郊外百貨店「団塊世代と共に去りぬ」 9月30日で伊勢丹相模原店・府中店が閉店

 伊勢丹相模原店(神奈川県)と同府中店(東京都)が9月30日で営業を終える。両店をはじめ、百貨店の閉店で近年目立つは東京のベッドタウン立地である。都心店は富裕層や訪日客の旺盛な購買力に支えられている。一方、郊外店はそれらの恩恵は少なく、大型ショッピングセンター(SC)やネット通販(EC)に客を奪われ続ける。さらに主力顧客である団塊の世代の先細りが追い討ちをかけた。

百貨店の絶頂期にオープン

 9月中旬、伊勢丹相模原店の建物には「29年間のありがとう」の垂れ幕が掛けられ、店内は閉店セールでにぎわっていた。正面入り口では記念オブジェの前で撮影する人の姿が絶えない。オブジェはアルファベットで「ISE AN」となっており、隙間に人が立って両腕を水平に伸ばして「T」の字を作る。孫を撮影していた60代の女性は「私が相模大野に引っ越した年に開店したので、それ以来ずっと通ってきた。家族との思い出もある店なので寂しい」と話した。

 相模原店は1990年9月に小田急線相模大野駅の南口再開発によってオープン。翌91年にはドラマ「デパート!夏物語」(TBS系列)のロケ地になった。高嶋政宏演じる新人デパートマンの奮闘を描いたこのドラマでは、伊勢丹相模原店が実名で登場した。ドラマは3度シリーズ化され、同店の名前は全国にも知られるようになった。

 今振り返れば、ドラマの放送が始まった91年は百貨店の市場規模が9兆7130億円とピークを迎えた年だった。それが直近の2018年では5兆8870億円と約4割も縮小している。相模原店の売上高は96年度の377億円がピークで、2018年度は187億円と半減。長らく赤字に歯止めがかからず、再建が困難と判断された。96年開業の伊勢丹府中店もほぼ同様の理由で閉店が決まった。

首都圏の閉店の大半はベッドタウン立地

 16年以降、首都圏で閉店した百貨店は下記の通りである。

 西武春日部店(埼玉県、ロビンソン百貨店春日部店として84年開業)、西武筑波店(茨城県、85年開業)、そごう柏店(千葉県、73年開業)、三越千葉店(千葉県、ニューナラヤとして72年開業)、三越多摩センター店(東京都、多摩そごうとして89年開業)、西武船橋店(千葉県、67年開業)、西武小田原店(神奈川県、ロビンソン百貨店小田原店として00年開業)、伊勢丹松戸店(千葉県、74年開業)。そして今月30日に伊勢丹相模原店と同府中店が閉店し、来年3月末には東急東横店(東京都、1934年開業)も事実上の閉店(食品売り場は継続)を迎える。

 渋谷駅の再開発に伴って姿を消す東急東横店を除けば、ほとんどが郊外のベッドタウン立地である。戦前からの老舗というよりも、高度成長期からバブル期にかけて、都内に通勤する人の流入で人口が急増したエリアに相次いで誕生した百貨店だ。これらの百貨店の最大のターゲットは、家庭を持って郊外にマイホームを構えた団塊の世代(1947〜49年生まれ)だった。

団塊の世代の先細りで見通し立たず

 日本の百貨店は、豊かな中間層を呼び込むことで発展した。70〜80年代は、今日より明日が豊かになれるという希望を国民が抱き、年功序列や終身雇用といった日本的経営がそれを下支えした。そのアッパーミドル消費をけん引したのが、団塊の世代だった。彼らが家庭を持ち、消費が最も活発になった時期が百貨店の絶頂期と重なる。

 だが、バブル崩壊による平成不況とデフレの長期化で潮目が変わる。

 特に郊外の百貨店は、90年代にロードサイドに急増した「ユニクロ(UNIQLO)」「洋服の青山」「ニトリ(NITORI)」「ヤマダ電機」「トイザらス」などのカテゴリーキラー、あるいは大店法の廃止によって00年以降に急拡大した大型SCに客を奪われた。そして、昨今はこれにECの台頭も加わる。

 頼みの綱である団塊の世代の消費も次第に減退してきた。団塊の世代は現在70〜72歳。比較的お金に余裕がある世代とはいえ、ライフステージとして消費の先細りは否めない。

 団塊の世代は人口ボリュームもさることながら、百貨店に強い親近感を持っているのが特徴だ。依然として中流意識が強く、百貨店が提案する高品質な商品やサービスに対価を払える経済力があった。衣料品や食品、日用品、中元・歳暮などで郊外の百貨店にお金を落としてくれた。

 彼らの子供世代で、やはり人口ボリュームの大きい団塊ジュニア(1971〜74年)が次の顧客になってくれれば、先行きの見通しが立つ。しかしこの世代の消費は親世代とはかなり異なる。中流幻想は崩れ、欧米並みに所得の二極化が進んだ。40代半ばになった団塊ジュニアはなかなか百貨店に来てくれない。あるいは郊外の百貨店の品ぞろえでは満足せず、品ぞろえが豊富な都心の大型百貨店に向かう。

 今年2月に亡くなった作家・堺屋太一氏が名付けた団塊の世代は、ファッション、クルマ、住宅、家電、食品、子育て、海外旅行、ゴルフなど戦後のあらゆる消費をリードする存在だった。団塊の世代の消費の高まりによって誕生した東京郊外の百貨店の多くは、彼らの高齢化に伴い、その役割を終えようとしている。

The post 郊外百貨店「団塊世代と共に去りぬ」 9月30日で伊勢丹相模原店・府中店が閉店 appeared first on WWD JAPAN.com.

編集長は先週何した? ジャーナルで片寄涼太、楽天で中島敏子、ゴルチエとフレンチ!

 こんにちは、「WWDジャパン」編集長の向(むこう)千鶴です。秋到来でイベントシーズンに突入です。先週は、ジャーナルスタンダードで片寄涼太さんのトークを聞き、楽天でelevenplayのパフォーマンスを見るなどにぎやかでした。週末には衣替えをしなくては!

9月13日(金)
80年代の「ゴルチエ」を着て
ゴルチエ氏とディナー

 ぜいたくな時間でした!前日のインタビューに続いて、この日もジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)氏とディナーの席でお会いしたのですが、せっかくなので「ジャンポール・ゴルチエ」の復刻アイテムを購入して着て参加したら本人にほめてもらいました。リップサービルでもうれしい!

 「ジャンポール・ゴルチエ」と言えばコルセット、ピンストライプのパンツスーツ、マリンボーダー、デニムなどなどですが、私が選んだのは1985年に発表したコルセット風デニムのフレアスカート。当時と寸分違わないデザインだそうです。ボーン(コルセットの張りの部分)が丹田辺りをギュッと押さえるから否応なく背筋が伸びます。須賀洋介氏が監修する「コトー」のフレンチはおいしかったですが、正直後半はお腹がだいぶ苦しかったです(笑)。

 ディナーの席には小池百合子・都知事も来場。都知事とゴルチエ氏と廣内武オンワードホールディングス名誉会長という、たぶん世界中でここでしか見ることができない貴重な3ショットは動画でどうぞ。

9月14日(土)
自分をこの世界に導いてくれた
先輩とFNOで再会

 土曜日は「ヴォーグ・ファッションズ・ナイト・アウト2019 トウキョウ」に繰り出しました。「エドウイン(EDWIN)」を訪ねると、先輩を発見。マーケティング・広報課長の安藤武徳さんです。私のキャリアのスタートはエドウインで、大学生だった自分のリクルーターがこの方、安藤さんでした。つまり私をこの素晴らしきファッション業界に導いてくれた恩人なのです!

 大学4年生の私はどんな仕事に就きたいのか自分でもわからず、女性を総合職で採用する企業を片っ端から受けて業界研究をしていました。ファッション関連はたまたま資料が目に留まったエドウインだけで、他は自動車や薬品や商社やメディアまで手当たり次第という感じ。その中でエドウインの面接で会った諸先輩は、ほかの業界の人たちとどこか違いました。“何歳になっても何かを諦めていない感じ”とでも言いましょうか……。とにかく、“この人たちが好き!”と思い、ほぼ即決したのです。その後、転職もしつつ多くのファッション関係者に会いましたが、あの時の“好き!”を繰り返してここに至ります。だからあの時、直感に従ってよかったとつくづく思います。

 エドウインは、FNOでは代表的モデルである「503」を若手フォトグラファー5組が撮り下ろした写真展を開催していました。私が23歳の時にこの会社の感じた“ユース”が別の形でそこにありました。という訳で安藤さんに改めて感謝をお伝えしつつ、ビールをもらって帰りました。ごちそうさまでした!

9月17日(火)
楽天で中島敏子氏が活躍

 写真は、左から佐藤可士和・楽天チーフクリエイティブディレクター、三木谷浩史・楽天会長兼社長、編集者・プロデューサーの中島敏子氏です。

 「楽天ファッションウィーク 東京」の会見&パーティーへ。そこで久しぶりに中島敏子氏と会いました。私の中島敏子・論は、下記の関連記事“暴れん坊編集長・中島敏子による「ギンザ」ラストイシューを語る”をぜひご確認ください。今回は、「Rakuten Fashion」のキービジュアル監修をアートディレクターの平林奈緒氏と手掛けたそうです。この“元「ギンザ」コンビ”は女子の元気とカワイイを引き出すのが大得意。楽天の新しいイメージが引き出されていました。

 パーティーでは、ダンスカンパニーelevenplayがランウエイをテーマにパフォーマンスを披露しましたが、こちらも中島氏がプロデュースをしたそうです。その様子は下記の動画でどうぞ!

 ちなみに、少し前になりますがアメリカの公開オーディション番組「America's Got Talent」でのelevenplayのダンスは要チェックです。ライゾマティクスが飛ばすドローンとのセッションで踊ったのですが、見たことがないパフォーマンスに会場がざわつきました。審査員たちも文字通り口をあんぐりあけて驚いていましたよ。

9月19日(木)
ジャーナルで片寄さんに公開取材&スリムになった杉村CEOを10度見

 セレクトショップ担当の小池記者が、ジャーナルスタンダード表参道で公開インタビューをするというので応援に行きました。お相手は片寄涼太さん。ジェネレーションズの片寄さんですが、今回は一人のアーティストとして白Tシャツのプロジェクトを発表し、世界6都市をテーマにユニセックスの真っ白いTシャツを少しずつアレンジしてデザインしました。抽選に当選して招待された30人を前にそのこだわりを解説したのですが丁寧な言葉選びに、本気度がうかがえました。

 この日めちゃくちゃ驚いたのが、ベイクルーズ杉村茂CEOのがめちゃくちゃスリムになったこと(写真3枚目)。8カ月で20数キロのダイエットに成功したそうで、別人!店の前で声をかけてもらった時はすみません、実はどなたかわからなかったほどです。スタッフの方にこっそり「あの方、杉村さんですよね」と確認してから改めてご挨拶をしたものの、話をしながらも信じられず、失礼承知でまじまじと見ちゃいました。肌艶も良くて10歳くらい若返った感じ。「ファッションの会社だと社員に言っている手前ね」とおっしゃるが、いや~CEO業のかたわらこの努力は半端ないでしょう。すごい!

9月19日(木)
「デシグアル」でバルセロナの
太陽を感じる

 “杉村CEO大幅若返り”の驚きを引きずったまま、明治通り沿いの「デシグアル(DESIGUAL)」原宿旗艦店のリニューアルオープンへ。以前、バルセロナの海沿いにある同社の本社取材に行った記者が、その健康的で明るい社風や働き方が素晴らしいことを力説していたのが頭に残っていたのですが、同店の雰囲気もやはり開放的でハッピーな感じ。3階ではリメークサービスもあります。

 IVANさんが着ているような柄のワンピースが可愛かったです。IVANさんの隣はデシグアルの日本&APACカントリーマネージャー、バラッシュ・クリザニック(Balazs Krizsanvik)さんです。

9月19日(木)
最新号「2020年春夏ニューヨーク
第1弾」校了と本日のおやつ

 表紙は女性同士のカップルが手をつないで登場した、多幸感あふれる「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」です。手に持っているグリーンがブーケではなく鉢植え、という自然体も良いです。本日のおやつは弊社から一番近いパン屋さんで週に1度は買ってしまうカヌレでした。

The post 編集長は先週何した? ジャーナルで片寄涼太、楽天で中島敏子、ゴルチエとフレンチ! appeared first on WWD JAPAN.com.

「これからは単に物をうるだけではなくトータルに生活を考える“健康産業”が必要だ」 by 五島昇

五島昇 東急百貨店会長(当時)

 地域開発事業のうち、現在は流通業界の全盛期だが、これからは単に物をうるだけではなくトータルに生活を考える“健康産業”が必要だ。これは屋外レジャーや旅行、スポーツからヨガのような精神衛生まで意味する。最近は「インベーダー」のような不健康産業もあるようだがこれからは精神衛生が大切だ。(Vol.9 1979年7月9日)

The WORDS
ファッション業界人の残した名言を日々の糧に。デザイナーやバイヤー、社長、編集長らの心に響く言葉をお届け。

The post 「これからは単に物をうるだけではなくトータルに生活を考える“健康産業”が必要だ」 by 五島昇 appeared first on WWD JAPAN.com.

ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクはなぜ多くの世界的デザイナーを輩出しているのか(後編)

 ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク(Walter Van Beirendonck)が8月、新たなファッションコンペティション「ビッグ デザイン アワード(big design award)」のために来日した。ウォルターといえば、自身のブランド「ウォルター ヴァン ベイレンドンク」を手掛ける一方で、アントワープ王立芸術アカデミーのファッション学科の学長も務める。自身もアントワープ王立芸術アカデミーを卒業しており、同校を卒業したデザイナー6人で“アントワープシックス”と呼ばれるなど、80年代から今なお、パリでコレクションを発表し、クリエイションをけん引。指導者としても実績を残しており、多くの世界的デザイナーを送り出している。なぜ、デザイナーとしても指導者としても世界のトップで居続けられるのか。多彩な顔を持つウォルターにデザイナーとして、指導者として、審査員としてなどの話を聞いた。今回は後編。(前編はこちら)

WWD:今のファッションシーンに対して物足りないと思うことは?

ウォルター:まず、「サステイナビリティーが必要だ」という認識だ。今日の消費者の消費の仕方にはショックを受けざるを得ない。毎週新しい服を買うなんてばかげている。消費者がこうした問題を認識することによって、生産する側も働き方を考え直すと思う。これは、ハイブランドにも同じことが言えて、毎シーズン、新しい製品を買うべしとアグレッシブにプッシュしている。現在のそうした文化から方向転換することが可能かどうかは分からないが、いろいろ考え直すことが、現在の過剰な消費からよりノーマルに落ち着いていけるようにする第一歩だと思う。

WWD:それは例えば「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」と「シュプリーム(SUPREME)」のコラボレーションのようなものも指している?

ウォルター:コラボ自体に問題があるわけではない。「ルイ・ヴィトン」と「シュプリーム」のように、クリエイティビティーのために行われるのであれば問題はない。ただ、「これは絶対に手に入れなければならない、マストハブなものだ」と常にあちこちから強く押し付けられ、人々がそれに従ってしまうのを見るといら立ちを覚える。

WWD:クリエイションとビジネスのバランスについてはどう考えている?

ウォルター:重要なのは、クリエイションがない限りビジネスも成立しないということだ。多くの経営側は気付いていないことかも知れないが……。ブランドを運営していく中で、ビジネス面がクリエイティビティーを超えてしまうことがあるが、クリエイティビティーを取り戻さないといずれ立ち行かなくなる。ファッションではその両方ともが重要で、私がマーケティングを批判するのは、それがビジネスとクリエイティビティーを分断してしまうものだから。マーケティングを重視しすぎると、そのバランスが崩れてしまう。

WWD:ウォルターのブランドについても伺いたい。クリエイションの際、その着想源やデザインのヒントはどこから得ている?

ウォルター:あらゆるところからだ。コレクションを作る際は、興味を引かれるものを探して、いろいろ見たり聞いたりするなどのリサーチをする。美術館や展覧会にも行くし、本も読む。あとはインターネット。まずそうして全体的な土台を作り、いろいろと考察を重ね、そこから深く掘り下げていく。

WWD:デザインのヒントを探す中で、苦労することは?

ウォルター:むしろ簡単だったことがない(笑)。時間がかかることだし、興味を引かれるモノが見つからないのでは?という恐怖もある。幸い、いつも何かしら興味を引かれるものが見つかっているが、かなり大変な作業だ。リサーチをして、いろいろ考察しながらストーリーを作り上げていき、その後でスケッチをしていく。(スケッチブックを見せながら)この段階で、全てのことを決めていく。ファブリックはもちろん、メイクアップや髪型も決めるし、いろんなものをどう組み合わせていくかも決める。この作業には数週間かかるが、私自身が全て決めている。仕事のやり方はデザイナーによって千差万別で、例えばウエアのデザインを先に行い、スタイリストがその組み合わせを考えていくというデザイナーも多い。だが、私は自分で全て完成させるのが好きなんだ。

WWD:今回のコレクションのインスピレーション源は?

ウォルター:これは“メルトダウン”コレクションと呼んでいて、世界中で起きている問題や、それによって世界が崩壊していく様子を着想源にしている。溶けていったり、建築物などが壊れていく感じを表現している。また、ファブリックが顔を含めて体全体を覆う感じにしたかった。さまざまな色やパターンを使っている。

WWD:クリエイションのメッセージを消費者に届けるためには何が大事だと思うか?

ウォルター:私自身が伝えたいメッセージやストーリーを消費者に押し付けたいとは思っていない。どちらかというと、プレスやバイヤーと話すためのものだし、例えば「このカラフルな色合いが好きだから」という理由で買ってくれても十分うれしいんだ。政治的なメッセージは常に込められているが、興味がある人たちがいれば喜んで話すよ――というスタンスのものだと思っている。

WWD:ショーを行う重要性とは?

ウォルター:多くの人がファッション・ウイークやショーの存在意義に疑問を投げかけているが、私にとってはとても重要なイベントだ。私はまだこの10~15分間の魔法を信じているから。たった数分に全ての命が吹き込まれて、一つのものになる。そしてその映像や写真によって、私が今シーズンに何をしたのか、どんな作品を発表したのかを世界中の人に知ってもらうことができる。とても大切な瞬間だと思っている。

WWD:長年ファッションショーをやってきて、昔と今とで変わってきたなと思うことは?

ウォルター:大きな違いがある。私の場合、1990年代は多額の予算をかけて2000~2500人に向けてショーを行っていたが、現在はもっと小規模で、親密な雰囲気のショーを開催している。しかしSNSなどの台頭により、ある意味では今のほうが大規模だとも言える。90年代と現在ではコミュニケーション方法があまりにも違うので、もはや比べられないぐらいだ。しかし、ショーのライブ感というのは今も昔も変わっておらず、とても大切なものだと思う。メイクアップをしたモデルが作品をまとい、音楽に乗せてキャットウォークを歩くからこそ生まれるクリエイションがある。それこそがファッションショーの醍醐味で、私がファッションショーを信じている理由だ。

WWD:今注目している若手デザイナーはいるか?

ウォルター:デザイナーがほかのデザイナーと違う存在になるには、独自のはっきりとしたビジョンを持ち続けていることが重要だと思う。トレンドを追ってしまうデザイナーは好きではない。タイミングや、ファッション業界の動きによってアップダウンがあるが、それでも自分らしさを失わずに前進し続けることが重要だと思う。難しい質問だが……、面白いなと思うデザイナーは何人かいる。私のもとでインターンをしていたクレイグ・グリーン(Craig Green)の作品はとても好きだ。だが、こうして好きなデザイナーがいる一方で、あまり努力が見られない退屈な作品だなと思うデザイナーもいる。社会で起きていることに関心がなかったり、自分の可能性を伸ばす努力をしていなかったり。ここで名前を挙げたりはしないけど。

The post ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクはなぜ多くの世界的デザイナーを輩出しているのか(後編) appeared first on WWD JAPAN.com.

ミラノコレ実質最終日のハイライト 装飾が控えめな「グッチ」とアマゾンの熱帯雨林を描いた「ドルチェ&ガッバーナ」

 2020年春夏シーズンのミラノ・ファッション・ウイーク、実質最終日の5日目。期間中は暖かく晴天が続いたが、ミラノ取材班の今季ラストショーとなった「グッチ」終了後には雨が降り注いだ。2ブランドをピックアップする。

グッチ(GUCCI)

DESIGNER/アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)

 過去5年で自らが築き上げた新しい「グッチ」像を、早くに古きものと捉え、それを軽やかに裏切った。性差を超えたスタイルや、カラフルな色使いはそのままだが、刺しゅうやパッチワークなどの装飾は皆無。柄もいつになく控え目だ。「正直、少し飽き始めていた」とミケーレが話す通り、大きなインパクトを放ったがゆえに瞬く間に世界中に広がって記号化した、ミケーレ「グッチ」の装飾主義が転換した。

 古典的なセクシーを否定してきた、もしくはそこに興味を示さなかったスタンスも改める。肌をあらわにするチュールドレスやネグリジェには、ハーネスやムチ、首輪のレザーアクセサリー。今シーズンは、「セクシー」を語ることを恐れない。

 飾らなくても良いこと、セクシーでも良いこと。振り切った新生「グッチ」を構築するがゆえに、振り返れば偏っていた方向性をフラットに戻し、ブランドの解釈の幅、何より着こなしの可能性をさらに一段階押し広げた。

ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)

DESIGNER/ドメニコ・ドルチェ(Domenico Dolce)&ステファノ・ガッバーナ(Stefano Gabbana)

 壁面は生い茂る緑に、床はレオパードのカーペット。”ジャングルへようこそ(Welcome to the Jungle)”というBGMでスタートした今季は、まさしくアマゾンの熱帯雨林から着想を得たコレクションだ。全124ルックの序盤は、ベージュのサファリルックがずらり。ジャケットとショートパンツのセットアップ、オールインワンをはじめ、大きなポケット付きのサファリジャケットをドレスとしても提案する。そこから、森林柄やフルーツのほか、ヒョウ、ゼブラ、ジラフ、オウムなど野生動物のプリントや刺しゅうを入れたドレスをラインアップ。中盤にはラフィアを編み込んだ立体的なミニドレスも登場させた。

 今季はブラジルのアマゾン熱帯雨林の火災など環境問題が深刻化するなか、自然の美しさを表現したブランドが多かった。それは直接的なサステイナビリティーにはつながらないものの、環境保全や自然愛護のマインドへの喚起にはなるだろう。

The post ミラノコレ実質最終日のハイライト 装飾が控えめな「グッチ」とアマゾンの熱帯雨林を描いた「ドルチェ&ガッバーナ」 appeared first on WWD JAPAN.com.

ミラノはますますドタバタ日記Vol.5 「グッチ」のミケーレが「セックスのオーガズム」を語るワケ 「ドルチェ&ガッバーナ」でジャングルのトレンド入り確定

 さぁ、ミラノ日記も今回で最終回。雨だし、寒いし、天気はグルーミーですが、心は元気いっぱいです。眠いけどね(笑)。

9:35 アラヌイ

 本日最初の「アラヌイ(ALANUI)」は、先日ファーフェッチ(FARFETCH)が買収したニューガースグループ(NEW GUARDS GROUP)のブランド。つまり、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」の妹分に当たる存在です。

 とはいえコレクションは、ノット・ストリート。超贅沢にカシミアをたっぷり使った、カラフルなガウンカーディガンがアイコンです。今シーズンは、ジャングルなどに生息するシマウマやオウムなどをニットで描きました。2020年春夏のミラノ・コレクションは、みんなジャングルを旅してるなぁ(笑)。

 オーストリッチの羽根をあしらったニットドレス、透けるほどハイゲージなニットで作るカーディガンやロングスカートなど、バリエーションを拡充しています。

11:05 ボス

 「ボス(BOSS)」は、ニューヨークからの移籍組。ニューヨーク・コレクションの時から拝見していますが、ワントーンやワンカラー・コーディネイトに代表されるピュアな色使いに、ドイツらしい“質実剛健”感、言うなれば“ちゃんとしてる感”が程よく絡むブランドです。

 今期も、まさに「ボス」らしい。ピュアホワイト、マリンブルー、レッド、キャメル、そしてブラック。次々変わるワンカラーコーディネイトは、シルクとジャージーをハイブリッドしたドレスや、ジャストフィットのジャケット&トレンチ、オーバーサイズ、特に背面がボリュームたっぷりのブルゾンなどを中心に組み立てます。「もうちょっと遊びがあっても良いかな?」。そんな気はしますが、真面目なドイツのブランドが、ご陽気なイタリアにやって来たから、そんな風に感じるのでしょう(笑)。

11:40 マルニ

 「マルニ(MARNI)」の展示会へ。ドレスに描かれたフラワープリントは、デザインチームによるフリーダムな手描きだそう。それらが一同に並ぶ会場は、とっても華やかでした。ここでは、バッグ&シューズ(サンダルかw)の写真を。メガサイズのバケツバッグ、中に荷物をいっぱい入れたら、誰も持てなくなっちゃうサイズ感です(笑)。

13:40 フィラ

 韓国資本のスポーツブランド「フィラ(FILA)」のコレクションへ。海を舞台に、誰もが知ってるロゴ全開のスポーティーなコレクションです。ショーには、モデルのKokiも登場でした(黄色いベストのルックです。ご覧あれ)。

 ミラノ・コレクションという舞台に挑戦するのだから、気合いが入るのはわかります。でも「フィラ」からブラックドレスって、どうなんでしょう?もちろん水着をベースにしたカジュアル&スポーティーな仕上がりで、シフォンにフリフリフリルなイタリアンドレスとは一線を画しています。でも、「ブラックドレスが欲しいなぁ。そうだ、『フィラ』見てみよう」なんて女性は、多分いない。必要ないと思うんです。

 ルック数が多く、ランウエイは長い。なが〜いランウエイショーだったせいか、イブニングが続く後半は、会場のテンションが徐々に下降。再考が必要ですね。

14:25 ドルチェ&ガッバーナ

 ジャングル、トレンド確定!!です。おめでとうございます。「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」は、めっちゃジャングル。わかりやすくジャングル。疑いようのないジャングルでした。

 コレクションは、サファリルックからスタートしましたが、あっという間に「ドルチェ&ガッバーナ」らしいセクシードレスが主役におどりでます。マンゴーやバナナ、スイカなどのフルーツ、オウムやレオパード、ゼブラなどのアニマル、そしてもちろん葉っぱのモチーフに彩られたドレスは、第二次世界大戦後に爆発的な繁栄の時を迎えたアメリカのピンナップガールのような雰囲気で、アップの髪と真紅のリップがレトロムードをかきたてます。
 
 ベルトには、今季増えつつあるアイコンバッグのミニサイズ。「フェンディ(FENDI)」はピコ、「ヴェルサーチェ(VERSACE)」からもナノサイズのバッグが登場しましたが、「ドルチェ&ガッバーナ」も負けず劣らずのミニサイズ。唇に塗った真紅のリップくらいしか入りそうにありません(笑)。

16:30 グッチ

 さぁ、ミラノ・コレクションの実質最終日。オオトリは、このブランドです。「グッチ(GUCCI)」ですね。

 会場は、あ、赤い(笑)。こりゃ、セレブ撮影も大変だ(笑)。真っ赤な空間で、ファッション業界一難解であることは間違いないプレスリリースを読みこむと、どうやら今回は「ルールへの反逆」とか「主体性の再定義」などがキーワードの様子。でもソレは、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)が、この5年間ずっとやってきたこと。正直、「今回も、似たような感じかな?」なんて思っていたら、ランウエイとなったベルトコンベアが開き、真っ赤な空間のライトが変わり、ショーが始まりました。

 「うわっ!全然違う!どうしよう(興奮)!!」。

 これが、ファーストルックの率直な印象です。だって、コレですよ。コレだけを見たら、誰がミケーレ「グッチ」とリンクできるでしょうか?「ルールへの反逆」は、もしかすると「現在のミケーレによる、過去のミケーレへの反逆」なのか?真っ白の、オーバーサイズのシルエットながら拘束衣のように窮屈にも見えるルックはしばらく続きました。だんだんみんなが、「え、マジで今シーズンは、コレなの?」と困惑し始めているのが、手に取るようにわかる(笑)。みんなドキドキし始めると、舞台は暗転。今度は、いつものミケーレ「グッチ」が登場です。

 と思ったら、コレも違った!!2020年春夏の「グッチ」、スタイルと色はこれまでの「グッチ」ですが、刺しゅうやワッペンの装飾は皆無、柄さえいつもよりだいぶ控えめです。

 そして、ちょっとエロい。シフォンのプリーツドレスは、おっぱいがスケスケ(コレに関しては、イロイロ考えるところがあります)。なんだかハーネス見たいなレザー使いが多いし、何よりムチ……。これまで僕はミケーレの「グッチ」って、前任のフリーダ・ジャンニーニ(Firda Giannini)はもちろん、ブランドを再生し今の礎を築いたトム・フォード(Tom Ford)たちの“本能に訴えるエロス”とか、“イタリアに根強い古典的セクシー”を否定してきたと思っています。なのに今回は、セクシー押し。やはり「ルールへの反逆」は、「自分が築いてきたミケーレ『グッチ』へのドレスコードへの反逆」だったのです。そう考えると、装飾に頼らないクリエイションも素直に頷けますね。

 “らしさ”を残しながらのシンプル回帰は、正直、大賛成です。ビジネス的に考えても、今回の「グッチ」はコンサバ気味な日本人に受け入れやすそうだし、おそらくミケーレの狙い通り、浸透しすぎたがゆえに記号化した「グッチ」のスタイルを新たなステージに導くでしょう。「派手なモチーフウエアを着とけばOK。ソレが『グッチ』でしょ?」みたいな一辺倒になりかけていた認識、スタイルを改めることは、プレスリリースが言う「主体性の再定義」なのだと思います。

 セクシーも、おんなじですね。これまで否定してきた(ように思える)セクシーを認めることは、さらに「グッチ」というブランドの解釈、そして「グッチ」を着ることで表現する自分のスタイルをさらに自由なものにするでしょう。

 ショーの後の記者会見でミケーレは、「同じことをするのに飽きてきた」と話しました。正直、そう感じ始めてきた人が少しずつ増えてきた中でさすがの嗅覚だし、とは言えいまだに一斉を風靡する自分のスタイルを大きく変える勇気もあっぱれです。

 会見の中では、セクシーに対して、強い意志を持っていたことを明かしました。その中で面白かったエピソードを2つ紹介しましょう。

 まず1つは、ムチ。女の子がほとんど持っていた、2020年春夏のキーアイテム(!?)です。これについてミケーレは、「『グッチ』と言えば、馬。 “ホースビット”(馬の口に含ませる“轡(くつわ)”から着想したアイコンモチーフ。ローファーなどに用いられています)など、馬に由来するアイテムは数多いが、どれも貴族的だった。でもムチは、セクシー。クラブに行く女の子とかが持ちそうで(笑)、貴族的じゃないところが気に入っている」と話します。「貴族的じゃない」は、ポイント。既存の階級社会を揺さぶってきたミケーレらしい考えです。

 そしてもう一つは、“動く歩道”を使った高速ランウエイ。「グッチ」は発表するルックが100を超えるため、ランウエイショーは他ブランドの2倍強、25分とか30分かかることも珍しくないのですが、今回は20分弱だったかと思います。これについてミケーレは、「セックスの最中、興奮するオーガズムって、一瞬。だから、ファッションの世界における興奮の頂点であるべきランウエイショーもなるべく短くしたかった」と言います。

 この人、やっぱりただ者じゃないです!!

