新シリーズ「マスナガ コード」が奏でる100年の技術とデザインのハーモニー

 増永眼鏡の歴史は、1905年に増永五左衛門が大阪から眼鏡職人を招いて、福井県で地場産業を築くために創業したことに始まる。その高い技術力は評判を呼び、眼鏡を昭和天皇に献上したほか、皇太子殿下(今上天皇)、吉田茂元首相などが同社を訪れた。

 100年以上の歴史を持つ“眼鏡産業の祖”が、伝統のモノ作りを継承するハウスブランド「マスナガ シンス1905(MASUNAGA SINCE 1905)」の新シリーズ“マスナガ コード(MASUNAGA CHORD)”を10月1日に発売した。

高度なテクニックから生まれた
ミニマルデザイン

 装飾性を極力排したミニマルなデザインのフレームは、薄くて軽量。ベータチタンと18金イエローゴールドを直接接合するフレームの設計は、恐らく世界でも増永眼鏡のみが持つ高度なテクニックだ。9月27日 から30日までパリで開催された国際眼鏡展「シルモ(SILMO)」でも発表し、メイド・イン・ジャパンの技術力は高い評価を得た。過去の「シルモ」では、出展社の中から優秀なブランドに贈られる「シルモ・ドール賞」を3年連続で受賞するなど、品質は世界レベルだ。

 「マスナガ シンス1905」シリーズは男性的なイメージが強いが、“マスナガ コード”は女性も意識したユニセックスなデザインで、新しいファンの獲得と認知度の向上を図る。価格はチタン+18金のモデルが12万5000円で、弾力性が高いチタン合金“ゴムメタル”を採用したオールチタンのモデルもあり、価格は4万5000円。

試してみたい
「マスナガ シンス 1905」の
本物の掛け心地

 昭和天皇に献上した3本のラウンド型フレームをもとにデザインされた“GMS”シリーズや、1970年の大阪万博で後世に残したいものとしてタイムカプセルに収納されたモデルの復刻版として誕生した「光輝(KOKI)」シリーズなど、「マスナガ シンス 1905」のシリーズはどれも歴史を感じさせるストーリー性と伝統に育まれた技術が注ぎこまれている。

問い合わせ先
増永眼鏡
03-3403-1918

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三城が力を入れるメイド・イン・ジャパンのモノ作りとエンターテインメントな店作り

 眼鏡専門店チェーンのパリミキとメガネの三城を運営する三城は近年2つの改革に取り組んでいる。1つはモノ作りの改革。世界的に評価が高い日本のアイウエア作りにスポットライトを当てた「パリミキ メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」を立ち上げた。拠点は福井県鯖江市にある三城ホールディングスの100%子会社クリエイトスリーで、1981年にチタン素材の眼鏡を他社に先駆けて完成させた工場として知られる。

サバエ伝統のクラフツマンシップが
光る最高のかけ心地

 三城のハウスブランド「スタイル ジェイ(STYLE J)」や「パリミキ オーセンティック アイウエア(PARIS MIKI AUTHENTIC EYEWEAR)」は、熟練の眼鏡職人による手仕事から生まれる三城の自信作だ。さらに、高性能な眼鏡レンズの設計を手掛けるイスラエルのシャミール・オプティカル・インダストリー社との業務提携や、眼鏡フレームの修理専門会社オプトメイク福井の買収を相次いで発表した。澤田将広・三城ホールディングス社長は「高品質で機能性とデザイン性に優れた日本製の眼鏡を提案する『メイド・イン・ジャパン・プロジェクト』の商品作りや、安心・安全なサービスを徹底して強固にするものだ。『ミキ』は新時代に向けて大改革中だ」と意気込む。

眼鏡選びが楽しくなる
店舗空間

 もう1つは店舗の改革。従来型の眼鏡店のスタイルを見直し、700ある国内各店舗のエンターテインメント化を目指している。客層や地域の特性に合わせて考案したコンセプトは、1950年代のアメリカやパリのベルエポック、にぎやかなサーカス小屋、木の温もりを感じさせるログハウスなどで、必要に応じて順次リニューアルが進んでいる。

 また今年は、東京・原宿に新しいコンセプトの店舗を2つオープンした。1つは三城が手掛けるハウスブランド「ディグナ クラシック(DIGNA CLASSIC)」の名を冠した初の店舗型ショールーム「ディグナハウス(DIGNA HOUSE)」で、もう1つはサングラスショップの「サニー(SUNNY)」。近隣のキャットストリートにはアメリカンダイナーをコンセプトとした「パリミキ(PARIS MIKI)」もあり、多彩な店舗展開で原宿・表参道エリアの若年層を取り込む。


問い合わせ先
三城お客様センター
0120-199-101

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「トニーセイム」が3人のアイウエアクリエイターを迎えたコラボレーション・プロジェクトをスタート

 アイウエアのグローバルブランド「トニーセイム(TONYSAME)」は、アイウエアクリエイターとのコラボレーション企画「デザイナーズ・インビテーション・プロジェクト(DESIGNERS INVITATION PROJECT)」をスタートする。第1弾は、蓮井明治「パドマイメージ(PADMA IMAGE)」デザイナー、小向真由美「シークレット・レメディ(SECRET REMEDY)」デザイナー、山中佳苗「カムロ(KAMURO)」デザイナーの3人が、「トニーセイム」を代表するモデル“アセテートライト”とコラボレートした。

人気モデル“アセテートライト”に
フォーカス

 「構想から実現まで3年を要した。新しいチャレンジに対して、職人、アーティストなどたくさんのクリエイターが力を貸してくれた」と細井礼トニーセイムジャパン社長。参加した蓮井明治「パドマイメージ」デザイナーは、「『トニーセイム』の技術力による薄さを生かしてリムに強弱をつけることにより、これまでの『パドマイメージ』になかった小ぶりでライトなボリューム感を出すことができた」と述べる。小向真由美「シークレット・レメディ」デザイナーは「メタルとアセテートのナイロールタイプを選んだ。メタルの上部はチタンにダイヤモンド状のカットを施し、『シークレット・レメディ』らしい女性らしさを全面に表現できた」と語る。そして山中佳苗「カムロ」デザイナーは、「娘が遊んでいるビーズコースターから着想を得たビーズのアクセントをテンプルに付け、色はディック・ブルーナ(Dick Bruna)の絵本『ミッフィー(MIFFY)』からビビッドなピンクや青を選んだ。かわいい色使いに特徴がある、女性を意識したデザイン」とコラボレーションモデルのポイントについてコメントした。

 細井社長は「来年のブランド設立10周年に向けて、新時代の『トニーセイム』を象徴するプロジェクトにしたい」と話した。価格は各3万6000円で、海外でも販売する予定だ。

新作は美しいカラーリングが充実

 「トニーセイム」の一番の持ち味は、フレームを彩るカラーリングの美しさだ。オリジナリティーのある色使いの発想は、多くの女性ファンを引き付けている。秋の新作もバリエーションが充実している。


問い合わせ先
トニーセイムジャパン
03-6914-0008

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日本の生理用品市場をECでゲームチェンジ ハヤカワ五味の新たな挑戦

 ハヤカワ五味の運営するウツワはこのほど、LINE公式アカウントに連動した生理用品のセレクトEC「イルミネート(ILLUMINATE)」をオープンした。生理日予測と、予測に基づいたタイミングでの商品購入の提案をLINEで行うほか、必要なナプキン、タンポン、月経カップ、経血吸収パンツなどの生理用品を販売するサービスだ。広告無しのシンプルな作りや、従来の生理予測アプリが持つ「妊娠しやすい日(排卵日)」を表示する機能を付けないことで “生理のある全ての人”にフレンドリーな仕様にこだわった。

 学生時代から小さい胸の“シンデレラバスト”向けランジェリーブランド「フィースト(FEAST)」などを手掛けてきた20代の経営者であるハヤカワ五味が、今なぜ生理用品市場に参入したのか?立ち上げの背景から今後の構想まで聞いた。

WWD:「イルミネート」をスタートさせた理由は?

ハヤカワ五味:もともとアパレルと下着ブランドの経営をしている中で、女性が多い職場にいました。管理職としての立場で感じたのは、女性同士でも「体調不良で仕事を休みます」と言いづらいということ。それが生理痛による理由だとしても、体調不良というと自己管理のできない人と見なされ、毎月休んでばっかりの人という印象を持たれてしまうことがあります。生理痛について相談できて、理解しあえれば、職場環境は変わっていくと思いました。

WWD:専用アプリではなく、LINE上でサービスを提供する理由は?

ハヤカワ五味:課金制や広告掲載で収益化している従来のアプリは、月2〜3回しか開かないことを不便に感じていました。でも、「イルミネート」は物販で収益を上げることで、予測機能は広告なしのフリーで提供します。ビジネスモデルの観点から、使用頻度の高いLINEといういつも使う動線にあった方がいいと思いました。

WWD:生理日予測の機能はシンプルにしている。

ハヤカワ五味:これまでひっかかっていた点をフラットにしたいと考えました。私の周りには女性同士の同性カップルもいますが、従来のサービスでは「妊娠しやすい日」を教えてくれる機能が付いていて、“生理のある女性が皆妊娠する”という前提であるところに疑問を感じました。また、「痩せやすい日」を表示する機能は、“女子は皆ダイエットしたい”という固まった観念。私は痩せていることがコンプレックスで、「逆に太りやすい日を教えてよ」と思ったことがあります(笑)。今まで通りのシステムも素晴らしく、妊活をしている人はそういった高機能なシステムを使っていただきたいのですが、「イルミネート」は最初に使う生理日予測ツールとしてシンプルに使いたい方におすすめしたいです。

1日で7000件集まった生理と性の悩み 浮き彫りになった“迷える人たち”

WWD:“生理のある人が誰でも使える”という仕様を意識している。

ハヤカワ五味:生理があるのは女性だけとは限らず、心が男性の方もいます。誰でも使いやすいようにECはネイビーを貴重に、商品動画も掲載しています。LINEではグレーをベースカラーにして、ピンクも甘すぎない色にしています。また、従来ありがちな“モテるため”をうたった広告コンテンツがないことも大きいと思います。ちょっとしたニュアンスですが、「イルミネート」のテキストは、女性向けではなく生理のある人に向けていて、固定観念にとらわれないフラットな文章にしています。

WWD:いつから“フラット”な価値観を持つようになったのか?

ハヤカワ五味:身近にLGBTQのコミュニティーがあり、さまざまな課題をクリティカル(深刻)に感じることがありました。私自身が悩んでいるわけではなくても、当事者はいっぱいいっぱいで解決することは難しい。余裕のある友だちとして、近くにいる自分が解決できないかという思いもベースにあります。

WWD:生理はタブーとされていて大声では話せないトピックだが、悩みを抱えている人は多い?

ハヤカワ五味:ツイッターで生理や性の悩みを募ったときに、1日で7000件も集まったんです。悩みの濃さがすごい……と思いました。本来は病院に相談に行くべきこと、頑張ってもどうにもならないこともあって、皆性の悩みについてどうしたらいいのか分からないといった感じでした。これまでそういった悩みを打ち明ける機会があまりなかったんだと思います。

“このビジネスモデルが成功すれば、生理用品の市場が拡大するはず”

WWD:今の生理用品の市場をどのように見ていますか?

ハヤカワ五味:国内の生理用品は99%を3社で持っている状況でどうしても変化が起こりにくく、ビジネス的にプレーヤーが少ない。ビジネスモデル的にECで販売すればゲームチェンジはできるとポテンシャルを感じました。一方で生理用品の年間購買価格は平均3600円くらいといわれて、単価が低くて渋い領域だからこそ、自分がやるしかないと思いました。

WWD:マネタイズ(収益化)はどう考えている?

ハヤカワ五味:一番時間を割いて考えているところです。海外ではフェムテック産業(女性が抱える健康問題をテクノロジーで解決する新興企業)が話題ですが、国内で出てこないのは日本に女性の投資家が少ないからだと思います。まだ成功事例がないということで、しっかりと数字を追える人がいないのも理由です。そこで、私たちのビジネスモデルが成功したら、投資もしやすくなって生理用品の市場ごと拡大するのではないか。「イルミネート」では、ユーザーにとって意味のある商品を充実させて儲けたいと思っています。例えば、鉄分のサプリメントなどは私が実際に飲んでよかったと感じたもので、販売していければと構想しています。また、長くサービスを使ってもらえるように評価を受けられるかが勝負だと思っています。

WWD:商品の選定はどのように行っている?

ハヤカワ五味:いらないものは作らない、売らないことを重要視し、生理についてのクリティカルな悩みを解決できるような商材を扱います。お客さまが気付いてもいない悩みに訴求するようなことはしたくない。例えば、バストアップやデリケートゾーンの悩みを過剰に煽るような商品はお客さまがハッピーになることではないので、ハマらないと思っています。

WWD:今後はオリジナル製品を作っていくのか?

ハヤカワ五味:計画をしていますが、まずは運営する中でどのような悩みがあって、どのような商品が売れていて、どんな売れ方をするかデータを集めたいと思っています。年始までに数商品を発売して反応がよかったものを伸ばしていきたい。商品をきっかけにして「イルミネート」を知ってもらえるようになるような成長でもいい。現状、生理用品はドラッグストアでの購入率が65%といわれています。地方のお店では品ぞろえも少ないので、ECにすることで多くの人に提供できると思っています。

初年度の売上高1億円を目指す “売り上げを立てることも正義”

WWD:昨今、SNS上では生理についての投稿をよく見かけるようになった。急に話題が増えたのはなぜ?

ハヤカワ五味:“第4の生理用品”と言われる経血吸収パンツがリリースされたり、漫画「生理ちゃん」の映画化が決まったりと、各社の話題が集中して出て来たからだと思います。私自身もユニ・チャームとの生理用品について考えるプロジェクト「#NoBagForMe」を行いました。業界自体も変わらなければならないという意識を感じます。

WWD:「イルミネート」のローンチ後の反応は?

ハヤカワ五味:9月12日にオープンして、ユーザー数は約9000人(10月2日現在)になりました。ポテンシャルとして生理について話したいと思っている人は2万人くらいいると想定しています。先日も匿名で参加できるLINEのオープンチャットで、デリケートゾーンのケアについての悩みについて話す会を開いたら、約400人も参加者が集まりました。こんな大勢で股の話しをするとは想像もしませんでしたが(笑)、やはり“話したい人”がいるということが分かりました。今後も「話さなきゃいけない」という強制的なものではなく、「話したいときに話せる」という、ゆるやかなコミュニティーを作りたいです。話すことで、病院に行ってみようとか、サプリを飲んでみようとか改善点が見つかることもあります。“誰も普通じゃない”ということに気づいて欲しい。ブラック企業に似ているんですが、会社の中にいるとそのヤバさが分からないけど、外から言われて「あ、これヤバイんだ」って知ることがあると思います。こういう風に話すきっかけ作りは、業界的に取り組むべきだと思いますね。

WWD:売り上げの目標は?

ハヤカワ五味: 1年目で売上高1億円を目指しています。オープンな市場が広がると今後他にも新たな生理用品が出てくると思います。なので、そのくらい売り上げを立てないと残っていけないと考えています。一時的な盛り上がりにせず市場を切り開いていけるよう、売り上げを立てることも正義だと思っています。

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編集長はパリコレで何をした?Vol.9 「シャネル」で始まり「ルイ・ヴィトン」で幕引きの最終日、鼻腔に残るのは「セリーヌ」の青春の香り

 パリコレ最終日は朝の「シャネル(CHANEL)」に始まり、夜の「ルイ・ヴィトン(LOUIIS VUITTON)」で終わるのがお決まりです。そしてまだまだ展示会もラッシュ。2020年春夏のムードが見えてきました。

10月1日(火)10:30
女性デザイナーらしいリアルな
「シャネル」

 「シャネル(CHANEL)」は、ヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)による初のレディ・トゥ・ウエアのコレクションでした。大掛かりなセットはカンボン通りの「シャネル」のアトリエから見える屋根の上の風景だそう。ヴィルジニーになり、路線ががらりと変わった訳ではなく「シャネル」はどこまでも「シャネル」ですが、これまでより少しリラックスしていてリアル。だからか、モデル自身の個性が見えてきます。ポケットに手を突っ込んで歩くウォーキングが象徴的です。ユーチューバー乱入事件の現場は日本エリアからは残念ながら見えませんでした。

12:00
「カイダン」のネオンカラースーツ
が気になる

 「カイダン・エディションズ(KAIDAN EDITIONS)」に見るネオンカラーや、パンツスーツは今季のトレンドのひとつ。デザイナーの2人はトレンドを意識するタイプではありませんが、勢いがあるブランドは結果的にトレンドのど真ん中にいることがしばしばあります。スニーカーに目を凝らすと、ん?「アシックス(ASICS)」?どうやらコラボではないようです。

13:00
「マックイーン」で若い職人と話す

 「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」の展示会の一角では、若き職人たちが刺しゅうのデモンストレーションをしており、「どうぞ良ければ座って、あなたも刺しゅうをしてみて」と誘われ、座って5針ほど刺しました。職人と聞くと、白衣を着た年配の人を想像しがちですが、彼女たちを見るとイメージが覆されますよね。

 下手ですみません、でも無心になれて楽しい!と短いながらもその時間を堪能した5針の間に彼女たちに話を聞きました。マックイーンのアトリエには刺しゅう専門のチームがあり19人が所属。彼らはそのメンバーだそう。ひとりが「刺しゅうをするのが大好き。マックイーンは英国のファッションブランドの中で一番刺しゅうにこだわっているから選んだ職場に選んだの」と教えてくれました。ショーに登場した黒い糸で刺しゅうをしたリネンのドレス(写真)はアトリエスタッフ全員が少しずつ刺しゅうをして完成したとか。「心がひとつになった」とは別の女性の談。いい話です。

14:30
「ミュウミュウ」で英国チームと
お見合い

 ショー会場ではたいがい、国ごとに座席のエリアが分かれています。「ミュウミュウ(MIU MIU)」の会場は、日本エリアの正面がイギリスエリア。お見合いみたいで面白いので写真を撮りました。イギリス版「ヴォーグ(VOGUE)のエドワード・エニンフル(Edward Enninful)編集長やジャーナリストのスージー・メンケス(Suzy Menkes)の姿が見えますね。あっちから同じように見えてるのだろうな~。

15:30
「セリーヌ」の香水はエディの追憶

 「セリーヌ(CELINE)」は、エディ・スリマン(Hedi Slimane)=アーティスティック、クリエイティブ&イメージディレクターによる香水をリッツ パリでお披露目しました。その場での写真撮影はNGだったのでいただいたミニボトルをホテルの部屋で撮影。エディらしいクラシックなボトルに入った9種類の香りはすべてエディ自身の記憶に由来するそうで、そこにマーケティングはナシ、だそう。だからひとつひとつにストーリーがあります。私が直感で選んだのは、エディが20歳の時に過ごしたパリの思い出の香り。パウダリーで同時にさわやかです。それにしても9種類同時発売とは大胆ですね。

16:30
テニスコートが「ラコステ」仕様に

 「ラコステ(LACOSTE)」はパリ中心から少し離れたテニスコートがショー会場に。コートではプロ選手が試合を行っているリアルな演出。「ラコステ」と言えばテニスですからね!ブランドのルーツやコアバリューが明確なブランドが強い、と最近つくづく思います。イギリス人女性のルイーズ・トロッター(Louise Trotter)がクリエイティブ・ディレクターに就任してからの「ラコステ」は、ジェンダーレスでスポーティー、そして時々キャッチーなデザインで勢いがあります。

19:30
ルーブル美術館で「ルイ・ヴィトン」が壮大にトリを飾る

 さあ、オオトリの「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」です。定休日のルーブル美術館をドカンと使うのが最近の「ルイ・ヴィトン」のショーで、資本力を見せつけます。そしてゲストがとにかく華やか。入口でお騒がせユーチューバーに足首をつかまれるというアクシデントに見舞われたジャスティン・ティンバーレイク(Justin Timberlake)とジェシカ・ビール(Jessica Biel)夫婦はじめ、韓国のイッジ(ITZY)や日本からはローラの姿も。

 客席などに使用した木材はすべて再利用するとのこと。初日の「ディオール(DIOR)」から最終日の「ルイ・ヴィトン」までLVMHグループのサステイナブルへの取り組みが印象に残ったシーズンでした。
登場したアクセサリーが可愛かったので、翌日の展示会で撮った写真も載せちゃえ!カセットテープをプリントしたバッグなどフォトジェニックなアイテムが揃っていました。

番外
10月4日(金)14:00

 パリから出国数時間前、日本の若者が2人、訪ねてきてくれました。クリエイターの強谷(すねや)鮎美さんと、アトリエ「ラフトワークス」の大坪研二さん。2人はエチオピアにほれ込み、現地の織物やコットンの工場に自力で通って関係性を築いている最中とのこと。来年にはそのネットワークを使ったブランドを立ち上げるそうです。

 エチオピアのファッションは今のところ民族衣装が中心で、そこに中国製の大量生産の商品がどんどん入ってきて、現地の若者は危機感を感じているとか。2人はエチオピアの若者たちと新しいファッションのムーブメントを起こそうとしています。すごいね!大切なことは発注元と作り手が価値をシェアしつながることと語る2人。今回のパリコレではサステイナブルなメッセージをたくさん受け取りましたが、見てきた点と点がつながり未来が見えてくるような話でした。頑張れ!

 途中で挫折するかもと思いつつ始めたパリコレ日記も最終日までたどり着くことができました。これも一重にお付き合いいただいた皆様と日夜情報を受け止めてくれた日本のスタッフのおかげです。ありがとうございました!さあ、来週は東京コレクションですよ!

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ファッション通信簿Vol.32 2019年「エミー賞」授賞式のレッドカーペットを米「WWD」がめった切り

 米「WWD」の人気企画「ファッション通信簿」では、ストリートからパーティー、レッドカーペットまで、海外セレブたちのファッションを厳しくチェック。A+、A、A-、B+、B、B-、C+、C、C-、D+、D、D-、そしてFAIL(失格)の13段階評価で格付けし、それぞれのファッションポイントを勝手に辛口ジャッジ!

 第32回は、9月23日に米ロサンゼルスで開催された第71回「エミー賞(Emmy Awards)」授賞式のレッドカーペットから、ゼンデイヤ(Zendaya)、ビリー・ポーター(Billy Porter)、グウェンドリン・クリスティー(Gwendoline Christie)、マンディ・ムーア(Mandy Moore)、メイジー・ウィリアムズ(Maisie Williams)、フィービー・ウォーラー・ブリッジ(Phoebe Waller-Bridge)、エミリア・クラーク(Emilia Clarke)、ケリー・ワシントン(Kerry Washington)が登場。テレビ作品のトップが決まる「エミー賞」の、今年のレッドカーペットの評価はいかに?

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「愛国心が強まっているから東コレはシビアに観察します」 ファッションフリークOL「WWDジャパン」最新号につぶやく

 1992年生まれのファッションフリーク女子が、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。渋谷のファッションベンチャー企業に勤める等身大OL、Azuがリアルな目線を生かし、「このニュースからはコレが見える」という切り口でさまざまな記事につぶやきます。

今日のニュース:P.12-13「自由の国に愛国心を示すNYデザイナー」

読み解きポイント「日本で愛国心は生まれるのか」

ニュースのポイント

 「Who gets to be American?」と問う「プラバル グルン(PRABAL GURUNG)」、多様性に富んだキャスティングの「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」など、2020年春夏ニューヨーク・コレクションでは、アメリカへの愛国心を示すデザイナーが多かった。来年の米大統領選挙の動向が注目される中、希望と夢の象徴だったアメリカは今後もダイバーシティーとオプティミズムの国であるべきことを、各ブランドがそれぞれの表現方法で訴えた。

AZUはこう読む!

 ファッションってやっぱり面白いし、「見た目で判断できる」という誰にでもわかりやすい側面があるからこそ、真剣に向き合わないといけない。そう思えたニューヨーク・コレクションでした。先々週の「モードって何?」特集では「モードは、ファッションは社会を映す鏡」との意見もありましたが、まさにこのシーズンは時代に反旗をひるがえすような主張だったり、優しく自由を掲げる演出だったり、社会情勢に対するメッセージ性が強かった印象です(私はもちろんニュースやSNS上で見ているだけですが笑)。

 「愛国心」という言葉は、どうしても日本にいるとピンとこない言葉ですが、一度「異国人」として海外に住んでみると、ほんのり芽生えてきます。それは自分が生まれ育った国に対してもだし、ネパール系アメリカ人のプラバル・グルンのように移住先の国に対しても、です。

 私は1年間だけですが留学生としてフランスに住んでいました。それまでは自分が何人かなんて考えたこともなかったのですが、ことあるごとに 「どこ出身?」「日本?中国?韓国?」と聞かれるので、自分が日本人であることをうんざりするくらい痛感しました(笑)。一方で、パスポートは日本だけれど「フランス語を話せばもうフランス人」と言われたり、「それだけパリを知っていたら、もう立派なパリジェンヌ」と言われたり。暮らしていくうちに日本人/フランス人(仮)という二つの感覚が出てきて、それぞれが作用しあうことで自分のバックグラウンドの輪郭がはっきりと浮かび上がってきたのです。だから帰国しても「私は日本人」という感覚は強いし、日本の良いところ・悪いところを客観的に見るように心掛けているし、フランスはいつも贔屓(ひいき)してしまいます(笑)。

 現実はこんなお気楽定義ではなく、人種差別や文化差別がめちゃくちゃあるので(つい先日もパリで「国に帰れ!」と突然怒号を飛ばされました)、一概に何人かなんて括れないからこうした主張が出てくるわけですが。

 今パリから帰国している途中で、間も無く私の「異国人生活」も終わります。私なりの愛国心が強まっている今、再来週から始まる東京のファッションウイークでは、どんなメッセージが読み取れるのか?そこに社会的な意味はあるのか?ないなら、なぜ生まれないのか?今回はちょっとシビアになって観察してみようと思います。

Azu Satoh : 1992年生まれ。早稲田大学在学中に渡仏し、たまたま見たパリコレに衝撃を受けファッション業界を志す。セレクトショップで販売職を経験した後、2015年からファッションベンチャー企業スタイラーに参画。現在はデジタルマーケティング担当としてSNS運用などを行う。越境レディのためのSNSメディア「ROBE」(@robetokyo)を主催。趣味は、東京の可愛い若手ブランドを勝手に広めること。ご意見等はSNSまでお願いします。Twitter : @azunne

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空からドレスが降ってきた! 「イッセイ ミヤケ」新デザイナー近藤悟史が振り返るデビューショー

 「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」ウィメンズの新デザイナーに、近藤悟史が就任した。デビューショーとなった2020年春夏は、パリ市内の公共の芸術センターを会場に、ダンスやスケートボードによるパフォーマンスをミックスしたショーを実施し、三宅一生が追求してきた“一枚の布”というコンセプトをハッピーなムードで伝えた。これまで、「プリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ(PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE、以下プリーツ プリーズ)」などに携わってきた近藤に、新チームで表現していきたいことや、20年春夏のショーの手応えを聞いた。

WWD:ショー後の囲み取材で「『イッセイ ミヤケ』イズムとは?」と聞かれ、「人種や性別を超え、あらゆる人に届けるエネルギーのこと」とはっきりと答えていたのが印象的でした。

近藤悟史(以下、近藤):興奮していたので言葉をうまくつなげたか思い出せないですが、この会社に入社して三宅(一生)にいろんなことを教わりました。他の会社がどうかは僕には分かりませんけど、(三宅の)間近でさまざまなことを経験させてもらった。そういった経験をもとに、僕なりに考える「イッセイ ミヤケ」らしさを新しいチームで表現したい。現代の女性に向けて、ブランドが新しいスタートをポジティブに切ったということを伝えるショーができたと思います。

WWD:ベテランジャーナリストからは、「一生さん自身がかつて行っていたショーのようだった」といった声も聞かれました。

近藤:原点回帰のつもりはありません。ただ、僕も過去の資料などはこれまで色々見てきているし、三宅と田中一光さんのプロジェクトの企画も担当してきましたので、どこかそういう部分が出ているのかもしれません。いろいろ学ばせてもらったうえで、純粋に僕の好きな「イッセイ ミヤケ」を表現しました。それは“一枚の布”という考え方を持った服作りであったり、堂々としたカッティングであったり。そして世の中に前向きなメッセージを送ることができる点もそうです。自分自身楽しんで生地と向き合いましたが、デビューシーズンの今シーズンは特に、(ブランドの根幹の考え方である)四角い布と向き合うことを意識しました。

WWD:囲み取材では「この会社では、社会と向き合うことも重要だ」とも話していました。

近藤:世の中で何が起こっているかはやはり理解しないといけない。かといって、世の中に対して口を出したいわけじゃない。単純に東京に住んでいるだけで5年前とは全然状況は違います。海外から日本への観光客が増えて、「イッセイ ミヤケ」でも客層の国籍や年齢は広がっている。そういう人たちに着心地のいいかっこいい服だということを伝えていかないといけない。気候もどんどん変わっているので、素材や肌の見せ方も変わります。だから、社会問題に取り組むというよりも、純粋に世の中の動きと向き合うという意味です。

WWD:ショーではきれいな色使いも印象的でした。

近藤:この数年で僕自身も明るい色を着たいと思うようになりました。きれいな色を着ると内面から明るくなります。太陽のもとできれいな花が咲いた、それがとても多様性に富んだ花だというイメージを今回のショーでは表現したかった。それで、最初はベージュトーンから始まり、青いパートで曇っていた空が晴れ渡って、そこから花開いていくという構成にしました。ダンスを取り入れたのは身体と向き合うコレクションにしたかったから。コートなどにプリントしたのは、2人の人が寄り添って抱き合っている柄です。それも身体と向き合うという意味ですし、同時に、(デビューショーなので)「初めまして」の挨拶として相手とハグするようなイメージも込めました。

WWD:天井から吊るされていたドレスがモデルのもとに降ってくるなど、楽しい演出がたくさん詰まったショーでした。

近藤:1つのコレクションを、物語性を持たせて表現したかったんです。そうすることで、抽象的ではあっても服って楽しいというメッセージやエネルギーが伝わればいいなと考えました。天井から服が降りてくる演出は、朝起きて、すてきな服が空から降ってきたら楽しいだろうなと思って(笑)。単に服をデザインするだけでなく、しっかりムードをデザインしたい。そのうえで服1点1点を見ると、ディナーに行けたり、海に行けたりとさまざまなシーンに対応できるものでありたいと思っています。演出担当のダニエル(ダニエル・エズラロウ=Daniel Ezralow)とは、6月に行った「オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSE ISSEY MIYAKE、以下オム プリッセ)」のショーでも組んでいます。“えがく”“かさなる”“ゆれる”など、言葉のムードボードを作って、考えを共有しました。

WWD:素材開発もブランドとは切っても切り離せない要素です。

近藤:確かにそうですが、今回は素材を細かく語るというよりも、絞りなどの伝統的な素材から最新素材までをミックスすることの方が大事だと考えました。人種や年齢を超え、いろんな人にいろんな服を着せようとすると、その中に天然素材が好きな人も機能素材が好きな人もいる。でも、どんな素材であれ「イッセイ ミヤケ」のカッティングで見せるとかっこいいというのを表現したかった。今までは「プリーツ プリーズ」を担当していたので、プリーツという1つの素材と向き合っていましたが、その制約がなくなったのでいろんな素材に挑戦していきたい。ただ、今回のショーの後半はプリーツ中心でしたが、それはやはり僕の得意分野だから、というのはあるかもしれません。空から降ってきたドレスは、プリーツをまず横にかけ、その後扇状にかけることで、動きに合わせてはずむようにしました。プリーツによって、四角い布を放射状にしたドレスなどもあります。

WWD:一生さんからは何を期待されていると思いますか。

近藤:それは三宅に聞いてもらわないと分からないですけど、(三宅と)コミュニケーションはいつも取っていたので、「君らしく、君のユーモアをブランドにのせなさい」とは言われています。会社の中で任された仕事に一つ一つ真摯に取り組んできたら、少しずつステップアップして、いつの間にかこうなった(「イッセイ ミヤケ」に抜擢された)という感じです。

WWD:新チームとしてブランドで目指すことは。

近藤:見ている人をワクワクさせたい、驚かせたいというのはあります。ただ、同じことをやるとワクワクしなくなるから、その時々で振り切ったコレクションをしていきたいですね。テーマやムードによっては、一切色を使わないコレクションだってやるかもしれません。驚かす方法は色だけではないですから。毎シーズン自分なりのテーマをもって作っていきたいです。これまで担当していた「プリーツ プリーズ」や「オム プリッセ」は、コンテンポラリーダンスなどの公演などに行くと着ている方を必ず見かけますし、結婚式でも見ます。元々はスポーティーな服なのに、着用シーンが広がっていて若いお客さんも増えている。「イッセイ ミヤケ」ももっと幅広い人に着てもらえるようにしていければと思っています。

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編集長はパリコレで何した?Vol.8 「ステラ」でちょっとエッチな気分になり、「サカイ」でファンキーに盛り上がり、「マックイーン」で手仕事を味わう

 パリコレは残すところ2日に。“リシー”と呼ばれるショー後の展示会が多く開かれ、この日から週刊紙「WWDジャパン」10月7日号の入稿が始まり日本の編集部との連絡が頻繁に。加えて今日もシラク前大統領の葬儀の影響でパリ市内の交通はマヒ状態。仕事がカオスになってきました!

9月30日10:00
ちょっとエッチな
「ステラ マッカートニー」

 「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」は、“これまでで一番サステイナブルなコレクション”だそう。であれば素材手配・開発の背景などには多くの研究、議論、投資などがあるはずですが、ショーからはストイックさや生真面目さは微塵も感じさせず。サークルモチーフのカラフルなドレスは単純にカワイイ。それこそが「ステラ」ですね。

 で、さらにそこを盛り上げたのが、ウィットの効いた演出です。350年の歴史を持つオペラ座の壁一面に交尾をする動物たちの動画を投影しました。私の席の前ではアルマジロの雄が雌が……、来場していたヴィヴィアン・ウエストウッド(Dame Vivienne Westwood)の背後ではクマやシマウマが……。自宅で飼っているカメの雄と雌も夏になるといつもこうだったな、と思い出したりして。そう、これは自然界でごく普通の風景。動物愛護や自然保護を訴えるステラ流のウィットの効いた演出にニヤニヤしてしまいます。ぜひ上の動画で見てください。

 2枚目の写真でステラの父、ポール・マッカートニー(Paul McCartney)と写真に収まっている右の女性は、デルフィーヌ・アルノー(Delphine Arnault)=ルイ・ヴィトン エグゼクティブ・バイス・プレジデント。「ステラ」は今年7月からLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトンと提携しました。座席にはサステイナブルな活動に関するステラのからのアツいメッセージ文が。LVMHをパートナーに「ステラ」の活動はさらにパワーアップしそうです。

11:00
ファンキーだぜ!「サカイ」!

 「サカイ(SACAI)」のファーストルックは世界地図、アクセサリーは丸い地球儀。“ona nation”という今季のメッセージがクリアです。で、思いました。デザイナーの阿部千登勢さんはこれを出す前に悩んだろうな、と。なぜならこれだけ地球環境への問題意識が高まっている今このメッセージを出すことは、逆に「今さら」など通りすがりの“評論家”たちから揶揄され、批判される可能性があるからです。その中で自分の考えを信じて決めて堂々とファーストルックで表現する、その決断力こそ阿部千登勢です。

 ということを伝えようとショーの後にバックステージに向かうと、そこにはファンキーな光景が広がっていました。阿部さんは自分のTシャツを指さして「これ、これなの!」と一言。そして隣には存在感たっぷりの黒人男性ご一行とナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)の姿が。男性はなんと、ジョージ・クリントン(George Clinton)でした!名前を知らずとも音楽を聴けば、「あ~」となるキング・オブ・ファンクのミュージシャンです。阿部さんが指さしていたのは、ジョージ・クリントンの曲「One Nation Under a Groove」のジャケ写でした。これ、買いますわ!

 バックステージを出て客席で興奮を冷ましていると、「サカイ」のクリエイティブ・ディレクションを務める源馬大輔さんを発見。しみじみ話した後、せっかくなのでブルーライトの中でセルフィーしました。

12:00
「ジバンシィ」のショールームから
エッフェル塔

 「ジバンシィ(GIVENCHY)」のショールームの窓から見るエッフェル塔はパリ随一だと思います。そして、このテラスは永遠にオードリー・ヘップバーン(Audrey Hepburn)の指定席かと。クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)は話すと、結構ロックで強い女性ですが、同時に何をやっても品の良さがにじみ出るデザイナーです。そんなムードがショールームにもありました。

13:00
「ヴァレンティノ」のパワフルな
アクセサリー

 「ヴァレンティノ(VALENTINO)」の展示会で見たアクセサリーがパワフルでした。この目が覚めるようなブルーのトートバッグは男子が持ってもカワイイのでは?ショーでは上手に写真が撮れなかったおサルのイヤリングにも再会。目が怖くてカワイイです。

14:30
「アニエスベー」に赤ちゃんを
抱いた男性モデル

 これまでたくさんのショーを見てきましたが、男性モデルが赤ちゃん(の人形)を抱いて歩くのはこの「AGNES B.(アニエスベー)」で初めて見ました。良い! ラッパー、オキシモ・プッチーノ(Oxmo Puccino)の歌が盛り上げます。

15:30
一着で朝昼晩に違う服を楽しむ

 「BEAUTIFUL PEOPLE(ビューティフルピープル)」は幾通りにも着られる服を客席の前でデモンストレーションしました。印象に残ったのは「一つの着方だけではなく、その時の時間、出来事、 気分によって、自由自在に着方を替えることができる」というリリースのメッセージ。「家にいったん帰って着替える」ではなく朝と昼と夜とで、同じ服を着たまま違う気分を楽しめるのは面白いです。

16:30
「ジェイ ダブリュー アンダーソン」のカゴバッグ

 ブルーベルが「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」の取り扱いを開始したとのことで、ロンドンブランドではありますが展示会へ。バッグが充実していて、3枚目のカゴバッグは3万5000円程度になるそう。来年の春夏はカゴバッグが大ブレイクする予感です。

18:00
レースがきれいな台北ブランド

 ショーの始まりを待つ間に台湾の知人と再会できるのも楽しみな「シャッツィ・チェン(SHIATZY CHEN)」。台北から大勢のセレブリティーが来場して盛り上がっていました。繊細な手仕事によるレースが持ち味のブランドですが足元は全部スニーカー。スニーカーはもはやトレンドではなくスタンダードです。

20:00
「マックイーン」の手仕事を味わう

 今季はリネン素材を多く使い、刺しゅうや染色、布を操るクチュールワークをたっぷり見せた「ALEXANDER McQUEEN(アレキサンダー・マックイーン)」。フィナーレにはアトリエの職人やスタッフが全員登場しました。職人と聞くと年配のベテラン技術者を想像しますが、フィナーレに登場した“職人”の多くは若く、意外であると同時に親近感もわき、応援したくなります。彼らの手仕事がたっぷりつまったフィナーレをどうぞ。

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ファッションラバーもハマる女の「サ道」Vol.2 サウナは男社会?女性だってタピオカよりサウナ好き

 空前のサウナブームに沸く日本列島。いまや、おじさんだけでなく若者にもサウナ文化が定着し、女性サウナーの存在もチラホラ。その背景には、タナカカツキによる伝説の漫画「サ道」のドラマ化や、「湯遊ワンダーランド」「極上! サウナめし」などが大きく影響しているのだとか。ビジネスマンからファッションラバーまで、慌ただしい日常に癒やしを求めサウナに集まる人たち。人はいったいどんなきっかけでサウナにハマり、何を得るのだろうか。

 これまでさまざまな施設を渡り歩いてきましたが、どうしても乗り越えられない壁があります。実は「聖地」といわれる有名店ほど女人禁制なのです! これは、女性サウナーにとってとても悲しい現実(泣)。「天空のアジト マルシンスパ」しかり、「オアシスサウナ アスティル」「サウナセンター大泉」、ちょっと足を運んで名古屋の「ウェルビー」などなど。水風呂も男性が水温15度前後に対し、女性はなんと20度設定がほとんど。その現実を垣間見るたびに、「パンケーキやタピオカよりサウナでしょ、男に生まれたかった~!」、何度そう思ったことでしょうか……。政治の世界とはいいませんが、サウナの世界は男社会そのものなのです。

 今までファッション業界でジェンダーの差別を感じることはなかったし、ここには年齢問わず、それぞれのスタイルを謳歌している人たちが大勢います。たとえば2019-20年秋冬の「ポステレガント(POSTELEGANT)」は、ウィメンズとメンズがほぼ同じ。いっぽう「チノ(CINOH)」は、グランジをテーマに、露骨なオンブレチェックをレディライクに落としこみます。まさに現代女性の働き方や、ひとつの価値観に縛られない自由な生き方、強さを投影しているのだと感じました。19年春夏にスタートした、奥田亜紀乃さんが手掛けるテキスタイルブランド「マスノウ デザイン(MASNOU DESIGN)」も、ジェンダーレスかつエイジレスな服を提案しており、もはや男女の垣根を越えて美を追求する世の中になったのだなと改めて痛感。少し話しが逸れましたが、サウナだってジェンダー関係なく楽しめる施設・温度設定であってほしい、そう心から願わずにはいられません。毎日のオシャレを楽しむように、女性にもサウナの選択権がもっと与えられますように……。

尾竹めぐみ:ファッション・エディター、ライター。大学卒業後、ボストンへ留学。帰国後はファッション誌「オーリーガールズ」編集部で、ストリートスナップを担当。2005年からリットーミュージックが発行するファッション&クラブカルチャー誌「ルイール」で、海外アーティストの取材やセレブゴシップ特集に力を入れる。12年、INFASパブリケーションズに入社し、季刊誌「WWD マガジン」、ファッション週刊紙「WWD ジャパン」で経験を積む。現在、フリーランスとしてファッションウェブ媒体を中心にエディトリアルからライティングまでを手掛ける。趣味はネットフリックスと日本全国のスーパー銭湯めぐり

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2019-20年秋冬のランジェリートレンドをピックアップ

 「WWDビューティ」10月3日号、「WWDジャパン」10月14日号には付録として、冊子「My Lingerie, My Scent(ランジェリー&フレグランス特集)」が付いてくる。ファッションと切り離して考えがちだけれど、実はファッション同様にトレンドがあるランジェリー。素肌にまとうものだから、そのときどきの女性の気持ちの変化さえ如実に映し出すという側面も併せ持っている。紙面では、そんなランジェリーの潮流をランジェリーライターの川原好恵が解説。同付録に掲載の最新トピックスの中から抜粋して紹介する。

Topics1.ファッション性も機能性も兼ね備えたボディーがトレンド

 ファッションの世界に比べてトレンドが語られることの少ないランジェリー。しかし国内外のブランドを俯瞰すると色、アイテム、ブラジャーやショーツの形など大きな流れが感じ取れるもの。例えば、スタイルはブラレット&ハイウエストショーツ、ディテールはメッシュやゴムなどのスポーツテイストとセクシーな要素のミックスが今のトレンドとなっている。

 そして、今秋の注目アイテムを挙げるとするなら間違いなく「ボディー」。レオタードや水着のワンピースに似たアイテムで、ヨーロッパではセンシュアルな黒のレース物を中心に数シーズン前からフィーチャーされていた。今秋は国内ブランドからも登場し、いよいよ定着しそうな予感だ。ジャケットやブルゾンなどのインナーとして見せる着こなしを楽しめるほか、ウエストがもたつかないためタイトなシルエットのボトムと相性がよく、温かくて冷え防止になるという機能性もある。ただし、選ぶ時はクロッチ(股)部分がホックボタンで開閉できるかを確認すること。ホックがないとトイレが大変なので要注意。

Topics2. 時代はボディーポジティブ

 ダイバーシティー(多様性)への意識の高まりは下着業界でも顕著。「どこかの誰かが決めた理想の体形や平均値と比べるのではなく、世界に一つの自らのボディーをポジティブに捉え、愛し、自信を持って」。そんな「ボディーポジティブ」なマインドが世界に広がっている。日々のエクササイズで目指すのはファンタジーの世界の10頭身モデルではなく、自己ベスト。それが今の時代だ。それを象徴するブランドとして注目されているのが、実業家としても活躍する歌手リアーナ(Rihanna)によるランジェリーブランド「サベージ×フェンティ(SAVAGE X FENTY)」。ダイバーシティーをコンセプトとする同ブランドは、32Aから46DDD(70Aから110G程度)、XSから3Xと豊富なサイズ展開が高く評価されている。今年7月には国籍、人種、年齢、体形の異なるモデルが登場するショーを開催し話題をさらった。本来これがあるべき姿。だって美しさの基準はそれぞれなのだから。

川原好恵(かわはらよしえ):ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルスの分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身

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週末お出掛けスポット 現代美術作家の中村ケンゴ × 「ソーイ」の展覧会などアート5選

 週末にオシャレして出掛けたいアートスポットをお届け。今週は個人宅にある美術作品と所有者に光をあてた展覧会や現代美術作家の中村ケンゴ × 「ソーイ(SOE)」の展覧会や日本初のアウトサイダーアート大型展覧会など5つをラインアップ。また、「WWD JAPAN.com」の過去記事の中から今週末(10月5、6日)に開催されるイベント情報やポップアップもまとめて紹介する。

【アートスポット5選】

【イベント】

シャネル銀座で新進写真家ヴァサンタ・ヨガナンタンが日本初個展 インド大叙事詩を現代に再解釈

ジャンポール・ゴルチエのクリエイションをたどる企画展 復刻アイテムも販売

「ストーンアイランド」がブランド初のアーカイブ展を原宿で開催、37年の歩みを振り返る

日本初のバスキア大規模展 前澤ZOZO前社長が所有する作品も

モデル、クリエイター事務所が人と人との“つながり”をテーマにしたアート展開催

「バレンシアガ」がバッグのカスタマイズイベント 伊勢丹新宿と阪急うめだで開催

「フリークス ストア」のデイトナ鹿島研社長がアメリカを撮った写真展「デイトリッパー」を開催

エスティ ローダー グループの乳がん啓発キャンペーン27年目がスタート

【ポップアップ】

パリ発「モロー・パリ」がギンザ シックスでポップアップストア開催

瀬戸内発、オーダーメイド感覚のジーンズ 「ラシンク」が初のポップアップストア

「デシグアル」が原宿旗艦店を大規模リニューアル とんだ林蘭が手掛けたファサードや限定コラボアイテム発売も

「ディオール」が伊勢丹でタータンチェックの限定コレクションを発売

NY発の「オーバーコート」がポップアップストアをオープン 特別に制作したインスタレーションを用意

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キーマンに聞く「リーバイス」 × グーグルのスマートジャケット製作秘話

 リーバイ・ストラウス ジャパンは、グーグル(GOOGLE)と協業して開発したスマートジャケットの第2弾“リーバイス トラッカージャケット ウィズ ジャカード バイ グーグル”を10月5日に発売する。価格は2万7500円で「リーバス(LEVI’S)」ストア全店とオフィシャルオンラインストア、ビームスの一部店舗で販売する。2017年の第1弾はアメリカ国内のみの展開だったため、日本での流通は初めて。同アイテムは「リーバイス」のトラッカージャケットの左袖口にグーグルが開発した導電性の繊維を組み込み、そこに内包したジャカードタグによりトラッカージャケットとスマートフォンをペアリングするもので、4つの簡単な動作で道案内や電話の応答、音楽の再生などをコントロールすることができる。同プロジェクトを先導するポール・ディリンジャー(Paul Dellinger)リーバイ・ストラウス グローバル・プロダクト・イノベーション担当ヴァイスプレジデントに話を聞いた。

WWD:グーグルと協業した“プロジェクトジャカード”のきっかけについて聞きたい。

ポール・ディリンジャー=リーバイ・ストラウス グローバル・プロダクト・イノベーション担当ヴァイスプレジデント(以下、ディリンジャー):現代人はスマートフォンと離れることはできない。たとえ気の置けない友人たちとのディナーの際でも、皆がスマホとにらめっこしている。つまり目の前の相手そっちのけで、どこかの誰かとコミュニケーションしている。とてもクレージーだ。しかし、われわれの作ったスマートジャケットがあれば、上司やパートナーなど特別な相手からの着信のみを文字通りスマートに知ることができる。健全なコミュニケーションのための一つの答え、それが“プロジェクトジャカード”による“リーバイス トラッカージャケット ウィズ ジャカード バイ グーグル”だ。

WWD:つまり行動科学が着想源であると?

ディリンジャー:その通りだ。僕はモノ作りの前に、社会の動きを見極めることを忘れない。

WWD:第1弾の販売経路、さらには店頭でのリアクションについて教えてほしい。

ディリンジャー:アメリカ国内のみの展開で、3つの直営店と3つの卸先(フレッド シーガル、キンフォーク、コンセプト イン ボストン)、オフィシャルオンラインストアに限定した。機能やメッセージをしっかり伝えるためにスタッフの教育も徹底した。結果として、友好的に受け入れられたと信じている。

WWD:そこで得たものを踏まえて第2弾は販路を拡大した。

ディリンジャー:日本をはじめ英国、フランス、イタリア、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランドで販売する。アメリカ国内の販路も広げた。それぞれの国の特性を理解し、適切に届けたい。

WWD:デニム最大の魅力である経年変化についても改良がなされた?

ディリンジャー: 12オンス以上あった生地を11.25オンスにした。これによって洗い加工によるリアルな経年変化感が表現できた。

WWD:改良はデザインにもおよぶ?

ディリンジャー:左袖に内包されるスマホ遠隔操作のためのジャカードタグを格段に小さくした。これによってスマートジャケットのカフ幅を小さくすることができた。実は「リーバイス」のトラッカージャケットのカフ幅とウエスト幅は同じだ。できるだけこのオリジナルデザインに近づける努力をした。結果は2cmだけカフ幅が広い。グーグルは操作性アップのためにもっと広くしてほしいと言ってきたが(笑)、これは譲れないポイントだった。だから5mmずつテストした。あくまでスマートジャケットをファッションとして取り入れてほしかったからだ。2017年に、われわれは自信を持って第1弾を発売した。しかし今考えるとテクノロジーに迎合していたと言える。だから第2弾では、それを改善した。トラッカージャケットは「リーバイス」のアイコンであり、その歴史は「リーバイス」そのものだからだ。

WWD:値段も手ごろになった。

ディリンジャー:第1弾は350ドル(約3万7000円)で、第2弾は198ドル(約2万1000円)だ。日本では2万7500円で発売される。

WWD:デニム生地は日本製?

ディリンジャー:糸は日本製だが、国や地域を問わずデニムを織れるようにしている。

WWD:あなたは第2弾の発売に合わせて、「スマホをポケットに入れて、世界にもっと目を向けよう」とのメッセージを発信した。「リーバイス」のテクノロジーを先導する立場のあなたのコメントとしては興味深い。あなたの考えるウエアラブル・テクノロジー、そして「リーバイス」の未来とは?

ディリンジャー:僕はモノ作りに際して、常に7つのルールを自分に課している。それが、1.水を汚さない 2.公害を起こさない 3石油由来の素材に頼らない 4.リサイクルを心掛ける 5.リサイクル可能なデザインをする 6.ユーザーをリスペクトして労働者を守るものを作る 7.作り手としてまた企業として責任と透明性を持つ、だ。その上で“質・タフさ・快適性”を届けたい。

WWD:“リサイクル可能なデザイン”とはシンプルということか?

ディリンジャー:そうだ。腐らないデザインを通じて、未来を創造したい。

WWD:あなたはリーバイ・ストラウスでサステイナビリティも担当する。そして以前のサステイナビリティについての取材で、「市場がどう思うかは関係ない。僕らはやるべきことをやるだけだ」と言った。それはもう1つの担当分野であるテクノロジーにおいても当てはまる?

ディリンジャー:おなかを空かせた人がいたとき、彼が「おなかが減った」と言うのを待つのが正解か?答えはNOなはずだ。われわれはジーンズのリーディングカンパニーとして、先回りして答えを示す責任がある。そして今回の主題はスマホだ。ある統計によると、われわれは1年の内49日間スマホを見ているという。では「リーバイス」は皆が目が見えなくなるまで待つのか?答えはNOだ。スマホにそれだけの価値はない。何となく見てしまう中毒性をジーンズメーカーの立場で解決したい。これがわれわれが行き着いた1つのソリューションだ。自分を信じて、その瞬間瞬間の問題を解決していくのみだ。

WWD:ずばり“リーバイス トラッカージャケット ウィズ ジャカード バイ グーグル”は日本市場に受け入れられる?

ディリンジャー:可能性は大きい。なにより日本人は新しいアイデアが好きだ。

WWD:少し気が早いが、第3弾のスマートジャケットではわれわれにどんな驚きを与えてくれる?

ディリンジャー:現在、コットン以外でデニムウエアを作る研究をしている。われわれが選んだのはヘンプだ。ヘンプは成長が早く、栽培時の水分量は綿の4分の1ほど。生命力が強く、生産も安定的だ。自社のラボ(研究所)で、ヘンプをコットンのように柔らかくする実験をしている。見た目がまるでコットン100%の、ヘンプ混ジーンズを20年の春夏、遅くとも秋冬にはお見せできるだろう。

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「タピオカ卒業組の皆さん、漢方はいかが?」 ファッションフリークOL「WWDジャパン」最新号につぶやく

 1992年生まれのファッションフリーク女子が、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。渋谷のファッションベンチャー企業に勤める等身大OL、Azuがリアルな目線を生かし、「このニュースからはコレが見える」という切り口でさまざまな記事につぶやきます。

今日のニュース:P.7「『誠品生活』日本1号店オープン」

読み解きポイント「おしゃれ漢方ブランドに注目!」

ニュースのポイント

 台湾の大型複合ショップ「誠品生活」が日本初上陸。9月27日に開業した「コレド室町テラス」の2階全体に「誠品生活日本橋」として出店し、台湾と日本のテナントをミックスしながら多彩な文化情報を発信する。書籍、文具、セレクト物販・ワークショップ、食物販・レストランの4ゾーンで構成し、“くらしと読書のカルチャーワンダーランド”のコンセプトを体現する。

AZUはこう読む!

