「『ミレニアルズは“SNS中毒”』なんて幻想だ。彼らこそ、リアルな体験・共感を欲している」 by アレッサンドロ・ボリオーロ

Alessandro Boglioloティファニー最高経営責任者

 「ミレニアルズは“SNS中毒”」なんて幻想だ。彼らこそ、リアルな体験・共感を欲している。私たちは彼らに向けて彼らの言葉で、なんどもコミュニケーションを図らなければならない。「自分に対して、もしくは自分のコミュニティーに対して、特別なアプローチをしてくれる」という実感に価値を置いているからだ。その意味において、SNSの存在価値は大きい。(WWDジャパンvol.2081、2019年4月22日号に掲載)「ティファニー」は4月19日、原宿キャットストリートに3年に及ぶ期間限定店舗をオープンした。場所柄、主たるターゲットに据えるのは、いわゆるミレニアルズ。日本初のカフェ、カスタマイズ、商品の試着スペース、フォトスポットなどを設け、既存店とは一線を画す。同店含め、加速するミレニアルズ戦略について尋ねられていわく

The WORDS
ファッション業界人の残した名言を日々の糧に。デザイナーやバイヤー、社長、編集長らの心に響く言葉をお届け。

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モデルとしてミラノコレにも参加した美容師の高橋侃 「シマ」を卒業した彼が見据える未来とは?

 元ヘアサロン「シマ(SHIMA)」の人気美容師で、モデルとしても活躍する高橋侃。モデルとしては、2018-19年秋冬のミラノ・メンズ・コレクションの「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」のショーに出演し、また同ブランドの18-19年秋冬のワールドワイドキャンペーンのモデルにも起用されるなど、“TOKYO”を代表するアイコニックな存在として注目を集めている。そんな彼が昨年9月、突然「シマ」を退社。現在24歳。今後どのような活動をしていくのか。そして彼が見据える未来とは。

WWD:「シマ」でスタイリストデビューして、これからというときに突然お店を辞めたのはびっくりした。どういった理由だったのか。

高橋侃(以下、高橋):ヘアに携わる仕事自体は好きでこれからも美容師やヘアメイクの仕事は続けていきたいと思っているんですが、それ以外にもやりたいことがたくさんあって。「シマ」にいるとやっぱりサロンワーク中心で、やりたいことができない。あと、なんとなく「シマ」での将来像がイメージできてしまい、できれば若いうちにどんどん挑戦していきたいと思って、直感で辞めることは決めました。1日で決意してすぐ言いました。止めてくれる先輩もいたんですが、決意は変わらなかったです。

WWD:具体的に何をするかはもう決めている?

高橋:先ほど言ったように美容師やヘアメイクとしての活動を軸にしてやっていくつもりです。少し離れてみて、あらためていい仕事だと感じています。でもそれだけではなく、ファッションも好きなので、自分でデザインをしてみたいという気持ちもあります。あとフォトグラファーやスタイリストとしての活動を始めたくて、将来的には自分1人でビジュアルのクリエーションやディレクションができるようになりたい。それは20歳くらいのときから考えていました。「シマ」のヘアショーでメンズモデル20人を自分でブッキングして、スタイリングもヘアメイクも僕が全部やったことがあって、その瞬間やりたいことはこれだと実感しました。僕にしかできないことだとも思っています。「生半可な気持ちでやるんじゃない」と言われるかもしれないけど、100%真剣にやっていくつもり。これまでにない新しいアーティスト像をつくっていきたい。

もう一つ美容学生向けのセミナーもやっていきたいと思っています。美容師のアシスタント期間って長いと5~6年かかるんです。その期間ってもったいないと思っていて、せっかく美容学校卒業したのに、そこで学んだことが実際のサロンワークに生かされない。基本的に美容学校の勉強は国家試験に受かるためのものなんです。だから僕が美容学生向けにセミナーして、ある程度できる状態でサロンに入社すれば、アシスタント期間を短くできるはずだと考えています。また技術だけではなく、インスタグラムの活用方法だったり、美容師として大事なことなどを伝えていきたいです。

WWD:そもそも高橋さんが美容師を目指したきっかけは?

高橋:それも直感でした。工業高校でずっとサッカーをやっていて美容とはまったく無縁の生活でした。卒業後どうしようか考えていたときに、先輩が美容学校に入学していたので、そこに見学に行って、そのときにその美容学校の先生から「君なら『シマ』に入れそう」って言われたんです。そのときは「シマ」って何ですか?という感じだったんですが、その日のうちに実際に「シマ」に髪を切りに行って、それで「ここで絶対有名になる」って思って。だからまさか「シマ」を辞めるとは想像しなかったです。

WWD:モデルとしても活動しているが、きっかけは何だった?

高橋:「シマ」に入ったときにボウズにしたんですが、それから街で「ドロップトーキョー(DROP TOKYO)」などにスナップを撮られるようになって、それを見てモデルの依頼がきたり、また「シマ」にはいろいろな業界の人が来るので、そこで知った人からオファーがくることもありました。

WWD:「シマ」にいたときは自由にモデルの仕事ができていた?

高橋:営業中はさすがにサロンワーク優先で、休日や営業の前後を使ってオーディションに行ったり、モデルの仕事をしたりしていました。でも最初はそこまでモデルをやりたいという気持ちではなく、美容師の仕事に生かせると思ってやっていました。

WWD:「ドルチェ&ガッバーナ」のショーなど、海外でも活躍していたが?

高橋:その当時は金髪のボウズで、服装も派手だったし、海外では受けがよかったです。オーディションで落ちたことはありません。逆に日本の方がオーディションに落ちることが多かったです。今後はモデルに限らず、さらに海外での活動もしていけたらなと考えています。

WWD:確かに金髪ボウズが印象的だったが、最近は髪を伸ばしているがその理由は?

高橋:もともとスタイリストになるまではボウズと決めていて、スタイリストになったら伸ばしました。ボウズだからキャッチ―なところがあったと思うのですが、それはもう卒業して、違う形でやっていきたいと思っています。

WWD:将来的にはどうなっていきたい?

高橋:クリエイティブのことなら高橋に任せれば大丈夫とみんなが思ってくれるような、唯一無二の存在になりたい。それしかないですね。

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読者が注目した今週の新作 ヨウジヤマモト × 「ニューエラ」など(1月31日〜2月6日)

 「WWD JAPAN.com」が今週発売の新商品を「ファッション部門」「ビューティ部門」「スニーカー部門」別にまとめてお届け。「ファッション部門」と「ビューティ部門」では読者の注目度(PV)から1〜3位までをランキング形式で紹介。今週の「ファッション部門」ではヨウジヤマモト × 「ニューエラ(NEW ERA)」のコラボアイテム、「ビューティ部門」では「マリークヮント(MARY QUANT)」のアイシャドウが最も注目された。

【ファッション部門】


【ビューティ部門】


【スニーカー部門】

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香港のアートバブルとデモの狭間で思ったこと エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年8月6日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

香港のアートバブルとデモの狭間で思ったこと

 先週、プライベートで1泊2日の香港弾丸旅行をしてきました。ニュースやSNSを通じて「逃亡犯条例」改正案に対するデモの様子をたびたび目にして、ここで何が起きているのか、どんな価値の変化が起きているのかを体感したいと思ったのが理由のひとつ。もう一つは盛り上がる香港のアートシーンを体感したかったからです。展覧会を開催中の村上隆さんのトークショーも聞きました。

 香港では今、アートがアツくなっています。現代アートを扱うスペースが続々とオープンしており、昨年オープンした「大館」もそのひとつ。繁華街のど真ん中にあり、展覧会会場のほか、おしゃれなカフェなどが入り観光&デートスポットになっています。その場所は元刑務所だそうで、大真面目な「刑務所博物館」なるものもあり、香港の歴史の一面を知ることができます。狭小な元監獄のすぐそばでおしゃれな男女がお茶をするというシュールな絵が生まれていました。また、2020年にはヘルツォーク&ド・ムーロンが設計する巨大美術館「M+」のオープンが控えており大変注目されています。

 これだけ香港でアートが盛り上がっている理由は、富裕層にとって投資の対象だから、です。中国の投資家が香港の不動産を買い進めたことで、香港の不動産は40年前の100倍などといわれます。次なる投資の対象がアート、という訳です。Wealth-Xという調査会社によると、3000万米ドル(約32億7000万円)以上の資産を持つ超富裕層の数は、ニューヨークを抜いて香港がトップとか。桁違いすぎてピンと来ませんが、シンガポールを舞台にした映画「クレイジー・リッチ!(Crazy Rich Asians)」の世界は香港で現実であり、富める者は益々富み、貧富の2極化は進む一方です。ラグジュアリーという視点から見れば、ラグジュアリー市場とアートの関係が今後ますます強まることは間違いないでしょう。

 今デモを行っている人の多くは、これらのアートバブルの動きとは無関係な人たちです。パスポートを複数取得し、いざとなれば世界中のどこでも暮らしてゆける富裕層とは違い、一般の人たちは香港で生きていくことが当たり前であり、その将来に大きな不安と不満を持っているようです。たった1泊2日で訪れた物見遊山の外国人には彼らの“本当”などわかるはずもありませんが、抗議のメッセージを書いた付箋がびっしりと貼られた街中の壁、通称“レノン・ウォール”を見て、私にはむしろアートやクリエイションはここから生まれるのでは、と思えました。制約や怒り、コンプレックスは強いクリエイションの源泉となりえることは、これまで何人ものクリエイターが証明してきました。デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)が、ジョージアから出てきたように。時間をあまり開けずまた香港を訪れてみようと思います。

IN FASHION:パリコレもストリートも。ジュエリーもインテリアも。今押さえておきたい旬なファッション関連ニュースやコラムを「WWDジャパン」編集長がピックアップし、レターを添えてお届けするメールマガジン。日々の取材を通じて今一番気になる話題を週に一度配信します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在9種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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「フミト ガンリュウ」のデザイナーがファッション業界に帰ってきた理由

 日本発のファッションブランド「フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)」は、2017年のデビューシーズンで「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTY IMMAGINE UOMO以下、ピッティ)」の舞台に立ち、セカンドシーズンでパリ・メンズ・ファッション・ウィークの公式スケジュール入りを果たした異例のブランドだ。現在3シーズン目にして世界約50店舗、国内約30店舗で扱われている。同ブランドを手掛ける丸龍文人デザイナーは、コム・デ・ギャルソン社で川久保玲に才能を見出され、自身の名を冠したブランド「ガンリュウ(GANRYU)」を約10年間率いた。しかし、16年に同ブランドを終了すると約1年半、ファッションの表舞台から姿を消した。彼はなぜファッション業界を離れ、何を求めて再びアパレルに挑むのかーー服作りのルーツを掘り下げながら、それらについて話を聞いた。

WWD:服作りの原体験は?

丸龍文人デザイナー(以下、丸龍):小学生の頃から服をデザインしていました。絵本のようにストーリー性のあるイラストをよく描いていて、その登場人物にどんな服を着せようか毎日考えていたんです。自分自身が着飾ることを意識し始めたのは中学生の頃。仲のよかった先輩が高校に入っておしゃれになったので、僕も自然と興味を持ち、そこから音楽をはじめ服にまつわるカルチャーにハマっていきました。

WWD:文化ファッション大学院大学でデザインを学んだが、なぜパタンナーとしてコム・デ・ギャルソンに入社した?

丸龍:同社にはデザインに密接な部門として企画生産部とパターン部の2つがありました。そのうち自分のスキルを活かせるのはパターン部だと判断して応募しました。学生時代から色や柄よりも形でアプローチするのが好きだったんです。

WWD:「ガンリュウ」を立ち上げた経緯は?

丸龍:機会に恵まれたとしか言えません。そこで服作りの全てを学びました。

WWD:コム・デ・ギャルソン退社は独立を見据えたものだった?

丸龍:そのつもりはありませんでした。目の前の仕事に全力で取り組むことが僕の正義なので、独立の準備も全くしていませんでした。 退社して初めて、「さて何をしようか?」と考え始めたくらいです。ただ、前社でしか働いたことがなかったので、外の空気を知りたいと思ったのは事実です。

WWD:服以外のビジネスにも興味があった?

丸龍:最初はファション以外のビジネスを構想していました。一番やりたかったのは服ですが、ブランド運営に必要な資金も人脈もなかったので、ローリスク・ハイリターンな事業で資金を集めようと考えました。ところが、その事業の準備を進めていたら、思わぬ形でアパレルをやるチャンスが巡ってきたんです。ブランドをやるにはまだ早いかなと迷いましたが、「いや、この機会は逃せない」とブランド立ち上げを決めました。

WWD:「ピッティ」でデビューし、セカンドシーズンでパリ・ファッション・ウイークの公式スケジュールに入った。新進ブランドとしては異例だが、どんな経緯があった?

丸龍:本当に運がよかっただけです。正直、僕が一番驚いていますから。ただ、「ピッティ」に向けて準備しているとき「これをものにすればパリへの道が開けるかもしれない」と考えていたので、パリ進出はある意味狙い通りでした。僕はひとつひとつのチャンスを単独でとらえず、それらをつなげて大きな将来を描きたいタイプなんです。

ギャルソン時代との決定的な違い&デザインの新たな着想源

WWD:「フミト ガンリュウ」のコンセプトは?

丸龍:“21世紀に必要な服”です。毎シーズン、その瞬間に必要だと思った要素をコレクションに取り入れています。

WWD:「ガンリュウ」と「フミト ガンリュウ」の違いは?

丸龍:決定的に異なるのは “ラグジュアリーさ”です。前ブランドでは社内のブランドポジショニングを踏まえて全く意識していませんでしたが、今はむしろ積極的に取り入れています。ラグジュアリーさには“表層的なもの”と“精神的なもの”の2種類があると思っていて、前者はクオリティーの高い付属品など目に見える形で盛り込み、後者は目に見えないけれど心にゆとりを生むようなクリエイションとして反映させています。

WWD:“心のゆとりを生むクリエイション”とは?

丸龍:例えば2020年春夏シーズンで取り入れた自然転写のパターンです。自然を服に取り入れることで、息苦しい現実世界を少しでも忘れてもらえたらと思って採用しました。同シーズンのテーマは“監視社会からのエスケープ”。監視カメラが氾濫し、SNSで他者から生活を見られることが当たり前となった現代にはそこからの脱却が必要だと考えました。

WWD:青やオレンジなど鮮やかな風景も採用しているが、それは意図的なものか?

丸龍:はい。メンズファッションにはカテゴリー別に配色や素材の組み合わせに規則があり、服が好きであればあるほどその規則に縛られてしまいますよね。でも、自然を用いた色・柄だったら、ルール上ありえない配色、ありえない素材の組み合わせも例外として認められて、斬新な装いに挑戦できるんじゃないか。そう思ってこれまでにないカラーを使いました。 僕自身が服のルールを破るための“免罪符”を求めていたし、それを欲する人は世の中にもたくさんいると思うんです。

WWD:監視社会がキーワードに挙がったが、社会情勢からインスピレーションを受けることは多い?

丸龍:国際情勢や政治をはじめ、ニュース全てが服作りのインスピレーションです。ニュースって、ファッションと無関係に見えて実は大いに関係がある。どこかの国である法案が通ったら、市民の生活ニーズに必ず変化が生まれ、生活に根差したアパレル市場にも絶対に影響が出ますからね。だから僕は動画共有サイトなどを活用して常にニュースを頭に入れて、「今からどんなジャブを打てば市民のニーズに対応できるか?」と考えながら服を作っています。

WWD:機能素材を意識的に用いている理由は?

丸龍:洋服は身にまとうモビリティーだと考えているので、合理性は必要不可欠なんです。これは“21世紀に必要な服”というコンセプトに直結していて、19-20年秋冬コレクションでは脇下にベンチレーションを備えたコーチジャケットやメッシュの裏地を用いたダッフルコートなどを提案しました。“服の機能性”と聞くと気心地や着脱しやすさ、汚れにくさなどを思い浮かべるかもしれませんが、今後はもっと広義の機能を意味すると思っています。今は「スマートフォン1台でなんでもできる社会」ですが、その先には「服1着でなんでもできる社会」が待っているかもしれません。

ブランド最大の目的は“ビジネスの成功”

WWD:スタッフはどのくらいいる?

丸龍:アトリエとショールームを合わせて10人くらいのスタッフがいます。まだまだ小さいですが、2年足らずでここまで人が集まってくれたのは本当にうれしい限りです。優秀なメンバーに恵まれているのが何よりのプレッシャーですね。

WWD:今後の展望は?

丸龍:ブランドを運営する最大の目的はビジネスとして成功すること。これを実現するためには海外市場の拡大が至上命題です。ただ、海外は国内以上にシビアにやらなければいけない。国内以上に情勢が不安定だし、稼げるときに一気に稼ぐのもビジネスとして健全じゃありませんからね。目の前の仕事に全力で打ち込んで、実直にブランドを成長させていきます。

WWDクリエイション面での目標は?

丸龍:僕が素晴らしいと思うブランドには、クリエイションが毎回ドラマチックに変わってもブレない何かがあります。僕はその“ブレないもの”として、全く新しい要素を打ち出したい。そのためにまずはブランドを長く続けて地道に発信することに徹します。いつかコレクションを振り返ったとき、その軸によってそれぞれのストーリーが全部つながって見えるーーそんな大河のようなブランドになりたいですね。

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「フミト ガンリュウ」のデザイナーがファッション業界に帰ってきた理由

 日本発のファッションブランド「フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)」は、2017年のデビューシーズンで「ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTY IMMAGINE UOMO以下、ピッティ)」の舞台に立ち、セカンドシーズンでパリ・メンズ・ファッション・ウィークの公式スケジュール入りを果たした異例のブランドだ。現在3シーズン目にして世界約50店舗、国内約30店舗で扱われている。同ブランドを手掛ける丸龍文人デザイナーは、コム・デ・ギャルソン社で川久保玲に才能を見出され、自身の名を冠したブランド「ガンリュウ(GANRYU)」を約10年間率いた。しかし、16年に同ブランドを終了すると約1年半、ファッションの表舞台から姿を消した。彼はなぜファッション業界を離れ、何を求めて再びアパレルに挑むのかーー服作りのルーツを掘り下げながら、それらについて話を聞いた。

WWD:服作りの原体験は?

丸龍文人デザイナー(以下、丸龍):小学生の頃から服をデザインしていました。絵本のようにストーリー性のあるイラストをよく描いていて、その登場人物にどんな服を着せようか毎日考えていたんです。自分自身が着飾ることを意識し始めたのは中学生の頃。仲のよかった先輩が高校に入っておしゃれになったので、僕も自然と興味を持ち、そこから音楽をはじめ服にまつわるカルチャーにハマっていきました。

WWD:文化ファッション大学院大学でデザインを学んだが、なぜパタンナーとしてコム・デ・ギャルソンに入社した?

丸龍:同社にはデザインに密接な部門として企画生産部とパターン部の2つがありました。そのうち自分のスキルを活かせるのはパターン部だと判断して応募しました。学生時代から色や柄よりも形でアプローチするのが好きだったんです。

WWD:「ガンリュウ」を立ち上げた経緯は?

丸龍:機会に恵まれたとしか言えません。そこで服作りの全てを学びました。

WWD:コム・デ・ギャルソン退社は独立を見据えたものだった?

丸龍:そのつもりはありませんでした。目の前の仕事に全力で取り組むことが僕の正義なので、独立の準備も全くしていませんでした。 退社して初めて、「さて何をしようか?」と考え始めたくらいです。ただ、前社でしか働いたことがなかったので、外の空気を知りたいと思ったのは事実です。

WWD:服以外のビジネスにも興味があった?

丸龍:最初はファション以外のビジネスを構想していました。一番やりたかったのは服ですが、ブランド運営に必要な資金も人脈もなかったので、ローリスク・ハイリターンな事業で資金を集めようと考えました。ところが、その事業の準備を進めていたら、思わぬ形でアパレルをやるチャンスが巡ってきたんです。ブランドをやるにはまだ早いかなと迷いましたが、「いや、この機会は逃せない」とブランド立ち上げを決めました。

WWD:「ピッティ」でデビューし、セカンドシーズンでパリ・ファッション・ウイークの公式スケジュールに入った。新進ブランドとしては異例だが、どんな経緯があった?

丸龍:本当に運がよかっただけです。正直、僕が一番驚いていますから。ただ、「ピッティ」に向けて準備しているとき「これをものにすればパリへの道が開けるかもしれない」と考えていたので、パリ進出はある意味狙い通りでした。僕はひとつひとつのチャンスを単独でとらえず、それらをつなげて大きな将来を描きたいタイプなんです。

ギャルソン時代との決定的な違い&デザインの新たな着想源

WWD:「フミト ガンリュウ」のコンセプトは?

丸龍:“21世紀に必要な服”です。毎シーズン、その瞬間に必要だと思った要素をコレクションに取り入れています。

WWD:「ガンリュウ」と「フミト ガンリュウ」の違いは?

丸龍:決定的に異なるのは “ラグジュアリーさ”です。前ブランドでは社内のブランドポジショニングを踏まえて全く意識していませんでしたが、今はむしろ積極的に取り入れています。ラグジュアリーさには“表層的なもの”と“精神的なもの”の2種類があると思っていて、前者はクオリティーの高い付属品など目に見える形で盛り込み、後者は目に見えないけれど心にゆとりを生むようなクリエイションとして反映させています。

WWD:“心のゆとりを生むクリエイション”とは?

丸龍:例えば2020年春夏シーズンで取り入れた自然転写のパターンです。自然を服に取り入れることで、息苦しい現実世界を少しでも忘れてもらえたらと思って採用しました。同シーズンのテーマは“監視社会からのエスケープ”。監視カメラが氾濫し、SNSで他者から生活を見られることが当たり前となった現代にはそこからの脱却が必要だと考えました。

WWD:青やオレンジなど鮮やかな風景も採用しているが、それは意図的なものか?

丸龍:はい。メンズファッションにはカテゴリー別に配色や素材の組み合わせに規則があり、服が好きであればあるほどその規則に縛られてしまいますよね。でも、自然を用いた色・柄だったら、ルール上ありえない配色、ありえない素材の組み合わせも例外として認められて、斬新な装いに挑戦できるんじゃないか。そう思ってこれまでにないカラーを使いました。 僕自身が服のルールを破るための“免罪符”を求めていたし、それを欲する人は世の中にもたくさんいると思うんです。

WWD:監視社会がキーワードに挙がったが、社会情勢からインスピレーションを受けることは多い?

丸龍:国際情勢や政治をはじめ、ニュース全てが服作りのインスピレーションです。ニュースって、ファッションと無関係に見えて実は大いに関係がある。どこかの国である法案が通ったら、市民の生活ニーズに必ず変化が生まれ、生活に根差したアパレル市場にも絶対に影響が出ますからね。だから僕は動画共有サイトなどを活用して常にニュースを頭に入れて、「今からどんなジャブを打てば市民のニーズに対応できるか?」と考えながら服を作っています。

WWD:機能素材を意識的に用いている理由は?

丸龍:洋服は身にまとうモビリティーだと考えているので、合理性は必要不可欠なんです。これは“21世紀に必要な服”というコンセプトに直結していて、19-20年秋冬コレクションでは脇下にベンチレーションを備えたコーチジャケットやメッシュの裏地を用いたダッフルコートなどを提案しました。“服の機能性”と聞くと気心地や着脱しやすさ、汚れにくさなどを思い浮かべるかもしれませんが、今後はもっと広義の機能を意味すると思っています。今は「スマートフォン1台でなんでもできる社会」ですが、その先には「服1着でなんでもできる社会」が待っているかもしれません。

ブランド最大の目的は“ビジネスの成功”

WWD:スタッフはどのくらいいる?

丸龍:アトリエとショールームを合わせて10人くらいのスタッフがいます。まだまだ小さいですが、2年足らずでここまで人が集まってくれたのは本当にうれしい限りです。優秀なメンバーに恵まれているのが何よりのプレッシャーですね。

WWD:今後の展望は?

丸龍:ブランドを運営する最大の目的はビジネスとして成功すること。これを実現するためには海外市場の拡大が至上命題です。ただ、海外は国内以上にシビアにやらなければいけない。国内以上に情勢が不安定だし、稼げるときに一気に稼ぐのもビジネスとして健全じゃありませんからね。目の前の仕事に全力で打ち込んで、実直にブランドを成長させていきます。

WWDクリエイション面での目標は?

丸龍:僕が素晴らしいと思うブランドには、クリエイションが毎回ドラマチックに変わってもブレない何かがあります。僕はその“ブレないもの”として、全く新しい要素を打ち出したい。そのためにまずはブランドを長く続けて地道に発信することに徹します。いつかコレクションを振り返ったとき、その軸によってそれぞれのストーリーが全部つながって見えるーーそんな大河のようなブランドになりたいですね。

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4000円で買える「グッチ」 エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年9月18日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

4000円で買える「グッチ」

 「グッチ(GUCCI)」はマジで100億ユーロ(約1兆1900億円)ブランドになりますね。彼らは18年6月に売上高100億ユーロを掲げて邁進中で、17年12月期の62億ユーロ(約7378億円)から18年12月期で82億ユーロ(約9758億円)まで伸ばしています。 LVMHはブランドごとの売り上げを開示しませんが、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は100億ユーロを優に超えているとしており、「シャネル(CHANEL)」も111億ユーロ(約1兆1320億円)ですから、このビッグ2に続くブランドとしてぐいぐい追い上げてきています。

 今後、この成長のドライバーになるのは、間違いなくコスメでしょう。

 香水だけだったビューティ事業をコスメにまで拡大すれば、そりゃあ伸びます。なにしろ「シャネル」は売上高の半分以上がビューティのようですから、ウエアやハンドバッグと同等か、それ以上のポテンシャルを秘めているといえるのです。

 とはいえ、「グッチ」のビューティはコティによるライセンス生産。「グッチ」の売上高にはライセンス料しか計上されないので、爆発的に売上高を押し上げるには至らないでしょう。しかし、それでもリップが発売1カ月で100万本売れるのであれば、恩恵は少なくないはずです。

 日本は未発売で、個人的には香りがついた口紅ってイヤなんですが、それでも「どんなものかね?」と興味を持ちます。 「グッチ」はインスタグラムでビューティ専用のアカウントを開設しているのですが、さまざまな地域のさまざまな年代の化粧文化について言及する投稿もしており、カルチャーを感じさせるのが、本当に今ドキだなと思います。

 さらに「グッチ」は7月にハイジュエリーコレクションを発表して、ヴァンドーム広場に小さなジュエリーショップもオープンしました。4000円のリップを頑張って買う学生から、自家用ジェットで1000万円のハイジュエリーを買いに来る超富裕層まで幅広い層にアプローチできる商材を一気に拡大しているわけです。

 とはいえ、実際使ってみてどうかがコスメの難しいところ。「グッチ」のブランド力による掴みはOK!リピート購入につながるかはコティの力量が問われます。 「グッチ」が輝きを保ちながらどこまで拡大するか、注目です。

VIEWS ON WWD U.S.:米「WWD」の翻訳記事から、注目すべきニュースの紹介や記事の面白さを解説するメールマガジン。「WWDジャパン」のライセンス元である米「WWD」は1910年から続くファッション業界専門紙。世界中のデザイナーや企業のトップと強く繋がっており、彼らの動向や考え、市場の動きをいち早く、詳しく業界で働く人々に届けています。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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“生理用品と環境汚染”に危機感 フェムテック関連のオーガニック生理用ナプキンを手掛ける「ナトラケア」

 環境に負荷をかけないオーガニック・ナチュラルの生理用品「ナトラケア(NATRACARE)」がイギリスで誕生したのは1989年。ブランドを立ち上げたスージー・ヒューソン(Susie Huson)創業者は環境保護の活動家としての顔も持ち、“生理用品と環境汚染”をテーマにした報道番組を見たことをきっかけにブランド開発に着手した。今では米国や韓国など海外約80カ国に広がり、日本には2018年に参入した。フェムテックを代表するアイテムでもある生理用製品を中心に30年以上女性の体と環境を守ってきたヒューソン創業者に、これまでの取り組みと今後の展望を聞いた。

WWD:約30年前にオーガニック・ナチュラルの生理用品を手掛けようと思った理由は。

スージー・ヒューソン「ナトラケア」創業者(以下、ヒューソン):環境保護の活動家として過ごしていた中で、2人の子どもを出産し日々を送っていたあるとき、“生理用品と環境汚染”がテーマのテレビ番組を目にしました。それは生理用品を生産する企業から出る排水が海や川を汚染し、魚や周辺の動物に大きな影響を及ぼしていた映像でした。また、製品化した紙おむつや生理用品、コーヒーのフィルターに残っている化学薬品の残留物も問題に上がっていたんです。私は環境を守り直接行動を起こすことを信条としていたので、アクションを起こしました。

WWD:当時は、生理用品の安全性に消費者の関心がそれほど高くなかったのでは。

スージー:女性は毎月5~6日の生理期間があって、生理用品を40年以上使いますよね。使用している製品によって健康に問題が生じることに懸念を感じていました。原材料などを含めた生産工程などが隠されていることが多すぎました。さらに化学薬品を使用した生理用品が将来の世代にどう影響するかも気になっていたのです。

WWD:実際に生理用品を生産するにあたり、知識やノウハウはどう得ていったのか。

スージー:まずは、とにかく勉強しました。当時は現在のようにインターネットでの検索が容易にできるわけではありませんから図書館に通い詰めましたね。環境保健活動グループの研究者にも相談し、私がオーガニック・ナチュラルな生理用品を生産するために必要なことを明確にしました。それから、オーガニックのコットンや塩素フリーのパルプの入手方法に始まり、プラスチックや石油化学製品を使用せず、環境に負荷をかけない生産方法を探しました。幸いなことに私はデザイナーや教師になるような教育を受けていたので、問題を分析する、リサーチをする、得た情報を伝える、ということのスキルがあったんです。

発案から1年で製品化

WWD:リサーチから製品化までどのくらいの期間で実現したのか。

スージー:1年ですね。パルプの製造は主にフィンランド、オーガニックコットンがキルギスタン(それをトルコで加工)、包装のフィルムがノルウェー、生産はイギリスに1社だけオーガニックコットンで生理用品を製造してくれる工場があり、そこに協力を得ました。もちろん困難も多かったですが、今のままで製品を生産することが環境破壊につながるという問題を理解してもらえ、実現することができたんです。

WWD:1989年に「ナトラケア」が誕生し、当時のイギリスの消費者意識は生理用品に化学物質が含まれていることを理解し、オーガニック・ナチュラルな生理用品をすんなり受け入れたのか。

スージー:まずは女性中心の環境問題のグループと協力して、生理用品の中に化学物質が含まれていることの問題提起をし、女性に気づきを与える啓発活動から始めました。「ナトラケア」は、ナチュラルな製品を扱う店舗や高級スーパーマーケットのウエイトローズ(WAITROSE)が扱ってくれました。90年代前半になると、ささやかですが“環境”という言葉が世間でかっこよいとされてきて、多くの人が関心を持つようになったと思います。海外展開も始めていたので、1990年代の初期はカナダで非常に好調でした。カナダでは木の伐採をしている近隣に製紙工場があって、その周辺に住んでいた人々がもしかしたら汚染されているかもしれないと気にし始めていたんですね。タイミングがよかったです。オーガニック・ナチュラル大国のニュージーランドも売れ行きがよかったです。

WWD:海外展開は早い時期からスタートした。

スージー:アメリカの関心も高かったので、92年頃にはアメリカに現地法人を設立しました。イギリスの小規模な企業がすることではなかったかもしれませんが、そのおかげで現在はイギリスよりも海外市場の成長が早くアメリカは最大規模のマーケットになっています。2005年には韓国にも現地法人を作りました。現在は約80カ国で展開し、売り上げシェアはイギリスが8%(ヨーロッパ全体では30%)、アメリカが45%、韓国が25%。近年は売り上げが毎年25%増で成長しており、19年には3年以上成長が継続している企業に与えられる女王賞を英国王室から授与されました。

WWD:本国の売り上げシェアが低い理由は。

スージー:大手チェーンのスーパーマーケットの取り組みに賛同できず、販路は自然食品店や健康食品店のような小規模な店舗に絞り込んだのです。ウエイトローズは29年間販売し続けてくれているんですよ。もちろん、大きな市場を目指してチャレンジした時期もありましたが、よい思いをしませんでした。大手スーパーにこびを売るようなことをしてまで拡大したくないんです。

米国のタンポンによる
毒性ショック症候群が拍車

WWD:製品のラインアップが増えてきた。

スージー: 現在は31種類をそろえていますが、アジアと南米は生理用ナプキン「ウルトラパッド」と「パンティーライナー」が人気ですね。北米は、1980年代にタンポンに含まれる有害な物質によってTSS(毒性ショック症候群)のために何人もの女性が亡くなる事件があったため、有害な物質が全く入っていない当社のタンポンの支持が長らく高かったんです。しかし近年は「ウルトラパッド」が好評ですね。日本では18年からおもちゃ箱が販売してくれており、19年にはおりものケア&水分ケア用のライナーとパッドの展開も始まりました。

WWD:原料の調達からオーガニックに対応できる工場まで取り巻く環境は30年で変わってきているのか。

スージー:90年代はイギリス最大の有機認証機関ソイル・アソシエーションに生理用品の基準がありませんでした。そこで基準を提言しましたが2000年に反映されるまで14年掛かりました。オーガニックの基準が変わり進展するにつれて、「ナトラケア」の製品を増やしていきました。原料としては、96年から採用していた植物由来のバイオプラスチックをやめ、現在はでん粉由来のバイオプラスチックを採用。2000年ごろに新しい機械を導入して、個別包装ができるようになりました。パッケージが変わるなど見た目が変わったり、羽根つきの生理用ナプキンなどを作ってみたりと、自然な変化を遂げています。

WWD:ここ数年、さまざまな業種がようやくサステナブルな取り組みに注力するようになった。

スージー:「ナトラケア」は立ち上げ当初から原材料が持続可能なもの、クリーンな方法で環境に負荷をかけないで生産する、使用後の製品が土に返る、ことを念頭においてモノ作りしています。オフィスの電力もソーラーパネルで賄っていますし。このように環境問題を解決しようと努めながらも、常に意識しているのは高品質な商品を作り出すことです。いくら環境問題を解決しても女性に欲しいと思ってもらわないといけませんから。この30年を通じて、環境に負荷をかけず高品質なモノを製造するノウハウを得ましたし、それを証明もしてきました。

WWD:健康意識や環境配慮の面でも世界の意識が変わってきていると思うが、今後「ナトラケア」としてどのような展望を描いているのか。

スージー:今まで通りかな。創業時から環境に配慮したモノ作りの方針を明確にして、それに基づいて行動してきました。それは正しいことだったと思っています。多くの女性に今まで自分たちが使ってきたものの正体を知ってほしいですし、新たな選択肢として「ナトラケア」の製品を使ってもらって変化を感じてほしい。できれば販路を増やして、さらに多くの女性に届けたいですね。輸送による環境へのインパクトを小さくすることもできるかもしれない。製造方法や品質にも常に改善の余地は残っています。また、啓発活動も継続していきます。

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オブジェのように美しい加湿器が話題 技術とデザインが共存する「カドー」の独自戦略とは

 家電女優の奈津子です。ありきたりなデザインが飽和する加湿器市場において独自路線を突き進むのが、「カドー(CADO)」の加湿器「STEM」です。土の中の養分と水分を植物全体へ届ける“茎”がモチーフのデザインで、愛用しているわが家へ訪ねてくる友人達が「このカッコいいオブジェ、何?」と口にしていくほど斬新なデザインです。昨年末にはIoT搭載の新モデルを発売し話題を集めました。

 その唯一無二の世界観でファンを魅了する「カドー」は、社員数15人ながらも全体の19年の売り上げは前年比の10%増、加湿器の販売台数は同15%増となり、ジワジワと認知度も向上しています。高いデザイン性と技術力を融合させた空調製品を多く手掛け、進化を重ねる「カドー」に迫るべく金崎泰真マーケティング部部長にへインタビューしてきました。

「ポリシーに共感してもらうこと」を重要視

奈津子:「カドー」製品の勢いを増していくためには、どのような戦略があったのですか。

金崎泰真マーケティング部部長(以下、金崎):他メーカーと比べて情緒的な価値を大切にしています。例えば、お客さまへスペックだけを押し出すのではなく、ライフスタイルの提案もしています。今は洋服屋さんでもインテリア用品も置いているなど、カテゴリーを限定しない形態が増えていますよね。われわれとしても生活空間や暮らしの質の提案を目指していて、昨年12月にはデンマーク発の歴史あるインテリアブランド「フリッツハンセン(FRITZ HANSEN)」のショールームに新製品を置き、期間限定の展示会を行ないました。また、店頭だけでなくオンラインサイトでの売り上げも伸ばしています。「カドー」の製品に対して、お客さまがさまざまな形で出合えることを大切にしているんです。

 モノが溢れる世の中で、何を選べば良いのか分からないというユーザーも多いと思います。なので、製品の放つ佇まいからメーカーのポリシーまで感じとっていただいて共感してもらうことが重要だと考えています。ただ、奇抜さだけの意味のないデザインは全くなくて、「STEM」であれば高い位置からミストが噴射されることで加湿効率が追求できるといったように、デザインと機能がお互いを高め合うために共存しているのは「カドー」ならではだと思います。

ファストファッションではなく、
デザイナーズブランドを目指している

奈津子:確かに「STEM」を使用していると、デザインの美しさに心が満たされるだけでなく衛生面への配慮や、A4用紙ほどの設置面のコンパクト性など、精密なロジックの上に成り立ったデザインであることを実感します。市場へ参入してからは約6年ということですが、大きな転換点はどこにありましたか。

金崎:最初は「LEAF」という空気清浄機の発売から始まったのですが、空気清浄機の国際的な基準AHAM(エーハム)で、世界ナンバーワンの空気清浄能力のお墨付きをもらえたのは大きかったですね。

 ヨドバシカメラさんや蔦屋家電さんが大きく取り扱ってくれるようになったのも転機でした。しかし、テレビCMを始めとする商業的な宣伝活動は積極的には行なっていません。まだベンチャーブランドと言う立ち位置で、そこに大きなリソースを割けないという理由もありますが、実際に使っていただいているお客さまからの評価が一番重要だと考えているからです。おかげさまで、今ではクチコミによる広がりを多く頂いています。

奈津子:そのようなスタンスは製品への自信の現れでもあるのでしょうね。TBS系列「マツコの知らない世界」でマツコ・デラックスさんの愛用品として「STEM」が紹介され話題を呼んでいますよね。

金崎:「こういう製品が欲しかった」という声を頂くことは多いですね。「カドー」の思いを広げていきたいという一方で、大手メーカーさんのようなマス規模を目指している訳ではありせん。プロダクトの意味やストーリーをきちんと伝えていき、時代性に左右されない質を深めていくことを大切にしています。

 ファッションで例えるならば、ファストファッションではなくデザイナーズブランドのような立ち位置を目指しています。僕らで言えば、デザイナーであり副社長の鈴木健の独自の感性を活かすことですね。その上で商品開発から販売に至るまでの一連のコミュニケーションをどうブラッシュアップさせていけるのかをチーム全体で考えています。

奈津子:カドーのコンセプトは「We design for atmosphere.(空気をデザインする)」と言うものだそうですね。呼吸って普段何気なくしているものですが、健康に直接に結びつくものだからこそ、納得のいく空間づくりをしていきたいところです。今後の「カドー」はどう展開していくのでしょうか。

金崎:引き続き、お客さまの暮らしの質を高めるための価値提案をしていきたながら、空気に対する人々のリテラシーを上げていきたいです。なので、例えば加湿器や空気清浄機に留まらず純度の高い植物性のアロマリキッドやデフューザーの開発を通じて、心身を整えるための手助けを促す提案も行っております(2月下旬発売予定)。もちろん香りだけでなく、空間の除菌や消臭という点でも追求していきお子さまや年配の方への快適性につなげられればと思います。

奈津子(家電女優):ドラマ「野ブタをプロデュース」で女優デビュー。その後SDN48でアイドルとして活動し、卒業後に家電アドバイザーGOLD等級を取得。現在はテレビ東京系列「なんでも鑑定団」、東京FM「スカイロケットカンパニー」出演中。インスタグラム「natsuko_kaden」では愛用の家電を紹介中

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日焼け止めに求めるものは「保湿」、価格は1000〜2000円 「WWDJAPAN.com」アンケート

 2020年春は、各社から日焼け止めが多く発売される。製品は「WWDビューティ」1月30日号の「2020年春夏スキンケア特集」で詳しく紹介しているが、今季は“(一部の)光を通す”「B.A」の日焼け止めだったり、既存の日焼け止めの8分の1の薄さをかなえた「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」の日焼け止め、多様化するニーズに合わせ4種の日焼け止めを発売する「コスメデコルテ(DECORTE)」など、進化したUVケアアイテムが登場する。近年の日焼け止めは紫外線のみならず、環境汚染物質やブルーライトもカットするような多機能タイプが当たり前になりつつあるが、そういった“多機能UVケア”が多く登場するのは、消費者のUVケアに対する意識の向上およびニーズの多様化が背景にある。

 そこで「WWDJAPAN.com」の公式インスタグラムとツイッターのアカウント(@wwd_jp)で日焼け止めニーズの調査を行った。インスタグラムで問いかけた「紫外線カット以外の機能で日焼け止めに求めるものは?」に対し、最も回答が多かったのは①保湿②ベタつかない③スキンケア効果だった。中でも「保湿」が圧倒的に多く、日焼け止めもしくは日焼けそのものによる乾燥に悩むユーザーが多いようだ。そのほかにも「美白効果」「エイジングケア」「肌荒れしない」のような具体的なスキンケア効果を求める意見があれば、「トーンアップ」「艶」「肌色補正」「カバー力」「下地効果」といったメイクアップ効果を求める声も見られた。

 「ツイッター」では同じ問いに対し四択でアンケートをとった。すると「肌への優しさ」と答えた人が39%、「スキンケア効果」が30%、「塗り心地の良さ」が16%、「トーンアップ効果」が15%だった。このように、ただ紫外線から肌を守るだけでなく、肌をケアしたり、メイクアップすることも同時に求めるニーズが高いことが分かる。

 今回のスキンケア特集では百貨店ブランドを中心に取り上げた。各社共に、これまで以上に最新技術・知見を生かした製品が多く、そのために価格も4000円以上するものがほとんどだった。中にはスキンケアと同じ理論のもとで作られていたり、同等のスキンケア効果にこだわったりするために1万円以上するものもあった。紫外線カットだけでなく、ニーズに合わせてプラスアルファの効果を加えていることで単価がアップしているが、果たして高価格の日焼け止めを一般ユーザーは購入するのか?

 ツイッターで尋ねた「顔用日焼け止めにかけるお金は?」という問いに対し、「1000〜2000円」と答えた人が44%、「2000〜5000円」が34%、「〜1000円」が16%、「5000円〜」が6%いた。また、インスタグラムでは「百貨店ブランドの日焼け止めを購入するか?」という問いに対し、「NO」と答えたのが76%、「YES」は24%だった。こう見ると、1万円以上の日焼け止めのニーズはまだ低いように感じるが、同時にドラッグストアブランドの日焼け止めも年々進化していることも背景にあるだろう。もちろん、「WWDJAPAN.com」のフォロワーが全国の消費者を代表する訳ではないが、約3分の1が「2000〜5000円」と答えたことから、4000円以上の高価格UVケアアイテムのニーズも決して低くないことが分かる。

 紫外線研究が進むと、紫外線を効率よくカットするだけでなく、紫外線ダメージにアプローチするような、ますます多機能は当たり前になってくるだろう。また、今回の調査では紫外線吸収剤が海に及ぼす影響から「環境に優しい」という回答も見られ、今後は環境への負荷も考えた製品が増えていくのではないか。

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暖冬vsアパレル企業 天候に負けないビジネスモデルは可能か

 暖冬がアパレル企業に打撃を与えている。多くのアパレル企業は“秋冬偏重”だ。シャツやカットソーなど単価の低い春夏物は利幅が小さいため、コートやジャケットといった単価が高い秋冬物で年間の収益の帳尻を合わす。そんな業界慣習は常態化した暖冬でもろくも崩れ、業績の下方修正や赤字転落が相次ぐ。

強みだった重衣料が…

 三陽商会は典型的な秋冬偏重のアパレル企業だ。直近の12月度の全店売上高は前年同月に比べて7%減った。10月の消費増税以降、落ち込みが続く他のアパレル各社と比較しても回復が遅い。

 もともとコート製造で創業した同社は、高品質な重衣料を強みにして発展してきた。屋台骨のライセンスブランドを失った2016年の“バーバリーショック”からなかなか立ち直れないのは、販路での百貨店偏重、商品での秋冬偏重も要因といえる。中間層の消費が活発だった時代、冬がしっかり寒かった時代であれば、同社の回復はもっと早かっただろう。それがデフレによる消費の二極化、気候変動による温暖化でひっくり返り、先行きが見えない。20年2月期の4期連続の営業赤字が確実になり、岩田功社長は12月末に引責辞任に追い込まれた。

 三陽商会ほどではないにせよ、秋冬偏重はアパレル各社にほぼ共通の課題だ。長い夏に対応したMDカレンダー、または天候の影響を最小限に抑えるブランディングや新規事業を確立しなければ、生き残りは難しい。ビジネスモデルの「大転換」が必要だ。

多角化でリスクヘッジ

 ワールドは「服を作って売る」以外の収益源の構築に乗り出した。上山健二社長が戦略の柱として進めるプラットフォーム事業である。国内外の自社工場や協力工場の生産網、国内役2500店舗の販売網と人材、店舗内装の子会社、ECサイト受託とシステムソリューションを手がける子会社などの機能を他社にも提供する。

 上山社長は「ブランド事業(アパレル)の一本足打法であれば、商品単価の低い夏に利益が薄くなるのは避けられない。だが、19年の夏の端境期(7〜9月期)は、国際会計基準の適用(2014年3月期)後で初めて黒字化した。プラットフォーム事業による補完が大きい」と手応えを強調する。

 また、飲食や化粧品などの異業種ビジネスの拡大、あるいはワールドと同じようにECのプラットフォーマーを目指す動きも目立つ。

 ジュンの佐々木社長はファッション、フード、フィットネスの“3F”を今後の柱に位置付け、さらには昨年11 月からは化粧品販売にも乗り出した。今年は「飲食の多店舗化に着手して、収益化を急ぐ」と話す。ストライプインターナショナルの石川康晴社長は、百貨店系のアパレルブランドを中心に集めたECモール「ストライプデパートメント」や、サブスクリプションサービス「メチャカリ」の拡大にアクセルを踏む。「ECも、プラットフォームも、レンタルも手がける。そんな“ネオアパレル”が目指すべき姿」と語る。

 多角化は天候に左右されやすいアパレル企業のリスクヘッジとしても期待を集める。

「存続の危機」からV字回復

 一方、長い時間をかけてアパレル事業を大転換した企業もある。

 スポーツアパレルのゴールドウインは、19年3月期の連結業績が売上高で前期比20.6%増の849億円、経常利益で同65.7%増の129億円だった。9期連続の増収、5期連続の経常増益と右肩上がりだ。「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」を主力にしたアウトドア事業が安定的に成長している。20年3月期は業績予想を3度も上方修正した。

 飛ぶ鳥を落とす勢いの同社だが、実は1990年代末から長らく低迷が続き、一時は会社の存続が危ぶまれるほどだった。

 ゴールドウインも典型的な秋冬偏重のアパレル企業だった。バブル期の国民的なスキーブームで急成長を遂げた。一時は売上高の6〜7割がウインタースポーツ事業だった。だがブームが収束すると売上高は急降下。事業多角化の失敗も重なり、90年代末には3期連続の経常赤字に沈む。

 2000年に就任した西田明男社長は事業構造の改革に乗り出す。

 第一にスポーツ専門店への卸主体のビジネスから、自社で売り場を持って在庫もコントロールする小売型ビジネスへの転換だ。現在では「ザ・ノース・フェイス」「ヘリーハンセン(HELLY HANSEN)」「カンタベリー(CANTERBURY)」などを中心にショッピングセンターで展開する自主管理売り場(直営店)の割合が56%に達する(19年3月期)。

 第二に秋冬偏重からの転換だ。ウインタースポーツで成長した同社は、三陽商会以上に秋冬偏重のアパレルだった。2000年代半ばまでは春夏物の赤字を秋冬物の黒字で補う収益構造だった。現在の主力で売上高の7割以上を占めるアウトドア事業は、一般的にはダウンジャケットなど高単価の秋冬偏重になりがちだ。しかしウィンドブレーカー、レインウエア、バックパック、ショーツ、Tシャツなどの競争力のある春夏商品を開発し、年間を通じて安定的な売り上げをとる。「ザ・ノース・フェイス」の日本での商標権を買い取っている同社は、商品企画だけでなく、規格化されない個性的な店作り、ユニークなマーケティング活動でブランド価値を高めた。アウトドアの愛好者だけでなく、日常着としてのシェアを拡大しているのは周知の通りである。

 同社は一朝一夕に大転換を実現したわけでない。試行錯誤を重ねながら、年月をかけて再び消費者の支持を集めるようになった。気候変動を始めとしたピンチを、変革のチャンスにできるか。多くの企業の実行力が問われている。

 「WWDジャパン」1月27日号のCEO特集では、ファッション企業20社のトップインタビューを掲載する。デジタル化の進展やサステナビリティの高まりでビジネスモデルの「大転換」を求められる2020年代、経営者はどのようなビジョンを語るのか。登場企業はオンワードホールディングス、ワールド、ワコール、ジュン、ジョイックスコーポレーション、メルローズ、ユナイテッドアローズ、ベイクルーズグループ、ビームス、アーバンリサーチ、アダストリア、ストライプインターナショナル、マッシュホールディングス、バロックジャパンリミテッド、アイア、豊田貿易、ジンズ、カッシーナ・イクスシー、バニッシュ・スタンダード、アレフス(掲載順)。

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年間個人販売額は1億円超え! 「ステュディオス」MVP販売員が上海店店長の座をつかむまで

 日本ブランドのセレクトショップ「ステュディオス(STUDIOUS)」を運営するTOKYO BASEは2019年8月、中国本土初の店舗「ステュディオス トウキョウ」を上海にオープンした。東京でいうと青山のような新天地エリアにある店は、2層の作りで売り場面積は約300平方メートル。同社は20年中に北京、深圳への出店も予定しており、上海店は今後の中国事業を占う重要な店舗だ。その店長に抜擢されたのが、18年度の同社のナンバーワン販売員で、入社3年目の尹天沢(イン・テンタク)さん。青島出身で日本語ペラペラ、「青年よ、大志を抱け」を地で行く27歳の尹店長に、上海店や自身の夢について聞いた。(取材は19年間年末に実施)

WWD:TOKYO BASEで働いているのはどんな経緯から?

尹天沢店長(以下、イン):親の仕事の都合で14歳の時に初めて日本を訪れ、長崎で過ごしました。その後一度中国に戻って、再度日本に住んだのが17歳の時。大学も大分の立命館アジア太平洋大学を卒業しています。元々服がすごく好きで、大学2年の時に自分でブランドを立ち上げたほど。「シュプリーム(SUPREME)」が好きだけど、高くてなかなか買えないから自分でブランドを作ろうと思ったんです。でも、半年くらいでお金がなくなって続けられなくなっちゃったんですけど。就職活動ではTOKYO BASE以外に、中国でも人気の日本のライフスタイル企業大手から内定が出ていました。周りは口をそろえて「ベンチャーより大手がいいよ」と言ったけど、谷さん(谷直人TOKYO BASE最高経営責任者=CEO)に「将来何がしたいの?」って聞かれて、「もちろん自分のブランドがやりたい」と答えました。「だったら、大手よりこっちじゃないの?」と言われたのが入社のキッカケです。その夢は今も変わっていないですが、この会社の中でもそれは叶えられるし、今は中国子会社のCEOをやりたいとも思っています。

WWD:日本ではどのように働いていた?

イン:17年に入社して、まず配属されたのが福岡店。2年目から原宿店勤務になりました。18年の販売額は年間1億1000万円で全社トップ。1億5000万円を狙っていたから、自分としてはまだまだって感じでしたけど(笑)。中国語が喋れることはもちろん僕の強みですが、中国のお客さまにばかり売っていたわけではありません。当時の僕の顧客は7割が日本の方。人と話すのが大好きで仲良くなるのが早いので、接客が向いているんだと思います。僕は大学を卒業したのが遅くて、入社2年目にはもう26歳でした。谷さんが以前、「30歳までにさまざまな経験を積んでおくべき」という話をしていたので、それにならうと僕に残された時間は4年しかない。「人の10倍努力しなきゃヤバいぞ!」と思って、その年(18年)は自分への“先行投資”として、時間もお金も体力も仕事のためにものすごく使いました。それが今につながっています。

WWD:具体的にはどんな努力をした?

イン:会社がこの先、中国などの海外事業を拡大していくという話は聞いていたので、3連休が取れると北京、広州、上海、深圳などを自腹で視察して周りました。18年は家に居た休日が3~4日くらいしかないと思う。現地のお店を見てまわって、ファッション関係者と仲良くなって一緒に食事をすることを繰り返しました。それがあったから、いざ上海に出店するとなった時に「こういうブランドが売れる」と会社に伝えることができた。現地の雑誌編集者とも親しくなっていたので、上海店オープンの時は複数の雑誌が「ステュディオス」を紹介してくれました。それによって、広告費が800万円分くらい節約できたんじゃないかな(笑)。あとは、これも“先行投資”として18年は年間で服を200万円くらい買ったんです。素材や着心地についてお客さまに自分の言葉で伝えられるようになったことで、売り上げアップにつながった。“スーパースターセールス制度”で年収は1000万になっていたし、こういう形で自分に“先行投資”していけば、いつか会社が返してくれるって考えでやってきました。

スーパースターセールス制度=TOKYO BASE独自の販売員の人事評価制度。年間販売額7000万円、8500万円、1億円達成で、それぞれ年収が700万円、850万円、1000万円になる

「予算設定が低かったら面白くない」

WWD:上海店がオープンして約5カ月。客層や人気のブランドは?

イン:顧客は25~45歳が中心。日本の店舗は大学生の顧客が多いですが、こちらはもっと大人で、外資系金融などに勤めている方も多い。僕は勉強が得意じゃないですが、トップのビジネスマンから聞く話は本で勉強するよりも断然面白いから、接客することが勉強になっています。人気のブランドは「サルバム(SULVAM)」「ベッドフォード(BED J.W. FORD)」「ターク(TAAKK)」などの“モード系”。リサーチの時点ではもっとストリートテイストのブランドが売れると思っていたんですが、他店では買えない“モード系”が「ステュディオス」には求められます。秋冬の客単価は日本だと5万円弱くらいだけど、こちらでは7~8万円。オープン以来、メンズブランドのみ扱ってきましたが、売り上げの3割が女性客なので、2月からは「アキラナカ(AKIRA NAKA)」「ウジョー(UJOH)」など、日本のウィメンズブランドも販売します。

WWD:米中貿易摩擦により、「中国経済は減速」と日本ではしきりに報道されています。そんな中でも売り上げは取れている?

イン:目標はクリアしています。オープン初月はやや低めに予算を組んでいたんですが、予算の1.6倍くらい売れたので、本社に「もっと予算を上げてほしい」と伝えました。「僕たちを舐めないでください」っていう気持ちですね(笑)。予算が低かったら面白くないから、原宿の本店よりも高い予算を組んでいます。売上高によってスタッフのインセンティブも変わってくるので、負けられません。オープン後、想定以上に売れたことで商品が不足し、急きょ商品を本社から分けてもらいました。通関での遅延もあって若干の欠品期間は発生しましたが、一回経験したので今後はもっとスムーズに運営できる。大きな流れでは中国経済は減速しているのかもしれませんが、ファッション業界としては今はすごくいい時期だというのが僕の実感。化粧品を主戦場にしていたインフルエンサーたちも今続々とファッション分野に進出していて、中国人の間でファッションへの熱が高まっているように思います。

WWD:上海のお客さまには「ステュディオス」の何が支持されている?

イン:接客です。中国のお店って、お客さまが目の前にいても販売員が携帯をいじっているっていうこともザラなんです。そこに日本の「ステュディオス」と同様のきめ細かい接客を持ち込みました。まずは趣味などの共通の話題からお客さまと関係を作って、新作が入ったらメッセージアプリの「ウィーチャット(WeChat)」でお知らせする。お礼などのメッセージもこまめに送る。この接客手法がかなり新鮮なようです。もちろん最初はうまくいきませんでした。日本の「ステュディオス」で働いた経験があるのはスタッフ6人のうち僕だけなので、接客のロールプレーを重ねて少しずつその意図や精神を伝えていきました。オープンから4カ月の時点で、スタッフそれぞれの顧客売り上げは200万円ほどになっています。日本だと、そこまでいくのに平均で半年~1年くらいかかるんじゃないでしょうか。この接客手法は世界中どこでも通用すると思う。

目指すは「世界一かっこいいショップ」

WWD:上海は人件費が高騰して、なかなかアパレル販売員が集まらないと聞きます。スタッフはどのように採用した?

イン:日本語が喋れる女性スタッフが一人いますが、彼女とは上海店オープン前に現地を視察している際に他店で出会いました。僕のことを日本人だと思って日本語で接客してきたから、スカウトしたんです。上海店のナンバーワンセールスの男性販売員は、もともと原宿店時代の僕のお客さま。カナダで友人と一緒に自分のお店を運営していて、よく日本にも遊びに来ていたんだけど、カナダの店を閉めるというから「一緒に働こう」と誘いました。あとは友達の友達などですね。

WWD:将来的に、「ステュディオス」上海店をどのようにしていきたい?

イン:世界で一番かっこいいセレクトショップにしようって、オープン前にスタッフと話しました。世界一かっこいいのに加えて、世界一の売上高で、給料も世界一高いセレクトショップを狙っています。これから北京や深圳などの国際都市に出店していけば、世界中の人が中国で日本ブランドを知って、日本のファッションってこんなにかっこいいんだってと気付くようになると思う。就職する際、大手企業に入社せずにTOKYO BASEを選んで本当によかった。僕は上司の言うことがどんな時でも正しいとは思わないタイプだから、この会社のカルチャーが合っている(笑)。谷さんのこと、本当に尊敬しています。

WWD:具体的に、谷CEOのどんな部分を尊敬している?

イン:谷さんは“見る目”が違うなと思う。人を見る目もそうだし、ビジネスを見る目もそう。中国に進出するタイミングも、さっきも言った通りバッチリだと思う。あと、TOKYO BASEでは自分の好きなことを通して、夢に近付いていくことができるんです。そんなふうに思わせる組織を作ったという点で谷さんはすごい。月間販売額でトップになった時に、僕が前から好きだと言っていた香港の俳優で、メンズブランド「マッドネス(MADNESS)」を手掛けるショーン・ユー(Shawn Yue)に会う機会を作ってくれたのもその1つです。いつか一番の憧れの人であるNIGO(R)さんにも会ってみたいし、それもこの会社ならきっと叶うと思う。でも、次は自分が偉くなって、自分自身の力で会えるようになってやろうっていう気持ちです。

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合成ダイヤモンドのD2Cジュエリーのトップが語る「ダイヤモンドジュエリーの解放」

 昨年ジュエリー業界で話題になった合成ダイヤモンドのジュエリーブランド「プライマル(PRMAL)」が2月1日に登場する。合成ダイヤモンドは天然ダイヤモンドと見た目は同じ。構造や組成、特性が同じため、見分けるには特殊な機械が必要だ。価格は天然のものより安価で、採掘による天然ダイヤモンドより環境に優しくエシカルということから注目を浴びている。ジュエリー業界では天然vs合成でいろいろと議論もあり、市場はまだ創成期だ。このような状況下で合成ダイヤモンドに特化したD2Cブランドを立ち上げた福島剛プライマル代表に話を聞いた。

WWD:合成ダイヤモンドのジュエリーブランド「プライマル」を立ち上げたきっかけは?

福島剛プライマル代表(以下、福島):約10年間ジュエリー業界で活動してきた。欧米ではジュエリーは日常に溶け込んでいるが、日本ではまだファッションの次。ダイヤモンドの卸業が家業で、ジュエリーをもっと身近なものにしたい、ダイヤモンドに対する敷居を下げたいと思った。ダイヤモンドの業界は狭く、その中でお互いに持ちつ持たれつでビジネスをしている。まだ中間マージンによるビジネスが中心なので、当然末端価格は高くなる。だから今、注目を浴びているD2Cの仕組みを選べば、投資してもらえるチャンスもあるし、業界の持つ問題を解決できると思い、ITエンジニアの友人と意気投合してブランドを立ち上げた。合成ダイヤモンドは天然のものと構造は同じで価格が安く、エシカルだし、われわれのようなミレニアル世代にとってはベストの商材。なぜなら、われわれの物の考え方は合理的だから。同じ価格であれば、石も大きくてエシカルなものの方がいいと思う。だから合成ダイヤモンドは面白いと思うし、市場で一番を取っていきたい。

WWD:ブランド哲学は?

福島:“未来につながるジュエリー”がコンセプトだ。特に若い世代に、遠い存在だったダイヤモンドジュエリーを解放したい。日本では、ジュエリーは冠婚葬祭やパーティーなど特別な場で着けるものだと思われているが、それぞれのスタイルを大切にし、日常のファッションに取り込んでほしい。インスタグラムなどのSNSを通してジュエリーの背景やストーリーを発信するだけでなく、ファッションコーディネート提案も行っていきたい。ただ発信するだけでなく、消費者とインタラクティブに交流できるようにするつもりだ。

WWD:ターゲットは?それらをどのように獲得するか?

福島:ミレニアル世代がターゲットだ。ウェブサイトでレビューやコメントを書き込めるようにするなど、紹介したくなるような仕組みをつくりたい。また、ブランドに共感してくれる人々と共に成長していくのが理想だ。ブランドに興味のないインフルエンサーを起用しても意味がないと思っている。共感を大切にしていきたい。

WWD:戦略と初年度の売り上げ目標は?

福島:D2Cということもあり、従来の販促方法に頼らず、独自の仕組みをつくるつもりだ。プロダクトとIT(D2Cの仕組み)とを同じポジショニングでブランドを作っていく。モノを作って売るだけでなく、コミュニティーをつくりたい。デビュー時に約60型発売し、毎週新作を投入する。消費者に身近に感じてもらい、飽きさせないためだ。1年に1回ジュエリーを購入していた人が毎月買うようなECにしたい。ジュエリーはシーズン性がないので消費者と接点を持つのが大切。当初は受注生産で3~4週間の納期を見込んでいるが、それを短くしていくつもりだ。自宅で試着できるよう30日間返品や交換に対応し、敷居の高いジュエリー店に行く時間と労力をなくしたい。D2Cビジネスだから可能なウィッシュリストや、閲覧および購入履歴などをデジタルで管理し、無駄なく効率よく運営していくつもりだ。初年度の売り上げ目標は8000万円。6000万円をECで2000万円をポップアップショップで作るつもりだ。

WWD:合成ダイヤモンドの調達はどのように行っているか?

福島:カラットの小さめのものはインドの合成ダイヤモンドメーカーから調達している。ゆくゆくはブライダルなどカラット数の大きいものも作りたいので、アメリカのダイヤモンド・ファウンドリー(DIAMOND FOUNDRY)と契約した。水力発電による製造を行っており信頼度が高い。コストは高くなるが、できるだけエシカルな背景にもこだわりたい。

WWD:現在、合成ダイヤモンドを生産している国は?

福島:アメリカ、インド、中国、ロシア、シンガポールなど。

WWD:合成ダイヤモンドは天然ダイヤモンドよりエシカルというのが売りだが?