20:30 グリーン・ファッション・アワード

 ミラノ・コレクション最後の取材は、スカラ座で開かれたグリーン・ファッション・アワードの授賞式。19:00までに入場して、とあったの急いで着替え向かったら、スタートはまさかの20:30。会食がありましたので、早々に失礼しました。

 スカラ座で写真撮ったからいいけどさぁ、押しすぎでしょ。イタリアは、やっぱりイタリアなのですね(笑)。

The post ミラノはますますドタバタ日記Vol.5 「グッチ」のミケーレが「セックスのオーガズム」を語るワケ 「ドルチェ&ガッバーナ」でジャングルのトレンド入り確定 appeared first on WWD JAPAN.com.

2019-20年秋冬トレンドはボウタイブラウスが本命 平凡に見えないアレンジ技は?

 2019-20年秋冬は、ここ数年続いたストリートムードに代わって、エレガンス路線がトレンドとして復活しています。そんな中でスタイリングのアイコン的存在になりそうなのがボウタイブラウス。ボウ(リボン)を首元に飾ったブラウスのことです。クラシックな淑女ムードを漂わせるのが一般的なボウタイブラウスの着こなしですが、それだとややありきたり。ムードを変えながら賢く着回すには、レディーな雰囲気に寄せすぎない着こなしのバランス感が重要です。

 例えば、「イエナ(IENA)」の2019-20年秋冬では、キャメル系カラーでまとめたスーツに、ボウタイブラウスを合わせました。ワントーンのコーディネートに、柄入りのボウでアクセントを加えて遊び心を盛り込んでいます。このように、レディーなムードを巧みに崩すことが、ありきたりコーデとの分かれ目となります。

 今回は、古くて新しいボウタイブラウスの一味違う上手な着こなし方を、人気の国内ブランドのスタイリングから解き明かしていきます。

パンツと合わせて、女っぽさを
あえてトーンダウン

 品格レディーのシンボルともいえそうなボウタイブラウスだからこそ、女っぽくまとめすぎないのがありふれた着こなしを避けるコツ。ほぼ正反対といえるイメージの紳士風パンツを合わせると、クールに決まります。「ニアーニッポン(NEAR.NIPPON)」のルックは、首に巻いて長く垂らしたロングスカーフがキーピースです。結び目を正面から横にずらすことで、抜け感をプラス。ボトムスはあえてコーデュロイパンツを選んで、マニッシュな感覚を取り入れました。足元はウエスタンブーツを合わせて、さらにはずしています。“結び目ずらし”と“メンズはずし”の合わせ技が決まりました。

 色味まで同じトーンでそろえたパンツスーツを提案したのは、「ライト(WRYHT)」。ボリュームたっぷりの大きなボウタイは、小顔に見せてくれる効果までありそうです。ジャケットの上から共布ベルトでウエストをキュッと絞ることで、くびれを演出。首元のボウとベルトの結び目が響き合います。

ロングスカートとのコーデで、
縦長シルエットに

 ボウタイの動きを生かせば、印象を自在に操ることもできます。今秋冬のおすすめは、縦長なイメージを引き出すアレンジ。ボウを長めに垂らして、ロング丈のボトムスと組み合わせれば、“ロング×ロング”の相乗効果でスタイルアップがかないます。「ダズリン(DAZZLIN)」はピンクのボウタイブラウスに赤のロングスカートを合わせて、パンチを効かせました。スカートの箱ひだプリーツがスリットのようにも見えて、あでやかな表情です。スカート正面に重ねたボウがスタイルアップに一役買いました。

 短めのボウタイでも、印象の強い色を使えば、装いのムードを変えてくれます。「パメオポーズ(PAMEO POSE)」は、袖コンシャスの白ブラウスに、黒いボウタイをセット。清楚なブラウスに、ミステリアスな雰囲気を添えています。イエロー系のロング丈スカートは縦落ち感を印象づけるアイテムになっています。

アクセサリー風のボウで、
顔周りに華やぎを

 ボウタイの巻き方や色・柄を工夫すれば、ボウタイをアクセサリーのように活用することもできます。秋冬は分厚いアウターで重い印象になりがちですが、顔周りに華やぎを添える小技として、ボウタイの活用を覚えておいて損はありません。マルチカラーのボウタイを装いのスパイスにしたのは、「ルプコ(RPKO)」のコーディネート。赤を主体にした柄入りのボウタイは、顔にチークを差したような効果をもたらしています。シャツの上にあふれ出すボウの量感も、顔周りを彩ります。

 首にぴったり巻くチョーカー形のネックレスの人気が復活していますが、細めのボウタイを使えば、チョーカーのようなコンパクトな印象になります。「ミドラ(MIDDLA)」は極細のボウをきゃしゃなネックレスのように巻いて、可憐な雰囲気をまとわせました。太いボウよりも目立たず、甘すぎないので、ボウタイブラウスを着慣れていない人も試しやすそうです。

 この秋冬の注目アイテムであるボウタイブラウスは、トレンドだからこそ、“その他大勢”に見えないよう、自分らしいアレンジを加えて着こなしたいところ。各ブランドから提案された大技・小技を駆使して、着回しバリエーションを増やしていきましょう。

2019-20年秋冬トレンドをもっと見る

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

The post 2019-20年秋冬トレンドはボウタイブラウスが本命 平凡に見えないアレンジ技は? appeared first on WWD JAPAN.com.

ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクはなぜ多くの世界的デザイナーを輩出しているのか(前編)

 ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク(Walter Van Beirendonck)が8月、新たなファッションコンペティション「ビッグ デザイン アワード(big design award)」のために来日した。ウォルターといえば、自身のブランド「ウォルター ヴァン ベイレンドンク」を手掛ける一方で、アントワープ王立芸術アカデミーのファッション学科長も務める。自身もアントワープ王立芸術アカデミーを卒業しており、同校を卒業したデザイナー6人で“アントワープシックス”と呼ばれるなど、80年代から今なお、パリでコレクションを発表し、クリエイションをけん引。指導者としても実績を残しており、多くの世界的デザイナーを送り出している。なぜ、デザイナーとしても指導者としても世界のトップで居続けられるのか。多彩な顔を持つウォルターにデザイナーとして、指導者として、審査員としてなどの話を聞いた。今回はその前編。

WWD:今回、「ビッグ デザイン アワード」の審査員を務めるが、審査をする上で重視していることは?

ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク(以下、ウォルター):私はあまり審査員を引き受けないのだが、今回は私の元生徒のミキオ(坂部三樹郎「ミキオサカベ」デザイナー)とユウスケ(デザイナーの発知優介)が携わっているので、彼らをサポートしたいと思い引き受けた。審査の際は、その場の直観を大事にしている。作品を見て、まずデザイナーの感性や輝き(スパーク)を感じ取り、その後で話をしたりしてより深く理解していくようにしている。

WWD:それはコンセプトも重要になってくるということか?

ウォルター:重要なのは、まず作品を見たときに何かを感じられるかだ。その後でより深く掘り下げて、作品のコンセプトやアイデア、それらをどのように服に反映しているのかなどを見ていく。しかし、まずは直観的に何かを感じられること、感情を揺さぶられることが大切だ。

WWD:「ビッグ デザイン アワード」はアジアを拠点としたものだが、アジアの可能性についてどのように感じているか?クリエイティブ面とビジネス面の両方について伺いたい。

ウォルター:あらゆる国に成長や成功の大きな可能性があると思う。「ビッグ デザイン アワード」はアジアの候補者だけを対象にしているわけではなく、欧州やその他の地域も対象としているし、近年は若者が国際的な土壌で育つことがいっそう重要になっていると思う。このようなアワードは、若いデザイナーが国外で認められる第一歩となるもので、そういう意味で非常に重要な位置付けにある。

WWD:世界での日本の立ち位置をどのように感じている?

ウォルター:常に最前線を走っている。日本人デザイナーの仕事の仕方には独特の雰囲気があり、ベルギーのデザイナーと少し似ているところがあるように感じる。面白いコレクションやアプローチの多くは日本人デザイナーの手によるものだ。「アンダーカバー(UNDERCOVER)」や「アンリアレイジ(ANREALAGE)」などの非常に実験的な作品は、フランスやイタリアのデザイナーには見られない大胆な作風だ。

WWD:アントワープ王立芸術アカデミーにおいては、日本人学生と他国の学生とで違いは感じるか?

ウォルター:当校ではどの国の学生にも同じように接して育てているので、日本人の学生の違いについては話せないが、日本人の学生が当校に入学し始めた頃のことは覚えている。ミキオなどがちょうど第一世代だと思うが、それまで欧州系の学生ばかりだったところに、文化的な背景が全く違う学生が来たわけだ。アジア系の学生ということで、場合によっては欧州系の学生と比べて難しいことがあったり、逆にむしろスムーズにいくことがあったりしたが、学校側としてはとてもエキサイティングなことだった。

WWD:アントワープ王立芸術アカデミーの教育方針と、学生に求めていることは?

ウォルター:とても幅広い質問だが、最も重要なのは、学生たちが自分らしさを見つけて成長していくことだ。それをドローイングや、実際の服作りに必要な各ステップにおける高い技術力と組み合わせて、彼らが実社会で活躍できるように準備させること。本物(オーセンティック)であることをとても重視している。

WWD:学生から一番相談されることは?

ウォルター:当校では学生一人一人と向き合っていて、私も少なくとも週に2回は彼らと会っている。とても個人的というか、マンツーマンでの指導をしていて、彼らの作品とも向き合って、デザインなどに問題があれば相談に乗っている。なので学生から質問や相談があるというより、共に作業をしていく、という感じだ。一緒に作業をしたり見たりしながら、この素材のほうがいいか、この色のほうがいいか、というようなことを話し合いながら作り上げていくので、コラボレーションに近いかもしれない。

WWD:世界的に活躍するデザイナーもファッションスクールの卒業生ではない場合がある。ストリートファション系のデザイナーは特にそうだ。世界のファッションスクールの卒業生に足りないものは何か?

ウォルター:ファッションスクールを卒業することで、技量や知識などの面では有利になると思うが、もちろん別の道から行くという方法もある。ラフ・シモンズ(Raf Simons)などがその好例で、彼はファッションスクールは卒業していないものの、私の下で1年半近くインターンをしていた。そこで多くを学んだわけだが、彼のその後の活躍は誰もが知るところだろう。学校に行くという通常通りの道もあれば、異なる道もあるということだ。ファッションスクールで学ぶことは成功を保障するものではないし、学ぶ側の能力や性格にもよる。ラフ・シモンズが通常とは違う方法を取ったのは実に彼らしいし、実際それで成功している。

WWD:世界のファッションシーンをどのように見ている?

ウォルター:今は過渡期にあって、誰もこの先がどうなるのか分からない状態だ。誰もが違うことをやりたいと思っており、問題があることも分かっているが今は全般的に難しい時だと思う。私個人としては、ファストファッションとハイファッションの両方に関して、必要以上にモノを大量生産しているので、将来的にはそれが変わることを願っている。これは消費者にも問題があるわけだが、最近は消費者も何を着るべきか、何を買うべきかがより意識的になってきている。メディアもこうした問題に関する情報発信をしたり、消費者を啓発したりするなどの大きな役割を担えると思う。それがよりよい将来への第一歩になるだろう。

後編は9月23日公開予定

The post ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクはなぜ多くの世界的デザイナーを輩出しているのか(前編) appeared first on WWD JAPAN.com.

高感度女子に大人気! 「バーバーバー」のサンダルは秋冬物も超カワイイ

 8月、東京・神宮前の明治通りを歩いていると、若い女性の行列に遭遇した。「またタピオカの新しい店が出来たのか?」といぶかしんでいると、列の先にはパルの複合型ショップ「ベースヤード トーキョー」。並んでいる女性も、いかにも「タピオカ好き」そうなマスっぽい女の子(失礼)ではなく、オシャレ上級者な感じの女性が多い。店員に聞き込むと、この日は東京・学芸大学のセレクトショップ、333(ベトナム語で「バーバーバー」)のポップアップショップのオープン日だという。女性たちのお目当ては、同ショップが買い付けるオシャレサンダルだった!

 後日、学芸大学の333を訪ねると、約40平方メートルの店内にはベトナムを中心にタイ、ミャンマーの服のほか、ビンテージアクセサリーや食器類の買い付け商品が並ぶ。目当てのサンダル(3000円)は、アッパーにあしらわれた繊細な花柄のビーズ刺しゅうが目を引く。ベトナムの工場で職人がひとつひとつ手作業で刺しゅうを施しているため、全て一点物。それでいてプチプラなのがヒットの理由だ。同店の坂野高広オーナーバイヤーに聞けば、もともとは現地の女性が家庭で手作りし、おしゃれというよりも日常的に履いているサンダルだという。18年夏に実験的に買い付けたところ、インフルエンサーの目に止まって瞬く間にSNS上で拡散。今年の夏からは本格的に人気に火が付いて、入荷と同時に完売を繰り返すようになり、今春夏は店舗・卸で計4000足以上を販売した。

 気になるのは秋冬の新作サンダルだが、やはりあった!すでに販売中のベロアサンダル(3500円)は、上品なアッパーに刺しゅうをあしらった、オペラスリッポンのようなルックス。ローゲージニットにデニムのようなカジュアルスタイルを上品に仕上げてくれるだろうし、ワンピースやロングスカートに合わせてもエレガントなムードを加速させてくれそう。これも、ヒットの予感がプンプンする。

 サンダルの販売にあたり苦労したのが、品質管理だったという。坂野オーナーは「手作業で数を作るため、当初は作りが粗い物も多かった。生産工場には、『丁寧な仕事をしなければ日本の消費者には受け入れられない』と何度も伝え、一方でわれわれはしっかりと量を買い付けることで本気度を示し、信頼関係を作った」と振り返る。最近は類似品が市場に増えてきたが、「一朝一夕で真似できるビジネスではないし、だからこそ、われわれのやっていることにオンリーワンの価値が生まれるのだと思う」と自信をのぞかせる。

 坂野オーナーは、「サンダルだけにフォーカスされてしまうのはウチの本懐ではない」とも。「本当に伝えたいのは、ベトナムの文化そのもの。かつてアメリカに戦争で勝った国としての矜持があり、首都ハノイは住む人の平均年齢も20代後半と、ハングリーさにあふれたタフでクールな街。ゆくゆくはこのストリートの空気感そのものを、この店から発信していくことができたら」と、ブームのその先を見据えている。

The post 高感度女子に大人気! 「バーバーバー」のサンダルは秋冬物も超カワイイ appeared first on WWD JAPAN.com.

ミラノコレ4日目のハイライト 七色に輝く「ジョルジオ アルマーニ」と10周年の「MSGM」など

 2020年春夏シーズンのミラノ・ファッション・ウイークもいよいよ残り2日。ショーだけでなく、展示会やプレゼンテーションの開催も多い4日目から、4ブランドをリポートする。

サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)

DESIGNER/ポール・アンドリュー(Paul Andrew)

 レザーで作った、リラックスシルエットのシャツドレス、サロペット、ストレートパンツなどで幕開け。ピュアホワイト、スカイブルー、バターブラウンに彩られたレザーには、重厚感は微塵もない。2020年春夏メンズ・コレクションにも登場した、「フェラガモ」が改修施設を投じたフィレンツェの観光名所、シニョリーア広場のネプチューンの噴水をモチーフにしたマリンリゾート、厚底エスパドリーユなど、古典的芸術とメゾンのアイデンティティーを絡めつつ、清潔感に溢れ誰でも着られるアイテムを提案する。

 シフォンのマキシドレスや、その上にのせるフリルやラッフルのドラマ性に頼らず、むしろ装飾は削ぎ落とすことで、着られる人と汎用性を高めるアプローチ。カフタン、カシュクール、メンズならワンサイズオーバーくらいのブルゾンやジャケットが、レザーウエア唯一の欠点、通気性の悪さをカバーする。

ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)

DESIGNER/ジョルジオ・アルマーニ

 光沢あるベルベット、幾重にしても軽やかさを失わないチュール、レザーのカットアウトやビーズを通したフリンジで作る、ジャケット&ドレスのスタイルは、ごくごく淡いスカイブルーやピーチピンク、七色に輝き、素材の軽やかさをより一層際立たせる。チュールは幾重にも重ねたり、大きなコサージュにして首元にあしらったり、大きなストールに仕立てたり、オンにも使えるジャケットスタイルをイブニングにまで格上げした。

 ランウエイとした鏡のように、チャコールからライトまでグレーの素材は、いずれも強い光沢を放つ。生地を重ねたり、ファスナーを這わせることでうねらせたり、そもそも得意な流線型のパターンワークを多用したりで、その光沢を丸みを帯びた優しいオーラへと変換。袖を通す女性を“主役”に格上げしてくれるよう。

MSGM

DESIGNER/マッシモ・ジョルジェッティ(Massimo Giorgetti)

 ブランド設立10周年を記念したランウエイショーをトリエンナーレデザイン美術館の中庭で行った。招待状に同封されたジンの表紙には、“決して振り返らず、先にあるものを見ていく(Never look back, It’s all ahead)”というメッセージがスクラブルのアルファベットで表現されていた。この10年間、音楽や映画、時には日本の漫画やアニメまでさまざまなカルチャーに焦点を当ててきたマッシモだが、今季はこれまで築いてきた「MSGM」のブランドイメージそのものが着想源だ。楽天的なビビッドカラーのブロッキングや、フェミニンな花柄とレース柄、若々しいストリートフィーリングなど、ブランドが確立した要素をミックス。キャッチーな大きなボウタイブラウスを主役にしたジャケットスタイルから始まり、ネオンカラーのフリルドレス、花柄のシフォンドレス、総レースのセットアップなど、顧客が求めるブランドらしさが溢れるラインアップだ。その一方で、ショー終盤には、未来の「MSGM」を暗示させるロングドレスも数型提案した。色はポップなマルチカラーストライプもあれば、シックな黒もあり、アシンメトリーなフリンジディテールがエレガントだ。

ミッソーニ(MISSONI)

DESIGNER/アンジェラ・ミッソーニ(Angela Missoni)

 会場はロマンチックな雰囲気が漂う、電飾でライティングされた野外プール。客席には、ひまわりの形をした太陽光発電式LEDランプの”リトルサン”が置かれ、「今、地球にとって私たちが行動を起こす重要なタイミング。太陽と手を取り合いましょう」というデザイナーのアンジェラと、”リトルサン”を手掛けたアーティストのオラファー・エリアソン(Olafur Eliasson)からのメッセージが残されていた。今季はアンジェラが自然の美しさに思いを馳せたコレクションだ。朝日と夕日をイメージしたグラデーションから植物を連想されるグリーンのバリエーション、マルチカラーのフローラルプリントなど、鮮やかでありながら、自然の豊かさを感じられる色とモチーフを多用している。一方で、アイテムは1970年代のジェーン・バーキン(Jane Birkin)とセルジュ・ゲンズブール(Serge Gainsbourg)のカップルの服装から着想を得ている。ジェーンのタイトドレスとカゴバッグを持ったスタイルと、ゲンズブールの開襟シャツとジャケットスタイル。また水着を合わせたサマーニットをはじめとするモダンなリゾートルックへと広げた。

The post ミラノコレ4日目のハイライト 七色に輝く「ジョルジオ アルマーニ」と10周年の「MSGM」など appeared first on WWD JAPAN.com.

最も影響力のある見本市が激変 サステイナビリティーはトレンドとしてではなく本気で取り組むべきこと

 9月17~19日にフランス・パリで開催されたファッション素材見本市「プルミエール・ヴィジョン(Premiere Vision以下、PV)では、例年に比べて明らかな変化が見られた。「サステイナビリティーに取り組むと商売の幅が広がる」から「サステイナビリティーに本気で取り組まないと商売にならない」へ――出展社からは焦りにも近い気持ちが伝わってきた。PVは各国の有力企業2000社以上が出展する世界で最も影響力のある素材見本市で、ラグジュアリーブランドからスポーツメーカー、グローバルSPAのデザイナーや素材担当者が必ず訪れる。

 サステイナビリティーがトレンドワードとなって久しいが、それがトレンドとしてではなく、本気で取り組むべき重要トピックに大きく流れが変わった。今回PVがサステイナビリティーの中でも“環境への責任”を全面に打ち出しその必要性を強く訴えかけたこともあるが、どうやら、企業を焦らせたのは主催者側の変化ではなく、取引先の変化にある。

 「変化のシーズンだと感じだ」と話す出展社もいれば「協業先から具体的にどう取り組むべきかの相談が格段に増えた。本気で取り組まなければいけない危機感が伝わる空気が流れている」という声が上がった。

「サステイナブル素材しか見ない」

 大きな影響力を持つ有力ラグジュアリー・コングロマリットのブランドはブースを訪れた際に「サステイナブル素材しか見ない」という姿勢だったというし、別のコングロマリットのラグジュアリーブランドは「サステイナビリティーの認証がないと買わない」と伝えてきたという。これまでも「サステイナブルな素材しか見ない」という客はいたが、その多くはブランドのサステイナビリティー担当者であり、テキスタイル担当やデザイナーからもここまでの声が上がることはなかった。

変化の背景にフランス政府

 その背景には、政治の力がある。フランスは2023年までに売れ残った衣料品の廃棄が禁止になることが決まり、また、8月に開催されたG7に合わせて「ファッション協定(Fashion Pact)」が発表された。

 「ファッション協定」はエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)=フランス大統領が、「グッチ(GUCCI)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」を擁するケリング(KERING)のフランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)会長兼最高経営責任者に対して、ファッションとテキスタイル関連企業トップと共に、環境に与える影響を削減するための実践的な目標を設定するミッションを与えたものだ。

 「ファッション協定」には、そのケリングをはじめ、「エルメス(HERMES)」「シャネル(CHANEL)」から「ナイキ(NIKE)」「アディダス(ADIDAS)」「プーマ(PUMA)」、「ザラ(ZARA)」を擁するインディテックス(INDITEX)、H&Mヘネス・アンド・マウリッツグループ(H&M GROUP)といったメーカーから、セルフリッジズ グループ(SELFRIDGES GROUP)やカルフール(CARREFOUR)、マッチズファッションドットコム(MATCHESFASHION.COM)やノードストローム(NORDSTROM)といった小売りまでが参加する。いずれの企業にも、50年までに温室効果ガス排出量ゼロを達成するアクションプランを作成し実践することが求められている。

 PVのパスカリーヌ・ウィルヘルム(Pascaline Wilhelm)=ファッション・ディレクターに「政府からの働きかけがあったか」と聞くと「ない」と即答したが、「PVはサステイナビリティーについて考える委員会には参加はしている。コミュニケーションはあるが、直接働きかけがあるわけではない」と答えた。フランス政府がサステイナビリティー追求に本腰を入れ、PVも足並みをそろえたことは明らかである。

 9月23日に開催される米国での国連気候変動サミットを前に20日、世界中の若者たちが、地球温暖化への対策を求めた抗議運動を行った。21日には国連ユース気候サミットが開催され、各国政府に一刻も早い対応を求めた。彼らジェネレーションZは、これからの消費を担う世代である。企業はその経済活動に責任が求められるだけでなく、サステイナビリティーに取り組むことが、もはや経営の基本的な姿勢になりつつある。

The post 最も影響力のある見本市が激変 サステイナビリティーはトレンドとしてではなく本気で取り組むべきこと appeared first on WWD JAPAN.com.

ミラノはますますドタバタ日記Vol.4 「フェラガモ」「アルマーニ」の「上質な大人服」の1日&燦然と輝いたカオスな“ニッポンKawaii”

10:00 サルヴァトーレ フェラガモ

 さぁミラノ4日目は、「上質な大人服」を堪能する1日です。最初は「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」。ショーは、屋外の気持ち良い空間で始まりました。

 序盤は、今シーズンの推しアイテム、バルーンスカートを筆頭に、オーバーサイズのシャツドレス、ブルゾン、ステンカラーコート、サロペットまでがぜ~んぶレザー。レザーシャツをパンツの中にタックインできるのは、素材をごくごく薄く柔らかくなめした上で、正確なパターンワークを形にできるメゾンの力と言えましょう。

 その後は布帛、ベロアと素材の軽さや柔らかさが増し、最後はオーガンジーのジャケットでフィナーレ。レザーも含めて素材は軽く、色はピュアで爽やか、絞り込んだアイテムは定番から逸脱しない安心感。だからこそ若い人は大人っぽく、年を重ねた女性は爽やかに映り、それぞれが美しい。(お金のある)若い人には「ピュアで、“オバさんっぽくない”から私も着たい」、年配の女性には「奇をてらわないから、私にも着られる」、そんなムードを提供してくれます。このコレクションライン、日本にちゃんと持ってきて、頑張って販売してほしいなぁ。

10:30 ボルサリーノ

 お次は帽子の「ボルサリーノ(BORSALINO)」。「アート&クラフト」をテーマに最近はイロイロ、ポジティブマインドで多彩な帽子作りに挑戦中です。

12:00 MSGM

 「MSGM」は、ブランド設立10周年のアニバーサリーショー。このブランドと言えばフレッシュな色、大胆なロゴ、ほんのり感じるスポーツやストリートのムードですが、今回は色を押し出し、ロゴを封印。代わりにシルエットで遊びます。さまざまな色に染まったのは、フリルとラッフル、それにリボンで彩った “お人形さんドレス”。クロシェ編みのラペルなどがますます、「お母さんが作ってくれた洋服を着せ替えるお人形」感を醸し出し、思わず目が細くなります。

 ラグジュアリー・ブランドのように大層で敷居が高いワケじゃないけれど、ドレスのオンパレードからは、Tシャツやスエット、スポーツウエアの次へのステップアップを試みるマッシモ・ジョルジェッティ(Massimo Giorgetti)の意気込みを感じました。

13:00 チヴィディーニ

 「チヴィディーニ(CIVIDINI)」は、ニットで有名。グラデーションの染色カーディガンが、南国ムードを盛り上げます。リネン混のカーディガンは、シワ加工しなくても良かったかな?ハイゲージニットは、その美しさを堪能したいかな、と思います。

13:20 ヴァレクストラ

 新作バッグは、マイケル・アナスタシアデス(Michael Anastassiades)とのコラボレーション。なんか美しくないですか、コレ?ショルダーストラップは、バッグをテーブルに置くと、勝手にこの形になるんです。こうなると、「ヴァレクストラ」だし、ほとんどオブジェですね(笑)。

13:35 ジミー チュウ

 ほぼお隣の「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」へ。「自然や野生を、人工的に表現した」コレクションと言います。

 ン!?ドウイウコトカナ?

 「わからん!」と思いながらバッグ&シューズを拝見すると、パイソンプリントのバッグは、激しい赤&シルバーの組み合わせ。ゼブラモチーフのパンプスにも、ネオンオレンジのパテントレザーが差し込まれています。野生の世界ではあり得ないカラーコンビネーションや素材使いで、ヘビ柄やシマウマ柄に由来する野生のイメージをさらに強烈なものとする。そんな意味だったんですね。

14:30 エルマンノ シェルヴィーノ

15:30 フィロソフィ ディ ロレンツォ セラフィニ

 母国イタリアで根強い人気のブランドたちは今シーズン、ガーリー気分が強めです。この2つも、まさに。風になびくシフォンドレスの上には、縦・横・斜めにフリルやラッフル。マカロンカラーのネグリジェドレス(ラブい!)もたくさん登場します。

16:30 ヴェルサーチェ

 昨日の感動、再び!ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)が着たジャングルドレスが見たくて(笑)、来てしまいました。

 「もしかすると、JLO、ドレスは早速お持ち帰りしたかも……!?」と思いましたが、ありました!!ジャングルドレス!!アクセサリーの写真と一緒に、お楽しみください。

17:00 ジョルジオ アルマーニ

 一昨日は「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」からバスケットボールの試合まで大活躍でいらっしゃったアルマーニさん。今回は、「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」です。

 最初は、ブランドの次なるアイコンバッグの展示会へ。コレ、今シーズンその価値が一気に急上昇中の「タイムレス」なバッグで、良くないですか?しかもお値段は、ギリギリ20万円を切りました(税込になると、超えますw)。いつでも、誰でも、どこにも持っていけるバッグ。期待です。

 そしてショーは、今シーズンのワン・オブ・ザ・ベストです。洋服って、こんなに美しくなるのですね。心の底から、そう思いました。

 柔らかな素材を、さまざまなグレーや、ごくごく淡いスカイブルーとピーチピンクに染め、曲線的なジャケットやタック入りのテーパードパンツ、チュールのドレスを作ると、これほどまでに優しいスタイルが生まれるのかーー。丁寧に素材と色、柄、そしてシルエットを決めているのが、手に取るように伝わります。

 ここ最近、アルマーニさんのクリエイションが、どんどん好きになっています。「年をとったから」なのかもしれません(笑)。でも理由はそれのみならず、残り少ないコレクションの発表を、1つ1つ丁寧に、楽しみながら迎えようとするアルマーニさんの思いが感じられるから。そんな気がしてしまう。クチュールも含めれば彼は年間10回、驚異的なペースでランウエイで発表するコレクションを生み出し続けています。けれど現実的に考えれば、彼にとっての発表の場は、残り100回もないでしょう。だからこそ「一球入魂」な姿勢が感じられて、ファン以外も巻き込もうと門戸を広く開放し始めた意気込みが見て取れて、でも、肩の力はしっかり抜けていて。そんなムードが心地よいんだと思います。

18:30 アニオナ

 エルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)グループのウィメンズブランド「アニオナ(AGNONA)」は、1980年代を思わせる構築的シルエット&オーバーサイズのジャケットがキーアイテム。今シーズンのトレンド、ど真ん中に直球を投げ込みます。本来はパワフルなシルエットですが、持ち前の柔らかな素材感でイケイケ感は幾分リアルに、落ち着きました。

19:30 ミッソーニ

 この春改修が終わったばかりの、めちゃくちゃキレイで開放的な市営プールを会場に選んだ「ミッソーニ(MISSONI)」は、太陽光を蓄電し、ランプ(しかも明るい)や携帯の充電器として使える「リトル サン(LITTLE SUN)」をお土産に。ミラノのブランドも環境問題への意識がぐんぐん高まっています。

 コレクションは、“元祖・地球のことを真剣に考えた若者”とも言える1970年代のヒッピースタイルに、リゾートのムードをプラスしたコレクション。ごくごく薄いハイゲージニットで、もはやチュールやシフォンのようなスケスケのマルチカラーニットから、フリルを加えたフレアパンツや開襟シャツ、ホルターネックでテントラインのドレスなどを提案します。マルチカラーのニットと、花柄をプリントしたシフォンのスカート、それに七色のスパンコールがキラキラのジャケットをどんどん重ねる超カラフルミックスは、見ているだけでウキウキです。

20:40 GCDS

 本日の最後は、イタリアンストリートの「GCDS」。この「上質な大人服」の1日に、燦然(さんぜん)と輝く異端児、でありながら亜流です(笑)。

 ショーが始まると、ヤシの木が生える南の島から「ガォガォ」吠えるピンク色の恐竜が現れました(なぜw!?)。そしてモデルは、海外の人が考える“ニッポンKawaii”スタイル。クマさんのビキニ、ウサギさんのサンダル、キティちゃんバッグ、そしてアダルトアニメのブルゾンやミニスカ、ピンヒールのニーハイブーツが現れ(なぜなぜw!?)、ハッキリ言ってカオスです(笑)。

 モデルは、デカ目になるカラコンを装着していて、お人形感が強目。はっきり言ってチョット怖い!

