが生まれた。一方、この10年間で理解したのは消費者心理が簡単には変わらないこと。それに、労働環境の改善やバリューチェーンの環境負荷低減に対する業界全体の考え方も簡単に変わるとは思えない。そのため、根本的な変化には法律に基づいたレギュレーションが欠かせないと考えている」。

 最後にサステナブル・ファッションの未来について尋ねると、「どのくらいの時間がかかるかは分からないけれど、『サステナビリティ』という言葉を使う必要がなくなる日を夢見ている」とシャフリン=クリエイティブ・ディレクター。「ファッションである以上、最も重要なのはデザインが良く、心の琴線に触れるものであること。その面で一般的なファッションと戦えることが、サステナブル・ファッションブランドが成功する唯一の方法だと考えている。いくらサステナブルであっても、安かったとしても、誰も欲しがらないものを作る意味はない」と言い切る。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

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サステナ先進国ドイツのエキスパートに聞く、サステナブルファッションの今とこれから

 昨今ファッション業界でも「サステナビリティ」という言葉を頻繁に耳にするようになったが、その先進国の一つと言えるのがドイツだ。ベルリンでは、2009年からファッション・ウイーク期間中にサステナブルなハイファッションに特化した合同展示会「グリーンショールーム(GREEN SHOWROOM以下、GSR)」が開かれており、19年1月にはその発展形となる「ネオニット(NEONYT)」が発足。200を超えるブランドが出展する一大合同展になっている。そのキーパーソンは、GSRの共同創設者でもあるマグダレナ・シャフリン(Magdalena Schaffrin)「ネオニット」クリエイティブ・ディレクターだ。ドイツにおけるサステナブル・ファッションの第一人者である彼女は、現在を、そして未来をどう考えているのか?

 もともとデザイナーとして自身のブランドを手掛けていたシャフリン=クリエイティブ・ディレクターが、同業の友人ヤナ・ケラー(Jana Keller)と共に「GSR」を立ち上げたのは2009年7月のこと。「もともと自分のブランドでもサステナブルなモノ作りをしていたし、当時からドイツではある程度サステナビリティへの意識があった。加えて、10年前は、スタイルやファッション性を重視する“第2世代”のサステナブル・ファッションブランドが誕生し始め、より多くのファッション企業がサステナビリティへの取り組みを始めた頃でもあった。ただ、自分たちにふさわしい合同展はなく、“ハイファッション×サステナビリティ”をコンセプトにした展示会として、16ブランドを集めて『GSR』をスタートさせた。コンセプトを明確に打ち出すため、会場に選んだのは5つ星ホテルのホテル・アドロン。サステナブルブランドのアイテムを組み合わせたランウエイショーもベルリン・ファッション・ウイークの一部として当時から開催していた」と振り返る。

 その後、11年に数多くの合同展を運営するメッセ・フランクフルト(Messe Frankfurt)に同展の事業を売却。同社は「GSR」の開催に加え、すでに買収していた「エシカル・ファッションショー」の開催地をパリからベルリンに移し、サステナブルなカジュアル&ストリートファッションに特化する合同展として再始動した。15年1月からは両展のシナジーを高めるために同じ会場で開催してきたが、19年1月、2つが合同・発展する形で「ネオニット」としてリローンチした。「イベント名は、古代ギリシャ語とスウェーデン語で“新しい”を意味する『NEO(ネオ)』と『NYTT(ニット)』を合わせた造語。サステナビリティの考え方は、科学の進歩や革新的なテクノロジーによって急速に変化を続けている。時代に合わせてコンセプトを再考しつつ、常に発展させていくという思いを込めた」。そして、リローンチに合わせて合同展のコンセプト自体も見直した。「昔ながらのフォーマットでは、これから生き残ることはできない。今の合同展に必要なのは、コミュニティーが一堂に会する場を作り、相互的なコミュニケーションを促すこと。あらゆるビジネスは人と人との信頼関係の上に成り立っていると私は信じているし、ファッション業界にまつわるさまざまな問題を皆で考えていくことが大事だと思う。そのため、カンファレンスやネットワークイベントにも力を入れている」。