福島:天然ダイヤモンド1カラットを採掘するのに排出される二酸化炭素は約64.8kgといわれている。インドでは太陽光発電を使用し製造しているメーカーが多いが、通常の電力を使って製造しても合成なら天然ダイヤモンドの採掘で排出される二酸化炭素量の5~10%程度だ。環境負荷の少ない方法で生産された合成ダイヤモンドはそうでない合成のものと比べて約15~20%高いイメージだ。

WWD:グレードをカラーがG以上、クラリティーをVS2以上にしているのは?

福島:できるだけいいものを届けたいという思いから。また、合成ダイヤモンドの供給がまだ安定していないので、ある程度幅を持たせておく必要がある。

WWD:使用するダイヤモンドの主なカラット数は?

福島:メレダイヤモンドが多いが、0.3カラットや0.5カラットの商品もある。

スタートアップだからできた
合成ダイヤモンド市場への参入

WWD:日本における合成ダイヤモンドの市場は?

福島:まだあまり流通していない。調達が安定していないから、ビジネスをスタートさせるのには壁が高いのが事実だ。ジュエリーメーカーも天然と合成が混ざるのを嫌がるし、大手も手を出しにくい。だからチャンスだと見ている。われわれのようなスタートアップだから参入できた。

WWD:10金、18金と2種類のゴールドを使用する理由は?

福島:いろいろな需要に対応したいためだ。価格の面で10金を選ぶ人もいるだろうし、金属アレルギーで18金しか着けられない人もいるから。

WWD:今後日本で合成ダイヤモンドの市場は拡大すると思うか?

福島:確実に拡大するだろう。天然ダイヤモンドより価格が安くエシカルで、見た目は天然ダイヤモンドと変わらないから消費者は関心を持つはず。モルガンスタンレー(MORGAN STANLEY)の調査によると、2016年度の合成ダイヤモンドの市場規模は約150万ドル(約1億6350万円)だが、20年には10億5000万ドル(約1144億)になると予測している。5年以内に市場は約700倍に成長するという見通しだ。今は合成ダイヤモンドを敬遠している卸業者やジュエリ―メーカーもそのうち供給しなければならなくなるだろう。ジュエリー業界自体が合成ダイヤモンドに対する考えを変える必要がある。海外では、イギリスのメーガン・マークル(Meghan Markle)=サセックス公爵夫人や女優のエマ・ワトソン(Emma Watson)などのセレブリティーが合成ダイヤモンドのジュエリーを着用し、認知度が上がっている。日本でもこのようなきっかけがあれば、合成ダイヤモンドの市場は広がっていくはずだ。

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「ジバンシイ」“テンション・ファンデ”で作るオートクチュール肌

 「ジバンシイ(GIVENCHY)」は2月1日に「タン・クチュール・クッション」を発売する。まるでオートクチュールのようにその人の肌に合わせた仕上がりをかなえる人気ベースメイクシリーズ“タン・クチュール”が新たに提案するのは、従来のクッションファンデーションの手軽さはそのままに、最先端技術を搭載した“テンション・ファンデ”だ。肌に完璧なベールを作り、ピンとしたハリを実現する新ベースメイクに注目だ。

クッションファンデーションは
さらなる高みへ
最先端のテンション・テクノロジー

 トレンドアイテムから、ファンデーションのカテゴリーの一つとして地位を確立したクッションファンデーションだが、新たに登場する「タン・クチュール・クッション」は従来のクッションファンデーションとは一線を画し、手軽さはそのままにワンランク上の端正なマット肌を実現する。その秘密は「ジバンシイ」の最先端技術を用いた独自のテンション・テクノロジーだ。従来のスポンジなどにファンデーションを含ませたものとは異なり、目の細かい反発力のあるメッシュ状のテンション・ネットの採用でパフに最適な量のファンデーションが均一に付着し、ムラのない塗布を可能にした。加えて、肌に密着してフィルムを形成する特殊なポリマー※1を配合したファンデーションとの相乗効果により高いカバー力を発揮し、完璧な肌作りをかなえる。

 カラーバリエーションはクールトーンとウオームトーンをそろえ、アジア系の肌色に合う6色をラインアップする。

※1(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー

一日中快適なマット肌が続く
ロングラスティング

 テンション・テクノロジーによって肌の上でフィルムのように密着したファンデーションはヨレや崩れに強く、メイクしたてのような美しいマット肌が一日中続く。さらに、“タン・クチュール”シリーズ共通成分のリコリス・エキス※2が肌の潤いを保ち乾燥による崩れも防いで、潤いのある快適な肌をキープする。

※2グリチルリチン酸2K

あらゆる外的刺激から肌を守る
バリア・ファンデも登場

 同日にオールインワンタイプのベースメイクアイテム「タン・チュール・シティ・バーム」も発売する。ファンデーションをつけたくない人、ナチュラルな仕上がりがほしい、だけど肌はきちんと守りたい……、そうしたベースメイクに対する新たなニーズに応えるマルチな機能を持つ新感覚の“バリア・ファンデーション”だ。

 スキンケア効果と高い保湿力で肌を快適に保ちながら、SPF 25・PA++で紫外線や大気汚染、乾燥などの外的要因から肌を“バリア”。みずみずしいテクスチャーでメイクしていないかのような軽いつけ心地が特徴だ。肌色を美しく見せるメイク効果で気になる悩みをナチュラルにカバーして、素肌のようなヘルシーな肌を演出する。肌への優しさや機能性、すべてに妥協しないファンデーションだ。

問い合わせ先
パルファム ジバンシイ
[LVMHフレグランスブランズ]
03-3264-3941

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実は食の選択肢が少ない日本はオリンピック需要に応えられるのか?

 先日来日した主にフランス人で構成された海外テキスタイルメーカーのチームとの会食で、チームにビーガン(肉や魚、卵や乳製品など動物性食材を一切とらない)の人がいたが、会場になった名門ホテルのレストランにはビーガンやベジタリアン(肉や魚を食べない)用のメニューがなく、人々はサラダのツナをよける形で対応していた。外資系スポーツブランドやラグジュアリーブランドに勤める友人からも「本国スタッフが来日したときの食事が大変。ビーガン対応のレストラン知らない?」と聞かれることが増えたし、実際困っている人は多い。

 1月5日に行われたゴールデン・グローブ賞(Golden Globe Awards)の授賞式の食事は初めての試みとしてビーガンのメニューが提供されて話題になった。気候変動への問題意識からだと複数のメディアが報じていた。

 ビ―ガンはもともと動物愛護や宗教上の理由から、あるいは健康のため(編集部注:ビ―ガン食では摂取できない必要栄養素があるため、ビーガン=健康食ではない)に選ぶ人が多かった。しかし、最近では環境負荷が低いからという観点でビーガンやベジタリアン(肉や魚を食べない)食を選ぶ人が増えている。

「週に1度肉を食べない」選択は
環境負荷を抑える大きな一歩

 私自身もビーガンやベジタリアン食を選ぶことが増えた。理由は、肉食に比べて環境負荷が低いから。先に言っておくと私はCO2を大量に排出する飛行機にも乗るし、お肉も会食などでいただくことはある。ストイックに環境への負荷を抑えるための生活に取り組めている訳ではないが、できる範囲で個人レベルでの環境負荷を減らせないかと考えながら日々選択するようにしている。

 例えば、東京・羽田と英ロンドンをエコノミークラスで往復すると、1人あたり約1.2トンのCO2を排出するといわれている。相当な量だ。一方、畜産におけるCO2排出量は全世界の温室効果ガス排出の18%ともいわれており、中でも牛は、呼吸や排泄物でメタンガスを多く排出する。

 地球で起きていることを知るたびに胸が痛むし、問題が大きすぎて途方に暮れる――そう感じている人は多いのではないだろうか。私が出した個人レベルでできることの一つの答えが「なるべくお肉を選ばないこと」だった。サステナブルファッションの先駆者であるデザイナーのステラ・マッカートニー(Stella McCartney)にインタビューしたときに彼女が、「週に1度お肉を食べるのを控えるだけでものすごいインパクトよ!1週間移動するのをやめるのと同じくらいの影響がある」と話していて、「そんなにか!」と畜産による環境負荷の大きさを知った。ステラは「完璧じゃなくていいの。私もビーガンと言えればいいのだけど、週に1度チーズを食べるからベジタリアンなの」と話していたのが印象的で「完璧じゃなくていい」という言葉にも日々、救われている。できる範囲で“選ぶ”ことが大切なんだと思う。

食の自由度が低い日本、
オリ・パラへの不安

 そうした中で、東京オリンピック・パラリンピックを前に東京でビーガンやベジタリアン食を選べる機会が少ないことに危機感を抱くようになった。ほとんどのレストランでビーガンやベジタリアン用のチョイスがない。「アレルギーはありますか?」と聞かれることは増えたが、メニューにアレルギー表記があるレストランはまだ少ない。ましてやビーガンやベジタリアンの表記はほとんどない。

 もちろん、ビーガンやベジタリアン専門のレストランは増えたが、友人と食事をする際に、「ビーガン(orベジタリアン)レストラン行こうよ」とはなかなか言い出せず、一般的なレストランでもビーガンやベジタリアンのチョイスがあればみんなが楽しめるのに、と感じることは多い。

 7~9月にはオリンピック・パラリンピックのために世界中から、それこそ多様な人たちが東京にやってくるが、今の日本に彼らの食を満たすことができるのだろうか。宗教や動物愛護、健康や環境、アレルギーなど理由はさまざまだが、そうした食の需要に応えられるレストランはどれだけあるのだろうか。ちなみに出張などでヨーロッパに行く機会が多いが、ビーガンやベジタリアン用のメニューを用意しているレストランは多い。そしてビーガンレストランがかなりのスピードで増えていると感じる。

 もし、レストランやホテルを運営している人が読んでいたら、ぜひ選択肢を増やすことを検討してほしいと思う。はるばる日本にやってくる多くの人たちに、食事も楽しんでほしいから。

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最重要キーマンが語る「世界のジーンズ産業の現在と未来」 トルコのイスコCEOに直撃

 年間3億mのデニム生地を生産するトルコ企業のイスコ(ISKO)は、約20億本生産される世界のジーンズ産業で最も大きな影響力を持つ企業の一つだ。同社は単に生産能力が高く、有力なジーンズブランドやメガSPAなどに生地を供給するだけの企業ではない。垂直統合型のビジネスモデル、世界のジーンズ市場の潮流を変えた革新的なストレッチデニムの開発、先進的なサステナビリティの世界規模での推進など、世界のジーンズ産業をさまざまな面でリードし、実際に大きなインパクトを与えてきた。日本のメディアにほとんど顔を出すことのなかった、来日中のファティ・コヌコグル(Fatih Konukoglu)=イスコCEOを直撃した。

WWDジャパン(以下、WWD):来日は何回目になりますか?

ファティ・コヌコグルCEO(以下、コヌコグル):もう数え切れないほどだ。日本はジーンズ産業にとって最も重要な地域の一つだ。ファッションの先進性に加え、技術的な面でも重要な貢献をしてきた。ジーンズ産業に関わるものとして、そうした地域を自分の目と耳で確かめるのは当然であり必要なことだ。

WWD:イスコが開発したストレッチデニムは、ファストファッションブランドやグローバルSPAを通じて若い女性という新しく強力な市場を獲得し、ジーンズ市場の潮流も塗り替えた。自社をどう位置づけているのか?

コヌコグル:ストレッチデニムは、われわれの開発したアイテムの一部に過ぎない。われわれの本質は、特定のデニム生地を開発するファブリックサプライヤーではなく、顧客のニーズを満たすサービスサプライヤーであること。ジーンズを作る全てのブランドや小売店に、あらゆる商品を供給することを目指しており、セルビッジや14オンスの伝統的なリジッドデニムからストレッチ、さらにはスポーティーな製品まで、当社のポートフォリオは2万5000種類以上に達している。

WWD:研究開発体制は?

コヌコグル:本社の研究開発センターには、テキスタイルのエンジニアはもちろん物理学者や化学者、生物学者、数学者といった研究者も在籍しており、チームとなってあらゆる面から消費者のニーズに対するソリューションを探っている。デザイナーやブランドを支援するため、われわれはデニムと衣服に関して「イスコテカ(ISKOTECA)」と「クリエイティブ・ルーム(CREATIVE ROOM)」という2つの “シンクタンク”を持っている。「イスコテカ」は当社のデニム生地の洗い加工などのフィニッシュに関するライブラリーで、2万5000点以上のデニム生地とそれを再現するレシピを持つ。「クリエイティブ・ルーム」はスタイルとデザインに関するリサーチに特化しており、消費者のトレンドや洗い加工、世界中の衣服のサンプルなどを保有している。

WWD:イスコをはじめ、米国の名門コーンデニム(CONE DENIM、旧コーンミルズ)、インドの新興企業アルヴィンド(ARVIND)など、世界のメガ大手企業はいずれも年産1億mを超え、紡績から織り、染め、仕上げまでの一貫生産体制を持ち、各工程の自動化もかなり進んでいる。今後ジーンズ生地のメガ大手サプライヤーはどういった方向性に進むのか。

コヌコグル:われわれがいま最も注力しているのは、生産性の向上ではない。使用する原料から生産工程の省エネ・省力化など、サプライチェーン全体のあらゆる点で不要なものを極限まで減らすこと、つまりサステナビリティだ。最新の製品の一つで、リサイクルコットンとリサイクルポリエステルを使った“アールツー(R-TWO)”では、綿糸を紡績する際に発生する“落ちわた”を回収し、再利用している。イスコは創業以来、“レスポンシブル・イノベーション(RESPONSIBLE INNOVATION)”を事業の根底に掲げてきたが、時代の変化に合わせてその方法は常にアップデートする必要がある。現在のサステナビリティで最も重要な点の一つは“透明性”で、どんな原料や工程も、文書化され、監査され、完全にトレーサブルであることが求められる。“アールツー”でも、もちろんそうしたことが徹底されており、リサイクルコットンは繊維製品の国際的なNGO「テキスタイル・エクスチェンジ(TEXTILE EXCHANGE)」のトレーサビリティ認証基準「CCS(Content Claim Standard)」を、再生ポリエステルもグローバル・リサイクル・スタンダード(GRS)、あるいはリサイクル・クレーム・スタンダード(RCS)のいずれかを取得している。

WWD:英国の調査会社ジャストスタイル(JUST-STYLE)によると、世界のデニム市場は年率1〜2%と緩やかながらも継続的に成長を続けるとされている。設備投資には、今後どの程度の資金を投下していくのか?

コヌコグル:申し訳ないが、財務的な質問には答えられない。ただ、設備投資は常に行っている。織機は常に最新のものに入れ替えたり、追加したりしており、現在は2000台の最新の自動織機を持っている。ここ最近で最大の設備投資は、19年前半に新設した12万8000平方メートルの最先端機器を備えた物流センターだ。最大500mの織物ロールを扱うことができ、7台の自動運転ロボットが稼働。完全無人化を達成していて、酸化しやすいデニム生地の劣化と火災を防ぐため酸素濃度は16.4%に保たれている(通常の空気中の酸素レベルは21%)。

WWD:イスコの考える未来のデニムとは?

コヌコグル:新たなターゲットという意味で答えるならば“ヘルスケア”だ。2019年1月の世界的なスポーツの総合見本市イスポ(ISPO)で発表した“イスコ・バイタル(ISKO VITAL)”は、織物による世界初のコンプレッションウエアだ。これまでコンプレッションウエアのほとんどはニットだったが、織物の方がニットよりも最大で4倍長く形状を維持でき、テキスタイルの位置もズレにくいなど、さまざまなメリットがある。圧力を掛けることで血流を改善し、多くのメリットを着用者に提供できる。もう一つの革新的な製品が昨年11月のミュンヘンのファブリック見本市パフォーマンス・デイズ(PERFORMANCE DAYS)で発表した“イスコ アクアス(ISKO ARQUAS 6.0)”だ。さまざまな高機能の特許技術を集積したもので、防風性、撥水性と防汚性、UVカット、防臭、抗菌などの機能を持ち、肌面にあたる生地の水分は常に最低限に保たれる。フィットネスやアウトドア、アスレチックがターゲットになる。

最後にこれは未発表だが、来年2月12〜14日に東京ビッグサイトで開催される「ウエアラブルEXPO」で、最先端のウェアラブル技術を、イスコとして発となるキッズコレクションで発表する。モーションキャプチャーやLEDの組み込みによる衣服の点灯まで、さまざまな可能性を見せたいと考えている。

WWD:最後に今後デニム市場で勝ち抜くカギになるのは?

コヌコグル:絶え間なき革新と責任ある選択、そして情熱だ。われわれイスコの社員の体には青い血が流れている。

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帽子のフリンジが開閉! 2020年「グラミー賞」のレッドカーペットで見逃してはいけないディテール5選

 1月26日(現地時間)に開催された第62回「グラミー賞(Grammy Awards)」では、アリアナ・グランデ(Ariana Grande)が着用したシンデレラのような「ジャンバティスタ ヴァリ(GIAMBATTISTA VALLI)」のボールガウンドレスや、カーディ・B(Cardi B)のクリスタルスタッズが散りばめられた「ミュグレー(MUGLER)」のショッキングピンクのドレスなど、セレブリティーたちの豪華な衣装が見物だった。しかし、彼らのコーディネートのディテールにまで気が付いた人はどれくらいいただろうか。ここでは今回のレッドカーペットで見逃してはいけない5つのディテールを紹介する。

1.ビリー・ポーターの
自動開閉フリンジ付きハット

 いつも豪華な衣装でレッドカーペッドに登場することで知られるポーターだが、2020年「グラミー賞」でも観客の期待を裏切ることはなかった。「バハ イースト(BAJA EAST)」のターコイズのカスタム仕様のジャンプスーツはメタリック調のデザインで注目度は抜群だったが、そこにサラ・ソコル(Sarah Sokol)がデザインした自動開閉するフリンジをあしらったハットをプラスしてコーディネートを完成させた。自身のインスタグラムには、ポーターがレッドカーペッドでフリンジを動かしている様子が投稿されている。

2.ビリー・アイリッシュの
「グッチ」のモノグラムのネイル

 アイリッシュは18歳にしてすでに、“ラグジュアリーとリラックスウエアの融合”という彼女のシグネチャー的スタイルを確立している。2020年の「グラミー賞」でもブレることはなく、ネオングリーンとブラックでまとめたカスタム仕様の「グッチ(GUCCI)」のモノグラムのセットアップ姿で登場した。

 主要4部門のすべてを含む5つの賞を受賞するという快挙を成し遂げたアイリッシュだが、彼女のモノグラムをテーマにしたコーディネートにアクセントを加えていたのが「グッチ」のロゴをあしらったグリーンのネイルアートだ。このネイルは日本人ネイリストのエミ・クドウとネイルブランドの「OPI」がタッグを組み、ネイビーブルー、ターコイズ、イエロー、ライムグリーンの4色のネイルカラーを用いて施された。

3.ショーン・メンデスの
「ブルガリ」のネックレス

 ショーン・メンデス(Shawn Mendes)はベリー色の「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のスーツに、ファンシーカットのマラカイトとパヴェ・セッティングのダイヤモンドをあしらった繊細ながらも印象的な「ブルガリ(BVLGARI)」の“セルペンティ(Serpenti)”のネックレスを着けて登場した。

4.マギー・ロジャースの
「シャネル」のウオーターボトル

 最優秀新人賞(Best New Artist)にノミネートされたマギー・ロジャース(Maggie Rogers)は、この日の衣装に「シャネル(CHANEL)」の2014年プレ・フォール・コレクションから星があしらわれたドレスをチョイスし、同ブランドのウオーターボトルというレッドカーペッド・ファッションとしてはすこし意外なアクセサリーを用いてコーディネートを完成させた。

5.タイラー・ザ・クリエイターの
スーツケース

 タイラー・ザ・クリエイター(Tyler, the Creator)は、「ゴルフ ル フルール(GOLF LE FLEUR)」のピンクと赤のベルボーイ風スーツを着用し、レッドカーペット上で多くの注目を集めていた。衣装に合わせたピンクのスーツケースの中身はピンクと赤のストライプシャツとブラウンのパンツで、授賞式ではこの服を着用して最優秀ラップ・アルバム賞(Best Rap Album)を受け取った。

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「テレビCMの審査に落ち続けた」 フェムテック第一人者「ルナルナ」事業部長と東大准教授が生理認識の変化を語る

 女性が抱える健康問題をテクノロジー(技術)で解決するサービス“フェムテック”が注目されている。生理用ショーツや月経カップ、女性用セルフプレジャーアイテムなどが関連アイテムとして話題だが、日本人女性になじみのある生理日管理サービス「ルナルナ」はその先駆けだ。提供開始から20年がたち、1400万のインストール数(19年7月時点)を超えるほど多くの人に利用されているが、開発当初は携帯の公式サービスとして認められないほど風向きが強かったという。生理に対する社会の認識はどう変化し、これからはどんなサービスが求められるのか?日根麻綾「ルナルナ」事業部事業部長と東京大学医学部附属病院産婦人科の甲賀かをり准教授にそれらについて話を聞いた。

WWD:「ルナルナ」の誕生から20年が経ちましたが、サービスに対する社会の認識や生理に対する意識はどう変わりましたか?

日根:サービスをポジティブに受け入れてもらえるようになりました。2000年に「ルナルナ」を始めたときは携帯キャリアの公式サービスとして認められず、大手4社から承認されるまで7年かかりました。それぐらい女性の健康や生理を管理することが大切だという認識が浸透していなかったんです。しかし、サービスを提供し始めると登録者数はどんどん増え、「女性が生理周期を管理するシステムを求めていたんだ」という意識が広がった結果、今では全国ネットのテレビCMを放映できるまでになりました。実はテレビCMも審査に落ち続け、地方局で流しても「生理に関するCMなんて流すな!」と批判されることがあったのですが、ようやくお茶の間でも受け入れてもらえるようになりました。

甲賀:病院でも生理に関する相談は増えていますよ。「ルナルナ」さんが世論を変化させてきたのもありますが、ここ20年というタームで考えると、女性が社会進出して子どもを生み始める年齢が遅くなっていることが大きな要因だと思います。かつては短大を卒業し、20台前半で2〜3人の子供を授かり、30代はずっと子育て。そんな時代でした。でも今は30代に入って初めて子作りに向かう人がたくさんいるから、いざお子さんをつくろうと決めても不妊症が発覚したり、子宮の病気が見つかったりと妊娠・出産のリスクが高まったんです。

日根:それで、女性の性に関する情報や生理周期のスケジュール管理、避妊のコントロールなどができるツールのニーズがかつてより大きくなっていたんですね。

甲賀:はい。「ルナルナ」はそのニーズの受け皿になり、急速に支持を得たんだと思います。

“母親世代”が生理の正しい理解を妨げる

WWD:「ルナルナ」などのサービスによって生理に対する正しい知識は広がっているのでしょうか?

甲賀:実際のところはまだまだです。日本人は「ピルが怖い」「ワクチンは大変」など、一部のネガティブな情報に流される傾向にあります。本当はピルもワクチンも正しく利用すれば多様なベネフィットがあるのに、科学的知識が身についていないから、よくわからない恐怖心に翻弄されるんでしょうね。これは女性だけではなく男性の偏った認識にもつながっています。「ルナルナ」やピルの知識が浅いから、「ルナルナは不妊のためのアプリ」「ピルは避妊のための薬」といった偏見が生まれてしまうんです。

日根:お母さん世代でも偏った理解で判断してしまう人は多いですよね。「ルナルナ」利用者に実施したアンケートでは「母親にピルの服用を止められた」という意見が多数見受けられました。

甲賀:本人はピルの事前説明を聞いて納得したのに、お母さんに「やめなさい」と言われて服用しないケースですね。これは、自分と子どもの生理の状況が異なることを理解していないことから起こります。同じ20代でも、お母さんは3人子どもを生み、娘さんは子どもを作らなかった場合を想像してください。妊娠中と授乳期は生理が止まりますから、20代のうちに生理を経験する回数はお母さんの方がずっと少ないですよね。一方、娘さんは生理・排卵のサイクルをずっと重ねているから、不妊症や子宮異常に陥るリスクが大きい。医者はそれらのリスクを鑑みてピルの服用をすすめるのですが、お母さんがそのリスクを理解できていないんです。

日根:男性だけでなく、親世代の考えをアップデートできたらいいですよね。

WWD:福利厚生として女性の健康に予算を割く企業も増えているのでしょうか?

甲賀:メンタルヘルスをエンカレッジする企業は多いですが、女性の健康にはなかなか踏み込めない企業が多い印象です。これは、メンタルヘルスは社員の自殺などにつながる可能性がある一方、女性の生理はそういった問題に直結しづらいため、ないがしろにされてしまうんです。さらに不妊治療を支援すると出産・育休を取得されやすくなるため、企業としてデメリットが大きいと感じてしまうんです。

日根:でも、生理の日に無理に出勤してもパフォーマンスは上がらないことはデータで証明されているし、福利厚生で女性の働きやすい環境を整えたほうが女性社員のロイヤルティーも上がりますから、長期的にみたら絶対に導入したほうがいいですよね。われわれも福利厚生で従業員向けの生理セミナーを開いたり、女性がオンライン診療を受ける環境を整えたりという動きを始めていますが、これも経済的合理性があると判断しているからに他なりません。

WWD:「ルナルナ」が新たに考えているサービスは?

日根:大きく考えているのは3つ。まず、妊娠を希望しない若い子にむけた「ピルモード」です。去年スタートしたサービスですが、今後は医療機関とのアクセスをスムーズにして、より実践的なサービスに進化させていきます。次に妊活・不妊治療のサービス。不妊治療は通院頻度が高く、仕事との両立がとても大変な治療です。そこで、体温や生理周期のデータを病院に送り、先生と対面しなくても診療システムなどにつながるプラットフォームを作れたらと思っています。最後は出産期です。先ほども言った通り、出産期に利用できる医療施設の減少がどんどん深刻になっていて、地方には車で1~2時間かけないとお産施設にアクセスできないのも当たり前になっています。それらの施設とユーザーデータをつなぎ、スムーズで安心なお産環境の手助けをしたいです。

甲賀:やるべきことはたくさんありますね。BtoCで完結させず、医療機関にもメリットやインセンティブがあるシステムをいかに構築するかが鍵ですね。

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南仏プロヴァンス発「パルファム ドゥ ラ バスティード」 有名香水ブランドを育てたキーマンが作るライフスタイル・フレグランスとは

 香水の輸入販売大手のブルーベル・ジャパンにより昨秋日本に初上陸した仏ライフスタイル・フレグランス「パルファム ドゥ ラ バスティード(PARFUMS DE LA BASTIDE)」。同社が新しいチャネル開拓を模索する中で、日本人のライフスタイル空間に香りを提案する場として郊外型モールに出店が進むコスメティックチェーンに注目し、そこにマッチするライフスタイル・フレグランスをという戦略のもと導入に至った。同ブランドは「アニック・グタール(ANNICK GOUTAL)」をはじめ多くの有名香水ブランドにマーケティングトップとして携わり、ラグジュアリービジネスと国際ビジネスでキャリアを築いた2人によって2014年に南仏プロヴァンスで誕生した。ナチュラルな素材を使ったオードパルファムのほか、キャンドルやホームスプレーを展開。2月19日にはランドリーソープのほか小さいサイズのオードパルファムやキャンドルなどの新商品を発売する。共同設立者2人が多忙な生活を経て行き着いた、“スローライフ・フレグランス”の真髄を聞いた。

WWD:グローバルなフレグランスブランドを数多く手掛け、特にアジアでのビジネスに深く関わってこられましたが 、ライフスタイル・フレグランス「パルファム ドゥ ラ バスティード」を立ち上げた理由は?

ウィリアム・ブエレ共同設立者兼社長(以下、ブエレ): 30年以上にわたって香水ブランドに携わってきましたが、香水ビジネスがグローバルになりすぎていると感じていました。本来の意味で香りをクリエイトするというより、イメージやマーケティングに偏っているのではないかと。そんな中で、創造性を持って香りを作りたいという思いからブランドを立ち上げました。マーケティングを重視していないのでターゲットも定めていませんし、売り上げ目標も予算も持っていません。ノウハウを持った職人の手を借りながらトレーサビリティーを確立した製品を作っています。

WWD:“スローライフ・フレグランス”のコンセプトはどこから生まれたのでしょう。

ブエレ:一番のインスピレーション源はフランスのワイナリーです。特に、高級なワイナリーの哲学から影響を受けました。偉大なワインを意味する“グラン・ヴァン”を生み出すワイナリーでは、“テロワール”といわれる要素、それはブドウが育つ場所や気候、土壌を意味しますが、それらを非常に重視してワインを造ります。それと同じことを香水でもやってみようと。われわれにとっての“テロワール”は南仏プロヴァンスであり、その土地の気候や風土から最高のものを引き出して香りで表現したいという思いから生まれました。

アン=セシル・ヴィダル共同設立者兼最高業務責任者(以下、ヴィダル):何世紀も前から香水産業が盛んで、香水の故郷ともいわれる都市グラースも南仏プロヴァンス地方にあります。プロヴァンスは太陽の光や自然が豊かで山もあれば海もあって風土や植物、花々も豊富です。ですから香水に携わってきた私たちにとってプロヴァンスのコンセプトはある意味で原点だと言えます。

「プロヴァンス発のブランドは
香水ビジネスの原点回帰」

WWD:今日では香水の都はパリというイメージが強くなっています。

ブエレ:1950年代までは全ての香水はプロヴァンスから発信されていましたが、今ではほとんどがパリ近郊に移っています。なぜかというと、パリから発信されるオートクチュールを発表しているようなラグジュアリーブランドは、洋服が高価すぎて誰もが買えるわけではないため、もう少し手を伸ばしやすいものとして、そうしたブランドがいろいろなアクセサリーを作るようになったからです。その一つが香水で、香りはブランドのシグネチャーになりうるものなので、パリの印象が強くなったのでしょう。

WWD:「パルファム ドゥ ラ バスティード」の特徴は何でしょうか。

ブエレ:先ほど述べたようにプロヴァンスの豊かな自然や文化を香りの核としていることとが一つです。もう一つは、香水は人が生きていくためにどうしても必要ではなく、喜びを与えてくれるもの。だから楽しいと思えるものを作ろうというのがブランドとしてのポリシーでもあります。

WWD:香りそのものや製造方法にこだわりは?

ブエレ:全製品がプロヴァンス地方のいろいろな土地をテーマにしているのでプロヴァンスを旅しているように感じられると思います。天然素材を使いながら伝統的な職人の技と今日的な科学技術とうまく組み合わせることで、自然な素材を使っていても最低限の保存料で済ませることを可能にしています。シンプルでナチュラルなものを目指したので着色料も使っていません。ナチュラルをうたうブランドは今多く出てきていますが、香りのシグネチャーという意味では少し物足りません。われわれはそうしたシグネチャーとなる香りを持ちながら、ラグジュアリーという位置づけの中でホームフレグランスを展開しています。

WWD:プロヴァンスを拠点にフランス国内外でどのようにブランドを展開していくのか、今後の構想を教えてください。

ブエレ:われわれはリテールブランドであると考えているので、やるべきことは自分たちの販売網を確立するということです。

ヴィダル:もしフランス国内で次に店舗を開くとしたらカンヌやニースのような南仏の都市になるでしょう。2号店を開くのであれば日本や韓国、ドバイなどになると思います。未来のことは分かりませんが、パリに行くということは考えていません。プロヴァンスには外国からたくさんの人の来訪がありますし、パリに行く理由はあまりありません。まずはアジアで展開し、ヨーロッパではドイツやオーストリアなどゲルマン系のエリアでの展開を考えていくと思います。

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育児・仕事・家事に追われるママと子どもにも嬉しい、冬のスキンケアはどれ? スキンケアのざっくばらん“本音”トークVOL.2 ビューティー編

 一年の中でもっとも乾燥が目立つこの時期、時間に追われるママの悩みは尽きない。例えば、塗っても塗ってもハンドケアはエンドレス。子どもと一緒に入るお風呂上がりの全身保湿はもちろん子ども優先。抱っこをせがまれたり、子どもとすりすり顔をくっつけることもしばしば。そんな日常の中で、ママにも子どもにも安心して使えるスキンケアについて、3年前、7年ぶりに第3子を出産したママと、働きながら5歳の息子を育てるママが語ります。

時短の味方は泡タイプ洗顔
忙しくてもワーママは
香りも忘れない

髙田翔子(以下、しょうこ):暖冬とはいえ肌がかさつく時期到来。授乳後の肌の調子はどう?

野島一美(以下、ひとみ):妊娠中はお肌ツルツル。生理も止まって、エストロゲンが大量に分泌された影響かな?それが今は手と唇の乾燥速度が恐ろしいほど速い。

しょうこ:私も妊娠中はお化粧のノリが良かったけど、抜け毛とシミの悩みはあったな。

ひとみ:抜け毛や白髪は妊婦の勲章!って思うようにしてたよ。

しょうこ:前向きでいると、メラニンが増えなさそう(笑)

ひとみ:見て、このシミ。明らかに若いときの日焼けの形跡。

しょうこ:シミってなかなか消えないよね。新婚時代家庭菜園にはまって、近所の農園を借りて炎天下に野菜づくりをしたせいか、気が付けばシミが増えてた! 最近顔に加えて、手や首の乾燥とシワも気になってる。

ひとみ:首のシワ?今聞くまで意識したことないかも。

しょうこ:30代後半っていう年齢もあるのかな。とにかく毎日、「ウーマンメソッドトリプルAトリートメントリキッド」や「イプサ(IPSA)」の化粧水をたっぷり塗ってから、「シロ(SHIRO)」のオイル美容液「タマヌオイルインセラム」を使ってる。そうそう、一昨日から使い始めた花王の「ソフィーナIP」の炭酸泡は、化粧水なしでも泡の美容液とその後に塗るクリームで肌がもっちり潤うの。

ひとみ:もっちり、は嬉しいね。うちはサッカー少年2人に2歳児がいる生活だから、朝夕に自分をケアする時間は作れないけど、朝の洗顔は「リサージ(LISSAGE)」のクレンジングソープ、夜は同じく「リサージ」のクリーミーソープとで使い分けてる。クレンジングソープはワンプッシュで泡が出るから忙しい朝には最適。ワンプッシュ式でいうと、「ロクシタン(L'OCCITANE) 」の「イモーテルクレンジングフォーム」も使っててよかったよ。洗顔後は「うるおい(URUOI)」の「ディープモイスチャージェル」をたっぷりつける。いやなべたつきがないし、朝起きても潤いが残ってるからお気に入り。今晩から首にもつけてみようかな。

しょうこ:首って自分からは見えにくいから気になっちゃう。ま、20代のころ母にシワを指摘されたからなんだけどね。

ひとみ:子どもがいながら国内出張もこなす忙しさなのに、見えにくい部分を気にするって美意識が高いね。何か使ってるの?

しょうこ:お風呂上りは子どものスキンケアもあって慌ただしいから「とにかく保湿だけは!」という感じ。特別なケアはできていなくて。プチプラで気になってるのは、「ケイト(KATE)」の「フェイス&ネックホワイター」。首筋まで使えて色白肌に見せる化粧下地なの。

ひとみ:そうなるよね。ケアが必要な個所の優先順位を決めて、なるべく最短で終わらせる。

しょうこ:本当は年齢的に時間もお金も掛けいないといけなくなってるんだろうけど。

ひとみ:おぉ、40代の私には痛いセリフ。

しょうこ:手にはハンドクリームが欠かせない時期だね。

ひとみ:家にいると水仕事が多いから、ハンドクリームを塗った途端おむつ替え、塗り直せばご飯の支度ですぐに水で流す、を繰り返すから嫌になる。

しょうこ:分かる。私は家中の水回りにハンドクリームを置いてる。

ひとみ:いいアイデア!各所違う製品なの?

しょうこ:買う時の気分にもよるけど、あえて色んな香りを楽しみたいから違うもの。

ひとみ:育児中は香水をつけにくいから、手の潤いだけじゃなくて、香りのリラックス効果もハンドクリームには期待できるよね。

しょうこ:前に取材で出会ったママからいい匂いがしたから何を使っているかを聞いたら、「ザ・ボディショップ(THE BODY SHOP)」のモリンガのハンドクリームだったの。これなら子どもがいてもつけられるってその日の帰り道に買っちゃった。

ひとみ:「ザ・ボディショップ」!高校時代大好きでよくデューベリーやホワイトムスクをつけてたな、なんだかまたつけたくなってきた!

しょうこ:私にとっても「ザ・ボディショップ」は高校時代に通った思い出の店のひとつ。懐かしいよね。

ひとみ:年齢が違うのに、共有できて嬉しいな。今時たいていの物をぽちっと入手できるけど、幸い隣駅に「ザ・ボディショップ」があるし、欲しいアイテムをお店で買って、家で開けるのが私にとってはコスメ買いの醍醐味!

試したい、話題の発酵スキンケア

しょうこ:スキンケア製品を選ぶ上で、子どもができて気になり出したのは肌への刺激が小さいかどうかかな。子どもとのスキンシップを意識して、赤ちゃんの肌に触れても刺激が薄いモノを選ぶようになったけど、そういった商品は大人の肌にも優しいよね。スーパーフードも注目されてるけど、発酵スキンケア、知ってる?ちょっと前までよく店頭販売していたり、最近CMでも見かけるから気になってて。

ひとみ:最近私の周りでも話題になってるよ、「エヌ オーガニック(N ORGANIC)」とか。発酵だったら食品でもあるし、子どもの肌にもそんなに影響ないのかな。使用中のモノを使い終えてから、と思うと買うタイミングを逃すよね。娘が納豆好きで、よく口の周りをべたべたにする発想から試しに水で薄めた日本酒を顔に塗ってみようかと思ったけど、万が一子どもが舐めたらまずいなとやってない(笑)。

しょうこ:面白い発想!菊正宗の吟醸純米酒が配合された化粧水は価格も1000円以内、ドラッグストアで手に入るし、いいって聞いたことがある。少し日本酒の匂いもするみたいよ。

ひとみ:授乳中は禁酒期間だから、のんべいママには試す価値ありかもね。

しょうこ:私が気になってるのは福光屋の日本酒の発酵化粧品。

ひとみ:なんかリッチな感じがする。

しょうこ:化粧品って単価1万円以上するものにはなかなか手が出せない。必要経費だけど、ほかのモノとの兼ね合いでどう削るのかも大事な問題。だからなかなかネック用クリームを買えないでいるし。

ひとみ:時間との勝負の生活でぜいたく品を使うのは忍びないよね。そしたらまずはトライアルキットの出番じゃない。

しょうこ:HACCIからでたはちみつ発酵液も気になるの。はちみつと発酵って結びつかない。

ひとみ:ほら、スターターキット購入、決まりね!

しょうこ:そ、そうだね。

ひとみ:この前実家で母が使ってる「SK-Ⅱ」の「フェイシャルトリートメントエッセンス」を借りたの。さすがにたっぷりは使ってないけど。

しょうこ:「SK-Ⅱ」こそ発酵だよね。なんとなく大人の女性が使うイメージだったけど、気づけば自分もすっかり大人の年齢。実際、肌のきれいなママに使ってるスキンケア聞いてみると「『SK-Ⅱ』を愛用しています」という声はけっこう多くて。

ひとみ:そうだよ、シミと共存するお年頃だもん。私より年下のママ友たちも「SK-Ⅱ」を使ってるし、これからは一品ちょっと高価なもので自分の肌を労わってもいいのかなって。

2歳児女子も「キレイ」には敏感

しょうこ:つい子どもがいるからって言い訳しちゃうけど、老化は待ってくれないしね。私なんて子ども1人でも大変なのに、3人って想像つかないよ。

ひとみ:息子たちは普通肌なのに娘が超乾燥肌で、高齢出産が原因かもって責任を感じたりもするけど、とにかく保湿が大事だと皮膚科医に言われたのが自分の保湿意識も高まらせたの。

しょうこ:年齢が原因じゃないとは思うけど、そう思う気持ちはわかるな。うちの息子も肌が弱くて、お風呂上りに脱衣所から脱走する息子にクリームを塗るのが大変。

ひとみ:スプレータイプもあるから試して、男児は喜ぶかもよ?娘が逃げて遊びだすと「塗り塗りしたら明日はもっときれいになるよ」って暗示すると、2歳児でもキレイという言葉に弱いみたいで黙る!

しょうこ:女子だね、すでに美意識が芽生えてる!

ひとみ:もうこれは、春に向けて「SK-Ⅱ」のファーストキットを買うしかないのかな。でも気になるのはパッケージ効果もあるのか「エヌ オーガニック」のほう。キッチンに置いても映えるよね。

しょうこ:両社お値段に差があるから、まずは手軽に試せる「エヌ オーガニック」から始めてみる?

ひとみ:あれ、いつの間にか私が勧められちゃってる?

しょうこ:そうかも?(笑)

ひとみ:ま、できちゃったしみとは長く、うまく付き合っていくしかないし、まずはトライアルキットを購入してみようかな。

髙田翔子(たかだしょうこ):1982年東京都東村山市生まれ。大学卒業後、ビジネス・実用書出版社勤務を経てフリーライターに。主に女性誌、書籍、WEBでインタビュー、読み物記事などを執筆。肌年齢だけは20代の診断。旅と読書とお酒が好き。電車好き1男の母

野島一美(のじまひとみ):1976年東京都杉並区生まれ。幼少期を香港、NYで過ごす。大学卒業後はテレビ制作会社で報道映像資料編集等に携わった後、東京大学生産技術研究所で教授秘書に。結婚後はフリーのライターとして雑誌VERY(光文社)で育児・早期教育について等執筆。和太鼓にはまる2男1女の母

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花王の“第二の皮膚”を発売してからの反響は? 「購入客の8割以上が新客」

 花王は2018年11月に発表した“第二の皮膚”技術「ファインファイバー 」を製品化し、花王の「エスト(EST)」とカネボウ化粧品の「センサイ(SENSAI)」に導入。デバイスに化粧液をセットして噴射することで、極細の繊維が肌の上にベールを形成するという新発想のスキンケア「バイオメシスヴェール」は発表時に大きな話題を呼んだが、昨年12月4日に発売後、その売れ行きや反響はどうなのか?今回、中屋英昭・花王コンシューマープロダクツ部門ソフィーナ事業部 エストグループ シニアマーケターと、小島正也・カネボウ化粧品 マーケティング部門 センサイ ブランドグループ マーケティング部長に聞いた。

 両ブランドともに売り上げは計画通りだというが、新客獲得に一役を買っている。中屋シニアマーケター(エスト)は「新たなナイトケア提案であることに加え、ベールを剥がすという見た目のインパクトから、多くのお客さまからの問い合わせがあった。また、日本のみならず海外(アジア圏)でも話題になっている」とコメントし、小島・マーケティング部長(センサイ)は「お手元でデモンストレーションをするとみなさま一様に驚かれ、『効果に期待できる!』とのお声をいただいている」と話す。

 また、「センサイ」はカネボウのプレステージグローバルブランドとしてこれまで日本を除く40カ国で展開してきたが、19年9月に日本にも投入し、伊勢丹新宿本店や阪急うめだ本店に出店した。「バイオメシスヴェール」は、日本に逆輸入した「センサイ」の日本での認知度向上にもつながったという。「購入客の6割以上が『センサイ』製品を初めて購入した方で、昨年9月に日本に投入した新規ブランドとしては、お客さまにブランドを知っていただくよい機会になった。年齢層は大人世代から20代まで幅広く、訪日外国人のお客さまにもお買い上げいただいている」。一方の「エスト」でも新客誘導のきっかけとなり、「ご購入いただいたお客さまのうち8割以上が新客であり、この商品に対する関心や期待の高さがうかがえる。年齢や性別に関係なく、また海外からの指名のお客さまも増えている。購入者からは、『新しいスキンケアにワクワクした』『まだ一日目だけど肌がもちもちする』など驚きの肌実感の声を頂戴している」と中屋シニアマーケター。

 「エスト」の「バイオメシスヴェール」は12月にリニューアルした花王の情報発信基地ショップ「ビューティ ベース バイ 花王(BEAUTY BASE BY KAO)」で発売し、体験イベントなどを行ってきた。同ショップの入店客増加にも貢献し、12月の来店者数は前年同月比80%増と好調な滑り出しだという。花王の広報担当者は「花王では現在、ESG(環境・社会・ガバナンス)を根幹に据えた経営戦略のもと、『ファインファイバーテクノロジー』を社会課題解決のためのソーシャルイノベーションのひとつとして位置づけている。同技術は化粧品のみならず、医療領域への展開も視野に入れて研究を進め、将来的にさまざまな商品や顧客サービスなどに応用できればと考えている」と、「ファインファイバーテクノロジー」の今後の可能性に期待を寄せた。

 なお、「センサイ」の「バイオメシスヴェール」は1月20日に英ハロッズ(HARROD’S)でも発売し、2月には仏ボンマルシェ(LE BON MARCHE)でも取り扱いを開始する。日本の免税店での販売も今後スタートする。「エスト」は現在直営店と百貨店6店舗で展開しており、3月6日には販売拠点を大幅に拡大して全国約100店舗に導入する。海外でも順次、アジア圏での販売拠点を増やす予定だ。

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「世の中に服が溢れすぎている。ブランドイメージを保つために廃棄するのは、あまりにも無責任だ」 by ジャンポール・ゴルチエ

Jean Paul Gaultier

 世の中に服が溢れすぎていること。ファッションブランドの中には、大量にアイテムを作っておいて、売れなかったものを焼却してしまうところさえある。それなら、最初から売れる分だけを生産すべきだし、残った服はリサイクルするなどの手段を講じるべき。ブランドイメージを保つために廃棄するのは、あまりにも無責任だ。(「WWDジャパン.com」2019年9月25日掲載、「僕が求めるのは、自由なクリエイションができる環境だ」 ジャンポール・ゴルチエが語る現代ファッションの明暗)ファッション業界の悪いところを聞かれていわく

The WORDS
ファッション業界人の残した名言を日々の糧に。デザイナーやバイヤー、社長、編集長らの心に響く言葉をお届け。

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要注目メンズブランド「ボーディ」 手仕事と古布で奏でるノスタルジックな物語がパリコレで異彩を放つ

 ニューヨークを拠点に活動するデザイナー、エミリー・アダムス・ボーディ(Emily Adams Bode)の「ボーディ(BODE)」が、2020-21年秋冬コレクションを1月18日パリで発表した。パリ・メンズ・ファッション・ウイークに参加するのは前シーズンに続いて2回目。アトランタ出身のボーディは、パーソンズ美術大学(Parsons School of Design)でメンズファッションデザインと哲学を専攻し、「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS」と「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」で経験を積んだ後、16年に同ブランドを始動した。翌年には、メンズウエアの女性デザイナーとしては初めてニューヨーク・ファッション・ウィークに参加。昨年、アメリカファッション協議会(CFDA)による「CFDAアワード」のエマージング・デザイナー賞を受賞するなど、業界が注目するアップカミングなデザイナーである。

 今回のパリコレ参加のためにニューヨークから引き連れてきたスタッフは10人程度だ。現在30歳のボーディが率いるチームは、20代中盤とかなり若い。バックステージでは年齢層の低い「ボーディ」チームとフランス現地のプレスチームが準備を進めていた。腕全体にタトゥーが入った男性、鼻ピアスに刈り上げたヘアスタイルの女性も「ボーディ」のクラフト感溢れる衣服に身を包み、各々の着こなしを楽しんでいる。リハーサルを待っている間、彼らは私語を全くせずにバックステージはずっと静かだった。それはボーディの緊張が空気で伝わってきていたからかもしれない。彼女はスタイリストや演出家、音楽担当らと話しをしながら、1階の会場と2階のバックステージを何度も往来する。マフラーの巻き方やバッグのストラップの位置、ウオーキング時の手の位置など細かい部分までボーディが確認と指示出しを重ね、結果的にパリでのショーはミスなく終えられた。

絶妙なバランスの色彩やシルエット
親近感も織り交ぜた高い完成度

 今季のテーマは“The Education of Benjamin Bloomstein”と銘打った。彼女の友人であり、コラボレーション相手であるベンジャミン・ブルームステインの学生時代が着想源となっている。プレスリリースには、ブルームステインが小学校から高校までに何度も転校を重ねる度に、それぞれの土地で熱中した趣味などが綴られていた。結局、彼は高校を中退して樹木管理士の下で修行を積み、現在は樹木の家具やオブジェを作るデザインスタジオを主宰している。彼女は、過去のコレクションで幼少期の休暇や祖父母の家の屋根裏部屋での思い出を着想源にするなど、個人的な経験や感情から生まれる服作りを大切するデザイナーである。

 ファーストルックは、学生服のようなブレザーのセットアップ。いくつかのルックに書かれた文字は、ブルームステインが学生時代に書いた詩だという。デザインコンテスト「インターナショナル・ウールマーク・プライズ(International Woolmark Prize)」の2020年度ファイナリストに選出されている、100%トレーサビリティー(追跡可能性)のメリノウールを使ったプルオーバーやクロシェットも登場した。19世紀に掛け布団として使用されていた布やインド北部で長年技術が継承されている貴重な絹織物やビンテージのシルクリボンのキルト、20世紀のデッドストックの生地やワッペンがコレクションを形成する。人間味感じるハンドワークは、背景にノスタルジックな物語を想像させた。スイスで何世代にも渡り変わらぬ手法で生産する「アッペンツェラー・ガート(Appenzeller Gurt)」のアップリケもルックに華を添える。カントリームード漂う衣服だが、野暮ったさとは無縁。色彩やシルエット、スタイリングといった全ての要素が絶妙なバランスで構成された完成度の高さは見事である。

 コンセプチュアルで突飛なデザインでない限り、リアルクローズとして提案される衣服に目新しさを感じることは少ない昨今だが「ボーディ」は例外だった。手仕事による温かみや懐かしさといった親近感と、初めて味わう新鮮さも共存しているからだ。懐古主義的に過去を肯定して現在を否定するのではなく、重ねた時間にリスペクトを示し、現代に合った新しいスタイルを提示する——そんな彼女の心意気が感じられた。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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名古屋で話題の「バーミキュラ ビレッジ」 おしゃれ鍋ブランドが手掛ける最旬施設をマーケティング目線でパトロール!

 年末年始に地元の愛知に帰省した際、家族から「今名古屋で話題になっているよ」と教えてもらった場所があります。2019年12月に開業した、「バーミキュラ ビレッジ(VERMICULAR VILLAGE)」です。「バーミキュラ」とは愛知ドビーが作っている鍋のブランド。「……なんだ、鍋か」とおっしゃることなかれ。この鍋、「ザ・コンランショップ(THE CONRAN SHOP)」などのおしゃれインテリア店でも扱っており、“丁寧に暮らす系”ライフスタイルの方々から強く支持されています。それゆえ一時期は入荷待ち状態が続いていました。そんなおしゃれ鍋ブランドが、「最高のバーミキュラ体験」や「バーミキュラの聖地」を打ち出しているのがこのビレッジ。早速パトロールしてきたんですが、「マーケティング的になんて今っぽい施設なんだ!」と唸らずにはいられなかったので、ご紹介します。

 「バーミキュラ ビレッジ」があるのは、ジェイアール名古屋タカシマヤなどが林立する名駅(めいえき)エリアから少し南に下ったあたり。名古屋市が再開発を進める中川運河沿いです。だだっ広い物流倉庫や古い町工場が立ち並ぶ中に、突然シャレた感じの建物が現れます。それが「バーミキュラ ビレッジ」です。なぜここに!?と思いますが、もともと同エリアが愛知ドビーの創業の地なんだとか。

 ちなみに愛知ドビー、今でこそフランス発の「ル・クルーゼ(LE CREUSET)」や「ストウブ(STAUB)」に並ぶおしゃれ鍋のメーカーですが、実はわれわれファッション業界とも縁が深いのです。同社の祖業はその名の通り、ドビー織機のメーカーだそう(愛知は繊維産業で栄えた街。一宮市は今も世界的ウール産地として有名です)。しかし、繊維産業の衰退と共に愛知ドビーも工業機械用の鋳物部品生産に業容を転換。更にそれも下降線となり、これまで培ってきた鋳物技術を注ぎ込み、起死回生として開発したのが「バーミキュラ」だったんだとか。このあたりのストーリー、経済番組などでもよく取り上げられています。「バーミキュラ」はフタと本体がビチっと閉まる気密性の高さが売り(それゆえ、食材そのものの水分だけでの調理=無水調理が可能)なのですが、その気密性こそ、まさに同社が鋳物製造で培ってきた技術の粋の部分だそうです。

「ライフスタイルを売る」ってまさにこういうこと

 で、肝心の「バーミキュラ ビレッジ」ですが、「バーミキュラ」で調理した料理を味わえるレストラン&ベーカリーと、物販&料理教室などのスタジオの2つのエリアで構成されています。私が同所を訪れたのは1月4日。朝11時過ぎにレストラン前に到着したところ、既にレストランの前には大行列が!ランチは予約を取っていないのですが、その時点で既にランチ時間中(14時まで)の入店は不可能だという話だったので、悔しいですがベーカリーの行列に加わりました。

 暖冬とはいえそれなりに寒いお正月、しかも運河沿いです。何度かくじけそうになりながらも、「ここまで来たからには何かしら食べずには帰れない!」とひたすら待ちました。周りはオシャレ系ファミリーや女性グループが多いですが、普通のおじさま、おばさまも多数です。あとは若い男性4人組とかもいました。いやー、幅広い層を集めていますね。そんなふうに待っている間に、人気のカレーパンやビーフシチューが売り切れたという案内が次々と出て焦りましたが、1時間超ほど待ったところでようやく私のターン!1階のベーカリーでパンとポトフのセットを購入し、2階のカフェスペースでいただきました。

 「バーミキュラ」で煮込まれたポトフは、大きめサイズのニンジンやジャガイモ、豚バラ肉が超やわらか!そして具材のうまみが溶け込んだスープは滋味あふれるおいしさ!パンも1個1個を小さな「バーミキュラ」鍋に入れて焼いているそうで、ポトフと相性ばっちりです。普段、時短のために煮込み料理は圧力鍋一択な私ですが、「こんなふうにじっくりコトコト煮込むライフスタイルっていいわね~」「こんなゆとりのある暮らしって憧れるわ~」と思うことしきり。きっとみんな、こういう気持ちで「バーミキュラ」の鍋買うんですね。業界でよく使われる用語「ライフスタイルを売る」って、まさにこういうことを指すんですね。

ライブラリーやラボまで併設 旬な要素がテンコ盛り

 さて、お腹もいっぱいになったところで、今回は入れなかったレストランの詳細をチェック。1階は普通のレストランのようでしたが、2階はオープンキッチンをカウンター席が囲むスペシャルな空間になっていて、イベント時のみ開放するそう。どうやら話題のシェフを招いて、お客さまに「バーミキュラ」で調理した特別メニューを楽しんでもらうといった食のイベントを想定しているようです。こういった、ゲストシェフが特別メニューをふるまうタイプの食イベントって、最近増えていますよね(クレジットカード会社がVIP客向けに、海外の3ツ星シェフを呼んで行う食イベントなどをチラホラ耳にします)。特定のレストランに属さず、そのようなイベントの場を主戦場にしているシェフの方も最近増えている印象があります。

 この時点で既に、「行列のできるパン屋」「ゲストシェフが特別料理を振る舞うイベント空間」という、旬な要素を2つも備えている「バーミキュラ ビレッジ」ですが、物販&料理教室エリアにも旬な要素がテンコ盛りでした。そもそも、物販エリアに料理教室スペースを備えているという点で既に旬だと思うのですが、それに加えて鍋のプライベートオーダーに対応したり、ワークショップを行ったりするための“ラボ”も併設。そこには鋳物加工やホーロー加工に使うであろう古くて重厚な機械類が置いてあって、「『バーミキュラ』はポッと出のブランドじゃありません!」というストーリーをビシバシ感じさせます。さらには、物販エリアにはライブラリーまでありました。世界中の食文化に関する本やレシピ本、地元名古屋や中川運河などについての本がズラリと並んでいて、そのラインアップを見るだけで楽しい。

“餅は餅屋”の協業によってブランドの魅力が最大に

 ここまでパトロールしてきて、「なんて今っぽい施設なんだ……!」と感嘆することしきりだったんですが、こちらの施設のクリエイティブディレクションを担当しているのがトランジットジェネラルオフィスだと知って、非常に納得しました。同社はパンケーキの「ビルズ(BILLS)」を始め、イケてる飲食店のプロデュースやラグジュアリーブランドが手掛けるカフェの運営などを請け負っている会社です。それ以外にも、オフィスやシェアハウスのプロデュースなどもされていて、ファッション業界ではおなじみな企業。ちなみに、同社の中村貞裕社長が元伊勢丹のバイヤーということも有名です。

 トランジットがプロデュースをしていると知ってあらためて感じたのは、「何かのプロジェクトを行う際に、その道のプロに協力を仰ぐことってやはり大事だな」ということ。なんでもかんでも自前でやろうとすると、マイナーな匂いが漂ってきてしまって突き抜けられないですよね。昔から“餅は餅屋”と言いますが、その世界の王道のプロ(この場合はトランジット)と組むことで、「バーミキュラ」が元々持っていた魅力が何倍にも拡大されて、非常に旬な感じの施設に仕上がっているな~と感心しました。地方でモノ作りをしているメーカーなどにとって、とても参考になる事例ではないでしょうか(今治タオル×佐藤可士和さんなど、これまでにも同様の事例は多いですが)。ちなみに、同ビレッジのロゴ&グラフィックデザインは長嶋りかこさん、物販部分のプロデュースはクラスカ ギャラリー&ショップ“DO”が担当しているそう。トランジット以外も、間違いないメンバーが脇を固めています。

 長々と書いてきましたが、「バーミキュラ ビレッジ」は、そんじょそこらのファッションの店よりもよほどファッションを感じる施設でした。というわけで、皆さんも名古屋を訪れる際はチェックをお忘れなく!ベーカリーは、そのうち百貨店がやっている全国の人気パン屋の催事などに出店するんじゃないだろうかと勝手に予想しています。

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春夏なのにマットリップ?! 質感で作るリップメイクに注目

 「WWDビューティ」の1月23日号は2020年春夏ベースメイク&新色特集です。@wwd_jpのインスタグラムでは春夏メイクのアイ、リップ、チーク、ベースのカテゴリーごとに「今季の新作の中でどちらのアイテムや色を使いたいか」という二択のアンケートを行いました。

 リップのカテゴリーでは、春夏の定番になっている艶のある仕上がりのリップが大半を占めましたが、マットリップも多数登場しました。そこで「春夏のリップトレンドはこの2つ、どちらを使ってみたい?」という質問をしてみたところ、「高発色マットカラー」は25%、「透け感のあるツヤカラー」は75%という回答を得ることができました。圧倒的に“艶”の人気が高かったのですが、春夏にマットを試してみたいと思います。

 マットリップは近年秋冬に定番化し、赤やプラム、ブラウンなどのダークカラーが人気です。リップをダークカラーのマットに変えるだけで季節感が出せて、一本持っていればしっかり塗ってクラシカルにも仕上げることができますし、指でぼかせばナチュラルかつカジュアルに仕上げることができるので取り入れている人も多いのではないでしょうか。そんなイメージのあるマットリップですが、春夏で登場したマットリップは一味違います。色もさることながら“マット”という質感に注目していただきたいのです。

 そのマットな質感とは、ダークなカラーだとくっきりとした印象に仕上がりますが、オレンジやピンク、ベージュといった春夏の鮮やかなカラーで取り入れるとふんわりとした印象になります。そして艶感のあるリップよりも派手さが抑えられるので、目元にカラーを取り入れたときに口元をマットにするとちょうどよくバランスをとることができます。

 大人の女性に向けたメイクを提案する「アンプリチュード(AMPLITUDE)」」は、「ヌーディ スプリング カラーズ」をテーマに、目元はスモーキーな紫やグリーン、バーガンディーといった華やかさのあるカラーメイクを、口元はマットリップでヌーディーに仕上げることでバランスをとることを打ち出しました。

 昨年リブランディングを行った「ルナソル(LUNASOL)」は、コレクションテーマ“ディスコード(不協和音)”のもとにカラフルなアイシャドウを展開する一方で、「シームレスマットリップス」(全12色、うち限定2色)を発売し、色と色がぶつかり合いながらも美しく響き合うメイクを提案しました。マットリップにすることで、ひと塗りでも指でぼかしたようなこなれ感が出るのも特徴です。

 ほかにも「シャネル(CHANEL)」や「スック(SUQQU)」「トムフォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」「ポール & ジョー ボーテ(PAUL & JOE BEAUTE)」などからもマットリップが続々と登場しました。塗り心地も、マットながら乾燥やパサつき、ムラを解決しようと取り組んで処方を工夫しており、使いやすいものが多い印象です。冬のダークカラーのマットリップに抵抗感のある人は、春夏にふんわり感をつくるために取り入れてみてはいかがでしょうか。

 春っぽい顏やメイクは色だけではありません。艶なのか、マットなのか取り入れる質感にも気を配るとメイクの可能性が広がります。マットは秋冬のイメージが強く、あまり支持は集めませんでしたが、SNSなどのHOW TO動画で勉強をするメイクに熱心な人も多くなっているので、質感にも気を遣う人が増え、マットリップは春夏にも定着するのではないかと予想しています。

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春夏なのにマットリップ?! 質感で作るリップメイクに注目

 「WWDビューティ」の1月23日号は2020年春夏ベースメイク&新色特集です。@wwd_jpのインスタグラムでは春夏メイクのアイ、リップ、チーク、ベースのカテゴリーごとに「今季の新作の中でどちらのアイテムや色を使いたいか」という二択のアンケートを行いました。

 リップのカテゴリーでは、春夏の定番になっている艶のある仕上がりのリップが大半を占めましたが、マットリップも多数登場しました。そこで「春夏のリップトレンドはこの2つ、どちらを使ってみたい?」という質問をしてみたところ、「高発色マットカラー」は25%、「透け感のあるツヤカラー」は75%という回答を得ることができました。圧倒的に“艶”の人気が高かったのですが、春夏にマットを試してみたいと思います。

 マットリップは近年秋冬に定番化し、赤やプラム、ブラウンなどのダークカラーが人気です。リップをダークカラーのマットに変えるだけで季節感が出せて、一本持っていればしっかり塗ってクラシカルにも仕上げることができますし、指でぼかせばナチュラルかつカジュアルに仕上げることができるので取り入れている人も多いのではないでしょうか。そんなイメージのあるマットリップですが、春夏で登場したマットリップは一味違います。色もさることながら“マット”という質感に注目していただきたいのです。

 そのマットな質感とは、ダークなカラーだとくっきりとした印象に仕上がりますが、オレンジやピンク、ベージュといった春夏の鮮やかなカラーで取り入れるとふんわりとした印象になります。そして艶感のあるリップよりも派手さが抑えられるので、目元にカラーを取り入れたときに口元をマットにするとちょうどよくバランスをとることができます。

 大人の女性に向けたメイクを提案する「アンプリチュード(AMPLITUDE)」」は、「ヌーディ スプリング カラーズ」をテーマに、目元はスモーキーな紫やグリーン、バーガンディーといった華やかさのあるカラーメイクを、口元はマットリップでヌーディーに仕上げることでバランスをとることを打ち出しました。

 昨年リブランディングを行った「ルナソル(LUNASOL)」は、コレクションテーマ“ディスコード(不協和音)”のもとにカラフルなアイシャドウを展開する一方で、「シームレスマットリップス」(全12色、うち限定2色)を発売し、色と色がぶつかり合いながらも美しく響き合うメイクを提案しました。マットリップにすることで、ひと塗りでも指でぼかしたようなこなれ感が出るのも特徴です。

 ほかにも「シャネル(CHANEL)」や「スック(SUQQU)」「トムフォード ビューティ(TOM FORD BEAUTY)」「ポール & ジョー ボーテ(PAUL & JOE BEAUTE)」などからもマットリップが続々と登場しました。塗り心地も、マットながら乾燥やパサつき、ムラを解決しようと取り組んで処方を工夫しており、使いやすいものが多い印象です。冬のダークカラーのマットリップに抵抗感のある人は、春夏にふんわり感をつくるために取り入れてみてはいかがでしょうか。

 春っぽい顏やメイクは色だけではありません。艶なのか、マットなのか取り入れる質感にも気を配るとメイクの可能性が広がります。マットは秋冬のイメージが強く、あまり支持は集めませんでしたが、SNSなどのHOW TO動画で勉強をするメイクに熱心な人も多くなっているので、質感にも気を遣う人が増え、マットリップは春夏にも定着するのではないかと予想しています。

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YOUは何しに鶴岡へ? 世界中から優秀な研究者がスパイバーに集まる理由

 「人工構造タンパク質研究なら鶴岡だ!」――山形県鶴岡市を拠点にするスタートアップ企業スパイバーは、人工構造タンパク質の分野において地球規模でその名を知られるようになった。すでに世界各国から優秀な研究者が鶴岡に集まってきており、研究開発のスピードも加速している。18年に、「健康的な地球と人類の共存関係の実現に貢献したい」との思いから同社に入社した台湾出身のチャン・ユンシャン(Yun-Hsiang Chang)さん、通称ユンさんもその一人だ。

 ユンさんは、医学系なら台湾で最も有名でレベルが高いといわれている国立陽明大学で生命科学部と生物医学工程部の2分野の学位を取得した。しかも4年で2分野を取ったという。その後、アラブ首長国連邦の首都アブダビにある再生可能エネルギー関連の研究機関マスダール工科大学(現:Khalifa University)で、材料科学工程修士研究を続けながら助手エンジニアとして勤務した。

 そして彼は、鶴岡にやってきた。ユンさんに、スパイバーに入社した理由や研究内容について聞いた。

WWD:なぜスナイバーに入社したのか?