 「上質って素晴らしい」「丁寧って大事だな」と思っていたラストに、このカオス。やっぱりファッションって面白いですね(水野晴郎風にお別れしたいと思います)。

The post ミラノはますますドタバタ日記Vol.4 「フェラガモ」「アルマーニ」の「上質な大人服」の1日&燦然と輝いたカオスな“ニッポンKawaii” appeared first on WWD JAPAN.com.

ロングスカートでスタイルアップ! 19-20年秋冬の注目トレンドコーデ実例

 クラシックでレディーライクな装いが、2019-20年秋冬は主役に浮上してきます。このトレンドにマッチするボトムスといえば、やはりロングスカート。秋冬コーディネートの軸にと、海外有力ブランドの多くが発表済み。例えば、ニューヨークブランド「3.1 フィリップリム(3.1 PHILLIP LIM)」は19-20年秋冬コレクションで、大胆なゼブラ柄のロングスカートを披露しました。サイドのスリットはボタンで開け閉めでき、アシンメトリーな裾が優美な動きを演出します。強めの柄を穏やかなトーンで見せるのは、今秋冬の見逃せない傾向です。

 トップスや羽織り物と、ロングスカートとのコンビネーションを意識した提案が増えたのも、今シーズンの目立った変化と言えます。ロングスカートはロマンティックでガーリーなイメージもありますが、今季は大人っぽくシックに着こなすのが新しい作法。そこで、今回はロングスカートを新たな切り口で提案している、大人女性に人気のブランドから、着こなしのヒントになりそうなスタイリング実例をピックアップしてみました。

プリーツとレースで“女度”アップ

 ロングスカートは丈がたっぷりあるため、布の表情を生かしやすいシルエットです。たとえば、細いひだのプリーツをあしらえば、縦落ち感が際立ちます。一方、レースを配すと、ロマンティックな表情に。ワンランク上の満足感を求める女性に向けた「アドーア(ADORE)」が19-20年秋冬コレクションで披露したのは、細ひだのプリーツで、節度とスレンダー感をダブルで印象づけるニットプリーツスカート。斜めに流れ落ちるようなイエローの使い方が優美です。同素材のトップスと合わせるニットのセットアップは、動きやすさと上品さが融け合います。

 一方、優しくたおやかなムードを醸し出せるのが、レース仕立てのロングスカートです。ゆったりとしたシルエットのロングニットに合わせれば、絶好のパートナーに。ロングスカートならコートにも隠れてしまわないので、繊細な表情が装いのアクセントになります。

トーン・オン・トーンで
こなれ感をアピール

 素材感や色味を少しだけ変えつつ、全身を同系色でまとめる“トーン・オン・トーン”の装いは、大人ならではの適度な抜け感を印象づけやすいコーディネートです。落ち着いた雰囲気に見えるので、お仕事服にも向いています。「女性に生まれてよかったと思える服」を提案する「エブール(EBURE)」の19-20年秋冬コレクションでは“進化系セットアップ”とも呼べそうなツーピースを提案。大きめのダブルポケットが印象的なブラウスに、優雅なAラインを描くプリーツスカートを合わせています。ワンピースともスーツとも異なる、絶妙なムードが生まれました。

 完全な上下おそろいではなく、2枚目の写真のように別素材で微妙に色のトーンをずらせば、さらにこなれ感がアップします。ウエストのベルトを垂らして細長効果も発揮。ざっくりニットのプルオーバーで正面だけウエストインしています。背中側に裾をあふれさせたアシンメトリーな着こなしで、フェミニンが自然とただようスタイリングに仕上げました。

“ロング×ロング”レイヤードで
縦長シルエットを強調

 ロングスカートは縦長シルエットも強調できます。賢い着こなしのコツは、着丈の長いトップスやアウターとコーディネートする“ロング×ロング”の合わせ方。秋冬らしいロング丈アウターとのマッチングが試せます。上質感とシンプルさを大切にしながら、今の気分を表現する「イレーヴ(YLEVE)」。19-20年秋冬コレクションでは波打つアコーディオンプリーツに、モヘア素材のロングニットカーディガンを合わせて上質な異素材コントラストを披露しました。自然な落ち感が印象的で、気負わない雰囲気です。ロングブーツで足元を引き締める小技は、今季のマストとも呼べるアレンジです。

 写真2枚目のスタイリングは、スカートの両サイドの丈が長いイレギュラーヘムのデザインで、さらに縦長感が強まりました。ほんのりと光沢を帯びたシルクキュプラのフレアスカートには、色味を少しずらしたコートをオン。ロング丈同士のレイヤードは、防寒ルックをシャープに見せる切り札的コーデとしても注目です。

 ロングスカートを「かさばる」「太って見えそう」と敬遠する人もいますが、今回の着こなしの実例からも分かる通り、コーデ次第ではむしろスタイルアップがかなうアイテムです。色・素材のずらし、“ロング×ロング”の合わせなどのアレンジを生かせば、秋冬コーデの頼れる味方になってくれそうです。

2019-20年秋冬トレンドをもっと見る

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

The post ロングスカートでスタイルアップ! 19-20年秋冬の注目トレンドコーデ実例 appeared first on WWD JAPAN.com.

ミラノコレ3日目のハイライト 自然をダイナミックに表現した「マルニ」と「ヴェルサーチェ」をリポート

 2020年春夏シーズンのミラノ・ファッション・ウイークも中盤戦。3日目のブランドの中から、「マルニ」と「ヴェルサーチェ」をピックアップしてリポートする。

マルニ(MARNI)

DESIGNER/フランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)

 ”アクト1”と題した6月に発表したメンズに引き続き、海洋プラスチック汚染を問題提起する”アクト2”と題したコレクション。「マルニ」を象徴するフラワープリントや色の掛け合わせの表現を更新しながら、自然の危機と愛しさを視覚的を訴えかけた。会場は、アーティストのジュディス・ホプフ(Judith Hopf)によるプラスチックの廃棄物で作ったジャングル空間を、リッソが”フラワー ソルジャー(花の戦士)”と呼ぶルックをまとったモデルたちが歩いた。”フラワー ソルジャー”たちは、リッソ本人がペイントした力強い花柄のスモックドレス群や、ドレープとギャザーを効かせたビビッドカラーのドレス、大花を刺しゅうしたフィッシュネットドレスを着ている。いずれもカラフルでダイナミックで、シルエットもユニーク。エプロン型のドレスからサイドスリットを入れたものまでレイヤードアイテムとして機能するアイテムがそろった。ジュリアン・ディス(Julien D'ys)によるヘアメイクは、全体をクレイで白く固めて、一部のモデルには花を装飾し、朽ちていく自然を比喩しているようだった。

ヴェルサーチェ(VERSACE)

DESIGNER/ドナテッラ・ヴェルサーチェ(Donatella Versace)

 序盤は、2020年春夏最大のトレンドである、ボックスシルエットの“ジャケットルック”でスタート。とはいえ、ファーストルックは、ドレス。ジャケット同様の構築的なショルダーライン、深いVゾーンを有するスーツ地仕立てのボディコンドレスという「ヴェルサーチェ」らしい幕開けだ。ジャケットもシャツも、このブランドはパワフルに。タップルの肩パッドを入れて、ジャケットなら構築的かつパワフルに。ドレスならそこを起点に美しくドレープするジャージーの素材感を楽しむ。装飾はウエストマークするための細ベルト、それにゴールドのボタンだ。

 中盤以降はグリーンのボリュームが増え、次第にボタニカルモチーフに侵食される。気づけばドレスは、ジャングルのように。かつてジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)がグラミー賞で着用し、「あのドレスは、一体どのブランド」と世界の人々がGoogle検索した”ジャングル・ドレス”をミニ丈にアレンジした。会場が暗転すると、「OK、Google。本当のジャングルドレスを着たセレブは誰?」というコメントとともに、本物のディーバが降臨。たっぷりのシフォンにジャングルをプリント。胸元をバックリ開けた、オープンバッグのドレスを見せつけ、ミラノ一番の拍手喝采に包まれた。

The post ミラノコレ3日目のハイライト 自然をダイナミックに表現した「マルニ」と「ヴェルサーチェ」をリポート appeared first on WWD JAPAN.com.

「おっぱい、ブラで隠しちゃダメですか?」 久しぶりのミラノ・コレクション取材で考える

 数年ぶりにミラノのウィメンズ・コレクションを取材すると、驚くことがイロイロあります。会場周辺のインスタグラマーの数から、すっかり様変わりしたフロントローの面々、予想以上に多かった市街の「スターバックス(STARBUCKS)」までさまざまですが、その中の1つに「こんなに、おっぱい見えたっけ?」というのがあります。

 発表しているのは、2020年春夏コレクション。暑い時期に着るコレクションですから生地が薄くなるのは当然で、ランウエイにはオーガンジーやシフォンなどのシースルー素材があふれます。そして、時代はリラックス。結果、Vネックが深くなったり、シルエットがちょっぴり大きくなったり。するとモデルが歩くたび、バスト周辺の生地は揺れ、不意におっぱいが見えるんです。フィッティングの問題と信じたいところですが、明らかにドレスのデコルテラインが下過ぎて、そもそもおっぱいを隠しきれていないドレスも出てきます。そんな時、ふと思うのです。

 「おっぱい、そろそろ隠してあげても良くないですか?」と。

 ショー会場を訪れるゲストは、そのほとんどが洋服に興味・関心を抱いているワケで、正直、モデルがブラを身につけていたって、誰も気にしないと思います。パーソナルな感想ではありますが、「アルベルタ フェレッティ(ALBERTA FERRETTI)」のコレクションでは、今をときめく、僕も大好きなカイア・ガーバー(Kaia Gerber)のおっぱいが見えたのですが、「カイアのおっぱい(喜)!!」とはならず、「カイアのおっぱい(驚)……」というのが正直な感想でした。おっぱいが見えることが、プラスに寄与することはありません。

 しかも世の中にはヌーブラ的な、洋服にほとんど影響を与えないブラジャーがたくさんあるワケで、今時「ノーブラじゃないと、洋服が美しく見えない」は、通用しない言い訳だと思うのです。

 確かにオープンバック、背中がバックリ開いたドレスの場合、ブラジャーのヒモは“余計なモノ”かもしれませんが、例えばニューヨークブランドの「セルフ-ポートレート(SELF-PORTRAIT)」は、オープンバックのトップスにストラップを取り付け、ブラジャーのヒモを隠したり、それをデザインの1つとして取り入れちゃったりの工夫を採用することで「ブラジャーをつけても問題ない」洋服に昇華しています。ブラジャーもデザイナーも進化し続けているのです。もはや「ブラジャーがあると、キレイじゃない」なんて状況ではないでしょう?

 今回、特におっぱいがたくさん見えたのは、「ブルマリン(BLUMARINE)」のランウエイショーでした。イタリアで長年、大人気のブランド。ショーは満員御礼、スタンディングもたくさん、という空間です。そこに送り出されてウォーキングしている間、会場にいる数百人の視線が一斉に注がれる中で、おっぱいが見え続けているモデルの気持ちは、どうなんでしょうか?アンダー20、ティーンも数多いモデルの世界です。「自分だったら?」と考えると正直、彼女たちの胸元は直視できません。

 モデルには、「おっぱいが見える洋服はNG」という女性もいます。「おっぱいが見える洋服を着るときは、ギャラアップ」なんてブランドも多いです。そう考えると、「おっぱい?そんなの気にしているの?」なんて業界人は少数派で、モデルもブランドも、「おっぱいが見える洋服を着るのは、勇気がいること。ツラいこと。断ったり、ギャラをアップしたりしなければいけないもの」と認識しているワケですよね?そう考えると、「もう、本当にブラジャー着けましょうよ」と思うのです。

 そんな話を、「WWDジャパン」のために長年バックステージでの撮影を続けているフォトグラファーの景山郁さんに振ったら、悲しいエピソードを教えてくれました。バックステージで泣いていたモデルの話です。

 彼女は「おっぱいが見える服」を着てランウエイを歩きました。するとその後、その写真が「ペチャパイ」的な辛らつなコメントとともにSNSに上がってしまったのだそうです。悔しくて涙が止まらず、バックステージのヘア&メイクアップアーティストに慰めてもらっていた、そんな話です。

 そう、今は、誰もが撮影できて、誰もが世界中に向けてデジタルの世界に写真をアップできる時代なのです。昔とは違います。「おっぱいが見えてしまった」モデルの写真は、(私たち「WWD JAPAN.com」も写真は加工・修正しないので、片棒を担いでしまっているのかもしれませんが)世界中に出回り、永遠に残ってしまうのです。もうマジでブラジャー着けて良いでしょう?これでもまだ、ダメですか?

 ちなみにインスタグラムなどでは、おっぱいが見えている写真はアップ禁止。削除されてしまいます。「おっぱいが見える洋服」は、プロモーションにとっても効果的ではないのです。

 「ブルマリン」などの会場に行くと、こちらがビックリするくらいセクシーな洋服で自信満々の女性もいます。お尻が半分、おっぱいも半分見えているケースは少なくありません(笑)。でも、それは彼女たちの意志。「おっぱいが見える服」から逃れられないモデルとは、事情が全く異なります。洋服は、とても素敵です。美しい体を見せつけることは、人に勇気を与えることだとも思います。でも、それは選択できる状況であるべき。そんな状況にないモデルのおっぱいが見えると、洋服さえ素直に賞賛できない自分がいます。そんな人は、少なくないのではないでしょうか?

 だからこそ、ブランドには通例にとらわれず、考えて欲しいのです。

 「それでもまだ、ブラジャーはつけられませんか?」。

The post 「おっぱい、ブラで隠しちゃダメですか?」 久しぶりのミラノ・コレクション取材で考える appeared first on WWD JAPAN.com.

「おっぱい、ブラで隠しちゃダメですか?」 久しぶりのミラノ・コレクション取材で考える

 数年ぶりにミラノのウィメンズ・コレクションを取材すると、驚くことがイロイロあります。会場周辺のインスタグラマーの数から、すっかり様変わりしたフロントローの面々、予想以上に多かった市街の「スターバックス(STARBUCKS)」までさまざまですが、その中の1つに「こんなに、おっぱい見えたっけ?」というのがあります。

 発表しているのは、2020年春夏コレクション。暑い時期に着るコレクションですから生地が薄くなるのは当然で、ランウエイにはオーガンジーやシフォンなどのシースルー素材があふれます。そして、時代はリラックス。結果、Vネックが深くなったり、シルエットがちょっぴり大きくなったり。するとモデルが歩くたび、バスト周辺の生地は揺れ、不意におっぱいが見えるんです。フィッティングの問題と信じたいところですが、明らかにドレスのデコルテラインが下過ぎて、そもそもおっぱいを隠しきれていないドレスも出てきます。そんな時、ふと思うのです。

 「おっぱい、そろそろ隠してあげても良くないですか?」と。

 ショー会場を訪れるゲストは、そのほとんどが洋服に興味・関心を抱いているワケで、正直、モデルがブラを身につけていたって、誰も気にしないと思います。パーソナルな感想ではありますが、「アルベルタ フェレッティ(ALBERTA FERRETTI)」のコレクションでは、今をときめく、僕も大好きなカイア・ガーバー(Kaia Gerber)のおっぱいが見えたのですが、「カイアのおっぱい(喜)!!」とはならず、「カイアのおっぱい(驚)……」というのが正直な感想でした。おっぱいが見えることが、プラスに寄与することはありません。

 しかも世の中にはヌーブラ的な、洋服にほとんど影響を与えないブラジャーがたくさんあるワケで、今時「ノーブラじゃないと、洋服が美しく見えない」は、通用しない言い訳だと思うのです。

 確かにオープンバック、背中がバックリ開いたドレスの場合、ブラジャーのヒモは“余計なモノ”かもしれませんが、例えばニューヨークブランドの「セルフ-ポートレート(SELF-PORTRAIT)」は、オープンバックのトップスにストラップを取り付け、ブラジャーのヒモを隠したり、それをデザインの1つとして取り入れちゃったりの工夫を採用することで「ブラジャーをつけても問題ない」洋服に昇華しています。ブラジャーもデザイナーも進化し続けているのです。もはや「ブラジャーがあると、キレイじゃない」なんて状況ではないでしょう?

 今回、特におっぱいがたくさん見えたのは、「ブルマリン(BLUMARINE)」のランウエイショーでした。イタリアで長年、大人気のブランド。ショーは満員御礼、スタンディングもたくさん、という空間です。そこに送り出されてウォーキングしている間、会場にいる数百人の視線が一斉に注がれる中で、おっぱいが見え続けているモデルの気持ちは、どうなんでしょうか?アンダー20、ティーンも数多いモデルの世界です。「自分だったら?」と考えると正直、彼女たちの胸元は直視できません。

 モデルには、「おっぱいが見える洋服はNG」という女性もいます。「おっぱいが見える洋服を着るときは、ギャラアップ」なんてブランドも多いです。そう考えると、「おっぱい?そんなの気にしているの?」なんて業界人は少数派で、モデルもブランドも、「おっぱいが見える洋服を着るのは、勇気がいること。ツラいこと。断ったり、ギャラをアップしたりしなければいけないもの」と認識しているワケですよね?そう考えると、「もう、本当にブラジャー着けましょうよ」と思うのです。

 そんな話を、「WWDジャパン」のために長年バックステージでの撮影を続けているフォトグラファーの景山郁さんに振ったら、悲しいエピソードを教えてくれました。バックステージで泣いていたモデルの話です。

 彼女は「おっぱいが見える服」を着てランウエイを歩きました。するとその後、その写真が「ペチャパイ」的な辛らつなコメントとともにSNSに上がってしまったのだそうです。悔しくて涙が止まらず、バックステージのヘア&メイクアップアーティストに慰めてもらっていた、そんな話です。

 そう、今は、誰もが撮影できて、誰もが世界中に向けてデジタルの世界に写真をアップできる時代なのです。昔とは違います。「おっぱいが見えてしまった」モデルの写真は、(私たち「WWD JAPAN.com」も写真は加工・修正しないので、片棒を担いでしまっているのかもしれませんが)世界中に出回り、永遠に残ってしまうのです。もうマジでブラジャー着けて良いでしょう?これでもまだ、ダメですか?

 ちなみにインスタグラムなどでは、おっぱいが見えている写真はアップ禁止。削除されてしまいます。「おっぱいが見える洋服」は、プロモーションにとっても効果的ではないのです。

 「ブルマリン」などの会場に行くと、こちらがビックリするくらいセクシーな洋服で自信満々の女性もいます。お尻が半分、おっぱいも半分見えているケースは少なくありません(笑)。でも、それは彼女たちの意志。「おっぱいが見える服」から逃れられないモデルとは、事情が全く異なります。洋服は、とても素敵です。美しい体を見せつけることは、人に勇気を与えることだとも思います。でも、それは選択できる状況であるべき。そんな状況にないモデルのおっぱいが見えると、洋服さえ素直に賞賛できない自分がいます。そんな人は、少なくないのではないでしょうか?

 だからこそ、ブランドには通例にとらわれず、考えて欲しいのです。

 「それでもまだ、ブラジャーはつけられませんか?」。

The post 「おっぱい、ブラで隠しちゃダメですか?」 久しぶりのミラノ・コレクション取材で考える appeared first on WWD JAPAN.com.

「ディオール」と一緒に女子大生が個性について考える 東京で開催のエンパワーメントプログラム潜入レポ

 「ディオール(DIOR)」はこのほど、若い女性がキャリアを築く上でのサポートを目的とした交流・学びの場「ウーマン・アット・ディオール(WOMAN @ DIOR)」の東京でのプログラムを開催しました。東京でのイベントには、就職活動を通して人生のビジョンを描き始めた大学生ら16人が参加。自己分析と自身に対する自信、それらを踏まえた上での他者との違いなどを考える座学とワークショップに挑戦した後、シャンパンで乾杯し、親睦を図る“女子会”で終了しました。以後参加者は社会貢献活動に取り組みつつ、ここからさらに選抜される代表7人(予定)は来年3月パリに渡り、世界の参加者を前にして活動の成果を発表します。今年、このプログラムには、フランスはもちろん、イギリスやイタリアなどのヨーロッパ、アメリカ、中国、韓国、そしてアラブから450人以上が参加しています。

 プログラムを担うエマニュエル・ファーヴル(Emmanuelle Fabre)クリスチャン ディオール クチュール ヒューマンリソーシズ ディレクターは趣旨を、「才能ある女性が彼女たち自身、ならびに夢を自覚するためのサポート。特に自信を持ち、仲間と強固なネットワークを築く価値という、学校では教えてくれない学びの機会を提供したい」と話します。重要視するのは、「強固なネットワーク」なのでしょう。彼女は次世代を担う女性を「私生活を犠牲にせず、つながり、ネットワークを深め、正直に、競争を恐れずリーダーシップを磨ける人物」と捉えます。一人のカリスマではなく、個性豊かなコミュニティーで社会をけん引しようというのは、実に今っぽいところ。とは言え率直に言ってプログラムは、日本の女性が置かれている現状よりもずっと先、女性が男性同様に活躍する社会を実現するための過程でもありながら、さらに先の未来でもある印象です。エマニュエル・ディレクターは、「これは、CSR(企業の社会的責任)だけではない。社会的価値を創造し、ポジティブな社会変革を促進するプログラムなの」と壮大な野望、そして夢を語ります。アーティスティック・ディレクターに就任して最初に発表したコレクション「私たちは皆、フェミニストであるべき(We Should All Be Feminists)」以来、絶えず女性のエンパワーメントを考え続けるマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)同様、ビジョンは壮大です。

 東京でのプログラムは、応募者多数につき事前選考が行われました。選考基準は、大きく分けて3つ。「才能、野望、そして寛容さ」だそうです。2つ目の「野望」は、ともすれば日本ではネガティブな印象を受けるかもしれません。でも、エマニュエル・ディレクターが目指す「社会的価値の創造」は、確かに遠大な野望です。こんなに強い言葉を、臆せず、堂々と発する「ディオール」を頼もしく思うし、受講者の多くが将来、同様に野望を語る人物になればと願います。

 と、42歳のオジさん、女子に勝手なお願いをしましたが、それは杞憂みたいな願いでした(笑)。僕が親戚のおじさんなら「立派になったねぇ〜」としみじみしてしまうほど、参加者、デキる!!大半が英語を流暢に操る(ちなみにプログラムは全編英語でした)バイリンガル(以上)の語学力を有していましたし、発言を求められると次々挙手。一般的な日本の授業風景とは全然違います。この子たちなら、自分の野望をかなえ、将来、マリアやエマニュエル、そして「ディオール」が願う真の意味で平等な社会を作れるのかもしれない。マジでそう期待させるガールズが集結した、そんな印象です。

 プログラムはまず、「シンギュラリティー」を学ぶことから始まりました。デジタルの世界に足を突っ込む僕にとっての「シンギュラリティー」は、2045年までに訪れるとされる“AI(人工知能)が、人間を超えてしまうとき”のことですが、一般的には「特異性」という意味。他の人にはない、自分だけのアイデンティティーに迫ろうという講座でありワークショップです。ここで彼女たちの背中を押したのは、オスカー・ワイルドの(Oscar Wilde)の「Be Yourself, the Others Are Already Taken!(自分らしくあれ!誰かの真似をしても、その人には決して追いつけないから)」という言葉。アイルランド出身の詩人オスカー・ワイルドは、退廃的な19世紀末文学の代表家でしたが、同性愛者だったがゆえに収監されて失意のままに没した人物です。こういう耽美な人物が登場するのは、フランスメゾンならではですね(笑)。

 その後は、自分の「シンギュラリティー」をノートの表紙に表現するワークショップや、完成した表紙について語り合うディスカッションが続きます。プログラム中は随時「ディオール」のスタッフがメンターとなって、参加者をフォローアップ。自己分析や社員との交流など、就職活動に女性のエンパワーメントについての学びがプラスされたようなプログラムです。あ、美味しいスイーツもプラスされてました(笑)。

 このプログラムを担当したのは、パリで女性のエンパワーメント活動に尽力する作家でありジャーナリストのフローレンス・サンディス(Florence Sandis)。ここでは、(男性ではありますがw)僕が聴講して心に残ったフローレンスの言葉をいくつか紹介しましょう。

・「嫌われることへの恐怖は、身を守るために大事なこと。でも、それは脇に置きましょう。自分のゴールや目標に向かう道の前には置かない方が良いの」
・「勇敢になるための第一歩は、声に出すこと。『自分は、強くなんかない』と理解してもらうこと。その上でリスクを覚悟すること」。
・「一人は、Invisible(その姿は見えてこない)。仲間と一緒なら、Invincible(無敵)」。
・「世界で働く女性エグゼクティブ99%は、結婚したり、パートナーと幸せな生活を送っていたりする。オトナになったら、パートナーがいなくちゃダメ。素敵な人を見つけて」。

 最後のフレーズからは、パリを感じませんか(笑)?

 そのあとは、働く女性を支援する会社ポピンズの轟麻衣子社長がスピーチ。メリルリンチ(MERRILL LYNCH)を経て、「シャネル(CHANEL)」「グラフ(GRAFF)」そして「デビアス(DEBEERS)」で要職を歴任した轟社長のキャリアや考え方は、すぐに真似したり実践できたりするものではなかいかもしれないけれど(笑)、刺激になったことは間違いないでしょう。

 参加者に話を聞くと、「自分を周りの人と比べると悲しくなる時もあったけれど、大事なのは自分らしくいること。日本は周囲に溶け込むことに価値を置くけれど、それはグローバル・スタンダードではないことを知った」や「高価なバッグや素敵な洋服で女性を彩っているブランドというイメージは持っていたけれど、本当に女性を大事に捉えているんだと知った。好きな洋服を、好きな時に着ることは、自分の自信に繋がることも学んだ」「『女性らしく』ではなく、『自分らしく』を応援してくれるブランドと感じた」などの反応がありました。

 エマニュエル・ディレクターは、「ウーマン・アット・ディオール」はスタッフにとっても自身が働くメゾンの意志に気付く1つの契機となり、「インクルーシブな価値観が広がることで、恒常的な成長の原動力になっている」と話します。メリットは参加者のみならず、メンター、そしてメゾン、ひいては業界、さらには世界にまで広がる可能性を秘めていることを教えてくれました。

The post 「ディオール」と一緒に女子大生が個性について考える 東京で開催のエンパワーメントプログラム潜入レポ appeared first on WWD JAPAN.com.

ミラノはますますドタバタ日記Vol.3 「ヴェルサーチェ」ジャングルドレスのジェニファー・ロペスVS「マルニ」花の戦士

 ミラノ・コレクションは3日目。本日は、バッグやシューズブランドのプレゼンテーションがてんこ盛り。「WWDジャパン」は3人体制でミラノ・コレクションを取材していますが、本日は3人がほとんど別行動。移動がちょっぴり寂しい1日です(笑)。

9:55 トッズ

 ということで、本日最初は「トッズ(TOD’S)」。

 ファッション週刊紙「WWDジャパン」は月曜発売の最新号で2020年春夏ニューヨーク・コレクションをレポートしていますが、特に注目したのは「タイムレス」という価値観。「タイムレス=いつでも、どこでも、誰でも、長く着られる洋服」と定義し、「それが一番、サステイナブルなんじゃない?」と考えるNYデザイナーの考え方とクリエイションに迫りました。

 というワケで「タイムレス」が気になる今日この頃。「イタリアン タイムレス」と銘打った「トッズ」のコレクションに、共感しないハズがありません。

 ファーストルックは、コレ。間違いないですね(笑)。ずっと着られます。裾と袖をリブにしたブルゾン、クリーンな白シャツ&チノのキュロット、ピカピカレザーのコインローファーに、(写真では見えないけれど)レトロなショルダーバッグ。大事に使えば10年後だってヘビロテアイテムでしょう。バッグとシューズが主力で、ウエアは「アクセサリーに合わせやすいアイテムを」というアプローチの「トッズ」。クリエイティブ・ディレクター不在の今、そして世界中の人々が「賢い消費」、お金も地球も大事に考えながら買い物する今は、コレが「トッズ」らしいと思うのです。

11:00 ブルマリン

 お次は「ブルマリン(BLUMARINE)」。バラが咲き乱れる“ラブい”ランウエイに登場するのは、同じくバラが百花繚乱状態のシフォンのドレス。胸元や腰元にあしらったコサージュは異様にデカく、「ラブ注入(←古い表現でスミマセンw)」度合いハンパなしです。「ブルマリン」を筆頭に「アルベルタ フェレッティ(ALBERTA FERRETTI)」など、イタリアには「女性に生まれて良かった!!」という気分を堪能させてくれるブランドが多く、特に現地では絶大な支持を誇っています。ピンクのネグリジェドレス、ポピーが咲き乱れるジャケット&パンツ、総スパンコールのワンショルダートップスとキュロットなどは、そんな女性のテンションを確実にアップさせるのでしょう。

 にしても、コチラもおっぱい、見えすぎです。ちょっとイロイロ考えちゃいます。ということでこの問題については、別の記事で思うところを書いてみよう。

11:30 プラン C & アリータ

 お次は、「プラン C(PLAN C)」と「アリータ(ALIITA)」。それぞれ「マルニ(MARNI)」の創業者コンスエロ・カスティリオーニ(Consuelo Castiglioni)の娘と、義理の娘が手掛けるウエア&アクセサリーブランドです。ちなみに、2人ともモノ凄くいい人。コンスエロの教育が良いのでしょうか(笑)?