 1月14〜16日に開催された「ネオニット」では、社会問題や環境問題、最新テクノロジーなどを通してファッションの未来を考えるプレゼンテーションやパネルディスカッションなど50のプログラムを実施。出展ブランド数は210を超え、世界最大のサステナブル・ファッションの合同展になっている。もちろん出展するためには、展示するコレクションの最低70%が定められたサステナビリティの基準を満たす必要がある。「昨年は、(環境に配慮しているように見せかけることを意味する)『グリーン・ウォッシング』について深く考えさせられた。今は誰もが『私たちはサステナブル』と主張する時代。だからこそ、事前審査は非常に重要。サステナビリティの解釈は多岐にわたり、基準は常に発展しているので、最新の事実や知識に基づいた観点からチェックをしている。その中でも重視しているのは、社会的側面と環境的側面。完全に循環型のモノ作りを実現した製品に与えられる『クレイドル・トゥ・クレイドル(Cradle to Cradle以下、C2C)』認証も大きなトピックになって、『C2C』の商品を作るということは最初の段階から有害な化学物質や素材を一切使わないということを意味するので興味深い。まだ市場に出ている商品は少ないが、『カリダ(CALIDA)』や『ウォルフォード(WOLFORD)』『C&A』などが提案を始めている」。

この10年間で変わったこと、変わらなかったこと

 また、シャフリン=クリエイティブ・ディレクターも指摘するように、最近は「サステナビリティ」がトレンドや流行語のように扱われていると感じることも多い。そういった意識が広まるのは良いことであると同時に、安易に使われることは危険もはらんでいる。それに対して、「科学的な事実に基づいた評価や真の理解を広めていくことが解決策になる」とコメント。そして、サステナブル・ファッションの実現はまだ長い道のりにあることも付け加える。「今、サステナビリティに対する認識は確実に高まっていて、来年あたりまでそれが続くと思う。しかし、それによってファッション業界全体が変わるかは疑問だ。正直なところ、『GSR』を立ち上げた10年前の方が、将来に対して今よりもずっと楽観的だった」。当時は、10年の間に大半のブランドがサステナビリティに取り組むようになるとともに法律も整備され、業界が変わると考えていたという。「その予想通りにはならなかったけれど、たくさんの変化もあったのも事実。例えば、この大きな問題の解決は企業単位では難しいことに気付き、多くの企業が競争以前の協力の必要性を理解したことは最も大きな変化の一つ。その結果として、『ファッション協定(The Fashion Pact)』や『サステナブル・アパレル連合(Sustainable Apparel Coalition)』のようなイニシアチブが生まれた。一方、この10年間で理解したのは消費者心理が簡単には変わらないこと。それに、労働環境の改善やバリューチェーンの環境負荷低減に対する業界全体の考え方も簡単に変わるとは思えない。そのため、根本的な変化には法律に基づいたレギュレーションが欠かせないと考えている」。

 最後にサステナブル・ファッションの未来について尋ねると、「どのくらいの時間がかかるかは分からないけれど、『サステナビリティ』という言葉を使う必要がなくなる日を夢見ている」とシャフリン=クリエイティブ・ディレクター。「ファッションである以上、最も重要なのはデザインが良く、心の琴線に触れるものであること。その面で一般的なファッションと戦えることが、サステナブル・ファッションブランドが成功する唯一の方法だと考えている。いくらサステナブルであっても、安かったとしても、誰も欲しがらないものを作る意味はない」と言い切る。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

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2020年もう買い物した? 「WWDジャパン」スタッフの新年ベストバイ!

 毎月お届けしている「WWDジャパン」「WWDビューティ」スタッフらのベストバイアイテムのご紹介。2020年1回目のお題は、新年初ショッピングアイテム。みなさん、今年の抱負は立てましたか?仕事やプライベートをいそがしく過ごしながらも、活躍する買い物を済ませたスタッフの、1月のベストバイをお届けします!

