「現実とフィクションを行き来したい」 人気漫画「左ききのエレン」から始まったデザインレーベル「アントレース」が海外進出

 漫画「左ききのエレン」は、広告業界で活躍するクリエイターの群像劇を描いた作品だ。少年漫画らしい熱いストーリーと個性あふれるキャラクター、業界のあるあるネタが支持され、漫画アプリ「少年ジャンプ+」に最新話が更新されるたび、人気ランキング1位に躍り出ている。19年には連続ドラマ化、20年には舞台化されるなど、多方面でファンを増やす。

 同作に登場する、トップクリエイターらが所属するデザインスタジオ「アントレース(UNTRACE)」は、実は現実世界にも存在している。原作者を中心とした数名のメンバーが昨年5月に立ち上げ、キャラクターの衣装を再現したアパレルや雑貨などを不定期でリリース。Tシャツが1万〜2万円、パーカは1万5000円〜2万2000円という価格帯にもかかわらず、目玉アイテムは即完売し、フリマアプリで高値で取り引きされている。今年3月にはスタイリスト熊谷隆志の「ウィンダンシー(WIND AND SEA)」とのコラボを実現させ、4月には上海ファッション・ウイークにも参加した。

 漫画発のデザインレーベルがなぜこれほど支持されるのか。アパレルと漫画を武器に、どんな未来を展望するのか。原作者のかっぴーと、デザインとディレクションを手掛ける小野清詞アートディレクターに、作品になじみのある街、中目黒で話を聞いた。

WWD:「アントレース」を現実世界で立ち上げた理由は?

小野清詞アートディレクター(以下、小野):最初は「アントレース」のステッカーを作ろうとしてたんですが、ある企業から「『左ききのエレン』と実在するアーティストとのコラボTシャツ作りませんか?」と声を掛けられ、アパレルも考え始めました。その企画は実現しませんでしたが、「じゃあ自分たちでやろうぜ」と「アントレース」を立ち上げたんです。

かっぴー:「左ききのエレン」はフィクションと現実を行き来する漫画にしたいと考えていて、エレン(作中に登場する天才アーティスト)の絵を実在するアーティストに外注するなど、要所要所に“本物”を差し込んでいます。「アントレース」もこれと同じ。広告業界というリアルな世界を作品にしているから、全てをフィクションにするとつまらなくなると思っています。

WWD:製品洗いを施したTシャツや、防水性と耐久性に優れた3レイヤー構造のバッグなど、ファングッズとは一線を画したクオリティーのアイテムがそろう。

小野:やるならとことんやろうと、本気で企画しています。最初に生産したのは、白Tの専門ブランド「マイン(MINE)」と協業したロゴTシャツ。ヘビーウェイトのコットン生地や身幅大きめなボックスシルエット、縫い目のない丸胴のボディーなど、細部までこだわりすぎてしょっぱなから1万円を超えちゃったんですけど、発売後すぐに売り切れました。「この路線でもイケるんだ」と背中を押されて、久米繊維さんのボディーを使い、パターンを引き直したパーカとか、裾が絞れて好みの丈に調整できるストレッチパンツとか、こだわり抜いたアイテムをリリースしています。

かっぴー:“自分たちが着たいと思える服”が一貫したテーマだから、僕らも毎日のように愛用していて。広告業界の友達からも「何それ、欲しい」と言ってもらえるなど、どんどん輪が広がってます。
小野:ファンはもちろん、自分たちのコミュニティーも大事にしたい。僕らを見て、「アントレースって何?」って話が広がれば面白いからね。

2人の出会い&服作りの意外な経歴

WWD:お二人の出会いは?

かっぴー:デザインの仕事で出会いました。小野さんはグラフィックやプランニングなど、めちゃくちゃイケてる仕事をしていて、神谷祐介(「左ききのエレン」に登場する天才アートディレクター。主人公の師匠であり、最大のライバル)のモデルでもあります。ずっと「アントレース」のロゴを作ってもらおうと思ってたんですけど、気づいたら服や雑貨までお願いしてました(笑)。

WWD:小野アートディレクターはなぜ服作りに詳しいのか?

小野:過去に4シーズンだけ古着のリメイクブランドをやってたんですよ。当時「メゾン マルタン マルジェラ(MAISON MARTIN MARGIELA)」のアーティザナルラインが出始めたときで、「格好いいじゃん」と思って始めました。モッズコートの裏にスプレーでメッセージを載せて20万円くらいで売ったりとかね。友達のDJがこぞって着てくれてたり、アントワープの某有名デザイナーが面白がって買ってくれたりもしましたよ。

かっぴー:え、そんなこともあったんですか?知らなかった。

小野:けっこう調子良かったのに、メンバーの1人がブランド資金丸々をFXに誤って突っ込んじゃって(笑)。あと、メンバーそれぞれの本業も忙しくなってきたから、「ころ合いかな」とスパッとやめたんだよね。

WWD:4月には上海ファッション・ウイークに出展していたが、海外進出を視野に入れている?

かっぴー:そうです。少し前に、長年アパレルで活動していたセールス担当者がメンバーに加わり、「中国イケるんじゃない?」とアドバイスされたのがきっかけ。「じゃあお願いします!」とその人に丸投げして出展してみたら、ロゴを気に入ってもらったり、服のこだわりを面白がってくれたりして、上々の滑り出しでした。コラボのお誘いやセレクトショップのオーダーも入っています。

WWD:国内は読者以外のファンがつきにくい?

小野:ぶっちゃけそうですね。でも、国内はファンだけでいいと思ってます。海外に行くのは、“漫画発”とか関係なく、服単体でも勝負したいから。「アントレース」の服が先に浸透して、後から「これ漫画のブランドだったんだ」って思ってもらえれば勝ちです。

かっぴー:洋服から漫画を知ってもらうのは大いにアリ。日本で人気の作品をそのまま中国に持って行っても、全部が全部読んでもらえるわけじゃありませんからね。かつてはジャンプやマガジンといった漫画雑誌がタッチポイントの中心でしたが、今は無料アプリでたまたま読んだり、ツイッターで流れてきたりと、いろんな入り口があって、アパレルもその一つ。どこから作品を知ってもらうかに優劣はありません。

小野:中国漫画ってやっぱすごいの?

かっぴー:アプリやブラウザで見る中国発の縦スクロール漫画がすごい勢いで伸びていて、市場規模で言ったらすでに日本は負けてます。だから、本当に漫画で成功したいなら、中国は無視できない時代になっている。日本の紙漫画は古典になりつつあるのに、プライドがあるから紙にこだわるし、アプリでも横読みのものが多いんです。

WWD:「アントレース」の今後の展望は?

かっぴー:これまでは小さなプロジェクトとしてやってきましたが、より本格的に活動していきます。今、法人化の準備の真っ最中です。活動領域は定義しませんが、広告制作をはじめ、いろんな分野に挑戦していきます。

小野:全部で5人のメンバーがいて、PRからクリエイティブディレクション、アートディレクション、プランニング、制作までワンストップでなんでもできちゃうのが強み。それに漫画家もいるしね。今までこんなチームはなかったし、カテゴライズできない存在。だからこそ自由な表現にチャレンジできるんです。そういう意味では、「アントレース」に限界はない。強いていうなら、俺らが飽きたときが最後ですね。

かっぴー:それか、FXに突っ込んだときですね(笑)。

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“スタンスミス”がサステナブルに進化 アディダス オリジナルスが明かす開発の裏側

 スニーカー業界のサステナビリティをけん引してきたアディダス(ADIDAS)は、“END PLASTIC WASTE”を掲げ、2024年までに全商品においてバージンポリエステルの使用を廃止し、リサイクルポリエステルへの切り替えを目指している。20年に定番モデル“スタンスミス(STAN SMITH)”の全商品をリサイクル素材に切り替えることを発表した。

 4月7日には、持続可能な未来に向けて前進した“スタンスミス”の誕生を記念するトークショーを、アディダス オリジナルス フラッグシップ ストア 新宿で開催した。トーマス・サイラー(Thomas Sailer)=アディダス ジャパン副社長や阿部勇紀「ハイプビースト ジャパン(HYPEBEAST JAPAN)」編集長兼マネージングエディター、向千鶴「WWDJAPAN」編集統括兼サステナビリティ・ディレクターが登壇し、モデルでタレントのマリエがファシリテーターを務めた。

“スタンスミス”をサステナブルに
したのは世界を変えるため

 トークショー前半では向「WWDJAPAN」編集統括が、業界全体でサステナビリティへの取り組みが加速している現状について語った。環境先進企業のアディダスは、1990年ごろから、二酸化炭素排出量削減に向けてさまざまな取り組みを実践してきた。サイラー副社長は「特に2015年に海洋環境保護団体パーレイ・フォー・ジ・オーシャンズ(PARLEY FOT THE OCEANS)と連携して以降、世界をより良い場所にしていこうという考えがブランドに根付いた。今ではプラスチックの廃棄をなくす“END PLASTIC WASTE”が、ブランドの存在を定義している」と、同社の姿勢を語った。

 向「WWDJAPAN」編集統括は、アディダスが19年に発表した100%リサイクル可能なランニングシューズ“フューチャークラフト.ループ(FUTURECRAFT.LOOP)”を例に挙げ、「サステナビリティはイノベーションであり、かっこいいというメッセージが読者に響いた」と反響を振り返った。阿部「ハイプビースト ジャパン」編集長は「ストリートカルチャーのシーンでは、まさに“かっこいい”という文脈に落とし込み、自然と消費者に手に取ってもらうこと大切だ」と加えた。

 マリエは生まれ変わった“スタンスミス”について、「デザインを変えずに、中身だけを進化させたのが衝撃だった」とコメントすると、サイラー副社長は「変化を起こすためには、リスクを取ることも必要だ。1970年代から続くアイコニックなモデルを、サステナブルに変えると決断した時は社内外から懐疑的な反応もあった。しかしこのようなリスクは問題ではなく、世界をより良い場所にしていくための可能性だと考えた」と、背景を語った。

 最後にマリエは「新しいトレンドはいつか当たり前になる。サステナビリティも今後のニューノーマル、当たり前になると信じている」と、トークショーを締めくくった。

期間限定のフォトブースで
自分自身が“スタンスミス”のロゴに

 5月31日までの期間限定で、アディダス オリジナルス フラッグシップ ストア 原宿と新宿などの一部の店舗にフォトブースを設置した。今から始められるサステナブルなアクションを選択して顔写真を撮影すると、“スタンスミス”のシュータンロゴのデザインに加工されたオリジナル画像を作成できる。

最新コレクションはグリーンの
キャラクターが大集合

 高機能リサイクル素材“プライムグリーン(PRIME GREEN)”をアッパーに使用した最新コレクションでは、「トイ・ストーリー」のレックスや「ピーター・パン」のティンカー・ベル、「モンスターズ・インク」のマイクなど、ディズニー、ピクサー、マーベルのグリーンのキャラクターがデザインに生かされている。それぞれの個性をカラーリングや素材感で表現し、かかと部分にはカーミットの代表的なセリフ“it's not easy being green”を施した。

PHOTOS:KAZUSHI TOYOTA

問い合わせ先
アディダスお客様窓口
0570-033-033

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ペットボトルがカラフルなストラップに 「テバ」が目指す豊かな自然との共生

 米国発のフットウエアブランド「テバ(TEVA)」は、「モダンアウトドアにおいて、人々が冒険者になるためのガイドになること」をミッションに掲げ、安全性と機能性を併せ持つスポーツサンダルを提供する。ブランドの成長と、社会や環境への配慮を両立させながら、未来の世代がアウトドアを楽しめるよう積極的に活動している。ここでは、同ブランドが実践している3つの取り組みを紹介する。

累計4000万本の
ペットボトルをリサイクル

 環境負荷の低い素材にこだわる「テバ」は、2020年、サンダルのストラップの素材を、100%リサイクルプラスチックから作られた米ユニファイ社の機能繊維“リプリーブ”に切り替えた。“Less Plastic, More Freedom”をスローガンに掲げ、20年末までに累計4000万本のペットボトルが「テバ」のサンダルへと生まれ変わっている。21年からはリサイクルEVAのソールの使用も開始した。レザーは、レザー・ワーキング・グループ(LWG)に認定された、水の使用量や廃棄物の管理、労働環境などの厳しい審査を通過した皮革製造工場から調達したもののみを使用している。さらに、循環型経済推進の一環として、ゴミの削減に向けて先進的な取り組みを進める米テラサイクル社と連携。業界で初めて使用済みサンダルの回収プログラムを4月からアメリカでスタートした。将来的には、日本を含むグローバルでも実施予定だ。

パッケージのLCAを実施して
環境負荷を見える化

 パッケージを見直すことで、環境保全も推進している。パッケージを可能な限り簡素化し、再利用可能な資源の切り替え、工場での水の使用量や生産工程で発生する廃棄物の削減を目指す。実際に、使用する紙をFSC(森林管理協議会)の認証を得たものに切り替えることで、2018年から20年初頭までに26万本の樹木の保護に成功した。また、パッケージの環境負荷の把握と低減を図るため、原料の調達から加工、製造、流通、製品使用、メンテナンス、廃棄やリサイクルに至るまでの全過程における環境負荷を算出するライフサイクル・アセスメント(LCA)も実施。2020年時点で、二酸化炭素の排出量を約6577トン、水の使用量を約13億2000万リットル、パッケージの使用量を約1871トンそれぞれ削減したと公表している。

新登場のアパレルラインは
リサイクル素材や
余剰ストラップを使用

 昨今の自然との共生やつながりといった世の中のニーズの高まりから、新たにアパレルラインを公式サイトと一部店舗で5月から販売する。アノラックジャケットやTシャツ、パンツなどのウエアから、キャップやバックパック、ウエストバックなどの小物まで、全15型を販売予定だ。アイテムには自然界からインスパイアされたカラーやプリントを取り入れている。全てユニセックス。リサイクルナイロンやリサイクルポリエステル、オーガニックコットンなどを積極的に使用し、サンダルの余剰ストラップをアクセントとして使うなど、環境に配慮したモノづくりを行っている。

 アパレルラインに加え、新作サンダルも大自然への思いをデザインで表現。“ハリケーンバージ”はストラップを甲の部分でクロスさせてホールド力を高め、あらゆるアクティビティーに対応する快適性を実現させた。“ハリケーン XLT 2”の新色は、燃える夕日が着想源だ。両型とも素材には“リプリーブ”を採用している。

TOPIC
テーマは“好きを、チカラに”
著名人が夢中になる瞬間を紹介

 今シーズンのテーマ“In Your Element”と連動したキャンペーンも実施。第1・2弾では、俳優の野村周平と歌手のエイウィッチが登場し、自分らしい生き方や自然に対する考え方をはじめ、自分が夢中になれる瞬間(エレメンツ)について、公式サイト内の動画で語っている。4月22日からは第3弾として、古着屋「デプト」のオーナーeriが、気候危機への関心を高めるための自身の環境活動について語る動画を公開中だ。

問い合わせ先
デッカーズジャパン
0120-710-844

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生きる歓びを体現する「ショパール」の“ハッピースポーツ”

 「ショパール(CHOPARD)」の“ハッピースポーツ”は、ダイヤモンドが文字盤の上でくるくるとダンスする時計史上まれな名作だ。老舗ウオッチメゾンであり、ジュエラーでもある同ブランドならではのアイコンウオッチは一度見れば誰もが記憶しているはず。1993年に誕生して以来人気のコレクションから今年、最新作が登場した。コレクション誕生時の知られざるエピソードから、ショパールの共同社長兼アーティスティック・ディレクターから寄せられたメッセージ、アンバサダー、そして気になる最新作の魅力に迫る。

メゾンのアイコンウオッチ
誕生秘話

 “ハッピースポーツ”コレクションを生み出したのは、共同社長兼アーティスティック・ディレクターとして「ショパール」を率いるキャロライン・ショイフレ(Caroline Scheufele)自身だ。90年代初頭、彼女は“気まぐれな時計”という斬新なアイデアを打ち出す。品の良さとカジュアルさを併せ持つレディスウオッチ。それが“ハッピースポーツ”だった。それに先立つ76年、「ショパール」はダイヤモンドが文字盤の周囲をめぐる“ハッピーダイヤモンド”を発表していた。それは、2枚の透明なサファイアクリスタルの間で宙に浮いているかのように“ムービングダイヤモンド”がきらめくデザイン。彼女はその遊び心たっぷりの魅力を時計の文字盤でも表現しようとする。彼女のアイデアに当時のアトリエ長は、「無茶だ、こんな時計。キャロライン、もし本当に売れるっていうなら、売れた時計1本につきにバラの花を1本贈るよ」と言った。

 93年に完成した“ハッピースポーツ”の文字盤の上では、“ムービングダイヤモンド”がフェッテ(バレエの回転技)のように軽やかに踊っていた。ステンレススチールを採用したコンテンポラリーなデザインは多くの女性の心を射止め、世界的な大ヒットに。アトリエ長は結局、たくさんの花が咲くバラの木をキャロラインに贈って彼女をたたえたという。

人生を謳歌する
女性のためのウオッチ

 時計業界に旋風を巻き起こした“ハッピースポーツ”。1本も売れないとまで言われた時計を、女性たちがこぞって身に着けた理由は、そのスタイルにある。テニスコートにも、ビジネスランチにも、パーティにも着けていけるスポーツ・シックの極致であり、ジーンズにもドレスにも似合う優れたデザイン。世代を超えてアクティブに楽しめるこの時計は、現代女性たちのジョワ・ド・ヴィーヴル(生きる歓び)と自由なスピリットを体現しているのだ。

  “ムービングダイヤモンド”は底面が丸みを帯びたパーツにセットされているため、ほんのわずかに手を動かしただけでも魔法のように自由に回転する。ほかにはないこの輝きが、女性たちのさりげない仕草を美しく見せてくれるのだ。

幸せの瞬間を表現する
“ハッピースポーツ”

ジュリア・ロバーツの幸せの秘訣は、「人に親切であること、共感してくれ愛する人たちに囲まれること、そして、ダンスとキスをすることかしら。」だという
ART DIRECTOR: XAVIER DOLAN, PHOTOGRAPHER : (c) SHAYNE LAVERDIÈRE, STYLIST: ELIZABETH STEWART

 その眩いばかりの微笑みで人々を魅了するジュリア・ロバーツ。彼女ほど、“生きる歓び”を表すのにふさわしい人物はいないだろう。ロバーツは「ショパール」とのコラボレーションについて、以下のように述べている。

 「ショパール」は、エレガンスや輝き、そして女性らしさといったタイムレスな価値を象徴しています。見るたびにダイヤモンドがキラキラと輝きながらダンスする“ハッピースポーツ”は、まるで幸せの瞬間を表現するような、すばらしい時計。業界におけるアイコンの一つで女性を魅了する“ハッピースポーツ”とコラボレーションできて光栄です。

「ショパール」のアイコンが
“黄金比”で復活

 “ハッピースポーツ”の最新作は、ケース径が33㎜と小ぶりで、自社製の小型自動巻きムーブメントを搭載し、機能性を追求している。どのモデルも環境や人権に配慮した“18Kエシカルゴールド”や、リサイクルされたスチールを70%含む“ルーセント スチール A223”をケースに使用。ダイヤモンドも倫理的に配慮された方法で採掘された原石だけが使われている。最も美しいプロポーションを導き出すために古代から用いられた“黄金比”の理論を設計に取り入れ、完璧なバランスを生み出しているのも大きな特徴だ。

TEXT:KEIKO HOMMA

問い合わせ先
ショパール ジャパン プレス
03-5524-8922

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躍進するアンダー30を取材した若手記者たちは何を思ったか?

 「WWDJAPAN」4月5日号の特集“新入社員の基礎知識”は、この春入社3〜5年目となる若手記者が中心となって作り上げた。巻頭では、「フーフー(FOUFOU)」の高坂マールデザイナーやyutoriの片石貴展・最高経営責任者ら、躍進するU30にインタビューを実施。記者たちは先輩たちのどんな考えに共感し、自らの生活に役立てようと思ったのか?それぞれの意見を述べ合う座談会を実施した。(この記事はWWDジャパン2021年4月5日号からの抜粋です)

【座談会参加者】
美濃島:この春入社4年目。後輩が増え、若手と言えなくなってきた状況に焦りながらも、「飛躍の年」を目標に掲げて日々の取材に邁進する。主にデザイナーズとスポーツを担当し、特集ではユーチューバー兼美容師の宮永えいとをインタビューした。

木村:入社3年目のチーム最年少。仕事には慣れてきたが、悩みの多い時期を過ごす。今号では表紙撮影やインタビュー、裏表紙「ファッションパトロール」を担当。

川井:入社5年目。取材を通して人物の「人となり」を可視化し、発信することに意義を感じる。オンライン取材には未だに慣れない。主にメンズコスメを担当し、今号ではインタビューと「お仕事スケジュール」などを担当した。

座談会スタート!

美濃島:“時代を切り開くマイルール”と題して個性あふれる6人の先輩にインタビューしましたが、心に残った言葉はありました?

木村:「フーフー(FOUFOU)」の高坂デザイナーとyutoriの片石CEOの対談で挙がった、「短期間で成功も失敗も判断しない」という話です。私たちの世代ってSNSもあるし、欲しい情報に瞬時に到達できるから、物事と向き合う時間が短くなっている。でも、仕事やビジネスって短期間の成長が全てじゃない。目前の利益や事業拡大だけじゃなく、自分の理想的な姿に近づいているか、得られたものがあるかが大事なんだなと改めて気付かされました。

川井:D2Cブランド「フェイブスビューティー(FAVES BEAUTY)」の小澤一郎社長は、学生時代に起業し、事業内容をどんどん変えながら10年近く会社を経営されています。一つの事業に固執し過ぎると、危機的状況を察知していてもやめ時が分からなくなる。継続力と判断力のバランスが重要なんだと思いました。

美濃島:僕が救われたのは、ユーチューバー宮永えいと氏の「とことん個人と向き合うこと。でも、全員と向き合う必要はない」という言葉です。会社に入って思ったのが、人によって言ってることが全然違うこと。この春入社する人も、似たようなことで悩む人は多いはずです。でも、大切にする意見ってその時々で変わっていいし、全ての意見を吸収する必要はない。最も重要なのは、自分の軸を持つことなんですよね。

木村:その考え方はタメになりますね。私は「途中経過を楽しめなかったらやめたらいい」って言葉を聞けたのがうれしかった。仕事になると、成果やアウトプットを念頭に置くあまり、仕事の過程を楽しめないことがたくさんある。今回の表紙撮影も、すてきなクリエイターやタレントと一緒に物作りができるのに、締め切りや付随作業ばかりを考えてしまって、最初は「大変さ」が勝っていた。でも途中で「あ、これって楽しいことじゃん!」と気付くことができて、大変さがストレスじゃなくなりました。

美濃島:そういう意味では、どの人も「好き」という初期衝動からビジネスにつなげているのが今っぽかったですね。

川井:今はいろんなツールがあるから、ビジネスへの落とし込み方もたくさんあります。些細なことも視点を変えれば事業に転換できるから、視野を広く持って生活していきたいです。

美濃島:僕たちも、やりたいことが明確になったら限界を決めずに、あらゆる手段を試しながら突き進んでいきましょう!


お知らせ: 「WWDジャパン」は4月5日号の「新入社員のための基礎知識AtoZ」特集の発売に合わせ、25歳以下を対象とした期間限定の購読キャンペーン「U25応援キャンペーン」を実施します。キャンペーン詳細はコチラ


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多様なランライフを彩る「ニューバランス」の“フューエルセル” あのクリエイターの「走る理由」とは?

 春本番を迎え、ランニングが気持ち良い時期が到来した。健康意識の高まりからランニングに興味を持つ人が増え、記録更新を目指す人から楽しさを優先する人まで、ランニングスタイルも多様化している。そんな中、「ニューバランス(NEW BALANCE)」の人気シリーズ“フューエルセル(FUELCELL)”から幅広いランナーに向けた新作“フューエルセル レベル ブイツー(FUELCELL REBEL V2)”が登場。弾むような反発性のミッドソールと、左右非対称に配置したシューレースホールによるフィット感、軽量性と耐久性に優れたアウトソールで、あらゆるランナーの足下をサポートする。ランニングを日常に取り入れ同シューズの魅力を知る、青山にあるセレクトショップ「レショップ(L'ECHOPPE)」コンセプターの金子恵治さんと、ミツロウや樹脂で記憶の断片を描くアーティストの中瀬萌さんに、走ることについて話を聞いた。

「レショップ」金子さんの
「服との距離が
ちょうど良くなる走り」

 ファッションへの造詣の深さを感じるアイテムセレクトと店構えのユニークさが話題を呼び、いまや東京を代表するセレクトショップの一つとして名を広げる「レショップ」。コンセプターの金子恵治さんは、バイイングからオリジナル商品の企画、SNS出演まで幅広く業務を担当。しかし、多忙な日々を送る中でも、ランニングは欠かさないという。そんな彼のランニングアイテムの選び方と、仕事との向き合い方を“ちょうど良くする”ランニングとは。

WWD:走り始めたきっかけは?
金子恵治「レショップ」コンセプター(以下、金子):もともと自転車にハマっていて、シクロクロス(オフロードを走る自転車競技)を6〜7年やってきました。そこから「もっと気軽に運動したい」との思いから自転車仲間と走るようになり、皇居を中心に週に2回ほど10キロ程度のランニングをしていました。「レショップ」をスタートした2015年から仕事が忙しくなりましたが、それでも週4で走るときもあります。

WWD:ランニングで何が得られる?
金子:一番はバランスです。実は会社員をしていたとき、社内で一番社販をするような“服バカ”だったんです。でも、あるとき社内の先輩に「洋服だけじゃダメだ」と言われてしまって(笑)。そこで、体を動かすことを趣味にして、洋服と運動に半分ずつ打ち込むようになりました。そのおかげで興味の幅も広がったし、生活のバランスも良くなったと思います。忙しいときほどランニングするように意識していて、海外出張でも走っています。買い付けのため1カ月ほど滞在するパリ出張では、朝にモンマルトルの坂を駆け上がり、街を一望するのが日課になっていました。

WWD:“フューエルセル レベル ブイツー”を履いた感想は?
金子:まずカラーリングが良いですね。ランニングシューズでは自分の好みにハマるカラーが少ないんですが、これは気に入りました。普段はクラシカルなアイテムや落ち着いた色に手を出しがちなのですが、このカラーは派手だけど自分のスタイルに取り入れられそうです。「レショップ」はUSアーミーの要素を落とし込んだオリジナルのランニングウエアを作っていて、それとも相性が良い。アッパーは涼しげな透け感があって、お気に入りのソックスのロゴも見せられるし、ショーツとも合わせやすいです。

WWD:機能面の印象は?
金子:フィット感に驚きました。足の幅と長さにピタッとフィットして、無駄な遊びがありません。でも締め付けは全くなく、快適です。ソールのクッションは柔らかめなので、コンクリートランや脚をいたわりたいときに重宝しそうです。 

WWD:店からランニングカルチャーを伝えていきたい?
金子:そうですね。必ずしもガチである必要はなくて、「ランニングウエアがかっこいいから着てみたい」という動機でスタートしてもいいと思っています。結果的に運動につながりますし、ランニングアイテムを軸にして普段のファッションを楽しむのも面白い。自分自身、走ることで世界が広がって、それまで興味がなかったスマートウオッチやランニングウエアなど、魅力的に思えるアイテムが確実に増えました。これからもスポーティーなアイテムや健康に良いものを仕入れて、アイテムという“モノ”から、ランニングという“コト”の楽しさも発信していきたいです。

ランニングで「脳に余白を作る」
アーティストの中瀬さん

 中瀬萌さんは、ミツロウと樹脂を使う、美術史の中で最も古いと言われる絵画技法“エンカウスティーク”を独自に解釈して作品制作を行うアーティスト。絵を描く時間を「ひたすら自分自身と向き合うこと」だと話す彼女の日課は、アトリエのある山中や自宅近くの河川敷でのランニングだ。彼女の考えるランニング哲学とは。

WWD:ランニングをする理由は?
中瀬萌(以下中瀬):走る理由は2つあって、1つは制作のためです。数年前、夜中まで作品を作ったり、アドレナリンが出て夜に寝付けなかったりすることがよくありました。そんな生活を送る中で「体が資本だ」と気づき、健康に気を使うようになりました。学生のころは長距離走が好きじゃなかったし、最初はランを継続するのが難しかったのですが、心と体をリンクさせることが制作のクオリティーに直結すると分かってから、自然と日課になりましたね。もう1つは、日常生活で自分の心臓がつかまれるくらい追い込むシーンってないなと思ったこと。その苦しさを越えたところに、自分のタフさがあるんじゃないかと考えて、日々ランニングしています。

WWD:走ることで何か変化した?
中瀬:充実感に満たされて、1日が長く感じるようになりました。それに、フィジカル面で自分を追い込むと、情報で埋もれそうな脳に余白ができて、新しいものを受け入れる余裕が生まれていると思います。周りの人に「ストイックだね」と言われますが、決してそうではなくて、体の良いコンディションを楽しんでいるだけなんです。

WWD:“フューエルセル レベル ブイツー”の履き心地は?
中瀬:走っている間、心地いい軽やかさを感じました。私は足の幅が広めでシューズ選びに困ることが多いのですが、これは初めて履いた瞬間からフィットする感覚があります。特に足の甲の自由度は抜群で、全く違和感を感じません。反発力もあって、スムーズに前に進んでくれます。

WWD:これから挑戦したいことは?
中瀬:4mくらいの大きな作品を作ること。体の可動域以上の大きさのものに向き合ってみたいんです。でも、作品を作るよりも先に、人間としてどう生きたいかにも思いを巡らせていきたいな。ちゃんと呼吸して生きているかどうかを重視して、これからも自分と向き合っていきます。

 “フューエルセル レベル ブイツー”は、自然と前に出る推進力と、速さを追求する反発弾性を前作からさらに強化したモデルだ。高いフィット感をもたらす左右非対称なシューレースホールと、優れたソールのクッショニングは継続し、緩やかなファンランから激しいトレーニングまで、幅広いランニングに対応する。さまざまなタイプのランナーが描く、理想のランニングスタイルをかなえてくれる一足に違いない。

PHOTO:ANNA MIYOSHI
TEXT:AIKA KAWADA

問い合わせ先
ニューバランス ジャパンお客様相談室
0120-85-0997

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美肌菌に注目し続ける神崎恵が「ボディケアでも美肌菌」のススメ

 ユニリーバ・ジャパンが手掛けるパーソナル ビューティケアブランド「ダヴ(Dove)」はこのほど、昨春トータルリニューアルした「ダヴ ボディウォッシュ」に関するプレスイベントを開催した。美容家の神崎恵をゲストに迎え、肌本来のうるおいを守る菌「美肌菌」(※1)と肌のうるおいケアについて発信した。3人の息子の子育てに追われつつも女性の美しさを応援し続ける神崎に、美肌菌に着目したきっかけや、自分の肌に既にあるものを大事にする美容法などについて聞いた。

「頑張らなくていい」、
日々できるケアで美肌菌を守る

 神崎は「菌と言うと悪いイメージを持たれるかもしれませんが、美肌菌は、誰もが持つ肌に良い菌なんです」と語り出し、「日常生活では美肌菌のバランスを崩さず、守ろうと心がけています」と自身の美容法を紹介。と言っても美肌菌を守る美容は「簡単で、頑張らなくてもいい」そうで、3児のママは「いい睡眠をとること」「発酵食品など、腸内環境に良いものを摂取すること」「紫外線対策」などを実践中。誰でもマネできそうだ。

 そして神崎は「お風呂で体を洗うときは、体も、顔と同じくらい大切に」と続け、顔同様に美肌菌を持つボディのケア方法も指南。「ダヴ ボディウォッシュ」をしっかり泡立て、手で優しく泡を転がすように洗い、お湯が優しく体をなでるように流し、最後も優しく触れるようにタオルを押しあて水分をふき取るという、大切な人と愛を育むような洗い方を伝授した。神崎は、「私は、お風呂や歯磨きなどの毎日のケアで自分を大事にして、“きれいのスイッチ”を入れています。ただ体を洗うのではなく、自分の肌を大事にする、その肌を育てることを楽しんでくれたら」とエールを贈る。

「持っている力を引き出す」で
「ベクトルを自分に」

 そんな神崎は「WWDJAPAN」のインタビューで、「先輩たちが冗談半分で言っていた『キレイな人には、美肌菌がいるんだよ』という言葉を『本当にそうかも』と思うようになったんです」と、美肌菌に着目した経緯を教えてくれた。そして美肌菌に着目すると、「(スキンケアアイテムで)『与える』ばかりに注目していたけれど、その前に『元来のちからを引き上げる』美容も大事なのでは?」と考えるようになって、自身の美容法に「もう1本の軸ができたんです」と話す。

 特に「元来のちからを引き上げる」は、固定の美意識にとらわれず、「ベクトルを自分に向け、自分自身を愛すること」につながると主張する。そして美肌菌を含む「元来のちからを引き出す」考え方は美容家の間では既に広がっているが、「ダヴ」のように手に取りやすい、親しみやすいボディケアアイテムにまで広がると、「みんなが自分の肌、自分自身を大事にできるようになりそうです」と期待した。日常生活の中で実践できるのも、「“突き詰めない感じ”がちょうど良い。ライトなくらいの方がみんな実践できるし、みんなを受け入れてくれるビューティというムードを感じます」という。

「ダヴ」は「美肌菌」も残して洗う

 「ダヴ ボディウォッシュ」は、肌のうるおいを守るのに重要な役割を果たしている表皮ブドウ球菌とサーモフィルス菌を美肌に関わる菌、「美肌菌」と定義。昨春の大型リニューアルでは"美肌菌・ケア(※2)処方"を採用。濃密うるおいミルク(※3)を配合し、うるおいを守り、もっちり肌に導きつつ、肌の上の美肌菌も残して洗う。
 「あなたらしさが、美しさ」と考え、全ての人がありのままの自分を肯定的に受け入れられるきっかけを作り、一人一人が自分の可能性を最大限に発揮できるようになることを応援する「ダヴ」ブランドは現在、世界137カ国以上で展開。毎日2億7000万人が使用する、世界売り上げナンバーワン(※4)のボディウォッシュブランドだ。

※1:肌表面に存在する、肌の保湿に寄与するといわれている微生物叢(そう)
※2:「美肌菌」の役割を補うために、肌にうるおいを与えること
※3:ステアリン酸、セラミド、ココイルグリシンK、ビタミンB3、グリセリン水溶液をうるおい成分としています
※4:ニールセン調べ。世界36カ国(日本は含まれない)の日用品市場における身体洗浄料分野での売上金額をもとにユニリーバが算出(対象期間は、2020年9月時点でデータ取得可能な直近12カ月)

問い合わせ先
ユニリーバお客様相談室
0120-362-170

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世界中の“孤高の魔女”に向けた服 海外発信を目指す「ルルムウ」が初のショーを開催

 東佳苗によるウィメンズブランド「ルルムウ(RURUMU)」は4月20日、東京・芝公園の東京タワーメディアセンターで初のファッションショーを行った。東は「縷縷夢兎(るるむう)」の名義で、アイドルやアーティストの衣装を手掛けるデザイナーで、アートディレクターやスタイリスト、空間演出家、映画監督としてもマルチに活動している。「縷縷夢兎」では一点モノの手編みのニットを得意とし、熱狂的なファンコミュニティーを持つ。2019年春夏には海外への発信も視野に入れ、ローマ字表記の新たなブランド「ルルムウ(RURUMU)」を開始し、量産可能な商品も加えた。

“前向きに自己愛を高める”
現代の魔女性を肯定

 ショーデビューとなった21-22年秋冬コレクションのテーマは「Solitary Witch(孤高の魔女)」。“魔女”とは、ホウキに乗って空を飛ぶファンタジーの世界の魔女や、魔女狩りされていた歴史上の魔女ではなく、パワーストーンやタロットカードなどを使って、自己愛を高める現代の“ミレニアルウィッチ”を題材にしたという。東は「発信したかったのは魔女性を通した自己愛。もともと魔女はファンタジーやホラーのイメージが強かったが、現代でもセルフケアとしておまじないを使う、“近代魔女”が存在することを知った。コレクションでは現在の魔女性を肯定して、前向きに自身を高めていくというメッセージを込めた」と話す。

 ランウエイの真ん中には、草木や花、電飾が飾られたオブジェが置かれ、2つの頭があるウサギのぬいぐるみや、水晶が並べられている。ショーの冒頭では、クロッシェ編みのモチーフが特徴的な白いドレスを着た1人の少女がオブジェの真ん中に座り、12人のモデルたちが星型に照らされたライトをなぞるように歩く。これは、新しい魔女を受け入れる儀式“サバト”から着想した演出だ。

海外にいる“孤高の魔女”にも
コレクションを届けたい

 ウエアは、いわゆる魔女のダークでゴシックなイメージを取り入れつつ、ブランドらしいパステルカラーなどの甘い要素をミックス。手編みのニットドレスもあれば、チュールドレス、ライダースジャケットもが登場した。使用したモチーフは、古代ヨーロッパで使われていたルーン文字を使った古い魔女のおまじない記号、オリジナルの紋章を取り入れている。

 今回ショーを行った理由は海外進出への布石だという。「これまで日本の女の子に向けてデザインしてきたが、もともと海外から強く影響を受けてきた。海外でニッチな世界観を好み、孤独を感じている“孤高の魔女”のような人たちにも『ルルムウ』を届けたいという思いがあった」と東は説明した。また海外での発表については「心が通じ合う人に国籍は関係ないと思う。パリやロンドンなど都市にこだわりはないが、海外の人に徐々に知ってもらえるような取り組みを続けていきたい」と抱負を語った。

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SNSで超絶話題!「パーソナルスムージー&スープ」実食【爆裂!健康美容マニア道】

 1日8食、ジャンクフード漬けの超不健康児から超健康優良児へと大変身を遂げたフリーアナウンサーの名越涼。およそ15年かけて自らの体で人体実験を繰り返してきた結果、“超絶良かったもの”だけを余すことなくお伝えする。今回はパーソナルスムージーとスープについて。

 サブスクリプションが生活の中で定着して久しい。サプリメントや健康食品のみならず、飲食店や美容室などバラエティー豊かなサービスが続々とローンチされている。コロナ環境下でますます生活の中に占めるサブスクの割合は増えていくだろうし、名越自身もかなりのサブスクユーザーである。で、今回は前から気になっていたスムージーとスープのサブスクにチャレンジ!ただ単純に好きなものを選ぶというよりも、自分の体調に合わせたものが「パーソナライズ」されて届くらしい。SNSで超絶話題になっているそれって、一体どんなものなのか。

ほかの誰でもない「私に」必要な野菜

 Greenspoonが展開する定額制パーソナルスムージーとスープ「グリーンスプーン(GREEN SPOON)」。去年3月に発売されたスムージーは瞬く間にSNSでシェアされ、半年間で10万個以上が売れるという人気ぶり。じゅ、10万個って(驚)。今や群雄割拠のスムージーだが、数ある商品の中で一体なぜ、「グリーンスプーン」がこれほどまで注目されているのか。その大きな理由の一つが「パーソナライズ」。商品を注文するときにいくつかの質問に答えると、50種類ほどあるレシピの中から「私に」必要な野菜や果物を含んだスムージーやスープが導き出されるのだ。しかもそのレシピは管理栄養士が監修していて、野菜・果物・スーパーフード・魚・肉など200種類もの食材の中から組み合わせられたものだそう。さらに、保存料・甘味料・化学調味料・着色料・香料は使っていないという安心感。何なのこれ。「素晴らし過ぎて、けしからん♡」と言いたくなるクオリティーの高さよ。

予想以上の、ごろごろ野菜

 届いてまず驚くのは、そのデザイン性の高さ。スムージーとは思えないパッケージはインテリアとして飾っておきたくなるかわいさ。置くだけで映えるから、そりゃSNSに載せたくなりますな。歌詞のようなレシピタイトルもさることながら、内容もとてもユニーク。例えばスムージーの“ミケネコ”は、アスパラガスやかぼちゃにマンゴー、玄米フレーク、カカオニブなどを組み合わせた斬新なレシピ。どんな味がするのか、わくわくが止まらない。

 どーんとたっぷり、野菜と果物がごろごろ。「え?こんなに?」と驚くボリュームである。牛乳を入れてもみほぐし、ミキサーにかけることおよそ1分。それでは、いただきま〜す!


 「う、うまっっ……!」期待以上のおいしさに思わずにんまり。どんな味なのか想像もつかなかった“ミケネコ”は、オレンジとカカオの酸味がありながら玄米とかぼちゃのコクがしっかり感じられる味わい。疲労回復に有効なアスパラギン酸はアスパラガスから、ビタミンCはかぼちゃ、糖質の代謝を助けてくれるビタミンB1は玄米フレークからと栄養もばっちり。おいしく飲んで、きちんとセルフケア。その両方がかなうだなんて、最高過ぎるのだが。

衝撃的なクオリティーの高さ


 夜食には豆乳トマトスープの″インロマンス″を実食。本格的な味付けに、しっかり食感を感じられる野菜の存在感。それだけでも感激なのに、グラスフェッドバターが入っているという衝撃。なかなか手に入らない牧草牛から作られた希少なバターを惜しげもなく投入しているとは。映えるだけじゃない、徹底したクオリティーの高さに、新しいおいしさとの出合いという価値。人気の理由、しかと体感しました……!

 モノも情報も溢れる時代だからこそ、「私に」必要なものをチョイスしたい。それもおいしく。できれば楽しく。消費者の当たり前のレベルが年々高まる中で、パーソナライズ化はどこまで進化し続けるのか。技術の進歩と時代の変化をど真ん中で体感しながら、しばしパーソナルフードで自分磨きにいそしむことにしよう。

名越涼/フリーアナウンサー。香港出身。福井と愛知のテレビ局アナウンサーを経て独立。司会やライター、セミナー講師、企画・プロデュースなど幅広く活躍するパラレルワーカー。趣味・特技は手作り発酵食、食文化研究、ヨガ(歴15年)eスポーツと農業にも精通

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【動画】ファッション業界人辞典Vol.2 村上要「WWDJAPAN」編集長の1日に密着

 「ファッション業界人辞典」は、ファッション業界で働く人にフォーカスし、その仕事柄を伝えます。業界のさまざまな職業を紹介しながら、「実際、どんな仕事をしているの?」「どうしたらその職に就けるのか?」などの疑問を解決。これからの若者たちの指針になるような情報や、業界人が気になるあの人の素顔や過去を、日々の仕事姿や過去の映像・写真を通して発信します。

 第2弾は、“誰よりもファッションを楽しむ”村上要「WWDJAPAN」編集長が登場。意外な経歴や自分の強みから、社内最速の原稿書きで意識していること、定時に退社する理由までを、自転車の通勤・退勤シーンや社内業務、ライブ配信の映像を交えて紹介します。「サルバム(SULVAM)」2021-22年秋冬コレクションのショー会場では、ブランドの印象やコレクションを見るときのポイントのほか、藤田哲平デザイナーと話し込む姿をキャッチしました。

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写真家・若木信吾による「リーバイス」“501 DAY”の広告撮影を被写体としてリポート

 「リーバイス(LEVI'S)」は、5月20日の“501”の誕生日(リベットの特許申請が1873年の同日に受理された)を祝う“501 DAY”に先駆けて、写真家・若木信吾が撮り下ろした写真を使った広告キャンペーンを4月23日から行う。2020年に続く第2弾で、新たにミュージシャンや古着店店長などを撮り下ろした。そして、大変光栄なことに「WWDJAPAN」のデニム担当である僕もその中の1人に選ばれた。ここでは撮影日の様子と若木さんへのインタビューを掲載する。

WWD:2日間で28人を撮影すると聞いた。連続して“青い”モチーフを撮ることになるが、気を付けていることは?

若木信吾(以下、若木):確かに青一色とも言えるが、その中にある“濃淡”を表現したいと考えている。企画コンセプトの通り、“501”とひと口に言ってもはく人やはき方によって色落ちや表情は千差万別だ。そのため、背景となる壁面も特別にオーダーした。濃い色のジーンズなら水色の前、三澤さんのように淡い色のジーンズなら白の前で撮るようにしている。

WWD:若木さんがスタジオに陣取りそこに被写体が次々とやって来る、定点観測とも言える撮影方法だ。

若木:僕としては定点観測ではなく、むしろロケの気持ちでいる。そのため壁面は夏、もっと言えばキューバをイメージした。スタジオも密にならないようにという狙いもあるが、なるべく大きなところを押さえてもらって、そこでもロケ感を出した。

WWD:今回の撮影では何を切り取りたい?

若木:日本人の、それもモデルや芸能人ではない一般の方の自信にあふれた表情=強さを撮りたかった。その点、私物の“501”で登場いただくというのは奏功していると思う。

WWD:とはいえ、中には緊張する人もいるのでは?

若木:そんな時でも“その人らしさ”を見つけるのが僕らプロの仕事だ。たくさん撮ることで次第に緊張がほぐれる人もいるし、逆にどんどんかたくなってしまう人もいる。自然体を収めたいから、あれこれ撮ったあとで結局ファーストカットが一番良かったということもある。少し格好つけて言うなら、瞬時に相手を見抜く必要がある。だけど最良の一枚が残せればよいので、方法や型にはこだわらない。

WWD:型を持たないのが若木さんの型である?

若木:“「リーバイス」をはく人はこうであるはず”という先入観は捨てている。僕が誘導してしまうのもご法度だ。

WWD:昨年に続いて2回目となる撮影で意識したことは?

若木:「リーバイス」には申し訳ないが、1年ぶりの撮影で、その間多くの仕事をこなしてきたので、良い意味で昨年のことは忘れていた(笑)。だからこそフラットな気持ちで臨めたと言える。技術的なことを言えばライトの向きや壁面を昨年とは変えているが、大事なのはやはり撮る側と撮られる側の気持ちだと思う。

WWD:若木さんも今日はジーンズをはいている。

若木:特に「リーバイス」に気を使ったわけではなくて、ジーンズは僕ら写真家のユニホームとも言える存在。今日の撮影に向けて、ここ3カ月は「リーバイス」のジーンズだけで過ごした。

WWD:すごい心掛けだ。「リーバイス」のジーンズは何本所有している?

若木:10~15本。古着好きを否定するつもりはないが、誰かの型に自分が合わせているような気がするので、ジーンズは新品のリジットしか買わない。またジーンズファンには洗濯法などにこだわる方もいるが、僕にとってはあくまでユニホームなので、1回はいたら洗うようにしている。そのため、ある程度の本数が必要になる。

WWD:最後に、今日の僕の点数は?

若木:三澤さんらしく撮れたので、もちろん100点!

 なんだか最後は若木さんに気を遣わせてしまったが……、写真は4月23日から直営全店舗の壁面を装飾したり、ホームページやSNSで使われたりするというので、僕もさっそく原宿店を覗いてみようと思う。

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高校から服飾を学んだ販売員 目指すは「お客さまの気持ちがわかるデザイナー」 チャオパニック ティピー船山佳純

 デザイナーに憧れてファッション業界を目指す人は多い。筆者も学生時代はデザイナーを目指していた。実際にこの業界に足を踏み入れてみると、デザイナーというのは実に一握りの人ができる仕事であり、そのデザイナーたちも才能に加え、お客さまに喜んでもらえる商品作りのためにさまざまな知識を駆使している。学校では技術的な面は習得できるが、市場のことは学校で学ぶことができない。一番学べるのは店頭ではなかろうか。その面で最高のキャリアと言えるのが販売員。現在、販売員からデザイナーを目指して奮闘する「チャオパニック ティピー(CIAOPANIC TYPY)」イオンモール越谷レイクタウン店の船山佳純さんに話を聞いた。

―私も工業高校で専門課程のある学校に行きましたが、どうして服飾科のある高校へ進学しようと思ったんでしょう?

船山佳純さん(以下、船山):小学生の時から絵を描くのが好きで、いつも描いていたんです。それと同じくらい洋服も好きで、毎日好きな服の絵を想像して描いていられる仕事って何だろう?と調べたら『デザイナー』という仕事があることを知って、その道に進みたいと親に相談し、高校からファッションを学べる学校に行きました。

―90年代生まれの方はナルミヤブランドの影響が大きいですよね(笑)。

船山:当時、私の周りでは『メゾピアノ』が流行っていました(笑)。洋服が好きな子はみんな着ていましたから、その影響は大きいと思います。

―高校のファッション課程ではどんな勉強を?

船山:縫製の授業を中心に、デザイン画や服装史の授業がありました。ファッションに関する授業があるので、一般的な普通科コースよりも普通科目が少なかったと思います。縫製の授業で縫い終わらず、放課後に残って進めていたこともよくありました。3年生のときに集大成のファッションショーを行うので、それに向けてたくさんの服を作りました。

―普通科目の授業が少ないのは工業高校も同じですね。さらに服飾の大学にも行かれたんですよね。

船山:そうです。もっと専門性の高い学校で勉強したくなり、特にデザイン画を本格的に学びたくて大学に進学しました。個人的にはモノを作る、縫うことも好きなんです。でも、どうも手先が不器用なことに自分で薄々気が付いてしまいまして…(苦笑)。高校時代に先生からはデザイン画を褒めていただくことが多かったので、そっちを伸ばしていこうと。本格的にデザインが学べるところへ行きました。

―今でも最終ゴールとしてデザイナーや企画職を目指しているんですか?

船山:そうです。

―デザイナーの魅力とは?

船山:デザイナーである自分が考えた洋服を、お客様が「可愛い」といってお買い上げいただけるところです。販売員のように店頭で直接、お客様が喜ぶ姿を見ることはできなませんが、喜んでもらえるものを作れることに憧れます。もともと絵を描くことが好きですし、自分の考えたことをデザインに描き出し、服として表現できるところが魅力です。服作りを学んでいると自分のデザイン画をパターンに起こして作ってみても、全然上手くいかなくて想像していたものと違うものができ上がるんです。デザイナーは出来上がりを想像して、デザイン画を描いているという点も凄いなと思います。

―確かに!自分の学生時代を思い出しました。

船山:でも、高校の服飾科と大学は全く違う世界で、大学には全国からファッションを学びたくて集まってきた、いわば精鋭というか、秀でた生徒が集まってきているので、作品を出すとその差が歴然と見えてしまいます。単に「好き」という気持ちだけではどうにもならないというのを目の当たりした学生生活でした。

―熱量が半端ないんですね。

船山:本当にすごくて、刺激にもなりましたし、頑張ろうとも思いました。ですが、大学は家庭の事情で3年次に中退することになり、販売のアルバイトを始めました。

―そうなんですね…。中退だとデザイナー職での入社が難しかったですか?

船山:はじめは探してみました。デザイナーアシスタントなどでも探してみましたが、面接時にアパレル未経験だったため難しかったんです。それまでアルバイトも飲食業界ばかりで、アパレル業界で働いたことがなかったので、まずは販売員から経験を積もうと考えたのです。

―未経験でデザイナーや企画をするよりも、販売などで売り場を知っている人の方が採用にも有利だと思います。結局は作ったものを販売して、気持ち良く着てもらうことがファッション業界の基本だと思うので、販売経験と通して着る人たちの気持ちを知っていることは強みになると思います。

船山:そう思います。お客様の意見やニーズ、気持ちがダイレクトに聞ける場所なので、販売の仕事を始めて良かったです。

―実際に販売職をしてみていかがでしたか?

船山:元々、人と話すこと好きなので、販売員の仕事も合っていると思っていました。お客様との会話はとても楽しいですし、悩んでいても会話をして、解消して、お買い上げしていかれるのがうれしいです。いろいろと提案して、最終的に「コレにします!」と決めた服を後日着て来店してくれるのは幸せです。幸せというか感謝ですね。

―学生時代に学んだこと、例えば色彩やデザインなどは接客に生かされていますか?

船山:生かされていると思います。トレンドに基づいた提案もしますが、お客様の好みを聞きつつ、お客様にとってどう良いのか、バランスや色がどうして似合うのかを伝えるように心がけています。例えば、肌の色や髪の色と持っている服の色を聞き出して、合わせやすいものとかを提案しています。服って買って終わりではないので、他の手持ちの服と着回しがしやすい色を提案したり、今後ほかのアイテムを買っても活躍できるスタイリングの提案をしたり、コーディネートで楽しんでいただけるように心がけています。

―理由もなく「お似合いです」とか「カワイイ!」といわれても、お客様からしたら「本当かな?」と思いますもんね。

船山:なぜ似合うのかを伝えるとお客様から「聞いてよかった」と言われて、私も良かったなってなります。他にも「こういう服は持っているけど、何をどう合わせればいいか分からなくて」という悩みもよく聞かれます。コーディネートを考えるのは好きなので、一緒に悩み過ぎてしまい接客に時間がかかるときもあります(笑)。

―個人的にはそうやって一緒に悩んでくれると信頼感が増しますね(笑)。楽しいですし。

船山:私も楽しいです(笑)。私も買い物するときは悩む方なので、気持ちは分かります。

―では、今の目標は?

船山:最終的な目標はデザイナーですが、まずはその前にお店の顧客、リピーターを増やしていくこと。それと店長になりたいです。

―一歩ずつステップアップしていくということですね。

船山:そうですね。まずは店長。それから本部で働きたいです。その為には店長になることもですが、インスタグラムのフォロワーも伸ばしていきたいですし、少しずつステップアップしていこうと思っています。

―ちなみに今でもデザイン画は描いていますか?

船山:以前よりは頻度が少ないですが書いています。特に素材感を書くのが好きで、よく生地のシワを丁寧に描いたりしています。あとは好きなイラストレーターさんの絵を見て勉強しています。

―デザイナー職を目指していることは上司に伝えていますか?

船山:面談などで機会があるときに言っています。実は「チャオパニック ティピー」のアルバイト面接で私を採用してくれた当時の北千住店店長が、現在は企画に在籍しているんです。

―なるほど!

船山:私の理想とする方で、今もいろいろなアドバイスをいただいています。道しるべになる人がいるということは、自分を磨いていくことで評価もしてもらえるということだと思うので、まずは目先の目標を一つずつクリアしていき、最終的にはデザイナー職で働きたいと思います。

苫米地香織:服が作れて、グラフィックデザインができて、写真が撮れるファッションビジネスライター。高校でインテリア、専門学校で服飾を学び、販売員として働き始める。その後、アパレル企画会社へ転職し、商品企画、デザイン、マーケティング、業界誌への執筆などに携わる。自他ともに認める“日本で一番アパレル販売員を取材しているライター”

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ミランダ・カーが作る“心を満たす”スキンケア ポジティブでい続ける秘訣とは

 ミランダ・カー(Miranda Kerr)が手掛けるオーガニックスキンケアブランド「コーラ オーガニックス(KORA ORGANICS)」は、マッシュルームを配合したクレンジングオイル“ミルキーマッシュルームジェントルクレンジングオイル”(150mL、税込4320円)とターメリック入りのクリーム“ターメリックグローモイスチャーライザー”(50mL、税込6240円)を公式楽天ショップで発売した。

 クレンジングオイルは保湿力に優れ、肌をストレスから守るシルバーイヤーマッシュルームをキー成分として配合。そこに肌の状態を整える必須脂肪酸とエイジングケア成分が豊富のババスオイルや肌を滑らかで柔らかくするアップルシードオイル、余分な汚れや皮脂を取り除くひまわり油を加え、優しく肌をケアする。クリームは高い保湿力を誇るローズヒップオイルやマラクージャオイルなどのほか、ブライトニング成分としてターメリックやリコリス、ノニをリポソーム化して配合。肌を乾燥から守りながら滑らかに整える。レフィルも用意し、環境にも配慮している。どちらもコスモス認証を得たオーガニック処方だ。そんな新製品やブランドに対する思いをミランダ・カーに聞いた。

WWD:新作のこだわりは?

ミランダ・カー(以下、ミランダ):私はクレンジングオイルはベタついたり、重たすぎるものが多い気がするのだけど、新作のクレンジングオイルはとにかく軽やかな使い心地でデイリー使いにピッタリ。シルバーイヤーマッシュルームは“天然のヒアルロン酸”と呼ばれているくらい水分保持能力に優れていて、配合することによってメイクや汚れをオフしながら水分ケアもできる。ローズやゼラニウム、バジルなども入れ、心安らぐ香りもポイント。

クリームは抗酸化力に優れたターメリックやブライトニング作用が期待できるリコリスをリポソーム化して配合している。そこにパッションフルーツオイルやローズヒップオイル、マラクージャオイルなど複数種類のオイルをブレンドしたリッチな保湿を届けるクリームよ。肌を保湿するのはもちろん、健やかなグロウ(艶)をもたらすわ。

WWD:効能はもちろん、心やマインドにも働きかけるように設計した。

ミランダ:不安を和らげるような香りを採用したのは、使うたびにリラクシングな体験を味わって欲しかったから。実際、心の絡みが解かれくような感じがするの。また私は幼い頃からウエルネスの観点からクリスタルやアロマセラピー、ポジティビティーのパワーを信じてきた。だからローズクオーツで製品を“浄化”していて、肌を洗うたびに不安も“洗い流し”、心までで浄化されるような体験を届けている。新作のクリームのパッケージはシトリン(黄水晶)をイメージしているが、シトリンは人生に明るさや希望、豊かさをもたらすとされているの。夫のオフィスにも巨大なシトリンの置物があるくらいよ(笑)。そしてラベルの裏には前向きなメッセージを表現する言葉を印字している。不安が多い今の時代、心の健康を軽視してはいけないわ。心を労ることは本当に大事。忙しい毎日の中でも手軽に取り入れられるように、スキンケアをリラックスタイムにしたらいいでしょう?だから製品は肌だけでなく心やマインドにも働きかける360度アプローチをとっている。

WWD:近年はクリーンビューティもトレンドだが、オーガニックにこだわる理由は?

ミランダ:ケインブリッジ大学の調査によると、オーガニック認証を得た原料はそうでないものに比べて抗酸化力が60%も高い。安心して使える安全な原料を用いたかったのはもちろん、オーガニック原料は効能にも優れていることから、全製品オーガニック認証にこだわっている。そしてクリーンビューティには基準や定義がないけれど、オーガニック製品は第三者による厳しい基準を満たさないと認証を得られない。原料だけでなくパッケージや製造の方法まで厳しくチェックされるし、毎年監査が入る。マーケティングのためだけでに安易に“クリーン”という言葉を使うのとは全然違うの。私は16歳のときに母親がガンを患い、それをきっかけに家の中にあった化粧品や洗剤など全て見直した。その際、効果的でありながら体にも優しい製品が本当に少なくて大変だった。だから高い効果効能があるオーガニック製品を広めたく、2009年に「コーラ オーガニックス」をスタートした。

WWD:マッシュルームやノニなど、ユニークな原材料を多く使っているが、新製品のアイデアはどのように思いつくのか。

ミランダ:日常生活だったり、生まれ育ったオーストラリアで目にしていた植物からヒントを得ることが多い。例えばビタミンCセラムはレモンやオレンジの果皮を配合しているが、もっとパワフルなビタミンCが欲しかった。特に妊娠してから肌の色素沈着や色むらが気になるようになるようになり、効果的な美容液を作りたかった。そうしたら母親が昔から飲んでいたカカドゥプラムジュースを思い出したの。カカドゥプラムはオーストラリア特有の植物で、ビタミンCを豊富に含む。そこで出来上がったセラムは世界で初めてオーガニック認証を得たもの。私は外側だけでなく内側から美しくなるインナービューティに気を使っていて、健康食品からひらめくことも。例えば最近はマッシュルーム入りのお茶やターメリックとレモンを入れたお茶がお気に入りで、そこからマッシュルームのクレンジングを思いついたの。

WWD:ミランダはウエルネスにも力を入れており、SNSでもポジティブなメッセージを発信している。コロナ禍でも前向きでいられる理由は。

ミランダ:私は感謝の気持ちを大切にしているわ。命があること、健康でいられること、家があること、家族や友達がいること。つい当たり前のように捉えがちだけれど、決して当たり前ではなく、恵まれているわ。メディテーション(瞑想)やヨガも日課で、心の中の混乱やもやもやをリセットしている。そのほか家の中に集めているクリスタルを太陽の光で浄化することで、家の中や自分の中の悪いエネルギーを取り除いてくれるの。クリスタル製のマッサージツールもおすすめよ。アロマセラピーも大好きで、巨大なディフューザーに常にいろいろなエッセンシャルオイルを垂らしている。心身ともに健康でいることが大切で、そのためにいろいろ取り入れているわ。

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「推し時計、燃ゆ」 平成生まれの女性クリニック経営者は“青”にご執心

 「推し時計、燃ゆ」3回目のゲストは、都内でクリニックを経営する平成生まれの女性、ぽーちゃん。前回のゆうさん同様、メンズライクな時計を好んで身に着けている。そのわけとは?

WWD:ぽーちゃんのツイッター(TWITTER、@poetamupopopo)には、美食と高級時計が並んでいますね。今日はお気に入りだという、アマン東京の「ザ・ラウンジ by アマン」にお邪魔しました。

ぽーちゃん:お酒も好きなので、仕事帰りに一人で来ることもありますし、“時計友達”とここで時計談義することもあります。

WWD:ちなみに今日の相棒は?

ぽーちゃん:「A.ランゲ&ゾーネ(A. LANGE & SOHNE)」の“ランゲ1 25thアニバーサリー”です。ブランドのアイコンである“ランゲ1”の25周年を記念して発売されたモデルで、ホワイトゴールド製です。ネットでひと目ぼれして、1年ほど前に約600万円で購入しました。ここ2年ほどクリニックの業績が良く、自身の年収が上がったこともあって奮発しました。買ってすぐのころは、うれしくて毎日着けていました(笑)。ファッションはモノトーンが多いんですが、時計はブルーがマイブームで、ついつい触手が動いてしまいます。ツイッターで時計について発信し始めた1年ほど前からは、購入のペースも大幅にアップしてしまって……。最近も「パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)」のブルーの“アクアノート”を購入しました。

WWD:時計は仕事中も身に着けるのでしょうか?

ぽーちゃん:カジュアルなものを着けることはあります。例えば「ロレックス(ROLEX)」とか。なんと言っても剛健な時計なので。「ロレックス」は10代後半のころ、父から「そろそろちゃんとした時計を着けては?」とプレゼントされた、私にとってのファーストウオッチなんです。“デイトジャスト”で、今でも大事にしています。

WWD:その後の時計遍歴について教えてください。

ぽーちゃん:ファーストウオッチの影響もあってか、自分で初めて購入した時計は「ロレックス」の“デイトナ”でした。120万円くらいでした。その後は、年に1本くらいのペースで、100万円前後の時計を自分へのご褒美として買うようになりました。「カルティエ(CARTIER)」「シャネル(CHANEL)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」など、当時はピンクのモデルばかり買っていましたね。ダイヤモンドなどが付く宝飾系の時計ってクオーツムーブメントが多いんですが、ツイッターで時計コレクターの方の投稿を見ているうちに、だんだん“本格派”の機械式時計に引かれるようになりました。

WWD:通勤時に着用していたのも機械式でしたね。

ぽーちゃん:「パテック フィリップ」の“5205G”です。私、ブルーの時計も好きですが、ムーンフェイズも好きなんです。こちらもホワイトゴールド製で、やはり1年ほど前に百貨店で約600万円で購入しました。

WWD:時計は何本くらい持っているんですか?

ぽーちゃん:20本くらいです。買った時計は売らない主義なので、増える一方なんです(笑)。でも、いいんです。ゆくゆくは子どもに譲ろうと思っているので。

WWD:休日でも時計はする?

ぽーちゃん:はい。休みの日もツイッター用の写真を撮るので、時計をしない日はありません。場所でも食べ物でも青があると、時計を主役に写真を撮りたくなるんです。これからの季節は海なんかもいいですよね。

WWD:次に狙っている時計は?

ぽーちゃん:「パテック フィリップ」の“ノーチラス”。もちろんブルーです(笑)。すでに予約済みで、順番待ちです。「パテック フィリップ」「A.ランゲ&ゾーネ」「オーデマ ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」の3ブランドが最近のお気に入りです。

WWD:ぽーちゃんにとって時計とは?

ぽーちゃん:私の“全て”、活力の源です。時計があると毎日楽しいし、仕事をする意味と言ってもいいかもしれません。

<「推し時計、燃ゆ」とは?>
「推し、燃ゆ」が芥川賞を受賞し、“推し活”が豊かな生き方につながるとの認識が広まっている。そこで元来、推しの要素が強い時計の世界で、さまざまな人に“推し時計があることで得られる幸福感”や“そもそも、なぜ推しているのか?”などを聞き、時計の持つ“時間を知る”以上の価値について探る企画。

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サイバーエージェント藤田社長が出資を即決 新生「スタイルヴォイス」の展望

 マッシュホールディングス、ジュンが出資して運営するECモール「スタイルヴォイス ドットコム(STYLEVOICE.COM)」は4月26日、D2Cブランドプロデュースを主軸としてリニューアルする。これに合わせて、インターネット広告大手のサイバーエージェントが出資する。

 同ECモールを運営するスタイルヴォイスは19年10月、マッシュホールディングス(HD)、ジュン、デイトナ・インターナショナルの3社の合同出資により発足し、「メディア並みの発信力を備えるEC」として、オウンドメディアを併設するECモールとして運営してきた。20年末にはマッシュHD、ジュン2社の出資構成に変更となった。

 サイバーエージェントの藤田晋社長は出資の背景について「ここ数年、D2Cのアパレル分野には大きな可能性を感じていた」と話す。同社は創業間もない1999年、子会社を通じてECモール事業への参入を試みたこともあり、関心の高さがうかがえる。「消費において、人々の憧れの対象がモノではなく『人』にシフトする中、『スタイルヴォイス』には新しい道を切り拓くポテンシャルを感じた」と期待を口にする。サイバーエージェントとともに、フィギュアの「ベアブリック」などを企画・販売するメディコム・トイも出資メンバーに加わる。出資は話し合いのその場で即決したという。

 同ECの展望について、スタイルヴォイスの片山裕美社長、マッシュHDの近藤広幸社長、ジュンの佐々木進社長、メディコム・トイの赤司竜彦社長に聞いた。

※サイバーエージェントの藤田晋社長は都合により座談会には不参加

WWDジャパン(以下、WWD):19年10月のスタートから現在までの、「スタイルヴォイス ドットコム」の進捗は?

片山裕美スタイルヴォイス社長(以下、片山):ECモールとしては後発で、これまでは知名度をじわじわと広げていく期間だったと思うが、同時にコロナ禍の中、昨年春ごろから自分たちの強みがはっきりと見えてきた。影響力のあるモデルやキーインフルエンサーの熱量のある発信から、その人たちの周りに集まるインフルエンサーへと情報が広がり、認知度・注目度も急速に高まったという手応えがあった。そのような“種まき”があった上で、20年初夏には、サイト内特集として「ワンマイルウェア」を打ち出し、その中でもデザイナー川島幸美さんが企画した商品は、インフルエンサーたちが自発的にSNSで紹介してくれたことで大ヒットにつながった。この事例を手本に、秋には女優の剛力彩芽さんやインフルエンサーの中村麻美さんらを起用した商品企画や既存のD2Cブランドとの連携企画にチャレンジし、バズにつながった。

 この辺りから、「ここでしか買えないオリジナルのD2Cブランド」を主軸とした事業展開の構想が固まっていった。企業やブランド数は立ち上げ時(約45ブランド)の半数以下にしぼるが、リニューアル後は自社企画を中心としたD2Cブランドが中心になる。足元では、すでにたくさんのブランドがローンチに向けた準備に入っている。インフルエンサーたちの熱量も非常に高く、外からコラボやイベント出店の相談もいただいている。「スタイルヴォイス」の中で次々に新しい企画が生まれ始めている状況だ。単純にブランド数や会員数を増やすことで成長するのとはまた違う、ユニークな成長路線が見えてきた。

生産から発信面までチームとして動く
「心を動かす」インフルエンサーを育てる

WWD: D2Cブランドを作っていく上で大事になるのは?

片山:軸になるインフルエンサーの思いをしっかりくみ取ること。そして商品企画から発信コンテンツまでを通じて、熱量高く伝えていくこと。それができればお客さまの心を動かし、今までにない買い物の楽しさを体験していただけるはずだ。バックにはモノづくりのプロであるマッシュHD、ジュンがおり、マッシュグループの生産背景を活用することで高品質な商品を実現できる。先行して4月に販売した商品は、企画したブランドディレクターの元に届くと、彼女たち自身がそのクオリティーに驚き、心から喜んでくれた。作り手が満足できる仕事ができれば、お客さまにも必ず幸せになっていただける。お客さまの心を動かすインフルエンサーを発見し、育てることからチャレンジする。

佐々木進ジュン社長(以下、佐々木):今、このタイミングでフィーチャーすべき人選、その先にいるファンの興味に対して知見が深いのは、雑誌編集の経験もある片山さんの最大の強みだと思う。よくあるECモールではなく、“ここでしか買えない”を突き詰める上では大きな武器になっていると感じる。

近藤広幸マッシュHD社長(以下、近藤):これまでの事例で面白いと思ったのが、フォロワー数が多いからといって、その人の監修した商品が必ずしも売れるわけではないこと。フォロワーが少なくても、売れる人はいる。インスタの写真の撮り方など、さまざまな点で商品を売るためのコンサルティングが重要。片山社長をはじめとした編集部のプロデュース能力で、「スタイルヴォイス」が「モノが売れる」インフルエンサーを輩出するプラットフォームになることも期待したい。

WWD:一方で、イチからブランドを立ち上げるのは、これまでの既存ブランドを中心に扱うビジネスに比べてリスクも大きい。

近藤:リスクに関しては(スタイルヴォイス社の)大株主となったマッシュHDが、連結子会社として、責任と覚悟を持って背負っていくつもりだ。成長するまでは、マッシュグループの社員がサポートしたり、経営のバックオフィスなども支援する。今後の運営フェーズでは、意思決定のスピード感やモノ作りへの支援体制を一社に集約する重要性、そして明確なリーダーシップが必要になると考え、デイトナ(・インターナショナル)さんに株式を譲っていただくことにした。今後も良好な関係性でお付き合いしていくことは変わらない。

「ノイズ」を混ぜることで
ビジネスがより面白くなる

WWD:新たにサイバーエージェントとメディコム・トイが出資者になった背景は?