 「プラン C」は、ワークやスポーツウエアをドレスと大胆ミックス。モチーフもフローラルとストライプ、そしてチェックが入り乱れます。全体の印象は「カワイイ!!」。でも実はそのカワイイを、大胆不敵かつ勇敢なハイブリッドで生み出すのが、カスティリオーニ家のアプローチです(笑)。

 「アリータ」は、海の世界。リングに“ちょこん”と乗っかるカニはサンゴでできています。「リゾートですか?」と思ってシンシア・ヴィルチェス・カスティリオーニ(Cynthia Vilchez Castiglioni)に話を聞くと、「海は、一人になれる場所。周りから姿を消し、自分だけの秘密の生活ができるでしょ」と、コチラもクリエイションはカワイイのに、ミステリアスな世界観(笑)。一筋縄じゃいきませんね。

 お土産の水中マスク(なぜw?)姿で、ドレッシーな海女さんモデルと記念撮影して帰りました(笑)。

12:05 ロロ・ピアーナ

 最高級の素材と戯れる「ロロ・ピアーナ(LORO PIANA)」は、高密度ゆえシワになりにくいシルクリネン、独自の防水技術レインシステム搭載生地を貼り合わせたスエード、コットンの周りにシルクを絡めたというシルクコットンなど、もちろん、とろけるカシミアと半端ないクオリティ。砂漠色に染め、ポンチョやアノラック、カフタンドレスなど、素材の肌触りが提供する心地良さを、損ねないどころか倍増してくれそうなリラックスウエアを提案します。

 「エルメス(HERMES)」「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」含め、この手のブランドの洋服には、自然と手が伸びるものです。「滅多にないチャンスなんだから、触っとかないと!!」、そんな気持ちにさせられるからです。「ロロ・ピアーナ」でも、カシミアコートを触りながら、PRの方と無言でうなずき合ってしまう。このコミュニケーション、なんでしょう(笑)?

12:55 スポーツマックス

 「スポーツマックス(SPORTMAX)」は、マリン。マリンストライプこそ登場しませんが、ネイビー、フィッシャーマンズセーター、Pコート、マリンキャスケットなどが、広大な海の開放感、“勝手に船長さん”気分を盛り上げます。そこに加えたのは、レザーで作ったカフスやラペルなど。ネイビーのカフタンドレスに、コニャック色のレザーアクセサリー。面白いコントラストです。

13:45 フェンディ

 「フェンディ(FENDI)」の展示会を10分で駆け抜けます!!シルヴィア・フェンディ(Silvia Fendi)体制となり、キッチュなムードが増したアクセサリーなどをパシャパシャ。すでに長年クリエイションの陣頭指揮を執ってきたメンズでは、「天気が良いから、公園でサボっちゃった男性」とか「めちゃくちゃ暑いけど、スーツを着なくちゃいけない可哀想なサラリーマン」なんて、面白いけど「いるいる!!」な男性像を思い描き、微笑ましいコレクションを生み出しているシルヴィア。ウィメンズもそうなっていきそうです。

 ちなみに先日、“オフトゥンドレス”と紹介した、このドレス。本当に“ベッドマットドレス”と呼ぶそうです(笑)。

14:30 エトロ

 「エトロ(ETRO)」は、安定感漂うボヘミアン。ペイズリーはもちろんですが、アースカラー、ポンチョ、マタドール風のショートベスト、それにメダリオンベルトを見ると、「『エトロ』だなぁ」と当たり前の感想が口に漏れますが(笑)、考えてみれば、このアイテム、そして組み合わせを見るだけでブランド像が瞬時に蘇るっていうのは、スゴいコトです。

 今シーズンは、そんなボヘミアンがフリルの力を借りて、ちょっと色っぽくなりました。ジャケットのVゾーンからフリルが溢れんばかりのフォーマル。エトロらしい2020年春夏です。

15:35 マルニ

 フランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)の「マルニ(MARNI)」は、6月のメンズが第1章なら、今回のウィメンズは第2章。まず会場では、メンズのとき、天井の漁網の上に転がっていた海のゴミのペットボトルを再利用。葉っぱにして、ジャングルなムードを演出します。

 そこに飛び出したモデルは、まるで蕾(つぼみ)や球根のような球体のシルエットだったり、満開の花のようなボリュームシルエットだったりのドレス姿。ほぼ全てのドレスには1点モノのハンドペイントが施されます。ヘアスタイルは、普段なら「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」くらいしかバックステージを手掛けないジュリアン・ディス(Julien D'ys)が担当。フランチェスコが、口説き落としました。

 6月のメンズでフランチェスコは、「いよいよ地球がヤバい。今こそ、革命が必要だ」と考え、1960年代の若き革命家エルネスト・チェ・ゲバラ(Ernesto Che Guevara)を現代に蘇らせました。「今回のウィメンズは、革命後の理想郷?」。そう思ってバックステージでフランチェスコに話を聞くと、「メンズのチェは、戦士。今回のウィメンズも、“花の戦士”。内側から力と美をバクハツさせるんだよ」と教えてくれます。なるほど、やはり今は、男女ともに戦わなくてはダメな時代なのですね。まだ30代の若きデザイナーが、これほどまでに真剣に地球に向き合っていること、感銘を受けます。

16:30 ボッテガ・ヴェネタ

 昨日、ショーを拝見した「ボッテガ・ヴェネタ」の展示会へ。ここでは、バッグ&シューズの写真をたくさんアップしたいと思います。

20:30 ヴェルサーチェ

 この間は、会えるハズだった方に会えなかったり(泣)、など生産性の低い時間を過ごしまして、今日のラストは「ヴェルサーチェ(VERSACE)」!!イケイケブランドらしく、ジャケットはおろか、シャツにまでがっつり肩パッドを入れたパワフル&セクシーフォーマルで幕開けです。ゴールドのボタン、細いベストを使ったウエストマーク、大きなコサージュのブローチに彩られたフォーマルは、徐々にグリーンへと変化。気づくと、ジャングルプリントのドレス祭りとなっていました。

 パレード・オブ・ジャングルドレスと化したランウエイショーのBGMは、ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)の「LOVE DON’T COST A THING」。これは、かつてのグラミー賞授賞式で「ヴェルサーチェ」のジャングルドレスを着用したジェニファーが、あまりにセクシーだったことに由来しています。当時ジェニファーのドレスは、「あれは一体、どこのブランド?」と世界中でGoogle検索されました。

 なんて思い出に浸ろうとしたら、会場は突然暗転。「OK、Google。本物のジャングルドレスを着たのは、誰?」なんて音声が流れます。ま、まさか〜。

 でた〜。モノホンです。J.Loです(笑)。セクシー・ダイナマイツです!!

 ここで会場は、今回のミラノで一番大盛りあがり。フロントローの人までもがスタンディングで、ジャングルプリントのシフォンをヒラヒラ、腰をクネクネ、目線バチバチのジェニファーを動画で収め始めます。

 コーフン!!ミラノ3日目は、こうして幕を閉じました。

 会場からの帰り道は、もちろんJ.Lo。彼女ばりに堂々とウォーキングして、ホテルに戻りました(笑)。

The post ミラノはますますドタバタ日記Vol.3 「ヴェルサーチェ」ジャングルドレスのジェニファー・ロペスVS「マルニ」花の戦士 appeared first on WWD JAPAN.com.

「ルシアン ペラフィネ」がポケモンとコラボ メンズ、ウィメンズ、キッズを用意

 「ルシアン ペラフィネ(LUCIEN PELLAT-FINET)」は9月下旬、世界的人気キャラクターのポケモンとのコラボコレクションを発売する。同コレクションは最上級の素材を使用し、大胆でカラフルな遊び心あるデザインを施したメンズ、ウィメンズ、キッズを用意する。

 アイテムは、ヒトカゲ、ゼニガメ、ピカチュウ、イーブイの4体のポケモンを用いた全17型。ピカチュウをプリントしたコットンTシャツ(11万円)、ニットパーカ(28万円)、各ポケモンを象徴するカラーリングで仕上げるカシミアインターシャニット(ヒトカゲ60万円、ゼニガメ64万円、ピカチュウ58万円、イーブイ60万円)などをそろえる。「ルシアン ペラフィネ」直営店と公式オンラインストアで取り扱う。

The post 「ルシアン ペラフィネ」がポケモンとコラボ メンズ、ウィメンズ、キッズを用意 appeared first on WWD JAPAN.com.

勢いづくパリの新鋭「カサブランカ」 自然を愛する男の美しいメンズウエア

 スキンヘッドにたっぷり蓄えた髭とサングラス——この一度見たら忘れられない個性を放つのが、メンズブランド「カサブランカ(CASABLANCA)」を手掛けるシャラフ・タジェル(Charaf Tajer)だ。モロッコ生まれの同氏は、パリでマーケティング業やクリエイティブチームのパン オ ショコラ(PAIN O CHOKOLAT)のメンバーとしてクラブ「ル・ポンポン(LE POMPON)」を経営するかたわら、2019年春夏シーズンに出身国の都市名を冠した「カサブランカ」を立ち上げた。同ブランドはユナイテッドアローズ&サンズ(UNITED ARROWS & SONS)でポップアップストアを9月24日まで開催しており、同店と東京・原宿のアジアンレストラン「チャオ!バンブー(CHAO! BAMBOO )」とのトリプルコラボレーションTシャツ(6000円)などを販売している。

服作り経験ゼロだから作り出せた自由なムード

 「自分が着たい服を作りたかった」——ブランド立ち上げのきっかけについてそう語るタジェルは、服作りを学んだ経験がない。しかし「ピガール(PIGALLE)」を率いるステファン・アシュプール(Stephane Ashpool)と親交が深く、同氏のクリエイションを近くで見ながら自らのブランドについて3〜4年の構想を重ねていった。ストリートに軸足を置いた独学ゆえの自由なムードと、クラシックな高級素材や自然の風景といった“美しいもの”を愛するタジェルのパーソナリティーが融合したコレクションは立ち上げ直後から話題を集め、世界中で取り扱いが始まった。現在の取引先は世界に67店舗で、20年春夏シーズンには126店舗に倍増予定と、売り上げは右肩上がりだ。19-20年秋冬と20年春夏シーズンはパリ・メンズ期間中にランウエイショーを行うなど、立ち上げ3シーズン目とは思えない勢いを見せている。スタッフは現在17人で、さらなる規模拡大のための雇用も検討しているという。順調なスタートを切った同ブランドだが、「3000ユーロの資金からスタートしたときは、まさかここまで大きくなるとは思っていなかったからビックリだよ。(日本語で)ヤバイ」とタジェルは驚く。

 タジェルがコレクションを製作する際は、自身の幼少期を思い描く。「幼いころはモロッコのカサブランカで夏休みを過ごすことが多かったんだ。そこで見た人たちはとてもきれいに着飾っていた。まるで『世界が今日で終わるから美しい自分でいたい』と感じているかのようだったよ」と振り返る。アイテムはダブルブレストのスーツやコート、シルクシャツなどベーシックなものが多いが、素材感やグラフィックで“美しさ”を表現する。現在はメンズウエアのみだが「ウィメンズウエアから着想することが多いんだ」と話し、将来的にはウィメンズの構想もあるようだ。

 昨今、アパレルブランドが続々と表明しているサステイナブルへの姿勢についても、独自の視点を持つ。「ボタンはプラスチックではなくココナツ製だし、次のシーズンからコットンは100%オーガニックのものしか使わない。ありがたいことに知名度が上がっているから、ブランドとして環境に配慮するのは当然の使命。でも、僕たちは“エコ”ブランドじゃない。次世代を担う若者や子供に、自然ってこんなに美しいだよ、こんなに素晴らしいんだよということを伝えていきたいだけなんだ」。エキゾチックな夜空や雪が残る山脈、眼前に広がる広大な海など、ブランドの特徴でもある多彩なグラフィックには、美しいものを愛するデザイナーの強い思いが込められていたのだ。旅行好きで親日家でもあるタジェルは、最後にこう締めくくった。「いつか大好きな日本を車で縦断したい。そして、日本をテーマにしたコレクションを作りたい」。

The post 勢いづくパリの新鋭「カサブランカ」 自然を愛する男の美しいメンズウエア appeared first on WWD JAPAN.com.

ドレスコードを書き換えてはいけない? 「ドレス・コード?―着る人たちのゲーム」

 京都国立近代美術館と京都服飾文化研究財団(KCI)は8月9日~10月14日まで、日常的に行う「服を着る」「装う」という行為に焦点を当てた展覧会「ドレス・コード?―着る人たちのゲーム」を開催しています。

 同展では18世紀の宮廷服から最新のコレクションアイテムまでKCIが所蔵する約90点の衣装を中心に、映画のポスターやアート作品など約300点を展示。デザイナーの創造性やファッションの歴史を強調した内容ではなく、あくまで日常的に服を着る主体に目を向けた構成になっていることが特徴です。「#モードって何?」特集の取材で京都に行く機会があり、せっかくだからと足を運びました。

ドレスコードは
守らなくてはならない?

 会場では13のドレスコードが提示され、それぞれのテーマにまつわる衣装や展示が並びます。ほとんどのテーマが「組織のルールを守らなければならない?」などのように断定形の文章に「?」が添えられた疑問文になっていて、鑑賞者への問いかけになっています。ルールの存在を自明のこととしてそれを強制させようとする断定形の言葉づかいに、ドレスコードが持つ強い影響力が表現されていると感じました。

 「装う」ということは極めて私的な行為である一方で、他者のまなざしに否応なく晒される社会的な行為でもあります。共有されるドレスコードは社会や時代、文化などによって異なり、誰しもがこのまなざしを向ける/向けられる関係、ドレスコードの内/外をめぐる装いのゲームに参加することになります。

 ゲームと言われると、与えられたルールの中でだけ振舞うことが許されるものと考えてしまいがちですが、このドレスコードをめぐる“ゲーム”はルールが一方的に与えられる不自由なものではないはずです。

 記憶に新しい「#KuToo」運動(SNSを中心に広がった業務中のヒール靴・パンプス着用強制に抗議するムーブメント。約1万8000人による賛同の署名を集めた要望書が厚生労働省に提出された)は、まさにドレスコード=ルールに対する異議申し立ての象徴的な出来事でした。時としてドレスコードは“社会通念”となって過度の従属を強要することもあるが、常にそれに従う必要はない――このことを「#KuToo」運動から感じ取りました。問いを立て発信し議論の俎上に載せるという点で、同展にも「#KuToo」運動と同様の問題意識があるように思われます。

誰もルールを書き換えられない?

 「ゲームには必ずルールがある。スポーツであればルールを順守することが望まれるが、ルール違反ギリギリの行為や、ルールを逆手に取ったプレーがある。(中略)これらのルールは変更されることがある。ファッションであろうと、ゲームであろうと、その枠内で設定されるルール(=コード)は、厳密にみえて実は変動性のあるものなのだ」(「ドレス・コード?― 着る人たちのゲーム カタログ」より「ドレス・コードをめぐって 明日着る服を考えるために」、石関亮、p.21)。

 展示全体(特にコーナーの一つである「誰もがファッショナブルである?」)を見て、ルール=ドレスコードの設定において、絶対的な主導権を持った存在はいないということを再確認しました。確かに、これまで守られてきた慣習や常識、あるいはパリを中心とする流行生成のシステムはいまなお大きな影響力を持っていますが、あくまで装う人の手にこのルールを如何とする権利は委ねられているはずです。同展に並ぶドレスコードをはみ出した事例・実践がこのドレスコードを更新してきたという事実に、それを見ることができます。

 服を着る主体はゲームのプレーヤーであると同時に、ゲームのルールメーカーでもあるということを意識しておきたい。ドレスコードは恒久不変のものではなく、プレーヤー自身によって常に解釈され、組み替えられ続けるものであるはずです。着る主体である自分にもそのルール=ドレスコードを書き換える権利があるということをあらためて感じられた展覧会でした。

 ただし、装いには必然的に他者の存在、他者のまなざしがついてまわるということは忘れないようにしたいと思います。他者への敬意を欠いた装いや、他者の権利を阻害するような装いは、ルール以前の前提としてわきまえておきたいものです。

改めて考えるきっかけとして

 同展のカタログは、日本のファッション論の草分け的存在である鷲田清一・大阪大学・京都市立芸術大学名誉教授の代表的著書「モードの迷宮」(ちくま学芸文庫、[1989]1996)から「明るいニヒリズム?」を収録。ほかにも3月に行われた同展のプレ・セミナーにおける千葉雅也・立命館大学准教授と蘆田裕史・京都精華大学准教授による対談をはじめ、牧口千夏・京都国立近代美術館主任研究員や石関亮KCIキュレーター、小形道正KCIアシスタントキュレーター、宮脇千絵・南山大学准教授らによる論考など、展示を補完してさらに思考を広げてくれる内容が多く掲載されているので、併せて読むことをおすすめします。

 同展は2019年12月8日~2020年2月23日に熊本市現代美術館でも巡回展を開催。日々逃れられない「服を着る」ということをあらためて考えるきっかけとして、足を運んでみてはいかがでしょうか。

■「ドレス・コード?―着る人たちのゲーム」京都展
日程:8月9日~10月14日
時間:9:30~17:00(毎週金曜日、土曜日は21:00まで開館 入館はいずれも閉館の30分前まで)
場所:京都国立近代美術館
住所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町26-1
休館日:毎週月曜日(ただし8月12日、9月16日、9月23日、10月14日は開館、翌火曜日休館)
入場料:一般1300円 / 大学生900円 / 高校生500円 / 中学生以下無料

■「ドレス・コード?―着る人たちのゲーム」熊本展
日程:12月8日~2020年2月23日
時間:10:00~20:00
場所:熊本市現代美術館
住所:熊本県熊本市中央区上通町2-3
休館日: 毎週火曜日(ただし2月11日は開館、12月29日~1月3日、2月12日は休館)
入場料:一般1100円 / シニア900円 / 学生600円 / 中学生以下無料

秋吉成紀(あきよしなるき):1994年生まれ。2018年1月から「WWDジャパン」でアルバイト中。

The post ドレスコードを書き換えてはいけない? 「ドレス・コード?―着る人たちのゲーム」 appeared first on WWD JAPAN.com.

活動開始2カ月での快挙 新人モデルの美佳が「プラダ」でランウエイデビュー

 2カ月前に活動を始めたばかりという新人モデルの美佳(MIKA)が、ミラノ・ファッション・ウイーク初日の9月18日に行われた「プラダ(PRADA)」2020年春夏コレクションのショーでランウエイデビューを果たした。ショーでは20ルック目に登場。リーフモチーフのビーズ刺しゅうが施された鮮やかなオレンジのコートスタイルを着こなした。

 エキゾチックなムードをまとう美佳は、2001年フランス・パリ生まれの18歳。フランス人の父と日本人の母の間に生まれ、日本、フランス、ロシア、インドで育った、仏英日の3カ国語を話すトリリンガルだ。7月からモデルエージェンシーのイマージュに所属し、ウォーキングの練習などを重ねてきた。10月からは東京を拠点に活動する。そんな彼女にショー直前のバックステージで話を聞いた。

 ランウエイモデルを目指したきっかけについて、美佳は「インドに住んでいた時、知人からの紹介でポンディシェリー・ファッション・ウイーク(南インドのポンディシェリーで開催されているローカルイベント)に1度だけ出たことがあり、ドキドキ感と注目されていることへの喜びを感じました。そんなとても楽しかった体験を通して、ランウエイに興味を持ったのがきっかけです」とコメント。好きなブランドは「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「エルメス(HERMES)」「プラダ」などで、「プロのモデルとして初めてのランウエイショーが、好きだったブランドで本当にうれしいです」と笑顔を見せる。

 最近関心を抱いているのは、環境問題。「自分にできることは、小さなことでもやるようにしている」と話す彼女が、当日着用していた私服のボトムスは「ザラ(ZARA)」のサステイナブルなライン“ジョインライフ(JOIN LIFE)”のもので、スウェーデン発の「ヌーディージーンズ(NUDIE JEANS)」など環境に配慮したブランドを買うことが多いという。また、モデル活動を通して「サステイナブル・ファッションと関わり、その意義や目的を少しでも広げていくこと」を目指している。憧れているモデルは、アドゥ・アケチ(Adut Akech)、グレース・エリザベス(Grace Elizabeth)、カイア・ガーバー(Kaia Gerber)、ソラ・チョイ(Sora Choi)ミン・シー(Ming Xi)、そしてサンヌ・ヴロート(Sanne Vloet)。「夢はコレクションや来日ショーといった有名ブランドのショーやキャンペーン、イベントなどに呼んでいただけるようになること。いろいろな方に指名してもらえるようなモデルになりたい」。

 美佳は9月23日から10月2日まで開催されるパリ・ファッション・ウイークでもショーに出演予定。どのブランドのランウエイに登場するか注目したい。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

The post 活動開始2カ月での快挙 新人モデルの美佳が「プラダ」でランウエイデビュー appeared first on WWD JAPAN.com.

ロンドンコレのヘアメイクは“ナチュラル”一択 個性を生かしてヘルシーに

 9月13〜17日に開催された2020年春夏シーズンのロンドン・ファッション・ウイーク(LONDON FASHION WEEK)に参加したブランドは、ナチュラルなヘアメイクが主流だった。ヘアとメイクは作り込まず自然体で、取材したメイクアップアーティストとヘアスタイリストからは“個性を生かす”“ありのまま”“自由な女性”という言葉が多く返ってきた。

 女性にとって、薄づきのナチュラルなヘアメイクは決して手抜きではない。むしろ、日ごろの手入れを入念に行う必要がある。今後もナチュラルなメイクのトレンドが続けば、世界中で拡大し続けているスキンケア市場にとってはさらなる追い風となりそうだ。バックステージ取材を行った4ブランドのビューティの傾向を紹介する。

TOGA
ラフさ演出し“強さ”を表現

 「トーガ(TOGA)」のメイクは、伊藤貞文「NARS」グローバルアーティストリーディレクターがリードした。モデル一人一人の個性を尊重するように、仕上がりは極めてナチュラル。スキンケアで素肌をしっかり整えた後、肌色を覆わない透明感のあるベールでカバーするファンデーション「ピュアラディアント ティンティッドモイスチャライザー」を少量のせてベースメイクを仕上げていく。眉毛は「ブローパーフェクター」で隙間を埋め、アーチは描かずストレートに毛の流れを整えた。リップはブランド創立25周年を記念してフルリニューアルした「リップスティック」から、マットなモーブヌードピンクとローズブラウンの2色を使用。モデルの肌の色に合わせて色を選び、塗るのではなく唇の輪郭を縁取り、血色が良く見えるよう軽くのせていく程度だった。伊藤ディレクターは「『トーガ』が描く女性の“強さ”を表現するために、キレイというよりは少しラフに見えるくらいにし、とにかくナチュラルでフレッシュに仕上げた」と説明した。ヘアはロンドンを拠点に活動するアサシ(Asashi)が手掛けており、メイク同様にナチュラルさを意識してぞれぞれの癖毛を生かしていたようだ。ランウエイではロングヘアのモデルが軽やかに髪をなびかせているのが印象的だった。

SIMONE ROCHA
こだわりの“素朴風”ヘア

 「シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)」は今季、デザイナーのルーツであるアイルランド伝統の“レンボーイ”から着想を得た。アイルランドでは“聖ステファノの日”とされる12月26日に、少年がミソサザイという小さな鳥を捕まえ、街の家々を回ってお金をねだる伝統行事がある。レンボーイと呼ばれる少年らが着用する衣装をほうふつとさせるわらを使ったヘアが施され、メイクには鳥の羽根がペイントされていた。バックステージは終始せわしなく、ショー開始直前までほとんどの時間をヘアのセットに費やしていた。ロングヘアのモデルは髪をブロッキングしていくつもの三つ編みの中にわらを編み込んでいき、最後にアーチ状に留めて完成だ。カチューシャやヘアアクセサリーをつけたモデルたちは三つ編みと編み込みを多用し、ショートヘアのモデルは七三分けで、共通しているのは顔に髪がかかることなく、「KMS」のジェルでしっかり固められていることだ。ヘアのダフィー(Duffy)は「ドラマチックでフェミニンな『シモーネ ロシャ』だが、今季はレンボーイをイメージしてドライな質感で乱れることのないヘアスタイルに仕上げた。編み込みは、フェミニンな印象のフレンチ編みをいくつも作って、ドレスの装飾やアクセサリー、レンボーイのイメージとリンクするように仕上げた」と説明した。トーマス・デ・クルイヴァー(Thomas de Kluyver)が率いたメイクはセミマットな肌で素顔風でナチュラルだった。メイクにスポンサーはなく、メイクアップアーティストが持ち込んだアイテムを使用した。アマ・クワシ(Ama Quashie)が手がけたネイルは、パールがポイント。「ネイルもジュエリーの一部だという考えから、ジュエリーを着用するモデルだけにパールの装飾をあしらった。ルックはフェミニンではあるが少年っぽさも兼ね備えていたので、『キュアバザー(KURE BAZAAR)』のドライな質感のマニキュアをベースに、ラフさが残るようなネイルにした」と解説した。

JW ANDERSON
シャワー後のような清潔感

 「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」は、若々しくフレッシュでヘルシーなメイクとヘアだった。「キコ ミラノ(KIKO MILANO)」のアイテムによって施されたメイクアップは、まずスキンケアラインで顔をマッサージしながら肌を整えることからスタート。保湿クリームやメイク下地、ハイライトが一つになった「スマート ラディアンス クリーム」を塗り、薄づきのBBクリーム「グリーン ミー」を顔の中心と気になる部分にのせた。仕上げに「スカルプティング タッチ」でシェーディングを入れてメリハリを加え、完成させていく。「スマート フュージョン リップスティック」のカラー403と434をモデルの肌色に合わせて唇に塗った後、少量をブラシに取ってチークとしても使用した。最後に「ポップ レボリューション ハイライター トゥ ゴー」でハイライトを入れ、内側から満ちるような潤いの艶を演出した。メイクを手がけたリンジー・アレキサンダー(Lynsey Alexander)は「“多様性を尊重する” をテーマに、とにかくナチュラルさを意識した。朝起きてシャワーを浴びたばかりのような清潔感をイメージしてフレッシュに仕上げている。素顔のまま堂々と外に出かける女性を表現した」と説明する。ヘアは全体的に少しウエーブがかかり、毛先にいくほどドライな質感だった。「ロレアル(L’OREAL)」のアイテムで仕上げたヘアについてアンソニー・ターナー(Anthony Turner)は「イメージは、前夜の楽しかったパーティーを翌朝に思い出している、若々しく自由なマインドの女性。ありのままの姿が最もセクシーに見えるようなエフォートレスな雰囲気をつくった。細めのコテでウエーブを作り、ランウエイで髪がふんわり揺れるように毛先は特に動きをつけた」と説明した。

REJINA PYO
ビーチで遊ぶ快活な女性像

 ロンドンを拠点にする韓国出身のレジーナ・ピョウ(Rejina Pyo)は、詩人でアーティストのエテル・アドナン(Etel Adnan)と陶芸家ルーシー・リー(Lucie Rie)の作品から着想を得たコレクションを発表した。常夏のリゾート地をイメージさせる鮮やかなカラーパレットのルックには、日焼けしたようなメイクアップがほどこされた。スキンケアラインで肌を整えた後、「ロード アンド ベリー」のスティック状のファンデーション「パーフェクトスキン ファンデーション」を少量塗って、ベースメイクはセミマットに仕上げた。4色が1パレットになった「グロー オン ザ ゴー」を使い、艶感をアップさせていく。数色を混ぜながらチークとシェーディングし、鼻の上と耳にも色をのせて日焼けしたてのような肌が完成した。唇にはマットな質感のリップスティックを指でポンポンとたたきながらのせて、自然に仕上げた。メイクをリードしたゾエ・テイラー(Zoe Taylor)は「太陽に愛される、開放的で自由な女性の夏のメイクだ。色はほとんど使わず、ナチュラルにした」と説明した。ヘアは顔周りをウエットにし、毛先にいくにつれてドライな質感へと変化する。ヘアのティナ・オーテン(Tina Outen)は「ロレアル」の商品を使用していた。ランウエイに登場したモデルたちは、ビーチで遊ぶような女性のように快活だった。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

The post ロンドンコレのヘアメイクは“ナチュラル”一択 個性を生かしてヘルシーに appeared first on WWD JAPAN.com.