原点回帰的に選んだ“100年ブランド”のベースボールキャップ

 2019年の年間ベストバイで“帽子男子”始めました!宣言をしましたが、ハットの次はキャップです。夏場に子どもと公園やプールに行く際にはかぶっていましたが、20年は積極的にファッションにも取り入れようかと。1988年シアトル生まれの「エベッツフィールドフランネルズ(EBBETS FIELD FLANNELS)」や86年ニューヨーク生まれの「クーパーズタウンボールキャップ(COOPERSTOWN BALL CAP)」に“浮気”したこともありましたが、2020年の最初に選んだのは「ニューエラ(NEW ERA)」です。令和というニューエラ=新元号1年目ですし、なんといっても20年は「ニューエラ」の創業100年目ですから!あらためて王道のニューヨーク・ヤンキースモデルをセレクトしました。ジャケットスタイルの“外し”として取り入れます。(「WWDジャパン」編集部 三澤和也)

何本あっても重宝する「ディオール」のリップ

 新作コスメをお試しさせていただく機会が多いビューティ編集部ですが、やっぱり店頭で色や使い心地を吟味して購入すると気分も上がります。今年の初買いコスメは「ディオール(DIOR)」の新リップ「ディオール アディクト リップ グロウ オイル」(3800円)と、「ディオール アディクト リップ グロウ」(3800円)の春コレ限定色です。新リップはティントタイプで色持ちがよく、ボリュームアップしたかのようなハリを与えてくれるケア効果の高さに感動。リップ グロウはすでに色違いで3本持っているのですが、限定色の鮮やかなオレンジがあまりにかわいく、タッチアップ中に、「これもお願いします!」と即決。かわいいコスメの誘惑には勝てません……!(「WWDビューティ」編集部 浅野ひかる)

子ども連れのときなんかちょうどいいニットカーデガン

 なぜかベイクルーズのECで洋服を買うことが増えてきました。子どもを産んでから、仕事と家事、育児を両立させていこうと思うとおのずと自分の時間が少なくなってきて、それまで「試着もしないで洋服を買うなんて……」と思っていたけど何か欲しいし、ECが大活躍。それで利用しているのが、最初の言葉通り“なぜか”ベイクルーズ なんです。ほどよくこなれた服ってほかのセレクトショップのECでも取り扱っていると思うのですが、このこなれた感が母である私にちょうどいいベイクルーズ 。今回買った(1万8700円税込)本当にベーシックなグレーのカーディガンですが、ボタンを後ろ身頃にしてニットにもできる。前後ろどっちでも着られるというところにまずは“へ~”。その丈感も、出産後に腰回りが気になる私としては絶妙で嬉しい。子どもを連れていてあんまり頑張りすぎた格好って浮いちゃうから、ベーシックだけどなんかちょっといいのがキモ。休日にヘビロテしてます。(WWD JAPAN.com編集部 福崎 明子)

新しい年でも、古いものに惹かれて古着を購入

 学生の頃から、“サステナブル”がコンセプトの回し読みフリーペーパーを制作するサステナブルガールだった私は新年早々に購入したのも古着。最近の「WWDジャパン」の特集を見ていると「地球のために個人ができることってなんだろう」と難しく考えてしまいますが、古着を購入することもひとつのサステナブルな行動ではないでしょうか。今回購入した店はアメリカからの古着や雑貨を中心に状態の良いものがセレクトされた高円寺のmepontego(メポンテゴ)。みなさんも古着を取り入れたスタイリングで、地球に優しい1年を過ごしてみては?(デザイン部 吉田亜沙美)

iPadで目指す、快適ワークライフ

 春夏コスメの特集を担当するにあたって、70ブランドほどの紙の資料を前に、「重い!」「どっかいっちゃった!」と戦う毎日に、スマートかつエコに仕事をするためについに購入しました。資料をPDFで取り込んで、「エバーノート」に保存しておけば、簡単に検索管理ができて、「あれ、あの資料見当たらない」なんてこともなくなりました。2020年は今さらながら文明の利器の力を借りて、快適なワークライフを送ろうと思います。もちろん動画を見たり雑誌を読んだり、プライベートでの活躍も間違いなしです。(「WWD ビューティ」編集部 米山奈津美)