 台湾の「誠品生活」には何度か行ったことがあり、今回の出店も楽しみにしていました。台湾の店舗は「蔦屋書店」のように洗練された落ち着く空間で、日本人にとって馴染みある雰囲気だったのでとても居心地がよかったのです。

 まだ「誠品生活日本橋」には行けていませんが、まず行きたいのは待望の日本初店舗となった漢方ブランド「デイリリー(DAYLILY)」です。同世代の日本人と台湾人女性が二人で起業したという、おしゃれ漢方ブランドということで、気にならないわけありません!

 以前ポップアップで何点か購入したのですが、鮮やかなオレンジのパッケージも可愛いし、お茶も飲みやすくて美味しいし、フェイスパックはつけ心地良いしで、すっかりハマってしまいそうです。漢方というと「難しい……」と身構えてしまいますが、女性の体調や悩みに寄り添ったわかりやすい商品ラインアップとビジュアルで手に取るハードルをぐっと下げてくれるので、漢方デビューにもプレゼントにもぴったり。

 「台湾 × 女の子 × ドリンク」というと真っ先にタピオカが頭に浮かびますが、台湾では生理痛を和らげる漢方ドリンクがコンビニで売っているなど、漢方は日本よりもっと身近な存在です。“タピオカ卒業組”は体にも優しくおしゃれな漢方にシフトしても良いのかも。

 帰国したらヨーロッパの炭水化物と糖分、硬水で乱れまくった体内外環境を整えるため、真っ先にアジアのビューティパワーを借りようと思います。

Azu Satoh : 1992年生まれ。早稲田大学在学中に渡仏し、たまたま見たパリコレに衝撃を受けファッション業界を志す。セレクトショップで販売職を経験した後、2015年からファッションベンチャー企業スタイラーに参画。現在はデジタルマーケティング担当としてSNS運用などを行う。越境レディのためのSNSメディア「ROBE」(@robetokyo)を主催。趣味は、東京の可愛い若手ブランドを勝手に広めること。ご意見等はSNSまでお願いします。Twitter : @azunne

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「広告商品化は余裕。だけどつまらない」 MERYの“共感型イベント”から見るメディア主催イベントの形

 女性向けウェブメディア「メリー」を運営するMERYは、新たなイベント「ROOM MERY MATE」をスタートした。昨年2日間にわたり開催した参加者2000人のイベント「LUCKY MERY DAY」とは異なり、参加者20~40人程度のミニイベントだ。すでにメイクのイベントを8月6日、カメラのイベントを8月30日に開催しており、今後も継続的に実施していく。電通との資本提携後初のイベントだが、現在電通とはデータ連携を徐々に進めている段階で、「ROOM MERY MATE」と直接は関わっていないという。同イベントを総合ディレクターとして率いる森茂穂MERYチーフクリエイティブディレクターは「『MERY』でメイクの記事などを見て、実践したいという気持ちなっても、HOWの部分って記事だけでは伝えきれない部分がある。その実践方法を伝えると共に、今まで以上にユーザー1人1人との関係値を深める場を作ろうと考えた。年内は深い体験を作ることを目標に据えてイベントの磨きこみや対象ユーザーの明確化、チームの設計を行っていき、2020年には本格的なマネタイズを目指す」と説明する。

2度のイベント共に手ごたえを感じる

 いずれのイベントも森ディレクターとほか2人の計3人で運営を行い、空間の設計も自前で行っている。「『メリー』には、雑誌のような世界観は存在しない。そういった中で、小規模な空間でどこまで“『メリー』らしさ”を演出できるかは徹底的にこだわった」と森ディレクター。初回は“バースデーメイク”、2回目は“オシャレなシャッター角度”をテーマに選んだ。「第一回は記事をリアルの場で表現したリプレイス型のイベントで、読者のインサイトに響くものにした。第二回はマネタイズを視野に入れ、広告の可能性のある分野、かつユーザーの潜在的ニーズがありそうな領域として『メリー』としては初のファッション・ビューティ領域外のカメラを選んだ」という。いずれのイベントも同メディア内での告知記事で集客は完結しており、特に初回のイベントは当選倍率が約30倍。実際の参加率も90%を超えており、不参加の際にも事前に連絡をするユーザーもいたという。「イベント終了後に『新しい自分に出会えた』という方や、『カメラを買いたい』と言ってくれる方もいた。ユーザーのエンゲージメントの高さを可視化することができたし、実際にユーザーと身近で対面することで、どのような考えを持っているのかなどが確認できた。単に広告商品化するだけだったら容易にできるだろう」と手ごたえを感じているようだ。

広告商品としてのイベントはつまらない

 しかし、「単なる広告商品としてのマネタイズだけではつまらない」とも森ディレクターは語る。「例えば毎週土曜と日曜は『メリー』の日だと思ってもらえるなど、『メリー』のユーザーがすでに形成しているコミュニティーのなかに、われわれがどのように位置づけてもらうべきかを考えていく。彼女たちのエンゲージメントの高さを軸に、どうすれば新たなマーケットを開拓できるのか、チャレンジしたい」。

 確かに広告記事とそれにひもづいたイベントのセットで収益を得るモデルはすでに多くのメディアで確立されているが、広告主ではなく、ユーザーの視点に立ったイベントを行えている媒体は少ない。「多くの場合、ユーザー体験は70点くらいを目指し、設計するが、『メリー』の場合はエンゲージメントの高さゆえに100点満点が最低ラインになってくる。オンライン上では数字勝負になってくるが、実際はユーザーがいかに心地よさを感じてくれるかが大事。そのポリシーをもってわれわれは記事やイベントなど、さまざまなサービスを提供していく」。

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編集長はパリコレで何した?Vol.7 シラク元大統領の葬儀に翻弄された日曜日、「バレンシアガ」でキティちゃんを追い、「ヴァレンティノ」でうっとり

 パリコレ7日目はシラク元大統領の葬儀が執り行われ、パリの交通事情が大混乱。幹線通りの一部が通行止めで、市内中心部の地下鉄の駅が閉鎖されるという事態に、毎時大移動を繰り返すパリコレの進行はスタック状態となりました。それでも一日が終わって見れば全部の予定が消化されているから不思議です。

9:00
大雨の中を走り出す
若い2人のデザイナー

 「ニナ リッチ(NINA RICCI)」のルシェミー・ボッター(Rushemy Botter)とリジー・ヘレブラー(Lisi Herrebrugh)にインタビューをするため朝一でショールームへ。モンテーニュ通りにはまだ人がまばらで静か。1週間以上パリコレの喧騒の中にいるのでホッとします。で、オープン前の「ニナ リッチ」のお店の前でドイツ在住のジャーナリスト薮野淳さんと写真を撮ったりして。薮野さんは元「WWDジャパン」記者で、今も山ほど仕事をしてくれています。

 ルシェミーとリジーのポートレートをショールームで撮影した後、場所をホテルのカフェに移そうとしたら突然の大雨が!そんなことお構いなしに雨の中を走っていく2人の後姿を見て、なんかいいな、と思いました。カリブ諸島にゆかりのある2人はスコールにも慣れているそうです。いろいろなカルチャーを経験している2人がパリのメゾンをどう導くのか?同じく多くのカルチャーを経験している薮野さんのリードで、2シーズン目の新しい「ニナ リッチ」像をたっぷり語ってもらいました。続きは紙面で~。

11:30
段々近づいてくるあの横顔は!

 「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は最近、パリ市外の巨大なスタジオをショー会場に使用しています。なぜなら大掛かりなセットを作るから。今回はかたつむりの殻を逆さにしたような巨大な螺旋階段を作り、目が覚めるような青いじゅうたんを敷き詰めてランウエイを作りました。ユニフォームをテーマにした91ものルックの中に「マスターカード」風イヤリングなど面白アイテムがいろいろ登場しましたが、その中に発見です!キティちゃん!エッジィの効いた格好をしている「バレンシアガ」男子に運ばれてくるキティちゃんがシュールです。遠くから近づいてくるキティちゃんの横顔を連写したのでどうぞお楽しみください。ドレスの背中のリボンもキティちゃんに見えますよね。

13:00
「アナイス ジョルダン」
× 「ナイキ」がカワイイ

 香港出身のデザイナーによる「アナイス ジョルダン(ANAIS JOURDEN)」で見つけた「ナイキ」とのコラボと思われるスニーカーがカワイイです。

14:00
「トム ブラウン」のシュールな
夢想の世界

 奇想天外とはこのこと。「トム ブラウン(THOM BROWNE)」の空想を具現化したかのようなショーは、夢に一さじのアイロニーが含まれ、時にサディスティックでもあります。今回はトムが大好きなグレーのストライプでできた庭に花の妖精が降り立ったかのような世界観。ワンコバッグはカワイイし、このショーにモデルとして参加するのは楽しそうだけど、イルカの置物に素足で立ち続けるのは私には厳しいかな……(求められてもいないけど)。

16:00
エグゼクティブ女性の味方
「アクリス」

 レースの街、スイス・サンガレン発ブランド「アクリス(AKRIS)」は働くエグゼクティブ女性にぴったりな上品で機能的な服がそろいます。で、お仕事やお仕事関係のパーティーにはバッグが必要ということもあり全ルックがアイコンバッグ“アイ(Ai)”を持っています。スーツにはPCも入るサイズの“アイ”、ドレスにはクラッチの“Ai”と、すごいバリエーションです。

17:00
シラク元大統領の弔問列と
「ヴァレンティノ」

 この日は、9月26日に亡くなったジャック・シラク(Jacques Chirac)元フランス大統領の葬儀がアンヴァリッドで行われ、市内は交通規制の嵐。弔問に訪れた一般の人が長蛇の列を作っており、とても人気のある大統領だったことがわかります。で、すぐ近くで行われた「ヴァレンティノ(VALENTINO)」の会場にたどり着くのが大変なこと!行列を横切ろうとしたら、陽気なおじさまが「これが『ヴァレンティノ』の列だよ」と冗談を飛ばしてきて笑っちゃいました。

 白のコットンから始まった「ヴァレンティノ」のショーは、いつも通りに美しい。クチュールの技をいつも以上に取り入れ、とにかく美しい。シュールなお猿モチーフのイヤリングが気になりました。

19:30
「ワンオー パリ」のオープンを
お祝い

 ワンオーがパリに新会社ブルペッパー設立し、活動拠点となるショールームを3区にオープンしたのでお祝いに行きました。パリで困ったとき(何かなくしたとかトイレが急務とか!)に駆け込む場所がひとつ増えて嬉しいです(笑)。

 最近はアジアでの活動に力を入れてきたワンオーですが、ここをハブにアジアとヨーロッパをつないでいくそうです。やるね!パリは2024年のオリンピックに向けて各所で再開発が進んでおり、こちらのエリアもこれから盛り上がるとか。写真はワンオーの松井社長(左)とブルペッパーの横山社長です。おめでとう!

20:30
もちもちプレッツェルでNYを感じる

 「ジバンシィ(GIVENCHY)」の招待状はデニム、そして会場で配られていたのはNY名物プレッツェル(もっちもち)でした。クリエイティブ・ディレクターのクレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)が「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」などで働いていた時のNYの思い出が今季のインスピレーションだそう。洗いをかけたデニムが少し懐かしくてよい感じです。という訳で江原美希さんをはじめとするモデルが着るデニムコレクションをご覧ください。

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優れたサービスには正当な対価を 低料金エステ倒産で思う業界の問題

 エステサロン「エイチエス ボディーデザイン(HS BODYDESIGN)」を運営するアキュートリリーが10月1日に東京地裁から破産手続開始の決定を受けました。2019年春ごろから従業員がSNSで給与の未払いを訴え騒動になっていたので、倒産の流れは当然だったのかもしれません。「エイチエス ボディーデザイン」はハンドトリートメントの全身オイルマッサージが60分3000円から受けられることや、接客のよさなどで高い評価を受けていましたが、この60分3000円という“低料金”が倒産の要因のひとつであったと思います。

 エステティック業界は近年、低料金サロンが増えています。その理由には、マシンの性能が高くなって施術の時間が大幅に短縮できるようになったことと、それによりスタッフの教育にさほど時間を割かなくても一定レベルのクオリティーを提供できることなどがあります。また、脱毛やフェイシャル、痩身などの業務用マシンを来店客が自分で操作するセルフエステも台頭してきています。

 低料金競争の結果、サロンの倒産・閉店は後を絶ちません。特に両ワキの施術料金がランチ代程度にまで下がっている脱毛サロンはその傾向が顕著で、月額4900円の全身脱毛コースが特徴だった「ピカリ(PIKARI)」は投資に対して採算が見合わず資金繰りが悪化し、19年4月に破産宣告を受けています。脱毛サロン最大手の「ミュゼ プラチナム(MUSEE PLATINUM)」は料金の安さと積極的なプロモーションで会員数を増加させた結果、予約の取りにくさが問題になって解約が相次ぎ、15年に運営がジンコーポレーションからRVHに引き継がれました(ジンコーポレーションはその後任意整理)。

 「エイチエス ボディーデザイン」はオプションなどによる追加料金はありましたが、手技で60分3000円は超格安です。10分500円——家賃や光熱費、諸経費を考慮すると、10分あたりの収入は300円を切っていたかもしれません。景気は上向いているといわれながらも給与に反映されていない人が多い中、料金の安さは消費者の心を引きつけます。若年層の取り込みを狙うならば、無理なく通い続けられる料金であることも重要でしょう。「エイチエス ボディーデザイン」の倒産を受けて、ツイッターでは「良質なサービスで大好きなサロンだったのに」「勧誘が一切なく、技術力は高く、最高のひと時を与えてくれるサロンだった」などの声が上がっています。手技によるクオリティーの高い施術を低料金で提供することは独自性が出る上に、顧客の満足度も高くなります。しかしその結果、企業が疲弊していく状況は健全とはいえません。サロンがつぶれて悲しいのは会社側だけではなく、足しげく通っていた顧客も同じです。

 低価格メガネの火付け役だった「ジンズ(JINS)」や「ゾフ(ZOFF)」はデザイナーを起用したり機能性を高めたり、ブルーライトをカットする“PCメガネ”で近視・遠視の人以外にも訴求したりと付加価値を高め、1万円以上の製品も取りそろえて格安イメージから脱却しました。全くの異業種ですが、“ハンバーガー80円”の時代から使用期限切れ鶏肉や異物混入問題による顧客離れを経て、“おいしさ&安全”にシフトしたマクドナルドも、マーケティングを重ねた末に開発した新メニューをヒットさせたり、「マクドナルド総選挙」などのユニークな企画を行ったり、店舗を「ポケモンGO」のジムやポケスポットにしたりと、さまざまな施策を取り入れてV字回復を果たしています。

 リクルートライフスタイルが6月に発表した「美容センサス2019年上期」によると、エステティックサロンや脱毛サロンは利用者数や利用頻度が増加しているだけじゃなく、客単価も上がっているそうです。メイクアップやスキンケアも、百貨店ブランドの高価格帯製品が若年層の間でヒットしています。エステ業界も、料金を下げなくても勝ち上がる道はあるはずですし、1万円を超えていても満足できる施術ならばお客は納得して通い続けるでしょう。

 一昔前はセレブが通う場所だったエステサロンも、低料金サロンの台頭で今では誰もが気軽に通えるビューティスポットになりました。しかし、1回で複数の顧客に対応するフィットネスのスタジオプログラムとは異なり、エステや脱毛は“1対1”が原則で、だからこそ技術やサービスに見合った料金設定はブランド価値の形成にもつながるのではないでしょうか。と同時に、私たち消費者も昨今の低料金競争を “恩恵”と捉えてはいけないと感じています。

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「フォーエバー21」破綻 ファストファッションの明暗を振り返る

 9月29日、米フォーエバー21(FOREVER21)の経営破綻が世界を駆け巡った。ファストファッションの代表格として世界で800店舗以上を運営してきたが、消費者や市場の変化に対応できず、近年は失速していた。同社以外でも安さを売りにした業態の不振が国内外で目立つ。だが一方で、「ザラ(ZARA)」のインディテックス(INDITEX)、「ユニクロ(UNIQLO)」「ジーユー(GU)」のファーストリテイリングは勢力を伸ばしている。

【「フォーエバー21」の経営不振と撤退ドミノ】

 米本社の経営破綻に至るまで、旗艦店の閉店、エリアでの大量閉店、中国や台湾からの撤退、日本からの撤退が相次いで発表され、Xデーがささやかれていた。

【米ギャップも苦戦
17年には日本の「オールドネイビー」事業から撤退】

 2012年に日本に上陸した低価格業態「オールドネイビー」を17年に撤退した米ギャップ。その戦略も曲がり角に来ている。

【英「トップショップ」も赤字転落
日本からは15年に撤退】

 2015年に日本事業から撤退した英「トップショップ」は、親会社のアルカディア・グループが経営再建中。

【青山商事は「アメリカンイーグル」の国内事業を手放す】

 青山商事は合弁会社を通じて展開する米カジュアル「アメリカンイーグル」の事業から撤退すると発表している。

【「ユニクロ」のファーストリテイリングは世界で出店攻勢】

 「ユニクロ」は日本と海外の売上高が逆転。成熟したといわれる日本でも既存店売上高が7期連続で増収を達成する。

【「ザラ」のインディテックスは
ECとリアル店舗が相乗効果を発揮】

 世界最大のカジュアル専門店企業であるインディテックスは、出店ペースを抑えながらも、EC拡大で成果を出す。

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小島健輔リポート “ニューリテール”のキモは無人化と無在庫化

 ファッションビジネスのコンサルタントとして業界をリードする小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する不定期連載をスタート。3回目は、アパレルビジネスのデジタル化の最前線を国内外の有力企業の事例とともに紹介する。

 ECや店舗運営はもちろん、接客や決済から生産までデジタル革新の嵐が吹き荒れているが、早とちりしてはリープフロッグの罠※1にはまりかねないし、躊躇していては時代に追い抜かれてしまう。アパレルビジネスのデジタル化はどうあるべきなのだろうか。

店舗運営はAIとICタグのせめぎ合い

 「アマゾンゴー(AMAZON GO)」に端を発して中国や韓国ではIT仕掛けの“無人コンビニ”がブームとなった。しかし注目されたのはつかの間、早くも有人運営になったり閉店したりでブームは過ぎ去ろうとしている。個人認証や決済のわずらわしさももちろんだが、品ぞろえや人的サービスへの不満が根底にあるようで、目新しさが過ぎれば小売店本来の魅力が問われるのは当然だ。

 その点、元祖“無人コンビニ”たる「アマゾンゴー」はよく考えられており、決済・精算こそAI(人工知能)仕掛けだが品ぞろえは一般のコンビニと遜色ないし、カフェサービスなどは人手を惜しまず、一般のコンビニより多人数で運営している。「アマゾンゴー」は無人精算店舗であって無人運営店舗ではないのだ。中国のマネっこ“無人店舗”もその点は変わりなく、精算は無人でも品出しやフェイシング(陳列・補充)管理などマテハン※1は従来のコンビニとなんら変わらず、無人運営には遠い。

 ついでながら、決済と精算の違いを明確にしないと、必要とするデジタル技術を理解できない。「決済」は銀行口座などと紐づけたIDや生体で個人認証すれば容易だが、「精算」はどんな商品をいくつ持ち出したのかを確実につかむ必要があり、ICタグか画像解析AIのどちらか、あるいは両方の検証を要する。流行りの“なんちゃらペイ”スマホ決済は2次元コードによるID認証に過ぎず、「決済」はできても「精算」とは無関係で、レジで手間取るだけで何のメリットがあるのか理解に苦しむ。

 「精算」だけなら画像解析AIと個人認証で済むし、フェイシング管理も画像解析AIでできるが、賞味期限管理や棚卸、入出荷検品や防犯、サプライチェーン連携となるとICタグに頼らざるを得ない。直近では電波位相解析技術を使った最新鋭スキャナー(RFルーカス社)で動体検品や位置探索も可能になったから、タグの低価格化とも相まって実用性が高まっている。

 AIも解析効率が高まったとはいえ大量の処理能力を要するので、スピード感は今ひとつ。「アマゾンゴー」でも当初は精算確認に30分近く要していたし、直近でも3分ほどかかると聞く。そんなわけで、「アマゾンゴー」を全米に3000店も展開しようというアマゾンの構想はAWS(クラウドサービス)事業の拡大を狙ったものではと勘ぐりたくもなる。ITビジネスではSNSの多くがそうであるように表のサービスと裏の収益の二重構造は珍しくないから、案外、正鵠を射た見方かもしれない。

 店舗運営ではICタグとAIを軸に「決済」「精算」「防犯」「在庫管理」の無人化や効率化が進む一方、「接客」を支援するAIエントリーやAI採寸、ひいてはAIコーディネートまで過熱気味だが、「アマゾンゴー」に学ぶまでもなく、残すべき人的サービスは何かを熟慮すべきだろう。何から何までAI化できるとしたら、今まで心血を注いできた店舗運営や接客のスキルは一体何だったのかということになってしまう。

※1.リープフロッグの罠…固定電話網に囚われてモバイル通信網の整備が遅れたり、ATM網に囚われてキャッシュレス決済に取り残されたり、古いインフラや隘路に入る技術に囚われてシステム革新に後れを取ること。

※2.マテハン…マテリアル・ハンドリングの略称で、商品の搬入や補充・陳列の作業を総称する。

全ての元凶は在庫だから無在庫C2Mへ

 遠い昔の卸流通(垂直分業)時代には需給調整が成り立って過剰供給は一過性にとどまっていたが、90年代以降の四半世紀でSPA流通(水平分業)が主流になるにつれ、デフレ圧力による生産地の遠隔化とロットの拡大もあって過剰供給が慢性化し、今やアパレル業界が供給する総量の半分(18年で46.9%)も最終消化できないという泥沼に陥っている。その直接的元凶は「在庫」だから、それを圧縮し、無在庫化できれば泥沼から脱出することができる。

 流通段階で在庫効率を高めるには在庫を分散させないことが肝要で、多店舗に在庫が分散する店舗販売より、DC※3に在庫を集中できるEC、ECでも在庫の分散を避ける一元化やドロップシッピング※4が求められる。DCへの在庫集中による店舗在庫の希薄化と売り上げの低下を避けるには、EC受注に店舗在庫を引き当てて店で渡したり店から出荷するC&C(クリック&コレクト)が突破口になる。

 流通段階で在庫効率を高めても、大量一括の生産や調達では商社や自社の倉庫に積み上げて売り減らす「ダム型サプライ」を抜けられない。「ユニクロ(UNIQLO)」や「無印良品(MUJI)」が店頭在庫の1.5倍も倉庫に積み上げているのは決算書からも明らかで、実質的な在庫回転は「ユニクロ」が2.17回、「無印良品」は2.44回にとどまる(いずれも前期)。

 そんな「ダム型サプライ」を回避するには「ザラ(ZARA)」のようにミニマムロット(平均ロットは「H&M」を1ケタ下回る)で一蒔きに徹してどこにも倉庫在庫を積まない「清流型サプライ」に徹するべきだが、それでも店舗には在庫が滞留してセール処分が必要になる。D2CといわれるEC特化ブランドでもロット生産した在庫を売り減らしているのが現実で、無在庫販売を実現するには生産を受注に即応させるしかない。

 その理想を実現するのがC2M(Consumer to Manufacture)※5という受注生産で、「ユニクロ」が島精機製作所と組んだホールガーメント・ニットや「カシヤマ・ザ・スマートテーラー(KASHIYAMA THE SMART TAILOR)」の短納期PO(パターンオーダー)スーツが代表的なものだ。「ナイキ(NIKE)」や「プーマ(PUMA)」の消費地生産は理想だが、生産コストを考えれば中国沿海部などでIoTによって短納期生産するのが現実的。オンラインCAD※6、さらにCAM※7まで投資すれば生産サイクルは極端に短縮できる。

 C2Mの究極は生産仕様をオンラインで送って消費者の目の前で製品化する3Dプリンター生産で、これは樹脂製のアクセサリーならもう実現している。金型を使ったり金属粉を焼結したりして仕上げる金属アクセサリーはやや時間を要するが、それでも数日で手に入る。

※3.DC(Distribution Center)…商品を一旦、棚入れして保管して仕分け出荷する旧式物流倉庫。TC(Transfer Center)は保管・棚入れしないで仕分け出荷する物流加工基地。

※4.ドロップシッピング…受注情報を宅配伝票データにしてオンラインで出品者に送り出品者が顧客に出荷する方式で、出品者は在庫を分散させず複数のECサイトに対応できる

※5.C2M(Consumer to Manufacture)…一歩進んでIoTによる無在庫サプライに踏み込むビジネスモデルで、短納期パーソナルオーダーや店頭3Dプリンター出力販売などが挙げられる。

※6.CAD(Computer Aided Design)…コンピュータを使って設計することや設計するためのソフトやシステムのこと。

※7.CAM(Computer-Aided Manufactureing)…コンピュータ支援を使用した製造や生産のこと。CADで製作図面を作成したのちの工程を導き出す。

リードタイム短縮のデジタル投資という現実的選択

 パーソナル対応のC2Mでは大量販売に限界があるから、多くのアパレルメーカーやSPAにとって現実的な選択はリードタイムの短縮だろう。需給ギャップのリスクはリードタイムとロットに比例して大きくなるから、ロットを細分化して短サイクル生産すればリスクを格段に圧縮できる。

 アパレル生産で時間を食うのは企画からサンプリングして決定するプロセス、決定した企画をパターンに仕上げてグレーディングしマーキングするプロセスで、裁断された生地を縫製するプロセスは全体の数分の一に過ぎない。それも小ロットのセル生産なら数時間から一両日で終わる。大ロットのライン生産こそ数週間を要するが、企画〜マーキングのプロセスに比べれば知れている。

 そこで急進しているのが企画〜仕様開発のデジタル化で、サンプルを作らない3Dモデリングで企画を決定し、デジタルCADで仕様を仕上げてオンラインでマーキングCAD&裁断CAMに送れば、前工程のリードタイムを何分の一にも圧縮できる。今や商品企画を主導しているのは3Dモデリングを操るデジタルデザイナーやデジタルCADに習熟したデジタルパタンナーであり、アパレル事業者は明確な戦略展望に基づくCAD /CAM投資を急ぐべきだ。

 「製品買い上げ」に埋没して生産現場から乖離した事業者には見えないかもしれないが、自ら開発と生産をマネジメントする「工賃払い調達」を固持している事業者には当然の見識だろう。グローバルSPAの中で唯一、部分的とはいえ早くからCAD /CAM投資をして「工賃払い調達」で短サイクル商品開発と完成度を両立させている「ザラ」の先見性をあらためて評価したい。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

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「ファッションをこの消費社会の諸悪の根源だと思っているから、実はあまり関心がないんだよね」 by トム・サックス

現代芸術家トム・サックス

 ファッションをこの消費社会の諸悪の根源だと思っているから、実はあまり関心がないんだよね。ファッションの“シーズン”という考え方は、計画的に製品を廃れさせることへと直結している。そして消費者、特に女性に対して、最新ではないアイテムを着ていることを時代遅れで恥ずかしいと思わせ、さらに現実的ではない理想像で苦しめ、病に悩ませる。そういう点が大嫌いだ。(2019年5月22日掲載、世界を魅了する現代芸術家トム・サックス 「ナイキは僕を、僕はナイキを必要とする」から)

The WORDS
ファッション業界人の残した名言を日々の糧に。デザイナーやバイヤー、社長、編集長らの心に響く言葉をお届け。

【トム・サックスの考えを知る】

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皮脂の詰まりをすっきり落として頭皮環境を整える スカルプケアに“スクラブ”の新提案

 秋は紫外線による日焼けダメージや皮脂の分泌増加、エアコンによる乾燥など、夏の間に受けたダメージが頭皮に表れる季節です。季節の変わり目のせいか、記者自身シャワー後の排水溝に抜け毛が多いような気も……。頭皮ケア用のエッセンスやローションを使ってみようかなと思っていたところ、8月下旬に「サボン(SABON)」から、9月中旬には「ケラスターゼ(KERASTASE)」から、頭皮用のソルトスクラブが発売され気になっていました。ボディーケアでは慣れ親しんでいるソルトスクラブですが、頭皮への効果や使い心地はどうなのでしょうか。疑問を解消すべく「ケラスターゼ」のスクラブを導入するという「カキモトアームズ 新宿店」に行ってきました。

 「ケラスターゼ」の頭皮用スクラブはその名も「フュジオスクラブ」。肌と同じで頭皮にも脂性タイプと敏感タイプの2種があるということで、脂性用のシーソルト配合の「エナジャイズスクラブ」と敏感用のジェルタイプの「アペザントスクラブ」をそろえています。さらに顧客の好みによってスクラブにブレンドする3種のエッセンシャルオイルをそろえたサロン専用メニューです。

 まずは頭皮と毛髪の状態をリアルタイムで確認できる高解像度のカメラ“K-Scope”で頭皮の状態をチェック。健康な毛穴からは通常2~3本の毛髪が生えてくるといわれていますが、記者の場合は多くても2本。2本生えている場合でも1本は細毛になっている毛髪が多いことも分かりました。施術を担当してくれた永井幸佐スタイリストによると「毛穴に皮脂が詰まっていると毛髪が生えてくるのを阻害したり、栄養が毛根まで行き届かずに細毛の原因になってしまう」そうです。

 診断の結果、毛穴の周りに皮脂があること、血行不良による頭皮の赤みから敏感用の「アペザントスクラブ」を使用してもらうことになりました。ソルトスクラブが気になっていたのに……と思いながらも無理はできません。ソルトスクラブは粒子が粗いため、男性でも特に皮脂の分泌量の多い人におすすめするそうです。

 施術はまず「アペザントスクラブ」に、気分で選んだジンジャーの香りのオイル「ユイルティミュリスト」を混ぜ合わせたものを地肌に塗布しマッサージし、そしてシャンプー。食器洗い用洗剤のCMでよくあるお皿を指でこすったときのキュッキュッという音が地肌からするぐらいの洗い上りを実感しました(笑)。スクラブも敏感用のため粒が細かいのでこすられている感じはせず、頭皮のマッサージを受けている感覚です。

 その後「マスク イドラ アペザント」を使用したトリートメントへと進みます。トリートメントにも好みに合わせたエッセンシャルオイルを混ぜてくれるので、香りによるリラックス効果もありました。最後にハリ・コシ、ボリュームをアップしてくれる、頭皮・ヘアトリートメント「DS アドジュネス」を塗布して乾かしてもらいました。

 施術後も“K-Scope”で頭皮の状態をチェック。施術前に比べると皮脂がなくなっているのが目に見えてわかります。またマッサージ効果もあって赤みもやや改善されました!

 最後に気になっていた頭皮へのソルトスクラブの影響を永井スタイリストに質問。「ソルトスクラブに限らず、スクラブは毛髪と粒子のこすれでヘアカラーが少しだけ抜けやすくなります。ヘアカラー後2週間程度はヘアカラー専用のケアをおすすめします」ということでした。頭皮や毛髪の状態に合わせて、使うアイテムやステップを考慮してくれるので一度サロンで相談してみるとよいですね。

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予約段階で1万本を記録! ランコム「ジェニフィック」新作発売記念イベントに潜入

 「ランコム(LANCOME)」の人気製品「ジェニフィックアドバンスト N」の発売を記念した期間限定イベント「美肌菌サロン」が、東京・表参道ヒルズでスタート!発売前の約1カ月で予約本数が1万本を超えた話題の新製品です。イベント会場は製品の秘密を紹介するアカデミックなコーナーやテンションの上がるアトラクション、お得なビューティ体験まで、さまざまなコンテンツが用意されていました。

今回のイベント一の力作!
「美肌菌ゲーム」

 会場入り口横に備えられたモニターには、「美肌菌ゲーム」の文字と昭和感たっぷりなドット絵のキャラクターが。パネルに浮かんでは消えていく「ジェニフィックアドバンスト」をタッチして消していく、オリジナルゲームが楽しめます。キョロキョロ&アワアワしながらひたすらたたいてみたところ、9000点(4位)の成績を出すことができました!運動神経はよい方ではないのですが、求められるのは動体視力と反射神経だけじゃなく、楽しんでトライするお祭り気分なのかも?ゲームを体験した人の中から1日1人に「ジェニフィックアドバンストN」1年分をプレゼントするスペシャル企画も用意されています。

プロが撮影するフォトスポットは2カ所!

 昨今のイベントにはフォトスポットがつきものですが、今回の会場には2カ所用意されています。一つは鏡張りの壁面と製品シルエットをモチーフにした電飾によるスペース。もう一つは壁面にデジタル映像が映し出されたスペースで、プロのカメラマンが撮影をしてくれるサービスが用意されています。撮影データはiPhoneのエアドロップを使って受け取ることが可能。製品の大きな模型を手に撮影することもできます。

顕微鏡で美容液に含まれている美肌菌を観察

 テンションの上がるコンテンツを楽しんだら、ちょっぴりアカデミックなお話を。今回の新作「ジェニフィックアドバンスト N」は、人の肌に存在する常在菌から肌を美しく保つ“美肌菌”に着目。一人一人異なる肌の美肌菌バランスを整えるための菌を配合しています。会場では配合されている菌を一つ一つ紹介していて、顕微鏡をのぞくとさまざまな形状の菌を確認することができます。また、年齢や環境、肌質によって異なる皮膚常在菌のバランスをグラフで説明する、科学館のような模型も。説明を聞いていると、自分の皮膚常在菌を確認してみたい!と、興味がさらにかき立てられます。

美容液1週間分と美顔器で集中ケア体験

 会場奥には、「ランコム」のイベントではおなじみになりつつある「輝き肌体験」のスペースが。1週間分の「ジェニフィックアドバンスト N」を顔にたっぷり塗り、1秒間に約300万回振動する超音波ブースターを使ったフェイシャルトリートメントを無料で受けることができます。通常量(1滴)の場合はスーッと肌に浸透していく軽いテクスチャーが魅力ですが、なにしろ1週間分の滴を一気に肌にのせるため、最初はフェイスマスクを外した後のようにトロトロとした美容液が顔一面についた状態。それを、ブースターを使いながら奥まで浸透させていくと、終了時には肌がもちもちになります。こちらのコーナーはいつも大人気なので、事前に公式サイトから予約しておくとベスト。仕上げのメイクもしてもらえるので、仕事や学校の終わりに立ち寄ると一日の疲れも吹き飛びますよ。

大階段にはクレーンゲームが

 表参道ヒルズの大階段にも「ランコム」の装飾が施されています。中段の踊り場には「ジェニフィックアドバンスト N」のサンプルがもらえるクレーンゲームが置かれています。さっそく挑戦してみると編集部3人中2人がまさかの失敗!「失敗した方を初めて見ました」とスタッフも苦笑いでした。本当は、誰でも挑戦できるよう、簡単に設計されているとのこと。時間内ならば何回でもクレーンを動かすことができるので、焦らず冷静にターゲットのカプセル位置を見極めることが大切なようです。

 ちなみに、今回のイベントで一番準備に時間がかかったのは「美肌菌ゲーム」で、いちからプログラムしたという力作なんだそうです。また、顕微鏡で見ることができる菌もフランスから取り寄せた貴重なもので、ここでしか体験できないコンテンツの多さが魅力でした。レジャー気分で楽しみながらためになる美肌作りの情報も仕入れることができる「美肌菌サロン」。週末レジャーに訪れてみてはいかがでしょうか。

■「ランコム 美肌菌サロン」
日程:10月3~13日
時間:11:00~20:00 (最終日のみ18:00まで)※超音波ブースター最終受付 19:30(最終日のみ17:30まで)
場所:表参道ヒルズ 本館B3F スペースオー
住所:東京都渋谷区神宮前4丁目12-10

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読者が注目した今週の新作 「スノーピーク」 × 「東京デザインスタジオ ニューバランス」など(10月4日〜10日)

 「WWD JAPAN.com」が今週発売の新商品を「ファッション部門」「ビューティ部門」「スニーカー部門」別にまとめてお届け。「ファッション部門」と「ビューティ部門」は読者の注目度(PV)から1〜3位までをランキング形式で紹介。今週の「ファッション部門」では「スノーピーク(SNOW PEAK)」と「東京デザインスタジオ ニューバランス(TOKYO DESIGN STUDIO NEW BALANCE)」のコラボレーションしたカプセルコレクションが最も注目され、「ビューティ部門」では「ドルチェ&ガッバーナ ビューティ(DOLCE&GABBANA BEAUTY)」のメイクアップコレクションが1位に輝いた。

【ファッション部門】


【ビューティ部門】


【スニーカー部門】

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新たな自分に出会う この秋冬にすすめたいランジェリーと香り

 「WWDビューティ」10月3日号、「WWDジャパン」10月14日号には付録として「ランジェリー&フレグランス特集」が付きます。下着も香水も、素肌にじかにまとうものでありながら選び方はさまざま。ランジェリーについてはデザインだったり、機能性の高さだったり、はたまた “見られる”ことを念頭に置いていたり(女性が最もランジェリーに気合いを入れるタイミングの一つは「女性同士での温泉旅行」なんて説もありますよね)。香水は、自分の気持ちを高めたりリフレッシュしてくれたりするのはもちろん、人々にどんな自分を印象づけたいか、という選び方もあると思います。

 そんな中、今回の特集は“わたしのために選ぶランジェリーと香り”をテーマに据えました。一人の女性の日常の中でも、新たな自分に出会うべくチャレンジしたいときもあれば、安心感たっぷりにリラックスしたいときもある。自分本位にわがままに、気持ちに合わせてまといたいものをピックアップしました。ここでは特集の一部をご紹介します。

 巻頭では、「スタディオファイブ(STUDIO FIVE)」のランジェリーで強く前向きな女性像を表現しました。赤みのあるオレンジベースのブラ&ショーツは、カラフルな刺しゅうが華やか。肌をきれいに見せてくれる色使いに気分も上がります。コーディネートしたフレグランスは、名女優オードリー・ヘプバーン(Audrey Hepburn)が愛した「ジバンシイ(GIVENCHY)」の名香「ランテルディ(L’INTERDIT)」の新作。強く美しい女性にこそまとってほしい、純白の花束のようにかれんでチャーミングな香りです。

 くつろぎ気分にぴったりなのが、「ランジェリーク(L’ANGELIQUE)」のノンワイヤーブラ。コットンをメインにしたジャカードがやさしく肌を包みつつ、スタイリッシュな表情に仕上がっています。コットンのランジェリーというと“ナチュラルほっこり感”が強いものも多く、気分が上がる一枚が見つけにくいこともありますが、「ランジェリーク」はその点においてもパーフェクト!このページでは、そのほかにもデザイン性の高さとつけ心地のよさを両立させたコットンのアイテムを紹介しています。

 「ランジェリーク」に合わせたフレグランスは、日本発の注目ブランド「トバリ(TOBALI)」の「ホワイトストレージ(WHITE STORAGE)」。透明感あふれる草花の香りはどこかスパイシーで、やさしいだけでない多面的な魅力があります。実は今回の特集を担当するにあたって100本前後のフレグランスを試した中で一番好きだったのがこちら。四方を山に囲まれた土地で育ったせいかウッドや土、深い森のような香りに引かれがちなのですが、「ホワイトストレージ」はしんと静かな景色にオリエンタルなニュアンスが心地よく重なるような、深呼吸したくなる香りでした。“一筋縄ではいかない”魅力的な香りを提案する「トバリ」に今後も注目していきたいと思います。

 国産ランジェリーの大手、ワコールの技術を結集したブランド「トレフル(TREFLE)」のランジェリーからは、“好きなものを慈しむ喜び”を切り取りました。フィット感がありながら美しいドレープを描くボディーに刺しゅう糸だけで仕立てた繊細なレースがあしらわれた一枚は、ずっと眺めていられるほど端整。撮影現場でも「きれい!」という声があちこちで上がりました。コーディネートした香りはパリの実力派フレグランス「メゾン フランシス クルジャン(MAISON FRANCIS KURKDJIAN)」の「プティ マタン(PETIT MATIN)」。早朝の陽の光のような、穏やかでフレッシュな香りです。

 特集内ではこのほかにもランジェリーの最新トピックスや、3つの香水トレンドから今選びたい12本の香りを紹介しています。ランジェリーも香水も、表立って主張するものではありません。でも、だからこそ心と身体にぴったりと寄り添うアイテムは、毎日をごきげんなものにしてくれるはず。この秋は気の向くまま、自分のために、お気に入りを選んでみてはいかがでしょうか。

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新たな自分に出会う この秋冬にすすめたいランジェリーと香り

 「WWDビューティ」10月3日号、「WWDジャパン」10月14日号には付録として「ランジェリー&フレグランス特集」が付きます。下着も香水も、素肌にじかにまとうものでありながら選び方はさまざま。ランジェリーについてはデザインだったり、機能性の高さだったり、はたまた “見られる”ことを念頭に置いていたり(女性が最もランジェリーに気合いを入れるタイミングの一つは「女性同士での温泉旅行」なんて説もありますよね)。香水は、自分の気持ちを高めたりリフレッシュしてくれたりするのはもちろん、人々にどんな自分を印象づけたいか、という選び方もあると思います。

 そんな中、今回の特集は“わたしのために選ぶランジェリーと香り”をテーマに据えました。一人の女性の日常の中でも、新たな自分に出会うべくチャレンジしたいときもあれば、安心感たっぷりにリラックスしたいときもある。自分本位にわがままに、気持ちに合わせてまといたいものをピックアップしました。ここでは特集の一部をご紹介します。

 巻頭では、「スタディオファイブ(STUDIO FIVE)」のランジェリーで強く前向きな女性像を表現しました。赤みのあるオレンジベースのブラ&ショーツは、カラフルな刺しゅうが華やか。肌をきれいに見せてくれる色使いに気分も上がります。コーディネートしたフレグランスは、名女優オードリー・ヘプバーン(Audrey Hepburn)が愛した「ジバンシイ(GIVENCHY)」の名香「ランテルディ(L’INTERDIT)」の新作。強く美しい女性にこそまとってほしい、純白の花束のようにかれんでチャーミングな香りです。

 くつろぎ気分にぴったりなのが、「ランジェリーク(L’ANGELIQUE)」のノンワイヤーブラ。コットンをメインにしたジャカードがやさしく肌を包みつつ、スタイリッシュな表情に仕上がっています。コットンのランジェリーというと“ナチュラルほっこり感”が強いものも多く、気分が上がる一枚が見つけにくいこともありますが、「ランジェリーク」はその点においてもパーフェクト!このページでは、そのほかにもデザイン性の高さとつけ心地のよさを両立させたコットンのアイテムを紹介しています。

 「ランジェリーク」に合わせたフレグランスは、日本発の注目ブランド「トバリ(TOBALI)」の「ホワイトストレージ(WHITE STORAGE)」。透明感あふれる草花の香りはどこかスパイシーで、やさしいだけでない多面的な魅力があります。実は今回の特集を担当するにあたって100本前後のフレグランスを試した中で一番好きだったのがこちら。四方を山に囲まれた土地で育ったせいかウッドや土、深い森のような香りに引かれがちなのですが、「ホワイトストレージ」はしんと静かな景色にオリエンタルなニュアンスが心地よく重なるような、深呼吸したくなる香りでした。“一筋縄ではいかない”魅力的な香りを提案する「トバリ」に今後も注目していきたいと思います。

 国産ランジェリーの大手、ワコールの技術を結集したブランド「トレフル(TREFLE)」のランジェリーからは、“好きなものを慈しむ喜び”を切り取りました。フィット感がありながら美しいドレープを描くボディーに刺しゅう糸だけで仕立てた繊細なレースがあしらわれた一枚は、ずっと眺めていられるほど端整。撮影現場でも「きれい!」という声があちこちで上がりました。コーディネートした香りはパリの実力派フレグランス「メゾン フランシス クルジャン(MAISON FRANCIS KURKDJIAN)」の「プティ マタン(PETIT MATIN)」。早朝の陽の光のような、穏やかでフレッシュな香りです。

 特集内ではこのほかにもランジェリーの最新トピックスや、3つの香水トレンドから今選びたい12本の香りを紹介しています。ランジェリーも香水も、表立って主張するものではありません。でも、だからこそ心と身体にぴったりと寄り添うアイテムは、毎日をごきげんなものにしてくれるはず。この秋は気の向くまま、自分のために、お気に入りを選んでみてはいかがでしょうか。

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ニトリの3~8月期は減益も通期は33期連続の増収増益の見込み

 インテリア最大手のニトリホールディングス(HD)の2020年3~8月期決算の売上高は前年比6.6%増の3215億円、営業利益が同0.6%減で555億円、純利益が同2.9%減の368億円だった。

 10月2日行われた会見で似鳥昭雄ニトリHD会長兼CEOは、増税やアメリカ市場の現状を例に「小売業として生き残るには価格を安く、品質や機能をアップしていくしかない。約1万4000あるSKUの半分を1年間で入れ替え、残りは品質を向上させるか価格を下げるべきだ」とコメント。ニトリHDでは会長兼CEOが自ら年間1400人のスタッフをアメリカ研修に連れて行くという。同会長兼CEOは、「アメリカの市場は年々変化している。2つのブラックホールであるアマゾン(AMAZON)とウォールマート(WALMART)によるネット旋風が巻き起こり、リアル店舗は淘汰されている。専門店も寡占化していっている。10年後、日本もアメリカのようになる。だから、安さや今までにない機能といった商品の魅力を追求するしかない。目先のことに惑わされても仕方ない。10年、20年、先を見据えて人材を含めて投資していきたい」と話した。

梅雨寒の影響も季節商材は前年並み

 7月は記録的な梅雨寒の影響で季節商材の売り上げが伸び悩んだが、8月に好転。気温の上昇に伴い“ハンディファン”や“Nクール”などの季節商材の売り上げはほぼ前年同様だった。ほか、テレビCM効果で部屋が広く見えるロータイプのダイニングの売り上げが堅調に推移。また、一部地域で限定販売をしていたベビー商材がSNSで話題になって全国展開をスタートさせ、今後も継続してこだわりが詰まった商材を強化していく。通販事業は首都圏中心の若年層からの支持を得て好調で同20.6%増。8月26日に「ニトリネット」のリニューアルを行い、アプリを刷新することで利便性を高める。LINE会員証の導入も今期中に行いさらに客層を広げるもくろみだ。

 「デコホーム(DECO HOME)」では、女性向けの花柄やカラー商材が好調。今後はフレグランスなどの商材を拡大していく予定だ。現在オリジナル商材は全体の約55%だが、人気の高い「ニトリ(NITORI)」の商材もキープしつつ来年には70%までに増やす目標を掲げている。

中国では日本のノウハウをもとに標準化を図る

 現在38店舗を運営している中国市場では、上海の主要店舗で日本における最先端の店舗を再現するとともに、ノウハウやパターンを導入した標準店舗とすることで既存店に広げていく予定だ。売り場の改装を行った上海七宝店では、日本の売り場では当たり前のポップなども整備したところ改装後に売り上げが2ケタ増になったという。2021年の出店再加速を視野に入れ、日本人の店舗運営スタッフ4人を常駐させて内部マネジメントの体制を整えるとともに、中国市場の把握や商品の効果的な打ち出し方を模索する。

 日本ほどブランドの認知度がない中国では、出店するSCの集客に頼らざるを得ない面があり、採算が取れない店舗に関しては閉店していく。日本市場と共通の商品の割合は現在約60%。先行してクッションカバーや布団カバーなどのファブリック素材を中心に、今年末までに70%を目指し、ゆくゆくは家具のサイズの見直しなども行っていく。

増税後は販促とコントロールを強化

 増税前の駆け込み消費は、9月21~30日の10日間では、既存店売り上げが前年比6割強増加して予想を上回る結果になったが、約半年間は増税の影響を見込んで販促を積極的に行うほか生産、在庫などのコントロールの精度を上げていくという。

 2020年2月期の通期見通しは、売上高が同5.7%増で6430億円、営業利益が同3.2%増で1040億円、純利益が同4.9%増で715億円を見込んでいる。

 11年には年商を1兆にする目標を掲げるニトリHDの今後の動きに注目が集まる。

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ニトリの3~8月期は減益も通期は33期連続の増収増益の見込み

 インテリア最大手のニトリホールディングス(HD)の2020年3~8月期決算の売上高は前年比6.6%増の3215億円、営業利益が同0.6%減で555億円、純利益が同2.9%減の368億円だった。

 10月2日行われた会見で似鳥昭雄ニトリHD会長兼CEOは、増税やアメリカ市場の現状を例に「小売業として生き残るには価格を安く、品質や機能をアップしていくしかない。約1万4000あるSKUの半分を1年間で入れ替え、残りは品質を向上させるか価格を下げるべきだ」とコメント。ニトリHDでは会長兼CEOが自ら年間1400人のスタッフをアメリカ研修に連れて行くという。同会長兼CEOは、「アメリカの市場は年々変化している。2つのブラックホールであるアマゾン(AMAZON)とウォールマート(WALMART)によるネット旋風が巻き起こり、リアル店舗は淘汰されている。専門店も寡占化していっている。10年後、日本もアメリカのようになる。だから、安さや今までにない機能といった商品の魅力を追求するしかない。目先のことに惑わされても仕方ない。10年、20年、先を見据えて人材を含めて投資していきたい」と話した。

梅雨寒の影響も季節商材は前年並み

 7月は記録的な梅雨寒の影響で季節商材の売り上げが伸び悩んだが、8月に好転。気温の上昇に伴い“ハンディファン”や“Nクール”などの季節商材の売り上げはほぼ前年同様だった。ほか、テレビCM効果で部屋が広く見えるロータイプのダイニングの売り上げが堅調に推移。また、一部地域で限定販売をしていたベビー商材がSNSで話題になって全国展開をスタートさせ、今後も継続してこだわりが詰まった商材を強化していく。通販事業は首都圏中心の若年層からの支持を得て好調で同20.6%増。8月26日に「ニトリネット」のリニューアルを行い、アプリを刷新することで利便性を高める。LINE会員証の導入も今期中に行いさらに客層を広げるもくろみだ。

 「デコホーム(DECO HOME)」では、女性向けの花柄やカラー商材が好調。今後はフレグランスなどの商材を拡大していく予定だ。現在オリジナル商材は全体の約55%だが、人気の高い「ニトリ(NITORI)」の商材もキープしつつ来年には70%までに増やす目標を掲げている。

中国では日本のノウハウをもとに標準化を図る

 現在38店舗を運営している中国市場では、上海の主要店舗で日本における最先端の店舗を再現するとともに、ノウハウやパターンを導入した標準店舗とすることで既存店に広げていく予定だ。売り場の改装を行った上海七宝店では、日本の売り場では当たり前のポップなども整備したところ改装後に売り上げが2ケタ増になったという。2021年の出店再加速を視野に入れ、日本人の店舗運営スタッフ4人を常駐させて内部マネジメントの体制を整えるとともに、中国市場の把握や商品の効果的な打ち出し方を模索する。

 日本ほどブランドの認知度がない中国では、出店するSCの集客に頼らざるを得ない面があり、採算が取れない店舗に関しては閉店していく。日本市場と共通の商品の割合は現在約60%。先行してクッションカバーや布団カバーなどのファブリック素材を中心に、今年末までに70%を目指し、ゆくゆくは家具のサイズの見直しなども行っていく。

増税後は販促とコントロールを強化

 増税前の駆け込み消費は、9月21~30日の10日間では、既存店売り上げが前年比6割強増加して予想を上回る結果になったが、約半年間は増税の影響を見込んで販促を積極的に行うほか生産、在庫などのコントロールの精度を上げていくという。

 2020年2月期の通期見通しは、売上高が同5.7%増で6430億円、営業利益が同3.2%増で1040億円、純利益が同4.9%増で715億円を見込んでいる。

 11年には年商を1兆にする目標を掲げるニトリHDの今後の動きに注目が集まる。

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「ディオール」がパリコレで森を再現した理由 マリア・グラツィア・キウリが考えるサステイナビリティーとは

 「ディオール(DIOR)」の2020年春夏パリ・コレクションは、ロンシャン競馬場(LONGCHAMP RACECOURSE)に設置したテント内に種類が異なる164本の木々を配し、森を再現した中で開催された。園地栽培に取り組むアーティスト集団アトリエ コロコ(COLOCO)と協業したもので、ショーの後で木々は移設されてパリの街造りに生かされることになっている。

 マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)「ディオール」アーティスティック・ディレクターによれば、今回のコレクションは「ディオール」のアーカイブ、中でもクリスチャン・ディオール(Christian Dior)の妹であるカトリーヌ・ディオール(Catherine Dior)の写真に着想を得たという。兄と同様に花を愛し、園芸家でもあったカトリーヌが手入れをしていたディオール家の庭園をヒントにしつつ、それをいかに現代の気候変動問題と結び付けるかを考えたと語る。「“ガーデン”という概念をサステイナビリティーの実現に向けた具体的な行動に落とし込むにはどうすればいいかを、コロコと共に考えた。そこで、ショーで使用した木々を移設して街に庭や緑を増やす支援プロジェクトとすることを思いついた」。

 木々の種類が異なるのは、気候変動への対応策としてさまざまな植物があることが大切だと啓発するためだ。「木は自然への投資を象徴する重要な存在。未来のために植樹することは、とても前向きな行動だ」とマリア・グラツィアは話す。また、ショーで来場者が座っていたベンチも非営利団体に寄付される。コロコと長期的に提携し、今後もショーのセットをリサイクルしたいと考えているという。

 16年に「ディオール」のアーティスティック・ディレクターに就任して以来、マリア・グラツィアはフェミニズムや文化の盗用など非常に今日的なテーマでコレクションを発表し、社会問題に関心が高いミレニアル世代を引き付けてきた。今回、そうした若年層が注目する話題の一つであるサステイナビリティーをテーマに選んでいるが、同ブランドを擁するLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)も環境保護に関する取り組みに本腰を入れてきており、ちょうどいいタイミングだと言えるだろう。しかも、コレクションが開催される何日か前には気候変動の危機を訴える「グローバル気候マーチ(Global Climate Strike)」が世界各地で行われたが、これは全くの偶然だという。「誰も信じてくれないと思うけれど、本当に偶然。南米アマゾンの熱帯雨林で発生した大規模な火災の写真を見たときには、あまりにショッキングで、コレクションのテーマを変更しようかと思った。サステイナビリティーをテーマにしているのに、服自体がサステイナブルではないと批判されることが容易に想像できたが、サステイナブルなコレクションはすぐに作れるものではないし、それでは信用できるものなど作れない」と経緯を説明する。