赤司竜彦メディコム・トイ社長(以下、赤司):(出資の話は)年始に突然聞いて、突然決めた(笑)。ビジネスとして結果を求めることはもちろん大事だが、投資の決定打になったのは片山さんの人を見る目や人格。その他の出資者も何か面白いことが起こりそうなすごいメンバーだし、出資者として参画することで、モノ作りにもより深くコミットするなどシナジーを強められると考えた。

佐々木:D2Cブランドの開発をする上で、より面白みのあるモノ作りのためには、われわれのようなアパレル製造小売業とは違う視点が必要であると考えていたことも一つ。(サイバーエージェントの)藤田晋社長は、グループにさまざまな企業を有しているし、今後は「スタイルヴォイス」においてメディアやコンテンツなど絡め、ECの枠組みだけで売る以外の手法も出てくるはずで、そういった面でも強力な手助けになる。(メディコム・トイの)赤司社長はクリエイティビティーや人脈などはもちろん、テクノロジーにも詳しく、そういった知見やアイデアをぜひお借りしたい。

近藤:お二人(藤田社長と赤司社長)はモノ作りやコンテンツ制作の大変さを理解している方々だ。赤司さんは「スタイルヴォイス」立ち上げの当初から出店者として関わっていただいている。報道陣へのお披露目の際にお願いしたスピーチに心を奪われ、いつか一緒により深い部分でお仕事をしたいと思っていた。われわれのプレゼンを聞いて参画を即決してくれたのは素直に嬉しかった。

赤司:「D2C」はアパレル業界で最近何かとフィーチャーされている言葉だが、そもそも、さまざまな表現者やブランドとコラボし、コミュニティー単位でのバズを起こし続けてきたわれわれのビジネスモデルは、実は(創業した)25年前からD2C的だったのではないかと思っている。(「スタイルヴォイス」での)メディコム・トイの役割は、アパレルのど真ん中でやっている人たちが美しいシンフォニーを奏でている中に、どれだけ「ノイズ」を混ぜていけるか。美しい曲に少しのノイズが混ざることで、時によってはとても素晴らしい音楽になる。新しいビジネスを生むための刺激を提供していく立場として、いつか(「メディコム・トイ」を)入れておいてよかったねと言われたい。

片山:赤司さんからはすでに常に新しいアイデアや刺激をいただいていて、早く実現にこぎ着けたい。いろんな人がいろんなアイデアを持ち寄って、可能性があればそれをどんどん大きくしたり、あるいは他のものとミックスさせてみたりと、「スタイルヴォイス」を実験室のような場にしていく。

WWD:「スタイルヴォイス」はスタート時から上場も視野に入れていた。今後の展望は?

近藤:上場すること自体が目的ではないものの、藤田さんという上場の経験者がいるし、選択肢としては念頭に置き続ける。ただ規模をいたずらに求めるより、他業界にも真似したいと思われる取り組み、新商品などを生み出し、小さくても尊敬される企業を目指していきたい。

片山:話題性の発信としてブランドを生み出し続けることも必要だが、数億円レベルまで成長するような、大きな柱となるブランドを育てることも必要だ。すでに「スタイルヴォイス」ではモデルや著名人たち同士が直接コラボしたいねという会話があったりと、ワクワクするような状況を作り出せている。ブランドディレクターたちの熱量を見てみると、それが可能だという確信めいたものがある。

佐々木:視野を広げてみると、「スタイルヴォイス」は今後、モノを売ることだけでなく、ブランドコンサルティングでも力を発揮していくことができるだろう。「スタイルヴォイス」で積み重ねた経験を活かして企業のコンサルができるかもしれないし、ここで作り上げた人脈そのものが他のビジネスの種になるかもしれない。

近藤社長:これまではECモールとしてあるべき形を探る準備期間だったが、今は熱量のある人たちを巻き込みながら、大変ながらも前向きでワクワクしながら仕事ができている。そんなクリエイティブに集中できる環境こそが、ビジネスとして成功する秘けつだと思う。

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「寧波阪急」はこれまでの日系百貨店とは全く違う 周到に練られた中国戦略

  阪急阪神百貨店を中核にするエイチ・ツー・オー リテイリング(H2O)が中国1号店「阪急寧波」を4月8日にオープンした。沿岸部の港湾都市である寧波市(人口850万人)に開業した同店は、大阪の阪急本店(阪急うめだ本店、阪急メンズ大阪)を上回る売り場面積11万7000平方メートルの巨大店舗だ。生き馬の目を抜く中国市場で成功できるのか。上海在住のVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)コンサルタントの内田文雄氏が報告する。

 寧波阪急は寧波市の中心部から車で約20分程度の東部に位置します。周りは開発地域で、多くの銀行などが集まる金融街、大きな会議や展示会が開催されるコンベンションセンター、富裕層が居住する高層マンションに囲まれています。

 現地を訪れて、まず驚いたのが低層で横に長い建物です。百貨店というと縦に長いという固定概念があるけれど、ここはまるでモールのような印象を受けました。日本の旗艦店である阪急うめだ本店が15フロア(地上13階・地下2階)なのに対して、売り場面積で上回る寧波阪急は7フロア(地上6階・地下1階)。1フロアの広さが分かるでしょう。コンセプトの「百貨店とSC(ショッピングセンター)を融合させた”体験型デパートメンモール”」を体現しています。

 1階は全てラグジュアリーブランドが並び、それぞれが華やかさを演出しています。消費者視点で見ると高級感が溢れ過ぎていて、入店を躊躇する感覚もある。でも寧波にはほぼなかったラグジュアリーブランドを集積させた商業施設を見てみたいという期待感をあおる仕掛けになっています。

百貨店の定石を破るフロア構成

 7フロアの売り場は日本や中国の百貨店のフロア構成とかなり違っています。”体験型デパートメントモール”を具現化させるには、他競合とは完全に差別化させる必要があったからでしょう。私は過去30年間にわたって上海やその他地域に出店して成功、失敗した国内外の百貨店、SC、スーパーマーケットを見てきました。今回はお世辞ではなく「さすが阪急さん、素晴らしい」と感心しました。

 全館では380店舗の吟味されたさまざまなテナントが入っています。日系の食やファッションの品ぞろえは全体の2割の70店舗ほど。それ以外は欧米のラグジュアリーブランドをはじめ、中国のテナントで構成されています。是が非でも日本のブランドを集めたいという、これまで中国に進出してきた日系百貨店が陥る「あるべき姿」とは一線を画した姿が新鮮に映りました。

 ターゲットのミレニアル世代やその下のZ世代の嗜好や購買力を鑑みた場合、どのようなブランドで構成するべきかが、今回のテナント構成につながっています。例えば中国市場で人気の大手アパレル、PEACE BIRD(本社寧波市)の全4ブランドも入っています。中国ローカルブランドだからどうのではなく、ファッションに関心が高い顧客に向けて躊躇なく品ぞろえしている。商品戦略が明確なのです。

上海でも勝負できるリーシングと品ぞろえ

 私が訪れた4月10日は、残念ながら1階(ラグジュアリーブランド)、2階(化粧品、靴、バッグ、グローバルファッション)はまだ施工中で、完全な状態を見ることができませんでしたが、関係者にお願いして売り場を少しだけ見せてもらえました。

 1階のラグジュアリーブランド集積は圧巻の一言です。男館、女館で分けられたゾーイング、広い通路で動線や回遊性もよく考えられています。よくぞここまでの名だたるブランドの寧波初ローンチを実現させたものです。中国ではセレクトショップでの取り扱いにとどまった「ヨウジ ヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」のフラッグショップもあります。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のポップアップショップも人気になりそうです。1階、2階がオープンした16日のSNSを見ていると、前夜に催されたVIP向けのレセプションパーティで、KOL(キーオピニオンリーダー、中国のインフルエンサー)や招待客たちがラグジュアリーブランドで買い物をする様子を投稿していました。

 2階は化粧品、靴、グローバルファッションなどです。化粧品売り場はあえて通路幅を若干狭めに設定し、にぎわい感を演出している様に見えました。女性にとっては1階のラグジュアリーブランドとこの化粧品と靴売り場は圧倒的に魅力的な品ぞろえで話題になると思います。

 3階は婦人服、ランジェリー、宝飾雑貨などが並びます。ここの特徴は広い通路幅でゆったりと買い回りができ、十分な休憩空間もあります。

 4階はインドアライフスタイル(携帯電話、雑貨系)、アウトドア(スポーツブランド、スケートボードリンク)など、Z世代にフォーカスしたテナントが目立ちます。また阪急うめだ本店の「祝祭広場」の中国版である巨大な吹き抜け空間「慶典広場」もあります。こけら落としとして中国でも人気の日本の漫画「ONE PIECE」のイベントが開催されていました。今後もさまざまなイベントが行われ、集客装置として機能することになるでしょう。

 5階は約40店もの人気のレストランが並びます。ミシュラン認定店も2店舗。日本食フードコートも人気を博しそうです。

 6階はエンターテインメント、つまり非物販フロア。シネコンやペット用品、ドッグラン、ゴルフ打ちっぱなしなど、下のフロアとは全く違う雰囲気です。買い物に疲れたお客さんが休憩したり、リフレッシュしたりする空間になっています。

 地下1階はH2O傘下のスーパーであるイズミヤ、軽食中心のフードホール、フードエクスプレス、子供服、デイリー雑貨です。寧波初の人気の「ピーツコーヒー(PEET’S COFFEE、2階にもあり)も出店。中国では一般的に子供服や子供関連は上層階が一般的なのですが、ここではあえて飲食フロアに子供関連をリーシングしていて、食+子供関連の買い回りという組合せをアピールしているのだと思います。この珍しい試みは要チェックです。

 以上、各フロアーのポイントを書き出しましたが、文字だけでは伝わりづらいですよね。まとめると寧波エリアで競合する商業施設とは明らかな差別化ができているのは言うまでもなく、上海で繁盛してもおかしくないレベルの品ぞろえ、フロアー構成です。

 私見ですが、寧波だからこのような品ぞろえ、リーシングにしたのではなく、阪急阪神百貨店として中国に出店するからには「こういうモデルであるべき」というフィロソフィーを具現化したのではないかと感じました。

中国のハイスペック人材を招へい

 日本でも中国でもラグジュアリーブランドを集積させることは簡単ではありません。寧波阪急は1階に圧倒的な数のラグジュアリーブランドを集めています。阪急阪神百貨店のネットワークと交渉力が結実したといえるでしょう。

 しかし商業施設として成功するにはラグジュアリーブランドを誘致して終わりではありません。開業後にいかに運営維持させていくか。そのためには中国の高級商業施設で運営実績を持ち、有力ブランドとの強いパイプを築いたハイスペック人材が誘致を手助けし、運営していくことが不可欠になります。固有名詞は伏せますが、中国で相当な実績を持った人材をヘッドハンティングしたようです。

 この取り組み一つとっても、過去に中国に進出した日系百貨店とは明らかに組み立て方が違います。ラグジュアリーブランドを中核にすると決めたからには、まずは人材ありき。非常に戦略的だと思いました。

 寧波初登場のラグジュアリーブランドを多く擁するため、おのずと攻めの商売が必要となってきます。日本の百貨店には外商という機能があります。富裕層や法人を対象に手厚いサービスを施す外商は、中国では存在しない概念です。しかし寧波阪急では、ターゲットの若い富裕層や企業に対して、積極的に外商を仕掛けていくようです。

 また会員対策として阪急会員制倶楽部があります。5つのランク(ダイアモンド、プラチナ、ゴールド、貴賓、準会員)に分け、年間お買い上げ累計額でさまざまなサービスを受けることができます。ちなみに最上級のダイアモンド会員は、年間累計お買い上げ額30万元(500万円弱)が条件。館内専用ラウンジの利用、一般商品の12%割引、通常ポイント2・5倍、誕生日月のポイント5倍、専用駐車場利用などの特典がつきます。

 2つのVIPラウンジ(ダイアモンド、プラチナ)に入ったところ、まるで空港にあるマイレージラウンジ以上の豪華さでした。こんなVIPラウンジを擁している百貨店は日本でも見たことがない。おそらく中国でも初ではないでしょうか。中国人の「メンツを重んじる」気質をうまく活用したこの豪華なVIPラウンジは富裕層の心をくすぐることは間違いありません。過去の日系百貨店の進出でよく見られた「日本式サービスを取り入れました!」というステレオタイプのやり方はもう通用しない。日本以上の特別なおもてなしが必要なのです。

 寧波阪急は当初計画から2年半ほど開業時期が延びました。その間、阪急阪神百貨店の担当者の方々は日本や中国の各都市、その他海外の百貨店、SCなどの商業施設の品ぞろえ、フロアー構成、客動線、顧客サービス、エンターテインメント手法などを念入りに研究しました。開業延期が結果として館の完成度を高める時間になったようです。

 百貨店が中国でいかに勝つのか――このシナリオを磨きに磨き上げたのが寧波阪急なのだと思います。これまでの日系百貨店、SCとは全く違う。大いに期待したいですね。

内田文雄(うちだ・ふみお):福岡県福岡市生まれ。ワールドで22年間のVMD経験、1993年に上海交通大学留学、上海駐在を経て、その後はアジア事業で海外を飛び回る。2005年ユニクロへ転じ、海外の大型店などのVMDを手がける。2011年、独立して上海に拠点を移す。中国のアパレル、小売企業に対しての実務指導、セミナー講演を行う

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大丸松坂屋「DXで百貨店は宝の山に化ける」 澤田社長とサブスク仕掛け人・田端氏に聞く

 大丸松坂屋百貨店は婦人服レンタルのサブスクリプションサービス「アナザーアドレス(ANOTHER ADDRESS)」を3月に開始した。「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA」「マルニ(MARNI)」など50ブランドの服を月額1万1880円(税込)で3着まで借りられる。5年後に売上高55億円、アクティブ会員3万人、在庫は20万着の規模を目指す。同社の澤田太郎社長と、キーマンである田端竜也・DX推進部マネージャーに新規事業の背景を聞いた。

WWD:サブスクはいつから準備してきたのか。

澤田太郎・大丸松坂屋百貨店社長(以下、澤田):5年ほど前に(親会社の)J.フロント リテイリング(JFR)が米スタートアップ企業でファッションレンタルのル・トート(LE TOTE)に出資したことから始まっている。その頃からJFRとして服のサブスク事業に関心を持っていた。ル・トートは19年に百貨店のロード&テーラー(LORD & TAYLOR)を買収している。JFRは当時、シリコンバレーの企業に若手社員を派遣してデジタルビジネスの勉強をさせていた。私がシリコンバレーを視察した際、百貨店のニーマンマーカス(NEIMAN MARCUS)の中にファッションレンタルのレント・ザ・ランウェイ(RENT THE RUNWAY)が大きな店を構えているのを見てショックを受けた。百貨店の顧客が利用し、気軽にラグジュアリーブランドに触れられる入り口になり、最終的にはブランドのファンになっていることを知った。百貨店とシェアリングは相対するのではなく、相乗効果を生める可能性を知った。

WWD:まず米国の事例に触発されたと。

澤田:しばらくしてエアークローゼットの天沼(聰社長)さんに話を聞きに行った。まだエアクロが現在のようにメジャーになる前だった。彼の話を聞いたり、出資したル・トートなど海外の事例を研究したりする中で、JFRの新規事業として直接参入すべきか、スタートアップ企業への出資を通じて参入するか、検討してきた。社内にも慎重論もあった。そもそも百貨店はストック(在庫)商売の経験がない。でも新しいチャレンジすべきという流れができ、百貨店の新規事業として始めることになった。で、ここにいる田端に事業プランを出すように指示した。

田端竜也・大丸松坂屋百貨店DX推進部マネージャー(以下、田端):でも最初に作った事業プランは上からふくろ叩きにあった(笑)。練り直した事業プランにゴーサインが出たのは19年12月。そこから大丸松坂屋百貨店の営業本部の力を借りて、ファッションブランドへの営業活動が始まった。難航するかと思ったら、外資ブランドはレント・ザ・ランウェイと取引があるので話は早かった。

澤田:昨年5月に私が大丸松坂屋百貨店の社長に就任したので、社長直轄のプロジェクトに位置付けた。当時、最大の壁はシステムだと考えていた。

田端:JFRや大丸松坂屋はいわゆるレガシーシステムなので、これに組み込むとかなりややこしい話になる。諸々の調整で1年くらいかかってしまうかもしれない。ならば、イチから在庫や顧客とのリレーションのシステムを作った方が迅速に臨機応変に動けると考えた。百貨店とのポイント連携などは一旦棚上げし、とにかくスタートを切ることにした。

WWD:「アナザーアドレス」に続くデジタルの新規事業も計画しているのか。

澤田:もちろん、そのつもりだ。いずれは事業利益5億円を稼げる事業を10個くらい作りたい。それで百貨店の1店舗くらいの収益になる。とにかくトライ&エラーを重ねる。若い人には失敗を恐れないでどんどんチャレンジしてほしい。経営側は腹をくくっている。

WWD:デジタル関連の新事業を進めるには社内体制や人材は?

澤田:3月1日付で新設したDX推進部が中心になる。分かれていたデジタル関連の部署を統合した70数人のチームだ。「アナザーアドレス」もここの管轄になる。部長には当社を退社してIT企業で働いていた岡崎路易に復帰してもらった。百貨店は保守的なので、いきなりIT のプロパー人材がリーダーになると萎縮してしまう。彼はITの知見だけでなく、百貨店の強みも弱みも知り尽くしている。

私は社長就任後、全員の部長と面談した。そこで分かったのは既存事業でもDXを用いれば宝の山になるということ。「アナザーアドレス」のような新規事業ではなくても、化粧品や美術品だってDXによって大化けできる。化粧品ではオウンドメディア「デパコ」とECとリアル店舗を三位一体にする改革に乗り出している。百貨店のOMO(オンラインとオフラインの融合)は人の魅力がキーポイントになる。大手のECモールとは異なり、●●さんが勧める商品、●●さんが接客する商品を買いたくなるといった差別化ができる。当社が得意とする美術品もバーチャル画廊のような機能によって、アーティストやキュレーターとの双方向コミュニケーションが体感できるものになるだろう。

WWD:「アナザーアドレス」の反響は?

田端:会員数は当初の計画通りで、まずは順調な滑り出し。特定のブランドや商品に人気が集中してしまうのではないかと心配していたが、海外のハイーブランドもドメスティックブランドもけっこう広く利用されている。ウィメンズで開始したが、メンズを望むお客さまの声も届いている。秋に向けて新しいブランドも増えるだろう。

澤田:田端はまだ32歳。百貨店の常識に染まりきっていない彼らの世代にとても期待している。

WWD:百貨店の新規事業の責任者としては若い。これまでどんなキャリアを重ねてきたのか。

田端:実は百貨店事業の経験は少ない。11年に新卒で大丸札幌店に赴任してワイン担当として売り場運営に従事した。ソムリエの資格を取ったりもしたが、すぐにJFRの新規事業開発部門に映って、ITやスタートアップ企業の案件に携わった。この間、シリコンバレーを頻繁に行き来したり、マレーシアに短期留学したりして外の世界を見てきた。

澤田:田端は百貨店の流儀に染まっておらず、広い視野でマーケットを俯瞰できる。彼に限らず、そんなマインドを持った若い社員が増えているので、とても頼もしく思っている。
田端:長くお客さまに信頼されてきた百貨店を持つ当社だからこそ、できることがたくさんある。大丸松坂屋やパルコなどJFRグループの顧客基盤も生かし、アナザーアドレスを手始めに新しいことをどんどんやっていきたい。

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エディに選ばれた「セリーヌ」初の日本人男性モデル 黒髪ロングヘアのKEITA

 エディ・スリマン(Hedi Slimane)アーティスティック、クリエイティブ&イメージディレクターが手掛ける「セリーヌ オム(CELINE HOMME)」2021-22年秋冬メンズ・コレクションに、ブランド創業76年の歴史で初めて日本人男性モデルが登場した。金字塔を打ち立てたのは、188cmの長身に黒髪のロングヘアが特徴のKEITAだ。大学在学中にモデルを志し、デビューからわずか2年で「セリーヌ オム」の舞台にまで上り詰めた彼の人物像に迫ると共にに、撮影秘話などを聞いた。

KEITAがモデルになるまで

WWD:モデルを志した理由は?
KEITA:大学3年生の終わり頃に、将来何がしたいかを改めて考えたのがきっかけです。それまで周囲に流されて生きてきたので、自分が興味のあること、好きなことを仕事にしたいと思い立ち、モデルに挑戦することを決意しました。

WWD:どのようにモデルになった?
KEITA:当時は一般的な4年制大学の学生で、周りにファッション関係の知人もいなかったので、希望者なら誰でもオーディションを受けられる事務所の門を叩きました。全く知識がなかったので、ポートレートの準備もなく、手ぶらでオーディションに行ってスマホで適当な写真を見せていたので当然合格する訳もなく(笑)。その後、インスタグラムでプロのカメラマンに連絡しポートレートを撮影してもらうなどし、少しづつ資料を作成しました。

WWD:すぐに事務所は決まった?
KEITA:日本の事務所を受け続けていたんですが、中々決まりませんでしたね。大学在学中に事務所を決めたり、モデルとして仕事をしたりと何か一歩踏み出したかったので、国内で決まらないのなら海外だと考え、20年10月にヨーロッパを1カ月間回って事務所を探しました。モデルや事務所などの情報を掲載している「モデルズドットコム(Models.com)」のランク別事務所リストの上から順にオーディションを受けて、最初に滞在したロンドンで運よく事務所が決まったんです。その後、21年1月のミラノ・メンズ・コレクションの「バリー(BALLY)」でモデルデビューしました。

WWD:どのような理由で事務所が決まったと思う?
KEITA:188cmと長身なことに加えて、今回の「セリーヌ オム」の起用理由でもある黒髪のロングヘアに興味を示してくれたようです。当時のアジア人モデルは短髪や坊主などが多かったので、上手く差別化できたのかなと思います。

エディに 認められ「マジか」

WWD:オーディションを受けた経緯は?
KEITA:他ブランドのオーディションを受けるために渡航する前日、海外の所属事務所から「セリーヌ オム」のモデルオーディションの連絡をもらいました。「上半身裸でスキニーパンツを履いて、ウオーキングする動画を送ってほしい」と言われたんですが、普段スキニーパンツを履かないので、空港に向かう道中の「ユニクロ(UNIQLO)」でスキニーパンツを購入し、友人に撮影してもらいました。現地でオーディションを受けたその日のうちに合格の連絡がきて、翌日にはデジタルショーの撮影現場に向かいました。

WWD:合格の連絡が届いたときの感想は?
KEITA:「いや、マジか……。」と思いました(笑)。僕は長身で細身、ロングヘアとエディが描くモデル像に合っていると感じていましたし、何よりこの仕事を始める前からファッション業界のレジェンドであるエディに憧れていたので、すごく嬉しかったですね。

WWD:エディの印象は?
KEITA:僕は画像でよく見るエディを想像していたんですが、実際の彼は髪が伸びていて、最初気付かなかったんですよね(笑)。エディに向けてアピールしようと意気込んでいたので「あれ?どこにいるんだ?」と。オーディション中、写真を撮ってる人がいるなと観察していると「あ、エディだ!」と気づきました。彼は、当時デザイナーを務めていた「イヴ・サンローラン リヴ・ゴーシュ オム(YVES SAINT LAURENT RIVE GAUCHE HOMME)」が東京でショーを開催したときに「プロのモデルに混じってストリートにいる若い子たちをキャスティングした」と裏話を教えてくれたり、「ピアス開いてる?」と聞かれ「開いてない」と答えると「誰かハサミ持ってきて!今からこの子の耳に穴開けるから!」と冗談を交えて話してくれたりと、チャーミングな人でした。

WWD:ショー会場のシャンボール城は壮大でしたね。
KEITA:世界遺産を約2週間貸し切って撮影しました。バスで田舎に行くとしか聞かされていていなかったので、車内で「すごくデカい城が見えるね」とほかのモデルと話していたら、ブランドチームから「あそこで撮影するよ」と聞いて「あそこで!?」とみんな驚いていました。城で撮影するなんて誰も思わないですよね(笑)。シャンボール城は狩猟のための滞在先として建設された城なので、今でも特定の日は、周辺で狩猟が行われていて、「今日はあまり外出しないでね。弓で撃たれちゃうよ(笑)」とブランドチームの人が話していたのが印象的でした。

WWD:ほかのモデルの様子は?
KEITA:シャンボール城に行く前に「田舎すぎて周囲に何もないから時間をつぶせる物を持ってきて」と言われていました。スケートボードやゲーム機などのほかに、ギターを持ってきたモデルもいました。待機中に皆でセッションが始まって、いかにもエディが選んだモデルっぽいなと感じましたね。僕はニンテンドースイッチしか持って行きませんでしたが(笑)。

WWD:ブランド側からショーに関する指示はあった?
KEITA:「セリーヌ オム」は、過去のコレクションでも歩き方などはモデルに委ねているのでようで指示は特になかったです。現場では常にショーの音楽が流れていたので、BGMにノリながら歩くという感じでした。普段履かないヒールブーツで、さらに床が石畳だったのでとても歩きにくかったです。

今後の展望や意気込み

WWD:憧れのモデルはいる?
KEITA:特定の人はいないですね。最近は何となくほかのモデルを意識するようになりましたが、人それぞれ見た目もキャラクターも違うので、真似をしても売れるとは限らない。いろいろなモデルを隔たりなく見たり、話を聞いたりして良いところを吸収しています。

WWD:モデル2年目を迎えて、心境の変化はある?
KEITA:プロのモデルとして、いつでもショーに出られるようベストな状態でいることをより強く意識しています。事務所探しで海外に行くときに、父に言われた「趣味で終わらせるなよ」という言葉が常に心の中にあります。また最近では、いつも楽しもうという気持ちを心がけ、オーディションに落ちたり、なにか失敗したりしても後で笑い話になればいいやとポジティブ思考でいることを大切にしています。ただ、毎回受からなかったブランドのショーを見て、誰が代わりを務めていて自分とは何が違うのかを見て、今後に生かせるようにもしています。

WWD:今後の展望を教えてください。
KEITA:まずは目の前の仕事を一生懸命取り組むこと。そして、一流ブランドの仕事には学ぶことが多いので、「セリーヌ オム」をはじめ、メゾンブランドのショーにはまた出たいです。また大学時代はサステナビリティについて学んでいたので、モデル業を通してそういったことに関われたらいいですね。大学での経験を生かし、ファッション業界に少しでも貢献したいです。

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マリエが本音で語る「私の33年目のサステナブル」 Vol.11 ファッション好きの少女がデザイナーになるまで【パーソンズ編】

「あなたたち!昨日の『ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)』のニュースは見た!?」

それが、私のパーソンズ初日の授業で教授が発した言葉だった。その瞬間、「これが好きなことを学ぶということなのだ」と感じた。

毎日授業と課題に追われ、24時間ほぼファッションのことしか考えていなかった。それまで“勉強=嫌なもの”と考えていた私は、勉強を勘違いしていたと気付いた。好きなことを学べる幸せを噛みしめ、まるで何かのボタンを押されていたかのようにファッションに没頭した。

留学前は23歳での大学進学について、周りは懸念していたがフタを開けてみると、私はクラス最年少だった。人種もバラバラ。同じクラスには60代の女性もいて、「歌手になる娘の衣装を作ってあげたい」と話していた。スキルアップのために受講している有名アパレルブランドの現役社員もいて、そんな生徒たちとの情報交換も楽しかった。

中でも、「ウィンドウディスプレイ」「ファッションライティング」「ファッションマーチャンダイジング」など、デザイン以外のクラスが私の脳を活性化させたことは間違いない。

例えば、「ウィンドウディスプレイ」の授業では、人の目の動きを学んだ。広告やウィンドーという箱の中に“目”をつけると、人は洋服より先に“目”に視線がいくらしい。だから“目のない”マネキンがあるのか、と納得した。多様性の観点から使うライトにも配慮し、肌の白い人や黒い人をはじめ、それぞれに合うライティングがあることも日本では気付けなかったことだ。

「ファッションライティング」の授業では、教授の「言葉を添えることで、服そのものの美しさに何倍もの輝きとパワーを与えることができる」という言葉が印象的だった。

「ファッションマーチャンダイジング」では、デパートを何十周もして地図を描き、人の流れを観察した。一つの建物の中で、何を、どこに、どう置くかをどのように決めているのかひたすら探った。

どれも充実した授業だったが、実は英語へのコンプレックスが半端なく、人前ではほとんど喋れなかった。だから最後の授業での作品発表後、そそくさとクラスの隅に引っ込んだ私を教授とクラスメイトが引っ張り出してくれて、「パスカルはシャイだけれど、作品は素晴らしい」と笑って讃えてくれたことはうれしかった。

成績は、苦手だった「パターン」のクラス以外全てAだった。言葉が苦手な分、“伝えたい”という気持ち一心で技術を磨いてきた。辛い戦いの日々だったが、それでもやめなかったのはやはり“好きなことに出会ったから”。

これは、私が学んだ持続可能な社会を作るための一つのヒントだ。日本で「好きなことを仕事に」というと、「ずるい」とか「ラクしてる」と思われることもあるが、私は“好きだからこそ”続けられ、問題や壁にぶつかっても乗り越えられている。そこに“持続可能な社会”が存在すると信じている。

次世代には、ぜひ好きなことを仕事にできる未来を描いてほしいと心から願う。そして、私たち大人はその未来をデザインし続けなければならない。

さらにもう一つ伝えたいのは、大人も何度でもやり直せるということ。だって、私がそうだから。

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「ブルネロ クチネリ」が表参道に作った日伊の懸け橋は、優しく穏やかで明るい“家”

 「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」は3月26日、東京・青山のフロムファースト通りに表参道店をオープンした。地上2階、地下2階の4フロアからなる専有面積約915平方メートル(売り場面積約600平方メートル)のショップは国内最大。設計は、世界中の「ブルネロ クチネリ」の店舗を手掛けるイタリア人建築家のロレンツォ・ラディ(Lorenzo Radi)が担当した。コンセプトは“イタリアと日本のデザインの融合”だ。

自然光が差し込む店内では
随所で日伊が融合

 「ブルネロ クチネリ」表参道店に足を踏み入れたゲストは、まずグレージュの空間に包まれる。ブランドらしい、優しく穏やかで明るい色の世界だ。ウッドとメタルを組み合わせた店内に配置したのは、丁寧に修復したアンティークのソファやテーブル。2階にしつらえた木製の大型什器は、18世紀に北イタリアの教会で使われていたアンティークだ。イタリアのプロダクトを日本のショップに持ち込んで異文化を融合したほか、片田舎で見つけたビンテージに再び命を注ぎ込むことで、「ブルネロ クチネリ」らしい地元愛やサステナブルな精神を表現する。

 日本古来の文化に対するリスペクトも特徴で、カウンター横の2階に続く階段には、“ルーバーウォール”と呼ぶ日本の障子をイメージした木製の鎧戸のような装飾を施す。壁面の一部には掛け軸をモチーフに、ジュート(麻)にセメントを重ねたテクスチャー感のある壁紙を採用した。また全ての家具・資材をイタリアから輸入した。日本とイタリア、伝統とコンテンポラリーなど、「ブルネロ クチネリ」表参道店は地理的・時間的な隔たりを超越する。

地下フロアには
テーラードスペースと“知の空間”を

 地下1階のメンズの売り場も空間をぜいたくに使い、ゲストの居心地を重視する。一角には、ブランドが“サルトリア ソロメオ”と呼ぶメードトゥメジャー(カスタムメード、以下MTM)を受け付けるテーラードスペースを設ける。MTMは、「ブルネロ クチネリ」でも人気のサービスの一つ。ベスト1枚から注文を受け付け、ブランドが推すセパレートのコーディネートも完璧なフィッティングで楽しめる。リネンやコーデュロイなど季節の素材も充実し、MTMスペシャリストや地下2階には2人のテーラーも常駐し心強い。

 約6メートルと天高な地下2階に広がるのは、ブランドの本拠地であるイタリア・ソロメオ村の劇場や図書館のように、広く一般に開放する学びのアートスペースだ。日本とイタリアの懸け橋になるべく、初回は陶芸家・辻村史朗氏の器を並べた。辻村氏は「私のモットーは“好きなことを、好きなように、好きなだけやる”。だから、お客さまにも私の作品を好きなように楽しんでほしいです」と話す。今後は、世界中の店舗に先駆けた“知の空間”として、ゲストアーティストにちなんだワークショップも開催予定だという。

 地下2階の壁面にディスプレーするのは、イタリア・ウンブリア州の職人が手掛けるセラミックの食器や花器、カッティングボード、大理石のテイストを持つ箸&箸置きセットなどの“ライフスタイルコレクション”で、その奥には本を愛するブルネロ・クチネリ会長兼クリエイティブ・ディレクターにちなみ、ブランドの哲学を知ることができる“ライブラリー”も構えた。

「恐れを希望に変えて、
共にリスタートしましょう」

 表参道店のオープンに際してクチネリ会長は、「この美しい街に、新たな店舗をオープンできて大変うれしく思います。これを機に、あらためてわれわれの商品と哲学を日本の皆さまに知っていただきたいです。日本のアート、そしてサムライスピリットは常に私を魅了します。あなた方の同胞であるパオロ・ナガイ(被爆者であり医師・作家の永井隆)は『希望のない人生は生きるに値しない』と書き残しています。だから、恐れを希望に変えて共にリスタートしましょう」とエールを送る。

 また宮川ダビデ・ブルネロ クチネリ ジャパン社長は、「コロナ禍での出店準備となりましたが、クチネリ会長は常に私をサポートし、『現状を見るのではなく、10~100年先を見るように』と励ましてくれました。われわれは表参道店を“カーサ・クチネリ(クチネリの家)”と呼んでいます。顧客のみならず、全ての人がイタリアと日本の文化・芸術を分かち合える懸け橋としたいです」と述べた。

イタリアに生き、
イタリアから発信するブランド

 「ブルネロ クチネリ」は1978年に創業。ブランドコンセプトに“スポーツ・シック ラグジュアリー”を掲げ、今なおメード・イン・イタリーにこだわる。カラーカシミヤで一世を風靡したのち、85年にクチネリ会長の妻の故郷であるイタリア中部のソロメオ村にある14世紀に建てられた城を購入。修復して本社とした。村民を雇用し、村に新たに劇場を作るなど地域の発展に寄与。2013年には、職人の技術を継承するための“ソロメオ学校”を開校した。18年には、次世代に美しい大地と風景を残す“A Project for Beauty(美のためのプロジェクト)”により、東京ドーム約18個分の平野に公園を作った。

問い合わせ先
ブルネロ クチネリ ジャパン
03-5276-8300

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kemioと考える、みんなに居心地のよいヘアサロン #PrideHairへの賛同サロンは1000店舗を超え拡大中

 P&Gのヘアケアブランド「パンテーン(PANTENE)」は、“あなたらしい髪の美しさを通じて、すべての人の前向きな一歩をサポートする”という理念のもと、“ヘアサロン向けLGBTQ+フレンドリーマニュアル”を公開した。同ブランドは昨年9月、就職活動で自分を偽らず自分らしさを表現できることを願うプロジェクト“#PrideHair”を始動すると、12月には個性に寄り添うヘアサロンを日本全国に広める“#PrideHair サロン”プロジェクトをスタート。ワークショップなどを踏まえて“ヘアサロン向けLGBTQ+フレンドリーマニュアル”を策定し、現在はセクシャルマイノリティーにも優しいヘアサロンを増やそうと、プロジェクトへの賛同サロンを募っており、その数はすでに1000店舗を突破した。

 今回は、kemioが、プロジェクトにいち早く賛同したヘアサロン「ミンクス(MINX)」を訪問。「苦手だった」とまで言うヘアサロンでの思い出を振り返りながら、賛同サロンにLGBTQ+フレンドリーになろうとした経緯や、具体的な心配りを聞いた。

きっかけは「SDGs」、
LGBTQ+フレンドリーは「延長線上」

 kemioが訪れたヘアサロン「ミンクス」の銀座店は、8年前にオープン。銀座で、60人のスタッフを抱える大きなサロンだ。店舗の指揮を執るのは、菅野久幸取締役エグゼクティブ・ディレクター。菅野ディレクターは“#PrideHairサロン”プロジェクトへの賛同のきっかけを、「サロンとしてSDGs(国連加盟国が2030年までに達成する持続可能な目標)、特に『ジェンダー平等を達成しよう』や『パートナーシップで目標を達成しよう』に取り組む中、LGBTQ+フレンドリーになることは、その延長線上にあると考えました」と振り返る。SDGsを意識するようになったのは、「激選区の銀座で戦うために視察したニューヨーク5番街のヘアサロンは、天然木のフローリングで、テーブルにはオーガニック栽培のリンゴが置いてありました。みんな、施述が終わると、一つもらって、歩きながら食べて帰るっていうんです。そんなナチュラルなライフスタイルを提案したいな」と思って以来。「パンテーン」が作成した“ヘアサロン向けLGBTQ+フレンドリーマニュアル”が提唱する、「美容室は、職場・家庭とは異なる『第三の居場所』」というメッセージにも共感した。

「気を使って、いろんな話をしてくれる」
から「遠ざかった」

 店舗を訪問する前は「ヘアサロンで不快な思いをしたことがない」と話していたkemioは、菅野ディレクターの話を聞いて少しずつ、昔の“居心地の悪さ”を思い出した。そして「kemioとして活動する前は、“10分間カット”に通っていたんです」と告白。「ご本人に悪気がないことはわかっているけれど、必要以上にいろんなコトを聞かれると、面接のように感じてしまって。カムアウトする前はとっさにウソをついてしまう時もあって、『次はなんて答えよう』とか『またウソをつかなくちゃならないのかな?』なんて考えるのもイヤでした。結果、“行きつけ”は作らず、最初はいろんな場所を転々として。でも、毎回、違うヘアサロンを探すのもイヤだったんです」と、セクシャルマイノリティーの当事者なら一度は感じる“居心地の悪さ”や“気まづさ”“本当なら楽しいハズの場所なのに、楽しめない無念”を吐露。そして日本と行き来するアメリカについて、「若い世代を中心にアメリカの消費者は、何かをサポートしていたり、社会に貢献したりの企業やブランドからモノやサービスを買うようになっています。日本も同じようになると思います」と続けた。

空間から接客まで総点検。
来店客からも「真剣」と好評

 SDGsや“#PrideHair サロン”プロジェクトを意識して以降、菅野ディレクターは、雰囲気づくりから接客までを総点検、さまざまを改善している。もともとジェンダー・ニュートラルを意識した内装だったが、1つのトイレは男女の区別なく、誰でも使えるように変更した。新型コロナの影響も手伝い、雑誌は、来店者が自由に選べるダブレット端末で楽しむ電子版に切り替え。接客では、「3回目までは、サロンからプライベートに踏み込まない」を心掛け、結婚や仕事、政治などの話は特に注意するようになった。

 日本では10人に1人はセクシャルマイノリティーと言われている。60人のスタッフが働く銀座店にも、複数のLGBTQ+がいるのだろう。そこでスタッフとのコミュニケーションも「随分変わった」と菅野ディレクター。人の心に土足で入り込み、「彼氏は?」や「彼女は?」と聞くことはなくなった。
 こうした対応は、来店客からも好評だ。特に銀座店の顧客には企業でダイバーシティーやSDGsの研修を受けている人も多く、「『ジェンダーに真剣に向き合っているんですね』と応援していただくことも多い」。

 今年は、銀座店でのSDGsやLGBTQ+フレンドリーの取り組みを「ミンクス」全店に拡大する。いち早く勉強してきた菅野ディレクターは全店を回り、勉強会を開催予定だ。

“#PrideHair”賛同サロンは、
早くも1000店舗超え

 「パンテーン」は、“#PrideHair”というハッシュタグのもと、実体験を伝えながら皆でより良い就活のあり方を考える活動をスタート。トランスジェンダーが就職活動の実体験を語る動画の再生回数は2000万回を超え、当事者のみならず、LGBTQ+をサポートしたいと願うアライの賛同も多かった。一方でジェンダーに対する誤解や思い込みは少なからず存在し、「知らなかった」「気づきを与えてくれてよかった」などの反響も届いたという。これを受け、同ブランドはヘアサロンが「誰もが、自分らしい髪になれる場所」になることを目指して年初にガイドラインを策定し、現在賛同サロンを募っている。反響は大きく、賛同サロンの店舗数は現在1000を大きく超えている。

 P&Gでは、役員や人事部門、面接官に対してLGBTQ+をはじめ、多様性への理解を深める研修を実施している。面接を行う社員の先入観を少しでも排除するため、14年からはエントリーシートの写真欄を削除、19年には性別欄に“その他”という選択肢を設定した。21年には生年月日情報も削除することで、年齢による先入観も排除する。

PHOTOS:KICHIRAKU YOHEI

問い合わせ先
パンテーン

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メード・イン・ジャパンでありながらインポートランジェリーの魅力を表現する「ランジェリーク」の有馬智子 ランジェリー業界の開拓者 vol.6

 新型コロナウイルスの感染拡大は、従来の商品やサービスの在り方に変化をもたらしている。対面のフィッティング接客や機能ありきの商品を重視してきた下着業界にも影響を及ぼしているのは言うまでもない。ライフスタイルが大きく変わり、既成概念に縛られない新たな価値観が下着にも求められる。この連載では、コロナ禍に先んじて新領域の商品やサービスを生み出し業績を伸ばす下着業界の開拓者を紹介する。

 第6回に登場するのは、「ランジェリーク(LINGERIQUE)」の有馬智子クリエイティブディレクターだ。2010年に誕生した同ブランドは日本のブランドでは珍しく、ノンワイヤーブラやカップに裏当てのないノンパテッドブラにより、繊細なレースの美しさを前面に打ち出したミニマルなデザインを提案している。ヨーロッパのブランドのような軽いつけ心地と、日本のブランドならではの丁寧なモノ作りを兼ね備えたブラジャーは日本の下着業界に新風を吹き込んだ。19年からはラウンジウエアも強化している。

――「ランジェリーク」とはどんなブランドか?

有馬智子クリエイティブディレクター(以下、有馬):女性にそっと寄り添う存在。「ランジェリーク」は整った環境で、さらに良い方向に育てるように活動しているブランドだ。“シンプル、エレガント、スマート”というコンセプトだが、その捉え方は人それぞれ。この環境の中で、どうやって美しいものを作っていくか常に考えている。その思いで作ったものが顧客に好意的に受け入れられ、新作を楽しみにしてもらっている。それに応えられるものを創造したい。

――環境が整っているとは?
有馬:最大の強みは親会社であるカドリールニシダの生産体制だ。「ランジェリーク」の下着は100%カドリールニシダの中国・青島工場で縫製している。1969年創業という長い歴史があり、自社工場は著名なヨーロッパブランドの縫製を請け負うほどの非常に優れた技術力を持っているため、他の工場では難しいと思われる繊細な素材を選べる。それはクリエイティブディレクターとして何よりも心強いことだ。ブランド立ち上げのときも05年から続いていた「クロエランジェリー(CHLOE LINGERIE)」のライセンス契約満了に伴い、その市場を「ランジェリーク」で受け継ぎ、育てることができたのはありがたかった。ブランド設立以来、売り上げは常に前年を超えて成長し続けている。

ノンパテッドブラが日本の市場で難しいという概念はない

――ブランド設立時から日本の市場では難しいとされるノンワイヤーブラやノンパテッドブラを展開していたその理由は?
有馬:そもそもそれらが“難しい”という概念はなかった。私自身がインポートの下着が好きで、日頃からノンワイヤーやノンパテッドを愛用していたこともあり、快適に過ごせることや、美しいものを身につけたいと思う素直な気持ちからデザインしている。下着の仕事に関わる前もヨーロッパのブランドが好きで、そう思うのかもしれない。自分が作っている商品にピュアに向き合いデザインしている。自分が感化されるヨーロッパのランジェリーを見ること時間を費やして私自身が納得でき、顧客に満足してもらえるものを作ることに注力している。いろいろなものがあっていいと思うが、売れているからと似たようなものを作っても意味がなく、モノが増えるだけ。余計なモノは作りたくない。

――それでいて独りよがりにならない理由はどこにあるのか?
有馬:日常生活におけるいろいろなことを想像して作っているからかもしれない。見た目が美しいのはもちろん、生活のなかで求められる機能は何か、快適なフィッティングはどうあるべきかを追求することに集中している。ワイヤー入り、ノンワイヤー、ノンパテッドのブラジャーを展開するようになったのも、戦略ではなく顧客が求める機能を反映させた結果だ。そのニーズと美しさのバランスをデザインしている。

――素材の美しさを生かし、余分な装飾がないデザインコンセプトはどのように生まれたか?
有馬:デザインコンセプトというより、自分が理想だと思う形、素敵だと感じるものが余分な装飾をしないものだった。「ランジェリーク」の素材は美しく上質なものを使用している。全体の約6割はインポートのレースだ。フランスのカレーやコードリー地方のメーカーが生産するリバーレースは、それ自体が芸術品のようですばらしい。その美しさを生かすことが重要だと思っている。

パリのランジェリー展がモチベーションに

――ブランド設立から10年が経過したが?
有馬:10年間ひたすら前進してきたという感じだ。世界中がコロナ禍にある今は、まるで、方位磁石が狂ったような状態で、どちらの方向に進めばいいのか見極めるときだと思う。16年7月から連続して出展しているパリのランジェリー展が開催されないことも大きい。改めてランジェリー展がモチベーションになっていることを実感している。

――日本とパリの展示会は何が違う?
有馬:世界中の約400ブランドが並ぶ中、オリジナリティーがないとバイヤーの目に留まらず、商品に触れてももらえない。可能性があると思えば率直にアプローチがあり、それがブランドの英気を養っている。評価されてビジネスを広げていくための課題があり、それを解決するためにまた邁進する。その繰り返しで少しずつ取引先を増やしていった。

――ラウンジウエアにも力を入れている理由は?
有馬:ランジェリーがベースだが、ラウンジウエアは、ブランドの世界観を伝えるためにとても有効なアイテムだと思っている。18年にオープンしたニュウマン新宿や松屋銀座本店などで広いスペースの売り場ができたことで、下着だけでなくラウンジウエアを展開できる環境が整った。ファッションブランドに勤めていたこともあり、「こういう部屋着があったらいいな」と思いスタートした。売り場を限定しているため、まだあまり知られていないが売り上げに貢献している。

――今後の目標は?
有馬:成熟しながら実らせる、それを繰り返していくこと。「ランジェリーク」に関わるあらゆる人々から顧客に至るまで全ての人が充実した日々を送れること、その循環が有機的な進化を生むと考える。人もレースも、その素材の魅力を最大限に生かし、しっかり根をはり、それぞれの長所を生かしながら成長していきたい。

川原好恵:ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルス分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身

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美容室の新たな通い方を提供 ヘア業界の課題解決を目指す「メゾン」の鈴木代表【ネクストリーダー2021】

 「メゾン(MEZON)」は、美容室のシャンプー・ブローやヘアケアサービスを月額定額で提供するサブスクリプションサービスだ。2018年2月から展開し、加盟店は首都圏を中心に全国約1000店にまで拡大。カット・カラーを軸に運営する従来のサロンの在り方に対し、ユーザーはさまざまなメニューをより手軽に試せるようになり、美容室にとってもリピート率向上に貢献している。ユーザーと美容師どちらに対してもメリットをもたらし、新しい“美容室の通い方”を提案する画期的なシステムだ。そんな「メゾン」を率いる鈴木みずほジョシー(JOCY)代表が、「WWDJAPAN NEXT LEADERS 2021」に選出された。

WWD:美容室での勤務経験がない鈴木代表が、このサービスを思いついた経緯は?

鈴木みずほジョシー代表(以下、鈴木):前職ではプレゼンを行う機会が多かったが、正直苦手だった。ところがある時美容室でシャンプー・ブローを受けてから臨んだら、いい結果を出せた。その時に「私は美容室で自信ももらっている」と気が付き、美容室をもっと気軽に通える場所にしたいと考えた。

WWD:目新しいサービスだが、どのように加盟店を増やしたのか。

鈴木:このサービスは美容室の協力が重要なので、最初から「どうしたら協力してくれますか」と美容師を巻き込んだ。サービス導入の営業ではなく、金額も含めて要望を聞き、ビジネスモデルを一緒に構築した。

WWD:美容室と話す中で、どのような経営課題が見えた?

鈴木:集客は大きな課題。美容室のお客のリピート率は約15〜30%と低く、新客の獲得はクーポン券に頼ることが多い。そうするとお客も価格で美容院を選ぶようになり、次回以降も新客向けクーポンを使い、別の美容室に行く……という負のスパイラルが起こる。一方で「メゾン」のメインユーザー層である30〜40代は価格より質を重視する。初めての美容室でカット・カラーを受けるのは、失敗が不安だという意見が多かった。だから「メゾン」は手軽なメニューで美容室をお試しでき、信頼を得て再来してもらえるように設計した。カット・カラー以外の収益は美容室のメリットも大きい。女性は年平均4.2回美容室に行くが、美容室は直近10年で7万軒も増えて、25万軒に達した。膨大な美容室がカット・カラーだけでお客を奪い合うのは限界がある。

WWD:美容室が増え競争が激化しても、なぜ業界は変わらない?

鈴木:要因はさまざま。美容室はもっと柔軟に、新しい収益基盤を作るべきだと感じる。それは働き方にも当てはまる。美容室は女性経営者が少ないが、その要因の一つに出産・育児が挙げられる。出産と産休で3年ほど仕事から離れれば、技術もトレンドも大きく変化し、復帰が難しい。ヘッドスパやトリートメントであれば専門職として新しい働き方も模索できるのでは、と思う。

WWD:ローンチから3年、順調に拡大しているように見える。大変だったことは?

鈴木:1つは資金調達。投資家の多くが50代以上の男性でサービスへの理解を得るのが難しく、自分まで事業内容に自信を持てない時期があった。2つ目は新型コロナ禍。昨年4月の緊急事態宣言では、ユーザーに一時解約を促進し、調達したばかりの資金がみるみる減っていった。ジョシーとしては新規事業も計画したが、結局全て白紙に。新事業は私たちがすべきことなのか、私たちが提供したい価値に近づくことかと考え直した結果だ。経営者としては一番勇気がいる決断だったが、今はコロナ以前の8割までユーザーが戻っている。

WWD:これからの市場をどう見据える?

鈴木:今後10年でメガヒットするサービスはなかなか生まれないのではないか。人の価値観やライフスタイルは多様化し、顕在化した課題を解決するサービスもほとんどそろった。その中で生まれるのは、細分化された価値観に合った商品、少数に愛されるサービスだろう。私たちは新しいライフスタイルを作ることで、生き方の選択肢を増やしたい。

【推薦理由】
 日本の美容室の数は約25万軒あり、コンビニよりも多いとされる。近年はクーポンサイトの台頭などで価格競争が激しくなる中、美容室にとってリピート顧客の定着や収益率が高いサービスの提供は課題とされてきた。一方ユーザーからすると、トリートメントやヘッドスパなど、これまでカット以外の目的で美容室に通うことはハードルが高いとされてきた。そこで「メゾン」はカット・カラー以外のメニューを定額で通えるようにすることでユーザーはより多くの美容室を気楽に通えるようにした。コロナ禍でヘアサロンも打撃を受ける中で、美容室の新たな通い方を提案している。またユーザーにも、美容室にもメリットがある仕組みとして、業界にポジティブなチェンジをもたらしている。

臼井杏奈:産経新聞社を経て、2017年から「WWDJAPAN.com」「WWDビューティ」編集記者として海外市場やビューティテックの取材を担当。現在はフリーライターとして活動。 日本美粧協会「チャイナコスメティックラボ」研究員

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“ファッションは時代を映す鏡” 2021-22年秋冬コレクションから読み解く、少し先の明るい未来

 “ファッションは時代を映す鏡”と表現されますが、パリをはじめとする各都市からオンラインで発表された2021-22年秋冬コレクションではそれを強く実感しました。私自身、パンデミックという初めての経験で抱いた感情や思想を、どう処理すべきか分からない生活が続いていました。モヤモヤを抱えていたのはブランドも同じで、衣服を通して私たちの心の声を代弁してくれたように思います。コレクションを見ていると、「今こんな気分じゃない?私もだよ」とか「今不安だけど、こんな楽しい時間が少し先の未来で待っているからね」と対話しているような感覚になりました。世相の影響を受けるファッションが、どのように現代を映しているのか、今季の象徴的なルックとともに紹介します。

1960年代スタイルが豊作
ミニスカートが意味する新しい時代の幕開け

 今季は60年代をほうふつとさせるスタイルが多く見られました。その代表格であるミニスカートを「シャネル(CHANEL)」「ディオール(DIOR)」「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」「バルマン(BALMAIN)」が打ち出しています。ミニスカートは60年代に「マリークヮント(MARY QUANT)」と「クレージュ(COURREGES)」が火付け役となりました。イギリスでは「マリークヮント」がストリートの若い女性たちが履いていた短いスカートに目をつけて提案。その後フランス版「エル(ELLE)」やアメリカ版「セブンティーン(SEVENTEEN)」などの若い読者をターゲットにした小規模な婦人服の製造者たちも、ミニスカートを販売し広めたとされています。パリで「クレージュ」が初めてミニスカートを発表すると、大人の女性を顧客とするオートクチュール界では非難されるも、若年層を対象としたプレタポルテでは受け入れられ、多くのデザイナーが続々と取り入れていきました。当初、世間では脚を露出することは“ミニスカートは女性のエレガントな美しさを損ねるもの”と諭されても、若者がリードする時代に逆らえず、最終的には受け入れられたのです。ミニスカートの流行は服飾史において、従来の女性の服装についての既成概念を打ち破るものであり、上流階級から大衆へ、大人から若者へ、消費者大きくが移行したことを鮮明に示す出来事の一つでした。

 ミニスカートが60年代と現代とで異なるのは、ストリートファッションとしてではなく、性の価値観が大きく変化している側面を表している部分にあると感じます。性に対する女性の考え方もここ数年で変化が見られ、今季はほとんどのブランドがプレスリリースで“フェミニズム”という単語を出していませんでした。現在は、女性は女性であることをより楽しみ、世の中と力を合わせて社会で地位を確立していくという空気感があります。「エルメス」はギリシャ神話に登場する女性だけの騎士アマゾン族になぞらえ、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」ではショー映像のフィナーレにモデルが勝利の女神の彫刻「サモトラケのニケ」を見上げ、「ミュウミュウ(MIU MIU)」はランジェリーとダウンジャケットを着たルックが雪山を勇敢に進んでいく映像で“集合的な力”というメッセージを盛り込みました。新しい時代に向けて、女性が女性であることの意義を説いているように感じました。

構築的なシルエットと直線的な模様の
デジタル映えと快適性

 また今季は構築的なシルエットや、直線的な幾何学模様も多く登場しました。「ニナ リッチ(NINA RICCI)」はシャープなシルエット、「ロエベ(LOEWE)」は丸みのある立体的な袖とギザギザの裾、グラフィックは直線と曲線を合わせて抽象的に表現。「バルマン」はボーダー、「エルメス(HERMES)」「ディオール」「シャネル」も直線的な模様が印象的でした。

 構築的なシルエットと幾何学模様という2つの要素は、デジタルで映えるという特徴があります。二次元のスクリーン上で見た時にアウトラインや柄の線がハッキリとしていた服の方が目立ちやすいためです。これはパンデミックの影響により、多くの人がデジタルの世界に時間を費やしていたことが影響しているのかもしれません。消費者はリアルだけでなくデジタルでの見栄えの良し悪しも重要になり、ECサイトのスクリーン上で映える服といった点を、ブランドはマーケティングの観点から考慮すべきなのでしょう。「ヴァレンティノ(VALENTINO)」と、新ディレクターのデビューショーを披露した「クレージュ」は今季、無地の背景にすることで、服の輪郭と線の柄をしっかりと強調した演出になっていました。

 建築的なシルエットは西洋の服飾史では古くから存在しますが、これもまた「クレージュ」が60年代に新しい解釈で独自性を出しました。造形を優先してウエストを細くしたシルエットに、切替えやパネル、配色などのテクニックで快適性をもたらしたのです。65年に「イヴ サン ローラン(YVES SAINT LAURENT)」が打ち出した“モンドリアン”ルックは、直線と三原色を全面に配置し、芸術品の構図を取り入れながら、建築のようなAラインのシルエットを合わせた、新しい概念を生み出したミニドレスです。そして今季、多くのブランドが取り上げたキーワードは“コンフォート”であり、「クレージュ」のAラインドレスはストレッチジャージー素材が用いられ、「ニナ リッチ」はウエットスーツのようなネオプレン素材を採用するなど、機能的な素材と構築的なシルエットを合わせて、快適性を現代的に表現しています。

70年代の事象から解く
ファッションが示す明るい未来

 他にも「シャネル」が62年に創業したプライベートクラブのカステル(Castel)で撮影を行ったり、「クロエ(CHLOE)」が60年代に創業者のギャビー・アギョン(Gaby Aghion)がコレクション発表時にゲストを招いた老舗ブラッセリーのリップ(Lipp)をロケ地にしたりと、60年代のキーワードを発見しました。ただレトロ回帰やノスタルジーといった過去への感傷的な切望ではありません。ファッションはパンデミックの終息を予期して明るい未来に焦点を合わせ、その参照として、60年代からヒントを得たのでしょう。歴史は繰り返すと言いますが、もし60年代と現在の状況が似ているとしたら、私たちにどんな未来が待っているのでしょうか?

70年代はファッションが一気に多様化した時代です。高田賢三や三宅一生がパリコレに進出して成功を収め、ニューヨークも既製服産業が成長したことでパリに迫る勢いをつけました。イタリアではジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)やジャンニ・ヴェルサーチ(Giovanni Maria Versace)らが名を馳せたことで、ミラノにも世界中から人が集まるようになったのです。70年代の2度のオイルショックの影響で、経済成長率は緩やかに低下しますが、服飾を含む製造業は急速に発展。欧米ではそれ以前から活発であった女性解放運動が最盛期を迎え、離婚法と中絶法の改正、国連が国際女性デーを正式に制定するなど女性の社会的地位向上が進みました。60〜70年代の歴史を振り返って現代と重ねたら、いまは従来の価値観を揺るがす困難な状況ではあるけれど、私たちは確かに前進していると感じます。

 私が暮らすフランスは2020年3月中旬に最初のロックダウンが始まり、規制の緩和と強化を繰り返して現在(21年3月末時点)は3回目のロックダウン下にあります。私は今自分が置かれている状況や時代の輪郭をはっきりと捉えられていませんが、時間の経過によって、少し明瞭になっていくのだと思います。過去は現在に痕跡を残しますが、それは見方によって幾様にも姿を変え、今と未来を切り開くカギになることがあります。今はただ時流に身を委ね、ファッションが示す明るい未来に期待しましょう。今季のコレクションが店頭に並ぶ頃には、今が過去となり、各々の中でこの困難な経験に対する何かしらの答えや新たな側面が見え、私たちは前進しているはずです。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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人気美容師が“21年春夏ヘアカラートレンド”を語る 肌がきれいに見える“春映えピンク”が今の気分

 プロフェッショナルヘアメーカーで、トップクラスのヘアカラーシェアを誇るナプラと、「WWDJAPAN」Digitalがコラボレートし、“2021年春夏ヘアカラートレンド”をテーマにトークセッションを実施した。参加したのは、ヘアカラーで高い支持を得ている人気美容師、「シキ(siki)」の伊藤竜代表、「ベル ギンザ(Belle Ginza)」の加藤千明店長、「アピッシュ オモテサンドウ(apish omotesando)」のmayuトップデザイナーの3人。村上要「WWDJAPAN」編集長がMCを務め、サロンワークで提案しているヘアカラーや顧客のニーズ、カラーリングのポイントなどについてトークした。

 3人ともトレンドセッターサロンで働いているが、それぞれ顧客の傾向は異なる。伊藤代表の顧客は20代の女性が大半で、この時期は高校を卒業し、大学に入るまでの期間にブリーチをしたいというお客がかなり多い。2~3回ブリーチするくらいの明るさが求められているという。加藤店長は銀座店勤務ということもあり、30~40代が客層のボリュームゾーン。比較的落ち着いたカラーのオーダーが多いが、その中でも「おしゃれを楽しみたい」「人と違った個性を出したい」と考える人が多いという。mayuトップデザイナーは看護師やCAの顧客が目立つ一方で、SNSで韓国の俳優が好むようなヘアカラーを提案しているので、それに刺激されて来店する人も少なくないという。

 トークの中で語られる客層によるヘアカラーニーズの違いや、客層に関係なく共通する全体的なトレンド傾向は要注目だ。

3人の人気美容師が語った
“2021年春夏
ヘアカラートレンド”とは?

“肌映え”“くすまない”といえば
「ナシードカラー」の春の新3色

 “2021年春夏ヘアカラートレンド”をテーマにしたトークの中で、3人の美容師が共通してトレンドとして挙げたのが、“くすまずに肌がきれいに見えるカラー”だ。ナプラのヘアカラー剤「ナシード(NASEED)」が今年1月に発売した春の新3色は、そのトレンドを体現したカラーになっている。黄みを抑えて透け感とシルバー感を表現できる“モノグレージュ”、他のピンクと比べて彩度が高く、中・低明度でもきれいに発色する“オリエンタルピンク”、にごりにくく透明感が出せる“スカイブルー”の3色だ。

 今回のトークの中で伊藤代表は、「僕は“モノグレージュ”がすごく好きで愛用している。グレー過ぎずベージュ過ぎず、日本人の髪に合っていて、透明感やクリア感を演出できる。発色や肌なじみもいいので、これ1本あればいいという印象」と話す。加藤店長も「艶が出て肌の色がきれいに見える“オリエンタルピンク”は多用している。発色がいい一方で、透明感のある“ほんのりピンク”にも調整できるので、ピンク初挑戦の人でも楽しめる」とコメント。mayuトップデザイナーは“スカイブルー”推しだ。「“スカイブルー”1本でオレンジみを消せるのでよく使っている。色の抜け方もきれいなので、お客さまからもすごく好評。“スカイブルー”と“モノグレージュ”を使った仕上がりを“アイスグレージュ”というネーミングでインスタグラムに投稿していたら、最近では『アイスグレージュで』とオーダーしてもらえるようになった」。

ファッションカラー全107色の
豊富なラインアップを誇る
「ナシードカラー」

 「ナシード」は、2種類の植物種子オイル(マカダミアナッツオイル、グレープシードオイル)に加え、6種類のオーガニックハーブエキスなどの保湿成分を配合したヘアカラー。艶やかで滑らかな仕上がり、ファッションカラー全107色の豊富なラインアップが特徴だ。

 春の新3色“モノグレージュ”“スカイブルー”“オリエンタルピンク”は、それぞれ6、8、10、12Lvをそろえる(“オリエンタルピンク”のみ6、8、10Lv)。

“2021年春夏
ヘアカラートレンド”に関する
トークセッションの様子を公開


PHOTOS:YOHEI KICHIRAKU

問い合わせ先
ナプラ
0120-189-720

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ハッピー、カラフルを封印した「パーリーゲイツ」 ベージュににじむ未来への覚悟

 ある時は常夏のジャングルを表現したかと思えば、スカイクレイパーに圧倒されるNYの街 —— 。ポップでエネルギッシュに、日本のゴルフシーンをけん引してきたのが「パーリーゲイツ(PEARLY GATES)」だ。そんな世界観がゴルフ愛好家たちに唯一無二の高揚感を与えてきた。
 
 ところが2021年春に打ち出したのは、ベージュを基調としたコレクションである“エッセンシャル(ESSENTIAL)”。必要不可欠をメインテーマとし、大きなロゴや大胆な柄もないシンプル&ベーシックで、これまでのイメージとかけ離れている。加えて、今回は2分半の短編動画も制作・公開した。ところが、ここにはゴルフのシーンもなければ、商品も紹介しない。「これから」と題した動画は、世代や職種の異なる5人が出演し、その生きざまに迫るものだ。
 
 これまでの「パーリーゲイツ」とは全く違う、マジメで“らしくなさ”全開のコレクションとショートムービー。これらを通じてある「想い」を発信したのは、これまで通り、酒井昭征「パーリーゲイツ」ディレクター兼チーフデザイナーだ。普遍的なコレクションと動画に込めたものとは?「WWDJAPAN」編集長の村上要が聞いた。

一歩前へと踏み出す糧へ
短編動画ににじませた意思

「パーリーゲイツ」が2021年春夏に制作した短編ムービー「これから」

酒井昭征「パーリーゲイツ/ピージージー」ディレクター兼チーフデザイナー(以下、酒井):ショートムービーをご覧になって、どう思われましたか?率直な感想が気になります。
 
村上要「WWDJAPAN」編集長(以下、村上):いやー、エライです(爆笑)!言葉を選ばず言えば、“たかが”一つのゴルフブランドが、こんな手の込んだ、社会的なメッセージを詰め込んだ動画を作るなんて、本当に「エライ」と感じました。商品がほとんど出てこないんですもん(笑)。
 
酒井:作っている時はただただ必死だったんですが、見返してみると、「これって『パーリーゲイツ』なのかな?」って自分でも思うほどです(笑)。花火が上がってたり、古典芸能の横笛演奏など、ゴルフブランドの動画には見えませんよね。
 
村上:ですね(笑)。そもそも、なぜこの動画を作ったんでしょう?
 
酒井:最初の緊急事態宣言(2020年4〜5月)のころ、周りが心配するくらい気分が沈んでしまったんです。同時に、「このコロナ禍にブランドとして存在している以上、今までと同じようにしていてはいけない」「この時代に自分が一つのブランドに関わっている中で、この社会に何か出来ることは無いのか?」と悩み、その答えとしてこの「想い」を映像で表現しようと。展示会費を削り、動画の制作費に充てました。
  
村上:「パーリーゲイツ」なりの「想い」とはなんでしょう?
  
酒井:強制的に大きく変化した世の中になった今、その最中で感じたつらい気持ちを今記憶して、前に進む糧となるものを発信することです。それを見た人が、少しでもこのメッセージを発信しているブランドに興味を持ってもらえたらと。「パーリーゲイツ」も単に個性的なゴルフの服のデザインだけではなく、そういうブランドの“懐”みたいな部分を、映像を通じて感じて、知ってほしかった。これからの時代、この世の中に必要な存在でいられないとブランドは生き残れないと思うんです。

「今の時代に必要なものを」
行き着いたベージュという選択

村上:でも「パーリーゲイツ」にはすでに、「『パーリーゲイツ』らしいものが好き」というコアなファンが多いイメージです。
  
酒井:シーズンカタログはめちゃくちゃ凝って作っているし、コレクション自体も春夏、秋冬だけでなく月ごとにテーマを設けているんです。本当に大変なんですが、顧客さまもそれを知っていて、新作を求めて毎月のように来店してくださいます。「このスタッフから買いたい!」「次の(ゴルフの)ラウンドでは絶対これが着たい!」と人や商品をめがけて買いに来てくださる方も多い。ブランド主催のコンペなどでお客さま同士のコミュニティーもどんどん広がっていて、いつの間にか独自の強い世界ができていましたね。
 
村上:これからは、不特定多数のお客さんにそれなりに好かれるより、特定のファンに激しく愛してもらえるかが大事な時代がやってくる。“愛される”ことはますます重要になりますね。ただ21年春夏のベージュ基調のコレクション“エッセンシャル”には、ファンも驚いたのでは?

パーリーゲイツ」の2021年春
“エッセンシャル”

酒井:自然の中でプレイするゴルフは、ビビッドなカラーや原色のウエアの方が映えます。アースカラーは周りの自然に馴染みすぎてしまうから、セオリーではありません。でも、今の時代は「溶け込む」ことも選択肢の一つにしてもいいのかもしれない。それに、このコロナ禍においてゴルフのためだけに服を買うのはただの贅沢なのかも知れないと感じ、日常でも着られるようにお客さまが自由に選択して自由に着こなしが出来るような、汎用性が高いデザインにしました。そして、柄物のイメージが強いパーリーゲイツが無地のベージュを打ち出すこと自体がインパクトを与えるのかなと。最初は社内でも「大丈夫?」なんて言われましたが、説得を続けると納得してくれるようになりました。結果、大きな反響をいただき、店頭への入荷までに完売する商品も数多くありました。今の時代に、今を考えながらブランドビジネスをやることこそが、本来のあるべき姿なのだと考えさせられました。

パワフルなデザインに
“思い”が重なる服へ

村上:“エッセンシャル”は「パーリーゲイツ」が変わるきっかけになったんでしょうか?
 