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まだ、あなたが知らないニューヨーク最新トレンド みんなの憧れだったバーニーズ、消えゆくNYのファッションランドマーク

 ニューヨークで活躍する名物クリエイティブ・ディレクター、メイ(May)と、仕事仲間でファッションエディターのスティービー(Stevie)による連載第4回。一緒にする仕事とは別に、月に1度はお気に入りのレストランでランチをしながら情報交換する2人。“You’d Better Be Handsome”は、2人がときにゲストを交え、ニューヨークのトレンドや新常識について雑談するコラム 。今回は、閉店が決まってセール中のバーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)、その閉店が何を意味するのかを2人で考えた。当たり前と思っていた老舗や人気ブランドが消えていく今、時代が大きく変化しているとつくづく感じる今日この頃。

 本日のランチは、ソーホーの人気スポット「SADELLE ‘S(サデールズ)」。具がたっぷりの小ぶりベーグルが、レストランの中2階で次々に焼かれ、熱々のままテーブルに届く。入口付近には燻製された魚やキャビアが並べられ、オーダーが入る度にスモークサーモンが スライスされている。ブレックファーストやブランチが有名で、ディナーの営業はなし。SADELLE’S, 436 West Broadway, New York, NY 10012

メイ:ここはいつも混んでいるよね。

スティービー:初めてだけど、なんだか熱気を感じる。

メイ:やっぱりアメリカ人って、ベーグルとスモークサーモンが好きなんだと実感させられる。私もだけど。

スティービー:燻製の魚ってユダヤ人じゃなくても、ニューヨーカーだったら小さい頃から親しんできた味だからね。

メイ:そういえば最近バーニーズ ニューヨークに行った?

スティービー:実はマジソンアベニュー店に2日前に寄ったんだけど、悲しい気持ちになった。バーニーズの恒例だった、別の場所で開催されていた在庫処分的セール“ウエアハウスセール”よりもさらにたたき売りみたいな状況で。値下がりしているのを見たこともない化粧品やフレグランスまで安売りされていたし。

メイ:いまウェブサイトに入ろうとすると、すでにサックス・フィフス・アヴェニュー(SAKS FIFTH AVENUE)のサイトに自動的に変わっちゃうから。

スティービー:バーニーズを買収したオーセンティック・ブランド・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP)は、バーニーズの経営難の源だった不動産を全て整理し、コンセプトだけを生かして他の百貨店内にインショップを展開するという方針らしい。

メイ:倒産の話はこれまでにも何回もあって、その度にいくつもの投資会社が手を挙げて乗り越えてきたから、今回もなんとかなるのでは?と勝手に思ってた。2007年には日本のファーストリテイリングも手を挙げたけど、9億4230万ドル(約1036億円)でドバイの投資会社が勝ち取ったかたちになったから。

スティービー:今回もストリートブランドの「キス(KITH))のオーナー、サム・べン・アヴラハム(Sam Ben Avraham)を中心にファッション界の人々が、“セーブ・バーニーズ(バーニーズを救おう)” キャンペーンを行ったりして、なんとかバーニーズを残そうとしていたけど。

メイ:1923年に創業して、もう少しで100周年だったのにね。

バーニーズは
子どもの頃からの憧れだった

スティービー:バーニーズは、子どもの頃からの憧れで、中学生の頃にはニュージャージーの実家からバスを乗り継いで行った。10代の僕に買えるものは限られていたけど、1階から最上階まで見て回るだけでも楽しかった。そのときに購入したカシミヤのビーニーは今でも愛用しているよ。

メイ:私も最初にニューヨークで住んだ場所がチェルシーで、バーニーズの最初の店舗がまだあって、すごく素敵だったのを覚えている。その後、“CO-OP(コーアップ=コンテンポラリースポーツウエア)”というコンセプトを打ち出して、「3.1 フィリップ・リム(3.1 PHILLIP LIM)」や「アレキサンダー ワン(ALEXANDER WANG)」といったコンテンポラリーラインのデザイナーの時代が到来したり。