チャン・ユンシャン(以下、チャン):大学時代は老化遺伝子、細胞周期と肝臓がん関連医療の分野を学び、その後、アラブ首長国連邦のアブダビでサステナビリティについて学んだ。そこでは、再生可能資源や材料のいろんな可能性を探っていた。材料の研究を進める中で、新しい材料としてタンパク質に出合った。人工構造タンパク質は、アパレルに限らず、医療分野などさまざまな分野で新しい材料として使えるのではないか思い、それでスパイバーに来た。

WWD:実際来てみてどうだったか?

チャン:面白い。まず入社して取り組んだのは、パイロットプラントやタイの新工場における生産プロセスの最適化だった。もともと勉強していた分野とは異なる研究だが、分析などの過去の経験が生きたと思う。

WWD:異なるものを扱っているのに、過去の経験が生きていると。

チャン:そう。考え方もつながったと感じている。大学時代はがんの研究をしていて、動物実験もしていた。動物実験は動物倫理の観点からみるとよくないこと。そこから、素材への興味がわき、サステナビリティに関心を持ち始めたからつながっていると思う。

WWD:スパイバーは東京ではなく、自然豊かな鶴岡にある。

チャン:アブダビは砂漠の真ん中だった。真夏は45℃にもなる灼熱の砂漠から日本の田園と、環境は極端に変わったわけだけど、僕自身、そんなに変わったとは感じていない。鶴岡はアラブより暮らしやすいかな。アブダビでの食事はインド系やパキスタン系、アラブ系で、おいしいはおいしいんだけど、毎日食べるとさすがに辛くなってくる。日本食は台湾料理とかなり近いから、慣れやすい。

WWD:アブダビという選択もユニークだ。

チャン:実はアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)に行きたかったのだけど、お金がかかるし、両親に迷惑をかけたくなかった。だから、MITの修士と提携しているマスダール工科大学に行こうと決めた。この大学は、学費はないしアラブ首長国連邦からの金銭的な支援もあった。アラブ首長国連邦は化石燃料が豊富で豊かな国だけどいつかそれも尽きる。豊かだからこそサステナビリティの研究に力を入れていて進んでいる。

WWD:今は何を研究している?

チャン:人工構造タンパク質の新規用途の開発をしている。医療や三井住友建築の建築資材の可能性を模索している。自由に研究できるし、研究環境などの支援もあるから楽しい。あ、入社したときに時給を自分で決めると知ってびっくりしたよ(笑)。

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「ショッピファイ」を決済の面から日本上陸に導いた影の立役者 デジカとは何者か?

 デジカは2005年に設立された、ソフトウエアのネット販売やゲーム事業、決済サービス「コモジュ(KOMOJU)」の開発・運営を行う企業だ。中でも「コモジュ」は、14年のローンチ以降、決済金額と導入企業数を着実に伸ばし、カナダ発のECプラットフォーム「ショッピファイ(SHOPIFY)」日本上陸の“影の立役者”になったとも言われている。デジカ創業者のモモセ・ジャック・レオン代表取締役に同社のこれまでの歩みや日本の決済の現状、「ショッピファイ」を日本上陸に導いた経緯を聞いた。

 カナダ出身のジャック代表がデジカを設立したのは05年のこと。海外のソフトエアの輸入販売事業からスタートした。量販店や代理店経由での販売がメインだったが、「当時はデジカも小規模で、不利な条件が多かった」とジャック代表。後に自社ECを構築し、ソフトウエアの直販を始める。決済サービスの企画を始めたのもこの時期だ。「決済は購入の最終ステップ。決済で問題が発生すると信用度を失うし、そもそも売り上げにつながらない。しかし、当時の日本の決済システムは非常に古く、スペックやAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)など、全てが良くなかった。当社でそれらの問題を解決できる決済システムを構築し、カード決済や振り込み、コンビニ支払い、電子マネーなど全てに対応できるようにした」と経緯を説明する。

 14年には、自社EC用に構築した決済システムを他社に開放するような形で「コモジュ」をローンチした。それと並行して、米発のPCゲームプラットフォーム「スチーム(STEAM)」など、海外企業の日本進出を決済の面からサポートするようになる。「ショッピファイ」を日本上陸に導いたのもその一環だ。「ショッピファイと当社は同じプログラミング環境で開発を行っていることもあり、昔から付き合いがあった。その中で、日本の決済を一緒にやろうとかねてから打診していた。後にショッピファイが日本への進出を検討し始めたが、やはり決済がネックとなっていたようだ」と語る。デジカは「コモジュ」を「ショッピファイ」内のアプリケーションの1つとして導入。「ショッピファイ」の決済部分を担うことになった。「われわれは、カード決済のほか、コンビニ決済を導入することを彼らに提案した。コンビニ決済自体はマジョリティーではないが、複数の決済手段があることで、マーチャントや消費者に『他の決済手段も今後は順次導入されるだろう』という安心感を与えることができると考えた」と当時を振り返る。

 「ショッピファイ」のアプリケーションとなることで、韓国アパレル通販の「イチナナキログラム(17kg)」やウィメンズD2Cの「コヒナ(COHINA)」など、同プラットフォームでECを構築するブランドにも「コモジュ」の導入を進めるデジカは、日本の決済をどのように捉えているのか。「例えば北米ではクレジットカードがオンライン決済の90%近くを占めているが、日本では50%程度。日本のように、オンライン上の購入で、振り込みやコンビニ決済など、クレジットカード以外にも決済手段が充実している国は少ない」と分析する。また、「ペイペイ(paypay)」や「ラインペイ」をはじめ、多数のペイメントサービスが乱立している状況に対しては「今は戦争状態だが、M&Aなどを重ねいずれは1社か2社残る程度だろう。われわれが参入してもメリットはないし、ユーザーにとってもメリットがない」。

そんな中で、デジカが新たにスタートするべく準備を進めているのが、オンライン決済用の技術「コモジュQR」だ。「当社が発行するQRコードを各ペイメントアプリで読み取るだけで、購入できるような技術だ。企業側は『ペイペイ』などの各種ペイメントサービスに対応するのではなく、『コモジュQR』を導入するだけで全てに対応できるようになる。既に韓国で実験中だが、手応えを感じている。このサービスに限らず、今後も買う人と売る人の双方がメリットを感じるようなサービスの開発を続けていくつもりだ」。

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ゴルチエの最後のショーに豪華メンバーが大集結! 「ジャンポール・ゴルチエ」2020年春夏オートクチュール・コレクション

 1月22日に仏パリのシャトレ座(Theatre du Chatelet)で、ジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)による最後のオートクチュール・ショーが開催された。ゴルチエのショーはファッションとゲストパフォーマーたちが融合したエンターテインメント性溢れるものとして知られているが、現在67歳のゴルチエはこれを最後にランウエイから退く意向で、今回のショーは彼の50年間の歴史を振り返るような内容となった。

 ショーでは1時間以上にわたって、モデルやミューズ、ゴルチエの友人に至るまで多くの人物が彼の過去のコレクションを取り入れた230以上のルックを身にまとってステージに登場した。セーラー服、コルセット、タキシード、そしてトロンプルイユ(だまし絵)の技法を用いた作品など、ゴルチエのシグネチャー的作品がランウエイを彩った。

 今回のショーにはエリン・オコナー(Erin O’Connor)、ココ・ロシャ(Coco Rocha)、ジェイド・パーフィット(Jade Parfitt)、カーリー・クロス(Karlie Kloss)、ジジ・ハディッド(Gigi Hadid)、ベラ・ハディッド(Bella Hadid)、ジョーダン・ダン(Jourdan Dunn)、リリー・マクメナミー(Lily McMenamy)、カレン・エルソン(Karen Elson)、ナ・クリーブランド(Anna Cleveland)、エステル・ルフェビュール(Estelle Lefebure)、ノエミ・ルノワール(Noemie Lenoir)、ウィニー・ハーロウ(Winnie Harlow)、そしてブランドの前ミューズでありクチュール・ディレクターも務めたファリーダ・ケルファ(Farida Khelfa)までもが登場した。

 最も大きな喝采を浴びたのはゴルチエのショーに何十年もの間参加し続けてきたタネル・ベドロシアンツ(Tanel Bedrossiantz)で、最後のショーであっても落ち込む様子はなく、右肩に雄鶏を付けたレザージャケットを着てランウエイを闊歩した。

 ベドロシアンツを筆頭に、ボーイ・ジョージ(Boy George)、ディタ・フォン・ティース(Dita Von Teese)、パリス・ジャクソン(Paris Jackson)、女優のベアトリス・ダル(Beatrice Dalle)、ロッシ・デ・パルマ(Rossy de Palma)、ファニー・アルダン(Fanny Ardant)、シンガー・ソングライターのカトリーヌ・ランジェ(Catherine Ringer)、歌手のミレーヌ・ファルメール(Mylene Farmer)、元祖ディスコクイーンのアマンダ・リア(Amanda Lear)、そして90年代にゴルチエと共にテレビ番組「ユーロトラッシュ(Eurotrash)」を手掛けた司会者のアントワーヌ・ドゥ・コーヌ(Antoine de Caunes)らもステージに登場した。

 オーディエンスにはピエール・カルダン(Pierre Cardin)、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)、クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)、クリスチャン・ルブタン(Christian Louboutin)、ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)、イザベル・マラン(Isabel Marant)、ジュリー・ドゥ・リブラン(Julie de Libran)などの有名デザイナーたちの姿もあり、ゴルチエの最後のショーを客席から見守っていた。

 ショーはウィリアム・クライン(William Klein)による1966年のフランス映画「ポリー・マグーお前は誰だ?(Who Are You, Polly Maggoo?)」に登場する葬儀のシーンから始まり、ボーイ・ジョージがエイミー・ワインハウス(Amy Winehouse)の楽曲「Back to Black」を熱唱した。80年代初頭に発表され、マドンナ(Madonna)が90年に行った「ブロンド・アンビション・ツアー(Blonde Ambition Tour)」で着用して有名になった円すい形のブラをほうふつとさせる棺が登場するなど、葬儀シーンといえどもゴルチエらしくおふざけのある演出に会場は沸いた。

 フォン・ティースが着用したヌードカラーのサテンのベルト付きコルセットや、デ・パルマが着用した黒の短いビスチェドレスとマンティラ、ジジ・ハディッドのセーラーのトップスに白のパンツ姿や、ベアトリス・ダルが黒のネグリジェにサテンパンツ姿で行ったパフォーマンスなど、ショーは数々のハイライトで彩られた。

 ゴルチエが最後の挨拶に現れると、会場は総立ちの大歓声に包まれた。ボーイ・ジョージ率いるキャストの合唱と、男性モデルらによるゴルチエの胴上げによって最後のショーは大きな盛り上がりとともに幕を閉じた。

 ゴルチエは「とてもハッピーで感動的、よい気分だ。古くから知る多くの愛するモデルたちがこのショーに特別に参加してくれた。みんなと再会したことでたくさんの思い出がよみがえったと同時に、全員で新たなショーを創り出すことができた」と語った。

 ゴルチエはランウエイからは引退するが、デザイナーとしての活動を完全にやめるわけではないという。ロシアのモスクワとサンクトペテルブルクでは「ファッション・フリーク・ショー(Fashion Freak Show)」と題したキャバレーショーを行っているし、「Gaultier Paris(ゴルチエ パリ)」は新たなコンセプトで継続していくとしている。

 ゴルチエは「ファッションに携わるのはやめられないから、何かほかのことをするよ。クチュールは死んでいない。あの葬儀はおもしろくて新たな創造性もあった。だから、全く死んでなんかいないのさ」と語っている。

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レースのドレスでおなじみの「セルフ-ポートレート」デザイナーが語る、シグネチャースタイルの重要性

 レースや刺しゅうを駆使したドレスを比較的手ごろな価格帯で提案することで、一躍グローバルブランドへと成長を遂げたロンドン発の「セルフ-ポートレート(SELF-PORTRAIT)」。現在ニューヨーク・ファッション・ウイークで発表しているコレクションは世界約400店舗で取り扱われ、ロンドン、ニューヨーク、バンコクの3都市には旗艦店も構えている。そのクリエイションとビジネスの両方を手掛けるのが、2013年に同ブランドを立ち上げたハン・チョン(Han Chong)=デザイナーだ。イベント「イザ ピンク クリスマス2019」でのショーのために来日した彼に、ファッションデザイナーを志したきっかけからブランディングにかける思いまでを聞いた。

−マレーシア出身ということだが、どんな環境で生まれ育ったのか?

ハン・チョン「セルフ-ポートレート」デザイナー(以下、チョン):僕が生まれ育ったのは、マレーシアのペナン島。大都市ほどいろんなものがあるわけでなく、幼い頃は自然に囲まれて育った。そして、18歳の時に首都のクアラルンプールに引っ越し、その後、セント・マーチン美術大学で学ぶために渡英した。

−ペナンは正直、ファッションとは縁遠い場所のように感じる。ファッションデザイナーを志したきっかけは?

チョン:母方の家系に芸術家が多かったこともあり、幼い頃からアートを勉強していた。ファッションに興味を持ったのは確か16〜17歳の時で、当時教わっていたセント・マーチン美術大学卒の先生から同大学の話を聞いてから。アートは限られた人のものだけど、ファッションならもっと多くの人にアプローチできると感じたんだ。実際、2009年に「ベネチア・ビエンナーレ」にアーティストとして参加したこともあるけれど、振り返ると、やはりファッションで得られる喜びとは違ったよ。

−ロンドンを拠点に選んだ理由は?

チョン:大学時代もロンドンで過ごしたし、チームもいるので、ここを拠点にするのが自分にとっては都合がよかった。ロンドンは、クリエイティブとビジネスのどちらもがある街。そこが自分に合っていると感じるし、大きな刺激を受けている。

−ブレグジット(イギリスのEU離脱)が決定的になったが、ブランドに影響はある?

チョン:もちろん将来的に影響は受けると思う。ただ、実際どんなことが、どのタイミングで起こるかは、まだわからない。

デザインする時にイメージするのは、“普通”の女性

−コレクションを制作する上でイメージしている女性像は?

チョン:「セルフ-ポートレート」を立ち上げる時からインクルーシブ(包括的)なブランドにしたいと考えていた。富裕層だけでなく、一般の女性にもより多くのファッションの選択肢を与えたかったんだ。だから、デザインする時にイメージするのも、“普通”の女性。特に、モダンで自身のフェミニンな一面を見せることを恐れない人を思い浮かべているよ。

−レースのドレスをきっかけに人気を博し、徐々にブランドとして知名度を高めてきた。レースや刺しゅうなどを駆使した手の込んだデザインでありながら手の届く価格帯(ドレスで5万円台〜)というのは、「セルフ-ポートレート」の強みであると同時に、両立させるのが難しい点だと思う。どのように実現しているのか?

チョン:レースは安い素材ではないし、最初は生産数も少なかったから、正直大変だった。一番目立つ前面にだけにレースを使って、背面はより安価な生地にするなど、いろいろと工夫していたよ。当時は利益も少なかったけれど、ブランドとしてシグネチャースタイルを確立することが大事だと考えていたから、レースを使ったデザインにこだわっていたんだ。そして、ビジネスが拡大し生産量が増えた今は、以前よりもずっと自由にデザインができるようになった。レースのパターンもオリジナルでデザインしているしね。アイテムの生産は、大半が中国。そう言うと、正直微妙な顔をする人もいるけれど、実際は最新の設備や仕上げの細かさという点で優れている。クオリティーやスタンダードを保つために、頻繁に工場を訪れてチェックもしているよ。

−レンタルやリセールといった新たなビジネスが広がりを見せているが、そういった分野に興味はある?

チョン:2018年くらいからそういう流れが高まっているのは感じていて、関心もある。とてもサステナブルな考え方だと思うし、今後もいろいろな形を検討していく。すでに取り組んでいるのは、レンタルサービスの「レント・ザ・ランウエイ(RENT THE RUNWAY)」。ドレスはオケージョンニーズが高いし、特に都市部に住んでいる人に比べて地方に住む人はドレスを着る機会が少ないと思うので、レンタルサービスのポテンシャルは高いと感じている。

−現在注力している、もしくは今後力を入れたいカテゴリーは?

チョン:ちょうど最近、スイムウエアをローンチしたところ。そして、定期的にウエディングドレスのカプセルコレクションも制作している。カジュアルなウエディングのためのドレスを探しに来る女性も多いからね。将来的にはバッグやSLG(革小物)も手掛けたいと思っているけれど、新たなカテゴリーはきちんとチームや体制を整え、100%の力を注げるようにしてからしか始めないと決めているんだ。なので、まずは他ブランドとのコラボレーションから始めて、知識を身につけつつ可能性を探るようにしている。そして、どのカテゴリーにおいても、「美しいものを手の届く価格で提案する」というコンセプトを大切にしているよ。

−着実にステップアップをしているように見えるが、現在のビジネス規模は?

チョン:18年の売上高は、小売りベースで1億2000万ポンド(約171億円)。19年は5%増程度になりそうだ。アジアに関しては、ローカライズが鍵になるので、現地パートナーと組むことが重要。日本は(セレクトショップの)イザでの取り扱いから始まり、(その母体である)グルッポタナカがディストリビューターを務めるという関係に発展した。タイも日本と同じような形だ。一方、中国はエラセーイ・グループ(ELLASSAY GROUP)との合弁事業として取り組んでいる。

−次なる目標は?

チョン:現在、グローバルでの取り扱い店舗数は約400。卸はすでに増えるところまで増えたと考えているので、今後は直営店の出店に力を入れる。中国では20年内に5店舗を出店する予定。日本でも東京に旗艦店をオープンしたいと考えているので、滞在中に実際にいろんなエリアを訪れてブランドに合う場所をリサーチするよ。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

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「ボッター」が上々のパリコレデビュー 「ナイキ」との巨大シューズなどDIY精神溢れるハッピーなコレクション

 ルシェミー・ボッター(Rushmey Botter)とリジ―・ヘレブラー(Lisi Herrebrugh)のデザイナーデュオが率いる「ボッター(BOTTER)」が、パリ・メンズ・ファッションウイークで2020-21年秋冬コレクションを発表した。彼らは18年から「ニナ リッチ(NINA RICCI)」のアーティスティック・ディレクターを務めているが、自身のブランドでパリ・メンズ・ファッション・ウィークに参加するのは今回が初めて。

 筆者が彼らに取材をするのは今回が2度目だ。前回は「第33回イエール国際フェスティバル(33e Festival International de Mode, d'Accessoires et de Photographie à Hyères)」でグランプリを受賞した約2年前。ショー開始1時間前に筆者がバックステージへ入ると、「前にも取材してくれたよね?」と笑顔で挨拶を交わしてくれた。グランプリ受賞からの2年で心情に変化があったかたずねると、「自身のブランドのデザイナー、さらには『ニナ リッチ』を率いる立場として責任感は増したけど、心の内は変わらない。きっと僕らの関係性が何も変わらないからさ」と、少し離れた所に立っていたヘレブラーに目を向けながら答えた。彼らはビジネスパートナーであり、長年の恋人同士でもある。この2年でアントワープからパリへと拠点を移し、現在住居も共にしているという。

ポップでキャッチーなアクセが豊富

 環境や肩書きが変わっても、彼らのクリエイションの基盤はデビュー当時と変わらない。ハンドメイドでペイントや装飾を加え、身の回りにあるアイテムで自由にDIYを楽しむ精神だ。「アルト・ポーヴェラ(Arte Povera)による楽観的なバイブス」と、ボッターはブランドについて形容した。アルト・ポーヴェラとは、60年代にイタリアで始まった美術運動で、日本語では“貧しい芸術”と訳される。材木や石、古布など非芸術的な物に作り手の身体や思考を結びつけて表現される美術とされている。会場の真ん中にはキュラソー島(カリブ海に位置する島)を拠点にアーティストとして活動するティルゾ・マルタ(Tirzo Martha)が制作した、便器やタイヤ、扇風機がぶら下げられたアート作品が飾られており、ショーではルックを視覚効果で芸術的に見せる役割を果たした。

 今季のコレクションでは、カラフルなバルーン、商品値札の留め具、空気ビニールの中にパスポートを入れた小物などがアルト・ポーヴェラを示すアイテムと言えるだろう。ショー30分前のリハーサルで、モデルが着用した「ナイキ(NIKE)」とのコラボレーションによるスニーカーが故障するハプニングに見舞われた。分厚い靴底が外れて歩ける状態ではない。ボッターは釘と電動ドリルを持って急いで補修を施し、ショーには間に合った。予定にはなかっただろうが、結果的にそのスニーカーが最も「ボッター」らしいDIYに満ちたアイテムとなったようだ。ボッターが補修を行っている間、ヘレブラーはルックのスタイリングの最終確認や早着替えの練習を進行していた。通常バックステージには、フィッターと呼ばれるモデルに衣服を着用させる担当者が2ルックに対し1人程度備えているのだが、同ブランドに関しては29ルックに対して5人程度のフィッターしかいなかった。ボッターとヘレブラー自身がフィッティングからスタイリングまでをほぼ全て仕上げており、クリエイションだけでなくショーの作り方にもDIYの精神が宿っているようだった。

 「とにかく楽観的なメッセージを伝えたかったんだ」。ショー後の囲み取材でボッターがコレクションの詳細について説明する。「例えば、入院患者を励ますために贈り物として届けるバルーンって、人を元気付けるパワーを持っているよね。そんな風に『ボッター』はポジティブなエネルギーを、見る人や着る人に与えるブランドへ成長させたいという想いを込めたんだ」。続けてヘレブラーも口を開いた。「“醜い物を美しく見せる”ことこそ、私たちが日々学び、コレクションを通して見せ続けていきたいの」。故障したら補修して、長い期間をかけて育む——2人の関係性もブランドも、我流のDIY精神で無二の道を築いていくのだろう。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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ファッション通信簿Vol.42 70年代のポルノショー興行主になりきった?セレブのレッドカーペット・スタイルを米「WWD」がめった切り

 米「WWD」の人気企画「ファッション通信簿」では、ストリートからパーティー、レッドカーペットまで、海外セレブたちのファッションを厳しくチェック。A+、A、A-、B+、B、B-、C+、C、C-、D+、D、D-、そしてFAIL(失格)の13段階評価で格付けし、それぞれのファッションポイントを勝手に辛口ジャッジ!

 第42回は、ティモシー・シャラメ(Timothee Chalamet)、アリシア・キーズ(Alicia Keys)、ヤング・サグ(Young Thug)、ジョン・ボイエガ(John Boyega)、デイジー・リドリー(Daisy Ridley)、ザ・ウィークエンド(The Weeknd)、シャーリーズ・セロン(Charlize Theron)、ニコール・キッドマン(Nicole Kidman)が登場。ティモシー・シャラメのピンクのスーツには高評価が与えられた一方で、「銀河系のはるか彼方で結婚を誓う」「全部一緒にすると全てが台無し」など低評価も目立った今回のファッションチェック。判定はいかに?

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編集長はオートクチュールで何した?Vol.3 「マルジェラ」でラッパーKOHH、ミキモト×ギャルソン、「ゴルチエ」ラストショー

1月22日(水)10:00
いろいろな意味でおもしろい
「マルジェラ」

 「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)ではオートクチュールを“アーティザナル”と呼び、メゾンの “原液”と位置付けて実験的なアプローチを行います。デザイナーの視点を濁りなく注ぐ、そのことがブランドを強くし、プレタポルテの“売れる”商品につなげています。だから服だけではなく、会場もモデルも一貫性がありおもしろい。

 今季のキーワードは“ブルジョワ・ジェスチャー”と“ワーク・イン・プログレス”。正直、前者は難解ですが、後者はわかりやすく、会場演出にも反映されています。下の動画は独特なウォーキングで話題になっているモデルのレオン・デイム(Leon Dame)。今季はいつもよりエレガントです。

10:00
「メゾン マルジェラ」に
集まる人たち

こちらは会場でのスナップです。ラッパーのKOHHさんが隣の隣の席に登場したのがまず嬉しく、根ほり葉ほり聞いちゃいました。昨年「モードって何?」特集でフォトグラファーの鈴木親さんが「モードだと思う人」に挙げていたのがKOHHさん。全身タトゥーにスーツ、毛皮のブルゾンがおしゃれでした。

11:00
近所のドーバーに香水を見に行く

 ショーが終わり会場の外に出ると路面にも“タビ(TABI)”と「リーボック(REEBOK)」のコラボシューズのピンクの足跡が続いています。たどっていくと近くの「ドーバー ストリート パフューム マーケット(DOVER STREET PAFUME MARKET)」に到着。マルジェラの香水「ミューティニー(MUTINY)」のイベントが開かれていました。と、いった足取りを約1分の動画に収めました。よろしければ臨場感をお楽しみください。

14:00
男性につけてほしい
パールのネックレス

 「ミキモト(MIKIMOTO)」と「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS」がコラボレーションして誕生したパールのネックレス7型がお披露目になりました。パールは女性のイメージが強いけれど、これは“男性こそ楽しんで”、というコンセプトのパールです。黒真珠を使ったりスタッズを合わせたりではなく、クラシックなパールのネックレスの印象を残しているところがイイですよね。

16:00
「ヴィクター&ロルフ」の
会場を出ると

 「ヴィクター&ロルフ」の会場から出るとバックステージに帰ってゆくモデルたちと遭遇しました。大きなドレスを着てフツウにおしゃべりしている姿がかわいいです。

18:00
夢を形にする
「ヴァレンティノ」

 オートクチュールの意味を言葉にするなら「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のリリースに書かれていた一文を引用するのが適切でしょう。「夢そのものになるため、クチュールではジェスチャーやテクニック、ファンタジーといったほとんど明らかにされていないものを結集します。こうした秘密によって定義され、制作する過程において、作り手によって伝えられていくのです」。完璧。

20:30
「ゴルチエ」のラストショーに
涙なし

 ジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)の最後のオートクチュールショーは、フランスのテレビ局が事前にニュースで取り上げるなど国民級の注目を集めていました。そしてシャトレ座の幕が上がると舞台にはボーイ・ジョージ(Boy George)を筆頭に有名人が次々登場し、歌あり踊りありで大盛り上がり。さながら紅白歌合戦です。

 その中でコーンブラやコルセット、トロンプルイユにタキシード、トリコロールといった、ゴルチエのアイコニックなスタイルが次々披露されました。プレタポルテのラストショもそうでしたが今回も涙は一切ナシ。青いつなぎ姿のゴルチエもご覧の通り元気に飛び跳ねて軽やかに「バイバイ」と手を振り去っていったのでした。ブラボー!それでいい、それがいいと思います!

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元乃木坂46の伊藤万理華が“ホームシック”をテーマに個展を開催 漫画家の椎名うみとの出会いがきっかけ

 元乃木坂46のメンバーで、現在は女優として活動する伊藤万理華による自身2度目の個展「HOMESICK(ホームシック)」が、1月24日から2月11日まで東京・渋谷パルコの地下1階にあるギャラリーXで開催されている。今回は漫画家の椎名うみをはじめ4人のクリエイターと、ファッションブランド「ボディソング(BODYSONG.)」「パーミニット(PERMINUTE)」「タナカダイスケ(TANAKA DAISUKE)」とコラボ。会場は「写真ゾーン」「漫画ゾーン」「ショートムービーゾーン」「ファッション×ダンスゾーン」に分かれており、各ゾーンでコラボした作品を楽しむことができる。なぜテーマが“HOMESICK”だったのか。個展にかける思いとともに彼女に聞いた。

WWD:まずは個展をやることになったきっかけから教えてください。

伊藤万理華(以下、伊藤):今回の個展では漫画家の椎名うみさんとコラボしているんですが、もともと私がうみさんのファンで、いつかお会いしたいと思っていてたんです。それで1年ほど前に勇気を出して「会いたいです」と伝えて直接お会いすることになりました。いろいろと話していくうちに仲良くなって、「うみさんと何かやりたい」と思うようになったのがきっかけです。それから以前から知っていた映像ディレクターの柳沢翔さんを交えて3人でやったら新しいことができると思って、そのアイデアを表現できるのが個展だったんです。

WWD:いつごろから考えていたんですか?

伊藤:うみさんとお会いしたのは1年ほど前で、個展をやろうと決意したのは半年ほど前です。それから以前の個展のときにもお世話になったパルコの担当の方に私が直接プレゼンしに行って、渋谷パルコで開催することになりました。

WWD:個展タイトルの「HOMESICK」にはどういう意味が込められている?

伊藤:前回の個展が終わって、乃木坂46を卒業してから1年半ほどひきこもっていたんです。乃木坂46には6年間いたんですが、いた場所が大きすぎて、卒業してから自分の環境が整っていないことへの不安もあったりして、家族や友だちとのコミュニケーションを避けている時期がありました。今回の「HOMESICK」は「家族から離れて寂しい」という意味ではなく、“HOME(家)SICK(病気)”という解釈で“家が病んでいる”みたいなネガティブな意味なんです。今回の個展を開催することで、私自身がそれを乗り越えたいという気持ちでこのタイトルにしました。

WWD:椎名さんの漫画や柳沢さんの映像はかなりダークで衝撃的な内容でした。

伊藤:うみさんに漫画「おかえり」を描き下ろしてもらい、柳沢さんにはその漫画をベースに実写作品「HOMESICK」を作ってもらいました。うみさんとは本当に裸で向き合うという気持ちで、ひきこもっていたときの自分が今どういう状況でどんな気持ちなのかを正直に話しました。それで作品を作ってもらったんですが、うみさんが私の話を聞いてどういう作品にするのかすごく楽しみでした。今回の漫画は人それぞれ受け止め方が違うと思いますが、個展でしかできない表現だし、今のタイミングでしか伝えられないことがこれに詰まっています。

WWD:漫画以外のコラボはどのように決まったんですか?

伊藤:うみさんの漫画とそれを実写化することは決めていて、個展をするなら他のクリエイターともコラボしたいと思い、縁のあるフォトグラファーの前康輔さんや振付師の菅尾なぎささん、あとは自分が気になるファッションブランドにお声掛けさせていただきました。

WWD:ファッションブランドは「ボディソング」「パーミニット」「タナカダイスケ」の3ブランド。それぞれのブランドに一点ものの衣装を制作してもらっていますが、どういったきっかけでこの3ブランドになったんですか?

伊藤:もともとファッションブランドとのコラボ企画は、私が直接「装苑」編集部に持ち込んで実現した企画なんです。そこでどんなブランドとコラボしたいかとなって、この3ブランドになりました。「ボディソング」は乃木坂46時代から衣装を作ってもらっていたことがあったんですが、「パーミット」の半澤さんと「タナカダイスケ」の田中さんは前から気になっていてお会いしたかった人たちで、今回初めてご一緒しました。それぞれ「HOMESICK」をテーマに服を作ってもらったんですが、三者三様ですばらしい作品を作ってくれました。

WWD:衣装に関しては、どんなオーダーをしたんですか?

伊藤:今回の展示では実際に作っていただいた衣装を着て、振付師の菅尾さんにダンスの振り付けをしてもらい、それを映像にしたいと考えていました。だから一つだけ「踊れる衣装」というのはお願いして、あとは私のパーソナルな話をして、そこからイメージしてもらい、作っていただきました。

WWD:今回、伊藤さんがお母さんと一緒に作ったドレスも展示されていますね。

伊藤:はい。今回、母とコミュニケーションをとるために初めて一緒にドレスを作りました。それが今回のメインビジュアルで着ている服です。

WWD:伊藤さんの母親はファッションデザイナーだったんですよね?

伊藤:母がファッションデザイナーで、父がグラフフィックデザイナーでした。母はもうファッションデザイナーを辞めているんですが、今でもファッション関系の仕事をしています。家にはミシン部屋があったり服がたくさんあったりして、子どものころから自然とファッションには興味を持つようになりましたし、モノに対する探求心も芽生えていきました。

WWD:展示会のグッズも充実していますね。伊藤さんが考えたんですか?

伊藤:そうです。TシャツやロンT、パーカ、トートバックなど、普段でも使えるように意識してアイテムは考えました。グッズに使っている「HOMESICK」のロゴは私自身がデザインしたんですが気に入っています。最初は絵の具を使って手描きしていたんですが、それだと温かみのある雰囲気になってしまい、イメージと違う感じになってしまって。今回はもう少し冷たくて現代っぽい方がいいなと思って、それでPCでデザインしたら納得のいくものができました。

WWD:今回の個展はどんな人に見てもらいたいですか?

伊藤:半年前まで感情をぶつけるところがなく、ひきこもっていた私が衝動的に動いた結果、今回の個展が開催できました。私と同世代の若い人は感受性が強くて、外から見ればたいしたことないことでもすごく傷ついてしまうことがあります。それで一歩も踏み出せない人も多いと思うし、それが半年前の私でした。そんな同じような経験をしている人たちに見てもらって、何か感じてもらえればと思いますし、一歩踏み出す勇気を持ってもらえればうれしいです。

WWD:個展のあとはどんなことをやっていきたい?

伊藤:あまりジャンルを決めずに制作活動はしていくつもりです。あと女優としてもおもしろい作品に出演していきたいです。

■伊藤万理華 展覧会「HOMESICK」
日程:1月24日〜2月11日
会場:渋谷パルコ ギャラリーX(渋谷パルコ地下1階)
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1
時間:11:00〜21:00
料金:一般 500円

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アマンダ・サイフリッドが語る女性としての生き方や憧れの人、美の価値観、子育てまで

 「ランコム(LANCOME)」のグローバルアンバサダーに米女優で歌手のアマンダ・サイフリッド(Amanda Seyfried以下、アマンダ)が就任した。アマンダは1985年生まれ。アメリカ・ペンシルバニア出身の34歳で、15歳で女優としてのキャリアをスタートさせた。2008年に公開されて、「ゴールデン・グローブ賞(Golden Globes)」にノミネートされた大ヒットミュージカル映画「マンマ・ミーア!(原題:Mamma Mia!)」への出演を機に、トップ女優の仲間入りを果たす。その後「レ・ミゼラブル(原題: Les Misérables)」や「テッド2(原題:Ted 2)」など多数のヒット作品に出演、キャリアを積み上げてきた。私生活では16年に結婚し、17年に第一子を出産するなど母親としての顔も持つ。アマンダに「ランコム」グローバルアンバサダー就任の感想から、スキンケア・メイク方法、美の価値観、さらには育児についてまでを聞いた。

WWD:「ランコム」のグローバルアンバサダーに就任した感想を教えてください。

アマンダ:お誘いをいただいたときは本当に驚きました。不安もありましたが、私の裏表のなさ、偽りのなさを評価してくださってのお声掛けと聞いて、私自身もそれを誇りに思っているのでお受けしました。

WWD:「ランコム」との仕事を通して美に関して新しく知ったことや感じたことを教えてください。

アマンダ:年を重ねることに抵抗がなくなりました。年を重ねることを恐れなくていいんだということ感じましたし、グローバルアンバサダーの役割を通してそれを体現したいと思います。

WWD:2月14日に発売する新化粧水「クラリフィック デュアル エッセンス ローション」の好きなところを教えて下さい。

アマンダ:まず初めに「ランコム」の製品の中でも香りが一番好きです。配合されているブナの芽エキスがバニラのような香りで、まるで食べ物みたいです(笑)。消えていくように浸透していく感触で、体感したことのないテクスチャーです。クリーンで透明感のある肌に仕上げてくれて本当に大好きです。

WWD:「ランコム」の製品を初めて使ったのはいつですか?また「ランコム」のお気に入り製品を教えてください。

アマンダ:初めて使用した製品は「イプノ マスカラ」です。3歳上の姉が使っていた影響で使い始めました。まつ毛がブロンドの私の場合は、マスカラの使い方をマスターすることが重要でした。マスカラをうまく使用すれば印象を手早く簡単に変えられ、自身をチャーミングに演出できます。お気に入りの製品は「ジェニフィック」です。肌が吸い込むようにすぐなじむので、やみつきになるほど大好きな美容液です。

WWD:「ランコム」の哲学は “人生は美しい”ですが、人生をより美しくするものは何ですか?

アマンダ:農場の動物たち、そして自然の中を歩くことです。私はペンシルベニア州の郊外で育ったので、当時飼っていたのは数匹の猫だけでした。なので、今暮らしている農場は私にとって地球上で最も美しい場所だと感じています。山や森の中は、静かで集中できます。私にとっては集中できて地球とつながれるのは素晴らしいことです。

WWD:肌のお手入れに欠かせないアイテムはありますか?

アマンダ:美容液です。メイク前にも使用しますし、もちろん毎晩のスキンケアにも欠かせません。夜は特にたっぷり染み込ませてからベッドに入ります。どんなに疲れていてもメイクをしたまま寝ることはありません。また、乾燥肌なので秋冬はローションのほか、バスタイム後にボディーバームもたっぷり使います。

WWD:よく使うメイクアイテムやテクニックはありますか?

アマンダ:メイクアップならマスカラは欠かせません。それから唇にボリュームがあるので、いろいろなリップカラーで際立たせます。またテクニックとしては、まぶたの表面にアイライナーを使わず内側にのみ入れることです。そうすると目の形がガラッと変わって効果的です。リップだと普段はクリーミーなテクスチャーを好んでつけています。

WWD:これまでの人生で、美容について他の女性から何か教わったことはありますか?

アマンダ:母からメイクは“Less is more(控えめこそ美しい)”と教わりました。10代の頃マスカラを学校に持って行ったり、バスルームに置いたままにしたら叱られたことを覚えています。母は、マスカラをつけると老けたりませてみえたりするからと言っていました。子ども頃に読んだ本の中で主人公が「リップスティックを手に取ると唇に塗り、家を出た」とあり、その一節はいまでも鮮明に覚えています。つまりそれだけで美しいと感じられるということです。

WWD:女性にアドバイスしたいことは?

アマンダ:メイクに関しては際立たせたいパーツを1つか2つ決めて、ほかはあまり触らないようにするのがいいと思います。SNSを見ても若い人は特にメイクが濃すぎるように感じます。自分自身のありままの姿を隠すことで心理的に安心感があるのかもしれません。私が10代のときはそうでしたから分かります。でも、メイクはあなたらしさを隠すものではなく生かすものです。それが私の考えです。だから私はナチュラルメイクが好きなんです。

WWD:当時、憧れていた人はいましたか?また現在はどうですか?

アマンダ: 10代の頃の憧れはクレア・デインズ(Claire Danes)さんです。私の一番好きな映画「ロミオとジュリエット(原題:Romeo and Juliet)」の中で、クレア・デインズさんがまるでノーメイクのようなメイクで出演していて、とても美しいと思いました。最近でいえばケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)さんです。まだ実際にお会いしたことはありませんが、私生活と仕事のどちらも充実した幸福なオーラを感じます。常に自然体でいながらエレガントで美しいのと同時にフレンドリーな雰囲気で、女優として憧れています。

WWD:自身が思う美しい女性とはどんな女性ですか?

アマンダ:自分自身に優しいこと、愛してあげられること、自分の強みを理解していること、謙虚な心を持っている女性です。私の姉がまさに全てを兼ね備えた女性です。ユーモアがあり、人を笑わせることが好きな人です。

WWD:自信を持つことと美しさはどちらが先に来るものだと思いますか?

アマンダ:自信だと思います。笑顔の人を見ると美しいなと思いますが、もし自分に自信がなければ笑顔でもそれが透けて見えます。肌や爪がキレイでいることは自信を持つことの手助けにはなります。しかし本当の意味で自信を持つということは、自身を特別だと思う力から生まれます。そのことに気付けるかは人それぞれ生きている環境によって違います。だから60歳、70歳になってたときに過去を振り返って「10代の自分にこう言ってあげられたらよかったのに」と言うんです。

WWD:自信を失うことはありますか?またそれとどう向き合いますか?

アマンダ:もちろんあります。現場に立つときはいつでも「失敗したらどうしよう」と思います。うまく演技できなかったら、監督が求めるメッセージを伝えられなかったらと。でもそうした気持ちを偽らないようにしているので、あるとき「私はときどき自信を失うことがあって、それを知ってほしい」って監督に打ち明けたことがありました。

WWD:自信を持てないという人に何かアドバイスするとしたら?

アマンダ:自信のなさを認めることは、人として落第ではありません。不安に対してただ正直なだけです。ほとんどの場合、自分が思うほど周囲はそんなこと特に気に留めてもいないものです。だから一息ついて、ただやるべきことをやりましょう。それが私の一番のアドバイスです。自分でもそれを忘れないように心掛けています。

WWD: 若い頃と比べて自分の外見はどのように変化したと思いますか?

アマンダ:私はそれほど外見を気にしていないのであまり鏡を見ません。鏡を見るときも自分の眉間のシワや吹き出物などを不快には思わないので顔をしかめたりはしません。なぜならそれらは自分のほんの一部にすぎないからです。

WWD: 現在34歳ですが、年齢を重ねることについてどう思いますか?30代になることは何か大きな意味はありましたか?

アマンダ:特別なことは感じません。友人の多くは少し年上なので。ですが時々、ふと気づいたら90歳になっているんだろうなと思うので、その意味では34歳は意義深い年齢です。見た目の老いに関しては、一つ一つ対処していくつもりですが、事実を正しく捉えようとも思います。膝に弱ってくるのも変な髪の毛が生えてくるのもOKです。今後、40代、50代と年を重ねていきますが、ボディーケアやスキンケアに熟練して、トラブルもなく気にしないでいれるようになりたいですね。

WWD:子どもが生まれてから、ワークライフバランスの考え方は変わりましたか?

アマンダ:自分がやろうとしていることがどのくらい大切なのかをもっと意識しなくてはいけないと思います。娘への影響を考えると全ての仕事を引き受けるわけにはいきません。昨年の11月以降映画の仕事をしていないのでこれまでより長く娘と一緒にいられるようになりました。娘がハッピーで充実した生活を送っている限り、私は満足です。

WWD:母親になってから気持ちの変化はありましたか?

アマンダ:「子どもが生まれる瞬間に新たに母親という存在が生まれる」という言葉があるように今は娘という存在が私の生きがいです。母親になってからは、自分に対する感情を持ち続ける理由があまりなくなったように思います。新しく手にした娘への責任があるので。この責任感があるからこそ、強くなれたと思います。また、親になるとどうしたってたくさんのことを自問します。例えば、子とどう対話すれば良いか、どんな人に出会ってほしいか、何を学んでほしいか、などです。そうして娘について考えて手本になろうとすることが、強さの源でもあります。娘にとって私を誇りだと思って欲しいし、私から学んでほしい。そして子を信じる両親のもとで育つことがどのようなものか知ってほしいです。

WWD:女性にとって力の源を見つけることは大切ですか?

アマンダ:絶対に必要です。全ての女性が、自分がどういう存在かを知る必要があると思います。人は一人一人違い、それぞれがユーモアや知恵、優しさなど他人に与えられる何かを持っています。そして愛すべき欠点があります。そのやっかいな部分に思いやりを持てないのであれば自分の美しい部分も愛せません。自分を愛せないのなら、自分以外の誰かを愛せません。

WWD:何かモットーはありますか?

アマンダ:いくつもありますが、その一つは“”全ての物事を個人的に受け取らないこと”です。人は物事を個人的に捉えがちですが、それは正しい行動の妨げになります。それから、だれに対しても憶測を持たないようにしています。誰しも何らかの大変な経験を経ているからです。

WWD:最後にグローバルアンバサダーとして女性に伝えたいことは?

アマンダ:美しい肌や髪を手に入れるために決まった方法はないことを伝えたいです。自分らしく、正直であり続けること、それで大丈夫です。誰かのために自分を変える必要はありません。私自身このことに気づくまで時間が掛かりましたが、今では心からそう思えますし、実践しています。

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女優、モデルとして活躍するモトーラ世理奈 映画の主演も相次ぐその魅力とは?

 雑誌「装苑」の専属モデルを務めるモトーラ世理奈。その独特の存在感で同性を中心に多くのファンを獲得している。また「アンダーカバー」2018-19年秋冬コレクションにも参加し、パリコレデビューも果たした。18年に映画「少女邂逅」で本格的に女優の仕事をスタート。その演技力への評価も高く、1月18日から公開中の映画「猫、かえる」、1月24日から公開中の映画「風の電話」、2月22日公開の映画「恋恋豆花」と映画への主演が相次ぐ。現在21歳。モデルとしても女優としても、今後さらなる飛躍が期待される彼女の魅力に迫る。

WWD:現在さまざまなメディアで活躍しているモトーラさん。もともとモデルの仕事をするようになったきっかけは?

モトーラ世理奈(以下、モトーラ):高校1年(2014年)の4月に原宿で今の事務所の人からスカウトされたのがきっかけです。その年の10月に、雑誌の「装苑」に顔見せに行ったら、そこで“ニューカマー”という企画に選んでいただいて、15年1月号の「装苑」でモデルデビューしました。それから少しずつモデルの仕事をするようになって、17年5月号から「装苑」の専属モデルになりました。

WWD:もともとモデルになりたいという気持ちはあった?

モトーラ:小さい頃からファッションが好きで、小学校1年生のときから、将来は女優とモデルをやりたいとずっと思っていました。それでモデル事務所のオーディションも受けたりしていたんですが、受からなかったです。

WWD:モトーラさんといえば16年に発売されたRADWIMPSのアルバム「人間開花」のジャケットが印象的だが。

モトーラ:アルバムが発売されたときは高校2年だったんですが、発売されてからは高校の後輩からも声をかけられるようになりました。

WWD:最近は女優の仕事も増えている。

モトーラ:映画デビューは18年に公開された「少女邂逅(しょうじょかいこう)」でした。それまでもいろいろと映画やドラマのオーディションは受けていたんですが、最初に合格したのがこの作品だったんです。「少女邂逅」は群馬県の高崎で1週間くらい泊まり込んで撮影したんですが、それまでそんなに家から出たことがなくて、合宿みたいで楽しかったです。

WWD:モデルと女優、どちらが好き?

モトーラ:どっちも好きです。最初映画に出たときには何も分からずに、モデルとは全然違うなと思っていたんですが、やっていくうちに「モデルも女優も一緒だな」って思うようになりました。どちらも“何かになる”ということが共通していて、一つのパートとして作品に携わるという気持ちでやっています。日本ではあまりハーフの女優がいないし、私自身そこまでみんなが親近感を持ちやすい見た目でもないと思うんですが、そんな私が女優として役を表現するのは新しいなと感じています。

映画「風の電話」で感じた女優への手応え

WWD:1月24日から公開されている映画「風の電話」では主役のハルを演じる。女優としての手応えも感じている?

モトーラ:気持ち的にはお芝居の仕事を始めたときとそんなに変わらないです。でも「風の電話」が完成して初めて見たときは、そこに映っているのが自分じゃないような気がしました。今までの作品は「こういう表情よくするな」とか「こういう仕草よくするな」と思うことがあって、普段の自分を見ているようで恥ずかしさもあったんですが、「風の電話」でははまったく違う人に見えて、それがおもしろいなって思いました。

※映画「風の電話」は、実際に岩手県の大槌町にある電話線がつながっていない“風の電話”をモチーフにしたロードムービー。その風の電話を使うと亡くなった人と話ができるといわれている。風の電話は2011年に設置され、東日本大震災以降、多くの人が訪れている

WWD:映画「風の電話」ではストーリーに沿って順番に撮影(順撮り)していったそうだが、映画では珍しい。

モトーラ:やってみて順撮りでよかったなと思います。今作はロードムービーで広島の家から始まって、風の電話のある大槌町に行くストーリーなんですが、自然にハルと同じ気持ちになりやすかったし、ハルになりきっていたと思います。

WWD:セリフがきちんと決まった台本がなく、全部即興での演技だったとか。

モトーラ:そうです。台本もなくざっとストーリーが書いてある紙が撮影の朝に10枚ほど渡されて、それをもとに演じていくという流れでした。最初はこのストーリーだと30分くらいで終わっちゃうんじゃないかって思うほどでした(笑)。事前に何となくセリフを考えてくる人もいたんですが、私は現場に行ってみないと分からないなと思って、何を言うかはあまり考えてなかったです。即興芝居はその場で自由に演じるのですが、私はセリフを覚えて演技するよりも、相手を感じて演じられるのでやりやすかったです。

WWD:撮り直すこともあった?

モトーラ:シーンによっては撮り直すこともありました。演技をしているとみんなが何か違うなと思うことや、「今のよかったね」って思うときがあって、それがおもしろいです。

WWD:西島秀俊さんや西田敏行さん、三浦友和さんら大御所との共演はどうだった?

モトーラ:そうですね。衣装合わせで最初にお会いして、そのときはすごく緊張したんですが撮影が始まったらハルという役と同じ感覚で接していたので、緊張はしませんでした。

WWD:風の電話は亡くなった人と話せるといわれているが、モトーラさんが話してみたい人はいる?

モトーラ:ひいおばあちゃんです。中学1年生くらいのときに亡くなったんですが、私が物心ついてから身近で初めて亡くなった人でした。それまで普通に遊びに行ったりもしていたので、また話してみたいです。

WWD:「風の映画」はどんな人に見てもらいたい?

モトーラ:年齢や男女に関係なく、多くの人に見てもらいたいです。ハルと一緒に旅をしている気持ちで見てもらえたらうれしいです。

モデルとしても女優としても海外に挑戦したい

WWD:モデルとしては「アンダーカバー」2018-19年秋冬コレクションにも参加して、パリコレにも出演している。当時はどんな気持ちだった?

モトーラ:そのときはヨーロッパに行くのも初めてで行く前はすごく楽しみでした。ショーの前までは、普通にパリ楽しいなと思っていたんですけど、ショーの瞬間はなんとも言えない特別な気持ちになりました。

WWD:モデルとしても活躍するモトーラさんのファッションのこだわりは?

モトーラ:「着たいものを着る」。着てみてテンションが上がらなかったら着替えることもあります。ただ自分はこういうスタイルとかあまり決めたくなくて、何でも着たいなと思っています。

WWD:美容に関してはどうですか?

モトーラ:基本的なことしかしないです。メイクは普段あまりしないです。メイクは少しやっただけで大きく変わってしまうので、正解が分からなくて。だったらあまりやらなくていいやって思ってしまっています(笑)。でもその分、仕事でいろいろなメイクができるので楽しいです。

WWD:影響を受けた人はいる?

モトーラ:最近はアメリカのバンド、クルアンビン(KHRUANGBIN)がお気に入りで、去年は「フジロック」と渋谷のクラブクアトロでライブを見ました。女性のローラ・リー(LAURA LEE)がベースを務めているんですが、それに影響を受けて私もベースを購入しました。最近はあまりベースの練習ができていないのですが、弾けるようになったらバンドも組んでみたいです。

WWD:音楽フェスはけっこう行く?

モトーラ:そうですね。「フジロック」とか、去年11月には初めて海外のフェスに行きました。ラッパーのタイラー・ザ・クリエイター(Tyler, The Creator)が主催している「Camp Flog Gnaw Carnival 2019」というフェスで、ソランジュ(SOLANGE)やFKA ツイッグス(FKA TWIGS)が見たくて行ったんですが、日本のフェスとも違う雰囲気でおもしろかったです。今年も機会があれば、海外も含めていろいろなフェスに行きたいです。

WWD:好きな映画は?

モトーラ:岩井俊二監督の「スワロウテイル」です。

WWD:女優としてやってみたい役は?

モトーラ:SFには挑戦してみたいです。誰だか分からないくら特殊メイクをするような役をやってみたいです。

WWD:最後に今後の目標は?

モトーラ:モデルとしても女優としても、海外に挑戦したいです。まずはモデルからやっていきたいと思っています。

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編集長はオートクチュールで何した? 若返った「シャネル」、自信に満ちた「ジバンシィ」、日本人シェフの1つ星フレンチ

 こんにちは。「WWDジャパン」編集長の向千鶴です。気温は毎日10℃以下で石畳の街は底冷えする寒さです。昔はこの街で毛皮のコートが必須だった理由を実感します。今はオートクチュールに集まる人も毛皮を着ている人は少数派。ただしダウンも少数派。ウールのコートが多数派です。下にヒートテックを着ているのかな?

10:00
「シャネル」がぐっと若返り

 「シャネル(CHANEL)」のヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)が自分らしさを全開にしてきました。ガブリエル シャネル(Gabrielle Chanel)が幼少期を過ごしたオバジーヌ修道院の庭園を再現したという会場は、客席を囲むように使い古されたリネンが干されていたり、庭のトマトが少し傷んでいます。「シャネル」の会場演出はこれまでも風景の再現など超リアルでしたが、“少し汚れている”や“傷んでいる”状態を再現するなんて初めてです。このリアルさ、そして修道院から想起する禁欲的なピュアネスがヴィルジニーらしさにつながっています。従来の「シャネル」を愛する女性たちから見ると少し物足りないかもしれませんが、新しいお客さん、特に若い世代から支持されそうです。オートクチュールの顧客は年配者も多いですが、女性が何歳になっても心に内に持つ少女性とも共鳴しそうです。

11:00
「ミュウミュウ」プレ・フォール
展示会が写真NGの理由

 「ミュウミュウ(MIU MIU)」の2020年プレ・フォールの展示会に行ったところウエブやSNSへの写真ポストは全てNGでした。理由を聞くと5月に初めてプレ・フォールのショーを行うから。場所や日程は未定ですが、5月に各ブランドが世界各地で行うプレ・フォール(クルーズ)ショーに「ミュウミュウ」も参戦という訳です。

12:15
「ディオール」のハイジュエリー

 ヴィクトワール・ドゥ・カステラーヌ(Victoire de Castellane)がデザインする「ディオール(DIOR)」のハイジュエリーは、石や色の組み合わせが独創的でファンタジック。女子のハートをギュッとつかみます。今季は2つの石を対向して配置する「トワ エ モワ(あなたと私)」というセッティングを採用しています。石の並べ方にこんなセンチメンタルな名前をつけるあたりがフランス!

13:30
“実用性?そんなの不要”な
「アレクシ・マビーユ」

 オートクチュールに実用性ばかりを求めてはいけません。美しければよく、華やかであればよく、ファンタジックであればよく、“らしければ”よいのです。という考え方を地で行くのが「アレクシ・マビーユ(ALEXIS MABILLE)」。見に来ている顧客も目いっぱいドレスアップしています。ビジネス規模は大きくないでしょうが、デザイナーと顧客双方に幸せな時間だと思うし、ファッションビジネスの原点だとも思います。

19:00
アルマーニに見る
アジアのエッセンス

 「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ(GIORGIO ARMANI PRIVE)」にはいつもどこかにアジアの要素が入っています。今季はアジアの織物、イカットが着想源だそう。以前インドネシアを訪れた時、織物や染色の文化の豊かさに触れて “生地それ自体をまとう”感覚が日本の着物と似ているな、と思いました。なんてことを思い出したコレクションです。生地それ自体の豊かな質感や色彩がドレスは雲の上を歩くような軽やかさ本当にきれいです。

20:00
「ジバンシィ」のショーは
ただうっとりと眺めてほしい

 「ジバンシィ(GIVENCHY)」はぜひ動画で見てください。大きな帽子が揺れる様子やシルクタフタをたっぷり使ったドレスの丸いふくらみが、背中を飾る大きなリボン。着るか着ないか、着れるか着れないかなど関係なく、ただ“あ~きれいだな”と眺めていただきたい。バイオリンの生演奏も見どころです。

21:15
1つ星を獲得した
日本人シェフのフレンチへ

 昨年、パリでは日本人がシェフを務めるレストランがなんと6軒も新たに1つ星を獲得したそうです。そんなに!?と驚きつつ、ミーハーとしては話題のお店をのぞいてみたい。そこで友人と6区にある「YOSHINORI」へ行ってきました。夜遅くからにぴったりな優しい味付けで、かつ2皿でも大満足なボリューム感。オススメです。

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#敦子スメの「新月・満月」ノート 今回の新月(1月25日)はこれからの「なりたい私」や理想の形を考えよう

星占いとの出合い

 オーガニックコスメとの出合いや、コスメキッチン在籍中に占い師・ジョニー楓さんのイベントを担当したのをきっかけに星占いに興味を持ち、独学しました。現代では、占いとしてこれはラッキー、アンラッキーという区別に使われることもありますが、良い悪いではなく自然の流れとしての月の動きに、地球上で生活しているわたしたちは知らずに影響を受けています。この連載では、月の動きの中で活用できるものを知り、うまく生かしていただくための付き合い方をお伝えしていきたいと思います。新月・満月の流れを最大限に引き出すためのサポートをしてくれるコスメやインナーケアアイテムも紹介していきます。第3回は1月25日の新月とおすすめコスメについてお伝えします。

 水瓶座の新月が起こるこの時期、寒さが人の気持ちを凛とさせる1年の走り始めでもあるこのタイミングは、「これからの自分」や「今年一年どんな年にしようかな」ということを考えたくなる時期。ビジネスでも、「これからのあり方」に自然と意識や話の流れが行くような、そんなタイミングかも知れません。水瓶座という星座は「理想やビジョン」に関連した星座とも言われ、「こうなったらいいな」「こういう形でありたいな」と、個として、または人と何かをするときも「あり方」に意識が向きやすいと伝えられています。

 美容に関しての「理想」はある意味、思い込みとイメージでどうにかなるのかも、と思ったことがあります。なりたい姿をイメージしてケアすると、それに近づく気が……。とりわけ「顔」に関してはそうなのかも。

 今回提案したい新月コスメは「顔」。というよりも「なりたい顔の形」をかなえる小顔ギア「コアフィット(COREFIT)」の“フェイスポインター”です。顔の筋肉は知らずに緊張していたり、筋膜に癒着していたり、歯ぎしりなどで顎の筋肉が必要以上に張ってしまったりしているそうです。そんな「気づかない慣れ」の形をリリースして、新たな巡りのよい顔、シュッとしたフェイスラインに近づけるサポートをするのがこちら。1日15分から20分、こめかみ、頭皮、首筋などを刺激することで気づかない筋肉の癒着を取り、理想の顔に近づけてくれるかも。特に効果が早いのは顎下、首と顔の境目です。新年会でむくみやすくなったフェイスラインをなかったことにしてくれるかもしれません。

福本敦子(ふくもと・あつこ)/フリーランスPR・美容コラムニスト:「コスメキッチン」に14年間勤務後、現在はフリーランスPRのほか、ビューティコラムニストとしてイベント、SNSなど多方面で活躍。オーガニックに精通した知識を武器に、ライフスタイルに寄り添った独自のオーガニック美容論が、著名人やエディターをはじめ各方面から大人気。「#敦子スメ」は「読んだ瞬間試したくなる」と多くの反響を呼び、欠品や完売商品も多数。2019年秋、初の書籍となる「今より全部良くなりたい 運まで良くするオーガニック美容本 by敦子スメ」(光文社)を出版。発売前に増刷が決まるなど話題を読んでいる。旅を愛し、占星術にも精通 instagram:@uoza_26

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廃棄物削減に取り組む理由が曖昧なんて情けない ファッションフリークOL「WWDジャパン」最新号につぶやく

 1992年生まれのファッションフリーク女子が、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。渋谷のファッションベンチャー企業に勤める等身大OL、Azuのリアルな目線を生かした「このニュースからはコレが見える」という切り口で、さまざまな記事につぶやきを添えます。

今日のニュース:P.8『無視できない廃棄問題、アパレル各社の本音』

読み解きポイント:「消費者は捨ててないのに、売る側は捨てるの?」

ニュースのポイント

 多くのアパレル企業がサステナビリティを考える上で避けては通れないのが大量の在庫と廃棄の問題だ。上場企業では昨年末ごろから株主からの圧力が高まっており、経営層にとって待った無しの問題となっている。「捨てないファッション特集」では95社のアパレル企業に廃棄のリアルな現状を問う無記名の緊急アンケートを実施し、24社から回答を得た。

Azuはこう読む!

 昨年話題になったワードといえば「サステナブル」。「WWDジャパン」本紙でもこの連載でも何度も取り上げていますが、それでも話題は尽きません。年末に実施した緊急アンケートでは、総合アパレル、メーカー、商社、小売などのファッションに携わる95社に回答を依頼したそう。衣料廃棄物の年間廃棄量や廃棄物削減・サステナビリティのために計上する予算額など、本紙ではさまざまな問いに対する各社担当者のリアルな意見が掲載されています。

 その中に、いくつか気になる点がありました。「廃棄物削減のために取り組んでいることは?」という質問に対する「アウトレットの活用」という回答が「解決策になっていないのでは?」と思ったり、「SKUレベルの数量精査」や「売り切ることを前提とした計画的な発注」も「当たり前では?」と思ったり。実際に生産側に立ったことがないので簡単に言えるのかもしれませんが……。

 もちろん商材がないと売り上げは立つはずないので、予算を達成するためには消化率を考えた上で、組まれた予算以上の生産が必要かもしれません。しかし、例えば現状を踏まえず「前年超え」を目安として組まれた予算があるとしたら、それが過剰生産につながっている一つの要因だったりするのでは?と思っています。利益率の低い商品を過剰生産して、その廃棄にお金をかけて……というサイクルがあるとしたら、それは一体何を作ってるのでしょう。

 消費者はメルカリなどのCtoCサービスを利用して賢く不用品を何かに変えているのに対して、売る側は廃棄物として処分しているという現実。昨年発売されアパレル業界でも話題になった本「2030年アパレルの未来 日本企業が半分になる日」(東洋経済新報社)にも辛辣な数字が予想値として記されていましたが、「廃棄物削減に取り組むべきだと考える理由は?」という問いに対して「世界で取り組まれているからやったほうが良い」「無駄の多い業界だから、健全なビジネスにする必要がある」といった曖昧な答えでは先が思いやられます。

 そもそも大量廃棄の問題は今に始まったことではないと思うのですが、それを今になって「社会の流れが」とか、それを受けての「株主が」「消費者が」といって舵をきるのはなんとも情けないというか。最近さまざまな店でショッパーをビニール袋から紙袋へ変えたり、有料にしたりして「サステナブル」に取り組んでいますが、その横で時期尚早の"SALE"の文字を見かけると、「?」となってしまうのが本音。

 一方で、このアンケートに無記名でも答えた24社はそれだけでも素晴らしいと思います。回答できるということは、そもそも問題意識を持っていたから、もしくはすでに取り組んでいるからだと思うので。消費者の意識がどんどん変わっていく中で、10年後の未来も生き残っているかどうかは、そこに追いついていくスピード感があるかどうかにかかっているかもしれません。

Azu Satoh : 1992年生まれ。早稲田大学在学中に渡仏し、たまたま見たパリコレに衝撃を受けファッション業界を志す。セレクトショップで販売職を経験した後、2015年からファッションベンチャー企業スタイラーに参画。現在はデジタルマーケティング担当としてSNS運用などを行う。越境レディのためのSNSメディア「ROBE」(@robetokyo)を主催。趣味は、東京の可愛い若手ブランドを勝手に広めること。ご意見等はSNSまでお願いします。Twitter : @azunne

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ワークライフバランスを追求した柔軟な働き方を推進 「法令順守意識」1位/高島屋【ファッション業界 働きがいのある企業ランキング】

  「WWDジャパン」1月20日号では、「ファッション業界 働きがいのある企業ランキング」を発表。国内最大級の社員クチコミ数を有する「OpenWork」の協力のもと、直近5年間でクチコミ件数10件以上ある企業の中からファッション業界における働きがいのある企業ランキングを独自に作成した。連動するウェブ企画では、「風通しの良さ」「20代成長環境」「法令順守意識」項目で1位となった企業に取材し、1位たるゆえん、その魅力と源泉を探った。

 「法令順守意識」1位は高島屋だ。世の中で働き方改革が言われ始めるよりはるか以前の1980年代から、社員が働きやすい仕組みづくりを地道に行ってきた同社は近年どんな取り組みをしてきたのか、福田大・人事部労務担当課長に話を聞いた。

WWD:「法令順守意識」1位について、率直な感想は?