酒井:今後も代名詞であるハッピーでカラフルで機能的な「パーリーゲイツ」を提案し続けていきます。しかし、仕事への向き合い方、特にデザインへの考え方は確実に変わりました。シーズン毎に展開する柄や色の背景をこれまで以上により考えるようになりましたね。「こういう柄の服を、なぜ今この時代に出すのか」という意味を、パーリーゲイツに関わるスタッフへもしっかりと伝えていく。その想いは、お客さまにもきっと伝わります。ブランドのキャッチーな部分だけでなく、“想い”を知った上で服を見てもらえるようになったら、もっともっと素晴らしいブランドになっていけると思うんです。
 
村上:なるほど。嫌う人もいるかもしれないけれど、臆せず、想いを伝えることは、これからのブランドビジネスで欠かせない覚悟だと思います。一番恐れるべきは、無関心・無反応。
「嫌い」はそれよりずっとマシです(笑)。
 
酒井:「パーリーゲイツ」は(年間売上高が)100億円以上あるブランドです。本当に多くの方々に「好き」と思ってもらえないと、この規模は保てません。定番と言われる商品にもしっかりとデザインに力を入れ、ベーシックな中にちょっとした新鮮味を与える要素を入れてみながら、前後のシーズンと被らないように細かく調整をし、半歩先のデザインをしています。定番商品と、シーズンテーマを明確に打ち出す強いデザインの商品とのバランスの取り方が本当に難しいと感じます。何よりその時・その時代にお客さまがどう思っているのか、自分自身がどんな気持ちになっているのかをしっかりと表現できるのか。さらに他業種とのコラボレーションや共同制作、SDGsへの考え方やブランドとしての取り組み方など……。毎日毎日やってくるたくさんの出来事に悩み、考え続けているので、つぶれてしまいそうになる時もあります。それでも、パーリーゲイツは32年の歴史がありながら常に驚きと楽しさを発する、本当に素晴らしいブランド。これからも、そうあり続けたいと考えています。
 
村上:カッコつけず、迷いながら試行錯誤している様子さえ、消費者に伝えていいと思うんです。そういうブランドにこそ共感が生まれ、支持される時代がやってくると思います。

問い合わせ先
パーリーゲイツ
03-6748-0392

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逆風の中で未来への希望を説き続ける、名門紡績の若き5代目 長谷享治【ネクストリーダー2021】

 1887年創業の長谷虎紡績は、日本の毛織物の産地である尾州の名門企業の一つだ。規模は決して大きくないものの、スパイバーの人工タンパク質素材や、同社が世界で唯一生産し宇宙ロケット「H2ロケット」に採用されている超耐熱性素材のフェノール繊維など、数々の革新的な素材を糸に紡いできた。素材が革新的であればあるほど、最初に糸に変えるのはとても難しい。同社は表にこそ出ないものの、そうしたハイテク素材が世に出る重要な一歩を支えてきたスペシャリストなのだ。2019年12月に5代目として就任した長谷享治(たかはる)社長は「日本の繊維には輝かしい未来がある」と咆哮(ほうこう)する、日本の繊維産地企業の“若き虎”だ。

WWDジャパン(以下、WWD):「日本の繊維には世界を変えられる力がある。未来のある輝かしい産業だ」が持論だ。

長谷享治(以下、長谷):だってそうでしょ?繊維以外に、お風呂に入る時などのごく一部の時間を除き24時間365日、人間が触れているものってありますか?つまり、それだけ人間に身近でありふれたものであるからこそ、繊維を変えれば本当の意味で世界を変えられる。当社はフェノール繊維やスパイバーの「ブリュードプロテイン」など、さまざまな繊維を手掛けているが、それでもごく一部に過ぎない。われわれが知らないだけで素晴らしい素材はまだまだある。それだけ可能性を秘めているのに、繊維産業に関わっている人たちこそがその可能性に気付いていない。

WWD:しかし日本の繊維産業はこの数十年、縮小を続けてきた。希望を捨てないのは大事だが、あまりにも楽観的に過ぎるのでは?

長谷:実家はすぐ工場の隣りにあって、物心ついたときから繊維業が身近にあった。特にここ羽鳥市は、紡績から織り・編み、染色加工、縫製までさまざまな工程に関わる中小企業が集積する“産地”。産業の縮小はそのまま、僕らのすぐ身近にあった企業の廃業や倒産に直結していて、閉塞感はずっと感じてきた。同業者や取引先と会っても、メディアでも「繊維はダメだダメだ」とそればかり。僕もほんのつい最近まで、そう思っていた。それを変えたのがゴールドウインの渡辺(貴生)社長とスパイバーの関山(和秀)社長という2人との出会いだった。

WWD:お二人との出会いをもっと詳しく。

長谷:2014年3月ごろに当社の桂川(誠也・取締役)がすごいスタートアップがあるといううわさを聞いて、翌月には私も含め、山形県鶴岡市のスパイバーさんの本社に行って「これはすごい、とんでもない素材だ」と。

WWD:当時のスパイバーはまだ、立ち上がったばかりのスタートアップ企業で、極端なことを言えば、海の物とも山の物とも判断がつかないようなステージだったと思うが。

長谷:関山社長を筆頭に、スパイバーの経営陣は僕よりも年下で、そんな若者たちがとんでもない革新的な繊維を通じて本気で世界を変えようとしている。その姿勢は衝撃的だった。さらに、当社とは長いお付き合いのあった、恩人とも呼べるゴールドウインの渡辺社長もそうした思いに共感して加わっていた。そこで僕も思ったんです。「繊維は世界を本当に変えられるんだ」と。

WWD:15年9月には、ゴールドウインと同じタイミングでスパイバーの第三者割当増資を引き受け、20年にはベンチャーのエム・テックスと共同でナノファイバー製品を開発するスピタージュを立ち上げた。

長谷:当社の紡績工場は小規模ながら、多種多彩な機械をそろえており、ずっと「どんな素材でも紡績してみせる」という自負があった。ただ、それではまだ受け身。ゴールドウインの渡辺社長とスパイバー関山社長に触発され、こちらの方から画期的な素材を主体的に掘り起こして世の中に出していこう、という考え方だ。

WWD:長谷虎紡績の業績は?

長谷:フェノール繊維や「ブリュード・プロテイン」などの最先端素材などを扱う紡績事業、衣料向けの糸や製品を製造する繊維製品事業、法人向けのタイルカーペットの3つが主要事業で、従業員数はグループ全体で195人。19年10月期の売上高は74億円(単体)、営業利益が2億円。ただ、コロナで20年10月期は苦しかった。赤字です。

WWD:原点は?

長谷:新卒で入って配属された大阪支店で上司になった、当時の支店長の教えだ。当時ですでに70歳になっていたその支店長はだれよりも早く6時半には出社し、トイレなどオフィスの清掃を行っていた。決して新しい建物ではなかったが、常にトイレはピカピカだった。ビジネスにしろ、人の生き方にしろ、入り口と出口が大事なんだ、ということを叩き込まれた。今になって思えば、社員の、そして会社自体が荒んでくればトイレに現れるというのは、ある種の真理だと感じている。

【推薦理由】
日本の繊維産業はピークをとっくに過ぎており、この30年縮小を続けてきた。繊維産地には紡績から織り・編み、染色・加工まで各工程の中小企業が集積しており、産地企業は外側にいるわれわれの想像を超えた閉塞感の中にいる。それらを裏側に秘めつつ、なお発する希望の言葉は強く深い輝きを持つ。

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しまむらの復活は本物か 小島健輔リポート

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。コロナ禍でアパレル市場が低迷する中、しまむらのV字回復に注目が集まっている。このたび発表された2021年2月期の財務諸表を細かく分析して、復活の背景と今後の課題を整理してみた。

 しまむらが4月5日に発表した2021年2月期連結決算はコロナ禍のエッセンシャルシフトや順調な天候推移を追い風に、商品調達の短サイクル化やPB(プライベートブランド)とTB(タイアップブランド)の再構築なども寄与して売り上げが上向き、粗利益率も販管費率も改善して4期ぶりに営業増益に転じて純利益は倍増した。この勢いはコロナが収束しても続く「実力」なのだろうか。

業績を押し上げたのは内因か外因か

 21年2月期の売り上げは第1四半期(3〜5月)こそ緊急事態宣言に直撃されて前年同期の8掛けに落ち込んだが、第2四半期(6〜8月)は全国民に一律10万円が支給された「特別定額給付金」が寄与して12.6%増と急浮上し、第3四半期(9〜11月)もコロナの季節的収束と順調な天候推移に恵まれて15.6%増と好調が続いた。第4四半期(12〜2月)こそ再度の緊急事態宣言や勤労収入の減少(賞与や残業手当の減少、非正規就業者の失業やシフト減など)で8.2%増と減速したが、通期では5426億円と前期から4%近く増加した。

 粗利益率も第1四半期こそ30.6%と前年同期から1.6ポイント低下したが、第2四半期は35.5%と同1.1ポイント改善し、第3四半期は35.3%と天候不順と消費増税で不調だった前年から2.6ポイントも上積み、売り上げの伸びが鈍った第4四半期も33.4%と消費増税と暖冬に直撃された前年から2.5ポイント上積んだ。その一方、販管費率は第1四半期こそ32.0%と前年同期から3.8ポイントも上昇したが、第2四半期は24.0%と前年から3.9ポイントも抑制され、第3四半期も25.3%と前年から3.8ポイント抑制されたが、第4四半期は28.6%と前年より0.8ポイントかさんだ。

 結果の営業利益は第1四半期こそ売上対比12%もの赤字に転落したが、第2四半期は11.7%の黒字に浮上。第3四半期も10.1%の黒字と収益性を維持したが、第4四半期は5.0%(前年は3.2%)と大きく減速した。そんな四半期ごとの流れを見る限り、商品内容やサプライ体制の革新という内因ではなく、前年と比較しての消費環境の好転という外因が大きかったと推察される。

長期的には下げ止まりでしかない

 4期ぶりの好転とはいえ、長期的に見れば成長の鈍化は否めず、営業利益率も7.0%と4%台に落ち込んだ過去2期からは回復したものの、9%台だった11年2月期〜13年2月期には及ばない。

 商品政策や天候による好不調で上下はあるものの、粗利益率はPB(自社開発ブランド)やTB(サプライヤーとのタイアップブランド)の拡大で上昇基調が続いており、21年2月期は33.9%と06年2月期の30.7%からは3.2ポイント上昇しているが、販管費率の上昇の方が速く、06年2月期の22.7%から20年2月期の28.3%まで5.6ポイントも上昇して収益を圧迫していた。02年2月期には粗利益率27.6%、販管費率21.5%だったことを思えば、随分と非効率になってしまったものだ。

 在庫回転は07年2月期の12.43回転がピークで、以降は減速基調が続いて20年2月期は6.89回転と7回を割り込み、業績が浮揚した21年2月期も7.01回転と根本的な在庫フローは変わっていない。年間坪効率も06年2月期の95.6万円からじりじりと低下が続いており、20年2月期は76.4万円まで落ち込んだ。21年2月期は79.8万円とやや戻したとはいえ、19年2月期の81.1万円にも届かないから、品ぞろえや店舗の魅力が目に見えて高まったとは言い難い。直近の売り場を見ても商品も陳列も代わり映えしないから、売り場の印象と結果数字は一致している。

 主力業態の「ファッションセンターしまむら」(全社売り上げの76.8%を占める)の21年2月期部門別売り上げを見ても、伸びたのはインテリア(18.6%増)、ベビー・子供服(10.3%増)、寝装具(9.2%増)、洋品小物(6.6%増)、肌着(3.1%増)であって、肝心の婦人服は2.2%減と前年を割り、シューズは13.5%減と落ち込んだ。商品の魅力が回復しているなら婦人服が一番に伸びるはずではないのか。

 西松屋チェーン同様、エッセンシャルシフトに押し上げられた子供服業態「バースデイ」こそ16.0%増と好調だったが、トレンド志向の強い「アベイル」は1.1%減と前年を割っている。事業構造や運営体系が改革されたのなら全業態が上向くはずで、やはり内因より外因による浮揚が大きかったと見るべきだろう。

陳腐化・非効率化したマーチャンダイジング

 「ファッションセンターしまむら」業態の21年2月期は浮揚したとはいえ売り上げは4120億9500万円と2.6%しか伸びず、客数は1.6%減少しているから人気が復活したわけではない。年間坪効率も91.2万円と前期の88.7万円からは回復したが、18年2月期の100.7万円には遠い。

 前年より値引き率が2.3ポイント抑制され8.4%に収まったと開示しているから、33.1%の結果粗利益率から単純計算すれば値入れ率は41.5%(調達原価率58.5%)だったと受け取れる。値引き率を5%弱に抑えていた02年頃に比べれば直近は10%を超え、当時は68%ほどだった調達原価率も10ポイント近く切り下げられたから、お買い得感は相応に薄れたのではないか。

 店頭の品ぞろえも、ティーンズはともかくヤング・OLとミセスのメリハリがなくなり、似たような商品が重複して色調もベタになり、その分、テイストとアイテムのバラエティーを損なって魅力のない店になってしまった。かつての稼ぎ頭からお荷物部門に転落したイトーヨーカ堂の衣料部門同様、POSを過信して売れ筋に絞り込んで類似品を広げると、こんな売り場になってしまう。消費環境の好転で売り上げこそ回復したが、客数は3期連続して減少している。品ぞろえの魅力が高まったのなら客数が一番に上向くはずで、「ファッションセンターしまむら」の退化には歯止めが掛かっていない。

 「アベイル」はもっと厳しく売り上げも1.1%減の494億8000万円と浮揚せず、客数も6.3%減と前期の2.6%減より悪化している。年間坪効率も52.3万円と主力3業態では最も低く、これでは在庫を消化できず滞貨してしまう。値引き率は前期から3.4ポイント抑制されたとは言え17.0%(前期は20.4%!)と販売消化が滞っており、商売になっていない。

 38.0%の結果粗利益率から単純計算すれば値入れ率は55.0%(調達原価率45.0%)になるから、魅力的なブランドがそろうはずもない。かつてのテイスト・ブランド別編成を崩して「ファッションセンターしまむら」同様に似たようなテイストとアイテムが重複するメリハリとバラエティーの欠けた売り場になっており、エッセンシャルシフトでオシャレ離れが進む現況では立て直しは容易ではないだろう。

 唯一「バースデイ」だけは売り上げが626億5400万円と16.0%増で、客数も5.4%伸びており、値引き率も前期から2.6ポイント抑制されて5.6%と販売消化も順調だが、年間販売効率は前期から15%伸びても74.5万円と「ファッションセンターしまむら」の8掛け強に留まる。売り場を見る限り「ファッションセンターしまむら」や「アベイル」よりバラエティーとメリハリがあり育児関連のアイテムも多少はそろっているから、まだまだ伸ばせるはずだ。

ブレイクスルーなき成長はない

 業績が回復したとはいえ再成長に転ずるほどの勢いはなく、21年2月期末店舗数も2199店と前期末から15店減少している。「中期経営計画2023」も今期から3年間に100店舗を新規出店して売り上げを5950億円と9.7%伸ばし、営業利益を493億円と29.6%伸ばす構想で、ブレイクスルーな勢いはもとより想定していない。

 EC(ネット通販)にしても、客注アプリ活用のお取り寄せ「しまコレ」に始まり、「ゾゾタウン」での1年足らずという短期間のトライアルを経て20年10月にようやく公式オンラインサイトを立ち上げたばかりで、21年2月期の売り上げは「しまコレ」を合わせて17億円(EC比率0.3%)に過ぎない。インフルエンサー企画のEC専用商品をSNS発信し、全国2200店舗で業態を超えた店受け取り実現して2024年2月期でEC比率2%(120億円)を計画するが、国内ユニクロが20年8月期で1076億円(EC比率13.3%)を売り、多くのアパレルチェーンがコロナ禍でECを急拡大してEC比率2ケタが当たり前になり、中には過半を超えるチェーンもある中では遅きに失する感がある。

 21年2月期でEC商品の「店受け取り」が9割を占めると言っても店舗在庫を引き当てるわけではなく、EC専用倉庫から店舗物流のルート便を使って店舗に配送するだけで、店舗在庫の消化回転を高め機会ロスを減す効果も顧客の受け取りを早める効果もなく、C&C(クリック&コレクト)は初歩的な段階にある。ライトオンさえECから店舗在庫を引き当てて取り置き、店舗でお試しして決済するC&Cで顧客の利便に応えているのに、ひと時代もふた時代も出遅れた感を否めない。

 しまむら自身が決算短信の「次期の見通し」で明記しているように、「政府による財政支援の段階的縮小、非正規社員の厳しい雇用情勢、旅行業や飲食業を中心に引き続き厳しい状況が継続」する中、しまむら顧客の生計はさらに窮していく。テクニカルな改善の積み上げだけでは、顧客層の消費減退で売り上げが伸び悩み、効率低下とコスト上昇で収益が細るのは目に見えている。従前の事業構造のまま改善するだけでなく、事業構造を一変させるブレイクスルーが必要ではないか。

同じ事業構造ではコスト上昇に飲み込まれる

 販管費率は02年2月期の21.5%から20年2月期は28.3%まで上昇したが、その中身を検証しておきたい。02年2月期の人件費率は9.8%だったが、20年2月期も21年2月期も13.4%と3.6ポイント肥大している。店舗コストを反映する賃借料率も10年2月期は4.9%に収まっていたが、年々上昇して20年2月期は6.5%と1.6ポイント、売り上げが上向いた21年2月期も6.1%と1.2ポイント肥大している。

 主婦のパート中心に運営するしまむらはマニュアル化で店舗作業を標準化・省力化してきたが、アドレス管理と棚割指示を徹底しても什器システムと陳列方式自体はほとんど進化しておらず、定番比率が低く季節商品が多頻度に入れ替わり、TC(トランスファーセンター)※1.に在庫を残さず店舗に撒き切るから店間移動のピッキングも多く、作業量を圧縮できないでいる。

 RFIDタグも未導入だからマテハン作業の圧縮も在庫管理やレジ精算の効率化も進まない。RFIDタグが導入済みならスマホのレーダー探索アプリでピッキングも手間取らず、店間移動や客注、EC受注に店舗在庫を引き当てる多数のピッキングもこなせるが、未導入では汗だくの人海戦術になってしまう。

 しまむらでは最新の店舗でもセルフレジさえ入っておらず、1点ごとにビニール袋から取り出してハンガーに掛け、タグに記載されたコードを見て指定什器に陳列する、という20年前と大差ない品出し陳列作業が黙々と続けられている(開店直後に行って作業プロセスを実見した)。ユニクロやジーユーが早々とRFIDタグを全面導入して在庫管理やマテハンの効率化、セルフレジ化を進めて着々と運営人時量を圧縮しているのに比べれば、一時代どころでなく出遅れた感がある。中期計画ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を挙げているが、ならばRFIDタグの全面導入が先決ではないのか。

 店舗の大型化も全く進んでおらず近年は1000平方メートル強で停滞しており、大型化による運営効率の改善も期待できない。店舗が大型化しないまま販売効率がじりじりと下がっていけば、売上対比の人件費負担も賃借料負担も年々かさんでいく。決算業績の推移を見れば、その隘路は明らかだ。ユニクロが年々、着々と店舗規模を大型化し運営効率を改善しているのとは好対照に見える。

※1.TC(トランスファーセンター)…入荷商品を棚入れすることなく自動ソーターで高速仕分けして出荷する方式の物流センター

米コールズにみるブレイクスルー

 「米国のしまむら」と比喩したくなるほど立地も客層も似ているのが米国の大衆デパートチェーンのコールズ(KOHL’S)で、郊外の賃貸アパート地区につながる生活幹線道路では必ずと言ってよいほど目につく。中低所得女性勤労者とその家族を対象としているのも似ているが、店舗規模は標準店で8175平方メートルと1000平方メートル強の「ファッションセンターしまむら」と比べれば8倍大きい。21年1月期末で49州に1162店舗を展開し、159億5500万ドルを売り上げている。

 立地はロードサイドのストリップセンター※2.が82%、フリースタンディング(独立店舗)が13%、モール内が5%の構成になる。出店形態は所有店舗が35%、定期借地店舗(建物は自前)が21%、賃借店舗が44%という布陣で、コロナ前の20年1月期で売上対比賃借料率は1.57%、減価償却費を加えて6.16%という負担率は一昔前のしまむらに近い。コロナ禍の米国ではパーキングアクセスに手間取り人混みも避けられないモールが疎まれ、ダイレクトパーキングが可能なストリップセンターやフリースタンディングが好まれている。

 ウィメンズを中心にメンズ、ティーンズ、キッズの衣料と服飾雑貨、化粧品、ホームグッズの構成で、拡大している化粧品では今秋から「セフォラ」の導入が始まる。衣料品では「ナイキ」や「アディダス」「アンダーアーマー」「ニューバランス」「バンズ」「スケッチャーズ」、「リーバイス」「チャップス」などのNB(ナショナルブランド)に加え、独自開発のPBやブランドメーカーとタイアップしたEXB(エクスクルーシブブランド)で構成される。「ファッションセンターしまむら」に比べれば店舗が広くデパートメント構成になっており、大衆デパート風に小綺麗なVMDが組まれている。「しまむら」と大きく違うのは大衆的なNBがそろっていることとジュエリーや化粧品の売場が大きいことで、近年はカフェを併設する店舗も増え、昔に比べれば華やぎも加わってきた。

 中低所得層を顧客とするコールズは、しまむら同様に近年は伸び悩んでおり、ECを拡大して自社在庫だけでなくサプライヤー在庫も自社サイトに掲載してドロップシッピング※3.で売り上げを稼ぎ、近隣顧客の注文に店舗在庫を引き当てて最速で店渡し・店出荷し(EC売り上げの43%)、EC売り上げは59億ドルと総売り上げの40%に達している。加えて19年からアマゾンの返品も受け付けて全店に広げ、アマゾンのデバイスも販売して来店客を増やしている。

 コールズも業績は好調とはいえないが、ECを拡大してサプライヤーまで取り込み、C&Cを実践して店舗をOMO(オンラインとオフラインの融合)の拠点とし、アマゾンとも提携して新規客の取り込みを図っている。全社売上の40%に達する59億ドルものEC売り上げは間違いなくブレイクスルーで、しまむらはもっとコールズに学ぶ必要がある。ならば、しまむらが大手ECプラットフォーマーと戦略提携して、店舗受け取りと返品の拠点となっても驚きはしない。それで受け取る手数料は知れているだろうが、これまで「ファッションセンターしまむら」に来なかった客層が大挙して訪れる効果は想像以上のものになるだろう。

※2.ストリップセンター…店舗棟が並列あるいはコの字状に駐車場を囲んで各店舗にダイレクトパーキングできるロードサイドの自由営業型商業施設
※3.ドロップシッピング…サイトを運営する会社は在庫を抱えず、受注した商品はサプライヤーが直接、顧客に発送するECの仕組み

巨額の余剰資金が革新を妨げている

 しまむらは独立店舗が大半だから商業施設デベロッパーに売上金を預託する必要がなく、売上債権回転日数は20年2月期で4.18日、21年2月期も4.47日と日銭が回っている。棚資産回転日数は20年で53.51日、21年で51.67日と昔に比べれば遅くなったが、買掛債務回転日数は20年で19.33日、21年も24.53日と支払いが速く、20年は38.36日で548億5800万円、21年は31.61日で468億7300万円の運転資金負担が発生している。それは純資産対比で20年15.0%、21年12.2%に過ぎず、無借金経営どころか20年2月期末で1520億円、21年2月期末で1930億円の余剰資金が遊んでいる(NCD 譲渡性定期預金)。

 「遊んでいる」というのは適切でなく「運用されている」のだが、企業が手持ちの巨額余剰資金を事業に投ぜず低金利の譲渡性定期預金に寝かせているのは決して健全な状態ではない。ファーストリテイリングだって純資産9961億円に対して5900億円の有利子負債を借り入れ、事業の拡大に投資している(20年8月期)。それが成長を志向して事業構造を変えていく健全な経営であり、巨額の余剰資金を寝かせたままでは経営判断が保守的になり、未来への扉を開けなくなる。

 21年2月期のしまむらは4期ぶりに浮上したが、はっきりいえば大した改革もせず、時代の追い風に乗ってテクニカル得点しただけなのではないか。事業構造を変えていかないと収益性は確実に劣化し、いずれ不採算に陥ってしまう。それはレナウンや三陽商会など大手アパレル、三越伊勢丹など大手百貨店で実証されたことではないのか。あまりに余剰資金があると危機感が欠け、何もかもが不徹底で後手に回って時代に置いていかれ、果てはゆでガエルのごとき結末に至る。

 しまむらが最も急ぐべきは余剰資金の前向きな投資であり、開発力あるサプライヤーの買収で商品力を高め、ECプラットフォーマーの買収や資本提携で一気呵成なEC拡大を図るべきだ。それに踏み切れないのなら、自社株式の買い入れで減資するべきではないか。身を引き締め危機感ある経営に転ずるにはそれが必要だと思う。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。著書に店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)、12月11日に出版した「アパレルの終焉と再生」(朝日新書)

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しまむらの復活は本物か 小島健輔リポート

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。コロナ禍でアパレル市場が低迷する中、しまむらのV字回復に注目が集まっている。このたび発表された2021年2月期の財務諸表を細かく分析して、復活の背景と今後の課題を整理してみた。

 しまむらが4月5日に発表した2021年2月期連結決算はコロナ禍のエッセンシャルシフトや順調な天候推移を追い風に、商品調達の短サイクル化やPB(プライベートブランド)とTB(タイアップブランド)の再構築なども寄与して売り上げが上向き、粗利益率も販管費率も改善して4期ぶりに営業増益に転じて純利益は倍増した。この勢いはコロナが収束しても続く「実力」なのだろうか。

業績を押し上げたのは内因か外因か

 21年2月期の売り上げは第1四半期(3〜5月)こそ緊急事態宣言に直撃されて前年同期の8掛けに落ち込んだが、第2四半期(6〜8月)は全国民に一律10万円が支給された「特別定額給付金」が寄与して12.6%増と急浮上し、第3四半期(9〜11月)もコロナの季節的収束と順調な天候推移に恵まれて15.6%増と好調が続いた。第4四半期(12〜2月)こそ再度の緊急事態宣言や勤労収入の減少(賞与や残業手当の減少、非正規就業者の失業やシフト減など)で8.2%増と減速したが、通期では5426億円と前期から4%近く増加した。

 粗利益率も第1四半期こそ30.6%と前年同期から1.6ポイント低下したが、第2四半期は35.5%と同1.1ポイント改善し、第3四半期は35.3%と天候不順と消費増税で不調だった前年から2.6ポイントも上積み、売り上げの伸びが鈍った第4四半期も33.4%と消費増税と暖冬に直撃された前年から2.5ポイント上積んだ。その一方、販管費率は第1四半期こそ32.0%と前年同期から3.8ポイントも上昇したが、第2四半期は24.0%と前年から3.9ポイントも抑制され、第3四半期も25.3%と前年から3.8ポイント抑制されたが、第4四半期は28.6%と前年より0.8ポイントかさんだ。

 結果の営業利益は第1四半期こそ売上対比12%もの赤字に転落したが、第2四半期は11.7%の黒字に浮上。第3四半期も10.1%の黒字と収益性を維持したが、第4四半期は5.0%(前年は3.2%)と大きく減速した。そんな四半期ごとの流れを見る限り、商品内容やサプライ体制の革新という内因ではなく、前年と比較しての消費環境の好転という外因が大きかったと推察される。

長期的には下げ止まりでしかない

 4期ぶりの好転とはいえ、長期的に見れば成長の鈍化は否めず、営業利益率も7.0%と4%台に落ち込んだ過去2期からは回復したものの、9%台だった11年2月期〜13年2月期には及ばない。

 商品政策や天候による好不調で上下はあるものの、粗利益率はPB(自社開発ブランド)やTB(サプライヤーとのタイアップブランド)の拡大で上昇基調が続いており、21年2月期は33.9%と06年2月期の30.7%からは3.2ポイント上昇しているが、販管費率の上昇の方が速く、06年2月期の22.7%から20年2月期の28.3%まで5.6ポイントも上昇して収益を圧迫していた。02年2月期には粗利益率27.6%、販管費率21.5%だったことを思えば、随分と非効率になってしまったものだ。

 在庫回転は07年2月期の12.43回転がピークで、以降は減速基調が続いて20年2月期は6.89回転と7回を割り込み、業績が浮揚した21年2月期も7.01回転と根本的な在庫フローは変わっていない。年間坪効率も06年2月期の95.6万円からじりじりと低下が続いており、20年2月期は76.4万円まで落ち込んだ。21年2月期は79.8万円とやや戻したとはいえ、19年2月期の81.1万円にも届かないから、品ぞろえや店舗の魅力が目に見えて高まったとは言い難い。直近の売り場を見ても商品も陳列も代わり映えしないから、売り場の印象と結果数字は一致している。

 主力業態の「ファッションセンターしまむら」(全社売り上げの76.8%を占める)の21年2月期部門別売り上げを見ても、伸びたのはインテリア(18.6%増)、ベビー・子供服(10.3%増)、寝装具(9.2%増)、洋品小物(6.6%増)、肌着(3.1%増)であって、肝心の婦人服は2.2%減と前年を割り、シューズは13.5%減と落ち込んだ。商品の魅力が回復しているなら婦人服が一番に伸びるはずではないのか。

 西松屋チェーン同様、エッセンシャルシフトに押し上げられた子供服業態「バースデイ」こそ16.0%増と好調だったが、トレンド志向の強い「アベイル」は1.1%減と前年を割っている。事業構造や運営体系が改革されたのなら全業態が上向くはずで、やはり内因より外因による浮揚が大きかったと見るべきだろう。

陳腐化・非効率化したマーチャンダイジング

 「ファッションセンターしまむら」業態の21年2月期は浮揚したとはいえ売り上げは4120億9500万円と2.6%しか伸びず、客数は1.6%減少しているから人気が復活したわけではない。年間坪効率も91.2万円と前期の88.7万円からは回復したが、18年2月期の100.7万円には遠い。

 前年より値引き率が2.3ポイント抑制され8.4%に収まったと開示しているから、33.1%の結果粗利益率から単純計算すれば値入れ率は41.5%(調達原価率58.5%)だったと受け取れる。値引き率を5%弱に抑えていた02年頃に比べれば直近は10%を超え、当時は68%ほどだった調達原価率も10ポイント近く切り下げられたから、お買い得感は相応に薄れたのではないか。

 店頭の品ぞろえも、ティーンズはともかくヤング・OLとミセスのメリハリがなくなり、似たような商品が重複して色調もベタになり、その分、テイストとアイテムのバラエティーを損なって魅力のない店になってしまった。かつての稼ぎ頭からお荷物部門に転落したイトーヨーカ堂の衣料部門同様、POSを過信して売れ筋に絞り込んで類似品を広げると、こんな売り場になってしまう。消費環境の好転で売り上げこそ回復したが、客数は3期連続して減少している。品ぞろえの魅力が高まったのなら客数が一番に上向くはずで、「ファッションセンターしまむら」の退化には歯止めが掛かっていない。

 「アベイル」はもっと厳しく売り上げも1.1%減の494億8000万円と浮揚せず、客数も6.3%減と前期の2.6%減より悪化している。年間坪効率も52.3万円と主力3業態では最も低く、これでは在庫を消化できず滞貨してしまう。値引き率は前期から3.4ポイント抑制されたとは言え17.0%(前期は20.4%!)と販売消化が滞っており、商売になっていない。

 38.0%の結果粗利益率から単純計算すれば値入れ率は55.0%(調達原価率45.0%)になるから、魅力的なブランドがそろうはずもない。かつてのテイスト・ブランド別編成を崩して「ファッションセンターしまむら」同様に似たようなテイストとアイテムが重複するメリハリとバラエティーの欠けた売り場になっており、エッセンシャルシフトでオシャレ離れが進む現況では立て直しは容易ではないだろう。

 唯一「バースデイ」だけは売り上げが626億5400万円と16.0%増で、客数も5.4%伸びており、値引き率も前期から2.6ポイント抑制されて5.6%と販売消化も順調だが、年間販売効率は前期から15%伸びても74.5万円と「ファッションセンターしまむら」の8掛け強に留まる。売り場を見る限り「ファッションセンターしまむら」や「アベイル」よりバラエティーとメリハリがあり育児関連のアイテムも多少はそろっているから、まだまだ伸ばせるはずだ。

ブレイクスルーなき成長はない

 業績が回復したとはいえ再成長に転ずるほどの勢いはなく、21年2月期末店舗数も2199店と前期末から15店減少している。「中期経営計画2023」も今期から3年間に100店舗を新規出店して売り上げを5950億円と9.7%伸ばし、営業利益を493億円と29.6%伸ばす構想で、ブレイクスルーな勢いはもとより想定していない。

 EC(ネット通販)にしても、客注アプリ活用のお取り寄せ「しまコレ」に始まり、「ゾゾタウン」での1年足らずという短期間のトライアルを経て20年10月にようやく公式オンラインサイトを立ち上げたばかりで、21年2月期の売り上げは「しまコレ」を合わせて17億円(EC比率0.3%)に過ぎない。インフルエンサー企画のEC専用商品をSNS発信し、全国2200店舗で業態を超えた店受け取り実現して2024年2月期でEC比率2%(120億円)を計画するが、国内ユニクロが20年8月期で1076億円(EC比率13.3%)を売り、多くのアパレルチェーンがコロナ禍でECを急拡大してEC比率2ケタが当たり前になり、中には過半を超えるチェーンもある中では遅きに失する感がある。

 21年2月期でEC商品の「店受け取り」が9割を占めると言っても店舗在庫を引き当てるわけではなく、EC専用倉庫から店舗物流のルート便を使って店舗に配送するだけで、店舗在庫の消化回転を高め機会ロスを減す効果も顧客の受け取りを早める効果もなく、C&C(クリック&コレクト)は初歩的な段階にある。ライトオンさえECから店舗在庫を引き当てて取り置き、店舗でお試しして決済するC&Cで顧客の利便に応えているのに、ひと時代もふた時代も出遅れた感を否めない。

 しまむら自身が決算短信の「次期の見通し」で明記しているように、「政府による財政支援の段階的縮小、非正規社員の厳しい雇用情勢、旅行業や飲食業を中心に引き続き厳しい状況が継続」する中、しまむら顧客の生計はさらに窮していく。テクニカルな改善の積み上げだけでは、顧客層の消費減退で売り上げが伸び悩み、効率低下とコスト上昇で収益が細るのは目に見えている。従前の事業構造のまま改善するだけでなく、事業構造を一変させるブレイクスルーが必要ではないか。

同じ事業構造ではコスト上昇に飲み込まれる

 販管費率は02年2月期の21.5%から20年2月期は28.3%まで上昇したが、その中身を検証しておきたい。02年2月期の人件費率は9.8%だったが、20年2月期も21年2月期も13.4%と3.6ポイント肥大している。店舗コストを反映する賃借料率も10年2月期は4.9%に収まっていたが、年々上昇して20年2月期は6.5%と1.6ポイント、売り上げが上向いた21年2月期も6.1%と1.2ポイント肥大している。

 主婦のパート中心に運営するしまむらはマニュアル化で店舗作業を標準化・省力化してきたが、アドレス管理と棚割指示を徹底しても什器システムと陳列方式自体はほとんど進化しておらず、定番比率が低く季節商品が多頻度に入れ替わり、TC(トランスファーセンター)※1.に在庫を残さず店舗に撒き切るから店間移動のピッキングも多く、作業量を圧縮できないでいる。

 RFIDタグも未導入だからマテハン作業の圧縮も在庫管理やレジ精算の効率化も進まない。RFIDタグが導入済みならスマホのレーダー探索アプリでピッキングも手間取らず、店間移動や客注、EC受注に店舗在庫を引き当てる多数のピッキングもこなせるが、未導入では汗だくの人海戦術になってしまう。

 しまむらでは最新の店舗でもセルフレジさえ入っておらず、1点ごとにビニール袋から取り出してハンガーに掛け、タグに記載されたコードを見て指定什器に陳列する、という20年前と大差ない品出し陳列作業が黙々と続けられている(開店直後に行って作業プロセスを実見した)。ユニクロやジーユーが早々とRFIDタグを全面導入して在庫管理やマテハンの効率化、セルフレジ化を進めて着々と運営人時量を圧縮しているのに比べれば、一時代どころでなく出遅れた感がある。中期計画ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を挙げているが、ならばRFIDタグの全面導入が先決ではないのか。

 店舗の大型化も全く進んでおらず近年は1000平方メートル強で停滞しており、大型化による運営効率の改善も期待できない。店舗が大型化しないまま販売効率がじりじりと下がっていけば、売上対比の人件費負担も賃借料負担も年々かさんでいく。決算業績の推移を見れば、その隘路は明らかだ。ユニクロが年々、着々と店舗規模を大型化し運営効率を改善しているのとは好対照に見える。

※1.TC(トランスファーセンター)…入荷商品を棚入れすることなく自動ソーターで高速仕分けして出荷する方式の物流センター

米コールズにみるブレイクスルー

 「米国のしまむら」と比喩したくなるほど立地も客層も似ているのが米国の大衆デパートチェーンのコールズ(KOHL’S)で、郊外の賃貸アパート地区につながる生活幹線道路では必ずと言ってよいほど目につく。中低所得女性勤労者とその家族を対象としているのも似ているが、店舗規模は標準店で8175平方メートルと1000平方メートル強の「ファッションセンターしまむら」と比べれば8倍大きい。21年1月期末で49州に1162店舗を展開し、159億5500万ドルを売り上げている。

 立地はロードサイドのストリップセンター※2.が82%、フリースタンディング(独立店舗)が13%、モール内が5%の構成になる。出店形態は所有店舗が35%、定期借地店舗(建物は自前)が21%、賃借店舗が44%という布陣で、コロナ前の20年1月期で売上対比賃借料率は1.57%、減価償却費を加えて6.16%という負担率は一昔前のしまむらに近い。コロナ禍の米国ではパーキングアクセスに手間取り人混みも避けられないモールが疎まれ、ダイレクトパーキングが可能なストリップセンターやフリースタンディングが好まれている。

 ウィメンズを中心にメンズ、ティーンズ、キッズの衣料と服飾雑貨、化粧品、ホームグッズの構成で、拡大している化粧品では今秋から「セフォラ」の導入が始まる。衣料品では「ナイキ」や「アディダス」「アンダーアーマー」「ニューバランス」「バンズ」「スケッチャーズ」、「リーバイス」「チャップス」などのNB(ナショナルブランド)に加え、独自開発のPBやブランドメーカーとタイアップしたEXB(エクスクルーシブブランド)で構成される。「ファッションセンターしまむら」に比べれば店舗が広くデパートメント構成になっており、大衆デパート風に小綺麗なVMDが組まれている。「しまむら」と大きく違うのは大衆的なNBがそろっていることとジュエリーや化粧品の売場が大きいことで、近年はカフェを併設する店舗も増え、昔に比べれば華やぎも加わってきた。

 中低所得層を顧客とするコールズは、しまむら同様に近年は伸び悩んでおり、ECを拡大して自社在庫だけでなくサプライヤー在庫も自社サイトに掲載してドロップシッピング※3.で売り上げを稼ぎ、近隣顧客の注文に店舗在庫を引き当てて最速で店渡し・店出荷し(EC売り上げの43%)、EC売り上げは59億ドルと総売り上げの40%に達している。加えて19年からアマゾンの返品も受け付けて全店に広げ、アマゾンのデバイスも販売して来店客を増やしている。

 コールズも業績は好調とはいえないが、ECを拡大してサプライヤーまで取り込み、C&Cを実践して店舗をOMO(オンラインとオフラインの融合)の拠点とし、アマゾンとも提携して新規客の取り込みを図っている。全社売上の40%に達する59億ドルものEC売り上げは間違いなくブレイクスルーで、しまむらはもっとコールズに学ぶ必要がある。ならば、しまむらが大手ECプラットフォーマーと戦略提携して、店舗受け取りと返品の拠点となっても驚きはしない。それで受け取る手数料は知れているだろうが、これまで「ファッションセンターしまむら」に来なかった客層が大挙して訪れる効果は想像以上のものになるだろう。

※2.ストリップセンター…店舗棟が並列あるいはコの字状に駐車場を囲んで各店舗にダイレクトパーキングできるロードサイドの自由営業型商業施設
※3.ドロップシッピング…サイトを運営する会社は在庫を抱えず、受注した商品はサプライヤーが直接、顧客に発送するECの仕組み

巨額の余剰資金が革新を妨げている

 しまむらは独立店舗が大半だから商業施設デベロッパーに売上金を預託する必要がなく、売上債権回転日数は20年2月期で4.18日、21年2月期も4.47日と日銭が回っている。棚資産回転日数は20年で53.51日、21年で51.67日と昔に比べれば遅くなったが、買掛債務回転日数は20年で19.33日、21年も24.53日と支払いが速く、20年は38.36日で548億5800万円、21年は31.61日で468億7300万円の運転資金負担が発生している。それは純資産対比で20年15.0%、21年12.2%に過ぎず、無借金経営どころか20年2月期末で1520億円、21年2月期末で1930億円の余剰資金が遊んでいる(NCD 譲渡性定期預金)。

 「遊んでいる」というのは適切でなく「運用されている」のだが、企業が手持ちの巨額余剰資金を事業に投ぜず低金利の譲渡性定期預金に寝かせているのは決して健全な状態ではない。ファーストリテイリングだって純資産9961億円に対して5900億円の有利子負債を借り入れ、事業の拡大に投資している(20年8月期)。それが成長を志向して事業構造を変えていく健全な経営であり、巨額の余剰資金を寝かせたままでは経営判断が保守的になり、未来への扉を開けなくなる。

 21年2月期のしまむらは4期ぶりに浮上したが、はっきりいえば大した改革もせず、時代の追い風に乗ってテクニカル得点しただけなのではないか。事業構造を変えていかないと収益性は確実に劣化し、いずれ不採算に陥ってしまう。それはレナウンや三陽商会など大手アパレル、三越伊勢丹など大手百貨店で実証されたことではないのか。あまりに余剰資金があると危機感が欠け、何もかもが不徹底で後手に回って時代に置いていかれ、果てはゆでガエルのごとき結末に至る。

 しまむらが最も急ぐべきは余剰資金の前向きな投資であり、開発力あるサプライヤーの買収で商品力を高め、ECプラットフォーマーの買収や資本提携で一気呵成なEC拡大を図るべきだ。それに踏み切れないのなら、自社株式の買い入れで減資するべきではないか。身を引き締め危機感ある経営に転ずるにはそれが必要だと思う。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。著書に店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)、12月11日に出版した「アパレルの終焉と再生」(朝日新書)

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パリコレで活躍した、今注目の日系モデル4人

 2月末~3月上旬まで開催された2021-22年秋冬シーズンのミラノとパリのファッション・ウイークでは、日系モデルの活躍が見られました。海外渡航が難しい中、ヨーロッパ拠点のアジア系モデルに活躍のチャンスが多く与えられたようです。ここでは今季、さまざまなブランドに起用され躍進したモデル4人を紹介します。

「ルイ・ヴィトン」など12ブランドに出演
日系モデル勢をけん引する美佳

 日系モデル勢をけん引しているのは日本とフランスのハーフ、美佳さんです。ミラノで「アルベルタ フェレッティ(ALBERTA FERRETTI)」「フェンディ(FENDI)」「デルコア(DEL CORE)」「エトロ(ETRO)」「トッズ(TOD’S)」「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」で連日見かけた後、パリでは「クレージュ(COURREGES)」「ロンシャン(LONGCHAMP)」「コペルニ(COPERNI)」「ジバンシィ(GIVENCHY)」「ランバン(LANVIN)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「アミ アレクサンドル マテュッシ(AMI ALEXANDRE MATTIUSSI)」に起用されていました。この他、パリコレ会期中に出版したアメリカ版「i-D」マガジンの最新号の表紙や、アメリカ版「ヴォーグ(VOGUE)」のエディトリアルに登場していて勢いを感じます。

「ドリス ヴァン ノッテン」など11ブランドが起用
2シーズン目の樋口可弥子

 先シーズンに海外コレクションデビューを果たした樋口可弥子さんに注目している人は多いはず。2シーズン目となった今季も、見かけない日がない大活躍ぶりでした。ミラノの「フェンディ」「ヌメロ ヴェントゥーノ(N21)」「デルコア」「ブルマリン(BLUMARINE)」「スポーツマックス(SPORTMAX)」「サルヴァトーレ フェラガモ」「フィロソフィ ディ ロレンツォ セラフィニ(PHILOSOPHY DI LORENZO SERAFINI)」、パリの「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」「ジャンバティスタ ヴァリ(GIAMBATTiSTA VALLI)」「バルマン(BALMAIN)」「アミ アレクサンドル マテュッシ」と計11ブランドに出演しました。

 今季は多くのブランドがランウエイショーだけではない、さまざまな手法を凝らした映像を発表しましたが、樋口さんが最も印象に残っているのは47人のダンサーとモデルがパフォーマンスを行った「ドリス ヴァン ノッテン」だといいます。樋口さんは、東京からベルギーに入国後、2週間の自主隔離を経て撮影に参加したそう。「普段とは違う体の動きで服を表現しました。短い撮影時間でしたが、高い集中力を維持しながら世界観に入り込んだことで、泣きそうなくらい感情的になっている自分自身に驚きました。自分は服を通して表現をするのが大好きなんだなと実感した瞬間でもありました」と語ってくれました。

 また、前シーズンとは異なる学びを得たようです。「1シーズン目とは違って、大体の仕事の流れが把握できていた分、不安に感じることが多かったです。先シーズンは全てが新鮮で気づいたら終わっていたのですが、今季はずっと不安でした。でも、ファッション・ウイーク中盤にさしかかる頃には、大きいブランドの仕事と仕事をするという実績にこだわるのではなく、素晴らしいプロフェッショナルの方々と関われる喜びや新たな発見を大切にしようと切り替えられたのが学びでした」。これから樋口さんはパリを拠点に活動していくので、慣れない海外生活や新たな挑戦によって、さらに成長していく姿が見られるのではないかと期待しています!

「エルメス」や「ヴァレンティノ」に登場
台湾と日本のハーフモデルの中野悠楽

 そして今季、新たに2人の日系モデルも活躍しました。1人目は、台湾と日本のハーフで2001年長野県生まれの中野悠楽さん。海外のコレクションデビューは、2020-21年秋冬の「GCDS」です。今季は1月に開催されたメンズ・ファッション・ウイークから3月のウィメンズまで、ミラノとパリで何度も中野さんを見かけてずっと注目していました。メンズの「フェンディ」「エトロ」「エルメス(HERMES)」、メンズとウィメンズを合同で見せた「ヌメロ ヴェントゥーノ」「スンネイ(SUNNEI)」「ヴァレンティノ(VALENTINO)」「ランバン」にも起用されていました。

 モデルを始めたきっかけは、ニューヨークでモデル活動をしていた幼なじみに勧められたことだそうです。多くのショーに出演できた理由を聞くと、「東京で行われた『ルイ・ヴィトン』2020年春夏コレクションのショーに出演した直後にヨーロッパで活動を始めたため、タイミングが良かったのかも」と分析します。現在はスーツケースだけを持って各国を点々としながら、ヨーロッパに拠点を置いています。ジェットセッターなライフスタイルで世界を飛び回り続け、コウヘイさんのようなモデルを目指しているとのこと。

「フェンディ」「ディオール」が抜擢
行動力ある次世代モデルのハナカ

 もう一人は、2000年生まれ新潟県出身で、日本、イギリス、アメリカのミックスのハナカさんです。海外のコレクションデビューを飾ったのは、2020年春夏シーズンの「ニナ リッチ(NINA RICCI)」。今季はミラノとパリに挑戦して、「フェンディ」「デルコア」「ヴァレンティノ」「ディオール(DIOR)」などビッグメゾンに起用されました。

 モデルになったきっかけは、高校3年生で進路に悩んでいたとき、大好きなファッションに携わる仕事に就きたいと思い自らモデル事務所ドンナに履歴書を送り採用されたこと。そんな彼女の行動力は今季の活躍にも繋がっているように思えます。ヨーロッパ各国の水際対策が厳しい状況下でのファッション・ウィークとあって、今季はモデルだけでなく多くの業界人が現地入りしませんでした。しかし、東京拠点のハナカさんは早々にイタリアへと入国し、2週間の隔離を経て初めてとなるミラノ・ファッション・ウィーク、2回目のパリコレに挑みました。

 そんな彼女が最も印象に残っているのは、「フェンディ」のショーだそう。「隔離後、キャスティングディレクターに会いに行き、最終決定が出るまで計5回『フェンディ』のショールームへ出向きました。本番の日は、いつもインスタで見ているヘアスタイリスト、メイクアップアーティスト、スタイリスト、モデルたちと同じ現場にいて『私、今すごいところにいる!』と感激のあまり泣きそうになりました。キム・ジョーンズ(Kim Jones)さんと日本語でお話ししたのも貴重な思い出として残っています」。自ら行動し、自らの手で夢を掴み、憧れの人たちと一緒に仕事をしたハナカさんにとって素晴らしい結果を残すシーズンとなりました。目標は「世界中で活躍しているクリエーターの方々に名指しで『ハナカと仕事がしたい』と思ってもらうこと」だと語り、今後も彼女の行動力でさまざま経験を重ねて、国内外で活躍する姿を見られそうです。

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就任初年度に黒字化を達成 婦人靴の卑弥呼社長が語る、歴史あるブランドの刷新術【ネクストリーダー2021】

 婦人靴のSPA「オリエンタルトラフィック(ORIENTAL TRAFFIC)」をファッションビル中心に出店するダブルエーが、百貨店向け婦人靴メーカーの卑弥呼を傘下に収めたのは2020年5月のこと。そのタイミングで卑弥呼社長に就任したのが新井康代氏だ。ダブルエー最古参メンバーの1人としてその成長を支えてきた新井社長は、卑弥呼社員の声にしっかり耳を傾けつつ、ダブルエーのノウハウを注入。初年度(21年1月期)で黒字化を達成し、その実績から「WWD NEXT LEADERS 2021」に選ばれた。

WWDジャパン(以下、WWD):卑弥呼の2021年1月期の売上高は20億2700万円、純利益は7200万円。就任初年度で黒字化を達成した原動力は何か。

新井康代社長(以下、新井):売れる商品を企画し、在庫の奥行きを持って仕掛けたことで売れ筋を作ることができた。そこに一番手応えを感じている。スニーカーの定着や外出自粛の中でパンプスは全般的に厳しいが、ローファーなどのトレンド商品や、バレエシューズなどソフトな履き心地の商品を増やしたことも実績につながった。とは言え、ベーシックなブラックパンプスの売り上げも悪くはない。仕事用途などでブラックパンプスを探している方には「『卑弥呼』がいい」と思っていただけている。靴はサイズがあるので、ECの在庫を厚くしてオムニチャネル強化を図ったことも奏功した。これは親会社のオリエンタルトラフィックの手法を活用したものだ。20年8月~21年1月のEC売上高は、前年同期比62%増となった。

WWD:新井社長はダブルエーの最古参メンバーの一人だ。

新井:靴デザインを学ぶ専門学校生だったころ、「オリエンタルトラフィック」1号店にアルバイトとして入社し、4~5人だった社員が500人規模に育つのを見てきた。販売、物流、生産などの部門を経験・勉強した上で商品企画全体を担当するようになり、ブランディングを固めていくことができた。その時期に売り上げも大きく伸びたという手応えがある。どんなデザインの商品が、いつ、どれだけ必要なのかが分かるようになったのは、商品企画だけでなくさまざまな部門を担当したからこそ。数字を扱うことがすごく好きだったわけではないが、「どうしてこの商品が売れるのか」「もっと売るにはどうしたらいいか」といったことを分析するのは昔から大好きだ。

大事なのは「一人一人が何を考えているか知ること」

WWD:ダブルエーの肖俊偉社長からは、どういった点を見込まれて卑弥呼社長に抜擢されたと思うか。

新井:ダブルエーでずっと働いてきたことで、会社の“イズム”を理解している点だと思う。ダブルエーは現場で実績を重ねて上がっていくリーダーが多い。店頭アルバイト出身の私もその一人だ。現場を知っているからこそ、店はチームワークによって成り立つということを知っている。自分一人の力で売れるわけではない。ただし、販売員のころから、売り上げに対する思いは人一倍強かったと思う。昨日よりも売りたい、前進したいという思いでやってきた。

WWD:自身はどんなタイプのリーダーか。

新井:あまり前に出たいとは思わないし、社長という自覚も薄い。その方が社員との距離感が縮まっていいと思っている。なるべく社員とはフラットに接したい。調整能力はある方だと思うので、自分は調整型のリーダー。ダブルエーの取締役も兼任しているので毎日卑弥呼とダブルエーの両方に出社しているが、心掛けているのはフロアを歩き回って自分から社員に話しかけること。1人1人がどんなことを考えているのか普段から知っておくことが大切だと思う。その中で業務上の問題点はつかんでいるので、トップダウンで何かを決めることはあっても、無理を通すようなことにはならない。何かやってみてダメな場合も固執はせず、「それならこっち」と切り替えるタイプだ。オフィスのメンバーだけでなく、売り場に行って販売員とも話すし、店頭のマネジャーとも毎日電話などで話している。

WWD:具体的に、社員とはどのようなやり取りをしているのか。

新井:卑弥呼は1973年の操業。歴史があるので、デザインにしろカタログの作り方にしろ、積み上げてきた成功体験や習慣がたくさんある。ただ、それが今の時代に合ってないと感じる場合も多い。「これは今お客さまが求めていることなのか」「業務として当たり前に行われているが、本当に必要なことなのか」と疑問に思うことについては、私自身が卑弥呼を理解するためにも遠慮せずに毎日のように社員に聞いている。もちろん、そこで明確な答えが返ってくるならそれで問題ない。外部から来た私だからこそ気付ける部分もあると思うし、方向性を示すのが私の役目だ。

キャリアアップを恐れず「やってみたらできる」

WWD:ファッション業界はまだまだ女性トップが少ない。

新井:私自身、ここまで上の立場になるとは思ってもいなかったし、自分は社長の器ではないと思っていた。でも、やってみると楽しいことがあって、自分が成長している実感もある。(役職の打診を受けて)もし挑戦するか迷っているなら、やってみたら自分が思っているよりもできるという人は多いと思う。これまでも経験上、女性は(役職などを提示すると)「私なんて無理です」と断るケースが非常に多かったが、実際やってみたらできたというケースがほとんどだ。

WWD:私生活では母親でもある。

新井:ダブルエー社員の中で育休取得者第2号だったと記憶している。ありがたいことに保育園もすんなり決まり、出産後あまり間を置かずに職場に復帰した。働くことを優先したわけだが、これは夫や両親など家族の協力があってこそ。なぜ私が働くのか、働きたいのかを家族にしっかり伝えた。私生活においても、大切なのはやはりみんなの意見を調整していくことだと思う。

WWD:会社と自身の10年後の理想像は。

新井:女性が活躍する時代なので、足元から女性を後押しする会社でありたい。私自身は自信の持てる経営者になれるように、日々実績を積んでいきたい。

WWD:ファッションやビューティの世界で働こうと思っている若い世代に、自身の経験からメッセージを。

新井:私が学生時代に下北沢で「オリエンタルトラフィック」1号店に出合ったときは、「この価格でこういった商品を出す業態は他にない」「絶対伸びる」と感じた。それでアルバイトを始めて今がある。自分がいいと思う業態やブランド、会社で、世の中にまだその価値が伝わっていないと感じるものがあれば、規模を問わず飛び込んでみるのがいいと思う。

【推薦理由】
ダブルエーの成長を支えてきた人なのに、「これをやった」「あれもやった」と実績をひけらかすことがない。「チームワークの成果であって、自分1人の力ではない」という考えだ。ただし、単に控えめというのではなく、心の中に非常に熱いものを持っている。「販売員時代から昨日よりも売りたい、日々前進したいと思ってやってきた」という言葉にそれが表れている。コミュニケーションを大切にし、対話の中で問題点を見付けていくしなやかで柔軟なリーダーだ。硬く尖っている人よりも、こういう人の方が実は強いんじゃないかと思う。

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「ザ・コンランショップ」が伊勢丹新宿本店に返り咲いた理由 両社に聞くその背景

 インテリアのセレクトショップ「ザ・コンランショップ(THE CONRAN SHOP以下、コンランショップ)」が3月31日、伊勢丹新宿本店5階にオープンした。オープン直後の週末に足を運んでみたが、売り場は多くの人々で賑わいレジに列ができるほどだった。家具を選ぶ夫婦から子ども連れ、デザインに興味がありそうな若いカップルや、テーブルリネンを選ぶ女性までさまざま。私の友人も、「軽量でPC入れる仕事用バッグに便利」と「コンランショップ」オリジナルのトートを購入した。「コンランショップ」は2016年にも同フロアに出店していたが、1年経たずに閉店。再出店に至った経緯について、両社の担当者に話を聞いた

 インテリア担当の私は、伊勢丹新宿本店に行くと必ず5階のリビングフロアに行くのだが、その下のファッションフロアでのショッピングがお目当ての人が多いだろう。ところが、新型コロナウイルス感染拡大による“おうち時間”の増加により、以前は5階まで上がってこなかった新客が増えているようだ。

“生活に彩り”需要をオン・オフで取り込む

 伊勢丹新宿本店の5階リビングフロアを担当する三越伊勢丹 新宿ライフデザイン営業部の原宏史氏は、「“おうち時間”用の買い足し需要が見られたが、約1年の自粛が続いているため、今でも継続的にその需要は見られる」と話す。「コンランショップ」再出店に関しては、「『生活に新しい彩りを取り入れたい』『もっと便利に買い物がしたい』という声を反映したのが新『コンランショップ』だ」と言う。
 新「コンランショップ」は5階リビングフロアの中心にあり、花器やフォトフレーム、クッションなど雑貨が中心だった以前の店舗の約5倍の広さ。新店舗では、代表的な名作家具から、テーブルウエア、雑貨、オリジナルグッズまで約100ブランドから1000点以上もの商品をそろえる。しかも、三越伊勢丹のECや三越伊勢丹リモートショッピングアプリ(以下、リモートアプリ)を利用してのショッピングも可能だ。三越伊勢丹が持つこれらECやリモートアプリによるシームレスなサービスに関してもシナジーが期待できると両社の意向により出店が決定した。ECでは、品ぞろえを店舗以上に充実させ、店舗のないエリアの日本全国の消費者一人一人のニーズに合うショッピング体験を提供する。

新型コロナによる“おうち時間”増加で変わる消費

 ザ・コンランショップ ジャパンの塩原道マーケティング兼VMDマネージャーは、「コロナ禍で激変する新しい価値観に寄り添った暮らしのスタイルを提案する場として出店した。時代に沿った『コンランショップ』らしいモダンでインスピレーションに溢れたスタイリングを通して、優れたデザインに囲まれた豊かな暮らしや快適なリモートワークなどを提案したい」とコメントしている。暮らしが変われば、消費も変わる。冬が長く自宅で過ごす時間が長い北欧の人々が、快適な家作りに重きを置くように、新型コロナ感染拡大により世界中の人々が自宅の暮らしを見直すことにより、新たな需要が生まれ、それがインテリア業界好調につながっている。また、今まで以上に消費者の利便性が重要視される時代で、オン・オフのシームレスなショッピング体験の提供が鍵となるだろう。

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まだ、あなたが知らないニューヨーク最新トレンド 急ピッチで広がるメンタルウエルネス

Entering the New Chapter for Mental Wellness

 ニューヨークのファッション業界で活躍するクリエイティブ・ディレクター、メイ(May)と、仕事仲間でファッションエディターのスティービー(Stevie)による連載も第18回。“You’d Better Be Handsome”では、セレブ情報に敏感なレイチェル(Rachel)も加わって、ニューヨークのトレンドや新常識について毎回トーク。今回は、現在1210億ドル(約13兆2000億円)と言われているメンタルウエルネス市場について。コロナの影響でロックダウンが始まった昨年春から1年間の間に、アメリカでは6人に1人が新たにセラピー(心理カウンセリング)を始めたという統計も。90%以上の人々が、1つまたは2つ以上のうつ系の症状を持っていると言われている。

メイ:暗くて長〜い冬もようやく終わりそうな気配。この冬は特に長かったような。

スティービー:この1年間ずっと冬みたいなものだったから。冬ごもりする熊みたいな気分だったよ(笑)。

レイチェル:ニューヨークでは3月30日から新型コロナウィルスのワクチンを受けられる年齢制限が30歳まで下がったし、少し光が見え始めてきたかも。4月6日からは16歳以上は誰でも受けられるようになったし。

メイ:落ち込む暇もないくらい仕事が忙しかったのはありがたかったけど、友人と食事に行ったり旅行に行ったり、以前のような息抜きがうまくできなくなった。ときには「これってうつ?」という気分にもなったり。

スティービー:そういう人は多いんじゃないかな。やる気が出ないというか、体に力が入らないバーンアウトみたいな日も結構あった。以前だったら「次の旅行」とか「次の出張」を一つのゴールにして生活の張りを維持できていたんだけど。

レイチェル:うつや精神が不安定になっている人は周りでも増えているし、そういった心の問題について前よりもオープンにするようになってきたように感じる。このようなご時勢だし、メンタルが弱っても仕方ないというか、それを受け入れるムードが広がっているのかも。

メイ:雑誌や新聞でもメンタルイルネス(Mental Illness、精神疾患)とどう向き合うかだったり、メンタルウエルネスに効果的なグッズを紹介するような記事が目につく。また家にいる時間が長くなると嫌でも自分と向き合う時間も増える。

スティービー:これまで以上に、自分のメンタルウエルネスを維持し向上させることを意識している人が増えているよね。気をつけないと、知らぬ間に精神的に不安定になることもあり得る。普段から食事や運動に気を使って、大きな病気にならないように努力するのと一緒。強度のストレスや落ち込みから自分をうまく解放していかないと、心の健康はもちろん、体の健康にまで影響が出てくるってことだね。

リモートの進化で手軽に始められるセラピー

スティービー: 気が滅入ったからといって、突然セラピーに行くのはハードルが高い。そこに目をつけたシリコンバレー系のテックカンパニーが次々とメンタルヘルスビジネスに乗り出してきている。

メイ: 仕事から授業まで、この1年ですべてがリモート化されて、同時に前からあったはずのメンタルウエルネスアプリも一気に認知が高まった。

レイチェル:2020年はリモートが浸透してさまざまな事業やサービスのアプリ化が進んだ。「何もかもアプリってどうかな?」と思っていた分野でさえ、実際にアプリを使ってみると便利かも!とみんなが気づいたよね。これまでセラピーは前もってアポを入れて一対一で向き合うものが主流。アプリだと家から出なくていいしとても楽!前からメディテーションのアプリは充実していたけど、最近は心理学に基づいて症状を判断してくれ、そのときの気分はもちろん、睡眠、投薬、運動などを記録していけるようなアプリ「ムードフィット(MOODFIT)」なども人気みたい。

メイ:「ヘッドスペース(HEADSPACE)」 や「カーム(CALM)」などの瞑想アプリはテレビ広告まで打ち出し、ニーズが高いのだと感心した。私も何度かダウンロードしかけたけど、「瞑想するのにアプリって本当に必要?」ってやめてしまった。でも、シリコンバレーの人たちはみんな使ってそうな印象。

スティービー:「トークスペース(TALKSPACE)」はセラピストと直接やりとりができるという進化型アプリ。サブスクリプション型になっていて、会員になるとライブセッションに参加したり、テキストや動画、音声メッセージをいつでもセラピストに送信できるシステム。一対一のセッションは65ドル(約7000円)という設定で、いわゆる対面セラピーに比べるとかなりお得。

レイチェル:似たようなシステムだけど、 「ベターヘルプ(BETTER HELP)」も話題。1万人を超えるセラピストが登録していて、みんな資格はもちろん、最低3年・2000時間の実績が条件になっている。サービスの頻度などによって価格は変わるけど、週に35〜80ドル(約3800円~8700円)くらい。ニューヨークで実際に精神科医に診てもらうと1回200〜300ドル(2万1800〜3万2700円)はするだろうし。

スティービー:ミレニアル世代はネットやアプリでセラピストを探す人が多いから、こういったアプリは今後もっとニーズが高まるはず。にしても、この1年で新たにセラピーを始めた人が6人に1人いるってアメリカはメンタルウエルネスの先進国だね。

英国王室とメンタル問題

メイ:メンタルウエルネスといえば最近の話題は英国王室に嫁いで離脱したメーガン・マークル(Meghan Markle)。彼女はテレビ界の女王オプラ・ウィンフリー(Ophra Winfrey)のインタビューで、自身が精神的に追い込まれていた時に助けを求めても王室はセラピストを用意するなどはもってのほか、精神的な問題を抱えていることは黙らされていたと告白した。

スティービー:さらに、王室の中には2人の間に生まれてくる子供の皮膚の色を懸念する人もいたということを明かした。ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter、黒人の命は大切)の時代にテレビで激白されると、王室も逃げ場がない。

メイ:英国王室は今回のことだけではなく、故ダイアナ妃のときもメンタル問題を見ないふりして責められているよね?確か。

スティービー:ダイアナ妃はチャールズ皇太子と婚約したすぐ後から過食症に悩まされていたことを、離婚した後1995年にBBCのテレビインタビューでも告白している。王室内では周知の事実だったにも関わらず、アンドリュー・モートン(Andrew Morton)の著書「ダイアナの真実」が1992年に出版されるまで、措置も取らず黙って見過ごしていた。

レイチェル:若いときに母親を亡くしたヘンリー王子も20代で精神的に病み、セラピストにかかっていると2017年に発表。そのときウィリアム王子が彼を支援してくれたらしい。実際ウィリアム王子は、セレブリティーらと共に英国のメンタルヘルスウイークをプロモーションしたり、メンタルの問題に理解があるようには見えるけど。彼らの親、そして祖父母の世代は考えが古そうだから。

メイ:だってクイーンの夫であるフィリップ 殿下は99歳だからね。

レイチェル:そのヘンリー王子は最近ハリウッドに引っ越し、ネットフリックス(NETFLIX)とスポティファイ(SPOTIFY)と契約して企業向けにライフコーチングを提供するベターアップ(BETTERUP)に参加したというニュースが。

メイ:ヒルトンとかNASAとかをクライアントに持つ、あのベターアップ?

スティービー:そう。ベターアップは年商17億ドル(約1853億円)の企業で、ヘンリー王子はスポークスマンのような役割みたいだよ。彼はプレスリリースで、「メンタルフィットネス(Mental Fitness)」と いう言葉を使っていたけど、“心の健康の重要性”の伝道師として第二の人生を歩くということかも。

レイチェル:ヘンリー王子は、メーガンとともに「アーチウェル(ARCHEWELL)」という非営利団体を去年の春に立ち上げていて、支援を必要とする人々のチャリティのサポートや、ソーシャルおよびパーソナルケア、メンタルサービスなどのコーディネートをしていくらしい。

うつ病に悩まされるセレブリティたち

スティービー:英国王室ほどではないにしろ、人目にいつもさらされるセレブリティにはメンタルの問題を抱えている人が多いのは事実。最近はみんな声を大にして自分の問題を公にしているよね。ソーシャルメディアというプラットフォームがあるからだと思うけど。

メイ:メンタルイルネスと言ってすぐ思い浮かぶのはカニエ・ウェスト(Kanye West)かな。双極性人格障害らしいけど、突然大統領選挙に出馬したり、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)ともとうとう離婚が決まってしまったしね。

レイチェル:ヘイリー・ビーバー(Hailey Bieber)との結婚で落ち着いて見えるジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)もうつ病の治療を受けているらしい。元ガールフレンドのセレーナ・ゴメス(Selena Gomez)もキャリアは順調に見えるけど、うつ病を抱えている。セレーナが最近始めたビューティブランド「レアビューティー(RARE BEAUTY)」の売り上げ一部を、同時に立ち上げたレアインパクトファンド(RARE IMPACT FUND)に寄付し、お金がなくてもセラピーが受けられるメンタルヘルスのサポートを支援している。

メイ:歌手のエルトン・ジョン(Elton John)も「若くて有名というのは本当に大変なプレッシャーなんだ」と語っているけれど、実際に若くて有名な人の多くは心を病んでいる。

レイチェル:シンガーのビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)は現在19歳だけど、18になったばかりのときにグラミー賞を一気に5つも獲得して大快挙を成し遂げた一方で、裏ではうつ病で大変だったみたい。他にもビヨンセ(Beyonce)、ケイティ・ペリー(Katy Perry)、レディー・ガガ(Lady Gaga)、そしてマライア・キャリー(Mariah Carey)もメンタルを病んだことがあると告白している。

スティービー:歌ったり踊ったりしてストレスを発散してそうだけど、やっぱり人に見られているって大変なプレッシャーだよね。最近はそれにソーシャルメディアまで加わって、24時間監視されている気分になるのかも。セレーナは自分のソーシャルメディアからしばらく離れていたらしいよ。それもメンタルウエルネスには重要な鍵かも。

メイ:意見を発信する立場にいるセレブリティがメンタルウエルネスの話をすることで、「自分もセラピーを受けてみようかな」とか、「悩んでいるのは自分だけじゃないんだ」、と分かるならば素晴らしい。私もとりあえず「トークスペース」と「ベターヘルプ」を使ってみようかと、今日二人と話して思ったよ。

ヘルプが必要なファッション業界

レイチェル: メンタルを病むファッションデザイナーも多いよね。

スティービー:アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)やケイト・スペード(Kate Spade)の自殺は記憶に新しい。いま振り返ると、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)が酔っ払って、人種差別的なコメントをしてディオール(DIOR)のクリエイティブ・ディレクターを降ろされたけど、彼もあのときはメンタル的にかなり衰弱していたのだと思う。マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)もアルコールと薬物で何度か通称“リハブ”と呼ばれる更生施設に行っているし。

メイ:そういえば以前はよくケイト・モス(Kate Moss)がリハブに入っただの、そういう話が多かったけど、最近あまり聞かないね。

スティービー:ファッション業界は一見華やかに見えるかもしれないけど、デザイナーの仕事量とプレッシャーは半端じゃないし、常に新しい子たちが入ってくるモデル業界もシビア。業界別にみる自殺率は、ストレスが多いと言われる法律系と医療を抜いてファッション業界が7位らしい。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)がそういう衝撃のデータを発表している。

レイチェル:オリジナル性の高いもの、クリエイティブなものを生み続けるって大変だからね。天才たちもそれを休みなくアウトプットしないといけないとなると、どこか狂ってくるのかも。

メイ:もっといろいろなサポートシステムが必要よね。最近は健康的に見えないモデルを起用しない企業があったり、コンデナスト社も18歳以下のモデルは起用しない方針を掲げているし、ここ数年で変わってきたこともある。

スティービー:高級ブランドコングロマリットのLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)やケリング(KERING)も、ビジネスではライバルであるにも関わらず、モデルの健康を守るために、共同で基準を決めて取り組んでいるね。細すぎるモデルの起用を取りやめたり、22時から6時は労働を禁止したり。これまで当たり前のことがファッション業界では無視されがちだから。

メイ:モデルもフォトグラファーのポートフォリオ作りのために無償でサービスを提供したり、デザイナーもお金が払えないから物品をあげたり。駆け出しのときは仕方がないとしても、いつまでもきちんとサービスに対するフィーを払わないケースも多々見てきたし。まだまだ改善の余地あり、よね。

受講者300万人超え、幸せになるコツを科学的に立証する授業

スティービー:ようするに「幸せってなんだろう?」みたいなことをみんな常に考えていて、以前だったら本を読んだり、映画を観たり、教会に行ったりしていたけど、最近はみんなアプリに答えを求めているのかも?