スティービー:バーニーズは当時から他のデパートとは違って、並んでいる商品だけではなく、売り場のディスプレーはもちろん店員たちも個性的で、本当にファッションを愛する人たちが集まっている場所だった。

メイ:ファッションの代名詞だったからね。ウインドーもツイストが利いて面白かった。

スティービー:自称“ウインドードレッサー”のサイモン・ドゥーナン(Simon Doonan)みたいな人もいて、彼によってバーニーズのウィンドーディスプレーは毎回話題になって独特の文化を発信していた。

スティービー:それにしても、マディソン店の家賃が年間3000万ドル(約33億円)と聞いて体の力が抜けたよ。それじゃ、いくら売っても利益が出ないと素人でも分かる。

メイ:もともとは1600万ドル(約17億6000万円)だったらしいけど。さらに2016 年にチェルシーに立派なお店をつくっている。あれは必要だったのかな?

スティービー:ラグジュアリーブランドの聖地といえるマディソン店が、そもそも自社ビルじゃなかったことに驚かされた。

メイ:アメリカ市場にはまだ紹介されていなかった「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」や「アズディン アライア(AZZEDINE ALAIA)」「ゴヤール(GOYARD)」、「クリスチャン・ルブタン(Christian Louboutin)」なんかを扱ったのも、バーニーズが最初よね。

スティービー:それに若いファッションデザイナーにとっては、バーニーズ ニューヨークに置いてもらえるということがステータスというか登竜門になっていた。

メイ:ライバルだった五番街のサックス・フィフス・アヴェニューにインショップを開くって、なんだか皮肉よね。

スティービー:正直、受け入れがたい事実。

メイ:時代の流れや変化に乗れなかったというか。

スティービー:人気ドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ(SEX AND THE CITY)」の中で、サラ・ジェシカ・パーカー(Sarah Jessica Parker)扮するキャリー・ブラッドショーが、かつて「ショッピングが私の有酸素運動」って言っていたのを思い出す。ショッピングの主なプラットフォームが売り場ではなくてオンラインになってしまった現在は、有酸素運動も自分がやるのではなく、宅配の人に任せているっていう時代。

メイ:日本では、セブン・アンド・アイ・ホールディングスがバーニーズのライセンスを持って展開しているよね。ニューヨークで生まれたバーニーズだけど、今後もがんばってほしい。

スティービー:バーニーズの帰りにマディソン街を歩いていたら、ずーっと「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」の旗艦店だった場所が空き物件になっていたのを見て、一つの時代が終わったとつくづく感じた。

メイ:ラフ・シモンズ(Raf Simons)がチーフ・クリエイティブ・オフィサーなった後に大々的なリノベーションをしたばかりだったのに。

スティービー:ニューヨークの老舗デパートのロード&テイラー(LORD & TAYLOR)も、2019年頭に閉鎖している。100年以上続いた歴史ある店なのに。

「ディーン&デルーカ」も
NYから消えていく

メイ:ファッションじゃないけど、ニューヨークの街からは「ディーン&デルーカ(DEAN & DELUCA)」の店も消えたよね。ニューヨークの権利は、タイの企業が持っていて、アジアと中東では約70店舗展開、今後5年で90店舗をオープンする予定って「ニューヨークタイムズ(NEW YORK TIMES)」に書いてあったよ。

スティービー:ホールフーズ(WHOLEFOODS)ができて、デリバリーしてくれるアマゾンフレッシュ(AMAZON FRESH)なんかが普及していったことがニューヨークで苦戦した大きな理由かもね。形を変えて生き残っていく。肉体が消えても、精神は各国でまだ残っている。

メイ:さらに、今年に入って「オープニングセレモニー(OPENING CEREMONY)」もニューガーズグループ(NEW GUARDS GROUP)に買収された。年内に店を閉めるらしい。

スティービー:ウンベルト・レオン(Humberto Leon)とキャロル・リム(Carol Lim)がセレクトショップ兼自身のブランドとして立ち上げた2002年、ハワードストリートは、まだチャイナタウンの一部のエリアという位置付けだった。それが「オープニングセレモニー」の登場で、ユニークなショッピングストリートになったのは確か。