福田大・人事部労務担当課長(以下、福田):時間外労働の上限規制や5日間の年次有給休暇取得が義務化など、働き方改革法案の施行を踏まえ、高島屋としても2019年4月を待たずやれることはやっていこうと、前倒しして実行してきた。19年1月に、私たちが“ワーク・ライフ・バランス休暇”と呼んでいる計画付与年休を、従来の2日から5日間に拡大。また、小売業は長時間労働のイメージがあると思うが、会社として長時間労働の抑制を経営課題と捉え、新勤怠システムを導入して就労管理業務のデジタル化を進め、業務を効率化したりと、さまざまな取り組みをしている。そういう意味で評価をいただいたというのは率直に言ってうれしい。

WWD:それらの施策について、一つずつ伺っていきたいのだが、まずは長時間労働を是正する柔軟な働き方に対する具体的な取り組みを教えてほしい。

福田:36協定は、時間外労働の限度時間が月45時間、年360時間以内というイメージがあるかもしれないが、労働組合とも協議して、労使協定の覚書も締結し、私たちは年120時間を一つの目安として、時間外労働月10時間以内を最大の目安として管理する取り組みを進めてきた。

WWD:ファッション業界の長時間労働はよく話題にもなるが、時間外労働が月10時間以内というのは驚くべき数字だ。10時間以内に収めるために、シフトなど具体的にどのような施策を行っているのか?

福田:実際には18年度の社員全体の残業時間は平均月5.3時間だった。地方・郊外店や中小型店に関しては短刻営業を実施するなど、一直勤務(途中交代のない勤務形態)できるような仕組みを数年以上前から整えてきた。閉店時間を早めることで朝から晩まで同じメンバーで働けるので、早番・遅番で生じる無駄な重なりも省くことができ、非常に効果を発揮している。

また、19年1月から1日の所定労働時間を月の中で柔軟に拡縮できる勤務方法を導入した。例えば、いそがしい日は労働時間を2時間延長する分、閑散日は2時間短くして調整するなど、フレックスとまではいかないが、よりフレキシブルに働ける勤務方法をつくった。

WWD:それ以外で何か対策していることは?

福田:広報や人事部の人間は一日家にこもってやったほうがはかどる場合もあるので、在宅勤務は17年に試験的に導入し、18年に正式に施行した。それ以外には、「サテライトオフィス」といって全国に拠点のあるサテライトと契約をし、そこを利用できるようにしている。百貨店はバイヤーの数も多く、取引先に行くことも頻繁だ。例えば、表参道はよく行くエリアだが、その際に表参道のサテライトで最後の2時間仕事をして定時に帰る、といった働き方を可能にしている。費用対効果を考えると、投資的には「ん?」と思うところもあるものの、外出して会社まで戻って仕事をするより、移動時間を極力抑えることで効率的に働けるということで採用している。ただ1日4時間までと規制は設けている。現在は、本社のバイヤーと販売員以外の社員がその対象だ。

WWD:次に、年次休暇の取得について伺いたい。

福田:19年1月から年次休暇を半日単位で取得できるように変更した。年始の段階でその年の取得予定日を提出してもらい、現場のマネージャーや部門長が、自分の部下が年次休暇を取得したかどうかを確認することを業務に組み込んでいる。最終的には人事担当者が未取得者がゼロになるまで追いかける。ちょうど今19年度が締まるのだが(取材日1月9日)、最後のヒアリングをして、なんとか100%に持ってきたところだ。もともと“ワーク・ライフ・バランス休暇”を始めた16年当初から今まで、日数に関係なく取得率はずっと100%だ。ただ平均でいうともっと取得していて、18年度の正社員の休暇取得日数は11.2日だった。

WWD:従業員の約7割が女性と聞く。女性は出産や育児などでライフステージの変化が起こりやすいが、育児休暇制度などはどのような仕組みを取っているのか?

福田:育児休暇に関しては、正社員に限らず勤続1年以上ならパートタイムの人でも取得できる。子どもがたくさんいる人は育児休暇期間が長くなるが、以前は上限を12年としていたがそれを撤廃し、一番下の子どもが満3歳になるまでは取得できるようにした。

また育児勤務制度も充実していて、一番下の子どもが小学校4年生になる年の3月31日までは希望者全員が取ることができる。短時間勤務に加え、短時間とフルタイムを併用できる勤務など8パターン設定し、多様なニーズに対応している。なので、出産を理由に退社する正社員はわが社では皆無だ。今、正社員の平均勤続年数は女性が男性をすでに超えていて、そういう企業はなかなかないと思う。

WWD:法令を順守し、働きやすい環境づくりを目指して積極的に施策を行う背景には何があるのか?

福田:わが社はもともと働き方改革が言われるよりはるか昔から社員が安心して働ける職場づくりに尽力してきた。そして現在、百貨店自体の要員がどんどん減少していく中、厳しい状況にあるというのも理由の1つだろう。今いる人間で同じ成果以上のものを目指そうと思うと、働き方を変えないと伸びない。かつ、退社されると会社にとっては損失となるので、長く気持ちよく働いてもらうための視点がすべての根底にある。

WWD:最後に、社員にとって「働きがいのある」企業とは、どのような企業だと考えるか?

福田:「いつも、人から。」が経営理念であり、何よりのテーマだ。明るく楽しく働きやすい、働きたい職場づくり──これを大きなテーマにして、業務プロセスや制度、システムを考えている。その中には業務効率化や人材育成などいろいろな項目があり、それらをきちんと循環させながら、ワークライフバランスも充実させ、仕事でも活躍し、成長できるようなグッドサイクルをつくっていくことができれば、「働きがいのある企業」となるのではないだろうか。

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英国貴婦人風のヴィクトリアンブラウスが復活! マルチに着回すコツを紹介

 クラシックで貴族風の装いが勢いづく中、じわじわ人気が広がってきたのが、19世紀英国風のヴィクトリアンテイストです。装飾的な立ち襟が目を引くヴィクトリアンブラウスは、シンボリックなアイテム。フリルやリボンなど、さまざまなディテールが施され、古風でノーブルなムードを呼び込める点が魅力です。

 写真の「アダム リップス(ADAM LIPPES)」をはじめ、2020年プレ・スプリング・コレクションでは、多くのブランドからヴィクトリアンブラウスが発表されました。フェミニン濃度が高めのヴィクトリアンブラウスに、キュロット×ロングブーツを合わせ、ジェンダーミックスに仕上げています。高い襟は顔周りにまで貴婦人ムードを漂わせます。ヴィクトリアンブラウスのような品格のあるアイテムには、別テイストを添えることがコーディネートのコツです。詳しく見ていきましょう。

◆パンツスーツやテーラードジャケットでハンサムレディーに

 英国のヴィクトリア女王が在位した1837~1901年当時の装いがヴィクトリアンテイストのベースになっています。装飾性の高さに特徴があり、ゴシックロリータの源流ともいわれます。フリルや刺しゅう、レースはヴィクトリアンの象徴的なディテールです。

 フェミニンな飾り襟付きのブラウスには、テイストの異なる紳士服やミリタリーなどのウエアを引き合わせると、バランスが整います。「テンパリー ロンドン(TEMPERLEY LONDON)」は軍服風のセットアップに、ヴィクトリアンブラウスを組み込みました。細身のスティックパンツもメンズ風で、シャープな着映え。襟周りと袖口からフリルをあふれさせて、ブラウスの持ち味を引き出しています。

 フェミニン×マスキュリンのミックスコーデに仕上げるなら、トレンド継続中のテーラードジャケットも使えます。写真2枚目の「ラファイエット 148 ニューヨーク(LAFAYETTE 148 NEW YORK)」はたおやかなブラウスに、上から着丈が長めの男顔ジャケットをオン。りりしいムードを添えました。デイリーに着回すなら、デニムパンツでドレスダウン。裾広がりのシルエットはカムバックが見込まれている70年代調です。

◆甘さを抑えて“大人かわいい”レイヤードに

 ヴィクトリアンブラウスならではの愛らしい雰囲気を押し出す着方も選べます。ただし、ガーリーに映りがちなので、さじ加減が肝心。襟の部分だけをネックレスやスカーフのような雰囲気でアレンジするレイヤード術が有効です。

 「フィロソフィ ディ ロレンツォ セラフィニ(PHILOSOPHY DI LORENZO SERAFINI)」はブルーのブラウスに、肩ラッフルをあしらったピンクトップスを重ねて、フリルの競演に。デコラティブな上半身とは逆に、レザーのショートパンツでボトムスはフェティッシュ感を強調。甘さを出し過ぎず、スパイスを効かせました。

 色味をまとめると、ガーリーでも幼く見えにくくなります。写真2枚目の「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」は淡いパープル系で全体を統一するワントーンの装い。ニットトップスの首回りから、ヴィクトリアンブラウスの襟だけをのぞかせ、まるでネックレスのような印象に。ブラウスを目立たせすぎないレイヤードは、着こなしのレパートリーを広げてくれます。

◆ストリートやプレッピーと“複雑系”コーデに

 襟のクラシック感を逆手に取って、全く異なるテイストの装いに交わらせるコーデも組み立てられます。たとえば、ストリート系やプレッピーのスタイリングに組み込めば、程よいカオス(混沌)を引き起こせます。

 ヴィクトリアンブラウスをケープのように使って、絶妙なハイブリッドコーデを仕掛けたのは、「エムエスジーエム(MSGM)」。ブラウスのボタンを一番上だけ留めて、フロントをオープン。インナーのプリントTシャツを大胆にのぞかせました。ボトムスはアスレチックなパンツで合わせ、足元も白ソックスで軽やかにコーディネート。レディーライクなバッグを添えて、一段と複雑なミックスにまとめ上げています。

 写真2枚目の「エトロ(ETRO)」も入り組んだスタイリングを披露。タッセル風のリボンをあしらったブラウスの上から、プレッピー気分のニットトップスを重ねました。さらに、若々しいショートパンツを合わせて、アクティブ感をプラス。ガウンのようなロングアウターを羽織り、パンツとの長短丈違いコーデで、縦長イメージを際立たせました。ノーブルなブラウスを軸に据えながら、マルチなテイストを響き合わせています。

 お嬢様テイストを薫らせるヴィクトリアンブラウスなので、時に淑女ムードで、時にマニッシュにと、表情を変えながらマルチに着回すことが出番を増やす秘けつです。首を飾るフリルのおかげで、顔周りが華やぐのも、ほかのブラウスにはない魅力でしょう。1枚で着ても品格を保ちやすいので、薄着になっていく春から先にも使い勝手に優れたアイテム。重ね着が楽しめる春先は、“複雑系”のミックスコーディネートデビューにぴったりです。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

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女優→モデル→インフルエンサー、2020年現在「美のお手本」は誰?

 「理想の顔」「なりたい顔」と聞いて、あなたは誰を思い浮かべるだろう?1990年代まで、なりたい顔の対象は女優やアーティスト等の有名人だった。女性誌では「○○風メイク」「○○風ヘア」といった美容特集が組まれ、なかでも象徴的なのは、安室奈美恵のスタイルをお手本にした「アムラーメイク」だろう。2000年代後半~2010年代前半になると、美のお手本は有名人の中でも「より身近な存在」へとシフトする。AKB48の登場により、メンバーをモデルに起用する女性誌や化粧品会社が登場。同じ時期、雑誌の読者モデルも注目され、彼女たちの美容法や愛用コスメが話題となった。さらに10年代半ば以降になると、インスタグラムやユーチューバーで、一般の女性たちが美容情報を自由に発信し始める。フォロワー数の多いインフルエンサーが取り上げた商品がヒットしたり、10代では動画でメイクを覚える女性も増加したりした。時代とともに、美のお手本は「手の届かない憧れの存在」から「リアルな存在」へと移り変わっていった。

 さて、そんな背景を踏まえて、この20年現在。「なりたい顔」「美のお手本」として注目されるのは、いったい誰だろう? 答えは実に意外であり、一方「なるほど」と膝を打つ存在―――。答えは「美肌アプリで加工した自分自身の顔」であるという。

 このデータの元となるのは、アットコスメの口コミを分析し、女性の美容意識やトレンドを調査する、アイスタイル・アットコスメリサーチプランナーの調査結果。「2019年度のユーザー意識調査において、『アプリなどで加工された自分の顔に近づきたいか』という質問をしたところ、全世代を通して『そう思う』『ややそう思う』という肯定的な回答が40%。10代に限定すると、70%を越す結果となりました」(西原羽衣子・アイスタイル@cosme広告事業本部リサーチ担当)。

結局「他人」にはなれない

 最初にこの話しを聞いたとき、「あっ、言われてみれば、確かに」と、ストンと腑に落ちる面があった。美肌アプリで肌トーンを明るく補正し、目を少々大きく見せたとしても、あくまでそれは「自分自身」。他人を真似るのではなく、美しくなった自分の姿が、具体的にイメージできる。

 「色白は七難隠すという言葉の通り、『肌が明るいと美しく見える』のは誰もが知っていることですが、アプリで肌を修正すると、その効果を『自分ごと』として視覚化できます。もちろん、現在においても憧れの対象となる有名人は存在します。その一方で『骨格が違う』『肌質が違う』も口コミの頻出ワードであり、現代の女性たちは『結局、他人にはなれない』という現実的な感覚を持っているようです」と語る。

 現代の空気感として、誰かに憧れてその人に近づくより「自分らしさを追求する」ほうがカッコイイという風潮もあるという。少なくともこれだけたくさんのコスメが存在する中で「自分に合ったモノを選びたい」というニーズは高く、そのヒントの1つとなるのが、アプリで加工した自分自身なのだ。

メイクより先に、加工した自分の顔に触れる時代?

 10代の女性の間ではスマホで写真を撮る際、アプリのカメラを使用して加工するのが当たり前になっているという。アプリが身近な10代において「加工された自分に近づきたいと思う」と回答した人は、実に72.6%。30代以降になると、加工された自分への肯定的な意見は減少するが、「これは単純にアプリに触れる機会の差と思われます。年代が上の女性でも、日常的にアプリを操作する機会があれば、肯定的な意見が増えるのでは」と西原リサーチ担当。

 興味深いのは、今後デジタルネイティブ世代の成長とともに「化粧に関する意識」「化粧行動」が変化する可能性だ。「今は小中学校からスマホに触れていますから、今後はメイク年齢に達する前に、『アプリで修正した理想の肌』に親しむ女性が増えると予想されます。これまで美容、特にメイクアップ分野においては、まず『理想の自分』や『なりたい顔』を模索する作業が必要でした。今後は最初から『正解』が分かっていて、そこに近づくにはどうしたら良いか、という視点が生まれるのでは」。

消費者がリードする、美肌アプリ時代のヒット商品とは?

 そもそもアイスタイルが、この「アプリなどで加工された自分に近づきたいか」という調査を行ったきっかけは、2018年度のアットコスメベストコスメアワードにおいて、ランキングに予想外の展開があったからという。

 「それまで日焼け止めのカテゴリーでは、資生堂の『アネッサ(ANESSA)』とカネボウの『アリィー(ALLIE)』がほぼ毎年1位を獲得するという状態が続いていました。ところが18年上半期、ロート製薬の『スキンアクア トーンアップUVエッセンス』が彗星のごとく現れ、新作日焼け止め部門の1位に輝きます。私たちも予想外の展開で、いったい何故だろう?と調査を始めました」。

 さまざまな角度から口コミを分析したところ、まずこの製品名にもある「トーンアップ」というワードが2017年度から飛躍的に増加していることが判明。2015年度と比較すると、2019年度は約5倍にまで増加している。

 「さらに、ユーザーに直接インタビューを重ねた結果『どうやらスマホの美肌アプリと関係性しているらしい』という仮説にたどり着きました。この仮説を検証する過程で「アプリで加工した自分」に肯定的な人が一定数存在することが判明したんです」。

 トーンアップという言葉自体は昔から存在しており、以前は角質ケアやマッサージの結果、肌が明るくなることを指す、どちらかというと美容上級者向けのワードだった。しかし、アットコスメユーザーの声から判明した現在のトーンアップは「塗ってそのままダイレクトに肌が明るくなる」ニュアンスを持ち、10~20代が頻繁に使用している。

 ベストコスメに輝いた「スキンアクア トーンアップUVエッセンス」の発売は2018年。インスタグラムの流行を背景に、ロート製薬が「フィルターをかけたような美肌」を意識して開発した製品だ。「瞬時の美肌効果がSNSとも親和性が高く、製品名の『トーンアップ』も時代とハマって、人気を博したのではないか」と西原リサーチ担当は分析する。「まずは肌全体を明るくトーンアップして、気になる部分を修正していく……。このメイク法はアプリの修正ステップと感覚が近い。もしかしたら、若い女性たちはアプリで普段行っている動作を、実際に顔の上で再現しているのかもしれません」と語る。

バレないギリギリの線が重要。素肌美トレンドは続く

 もう1つ、ここ数年アットコスメで出現率が上がったワードに「素肌感」がある。16年度から徐々に出現率が上昇し、15年度よりも19年度は1.4倍に増加している。それだけ素肌美へのニーズの高まりを示唆している。

 「スキンアクア トーンアップUVエッセンス」のヒットは、「学生の間で支持されたことも関係しています。『学校メイク』に最適といいますか、周囲にバレないギリギリの線で、素肌を美しく見せる製品だった。その効果がSNSを通じて拡散し、爆発的なヒットにつながったように思います」。

宇野ナミコ:美容ライター。1972年静岡生まれ。日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、ウェブなどで美容の記事を執筆。スキンケアを中心に、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、美容医療まで担当分野は幅広く、美容のトレンドを発信する一方で丹念な取材をもとにしたインタビュー記事も手掛ける

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動画追加:アナタの知らない時計専門店Vol.02 「ウブロ」を2億円以上売る27歳の女性販売員

 “時計専門店”という言葉を聞いたことがありますか?――答えは「NO」で構いません(笑)。かくいう僕も、時計担当を拝命した1年半前までは聞いたことがありませんでした。つまりは“時計”を“専門”に売る“店”のことなんですが、具体的に想像しづらいですよね……?時計の販路は百貨店やセレクトショップ、家電量販店などいくつかありますが、その一つが時計専門店です。時計しか売っていないので専門性はとても高く、結果としてよく“予習”した男性客が多いです。つまり女性や一見さんには、なかなかにハードルの高い存在でもあります。でも「高級時計だけで構成される、ぜいたくな空間を知らないなんてもったいない!」――そんな素直な思いが本連載スタートのきっかけでした。「気負わず、ふらっとのぞいてください」、店舗スタッフはやさしくほほ笑みますが、「そうですか、じゃあ……」と言える(僕のような)ずうずうしさを持った人は多くないはず。そこで、この連載なんです!高級時計の世界に、ほんの少し早く入ったオールドルーキーの僕が素直な感想とともに伝えるので、近くにあるのに遠い存在の時計専門店を少しでも身近に感じてもらえたらと思います。

 連載第2回で紹介したいのは、ベスト新宿本店。前回紹介したイシダ表参道と同じく、ベスト販売が運営しています。ベスト新宿本店のオープンは、同社の創業年でもある1979年。新宿駅東口にあり、地下鉄のB9出口からは徒歩30mの距離です。地下1階、地上5階の6フロア構成で、売り場面積は約480平方メートル。取り扱いブランド数は約50、常時5000本の時計が並び、“日本で唯一の、正規品と中古品を扱う時計専門店”を自負します。今回ベスト新宿本店を選んだ最たる理由は、“「ウブロ(HUBLOT)」を年間2億円以上売るスゴ腕の販売員がいる!”と聞いたから。

 「松原です」――そう言って現れたのは若くて小柄な女性。失礼ながら、“えっ!?”と思いました。でも次の瞬間、一気に興味が湧いて、あれこれ聞いていました。

WWD:おいくつですか?

松原蘭ベスト新宿本店スタッフ(以下、松原):27歳です。

WWD:お、お若い……。

松原:新宿本店で“一番若い女性販売員”ということになります。

WWD:ちなみにベスト販売へは新卒入社?

松原:はい、2015年の入社で5年目です。

WWD:勤務先は新宿本店ひと筋ですか?

松原:はい、最初は1階でドイツ時計の「ユンハンス(JUNGHANS)」やスイス時計の「テンデンス(TENDENCE)」「フレデリック・コンスタント(FREDERIQUE CONSTANT)」などを販売していました。販売価格が15万~20万円のゾーンです。17年に3階に移って、「IWC シャフハウゼン(IWC SCHAFFHAUSEN)」を担当するように。「ウブロ」担当になったのは18年のことです。

WWD:松原さんは、年間2億円以上「ウブロ」を売ると聞きました。

松原:進行中の数字なのですが、ほぼ確定と言っていいと思います。19年2月期の個人売り上げは1億9000万円で、すごく悔しかったんです。それで今年は2億円達成を強く意識しました。もちろん接客時に、それは一切出しません。そんなことしたら、お客さまに失礼なので。頭の片隅には常に置きながら前進しました。

WWD:となると、新宿本店のブランド別売り上げランキングは「ウブロ」が1位?

松原:いえ、1位は「オーデマ ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」で、「ウブロ」は2位なんです。ですから、次の目標は1位獲得ですね!ちなみに次点は「ブライトリング(BREITLING)」「IWC シャフハウゼン」です。

WWD:「ウブロ」の平均販売価格は?

松原:140万~150万円です。

WWD:では購入の際、客が「ウブロ」と共に迷うブランドは?

松原:「ロレックス(ROLEX)」「オーデマ ピゲ」「オフィチーネ パネライ(OFFICINE PANERAI)が多いです。

WWD:面と向かって聞かれると答えに窮するかもしれませんが、ほかの販売員にはない松原さんのすごさとは?

松原:“かしこまらない”ということでしょうか。それと“接客”ではなくて、お客さまとの“コミュニケーション”だと思っています。まずは聞き役に徹して、そのうえで似合わなければ素直にそれを伝えます。逆に言うと、いち早くそう言える関係性を築くべく努めています。ブランドごとの販売価格の多寡は私の中で関係ありません。ひとえに、お客さまに“来店してよかった”と思ってほしいんです。

WWD:すごくちゃんとしていますね……。

松原:アレ、ちょっとかっこつけすぎちゃいました(笑)?もっとざっくばらんに言うなら、今どきの顔じゃないところがいいんだと思いますよ。メイクも軟派じゃないというか、あまり女っぽくないんです。そういうさばさばしたところが受けているのかな、と。

WWD:なんとも冷静な自己分析……。では、これを読んだ他の販売員が即実践できるテクニックはありますか?

松原:“周りを巻き込む”こと。一人で来店されるお客さまの場合、50代の男性スタッフに「どう思います?」と感想を求めます。お客さまとしても、老若男女の意見が聞けると安心できると思いますので。お友だちと来店された場合は、お友だちを巻き込みます。彼らはお客さまの“いつも”をよく知っており、キャラクターや服装、時計にまつわる失敗談などの情報はとても重要です。奥さまとの来店なら、奥さまから口説きます(笑)。奥さまのGOサインなくして成立はありませんので。それに、連れて来られた人の“つまらなそう”は気になってしまうんです。

WWD:なるほど。ちなみに接客時間はどれくらいですか?

松原:人によるので何とも言えませんが、平均すると40分ほどでしょうか。長い人は半日以上いらっしゃいます。決定までに2、3回来店する人も多いですね。

WWD:松原さんイチ推しの「ウブロ」のアイテムは?

松原:“クラシック・フュージョン(CLASSIC FUSION)”です。

WWD:とてもシンプルですよね。

松原:ええ、だからオールマイティーに使えます。「ウブロ」は国別の限定モデルに力を入れていて、当然、日本限定モデルは日本人の感性に合ったものになっています。マーケティングの賜物ですよね。そして、これらはわれわれ正規販売店でしか購入できません。それと「ウブロ」のコーナーにあるからシンプルに見えていますが(笑)、しっかり主張できる時計ですよ。「ウブロ」と聞くと派手でゴツいイメージを持つ人が多いですが、「それだけではないんですよ」と伝えると響きます。かつては体の大きなスポーツ選手や“やんちゃ”な層に人気がありましたが、今ではマス層からの声が高まっています。

WWD:いわゆる“普通”のサラリーマンということでしょうか?

松原:そうです。「ウブロ」の購買層は8割が男性で、30~35歳が多いです。ただ、ここ数年、20代男性が増えています。

WWD:先輩や上司がよい時計を着けていて、それに憧れる層ですね。

松原:その通りです。当店では分割払いが無金利なので、商品にもよりますが月額1万~2万円で100万円前後の高級時計が手に入ります。

WWD:それはありがたいですね。最後の最後で迷っている客の背中を押す“キラーワード”はありますか?

松原:「このまま“この子”を連れて帰りたくありませんか?」でしょうか(笑)。

 最後に前川真二ベスト新宿本店店長にも、松原さんのすごさについて聞きました。「洞察力だと思います。高額商品をお求めのお客さまは下準備にも力が入り、“自分にはこの時計が似合う!”“この時計しかありえない”と思い込む人も。その気持ちにしっかり寄り添いながら、ときに思いもよらない提案をしてくれるのが彼女です」。

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読者が注目した今週の新作 「リーバイス」の機能ジーンズなど(1月24〜30日)

 「WWD JAPAN.com」が今週発売の新商品を「ファッション部門」「ビューティ部門」「スニーカー部門」別にまとめてお届け。「ファッション部門」では読者の注目度(PV)から1〜3位までをランキング形式で紹介。今週は「リーバイス(LEVI'S)」の血液循環を促す特殊なデニム生地を使った“リーバイス エナジー(LEVI'S ENERGY)”が最も注目された。

【ファッション部門】


【ビューティ部門】


【スニーカー部門】

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ヒップホップシーン随一の“ひねくれ者”、ヴィンス・ステイプルズ 「リリックは書き方次第で何でも共感できちまう」

 昨年の12月初旬、ヒップホップメディア「HIP HOP DNA」が主催するライブイベントのために、アメリカを代表する若手ラッパーのヴィンス・ステイプルズ(Vince Staples)が来日した。

 ヴィンスは、2017年6月に発表した2ndアルバム「Big Fish Theory」が各所で“2017年のラップのベストアルバム”と高い評価を受け、一躍トップアーティストの仲間入りを果たした1993年生まれの若手ラッパーだ。しかし、その実力の一方で大御所ラッパーに対する歯に衣着せぬ発言や、アルコールもドラッグも摂取しないストレートエッジな生活、自身のアンチに対して引退を掛けたクラウドファウンディングの実施、とあるインタビューで「音楽を聴くのが嫌い」と応えるなど、癖の強いアーティストが多いヒップホップシーンの中でも随一の“ひねくれ者”としても知られている。

 ライブ直前、同年7月の「フジロック」ぶりに来日した彼にラッパーになった経緯から、楽曲制作へのこだわり、ファッション観まで話を聞いた。

WWD:カリフォルニアのコンプトン出身だそうですが、現在も拠点はコンプトンですか?

ヴィンス:両親がコンプトンの出身だから子どもの頃は住んでいたけど、その後に母親の希望で南のロングビーチに引っ越したから“地元”はロングビーチで、今も住んでいるよ。まぁ実際は、ロングビーチの近くにある誰も知らないような小さな町なんだけどね。そのほうが分かりやすいから。

WWD:両親のルーツは?

ヴィンス:ルーツを聞かれたくないやつもいるよな、俺は平気だけど。母親の祖父母は西インド諸島にあるハイチからの移民で、父親は中米のどこか。どっちもアメリカからそんなに遠くないところさ。

WWD:ラッパーになったきっかけは?

ヴィンス:キッズの頃、友だちとふざけてそれっぽい真似ごとをしているうちにうまくなり、気付いたらなっていたとしか言いようがない。だからラッパーになるのが夢だったとか、なろうと思ってなったとか、そういうわけじゃないんだ。

WWD:幼少期に真似をしていたり、影響を受けた人は誰なんですか?

ヴィンス:そうだな……んー特にいない。俺はあんまりスターに憧れるとかがなくてさ。もちろん、スヌープ・ドッグ(Snoop Dogg、同じくロングビーチ出身のラッパー)のことはすごくリスペクトしているけど、それはラップや音楽的にというよりも、俺たち地元のキッズのためにしてくれたことをありがたく思っているということ。だって世界で最も有名なラッパーの1人なのに、若者向けのフットボール・リーグを作ってくれたり、キッズのために授業を開いてくれたりするんだぜ?彼のそういうところには本当に敬意を抱いているよ。

WWD:では、あなたも将来的に地元に貢献したいと?

ヴィンス:当然さ。いつかそういう立場になれたら、俺が今まで受けてきたことを還元してみんなを助けたいんだ。

WWD:気付いたらラッパーになっていたとのことですが、楽曲制作を始めた頃は覚えていますか?

ヴィンス:はっきりとした時期は覚えていないけど、キッズの頃に曲を作りたいと思ってすぐに作り始めたことだけは覚えている。地元のやつを通してロサンゼルスのいろんなところにコネを持っている人たちに出会い、それが未来につながった。彼らはスタジオを持っていたからすぐに曲作りができたんだ。まぁ人に聴かせられるようなレベルじゃなかったんだけど、とにかく好きだったから趣味としてやっていた。あいつらに出会えたからうまくなれたし、本当にラッキーだったと思うよ。じゃなかったら、今こうして東京でインタビューなんて受けることだってなかっただろうし。

WWD:楽曲制作において、自分なりのテーマやルールはありますか?

ヴィンス:オープンでクリエイティブな姿勢でいること、そして、間違いを恐れずにあれこれ実験してみることが大事だな。あとは、「うまくいかなかったらどうしよう」と心配したり、「ほかのやつらはどんな音楽を作っているんだろう」なんて周囲を気にしたりせずに、“これが好きだ”という自分の直感を信じることにしている。何においても自分を信じて好きなものを作ることって大事だろ?

WWD:日本の音楽シーンでは“(歌詞の)共感”が重要とされることが多いんですが、リリックでは何に重きを置いていますか?やはり実体験?

ヴィンス:毎日の暮らしやそこで感じること、金のために働かなきゃいけないこと、家族や愛する人がいること、近い関係のやつが死んだことーー表面的な違いはあるけれど、根っこにある本質はそう違ったりはしない。リリックは書き方次第で何でも共感できちまうんだ。楽曲を作るうちに、誰かに共鳴してもらえる音楽を作りたいのならば“音楽を消費されやすい形にする必要がある”ということを学んだよ。

人はなぜ音楽を聴くのか、それは共感したいから。この曲はこういう意味だとか、こういう風に聴けとかは俺は言わない。例えば歌詞の内容が、俺の意図とは違って伝わったとしても、君がそう聴いたならそれでいいと俺は思う。何のために音楽を作るかって、みんなに楽しんでもらうためだ。好きに解釈してくれて構わないし、俺はそういうのも含めて楽しんでいる。俺の曲を気に入って聴いてくれているなら、どう楽しんでくれてもいいんだよ。気に入らなかったら、それはそれだ。

2ndアルバム「Big Fish Theory」に収録されている代表曲「Big Fish」

WWD:2ndアルバム「Big Fish Theory」は全体的に暗くて冷たいビートが多いと感じたのですが、これは意識したのではなく好きなように作った結果でしょうか?

ヴィンス:そうだな。世の中には“意識して作ったアルバム”ってのがあるけど、このアルバムは自然とそうなった。音楽を聴くときに癖というか、こういうサウンドが好きっていうのがあるだろ?誰も好みからは逃れられないように、音楽を作るときも同じことが起きるんだ。

WWD:アートワークが個人的にとても好きなんですが、どういう意図が隠されているんですか?

ヴィンス:そう言ってくれてうれしいけど、あれは事故の産物なんだ(笑)。最初は全然違うものを想定していて、透明な水槽で金魚が泳いでいるように、CDケースを水槽に見立ててそこに金魚がいるビジュアルにするはずだったのに、どういうわけか金魚をアップにしたものになっちまった。まぁ出来上がりを見て「あー……もうこれでいこうぜ?」って(笑)。

WWD:3rdアルバム「FM!」のアートワークは、VERDYさんが手掛けていますね。

ヴィンス:彼のことが前から大好きで、友人の紹介で出会ったんだ。いざ会ってみたら、才能あふれるクールなアーティストで、すぐに意気投合して依頼したんだ。

WWD:VERDYさんとはツアーグッズでもコラボしていますね。

ヴィンス:ツアーグッズは、買ってくれるファンにとって何か意味があるものであってほしいと思うし、日常生活で着られず洗えもしないなんてありえない。それに俺は昔から、グッズを売るんだったら利益を出すためにバカみたいに高くするべきじゃないと思っていたし、もし高くするならばそれ相応のデザイン的な価値があるべきだと考えていた。ライブを見に来てくれたファンにはいい音楽だけじゃなくて、いいグッズも購入してもらうことで、より忘れられない体験にしてもらいたいんだ。

WWD:グッズ製作に力を入れているようですが、ファッションは好きですか?

ヴィンス:いや、そこまでファッションは好きじゃない。好きなアイテムはあるけど、デザイナーやブランドなんて全然知らないし、気にしない。誰が作ったとか、どこのブランドってよりも、いいと思ったらなんでも着る、みたいな感じさ。

WWD:USラッパーは派手なファッションやジュエリーを身に着けていることが多いですが、あなたはスタイリッシュでシンプルですよね。

ヴィンス:稼いだら高価で派手なものを身に着けたい気持ちは分かるし、悪いことじゃない。ただ単に、派手な格好は俺の趣味じゃないし似合わない(笑)。

WWD:昨年の「フジロック」に出演した際には、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)と「ナイキ(NIKE)」の“エア プレスト(AIR PRESTO)”を履いていましたね。スニーカーが好きなんでしょうか?

ヴィンス:“エア プレスト”はもらったから履いただけ(笑)。俺も昔はスニーカーが大好きだったよ。でも今は高すぎる。リセールとかさ、もうこりごりって感じ。だって、たかが靴一足が500ドル(約5万5000円)とか800ドル(約8万8000円)もするんだぜ?マジで高すぎる。俺はそんな大金を払う気にはなれないよ。その金があったらもっと違うものがたくさん買えるし、違うことに使ったほうがいい。

今のキッズは、“こういうものを履かないとクールじゃない”と思わされて大変だよな、かわいそうだよ。大事なのは値段じゃないだろ?ファッションって、自分が好きなスタイルの服を着ることでこういう人間だと表現したり、自分にとって心地いい服を着ることのほうが大事なんじゃないのか?


WWD:以前まで「コンバース(CONVERSE)」と契約していましたね。

ヴィンス:「コンバース」とは2~3年ぐらい契約していたんだけど、正直言うと、契約が終わってからは履いていない(笑)。デザインは好きなんだけど、パフォーマンスするには底が薄くてね。でもコラボは本当にいい経験だったし楽しかったから、またスニーカーブランドとコラボする機会があればいいなと思っているよ。

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オオスミタケシが「MCM」とのコラボライン復活を語る 5年ぶりに「フェノメノン」としてカムバック

 ドイツ発ライフスタイルブランド「MCM」は2月4日まで、「フェノメノン(PHENOMENON)」とのコラボレーションライン“MCM バイ フェノメノン”のポップアップストアを伊勢丹新宿本店メンズ館1階に開いている。

 今回の“MCM バイ フェノメノン”は約5年ぶりの復活であり、「フェノメノン」の創業デザイナーであるオオスミタケシ(TAKESHI OSUMI)が「フェノメノン」の名を冠した商品を手掛けるのも約5年ぶり。「フェノメノン」は2015年に「MCM」を手掛ける韓国のソンジュグループの傘下に入り、翌年にオオスミは退任。その後、オオスミは吉井雄一と手掛けるメンズブランド「ミスター・ジェントルマン(MISTERGENTLEMAN)」のデザインに専念してきた。

 商品はアクリルボードを融合させたクラッチバッグやコインケースをはじめ、キャップ、スエット、トラックスーツなど色あざやかな商品をラインアップ。約5年ぶりに “MCM バイ フェノメノン”のコラボラインを手掛けたオオスミタケシに復活の経緯やコレクションに込めた思いを聞いた。

WWD:“MCM バイ フェノメノン”の復活の経緯は?

オオスミタケシ(以下、オオスミ):デザイナーを退任した後も、会社のメンバーとは食事に行ったりとプライベートのお付き合いがありました。そこでまず『フェノメノン』単体としてではなく、『“MCM バイ フェノメノン”として再始動しませんか?』というお声がけをいただいんです。そうして約1年の準備して、このコレクションが完成しました。

WWD:久しぶりに“MCM バイ フェノメノン”をデザインした感想は?

オオスミ:「ミスター・ジェントルマン」では吉井と2人でモノ作りをしているので、僕一人でデザインするのは本当に久しぶり。実はこの“MCM バイ フェノメノン”の制作では、5年前に携わっていたスタッフたちが集まって、チームが再結成したんです。そういう意味でも一番しっくりするモノ作りができました。

WWD:このコレクションに込めた思いは?

オオスミ:「MCM」の有名なヴィセトス柄(モノグラム)はヒップポップにルーツがあって、ストリートのイメージも強い。「フェノメノン」もデザインにヒップホップの感覚があって。そのルーツを忠実に守って、新しいものを出せたらと思いました。

WWD:「ミスター・ジェントルマン」でのモノ作りとの違いは?

オオスミ:“MCM バイ フェノメノン”はデザイナーが僕一人なのでやりやすくはあるんですけど、相棒の吉井と2人で話すことと、僕1人で考えることは全然違う。「フェノメノン」はジェンダーレスで、色も素材も自由。一方で「ミスター・ジェントルマン」は制約はないが、正しい服装のようなマナーがある。でも今回は5年前の「フェノメノン」とは一味違う今の僕を出せたらいいなと思って取り組みました。

■MCM by PHENOMENON POP-UP STORE

会期:1月22日〜2月4日
場所:伊勢丹新宿店メンズ館1階=プロモーションスペース
住所:東京都新宿区新宿3-14-1

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【動画】WWDJAPAN ENGLISH Vol.5 “売上高”や“営業利益”は英語でどう言う? 海外首脳にデータを報告する幹部職必見

 「WWDJAPAN ENGLISH」は、世界に羽ばたきたい業界人に向けた英会話番組です。RIZAP ENGLISH(https://www.rizap-english.jp/)全面協力のもと、「WWD JAPAN.com」にアップした記事の英訳をきっかけに、「こんなコトが英語で言えたら!!」「あの時、英語のフレーズが浮かばなかった!!」というアナタの悩みに応える必要最低限の英会話を学びます。

 5回目は、全編英語でお送りする上級編(安心してください、全部日本語の字幕付きです)。ユナーテッドアローズの売り上げにまつわる記事から、「売上高」や「営業利益」などのビジネス英語を学びます。

 動画の下にも、翻訳前の日本語、番組中に読み上げた英語を掲載しています。

UAの11月度は増税後の落ち込みから持ち直し
UA’s sales are picking up after slump from tax hike

大手SPA、セレクトショップ、専門店の2019年11月の売上高(既存店ベース)は、気温が下がりきらなかったことで冬物衣料の動きが鈍く、前年実績を割り込んだという企業が目立った。
Among major SPAs, boutiques, and specialist stores, the same-store sales for November 2019 saw a sharp decline compared to the previous year's results. A delay in cooler temperatures this season caused a slump in the sales of winter apparel.

ユナイテッドアローズ(UA)の小売りとECの既存店売上高は前年同月比1.6%増。
The same-store sales of United Arrows (UA), both in-store and online, increased 1.6% compared to last November.

引き続き「オン、オフ兼用できるキレイめカジュアルがウィメンズ、メンズともに売れている」(広報担当者)という。
“Fashionable and casual clothes that can be worn for both business and leisure are still popular among both women and men,” a spokesman said.

高額のダウンアウターなどは増税前の購入が多かったが、ウィメンズは「マウンテンパーカやウールのラップコートが売れており、アウターの動きは悪くはない」。
Much of the expensive outerwear, such as down coats, were purchased well before the tax increase, but women's “mountain parkas and wool wrap coats are still selling well, so the outerwear sales are not looking too bad.”

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片寄涼太がオフショット写真付きで独占寄稿 「ロエベ」秋冬メンズレポート&パリの食事&買い物日記

 片寄涼太はこのほど、自身にとって3回目となるパリに赴き、「ロエベ(LOEWE)」の2020-21年秋冬メンズ・コレクションを鑑賞した。そこで「WWD JAPAN.com」は、片寄にコレクションレポートを依頼。オフショットの写真付きで、彼の「ロエベ」レポートとパリ日記を独占公開する。

 自分にとって3年半ぶりのパリ・メンズ・ファッション・ウイークで、「ロエベ」のショーには初めてご招待頂きました。自分なりの目線でのパリレポートを「WWD JAPAN.com」独占で掲載して頂きます。

 「ロエベ」ショーの前日には、メゾンのパリ旗艦店にお邪魔させて頂きました。店のオブジェは楽しく温かくて、スタッフはスペインならではの明るさ。居心地が良く、思わずたくさんお買い物してしまいました。買ったのは、ブラウンの一枚皮のロングコート。今回のパリの思い出にもなる一生物のアイテムで、パリから帰る日に早速着ちゃってました。

 当日、新しいコレクションをパリで、しかも目の前で見ることができるなんて、やっぱりとってもワクワクします。会場に向かう車からニヤニヤが止まりません。会場は例年同様、パリのユネスコ本部。ファッションだけでなくアートやカルチャー、ライフスタイルを重んじる「ロエベ」だからこその会場選びです。会場内のランウエイは木造の黒い橋のようなデザイン。シンプルですが、だからこそ新たなコレクションのルックや細かなディテールまでが明確に見える工夫のように感じました。

 "Pretty Boy"をBGMに明るい世界観で始まったショーは、まるで太陽が思いっきり満ちたようなパワフルなエネルギーに溢れた雰囲気。まさに今回のパリの天気のような「ロエベ」2020-21年秋冬メンズ・コレクションがスタートしました。フェミニンの雰囲気も強めな今回のコレクションで印象的だったのは、女性のドレスっぽく見える、とても煌びやかなエプロンを身に纏ったルック。また象をモチーフにした「ロエベ」の代表的なバッグは、キラキラにデコレーションされていてすごく素敵でした。

 個人的に「これは気になる!」と思ったアイテムは、ハットとバケットの中間のような小さめの帽子。こちらもちょっとした装飾が幾何学的にあしらわれていてすごく可愛く、自分もワンポイントにかぶってみたいアイテムです。クリエティブディレクター、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)の「ロエベ」は素敵な色づかいが特徴。首元と袖に輝くストーンが装飾された鮮やかな黄色のニットは、ショーが終わっても頭のなかに強烈に印象に残るアイテムでした。

 素敵なショーはあっという間に終わり、ジョナサンとの対面。聞きたいこともイメージしていたのですが、彼の時間も限られるなかでの対面……。前日にある雑誌で「ロエベ」のファッションストーリーを撮影をしていたので、スタッフに無理をお願いして、撮影した写真を事前にもらっておきました。案の定、ジョナサンに挨拶するとすぐに記念写真の2ショットに。「なにかもっとコミュニケーションを……」と思い、「昨日、日本の雑誌のために撮影した写真を見てくれない?」とおもむろに自分の携帯を取り出し、写真を見せてみました。とても褒めてくれて、改めて記念撮影に応じてくれました。最初の記念撮影よりもグッと距離が縮まったような雰囲気で、自分のインスタグラムにもポストした、とてもお気に入りの写真になりました。「ロエベ」のショーで感じたのは、ブランドロゴを大々的に打ち出さないこと。あくまでジョナサンは自身のクリエーションに興味を集中させていて、仕事への取り組み方がすごくシンプルなんだなあと思いました。

 これを終わりにせず、この縁を大切にして関係性を深めていけたらと思います。彼が来日した際は、また別の形でお会いできたら嬉しいし、今後のファッションショーにも伺えたら嬉しいです。「ロエベ」はファッションだけでなく、アートのアワード「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ」などにも取り組んでいます。自分もアートにとても興味があるので、今後はそんなフェーズでも関わりを深く持つことに意欲を燃やしたいと思います。

 寒い寒いと身構えていたパリは天候にも恵まれて、自分が滞在した約3日間ほぼ雨が降らず、毎日青空を見る事ができました。雨の予報だった日まで晴れてくれて、それは、まるでパリが歓迎してくれているかのよう。こんなことがあると、余計パリが好きになりますね。パリは今回が3度目。雰囲気や食事など、好きなものも沢山あります。基本ファッション以外では「食べること&飲むこと」が趣味。特にワインがとても好きなので、パリではワインを頂くのも楽しみでした。滞在中は運良くスタッフの方に予約していただき、「アレノ・パリ・オ・パヴィヨン・ルドワイヤン(Alleno Paris au Pavillon Ledoyen)」というミシュラン3つ星のフレンチのお店にも伺うことができました。前菜のトリュフに包まれたサラダから、メインのお肉まで、言葉に表せないほどの美味しさ。ペアリングしたワインも、泡のキメがすごく細かいキリッと冷えたシャンパンからお食事にきちんとマリアージュ。最後のエスプレッソまで全て完璧で、自分にとって最高のご褒美のようなディナーでした。

 パリの旅は自分のファッション感や美的感覚を養ってくれる時間で、自信に繋がる時間でもありました。パリにもまた来られたら嬉しいし、その時はさらに3つ星が似合う男性として帰ってこよう!!と心に決めました。

【片寄涼太が気になったルックは、コレだ!!】

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“記事は足で書け”がやっぱり好き エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年10月18日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

“記事は足で書け”がやっぱり好き

 “記事は足で書け”と言われますが、ニュース媒体である「WWDビューティ」も同様です。とはいえ、ビューティ業界はファッション業界と比べても発表会が多いですし、発表会では情報が溢れているためそれで記事は書けます。さらに先輩方が培ってきた各社との信頼関係から情報の先出しをしてくれる企業も少なくありません。そんな中で“足で書く”が自分自身の中で薄れてきているのでは……と危惧していました。

 そんなモヤモヤ感を抱いていた中、久しぶりに大型の見本市に行ってきました。ファッションや食、サービス業などが一堂に会したものでしたが、やはりじっくり見るべきはビューティでした。全てのブースを取材できるような出展数ではないとき、選ぶのは自分の琴線に触れるか否かで決めます。商品だったり、ブース全体の印象だったり、対応している人の雰囲気だったりと観点は違いますが、完全に自分の“好み”です。あるブースの前で足が止まり、話を聞いてみると、皮膚疾患の医薬品を得意とする医薬品製造メーカーがオリジナル化粧品ブランドを手掛けたものでした。

 まあ、ここまではそう珍しくないことなのですが、さらに話を聞くと創業地の富山県立山市に東京ドーム2個分の約10ヘクタールの複合型ウエルネス&リトリート施設を開業するというのです。そこにはハーブ園やアロマ工房、レストラン、イベントスペース、トリートメントスペース、宿泊施設が含まれると言います。しかも、建物の設計は隈研吾氏が手掛けるとも。なんだか聞いていてワクワクする話でしたし、なぜ富山に大型施設を建築するのかも気になりました。後日、詳細を聞かせてもらいたい旨を伝え、編集部に戻りました。帰社して早々に同僚部員にその思いを熱く伝え、あらためて取材をさせてもらったものが「WWDビューティ」の紙面や「WWD JAPAN.com」に掲載されています。

 記事を書いてくれたのは私の熱すぎる思いを聞かされた部員なのですが、冷静かつ客観点に詳細を伝えてくれています。足で稼いだ情報を部員と共有でき、それが形となるのは喜びでもあるわけです。話は少しズレますが、企業やPR会社の方が新製品の紹介に来てくださる“キャラバン”があるのですが、「WWDビューティ」編集部は、個別に聴いた内容も皆で共有していることが多いのでよく驚かれます。他の媒体では、極端なことをいうと各編集員個々にキャラバンしないと情報が伝わらないというのです。その点、得た情報は共有して全員でアップデート、知識を蓄積できるのが「WWDビューティ」編集部のよい慣習だと感じています。これからも、編集部員一丸となって“足で書いた”記事を伝えていきます。

BEAUTY ADDICT:メイクやスキンケアはもちろんのこと、ヘアケア、フレグランス、オーガニック、インナービューティ、美容医療、イベントまでさまざまなジャンルから、注目トピックを配信するメールマガジン。ビューティアディクト=美容大好き人間に向けた、今流行りのモノやコト、知っておきたいトピックスを厳選してお届けします。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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“フェムテック”を集めた大丸梅田店「ミチカケ」、オープン2カ月で売り上げ減も客数伸長の手応え

 大丸梅田店に11月22日にオープンした、女性のリズムに寄り添う”新ゾーン「ミチカケ(MICHIKAKE)」は、女性のさまざまな問題をテクノロジーで解決する“フェムテック”関連を取りそろえている。フィメールとテクノロジーを掛け合わせた“フェムテック(Femtech)”は今世界で大きな注目を集めているが、日本ではフェムテック関連製品を集積した売り場は少ない。オープンから約2カ月経ち、改めて売り場担当者に話を聞いた。

「セクシャルグッズは
特殊な市場ではない」と気づいた

 婦人服のヤングゾーン約893平方メートルに作られた「ミチカケ」は、日本初出店7ブランド、関西初の4ブランドを含む18ブランドの17店舗が出店している。立ち上げの理由は訪れやすい大阪駅直結という立地に対して新客が少ないことのほか、アパレル不振があった。 “脱服飾”はほかの百貨店でも取り組んでおり、その多くは化粧品や雑貨の売り場に転換している。しかし同店は化粧品や雑貨のほか、他店にはない個性として生理周期に着目したベイクルーズの「エミリー ウィーク(EMILY WEEK)」や、女性のための漢方をそろえる「デイリリー(DAYLILY)」などのほか、テンガの女性向けブランド「イロハ(IROHA)」、月経カップや経血吸収型のサニタリーショーツ、セクシャルグッズなどを取り扱う「ムーンド バイ エルピーシー(MOOND BY LPC)」など、 “性と生理”に関するショップを取り入れ、日本では類を見ないフロア構成が大きな話題になった。

 「きっかけは商談でお会いしたテンガさん。最初は『アダルトグッズはちょっと……』と思ったし、社内でもずっと反対の声がありました。しかし夫婦で一緒に家事をやったりお酒を飲んだりといったコミュニケーションはあっても、性を語り合うことは少なくて悩んでいる人は多い。女性向けの『イロハ(IROHA)』は非常に真面目に作られていて、夫婦愛を考えた時に取り扱う意味があるのではないかと思い、社長に直接プレゼンをして18年8月に『イロハ』のポップアップストアを開きました」(澤井裕之・営業推進部販売促進担当)。

 年配客も多い老舗百貨店が取り組むには大胆なテーマであるため「オープンしてみたものの正直、お客さまの反応が心配だった」という。流行感度の高い消費者の目に止まればと思っていたが、「1人目の購入者は40代の、ごく普通の女性だったんです。肩ひじを張っていたのはわれわれだけで、特殊な市場ではないと気づくことができました」。結果、『イロハ』のポップアップストアは8月の催事売り上げ1位に。その後も2回ポップアップを行い、対面販売ならでは相談や提案が行えることもあり、カップルや夫婦のコミュニケーション&課題解決という意味でも機能し始めていた。「これまで目を向けてこられなかった分野でも、真面目にやればお客さまにご理解いただけるんだと感じました」。

“フェムテック”を取り扱う
「ミチカケ」の存在意義

 この経験が、“来店客の悩みを解決する売り場“という「ミチカケ」構想の下地となった。「ほかにお客さまの悩みはなんだろうと考え、女性なら誰しも経験する生理関連に行き着きました。そうは言っても、みんなECで買うのでは?という話にもなりましたが、蓋を開けてみたらお客さまは普通に購入してくださいました」(佐藤聖海・営業2部プロモーションスタッフ)。

 とはいえ売り上げを見ると、オープン後の2カ月は元々のヤング服飾売り場と比べ、前年同月比で2割減となった。服飾と比較すると客単価が下がることが主な理由だが、客数と新客は伸長しているという。また、「ミチカケ」内にある大丸松坂屋グループのコスメセミセルフショップ「アミューズ ボーテ(AMUSE BEAUTE)」もオーガニックブランドを増やすなどして「ミチカケ」に寄せた品ぞろえにしたことで買い回りが増加したほか、服飾も中価格帯の売り上げが伸びるなど寄与している。

 「『ミチカケ』は売り上げだけが目的ではく、お客さまに寄り添うことが目的なので、客数の伸長は目的に沿っています。オープンな場でほかの人の声も聞きながら購入できることが嬉しいという声も多く、娘の月経を気遣ってショーツや漢方を購入するお母さまなどもいらっしゃる。進物需要も見出せていて百貨店としても良い傾向だと思います」と高橋知世・営業2部サブマネジャー婦人服担当。澤井・営業推進部販売促進担当は「将来的には性や生理以外にも切り込んでいきたいけれど、無理やり拡張しても意味がない。まずは今のこの状態を良いものにすることを重視し、真摯に取り組んでいくつもりです」と語り、今後は来店客の悩みに応えるイベントにも力を入れると述べた。

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編集長はオートクチュールで何した? 初日はショーもディナーもメイク用品もとことん「ディオール」

 こんにちは。「WWDジャパン」編集長の向千鶴です。今週はパリで開催中の2020年春夏オートクチュールの取材日記をお届けします。突然ですが弊紙のルーツはデザイナーの森英恵さんにあります。森さんは1960年代にNYに進出し米国の「WWD」と出会い、77年にはパリ・オートクチュール協会からアジア人初の正会員として認められました。女性がバリバリ働くこと自体が珍しかった当時に臆せず海外へ出ていった彼女のフロンティア精神があるから今がある。だから受け継いだ我々もオートクチュールを大切にしています。

10:00
「スキャパレリ」で
オートクチュールがスタート

 オートクチュールの初日はいつも「スキャパレリ(SCHIAPARELLI)」から始まります。ローマ生まれのエルザ・スキャパレリ(Elsa Schiaparelli)が1927年にスタートした歴史あるブランドで、現在のアーティスティック・ディレクターはアメリカ人のダニエル・ローズベリー(Daniel Roseberry)。ローズベリーは戦中・戦後に活躍したスキャパレリについて「彼女の偉業の一つは、混沌とした時代に人々はファンタジーを必要とすることを理解していたこと」と言っていますが、今の時代もそれが当てはまるな、とこの夢見るドレスを見て思います。

12:00
頭脳派「イリス ヴァン ヘルペン」の今季は神経解剖学

 異分野とファッションをつなげて独特の世界観を切り開いているのが「イリス ヴァン ヘルペン(IRIS VAN HERPEN)」です。今回の着想源はスペインの神経解剖学者サンティアゴ・ラモン・イ・カハル(Santiago Ramón y Cajal)とヒドロ虫。「ってそれ誰で何!?」ですよね。短く説明するのは困難なので興味が沸いた方はぜひ調べてください。そして、もう一度写真や下記の動画を見てください。きっと“なるほど”と思うはず。自然の摂理に則ったものは美しいのです。

14:30
女性の体の美しさを引き立てる
「ディオール」

 「ディオール(DIOR)」のマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuli)=アーティスティック・ディレクターはこれまでもショーを通じて、フェミニズムに関係する文学者や芸術家に光を当ててきましたが、今季はアメリカ人アーティスト、 ジュディ・シカゴ(Judy Chicago)にフォーカス。シカゴの言葉“What if Women Ruled the World ?” (もし女性が世界を支配したなら?)をテーマにし、主に会場装飾に取り入れました。ロダン美術館の庭園に立てたまあるいテントは、シカゴの巨大な作品でありインスタレーションという位置づけです。オートクチュールを買いにきた世界の富裕層はきっとシカゴの思想に影響を受けるでしょうし、考えさせられるはず。美と智を伴う壮大なアクションです。

動画で布の動きをぜひ見てください

16:00
ロダン美術館でしばし考える

 今年のマイ・テーマは、“セカセカしないで最後までよく考える”。ならばロダン美術館に来たのだから彫刻「考える人」を見なくちゃ、とショーの後にしばし滞在しました。すると意外な出会いが!

17:00
ウワサの
ギャラリー・ラファイエットを
パトロール

 シャンゼリゼに昨年春オープンした新しいコンセプトのギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)をパトロール。ポップアップでガンガン打ち出していたのは「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」でした。

21:00
「ディオール」のディナーで
心理学者と語らう

 今日はとことん「ディオール」デーで、夜はディナーに出席しました。一本の長~いテーブルに160人が着席する幻想的なテーブルセッティングで、私の両隣はいずれもローマから来たマリア・グラツィアの友人だそう。ひとりは心理学者でひとりは(多分)アーティストで、スノッブという表現からはほど遠いナチュラルで優しい人たち。こういう友人関係がマリア・グラツィアの懐の深い感性を育んでいるのだな、と思ったのでした。

おまけ
「ディオール」の化粧品を
愛用しています

 「ディオール」デーだからという訳ではなく、日頃からメイク用品は「ディオール」を愛用しています。なぜなら「ディオール」メイクアップ クリエイティブ & イメージ ディレクターであるピーター・フィリップス(Peter Phillips)の仕事が好きだから。彼が作り出す繊細なトーンや質感が好きで出張の度に羽田空港の免税で買っています。今回買ったのはこれら。アイシャドーに入っているパープルの絶妙なトーンが気にいっています。

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話題の米ビューティ「グロシエ」 ミレニアル世代起業家のシンデレラストーリー 鈴木敏仁のUSリポート

 アメリカ在住30年の鈴木敏仁氏が、現地のファッション&ビューティの最新ニュースを詳しく解説する連載。今回は米ビューティ業界で話題を集めるD2C生まれの化粧品ブランドを紹介する。

 アメリカのビューティ業界を俯瞰したときに、顕著なトレンドは3つあると考えている。

 1つめはエコやサステナビリティ意識の高まりから生まれたクリーンビューティ。この表現の上位概念はクリーンライフで、クリーンなライフスタイルを支えるのがクリーンビューティやクリーンイーティング、というような言い回しとなる。プロピルパラベンやフタル酸エステルといった化学成分を使わない、動物実験をしない、環境にも配慮しているといったことを求める人が増えている。

 2つめはメイクアップからスキンケアへ。化粧品をできるだけ使わないというクリーンライフ志向がベースにあるのだが、もう一つは“ありのまま”が良いというここ数年急速に顕在化している消費者意識も背景にある。広告モデルの肌のシワやたるみなどを加工せずそのままあえて使う企業が増えているのもそういった意識の変化が背景にある。

 そして3つめがD2C(またはデジタルネイティブな)ブランドの台頭だ。ご存知の通りアメリカではデジタルチャネルからスタートするメーカーや小売企業が多いのだが、ビューティでもご多分に漏れずデジタルブランドが増えていて、そのあおりで既存のメガブランドの売り上げがスローダウンしている。アルタビューティ(ULTA BEAUTY)のメリー・ディロン(Mary Dillon)CEOは直近の四半期決算で、「マスもプレスティージも大手ブランドの伸びはネガティブだ」と発言していて、大手メーカーの伸びの鈍化は小売企業にも影響を及ぼしている。

 このD2Cなビューティブランドで先頭を走っているのがグロシエ(GLOSSIER)だ。

設立わずか4年で売上高1億ドル超え

 グロシエの創業は2013年、最初の商品が市場にお目見えしたのは14年である。売上高は非公表なのだがメディアによる推定値は一昨年の時点で1億500万ドル(約115億円、前年比65.9%増)なので、わずか4年間で1億ドルを超えたことになる。昨年3月には1億ドルの資金調達に成功、このときの企業評価額は12億ドル(1320億円)でユニコーン企業リストに仲間入りを果たした。

 ユニコーンとは投資業界用語で、企業評価額が10億ドル以上(約1100億円)、創業10年以内で未上場のスタートアップ企業のことを言う。参考までに昨年はグローバルで430社がこの基準に適合しており、私がリストをチェックする限りアメリカ212社、中国151社で、2国で90%以上を占め、一方、日本には3社しかいない。日本経済の弱体化を垣間見るようなリストといえるのではないか。

 17年にニューヨーク、翌18年にはロサンゼルスに店舗をオープン、今のところ店舗はこの2店舗までで、あとは短期間営業のポップアップストアを活用している。ノードストロム(NORDSTROM)が新興ブランドを積極的に導入しようとしていることは前回書いたが、グロシエにもアプローチして昨年末の歳末に7店舗でポップアップストアを展開している。とうとうノードストロムという巨艦も無視できないブランドになったと騒がれたものである。

 NY1号店に一昨年末に訪問したときのことだ。繁盛しすぎて入場制限をしていたのだが、並んでいたら前後の女の子たちが「待ちきれない!」と騒いでいたのを目の当たりにしたのであった。さらにファザードを写真に撮り大学生の娘2人に送ったところ即座に買い物リクエストが返信されて、このブランドが若年層に強烈に支持されていることを実感するという経験をしたのであった。

 長くなるので省くが店のデザインもよく考えられている。ワクワク感、カワイイ!感、などなど仕掛けが随所にあり、ブランドイメージを店頭で表現することに成功している。

 創業したエミリー・ワイズ(Emily Weiss)はまだ30代前半で、若い女性起業家という意味でも大きな注目を浴びている。エステー・ローダー(Estée Lauder)やボビィ・ブラウン(Bobbi Brown)といったビューティ業界で大成功した女性たちと重ね合わせて、次世代の女性経営者という言い方をするメディアすら出てきているほどだ。この前世代の創業者達は当然のことながら時代にマッチした商品を開発しマスに受け入れられて、それを普及させるツールが口コミや紙メディアだったわけだが、これをSNSというデジタルツールに置き換えて成功したのが、グロシエが代表する新世代と言うことができるだろう。

 エミリー・ワイズは大学時代からファッション系の仕事をしていて、卒業後は「Wマガジン(W MAGAZINE)」と「ヴォーグ(VOGUE)」でアシスタントとして働いている。その傍らはじめたのが女性のコスメや肌の手入れといったビューティのルーチンを紹介するブログで、著名人のバスルームの中にまで入っていって洗面台やキャビネットの写真付きで記事を書き、これがウケて1カ月に1000万ページビューを超えるようになり(平均は135万ページビュー)、ここから自ら商品を開発し売るという道へと入っていった。

 つまりブロガー、またはインフルエンサーの手によるブランドなのである。

 マーケティングもデジタルしか使わない。フェイスブックのライク数は30万、インスタグラムのフォロワー数は256万。スラックにフォロワーを誘い、商品とブランドに関するフィードバックを参加者と共有し、さらにディスカッションを重ねて、新商品開発に生かすということまでしている。インスタグラムの自己紹介には「People-powered beauty ecosystem」と書かれている。「お客が作るビューティエコシステム」、会社とフォロワーが情報を共有し議論しフォロワーの意見が商品になるというループということを言っている。SNSを介したお客との距離感の近さがこの企業の原動力となっているのである。

大手コングロマリット入りか、上場で独立維持か

 世界のビューティ業界は大手7社がコングロマリットとして支配している。ここ数カ月でいえば、資生堂がD2Cのドランク・エレファント(DRUNK ELEPHANT)を買収し、コティ(COTY)がインフルエンサーブランドのカイリー・コスメティックス(KYLIE COSMETICS)を買収したが、このように大手メーカーは新興ブランドを買収してポートフォリオに組み込んでしまうのが常道となっている。自社で開発できない、開発しても若年層にアピールできない等々のハードルがあるので、買収してしまう方が早いからである。買収される方も投資企業が出口戦略としてそれを求めているという理由もある。

 ユニコーンの仲間入りしたグロシエには年内に上場かといううわさが出ているのだが、果たしてどうだろう。このまま独立企業として突き進むのか、はたまた大企業に取り込まれるという良くある道を選択するのか、注目が集まっている。

鈴木敏仁(すずき・としひと):東京都北区生まれ、早大法学部卒、西武百貨店を経て渡米、在米年数は30年以上。業界メディアへの執筆、流通企業やメーカーによる米国視察の企画、セミナー講演が主要業務。年間のべ店舗訪問数は600店舗超、製配販にわたる幅広い業界知識と現場の事実に基づいた分析による情報提供がモットー

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1月24日発売の“リーバイス エナジー”をひと足先に体験してみた

 「リーバイス(LEVI'S)」が血液循環を促す機能ジーンズ“リーバイス エナジー(LEVI'S ENERGY)”を1月24日に発売――という記事を2019年12月13日にアップしました。おかげさまでなかなかに反響をいただき、「リーバイス」から「体験してみませんか?」と声を掛けていただきました。もちろん答えはYES!です。

 僕が選んだのは、テーパーが利いた502フィットのジーンズ(1万3000円)とデニムジャケット(1万4000円)のセットアップです。上下で着ることで、効果を最大限に享受したいので。

 1月10日にリーバイス 原宿フラッグシップストアで商品を受け取り、11日から着用しています。経営トップのインタビューがある日などを除いて、可能な限りほぼ毎日着ています。直接肌に触れた方がいいということで、寒風吹きすさぶロケでも“ヒートテック”なしで臨みます!