メイ:アプリだけじゃなくて、リモートで爆発的な人気を呼んだエール大学の授業、「ウエルビーイングの科学(SCIENCE OF WELLBEING)」を知っている?有名大学のオンライン授業が受けられるコーセラ(COURSERA)上で無料で受けられるんだけど、なんと受講者数が300万人を超えたそう。しかも2020年3月だけで63万人が申し込んだのだとか。

レイチェル:私もそれ受けた。イェール大学で元々人気があったクラスがオンライン化されて、世界中から受講者が増えたという。心理学科のローリー・サントス(Laurie Santos)教授が18年にスタートした授業で、イェール大学史上最も人気のクラスになり、その後オンライン化されてさらに人気に火がついた。

メイ:通称「ハピネス・コース」ね。実際どういう内容なの?

レイチェル:例えばお金がたくさんあるとか、高級車に乗ってるとか、完璧な体型とか、一般的な思い込みでは実はハッピーになれないというところから始まる。このコースは科学とリサーチに基づいているから説得力もある。

スティービー:確かに欲しいものは全て持っていて、家を何軒も持っている人が必ずしも幸せとは限らないよね。それを大学生の時点で学べたらラッキーかもね。

レイチェル:すぐに取り入れられるようなトリックや考え方も教えてくれる。「モノよりも経験を大事に」、「たくさんのお金よりたくさんの時間を大切に」、「人に親切にすることで自分が幸せになれる」などね。そこでも瞑想、運動、快眠はやはり大事と言っていた。

日々進化するメンタルウエルネスグッズ

スティービー:実はこのメンタルウエルネス市場規模は、世界で1210億ドル(約13兆2000億円)を超えているらしい。内訳は、香りや睡眠関係グッズが495億ドル(約5兆4000億円)、脳を活性化するサプリ系が348億ドル(約3兆8000億円)、自己啓発系が336億ドル(約3兆7000億円)、瞑想とマインドフルネスが29億ドル(3200億円)なんだとか。

メイ:言われてみれば、私も快眠を目指して新しい枕やシーツ、ルームフレグランス、サプリとか日々いろいろ試している。さらに心が落ち着くようにと、毎朝「ザ ヌー コー(THE NUE CO)」の“ムード(MOOD)”というサプリを欠かさないし。

レイチェル:それってもしかしてアシュワガンダが入っている?うつにも効くと言われている?

メイ:そうそう。古くからアーユルヴェーダで使われてきたインドの“薬用植物界の女王”と言われるアシュワガンダと、ビタミンBとD。ストレスを減らしてくれるらしい。効いているかと聞かれたら自信がないんだけど、もしこれを飲んでないでストレスが2倍になったらと想像するだけでストレスになる。

スティービー:リラックスが大事だというならば、カンナビジオール(CBD)はどう?最近CBDが入ったありとあらゆるグッズが充実してきている。

レイチェル:最近は専門店もよく見かける。不安、不眠、体の痛みだけでなく、ときには中毒にも効果的らしい。私の友人は、犬が吠えてうるさいときにもCBD入りのおやつをあげているくらい。

メイ:あっという間に製品が増えていて、吸うタイプやドロップタイプから、スキンケアライン、入浴剤、インティメシーオイルまであるし。

スティービー:食べられるものもあるよね。寝る前に食べるCBD入りのグミやチョコレートとかまで。

レイチェル:そういうのは分かるけど、不思議なトレンドもあるよね。本来は仏前で手を合わせるときに使う“鈴(りん)”をヨガする前か、瞑想のときなどに使っている人も多いようで。本来の役割である邪念を祓う、ところまで理解しているとは思えないから、あの音が気持ちを落ち着かせてくれるってことかと思うけど。

スティービー:もちろんグウィネス・パルトロー(Gwyneth Paltrow)のグープ(GOOP)でも売っていた。彼女はトレンドを読むのが早いからね。ハッピーになるには、お金も時間もかかるってことなのか。

メイ/クリエイティブディレクター : ファッションやビューティの広告キャンペーンやブランドコンサルティングを手掛ける。トップクリエイティブエージェンシーで経験を積んだ後、独立。自分のエージェンシーを経営する。仕事で海外、特にアジアに頻繁に足を運ぶ。オフィスから徒歩3分、トライベッカのロフトに暮らす

スティービー/ファッションエディター : アメリカを代表する某ファッション誌の有名編集長のもとでキャリアをスタート。ファッションおよびビューティエディトリアルのディレクションを行うほか、広告キャンペーンにも積極的に参加。10年前にチェルシーを引き上げ、現在はブルックリンのフォートグリーン在住

レイチェル/プロデューサー : PR会社およびキャスティングエージェンシーでの経験が買われ、プロデューサーとしてメイの運営するクリエイティブ・エージェンシーで働くようになって早3年。アーティストがこぞってスタジオを構えるヒップなブルックリンのブシュウィックに暮らし、最新のイベントに繰り出し、ファッション、ビューティ、モデル、セレブゴシップなどさまざまなトレンドを収集するのが日課

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金山大成が答えるファッションや仕事に関する45の質問 インフルエンサー名鑑Vol.10

 インスタグラムを筆頭とするSNSの普及で、「憧れの人」「なりたい人」が細分化している。今は、誰もが、それぞれの「なりたい人」を持っている時代。ならば、そんな身の回りの人を改めて知るべきではないか?そこで「WWDJAPAN.com」は、インフルエンサーをはじめとするソーシャルリレーション マーケティング事業を手がけるリデルの協力を得て、身近な新世代インフルエンサー名鑑を作成する。

 今回は“衣食住の充実“をテーマに、雑誌風の投稿でコーディネートやアイテム、暮らしに役立つ知識、食など発信する金山大成。アパレル、ジュエリーブランドを手がけるほか、近年では動画制作やコンサルティング、キャスティングなどファッション領域以外にも事業を拡大する金山には、好きなブランドやコーディネートのポイントのほか、仕事や今後の展望に関する質問が数多く寄せられた。全ての質問と回答を一挙に公開する(2021年4月12日号「WWDジャパン」には、彼にSNS運用などを聞いたインタビュー記事を掲載します)。

ファッションに関するあれこれ

Q.1:アパレル業界を目指したきっかけは?
A.1:10代の頃に過酷な仕事を経験して、自分は好きなことしか続かないと感じたからです。

Q.2:ファッションにハマったきっかけは?
A.2:高校生のときにファッションを通して笑顔になる、楽しくなるという幸福感を覚えたことがきっかけです。

Q.3:服を購入するときの基準は?
A.3:値段は関係なく、ワクワクするかどうかです。私の場合、その感覚がないと買っても必ず失敗します。

Q.4:「ここは人に負けない」というコーディネートのポイントは?
A.4:レイヤード力と色の組み合わせです。

Q.5:いつからドレスライクな服が好きになった?
A.5:22歳ごろからです。童顔なので、革靴を履いたりシャツを着たりして“いかに大人っぽく見せるか”を意識していました。

Q.6:自身のブランド「サブレーションズ(SUBLATIONS)」のコンセプトは?
A.6:矛盾し対立する二律背反の要素をデザインに落とし込んだユニセックスブランドです。

Q.7:衝動買いすることはありますか?
A.7:あります(笑)。先日も勢いで「オーバーコート(OVERCOAT)」を買ってしまいました。

オススメのブランド

Q.8:オススメの財布ブランドは?
A.8:今は「ロエベ(LOEWE)」か「PB 0110」が欲しいです。

Q.10:3万円以内でオススメのローファーは?
A.10アウトソールの縫製のみ機械で行い、そのほかの工程すべてを手作業で仕上げるハンドソーンウェルテッド製法を採用している「ジャラン スリウァヤ(JALAN SRIWIJAYA)」のローファーです。

Q.11:2021-22年秋冬で気になっているブランドは?
A.11:「ヘド メイナー(HED MAYNER)」です。

Q.12:好きなブランドトップ3は?
A.12:1. 「ジル サンダー(JIL SANDER)」2. 「ヘド メイナー」3. 「アワー レガシー(OUR LEGACY)」です。

Q.13:社会人になって初めて買ったブランドは?
A.13:「プラダ(PRADA)」のシューズです。

Q.9:10代でも手に取りやすいブランドは?
A.9:「スタイルミキサー(STYLEMIXER)」や「コス(COS)」「ザラ(ZARA)」などは比較的に安価で手に取りやすいと思います。ブランド古着を買うことを1番オススメしたいです。

Q.14:ファッション誌は何を読んでいる?
A.14:主に「ウオモ(UOMO)」「ギンザ(GINZA)」「シュプール(SPUR)」「エル(ELLE)」「ヴォーグ ジャパン(VOGUE JAPAN)」「ポパイ(POPEYE)」です。

Q.15:女性に贈るならどのようなアクセサリーを選ぶ?
A.15:女性には華奢なアクセサリーよりも、ヴィンテージの「エルメス(HERMES)」など少し大振りなものを着けて欲しいです。

過去と現在について

Q.16:これまでの経歴は?
A.16:アルバイトスタッフとしてアーバンリサーチに入社しました。その後、社員になり店長やプレス、販促、マーケティングを経験し、昨年独立しました。

Q.17:販売員が持つべき心得えは?
A.17:お客様に喜んでもらうにはどうしたらいいかを考えることです。

Q.18:ブランド立ち上げで大変だったことは?
A.18:出資を受けずに立ち上げたので、資金を集めるのに苦労しました。

Q.19:コロナで仕事に影響はある?
A.19:自由にイベントが開催できなくなったので、ECでの販売戦略を今まで以上に考えるようになりました。

Q.20:「今の仕事をしていてよかったな」と思う瞬間は?
A.20:夢だった大好きなブランドのコレクションや、展示会に行けたときです。

仕事と人生に対する考え方

Q.21:人生で一番大事にしている「自分軸」や「考え」は?
A.21:人に喜んでもらうために行動するよう心がけています。周囲が楽しければ自分も楽しいという考え方を大切にしています。会社のメンバーが楽しそうに働いていたり、やりたいことに熱中していたりする姿を見るのが、なにより楽しいです。

Q.22:座右の銘や好きな言葉は?
A.22:切磋琢磨です。

Q.23:モチベーションを保つ秘訣は?
A.23:読書とロールモデルを立てることです。

Q.24:自身の原動力は?
A.24:目標を公言すること。後には退けない環境に自らを追い込みます。

Q.25:仕事の糧は?
A.25:「諦めるのは簡単。」と友達に言われてから、その言葉が糧になっています。

Q.26:現在の仕事をしていなかったら今は何をしていた?
A.26:きっと体育教師をしていたと思います。

Q.27:尊敬している人物は?
A.27:当時勤めていたアーバンリサーチの店長は、ずっと尊敬しています。ファッションでは松田翔太さん、「メンズノンノ(MEN’S NON-NO)」モデルの守屋光治さん、中田圭祐さんに影響を受けました。

趣味趣向について

Q.28:人生最後に食べたいものは?
A.28:納豆です(笑)。

Q.29:好きな女優は?
A.29:中条あやみさん、高田里穂さん、新木優子さんです。

Q.30:好きなアーティストは?
A.30:FIVE NEW OLDとLUCKY TAPESです。

Q.31:好きな女性のタイプは?
A.31:夢を持って走り続けている人です。

Q.32:好きな香りは?
A.33:「ロエベ(LOEWE)」の “001 MAN”という香水の香りです。

Q.34:服以外の趣味は?
A.34:歌うことと身体を動かすことです。

Q.35:幼少期はどんな子どもだった?
A.35:とにかく身体を動かすことが大好きでした。昔から好きなことへの探求心は変わらないです。

SNS運用のきっかけや方法

Q.36:インスタグラムで情報発信するきっかけは?
A.36:「私も光の当たっている方へ出てみたい」という憧れと「有名なアパレル販売員になりたい」という思いがあったからです。

Q.37:どのように インスタグラムで約18万人のフォロワーは獲得した?
A.37:ニーズに合わせて投稿内容を柔軟に変えることで、飽きられずに支持していただいています。常にPDCAを回すことが大切です。

Q.38:SNS運用で気を付けていることや意識していることは?
A.38:顔を出して運用しているので、インターネットにはないリアルな情報を伝えられるように意識しています。

Q.39:投稿写真の加工方法は?
A.39:adobe lightroomというアプリを使用しています。

今後の展望や将来のこと

Q.40:30歳までに成し遂げたいことは?
A.40:「サブレーションズ」のショーを行うことです。

Q.41:今後挑戦したいことは?
A.41:山ほどあります。挑戦するために現在の事業をコツコツ頑張ります。

Q.42:人生の目標は?
A.42:私の会社で働いている従業員がもっと安心できるような環境を築くことです。あとは、死ぬまでに1〜12月の四季を演出するホテルを経営したいです。

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「福祉×オシャレで世の中を変える」 身体障害者の声から生まれたブランド「ボトモール」

 障害があってもなくても誰でも着られるファッションを提案する「ボトモール(BOTTOMALL)」が、パリ・コレクション参加に向けて着々と準備を進めている。同ブランドを2019年に立ち上げたのは、日本障がい者ファッション協会(以下、JPFA)の平林景代表理事だ。JPFAはファッションの力で福祉を明るくするためにさまざまな活動を行い、同氏は、自他ともに認める"福祉業界のオシャレ番長”。「福祉×オシャレで世の中を変えることが生涯をかけた使命」と断言するほど、ファッションの力で福祉業界の課題や世の中の偏見に熱く立ち向かっている。「ボトモール」は、なぜパリコレを目指すのか。平林に話を聞いた。

WWD:これまでの経歴を教えてください。

平林景(以下、平林):20代のころ美容師として働いていました。ヘアスタイルが変わることで自分に自信を持てるようになったお客さまを見るうちに、“オシャレ”が持つ力を強く感じるようになっていきました。でも徐々に手荒れが悪化し、最終的にはハサミを持つこともできなくなって25歳のときに美容師を辞める決心をしました。退職後は美容専門学校の教員として10年ほど働いたのち、福祉と出合って現在に至ります。

WWD:福祉業界に携わるきっかけは?

平林:身近に発達障害を抱える人がいて、不得意なことはてんで駄目でも、得意なことには突き抜けた能力を発揮しています。そんな人たちの長所を子どものころから伸ばせれば、障害を持つ人の人生や社会全体を変えられるんじゃないかと思いました。そこで勤務先の美容専門学校を運営する学校法人に掛け合い、1年間に渡る交渉の末、2014年に個別学習塾「東京未来大学こどもみらい園」を開き、副園長を務めました。

WWD:JPFAを設立した経緯は?

平林:知人から過去に「パリコレでは、車椅子の人たちを中心にショーが行われたことがないらしい」と聞いたのがきっかけです。美容師時代に感じていた、"オシャレ"の持つ力で福祉業界も変えられるんじゃないかと思ったんです。ニューヨーク・ファッション・ウイーク(現在はアメリカン・コレクションズ・カレンダーに改称)で義手やダウン症のモデルなどがランウエイを歩いているので、パリコレでも実現できると考えました。

WWD:なぜそのような事例がないと考える?

平林:車椅子は着座しなければいけないので、立位姿勢を前提としたコレクションではファッションとして成り立ちにくいではという先入観や、障害に対するネガティブな考えもあるからではないでしょうか。障害に対する偏見はまだまだ根強い。“車椅子だからこそ格好いい”を表現できれば、そういった世間の偏見や考えが覆せるのではないかと思っています。

「オシャレのために誰かの手を煩わせたくない」

WWD:どうして福祉×ファッションにこだわる?

平林:車椅子に乗る人とお会いした時に、「若いときはファッションを楽しんでいたが、車椅子に乗る今は、お洒落を諦めてしまっている」と話していました。その理由を尋ねると「車椅子では入れない試着室がある。仮に入れたとして服を一人で着れないときは、誰かにサポートしてもらわなければいけない。『オシャレがしたい』という自分の欲求を満たすために、誰かの手を煩わせることが心苦しくなった」という答えに心を強く締め付けられました。

もし車椅子の人が簡単に着られるお洒落な服があればそんな気持ちを抱くこともなくなるんじゃないかーー。そう思い立って教育系大学の生徒や教授、福祉の現場で職員などに相談したところ、座席に広げて座るだけで着脱できる巻きスカートのアイデアが出てきたんです。本格的に製品化するにあたりファッションブランド「ボトモール」を立ち上げました。

WWD:スカートを履くことに抵抗を感じる男性も多いのでは?

平林:そもそも障害を持つ人のための服を作っているわけではありません。「ボトモール」は“障害の有無や性別、年齢なども問わず誰もが着られる機能的な服”がコンセプトです。ブランド名は「ボトム」と「オール(全員)」を組み合わせた造語に由来しています。

WWD:一般的な巻きスカートと異なる点は?

平林:車椅子に座ったときに一番きれいに見えるように前と後ろの長さをアシンメトリーにしています。また足が動かしづらいと血流が悪くなり冷えやすくなるので内側の生地を起毛素材にしたり、着脱がより楽になるようにセンターにジップを施したりしています。

WWD:巻きスカートのほかにアイテムは?

平林:両サイドにジップを施してスムーズに着脱できるパンツや、片麻痺(体の左右どちらかが麻痺する症状)の人でも、腕を通さず着られるトップスなどを作っています。また車椅子を使用するとき、一般的なジャケットでは丈が長すぎてしわがつきやすいという声を聞き、丈の短いジャケットを作りました。巻きスカートと同じ素材でセットアップとしても着用できます。

行政を巻き込んでパリコレ出展に尽力

WWD:パリ・コレクション参加に向けて具体的にどういった活動をしている?

平林:JPFAの拠点がある大阪・茨木市の福岡洋一市長と共に、経済産業省のクールジャパン政策課に出向いてパリコレ参加についてお話をしました。現在はその取り組みを“パリコレプロジェクト”と題して、正式に茨木市後援事業としてサポートとしてもらっています。また大阪府の吉村洋文知事にはフランス大使館の大使を紹介してもらい、現地での支援をお願いするなどたくさんの方々に援助していただきながら、少しずつ実現に向けて前進しています。デジタルショーも視野に入れ来年の参加を目標にモデルオーディションも進行中です。

WWD:ショーの構想は?

平林:“If…(もしも)”がテーマです。もしも世界が車椅子を乗ることに当たり前だったら、どんなデザインや未来が生まれていたのかを表現したいんです。「車椅子の方でもお洒落ができる」とうたった、障害者のためのファッションショーをするつもりは全くありません。マイナスをゼロにするのではなく、マイナスをプラスに変える「車いすだからこそ格好良いファッションは何か」を世界に向けて提示したいです。

WWD:今後の課題と展望は?

平林:障害に対する世の中のイメージを変えたいです。福祉業界の意識だけを変えても何も変わりません。世の中を変えるためにはまず地域を、地域を変えるためには市長や知事などのトップの意識が変わらないといけないんです。また「ボトモール」の認知拡大も今後の課題です。例えばファーストリテイリングなどのファストファッションの大企業と一緒に取り組むことができれば、ファッションに悩む人たちにも一気に認知を拡大できると考えています。

WWD:福士業界の課題は?

平林:福祉業界はまだまだ“きつい”“汚い”“危険”の「3K」のイメージが強い。福祉業界は、団塊世代が後期高齢者に達し、近い将来、現場の人材が大幅に不足する問題を抱えています。若者が福祉や介護に憧れて業界に入ってもらえたら、それを解決できるはず。だからこそファッションと掛け合わせて福祉業界を盛り上げたいんです。

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パルコの春夏広告を手掛けたジェイミー・リードに聞く “希望と重力”に込めた思い

 パルコの広告といえば、石岡瑛子や箭内道彦、エムエムパリス(M/M Paris)ら稀代のアートディレクターが次々と金字塔を打ち建ててきた栄誉ある仕事だ。そんなパルコのシーズン広告を、2020年からイギリス人アートディレクターのジェイミー・リード(Jamie Reid)が手掛けている。31歳のリードは、英ファッション誌「デイズド&コンフューズド(DAZED & CONFUSED)」や「ポップ(POP)」などのアートディレクターを務めてきた、若くして才能を認められた人物。コロナの脅威が続く中で制作された21年春夏のシーズン広告は、希望と重力を表現した“HOPE FLOATS”をテーマに掲げる。フォトグラファーにジョニー・デュフォート(Johnny Dufort)、スタイリストにガレス・ライトン(Gareth Wrighton)と、ロンドンの若手クリエイターを起用し、未来へのポジティブなメッセージを発信する。

WWD:19年にパルコのキャンペーンで初来日したと聞いた。そのとき感じたパルコの印象は?

ジェイミー・リード(以下、リード):パルコのキャンペーンをデザインすることになり、まずはパルコの持つコミュニティーのあり方や文化、サブカルチャーがその地域にどういう機能をもたらしているかに興味を抱いた。当時の渋谷パルコは建替中(19年に大規模改装を実施)だったけれど、建築自体もものすごくかっこよかったし、店が街にどんな機能を果たすかをすごく丁寧に考えているなという印象を持った。ファッションに限らず、とても強いアイデンティティーを発信していたんだ。デジタル社会におけるリアル店舗の意味とか、渋谷の中心から文化を発信していくんだっていう気概みたいなものを感じたよ。

WWD:21年春夏のキャンペーン“HOPE FLOATS”に込めた思いは?

リード:初めからみんなの共通認識だったのは、未来に向けて希望を抱けるようなそういう思いを大事にしようということだった。だから、気持ちが高揚したり明るくなったりする感覚をどうやって表現するかを何度も話し合った。それで、空に上っていく感じや体が浮き立つような感覚を重力に例えて、それをバルーンで表現することにしたんだ。

WWD:バルーンのモチーフをウサギやアイスクリームにした理由は?

リード:モチーフのアイデアはたくさんあったんだけど、広告を打ち出す際には、メッセージがクリアに伝えられるかを大事にしている。だから誰もが親近感を抱けるようなモチーフにしなければならなかった。ウサギやアイスクリームは多くの人の記憶と結びつく。サイズ感やビジュアルは、スタイリストのガレスのアイデアなんだけど、人間よりも大きいサイズにすることで、パワフルさを感じられる。最終的にはパッと伝わることが大事だから、それを写真の中に納めたときに一番効果的なビジュアルにできるかどうかにこだわった。この大きなウサギのバルーンがパルコのショッピングモールの中にあったら面白いだろうなって。

WWD:背景に実際のロンドンの街並みを用いた理由は?

リード:昨年の12月にロンドン市内の複数の場所で撮影した。ロンドンは今、コロナの状況がかなり悪化していて、街中に誰もいない本当に空っぽの状態なんだ。今は人々が行き来できない場所になってしまっているけど、そこで楽しいことや想像もしないような非現実的なことが起こっている様子をビジュアルで表現したいなって思ったんだ。

WWD:ファッションキャンペーンにおいて、特に大切にしていることは?

リード:キャンペーンの仕事では、どんなクリエイティブチームを作るかがとても大切だと思う。今回のキャンペーンのこのアイデアだったら、この人とこの人を出会わせたら面白いことが起こるんじゃないかとか。それが一番大事にしていることだし、自分が一番楽しんでいるところかな。

WWD:パルコと仕事をして感じたことは?

リード:19年に日本に行ったのがアジアを訪れること自体初めてだったから、消費者としてパルコを知っていたわけではないんだけど、グラフィックデザインを学ぶにあたって、パルコの広告はさまざまなところで目にした。アートやデザイン界隈にいれば、パルコの名前は必然的に目に入るから、歴代のキャンペーンビジュアルも自然と頭の中に刷り込まれているよ。だから声を掛けてもらったときは、非常に光栄だったし、関われることがうれしかった。パルコチームは表現に対してとても誠実だから、僕も自分のやりたいことをできたし、アイデアを追求できた。今回のキャンペーンみたいにゼロから全部考えさせてもらえるプロジェクトはなかなか無い。アイデアのためにデザイナーに服まで作ってもらえる自由があるのは、後にも先にもパルコぐらいなんじゃないかなって思うよ。

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オープンから3年内田聡一郎「レコ」代表に聞く 新規出店の背景とスタッフの育て方

 2018年のオープン以来、東京・渋谷のヘアサロン「レコ」はエッジの効いたヘアデザインと多彩なスタッフ陣で人気を集めている。20年4月には姉妹ブランド「クク」、今年3月には「レコ オーベン」をオープンし、スタッフも30人ほどに増えるなど、勢いは年々増している。内田聡一郎代表に「レコ オーベン」出店の背景と今後の展望を聞いた。

WWD:3店舗目となる「レコ オーベン」をオープンした背景は?

内田聡一郎「レコ」代表(以下、内田):「レコ」と「クク」2店舗体制でやってきて、単純に席数が足りなくなってきたというのがきっかけです。「レコ」と「クク」はかなり近い場所にあり、オペレーションがよく、なるべく3店舗目も近い場所でと考えていたところ、同じビルの2階が空いたので出店を決めました。

WWD:“内田代表のアトリエ”とも表現しているが、「レコ」にとって「オーベン」はどのような位置付けになるか。

内田:「レコ」の2号店であり同じビル内にあるので、大きく差別化するつもりはありませんが、「オーベン」では僕のお客さまを中心に施術して、より上質な空間を提供したいと考えいています。僕の美容師歴も20年ぐらいになり、サロンワークは長年通い続けてくれているお客さまが中心です。「レコ」は10〜20代半ばのお客さまがメインターゲットということもあり、僕の顧客層とのズレも感じていました。「レコ」に通ってくれたお客さまが大人になっても通える場所を作りたいという思いもありました。「個性は好きだけれど、リラックスした空間が心地よくなってきた」というお客さまもカバーしたいですね。「オーベン」は個室を完備し、スパメニューも充実させることでよりエグゼクティブな空間を提供します。

スタッフに会社の将来性を
プレゼンテーションする

WWD:「レコ」オープン時には、“人が辞めないサロン”を掲げていた。店舗数が増えるにつれてスタッフたちも育っている?

内田:4月には新たなスタッフを迎え、30人近くになりました。着々と人数が増え、当初目標としていた形が出来上がりつつあります。若手スタッフが増えたこともあり、「レコ」を統括してもらうためにも1月には小林賢司を店長兼ディレクターに任命して幹部陣の充実をはかりました。組織としての体制も整ってきています。

WWD:スタッフとのコミュニケーションで意識していることはあるか。

内田:僕自身は“叩いてのばす”ような体育会系の教育を受けてきました。それにも良い面はあるとは思いますが、今は否定せずに良いところを伸ばしていこうというムード。自分も最近は無理せずにそれができていると思うし、怒ることはほとんどありません(笑)。同じサロンで働いているのでコアにあるものは近いと思いますが、「クク」のメンバーも含め引き出し方は人それぞれ。多様性がある中で、僕がうまくコントロールして「いろんなタイプがいても良い」「美容師の成功って一つじゃない」と考えながら、成長してもらえたらと思います。

WWD:スタッフそれぞれの個性を伸ばせる環境ができている。

内田:そうですね。働き方も、ライフワークバランスの比率も人それぞれなので。僕の場合は10対0で仕事だけれど、5対5もありだし、年齢やライフステージごとに変化するものだと思うので、自分の型にはめないことも最近意識していますね。

WWD:今後の展望は。

内田: “「レコ」ビル”みたいに全フロアがうちみたいなこともアリですよね。働くスタッフたちもサロンの勢いや“乗っている”空気感を感じれるはず。“会社に将来性がある”ことは僕が一番見せるべき部分だと考えています。「『レコ』にいたら自分もいい感じになれるんじゃないか」という期待値をみんなにしっかりとプレゼンテーションできているか勝負しているところです。

WWD:コロナ禍での出店ということもあり勢いを感じる。

内田:単純にコップの水が溢れそうになったから次を出す、というシンプルな考え方です。人が育たないと意味がないと思うので、基本的には人ありき。一寸先も想像できない中でビジネスしないといけない中、それが一番着実とも考えています。「オーベン」はミニマムに作っていて、顧客に継続的に来店してもらえることがコンセプトです。それでもコップの水が溢れる状況は出てくると思うので、4店舗目や別のブランドを作るなども視野に入れています。

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立体的に女性の強さを引き出す気鋭デザイナー 夢は子どもたちを支援する財団の設立 【ネクストリーダー2021】

 「フォトコピュー(PHOTOCOPIEU)」の竹内美彩は、異質な雰囲気を持つデザイナーだ。日本のアパレル企業で婦人服のデザイナーとして勤めた後、パリへ留学し「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」などで経験を積んだ。パリ仕込みの立体裁断を得意とし、天然素材を使いながら、ソフトに肩を誇張したシルエットとワークウエアの機能性を備えたデザインを持ち味とする。2019-20年秋冬のデビュー以来、業界関係者にファンが多く、バイヤーたちも唸らせている。デビューシーズンから、伊勢丹新宿本店や阪急うめだ本店、インターナショナルギャラリー ビームス、エディションなどの有力店が買い付けを続けているのがその証だ。また日本の社会構造に疑問を抱く竹内デザイナーは将来、「フォトコピュー財団」を立ち上げて、母子家庭の子どもたちを支援するという夢も持つ。

WWD JAPAN(以下、WWD):ファッションに目覚めたきっかけは?

竹内美彩「フォトコピュー」デザイナー(以下、竹内):田舎に生まれ育ち、雑誌「キューティ(CUTiE)」「フルーツ(FRUiTS)」、漫画「ご近所物語」の世界に憧れ、小学1年生のときにはすでに将来の夢をデザイナーと書いていた。高校は美術科に進学し、デッサンや彫刻などを学ぶ上で立体造形と向き合い、そこでものを見る力がついたと思う。バンタンデザイン研究所大阪校に通ってからは、積極的にコンテストに応募して、入選できるようになった。

WWD:コンテストでは独創的な服をデザインしてきたが、その後リアルクローズをデザインしたいと思った理由は?

竹内:学生時代にクマの着ぐるみのような作品を作ったときに、モデルの女の子が「これを着るの?」と悲しそうな顔をしていた。それが衝撃で私は“着る人が喜ぶ服を作りたい”と思うようになった。

“媚びることなく自由を感じられ、
着る人が見下されず、格が上がるかっこいい服”

WWD:渡仏前は日本のアパレル企業に就職していたが、どのような経験をした?

竹内:4年間勤務したアパレル企業では、婦人服のデザイン企画担当として、ニットや布帛、刺しゅうなど一通り学んだ。自分のブランドも持たせてもらえて良い経験だったが、実力のある女性社員は平社員のままで、昇進するのは男性社員ばかり。その頃から日本の社会構造に疑問を持つようになった。

WWD:就職後にパリへ留学した理由は?

竹内:会社員時代も「海外に行きたい」という思いはずっとあり、入賞特典が海外留学である、神戸ファッションコンテストに応募した。2013年に入賞し、サンディカ・パリクチュール校の3年生に編入できることになった。

WWD:フランスと日本のモノ作りの違いは?

竹内:パリでの服作りで驚いたのは、肩のシルエットを作り込むこと。今まで「服装はジーパンとTシャツでこと足りる」と思ったこともあったが、フランスではシルエット作りが重視されていた。日本にあまりない肩パッドを使った服作りをフランスで学び、表現が広がったと思う。立体的なシルエットとデイリーな洋服が共存することを知った。

WWD:パリで勤めた「イザベル マラン」と「ヴェロニク ルロワ」では何を学んだ?

竹内:「イザベル マラン」では、まずは半年間アトリエでモデリストアシスタントとしてパターン作りを経験し、その後イザベルさん本人が働くデザインスタジオに移った。イザベルさんは全部の服を試着して確認する勤勉なデザイナー。スタッフの多い大規模な会社だったが、女性社員が多く、男性社員とはジョークを言い合うような雰囲気があり、男女が対等だと感じた。一方、「ヴェロニク ルロワ」はスタッフが5人ほどの小規模ブランド。ボタンなどの付属品の細かいディテールにこだわり、ヴェロニクさん本人の真摯なモノ作りを近くで学ぶことができた。

WWD:いつから独立してブランドを始めようと考えたのか?

竹内:「イザベル マラン」にいるときから自作した服を着ていた。アジア人は容姿が幼く見られがちなので、強さを感じさせるような黒いシルクにワークウエアから着想を得たタフなディテールの動きやすい日常向けのドレスを作っていた。ブランド名も「ヴェロニク ルロワ」にいたときに思いついたもの。アトリエに手書きで“photocopieuse”(フランス語で印刷機械の意)と書かれたラベルがあり、その歪んだ字面がなんとも愛おしく見えて、語尾のseをとってブランド名にした。そうして、パリでブランドのベースとなる“0コレクション”を作り、帰国直前に「イザベル マラン」で同僚だった友人をモデルにビジュアルを撮影した。

WWD:ブランドコンセプトはどのように考えたか?

竹内:世の中にたくさんブランドがある中で、唯一無二でなければいけないと強く思った。媚びることなく自由を感じられる服であり、着る人が見下されず、格が上がるようなかっこいい服を届けたかった。また「イザベル マラン」のショーのバックステージでモデルのジュリア・ノビス(Julia Nobis)に会い、彼女が着るような服を作りたいと刺激をもらった。

“世の中をけん引できる女性リーダーが少しでも増えてほしい”

WWD:クリエイションとMD(商品構成)のバランスもいい。

竹内:デビューの19-20年秋冬は全体のバランスを見ながら、万全に準備ができた。バイヤーには「日本のウィメンズの市場にありそうでない」と言ってもらえ、11アカウント、15店舗での販売が決まった。プレス関係者からの個人オーダーも多く受け、手応えを感じた。

WWD:天然素材にこだわっているが、サステナビリティについてどう考えている?

竹内:個人的にポリエステルが好きではなく、シルクやコットンを選ぶことが多い。膨大な数の素材に目を通すが、ピンとくるものだけを使用し、違和感を感じるものは使わない。扱いづらいイメージもあるが本来シルクはあらゆるシーンを想像できるし、トレンド性を抑えた自然と生活の中に存在する服は長く愛用してもらえる。ユーズドデニムなどを使ったリメイクアイテムも出しているが、“サステナブルだから”という理由ではなく、デザイン前提で素材を選んでいる。

WWD:今後の目標や挑戦したいことは?

竹内:遠い目標だが、「フォトコピュー財団」を立ち上げて母子家庭で育った子ども、恵まれない環境にいる女の子たちを支援したいと考えている。ファッションの成功者には、大学を卒業してから専門学校などに通った人が多いと感じていたし、私自身母子家庭で育ったことで(経済的な理由から)学びの環境の選択肢が限られていたと感じることもあった。世の中をけん引できる女性リーダーが少しでも増えてほしいという願いもある。現実的な目標は、ブランドを続けていくこと。ファッションショーやお店を持つことも魅力的だが、できるだけ身軽でいたい気持ちもある。生活と両立できる道があれば考えたい。

【推薦理由】
半年に100件以上の展示会を訪れる中で「フォトコピュー」はファーストシーズンから異彩を放っていた。華やかな装飾はなく、肩をソフトに誇張したシルエットで存在感のある日常着は、“日本にありそうでなかった服”だ。ロゴやステートメントを立ててフェミニズムを示すブランドではないが、着る女性に自信を与える強さがある。また竹内デザイナーに共感して集まったセールスやPRのチームからも強いブランド愛を感じる。今後も竹内デザイナーとブランドの魅力を知り、憧れを抱く人が増えていくだろう

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「オニツカタイガー」が欧米市場進出に手応え ミラノコレ参加で波に乗る

 「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」は、2021-22年秋冬コレクションを初参加となるミラノ・ファッション・ウイークの公式スケジュールで発表した。同ブランドは欧米市場への本格進出を目指しており、その序章としてアンドレア・ポンピリオ(Andrea Pompilio)=クリエイティブディレクターの活動拠点であるミラノを選んだ。昨年12月にはイタリア初の旗艦店をミラノに開いたばかり。“ブランドシアター”と称する店舗や突き抜けたクリエイション、好調なアジア市場で培った実績を武器に、欧米攻略に向けて動き出す。

“雄大な自然”を
取り入れ快活に

 2021-22年秋冬コレクションは、冬のヒマラヤ山脈がそびえる雄大な自然と1970年代のトレッキング・ハイキングブームから着想を得た。アナログ×デジタルなど相反する2つの要素を掛け合わせたテキスタイルグラフィックが、トラックスーツやダウンジャケット、バックパックに描かれている。屈強なグリップ性に優れたブーツは、険しい山が立ちはだかる現代社会でも、快活に登り切るためのアーバンフットウエアとして提案。ボリューム感がキャッチーなシューズも際立った。

「ミラノで発表することが
夢だった」

WWDジャパン(以下、WWD):ミラノ・コレクションに参加した理由は?

アンドレア・ポンピリオ「オニツカタイガー」クリエイティブディレクター(以下、ポンピリオ):「オニツカタイガー」との協業が始まってすぐにフィレンツェの見本市ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMAGINE UOMO)に出展するなどイタリアでコレクションを披露してきたが、ミラノでの発表は夢の一つだった。イタリア初の旗艦店がミラノに昨年12月にオープンしたタイミングも重なり、今この地でコレクションを発表することは素晴らしい機会だと考えた。

WWD:映像に出演していたパフォーマーは?

ポンピリオ:女性ラッパーのミス・ケータ(M¥SS KETA)、ダンサーのガブリエーレ・エスポジート(Gabriele Esposito)、ウォールアーティストのオズモ(Ozmo)といったミラノで活躍する次世代の表現者たちだ。彼らが出演してくれたおかげで音楽やアート、パフォーマンスの融合という今の世界を見事に映し出せたと思う。

WWD:動画のプレゼンテーションを実施した感想は?

ポンピリオ:パンデミックによりファッション・ウイークはほぼデジタル化されたものの、映像での新しいクリエイティブな表現が発見できてとても面白い。光や音楽、色が混ざり合った映像作品は、リアルのファッションショーや映画館が喚起する感情に近いものを生み出せるはずだ。

WWD:2021-22年秋冬コレクションのテーマを“雄大な自然”にした理由は?

ポンピリオ:「オニツカタイガー」は、スポーツに関わる心身の健康やウェルビーイングが根幹にあるファッションブランドだ。現在の困難な状況下で、誰もが内面のバランスを整える方法を探っている。そこで、“雄大な自然”というテーマにたどり着いた。自然の地を散歩すると、どういうわけか自分自身を見つめ直すことができる。それからヒマラヤ山脈がイメージに浮かび、トレッキングの世界とのさまざまな繋がりを発見した。トレッキングのディテールに加え、冬の真っ只中から春の夜明けまで、山のあらゆる風景からインスピレーションを得た。デザイナー兼アートディレクターの足立豊樹によって描かれた美しいフラワープリントは、花が咲き誇る自然風景に私たちを導いてくれるはずだ。

WWD:8年間の協業を経て、自身に変化は?

ポンピリオ:長いコラボレーションを経て、「オニツカタイガー」はもはや私のDNAの一部になっている。それでも初心を忘れることは決してない。コラボレーションが始まった当初に駆り立てられた創作意欲を今でも鮮明に覚えている。デザイナーにとって、歴史あるブランドで働ける環境はとても刺激的だ。私を深く理解してくれる日本のチームと一体となり、ブランドの歴史と私のアイデアを融合させられることに喜びを感じる。

WWD:欧米での販路拡大において「オニツカタイガー」の強みは?

ポンピリオ:「オニツカタイガー」は日本で誕生したが、国際的なブランドであると私は以前から信じている。快適性やフェアプレー、ウェルビーイングの基盤を築き上げてきたからだ。これらは確実にブランドの大きな強みであり、重要な価値として欧米でもさらに成功させることができるだろう。

イタリア初の旗艦店は
見どころたくさん

 昨年12月にオープンしたミラノの旗艦店は“古今東西”をテーマに、「インテリアをデザインすることが夢だった」というアンドレア・ポンピリオが外装と内装のデザインを手掛けた。店舗面積は227平方メートル。東京とミラノ、二つの核で成り立つ「オニツカタイガー」の象徴的なコンセプトを、“ラボ(研究所)”“日本の黒漆仕様の重箱”“ギャラリー”の3つのスペースで表現している。幅広いラインナップで商品を提供するほか、二つの都市の文化や美学を凝縮し、顧客と共に新たな体験を共有する“ブランドシアター”としての役割も持つ。イタリアや欧米のPRの拠点として、期待は高い。

TEXT:ELIE INOUE

問い合わせ先
オニツカタイガージャパン お客様相談室
0120-504-630

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「ゴウトゥデイシェアサロン」の2人のトップが目指す“クリエーターが輝けるプラットフォーム”とは 【ネクストリーダー2021】

 2017年11月に東京・原宿に1号店をオープンしたフリーランス美容師向けのシェアサロン「ゴウトゥデイシェアサロン(GO TODAY SHAiRE SALON)」(以下、「ゴウトゥデイ」)。“シェアサロン”とは、フリーランスの美容師が、施術スペースを借りてサロンワークを行う美容室のこと。借りるスペースは仕切られた個室となっていて、基本的には一人の美容師がマンツーマンで接客するので、“個人経営のサロンが集まった大きなサロン”ともいえる。同サロンの経営を担当する大庭邦彦代表と、フリーランス美容師として現場を管理する大池基生取締役兼代表美容師が今回、ファッション・ビューティ業界の次世代をけん引する「WWDJAPAN NEXT LEADERS 2021」に選ばれた。そんな2人が抱くビジョンとは。

WWDジャパン(以下、WWD):「ゴウトゥデイ」をオープンしたきっかけは。

大池基生取締役兼代表美容師(以下、大池):われわれ2人は、ともに美容室業界がバックボーンにある。私は都内の美容室で9年間、美容師として働いていた。しかし、きつい、給料少ない、休日少ないといういわゆる“3K”で、16年に独立してフリーランスになった。そして当時としてはまだ珍しかったが、知人の美容室の一席を借りてサロンワークを行う“面貸し”という形態で働き始めた。すると、“お客さまとしっかり向き合えている実感が持てた”“考えたことをすぐに行動に移せるようになった”“収入も自由な時間も増えた”といいことばかりで、「この働き方をもっと広めたい」と思っていたときに大庭と出会った。

大庭邦彦代表(以下、大庭):私は前職でヘアサロン検索サイトを運営していたが、そのときから「もったいないなぁ……」と思っていた。美容師にはやる気のある人や高いクリエーティビティーを持った人が多いのに、古い業界であるだけに、いろいろと締め付けがあって輝けていない。ところが大池のように、環境や働き方を少し変えるだけで伸び伸びと輝ける美容師がいると分かり、それならば一緒にプラットフォームを作ってしまおうと思った。その試みは美容師のニーズをとらえていたようで、現在は都市圏を中心に20店舗以上を展開し、350人強の美容師(アイリスト、ネイリストも含む)が登録している。近々にさらに3~4店舗のオープンも決まっており、24年までに60~70店舗の展開を目標にしている。

WWD:躍進の理由は。

大池:時代背景によるところが大きい。私がフリーランスで働いていた頃までは、集客は美容室が行っていた。そのためフリーランスには“美容室から外された美容師”“ついていけなかった美容師”というかなりマイナスのイメージがあった。ところがSNSが急速に発達し、今や美容師が個人で集客できる時代。美容室での働き方に縛られる必要はなく、自由な働き方を選択できるようになったため、シェアサロンの成長は“必然”だと思う。実際、当サロンに登録している美容師には、飲食店、ジュエリーデザイナー、ユーチューバーなどパラレルキャリアで働いているスタッフも少なくない。フリーランス美容師に対する評判も、“自由でいい”“今の時代にマッチしている”などと一気に逆転した。

大庭:当サロンに登録している美容師の中には、大池のように「この働き方をもっと知ってもらいたい」と思う人も多く、現在の運営スタッフの約半数が元美容師だ。登録者に関しても、美容師にとどまらず、アイリストやネイリストの利用も増えているため、東京・青山にアイとネイルの専門サロンを作った。現在は登録技術者の枠が埋まってしまったため、2店舗目の出店を計画している。今後も、あらゆるビューティシャンを対象にビジネス展開していきたい。

WWD:現在の課題は。

大池:まずは“場所を提供するだけのビジネスからの脱却”を目指している。そのための施策として、1月に会計などができるオリジナルアプリをローンチした。今後はさらに、予約や経営管理などの機能も充実させていき、“ハサミとアプリさえあればどこでもサロンワークができる状態”にまで持っていきたい。ハードを提供しているだけでは優位性を築けないので、ソフトも充実させ、総合的かつ包括的に技術者をエンパワーメントしていきたい。

大庭:女性美容師がもっと輝ける仕組みを作りたい。現在の美容室業界は、美容学校を卒業したときには女性の方が多いのに、年齢を重ねるにつれてどんどん女性美容師が辞めていく、という状況にある。30歳までに女性美容師の約9割が辞める、というデータもあるほどだ。もちろん“結婚や出産といった女性ならではの事情がある”“体力的にきつい仕事で続けにくい”といった、よく言われている理由もあるだろうが、私は“女性の方が冷静に物事を見れるから”だと考えている。思いや熱さで走る男性とは異なり、女性は冷静に“続けていく価値のある仕事かどうか”を分析できる。シェアサロンの仕組みを通して、その分析でも“美容師は年齢を重ねても続けていく価値のある魅力的な仕事”と思ってもらえるようにしていきたい。

WWD:10年後の目標は。

大庭:シェアサロンは、シェアオフィスやシェアハウスと比べると、まだまだ知名度が低い。もっと生活に寄り添い、まるで水を使うようにシェアサロンを利用してもらえるようにしていきたい。さまざまな技術者が集い、利用者が日常的に訪れる、本来の意味での“サロン”にすることが目標だ。

【推薦理由】
これまで美容師は独立する場合、サロンの開業もしくは他サロンの面貸しの2択しかなかった。「ゴウトゥデイ」の登場により、低価格で施術スペースを借りることができるようになり、独立や兼業をしやすくなった。働き方の自由が大きな課題とされてきた美容室業界において、2人は新たなワークスタイルを提供。美容師だけでなくネイリストやアイリスとにもスペースを貸し出し、異なる業界にも新たな働き方を提供している。予約や物販などのサポートを行うアプリも開発し、ヘアサロン業界のDXを率いる存在として期待が高まる。

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「#FR2」が移動販売!石川涼が「#FR2DOKO?」を始めた理由

 せーのの石川涼が手掛ける「エフアールツー(#FR2)」はこのほど、移動型販売店舗「エフアールツードコ?(#FR2DOKO?、以下ドコ?)」を始めた。購入希望者は全国各地を移動する黄色の販売車を、地図コミュニケーションアプリ「ゼンリー(ZENLY)」の位置情報を頼りに探す。試験的に茨城や群馬、山梨などで営業したところ、「ドコ?」の限定商品などが各地で完売し、1日の売り上げが200万円に上った。その販売場所はインスタグラムやツイッターのDMで募った、全国各地の協力者の土地だ。全国にいる「エフアールツー」のファンの元へ、「エフアールツー」が自ら出向く――ありそうでなかったこのサービスを始めた理由を石川社長に聞いた。4月12日発売の「WWDJAPAN」では、現地リポートも掲載する。

WWD:「ドコ?」を始めようと思ったきっかけは?

石川涼せーの社長(以下、石川):2回目の緊急事態宣言が出そうだったときに、このままだと今以上にみんなが移動しなくなるなと思った。1回目の緊急事態宣言(昨年4〜5月)のときは本当に酷くて、やっとお店の売り上げが戻り始めていたのに、また1回目のときのように大自粛になったらそれこそ死ぬ。それで、役員会でこっちから車で売りに行こうという話をしていたら、偶然若いスタッフが移動販売をしたいと言ってきた。じゃあやろうと、すぐに軽自動車を発注した。決め手はアパレル業界で移動販売なんてする人がいなかったから。それが一番大きい。

WWD:移動販売の目印に「ゼンリー」を採用した理由は?

石川:アプリ自体は前から知っていたけど、日本ではカップルに、浮気防止のための束縛し合うアプリとして使われていることが多くて、正直気持ち悪いなと思っていた(笑)。ただ、移動販売の場所をお客さんに知らせる方法が必要だから、それに「ゼンリー」を使うのはどうだろう?と。オープンプロフィールにして登録すれば誰でも「ドコ?」の場所を追えるようになる。それで「ゼンリー」に登録したら、一気にユーザーが増えて、承認待ちの時間が必要なほどになってしまった。それに驚いた本国(フランス)が、「ドコ?」のアイコンをわざわざ作ってくれた。

WWD:「ドコ?」を実施して、どうだった?

石川:初回は2月20日と21日で、1日目が茨城県の水戸と下妻、2日目が群馬の高崎と富岡を予定していた。ところが1日目の水戸で2日分の商品が全て売り切れてしまった。同じ日に原宿でもコラボ商品の発売があってスタッフが稼働していたから、急いで追加の商品を社用車で持ってきてもらって下妻で合流したんだけど、翌日の高崎でまた全て売り切れてしまった。商品を積めないので今は週末の1日だけ、軽自動車と社用車の2台態勢で回ることにしている。

WWD:そのときの売り上げは?

石川:軽自動車と社用車に積める分で200万円ぐらい。しかも出店場所はSNSで募っているから、場所代もかかっていない。自分の自宅の庭を使ってくださいというありがたい連絡も来る。

WWD:初期投資は?

石川:車代の100万円だけなので、初回で元は取れた。ただ、2台態勢はスタッフの稼働も増えて効率が悪い。もともとは軽自動車1台で全国を練り歩こうと思っていたんだけど、嬉しいことにそういう次元ではなくなった。だから今、一番大きいハイルーフのバンをオーダーしている。

WWD:「ドコ?」が行く場所はどんな場所?

石川:「エフアールツー」は卸をやっていないので、僕らのお店がないところを中心に回りたい。だからみんな来てくれる。

WWD:どんなお客さんが来る?

石川:カップルが予想以上に多い。多分「ゼンリー」を使って、スマホで追っている感じが楽しんじゃないかな?宝探しというか店の場所を探すところからゲームやイベントのように感じてくれている。「ドコ?」の車を追いかけている動画が(インスタグラムの)スートーリーズとかに上がっていて、それを見たときに“これはいける”と思った。お客さんのテンションを上げさせられているということなので、これは大きなウネリになるな、と。

WWD:これをきっかけにアパレルの移動販売が増えるのでは?

石川:増えると思う。洋服だけじゃなくてキッチンカーとかも。移動販売自体はもともとある方法なので。移動先でしか買えないモノが増えていくと思う。

WWD:将来的にはどうする?

石川:今は週末だけ東京から行って、帰ってこられる距離でやっているけど、本当は東北や関西みたいに各地区にそれぞれ車を分けて、平日も毎日移動しながら巡業したい。ゴールデンウイークは、何日かかけて東北を回るプランを考えている。今後は、現地の食べ物屋さんとかにも出店してもらったりして、少しでもその地域を盛り上げることができればいいなと思う。

WWD:行ったこともない辺ぴな場所で、売れないかも知れないという不安はない?

石川:でも究極は、お客さん1人でもいい。そもそも、そこまで売れると思って始めていないし。移動しながら、そのときにしか会えない人に会う。そうすれば、そのお客さんの中に思い出としてずっと残るから。そういうお客さんがのちのちECで買い物をしてくれればいいなと思う。

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感染症予防にも期待のオーラルケア オーガニック・ナチュラルブランド4選

 マスク着用がルーティン化したことに伴って、口内環境への関心を持つ人が増えている。口臭予防歯磨き粉「デンティス(DENTISTE)」を扱うリベルタの山田祐子ブランド戦略PR担当は「オーラルケア関連の市場は拡大傾向にあり、数年前はホワイトニングのサロンやキットの発売が相次ぎ盛り上がったが、近年マスク生活が続くことから口臭ケアへの意識も高くなった。セルフメディケーションの波にも乗り伸長している」と話す。口の中の粘膜はウイルスなどの侵入を防ぐ役割を果たすこともあり口腔ケアに力を入れることは、感染症予防にも良いと聞く。そこで合成界面活性剤、合成発砲剤不使用のオーガニック・ナチュラルアイテムを紹介する。

「ジョンマスターオーガニック」炭の吸着力で、虫歯や口臭のもとを除去

 「ジョンマスターオーガニック(JOHN MASTERS ORGANICS)」からブランド初となるオーラルケアシリーズが3月25日に誕生した。同ブランドのオーラルケアアイテムは、ラウリル硫酸Na・合成着色料・合成香料・人工甘味料・パラベンフリーを約束する。また、無数の細かな穴を持つ炭の吸着力で、虫歯や口臭のもととなる歯の汚れを取り除き、歯のステインを磨いて取り除く。オーガニックのペパーミントを配合しているので、磨いた後はスッキリとした清涼感が感じられる。

 「アムリターラ」虫歯予防、着色除去、口臭予防を1本に

 「アムリターラ(AMRITARA)」の“トータル バランス オーガニック トゥースペースト”は、虫歯予防、歯の着色除去、口臭予防を兼ねたオールインワンタイプ。ペーストのキーとなるのが四万十ヒノキ水、イオン化アパタイト、乳酸菌だ。良質なヒノキから取れる蒸留水、四万十ヒノキ水を抽出して水の代わりに配合し、口中に潤いを与える。歯の表層のエナメル質の約97%は「ハイドロキシアパタイト」と呼ばれる無機質からできている。そこでホタテ貝殻由来のアパタイトにクエン酸や海洋深層水ミネラル、 水素を封じ込めた「イオン化アパタイト(ヒドロキシアパタイト)」を配合。歯の汚れを落とし、滑らかで白い歯をかなえる。水素と海洋深層水で熟成発酵した12種類の乳酸菌を配合することで健やかな口内環境に導く。

「Dr.ハウシュカ」抗菌作用に優れた「セージ」配合のマウスウォッシュ

 メイクアップのイメージがある「Dr.ハウシュカ(DR.HAUSCHKA)」だが、オーラルケアアイテも充実している。ブランドでは、合成の保存料、着色料、香料、鉱物油、パラベン、シリコン、PEG不使用を掲げていて、全製品がネイトゥルーのオーガニック・ナチュラル認証を受けている。2020年8月パッケージリニューアルした“MED セージ マウスウォッシュ”は、口の汚れやべたつきを洗い流すマウスウォッシュ。抗菌作用、風邪や感染症予防に優れたセージを配合している。洗口液にありがちなピリピリ感もなく、スッキリとクリアな洗い上がり。
「Dr.ハウシュカ」“MED セージ マウスウォッシュ”(300mL、1900円)

「ブライトティー」ピンクトルマリン微粉末を配合 歯周炎、歯肉炎、口臭予防に

 「ブライトティー(BRIGHT-T)」はピンクトルマリン微粉末とヒドロキシアパタイトを配合した歯磨き粉を扱う。パワーストーンとしても知られる「ピンクトルマリン」の微粉末を処方している点がユニークだ。研磨剤にヒドロキシアパタイトを配合し、歯周炎・歯肉炎の予防や、歯を白く保つ働き、虫歯・口臭予防効果が期待できる。アミノ酸系洗浄成分を使用していて、磨き上がりは、ハッカ油とスペアミント油の清涼感とほのかな塩みを感じる。防腐剤、合成着色料、合成甘味料は不使用。トルマリンを配合した特殊なナイロン繊維の極細毛“トゥースブラシ”(500円)との併用もおすすめ。ビープルバイコスメキッチン各店、公式オンラインストアで販売。

小竹美沙:1984年生まれ。女性誌やウェブマガジンで、ナチュラル&オーガニック&サステナブルなコト、モノ、人びとについて取材&発信中。2009年から恵比寿のファッションスクールのオフィシャルライターとして広報資料のライティングにも携わる

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“働き方もゼロから作る” 世界基準の透明性に挑み、業界のルールを覆す【ネクストリーダー2021】

 元「イッセイ ミヤケ メン(ISSEY MIYAKE MEN)」の高橋悠介が、2020年2月に立ち上げた「CFCL」は、ブランドストーリーだけでなく、会社の在り方から世界基準の透明性に挑んでいる。その取り組みの一環として、「Bコーポレーション(B Corporation、B corp)」に申請中。事業利益だけでなく、環境や社会に配慮した公益を重んじる企業に与えられる米国の厳しい民間認証で、日本のアパレル企業初の承認取得を目指す。11月に引っ越したばかりのアトリエには、トワルも、裁断机も、ミシンもない。3Dコンピューター・ニッティングを核に、“時代に左右されない衣服”の提供を目指す。高橋が考える、今求められる服とは。企業価値とは。

WWD:ブランドをスタートしてから、どんな1年だったか?

高橋悠介 CEO兼クリエイティブ・ディレクター(以下、高橋):新型コロナウイルスの流行拡大のタイミングで起業したため、周囲には「大変だったね」と声を掛けられる。しかし、1年間は売上が立たない見込みで事業計画書を作り、資金調達をしていたので、大きな影響はなかった。オフィスを借りたのは11月、社員が増えたのが12月で、やっと会社らしくなってきた。現在は、就業規則を作成中だが、働き方もゼロから作れる。従来のルールに縛られずに変えていきたい。

WWD:就業規則も、「Bコープ」の規定に沿っている?

高橋:働き方に関する項目を参考にしている。もう1つ、昨年フィンランドの首相が、1日6時間労働・週休3日制の指針を出していて、自社でもそれに近づけようと考えている。さすがに週休3日は厳しいが、ブルシット ジョブを徹底的に排除した結果、社員の残業は展示会前の時期に少しだけ。そもそもフレックス制を導入しているので、残業という概念はなく、1日10時間働く日があれば、5時間の日もある。リモートワークで通勤時間は省けるし、デザイン画や指示書も、すべてオンラインで共有できる。急に1日6時間制を導入するのは難しいので段階的に短縮し、2030年までの実現を目指したい。

“コレクションのためだけに作る服は誰も買わない”

WWD:高橋さんが考える、ブルシット ジョブとは?

高橋:1番の無駄は、コレクションのためだけに作る服。「本当にやる必要があるか?」を突き詰めていくと、やるべきことは意外に少ない。その分、構想の時間を増やして、物事と向き合う時間を大切にしたい。

WWD:元コレクションブランドのデザイナーから、その言葉を聞くのは衝撃だ。

高橋:時代が変わった。僕が学生だったときは、アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)やジョン・ガリアーノ(John Galliano)、フセイン・チャラヤン(Hussein Chalayan)が現役で、エンターテインメントとしてのショーが求められていた。当時はショー自体に価値があったが、人間の感覚や生活様式が急激に変わらないのに、半年に1度のコレクション発表は難しい。ファッションショーを否定しているのではなく、ファッションにおける、“新しいモノ”の価値観が変化している。AIや5G、LOT、社会の女性進出など、新しい技術や価値観が浸透していくにつれて、服のスタイルが変わるのは間違いない。でも、それが見た目で分かるモノとも限らない。

WWD:ブランドに対する周囲からの反応や、ビジネスの推移は想定内?

高橋:サステナビリティに関する質問や取り上げられ方は、想像以上だった。ただ、それを会社の売り文句にしていないので、雑誌社や新聞社の方には「“サステナブランド”にせずに、他の質問もきちんとしてほしい」と伝えている。ビジネスに関しては、消化率は非常に良い。もともとメンズのデザイナーだったので、ウィメンズのバイヤーの方々から良い反応があり、ほっとしている。また、2月1日にスタートしたオンラインストアの越境ECの売上は、想像以上。海外出荷は13カ国で、すでにリピーターがいることに驚いている。

WWD:卸売りの日本と海外の割合は?

高橋:売り上げは国内の割合が大きいが、卸売先の半分以上を海外クライアントが占める。コンサルティング・エージェンシーのセイヤ ナカムラ2.24(SEIYA NAKAMURA 2.24 )が卸のセールスを担っているが、パリでの売り込みがないなかで、この数字が付くのは今の時代ならでは。一部の卸先には、郵送で実物の生地や色味を見てもらったが、それでも数百万円単位で買い付けてくれるのは、すごいことだ。

小学生の頃の夢は建築家。中学生でファッションに目覚める

WWD:そもそもファッション業界を目指したきかっけは?

高橋:祖父が建築家だった影響で、小学生の頃は建築家を目指していたが、中学生の頃に、ファッションに目覚めた。雑誌ブームの全盛期で、スタイリストの祐真朋樹さんや、野口強さんが好きだった。革靴ブームもあって、「ジョンロブ(JOHN LOBB)」などにも興味があった。一方で、インテリアが好きで、吉岡徳人さんのハニーポップチェアに感動した。イギリス留学中は、「チャラヤン」や「アレキサンダー・マックイーン」に就職したいと意気込んでいたが、“海外留学あるある”で、逆に日本の良さにも気付かされた。

WWD:モノ作りは幼い頃から好きだった?

高橋:病院で診断されたわけではないが、僕はディスレクシアという失読症で、幼い頃から文字の読み書きや勉強がとにかく苦手だった。でも図工だけは、他の子よりも圧倒的に出来ている自覚が、5歳くらいからあった。父は医者と弁護士として働いていて、そのことに早く気付いてくれたことも大きい。世間的には「医者の息子は、医者を継ぐ」みたいな風潮があるが、意志を尊重してくれて、いつかモノ作りをしたいとずっと思っていた。

WWD:「CFCL」のコンセプトは「時代が求める服」。今、人が服に求めるコトとは?

高橋:より本質に近づいている。ファッションだけでなく、生き方の価値観が変わりつつある。ダイバーシティという言葉が浸透し、「他人と一緒」が不自然であることにも気づきはじめている。そうなるとトレンドもない。ファッションは、ある意味見せびらかしで、帰属意識から生まれる気持ち良さや、生き方の意思表示だったりしたが、SNSの登場で、ライフスタイル全体で、それを表明する時代になった。もう“服が気張る”必要はないが、生き方をサポートしてくれるモノであることに変わりはない。ファッションは、煌びやかで身近なので、憧れの対象になりがちだが、「所詮は服である」ことを認識しなければならない。

WWD:ブランドが伝えるメッセージが、服を通してだけではなくなっている?

高橋:ウェアラブルなモノ全般を通して、どういう生き方を推奨するかを発信するのが「CFCL」。例えば、お客さまに水を出すときに、ペットボトルでいいのか。商品は、過剰包装になっていないか。すべてがブランドのステートメントやフィロソフィーの一部になる。

“東京を、日本のモノ作りのシリコンバレーに”

WWD:今後10年、どんな役割を担っていきたい?

高橋:アパレルに限らず、日本のモノ作りが、世界で戦っていけるようにネットワークを作って発信していきたい。起業するきっかけの1つが、同世代で活躍している人が多かったことだ。シリコンバレーに、スタートアップ企業が集中しているのは、「新しいモノを作ってやろう」という人たちが集まること自体が、プラスに作用しているから。東京でもそれは出来るし、人が何かを欲しいと思ったり、感動したりするのは、業種が違っても同じ。

WWD:今後の目標は?

高橋:まずは「CFCL」の世界観を多くの人に知ってもらいたい。次のシーズンは、ニットだけでなく、ウォッシャブルウールと再生ポリエステルをミックスしたアイテムなども登場する。これからの時代は、どういう会社が何を作っているかが重要。良いモノを作っている裏で、残業を強いられていたり、安い賃金で作られていたりするモノは、気持ち悪くて着ることができない。すべての面で、服に対する透明性をさらに突き詰めていく。

【推薦理由】
高橋CEOは、世界的ブランドのデザイナーというキャリアを早々に切り上げ、ファッション業界が抱える問題に真っ向から立ち向かっている。“サステナビリティを売りにしたくない”と自身が言う通り、サステナビリティやSDGsを当たり前のように捉える姿勢は、同世代の経営者やデザイナーにもいい刺激を与えているはずだ。実際に彼の周りには“新しいものを作ってやろう”と気概のある連中も集まっている。近い将来、日本のファッション業界をけん引する存在になることを期待する。

村上杏理:1986年、北海道生まれ。大学で日本美術史を専攻し、2009年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、東京のファッション・ウイークやセレクトショップ、販売員取材などを担当。16年からフリーランスで、ファッションやライフスタイル、アートの記事執筆・カタログなどを手掛ける。1女児の母

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迷える業界の子羊たちにささぐ 栗野先生のお悩み相談室

 自分で選んだ道であれど、会社の人間関係や先の人生設計など、仕事に悩みは付きもの。困った時は先輩に聞くのが一番。そこで今回は業界歴44年、ユナイテッドアローズ創業者の栗野大先輩によるお悩み相談室をオープン。業界で奮闘する「WWDジャパン」読者から寄せられた仕事に関する悩みを聞いた。

Q.アパレル販売員です。コロナ禍で生活が一変し、貧困や地球環境など、社会問題を深く考える時間ができ、私も世の中をより良くしたいと思うようになりました。販売員としてどうしたら世の中を変えていけるのか教えください。

栗野宏文ユナイテッドアローズ上級顧問クリエイティブディレクション担当(以下、栗野):自分が今の時代に必要だと信じたモノをお客さまに伝えることに尽きるでしょう。販売員の仕事はただモノを売るのではなく、意味や価値をお客さまにお渡しする仕事です。サステナビリティはモノを大切にすることでもありますが、販売員がお客さまに満足度の高い購買体験を提供できれば、きっとその商品を長く愛用してくださると思いますよ。

Q.社会人歴約5年です。最近、忙しいときや焦っていると感情が先に出てしまい後悔する事が多いです。栗野さんは焦ったり感情的になったりすることはありますか?そんなときはどういうふうに対処していますか?

栗野:人間は理性的な生き物です。感情が先に出てしまうときは、冷静に理由を探してみましょう。小池龍之介さんの「もう、怒らない」という本の中に、「なんでこんなこと起きるんだ」と思ったら、その気持ちに頭の中で「」をつけて認識するとよいと書いてありました。そうすることで客観性が生まれ、感情が考える対象になるからです。10年ほど前にこの本を手に取ったということは、僕も同じような悩みを持っていたのでしょう。厳しい言い方をしますが、「私は短気なんだよね」と決めつけている時点で言い訳です。そうありたくないのであれば、そうではない自分でいればよい。あらゆる悩みに共通しますが、自分は自分で変えられます。

Q.個性が強いもの同士はどうしたらうまく一緒に仕事ができますか?

栗野:まず、個性がない人はいません。みんな違って当たり前。それぞれの個性の良いところを上手に引き出せば、違いは必ずプラスに作用します。

Q.仕事で立ち止まってしまったときに何をされていますか?

栗野:悩まないことです。池田晶子さんの「14歳からの哲学」という本の中に、「悩むと考えるは違う」という言葉があります。「悩む」は自分を立ち止まらせること。「考える」は考え始めた瞬間から問題解決が始まっています。僕も周りからよく「考えすぎじゃない?」と言われることがありますが、考えないなんて無理なこと。悩まずに考えていれば、おのずと答えは見えてきます。

Q.特にファッションの仕事は生活と密接な分、仕事のことを考えないことが難しいです。お勧めの気分転換法はありますか?

栗野:残念ながら僕は気分転換が必要だと思ったことがありません。服について考えることも、街の人々を観察することも好きなので、それに疲れてしまったらこの仕事を辞めるとき。ただ世の中には僕みたいなお気楽な人ばかりではないと思うから(笑)、気分転換が必要な人は深呼吸すること、温かいお茶を飲むことをお勧めします。僕は毎朝自分で紅茶を入れて飲んでいますよ。

Q.地元で織物産業を活気づけるためにアーティストができることはありますか?

栗野:ファッションはあらゆるアーティストやクリエイターと接点を作ることができます。臆せず、門をたたきに行ってほしいです。

Q.栗野さんがお考えになる新入社員の心得を教えてください。

栗野:とにかく何でもやりなさい。どんなことにも学びがあります。組織に入れば、自分の好き嫌いにかかわらず、周りから仕事を頼まれるのは当たり前です。僕が大学卒業後に入社した会社では、3カ月ほど店の掃除しかやらせてもらえませんでした。しかしそこで、売り場が整っていることが物事の原点だと学びました。靴の在庫を整理するときにはサイズ順に並べて、売れる商品を前に持ってくるなど工夫をしました。ただの片付けですが、そこにクリエイティビティを生かしたわけです。それを見ていた上司が6カ月後くらいにバイイングのアシスタントを任せてくれました。任された仕事はとっととこなして、自分で仕事を作ってしまうくらいの勢いで取り組むべきです。イエスマンになれという意味ではなく、仕事を受ける側としての主体性をきちんと持つことが大切です。

Q.仕事で人と関わるときに気を付けていることはありますか?