メイ:彼らは、昨年「ケンゾー(KENZO)」からも離れている。「オープニングセレモニー」のクリエイティブ・ディレクターとしては残るらしい。

スティービー:彼らが店をオープンした当初、いわゆるダウンタウン系のデザイナーがこの店を中心に集まっていた。「ユナイテッドバンブー(UNITED BAMBOO)」「イミテーション・オブ・クライスト(IMITATION OF CHRIST)」といった、カルチャーを感じるブランドがあった。「オープニングセレモニー」はクロエ・セヴィニー(Chloe Sevigny)とのコレクションを仕掛けたりしてファッション界を盛り上げてくれたし、いろんなデザイナーに機会をくれた。そのお店が閉まるなんて、時代が大きく変わっているのを感じるよ。

メイ:パリのコレット(COLETTE)が18年末に閉店したのも痛かったけど、今後この流れが続かないといいな。

メイ/クリエイティブディレクター:ファッションやビューティの広告キャンペーンやブランドコンサルティングを手掛ける。トップクリエイティブエージェンシーで経験を積んだ後、独立。自分のエージェンシーを経営する。仕事で海外、特にアジアに頻繁に足を運ぶ。オフィスから徒歩3分、トライベッカのロフトに暮らす

スティービー/ファッションエディター:アメリカを代表する某ファッション誌の有名編集長のもとでキャリアをスタート。ファッションおよびビューティエディトリアルのディレクションを行うほか、広告キャンペーンにも積極的に参加。10年前にチェルシーを引き上げ、現在はブルックリンのフォートグリーン在住

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サステナブルなコレクション、良し悪しの決め手は? エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年6月20日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

サステナブルなコレクション、良し悪しの決め手は?

 2020年春夏ミラノ・メンズ・コレクション一番のトレンドは、サステナブルでした。いや、「トレンド」と片付けちゃダメなことは、わかっています。けれどついつい「ブーム」と思ってしまうくらい、今シーズンはあらゆるブランドが環境問題と対峙。サステナブル素材を使ったコレクションには、もう驚かなくなりつつあります。

 それぞれ地球環境を考えた上での提案ですから、すべてに価値があると思います。でもこの世界には、やっぱり出来・不出来、売れそう・難しそう、良い・それほど良くないコレクションがあるもの。サステナブルなコレクションだって、同様です。

 では、“良いサステナブルなコレクション”の基準って、一体なんでしょうか?再生原料の割合?環境に優しい素材や染料、加工?生産過程における二酸化炭素排出量?さまざまあるでしょうが、一番は「“自分ごと”として共感できる」な気がします。

 例えば「フェンディ(FENDI)」はガーデニングをテーマに、まるで日曜の昼下がりのように穏やかなムードのワークウエアを発表しました。朝一番の公園で発表したのは、これまでの「フェンディ」のように目に飛び込んでくるキャッチーではなく、心に染み入るピースフルなコレクションです。人は誰しも休日には心穏やかに、自然と戯れ、植物を愛でたくなるもの。「フェンディ」は取り立ててサステナブルやエコを前面に押し出していませんが、ゆえに共感しやすく、難しい哲学や目を背けたくなる現実さえちょっとだけ自分に近しい存在に変わります。

 インクルージョン(包摂・包括性)やダイバーシティー(多様性)と一緒です。CSR(企業の社会的責任)と捉え取り組んでしまうと“シンドい”問題も、“自分ごと化”できると共感できて積極的に向き合えます。サステナブルをどう“自分ごと化”してもらい、頭で理解するのではなく、心で共感してもらって購入していただくか?サステナブルを謳う企業・ブランドこそ、メッセージを押し付けるのではなく、消費者の気持ちに寄り添う姿勢が必要なのです。

SOCIAL & INFLUENTIAL:社会情勢によって変化するファッション&ビューティ業界を見つめます。インクルージョン(包摂性)&ダイバーシティー(多様性)な時代のファッション&ビューティから、社会に届けたい業界人のオピニオンまで。ジャーナリズムを重んじる「WWD JAPAN.com」ならではのメルマガです。

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