 そんな涙ぐましい「リーバイス」愛とともに前進しましたが、21日時点で実感できる変化はありません。そりゃそうですよね、そんな即効性があったら逆に恐いですもん……。

 それに被験者にも大いに問題があると自認しています。中性脂肪、LDHコレステロール、尿酸値が基準値オーバー(中でも中性脂肪は上限の約3倍!)の成人病まっしぐらな“三冠王”なので……。でも、そんな血液ドロドロの僕だからこそ、“リーバイス エナジー”にすがりたいのです!

 運動というものを生まれてこの方(42年間)まるでやってこなかった僕でも、“(結果を出すために)少しは注意しなくちゃ”と思わせただけでも“リーバイス エナジー”の勝ちなはず。普段なら、表参道から明治神宮前までのひと駅も地下鉄に乗ってしまいますが徒歩移動に変え、意識的に野菜も多めに摂取しました。なにより“着たからには外に出よう”と思えるんです。これって寝るのが大好きな出不精の僕からしたら画期的変化です!

 “リーバイス エナジー”の詳細については既報の記事に譲りますが、米リーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS)のテストによると、TcPO2(経皮酸素分圧測定)と呼ばれる数値が約10%アップしたとか。なので、もう少し着用してみようと思います。

 そのうえで(主に小言を)少し。機能素材“セリアント(CELLIANT)”をブレンドしているためか、個人的にはき慣れないストレッチ素材のためか、生地は薄いものの硬さというかプラスチックのような、コットン100%にはない質感があります。そして独特の薬品臭も。僕も、念のため尋ねてみた娘も「嫌いじゃない」ですが、一日中着用しているといささか気になります。一方で、あらゆるポケットが大きいのはよい点。“ちょっとそこまで”ならバッグ要らずです。

 ちなみにデニムはトルコの生地メーカー、オルタ・アナドール(ORTA ANADOLU)が担当。なるほど、ここでもトルコですか……。というのもトルコ企業で、世界最大のデニム生地メーカーであるイスコ(ISKO)も19年に、世界初の圧縮技術によって血流改善を目指す“イスコ バイタル(ISKO VITAL)”を開発・発売しています。世界ナンバーワンのジーンズメーカーとデニム生地メーカーが“健康”に注目しているのは、とてもおもしろい符合です。

 デニム業界には数年来の閉塞感があります。新たな突破口が見えたこと自体が久しぶりなので、この火を絶やさないよう、メディアに携わる人間として引き続き注視したいと思います。

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カリスマ創業者の後 エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年10月3日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

カリスマ創業者の後

 老舗セレクトショップ、サンモトヤマの自己破産申請のニュースを聞いて、小売業の格言を思い出しました。

 「店は客のためにあり、店員とともに栄え、店主とともに滅びる」

 小売業に関する雑誌や書籍の出版社、商業界の創業者である倉本長治氏が戦後まもない頃に遺した言葉で、小売業の本質を突いた言葉として語り継がれています。ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長も著書の中で「好きな言葉」だと述べています。

 「店は客のためにあり、店員とともに栄え」は説明不要でしょう。「店主とともに滅びる」は経営者の失策や、創業の理念が揺らいだり、時代に対応できなくなったりすることを指します。

 サンモトヤマの創業者である茂登山長市郎氏は、戦後の復興期から高度成長期に「グッチ(GUCCI)」「エルメス(HERMES)」など欧州の高級ブランドを日本に紹介したカリスマ経営者であり、小説のモデルになったりもしました。90歳を過ぎても会長として現役を貫いた茂登山氏でしたが、2017年に96歳で死去。その後、同社は今年3月に長野県の実業家に全株式を譲渡したものの、5月にはそれを買い戻しました。信用不安の情報も飛び交い、ついには今回の自己破産に至りました。茂登山氏の死去から2年も経たないうちの急展開でした。

 もっとも同社の低迷は、1990年代以降に欧州の高級ブランドが次々に日本法人を設立して、直接上陸を果たした頃から始まっていました。帝国データバンクによると、同社の売上高は88年7月期が86億円、2002年7月期が67億円、18年7月期は29億円で赤字に陥っていました。カリスマの死去で求心力が失われ、山積していた問題が一挙に噴出したのかもしれません。

 同社に限らず、小売業やアパレルは創業者の強烈な個性を原動力に発展し、カリスマが退場した後に競争力を失ってしまうケースが多いといわれています。消費者相手のビジネスは他の業界よりも変化が激しいからでしょう。サラリーマン経営者の常識的な手腕では対応できず、時代に対する嗅覚に優れて、多少強引でも自分の意思を押し通せるカリスマ創業者が結果として消費者の支持を集めてきました。

 しかし企業であるからには「店主とともに滅びる」わけにはいきません。社長の最大の仕事は後継者の育成とも言われています。それは多くのファッション企業にとっての課題です。

MARKET VIEW:ファッション市場で日々発信されるホットなニュースを、「WWDジャパン」のビジネス担当記者がコンパクトに解説するメールマガジン。ニュースを読み解くヒントを提供します。

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ZOZO澤田新社長が語った“脱・前澤路線”  原点回帰で「ファッション強化」

 ZOZOがヤフー(現Zホールディングス)の子会社化と前澤友作・前社長の退任を発表して4カ月近くが経った。前澤氏の後を継いだ澤田宏太郎・社長は“ZOZOイヤー”と掲げる2020年に突入する中で、どのように舵を取っていくのか。「“ZOZOイヤー”は2つのキーワード、3つの方針をもとに動くことになる」と語る澤田社長へのインタビューから、「ゾゾタウン」の行方やヤフーとの今後の関係、そしてZOZOの未来を探った。

WWD:ZOZOの社長に就任してから4カ月弱。新社長としてどのようなことを行ってきた?

澤田宏太郎ZOZO社長(以下、澤田):ヤフーの傘下に入るに当たって経営陣で事前に決めた計画をこなしてきたほか、“ZOZOイヤー”でもある20年の計画を策定していた。社内での意思決定体制においても、前澤(友作・前社長)時代のトップダウン方式から、ボトムアップ方式に切り替えるように努めている。これまでは社員みんなが前澤の決済を取るために動いていた。未だにその名残があり、「どうすれば良いか」と私が社員に聞かれることもあるが、「自分で決めて欲しい」と言っている。もちろん時間はかかるが、自発的な組織体制を作ることで、事業展開のスピードは速まっていくと考えている。

WWD:昨年9月の会見では「前澤氏はZOZOの持ち株を全て手放す」とされていたが、未だに株の約17%を保有している。大株主として経営に関わることはないのか?

澤田:経営に関わることは全くない。「株主として応援する」とは言っていたが、本人も経営から距離を取ることを徹底している。私も現時点では経営者の覚悟として、基本的に連絡を取らないようにしている。

WWD:昨年9月12日の会見では前澤氏が「社長打診は会見の一週間前だった」と言っていたが、本当か?

澤田:本当だ(笑)。彼特有のインスピレーションが働いたのだろう。ただ、ヤフーの下で何ができるのか、ということは経営陣の間でかなり話し合っていたので、就任後もそれほど慌てふためくようなことはなかった。

WWD:具体的には、ヤフーの下でどういったことを行っていくつもりか?

澤田:既に発表されている通り、まず「ペイペイ(PAYPAY)モール」が大きな存在だ。ヤフーが重要視している「ペイペイモール」を伸ばしていく中で、「ゾゾタウン」の出店ブランドがどれだけモールに出店してくれるかがポイントとなる。さらには集客、物流、「ペイペイフリマ」と「ゾゾユーズド」のシナジーなど、出来ることは数多くある。

WWD:「ペイペイモール」に「ゾゾタウン」として出店したが、ブランドの集まり具合は計画通りか?

澤田:計画以上で、「ゾゾタウン」の出店ブランドの9割近くが「ペイペイモール」に出店してくれている。改めてブランドとのコネクションや信頼関係の中でわれわれは生きており、それこそがZOZOのバリューであると感じた。私自身、社長に就任して以降、20社ほど「ペイペイモール」の営業も兼ねて挨拶に回ったが、不安を抱いていたブランドも少なからずあった。その不安を払拭するために、ZOZOの営業部隊が丁寧にブランドに説明し、納得してもらった結果が出ている。

2020年、ZOZOは
“ファッション”を打ち出す

WWD:2020年はどうする?

澤田:“MORE FASHION”と“FASHION TECH”という、2つのキーワードをもとに動いていくことになる。どちらのキーワードもZOZOの強みとして漠然とは理解していたが、もう一度明確にして打ち出していきたい。“MORE FASHION”では、当社がIT企業ではなく、あくまでファッション企業であると考えていることに起因する。ZOZOは世界的に見てもファッション好きの社員が多い企業だと自負しており、それを徹底的に生かしていきたい。2つ目の“FASHION TECH”では、ZOZOテクノロジーズに集まった優秀な人材と、コーディネートアプリ「WEAR」を中心としたデータやZOZOの購買履歴といったデータの“宝の山”を生かす。

WWD:具体的にはどのような施策を行っていくのか?

澤田:3つの方針がある。1つ目は「ペイペイモール」と「ゾゾタウン」におけるターゲットの明確な差別化だ。国内における10~50代の消費者のデータを独自に取ったところ、ファッション好きが全体の15%、あまり興味がない人が35%、その中間が50%だった。さらに各層の市場規模を算出すると、ファッション好きが2.2兆円、中間が2.7兆円(ECとリアル含む)。「ゾゾタウン」はこれまで、ボリュームのある市場を取り込むことで成長してきたが、ファッション好きの層は取り込めておらず、中途半端な立ち位置になっていた。今後は「ゾゾタウン」でファッション好きの層を取り込み、中間層を「ペイペイモール」で狙っていく。目標数字は明かせないが、今の状況が「この程度?」と言えるくらいには「ゾゾタウン」の会員数や購入者数を増やせると思っている。

2つ目の方針は、カテゴリーの強化だ。テクノロジーの力でユーザーが感じているハードルを下げ、買いやすくすることでカテゴリーの強化を図る。まずはリリースが遅れていた、“ゾゾマット”を2月にスタートし、“ZOZOシューズ”という屋号を掲げ、シューズのカテゴリーをグレードアップしていく。今後も “ZOZO〇〇”を続々とローンチしていく計画だ。

そして3つ目に、BtoB事業の強化がある。これまではECの枠の中で支援してきたが、リアル店舗の支援もできると考えている。まだ構想段階だが、需要予測をもとにしたディストリビューションや集客、決済サービスの「ペイペイ(paypay)」を使った店舗支援ソリューション、データを活用した販売員の接客支援などができると思う。端的に言えば、“価値ある服を適正な価格で売ること”ができればファッション業界はもっと盛り上がるはず。ただ、物流などいろいろな問題が邪魔をしてうまくいかない。そういった“雑音”をデータやテクノロジーの分野からZOZOが取り除けると考えている。

WWD:「ゾゾタウン」としては“マス化”を進めてきたこれまでから大きく路線変更し、“ファッション”を強く打ち出していく、と。マス層を「ペイペイモール」に任せ、ZOZOはそれ以外に注力するようなイメージか?

澤田:そう簡単には行かない。ヤフーはやはりメディア企業であり、在庫を抱えて運ぶECとはカルチャーが異なる。ZOZOとしては現在、専用部隊を設け「ペイペイモール」でファッションを売るためにさまざまな知見を共有している。「ゾゾタウン」の成功事例を「ペイペイモール」に導入し、「ゾゾタウン」は新たな手法を模索していくといったサイクルを作りたい。

WWD:「ゾゾタウン」がファッション好きの層を取り込むためには、どのようなことが必要だと考えている?

澤田:一つはメディア的な要素だと考えている。当社も「WEAR」というメディアを持っているが、そういったモノを使いながら、“楽しいサイト”を作っていかなければいけない。また、限定品やコラボ商品といった企画も重要だ。従来は「欲しい時にすぐに買える」という、ある種の“自動販売機”のようなサイトになってしまっていたし、“ゾゾスーツ”やPBに技術者がつきっきりになっていた。現在は「ゾゾタウン」をファッション好きが満足するためのサイトにもう一度作り直すための体制を整えている。

テクノロジーも絡めて
ラグジュアリーをも取り込む

WWD:ファッション好きが好むようなブランドの取り扱いも増やしていく?

澤田:ラグジュアリーブランドを含め、ファッション好きを満足させるブランドの取り扱いを増やしていく。ただ現在の「ゾゾタウン」では、そうしたブランドはどうしても埋もれてしまうし、ブランド側も今の「ゾゾタウン」ではただ出店して欲しいと言っても応じるわけはない。カギはテクノロジーだ。すでに一部のラグジュアリーブランドとは水面下で話をしているが、ゾゾマットのようなテクノロジーを絡めたソリューションにはかなり高い関心を持っていただいている。

WWD:出店ブランドの中には、「ゾゾタウン」内でのランキングや検索で、「低単価の商品がメインで、自社の商品が上位に出づらい」という不満を持っているブランドもある。サイトを作り直す中で、その部分が改善される可能性はあるのか?

澤田:パーソナライズ化の流れの中で解決できればと思っている。「低単価の商品に押され、露出の機会がない」と言うブランドもある一方で、安価な商品を求めているユーザーもいる。われわれとしては対応が遅れてしまった部分だが、今後はユーザーの好みによってランキングの表示方法を変更できるよう、整備していくつもりだ。ランキングも含めたパーソナライズ化は、“ZOZOイヤー”内に必ず実現させたい。

WWD:昨年の12月には中国への進出も行った。中国事業は今年、どうなっていくとみている?

澤田:7年ぶりの再進出なので、土地勘を養っていくことがメインになるだろう。先日オープンしてからの報告を受けたところだが、まだまだ出来ることがたくさんある。中国では、ECのトレンドとしてメディアECが浮上している。われわれとしても日本発のメディアECとしてどこまで行けるのか、試行錯誤していきたい。

WWD:最後に、有価証券報告書によると前澤前社長のZOZOでの年収は1億8400万円だった。澤田社長の年収は?

澤田:もちろん言えない(笑)。ただ、前澤よりは全然低いです。

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喜劇王「ダブレット」の笑いが国境を越えた ファミレスを再現し初のパリコレに「いらっしゃいませー」

 井野将之デザイナーの「ダブレット(DOUBLET)」が、2020-21年秋冬コレクションを1月16日パリで発表した。パリ・メンズ・ファッション・ウイークに参加するのは今回が初めて。井野デザイナーはLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)が若手を支援するために創設した「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(以下、LVMHプライズ)」のグランプリに18年に輝き、以降LVMHのエキスパートからのサポートを受けてきた。グランプリ受賞から約2年、満を持してのパリコレ参加である。

有名な某ファミレスを再現?

 プレゼンテーションの会場に選んだのは、北マレ地区にあるギャラリーだ。入り口には「D」から始まる、見覚えのあるファミリーレストランそっくりの“DOUBLET”と書かれた看板が掲げられている。ガラス張りの棚には、日本のレストランでよく見かけるメニューの食品サンプルが飾られていた。“たこやき 500”“スパゲッティ 800”とよく見るとフードの横に数字が付けられており、通貨の単位はなんと円ではなくユーロ表記。ということはたこ焼きは約6万円、スパゲッティは約9万6000円なの?すでに本気か冗談かもわからない「ダブレット」の世界観に引き込まれる。「いらっしゃいませー」というスタッフの掛け声とともに中に誘導され、超高級ファミレスへと入店してしまった。

スタッフやモデルも笑いが絶えず

 入り口付近の会計スペースを通るとドリンクバーが設置されており、来場者は自由にソフトドリンクやフローズンドリンクをカップに注いで中へと入っていく。ファッションショーの会場というよりファミレスをほぼ完全に再現した空間で、「ウィ・アー・ザ・ワールド(We Are The World)」のBGMとともにランウエイショーが始まった。テーラードジャケットとチャイナシャツをハイブリッドさせたアウターや、ロックシンガー風のコートにバビューシュカが描かれた靴下、フランスマダムが着ていそうなボーダーのニットウエアにエッフェルタワーの刺繍を装飾し、トップスや小物にはアメリカンインディアンの装飾品であるドリームキャッチャーを用いた。とにかく多国籍の要素をミックスさせた風変わりなムードが、ブランドの世界観を凝縮させたようなコレクションである。

あらゆる仕掛けに会場の反応は

 ショー後は、アメリカ版「ヴォーグ(VOGUE)」のジャーナリストや元コレット共同創業者サラ・アンデルマン(Sarah Andelman)が満面の笑みで、井野デザイナーへの元へ祝意を伝えに来た。「とっても面白かったわ!」と言われ、照れ臭そうだが満足気な様子の井野デザイナーに、コレクションのコンセプトについて尋ねた。「着想源は見ての通り、幼少期に家族で行ったファミリーレストラン。最近は色んな国へ行く機会が増えて、各国の食文化を体験した。すると改めて日本のファミリーレストランのメニューってとてもダイバーシティーだなと気づいた。パリという世界の舞台で人種や国籍、性別問わない『ダブレット』流“大人のファミリーレストラン”を作ってみようと思った」。そう語る彼はシェフ風の割烹着に、大きなフライパンとお玉を両手に持つシェフの出で立ちだ。聞くと、出国直前に急きょアマゾン(AMAZON)で購入したのだという。

 そして井野デザイナーから「楽しんでくれましたか?みんな笑っていた?」と逆に質問を投げかけられた。答えは、笑っていた。ファミレス文化が海外の来場者にどれだけ伝わったのかは正直わからない。でもショーの最中やショーが終わった直後には、笑顔でスマートフォンを方々に向けて撮影する来場者が見られた。彼は「LVMHプライズ」受賞の際やそのほかの取材でも、「周りの人が喜んでくれてうれしい」「何よりも周りの人に楽しんでほしい」と、いつもファッションを通じて“笑い”を届けることに挑むデザイナーである。井野デザイナーのことを、尊敬と愛を持って”平成の喜劇王”と筆者も呼ぶことにしよう。この類い希なデザイナーは、もしかするとファッションで世界に平和を届けてくれるかもしれない。なぜなら“笑い”こそが世界共通言語であり、ダイバーシティーなのだから。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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東急東横店の閉店に思う エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年9月26日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

東急東横店の閉店に思う

 東京オリンピック・パラリンピックを来年に控え、都内は至る場所で工事をしています。中でも最も変貌を遂げているのが渋谷です。それまでなかった高層ビルが雨後の筍のように建設され、少し前の風景を思い出すことが困難になってきました。

 私は渋谷に行くと、たまに「このあたりは東横線のカマボコ型の駅舎があったよな」とか、「五島プラネタリウムのドームってどこにあったんだっけ」と思い返したりしますが、もう昔の風景を重ねることができません。そうやって昭和だけでなく平成の記憶も遠くになっていくのでしょうね。

 さて東急百貨店は、渋谷駅で運営する東急東横店の営業を2020年3月末で終了し、86年の歴史に幕を閉じると発表しました。もともと渋谷駅の再開発で建て替えられ、高層ビルの「渋谷スクランブルスクエア」に生まれ変わる計画は発表されていたので、関係者にとっては既定路線だと思います。11月1日に開業予定の渋谷スクランブルスクエア第1期棟は、13年に閉店した東急東横店の東館の跡地です。このほど閉店が発表された西館・南館も同様に取り壊され、跡地は27年に渋谷スクランブルスクエア第2期棟になります。

 東急東横店は東京発のターミナル型百貨店として1934年に開業しました。東急グループの創業者である五島慶太(1882〜1959年)は、阪急グループの小林一三(1873〜1957年)にならい、沿線の住民の生活レベルの向上につながる百貨店を作り上げたと言われています。老朽化した今の姿からは想像できませんが、かつて渋谷のランドマーク的存在で、映画の舞台になったり、戦後の一時期は建物と建物の間にロープウェイが通っていたりしました。東急グループにとっても、日本の小売業の歴史にとってもエポックな店であることは間違いありません。現在、西館・南館での縮小営業をしている東急東横店ですが、東急百貨店の店舗の中では坂の上にある渋谷本店を上回り、売り上げ・利益の最大店舗のポジションにあるそうです。東急百貨店および東急グループにとって一番店を閉める決断は重かったはずです。

 大手私鉄のターミナル駅には当たり前ように子会社の百貨店が営業しています。新宿駅の小田急百貨店新宿店と京王百貨店新宿店、池袋駅の西武池袋本店と東武池袋本店、名古屋駅の名鉄百貨店、梅田駅の阪急本店、阿倍野駅のあべのハルカス近鉄本店。おそらく大都市の大手私鉄ターミナル駅から百貨店が消えるのは今回が初めてだと思います。

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帰ってきたメンズコレドタバタ日記Vol.11 どちらも簡単には着られない!? 「オム プリュス」から「ダブレット」まで怒涛の展示会レポート

 ランウエイショーは昨日で終了したけれど、パリメンズはまだ終わらず。今日は展示会回りの1日です。ショーで見たアレ、気づかなかったソレ、まだ見ぬコレを探しに、さぁ、出張最終日のスタートです。

11:15 コム デ ギャルソン

 “ギャルソン・デー”に拝見した「コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS)」と、「コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン(COMME DES GARCONS JUNYA WATANABE MAN)」、それに「コム デ ギャルソン・シャツ(COMME DES GARCONS SHIRTS)」の展示会へ。ファンならむせび泣くほど、ギャルソンの洋服が並んだパリ本社に伺います。

 「オム プリュス」は、“カラー・レジスタンス”がキーワード。川久保玲さんが気になっているのは、「Tシャツやフーディなど世の中が、着るのに簡単な洋服で溢れていること」。色はもちろん、雑多な素材を組み合わせることで、この流れに抗おうと試みました。序盤のカラージャケットはもちろん、ジャケットの上にケープ、レザーブルゾンの下にマントのような(フェイク)レイヤードスタイルが、そんな気持ちを代弁しています。ということは、ここに並んでいるのは「簡単には着られない洋服」?じゃあ早速、着てみましょう。この1着は、トレンチコートの下でサスペンダーのようなベルトを交差させ、つながっているスカートはベルトをギュッと絞って着こなすコート。慣れないと1人では着られません(笑)。正直重たいし、畳むのも面倒臭そう。Tシャツやフーディーとは、真逆の洋服です。「そんなに苦しい思いまでして着たくないよ」とか「高いのに、着回しづらいよ」と思う人もいるでしょう。でも、そこにあえて切り込んできたのが「オム プリュス」。大変だけど、身に纏えば、圧倒的な力を手に入れられるのは間違いありません。そして、「ちゃんとした服を着る」は「オム プリュス」のみならず今シーズン、数多のブランドが挑んだ2020-21年秋冬の最大のテーマ。細身のスーツが増えたのは、その証です。「オム プリュス」は時流にのっている、いや、時流を生み出しているのです。

 ちなみに、ちょっと炎上しているコーンローのヘアスタイルについては、スフィンクスを模したものだそうです。騒がれているような意図はなかったワケですね。「ジュンヤ マン」は、レトロなユニフォームをクラシックな作業服と組み合わせて「ジュンヤ マン」らしく。特に「フェラーリ(FERRARI)」や「ブレンボ(BREMBO)」など、イタリアの車と、車にまつわる部品メーカーとコラボレーションして、カーレースのピットクルーのような作業着を作成。各メーカーにOKをもらってから解体し、レトロなユニフォーム、つまりメンズのジャケットやコートなどとハイブリッドしました。なかなかの手間でございます(笑)。

 そして「コム デ ギャルソン・シャツ」では、「アシックス(ASICS)」の“ゲルライト”とコラボレーション。今季のマイベストは「ギャルソン・シャツ」。このヒラヒラシャツを手に入れたいと思います(笑)。

12:30 アルケミスト→レディ メイド→セントマイケル

 この後は、仲良しPRに案内していただき、正直、僕が不得意な世界、音楽やカルチャーと密接に関わるストリートの世界を覗いてみました。まずは、「アルケミスト(ALCHEMIST)」。「フィアー オブ ゴッド(FEAR OF GOD)」などのポップアップを開いてきたマイアミのセレクトショップによるブランドは、音楽や建築とリンクしています。2020-21年秋冬コレクションは、世界の悪そうなカンジが大集合。スカルなんて当たり前、刺青風、南米「死者のお祭り」風、どこかのギャング風(笑)など、全身コーディネイトはなかなかコワく仕上がっています(笑)。でもフーディは、肉厚の生地にプリントを重ねたのちにブリーチ。それに1着ずつダメージ加工など、こだわっています。刺しゅうも、えげつないのです。

 お次は、日本代表の「レディ メイド(READY MADE)」。細川雄太さんとは入れ違いになってしまいましたが(残念!でも、帰りの空港でバッタリでしたw)、今季もあるよ、バンダナシリーズ!!状態の良いバンダナを見つけるのは年を追うごとに大変になるでしょうから(しかも最近は、いろんなブランドが真似をしようしているせいか、古バンダナの争奪戦が勃発中とのこと!!)、「コレは、いつまでみられるのだろう?」なんて考えてしまいます。僕のお気に入りは、コレでした。

 そして最後は、そんな細川さんがアーティストのカリ・ソーンヒル・デウィット(Cali Thornhill Dewitt)とコラボして立ち上げた「セントマイケル(ST. MICHAEL)。

 この記事で、立ち上げを匂わせていたヤツです。記事では「古着にインスパイア」とおっしゃっているけれど、マジでほぼ古着(笑)!加工がスゴくて、古着じゃないとは思えません。でも生地の肉厚感とかは、確かにとても今っぽい。そうか、やっぱり新品なのか(笑)。お気に入りは、コイツ。お値段は、「レディ メイド」に比べると“安心”ってカンジです。

13:30 KING-MASAさんとゴハン


 仲良しPRに紹介していただき、KING-MASAさんとクスクスランチ。時間がなくて30分で失礼してしまいましたが、今の業界に対する想いなど、共感することしきりです。それは1月22日に配信した「エディターズレター」につづりましたので、よろしければご覧ください。まだ申し込んでいないアナタは、さぁ、ここをクリック!週に3回、僕からお手紙が届きます(笑)。

14:15 カラー

 お次は大好きな「カラー(KOLOR)」。阿部潤一さんらしい切り返し満載の洋服ですが、今シーズンは「シンプル」だそう。いや、実際は「シンプル」じゃないけれど(笑)、今季は切り返しが自然と言えば良いでしょうか?

 例えばこのアウター。パターンはスーパー複雑で、「バラクーダ(BARACUTA)」の“g9”風ブルゾンにデニム、ナイロンパーカ、しかもそれぞれ生地をバイアスに断つなどテクニック満載ですが、そのこだわりを“押し付けない”カンジです。1年前、半年前の「すご~い!!」という洋服も良いのですが、今回も素敵ですね!!シルエットは、総じてオーバーサイズ。僕は、直営を含めて6店舗限定販売の予定という、コチラ、手に入れたいと思います。

14:45 キディル

 さぁ、お次は東京生まれのパンク野郎「キディル(KIDILL)」です。

 「キディル」のプレゼンは、パリメンズ初日僕は「グッチ(GUCCI)」を見終わった後、まさに飛行機でミラノからパリに移動中だったため、拝見することができませんでした(残念!!)。ということで、展示会でじっくり。ファスナーを外すとどんどん巨大になるタータンチェックのブルゾンとか、ベルベットに「極楽」とか「諸行無常」の文字を刺しゅうしたスイングトップ、カミソリが無数に垂れ下がったGジャンなどイロイロで、そのうち数着については末安(弘明)さん、「いや、ベーシックです」とか言うのですが(どこが!?)、いずれもインパクト絶大。「キディル」は、コレかな~と思っています。

15:20 ビズビム

 さらに「ビズビム(VISVIM)」。今季はモンゴルの民族衣装にインスピレーションを得たような、ラップコートが気になります。ゴートファーのスゴいやつは、もはやチンギス・ハーン。お値段はいかほどかしら!?日本の展示会で確認しましょう(笑)。

16:00 ターク

 さらにさらに「ターク(TAAKK)」。こちらのプレゼンテーションも、時間の関係で伺うことができませんでした。悲しき、です。プレゼンを見た後輩オーツカからは、「大人になりました」と教えてもらっていましたが、確かに!!荒っぽくない!!スマートなジャケットや、艶っぽいシャツ、ベルベットのトレンチなどが並んでいます。ど~したの!?と思ったら、森川(拓野)さん、「このジャケットは、“外せるジャケット”で~」と、相変わらずネーミングは再考の余地アリな商品名(のアダ名)を連発して、笑えるアイデアを披露してくれます。“外せるジャケット”は、留め金を外していくと、ラペルとライナーがジャケットから分かれちゃう仕組み(笑)。ラペル&ライナーだけの着用もOKだし、コートとレイヤードすればジャケットを着ているかのように振る舞えます。暖冬にぴったりです。エレガントなチェックシャツは“何かありそうなチェックシャツ”、ベルベットかと思ったコートはデニムにフロッキープリント。このブランドも、笑えるハッピーなアイデアが盛りだくさんです。

16:45 ダブレット

 さぁ、「笑えるハッピー」のメインディッシュとして、こちらの“ファミレス”に出かけましょう。「ダブレッド(DOUBLET)」です。ショールームを訪れると、井野(将之)さんがコックさん姿で出迎えてくれました(笑)。メニューを見て、コーヒーを頼んで、試着大会スタートです(笑)。相変わらずイロイロありまして、例えば“お守りネックレス”は、「打舞列島(ダブレット)」とか「紛失防止」とか芸が細かい!!カツラ風のベレーは、深めのタイプをオススメします(笑)。ショーで気になっていた「アマゾン(AMAZON)」のダンボール風トレンチコートは、豚の革をプリーツして作ったものなんだって!お値段は、なんと58万円!!58万円のコートが、ダンボールを纏っているように見える。ギリギリです(笑)。でも、「世界は1つ」という願いを込めたコレクションは、ひっくり返すとムエタイローブに早変わりのチャイナ服とか、右の身頃と左の身頃に別々の都市の風景を描いたシャツなど、誰もが共感する“願い”もしっかり込められています。僕のお気に入りは、このプラモデルニット。セーターにビーニーもマフラーも手袋もぜ~んぶくっついていて、まさに「防寒具も1つ」なのです。でもコレ、コートは着れないね(笑)。

 ということで、後半は爆笑に次ぐ大爆笑!!笑顔で帰国できそうです。

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パリコレ初挑戦「ターク」のドタバタ劇 大舞台に刻んだ確かな一歩

 森川拓野デザイナー率いるメンズブランド「ターク(TAAKK)」が、2020-21年秋冬コレクションを1月16日パリで発表した。パリ・メンズ・ファッション・ウイークへの参加は、東京都と繊維ファッション産学協議会が主催するファッションコンペ「ファッション プライズ オブ トウキョウ(FPT)」受賞によるものだ。公式スケジュールの中でプレゼンテーションとして時間を設け、ランウエイショーを45分刻みで合計3回行った。

本番1秒前まで絶対に妥協しない

 筆者が会場に着いたのは、1回目のショーが始まる1時間前。バックステージでは森川デザイナーが忙しなく動き回っている。ここまで苦楽を共にしてきた仲間、ニューヨークで出会って絶大な信頼を寄せているスタイリスト、キャスティングのスタッフも全員が慌ただしい。特にスタイリストとは、通訳を通して入念にルックの最終確認を重ねている。「ネックレスの重ね付けはくど過ぎる、一つ外そう」「シャツの前ボタンは閉めず開けた状態の方がいい」「開けた状態だとランウェイを歩いた時にシャツが美しく見えないから、動き過ぎないように中のTシャツとシャツを軽く留めよう」——森川デザイナーを支える身近なスタッフは、針と糸を手にボトムスのウエストやトップスのサイズ調整を指示通りに行なっていく。同時に、森川デザイナーはバックステージを駆け巡り各モデルのルックを整えていく。風を切るように素早く動いていたかと思えば、次の瞬間には時が止まったかのように静止して、真剣な表情で目を凝らしてルック全体を眺める。周りが一切見えず高い集中力を維持していたのだろう。筆者はそんな森川デザイナーをずっと観察していたが、ショーが始まる前にバックステージで彼と目が合うことは一度もなかった。彼の表情が唯一ゆるんだのは、ショー直前に会場内の様子を見て「少しずつ観客席が埋まっている」と口にした時だった。

 間もなくショー開始時間。10分前に息を切らしながらバックステージへ入ってきた女性スタッフは、近くのスーパーで購入した品をリレーのバトンをつなげるようにほかのスタッフへと急いで渡した。中身は黒の靴下とTシャツだった。直前になって数が足りないことが判明し、急きょ買い出しに走っていたのである。モデル全員に必要な小物も行き渡り、ようやくルックは完成したようだ。しかし森川デザイナーは少しのシワやレングスを1ミリ単位で手直しするなど、時間がいくらあっても足りない様子だった。自分が納得のいく形に仕上げるまで絶対に妥協しない、したくなかったのだろう。

ショーに込めた自然への強い思い

 日常や自然の中の音を使って曲を作るサウンドデザイナー、ヨシ・ホリカワ(Yoshi Horikawa)の「タンブル(Timbres)」をBGMに、予定時刻から大きく遅れることなくショーが始まった。デニムにベルベット調の繊維を植毛してフロッキー加工を施したコート、廃をかぶって黒ずんだようなプリントのテーラードジャケット、燃える花が描かれたセットアップ、苔を彷彿とさせるモヘアのような柔らかい肌触りのニットウエアなど、独特の風合いの生地と柄がコレクションに深みを与える。ダークトーンの色彩は悲哀のようだが力強さもあり、薄暗い森の中で奏でる美しい旋律のようであった。ショー後のバックステージでようやく目が合った森川デザイナーは、無事に終えられたことにまずは安堵の表情を浮かべた。「今季に限らず、“自然”から着想を得ることが多い。オーストラリアの大規模火災は記憶に新しいが、昨今は自然に関する悲痛なニュースばかり。目を背けたくなるような悲しい事象の内側に潜む声に、常に耳を傾けるようにしている。しかし、決して物悲しいコレクションにはしたくなかった。“一度立ち止まって考えて欲しい”とコレクションを通じて訴えかけたかった」。

世界への挑戦は始まったばかり

 初となるパリでのショーの1回目を終えた感想をたずねると「今までは来場者が来て当たり前だったが、パリでは挑戦者の立場として、来ない事が当たり前の状態でスタートした。(3回のうち)1回目のショーを終えてまずは気持ちが落ち着いた。今日ここにいるスタッフ誰一人として欠けていたら納得のいく仕上がりにならなかっただろうから、あらためて感謝している」と答え、そそくさと2回目のショーに向けて準備を始めた。最終的に3回のショーを合計して約300人が来場したという。

 筆者よりも長く「ターク」を取材してきた大塚デスクは、ショーを見た後感慨深い表情だった。「きれいなコレクションに仕上がっていた。応援してきたインディーズバンドがメジャーデビューを果たしような、嬉しいけれどどこか寂しい——出来が良いだけに、そんな気持ち」とポツリ。「ターク」のパリでの挑戦は始まったばかり。活躍の場を広げて世界へ羽ばたき、私たちをますます寂しい気持ちにさせてほしい。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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評価基準は100%数字 徹底した実力主義の実情とは?「20代成長環境」1位/TOKYO BASE【ファッション業界 働きがいのある企業ランキング】

 「WWDジャパン」1月20日号では、「ファッション業界 働きがいのある企業ランキング」を発表。国内最大級の社員口コミ数を有する「OpenWork」の協力のもと、直近5年間でクチコミ件数10件以上ある企業の中からファッション業界における働きがいのある企業ランキングを独自に作成した。連動するウェブ企画では、「風通しの良さ」「20代成長環境」「法令順守意識」項目で1位となった企業に取材し、1位たるゆえん、その魅力と源泉を探った。

 「20代成長環境」でジンズと同率1位になったのは、日本発を世界に発信するファッションカンパニー、TOKYO BASEだ。実力主義のもと、潔いほどシンプルに数字にこだわる経営を押し進める。社員の自主性を重んじるそのカルチャーと仕組みについて、経理本部 人材開発Div.の芦澤潤・経営企画・中途採用担当に話を聞いた。

WWD:「20代成長環境」1位について、率直な感想は?

芦澤潤・経営企画・中途採用担当(以下、芦澤):弊社の社員の平均年齢は29歳で、店舗はもう少し若く27歳くらい。本社はある一定の経験、経歴を求めるので30〜40代前半だ。今回は「20代成長環境」1位ということなので、私たちが“営業”と呼んでいる“販売職”について評価をいただいたのだろうと考えている。

WWD:若手社員育成において、研修などは行っているのか?

芦澤:入社前に基礎研修は行っている。そこでは企業理念・文化や顧客定義、接客ロジック、オーナーシップメントといった座学を中心とした研修とロールプレーイングを行う。最高経営責任者である谷正人が自身の考えを話したり、会社が目指す理想と目標を伝え、価値観を共有する。そして研修の最後に、半期目標設定を社員自身に立ててもらう。

WWD:では新入社員は基礎研修後、接客のノウハウを実践で習得していく?

芦澤:もちろん店長が指導はするが、それよりも自主性に重きを置いている。私たちは「裁量権がある」という言い方をするが、もともと谷の考え方も“ワンショップ・ワンオーナー”。店長がその店舗を経営するオーナーで、スタッフは当然オーナーを支えていく形で自律的に裁量権を持って行動している。若手社員と話していると、自分の力で何かしたいと思っている人が多く、「将来独立したい」「インセンティブである程度の報酬をもらいたい」「最速で店長になりたい」などみんな野望があり、上向きの矢印を感じる。自社の採用ページに「理念を実現する為に数値的な結果に徹底的にこだわる」と明言しているので、“実力主義”もしくは“from JAPAN to the WORLD”という会社の企業理念に魅力を感じて入社してくる人がほとんどだ。社員が最低限これぐらいの金額を取っていきたいという“基準”を掲げているので、必然的にそこを目指す形になっていく。

WWD:集客数の多い店舗もあれば少ない店舗もある中、全体としての均衡はどう保つ?

芦澤:店員の適正配置を人頭効率をベースに決めている。私たちは東京や大阪のような都会で比較的ロケーションのよいエリアに出店しているので、大手アパレルのように3000万円から800万円といった差があまりない。1店舗あたりの売り上げがだいたい近いところに出店を制限している。

WWD:実力主義、結果主義にこだわるTOKYO BASEの評価基準とは?

芦澤:評価基準はいたってシンプル。100%数字だ。“営業”の場合、指標は2つ。「ユナイテッド トウキョウ(UNITED TOKYO)」と「パブリック トウキョウ(PUBLIC TOKYO)」はまず“個人売り上げ”。そしてSPA業態なので、“TOKYO BASEのアプリ会員数”の2つが基準となる。一方、「ステュディオス(STUDIOUS)」はセレクトショップなので、“個人売り上げ”と“顧客売り上げ”が基準。「ステュディオス」では、LINE WORKSのシステムを活用し、営業時間内に顧客に連絡をする時間を設け、率先してLINEでコミュニケーションを取っている。また、売り上げに応じてインセンティブ制度を明確に設定している。

WWD:個人売り上げだと同じ店舗スタッフもライバルとなるわけだが、険悪な関係にはならないのか?

芦澤:よい意味では競い合いもあるとは思うが、みんなTOKYO BASEを好きなスタッフばかりだ。なので、店のために自分の力を発揮できたという達成感のほうが強く働くスピリッツがある。その企業文化はやはり谷の考え方によるところが大きい。“from JAPAN to the WORLD”というミッションと、あまりオープンにされてないが、“5 VISION”。この2つの会社のコンセプトへの共感と個人の実力主義が両立しているからこそ成り立つ。

WWD:具体的に“5 VISION”とは?

芦澤:「全世界顧客感動」「ファッションプロフェッショナル集団」「NEXT MADE IN JAPAN」「世界10大都市展開」「最速1000億円 EC売り上げ500億円」の5つだ。全世界の顧客に感動を与え、企画、MD、販売など各分野のプロでありたいという意識。そして、ただ日本製というのではなく、どこの生地を使っているなど、よりこだわった商品を次のステージに進化させていきたいと考えている。いずれは日本をはじめ上海、香港、北京、パリ、ロンドン、ニューヨークなど全10大都市に、“NEXT MADE IN JAPAN”の商品を掲げて出店していく。今年も日本はもちろん、海外にも積極的に出店していく予定だ。そして売り上げ最速1000億円、そのうちEC売り上げ500億円が目標だ。

WWD:接客に強いこだわりを感じるが、やはり顧客とのコミュニケーションを重要視している?

芦澤:いかに自身のファンを獲得するかは販売職の一番基本的なミッションだ。商品知識を提供することと本人の人間性を提供すること──この2つがそろってはじめてお客さまが「他の店ではなくあなたから買おう」となる。メード・イン・ジャパンという差別化したもの作りと正しい商品知識、そしてスタッフの人間性が重要。人としてお客さまに慕っていただくという根幹を押さえていくので、それは接客スキルのマニュアルなどよりはもう少し上位概念だと思っている。だから中には驚くほど売り上げるスタッフもいる。トップクラスは月間1000万超だ。私自身そんなに売る人間を初めて見た。そして、そういうスタッフほどいかにも“売る”といった感じはなく、接客もとても自然でまめによく連絡を取る。飛び抜けて売る社員の一人は、日本語が流暢な中国人だった。彼は2017年に入社し、「ステュディオス メンズ(STUDIOS MENS)」原宿本店に所属していた。そこで実力をつけて月間1000万超を売り上げ続け、入社3年目にして、19年8月にオープンした上海1号店の「ステュディオス トウキョウ(STUDIOS TOKYO)」の店長に就任した。上海店は日本以上の売り上げで非常に好調なスタートを切っている。実力をつければ彼のような道もあると、他のスタッフのよいモチベーションになっていると思う。

WWD:最後に、社員にとって「働きがいのある」企業とは、どのような企業だと考えるか?

芦澤:自分の夢や目標を達成できることではないだろうか。私たちが企業を通してそれを手伝うことができれば、全員が幸せになれると思っている。

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サイズ表記の呪縛は恐ろしい エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年7月30日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

サイズ表記の呪縛は恐ろしい

 夏にサンダルを履くと思い出すことがあります。元上司の故・織田晃さん(当時は「WWDジャパン」編集委員)と狭いエレベーターで乗り合わせた時のこと、サンダル履きの私の足の指を見て一言「かわいそうに」とつぶやきました。エレベーターの中って、なんとなく気まずくて上とか下とか見がちじゃないですか。そんな感じで、下を見て目に入ったからふと口にした……程度の会話でしたが衝撃でした。「え、私の足の指ってかわいそうなの?」と。

 「かわいそう」な理由は、足の指がゴツゴツしていたからです。私の靴のサイズは25㎝ですが、学生時代から30歳位までは24.5㎝だとかたくなに思い込んでいました。常時無理に足を詰め込んでいるから常時足が痛く、指の関節は自己防衛でどんどん硬く頑丈になっていき、冒頭のエレベーター内の会話に至ったというわけです。靴を履くには、脚の指は我慢するのも仕方なし、多少荒れても仕方なし……がマイ常識だったので「え?」となりました。

 ならば最初から25㎝を履けばいいじゃない!という話ですが、足が大きい=背が高いことに強烈なコンプレックスがあった10代の思い込みパワーは凄まじく、「25だと幅が広すぎるのよね」などと、ほぼ自己暗示にかかり続けたというのは嘘みたいな本当の話です。

 何が言いたいかというと、「サイズ表記という、数字や記号から生まれる固定観念は恐ろしい」ということです。当時の私も、「25がイヤなのではなく、25などという規定外に大きい自分がイヤ」だったのです。もし売り場に25㎝の靴が常備されていたら、10代の超繊細なワタクシも安心して25を買っていたでしょう。そして足の指はきれいなままだったでしょう。靴も服もサイズとは切っても切れない関係ですが、SやMやL、75Aや80Dなどは便宜的に使う記号でしかないのに、時に人としての価値まで決められているような感覚に陥らせるパワーさえあるのも事実です。

 前置きが長くなりましたが、こんな経験からもワコール(WACOAL)の新接客サービス“3D スマート アンド トライ(WACOAL 3D SMART & TRY)”はすごい画期的!と思いました。だって一般的なサイズ表記ではなく、自分だけのデータで自分のサイズを把握することができるのですから。ブラジャーのサイズはそれこそ「悩み」に直結しがちな数字ですから、そこから解放されるのは、単に体に合うブラジャーを手に入れる以上の喜びに違いありません。同じ理由から“ゾゾマット(ZOZOMAT)”にも期待しています。

 この先、自分のサイズのデータを常時スマホで持ち歩き、店頭の服にピッとかざせば、自分の体形ではどのように着ることができるのか瞬時にわかる、というサービスも誕生しそうです。誰かが規定した「標準」ではなく、自分にとっての「標準」をもとにした買い物ができるのは、多くの人をコンプレックスから解放するのではないでしょうか。で、もちろんそこには大きなビジネスチャンスもありそうです。

 ちなみに、今の私の足の指はそれほどゴツゴツしていません。なぜなら、海外で靴を買うようになってサイズの呪縛から解放されたから。38だろうが、38.5だろうが、39だろうが、それは数字に過ぎない……今はそう思えます。

IN FASHION:パリコレもストリートも。ジュエリーもインテリアも。今押さえておきたい旬なファッション関連ニュースやコラムを「WWDジャパン」編集長がピックアップし、レターを添えてお届けするメールマガジン。日々の取材を通じて今一番気になる話題を週に一度配信します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在9種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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「販売員はブランドの伝道者」 焚火で広げるコミュニティー スノーピーク渡邊大夢

 スノーピークといえば、世界でも知られる日本を代表するアウトドアブランドだ。初代社長、山井幸雄氏が1958年に創業した金物問屋から始まり、90年代には同社の代名詞といえるステンレス製の焚火台が誕生。今やアウトドアには欠かせないアイテムとなったチタニウム製マグカップの製作で一躍ブームに。14年からはアパレル事業をスタート、さらにその動向が注目されるようになった。今回インタビューした渡辺大夢さんは、そんなスノーピークのもの作りや人や自然とのつながりに興味を抱いて転職してきた一人。現在は香林坊東急スクエア店長を務める渡邊さんにスノーピークの魅力を聞いた。

―香林坊はよく耳にするのですが、どういう街ですか?

渡邊さん(以下、渡邊):北陸三県(富山・石川・福井)を代表する古都、金沢市にある街です。よく言われるのは“昔ながらの城下町”ですね。戦争の被害をほとんど受けず、当時の建物が今でも残っています。仕事をする上でいろいろと街のことを調べていると“リトルキョウト”と外国人観光客からは呼ばれているようです。戦の時に攻めにくい地形になっていて、坂道とかくねくねした道が多いです。今は金沢城や兼六園、金沢21世紀美術館など観光名所が集中していながらも、金沢は周遊バスで回れるくらいコンパクトな街です。

―新宿や表参道の店舗から異動したときにカルチャーショックはありませんでしたか?

渡邊:自分が買い物をする立場としては満たされないところも当初はありましたが、情報や感度に関しては行き届いていると感じました。例えば古着屋に行って扱っている商品やその価格を見ると都内のお店とさほど変わらず、街を歩く人を見ていてもいい意味でミーハー、トレンドに対する反応も大きいです。

―そうなると“地方格差”はあまり感じない?

渡邊:情報に関しては格差はないです。情報は行き渡っているけど、商品そのものへのアクセスが難しいという印象。でも、その方が冷静に買い物できそうです。

―都内はすぐに店へ実物を確認しに行けますから、ついお買い物しがちですね(笑)。香林坊東急スクエア店はどんなショップですか?

渡邊:香林坊東急スクエア自体が感度の高い方が来店する商業施設で、都内でも展開しているブランドやセレクトショップが入っています。ただ、都内でいう一等地という感じでもないし、人が流動的にたくさん来る場所でもない。目的を持って買い物に来られる人が多い印象です。先日あるショップの店長に聞いたところ、オーダースーツの売り上げが都内2店舗に次いで全国3位になったと喜んでいました。どのショップも顧客をとても大切にしています。

「スノーピーク」は北陸エリア初の直営店として2017年にオープンしました。現在でも運営していますが、それまではスポーツデポのショップインショップのみ。オープンして2年が経ちましたが、いまだに「ここに『スノーピーク』があったんだ!」とおっしゃる人が多くて、地元の方への認知普及がまだまだだなと反省しています。

―SNSやネットで簡単に情報拡散ができるとはいえ、届いてほしいところに情報が届かないことはありますね。

渡邊:なぜ情報が伝達できていないのかを考えると、シンプルに地元の方たちの情報源がSNSやブログだけでなく、紙媒体などアナログなものから得ている方が多い地域なのかと分析しています。昔は「スノーピーク」も駅前でビラ配りしたり、ポスティングしていたという話を聞いたことがあり、原点ではないですが、そういうところに戻ってもいいのかなと思うことがあります。

―ネットは自分で情報を取りにいくツールですが、新聞や紙媒体はいろんな情報がまとめて届くツール。地方ではローカル紙を情報源にしている人も多そう。スタッフには地元の人はいらっしゃるのですか?

渡邊:今は自分を含めて、スタッフ6人体制で運営しているのですが、そのうちアルバイトの1人だけが地元出身者です。今後は地元のことを知っているローカルスタッフを育てていきたいところです。

―地元の人にしか分からない地域特性や街の魅力を伝えたい、と?

渡邊:そうなのですが、実際には灯台下暗しのようで、僕らから見た金沢とローカルな人たちから見た金沢にはギャップがあるようです。もっと石川のことを知ろうと、能登半島の先端に位置する珠洲市へ行ってきたのですが、「いいところだった」と地元出身のスタッフに話したら「行ったことがない」と。正直、驚きました。確かに金沢市内から珠洲まで3時間くらいかかり、同じ時間をかけるなら名古屋とかに行きたいと言われまして(苦笑)。そのときはローカルのスタッフに「行った方が良い!」と推したのですが、自分に置き換えると、地元が神奈川県相模原市で箱根や小田原がとても近いのですが行ったことがなかったのです。それと同じだなと思い、私も家族で箱根旅行してきました(笑)。

―日本に住んでいるのに日本のことを知らないと外国の人から言われるのは、自戒したいところですね。オリンピック・パラリンピックもありますし……。

渡邊: そうですね。逆に、地元でない人から見たその地域のよい所を地元の人に伝えたら、新しい発見が見いだせるのかもと思いました。地元の人にこそ、地元のよい所にもっと気づいてもらいたいです。

―前職では販売、それからアシスタントバイヤーをされていましたが、なぜスノーピークへ転職されたのですか?

渡邊:山井(太スノーピーク社長CEO)の著書で「スノーピーク『好きなことだけ!』を仕事にする経営」を読み、製品やもの作りに対しての考え方に対して、さらにものを選んで買うときの感覚にとても共感したことがきっかけです。例えば3万円のデザインも質も良い服と、手頃に買える1万円しない服が目の前に並んでいたとして、自分なら3万円の服の方が飽きずにずっと長く着続けられるだろうという価値観を大切にしたい。価格だけで比較するようなもの選びは違うなと思うのです。ただし、難しいのはそれだけでは経営は成り立たないということ。両軸で考えなければいけません。

―それを踏まえ、日頃の接客で心掛けていることはありますか?

渡邊:商品説明をし過ぎないようにしています。これは店頭での接客でも、ブログを書くときも心掛けています。特にギアものは商品説明に偏りがちになりますが、そうならないように自分が使ってみた感想を自分の言葉で伝えるようにしています。特に最近は、自分で調べればいろんな情報をキャッチできる環境になっています。みんな、ブログやインスタで常に比較検討しているような状況で、何が良いのか迷っている人が多い。機能面も比較対象の一つではありますが、接客では他にはない「スノーピーク」ならではということをお話しています。「スノーピーク」の代名詞にもなっている焚火台やチタンマグは、今ではいろんなメーカーが作っています。お客さまから「スノーピークのチタンマグは何で高いの?」とよく質問されることがあるのですが、最初に職人の力を借りてゼロから製品化したのは弊社である、という歴史をキチンと伝えていきたいです。

―正しい情報を伝えるのは販売員の使命ですね。

渡邊:販売員の役割は販売だけでなく、 “伝道者”でもあると考えています。作り手がいて、デザインする人がいる。店頭からは見えないところで、とてつもない努力と熱い気持ちでもの作りをしている。その思いをお客さまに伝えることが販売員の仕事です。「スノーピーク」の場合は伝える環境が店頭だけでなく、オフィシャルのキャンプイベントやプライベートなキャンプや焚火の場などもありますし、ネットにもあります。全部の場所で熱意を持って伝えています。

―焚火でお客さまとの信頼関係を築くって、素敵ですね。

渡邊:最近は、飲みに行く感覚で焚火をよくやっています。オフィシャルなイベントのときはお客さまをおもてなしすることがメインになりますが、プライベートの焚火にお客さまを誘う場合はあえて「何もおもてなししないですよ」と言っています。プライベートの焚火ではお客さま発の企画もあって楽しいです。面白かったのは、店でから揚げの話になり、それなら一番おいしいと思うから揚げを持ち寄りましょうという話になりました。自分は焼き芋にハマっていたので焼き芋も作って、さつま芋が苦手なお客さまにはパイナップルとサトイモを持ってきました。お客さまとつくる時間はオフィシャルのイベントにはない、良い時間、良い関係性がつくれたと思います。それが付加価値というか、スノーピークの大事にしている体験価値だと意識しています。

―これからの目標は?

渡邊:最終的な夢は自分のショップを作ることです。そこで提供するものが服になるのか、食になるのか、はたまたスーベニアを買い付けてくるのか分かりませんが、今はそのために必要なことを身につけている段階です。できればみんなを巻き込みつながって、経験とかを共有し合い、仕事が生まれるコミュニティーをつくっていけたらなあと、漠然とですが考えています。

苫米地香織:服が作れて、グラフィックデザインができて、写真が撮れるファッションビジネスライター。高校でインテリア、専門学校で服飾を学び、販売員として働き始める。その後、アパレル企画会社へ転職し、商品企画、デザイン、マーケティング、業界誌への執筆などに携わる。自他ともに認める“日本で一番アパレル販売員を取材しているライター”

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ユースの旗手 ラッパーTohji「ファッションが本当の自分を取り戻してくれる」

 昨今、グラミー賞でラップミュージックが史上初の年間最優秀レコード賞と年間最優秀楽曲賞を受賞したほか、ラッパーがランウエイモデルや広告ビジュアルとして起用されるなど、ヒップホップがメインストリームの座を確立したことをまざまざと見せつけている。

 そんな時代の潮流の中でひと際異才を放つラッパーがいる。Tohjiだ。最近ではプロデューサーでシンガーの小袋成彬のニューアルバム「Piercing」に「Tohji's Track」を提供したほか、プロデューサー・DJとして世界的に活躍するムラ・マサ(Mura Masa)の2019年のジャパンツアーでは東京と大阪公演に同行するなど活躍が目覚ましい。また、ファッション誌「オーリー(Ollie)」(ミディアム)2019年10月号では表紙を飾り、「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」の「ランドロード ニューヨーク(LANDLORD NEW YORK)」2020年春夏コレクションのランウエイを歩くなど、ラッパーとしてだけでなくジャンルレス、ボーダーレスに活動を続けている。

 東京を中心に全国のユースから圧倒的な支持を受け、19年を象徴するムーブメントにまで成長したといっても過言ではないTohji。新鋭ラッパーの彼に、インターネットが浸透しきった時代の楽曲の制作方法やリスナーとの関係性、「自分を取り戻してくれるもの」と語るファッションについて聞いた。

WWD:いつヒップホップを聴き始めたのですか?

Tohji:ヒップホップは中学のときから聴き始めました。当時の俺にはヒップホップは新鮮で、そのマインドセットが新しかったです。日本だったらSEEDAさんとか(キング)ギドラとか、海外だったらカニエ・ウェスト(Kanye West)とかもよく聴いていたし、ウータン・クラン(Wu-Tang Clan)みたいな古いアーティストも聴いていました。でもヒップホップだけが好きだったわけじゃなく、エイフェックス・ツイン(Aphex Twin、現代テクノ界の最高峰と評されるイギリス出身のDJ)とかTHE BLUE HEARTSみたいに気分に合うものは何でも聴いていました。

WWD:何か新しいことをやりたくて始めたのがヒップホップだった?また、ラッパーとして活動していくと決めたきっかけや出来事などはありましたか?

Tohji: 確かにヒップホップはずっと聴いていたけど、「ヒップホップをやろう」って意気込む感じではなかったです。ギターの弾き方やバンドの組み方も分からなかったから、それに比べるとラップは始めるのが簡単だったので自然とこの形になっていました。でも、音作りだけ生真面目にやっていくのは自分的にしっくりこなくて。USでエイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)やタイラー・ザ・クリエイター(Tyler, The Creator)が音楽だけじゃなくてファッションとかビジュアルを取り入れる動きをしていて、いろいろな表現をごちゃ混ぜにするのが当たり前になってきてしっくりきました。

Tohjiの主催した「Platina Ade」のパフォーマンス

WWD:新世代の若手ラッパーやDJなど自身と同年代のアクトをそろえて、3月に主催したイベント「Platina Ade」は大きな話題になっていましたね。

Tohji:「Platina Ade」の2か月前に東京・恵比寿のバチカでイベントをやったんですけど、そのときの来場者は150人ぐらい。でもそれから2カ月後に渋谷のWWWで開催した「Platina Ade」には550人集まったんです。このイベントをきっかけに一気に自分のイメージに近づいた感じがあったし、東京に新しい流れができたと思う。

WWD:主催するイベントではジンの販売や、SNSで出店者を募ってフリーマーケットを開催したりしていますがその意図は?

Tohji:みんなが何かをノリで表現できる場所が作れたらいいなと思って。この前(OKAMOTO‘Sのオカモト)レイジくんにつないでもらって「リーバイス(LEVI'S)」と一緒にコラボアイテムを製作したり、原宿にできたフラッグシップのオープニングイベントでライブをしたんですけど、そういう大きなブランドと対等に仕事をしたり、今までよりも大きなフィールドに進出したときに、そこで自分たちがつかんできたものを別のところへ還元したいなって思っています。一瞬のエンターテイメントじゃなくて、本質的なカルチャーにしたいと思っているから、これからもそういった場所を作っていきたいです。

WWD:イベントにはどういった人たちが出店したのでしょうか?

Tohji:インスタで直前に呼びかけてフラットに出店者を選んだから、JUN INAGAWA(「ディーゼル(DIESEL)」や「ヴィーロン(VLONE)」などファッションブランドとも協業する20歳のアーティスト)みたいにすでに大きなブランドと仕事している人もいれば、絵を描き初めてまだ1~2カ月の子もいました。ステージは違っても、同じノリを持った人たちが一つの場所で仲良くなれればって思って。フリマがあった自主企画の翌月、「全感覚祭」 (バンドGEZAN主催の投げ銭式の音楽フェス)のライブ中にステージの上から観客席を見ていたんんですけど、自分のイベントで仲良くなった人たちがモッシュの真ん中にいて、うれしくなりました。

WWD:SNSでもファンと積極的に交流を図っていて人とのつながりを大事している印象がありますが、ファンとの関係をどう考えていますか?

Tohji:俺は音楽以外にも映画が好きなんですけど、ほとんどの音楽とか映画は結局見終わっても現実はそんなに変わんないなと思っていて。膨大な費用と時間をかけて制作した映画やライブでも、その瞬間は楽しいし盛り上がるかもしれないけど、人生が変わるわけじゃない。その現実と切り離されている感じがすごく嫌で。そういう意味でリスナーとアーティストの垣根がなくなって、自然にお互いの感情や役割を行き来する感じがいいなって思っています。自分が表現する以上は、みんなの生活をみんなで変えたい。

アンチアンチアートが手掛けた「HI-CHEW」のMV

WWD:ベトナムの映像制作チーム、アンチアンチアートが手掛けた「HI-CHEW」のMVでは自身を堕天使に見立てた映像が印象的でした。昨年8月に発表したミックステープ「angel」のタイトルにかけている?

Tohji:自分にとってしっくりきたのがあのビジュアルでした。俺は、日本の古い不良ノリはあまり救いがなくて。「HI-CHEW」のMVで表現した天使と悪魔のような神秘的なものに救いを見出している気がします。今ってみんなすぐに自分たちを何かに当てはめている気がするんですけど、俺はフラットに世界中のノリが合う人に自分のクリエイティブを届けたいって思っているから、天使と悪魔みたいな普遍的でシンプルなものが自分にとってすごく大事だなって思いますね。自分が仲間とインディペンデントに活動しているのも、そういう枠とか壁にとらわれたくないからだし。

WWD:「angel」タイトルにはどのような意味が込められていますか?

Tohji:今ってなにもかもがぐちゃぐちゃで、新しい時代に向かって突き進んでいる黎明期だと思っています。音楽も面白いものがたくさん出てきて混沌としていて、“みんな違って、みんないい”みたいな雰囲気がある。だけど「結局俺らどうしたらいい?」みたいな漠然とした不安とか疑問もあると思っていて、自分に「ラッパーなのか?それともアートをやりたいのか?」って問うなら、答えは「YES」であり「NO」でもあるみたいな。そういうのを貫く言葉が “angel”でした。だから作品を通じて“エンジェルバイブス”を表現しています。

WWD:これまで発表してきたEPと「angel」はどういった点が異なりますか?