ファッションラバーもハマる女の「サ道」 Vol.1 ワタシがサウナにハマった理由

 空前のサウナブームに沸く日本列島。いまや、おじさんだけでなく若者にもサウナ文化が定着し、女性サウナーの存在もチラホラ。その背景には、タナカカツキによる伝説の漫画「サ道」のドラマ化や、同じく漫画の「湯遊ワンダーランド」「極上!サウナめし」などが大きく影響しているのだとか。ビジネスマンからファッションラバーまで、慌ただしい日常に癒やしを求め、サウナに集まる人たち。人はいったいどんなきっかけでサウナにハマり、何を得るのだろうか。

 “ととのう”。この言葉を聞くだけで、ピンときた人はすでに立派なサウナーです。わたしがサウナに通うようになったのは、ティーン向けファッション誌の編集を担当していた頃。かれこれ15年前にさかのぼります。毎日撮影続きで終電どころか、会社泊も日常茶飯事のなかで、唯一ひとりになれる場所がサウナだったのです。そもそも当時のわたしは、人見知り&オタク気質で、仕事以外のプライベートでは家で音楽を聴いたり、漫画を読んだり……。もはや誰かと行動を共にする行為は、限りなく“行事”に近い感覚。つまり他人と一緒にいることは、スイッチが「ON」の状態というわけです。

 もちろん、スーパー銭湯も大嫌いでした。人前で裸になるのが、気恥ずかしかったのでしょうね。ところが校了を終えたある日、代休をとって近所をブラブラしていると、ノザワランド(現在休業中)という昭和チックな銭湯を環七沿いに発見。興味本意で中に入ってみると、そこには薬湯、ジェットバス、電気風呂、露天風呂、サウナ、水風呂、まるで遊園地のような光景が目の前に広がりました。サウナ室で身も心も裸になってコミニケーションを図るおばちゃん達は、全員知らない人。服を着ていないので、その人たちの仕事や生活スタイルの先入観がまったく入ってこないのです。そのとき、ふっと頭にこんなことがよぎりました。

 「こんな身近に “開放的な空間=自由”があったんだ」と。それからというもの、週1でその銭湯に通うようになりました。サウナという箱に入れば一人の世界に浸れる。でも人の存在だって、ちょっぴり感じるから寂しくない。なんの利害関係もなく、恥もプライドもかき捨て、会話を必要としない裸の付き合いができるのだと。

 と同時に、大量の汗とともに煩悩をも消し去ってくれることを実感。たとえば仕事でミスをおかしてしまったとき、話の通じない上司とのやりとりにイライラしたとき、コンビニで買ったアイスを冷凍庫に入れ忘れて溶けてしまったとき……。そんな日常のモヤモヤを一気に流してくれる心地良さに自由を感じたのです。過去を振り返っても仕方ないじゃないか、また明日から気持ちを入れ替えて頑張ればいい!携帯にも邪魔されず、心と頭のスイッチを「OFF」にするからこそ、斬新な企画やアイデアが浮かぶことも。もはやサウナは、わたしにとってインスピレーションを掻き立てる場所、といっても過言でないくらい「サ活」が生活の一部になっていったのです。

【今日のサウナ用語集】

アウフグース
発祥はドイツ。熱くなったサウナストーンにアロマ水をかけて、サウナルーム全体に蒸気を発生させた後、スタッフがタオルで一人一人に熱風化した蒸気を仰ぐスタイル(一人5スイング程度)。大うちわであおぐ施設もあり、厄除けとしても効果があるのだとか。

ロウリュ
フィンランドで長く愛される入浴法。サウナストーンにアロマ水をかけて蒸気を発生させるが、アウフグースが90℃前後なのに対し、ロウリュウは70℃~80℃と低めの温度設定が多い印象。初心者はまずはロウリュからスタートするのがベター。こちらもアウフグース同様、スタッフがアッツアツの熱風を送ってくれる。

尾竹めぐみ:ファッション・エディター、ライター。大学卒業後、ボストンへ留学。帰国後はファッション誌「オーリーガールズ」編集部で、ストリートスナップを担当。2005年からリットーミュージックが発行するファッション&クラブカルチャー誌「ルイール」で、海外アーティストの取材やセレブゴシップ特集に力を入れる。12年、INFASパブリケーションズに入社し、季刊誌「WWD マガジン」、ファッション週刊紙「WWD ジャパン」で経験を積む。現在、フリーランスとしてファッションウェブ媒体を中心にエディトリアルからライティングまでを手掛ける。趣味はネットフリックスと日本全国のスーパー銭湯めぐり

The post ファッションラバーもハマる女の「サ道」 Vol.1 ワタシがサウナにハマった理由 appeared first on WWD JAPAN.com.

メディカルコスメ「エンビロン」初のポップアップでビタミン導入を体験!

 メディカル発想のスキンケアブランド「エンビロン(ENVIRON)」が22日まで東京・ゼロベース表参道で開催している、ブランド初となるポップアップイベントを体験してきました。同ブランドは1987年にサンケア先進国である南アフリカ共和国の形成外科医により開発され、ビタミンAを用いたスキンケアの先駆けとして現在世界70カ国で展開。日本には92年に上陸し、2000カ所以上のエステサロンとクリニック、自社ECサイトとアットコスメショッピングで販売されています。

 肌のコンディションに合わせて、肌の自己再生を促すビタミンAの配合濃度を段階的に高めていくというスキンケアシステムの特性上、カウンセリングを伴う対面販売を推奨としています。そのためこれまで一般向けのプロモーションは積極的に行っておらず、サロンやクリニックを利用する人以外が手に取る機会が少なかったといいます。

 ただ今後はさらにブランドの認知拡大、新客獲得のために日本での総販売代理店のプロティア・ジャパンは、BtoCマーケティングに着手し、同時に、契約するサロンやクリニックとユーザーをつなぐ会員制ECサイト「リブアクティブストア(Live Active store)」を今年4月に開設しました。そして今回、「エンビロン」を知らない人はもちろん、知っていたけれど使ったことはないという人に向けて、初のポップアップが開催されました。

 連日、オープンと同時に整理券がなくなるほどの行列ができているという会場に向かうと、白衣を着たセラピストが迎えてくれました。着席して説明を受けながら所要時間約15分程度で、サロン機材を使った本格的なビタミン導入のトリートメントを手で体験できます。トリートメントは全4ステップで、まずはオイルとクレイマスクを使ったマッサージで肌のざらつきや毛穴の汚れ、黒ずみを取って滑らかにします。その後、AHA(乳酸)配合のトーニングローションで肌表面の余分な脂を取り除き、次にビタミンAやビタミンC配合のトリートメントセラムを塗布し、超音波導入機でビタミンを浸透させます。最後に、保湿効果のある冷却マスクで有用成分を浸透させて、ホームケア用の製品で仕上げて終了です。反対の手もベーシックエイジングケアシリーズを使ってケアしてもらえました。

 サロンやクリニックではイオン導入のメニューもあるそうですが、超音波導入でも、表面に塗布するだけの場合の約40倍浸透するそうで、トリートメント後は肌のキメが整い、ハリや弾力が出て肌に活力が戻った実感がありました。先述のECサイト「リブアクティブストア」にその場で無料会員登録すると、ミニサイズのサンプルセットがプレゼントされるということでした。「エンビロン」は一般流通に進出していないにもかかわらずドクターズコスメとして知る人ぞ知るブランドで、今回のポップアップでも「ずっと気になっていてSNSを見て来た」という声も多いとか。スキンケアのパーソナライズはトレンドですし、メンテナンスとしてエステサロンやクリニックを利用する人も少しずつ増えています。今回のビタミン導入体験は、メディカルコスメは気になっていたけど敷居が高くて……そう感じている人にぴったりのイベントではないでしょうか。日曜日までなので興味のある人はぜひ足を運んでみてください。

■エンビロンPOP-UPストア
日程:9月22日まで
時間:11:00~19:30(最終日は17:00まで)
場所:ゼロベース表参道
住所:東京都港区南青山5-1-25

The post メディカルコスメ「エンビロン」初のポップアップでビタミン導入を体験! appeared first on WWD JAPAN.com.

若手デザイナーの夢の舞台、「LVMHプライズ」の最終審査に密着

 世界の若手ファッションデザイナーにとって最も価値のあるコンテストとも言える「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE以下、LVMHプライズ)」の第6回の最終審査が9月4日にパリで行われました。その魅力は、30万ユーロ(約3600万円)というグランプリの賞金だけでなく、1年間にわたりブランド運営に必要なコーチングをLVMHグループのブランドに携わるプロから得られるということ。過去の受賞者やファイナリストの活躍も手伝い、年々注目度は高まっています。そして今回、最終審査を密着取材する機会をいただいたので、ベルリンからひとっ飛び、会場となったフォンダシオン ルイ・ヴィトン(Fondation Louis Vuitton)に向かいました。ここでは審査の模様をはじめ、現地取材を通して感じたことをお届けします。まずは、当日の大まかな流れから。

10:00 審査スタート

 審査員が続々とフォンダシオン ルイ・ヴィトンに到着。ちなみに一番乗りはジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)「ロエベ(LOEWE)」クリエイティブ・ディレクターでした。自由にブランドのブースを回って、それぞれ展示された服をチェックしたり、デザイナーたちと話したり。この時点で会場に入れるメディアは、限られたジャーナリスト数人のみで、ゆったりしたムードが漂います。

11:00 最終プレゼンテーション

 審査員が一堂に会する別室に1組ずつ呼ばれ、10分間の最終プレゼンテーション。ここは非公開のため取材には入れずでしたが、1ブランドにつき3人のモデルが実際のコレクションを着用して登場。終了後には、デザイナーがモデルと共にメイン会場に戻ってきて記念撮影。やはり人が着ることで、服の個性や魅力がグッと引き立ちます。

12:30 帝王現る!

 ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼CEOが到着!ファイナリストは緊張した面持ちで、自身のコレクションを説明。先ほどとは打って変わって、会場に少しピリッとした緊張感が漂いました。

13:15 ランチタイム

 お弁当のようなスタイルで、野菜中心のメニューが供されました。が、お腹が空きすぎて写真を撮るのを失念。バックステージの狭い階段にデザイナーやモデル、ブランド関係者が仲良く座って食べているのは、なんだか微笑ましい光景でした。

14:00 メディア&ゲスト到着

 テレビや雑誌など世界各国のメディア関係者、業界関係者が入場。一気に会場が人でごった返しました。中には、初回に特別賞を受賞したサイモン・ポート・ジャックムス(Simon Porte Jacquemus)「ジャックムス(JACQUEMUS)」デザイナーや、昨年グランプリに輝いた井野将之「ダブレット(DOUBLET)」デザイナーといったこれまでの受賞者の姿も。また、来年からおそらく審査員に加わるであろうフェリペ・オリヴェイラ・バティスタ(Felipe Oliveira Baptista)「ケンゾー(KENZO)」新クリエイティブ・ディレクターも会場を訪れていました。

15:15 結果発表

 審査員全員がステージに登壇。今年は、多様性をイメージしたレインボーカラーの背景が印象的です。デルフィーヌ・アルノー(Delphine Arnault)=ルイ・ヴィトン エグゼクティブ・バイス・プレジデントのスピーチの後、ファッションスクールで学ぶ最終学年の学生を対象にした「グラデュエート・プライズ」と、特別賞「カール・ラガーフェルド賞」が授与され、いよいよグランプリの発表です。今年は女優のアリシア・ヴィキャンデル(Alicia Vikander)がプレゼンターとして登壇し、栄冠を勝ち取ったテベ・マググ(Thebe Magugu)「テベ マググ」デザイナーにトロフィーを手渡しました。終了後は、皆ステージから降りてきて来場者と談笑したり、ファイナリストたちの労をねぎらったり。受賞者の2人にはインタビューが殺到し、2時間ほど続きました。

時代を象徴するファイナリスト

 「LVMHプライズ」のファイナリストは毎年実力派ぞろいなのですが、そのラインアップは常に時代のムードを反映しているように感じます。特に今回はそれが際立っていて、環境やサステイナビリティーを意識したモノづくり、ジェンダーを問わないデザイン、インクルージョン&ダイバーシティーや社会問題へのアプローチを軸にしたデザイナーたちが選ばれました。ただし、あくまでも選考のポイントは“デザインのオリジナリティー”。そして、“ストーリー性”も多くの審査員が重要な点として挙げていました。つまり、どんなにサステイナブルでも、社会的に素晴らしい取り組みでも、結局は人の心を惹きつけるコレクションでなければいけないのです。

 また今回は、南アフリカのヨハネスブルクとイスラエルのテルアビブという、伝統的にファッションで知られる都市ではない場所を拠点とするデザイナー2人が受賞したことも印象的でした。ちなみに、「ディオール(DIOR)」がモロッコで2020年プレ・スプリング・コレクションを発表したり、米コンデナスト(CONDENAST)が南アフリカで「インターナショナル・ラグジュアリー・カンファレンス(International Luxury Conference)」を開いたりと、ラグジュアリーファッションビジネスにおいて大きな成長の可能性を秘めるアフリカ市場は今、注目を集めています。グランプリ受賞と直接関係があるとは言えませんが、LVMHがそれを意識しているのは間違いないでしょう。

気になる賞金の使い道は?

 「LVMHプライズ」ではグランプリに30万ユーロ、特別賞にも15万ユーロ(約1800万円)の賞金が授与されます。若手デザイナーにとってはかなり大金なので、その使い道が気になるところ。今年の受賞者2人にも聞いてみました。マググ=デザイナーは、「今は予算管理からパターンのドラフトや素材の調達まで自分でやっている部分が多いので、その部分を担ってくれる人を雇い、チームを作りたい。そして、今は自宅で作業しているので、より快適に働けるスタジオを構えようと思う」とコメント。「ショーなどの大きなことに使うのではなく、今本当に必要なことに投資して土台を築き、着実に成長していきたい」とし、9月末にパリで展示会を開いたりはするそうですが、今後も南アフリカのヨハネスブルクを拠点に活動を続けて、アフリカ発のインターナショナルブランド確立を目指すそうです。

 一方、特別賞の「カール・ラガーフェルド賞」を獲得したヘド・メイナー(Hed Mayner)「ヘド メイナー」デザイナーは、すでにパリ・メンズ・ファッション・ウイークで継続的にショーを行なっていることもあり、現在の活動拠点であるテルアビブに加えパリにもスタジオを構えることを検討中。「今ブランドに携わっているのは、自分を含めて4人。人員を増やして、よりクリエイティブに専念できるようにしたい。財務などビジネス面については、LVMHのメンターに相談するつもり」と話していました。

サラ・ムーアが日本の若手デザイナーに提言

 最終プレゼンテーションが終わるのを待っている間、ファイナリストの選出に携わる選考委員の一人でもあり、若手デザイナーの支援に情熱を注ぐファッションジャーナリストのサラ・ムーア(Sarah Mower)と話しました。彼女がまず口にしたのは、「日本には面白いデザイナーがたくさんいるのだから、もっと積極的に応募すべき。言語のハードルが高いのかもしれないけれど、その面をサポートしてくれるメンバーを見つければ大丈夫でしょう?」ということ。もちろん日本のデザイナーが挑戦していないわけではなく、ここ数年は毎回ファイナリストに残っていますし、昨年は「ダブレット」の井野デザイナーがグランプリに選ばれました。しかし他国と比べると、ある程度キャリアを積んだ後、もしくは国内で“中堅”と呼ばれるようになってからしか応募していないというところに大きな違いがあるのではないかと思います。

 その点を会場に来ていた井野さんに尋ねてみたところ、「日本でブランドを手掛けている身からすると、セールスや資金繰り、生産の土台ができないことには海外に出るのが難しいというのもある」と話していました。確かにコンテストで注目を浴びることはきっかけに過ぎないですし、海外発表を継続するためにはブランドの体力が欠かせません。その一方で、「自分がグランプリをもらえたのは、去年のタイミングだったからかもしれない」とも。先ほども触れたように時代の流れが反映されるので、挑戦するタイミングも非常に重要です。ブランドにとってステップアップを必要とする時期はそれぞれですが、「LVMHプライズ」がきっかけとなり新たな出会いや機会に恵まれることが多いのも事実。来年は日本から世界を目指す若手デザイナーが増えることを期待しています。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

The post 若手デザイナーの夢の舞台、「LVMHプライズ」の最終審査に密着 appeared first on WWD JAPAN.com.

自社のテクノロジーをサービス化して新ビジネスの潮流に注目 ITのプロ「WWDジャパン」最新号につぶやく

 大手通信会社に入社後、国内外でITソリューションを提供するビジネスマンが、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。最先端のテクノロジーから企業と、その利用者が必要とするものについて考え続けたITのプロ、CKRが未来的視点からニュースにつぶやきを添えます。

今日のニュース:P.5「ショッピファイが『EC業界の黒船』となった理由」

読み解きポイント:自社で活用するテクノロジーをサービス化して、新たなビジネス拡大を図る

ニュースのポイント

カナダ発EC構築プラットフォーム企業のショッピファイ(SHOPIFY)が急成長。2018年の商品取扱高は411億ドル(約4兆3500億円)、時価総額も403億ドル(約4兆2700億円)を超えた。商品の3D表示、多言語対応などのグローバルでの機能に加え、多様な決済手段への対応といった日本向け独自サービスも提供。手軽にネットショップをオープンでき、多様な要望にも応えるためのカスタマイズ機能をウリに、アマゾンなどのマーケットプレイス型とは違う、業務支援プラットフォームとしての市場拡大を狙う。

CKRはこう読む!

「477億円」。ショッピファイが今月傘下に収めた倉庫自動化テック企業シックスリバーシステムズ(6 RIVER SYSTEMS)の買収金額です。

 シックスリバーシステムズの創業者は、アマゾンが12年に買収したキバ・システムズ(KIBA SYSTEMS。現アマゾン・ロボティクス)出身。アマゾンスピードに慣れてしまった今、テクノロジーを活用し、フルフィルメントをどう効率的に設計・運営するかが、ECビジネスにとって非常に重要なポイントとなっています。

 そこで今回は、「一企業によって最適化されたテクノロジーが、業界全体へ拡大する」動きについて考察したいと思います。

 アマゾンは、自社のフルフィルメントセンターにアマゾン・ロボティクスを導入。従業員が移動することなく、効率的に商品を出荷できる体制を整えています。カメラとマイク、センサーとAIを活用し、レジなしコンビニ「アマゾン ゴー(AMAZON GO)」も実現しました。

 今アマゾンの利益の稼ぎ頭であるAWS(Amazon Web Services)も、初めは自社インフラとして構築したサーバーの空いているリソースを他企業へ貸し出し、使用量に応じて課金した結果、クラウドサービスと呼ばれるようになったものです。「最新テクノロジーを自社で活用し、最適化する。そして他企業へ提供するためにサービス化して新たな市場を生み出す。利用企業からのフィードバックで、さらにサービスを強化する」という流れにあることが分かります。

 フルフィルメントを最適化するアマゾン・ロボティクスも、アマゾン ゴーの裏で動いている技術も今後、AWSのようにサービス化され、小売り企業に提供・拡大される可能性が高いでしょう。シックスリバーシステムズは、「人と協調するロボット」がコンセプト。倉庫の作業員の業務をサポートする機能を中心に据えており、導入企業が運用プロセスを変えずに効率化できることをウリにすることが予想されます。

 このような動きは、身体採寸の世界でも起こっています。アパレル大手ワールドが子会社化した米国オリジナル社のAI身体採寸技術「Bodygram(ボディグラム)」については、ファストファッション通販サイト「Shoplist」や「ユニクロ(UNIQLO)」が自社アプリに採用します。ボディグラムは新会社としてスピンオフしており、今後はさまざまな企業にサービスを提供し、機能強化を図り、プラットフォーム化していくでしょう。

 小売り企業が最適化したテクノロジーをサービス化して他企業へ提供するビジネスには、今後も注目です。

CKR Kondo : 大手通信会社に入社後、暗号技術/ICカードを活用した認証決済システムの開発に従事。その後、欧州/中東外資系企業向けITソリューションの提供、シンガポール外資系企業での事業開発を経験。企業とその先の利用者が必要とするもの、快適になるものを見極める経験を積み、ウェアラブルデバイスやFree WiFiを活用したサービスインキュベーションを推進。現在は、米国、欧州、アジア太平洋地域にまたがる、新たなサイバーセキュリティサービスの開発を推進中

The post 自社のテクノロジーをサービス化して新ビジネスの潮流に注目 ITのプロ「WWDジャパン」最新号につぶやく appeared first on WWD JAPAN.com.

週末お出掛けスポット 織物の解体と再構築という手法を用いるアーティストの個展などアート5選

 週末にオシャレして出掛けたいアートスポットをお届け。今週は織物の解体と再構築という手法を用いる現代作家の個展や横尾忠則自身がキュレーターを務める展覧会「横尾忠則 自我自損展」など5つをラインアップ。また、「WWD JAPAN.com」の過去記事の中から今週末(9月21〜23日)に開催されるイベント情報やポップアップもまとめて紹介する。

【アート5選】

【開催中イベント】

シャネル銀座で新進写真家ヴァサンタ・ヨガナンタンが日本初個展 インド大叙事詩を現代に再解釈

「エルメス」の“ラジオ局”が原宿に出現 聴いて、見て、触れるメンズの世界観を体験してみた

「ブルガリ」と「ドン ペリニヨン」のマリアージュ ブルガリ銀座タワーの最上階に

「リモワ」がストリート誌と企画展 過去のアーカイブからアーティストの作品まで

「MCM」がサステナをテーマに展示会開催 未使用バッグをドレスにアップサイクル

松屋銀座が「美しくなるビアガーデン」開催 今年もクロスフィットトレーナーAYAとコラボ

【開催中ポップアップ】

「ピエール・カルダン」日本上陸60周年 高島屋が1年間を通してフェア開催

「シャネル」が新リップ発売記念のポップアップ開催 図書館をイメージ

ワールドがスタートアップブランドを集めたポップアップ型百貨店をオープン 全13ブランドを集結

仏老舗ニット「メゾン モンタギュ」が表参道ヒルズで初のポップアップショップをオープン

ビートたけしプロデュースの「キタノブルー」が初ポップアップストアをオープン

The post 週末お出掛けスポット 織物の解体と再構築という手法を用いるアーティストの個展などアート5選 appeared first on WWD JAPAN.com.

ミラノはますますドタバタ日記Vol.2 「マックスマーラ」は「どや!」感アップ 新生「ボッテガ・ヴェネタ」は本能むき出し

 さぁ、ミラノ・コレクションは2日目。昨日から一転、今日はなんだか肌寒く、秋の気配が漂っています。でも、コレクションは今日もアツい!!「どや!」ブランドから、インフルエンサー大集結の人気メゾン、そして、大胆な方向転換が心地よい若手まで、できるだけインプットするために、今日もミラノ市内を駆けずり回ってみましょ〜。

10:00 マックスマーラ

 さて、本日最初の取材は、「マックスマーラ(MAX MARA)」。このブランドと言えば前回……、

 記者がこんなレビューを書いちゃうほど「どや!」という勢いにあふれているワケですが、「どや!」感、まだまだ健在でございます。てかむしろ、強まってるのです(笑)。

 前回同様、同じスタイルの色違いのモデルが隊列を組んでやって来るし、そもそも、スタイルがミリタリー。メイクはダークな黒リップ。すごく乱暴にいえば、多くのデザイナーが普通の女性の、何気ない日常を描くことで彼女たちに共感してもらおうと思っているなかで、「マックスマーラ」は女スパイを描きます。唯我独尊。自分たちに確固たる自信がなければ、こんなコトはできません(笑)。

 でも、参考にした着想源の1つが、アメリカの連続ドラマ「キリング・イヴ」(冷酷な暗殺者と、優秀な捜査官の攻防戦を描いているそう)。かつては映画でしたが、イマドキのデザイナーはTVドラマ、特にNetflixで視聴できる連ドラなんかにインスピレーション源を得るのですが、その潮流にうまく乗っており「唯我独尊」なだけでもないのです。

 フィナーレは、3人一組だった隊列が増殖。まるで戦隊、僕の世代で言うならゴレンジャーです。

10:50 ジル サンダー

11:45 エンポリオ アルマーニ

 「ジル サンダー(JIL SANDER)」の展示会の後は、「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」へ。チュールには優しいパステルカラー、合わせるのはシルバーのスパンコールやステッチがピカピカ光る流線型のコンパクトジャケット。スカイブルーにシルバーの組み合わせは、まさにテーマの「空」を連想する優しさと軽やかさ、そして壮大さです。

 イヴニングのパートは、「空」が「夜空」に変身。ウエアはモノトーンに、その代わり装飾が一気に増えて、星が瞬く夜空そのものです。

 それでは、ビーズがいっぱいのフリンジが揺れ、流れ星のように瞬くドレスの動画をスローでお楽しみください(笑)。

12:25 ヘルノ

 歩いて「ヘルノ(HERNO)」の展示会へ。ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMAGINE UOMO)で拝見したメンズ同様、モノグラムがレトロムードを醸し出すコートなどを拝見です。

 メンズではアーバンモードな雰囲気に溢れている、高機能素材“ラミナーシリーズ”。ウィメンズは、淡いピンク色に彩られるなど、デザイン性が増して全然違う商品に仕上がっています。面白い!

13:05 フェンディ

 さぁ、お隣の建物の「フェンディ(FENDI)」へ(笑)。カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)がいなくなって、最初の、ゼロから作り上げたコレクションです。シルヴィア・フェンディ(Silvia Fendi)、頑張って!

 と応援するつもりで拝見しましたが、シルヴィア、期待に見事応えたと思います。先に発表したメンズ同様ほっこりするガーデニングムードで、同じリーフモチーフもたくさん。キルティングで作るボリュームドレスは、なんだか“オフトゥンドレス”みたいで愛らしく(そのまま横たわったら、安眠できそうw)、シフォンにギンガムチェックをのせたミニワンピは「フェンディ」らしい、カールらしい意表を突いた素材選びと、遊び心たっぷりのモチーフ選び。がま口のショルダーバッグや、メッシュとレザーを組み合わせた“ペカン(メゾンが呼ぶストライプ柄のこと)”トート、日よけの大きな防止など、キッチュなアクセサリーも豊富です。なんの心配もいりません。

 にしても、インフルエンサー、多数集結!会場は終始大混雑でした。

14:10 アンテプリマ

 お次は「アンテプリマ(ANTEPRIMA)」。ニットでリゾートです。マルチカラーのボーダーニットを何枚も用意してパネル上につなげたドレス、プリーツの中にコミカルな人物を描いたスカート、そして、涼しげなニットの開襟シャツ。ワイヤーバッグも大量放出‼︎でした。

15:00 プラダ

 昨日の「プラダ(PRADA)」の展示会へ。

 昨日、「『プラダ』のショーは、禅問答」と話しましたが、ショーを見ながらそれぞれがミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)の心の内を考えるランウエイショーの、答え合わせの時間がやってまいりました。

 答えは、「複雑さに対する解毒剤」。アイテムを絞り、シンプリシティーに徹することで、ファッションではなく、スタイルとしての強さを表現したそうです。僕が考えた「プラダ」流の、こんまりの“ときめき”断捨離、まぁまぁいい線行ってたんじゃないでしょうか(笑)。

16:05 M ミッソーニ

 「M ミッソーニ(M MISSONI)」からは、結構キツめなテンションで、「15:55からの“ライド”になるから、遅れないで」というメールをもらいました。“ライド(RIDE)”って、なんだろう?搭乗?乗車?まさか乗船??頭の中ではクエスチョンマークがクルクル回りつつ、イタリアだから時間通りには始まらないとわかりつつ、それでも、なんとなく小走りになりつつ(マジメだw)15:55にたどり着きますと、20人弱のゲストはすでにスタンバイ。しばらくすると、ピンクのおキャワなトラムがやってきました。ミラノでは今も大事な市民の足が、「M ミッソーニ」仕様になって、この日はミラノ市内を走っているんです。

 クリエイティブ・ディレクターが一族の3代目マルゲリータ・ミッソーニ(Margherita Missoni)に変わった「M ミッソーニ」の2020年春夏プレゼンテーションは、このトラムに乗って25分間、市内を旅するプログラムです。席に座って発車を待っていると、カラフルニットの男女がやってきました。彼女たちが、今回のモデルです。

 ローゲージのロゴニットから、ハイゲージのフレアパンツ、スプレープリントのGジャンまで、「ミッソーニ」もカラフルですが、「M ミッソーニ」はもっと大胆。さまざまなモデルが集まっている様子もカラフル。ブランドらしいプレゼンテーションでした。

17:05 ファビアナフィリッピ

 糸を紡ぐところからクリエイションをスタートする「ファビアナ フィリッピ(FABIANA FILIPPI)」は、砂、水、そして緑などの自然をイメージしたコレクション。トレンチコートもギャバジンのようにハリのある素材感ではなく滑らか。ニットで提供する極上の着心地を妨げません。

17:50 シモーナ マルツィアーリ

 イタリアの若手コンテスト「Who’s on Next?」で今年グランプリに輝いた「シモーナ マルツィアーリ(SIMONA MARZIALI)」のコレクションは、うれしい発見でした。レトロなテニススタイルを描いたニットの主軸のコレクションは、若手らしいスポーティーとストリートでイタリアのクラフツマンシップを若々しく表現します。

 ミラノって、本当に新人ブランドには冷たい街なんです。パリは、若手のコレクションに比較的多くの業界人が集まって「まずはチェック」という姿勢を感じることができるのですが、ミラノは全然違う。「まずはチェック」なんて心意気があまりないので、新人のランウエイショーは時に可哀想なくらいガラガラな時もあるんです。でも「シモーナ マルツィアーリ」のショーは、初登場ながら結構大勢で賑わいました。現地の期待も、大きいです。

18:55 ボッテガ・ヴェネタ

 さぁ、本日の最後は、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」。32歳の若手ダニエル・リー(Daniel Lee)を大抜擢したブランドが、彼にとって2回目のコレクションを発表です。

 このレビューの通り、前回のコレクションは写真や動画で見る限り、ダニエルの“思い切り”、つまりブランドにとっては突然の大変身に“ついていける人・ついていけない人”がパッキリわかれそうなコレクションでした。正直、僕は後者だったのですが、その後店頭に並び始めた若々しいバッグ、何より今シーズンの広告ビジュアルを見て、「なんか、新しくていいかも」と思い始めた中でのランウエイショー。その期待は、間違っていなかったみたいです。

 コレクションは、前回同様、ちょっとした、いや時に結構な違和感を覚えるボリューム感です。しかも極端なオーバーサイズは、ストリートムードの沈静化により正直ダウントレンド。でも、ダニエルによる80年代風とも言えるセットアップ、ビッグシルエットのアノラック、それに対してボディコンシャスなミニドレスは、ディスクリート・ラグジュアリー(控えめなラグジュアリー)というアイデンティティを持つブランドらしい落ち着いたカラーパレットのせいか、それとも、装飾を極力排除してシンプリシティに徹したおかげで直接的・本能的になったせいか、新たなフォームに対する抵抗感がありません。むしろ、「新しいシルエットに挑戦するなら、『ボッテガ・ヴェネタ』かも」とさえ、思ってしまうくらい。独特のボリューム、徹底した非装飾主義、そしてボリュームアウターから連想する着心地と、ボディコンワンピの緊張感。どれも割り切ったくらい大胆で潔いので、「わかりやすい」んだと思うんです。

 ということで僕も「わかりやすく」お話すれば、「新しいスタイルを見つけたいけれど、『グッチ(GUCCI)』や『バレンシアガ(BALENCIAGA)』は、“てんこ盛り”すぎて、難しいかもなぁ」と思う人は(実際、これらのメゾンにもシンプルなアイテムはあるのですが)、「ボッテガ・ヴェネタ」を新たな候補に選ぶかも。もしかしたら、“ポスト・フィービー”枠ではなく、“「グッチ」&「バレンシアガ」対抗枠”なのかも?と思ったのでした。

20:30 A|X アルマーニ エクスチェンジ

 さぁ、本日最後は、なぜかバスケットボールコートへ(笑)!!「A|X アルマーニ エクスチェンジ(A|X ARMANI EXCHANGE)」がユニホームを提供するミラノのバスケットボールチーム、オリンピア・ミラノの試合観戦にやってまいりました。

 イタリアと言えばサッカーですが、バスケもサッカーみたいに応援するんですね(笑)。

 そして会場には、アルマーニさん!!アナタ、今朝は2回もランウエイショーを開いたのに、こんなに夜遅いバスケ観戦って、どれだけパワフルな80代ですか(驚)!?