栗野:相手との必要な距離感は考えながら取っています。販売員でもお客さまに信頼されるのはありがたいことですが、友達になってしまってはプロとしての関係性が崩れてしまいます。若いうちは距離感の取り方が難しいかもしれませんが、何気なく話しているときも考えながら行うということが大切です。

Q.一つの大きな目標が定まりません。

栗野:ひょっとするとこの方は目標がないと前に進めないと思っているのかもしれませんね。でも僕は目標なんて持ったことはないですよ。全部歩きながら考え、歩きながら考えているうちに形になっていくものです。一方で、周りに目標を聞かれることもあります。そういうときは相手があなたを育てるためのヒントを探っているから。期待してくれていると思って小さなことでも答えてみるとよいかもしれません。

Q.販売員をされていたときにモノのかっこよさを伝える力はどのように磨きましたか?

栗野:自分が試すしかありません。服は人が着て動いて初めて良さが分かります。自分で着られない服は、試着されたお客さまや同僚をよく観察してください。商品のスペックやマニュアルを覚えるよりも、自分の熱量を伝えることでお客さまは納得します。今後ますます販売員の温度やヒューマニティーが求められる時代になると思います。

Q.デザイナーとして稼ごうとすると家庭との両立が難しいです。

栗野:家庭か仕事、どちらを取るかではなく、家庭を大切にするためにはどんな働き方が適切か、考えてみてください。たとえそれで収入が減ったとしても、別のハピネスがあるはずです。現代人は忙しいことに価値があると誤解しがちですが、忙しいとは他人に時間を奪われているということ、自分で納得のいく時間を生きていないということです。

Q.マネジメント職に就くために若手のうちに磨くべき能力は何ですか?

栗野:最も大切なことは、相手の話を聞く力でしょう。それがコミュニケーション能力です。販売員を経験し、聞き上手は話し上手だと学びました。自分を理解してもらうためにはまず相手を知ることが大切です。

Q.私は現在大学4年生で将来は洋服のサプライチェーン上の諸問題の解決に取り組みたいと考えています。特に関心の薄い人に自身の問題意識を伝えたいときに心掛けていることはありますか?

栗野:身近な例で説明することです。特にサステナビリティの話題は、科学的な説明はとても難しい。化学調味料がたくさん入った5分で作れる料理と、だしから時間をかけて作った料理、最終的に体に良いのはどちらでしょう、という具合に例えてみると理解しやすい。「こんなに良いことなのになんで分かってくれないの?」という態度は禁物です。重要なことほど、さらりと言う方が伝わります。

Q.私は少しでも洋服を楽しむときに後ろめたさを感じずに済む世界にしたいと思っています。環境に配慮したモノ作りと、デザインの多様性は両立し得るのでしょうか?

栗野:両立します。そのヒントは「WWDジャパン」を読んでください。答えは一つではありません。両立できないと考えるのは逃げだと思っています。後ろめたさを感じずにファッションを楽しむ方法を一緒に知恵を絞って見つけていただきたいです。

Q.憧れていた業界の仕事に就いたにもかかわらず、日々の仕事の忙しさやストレスで仕事が楽しめません。栗野さんはこれまで仕事が楽しめなかったことはありますか?

栗野:楽しくなかったことはほとんどありません。それでも壁に突き当たることはありますよ。むしろ悩みや課題がない方が楽しくないと思います。解くべき問題があるときはむしろやるべきことがある証拠。悩んだ人ほど幹が太くなります。今日僕が話したことも答えではありません。立ち止まってしまったときに一歩を踏み出すヒントを共有できたらうれしいですね。


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「スノーピーク」山井梨沙社長 社員700人を率いる若きリーダーの求心力【ネクストリーダー2021】

 2017年にスタートした「WWDJAPAN ネクストリーダー」第3回の受賞者であるスノーピークの山井梨沙社長。当時の山井社長は副社長で、昨年3月に創業家3代目として、社長に就任した。32歳での抜てきだ。山井社長1年目の20年12月期(2月12日発表)は、売上高が前年同期比17.6%増の167億6400万円、営業利益が61.6%増の14億9300万円、純利益は約2.5倍の10億4800万円と増収増益だった。密を避けたキャンプブームの追い風もあったが、積極的にメディアの前で語る山井社長の存在が、ブランド知名度をますます高めていると言っても過言ではない。その山井社長が今年の「WWDJAPAN ネクストリーダー2021」で審査アドバイザーを務めた。若きリーダーは何を語るか。

WWD:2020年3月に社長に就き約1年、気持ちの変化は?

山井梨沙スノーピーク社長(以下、山井):社長に就任したタイミングで、コロナで状況が悪化してしまい、自分にとっては試練の多い年でした。振り返れば、それを乗り越えて自分自身も成長できた年ではあったけれど、倒産リスクを考えて資金繰りを考え直さなければならなかったり、経営面でも周りの助けがなければ乗り越えられなかった。一方で、30年後にどうなっていたいか、会社の可能性を今一度見直せる年になったので、そういう意味では非常に良い1年でした。

WWD:社長就任時は32歳だったが、年齢的な部分でネックに感じたことは?

山井:仕事をする上で「女性だから」「年齢が若いから」ということを周りに感じさせないように努力してきました。社長に就任した時点での世間的なネガティブな意見はかなりの数を目にしましたが、それには結果で示すしかない。自分が32歳でも、女性でもやれるということを示さないといけないと思いました。

WWD:結果を出すために、どういったことを心掛けている?

山井:自分一人で達成できることではないというのは前提にあります。その上で、自分が社長に就任できた一番の要素は信念がめちゃくちゃ強いこと。周りからやるなと言われても絶対にやり抜く強さは、自分のリーダーシップだと思っています。こうしたら絶対によくなるという勘所と、絶対に実行して成し遂げる、前に進む強さは大事にしています。

WWD:国内外でおよそ700人の社員を抱えている。社員に伝えている言葉は?

山井:スノーピークは、モノを売るだけの会社ではありません。それは創業から変わらない価値ですが、それを今一度、言語化して伝えることを経営側になった時から続けています。その先に、体験を通じてライフバリューを創出するブランドになろうということを再定義しました。最近はスノーピークがお客さまにライフバリューを提供するだけではなく、一緒に働いているスノーピークの従業員全員がライフバリューを高められる会社になろう、と伝えています。

WWD:社長に就任して初めて伝えた言葉を覚えていますか?

山井:社長に就任したときに0からのスタートだなという感覚が自分の中で芽生えて、「とにかく20年30年先の未来を会社と社会に対して作っていく」。そして、新潟に本社があるアウトドアブランドの会社として、「地方初の世界で一番クリエイティブな会社にしていきたい」とお伝えしました。

WWD:これからのファッション業界、アウトドア業界をどう見ますか?

山井:アウトドア事業はグローバルでプレゼンスが上がっています。資本主義経済、文明社会の中で失われているものは自然の力じゃないと取り戻せません。スノーピークは企業の社会的な使命として「人間性の回復」を掲げています。アウトドアは、文明の進歩に比例して増えていく――その自負はありましたが、コロナをきっかけにそのタイミングがかなり早まったと感じています。一過性のブームではなく、自然との関わりが重要であると再認識されて、日常的に楽しむ人はどんどん増えていく。昨年は当社も在庫のやりくりだったり、年間の販売数量を計画し直したり、販売タームも大きく変えたりしました。今年もそれを反映している部分はあります。ファッション業界にとっては当たり前だったことが当たり前ではなくなったので、商売構造を変えていくきっかけになったのではないかと思います。

WWD:10年後のスノーピークをどう描く?

山井:もともとはキャンプの事業を軸としてきたましたが、改めて、キャンプの要素は人間が自然の中で生活する営みそのものだと気づきました。インフラの整っている東京に住んでいれば、あまり人と協力しなくても生活が成り立ちますが、自然の中ではそうはいかず、衣食住を営むことで人とのつながりが強くなると考えます。私が14年に新規事業として始めたアパレルを含めて、今は、「衣・食・住・働・遊」、人が生きる全てのライフステージに価値提供できるブランドになりました。まだまだキャンプのコアビジネスの割合が大きくはありますが、キャンプの価値観をもっと変えて、自然思考に生きるためのブランドに成長させたいと思います。

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「恥じない環境で働きたいだけ」 名物記者サラ・モーアの提言

 サステナビリティの取り組みを報じる記者、伝える企業にとって大切なこととは何か。環境、人、社会、企業統治など幅広い領域で用いられるが、私はなるべくサステナビリティという言葉を使わず、かつ具体的に表現したいと取材に取り組んでいるが、なかなか難しい。どうすれば的確に伝えることができるのだろうか。

 今、改めて心に刻んでいる言葉がある。昨年5月の取材で聞いた、最も影響力のあるジャーナリストの一人であるサラ・モーア(Sarah Mower)米「VOGUE.COM」チーフクリティック(当時)の言葉だ。「抱えている問題に気づき、正しい問いを投げ掛け、明確に説明することは全ジャーナリストの義務だと感じている。それが世の中に対する私たちの存在価値なのではないだろうか」。

 サラ・ムーアと言えば、ウェブメディア「STYLE.COM」(2017年に閉鎖)の名物記者でファッションショーではフロントローの常連。「STYLE.COM」記者時代はものすごいスピードでショーのレビューを投稿していて、ファッションウイークの分刻みのスケジュールをこなしながら「いつ原稿を書いているんだ」と疑問を持つほどで、ファッションウイーク七不思議のひとつだった。ショー会場で見かける彼女は常に余裕があり“ナイス”な印象で、偉ぶった様子もない。食事を共にしたことがある先輩記者も、“柔らかく気さくですばらしい人格者”と教えてくれた。彼女の魅力はコレクションレビューだけではなく、卓越したインタビュー術にある。踏み込んだ質問と対話でデザイナーの新たな側面を引き出していて、彼女の記事から知ることも多い。
 
 インタビューを行ったのは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、世界各地で1回目のロックダウン(都市封鎖)が行われていた5月末。彼女は「私たちはサステナビリティとエシカル(倫理)についてもっと真剣に考える必要がある」と話し、業界の次のステップを「環境と人に優しい方法を見つけること」と言及していた。当時、サラは読書に没頭していて、循環型経済を推進するエレン・マッカーサー財団のエレン・マッカーサー(Ellen McArthur)、ファッション産業の透明性を目指すNPO「ファッションレボリューション」の設立者オルソラ・デ・カストロ(Orsola de Castro )、サステナブルファッションを研究するスロー・ファクトリー(The Slow Factory)創設者でアクティビストのセリーヌ・セマン(Celine Semaan )を、「この分野で尊敬する3人の女性」として挙げている。加えて、ファッションに関する記事の在り方そのものを考え直す必要があり、それは「興味深い挑戦だ」とも語っている。その根底には「恥じない環境で働きたいだけ」という彼女の強い思いがある。
 
 8月に「HOPE」と題して「ヴォーグ」に寄稿したコラムには、彼女の思いや覚悟がさらに明確になって記されていた。その後、気づけばサラは「VOGUE」のサステナビリティ・ディレクターに就任している(2021年1月時点)。

 私たち記者は、ファッションの見た目だけではなく、地球環境に配慮しているか、人権侵害をしていないかなど生産工程を含めて語る必要が出てきた。科学の知識も必要になっている。サステナビリティと経営戦略は切り離せないため、複雑になってきているし、難しくなりがちだ。正直難しいと感じることも多い。10年前にはなかったアプローチだ。でも諦めてはいけない、とも思う。企業と対話を重ねて、的確かつ分かりやすく伝えていくことが必要だと思う。そして、新しいことだらけだからこそ、これまでなかった“魔法”のような技術とも出合うことができる。そのワクワク感は、ファッションショーで新しいものを目撃したときのそれと近い。というかそれ以上だ。

 サラは「ウイルスの脅威と共に生きることと環境保護の双方の観点を考慮した新しい生き方をデザインすることで新しいビジネスが生まれると思う。この状況下では循環型システムについて真剣に考えている」とも語っている。ファッション産業をどのようによりよい形にシフトしていくのか。私たちみんなで知恵を持ち寄り、取り組む中で答えを探していきたい。
最後にサラはこう締めくくっている。「“恥ずかしくない”から“誇りに思う”ようにできるのか。それが私のモチベーションです」。

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「G-SHOCK」のカシオがオンライン展示会を開催 新作“鳳凰”などを発表

 カシオ計算機はこのほど、メディアおよび卸先向けにオンライン展示会を開催した。2020年9月に公開した特設サイトをアップデートし、英語によるグローバル版もローンチした。プレス担当者は、「ピンチはチャンス。展示会をリアル開催した場合、コロナにかかわらず会場のキャパシティーから人数を制限せざるを得ないが、オンラインではより多くの方にご覧いただける」と話し、メインモデルについては「利用者のリクエストに応える形」として3DCGで細部まで確認できるようにしたという。

公開取材の生配信で、
新作の魅力をより身近に

 オンライン展示会では、時計ジャーナリストの篠田哲生や渋谷ヤスヒト、ガジェットライターの熊山准を招いて、カシオ計算機の開発担当者などへの公開取材を生配信した。プレス担当者は、「プロならではの視点で質問していただくことで、視聴者にも新作の魅力をいっそう理解してもらえたのではないか」と話す。さらにレーシングドライバーの谷口信輝をゲストにトークセッションも行った。

構造の進化がデザインを
進化させた好例

 オンライン展示会で発表した商品の目玉は、“MT-G”シリーズの新作“MTG-B2000PH-2AJR”だ。欧米で“現れると良いことが起きる”といわれるブルーフェニックス(鳳凰)をモチーフに、ベゼルやケースにレインボーIP(イオンプレーティング)を施したモデルで5月21日に発売する。「『G-SHOCK』はこれまでCMF(カラー、素材、仕上げ)を組み合わせて、新たな表現を追求してきた。近年ご好評いただいているメタル製モデルにおいても、IPやレーザーといった加工や新素材の採用により、『G-SHOCK』にしかできないものを目指している」。

 “MTG-B2000PH-2AJR”はケースとベゼルが別体のため、ケースは縦向き、ベゼルは横向きに赤から黄色へのグラデーションを重ね、独特のカラーリングを表現している。機能面でも標準電波の受信機能に加えて、専用アプリとの連携によってスマートフォンが近くにあると自動で時刻を修正する。またタイムゾーンをまたぐ移動の際も、ボタン操作なしで現地時刻に変わる。

「G-SHOCK」専用チタン合金を
マルチカラーで表現

 もう一つの推しは、「G-SHOCK」の初代モデル“DW-5000C”のデザインコードを引き継ぐスクエアフォームの“GMW-B5000TR-9JR”(4月23日発売)だ。国内最大手の鉄鋼メーカー日本製鉄と、約6年の歳月をかけて「G-SHOCK」のために共同開発したチタン合金“トランテクシー”を用いる。軽くて肌に優しいチタンの特徴はそのままに、約2倍の硬度を持つ。「硬度が上がったことでステンレスのような鏡面仕上げが可能となり、『G-SHOCK』としては初のチタンのオールミラー加工を実現した」。またブレスレットにはレッド、ブルー、ライトグレー、ダークグレー、ゴールドの複数のIPを施してマルチカラーにしている。

「特殊な状況下でも
『G-SHOCK』のカシオは走り続ける」

 最後にオンライン展示会の総括を聞くと、「特殊な状況下でメディアや卸先とどう接点を保ち続け、それを強化できるか考えながら走った。当然、そこには“カシオらしさ”も求められる。結果を踏まえてブラッシュアップを続けたい。オンライン展示会に加えて、感染症対策を万全にした上で、メディアに対して実機によるタッチ&フィールの場を設けたり、卸先向けには地域ごとの対面式の商談も実施する予定だ」と述べた。

問い合わせ先
カシオ計算機 お客様相談室
03-5334-4869

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「G-SHOCK」のカシオがオンライン展示会を開催 新作“鳳凰”などを発表

 カシオ計算機はこのほど、メディアおよび卸先向けにオンライン展示会を開催した。2020年9月に公開した特設サイトをアップデートし、英語によるグローバル版もローンチした。プレス担当者は、「ピンチはチャンス。展示会をリアル開催した場合、コロナにかかわらず会場のキャパシティーから人数を制限せざるを得ないが、オンラインではより多くの方にご覧いただける」と話し、メインモデルについては「利用者のリクエストに応える形」として3DCGで細部まで確認できるようにしたという。

公開取材の生配信で、
新作の魅力をより身近に

 オンライン展示会では、時計ジャーナリストの篠田哲生や渋谷ヤスヒト、ガジェットライターの熊山准を招いて、カシオ計算機の開発担当者などへの公開取材を生配信した。プレス担当者は、「プロならではの視点で質問していただくことで、視聴者にも新作の魅力をいっそう理解してもらえたのではないか」と話す。さらにレーシングドライバーの谷口信輝をゲストにトークセッションも行った。

構造の進化がデザインを
進化させた好例

 オンライン展示会で発表した商品の目玉は、“MT-G”シリーズの新作“MTG-B2000PH-2AJR”だ。欧米で“現れると良いことが起きる”といわれるブルーフェニックス(鳳凰)をモチーフに、ベゼルやケースにレインボーIP(イオンプレーティング)を施したモデルで5月21日に発売する。「『G-SHOCK』はこれまでCMF(カラー、素材、仕上げ)を組み合わせて、新たな表現を追求してきた。近年ご好評いただいているメタル製モデルにおいても、IPやレーザーといった加工や新素材の採用により、『G-SHOCK』にしかできないものを目指している」。

 “MTG-B2000PH-2AJR”はケースとベゼルが別体のため、ケースは縦向き、ベゼルは横向きに赤から黄色へのグラデーションを重ね、独特のカラーリングを表現している。機能面でも標準電波の受信機能に加えて、専用アプリとの連携によってスマートフォンが近くにあると自動で時刻を修正する。またタイムゾーンをまたぐ移動の際も、ボタン操作なしで現地時刻に変わる。

「G-SHOCK」専用チタン合金を
マルチカラーで表現

 もう一つの推しは、「G-SHOCK」の初代モデル“DW-5000C”のデザインコードを引き継ぐスクエアフォームの“GMW-B5000TR-9JR”(4月23日発売)だ。国内最大手の鉄鋼メーカー日本製鉄と、約6年の歳月をかけて「G-SHOCK」のために共同開発したチタン合金“トランテクシー”を用いる。軽くて肌に優しいチタンの特徴はそのままに、約2倍の硬度を持つ。「硬度が上がったことでステンレスのような鏡面仕上げが可能となり、『G-SHOCK』としては初のチタンのオールミラー加工を実現した」。またブレスレットにはレッド、ブルー、ライトグレー、ダークグレー、ゴールドの複数のIPを施してマルチカラーにしている。

「特殊な状況下でも
『G-SHOCK』のカシオは走り続ける」

 最後にオンライン展示会の総括を聞くと、「特殊な状況下でメディアや卸先とどう接点を保ち続け、それを強化できるか考えながら走った。当然、そこには“カシオらしさ”も求められる。結果を踏まえてブラッシュアップを続けたい。オンライン展示会に加えて、感染症対策を万全にした上で、メディアに対して実機によるタッチ&フィールの場を設けたり、卸先向けには地域ごとの対面式の商談も実施する予定だ」と述べた。

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カシオ計算機 お客様相談室
03-5334-4869

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パリの若者に大人気!手頃な価格の新クリーンビューティブランド

 世界に目を向けると日本とは異なる美容トレンドが生まれている。そこで、連載「海外ビューティ通信」では、パリやニューヨーク、ソウル、ベルリンの4都市に住む美容通に最新ビューティ事情をリポートしてもらう。

フェイシャルも格安!季節ごとの悩みに対応する「シーズンリー」

 フランスでは、クリーンビューティがほぼ当たり前になっている。ブランドはオーガニックやグリーンであることを全面に出さずとも、消費者がスマホアプリ「ユッカ(YUKA)」で製品の安全性の評価をチェックしてから購入することが習慣化している。そんな中、新しく若者層に絶大な支持を得ている手頃な価格の2つのクリーンビューティブランドを紹介する。

 パリのトレンド情報や流行のスポットを配信するニュースレター「マイ リトル パリ(My Little Paris)」の創始者として大成功を収めたファニー・ペショワダ(Fany Pechoidat)が2019年に立ち上げた「シーズンリー(SEASONLY)」は、季節ごとの悩みに応じ、フレッシュかつパーソナライズを売りにしたスキンケアを展開する。プロのモデルではなく、そばかすやシワ、たるみ、肌荒れなど実際に悩みを持つ一般の女性たちをモデルに起用し、インスタグラムで積極的に発信し、イメージをアップしている。パリ2区にスタジオ兼ショップをオープンし瞬く間に話題となり、昨年にはギャラリーラファイエット本館3Fのコーナーを含むパリに5店舗、ボルドーに1店舗をオープンするなど、急成長している。

 おすすめは、肌診断を経て自分にぴったりのスキンケアが届く“ルーティーンセット”(単発購入89ユーロ、約9700円。3カ月のサブスクリプションで計59ユーロ、約7600円)だ。ネットで年齢、ストレスや汚染レベル、肌タイプ、悩み、好みのテクスチャーなどについて答えると、セラム、クリームとカッサの3点が届く。そのほか単品でも化粧水(28ユーロ、約3600円)、クリーム(38ユーロ、約4900円)、セラム(25ユーロ、約3200円)と手頃な価格で製品をそろえる。

 ショップには可愛いドーム型の施術ルームが設置され、10分間のカッサ、目元、頭皮マッサージなどのミニコース(15ユーロ、約1900円)から、フェイスジム(1時間110ユーロ、約1万4100円)、LEDライトでコラーゲンの生成を刺激し、ヒアルロン酸の劣化を抑える酵素へ働きかけるエイジングケアコース(60分95ユーロ、約1万2200円)、そしてビタミン、抗酸化物質、セラミド、ヒアルロン酸、植物由来ポリアミドなどを肌に直接入れる韓国式リフティング(30分115ユーロ、約1万4800円。60分180ユーロ、約2万3200円)など、常に新しい美容トレンドを盛り込んだ楽しいコースばかりだ。

 スタジオでは定期的にヨガ教室や消費者と積極的にアイデアを交換するワークショップ、科学者やアーティストを招いたトークセッションを開いている。またニュースレターでは世界中の最新美容・ウェルネス情報を始め、マスク時のメイク方法やおすすめのレシピ、本などさまざまな情報を盛り込んでいて面白い。

パリのメンズビューティを盛り上げる「ホラス」

 もう一つ注目のクリーンビューティブランド「ホラス(HORACE)」は16年にECからスタートし、昨年マレ地区とギャラフィーラファイエットのメンズ館、リヨンに店舗をオープンした話題のメンズスキンケアブランドだ。全てフランス製にこだわり、95%以上自然派由来であるにも関わらず、中間業者を介さないため15ユーロ(約1900円)前後でフェイス、ボディー、ヘアケアプロダクトが買えてしまうのが魅力だ。創始者の一人マルク・ブリアン・テルレ(Marc Briant-Terlet)は「スーパーでは、タウリン配合のシャワージェルや効能が明確でないケミカルな歯磨き粉を勧められる。そんな(クリーンでない)製品に過去数年で何百ユーロも費やしていたことにうんざりしたんだ」と振り返る。そんな中、「男性は刺激的な商品名だけが一人歩きした90年代のマーケティングトレンドにずっと縛らわれていて、商品について質問することに消極的になっていた。われわれはさまざまな製品を実際に試しコストパフォーマンスと優れた効果を確実に期待できる商品だけを提供したい」と考えたことから、ブランドをスタートしたという。「顧客の悩みや相談にはSNSを通じて積極的に答えるようにし、ウェブマガジンでさまざまなメンズコスメ情報を共有して消費者の意識を高めることに努めている」。

 ベストセラーの洗顔フォーム(12ユーロ、約1500円)は日本の備長炭とアロエベラを配合し、モイスチャークリーム(16ユーロ、約2000円)はウチワサボテンとパパイアAHA配合で肌の乾燥を防ぎ、時間とともに肌の水分バランスを取り戻す。新製品のブルーイモーテルとカオリンクレイ入りのフェイスマスク(12ユーロ)は初めてマスクをする男性でも楽しめる鮮やかなブルーのマスクで、毛穴を引き締める効果が期待できる。またリサイクルにも積極的で、店頭では空き容器を5つ持参すると10%の割引きを提供する。

 この2つのブランドに共通するのはDtoCからスタートし、顧客の意見を積極的に取り込み手頃な価格のプロダクトを提供している点だ。またウェブマガジンやニュースレーターを通して、ブランド情報だけに留まらず、最新の美容トレンドやおすすめのスキンケア、インタビュー記事なども提供する。成長し続ける新しい流れのクリーンビューティ事情に、今後も注目したい。

須山佳子(すやま・けいこ)/コンサルタント:2001年に渡仏しMBAを取得。ファッション業界で働き、09年に日本の美容ブランドを欧州市場へ売り込むコンサルティング会社を設立。取引先は欧州の高級百貨店、美容ストア等。パリ市内でポップアップストア「Bijo;」主宰。インスタグラムアカウントは@bijo.paris

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男性による男性のための新ブランド「メンズツルリ」 メンズ商品=黒白のモノトーンという認識から脱却

 スタイリングライフ・ホールディングス BCLカンパニー(以下、BCL)による、毛穴悩みにアプローチするブランド「ツルリ(TSURURI)」から、メンズ向けの兄弟ブランド「メンズツルリ(MEN’S TSURURI)」が3月8日にデビューした。商品企画から販促、店頭展開にわたるまで携わったのは、社内横断型のプロジェクトチーム“メンズラボ”。自分たちの「欲しい」を形にすることをコンセプトに、第1弾アイテムとして洗顔料の「スクラブフェイスウォッシュ(1320円)と部分用洗顔料『スクラブジェル』(990円)を発売。ラボメンバー6人に、新ブランドに込めた想いやこだわりを聞いた。

WWD:メンズラボ発足の経緯は?

中川涼介・国内事業部バラエティ営業部(以下、中川):BCLにはメンズブランドがありません。そして、私自身も店頭で買いたいと思えるメンズ商品が見当たらず、「メンズが考える、メンズのための化粧品」を作りたいと思っていました。メンズコスメブランドの立ち上げは私の目標でもあり、同じ思いを持ったメンバーと意見を出し合いながら良いものを作りたいと考え、ラボを立ち上げました。私たちのメンズラボは、実は3代目なんです。過去に何度かメンズブランドを作ろうとラボが立ち上がりましたが、ブランド化には至らなかった経緯があります。

近藤允・海外事業部係長(以下、近藤):当社としても、これからメンズ向けアイテムを強化したいという思いがありました。新ブランドを作るなら、メンズ市場が盛り上がっている今がベストでした。

中川:メンズラボは2019年8月に立ち上がりましたが、「メンズツルリ」の開発は20年8月にスタートしました。BCLでもこんなにスピード感のある商品開発はほとんどありません。月1で集まっていますが、みんな普段の業務とメンズラボの割合は7:3くらい。普段の業務の経験を生かしてラボでも営業なら営業を、宣伝なら宣伝の役割を担っています。

WWD:新ブランドはなぜ既存ブランドから派生したものに?

南直宏・宣伝本部宣伝部メディア室PR担当(以下、南): 2000年にデビューしたブランド「ツルリ」は毛穴に特化しており、男性にも扱いやすいブランド。出荷数はシリーズ累計で1800万個を突破して、知名度もありました。しかしパッケージは女性の使用シーンをイメージしたものだったため、パッケージを変更して「メンズツルリ」としてスタートしました。

谷口祐一朗・国内事業部東日本営業部(以下、谷口):既存の「ツルリ」は以前、メンズ向けの“鼻用吸着パック”を発売したこともありました。しかし売り上げは苦戦。「メンズツルリ」は、そのリベンジでもありますね。

赤城俊介・国内事業部専門店営業部(以下、赤城):そして男性の肌悩みはなんといっても毛穴がダントツ。美容感度の高い人もそうでない人も、洗顔は誰でも使っているアイテムなのでまずは洗顔フォームからスタートしました。

WWD:パッケージには特にこだわった?

南:女性が思う“メンズっぽさ”と、男性が欲しいものは違います。社内でもいくつかデザイン案を出しましたが、女性社員が思う“メンズっぽさ”のイメージは、色は白がベース、字体はポップで柔らかめなど韓国のビューティテイストが入ったものでした。しかしラボのメンバーが欲しいカラーは、ダントツでイエローでした。

谷口:ドラッグストアなどで他社製品を見ると、メンズ商材の多くは黒や白のモノトーンや、青など。だからこそラボで作るアイテムは目立つデザインがいいと思いました。イエローは売り場にも少なく、部屋に置いていても、友達や彼女が見たときにおしゃれだと感じてくれる色。結果、「メンズツルリ」はイエロー×グレーの組み合わせになりました。

赤城:いわゆる“男らしい”ものをラボのメンバーでは欲しいと思いませんでした。中身に関しても、スースーしたメントールの清涼感のあるすっきりではなく、“脂の取れたスッキリ感”が欲しいんですよね。「メンズツルリ」の洗顔は、通常より大きめのスクラブを配合しているので、洗顔中もしっかりスクラブを感じながら毛穴の角栓を除去しているスッキリさを実感できるはずです。その点はこれまでの洗顔とは大きく違いますね。

長崎絢・国内事業部マーケティング部ブランド戦略室(以下、長崎):毛穴に特化した「メンズツルリ」ではありますが、実はパッケージやポップには“毛穴”という言葉を書いていません。余計なものを無くしてシンプルさを追求した結果、「商品内容が気になる人は裏面を見るよね」と考え、訴求の文言もあえて日本語を排除してシンプルなかっこよさだけを残しました。その分、店頭で目立たせるためのイエローカラーでもあったりします。

WWD:「メンズツルリ」をどんな人に使ってほしいか。また今後の展開は?

南:「メンズツルリ」は洗顔が1320円という中価格帯の商品です。メインターゲットは20〜30代ですが、大学生や社会人になって「少しいいものが欲しい」と思ったときのアイテムとしてはもちろん、いま市場にある商品に満足していない、美容感度の高い男性に手に取ってもらえるアイテムになるとうれしいですね。そして「黄色のあのブランドだよね」と言ってもらえるブランドに成長させていきたいです。

長崎:今後は半年に1回のペースで新製品を出していきたいです。ブランドとしての鮮度も高まりますし、売り場の新鮮さも上がるので。

近藤:いずれは海外進出も目指しています。グローバルでは日本のメンズアイテムはほとんど知られていません。まずはアジアからスタートし、ゆくゆくは欧州への進出を目標としています。

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ディスカウントストア「ターゲット」の衣料品復活の背景 鈴木敏仁USリポート

 アメリカ在住30年の鈴木敏仁氏が、現地のファッション&ビューティの最新ニュースを詳しく解説する連載。米国を代表するディスカウントストア、ターゲットの衣料品が売れている。その裏側には優れたプライベートブランド開発があった。

 ディスカウントストアチェーン大手のターゲット(TARGET)が昨年1月末に導入したプライベートブランド(PB)のアクティブウェア「オールインモーション(ALL IN MOTION)」が初年度で売上高10億ドルを突破したことが分かった。日本円に換算すると1000億円を超える。

 ディスカウントストアというと日本の読者は安かろう悪かろう的な安売り屋をイメージしがちだろうが、米国のディスカウントストア業態はそうではなくて「良いものを安く」を主軸に据えたビジネスモデルだと理解していただきたい。ウォルマート(WALMART)は今も低価格を戦略の主軸に据えた企業だが、店舗を一目でも見れば安売り屋ではなくて、ざっくりと日本で言えばGMS(総合スーパー)を大きくしたような店である。クローズアウト(日本で言うところのバッタや見切り商品)を取り扱う業態はまた別に存在する。

初年度で1000億円売るプライベートブランド

 ターゲットはそのディスカウントストア企業群の中でも対象としている所得層が高めで、ファッションの強さでウォルマートと差別化してきた企業である。ターゲットはマーケティングに強さがあり、ウォルマートはオペレーションに強さがあるといったところだ。

 実はターゲットはもともと百貨店のデイトン(DAYTON)が開発したアウトレット業態が出自なのである。百貨店の人材がターゲットを運営していたため、ファッション性が色濃く反映されてきたのだ。

 非常に優秀な企業で業界評価も高かったのだが、この成長を牽引した中興の祖ともいえるロバート・アーリック氏が2009年に引退してから業績がしばらく低迷した。これを打破するためにアーリック氏の後任CEOが2014年に更迭され、外部から招聘されたブライアン・コーネル氏がCEOとなり再建に取り組んで今に至っている。

 その再建の道筋についてここでは詳細に説明することは省くが、結果として大成功に終わった。成果が出たのが2018年度、それまで既存店成長率が1~2%またはマイナス成長の年もあったのだが、5.0%増を記録したのであった。

 PB「オールインモーション」が初年度に10億ドルを超えたのは、同社の強さが回復したことの象徴なのである。

激しいスクラップ&ビルド

 ターゲットのPBは一昨年度末の時点で、自社ブランドが41、エクスルーシブブランドが11となっている。エクスルーシブとは自社開発ではなく企業やデザイナーと提携してオリジナル開発したブランドで、最も分かりやすいのはリーバイス(LEVI’S)と提携し開発導入したばかりの「リーバイス・フォー・ターゲット(LEVI’S FOR TARGET)」である。デニムをベースコンセプトとしたホームファッションで、これもまた商品開発力に長けるターゲットらしい新ブランドである。

 この自社ブランド41のうち、アパレルとアクセサリーが19、残りはグローサリー、ビューティ、ホーム、ペットとなっている。

 公表されている情報によると、このPB群のうち年商10億ドルを超えているのが10ブランド、20億ドルを超えているのが4ブランド、合計するとプライベートブランドは総売上のおよそ3分の1を占めている。20億ドルを超えている4ブランドの内訳は、子供服の「キャット&ジャック(CAT&JACK)」、食品の「グッド&ギャザー(GOOD&GATHER)」、雑貨の「アップ&アップ(UP& UP)」、ホームファニシングの「スレッシュホールド(THRESHOLD)」である。

 これら20億ドルを超えているブランドはすべてこの5年以内に開発された新ブランドだ。ざっと見る限り昔からあるのはわずかで、ほとんどが再建の途上でオーバーホールされている。その象徴が17年に開始した主力アパレルのブランドの入れ替えである。ウィメンズウエアの「メロナ」とメンズウエアの「モッシモ」を廃番として、新たにウィメンズには「アニューデイ(A NEW DAY)」、メンズには「グッドフェロー(GOODFELLOW)」という新ブランドを投入した。

 「メロナ」はとくに店頭での露出も多くよく知られたブランドで、このニュースを聞いたときは同社の本気度を感じたものである。実は16年の夏に子供服ブランドのチェロキー・アンド・サーコ(CHEROKEE AND CIRCO)」をスクラップして「キャット&ジャック」に入れ替え、これが大ヒットしたことが主力ブランドのオーバーホールへの原動力となったようだ。

 ちなもに「キャット&ジャック」と「アニューデイ」も初年度に売上高10億ドルを超えている。
これらブランドのオーバーホールの総予算は70億ドル(日本円換算で約8000億円)である。私は「メロナ」の廃番で本気度を感じたのだが、この予算額だけでも十分に本気で不退転の取り組みということが分かるだろう。

 今回年商10億ドル超えブランドの仲間入りした「オールインモーション」は、「C9チャンピオン」というブランドの後釜である。「C9チャンピオン」はライセンシングによるブランドで今はアマゾンで買うことができる。

 「オールインモーション」はアクティブウエアと総称されるが別の業界用語を使うならば、流行のアスレジャーだ。リモートワークで昨年初頭から衣料品のトレンドが大きく変わったが、カジュアルウエアや自宅フィットネス用として米国のアスレジャー市場は引き続き伸びていて、25年には市場規模が2000億ドルを超えるだろうという予測もある。

 ディスカウントストアによるブランドなので、「オールインモーション」の基本はベーシックだ。ただし単なるシンプルなデザインのアスレジャーではなくて、少しだけひねりが入っている。ブランドコンセプトは3つ、品質、サステナビリティ、そしてインクルーシビティ。サステナブルな取引先や素材を調達しながらプレミアムブランド並みの品質を実現するとしながら、ここ数年のアメリカの社会潮流ともなりつつあるインクルーシビティを加えている。

 特にマーケシングメッセージにはインクルーシビティを主眼に置いており、広告で利用するモデルの体形、人種、年齢を偏らせず、写真はレタッチを一切せずそのまま使い、店頭のマネキンのサイズには4、10、16を用意する。

 インクルーシビティとは排他的ではない誰でも参加できる社会にしようというムーブメントで、とりわけ若年層にアピールするには避けては通れないテーマとなっている。トレンドをしっかり捉えてブランディングに活用しているというわけで、このあたりはマーケティングに長けたターゲットらしい。

 本稿を執筆している3月半ばにはクラフトカテゴリーに新PBを導入したというニュースが入っている。強いPBは大きな利益源になるだけではなく、アマゾンに代表されるEC企業に対抗する強力な武器でもある。昨年度はパンデミックという追い風も吹いて売上高は19.8%増、一年間で過去11年間のトータル増額分を超える150億ドル増を記録した。同社のPBはこの絶好調を支える屋台骨なのである。

鈴木敏仁(すずき・としひと):東京都北区生まれ、早大法学部卒、西武百貨店を経て渡米、在米年数は30年以上。業界メディアへの執筆、流通企業やメーカーによる米国視察の企画、セミナー講演が主要業務。年間のべ店舗訪問数は600店舗超、製配販にわたる幅広い業界知識と現場の事実に基づいた分析による情報提供がモットー

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ディスカウントストア「ターゲット」の衣料品復活の背景 鈴木敏仁USリポート

 アメリカ在住30年の鈴木敏仁氏が、現地のファッション&ビューティの最新ニュースを詳しく解説する連載。米国を代表するディスカウントストア、ターゲットの衣料品が売れている。その裏側には優れたプライベートブランド開発があった。

 ディスカウントストアチェーン大手のターゲット(TARGET)が昨年1月末に導入したプライベートブランド(PB)のアクティブウェア「オールインモーション(ALL IN MOTION)」が初年度で売上高10億ドルを突破したことが分かった。日本円に換算すると1000億円を超える。

 ディスカウントストアというと日本の読者は安かろう悪かろう的な安売り屋をイメージしがちだろうが、米国のディスカウントストア業態はそうではなくて「良いものを安く」を主軸に据えたビジネスモデルだと理解していただきたい。ウォルマート(WALMART)は今も低価格を戦略の主軸に据えた企業だが、店舗を一目でも見れば安売り屋ではなくて、ざっくりと日本で言えばGMS(総合スーパー)を大きくしたような店である。クローズアウト(日本で言うところのバッタや見切り商品)を取り扱う業態はまた別に存在する。

初年度で1000億円売るプライベートブランド

 ターゲットはそのディスカウントストア企業群の中でも対象としている所得層が高めで、ファッションの強さでウォルマートと差別化してきた企業である。ターゲットはマーケティングに強さがあり、ウォルマートはオペレーションに強さがあるといったところだ。

 実はターゲットはもともと百貨店のデイトン(DAYTON)が開発したアウトレット業態が出自なのである。百貨店の人材がターゲットを運営していたため、ファッション性が色濃く反映されてきたのだ。

 非常に優秀な企業で業界評価も高かったのだが、この成長を牽引した中興の祖ともいえるロバート・アーリック氏が2009年に引退してから業績がしばらく低迷した。これを打破するためにアーリック氏の後任CEOが2014年に更迭され、外部から招聘されたブライアン・コーネル氏がCEOとなり再建に取り組んで今に至っている。

 その再建の道筋についてここでは詳細に説明することは省くが、結果として大成功に終わった。成果が出たのが2018年度、それまで既存店成長率が1~2%またはマイナス成長の年もあったのだが、5.0%増を記録したのであった。

 PB「オールインモーション」が初年度に10億ドルを超えたのは、同社の強さが回復したことの象徴なのである。

激しいスクラップ&ビルド

 ターゲットのPBは一昨年度末の時点で、自社ブランドが41、エクスルーシブブランドが11となっている。エクスルーシブとは自社開発ではなく企業やデザイナーと提携してオリジナル開発したブランドで、最も分かりやすいのはリーバイス(LEVI’S)と提携し開発導入したばかりの「リーバイス・フォー・ターゲット(LEVI’S FOR TARGET)」である。デニムをベースコンセプトとしたホームファッションで、これもまた商品開発力に長けるターゲットらしい新ブランドである。

 この自社ブランド41のうち、アパレルとアクセサリーが19、残りはグローサリー、ビューティ、ホーム、ペットとなっている。

 公表されている情報によると、このPB群のうち年商10億ドルを超えているのが10ブランド、20億ドルを超えているのが4ブランド、合計するとプライベートブランドは総売上のおよそ3分の1を占めている。20億ドルを超えている4ブランドの内訳は、子供服の「キャット&ジャック(CAT&JACK)」、食品の「グッド&ギャザー(GOOD&GATHER)」、雑貨の「アップ&アップ(UP& UP)」、ホームファニシングの「スレッシュホールド(THRESHOLD)」である。

 これら20億ドルを超えているブランドはすべてこの5年以内に開発された新ブランドだ。ざっと見る限り昔からあるのはわずかで、ほとんどが再建の途上でオーバーホールされている。その象徴が17年に開始した主力アパレルのブランドの入れ替えである。ウィメンズウエアの「メロナ」とメンズウエアの「モッシモ」を廃番として、新たにウィメンズには「アニューデイ(A NEW DAY)」、メンズには「グッドフェロー(GOODFELLOW)」という新ブランドを投入した。

 「メロナ」はとくに店頭での露出も多くよく知られたブランドで、このニュースを聞いたときは同社の本気度を感じたものである。実は16年の夏に子供服ブランドのチェロキー・アンド・サーコ(CHEROKEE AND CIRCO)」をスクラップして「キャット&ジャック」に入れ替え、これが大ヒットしたことが主力ブランドのオーバーホールへの原動力となったようだ。

 ちなもに「キャット&ジャック」と「アニューデイ」も初年度に売上高10億ドルを超えている。
これらブランドのオーバーホールの総予算は70億ドル(日本円換算で約8000億円)である。私は「メロナ」の廃番で本気度を感じたのだが、この予算額だけでも十分に本気で不退転の取り組みということが分かるだろう。

 今回年商10億ドル超えブランドの仲間入りした「オールインモーション」は、「C9チャンピオン」というブランドの後釜である。「C9チャンピオン」はライセンシングによるブランドで今はアマゾンで買うことができる。

 「オールインモーション」はアクティブウエアと総称されるが別の業界用語を使うならば、流行のアスレジャーだ。リモートワークで昨年初頭から衣料品のトレンドが大きく変わったが、カジュアルウエアや自宅フィットネス用として米国のアスレジャー市場は引き続き伸びていて、25年には市場規模が2000億ドルを超えるだろうという予測もある。

 ディスカウントストアによるブランドなので、「オールインモーション」の基本はベーシックだ。ただし単なるシンプルなデザインのアスレジャーではなくて、少しだけひねりが入っている。ブランドコンセプトは3つ、品質、サステナビリティ、そしてインクルーシビティ。サステナブルな取引先や素材を調達しながらプレミアムブランド並みの品質を実現するとしながら、ここ数年のアメリカの社会潮流ともなりつつあるインクルーシビティを加えている。

 特にマーケシングメッセージにはインクルーシビティを主眼に置いており、広告で利用するモデルの体形、人種、年齢を偏らせず、写真はレタッチを一切せずそのまま使い、店頭のマネキンのサイズには4、10、16を用意する。

 インクルーシビティとは排他的ではない誰でも参加できる社会にしようというムーブメントで、とりわけ若年層にアピールするには避けては通れないテーマとなっている。トレンドをしっかり捉えてブランディングに活用しているというわけで、このあたりはマーケティングに長けたターゲットらしい。

 本稿を執筆している3月半ばにはクラフトカテゴリーに新PBを導入したというニュースが入っている。強いPBは大きな利益源になるだけではなく、アマゾンに代表されるEC企業に対抗する強力な武器でもある。昨年度はパンデミックという追い風も吹いて売上高は19.8%増、一年間で過去11年間のトータル増額分を超える150億ドル増を記録した。同社のPBはこの絶好調を支える屋台骨なのである。

鈴木敏仁(すずき・としひと):東京都北区生まれ、早大法学部卒、西武百貨店を経て渡米、在米年数は30年以上。業界メディアへの執筆、流通企業やメーカーによる米国視察の企画、セミナー講演が主要業務。年間のべ店舗訪問数は600店舗超、製配販にわたる幅広い業界知識と現場の事実に基づいた分析による情報提供がモットー

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女性の歴史と貢献を学ぶ3月の「女性史月間」 企業やブランドの取り組みは?

 毎年3月8日は「国際女性デー(International Women’s Day)」と制定し、ジェンダー平等に向けて女性の権利向上を喚起する日となっている。アメリカでは3月いっぱいを「女性史月間(Women’s History Month)」と定めており、期間中は日頃の取り組みに加えて女性の歴史や貢献、活動により一層深い焦点を当てる。ファッション業界からは、自信と勇気が湧き出るエンパワーメントを目的としたカプセルコレクションやトークイベント、キャンペーンの数々が登場している。

 ファッション業界による女性支援に特化したキャンペーンや、女性によるビジネスを紹介する取り組みなどを行うブランドや企業を紹介する。

■H&M USA
 H&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ、以下H&M)のアメリカ法人は、黒人女性が運営するビジネスに焦点を当てて黒人コミュニティーの支援をする非営利団体「バイ・フロム・ア・ブラック・ウィメン(Buy From a Blackwomen)」と1年間にわたるパートナーシップを結んだ。同団体が21年6月に開催する、アメリカで起業など何か新しいことを始めたいと考えている黒人女性に向けた「ザ・ブラック・ウィメン・インスパイア・ツアー(The Blackwoman Inspire Tour)」のスポンサーを務める。

■ギャップ
 ギャップ(GAP)は「女性史月間」に合わせて、2007年から続く女性のエンパワーメントプログラム「パーソナル・アドバンスメント&キャリア・エンハンスメント(Personal Advancement & Career Enhancement以下、P.A.C.E.)」のさらなる強化を25年まで行うと発表した。これまで80万人以上の女性が同プログラムに参加しており、22年までに100万人の加入を目指す。

 加えて人権やジェンダー平等に焦点を当てたサステナビリティを展開する団体と協力して、「エンパワー@ワーク(Empower@Work)」プログラムを立ち上げた。同プログラムではサプライチェーンにおけるジェンダー平等を目指しており、ギャップの主要工場は全て加入している。2025年までに全てのブランドが持つ工場が加入する予定だ。

■バーバリー
 「バーバリー(BURBERRY)」は、現代社会を生きる女性を称えるため、著名人を集めたオンライン対談を開催した。登壇者は「バーバリー」の衣服を身につけて参加し、女性であることで感じる喜びなどを共有。モデルのジョーダン・ダン(Jourdan Dunn)は、「シスターフッドの連帯の中にいられることがうれしい」と語った。2021年に女性であることの体験や気持ちを語り合い、現代社会を生きる上でのヒントなどを提供した。

 国際女性デー当日には、若者の就職支援を行う「ザ・プリンスズ・トラスト(The Prince’s Trust)」が立ち上げた女性の自立をサポートするプログラムへ寄付キャンペーンを実施した。「バーバリー」のアイテム1点の購入ごとに、1ポンド(約150円)を寄付した。

■リーバイス
 リーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS & CO.以下、リーバイス)は、2010年に開始した「パイオニア・イン・ジャスティス(Pioneers in Justice)」イニシアチブの第3弾を開始した。これまで同取り組みを通じて社会貢献を行うリーダーに焦点を当ててきたが、今回は有色人種の女性と自認するリーダーを募集する。アパレルで働く人を対象に、パンデミックへのサポートやサプライチェーンにおけるジェンダー平等を支援する。

■「ピンタレスト」
 幅広いウェブ画像をそろえ、それらをブックマークする機能などを提供するオンラインプラットフォームの「ピンタレスト(PINTEREST)」は、ショップ機能に女性による25小企業をキュレートしたページを公開した。

■「トリー バーチ」
 「トリー バーチ(TORY BURCH)」は社会の変化につながるニュースや情報を届ける「アップワーシー(UpWorthy)」と連携して、「エンパワード・ウィメン(Empowered Women)」キャンペーンを開始した。自身のコミュニティーに変革をもたらした5人の女性を取り上げ、その功績を称えた。キャンペーンが続く1年間を通して新しいことに挑戦する女性を随時募集し、毎月選考を行って1人にスポットライトを当て、その女性が希望する非営利団体に5000ドル(約54万円)を寄付する。

■「マイテレサ」
 ドイツの高級ファッションEC「マイテレサ(MYTHERESA)」は女性のアーティストに着目し、「アート・フィメール・フューチャー(Arts Female Future)」を立ち上げた。女性のアーティスト4人に焦点を当てて支援を行う。また4人それぞれが選んだチャリティー団体に1万ユーロ(約129万円)を寄付する。

■ユークス ネッタポルテ グループ
 大手ECのユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP)は、歌手のザラ・ラーソン(Zara Larsson)やコメディアンのインカ・ボキニ(Yinka Bokinni)、チェス選手のアレキサンダー・ボテル(Alexander Botel)、プロスケートボーダーのレティシア・ブフォーニ(Leticia Bufoni)など、さまざまな分野で活躍する女性によるエンパワーメントをテーマにしたオンライントークを開催した。

 ほかにも、連帯感を表現した「私がついてるよ(I Got You)」というロゴがプリントされたTシャツや、女性の体の形をした花瓶など、女性が手掛けるアイテムを集めたカプセルコレクションを展開した。売り上げは全て慈善団体「ウィメン フォー ウィメン インターナショナル(Women for Women International)」に寄付する。SNSでは「#PowerToChange」というハッシュタグを作成し、良い世の中に向けて行っていることを投稿するよう促した。合わせて、1投稿につき1ドル(約108円)を寄付する。

■ニーマン マーカス グループ
 米百貨店のニーマン マーカス グループ(NEIMAN MARCUS GROUP以下、NMG)は、アパレル業界での女性のエンパワーメントと環境問題へのアクションを行う「ファッション メイクス チェンジ(Fashion Makes Change以下、FMC)」とパートナーシップを結んだ。店頭で買い物をした消費者にFMCへの寄付を募るほか、女性による商品を扱うキャンペーンからの売り上げを「エンパワー@ワーク」の支援に当てる。

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キーワードは“シンプル&本格” ナプラから“カラーケアの普段使い”をかなえる「エミーム」誕生

 プロフェッショナルヘアメーカーのナプラは3月19日、新たにヘアサロン専売のカラーケアブランド「エミーム(ETMEME)」をローンチした。3月下旬より全国のサロンで順次取り扱いを開始している。
 これは、プロ向けのヘアカラー剤市場でトップクラスのシェアを持つ同社が、サロンユーザーにもっとヘアカラーを楽しんでもらうために作ったブランド。カラーケアだからといって特別なステップを必要とするわけではなく、毎日のシャンプー&トリートメントなどの普段のお手入れで、髪の悩み解消やカラーの色艶アップをかなえる。

 ラインアップは、なりたい髪質に合わせた3タイプのシャンプー・トリートメントと、アウトバスで使うコンディショニングケア4種。厳選したミニマルなラインアップで、時間をかけずにケアできるため、ライフスタイルに取り入れてもらいやすい。

 また、自宅で使用するデイリーアイテムだけでなく、サロンでのスペシャルアイテムもそろえる。サロンで体験できるシステムトリートメントで、2~3浴式という簡単なステップを採用し、スピーディーに毛髪の内側と外側からのWケアを実現する。“本格&シンプル”をキーワードに、「忙しいけど常に美しい髪色でいたい」と願う女性に寄り添えるブランドだ。

「エミーム」の特徴➀
プロ向けヘアカラーメーカーが
作ったブランド

 「エミーム」は、「エヌドット(N.)」や「ナシード(NASEED)」など、美容師から高い支持を得るヘアカラーブランドを持つナプラが、満を持して作ったカラーケアブランド。ヘアカラーを知り尽くした同社が、髪色や髪質を美しく保つために必要なテクノロジー、成分を投入している。カラーの施術をする美容師のニーズにも対応し、扱いやすい処方になっている。

 ちなみにブランド名の「エミーム(ETMEME)」は、フランス語の“ET=and”と“MEME=myself(自分自身)”を組み合わせた造語。「きれいな髪を育むことは、私らしさを大切にすること」という意味が込められている。

「エミーム」の特徴②
忙しい女性に
寄り添うシンプルケア

 シャンプー&トリートメントとコンディショニングケアというコンパクトなラインアップで、毎日のお手入れをしながら髪色ケアができる。ホームケアアイテムのほか、サロンで行うシステムトリートメントもあり、最短3分からできるので、本格的なカラーケアを簡単かつスピーディーにかなえる。サロンの滞在時間を気にする顧客に対しても配慮したブランドだ。

 システムトリートメントには、ヘアカラーの褪色を防ぐ“スピードティントケアシステム”、熱ダメージを防ぐ“トリプルキューティクルコート”を採用。髪のダメージを補修してケア成分の吸着を高める“ベーストリートメント”、毛髪内部のすみずみまでトリートメント成分や水分を補給する“インナートリートメント”、髪の表面をコーティングして指通りと艶を向上させる“アウタートリートメント”という3種類の薬剤を組み合わせるタイプだ。3ステップだとしっとり、2ステップだとさらさらに仕上がり、最短3分からの施術が可能。

「エミーム」の特徴③
導入希望サロンに
優しい新時代のブランド

 これまでのサロン専売品には、サロンが新規導入する際に数量条件が付くのが一般的だったが、「エミーム」ではそれらをなくし、1本からでも購入できる。「エヌドット」で構築したメーカー直送の流通システムを使い、専売品の流通を守りながら安定して商品を提供できることも特徴の1つ。価格設定も、コロナ禍で苦しむサロンに優しい設定になっている。

厳選したミニマルなホームケアの
ラインアップ

PHOTOS:HIROKI WATANABE(PRODUCTS SHOT)

問い合わせ先
ナプラ
0120-189-720

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「アンリアレイジ」の森永邦彦が老舗オンワードと組んだ理由

 デザイナーの森永邦彦が手掛ける「アンリアレイジ(ANREALAGE)」とオンワード樫山の協業による、バッグとアクセサリー主軸のブランド「アンエバー(ANEVER)」がこのほど、オンワードグループの自社EC「オンワード・クローゼット(ONWARD CROSSET)」で販売を開始した。

 「アンエバー」は一瞬(A NEVER)と永遠(AN EVER)を組み合わせた造語で、“対極の概念をつなぐ”の意。商品ラインアップでは、ドライフラワーを樹脂に閉じ込めたパーツをシグネチャーとしており、これらは「時間とともに枯れていく一瞬の花の命」を樹脂の中で「永遠に生かす」ことで、ブランドコンセプトを表現したものだ。

 販売している2021年春夏コレクションは、バッグ8型(5940円)とアクセサリー13型(2200〜7700円)で、「アンリアレイジ」の商品と比較すれば格段に手の届きやすい価格設定。ブランドがこれまで取り込んでこなかった層へリーチすることも狙いの一つだ。森永氏は協業に至ったきっかけについて、「これまで『アンリアレイジ』ではファッションが好きな方々に向けて尖ったデザインの、ある種の非日常的な服を作ってきた。より大衆向けのアイテムに価値を吹き込む仕事から学び取れることもあるはずだと考えた」と話す。「アンエバー」のパーツでは生花を用いるため、花の形や模様が一点一点それぞれ違い、リーズナブルながら全てがオンリーワンといえるアイテムだ。

 オンワードの大手アパレルならではの生産背景もメリットと捉えた。「コレクションシーンでは最新の発表作品が常に優先される。過去のものはすぐに忘れ去られてしまう。それらからエッセンスを抽出し、積み重ねていくことができる何かを作ることが『アンリアレイジ』に必要なことだと考えていた。その一つの形が別のブランドを作ることだったが、自分たちだけの力では限界がある中で、(オンワードの資本力が)とても魅力的だった」と振り返る。

 一方のオンワード側は、「アンエバー」にファッション感度の高い若者の取り込みを期待する。同社の会員システム「オンワードメンバーズ」は約300万人以上を抱える(2020年12月時点)が、主要顧客層は40代以上。「アンエバー」の春夏コレクションでは若者の認知度が高い女優の平手友梨奈を起用するなどプロモーションにも力を入れる。公式インスタアカウントのフォロワーは現在約3500人とブランドとしては小規模だが、その内訳は35歳以下が7割を占める。

 今回のように企業としてブランドと協業する事例は珍しい。これについて「アンエバー」の企画・生産を担当する不破一貴・第二カンパニー課長代理MDは「ブランドを通じて、オンワードという名前も若い方を中心により多くの人に認知していただきたいため。(『アンエバー』は)まだ実験的な試みだが、お互いにメリットを享受しながらさまざまな化学変化を生み出していきたい」と話す。

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女優・大政絢が彩る、この春のカシオ“G-MS”

 カシオ計算機の女性向け時計ブランド「BABY-G」の上位ライン“G-MS(ジーミズ)”は、2021年春夏シーズンのイメージモデルに女優の大政絢を選んだ。選定理由について上間卓 時計コミュニケーション戦略部 部長は、「“G-MS”は『G-SHOCK』のアイデンティティーである耐衝撃性や防水性といったタフな機能はそのままに、サイズやデザインをアレンジしてアクティブな女性たちにアプローチしている。大政さんは、われわれが思い描く女性像にピッタリだった」と話す。

推しはデジタルとアナログを
組み合わせた“MSG-W600”

 “G-MS”の今春の推し時計が、デジタル表示と針を使ったアナログ表示を組み合わせた“MSG-W600”シリーズだ。樋口貴康 デザイン開発統轄部 第一デザイン部 BGデザイン室リーダーは、「一見スポーティーだが、メタル(ステンレス)素材を使うことで高級感をプラスしている」と述べる。コーディネートしやすいブラック、ネイビー、ホワイトの3色展開で、機能面では世界6局の電波を受信して時刻を自動修正する“マルチバンド6”やワールドタイム、太陽光はもちろん蛍光灯などの光も動力とするカシオ計算機独自のソーラー充電システム“タフソーラー”などを備える。また、暗所で腕を傾けると自動的にライトが点灯するフルオートLEDライトをデジタル表示と文字板の両方に採用する。中村あゆみ 開発推進統轄部 プロデュース部 第一企画室リーダーは、「洗練のデザインと頼れる機能が女性の毎日をサポートし、ワークシーンから休日まで幅広く活躍してくれるはず」と胸を張る。

八角形ベゼルの
“MSG-W350”もオススメ

 もう1つの推しが、オクタゴンベゼルが特徴の“MSG-W350”シリーズだ。日常生活を意識した日付表示付きの3針仕様で、こちらも“タフソーラー”で稼働する。樋口リーダーは、「女性のきゃしゃな手元にも合わせやすい小型ケースながら、八角形のフォルムで力強さを表現した。ただし大き過ぎたり、ハード過ぎたりしてはいけない。サイズ感については、特に試作確認を繰り返した」と振り返る。色展開は、パール感のあるホワイトと落ち着きのあるオリーブグリーンだ。

「アクティブさと知的さを
併せ持つ大人女性」

 “G-MS”のターゲット層は20代後半~40代の女性だ。上間部長は「彼女たちが憧れる“洗練された大人の女性”として大政さんを起用した。アクティブさと知的な印象を併せ持つ大政さんの力も借りて、“G-MS”の持つデザイン性と機能性を訴求したい」と結んだ。

問い合わせ先
カシオ計算機 お客様相談室
03-5334-4869

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パルコの泉水常務執行役員が語る、ネクストリーダーに必要な5つの資質【ネクストリーダー2021】

 「WWDジャパン ネクストリーダー2021」でアドバイザーを務めるパルコの泉水隆常務執行役員は、2019年にオープンした新生・渋谷パルコをファッション、アート&カルチャー、エンターテインメント、フード、テクノロジーを文字通りミックスした構成にするなど、従来の枠組みにとらわれない斬新なアイデアを形にした人物だ。直近では心斎橋パルコも陣頭指揮した。先を見据えるその千里眼で、次世代のネクストリーダーに必要な資質を語った。

WWD:ネクストリーダーの資質とは?

泉水隆パルコ常務執行役員(以下、泉水):大きくは5つある。①インターナショナル、②アート・カルチャー思考、③コミュニケーション能力、④SDGs、⑤ITリテラシー。月並だけど、この5つを挙げさせていただく。

WWD:インターナショナルとは、海外で勝負するということか?

泉水:世界に打って出ることが必ず必要だ。例えば韓国をみると、ファッションマーケットは日本の半分以下。韓国国内だけではビジネスが成立しないから、デザイナーらは当たり前にECを立ち上げ海外でも販売しているし、上海の展示会にも出展している。K-ポップを見ても良く分かる。アジアのみならず欧米までを見据えた戦略で、BTSなんかはビルボードで1位を獲得している。日本はガラパゴス。日本国内だけでビジネスが成立してしまうから、コスモポリタン発想、国際的視野が弱い……。今はコロナ禍で海外へ行き来はできないけど、収束すればインターナショナルといったキーワードは出てくる。世界発想、コスモポリタン発想は必ず持っていないと。だから語学力はマストだと思う。

WWD:2つ目のアート・カルチャー思考は?

泉水:ネクストリーダーになりうる30代のデザイナーらと話しているとアートへの造詣が深いように思う。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』の著者である山口周氏に当社の社内研修に登壇してもらい、マーケティングの予定調和ではなく感性に磨きをかけて勝負するアート経営が重要と言われ感銘を受けた。新生・渋谷パルコのプランニングにもつながっている。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」と村上隆など、業界としても以前からラグジュアリーとストリートアートの融合が行われているが、つまりファッションだけで勝負するのではなく、アート・カルチャーの付加価値があるかどうか。また、コロナを経て、よりアート・カルチャーへの希求が高まっているように思う。アート・カルチャー思考的なものは持っていた方が良いと思う。

WWD:3つ目のコミュニケーション能力は?

泉水:リーダーというのは部下をリードするのは当然だけど、次世代リーダーは、体制を打破する、既存勢力を突破する力を持っていることも重要だろう。それには、体制の人、目上の人をたらし込む“人たらし力”が必要だと思う。年を経てそういうのが分かってきた。伸びる人にお会いすると、いつもたらし込まれてしまう(笑)。リーダーの資質なんじゃないかな。

WWD:4つ目のSDGsは時代として重要なファクターだ。ファッション・ビューティのネクストリーダーが考えなければいけないSDGsとは?

泉水:持続可能な世界を実現させるためのSDGsはとても重要で、デザイナーを含めたファッション、ビューティ業界人も社会意識を持つべきだ。コロナ前にもリアルファーの使用廃止などにH&Mやケリング、ユニクロなどが取り組んでいたけど、コロナが収束すれば、よりサステナビリティに寄り添っていく事になるだろう。日本環境設計さんの再生素材を使ったブランド開発や、クルックさんと伊藤忠さんが行っているオーガニックコットンプロジャクト、山縣良和デザイナーの「ここのがっこう」など、環境に優しいとか、LGBTQとか、これからはマストになってくるだろう。

WWD:5つ目のITリテラシーとは?

泉水:言わずもがなだが、広告や生産などのビジネスの様々な場面でITを使うというのは自然な流れ。ITリテラシーは、ネクストリーダーにとって当たり前に必要だ。

WWD:次世代リーダーとして注目している世代はあるか?

泉水:注目しているのはZ世代が個性的でめちゃくちゃ面白い。例えば、1995年生まれの辻愛沙子さんは、日本生命と組んでワンコイン診療を実施したり社会意識が圧倒的に強い。03年生まれのグレタ・トゥンベリさんもそうだ。政治にも物申す世代だ。また、音楽の業界では、ユーチューブやTikTokが台頭したことも影響していると思うけど、既成の枠に囚われない新しい音楽を作る若者が出てきている。福岡出身の女の子だけど、メイク、ファッションをセルフプロデュースで英語で歌っている子や、スマホ1個でラップを作っている男の子とか。大流行している「うっせいわ」は2002年生まれの女の子の歌だ。そういうのを聞いていて、音楽業界で起こっていることが、ファッション業界でも起きてこないかなと思う。もしかしたらすでに起きているかもしれないけど、大人のわれわれはキャッチできていないだけかもしれない……。

WWD:Z世代を理解し、体制側の人々を“たらしこめる”人がネクストリーダーになれるのか?

泉水:声を上げるZ世代は影響力が大きいと思うけど、ただ洋服は買わないし限られた消費しかしない世代。この子たちをターゲットに、どんな商売をしていくのかという課題がある。別件だが、新しいビジネスとして、ある企業家の方にお会いした。アパレルから余剰在庫を買い取って、メルカリ等で販売する一般人とマッチングするプラットフォーム。個人プレーヤーが商売相手だ。ブランドとしても2次流通だけど、個人が値付けするから価格が下がっても平気で、そこで売れることでブランド価値が上がるから良しとしている。メルカリがなかったら存在しなかった商売形態でとても面白い。

WWD:ユーチューバーも、アパレルから在庫を買い取って自分のユーチューブで売っている。そんなネクストリーダーが台頭してきているが、泉水さんがネクストリーダーだったころ、30代は何を考えていたか?

泉水:ちょうど課長だったころだ。30代は何も考えずにがむしゃらに仕事をしていたと思う。90年代になってフレンチカジュアルブームで渋谷パルコパート3ではそういった服を集めて超売れた。一方でライバルの渋谷109はフレンチカジュアルファッションは取り扱わずキツそうだった。その中で「ラブボート(LOVE BOAT)」などが出現し、渋谷ギャルカルチャーを創出して人気を集め黄金期を築いた。その時にはわれわれが手がけていたフレンチカジュアルは低迷していった。ファッションには流れがあるんだと身を持って分かったし、流れを掴まないといけない、掴むためにはアンテナを張ってないといけないと思った。

WWD:現在のコロナ禍でのファッションの流れは?

泉水:コロナ禍でも売れているのはラグジュアリーだ。前年を超えて好調の「ロエベ(LOEWE)」や「エルメス(HERMES)」などから思うのが、クラフトワークに造形が深かったり、アート思考が強かったりすることだ。ファッションだけの力では売れなくて、アートの文脈があるから売れている。そういう流れなんだろうなと思う。

WWD:パルコに導入するブランドに基準はあるのか?目を引くブランドとは?

泉水:具体的には言えないが、モノも見るが、人も見る。昔、他のファッションビルの名物幹部が導入したブランドの有名な話だが、商品を見たスタッフさんたちは導入に反対したが、「モノじゃなく人を見ろ」と言って人物にフォーカスしてブランド導入し、一大人気ブランドになった。モノも人が作っているということ。私自身は、影響されるのが嫌で競合施設の視察はしないけど、普段からモノ・服を見るのと同時に来店している人を見ている。イベントでもどういった人が集まっているか、それを見ている。

WWD:今、パルコがやるべきことは?

泉水:それでいうと人材育成、教育をやってこなかったことを反省している。言い訳できるとすれば、われわれの世代は先輩の背中を見て覚えていた。だからスタッフさんは教えずとも見て覚えてくれていると思っていた。でも実際は、ゆとり教育世代とかは覚えてくれないスタッフが多かった。「教える」という意識を持って教育することが大事で、オンザジョブトレーニングの重要性を痛感している。現在、18店舗あるパルコはそれぞれに違う戦略で動いていて、マニュアルがない。だからこそ「こうするんだよ」と個々に教えていく必要がある。

WWD:今後の方針は?