Tohji:ラップを始めた頃は、ずっと部屋にこもって一人で制作していて、ラップもトラックもMVも全部自分でディレクションして作っていました。でも今回リリースした「angel」は、トラックメーカーのMURVSAKI君と何カ月も一緒に生活して制作したのが一番大きな違いです。「自分が部屋にこもって培ってきたのを外に持っていったらどうなるかな」って思って。だから感覚的には自分の部屋から出て、“初めて外の世界と一緒に作った作品”というか。MVもこれまではMall Boyz(Tohjiが所属する映像制作やマネジメントなどを手掛けるクリエティブ集団)や友人と一緒に作ってきましたが、今回はノリが合う“外”の人たち、例えばベトナムの映像クルーアンチアンチアート (ANTIANTIART)やロシア人アーティストのアントン・レヴァ(Anton Reva)と作ったりしました。

「Snowboarding」のMV “ナイキiD(NIKE iD)”で制作したAIR MAX95を着用している

WWD:「angel」のアイキャッチなアートワークや収録曲「Snowboarding」のMVを手掛けたアントン・レヴァとはどのようなきっかけで共作に至ったのですか?

Tohji:昨年4月頃に渋谷・WWWで無料のレイブイベントがあって、ガバやトランスとかが流れるイベントだったんですけど、そこにたまたま来日していたアントンが遊びに来ていて、イベントが終わったあとにインスタでDMをくれたのが始まりです。あいつのインスタを見たらすごく面白くてその後もDMで連絡を取り合っていたんですけど、「angel」を制作している時期にちょうどロシアに帰国していたから、飛行機代と宿を用意して東京に呼び戻して、それで一緒に作品を作りました。

WWD:アートビジュアルのコンセプトは?

Tohji:“汚くて傷ついてもきれい”“気持ち悪いけど美しい”。“そのままの自分を肯定しろ”みたいな感じです。「キモいまんまでいけ!」みたいな。ほかに合わせるんじゃなくて、自分でかっこいいっていう思う何かを作って、トレンドをこっちからつくっていけって感じです。

WWD:18年に自身初のEPを出してから約1年で一気に19年を象徴するアーティストにまで駆け上がりましたが、心境の変化や人気の高まりを感じますか?

Tohji:体感としてはこの1年で5年間ぐらい経った感じがあります。知られることで、ファッション業界の人もそうだし、これまでは関わることが少なかった人たちが自分のことを知って声を掛けてくれるから、新しいチャレンジができてうれしい。

WWD:自分史の中で19年はどういう位置付けですか?

Tohji:ホップ・ステップ・ジャンプの“ホップ”です。昨年は自分だけじゃなくてチームのみんなとイベントをつくったりレーベル業務をやったりといろいろなチャレンジをしました。ただ企業やメディアから話を受けるだけじゃなくて、例えば「オーリー」の表紙撮影の時も「こういう服装でこのロケーションで、こういうライティングの方がかっこいいと思うんですが、どうですか?」って俺たちで提案し直してディレクションするようにしてます。企業とアーティストっていう関係じゃなくて、面白いことがやりたいって提案があったら俺らもフェアに乗っかっていく。その姿勢で大きなブランドとコラボレーションができたり、雑誌の表紙を飾れたのは大きかったけど、まだ初めてのことが多かったから、やっと準備が整ってきたかなって感じです。

WWD:最近ファッションブランドがアーティストを起用することが多くなってきていますが、どのように感じますか?

Tohji:人によると思うけど、すごいいいことだと思う。俺はやっぱどんどん新しい表現にチャレンジしていきたいから、それこそこの前の「ランドロード ニューヨーク」みたいにオファーをくれて、一緒にいろいろ作り上げたり新しい経験をする機会があるのはすごくうれしいですね。

WWD:「ランドロード ニューヨーク」2020年春夏コレクションのランウエイを歩いたきっかけは?

Tohji:俺が行ってる床屋に「ブラックアイパッチ(BLACKEYEPATCH)」の人も通っていて、その人が「ランドロード ニューヨーク」クリエイティブ・ディレクターの川西(遼平)さんを紹介してくれたんです。最初床屋からブッキングのメールがきた時はナゾでしたね。

WWD:シースルーやメッシュ素材を取り入れたライブ衣装が印象的なTohjiさんですが、衣装は私服ですか?

Tohji:ライブのときに着ている服は私服です。その服を着て動いているときにかっこいい服を選んでいる気がします。変わった素材や服を選んでいるつもりはなくて、機能性がある服が好きなんです。ダボダボだったら動きやすいし、シースルーとかメッシュも動いたときに涼しいから着ています。

WWD:好きなブランドは?

Tohji: 「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」が好きです。形が変わっているんですけど、でもただ奇をてらっているわけじゃなくて。作りがしっかりしているし、機能性を兼ね備えてるところが好きです。

WWD:今後ファッションの分野で取り組んでいきたいことは何かありますか?

Tohji:いつになるか分からないけど、どこかのタイミングで “ギア”みたいな服を作りたい。みんなが買える値段で、踊ったり動けるシンプルなかっこいいやつ。

WWD:Tohjiさんにとってファッションとは?

Tohji:本来の自分に戻してくれるものです。裸のときの自分はなにか欠けているって感じる部分があって。服を着るとその欠けていた部分がバチっとハマる感じがあるんです。ファッションは自分のいいところをよりよく引き立ててくれるので好きです。

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帰ってきたメンズコレドタバタ日記Vol.10 三浦春馬&森星が「ポール・スミス」50周年をお祝い 「アクネ」のメンズが見られない!?

 1月19日、晴れ。天候に恵まれたパリメンズも、いよいよ今日が最終日。例年この日は、「もう終わっちゃうのか~」と「やっと終わるのか~」というアンビバレントな気持ちが交互に訪れる穏やかな日曜日です。

10:40 ランバン

 さぁ、最終日のトップは「ランバン(LANVIN)」。「ロエベ(LOEWE)」でジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)のもとメンズウエア・デザイン・ディレクターを務めたブルーノ・シアレッリ(Bruno Sialelli)のメンズランウエイも2回目になりました。会場は、パリ市外(苦笑)。日曜日で渋滞こそないものの、疲れたカラダには堪えます。

 コレクションからは、まだまだ“ジョナサン臭”が漂います。出自ゆえニオイをゼロにする必要はないかと思いますが、ロング丈のジャケット、独特なシルエットのパンツ、リブ編みのニットで作るラペル、違和感を覚えるカラーコンビネーション、キッチュなアクセサリーのすべてが揃ってしまうと、どうしても既視感に繋がってしまうのは否めないところ。2日前に「ロエベ」、4日前に「JW アンダーソン」のショーを見ているので、尚更です。

 子ども服から大きくなった「ランバン」にとって、“キッチュ(ちょっと奇抜)”なムードは大事かもしれません。でもメンズのセットアップやウィメンズのドレスなどを見る限り、ブルーノは、同じく子ども服に欠かせない“イノセント(無垢)”なムードの表現も上手みたい。次は、そちらを強く意識して欲しいなぁ、と思うのです。

12:10 クレイグ グリーン

 お次は、ロンドンメンズから移籍した「クレイグ グリーン(CRAIG GREEN)」。「コレは洋服?それともアート?」と唸っちゃうクリエイションの持ち主です。

 今回も、終盤4ルックには度肝を抜かれます。完全にロボットです(笑)。「ワレワレハクレイググリーンナノダ」。そんなデジタル音が聞こえてきそう(笑)。細部を見ると、日除け用のブラインドが洋服の骨組みを担っています。奇想天外ではありますが、このあたりは「クレイグ グリーン」らしい、さ
まざまが繋がって構成される万物をシンボリックに表現するコレクションピースです。

 進化が際立っていたのは、そんなアイデアを希釈してリアルクローズに落とし込んだ前半のパートでした。アイデアは最後のコレクションピース同様、万物、この場合は「パーツ」と呼ぶのがピッタリの小さな布の組み合わせ。けれどその一個一個が、白いシャツ生地やダウン、パラフィン、サテンなどで作られており、「あぁ、着られそうだ」と思わせるのです。キャンバスに見立てた純白のコットンに大きな花を描き、それをイーゼルに立てかけるかのようにボディに貼り付けたワンピースは、秀逸な美しさでした。拍手喝采。パリに移って、大正解です。

14:00 ダンヒル

 パリのシンボル、グラン・パレに移動して「ダンヒル(DUNHILL)」へ。センス抜群のマーク・ウェストン(Mark Weston)による「ダンヒル」は、あくまでリアルクローズながら、ドラマティックな要素をひと匙。しかも、コレクションピースも店頭でしっかり売ろうという気概に溢れるステキブランドです。

 今シーズンは、ピカピカに光るパテントレザーのパンツを軸に、ボックスシルエットのジャケットやオーバーサイズのコートを合わせ、シルクサテンのストールを首にキュッと巻きつけます。これだけ正統派のエレガンスだと、正直ちょっと気疲れ・着疲れしてしまいそうですが、オーバーサイズだから大丈夫かな?

16:30 ポール・スミス

 お次は、なんとブランド創立50周年の「ポール・スミス(PAUL SMITH)」!!半世紀、しかも創業デザイナーが今も現役。加えてインディペンデントというのは、本当にたいしたものです。ショーの前には、日本人アンバサダーの三浦春馬さんと、森星ちゃんを撮影。2人はそれぞれ、ジャケットの着こなしが対照的で、写真に収まる姿もバラバラ。「ジャケットって、個性的に着こなせるし、個性的に振る舞えるモノなんだなぁ」なんて思います。

 ショーは、50年を振り返るムービーからスタート。うまく撮影できないアングルだったのが悔やまれます。コレクションは、近年トップラインでイメージ発信を強化する、大人カラーのセットアップがメーン。最近は、英国紳士もノーネクタイ。タートルネックのトップスや、ポールさん手描きのロゴを拡大プリントしたシャツなどを合わせます。終盤は、美しきスカイブルー。50年経っても明日のため、未来のために空を見つめているのかな?ベリー・エモーショナルです。

17:30 アンブッシュ

 お次は「アンブッシュ(ABMUSH)」。先日、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」などを擁するニューガーズグループ(NEW GURADS GROUP) が買収というビッグニュースが飛び込んだのは、記憶に新しいところです(詳細は、コチラ)。

 展示会場に行くと、ウエアの提案、メチャクチャ増えています。きっと次は、バッグやシューズですね。

 「カントリーサイド」と銘打ったコレクションは、作務衣や長着、市松模様など、日本の伝統文化とストリートを融合。着物合わせのMA-1(風)がベリークールです。ニューガーズ入りを決めた理由と今後のビジョンについて、日本に帰ったらVERBALさんに取材したい旨を伝えつつ、YOONさんには「ディオール(DIOR)」のシルバー&パールジュエリーが素晴らしかったこともお伝えして、失礼しました。

18:30 アクネ

 次はルーブル美術館で「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」。今回は同じ会場、同じ時間に2020-21年秋冬のメンズとウィメンズを同時に発表。でもランウエイは分かれていて、2つを同時に見ることはできません(苦笑)。「Why~、なぜに(by 矢沢永吉)」状態とはこのコト。なぜ、一緒に見られるようにしないのか?ナゾではありますが、「アクネ」っぽいカンジでもあるので、仕方なしに僕はウィメンズ、後輩オーツカはメンズに分かれ、会場入りです。

 会場は、こんなカンジ。中央に大きな壁がそびえ立ち、メンズ側からはウィメンズを、ウィメンズ側からはメンズを見ることができません。唯一、天井の鏡越しには、チラッと見えるのかな?

 ウィメンズは、タペストリーのように肉厚の生地や、洗いをかけたベルベットなどで作る、大人色のボディコンドレスが主軸。袖や裾はフレアでデカダン、退廃的なムードが漂います。

 一方のメンズは、どうだったんでしょう?あ、こんなカンジか。結構違ったんですね(笑)。

17:30 「1017 アリックス 9SM」

「1017 アリックス 9SM」のショー会場。パリメンズのフィナーレにこの混雑。マジでカラダにこたえます(笑)。

 さぁ、パリメンズのラストは、「1017 アリックス 9SM(1017 ALYX 9SM)」。会場は、ご覧の大混雑です。この手のブランドは毎回こんなカンジなので馴れっこですが、最後の最後にこの人混みは、実にキツい(笑)!!もみくちゃになって、会場入りです。

 コレクションは、正統派のフォーマル。「ちゃんと着る」価値観を提案した20-21年秋冬メンズを象徴するかのようでした。「アリクス」でタイドアップなのです。

 正直、皆が皆フォーマルを提案しなくて良いのでは?と思います。でもコレができないと、メンズブランドとして長生きできないのも分かっています。僕自身も、スーツの美しさをブランドの評価基準の1つにしています。でも働き方が自由になってリモートワークが増える世の中、スーツはどこまでメンズの中心であり続けるのでしょう?需要は再び、盛り上がるなんてコトあるのでしょうか?

 ショーのあとは、そんなことを考えながらホテルに戻りました。これから半年、みなさんと一緒にじっくり考え、悩み、アクションしていきたいと思います。

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「東カレ」が小説の舞台をリアルに体験できるイベントを開催 「DHCオリーブバージンオイル」をアピール

 ライフスタイルメディアの「東京カレンダー(以下、東カレ)」が、同誌に掲載している小説の舞台をリアルに体験できる読者向けのイベントを、2019年12月に開催した。40周年を迎えた「DHCオリーブバージンオイル」のプロモーションの一環として行われた同イベントでは、レストラン「KEISUKE MATSUSHIMA」の松嶋啓介・シェフがメニューを考案。オリーブオイルの味と香りが堪能できるスペシャルな一皿となった。

 「私が本気を出して、落ちない男なんかいない」。

 そんな強気のイントロダクションで始まる小説「落ちない男」は、2019年12月に「東カレ」のWEB版で連載していたコンテンツ。 シチュエーション別に区切ったストーリー仕立てで旬のレストランを紹介する手法は「東カレ」の十八番と言えるが、「落ちない男」の中でも、恋が始まる舞台として「KEISUKE MATSUSHIMA y Oliva(ケイスケ・マツシマ・イェ・オリーバ)」が象徴的に登場する。通常は「KEISUKE MATSUSHIMA」として営業している人気店だが、連載に合わせて3日間限定で、小説に登場する「KEISUKE MATSUSHIMA y Oliva」としてオープンし、読者イベントが開催された。

 同イベントでは、史上最年少で「フランス芸術文化勲章」を受勲するなど、数々の偉大な功績を持つ松嶋啓介・シェフが、オリーブオイルの香りや味を最大限に引き出すメニューを特別に考案。極上のバージンオリーブオイルを贅沢に使用した「鯛のローストとスペイン産オリーブオイルのピストゥ」が松嶋シェフの代表作の一つとも言える“本当”のラタトゥイユを添えて振る舞われた。

 小説の中でも、登場人物達が舌鼓を打った本メニューは、季節の食材にこだわった自然な美味しさに加えて、女性の美容も考えられた究極のメニュー。同イベントをサポートするDHCのスペイン産エクストラバージンオリーブオイルが使用されている。オリーブオイルの苦味とコクが堪能できる一皿だ。

 会場ではトータルビューティアドバイザーの水井真理子氏と日紫喜康一郎「東カレ」編集長のトークショーも開催。オリーブオイルの効能と共に、小説の主題ともなっている“自然体の美しさ”について、水野氏は「足し算と引き算が大切」とアドバイス。「素材のポテンシャルを引き出すためにも、時短で効果を出すためにも、オイル美容は有効。肌がきれいならメイクもポイントを絞ったシンプルなメイクでも十分に映えます」と語った。

 渋谷区神宮前の閑静なロケーションに店を構える「KEISUKE MATSUSHIMA」は、オリーブオイルの本当の美味しさが楽しめるメニューに定評があり、新たな食体験を求める人におすすめしたい名店。舞台に身を置き、小説の登場人物に思いを馳せながら、素材を活かしたメニューを心ゆくまで堪能したい。

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好調「パリ・サン=ジェルマン」のアジアトップに聞くサッカークラブの枠にとどまらない多角化経営

 フランスのサッカーチーム、パリ・サン=ジェルマンFC(PARIS SAINT-GERMAIN FC以下、PSG)が日本のファッション市場で存在感を増している。2018年9月に欧州サッカークラブとしてアジア初の公式ストア「PSG ストア トウキョウ」をベイクルーズグループ運営のもとに、渋谷・明治通り沿いにオープン。ナイキの「ジョーダン ブランド(JORDAN BRAND)」と継続的にコラボしたり、メンズスキンケアブランド「バルクオム(BULK HOMME)」とパートナーシップを結んで、チームに所属する仏代表キリアン・エムバペ(Kylian Mbappe)の来店イベントを行ったりと、話題性にも事欠かなかった。さらに昨年11月には、新生渋谷パルコにPSGストアの2号店と初のカフェ事業「PSGカフェ」をオープンするなど出店攻勢をかける。事業拡大の背景をキーマンであるセバスチャン・ヴァゼル(Sebastuien Wasels)パリ・サン=ジェルマン アジア・パシフィック代表と、ファビアン・アレグレ(Fabian Allegre)パリ・サン=ジェルマン ブランド・ディバーシフィケーション・ディレクターに聞いた。

WWD:渋谷パルコに「PSGストア」の2号店と「PSGカフェ」を同時オープンしたが、日本で出店拡大する理由は?

セバスチャン・ヴァゼル=PSG アジア・パシフィック代表(以下、ヴァゼル):2018年に縁があってオープンした明治通り沿いの最初のストアが非常に好調なので、日本での出店を拡大するきっかけになった。渋谷パルコでは、1号店とは違う新しい客層を獲得できると考えている。われわれの存在感を示すのに最適な場所だ。

ファビアン・アレグレ=PSG ブランド・ディバーシフィケーション・ディレクター(以下、アレグレ):日本はアジアの中で最もファンが多く、われわれにとって非常に重要なマーケットだ。東京とパリはとても似ているし、日本もファッションに対しての感度が高い。そういった意味でもアジアで最初のストアを東京にオープンしたのは、シナジーが生み出せると考えたからだ。PSGと「ジョーダンブランド」のコラボレーションも話題になったが、それも想定通りだった。今後もいくつかの出店をしたい。

WWD:ベイクルーズグループはどのようなパートナーか?

ヴァゼル:6年前からライセンスパートナーとして、製品の企画、製造、販売を手掛けていただいている。同じ価値観を持ち、ファミリーのような存在だ。

アレグレ:われわれはパリのチームだから、ファッションを非常に大切にしている。だから同じような感覚を持ち同じようなビジョンを持っているベイクルーズは、われわれにとってはパーフェクトなパートナーだ。

WWD:そもそもサッカークラブであるPSGが、なぜファッション事業も本格的に取り組むのか?

ヴァゼル:11年にカタール政府投資庁の投資が入ったことが大きい。そこからグローバルなチームを目指すためにファッションやミュージック、アート、エンターテインメントなど多くの戦略を掲げてきた。中でもファッションはパリを代表するカルチャーだし、より多くの人にチームを知ってもらえるきっかけになると考えた。

WWD:PSGとしては日本でカフェ業態もオープンさせた。

ヴァゼル:イギリスにパブがあるようにカフェはパリの文化そのもの。その文化をわれわれはグローバルに伝えていく。カフェにはさまざまな可能性があり、例えば待ち合わせ場所として「PSGカフェ」を使ってもらったりと、PSGが人々の生活にもっと入り込める可能性がある。そして飲食からも新しいファン獲得ができるだろう。

アレグレ:パリの人々にとってカフェは、本当に日々の生活の一部なんだ。カフェで試合を観戦できるようにするなどといったことにも日本で取り組んでいきたい。

WWD:事業が多角化する中でも大切にしているPSGらしさとは?

ヴァゼル:どの分野にも共通することは、‟Excellence(優秀であること)”‟Diversity(多様性)”‟Innovation(革新的)”——この3つだ。何をするにおいても常にハイクオリティーでなければならないし、人種や性別、年齢に関係なくリーチできることが必要だと考えている。

WWD:昨年はスキンケアの分野で「バルクオム」とのパートナーシップ契約を発表した。パートナーを選ぶ際に重要視していることは?

アレグレ:同じような価値観や目標を持っていること。

WWD:今後の日本展開をどのように考えている?

ヴァゼル:日本には今580万人のヨーロッパサッカーのファンがいるが、その中でナンバーワンのヨーロッパサッカークラブになりたいという目標を持っている。PSGが人々の生活の中に毎日入っていけるようなチームにするため、さまざまな活動を引き続き行い、われわれのDNAを伝えていく。今後は日本でもサッカーアカデミーを開いたり、親善試合を行うことも考えている。全ての計画はパートナーが見つかってからになるので、今の段階で具体的なタイミングは言えないが、ほぼ毎日パートナー候補と話しており、近いうちに実現したい。

アレグレ:現在15カ国にアカデミーがあり、2万人の子どもたちがプログラムを受けている。ただし、われわれの戦略は他のクラブと違い、世界各国に無数のアカデミーを作ればいいというわけではない。本当に重要な都市で正しいパートナーと組み、進めることが重要だ。じっくりと時間をかけて最適なパートナーを探していく。

WWD:22年の「カタールワールドカップ」に向けて、中東でのビジネス展開も強化している。中東でのビジネス拡大については?

ヴァゼル:中東は戦略的にも重要な地域だ。中東のほとんどの国にファンクラブがあり、カタールにも最近オフィスを設け、ストアもオープンした。日常的にその地域でファンとコミュニケーションし、われわれの存在感を高めていくことを目的にしている。毎年冬にはチームのフレンドリーツアーという海外ツアーがあり、ローカルなファン層を強化するために、トップ選手の練習風景を間近で見られるような活動も行っている。PSGブランドをより多くの人に知ってもらうために今後も活動を続ける。

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メンズコレ裏街道記 パリメンズに初挑戦した「ダブレット」と「ターク」を見て思うこと

 1月16日。晴れ。日程が過密なパリ・メンズの中でも特にこの日はスケジュールがぎっちりで、朝から何だか落ち着きません。でもそのそわそわとした気持ちはスケジュールのせいだけではなく、この日にパリコレデビューを飾る日本の2ブランドがショーを控えているからでもありました。井野将之デザイナーの「ダブレット(DOUBLET)」と森川拓野デザイナーの「ターク(TAAKK)」です。

15:15 ターク

 前のショーから少し時間が空いたため、珍しく昼食をとる時間が作れました。しかも比較的ゆっくりと食べられるほどゆとりがあります。でも、気がつけばいつも通りの早食いをきめて、会場に到着していました。ショー開始は15時15分。僕が会場に着いたのが15時ちょうどぐらい。どんなショーでも基本的に20分前後遅れて始まるので、会場に着くのは早すぎるぐらいです。でも、なぜだか行かずにはいられませんでした。会場に到着すると、森川拓野デザイナーが入り口付近で忙しそうに挨拶まわりをしています。前日も会場で深夜2時まで作業や打ち合わせをしていたらしく、寝不足のせいか顔色はめちゃくちゃ悪い。日本から帯同している広報も目を充血させながら、にこやかに振る舞っています。みなさん明らかに満身創痍。(本番前にこのバタバタで大丈夫か……)と少し心配していたところに、森川デザイナーが駆け寄って来てくれました。僕からは「頑張ってください」としか言うことはできないなと考えていると、先に森川デザイナーから「良いショーを見せられると思う」とだけ言い残し、再びバックステージへと帰って行きました。ファッションの舞台でここまで真剣に戦っている人たちを目の当たりにし、まだ会場に入ってもいないのに泣けてきました。実際にショーを見ると、これまでとは明らかに違います。パリという大舞台で戦うために、洗練されたスタイルへと舵を切ってきたという印象でした。よく見るとこれまでの「ターク」のドロっとした濃厚な強さはあるものの、フロッキーに見立てたデニム素材やチュールを重ねたような奥行きのあるチェック柄、チェーンパーツの使い方など、これまでに感じることのなかったエレガンスを感じました。これまでよりもスタイルをぐっとハイファッションに寄せています。ショーを一緒に取材したジャーナリストのエリー・イノウエ(ELIE INOUE)さんやカメラマンの土屋航さんは、興奮気味に「めっちゃよかった」と口をそろえます。でも「ターク」の濃厚さが人間っぽくてが好きだったひねくれ者の僕にとって、本当にいいコレクションだったか、ショーの直後はいろいろ考えていました。

「ターク」2020-21年秋冬パリ・メンズ・コレクションより

16:30 ダブレット

 奇しくも「ターク」とほぼ同時間帯での開催となったのは、2018年の「LVMHプライズ」でグランプリを獲得した「ダブレット」です。会場に着くと、早くも異様なムードが漂っています。入り口横にはなんと、日本のレトロな定食屋のようにラーメンやステーキなどの料理サンプルがウインドウに並んでいます。その時点ですでにワクワクするのですが、会場内に入ってさらに度肝を抜かれました。外観は定食屋なのに、中身は完全にファミリーレストラン仕様だったからです。本物そっくりなメニューが置かれていたり、お菓子コーナーやおもちゃコーナーがあったり、フローズンの機械を設置していたりと、もう爆笑の連続。すでに「ダブレット」ワールドに引き込まれてしまいました。いよいよショーが始まると、BGMの「We Are the World」のしっとりしたイントロの違和感にじわじわきて、笑いすぎて頬が痛くなるほど。とはいえ、演出に服が付いてこなければショーをやる意味はありません。われに返って取材モードに切り替え、真顔でモデルの登場を待ちます。そして10秒後、再び爆笑していました。だってリアルな寿司のプリントや立体になったパンダのウエアやシューズ、くり抜く前のプラモデルを模したバッグやニットなど、これでもかというほどのユーモアが連続したから。でもただ面白いだけではなく、段ボール風の素材はピッグスキンに特殊な加工を施していたり、プラモデルのアイテムは一つ一つのパーツが精巧に計算されて作られていたりとものすごいテクニックで作られているからこそ、なおさら引き込まれます。「ダブレット」チームにしかできない特殊技術をこれ見よがしに主張するのではなく、“笑い”という全世界共通のフィルターを通して表現することで、より共感されて愛される服になる。涙した「ターク」とは一転、多幸感に溢れたショーとなりました——フィナーレを終えるまでは。

「ダブレット」2020-21年秋冬パリ・メンズ・コレクションより

 ショーが終わり、次の会場に向かおうとすると、井野デザイナーの奥様が「まだまだですね」と涙を流しながらダメ出しをしています。その姿を見て僕もハッピーな表情から一転し、必死に涙をこらえました。「ターク」のように大舞台に真っ向勝負するショーでも、「ダブレット」のように人を楽しませるショーでも、裏側には携わる人たちの個々の思いがあります。しかし僕たちの仕事は、ショーという“結果”を見て、クリエーションの質や現在のマーケットを開拓できる可能性があるかどうかというビジネス的な考察を綴ること。プロセスは大事ではありますが、その部分に左右されすぎると、フラットな視点が揺らいでしまう可能性がある。でも、これまでの2人のファッションに対する強い思いを見てきたからこそ、ブランドに携わる人たちを大切にする姿勢を見てきたからこそ2ブランドのショーの素晴らしさは必然であり、涙せずにいられませんでした。

 思い返せば2人に出会ったのは4年前で、今よりもブランドの規模はまだまだ小さかったころ。当時から共通して変わっていないのは、自分がデザインしたコレクションを心の底から愛しているという気持ちがにじみ出ていること。そしてそのムードを伝って人に感動を与える力を持っていることです。右往左往しながらも、そこだけは一貫していました。ショーの直後はいろいろと考えた「ターク」の“強さ”も、「ダブレット」の“笑い”も、昔からブレずにやってきたことであり、2人ともパリの舞台にまでたどり着いたのだからきっと両方正解なのです。暗いニュースが多いファッション業界で、ここまで前向きに、そして真剣にファッションと対峙する彼らの姿に、業界への希望すら見出すほどでした。彼らが残したエモーショナルな足跡は、きっと次世代にもつながるはずです。2人には、時には切磋琢磨し、時には協力しながら、日本のファッションを活気付けてもらいたい——そう強く願った、思い出に残る1日となりました。

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それぞれの時計「トゥルーム」 モデル市川紗椰の場合

 「トゥルーム(TRUME)」は、プリンター大手のセイコーエプソン(長野県諏訪市、碓井稔社長)が2017年にスタートした時計ブランドだ。ブランド名はTRUE(真実)とME(自分)を合わせた造語で、“真実の自分を見つけるための人生の羅針盤となるもの”との思いが込められている。ここでは、「トゥルーム」とモデル市川紗椰との特別な関係にスポットを当てて、その魅力に迫りたい。

「トゥルーム」が提供する
ラジオ番組の公開収録を取材

 J-WAVE(ジェイウェイブ)が毎週土曜日21時からオンエアする「トゥルーム タイム アンド タイド(TRUME TIME AND TIDE)」は、「トゥルーム」がスポンサーを務めるラジオ番組だ。スタートは17年10月で、ナビゲーターはモデルだけでなく雑誌でコラム連載なども行い、鉄道や相撲などのカルチャーにも造詣が深い市川紗椰。毎回、各界をけん引するゲストを招き、“どのような時を歩んできたのか”“この先、どのようなビジョンに向かっていくのか”、過去・現在・未来に迫る。ゲストならではの価値観が明らかになるトークは必聴だ。

 市川は、「1時間番組で、一人のゲストをここまで掘り下げることはなかなかありません。番組を通じて、その人の別の側面にも光を当てたいので、それらを引き出すためのトークにはついつい熱が入ります。ちょっと前向きになれたり、新たな気づきを得られたり。そういったプラスをリスナーに感じてもらえればと思います」と話す。

市川紗椰が自分用に
「トゥルーム」を選ぶなら

 市川に時計観について聞いてみた。「私にとって時計はファッションの一部。服装のバランスを取るものとして使っています。少しゴツめでメカメカしい時計を、あえてフェミニンなスタイリングに合わせたりします。コントラストで女性らしさが際立つんです。もし私が『トゥルーム』を身に着けるなら、パイロットモデルの“Sコレクション”ですね。主要25の空港コードがベゼル側面に刻まれていて、これを眺めるだけでもいろんな想像ができて楽しいです。“紺碧(こんぺき)”と名づけられたネイビーのレザーベルトの色合いも好き。見た目は重厚なのに着け心地は軽いところもいいですね」。

市川紗椰が男性に
着けてほしい「トゥルーム」は?

 男性に着けてほしい一本については、「海から着想された“Mコレクション”。カジュアルスタイルをグレードアップしてくれるし、スーツにも合わせられるので一つ持っておくと便利かも。もちろん光充電だけで作働して、GPSセンサーによって今いる場所の時間・高度・気圧・方位を針で示してくれるのもすごいですよね。“TR-MB7005”には米国ホーウィン社製のクロムエクセルレザーベルトが付いていて、経年変化が楽しめるそうです。その日の予定や気分に合わせて、付属のコーデュラバリスティックナイロンベルトに付け替えられるのもいいですね」と語る。さらに、時計とは?と問うと「時間を見るだけでなく、自分らしさを表現できるもの。つまり時計って、その人の分身なんだと思います」と答えた。

エプソンスクエア丸の内で
タッチ&フィール!

 公開収録が行われたエプソンスクエア丸の内では、最新のエプソン商品やソリューションを体感することができる。「トゥルーム」に加えて、同社傘下の「オリエント(‎ORIENT)」や「オリエントスター(ORIENT STAR)」もタッチ&フィールが可能で、貴重なアーカイブなども展示されている。もちろんプリンターやプロジェクター、パソコンなどもラインアップする。

PHOTO : TAKUYA FURUSUE, KEIKO TANABE
TEXT : KIYOTO KUNIRYO(NO-TECH)

問い合わせ先
エプソン販売
03-5919-5442

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完全実力主義。検定試験と現場社員の声を生かした評価制度で明確な指標を示す 「20代成長環境」1位/ジンズ【ファッション業界 働きがいのある企業ランキング】

 「WWDジャパン」1月20日号では、「ファッション業界 働きがいのある企業ランキング」を発表。国内最大級の社員口コミ数を有する「OpenWork」の協力のもと、直近5年間でクチコミ件数10件以上ある企業の中からファッション業界における働きがいのある企業ランキングを独自に作成した。連動するウェブ企画では、「風通しの良さ」「20代成長環境」「法令順守意識」項目で1位となった企業に取材。1位たるゆえん、その魅力と源泉を探った。

 「20代成長環境」1位はジンズ。社員の平均年齢29歳の若い企業だ。完全実力主義を採用し、若者が活躍し成長できる環境づくりを積極的に進めている同社の仕組みについて、人事戦略本部の小川篤史・企画開発チームリーダーと小林真吾・事業統括リーダーに話を聞いた。

WWD:「20代成長環境」1位について、率直な感想は?

小川篤史・企画開発チームリーダー(以下、小川):現場の力は日々実感していたが、「20代成長環境」1位にランクインできたことはとてもうれしい。「ジンズの成長は人間力にある」と自負している。そこが一番の強みであり、採用を担当しているとそのような社風に魅力を感じて入社してくる社員が多いことも目の当たりにしている。だが、意図的に成長できる環境をつくり出せているかというと、まだ改善していくべき点はあると感じている。会社全体の成長には社員一人一人の成長が不可欠だと思うので、現状にとどまらずより良い社内の仕組みを作っていきたい。

小林真吾・事業統括リーダー(以下、小林):社員約3500人のうち200人が本社勤務で、残りは店舗勤務。新入社員は全員まず店舗に配属される。眼鏡に関する教育制度はかなり充実していて、弊社独自の「スキル検定」と呼ばれる検定制度で眼鏡の知識はもちろん、販売の技術も習得できる仕組みになっている。ランクが分かれていて、「エントリー」「ベーシック」「アドバンス」「エキスパート」「マイスター」までの5段階。「マイスター」は合格率が5%で全体のわずか1%しかいない狭き門だ。また業務形態上、来店者数の多い店舗では接客の回転率も重要で、お客さまの意図を汲み取った最適な提案ができる知識と技術力が伴った対応が素早くできることが問われる。そこが“街の眼鏡店”と異なる点かもしれない。求められる技術を研修と検定に分けて明確に示しているところが、「20代成長環境」の評価に繋がっているのかもしれない。

小川:この検定制度は、社員だけでなくパートやアルバイトにも適用される。検定のレベルが上がれば基礎時給も上がるので、それがモチベーションにつながっていると思う。もちろん目指す目標は個々に委ねているので強制ではない。

WWD:検定に合格するためにはどのくらいの時間を要するのか?

小川:店長になるには「スキル検定」で「エキスパート」の取得が必須。個人差はあるが、早ければ入社して3カ月くらいで「エントリー」を、1年半で「エキスパート」を取得し店長になる者もいる。平均は2年以上だ。検定自体は6年前にできたが、年々難易度は上がっていると思う。検定を作った当時は年間50〜70もの店舗が新規にオープンするなど、ビジネスが急速に拡大していた。チェーン店なので各店舗の店長の裁量に頼る部分が大きくバラつきがあり、昇進の基準を明確にする必要があった。手頃な価格の商品であっても、接客、笑顔、回転率、ブランド力など、競合に勝つためにどうすればいいか研究した。また、眼鏡は医療器具としての側面もあるので、丁寧に扱い信頼を得ることも大切な要素だ。

WWD:完全実力主義を採用しているが、具体的な評価制度は?

小川:2019年9月に店舗の人事制度を変えた。従業員満足度の調査で、現場から「評価基準が曖昧」「現場で頑張っているのに評価されにくい」という声があったためだ。そこで、それまで評価の目安としていた「グレード評価」を見直し、新たに「インセンティブ評価」と「コアバリュー評価」を実施することにした。「スキル検定」では測れない、ジンズが掲げるブランドのコアバリューを理解し体現できているか、さらにビジネスマンとしての行動が適切であるかをチェックするものだ。“店舗で頑張っている人を評価する”ことを新しいポリシーとして設け、従業員が納得できる評価制度に作り直した。「インセンティブ評価」では“売り上げ利益”“お客さまの満足度”“従業員の満足度”の3つの視点で判断する。半期に一度の評価だが、売り上げとお客さまの満足度を達成するとインセンティブが毎月給与に反映される仕組みになっている。

また「グッジョブカード」を導入し、店の売り上げに貢献したスタッフを店舗スタッフ内で評価し合えるようにしている。このカードは正社員かアルバイトかに関係なく、個人間で自由に送り合えるもので、90%の店舗スタッフが使用している。店舗業務はホール、測定、加工と分業制で個人ノルマを設けることができないため、個人の評価におけるこまやかな評価体制を設定した。この「グッジョブカード」の枚数もインセンティブに反映されるが、実際のところスタッフの間では1枚あたりがいくらに換算されるかというよりも、個人の長所や感謝の気持ちを伝え合う文化として根付いているように思う。

WWD:昇進に関しては、「スキル検定」「インセンティブ評価」「コアバリュー評価」以外にも評価基準がある?

小川:「スキル検定」だけでは昇進の納得感が自他ともに得られづらかったため、19年9月に「昇進試験」を復活させた。「ブランドのコアバリュー理解・体現度」を確認する試験だ。コアバリューの理解度を「実際に行動できているか」をすり合わせすることで、お互いの納得感を高めることが出来ている。知識があり普段の行動も伴っていて、周りも認める社員が店長になれるシステムを作る必要があった。

WWD:このようなこまやかな人事制度を整えるために、どのような点に留意したのか?

小川:今回の人事制度は、もともと店舗スタッフだった者が店に立つ人の目線で作った制度だというのは大きいかもしれない。また店舗で社員とパート、アルバイトのスタッフにアンケートや聞き込み調査も実施した。社風として、アルバイトの学生や家庭を持つパートタイムの方にはよく話を聞くようにしている。なぜなら彼らが消費者の目線に近く、またしがらみがないので率直な意見が出るケースが多いからだ。

WWD:最後に、社員にとって「働きがいのある」企業とは、どのような企業だと考えるか?

小林:利益だけを追うのではなく、ジンズがビジョンとして掲げている「すべての人の人生を豊かにする」という“Magnify Life”を実現し、顧客も従業員も満足した上で社会的に価値があることをできる会社だと思う。もちろん個人としては給与を重視する価値観もあるだろう。ただ、それだけで終わらない仕事ができることが働きがいに通じていくと考えている。低価格で良い品質のものを提供することで暮らしを変えていく。現在弊社はほかにもシェアオフィスなどの新業態にも着手している。“より良い社会に”という視点を常に持ち続けている会社が働きがいのある企業ではないだろうか。

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「スキンケアフロアの設計がうまい」伊勢丹新宿本店約40年振りの大改装 化粧品売り場のデジタル施策を市川渚が体験 後編

 三越伊勢丹は2019年9月25日、伊勢丹新宿本店本館の化粧品フロアのリモデル第1弾として2階のスキンケアゾーンをオープンした。“セルフケア”をコンセプトに“なりたい自分になるために、素肌を整え、素質を高める場”と定義する同フロア。これまで1階にそろえていたスキンケアカテゴリーを2階に拡張移設することでより深い製品提案やコンサルテーションが可能になった。

 約40ブランドをそろえる同売り場では新たにデジタルテスターを用意し、顧客自身が商品を調べることができるツールを設けたほか、パーソナルな肌測定を行うAI(人工知能)搭載型のツールを取り入れたデジタルコンサルテーションがキーとなる。

 同売り場では指名買い、目的買いに対応できるクイックカウンターを各ブランドに新設した。これまでスキンケアと言えば着席し、接客を受けながら購買につなげるのが主流だったが、クイックカウンターでは買い物の時短ニーズに応え、時間がない顧客にも満足できる体験を提供することができる。

 今回、ファッションやデジタルの業界で活動するクリエイティブ・コンサルタントの市川渚氏に1階メイクアップ同様売り場を体験してもらった。

 まずは「SK-II」。タブレット端末に顔を映し出すと、AR(拡張現実)で化粧水のつけ方をレクチャーするツールを設置。お客の顔の形に合わせて映像内に手が投影され、それにならって実際に手を動かせば正しく効果的に化粧水を塗布することができるというもの。そのほかにも、メイクを落とさず測定できる肌診断をそろえる。同サービスは乾燥や毛穴、シワなど肌の悩みなどをカウンセリングし、ユーザーと同年代の肌データをベースに肌年齢や状態などを診断、お客一人一人に合ったスキンケア方法を提案するというものだ。

 同ブランドの美容部員に曰く「毎日肌の状態は変化します。診断した方の多くは肌年齢を気にされますが、それよりも水分量やくすみなどを気にされたほうが今後お手入れしていく上では重要です」とのこと。

 実際に肌診断を受け、市川氏は「こうして診断し、肌年齢を可視化されると数字ばかりに目が行きがちですが、改めて今現在の肌の状態を知り、スキンケアの大切さを再認識しました。メイクを落とさずに診断を受けることができるのも手軽で嬉しい。継続して診断を受けることで肌の状態が改善されていくことが分かれば、モチベーションも高まりますね。」とコメントした。

 次に「イプサ(IPSA)」。素肌の状態の診断結果から、肌に合ったファンデーションなどのリップの色などを提案する機能をそなえ、測定結果はスマートフォンに保存できる。肌状態に合わせておすすめされた製品などを確認出来るほか、会員登録することで肌データや購買履歴、受け取ったサンプルまでデータ化され、全国の「イプサ」店舗で確認できるシステムを導入した。また、お客は肌データを元にクイックカウンターでも製品を購入できるというのも特徴だ。

 「細部まで診断して下さった上で、自分に合う製品をお勧めしていただけるので、説得力が増しますね。また、受けた診断内容や勧めていただいた製品など店頭での体験をベースにして、それらをサポートするサービスがスマホを通していつでもどこでも利用できる仕組みはとても現代的。ユーザーファーストな設計で好感を持ちました。」と語る。

 今回の大改装でより強化した“体験型”のデジタルコンテンツは、リアル店舗とオンラインをつなぐ足がかりになりそうだ。これまでAIやARを用いたデジタルコンサルテーションといえば、メイクアップが主流だった。スキンケアでも店舗に足を運ぶことで体験できるサービスや提案などを拡充することで、お客は肌状態を可視化できるようになりオンラインでも自分に合った製品をリピート購入することができる。季節の変わり目や肌の状態が揺れる時などに店頭に足を運べばその都度パーソナルな提案を受けられ、店舗側も顧客が定期的に足を運ぶ回数を増やすことができる。ECサイトなどが発展し、顧客が店頭に行かずとも製品を購入できる時代で、リアル店舗はそのあり方を問われているが、互いの利点を生かし上手く融合した施策が今後ますます増えそうだ。

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懐かしいビデオカセットテープがモチーフに 「ルイ・ヴィトン」2020年春夏バッグ&シューズ

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の2020年春夏コレクションは、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのパリが華やかだった時代、ベル・エポックに思いを馳せた。テーマは、“ジェンダーの流動性”。中性的な魅力を放つアーティスト、ソフィー(Sophie)が歌うエモーショナルな映像を背景に、ロマンチシズムとアール・ヌーボーがダンディーな人々のワードローブに影響を与えた時代の記憶を蘇らせた。パフスリーブやベルスリーブ、ラウンドカラー、チューリップスカートといった曲線的なデザインと、テーラードアイテム、カラフルなプリントやスパンコールの装飾で、華やかかつノスタルジックなスタイルを提案する。

 バッグの中で印象的だったのは、懐かしいビデオカセットテープのモチーフと、多くのバッグにレザーを編み込んだチェーンを付けたこと。ビデオカセットテープは、その形状を象ったバッグ(予定価格62万5000円)やモノグラム・キャンバスの上にプリントしたトートバッグ(同21万4000円)に採用。チェーンは取り外し可能で、バニティーケースのようなバッグや卵型の “エッグ バッグ”、細いショルダーストラップも付いたがま口タイプのクラッチ、ヌメ革でアップデートされた“スピーディ”などにあしらわれた。そのほか、モノグラムの“AirPod”ケースやリップスティックケースも登場した。

 シューズは、バッグ“ドーフィーヌ”に見られるLVロゴの金具からインスピレーションを得たアッパーのデザインがカギ。ローファーからスポーティーなカラーリングのヒールシューズまでにバッグ同様の金具があしらわれている。モノグラムのフラワーモチーフを象ったヒールのデザインもポイントだ。また、スエードとレザーを組み合わせたプラットフォームのロングブーツや、ラバーのトーキャップを配したキャンバスのレースアップショートブーツも打ち出す。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

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編集長は先週何した? ルミネ、海外ブランド、百貨店、アパレルの賀詞交歓会をハシゴ

 「WWDジャパン」編集長の向です。本連載は今年最初の更新です。遅ればせながら本年もよろしくお願いします。1月の最初の2週間は連日、各種業界団体の賀詞交歓会に出席しました。賀詞交歓会はもちろん「今年もよろしくお願いします」と挨拶を交わす場ですが、各社の責任者に一気に会えるから記者にとっては情報を得る好機であり、狩人気分です(笑)。

1月7日(月)
新年初出勤

 つまるところ私は、ファッションを生業にする人たちの情熱や戦略を追いかけ紹介するのが好きでこの仕事に就いています。この日発売の新年号の特集「ネクストリーダー」でも、今後ファッショ界をリードするに違いないと弊紙記者たちが推す10組を紹介しています。表紙はウワサのモデル、美佳さんです!

1月8日(火)
ルミネ賀詞交歓会

 ルミネの賀詞交歓会の会場は東京プリンスホテル。出店している各社が来場しているので大賑わいです。こういう場での「今度ご飯行きましょう」から新しい話が広がるケースは多々あり、今回も帰り際の立ち話から楽しみなご飯が決定。来てよかった。

1月8日(火)
海外ファッションブランド協会 
ニューイヤーパーティー

 数あるファッション業界の賀詞交歓会で一番華やかなのが、外資系ブランドが所属する海外ファッションブランド協会です。女性社長や役員が他団体と比べれば多く(それでも少ないけれど)、男性社長もポケットチーフ率が高いなどドレスアップしている人が多いから。そしてくじ引き大会の景品が各社持ち寄りのため豪華で盛り上がります。

1月8日(火)
例の「アディダス」の
“循環”スニーカーが届く

 「アディダス(ADIDAS)」が昨年発表した完全リサイクルスニーカー「フューチャークラフト.ループ(FUTURECRAFT.LOOP)」の“第2世代”が手元に届きました。昨年4月の発表会で“第1世代”を受け取り、しばらくジムなどで履いた後に同社へ戻し、リサイクルされて帰ってきたというワケです。履き心地を試すためにルミネの賀詞交歓会にはこちらで出席しました。

1月10日(金)
日本百貨店協会賀詞交歓会

 百貨店の社長が一同にそろう賀詞交歓会の会場は東京會舘でした。開演直後に別行動の同僚から「どのあたりにいますか?」とLINEが届き、「スピーチをしている赤松会長の正面にいます」と返信したつもりが誤って母親に送ってしまう失態。母から「何事?」と問われて説明が面倒でした、というのは余計な話です。今年もコミュニケーションツールの使い方には気を付けようと思います。

1月15日(水)
日本アパレル・ファッション産業
協会賀詞交歓会

 アパレル各社がそろうこちらの会の出席者は男性率が推定98%!毎年出席しているので慣れましたが最初はギョッとして、“ファッションを扱う業界なのにこれは異様”と思いました。男性がダメではもちろんないですが、女性を対象にしたビジネスが多い業種で、就業人口全体は女性の方が多いのに意思決定する立場に女性がほぼゼロなのはアンバランスなお話です。

1月19日(日)
1/13号「捨てないファッション」特集と
1/20号「働きがいのある企業
ランキングTOP50」特集

 1月に発行した2号の特集はいずれもファッション業界にとってシリアスな問題に真正面から取り組んでいます廃棄と人材。賀詞交歓会の席でもこの2つの話題がたびたび上がりました。何かしらキズキを得られる内容ですのでぜひ読んでください。

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「公爵夫人はたくさんいるけれど、ココ・シャネルは私一人しかいないから」 by ココ・シャネル

Coco Chanel

 公爵夫人はたくさんいるけれど、ココ・シャネルは私一人しかいないから(「WWD JAPAN.com」2017年8月20日公開、公爵のプロポーズを拒絶? あなたが知らないココ・シャネルの真実9選から)英国の第2代ウェストミンスター公爵ヒュー・グローブナー(Hugh Grosvenor)と10年ほど交際していたが、公爵から結婚を申し込まれるとあっさり断ったという。その理由についていわく

The WORDS
ファッション業界人の残した名言を日々の糧に。デザイナーやバイヤー、社長、編集長らの心に響く言葉をお届け。

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帰ってきたメンズこれドタバタ日記Vol.9 片寄涼太と「ロエベ」のメンズワンピを鑑賞 「ソロイスト」にタフな決断の時

9:15 コム デ ギャルソン・シャツ

 今日の朝イチは「コム デ ギャルソン・シャツ(COMME DES GARCONS SHIRTS)」のミニショー。通常、ファッションショーは20~30分遅れるのが当たり前。ギャルソンのブランドさえ、「コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS)」や「コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン(COMME DES GARCONS JUNYA WATANABE MAN)」は25分くらい遅れますが、朝イチのミニショーはオンタイム。しかも座席は早いもの勝ちです(分かりやすい!)。

 ということで、朝9時前には現地に到着。疲労もピークのパリメンズ後半戦で朝9時に会場に着くのは、正直ラクではありません。某バイヤーさんは「修行」と言っていましたが、気持ち、良く分かります(笑)。

 気になったのは、このスタイリング。スリット入りのポンチョを、カーディガンの中から外へ。カワイイです。シューズは、「アシックス(ASICS)」とのコラボでした。

12:25 ロエベ

 その後は、原稿を書いたり、エディターズレターをしたためたり。お昼過ぎに「ロエベ(LOEWE)」のショー会場、ユネスコ本部に到着しました。片寄涼太さんのお隣。片寄さんは昨日、「ロエベ」を着用してのシューティングに臨んだそうで、翌日ご挨拶するためにもジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)のインタビュー動画を事前にチェックしたそうです。昨日ご一緒した会食では、どこに、どう共感したかアツく語ってくれました。なんて勉強熱心でしょう。素直に感動です。

 そんな片寄さんと一緒に見たコレクションは、ジェンダーの概念を超越、というか最初から意識していないかのようです。コートの下は、もしかしたら何にも履いてないかもしれない(いや、下着は履いているでしょうがw)。コートをワンピース的な感覚で着ちゃいます。ファーストルックは、ドレープを寄せたドレス!!でもコレ、実はエプロンなんです(笑)。BGMはYoung GalaxyのPRETTY BOY。Shazamして初めて知りましたが、バンド名も曲名も、今季のコレクションにピッタリ。ヤングボーイが、パパやママの洋服を漁って、鏡の前でキャッキャしている。そんなプリティなシーンが思い浮かびます。今季のBGM大賞です。

14:30 サカイ

 お次は、今季はミリタリーの「サカイ(SACAI)」。MA-1の下にウールの将軍コート、その下にはモッズコートまで重ねたように見えるフェイクレイヤードのアウターなど、今季も「1着でキマるハイブリッド」がさく裂しています。レオパード、レッドベースのチェック、デニム、世界地図、ネイティブモチーフ、フリンジ、プリーツ、指輪を連ねたネックレス、「ナイキ(NIKE)」コラボのスニーカー……。終盤に出てきたアルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein)のTシャツにプリントされたメッセージ「本能と直感を信じる。自分は、正しいと思う時もある。でも、本当に正しいのかは分からない」というメッセージが印象的。思うままに、不安になる時もあるけれど、信じて突き進む。阿部千登勢さんの信念が滲むコレクションでした。願わくば、もっとメンズが見たいぞ!


15:05 アグ

 一昨日ローンチイベントがあった「アグ(UGG)」のスニーカーを手掛けた、アトモスの本明秀文社長にインタビュー。記事は近々にアップします!!

16:00 ディオール

 昨日のベスト、というか今のところのメンズベスト(の予感大な)「ディオール(DIOR)」の展示会へ。スゴいニュースもあるのですが、それはコチラの記事で。

 2020-21年秋冬コレクションは、一見するとシンプルですが、ものスゴく凝りまくっております。一番スゴかった、正直、今まで一度も見たことさえなかったド級のアイテムは、ミンクで作った“Gジャン”。遠目で見ると、縫製やボタンを模した線が見えてGジャンそっくりなのです。どうやって作っているのか⁉︎PRの方と一緒に考え、「まず表面をブリーチして、線を描きたい部分を少しだけカッティング。すると、ブリーチしていない黒い毛が現れ、線に見えるのでは?」との推論に達しました。正解は分からないけれど、いずれにしてもモノすごいクラフツマンシップ。「ディオール」、凄まじきです。

18:45 タカヒロミヤシタザソロイスト.

 地下鉄のストライキはだいぶ落ち着きましたが、いまだ運行本数は通常の1/5という13番線は大混雑!そして最寄駅はまさかのクローズ(モンパルナスというハブ駅なのに~!)。余裕だったハズが、結局小走りで「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATHESOLOIST.)」の会場にたどり着きました。

 すぐに始まるかと思いきや、1時間前にパリ市外でショーを開く予定だった「ジャックムス(JACQUEMUS)」のお客さんを待つと言います。けれど「ジャックムス」に向かった後輩オーツカによれば、ショーは55分押しで始まったとのこと……。そこから「ソロイスト.」の会場までは40分以上かかりますから、ゲストを本当に待つのであれば、ショーはまだまだ始まりません。でも、こちらも次のショーがあるワケで、正直、そんなに待ってられない……。さぁ主催者にとって、難しい判断が迫られる場面です。

 ブランドにとっては、「ジャックムス」帰りのゲストを待った方が、より多くの人の目に触れることになります。でも次のショーを考えると、どこかで決断しなくちゃいけない。一番悪いのは「ジャックムス」なワケですが、タフな決断をするのは「ソロイスト.」というなんとも可哀想な状況に。結局、ショーは45分遅れで始まりました。

 コレクションは、知ってた「ソロイスト.」よりもずっと開放的です。今季はあらゆるアイテムをプルオーバーで仕上げ、足りないラペルはストール状のアクセサリーで補うスタイルでした。

19:40 ホワイトマウンテニアリング

 「貧乏バス」で移動して「ホワイトマウンテニアリング(WHITE MOUNTAINEERING)」の会場へ。ピッティで「ラルディーニ(LARDINI)」とコラボしたカプセルコレクションを発表した時、相澤陽介さんが「今度のは、スゴいから。絶対来て!!」と熱弁を振るっていた(もちろん、参りますともw)、コレクションです。

 メロウなBGMで現れたのは、落ち葉プリントが郷愁、もしくは昔の日々を思い出させる「ホワイト」らしいレイヤード。今シーズンは「グッチ」や「ロエベ」を筆頭に、みんな子ども時代に戻っていますが、「ホワイト」もそんなカンジなのでしょうか?いずれにせよ、機能性素材の「無機的」という“短所”になりかねない特性を、郷愁が補完して、共感性を高めます。落ち葉色、ワインレッドがノスタルジックなムードをより一層引き立てますね。

 そして「アグ(UGG)」や「ダナー(DANNER)」「サッカニー(SAUCONY)」「コルマー(KOLMAR)」「ミレー(MILLET)」など、いろんなブランドとのコラボレーション。ブランドバリューを損ねず、デザインをブラッシュアップすることに長けた器用人の相澤さんならでは、です。コラボには懐疑的な人もいるかもしれませんが、こと日本人デザイナーのコラボについては、私、大賛成。日本人デザイナーはみんな器用だから、相手先にとってもメリットが大きい。何より大手に作ってもらうことにより手頃な価格帯で商品を供給できれば、消費者は嬉しいし、ブランドも海外での価格競争力がアップできる。デザイナー、コラボ相手、そしてエンドユーザー、みんなハッピーだと思うからです。

20:25 エルメス

 今日のラストは、「エルメス(HERMES)」。いつもより1サイズオーバーくらいのシルエットで、ジャケットはラペルが2重になったフェイクレイヤード。いつもよりストリートの感覚が増しています。でも、やっぱりとってもエレガント。オーバーサイズだと柔らかな素材感、つまりいいモノを正しく使っている「エルメス」の個性が光りますね。終盤は、不思議に輝く機能素材のパート。テクノ素材のようだし、ベルベットのようでもある。不思議なブルゾンに魅了され、1日が終わるのでした。

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“NUNO”展と抗議活動、展覧会がもたらしたもの 【高橋瑞木の香港アート&テキスタイル 連載vol.2】

 水戸芸術館現代美術センターのキュレーター時代に「拡張するファッション」(2013)などの展覧会を手掛け、現在は香港のCHAT (Centre for Heritage, Arts and Textile)で共同ディレクターを務める高橋瑞木氏が、“アジアのアートハブ”香港発のアートやテキスタイルの新潮流をリポートする。2回目は日本を代表するテキスタイルデザイナー須藤玲子氏の展覧会と香港の抗議活動、そして展覧会の現地での評判について。

 日本はお正月休みムードもすっかり抜けて、人々があわただしい日常に戻っているころだろう。しかし、香港は1月末から始まる旧正月を本格的に祝うため、今が師走の時期にあたる。しかし、香港は元英国領だったこともあり、クリスマスの時期も連休になるため、CHATにも多くのファミリーやカップルが訪れ、開催中の日本を代表するテキスタイルデザイナー須藤玲子氏の展覧会「Sudo Reiko: Making NUNO Textiles(邦題:須藤玲子の仕事-NUNOのテキスタイルができるまで)」や、須藤氏のテキスタイルによる鯉のぼりのインスタレーションを満喫した。

 展覧会が無事オープンした今だから落ち着いて振り返ることができるが、実はこの展覧会がちゃんと予定通り開催できるか、直前まで確信が持てなかった。というのも、香港で去年の6月から始まった逃亡犯条例改正案に反対する市民の抗議運動と、それに対する警察の度を超えた暴力的な取り締まりが、ちょうど展覧会設営の時期にピークを迎えていたからである。

 抗議運動の実施日時や場所についての情報は事前にSNSなどで拡散されていたが、11月は地下鉄構内が破壊されたり、抗議者と警察の衝突が頻繁に起こったため、公共交通網に影響が及んだ。そのため、多くの人が自宅から職場まで通勤できなかったり、自宅に無事にたどり着くために早退しなくてはならないという事態に陥った。ただし、状況は刻一刻と目まぐるしく変化し、激しい衝突が起こった後でも数日後には何事もなかったかのように普通の日常が戻ってくる、という感じだった。

 須藤玲子展の設営のために、 須藤氏をはじめ、NUNOのスタッフ、本展のアーティスティックディレクター、ライゾマティクス・アーキテクチャの齋藤精一氏と彼のチーム、展示デザイナーのたしろまさふみ氏や設営のチームなど、およそ10名近くを香港に招聘していたので、CHATのスタッフは毎日抗議運動の様子に神経を尖らせながら、デモの影響が比較的少ない場所にホテルを変更したり、 移動手段にマイクロバスを借り切るなど、万全の態勢で日本人クルーを迎える準備を整えた。そして、最悪の場合は展覧会を中止しなくてはならないだろうとも考えていた。日本では抗議運動の激しい場面がテレビなどで繰り返し報道されていたらしいから、日本人クルーの皆さんはさぞかし不安だったと思う。実際、NUNOの設営チームの先発隊が香港に到着した直後には、大学で学生と警察の激しい衝突が起こり、大学構内で火炎瓶と催涙ガスの応酬が繰り広げられた。

 そんな緊張感に包まれる中の香港に到着した須藤氏だが、偶然にもその到着のタイミングが区議会選挙の直前に重なり、 抗議運動を理由に選挙を政府によって中止させてはなるまいと、激化の一方だった抗議運動は市民によって驚異的なスピードで 沈静化した。したがって、私たちは予定通り設営作業を進めることができ、夜には美味しい中華料理に舌鼓を打つ余裕さえあった。

 今回の展覧会のキモは、「須藤玲子氏とNUNOのテキスタイルのクリエーションの秘密を思いっきり公開」すること。須藤氏のデザインのインスピレーションの源から、デザインスケッチ、サンプルから使用された素材までが陳列した。そして、今回の展示で画期的なのは、その素材が布になるまでの工場での染めや織りなどの特殊な加工の過程をインスタレーションとして再現していること。齋藤精一のチームが手がけた映像、照明、音声による演出で、展覧会会場は8つのテキスタイルの機械によるステージのような構成になっている。こればかりは会場で実際に体験してもらわないと伝わらないかもしれないが、CHATのビデオでさわりを見ることができる。

 迎えた展覧会オープニング当日の11月23日。100匹の鯉のぼりが雄大に空中を泳ぐ下で「Sudo Reiko: Making NUNO Textiles」の幕が開いた。レインボカラーの鯉のぼりが、CHATの会場をめがけて泳いでいく展示構成を手掛けたのは、須藤とフランス、アメリカ、東京など各地でタッグを組んでいるフランス人デザイナー、アドリアン・ガルデール。香港人たちは、早速スマホで記念写真やセルフィーを撮っていた。単に布を展示するだけでなく、その“布ができるまで”にもフォーカスし、デジタル映像やサウンドを駆使した展示は、これまでにない新しいテキスタイルデザインの展覧会だと関係者一同満足している。普段見ることのないテキスタイルデザインと製造の過程を感覚的に学ぶことができ、 NUNOの美しいテキスタイルを間近で見て触れるため、本展は香港の観客に大好評だった。何よりも鯉のぼりのインスタレーションは、日々テレビやパソコンで香港の殺伐とした様子を見てばかりいた香港人にとって、 久しぶりに見る色とりどりの美しい光景だったのだと思う。展示に加えて、CHATのテキスタイルチームは“ワークショップマラソン“と銘打ったイベントを開催。NUNOのテキスタイルを使った手芸のワークショップは大人気で、連日たくさんの人が参加していた。

 展覧会が開いて間もなく、恒例のCHAT主催「国際フォーラム」の時期がやってきた。これは香港で毎年12月1週目に開催されるビジネス・オブ・デザイン・ウイーク(Business of Design Week)と同時期に開催されていて、今年で4回目となる。このフォーラムは毎年特定のテーマのもとに10人以上のキュレーター、アーティスト、デザイナーや学者を世界各地から招聘し、それぞれがリサーチやプロジェクトについて発表し、意見を交換するもの。ちなみに2016年に開催された第1回目のテーマは「テキスタイルと女性とテクノロジー」、第2回目は「テキスタイルとコミュニティ、パブリックスペース」、第3回目は「テキスタイルのヘリテージ」、そして19年は「Staging Textiles」。テキスタイルやファッションの展示、プレゼンテーションの方法がテーマだった。20年は「テキスタイルとコンピューター、デジタルテクノロジー」がテーマになる予定だ。

 フォーラムにはロサンゼルス・カウンティ美術館(Los Angeles County Museum of Art、通称LACMA)で長年テキスタイルとファッション部門のキュレーターを務めているシャロン・タケダ(Sharon Takeda)氏をはじめ、パリでオートクチュールコレクションを発表している中国人ファッションデザイナー、グオ・ペイ(Guo Pei)の個展をシンガポールのアジア文明美術館で企画したキュレーター、ジャッキー・ユン(Jackie Yoong)氏、日本人若手デザイナーの富永航氏、前回のドクメンタ(DOCUMENTA)の参加アーティストでインディゴの栽培から染め、ファッションデザインまでおこなっているアフリカ・マリのアーティスト、アブバカール・フォファナ(Aboubakar Fofana)氏など、普段は絶対に一堂に会することはない多彩な顔ぶれが集まった(このフォーラムの様子はCHATのYouTube channel から見ることができる)。もちろん、須藤玲子、齋藤精一の両氏はフォーラムの最初のセッションに登壇していただき、須藤氏の展覧会の軌跡とともに、CHATの個展の制作の裏側を話していただいた。

 そんなわけで怒濤のように過ぎていった11月と12月。そして気がつけば1月もすでに半ば!「Sudo Reiko: Making NUNO Textiles」の会期は2月23日まで。今の香港は観光客も少なく、通常は宿泊代が高いホテルも格安のパックを売り出している。いつも数時間待ちのピークトラムもほぼ待ち時間なしで乗れる。私は普段は予約がいっぱいのレストランに当日の電話で入ることができた。そして今のところ「Sudo Reiko: Making NUNO Textiles」は日本巡回の予定なし、ということだけはお伝えしておこう。

高橋瑞木(たかはし・みずき)/CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)共同ディレクター:ロンドン大学東洋アフリカ学学院MAを修了後、森美術館開設準備室、水戸芸術館現代美術センターで学芸員を務め、2016年4月CHAT開設のため香港に移住。17年3月末から現職。主な国内外の企画として「Beuys in Japan:ボイスがいた8日間」(2009)「新次元:マンガ表現の現在」(2010)「クワイエット・アテンションズ 彼女からの出発」(2011)「高嶺格のクールジャパン」(2012)、「拡張するファッション」(2013、以上は水戸芸術館)「Ariadne`s Thread」(2016)「(In)tangible Reminiscence」(2017、以上はCHAT)など

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そうきたか!LVとSUGALABOという新展開 エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年7月23日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

そうきたか!LVとSUGALABOという新展開

 おっと!来ましたね、このニュース。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」が日本最大規模の店を大阪・御堂筋にオープンし、最上階に「SUGALABO」の須賀洋介オーナーシェフが手がけるカフェ&レストランが入るそうです。世界広しと言えど、「ルイ・ヴィトン」の店舗がレストランを併設するのは初めて。ラグジュアリーと飲食の新しい扉が開くと言っても過言ではありません。しかもパートナーは今を時めくスターシェフ。これは話題です。

 フランス生まれの「ルイ・ヴィトン」は80年代以降、ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)会長兼最高経営責任者(CEO)の指揮下でレザーグッズを中心に世界中へビジネスを広げてきました。1997年にはマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)を起用してプレタポルテを本格スタートしアイテムの幅を拡大。キム・ジョーンズ(Kim Jones)がメンズのアーティスティック・ディレクターに就任(2011年)以降はメンズのビジネスの成長も著しく、現在同職に就くヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の活躍はご承知の通りです。

 そして次は飲食。LVMHのさらなるビジネス拡大の胎動をこのニュースに見ました。LVMHはグループ傘下にワイン&スピリッツのグループを持ち、「モエ・エ・シャンドン(MOET ET CHANDON)」や「ドン ペリニヨン(DOM PERIGNON)」などを有していますが、レストランビジネスはそれとは角度が違う話です。なぜなら、食材という鮮度命の材料が使われ、料理という人の手による仕事が入るから。輸出ビジネスとは異なり、土地土地のシェフや飲食関連企業との協業が重要になります。

 食、特にレストランは、その時・その場にいなければ体験することができない、ある意味究極にクリエイティブで贅沢な商品です。シェフが指揮するチームの「手」から生まれ、その場で消費されるという意味で音楽や演劇といったライブイベントに近い。また、レシピの多くにはルーツがあり、食材の組み合わせは科学でもあるといった理由から、食することは知的好奇心も満たしてくれます。この“知的好奇心”は今後のラグジュアリービジネスの重要なキーワードだと思います。

 「SUGALABO」はその名の通り、実験的なアプローチのメニューが魅力で、海外デザイナーが来日した際のディナーでは、度々彼の料理が採用されています。「SUGALABO」に行くというより、私邸などを会場に、ブランドの世界観を須賀さんなりに解釈し季節感を盛り込んだ唯一無二の世界を作り上げます。その多くが、味覚だけではなく嗅覚や視覚など五感が刺激されるものです。

 LVMHは日本をラグジュアリービジネスのテスト市場としてとらえているところはあると思います。同店に始まり、この先「SUGALABO」に続く、スターシェフたちとの協業を世界中へ展開してゆくことが予想されます。楽しみです。

IN FASHION:パリコレもストリートも。ジュエリーもインテリアも。今押さえておきたい旬なファッション関連ニュースやコラムを「WWDジャパン」編集長がピックアップし、レターを添えてお届けするメールマガジン。日々の取材を通じて今一番気になる話題を週に一度配信します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在9種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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スタイリスト2カ月目は売り上げ230万円超え 「アルバム」金内柊真のスター美容師への道 Vol.2

 ツイッターのフォロワー数14万超え、インスタグラムのフォロワー数10万超えの美容師・金内柊真。かつては芸能活動を行い、2018年8月にはアシスタントながら自身の著書「才能がなければその分努力すればいい」(KADOKAWA)を出版するなど、美容師の枠に収まらない存在として注目を集めている。昨年11月にスタイリストデビュー。今連載では、毎月の彼の売り上げの推移とともに、売り上げを伸ばすために何をやってきたか、また新人スタイリストならではの苦労などを紹介していく。今回はデビュー2カ月目(19年12月)を振り返ってもらった。

WWD:デビュー2カ月目(19年12月)を振り返って、売り上げはどうだった?