 そもそも、“サステイナブル”とは何を指すのか。そう疑問を抱いたマリア・グラツィアは、より深く理解するためにサステイナビリティーの専門家を招いて話を聴いたが、万能の解決策はないという結論に至ったという。「化学製品を使わないこと、効率重視の生産工程ではないことなどさまざまな面があり、一概には言い切れない複雑さがある。また、皆で協力し合わなければ実現できないことも分かった。サステイナビリティーは『ここまでやったらもう大丈夫』というものではなく、自分たちができることから始めて継続していくしかない」。

 「ディオール」は、LVMHが掲げている二酸化炭素排出量の削減目標などを達成することに加えて、サプライヤーにも類似の数値目標を設定することを求めている。ほかの取り組みとしては、シーズンごとに買い替える必要のないタイムレスなアイテムの品ぞろえを強化しており、ブランドを象徴する“バー”ジャケットやチュールのスカート、Tシャツ、セーターなどで構成されたカプセルコレクション、“30モンターニュ(30 MONTAIGNE)”を発表した。マリア・グラツィアは、「ファッションブランドとしてシーズンごとに服を作ることは大事だが、こうしたタイムレスなアイテムを提供することも同じぐらい重要だ」と話した。

 サステイナビリティーについて語るのであれば、「グローバル気候マーチ」が行われるきっかけとなった16歳の環境活動家、グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)の話題は避けて通れないだろう。その言動が過激すぎると眉をひそめる向きもあるが、マリア・グラツィアは、「確かに過激かもしれないが、若い世代は過激であるべきだと思う。どのように協力し合えるか、共に何を成し遂げられるかを考えるために、若者たちと対話するべきだ」とコメントした。

 何か新しいことを始めるときには、批判やリスクが付きものだ。「リスクを冒さず安全地帯に居続けるのか、批判される覚悟で新しい一歩を踏み出すのか。私は批判される覚悟で前に進むことにした。とはいえ、あまり激しく批判されないといいなと思っている」とマリア・グラツィアは心情を吐露する。「美しくて魅力的な、身に着けると気分がよくなる服を作りたいと思っているが、好きなプロジェクトを実現するためにも、まずビジネス面でしっかりしないといけない。試行錯誤の日々ではあるものの、幸い経営陣は私のことを理解してサポートしてくれている。全ては庭造りみたいなものだと思う。美しい庭を造るには、未来を見据えて、やるべきことを一つずつ実行していくしかない」。

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「ディオール」がパリコレで森を再現した理由 マリア・グラツィア・キウリが考えるサステイナビリティーとは

 「ディオール(DIOR)」の2020年春夏パリ・コレクションは、ロンシャン競馬場(LONGCHAMP RACECOURSE)に設置したテント内に種類が異なる164本の木々を配し、森を再現した中で開催された。園地栽培に取り組むアーティスト集団アトリエ コロコ(COLOCO)と協業したもので、ショーの後で木々は移設されてパリの街造りに生かされることになっている。

 マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)「ディオール」アーティスティック・ディレクターによれば、今回のコレクションは「ディオール」のアーカイブ、中でもクリスチャン・ディオール(Christian Dior)の妹であるカトリーヌ・ディオール(Catherine Dior)の写真に着想を得たという。兄と同様に花を愛し、園芸家でもあったカトリーヌが手入れをしていたディオール家の庭園をヒントにしつつ、それをいかに現代の気候変動問題と結び付けるかを考えたと語る。「“ガーデン”という概念をサステイナビリティーの実現に向けた具体的な行動に落とし込むにはどうすればいいかを、コロコと共に考えた。そこで、ショーで使用した木々を移設して街に庭や緑を増やす支援プロジェクトとすることを思いついた」。

 木々の種類が異なるのは、気候変動への対応策としてさまざまな植物があることが大切だと啓発するためだ。「木は自然への投資を象徴する重要な存在。未来のために植樹することは、とても前向きな行動だ」とマリア・グラツィアは話す。また、ショーで来場者が座っていたベンチも非営利団体に寄付される。コロコと長期的に提携し、今後もショーのセットをリサイクルしたいと考えているという。

 16年に「ディオール」のアーティスティック・ディレクターに就任して以来、マリア・グラツィアはフェミニズムや文化の盗用など非常に今日的なテーマでコレクションを発表し、社会問題に関心が高いミレニアル世代を引き付けてきた。今回、そうした若年層が注目する話題の一つであるサステイナビリティーをテーマに選んでいるが、同ブランドを擁するLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)も環境保護に関する取り組みに本腰を入れてきており、ちょうどいいタイミングだと言えるだろう。しかも、コレクションが開催される何日か前には気候変動の危機を訴える「グローバル気候マーチ(Global Climate Strike)」が世界各地で行われたが、これは全くの偶然だという。「誰も信じてくれないと思うけれど、本当に偶然。南米アマゾンの熱帯雨林で発生した大規模な火災の写真を見たときには、あまりにショッキングで、コレクションのテーマを変更しようかと思った。サステイナビリティーをテーマにしているのに、服自体がサステイナブルではないと批判されることが容易に想像できたが、サステイナブルなコレクションはすぐに作れるものではないし、それでは信用できるものなど作れない」と経緯を説明する。

 そもそも、“サステイナブル”とは何を指すのか。そう疑問を抱いたマリア・グラツィアは、より深く理解するためにサステイナビリティーの専門家を招いて話を聴いたが、万能の解決策はないという結論に至ったという。「化学製品を使わないこと、効率重視の生産工程ではないことなどさまざまな面があり、一概には言い切れない複雑さがある。また、皆で協力し合わなければ実現できないことも分かった。サステイナビリティーは『ここまでやったらもう大丈夫』というものではなく、自分たちができることから始めて継続していくしかない」。

 「ディオール」は、LVMHが掲げている二酸化炭素排出量の削減目標などを達成することに加えて、サプライヤーにも類似の数値目標を設定することを求めている。ほかの取り組みとしては、シーズンごとに買い替える必要のないタイムレスなアイテムの品ぞろえを強化しており、ブランドを象徴する“バー”ジャケットやチュールのスカート、Tシャツ、セーターなどで構成されたカプセルコレクション、“30モンターニュ(30 MONTAIGNE)”を発表した。マリア・グラツィアは、「ファッションブランドとしてシーズンごとに服を作ることは大事だが、こうしたタイムレスなアイテムを提供することも同じぐらい重要だ」と話した。

 サステイナビリティーについて語るのであれば、「グローバル気候マーチ」が行われるきっかけとなった16歳の環境活動家、グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)の話題は避けて通れないだろう。その言動が過激すぎると眉をひそめる向きもあるが、マリア・グラツィアは、「確かに過激かもしれないが、若い世代は過激であるべきだと思う。どのように協力し合えるか、共に何を成し遂げられるかを考えるために、若者たちと対話するべきだ」とコメントした。

 何か新しいことを始めるときには、批判やリスクが付きものだ。「リスクを冒さず安全地帯に居続けるのか、批判される覚悟で新しい一歩を踏み出すのか。私は批判される覚悟で前に進むことにした。とはいえ、あまり激しく批判されないといいなと思っている」とマリア・グラツィアは心情を吐露する。「美しくて魅力的な、身に着けると気分がよくなる服を作りたいと思っているが、好きなプロジェクトを実現するためにも、まずビジネス面でしっかりしないといけない。試行錯誤の日々ではあるものの、幸い経営陣は私のことを理解してサポートしてくれている。全ては庭造りみたいなものだと思う。美しい庭を造るには、未来を見据えて、やるべきことを一つずつ実行していくしかない」。

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“売らないお店”作りを進める丸井とファブリック トウキョウが見据える「未来の小売りの在り方」

 オーダースーツのD2Cブランド「ファブリック トウキョウ(FABRIC TOKYO)」を運営するファブリック トウキョウは9月26日、新事業の戦略発表会を行った。発表会では同社の森雄一郎社長が“RaaS(Retail as a Service、小売りのサービス化)”という新たな構想を軸とした取り組みについて説明したほか、今年の5月に同社への出資を発表した丸井グループの青井浩社長が登壇。タクラムの佐々木 康裕ディレクターをモデレーターに迎え、出資の経緯と狙いや、丸井グループとファブリック トウキョウが考えるD2Cビジネスの今後の行く末を探るトークセッションが行われた。本記事ではそのトークセッションの模様をまとめてお届けする。

激動の小売り業界
“サービス化”した店舗が生き残る

佐々木康裕タクラムディレクター(以下、佐々木):まず一つ目のテーマは、“サービス化する小売り 今、何を考えているのか?”。つい先日の「フォーエバー21(FOREVER)」日本撤退の発表など、リテールが激動の時代にある中で、お二人は業界の変化をどのように捉えているのか。そして業界はどのようにサービス化するつもりなのか。

青井浩・丸井グループ社長(青井):おっしゃる通り、小売りの業界は変換期にあると思う。モノを買うという意味では、オンライン上でいつでもどこでも、どのようなモノでも買える。買うだけならオンラインの方が非常にスムーズで、店舗に行くことにストレスを感じる時代になりつつあるし、一部ではすでになっている。その中でリアル店舗はどういう存在になればいいのかをわれわれは考えている。その一つがサービス化することであり、われわれはキーワードに“経験”を据えている。店舗では、何かしら豊かな経験が提供され、味わえる。それがお買い物の楽しみになっていくと考えている。

佐々木:店舗の役割が体験する場所となり、お店と顧客との関係が長くなる。

青井:そう。一期一会から、ずっとお付き合いする関係値になる。顧客体験がジャーニーになっていくと考えている。

佐々木:ファブリック トウキョウでは、店舗の売り上げを店長が把握していないという話もある。

森雄一郎ファブリック トウキョウ社長(以下、森):不謹慎かもしれないが(笑)、確かにそうだ。従来の小売りは、お店を“売り場”として表現していた。しかし買う場所の選択肢が増えている現在、逆に店舗で買う必要がないことも考えなければならない。われわれが提供しているのは洋服ではなく、顧客体験だと言っているのもそれが背景にある。こうした考え方は丸井グループともシンクロしている。

佐々木:店舗のスタッフのモチベーションも、売り上げへのコミットから解放されることで、変化が見られることもある?

青井:まだ実験段階だが、ファブリック トウキョウの店舗へも、丸井側から7人、店頭スタッフが出向する。従来は成果が売り上げで見られていたが、これからは顧客満足やNPS(ネット・プロモーター・スコア、顧客推奨度の意)といったモノが指標になっていくのではないかなと思っている。

森:おっしゃる通りだと思う。すでに当社では、毎月の売り上げノルマは設定していない。KPIはお客さまのパーソナルデータをどれだけ取れたかや、接客をきっかけにお客さまがどれだけリピートしてくれたかなどを指標としている。

青井:アイウエアのD2C「ワービーパーカー(WARBY PARKER)」の店舗を見たことがあるが、来店客が楽しそうにメガネを選んでいて、個人的には衝撃を受けた。なぜ、あんなにも楽しそうなのかと考えたときに気づいたのが、店舗では買わなくていいし、売らなくていいということ。小売りのスタッフはもともと人が好きで、人に喜んでもらう、役に立つことが喜びとなっている。売り上げノルマではなく、純粋に喜んでもらうためのサービスを提供できるのは、スタッフたちのモチベーションにつながるはずだと思った。

森:アパレルの販売員の離職率は一般的に高いと言われているが、当社の場合、約60人の店舗スタッフのうち、この1年で辞めたのは1人いるかいないか。それぐらいやりがいをもって仕事に取り組んでくれているのではないかと思っている。

丸井のファブリック トウキョウへの出資
その経緯と狙いは?

佐々木:続いて2つのテーマ。今年の5月に資本業務提携が発表されたが、両社それぞれの立場から、改めて経緯と狙いは?

森:経緯としては、われわれは2014年に設立後、16年からリアル店舗戦略を始めた。しかし、なかなか出店がうまくいかなかった。一般的なショッピングセンター(SC)や百貨店などでは、店舗で売り上げが立たないようなわれわれのビジネスモデルは否定的に取られてしまうためだ。そのため最初は渋谷に路面店を出した。その後いろいろと交渉していく中で、丸井グループが手を挙げてくれた。丸井はデジタルネイティブストアとも呼ばれる、“モノを売らないお店”が必要になると当時から言っていて、マルイの新宿店と渋谷店に出店をさせていただいた。

青井:当社も期せずして、同じことを5年ほど前から考えていた。丸井グループはそれまで、百貨店型のビジネスモデルで、商品を仕入れ、販売をして、その差額を収益としていた。これをSCのような不動産賃貸借方式、いわゆる場所貸しの方式に変えていった。全国の約25店舗をその方式に変え、満を持して、オンラインと共存でき、経験やコミュニティーを提供できる場としての“モノを売らなくても良い店舗”をどんどん作っていこうと思った時に、最初にやりましょうと声を挙げてくれたのが森さんだった。

佐々木:丸井グループとファブリック トウキョウの店舗に対する理念が合致したと。

青井:タイミングが良かった。

森:昨年末くらいに青井さんと初めてお会いし、話をしたころ考え方がマッチしていた。そこでやりたいというよりも、やらなくてはいけないと考えた。半年後に出資を受けて、資本提携を行った。個人的には相思相愛だと勝手に思っている(笑)。

青井:森さんが素晴らしいのは、自社だけでなくD2Cブランドのマニアで、D2C全体を盛り上げていきたいというところ。そこも意気投合した。

佐々木:資本提携に際して、店舗という分かりやすい協業の在り方以外に、どういったシナジーを生み出せると考えているか。

青井:具体的なところでいうと、先ほども言ったような人の派遣が一つ。われわれもお客さまが大好きで、熟練したスタッフを多数抱えている。併せてスーツの製造工場の紹介であったり、PB(プライベートブランド)で培った生産管理のノウハウの提供だったりも協業の範囲に入っている。資本だけではなく、いろいろなことができる。

森:われわれもまだ小さいベンチャー企業で、アクセスできない取引先も多い。そういった中で支援をもらえると、新しい取り組みなどがしやすくなる。さらには丸井グループが持っているビジネスには、ショッピングビルだけでなく、エポスカードもある。当社も連携を今年から始め、オンラインで購入すればエポスカードの特典が受けられるような形にした。すでにお客さまからは好評を得ている。

青井:D2Cブランドに関してはオンラインでの購入が主流であり、決済が重要。その手段としてエポスカードがある。決済においてはサブスクリプションもクレジットカードが向いていると考えており、そういった面でも手伝えるはず。

「小粒だけどピリリと辛い」世界
丸井グループの考えるD2Cの可能性

佐々木:最後のテーマは、丸井グループが考える、これからの小売体験について。体験に限らず、これからのD2Cのエコシステムについて伺いたい。

青井:アメリカでも言われているが、今後ネットでの小売りでは、大手のビジネス中心に進んでいく。大手のEC一極集中の世界は確かに便利、かつスムーズだが、それだけだと少し面白くない。小さくてもいいので、いろいろな個性や、ユニークなモノとサービスなど多様性のある豊かな社会を作りたい。その主役がD2Cであり、D2Cのエコシステムを作りたいと考えている。そのためにわれわれは、場の提供やデータの提供、決済、人材、サプライチェーン、融資などいろいろな面で手伝っていくつもりだ。私自身もマニアックなモノが好き。マニアックなものも支持を受け、小粒だけどピリリと辛いモノもそろう、多様な世界を作りたい。

森:D2Cビジネスは現在、過渡期だと思っている。D2Cに関するイベントでは多くの人が集まるし、僕個人のツイッターやメール、ブログのコメント欄にも、D2C関連の相談などをたくさんいただいている。感覚的には、今年だけで100件以上立ち上がっているのではないかと思っている。D2Cはトレンドの一過性ではない。ネット時代に生まれたスタンダードなビジネスモデルだと考えている。個人的にはそのエコシステムにどう貢献できるのかを考えている。丸井グループさんと共に、トップランナーとして小売りを楽しいものにしたい。

青井:今の話もそうだが、森さんはリーダー的な存在でもあると思っている。一緒にエコシステムに貢献していきたい。

佐々木:丸井グループはBASEやシタテルなど、D2Cを裏から支えるシステムや仕組みを提供する会社にも出資している。エコシステムをどう成長させるのかを重視している?

青井:そう。エコシステムを作るのは、一対一の取引関係の逆にある。できるだけ中立的で、一緒にやっていけるというのがエコシステムにおいて重要だと考えている。われわれは最初に二人三脚で飛び出して、成功事例を作れればと思っている。丸井グループとして初期段階から出資したBASEも、小ロットでの生産を可能にしたシタテルも、事業を始めたばかりの人たちにとっては非常にいいサービス。われわれは生産の川上であったり、プラットフォームであったりと、いろいろなところからエコシステムに寄与していきたい。

森:BASEなどは、従来の小売りの考えから見ると競合にもなりえると考えられてきた。その中で丸井グループはBASEに早い段階で出資をしており、先日上場承認を受けたという成功事例も作っている。考え方が非常に柔軟だと思っている。

青井:従来の店舗とネットとの対立構造はもう終わっている。ビジネス上は分けて見られがちだが、消費者から見ると普段の生活においてオンライン、オフラインを分けて考えることはない。ビジネスだけは分けてやりたいというのは不可能だ。それよりも融合型のビジネスモデルを確立した方が、前向きだし、戦略としても結果的に有利なはずだ。

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百貨店の閉店の現場で感じた、未来につなぐべき客との絆

 大型ショッピングセンター(SC)やネット通販(EC)に客を奪われ、郊外・地方では百貨店の閉店ドミノが続いている。1990年の開店当初はドラマ「デパート!夏物語」の舞台として話題となった伊勢丹相模原店(神奈川県)も地域唯一の百貨店として29年続いたが、9月30日閉店した。

 この日の開店時刻の10時、店を訪れると1500人超の行列ができていた。シニア客でにぎわう店内は、ワゴンセールに女性客たちが殺到し、まだまだ地元民から愛されていることを示す盛り上がりを見せていた。

 店の入り口付近に目を向けると、備え付けのベンチが4脚。買い物を終えた家族が談笑を楽しんだり、地域住民同士が交流したりする、ちょっとしたハブのような場所になっていた。この日もベンチは満席で、腰掛けていた70歳の女性は「開店以来、おしゃれをしてここに来るのが楽しみだった。隣に座る人も、大体が顔見知りになったよ」と楽しそうに話したが、「でも、それも今日で終わり」と寂しそうにぽつり。「最近は買い物をあまりしなくなったけど、ついつい毎日来ちゃう場所だった」。

 現在の60~70代は、団塊の世代(70~72歳)を中心に、アイビーブームやDCブームを通過したファッション消費の醍醐味を知る世代。年齢を重ねて消費意欲が衰えたとはいえ、百貨店の熱烈なファンが多いことは間違いない。彼らはこれまで子を連れ孫を連れ、一緒に買い物を楽しむことで、新たな百貨店ファンを作ってきた伝道師でもある。

 この女性は「娘と毎週のように買い物に来ていたし、孫には高校入学用に、制服を一式そろえてあげた」と思い出話もしてくれた。店内を見渡せば、親・子・孫の3世代で買い物を楽しむ家族も多く見られた。腰の曲がった祖母に父母と孫娘が連れ添う家族に、エスカレーターで何度かすれ違った。近隣の大学に通う友人同士で訪れた20代女性2人は、「幼いころに両親や祖父母につれてきてもらった。今でもたまに買い物に来ていたが、閉店は寂しい」と惜しんだ。

 思い返せば、記者自身のファッション消費の原体験も、幼い頃に親に連れて行ってもらった地元の百貨店だった。記者は百貨店の勢いがピークを迎えていた1991年の生まれで、幼少期は百貨店で買いそろえてもらった「ポロ ラルフローレン(POLO RALPH LAUREN)」の服で小学校に通った。大学入学の際も、就職の際も百貨店で財布を買い替えた。「とっておきの買い物は、やっぱり百貨店」。日本人に染み付いているこの感覚を、ファンたちが世代を超えて受け継いできたからこそ、今の百貨店があるのだろう。

 地方の百貨店には新しい風も吹いている。ストライプインターナショナルはこのほど、地方百貨店のEC運営を代行するサービス「ダース」をスタートした。利用者は、親しみのある百貨店の屋号を冠したECサイトで買い物を楽しむことができ、百貨店側には売り上げに応じた手数料が入る仕組みだ。

 相模原店で19時に始まった閉店セレモニーは多くのファンが見守り、出入り口付近はごった返した。セレモニーは数分で終了。「もう終わり?」「もっと店の明かりを見ていたかった」という声が聞こえてきた。地元住民と百貨店の絆は、百貨店で働く人たち自身が思っている以上に深いのかもしれない。店を閉めることは、その絆が切れることを意味し、絆を失うことは、未来のファンの芽を潰してしまうことになる。大事なのは、これまで作ってきた客とのつながりを絶やさぬこと。百貨店の既存の仕組みだけでなく、外側の力も借りながら、その手立てを考えてほしい。

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サンモトヤマはなぜ自己破産したのか?

 サンモトヤマ創業者の故・茂登山長市郎氏は、「フェラガモもワンダさんが亡くなったらどうなるかわからないな」と私に漏らしたことがある。1990年代後半のことだった。創業者サルヴァトーレ・フェラガモ(Salvatore Ferragamo)の長男でファミリーの総領であるフェルッチョ・フェラガモ(Ferruccio Ferragamo)は来日すれば必ず日本に「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO以下、フェラガモ)」を紹介した長市郎氏を表敬訪問するのを欠かさなかった。それぐらいだからフェラガモ社の内情には通じていた長市郎氏の言葉には説得力があった。創業者の妻のワンダ・フェラガモ(Wanda Ferragamo)は96歳で2018年に亡くなったが、言うまでもなくフェラガモ社にとって、その死に大きな影響はなかった。

 自分が逝ったら、この企業はどうなるか分からないと思っていたから、ワンダ・フェラガモも茂登山長市郎氏も驚くほどの長生きをしたのであろう。長市郎氏は17年12月15日に死去した。誰もが「長さんがいなくなって、サンモトヤマは大丈夫だろうか?」と危惧したはずだ。経営基盤を確立していたフェラガモ社と違って、サンモトヤマのその後はまさにイバラの道であった。

 2018年6月には、卜部正壽氏を社長に迎え、長市郎氏の長男である茂登山貴一郎氏は代表取締役会長に就いた。卜部社長は長野のバス会社社長の小林道明氏に、サンモトヤマファミリーが持つ株式を売却させ、資本業務契約を結んだが、その契約は今年5月に破棄された。そして卜部氏の社長退任、さらに今回10月1日の自己破産と事態は恐るべき速さで結末まで突き進んだ。

 負債総額が9億7150万円というのが哀れだった。10億円にも満たない金が都合つかないところまで追い込まれていたのである。

 長市郎氏がいたら、こんなことが起きていただろうか。絶対にサンモトヤマの名前をきちんと継続したいというファッション企業が名乗りを上げたはずだ。それほど長市郎氏とサンモトヤマは、日本のファッション業界で尊敬を集めた存在だった。卜部社長を選び、長野のバス会社社長に頼らざるを得なかった二代目の不甲斐なさということなのだろうか。朝日新聞グループが保有する銀座の並木通りの土地の再開発で、高層階にホテルが入居するビルに、今まで通り本店を構えたのが17年11月。家賃は従来に比べて大きくハネ上がった。サンモトヤマの聖地とも言えるこの場所にこだわったのが、今回の自己破産の遠因と言われるが、確かに倒産してしまっては、元も子もない話である。面子にこだわりすぎたのかもしれない。しかし、冷静に考えれば、今回をしのぎきっても、破たんは時間の問題だったのかもしれない。小売業は時代に嫌われて一度落ち目になったら、もう一度這い上がるのは本当に難しいのだ。

 あの世の長市郎氏も、「やっぱりそうなったか」と溜め息混じりに納得しているのではないだろうか。結局「グッチ(GUCCI)」「エルメス(HERMES)」「フェラガモ」「エトロ(ETRO)」「ロロ・ピアーナ(LOLO PIANA)」を日本に紹介した茂登山長市郎とサンモトヤマの伝説だけが残った。そして、それはいつまでも語り継がれるだろうか。

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アウトドア初心者も感動、「スノーピーク」 × 「東京デザインスタジオ ニューバランス」のアイテムで大自然を歩いてみた

 「アウトドア市場は伸び続けてる」「特にキャンプはすごい」——そんな声を多く聞く今日このごろ。アウトドアにはなんとなく憧れがあるし、記者としても市場をしっかり取材したいという気持ちはあるものの、肝心のキャンプ経験はゼロ。アウトドアといえば、年に一度の弾丸日帰り「フジロックフェスティバル(FUJI ROCK FESTIVAL」のみという完全なインドア派のため、「キャンプって専門的で、なんかハードル高くないですか?」という固定観念が振り払えず、自分ごと化できずにいました。そんな時、10月5日に発売される「東京デザインスタジオ ニューバランス(TOKYO DESIGN STUDIO NEW BALANCE以下、TDS)」と「スノーピーク(SNOW PEAK)」のコラボアイテムが体験できるというイベントのお誘いが届きました。これは参加するしかない!と、重い腰を上げて新潟・中野原のスノーピーク本社兼キャンプ施設に行ってきました。

スノーピーク敷地の広大さにビックリ

 東京駅から新幹線で2時間弱、その後バスに30分ほど揺られて現地に到着。いい場所だというウワサは聞いていましたが、想像以上に気持ちいい。目の前に広がる緑と青空がきれい!緑の中を走り出す人やキノコを発見して「おーー」と声をあげる人、トンボが近くにとまると「うおーー」と携帯電話のカメラを向ける人など、自然に触れるとささいなことでもみんな元気いっぱいです。「スノーピーク」の私有地はなんと約20万平方メートルという広さで、フェスも余裕で開けそうなぐらいの規模。しかも今後は面積を2倍に広げる予定だといい、数字だけでは伝わらないスケールに圧倒されました。キャンプフィールドは一般利用も可能で、ショップを併設してレンタルも行なっているので、手ぶらで行けます。

 イベントは1泊2日の日程でキャンプをしながら自然と親しみ、商品も体験してもらおうという内容です。ニューバランス ジャパンの久保田伸一社長と「TDS」を率いる守谷周庫クリエイティブ・デザイン・マネジャー、「スノーピーク」の山井梨沙副社長CDOらに加え、有力ショップのバイヤーやメディア関係者が約30人が参加しました。まずはテントを組み立てるところからスタート。出た、いきなりハードル高いやつ。でも「スノーピーク」のエントリーモデルであるテント“アメニティドームM”(3万6800円)は組み立ては容易で、テント設営未経験の参加者もスムーズに完成させていました。テントの中も快適そうで、キャンプについて想像していたハードな先入観とは明らかに違いました。

気になる商品のはき心地は?

 テントを組み立て終えると、いよいよ今回の目玉であるコラボアイテムの体験です。スノーピーク本社の地下にあるミュージアムスペースを使い、久保田社長や山井副社長が映像や説明を交えてアイテムの機能やデザインについて解説してくれました。そして実際にシューズ“TDS × Snow Peak EXTREME SPEC R_C4 MID”(3万5000円)を試着します。アウトドアブーツのような見た目に反して、履き心地の軽やかさは完全にスニーカーそのもの。でも(これでアウトドア、本当にいけるの?)という思いが生じたのも正直なところ。ただ今回は説明を聞いた直後にハイキング体験ができたのがよかった。これまでいくつも体験イベントを取材してきましたが、ここまで機能について納得した例は多くはありません。優れたグリップ力があるため、急斜面でも草木が生い茂る道でも終始安定感がありました。僕のほかにもいたアウトドア初心者からも好評でした。

 守谷マネジャーは「今回のアイテムは『スノーピーク』のギアとしても店に並べられるように、今まで以上に機能性を充実させるように意識しています。シューズはわれわれが、ウエアは『スノーピーク』がそれぞれリードして協力し合いながら完成させました。『TDS』の本格的な立ち上げから1年になりますが、ニューバランスの素材や機能性を開発していくチームとして徐々に実績を作れてきています」と語ります。アパレル開発をリードした「スノーピーク」の山井副社長は、「TDS」だったからこそ協業を引き受けたと言います。「ブランドとしてコラボレーションはあまり積極的に行っていないのですが、ニューバランスは企業理念も働く人も好きで、いい会社という印象をもっていました。そんなブレないスタイルと信頼性がある老舗企業が新しいことに挑戦しているのが『TDS』。その姿勢に共感したので、ぜひやりたかったんです」。そして今年3月にニューバランス ジャパンのトップに就任した久保田社長はライフスタイルの商品企画などをグローバルでけん引してきたキャリアがあり、「TDS」設立の発起人でもあります。完成した商品について「ウエアの素材にはコットンが入っていて着心地がとてもいい。シューズも、着用した自分の足を見下ろしても形がきれいで、よくできています。バーベキューをひんぱんにやるので今回のアイテムは役立ちそうですね」と満足気でした。

アウトドアブームは今後も続きそう

 取材をしている間に太陽も沈んで火がたかれ、あたりは日中とはまた違う幻想的なムードに。最初は緊張気味だった参加者も内星太郎さんが手掛けたフードを囲んで、共に体を動かし、汗を流し、山のきれいなシルエットや変わった雲の形についても語り合ううちに、自然とリラックしてコミュニケーションをとりあっていました。東京で連夜行なわれているハイテンションなパーティーでは、なかなかこうはいきません。アウトドアは山に登ったり川を下ったりとアクティビティーを楽しむだけではなく、コミュニケーションを自然体で楽しめるのも魅力なのですね。デジタルの時代だからこそ、アウトドアの価値があらゆる面であらためて見直されているのかもしれないなと、満天の星の下で思いました。

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パリコレ9日目のハイライト パリの街の屋根を舞台にした「シャネル」、いつもより少しパンキッシュな「ミュウミュウ」、ベル・エポックに光を当てた「ルイ・ヴィトン」

 2020年春夏パリ・コレクションの最終日は、「シャネル(CHANEL)」、「ミュウミュウ(MIUMIU)」、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」などメガブランドがショーを行い今シーズンを締めくくった。

シャネル(CHANEL)

DESIGNER/ヴィルジニー・ヴィアール

 ヴィルジニー・ヴィアールによる初のレディ・トゥ・ウエアコレクション。カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)在任時から「シャネル」はグラン・パレ(Grand Palais)に大掛かりなセットを作ることで知られるが、今回のランウエイセットはカンボン通りの「シャネル」のアトリエから見える屋根の上の風景を再現した。モデルはその上をポケットに手を突っ込んで歩き、リラックスしたムードだ。コレクションはツイードのミニ丈のオールインワンからスタート。その後はカーディガンのように前を開けて羽織るようなデザインのツイードジャケットやフレアスカートやホットパンツなどフェミニンでウエアラブルなアイテムが続く。アクセサリーもカール時代のようモチーフをかたどったバッグなどではなく、日常で多用できるバッグが多く登場した。“潜入者マリー(Marie S’Infiltre)”の名前で活動するユーチューバーでコメディアンのマリー・ベノリエル(Marie Benoliel)がフィナーレでランウエイに乱入するなどのハプニングは、ジジ・ハディッド(Gigi Hadid)が冷静に対処し事なきを得た。

MIUMIU(ミュウミュウ)

DESIGNER/ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)

 カラフルな絵具が飛び散ったような柄の服やバッグ、シューズが象徴するように、今季の「ミュウミュウ」は偶発性や手仕事から生まれる躍動感などがポイントになっている。体に直接巻き付けたようなドレープ使いや、ずり落ち落ちたように着るスタイリングなど、予定調和ではないデザインで、着る人の強い意志を感じさせる。カラフルな色使いで独特のかわいらしさは健在だが、いつもより力強くパンクチュアルな印象だ。

LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)

DESIGER/ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)

 パリの古き良き時代、19世紀後半から20世紀初頭のベル・エポックに光を当てた。S字型を描くカーヴィーなミニドレスや、当時のオーダー紳士服をほうふつとさせるパンツスーツなどにニコラ・ジェスキエールが得意とするスポーティーな要素をブレンドし非常に華やかなコレクションに仕上げた。ショー会場壁一面の巨大なモニターに映し出されたのは、アーティストのソフィーが「It’s Okay To Cry」を高らかに歌う映像でその場にいる者の感情を喚起する。パリやファッションの美しさをエモーショナルに取り戻そうとするニコラ・ジェスキエールの姿勢が反映されているようだ。

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ドーバー ストリート マーケットがビューティ特化の新店をパリに出店 川久保玲が仕掛ける美の館

 「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」の川久保玲がディレクションするコンセプトストア、ドーバー ストリート マーケット(以下、DSM)は10月2日、パリ・マレ地区に香水やコスメに特化したビューティの店をオープンした。DSMとしては世界で7店目となり、アイテムを絞り込んだ店はこれが初めて。地上1階、地下1階の2層で計200平方メートルという店舗は、同店としては小型だ。DSMの最高経営責任者(CEO)でもあるエイドリアン・ジョフィ(Adrian Joffe)=コム デ ギャルソン インターナショナルCEOは、「今後はビューティと同様に、スニーカーやTシャツ、ジュエリーなどに特化した店をベルリンやミラノなどに出店していきたい」と語る。同店のコンセプトや、今後の展望をジョフィCEOに聞いた。

WWD:なぜビューティに特化したのか?狙いは?

エイドリアン・ジョフィCEO(以下、ジョフィ):ロンドンや銀座のような店はもちろんパリでもやりたいが、適当な物件がなかなか見つからない。ヴァンドーム広場にあった「コム デ ギャルソン」の香水のストアを昨年閉め、もっと大きな店を作ろうとしていたが、パリはビューティ(産業)の発祥地だし、それなら自社のブランドだけでなくDSMのDNAを生かしてさまざまなブランドを混ぜていく方が面白いと思った。そういった経緯があるので、DSMが手掛けるアイテム特化型店の1号がビューティの館になったのは自然な流れだ。

WWD:DSMは“ビューティフルカオス(美しい混沌)”を常に店作りの軸としている。

ジョフィ:今回の店ももちろん社長(川久保玲コム デ ギャルソン社長)がディレクションしている。床も壁も真っ白で何もなく、変なディスプレーももちろんない。一般的なビューティ産業は(売り場の内装などが)非常に保守的だと感じる。それとは全く違うものを作ることに興味があった。内装は(什器となる)柱がいくつも立っていて、まるで柱の森のように作り込んだ。パッと見れば全てが目に入るのではなく、店の中を探検することで、商品を見つけ出すような内装にしている

WWD:どんな商品を扱っているのか?

ジョフィ:65ブランドを扱う。軸となるのは、「グッチ(GUCCI)」の香水やメーキャップ商品、「トム ブラウン(THOM BROWNE)」の香水、「バイレード(BYREDO)」の香水やボディケア商品、「M・A・C」のメーキャップ商品だ。「トム ブラウン」の香水は世界に先駆けてここで販売している。各ブランドの商品を陳列している柱は一つ一つ社長がデザインしているが、「トム ブラウン」の柱は期間限定でトムがカスタムしており、ブランドを象徴するグレーの生地で柱を覆っているのがポイントだ。催事スペースもあるので、毎月イベントを行なっていく。オープン時に開催しているのは「M・A・C」のイベントだ。アイライナーやボディペイントなどに使用するアイテム数点を社長がキュレーションし、タトゥーキットとしてパッケージングした。品ぞろえ全体としては、10万円以上する商品もあるし、スウェーデン軍が採用している保湿バームなど、200円で買えるものもある。パリではこの店だけで扱う商品も豊富だ。

WWD:「このブランドを扱いたい」と思う時の決め手は何か?

ジョフィ:ストーリーがあること。ヴィジョンがあってメッセージを持っていること。“ノンバイナリー(性差などを超えた多様性)”の打ち出しや、ハンドメイドのブランド、オーガニックであることなどもそうだし、もちろん美的感覚はコム デ ギャルソンにとって非常に大切だから、見た目がカラフルで美しいといった点にひかれることもある。例えば「コスタ ブラジル(COSTA BRAZIL)」というオイルやキャンドルのブランドは、ファッションデザイナーだった人物がアマゾンの熱帯雨林で見つけた自然のオイルから作っているオーガニックなブランド。そんな風に、ストーリーを持っているブランドにひかれる。

WWD:パリのアイコンセレクトショップ、コレットが17年末に閉店して以来、DSMへの出店の期待は高いのでは?

ジョフィ:実は、コレットのサラ(・アンデルマン、Sarah Andelman)とはコンサルティング契約を結んでおり、サラから紹介されて仕入れたブランドもある。コレットの閉店を受け、「パリにDSMを出店するべき」とは多くの人にいわれた。しかし、求める物件がなかなか見つからないし、コレットとは品ぞろえの考え方で似ている部分があるにしても、どんな店であれコレットの代わりにはならないと思う。

WWD:今後の出店計画は?物件を選ぶ時の決め手は?

ジョフィ:ビューティだけでなく、スニーカーやTシャツ、ジュエリーなどに特化した小型店を各国に出していきたいし、全てのアイテムがそろう大型店も出店したい。ただ、現時点で進行中のプロジェクトはなく、出店は時間をかけて1つずつ進めていければと思っている。出店を決める際は、エリアよりも建物がすばらしいかどうかが大事。建物に関してはDSMとして統一したコンセプトがあるわけではなく、銀座のビルは非常にモダンだし、ロサンゼルスは古い倉庫のよう。面白くて雰囲気のある建物かどうかが決め手だ。今回のパリ店は、たまたまちょうどいい面積の物件が見つかったというのもあるし、(エリアは重視しないといったが)店が点在していて、人が行き交い発見があるマレという地域が面白いと思ったところもポイントだった。

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ドーバー ストリート マーケットがビューティ特化の新店をパリに出店 川久保玲が仕掛ける美の館

 「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」の川久保玲がディレクションするコンセプトストア、ドーバー ストリート マーケット(以下、DSM)は10月2日、パリ・マレ地区に香水やコスメに特化したビューティの店をオープンした。DSMとしては世界で7店目となり、アイテムを絞り込んだ店はこれが初めて。地上1階、地下1階の2層で計200平方メートルという店舗は、同店としては小型だ。DSMの最高経営責任者(CEO)でもあるエイドリアン・ジョフィ(Adrian Joffe)=コム デ ギャルソン インターナショナルCEOは、「今後はビューティと同様に、スニーカーやTシャツ、ジュエリーなどに特化した店をベルリンやミラノなどに出店していきたい」と語る。同店のコンセプトや、今後の展望をジョフィCEOに聞いた。

WWD:なぜビューティに特化したのか?狙いは?

エイドリアン・ジョフィCEO(以下、ジョフィ):ロンドンや銀座のような店はもちろんパリでもやりたいが、適当な物件がなかなか見つからない。ヴァンドーム広場にあった「コム デ ギャルソン」の香水のストアを昨年閉め、もっと大きな店を作ろうとしていたが、パリはビューティ(産業)の発祥地だし、それなら自社のブランドだけでなくDSMのDNAを生かしてさまざまなブランドを混ぜていく方が面白いと思った。そういった経緯があるので、DSMが手掛けるアイテム特化型店の1号がビューティの館になったのは自然な流れだ。

WWD:DSMは“ビューティフルカオス(美しい混沌)”を常に店作りの軸としている。

ジョフィ:今回の店ももちろん社長(川久保玲コム デ ギャルソン社長)がディレクションしている。床も壁も真っ白で何もなく、変なディスプレーももちろんない。一般的なビューティ産業は(売り場の内装などが)非常に保守的だと感じる。それとは全く違うものを作ることに興味があった。内装は(什器となる)柱がいくつも立っていて、まるで柱の森のように作り込んだ。パッと見れば全てが目に入るのではなく、店の中を探検することで、商品を見つけ出すような内装にしている

WWD:どんな商品を扱っているのか?

ジョフィ:65ブランドを扱う。軸となるのは、「グッチ(GUCCI)」の香水やメーキャップ商品、「トム ブラウン(THOM BROWNE)」の香水、「バイレード(BYREDO)」の香水やボディケア商品、「M・A・C」のメーキャップ商品だ。「トム ブラウン」の香水は世界に先駆けてここで販売している。各ブランドの商品を陳列している柱は一つ一つ社長がデザインしているが、「トム ブラウン」の柱は期間限定でトムがカスタムしており、ブランドを象徴するグレーの生地で柱を覆っているのがポイントだ。催事スペースもあるので、毎月イベントを行なっていく。オープン時に開催しているのは「M・A・C」のイベントだ。アイライナーやボディペイントなどに使用するアイテム数点を社長がキュレーションし、タトゥーキットとしてパッケージングした。品ぞろえ全体としては、10万円以上する商品もあるし、スウェーデン軍が採用している保湿バームなど、200円で買えるものもある。パリではこの店だけで扱う商品も豊富だ。

WWD:「このブランドを扱いたい」と思う時の決め手は何か?

ジョフィ:ストーリーがあること。ヴィジョンがあってメッセージを持っていること。“ノンバイナリー(性差などを超えた多様性)”の打ち出しや、ハンドメイドのブランド、オーガニックであることなどもそうだし、もちろん美的感覚はコム デ ギャルソンにとって非常に大切だから、見た目がカラフルで美しいといった点にひかれることもある。例えば「コスタ ブラジル(COSTA BRAZIL)」というオイルやキャンドルのブランドは、ファッションデザイナーだった人物がアマゾンの熱帯雨林で見つけた自然のオイルから作っているオーガニックなブランド。そんな風に、ストーリーを持っているブランドにひかれる。

WWD:パリのアイコンセレクトショップ、コレットが17年末に閉店して以来、DSMへの出店の期待は高いのでは?

ジョフィ:実は、コレットのサラ(・アンデルマン、Sarah Andelman)とはコンサルティング契約を結んでおり、サラから紹介されて仕入れたブランドもある。コレットの閉店を受け、「パリにDSMを出店するべき」とは多くの人にいわれた。しかし、求める物件がなかなか見つからないし、コレットとは品ぞろえの考え方で似ている部分があるにしても、どんな店であれコレットの代わりにはならないと思う。

WWD:今後の出店計画は?物件を選ぶ時の決め手は?

ジョフィ:ビューティだけでなく、スニーカーやTシャツ、ジュエリーなどに特化した小型店を各国に出していきたいし、全てのアイテムがそろう大型店も出店したい。ただ、現時点で進行中のプロジェクトはなく、出店は時間をかけて1つずつ進めていければと思っている。出店を決める際は、エリアよりも建物がすばらしいかどうかが大事。建物に関してはDSMとして統一したコンセプトがあるわけではなく、銀座のビルは非常にモダンだし、ロサンゼルスは古い倉庫のよう。面白くて雰囲気のある建物かどうかが決め手だ。今回のパリ店は、たまたまちょうどいい面積の物件が見つかったというのもあるし、(エリアは重視しないといったが)店が点在していて、人が行き交い発見があるマレという地域が面白いと思ったところもポイントだった。

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まるで夢の世界 女性が輝くステージの舞台裏を見せる「ロジェ ヴィヴィエ」の新作プレゼンテーション

 ゲラルド・フェローニ(Gherardo Felloni)=クリエイティブ・ディレクターが手掛ける「ロジェ ヴィヴィエ(ROGER VIVIER)」は毎シーズン、パリコレ期間中に“ホテル ヴィヴィエ(HOTEL VIVIER)”と題したプレゼンテーションを開き、エンターテインメント性あふれる演出で見るものをファンタジーの世界へといざなう。3回目となる2020年春夏シーズンもその期待を裏切ることなく、「カワイイ」と言わずにはいられないゲラルド・ワールドが炸裂した。今シーズンのテーマは、役者などの集合時間を意味する“コールタイム(Call Time)”。「パフォーマンスで披露されるのは、いつも本番という表側だけ。今回はホテル ヴィヴィエの裏側、つまり隠されたバックステージの部分を見てもらいたかった」とゲラルドが語るように、女性を主役にしたさまざまなシーンの舞台裏で、新作を披露した。

 入り口にはいつものようにフロントデスクが置かれ、今季はグラマラスな女性が来場者を迎える。後ろの棚に飾られているのは、色とりどりの“RV ミニ バッグ(RV MINI BAG)”だ。階段を上がると、2階では異なる設定で作られたいくつもの小部屋の中で、個性豊かなキャラクターたちが本番に向けて準備中。そこには、類い稀な演技力で知られるモデルのアナ・クリーヴランド(Anna Cleveland)とコミカルなオートクチュールデザイナーがフィッティングを行うアトリエもあれば、キャバレーのショーガールがステージを待つバックステージや、チアリーダーが集うロッカールーム、バレリーナが練習に励むスタジオもある。また、廊下ではミスユニバースの候補者が笑顔を振りまき、奥に隠されたスモーキングラウンジではマリリン・モンロー(Marilyn Monroe)、ブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)、マレーネ・ディートリッヒ(Marlene Dietrich)、エリザベス二世(Elizabeth II)という創業者のロジェ・ヴィヴィエ(Roger Vivier)にゆかりのある人物に扮した役者たちが密会を楽しんでいる。

 そんな中で披露されたコレクションは、部屋によってテイストの異なるアイテムを展示しているだけあって、バリエーション豊富だ。特に印象的なのは、フェザーとラフィアの装飾を手作業で施した“ティキ(TIKI)”シリーズのドラマチックなミュールとバッグ。ブラック×ベージュのコンビネーションに加え、ピンク、オレンジ、イエロー、ラベンダーで提案する。さらに、アンティークジュエリーから着想を得たフラワーモチーフのスクエアバックルも多用し、ポインテッドトウのパンプスやサンダルのアッパーとバッグのフラップに華やかさを添える。クロッグスタイルが新鮮な新作サンダル“ヴィヴ クロッグ(VIV’ CLOG)”は、ナチュラルなウッドソールにレザーや柄入りのグログランのアッパーを合わせたタイプと、ウッドソールまでを鮮やかなワントーンでまとめたタイプをラインアップ。イブニングシューズは、エリザベス二世の戴冠式のために作られたシューズから着想を得たという、アイリスモチーフの紋章がクリスタルであしらわれた“ヴィヴィエ クイーン サンダル(VIVIER QUEEN SANDAL)”が目を引く。スニーカーなどのカジュアルなアイテムは、「RV」のロゴや「ROGER VIVIER」のレタリングがポイントに。バッグでは、アイコンバッグ“ヴィヴ カバ(VIV’ CABAS)”や“トレ ヴィヴィエ(TRES VIVIER)”をデニムやラフィア、ベルベットなどの素材と繊細な花の刺しゅうでアレンジしたモデル、バニティバッグのミニサイズ、キャンバスのトートなどが登場した。

 そして、1時間に1回ベルが鳴ると、“本番”がスタート。各部屋にいたキャラクターたちが1階に集合し、広間に用意された真っ赤なランウエイをそれぞれの個性を生かして思い思いに闊歩した。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める

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男性と女性、それぞれが脱ぐべき“重たい鎧” スタイリング企業の多様性を考えるイベントで業界人が語る

 パーソナルスタイリングサービス「ソージュパーソナル」を手掛けるモデラートはこのほど、ダイバーシティー(多様性)を考えるイベント「BLESS THE DIFFERENCE」を開催しました。“ジェンダーバイアスにとらわれない世界を、アートとパーソナルサービスを通して描く”というテーマのもと、インスタレーションアートのとともに、ポーラ ザ ビューティ銀座店でのパーソナルスタイリング・メイクの体験会を実施。インスタレーション会場では、性別も人種も分からない人々が、その心の中さえも読み取れない表情で整然とウォーキングする映像が投影されていました。まっすぐに遠くを見据えて歩く彼ら(彼女ら)は、迷いもなく、新しい道を突き進んでいるよう。モデラートの市原明日香・代表は、「見る人それぞれに感じ方を委ねるアートが、多様性の考え方とフィットしました」と説明します。

 同展の記者発表会では、そんな“多様性”をテーマに、ジェンダーやパーソナルサービスに造詣の深いスタートアップ経営者の方々を迎え、トークセッションが催されました。モデレーターを務めたのは、軍地彩弓「ヌメロ・トウキョウ」(扶桑社)エディトリアル・アドバイザー。ミレニアル世代の女性たちに向けたクリエイティブスクール「SHElikes」を手がける中山紗彩最高経営責任者(CEO)、出張料理サービス「シェアダイン」の井出有希・代表、オーダーメードスーツ「ファブリックトウキョウ」の森本萌乃プランナー、女性に特化した転職支援サービス「LiBzCAREER」を運営するLiBの松本洋介CEOという、まさに多種多様な方々が登壇し、多様性に寄り添うパーソナルサービスの新潮流について、それぞれの意見を交わしあいました。

 正直な話、「女性のための~」という枕詞がついた企業の方が多いので、なんだかんだ女性が主語のトークが進むのだろうとタカをくくっていたのですが(笑)、その考えは松本CEOの一言で吹き飛びました。彼は「ジェンダーというと女性に目を向けがちですが、男性だって当事者なんですよ」とピシャリ。「女性が働きやすい環境って実は、ジェンダー問わず、誰もが働きやすい環境なんです」。育児や介護など、誰かを支えながら働くスタンスは女性だけのものではなく、男性にだって起こりうる時代。さらに「今、個人の価値観の方が早くインクルージョン(包摂・包括)され始めている。男性も『稼がないと』『働いて養わないと』といった“男らしさ”のバイアスに悩んでいたんです。そんな男性たちも肩の力が少し抜けて、少しずつ変わり始めている。でも、まだ成功モデルが追いついていない」と続けます。転職市場では、結婚や子育てといったライフステージの変化や、これからの人生設計を見据えてキャリアを考える女性の悩みに目が向きがちですが、実は、男性は男性で重たい鎧を背負っている。市原代表も「ソージュ」にスタイリング相談に来る消費者について「女性の服装の悩みを解決したい、という思いからスタートしましたが、管理職クラスになると男性からの問い合わせも多いんです」と明かします。そもそもジェンダーバイアスって、女性だけが主語じゃない。男性だって自己表現に悩んでいる。すでに自分にバイアスがかかっていた、と恥ずかしくなった瞬間でした。

 そして男性の鎧の象徴とも言える、スーツ。パーソナルオーダーを手がける森本プランナーは、「心にも体にもフィットするスーツを、ファッションとして届けたいという思いで作っています。この夏、試験的にメンズのパターンを使ったウィメンズのスーツ企画も始動しました」。特にジェンダーやマイノリティーといったワードには触れずに発信していたそうなのですが「自身の性に悩んでいるというお客様からも反響をいただいていて。そんな方々に選択肢を増やせたことにやりがいを感じています」と、新たな役割にも気づいたそう。「メンズ仕立てのジャケットはトレンドアイテムの一つ。男女が共通のシルエットの洋服を着ているというのは、今季のコレクションでもポイントでした」と軍地アドバイザーも共感していました。

 ゴールドマン・サックス(GOLDMAN SACHS)など外資の金融会社でキャリアをバリバリ積んでいた井出代表は、育児でお子さんの偏食に直面し、食の悩みに寄り添う出張料理サービスの「シェアダイン」を創業しました。専門性の高いシェフが悩みを聞き出し、最適な料理を、その家庭のキッチンで作ってくれるという画期的なサービスです。「日本には、人に作ってもらうことに罪悪感を感じる考え方が依然として存在します。でもパーソナライズすることで得られるメリットは、かなり大きい。もっと理解を深めてもらい、気軽に頼める文化を作りたいです」。“家事も育児も自分がやらねば”という女性の重たい鎧もいつか脱げるように。そっと寄り添いサポートしてくれているんですね。多様性を認める働き方が一層“世の中ゴト”になるには「身近なロールモデルがもっと増えないと」と話すのは、ウェブデザイナーやマーケターなどの養成カリキュラムを用意し、自分らしく働くことを応援する「SHElikes」の中山CEO。「これまでは『管理職などで活躍している女性は、家庭を犠牲にしている』というイメージがどうしても拭えなかった。でも今は、肩の力が少し抜けて『目の前にいる大事な人を幸せにしたい』というシンプルな動機で、仕事と家庭を両立する女性が増えているのも事実。そんなポジティブなオーラを持っている人がSNSで発信している姿を見て、ミレニアル世代にも響き始めています」。

 “ボーダーレス”など“〇〇レス”についての考え方の浸透が、先進国の中でまだまだ遅いことも指摘します。軍地アドバイザーは「大人よりも、若い子たちの方がジェンダーのバイアスが全然かかっていないと思んですよね。私たちも、もっと身近な人たちと話し合うことが大切かなと」とコメント。正解はないと思うけれど、いろいろな人とたくさん話すことで荷をおろすこと。「それが、生きたいように生きられる社会に繋がる、ハッピーの一歩なのかなと思います」(軍地アドバイザー)。

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ヒッピー&ストリート育ちの日本発シルバーアクセがモードで評価される理由

 シルバージュエリーといえばまず思い浮かべるのが、連日行列のできる東京・表参道の「ゴローズ(GORO’S)」だろう。海外ブランドでは、「クロムハーツ(CHROME HEARTS)」や「コディ サンダーソン(CODY SANDERSON)」「ホーセンブース(HOORSENBUHS)」などの人気が高い。日本発のシルバージュエリーで注目されるのが「ナチュラルインスティンクト(NATURAL INSTINCT)」だ。通常、スカルやクロスなどのモチーフが使われることが多いシルバージュエリーだが、「ナチュラルインスティンクト」は幾何学的なモチーフの連続や、結び目をモチーフにした抽象的なデザインがインパクトを放っている。ブランド設立後間もなくドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET以下、DSM)が独占販売を始めたというのも納得だ。

成り行きで作り始めたシルバージュエリー

 「ナチュラルインスティンクト」を手掛けるのはデザイナーの稲葉表さんだ。稲葉さんは大学に入学したものの、約1年で中退。1994年頃から東京・六本木のクラブでアルバイトし始めて、この街でヒッピー、ギャング、ストリートといったさまざまなカルチャーに影響を受ける。彼は「夜はヒップホップのクラブでアルバイト、朝からトランスのパーティーという日々でした。ヒッピー仲間とタイや米・ロサンゼルスを旅したときに、夜店などで手作りのシルバージュエリーを販売しているのを見て、いいなと思ったんです」と話す。

 成り行きでシルバージュエリーを作り始めたという稲葉さんだが、その才能は早くから花開く。「たまたま壁紙張りのアルバイトで行ったのがインディアンジュエリー等の輸入をしている会社のリアインターナショナルでした。自社ブランドを立ち上げるタイミングで、アクセサリー作りが出来る人を募集していたので作品を見せに行ったんです」と稲葉さん。当時、同社に所属していたインディアンジュエリーのプロであるハンマー・コング(Hammer Kong)に作品を気に入られ、稲葉さんは即採用された。「彫金学校に通ってもいいから、就職してくれと言われました」という。そこで彼はデザイナーとして働きながら彫金学校でジュエリー作りを学んだ。「オリジナルブランドのデザインと原形を手掛け、ロサンゼルスで生産後し輸入したものを日本とハワイで販売していました。コング氏は僕の師匠でした」。