 アルマーニさんが会場を去るときは、バスケファンも彼に手を振っていました。この人はやっぱり、ファッション業界のみならず、イタリア中で愛されているんですね。

The post ミラノはますますドタバタ日記Vol.2 「マックスマーラ」は「どや!」感アップ 新生「ボッテガ・ヴェネタ」は本能むき出し appeared first on WWD JAPAN.com.

2020年春夏ミラノコレ2日目のハイライト カール亡き後初の「フェンディ」ウィメンズと、新生「ボッテガ」の2季目のショーなど

 2020年春夏シーズンのミラノ・ファッション・ウイーク2日目は、「フェンディ」から「ボッテガ・ヴェネタ」などの注目のブランドを入れた10を取材。その中から3ブランドをピックアップして紹介する。

フェンディ(FENDI)

DESIGNER/シルヴィア・フェンディ(Silvia Fendi)

 カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)亡き後、シルヴィア・フェンディが最初から最後まで手掛けたコレクション。カールがまず「フェンディ」で試した、革新的な素材使いは健在だ。チュールにギンガムチェックをプリントしてタンクトップからキュロット、パフスリーブドレスまで、さまざまアイテムを送り出す。ともに帯状に切り出したファーと組み合わせ、真逆に位置するような異素材によるガウンコートも生み出した。

 ムードは6月に発表した2020年春夏メンズ同様、ボタニカル柄を多用したガーデニング。そこにグラムミュージックのムードを重ね合わせ、太陽光の下で楽しむナチュラルと、スポットライトの下のアンダーグラウンドが交差した。アクセサリーは、洋服とモチーフをシェアする“バゲット”など。

ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)

DESIGNER/ダニエル・リー(Daniel Lee)

 4シーズン目、2回目のランウエイショーを披露した32歳の英国人デザイナー、ダニエル・リーはすでに一目置かれた存在だ。ショー会場には、彼が手掛けたクラッチバッグ”ザ・ポーチ”などのバッグやシューズを着用する人が目立った。デビューから1年以内に新アイコンをヒットさせた実績は、レザーグッズを主力にする「ボッテガ・ヴェネタ」が無名デザイナーを起用した決断が正しかった証だ。今季、リーはメゾンのレザーのクラフツマンシップを生かしながら、オーバーサイズとタイトシルエットのバランスで遊んだ。ファーストルックはワンショルダーのタイトドレスに、巨大化したハンドバッグの"ザ・アルコ”をクロスボディー(ななめがけ)として身に着ける。ドロップショルダー、スクエアネック、タイトなウエストも特徴的で、構築的シルエットをソフトに見せる。メンズも良好だ。軽やかなレザーのショートパンツやトレンチ風のオールインワンなどウエアラブルな提案が広がった。「セリーヌ(CELINE)」でフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)もとで経験を積んだリー、バッグはすでにフィービーファンに受け入れられているが、ウエアはまだ伸び代がありそうだ。

エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)

DESIGNER/ジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)

 キーワードは、「空」。スカイブルーやべピーピンク、ごくごく淡いカーキなどにライトグレーやシルバーを組み合わせ、広がる雲、無限の青空を表現した。パステルカラーはシフォンやチュールなどの優しい素材、シルバーはスパンコールや銀糸のステッチで描く。パンツはタック入りのキャロットやガウチョで、あくまでもリラックス。トレンチコートも、歩くたびに大きくなびく。

 イヴニングは、青空から夜空に。シルバーの輝きが増し、ビーズやスパンコール、メタル装飾のボリュームも増す。深いVゾーン、ベアトップなど、最近の「エンポリオ アルマーニ」はイヴニングでもとことん若い。

The post 2020年春夏ミラノコレ2日目のハイライト カール亡き後初の「フェンディ」ウィメンズと、新生「ボッテガ」の2季目のショーなど appeared first on WWD JAPAN.com.

次回は「やりたいのは、アパレル?ファッション?」でいかが? ファッションフリークOL「WWDジャパン」最新号につぶやく

 1992年生まれのファッションフリーク女子が、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。渋谷のファッションベンチャー企業に勤める等身大OL、Azuがリアルな目線を生かし、「このニュースからはコレが見える」という切り口でさまざまな記事につぶやきます。

今日のニュース:P.8-9「WHAT IS “MODE” モードって何ですか?」

読み解きポイント 立場が違えば「モード」も違う。時代を見るか、心を見るか

ニュースのポイント

 4月の特集「業界基礎知識A to Z」の企画を練るにあたり若者から質問を募ったところ届いた、「モードってどんな意味?」という疑問。簡単には説明できない単語ゆえ、改めてデザイナーやバイヤー、経営者、学者などのファッション関係者35人に「モードって何?」を問いかけた。出てきた答えは35人35色。その答えを統括すると、モードとはファッションの”最先端”であり、時代や社会の価値や空気を写し取ったものと言えそうだ。

AZUはこう読む!

 ファッション業界の今を担う35人分の「モード」を一気に読み込むと、かなり頭が混乱します(笑)。共通言語であるはずの「モード」が、それぞれの立場によってこれだけ違ったニュアンスを持っている。定義がふんわりとしていて「周りと違うことを指しているんだな」というのがなんとなく伝わるからこそ、つい簡単に使ってしまう言葉で、わかってはいたけれど、その言葉の奥深さに鳥肌が立ちました。

 その中でも一番印象に残ったのが、フォトグラファー鈴木親さんの「定義しづらい曖昧なことだからこそ、新たに創造していける無限なもの」という言葉です。これ以上説明がいらないくらい、「それだ!」と思いました。私もこれからこのフレーズをお借りしようと思います(笑)。他にも心に留めておきたい言葉がたくさんありましたが、これが一番希望にあふれていたので。

 先輩方の素晴らしい言葉の後で恐縮ですが、私にとっての「モード」とは、より良い時代とは何かという正解のない未来を提示する先導者であり、次の時代への後押しをするために今を切る剣でもあると思っています。だから「モード」を体現しているのはランウエイで「ファッション」を提案するブランドだけではなく、人々の生活を支える「アパレル」も入ります。そういう意味では「グッチ(GUCCI)」も「ユニクロ(UNIQLO)」も「モード」で良いんじゃないかな。逆にいうと、今しか見ていないブランドはそうではないということ。

 私自身の言葉で「モードって何?」を考えたときに、真っ先に頭に浮かんできたのが「アパレルをやりたいのか、ファッションをやりたいのか?」という問いかけでした。私が就活をする少し前、尊敬する先輩に投げかけられた言葉です。その時はいまいちピンときませんでしたが、アパレル販売を少し、そしてITという立場からファッション業界に関わるようになってからは、なんとなく思いが固まってきた気がします。一言で言うと、「ファッションが服だけではなくなった時代だからこそ、アパレルという手段でファッションをやりたい」んです。

 「WWDジャパン」編集部の皆さん、次の議論のテーマは「アパレルをやりたいのか、ファッションをやりたいのか?」はどうでしょう?

Azu Satoh : 1992年生まれ。早稲田大学在学中に渡仏し、たまたま見たパリコレに衝撃を受けファッション業界を志す。セレクトショップで販売職を経験した後、2015年からファッションベンチャー企業スタイラーに参画。現在はデジタルマーケティング担当としてSNS運用などを行う。越境レディのためのSNSメディア「ROBE」(@robetokyo)を主催。趣味は、東京の可愛い若手ブランドを勝手に広めること。ご意見等はSNSまでお願いします。Twitter : @azunne

The post 次回は「やりたいのは、アパレル?ファッション?」でいかが? ファッションフリークOL「WWDジャパン」最新号につぶやく appeared first on WWD JAPAN.com.

読者が注目した今週の新作 「ユニクロ ユー」2019-20年秋冬コレクションなど(9月20〜26日)

 「WWD JAPAN.com」が今週発売の新商品を「ファッション部門」「ビューティ部門」別にまとめてお届け。「ファッション部門」と「ビューティ部門」は読者の注目度(PV)から1〜3位までをランキング形式で紹介。今週の「ファッション部門」では「ユニクロ ユー(UNIQLO U)」の2019-20年秋冬コレクションが最も注目され、「ビューティ部門」では「ザ パブリック オーガニック(THE PUBLIC ORGANIC)」の精油カラーリップスティックが1位に輝いた。

【ファッション部門】


【ビューティ部門】

The post 読者が注目した今週の新作 「ユニクロ ユー」2019-20年秋冬コレクションなど(9月20〜26日) appeared first on WWD JAPAN.com.

ロンドンコレ初のショーチケット一般販売は売り上げ上々 主催者が語る狙いと今後

 2020年春夏シーズンのロンドン・ファッション・ウイーク(LONDON FASHION WEEK 以下、LFW)は、一般入場可能なパブリックショー(Public Show)を初めて開催した。イベント内容は9月14日に「アレクサチャン(ALEXACHUNG)」の単独ショー、15日に「ハウス オブ ホランド(HOUSE OF HOLLAND)」と「セルフ-ポートレート(SELF-PORTRAIT)」の合同ショーの2種だ。LFWの公式ホームページ上で販売したチケットの価格は1日分のスタンダードが135ポンド(約1万7700円)、フロントローが245ポンド(約3万2000円)で、業界人を招いたトークショーや9月に開催予定のイベントに参加する権利も含まれている。

8割は埋まるも高額のフロントローはまばら

 会期中は両日3回のショーが行われた。9月14日の「アレクサチャン」の初回は約300人のキャパシティーの会場に250人ほどが来場し、高額なフロントローに空席はあったものの上々の集客だった。会場はLFWのメーン会場である「180 ザ ストランド」内で、場内に目立った装飾はなく、ただ白い真っ直ぐのキャットウオークとスクリーンが設置されていた。ショー前にLFWを紹介する約5分間のムービーが放映され、ショー前にもデザイナーのアレクサ・チャン自らがブランドについて語る約3分間のムービーが流れた後に本番がスタートした。ランウエイで見せたのは19-20年秋冬コレクションで、同ブランドが2月のLFWで行ったショーとは内容が異なり、ジーンズやジャンプスーツなどを組み合わせたリアルなスタイリングの27ルックだった。会場内にはポップアップショップが開かれ、ショーで見た商品がすぐに購入できる仕組みになっていた。ショーの費用は主催するLFWが負担し、ポップアップの商品もそれぞれの店頭用在庫なのでブランドのリスクは少ない。デザイナーのビジョンや世界観を発信する場である業界人向けのファッションショーとは違い、消費者の販売促進が目的といえるだろう。

来場客に聞く
「イベントどうでした?」

 客席は頭から足先まで着飾った一般客が大半で、業界人の姿はほとんど見られなかった。女性客が多く、中にはカップルらしき男女もいた。ショーが始まるまで待ちきれずにキョロキョロと会場を見渡したり、友人同士でセルフィーを撮ったり、来場者が一大イベントとして楽しそうな様子が印象的だった。ショーの後、女性客数人に感想を聞いた。15歳のスザンナは高校卒業後に専門学校へ通う予定のデザイナー志望。「ファッションショーに参加するのがずっと昔から夢だったけど、どうやったら参加できるのか分からなかったの。だからパブリックショーが開催されると知った時は大喜びしたわ!しかも私にとってアレクサ・チャンは憧れの存在だから絶対に参加したくて、すぐに両親に頼んでチケットを買ってもらい1人で来たの。ショーで見た洋服はとても可愛かったけれど、あっという間に終わってしまったのが少し悲しいな。この後のトークショーにも参加する予定よ」と興奮冷めやらぬ様子だった。

 ピンク色のヘアとホログラムの洋服でひときわ華やかな姿だったクリスティーナは、現在ロンドン郊外のファッション専門学校でマーチャンダイジングを学ぶ学生だ。「パブリックショーは消費者が業界の一員になれるような素晴らしい取り組みだと思う。次回もあれば来たいし、今後はアフターパーティーなども開催してほしいわ。半年後までにお金を貯めて、次はフロントローのチケットを購入するの」とポジティブな意見を述べた。

主催者に聞く
「チケット売れました?」

 LFWを主催する英国ファッション評議会(ブリティッシュ・ファッション・カウンシル/BFC)のキャロライン・ラッシュ(Caroline Rush)最高経営責任者(CEO)は、パブリックショー開催の理由について「SNSの台頭によってブランドと顧客の繋がりはますます強くなっており、ブランドはBtoC事業に注力するようになった。一方で、一般消費者はインスタグラムなどを通じてファション・ウイークの華やかな様子が拡散されることで、より一層注目度や憧れが増している。ファッションに関心がある消費者にファッションショーを見てもらい、英国発のデザイナーや業界内で何が起きているのかを知る貴重な機会を提供することが目的の一つ。会場内の展覧会では、ファッションが世の中や環境にいい影響を与える“ポジティブ・ファッション”という考えを共有し、消費者にこれまでとは違った視点を持ってもらいたい」と語った。選定した3ブランドについては「SNSで認知度が高く、価格帯が高すぎない。すでに取引先をいくつも持っていて消費者が店頭でも気軽に商品を見られること」を理由に決めたという。チケットは2日間のうち「ハウス オブ ホランド」と「セルフ-ポートレート」の合同ショーが行われた日は完売し、好調な売れ行きだったという。今季の「LFW」はファッション業界人が約5000人、一般客が約3000人参加した。「毎シーズン来場者数に大きな変化はないが、LFWへの関心は世界中の小売業者やインフルエンサーを中心に高まっており、市場も広がっている」とラッシュ最高経営責任者。今後の展望について「2030年までにビジネスも生産も循環型システムを構築し、業界内から“ポジティブ・ファッション”を推進すること。100%サステイナブルまでいかなくとも、温室効果ガスの純排出量ゼロを目指し、クリエイティビティー面でも強化していきたい」と述べた。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

The post ロンドンコレ初のショーチケット一般販売は売り上げ上々 主催者が語る狙いと今後 appeared first on WWD JAPAN.com.

「トーガ」がファッションの“無駄”を楽しみに変えた 自由を手に入れ活気づくベーシック

 時には、寄り道先で思わぬ素敵な拾い物をすることがある。乗り間違えた電車で、美しい景色に出くわすこともある。無駄に見える人生の余白を持つことこそ、本質的に心を満たす一つの方法になる——「トーガ(TOGA)」2020年春夏コレクションのショーを見た筆者はそう思った。

 同ブランドは今シーズンもロンドン・ファッション・ウイークに参加し、ショー会場には王立英国建築家協会を選んだ。コレクションノートには、“包む(wrapping)”“再開発(redevelopment)”“能率(efficiency)”の3語がテーマとして並んでいた。「生産性最優先の現代において、生産性を優先しないという空気感をどのように作れるのかを考えた」というデザイナーの古田泰子の言葉で、コレクションの背景についての説明が始まる。今季はメキシコシティーを拠点に活動するベルギー出身のアーティスト、フランシス・アリス(Francis Alys)の作品から着想を得たという。数ある彼の作品の中で例に挙げたのは、1997年に発表された「実践のパラドックス1(ときには何にもならないこともする)」だ。これは彼が朝から晩までメキシコシティー内で巨大な氷の塊を完全に溶け切るまで押し続けた様子を撮影した映像作品だ。

 「生産過程において“不必要”なことにもっと多くの時間を費やし、そこから何が生まれるのかを見たかった」と古田デザイナーは説明する。ドレスには伸縮性のあるスポーツティーな素材を付け加え、フロントが大きく切り開かれたテーラードジャケットやパンツにはスカーフを当て、ビーチサンダルにはPVC素材のエレメントが加えられた。体を覆ったり、バッグに使用されたパラコードメッシュは魚を釣る網のようだったり、ビニール素材の花のコサージュやねじ曲げられた金属のピンなどルックを彩った装飾品は、海洋ゴミからヒントを得たのではないかと想像させた。スーツや白シャツ、トレンチコートなどのクラシックな服は、古田デザイナーの“不必要”から発展させたアイデアによって自由を手に入れ、活気づいていた。まるで“無駄”の中に価値を見出す楽しみを訴えかけてくるようだった。

 必ずしも理にかなっているわけではないし、着用することで生産性が上がるような機能的な衣服ではないかもしれないが、“不必要”を楽しむのがファッションの醍醐味でもある。「結局のところ、ファッションを作ること自体が不必要なこと。でも、それこそが大切な道楽」と古田デザイナーは締めくくった。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

The post 「トーガ」がファッションの“無駄”を楽しみに変えた 自由を手に入れ活気づくベーシック appeared first on WWD JAPAN.com.

「アパレルのオンデマンドを実現する」 英発有力ファッションテックCEOの野望

 タッチパネル上でユーザーが自由にカスタマイズしたデザインを、プリントや刺しゅうで即時的に製品化する「ユア ライブ(YR LIVE)」は、2013年にイギリス・ロンドンでスタートしたサービスだ。当初はユーザーによるカスタマイズができるブランドとして設立されたが、ファッションブランドやメーカー、化粧品などさまざまな企業との協業が殺到し、ビジネスモデルを転換。レセプションやポップアップストアなどのイベントでサービスを活用する“ライブ”と、常設店に導入する“ストア”、そしてEC上でサービスを展開する“オンライン”の3つを軸にサービスを提供しており、導入実績は4000件を超える。現在はサービス導入のエリアを拡大しており、アメリカ・ニューヨークやロサンゼルス、日本、香港に支社を構える。カスタマイズに着目した「ユア ライブ」はどのように成長を遂げ、何を目指すのか。来日したティム・ウィリアムズ(Tim Williams)CEOに創業の経緯から今後の構想までを聞いた。

 もともとはソフトウエア企業に勤務していたというティムCEOが手掛ける「ユア ライブ」は、専用のアプリケーションと最先端のプリント・刺しゅう技術を用いたストレスフリーなデザイン体験が特徴だ。「自分の強みであるソフトウエアを用いたデザインやパターンのカスタマイズで、ユーザーがファッションを楽しめる環境を整えられるのではないかと考えた」と創業当時の考えを説明する。そうして生まれた「ユア ライブ」は、カスタマイズ特化型のブランドとして13年にロンドンのカーナビ―ストアに期間限定店を出店した。「15年までは全ての商品がカスタマイズできるファッションブランドとして運営していた。こういった考えが当時は新しかったせいか、周囲の人々に理解してもらうのは大変だった」と当時を振り返る。

 そんな同社に転機が訪れたのは14年のこと。英高級百貨店の「セルフリッジ(SELFRIDGES)」が「ユア ジャパン」のシステムを導入した。「これをきっかけにメディアにも取り上げられ、われわれの注目度が一気に高まった。企業やブランドの方から協業のオファーが来るようになり、われわれはファッションテックカンパニーとしての立ち位置になった」とティムCEO。16~17年には2倍の成長を見せ、その後も毎年20~30%は成長できているという。「現在、世界の主要地点に支社を構えることができており、ベースはおさえたと考えている。各拠点をしっかりと伸ばしながら、ゆくゆくはイベント需要の高い中国などにも進出したい」。

 「ユア ライブ」の創業地であるイギリスは、ファッションテック企業が数多く生まれている地域でもある。中には同社と同じく13年創業の、カスタマイズ可能な服を作る技術を提供するプラットフォーム「アンメイド(UNMADE)」といった競合も存在する。そういった状況の中で「ユア ライブ」が持つ強みは「オフラインだ」とティムCEO。「“オンデマンド”でのモノづくりがトレンドとなってきているイギリスでは現在、さまざまなカスタマイズサービスが生まれている。しかし、彼らはほぼオンラインに特化しており、オフラインへの参入は簡単ではない。一方でわれわれは“オンデマンド”をベースに、リアル店舗からスタートした企業。店舗とEC、両方においてブランドと共にユーザーにデザイン体験を届けることができる」。

 オンラインとオフラインの双方でサービスを提供してきた「ユア ライブ」は、今後どのように拡大していくつもりなのか?「アメリカを筆頭に、イベント需要はまだ伸びると思っている。さらにオンラインでは、ブランドのモノづくりにおけるオンデマンド化が進んでおり、非常に大きなポテンシャルを感じている。世界のファッションにおける市場規模は約3兆ドル(300兆円)と言われているが、そのうちの10%ほどはカスタマイズが占めることができると考えている。決して簡単ではないが、カスタマイズの先行者としてファッション業界のオンデマンド化をサポートしていきたい」。

The post 「アパレルのオンデマンドを実現する」 英発有力ファッションテックCEOの野望 appeared first on WWD JAPAN.com.

「アパレルのオンデマンドを実現する」 英発有力ファッションテックCEOの野望

 タッチパネル上でユーザーが自由にカスタマイズしたデザインを、プリントや刺しゅうで即時的に製品化する「ユア ライブ(YR LIVE)」は、2013年にイギリス・ロンドンでスタートしたサービスだ。当初はユーザーによるカスタマイズができるブランドとして設立されたが、ファッションブランドやメーカー、化粧品などさまざまな企業との協業が殺到し、ビジネスモデルを転換。レセプションやポップアップストアなどのイベントでサービスを活用する“ライブ”と、常設店に導入する“ストア”、そしてEC上でサービスを展開する“オンライン”の3つを軸にサービスを提供しており、導入実績は4000件を超える。現在はサービス導入のエリアを拡大しており、アメリカ・ニューヨークやロサンゼルス、日本、香港に支社を構える。カスタマイズに着目した「ユア ライブ」はどのように成長を遂げ、何を目指すのか。来日したティム・ウィリアムズ(Tim Williams)CEOに創業の経緯から今後の構想までを聞いた。

 もともとはソフトウエア企業に勤務していたというティムCEOが手掛ける「ユア ライブ」は、専用のアプリケーションと最先端のプリント・刺しゅう技術を用いたストレスフリーなデザイン体験が特徴だ。「自分の強みであるソフトウエアを用いたデザインやパターンのカスタマイズで、ユーザーがファッションを楽しめる環境を整えられるのではないかと考えた」と創業当時の考えを説明する。そうして生まれた「ユア ライブ」は、カスタマイズ特化型のブランドとして13年にロンドンのカーナビ―ストアに期間限定店を出店した。「15年までは全ての商品がカスタマイズできるファッションブランドとして運営していた。こういった考えが当時は新しかったせいか、周囲の人々に理解してもらうのは大変だった」と当時を振り返る。

 そんな同社に転機が訪れたのは14年のこと。英高級百貨店の「セルフリッジ(SELFRIDGES)」が「ユア ジャパン」のシステムを導入した。「これをきっかけにメディアにも取り上げられ、われわれの注目度が一気に高まった。企業やブランドの方から協業のオファーが来るようになり、われわれはファッションテックカンパニーとしての立ち位置になった」とティムCEO。16~17年には2倍の成長を見せ、その後も毎年20~30%は成長できているという。「現在、世界の主要地点に支社を構えることができており、ベースはおさえたと考えている。各拠点をしっかりと伸ばしながら、ゆくゆくはイベント需要の高い中国などにも進出したい」。

 「ユア ライブ」の創業地であるイギリスは、ファッションテック企業が数多く生まれている地域でもある。中には同社と同じく13年創業の、カスタマイズ可能な服を作る技術を提供するプラットフォーム「アンメイド(UNMADE)」といった競合も存在する。そういった状況の中で「ユア ライブ」が持つ強みは「オフラインだ」とティムCEO。「“オンデマンド”でのモノづくりがトレンドとなってきているイギリスでは現在、さまざまなカスタマイズサービスが生まれている。しかし、彼らはほぼオンラインに特化しており、オフラインへの参入は簡単ではない。一方でわれわれは“オンデマンド”をベースに、リアル店舗からスタートした企業。店舗とEC、両方においてブランドと共にユーザーにデザイン体験を届けることができる」。

 オンラインとオフラインの双方でサービスを提供してきた「ユア ライブ」は、今後どのように拡大していくつもりなのか?「アメリカを筆頭に、イベント需要はまだ伸びると思っている。さらにオンラインでは、ブランドのモノづくりにおけるオンデマンド化が進んでおり、非常に大きなポテンシャルを感じている。世界のファッションにおける市場規模は約3兆ドル(300兆円)と言われているが、そのうちの10%ほどはカスタマイズが占めることができると考えている。決して簡単ではないが、カスタマイズの先行者としてファッション業界のオンデマンド化をサポートしていきたい」。

The post 「アパレルのオンデマンドを実現する」 英発有力ファッションテックCEOの野望 appeared first on WWD JAPAN.com.

編集後記座談会:「エネルギーのダダ漏れは尊い!」 連載「モードって何?」Vol.13

【#モードって何?】きっかけは読者から編集部に届いた質問「つまるところ、モードって何ですか?」だった。この素朴な疑問に答えを出すべく、「WWDジャパン」9月16日号では特集「モードって何?」を企画し、デザイナーやバイヤー、経営者、学者など約30人にこの質問を投げかけた。ウェブでもこれまで12回にわたって、ファッション研究者や有力バイヤーらが考える「モードって何?」を掲載してきたが、今回はその締めくくりとして、特集を担当した記者による座談会を実施。「WWDジャパン」が考える「モードって何?」の答えやいかに……!?

座談会参加者

向千鶴:「WWDジャパン」編集長。海外コレクション取材歴20年以上。モードを愛し、モードの持つパワーを信じるパッションあふれる編集長

五十君花実:「WWDジャパン」ニュースデスク。ファッションのエモーショナルな面と共に、ファッションの産業としてのロジカルな側面の取材も普段から担当

秋吉成紀:「WWDジャパン」アルバイト。豊富な読書量に裏打ちされた、学問としてのファッションの知識を見込まれて、今回の特集では研究者の取材を担当

五十君花実(以下、五十君):特集お疲れさまでした。特集を担当したもう1人、大杉真心記者はロンドン&ミラノのコレクション取材に旅立ってしまったので座談会への参加は3人です。さて、「モードって何?」特集ですが、改めてどんな意図から企画したものだったんでしょうか?

向千鶴(以下、向):特集のリードやウェブ連載の冒頭に繰り返し書いてきたことではあるんだけど、「モードって何ですか?」という読者の方からの質問が編集部にたくさん寄せられた(注:「WWDジャパン」4月8日号に掲載した新入社員向け特集のために、SNSでファッション業界に関する質問を募ったところ、そうした質問が多数届いた)ことがきっかけです。その質問に答えようとしたんだけど、改めて考えると案外難しい。それで、いい機会だから突き詰めてみようと思ったのが企画の始まりです。

秋吉成紀(以下、秋吉):海外コレクションを含め、ファッションを幅広く取材している「WWDジャパン」なら、つかみどころのない「モードって何?」に答えてくれそうだと思われているんですかね。

向:実は私自身、ここ数年思うところがあって。こんなにファッションが好きな私でさえも、「現状のファッションビジネスの未来はどこにあるのか?」って、海外でショーを見ながらふと冷静になって考えてしまう瞬間があるんだよね。「ファッションシステムはこのままでいいのか?」って。モードという言葉をきっかけにして、これまでのファッションシステムを見直してみたいというのも、自分の中ではテーマとしてありました。

五十君:向さんの言う「現状のファッションシステム」というのは、具体的に何を指していますか?