泉水:コロナの流行によりさまざまなことが停滞してしまった。まだ終息したわけではなくリスクはあるが、ワクチン接種も始まったし、人に会っていきたい。人に会いコミュニケーションすることが非常に大切で、我々の生命線だということを痛感したので。

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日本最強の期間限定販売のプロ集団ラベルヴィーが“ファミセ”を本気でアップデート

 日本のフラッシュセール最大手企業のラベルヴィー(LA BELLE VIE)が注目を集めている。同社は「グラッド(GLADD)」「ギルト(GILT)」という2大フラッシュセールサイトを擁し、サービス開始の2009年以来、「会員限定」「短期集中販売」「在庫運用」という機能を磨き続けてきた。コロナ禍がファッション産業にも大きな影響を与える中、こうした機能が評価され、ここに来て再び同社の存在がクローズアップ。独自に開発したオンラインファミリーセールサービス「ホワイトレーベル」も、ハイレベルなセキュリティや工数の削減などが評価され、急速に導入企業が増えている。

名実共に日本ナンバーワンの
フラッシュセール企業

 「グラッド」の会員数は約300万人、「ギルト」が同270万人。共に日本でのサービス開始は2009年で、ブランド価値を維持しながら短期間で売り上げるノウハウを蓄積している。18年9月に本社機能、11月に物流拠点、そして12月末に法人を統一。名実共に日本ナンバーワンのフラッシュセールサイトになった。

 カテゴリーの幅広い「グラッド」、ラグジュアリーに強い「ギルト」の両サイトを有しているため、高級ブランドや幅広いターゲットから人気を集めるブランドぞろえ、取り扱いアイテムもアパレル、アクセサリー、家具・インテリア、食品、日用雑貨、旅行まで幅広い。販売したいブランド側にとってはブランドやアイテムによって、両サイトを使い分けることができる。

委託から在庫連携、
買い取りまで
取引形態はいろいろ

 「グラッド」「ギルト」ともにブランドとの取引形態はバリエーションが広がっている。ブランド側の要望に応じて、期間を限定して販売委託する「販売委託」、ECのシステム上で連携する「在庫連携」、すぐに現金化できる「買い取り」など、取引形態はさまざまだ。ブランド側は、在庫を自分たちの状況で決められる。

 会員制フラッシュセールがルーツではあるが、現在はセミクローズド形式だけでなく、短期間でより効率的に販売するための、さまざまなノウハウを蓄積。ブランドや商品カテゴリー、在庫のシーズン性など、アイテムの特性に応じて多角的にアプローチでき、ベストなソリューションを提案している。

ファミセをオンライン化する
「ホワイトレーベル」で
手間と工数を激減、
売り上げは倍増

 ラベルヴィーのファミリーセールに特化したサービス「ホワイトレーベル」が伸びている。フラッシュセールで培ってきた「会員制」「期間限定」「在庫運用」といったノウハウをベースに、ハイレベルなセキュリティーや個人情報の取り扱いにも対応する同サービスは、コロナ禍でリアルイベントが難しくなる中で、外資系の有力ブランドの導入も相次ぎ、急速に広がっている。現在は外資系ブランドや国内の大手セレクトショップなど30社が導入している。導入拡大の背景を香取純一ラベルヴィー共同CEOは「サービス自体は5年前から展開してきたが、昨年3月以降、問い合わせが急増している。ファミリーセールはこれまで実は多くの手間と工数、人員を必要としていたが、『ホワイトレーベル』を使えばかなり削減できる一方、ほとんどのケースで売り上げは1.5〜2倍に増えている」と語る。

 「ホワイトレーベル」の最大のポイントは、手間と工数の圧倒的な削減だ(図参照)。会場の手配などを含めると最大で2カ月前から準備していたファミリーセールは、最短でわずか2〜3週間まで準備期間を短縮できる。渡辺サブリナ=ラベルヴィー共同CEOは「ブランドが年に数回だけのファミリーセールの運用を改善するには限界がある。とはいえハイレベルなセキュリティと個人情報の取り扱いや、ベストなタイミングでの告知や登録、販売面の細かな気配りなど求められる機能やサービスに関しては、かなりのクオリティーとノウハウが必要。『ホワイトレーベル』には在庫運用のプロフェッショナルとして培ってきた多くのノウハウが凝縮されている」という。

ハイレベルなセキュリティや
個人情報の取り扱いにも対応

 導入企業の多くがサービスを継続して利用しており、「ほぼ全てのケースで購入者数と購入単価のアップ率は際立って高くなっている。一つ強調しておきたいのは、『ホワイトレーベル』の導入で、これまでブランドがファミリーセールを自社で開催する際にコストとして可視化しづらかった運営関係者の人件費や手間を削減でき、在庫をより効率的に運用できるという点。経営側のメリットも大きい」(渡辺共同CEO)。また、「当社が最重要視しているのは、効率的な在庫運用をすることで、ファッション産業のサステナビリティに貢献すること。在庫のライフサイクル全体の効率化は、大量生産・大量廃棄が大きな課題となる中で、ブランドが成長し続けるためにも重要な解決策の一つ。ファッション産業に精通した人員を多く抱える当社だからこそ提案できるブランディングの維持・向上と効率的な在庫運用が、業界全体の課題のソリューションになると実感している」(香取共同CEO)。

問い合わせ先
ラベルヴィー
press@labellevie.jp

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「シアタープロダクツ」がSDGs未来都市と連携 デザイナーのクリエイティビティが人々を繋げる

 「シアタープロダクツ」はこのほど、京都・亀岡市と連携し、パラグライダーの生地をアップサイクルしてバッグを作る新たなファッション事業「ホズバッグ(HOZUBAG)」を立ち上げた。2019年に亀岡市の駅前で、廃棄されるパラグライダーの生地をつなぎ合わせた巨大なバッグをクレーンで吊るすパフォーマンスを行って以来、つながりを深めている。このパフォーマンスは、SDGsに取り組む“SDGs未来都市”の認定を受けた亀岡で環境先進都市としての多様な取り組みが始まることを周知する目的で行われた。クリエーションの力で長期的な課題解決を目指す武内昭「シアタープロダクツ」デザイナーに話を聞いた。

WWD:亀岡市と取り組むことになった経緯は?

武内昭デザイナー(以下、武内):亀岡市が、「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」で2030年までに使い捨てプラスチックごみをなくすことを目指し始めたのがきっかけでした。行政は市民の環境意識を高め、取り組みを広めるための文化芸術を考え、「かめおか霧の芸術祭」でイベントを開いてくれないかと声がかかりました。そこで、廃棄される予定だったパラグライダーの布をエコバッグに生まれ変わらせる「フライバッグ(FLY BAG)」プロジェクトを立ち上げました。夏に10mを超える巨大なパッチワークのバッグを亀岡市の駅前にクレーンで吊り上げるパフォーマンスを行い、冬の芸術祭では市民の皆さんとそれを一緒に解体してエコバッグを作りました。

WWD:市民からはどんな反応が?

武内:想像を超える反響で、幅広い年齢層の方に参加していただきました。イベントの成功に背中を押され、一度きりではなく本質的な問題解決のために事業化を目指したプロジェクトを提案し、誕生したのが「ホズバッグ」です。

WWD:販売後の反響は?

武内:最初はパリで展示会を開催しました。「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」の「私たちにできる身近な取り組みを国内外の他都市とも連携し、湧き上がるような大きな流れを巻き起こしていかなければ」という一文に共感し、「ホズバッグ」で実践したいと思ったんです。すると、パリの名門ギャラリー「イヴォン・ランベール(YVON LAMBERT)」の方が気に入ってくださり、会期中に全て買い取ってくれました。亀岡生まれのブランドが、パリで販売を開始という状況にとてもワクワクし、「ホズバッグ」の可能性を感じました。商品は1カ月で完売しました。国内では20年から販売し、現在生産が追い付かないような状況です。

WWD:「ホズバッグ」の何が共感を呼んだ?

武内:まずファッションとしての価値が一番でしょう。そこから興味を持って、商品に触れ、背景を知ることでさらに価値を感じられる構造が上手く機能したと思います。今後は亀岡市内に工場を作り、独立したブランドとして展開します。

日本環境設計との出会いで地下資源に頼らない未来を目指す

WWD:「シアタープロダクツ」がSDGsを意識するようになったきっかけは?

武内:残布で製品を作ったり、既存のプリント版を再利用したりといった、資源を無駄にしないデザインは当初から自然と実践していました。サステナビリティを強く意識するようになったのは、2017年頃に日本環境設計の岩元美智彦会長にお会いして以来です。

WWD:同社の「ブリング(BRING)」プロジェクトは古着をリサイクルして新たな製品を作る循環型の仕組みを確立した。

武内:石油などの地下資源に頼らない未来を目指せることに感銘を受け、以来「ブリング」のディレクションを担当しています。ニューヨーク・ファッション・ウィークで発表したリサイクルできるドレスは同社との取り組みで実現したものです。その後、バンダイスピリッツ(BANDAI SPIRITS)とコラボして、プラモデルの成形中に生じる端材などを再利用したアクセサリーなども販売しました。会社としてもサステナビリティの取り組みを進めていて、「SDGs事業認定」を取得しました。環境や社会への貢献が、ブランドの付加価値を高めると実感しています。

WWD:会社としてはどんな取り組みを?

武内:ほとんどの商品においてカーボンオフセットが実現できそうな段階です。とは言え、本音はまだまだ課題ばかり。まずは自分の襟を正すことが先決ですから、社内のプラスチック使用量の削減など、できることから取り組んでいます。

環境問題は課題が山積だからこそクリエーションが進む

WWD:ファッション業界が抱える廃棄問題や環境負荷は以前から意識していた?

武内:業界が抱える問題を掘り下げると絶望的な気持ちになりますが、僕は課題意識よりも、資源を循環させた未来というポジティブなところに興味を持ちました。僕のデザインする思考と、資源を循環させることの相性が良かったんだと思います。

WWD:サステナビリティがクリエーションを制限するという意見もあるが?

武内:逆に条件があるほどクリエーションは進むと思います。デザインは、さまざまな課題をどう解決するかという作業です。環境問題は山積だからこそ、クリエーションが生まれる可能性を感じます。

WWD:亀岡市との取り組みでは、クリエイティビティやデザイン力そのものが求められた。

武内:そうですね。僕はファッションデザイン以外にも興味の幅が広いので(笑)。例えば亀岡市は、レジ袋を全面廃止しました。当然市民からは反対の声も上がりましたが、どう解決できるかを考え、亀岡市が共同購入する紙袋のデザインを申し出ました。メッセージを大きくプリントし、掲げるとプラカードになるようなデザインです。紙袋のデザイン一つでも、人々の意識は変化すると思ったからです。亀岡市で行われているさまざまな対話がとても面白く、「これをクリエイティブな方法で多くの人に伝えたい」と思い、映像作家の丹下紘希さんをディレクターにお招きし、「しぜんの中の小さな会議」と題したドキュメンタリー動画も制作しました。農家や子ども、市長といった亀岡市民が自然の中で対話をしています。市民からの問題提起に対して、行政はどんな答えを出せるか、デザイナーやアーティストは何を提案するのかを持ち合う亀岡市の今を再現しました。対話にヒエラルキーはなく、アーティストやデザイナーの声もきちんと行政に届く。その環境が素晴らしいと思います。

WWD:これからのデザイナーに求められる技術や知識とは?

武内:ファッションは経済活動と社会・環境問題の解決を比較的結び付けやすい分野です。デザイナーはその双方を解決する役割を担うのではないでしょうか。今ある資源に限りがあることを知ると、得るべき技術や知識は変ります。最終的に問題を解決するのはテクノロジーですが、解決策が見つかるまでの間はクリエイティビティを駆使して答えを模索すること。それが今後のデザイナーの役割だと思います。

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「シアタープロダクツ」がSDGs未来都市と連携 デザイナーのクリエイティビティが人々を繋げる

 「シアタープロダクツ」はこのほど、京都・亀岡市と連携し、パラグライダーの生地をアップサイクルしてバッグを作る新たなファッション事業「ホズバッグ(HOZUBAG)」を立ち上げた。2019年に亀岡市の駅前で、廃棄されるパラグライダーの生地をつなぎ合わせた巨大なバッグをクレーンで吊るすパフォーマンスを行って以来、つながりを深めている。このパフォーマンスは、SDGsに取り組む“SDGs未来都市”の認定を受けた亀岡で環境先進都市としての多様な取り組みが始まることを周知する目的で行われた。クリエーションの力で長期的な課題解決を目指す武内昭「シアタープロダクツ」デザイナーに話を聞いた。

WWD:亀岡市と取り組むことになった経緯は?

武内昭デザイナー(以下、武内):亀岡市が、「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」で2030年までに使い捨てプラスチックごみをなくすことを目指し始めたのがきっかけでした。行政は市民の環境意識を高め、取り組みを広めるための文化芸術を考え、「かめおか霧の芸術祭」でイベントを開いてくれないかと声がかかりました。そこで、廃棄される予定だったパラグライダーの布をエコバッグに生まれ変わらせる「フライバッグ(FLY BAG)」プロジェクトを立ち上げました。夏に10mを超える巨大なパッチワークのバッグを亀岡市の駅前にクレーンで吊り上げるパフォーマンスを行い、冬の芸術祭では市民の皆さんとそれを一緒に解体してエコバッグを作りました。

WWD:市民からはどんな反応が?

武内:想像を超える反響で、幅広い年齢層の方に参加していただきました。イベントの成功に背中を押され、一度きりではなく本質的な問題解決のために事業化を目指したプロジェクトを提案し、誕生したのが「ホズバッグ」です。

WWD:販売後の反響は?

武内:最初はパリで展示会を開催しました。「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」の「私たちにできる身近な取り組みを国内外の他都市とも連携し、湧き上がるような大きな流れを巻き起こしていかなければ」という一文に共感し、「ホズバッグ」で実践したいと思ったんです。すると、パリの名門ギャラリー「イヴォン・ランベール(YVON LAMBERT)」の方が気に入ってくださり、会期中に全て買い取ってくれました。亀岡生まれのブランドが、パリで販売を開始という状況にとてもワクワクし、「ホズバッグ」の可能性を感じました。商品は1カ月で完売しました。国内では20年から販売し、現在生産が追い付かないような状況です。

WWD:「ホズバッグ」の何が共感を呼んだ?

武内:まずファッションとしての価値が一番でしょう。そこから興味を持って、商品に触れ、背景を知ることでさらに価値を感じられる構造が上手く機能したと思います。今後は亀岡市内に工場を作り、独立したブランドとして展開します。

日本環境設計との出会いで地下資源に頼らない未来を目指す

WWD:「シアタープロダクツ」がSDGsを意識するようになったきっかけは?

武内:残布で製品を作ったり、既存のプリント版を再利用したりといった、資源を無駄にしないデザインは当初から自然と実践していました。サステナビリティを強く意識するようになったのは、2017年頃に日本環境設計の岩元美智彦会長にお会いして以来です。

WWD:同社の「ブリング(BRING)」プロジェクトは古着をリサイクルして新たな製品を作る循環型の仕組みを確立した。

武内:石油などの地下資源に頼らない未来を目指せることに感銘を受け、以来「ブリング」のディレクションを担当しています。ニューヨーク・ファッション・ウィークで発表したリサイクルできるドレスは同社との取り組みで実現したものです。その後、バンダイスピリッツ(BANDAI SPIRITS)とコラボして、プラモデルの成形中に生じる端材などを再利用したアクセサリーなども販売しました。会社としてもサステナビリティの取り組みを進めていて、「SDGs事業認定」を取得しました。環境や社会への貢献が、ブランドの付加価値を高めると実感しています。

WWD:会社としてはどんな取り組みを?

武内:ほとんどの商品においてカーボンオフセットが実現できそうな段階です。とは言え、本音はまだまだ課題ばかり。まずは自分の襟を正すことが先決ですから、社内のプラスチック使用量の削減など、できることから取り組んでいます。

環境問題は課題が山積だからこそクリエーションが進む

WWD:ファッション業界が抱える廃棄問題や環境負荷は以前から意識していた?

武内:業界が抱える問題を掘り下げると絶望的な気持ちになりますが、僕は課題意識よりも、資源を循環させた未来というポジティブなところに興味を持ちました。僕のデザインする思考と、資源を循環させることの相性が良かったんだと思います。

WWD:サステナビリティがクリエーションを制限するという意見もあるが?

武内:逆に条件があるほどクリエーションは進むと思います。デザインは、さまざまな課題をどう解決するかという作業です。環境問題は山積だからこそ、クリエーションが生まれる可能性を感じます。

WWD:亀岡市との取り組みでは、クリエイティビティやデザイン力そのものが求められた。

武内:そうですね。僕はファッションデザイン以外にも興味の幅が広いので(笑)。例えば亀岡市は、レジ袋を全面廃止しました。当然市民からは反対の声も上がりましたが、どう解決できるかを考え、亀岡市が共同購入する紙袋のデザインを申し出ました。メッセージを大きくプリントし、掲げるとプラカードになるようなデザインです。紙袋のデザイン一つでも、人々の意識は変化すると思ったからです。亀岡市で行われているさまざまな対話がとても面白く、「これをクリエイティブな方法で多くの人に伝えたい」と思い、映像作家の丹下紘希さんをディレクターにお招きし、「しぜんの中の小さな会議」と題したドキュメンタリー動画も制作しました。農家や子ども、市長といった亀岡市民が自然の中で対話をしています。市民からの問題提起に対して、行政はどんな答えを出せるか、デザイナーやアーティストは何を提案するのかを持ち合う亀岡市の今を再現しました。対話にヒエラルキーはなく、アーティストやデザイナーの声もきちんと行政に届く。その環境が素晴らしいと思います。

WWD:これからのデザイナーに求められる技術や知識とは?

武内:ファッションは経済活動と社会・環境問題の解決を比較的結び付けやすい分野です。デザイナーはその双方を解決する役割を担うのではないでしょうか。今ある資源に限りがあることを知ると、得るべき技術や知識は変ります。最終的に問題を解決するのはテクノロジーですが、解決策が見つかるまでの間はクリエイティビティを駆使して答えを模索すること。それが今後のデザイナーの役割だと思います。

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ファッション通信簿Vol.66 止まるところを知らない!? 2021年「グラミー賞」授賞式のレッドカーペット・ファッションを米「WWD」が勝手にジャッジ!

 米「WWD」の人気企画「ファッション通信簿」では、ストリートからパーティー、レッドカーペットに至るまで、海外セレブたちのファッションを厳しくチェック。評価を絵文字でお伝えするとともに、それぞれのファッションポイントを勝手に辛口ジャッジ!

 第66回は、3月14日(現地時間)にロサンゼルスで開催された第63回「グラミー賞(Grammy Awards)」の授賞式から、デュア・リパ(Dua Lipa)、ハリー・スタイルズ(Harry Styles)、シンガーソングライターのフィービー・ブリジャーズ(Phoebe Bridgers)、 ノア・サイラス(Noah Cyrus)、プロデューサーでDJのケイトラナダ(KAYTRANADA)、ラッパーのミーガン・ジー・スタリオン(Megan Thee Stallion)、リゾ(Lizzo)、ドージャ・キャット(Doja Cat)が登場。2021年の授賞式はソーシャルディスタンスを保つためにライブとデジタルを織り交ぜた形式で行われたが、パフォーマンスはもちろんのこと、レッドカーペット上の華やかさも健在だった。

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 米「WWD」の人気企画「ファッション通信簿」では、ストリートからパーティー、レッドカーペットに至るまで、海外セレブたちのファッションを厳しくチェック。評価を絵文字でお伝えするとともに、それぞれのファッションポイントを勝手に辛口ジャッジ!

 第66回は、3月14日(現地時間)にロサンゼルスで開催された第63回「グラミー賞(Grammy Awards)」の授賞式から、デュア・リパ(Dua Lipa)、ハリー・スタイルズ(Harry Styles)、シンガーソングライターのフィービー・ブリジャーズ(Phoebe Bridgers)、 ノア・サイラス(Noah Cyrus)、プロデューサーでDJのケイトラナダ(KAYTRANADA)、ラッパーのミーガン・ジー・スタリオン(Megan Thee Stallion)、リゾ(Lizzo)、ドージャ・キャット(Doja Cat)が登場。2021年の授賞式はソーシャルディスタンスを保つためにライブとデジタルを織り交ぜた形式で行われたが、パフォーマンスはもちろんのこと、レッドカーペット上の華やかさも健在だった。

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読者が選んだ!東コレ人気ブランドランキング“T-1グランプリ“結果発表 「アンダーカバー」を抑えた1位は?

 2021-22年秋冬シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」が21日に閉幕しました。「WWDJAPAN.com」は、編集部が選出した全20の候補から、ユーザー投票で人気No.1ブランドを決定する“T-1グランプリ”を開催!見事トップ10に入ったブランドをランキング形式で発表します。

【1位】「ミーンズワイル(MEANSWHILE)」


理由:アウトドアな感じが好き/素敵なデザインです!/衣服のさらなる可能性を感じた/コンセプトと映像表現がよかった/洋服に力強さを感じる。着ることで先行き不透明な時代に対して一種のパワーを与えてくれそうな気がする/細部まで作り込まれていて、いろんなギミックが詰め込まれてるのに、うるさくない絶妙なバランス/好きなテイストとサイズ感だった。リラックスできる物が好きなので/衣服は道具という観点から機能美を表現している点が興味深かった/人と被らず、使いやすそう/ルックとコンセプトがかっこいい

【2位】「アンダーカバー(UNDERCOVER)」

理由:エヴァに目が行きがちだけど、パジャマセットアップなどトータルで着たいと思わせるバランスが完璧。さすがジョニオさん!/服も音楽も照明も演出もカッコ良かった!!ダントツです/エヴァの服で使徒のモチーフはあまり見かけたことがない。ニットなので普通に着ても違和感がなさそう。サキエルかサハクィエルのニットが欲しい(笑)/時代を利用することなく、また逆らうわけでもなく、常に独自の世界観を進化させ、私たちを楽しませてくれるブランドだと思う/ワントーンでまとめられたチュールドレスも素敵だったが、何よりもエヴァンゲリオンコラボの印象が強く残った/東京を感じるショーかつ、アンダーカバーらしいダークな雰囲気も最高でした/クオリティーの高さとデザイン性がズバ抜けていた/今の世の中のニュースに対して鬱積する死生観と、毒っ気などブランドの特徴がいつも以上に表現され、儚くも美しいコレクションだった/ファッションの枠を広げるディレクションが、まさに「今」を語っているようだった。日本ファッションもまだまだイケてるな/すでに地位を確立しているのに挑戦する姿勢を支持したい/このタイミングでエヴァ!!ツボ!!流石のアンカバワールド!

【3位】「ハイク(HYKE)」


理由:ミリタリーを得意とする「ハイク」らしさが、アウター類を中心に感じられた。2021年春夏に続き、素材や機能面でもこだわりが見られた/ミリタリーとアウトドアの要素をきれいに見せるのが今の気分とマッチしている/デザインが好きです/素敵。質が良さそう。オフィスにも着ていけそう/洋服のデザインが素晴らしいブランドは他にもあるが、シルエットのレベルが圧倒的に高く、そこにあるだけで美しい。人物像も確立され、スタイリングも秀逸。ミクロで見てもマクロで見てもレベルが高く、素晴らしいブランドだと思います/相対するものをうまくミックスし、新しいものを生み出すセンスのよさと、全体の絶妙なバランス/洗練されたデザインが大好き/サラッと着るだけで、上品でセンスが良い雰囲気をまとえそうだから/シンプルなのにブレない。本当に必要な服は、トレンドとかコロナとかそんな事は関係ないなと思わされた/他のブランドも新しくて良いなと思いましたが、やっぱりハイクが素晴らしかった。限られた区画内をまわるランウェイも、コロナ禍で個人のルーティンを行う生活や、服を循環させるファッション業界などを象徴的に表しているように感じました/日本のドメブラは「ハイク」に任せることにした

【同率3位】「ビューティフルピープル(BEAUTIFUL PEOPLE)」


理由:“ダブルエンド”という上下逆にして着用可能な発想が面白い/ブランドのローンチ時から一貫して、ファッションのもつポジティブな楽しさと、相反するファッションの文化的な側面を押し広げようとする真面目で真摯な姿勢が感じられる。自らの設定したテーマのみならずコロナ禍という世相も見事に反映し、完成度も高いことから、ベストだと思った/アイデアが面白いし、上下逆に着ても違和感があまり無いのがいい/世界観の作り込みとコンセプトの明瞭さ/“ザ・東コレ”という感じがしてワクワクしたから。ファッションが元気だった10年ほど前を思い出しました/「アンリアレイジ」と似た感じではあるが、“1着で2通りの着方が可能”という、着回しとは違ったファッションの可能性を広げてくれて興味深かった/対になったルックで違いを見せる演出も見応えあるものだった/「アンダーカバー」と「ハイク」もよかったですが、アイデアをきちんとかたちに落とし込んだビューティフルピープルの技術力に一票

【5位】「ミスター・ジェントルマン(MISTERGENTLEMAN)」

理由:オオスミタケシの魂を感じた/さすがのレイヤード術とクリーンな色彩/素直に一番着たいと思った。人と会えない状況でも、服を純粋に楽しめるデザインだった/買いたい!と思う商品がたくさんあった。追悼の意だけではなく、とてもドラマチックでした/とにかく美しかった。オオスミさんのこともあり涙なしでは見られなかった。配信を見た自分も、実際にリアルショーを見た人もどちらも感動の嵐だったのではないか/洗練されたコーディネートと素材のハイブリット感が絶妙。コレクションの完成度が高い。/ラストの演出含め圧巻でした/悲しくも素晴らしいショーでした/いい意味でいつもと変わらず、今後ももっとこの方向性のモノづくりが見たいと思った/大好きだからです

【6位】「ミカゲシン(MIKAGE SHIN)」

理由:上品なシルエットが素敵/テーマと服が合致している/美しかった/ジェンダーレスで建築的なデザインが◎/SNSでの発言とデザインに矛盾がなく共感できる/素敵な色合いに惹かれた/カッコ良すぎる。メンズ、ウィメンズ問わずに着られそう/ユニセックスなのにシンプルでデイリーにもきやすいデザインだったため/未曾有の状況でもクリエイティブさを発揮している印象だった/東京でのファーストコレクションとのことだが、完成度が飛び抜けていた/洋服のクオリティー、ソリッドな演出、全てにおいて印象に残っている/アシメントリーなスタイル、揺れるプリーツや素材に魅力された/(この服を)まとうことにより、「ここから新たなプロセスを私たちが作っていくんだ」と強く思った/ある種の清冽さを感じ、落ち着く

【7位】「ソワハ(SOWAHA)」


理由:着物という日本の民族衣装を現代風にアレンジ。美しいグラフィックも良かった/和と洋の調和が洗練されており、何よりも一番美しい服がそろっているから/美しく細やかな色彩、シンプルなデザインに新しさと普遍性を感じる。何より、パッと見て、ぜひ着てみたい!と思った/ジャパン・オリジンを大事にされているスピリッツを応援したいと思いました/見た瞬間にきれいだなと感じた。友禅染めブルーがとても印象に残る/クリエイティブの高さに感動しました。改めて、日本の文化に誇りを持ちました/because I love the combination of traditional and modern style/他にない美しさ。見惚れる

【8位】「ザ・リラクス (THE RERACS)」


理由:一目惚れした/シンプルかつモダンで、いい素材使いをしてる/着心地と洗練されたデザイン性が素晴らしいと思います/襟元や袖口に黒が入って、甘い感じを引き締めた感が好き。全体的に好みです/映像から分かる素材の良さ。回を重ねるごとに上がるショー全体のクオリティー/すぐに着たいっ!と思えるルックばかりだった。ショーの映像、音楽も含めて素敵だった/徹底されたデザインが好きです/コロナ禍のストレスを軽減させるような雰囲気

【同率8位】「ニサイ(NISAI)」


理由:どのルックもテーマの“アフターレインボー”を感じさせる、古着再生とは思えないファッション性だった/洋服が生き生きしていて、エネルギーと高揚感、未来への勇気をもらった/色合いがきれいで好きです/ワクワクしました。演出、モデル、全てがブランドらしく、元気になるランウエイでした/感性豊か。色合いと感覚が素敵です/独創的で美しい

【10位】「リコール(REQUAL≡)」

理由:希望を持てた/ショーがとても感動した/他にはないセンスと独自性を感じた/今の世の中の空気感を良く表していたのではないかと思う/元気とエネルギーとハッピーをもらえてただただ幸せ/ショー形式で発表する意味をしっかり感じられた。観客を巻き込んでいた/自由とパワーを感じた。洗練された美しさはないが楽しく、クリエイティブで非常に魅力的であった/ショーにモデルとして出演させていただいたのですが、ショーを見ていて思わず感動してしまいました/素晴らしかった。ヘアもメイクもクリエイティブで世界観に惹きつけられた

担当者の感想

 大本命の「アンダーカバー」を抑えて「ミーンズワイル」がグランプリを獲得!意外な結果に編集部もどよめきました。アーバンアウトドアスタイルが読者の目に新鮮に映ったのでしょうか。2位の「アンダーカバー」は、「エヴァ」コラボはもちろん、ウィメンズの完成度の高さで支持を広げました。3位は、色や柄を使って軽やかさを出した「ハイク」と、ペアモデルで“ダブルエンド”を表現した「ビューティフルピープル」。他にも「ミカゲシン」「ニサイ」などの気鋭ブランドが奮闘しました。次世代ブランドは、時代の空気に呼応したテーマ設定と、勢いを感じるクリエイションがユーザーの共感を呼んだのでしょう。

 “T-1“グランプリは次のシーズンも継続する予定。今後も東コレブランドの活躍にご注目ください!

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敏腕販売員が語る「アパレル接客経験は最強のキャリア」、その理由とは? エルーラ川崎万智子

 販売員のスキルを磨くイベントの一つが、毎年、秋から冬にかけて商業施設やアパレル企業が実施する、接客ロールプレイングコンテストだ。2020年はコロナ禍でほとんどの企業が開催を見送った中で、「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」「ニコアンド(NIKO AND…)」「ローリーズファーム(LOWRYS FARM)」などのブランドを展開するアダストリアは、オンラインを活用してロープレコンテストを実施した。

 そのコンテストで見事、同社独自の接客スキル認定制度である「SSCアドバイザー認定制度」でトップのプラチナアドバイザーに認定された凄腕の販売員が、2019年10月にスタートしたばかりの「エルーラ(ERULA)」でシニアスタッフを務める川崎万智子さんだ。接客の極意を聞いた。

―アパレル業界で働くことになったきっかけは?

川崎万智子さん(以下、川崎):父から聞いたのですが、幼少の頃に兄と一緒に「失礼します!」「恐れ入ります!」とか言いながら遊んでいて、それを見た父の友人が「どういう教育をしているんだ」と笑われたこともあったそうです。その頃から接客業で働きたい気持ちが強くて、高校生で飲食店のアルバイト始めました。その飲食店には大学生になってからもお世話になっていたのですが、いざ大学卒業となった時に、同じ接客業のアパレルもいいなと思ったんです。当時は「ローリーズファーム」が人気上昇中で、よく買い物にも行っていたこともあって自然と「(ローリーズファームを運営していた)この企業が良いな」と考えました。

―確かに接客業の中でも、ショップスタッフは身近な存在ですしね。オシャレに興味がある人なら一度は憧れる仕事かと思います。

川崎:就活中は華やかな仕事だし、楽しそうだなと思っていました。

―では実際にアパレル業界で働いてみてどうでしたか?

川崎:思った以上に体力を使う仕事だというのが最初の印象でした。内定をいただいてから「ローリーズファーム」でアルバイトを始めたんですが、「こんなに疲れるの?」と思うくらい衝撃的だったんです。

―そんなに?飲食も同じくらい疲れませんか?

川崎:この業界には飲食店でバイト経験ある方が多いので共感してくれると思うのですが、一番の違いは、飲食店は入店したら100%売り上げが立ちますが、アパレルは極端に言えば大半の人は入店しても購入しないことです。つまり、お客さまが入店された瞬間から接客が始まって、お客さまが店頭にいる間はずっと常に神経を巡らせている状態なんです。最初の頃はそれが一番疲れましたね。飲食店は客単価を上げる接客をしますけど、アパレルは“0を1にする”接客で、その違いにも結構衝撃を受けました。だからこそ、常に接客技術の向上が必要で、いつまでも勉強することがあります。それが楽しいですが。

―たくさんの販売員を取材していると、人と接するのが好きでこの道に進む方と服が好きで進む方がいます。恐らくこれまで育成してきたスタッフの中にもファッションは好きだけど、接客は苦手な方もいたと思います。ファーストアプローチが苦手な方へのアドバイスは?

川崎:そうですね、私の場合は最初に、「お友達と買い物って行く?」と尋ねます。大体は「行きます」と答えてくれるので、そうした状況を丁寧に実践してみようとアドバイスしています。アダストリアの多くはカジュアルなブランドなので、かしこまり過ぎず、お友達と接するよりは少し丁寧にお客さまと接してみる感じです。なので、たまに「一人で行く」と言われると、ちょっと悲しくなりますね(苦笑)。

―どちらかと言えば私も一人で買い物行くタイプです(苦笑)。そういう場合は?

川崎:スタッフによりますが、もっと具体的に「3秒間、よく観察してから行こう」など、細かく指示を出してトレーニングをするようにしています。「いま!」と背中を押したり、逆に観察してもらった上で声をどう掛けるか考えさせたり、スタッフの性格に合わせて教えています。その後が大切で、一歩踏み出せたときにはすごい褒めます。「やっぱり楽しい!」という成功体験を思ってもらわないと続かない仕事だと思うので、体力的にも。だから、とても良かったことはそのときそのときにきちんと伝えるようにしています。当社は学生アルバイトも採用しているので、例えば将来は音楽の先生になりたい学生バイトが入ることもあるんです。そういう時は将来のことを上手く絡めて、アダストリアでバイトしたことがプラスになったと思えるようにスタッフ育成しています。「全く畑違いの業界でも、接客の仕事は対人コミュニケーションを伸ばせるのでどんな仕事にも生かせるよ」と伝えています。

―私も販売職がマスターできれば、どんな仕事でもできると思っています。

川崎:できますよ!その子の強みになります。

―将来を見据えて店頭に立つことができれば、モチベーションも上がりそうですね。

川崎:接客は自分から行動をしないとダメな仕事ですから、ここで働こうと思ったきっかけや将来どうなりたいかはしっかり聞いて、「それなら、これができるまでは頑張ろう」と伝えています。振り返ると結構、口うるさい店長だったんだろうなって思います(笑)。

―言われたスタッフは感謝していると思いますよ。

川崎:そう思ってくれているといいですね。なるべくプライベートに踏み込みすぎない程度にとは思いつつも、きちんとケアをするように心がけていました。ある種、自分の子どものように育てていました。

―子どもと言えば、昨年6月から復職されたそうですが、大変な時期での復職でしたね。

川崎:そうですね。私的には早く仕事復帰したいという思いが高まっていたので、復職できて嬉しかったです。社内的には珍しいのですが、新卒で配属された店舗で店長になったことあり、実は産休までほとんど店舗異動することがなくて仕事に新鮮味がなくなりつつあったのです。そんなタイミングで産休に入って、正直とても解放された感覚がありました。当初は1年で復帰予定だったのが、保育園が決まらなくて復職が延びてしまって。でも当初の復帰予定の時期はまだ仕事したいという気持ちにはなっていなくて…。

―復帰まではどう過ごされていたんですか?

川崎:自粛期間も重なっていたので、今日が何曜日か分からなくなるくらい子どもと一緒に家にこもっていました(笑)。それまで収集しきれていなかった情報を取り入れるために、毎日テレビの情報番組をチェックしていました。インスタグラムなどもよく見ていましたね。この期間にブランドの公式アカウントが伸びているのを聞いて、距離を置いた立場でみていても「楽しそうだな」と感じました。そんな生活をしているうちに沸々と「仕事したいな」という気持ちが出てきて、復帰が決まる頃にはやる気に満ち溢れていました(笑)。外出先でお客さまと会話している販売員の姿を見かけると楽しそうで、入社したての頃の感覚になって仕事したくてたまらない気持ちになりましたね。

―復帰後、最初の仕事は?

川崎:最初の1カ月半は基本的にはオンラインミーティンでした。当時の店長から、私が過去に商業施設のロープレコンテストで入賞経験していることを踏まえて、「スタッフの接客教育をして欲しい」と言われまして、昔の資料引っ張り出して、どんな教育をしようかアレコレ考えていました。

―そんな経験があったんですね。自分の接客の強みはどこでしょうか。

川崎:「共感」です。「共感」を手に入れた瞬間に、何かすごく強みが見つけられた感じがして、自信を持てるようになりました。商業施設のロープレコンテストの挑戦している時に「共感」について教えてもらい、接客も変わりました。「共感」はとても聞き慣れた言葉なので簡単に分かった気になると思いますが、例えば自分から「この色をよく着るんですか?」と尋ねて「着ます」と返されたら、こちらが「そうなんですね」と答えて終わる会話を「共感」だと勘違いしている方が多いと思います。以前の私もそうでした。ですが、お客さまの「着ます」を一度ギュッとキャッチした上で「それならコレもお好きじゃないですか?」と会話を重ねていくことが本来の「共感」なのだと学んでから、接客の考え方が変わりました。今までやってきたことは共感じゃなかったんだって、目から鱗が落ちました。

―取材でも「共感」は良くキーワードになりますが、私も目から鱗です!では、最後に今後の目標を教えてください。

川崎:「エルーラ」は年齢を重ねても店頭で働ける場所をつくるというのが、社内的にもミッションになっているブランドなので、まずはこのブランドを成長させることです。私自身もですが、友人たちもこのまま年齢を重ねていって、50歳になったら何を着たらいいんだろうと話題になっていたので、消費者の気持ちも汲んだ上で丁寧に育てていこうと思っています。

―店舗数を増やすときには、スタッフの育成も重要です。

川崎:そうなんです。「エルーラ」のターゲット層は40代半ば~50代で、若い頃にリアル店舗で買い物をしてきた経験がある接客慣れした方たちが多い世代です。アダストリアのヤングブランドとは違う接客スキルが求められます。それこそ「共感」や会話力、30代のスタッフとお客さまの年齢で感じるギャップを埋める専門的な知識など、身につけていく必要があります。スタッフの接客レベルを上げて、年齢にかかわらず「この方に相談したい」と思っていただけるスタッフを育てていきたいです。

苫米地香織:服が作れて、グラフィックデザインができて、写真が撮れるファッションビジネスライター。高校でインテリア、専門学校で服飾を学び、販売員として働き始める。その後、アパレル企画会社へ転職し、商品企画、デザイン、マーケティング、業界誌への執筆などに携わる。自他ともに認める“日本で一番アパレル販売員を取材しているライター”

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キーワードは“循環” サステナブルなヨガウエアから考える心地よさ

 旭化成と「WWDJAPAN.com」は3月7日、ライブ配信によるヨガイベントを実施した。「サステナブルなヨガウエアで健やかに 心地よさをつくるヒント」と題した今イベントには、ヨガインストラクターの渋木さやかさんとマッシュスタイルラボが手掛ける「エミ(EMMI)」の豊山YAMU陽子ディレクターが出演し、お気に入りのヨガウエアについて、そして自身の心地よさを作るルーティンなどを語るトークセッションとヨガレッスンを行なった。

ヘルシーな2人の
心と体の心地よさをつくる習慣

 渋木さんと豊山さんが着用したのは、ともに「サスティナレッチ」素材のヨガウエア。「サスティナレッチ」は、工場内で発生した廃棄する糸などを原料として再利用した旭化成のリサイクルストレッチファイバー「ロイカEF」にリサイクルナイロンを組み合わせた100%リサイクルのストレッチ素材を使用し、UVカット、吸水速乾、接触冷感といった機能を備えている。「生地を提供する旭化成アドバンスと『エミ』との共同開発によって生まれた『サスティナレッチ』は、サステナブルであることに加えて、ヨガの動きに最適なストレッチ性としなやかさが特徴です。“せっかくヨガをするなら環境にも良いものを”と手に取ってもらえたらうれしいですね」と豊山さん。渋木さんは、「(『サスティナレッチ』のウエアは)着ていて気持ち良く動きやすいんです。ヨガウエアって下着と同じように肌にとても近いもの。だからこそ、着心地の良さは魅力的ですね」と感想を語った。
 
 話題は、心地よさをつくるために日々大切にしていることについても。オンオフ問わずヨガウエアを着用していると話すのは豊山ディレクターだ。「“ヨガの中に生活を入れてしまおう”という感覚です。ウエアを常に身に着けることで、自分を動かしていこうという気持ちになるので、心も体も軽やかでいられる気がします」。渋木さんは、ポジティブなマインドを保つための心掛けを教えてくれた。「年齢を重ねたりヨガに出合ったことで、自分にとって何が心地よいのか、逆に心地よくないのかが分かるようになりました。若い頃は、友人や家族、恋人に“自分の機嫌を取ってもらう”という考えをしていたかもしれません。けれど、エネルギーは人からもらうものではなくて自分で作るものなんですよね。それは精神的な自立につながること。こうしたサステナブルな素材が使われた素敵なウエアを選ぶことも、自立した女性の選択のひとつだと感じます」。

“循環”がテーマのヨガレッスン

 「感情も体も“循環”させることが大切。滞らせずに流すことによって心身が整ってきます。それはサステナブルな考えにも通じると思うんです」と話すのは渋木さん。今回のヨガレッスンは、「サスティナレッチ」素材のウエアからインスプレーションを受けたものだという。「ウエアが持つ高いストレッチ性とサステナビリティにつながる“循環”をテーマに、骨盤周りをほぐして血流が良くなるようなプログラムを考えました。骨盤周辺に柔軟性を持たせることで呼吸も深くなり、自然と心も穏やかになるのを感じられると思います」。約30分のレッスンは、骨盤を中心に体全体にアプローチする充実の内容となった。「両腕を上げたら、肩甲骨でグレープフルーツをギュッと絞るように」といった分かりやすくてユーモアのある表現も渋木さんならではだ。

 ヨガをする時は“この瞬間を意識すること”が大切だという。「ポーズが正確にできているかどうかと鏡を気にするよりも、自分に意識を向けて心地よいかどうかを感じながらしっかりと呼吸を」と渋木さん。当日の内容はページ下部の動画でチェック。

ヨガを愛する「エミ ヨガ」
アンバサダーが語る
「サスティナレッチ」

 「何も着ていないような開放感がありながら、適度なストレッチが心地よく、ずれにくいのがお気に入り。まだまだオンラインレッスンが続く中ですが、外の空気を感じながら顔を合わせてヨガができる日が待ち遠しいですね」。(Yuri)「体のラインに沿うようにしっかりと伸びのある着圧を感じられる『サスティナレッチ』は、ヨガやフィットネスだけでなく日常でも楽に過ごせます。肌に吸い付くような心地よさをぜひ体験してほしいです」。(Kanaco)

トークセッションとヨガレッスン
の動画はこちら

PHOTOS:KENTA YOSHIZAWA
MOVIE CAMERA:NORICHIKA INOUE
HAIR & MAKEUP:FUYUMI KUBO(ROI)
SPECIAL THANKS:YES TOKYO STUDIO
問い合わせ先
旭化成 パフォーマンスプロダクツ事業本部
ロイカ営業部 テキスタイル担当
06-7636-3547

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よしみち姉弟や野崎萌香も体験 「ロクシタン」が「春の開運パーツ占い」を実施中

 新しい出会いや環境が期待できる春は、肌や髪などのパーツケアで印象をアップし、新しい自分を発見するのにピッタリの季節だ。そこで「ロクシタン(L’OCCITANE)」は、ビューティ誌「ヴォーチェ(VOCE)」とコラボレーションし、この春、あなたにおすすめの印象アップパーツが占える「春の開運パーツ占い」を期間限定で実施中だ。ユーザーの回答次第で変化する診断結果に応じて、春におすすめのパーツケア製品を紹介する。

春の運勢やケアのヒントを教えてくれる
「春の開運パーツ占い」

 「春の開運パーツ占い」は、ファッション&占いエディターの青木良文が監修。スキンケアやメイクなどに関する質問に「YES」か「NO」と答えるだけで春の運勢や印象アップのヒント、パーツケアコスメなどが分かるパーソナル診断だ。「ロクシタン」のLINE公式アカウントをお友達登録し、「春の開運パーツ占い」とメッセージを送るだけで簡単にコンテンツが体験できる。

よしみち姉弟や野崎萌香も
始めている春の印象アップケア!

 忙しい朝でも、簡単に髪がまとまる"リペアリングヘアミルクセラム"は、乾燥やパサつきをケアして潤いに満ちた艶髪へと変え、自然由来のクリーンな香りで印象もアップ!今年のラッキーカラーのピンクが印象的なフレグランスは、フローラル調で春にぴったりな香りと好評だ。

春の印象アップをサポートする
パーツケアアイテム

 パーツケア製品に合わせて、2021年のラッキーカラーのピンクを想起させる、桜をはじめとした春の花々の香りを纏うことで運気アップも期待したい。またインスタグラムとツイッターでファッション&占いエディターの青木良文の個別鑑定も当たるハッシュタグキャンペーンも実施中だ。新生活に向けた第一歩として、「春の開運パーツ占い」を試してみては?

スマートフォンのみ対応

問い合わせ先
ロクシタンジャポン カスタマーサービス
0570-66-6940

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よしみち姉弟や野崎萌香も体験 「ロクシタン」が「春の開運パーツ占い」を実施中

 新しい出会いや環境が期待できる春は、肌や髪などのパーツケアで印象をアップし、新しい自分を発見するのにピッタリの季節だ。そこで「ロクシタン(L’OCCITANE)」は、ビューティ誌「ヴォーチェ(VOCE)」とコラボレーションし、この春、あなたにおすすめの印象アップパーツが占える「春の開運パーツ占い」を期間限定で実施中だ。ユーザーの回答次第で変化する診断結果に応じて、春におすすめのパーツケア製品を紹介する。

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よしみち姉弟や野崎萌香も
始めている春の印象アップケア!

 忙しい朝でも、簡単に髪がまとまる"リペアリングヘアミルクセラム"は、乾燥やパサつきをケアして潤いに満ちた艶髪へと変え、自然由来のクリーンな香りで印象もアップ!今年のラッキーカラーのピンクが印象的なフレグランスは、フローラル調で春にぴったりな香りと好評だ。

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インスタとコロナ禍が追い風のブリーチヘア、実は大人こそ挑戦すべき理由

 ここ数年、若年層を中心にブリーチヘアが流行している。原宿・表参道など流行の発信地だけでなく、銀座など大人の街や、新宿などのターミナル駅でも、明るい髪色の人とすれ違う機会が増えた(髪全体だけでなく、一部にハイライトを入れたり、部分的にブリーチしている人含め)。一体その背景には、どのような事情が隠されているのだろう?

ブレイクのきっかけは
「インスタ」と「コロナ禍」

 ミルボンが実施した、20代女性を対象にしたウェブ調査(フリージー調べ)によると、直近3年以内にブリーチを体験したことのある女性は約4割。またヘンケル ビューティケアの調査によると、2020年における国内美容室専売ブリーチ市場は前年同期比28.9%増、同じく国内リテール市場は同28.3%増。特にリテールのブリーチオンカラー市場は2年連続で約30%という伸張率を記録し、ブリーチが成長分野であることは間違いなさそうだ。

 「まず大前提として、日本人は心のどこかで“黒髪ではない違う髪色になりたい”欧米人風の髪色に憧れる気持ちが存在するように思います。そのうえで、ここ数年のブリーチの流行は“インスタグラム”の存在抜きには語れません」とは、ミルボン開発研究本部・シニアリサーチャーの長谷部未来研究員。

 インスタにアップするために自撮りをする際、髪は写る面積が大きい。そしてヘアカラーは、スタイルやアレンジに比べると、パッと見た時に“自己表現”しやすい。「インスタグラム上では海外のカラーデザインもリアルタイムで入ってきますし、一般の方がアップした写真は、より身近な存在として仕上がりをイメージしやすい面もあります」と、長谷部研究員。ハッシュタグ検索をしてみると、2021年3月20日現在「#外国人風カラー」は実に374万投稿、「#ハイトーンカラー」は146万投稿にのぼる。ひと昔前は、芸能人の写真や雑誌の切り抜きを手にサロンに来店する人が目立ったけれど、現在はインスタグラムを参考に「こんな髪になりたい」とリクエストする人が多いという。

 もうひとつ、ブリーチの流行に関与するのが、コロナ禍による「おこもり生活とマスク着用」だ。直接人と会う機会が減少し、メイクの機会が減ったこと。マスク着用中は「目元と髪」という限られたエリアでしかおしゃれを楽しめない。そこで「顔周りの印象を明るくするために、ポイントでハイライトを入れたり、耳の下だけブリーチする“イヤリングカラー”を取り入れる人が増えました。一方、年齢層が高い世代はサロンに通う頻度が減り“白髪染め”の手段としてブリーチを取り入れる方も一定数増加しています」(長谷部研究員)。この大人の女性とブリーチについては、詳しく後述したい。

ダメージはヘアカラー5回分!? ブリーチ毛に生じる独特の悩み

 ブリーチが流行して以来、世代に関係なく髪悩みにある種の変化が生じているという。長谷部研究員は、「消費者調査において、年目立つようになったのが“ゴワゴワする”“髪が硬くなる”というワードです。これまでもヘアカラー後に“パサつく”“毛先が傷む”という声はありましたが、“ゴワゴワ”はブリーチ毛特有のお悩みといえます」と話す。

 ヘアカラーもブリーチも、実は髪色を変える仕組み自体は大きく変わらない。酸性とアルカリ性の薬剤でキューティクルに隙間を作り、髪内部のメラニンを破壊して、黒から明るいトーンへと変えていく。では、何が違うのか?ヘアカラーの場合はメラニンを一部残して別の色に染めるが、ブリーチの目的はメラニンを強力に破壊する(欧米人のような明るいトーンになるまで)ことにある。その分髪へのダメージも大きくなるのは当然のこと。長谷部研究員は、「使用する薬剤やサロンの染め方によって一概にはいえませんが、大枠で考えるとブリーチ1回分のダメージは、ヘアカラー4~5回に相当します。ヘアカラーは主に、髪のタンパク質の間に張り巡らされたCMC(細胞膜複合体)にダメージを与えますが、ブリーチの場合は髪の約8割を占める“タンパク質そのもの”にダメージを与えます。髪内部からタンパク質が流出したり、髪に残ったタンパク質自体が変性した結果“ゴワゴワする”“硬くなる”という、特有の髪悩みが生じるのです」。

極度のダメージには、ブリーチ専用のケアが必要

 仮に部分的なハイライトを入れたとしても、ブリーチをした部分の髪が極度のダメージを受ける事実は変わらない。そこで注目したいのが、近年続々登場するブリーチ毛専用のホームケアや、髪のダメージを防ぎながら自宅でブリーチ可能な染毛剤だ。いずれもブリーチ毛特有の状態をミクロレベルで研究し、ダメージを防ぐべく、最新のテクノロジーを搭載している。

世界初、髪の「結合水」に注目したブリーチ用のホームケア

 ブリーチ毛は、なぜ硬くなるのかを分子レベルで研究した結果、誕生したのが「ミルボン(MILBON)」の“オージュア リペアリティ”シリーズだ。物質の「硬さ・柔らかさ」を決定づけるのは、分子の「動きやすさ」。髪のタンパク質は本来、水と結合しているおかげで動きやすいが、ブリーチ毛はタンパク質周囲の水が失われ、動きにくい状態であることを突き止めた。シリーズ全品にニーム葉エキスを配合し、髪のタンパク質に水を引き寄せ、やわらかくしなやかな状態へと導く。ブリーチ毛から失われたタンパク質を補い、髪内部を補修しながら、髪に残ったタンパク質をケアする「世界初の結合水に注目した画期的なヘアケア」である。ブリーチ特有のゴワゴワ感から解放し、しなやかな髪へと導いてくれる。

自宅で染めても傷まない!ボンディングテクノロジー搭載のブリーチ剤

 「ヘンケルビューティケア(HENKEL BEAUTYCARE)」のゴットゥービーから登場したのは、ヘアサロンで注目される「ボンディングテクノロジー」を応用した、ホームケア用ブリーチ剤だ。髪のタンパク質が分断されるのを防ぐべく、ブリーチ剤にはコハク酸を、トリートメント剤には塩化マグネシウムを配合。タンパク質同士の結合を守り、強化することで、ダメージを防ぎながら美しいハイトーンの髪へと導く。同シリーズには、ブリーチした髪に鮮やかな色を重ねる“カラークリーム”もラインナップ。乾いた髪に塗って10~20分程度置いたのち、洗い流してから通常のシャンプー・トリートメントを。1回でも美しい髪色に染まり、メイク感覚で鮮やかなカラーが楽しめる。

一時的な流行か、定着するかは「大人の女性への浸透」がカギ

 このように、ホームケア用のブリーチ剤や、専用のアフターケアが充実する今。若年層がメイク感覚で、明るい髪色に挑戦する気持ちは共感できる。その一方で、大人の女性の間では、まだまだブリーチに対して、一種のハードルがあるのも事実ではないだろうか。長谷部研究員は「大人の方にこそ、ぜひ挑戦して頂けたら」と語る。大人特有の「白髪」のお悩みに対して、ブリーチだからこそ叶う利点があるからだ。「髪を全部黒もしくはダークなブラウンに染めると、伸びてきた時にどうしても根元が目立ちます。これは白髪染めの永遠のテーマでもありました。髪全体のトーンを上げ、白髪の目立つエリアにブリーチでひと筋ハイライトを入れると、伸びた時にも周囲の髪となじんで、目立ちにくい効果があるんです」。

 ミルボンの調査によると、40代~60代女性がブリーチを始めるきっかけの1位は「白髪対策」。「サロンで薦められて」という回答も、同じく白髪染めの1つの方法として提案されたのではないかと推測できる。ブリーチで満足している点は「白髪が目立ちにくい」が50代で1位、60代で4位。40代以降では「若々しく見える」という声も目立った。

 長谷部研究員は、「コロナ渦では年齢層が高い方ほど、外出を控えサロンの利用頻度も減る傾向にありました。サロン側でも“髪が伸びても白髪が目立ちにくいスタイル”として、ブリーチを提案する機会が増えたようです。これは仕上がりが自然だったり、ダメージを少なく抑えられるようになったブリーチ用ヘアケア剤の進化も関係しています」と話す。

 実は身近な美容関係者(大人の女性)でも、ブリーチを取り入れている方が本当に増えた。皆さん口を揃えていたのは「やってみると、メンテナンスが本当に楽」ということだ。実際に髪の質感を見ると「いかにもブリーチ」という感じではなく、自然に地毛となじんで「これなら私にもできそう?」と思ってしまう。

 大人の女性は「最初の一歩」にハードルがあるけれど、「実際やってみると本当に楽」とい聞くと(忙しい女性ほど)かなり魅力的なはず。若年層が楽しむ鮮やかなカラーは一時的な流行かもしれないが、今後大人の女性たちに定着するとしたら、ブリーチ市場はさらに拡大していく可能性を秘めているのではないか。一連の取材を通して個人的にも興味津々であり、次回ヘアサロンに行く時にはぜひブリーチに挑戦してみようと思う。

宇野ナミコ:美容ライター。1972年静岡生まれ。日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、ウェブなどで美容の記事を執筆。スキンケアを中心に、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、美容医療まで担当分野は幅広く、美容のトレンドを発信する一方で丹念な取材をもとにしたインタビュー記事も手掛ける

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「SK-II」が映像作品の力で女性を支援する「SK-II STUDIO」を始動 第1弾は池江璃花子選手が登場

 グローバルスキンケアブランド「SK-II」はブランド初のフィルムスタジオ「SK-II STUDIO」を立ち上げ、一年にわたり現代女性が直面するさまざまなプレッシャーに立ち向かうコンテンツを発信する。世界で活躍する映像クリエイターやアニメーター、ミュージシャン、コンテンツクリエイターを起用し、映像や物語の力で世界の女性がプレッシャーから解き放たれ、自らの力で自身の運命を切り開くことを後押しする。

 これまでも「SK-II」は「運命を、変えよう。~#CHANGEDESTINY~」と掲げ、多くの女性が勇気を持って一歩を踏み出し、運命を変えることを応援してきた。中国の独身女性が抱えるプレッシャーを取り上げた「婚活マーケットを乗っとろう」、年齢に対する不安やプレッシャーを掘り下げた「期限なんてない」「タイムライン」など、グローバルキャンペーンを通じて”こうあるべき”という女性に課せられたプレッシャーに関する問題提起や、彼女らのストーリーや言葉を通じて多くの女性の背中を後押ししてきた。そんな中、昨年は新型コロナウイルスの影響で世界が一変し、女性を取り巻くあらゆるプレッシャーはこれまで以上に身近な問題となった。そこで「SK-II」は今こそ女性の挑戦へのサポートがさらに必要だと考え、彼女らに力強いエールを送るべく「SK-II STUDIO」を始動した。

第1弾作品は池江璃花子選手の
競技復帰までの道のりを描く

「センターレーン」は「SK-II STUDIO」特設サイトで公開する

 第1弾として、2019年2月に白血病の発症を公表した競泳・池江璃花子選手の競技復帰の軌跡を描いた作品「The Center Lane(センターレーン)」を3月29日に公開する。監督に是枝裕和氏を迎え、池江選手のストーリーを通して、運命がただの偶然ではなく、自らの選択によって切り開けるものであることを表現。同作品を皮切りに、今年中に計8作を公開する予定だ。また#CHANGEDESTINY資金を準備し、2021年の拠出額50万ドル(約5500万円)を上限として、「SK-II STUDIO」の動画作品の再生回数に応じて、運命を変えようと踏み出す女性の支援活動に拠出する

※参加団体は後日発表予定
※再生回数1回につき、1ドル(約110円)を拠出。

“#CHANGEDESTINYは
キャンペーンではなく
ブランドの存在意義”

 これまで「SK-II」では、あらゆる女性が自身で運命を切り開けるよう、「運命を、変えよう。~#CHANGEDESTINY~」というメッセージを発信してきた。さまざまなプロジェクトでブランドメッセージとして掲げてきたが、これは単なるキャンペーンではなく、ブランドそのものが存在する意義。新型コロナウイルスの感染拡大以来、世の女性はさらなるプレッシャーや不安、困難と向き合うことが増えている。そんな今こそ、われわれが声を上げて女性をサポートする必要があると感じている。

 「SK-II STUDIO」は、#CHANGEDESTINYの信念へのコミットメントをより具体的な形にしたものだ。このプロジェクトにコミットする専用チームを社内で立ち上げ、優秀なクリエイターを世界中から招いた。是枝監督が手掛けた第1弾作品は、池江選手が競技復帰にいたるまでの姿を描いたもので、数々の困難を乗り越えた彼女の変わりゆく心境や思いに迫った。私もそうだが、彼女の言葉や姿は多くの女性に力を与えるだろう。

 昨年、アスリートを起用しニューヨークのタイムズスクエアをジャックしたキャンペーンをはじめ、女性のプレッシャーや運命にまつわるプロジェクトを次々と立ち上げた。その反響は凄まじく、多くの女性が自身の体験や意見をSNS上で共有し、通常の広告キャンペーンとは比べられないほどの共感やエンゲージメントを生み出した。これを目の当たりにして、私は女性同士が支え合い、ともに前進して運命を変えていくことこそ、ブランドとして手助けすべきことだと学んだ。ブランドが力を貸すというのは違うと思っていて、女性には既に力がある。自身の力で運命を変えられるよう、女性に寄り添う存在でありたいと願っている。「SK-II STUDIO」ではさまざまな困難を乗り越えてきた等身大の女性のリアルなストーリーを発信し、少しでも多くの女性が運命を切り開く勇気を手に入れることを願う。

“今こそ女性が自ら運命を
切り開けるようにサポートしたい”

 今の世の中は、新型コロナウイルスの影響で誰もが経験したことのない状況にある。例えば育児をしながら子育てを在宅でしなければならなくなった女性も多くいるだろうし、彼女らが感じるプレッシャーはさらに強くなり、いろいろな決断を迫られているはず。そんな状況だからこそ「SK-II」は女性たちが自らの意志で運命を変えられるように応援する存在でありたいし、その思いは日々強まるばかりだ。社内でも、それを達成することに働く意味を見出している社員が増えているように感じる。
 
 完成した「センターレーン」を初めて観たときの感動は今でも忘れられない。池江選手の力強い生き様や精神力、前向きなスピリットに大きなパワーをもらった。それは同じ日本人だから、女性だから、というより、同じ人間として心を動かされたから。「SK-II STUDIO」を立ち上げたのも、そんな彼女をはじめ、多方面で活躍する女性のストーリーを世界中の女性に届けるため。未曾有の状況が続く中、これから1年かけて公開する8つの作品を通じて、多くの女性に希望やパワーを感じてほしい。

問い合わせ先
SK-II お客様相談室
0120-02-1325

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確かなサイエンスで透明感のある肌へ ポーラの「ホワイトショット」新美容液

 ポーラの最先端技術を凝縮した美白ブランド「ホワイトショット(WHITESHOT)」は2021年、ブライトニングを根本から再定義し、現代のストレスや環境を捉えた“ラディカル(根本的)”発想のブライトニングへと進化する。そして業界で初めて、一時的なくすみとは異なる定着した肌の濁りに着目した美容液“ホワイトショット CXS”1万6500円(税込)が3月1日に登場した。90年以上女性の肌を支え続け、さらに70年間にわたり美白研究を続けてきたポーラの知見から開発した肌の透明感や輝きをサポートする成分を配合。感触にこだわったとろみのある透明な美容液が肌のすみずみまでスピーディになじみ、澄みわたるような透明感のある肌に導く。

小林ひろ美・美容家が語る
“ホワイトショット CXS”への信頼

 「ホワイトショット」の美白美容液には多大なる信頼を寄せていますが、今回の新美容液にも脱帽。美白ケアはぬかりないはずなのになぜか濁る肌色の原因が血管にあったとは!血管に蓄積している老化色素にまでアプローチしてくれるので、肌の奥まで光が通るような、真の透明感をかなえてくれます。適度なとろみのあるテクスチャーが心地よく肌の奥へ引き込まれていき、ピタッと密着。パフォーマンスの高さを感じさせてくれます。肌のクオリティを確実にあげてくれるカンフル的美容液です。

ポーラ最新美白研究・5つのポイント

 業界初の美白理論を数々見出してきたポーラが今回着目したのは肌の濁り。これまでもメラニンや糖化によるくすみに着目してきたが、今回新たに、血管内の茶色い濁りに着目した。特に、血管に蓄積する老化色素“リポフスチン”は肌が茶色く濁ってしまう原因に。そこにメラニンの黒色と糖化の黄色が重なると頑固な濁りとなり、暗い肌色や色むらがある印象になるという。だからこそ、この3つの肌の濁り要因にアプローチすることが大事なのだ。

「ホワイトショット」初の
“美白×UV”クリーム登場

 ポーラは4月22日、「ホワイトショット」から初の日焼け止めも兼ね備えた日中用美白クリーム“ホワイトショット スキンプロテクター DX”6600円(税込)を発売する。紫外線やブルーライト、近赤外線、大気汚染から肌を守る強いUVカットと美白ケアを両立し、日中も透明感のある肌に。テクスチャーはみずみずしく伸び広がる“スプラッシュショット感触”で、ごわついた肌を柔らかく滑らかな肌に整える。

「ホワイトショット」と楽しむ
美白ライフを提案
新美容液プレゼントキャンペーンも

 ポーラと「WWDJAPAN.com」は3月12日にライブ配信を実施。小林ひろ美・美容家をゲストに迎え、美容のプロが肌の透明感を手に入れる秘訣を伝えたほか、“ホワイトショット CXS”で仕上げた美しい肌をさらに楽しむファッションも紹介。ポーラ担当者による商品のおすすめポイントや使い方など「ホワイトショット」と楽しむ透明感にあふれた美白ライフを提案した。

 新美容液の発売を記念して、今回は“ホワイトショット CXS”を抽選で10人にプレゼント。応募フォームにアクセスして、必要事項と簡易アンケートへの回答をご入力の上、ご応募ください。

ポーラ“ホワイトショット CXS”読者プレゼントキャンペーン問い合わせ窓口(村田)
whiteshot_present@infaspub.co.jp
PHOTO:HIROKI WATANABE[STILL], CHIE FUKAMI[MODEL]

問い合わせ先
ポーラお客さま相談室
0120-117111

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驚異のリフトアップ!?噂の電気バリブラシを使ってみた【爆裂!健康美容マニア道】

 1日8食、ジャンクフード漬けの超不健康児から超健康優良児へと大変身を遂げたフリーアナウンサーの名越涼。およそ15年かけて自らの体で人体実験を繰り返してきた結果、“超絶良かったもの”だけを余すことなくお伝えする。今回は小顔効果抜群の美容グッズ「電気バリブラシ」について。

SNSで爆発的に話題の美容グッズがある。それが「電気バリブラシ」だ。わずか10分で頭皮全体のむくみが解消されるだけでなく、たるみが引き上がりワンサイズ顔が小さくなるという。喜びの悲鳴と驚きの結果がネット上に飛び交い、“魔法のブラシ”とも評される電気バリブラシ。ほんまかいな。でも、とてつもなく気になる。早速、その実力を確かめてみた。

およそ20万円!その効果たるや

 頭皮を制するものは、あらゆる不調や悩みを制する。肌がたるんでくると、ついつい顔ばかり集中してケアしてしまうが、頭皮、侮るべからず。皮膚は1枚でつながっているから、頭皮を柔らかく保つことによって耳下腺リンパから老廃物を排出しやすくし、顔全体の新陳代謝を活性化。結果、たるみやむくみを予防できるというわけだ。そもそも頭頂部は帽状腱膜という筋膜で覆われている。筋肉がない分、血流が巡りにくく老廃物が溜まりやすいそう。頭部がこって栄養がスムーズに行き渡らなくなると、たるみやむくみのみならず、頭痛や肩こり、眼精疲労、さらには薄毛になったり白髪が増えたりする恐れがあるそうだ。ひええ。恐ろしや。

 ブラシの先端の金属部分から、500〜1000Hzの低周波が流れる電気バリブラシ。頭皮にあてるだけで筋膜に働きかけ、血流を良くし、老廃物の排出を促進。頭筋膜を緩めることで、むくみやたるみの改善も期待できる。さらに1秒間におよそ1000回振動し、毛を立たせる筋肉である立毛筋にアプローチ。毛根を活性化し、ヘタった髪の毛の立ち上がりを良くしてくれるそうだ。これだけでも「やるやん……!」と言いたくなるが、まだうれしい機能が搭載されている。それが、LED。青色のLEDは過剰な皮脂の抑制や肌表面の殺菌に、赤色のLEDはコラーゲンの生成を促し、ハリやコシを与えてくれるという。しかも、頭だけでなく、顔や首など全身に使えるなんて!決して安くはないけれど、これだけの効果があるのであれば、お値段以上の満足感が得られるのは間違いなさそう。せっかくなのでサロンで体験してみた。

歓喜あふれる仕上がり

 ブラシの先をあててみると、剣山で刺激されているような、ちくちくした痛み。我慢すれば何とか耐えられ…そう…?いや、痛い!(笑)。そんな時にはスプレーで頭皮を湿らせると、痛みがかなり和らぐ。顔も化粧水をバシャバシャつければ痛みなくケアできるので、メイク前がおすすめ。気になるところは動きを止めながら使うとピンポイントにアプローチできる。ほんのりちくちくした刺激を感じながらケアすること10分。ん?あれ?なんとなく引き締まってきたような。以下、結果がこちら。


 目が!開いた……!頬のたるみもキュッと上がって全体的に顔のバランスが良くなった感じが……!す、すごいぜ電気バリブラシ!!!!!むしろこんな顔で毎日過ごしていたのか。何事もなく接していてくれた皆さん、ありがとうございます。使用回数は1回10分を1日2回まで。これを毎日続けたら、1週間後、1カ月後、半年後にはどれだけ見た目年齢のタイムスリップができるのだろうか。家庭で使える美容グッズも、いよいよプロ仕様のレベルへ。持ち運び可能なので、いつでもどこでも簡単に頭皮ケア。とりあえず、清水の舞台から、いったん飛び降りる覚悟を決めたいと思う。目指せ!マイナス5歳顔!

名越涼/フリーアナウンサー。香港出身。福井と愛知のテレビ局アナウンサーを経て独立。司会やライター、セミナー講師、企画・プロデュースなど幅広く活躍するパラレルワーカー。趣味・特技は手作り発酵食、食文化研究、ヨガ(歴15年)eスポーツと農業にも精通

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春の“香り”に誘われて ニュウマン横浜で楽しむ豊かな一日

 2020年6月、横浜の新しいランドマークとして誕生した「ニュウマン横浜」。自分の価値観をもつ自立した大人の女性に向け、ファッションやビューティ、グルメなどジャンルを横断した計115テナントをそろえ、上質で本物、かつ時代を先取りした価値提案が感性を刺激する。また、「時間消費型」の商業施設をコンセプトとして掲げるように、ゆったりと時間を過ごせるような仕掛けや工夫が随所に散りばめられているのも特徴だ。陽気に誘われ、お出かけ気分が高まる季節がやってきた。この春はゆったりと時間が流れる「ニュウマン横浜」で一日を過ごしてみてはいかがだろうか。

開放的な空間とユニークな環境設計
滞在する楽しさを呼び起こす

 JR横浜駅西口直結のアクセスのよさも魅力の「ニュウマン横浜」。館内に入って周りを見渡せば、建築家・田根剛の環境デザインにより、世界の港に着想を得たタイルが館全体を彩り、ゆったりと広めにとられた通路は歩くだけでも楽しい。異なるフロアを行き来するたびに新鮮な印象を受けるが、これは“新しい自分と出会う”(1〜2階)“美が宿る”(3階)といったフロアごとに異なるコンセプトでショップ構成、空間設計がなされているからだ。
 1〜2階の一角には、気鋭のアーティストによる作品を展示する「ウォールストリートミュージアム」がある。定期的に入れ替わる作品群からは、その時だけの新鮮な驚きが得られ、買い物の合間にもちょっとした美術館気分を味わうことができる。
 「ニュウマン横浜」をめいっぱい楽しむなら、買い物だけではもったいない。6階には物販とレストランの複合エリア「2416マーケット」がある。名前は神奈川県の面積である2416㎢にちなんだもの。伝統工芸品の物販や採れたての食材を使ったレストランなど、神奈川ならではのモノ・コトを楽しめる。また、「ニュウマン横浜」の上位顧客のみ特典として利用ができる「ニュウマンラウンジ」も用意されている。

香りで新しい自分を演出する
充実のフレグランスショップ 

 この春は装いだけでなく、新しい香りをまとうことで、今までとは違う自分を演出したい。「ニュウマン横浜」には国内外の上質なビューティ&フレグランスブランドのショップがそろう。フィレンツェ発「サンタ・マリア・ノヴェッラ(SANTA MARIA NOVELLA)」に資生堂の「バウム(BAUM)」、パリの「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー(OFFICINE UNIVERSELLE BULY)」、香りのセレクトショップ「ノーズショップ(NOSE SHOP)」、京都の老舗「薫玉堂」などバリエーションも豊かだ。

4月に新出店「ディプティック」
期間限定のフレグランスセットも

 4月には1階にパリ発のフレグランスメゾン「ディプティック」がオープンする。センティフォリアローズとダマスクローズのフレーバーが贅沢なハーモニーを奏でる香水“オードトワレ オー ローズ”(1万7000円)などベストセラーのほか、10種のフレグランスからお気に入りの3種(各7.5ml)をセレクトできる期間限定の特別セット“オード トワレ7.5ml3本セット”(7900円)を用意する。

PHOTO:SHUHEI SHINE

問い合わせ先
ニュウマン横浜 お客さま電話相談室
0120-045-088
(11:00~18:00)

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宮永えいとら美容師が語る、男女兼用の「ヤーマン プロフェッショナル」光美容器の実力

 光美容器と美顔器などを多数開発・販売してきたヤーマンからサロン専売のハイパワーモデル、“レイボーテRフラッシュ ハイパー for Salon”(9万5000円)が誕生した。この一台でフラッシュによるムダ毛ケアから美顔器機能までこなせる優れもので、男女兼用で使用できるのも特徴だ。多機能を詰め込んだ一台の魅力を、スペシャリストたちに聞いた。

照射範囲や男女シェア…
美容師がほれ込むポイントは?