六本木の仲間が立ち上げたストリートブランドに参画

 稲葉さんは、約2年半のリアインターナショナルでの活動を経て、1997年、六本木で出会った仲間らが始めたストリートブランドに参画し、シルバージュエリーを制作。稲葉さんと仲間の周りにはアメリカ、イギリス、ブラジルなどからのさまざまな人が集まりミックスカルチャーのコミュニティーが出来たそうだ。「当時は東京のブランドが大ブレイクしていました。でも、とある伝説の編集者から褒められ、流行りものではないものを作っているという実感がありました」。

 仲間が立ち上げたブランドでの活動を通してアパレルブランドなど横のつながりができた稲葉さんは、他のブランドからも依頼され、メンズ / ウイメンズを問わずシルバーアクセサリーを作り始めた。国内のジュエリー企業のライセンスブランドのほか、東京のメンズブランド、芸能人御用達の東京のウィメンズブランドなどへもジュエリーやレザーアイテムもデザインしていたという。

子どもの高校入学を機に自身のブランドをスタート

 活動の幅を広げた稲葉さんが「ナチュラルインスティンクト」を始めたのは2017年。シルバージュエリーを作り始めてから20年以上を経てのことだった。「03年に子どもが生まれました。高校から寮生活だった自分のことを考えると子どもと過ごす時間は15年しかないと思い、ジュエリー制作をしながら主夫をしていました」。 

 そんな稲葉さんには05年ごろから、映画やキャラクターなどのオフシャルグッズデザインの依頼が来るようになった。「どのような風の吹き回しか分かりませんが、ジュエリーだけでなくこのような造形のオファーも来ます」。知らず知らずの間に“シルバーといえば稲葉表”という評判が口コミで広がっていったのだろう。

 自身のブランドを立ち上げた理由を聞くと、「息子が遊んでくれなくなったので、息子の高校入学を機に設立しました」という。今までは他のブランドのためにデザインをしてきたが自分のブランドでは、本当に作りたいものだけを作ろうと決心。自身のブランドに集中してデザインをしてきたという。

 ブランド名は子どもが生まれたときに、友人から将来会社を立ち上げる際に使ってほしいと贈られた屋号「ナチュラルインスティンクト」。「ブームに関係なく、他にはないものを作りたいと思うし、作りたいもののアイデアは頭の中にありました。古代建築や植物、動物の本能的に環境に対応できる力、それらの神秘的な美しさ、自然の黄金比のようなものを造形にしたかったのです」。彼の作品には花のつぼみのねじれや古代からあるらせん状のモチーフなどが施されている。価格はリングが4万5000~12万3000円、バングルが9万~25万円、ネックレスが46万円~88万円。

国籍・性別・年齢問わず着けてもらいたい

 「ナチュラルインスティンクト」は、メンズファッション誌だけでなく、国内外の女性モード誌の編集ページでも採用されることがあるという。「国籍や性別、年齢問わず、スタイルを完成させるジュエリーとして着けてもらえたらうれしい」。ジュエリーを作り始めた当初から才能を認められ、主夫を経て自身のブランド設立に至った稲葉さん。「ナチュラルインスティンクト」は彼の生き方や純粋なクリエイションの源が詰まったジュエリーだ。現在DSMの銀座店、ロンドン、シンガポール、北京店で販売されており、今後はニューヨークやロサンゼルスでも販売が予定されている。

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六本木ヒルズにヨウジ公式EC「ザ ショップ」初のリアル店舗 落合陽一の写真展を同時開催

 ヨウジヤマモトは10月5~27日、公式オンラインストア「ザ ショップ ヨウジヤマモト(THE SHOPI YOHJI YAMAMOTO以下、ザ ショップ)」の世界初となるリアル店舗を開く。六本木ヒルズに新たに設けられたポップアップスペース、ヒルズ ボックスにオープンする同店ではメディアアーティストの落合陽一写真展も同時開催する。オープンに先立ち、ファッションとアートが融合した空間となる同店の魅力に迫る。

公式サイト限定ブランド
「サイト」のアイテムがそろう

 店舗では、「ザ ショップ ヨウジヤマモト」限定で販売されている「サイト(S’YTE)」の最新アイテムを中心にラインナップ。フランス語の“et Y’s(「ワイズ」と共に、の意)”を逆さに取ったブランド名を持つ「サイト」は、メード・イン・ジャパンのクオリティーにこだわり、ヨウジヤマモトの特徴的なカッティングとシルエットを継承。上質なカットソーを中心に、より身近なリアルクローズを提案する。

「風に吹かれる布の姿に感じる霊性」の
ルーツを探る
落合陽一の写真展

 店舗で同開催される落合陽一写真展のタイトルは「燐光する霊性 ―布と風、残響する軀と機械―」。「風に吹かれる布の姿が好きだ」と語る落合が、風景の中に現れる様々な霊性を感じるモチーフに着目した。同展では、さまざまな人の手を経由し、中国・深圳の電気街で分解された中古スマートフォン部品の束を撮影した、“燐光する部品”をはじめとする写真計5点を展示。そのほか、今回の展示テーマに合わせた映像作品1点、立体作品1点を新規で製作し、お披露目する。

写真展開催を記念した
限定アイテムを先行販売

 落合陽一写真展開催を記念したアイテムを店舗で先行販売。展示の写真作品をプリントしたTシャツ(ショートスリーブ6600円、ロングスリーブ7700円)とパーカ(1万5000円)や、メッセージをランダムにプリントしたパーカ(1万5000円)をそろえる。Tシャツには背中の首元部分に、パーカにはフードの部分に「サイト」のロゴがワンポイントでプリントされている。

高感度なコンテンツを発信
六本木ヒルズの
新たなポップアップスペース
「ヒルズ ボックス」

 「六本木ヒルズ」はアート、学び、ファッション、食などさまざまなコンテンツの発信拠点だ。その六本木ヒルズの玄関口ともいえるヒルサイド2階に生まれた新たなポップアップスペース「ヒルズ ボックス」は、1~2か月サイクルで話題の店舗を誘致し、高感度な「ファッション」と「食」の情報発信を行う。

INFORMATION
THE SHOP YOHJI YAMAMOTO ポップアップストア

日程:10月5~27日
時間:11:00〜21:00
場所:六本木ヒルズ ヒルズ ボックス
住所:東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ ヒルサイド 2F

問い合わせ先
THE SHOP YOHJI YAMAMOTO
046-212-2616

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ロンドン女子は新生「ボッテガ・ヴェネタ」に夢中 アクセサリーのリアルトレンド

 9月13〜17日に開催されたロンドン・ファッションウイークのオフランウエイでトレンドに浮上した“ニュークラシック”。クラシックを現代風に解釈したスタイルのアクセサリーは、ここ数年存在感が薄かったロングブーツや、ダニエル・リー(Daniel Lee)=クリエイティブ・ディレクターによってイメージを刷新した「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」の支持率が高かった。特に着用者が多かったトレンドアクセサリー2つをご紹介。

キーアクセ1:「ボッテガ・ヴェネタ」のバッグ

 バッグは「ボッテガ・ヴェネタ」の一人勝ち!特に“ザ・ポーチ”はサイズ、色違いで1日に何度も見かけた。シンプルな無地のウエアやドレス、ワントーンカラーのシックなスタイリングのアクセントにぴったり。ただしシューズやベルトの着用者こそいたものの、ウエアを見ることはほとんどなかったため、新生「ボッテガ・ヴェネタ」がトータルで浸透していくにはもう少し時間がかかりそうだ。

キーアクセ2:ロングブーツ

 ここ数年はショートブーツが秋冬の主流だったが、今季はエレガントな印象を与えるロングブーツがトレンドシューズとして浮上している。パイソンやゼブラなど、アニマルプリントで存在感のあるデザインが多い。膝が見える丈のロングブーツを、ミドル丈ドレスやスカートと合わせるスタイリングが今秋冬らしい印象だ。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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「若返る」とはうたえない日本の広告表現を考える ITのプロ「WWDビューティ」最新号につぶやく

 大手通信会社に入社後、国内外でITソリューションを提供するビジネスマンが、今週のビューティ週刊紙「WWDビューティ」で気になったニュースを要約してお届け。最先端のテクノロジーから企業と、その利用者が必要とするものについて考え続けたITのプロ、CKRが未来的視点からニュースにつぶやきを添えます。

今日のニュース:P.5「特許技術、ヒト由来皮膚幹細胞を高配合した美容液が発売」

読み解きポイント:科学で攻めるか、ポエムで攻めるか。表現規制がある日本での化粧品マーケティング。

ニュースのポイント

 プロフェッショナルヘアメーカーMB Labは、米国の幹細胞研究開発会社AIVITA Biomedicalが開発したヒト由来皮膚幹細胞コスメ「ルートオブスキン(ROOT OF SKIN)MD」を発売。独自のヒト幹細胞培養液を活用して、肌になる前のエキスを取り出し、美容液に配合。シワ、ハリの減少、シミなどに働きかける。AIVITA Biomedical社のCEOであり開発者のハンス・キルテッド医学博士(Hans S. Keirstead, Ph.D.)は、再生医療に従事してきた幹細胞の権威。ルートオブスキンブランドの収益の100%は、がん治療の基金に寄付される。

CKRはこう読む!

 「56」。薬事法、薬機法が定める、化粧品の効能について、広告表現が可能な項目数です。「皮膚にうるおいを与える」「肌にハリを与える」は、表現として認められています。今から8年前、「乾燥による小ジワを目立たなくする」という表現追加を最後に項目は増えていません。

 AIVITA Biomedical社のホームページにあるニュースリリースを見ると「rejuvenating skincare products(若返りスキンケア製品)」としっかり記されていますが、日本で「若返り」と広告表現するのはNGです(「見た目年齢マイナス5歳肌へ(見た目の話で若返り効果を示すものではありません)」はOKです)。

 政府が表現規制を強めた日本で、化粧品はどのような広告宣伝がされているのでしょうか?

 一つは、情緒的・抽象的な表現で、商品の魅力を伝えることが多くなりました。

 「年齢を重ねても、上質で魅力的に輝きたい!」「ふっくらピーン!」。「たしかにそうだよね」と肯定したくなる表現です。その結果、消費者は前向きな想像を膨らませるようになりました。「日本初」「最高級」という合理的根拠のない表現はできない不動産業界の広告が、ポエム化した(「悠久の高台で」や「高みを目指す」などが代表例です)世界にも近いでしょう。皮肉にも、表現規制の強かった業界ほど、細かい機能や効果による開発競争ではなく、デザインやストーリーによる製品価値の差別化が進む可能性は高いんです。

 もう一つは、科学的な世界観から、商品の魅力を伝えることも増えています。「再生医療に端を発する皮膚幹細胞美容液」と言われると、あえて「若返り」と表現しなくても、その効果を間接的に伝えることができます。幹細胞培養液配合の美容液は、「不活性な細胞を改善し、肌を再生する」という魅力ある特性をもっています。従来の「アロエなどの天然成分で水分、油分を補う」「コラーゲン、ヒアルロン酸などを肌に浸透させる」というスキンケアのアプローチとは違います。魅力的な特性をもつ幹細胞培養液配合の美容液は、広告表現の観点からも今後、目にすることが多くなるかもしれませんね。

CKR Kondo : 大手通信会社に入社後、暗号技術/ICカードを活用した認証決済システムの開発に従事。その後、欧州/中東外資系企業向けITソリューションの提供、シンガポール外資系企業での事業開発を経験。企業とその先の利用者が必要とするもの、快適になるものを見極める経験を積み、ウェアラブルデバイスやFree WiFiを活用したサービスインキュベーションを推進。現在は、米国、欧州、アジア太平洋地域にまたがる、新たなサイバーセキュリティサービスの開発を推進中

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ロンドンコレ最終日の回想 BLACKPINK探しの「バーバリー」やジョナサン・アンダーソンの誕生日会など

 皆さんこんにちは。飛び飛びになってしまったロンドン・ファッション・ウイークのドタバタ日記の4日目をお届けします。私にとって取材最終日となった9月16日は、スマッシュヒットが連発しました。前日までは、ブランド単体で見ると物足りなさを感じるショーもありましたが、この日で返上。ウィークの中で一番充実した一日でした。

10:00「ロクサンダ(ROKSANDA)」

 朝からワクワクする会場でした。ロンドンの王立公園ケンジントンガーデンズ内のサーペンタイン・ギャラリーです。毎年夏季限定で、世界的な建築家によるパビリオンが建てられますが、今年は日本人建築家の石上純也さんによる岩肌を再現した屋根が特徴的な洞窟のような作品でした。

 パビリオンを望むイエローカーペットを敷いた野外のランウエイは、ファンタジーの世界に入り込んだような高揚感がありました。自然光の下で見るショーは格別です。少し曇り空というのも、コレクションの美しい色彩を引き立たせていたと思います。

11:00「アーデム(ERDEM)」

 「アーデム」の会場への移動中の車で、ロンドンの中堅ブランドの未来について他媒体の人たちと話していました。今季のロンドンコレは、設立10年前後の「メアリー カトランズ(MARY KATRANTZOU)」「アシュリー ウィリアムズ(ASHLEY WILLIAMS)」「シュリンプス(SHRIMPS)」などの中堅ブランドがごっそり抜けていて、頭打ち感が出てきたデザイナーズがショー発表を継続する難しさ、ショーを行う意義を熟考するタイミングになっています。

 そんな中、「アーデム」は世界観の詰まったロマンチックなドレスと、エレガントな日常着をバランスよく打ち出して支持を得ているブランドです。グレイ法曹院の広い庭園で行ったショーは高貴な雰囲気が漂いながらも、鮮やかな色とプリントが生えてとても心地いいショーでした。

12:00「フーシャン ザン(HUISHAN ZHANG)」

 著名デザイナーを多く輩出しているセント・マーチン美術大学には、年々多くの中国人留学生がファッションを学びに来ていることもあり、ロンドンでの中国人デザイナーの存在感が増しています(ニューヨーク、パリなど他の都市でも見られる傾向です)。その中でも堅実成長を続けているのが「フーシャン ザン」です。8年目になるブランドですが、LVMHプライズのファイナリストに選ばれた実績や、老舗百貨店のセルフリッジのドレスコーナーにもしっかりと大きな展開があります。他のショーの待ち時間に仲良くなった中国人ライターも「フーシャンの成功に憧れを持つ中国人学生が増えている」と話していました。もともと財力を感じるブランドですが、素材や技術のクオリティーは劣っていません。裾にパールを付けたフリルドレスが目を引きました。

13:00「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」

 会場の入口には珍しくセレブを撮影するためのバックボードが立っています。そこにサングラスをかけた女性が現れてポーズを決めていて「誰だろう?」と見ていたのですが、なんと歌姫クリスティーナ・アギレラ(Christina Aguilera)でした。

 コレクションはスマッシュヒット。ジュエリーと洋服の融合、シルエットの探求、いいショーを見ると心が踊り、見ていてゾクゾクするものを感じます。ショー後に「ジョナサンの話を聞かなくては」と思いそのままバックステージに入り、囲み取材に参加しました。他のジャーナリストたちも同じ思いを感じていたのでしょう、皆興奮していました。ジョナサンがVIP来場者のアギレラや、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長の照代夫人との撮影を終えると、囲み取材が始まり、質問攻めにあっていました。コレクションリポートはバックステージ取材を行ったELIE INOUEさんの記事も公開中ですが、「WWDジャパン」11月11日号のロンドン特集でも解説予定です。

14:00「ミントデザインズ(MINTDESIGNS)」

 東京発の「ミントデザインズ」がロンドンのアートギャラリーPOCKOで企画展「ブラックシンデレラ」を開催しました。東京で行った19-20年秋冬プレゼンテーションに訪れたギャラリストの誘いで出展が決まったそう。取材前まで、ブランド初の海外展示会と思い込み20年春夏の新作を見に行く感覚で伺ったのですが、今回は3シーズンの連動性を見せたインスタレーションでした。

 展示はブランドの19年春夏のガラスの靴をイメージしたクリアサンダル”シンデレラ”が出発点となり、シンデレラのビフォーアフターを描いています。19-20年秋冬の刺しゅうを入れたゴミ袋から着想したコレクションは変身する前、新作20年春夏はガラスの模様を使った透け感のあるドレスで、魔法にかけられたシンデレラを表現しています。割れ物注意の”Fragile”のシールが貼られたダンボールに包まれている演出もユニーク。また、同ギャラリーに所属するアーティストのアレッサンドラ・ジェヌアルド(Alessandra Genualdo)とのコラボレーションで、シンデレラをイメージして描き下ろされたプリント入りのドレスも発表しました。

 デザイナーの勝井北斗さんと八木奈央さんはこの企画展の他にも、ロンドンの街中でアートプロジェクトの制作に取り掛かっていたそうでその内容は今後公になるそうです。

15:00「クリストファー ケイン(CHRISTOPHER KANE)」

 こちらもスマッシュヒットが出ました。深刻化する環境問題を背景にした「自然を愛しましょう」というド直球なメッセージを、ブランドらしいセンシュアルなテイストで表現したコレクションです。公園で撮影したというガーデンの写真を使ったプリント、“ECO SEX”などのスローガンアイテムも強いですが、新鮮さとリアルのバランスがとてもよかったです。昨今、主婦の性生活などをシリーズ化したコレクションは賛否両論で、1年前のケリングから独立した際も今後を懸念する声を聞いたので、今季いいコレクションを見られて一安心。フィナーレのケインも自身に満ち溢れていて、いい笑顔でした。

17:00「バーバリー(BURBERRY)」

 私のLINEには日本のSNSチームから「BLACKPINKのJISOOとWayVのLUCAが来ているからキャッチして!」というミッションが届き、意気込んで臨みました。ショー前に客席をぐるぐる回って、いろんなセレブを撮影しましたが、なかなかJISOOだけは見つからない……。結局断念しショー開始ギリギリで着席したのですが、「バーバリー」PRチームの皆さまに挨拶もせずに会場をさまよっていたので、私が来場できていないのではないかと心配をかけてしまいました。本当にすいませんでした。

 ショーでは、フェザードレスや繊細なレースの装飾が美しかったです。メンズモデルがレース付きのパーカやTシャツを着用していて、ジェンダーニュートラルの流れを感じました。またモデルとして登場した00年代に一世を風靡したモデルのアギネス・ディーン(Agyness Deyn)や、フレーヤ・ベハ・エリクセン(Freja Beha Erichsen)を生で見ることができたのも感激ポイントでした。

20:00「リチャード クイン(RICHARD QUINN)」

 「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」にも抜擢され今をときめくデザイナーです。注目ブランドは会場の着用者の数で図ることができますが、着こなしの難易度が高いのか着用者は少ない傾向でした。会場外の列に並ぶこと40分。リハーサルでトラブルが発生したとのことでなかなか入場できず周囲がイライラし始めています。

 オンタイムの1時間後にようやく会場に入ると、オーケストラとコーラス隊の姿があり大掛かりなセットを確認できました。しかし、サプライズはそれだけではありません。ショーのラストにはプリントドレスを着用したキュートな子どもたちが現れ、舞台の幕が開くとウエディングコレクションを着たモデルたちが登場。盛大なオーケストラの演奏もクライマックスで、拍手喝采で幕を閉じました。

21:00 ヤウアチャ(Yauatcha)取材

 ライターのELIE INOUEさん主導のロンドンの食とライフスタイル取材に同行し、SOHOにある人気の中華料理店ヤウアチャへ行きました。すでにロンドンに来て6日目でしたが、なかなか食事に有り付けず実はこれが最初の外食でした(涙)。記事について打ち合わせをしながら、モダンにアレンジされた中華料理に舌鼓。看板メニューの海老と湯葉のチョンファンが美味でした。

24:00 ジョナサン・アンダーソンの誕生日会

 「ジェイ ダブリュー アンダーソン」ショーのアフターパーティーにお誘いいただき、INOUEさんと共に郊外のパーティー会場へ。日付の変わる17日がジョナサンの誕生日ということで、盛大な誕生日会を取材すべく向かいましたが、ジョナサンは早々にパーティーを去っており、到着した頃には関係者たちのだけのダンスフロアになっていました(笑)。ちょっぴりカオスな会場に「ハッピーバースデー」を言い残して、私の濃厚なロンドンコレ取材が終了しました。

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パリコレ8日目のハイライト オペラ座を交尾の映像で染めた「ステラ マッカートニー」、クリントンが駆け付けた「サカイ」、物語を秘めた「アレキサンダー マックイーン」

 パリコレもいよいよ残すところあと1日。8日目は、「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」「サカイ(SACAI)」「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」がショーを行った。

「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」

DESIGNER/ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)

 「ステラ マッカートニー」はオペラ座の壁や天井に動物たちが交尾をする映像を映し出した。座席には「これまでで一番サステイナブルなコレクション」とデザイナーからのメッセージ。動物と地球の命を大切につないでいこうとするステラのぶれない姿勢をユーモアを交えて伝えた。オーガニックコットンや再生ナイロンなどを用いた服は、サークルモチーフやスカラップヘムを多用し、甘くて優しい雰囲気。多く登場したデニムは100%オーガニックはアップサイクルだという。

サカイ(SACAI)

DESIGNER/阿部千登勢

 ショーは鮮やかな世界地図プリントのウエアと、地球儀をモチーフにしたバッグのルックでスタート。クリエイションの原点となったのは「1つの地球」というアイデア。さまざまな要素を再構築し、見事に調和させるハイブリッドはブランドの大きな特徴だが、これはさまざまな大陸、人種、要素がありながら、全ては1つの星の上にある地球と通じる。一見シフォンのボウタイブラウス、カーキパンツ、トレンチをスタイリングしたように見えるルックは、実は全てつながっているオールインワンだ。ツイードやニットにあしらわれた立体的なフリンジは、大陸をイメージしている。会場にも姿を見せたジョージ・クリントン(George Clinton)率いるファンくバンド、ファンデリックの楽曲「One Nation Under a Groove」のジャケ写をプリントしたTシャツが、そのメッセージをより明確に伝えた。

アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)

DESIGNER/サラ・バートン(Sarah Burton)

 「一着一着にストーリーがある」と前書きされたリリースには42ルックの素材説明に加えて、いくつかは生産背景か記されている。オートクチュールのようにひとつひとつの服に力が注がれたコレクションだ。アイルランドに唯一残るリネンを使ったダマスク織の職人の仕事やセント・マーチン美術大学の学生との協業などが彩る。パフスリーブのドレスやタキシードジャケットなど得意とするアイテムがそろい奇抜さはないが心に響く仕上がりだ。

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ファッションショー招待企画 2020年春夏「楽天 ファッション ウィーク東京」を見に行こう!

 2020年春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」が10月14〜19日に開催されます。そこで「WWD JAPAN.com」は、さまざまなブランドにご協力いただき、「実際に見てみたい!体験してみたい!」という皆さまをファッションショーにご招待。招待状を希望する方は、見たいブランドや開催日、場所を確認し、下記応募フォームからエントリーしてください!

※ブランド名をクリックすると過去のルックを見ることができます。
※座席の仕様・席数は予告なく変更となる場合がございます。
※予め設定された会場の収容制限数に達した際は、入場を制限する場合がございますので、ショー開始30分前には会場にお越しください。
※応募にまつわる個人情報は、開催ブランドと共有させていただきます。また情報は本企画にのみ使用し、終了後は速やかに破棄いたします。
※抽選結果のご連絡は、当選者のみにメール又は郵送にて通知いたします。
※メール・インビテーションがうまく表示されない場合があるため、メールアドレスを記載する際はなるべくPC用アドレスでお願い致します。

10月14日(月)

■「タチアナ・パルフェノワ(TATYANA PARFIONOVA)」
時間:18:30〜
場所:ヒカリエホールB
募集:4人

10月15日(火)

■「ノントーキョー(NON TOKYO)」
時間:11:30〜
場所:ヒカリエホールB
募集:5人

「アジアンファッションミーツトーキョー フィリピン(ASIAN FASHION MEETS TOKYO PHILIPPINES)」
時間:12:30〜
場所:ヒカリエホールA
募集:50人

「ヒロココシノ(HIROKO KOSHINO)」
時間:15:30〜
場所:東京都現代美術館
募集:10人

「ステア(STAIR)」
時間:16:30〜
場所:非公開
募集:未定

■「イルイット(ILL IT)」
時間:17:30〜
場所:表参道ヒルズ スペース オー
募集:5人

「バルムング(BALMUNG)」
時間:18:30〜
場所:ヒカリエホールB
募集:5人

「ネグレクトアダルトペイシェンツ(NEGLECT ADULT PATIENTS)」
時間:19:00〜
場所:ヒカリエホールA
募集:未定

10月16日(水)

「レインメーカー(RAINMAKER)」
時間:12:00〜
場所:ヒカリエホールb
募集:1人

「ノブユキマツイ(NOBUYUKI MATSUI)」
時間:12:30〜
場所:非公開
募集:5人

■「スリュー(SREU)」
時間:15:30〜
場所:非公開
募集:10人

「ティボー(THIBAUT)」
時間:16:30〜
場所:ザ・グローブ
募集:10人

「チノ(CINOH)」
時間:19:00〜
場所:ヒカリエホールA
募集:1人

■「フェイス.A-J(FACE A-J)」
時間:21:00〜
場所:非公開
募集:20人

10月17日(木)

「トクコ・プルミエヴォル(TOKUKO 1ER VOL)」
時間:12:30〜
場所:ヒカリエホールA
募集:3人

「グローバルファッションコレクティブ(GLOBAL FASHION COLLECTIVE)」
時間:13:30〜
場所:ヒカリエホールB
募集:10人

■「シンヤ コヅカ(SHINYA KOZUKA)」
時間:15:00〜
場所:非公開
募集:未定

「メルシーボーク、(MERCIBEAUCOOUP,)」
時間:16:00〜
場所:非公開
募集:3人

「チルドレン オブ ザ ディスコーダンス(CHILDREN OF THE DISCORDANCE)」
時間:17:00〜
場所:表参道ヒルズ スペース オー
募集:未定

「グローバルファッションコレクティブ(GLOBAL FASHION COLLECTIVE)」
時間:18:00〜
場所:ヒカリエホールB
募集:10人

10月18日(金)

「ウィシャラウィッシュ(WISHARAWISH)」
時間:12:00〜
場所:ヒカリエホールA
募集:50人

「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」
時間:12:50〜
場所:非公開
募集:未定

「ショーヘイ(SHOHEI)」
時間:14:30〜
場所:非公開
募集:20人

「ディーベック(D-VEC)」
時間:15:30〜
場所:表参道ヒルズ スペース オー
募集:50人

「タエ アシダ(TAE ASHIDA)」
時間:16:30〜
場所:グランド ハイアット 東京(六本木ヒルズ)3階グランドボールルーム
募集:3人

「リト(RITO)」
時間:17:30〜
場所:トランク ホテル 屋上チャペル
募集:8人

「ダイエットブッチャースリムスキン(DIET BUTCHER SLIM SKIN)」
時間:18:30〜
場所:ヒカリエホールB
募集:5人

「ミスター・ジェントルマン(MISTERGENTLEMAN)」
時間:20:00〜
場所:ヒカリエホールA
募集:未定

10月19日(土)

「ミツル オカザキ(MITSURU OKAZAKI)」
時間:12:00〜
場所:ヒカリエホールB
募集:未定

「アール エー ビー ディー(RABD)」
時間:18:30〜
場所:ヒカリエホールB
募集:未定

■「ガッツダイナマイトキャバレーズ(GUT’S DYNAMITE CABARETS)」
時間:19:00〜
場所:ヒカリエホールA
募集:1人


※ご応募には会員登録が必要です

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ロンドン女子、脱ストリート宣言 次のトレンドは“ニュークラシック”

 9月13〜17日に開催されたロンドン・ファッションウイークでは、秋冬シーズンの最新コレクションを早速身につけた来場者が多かった。今季は数シーズン続いていたストリートの流れが終わり、クラシックを現代の感覚で解釈した“ニュークラシック”へとトレンドが移行した。特に着用率の高かったキーアイテム2つを紹介する。

キーアイテム1:
テーラードジャケット

 トレンドの大本命はテーラードジャケット。さまざまな素材や色が見られ、バラエティー豊かだった。ここ数年はオーバーサイズのテーラードジャケットをストリート風に着崩すスタイリングが目立ったが、今季はジャストサイズでボクシーシルエットの長い丈が多かった。ボトムスはパンツ率が圧倒的に高く、メンズライクな印象。ランウエイにも多く登場した、セットアップやウエストマークのスタイリングも見られた。

キーアイテム2:ロングドレス

 各ブランドがさまざまなアイテムでロング&リーンなシルエットを提案した今季は、ドレスもロング丈でリラックスムードがトレンドのようだ。春夏シーズンのようにあざやかな色や花柄も見られたが、着用率が最も高かったのはプレーンな白。会期中は30度に近い夏日とあって足元にはサンダルを合わせる来場者もいたものの、ウエスタンブーツやロングブーツなどを合わせて素肌を見せず、足元にボリュームのあるスタイリングは秋らしさがぐっと増していた。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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「AI、正確度97.25%」にツッコミ ITのプロ「WWDビューティ」最新号につぶやく

 大手通信会社に入社後、国内外でITソリューションを提供するビジネスマンが、今週のビューティ週刊紙「WWDビューティ」で気になったニュースを要約してお届け。最先端のテクノロジーから企業と、その利用者が必要とするものについて考え続けたITのプロ、CKRが未来的視点からニュースにつぶやきを添えます。

今日のニュース:P.13「海外Beauty通信 ブランドの枠を超えて商品提案する「AI肌診断機」とは?」

読み解きポイント:耳ざわりのよい診断精度に引きずられないこと。

<ニュースのポイント>

 1回9.9元(約150円)の証明写真ボックス型の肌診断機が、上海市内のデパートや地下鉄駅構内などに、約20台設置されている。セフォラ(SEPHORA)、自然堂とも業務提携を結び、診断結果や具体的なアドバイスと関連商品の割引クーポンを合わせて、利用者の携帯端末へ通知。肌診断の確実性を高めるため、10万回以上の試験を実施し、正確度を97.25%に引き上げることにも成功した。

 「肌診断の正確度:97.25%」。「診断の精度、相当高いなぁ!ん?でも本当なの?」と思うこと、多くありませんか。最近、「AI、精度99.9%」というようなニュースをよく見かけます。わかりやすい数字とメッセージなので、判断が引きずられることも多いです。とはいえ検知精度が高くても、診断や検証で導かれた答えが起こりうる可能性が低いこと、実は多々あるんです。

 そこで今回は、99%というような耳ざわりのよい数字に「ホントかぁ!?」とツッコミを入れてみたいと思います。

 「正確度97.25%」ということは、誤診率が2.75%。つまり「肌は健康なのに、不健康と診断される確率(偽陽性:false positive)」や「肌は不健康なのに健康と診断される確率(偽陰性:false negative)」が2.75% ということです。

 例えば、不健康な肌の人が、人口の10%いるとした場合、AI肌診断機で「肌不健康」と診断された人が、本当に不健康である確率はどのくらいになるのか計算してみたいと思います。

 「肌が不健康」と診断で発見される確率は、0.1(10%)×0.9725(97.25%)=0.09725

 一方、「肌が健康なのに誤診で不健康」とされる確率は、0.9(90%)×0.0275(2.75%)=0.02475。よって、「肌が不健康」と診断された人が、本当に不健康である確率は、0.09725/(0.09725+0.02475)=0.79、約8割。「なるほど」という診断結果ですが、よく考えると「肌が不健康」と診断された5人のうち1人は、「肌が不健康でなく健康」ということになります。実際に、肌が不健康な人が世の中にどのくらい存在するのか分からなければ、診断機の正確度だけでは、結果の判断はできないということです。

 ちなみに実際「肌が不健康」な人の割合が、人口の1%だった場合、診断機の正確度が97.25%だったとしても、「肌が不健康」と判断された人が、本当に「不健康」である確率は、たったの26.3%となります。

 ところで、このAI肌診断機。化粧を落とさずバッチリメイクで撮影してもうまく診断してくれるのでしょうか。今は検診データを徹底的に集めてナレッジをためている状況で、今後はアプリ化して、家で化粧を落とした後、気兼ねなく正確な診断ができるサービスなどを狙っているのかもしれませんね。

CKR Kondo : 大手通信会社に入社後、暗号技術/ICカードを活用した認証決済システムの開発に従事。その後、欧州/中東外資系企業向けITソリューションの提供、シンガポール外資系企業での事業開発を経験。企業とその先の利用者が必要とするもの、快適になるものを見極める経験を積み、ウェアラブルデバイスやFree WiFiを活用したサービスインキュベーションを推進。現在は、米国、欧州、アジア太平洋地域にまたがる、新たなサイバーセキュリティサービスの開発を推進中

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ドリスとラクロワが語る、パリコレ協業の舞台裏 テーマは“現実逃避”

 「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」の2020年春夏パリ・コレクションは、色彩とプリントの巧みな使い手として名をはせたオートクチュールデザイナー、クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)をゲストに迎え、共同で作り上げられた。盛大な拍手が送られたこの特別なコレクションは、果たしてどのように実現したのだろうか。

 米「WWD」のインタビューに対してドリスは、「ファッションは世相を反映すべきものだが、今の世の中はあまり美しいところではない。しかし、重苦しくて悲しい雰囲気のコレクションを作りたくはなかったので、“現実逃避”をテーマにしてはどうだろうと考えた。参考にするため、1980~90年代に流行した音楽のニューロマンティックやポストパンク、そして当時のオートクチュールなどに関する資料を集めていくうちに、ラクロワの作品をたくさん目にすることになった。当時も世の中で悪いことが起きていたが、それにもかかわらずフリルたっぷりの美しい服を発表していた彼にとても興味を引かれ、一緒に仕事をしてみたいと思って連絡した」と語った。

 ドリスからのメールを受け取ったラクロワは、とても感激したという。「個人的な知り合いではなかったが、彼の作品はよく知っていたし、その自由な作風を敬愛していた。連絡が来たときには、どんな用事だろうと好奇心をかき立てられたよ」。

 しかし、ラクロワは協業の申し出をすぐには承諾しなかった。信頼する占星術師に相談し、ドリスからの誘いは星の並びが非常にいいので啓発的な体験になるだろうとのお墨付きを得てから返事をしたという。「仮に星の並びが悪くても承諾したと思う」とラクロワは話すが、真実は誰にも分からない。ともかくもデザイナー2人は、「ドリス ヴァン ノッテン」を擁するプーチ(PUIG)のシャンゼリゼにあるオフィスで会うことになったが、それはパリで仏政府への激しいデモが行われている時期のことだった。「まるで紛争地帯のようになっている中で、私たちはフリルやファブリック、色合い、そして美について語り合った。パリでひどいことが起きた直後だからこそ、創造の喜びやファッションを楽しむこと、ラグジュアリーなものの美しさを堪能することが重要だと心から思った。最近はあらゆるものに政治的な意味が求められるが、そのために“喜び”を少し失ってしまったのではないかと思う」とドリスは述べた。

 ミーティングは大成功だった。ラクロワは、「私たちには共通するものがあり、とても相性がよかった。素晴らしい化学反応が起きたようだった」と、その時のことを振り返った。歴史劇の衣装を思わせるファンタジックな作風のラクロワと、より現実的で洗練された美を得意とするドリスだが、2人の作品には鮮やかな色彩と美しい装飾性という共通項がある。そして互いへの敬意が創造性をさらに刺激し、今回のコレクションへと発展した。

 ドリスは、ラクロワのおかげでいっそう自由になれたという。「私はかなり自由に仕事をしているが、それでも時には価格や商業性、時代に合っているかなどの条件を先に考えてデザインをすることがある。ラクロワはそうしたことを全て忘れさせてくれた。いつもであればクールではないからという理由で捨ててしまうような、『水玉模様にしたい』『スカートに50mのフリルをつけよう』などのひらめきをそのまま形にすることができた。現在求められている美とは異なるかもしれないが、別に構わないじゃないかというクリエイティブ上の自由が生まれた」。

 また、ドリスはラクロワと組んだ今回のコレクションを“コラボレーション”とは呼びたくないと話す。「その言葉は商品を押し売りするような、非常に商業的な響きを持つものとなってしまった」からだ。そして、ファッション業界で重視される“ブランド・アイデンティティー”というコンセプトにも疑問を覚えるようになったという。「それが明確にあることによって、バイヤーやプレスはそれに沿った作品を期待するし、デザイナーもその期待に応えようとしてしまう。しかし、時にはそうした範囲を超えて創造性を発揮したくなるものだ。私は30年以上にわたってデザインをしてきたので、創造性を自由に羽ばたかせるには刺激剤が必要だった」。ラクロワは、まさにその“秘薬”だったという。「ラクロワとの作業は、私を解放してくれた」。

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死者多数の事故「ラナ・プラザの悲劇」から6年 バングラデシュの労働環境は改善されたのか

 2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカ近郊で複数の縫製工場が入った複合ビルが崩落し、死者1138人、負傷者2500人以上を出す大惨事が起きた。ビルの名称から「ラナ・プラザ(LANA PLAZA)の悲劇」と呼ばれる事故から6年が経つが、同国の労働環境は改善されたのだろうか。

 事故から1カ月後の5月には、安全監視機関として「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定(The Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh以下、アコード)」が設置され、「H&M」や、「ザラ(ZARA)」の親会社であるインディテックス(INDITEX)など欧州を中心とするアパレル企業222社が署名した。なお、「ユニクロ(UNIQLO)」も13年8月に署名している。アコードには法的拘束力があり、参加企業はバングラデシュにある縫製工場などの安全検査を実施し、問題があると判明した場合にはその改修費用を負担する仕組みとなっている。

 同様に、主に米国の企業が参加する「バングラデシュ労働者安全連合(Alliance for Bangladesh Worker Safety以下、アライアンス)」も同時期に設置され、1000カ所近い工場の安全を監視していた。しかしこれは法的拘束力がない上に、もともと5年間でバングラデシュの政府関連機関などに業務を引き継ぐという期限付きだったため、18年12月末で活動が停止された。

 実はアコードも同様に5年間の期限付きだったため、活動停止を命じる判決をバングラデシュの下級裁判所が出していたが、現在でも縫製工場などで火災が頻発する状況に危機感を覚えたアコード側が19年5月に上訴し、281日間の活動継続および後継組織への活動引き継ぎが承認された。

 縫製産業従事者の労働環境の改善を訴える非政府組織「クリーン・クローズ・キャンペーン(Clean Clothes Campaign以下、CCC)」のイネケ・ゼルデンラスト(Ineke Zeldenrust)=インターナショナル・コーディネーターは、「バングラデシュではいまだに火災が後を絶たず、いつ第二の『ラナ・プラザの悲劇』が起きてもおかしくない。19年2月にはダッカのチョークバザール地区にある集合住宅や倉庫で、3月にはアパレルブランドのバイヤーなどが入居する高層ビルで大規模な火災が発生して大勢の人が死亡した。建築基準法が守られていないし、非常口に鍵がかけられているなど安全基準法に違反しているケースも多いのに、政府当局がそれを摘発しないからだ」と語った。

 バングラデシュの縫製品輸出産業の規模はおよそ300億ドル(約3兆2100億円)で、中国に次いで世界第2位だ。大勢の労働者が従事する業種だが、労働環境の改善を要求することが難しいだけではなく、場合によっては命の危険すらあるという。19年1月には最低賃金の引き上げを求めるストライキが行われたが、平和的な抗議行動だったにもかかわらず、警察が催涙弾や放水銃などの強硬手段を用いて群衆を散らしたために1人が死亡し、少なくとも65人が逮捕された。またストライキに参加した労働者のうち1万1600人が職を失い、その多くは再就職できずにいる。縫製工場などが作成している“ブラックリスト”に載せられたためだ。

 米非営利団体「国際労働権フォーラム(International Labor Rights Forum)」のジュディ・ギアハート(Judy Gearhart)=エグゼクティブ・ディレクターは、「労働者に銃を向ける国の政府が、彼らの権利を守るとは思えない。バングラデシュ政府は労働者の安全より、世界で最も安い労働力を提供することを優先している」と話した。

 こうした状況を踏まえると、同国政府にアコードの業務を引き継ぐのは時期尚早であり、この段階で活動を停止することはさまざまな意味でリスクを伴うと多くの人権活動家が口をそろえる。アコードに調印している企業が、労働者の安全を脅かす国での生産は大きなリスクだとみなして撤退すれば、バングラデシュの縫製品輸出産業自体が立ち行かなくなるかもしれないからだ。結果として、縫製工場と労働者のいずれもが仕事を失ってしまう。アコードはこれまで、欠陥建築や火災警報器の未設置、非常口がふさがれているなど9万7000件以上に及ぶ危険性を発見して解決してきた。政府の監視機関にそうした能力や意思がない以上、アコードはいわば労働者の安全を確保する“最後のとりで”だ。

 労働者の人権問題に取り組む「マキラ・ソリダリティー・ネットワーク(Maquila Solidarity Network)」のリンダ・ヤンツ(Lynda Yanz)=コーディネーターは、「アコードほど透明性が高くなく、法的拘束力のない監視機関でもいいと考えるアパレル企業は、サプライヤーの工場で『ラナ・プラザの悲劇』が再び起きるリスクを冒すことになる。それはブランドの評判を危険にさらすことでもある」とコメントした。

 CCCの調査によれば、アライアンスの業務を一部引き継いでいるバングラデシュの自主規制団体「ニラポン(Nirapon)」は安全基準を満たしていない工場を公表していない上に、そうした工場の操業停止や危険性の排除を命令する権限もないため、「恐ろしく不十分な能力しかなく、アライアンスの代替として不適当」だと指摘している。

 ゼルデンラストCCCインターナショナル・コーディネーターは、「信用のおける代替組織がないままにアコードを解散することは、バングラデシュにおける労働者の安全を大幅に後退させることになる」と警告する。「縫製産業従事者の安全を守るためには、バングラデシュ政府と工場の経営者たちがアコードと協働し、政府による監視機関の準備が整っていることを条件に業務を引き継ぐといった“責任ある移行”をする必要がある」。

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編集長はパリコレで何した?Vol.6 朝「ジュンヤ」、昼「ノワール」、夕方「ギャルソン」の3本立てに魂震わす

 パリコレ5日目は、コム デ ギャルソン社の3ブランドがショーを行ういわばギャルソンDAYです。土曜日ということもありパリの街中は車が少なく比較的穏やか。しかし、ショーはソウルに訴えかけてくるものが多く胸の中は一日中ザワザワしています。

9月28日(土)9:30
「ジュンヤ」は
トレンチコートを再構築

 “このブランドの店に行けば〇〇があるのではないか”と、特定のアイテムを想像できるブランドは強いと思います。“人とは違ったトレンチコートかデニムがほしい”と思ったら、私なら「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン(JUNYA WATANABE COMME DES GARCONS)」に行きます。今季もトレンチ、デニム、白いシャツ&Tシャツといったスタンダードアイテムをベースに、ウエストラインをきれいにたたんだり、プリーツを加えたり形を再構築したアイテムがそろいます。

10:30
「ハイダー」で
デヴィッド・ボウイを連想する

 「ハイダー アッカーマン(HAIDER ACKERMANN)」では毎回、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)を連想します。ボウイの若い頃に会ったらこんな風にドキドキしたのかな。複数人のモデルが同時に歩いてくる演出は男女の境があいまいで、そんな違いはどうでもよいと思わせ、ただ歩いているだけなのに問答無用に美しい。着物ディテールを好むからかどこかサムライ風でもあります。着こなすのは難しいですけどね……。激しく研ぎすまされた美意識を持つハイダーはファッション界の宝です。

12:00
「ノワール」で魂がプルプル震える

 「ノワール ケイ ニノミヤ(NOIR KEI NINOMIYA)」の二宮啓さんは底知れない。会えばひょうひょうとしているけれど、作り出す服はこれですよ!穏やかな人柄と作り出す服のコントラストが鮮やかすぎて底知れない。テーマとかストーリーとか戦略とか、そんなものは〇〇くらえ。手を動かし、美しいと思う形を作り出すだけ。なんて、本人は言わないけれど、そこを歩いているモノが二宮さんのソウルであることはわかります。東信さんによるヘッドピースに今回は苔を使っていることは、バックステージで確認しました。

13:00
「アルチュザラ」でNYを感じる

 洋館での 「アルチュザラ(ALTUZARRA)」でのショーには、米「ヴォーグ(VOGUE)」誌の名物編集長アナ・ウィンター(Anna Wintour)も姿を見せ、NYコレクション感あります。実はアナは最近パリコレにあまり姿を見せないのです。

14:00
ベルギー「デルヴォー」の展示会へ

 世界最古と言われるベルギーのバッグブランド「デルヴォー(DELVAUX)」の展示会で、こちらはヒラオインクの平尾香世子社長です。笑顔をありがとう!新作の中でもいいなと思ったのがバッグにつけるアクセサリーと真っ白×ネオンカラーのコントラスト、それからカーヴィーな底の “Le Pin”。ピンクなどパステルカラーがカワイイです。

15:00
「ロエベ」の靴がよい!

 週末のパリは何かしらのパレードが行われ交通機関がマヒすることがしばしば。この日も複数のパレードが行われており、セーヌを渡る道がブロックされ車が渡れない!そこでパレ・ロワイヤルからサン=シュルピス教会まで20分歩いて「ロエベ(LOEWE)」の展示会へ。天気がよいからこんな散歩もたまにはよいです。途中、ルーブル美術館を振り返ると「バレンシアガ(BALENCIAGA)」の巨大な広告が掲出されておりました。

 で、「ロエベ」ですが、靴がよい!!バッグはもちろん定評がありますが、靴もこんなに魅力的だったけ?ローファーやバレーシューズをベースにしたフラットシューズがツボです。

16:00
「セドリック」でトレンドチェック

 「セドリック シャルリエ(CEDRIC CHARLIER)」は、シーズントレンドを取り入れるのが上手です。今季は、ネイチャープリント、レース使い、クラフト感ある装飾、ブルーデニム、メンズスーツのアレンジなどなど、やはりトレンドの答え合わせになりました。

17:00
さあ、ギャルソンです

 「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」のショーでは派手な格好をした大人が世界中から集まり、“17歳の自分”に戻ったみたいな神妙な表情をしているのを見るのが好きです。パリコレはまぎれもなくビジネスの場ですし、競争の場でもありますが、この20分間だけは特別。なぜ自分がこの仕事をしているのかを再確認させてもらいます。

 川久保さんは今冬、ウィーン国立歌劇場で上映されるオペラ「オーランドー」の衣装を手掛けます。先に発表したメンズと今回のウィメンズはオペラで完成するいわば3部作の一部だとか。ちなみに、このオペラを見たさに12月に休みを取ることを決めチケットを予約した業界関係者を私は2人知っています。

20:00
一日の終わりに「エルメス」

 一日の終わりに「エルメス(HERMES)」の上質な世界に触れることができるのは精神衛生上よいことです。シャンパンを飲みながらショーが始まるのを待ちます。「エルメス」と言えばレザーであることは改めて言うまでもありませんが、今季はそのレザーに改めてフォーカスし、布のように扱い、染めて縫った服が多く登場しました。

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「根底には、常に私なりのロマンチシズムが流れている」 by 桂由美

桂由美

 私は一貫してロマンチシズムを自分のデザインポリシーとしてきた。一般にブライダルファッションには3つの欠かせない要素、“清純さ”と“華やかさ”と“優雅さ”があるが、その根底には、常に私なりのロマンチシズムが流れている。(Vol.393 1989年8年28日)

The WORDS
ファッション業界人の残した名言を日々の糧に。デザイナーやバイヤー、社長、編集長らの心に響く言葉をお届け。

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ロンドンコレのドタバタ日記3日目 反ファッション・ウイークのデモ隊現る!癒しのベッカムファミリーなど

 皆さん、こんにちは。パリコレ真っ最中ですが、ミラノコレ取材を終えて2週間遅れでロンドン・ファッション・ウイークの日記の続きを綴らせていただきます。ロンドンの天気は朝昼夜の寒暖差が激しく体調管理が大変でした。朝はコートを着る人を見かけるくらい寒いのに、昼には30度近くでTシャツでも汗ばみ、夜には10度に戻り冷え込みました。しかし、雨が降らないだけ幸運だったと思います。この日のバタバタ模様をお送りします。

11:00「アニヤ・ハインドマーチ(ANYA HINDMARCH)」プレゼンテーション

 会場は立体駐車場。スロープを上がっていくと真っ赤な迷路が用意されていました。今季の新作は郵便ポストをイメージしたコレクションということで、迷路をさまよいながら、さまざまな年代に送られた手紙の朗読を音声で聴くことができます。

 印象に残ったのはエルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)の熱心なファンたちが当時のアイゼンハワー(Eisenhower)米国大統領に送った手紙の音声です。徴兵令で軍隊に入るエルヴィスを心配してホワイトハウスに数千枚の手紙が届いたそう。その一枚には「どうか、エルヴィスの髪型だけは変えないであげて下さい!彼のもみあげを剃るなんてことをしたら、私たちはショック死します」という内容で、ファンの必死さが伝わってきました。

 迷路を出ると、ポストマンに扮したオールインワン姿のスタッフたちが出迎えてくれました。新作バッグのデザインとリンクさせたかわいい切手や手紙をかたどったクッキーなどのケータリングもかわいい。また筆記体の練習体験コーナーや郵便にまつわる雑貨コーナーもありました。テーブルには便箋と封筒が用意されており、どこへでも手紙を出していいということだったので、私も祖母に向けて一筆とってみました。

13:00「マーガレット・ハウエル(MARGARET HOWELL)」

 「アニヤ・ハインドマーチ」でゆっくりし過ぎてしまい、「マーガレット・ハウエル」の会場に向かう車が先に出発してしまいました(苦笑)。結局バタバタしながら、会場を後にしてチューブ(地下鉄)に飛び乗り、猛ダッシュして到着。40分押しのスタートで間に合いましたが、走ってきたので汗が引かず、会場も空調が効いておらず蒸し風呂状態。みんな招待状をパタパタとうちわ代わりにして扇いで待っていました。

 ショーのルックで気になったのは襟もと。この襟巻きトカゲのようなラッフルカラーはこの後もいろんなブランドで見かけました。セーターやカーディガンの下に着てもアクセントになります。ショーには今や日本を代表するメンズモデル、コウヘイも歩いていました。

14:00「ヴィクトリア ベッカム(VICTORIA BECKHAM)」

 会場は外務省。入口前には「XR ボイコットファッション」という団体のデモ隊の姿があり、プレートを持ってファッション・ウイークのシステムに反対運動を起こしていました。写真を撮られることや質問されることに前向き。話を聞いてみると、彼らは大量生産、大量消費のファッション産業に対して、スピーチを行う団体で、イギリスには彼ら以外にもファッション産業に対するデモ団体がいくつか存在しているそう。

 建物内には入ると、フロントローにはベッカム一家の姿がありました。子どもたちに「写真を撮ってもいい?」と聞くと、「もちろん!」と笑顔で返してくれました。パパのベッカムを探していると、デザイナーのキム・ジョーンズと一緒に立ち話をしていました。タイミングを見計ろうと少し待ってみたものの、ショーが始まりそうだったので、撮影を断念して席に着きました。

15:00~17:00「ハウス オブ ホランド」&「セルフ-ポートレイト」のパブリックショー

 2日目の一般公開のファッションショー“パブリックショー”の取材に来ました。今日のラインアップは「ハウス オブ ホランド」&「セルフ-ポートレイト」の2ブランドですが、昨日と打って変わって満席です!「ハウス オブ ホランド」のデザイナーのヘンリー・ホランド(Henry Holland)は英バラエティー番組にも登場しているのでお茶の間でもよく知られた存在ということもあり、マスの知名度も高いということでした。

 フロントローのチケットを購入した来場者に話を聞いてみると、石油系の会社に務めるクロアチア出身イギリス・ブリストル在住の30代女性は「ファッションショーを生で見るのがずっと夢だった」といいます。一人で来場していましたが、すでに隣に座っていたお一人さまと仲良くなりファッショントークを楽しんでいました。日本でも同じ思いを持った人はたくさんいるんだろうなとしみじみ感じながら、テイストは異なりますが「東京ガールズコレクション」は先駆けてそのニーズに応えていたんだと思いました。会場内ではショーのコレクションが購入できるポップアップストアも開かれていました。

16:30「チャラヤン(CHALAYAN)」

 会場はバレエやコンテンポラリーダンスで有名なサドラーズウェルズ劇場。ロンドンの中心から離れていますが、「チャラヤン」は長年この会場でウィメンズのショーを続けているそうです。ファーストルックは顔が覆われたドレス。日本から着想を得ているそうですが、確かに折り紙的なテクニックが見て取れます。

18:00「シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)」

 この会場も遥かに遠かった…。渋滞に巻き込まれながら50分ほど車に揺られ、少し車酔いしながら到着したのはアレクサンドラ・パレス。北ロンドンに位置するビクトリア朝様式の宮殿で展示場でした。丘の上に建てられていて、ロンドンの街を一望できる穴場スポットです。側の公園は家族やカップルで賑わっていました。

 ショーは透け感のある花柄のオーガンジードレスにラフィアを編んだヘアアクセサリーなど異素材の組み合わせが素敵です。このウエアへのラフィア使いは今季のトレンドの一つです。キャスティングは、異なる人種の起用はもちろん、40~60代のマダムモデルたちも登場していたところにも共感が持てました。バックステージ取材を行ったELIE INOUEさんのリポートはこちらからご覧ください。

20:00「アシッシュ(ASHISH)」

 演奏者たちが床に座っていて、彼らが鳥の鳴き声や風の音など、自然が発する音を再現しながらショーがスタート。インドの伝統的な刺しゅうを施したワークジャケットやデニム、シャツなどの日常着が登場しました。キラキラと光るのは刺しゅうのミラーワーク。このミラーを一つ一つ縫い付ける工程を考えると気絶しそうになりますが(笑)、職人技の賜物ですね。

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パリコレ7日目のハイライト 個性豊かなモデルが歩いた「バレンシアガ」、クチュールのような「ヴァレンティノ」、90年代調デニムの「ジバンシィ」

 パリコレもいよいよ残すところあと2日。7日目は、「ヴェトモン(VETEMENTS)」を去ったデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)の「バレンシアガ(BALENCIAGA)」や、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」「ジバンシィ(GIVENCHY)」がショーを行った。

バレンシアガ(BALENCIAGA)

DESIGNER/デムナ・ヴァザリア (Demna Gvasalia)

 カタツムリのように渦を巻くランウエイを、建築家や俳優といった肩書を持つ91人の男女が歩いた。キーワードは「仕事着の再考」。スーツを着るような職業であれば肩のラインを極端に強調し“フツウだけどフツウじゃない”アイテムへ変容させ、着る人の個性を際立たせる。中綿ジャケットは肩が倍ほどの盛り上がり迫力があるが超軽量だったり、“ボールルームドレス”は取り外し可能なクリノリンで造形したりなどエキセントリックに見えて着心地も考えられている。キティちゃんの顔をした黒、白、ピンクのバッグが話題になりそうだ。

ヴァレンティノ(VALENTINO)

DESIGNER/ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)

 ショー会場はアンヴァリッド。同場所には9月26日に死去したジャック・シラク(Jacques Chirac)元フランス大統領の棺が安置されていたため、弔問する市民の行列が周辺をぐるりと囲む。ショーも混乱するのかと思いきや、意外やスムーズにスタートした。クリスプな白いカシュクールシャツとプリーツスカートで始まったコレクションは、細かなティアードフリルや羽根飾り、象がん、刺しゅうなどの手法が今季もふんだんに盛り込まれており、もはやクチュールの域だ。ため息が出るようなエレガンスを、目の覚めるようなネオンピンクやアップルグリーンで引き締める。ジャングルを描いたプリントや象がんの中にはサルのモチーフも登場。ゴージャスなゴールドアクセサリーにも、よく見るとサルのモチーフが隠れているのが楽しい。

ジバンシィ(GIVENCHY)

DESIGNER/クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)

 招待状はデニム生地で、会場で配られたのはもちもちのプレッツェル。今季は“パリからニューヨークへ”をキーワードに、洗いをかけたりクラッシュドさせたりした90年代調のデニムを、エレガントなボウタイブラウスや柔らかいレザーアイテムと合わせた。もうひとつのキーワードは世界中から集めた植物で、ザクロなど服の柄ではあまり見ない植物をプリントや刺しゅうで採用している。マリゴールドのイエローなど優しい色合いが目に優しい大人のリアルクローズがそろう。

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編集長はパリコレで何した?Vol.5 「イッセイ」が新展開、「ヨウジヤマモト」で耀司さんの歌を聞く、「セリーヌ」でLISAを追え!