向:パリコレをピラミッドの頂点にして、トレンドが上から下に伝わり、同時に生産から販売のフローとしては、左から右に不可逆的に流れていく、という動きのことです。トレンドを作って欲望を喚起し、売り減らしていく、という流れね。

五十君:確かに、アパレルの大量廃棄などは今や社会問題化しています。「業界内のシステムが長年こうだったから、しょうがない」ではもう済まないですもんね。

向:もちろん、大量廃棄などの側面から今までのシステムに疑問を抱いたという部分は大きいんだけど、それと同時に、ショーを見ていても純粋に面白いとは思えない瞬間が増えていたんだよね。私はジョン・ガリアーノ(John Galliano)やアレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)の時代から海外コレクションの取材をスタートしているんだけど、あの頃のショーは本当にエモーショナルだった。でも今は、クリエイティブ・ディレクターがち密に計算した上で欲望を作り出す時代。「あのころはよかった」だなんて当時のことを語ってもそんなのはただの郷愁だし、そんな気持ちの人にショーをレポートされても読者は迷惑だと思う。そういったことをいろいろ考えていて、自分の中でモードの価値観をアップデートしたかったんだよね。

秋吉:取材していても思いましたが、世代によって感じていることが違って面白いです。僕は今25歳なんですけど、「パリコレってスゴイ!」みたいな感覚は持っていない。生まれた時から「ユニクロ(UNIQLO)」も「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」も同列に存在していたし、日本経済が“失われた30年”といわれる中で生きてきた。僕の中でモードっていうのは、 自分以外のどこかを中心として勝手に欲望が作られて、それに巻き込まれる、引きずり回されるイメージ。まるでリードにつながれて引っ張られる犬みたい。興味がないわけじゃないけれど、たまにでいいかな、という感じ。

五十君:私は今30代半ば。パリなどのコレクションを取材すると、確かに「面白い」「伝えたい」と感じる何かに毎回必ず出合うんだけれど、ショーを見てそのスペクタクルに刺激されて、猛烈に圧倒されたという向さんのコレクションの原体験とはやはり違う気がします。だからといって、秋吉くんほどニヒルな感覚でもない。やはりちょうど中間の世代なのかも。

向:「WWDジャパン」は、バイヤーやビジネスパーソンは普段からよく取材しているんだけど、今回の特集では秋吉くんを水先案内人として、意識的にファッション研究者を多数取材しました。一口に研究者といってもバックグラウンドはバラバラ。まるで映画を観るような感覚で取材が進んだのが非常に印象的でした。

秋吉:学問としてのファッションは、日本では鷲田清一さん(注:大阪大学総長も務めた哲学者)から始まるといっていいと思います。それを成実弘至・京都女子大学教授らが整え、蘆田裕史・京都精華大学准教授、水野大二郎・京都工芸繊維大学特任教授の世代が押し広げて、さらにその次に、研究もしつつビジネスの実践の場にも身を置く藤嶋陽子ZOZO研究所リサーチサイエンティスト、川崎和也スぺキュラティブ・ファッションデザイナーらの世代が続きますね。

向:どの方もお会いしてみたかったんですが、なかでもやはり鷲田さんには一度お話を聞いてみたいと思っていました。「モードの迷宮」(注:1989年に筑摩書房より出版された鷲田の著作)を改めて読んで、この人が今の時代をどう見ているのか聞いてみたかったんだよね。仙台の講演会にお邪魔して、手紙を渡して取材を申し込んだんだけれど、結果として取材は叶いませんでした。ただ、そのお断りの文面が非常に納得がいくものだった。これ、記事に出してもいいと思うんだけど、要約すると「私は『ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)』『コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)』が日本でショーを行わなくなって以降はファッションを語っていない。ファッションは上から語るものではなく、現場に身を置いて、現場から語るべきもの。現場に身を置いていない私は語るべきではない」といった内容でした。

五十君:鷲田さんがおっしゃる、「現場に身を置いて、現場から語る」というのを、まさに今の時代に実践しているのがZOZO研究所の藤嶋さんたちの世代かもしれませんね。

向:われわれ記者も、現場で見て、それを伝えるということが大切だと改めて思ったし、背筋が伸びる感覚でした。研究者はどなたも思考のスパンが長いです。ビジネスでは短期での結果がどうしたって求められるけど、研究者は半年、一年、それ以上のスパンでファッションの先を見通そうとしている。それが、今回の特集で意図的に研究者の方にたくさんお会いした理由です。さっき、私が「研究者の取材は映画を観るような感覚だった」と表現したのもそのためです。映画は長期的に作るものだから。

五十君:研究者の話が続きましたが、特集全体として、印象的だったコメントは他にどんなものがありますか。私は南青山のセレクトショップ、アデライデのバイヤー、長谷川真美子さんの言葉をぜひご紹介したいです。「モードって見つけづらいものなんだけれど、展示会やショーで他とは違う光を放っていてるから魅了される。それを見つけてくるのは、まるで、岩場に同化している保護色のアワビを長年の経験や勘、感性で獲ってくる海女さんのようだ」といったことをおっしゃっていたんですが、長谷川さん独特のユーモアやウィットが非常にチャーミングです。

秋吉:僕は編集者の中島敏子さんの言葉にすごく納得しました。モードとは「時に涙が出るほど華麗で軽薄で、熱狂と倦怠を交互に繰り返す運動体」ということでしたが、モードとはシステムなんだということをズバッと言い切っています。

向:私はどの方の言葉も印象的だったけど、そのうちの一つはストリートスナップ誌「フルーツ(FRUiTS)」の創設者である青木正一さんのコメント。ストリートに身を置き続けている青木さんならではの目線で、「モードのシステムが存在しない環境でのストリートファッションは、実はつまらない」とおっしゃっていました。ファストファッションが世の中を圧倒していた2010年前後を振り返っての言葉です。

五十君:さて、そろそろこの座談会も総括に入りますが、向さんはこの特集を通して、自分の中の「モードって何?」にどう答えを出しましたか?

向:私がこの特集をしようと思ったきっかけは、この対談の前半でも語ったようにすごく感傷的だったんだけど、「モードの体系」(注:仏の哲学者、ロラン・バルト=Roland Barthesによる1967年の著作。モード論の原点として今回の特集内でも何人かから名前があがった)って、英語版だと「The Fashion System」っていうタイトルなんだよね。“モード=ファッション”とすごく単純に訳されている。それを私は特別な気持ちで解釈しすぎていたとは思う。でもそれって、私だけじゃなくてみんなそうだと思う。日本は敗戦国として洋装を徐々に受け入れて、欧米へのコンプレックスを下地に、モードというものをその時々で捉えていった。だからこそ、モードに意味を持たせ過ぎる感覚が生まれたんじゃないかな。

秋吉:「モードとは単なる言葉だ、欲望を喚起する記号だ」というバルトの原点に戻ればいいということですか?

向:原点通り、欲望を喚起する記号ではあるんだけど、でも欲望の湧き出し方が今は昔とは違う。昔みたいに、世の中全体で共有できる大きな物語や大きな欲望があるわけじゃない。小さな欲望の集合体からふつふつと湧き出るものを、つぶさに見ていくことが大切なんだなと思う。無理やりモードって言葉に意味を持たせようとして、みんなゴメンね!という気分です(笑)。

五十君:その小さな欲望をなんとか喚起できないかと、企業やデザイナーは腐心しているというのが、ファッション業界の現状ということですね。

向:大きな欲望ではなく、小さな欲望だといっても、それを喚起するにはすごいエネルギーが必要だし、そうしたエネルギーを持っているモノや人が、私は魅力的だと感じる。「モードって何?」特集の前週の「WWDジャパン」9月9日号は、村上隆特集を掲載したよね。実は私の中で、この2つの特集は2つで1つといった感覚です。村上隆特集は1万5000字の超ロングインタビューで村上さんを掘り下げているんだけど、その中で「個人的な体験を世の中にダダ洩れさせていくのがアーティストやクリエイターだ」といったことを村上さんは言っているんです。「リミットを外して、どれだけ自身を外に対してさらけ出していくことができるか」って。それが世の中に与えるエネルギーなんだと思うし、やっぱり私はそういう人が好き。「WWDジャパン」は、そういう人を応援できる媒体でありたいと思っています。

五十君:リミットを外して世の中にさらけ出す、という点では、今回の特集の表紙がまさにそれですよね。

向:表紙は、カメラマンの沢渡朔さん、スタイリストのふくしまアヤさんらとチームを組んで、渋谷で撮り下ろしました。沢渡さんたちにお願いしたのは、「忖度なく、自分が今、かっこいいと思う感覚を表現してください」ということだけ。そういう風に言える雑誌や媒体って、実は今すごく少ないんですよね。でも、忖度なしで、自分がいいと思うものをクリエイター同士がさらけ出してぶつかり合う中で、いいものは生まれると思うから、そうお願いしました。

「#モードって何?」をもっと見る

The post 編集後記座談会:「エネルギーのダダ漏れは尊い!」 連載「モードって何?」Vol.13 appeared first on WWD JAPAN.com.

小島健輔レポート 「ザラ」はなぜECを拡大しても店舗売り上げが伸びるのか

 ファッションビジネスのコンサルタントとして業界をリードする小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する不定期連載をスタート。第1回はECと店舗売り上げの関係と、勝ち組「ザラ」の戦略を深掘りする。

 「ECにお客が流れて店の売り上げが落ちている」と嘆く店長の声を聞くことがあるが、それって本当なのだろうか。同じブランドでECが伸びたら店舗の売り上げは減るのだろうか。EC比率がどこまで上がったら店舗の売り上げが落ち始めるのだろうか。

■ECが伸びても店舗売り上げは落ちない

 そのブランドの商圏顧客数も1人当たり購入額も一定であるなら、ECが伸びた分、店舗売上は減りそうなものだが、必ずしもそうはならず、逆に店舗売り上げが伸びるケースもある。そのわけは、ECは新規顧客を開拓する広告効果が大きいからだ。

 ECサイトには、広告媒体的な新規顧客獲得効果や店舗に顧客を誘導するウェブルーミング効果があり、ECで得られた新規顧客の売り上げは店舗売り上げの減少をもたらさないし、ECで得た情報を実体験しようと店舗を訪れる顧客が店舗の顧客になれば、店舗の売り上げも増える。オープン流通の家電などでは各ECや各店舗で売価が競われるから、店舗からECへ顧客が流れるショールーミング効果が大きいが、直営店やFC(フランチャイズ)店に販路が限定されるファッションブランドでは売価が競われず(ブランド統一の値引きやセールは多いが)、ウェブルーミング効果の方がはるかに大きい。

 SPAC※1のメンバー企業の平均では、店舗だけで購入する顧客/ECだけで購入する顧客/両方で購入する顧客の比率はほぼ7対2対1。年間の購入額は、店舗だけの顧客を100とすればECだけの顧客は67、両方で購入する顧客はなんと220もなる。ECだけの顧客が店舗でも購入するようになると67が220に増える可能性があり、2割を占めるEC顧客の全員が店舗でも買うようになってくれれば両方で購入する顧客が1割から3割に増え、皮算用では店舗売り上げが28.3%も増える。

 EC注文品の店受け取りやECから店に取り寄せての試着といったC&C(クリック&コレクト)がいかに店舗売り上げに貢献するか、これでご理解いただけよう。

※1.SPAC… 筆者のクライアントを中心とするアパレル企業の研究会

■ECを伸ばすと店舗売り上げが落ちるケース

 現実にはECを伸ばして店舗売り上げが落ちるケースもある。その要因は商品供給が絞られることにある。

 かつてのECは店舗在庫と切り離してEC向けの在庫を確保し注文に引き当てていたから、EC比率が高まるほど店舗在庫が薄くなり、機会ロスで店舗売り上げが減少する弊害があった。店舗で欠品した商品を求めて顧客がECに流れれば在庫も一段とEC倉庫に移り、店舗売り上げの減少が加速するリスクが指摘されていた。

 在庫データの一元化が進んだ今日でも、多くのECモール事業者は欠品による機会ロスを恐れて出品者の在庫を自分の倉庫に抱えようとするから、データは一元化されていても物理的には分断されたままだ。ゆえにECモール在庫と自社EC在庫、店舗在庫の互換には二重物流の手間とコストを要し、顧客への出荷も遅れるから現実的ではない。

 ECモールに在庫を預けないドロップシッピング※2方式なら自社ECとの壁はないが、EC比率が高まるほど倉庫在庫が積み上がり、その分、店舗在庫は薄くなる。ECがマイナーにとどまっていた時代には問題とはならなかったが、EC比率が10%を超えるあたりから店舗への商品供給が細り始め、店舗在庫の奥行きが浅くなって機会ロスで売り上げが落ちていく。

 EC以前の時代には店舗在庫とDC※3在庫の比率は80対20、DCに補給在庫を積む定番比率の高いチェーンでも60対40ぐらいだったが、EC比率が高まった今日ではEC比率分の在庫がDCにシフトし、EC比率が15%なら65対35、同20%なら60対40になり、もとよりDC在庫比率の高かったユニクロなどは40対60に逆転している。

※2.ドロップシッピング…受注情報を宅配伝票データにしてオンラインで出品者に送り出品者が顧客に出荷する方式で、出品者は在庫を分散させず複数のECサイトに対応できる

※3.DC(Distribution Center)…商品を一旦保管し、物流センター内で荷さばき・流通加工を行った上で出荷指示に基づき各届先までの配送すること

■店在庫引当型C&Cという「ザラ」の決断

 EC向けDC在庫が増えていけば店舗在庫は相応に薄くなって機会ロスが増え、DC在庫の消化回転も足を引っ張って全社の在庫効率が劣化していく。もとよりダム型物流で倉庫在庫を積み上げるユニクロ(UNIQLO)はともかく、スルー物流に徹して本国にも各国にもDC在庫を持たなかったインディテックス(INDITEX)は、ECの拡大とともに積み上がるEC向けDC在庫が全社の在庫効率を悪化させ、その分、供給が薄くなって店舗売り上げが翳り始めるに及び、EC比率が10%を超えた18年6月に大きな戦略転換を決意した。

 「ザラ(ZARA)」を展開するインディテックスのECは11年に欧州6カ国で開始と出遅れたが、17年(18年1月期)には41%も伸びてEC比率が10%(EC展開国では12%)に達し、18年(19年1月期)には12.2%に伸びて円換算で4173億円とH&Mの3874億円、ギャップ(GAP)の3665億円(推計)、国内ユニクロの730億円(グレーターチャイナ圏を合わせても1290億円)を引き離してSPA(製造小売り)最大となり、EC向けDCの在庫負担と店舗在庫の圧迫は放置できなくなっていた。

 「今後は、EC向けDCは増設せず、顧客に最も近い店舗の在庫を引き当て、店受け取りや店出荷に切り替える」というのがその決断で、C&Cの戦略的意図がダム型物流の他社とは大きく異なる。もとより店発注によるスルー物流で店舗にしか在庫を持たなかったインディテックスにとって、EC向け在庫をDCに積み上げるデメリットは大きく、店在庫引当型C&Cという決断となった。それが実行されだした18年下期以降、17年に減速していた既存店売り上げが明らかに好転したから効果絶大な決断だった。

■戦略的意図で店舗からECに売り上げを移す

 ECを拡大してもC&Cで店舗売り上げも伸ばすというのが最新の戦略的帰結だが、店舗チャネルが非効率化して維持しても収益が望めない場合、意図してECに売り上げを移すという選択もある。

 売り上げ対比の運営コストが50%前後にも及んで収益が見込めない百貨店が主販路という大手アパレルなどは、売り上げ減少が続いて不採算の地方百貨店や郊外百貨店の売り場を無理して維持せず、地方や郊外の顧客を自社ECに誘導して引き継ぐという選択が見られる。自社ECの伸びが年率30〜40%というハイペースの一方で地方や郊外の店舗は2ケタ割れが目立つから、意図した戦略的販路シフトだとわかる。

 ECと店舗を合わせた売り上げは多少減っても、高コスト販路から低コスト販路に顧客と売り上げが移れば収益は加速度的に改善されていく。収益が改善された分を店舗に投資せず、デジタル投資や有望分野のM&A(企業の買収・合併)に投じるというのが大手アパレルの戦略トレンドのようだ。

 小売業者はC&Cを軸にECも店舗販売も伸ばして店舗運営を効率化すべくデジタル化を進め、大手アパレルは不採算販路から脱してデジタル化に投資を振り向け、商品開発を効率化してD2C※4、さらにはC2M※5などのビジネスモデルに転換する、という戦略シナリオの違いがある。C&Cもデジタル革新もアパレルチェーンとアパレルメーカーで二方向に分かれるのかもしれない。

※4.D2C(Direct to Consumer)…小売業者や直営店舗を通さずECなど顧客に直販するビジネスモデル

※5.C2M(Consumer to Manufacture)…一歩進んでIoTな無在庫サプライに踏み込むビジネスモデルで、短納期パーソナルオーダーや店頭3Dプリンター出力販売などが挙げられる。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

The post 小島健輔レポート 「ザラ」はなぜECを拡大しても店舗売り上げが伸びるのか appeared first on WWD JAPAN.com.

2020-21年秋冬のトレンドは“エコ”と“エゴ” 世界最高峰の素材見本市が提案

 世界最高峰のファッション素材見本市「プルミエール・ヴィジョン(PREMIERE VISION以下、PV)」がフランス・パリで開催中だ。48カ国2056の出展社が、テキスタイルを中心に糸、レザー、資材、図案などを提案している。2020-21年秋冬向けのトレンドキーワードは“エコ”と“エゴ”。その意図についてPVのトレンドを統括するパスカリーヌ・ウィルヘルム(Pascaline Wilhelm)=ファッション・ディレクターに話を聞いた。

「エコの付加価値ではなくモードとして面白いものが増えている」

WWD:“eco responsibility(環境への配慮)”を全面に打ち出した。

パスカリーヌ・ウィルヘルム=「プルミエール・ヴィジョン」ファッション・ディレクター(以下、パスカリーヌ):これまでもPVとしてエコを打ち出してきたけれど、技術革新が進み、選択の幅が広がって出展社の提案が増えたことがある。それがエコだからという付加価値の提案ではなくて、モード的に見ても非常にいいものが出てきている。環境を考慮することは、クリエイションだけでなく原料から工程まですべてで考えること。また、市場そのものが環境に配慮した製品を求めていて、それが今動いている。今回は変化のシーズンでもある。

WWD:変化のシーズンとは?

パスカリーヌ:移行のシーズンということ。私たちは“変態”、すなわちミューテーション(突然変異)する用意ができている。それには、環境への責任を持つこと、装いが変化すること、ノージェンダーということなどがある。装いの変化はストリートウエアから構築的なテーラリングに移行しつつあり、ノージェンダーにはさまざまな可能性が表れていて、選び方に広がりが出てきている。

WWD:今回のPVが掲げたトレンドキーワードは“エコ”に加えて“エゴ”があった?

パスカリーヌ:今の世の中、みんな自分のおへそが一番大事よね(笑)。フランスのことわざに、自分のことばかり考えているときはへそばっかり見ているというのがあるのだけど、そういうこと。今、みんな自分が一番大事でしょ?セルフィ―の時代だし。みんなが、「自分自分」と言っている市場は、オファーする側としては挑戦しなきゃいけない。個性を求めているということだからそれに応えなければいけない。小ロットの商品や個性的で特別な商品を作ることを努力しているでしょ?

WWD:PVとして特にポイントとしたことは?

パスカリーヌ:快適さや包まれる感覚、大事にされる、守られているといった感覚はもちろん必要だけど、構築的なものに変化が起こっていて、でもそれは快適ではなくなるということではない。テーラリングで“体をデザインする”という感覚で、それはフーディーやぶかぶかのパンツとは一線を画すもの。具体的な素材の話をすると、軽くて機能的、でもそれが目に見えないような生地――例えばフィルムをボンディングしたしなやかな生地などね。

WWD:しなやかな素材で構築的なものを作っていくイメージ?

パスカリーヌ:「PVアワード」でグランプリを取った素材はカシミア100%にコーティングしたしなやかな素材。固くはないけれど、張りがある。あとは、硬すぎないこともポイントで、例えばジャケットになったときにやや肩が丸みのあるラインになるようなイメージ。

「私たちは不安を受け入れなければいけない」

WWD:ベルベットやクラシックなチェック柄など牧歌的な印象の生地が多かった。

パスカリーヌ:例えばベロアはシルクやビスコースとブレンドした生地が多く、田舎っぽいものではなくなっている。ビスコース100パーセントのベロアなど、柔らかくて汎用性が広がるものが多いのが特徴。また見た目はゴツゴツとしたコーデュロイだけど、タッチが違うものも多い。ベルベットはメンズのアイコン的素材の一つだけど、今回のものは光沢があり流麗感がある。スカートやドレスなど、幅が広がると思う。

WWD:トレンドのメインエリアの“パースペクティブ”は、暗い森に迷い込んだようなディスプレーで、展示された生地はくすんだ色のものが多く、妖しい光を放つものもあった。

パスカリーヌ:(提案するシーズンが)冬だから(笑)。展示では、自然との関係の重要性を表現したかった。それは私たちが思い描く理想的な森ではなく、暴力的で、危険をはらむような森をね。でも最後は暗い森から飛び出すようなイメージで、それを今回のキービジュアルにした。私たちは不安を受け入れなければいけない。自然に気を付けながら、自然に配慮して、その中にいる自分を大事にしよう、という意図がある。

WWD:立ち止まって考えてみよう、的な?

パスカリーヌ:立ち止まる必要はないけれど、歩きながら考えてほしい。モードは止まることを知らないから。

WWD:あなたにとってモードとは?

パスカリーヌ:私にとってはすばらしい原動力。人の美しさや快適さを求めることで、人が生きていることを肯定してくれるもの。そのための新しい方法を提案できるもの。

WWD:なぜ今、サステイナビリティーなのか?

パスカリーヌ:先に開催されたG7など政治的な背景は大きい。あとは、アマゾンの森を燃やしっ放しといった環境問題のスキャンダルが情報として伝達されていて、個人が自分の生活の中で認識するようになっている。そうした中で個人レベルで意識の変化が起こっている。自分の外側の世界が思ったよりも脆弱(ぜいじゃく)であることが理解されるようになった。これまでは、そういったコミュニケーションが少なかったけれど、今は自分事として考えられるようになったと感じる。テキスタイル業界に目を向けると、技術が進んでサステイナブルな素材が提案できるようになったこともある。

WWD:フランスに目を向けると23年までに衣料品の売れ残りの洋服の廃棄が禁止になったり、G7に合わせて「ファッション協定(Fashion Pact)」が発表されたりと先導していると感じる。

パスカリーヌ:北欧やオランダの国に比べて環境への配慮は遅れている。彼らは日常的に行っているから。フランスは遅れを取り戻すために行っている。

WWD:フランス政府から何かアプローチはあるか?

パスカリーヌ:ない。PVは、サステイナビリティーについて考える委員会には参加はしている。コミュニケーションがあるが、直接働きかけがあるわけではない。

WWD:サステイナブルなファッション業界であるためには?

パスカリーヌ:製造工程のすべて、廃棄に至るまでのすべての段階でエコロジーを考えること。それがモードの一部になっている。クリエイションが変わるのではなく、いろんな要素を考えなければいけなくなっている。

The post 2020-21年秋冬のトレンドは“エコ”と“エゴ” 世界最高峰の素材見本市が提案 appeared first on WWD JAPAN.com.

メンズコスメブランド「ファイブイズム バイ スリー」が誕生から1周年 記念イベントをFNOで開催

 昨今、メンズコスメ市場は新規参入するブランドや、専門のウエブメディアも登場し、ますます目が離せない市場へと発展しています。過熱するメンズコスメ市場を先導するメンズ総合ブランド「ファイブイズム バイ スリー(FIVEISM × THREE)」は9月14日、ブランド誕生1周年を記念したパーティーを開催しました。同イベントは「ヴォーグ ジャパン(VOGUE JAPAN)」(コンデナスト・ジャパン)主催のファッションイベント「ヴォーグ・ファッションズ・ナイト・アウト2019 トウキョウ(以下、FNO)」のイベントの一環で開催されたもので、ファッションの祭典をビューティ、しかもメンズビューティが盛り上げるという、新たな取り組みに心がワクワクしました。

 東京・表参道のWALL&WALLで開催した同イベントは、メンズコスメなだけあり、スラっとした端正な男性モデル達がエントランスやレセプションでお出迎えしてくれました。小柄な筆者は、若干の気おくれを感じながらも会場の中に。打ちっぱなしのコンクリートの会場のインダストリアルな雰囲気がブランドイメージにもマッチしています。2カ所に分かれたタッチアップブースは男性を中心に満席状態。中には楽しくメイクアップアーティストと談笑する光景も。FNOという事もあり普段とは違う気飾り方の1つにメイクを挑戦してみる人もいたのではないしょうか。会場のスタッフは目元に模様のようなメイクを施していたり、髭や眉毛をマスカラでブルーやグリーンにカラーリングしていたりとブランドコンセプトの“INDIVIDUALITY”(個性)を表現したメイクをスタイリングの一部として楽しんでいました。

 同イベントでは、リエ・オモト(Rie Omoto)「THREE」グローバル・クリエイティブディレクターも出席。リエ・クリエイティブディレクターは、3日に74歳で死去したピーター・リンドバーグ(Peter Lindbergh)やスティーブン・クライン(Steven Klein)のなどファッションフォトグラファーと共に仕事をし、「ヴォーグ(VOGUE)」や「エル(ELLE)」、「ヌメロ(NUMERO)」をはじめとする海外のモード誌でメイクアップアーティストとして活躍してきました。そんな経歴を持つにリエ・クリエイティブディレクター誕生1周年を迎えた「ファイブイズム バイ スリー」について聞きました。

 リエ・クリエイティブディレクターは、ブランドローンチから1周年を迎えたことについて「ローンチした当初に比べて、もっとメンズコスメが受け入れられていると感じる。1年という短い期間の中にも意味があったんだと改めて実感できた」と語ってくれました。

 イベント中は、カリグラファーのRYO KOIZUMI氏によるライヴドローイングも行われました。個性を前面に押し出す同ブランド同様に、同氏も壁一面にブランドコンセプトの“INDIVIDUALITY”の文字を描く姿は迫力がありました。「ファイブイズム バイ スリー」の発表会でよく見かける名物(?)DJも目元に赤いカラーマスカラを引いていました。さりげないながら存在感のある印象で、筆者が勝手に抱いている彼の少し危ない雰囲気にもマッチしていました。

 タッチアップコーナーで多くの男性が順番を待つ姿を見るともっともっとメンズコスメは過熱するだろうと感じました。今後どんなブランドや製品が登場するのか……期待大です!

The post メンズコスメブランド「ファイブイズム バイ スリー」が誕生から1周年 記念イベントをFNOで開催 appeared first on WWD JAPAN.com.

日本で5人目のバーチャルインフルエンサーがデビュー その素性を直撃

 高精度なCGで作られ、インスタグラムで活動するバーチャルインフルエンサーが新たに登場した。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」を着こなしたミラ・サクライ(MILLA SAKURAI)は、日本では5人目となるバーチャルインフルエンサーだ。まだ初々しい、デビューしたばかりの彼女に素性などを訪ねた。

WWDジャパン(以下、WWD):生年月日と出身地は?

ミラ:2019年8月31日生まれの乙女座です。血液型はO型、日本とアメリカのハーフで東京都出身です。

WWD:職業は?

ミラ:モデルです。

WWD:好きなファッションブランドとメイクのアイテムは?

ミラ:ブランドにこだわりはありません。いろんなものを着たり、メイクしたりしたいです。 あ、セルフネイルするのも好きです。

WWD:好きなアーティストは?

ミラ:イギリスのオルタナティブバンドのTHE 1975、米国の歌姫のビリーアイリッシュ、イギリスのリタ・オラも好きです。

WWD:趣味は?

ミラ:写真と旅行、城、お絵かき、コスメです。

WWD:旅行先はどこが好き?よく行くショップは?

ミラ:好きな旅行先は京都と南ヨーロッパ。買い物は青山や代官山、代々木上原によく行きます。

WWD:尊敬している人は?

ミラ:エマ・ワトソン(Emma Watson)と後藤久美子です。

WWD:最後に一言。

ミラ:この度はご取材いただきまして、ありがとうございます。 まだデビューしたてて、あまりうまくしゃべれなくてすみません。周りからは「とてもまっすぐな性格」と言われることが多いです。 好き嫌いがはっきりしていて、喜怒哀楽がはっきりと顔に出てしまうので、嘘がつけないタイプです。

The post 日本で5人目のバーチャルインフルエンサーがデビュー その素性を直撃 appeared first on WWD JAPAN.com.

ミラノコレ初日のハイライト 「プラダ」「ジル サンダー」「N°21」

 9月18日、2020年春夏シーズンのミラノ・ファッション・ウイークが開幕した。15以上のブランドが新作を発表した初日から3ブランドをレポートする。

プラダ(PRADA)

DESIGNER/ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)

 提案する洋服は、リブ編みニットのポロシャツ、コットンガーゼのナチュラルドレス、コンケーブドショルダーのシングル&ダブルジャケット、ペンシルシルエットのミディ丈スカートなど、決してバリエーションには富んでいない。むしろ型数を絞り、それらを縦横無尽に組み合わせることで、それぞれの女性の、異なるパーソナリティーを表現するのが狙いだ。

 アクセサリーは、カゴバッグから、ワンハンドルのクラシック、ミニ巾着、編み込みのフラットシューズ、レインブーツを模したレザーのニーハイ、ロープを通したサンダルなど、コチラのバリエーションは豊か。メシの種のアクセサリーは豊富に、世界観を描くウエアは型数を絞ることでイメージを強調しつつサステイナブルなマインドを表現する。

ジル サンダー(JIL SANDER)

DESIGNER/ルーク&ルーシー・メイヤー(Luke & Lucy Meier)

 2020年春夏のマストアイテムと化しつつある、ボックスシルエットのジャケットにドレスを組み合わせて、オンとオフ、強さと優しさ、フォーマルとエレガンスの双方を提案しつつ、脱ぎ着することで異なる女性像を描く。ジャケットスタイルの、1つの絶対的正解を提案した印象だ。

 引き続きモノトーンを基調に、ハリコシのあるギャバジン風の素材から、贅沢な肉厚のシルクタフタまでさまざまな素材をチョイス。前者は形を維持できる特性を生かして強めのショルダーラインを持つトップスに、後者は光沢とドレープを楽しむシャツにと、特性を生かしたパターンを追求。細かく刻んだプリーツ、ギリシャの女神のドレスを思わせるタッキングやドレープが、白黒の世界にドラマを与えた。叩きつけたラフィア、それを緻密に這わせることでレースのように仕上げたパーツをラペルやヘムラインにプラスしたドレスやコートもドラマチック。

ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)

Designer/アレッサンドロ・デラクア

 ウィメンズとメンズ初の合同ショーを披露した。招待状として用意されたベージュのチュールショーツがジェンダー・ニュートラル(性別を問わない)なアイテムだったように、男女共通アイテムでありながら色気を感じられるコレクションがそろった。巧みなのはヘルシーな肌見せだ。序盤に登場させた小花柄のセットアップをはじめ、殆どのルックの袖下や背中に大胆なスリットを入れることで野暮ったさを打ち消した。また、男女で共通するひざ下丈のハーフパンツと肩パッド付きのノースリーブシャツは、リラックス感のあるカジュアルアイテムでありながら、素材と仕立ての良さでエレガントに昇華した。

The post ミラノコレ初日のハイライト 「プラダ」「ジル サンダー」「N°21」 appeared first on WWD JAPAN.com.