アタッチメントの付け替えで
全身を美しく

 マシンにはアタッチメントを4種付属し、マルチな機能を発揮する。ムダ毛ケアを行う“ローラーヘッド”は、従来品※1に比べて面積が約150%アップ、エステでも使われているランプを2本搭載してパワーも約180%アップした。照射スピードは大幅に向上し、全身をおよそ3分※2で処理できる。

 “LEDヘッド”は鼻の下や指、男性のひげなど細かな部分まで逃さずケアする。加えてエステサロンでも人気の紫色LED(赤色LED、青色LEDの同時照射)を搭載。ムダ毛ケアの光と同時に使用することも、紫色LEDだけを使用することもできる。さらに“VIヘッド”も搭載し、デリケートゾーンケアまで一台で完結できる。

 光を当ててほてった肌は、“クールヘッド”でケア。サロンケア同様に、冷やして毛穴を引き締める。

 照射回数は約90万発※3もあり、これほどの機能をシェアして使うことが可能だ。美顔器を開発してきたヤーマンらしい一台となっている。

※1 STA197Bとの比較
※2 個人差あり。各モードレベル1で両脇、両脚、両腕、両手指、両足指、へそ下をケアした場合
※3 ローラーヘッド、スポッドヘッド、VIヘッドの合計。シングルモードレベル1で算出

光美容器の優位性

 光にはさまざまな種類があり、波長(色)によって到達範囲に違いがあります。LEDやレーザーは単一波長(単色)で集中的に出力し、ピンポイントに効果を発揮します。対して光美容器は複数の波長(色)を同時に出力するので、広い範囲に効果を発揮でき、顔から体まで全身の肌悩みにおすすめできます。

手軽でスムーズなケアの
ポイントを動画でチェック


PHOTO:HIROKI WATANABE
TEXT:ANNA USUI
問い合わせ先
ヤーマン
0120-776-282

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弁護士・学者・元裁判官によるファッションロー専門チームが誕生 炎上しないためのガイドライン策定やロビイングに取り組む

 近年、ファッション業界の法律問題を総称する“ファッションロー”という言葉が少しずつ浸透してきている。ファッションロー分野を得意とする小松隼也弁護士と海老澤美幸弁護士が所属する三村小松山縣法律事務所は2021年1月、ファッションローに特化した専門チーム“ファッションロー・ユニット”を結成。その狙いや目的を聞いた。

――三村小松山縣法律事務所は小松隼也弁護士と海老澤美幸弁護士が所属しているから、もともと“ファッションローに強い法律事務所”という認識だった。ユニットを結成することで何が変わったのか。

小松隼也弁護士(以下、小松):私と海老澤さんが同じ事務所に所属しているということが意外と知られていなかったので、それをきちんと打ち出すことは狙いの一つです。また、同じ事務所の中にファッションロー案件に対応できる心強いメンバーがほかにも複数いるということを十分にアピールできていなかったので、きちんと打ち出していこうと考えました。

海老澤美幸弁護士(以下、海老澤):ファッションロー案件をやるときには、必要に応じて三村さん(三村量一弁護士)や玉井さん(玉井克哉教授兼弁護士)に相談したり、塩川さん(塩川泰子弁護士)とも連携していましたが、それを強みとして外部に打ち出せていませんでした。三村さんは“プリーツ・プリーズ事件”(=「プリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ(PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE)」の商品の模倣品裁判)を裁判長として担当した人ですし、玉井さんはファッション分野で頻繁に問題となる不正競争防止法2条1項3号の立法に関与しています。塩川さんは海外との交渉案件に強い弁護士です。そこに今年の1月から中内(中内康裕弁護士)さんが加わってくれました。

――弁護士だけでなく、ファッション業界の問題に詳しい元裁判官や学者の視点も踏まえたアドバイスはクライアントにとっても有益だろう。

小松:何かトラブルが起きたときにブランドを守るために必要な権利を取得していなかった、といったことがファッション業界ではよくあります。企業やブランドが無駄な資金や労力をかけないためにも、ゴールを設定してそこから必要な権利は何かを逆算していくための戦略を立てるときに、三村さんの元裁判官としての経験や玉井さんの学者としての意見はとても参考になります。弁護士も私と海老澤さんに加えて塩川さんが参画したことで、海外との交渉案件への対応力がさらに強化できました。塩川さんは海外案件のほかに、芸能関係の案件も多く手掛けています。

塩川泰子弁護士(以下、塩川):アーティストの契約のチェックやインフルエンサーの動画の内容を法律の観点からチェックしています。また、動画をアップした後に問題が発生した場合の対応などのご相談も多いです。

――語学が堪能で海外案件に対応できる弁護士はどの法律事務所にとっても貴重な存在だ。中内康裕弁護士が21年1月に大手法律事務所から移籍したのはファッションローを専門にしたかったから?

中内康裕弁護士(以下、中内):私が就職活動していたときには、“ファッションロー”という言葉はまだ浸透していなかったこともあり、その軸で就職先を探していませんでしたが、弁護士として働くにつれて自分の好きな業界のために弁護士として仕事をしたいと思ったのが出発点です。

――中内弁護士はバンタンデザイン研究所に通っていると聞いた。

中内:大手法律事務所に入って2年目のときに社会人コースに通い始めて今も継続中です。そこではバターンの勉強などをしていて、今日は自分でパターン引いて、自分で作ったシャツを着てきました。ファッションが好きで弁護士としてかかわっていきたい気持ちがあったので、同じロースクール出身の海老澤さんにコンタクトを取りました。そこから海老澤さんと小松さんが主宰しているファッション関係者のための法律相談窓口「fashionlaw.tokyo」を手伝う中で、業界内にはリーガルサポートを求める声が多いことを知りました。

――中内弁護士が最近注目しているファッションローのトピックは?

中内:自分の氏名をブランド名として商標登録することが難しくなっている問題に注目しています。デザイナー目線で考えたときに、自分の名前でブランドを立ち上げられないのはかなりデメリットだと思いますし、ファッション関連の学生と話しても自分の名前でブランド出したいと強く思っている人もいるので、この問題は深刻だと感じています。

――ファッションロー・ユニットとして取り組んでいきたいことや、力を入れていることは?

小松:ロビイング(官公庁がルールや法律を作る前に、業界としてのニーズを吸い上げて伝えること)活動に力を入れたいです。ファッション業界はロビイングが弱いという課題があり、ロビイング活動をしていると民間企業から声が上がっても学者の意見書や裁判所の考えが出ることは少ないと感じます。当事務所のファッションロー・ユニットには裁判所の視点を三村さん、学者としての意見を玉井さんがカバーできますし、実務の声は小松・海老澤・塩川・中内で取りまとめられます。ロビイングに対応できるチームがいる法律事務所だということは、今回のユニット結成で打ち出せたと思います。

塩川:日本は分野に限らずロビイングが得意ではないと感じます。制定されて困るルールができる前に業界の実情や希望を伝えることが重要で、法が制定される前であれば「自主的に業界のガイドラインを作るから法で規制する必要はないよね」と交渉する余地もあります。官公庁側は企業が意見を出すことに対して決して門戸を閉ざしているわけではないですし、企業側としても官公庁が法改正の方向性を検討しているタイミングで、正常な経済取引まで規制されないように意見を伝えていく必要があります。

小松:今動き出そうとしているのは、サステナブルなサプライチェーンを作ることができた企業に国が助成金を出すことで、業界としてサステナブルを推進する取り組みです。業界独自に取り組もうと思っても、なかなか重い腰が上がらないこともあるので国のサポートを得られるような仕組みを作ろうとしています。われわれは複数のファッション関連企業と環境省の間に入って、意見のすり合わせをしていきたいと思います。

海老澤:そのほかにも昨年は文化の盗用の問題やジェンダー、人種差別による炎上事件が多かったですが、文化の盗用の問題については業界のガイドライン策定にも取り組んでいきたいと考えています。文化の盗用ははっきりとした線引きが難しい問題なので、企業は炎上を必要以上に恐れるあまり、表現に対して消極的になっています。こうした状況を打開するためにも業界が自主的にルールを作ることで企業は安心して創作活動を行うことができると考えています。ファッションロー・ユニットには実務家、裁判官、学者がそろっているので、それぞれの視点を生かしてルールを検討し、業界関係者と対話を重ね、業界のスタンダードを作っていけたらいいなと思います。

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中

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「クロックス」を変えるマーケティングの達人に聞く 「週末、近くのコンビニに行くための靴でありたい」 

 万人受けする履き心地と手入れのしやすさで、子どもから大人までが履く、穴のあいたサンダル「クロックス(CROCS)」。かつては決して“オシャレ”とは言い難かったこのサンダルも世界規模で見ると、ここ最近は欧米を中心に、ラグジュアリーブランドやセレブリティーなどとの大胆で自由度の高いコラボレーションが目立っている。こういった流れに遅ればせながら、クロックス・ジャパンは、これまでに「リーバイス(LEVI'S)」や「アディダス(ADIDAS)」のマーケティング戦略で手腕を振るった出倉成昌氏を招へいし、大きなリブランディングを図る。生まれ変わる「クロックス」の展望を聞いた。

WWD:これまでの「クロックス」をどのようなブランドだったと捉えている?

出倉成昌クロックス・ジャパンマーケティング部 部長:「クロックス」は2002年にボートシューズブランドとしてアメリカで生まれた。日本に上陸したのは恐らく05年で、その翌年には大ヒットした。恐らくみなさんが「クロックス」と聞いて思い浮かべるであろうサンダルは、“クロッグ”というカテゴリーに分類される。「クロックス」がクロッグの市場を新しく作ったという意味では、フットウエア界に多大な影響を与えたブランドだ。ただ、それにより類似品が多く出回ってしまったのも事実で、クロッグの中で価格競争が始まった。定価5000円の「クロックス」に対し安価な商品が次々と出てきて、その価格競争に負けて大きく低迷期に入った。そこから少し経って、クロッグ以外のフットウエアを発売したが、幅広く展開したことが結果的にブランドとしての差別化をどんどん不明瞭にしてしまった。一方で多くの日本の家庭には、それが「クロックス」だったかは別として、一足はあるので認知度は高い。

WWD:海外では米「コンプレックスコン(ComplexCon)」への出展やジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)とのコラボが記憶に新しい。日本ではどうか?

出倉:「クロックス」のトレンドの流れでいくと日本は間違いなく遅れている。アメリカでは14~15年に大きなリブランディングが行われた。その後、17年の「バレンシアガ(BALENCIAGA)」とのコラボを筆頭に、ヨーロッパではラグジュアリー領域、アメリカではストリート領域にブランドを露出していったことで、明らかに日本よりも早く復活した。

WWD:日本市場の「クロックス」に対して、どのような課題を感じているか?

出倉:正直たくさんあるが、まず、そもそもこれまではブランドとしての体を成していなかった。カテゴリーの中ではアイコン的な存在かも知れないが、まだ“クロッグ=クロックス”というレベルではない。「クロックス」を選んでもらうための付加価値や理由を明確に定義し、圧倒的なポジショニングを確立したい。認知の質も課題で、パーセプション(ブランドの印象)に関しては、かなり注意深く見ていく必要がある。クロッグの履き心地や使い勝手の良さに価値を感じて愛用くださっている人はもちろん大切にしながら、ブランドとしてはファッションやスタイルの文脈も持たせたい。その上で印象的なものにしていくことがこの先のブランドの成長を左右する。特にZ世代への訴求が重要になってくる。

WWD:その上でブランドとして何を発信していくか?

出倉:ブランドメッセージとして「COME AS YOU ARE」を掲げている。これは等身大の背中を押すようなブランドでありたいという意味。“履いたそのままでいい”“作り込まなくていい”というのは、数あるフットウエアブランドの中でも稀有なスタンスだと思う。自分なりの一足を表現してもらうツールとして、“ジビッツ”(クロッグをカスタムできるパーツ)を提案し、パーソナライズすることで自分の“好き”を表現してもらい、ブランドとしてその価値観を尊重したい。そういったことがリブランディングする上ですごく重要になるだろう。

WWD:現在の取扱先は?

出倉:広げ過ぎたものを刷新中なので具体的な数は追えていないが、ブランドとしてベストなプレゼンテーションができる売り場と、売り上げを作るための売り場を精査しているところ。自分たちが売りたいお客さまに、自分たちが売りたい値段でしっかり売る方針に変わりつつある。

WWD:改めて「クロックス」の強みは?

出倉:圧倒的な履き心地だ。もともとボートシューズ向けに作られていた背景もあるので、濡れた地面でも滑りにくい。手入れも簡単なので、汚れも洗い流せるし、機能面は非常に高い。医療従事者や飲食店向けの、プロシリーズ「クロックス アット ワーク」もある。それに加えてジビッツ。これらの強みをこれから“本物化”させていく。

WWD:具体的な施策は?

出倉:まずは驚かせた上で喜んでもらえるようなアクティベーションをどんどん仕掛ける。例えば、年明けに発売したタイダイ柄のコレクションでは、とんだ林蘭さんをキャンペーンビジュアルに起用し彼女の私服に合わせたビジュアルを公開した。これまでになかった見せ方を試していきたい。もう一つは、Z世代に向けた認知度の強化だ。感度の高いお客さまと相性の良い小売店と組み、首都圏を中心としたキャンペーンを打つ。コラボレーションも武器になる。過去に「ケンタッキー」とコラボした際には実際のサンダルにフライドチキンの香りを仕込んだり、ニコール・マクラフリン(Nicole McLaughlin)とのコラボではライトやコンパス、バンジーコードなど、キャンプで使える小物をクロッグ全体に装着したりした。自由度は非常に高い。

WWD:改めて、これからの「クロックス」をどう変えていく?

出倉:冒頭で話した数ある問題点を全て突破しなければならないが、まず、ブランドのポジションニングをはっきりさせたい。「クロックス」は過去にアメリカで“アグリー(醜い)”と揶揄されることがあったり、最近では“Love to Hate”みたいな言葉も使われている。だったらそういったブランドになろう、と。嫌われないように無理してコミュニケーションするのではなく、好きだけど嫌い、ちょっと憎たらしい、どこかツッコミたくなるようなブランドになりたい。例えば一般的な女性が平日にハイヒールなどの綺麗な靴を履いて勤務されているとする。「クロックス」はハイヒールと勝負したいわけではなく、週末のなんでもないときに、スッピンで近くのコンビニに行くためにサラッと履いてもらえるような靴。そのときの靴は間違いなく「クロックス」であって欲しい。「クロックス」にしかできない強みはきっとそこだと思うので、その価値を伝えていきたい。

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7ORDERと写真家・浅田政志が語る「ファッションと写真」

安井謙太郎、真田佑馬、諸星翔希、森田美勇人、萩谷慧悟、阿部顕嵐、長妻怜央の7人組の男性ユニットの7ORDER(セブンオーダー)が、3月5日〜29日まで池袋パルコの「パルコファクトリー」で、写真家の浅田政志が撮り下ろした写真を展示した展覧会を行っている。2019年5月に始動後、今年1月にはメジャーレーベルでデビュー。ファッション、音楽、演劇、アートなど、それぞれのメンバーの多彩なキャラクターが支持を集める、注目のアーティストグループだ。写真家の浅田と、メンバーで楽曲などを手がける真田とファッション好きで知られる森田に話を聞いた。

WWD:7ORDERを撮影した経緯は?

浅田政志(以下、浅田):パルコから展覧会のために撮影してほしい、というオファーを貰ったからです。これまでもいろいろな人を撮って来ましたが、7ORDERの人たちはみんな性格が良くて、気を使わずに楽しく撮れました。

真田佑馬(以下、真田):実は僕らの方から、浅田さんに撮っていただきたいとリクエストを出したんです。浅田さんの写真集「浅田家」で、ご家族が消防士に扮した写真がとても印象に残っていて、せっかくの機会なのでほぼダメ元でリクエストをさせていただいたんです。なので引き受けていただいた時点で、僕らはすごく嬉しくて。だから撮影のときは、ずっと「こんな風に撮ってもらえるんだスゲー」という感じでした。今回は土木作業員と侍に扮した“七人のサムライ”というコスプレの撮影もあったのですが、その日はガチガチに緊張してて、その日のことはほとんど覚えておらず(笑)。

森田美勇人(以下、森田):そうそう。でも、1月13日の日本武道館のライブツアー風景を撮っていただいた写真を見たときにはすげー感動しました。写真がすっごく温かいんですよ。ツアーの写真はライブ中だけでなくバックステージにも入っていただきました。これまで、こういった生の姿をあまり撮られたことなかったので、「あーこんな感じだったっけ?こんな感じだったのか」と。武道館ライブが1月13日で、展覧会が3月5日からだったので、実際にちゃんとライブ写真を見たのは展覧会の会場でだったんです。なので展覧会の会場で初めて見て、余計に感動しました。ファンを始め、ぜひ色んな方々に見ていただきたいです。

浅田:武道館ライブは大変でした(笑)。当初ツアーの撮影は予定に入ってなかったのですが、新型コロナで展覧会の開催時期が延びて、ツアーの日も撮影に入れたんです。当日はツアー撮影のフォトグラファーと一緒にバズーカーみたいな超望遠のレンズを持って撮影に入りました。けどライブは動きも激しいし、7人をきちんと撮らないとというプレッシャーもあって。ただ、土方と侍はステージをこちらで作って、という感じでしたが、ライブは逆に文字通り彼らのステージなので、どう伝えるかは撮影の前に考えました。でも、その上で「そのままを撮ろう」と。

真田:いろんな僕らを浅田さんに撮影いただけて、それをいろんな方に見ていただけるなんて本当に夢みたいです。

7ORDER、ファッションを語る

WWD:代表作の「浅田家」など、自らの家族をテーマにした写真を撮られてきた浅田さんですが、「ケイスケカンダ(KEISUKE KANDA)」でファッションシューティングも手掛けています。もし7ORDERでファッションシューティングするとしたら、どう撮りますか?

浅田:ファッションシューティングはそれほど積極的にしているわけではないですが、7ORDERとならやってもいいですよ。うーん。そうだな、ハイブランドのスーツを着てもらうのはどうでしょう?

真田:はい!ぜひやりたいです!というか、浅田さんに撮っていただけるなら、なんでもやります!

WWD:7ORDERとして、やりたいファッションシューティングは?

森田:ぼくらはなんでもチャレンジしたいと思っていて、あまり仕事でスーツを着る機会がないので、そういった意味でもぜひハイブランドのスーツを着る撮影というのはやってみたいです。特に僕はファッションが好きなので、ぜひいろいろなブランドやファッションの仕事に挑戦したいと思っています。

WWD:「グラウンドY」とコラボレーションするなど、森田さんはファッション好きとして知られていますが、ファッション遍歴を教えてください。

森田:母がファッション好きだったので、小学生のころからよく古着屋に連れて行ってもらっていて、服も自分で選んでいました。僕自身は超平凡な中学生だったんですが、そのころから自分で服は選んで買っていました。母はもともと服が好きな上に、けっこうファッションの好みがあって、それからずれたりすると、かなり直接的なダメ出しをしてくるんですよ。性格的にもズバッと言うタイプなので。高校生にときにビンテージにはまって、当時はよく原宿の「ベルベルジン」や高円寺の「サファリ」などに通ってました。稼いだお金の有り金をはたいてボロボロのビッグEやビンテージの”チャックテイラー”を買っては、母を激怒させていました。

WWD:自分で稼いだお金で買ったので、それほど怒らなくてもとは思いますが。

森田:母親的には、高校生の僕には身の丈に合わない値段と、見た目のユーズド感が気に入らなかったんです。今でも古着っぽい服を着ていると母に、「そんな格好で仕事に行って大丈夫なのか?」みたいなことを言われます。基本的に母は「きれいめ」ファッション派なんです。

WWD:最近はどういった服やお店に?

森田:それが最近は全然服を買わなくなったんですよ。でも最近好きなのは、今日も着ている「セント マイケル(SAINT MICHAEL)」や「レディメイド(READYMADE)」です。

WWD:他には?

森田:滅茶苦茶ハマっているのは浅草の「ザ・スリーラバーズ(THE THREE ROBBERS)」です。僕が知っている限りでは会員制のお店で、いつも事前に予約して行っています。

WWD:ちなみにメルカリなどはやらないんですか?服好きあるあるですが、昔買った服が家に入り切らず、フリマアプリを使う人は多いですが。

森田:僕はメルカリ、やったことないです。基本的に、小学生のときに買った服も取っておくタイプです。今でも中学生くらいのころに着ていたスヌーピーのTシャツが取っています。もうスヌーピーの絵柄がボロボロになって流石に着れなくなったので、今は部屋に飾ってますね。そんな感じなので、将来古着屋さんをやれるくらい実家は服でパンパンです。

WWD:では真田さんはどんなファッションを?

真田:っていうか森田くんの後は話しづらいっす(笑)。森田くんの服好きはメンバー内でも有名で、誰とは言いませんが、森田が中学生のときに着ていた服をもらって着ているメンバーもいるくらいです。でもいいんです。僕は逆に、今年は「記号的ファッション」を打ち出していく、つまりは全面的にブランドの名前に頼ったファッションをきちんと世の中に発信していくと決めたんです!

WWD:では推しのブランドは?

真田:「マルニ(MARNI)」と「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」です。

森田:真田くんはすごいっすよ。僕は「アクネ」金太郎飴って呼んでいるんですが、「アクネ」ロゴがデカデカと載ったジャケットを脱ぐと、下からまたロゴがそこら中についた「アクネ」のニットを着ていて、パンツも「アクネ」のロゴ祭りみたいな。「マルニ」の日は全身「マルニ」で、極めつけは「マルニ」ってロゴの入ったケースカードを首から下げてるんで。でも、真田くんの色使いとか服の組み合わせ方のセンスは僕は好きだし、かなりいいと思います。

真田:まあ僕はロゴをどこまで使いこなすかってことに全力を尽くしてますんで。

WWD:ちなみにお二人のよく行くショッピングスポットは?

森田:あまり詳細は言いたくないのですが、基本的に浅草の「スリーラバーズ」のような特定のお店を巡回する感じです。

WWD:伊勢丹メンズ館みたいなファッションの定番スポットには行かないんでしょうか?

森田:あまり行かないですね。

真田:マジ?伊勢丹メンズ館行かないの?なんで?ファッション好きの聖地じゃん!俺なんて暇さえあれば行ってて、トイレがどの時間にどこのフロアが空いているまで把握してるよ。

WWD:そんな真田さんのファッションの原点は?

真田:言われてみれば、小学校のころにメチャクチャ流行った「ロアー」「ロエン」のミッキーのパーカーですね。そのときに胸を撃ち抜かれて、こんな自分が出来上がったのかもしれません。

WWD:浅田さんは、服はどうでしょう?

浅田:「ケイスケカンダ」「カナタ(KA NA TA)」の撮影をしているので、その服が多いですね。知っている人から服を買いたくなるんです。あとは妻が選んでいます。もともとファッションブランドのプレスをやっているので、似合う服を選びたくなるみたいで。「ケイスケカンダ」はアイコニックなシリーズの一つに、“刺し子”のアイテムがあるのですが、地方の撮影のときなんかは、おばちゃんにそれを見て話しかけられたりします。コミュニケーションを誘発する服っていう感じが好きです。

WWD:最後に一言。

森田:インスタのハッシュタグじゃないですが、「#オシャレな人とつながりたい」っす。オシャレな人ってどこで出会ってるんですかね?前によくメンバーと三茶で飲んでときに、超オシャレな人をよく見て、あー俺もこの人たちとファッションとか服について話したいって思ってました。今後はもっとファッションの仕事を増やしていきたいと思っています。

■WE ARE 7ORDER IN PARCO
日程:3月5日〜29日
時間:11:00〜20:00
定休日:なし
場所:池袋パルコ7F「パルコファクトリー」
入場料:一般 1000円 *小学生以下無料、新型コロナウイルス対策のため、日時指定の前売券入場制

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「コム デ ギャルソン」のモノクロームの景色 “過剰な情報”から逃げたい感情

 「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」は3月22日、2021-22年秋冬コレクションを東京・南青山の本社で発表した。前シーズンに続いて、オンライン化したパリ・コレクションには参加せず、限られた関係者を招待してリアルのファッションショーを行った。

全20ルックをモノトーンで構成

 会場には、ぼやけた光と影がプロジェクターで映し出され、足元には地面を真っ白に覆うスモークが焚かれている。ファーストルックは、白いチュールが前後に突き出したスカートと、黒いジャケットを合わせたようなミニドレス。頭には穴の開いたシルクハットをのせている。シルエットは古典的なヨーロッパのドレスやテーラードなどクラシカルなアイテムを彷彿とさせながら、静けさと、強さを放つ。続いて、大きな球体をチュールで覆ったドレス、ヒップにボリュームのあるバッスルスタイルのドレスなど、棉を詰め込んで大きな膨らみを持たせたルックや、頭をすっぽり覆う白いビッグジャケットも登場。披露された全20体のルックは全てモノトーンで構成され、鮮やかな色は皆無だ。

“雑多なことから逃れて一息つきたい”

 川久保玲デザイナーはショー後、今回のコレクションを「私の感情を反映した」と説明。21年春夏は不協和音からポジティブなエネルギーを生み出したが、今季は静けさに着目したという。「過剰な色、音、繰り返す情報の波から逃げて、静かになりたい気持ち。雑多なことから逃れて一息つきたいという思いだけ。難しいことはなく、静かなコレクションになった」。シルエットについては「新しい形やシルエットを追求した結果」と一言。世界の誰もが、未曾有の不安に振り回されて“疲れ”を感じている今、その思いをクリエイションで代弁しているようだった。そして、その不安を形作る感情が塊となって、ドレスを誇張しているようにも見えた。

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ZOZOが開設したラグジュアリーブランド集積EC「ゾゾヴィラ」に編集長&若手記者が感じた熱量

ファッション通販サイトを手掛けるZOZOは3月18日、ラグジュアリーやデザイナーズブランドを集積した「ゾゾヴィラ(ZOZOVILLA)」を開設した。まずは国内外の約90ブランド、約1万4000品番を用意。「ゾゾヴィラ」の魅力について、村上要「WWDJAPAN.com」編集長と、大澤錬記者が語り合う。

多彩なラインアップと安心感で、
長年の小さな不安を解決

村上要「WWDJAPAN.com」編集長(以下、村上):ZOZOが「ゾゾヴィラ」でラグジュアリーやデザイナーズブランドに再挑戦です。周りに比べてファッション熱が高めの大澤さんにとっては、「待望」なんじゃない(笑)?

大澤錬「WWDJAPAN.com」記者(以下、大澤):日本のECサイトはこれまで、海外サイトに比べてインポートブランドの取り扱い数が少なく、お気に入りブランドの、お目当ての洋服を見つけるのに一苦労していました。特に新進気鋭のブランドや、有名なブランドでもショーに出てくるコレクションピースは探すのが大変。僕らZ世代は海外のECサイトを当たり前のように使ってきましたが、送料が高額だったり、注文してから商品到着までの時間が長かったり、ガマンもありました。日本国内からの即配送という「ゾゾヴィラ」の登場は待望です!

村上:「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」でお馴染みの会社だから、言葉の不安も含め、海外サイトより頼れる存在になりそうだね。2020年は業界全体でECが成長したけれど、ZOZOの年間購入者は900万人を突破。みんな安心、信頼している証拠だね。

大澤:「ロエベ(LOEWE)」や「クロエ(CHLOE)」をはじめ、「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」など、「ゾゾタウン」では扱いがなかった海外ブランドのラインアップに驚きました。特に「ドリス」や「ラフ」は日本での取り扱い店舗が少なく、海外でも限られたECしか販売していないので、相当交渉されたのではないでしょうか?さらに利用者のニーズに応えるため、幅広いサイズと商品数を準備しているんだとか。コレクションピースを探す苦労も無くなりそうです(笑)。

「MORE FASHION × FASHION TECH」
を体現

村上:ローンチの段階では、国内外約90ブランドから1万4000点の商品が勢ぞろい。秋にはさらに数十ブランドが加わるみたいだよ。小柄な僕には、日本人向けのサイズ展開はありがたいです。今はどのブランドもデジタル化に一生懸命だから、かつてより交渉しやすかったのかもしれないね。ZOZOには、購買頻度や購入意欲が高い人に対して効率的にアプローチするAI(人工知能)などのテックがあるそう。まさに「MORE FASHION × FASHION TECH」を標榜するZOZOらしいね。

「ファッションとアートの境界は
存在しない」

村上:手に入るのは、ファッションだけじゃないみたい。アートにも積極的で、サイトのキービジュアルは、現代美術家の井田幸昌さんが担当しています。「今の消費者にファッションとアートの境界は存在しない」というのが理由みたいだけれど、大澤さん、アートへの関心は?

大澤:幼い頃からファッションに興味を持ち始め、ブランドのバックグラウンドを知ると、たとえばシーズンのコンセプトとリンクするアートや映画、音楽など、自然と興味は広がりました。ファッションを通して、他のジャンルを知ることができるのは素晴らしいことですね。逆に井田さんをきっかけに、「ゾゾヴィラ」やファッションに興味を持つ人も出てくると思います。

村上:最近は百貨店でもアート売り場が相次いで誕生しているもんね。2つを一緒に扱うECが現れるのは、むしろ当然の流れかもしれません。

ファッション熱の高い同志が
集う場に

村上:最後に「ゾゾヴィラ」に望むことはある?僕は、自分たちのように“ファッション血中濃度”の高い人たちが集うコミュニティーになって欲しいと思います。この対談の前に担当者を取材させてもらったけれど、2人とも、とってもファッション熱が高かった。同じような仲間が集うといいな、って思います。そのために個人的には、早々に「WEAR」と連携して欲しい。みんなのデザイナーズブランドの着こなしを見たいし、自分も発信したい。そうやって、ファッション熱を高め合っていければって思います。

大澤:心の底からファッションを楽しみながら仕事している人を見ると、僕らの気分も上がります。ファッションへの熱意が伝わったからこそ、今まで他社ECを拒んでいたブランドも参加したのかもしれません。「WEAR」との連携が実現すれば、新たな“ウェアリスタ”が生まれそうですね。

※4月にオープン予定

問い合わせ先
ZOZOVILLA
https://zozo.jp/_help/help_faq_info.html

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「ユニクロ」の春ジーンズは“綾瀬はるか売れ” 夏に向けてテック系にも期待

 コロナ禍で外出する機会が減り、「WWDジャパン」のデニム担当記者でさえジーンズをはかなくなった。毎年行っているデニム特集でも、ここ数年は「デニムは売れていない」と伝えており、“デニムは瀕死状態にある”と仮説を立てた。しかし大手SPAの「ユニクロ(UNIQLO)」は、「好調さが戻ってきている」(菊地健太郎ユニクロ グローバル商品本部 R&D部 部長)という。

WWD:コロナ禍でもジーンズは悪くない?

菊地健太郎ユニクロ グローバル商品本部 R&D部 部長(以下、菊地):一時はジャージーライクなジーンズやスエット、ウィメンズではレギンスなどが良かったが、ウィズコロナの生活が根付いてから、具体的には昨年末ごろから“ジーンズらしいジーンズ”というのか、メンズでは綿100%のセルビッジジーンズの売れ行きが復調傾向にある。もちろん“ウルトラストレッチジーンズ”(3990円税込)や、ウエストをリブにして取り外し可能なドローストリングを付けた“EZYジーンズ”(3990円税込)に代表されるコンフォート系は男女共に堅調で、二極化してきている。

WWD:セルビッジ復権の要因は?

菊地:セルビッジであることより、「ユニクロ」で“レギュラーフィットストレート”と呼ぶゆったりめのシルエットが、ウィメンズのトレンドであるハイライズなどと呼応しているのだと思う。

WWD:そのウィメンズでは、女優・綾瀬はるかを起用したCMでもジーンズを訴求している。

菊地:CM効果もあり“スリムストレートハイライズジーンズ”(3990円税込)が数字を伸ばしている。ハイライズでいえば、クリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)がアーティスティック・ディレクターを務める「ユニクロ ユー(UNIQLO U)」の“レギュラーフィットストレートハイライズジーンズ”(3990円税込)も良い。

WWD:春ジーンズが“綾瀬はるか売れ”していることは分かったが、夏に向けての打ち出しは?

菊地:東レと共同開発した合繊100%の新素材を使った“テックデニムジーンズ”(3990円税込)を推している。

WWD:“テックデニムジーンズ”は2021年春夏シーズンにデビュー?

菊地:その通りだ。デニムの面構えながら軽量で、清潔な服が求められる時代に、洗濯してもすぐ乾く点が魅力だ。しかも素材と染料の特性により綿に比べて移染しづらく、おうち時間が増えた今、家着としても最適。合繊ゆえ肌当たりに冷感もあり、気温・湿度が上がっても快適にはいてもらえる。実際、日本より暖かいASEAN諸国では早くも良いリアクションが出ている。“スリムストレートハイライズジーンズ”も“テックデニムジーンズ”も、すでにコロナ禍にあった約1年前から開発を進めてきた商品だ。大きく花開くことを期待している。

WWD:古着発のトレンドである“Gジャン”がセレクトショップなどで売れ始めている。「ユニクロ」での動きは?

菊地:定番としてはラインアップしているが、まだ大きな動きはない。一方で、軽めのカバーオールやデニムシャツなどの羽織りモノが良い。女性がメンズの商品を購入して、ボクシーかつ大きめのシルエットで着ることも恒常化している。これまで「ユニクロ」の服はタイトめだったので、ある意味で新たな消費動向と言えるだろう。

 「WWDジャパン」3月22日号では「ユニクロ」のほか、メーカーを代表して「リーバイス(LEVI'S)」、小売りを代表してビームス、古着店を代表してベルベルジンに、ジーンズの売れ行きについて聞いた。異口同音に「売れている!」と話しており、その理由や実際に動いているアイテムについてまとめている。

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アイスタイルの吉松社長が考えるリーダーの要は「視座の高さ」と「オピニオン」【ネクストリーダー 2021】

 日本最大の美容口コミサイト「アットコスメ(@cosme)」を運営するアイスタイル は、日本の美容業界のDXをけん引してきた存在だ。1999年にスタートした「アットコスメ」は当時女性のインターネット使用率が一桁台だった時代に、化粧品に関する消費者情報をデータベース化し、企業のマーケティング活動を支援することを目的として設立。現在は月間アクティブユーザーが1320万人、登録ブランドが約3万9000あり、会員である20~30代女性の過半数が毎月利用するほどに成長した。2002年には「アットコスメショッピング」を立ち上げ、今では約4万2000のSKUを誇る日本最大の美容専門ECサイトにとして存在感を高める。昨年は百貨店を中心に扱われるデパコスやドラッグストア・バラエティーショップストアで販売されるプチプラコスメ などさまざまなブランドを扱う旗艦店「アットコスメトーキョー」を原宿にオープン。アットコスメと連動させ、チャネルの垣根を超えた新たな形態のショップとして大きな話題を集めた。これまで同社はメディア、小売り、マーケティングサポートなどさまざまな事業を国内外で展開し美容業界をリードしてきた。そんなアイスタイルの吉松徹郎社長兼最高経営責任者(CEO)を、次世代の業界リーダーをたたえる「WWD JAPAN NEXT LEADERS 2021」のアドバイザーとして迎え入れた。そこで「WWDジャパン」は、吉松社長が描くリーダー像や美容業界の課題などについて聞いた。

WWD:吉松社長が思い描くリーダー像を教えてください。

吉松徹朗アイスタイル社長兼CEO(以下、吉松):ユーザーのニーズや課題にプロダクトで応えるのは素晴らしいことだけれど、製品軸で課題を解決する企業や人は今後もたくさん台頭するだろう。リーダーはどちらかというと、製品で課題を解決するより、業界の構造や仕組みを変えるような人だと思う。あとは、オピニオンリーダーかな。サービスや製品を持たなくとも、課題に対するオピニオンを持ち、人を動かすような人。パッションがある人、生き方自体にグッとくる人は業界をリードするようなポテンシャルがあると思う。

WWD:リーダーに必要なものは?

吉松:視座の高さ。目の前の課題だけでなく、業界全仕組みそのものをもっと広い視野で見れる力が必要だ。また、先ほどのオピニオンリーダーの話とかぶるが、しっかり意見を持つことも大事。両方を兼ね備える人は周りを動かす力を持っているし、人も集まる。よく「共感を呼ぶことが大事」ともいわれるけど、「そうだよね」と思われるだけでは意味がない。やはり「こうあるべき」「こう思う」と断言できる強い意志が持てないと、リーダーにはなれないだろう。

WWD:ご自身も視座の高さを意識している?

吉松:常に意識している。視座をどのように変えるか、それ次第で新たなビジネスのきっかけになるかもしれないし。当社でいうと、昔はつい化粧品中心でビジネスを考えることが多かった。でも実際のユーザーは、化粧品を使う延長線できれいになりたいと思うから、美容家電も使えば、クリニックもサロンでも美を追求する。コスメだけでなく、あらゆる美容アイテム・サービスをシームレスに使っている。だから化粧品中心ではなく、生活者中心に視点を変えた。そこから新たなサービスなどいろいろ着手するようになった。社内のスタッフからは急に「化粧品ではない、ほかことやるの?」と思われたりしたが、化粧品軸で考えると「ほかのこと」だが、生活者視点で考えるとそうでもなく、実はわれわれがずっと追求してきたものの延長線上にあった。

WWD:視座を変えるにはどうしたら良いのか。

吉松:基本的には自分の力で変えていくのと、ほかの人のきっかけをもらうのと、両方必要だと思う。ほかの人に言われたことをただ聞くだけでなく、その言葉で自分の視座を上げられるように、自らの努力も必要。想像力や、思考力も問われるだろう。

WWD:ご自身がリーダーとして影響を受けたり、憧れていた人はいる?

吉松:“憧れの人”はいないが、隣の業界のライバルや友人からはいつも刺激を受ける。オイシックスの高島宏平社長もそうだし、グリーの田中良和社長、ビズリーチの南壮一郎社長もそうかもしれない。

 最近改めて思うのは、リーダーとしての在り方がすごく難しい時代になってきていること。例えば、アップル(APPLE)のスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)やアマゾン(AMAZON)のジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)らは、圧倒的な“わがままリーダー”で日本だと間違いなく(パワハラなどで)会社から追い出されるタイプ(笑)。 わがままでも走り続けられるカルチャーなり、それを許容する組織なり、日本にはなかなかない。実現可能かどうかは別として、とりあえず果敢に挑戦してみるチャレンジ精神だとか、ビジョンをかなえるための行動力だとか、ミッションのための献身性とかで動く組織は羨ましい。

 そういう意味ではジョブスとベゾスは二人とも注目するリーダー。ジョブスはかつて、社員が一生懸命作ったiPhoneのプロトタイプを水に沈ませて(それが故障すると)、「まだ全然ダメじゃん!」と全否定して、一から作り直したとか。有名な話だが、それってなかなかの強さがないとできないこと。今はパワハラといわれるかもしれないが、彼はユーザーのことを徹底的に考えていたからやったことだった。

WWD:日本のビューティ業界の課題をどう見ている?

吉松:一番大きいのは世界を見据えたビジョン。海外にはブランドを買っては成長させ て、最後は売却するインキュベーターとしての役割を果たす企業が多いけれど、日系企業の多くはブランドを手放すことがなかなかできない。そういう意味では先日「ツバキ(TSUBAKI)」などを売却した資生堂の魚谷雅彦社長はまさにリーダーだと感じた。また日本のビューティ業界は小さいし、集まってくる人も例えば金融とかNPO系とかと全然違う。貧困や差別など社会課題って人の共感を集めやすいし、それこそNPOにはオピニオンリーダーが入りやすい。でも本当はビューティだって人の生活を豊かにするものだから、もっと頑張ればグローバルレベルでもっと豊かに生きられる世界を作れると思う。本来は世界で戦える、世界にインパクトを与えられる業界なはずだ。

WWD:次世代に期待することは?

吉松:次世代には本当に期待している。僕らの世代は長時間勤務し会社に貢献することが美徳と考える一世代上の影響を受けざるを得なかった。特に新卒入社した90年代はバブルがはじけ、ひたすら右肩下がりだったこともあるって。でも今は起業する人も多いし、いろいろ自由だから、ルールを変えるということを期待しているかな。個人的に一番それが進んだのは、音楽業界だと思っているて。昔はレコード会社や作曲家が力を握っていたけれど、今はそんなこと関係なくボーカロイドで作られた曲が良ければユーザーがダイレクトに評価して、ビジネスとしてやっていけちゃう。

 ビューティ業界はリアル店舗が多く、コロナ禍で打撃を受けているケースが少なくない。しかしこれを機にDXが推進され、この2年ぐらいでいろいろ変わるだろうし、変革のチャンスはあると信じている。

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3年で売り上げ10倍の噂の入浴剤「BARTH」のヒットの裏側 睡眠アプローチで入浴剤市場を切り開く

 TWOが手掛ける入浴剤ブランド「バース(BARTH)」は2017年に立ち上げてから毎年300%の伸長率を達成し、現在急成長をしているブランドの一つだ。SNSで「泥のようにぐっすり眠れる」「ちょっと腰が抜けるくらい気持ちいい」といった口コミが発信・拡散されたことをきっかけにヒットし、おうち時間が増えたことによる入浴ニーズの高まりも追い風になっている。昨年末は全国の百貨店やバラエティー・ドラッグストアで実際に売れた製品をランキング形式でたたえた「WWDビューティベストコスメ2020」にも入賞。そんなヒットの要因について、東義和・最高経営責任者に聞いた。

WWD:コロナ禍で多くの化粧品企業は打撃を受けているが、「バース」は成長している。

東義和・TWO最高経営責任者(以下、東):そうですね、売上高は3年で10倍以上になるほど、順調に成長を続けています。「バース」の入浴剤タブレットは独自の製造技術を用いた中性重炭酸入浴剤で、お湯を中性にすることで炭酸ガスから発生した重炭酸イオンが揮発しづらく、しっかりと湯中に溶け込むのが特徴です。有効成分が温浴効果を高め、疲労回復を促進します。もともと当社では睡眠関連グッズも出していますが、「バース」が著しく伸びはじめたのは“睡眠投資”にフォーカスした打ち出しを強化してから。昨年12月には新宿駅構内に、企業の社長からショップ店員、編集者、客室乗務員など幅広い職業の31人の1日の予定をカレンダー形式で掲示しました。“睡眠投資カレンダー”と名付け、各々が睡眠に投資する理由も記し、そこに入浴剤のサンプルを貼り付けたら、一瞬で全てのサンプルがなくなりましたね。

WWD:睡眠に着目した理由は?

東:やっぱり睡眠って究極的に普遍的な社会課題だと思うんですよ。人生や健康に大きく影響するにもかかわらず、軽視されがちでもあるんですよね。例えば十分に時間をとって質の高い眠りができると、翌日のパフォーマンスがよくなったりしますよね。それなのにプレゼン前日は徹夜しちゃう人も多い。寝てないと肌も荒れするのに、夜更かししちゃう人も。とにかく矛盾が多いんですよね。

 その理由は多岐に渡りますが、睡眠に対する情報が溢れすぎているのかな、と。長く寝れば良いのか、質を高めれば良いのか、寝る前にハーブティーを飲めば良いのか、情報がありすぎて何をしたら良いのか分からない、と思う人が多いはず。われわれはもっと大きな夢やゴールの達成のプラスアルファになる、というアプローチであえて“睡眠投資”と言っているんです。だから今回のキャンペーンでも、睡眠投資する理由に「家族も仕事も、笑顔で向き合いたいから」「誰かの人生を変える映像を作りたいから」といったことを書いてもらいました。睡眠をポジティブに捉え、人生を豊にしてほしいです。

社会課題にフォーカスしたプロモーション

WWD:“睡眠投資カレンダー”はSNSでも拡散された。

東:そうなんです。製品特徴より、睡眠不足という社会課題にフォーカスしたのが良かったと思います。今は社会的にいかに意味を持つような“パーパスブランディング”がますます大切になっています。消費者の目は今すごく肥えているんですよね。それは当然、製品の機能的な面でもそうですし、言葉の裏側にある企業の人だとか、ブランドの哲学とかも見られていますから。ブランドを作っている人たちが本気で課題解決に向き合っていないといけないですが、大手だと人数的に全員が100%フルコミットするのが難しい。だからわれわれのようなベンチャーにすごくチャンスがあると思っていて、結果的に消費者にメリットを生み出しているのかと。

WWD:東さんはもともとPRコンサル企業出身。そこから入浴剤ブランドを立ち上げた理由は?

東:前職ではいろいろな企業のPRを担当しました。いかに商品やサービスの価値をユーザーの需要に合わせて発信する“価値の転換”を行ってきたわけですが、もっと自由にマーケティングを一からしたくて、プロダクト事業を目指すことに。そこで中性重炭酸入浴剤を作る技術に出合ったのがきっかけで、ブランドを立ち上げました。

最初はバイヤーに相手にされず地道な営業活動を続ける日々

WWD:技術に出合ってからブランド立ち上げ・製品化までどれほどかかったのか?

東:半年ほどですかね。その技術を発見してから、いざ入浴剤をどのように展開していくかが大きなポイントでした。入浴剤の国内市場は400億円ほどで、シャンプーやボディーソープなど比べると比較的小さい。大体こういう小さな市場は、すでに需要が満たされているので新規参入組が入りづらいんですよね。そうすると市場の大手企業は外部からの圧力が少なく、イノベーションが起きにくい。まず、われわれはそこにすごくチャンスを感じました。

 さらに入浴剤の使用動機は、何かを強く求めてる人が少ないことに気づいて。例えば何となく入れることが習慣化してるからとか、何となく色が付いて効いてる気がするから、とか。期待値が意外に低く、習慣的に使っている人が多いんですよね。でも「バース」は特殊な技術でしか作れなくて、体に与えるリカバリー効果や美容効果が非常に高いんです。体の深部体温を上げて、睡眠を促したりもして、とても自信があった製品でした。

 そこで先ほど言った“価値の転換”で言うと、お風呂入ることでキレイになれるとか、良く寝られるとか、入浴行為そのものにもし価値を見いだすことができたら、もっと市場は広がると思ったんです。特に「バース」は一般的なマスブランドの入浴剤の3倍ほどの価格で販売しているので、付加価値がないと戦えないことも分かっていました。なのでもともとは美容という切り口で、コミュニケーションのターゲットを当てて、“美容液のような入浴剤”という店頭ポップを展開しました。今は睡眠にフォーカスを当てていますが、これまでお風呂に入ってこなかった人が睡眠や美容目的で購入してくれて、まさに、僕らとしては狙い通りでした。

WWD:パッケージも目を引く。

東:われわれのは普遍的なブランドを目指しているので、あまり奇をてらい過ぎることはしません。だから比較的覚えやすい名前で、ロゴもシンプルにしました。従来の入浴剤は効能がパッと見て分かるパッケージばかりで、当時バイヤーには結構ネガティブな意見もたくさんいただきました。最初は営業メンバーが「クリエイティブを変えないと棚に置かない」など散々言われて帰ってくる日々でした(苦笑)。だけどわれわれはエンドユーザーのニーズを最優先しようと決めていたので、地道に営業を続けましたね。

WWD:今後の展望は?

東:直近では4月1日に、“中性重炭酸洗顔パウダー”のトライアルボトルを発売します。また、会社として“ヘルシージャンフード”という新しいカテゴリの飲食事業を今春にローンチします。3月15日にアークヒルズにプレオープン後、4月以降にブランドの本格展開を予定しています。睡眠もそうですが、今後も健康に紐づいた事業を広げたいですね。

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あなたの投票で決定! 東コレ頂上決戦“T-1グランプリ”-決勝-

 2021-22年秋冬シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」が21日に閉幕しました。「WWDJAPAN.com」は、東コレのNo.1ブランドをユーザー投票で決定する“T-1グランプリ”を開催!編集部が選んだ全20の候補から、あなたが思うベストブランドに投票してください!ノミネートブランドの確認と、投票フォームには以下からアクセス!

“T-1グランプリ”の投票はこちらから!

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超熱気の「サルバム」と大トリ「リコール」 東コレ頂上決戦“T-1グランプリ”予選最終夜

 2021-22年秋冬シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」が15日に開幕しました。国内外から51ブランドが参加し、4割がリアルショーを行います。「WWDJAPAN.com」では、今シーズンのベストブランドをユーザー投票で決定する“T-1グランプリ“を開催!それに先駆け、記者3人がその日に発表したブランドの中から独断でグランプリ候補を選出します。今日のノミネートブランドはこの3つだ!


東コレ取材2シーズン目
現場取材担当の美濃島
「サルバム(SULVAM)」

見どころ:4年ぶりの東コレ参加。いつもより要素は少なめですが、ラウンドした身頃をいくつも使ったジャケットをはじめ、パターンワークの面白さが際立ちました。赤と黒をメインとした潔いカラーパレットも好み。会場には多くの学生が招待され、コメントを添えた手紙を客席に置いたり、メディアと混ざって学生による囲み取材も行ったりと、ファッションを次の世代に繋げようとする熱い姿勢がビシビシ伝わってきます。子連れの出席者もいて、中には大きな音と暗い空間に驚き泣き出しちゃう子も。そんな子に向けては「ごめんね、怖いよね。でもいつか服が好きになったら、『ファッションショー行ったことあるんだよ』って教えてもらえるし、きっといい体験になると思うんだ」と話してて、その優しさにもウルっと来ました。すっかり藤田哲平デザイナーのファンです。


東コレ取材歴5年
ニュースデスク大塚
「シュープ(SHOOP)」

見どころ:大木葉平「シュープ」デザイナー自らが「今までの中でベスト」と言い切る自信のコレクション。“トランスフォーメーション”をキーワードに、普遍的なスーツやストリートウエアにギミックを過剰に盛り込んでカルチャー的角度からの奥行きを加えています。ジャケットやパンツ中央の波打つようなカッティングだったり、体をクロスするニットの唐突な編み込みだったり、光沢のある強いマテリアルを多用したりするデザインは、緻密に計算されたというよりも、デザイナーデュオの衝動が込められていたように感じました。そういうテンションのときって、いいコレクションができる打率が高いですし。「ハルヒト ジーンズ(HARUHITO JEANS)」と協業したデニムアイテムは、精巧なビンテージ加工で経年変化の価値をポジティブに表現。一着一着を大切に、長く着ようというメッセージを発信しています。強い服に対して、動画はタイトル“CATWALK”にかけて本当に猫が登場するダジャレでスタート。さらに、猫には特に意味はなかったというオチにずっこけつつ、和みました。


若手随一の“ファッションバカ”
東コレ初取材の大澤
「リコール(REQUAL)」

見どころ:土井哲也デザイナーが望む半年先の未来を詰め込んだコレクションを発表。土井デザイナーが幼少期に訪れて衝撃を受けたアメリカのプレッピー&ヒッピースタイルと、仏・パリのフレンチスタイルを着想源に、さまざまな年齢や性別、人種のモデルを起用しました。ショー冒頭では、コレクションを身にまとった15体のモデルが登場して、会場の中央に座り込んで観客と共に最後までショーを楽しみました。スケートボードやバスケをする少年たち、テーマパークさながらのクマの被り物にフリースパーカーを着た2人の少女、また上下逆さの巨大Tシャツには“FAMILY”や“KISS”、“HUG”といったワードを貼り付けから、新型コロナ前の当たり前だった日常を思い出しました。

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「いつかショーが無くなる前に」 「サルバム」が4年ぶりの東コレで次世代に伝えた思い

 デザイナーの藤田哲平率いる「サルバム(SULVAM)」が、2021-22年秋冬メンズ・コレクションを「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で披露した。同ブランドはパリ・メンズ・コレクションに18年から参加しており、東コレ参加は4年ぶり。会場の渋谷ヒカリエには多数の学生を招待した。藤田デザイナーは、「僕は(パンデミックによる)こういう状況がこれからも続くと思っている。いつかショーが無くなる日が来るかもしれない。その前に、若い世代にショーを体感して欲しかった」とショー開催の経緯を語った。

 会場では、暗がりの中に無数のスポットライトを垂直に落とし、雲の隙間から光が差し込んだような空間を用意した。ヒップホップユニットCreepy Nutsの「生業」をBGMにショーがスタートすると、モデルたちが入場し、思うがままにウオーキングしていく。「決められた道なんてない。自分で作っていけばいい」という藤田デザイナーの思いを具現化したような演出だ。

 1月にパリ・メンズで披露したアイテムを、スタイリングを組み直して発表した。「唯一の新作」という真っ赤なセットアップとツナギには、ショーを行う熱意と覚悟を込めたのだろうか。チェスターコートやテーラードジャケット、ワークジャケットは、ステッチを目立たせたり、ポケットの縁をあえて外したりと、脱構築的に遊びを効かせる。代名詞となった、ジャケットからはみ出す長めの裏地は軽やかになびき、躍動感を加える。ラウンドした身頃を何枚も重ねたジャケットと、身頃や袖を丸くくり抜いたニットなど、曲線を強調するアイテムも登場。要素をそぎ落とし、黒と赤のみストイックなカラーパレットに絞ったからこそ、体のラインを程よく拾ったり、逆に直線的に見せたりする持ち味のパターンの良さが際立つ。パタンナーとしてキャリアをスタートさせた藤田デザイナーの原点を感じさせるコレクションだった。

 ショー終了後、藤田デザイナーがマイクを持ってステージに登壇し、ショーにかけた思いと若者へのメッセージを熱っぽく語った。「下を向いて欲しくないし、自分も前を向いていることを表現するために、このショーをやりました。若い人たちは何者かになりたくて、みんな焦ってると思う。俺もそうだった。でも、ゆっくり基本を磨いて、自分で道を作って行けばいい。スマートじゃなくていいんだよ。今はこんな状況でも、みんなが築く時代はもっといいものになる。それだけが伝えたかった。来てくれて本当にありがとう」。

 招待されたある学生は「ショーを見て心が震えた。素材からパターン、カッティングなど服の要素全てを意識しないと、感情を掻き立てる服は作れないと実感した。今はテキスタイルデザインを学んでいる。他の分野にも興味を広げて頑張っていきたい」と感想を述べ、別の学生は「生まれて初めてショーを見ることができた。デザイナーから直接話も聞けて、とても刺激になった」と語った。藤田デザイナーの思いは、彼らの胸にしっかり届いていた。

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「セルヴォーク」の田上ディレクターが次世代に期待すること 「課題解決だけでなくいかに心を動かせるか」【ネクストリーダー 2021】

 マッシュビューティーラボ傘下のビューティブランド「セルヴォーク(CELVOKE)」や「エッフェオーガニック(F ORGANICS)」を手掛ける田上陽子ディレクターは、「ナチュラル・オーガニック」と「モード」と、これまでほど遠かった2つの世界を掛け合わせた製品を展開してきた。今ほどナチュラル化粧品が当たり前ではなかった2016年に「セルヴォーク」を立ち上げ、当時 “地味”“自然”というイメージが残っていたナチュラル・オーガニック業界に新風を吹かせた。モードな世界観のビジュアルやメッセージを展開し、若年層も多く引きつけた。テラコッタカラーのリップスティック“ディグニファイド リップス(09)”は「幻のリップ」と称され、テラコッタメイクブームをけん引する存在にもなった。大人の女性でも使える、肌馴染みの良いくすみカラーを多く生み出し、今もなお幅広い女性に愛されているブランドだ。そんな田上ディレクターに、業界の次世代リーダーをたたえる「WWD JAPAN NEXT LEADERS 2021」のアドバイザーとして参画してもらった。彼女が考えるリーダー像や、次世代に期待することを聞いた。

WWD:「セルヴォーク」を立ち上げて5年が経禍した。この5年でもビューティ業界は大きく変化したが、今の市場をどう見ているか。

田上陽子「セルヴォーク」「エッフェオーガニック」ディレクター(以下、田上):今は良い意味でも悪い意味でも、誰もが簡単にコスメを作れちゃう時代。私たちもOEMで化粧品を作っていますが、工場も増えていますし、個人でもブランドを立ち上げられます。D2Cブランドも多く台頭しビューティ市場が多様化しているという意味ではとても良いと思うのですが、必ずしもこういったブランドが長く愛されるものとも限りません。正直、一過性の“バズ”を作って衰退しそうなビジネスもある印象です。もちろん、それも一つのビジネスのあり方かもしれません。ますます競争が激化する市場を見ていると、「ブランドって、何だろう?」というような、ブランドの存在意義を考えさせられます。

WWD:確かに時流に即したブランドもあるが、途中でビジネスを立ち上げた目的を見失うブランドもある。

田上:トレンドやニーズを分析してモノを売るということはもちろんできると思うんです。でも今は“モノで課題解決”だけでは足りない気がして。もともと私が入ったオーガニック業界は、美容業界でもニッチでしたが、そこにあったのは思想や価値観を強く持っているブランドばかりでした。それに惚れて購入する人が多かったんですよね。ファッションもそうだと思うんです。特にラグジュアリー系はブランドのヒストリーや哲学に憧れや共感を抱いてファンは商品を買いますよね。あとはデザイナーやブランドのセンスこそ人を引きつけると思うのですが、ビューティはセンスや世界観よりも、悩みや課題解決が先に来てしまう。特にパーソナライズが今後さらに進化していくとますますモノで溢れる時代になりますし、需要を満たせても心を動かせないと、生き残れないのではないでしょうか。似た製品がものすごいスピードでどんどん生まれるので、やっぱり製品力だけではもう勝てないと思うんですよね。

 サステナビリティの観点からしても、一緒です。もともとオーガニックの先進国であるヨーロッパでは、古き良きものを大切にする文化で、長く同じものを愛用する精神が強い。だから新商品もほとんど出さないオーガニックブランドも多いんですよね。一方で市場で戦うために次々と新商品が誕生し、それに比例してだけ廃棄も生み出す現実があります。これからは物欲以外で人を満たすことがより重要視されていくのではないでしょうか。

WWD:「セルヴォーク」や「エッフェオーガニック」でも“心を動かす”ことを意識しているのか?

田上:ブランド立ち上げからずっと貫いてきたことですね。メイクのコレクション一つとっても、テーマには必ず社会的な背景や人の心情を反映させてきたつもりです。また昨年は私たちのビジネスも新型コロナウイルスの大きな影響を受けました。オンラインカウンセリングやECでいくらでも製品を買おうと思えば買えますが、やっぱり販売員と会話しながら選ぶ・選んでもらうのとは全然違いますよね。これも、結局は人の心やマインドに訴えられるかに尽きると思うんですよね。うまくデジタルやテクノロジーを活用しながら、人の心に訴求できるか、私も毎日考えていることです。

WWD:田上さんはこれまで業界をけん引してきたリーダーの一人。次世代のリーダーはどのような人だと考えるか?

田上:少し古い言い方かもしれないですが、熱量を持って新たなカルチャーを作れる人。ある意味、ヤンキー根性がある人かもしれません(笑)。そういう熱意に人は動かされて、社会はそこに付いていくんだと思います。驚きや感動を届けられる人こそ歴史に残るし、私たちも昔の人に感動して彼らから学び、後世に残すわけですし。グッと心に響くものを生み出せるか。それこそリーダーの条件だと思います。そんな熱いスピリットを若い世代に期待しています!

WWD:「セルヴォーク」の次なる一章は?

田上:「セルヴォーク」は「ナチュラル×モード」というコンセプトを、ナチュラルやクリーンビューティがここまで広がる前からずっと掲げてきましたが、今や同じコンセプトのブランドは山ほどあります。ナチュラル・オーガニック市場を広げることに貢献できたのであれば、それはそれで良いのですが、この業界をリードし続けるためにはパワフルでありながら変化もしなければいけませんない。

 最近、長く愛されるブランドであり続けるために、ブランドの哲学を見直していますて。“「セルヴォーク」といえば”というブランドイメージをもっと分かりやすく伝えるためにもどうしたらいいのか、日々考えています。スタッフには「セルヴォーク」の裏にある女性像について「奥行きのある女性」と伝えてきましたが、その言葉も時代に合わせて変える必要があると思ったり。このようなブラッシュアップの積み重ねで、ブランドの哲学が出来上がるのでしょうね。これまで十分には伝えられなかった哲学や思想をいかに発信しいくかが当面の課題ですね。

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「アンダーカバー」のリアルショーでサプライズ 東コレにまさかの“使徒襲来”

 「アンダーカバー(UNDERCOVER)」が、19年ぶりの東京での単独ランウエイショーを寺田倉庫で開催した。「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」の冠スポンサー、楽天の支援プロジェクト「バイアール(by R)」の一環で、顧客を中心とした第1部と、メディアやバイヤーを招待した第2部に分けて行った。第2部の様子は公式サイトなどで生配信した。

メンズは「エヴァ」がモチーフ
突き抜けた世界観

 ショーはメンズとウィメンズに分けて発表した。メンズは事前にルックで公開したアイテムではなく、「新世紀エヴァンゲリオン」をモチーフにしたスタイルを披露。人類を襲う生命体「使徒」と、それに対抗するために生み出された人造人間「エヴァンゲリオン」を、グラフィックや総柄、アイテムの組み合わせなど多用な手法で表現した。例えば、目が光るヘッドピースにハイネックコート、細身のパンツというスタイリングで綾波レイが操る「エヴァ零号機」を表現したり、紫と緑のカラーブロックを用いたパフジャケットは主人公が操縦する「エヴァ初号機」だったり、他にアスカを思わせるスタイルも登場。作中で「エヴァ」操縦士が付ける耳型のヘッドピースをはじめ、アクセサリー1つ1つにも世界観を詰め込んだ。壁にはアニメのワンシーンを投影し、使徒の襲来を想起させる轟音を響かせるなど、演出と洋服が一体となり、作品のファンならずとも没入してしまうショーを作り上げた。

ウィメンズの
毒々しい生命力

 ウィメンズは、トム・ヨーク(Thom Yorke)がミックスした音楽を背に、ニットにワイドパンツ、ピンヒールを合わせたシンプルなルックでスタート。ニットには神や天使、教会など宗教関連のモチーフを採用し、意味深なムードを作り上げる。そこからショートブルゾンとフード付きのベスト、ロングジャケットなどをレイヤードしたカウボーイルックや、ベロアジャケットにフリルシャツを合わせたバースタイルなど、レトロなムードが続く。時おり透明のビニールパーツを差し込んで、フューチャリスティックなテイストも加えた。最後には、大きなフリルを腰にあしらったワンピースや、無数のフリルをつけて超ボリューミーにしたドレスなど、生命力溢れる服を連打する。目元には仮面のようなラメを付けたり、小さな蝶々やコウモリのような生き物を散りばめた総柄のジャンプスーツを挟んだりと、同ブランドらしい毒っ気も盛り込まれていた。

 ショー終了後の会場では、「まさかのエヴァだったね」「あれって販売するのかな?」「ウィメンズもすごく可愛かった」「見に来れてよかった!」と熱い感情を共有しあう来場者ばかりだった。高橋盾デザイナーの「東京でやるからには、“生”のショーの楽しさ、パワーを伝えたい」というコメントの通り、東京でしか起こせないインパクトを見せつけられた。デジタル発表によってリアルショーの価値が揺らいでいるのは事実だが、リアルの可能性を信じるデザイナーがいる限りは、ファッションショーの楽しさは進化していく。

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「アンダーカバー」が19年ぶりに東京出撃 東コレ頂上決戦“T-1グランプリ”予選第5夜

 2021-22年秋冬シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」が15日に開幕しました。国内外から51ブランドが参加し、4割がリアルショーを行います。「WWDJAPAN.com」では、今シーズンのベストブランドをユーザー投票で決定する“T-1グランプリ“を開催!それに先駆け、記者3人がその日に発表したブランドの中から独断でグランプリ候補を選出します。今日のノミネートブランドはこの3つだ!