 パリコレ5日目は、朝一にショーがあった「ロエベ(LOEWE)」を着ている人が目立ちました。「イッセイ ミヤケ」の新デザイナーデビューや「セリーヌ」など、大きなショーが目白押し。気合入れて取材します!でもちょっと眠いです!

9月27日(金)9:30
「ロエベ」が
“オールド「セリーヌ」”の
ポジションへ

 「ロエベ(LOEWE)」がじんわりよいショーを見せてくれました。「ロエベ」のショーはいつもじんわりよいのですが、今回はじんわり~~~とより滋味深い。ミラノサローネなどで発表したクラフトワークからデザインを発展させるのが、最近のジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)のストーリーの作り方。レザー使いはもちろんのこと、売れているカゴバッグも原点は、工芸品としてのカゴでした。今回は布のクラフトであるレースにフォーカス。スイスなどのレースから広げモダナイズしています。服の向こうに世界中の名もなき人たちの知恵と生活が透けて見えるようで素敵です。オートクチュールを持たないラグジュアリーメゾンの生きる道を切り開いていますね。

12:30
「イッセイ ミヤケ」の
新デザイナーはこの方

 「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」の新デザイナー、近藤悟史さんのデビューショーは成功だと私は思います。モデルが手をつないでクルクル回るフィナーレなどから、1980~90年代の「イッセイ ミヤケ」がフラッシュバックし、そこから同社における三宅一生さんの存在感の大きさを痛感します。だからと言って古く見えるわけじゃない。あの頃イッセイさんが見せていた“手をつないでひとつに”の世界観は今こそ必要なのだと思います。近藤さんの色のセンスが若々しくて◎。

14:30
「ニナ リッチ」をリードする
新世代デザイナー

 「ニナ リッチ(NINA RICCI)」のショーが終わり、バックステージに向かうと若い2人のデザイナー、ルシェミー・ボッター(Rushemy Botter)とリジー・ヘレブラー(Lisi Herrebrugh)が喜びを爆発させる姿がありました。カワイイ。明後日インタビューをよろしくね!とだけ伝えて去りました。

16:00
小鳥になりたい王子、ティスケンス

 「オリヴィエ ティスケンス(OLIVIER THEYSKENS)」は前回に続いてオフィスでショーでした。小鳥が飛んでいる柄の古い壁紙がロマンチックです。ずっと前、オリヴィエが「ニナ リッチ」のデザイナーだったころ、長いまつげをしばたいて「僕、小鳥になりたいんだ」と話していたことをここに来ると思い出します。小鳥のように可憐な少年から大人になったオリヴィエですが、得意なデザインが変わらず、シャープなテーラードやドレスです。

17:00
「クレジュリー」×「コーシェ」の共通項

 フランスの靴ブランド「クレジュリー(CLERGERIE)」の展示会で「コーシェ(KOCHE)」とのコラボを発見。左右の靴底にそれぞれのロゴがデカデカと入っています。クレジュリーのデザイナーいわく「同じ職人気質同士、フランス人同士、あうんでわかる感覚もあるんだ」。

18:00
ポメラニアン連れとはズルい作戦!

 「ルッツ ヒュエル(LUTZ HUELLE)」のショーに久しぶりに来ました。フロントローは、長年のファンとおぼしき人たちと「張り切って見に来た!」若い人たちで2分されています。そして隣はポメラニアン。って何それ!?動画のこの人はどうやらシートを持たずに入り、ポメラニアンパワーで座っちゃってます。ズルい!けど癒されちゃいました。

19:00
BGMは耀司さん自身が歌う声

 「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」の服にはバッグが似合わない、が持論でした。私が考える「ヨウジ」の女性像は、ポケットに手を突っ込んで少し猫背で一人で歩いているから。ハンドバッグを持つと手がふさがり、自由を奪われる気がするのです。ですが、前言撤回!今回のショーのフィナーレ前に登場したバッグは、「ヨウジ」スタイルを奪うことなく実用性もありそうです。

 それにしても、最近の「ヨウジ」のショーで気になるのがBGMの一部が耀司さん自身の歌声だということ。その声は少年のように優しいです。さらに今回は「神田川」も流れました。ファッションショーのBGMに「あなたは、もう、忘れたかしら~」なんて聞いたことありません!服がエレガントなだけにそのギャップが日本人的にはツボ。ニヤニヤするな、という方が無理な話です。

21:00
「セリーヌ」でLISAを追え!

「セリーヌ(CELINE)」エディ・スリマン(Hedi Slimane)

 このパリコレ日記の初日にご紹介した弊社のソーシャルエディターの情報の取り方は私とは全然違います。隣にいても謎ですがソーシャル上で起きている波を常時キャッチしており、“〇〇のコミュニティーで、この波来ています”と教えてくれます。まさにサーファーが波をキャッチするがごとく。「セリーヌ(CELINE)」でも、BLACKPINKのLISAが来場することを、それこそLISAが韓国を出国する段階からキャッチしていました。会場前にもその情報をキャッチしたファンが大勢!まさに熱波がそこにある、という感じです。ぜひLISAが会場を去る時の動画でその熱狂をご確認ください。

 エディ・スリマン(Hedi Slimane)による3シーズン目の「セリーヌ(CELINE)」は、すでに安定の粋。キュロット以外にも話題になるそうなアイテムがそろっていたので展示会後に別途リポートいたします。

21;30
「アシックス」×c2h4のパーティで
夜が終わる

 LISAパニックを経てクタクタになるも、「アシックス(ASICS)」とロサンゼルス発の「シーツーエイチフォー エルエー(C2H4 LA)のコラボ発売パーティーがセレクトショップ「ヌー(NOUS)」であると知り、旬なキーワードのオンパレードに見てみたい欲が出て立ち寄りました。「ヌー」は、コレット(COLETTE)のバイヤーだったセバスチャン・シャペル(Sebastien Chapelle)が手掛ける店です。会場にはおしゃれキッズがいっぱいで盛り上がっておりましたが早々に退散。部屋に戻って10分後には速攻でお休みなさい!

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ロンドンコレ後半戦のダイジェスト 創業者のロマンチックな一面を描いた「バーバリー」、“宝物になる服”を追求した「ジェイ ダブリュー アンダーソン」など

 2020年春夏シーズンのロンドン・ファッション・ウイークは最終日、多くのブランドがスマッシュヒットを連発した。「バーバリー」「ジェイ ダブリュー アンダーソン」「クリストファー ケイン」の3ブランドをリポートする。

バーバリー(BURBERRY)

DESIGNER/リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)

 ティッシは就任から3シーズン目のランウエイで、新たな「バーバリー」像の一つの土台を完成させた。この1年間、ブランドアーカイブの研究を重ねたティッシは、創業者のトーマス・バーバリー(Thomas Burberry)へ強い関心を持った。すでに彼のイニシャルである“TB”ロゴやモノグラムなどの新たなシグニチャーを生み出しているが、今季目に留めたのはトーマスが描いたというブランドを象徴する騎士のロゴだ。騎士が跨るのは馬ではなくユニコーン。「(ユニコーンを選んだトーマスは)大胆な革新者であると同時に、ロマンチストだったということが分かった」とティッシは話した。

 ブランドが創業したビクトリア朝(1830年代~1900年代前後)の繊細な刺しゅうをイメージしたフリルドレスや、アンティーク風のイラストを入れたスカーフなどをドッキングしたブラウスなどが登場。また、ユニコーンを思わせる長いフリンジを施したスカート、翼のようなフェザードレスや、背中にレースを合わせたTシャツなども披露した。

 代名詞のトレンチコートはクリスタル装飾を施してアップデート。またユニークな新アイテムとして、裾を折り返して丈を調整できるシャツや、キャップとハットの中間のような帽子などもそろった。カラーパレットは、ニュートラルでタイムレスなグレー、ベージュ、ブラック、ホワイト。淑女から紳士、少女、少年のさまざまな世代に愛される「バーバリー」らしいインクルージョンを“バーバリー キングダム”として表現。創業者に敬意を払いながら、アーカイブに新たな時代の価値観を加えてその先の未来を描いた。

ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)

DESIGNER/ジョナサン・アンダーソン

 「なぜファッションは重要なのか?なぜここまで人を真剣にさせるのか?」-大量生産・大量消費が繰り返される世の中で“サステイナブル”の言葉が切り離せない今、ジョナサンは「どうしたら、長く愛される服を生み出せるのか」を追求している。会場にディスプレーされたカナダ人のアーティスト、リズ・マゴー(Liz Magor)による作品は、古いぬいぐるみなど、かつては誰かに大事に扱われていたものをクリアボックスに入れたオブジェだった。それを見て「私もこういうものを持っていたことがある。今はどこに行ったのだろう?」と考えさせられるものだ。

 今季はマゴーの作品を通して、“誰かにとって宝物になるような洋服”を提案した。ファーストルックは、ギリシャ神話の女神のドレスようにドレープを効かせ、ジュエリー風のブラやネックレス、ベルトを合わせたワンピース。高貴を象徴するジュエリーをウエアに取り入れることで特別な一着へとグレードアップさせた。全体的に丸みを帯びたシルエットは「マリー・アントワネットのドレスように誇張をした後、空気を抜いたような形を探求した」とジョナサン。ウエストから裾にかけて緩やかなカーブを描くテーラードジャケットは、ウエスト部分に空洞ができる変形型。ワードローブに加えて、ベースボールキャップ型のショルダーバッグや、ロープとリボンを絡ませたエスパドリューのレースアップサンダルなど、外しに効かせたアクセサリーも面白い。

 ジョナサンによるアート作品に着想を得たコレクションは難解だが、見る人によって捉え方の異なる知的なアプローチだ。服のデザインについて「これは素敵」というシンプルな直感は重要だが、込められたメッセージを読み解くことが“ラグジュアリー”であり、服が人の心を豊かにするものだと気づかせてくれる。

クリストファー ケイン(CHRISTOPHER KANE)

DESIGNER/クリストファー・ケイン

 「風と愛し合い、星と眠り、花を感じる……(Make Love with the Wind, Sleep with the Stars, Feel the Flowers…)」- ロンドンで、自然愛をダイレクトに示したのが「クリストファー ケイン」だ。これまでも題材に掲げてきた花や植物、そして得意とするセクシュアリティーの表現を融合。「エコセクシュアル(the Ecosexual)」と題した今季は、ケインの自信がみなぎる力強いショーだった。

 ショー開始前にデジタルサイネージに映し出した草原の映像を、ファーストルックのコートとスカートのセットアップのプリントとして登場させた。花びら型のスカートのドレスや、胸元に深いスリットを入れたペイズリー柄のタフタドレスは、ただナチュラルな自然を出すのではなく、光沢感のあるタフタで仕立てたてたり、ネオンカラーをポイントに取り入れたりすることでフューチャリスティックな雰囲気を醸し出している。

 「クリストファー ケイン」が「グッチ」を擁するケリングから独立して早1年。ここ数シーズンの性のタブーに切り込むクリエイションは賛否両論だったが、今季は環境問題への意識をブランドらしくセンシュアルに描くことで新たな道を開いたようだ。今後も独自の世界観を失わずに、共感されるメッセージを組み込んで前進して欲しい。

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2020年春夏パリコレ6日目のハイライト 「コム デ ギャルソン」は迫力の「オーランドー」三部作、「エルメス」の上質タイムレス

 パリコレ6日目は、「コム デ ギャルソン」「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン」など、ギャルソン一門がパワフルなショーを実施。「エルメス」はブランドの魅力である上質レザーに改めてフォーカスしたコレクションを見せた。

コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)

DESIGNER/川久保玲

 優雅なクラシック音楽の調べと共に現れるのは、金糸を織り込んだ重厚なジャカード織りや立体的な花飾りの造形的なスタイル。襟が立ち上がるデザインや腰をおおうティアードの華美なボリュームは宮廷服を思わせる。それもそのはず、着想源となっているのは6月に発表したメンズに続き、ヴァージニア・ウルフ(Virginia Wolf)の文学作品「オーランドー」だ。「コム デ ギャルソン」は今冬ウィーン国立歌劇場で上演される同オペラの衣装制作も担当しており、いわば今回のコレクションは三部作の中の1つ。エリザべス1世時代のイギリス貴族の美青年が時を超え、性別を超える話として、ジェンダー研究で取り上げられることもある同作品は、男らしさ、女らしさの既成概念を揺さぶり、常に新しい美を追求してきた「コム デ ギャルソン」と親和性が高い。男性服の象徴であるスーツは内太ももが大きく開き、どきりとさせる。後半は一転、アートのような黒い造形を並べ、「あなたにはこれが理解できますか?」と問われているかのよう。

ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン(JUNYA WATANABE COMME DES GARCONS)

DESIGNER/渡辺淳弥

 ファーストルックは肩がずるりと落ちるボリュームフォームのトレンチコート。それを脱構築・再構築し、さまざまなアイテムに変化させていく。プリーツやレース生地をトレンチコートのベルトやポケットなどのディテールと組み合わせたドレスに、トレンチコートをいくつもはぎ合わせた複雑なパターンのアシンメトリースカート。トレンチコートのフロント部分のみをビスチエのように載せたTシャツや蛍光カラーのレギンスなどでスポーツムードも取り入れ、軽さを出している。アメコミ風プリントやビビッドなグラフィックもポイント。スニーカーは、イギリス発のシューズブランド「ハイ-テック(HI-TEC)」とのコラボレーションだ。

エルメス(HERMES)

DESIGNER/ナデージュ・ヴァンヘ=シビュルスキー(Nadege Vanhee Cybulski)

 洋服の大量廃棄問題がクロースアップされる中、タイムレスな魅力と価値がある服に改めて光が当たっている今シーズン。その代表格と言える「エルメス」は、ブランドのコアバリューであるレザーにフォーカスした。布のように柔らかなレザーを用いて、カジュアルなアイテムからスーツ、ドレスまでをそろえる。エクリュ、グレー、キャメル、ピンク、ネイビーなど繊細な色使いやパッチワークなどの職人技を生かしたデザインは時を経るほど魅力が増しそうだ。

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編集長はパリコレで何した?Vol.4 「クロエ」でジャケットの着こなしを学び、「オフ・ホワイト」のパワー健在を確認、「リック・オウエンス」の濃厚な世界にまみれる

 パリコレ4日目は、「クロエ(CHLOE)」「パコ・ラバンヌ(PACO RABANNE)」「オフ・ホワイト」などトレンドセッターのショーを取材し、「リック・オウエンス(RICK OWENS)」の濃厚な世界に昼と夜の2度触れてやる気を充電。夜ごはんはデザイナーの自宅にお招きいただきほっこりしました。

9月26日10:00
「クロエ」に見るジャケットの
スタイリングヒント

 ジャケットが気分だけど、久しぶりに着たら生真面目なリクルートスーツ風となりなんだかイマイチ。と思っている方、ぜひ今季の「クロエ」をチェックしてください。ボヘミアンスタイルを得意とする「クロエ」ですが、今季はエレガンスへシフト。“こういうジャケットを選んで、こうスタイリングすれば今っぽくなるんだ”とわかるヒントがたくさん見つかります。

11:00
「アトライン」はきれいな
ワンピースがそろう

 カッティングきれいなワンピースがそろった「アトライン(ATLEIN)」。ドレープやバイヤス使いなどウィメンズの服の基本が抑えられた、実用性が高い服ですね。

12:30
「ディオール」展示会で
刺しゅうの技をじっくり

 「ディオール(DIOR)」の展示会で服をじっくり。一着一着の服に職人技が採用されていて、オートクチュールみたい。特にこの、ラフィア素材を使った刺しゅうはぜひ近くで見てください。

13:15
ここは〇〇ランドか!
「ロジェ ヴィヴィエ」のおとぎ話に
溺れる

 問答無用にカワイイでしょう!「ロジェ ヴィヴィエ(ROGER VIVIER)」は“バックステージ”というテーマで、ダンサーやチアリーダーの支度部屋に見立てた小部屋をたくさん用意。その中で新作を見せました。笑いのセンスも散りばめたゲラルド・フェローニ(Gherardo Felloni)=クリエイティブ・ディレクターのハッピーワールド全開です。

14:00
「パコ・ラバンヌ」に見る
正統派フレンチ

 ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)門下生と言えるのが、朝一にショーを行った「クロエ」のナターシャ・ラムゼイ・レヴィ(Natacha Ramsay-Levi)とこの「パコ・ラバンヌ」のジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)。ニコラはいつも両ブランドのショーに出席し、後輩たちを応援しています。いずれもフランス人による正統派フレンチをベースにモダナイズ。いつも一言「センスが良い。センスの良さは」というフレーズが頭に浮かびます。

15:00
大人気「Y/プロジェクト」を見に
再びセーヌ川へ

 ヨハン・セルファティ(Yohan Serfaty)による「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」が笑っちゃうほどの大人気で、アレクサンドル3世橋のたもとの会場は人が入りきれないほどの熱気。カジュアルともフォーマルとも言い難い、アイテムもカテゴライズしずらい不統一感がこのブランドの魅力。攻めているアイテムが多いけど、ひとつ取り入れてみたいと思わせます。

16:30
フェティッシュは
「アン ドゥムルメステール」に健在

 最近はショーの原稿を書いていて“フェティッシュ”という言葉を使う機会が減りました。極端に何かを偏愛するスタイルは今のファッションの感覚から外れているのかもしれません。しかし、「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」は以前よりむしろフェティッシュでシャープ。黒、白、レザー、フェザー、ジャケット、ドレス、ハーネス。ショーには研ぎ澄まされた緊張感が漂いセバスチャン・ムニエ(Sebastien Meunier)のスタイルがストレートに伝わります。

18:00
「リック・オウエンス」で
風下に座りシャボン玉まみれとなる

 どこのショーより個性的な人が集まる「リック・オウエンス」ですが、ショーが終わってみれば誰よりも個性的なのはリック自身だと毎回思います。演出として登場したのはシャボン玉のパフォーマンス。噴水の水を救い上げてふわ~ふわ~とシャボン玉を作り続け、いつものようにコスチュームばりの服を着たモデルたちを包み込みます。めちゃくちゃポエティックです。同時に風下の観客席だったため大量のシャボン玉が頭に降り注ぎました。全然気にしませんよ。

19:00
「オフ・ホワイト」の
“ネズミに食べられた
チーズみたいな”バッグ

 「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)は、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が健康上の理由で不在と事前にアナウンスされていましたが、会場周辺にはヴァージル信者の若者たちが大勢集まり、そのカリスマ性を再確認。ジョニオさんの娘である高橋ららさんがモデルとして歩き話題になりましたね。気になったのは、ネズミに食べられたチーズ(そんなもの、実際には見たことないけど)みたいに穴が空いたバッグ。このバッグをジップロックに入れて持ち歩く?

20:00
「イザベル マラン」には
正統派美人モデルがずらり

 「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」はとにかくモデルが豪華。最近のショーは肌の色も顔立ちも、それこそ体形も多様性に富んだモデルが起用されることが多いですが、こちらは正統派美人モデルがそろいます。そして長い脚にピン&ハイヒールのブーツを合わせ、ダウンヘアを揺らしてガンガン歩く。彼女たちのテンションをあげるように笛の音が鳴り響きます。目を観客席に移すとフロントローにも美人のインフルエンサーがずらり。パワフルです。

20:30
リック・オウエンスのパートナー、
ミシェルと記念撮影

 「リック・オウエンス」のブックサイン会に向かうも、カルト的なファンが集まり店の2階にいるリックにたどり着くためには1階まで長蛇の列ができていて断念。でも、大丈夫。リックの妻であるミシェル・ラミー(Michele Lamy)がサインをくれました。迫力の彼女は一見近寄りがたいけど人懐っこくてオープンな方です。本は、1970年代に活躍した衣装デザイナーのラリー・ルガスピ(Larry LeGaspi)にリックが捧げたもの。購入したので大事に持って帰ります。

21:00
デザイナーのお宅で
アットホームな夜ごはん

 ディナーはカシミヤブランド「アレクサンドラ・ゴロヴァノフ・トリコ(ALEXANDRA GOLOVANOFF TRICOTS)」のデザイナー、アレクサンドラの自宅にお招きいただきました。シェフ手作りの魚のムニエルと蒸し野菜、イチゴのスイーツという、出張中には縁遠い優しい味に癒される~。ホント癒される~。アレクサンドラが作るカシミアのセーターも同じです。シンプルでずっと着られる、優しい服。プレスの吉田瑞代さんとは姉妹みたいでした。

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編集長はパリコレで何した?Vol.4 「クロエ」でジャケットの着こなしを学び、「オフ・ホワイト」のパワー健在を確認、「リック・オウエンス」の濃厚な世界にまみれる

 パリコレ4日目は、「クロエ(CHLOE)」「パコ・ラバンヌ(PACO RABANNE)」「オフ・ホワイト」などトレンドセッターのショーを取材し、「リック・オウエンス(RICK OWENS)」の濃厚な世界に昼と夜の2度触れてやる気を充電。夜ごはんはデザイナーの自宅にお招きいただきほっこりしました。

9月26日10:00
「クロエ」に見るジャケットの
スタイリングヒント

 ジャケットが気分だけど、久しぶりに着たら生真面目なリクルートスーツ風となりなんだかイマイチ。と思っている方、ぜひ今季の「クロエ」をチェックしてください。ボヘミアンスタイルを得意とする「クロエ」ですが、今季はエレガンスへシフト。“こういうジャケットを選んで、こうスタイリングすれば今っぽくなるんだ”とわかるヒントがたくさん見つかります。

11:00
「アトライン」はきれいな
ワンピースがそろう

 カッティングきれいなワンピースがそろった「アトライン(ATLEIN)」。ドレープやバイヤス使いなどウィメンズの服の基本が抑えられた、実用性が高い服ですね。

12:30
「ディオール」展示会で
刺しゅうの技をじっくり

 「ディオール(DIOR)」の展示会で服をじっくり。一着一着の服に職人技が採用されていて、オートクチュールみたい。特にこの、ラフィア素材を使った刺しゅうはぜひ近くで見てください。

13:15
ここは〇〇ランドか!
「ロジェ ヴィヴィエ」のおとぎ話に
溺れる

 問答無用にカワイイでしょう!「ロジェ ヴィヴィエ(ROGER VIVIER)」は“バックステージ”というテーマで、ダンサーやチアリーダーの支度部屋に見立てた小部屋をたくさん用意。その中で新作を見せました。笑いのセンスも散りばめたゲラルド・フェローニ(Gherardo Felloni)=クリエイティブ・ディレクターのハッピーワールド全開です。

14:00
「パコ・ラバンヌ」に見る
正統派フレンチ

 ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)門下生と言えるのが、朝一にショーを行った「クロエ」のナターシャ・ラムゼイ・レヴィ(Natacha Ramsay-Levi)とこの「パコ・ラバンヌ」のジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)。ニコラはいつも両ブランドのショーに出席し、後輩たちを応援しています。いずれもフランス人による正統派フレンチをベースにモダナイズ。いつも一言「センスが良い。センスの良さは」というフレーズが頭に浮かびます。

15:00
大人気「Y/プロジェクト」を見に
再びセーヌ川へ

 ヨハン・セルファティ(Yohan Serfaty)による「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」が笑っちゃうほどの大人気で、アレクサンドル3世橋のたもとの会場は人が入りきれないほどの熱気。カジュアルともフォーマルとも言い難い、アイテムもカテゴライズしずらい不統一感がこのブランドの魅力。攻めているアイテムが多いけど、ひとつ取り入れてみたいと思わせます。

16:30
フェティッシュは
「アン ドゥムルメステール」に健在

 最近はショーの原稿を書いていて“フェティッシュ”という言葉を使う機会が減りました。極端に何かを偏愛するスタイルは今のファッションの感覚から外れているのかもしれません。しかし、「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」は以前よりむしろフェティッシュでシャープ。黒、白、レザー、フェザー、ジャケット、ドレス、ハーネス。ショーには研ぎ澄まされた緊張感が漂いセバスチャン・ムニエ(Sebastien Meunier)のスタイルがストレートに伝わります。

18:00
「リック・オウエンス」で
風下に座りシャボン玉まみれとなる

 どこのショーより個性的な人が集まる「リック・オウエンス」ですが、ショーが終わってみれば誰よりも個性的なのはリック自身だと毎回思います。演出として登場したのはシャボン玉のパフォーマンス。噴水の水を救い上げてふわ~ふわ~とシャボン玉を作り続け、いつものようにコスチュームばりの服を着たモデルたちを包み込みます。めちゃくちゃポエティックです。同時に風下の観客席だったため大量のシャボン玉が頭に降り注ぎました。全然気にしませんよ。

19:00
「オフ・ホワイト」の
“ネズミに食べられた
チーズみたいな”バッグ

 「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)は、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が健康上の理由で不在と事前にアナウンスされていましたが、会場周辺にはヴァージル信者の若者たちが大勢集まり、そのカリスマ性を再確認。ジョニオさんの娘である高橋ららさんがモデルとして歩き話題になりましたね。気になったのは、ネズミに食べられたチーズ(そんなもの、実際には見たことないけど)みたいに穴が空いたバッグ。このバッグをジップロックに入れて持ち歩く?

20:00
「イザベル マラン」には
正統派美人モデルがずらり

 「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」はとにかくモデルが豪華。最近のショーは肌の色も顔立ちも、それこそ体形も多様性に富んだモデルが起用されることが多いですが、こちらは正統派美人モデルがそろいます。そして長い脚にピン&ハイヒールのブーツを合わせ、ダウンヘアを揺らしてガンガン歩く。彼女たちのテンションをあげるように笛の音が鳴り響きます。目を観客席に移すとフロントローにも美人のインフルエンサーがずらり。パワフルです。

20:30
リック・オウエンスのパートナー、
ミシェルと記念撮影

 「リック・オウエンス」のブックサイン会に向かうも、カルト的なファンが集まり店の2階にいるリックにたどり着くためには1階まで長蛇の列ができていて断念。でも、大丈夫。リックの妻であるミシェル・ラミー(Michele Lamy)がサインをくれました。迫力の彼女は一見近寄りがたいけど人懐っこくてオープンな方です。本は、1970年代に活躍した衣装デザイナーのラリー・ルガスピ(Larry LeGaspi)にリックが捧げたもの。購入したので大事に持って帰ります。

21:00
デザイナーのお宅で
アットホームな夜ごはん

 ディナーはカシミヤブランド「アレクサンドラ・ゴロヴァノフ・トリコ(ALEXANDRA GOLOVANOFF TRICOTS)」のデザイナー、アレクサンドラの自宅にお招きいただきました。シェフ手作りの魚のムニエルと蒸し野菜、イチゴのスイーツという、出張中には縁遠い優しい味に癒される~。ホント癒される~。アレクサンドラが作るカシミアのセーターも同じです。シンプルでずっと着られる、優しい服。プレスの吉田瑞代さんとは姉妹みたいでした。

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2020年春夏パリコレ5日目のハイライト 「セリーヌ」のキュロットが進化、「ヨウジヤマモト」と「ロエベ」に見るそれぞれのエレガンス

 パリコレ5日目は、パワーブランドが目白押し。その中から、「セリーヌ」「ヨウジヤマモト」「ロエベ」。パワーブランドの見どころを速報する。新デザイナーによる「イッセイミヤケ」のレポートはこちらから

セリーヌ(CELINE)

DESIGNER/エディ・スリマン(Hedi Slimane)

 「セリーヌ」のショー会場は、今季もナポレオンが眠るアンヴァリッド。カトリーヌ・ドヌーヴやBLACKPINKのリサなど、「セリーヌ」を身にまとった華やかなゲストが詰めかけ、ファンの絶叫がこだまする会場外は大混雑だ。会場に足を踏み入れると中は真っ暗。やはりエディには夜が似合う。会場前方で陽炎のように赤い光がゆらめくと、デニムシャツとデニムパンツに、紺のブレザーを羽織ったモデルが現れる。顔をおおうのはもちろんティアドロップのサングラス。前シーズン打ち出した1970年代のパリのブルジョワスタイルの踏襲ではあるが、今季はそれをデニムやベアショルダーのフリルドレスなどで、南仏のリゾートムードに味付け。高級避暑地サントロペに出掛けた、不良に憧れるブルジョワのお嬢さんといったイメージだ。前シーズンの最注目アイテム、キュロットパンツも今季はデニムで提案する。後半はぐっと70年代ボヘミアンのムード。フリルブラウスやギャザードレスは2020年春夏のトレンド本命になりそうだ。

ロエベ(LOEWE)

 

DESIGNER/ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)

 今季も会場はユネスコ本部。シアーな白いドレープカーテンで区切られた空間には、鉢に植えられたススキや大きなアメジストが置かれ、クリーンで静ひつなムードが流れる。ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)のクラフツマンシップへの探求は今季も続いており、いっそう研究熱に拍車がかかっているようにも感じられる。キーになるのは、ギピュールレース、シャンティイレース、マーガレットレースなど多様なレース。それをマットなコットンやサテンなどと組み合わせ、ギャザーたっぷりのドレスやブラウスに仕立てる。ジャケットやコートは、絞ったウエストから切り替えによって優美に生地が広がる作りが美しい。バレリーナのチュチュのようなパニエシルエットやラッフル襟もポイント。バッグの注目は、バケット型の新作“バルーン バッグ”だ。

ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)

DESIGNER/山本耀司

 最近の「ヨウジヤマモト」のショーはいくつかのパートで構成される。前半はパターン力を生かした新しいカタチ作りへの挑戦で、今回は服の一部を丸や三角のグラフィックで構成し、ちらりとのぞく素肌もデザインの一部として見せた。中盤は画家の朝倉優佳とのコラボレーション。さらに終盤には珍しくバッグをたくさん登場させた。斜めがけをする大きな布のバッグはいずれも服と一体となる。バッグだけが主張をしない、さらには両手が自由になるデザインが「ヨウジヤマモト」らしい。

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新デザイナー近藤悟史が考える「イッセイ ミヤケ」イズムとは? ブランドの原点を軽やかに表現

 「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」が、新デザイナー近藤悟史による初のコレクションを2020年春夏のパリ・ファッション・ウイークで披露した。日の光が差し込む空間でダンスと共に見せたショーは、タイトルが“センス・オブ・ジョイ”。三宅一生が追求したコンセプト“一枚の布”に立ち返った内容に、ベテランジャーナリストからは「昔の一生さんのショーを見ているかのよう」といった声も聞かれたが、単に昔をなぞるのではなく、現代流に、そしてハッピーに表現しているのがポイントだ。

 会場は、パリ中心地からやや距離がある19区。「なぜこんな遠い場所で?」といった声もあったが、会場に行ってみて納得。現代アートやグラフィックなどを扱う公共の文化施設は、気がきいていておしゃれなムード。広く明るい倉庫のような空間の会場を見上げると、丸い3枚の生地が天井にセットされている。

 きれいな電子音とアーティストのクリーンな歌声が重なる中でまず登場したのは、淡いピンクのドレープたっぷりのコート姿のモデル。和装のように四角い布を体に巻き付けて美しい造形を追求したパターンは、まさに“一枚の布”を象徴するものだ。その後に続くのは、ジャージーのドレスやスカートを身に着けた笑顔のモデルたち。手をつないでくるくる輪になって踊ると、スカートやドレスの裾がひらひら広がって揺れる。

 その後もダンサーによるパフォーマンスが続き、マクラメ編みのフリンジが揺れたり、パラシュートクロスのような極薄生地のドレスが花が開くように広がったり。極薄生地のつなぎ姿のモデルがスケボーに乗って現れると、風を受けてつなぎは凧のように広がる。マクラメ編みに見えたものはブランドらしい一体成型のニットでできており、パラシュートクロスも恐らく最新技術を盛り込んで作られたもの。原点回帰に思えても、それを支える素材は進化して表現に広がりを持たせている。ただし、そういった技術面を全面に押し出すのではなく、まず純粋に「楽しい」と感じさせるショーだ。これまでに比べてぐっと軽やかになった色合いも、それを後押しする。

 盛り上がりの最高潮は、天井に吊るされていた丸い生地がモデルのもとに下りてくる仕掛け。ニットでできた生地がモデルの体を通ってドレスになると、ダンスに合わせてピョンピョン飛び跳ねるように生地が揺れる。最後はモデルたち全員が手をつないで輪になって踊る演出だ。

 ショー後の取材で近藤は、「原点に回帰したというつもりはないけれど」と前置きしつつ、「僕なりに、『イッセイ ミヤケ』イズムを現代的に表現した」とコメント。イズムとは何か?と聞かれると、「人種や年齢を問わず、さまざまな人に届けるエネルギー」だと即答。輪になって踊る演出や笑顔のモデルは、まさにそれを表現するものだ。「社会に向き合いながら服を作っていくことがこの会社では大切。そこに僕なりのユーモアを取り入れていきたい」と抱負を語った。「(近藤のクリエイションに対し)今すぐ何かを求めるというよりも、何シーズンか重ねて、こういうことだったのかと分かるようになれば」と、伊勢孝彦イッセイ ミヤケ社長も話した。

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渡辺直美も注目する“イタリアン・カワイイ”「GCDS」のスゴさとは? けみおのランウエイデビューも

 イタリア発の「GCDS」は、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長しているストリートウエアブランドです。名前は「God Can't Destroy Streetwear(神はストリートウエアを破壊できない)」の頭文字。31歳のデザイナー、ジュリアーノ・カルツァ(Giuliano Calza)と、33歳の兄でビジネスを担うジョルダーノ(Giordano)がブランドを開始して4年目ですが、世界中で400店舗以上の取り扱いがあり、売上高は1000万ユーロ(約11億8000万円)を超えています。

 ベラ・ハディド(Bella Hadid)らセレブモデルの心も掴んでおり、少し毛色は異なりますがヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の「オフ-ホワイト ヴァージル アブロー(OFF-WHITE ℅ VIRGIL ABLOH)」のような成長で、ジュリアーノによるド派手なデザインは、“ネクスト ジェレミー・スコット(Jeremy Scott)”の呼び声も高いです。日本での知名度はまだ高くないものの、ミラノ・ファッション・ウイークで行ったショーのフロントローには渡辺直美の姿がありました。このブランドがなぜそんなにスゴイのか、2020年春夏のショーから解説していきたいと思います。

上海でファッションを学んだアジア好きデザイナー

 「GCDS」のジュリアーノは31歳のイタリア人でポップカルチャーが大好物。上海の大学でデザインを学んだという背景もあり、アジア文化に大きな影響を受けています。1年前の19年春夏では「ポケモン」、今回はサンリオのハローキティとマイメロディとのコラボも発表しています。天井に巨大なタコ足が張り巡らされた会場入口を抜けると、大きなGCDSのサイン前でスナップ撮影が行われていて、ハローキティのバブルティースタンドがありました。メニューはタピオカミルクティーもあれば、フルーツフレーバーのゼリー入りドリンクなど数種類などが自由に楽しめます。また、招待状は本物のココナツで、ストロー付きで飲むことができました。私はコレクション期間中にお腹を壊すのを恐れて飲みませんでしたが、会場では「あれ飲んだ?」という会話を何度も聞きました(笑)。このドリンクにまつわる仕掛けは序の口で、その先にはさらなるサプライズが待っていました。

しっぽを振った恐竜現わる キティやジュラシック・パークのコラボ祭り

 「K-HAWAII」と題したショーは文字通り、ハワイの南国感と日本のカワイイカルチャーのミックス。会場は大きなホールで、デジタルサイネージには金魚の泳ぐ姿が映し出されていて、ランウエイの真ん中には大きな箱が置かれています。ショーが開始すると恐竜の鳴き声と共に、箱の中からティラノサウルスが出現。これには度肝を抜かれました(笑)。会場内がザワザワと写真撮影を開始する中、アメリカ発のクマのキャラクター「ケアベア(Care Bears)」の顔型をかたどったビキニを着たモデルが登場します。そこから、ハローキティのバッグやマイメロディのトップス、映画「ジュラシック・パーク」のロゴを使ったTシャツやブーツなどのコラボのオンパレード。終盤には“ストリートウエアは永久不滅”と書かれたアダルトアニメ風のアキバ系プリントのウエアを着た、人気インフルエンサーのけみおもランウエイを歩いていました。

 コラボアイテムのほか、ショーではブランドの認知度を押し上げた定番人気のロゴ入りセーターやソックスなどのストリートウエアもしっかりとラインアップ。テイストも、テーマの“カワイイ”を象徴するフリルなどの要素に、イタリアらしい色気のあるクロップドカシュクール、オフショルダーのトップス、ドレスもそろえています。アメリカや日本の文化を融合しながらも、モノ作りは100%地元のイタリア生産にこだわっているのも特徴です。ショーには出てきていませんが、キッズラインもあります。

アニメの目を再現した!? コスプレーヤー風メイク

 4年目のブランドと思わせないのは、すでにコスメラインもローンチしていること。昨年末に発表されたイタリアのカラーコスメメーカーのインターコス(INTERCOS)との協業によるリップスティックとネイルはコンパクトなラインアップですが、今季のショーでも使用されていていました。ネイルチップにはブランド名のチャームを装着。ヘア&メイクはコスプレーヤーを意識したのでしょう。アニメのキャラクターになりきるかのように、ほぼ全員のモデルに真っ黒のカラーコンタクトを入れ、黒目の位置にアイラインを引いて強調。ヘアも現実離れしたツヤのあるハーフツインテールやボブのウィッグで、モデルたちを人形顔に変身させていました。

 ウエアもメイクも海外目線のジャポニズムの解釈でしたが、私の感想は嫌な気持ちになることもなく、ファニーな世界観を楽しめました。20年春夏は全体的に脱ストリートウエアの傾向が見られます。「GCDS」の急成長は間違いなくこの数年間のストリートブームが追い風になっていますが、ショーの仕掛けやSNS、商品のコラボレーション、ドロップ形式の商品販売を見る限り、ブランド力を強く感じるので、独自の発信力でファンを魅了するのではないでしょうか。

 また、ある日本人来場者はショー会場を出た後に、外で待機していたブランドファンに「何でもいいから、会場内でもらった紙をくれませんか?」とねだられたと言います。そんな熱狂的ファンを抱えるジュリアーノが、どのようにブランドを成長させていくのか今後も興味深いです。

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渡辺直美も注目する“イタリアン・カワイイ”「GCDS」のスゴさとは? けみおのランウエイデビューも

 イタリア発の「GCDS」は、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長しているストリートウエアブランドです。名前は「God Can't Destroy Streetwear(神はストリートウエアを破壊できない)」の頭文字。31歳のデザイナー、ジュリアーノ・カルツァ(Giuliano Calza)と、33歳の兄でビジネスを担うジョルダーノ(Giordano)がブランドを開始して4年目ですが、世界中で400店舗以上の取り扱いがあり、売上高は1000万ユーロ(約11億8000万円)を超えています。

 ベラ・ハディド(Bella Hadid)らセレブモデルの心も掴んでおり、少し毛色は異なりますがヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の「オフ-ホワイト ヴァージル アブロー(OFF-WHITE ℅ VIRGIL ABLOH)」のような成長で、ジュリアーノによるド派手なデザインは、“ネクスト ジェレミー・スコット(Jeremy Scott)”の呼び声も高いです。日本での知名度はまだ高くないものの、ミラノ・ファッション・ウイークで行ったショーのフロントローには渡辺直美の姿がありました。このブランドがなぜそんなにスゴイのか、2020年春夏のショーから解説していきたいと思います。

上海でファッションを学んだアジア好きデザイナー

 「GCDS」のジュリアーノは31歳のイタリア人でポップカルチャーが大好物。上海の大学でデザインを学んだという背景もあり、アジア文化に大きな影響を受けています。1年前の19年春夏では「ポケモン」、今回はサンリオのハローキティとマイメロディとのコラボも発表しています。天井に巨大なタコ足が張り巡らされた会場入口を抜けると、大きなGCDSのサイン前でスナップ撮影が行われていて、ハローキティのバブルティースタンドがありました。メニューはタピオカミルクティーもあれば、フルーツフレーバーのゼリー入りドリンクなど数種類などが自由に楽しめます。また、招待状は本物のココナツで、ストロー付きで飲むことができました。私はコレクション期間中にお腹を壊すのを恐れて飲みませんでしたが、会場では「あれ飲んだ?」という会話を何度も聞きました(笑)。このドリンクにまつわる仕掛けは序の口で、その先にはさらなるサプライズが待っていました。

しっぽを振った恐竜現わる キティやジュラシック・パークのコラボ祭り

 「K-HAWAII」と題したショーは文字通り、ハワイの南国感と日本のカワイイカルチャーのミックス。会場は大きなホールで、デジタルサイネージには金魚の泳ぐ姿が映し出されていて、ランウエイの真ん中には大きな箱が置かれています。ショーが開始すると恐竜の鳴き声と共に、箱の中からティラノサウルスが出現。これには度肝を抜かれました(笑)。会場内がザワザワと写真撮影を開始する中、アメリカ発のクマのキャラクター「ケアベア(Care Bears)」の顔型をかたどったビキニを着たモデルが登場します。そこから、ハローキティのバッグやマイメロディのトップス、映画「ジュラシック・パーク」のロゴを使ったTシャツやブーツなどのコラボのオンパレード。終盤には“ストリートウエアは永久不滅”と書かれたアダルトアニメ風のアキバ系プリントのウエアを着た、人気インフルエンサーのけみおもランウエイを歩いていました。

 コラボアイテムのほか、ショーではブランドの認知度を押し上げた定番人気のロゴ入りセーターやソックスなどのストリートウエアもしっかりとラインアップ。テイストも、テーマの“カワイイ”を象徴するフリルなどの要素に、イタリアらしい色気のあるクロップドカシュクール、オフショルダーのトップス、ドレスもそろえています。アメリカや日本の文化を融合しながらも、モノ作りは100%地元のイタリア生産にこだわっているのも特徴です。ショーには出てきていませんが、キッズラインもあります。

アニメの目を再現した!? コスプレーヤー風メイク

 4年目のブランドと思わせないのは、すでにコスメラインもローンチしていること。昨年末に発表されたイタリアのカラーコスメメーカーのインターコス(INTERCOS)との協業によるリップスティックとネイルはコンパクトなラインアップですが、今季のショーでも使用されていていました。ネイルチップにはブランド名のチャームを装着。ヘア&メイクはコスプレーヤーを意識したのでしょう。アニメのキャラクターになりきるかのように、ほぼ全員のモデルに真っ黒のカラーコンタクトを入れ、黒目の位置にアイラインを引いて強調。ヘアも現実離れしたツヤのあるハーフツインテールやボブのウィッグで、モデルたちを人形顔に変身させていました。

 ウエアもメイクも海外目線のジャポニズムの解釈でしたが、私の感想は嫌な気持ちになることもなく、ファニーな世界観を楽しめました。20年春夏は全体的に脱ストリートウエアの傾向が見られます。「GCDS」の急成長は間違いなくこの数年間のストリートブームが追い風になっていますが、ショーの仕掛けやSNS、商品のコラボレーション、ドロップ形式の商品販売を見る限り、ブランド力を強く感じるので、独自の発信力でファンを魅了するのではないでしょうか。

 また、ある日本人来場者はショー会場を出た後に、外で待機していたブランドファンに「何でもいいから、会場内でもらった紙をくれませんか?」とねだられたと言います。そんな熱狂的ファンを抱えるジュリアーノが、どのようにブランドを成長させていくのか今後も興味深いです。

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編集長はパリコレで何した?Vol.3 「マルジェラ」で“モード”注入、「ドリス」が最高!そしてケイト・モスに翻弄される

 こんにちは。「WWDジャパン」編集長の向(むこう)千鶴です。パリコレ3日目はおしゃれするも雨に打たれる朝に始まり、ケイト・モス(Kate Moss)の大幅遅刻で予定が大幅に狂う夜で終わるという、パリコレらしい一日に。そんなあれこれも「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」の会心作を見ればすべて帳消しになるのもまた、パリコレです!

9月25日(水)9:30
確立されてきた“カワイイ”
新「ランバン」像

 「ランバン(LANVIN)」のショー会場となったケ・ブランリ美術館の庭は素敵な空間なのですが、いかんせん雨で座席もしっとり。ブランドロゴがプリントされたカッパを着てショーを見ました。

 「ランバン」は、ブルーノ・シアレッリ(Bruno Sialelli)体制で2シーズン目。そのデザインはカワイイのですが、彼が「ロエベ(LOEWE)」でジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)直属のメンズウエア・デザイン・ディレクターだったというキャリアから、どうしても“ジョナサンっぽい、果たして「ランバン」とは?”と言いたくなります。が、先日知り合った彼の元同僚いわく「まさにあれが彼の持ち味だから当然」とのこと。なるほど。2シーズン目にしてブルーノ流“カワイイ”「ランバン」像が確立されており、新しい顧客を獲得しそうです。

12:00
「メゾン マルジェラ」でモード注入

 「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」は全ルックが熱量が高く、見るだけで“モード注入完了!”というテンションに。穴が開いた服だからといって、“抜け感がある”とは大違いで、むしろその逆です。モデルも前のめりで速足。特にハイヒールブーツをはいた彼のウォーキングは凄い迫力で、見ているこちらも思わず前のめりに。情熱は人を巻き込むのです!

13:00
「カルティエ」でダイヤの
力をもらう

 ジュエリーは疲れている時より、元気な時に見た方がよい、が自論です。パワーがある時はそれが倍増するし、弱っている時は負けちゃう気がするから。「カルティエ(CARTIER)」の“パンテール”とくればなおさら。上の動画は、リングからバングルまで、ひとつひとつの“パンテール”と目を合わせながら撮影をしたので彼らに飲み込まれないよう、座してごらんください。

13:30
「ショーメ」で若手カメラマンの
仕事に惚れる

 「ショーメ(CHAUMET)」がサンジェルマン通り165番地のブティックで開催中の展覧会「オートルモン」へ。ジュエリーを髪に飾るなどスタイリングで遊んでいるのですが、注目の次世代フォトグラファー、ジュリア・ヘッタ(Julia Hetta)の写真はファッション写真というより一人の人物を切り取った肖像画みたい。引き込まれて5分滞在の予定がオーバーし、焦る。

14:00
「ネヘラ」のフィナーレに駆け込み

 「ネヘラ(NEHERA)」独特の優しい生地&色使いのフィナーレにドタバタをしばし忘れてホッとしました。

15:00
「ドリス ヴァン ノッテン」の
コラボ相手は……

 ランウェイの作り方にもトレンドがあり、最近はフラット&自然光が主流です。だから「ドリス ヴァン ノッテン」が今回採用した、客席からモデルを仰ぎ見る高いランウェイは、ザ・ファッションショー&90年代的であり、久しぶりです。

 そしてドリスが協業のために迎えたのはなんと、クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)でした。フィナーレに2人が登場した時には、意外な組み合わせに思わず「え!」と声を上げましたが、10秒後には「なるほど!」と納得。プリントや刺しゅうを得意とするドリスの感性に、同じく色彩使いが巧みなラクロワの感性が重なるという、いわば職人と職人の協業は、見事なハーモニーを奏でていまいた。いわば、井上陽水と玉置浩二の「夏の終わりのハーモニー」的な?デヴィッド・ボウイ(David Bowie)とビング・クロスビー(Bing Crosby)のクリスマスソング的な?というのは冗談ですが、王道なファッションショーを通じて美しい服をキチンと見せようというドリスの意思が伝わってきます。ジャカードやプリントで色柄を大胆に合わせた美しい服をぜひ動画でどうぞ。

17:30
大阪・上田安子の学生たちを応援に

 年に何度か講義を持っている大阪の上田安子服飾専門学校がショーを開くというので応援に行きました。学校と言っても彼らは合同展示会トラノイに出展をして3年目で、世界15か国に取引先を持ち利益を出しているところがポイント。ショーでは日本の産地とコラボレーションし、一枚の四角い布から生まれる造形をコンテンポラリーダンサーが着て表現していました。

 授業参観の親みたいな気持ちで見てはいかん、私はプロなのだ、と思うものの、知った顔の若者がいたって真面目にプレゼンをしている姿を見るとどうにもバイヤスがかかり、ニヤニヤしてしまう。学生諸君、お疲れ様でした。ちゃんと伝わったよ。次は仕事の現場で会いましょう!

18:30
「エルメス」のシューズ展示会

 ピエール・アルディ(Pierre Hardy)による「エルメス(HERMES)」のシューズの展示会で、シャトレのオペラ座へ。日焼けしたらHの跡が残りそうなこの定番サンダル、好きです。こんな大胆な柄が登場します。“シェーヌダンクル”モチーフを使ったハイヒールなど太めハイヒールも充実していました。展示会後、お手洗いを探して館の中を歩き、扉を開けるとそこは劇場でした。誰もいない劇場ってなんか、ロマンチック。

19:00
「ディオール」のオープニングで
モナちゃんに会う

 「ディオール(DIOR)」がシャンゼリゼ大通りにオープンした新店のオープニングへ。3層の店内は開放的で、入りやすい雰囲気です。店頭のインスタレーションには大勢の観光客が集まっていました。店内の中央でDJをしていたのは松岡モナちゃん!NY暮らしが長くなったモナちゃんだから会うのは久しぶり。笑顔をありがとう。

20:00
ケイト・モスの
“ファッション・レイト”で
夜の計画崩壊!

 「ザディグ エ ヴォルテール(ZADIG & VOLTAIRE)」のスペシャルゲストのケイト・モスが来場したのは、オンタイムから1時間が過ぎてから。そしてショーが始まったのは21時10分という、1時間押しに。結果、行きたかったカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)へのトリビュートイベンなどに行けず(来場した村上隆さんに会いたかった!!)、ディナーの相手を待ちぼうけにさせることに。パリコレの夜はこんなものでもあるし、私の読みが甘かったと言えばそれまでだけど、でもケイトに一言モノ申したい!時間は誰にも平等に重要なのよ(泣)。

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ベスコス本命からプチプラまで、今「発酵コスメ」がアツい理由とは?!