金内柊真(以下、金内):総売り上げは234万円でした。220万円が目標だったので、それを達成できたのはよかったです。NOBU(「アルバム」プロデューサー)さんにも褒めていただいて、少しは恩返しできたなかなと思います。ただ年末にかけてはお客さまも忙しくなるので、けっこうキャンセルが多くて、それが残念でした。

WWD:12月からアシスタントが1人つくようになったが?

金内:2人まで同時施術が可能になり、予約枠も2倍(2枠)になりました。それでより多くのお客さまを担当できるようになったのはうれしいです。一方で、1人のお客さまと接する時間が短くなるので、その中でいかに満足してもらうか、よりクオリティーを高めていかないといけないなと思っています。まだまだ新規のお客さまが多いので、要望をすばやく的確に把握できるように、常に神経は研ぎ澄ましています。

WWD:アシスタントがつくようになって、意識していることは?

金内:的確な指示は心掛けています。「シャンプーして」だけよりも「シャンプーして、その後に〇〇というトリートメントをつけて乾かして」など、細かく指示するように意識しています。アシスタントを迷わせたらダメ。この前まで僕自身がアシスタントだったので、こういう指示の仕方をした方がいいというのが分かるんです。ただ毎回それができていたかどうかは分からないですが。

WWD:今はどれくらいアシスタントに任せている?

金内:基本的にシャンプーは任せていて、そのほかはなるべく自分で積極的にやるようにして、お客さまと接するように心掛けています。ヘアカラーも塗れるときは積極的にやります。それだとアシスタントの中には「任せてもらえてない」と感じる人がいるかもしれませんが、お客さまに満足してもらうために必要なんです。営業後にはアシスタントとミーティングを行うこともあります。1日のサロンワークを振り返って、「あのときはこうしてほしかった」などを話し合います。スタイリストによって要望が異なるケースもあるので、アシスタントには「分からないことがあったら聞いてほしい」とは伝えています。

WWD:12月の客数は何人だった?

金内:総客数で250人ほどでした。最大で1日15人ほどですが、平均すると1日11人ほどです。ありがたいことにほとんど指名で来てくれています。現在2月の予約まで受け付けているのですが、それもすでに埋まりつつあります。

WWD:予約枠をさらに広げることも考えている?

金内:僕自身はまだそこまで考えていないです。最終的には会社の判断になるのですが、まだまだ今の予約枠でも精一杯で余裕が持てていない。とりあえずはこの予約枠で、余裕を持ってまわせるようになってからかなと思います。

WWD:12月から銀座店の副店長にも就任したが?

金内:基本的には店長のサポート役なので、役割としてそこまで大きく変わったことはないです。でも副店長になったので初めて会社の幹部ミーティングに参加できて、それはすごく刺激になりました。

WWD:1月の売り上げ目標は?

金内:1月は190万~200万円が目標です。1月は4日まで休みだったのでその分営業日数も少なく、サロンワークをするのが実質20日ほどになります。現在1日の売り上げが9万~10万円なので、それくらいかなと考えています。

WWD:現在の課題は?

金内:先ほども言ったとおり、今後予約の枠をさらに広げられるように、タイムマネジメントを意識したサロンワークです。あとお客さま1人と接する時間が短くなったこともあり、店販売り上げの比率が下がってしまって。まだまだ店販をおすすめするところまで余裕が持てないので、それも課題です。

WWD:SNSの活用はうまくいっている?

金内:SNSはちゃんと更新はしているんですが、投稿する内容に僕自身が少し飽きてきてしまっています。だからそっちでも新しいことに挑戦していかないといけないなと思っています。

WWD:最後に、金内さんの服装は基本的にシンプルですが、サロンワークの服装で意識していることは?

金内:女性のお客さまが多いので、シンプルで清潔感のあることは意識しています。例えば今日だとデニムにコンバースを合わせたり。スタイリストになってアシスタント時代の服は8割ほど入れ替えました。スタイリストになって、さらに見た目は意識するようになりました。

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帰ってきたメンズコレドタバタ日記Vol.8 殺気立つほど大混雑の「ディオール」が今季ベストか?「オム プリュス」は黒を封印!?

10:25 コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン

 パリメンズの金曜日は、通称“ギャルソンデー”。朝と夕方、「コム デ ギャルソン」の2ブランドがショーを開催するからです。

 先陣を切ったのは、「コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン(COMME DES GARCONS JUNYA WATANABE MAN)」。毎回、オジさんモデルが思い思いにランウエイを歩き、その演技力とリアルクローズが拍手喝采を浴びています。

 今回の舞台は、イタリア。「ジュンヤ マン」らしいハイブリッドウエアも、肩を入れ、ウエストをギュッと絞ったイタリアンシェイプに仕上がりました。ウールは伝統的なチェック柄を中心としたダークトーン、そこにカラフルなナイロン素材を組み合わせます。「フェラーリ(FERRARI)」など、イタリアの名門スポーツカーブランドのワッペンもあしらいました。クラシコイタリアを愛しながら最新のエンジンを搭載したイタリアンカーにも夢中という、無邪気な子どもみたいなオジさん。いろんな2面性を、確立した不動のスタイルで描きます。

10:40 サルバム

 同じ会場の地下で開かれた「サルバム(SULVAM)」のプレゼンテーションは、暗い(笑)。写真を撮るのも大変ですが、そのムードがまた最近の「サルバム」らしい、ほんの~り退廃的なセクシーエレガンスのムードを掻き立てます。

 最近の「サルバム」が好きなのは、とっても肩の力が抜けたところ。どのブランドも大抵そうなのですが、日本勢はどうしても海外に打って出るとき気合いを入れすぎてしまうもの。若干の“気難しさ”みたいなものが支持層を少しずつ広げて海外にというブランドの場合、海外コレの序盤はメチャクチャ気難しくて、正直独りよがりで、共感しがたいコレクションが生まれてしまうケースも少なくありません。でも最近の「サルバム」からは、そんな面影を感じなくなりました。漆黒のレザーブルゾンには、クリーンなデニム。もう切り裂いてないジャケット(笑)には、スタンドカラーのミニマルシャツ。フェイクファーのブラックコートには、キャップを被ってハズしのスタイリング。ハラに何かありそうだけど、誰もが「カッコいいね」と思える共感性も高い。進化しています。

11:50 アン ドゥムルメステール

 さぁ、ここからは西から東に大移動。早くも1時間近くスケジュールから遅れ、「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」のショーが始まりました。ナイーブなブランドは、今シーズンもとっても繊細。中盤以降はチュールやシフォン、レースにレザーパンツやゴートファーのコートというスタイリングです。葉っぱの冠を被った少年たちは、なんだか神話に出てくる神々のよう。

12:40 ジュン. J

 今度は北から南へ(ヒィ、シンドいw)。「ジュン. J(JUUN. J)」は、今シーズンもデカい(笑)!!このブランドのモデルは、ちゃんと筋トレをやらないと務まりません。肩が張り出したオーバーサイズのジャケットの上にコートやブルゾンを羽織って、ピタピタのレザーパンツはサイハイブーツにイン。フィナーレはレザーマスク。呼吸困難。迫力満点ではあります。

13:30 ベルルッティ

 お次はオペラ座ガルニエ宮で、「ベルルッティ(BERLUTI)」。パリ一番の観光名所に入ると、鮮やかな花々がズラリ。就任以来、「パティーヌ」と呼ぶメゾン独自の染色技巧をコアバリューにコレクションを組み立てようと、鮮やかな色を連発し続けるクリス・ヴァン・アッシュ(Kris Van Assche)らしいおもてなしです。

 洋服は花々同様、今回も目が覚めるほどの色に染まりました。ショッキングピンクは、本当にショッキングなレベルでピンク(笑)。クロコダイルバッグまでショッキングピンクだったときは、正直「マジですか⁉︎」と思いました(笑)。提案するのは、単色の色を思い思いにまとい、十人十色、自分なりのスタイルを作り上げる価値観。コレがクリスの「ベルルッティ」です。

14:30 メゾン ミハラヤスヒロ

 さぁ、お次は「メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA YASUHIRO)のハズですが、今回はその前にサプライズ。「ベッドフォード(BED J.W. FORD)」のミニショーから始りました。三原康裕さんが、後輩分にあたる「ベッドフォード」の山岸慎平デザイナーにチャンスを与えた形です。なんてステキなんでしょう!洋服も、コーデュロイなのに美しくキレイに仕立てたスーツ、洗ったベルベットのセットアップなど、ステキでした。「サルバム」同様、このブランドからも“気難しさ”が消えつつあり、共感できるようになっています。

 で、いよいよ「ミハラ」のコレクション。BGMは、管弦楽団によるクラシックの演奏ですが、ハッキリ言ってベリー下手(笑)。聞けば美術を志す学生に1カ月練習してもらって録音した音なのだそうです。そしてショーの間は、やっぱり美術学生がランウエイをスケッチするのですが、コレもなかなか味わい深いタッチでした。

 きっと三原さんのメッセージは、「完璧じゃなくていいよね~。それが、ヒトっぽいんじゃない?」ということなんだろうと思います。そんな思いが詰まった洋服は、得意技の前と後ろが全然違うハイブリッド。2着を1着にしてるから、どうにも着られる一方、完璧には着られない。「正解」はないのです。それは、下手っぴなBGMや、味わい深いスケッチと同じ。“らしい”のが一番なのです。そんな多様性を訴えます。

15:00 ヨシオクボ

 メトロに乗って「ヨシオ クボ(YOSHIO KUBO)」のプレゼンテーションへ。琴が鳴り響く空間には、現れました!「アンダーカバー(UNDERCOVER)」以来のサムライです。

 「アンダーカバー」は西洋のアイテムで日本のサムライスタイルを作りましたが、「ヨシオ クボ」はもっとガチです。流石に素材はフランネルでしたが、本当に手甲や脚絆まで登場(笑)。琴が不協和音を奏でる中のサムライ。カッコ良かったです。


16:00 カサブランカ

 さぁ、お次はオペラ座(の目の前)まで戻って、「カサブランカ(CASABLANCA)」。コレがとっても良かったのです。カサブランカ生まれパリ育ち、「ピガール(PIGALLE)」で経験を積んだ黒人デザイナー、シャラフ・タジェル(Charaf Tajer)によるコレクションは、専属ペインターが風光明媚なカサブランカの街並みを描いたシルクシャツがキーアイテム。それをジャージーと合わせちゃうストリートマインドも持ち合わせています。レトロなスーツに合わせるも良し、Tシャツ&デニムに取り入れるも良し!!そんなスタイリングでダイバーシティーでした。

17:20 コム デ ギャルソン・オム プリュス

 本日のメインディッシュの始まりです。まずは、「コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS)」。毎回「プリュス」のショーは開演まで真っ暗なことも多く、それが眠気を誘うこともあって困りモノなのですが(笑)、今回は明るい。助かります~。

 で、出てきた洋服も、底抜けに明るい感じに仕上がっておりました。黒、ほとんどナシ。ブリティッシュチェックにレオパード、パイソン、ロゴ、マルチカラーのボーダー、花柄、アーガイル、ピンストライプ、星柄を組み合わせたジャケットやパンツ、スカートが登場します。裾に別の布をつなげたり、肩口で生地を留めて背中に翼のように流したり、ラペルだけを切り取ってストールのように掛けてみたり、今シーズンは工作みたいなアプローチ。「ベルルッティ」同様、好きなモノを好きなように着るのが一番「強い」というメッセージなように思えます。モデルのウォーキングもお決まりのコースはなくって、ランウエイを前に後ろに左に右にユラユラ。最近の「プリュス」、定番の演出です。

18:30 ディオール

 さぁ今度は「ディオール(DIOR)」。巨大な特設テントは、殺気立ったムードさえ漂うくらい大混雑しています!!ゲストも多いしセレブも多い、だからファンがメチャクチャ多い。人混みで入り口の場所が分からない(苦笑)。そのくらいの大混雑なのです。

 でも、その試練を乗り越えて見た甲斐がありました!!もう最高、今季ベスト(今のところ)。2018年に亡くなったイギリスのスタイリスト兼ジュエリー・アーティストのジュディ・ブレイム(Judy Blame)にオマージュを捧げたコレクションは、貧しいがゆえに蚤の市でガラクタを買い漁り、それを帽子やラペルにジャラジャラと組み合わせていたジュディのスタイルを再現。ピカピカのシルバージュエリーをジャラジャラ組み合わせる大胆さは、トップメゾンの気品とイマドキなストリートマインドの双方を同時に表現します。ジュエリーで言えば、パール使いも大きな特徴。これは、メゾンの3代目デザイナー、マルク・ボアン(Marc Bahan)に捧げたオマージュ。シャツのボタンやカフス、スカーフリング、そしてモデルの目元にもパールをあしらっています。カワイイ。ロンググローブも、マルク・ボアンのスタイル。ビジューを散りばめたロングシャツとのコーディネイトは、マルク・ボアンが女性に捧げたドレスのようにも思え、メゾンの遺産を継承しつつ、現代の価値観を反映してジェンダーの既成概念を超越しようとするキムの心意気が伺えるのです。ジャケットは、ラペルをウールとサテン、ベルベットで切り返すなど、クラフツマンシップ満載。「コレは、明日の展示会でディテールをチェックしなくっちゃ!!」と思わずにはいられません。

 バッグは、定番“サドル”バッグが絨毯のようなモコモコ素材で登場。同じくサドル型のフラップを持つビジネスバッグ。大小2つのケースが連なるボディバッグなど、相変わらずキャッチーでした。基本を残しながら、いや、むしろ増しながらコンテンポラリーに仕上げるこの才能。キム、やっぱスゴいです。

20:15 ヴェトモン

 さぁ、本日ラストは「ヴェトモン(VETEMENTS)」。デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)退任後、初めてのランウエイショーです。ショーの前、日本で一番「ヴェトモン」を買い付けている長谷川左希子マネジング・ディレクターにバッタリ会って、「どうよ、ぶっちゃけ、どうよ?デムナがいなくなって大丈夫?」と聞いてみると、「むしろ期待。正直最近は、子どもっぽいストリートばっかりだったから。メゾンはいろんなスタイルを提案したかったみたいだけれど、『バレンシアガ(BALENCIAGA)』でも働いているデムナは、『ヴェトモン』では好きなようにやりたかったみたいで、なかなか上手く変われなかった」と教えてくれます。なるほど。こりゃ、楽しみだ。

 コレクションは、左希チャンの言う通り、変わろうとするメゾンの心意気を感じさせるものでした。もちろん、まだフーディーやTシャツもあるけれど、全体的には大人の階段を1段登った感じ。特にブラックドレスは意識的に美しく仕上げたように感じます。肩パッドを入れて構築的なシルエットに仕上げたフーディーにチュールのミニスカートの組み合わせは、今までとこれからの「ヴェトモン」のハイブリッドのよう。他のバイヤーに話を聞いても、「変わったようで、変わっていないようで。でも変わったかな、やっぱり」と笑っていました(笑)。

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ファッション通信簿Vol.41 外は寒いのにそんな格好で大丈夫?セレブたちのはりきりコーデを米「WWD」が辛口ジャッジ!

 米「WWD」の人気企画「ファッション通信簿」では、ストリートからパーティー、レッドカーペットまで、海外セレブたちのファッションを厳しくチェック。A+、A、A-、B+、B、B-、C+、C、C-、D+、D、D-、そしてFAIL(失格)の13段階評価で格付けし、それぞれのファッションポイントを勝手に辛口ジャッジ!

 第41回は、ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)、キキ・パーマー(Keke Palmer)、リア・ミシェル(Lea Michele)、レニー・クラヴィッツ(Lenny Kravitz)、ポスト・マローン(Post Malone)、ビリー・ポーター(Billy Porter)、ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)、イギー・アゼリア(Iggy Azalea)が登場。「その服装で心地よく感じるのは、ソファの上でイケメン俳優にはまっている時間だ」など、今回の評価も皮肉たっぷりだ。

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勇気を出して「リック・オウエンス」崇拝者たちの素顔を突撃 「普段からそんなファッションなんですか?」

 1月16日はハロウィンではありません。「リック・オウエンス(RICK OWENS)」が2020-21年秋冬メンズ・コレクションをパリで発表した日です。ブランドの崇拝者らにとっては、ハロウィンのコスチュームよりも気合が入る重要な日なのです。今季も彼らはやってくれました!奇妙なシルエットの黒の衣服をまとい異様な空気感を放ち、会場周辺はブランドの世界観に包まれています。まるで地球ではないほかの星へと迷い込んでしまったような、そんな感覚さえ覚えるのです。少し足がすくむくらい威圧的な外見の方も見かけましたが、異様なものほど触れたくなる性分なので(笑)、今季は思い切って彼らに声を掛けてみることにしました。謎に包まれた「リック・オウエンス」崇拝者たちの素顔を少しのぞいてみましょう。

マスクを外すとただのイケメン
「両親も応援してくれてます」

 ショー会場周辺に着いてまず目に留まったのは、レースのマスクを顔に覆った謎の人物!その正体はパリ在住の18歳、トニーさん。「12歳の時にコレクションを初めて画像で見て、衝撃を受けた。同年代で『リック・オウエンス』なんてみんな知らない。『アディダス(ADIDAS)』とか着てる歳だよ、分かるでしょ?」現在はリックに憧れてデザイナーを目指し、専門学校でデザインを学んでいるそうです。帽子とシューズ以外、着用しているのは全てトニーさんが制作したもの。マスクの奥の素顔が気になるなぁとさり気なく言ってみると「取ろうか?」とすんなり外してくれました!10代らしいあどけなさが残る素顔は、マスクとのギャップもあってとても可愛く見えます。両親は彼のスタイルや夢を否定せず全面的に応援してくれているそうで、今後ビッグデザイナーになるかも。

このファッションは通常運転
「実は『グッチ』も着ます」

 2メートル近い長身でモデル体型の彼の名前はミグニーさん。ニューヨークを拠点にビデオクリエイターとして活動中。長年「リック・オウエンス」のファンで、常に彼からインスピレーションをもらっていると、興奮気味に話してくれました。ファッション・ウイークだからといって特別ドレスアップしているわけではなく、普段からこんな感じのスタイルだと言い切ります。「リック・オウエンス」から少し浮気して「グッチ(GUCCI)」や「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」もたまに着るのだそう。そんな話を聞きながら、私は毛穴の一切ないきめ細やかな彼の肌に見とれてしまいました…羨ましい!

普段は白衣をまとう看護師
「本当は職場でも真っ黒の服を着たい」

大柄な体つきとサングラスによって威圧感はあるものの、笑顔で対応してくれたローレンスさん(左)とカスダルドさん。ローレンスさんの職業はユーロスター(ロンドンとパリを結ぶ高速列車)のマネジャーだというから驚きです。大企業に勤務するお堅い仕事柄ですが、昔から「リック・オウエンス」が大好きで収集しているのだとか。「職場にもこの格好で行けたら毎日最高なんだけど、現実は甘くないね(笑)」。一方カスダルドさんは病院に勤務する看護師と、こちらも意外な職業でした。「職場では純白の白衣、休日は真っ黒な『リック・オウエンス』と対照的な服装」。2人ともプライベートと仕事はきっちり分けていて、オフの日に集まるのはリック崇拝者はじめとするファッション好きばかりのようです。

これぞお手本の着こなし
「歴史的建築物の執行役員です」

 「着る人によって衣服はこんなに変わるのか」と感動さえ与えてくれたのは、こちらの素敵なマダム。パリ在住のキャロラインさんは、パレ・ロワイヤル(Palais Royal)の執行役員!パレ・ロワイヤルは17世紀に王宮として建てられた歴史的建築物で、現在は骨董品店や画廊など一般向けに解放されているスペースの他に、文化省や国務院も入っています。つまり、とってもハイクラスな職業。彼女の内側からにじみ出る凛とした優雅さによって、「リック・オウエンス」の衣服が持つ美しさの側面が最大限に引き出されているようです。服を“着こなす”とはこういう事かと、一瞬見かけた彼女から多くを学べた気がします。

会場ではおなじみの2人
人気すぎて話しかけられず

 韓国出身パリ在住のアーティスト、ララさん(左)と彼女のメイクを手掛けたメイクアップアーティストのサムさんは一際特異なリックオーラを放っていました。サムさんのインスタグラムを拝見すると、特殊メイクではなく普通のメイクアップもたくさん手掛けているようです。角のような骨のような、垂れ下がっているのは一体どうなっているのか——いろいろと聞きたかった2人ですが会場では人気者で話しかける隙がなく、取材は次回に持ち越しです。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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パリコレに挑む日本人ヘアスタイリスト “コミュ力”を武器に世界で戦う

 パリ・コレクションに参加する多くのブランドのバックステージを支えているのは日本人といっても過言ではないだろう。なぜならビッグメゾンから新鋭ブランドまで、多くのバックステージで日本人のメイクアップアーティストとヘアスタイリストが活躍し、モデルに魔法をかけるようにルックを完璧な姿へと仕上げているからだ。彼らの多くが目指すのは、全体の指揮を取る責任者であるキーポジションである。一度でも“キー”を務めるとキャリアに箔が付くだけでなく、活躍の場やコネクションが大きくが広がる可能性があるという。今季のパリ・メンズ・ファッション・ウイーク初日にショーを開催したアメリカ発ブランド「ルード(RHUDE)」のキーヘアスタイリトには、日本人の名があった。ミラノ在住のヘアスタイリスト、森田信一だ。過去には「OAMC」の2016-17年秋冬から17-18年秋冬コレクションまでの4シーズンのキーヘアスタイリストを務めており、「ルード」ではパリでショーを行った前シーズンに続いて2シーズン目となる。

 ルイージ・マーク・ビラセノール(Rhuigi Mark Villasenor)「ルード」ファウンダー兼デザイナーは彼を起用した理由について「髪を切ってもらった時、直感的に『彼だ』と思った。スタイルや目指すものにシンパシーを感じる」と話す。サロンワーカーとして働いてきた森田は、ほかのショーのキーヘアスタイリストに比べると、アーティスティックな作品を手掛ける機会は少なかったものの、確かな技術と高いコミュニケーション力によって、いくつもの仕事を勝ち取ってきた。キーヘアスタイリストとして活躍する彼に、現在に至るまでの道のりや今後についてを聞いた。

WWD:「ルード」のデザイナーとはどのように知り合った?

森田:「ルード」が所属するミラノに拠点を置くセールスエージェント「247ショールーム(247 Showroom)」のオーナーがもともとお客さんで、ビラセノールがミラノに来た時に彼を通じて知り合った。ビラセノールはカットした髪型をとても気に入ってくれて「今度パリコレで初めてショーをやるからヘアを担当して欲しい」と口頭で言われた。その時は本気だと受け取っていなかったけれど、後で「エトワール・マネージメント」を通じて正式に仕事の依頼が入った。

−サロンワーカーとしてカットの技術を磨いてきたが、アーティスティックなスタイリング技術はどのように培った?

森田:昔からアメリカに憧れがあって、スタイリングやクリエイションはアメリカで学びたいという思いが強かった。日本からミラノに拠点を移してからは、まとまった休みが取れる夏の休暇シーズンに毎年ニューヨークへ行って、短期クラスを受講したり、知人のヘアスタイリストの作品撮りを手伝ったりして技術を身に付けられるように努力した。

−スタイリング技術において、自身の強みは?

森田:スタイリング技術が高いとは思っていない。僕より上手い人は無限にいる。自分の強みをあえて言うなら、アーティスティックな要望に応えられる応変さだと思う。かつてコンセプチュアル・アーティストのマウリツィオ・カテラン(Maurizio Cattelan)の作品撮りに携わった際、彼からそれまで経験したことのないスタイルを求められた。コミュニケーションを密に取りながら、感覚的に彼らが創りたいものを読み取り、自分なりに形にしていく作業だった。相手の要望に応えるというのは、カットやスタイリングに問わず、日々のサロンワークで身に付けた技術で、それが今の仕事でも活きている。

−相手の要望に応えるために必要な要素とは具体的に何?

森田:とにかく会話を広げ、コミュニケーションを取って相手を知ること。友人から僕は「コミュニケーション能力が高い」と言われるし、自分でも自信がある。両親が美容師だったから、遺伝なのかもしれない。でも22歳で渡伊した時は、イタリア語はおろか英語も全く話せなくて、コミュニケーションの取りようがなかった。勤めていた「オット」は日本人によるサロンだが、相手にするのはイタリア人。コミュニケーションが取れなければ、スタート地点にも立っていないような状態だった。仕事で成功したいという思いと、美人なイタリア人の彼女が欲しいっていう男心から(笑)、必死になってイタリア語と英語を学んだ。カフェやレストラン、クラブなどとにかく外へ出掛けては友人を作り、つたなくても会話を進められるようにした。もとの性格に加え、海外生活での経験でコミュニケーション能力がさらに磨かれたのかも。

本番直前でも大胆にヘアチェンジ

−「ルード」の今季のスタイリングのテーマは?

森田:ブランドのイメージに合わせて、“やんちゃな若者”を基本のテーマにしている。スタイリング剤は使わずドライな質感で、3日間洗髪していないようなラフさを出すようにした。女性モデルの場合はメイクに合わせて、ラフさの中にも少し華やかさ、フェミニンな感じを加えた。男性モデルは個々の地毛と個性を引き出せるようなスタイリングを目指した。

−ショーの本番は滞りなく進められた?

森田:パリコレ初日とミラノ・コレクション最終日が同日とあって、なかなかアシスタントが集まらず苦労した。メイクのアシスタント15人に対してヘアのアシスタント7人と、正直かなり心配だった。ヘアをほぼ仕上げて一度目のリハーサルをランウエイから見てみると、守りに入っているスタイリングだなと感じた。だから、ヘアはもっと攻めの姿勢でいこうと思い、さらに手を加えて“意志の強いやんちゃな若者”へと仕上げた。時間はギリギリになったが、ミラノやロンドン、パリを拠点に活動する信頼の置けるアシスタントのおかげで大きなミスもなく、僕もビラセノールも満足のいくランウエイになった。ショーのスタイリングにおいてはデザイナーやディレクターの要望に応えることがキーヘアスタイリストとって最も需要な任務なので、今回も無事に果たすことができたと思っている。

−今後の目標は?

森田:顧客の要望に応えられるカット、スタイリングを提供することはこれまで通り変わらない。ここ数年で、セレブリティーの結婚式のヘアスタイリングのために外国へ呼ばれる機会も増えた。手間や費用がかかっても僕を呼んでくれる。今までとは違ったやりがいを感じられているので、こういった仕事をもっと増やしていきたい。フリーになってエージェントに所属し始めたばかりだから、今後はエディトリアルや広告撮影などクリエイティブな仕事にも注力していきたい。

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動物モチーフとロープ使いに注目 「ヴァレンティノ」2020年春夏バッグ&シューズ

 潔い白のルックで幕を開けた「ヴァレンティノ(VALENTINO)」2020年春夏コレクションは、目の覚めるようなネオンカラー、そして、架空のジャングルとそこにすむ動物を描いたカラフルなプリントや象眼がポイントになった。普遍的なアイテムにクチュールの技術を取り入れたデザインやボリュームのあるシルエットが印象的なウエアに合わせたアクセサリーにも取り入れられている。

 バッグで目を引いたのは、ロープとフリンジが特徴の新作シリーズの“ロープ”。白、黒、タンなどでトートやフラップバッグ、クラッチなどを提案する。そこに繊細な刺しゅうでジャングルと動物たちが描かれたアイテムはインパクト満点だ。また、2020年プレ・スプリング・コレクションでデビューした大きなVロゴがインパクトを放つ“スーパー VEE”もバリエーション豊かにラインアップ。本体と同色で控えめにVロゴがあしらわれた“Vスリング”には、マイクロミニサイズが新たに加わった。素材では、ラフィアを用いたバッグも充実。“スーパー VEE”や、“ロックスタッズ スパイク”のほか、ざっくりとしたトートも打ち出す。素朴になりがちな素材をエレガントかつ洗練された印象に仕上げているのは、「ヴァレンティノ」ならではだ。

 足元は、クチュール級のドレススタイルに気負わない雰囲気を添えるフラットなサンダルが中心。バッグ同様のレザーロープをアッパーとソールに用いた“ロープ”シリーズや同色のレザーとロックスタッズを組み合わせたデザインをさまざまな色で提案する。ストラップを足首に巻きつけるスタイルが印象的だ。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

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帰ってきたメンズコレドタバタ日記Vol.7 「LV」のショーでヴァージルの心境変化を読み解き、「ダブレット」のファミレスにダッシュ

 1月16日。晴れ。パリに入って、スケジュールは一気に過密に。メトロのストは小康状態に向かいつつあるものの未だに一部区間・一部時間は運転見合わせや運行本数の削減が続き、結果、街は大渋滞です。ゆえに車に乗るとショーに間に合わない事態が頻発。特に“貧乏バス(BB)”なんて信用できないから、メトロとダッシュを繰り返しております。さぁ、疲れてきたね(笑)。でも、今日も元気に行ってみましょう~。

9:50 ジバンシィ

 本日の朝一番は、「ジバンシィ(GIVENCHY)」、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)のメンズランウエイも、すっかりメンズコレ取材陣の意識の中に溶け込んできました。

 前職「クロエ(CHLOE)」ではリラックスシルエットで描く自然体の女性像が共感を誘いましたが、「ジバンシィ」に移籍して以降、彼女は“強さ”にもこだわっています。正直、最初はぎこちないようにも見えて、「メゾンの前任、リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)のゴスっぽいカンジは踏襲しなくても」と思っていたのですが、今は少しずつ「やっぱり、ちゃんとした洋服が着たいね」というムードが高まっている時。彼女の決断は、正しかったのでしょう。

 今回のメンズも、そんなクレアの強さというか、潔さを垣間見ることができます。ベースはスリムなセットアップ。そこにセカンドスキンのようにピタピタの真っ赤なタートルネックをコーディネートしたり、ジャケットに赤のテープを貼り付けたり、コートのラペルに赤を差し込んだり、幾何学模様のニットを組み込んだりで、視覚効果においてもシャープネスを追求。今シーズン盛り上がっている、オプアートのムードも漂わせます。

 一方のケーブルニットは、ボリュームシルエット。長らく得意とするリラックスムードに溢れ、こちらはもはや安心感さえ覚えるのです(笑)。

10:45 ヴァレンティノ

 昨日感動した「ヴァレンティノ(VALENTINO)」の展示会へ。

 アクセサリーを中心に写真をパシャパシャ撮りましたが、ウエア同様に良いカンジ!実は「ヴァレンティノ」でピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)とタッグを組んでいたマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)が「ディオール(DIOR)」に移って以来、「ヴァレンティノ」のアクセサリーはちょっとパワーダウンした印象だったんです。で、「きっとピエールパオロはウエアの人、マリアはアクセサリーの人なんだろうなぁ」と勝手に思っていたワケですが、今回はその考えを改めるべきかも。

 バッグはどんどん小型化。「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」とのコラボも写真におさめました。

11:50 オム プリッセ イッセイ ミヤケ

 続いては「オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSE ISSEY MIYAKE)」。今回もさまざまなパフォーマーが最新コレクションを着用して、飛んだり跳ねたり回ったり、楽器を演奏したりと彼らの日常生活を再現。日々の生活に寄り添うブランドというコアアイデンティティーを発信します。これ以上は、説明不要。動画を見てもらうのが一番でしょう。コチラどうぞ、です。

12:50 リック オウエンス

 お次は「リック オウエンス(RICK OWENS)」。今回は、どんなフェティシズムを見せてくれるでしょうか?会場には、今回もツワモノが勢揃い。もはや顔タトゥーくらいでは驚かない自分が若干コワいくらいです。

 コレクションは、いつもどおりぶっ飛んでいるけど、ゴスっぽいカンジは本当に薄くなりました。黒の力を借りて恐怖さえ感じる迫力を生み出すのではなく、本当に強いシルエットで見せる振り切った強さです。柔らかで透明感のある素材と、スカイブルーまで登場する明るいカラーパレットで迫力を表現できるなんて、さすがリック様でございます。

 ファーストルックは、いきなりカシミヤニットのオールインワン。片足はフルレングスなのに、片足はもはやホットパンツ‼︎な丈感(笑)。しかもワンショルダーです。コレを着こなせるのは、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)だけでは?そう言えば、ジギーダストなジャケットもあったなぁ。

13:50 ジョン ロブ

 お次は、至高のシューズブランド「ジョン ロブ(JOHN LOBB)」。今年は代表的モデル“ウィリアム”が75周年。若干丸みを持たせてソールを厚くした日本人ウケしそうなタイプから、細長くて薄型のヨーロッパっぽいエレガントまで、同じシューズでも、細部で印象がだいぶ異なることを学びました。

14:55 ルイ・ヴィトン

 さぁ、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のお時間です。

 コレクションは、モノすごいフォーマルです。スーパーど直球。自身のブランド「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」もスーツメインでしたが、「ルイ・ヴィトン」はそれ以上。そして黒人モデルがちょっと減ったように思います。シルエットも、ストリート出身のデザイナーが生み出しがちな、ボックスシルエットのジャケットにリラックスパンツではなく、コンパクトなジャケットにスリムパンツ。キム・ジョーンズ(Kim Jones)の「ディオール(DIOR)」に通じる路線です。

 一体、ヴァージル何があったのでしょう?その答えのヒントは、きっとこの記事。「ストリートは終わった」とまで言い切る、自身の心の変化にあるのでしょう。「オフ-ホワイト」でも「ルイ・ヴィトン」でも感じましたが、ヴァージル、スリムになったし、フィナーレの挨拶も大人な立ち居振る舞いでした。その辺りも、心の変化の現れかもしれません。

 「ストリートは、終わった」。だからこそヴァージルは、仲間内で盛り上がっているヒップホップなカンジから一線を画したかった。出自のカルチャーではなく、その世界を超越した普遍のネクストステージで勝負したかった。そこで黒人モデルの数を減らし、フォーマルでガチンコ勝負し、シルエットもコンパクトにまとめたのではないか?そんな気がします。

 にしても、そんな心意気をちゃんと形にできるメゾンの偉大さ。改めて思い知らされました。正直、「オフ-ホワイト」のフォーマルとは全然違う。スーツに欠かせない美しさのレベルが格段に違うのです。アイデアソースは同じ人。なのに、こんなに変わるのだからトップメゾンとはスゴいモノです。

 一方、アクセサリーは今回もキャッチーです。建築に造詣の深いヴァージルは、ついにバッグの当たり前の形さえ疑い、“ひしゃげた”アクセサリーを並べました。コレが、モノは入れづらいだろうけど(笑)、モノすごく愛らしい!終盤は、キーモチーフになった空を映し出すミラーバッグ。頭の上には大空。カバンの中にも青空なんてハッピーすぎます。

16:05 ヘロン プレストン

 さぁ、ここからが殺人的スケジュール。どう考えても全部はクリアできないのですが、それでも、「1つでも多くのコレクションを見たい!」ダッシュが続きます。結局3回のミニショーに間に合わなかった「ターク(TAAKK)」、ゴメンなさい……。

 殺人的スケジュールの第一弾は、「ヘロン プレストン(HERON PRESTON)」。今回も「カーハート(CARHARRT)」や「CAT」などとコラボレーションして、ワークスタイルを生み出します。ワークスタイルだから、シーズン毎に大きく変わったりはしないのかな?ただ、そのスタイルの裏には意志がこもっているのか?正直、なかなか読み取れません。

16:30 クラークス

 定番のデザートブーツが50周年(‼︎)を迎えた「クラークス(CLARK’S)」の展示会に。そのバリエーションに驚きました。こんなにあるのね~。

 ソールを厚くしたり、それをラバーで覆ってみたり、色のバリエーションも豊富。ベジタブルタンニンやフェイクレザーまで、あらゆるデザートブーツが揃います。イベントでは、アーティストによる染色も。世界で一足のデザートブーツです。

17:40 ダブレット

 さぁ、今シーズン一番の爆走でたどり着いたのは「ダブレット(DOUBLET)」。パリで初めてのプレゼンテーションです。

 会場は、ファミレス⁉︎「ダブレット」同様に「D」から始まる、あの黄色と赤がイメージカラーのファミレスを模した空間には、テーブルと椅子、メニュー、それにナプキンが並んでいます。

 中のメニューは、こんなカンジ。相変わらず芸が細かい(笑)!でも、紙ナプキンの綴りは「DOUBELT」‼︎どこまでが本気で、どこからがジョークなのか⁉︎井野さんワールド、全開です。

 ショーのBGMは、「We Are the World」。モデルは奥まで行くと、ラーメンとか納豆ごはん、デラックスなお子様ランチ的セットを持ってテーブルまで戻ってきます。フェミレスでは、店員さんが持ってきてくれるケドね(笑)。で、みんなでおしゃべりして大爆笑。おいしいご飯は国境を越える。だから「We Are the World」なのですね(笑)。

 ということで、人種も性別も体型のバラバラなモデルたちが着るのは、刺しゅうスエットからスプレーアートのフェイクファーコート(今回の絵柄は、世界の風光明媚な町並みです)など、これまでの名作。新作は、パンダの顔が3Dなスエットやカンフーシューズ(嬉しいか嬉しくないかわかんないけど、「北京」って言葉をいっぱいのせてますw)、ニッパーで切り落とす前のプラモデルみたいに手袋とかビーニーがフレームにくっついてるセーター(冬のジュディ・オングになれること間違いなし)、アマゾン(AMAZON)の段ボールそっくりなトレンチコート(一歩間違えば、倫理的にもアブないw)など、これまた爆笑のアイテムばかり。爆走の甲斐がありました。

16:20 ジェイエム ウエストン

 さらにパリの街を駆け抜けて、シューズブランド「ジェイエム ウエストン(J.M. WESTON)」のプレゼンテーションに滑り込み!今回は新作ではなく、リメイクの発表会。実は「ジェイエム ウエストン」、今後、履かなくなった人から靴を買い取り、修理して、今度はそれを別の人にお手頃プライスで販売するというステキなプロジェクトをスタートします。予定ではリペアなのですが、今回はアーティスティック・ディレクターのオリヴィエ・サイヤール(Olivier Saillard)がリペアではなく、まったく違うシューズに変えてしまった全27足を発表です。

 このプロジェクト、そもそもサステナブルだし、「ジェイエム ウエストン」のシューズは高すぎて買えない人にもチャンスがあるし、思い入れのある一足を譲り受けるという“意志のバトン”みたいなフレームワークがとてもステキ。加えてオリヴィエの提案は本当にユニークで、「リペア以外もやればいいのに」と思ってしまうほどです。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」みたいに(本人もそう言ってたw)水玉を描いたり、タッセルが以上にデカかったり。老舗の、違う一面を垣間見せます。

 リペアもフルオーダー出来たら面白いし、完全にお任せで予期せぬ一足が届くなんてのもアリかもしれない。そんな風に思います。

19:25 ドリス ヴァン ノッテン

 さぁ、本日のゴールも見えてきました!「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」です。会場は、前回のウィメンズと同じ。ドリスがクリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)とコラボして、珠玉のコレクションを発表した新オペラ座。その大道具の保管エリアです。

 発表したのは、グラムロック。ハイヒールと大きなビジューがギラギラ輝くコスチュームジュエリー、それにフェイクのフォックスファーという、元来女性が楽しんできたアイテムを男性に委ね、性差を超越というか、蹴散らすかの如きのパワフル&エレガントなスタイルにまとめました。チュールのシャツ、サテンのパンツが、今シーズンのメンズに欠けている色をもたらし、気分を盛り上げます。

 スタイルのポイントとなったヒール付きのブーツは、奇しくも今シーズンのトレンドアイテム。徐々に、ではありますが、ヒール付きで、スクエアのトー(つま先)を持つブーツがメンズの世界にも広がっています。ドリスはそこからジェンダーの垣根を蹴飛ばすコレクション仕上げた雰囲気です。

20:50 ボッター

 さぁ、今日最後のランウエイは、「ボッター(BOTTER)」。「ニナ リッチ(NINA RICCI)」も手掛けるデュオ、ルシェミー・ボッター(Rushemy Botter)とリジー・ヘレブラー(Lisi Herrebrugh)がパリメンズに初挑戦です。応援するために、今日は1日「ボッター」のラガーシャツでパリの街を駆けずり回りました(笑)。

 正直まだまだ荒削りですが、面白いメンズです。クチュール級のDIYメンズ、って言うのかな?ベースは、「ボッター」と言えば、のラガーシャツだったりベーシックなスーツですが、そこに無数の“エノキだけ(洋服の値札を下げるための、プラスチックのアレです)”やガーゼ、パールで繋げたネットなどを合わせたり、解体したり、つまんだり、剥がしたり。工作みたいな感覚で、ストリートのムードを取り入れるのです。でも、どれもメチャクチャ手が込んでる。多分、スーパー高い(笑)。ただ、どこにもない一着ゆえ、面白い進化が見られるかもしれません。

21:30 アグ

 本日のラストは、「アグ(UGG)」。今年12カ月連続でローンチするスニーカーの第一弾お披露目のパーティーです。1月発売のスニーカーは、コレ。アトモスの本明秀文社長が手掛けました。モコモコのファーは、ネズミのイメージ?その証拠に、チーズのワンポイントがあしらわれています。そのほかも、「アグ」の生まれ故郷カリフォルニア州のヨセミテ国立公園をイメージした、コルク製のスニーカーなどが勢ぞろいです。

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ハローキティバッグから新作スニーカーまでインパクト満点 「バレンシアガ」2020年春夏バッグ&シューズ

 「バレンシアガ(BALENCIAGA)」の2020年春夏コレクションのキーワードは「仕事着の再考」。鮮やかなブルーで彩られた空間を建築家や俳優、ダンサーといったさまざまな肩書きを持つ男女のモデル91人が歩いたショーには、その幅の広さを物語るように多彩なアクセサリーが登場した。

 バッグで目を引いたのは、SNSでも話題になったハローキティの顔とシューレースの編み込みでアレンジされたトップハンドル型の“ヴィル”。赤いリボンは立体的で、ボディーのカラーは黒、白、ピンクをそろえる。また、新作として打ち出すのはフラップ型の“ゴースト”。マチのあるクリーンなシルエットに長さ調節可能なストラップを配した使い勝手の良さそうなデザインで、MとLの2サイズをそろえる。予定価格は15万1000〜18万9000円。そのほか、三角形のハンドバッグ“トライアングル”を再解釈した細身のショルダーストラップ付きクラッチや、口金を配したクラッチ、南京錠モチーフがあしらわれたフラップバッグ、ロゴパターンの型押しやキルティングが施されたトートバッグなどを提案する。

 シューズは、今季も個性際立つデザインが目白押しだ。半月を描くような凹んだトー(つま先)のユニークなデザインは、ウィメンズのショートブーツやブーティに採用。同ブランドを象徴するデザインの一つである誇張されたポインテッドトーは、無数のDリングにシューレースを通したアッパーが特徴的なスタイルや、板状のヒールを配したパンプス、サイハイブーツなどに落とし込んだ。一方メンズは、ゴツいソールやトーの形で捻りを効かせたフォーマルシューズやベルベットのスリッパのようなシューズをラインアップする。“トリプルS”や“トラック”に続く新作として提案するスニーカーは、スクエアトーが新鮮な“タイレックス”(10万〜11万5000円)。左右非対称にあしらわれた皮膚下の筋肉の網目をほうふつとさせるデザインが特徴で、メンズに加えウィメンズサイズも展開する。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

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“生理はうつる?”都市伝説のウソ・ホント フェムテックの先駆け「ルナルナ」が新成人に向けたイベント開催

 “フェムテック”という言葉をご存知だろうか?“フェムテック”とは、フィメール・テクノロジーの略で「女性が抱える健康問題をテクノロジー(技術)で解決するサービス」のこと。昨今、欧米から新しい技術や発想で開発された生理用品などが登場し、日本でも広がりを見せている。

 日本でも2000年にエムティーアイが生理日管理の「ルナルナ」のサービスを開始。インストール数は1400万(19年7月時点)を超えており、多くの女性たちに利用されている。

 その「ルナルナ」が1月11日に、新成人に向けたトークイベント「祝!新成人 カラダとココロのアップデートミーティング2020」を大丸梅田店5階の新フロア「ミチカケ(MICHIKAKE)」で開催した。「ルナルナ」が同アプリ内で約1600人のユーザーから生理にまつわる疑問や噂、都市伝説を集めて、日根麻綾「ルナルナ」事業部事業部長を司会進行に、東京大学医学部附属病院産婦人科の甲賀かをり准教授がその真偽について回答した。

その一部内容を紹介する。

Q1.生理はうつる?

日根麻綾「ルナルナ」事業部事業部長(以下、日根):生理にまつわる噂では、本当かどうか分からない不思議な話がありますよね。一番多かったのは「生理は友達同士でうつる」や「女性が集団で生活をしていると生理のタイミングが一緒になる」など。でも「ルナルナ」チームも不思議と生理周期が合っていて「今日始まった」と話していると、「私も」なんてことがよくあります。先生、これはどうなんでしょうか?

甲賀かをり・東京大学医学部附属病院産婦人科 准教授(以下、甲賀):それは都市伝説で、医学的根拠はありませんが、ネズミも一緒に飼っていると一緒の生理周期になることもあり、もしかしたらそういう種類の動物もいるかもしれません。

日根:今のところエビデンス(科学的根拠)はないけれど、そういうことがあるかもしれないんですね。

Q2.「タカアンドトシ」のトシの顔を見ると生理痛が和らぐ?

日根:初めて知ったんですけど、お笑い芸人「タカアンドトシ」のトシさんの顔を見ると生理痛が和らぐという都市伝説もあるようです。ツイッターで検索したら多くヒットしまして、「今日生理辛いな」という友達にトシさんの顔写真を送るという人もいて、有名な話のようです(笑)。

甲賀:全く医学的な根拠はないですね(笑)。

Q3. 生理中はセックスをしても妊娠しない?

日根:この質問も多かったのですが、「生理中はセックスをしても妊娠しない」って聞いたことありませんか。これはどうなんでしょうか?

甲賀:女性には「この時期だったら妊娠しない」というような時期は一切ありません。生理中は妊娠しにくい時期ではありますが、そもそも生理だと思ってもそれが排卵期の出血だったりすることもあるので、そこで性交渉をすると妊娠することもあります。「生理中は妊娠しない」というのは誤りです。

Q4. 女性が一生涯に訪れる生理の回数は?

日根:現代女性が一生涯に起こる生理の回数はどのくらいなのでしょうか?

甲賀:12〜52歳くらいの約40年間、年に12〜13回ありますので単純計算で約450回ほどです。しかし妊娠中や授乳中には生理は止まるので今は平均400回くらいだといわれています。

日根:皆さんのおばあちゃんが若かった頃は、5〜10人と子どもを産んでいる女性も多かったですよね。

甲賀:そうですね。妊娠中と授乳時に生理は来ないので、その時代の女性たちは生理の回数は少なかったんです。今は子どもを持たない女性も多いので、初潮から閉経まで絶え間なく生理が来ていていますね。

日根:昔の女性の生理は50回という話も聞いたことあります。そうしたら現代女性は9倍生理が来ていることになり、プラス400回も来ているんですね。

甲賀:生理のときは生理痛に、生理前にはイライラが起こる月経前症候群(PMS)に悩んでいる人も多いですが、どちらも女性ホルモンが卵巣から分泌されることによって起こります。本来は女性が妊娠するために必要なホルモンが出て体の変化が起こるのですが、現代女性にとっては困ることも多いですよね。

日根:人によっては生理中は生理痛で苦しんで、生理前はPMSで2週間苦しんでいる。月に1週間しか体調がいい時期がないですよね。

甲賀:私の患者さんでも月の半分以上、体調が悪いという方もいます。妊娠しないでホルモンが出続けることが現代女性を困らせています。

Q5. 生理痛とPMSの両方にどのようなリスクがある?

日根:女性たちを悩ませる生理痛とPMSですが、どのようなリスクがあるのでしょうか?

甲賀:「生理痛は病気じゃない、痛くて当たり前」だと思って、ずっと痛み止めを飲んでがまんしている人たくさんいると思いますが、子宮内膜症や子宮筋腫など手術をしないと治らない病気にかかって妊娠できない体になっている人もいます。そういう病気があるから生理痛がある人もいます。また初潮から生理痛が辛いという人はそういう病気になりやすいというデータもあります。なので、「これは病気じゃない」「普通のこと」と勝手に判断しないでほしい。そういう病気にかかっているかもしれない、将来かかるかもしれないという意識を必ず持ってほしいと思います。

日根:私は今30代ですが、周りにも子宮筋腫の人が何人もいます。私も一度手術を受けたことがあって、めちゃくちゃ痛かった記憶があります。私は高校生のときに痛みで「学校休みたい」というと許されなくて、「鎮痛剤も飲むな」と言われる人も多かった。

Q6.女性の3〜4人に1人がかかっている月経困難症って何?

日根:日本人女性の800万人(3〜4人に1人)が月経困難症だと聞きます。

甲賀:月経困難症は病気の有無にかかわらず、学校や会社を休む必要があったり、スポーツを控えているような生理で生活に支障が出ている人たちのことです。病気として名前がついていて、薬を出しています。

日根:え、それならば私も月経困難症です。生理痛で困っています。

甲賀:そうなんですよ。

Q7.生理不順の問題は?

日根:生理不順も聞きます。若い人で「年に2回しか生理がこない」という話も聞いたことがありますね。生理がことなくて「私はラッキー」と思っているような人もいるようですが。

甲賀:それは大間違いです。「ナプキンも買わなくていいから楽」と思っていたとしても、将来パートナーができて、いざ家族を持ちたいと思ったときに生理不順の人は妊娠しにくい。また、ホルモンが足りていないことでお肌の調子が悪くなったり、血液も健やかじゃなくなったりということがあります。

日根:生理不順の人はどんな特徴がありますか?

甲賀:やせ過ぎている人、逆に太り過ぎている人。偏った食生活の人、運動をし過ぎている人、寝不足の人など。

日根:「ダイエットに成功して生理が止まった」という話も聞きますよね。これも治療の対象になるんですか?

甲賀:そうです。

Q7.ピルって何?

日根:人生で450回もお付き合いする生理と生理痛はどう向き合ったらいいんでしょうか?

甲賀: 痛み止めを早めに飲む、食事や衣類、布団を温かくして冷えないようにすることも大事ですが、どうにもならない月経困難症の人はピルをお出ししてホルモンを整えていただくことができます。

日根:ピルというと避妊手段の一つとして認識している人も多いと思いますが、ピルとは?

甲賀:避妊用として開発されたのですが、今は月経困難症の治療として多く使われています。服用することによって痛みの原因であるプロスタグランジンも減るので、生理痛が軽減されます。

日根:「生理痛が辛い」と思ったら気軽に使えるものですか?

甲賀:生理の量が減りますし、飲み方によっては生理の回数自体も減ります。PMSの原因になるホルモンが一定になるので、コンディションがよくなります。

日根:副作用のイメージもあり、体重が増える、ニキビ出るという噂を聞いたことがあります。

甲賀:ピルにも種類があります。20代の皆さんのお母さん、おばあちゃん世代にあったものは高容量ピルが多く出回っていて、1錠のホルモンが多かった。でも今は低容量ピルや超低容量ピルもあったりします。昔の10分の1のホルモン量で排卵がちゃんと止まって、生理痛が軽くなるものもあり、副作用も減ってきています。

日根:値段は?

甲賀:避妊用と月経困難症用のピルがあって、避妊用は保険が利きませんが、月経困難症用のピルは保険が利くのでジェネリック(後発医薬品)で1000〜2000円ほどです。1000円を切るものもあります。ドラッグストアでは売っていませんので、産婦人科にかかって処方をしてもらう必要があります。

日根:毎日飲むのが大変そうですが。

甲賀:私の患者さんでも1カ月目でくじけちゃう人もいます。続けていくうちに劇的に生理痛がが改善されていくので、頑張って飲み続けてほしいですね。

日根:昨年9月には「ルナルナ」でもピルモードを出しました。甲賀先生に監修いただいて、あらゆる製薬メーカーのピルに対応しています。薬をアプリに登録して服用を記録でき、産婦人科の先生にも見せられるようになっています。

甲賀:女性は自分の体のことを記録することが大事です。患者さんでも「いつ体調が悪くなりましたか?」「前の生理はいつでしたか?」と聞いても「忘れちゃいました」という人も多くて悲しくなります。自分の生理の周期ぐらい覚えて、薬を飲んだ日も記録してほしいですね。

日根:大人の女性の嗜みですね。“見える化する”といいますが、自分を俯瞰してみると自分のことがよくわかるようになりますし、自分の体を守ることになります。

甲賀:せっかく女性として生まれてきて、神秘的なことが体に備わっていること、つまり将来自分の体で妊娠して子育てができるということは素晴らしくて尊いこと。でもそれによって、今赤ちゃんが必要じゃないときに生理に振り回されてしまうこともあるけれど、いつかその神秘的な機能を発揮させるために常日頃メンテナンスすることは大切です。

日根:メンテナンスするには正しい知識を仕入れてもらう必要がありますね。でも全部覚えることは大変です。

甲賀:正しい知識は自分を助けます。今持つだけでなく、常にアップデートをしていって、問題があったときに正しい情報をもとにどうしたらいいのか判断してほしいですね。

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「スポティファイ」も注目する15歳のバイリンガル・シンガー、エマ・ウォーリン ベールを脱いで世界へ羽ばたく

 エマ・ウォーリン(Emma Wahlin)をご存知だろうか。オランダを拠点とする人気DJ・プロデューサーデュオのシック・インディビジュアルズ(SICK INDIVIDUALS)が2018年にプロデュースした「Can’t Have」を、姿を隠したまま突如リリースすると、その透き通るような歌声からたちまち注目を集めることとなった女性シンガーだ。

 彼女は日本をはじめさまざまな国にルーツを持つ多国籍シンガーで、現在ロサンゼルスを拠点に活動する15歳。「Can’t Have」のリリース後には「スポティファイ(Spotify)」が注目の新人をピックアップする毎年恒例の企画「Early Noise 2019」に選ばれ、ストリーミング再生で400万回を超えるヒットとなった2ndシングル「Make A Move」などいくつもの楽曲をリリースするも、依然として姿を隠しながら活動を続けていた。しかし昨年夏、エマ本人が出演する新曲「Technicolor」のミュージックビデオを公開。美しい顔立ちはもちろん、それまでのミステリアスなイメージから一転してカラフルな映像美もあり話題となった。

 日本国内における知名度は現時点ではそう高くない新星だが、その歌声と歌唱力は一度耳にすればとりこになるだろう。昨年末に一時帰国したタイミングで、2005年生まれの若き才能がシンデレラストーリーを歩むことになったきっかけから、素顔を伏せていた理由、今後の展望までを聞いた。

WWD:さまざまな国にルーツがあるそうですね。

エマ:父親がスウェーデン人で母親が日本人ですが、父親はアメリカなどいろいろな国がミックスしているそうなので、詳しいルーツは自分でも分からないんです。

WWD:現在拠点とするロサンゼルスに移り住んだのは、両親の仕事の関係ですか?

エマ:幼い頃から父親が仕事で海外を飛び回っていたのでいろいろな国を訪れていますが、アメリカへの移住は自分で決めました。ミュージシャンになりたかったので、どうしても通いたかったアートスクールで学ぶために14歳からロサンゼルスに住んでいます。寮生活なのでご飯を出してもらえるんですが、日本食が好きなので自分で作ることが多いですね。1番好きな食べ物はうどんです(笑)。

WWD:ミュージシャンは幼い頃から目指していたんですか?

エマ:何歳から目指していたかは覚えていないんですが、小さい頃からバレエやヒップホップ、ジャズ、コンテンポラリーなどのダンスを習っていたところ、友達が「ミュージカルをやる!」と言い出したので私もやってみたら、歌が好きということに気付いたんです。それから歌の道に進むことを決めました。

WWD:影響を受けたアーティストは?

エマ:ずっとセレーナ・ゴメス(Selena Gomez)が好きで、このインタビューの前にも聴いていたので1番影響を受けていると思います。あとはクリスティーナ・アギレラ(Christina Aguilera)と、最近はメラニー・マルティネス(Melanie Martinez)をよく聴いていて、スタイルが好きなんです。同世代なので、ビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)も気になる存在ですね。

WWD:作詞作曲には興味はありますか?

エマ:なかなかやる機会がないんですが、作詞はiPhoneのメモ機能にかなりの量をためています。自分の感情に素直になって、主に英語でメモしていますね。1人でいるときによく思いつくんですが、寂しい思いをしているときに1番筆が進みます。

WWD:これまで発表している曲は全て英語の歌詞ですが、日本語の歌をリリースしたい気持ちはありますか?

エマ:今のところ考えていませんが、英語の歌詞の中にアクセントとして日本語が入っているのはいいかなと思っています。

WWD:他のアーティストでも同様に、iPhoneのメモ機能で作詞しボイスメモにメロディを残すと聞いたことがあります。

エマ:私もボイスメモを使いますね。シャワーを浴びているときに適当に歌っていると、「あ、これだ」ってなることが多いので、急いで出てボイスメモに録音します(笑)。

WWD:さまざまな国にルーツを持ち、幼い頃から海外を飛び回っている経験は音楽活動に影響を与えていると思いますか?

エマ:日本だけでなにかを感じるよりも、いろいろな場所を訪れてさまざまな考えを持つ人たちやカルチャーと触れてきたことで、モノの見方や聴き方が違うのかなとは思います。固定観念というのを持たず、偏見もないですね。

WWD:デビューのきっかけを教えてください。

エマ:以前は違う事務所にいたんですが、海外でアーティストとして活躍するためにはどうしたらいいか悩んでいたら現在のマネージャーと出会う機会があり、13歳から所属することになったんです。それで「1回レコーディングをしてみよう」という話になり、13歳のときに初めてレコーディングしたのが2ndシングルの「Make A Move」でした。3rdシングルの「Who I am」と未発表曲の全3曲を3日でレコーディングしたんですが、当時は自分の音楽が世界に発信されるなんて思ってもいなかったので、今の状況にびっくりしています。デビュー曲の「Can’t Have」はそれからしばらくしてレコーディングしたんですが、「Can’t Have」でデビューしたかったのでわがままを聞いてもらいました(笑)。

WWD:最新曲「Technicolor」のMVまでは素顔を伏せていましたが、その理由と解禁の訳は?

エマ:学校の友達にバレるのが恥ずかしかったので、事務所に嫌だと言っていたんですが、気にしなくなったので解禁しました(笑)。

WWD:ファッションが好きだということですが、どういったスタイルが好きですか?