東コレ取材2シーズン目の現場取材担当の美濃島
「アンダーカバー(UNDERCOVER)」

見どころ:19年ぶりの東京単独ショーを開催。メンズのモチーフはまさかの「新世紀エヴァンゲリオン」で、先週末に最新作を見たばかりの僕はテンション爆上がり。「第2使徒リリス」(人類の親のような存在)や「エヴァ初号機」(リリスを元に作った対使徒用人造人間)など、作中のアイコニックなキャラやシーンがグラフィックに登場しました。全身白の服と目元が光るヘッドピースや、紫と緑、赤とオレンジなどの象徴的なカラーブロックで「エヴァ」各機を表すなど、世界観を伝える手法もさまざま。危うく“フォースインパクト“が起きちゃうところでした。


7都市のファッションウイークを取材してきたコレクション担当の大杉
「タエ アシダ(TAE ASHIDA)」

見どころ:「タエ アシダ」から招待状と一緒に、桜とツツジの盆栽が届きました!植物の美しさに癒されつつ、自然に囲まれた邸宅の写真を載せた招待状のビジュアルに惹かれて、今日のコレクションを楽しみにしていました。今季は「La maison dans la foret(森のなかの邸宅)」というテーマの通り、邸宅内で撮影した動画を発表しました。室内ということで、ランウエイよりもリアリティーを演出でき、着用シーンも想像しやすいですね。特に目を引いたのは、モコモコしたシャギーニット。ニットドレスはほっこりした印象になりやすいですが、イエローとブラック、パープルの配色と、Aラインのシルエットで上品に提案していて、ドレスアップのオケージョンでも着用できそうです。またプレスノートに書かれた「長いコロナ禍を経て、一歩踏み出すエネルギーを込めた」という芦田多恵デザイナーのポジティブなメッセージにも共感しました。


若手随一の“ファッションバカ”で東コレ初取材の大澤
「アツシナカシマ(ATSUSHI NAKASHIMA)」

見どころ:「アツシナカシマ」は、日本を代表する絵画の“楚水”や虎のイラストを使用したド派手なルックが登場。日本画から着想したカラーリングを、明るいトーンにアップデートしました。前シーズンから継続する和の要素はさらに色濃くなり、ブルーとパープルのグラデーションに“楚水”のイラストをのせたMA-1は、アートをリアルクローズに上手くなじませた一着。そのほかレーザー加工で日本画を全面に施したデニムジャケットや、ストリート色の強い“FOREVER STRONG”のロゴを配したスエット、全面花柄のワンピースなどを提案。ヘアメイクは奈良裕也が担当し、暴走族をイメージしたリーゼントのモデルが印象的でした。フィナーレでは、“暗い世の中でも輝き続けたい”という思いから、Hi-STANDARDの「STAY GOLD」を選曲。名曲をバックに、モデルが颯爽と歩く姿は圧巻でした。

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「ザボディショップ」が“SELF LOVE”キャンペーンを始動 2人のエキスパートがありのままの自分を受け入れるために指南

 「ザボディショップ(THE BODY SHOP)」は自身を尊敬し、ありのままの自分を受け入れる“SELF LOVE(セルフラブ)”キャンペーンを3月25日にオンラインサイトや店頭で開始する。今後、各国でセルフラブにまつわるデータや情報、専門家と協業してアドバイスなどを発信する。女優でありながらセルフラブの啓もう活動を行うジャミーラ・ジャミル(Jameela Jamil)などを筆頭に、各国からリーダーを迎えてセルフラブにまつわる体験やストーリーを展開する。日本はkemioと長谷川ミラが選ばれ、3月30日にはアプリ会員向けのオンライントークイベントを開催予定だ。

 グローバル規模で行う一大キャンペーンに先駆け、メディア向けにジャミーラと「ザボディショップ」のセルフラブエキスパートのサラ・クブリック(Sara Kuburic) を交えた“SELF LOVE(セルフラブ)”に関するラウンドテーブルが行われた。

セラピストとの出会いで“セルフラブ”に目覚める

 ジャミーラは女優業だけでなくモデルや作家、アクティビストとしても活動し、「女性として、自分を誇りに思い、自分はありのままで素晴らしいと信じることは社会的や政治の偏ったバイヤスに立ち向かうこと」 と説いてきた。セルフラブやフェミニストのトピックスを自由に話し合い、意見を交換するプラットフォーム「アイ・ウェイ(I Weigh)」を立ち上げたほか、ポッドキャストやSNSなどでも声だかに訴えかけている。そんな彼女がセルフラブに目覚めたきっかけは、セラピストと会うようになってからだという。「セラピストと話していくうちに、自分の中にため込んできたトラウマや不健康な考え方が顕著化してきた。これまでどれほど周りの意見を気にして行動してきたか、他人に言われたことをひたすら鵜呑みにしてきたのか、社会の基準に合わせてきたか、自分の幸せを最優先にしてこなかったのか。それが結果的に自分の幸せも、成長までも妨げることに気づいた時に、涙が出そうになったわ。そこから、もっと自分を大切にしようと思い、“セルフラブ”の旅が始まったの」と語る。

「“セルフラブ”は自己肯定への旅」

 そもそも“セルフラブ”とはどんなものなのか?「旅よ。女性にとってありのままの自分を受け入れることってとても難しいと思うの。幼い頃から『かわいくないといけない』『美しくないと認められない』と刷り込まれることが多いから。“セルフラブ”とは、そんな刷り込みを1枚ずつ剥がしていくような作業。1日ではかなわない作業だから、私はよく旅に例えるの。先日35歳になったけれど、まだ旅の途中よ。少しずつでもいいから、“セルフヘイト”をなくし、その分のスペースをポジティブな思いで埋める。そうすると、自分を尊敬できるようになるし、自然に他人の意見とか、フェイクニュースとか気にならなくなるはず」とジャミーラ。

 モデルとして活動する彼女だが、雑誌の撮影ではレタッチされることも拒否し続けているという。「今の時代、インスタグラムを見ると、みんな同じ顔・体型でしょう?そんなの現実的じゃないわ。雑誌や化粧品企業の広告キャンペーンではその非現実的な美の基準に合わせてレタッチされることが当たり前。自分もそのような経験があるけど、雑誌に載っている自分と、鏡に映る自分の姿がまるで違い、とても悲しくなって耐えられなくなったの。幼少期は自分の見た目が嫌で、白人のようになりたかった。でもそれはメディアや社会が白人中心の美の理想を発信していて、その影響を受けていたから。私のような見た目のロールモデルもいなかったしね。だから私は美しさは十人十色だということを伝えるためにも、肌色を明るくしてもらいたくないし、毛穴も消して欲しくない。一切レタッチしないように指示しているわ」。

SNSでフォローする人を見直す必要性

 昨今はSNSの普及で「ありのままの自分を受け入れる」ことが難しくなっていると続ける。特にTikTokではウエストをヘッドフォンのケーブルで結べられるかや、ウエストの幅をA4サイズの紙と比較するなど、スリムな体型を称賛するチャレンジが流行っていることに懸念を示した。「SNSで流行しているそういったチャレンジは本当に最悪よね!特に若い女の子に『痩せなきゃ美しくない』という不健康な思い込みを浸透させるばかりで大きな問題。さらにこのような投稿の合間には、ダイエットサプリや食品の広告が流れるわけでしょう?摂食障害は死亡率が最も高い精神疾患と言われている中で、大人が若い子たちに対して“セルフラブ”を教えなければならない」と警笛を鳴らした。ミレニアル世代に対してカウンセリングを行うサラは「『ザボディショップ』が出した“セルフラブ”指標によると、SNSを見る時間が1日2時間を上回ると、自己肯定感が遥かに下がることが分かっている。それだけSNSには影響力があり、知らぬ間に“洗脳”されてしまう危険性も。だからどのプラットフォームを利用するか、どんな人をフォローするか、一度見直した方がいいと思うわ」と助言した。

リスト作りで“セルフラブ”を習慣化

 “セルフラブ”という考え方やありのままの自分を受け入れられるようにするために必要なこととして、ジャミールは「私は毎日リストを作っているわ。自分がその日に体験したこと、乗り越えたハードル、どのように社会に貢献したのか、自分の価値などを書くの。実際に紙に書くと、印象に残るというか、脳がちゃんと記憶として残す気がして。そもそも自分のことを見直す機会なんてなかなかないでしょう?毎日自分の行動や考えを振り返ることを意識的にやると、その分時間を他人の意見に惑わされることに割けられなくなって、自然に自分を大切にするようになると思うわ」と明かした。サラは「他人がどう思うか、考えるかなど他人軸で考えるのではなく、自分自身の感情や考えを把握し、向き合うことが大切。人は友情や恋愛など他人との人間関係を保つために一生懸命になるけど、自分との関係は軽視しがち。特にSNSの仕組み的に、「いいね!」やコメントが欲しくなるでしょう?「私を見て!」と他人からの称賛を求めちゃうの。たまには内心と向き合う時間をきちんととって欲しいわ」と述べた。

 「ザボディショップ」は2021年末までに「世界で100万のセルフラブに対する行動を達成すること」を目標に、さまざまなプロジェクトを展開する予定だ。“SELF LOVE”キャンペーンを通して人々の意識を変え、より公正で美しい世界を目指す。

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「食×エンタメ」の大阪新名所 心斎橋パルコの地下食堂街をリポート

 コロナで開業を延期していた心斎橋パルコ地下2階の「心斎橋ネオン食堂街」が18日に開業した。全国初7店、関西初1店、心斎橋初13店を含む飲食店24店舗が出店。コロナの影響で当初出店を予定していたテナントの約半数が入れ替わったが、他の商業施設とは一線を画す個性的な顔ぶれに。料理だけでなく、エンタメありカルチャーありのカオスな食空間になった。

 リーシングを担当した矢花誠・心斎橋パルコ店次長は「コロナ禍に生き残った足腰の強い飲食店ばかり。料理を提供するだけでなく、エンタメ要素があったり、テイクアウトが強かったり、プラスαのアイデアと発信力があるユニークなメンバーがそろい、よりおもしろいフロアになった」と胸を張る。

ボディコン姿のバーテンダーが接客

 例えば、関西を中心に音楽イベントやクラブ、飲食店をプロデュースするトライハードジャパンは、大阪・長堀橋で展開する四川料理店「芙蓉苑」を出店した。音楽とエンタメと食を掛け合わせたエンタメ居酒屋で、店内にはDJブースも設置。音響や演出照明の下でポールダンサーの踊りやDJを見ながら本格的な四川料理を味わえる。

 アメリカ村の異次元空間ショットバー「ファープレーン」も、ファッショナブルかつフェティッシュでエンタメ性にあふれた大人の社交場を提供する。店名は異世界という意味を持ち、店内ではボディコンシャスなコスチュームに身を包んだバーテンダーたちが接客。代表のロビンさんは「初めての人もここに来て一緒に弾けてほしい。4月からは昼営業でケーキも用意しているのでカフェ使いしてほしい」と話す。

 ほかにもマジックとモノマネを楽しめるバー「Mr.Shinの店」や、全日本スナック連盟とパルコが共同企画したスナック「James’ dream」など個性的なスナックやバーが路地裏のように軒を連ねている。

 大阪を代表する行列必至のネオ酒場も集結した。フレンチおでんとシャンパーニュ・ワインが人気の「赤白」や、ノスタルジックな雰囲気の現代風大衆食堂「大衆食堂スタンド そのだ」、ガッツリ食事もちょい呑みも楽しめる「立喰酒場 金獅子」。西中島南方と堺筋本町で「金獅子」を展開するライオンヴィレッジの内山博登社長は「働き方や価値観が変わるなか、平日の昼間から呑んでも罪悪感を感じないような空間で、昼呑みをもっと根づかせていきたい」と話す。メニューは日替わりで390円までの低価格が特徴。心斎橋パルコ限定でプチ贅沢できる料理も提供する。

 ミシュラン1つ星を2年連続で獲得した鳥羽周作氏率いる、東京のフレンチレストラン「sio」のニューモダン&クラシック居酒屋「ザ・ニューワールド」も注目店の一つだ。音楽からアート、デザインまでこだわった空間の中で、sioのフィルターを通したジャンルレスなこだわり料理を提供する。「居酒屋はすべてが凝縮した集合体で、ある意味モダンで最先端。料理はお通しから出来立てを提供し、音楽も現代から70年代ポップスまでのプレイリストを作っている。服も音楽も好きで生きてきたわれわれならではの新しい居酒屋カルチャーをつくっていきたい」(鳥羽氏)。

K-POPアイドルグループと交流できる

 K-POPと韓国料理を楽しめる店舗も2店舗出店した。芸能プロダクションのプラスウインが初めて手がける「韓国酒場 K-LOVERS」は、プロジェクションマッピングでK-POPのミュージックビデオなどが流れ、エンタメと食を融合した韓国居酒屋だ。韓国人料理長がつくる本格韓国料理を豊富なメニューで展開する。日本未上陸の人気韓国料理を味わえるほか、店員として働くK-POPアイドルグループ「バズーカ」のメンバーとも交流できる。

 パステルカラーの色使いが時間帯で変化する韓流チキン店「ホンマニ チキン」は、K-POPのダンススタジオ運営のJYSによる飲食業態の2店舗目。店内には100インチのサイネージビジョンが設置されていて、韓国料理を味わいながらK-POPのミュージックビデオを鑑賞できる。来日した韓国の人気アイドルがコンサート後に立ち寄る店としても人気を集めそう。

 アメ村カルチャーの仕掛け人の一人で、同フロアのネーミングから関わったプロデューサーの古谷高治氏は、カルチャー酒場と喫茶の「TANK」も運営する。「大阪にしばらくの間、パルコがなかったので、どうせやるならめちゃくちゃおもしろいことをしようと思った。ネオンには、昭和レトロなネオンのイメージと、新しい心斎橋を起動させるという二つの意味がある。人が集って交流して新しいものが生まれる場をつくり、街に活気がもどるようにしていきたい」と話す。

橋長初代(はしなが・はつよ)/流通ライター:同志社女子大学卒。ファッション専門誌の編集を経てフリーランスのライターに。関西を拠点に商業施設、百貨店、専門店、アパレル、消費トレンド、ホテル、海外進出などの動向を「WWD JAPAN.com」「日経クロストレンド」などに寄稿。取材では現場での直感と消費者目線を大事にしている。最近の関心事は“台湾”と“野菜づくり”と“コロナ後のファッションビジネス”。「リモート取材が浸透すれば、もっと取材先を広げていきたい」

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クラウドファンディングで1億円調達し吸水ショーツを開発した「ベア ジャパン」の山本未奈子CEO  ランジェリー業界の開拓者vol.4

 新型コロナウイルスの感染拡大は、従来の商品やサービスの在り方に変化をもたらしている。対面のフィッティング接客や機能ありきの商品を重視してきた下着業界にも影響を及ぼしているのは言うまでもない。ライフスタイルが大きく変わり、既成概念に縛られない新たな価値観が下着にも求められている。この連載では、コロナ禍に先んじて新領域の商品やサービスを生み出してきた下着業界の開拓者を紹介する。

 第4回に登場するのは、吸水ショーツ“ベア シグネチャー ショーツ(以下、ベア)”を販売する「ベア ジャパン(BE-A JAPAN)」の山本未奈子・最高経営責任者(CEO)だ。2020年6月1日に始めたクラウドファンディングでは45日間で9062人から1億円以上の支援金を集めて話題になった。20年から国内で吸水ショーツの発売が相次ぐ中、“ベア”は、多い日の平均経血量の約3倍(約120m)と圧倒的な吸水量を誇る。20年7月末に自社ECで発売し、21年3月初旬までに4万枚を販売。また、新型コロナウイルスの医療従事者などに約3000枚寄付した。2月には多くの要望に応え、ジュニアライン“ベア ペティート シグニチャー ショーツ(以下、ペティート)”を発売した。
 

――美容家として知名度も実績もある中、吸水ショーツという異業種の商材を開発した理由は?

山本未奈子ベア ジャパンCEO(以下、山本):10年以上美容家として活動し、ビューティブランド「シンプリス(SIMPLISSE)」も展開しているが、最近は起業家として話す機会やフェムテック事業に関する活動が増えてその割合は半々になっている。09年にエムエヌシー ニューヨークを設立した当時から“女性特有の悩みを商品や情報で解決し、女性が自分らしく活躍する社会を作る”という目的を掲げており、「シンプリス」でもデリケートゾーン専用のソープや美容液、セクシャルヘルスのインナーケアアイテムなどを販売している。女性は生理の悩みを無意識に諦めていることも多いと思うが、吸収型サニタリーショーツをはくことで生理の煩わしさから解放され、女性がより活躍できる社会をつくれると思い“ベア”を開発した。近年フェムテック分野が注目され、25年までにその市場は5兆円になるといわれている。現在はジェンダーの平等や女性のエンパワーメントなどが社会課題で、私たちもこの分野にさらに力を注いでいきたい。

――クラウドファンディディングで1億円を集めたが、それは予測できたか?

山本:正直、そこまで反響があると思わなかった。達成したいとの思いから、目標金額は100万円と低めに設定したが、多くても1千万円達成できればうれしいと思っていた。1億円を超える結果を見て、多くの女性が“生理は辛い”という同じ悩みを抱え、新しい選択肢を探しているのだと実感した。

――スタートにクラウドファンディディングを選んだ理由は?

山本:そもそも資金調達を目的にクラウドファンディングを行ったのではない。吸水ショーツという新しい選択肢を多くの人に知って欲しいと思い、啓蒙活動の一環としてスタートした。昨年6月に始めたが、医療に従事する女性に寄贈すると発表したため、コロナ禍で社会貢献をしたいと思う人々やクラウドファンディング自体に興味を持つ人々の支援を得られた。支援金で15カ所の医療機関に“ベア”を寄贈しており、今後は、被災者の支援や養護学校、貧困に悩む子どもらへの支援も行う予定だ。

不安や苦痛から解放されたという声

――印象に残った声は?

山本:防護服の着用や激務でなかなかトイレに行くことができない医療従事者のから多くの感謝の声があり、うれしく思う。また、発達障害のある子どもを持ち悩んでいた母親から、「生理を理解できないためナプキンを替えることも難しかったが、これで安心できる」という手紙をもらったときは心から“ベア”を作って良かったと思った。女性として出生し性自認が男性であるトランスジェンダーに悩む人から「ナプキンを買うのも交換するのも苦痛だったが、解放された」という声もあった。生理用ショーツはリボンが付いたフェミニンなものが多く「“ベア”のシンプルなデザインがいい」という声もある。

――商品開発でもっとも苦労した点は?

山本:工場探しだ。海外の吸水ショーツをはいて満足できなかったこともあり、ナプキンやタンポンと併用しなくても漏れないショーツを作りたかった。10社以上の下着メーカーを回っても、「吸水量がそこまで高いものは作れない」「日本人は清潔好きだから、そんなものを作っても売れない」「通常のショーツ製造の5倍手間がかかる」と相手にされなかった。途方に暮れたが、尿漏れショーツを製造している工場との出合いがあり形にすることができた。その工場は尿漏れショーツ製造の高い技術を持っていた。担当の男性が海外の吸水ショーツが人気という記事を読んで、自社で作った試作品を妻にモニターしてもらっていたそうだ。“製造する技術はあるが、売る技術がない”同工場と、“製造する技術はないけれど、売る技術はある”というわれわれが協力体制を取ることで、お互いを補い会えると思った。“人々の生活を豊かにする”というゴールも共通だ。だから、運命共同体のような体制で新商品の開発に取り組んでいる。吸水ショーツは、1年前は当たり前ではなかったが、今は選択肢の一つになった。それが、私たちが一番挑戦したい革新を体現していると思う。

ドラッグストアやコンビニでも買えるように

――販路や新商品など今後の戦略は?

山本:オンラインを中心に考えていたが、伊勢丹新宿本店のイセタンシードや阪急うめだ本店のメゾン・ド・ランジェリーで販売が始まり、売り上げが大幅に伸びた。実際、手に取れる場が大切だと感じたので販路を増やし、多くの人に知ってもらいたい。価格は6900円、ペティートが6500円と安くはない。一方で、女性が1年間にナプキンなどの生理用品に使用する金額が6500円と言われているので、1年以上使用すればコスパは良いということになる。ゆくゆくはドラッグストアやコンビニ、キオスクなど手軽に買えるようになったらいいと思う。日本の高い技術を海外で広めたいので、アジアへ販路を広げ、グローバルなブランドにできればと思う。

――今後のフェムテック市場をどう見るか?

山本:吸水ショーツを展開するブランドは今後も増えていくと思うが、それにより、吸水ショーツが選択肢として確立されればいい。現在はデイリーモデル、尿漏れ用と新しいラインの開発を行っているが、私たちがそのマーケットリーダーになるためにはここ1年が勝負だ。生理や更年期、セクシャルヘルスなどが一般的なトピックスになり、女性の生活が豊かになるような商品がたくさん生まれればいいと思う。フェムテック市場には、20代、30代の事業者がいる中で、40代である私たちだからこそ発信できることもある。これから先の発展が楽しみだし、自社ビューティーブランド「シンプリス」ともシナジーを図りながら第一線で取り組んでいきたい。

川原好恵:ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルス分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身

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「ジュンヤ ワタナベ」が28年ぶりに東京でショー ライブの熱気を纏う“不滅のロック魂”

 渡辺淳弥が手掛ける「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン(JUNYA WATANABE COMME DES GARCONS)」は2021-22年秋冬コレクションのファッションショーを3月15日に行った。従来パリで発表している同ブランドが東京でショーを行うのは、1993年4月の93-94年秋冬シーズン以来28年ぶり。会場となった東京・豊洲の大型ライブハウス、豊洲PITに入場するとギターやドラムセットが舞台上に並んでおり、今にもライブが始まる雰囲気だ。

「ヴェルサーチェ」と初コラボ ロックTシャツとプリントをミックス

 ショーは米ロックバンド、エアロスミス(Aerosmith)の楽曲「Back in the Saddle」のライブ盤をBGMにスタート。スモークの中から出てきたファーストルックのモデルは、背面に「ヴェルサーチェ(VERSACE)」の代表的なバロッコ柄のスカーフ地を配したエアロスミスのロックTシャツに、サイドプリーツを加えたジーンズを着用。顔は黒く囲んだアイメイクに鼻ピアス、チェーンネックレスを合わせたロックガールで、曲に合わせて踊るようにポーズをとった。

 キーアイテムはロックTシャツだ。エアロスミスに続いて、クイーン(Queen)、ザ・フー(The Who)、キス(KISS)、デフ・レパード(Def Leppard)、セックス・ピストルズ(Sex Pistols)、AC/DC 、ブラック・サバス(Black Sabbath)、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)、ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)など、主に1970年代に名を馳せたロックバンドのアルバムジャケットやロゴのモチーフを使用している。目を引くスカーフ風のテキスタイルは「ヴェルサーチェ」との初のコラボレーション。6種類の代表的なスカーフ柄を採用し、Tシャツやボトムスを彩った。デニムは「リーバイス(LEVI’S)」との協業で、定番モデルの“501”から37年、47年、66年、77年の4つの時代のモデルをベースに再構築している。「リーバイス」とはメンズの「コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン(COMME DES GARCONS JUNYA WATANABE MAN)」で長年コラボを続けているが、ウィメンズでは初。ウィメンズのデニムブランド「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン デニム(JUNYA WATANABE COMME DES GARCONS DENIM)」からのアイテムとなる。他にもミリタリージャケットやコートをはじめ、スタジャンやネルシャツ、テーラードジャケット、白シャツにネクタイなど、鉄板のロックスタイルに、異素材やプリーツを掛け合わせた。

自己表現を楽しむ“不滅のロック魂”

 フィナーレは、モデル全員が踊りながら一列に広がって一礼。会場にはライブ後のような熱気が漂っていた。渡辺デザイナーはこのコレクションを「不滅のロック魂」と題した。ヘビーメタルやハードロック、グラムロック、サイケデリック、パンクロックなど異なるジャンルを超えて、音楽のように自由に自己表現を楽しむスタイルだ。昨今はコロナ禍でさまざまなライブイベントがキャンセルされ、イベントのオンライン化も進んでいる。ロックの反骨心を借りながら、ミュージシャンたちの情熱を込めた「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン」の服は、人々を強く、前向きな気持ちにしてくれる。

■ショーのセットリスト
1. Back in the Saddle / エアロスミス
2. Seven Seas of Rhye / クイーン
3. Baba O'Riley / ザ・フー
4. Detroit Rock City / キス
5. Photograph / デフ・レパード
6. Anarchy in the U.K. / セックス・ピストルズ
7. Hells Bells / AC/DC
8. Sympathy for the Devil / ザ・ローリング・ストーンズ

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ルンルンが言語化できると「きれい」になれる!? 美容家 × 予防医学博士が考える「マインド・ビューティ」Vol.1

 なぜか(!?)仲良しの美容家と、予防医学を研究する医学博士と考える「マインド・ビューティ」の新連載をスタート!!「肌がキレイになると、心もウキウキ」や、「気持ちが沈んでいると、なんだか疲れているように」は、誰もが経験しているはず。果たして心と美の関係性は?初回は、美容家の深澤亜希に「マインド・ビューティ」に注目し始めた理由を聞きました。

WWD:深澤さんが「マインド・ビューティ」を提唱するようになったのは、いつ頃?そして今の段階では、「マインド・ビューティ」ってなんですか?

深澤亜希(以下、深澤):美容を始めた頃から、「マインドとビューティの関係は深いな」って思っていたんです。キレイになれば、心も晴れます。一方コンプレックスに悩んでいる人は、自分の外見上の違いを「欠点」と捉えがちですよね?ずっとそう考えていたけれど、マインドの話って、特に誌面では言葉にしづらかったんです。どうしても“スピリチュアル”と捉えられてしまうことが多くて……。でも私には、メイクのHow toも大事だけれど、“心持ち”も重要です。「きれい」という言葉の意味は広がっていて、最近は「幸福感」も「きれい」。15年前からずっと考えてきた、心と「きれい」の関係性、「マインド・ビューティ」への興味がますます増しています。

石川善樹(以下、石川):オウム真理教の事件以降、日本ではマインドの話が敬遠されがちでした。でも最近は、その存在を知らない世代も多い。そろそろ「マインド」という言葉も、スッと受け入れられる環境が整いつつある。

深澤:「マインド・ビューティ」を考える上では、「幸福感」と「自分を知る」こと、そして「継続する」ことの3つが大事だと思っています。最近、特に注目しているのは、「幸福感」。若い世代の「幸福感」は、私たち世代より低いと言われていて……。

ルンルンする?ルンルンしない?
理由を言語化すると「きれい」になる

石川:「幸福感」が強い人の方が長生きするのは、すでに知られた事実。人は、概念の世界で生きています。石の上のコケを見て「ほぅ」って思うのは、「侘び寂び」という概念があるから。その概念が無ければ、人は、石の上のコケなんか気にしないでしょう?概念は、それくらい重要なんです。そして概念や感情に関する言葉をたくさん知っている人は、自分の感情に向き合うときの解像度が増してくる。「マインドを磨く」は、「言葉を知る」ともいえます。「ととのう」という言葉が生まれたサウナに、人々は「ととのう」ことを求めて通うようになりました。言葉と体験、双方を知るのが大事です。

深澤:人は、インプットしたものをアウトプットしているもんね。私は、自分を一番「きれい」にしてくれるのは、質問されることだと思っています。いろんな取材で「なぜ、この化粧品なんですか?」や「何がいいんですか?」と毎日聞かれています。聞かれると、考えて、言葉にする。これを繰り返すうちに自分を知りました。自分を一番「きれい」にしたと実感しています。

石川:MoMA(ニューヨーク近代美術館)が開発した、美的感覚を養うプログラムがあるそうです。プログラムでは、いろんなものを見て、「好き」か「嫌い」かを決める。「どちらでもない」はダメなんです。そして「なぜ好きなのか?」もしくは「なぜ嫌いなのか?」を言語化します。それを繰り返すと、自分の偏りが理解できるようになり、嫌いものの良さまで見えるようになる。マインドとは、好きや嫌いと言う感情的なものと、その感情の言語化のように理性的なもの、双方を行ったり来たりする往復作業ですね。

深澤:私は、好きか嫌いかを「ルンルンするか?」「ルンルンしないか?」と捉えています。本当はルンルンするものだけに囲まれていたいけれど、それは無理。しかも身の回りの全てがルンルンするものだと、ルンルンを感じられなくなっちゃうって思うんです。だから理想は8:2。身の回りの8割がルンルンするものであれば、と思っています。

石川:白馬の王子様のように一瞬でルンルンを感じる場合もあれば、サウナやビールのようにルンルンを感じるまで時間が必要なケースもある。そして人は、ルンルンだけだと飽きちゃって、“ルンルン地獄”に陥っちゃう。変化は、あった方がいい。嫌なことがあると、改めてルンルンに気づくこともあるから。

深澤:たまには違う人とデートすると、それまでの人の良さに気づくことがあるのと一緒かもね(笑)。

石川:ルンルンを確かめるため、あえて他に手を出してみる必要性さえあるかもしれない。ヨーグルトは、同じものを食べ続けるより、時々違うものを取り入れた方が新陳代謝が良くなるんだって。

目指すのは「高み」
じゃなくて「奥深さ」

深澤:「肌は保湿」みたいに揺らぐことのない“共通ルンルン”と、そうじゃないルンルンがあるのかな?

石川:ベーシックルンルンだね(笑)。「幸せ」には、万人共通はないかもしれない。でも、大勢が「幸せ」と感じる可能性が高いものはある。1つは、「豊かなつながり」かな?

深澤:SNSが普及して、他者との比較で落ち込む人が増えているように思います。「きれい」という概念さえ一辺倒になっている気がして……。SNSは、「幸福度」をあげるのかな?

石川:普及し始めた頃は、SNSに触れている人の方が「幸福度」は高かったように思います。でも今は、「幸福度」が悪化しているSNSユーザーも多い。特に若い世代は、「高み」を目指すから疲れているのかな?「高み」を目指すと、社会は多様化しないし、競争になっちゃうからツラい。「高み」を目指すと、ピラミッドのような構造が生まれてしまうんです。元来日本には「高み」ではなく「奥深さ」の思想が存在します。神社などを想像してみて。入り口の反対側にある「奥」に向かって、みんなウネウネとした道を進むでしょう。しかも、「奥には何があるのか?」よくわかっていない場合も多いのに(笑)。日本人は「奥深さ」の思想を持ちつつ、その奥にあるもの、つまり大事なものは言わないんです。それが結果、多様性につながった。「マインド・ビューティ」とは、美の「奥深さ」を探ることかもしれないね。今はまだ、美の「高み」を見せつけられている場面も多いのかもしれない。

深澤:人は、衰えます。そして40歳を過ぎた頃から、人はそれに抗うようになります。これもやっぱり「高み」を目指しているからかもしれません。でも、それは「きれい」なのでしょうか?私は、そうは思わない。40を迎えて、豊かに生きたり、仕草が素敵だったりを「きれい」と思うようになりました。でも、やっぱり周りの40代以降は、皆、悩み始めるんです。だから私は美容家として、「美」の幅を広げたい。すでに変わってきたけれど、もっと変えたいと思っています。

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BiSHが「ネグレクト」に登場! 東コレ頂上決戦“T-1グランプリ”予選第4夜

 2021-22年秋冬シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」が15日に開幕しました。国内外から51ブランドが参加し、4割がリアルショーを行います。「WWDJAPAN.com」では、今シーズンのベストブランドをユーザー投票で決定する“T-1グランプリ”を開催!それに先駆け、記者3人がその日に発表したブランドの中から独断でグランプリ候補を選出します。今日のノミネートブランドはこの3つだ!


東コレ取材2シーズン目
現場取材担当の美濃島
「ネグレクトアダルトペイシェンツ(NEGLECT ADULT PATIENTS)」

見どころ:“違法野外レイブ”をテーマにしたエンターテインメント満載のショーを開催。巨大なドームとレーザー演出、客席の折りたたみチェア(オリジナルバッグに入れて持ち帰り可能!)、マスクの上から付けるバンダナなど、世界観を作るために手間とお金を惜しまない姿勢があっぱれ。デニムとTシャツのみのラフなルックからラメ入りのチェック柄セットアップでバチバチに決めたモデルまで、テイストは幅広いのに不思議とまとまって見えるのは、“レイブ”という個性の坩堝のようなテーマのおかげ。BiSHメンバーによるおなじみの“麺食い“演出は、「寝る人の隣で出前の盛りそばをすする」というもので、渡辺淳之介デザイナーは「よくあるシーンじゃないですか?」と話してましたが、全く共感できませんでした。


東コレ取材歴5年
ニュースデスク大塚
「ハイク(HYKE)」

見どころ:「ハイク(HYKE)」が登場すると東コレが急に引き締まりませんか?そう思ってしまうぐらい、高いクオリティーのクリエイションを毎シーズン安定的に見せてくれます。今シーズンもミリタリーやアウトドアを軸に、英国調のかっちりしたコートやセットアップ、牧歌的なざっくりフェアアイルニット、腕や脚を覆うパーツウエアを差し込んで凜としたスタイルを完成させています。タフな機能素材のアウターに柔和なシルエットを採用したり、命を守るカラビナ&ロープをキャッチーなベルトとして提案したり、マウンテンシューズにシャープなラストを用いたりと、相反する要素を軽やかに衝突させる“抜き”のセンスに毎回感心するんですよ。男性の僕も欲しい物だらけでした。


若手随一の“ファッションバカ”
東コレ初取材の大澤
「ミーンズワイル(MEANSWHILE)」

見どころ:14年にスタートした「ミーンズワイル」は、テーマ“FORM FOLLOWS FUNCTION , FUNCTION FOLLOWS FORM”を掲げてコレクションを発表。前シーズンのテントを意識した立体的なフォルムの要素は抜け、フロントに2本のファスナーを用いたMA-1やマウンテンパーカ、ハンティングベスト、ムートンジャケットなど、リアルで着やすい機能的なアイテムを数多く提案しました。そのほかリフレクターのラインが特徴の異素材を組み合わせたスエットや、木目調のジャケットとラップパンツを合わせた新しいスタイルも提案しました。個人的にはオレンジのダウンジャケットにケープがレイヤードされたルックがツボでした。

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金属アレルギーにも対応、高純度・高硬度のシルバージュエリー「サラース」始動

 「金属アレルギーの人の助けになるジュエリーを作りたい」――「アヤミ ジュエリー」を手掛けるジュエリーデザイナーの宗形あやみは、純度99.9%の純銀にこだわったジュエリーブランド「サラース(SARARTH)」を立ち上げ、4月30日に自社ECで発売する。これまで、シルバーの高純度と高硬度を両立するのは難しいとされていたが、その加工技術を開発して特許を取得。実は、宗形の両親はジュエリーの製造・販売を行うミスティーコレクションを営んでおり、同社が「アヤミ ジュエリー」を手掛けている。宗形は大手SPA傘下のアクセサリーブランドのデザイナーとしても活躍しているが、「サラース」立ち上げを機に、家業に専念する。

WWD:「サラース」を立ち上げたきっかけは?

宗形あやみデザイナー(以下、宗形):実は私自身金属アレルギーなんです。どうしても同じ境遇の人の助けになるジュエリーが作りたいと3年前から本格的に金属アレルギーについて調べ始めました。どうにかできるんじゃないかと。そうすると、ピュアシルバーが実は肌に優しい貴金属であることを知ると同時に、ジュエリーとしてピュアシルバーを用いるには硬さが必要であることも分かりました。一般的には銅などを混ぜて合金化することで硬さを担保しますが、それによって金属アレルギーが引き起こされる可能性があるんです。そのため、ピュアなまま硬さを保つための研究開発を兄(家業を継いだ宗形幸太郎代表)と長年一緒に取り組んでいた職人さんとともに始めました。1年に及ぶ試行錯誤の結果、独自の表面硬化処理方法を発見。ピュアシルバーを一般的な銀製品(SV925合金)やプラチナ製品(Pt950合金)と同等の表面の硬さに維持することに成功しました。

WWD:高純度・高硬度の両立は初めての技術ということでしょうか。

宗形:そうです。一般的に、金属加工ではピュアシルバーは硬くなっても自然に戻ってしまうと言われていますが、この製法で作ったピュアシルバーは元の硬さに戻りません。研究所や専門家にも相談してみたところ、口をそろえて不思議な現象だと言われ、これで私と同じ境遇の方たちの助けになるかもしれない!と、運命のように感じ、ブランドを立ち上げようと決心しました。

WWD:ブランドコンセプトを“PURE SILVER FOR SKIN, PURE LIGHT FOR ALL”とした意図は?

宗形:高純度のシルバーで肌に寄り添う光、を提案したいという思いを込めました。純銀は肌に優しい鉱物であり、地球が私たちに授けてくれたものでもあります。シルバーはこれまで山を切り崩して採掘されていたけれど、これ以上、山を崩すことのない仕組みを作りたいとも考えています。

WWD:シルバーの調達先は?

宗形:一般家庭や企業からリサイクルしたシルバーを使用しています。

WWD:これまでなかったピュアシルバーを加工するのは難しいのでは?

宗形:鋳造も磨きも一般的なSV925合金の常識が通用しないため、安定的に量産できるまでにとても時間がかかりました。ピアスポストを取り付けるには溶接材(ろう材)が必要ですが、これを使用すると製品の純度が落ちてしまいます。そのため、ピアスポストは宝石の石留めをする技術を流用しています。とても手間がかかりますが、こだわりの一つです。チェーンは、まだ一種類しか作れていないので、デザインの幅を広げるためにも今後の課題です。

WWD:これまでに扱ったことがない素材となれば、生産体制を整えることも大変そうですね。

宗形:はい。一般的な銀合金(SV92など)に使用される銅は、そばでいうところのつなぎ粉のような役目を持っています。ピュアシルバーのみの製造は十割そばのように素材に滑らかさを持たせることができません。そのため、一つの製品を作る際に最低4つは鋳造してその中で最も質が良いものだけを使用しています。これはうれしい誤算でしたが、余った製品はそのまま別の製品に再利用できます。これもピュアシルバーだからこそできることです。

WWD:デザインへのこだわりは?

宗形:ピュアな鏡面を生かすほかにないデザインを目指しました。「サラース」は全てを映し出すピュアな鏡のように見るままの世界を映し出します。自然の光が映し出されて輝く、というコンセプトを表現したいとも考えました。自然の荒々しさのような強さ感じられるフォルムラインと地球を優しさで包み込むような花などの植物の生命の宿りから着想を得た丸みを帯びたフォルムライン。この2つの思いを込めてデザインしています。

WWD:鏡面のような輝きはどのように出すのですか?

宗形:鋳造と同じぐらいに磨くことも難しい素材です。純銀を鏡面加工することは熟練の職人のみが可能にしてくれます。

WWD:この輝きはキープできるのですか?

宗形:家庭用の中性洗剤で洗ってもらえれば、輝きは戻ります。硬度が高いとはいえ、シルバーなので傷付きやすく、傷も味として楽しんでもらえればうれしいです。

WWD:パッケージにもこだわったとか?

宗形:プラスチックは不使用、包装紙やパッケージ類は環境への負荷に配慮し全て自然由来の環境対応紙を使用しています。紙素材パッケージでどのような表現ができるのかと考え、紙に精通した京都西陣の「かみ添」店主、嘉戸浩(かど・こう)氏にピュアシルバーをイメージした唐紙の作品を依頼しました。穏やかな質感や光を受けて輝く雲母(きら)の美しさを手に取ったときに感じてもらいたいです。

WWD:不要になったジュエリーを引き取る還元プログラムもあるとか?

宗形:金属アレルギーで付けられないなど不要になったジュエリーを送っていただければ、ポイントとして還元します。回収したジュエリーは、日本自然保護協会が行っている絶滅危惧種や自然環境を守る活動に使用されますが、シルバーに関しては、ゆくゆくは、新たな「サラース」のために活用できればとも考えています。

WWD:今後の展望は?

宗形:他業種に高硬度のピュアシルバーを活用できないか模索するつもりです。業界問わず、工業系やカトラリー業界なのかもしれないですし、面白いと思っていただき、私たちのピュアシルバーに救われる方がいるならば率先してさまざまな領域に役立てたいです。

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「ミスタージェントルマン」に感涙 東コレ頂上決戦“T-1グランプリ”予選第3夜

 2021-22年秋冬シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」が15日に開幕しました。国内外から51ブランドが参加し、4割がリアルショーを行います。「WWDJAPAN.com」では、今シーズンのベストブランドをユーザー投票で決定する“T-1グランプリ”を開催!それに先駆け、記者3人がその日に発表したブランドの中から独断でグランプリ候補を選出します。今日のノミネートブランドはこの3つだ!


東コレ取材2シーズン目
現場取材担当の美濃島
「ソワハ(SOWAHA)」

見どころ:「ソマルタ(SOMARTA)」の廣川玉枝デザイナーが立ち上げた“現代の和装”を提案するブランドです。京都の友禅染め企業と組んでデジタルプリントした、自然風景のグラフィックが段違いに美しかった。山合いの夕暮れや崖から落ちる清流を切り取ったのは、「自然を慈しむ日本人の感性をデザインに落とし込むため」だそう。菊の花や牡丹を織りで表現した無地のテキスタイルも独特の凹凸で目を引きました。こんな服を着た女性を街で見かけたら見とれてしまいそう。玉川デザイナーは香川の工場と組んだブランドもスタートさせるなど、日本の伝統や技術を広める活動を意欲的に行っています。


東コレ取材歴5年
ニュースデスク大塚
「ミスター・ジェントルマン(MISTERGENTLEMAN)」

見どころ:パンデミックで人類が直面している危機や不安を乗り越えた先の愛や平和を願うコレクションでした。異素材ハイブリッドや盛り盛りにレイヤードする東京ブランドらしいミックス感が強く、ベージュやパープルといったカリーリングが優しいスタイルでした。素材感やモチーフなど要素はたくさんなのに、スタイルとして軽やかに成立させてしまうバランス感は本当に上手い。ベーシックやトラッドが中心だった初期の軸は残しつつ、世界観を拡張していく姿勢がたくましかったです。今年1月に逝去したオオスミタケシデザイナーが「フェノメノン(PHENOMENON)」で使っていた“レモンツリーカモ”と“ブルータイガーカモ”がタイツに差し込まれていたのが涙涙。いつもと変わらない「ミスター・ジェントルマン」に感動しました。


若手随一の“ファッションバカ”
東コレ初取材の大澤
「ディ_カフェイン オム(DE_CAFFEINE HOMME)」

見どころ:日本出身の韓国人デザイナーのアビズモ ジョー(Avizmo Jo)が2018年にスタートしたメンズブランド。今シーズンはサテン生地で仕立てたチェスターコートをデニムジャケットにドッキングしたり、オレンジやグレーのスラックスパンツにコーティングを施したりと個性豊かなピースが目立ちました。個人的にはブルーで染めたベロアのタキシードが着てみたい。安っぽさもなく、日本のマーケットをに合わせているわけでもなくて、自分の作りたいものを届けているところに惹かれました。最近では韓国アイドルも着用して徐々に人気を集めていますし、これからが楽しみです。

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「フミト ガンリュウ」が「リトゥン」とコラボショー 初の東コレで示した存在感

 「フミト ガンリュウ(FUMITO GNRYU)」が2021-22年秋冬コレクションを東京・新国立美術館で発表した。6月にスタートする展覧会「ファッション イン ジャパン 1945-2020 —流行と社会」との連動企画で、文化庁や日本芸術文化財団のサポートを受けて実現した。

山縣良和が空間演出
三角のオブジェが出現

 同ブランドは21年春夏までパリコレクションに参加しており、東コレは初参加。セールスを担当するセイヤナカムラ2.24の中村誠也CEOがショー全体をディレクションし、空間演出は「リトゥンアフターワーズ(WRITTENAFTERWORS)」の山縣良和デザイナーが担当するというコラボも話題となり、今シーズンの目玉の一つとしてメディア編集長や業界の大御所たちが会場に訪れた。

 会場には岐阜県・白川郷の合掌づくりを模した三角形のオブジェと、ジャケットを土に埋めたガラスケースが置かれていた。これらは「生成と分解からなる衣服の循環をテーマにした」(山縣デザイナー)もので、三角形のオブジェには養蚕や和紙づくりなど白川郷を象徴する画像が貼られていた。

キーアイテムを多様な色に
デジタルならではの仕掛けも

 コレクションには、構築的なパターンのダッフルコートやテーラードのディテールを採用したダウンジャケット、脇下から裾までジップを配したコーチジャケットなど、過去に披露したアイコンアイテムが登場。それらを赤や青、黄など別のカラーで採用したり、スタイリングに変化をつけたりして、テーマの“必然的多様性”を表現した。全アイテムに載せたQRコードは実際に読み取り可能で、ブランドサイトに遷移する仕組み。機能の一つとして用いて、記号としてロゴを消費するブームに疑問を示している。そのほか、ノルディック柄を編みではなくプリントで表現したニットなど、「フミト ガンリュウ」らしいクリエイションが光った。

 “多様性”はショーの配信方法にも反映した。会場には5台のカメラを置き、「楽天 ファッション ウィーク東京」の公式サイトと「ファッションスナップドットコム(FASHIONSNAP.COM)」「ベース(BASE)」の3つのプラットフォームから異なる画角で映像を配信。ランウエイには6人組ガールズグループBiSHがモデルとして登場し、ハンディーカメラで客席やバックステージ、囲み取材の様子までを映すなど、複数の視点でランウエイを切り取った。ショー終了後にはBiSHのライブパフォーマンスを生配信し、彼女たちが着用していたTシャツをオンラインで即販売するなど、デジタルならではの企画も行った。

 最後に丸龍デザイナーに東コレに参加した経緯を聞くと「機会をもらったから挑戦した」と淡々と答え、こう続けた。「僕は社会に必要なものを作っている。でも夢を語るだけではなく、ビジネスもしっかり成功させるのが僕のスタンスです。今はまだ一部の人にしか受け入れられていないかもしれない。でもその裾野をどんどん広げていき、全ての人に刺さるブランドに成長させます」。

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「コーチ」が新ビジョン“コーチ フォーエバー”に込めた環境への思い

 1941年にニューヨークで創立され、今年で80周年を迎えた「コーチ」は、環境に配慮して制作した2021年スプリング・コレクション“コーチ フォーエバー”を発表した。スチュアート・ヴィヴァース=クリエイティブ・ディレクターは、同コレクションを語る上で「実践」「学び」という言葉を繰り返し、リサイクル素材や“ナチュラルレザー”の使用、アーカイブの復刻、“アップサイクル”などをコンセプトにデザインをすることで、環境やコミュニティーへの責任を示した。ここでは、挑戦しながら進化し続ける「コーチ」の新たな一面を象徴する“コーチ フォーエバー”の特徴を紹介する。

過去のコレクションピースや
リサイクル素材で作ったバッグ

地元ニューヨークへの愛を込めた
カプセルコレクション

 地元ニューヨークの職人とのコラボレーションも初の試みとして実施。職人技術の魅力を届けるため、家族経営の小さなニット工場や刺しゅう工房に依頼して“A Love Letter to New York”と題したカプセルコレクションを“コーチ フォーエバー”の中で制作した。“NEW YORK”の文字やてんとう虫、花などを刺しゅうしたアウターウエアやバッグを展開している。

 日本の店舗でも、今シーズン販売するレザーバッグなどの一部アイテムに、好みの刺しゅうを施せるサービスを期間限定で実施する。アルファベットを自由に組み合わせたイニシャルやお気に入りの言葉、または「コーチ」を象徴する9つのモチーフから選ぶことができる。刺しゅう糸は10色。(※詳細は、記事の最後にあるINFORMATIONをチェック!)

歴代の人気アイテムも
アップデートして復刻

スチュアート・ヴィヴァースが語る、
“クリエイティブとは、前進すること”

WWDジャパン(以下、WWD):今シーズンのコレクションの着想源は?

スチュアート・ヴィヴァース=クリエイティブ・ディレクター(以下、スチュアート):当初は、ニューヨークのアッパーイーストサイドをインスピレーション源にしていた。だが、新型コロナウイルスの感染拡大によって状況が一変し、私たちが取り組んでいたことの多くが、無意味でちっぽけに感じられたんだ。だから従来とは違う視点で制作しようと自然な流れで方向転換し、環境への責任やコミュニティー、前向きな姿勢をコレクションを通じて伝えたいと考えた。直感的に、自分自身のアイデアをさらに深く掘り下げる必要があると感じたんだ。

WWD:昨年の夏には双子の父親になるなど、プライベートでも変化があったが、その影響は?

スチュアート:親になったことで、次世代のためにより良い未来を作っていきたいという気持ちがさらに強くなった。そして、今シーズンのコレクションで表現したかった“環境に配慮したものづくり”は、より急を要するものだと実感した。

WWD:テーマを“コーチ フォーエバー”にした理由は?

スチュアート:「コーチ」のレガシーとファッションのライフサイクルという意味を込めた。本来なら廃棄される素材の再利用や、リサイクルを前提とした循環型デザインを意識した。また、若い世代が50〜60年前の「コーチ」のビンテージバッグを持っている姿を何度も目にし、ブランドが永く続いていく願いを込めて“フォーエバー”という言葉で表現したんだ。

WWD:“環境への責任”という言葉が印象的だったが、その責任をどのように捉え、打ち出そうと考える?

スチュアート:コレクション制作の過程で気付いたのは、私自身がサステナビリティについてもっと学ぶ必要があるということだ。最初から完璧でなくていい。環境に配慮したデザインプロセスによって環境負荷がどれくらい軽減されるかなどを、私たちチームは常に考え続け、実践することで学んでいる。固定観念を捨てて、サステナビリティに対してオープンな姿勢で取り組んでいきたい。そこで、私たちが描くビジョンを、環境や自然、お互いに対する“責任”という言葉で示した。

WWD:具体的に“責任”をどうアイテムに落とし込んだ?

スチュアート:今シーズンは、アーカイブの復刻や“アップサイクル”の手法、リサイクル素材やオリジナルの“ナチュラルレザー”を取り入れたコレクションを制作した“。ナチュラルレザー”は、イタリアの工場を訪れた際にオーナーから「祖父の代から受け継いでいる技術で、素材を埋めると土に還る」と聞き、レザーから始まった「コーチ」のルーツと重なった。だからそのレザーを用いて新しい「コーチ」を表現したいと考えたんだ。

さらに、“責任”は生産工程全体も指している。今回新たに挑戦したのが、コミュニティーへの還元だ。ニューヨークはパンデミック初期、厳しく苦しい状況にあった。そこで、地元のメーカーを支援するために“、A Love Letter to New York”と題したカプセルコレクションも“コーチ フォーエバー”の中で発表した。職人たちが、アイテムに刺しゅうを施したり、アポロのセーター、キース・ヘリングのTシャツ、モトジャケットなど、最近のコレクションからお気に入りのアーカイブピースを制作したりした。今までになかった新しい試みで、ニューヨーク発の素晴らしさを証明するものに仕上げることができた。

WWD:具創立80周年を迎えた「コーチ」の今後のビジョンは?

スチュアート:今の時代をとにかく生きること。適切なものとつながり、正しいと思うことを信念を持って実践していきたい。この1年で物事が急速に変化した。私たちはそんな世界の状況に目を向けながら常に実直であり続け、リアルでオーセンティック、かつオプティミスティックな「コーチ」を進化させる。もちろん“コーチ フォーエバー”のコンセプトも継続させ、さまざまなテクニックを研究しながら、新たなアプローチを試験的に取り入れていく。クリエイティブとは、前進することだから。

INFORMATION
アイテムに刺しゅうができる期間限定サービスを開催

開催期間:3月12〜31日
開催場所:「コーチ」表参道、「コーチ」銀座、レイヤード久屋通パーク、心斎橋パルコ、大丸札幌の5店舗(要予約)
納期:最大1カ月
価格:ワード(最大10文字・スペースも1文字換算)、モチーフ1点/各5000円

PHOTOS : © 2020 JUERGEN TELLER(LOOK IMAGES)

問い合わせ先
コーチ・カスタマーサービス・ジャパン
0120-556-750

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創業100周年のカミソリ王者「Schick(シック)」の“極”は、悩みや不便を全部解消

 今年で創業100周年、日本国内でもウェットシェービング市場でトップシェアを誇る「Schick(シック)」はこのほど、100年のノウハウを結集した日本だけのオリジナル・フラッグシップモデルの“極 KIWAMI”を発売した。最高のカミソリを提供することで、髭剃りの楽しさ、ひいては自分と向き合う時間の価値を伝える「Schick」は、“極 KIWAMI”の発売に合わせてTVCMも刷新。アニバーサリーイヤーの今年は、人々の多様性をサポートする商品などを続々発売する予定だ。

「どれがいいのか分からない」
人に贈る万能の最高峰ライン

 「Schick」は日本市場に進出してから30年で、国内のシェアで7割を独占。大事なマーケットであるからこそ、近年は4枚刃の“クアトロシリーズ”や、モイスチャー美容ジェル搭載の“ハイドロシリーズ”など、ラインアップを拡大してきた。だが、全てが等しく大事なシリーズだったからこそ、「どれを選んだらいいの?」と悩んでしまう男性がいたのも事実。“極 KIWAMI”は、「自分にあうカミソリが分からない」や「何を選んだら良いのか迷っている」男性に贈る、最高峰と呼べるフラッグシップモデルだ。

 最高峰モデルの“極 KIWAMI”は、ブランド生誕から現在に至るまでの100年に及ぶノウハウを結集している。まずは日本の先駆けとなり、その後も改良を重ねているチタンコート5枚刃を搭載。独自の「衝撃吸収テクノロジー」が圧力を分散し、「フリップ式トリマー(TM)」により、もみあげや鼻の下のキワまで簡単に整えられる。アイテムは定番ともう一つ、カミソリ負けなどの理由でウェットシェービングに苦手意識を持つ人にオススメの“極 KIWAMI 敏感肌用”の2種類だ。

CM刷新!! バーバーで働く
本田翼が髭剃りの楽しさを伝授

 “極 KIWAMI”と共に髭剃りの楽しさや自分と向き合う時間の価値を伝える「Schick」は3月17日、大刷新したTVCMの放映をスタートした。バーバーに通う男性に、理容師が“極 KIWAMI”で多様な髭剃りの楽しさを教えてくれるというストーリーをハッピーな世界観で表現している。理容師役を務めるのは、女優の本田翼。そして、バーバーに通うのは俳優の大倉孝二と伊島空。大倉孝二はすべての髭をスッキリ剃って、伊島空は顎髭だけを残してと、それぞれ異なる髭スタイルを楽しむ様子を見せることで多様性を表現する。

 “大人のちょっといいもの”をイメージした“極 KIWAMI”は、深い艶のあるブラック。そして“極 KIWAMI 敏感肌用”は、光沢を抑えたマットな質感のシルバー。こだわりのカラーリングでも、毎日のルーティンである髭剃りの時間をプレミアムなひと時へと演出する。

「刃物だから」と諦めていた
不便なパッケージを
サステナブルに改善

 男性なら一度は、ドラッグストアなどで購入したカミソリの開封に一苦労したことがあるだろう。丈夫なのにすぐ捨ててしまうプラスチックに、“罪の意識”を感じている人もいるかもしれない。

 そこで「Schick」の“極 KIWAMI”シリーズは、紙製パッケージを採用。日本に上陸してから60年以上というブランドには高齢のファンも多く、誰もが開封しやすい設計を実現した。国内だけでも毎年数百万本が売れるブランドの商品パッケージを紙製に切り替え、地球への環境負荷も軽減する。シェアNo.1だからこそ、取り組みのインパクトは大きい。もちろん最初は本体、その後は替刃を買い続ければ、それもまた地球に優しい。

創業100周年の「Schick」から
目が離せない

 「Schick」の誕生は、今から100年前。創業者のヤコブ・シック(Jacob Schick)は1921年、ブレード(刃)が替えられるカミソリ“インジェクター”の原型とも言うべき、充填式レザーを開発した。以降、カートリッジタイプの源流であり複数刃のカミソリの契機ともなった“スーパーⅡ”、スキンガード機能搭載の5枚刃“ハイドロ5”などラインアップを拡充し、現在に至っている。“ハイドロ5カスタム”の2018年2月~20年12月までの累計出荷本数は、約248万本。大ヒット商品となった。

 創業100周年の今年は、人それぞれの多様性を大事にする時代と呼応し、多様なスタイルとあらゆるニーズに応える商品やサービス、コミュニケーションを展開するという。“極 KIWAMI”は、その第1弾だ。

問い合わせ先
シック・ジャパン お客様相談室
03-5487-6801

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「SK-II」初の日本事業専任グローバル バイスプレジデントが語る、コロナ禍のブランド・ビルディング

 「SK-II」は昨年10月、ブランド初のポジションとしてグローバル バイス プレジデント 日本事業統括を新設し、P&Gビューティ部門で20年以上のキャリアを持つ荒尾麻由氏が就任した。直近3年はグローバルのブランド体験・リテール体験の改革を進めてきた同氏に、今後について聞いた。

WWD:日本事業を統括する新ポジションができた経緯は?

荒尾麻由プロクター・アンド・ギャンブル・インターナショナル・オペレーションズ SK-II グローバル バイスプレジデント 日本事業統括(以下、荒尾):「日本は『SK-II』の発祥の地であり重要な役割を担う市場です。日本の消費者に愛され続けるブランドであることがグローバルでの成功に大きく寄与するという戦略的観点から新設しました。営業とオペレーションのリーダーがいることに変わりはなく、従来の組織に新ポジションが加わりました。

WWD:託された最大の役割・任務をどう捉えているか?

荒尾:P&Gに入社して21年目になりますが、長年ビューティ部門を歩んできました。キャリアとして一番長いのが「SK-II」になります。ここ数年はお客さま起点のブランド体験・リテール体験を改革する責任者を務めてきたので、その延長で「売るのではなく、役に立つ」という視点に立った愛されるブランド作りが使命です。

WWD:日本の化粧品業界では、スマートストアの取り組みの先駆けとして注目された。

荒尾:リテール体験の改革は、お客さまにとっての悩みや課題が出発点。2018年に「FUTUREX Smart Store by SK-II」をオープンしましたが、当時はお客さま、特に若い世代にとって日本の伝統的な化粧品売り場やカウンターはハードルが高く、「見た目で買うか買わないか判断されているんじゃないか」「座ったら何か買わされるんじゃないか」など、ストレスやプレッシャーを感じているというインサイトがありました。さらに今の時代、消費者はショッピング前に商品のことを調べ、美容部員より知識を持っている人もいたり、かと言って自分の肌のことを分かっていないから何を使ったらいいのかも分からずセルフの店舗では物足りないと思ったりしている方もいたんです。それらの解決策として開発しました。

WWD:スマートストアの今後の展開は?

荒尾:ポップアップストアからスタートし、得た知見を実店舗に導入してきました。初代スマートストアの肌測定器「マジック スキャン」は電話ボックスぐらいのサイズでしたが、改良を重ねて小型化。鏡台の大きさになって、阪急うめだ本店、大丸心斎橋店に設置しています。肌測定器を肌にあてて美容部員が撮影するというプロセスを経ずに肌測定ができます。今はさらに持ち運びやすい「ミニ マジック スキャン」も開発し、イベントなどで試験的に導入しています。コロナ禍の非接触ニーズにも応えるツールなので、多くの人に体験していただきたいです。

WWD:米ラスベガスで開催される世界最大級のIT見本市「CES2019」に出展し話題になった。化粧品メーカーの出展は多くないが、狙いは?

荒尾:「CES」はテクノロジーの企業が最新の技術を発表する場ですが、テクノロジーは使われてこそ。特に消費者が関わるテクノロジーは、化粧品メーカーがそれを使うとどんな体験を生み出せるのか発信することに意味があると考えました。反響はとても大きく、ブースの前には行列ができるほどで、自分の肌について知りたいというニーズの高さを実感。単純に体験が楽しいと感じていただいているのが、大きな学びになりました。

WWD:日本事業統括としての一年目の取り組みは?

荒尾:「SK-II」は常にピープル、パーパス(目的)、ピテラの“3P”を大切にしてきました。これらを軸に、お客さま起点のオペレーション作りをすることは変わりません。“ヒューマンなブランドになる”という目標に向け、お客さまとの絆を築き未来を育むこと。ブランドの信念でありメッセージとして掲げている“Change destiny”の通り、肌の運命を変え、人生を変える勇気を持っていただく手伝いをしたいと思っています。地球の運命にもポジティブに貢献したいです。

WWD:“ヒューマンなブランド”とは?

荒尾:広告なども含めて発信するメッセージ、実店舗での体験、製品体験、ブランドの全ての体験において消費者目線でヒューマンなブランドであらねばと思っています。コロナで生活が一変してソーシャル・ディスタンスが叫ばれる一方、ソーシャル・コネクションも強まりました。社会や環境の意識が高まる中で、コミュニティーや地球環境にどう役立つか、そこにも“ヒューマンさ”を発揮することが求められます。若い世代はパンデミックによって、より一層きちんと信念を持ち行動するブランドを選ぶようになりました。信念に従ったブランド・ビルディングと、リテール体験の改革を実行し続け、ブランドを育てたいと思います。

WWD:コミュニティーや地球環境への貢献に関して具体的施策は?

荒尾:例えば昨年は中国で人工呼吸器を寄付したり、日本では“フェイシャル トリートメント エッセンス”を医療従事者やオリンピックアスリートに寄贈したりしました。そのほか「SK-II」の生産拠点である滋賀工場では、通常は化粧品の製造のみですがマスクの製造も行いました。店頭での空き容器回収やリサイクルガラスの活用、滋賀工場における再生エネルギーの利用や排水への配慮など、製造過程から消費者を巻き込むところまで、小売店ともパートナーシップを結びながら取り組んでいます。

WWD:消費者への発信は?

荒尾:こういう時代だからこそ、一層「#ChangeDestiny 運命を、変えよう」という「SK-II」の信念をお伝えし、日本の女性を取り巻くさまざまなプレッシャーに寄り添い、一歩を踏み出すお手伝いをしたいと考えています。昨年は水泳の池江璃花子選手とパートナーシップを結び、“ありのままの自分”をテーマにメッセージをつづったフォトダイアリーを公開しました。「運命は自分の力で変えられる」という、今求められる希望やポジティブさを発信しました。また卓球の“タカマツ”ペアの高橋礼華選手が現役引退を決めたことを受けて、自身の運命を変える決断をサポートするトリビュートとして、心の絆の強さをたたえる動画を配信しました。世の中は自分ではコントロールできないことが次々起こるから、自分でコントロールできるものにフォーカスする人が増えていると感じます。肌はそれに当てはまり、スキンケアへの関心は衰えることなく、むしろ高まっています。そうしたニーズに応えながら、今後もそのときどきの消費者の心に寄り添ったメッセージを発信したいと思います。

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「以前から厳しい売り上げ、それがコロナで“とっ散らかって”……」 業界の悩みを「心に火を灯して」解決しますVol.2

 ファッション&ビューティ業界は「変革」を謳っているけれど、実は「どう変わったらいいのか?」さえ見つからない人はいませんか?目指す姿は見えているけれど、実は迷っていたり、くじけそうになったりしている人はいませんか?そんな「登るべき山」が見つからなかったり、山は見えているけれど道を照らすトーチの火が消えそうだったりのアナタに、人の「心に火をつける。」ことを目指す神保拓也トーチリレー代表取締役“隊長”が向き合います。

 2回目の「心に火をつけたい」と願う相談者は、とあるブティックのディレクターBさん。数字しか見ない上司、「頑張ります」しか言ってくれない同僚、そして厳しい売り上げ……。悩みが“とっ散らかっている”と話す彼女の心に、登るべき山に向かうためのトーチの火を灯します。

神保拓也トーチリレー代表取締役“隊長”(以下、神保“隊長”):早速、今、何に悩んでいるのか、教えてください。

Bさん:以前からずっと「しっくり来ない」状態だったところ、新型コロナウイルスが蔓延して、頭の中が“とっ散らかって”いるんです。

神保“隊長”:どう、“とっ散らかって”いるんでしょう?

Bさん:全体的に、です。私は、店舗を統括する立場。スタッフの頑張る意欲や、私についてきてくれる意識は高く、スタッフとのコミュニケーションが足りていないとは思いません。ただ「みんな、同じ方向を向いているの?」と問われると、そもそもズバッと「この方向に進みたい!」と言い切れないんです。日々は売り上げも厳しく、スタッフが望むリーダー像を体現できているのか不安です。ショップは、アパレル経験者がいない中でスタートし、現在は数店舗とEC。顧客管理や在庫管理もわからない状態から模索を続け、いまに至っています。だから今のように迷っても、相談できる人が社内にも社外にもいないんです。これが、根本的な問題なのかもしれません。ロジカルな解決策に辿り着かず、複数の頭で考えたいと後輩に相談しても「頑張ります」以上の答えはありません。一方役員は、数字しか見ない。本当に“放置プレー”なんです。最近は「このままだと、閉店するしかない」と言われることもあります。

神保“隊長”:役員の方は、閉店しても構わないと思っているのでしょうか?

Bさん:気分屋なところがあって、数字が落ちると強く当たるんです。「潰したい」ワケではないでしょうが、売り上げは本当に厳しくて……。プライベートブランドも計画しているのですが、店舗数が減ると売れる数も減少するので、計画そのものが“おじゃん”。最近は、閉店の話が具体的になっています。

神保“隊長”:閉店で一番困るのは、経営陣だと思うのですが……。

Bさん:自分たちの“想い”がないんだと思います。経営者として「これだけ赤字が続くと無理だよ」という話は、「いよいよ」という局面でしか言ってくれません。売り上げが良いときは何も言わないのに、落ちると怒られる。そして私たちは数字の読み方を教えてもらっていないので、正直わからないんです。言われて気づくことも多く、「もっと早く教えて欲しかった」と思います。上から具体的な話がないから、私たちだけでは突破口を見つけられないんです。

神保“隊長”:後輩に相談という話がありましたが、彼女たちに意見を募るのは、無理難題なアプローチです。経験不足で視野もまだ広くないでしょうし、そもそも問題を“自分ごと化”できるとは思えません。責任を負っていない人に「何かある?」と聞いても、意見はなかなか返ってきません。「私たちは、こういう山に登りたいの。標高はどのくらいで、現在地はココ。登り始めると、こんなコトが予想されるけれど、どう思う?どんな登山グッズが必要?」と聞けば、考える軸が存在するので意見が出てくると思います。でも「この山に登りたい」がボンヤリしているタイミングで「どの山に登りたい?」と聞かれるのは、とてもシンドい。スタッフをいたずらに追い込んでいる可能性があります。ただ、お店のホームページやインスタグラムを見る限り、みんな仲良く、裏表がないカンジですよね?

Bさん:それは、自慢できます。

神保“隊長”:だとするとスタッフは、Bさんの悩みに薄々気づいていると思います。でも何もできず、「頑張ります」しか言えない。今の状況で、彼らに期待するのは逆効果かもしれません。まずはリーダーが「登る山」をハッキリ決めなければ。お店のコンセプトは、言語化できていますか?

Bさん:アパレルの未経験者ばかりだったので、MDも“とっ散らかって”います。「大人がファッションであそぶ」をテーマにテイストを絞っていないので、モードも、フェミニンもあるんです。かっちりしたパンツも、花柄のワンピースもあります。1つのビジュアルを作るのが、非常に難しい状況です。

神保“隊長”:「大人がファッションであそぶ」というコンセプトを、もっと研ぎ澄ましましょう。「あそぶ」って、なんでしょう?「ファッションであそぶ」ってどういうシーンですか?「今日は、ファッションであそんだ~」って思うのは、どんな一日ですか?みなさんの原点である「大人がファッションであそぶ」を解析するんです。ロイヤルカスタマーの来店理由は?その理由を語ることができますか?「スタッフが好き」「空気感が心地よい」など、どんな理由で買ってくださるお客さまがいるのかを適切にグルーピングできますか?

Bさん:「やっぱりお店で買いたい」という方が多く、スタッフが好きだから顧客になってくださる方が多いように思います。退職者が出ると、売り上げが大きく下がりますから。スタッフの提案を楽しみ、フルコーデを依頼してくださる方もいます。テイストを絞っていないから、仕入れは薄く幅広い。「ほかにはないものがある」「買い逃すと無くなっちゃう」と思ってくださる方も多いですね。

神保“隊長”:カスタマーが、ロイヤルカスタマーになった“きっかけ”はなんでしょうか?何かの会話、相性、きっかけでロイヤルカスタマーになったハズです。決して「ロイヤルカスタマーをもっと増やしましょう」と言っているのではなく、「ロイヤルカスタマーは、なぜBさんのお店で買ってくれるのか?」を聞いています。それが言語化できないと、作戦が立てられません。

Bさん:洋服を着て、人から褒められた体験をされている方が多いと思います。カラー診断で凝り固まっていた人には、少し個性的な洋服とコーディネートを提案。すると周りの方から褒めてもらえて、という体験をされるようです。そんなお客さまは、すぐに何人も思い浮かびます。

神保“隊長”:とても素敵な話じゃないですか。まさに「ファッションであそぶ」楽しみをお客さまに提供しているわけですね。リアリティのある返信が返ってきました。スタッフは今、何人くらいいるのですか?

Bさん:15、16人ですね。

神保“隊長”:インスタグラムを活用しているスタッフは?

Bさん:全然ダメです。みんな、得意じゃありません。

神保“隊長”:なるほど……。御社の強みと、戦略がマッチしていませんね。話を聞く限り、Bさんのお店の武器はスタッフです。でも現状は、お客様が来店しない限り、武器が全く活かせていない。こんなにもったいないことはありません。ロイヤルカスタマーが多いスタッフには、必ず何か強みがあるはずです。店舗よりもフォロワー数の多い個人アカウントを持つスタッフが現れても、本来おかしくないはずです。少数精鋭の店舗で、販売員をショップの中だけに閉じ込めておくのは、今の時代とてももったいないことです。今は、個にファンがつく時代。「どの店で買う?」ではなく、「誰から買う?」の時代です。そういう意味においては、Bさんのお店は、良いポジションにいると思います。「あの人から買いたい」という、ロイヤルカスタマーがいるんですから。だからこそ、はじめてのお客さまがロイヤルカスタマーになるまでの道のりを、もっと語れるようになりましょう。優秀なスタッフの接客に耳を傾け、“歴史が動いた瞬間”を見つけましょう。それを繰り返し、売れるまでのメカニズムを解析。トップ販売員が「無意識」にやっていることを含め、メンバーに横展開するんです。すると、皆のモチベーションが上がり始めます。これからの時代は、個が輝けば、本人も店舗も得をする。フォロワー数に応じてインセンティブを支払うとか、インスタグラム経由の来店やECへのコンバージョンを評価してあげることが大事です。すると皆、自分を自然とブランド化するようになります。店舗に搾取されるのではなく、「私が売れれば、店舗も儲かる」のシステムを作るんです。

Bさん:インスタグラムには以前挑戦したのですが、管理しきれず、方向性が定まらないことを心配してしまい、結局、止めてしまいました。数字で評価されるのは、プレッシャー。嫌がるスタッフもいます。

神保“隊長”:絶対に減点ではなく、加点評価にしなければダメです。究極、やらなくても良い。でも、やったほうが得をするという仕掛けが必要です。そして「現状を打破するために」ではなく、もっと「大人がファッションであそぶ」ために導入する。新しい取り組みを導入するには、スタッフが納得できるストーリーも大事です。SNSについては、どの企業も「管理できない」「カラーが統一できない」と悩んでいます。でも僕は経営者に「それで、何を失うの?」と言いたいんです。「管理できない」と言いますが、やましい経営をしていないのなら、管理すること自体が“おこがましい”。それは、見えない敵を恐れているだけ。何を管理したいんでしょう?何を失うんでしょう?そして、それだけ仲の良い同僚を信じられないのはなぜでしょう?会社のカルチャーやコンセプト、その狙いを理解していれば、みんなちゃんとやってくれます。みなさんが一緒に働いているスタッフは、そういうメンバーでしょう?信じて、自由にさせなくちゃ、もったいないんです。重要なのはスタッフに、何を、どう伝えるか?です。今のままでは、WhatとHowが弱すぎます。一通りのIGTVを拝見しましたが、シャツワンピを紹介する動画の再生回数が、他の7倍とズバ抜けて高いですよね?それは、なぜでしょうか?理由を言語化してみましょう。何がウケて、何がウケないのか?それを投稿のたびに分析しましょう。今は投稿を継続することに必死で、「先週よりも今週」という反省と分析が不十分です。ファーストリテイリングのスゴさは、商品力や価格だけではありません。経営努力です。あの会社は、「今年のコレは、何が良かったのか?何が悪かったのか?」を毎年考え続けています。年を跨いだABテストさえ行っています。ファーストリテイリングは、ファッションの前に、「経営」をしている。経営を伴うファッションだから、強いんです。ファッション業界は「センスが大事」と思いがちで、「分析する」「科学する」「哲学する」が苦手。だからみんな風邪を引いています。「ユニクロ」など、数社だけが元気です。どうしてアパレル業界だけ、ひどい風邪をひいているのか?理由は、「経営」と一番遠い業界だからだと思います。もちろんセンスが光る世界ではありますが、もうちょっと真剣に経営に取り組んでも良いのではないでしょうか?話を、インスタグラムに戻しましょう。現在は自社で扱う商品だけを投稿されているようですが、「大人がファッションであそぶ」なら、主役は、お店で売っている商品だけじゃなくても良いかもしれません。すでにお客さまのクローゼットの中にある洋服を主役にした投稿なども面白いのではないでしょうか?例えばインスタライブで、ロイヤルカスタマーの洋服をコーディネイトする、なんて企画に挑戦するのはどうですか?なぜなら御社は、商品だけでなく、スタッフの人柄やセンスも売っているのですから。ショップで無料のコーディネート相談会を開いて、その模様をSNSで発信。そうすれば発信する素材も同時に集められるます。今日お伝えしたのはあくまで一例ですが、とにかく自分たちのコンセプトや強みを改めて言語化し、ファッションだけではなく「経営」をしましょう。効果が現れるには時間がかかると思いますが、夜は、夜明け前が一番暗いものです。でもトーチの明かりを頼りに、朝を一緒に迎えましょう。

心に火がついたBさんの感想

 ぶっちゃけてしまいますと、前日は「どうしようもないね」「ダメダメじゃん」と叱られるかな?なんて思っていたのですが、杞憂でした。神保さんに“とっ散らかった”頭を整理してもらい、叱咤激励していただいて、目が覚めました。特に「テイストで定めず、『ファッションであそぶ』というMDでいいじゃない」とのお言葉には、眼から鱗がバラバラと落ちる音が自分でも聞こえるぐらいの衝撃を受けました。灯してもらった火は、無事に持ち帰りました。まずは山を具体的にしたいと思います。あの後上司とすぐににランチミーティングして、今日は産休中のトップにも参加してもらいました。方向性は定まってきたので、後はどんどん研ぎ澄ませていけるよう、スピード感も意識しつつ、着実に進めていこうと思います。何よりも、ドンと背中を押してもらったこと。とても勇気を与えてもらえました。火を灯してもらい、叱咤激励いただいたこの想いを今後、スタッフに、お客さまに、と伝えていければと思っています。本当にありがとうございました!また悩んだときには相談させてください。でも、そうならないようにしばらく頑張ってみます!


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