 今シーズンは「発酵コスメ」がアツイ。ベストコスメの本命と思われる大型のエイジングケアを筆頭に、プチプラのスキンケア含め「あ、これも発酵由来の成分、こっちも発酵に注目している製品」と、目を引く新製品が続々登場している。

 発酵とは、微生物がある物質からまったく別の「体に有用な物質(発酵代謝物)」を生成すること。その歴史は古く、世界最古の発酵食品が誕生したのは約8000年前。コーカサス地方(旧グルジア)のワインと言われている。以降世界各国には独自の発酵食品が存在し、現在では化粧品の成分としても広く用いられている。最も有名なのは、1980年に登場した「SK-Ⅱ フェイシャルトリートメントエッセンス」の「SK-Ⅱピテラ」だろう。

 人工的に合成する成分とは違い、発酵には微生物……つまり「生き物」が介在するため、ある種自然の成り行きに任せざるを得ない面がある。1980年代頃までは、微生物と発酵条件の組み合わせを総当たり的に検証し、肌に有効な発酵代謝物を見出す(そして量産する)手法が中心だった。現在は、この発酵に関する技術が飛躍的に進化。微生物に関する遺伝子レベルの研究や、発酵条件に関する膨大なデータが蓄積され、これらを背景に登場したのが冒頭の発酵コスメたちだ。

 たとえば、「ランコム(LANCOME)」の“ジェニフィック”シリーズには、効率良く発酵由来成分を抽出する独自のプロセスが採用されている。ビフィズス菌エキスを超音波によって粉砕し、イースト菌エキスを酵素によって加水分解して、熱を加えずに粒子を極小化。濾過したのち糖類を大きさ別に分類することで、速やかな浸透感や肌への働きの向上が期待できる。

 この秋登場した「ジェニフィック アドバンスト N」はさらに一歩進んで、肌表面の常在菌バランス(マイクロバイオーム)に注目。若い肌と加齢した肌の常在菌バランスを研究し、新たに2種類の発酵由来成分と、常在菌の栄養となる3種類のプロバイオティクスを配合。加齢によって偏りがちな肌の常在菌バランスを、健やかな状態へと導くことを目的とした、新発想の美容液だ。

 自然の営みである発酵に対し「計画的な発酵」に挑んだのが、「アルビオン(ALBION)」の「フローラドリップ」である。注目したのは、バイオ×ITを融合した「スマートセルインダストリー」の考え方。これは「生物が何かを生み出す力」を高度にデザインする技術のことで、現在エネルギー、農業、医療等の分野において、産学協同で推進されている。

 「アルビオン」が行ったのはまず、ゴールとなる「肌への効果」の設定だ。そのために必要な発酵代謝物を検証し、それらを生み出す微生物を選定。発酵条件をシミュレートした上で、実際の成分開発を行った。具体的には、白神山地の自社研究所で育った5種類のハーブを、純白麹を用いて高度な管理下で発酵。ハーブだけでも十分肌に有用な成分を含むが、この発酵から得られた成分には、キメ、ハリ、ツヤなど肌のあらゆる美しさに関与する働きが認められるという。開発においては、しばしば思い通りの結果を得られないこともあるが、ほぼ当初の狙い通りの成分が開発できたというのも驚きだ。植物の抽出や人工的に合成した既存の成分とは全く違う、次世代の画期的な開発手法といえる。

 発酵が難しい素材に対して、果敢に挑戦したのは、はちみつのエキスパートである「ハッチ(HACCI)」。はちみつは糖度が高く水分をほぼ含有しないため、微生物が活動しにくい……。つまり発酵しにくい性質を持つ(それが腐りにくいという利点でもあるのだけれど)。そもそもはちみつ自体栄養価が高く、肌に有用な成分を豊富に含んでいる。

 さらに「はちみつの新たな可能性を探りたい」という情熱のもと、「ハッチ」は京都の老舗発酵屋と協力。新鮮なフルーツを花酵母で発酵させ、そのままでは発酵が難しいはちみつの媒介役となる「発酵母液」を開発。この母液にベストなタイミングではちみつを加え、試行錯誤の結果はちみつ発酵液の開発に成功した。この発酵液にはヒアルロン酸の産生力やバリア機能を改善する働きが認められ、「ハッチ 発酵液シリーズ」の全製品に配合されている。

 さらにプチプラのスキンケアでも、発酵由来成分を取り入れた注目のアイテムが登場する。マンダムの「バリアリペア メンテナンスマスク」は、「うるおうチカラ乳酸菌」という外箱のコピー通り、シートには牛乳タンパク質を乳酸桿菌で発酵させた乳発酵液を含ませている。この発酵液はアミノ酸などの天然保湿因子が豊富で、マスクのシールド感との相乗効果により、自ら潤う肌へと導く効果が期待できる。乾燥の気になる季節に、発酵コスメの恵みを試したい方に最適だ。

 インナーケアで注目したいのは、たかくら新産業の「だいじょうぶなもの 植物発酵エキス」だ。発酵素材を用いた美容飲料がすでに沢山存在するなかで、有機JAS認証を得た初の発酵エキスだ。原料となる32種類の野菜や果物はすべて有機栽培、工場の環境やパッケージング方法に至るまで、有機JASの厳しい条件をすべてクリアしている。新鮮な原料を丸ごと1種類ずつじっくり抽出し、それぞれ自らが持つ酵母で発酵。最終的にそれらを1つの樽に入れ、ITOプロバイオ酵母によって追発酵&熟成させる。原料から製品として完成するまでに、実に1年以上を費やすという。この秋は携帯に便利な個包装タイプが登場し、職場や旅先でも気軽に手に取れるのが魅力だ。

 たかくら新産業のように、伝統的な発酵技術を用い、オーガニックという付加価値を追求した製品が登場したこと。加えて個人的には、「アルビオン」や「ハッチ」など国内メーカーの開発に、日本の老舗企業が技術提携している点が興味深い。古くは酒や味噌造りに必要な微生物を提供し、現在はバイオ企業に転身した会社もある「麹屋(もしくは発酵屋)」の技術と、先端のテクノロジーの融合が、発酵由来成分の可能性を広げているように思う。

 伝統の技と先端技術から誕生し、肌への効果まで検証した進化型の発酵コスメ。今回は今シーズン注目のエイジングケアから、プチプラのスキンケア、インナーケアまで、気になる製品をセレクトしてみた。エイジングサインが気になる方、肌本来の保湿力を内側から立て直したい方、ぜひ試してみては?

宇野ナミコ:美容ライター。1972年静岡生まれ。日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、ウェブなどで美容の記事を執筆。スキンケアを中心に、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、美容医療まで担当分野は幅広く、美容のトレンドを発信する一方で丹念な取材をもとにしたインタビュー記事も手掛ける

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ベスコス本命からプチプラまで、今「発酵コスメ」がアツい理由とは?!

 今シーズンは「発酵コスメ」がアツイ。ベストコスメの本命と思われる大型のエイジングケアを筆頭に、プチプラのスキンケア含め「あ、これも発酵由来の成分、こっちも発酵に注目している製品」と、目を引く新製品が続々登場している。

 発酵とは、微生物がある物質からまったく別の「体に有用な物質(発酵代謝物)」を生成すること。その歴史は古く、世界最古の発酵食品が誕生したのは約8000年前。コーカサス地方(旧グルジア)のワインと言われている。以降世界各国には独自の発酵食品が存在し、現在では化粧品の成分としても広く用いられている。最も有名なのは、1980年に登場した「SK-Ⅱ フェイシャルトリートメントエッセンス」の「SK-Ⅱピテラ」だろう。

 人工的に合成する成分とは違い、発酵には微生物……つまり「生き物」が介在するため、ある種自然の成り行きに任せざるを得ない面がある。1980年代頃までは、微生物と発酵条件の組み合わせを総当たり的に検証し、肌に有効な発酵代謝物を見出す(そして量産する)手法が中心だった。現在は、この発酵に関する技術が飛躍的に進化。微生物に関する遺伝子レベルの研究や、発酵条件に関する膨大なデータが蓄積され、これらを背景に登場したのが冒頭の発酵コスメたちだ。

 たとえば、「ランコム(LANCOME)」の“ジェニフィック”シリーズには、効率良く発酵由来成分を抽出する独自のプロセスが採用されている。ビフィズス菌エキスを超音波によって粉砕し、イースト菌エキスを酵素によって加水分解して、熱を加えずに粒子を極小化。濾過したのち糖類を大きさ別に分類することで、速やかな浸透感や肌への働きの向上が期待できる。

 この秋登場した「ジェニフィック アドバンスト N」はさらに一歩進んで、肌表面の常在菌バランス(マイクロバイオーム)に注目。若い肌と加齢した肌の常在菌バランスを研究し、新たに2種類の発酵由来成分と、常在菌の栄養となる3種類のプロバイオティクスを配合。加齢によって偏りがちな肌の常在菌バランスを、健やかな状態へと導くことを目的とした、新発想の美容液だ。

 自然の営みである発酵に対し「計画的な発酵」に挑んだのが、「アルビオン(ALBION)」の「フローラドリップ」である。注目したのは、バイオ×ITを融合した「スマートセルインダストリー」の考え方。これは「生物が何かを生み出す力」を高度にデザインする技術のことで、現在エネルギー、農業、医療等の分野において、産学協同で推進されている。

 「アルビオン」が行ったのはまず、ゴールとなる「肌への効果」の設定だ。そのために必要な発酵代謝物を検証し、それらを生み出す微生物を選定。発酵条件をシミュレートした上で、実際の成分開発を行った。具体的には、白神山地の自社研究所で育った5種類のハーブを、純白麹を用いて高度な管理下で発酵。ハーブだけでも十分肌に有用な成分を含むが、この発酵から得られた成分には、キメ、ハリ、ツヤなど肌のあらゆる美しさに関与する働きが認められるという。開発においては、しばしば思い通りの結果を得られないこともあるが、ほぼ当初の狙い通りの成分が開発できたというのも驚きだ。植物の抽出や人工的に合成した既存の成分とは全く違う、次世代の画期的な開発手法といえる。

 発酵が難しい素材に対して、果敢に挑戦したのは、はちみつのエキスパートである「ハッチ(HACCI)」。はちみつは糖度が高く水分をほぼ含有しないため、微生物が活動しにくい……。つまり発酵しにくい性質を持つ(それが腐りにくいという利点でもあるのだけれど)。そもそもはちみつ自体栄養価が高く、肌に有用な成分を豊富に含んでいる。

 さらに「はちみつの新たな可能性を探りたい」という情熱のもと、「ハッチ」は京都の老舗発酵屋と協力。新鮮なフルーツを花酵母で発酵させ、そのままでは発酵が難しいはちみつの媒介役となる「発酵母液」を開発。この母液にベストなタイミングではちみつを加え、試行錯誤の結果はちみつ発酵液の開発に成功した。この発酵液にはヒアルロン酸の産生力やバリア機能を改善する働きが認められ、「ハッチ 発酵液シリーズ」の全製品に配合されている。

 さらにプチプラのスキンケアでも、発酵由来成分を取り入れた注目のアイテムが登場する。マンダムの「バリアリペア メンテナンスマスク」は、「うるおうチカラ乳酸菌」という外箱のコピー通り、シートには牛乳タンパク質を乳酸桿菌で発酵させた乳発酵液を含ませている。この発酵液はアミノ酸などの天然保湿因子が豊富で、マスクのシールド感との相乗効果により、自ら潤う肌へと導く効果が期待できる。乾燥の気になる季節に、発酵コスメの恵みを試したい方に最適だ。

 インナーケアで注目したいのは、たかくら新産業の「だいじょうぶなもの 植物発酵エキス」だ。発酵素材を用いた美容飲料がすでに沢山存在するなかで、有機JAS認証を得た初の発酵エキスだ。原料となる32種類の野菜や果物はすべて有機栽培、工場の環境やパッケージング方法に至るまで、有機JASの厳しい条件をすべてクリアしている。新鮮な原料を丸ごと1種類ずつじっくり抽出し、それぞれ自らが持つ酵母で発酵。最終的にそれらを1つの樽に入れ、ITOプロバイオ酵母によって追発酵&熟成させる。原料から製品として完成するまでに、実に1年以上を費やすという。この秋は携帯に便利な個包装タイプが登場し、職場や旅先でも気軽に手に取れるのが魅力だ。

 たかくら新産業のように、伝統的な発酵技術を用い、オーガニックという付加価値を追求した製品が登場したこと。加えて個人的には、「アルビオン」や「ハッチ」など国内メーカーの開発に、日本の老舗企業が技術提携している点が興味深い。古くは酒や味噌造りに必要な微生物を提供し、現在はバイオ企業に転身した会社もある「麹屋(もしくは発酵屋)」の技術と、先端のテクノロジーの融合が、発酵由来成分の可能性を広げているように思う。

 伝統の技と先端技術から誕生し、肌への効果まで検証した進化型の発酵コスメ。今回は今シーズン注目のエイジングケアから、プチプラのスキンケア、インナーケアまで、気になる製品をセレクトしてみた。エイジングサインが気になる方、肌本来の保湿力を内側から立て直したい方、ぜひ試してみては?

宇野ナミコ:美容ライター。1972年静岡生まれ。日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、ウェブなどで美容の記事を執筆。スキンケアを中心に、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、美容医療まで担当分野は幅広く、美容のトレンドを発信する一方で丹念な取材をもとにしたインタビュー記事も手掛ける

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週末お出掛けスポット 約100点のアーティストの作品を一律10万円で販売する展示会などアート5選

 週末にオシャレして出掛けたいアートスポットをお届け。今週は約100点のアーティストの作品を一律10万円で販売する展示会やジャン・ミシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat)の日本初の大規模展覧会など5つをラインアップ。また、「WWD JAPAN.com」の過去記事の中から今週末(9月21〜23日)に開催されるイベント情報やポップアップもまとめて紹介する。

【アート5選】

【開催中イベント】

シャネル銀座で新進写真家ヴァサンタ・ヨガナンタンが日本初個展 インド大叙事詩を現代に再解釈

「エルメス」の“ラジオ局”が原宿に出現 聴いて、見て、触れるメンズの世界観を体験してみた

「ブルガリ」と「ドン ペリニヨン」のマリアージュ ブルガリ銀座タワーの最上階に

「リモワ」がストリート誌と企画展 過去のアーカイブからアーティストの作品まで

「MCM」がサステナをテーマに展示会開催 未使用バッグをドレスにアップサイクル

松屋銀座が「美しくなるビアガーデン」開催 今年もクロスフィットトレーナーAYAとコラボ

【開催中ポップアップ】

ワールドがスタートアップブランドを集めたポップアップ型百貨店をオープン 全13ブランドを集結

仏老舗ニット「メゾン モンタギュ」が表参道ヒルズで初のポップアップショップをオープン

ビートたけしプロデュースの「キタノブルー」が初ポップアップストアをオープン

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高橋盾を父親に持つ現役高校3年生 「オフ‐ホワイト」でパリコレデビューした高橋ららに聞く

 モデルの高橋ららが、「オフ-ホワイトc/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH以下、オフ-ホワイト)」2020年春夏ウィメンズのランウエイに登場した。父親は「アンダーカバー(UNDERCOVER)」の高橋盾、母親はモデルの森下璃子というサラブレッドは、「東京や韓国、中国のショーでランウエイを歩いたことはあるけど、パリは初めて」(高橋らら)。ショー開始前のバックステージで話を聞いた。

 現在17歳の高橋は、現役の高校3年生。今季のパリ・ファッション・ウイークでは、既にショーが終わったものも含め、「ディオール(DIOR)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」「クロエ(CHLOE)」「ロエベ(LOEWE)」「セリーヌ(CELINE)」「サカイ(SACAI)」「ミュウミュウ(MIU MIU)」など、10ブランド前後に客として来場することになっている。「オフ‐ホワイト」も同様だったが、突然キャスティングディレクターから連絡があり、ショーへの参加が決まったのだという。

 パリコレデビューに緊張しているかと聞くと、「緊張はしていない。それよりも楽しみ」と頼もしい答え。ストリートファッションやヒップホップが好きなこともあり、「オフ-ホワイト」は元々好きなブランドだったという。ヴァージルと父親の高橋は親交があり、先日は両者のコラボレーション商品も発売された。「私はヴァージルには会ったことはないけど、インスタグラムのメッセージでやり取りはしていた」。やはり気になるのは両親の反応だが、「よかったね、と言われた。2人とも今は日本にいるから、ショーは見に来ない」。

 来年3月には高校を卒業予定だ。「卒業したらニューヨークに移住して、向こうで仕事をしていきたい。いろんな都市のショーにも出たい」と話す。ランウエイを歩いてみたいブランドは、「サンローラン(SAINT LAURENT)」や「モスキーノ(MOSCHINO)」などだという。「アンダーカバー」のショーはどう?と尋ねると、「それはちょっと違うと思う。私は親とは違う方向に行きたい(自分の力でやっていきたい)から、親のブランドのショーに出るのは違う」ときっぱり。しっかりと自分を持った17歳の今後に注目だ。

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片寄涼太がジャーナルスタンダードに来店 ファンの目の前で公開インタビュー

 ジャーナルスタンダードは、アーティストの片寄涼太によるプロジェクト「エクスプレス マイ マインド(EXPRESS MY MIND)」とコラボした6型の白Tコレクション“WHITE TEE CITY SERIES”の発売を記念し、9月19日にジャーナルスタンダード表参道店でローンチイベントを開催した。イベントには、表参道店でコラボTシャツを購入した人の中から抽選で30人を招待。片寄本人が来店し、「WWDジャパン」による公開インタビューを行った。終盤にはファンによる質疑応答へと発展し、終始貴重な時間となった。ショップのエントランスでは、コラボのコンセプトである「本質の新時代」を意味する“THE NEW ERA OF TRUE NATURE”を片寄本人がドローイングで描き、イベントは大盛況で幕を閉じた。公開インタビューの一部を紹介する。

WWD:「エクスプレス マイ マインド」は片寄さんの歌手活動とは別のコラボレーションプロジェクトですが、改めて、「エクスプレス マイ マインド」とはどういった活動なのかを教えてください。

片寄涼太(以下、片寄):コラボレーションをきっかけに、日本からカルチャーを発信するプロジェクトです。その延長に日本とアジアをつなげられたらいいなという願いも込められています。

WWD:世界の中でもアジアを活動の舞台にしている理由はなんでしょう?

片寄:もちろん、メインは日本での活動がベースですが、今、アジアは世界の中でも注目されている地域の一つですし、エネルギーがすごくある場所。僕自身、今や国境を越えてすぐに行ける時代が来ていると肌で感じた1年間だったので、そういった経験から、まずはアジアを中心に考えています。

WWD:今回の「ジャーナルスタンダード」とのコラボレーションに至った経緯を教えてください。

片寄:僕が3月に上海で行った「エクスプレス マイ マインド」というファンミーティングで、その時の映像やメモリーブック、そこで販売したアパレルなどに興味を持っていただいたのがきっかけです。それで、一緒に何かアジアに向けて発信できることをやろうとスタートしました。

WWD:6型のTシャツ“WHITE TEE SERIES”は、アジアの6都市「北京、上海、香港、台北、東京、大阪」をイメージしたと聞きました。片寄さんが得に好きなアジアの街だとか?

片寄:はい、全て自分が行ったことのある街です。僕は大阪出身なので大阪のことは当然分かるのですが、それぞれの街にそれぞれのカルチャーや歴史があって、本当にエネルギーが溢れている。そういった街が同士が、白いTシャツのプロジェクトを通してつながれるのが、素敵だなと思ったんです。

WWD:“WHITE TEE SERIES”について、それぞれのデザインポイントを教えてください。背面に大胆なスリットが入ったモデルやヘムのラウンドしたモデルなどが印象的ですね。

片寄:僕がこだわったのは、実は“ポケットや装飾を付けない”ということなんです。白Tのバリエーションなので、1型ぐらい胸ポケットがあってもいいと思われるかも知れませんが、そうじゃなくて、ディテールで存在感が出る6スタイルにしたいと思いました。全型素材が違うのもこだわりです。ウィメンズの“台北”(背中に大きなスリットが入ったモデル)も、あえてファッションとして男性にも着ていただきたいなと思います。

WWD:片寄さん自身は今日はジャケットに合わせていますが、今回のコラボTシャツをどんな風に着て欲しいですか?

片寄:白Tって何も描かれていないキャンバスなんですよ。なので、自由に着ていただきたいという思いもあります。前後逆に着るのもいいかも知れないし、もし絵が好きな方であれば、本当に絵を描くのでもいいですし。人それぞれの着こなしができるのも白Tの意義なのかなと思います。

WWD:ウィメンズはどんな女性をイメージしましたか?

片寄:白Tを着たことがない女性って、ほぼいないと思うんですよね。今回は、例えばシンプルな白Tにデニムみたいに、普遍的なスタイルにひと味加えられるTシャツをイメージしてデザインしました。

WWD:白と黒を基調としたビジュアルも印象的ですが、プロジェクトのクリエイティブディレクターに中国のKIKI ZHOU(周卉卉)さんを起用した理由は?

片寄:KIKIさんは今回だけじゃなく、3月に行った「エクスプレス マイ マインド」のファンミーティングでも関わってもらってもらいました。日本のことも分かっている中国の方なのですごく視野も広く、重要なプロジェクトパートナーです。

WWD:プロモーション動画とビジュアルは、白と黒の世界が印象的でした。制作時のエピソードを教えてください。

片寄:制作中に色を入れるというアイデアもあったのですが、最終的な白と黒のビジュアルを見て、個性もあって統一感もあるのが今回のプロジェクトにピッタリだなと思いました。実際にTシャツを着て撮影もして、白と黒の世界がシャープでいいなと。

WWD:今回のプロジェクトは台北の誠品書店で先行してローンチイベントを行いましたが、現地の雰囲気はどうでしたか?

片寄:すごくアットホームな雰囲気で、台北のファンもたくさん来てくださいました。自分のこれまでの活動を振り返ったりしながら、今回のプロジェクトの紹介もさせていただき、てとも温かい反応で楽しんでもらえました。ジャーナルスタンダードさんによるファッションショーも行われたのですが、歴史ある書店で、ファッション、アート、本など、いろんなものが融合された先鋭的なショーがとても刺激的でした。

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2020年春夏パリコレ4日目のハイライト 「クロエ」「Y/プロジェクト」「イザベル・マラン」など春夏トレンドが見えてきた

 パリコレ4日目は、「クロエ(CHLOE)」「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」などを速報する。トレンドはストリートからエレガンスへとシフトが進み、ジャケットがキーアイテムに。同時で、70年代のボヘミアンムードも浮上してきた。

クロエ(CHLOE)

DESIGNER/ナターシャ・ラムゼイ・レヴィ(Natacha Ramsay-Levi)

 カジュアルを得意とする「クロエ」がフォーマルへぐっとシフトした。メンズスーツの素材で仕立てたジャケットスタイルを核にコレクションを構成。ただしジャケットは、ノーカラーだったり、オーバーサイズとしたり、ウエストにギャザーを寄せたりと、堅苦しくならないようさまざまな工夫がこらされている。合わせるアイテムも、得意とするボヘミアン調のロングドレスやカットオフパンツなどジャケットがフォーマルになりすぎないアイデアが多彩だ。

Y/プロジェクト(Y/PROJECT)

DESIGNER/グレン・マーティンス(Glenn Martens)

 アレクサンドル3世橋ふもとの会場は、ショーを見たいと集まったキッズたちでいっぱい。会場外の橋の下にもびっしり人が並んで始まったショーは、ブランドらしい脱構築のコレクション。コンセプチュアルなデザインが持ち味のブランドではあるが、これまでに比べると、今季はやや考え方がシンプルになった印象だ。デニムジャケットやステンカラーコート、ボタンダウンシャツは、パターン変化によってドレープが生まれ、デコルテやウエストから肌がのぞく。地厚なサテンのテーラードジャケットは、フロントが二重になった作り。肩の落ちるボリュームシルエットのテーラードコートやセットアップはやや見慣れてしまったバランス感のようにも思うものの、レーステープをバイアスにはぎ合わせたドレスなどで今季のムードも盛り込んだ。

イザベル マラン(ISABEL MARANT)

DESIGNER/イザベル・マラン

 インビテーションは笛。ショーでも力強い笛の音に合わせ、モデルがテンポよく歩く。イリーナ・シェイク(Irina Shayk)やアンバー・ヴァレッタ(Amber Valletta)、エヴァ・ハーツィゴヴァ(Eva Herzigova)、ジジ・ハディッド(Gigi Hadid)ら有名モデルが行進する様子は圧巻。ボトムスは超ミニ丈に変化。中には脚の付け根ギリギリの丈のホットパンツも登場した。ナチュラルなメッシュニットに小花柄やタイダイなど「イザベル マラン」らしいボヘミアン的要素はそのまま、ウエストマークやミニ丈シルエットで力強さを見せる。

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ヴァージル不在の「オフ-ホワイト」2020年春夏はどうだった? キッズは引き続き熱狂で大混雑

 ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が健康上の理由で不在と、事前にアナウンスされていた「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH以下、オフ-ホワイト)」の2020年春夏ウィメンズ。トレンドがストリートからクラシックに回帰していることも重なって、「以前より盛り下がっているのでは?」といった前評判もあった。しかし、蓋を開けてみたら今季もエントランスはヴァージルファンのキッズでごった返し、招待状を持っていても入れないのではと危惧するほど。おかげで、ショーは50分押しでのスタートとなった。

 ショー前にバックステージを尋ねたが、こちらもヴァージル不在で意気消沈、といったムードとは無縁。このブランドにはおなじみなジジ・ハディッド(Gigi Hadid)、ベラ・ハディッド(Bella Hadid)姉妹がリラックスした様子でヘアメイクを受け、日本人モデルではヴァージルと親交の深い「アンダーカバー(UNDERCOVER)」高橋盾の娘、高橋ららの姿も。ショー開始直前はファーストルックを写真に収めようとするカメラマンたちが押せや押せやの状態で、エントランス同様、こちらも大混雑だった。

 ショー会場であるポンピドゥー・センターの地下には、丸く作られたランウエイの中心にイスが並ぶ。陸上競技場のように会場を作り込んだ19年春夏、自動車レースのチェッカーフラッグよろしく床が碁盤の目状になっていた19-20年秋冬に比べると、かなりシンプルで正統派な作り。そこに登場したモデルは、白いシャツドレスやノットやラッフルをポイントにしたトップスにドレスと、こちらも比較的シンプルだ。テーマは“メテオ シャワー(流星群)”。ランニングトップスやパンツは、隕石が落ちた穴のような丸いカットアウトから肌がのぞくが、ブーツやハンドバッグも丸く穴が開いていて、それはどことなくチーズの断面のよう。

 マクラメ編みや、ブランドアイコンのクロス印などのキラキラアクセサリーが今季らしさを添える。メイクもラメやグロスでキラキラにしているのがポイント。ブランドらしさを象徴する、パラシュートクロスを使ったスポーティー×エレガンスなドレスは今季も健在だ。ただ、ルック数が37といつもより少ないこともあってか、迫力や新鮮さはこれまでよりもやや薄まった印象。しっかり休養を取って、元気になったヴァージルが、またいつものようにパワフルなショーを見せてくれることを願うばかりだ。

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「エヌドット」の天然由来成分100%のドライシャンプーが新たなトレンドに

頭皮にスプレーするだけで
清浄効果+爽快感

 ナプラの人気ブランド「エヌドット(N.)」から9月20日、ドライシャンプー「N. SHEA(シア) ドライシャンプー」が登場した。ドライシャンプーとは、髪や頭皮に使用すると清浄効果を得られる、いわば“洗い流さないシャンプー”のこと。「SHEA ドライシャンプー」はミストタイプで、頭皮にシュッとスプレーするだけで清浄効果と爽快感を得られるほか、汗や皮脂によるニオイやベタつきを抑えて、すっきりとした清涼感+保湿効果で頭皮環境を清潔に整える。

肌に優しい
植物由来成分100%

 キー成分は、摘みたてのレモングラスの葉を真空にし、低温のまま成分を壊さずに抽出した植物自体に含まれる水“レモングラス生体水”。そのほか、蒸れた頭皮やほてった肌にすっきりとした清涼感をもたらすペパーミントオイル、紫外線ダメージから皮膚を保護するシアバターなど、5種の植物由来成分のみで作られているため、安心して頭皮につけられることも大きな魅力。

汗でベタついた髪が
ふんわりして清涼感を感じる

 頭皮にスプレーするとミントの清涼感を感じて気持ちいい。スプレーしてからドライヤーで乾かすと、頭頂の髪がふんわりと立ち上がるので、朝のセットや夕方のお直しにも使える。日差しを浴びたとき、火照った頭皮がミントの清涼感でクールダウンできるし、体にも使えるのでアウトドアの必需品になりそう。朝起きたときにも最適で、寝汗をかいた頭皮にスプレーして乾かすと、汗でベタついた髪がふんわりとする。前髪にスプレーするときは、おでこにセット剤がついて肌荒れの原因になりがちだけど、これは天然由来成分100%なので顔や手にかかっても気にならないのも嬉しい。

ドライシャンプーの
知名度アップの兆し

 植物由来成分100%であることも大きな特徴。摘みたてのレモングラスから得られ、肌(頭皮)荒れを防いで潤いを与えるレモングラス生体水のほか、ペパーミントオイル、シアバターなど5種の成分で作られている。ドライシャンプーは、美容業界人の間での認知度は高いが、一般消費者の間ではまだまだ。これまで数々のトレンドを生み出してきた「エヌドット」の参入で、知名度の飛躍的アップが期待される。

問い合わせ先
ナプラ
0120-189-720

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韓国生まれの「レジーナ ピョウ」は等身大の視点で女性の支持を集める リアルとアートを行き来する2020年春夏コレクション

 コンセプチュアルな作品を生み出すデザイナーが多いロンドンで、「レジーナ ピョウ(REJINA PYO)」は現代女性に寄り添ったリアルクローズを打ち出す女性デザイナーとして独自の立ち位置を築き始めている。デザイナーのレジーナ・ピョウ(Rejina Pyo)は、韓国・ソウル出身。セント・マーチン美術大学MA(CENTRAL SAINT MARTINS)の卒業作品が高評価を得て、「ロクサンダ(ROKSANDA)」のロクサンダ・イリンチック(Roksanda Ilincic)のアシスタントなどでキャリアを積んだ後、2014年に自身のブランドをスタートさせた。色気と力強さを併せ持つ着心地のよさを追求した衣服は、働く女性であり妻であり、母でもある彼女自身の生活から生まれたものだ。多様なライフスタイルを過ごす世界中の女性から支持を集め、現在は世界で約130アカウントと取引している。

94歳の芸術家の創作意欲に刺激受ける

 ピョウは、シーズンごとに異なる芸術家の作品から着想を得る。今季は画家兼詩人のエテル・アドナン(Etel Adnan)の絵画と詩がインスピレーション源となった。ショーの招待状にはアドナンの詩の一節である「死に際だと気づくとき、未来のすさまじさを実感する。決してたどることのない時間にほれてしまうのだ」と記されていた。アドナンは94歳になる今もなお現役で作品を作り続けており、その姿勢にピョウは自身を投影させて想像を膨らませたようだ。ショー後のバックステージで「“人生の終わり”を感じたとき、究極の自由を手にする。ほかのことは一切何も考えず、自分自身を表現する力を手に入れる。そんなアドナンの姿勢と作品に感銘を受け、“自分らしく人生を楽しむ大切さ”がコレクションの軸になった」と説明した。

 会場に選んだのはホルボーン図書館。ファーストルックを飾ったのはイギリス出身のモデルで2児の母でもある36歳のジャケッタ・ウィラー(Jacquetta Wheeler)で、スクエアネックのブラウスとショートパンツのリネン素材のセットアップで登場した。アドナンの風景画に見られるさまざまな色味のグリーンを軸に、ニュートラルカラーや鮮やかなチェック柄のスーツ、ハワイアンプリントのシャツなどがランウエイを彩った。オーガニックコットンのシャツドレスやリサイクルポリエステルの透け感のあるドレス、シルクのスリップドレスなど素材もアイテムもバリエーション豊かだ。陶芸家のルーシー・リー(Lucie Rie)の作品をイメージして、スリーブには特徴的な曲線を加えて膨らみを持たせた。初となるユニセックスコレクションは、サマーニット素材のポロシャツやウオッシュドデニムのジーンズ、セットアップなどが登場した。オリジナルで製作しているウッド調のボタンは不ぞろいのさまざまな形状で、スカートの裾やキャミソールトップスのストラップにあしらわれた。ツバが大きなハットなどのアクセサリーやビキニスタイルのルックなど、全体を通して南国の風をまとっていた。

新たな提案や驚きを与えるまでには至らず

 「私はファンタジーを与えるデザイナーではない。人々の日常にこそ関心があり、彼らの人生とワードローブに私のコレクションが加わることを望んでいる」と語るピョウ。その願い通り、フロントローに座るインフルエンサーが今すぐにでも着用できそうな、フェミニニティーがほどよく香り立つ日常着であることは間違いない。しかし今シーズンのコレクションは、彼女の素晴らしい想像力とテーマ性が十分に発揮されておらず、新たな提案や驚きを与えるまでには至らなかった。会場に選んだ図書館と南国風のムードもリンクしておらず、インタラクティブなショー演出には達していなかったため、次シーズン以降に期待したいというのが率直な感想である。たとえ今回のコレクションが“人生の終わり”を想像して取り組んだものだとしても、現実にはそうはならないだろうから。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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小島健輔リポート 「フォーエバー21」敗北要因は情報の閉鎖性だった

 ファッションビジネスのコンサルタントとして業界をリードする小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する不定期連載をスタート。2回目は、今週の大きな話題になった「フォーエバー21」の日本撤退についてどこよりも詳細に報告する。

 3月末に台湾市場、4月末に中国市場から撤退して「次は日本か」と出店している商業施設を身構えさせた「フォーエバー21(FOREVER21)」。8月に入って米国で経営破綻の観測が広がり、連邦破産法申請(チャプター11)のXデーはいつかと疑心暗鬼になる中、9月25日朝に突然フォーエバー21ジャパンの公式サイトに10月末をもって日本国内全14店舗とオンラインサイトを閉鎖するという「日本事業撤退のお知らせ」が掲示された。

 ファストファッションがブームとなった頃は人気が沸騰して行列ができるほどだったのに、「フォーエバー21」はなぜ行き詰まったのだろうか。

日本事業撤退の経緯

 2009年4月末に上陸した当時は行列ができた「フォーエバー21」も多店舗化とともに人気が拡散。売り上げのピークは13〜14年頃で、以降は頭打ちになり、15年以降は店舗を増やしても売り上げが伸びず、16年以降は不振店の撤退と売り上げ減少の縮小スパイラルに陥っていた。

 16年初めには24店を数えたが、同年8月には仙台泉プレミアム・アウトレット(PO)店とあみPO店を閉店。17年に入って1月にららぽーとTOKYO-BAY店とダイバーシティ東京プラザ店、5月にイオンモール和歌山店と同各務原店、10月には日本1号店の原宿旗艦店も閉めている。

 18年3月には土岐PO店、19年に入っては4月にイオンモール名古屋茶屋店、7月6日には名古屋栄ゼロゲート店も閉店。撤退発表時には路面5店(札幌大通り、新宿、渋谷、福岡天神、大阪道頓堀)、イオンモール3店(京都、広島府中、沖縄ライカム)、仙台フォーラス、三ノ宮オーパ、ららぽーと2店(横浜、新三郷)、コクーンシティ、ルクアイーレの14店まで減っていた。

 「フォーエバー21」は非上場で日本国内売り上げも公表しておらず、H&Mジャパンの販売効率から無理やり類推すれば、売り上げのピークは14年1月期の220億円強で、19年1月期は140億円程度まで減少したと見る。販売効率の低下と閉店損失で大幅赤字に陥っていたはずで、損失を最少に抑えられる撤退タイミングを探っているうちに本社の資金繰りが苦しくなり、恐らくは融資するファンドの意向もあって日本事業の撤退を決断したと思われる。

米国本社の業績も悪化していた

 米フォーエバー21は非上場で決算はおろか売り上げも公表していないが、米国の調査会社が推計した数字によれば、02年(03年1月期、以下同)の3.15億ドルから急成長して06年には10.66億ドルと10億ドルの大台に乗せ、14年には40億ドルまで拡大して米国アパレルチェーン売り上げ4位まで上り詰めている。15年には44億ドルまで伸ばしたものの販売効率の低下で在庫回転が悪化して資金繰りが苦しくなり、18年以降はアジアだけでなく英国など世界各地で閉店に追い込まれて20〜25%も売り上げを落としたとされる。

 それでも米国アパレルチェーンでは首位のギャップ(GAP)、2位のLブランズ(L BRANDS)、3位のアセナリテールグループ(ASCENA RETAIL GROUP)、4位のアメリカンイーグル・アウトフィッターズ(AMERICAN EAGLE OUTFITTERS)、5位のアーバン・アウトフィッターズ(URBAN OUTFITTERS)、6位のアバークロンビー&フィッチ(ABERCROMBIE & FITCH)に次ぐ7位に位置する。米国内売り上げはH&M(28.5億ドルで10位)には届かないにしてもインディテックス(9.8億ドルで15位)は凌駕するから、勢いが衰えたとは言え米国内ではH&Mとファストファッションの双璧をなしている。

 米国ではH&Mも16年の32億ドルをピークに売り上げを落としているから、わが国のみならず米国でもファストファッションは下火なのだろう。代わって08年以降、ファストファッションに圧されて業績が悪化していたローカルチェーンやローカルブランドが業績を復活させている。日本では不調で青山商事傘下のイーグルリテイリングが手を引いた「アメリカンイーグル・アウトフィッターズ」にしても、本国では増収増益を続けている。

ファストファッション凋落の要因

 ファストファッションに火がついたのは08年で、営業利益率や在庫回転など経営効率は10年をピークに低下に転じ、15年以降は販売効率も低下するチェーンが多くなった。

 ファストファッションとひとくくりに言っても、ベーシック商品を継続販売する「ユニクロ(UNIQLO)」は在庫回転も遅く(前期で2.17回転)“スローファッション”というべきだし、「ザラ(ZARA)」は在庫回転こそグローバルSPAとしては突出して速い(前期で4.20回転)が、商品開発の手法はアパレルメーカー並みで完成度が高く、旬のトレンドを追って手早く開発した商品を“使い捨て”感覚の低価格で量販するという“ファストファッション”のイメージとは距離がある。世間でいう “ファストファッション”を代表するのは「H&M」と「フォーエバー21」と見るべきだろう。

 “ファストファッション”には「使い捨て感覚の低価格トレンド衣料」という意味に加えて「グローバル展開のSPAチェーン」という捉え方があり、ファストファッション凋落の要因はこの両面から考察する必要がある。

 「使い捨て感覚の低価格トレンド衣料」という面では、消費者のおしゃれ疲れ・おしゃれ離れという現実が大きい。少子高齢化の社会負担増で生活と生計に追われ、衣生活が機能本位になっていく今日の消費者にとってトレンドを追うのは面倒で、消費支出に占める衣料履物の比率は携帯電話などの通信料や化粧品・美容サービスに支出が流れて3.64%まで落ちている(19年上半期、1990年は7.38%だった)。着たきりTPOレスなアスレジャーのまん延やリユース・リサイクルの拡大、リセールバリュー重視も、ファストファッションには逆風となったのではないか。

 「グローバル展開のSPAチェーン」という面ではブレグジット(英国のEU離脱問題)やトランプ大統領就任以来の分断とローカル回帰の社会潮流が逆風となった。もとより体形や生活慣習に左右されるアパレルはローカル特性が強く、グローバル化に流れた08〜15年のサイクルはともかく、ローカル回帰に転じた16年以降は米国でも日本でもグローバルブランドの人気が落ちてローカルブランドが復活している。米国ではアメカジSPAや「リーバイス(LIVE‘S)」が復活し、わが国でも109ブランドが復調しているではないか。

 グローバルSPAでも「H&M」はアングロサクソン、「ザラ」はラテン、「ユニクロ」はモンゴロイドに立脚しており、異民族市場ではフィットはもちろんテイストやシーズン展開まで組み替えないと定着が難しい。人種のるつぼと言われる米国市場で成長した「ギャップ」はエスニックマーケティングに長けており、日本市場でもローカルフィット商品を投入しているし、「ユニクロ」もイスラム圏では割り切ったローカル対応をしているが、欧州系SPAはローカル対応に消極的だ。

 ちなみに、欧米高級ブランドも日本市場で売り上げを伸ばすにはローカルフィット対応が必須だが、相応の売り上げ規模がないと生産ロットに見合わない。売り上げが伸び悩んで撤退したり、代理店がころころ変わったりするブランドは、その決断ができないのだろう。

「フォーエバー21」固有の内部要因

 ファストファッション全般の逆風もともかく、「フォーエバー21」には固有の難点が指摘される。それは(1)SPAとしての開発・調達体制と海外店舗の運営体制、(2)経営状態のディスクロージャーだ。

 SPAといっても、コレクションブランド並みに素材から社内開発してIoTな生産管理で工賃払い調達し、物流も全て自社でコントロールする「ザラ」(3つの手法を使い分けている)から、工場に匠を送り込んで生産管理しても物流は外部に委託して製品買い調達にとどまる「ユニクロ」、商品企画はディレクション止まりで納入業者企画の製品買い調達が実態という「フォーエバー21」まで、その開発・調達体制はさまざまだ。

 ファストな鮮度と消化回転を命とする“ファストファッション”は「フォーエバー21」のような手離れのよい“バイイングSPA”であるべきで、実際、「セシルマクビー(CECIL MCBEE)」やかつてのポイント(現アダストリア)もローカルチェーン規模だった頃は二桁回転の高消化率を謳歌していたが、規模の拡大ともに消化回転が低下して開発・調達体制の変革を余儀なくされた。

 「フォーエバー21」も規模の拡大に海外展開も加わって消化回転が劣化していったが、「ザラ」のように開発・生産プロセスに踏み込むことはなく、売り上げより在庫が積み上がって資金繰りが苦しくなり、経営が行き詰まったと見られる。ファストファッションといいながらロットが過大で調達リードタイムが長く、「ユニクロ」並みに消費地倉庫に在庫を積み上げる「ダム型サプライ」が災いした「H&M」は2.79回転まで落ちているから、「フォーエバー21」も下手に“バイイングSPA”から踏み出しても経営が好転したとは思えない。

 加えて、フィットもシーズン展開も雇用ルールも異なる“アウェイ”な海外市場に手を広げ、ローカル主導のディストリビューション体制(配分・補給・店間移動・売価変更)も組めず、消化回転が落ちて運営経費が肥大したことが致命傷となったのではないか。

 トレンド鮮度が命のファストファッションは「ローカル特化」「リードタイムの短い小ロット調達」「ローカル主導の素早い補給と売り切り消化」のどれが欠けても行き詰まるが、「フォーエバー21」はその全てを外してしまった。

隠す会社は信用不安に追い詰められる

 フォーエバー21は非上場のファミリーカンパニーで財務諸表はおろか売り上げや利益も一切公開しておらず、わが国でも官報への決算公告も行なっていない。そんな非公開体質は好調時には問題とならなくても、ひとたび経営不振に陥れば不安が不安を呼んで資金調達にも支障をきたす。

 米国の連邦破産法第11条はわが国の民事再生法にあたり、債務整理と事業再生を法的に執行するもので、再生計画が整っていればつなぎ融資も受けられるし、スポンサーが現れれば再生へ、ダメなら事業を清算することになる。フォーエバー21が十分なつなぎ融資を確保できないまま連邦破産法を申請する事態となれば、不採算の海外店舗は一番に切り捨てられるが、今回は採算が悪化している海外事業をまず撤収することで本体の資金繰りを改善し、つなぎ融資を引き出す作戦と見る。

 フォーエバー21が株式を公開して経営状態を誠実に開示していれば、経営が苦しくなっても相応の貸し手が現れ、厳しいリストラは要求されるにしても採算部門の営業は継続できるはずだが、長年の非公開体質が災いしてつなぎ融資の確保にも苦慮し、不採算の海外事業から切り捨てることになった。米国内でも不採算店舗を切り捨てて採算のよい店舗だけでオフバランスをとることになるが、非公開体質でなければより多くの店舗と雇用が残されるはずだ。

 経営状態に限らず、会社は誠実に情報を公開するほど世間の信頼を得られる。融資関係のみならず取引先や従業員、そして顧客や将来の従業員も目を開き、耳を澄ませている。SNS社会の今日、隠す会社は信頼を得られないばかりか、痛くもない腹まで探られて憶測を拡散されかねない。フォーエバー21の苦境から一番に学ぶべきは、「開かれた会社」であるべきだということだろう。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

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Vインフルエンサーの活躍の場はリアルに ITのプロ「WWDジャパン」最新号につぶやく

 大手通信会社に入社後、国内外でITソリューションを提供するビジネスマンが、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。最先端のテクノロジーから企業と、その利用者が必要とするものについて考え続けたITのプロ、CKRが未来的視点からニュースにつぶやきを添えます。

今日のニュース:P.6「Vインフルエンサーが続々登場するワケ」

読み解きポイント:Vインフルエンサーにとってインスタは過渡期。本命はリアル空間に登場すること。

ニュースのポイント

 インスタグラムなどのSNS上で、本物の人間のように見えるバーチャルインフルエンサーが続々と登場。生身の人間を撮影した画像にCGで作成した顔に付け替えることで、時間、コストのかからない作り方を実現。各キャラクターの最初のコンセプトメイキングと戦略が成功の大きな分岐点になる。今後は、AI(人工知能)やAR(拡張現実)のテクノロジーと融合して新しい地平が開けることに期待。

CKRはこう読む!

 「50万円~300万円」。プロ機材で生身の人間を3D撮影し、モーションキャプチャーという実際の動きも付け、フルCGキャラクターを1体、製作する費用(目安)です。編集をどこまで加えるか、質感にどこまでこだわるかなどによって、製作費用は大きく変わってきます。

 インスタフォロワー数160万で世界最強のVインフルエンサーと言われる「Miquela(ミケーラ・ソーサ)」は9月19日、Youtubeで「Money」というミュージックビデオを発表しました。昨年10月にBaauer & Miquelaとして公開した「Hate Me」の中では、動きの少ないCGキャラクターだったため、映像の中で“浮いている”感じがありましたが、今回は歌って踊りながら、うまく溶け込んでいます。テクノロジーの進化とともに、キャラクターが自然な表情で活躍するシーンが増えています。

 今回は、なぜフルCGの写実的なキャラクターが注目を浴びるようになったのか、今後、どのような活躍が期待できるのかについて考察してみたいと思います。

 CGキャラクターを製作、プロデュースする側のメリットは、テクノロジーが民主化され製作費用が低減したことに加え、記事にもあるように世界観を完璧に作ることができ、人をマネージメントする難しさから解放される点が挙げられます。キャラクターとして面白いかどうかは別として、生身の人間のように、不祥事も起こさなければ老化もしません。

 また、CDやDVDといったパッケージ販売が主流だった時代は、露出メディアも限られていたので、一度コンテンツを製作すれば、アーティスト自身はあまり稼働しなくても稼ぐことができました。今はアーティスト自身が、ライブ、SNS、Youtubeでプロモーションなどを行い、消費行動を刺激するため、多くの時間を費やすことが求められています。そのような背景もあり、生身の人間より取り扱いが簡単で、時間と場所の制約がないバーチャルキャラクターに注目が集まるのは当然です。

 現在、Vインフルエンサーはスマホ内のインスタやYoutubeなど限られたメディアの中で活躍していますが、今後は、リアル空間をメディアに活躍することも考えられます。ギタリストの布袋寅泰は、漫画「北斗の拳」のキャラクターであるケンシロウ、ラオウとバンドを組んで、AR技術を活用し、リアルなギターピックの上でCGキャラクターとして演奏し始めています。

 アニメのキャラクターも、リアルな人間も一緒に溶け込む世界。インスタやYoutubeといったアプリではなく、ギターのピックやドリンクコースターといったリアルなモノがメディアになる世界が、すでに現実のものとなっています。今後はメガネ型ディスプレーなどスマホに代わるデバイスの登場により、手軽に現実空間と重畳できる世界が広がります。Vインフルエンサーを活用したビジネスシーンは、ますます広がるのではないでしょうか。

CKR Kondo : 大手通信会社に入社後、暗号技術/ICカードを活用した認証決済システムの開発に従事。その後、欧州/中東外資系企業向けITソリューションの提供、シンガポール外資系企業での事業開発を経験。企業とその先の利用者が必要とするもの、快適になるものを見極める経験を積み、ウェアラブルデバイスやFree WiFiを活用したサービスインキュベーションを推進。現在は、米国、欧州、アジア太平洋地域にまたがる、新たなサイバーセキュリティサービスの開発を推進中

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編集長はパリコレで何した?Vol.2  「ディオール」と「マリーン セル」の立ち向かう勇気、「サンローラン」のブレない王道パリ

 こんにちは。「WWDジャパン」編集長の向(むこう)千鶴です。パリ2日目は「ディオール(DIOR)」「マリーン セル(MARINE SERRE)」などからサステイナブルなメッセージがドカン!と伝わってきました。そしてエッフェル塔前の「サンローラン(SAINT LAURENT)」の王道ファッションショーはやはり突き抜けていて最高です。

9月24日(火)10:30
人気者「マリーン セル」が
朝から痛烈メッセージ

 この日は一日中、「マリーン セル」の三日月プリントを着ている人を見かけて人気ぶりがうかがえました。モデルのemmaさん、元2NE1のダラさんも来場。似合っています。会場では黒のスタッフコートが気になりました。「あれが欲しい」という声、多そうです。

 自然を生かした演出の全貌を知りたくて、ライブ配信を片手にショーを見たのですが、映画のワンシーンみたいですね~。地球の環境破壊が進み地下で生き延びた種族の物語だとかで、デザイナーの妄想力とそれを具現化する力が半端ない!ショーを見て頭に浮かんだのは、「エルメス(HERMES)」+「プラダ(PRADA)」÷2という計算式です。有名ブランドの真似、という意味では決してなく、「エルメス」から受け取る自然を大切にする大らかなメッセージと、「プラダ」が得意とするユーティリティーの両方をそこに見たからです。まだ若いのに、スケールが大きいデザイナーです。

12:30
「ビクトリア トマス」を出たら
そこはセーヌ川

 パリと言えばエッフェル塔とセーヌ川、エッフェル塔近くのセーヌ川と言えばアレクサンドル3世橋。橋脚を立てることなくセーヌをまたぐアーチ状の美しい橋です。「ビクトリア トマス(VICTORIA/TOMAS)」のショーは、その橋の真下の会場で開かれました。カフェを連想するギンガムチェックのワンピースや、パリの街で見かける鉄柵の装飾風刺しゅうなど、ステレオタイプなパリにほんのり風刺を効かせています。

14:30
「ディオール」が地球環境問題に
アクション。その心は

 「ディオール」のマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)がまたブラボー!なショーを見せてくれました。フェミニズムのメッセージに続いて今回は、環境問題へのアクションをうながすメッセージを発信。ロンシャン競馬場内に立てたテント内に森を再現し、木には「♯PlantingForTheFuture」のタグがぶらさがっていました。この演出を手がけたのは園地栽培に取り組むアーティスト集団、アトリエ コロコ。木はショーの後には移設し街づくりに生かされるそうです。そのハッシュタグとともに写真に収まっていた来場者をはじめ、多くの人がファッションと環境の関係を本気で考えるきっかけになったのではないでしょうか。

 こういうメッセージを出すのって、簡単ではありません。なぜならそこには批判的な意見も寄せられがちだから。影響力が大きい立場であればあるほど勇気がいります。「ラグジュアリービジネスをしながら、口だけ何言っちゃてるの」的な批判です。そのことについてバックステージでマリア・グラツィアに聞くと「批判は怖いわ、でも未来はアクションすることからしか生まれない、だから行動する」ときっぱり。彼女は“この人と組みたい”と思ったら、間に代理人を入れたりせず自分自身でアプローチし、直接ひざを詰めて話します。その姿勢故、これだけの大きなプロジェクトを確信を持ちながら次々実行できるのだと思います。マリア・グラツィア、あなたはやっぱりエラい!

17:00
「アンリアレイジ」が世界共通の
知的な(笑)を引き出す

 「アンリアレイジ(ANREALAGE)」は、先シーズンに引き続き今季も“言葉での説明はほぼ不要”な、わかりやすい演出のショーを行いました。3人が同時に歩いてくるモデルの服は、同じアイテムだけど、微妙に形が違います。そこから“最近は写真の影響力が大きいよね、でも写真に納まる服ってカメラのアングルによって形の見え方異なるよね(笑)”というデザイナーの視点を伝えています。そして観客はショーを見て“確かに(笑)”と思います。ポイントは最後の(笑)の存在であり、風刺が効いているから、その場にいるいろいろな国から来た人たちに共通の(笑)が生まれています。

 デザイナーの森永邦彦さんがいつも投げかけてくるのは、セクシーとか、リラックスといった人間の欲望を刺激する服ではなく、“視点を変えてみる”という知的好奇心をそそる服です。名づけるなら“知的カワイイ”服。そのスタンスはずっと変わらないけれど、パリコレで発表するようになってから伝え方がどんどん複雑になっていて、正直難解すぎると思うこともありました。だから知的であると同時にわかりやすい内容にシフトした先シーズンと今シーズンに私は一票。より多くの人に伝えることを目指すのであれば、わかりやすい、って大切なことだと思います。

18:00
平等精神が素晴らしい「コーシェ」

 「コーシェ(KOCHE)」の会場はとにかくでっかい!なぜなら大勢を招待し、全員がフロントローだから。その平等の精神は徹底しています。レースや羽といったオートクチュールの素材と技法を、Tシャツやポロシャツなどのカジュアルアイテムと融合するスタイルはずっと変わらず。変わらないけれど、多くの人が“見たい”と足を運ぶのは、このショーで得られる“平等”なハピネスを体感したいからなんじゃないかな

20:20
エッフェル塔と「サンローラン」は
2つでひとつ

 「サンローラン(SAINT LAURENT)」にとってエッフェル塔は、いなくてはならないパートナーみたいなものではないでしょうか。エッフェル塔は毎時0分になるとダイヤモンドのごとくキラキラと光るのですが、最近の「サンローラン」は20時のキラキラとともにショーをスタートします。加えて今回は約400個の照明が夜空に向かって光を放ち、その間をモデルがウォーキングする豪快な演出で、マラケシュとLAの2つのカルチャーを感じるコレクションを盛り上げました。

 会場は、オープンな作りのため、観光客が周囲に集まりフェス的な様相に。さらにゲストの中にBLACKPINKのロゼの姿があったことから熱狂的なファンたちが「ロゼ~」を連呼して周囲は騒然としていました。女子に愛される女子、ロゼはダンスで鍛えた体に「サンローラン」のマイクロミニスカートが似合っていましたよ。

番外
パリの硬水と「ウカ」の
シャンプーで戦う

 パリは硬水のため、髪がごわごわになり、どうしたってテンションが下がります。という訳でシャンプーは大切。「ウカ(UKA)」のシャンプーとコンディショナーに助けられております。これとヘアアイロンがあれば大丈夫。2週間の海外出張を乗り切れます!

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「ファッションに対する固定概念を壊して、オリジナリティーを創っていきたい」 by 川久保玲

川久保玲「COMME DES GARCONS」デザイナー

 ファッションに対する固定概念を壊して、オリジナリティーを創っていきたい。(Vol.97 1982年11月22日)

The WORDS
ファッション業界人の残した名言を日々の糧に。デザイナーやバイヤー、社長、編集長らの心に響く言葉をお届け。

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読者が注目した今週の新作 「エンダースキーマ」 × 「ドクターマーチン」など(9月27日〜10月3日)

 「WWD JAPAN.com」が今週発売の新商品を「ファッション部門」「ビューティ部門」「スニーカー部門」別にまとめてお届け。「ファッション部門」と「ビューティ部門」は読者の注目度(PV)から1〜3位までをランキング形式で紹介。今週の「ファッション部門」では「エンダースキーマ(HENDER SCHEME)」と「ドクターマーチン(DR. MARTENS)」の初コラボが最も注目され、「ビューティ部門」では「ウズ バイ フローフシ(UZU BY FLOWFUSHI)」の新リップスティックが1位に輝いた。

【ファッション部門】


【ビューティ部門】


【スニーカー部門】

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「ルイ・ヴィトン」が元オールブラックスのスター選手ダン・カーターと初のラグビーボールを製作 ボールに込めた思いを聞く

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」はこのほど、元オールブラックス(ラグビー・ニュージーランド代表の愛称)のダン・カーター(Dan Carter)とコラボレーションし、ブランド初となるラグビーボールを日本限定で発売した。“DC”ことダン・カーターは2003年に初めてオールブラックスに選出されると、15年までの12年間に司令塔として112試合に出場。チームのラグビーワールドカップ史上初の連覇(11、15年)に貢献し、個人としては3度の年間最優秀選手賞受賞に加えて世界歴代1位の1598得点の記録を持つなど、スター選手の1人として知られている。発売に合わせて、カーター本人にボールに込めた思いや、メンズ アーティスティック ディレクターのヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)のクリエイションについて話を聞いた。

WWD:なぜこのカラーに?