エマ:今日は全身ブラックなんですけど、最近はパステルカラーの洋服が気になっていますね。というのも、前まではストリート系が好きだったんですけど最近は自分なりのかわいい路線に系統を変えたくて、学校にいるときはピンクやパープル、オレンジを取り入れた服装をしています。アートスクールなのでファッション学科の友人も多く、彼らからはよく刺激を受けていますね。

WWD:好きなブランドはありますか?

エマ:「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」と「ジバンシィ(GIVENCHY))」で、ビジュアルにいつか起用されてみたいですね。「シャネル(CHANEL)」とは何かしらで協業するのが夢です。

WWD:ヘアメイクのこだわりは?

エマ:メイクは洋服と同じようにパステルのピンクやレッド、あとはブラウンのものをよく使います。「Technicolor」のMVの際は、初めて自分が出演するということもあって希望を全然言えなかったのが心残りです(笑)。

WWD:ビジュアルを解禁したことでライブを開催することも多くなると思いますが、ライブ衣装のイメージはありますか?

エマ:普段とは違う、ちょっと派手な衣装を着てみたいですね。

WWD:今後の活動目標を教えてください。

エマ:「誰っぽくもない、これがエマ・ウォーリン」という、かわいくてゴージャスでどこかミステリアスなアーティストになれればいいなと思っています。実は作曲も始めているので、作詞とあわせて仕上げるのが近々の目標です。あとはダニエル・シーザー(Daniel Caesar)やレーロと一緒に曲を出してみたいですね。

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週末お出かけスポット 自身の記憶を“あじわう”体験ができる展覧会「記憶の珍味」など5選

 週末にオシャレして出掛けたいスポットをお届け。今週は、自身の記憶を“あじわう”体験ができる展覧会「記憶の珍味」や世界的ロックバンド、クイーンの軌跡をたどる展覧会など5つをラインアップする。

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帰って来たメンズコレドタバタ日記Vol.6 和洋折衷の「アンダーカバー」劇場と「ヴァレンティノ」の美しさに感動の1日

11:30 オフ-ホワイト c/o ヴァージル・アブロー

 さて、パリ一発目はいきなり「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)。会場はルーブル美術館です。ヴァージルは昨年、自分のブランドと「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」、それにさまざまなコラボプロジェクトで疲労がたまったのか一休みしていましたが、インスタグラムを見る限りでは復帰してバリバリ働いているみたい。特に直近は「ルイ・ヴィトン」と「オフ-ホワイト」の投稿が入り乱れています。

 ストリートキッズに大人への階段を登って欲しいのでしょうか?自分の服作りへの思いがフォーマルにも広がっているのでしょうか?それとも、ストリートがちょっと落ち着いた時流を踏まえているのでしょうか?ここ2シーズンくらい、「オフ-ホワイト」のメゾンはエレガントなフォーマル志向。所々に穴を開けてみたり、左右のラペルが非対称だったり、そもそも1サイズオーバーくらいのボックスシルエットだったりでストリートのムードは取り入れていますが、基本はジャケット。パンツにはプリーツを寄せました。

 でも、どうでしょうか~?やっぱり「オフ-ホワイト」は、フォーマルじゃなくて良いと思うんです。正直ジャケットは、よっぽどのヴァージルファンでない限り、ここで買う理由を見いだすのが難しい。エレガントなスーツはもちろん、ストリートマインドのスーツだって無数に存在する世の中ですから。実際、バイヤーの方に話を伺っても、やっぱりスーツは難しいそうです。

 敢えて挑戦する気持ちは大事ですが、正直スーツは経験値です。「オフ-ホワイト」のスーツが共感を誘えるようになるのは、まだしばらく先の話です。

12:25 ヘド メイナー

 「ヘド メイナー(HED MAYNER)」のコレクションは実にシンプル。肉厚のウールをブラッシングして起毛させ、ふっくら暖かい生地を作成。まるで毛布のような生地を、本当に毛布のようにバサッと羽織った雰囲気のガウンコート、両端だけ縫い合わせて顔出したかのようなトップスなどを生み出すのです。飾らず、素朴。穏やかで、心地よい。そんなムードを前面に押し出しました。

 小さいブランドは、やれることが限られています。ならば1つを徹底的にやりきって、他はノータッチ。そうやって強い印象を残そうと腹を括ったのようでした。

 ステキな覚悟。そして、それはしっかり伝わった!好きか嫌いかは別として、「ふんわり毛布は『ヘド メイナー』」という印象は、誰にも強く残ったことでしょう。そんな単純明快なインプレッションも大事です。

13:20 JWアンダーソン

 奇しくも今シーズンは、「JW アンダーソン(JW ANDERSON)」も提案を絞り込みました。デザイナーのジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)曰く「エディットした」コレクションです。

 ショー終了後にその理由を尋ねると、「(プレコレクションも含めれば)3カ月ごとに新作を生み出す業界だから、時間をかけて磨いたアイデアの一つ一つを大切にしたい」と話します。続けてジョナサンは、「『パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)』の時計は時間が経てば経つほどビンテージとして価値を増すのに、洋服がそうならないのは理不尽だ」と主張。なるほど。そのためには業界全体が大きく変わらなくちゃいけないけれど、目指す理想は共感します。

 で、そんな磨きあげたコレクションは、幼少期は父親の虐待に苦しみ、その後は愛するパートナーをAIDSで失った悲しみにくれた不遇のフォトグラファー、デイビット・ヴォイナロヴィッチ(David Wojnarowicz)に想いを馳せました。

 中央のゴールドチェーンがインパクト絶大でジョナサンらしい“アーティー”な感じを醸し出すAラインのボリュームコート、裾が雲のようにモコモコしたプリーツトップスが2大アイテム。ともにデイビッドの写真のように強いインパクトを残しますが、正直いつもの方が素敵に見える。ジョナサンのスタイルは、独特だけどパーツのように小さな部品感覚の洋服を組み合わせるようにレイヤードして作るもの。Aラインのコートやノースリーブのトップスなど、強いアイテム1着で完成スタイルは、着こなせる自分が想像しづらい印象です。

15:00 ファセッタズム

 「ファセッタズム(FACETASM)」は、ビーガン、なのにレゲエミュージックの音響が自慢というレストランでプレゼンテーション。ビーガンなのに音重視。新鮮です。ちなみに、ここのゴハンはマジで美味しかった!!10区の「JAH JAH」、オススメです。

 そんなところに集う仲間の、自由奔放なスタイルを描いたようなコレクションは、ネイティブアメリカンな柄を貼り付けたダッフルコートやオーバーサイズの3ピース、フレアとスキニーという左右非対称の足を持ったパンツ、ネオンカラーのニットなど「ファセッタズム」らしい。歴史を持つ洋服や素材、柄を、その印象をガラリと変えて元気いっぱいに提案するのが得意なブランドだと思っています。前回はブランドらしい“幸せなカンジ”をあえて封印しちゃって残念な印象でしたが、今回は洋服にも満足満足です。

普通ならバックステージにあるスタイリングパネルが会場内に。モデルの写真からもパーソナリティが滲みます

18:00 ヴァレンティノ

 なんて美しいのでしょう。ダークスーツへの回帰がいよいよ顕著な今シーズン、こうなると力を発揮するのはトップメゾン。その一翼を担う「ヴァレンティノ(VALENTINO)」です。

 良い服を、丁寧に作る。そして誰もが「素敵ですね」と共感できる範囲で最高峰を目指す。そんなカンジでしょうか?

 ダブルのジャケット、ステンカラーコート、そして純白のホワイトシャツは、いずれもピュアでミニマル。織りや刺しゅうの花々がカラーに変わった瞬間、僕の心は一気にときめきました。正直コンサバなクリエイションが多くてイマイチ盛り上がっていなかった心が、「ヴァレンティノ」のフローラルコレクションと同時に開花した。そんな印象です。

 あまりに美しいから、見惚れてしまう。そんなコレクションでした。バリエーションは「豊か」とまではいかないけれど、見応え十分。「VLTN」のロゴは、洋服では背面に控えめに、その分ボディーバッグでは思いっきりなカンジです。リラックスを基調とする現代のシルエットに、メゾンが継承するクラフツマンシップというレガシー(遺産)が融合。久々に心の底から美しいと思えるプレタポルテを拝見させていただきました。

 あ、スニーカーは「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」とのコラボレーションです。

19:10 OAMC

 さぁ、「ヴァレンティノ」が30分遅れ、そこから左岸に移動しての「OAMC」は40分遅れ。ちょっとヤバい感じになってきました~。

 「ジル サンダー(JIL SANDER)」も手掛けるルーク・メイヤー(Luke Meier)の「OAMC」は、「ジル」同様に穏やかですが、今季はアウトドアムードを押し出すことで差別化を図りました。レインコート、ポンチョ(コレは「ジル サンダー」にもありますが)、ミリタリーシャツ、そしてレインブーツ。確かに「ジル」とは違います。

 でも、差異は非常に微細。よほどの洋服好きじゃないと、2つの違いはわからない。しかも素材が良い分、やっぱり良く見えるのは「ジル サンダー」。「OAMC」は正直、“「ジル サンダー」第2章”みたいな雰囲気に陥っています。それで良いのか?悪いのか?難しいところですが、既視感は気になるところです。

20:20 アンダーカバー

 「OAMC」の会場を出て、ダッシュでメトロの駅へ!ストライキで運行本数が少ない中、ラッキーなことに電車はすぐにやってきて、「アンダーカバー(UNDERCOVER)」に間に合いました。ちなみにパリの協会は、優雅なハイヤーに乗らない我々のために“貧乏バス(以下、BB)”を運行しているのですが、この“BB”に乗って移動した人は間に合わなかったそうです。

 そんな人は、本当に残念!!だって「アンダーカバー」、間違いなく本日のベストだったんです!!ショーのタイトルは「Fallen Man」、「堕落した男」という意味でしょうか?黒澤明監督作品の「蜘蛛巣城」にインスピレーションを得て、モダンバレエと日本の演劇を組み合わせたようなショー形式で、最新コレクションを発表します。

 帰って「蜘蛛巣城」の予告編を見ると、主役を務めた三船敏郎は、もののけが住む森にほど近く霧が立ち込める蜘蛛巣城で殿を殺し、腹心を殺し、最後は自らも狂ってしまう武士を演じています。ショーでも戦国武将のような男性が、もののけのような女性と交わり、最後には矢で射抜かれてしまう。その間を、東洋と西洋を融合したスタイルのモデルたちが歩いていくのです。

 例えば甲冑のようなスタイルは、キルティングのミリタリーやアウトドアベストにニットやネルシャツ、ドローコードでひざ下を絞ることができるパンツなどを複雑にレイヤードすることで描きます。そしてフーディーは、作務衣のような前合わせタイプ。そこに風呂敷を模したボディーバッグを抱えるのです。やっぱり着物合わせの巨大なダウンのモデルは、なんだか寺院の坊主のよう。「日本風」ではあるけれど、アイテムはどれも西洋由来。モダンバレエと演劇を組み合わせたショー同様、東洋と西洋の間を揺らめくのです。だから、どちらの側から見ても「新しい」し、どちらの側から見ても「コスプレじゃない」。無論、ジョニオさんらしいダークファンタジーの世界です。

 こんなコトを書くと怒られるかもしれませんが、僕(42歳)より年上でジョニオさん(50歳)くらいまでの世代、特にジョニオさんは“元祖リミックス世代”として、新しい時代を築いた人たちです。でも僕より下、もはやリミックスが当たり前だった世代から言わせると、「“元祖リミックス世代”は、日本の文化だけはリミックスしない。もしくは『敢えて』じゃないとリミックスしない」人たちなんだそう。数年前、そう分析されてドキッとしたことがありました。でも今回のジョニオさんは、自分のルーツである日本の文化さえ、高くも低くもなくフラットに捉え、それを自然と西洋の洋服をミックスしました。“元祖リミックス世代”の弱点を、軽やかに乗り越えている。そんな風に思ったんです。

21:40 ラフ・シモンズ

 さぁ、今日の最後は「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」。相変わらず、会場はパリ市外です。

 今シーズンの「ラフ」は、未来を見つめたようです。それは10年後?30年後?定かではありませんが、透明なPVC、ラミネート、コーティングが、ウールやフェイクファー、ボアなどのコートやジャケットを覆います。コートやジャケットの下は、セカンドスキンのようにピタピタのシルバーのタートルネック。足元は、ラバーのようなブーツです。真っ白いライナーのコートをひっくり返して着ているようなスタイルは、まるでラボの研究員でした。

 でも、だからと言って完全にフィーチャリスティックじゃない。未来的な素材で覆いこそしたものの、伝統的な素材から決別しないのは、その証。後半には、手編みのモヘアストールやへッドピースが現れ、現代の温もりにもまだ価値を置いているようなスタイルです。

 そんな姿勢は、BGMにも現れていました。大半は打ち込み、もしくはノイズのような重低音でしたが、フィナーレはデヴィッド・ボウイ(David Bowie)の“Life on Mars”。未来を志向しているものの、なじみあるボウイの声は郷愁さえ誘います。でも“Life on Mars”って、何かを批判しているような歌のハズ。「地球を出て、宇宙へ」「今を捨て、未来へ」なんてメッセージでもあるのだろうか?そんなことを考えながら、帰りのUberに揺られたのでした。

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ロンドンの若い世代を中心に人気を集めるストリートブランド「ヒドゥン・マングローブス」

 ロンドン発のストリートブランド「ヒドゥン・マングローブス(HIDDEN MANGROVES)」がいま、現地の若い世代を中心にジワジワと人気を集めている。

 「ヒドゥン・マングローブス」は2017年に誕生したばかりの若いブランドで、10代の頃からスケートボードやグライムに親しんでいたロンドン生まれのルカ・ブラウン(Luca Brown)がデザイナーを務めている。立ち上げのきっかけは、欲しいと思うTシャツがなかったために自分で製作し、それを友人たちに配りはじめたことだ。その後、ステッカーを貼ったり地元のスケーターにTシャツやフーディーをギフティングしたりと草の根活動を続けたことで、徐々にそのウイットに富んだカラフルなグラフィックデザインが注目を集め、設立2年目にしてドーバー ストリート マーケット ロンドン(DOVER STREET MARKET LONDON以下、DSML)でも取り扱われている。

 「マングローブの水面下には、マングローブを母体とした世界が広がっている。そこに潜む生き物たちは、マングローブと“家族”でない限り海上からは見ることができない。逆に“家族”であれば好きなだけ見ることができるんだ。また、表面的な関係で終わらせたくないという意味も込めている」とルカ=デザイナーは、ブランド名に託したコミュニティーの大切さを語る。そのため、ルックブックでも偽りのないありのままの自分たちを表現したいとモデルには水原佑果をはじめとした友人を起用し、ルカ=デザイナー自身が撮影したそうだ。

 素材でもルカ=デザイナーがインド旅行中に発見したものを採用するなどこだわりを見せ、夏に控える2020年春夏コレクションでは東京の職人が手作業で染めた生地を使用したTシャツなどを用意するという。

 価格は40〜150ポンド(約5700〜2万1000円)とストリートブランドらしく手頃で、現在「ヒドゥン・マングローブス」の公式オンラインストアとDSMLのほか、東京・原宿のセレクトショップ「ドミサイル東京(DOMICILE TOKYO)」でのみ取り扱っている。

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そごう・西武が正月広告で「ひっくり返したかった」2つのこと

 2020年元日、朝日新聞などの一部全国紙や地方紙に掲載されたそごう・西武の一面広告が話題を呼んだ。「さ、ひっくり返そう」という大きなキャッチフレーズが踊り、それと不釣り合いなほど小さな力士。「勝ち目のない勝負はあきらめるのが賢明」「どうせ奇跡なんて起こらない」といった11行の本文を一読すると、土俵際に追い詰められた状況が浮かぶ。だが、注意書きに従って下から上に読み直せば、大逆転ストーリーに様変わりする。ユニークな広告手法はSNSで多くの人から賞賛された。仕掛け人であるそごう・西武の相原秀久・営業企画部広告宣伝担当部長に、広告の狙いを聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):今回の正月広告に対する反響は?

相原秀久・営業企画部広告宣伝担当部長(以下、相原):SNSの中だけでなく、店頭にも「勇気づけられた」「鳥肌が立った」といったお客さまのポジティブな声が寄せられていて、まずはホッとしています。中学校の先生たちからは「受験生の背中を押すメッセージとして生徒たちに紹介したい」というお声もあり、驚きとともにうれしく思っています。

WWD:このようなメッセージ広告はいつから始めたのですか?

相原:17年からさまざまな制約の中でも自分を貫こうと頑張る人たちを応援する「わたしは、私。」という広告を展開してきました。毎年1月1日に新聞やウェブ広告で発表して、1年を通じて訴えるコーポレート広告です。初年度の17年は樹木希林さん。自由な装いで、年齢に関わらず自分らしさを表現する女性の姿を演出してもらいました。18年の木村拓哉さんは当時SMAPが解散し、ジャニーズに残るという決断に世間から厳しい目が注がれる中での起用でした。希林さんは年齢、木村さんは世間の常識や同調圧力に屈しないというメッセージを込め、私自身も手応えを感じていました。

WWD:しかし、19年の安藤サクラさんがパイ投げを受けているビジュアルの広告は大炎上しましたね。

相原:パイは女性を取り巻く「抑圧」の表現で、それに自覚的に立ち向かう人たちへのメッセージでした。当時「#MeToo」運動が世界的に広がりを見せる中、問題提起をしたいと企画したのですが、ビジュアルが強烈すぎたのかもしれません。お叱りの声が多く寄せられ、中には店舗のお客さま窓口まで抗議にいらっしゃる方もいらっしゃいました。

WWD:火消しのためにどう対応しましたか?

相原:結局、当社の場合は取り下げることなく、年末まで予定通りポスターを店内などに掲出しました。もともと元日にモデルが誰だか分からないパイ投げの広告を発表して、数日後にタネ明かしとして安藤サクラさんのシンプルなビジュアルに差し替える予定でした。批判が殺到したら、ひとまず広告自体を取り下げる方が企業としては無難かもしれません。ですが当社はトップの林(拓二そごう・西武社長)の強いリーダーシップもあって継続しました。ご批判はご批判として受け止めますが、だからと言って謝罪や取り下げは違うと思うのです。

WWD:同じ時期、やはり女性の描き方で広告が炎上し、謝罪や取り下げを余儀なくされた有名企業もありました。

相原:批判があったからといって安易に取り下げたら、それこそ予定調和的なものになってしまう。ただ、意見は分かれるところでしょう。この辺は、企業としても難しいところです。西武百貨店は1980年代に、糸井重里さんの「おいしい生活」をはじめとしたユニークな広告でお客さまの共感を集めて成長してきました。そごう・西武になった今も「こんなのは面白くない」「西武らしくない」と社内で喧々諤々する機運があります。ユニークさを求めるあまり裏目に出てしまうこともある。

WWD:炎上騒動は20年のコーポレート広告にも影響を与えましたか。

相原:それはもちろん。不本意な炎上を挽回したいという気持ちはありました。そのために多くの方々にまっすぐ届くもの。それでいて強いメッセージは何か。社内外で議論を重ねました。コーポレート広告はお客さまに向けると同時に社内に向けての宣言でもあります。19年はそごう・西武にとって非常に厳しい年でした。百貨店への逆風は止むことはなく、親会社のセブン&アイ・ホールディングスは10月10日、そごう・西武の5店舗を20年以降に閉店すると発表しました。ネガディブなニュースに触れて、意気消沈する社員が出てくるかもしれない。ならば今回は自社をとりまく状況をひっくり返そう。さまざまな逆境に立ち向かっているお客さま、そして社員をも鼓舞するようなメッセージを作りたいと思いました。

WWD:なるほど。裏テーマとしては19年の正月広告の炎上、そして百貨店事業の不振という2つの逆境を乗り越える意味があったのですね。

相原:正月広告は通常8、9月ごろから制作に着手しますが、今回は構造改革の発表(10月10日)を受けてから動き出すことになりました。実際、現場はかなりの突貫工事でした。テーマは決まった。キャスティングをどうするか。たまたま私が雑誌「アンアン」(マガジンハウス)をぱらぱらと眺めていたとき、スイーツ男子として大相撲の炎鵬さんが紹介されているのを発見して、ピンときたんです。制作チームは17年の「わたしは、私。」のスタートからずっとご一緒している、田中英生さんや島田浩太郎さんらを擁するフロンテッジ。私が「炎鵬さんでどうか」と提案したときは皆、首を傾げていました。しかしキャッチフレーズを元にコピーを考えていくと、むしろ炎鵬さん以外いないんじゃないかというくらいピッタリだったんです。幕内最軽量の168cm・98kg。小兵であることをハンデと思わず、それむしろ強みとし、周囲の予想を跳ね返して大きな力士に打ち勝っていく姿が、今回の主題にぴったりだった。

WWD:新聞広告のコピーやビジュアルのポイントは?

相原:まず角界で最も小兵な力士ということで、とにかく彼自身を小さくみせようと考えました。ポスターでも広告でもそうですが、皆さんは読もうと思って読むものではない。目に留めてもらうには、ぱっと見たときの違和感や摩擦感が大事ですね。今回も、たとえ炎鵬を知らない人でも「ちっちゃい!」と興味を持ってくれれば最初のハードルはクリア。キャッチコピーもポジティブで力強いですが、それだけでは物足りない。本文も最後まで読んでもらうためにどうするかを考え、あえてネガティブなことを言ってみようかと生まれたのが「逆読み」のアイデアです。

WWD:今回の反響を踏まえて広告の価値をどう捉えていますか。

相原:1980年代と比べれば、情報化が進んで価値観も多様化し、新聞をはじめとしたマス向け広告の影響力も弱くなっているとは思ってきました。しかし一方で、ネットのターゲティング広告が主流となった今だからこそ、一度に多くの方の目に触れる正月広告は、企業の姿勢を示す貴重な場とも考えられます。常に何か面白いものを発信しなければという西武百貨店時代からのDNAは今もわれわれの中にあります。時流を読み、工夫を凝らせばまだまだ人の心を動かせる。毎年続ければハードルもどんどん高くなりますが、来年も皆さんをあっと驚かせるような発信をしたいと考えています。

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「ケンゾー」がロゴを更新 新ディレクターが語る高田賢三との共通点

 「ケンゾー(KENZO)」のクリエイティブ・ディレクターに、「ラコステ(LACOSTE)」などを手掛けてきたフェリペ・オリヴェイラ・バティスタ(Felipe Oliveira Baptista)が就任した。前任として8年間ブランドをけん引したキャロル・リム(Carol Lim)とウンベルト・レオン(Humberto Leon)に代わり、ブランドに新しい風を吹き込む。新生「ケンゾー」はウィメンズの20-21年秋冬パリ・ファッション・ウイークで正式にデビューするが、それに先駆けて“更新”したロゴを発表。新ディレクターのバティスタに、ブランドをどのように導いていくかや、ロゴに込めた思いを聞いた。

WWD:「ケンゾー」にどんなイメージを抱いているか。

フェリペ・オリヴェイラ・バティスタ=クリエイティブ・ディレクター(以下、バティスタ):とてもフレッシュで、楽しさにあふれているブランドだ。DNAとして特に強く感じるのは、自然の要素であったり、ポジティブで自由な精神性。今後どんなクリエイティブ・ディレクションがブランドに加わるとしても、このDNAはブレない。アーカイブの研究は就任後すぐに始めた。それを基に、アーカイブのプリント柄などはもちろん取り入れていくが、自分に課された仕事はブランドの歴史に敬意を払いつつ、新しいブランドイメージを作り出すことだ。

WWD:「ケンゾー」は高田賢三氏が立ち上げたブランドとして、日本を含むアジア圏では特に親しまれているブランドだ。

バティスタ:日本的な感覚を持ったブランドであることは間違いない。それと同時に、高田氏は世界に対して非常にオープンマインドで、世界各国からインスピレーションを得ていた。それは僕自身にも通じる。僕はポルトガル出身で、ファッションを勉強したのはロンドン。ミラノでも働いたし、パリにももう10年住んでいる。アメリカや日本でもこれまでコラボレーションを行ってきた。高田氏と僕の共通点は、あらゆる国、あらゆる人の価値観認めていくようなあり方だ。日本の文化はもともと好きで、昨年12月には2週間日本に滞在していた。改めてフレッシュな視点で日本を感じることができ、満足している。

WWD:自身のブランドや「ラコステ」での経験と、「ケンゾー」はどう違うか。

バティスタ:ブランドの性質がそもそも異なる。僕自身のブランドはよりハイエンドなターゲットに向けたものだ。「ラコステ」は民主的で幅広い層に向けたスポーツウエア。それに対し、「ケンゾー」はフレッシュなマインドのファッションブランドだ。定義が異なるので、それぞれのブランドのアプローチは当然異なってくる。「ケンゾー」では着やすさを保ちつつ、全身をスタイリングするためには何が必要か、というワードローブの意識をもっと盛り込んでいきたい。

WWD:ここ数年の「ケンゾー」は、スポーツやストリートのムードが強かった。しかしこの1年ほどで、世の中の気分はストリートからエレガンスへと回帰している。

バティスタ:スポーティーさや着やすさはこれからもブランドに残っていくだろう。しかし、繰り返しになるが今後はもっとワードローブの感覚を強めていく。そして素材や色使いの部分では、DNAである自然の要素にもっと焦点を当てていきたい。素材の話と関連して、20年中に発表する2つのカプセルコレクションではサステナブルファブリックを使用しているし、リサイクルカシミヤなども増やしていく。サステナビリティへの意識を発信していくこともブランドの使命だと考えている。

WWD:ロゴを更新したが、これに込めた思いは何か。

バティスタ:インターネットの発達などにより、世界はどんどん近くなっている。そして、「ケンゾー」は常に多様性やオープンマインドな姿勢が根底にあるブランドだ。そういった考えから、更新したロゴからはPARISの文字を外した。「ケンゾー」はあらゆる国や地域の、あらゆる人のためのブランドだということを表現している。政治的なスローガンを発信したければそれもできるが、ファッションブランドとして、それぞれの美しさや違いを認め合っていく姿勢を発信することこそが重要だと思っている。見返りを求めるのではなく、お互いを尊重すること。グローバルブランドである以上、多様性を認めるメッセージを伝えていくことが非常に大切だと考えている。

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「コーディネートより身のこなしの方が大切だ」 by ジョルジオ・アルマーニ

Giorgio Armani

 コーディネートより身のこなしの方が大切だ。骨格をエレガントに見せること、そして落ち着いた話し方をすること。今はみんな大声をあげがちで、それが問題を呼ぶこともある。高いジャケットを着ることがエレガンスではない。たとえ安いジャケット出会っても、それをエレガントに着こなす行動様式を取ること。それが秘訣であり、安いジャケットを何百万もするものに見せることだってできる。(WWDジャパン2019年5月27日掲載、デザイナーのジョルジオ・アルマーニが「ジョルジオ アルマーニ」2020年プレ・スプリング・コレクションを5月24日に開催するため12年ぶりに来日した。ショーに先駆け、前日には雑誌編集者や新聞記者を集めてカンファレンスを実施。プレ・スプリング・コレクションのコンセプトや日本の消費者の印象などを語ると共に、各媒体からの質問に答えた。男性誌編集者に、“スーツを着る男性のエレガンス”について問われていわく)

The WORDS
ファッション業界人の残した名言を日々の糧に。デザイナーやバイヤー、社長、編集長らの心に響く言葉をお届け。

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読者が注目した今週の新作 「マルニ フラワー カフェ」のバレンタインチョコなど(1月17〜23日)

 「WWD JAPAN.com」が今週発売の新商品を「ファッション部門」「ビューティ部門」「スニーカー部門」別にまとめてお届け。「ファッション部門」では読者の注目度(PV)から1〜3位までをランキング形式で紹介。今週は「マルニ フラワー カフェ(MARNI FLOWER CAFE)」の“バレンタインチョコレートバッグ”が最も注目された。

【ファッション部門】


【ビューティ部門】


【スニーカー部門】

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読者が注目した今週の新作 「マルニ フラワー カフェ」のバレンタインチョコなど(1月17〜23日)

 「WWD JAPAN.com」が今週発売の新商品を「ファッション部門」「ビューティ部門」「スニーカー部門」別にまとめてお届け。「ファッション部門」では読者の注目度(PV)から1〜3位までをランキング形式で紹介。今週は「マルニ フラワー カフェ(MARNI FLOWER CAFE)」の“バレンタインチョコレートバッグ”が最も注目された。

【ファッション部門】


【ビューティ部門】


【スニーカー部門】

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【動画】WWDJAPAN ENGLISH Vol.4 “キュロット”や“メンズライクなジャケット”などトレンドアイテムを英語で言おう

 「WWDJAPAN ENGLISH」は、世界に羽ばたきたい業界人に向けた英会話番組です。「WWD JAPAN.com」にアップした記事をRIZAP ENGLISH(https://www.rizap-english.jp/)全面協力のもと、「こんなコトが英語で言えたら!!」「あの時、フレーズが浮かばなかった!!」という、業界人なら誰もが知りたいワンポイント英語を学びます。4回目は、日本語メインの初級編。この秋冬のトレンドの記事から、人気アイテムなどの表現を学びます。動画の下には、番組中に読み上げた英語を掲載します。

For the fall and winter of 2019-20, a more sophisticated and elegant look is trending again, replacing the street-inspired styles that have been in fashion for the past several years. The tie-neck blouse seems to be making a comeback as the iconic piece for this more refined style.

This look can lend a very refined and polished air to any outfit, but it’s trickier than it looks. In order to create the right effect, it is important to mix and match pieces to achieve a well-balanced look that doesn’t come across as overly girly or feminine.

For example, in the fall/winter 2019-20 collection for Japanese fashion brand Iena, a tie-neck blouse is paired with a camel coat and matching skirt. One-tone dressing can be accented with a patterned bow to add a sense of playfulness.

In this way, by skillfully reworking the feminine components of the look, you can break away from the conventional.

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多様なニーズに応える素材とデザインのバリエーション 「セリーヌ」2020年春夏バッグ&シューズ

 「セリーヌ(CELINE)」の2020年春夏コレクションは、昨秋冬シーズンに打ち出した1970年代風ブルジョアスタイルの流れを踏襲した。ただ今季の舞台はパリではなく、南仏にある高級避暑地のサントロペ。リゾートを訪れるブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)やシャルロット・ゲンズブール(Charlotte Gainsbourg)、ジェーン・バーキン(Jane Birkin)らパリジェンヌのスタイルからイメージをふくらませた。デニムシャツ&ジーンズの上に紺のブレザーを羽織ったルックからスタートしたショーは、デニムアイテムをはじめ、ひざ下丈のキュロットやスカート、軽やかなドレスがスタイルの鍵となった。

 バッグで大きくフィーチャーされたのは、パリの凱旋門を囲む鎖から着想を得た“トリオンフ”の金具を楕円で囲んだデザインが特徴的な“マイヨン トリオンフ”シリーズ。19年秋冬にデビューしたフラップ型チェーンショルダーバッグを多彩な素材バリエーションで見せたほか、バケットバッグやレザーストラップ付きの丸みのあるショルダーバッグなどの新作モデルを提案する。さらに、アーカイブのバックルをポイントにしたショルダーバッグやロゴをあしらったテキスタイルとレザーを掛け合わせたトート、大きな“トリオンフ”のレザーピースを飾ったラフィアのカゴバッグ、小ぶりなラタンのバケットバッグもラインアップ。ゴブラン織りの生地やスエードといった素材、そしてフリンジやスカーフの装飾が、ボヘミアンやエスニックのムードを醸し出す。

 足元は、キュロットやデニムスカート、ドレスにニーハイブーツをコーディネート。ジーンズやスラックスには、真っ白なローテクスニーカーや、プラットフォーム×ウェッジソールのサンダル、キューバンヒールのショートブーツを合わせた。また、ショーに登場しなかったアイテムには多彩なスタイルのフラットサンダルやエスパドリーユ、クロッグ、バブーシュ、ローファーなどもあり、欲しいアイテムが必ず見つかるようなラインアップの豊富さが魅力的だ。

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メンズコレ裏街道記 パリメンズ初日は汗と涙にまみれたカオスな状況で「キディル」が奮闘

 1月14日。くもり。パリに到着し、メンズのコレクションサーキットもいよいよ大詰め。でも、現地では史上最長となる交通ストがようやく終息したばかりのため、交通は乱れまくり。地下鉄が部分的にしか運行していないので、道路は渋滞し、道は人で溢れています。同日昼にはミラノで「グッチ(GUCCI)」のショーが開かれた後に夕方からはパリメンズがスタートするにも関わらず、イタリアの航空会社がストライキを行って便の欠航が相次ぐなど何もかもがカオスな状況。そんな中、この“裏街道”にぴったりなカオスなブランドから取材をスタートしました。

18:00「キディル」

 ドタバタを避けるために前日夜にパリ入りし、「キディル(KIDILL)」のショーに備えます。ホテルからは徒歩15分という距離だったため、ひとまずは安心して会場のライブハウスまで移動しました。モードの中心地パリでもアングラ感バッキバキなムードで、早くも期待が高まります。こういう空間でこそ「キディル」は映えるから。さらに今回はセックスピストルズをはじめさまざまなアートワークを手掛けてきたジェイミー・リード(Jamie Reid)やデニムの「エドウィン(EDWIN)」、パリ発のシューズブランド「ボース(BOTH)」とのコラボを事前に告知するなど、見所はたっぷり。さあ、ヒロ(末安弘明デザイナー)さん、準備は整いました。行きましょう……い、行きましょう……始まらん。いや、僕の気持ちがはやりすぎただけです。だってショー開始は大体20分遅れるのが通例ですもの。さあ、そろそろでしょうか。パリメンズ3回目のショー、ゴー……って、全然始まらんやんけ。気がつけば予定よりも1時間遅れています。もちろん今シーズンのメンズ・コレクション最長記録。ただ、コレクションは素晴らしかった。3回目のパリコレで、一番の出来ではないでしょうか。服の要素はめちゃくちゃパンクにも関わらず、丸みを帯びたオーバーサイズのシルエットによって急に近所の兄ちゃん的な親しみがわくのです。“極楽”“諸行無常”といった強烈な漢字の刺しゅうも、「キディル」の手にかかれば愛しきモチーフへと生まれ変わります。言葉を切り絵のようにコラージュするジェイミー・リードのグラフィックもバッチリとはまっていて、欲しいアイテムばかりでした。何より、「キディル」はこれで行くんだ!という強い意志と覚悟がコレクションからにじんでいたのが素晴らしかった。ただ、あまりこういうあくせくした状況で見たくなかったなというのが正直なところです。全部、ストのせいだ!

「キディル」2020-21年秋冬パリ・メンズ・コレクションから

19:30「フィップス」

「フィップス」2020-21年秋冬パリ・メンズ・コレクションから

 驚がくの60分押しの影響で次のショーをスキップし、フランス発のニューカマー「フィップス(PHIPPS)」の会場へ。歩道に溢れる人の波をかき分けながら、動いてるはずのメトロの駅にダッシュします。すると改札が常にフルオープン状態で、タダ乗りOKというこれまた異常なムード。当然、電車はめちゃ混雑します。冬のパリで汗だくです。会場には比較的スムーズに到着しました。昨年6月に同ブランドのショーを見たときはピンと来なかったものの、今回で印象がガラリと変わりました。ボーイスカウトやキャンプ、ネイティブアメリカンなど自然の中に暮らす男たちの普段着をベースに、シルエットを今っぽく膨らませたり、上質素材を使ったりと、都会的にアレンジ。アメカジにストーリー性を加える手法がユニークでした。

20:30「アミ アレクサンドル マテュッシ」

 公式スケジュール最後のショーは「アミ アレクサンドル マテュッシ(AMI ALEXANDRE MATTIUSSI)」のブランド設立9周年を祝したアニバーサリーショーです。え?10周年ではなく?はい、実はデザイナーのアレクサンドルにとって9はラッキーナンバー。だからこそ今回のショーには特別な思いが込められています。メンズは、ガラリと変わった前シーズンを踏襲するテーラリングがメイン。前回は見せたシャープなスタイルを打ち出しましたが、今季は素材のクラシックさと上質さをレトロなムードに落とし込んだ品の良さが印象的でした。キュロット風のショーツやスカートとスラックスのレイヤードといったボトムスの提案も素敵。ウィメンズは根底のフレンチシックは変わらないものの、よりきらびやかに進化しています。ショーの最後にステージの大きな幕が上がってパリの街並みを表現したセットが出現し、モデルたちがそこに佇むという劇仕立ての美しいフィナーレでした。9周年、おめでとう!でも10周年もやるのかな?

「アミ アレクサンドル マテュッシ」2020-21年秋冬パリ・メンズ・コレクションから

21:30コンパクトに進化した貧乏バス

 公式スケジュールが終わっても、まだまだファッション・ウイークは終わりません。最後の最後は「ナターシャ ジンコ(NATASHA ZINKO)」のショーが控えています。でも移動手段がない。徒歩で移動すると60分の距離で、タクシーもつかまらないし、地下鉄も動いていない。ハイヤーも手配していないし、ウーバーも高い。夜道を歩き続けるのもちょっと怖い。今日は諦めて帰るかと思った時、アレが目に飛び込んできました!メディアやバイヤーを次のショー会場へと運んでくれる俺たちの貧乏バス(通称BB)が!しかもめちゃくちゃコンパクトになっています。前はいわゆる旅行バスのような大きさだったのに、だいぶスリムになっていかにも貧乏バスっぽくなっているじゃないですか。聞くと、地下鉄がまだ動いているコンコルド駅まで最後にみんなを送ってくれるのだとか。なんてありがたいのでしょうと、早速乗り込みました。乗り心地は最悪でしたが、ぜいたくは言ってられません。

22:00「ナターシャ ジンコ」

 しっかり車酔いをいただいたところで、駅に到着。ここまでくれば「ナターシャ ジンコ(NATASHA ZINKO)」の会場はすぐ。ショーにも間に合いました。遠回りしながら苦労してたどり着いたからか、原宿っぽいブリブリの服やフィナーレに登場したデザイナーのナターシャとイヴァンのジンコ親子の笑顔がなんだか心にしみて、「ああファッション・ウイークってやっぱり楽しいなー」としみじみ感じながら徒歩40分かけてホテルまで帰りました。

「ナターシャ ジンコ」2020-21年秋冬パリ・メンズ・コレクションから

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業界の未来のため、大人は若者と対等に接して ファッションフリークOL「WWDジャパン」最新号につぶやく

 1992年生まれのファッションフリーク女子が、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。渋谷のファッションベンチャー企業に勤める等身大OL、Azuのリアルな目線を生かした「このニュースからはコレが見える」という切り口で、さまざまな記事につぶやきを添えます。

今日のニュース:P.3『“大人”たちよ、諦めるな』

読み解きポイント:「“若者”たちよ、言い訳するな」

ニュースのポイント

 “SNS世代”のファッションに対する意識を特集した大塚記者によるEDITOR’S VIEW。取材を通して印象に残ったのはデジタルネイティブに絶大な影響力を与えるファッションYouTuberの「売れてないのにカッコつけてる。そんな姿勢が変わらないからファッション業界は衰退して行くんだと思う」という辛辣な言葉だった。2019年は社内の若手を起用してブランドやプロジェクトを立ち上げる大手企業もあり、旧態依然にとらわれず変わろうとする動きも多数見られた。一方、若い世代の意見全てが「新しい価値」ではないはず。多様性と個性が尊重される社会になりつつある中でこそ、大人たちの経験は新たな価値観を生み出す基となるはずだ。

Azuはこう読む!

 わたし、「WWDジャパン」の紙面の中で一番好きなのが冒頭のEDITOR’S VIEWなんです。経験豊富な記者の率直な意見が書かれているから、等身大(?)OLのニュース読み解きなんかよりよっぽど深くてためになります(笑)。同じく昨年から始まったメルマガも愛読中。毎朝の通勤時間などにサクッと読めるし内容もアパレルビジネスから社会情勢までさまざまなので、大人の皆さんはもちろん、ファッション業界に興味ある就活生なんかは必読だと思います。回し者ではございません。

 朝から晩まで24時間365日ファッション業界のことを考え、現場に足しげく通い、ファッションとそれに携わる人々への愛とリスペクトを持って筆をとる。コラムを読むたびにそんな姿が想像できます。このコラムからも、ファッション業界への愛と危機感を感じました。最後の一文は力強くうなづけるものだったし、若者としては「そうあってほしい」と思うものです。

 「ファッション業界を支える大人たちに必要なのは、若者に従うでも無視するでもなく、共に成長しようという意識を持つことではないだろうか」。

 私は「デジタルネイティブ」であり「ミレニアル世代」なので若者という属性に入ります。なのでどんどん新しいことに挑戦し、既存の壁を壊していくことを期待されています。ですが時々、その「若さ」にあぐらをかき、言い訳にしてしまいそうになる時があるんです。「だって若いから」って。

 正直、同世代や下の世代を見ていると大人たちが囃し立てるから「若さ」を消費している人も多いです。もちろん今しかできないことをするのはとても良いことですが、「だって若いから知らなかった、分からなかった、良いと思った」は通用させちゃダメなんです。その言い訳が「使える」と思ったら、可能な限り使ってしまって、気がついたら自分自身に賞味期限のラベルを貼ることになってしまうから。

 もし本当に業界の未来を思うなら、同じようにファッションを愛する人として、対等に接して欲しいのです。私が若者を代表するなんてとてもじゃないけどできませんが、一人の若者の意見として見ていただけたら嬉しいです。

Azu Satoh : 1992年生まれ。早稲田大学在学中に渡仏し、たまたま見たパリコレに衝撃を受けファッション業界を志す。セレクトショップで販売職を経験した後、2015年からファッションベンチャー企業スタイラーに参画。現在はデジタルマーケティング担当としてSNS運用などを行う。越境レディのためのSNSメディア「ROBE」(@robetokyo)を主催。趣味は、東京の可愛い若手ブランドを勝手に広めること。ご意見等はSNSまでお願いします。Twitter : @azunne

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帰ってきたメンズコレドタバタ日記Vol.5 子ども時代をやり直す「グッチ」に感動、大いに語る

 さぁミラノメンズは今日でフィニート(おしまい)。夕方からは、パリメンズがスタートします。後輩オーツカは、泣く泣く「グッチ(GUCCI)」を諦め(スマン!)、昨日の夜パリ入り。僕は今晩の飛行機です。ということで最終日も、どこよりも多くコレクション見ちゃいますよ~。

10:00 ジエダ

 本日のトップバッターは日本から「ジエダ(JIEDA)」です。

 この記事にある通り、昨年アワードを受賞して、ミラノメンズでランウエイを開く権利を獲得、この街に乗り込んできました。

 とはいえ、朝イチなことも手伝い、会場はなかなか埋まらず。残念なのは、日本のメディアさえチラホラしかいないことです。確認できたのは、「メンズ クラブ(MEN‘S CLUB)」とジャーナリストの増田海治郎さんくらい。「みんな、せめて応援に来てほしいなぁ」と思わずにはいられません。

 たしかにコレクションは、正直物足りなかったです。でもね、ミラノはもうちょっと新人を本気で応援した方が良いですよ。一応呼んで、ショーをやらせるだけっていうのは、あまりに酷です。

11:00 マルコ デ ヴィンツェンツォ(MARCO DE VINCENZO)

 こちらは、すでにウィメンズである程度の存在感を発揮しているイタリアンブランドだからでしょうか?同じくミラノメンズ初参加ながら、会場にはそこそこのお客さまです。ちなみに「ジエダ」の会場から徒歩3分の距離だったら「ジエダ」も見に来ておくれよ……。

 コレクションは、正直日本人には難しい色使いと装飾。コートのバルーン袖、シャツのリボンみたいな襟元、そしてプリーツを刻んだフレアパンツなどは難易度高すぎですが、ジェンダーと時を超越した貴族的ムードを漂わせています。

12:55 グッチ

 やっぱり実質4日だとあっという間ですね~。あっという間に大トリの「グッチ(GUCCI)」の時間となりました。

 「グッチ」のショー取材は、セレブ撮影から始りました。というのもコレクションが始まる数時間前、日本にいる弊社のソーシャルエディターとSNS担当が「写真撮ってください!!」と、「#gucciboy」こと韓国のKAIのスナップという“司令”を送ってきたのです。「ショー当日が、誕生日なんです」という追加情報まで教えてもらったからには、撮影しないワケにはいかない(苦笑)。頑張って押さえたのが、この写真と動画でした。僕がどうしても押さえたかった日本代表は、MIYAVI。せっかくの記念だから、と奥様をカメラ前にエスコートして2人で写真に収まるシーンもありました。相変わらず、とても紳士です。

 一安心して会場に入ると、大きな振り子がドーーーーン!!この振り子がユラユラする砂上の舞台がランウエイです。

 「グッチ」のショーは、ブランドが男女合同ショーに移行して以来しばらく遠ざかり、昨年の9月、久しぶりに拝見しました。そして前回も今回も、「あぁ、プレッシャーから解放され、今まで以上にアレッサンドロ・ミケーレ(Allesandoro Michele )らしくなっているんだろうな」と感じています。

 振り返れば5年前、当時はデザインチームのトップだったミケーレは、ビジネスが停滞気味ゆえ突如退任した前任の穴を埋めるべく、数週間でメンズ・コレクションを作り上げ、それが、イタリアでは今も根強い古来の男性観や女性観を軽やかに超越したと賞賛され、以降あっという間にトップに登りつめました。

 すぐにクリエイティブ・ディレクターに昇格して数シーズンは、過去の「グッチ」との決別を強く強く意識してクリエイションに臨みます。ギーク(オタクっぽい)なムードは、トム・フォード(Tom Ford)時代と差別化するためのセクシーとの決別の結果であり、オーバーサイズやリラックスのシルエットは前任フリーダ・ジャンニーニ(Frida Giannini)のスリム&ロックからの方向転換でもあった印象です。彼は、往年の「グッチ」のアイコンを上手に用いつつも、直近の「グッチ」とは距離を置くという、極めて難しいミッションに挑み続け、それが「グッチ」大復活の原動力となりました。

 そして前回の20年春夏、封印してきたセクシーを解放してトムに敬意さえ表したコレクションを発表したとき、僕は「ファッションを既成概念から解放するのみならず、メゾンを数年前の自分からも解放できるんだ」と感動したんです。今回も、同じような思いに浸りました。

 今シーズンは男たちを苦しめてきた、少なくとも画一的な生き方や価値観につながってしまった“当たり前”、「家族を守らなくちゃいけない」「強く生きなきゃならない」「泣いてはいけない」などの考えに疑問を抱き、伝統的な男らしさからの解放を訴えました。でもそれは数年前までのように、コレクションにフェミニンのエッセンスを加えることで手に入れたワケではありません。過去、つまりは子ども時代に戻り、当時大人から教えられた「男の子なんだから」という押し付けを疑い、そんな既成概念とは無縁の男性観を一から学び直すよう呼びかけたのです。

 だからコレクションは、「子どもっぽい」。

 こう書くと悪く聞こえるかもしれませんが、ミケーレの言葉を借りれば「『子どもっぽい』はネガティブな表現なんかじゃない」。天真爛漫で、ピュアで、古臭い既成概念なんかに染まっていないから、結果新しい。「子どもっぽい」は褒め言葉です。

 実際、いつもよりちょっと小柄なモデルを大勢起用したように思われるコレクションは、子どもが好きなパステルカラー、曲線のディテール、そして、カラダは大きくなっているのに大好きだから着続けちゃうピチピチのインナーと、お父さんから借りちゃったようなジャケットやコート、そしてお母さんにお願いして持たせてもらったバッグ&シューズを組み合わせたようでした。ニットのモチーフは、ヒヨコさんにネコちゃん、それにお花。お姉ちゃんに着せられちゃったのか、アプリケ付きのミニワンピなんてスタイルもあります(笑)。子どもが、もうサイズは小さいけれど自分のお気に入りを最初に着て、そのあとはタンスから家族の洋服を漁って着てみた、そんなムードなのです。

 ショーの後パリに向かう飛行機を待つ空港で、「グッチ」のランウエイを歩いた山田大地クンに会いました。バックステージでの話を聞くと、「なんだかおもちゃ箱みたいでした」と教えてくれます。ホラ、子どもの頃にタイムスリップしているでしょう?

 こんな風に人生の早い段階からジェンダーを飛び越え、自分らしさを探す遊びを楽しんだ子どもは、大人になってもきっと画一的じゃないハズ。ミケーレはそう考え、タイムスリップの旅に出ました。ショーの後の記者会見では、幼年時代の思い出や、子ども服への特別な感情などを語ります。

 前回はメゾンの過去を、そして今回は自分の過去を振り返ったミケーレのクリエイションは、「過去なんて顧みず、前に進まなくっちゃ」という自分に課していた重圧や呪縛から解放されたように見えました。過去との違いを強調するため盛り盛りにしていた装飾、新しい「グッチ」ファンへの期待に応えたいという思いの表れだったろう奇想天外なスタイルなどは抑え目。パッと見は、コンサバっぽく映るかもしれません。でも控えめなスタイルは、ブレーキをかけたからじゃない。次に進むために過去を見つめたから、私たちにも馴染みのあるスタイルにたどり着いたと解釈すべきでしょう。

 そして、この進化は、ビジネス的にも正しい判断。そこがミケーレのクレバーなところです。実は「グッチ」、当然といえば当然ですが昨年は成長率が鈍り、特に北米では成長率が「微増」レベルまで落ち着きました。一方でメゾンは、5年前の倍に匹敵する売上高「100億ユーロ(約1兆2000億円)」突破を目指し、化粧品までローンチしたところ。過去数年からの幾らかの方向転換と、より大勢の消費者に向けた商品の開発が欠かせない状況にあります。馴染みのあるムードを増した今シーズンは、まさにそんなビジネス戦略を意識したものでもあり、ビジネスとクリエイションが一体となって突き進んでいる感があるのです。

 大変大変、「グッチ」だけで2500文字以上の日記を書いてしまっています。本当はまだまだ語りたいことがあるんだけれど、そろそろこの辺にしておきましょう。

 というワケで、大トリ「グッチ」に大満足!!ドタバタ日記のミラノ編は、これで終了。明日からは、今も地下鉄のストライキが深刻なパリから、もっとドタバタな日記をお送りしたいと思います。

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小島健輔リポート 日本にオフプライスストアは定着するか サステナブルに遠い二次流通の実態

 ファッションビジネスのコンサルタントとして業界をリードする小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。サステナビリティの潮流に乗って日本でも注目を集めつつあるオフプライスストア。そのビジネスモデルを解剖する。

 ファッション業界はいつもトレンドの波に乗って泳いでないと生きていけないようで、昨今はサステナビリティに夢中のようだが、企業がイメージ戦略として取り組むCorporate Sustainability(社会・環境・経済の3面から企業価値を高める)にどれほどのリアリティーがあるのか疑問を否めない。

 化石原料由来の素材を回避すれば自然素材の消費が増えてしまうし、リアルファーなど自然素材を回避すれば化石原料の消費が増えてしまう。売れ残り在庫を焼却処分するのがサステナブルじゃないと批判されて二次流通市場に放出すれば、オフプライス流通がプロパー流通を圧迫して売れ残り品が増えるやもしれない。物理学のニュートン第三法則に学ぶまでもなく全ての作用は大きさが等しい反作用を招くから、トレンドイメージはともかく、作用と反作用が打ち消し合って実効性は疑わしい。

 ファッション業界が本当にサステナブルを目指すなら、需要を無視して創作するギャンブルも売れ残り覚悟で量産する特攻も否定するしかないが、それなくしては存続できない業界でもある。需給ギャップを最小化するVMI※1や無在庫販売を実現するC2M※2に移行するのが理想だが、とりあえずは一次流通で消化できなかった在庫を二次流通に放出しているのが現実だ。そんな二次流通も、踏み込んでみると一次流通の矛盾をそのまま引き受けているだけという実態が見えてくる。

※1.VMI(Vendor Managed Inventory)…予め定めた棚割に基づいて納入業者に補給と在庫管理を委託するサプライ手法
※2. C2M(Consumer to Manufactory)…ネットやショールームで受注してデジタル生産や3Dプリンタ出力で素早く顧客に届けるパーソナル対応の無在庫販売手法。F2C(Factory to Consumer)とも言う

需給ギャップを押し付ける放出在庫

 需要に倍する供給が慢性化し、セールがどんどん前倒しされるばかりかEC主導でプロパー時期から値引き販売が常態化し、それでも消化できなかった在庫が二次流通に放出されているが、その放出方法には根本的な問題がある。

 在庫処分業者にヒアリングしても放出するアパレル側にヒアリングしても、在庫の放出はタイミングも商品選択も定見のない一方通行で、買い入れる側にはほとんど選択権がない。買うか買わないか、いくらで引き取るかの交渉しかないのが現実だ。「定見のない」と書いたのは、食品業界のように賞味期限で定期的に放出するのではなく、デッドストックが積み上がって運転資金を圧迫したり、倉庫代が負担になって放出が決まることが多いからだ。シーズンの異なる商品や何年もストックされて賞味期限を過ぎた商品も一緒に引き取らざるを得ず、引き取り価格が低くなるばかりか、引き取った側は手間のかかる仕分けと販路開拓という人海戦術を強いられる。

 一次流通の需給ギャップを二次流通がそのまま引き受けているのが実情で、色・サイズが欠けたり偏ったりB品が混じったりして仕分けや検品も必要だから(後述するPackawayでは不要)、一次流通より余分な手間がかかって非効率にならざるを得ない。消費者から一点一点買い取って値付けする中古衣料業界ほどではないが、手間取る仕事であることは推測される。未使用の放出品ではないが、中古品の小売業者で組織する一般社団法人日本リユース業協会の2017年調査によれば、加盟20社の合計売り上げ4047億円/従業員数4万2339人から推測される一人あたりの売り上げは955万円と低く、一次流通の半分程度にとどまる。

 そんなことをしていてはコストに合わないから、パッキン(梱包)を開けることさえなくサンプルかデジタル画像だけで商談して転売してしまうのがバッタ屋さんにとっては効率的な商売のようだが、結局は誰かが消費者に小売りする必要がある。

放出品に不可欠な仕分け

 最終的にはどこかの小売業者かECサイトが販売することになるから、誰かが仕分けざるを得ない。一般に、放出在庫の仕分けは以下の4段階で行われる。

(1)製品として再販できるものとウエスや繊維原料にするものに仕分ける
(2)婦人用・紳士用・子ども用に仕分ける
(3)アイテムとシーズンに仕分ける
(4)テイストとビンテージ(市販年度)に仕分ける

 (1)(2)は誰でもできるから人件費が極端に安い地域で行うのが望ましい。(3)は先進国市場の常識的知識が必要だから、それに近接する低賃金地域で行うのが好ましい。(4)は先進国市場の専門的知識が必要だから、高賃金地域で行わざるを得ない。仕分け工程間で移動するとコストが跳ね上がるから(1)〜(4)を1カ所で済ますのが必定で、モンゴロイド圏ではシンガポールと接するマレーシアになる。

 18年の貿易統計では日本からの中古衣料輸出23万6585tのうち53.5%を対マレーシアが占め、韓国が16.4%で続く。ちなみに日本に輸入される中古衣料5842tのうち米国が33.5%を占め、次いでマレーシアが17.6%を占めるから、仕分け後のブーメランはあっても最大0.8%までだ。

 アパレルメーカーの国内放出在庫なら(3)(4)だけで済むが、(4)になると玄人のセンスが必要で、素人感覚で荒っぽくやっては付加価値がはがれ落ちる。ビンテージとなると放出側が伝票かタグで表示してくれないと玄人でも判断に迷うが、中古衣料のバイヤーなら日常業務で長けている。中古衣料店は編集陳列にも慣れているから、オフプライスビジネス進出のハードルも低い。

 うまく仕分けたとしても、自社の販路に合わないものは転売し、シーズンが異なるものは時期が来るまで倉庫に保管しなければならない。その倉庫費用もばかにならないが、自社の店舗やサイトで販売するオフプライスビジネスとなれば単品管理のコストが付きまとう。バラ残品では仕分けしてバーコードを付けて棚入れするコストは一次流通より格段に高くつくし、襟ネームや洗濯タグ、下げタグを外して付け替えるとなると一点あたり数百円もかかる。それを売価にのせるのは困難だから、その分、引き取り価格をたたくしかなくなる。

ウィンウィンの在庫処分はタイミングが要

 二次流通の仕分け手間を最低限に抑え、シーズンまで倉庫に積んで賞味期限を浪費することなく販売するには、一次流通のアパレルメーカーや小売店が最適なタイミングで放出する必要がある。

 アパレル商品は鮮度とシーズン性が命だから期末越えの持ち越しは論外で、当該シーズン中、それもプロパー時期での放出が望ましい。それも店頭に出してバラ残になったものでなく(個別検品が必要で仕分けも手間取る)、未投入で色・サイズもロットもそろったPackaway(検品も仕分けも不要でバーコード付けも容易)が好ましい。

 米国の最大手オフプライスストア(OPS)チェーン「TJX」ではオンシーズンのPackawayが6割以上を占めるが、その多くは端からアパレルメーカーと組んだタイアップ別注品だといわれる。大手OPSでも古典的なディスカウントタイプである「バーリントン(BURLINGTON)」は旧シーズンの流通在庫が多くPackawayは3割程度といわれるが、「ノードストロム ラック(NORDSTROM LACK)」となると自社百貨店の売れ残り(多くは前シーズンもの)が半分以上でPackawayは3〜4割と、それぞれ性格が異なる。色・サイズがそろったPackawayでオンシーズンの鮮度を訴求するか、売れ残りでも著名ブランドを訴求するか、OPSには価格以外にも2面の魅力がある。

 放出のタイミングと形態は二次流通業者の引き取り価格も大きく左右する。二次流通業者の引き取り価格は、シーズン初期までなら調達原価の6〜7掛けだが、セールが近づくとその半額になり、持ち越すとさらにその半額になり、売れ残りのバラ残は格段に低くなる。人気ブランドにはプレミアムが付くから実際の買取レートは幅があるが、放出タイミングが早いほど高いのは同様だ。放出する側にとっても早期の放出はメリットが大きい。

二次流通への放出は価格帯で大差

 二次流通業界のアキレス腱は供給の途絶で、売れ残り商品が次々と放出されなければ商売にならない。需要に倍する供給で売れ残り品が溢れているように見えても、分野によっては放出が限られる。あまりの過剰供給に懲りたのかアパレル業界も調達の抑制に転じており、高価格帯かつ買取商品から順に放出が絞られている。

 欧米ラグジュアリーブランドはコレクションごとの受注生産(各国の独資販社も数入れする)で、売れ残り品も内輪のファミリーセールと直営アウトレットであらかたさばけるし、それでも残れば焼却処分するから、二次流通市場への放出は極めて限られる。まとまって出るようなことがあればライセンス品(著名ブランドでも国によってはライセンス契約が残る)か模造品の疑いが濃いから、インボイスを確かめるのが賢明だ。ファクトリーブランドもコレクションごとの受注生産で、代理店も百貨店も買い取りだから大量に残るような発注はしない。二次流通に放出されるのは期末セール後のバラ残品で量も限られる。

 百貨店NB(ナショナルブランド)や同クラスのライセンスブランドも近年は調達を絞っており、百貨店のセールに先行してECで処分を始めるし、ファミリーセールや直営アウトレットも駆使するから、二次流通への放出は急減速時の例外かセール後のバラ残品に限られ、うま味のあるPackawayなど期待できない。まとまって放出されるのはライランス先の切り替えや撤退に伴う一時的なケースで、しばしばあるわけではない。

 最も供給が潤沢なのは小売店のオリジナルなど一括ロット調達のSPA商品で、数カ月あるいは半年以上も前に発注して需給調整が効かないから、外しても当たっても大量に出てくる。トレンドを外すと売れ残るのはもちろんだが、当たっても多数の会社が似たような商品を供給すれば供給過剰になって大量に売れ残る。OEM会社が放出する未引き取り品やキャンセル品はもちろんPackawayだが、SPA事業者が売り切れず放出する商品も色・サイズがそろってPackawayに近いのが特徴だ。

 その下の量販店やホームセンター向けのPB商品、地方問屋のB級・C級ライセンスブランド(ネーム利用許諾だけで企画や販路の管理は極めて甘い)は途切れることなく放出されているから、過剰供給が慢性化しているのだろう。ブランドで売れる商品ではないから集客の目玉にはならないが、安定した供給が期待できる。

 ブランドで売れる商品でけっこう供給があるのが、メーカー直販でなく問屋経由でさまざまな小売店に流れるワーク系やスポーツ系のNBだろう。メーカー放出ほどロットはそろわないがPackawayに近いまとまった放出もあり、オフプライスストアの目玉になっている。

3タイプに分かれるオフプライスストア

 米国では大手3社(TJX、ロス・ストアーズ、バーリントン・ストアーズ)だけでも606億ドルと百貨店上位3社(メイシーズ、ノードストロム、ディラード)合計の468億ドルを3割近く上回るが(19年1月期)、わが国でオフプライスストアが広がるには供給面の障害が多く、遠い将来はともかく当面は紆余曲折が推察される。オフプライスストアは価格帯で以下の3タイプに分かれるが上位ほど放出が限られ、店舗の継続的運営が難しいからだ。

(タイプA)著名ブランドのディスカウント型

 ラグジュアリーやデザイナーズからストリートまで、誰もが知る著名ブランドをそろえてオフ率をアピールするディスカウント型。小売店の売れ残りや代理店の放出在庫に限られPackawayは希有で、「ノードストロム ラック」のような百貨店やセレクトチェーンの直営でない限りオンシーズン品も限られる。ブランドネームを外しては成り立たない。ダウンタウンの駅裏や裏通り、あるいはアウトレットモールに立地する。

(タイプB)中級ブランドの複合訴求型

 百貨店ブランドや専門店ブランド、セレクトチェーンのオリジナルなどで構成し、メーカータイアップのPackawayもそろえてオンシーズン品も訴求する複合構成。ブランドネームを外しては成り立たない。郊外のパワーセンターやロードサイドに出店するスーパーストア型、商店街やCSC(コミュニティー型ショッピングセンター)に出店するブティック型に分かれる。

(タイプC)低価格ブランドの価格訴求型

 大衆的SPAブランドや量販店向けブランド、その未引き取り品やキャンセル品で構成して絶対低価格を訴求するプライスライン型。小売店の売れ残りもあるがメーカーや問屋が放出するPackawayの比率が高く、供給が潤沢なこともあって多店化も容易。ブランドネームを外しても成り立つが、このクラスでは外すことを求めるブランドはないし、外すコストも見合わない。郊外のパワーセンターやロードサイド、商店街など家賃と客層が合えばどこにでも出店できる。

 上記の3タイプのうち、日本で急速に多店化できるのはタイプCで、「タカハシ」は東京圏西部の郊外に660平方メートル級の店舗を37店展開している。ホームセンターなども参入して「ファッションセンターしまむら」やGMS衣料品を追い詰めていくのではないか。タイプAは商品調達が難しく、百貨店やセレクトチェーンが直営するアウトレットストアの延長線上か、「ドン・キホーテ」などディスカウントストア内での展開に限られそうだ。

 読みにくいのがタイプBだ。ワールドの「アンドブリッジ(& BRIDGE)」(990平方メートル)はスーパーストア型の典型だが自社商品の比率が高いアウトレットストアとの折衷型で、不安定な商品調達が多店化の障害になると思われる。調達環境を考えれば数十坪級のブティックタイプが有望で、「オフプライスストア」と銘打たないでプロパー店舗と同じように運営し、センスと価格で顧客を捉えて生活圏に定着していくと思われる。

 オフプライスストアは米国型のスーパーストアモデル(2600〜4500平方メートル)にこだわらず、わが国の調達環境の実態に見合ったモデルを開発していくべきだと結論したい。

The post 小島健輔リポート 日本にオフプライスストアは定着するか サステナブルに遠い二次流通の実態 appeared first on WWD JAPAN.com.