カーター:何色にするか悩んだが、やはり私がオールブラックスの一員としてブラックを長年身にまとっていたのが大きい。加えて日本のマーケットではブラックが人気のカラーだと聞いた。モノグラム柄にしたのは、このボールで「ルイ・ヴィトン」の歴史に敬意を表したかったからだ。

WWD:現在のラグビーボールは縫い目がないタイプが主流ですが、今回のボールには縫い目がありますね。

カーター:昔のボールは全て手縫いで、私が初めてラグビーボールに触れた当時(5歳)もまだ縫い目があった。こうした過去の記憶とラグビーの歴史への敬意をボールに込めることはこのプロジェクトの当初から決めていて、デザイン的に現代的でありながらビンテージの風合いを漂わせるために昔ながらの革ひもの縫い目をあしらうことにした。

WWD:実際に持ってみると試合球よりも少し重く感じましたが。

カーター:できる限り本物に忠実に再現しようとしたが、キャンバスとレザーという素材の関係で少し重くなっているかもしれない。

WWD:他にこだわりは?

カーター:ラグビーボールとして一目で認識されるために、アメリカンフットボールのように細長すぎず、フットボールのように丸すぎないというシェイプに特にこだわっている。

WWD:112個の数量限定にした理由は?

カーター:オールブラックスとして出場した試合数が“112”で、この数字が私にとって非常に特別だからだ。ただ、友人や家族がほしいと言っていて、今はもう少し作ればよかったと後悔している(笑)。

WWD:実際にこのボールを屋外で使用しましたか?

カーター:まだ実際に使用していないが、ボールを手に持つとどうしてもキックしたいという衝動に駆られるから、1度くらい思い切りキックしてから家に飾ろうと思っている(笑)。ただ家にいる3人の子どもたちはこれで遊びたがるだろうし、飼っている犬がボールをダメにしてしまうかもしれないので保管には十分に気をつけるつもりだ。

「国の代表なのだから自らの外見にもっと関心を払うべきだ」

WWD:今回のメインカラーでもあるブラックはあなたにとって重要な色だと思いますが、どんな意味を持っていますか?

カーター:私が思うブラックは、「オールブラックスのジャージーの色がたまたまブラックだった」というだけでなく、先人たちが汗や血を流しながら引き継いできたレガシーが反映されていると思っている。心理学的にもブラックは強さを与えると聞いたことがあるし、特別なエネルギーを与えてくれる色に違いない。

WWD:オールブラックスといえば試合前に行われるハカ(マオリ族の民族舞踊)が有名ですね。

カーター:「祖先や霊を呼び起こしてこれから戦いに挑むーーその挑戦に対して力を貸してほしい」という意味があり、本当にエネルギッシュでエモーションにあふれた大切な儀式だ。ただ、力を入れすぎてゲームが始まったときに集中力やエネルギーが切れることがあったため、10年ほど前からハカをしたあとに少し時間をとるようになっている。

WWD:ユニホームと同じく「着る」という意味合いで、ファッションがお好きと伺いしました。

カーター:人口700人にも満たない小さな農村に生まれ、ご存知の通りラグビー選手というのはスポーツウエアばかり着ているから、ファッションにはずっと疎かった。ただ、20歳ごろからオールブラックスの一員としてパリやローマをはじめ世界中を回るようになり、行く先々でさまざまなファッションや人を目にする機会が増えてから好きになっていった。

NBAの選手はスタジアム入りするときにファッションで自己表現し、フランス代表のフットボール選手は写真を撮られることが当然だと思っているから着るものに気を使っている。同じように、オールブラックスも昔はスポーツウエアでスタジアムを出入りしていたが、ある時「国の代表として試合に挑むのだから、自らの外見にもっと関心を払うべきだ」という意見があがった。それから世間の目に触れるのがわずか数分でもスーツやきちんとした格好で移動するようになり、気を使い始めてからはチーム内の意識も自然と引き締まり、マインドが変わった。

WWD:プライベートで洋服を選ぶときの基準は?スポーツ選手は体格的に着ることができるものが限られるとよく耳にしますが……。

カーター:その通りで、美しいジャケットを見かけても、欲しいジーンズがあっても着ることができない。私だけでなく、多くのラグビー選手にとって自分のサイズに合ったものがないというのは大きな悩みの1つだ。私の場合は直してもらうこともあるが、オーダーメードが多い。日本のファッションブランドでもほしいものがたくさんあるのだが、日本人の男性は私よりも格段にスリムなため合うサイズがなく、残念な気持ちになる。

WWD:最近購入したお気に入りのアイテムは?

カーター:2004年の21歳のときに初めて「ルイ・ヴィトン」のパリの店舗に入ったら、まだ私が若かったのもあって入口に立っていた警備の人が中までついてきた。それが悔しくて、怪しい人物じゃないことを証明するためにジャケットを購入したものの、すぐにホテルに戻って「なんでこんな高いものを買ってしまったんだ、俺はバカだ!」と後悔した(笑)。しかしそのジャケットは今でもワードローブにあるし、着ることができる。先日、同じ店舗に行きテーラードのスーツを買った。それが最近のお気に入りだ。その時は警備の人はついてこなかったし、中のスタッフも友好的だったよ(笑)。

WWD:「ルイ・ヴィトン」のメンズを手掛けるヴァージル・アブローのクリエイションはどうでしょうか。

カーター:ブランドの歴史の中で彼らしいものを見つけて解釈し、それを展開することでブランドの新しい分野を切り開き、若い人たちに対しても魅力的なものを作っていると思う。シーズンごとのコレクションもそれぞれ違いながらどれも現代的で、今着るにふさわしいものだ。世界中を飛び回りながらのあのクリエイションを発揮しているというのは信じられない。

WWD:ヴァージルとは同世代ですが、その分野のトップとして見える景色が一緒だと思うことはありますか?

カーター:それぞれの分野でベストを尽くそうとしていることはもちろん、素晴らしい仕事をすることで他の人たちに対してインスピレーションを与えるという意味では似ていると思う。彼の仕事ぶりは、未来のデザイナーになりうる人たちにとって貴重なインスピレーション源であり、同じことがラグビーにも言えて、よりよいプレーをすることが未来のラグビープレーヤーのためになる。

WWD:ラグビーにおけるよりよいプレーとは?

カーター:きちんとした技術と能力を持って自己を表現するプレーだ。そして自分を律すること、自分を大切にすること、自分の気持ちをコントロールすること、非常に強いプレッシャーに対応できる精神的な強さを持つことが必要だ。メンタル面を自分で管理できる者こそが試合に勝利し、偉大な選手になると思っている。偉大な選手はプレッシャーが大好きで、どんなに大きなプレッシャーがのしかかったとしても何万人もの前で楽しみながらいいプレーができる。フィジカルの面だけでなく、メンタルも大切だということだ。

WWD:プレッシャーに弱い人へ何かアドバイスがあれば。

カーター:オールブラックスに選ばれるような選手でも、プレッシャーからダメになる選手もいる。一方で、プレッシャーを受けることでさらに強くなる選手もいる。これまでいろいろな人や選手を見てきたが、共通して言えるのはプレッシャーをエキサイティングなものだと捉えているということ。もちろんプレッシャーは苦しくてつらいものだが、それをうまく自分で飲み込んでコントロールし、結果やその結果から得られるものを想像することができるかどうかが鍵だ。

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パリ出張者必見! ギャラリー・ラファイエットの新店に行ってみた

 2020年春夏のパリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)取材でパリに来ています。個人的に5年振りのパリコレ取材なので、ショーを見るだけでなく張り切って街もパトロール中!そんなわけで、到着翌日に勇んで向かったのはまずシャンゼリゼ通り。言わずと知れたパリ観光の名所中の名所です。「シャンゼリゼだなんて、この人、仕事を忘れて完全におのぼりさんモードだ……(絶句)」と思ったそこのアナタ!ノンノン!ここにはパリ出張中のファッション業界人にとって見逃せない新スポットがあるのです。パリ百貨店界の雄、ギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)が今春開いた新店がそれです。

 地下鉄フランクリンルーズベルト駅を出てシャンゼリゼを凱旋門に向かって歩けば、目当ての新店はすぐにあります。パリらしい重厚な石造りの建物ですが、入り口部分はLEDライトが仕込まれていて宇宙船のようにスペイシー。海外からの観光客が多い地域なので、皆さん「一体これはなんだ?」と写真を撮っていました。それにまぎれて私もパシャリ。この店、“どこをとってもインスタジェニック”を打ち出しているため、店内もどんどん撮影してくださいというスタンス。おかげで私も心置きなく撮影できました。

 入ってすぐの吹き抜けスペースという店にとっての最重要スポットでポップアップを行っていたのは、歌姫リアーナ(Rihanna)がLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン傘下で今春立ち上げた新ブランド「フェンティ(FENTY)」。パリコレに合わせ、9月23日から10月12日まで実施しています。パリでのポップアップは、5月のブランド立ち上げ時以来2回目(全世界でもまだ3回目)だそう。

 ラファイエット・シャンゼリゼ店の「フェンティ」押しっぷりはこれだけに留まらず、2階へ続く階段に並ぶマネキンに飾られていたのも「フェンティ」。その階段を登りきったところにあったのも「フェンティ」の靴とサングラス売り場、その左側に「フェンティ」のウエア売り場と、「フェンティ」尽くし。価格はプリントTシャツで150ユーロや190ユーロ。コルセットのようにウエストを絞ったデニムジャケットが900ユーロ前後。LVMH傘下なだけあり、Tシャツなども非常にしっかりした素材感です。

 「フェンティ」以外の1階は、お土産感覚のガジェットやおもちゃが充実しています。今はなきパリ名所、コレットの1階を思い起こさせる品ぞろえです。恐らくそれを意識している部分もあるのでは。そして、奥はビューティコーナー。ここの香水の品ぞろえがすごい!鏡を使った陳列も美しい!

2階はコンテンポラリーゾーンの雑貨が大充実

 2階は私的にこの店の編集力を感じて最も楽しかったフロア。デザイナーズやコンテンポラリーのウエアやシューズ、バッグ、アイウエアなどが並びます。吹き抜けを囲むバッグのコーナーは特に充実しています。日本でも今は3〜5万円台のコンテンポラリーゾーンのバッグブランドが人気ですが、まさにそういったマーケット狙いのバッグがこれでもかと並んで選びたい放題です。

 ロンドン拠点の「レジーナ ピョウ(REJINA PYO)」のお弁当箱型バッグはその代表格。このバッグ、日本ではまだあまり見かけませんが、インフルエンサーへのギフティングがうまいようでこちらでは結構よく見掛けます。あとは「コペルニ(COPERNI)」、最近日本でもよく見る「ダンスレンテ(DANSE LENTE)」や「スタウド(STAUD)」、コペンハーゲン発のコンテンポラリーブランド「ガンニ(GANNI)」、初めて見たけど超かわいかったビーズバッグの「スーザン アレクサンドラ(SUSAN ALEXANDRA)」など。

 そんな風にコンテンポラリーの雑貨ゾーンを楽しんでいると、気付けばメンズコーナーに。男女の境界が曖昧な感じが今っぽいです。「オフ ホワイト」や「アンブッシュ」が並ぶストリートコーナーでフィーチャーされていたのは、ニューヨークを拠点にする川西遼平さんの「ランドラード(LANDLORD)」。スニーカーの品ぞろえとその美しい陳列も圧巻です!スニーカーと共に、現代アートのようなアイウエアの陳列も一見の価値アリアリです。

3階はラグジュアリー ドーバーが編集したジュエリーも

 最上階の3階はラグジュアリーのフロア。エスカレーター降りてすぐのベストポジションは、ドーバーストリートマーケットが編集するエッジーなジュエリーコーナーでした。ドーバーはマレにビューティの館を10月にオープンする予定で、パリコレ中に内見会も開催される予定です。3階には吹き抜けを囲むようにポップアップコーナーが何カ所か設置されているのですが、その全てで打ち出していたのが、新生「ボッテガ ヴァネタ(BOTTEGA VENETTA)」。3階には、先日の「グッチ(GUCCI)」のショーのような“動く歩道”式VMDポイントもあって思わず写真を撮りたくなります。

 この店、インスタ映え以外にももう一つポイントがあります。それはパーソナルスタイリングサービス。軽く話をした販売員さんは「ニーズを言っていただければ、それに合わせて商品をご案内します。販売員ごとに担当売り場は決まっていますが、要望があれば他の売り場のスタッフにつなげますよ」と言っていました。どうやら、三越日本橋本店のパーソナル接客と同じ感じのよう。ギャラリー・ラファイエットのオスマン本店でも同様のサービスがあるのかと聞くと「一部はあるだろうけど、基本的にオスマンの店に入っているのはブランドの直営店だから、販売員が他のブランドの商品を紹介するのは難しい。シャンゼリゼは一部委託契約で仕入れているブランドもあるけど、基本的にラファイエットが買い取っている編集売り場だからブランドを越えて提案できる」という話でした。なるほど!

デパ地下のフードコートは要改善? スタッフTシャツも販売中

 ファッション中心に紹介しましたが、地下1階は食品フロア。日本のデパ地下と同じ感覚ですね。缶詰や調味料など、パリ土産がそろうほか、食品売り場のオリジナル商品(マグカップやキャップ、スタッフTシャツなど)もありました。しっかりビジネスしてますね。そして、おしゃれなフードコートも入っていたので、私もオーダーしてみました。具が詰まりに詰まったサンドイッチと選べるサラダ3種、ジュースのセットで19ユーロ。私はサラダの1つが追加料金がかかるタイプだったので、本当はもう少し安いはずです。

 ただ、これ全部紙皿で出てくるんですよ。エコじゃないしおしゃれじゃないし、皿が軽くて動くから食べづらいし、なんといっても19ユーロも払ってるのに紙皿ってどうなの?と、ここはかなり要改善ポイントだと感じました。フードコートだけ見れば、ロンドンの高級百貨店ハロッズとかの方がエンターテイメント性も高くて好きです(あちらはもはやフードコートではない料金取られるけど)。

 以上、ファッション業界人としても、いち観光客としても楽しめる、ギャラリー・ラファイエットの新店。パリ出張中の方はぜひ出掛けてみてはいかが。

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自分だけの香りに出合える ブルーベルが期間限定のポップアップを公式EC内にオープン

 香水の輸入販売大手のブルーベル・ジャパンが、公式ECサイト「ラトリエ デ パルファム」内に、期間限定ポップアップストア、フレグランスマルシェ(FRAGRANCE MARCHE)をオープンした。「フレグランスも普段使いに、そして日常的に訪れる場所となれば」との思いが込められ、食品や日用品などが並ぶ市場、マルシェのように、香りにまつわる多彩なコンテンツだけでなく、キャンペーンなども用意した充実した内容だ。年内で終了。

 鮮やかな色彩と多彩な香りは選ぶ楽しさをも与えてくれる、香りの世界、フレグランス。その一方で、どのように選び、楽しめばいいのかわからないと感じている人も少なからずいるはずだ。そんな人たちに、またフレグランスジプシーの人たちにも自由に気軽にフレグランスを選ぶことができるよう考えられたのが、このポップアップストアだ。

 このポップアップは、7月に行った同名のイベントの進化版。イベントでは最新作を紹介するに留まったが、今回、トレンドも分かる最新フレグランスアイテムの情報はもちろん、ECとすることでお気に入りのアイテムをすぐに購入することができ、香り共もに暮らすことの豊かさを提案する。幅広い香りの知識と経験に基に、その魅力を伝えるスペシャリスト「パルファム ソムリエール」による注目のアイテムを紹介。さらには、「私」に似合う「香水(パフューム)」を見つけるパフューミー(PERFU-ME)診断に、フラワリーやグリーン ベジーなど香りのノート、香りにまつわる豆知識を得られるコンテンツを置く。

 今回のポップアップストアでは、オープンを記念して、クーポンやオリジナルエコバックのプレゼントなども用意されていて、さらに購入者全員に最新フレグランスミニサイズのスプレー3点セットのプレゼントもある。初回のセットは、「ブルガリ ローズ ゴルデア ブロッサム ディライト オードパルファム」(1.5mL)、「クリーン リザーブ スキン オードパルファム」(1.5mL)、「ブルガリ ブルー プールオム オードトワレ」(1.5mL)の3点という。ECでの購入も、ワクワク感を感じられる施策が盛り込まれている。

 展開ブランドは、「クロエ(CHLOE)」や「バーバリー(BURBERRY)」「ナルシソ ロドリゲス(NARCISO RODRIGUEZ)」「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」などファッションメゾンをメインに、「ペンハリガン(PENHALIGAN’S)」や「メゾン フランシス クルジャン(MAISON FRANCIS KURKJIAN PARIS)」などのメゾン フレグランス(MAISON FRAGRANCES)を含む全23ブランドがそろう。フレグランスのパイオニアであるブルーベル・ジャパンならではの、トレンドからニッチまで幅広いフレグランスから、お気に入りの1品を選んでほしい。

渡部玲:女性誌編集部と美容専門の編集プロダクションに勤めた後、独立。2004年よりフリーランスの編集者・ライターとして雑誌やウェブなどの媒体を中心に活動。目下、朝晩のシートマスクを美容習慣にして肌状態の改善を目指している

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パリコレ3日目のハイライト 「ドリス」がラクロワを迎え“ザ・モード”なショー キャンプでドラマチックな「マルジェラ」

 パリコレ3日目は、「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」や「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」が、ファッションショーが今より華やかだった1990年代を方彷彿とさせるショーを行った。ギョーム・アンリ(Gullaume Henry)による新生「パトゥ(PATOU)」もプレゼンテーションを実施、その様子はこちら。

ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)

DESIGNER/ドリス ヴァン ノッテン(Dries Van Noten)

 ドリス ヴァン ノッテンは今季、クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)を迎え、全コレクションを共に作りあげた。ラクロワは、2009年に自身のブランドを閉鎖するまで、色彩とプリントの巧みな使い手として名をはせたオートクチュールデザイナーだ。花とアニマルなど柄と柄をぶつける情熱的なコディネートや、金銀糸も織り込んだ華やかなジャカード使い、大きく丸い袖がドラマチックなクチュールライクなドレスなどにラクロワの仕事を見る。見上げるような高いランウエイを含め、華やかだった1980~90年代のファッションショーをほうふつとさせる“ザ・モード”なショーに多くの拍手が送られた。

メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)

DESIGNER/ジョン・ガリアーノ(John Galliano)

 ミリタリーや従軍看護師といったイメージをベースに、アトリエが作り出すクチュール的なボリュームシルエットや、テクノロジーを盛り込んだ。クラシックなツイードやヘリンボーンのオーバーサイズコートやジャケットは、柄が割れたように部分的に色を失っている。実はこれ、「ハックされた」ように作られたプリントなのだという。スーツやビスチエドレスなど、さまざまアイテムに使われた丸いレーザーカットは、柄を重ねることで目の錯覚を生む。兵士が腰から下げるパラシュートのような腰飾りは、クチュールドレスのようにも見えてとてもエレガント。男性モデルも含めて足元はヒールブーツ。異性装などの“キャンプ”な要素も感じさせるコレクションは、ガリアーノらしく非常にパワフルでロマンチック。

ルメール(LEMAIRE)

DESIGNER/クリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)

 ライトトーンのきれいな色使いを得意としているが、雨の音に載せて始まった今季のコレクションは全身黒のスタイル。「黒でシルエットを見せたかった。それに、同じ黒といっても、濡れたように光る黒など、さまざまな黒があるでしょう?」とルメール。フロントの合わせがカシュクール風に見えるスーツスタイルや、ギャザーたっぷりのロングドレスやブラウスは、黒ということもあっていつもより少し強くシャープな女性像。ただし、仰々しくはならない知的なバランスがこのブランドらしい。後半は徐々に色が差されるものの、全体的にトーンは抑えめ。ブルーグレーやグレーベージュなどの、一言では表現しづらい色使いがきれい。

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難解複雑な「ジェイ ダブリュー アンダーソン」の提唱、「ファッションは読解するより“見る”ことをもっと楽しんで」

 「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」の作品の独自性は、多様なアートからの着想にある。同時にアートによって、クリエイティブ・ディレクターのジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)の鋭敏な感覚はシーズンを重ねるごとに磨かれている。ロンドンで発表した2020年春夏コレクションは、同ブランドをさらに上のステージへと押し上げる素晴らしいコレクションであった。

 今季のインスピレーション源はカナダ出身のビジュアルアーティスト、リズ・マゴー(Liz Magor)だ。マゴーは日常生活で見落とされがちな不用品を作品に変えて、新しい文脈で再提示する試みを続けている。ショー会場内には四角い部屋の壁に沿って客席を設け、真ん中に置いた透明のボックスには古びた人形や古着のニットウエア、おもちゃなどが入ったマゴー制作のオブジェが複数置かれていた。スタッフやモデルの集合時刻はショー当日9月16日午前9時半で、ショー開始時刻の3時間半前だ。筆者が会場に到着した11時ごろにはメイクアップとヘアスタイリングは順調に進んでおり、リハーサルが間もなく始まるタイミングだった。アンダーソンは、ショー開始までのほとんどの時間を本番スペースで過ごし、インスタレーションのセッティングを行っていた。手には常に2台のスマートフォンを持ち、電話にテキストにとせわしない様子だ。

アナ・ウィンター登場でピリつく現場

 経験を積んだチームとブランドにとってなじみの会場ということもあり、準備はスムーズに進んでいく。唯一の誤算は、バックステージでの騒動だろう。ショー開始約20分前に姿を現したアナ・ウィンター(Ana Wintour)=コンデナスト(CONDENAST)アーティスティック・ディレクター兼米「ヴォーグ(VOGUE)」編集長に向かって、警備員がバックステージパスの提示を要求したのである。アナ・ウィンターといえばほとんど“顔パス”が利くほど有名人なだけに、本人というよりも周囲の空気が一瞬にして凍りついた。ウィンターが「パスは持っていないのよ」と口にすると同時に、近くにいたアシスタントが素早い動きで彼女を奥へと案内したため現場もひと安心。コワモテの警備員の女性はウィンターだと気付いた後にすぐさま照れ笑いを見せていたが、制服の下は冷や汗が吹き出していたに違いない。

 約300人収容の場内は満席だった。ショーはきらびやかなクリスタルの装飾が目を引く、ドレープの利いた黒いドレスからスタートした。アシンメトリーなカッティングの波打つドレスや構築的なテーラード、スリーブが誇張されたトレンチコートにラフィアで縁取ったエスパドリーユなどが登場した。アンダーソンがクリエイティブ・ディクレターを務める「ロエベ(LOEWE)」に通ずる芸術性やクラフト感も漂うが、「ジェイ ダブリュー アンダーソン」はより実験的で、失敗を恐れることなく好奇心のままに衣服を楽しむ女性像が浮かび上がる。

今回も得意のアート性全開

 ショーの後、バックステージにはフロントローに座っていたシドニー・トレダノ(Sidney Toledano)LVMHファッショングループ(LVMH FASHION GROUP)会長兼CEOや歌手のクリスティーナ・アギレラ(Christina Aguilera)、「ユニクロ(UNIQLO)」の柳井正ファーストリテイリング会長兼社長の柳井照代夫人が祝福の言葉を伝えに来た。アンダーソンは照れくさそうに彼らとの記念撮影を終えると、10人ほどのジャーナリストに囲まれて取材に応えた。「マゴーの作品をハーバード大学で見て、彼女が伝えようとする“見る”ということに引かれた。不要になった物に焦点を当て、新たな場所を与えるというアイデアだ。テクスチャーやジュエリーをどのように“見る”のか、それらをどのように知覚するのか……。そして雑音を打ち消してシルエットにフォーカスした」。身振り手振りを交えながら説明を続けるが、筆者がテーマやメッセージについて明確に理解するのは簡単ではなかった。「テーラードはマリー・アントワネット(Marie Antoinette)の衣服のように誇張した後に空気を抜いた。ほかには1960〜70年代の雑誌で見かけるようなデイジーの花と図解からもアイデアを得た」。身頃の半分だけにボリュームを持たせたジャケットやコート、胸元にビーズでデイジーの花を描いたドレスはそうしたアイデアをもとにしているようだ。このように芸術作品から意味を見出すことを好むアンダーソンだが、「裏にメッセージは潜んでいない。僕にとってのテーマは“見る”こと。僕らは時々全ての事柄に意味を見出そうとしてしまうけれど、ただ“見る”ことをもっと楽しむべきなんじゃないかな」と取材の最後に語った。

パーティーからすぐに去るアンダーソン

 ショーを終えた日の夜にはアフターパーティーが開催された。翌日がアンダーソンの誕生日ということもあって会場で彼の姿を探したが、主役は日付けが変わる前にそそくさと帰ってしまったようだ。現代で最もいそがしい業界人の一人である彼は、27日の「ロエベ(LOEWE)」のショーの翌日に日本へと発ち、東京、京都、大阪を訪れる予定だという。日本で何を見て感じ、次のコレクションへと反映させるのか楽しみである。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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ギョーム・アンリによる新生「パトゥ」がお披露目 エントリー価格は1万円〜

 「ジャン・パトゥ(JEAN PATOU)」から改称した「パトゥ(PATOU)」は、ギョーム・アンリ(Guillaume Henry)による初のコレクションを、パリ・ファッション・ウイーク期間中の9月25日にプレゼンテーション形式で披露した。

 会場は、ノートルダム大聖堂があるパリのシテ島に移転した「パトゥ」のアトリエだ。元々は私立の女子学校だった建物で、窓からはセーヌ川や、パリらしい街並みが見える。まず1階に入ると、コレクションのプロトタイプやミシンが展示され、コレクション制作の過程を感じることができる。「つい今朝までここでみんな働いていたのよ」と案内してくれた「パトゥ」のスタッフが教えてくれ、とてもアットホームな雰囲気だ。ウェルカムドリンクは爽やかなミントのスパークリングウォーターに、ティザー映像でも登場したチェリーが添えられていた。

 2階に登ると、「パトゥ」のスタッフジャケットを羽織ったクチュリエたちが黙々と作業していた。コレクションをまとったモデルたち、「パトゥ」のスタッフ、そして来場者が入り乱れる空間。アンリ=クリエィティブ・ディレクターも自ら来場者と話し、コレクションについて語っていた。

 ブランド名を改称し流れるようなフォントのロゴを発表した「パトゥ」だが、コレクションやいたるところにジャン・パトゥのイニシャルである“J”と“P”を重ねた新たなシンボルが見つかる。コレクションは、ロゴのタンクトップや、シンプルなTシャツなどカジュアルなものから、シンボルが肩部分に施されたデニムジャケット、ギャザーで丸みを帯びたスカート、袖口にフェザーが施されたシャツ、おお振りのゴールドのボタンを配したコートなど、ディテールにクチュール的なタッチを加えたアイテムを多くそろえる。

 以前「クチュールのようなアプローチをしながらも、時間をかけて商品開発をすることで、自分の友人たちが買えるような価格帯にしたい」とソフィー・ブロカール(Sophie Brocart)「パトゥ」最高経営責任者(CEO)は語っていたが、 価格は、最も安価なタンクトップが90ユーロ(約1万円)、平均価格が600ユーロ(約7万円)、高価格帯が2500ユーロ(約29万5000円)ほど。

 11月にはECサイトを開設し、来年には実店舗をオープン、日本にも複数のパートナーと交渉を進めており、出店予定があるという。「パトゥ」は現在、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)の傘下。アンリ=クリエイティブ・ディレクターは「カルヴェン(CARVEN)」を再生させた実績があるが、この後の動向にも注目が高まる。

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なぜ次々と誕生? Vインフルエンサーの仕掛け人に直撃

 インスタグラムなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で、CGとリアルを組み合わせ、まるで本物の人間のように見えるバーチャルインフルエンサー(以下、Vインフルエンサー)が日本で続々と誕生している。彼女/彼らはいったい何者なのか。日本初のメンズインフルエンサーのリアム・ニクロ(Liam Nikuro)をデビューさせた仕掛け人の1人である宮地洋州ワンセック(1sec)代表取締役CEOに聞いた。

 宮地CEOは、D2C(Direct to Consumer、顧客直結型)ブランド「エイミー・イストワール(EIMY ISTOIRE)」や動画制作などを手掛ける3ミニッツなどを起業したシリアルアントレプレナーで、3ミニッツをゲーム大手のグリーに売却後、その資金をもとに今年3月にワンセックを起業した。ワンセックは共同創業者として音楽業界のベテランプロデューサーであるジョン・ポスマン(John Possman)氏を迎えており、リアム・ニクロは3月27日にインスタグラムのアカウントを開設後、日米で同時デビューを果たしている。

WWDジャパン(以下、WWD):なぜ男性を?

宮地洋州ワンセックCEO(以下、宮地):世界的に見ても、女性のVインフルエンサーは多数存在しているが、男性はほとんど存在していなかったので。

WWD:今年3月末に開設したリアム・ニクロのインスタグラムのフォロワー数は現在、約1万2800。フォロワー数の推移は計画通り?

宮地:5カ月でフォロワー数1万2000。当初は月1000人増くらいのペースを考えていたので、想定以上です。

WWD:リアム・ニクロの今後の活動は?

宮地:ファッション分野だけでなく、音楽やエンターテインメント分野での活動も計画していて、水面下ではいくつかのプロジェクトを準備中です。

WWD:なぜVインフルエンサー事業を?

宮地:3ミニッツを売却後、次のビジネスを模索するために米国にしばらく住んでいたのですが、米国では160万フォロワーを持つリル・ミケーラ(Lil Miquela)が圧倒的な成功を収めており、日本でもデジタル上の架空の芸能人への需要が必ずあると考えました。

WWD:新キャラクターの予定は?

宮地:近々いろんなジャンルで、複数のバーチャルヒューマンを順次発表していく予定です。

WWD:9月4日に1億円の資金調達を発表した。現在の資本構成は?

宮地:資本構成は非公開です。某IT系の上場企業と米国にも拠点があるベンチャーキャピタルから出資を受けています。

WWD:Vインフルエンサーの今後をどう見る?

宮地:バーチャル市場は拡大する一方なので、ファッション分野に強いVインフルエンサーを筆頭に“バーチャルヒューマン市場”もこれからどんどん拡大すると確信しています。それに伴って、バーチャルヒューマンが既存の人間のインフルエンサーに取って代わるような事態も発生すると考えています。そもそもバーチャルヒューマンはAI(人工知能)と非常に相性がいい。リアルとバーチャルの区分はどんどん曖昧になると思います。

WWD:Vインフルエンサーのプロデュースでカギになるのは?

宮地:CGを作るための「MAYA」というソフトウエアやAIプログラミングのPythonといった技術は必須ではありますが、技術だけあってもファッションやエンターテインメントの分野自体を理解していないと、キャラクターを育てることは難しい。いまのデジタルネイティブ世代はウソにはすごく敏感で、途中からVインフルエンサーのキャラクターの路線変更があるとシラケて途端に支持を失ってしまう。どのジャンル・分野でキャラクターを育成・運用するのか。最初のコンセプトメーキングと戦略が成功の大きな分岐点になるでしょう。

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Windows95時代の再来!? IT企業が不満抱える潜在顧客を開拓 ITのプロ「WWDジャパン」最新号につぶやく

 大手通信会社に入社後、国内外でITソリューションを提供するビジネスマンが、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。最先端のテクノロジーから企業と、その利用者が必要とするものについて考え続けたITのプロ、CKRが未来的視点からニュースにつぶやきを添えます。

今日のニュース:P.5「アパレルD2C(Direct to Consumer)はITを超える鉱脈になる」

読み解きポイント:4980円のフルオーダーシャツ。「失敗しないシャツ」を仕組み化し、メンズの未開拓市場に切り込む。

ニュースのポイント

 翻訳マシーン「ポケトーク」でお馴染みのソースネクスト社が、2018年3月にSolve(ソルブ)株式会社を設立し、オーダーメイドドレスシャツ市場に参入。現在はソースネクスト社の共同創業者が株式の大半を買い取り、事業を運営。ECシステムも内製化し、中国の縫製工場とも直接連携。8年後の上場を目指す。

CKRはこう読む!

 「4999円以下が80.3%」。20~59歳の男性を対象に「仕事で着るワイシャツは、いくらのものを買いますか」と質問調査したときの結果です(インテージ社調べ)。5000円を切るか、切らないかが、市場のボリュームゾーンを獲得する上で、重要なことがわかります。今回は「4980円フルオーダーシャツという商材で、未開拓のボリュームゾーン(=アパレルに無頓着なオジサン市場)」に参入する、IT企業の秀逸なマーケティング戦略について考察したいと思います。

 D2Cブランド「ソルブ」の特長は①4980円でフルオーダーメイド(財布に安心、購入に躊躇しない)、②30日間、いかなる理由でもお直し無料(試着時、気に入らなければ必ず作り直せるので安心)、③シワにならない、折りジワもすぐ消える(毎日アイロンいらずで、手間なく安心)の3つで、全ての体験プロセスの中で「失敗、失望させない仕組み」を実現しています。人はうまくいかなかった事柄の方をよく覚えているという「ツァイガルニク効果」による顧客離れを防ごうとしているのかもしれません。

 実際シャツを着てもらい、シルエットと素材感でうっとりさせることができれば、顧客一人一人が「徹底的に大事にされたという感動体験」を享受し、「次回も頼んでみよう!」「友達に薦めてみよう!」となる可能性が高いです。自分自身のベストサイズを登録しておけば、次回からの注文はさらに楽になります。ここまでくると店舗よりオンラインの方が便利です。生地は形態安定加工なしも含めると95種類あり、襟、カフス、ポケット、前立て、後身頃も複数のバリエーションから選ぶことができ、品ぞろえも豊富です。あとは迅速なデリバリーを強化することで、IT事業者らしいサービスプラットフォームになることが予想されます。

 ソースネクスト社は、Windows95が発売されたとき、パソコンの処理の遅さに不満を抱えるユーザー向けに、処理時間を短縮化する安価なパソコンソフト「超速」「驚速」の販売で大きく成長しました。当時、パソコンの処理能力を上げるため、ハードウェアメモリを増設する費用は安くありませんでした。

 オーダーシャツは、フルオーダーすると7000円以上するのが現状です(「ユニクロ(UNIQLO)」は、セミオーダーで2990円)。現在のフルオーダー市場は当時、高価なパソコンメモリの増設にためらい、不満を抱えるユーザーが多かった状況と酷似しているのかもしれません。5000円未満でフルオーダー、品揃えも豊富、ビジネスシーンで好印象を与え、取り扱いが楽なシャツと打ち出すことで、メンズの大きな潜在需要を開拓できるか?今後のソルブの動向が楽しみです。

CKR Kondo : 大手通信会社に入社後、暗号技術/ICカードを活用した認証決済システムの開発に従事。その後、欧州/中東外資系企業向けITソリューションの提供、シンガポール外資系企業での事業開発を経験。企業とその先の利用者が必要とするもの、快適になるものを見極める経験を積み、ウェアラブルデバイスやFree WiFiを活用したサービスインキュベーションを推進。現在は、米国、欧州、アジア太平洋地域にまたがる、新たなサイバーセキュリティサービスの開発を推進中

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ラグジュアリーの巨人ケリングが完全なカーボンニュートラル宣言

 「グッチ(GUCCI)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」などを擁するケリング(KERING)は、自社および全サプライチェーンの温室効果ガスの排出量を2025年までに15年と比較して50%削減することを目指す。ケリングは18年からグループ全体の年間温室効果ガス排出のオフセットを最優先課題としている。

 すでに「グッチ」が9月末までに温室効果ガス排出の完全オフセット実現を発表しているが、今回の発表はそれに続くものだ。

ケリングが進める主な取り組み

・SBT(気候変動対策に関する情報開示を推進する機関投資家の連合体であるCDP、国際環境NGOの世界資源研究所WRI、世界自然保護基金WWF、国連グローバルコンパクトUNGCによって14年9月に設立された団体)イニシアチブによる削減目標全体の20%以上を達成するために、原材料と製造プロセスに関するケリング独自の基準を導入する。

・グループの事業活動におけるさらなるエネルギー効率の向上に注力し、15年に比べてグループの店舗の炭素強度(消費量に対する二酸化炭素排出量)を30%削減する。

・グループ全体で再生可能エネルギーの使用を100%にするために、同エネルギーへの変換を促進する。

・主軸となるのは製造効率で、そのための革新的プログラムを採用している。例えば、織物工場向けの「クリーン・バイ・ デザイン」プログラムは、年間12%の二酸化炭素排出の削減につながっている

・同業他社との協力のもと、「ファッション協定」を通じてファッション業界の脱炭素化を支援できる取り組みとソリューションをサポートしている。

 ケリングは原材料の生産を含むグループ全体の温室効果ガス排出を分析するために、それを数値化する環境損益計算書(EP&L)を開発して15年から活用している。これにより、環境負荷を効果的に削減するための独自のサプライチェーンへの取り組みや、効率化を目指すプログラムを導入することができるようになった。

 ケリングでは、サプライチェーン全体の環境負荷を回避および削減することを優先課題として注力していくが、現在、バリューチェーン全体で発生した温室効果ガスも残存するものを年次ベースですべて相殺している。18年のEP&Lの結果によると、グループ全体の残存温室効果ガス排出の合計は二酸化炭素量は約240万トンで、そのオフセット(相殺)は、森林と生物多様性を保全し、地域社会の生活をサポートする、REDD+(レッドプラス:森林伐採による二酸化炭素排出量の増大とそれによる気候変動を防ぐための対策)プロジェクトを通じて引き続き行う。

 ケリングのフランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)=会長兼CEOは「気候変動に関して言えば、もはや実際に行動するのを待っている予裕はなくなった。私たちは皆、ビジネスを発展させるだけでなく、発生する温室効果ガス排出量を計上する必要がある。ケリングは、すべての事業活動およびサプライチェーン全体でグループとして完全にカーボンニュートラル化を達成することを約束する」とコメントを発表した。

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一世を風靡した「フォーエバー21」はなぜ失速したのか?

 米国発ファストファッションブランドの「フォーエバー21(FOREVER21)」は、10月末で日本にある全14店舗と自社ECを閉鎖し、日本から撤退すると発表した。米本国でも経営の悪化が伝えられ、破産法(チャプター11)の申請を検討していると報道されている最中だ。日本に先駆けて、今年4月末には中国市場から撤退し、実店舗はもちろん、アリババのファッションブランドサイト「Tモール(Tmall)」や「京東(JD.com)」などのオンラインストアも閉じており、日本にもXデーが近づいているとみられていた。

 フォーエバー21は1984年、韓国出身のドン・チャン氏とジンスク・チャン夫人が米ロサンゼルスで創業。当初の屋号は「ファッション21」だった。トレンドをいち早く見つけて取引先にディレクションし、企画・デザインと生産を任せ、仕上がってきたものをそのまま、あるいは修正を加えて買い取り、スピーディー、かつ手頃な価格で店頭販売することを繰り返し、ファストファッション型のビジネスモデルで成長を遂げた。その後、取り扱いのほとんどがオリジナルデザインに切り替わったが、「ユニクロ(UNIQLO)」や「ザラ(ZARA)」のようなSPA(製造小売)型ではなく、しまむらに近いOEM(相手先ブランド生産)型のビジネスモデルが特徴だ。

 89年にショッピングモールへの出店を開始、95年にはカリフォルニアから全米へと店舗網を拡大。店舗数の増加に伴うスケールメリットの創出などにより、売上高が拡大。1号店としてロサンゼルスのフィゲロア通りに出した店舗はわずか25坪(約83㎡)だったが、事業拡大に伴い、平均で400~500坪(1320~1650平方メートル)、日本に上陸するころには1000~2000坪(3300~3960平方メートル)へと大型化した。取引先も2000社にまで増えていた。

 2003年度に181店舗・売上高3億1500万ドルだった業績は、09年度には280店舗・23億ドルにまで急拡大した。オーナ―夫妻は敬虔なクリスチャンで、出張時の渡航もエコノミークラスを使い、経営でも勤勉でローコストオペレーションを徹底。大量出店など派手さが目立ったが、当時は経常利益率が15%前後と高収益企業として知られていた。

 日本に1号店をオープンしたのはまさに急成長中の09年4月29日のこと。一足早い08年9月に日本に上陸してファストファッションブームを巻き起こしたH&Mの原宿店の隣に、530坪(1749平方メートル)で出店。開店当日には1200人が行列し、1日平均で約1万6000人を集客。開店2カ月で来店客数が100万人を突破、半年で300万人を達成し、社内記録を更新するなど、ファストファッションブームに拍車をかけた。

 圧巻だったのは、ちょうど1年後の10年4月29日、松坂屋銀座店に5層・930坪(3069平方メートル)のアジア旗艦店「XXI(エックスエックスアイ) at GINZA by FOREVER21」をオープンしたことだ。百貨店内に、しかも「グッチ」跡にファストファッションの代名詞的ブランドがオープンしたとあって、かなりのセンセーションを巻き起こした(のちのギンザシックスへの建て替えが決定しており、3年間の期間限定出店だった)。この銀座店は、開店初日の入店客数が約4万1500人を記録したほどだ。

 H&Mよりも3割程度安い、数百円~3900円前後の洋服や雑貨を、米国の高級百貨店を思わせるような高級感のある内装や、チャーミングな動きやメイクを施したマネキンなどとともに見せることで“高見え”感も創出。LA系のセクシーカジュアルからプレッピーなアメカジ系、モード系、フェミニン系からビンテージ系までテイストも幅広く、シューズやアクセサリーまで幅広い商品がそろうことが魅力的だった。

 ただ徐々に「しまむら」や、和製ファストファッションの「GU」、さらには、「ウィゴー」やネットを中心に販売する低価格ファッションや韓国系ブランドなどに押されて、当初の勢いは失っていった。トレンド的にも、かつてのLAカジュアル系から、ベーシックが主流となるノームコアや、地厚なオーバーサイズのフォルムやストリートカジュアル系などへのシフトも、「フォーエバー21」離れを引き起こした。

 さらにダメージを与えたのが、昨今のサステイナビリティへの意識の高まりだ。それまで主なターゲットだった若い世代のミレニアルズ達が、使い捨てを良しとせず、長く着られるアイテムや、「メルカリ」や古着店などでの2次流通で高値で取引される品質力や換金性の高さを求めるようになったのだ。

 運営面にも問題があった。今の小売業には、リアル店舗とオンラインストアの融合による顧客エンゲージメントの向上や、ブランド体験の提供などが求められる。だが、フォーエバー21は日本に本社機能を置かず、合同会社フォーエバー21・ジャパン・リテールが米本国からのディレクションの下で、オペレーションを行う体制をとっていた。日本に合わせた品ぞろえや組織運営などを行うことができなかった。

 上陸から3年ほどは新宿や渋谷、大阪などにも大型旗艦店を出店するなど話題を呼んだが、勢いは徐々にスローダウンし、17年10月には原宿店を閉店。同時期にダイバーシティお台場やららぽーと船橋の店舗を閉店し、店舗整理を進めてきていた。実は2000年に婦人服専門店の三愛が「フォーエバー21」を日本に上陸させ、わずか2年で事業を閉じているのだが、今回で2度目の撤退になる。

 米国フォーエバー21社の売上高は、15年の売上高44億ドル(約4708億円)がピークで、直近では34億ドル(約3638億円)まで低下。負債は5億ドル(約5350億円)といわれている。ECの台頭によるショッピングモールへの客数激減や、オムニチャネル施策の遅れなども背景にある。まずは米本国の立て直しが急務であり、日本での事業は当面考えられないだろうが、三度目の正直があるのか、これからも注視していきたいところだ。

松下久美:ファッション週刊紙「WWDジャパン」のデスク、シニアエディター、「日本繊維新聞」の小売り・流通記者として、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)

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「シモーネ ロシャ」が描いたファッションの理想郷 ステージ裏の超ギリギリドタバタ劇に密着

 「シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)」がロンドン・ファッション・ウイークで9月15日に発表した2020年春夏シーズンのショー会場は、ロンドンの中心地から車で50分も離れたアレクサンドラ・パレスだ。同劇場は19世紀のヴィクトリア朝時代の雰囲気を存分に残し、同ブランドのイメージにぴったりの場所だった。

 20年春夏コレクションは、ロシャの生まれ故郷であるアイルランドの伝統行事、聖ステファノの日に少年が扮する“レンボーイ”から着想を得た。これは少年らがミソサザイ(英語でレン)という小さな野鳥を捕まえに行き、その後にわらの衣装に身を包んで街中の家にお小遣いをねだって回る年に1度の行事である。デザイナーのシモーネ・ロシャは「ハロウィンに子ども達が仮装して『Trick or Treat』とお菓子をねだるのと同じ感じ」と、ショー後の取材で説明する。イギリス人ジャーナリストも“レンボーイ”についての質問を繰り返していたことから、アイルランド以外ではなじみのない行事のようだ。“レンボーイ”の少年らしさはテーラードやキャスティング、ヘアメイクで取り入れられた。さらに“レンボーイ”たちが訪問する家にも着目し、デルフト焼きの陶器やテーブルクロス、カーテン、壁紙など英国調インテリアの要素をコレクションに織り交ぜた。モデルにはこれまで通り幅広い世代の女性を選び、アイルランドで活躍する舞台女優なども起用した。円形に配した客席については「“レンボーイ”が家々をノックして回るうちに、徐々に輪になっていくパレードのように見せたかった」と、会場全体で世界観の表現にこだわった。

強いこだわりゆえのハプニングが

 だが「シモーネ ロシャ」がつくり出したメルヘンでロマンチックな世界も、時間は現実社会と同様に過ぎているようだ。同ブランドの贅を尽くしたバロック調ドレスに身を包んだスタッフが行き来する空間はメルヘンの世界そのものだったが、メイクアップとヘアスタイリングのスペースは人手が足りずに終始あわただしく、その様子を見て現実世界に引き戻された。スタッフやモデルの集合時刻は一般的にショー開始の約5時間前だが、今回は7時間前。早めに設定したスケジュールにもかかわらず、他ブランドのショーが終わって駆け付けたモデルの到着が予定より遅れたり、世界観づくりのためのメイクやヘアセットのこだわりが強すぎるがゆえに想定以上の時間を費やしたりし、ドタバタだった。ロシャ本人も、モデルが着替えるドレッシングルームで常に裁縫やルックの確認に追われていた。服は繊細な手仕事が多く、レイヤードやアクセサリーの使い方も複雑なため、時間がいくらあっても最終チェックには足りないように見えた。彼女は笑顔を見せず、時に眉間にシワを寄せながら厳しい表情を崩すことはなかった。

 ヘアのセットに時間がかかったことや、早い集合時刻のわりに、一人一人にかける時間が長すぎて待ち時間が長かったためか、モデルの何人かは少しいら立っているように見えた。普段は笑顔で接してくれる顔見知りのモデルも近寄り難い空気をまとっていたため、今回は話しかけるのを控えることにした。わらを編み込んだ複雑なへアのモデルは、何度も何度も三つ編みをやり直され、髪をきつく引っ張られていたために涙ぐむ一幕もあった。リハーサルではモデルの一人が「靴が痛い」と言い出し、ランウエイに出る直前で靴を脱いでウオーキングするというハプニングがあった。急きょ同じ色の厚手のソックスに変更することをスタッフが提案するとモデルの女性は承諾し、本番をなんとか無事に終えることができた。

ピンチを乗り越えて本人にも笑顔が

 今季はファッションショーならではのドタバタに見舞われる形となったが、ショーを無事に終えたバックステージでは、スタッフと親しい人たちにシャンパンが振る舞われてアットホームなパーティーが開かれた。ロシャは初対面の筆者にも「あなたもぜひ参加してね」と、ショー前には見られなかった笑顔とともに親しく声を掛けてくれた。

 イギリスは長引くブレグジット(イギリスのEU離脱問題)交渉の最大の難題であるアイルランドとの国境問題で、不協和音が生じている。しかし異文化交流ともいえるランウエイショーとパーティーは、そんなことを少しの間忘れさせてくれるほど平和的に行われた。「シモーネ ロシャ」が築いたドラマチックで平和的な世界は、まるで“インクルーシブ”の魔法をかけた理想郷のようであった。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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「LVMHプライズ」選出で注目度上昇の「アンリアレイジ」 名刺代わりの2020年春夏は引き続き原点回帰

 先日、最終審査会が行われた若手デザイナーの登竜門、第6回「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE以下、LVMHプライズ)」。「アンリアレイジ(ANREALAGE)」の森永邦彦はグランプリこそ逃したものの、ファイナリストとして最終審査会で“光合成”と題した“自然と共生する服”を披露した。2020年春夏のパリ・ファッション・ウイークでも当然それを見せるのかと思いきや、「あれはまた別の機会に見せるんですよ」と、ショー前のバックステージで森永はニヤリ。では一体、今季のパリでは何を見せたのかというと、“アングル”と題したブランドの原点ともいえるクリエイションだ。

 15年春夏に発表の場をパリに移して以来、「アンリアレイジ」が追求してきたのは、フラッシュ撮影すると柄が変わるといった、テクノロジーを全面に打ち出したコレクション。しかし、19-20年秋冬は一転し、ブランド立ち上げ間もないころに追求していた、服の形そのものへのアプローチに立ち返った。「昔と同じことをやっている」といった意地の悪い意見もあったが、海外を中心に特にバイヤーからは分かりやすいと高評価。さらに、「LVMH プライズ」ファイナリスト選出効果もあって、「今季のショーや展示会への問い合わせは非常に増えた」と森永は話す。

 そんな状況の中で見せる今季のコレクションは、いわばようやくブランドを知るようになった各国のバイヤーやプレスへの名刺代わり。満を持して森永が披露したのは、前シーズンの続編のような原点回帰のコレクションだ。写真に撮られた服(2次元)を、実際に生身の人間が着る(3次元)とどうなるかという試みで、「洋服は画像に変換されて伝えられることが当たり前になった。画像になった洋服には、必ずカメラアングルが付随する。画像化されたデジタルな洋服イメージを、アングルと共にそのまま現実に引っ張りだす」とリリースには説明がある。

 カメラアングルが上からなのか、斜めからなのか、下からなのかによって、同じ服でも写真の中では形が異なる。紺のブレザーやオックスフォードシャツ、ジーンズにTシャツといった普遍的なアイテムを3つのアングルから捉え直し、それを人が着ることで、思わぬフォームが生まれる。前シーズンに続き、ショー前にインスタグラムに商品画像を掲載し、2次元から3次元へというコンセプトをより明確化した。

 素材によって、きれいにシルエットが出るものとそうではないものがある。例えば、ローアングルから捉えたデニムジャケットは、テントラインを描く背中のラインがチャーミング。一方で、ハイアングルから捉えたセーターなどはずるりと垂れ下がって、コンセプト優先で服としての魅力がおざなりな印象だ。ただ、そんな批判は森永は今まで何百回と聞き続けてきた。それでも、既存の考え方に対し、別の視点からロジカルにアプローチしていくというのがこのブランドのやり方だ。

 パリに進出して丸5年が経った。「あくまで、この規模でショーをしているからだけど」と前置きしつつも、「ショーをして、ビジネスを回していくという循環ができている」と森永。「『アンリアレイジ』で自分たちのやりたいことをしっかり見せて、アシックスなどの外部企業やブランドとの協業によって、より幅広い層にリーチしていく形が取れている」とも。そうした協業依頼は「LVMH プライズ」をきっかけにさらに増えているといい、聞けば、次シーズンに向けて大きな協業企画も進行中だ。この波に乗って、ビジネスをどこまで安定拡大できるかに、今後の自由なクリエイションがかかっている。

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編集長はパリコレで何した?Vol.1  「マメ」「キムヘキム」「ロク」若いアジアパワーで初日がスタート!

 こんにちは。「WWDジャパン」編集長の向(むこう)千鶴です。今週からパリコレ取材に来ています。そこで、毎週頭に掲載している連載「編集は先週何した?」の番外編をパリからお届けをします。1回目は、初日から。アジアの若手デザイナーが元気です!

9月23日(月)18:00
「マメ」を着ると女になれます

 パリコレは「マメ(MAME KUROGOUCHI)」で幕開けです。会場はリュクサンブル公園近くの薬科大学。初日でショーは3つだけで荷物も少ないので、中身がほとんど入らない「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のワンコバッグを連れて、秋の公園を気持ちよく散歩しながら向かいました。

 「マメ」を着ると女になれます。女の子ではなく大人の女性、つまり“ありのまま”を楽しんでいる自分を見つけます。なんて、ナルシストっぽいけど袖を通したことがある方ならわかるはず!繊細な色の重ね方や、サテンやレースなどの素材選び、嫌らしくならない肌の見せ方、見た目はぴったりなのに実は着ていてラクなカッティングなどがその理由です。洗練度が増した今季はさらにバイヤーから引っ張りだこなのでは?個人的には緑色の使い方が特に好きです。

 長年、「マメ」を取材してきた五十君記者によるバックスステージリポートはこちらからどうぞ

19:00
「キムヘキム」

 うわ!これは韓国版「バレンシアガ」だ!と思ったら「バレンシアガ(BALENCIAGA)」出身のデザイナーでした。鮮やかな色、エディ・スリマン(Hedi Slimane)の「セリーヌ(CELINE)」的なロックな黒、極端な形、ゲーム感覚のロゴ使い、スポーティーかつセクシー。自己主張強めで勢いがあります。ベースには伝統衣装のチマチョゴリの存在があり、鮮やかな色彩はそこから。日本と韓国のファッションセンスの違いは、着物とチマチョゴリの色彩の違いなのかな、とふと思いました。会場外で撮らせてもらった2人は「キムヘキム(KIMHEKIM)」のペアルック。似合っています。

20:00
「ロク」で韓国勢の
勢いをビシバシ感じる

 ポスト“オールド「セリーヌ(CELINE)」”の呼び声高く、日本人バイヤーの姿も多数の「ロク(ROKH)」。アウトドアのディテールをトレンチコートなどに取り入れるアイデアが◎で、デザイナーがデザインを楽しんでいる様子が伝わってきます。最後の2ルックで見せたドレスにスケートボードの組み合わせもよい、です。「キムヘキム」と続けて見ると韓国勢の勢いをビシバシ感じます。まだ初日だけど、70年代のフラワーチルドレンは今季のキーワードになりそうかな。

番外
弊社ソーシャルエディターが
パリコレデビュー

 今季のパリコレ取材は、初めて弊社のソーシャルエディターが参戦。これは2日目の「マリーン セル(MARINE SERRE)」の会場前で、招待状でもある折りたたみ傘を片手に、私に無理やりポーズを取らされている彼女です。張り切ってフロントローなどを走り回っていますので、「WWDジャパン」のインスタグラムSNSもぜひチェックしてください!

番外2
「ドリス ヴァン ノッテン」を
衝動買い

 ホテルの近くに「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」の直営店があり、うっかり入ったらうっかり買ってしまいました。パンツスーツ。と、ワンピース。やっぱり今シーズンはジャケットの気分なんですよね。写真はパリコレ中のどこかであげたいと思います。

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映画「タロウのバカ」で話題のYOSHIが俳優になったワケ 大森立嗣監督と3人で座談会

 インフルエンサーのYOSHI(ヨシ)が、上映中の映画「タロウのバカ」の主演に抜てきされたのは、実は彼が14歳の誕生日に取材した「WWDジャパン」の記事がきっかけだったというのは、ごく限られた関係者のみ知っている話だ。菅田将暉、仲野太賀ら人気俳優と共演し、今では、「スッキリ」や「ニュース・エブリィ」が特集を組むなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのYOSHIだが、実は芸能事務所に所属したのは、つい最近のこと。窓口がなかったから、その記事を見てさまざまなメディアからこれまで何度も僕にYOSHIの取材依頼が来ていて、その都度、YOSHIにつなぐというのがいつもの流れだった。YOSHIがメディアで紹介される際には、必ずといっていいほど、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の名前が挙がるが(「オフ-ホワイト」の南青山の旗艦店オープンの際にYOSHIが一緒に写真を撮って話題になったため)、「WWDジャパン」の名前が挙がったことはない。言っていないのだから当然のことなのだが、大森立嗣(たつし)監督がどうやらほかの取材でわれわれのことを話してくれているということを聞いた。だったら、そんな大森監督も交えて話が聞きたい。YOSHI×大森立嗣×僕(「WWDジャパン」記者)で座談会を開いた。

小池裕貴WWDジャパン記者(以下、小池):僕が以前書いたYOSHI君の記事を監督が見てくださったとか。それで監督のチームの方から僕に連絡が来たんですね。

YOSHI:ほんと随分前のだよ。トランプルーム(7月に閉店)の松村社長が俺の誕生日会をやってくれたんだけど、その時に小池君が来て。

小池:それより前に「ドロップトーキョー」のスナップ(ヴァージルより先!)でYOSHI君を見て、オシャレな中学生がいるなと、インスタグラムでフォローしていたんですよ。そしたらYOSHI君の手書きで「誕生日会をやるからみんな来てね」って写真が突然フィードに流れてきて。それで「行っていいですか?」みたいなメッセージを送ったんです。

YOSHI:覚えてる!どうぞどうぞ、みたいな。15人ぐらいしか来なかったんだけどね(笑)。

小池:監督が読んでくださったのはその時のインタビューなんですが、まず、あの記事を見てどう思ったのか気になりまして。

大森立嗣監督(以下、大森):普段、俺が会っている子役はどこかこう、ちゃんとしているというか、大人になっちゃっているというか……。とにかく、写真とか、言っていることとか、誰にも操られていない感じがしたんですよね。好き勝手に服を着ているところとかも。それで、映画の主人公として興味を持ったのが最初です。(プロスノーボーダーの)平野歩君の生意気な面構えみたいなのが、役にぴったりだなと思っていたんですけど、彼が演技できるわけではないし、なかなかそういう子がいなかったんですよ。自分の存在を示そうとしている感じがいいなと思い、とにかく会いたいと。

小池:写真も僕がiPhoneで撮ったものですね。当時は(YOSHI君の使っていた)スマホもお母さんのだったので、何か依頼があったらお母さんを経由して連絡を取っていました。で、この映画の話をした時も演技のことで心配をされていて。とりあえず、監督が会いたいとおっしゃっているんで、会ってみたらどうですか?と。オーディションってどうだったんですか?

大森:いや、オーディションっていうか、最初は会って会話しただけなんですよ。

YOSHI:そう。ほんと「What's up?」みたいな。俺は監督が誰かすら分からなかったし(笑)。

大森:挨拶して、おしゃべりしただけなんです。実はタロウの役の公募を大きくかけていたので、それがまだ残っていたりして、自分の中ではほぼYOSHIに決まっていると思っていても、決めるに決められない状況がありました。

YOSHI:2回呼ばれて、そこから2週間ぐらいで決まったんだよ。で、俺は遅刻癖がひどすぎて怒られて怒られて……(汗)。

小池:ロケ中は下宿していましたよね?

大森:そうですね。ロケ中はYOSHIにスタッフと一緒に劇中のタロウの家に住んでもらいました。そこでセリフを覚えたりもしてもらった。

小池:監督はいつも、普段の生活から役作りをさせるんですか?

大森:いえ、初めてです。ただ、YOSHIが寝坊して来なかったら1日終わっちゃうなと思って。俺や(映画に出演した仲野)太賀もたまにそこに泊まったりしていました。

YOSHI:超楽しかったよ。たっちゃん(大森監督)は、いいイビキかいてたよね(笑)。

小池:映画も観させていただきましたが、演技もすごかったですね。叫んでて。演技指導とかは?

大森:クランクインするまでに5~6回練習したかな?会話しながらなんとなく映画の雰囲気を掴んでほしいなと。あとはアクションの動きとか。

小池:暴力シーンもありましたね。

YOSHI:俺これ本当に蹴るのかなって、最初ビビッてた。

大森:そういう、実際は当てないんだよ、ということとかは教えなきゃいけないので。そのためにカメラはココに置いて、ココから撮るよとかは細かく教えていました。そうしないと現場で時間が掛かってしまうので。

YOSHI:すごくテンポよかったよね。

小池:撮影中も何度か制作部の方に現場に来てみませんか?とお声掛けいただいたんですけど、テンポが早過ぎて全然時間が読めないと、結局行けなかったんですよね。

YOSHI:気が付いたら毎日終わっちゃってた。

大森:で、みんなで風呂入ってたもんな。

小池:初演技で緊張しなかった?

YOSHI:緊張はしなかったよ。でも一番「これはできないかな」と思ったのが、泣くシーン。プライベートの自分もそうなんだけど、泣くっていうのは自分にとってすごくカッコ悪いことだから、どうやって泣けばいいんだろうって前日からずっと考えてた。

小池:監督からはどんなアドバイスを?

大森:泣きたくなかったら泣かなくてもいいよって。タロウはYOSHIなんだから任せるよと。ト書きに泣くって書いてあっても本人がそんな風にならないなら別にいいかなって思っちゃうんですよね。

小池:映画がこれだけ話題になってますけど、新人を使うリスクもあったのでは?

大森:心配性な性格だけど、俳優に関しては決めた時点でなるようになるだろうと割り切ってました。まぁ本音では、そりゃあ最初は心配じゃないですか。ただ、現場に入ったら変わるだろうなと。やりながら変わっていくという感覚はあったんですね。

YOSHI:俺は初日の一発目で決まるなと思ってた。そこで現場の空気をつかめたらいける、つかめなかったらもうダメだと思っていたから。

小池:それで、初日は上手くいったんだ?

YOSHI:もう最高だったよ。「俳優できる!」って思った。バシッと演技して、カットがかかって、これキタ!って。

小池:ヴァージルとか(「アンブッシュ」の)YOONとか、ファッション業界でも早くから注目されていますけど、監督から見てYOSHI君の何が魅力だと思いますか?

大森:型に収まんないところじゃないですか?ファッションはものすごい勢いで流行が変化していくし、映画の方がゆったりしているなと思うんですけど、そういう中でも目に付くっていうのは、すごい飛び抜けた瞬発力を持っているんだと思います。

YOSHI:ファッションでいうと、俺はそろそろ70’sのファッションが来るんじゃないかと思ってるんだよね。今ずっとストリートで90’sでしょ。

小池:古着とかヒッピーとか?

YOSHI:うん。でもそろそろ新しい起点を作りたいんだよ。勢いがないじゃん。全て型にハマっちゃってるっていうか……。同年代の中にも生きる目的を見つけられてない人も多いから。だからそういう意味でも「タロウのバカ」を体感して欲しい。ジェットコースターに乗ってるみたいに何も考えず、フィーリングで観て欲しい映画だなと思う。

小池:まさに「タロウのバカ」だね。目的がなく空虚感に襲われちゃうみたいな。

YOSHI:日本もバブルの時はすごく勢いがあったっていう話を聞いて、それと比べると今の社会って行き場が無くなっちゃってるっていうか、目的を探しづらいというか……。俺にとっては目的って大事で、目的を持たない人生は終わりだと思っているから、自分の活動することで、そうじゃない世の中を作りたい。

小池:こういった若者の言葉をどう思いますか?

大森:多分、今の話を聞いて、やっぱりマーケティングで作られているモノが多いのかなって気がします。それよりも誰かの強い思いでできているものとか、俺自身、そういうモノに感動したりするんですけど。ビジネスになりすぎているものじゃなくて、誰かのアツい熱の元にあるモノの方が感動できる。

小池:YOSHI君のインスタグラムを見ていても思うけど、リアルのダダ洩れみたいなのがいいんでしょうね。

YOSH:型にハマりたくないし、常に尖っていたい。ありのままの自分っていうのを今後どれだけ出していけるのかって言うのが大事だと思ってる。もっと表面的じゃなくて、内面的な社会になればいいなと思うんだよね。例えば敬語も使えるけど、タメ語の方が感情が伝わるじゃん。英語には敬語がないし。日本のそういうところが、内面的にリスペクトできないようになっている理由なんじゃないかなって思う。

小池:撮影中を振り返るとどうですか?

大森:もう無茶苦茶。すぐ全裸になるし(笑)。

YOSH:(私有地で)撮影で使ったバイクでツッコんで、危うく人を轢くところだった(笑)。

小池:監督は長く芸能界を見てきて、こんなコいました?

大森:あんまりいないかも知れないですね。例えば松田優作さんがすごく破天荒だったとか、そういう伝説はいっぱい聞きますけど。内田裕也さんとか、新幹線に乗る時に(改札で)「内田裕也!」って言って、勝手に改札を入っちゃったりするところとかを見たこともあるんです。俺は、そういう破天荒と言われていた人たちの最後の世代を見てきただけなんですけど、今は映画界というか芸能の世界自体が小粒になってる感じはしています。YOSHIを見ているともっと面白くできるかなと思いますね。うちの親父(俳優の麿赤兒)にもYOSHIに会ってもらったんだけど……。

YOSH:マロちゃんね!

大森:ははは(笑)。まぁそういう親父世代の役者たちがどんどん亡くなって、だんだん小粒になっていった時に、モノ作り(作品)自体がどんどん小粒になっていっていると感じていたんです。それはなぜかというと多分、受け入れる側が、例えばYOSHIみたいな人を見つけても、事務所に入っていないからダメだとか、寝坊するし危ないからやめようとか、コンプライアンスをとったらそれで終わっちゃうんですよ。それをむしろ俺たちが受け入れていくことで、俺たち自身が変化していくんだということを考えさせられたんです。

YOSHI:現場の空気感もすごくよかった。

大森:だから現場のスタッフもYOSHI を見て喜んじゃって。

YOSHI:単純に楽しかった。

大森:それが一番ですよね。(菅田)将暉や太賀もそういうところがあるんですよ。

小池:菅田将暉、太賀という人気俳優を脇に添えるというのも監督として攻めた部分ではありませんか?

大森:彼らをYOSHIと会わせるためにみんなを誘って飯に連れて行ったんです。そしたらYOSHI を見た瞬間にみんな「何だコイツー!?」みたいに盛り上がってくれて。

小池:麿さんはなんて?

大森:「いきなりデカい孫ができたな」なんて言って喜んでいましたね。

小池:映画では、ダウン症の方とも一緒に演技するシーンがあったね。

YOSHI:最初はダウン症の人を監督が選ぶのはどういうことなんだろうと思ってたりしたけど、この映画は普段の俺たちが生活をしているだけでは分からないようなことを描いているから、振り返った時になるほどなって分かった。

大森:映画の世界ってすごく縦社会なんですけど、この現場だけすごくフラットだったんです。それは、YOSHIもそうだし、将暉や太賀、ダウン症の彼らもそう。YOSHIの存在があるからみんなが並列になれた。俺と将暉、俺と太賀でも違う風になっちゃうんですよ、映画を知ってしまっているから。YOSHIが無茶苦茶だからいいんだよね。

小池:監督にとって、YOSHI君はどんな存在ですか?息子みたいな?

大森:友だちですかね。俺、そういう付き合いしかできないんですよ。(長野の)白馬に親父の公演を一緒に観に行ったんですけど、グッパーして部屋決めしたら俺とYOSHIが同じ部屋になっちゃって。友だちみたいに楽しかった(笑)。

YOSHI:俺はそういうフラットな世の中になればいいなと思うんだよね。

小池:今後はYOSHI君にどうなって欲しいですか?

大森:友だちとしては、枠に収まらないでこのまま突き進んでほしいですね。映画監督としては、好きなことを楽しんでもらいたいけど、俳優をやってほしいとか言うと、つまんなくなっちゃうかなという思いもあるんで。

YOSHI:もし次出る作品があったら、たっちゃんが全部チェックして(笑)。

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パリコレ2日目のハイライト 「ディオール」が高らかにサステナ宣言、「サンローラン」はパリシック全開

 パリコレ2日目は、「ディオール(DIOR)」や「サンローラン(SAINT LAURENT)」などがパワフルなショーを見せ、若手「「マリーン セル(MARINE SERRE)」もスマッシュヒットを飛ばした。

ディオール(DIOR)

DESIGNER/マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)
 
 リリースの冒頭には「考えなければならない。私たちがすべきことを」というメッセージ。それは、「ディオール」が地球環境へ配慮した活動を本格始動させる宣言だ。今季の着想源は、ムッシュ・ディオールの妹であるカトリーヌ・ディオール(Catherine Dior)の写真。庭師でもあったカトリーヌが手入れしていたディオール家の庭園の植物やそこに生息する生物などからヒントを得た。

 会場演出は、園地栽培に取り組むアーティスト集団、アトリエ コロコとの協業でテントの中に原産地が異なる木々を配して森を再現。それらはショーの後には移設し街づくりに生かされるという。“ガーデン”は「ディオール」の象徴だが、現代の“ガーデン”は単に花を愛でるのではなく、生態系に配慮し育てつつ愛するという力強いメッセージが伝わってくる。

サンローラン(SAINT LAUREN)

DESIGNER/アンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)

 今季もエッフェル塔を臨む特別野外会場でショーを行った。夜空を突き刺す光の柱の間を歩いてくるモデルは、ボウブラウスにコンパクトなタキシードジャケットという、これぞ「サンローラン」なスタイル。ラメジャカードのボヘミアンドレスを挟みつつ、最後はキラキラと明滅するエッフェル塔を背景にもう一度ドレッシーなスモーキングルックを見せる。トレンドがどう変わろうと、“パリシック”とはこれなんだと見せつけるようなパワフルなショー。自信みなぎるナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)のウオーキングでフィナーレ。春夏なのに、思わずロングブーツが履きたくなる。

マリーン セル(MARINE SERRE)

DESIGNER/マリーン・セル(Marine Serre)

 これまでもサステイナブルや環境問題をテーマにしてきたが、今季はより大きく一歩を踏み出した印象。気候変動や熱波、大量絶滅など世界の終焉を地下深くで生き延びた人類を主人公にした架空の物語を設定。気温が上昇し、油と水で荒れた地に戻り、環境に適応し力強く生きる種族を描いた。

 最初の種族は油にまみれたような黒の服。シグニチャーの三日月柄を型押ししたレザーやプラスチックをリサイクルしたエナメル調のフィールドコートなどを着る。2番目の種族は砂漠で生きるため、赤とブラウンのジャカードの服を着ている。得意のスカーフを用いたドレスは、ダイバースーツと合体させた。3番目の種族は、旧世界のものを再利用。テーブルクロスを再利用した大きなかぎ編みのニットや、ベッドシーツをアップサイクルしたドレスなどが登場する。気温が上昇した世界故、スーツもタオル生地だ。

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「日常感のある体験は、自然で双方負荷の少ないPR」 ファッションフリークOL最新号の「WWDビューティ」につぶやく

 1992年生まれのファッションフリーク女子が、今週のビューティ週刊紙「WWDビューティ」で気になったニュースを要約してお届け。渋谷のファッションベンチャー企業に勤める等身大OL、Azuがリアルな目線を生かし、「このニュースからはコレが見える」という切り口でさまざまな記事につぶやきます。

今日のニュース:P.5「『エアー』と『バルクオム』がコラボ ヘアサロン『エアーオム』をオープン」

読み解きポイント:「誰が言うか」も大事だけど「体験の場所」が超重要

ニュースのポイント

 ヘアサロン「エアー」とメンズスキンケアブランド「バルクオム(BULK HOMME)」が9月25日、東京・南青山にメンズビューティに特化したサロン「エアーオム(AIR HOMME)」をオープンする。美容室としてのメニューはもちろん、「バルクオム」製品を使用した限定メニューも用意。従来のサロンの枠にとらわれず、「エアーオム」ならではの特別な体験提供に注力する。

AZUはこう読む!

 ほんの少し前まで「メンズがスキンケアなんて意識高すぎ〜」と言われていたのに、気がつけばそれはおかしくもなんともない時代になってきました。私の周りにもいわゆる美容系男子ではないけれど、洗顔、化粧水、乳液までデイリーに行うメンズは普通にいます。

 昨今の日本のメンズビューティ界に大きなインパクトを与えたのは、「バルクオム」。2013年にブランドをスタートし、17年に株式会社として運営元から独立。メンズ向けスキンケア製品のサブスクリプションブランドとして成長し、いまではボディ、ヘアケアも展開。20年にはアメニティー事業にも本格参入するなど、「メンズビューティ」をトレンドではなくライフスタイルへと押し上げる立役者です。

 今回のサロンオープンも、そんな動きの一つ。男性が美容サロンに行くハードルはまだまだ高いですが、美容室とセットになれば敷居は下がるのではないでしょうか。女性も利用可能とのことなので、施術後に褒め合う「キャッキャ、ウフフ」の美容デートを楽しむも良しです。多分(笑)。

 渋谷と恵比寿の間にある老舗銭湯「改良湯」にも、今年から「バルクオム」が置かれています。女子なので使う機会がありませんでしたが、使ってみると「スッキリ!メントール!」的なメンズ感がなくて良かったです。これなら男女問わず使えそう(だからアメニティー事業もハマるのだなぁと思ったり)。やはり美容系製品は、体験してもらうことに勝る施策はありませんよね。いくらインフルエンサーが「これいいよ!」と言ったところで、自分の肌に合うかどうかなんてわからないんですから。

 ポップアップなどの高揚感あるイベントで体験してもらうのではなく、「目の前にあったから使ってみた」くらいの日常感がある体験は、ナチュラルな動線で双方負荷の少ないPRになって良いなぁと思います。それができるのって、親和性のある業態と協業した体験の場づくりなのかなと、サロンと銭湯を例に思いました。

 ちなみに銭湯は好きでよく行きますが、脱衣所は消費者的には「目の前にあるものを使う」ので逃げ場がなく、企業的には「絶好のPR の場」だと思います。美容製品と相性の良いおしゃれ系銭湯は、スキンケアや美容家電などに力を入れると良いのでは〜と、サウナに入りながらぼんやり考えたりしています。

Azu Satoh : 1992年生まれ。早稲田大学在学中に渡仏し、たまたま見たパリコレに衝撃を受けファッション業界を志す。セレクトショップで販売職を経験した後、2015年からファッションベンチャー企業スタイラーに参画。現在はデジタルマーケティング担当としてSNS運用などを行う。越境レディのためのSNSメディア「ROBE」(@robetokyo)を主催。趣味は、東京の可愛い若手ブランドを勝手に広めること。ご意見等はSNSまでお願いします。Twitter : @azunne

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卓越したクラフツマンシップを生むファミリービジネス イタリア発「ファビアナフィリッピ」の魅力


 「ファビアナフィリッピ(FABIANA FILIPPI)」は、ジャコモ・フィリッピ(Giacomo Filippi)とマリオ・フィリッピ(Mario Filippi)の兄弟によって、1985年にイタリアのウンブリア州で創業されたブランド。ジャコモの妻ドナテラ・フィリッピ(Donatella Filippi)がデザインを担い、ファビアナとはジャコモとドナテラの娘の名前。ファミリーの手により、情熱と実用主義という理念のもと生み出されるコレクションは、ラグジュアリーかつ現代的なスタイルを表現している。卓越したクラフツマンシップと厳選された素材、繊細なディテール、倫理への高い意識にこだわったモノ作りがブランドの特徴だ。そんなブランドを代表するのは、“ファビアナ・グレージュ”と称されるカラートーン。ベージュからグレーまでの絶妙なニュアンスが、女性たちを優しく包み込むとともに凛とした輝きを放つ。

糸から独自にブレンド 
徹底したメード・イン・イタリー

 「ファビアナフィリッピ」の本社は、自然と文化に恵まれたウンブリア州ペルージャ県ジャーノ・デッルンブリアにある。ウンブリア州はニットの産地として知られ、同ブランドも他社メーカーのニットの生産からスタートした。1990年に初めてオリジナルのニットジャケットを発表し、92年に現在のロケーションに本社を移転。成長とともに増築を続けてきた。現在は、約1万平方メートルの空間にデザインアトリエをはじめ、サンプル製造やニットの生産、クリーニング、検品までを行う部門を擁し、約200人が働いている。大切にしているのは、真の“メード・イン・イタリー”を体現する丁寧なモノ作りだ。特に、ブランドの歴史を物語る100%カシミアの糸や、カシミアとシルク、オーストラリアンメリノウールを組み合わせて独自に開発した糸「プラチナ」から生み出されるニットは、その魅力を象徴している。

ドラマチックだけどリアル
 今秋冬は1980年代から着想

 2019-20年秋冬は、映画のようにドラマチックでありながら、リアルな都会の風景も想起させる1980年代の雰囲気を表現している。エレガンスと現代的な仕立てを併せ持つバランスのとれたワードローブを提案する。洗練されたレイヤードスタイルや程よいボリューム感、メタリックディテールやテクニカルな素材が特徴。メンズウエアをセンシュアルに再解釈したタキシードジャケットやチェックのセットアップスーツから、フェミニンなドレスまでがそろう。また、ブークレのケープやダブルフェースのカシミアコートなどアウターも豊富だ。コレクションの要となる素材は、柔らかなモヘア、光沢のあるベルベット、アンゴラ、スパンコールが織り込まれたオーガンジーなど、どれも非常に上質で着心地も抜群だ。

チュールスカートがヒット中
 大人の女性にこそ似合う
シルエット

 ニットに強みを持つ「ファビアナフィリッピ」だが、19年春夏からヒットしているのがチュールスカート。ブランドが得意とするグレージュトーンのロング丈のチュールスカート(10万9000円)を雑誌「プレシャス(Precious)」と組んで4月に打ち出したところ、これまでに450枚が完売。その後も問い合わせが続いている。しなやかなチュールを重ねた流れるようなシルエットが好評の秘けつで、ボリュームが出過ぎないため、大人の女性に似合うチュールスカートとして支持されている。19-20年秋冬も、引き続きチュールスカートやチュール素材のドレスを充実。華やかな雰囲気は冬のパーティーシーンにもぴったりだが、ニットと合わせれば普段使いもできる便利なアイテムだ。

原動力は、ファミリーから
受け継いだ価値観

 「起業家として生きるという夢を叶えるにあたり、ウンブリアの強みである確かな職人技術を生かしたかった」と、ブランド設立のきっかけを振り返る創業者のジャコモとマリオ。そんな彼らの原動力になっているのは、「誠実さ、敬意、他者への貢献というファミリーから受け継いだ価値観」だ。それを従業員にも伝え、意識を高めているという。「ウンブリアで生まれ、『ファビアナフィリッピ』を通して、国際的な視点を持ちながらも地元の価値、品質と創造性を生み出していく過程に携われることは、われわれの高いモチベーションにつながっている」。20年には、会社として35周年、ブランドとして30周年を迎える。「自分たちのルーツや過去に成し遂げたことの先に未来がある。品質と創造性という二つの重要なファクターに今後もこだわり続ければ、継続して進化していくことができると考えている」。その上で真摯に取り組んでいるのは、美しいものに囲まれた環境の保護に加え、新しい世代の育成だ。「無限の可能性を秘めた彼らは、私たちの未来への鍵であると確信している」。

TEXT:JUN YABUNO
問い合わせ先
ファビアナフィリッピ/アオイ
03-3239-0341

 

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「僕が求めるのは、自由なクリエイションができる環境だ」 ジャンポール・ゴルチエが語る現代ファッションの明暗

 アンドロジナス(性の差異を超えた自由なファッション)やアンダーウエアルックといったアヴァンギャルドなクリエイションで1980年代のファッションシーンを席巻し、40年以上にわたって業界をけん引してきたファッションデザイナー、ジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)。これまでに著名なアーティストのコスチュームや映画衣装のデザインを担当し、近年は自身の半生を描いたミュージカル「ファッション フリーク ショー(Fashion Freak)」を公演するなど、コレクション以外の領域でもその才を発揮している。そんなゴルチエ=デザイナーと深いつながりを持つオンワードホールディングス(以下、オンワード)が、彼が生み出してきた作品を振り返る企画展「エクスパンディング ファッション バイ ジャンポール ゴルチエ(EXPANDING FASHION by JEAN PAUL GAULTIER)」をカシヤマ ダイカンヤマ(KASHIYAMA DAIKANYAMA)で10月13日まで開催中だ。同展の開幕に合わせて来場したゴルチエ=デザイナーに、表現の場を横断しながらクリエイションを追究する理由や、現代のファッション業界の明暗などを語ってもらった。

WWDジャパン(以下、WWD):今回の企画展に至った理由は?

ジャンポール・ゴルチエ=デザイナー(以下、ゴルチエ):カシヤマ ダイカンヤマがオープンした際に「何かイベントをやらないか?」と誘いを受けたことが始まりだ。オンワードとは古くから付き合いがあり、私のデザイナーとしての活動はオンワードの存在なしでは語れない。

WWD:オンワードとはいつからつながりがある?

ゴルチエ:キャリアをスタートさせた当初からだ。1976年に自分のブランドを立ち上げ、最初の3回は自力でショーを行った。しかし、4回目の資金を賄えず、どうしようかと迷っていた時期があった。ちょうどその頃、パリのあるショップが新人デザイナーを募集していた。それに応募し、デザイナーとして働いた報酬を元手に4回目のショーを行った。そのショップこそ、樫山(現オンワード樫山)がパリで運営していた「バス ストップ(BUS STOP)」だった。その後、日本でのライセンスビジネスや直営店の運営など、オンワードと共に幅広いビジネスを行った。オンワードは、僕にとってファミリーのような存在で、切っても切れない大切な縁がある。

WWD:今回はオートクチュールの展示に加え、過去のプレタポルテを再現したアイテムを販売する。復刻アイテムには現代的なデザインを加えたか?

ゴルチエ:新たな要素は一つも加えていない。80年代に描いたデザイン画をもとに、当時の服を忠実に再現しただけだ。しかし、どのアイテムも今の時代との違和感はない。ハイウエストのスカートなどは今のトレンドで、最新のコレクションにさえ見える。復刻するアイテムを選ぶ際に、オンワードから「この時代のこのアイテムはどう?」と提案してもらったことで、客観的にアーカイブを振り返ることができたのもよかった。

WWD:2015年からプレタポルテの発表を休止し、オートクチュール・コレクションに専念している。その理由は?

ゴルチエ:プレタポルテは40年以上やってきた。当時はクリエイターの先駆けとして、自分の発想をそのままクリエイションに生かすことができた。しかし、今のプレタポルテは、ビジネスの世界、マーケティングの世界で、制約がすごく多い。僕が求めるのは、自分の発想を自由に表現できる環境だ。

WWD:ビジネスの制約以外の理由はあるか?

ゴルチエ:コレクションの幅を広げすぎて、一つ一つのクリエイションに集中できなくなったのも問題だった。プレタポルテでは、メンズとウィメンズに加え、キッズまで手掛けていた時期があり、多いときは年に6回、プレ・シーズンも含むと最大で12回もショーをやっていた。表現の手段は時代によって変化するし、多くのショーを行うやり方も当時はよかったのかもしれない。しかし今は、職人による刺しゅうといった伝統工芸を生かした表現に時間を費やしたいと思っていて、それを実行するにはオートクチュールが最適だ。

WWD:オートクチュールに専念し、ビジネス規模は縮小した?

ゴルチエ:確かに利益は少なくなったが、ショーで発表した服は毎回完売するし、次のショーを行う資金は十分賄える。また、オートクチュールはプレタポルテのようにSNSマーケティングやイメージビジュアル作りに注力しなくとも、純粋に服の良し悪しでコレクションを評価してもらえる。大量生産・大量消費・大量廃棄のプレタポルテに比べて、いたって健全なビジネスだ。オートクチュールは一点物で、色はもちろん、同じデザインがあってはならない。そのルール自体を楽しみながら、毎シーズンの服作りに没頭している。そしてなにより、顧客一人一人に向けて最大のクリエイションを発揮できるのは、クリエイター冥利に尽きる。

WWD:04〜11年には「エルメス」のウィメンズウエアのデザインを担当していた。現在はシグネチャーブランドに専念しているが、その理由もクリエイションの制約を避けるため?

ゴルチエ:かつて「エルメス」のデザインを手掛けたのは、メゾンの世界観を守りつつ、自分の発想をどう生かせるかに挑戦したかったから。その実験は十分にできたし、そこにはもはや関心がない。今は自分のブランドで自由にオートクチュールを作っているうえ、ミュージカルという新たな表現にも取り組んでいる。この2つをもっと面白くすることしか考えていない。今、どこかの老舗ブランドからデザイナーの誘いを受けても、「もう遅いよ」と答える。「こんな僕に依頼せず、若い人が活躍する場をつくってあげて」と。

幼少期に抱いたエンターテインメント界への憧れ、現代ファッションの明暗

WWD:ミュージカルにはもともと興味があった?

ゴルチエ:そうだ。幼いころから映画をよく見ていて、9歳のときに演劇や映画の世界に入りたいと思い始めた。もともとは、ファッションよりもエンターテインメントの世界への関心の方が強かった。しかし、13歳のとき、ファッションデザイナーの恋模様を描いた映画「偽れる装い」(1945年仏、ジャック・ベッケル監督)と出会い、その考えが変わった。ランウエイを歩くモデルが拍手喝采を受けているシーンを見て、「こんな世界があるのか!僕はこれをやるんだ!」と決め、ファッションデザイナーを志した。ミュージカルはすでにヨーロッパで公演していて、時期は未定だが日本での公演も決まっている。日本公演はオンワード樫山がスポンサーになってくれる予定だ。

WWD:現在のファッション業界のよいところと悪いところは?
ゴルチエ:よい点は、かつてのクリエイションやプロダクトの価値が再認識されていること。特に若い人にこの傾向が強く、ビンテージを今っぽく着こなしたり、リサイクル品をリメイクして取り入れたりしている。情報が溢れる中、自分の感覚を大切にして、自分なりにファッションを楽しむのは素晴らしいことだ。一方、悪い点は、世の中に服が溢れすぎていること。ファッションブランドの中には、大量にアイテムを作っておいて、売れなかったものを焼却してしまうところさえある。それなら、最初から売れる分だけを生産すべきだし、残った服はリサイクルするなどの手段を講じるべき。ブランドイメージを保つために廃棄するのは、あまりにも無責任だ。

ゴルチエから見た日本のジェンダーレス

WWD:アンドロジナスはジェンダーレスのクリエイションの先駆けでもある。今はジェンダーレスがムーブメントになっているが、日本ではまだまだその考えが浸透していないと考えられる。

ゴルチエ:僕は日本でジェンダーレスが遅れているとは思わない。メンズとウィメンズのカテゴリーに関係なく服を選び、自由にファッションを楽しんでいる。特に日本の男性は、ヨーロッパよりも圧倒的に自由で、先進的だ。伝統的に見ても、日本には袴の文化が根付いており、それは現代のスカートに通ずるものでもある。歌舞伎などの伝統芸能の衣装は、丸みを帯びたフォルムを採用して女性らしい優しさを備えつつ、硬い素材で男性らしい力強さを付加するなど、性別を超えたクリエイションが詰まっている。さらに、紐の結び方や服の色使いなども非常に繊細だ。こういった点も、日本人のファッション感度の高さを裏付けている。

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老舗百貨店ロード&テーラーが新興サブスク企業の傘下になった理由 鈴木敏仁のUSリポート

 アメリカ在住30年の鈴木敏仁氏が、現地のファッション&ビューティの最新ニュースを詳しく解説する連載をスタート。第1回は新興サブスク企業ル・トートによる老舗百貨店ロード&テーラーのM&A。新旧の勢力逆転を象徴するようなニュースだが、両社にはどのような思惑があるのか。

 カナダのデパートメントストア・チェーンの最大手、ハドソンズ・ベイ・カンパニー(HUDSON'S BAY COMPANY)が傘下の米百貨店ロード&テイラー(LORD & TAYLOR)をル・トート(LE TOTE)というデジタルネイティブな衣料サブスク企業に売却すると発表した。ハドソンズ・ベイはここ数年国外事業の見直しを進めていて、ヨーロッパは今年6月にドイツ事業の売却を決め、最後のオランダ15店舗は年内に閉鎖する予定であるほか、アメリカではサックス・フィフィス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)のみを残してロード&テイラーは売却するだろうと業界では見られていた。

 そういう意味では想定内なのだが、しかしながら相手が新興デジタル企業のル・トートという点で業界関係者を驚かすに十分なディール(取引)なのである。

取引条件から透けて見えること

 売却総額は1億ドル(約107億円)で、これによってル・トートが獲得するのは、ブランドや固定資産に付帯する知的財産、38店舗の運営権、デジタルチャネル、在庫となっている。つまり固定資産がないのである。ロード&テイラーは1824年創業の老舗中の老舗なのだが、ブランド価値は正直言うと老舗だというぐらいで、ル・トートが持っている若年層の顧客にはほぼアピールせず価値は低い。これを1億ドルで買うのはけっこうリスキーである。

 実はディールにはいくつか条件が付帯している。総額は1億ドルだが、最初に7500万ドル(約80億2500万円)のキャッシュ、2年後に2500万ドル(約26億7500万円)の担保付き約束手形という分割払いとなっている。またハドソンズ・ベイはロード&テイラーの家賃を最低3年間は支払い(推定年間7700万カナダドル、5790万米ドル)、2021年から両社が店舗を再査定してハドソンズ・ベイが店舗を再開発できるというオプションが付いている。ル・トートにとってのリスクを緩和する条項が付いているのだ。

 一方、ハドソンズ・ベイはル・トート資本の25%を獲得し取締役会の2席を獲得する。つまりハドソンズ・ベイはル・トートと資本関係を結びつつ経営にも関与することになるのである。

 こういったオプションからは、リアル店舗のノウハウを持たない新興企業のル・トートにそれでも“売りたい”という意思のようなものを感じつつ、一方でル・トートを取り込んでしまおうという思惑も透けて見えてくる。

 ハドソンズ・ベイの大株主は57%を所有するNRDCという投資企業だが、総帥のリチャード・ベイカー(Richard Baker)氏は商業不動産開発運営からスタートし、06年に買収したロード&テイラーをテコにしてハドソンズ・ベイまでたどり着いたという歴史を持っている。デジタル企業を次の買収対象として視野に入れていると考えるのは自然である。新興デジタル企業に手を延ばしてその人材やノウハウに触れることで、ハドゾンズ・ベイやサックスに変革がもたらされる期待感もあるのではないかと私は考えている。

プロパーもサブスクもまとめる

 衣料市場は、プロパー、中古、レント(サブスク)、リアル、ウェブ、モバイル等々と販売形態やチャネルが分化しているが、アメリカ最大の百貨店メイシーズ(MACY'S)が中古ファッションブランドECのスレッドアップ(THRED UP)と提携して専用売り場を導入するように、百貨店業界ではこれらをすべてまとめてしまおうという動きがあり、ル・トートによるロード&テイラー買収はその動きの一つと理解することができる。

 おそらくサブスク売り場がリアルに登場するのだろうし、また既存のロード&テイラーのマーチャンダイジングがサブスクにも生かされることだろう。なによりもデジタルネイティブなブランドにとっては、露出がネットの世界だけというのが強みでもあり弱みでもあるため、リアルな世界に出て行くことで顧客拡大につながるという期待が持てるし、ロード&テイラーの高年齢層顧客データも得がたいものになるだろう。

 しかしながら、チェーンストア運営の経験がない企業によるチェーンストア買収が成功した例というのは私の記憶にはなくて、失敗しか思いつかない。デジタル企業がリアル企業を買収して成功した例も今のところない。アマゾン(AMAZON)によるホールフーズマーケット(WHOLE FOODS MARKET)買収はいまだ途上だ。変革できなかった保守的な組織を変えるには相当な困難が待ち受けていることだろう。

 新興デジタル企業が老舗リアル企業を買収するといういかにも時代を象徴するような話ではあるのだが、その成否についてはまったく予断を許さない。われわれはこれから興味深い実験を目のあたりにすることになるのである。

鈴木敏仁(すずき・としひと):東京都北区生まれ、早大法学部卒、西武百貨店を経て渡米、在米年数は30年以上。業界メディアへの執筆、流通企業やメーカーによる米国視察の企画、セミナー講演が主要業務。年間のべ店舗訪問数は600店舗超、製配販にわたる幅広い業界知識と現場の事実に基づいた分析による情報提供がモットー

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「マメ」2020年春夏はパリコレトップバッターでも自然体 「トッズ」とのコラボも公開

 「マメ(MAME KUROGOUCHI)」が、2020年春夏パリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)公式スケジュールのトップバッターとして、9月23日にランウエイショーを行いました。18-19年秋冬からパリでの発表を続けており、今回で4シーズン目。公式スケジュールでの発表はブランド初です。公式スケジュールになると、注目度はぐっと上がります。そんな節目のシーズンをガッチリ取材しようと、ショー開始の少し前にバックステージを訪ねました。

 会場は、緑いっぱい花いっぱいのフランス庭園が美しいリュクサンブール公園そば。薬科大学の回廊です。公式スケジュールのトップバッターということで、現場はさぞピリピリしているのかと思っていましたが、モデルもヘアメイクもフィッターも、皆さん非常にリラックスしたムード。構内で挨拶した黒河内さんもふんわり柔らかく自然体で、思わずちょっと拍子抜けしました。

 黒河内さんに今から約4年前にインタビューした際、「(ブランドとして認知が上がり、スタッフも増えて責任は増しているけれど、だからこそ)作ることにもっともっと自由でいたい。ブランドの成長に合わせて変わらなきゃいけないというより、むしろ子どものような感覚や初心に戻ろうとしている」といったことをおっしゃっていたんですが、パリでも自然体の黒河内さんを見て、それを思い出しました。この人はパリに行って、また一つ階段を上がってもそういった部分は変わらないんだなと実感。

 いや、いつでも自然体でいるということは、そうあるように黒河内さんが猛烈に努力している結果なのかもしれません。アスリートが心身を鍛えて常に最高のパフォーマンスを出すように、黒河内さんも強い精神力でどんな時も平常心であるよう努めているのかも。それを周囲に感じさせないところが彼女のすごいところです。そういう、たおやかだけれど芯の強い女性像って、まさに「マメ」の描くイメージと重なりますよね。

 さて、前置きが長くなりましたが、肝心の服はというと、今シーズンはグリーンの色使いが印象的です。そして何層にも重なるレイヤードがポイント。ジャケットの肩からバッグを掛けて、その上からメッシュのドレスを重ねてすっぽり包んでしまうといったスタイリングが目を引きました。「マメ」の服って、11年春夏のスタート以来、黒河内さんの日々の生活や心の動きに非常に密着していて、彼女のパーソナルな部分のダダ洩れといってもいいものです。今シーズンは一体どんなことに心が動いたのかと黒河内さんに尋ねると、まず最初に返ってきたのは「勉強のために、カイコをアトリエで飼い始めたんです」という言葉。……えっ、カイコですか?

 黒河内さんが素材研究に非常に熱心で、日本各地の素材産地を頻繁に回っていることは有名です。ゆえに、彼女は産地の職人さんたちからすごく愛されています。それが高じて、とうとうアトリエでの養蚕につながったということなんでしょう。「カイコの幼虫がサナギになり、自身を繭で包んでいくのを観察していると、神秘的ですごく美しかった」と話は続きました。そこから“包む”ということのリサーチを始め、日本のアートディレクターの草分け的存在、岡秀行さんの書籍「包む」に行きついたとのこと。「マメ」の服には、色使いやディテールに日本的な感覚が色濃く漂いますが(特に、パリで発表するようになってからそれは強まっていると思います)、着物や風呂敷に代表される“包む”という概念って、まさに日本的な感覚だなと納得。

 “包む”という発想から、何層にも繊細に重なるレイヤードが生まれているわけですが、その着想源を細かく聞いていくとさらに面白い。たとえば、キラキラ光るメッシュは「東京でたくさん見る、ゴミ置き場のカラス除けのネット」から発想したものだそう。他は、衣服を運ぶ際に被せる「透明のガーメントケース」や、「前回の展示会終了後に、飾っていた花がゴミ袋に入れられて捨てられていた様子」など。彼女の目を通すと、日常の意外な場面も生き生きキラキラとしてきます。「カイコをきっかけに“包む”ことに心が奪われて、その意識で日常の中で美しいものを探した」というクリエイションは、ブランドが毎シーズン続けていることですし、ブランド名に通じる“まめまめしさ”といった日本の美学も感じます。

 そして、忘れてはいけない今季の重要ニュースは、「トッズ(TOD’S)」とのコラボレーション。キトゥンヒールのバックスリングパンプスを、白、黒、ネイビーの3色で展開していました。「『マメ』と『トッズ』に一体どんなつながりが?」と疑問に思いましたが、「前シーズンのショーに、トッズのディエゴ会長(ディエゴ・デッラ・ヴァッレ=Diego Della Valle)が来てくださって、クラフツマンシップに対する考え方にお互い共感した」と黒河内さん。最初は意外な組み合わせだと感じましたが、日本の産地の技術をリスペクトする「マメ」と、職人を大切にするイタリア企業トッズは、確かにモノ作りに対して共感する部分は多そう。同時に、トッズの会長が若手ブランドのショーをしっかり見て回っていることにも驚きました。日本で大手アパレルや小売りの会長が東コレに現れて、デザイナーと意気投合してコラボに至ったといった話は、ほぼ聞いたことがないですから。

 公式スケジュールでの発表になったことで注目度が上がり、これまでのミニショー形式よりもぐっと客数は増えたようです。さらに「来場者のうち、約半数は海外の方になりました」と広報担当者は手応えを話していました。ブランドスタートからまだ丸10年経っていない中で、ここまで来たのはやはりすごいこと。ビジネスの本番である展示会はこれからですが、バイヤーがどう反応したのかは、また追って取材していきます。

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「挑戦を超えた挑発」 人気美容師・中村トメ吉が語る“美容室「ゴールド」を始めた理由”

 今年7月に「オーシャントーキョー(OCEAN TOKYO)」を退社し、9月10日に自身のヘアサロン「ゴールド(GOALD)」をオープンした中村トメ吉代表は、経営者としても、若手を活用するマネジメントが注目を集めている。「一般の大手企業にも負けない美容室を作りたい」と語る中村代表がイメージする未来像を聞いた。

WWD:中村さんがまた一から美容室を始めようと思った理由は?

中村トメ吉(以下、中村):自分が思う理想の美容室、美容師を形にしたかったからです。美容室、美容師は現在さまざまな形態に溢れていて、何が正解か分かりにくくなっています。令和になったこのタイミングで“「ゴールド」の在り方こそ正解”だと業界や世の中に示したいと思っています。挑戦を超えた挑発です(笑)。

WWD:「ゴールド」が目指すものは?

中村:ヘアサロン業界は、いまだに美容師たちの待遇がいいとはいえません。ただ給料を上げればいいという単純な問題ではなく、会社として健全な経営計画を作り、自身が将来像を描ける役割やキャリアパスを提示し、成果に見合うライフスタイルを約束する。「ゴールド」は、そんな仲間の夢や幸せをデザインできる会社でありたいと考えています。

そして美容室を軸にしながらも、一般の人も憧れるようなライフスタイルカンパニーにしたい。もともと僕が美容師を目指したのはメンズをカッコよくしたいという動機からでした。だから美容室だけではなく、プロダクトやメデイア、教育機関など、カッコよくなれる、若者の背中を押せる要素は全部用意してあげたい。そのためには土台となるしっかりとした仕組みづくりと経営計画が重要です。それなら自分で一から作ろうと思い、「ゴールド」を創業しました。

WWD:具体的にどういった仕組みづくりを行っていくのか?

中村:美容室の組織は99%が営業職なんです。集客、売り上げといった評価基準がベースで売り上げが高くなれば、高い給料がもらえ、役職が上がるといったシンプルなもの。「夢があるでしょ」って表面的に見えますが、組織は目の前の評価を追わせて、未来のライフスタイルを描ける教育を放棄している形だと思います。そして体力的にも感性的にも35歳くらいでピークを迎えて、以降は売り上げが落ちて、将来が見えなくて不安になってしまうケースが多いんです。そのため従来の美容室が取り入れているサロンワークの売り上げによる歩合制だと、限界がきてしまうんです。「ゴールド」では未来のキャリアプランをしっかりと示し、安心して働ける環境を整えていきたいと考えています。

やっていきたいのは、スタッフを、“人、モノ、お金をちゃんと動かせる人”に育てていくこと。そのためにはそれぞれの役割と評価基準が必要だと思っています。「ゴールド」では10の役職とそれぞれの評価、目的を定めています。例えばアシスタントでも3つの役職があり、研修は22万円からのスタートで、25万~30万円まで稼げるシステムになっています。

WWD:“人、モノ、お金をちゃんと動かせる人”というのはどう実現する?

中村:将来的には各スタッフに自分のお店を持ってもらう。ゴールドという会社があって、その中にスタッフのさまざまな美容室(子会社)があるというイメージです。そうすると自分の売り上げではなく、そのお店全体をマネジメントして利益を上げていかなければいけないですし、プレーヤーの価値観では通用しません。極端にいうと美容師から経営者にシフトするキャリアプランで、事業を広げたり、2店舗、3店舗といった複数の店舗を経営することも可能になります。

「ゴールド」では“個性の調和”を掲げ、仕組みづくり、教育とプロデュースに注力してやっていきたいと思っています。僕は美容室を“人の最大の教育機関”だと捉えています。特にメンズ美容室には中学生から投資家まで幅広いお客さまが来店し、こんなに人と時間を共有する仕事って美容師以外ないですよね。お客さまと時間を共有することで、美容師は多くのことが学べるんです。これってすごいことだと思うんですよね。そうしたコミュニティースペースとしての役割もあって、お客さまから派生してビジネスにつながることもあります。そのためにも“人対人”を大切にすることがすごく重要で、そうしたスタッフを育てていくことが僕の役目だと思っています。

「ゴールド」は若者の夢を応援する場所

WWD:出店場所は渋谷にこだわった?

中村:渋谷区が掲げる2020年以降のビジョンを聞いてからは、絶対に渋谷に出したいと思っていました。

WWD:オープニングメンバーは何人でスタートした?

中村:美容師は13人で、そのうちスタイリストは6人。美容師以外にも財務やマーケティング、広報、営業などを担当するスペシャリストが3人います。限られた時間の中で、最短でビジョンに向かうためにはそれぞれの得意分野の役割を100パーセント全うすることが重要だと考えています。

従来の美容師オーナー1人での経営だと、サロンワークもやりながら、経営もやっていかないといけないし、多くの場合サロンワーク以外の知識や経験が低すぎる。サロンワークと経営を両方やっていくのはすごく大変で、無理無駄が多くなり、スタッフに不安や負担をかけてしまう。過去の経験から、立ち上げ時からバックオフィスを充実させて、美容師がサロンワークに全力で取り組める土台がしっかりとあることが重要だと実感しています。美容師が安心して、楽しみながら働ける環境づくりを徹底していきます。

WWD:店名の「ゴールド」はすぐ決まった?

中村:最初は「リアリティー」にしようと思っていたんです。スタッフにもお客さまにも包み隠さず、真実を発信していくという思いを込めて。でもスタッフから「ダサい」って反対されて(笑)。そこからまた500通りくらい出して考えました。“カッコいい”を追求してきた結果「目的を全うして輝いて生きている人はカッコいい」と思うことがあって。“輝く”を意味する“GOLD”に目標や目的を意味する“GOAL”を組み合わせて「GOALD」という造語にしました。あと僕のキャラやチャラさも“ゴールド”って感じだし(笑)。

WWD:今後の展開は?

中村:美容室を成功させるハウツーはすでに持っているので、スピーディーに成長させていくつもりです。僕は神輿にのって自分が暴れて先陣を切るというより、神輿をしっかりとかついで安定させ、道筋を描き、その上でスタッフに自由に暴れてもらいたいです。まだ「ゴールド」はスタートしたばかりなので、最初は僕が先陣をきりますけどね(笑)。

ありがたいことに仲間にも恵まれているので、その仲間がどんどん活躍していける環境をつくってあげたいですし、スタッフが誇れる会社にしていきたいです。あとは、先ほども言ったように美容室はコミュニティースペースでもあるので、“人対人”にこだわり、若者の夢を応援する場所ではありたいし、少しでも多くの人を幸せにしてきたいです。

■GOALD
時間:火〜日曜日 12:00〜21:00
定休日:月曜日
住所:東京都渋谷区神南1-22-7 岩本ビル5F

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2020年春夏のパリコレ開幕 新緑の煌めきで会場を包んだ「マメ」と「セリーヌ」「バレンシアガ」出身の若手勢に期待

 2020年春夏シーズンのパリ・ファッション・ウイークが9月23日に開幕した。トップバッターを飾ったのは、今回初めて公式スケジュールに参加した「マメ(MAME KUROGOUCHI)」だ。初日はその他「バレンシアガ(BALENCIAGA)」出身の韓国人デザイナーによる「キムへキム(KIMHEKIM)」や、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)時代の「セリーヌ(CELINE)」で経験を積んだ韓国人デザイナー「ロク(ROKH)」がコレクションを発表。アジア出身の若手勢が勢いを見せた1日になった。

 「マメ」の今季は「包む」という概念を中心にコレクションを構築した。蚕虫の繭、草木を守るように広げられたネット、無造作に捨てられていた漁網、そしていつの間にか美しい新緑に包まれている初夏、それら全ての「包む」を服に落とし込んだ。ルーズに編まれたメッシュトップスやメッシュドレス、「マメ」らしい繊細なジャカード、刺しゅう、ニッティングで体を優しく包む。バイカーパンツというブランドには一見意外性のあるアイテムも、メッシュスカートやワンピースをレイヤードすることでスポーティーになりすぎず水々しく健康的な印象を与えた。

 カラーパレットは新緑のグリーンと夏の眩しい日差しを想起させるホワイト。曇りガラス越しに見る夏の緑の景色を表現した。また、「トッズ(TOD'S)」とコラボしたパンプスも発表した。カラーはブラック、ネイビー、ホワイトの3色で、「マメ」らしい優雅なシルエットに仕上げた。

 「キムへキム」も今季初めて公式スケジュールに参加。デザイナーのキミンテ・キムへキム(Kiminte Kimhekim)の出身国である韓国の民族衣装にインスパイアされた柔らかなシフォン素材を用いたアイテムと、「バレンシアガ」などの経験で培ったテーラーリングが人気のブランドだ。前シーズンはテーラーリングに注力し“ポスト・フィービー枠”の一角に食い込んできたかと思いきや、今季は一転しシルエットはぐっとシャープに、ボトムスもワイドパンツからミニスカートに変化。大きなパールのボタンを重ねて素材にたるみを持たせたブランドのアイコン的なデザイン、“ヴィーナス”も、しっかりとウエストをマークしている。

 “ME(私)”と題したコレクションには、SNSで注目を浴びようとする人々をやゆするように、自撮り棒を持って歩くモデルや、“SICK”と書かれたTシャツを着て点滴を引くモデルが登場。今までには見られなかったユーモアでブランドの新たな可能性も垣間見れた。サングラスをかけ、ポケットに手を突っ込んで会場を駆けるように歩くモデルを見ると、“ポスト・フィービー枠”というよりもむしろエディ・スリマン(Hedi Slimane)の影を感じる。

 フィナーレに登場したデザイナーのキムへキムは照れながらもアレキサンダー・ワン(Alexander Wang)のように会場を走り抜け、歓声が湧いた。間違いなくブランドの勢いを感じた瞬間だった。

 前シーズンにパリコレデビューを果たした「ロク」は、フィービー・チルドレンとして名前があがることも多い韓国系アメリカ人、ロック・ファン(Rok Hwang)が手掛けている。自身が育ってきた1990年代のユースカルチャーを感じさせるフレッシュな感覚と、クリーンなムードのミックスが持ち味だ。今季は、自身が10歳だった1994年に、家族と共にニューヨークからヨセミテまでロードトリップした思い出が着想源。得意のトレンチコートを変形させたシャープなドレスでスタートしつつ、登山用ロープやカラビナなどのディテールで遊びを加える。チェック柄ドレスに重ねたほつれ穴のようなプリントは、グランジのムード。スーツにバックパックを背負っているようなスタイリングは、実はバックパックのベルト風の飾りを付けているだけ。スカートスーツにボリュームたっぷりなスニーカーといったスタイルも目立つ。「僕ら1980年代生まれの世代は、スタイリングは何でもアリだから」とファンは説明する。

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