ミラノコレ初日のハイライト 「プラダ」「ジル サンダー」「N°21」

 9月18日、2020年春夏シーズンのミラノ・ファッション・ウイークが開幕した。15以上のブランドが新作を発表した初日から3ブランドをレポートする。

プラダ(PRADA)

DESIGNER/ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)

 提案する洋服は、リブ編みニットのポロシャツ、コットンガーゼのナチュラルドレス、コンケーブドショルダーのシングル&ダブルジャケット、ペンシルシルエットのミディ丈スカートなど、決してバリエーションには富んでいない。むしろ型数を絞り、それらを縦横無尽に組み合わせることで、それぞれの女性の、異なるパーソナリティーを表現するのが狙いだ。

 アクセサリーは、カゴバッグから、ワンハンドルのクラシック、ミニ巾着、編み込みのフラットシューズ、レインブーツを模したレザーのニーハイ、ロープを通したサンダルなど、コチラのバリエーションは豊か。メシの種のアクセサリーは豊富に、世界観を描くウエアは型数を絞ることでイメージを強調しつつサステイナブルなマインドを表現する。

ジル サンダー(JIL SANDER)

DESIGNER/ルーク&ルーシー・メイヤー(Luke & Lucy Meier)

 2020年春夏のマストアイテムと化しつつある、ボックスシルエットのジャケットにドレスを組み合わせて、オンとオフ、強さと優しさ、フォーマルとエレガンスの双方を提案しつつ、脱ぎ着することで異なる女性像を描く。ジャケットスタイルの、1つの絶対的正解を提案した印象だ。

 引き続きモノトーンを基調に、ハリコシのあるギャバジン風の素材から、贅沢な肉厚のシルクタフタまでさまざまな素材をチョイス。前者は形を維持できる特性を生かして強めのショルダーラインを持つトップスに、後者は光沢とドレープを楽しむシャツにと、特性を生かしたパターンを追求。細かく刻んだプリーツ、ギリシャの女神のドレスを思わせるタッキングやドレープが、白黒の世界にドラマを与えた。叩きつけたラフィア、それを緻密に這わせることでレースのように仕上げたパーツをラペルやヘムラインにプラスしたドレスやコートもドラマチック。

ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)

Designer/アレッサンドロ・デラクア

 ウィメンズとメンズ初の合同ショーを披露した。招待状として用意されたベージュのチュールショーツがジェンダー・ニュートラル(性別を問わない)なアイテムだったように、男女共通アイテムでありながら色気を感じられるコレクションがそろった。巧みなのはヘルシーな肌見せだ。序盤に登場させた小花柄のセットアップをはじめ、殆どのルックの袖下や背中に大胆なスリットを入れることで野暮ったさを打ち消した。また、男女で共通するひざ下丈のハーフパンツと肩パッド付きのノースリーブシャツは、リラックス感のあるカジュアルアイテムでありながら、素材と仕立ての良さでエレガントに昇華した。

The post ミラノコレ初日のハイライト 「プラダ」「ジル サンダー」「N°21」 appeared first on WWD JAPAN.com.

ミラノはますますドタバタ日記Vol.1 「プラダ」流“こんまりのときめき”ミニマル? 「ジル サンダー」で2020年春夏の大正解出ました!

 ボンジョルノ〜。2020年春夏ニューヨーク・コレクション取材を終えて帰国して、3連休を日本で過ごし、やって参りましたミラノです。ミラノのウィメンズ・コレクションは超久しぶり。5年ぶり、くらいなのかな?その間に、「グッチ(GUCCI)」や「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」「ミッソーニ(MISSONI)」などは、男女合同ショー(通称「コーエドショー」)にシフト。もうすぐ、久しぶりの“再会”が待っております(笑)。

 というワケで、相変わらずバタバタは必至ですが、ミラノでも楽しくコレクション取材に参りましょう〜!

11:30 ユナイテッド カラーズ オブ ベネトン

 ミラノ最初の取材は、「ユナイテッド カラーズ オブ ベネトン(UNITED COLORS OF BENETTON.以下、ベネトン)」。かの有名なジャン・シャルル・ド・カステルバジャック(Jean-Charles de Castelbajac)に、昨日発表したコレクションについてのインタビューです。

 この記事の通り、1960年代から活躍する彼は昨年、「ベネトン」のアーティスティック・ディレクターに就任。今回が最初のフルコレクションです。

 「ベネトン」とカステルバジャック、パーフェクトマッチですね。お互い、今まで協業に至らなかったのが不思議なくらい(笑)。コレクションはスーパーカワイイし、「若者を鼓舞するメッセージを送りたい。特にサステイナブルの価値観については一緒に考えたい」と話すカステルバジャックにとって、昔はあれほど激しく社会を揺さぶってきた「ベネトン」は、ベストパートナーです。もっと早く出会えなかったものでしょうか?きっと、双方の運命は変わっていたハズ。これから、また輝かしい時代が始まるのか?楽しみです。

13:00 ピーター ピロット

 さてお次は、ロンドンからやってきた「ピーター ピロット(PETER PILOTTO)」。生地の多くがイタリア製ゆえ、生産の地に敬意を込めてミラノまで、だそうです。

 ご自慢の生地、いっぱい出てきました(笑)。花々をプリントしたシルクドレスは、数種類を組み合わせつつプリーツを寄せて露出度高めのドレスに。ラメ入りのリブニットもボディコンシャスで深いスリット入りです。初登場のメンズは、オーバーサイズの開襟シャツ。全体的にリゾート感満載ですが、ブリーチデニムなどダークサイドなストリートをほんのひと匙加えます。ん~、もうちょっとバリエーションが欲しいかな。美しいシルクドレスの色違いが登場するたび、そんな気分を抱いてしまいます。

13:55 フルラ

 お次は「フルラ(FURLA)」。

 このニュースの通り、ロゴも変わり、バッグも変わりました。ロゴは、はやりのゴシック調。「バーバリー(BURBERRY)」とかと一緒ですね。一説には、クラシカルな書体よりSNSでの視認性が高い。つまり、タイムラインを高速スクロールしていても目に留まりやすい、と言われますが、スマホ世代の皆さん、いかがでしょうか?

 ロゴとバッグはちょっと変わりましたが、安心してください。お値段はそのままです(笑)。個人的には、丸みと言うか柔らかさを帯びて、女性にはうれしい変身なのでは?と思います。特に全面花柄のバッグ、カワイイぞ!!

 この記事の通り、コレまでの「フルラ」の基幹コレクション“メトロポリス”は、カッチリバッグでした。総柄もあんまりなかったから、コレは新しいイメージの構築に一役買いそうです。

 そして、イマドキなインスタ映えスポットをたくさん用意。フェティッシュなモデルと一緒に記念撮影しちゃいましょう(笑)。

 商品を見た後は、ジョバンナ・フルラネット(Giovanna Furlanetto)社長にインタビュー。ブランド設立から90年以上がたった今、初めてロゴを考案したり、20年春夏のイチオシバッグに創業年の“1927”という名前をつけたり、ブランドのレガシー(遺産)を伝えようとしています。その理由を尋ねると、「私たちのレガシーは、ずっとあらゆる女性のために手ごろな価格でメード・イン・イタリーのバッグを作り続けていること。今までは上手にコミュニケーションできていなかった。コレからちゃんと伝えたい」と話します。なるほど、ブランドは変わらず。その伝え方が変わる変身なんですね。

15:10 ブルネロ クチネリ

 お次は、リラックス&スポーティー・ラグジュアリーの頂点に君臨します「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」でございます。ミラノ市内のショールームにお邪魔すると、ゲストは皆、“もぐもぐタイム”!ホスピタリティーに溢れる「ブルネロ クチネリ」のケータリングは絶品で、食いっぱぐれた昼ご飯を「ココで食べてやろう」というゲストが集結しています(笑)。

 残念ながら、僕にはそんな時間がなく(泣)、早速コレクションを拝見。20年春夏は「コレを買わずして、何を買う?」という存在になりそうなボックスシルエットのリラックスジャケットのスタイルが大豊作。そこにリラックスパンツ、もしくはひざ下ショーツのコーディネイトがイチオシです。デザインや装飾は控えめ。その分、素材と繊細な色のニュアンスを楽しんでもらおうという、最近のクリエイションは大賛成。白とベージュを基調にトルマリンブルーとフューシャピンク、それにピンクベージュを加えます。

 ウエアの売り上げ構成比が高いブランドは、バッグビジネスを開拓中。いろんなバッグがありますが、一番「クチネリ」らしいと思ったのは、コレかな……。ここはまだまだ工夫の余地がありそうですね(笑)。

16:35 プラダ

 さぁ、ミラノ初日のハイライト「プラダ(PRADA)」です。

 会場は、プラダ財団のアート施設、フォンダシオン プラダ。とにかくデカいです。セレブの姿もチラホラで、いよいよミラノコレ本格スタート!!というテンションが高まって参りました。

 このブランドのランウエイショーは、ちょっとした“禅問答”。パリでは「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」がその役割を務めますが(笑)、ゲストは皆、ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)のちょっぴり不思議なクリエイションを見ながら、「コレはどういうことだろう?ミウッチャさん、アナタは今、何を考えているの?」と一生懸命考察するのです。こんな哲学的なブランド、そうそうありません。ミラノだと、あとは「グッチ(GUCCI)」くらいかな?

 ということで、皆さんも一緒に動画を見ながら考えてみましょう(笑)。

 コレクションは大別すると、パフスリーブのように盛り上がったショルダーラインのジャケットルック、ガーゼのような生地で作った粗野なくらいナチュラルなワンピース、そしてニットのベスト&スカート、もしくはポロニット&プリーツパンツに分かれます。

 さぁ、何かしら(笑)?

 上の写真をスワイプして見続けると、「似てるなぁ」って思いませんか?僕が最初に抱いた印象は、「とっかえっこ」(笑)。幼稚な言葉でミウッチャさんに失礼な気もしますが、コンケーブドショルダー&マザー・オブ・パールボタンのジャケット、リブ編みのポロニット、コットンガーゼのドレス、ボウタイブラウス、ミディ丈のペンシルスカートなんかを、みんながシェアして、取っ替え引っ替え着まわしている印象を受けました。そこでたどり着いたのが、「プラダ」流の“ときめきミニマリズム”。世界で大人気の、こんまり、のように、「ときめくアイテムだけを残したら、こうなりました」っていうアプローチなのでは?と思ったのです。以前からスタイルではミニマリズムと縁の深いブランドですが、今回は、MDの組み立て方がミニマリズムと言いましょうか?

 というのが、僕の“禅問答”の結果です。正解だといいな。というか、絶対の正解なんて、ないんですよ。それぞれが感じれば良い、それがファッションです。

17:40 ブルガリ

 「プラダ(PRADA)」周辺の殺人的な大渋滞を乗り越えて向かったのは、「ブルガリ(BVLGARI)」。今回はジュエリーではなく、レザーグッズのプレゼンテーションです。時計やジュエリーと同じ名前の“セルペンティ”や“ビー・ゼロワン”が今シーズンはピカピカのシルバー&ゴールド、もしくはホットピンクやターコイズのようなブルーに染まりました。

 会場には、コチラもSNS対策のコレが。お目汚し、失礼しました〜(サングラスが「ブルガリ」ですw)。

18:35 アルベルタ フェレッティ

 さぁ、昨日の睡眠は時差ボケでアラウンド3時間半。ネムイヨ。ツカレテキタヨ。そんな感じは否めませんが、テクテク歩いて「アルベルタ フェレッティ(ALBERTA FERRETTI)」。1970年代風のサンドカラーをベースに、スエードのコンパクトジャケット&ミニスカートや、ストリートなGジャン、タイダイ、そしてヒッピーライクなカフタンドレスが盛りだくさん。カフタンドレスが、あまりに繊細なシフォンでできているので、オッパイ透けています。こういうの、そろそろなんとかした方がいいのかな?別にブラがあっても、誰も気にしないと思うのですが……。

19:30 N°21

 さぁ、お次は「ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)」。今回は男女合同ショーです。招待状は、なぜかパンツ(笑)。アレッサンドロ・デラクア(Alessandro Dell'Acqua)が大好きなベージュですが、コレを履くのは、なかなか勇気が入ります。実は今回、パンツを忘れちゃって(苦笑)、履いてきたパンツと持参したジムウエアのスパッツをこまめに洗いながら乗り切ろうとしているのですが、コレ、ワードローブに加えようかしら……(笑)?

 そんな話はさておき、コレクションは、合同ショーにふさわしいジェンダー・ニュートラルなムードです。袖に大きなスリットを刻んでマントやケープのように着るジャケットも、サテンで作ったノースリーブシャツとコーティング生地のショーツも、ジャージーで作ったボウタイ付きのプルオーバーも、総花柄のアイテムも、ドレス以外は男女の境界線がまるでナシ!!良きです。もともとメンズの中にフェミニン、ウィメンズの中にマスキュリンを忍ばせるブランドですから、当然の方向性でもあります。

 実は最近、「マスキュリン」とか「フェミニン」という言葉を使うことに、抵抗を覚えるようになっています。「もう、そういう言葉を使わなくて良い時代じゃない?」って思っているのです。だから「たくましい」とか「力強い」、「柔らかい」とか「優しい」という言葉に置き換え始めていて、僕はそれを心地よく感じています。だから、ジェンダー・ニュートラルを一歩前進させたかのごときクリエイションは、大賛成です。

20:35 ジル サンダー

 さぁ、本日のラストは、「ジル サンダー(JIL SANDER)」。見ているだけで微笑んじゃう仲良し夫婦、ルーク&ルーシー・メイヤーの(Luke & Lucy Meier)のコレクションです。

 ボックスシルエットのジャケットが盛りだくさんの今シーズンですが、出ましたね、1つの大正解が。この柔らかなシルクドレスの上から、カッチリジャケット。コレでしょう!!コレこそが、オンでもオフでも、(いや、そりゃこのブランドはお値段も張りますが)誰でも、季節を問わず、ドレスやジャケットを楽しめる1つの指針になるでしょう。

 素材からフォームを決めるかのごとく、ボリュームとドレープを自在に楽しむブランドですが、後半は、生地にロープを叩きつけたり、そのロープで飾りを作った後にラペルやヘムラインに加えたり、フリンジのように加えたり、アートの領域にも迫ります。それをごくごく穏やかなムードのまま、実はアヴァンギャルドに進めていく。堪能いたしました。

 ということで、初日から大満足。このあとは会食!!明日に備え、まずは寝ます(オヤスミナサイ……)。

The post ミラノはますますドタバタ日記Vol.1 「プラダ」流“こんまりのときめき”ミニマル? 「ジル サンダー」で2020年春夏の大正解出ました! appeared first on WWD JAPAN.com.

平屋のニーズが高まる時代 MUJI HOUSEが提案する生活者が「編集」する家とは

 良品計画の子会社であるMUJI HOUSEは5年ぶりに新商品「陽の家」を発表した。デザイン監修を担当した無印良品アドバイザリーボードであり、日本デザインセンター社長の原研哉氏によるトークイベントが9月13日に開かれた。「陽の家」は大開口を介して庭とつながる平屋で、ライフスタイルに合わせて“編集”できるのが特徴だ。「上質なスケルトンがあれば自分の空間を自分でつくれます。長く快適に過ごせる家は間取りを自在に変えられる家だと考えました」と原氏。「陽の家」はシンプルを極めた間取りのない家なのだ。

 MUJI HOUSEはこれまで大きな吹き抜け空間のある「木の家」、光と風、そして風景を取り込む「窓の家」、都会の限られた空間を有効に生かす「縦の家」を発表しており、「陽の家」はそれに続く4つ目の商品となる。「陽の家」間口5間半(10.01m)×奥行5.25間(9.555m)タイプの場合、標準仕様本体工事価格は1598万円。ウッドデッキの広さやデザインなど、さまざまな世代と家族構成に合わせてカスタマイズできる商品だ。

 原氏は「陽の家」で少子高齢化が続く未来を見据えた平屋の住みやすさを提案する。「階段がなく、テラスにもそのままつながるワンフロアなので、段差によるストレスがありません」。フラットで、壁や柱により遮断されない大空間のため、車椅子でも移動しやすい動線となった。シンプルな機能美とリーズナブルな価格設定もあり、従来のMUJI HOUSEは30~40代の若い世代に支持されてきた。「しかし平屋の『陽の家』はこれから子育てを始める若い層だけでなく、子育てを終え、終(つい)の棲家として自然と溶け込む暮らしを望む高齢者層にも需要があるのでは」と、原氏とともに登壇したMUJI HOUSE取締役の川内浩司氏は分析する。

 データ上でも平屋のニーズは高まっている。2010年に6.19%だった平屋着工戸数の割合は年々増加傾向にあり、17年には9.3%まで上昇。平屋住宅の豊かさを求める要望が実際増えているという。

 「陽の家」では窓が壁の中に完全に収まる全開可能なサッシとウッドデッキが標準仕様となる。そのため外部とつながる開放的な空間が実現した。「例えばキッチンで調理した後、キャスター付きのダイニングテーブルをそのまま移動し、ウッドテラスで食事を楽しむこともできます」と原氏。

 また階段がない平屋で、廊下も必要としないワンフロアであるため、限られた空間を有効に活用できるのも特徴だ。屋根の形をそのまま生かした吹き抜けのように伸び伸びとした勾配天井のため、閉塞感がない。壁ではなく収納家具でゆるやかに仕切るなど、生活者により間取りを調整でき、家族の成長やライフスタイルの変化に合わせた“編集”が自在な住まいとなった。

 「上質なスケルトンのために必要なのは高い断熱性、耐震性を備えた性能のいい箱。それを実現するのが一棟一棟で構造計算をしている木造SE構法です」と開発担当の川内氏。SE構法はMUJI HOUSEに共同出資しているNCNによる独自の構法で強度が数値化できる集成材を耐久性の高い金物で接合し、構造全体で家を支えている。そのため従来の木造住宅と比較して耐震性が極めて高く、大空間・大開口の一室空間が可能になった。

 また断熱性は軀体の中に断熱材を入れた充塡断熱と外張り断熱を組み合わせたダブル断熱とし、一年を通じて快適な室内環境を実現し、エアコン1台で家全体を暖められるほど気密性が高くなった。ひさしを深くし、太陽の光を取り込みつつ直射日光を遮るなど、自然のエネルギーを活用するパッシブデザインも採用している。「無印良品はこれが常識と考えられている生活をよりよくすることが信条。ローコストだが豊かで、無駄を省きつつもディテールをおろそかにせずに、徹底的に合理性を追求したい」と川内氏。ライフスタイルも多様になり、週末を郊外で過ごす二拠点居住も浸透しつつある。「Villa(山荘)と考えて20棟を建てると宿泊施設になる。大自然の中にローコストでホテルを建てるという需要もこれからあるのではないか。日本の暮らしのリテラシーを柔らかくしていきたい」と原氏は展望を語る。

 千葉県いすみ市に9月21日にオープンするフォレストリビング内には「陽の家」のモデルハウスが建ち、9月21日から29日まで毎週土・日・祝日に、完全予約制で公開される。

The post 平屋のニーズが高まる時代 MUJI HOUSEが提案する生活者が「編集」する家とは appeared first on WWD JAPAN.com.

「モードとは、欲望を喚起する記号だ」by渡辺三津子「ヴォーグ ジャパン」編集長 連載「モードって何?」Vol.12

【#モードって何?】きっかけは読者から編集部に届いた質問「つまるところ、モードって何ですか?」だった。この素朴な疑問に答えを出すべく、「WWD ジャパン」9月16日号では特集「モードって何?」を企画し、デザイナーやバイヤー、経営者、学者など約30人にこの質問を投げかけた。答えは予想以上に多岐にわたり、各人のファッションに対する姿勢や思い、さらには現代社会とファッションの関係をも浮き彫りにするものとなっている。本ウエブ連載ではその一部を紹介。今回は渡辺三津子「ヴォーグ ジャパン(VOGUE JAPAN)」編集長に聞く。

WWD:“モード”とは何でしょうか?

渡辺三津子「ヴォーグ ジャパン」編集長(以下、渡辺):ファッションを語る文脈では「ファッションピラミッドの頂点」という漠然とした意味で使われています。しかし、その言葉の意味をあらためて考 えてみると、学生の頃から折りにつけ読み返している「モードの体系」(ロラン・ バルト著)に記された「モードとは、欲望を喚起する記号だ」という言葉に行き 着きます。そしてその欲望は、社会や時代によって常に移ろうもの。私たちは、 モードを通して時代の欲望を捉え、発信する媒体です。

WWD:“モード”を体現しているブランド、クリエイターは?

渡辺:モードに挑戦する全てのクリエイター。年齢や経験は関係ありません。

「#モードって何?」をもっと見る

The post 「モードとは、欲望を喚起する記号だ」by渡辺三津子「ヴォーグ ジャパン」編集長 連載「モードって何?」Vol.12 appeared first on WWD JAPAN.com.

ZOZO前澤氏の「人財投資家としての功績」 ヤフーの連携施策も予想 ITのプロ「WWDジャパン」最新号につぶやく

 大手通信会社に入社後、国内外でITソリューションを提供するビジネスマンが、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。最先端のテクノロジーから企業と、その利用者が必要とするものについて考え続けたITのプロ、CKRが未来的視点からニュースにつぶやきを添えます。

今日のニュース:P.4「カリスマ去る どうなるZOZO」

読み解きポイント:「人財投資家としての前澤氏について考える。ヤフーの狙いは、親会社ソフトバンクのスマホユーザーの送客とフルフィルメント強化か?」

<ニュースのポイント>

 ヤフーがZOZOをTOB(株式公開買い付け)により子会社化することを発表。ZOZOの創業者、前澤氏は、持ち株の大半の売却に応じ、約3000億円の売却益を得て、社長を辞任。ヤフーは、広告事業の一本足打法から脱却しコマース事業を強化。前澤氏は今後、「宇宙渡航と新規事業」という2つの新しい道に進みたいとのこと。

<CKRはこう読む!>

 「100名様に100万円、1億円プレゼント企画」。記憶に新しい、ZOZO創業者の前澤氏がTwitterを通じて実施したお年玉キャンペーンです。当選者の多くは、アートやクリエイティブな活動に携わっている人たちだったと言われています。計画中の月旅行にも、6~8人のアーティストを連れて行きたいと話しています。ヤフーへの株式売却に際しては前澤氏に対して、借金の担保とした株式の強制売却を迫られたのではというネガティブな憶測も広がりましたが、今回は「人財投資家としての功績」について考察したいと思います。

 「基本給とボーナス全員同額支給」「1日6時間労働」「FRIENDSHIP手当」「自学手当」「点数による人事考課廃止」「上司の判断で毎月昇格可能」。ニュースで耳にしたことのあるZOZOの人事制度です。記者会見でも「社員は家族」と話していたとおり、絆を重んじる企業風土を体現しています。「個人毎ではなく、みんなで」「定期的に管理するのではなく、常に自主的な行動を尊重」「足を引っ張り合うのではなく、互いの成長を讃え合う」。施策後の労働生産性(1日あたりの売り上げ÷1日あたりのスタッフの総労働時間)は、25%上昇したと言われています。

 当たり前を疑い、働くということのパラダイムシフトに挑戦してきたことは、業界を超えて大きなインパクトを与えました。

 ZOZOは、正規社員1094人に対し、臨時雇用者が2298人います(2019年3月時点)。19年5月、前澤氏は「日本一のアパレル倉庫へ」と謳い、「最大3割増となる時給1300円、2000人採用、履歴書不要、未経験でも応募可」という機会拡大に取り組み、応募殺到により2日間で募集停止となりました。

 前澤氏が推進してきた施策への反応からわかることは、硬直化する日本のビジネス環境の中で、「今こそ人を信じて、成長機会を促す、ワクワクした取り組みをもっと始めてみよう」ということかもしれません。

 以前つぶやいた「離職率3% 驚異の低さを誇るビームスで気になること」で気になったのは、個人指名でオファーをいただく社員の個性、才能を生かす「ビームス事務所(仮称)」という施策です。

 「WWDジャパン」にはぜひこのタイミングで、人財投資・育成に関する特集を企画して欲しいところです。われわれの知らない企業のハッとする施策の中に、「なるほど面白い、いいね!」という、活用推進したいヒントが隠されているかもしれません。

 最後に少しヤフーから見た、今後のZOZOとの連携施策で重要になりそうなポイントを記したいと思います。

 「ZOZO vs ファーフェッチ 原価率&単価比較で考える」でつぶやいたとおり、国内ビジネスを主軸とするZOZOの収益増に向けた課題は、「販売量(一人あたりの購入数、顧客数)」をいかに増やすかということです。

 しかし今回、ソフトバンク傘下ヤフージャパンとの資本提携発表の中で説明のあった「爆増!ヤフーが強みをもつ30-40代の男性をZOZOへ送客する」には、少し違和感を覚えました。Yahooニュースを見る40代の男性は、ZOZOで服を積極的に買うのかな?

 真の狙いは以下の3つではないでしょうか。

① 約3400万件あるソフトバンク移動通信契約数を強みに、スマホユーザー向けポイント10倍特典をフックとして、20〜30代の女性を中心にZOZOへ送客。ヤフーではなく親会社であるソフトバンクとの連携施策でもあり、今回の記者会見での言及は避けたと思われます。

② ZOZOのフルフィルメントを活用し、「良いお店」が売れる仕組みを強化。ヤフーでは「良いお店」の評価指標の一つとして、出荷の速さ(上位500店は、0.9日で出荷)を挙げています。配送代行として新たな手数料率を設定し、迅速なデリバリーを通じた顧客満足向上を狙うと思われます。

③ 数年後、国内ECナンバーワン達成による自社株価上昇への期待。ヤフーのeコマース取扱高は19年3月期に2兆1000億円を超えました。ZOZOの3200億円が加わり、楽天の3兆4000億円へさらに一歩近づきました(ちなみにアマゾンジャパンの国内流通総額は非公開です)。ヤフーは国内ECナンバーワン達成に向け、もう一社、大きな買収などを仕掛けてくるかもしれませんね。

CKR Kondo : 大手通信会社に入社後、暗号技術/ICカードを活用した認証決済システムの開発に従事。その後、欧州/中東外資系企業向けITソリューションの提供、シンガポール外資系企業での事業開発を経験。企業とその先の利用者が必要とするもの、快適になるものを見極める経験を積み、ウェアラブルデバイスやFree WiFiを活用したサービスインキュベーションを推進。現在は、米国、欧州、アジア太平洋地域にまたがる、新たなサイバーセキュリティサービスの開発を推進中

The post ZOZO前澤氏の「人財投資家としての功績」 ヤフーの連携施策も予想 ITのプロ「WWDジャパン」最新号につぶやく appeared first on WWD JAPAN.com.

ZOZO前澤氏の「人財投資家としての功績」 ヤフーの連携施策も予想 ITのプロ「WWDジャパン」最新号につぶやく

 大手通信会社に入社後、国内外でITソリューションを提供するビジネスマンが、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。最先端のテクノロジーから企業と、その利用者が必要とするものについて考え続けたITのプロ、CKRが未来的視点からニュースにつぶやきを添えます。

今日のニュース:P.4「カリスマ去る どうなるZOZO」

読み解きポイント:「人財投資家としての前澤氏について考える。ヤフーの狙いは、親会社ソフトバンクのスマホユーザーの送客とフルフィルメント強化か?」

<ニュースのポイント>

 ヤフーがZOZOをTOB(株式公開買い付け)により子会社化することを発表。ZOZOの創業者、前澤氏は、持ち株の大半の売却に応じ、約3000億円の売却益を得て、社長を辞任。ヤフーは、広告事業の一本足打法から脱却しコマース事業を強化。前澤氏は今後、「宇宙渡航と新規事業」という2つの新しい道に進みたいとのこと。

<CKRはこう読む!>

 「100名様に100万円、1億円プレゼント企画」。記憶に新しい、ZOZO創業者の前澤氏がTwitterを通じて実施したお年玉キャンペーンです。当選者の多くは、アートやクリエイティブな活動に携わっている人たちだったと言われています。計画中の月旅行にも、6~8人のアーティストを連れて行きたいと話しています。ヤフーへの株式売却に際しては前澤氏に対して、借金の担保とした株式の強制売却を迫られたのではというネガティブな憶測も広がりましたが、今回は「人財投資家としての功績」について考察したいと思います。

 「基本給とボーナス全員同額支給」「1日6時間労働」「FRIENDSHIP手当」「自学手当」「点数による人事考課廃止」「上司の判断で毎月昇格可能」。ニュースで耳にしたことのあるZOZOの人事制度です。記者会見でも「社員は家族」と話していたとおり、絆を重んじる企業風土を体現しています。「個人毎ではなく、みんなで」「定期的に管理するのではなく、常に自主的な行動を尊重」「足を引っ張り合うのではなく、互いの成長を讃え合う」。施策後の労働生産性(1日あたりの売り上げ÷1日あたりのスタッフの総労働時間)は、25%上昇したと言われています。

 当たり前を疑い、働くということのパラダイムシフトに挑戦してきたことは、業界を超えて大きなインパクトを与えました。

 ZOZOは、正規社員1094人に対し、臨時雇用者が2298人います(2019年3月時点)。19年5月、前澤氏は「日本一のアパレル倉庫へ」と謳い、「最大3割増となる時給1300円、2000人採用、履歴書不要、未経験でも応募可」という機会拡大に取り組み、応募殺到により2日間で募集停止となりました。

 前澤氏が推進してきた施策への反応からわかることは、硬直化する日本のビジネス環境の中で、「今こそ人を信じて、成長機会を促す、ワクワクした取り組みをもっと始めてみよう」ということかもしれません。

 以前つぶやいた「離職率3% 驚異の低さを誇るビームスで気になること」で気になったのは、個人指名でオファーをいただく社員の個性、才能を生かす「ビームス事務所(仮称)」という施策です。

 「WWDジャパン」にはぜひこのタイミングで、人財投資・育成に関する特集を企画して欲しいところです。われわれの知らない企業のハッとする施策の中に、「なるほど面白い、いいね!」という、活用推進したいヒントが隠されているかもしれません。

 最後に少しヤフーから見た、今後のZOZOとの連携施策で重要になりそうなポイントを記したいと思います。

 「ZOZO vs ファーフェッチ 原価率&単価比較で考える」でつぶやいたとおり、国内ビジネスを主軸とするZOZOの収益増に向けた課題は、「販売量(一人あたりの購入数、顧客数)」をいかに増やすかということです。

 しかし今回、ソフトバンク傘下ヤフージャパンとの資本提携発表の中で説明のあった「爆増!ヤフーが強みをもつ30-40代の男性をZOZOへ送客する」には、少し違和感を覚えました。Yahooニュースを見る40代の男性は、ZOZOで服を積極的に買うのかな?

 真の狙いは以下の3つではないでしょうか。

① 約3400万件あるソフトバンク移動通信契約数を強みに、スマホユーザー向けポイント10倍特典をフックとして、20〜30代の女性を中心にZOZOへ送客。ヤフーではなく親会社であるソフトバンクとの連携施策でもあり、今回の記者会見での言及は避けたと思われます。

② ZOZOのフルフィルメントを活用し、「良いお店」が売れる仕組みを強化。ヤフーでは「良いお店」の評価指標の一つとして、出荷の速さ(上位500店は、0.9日で出荷)を挙げています。配送代行として新たな手数料率を設定し、迅速なデリバリーを通じた顧客満足向上を狙うと思われます。

③ 数年後、国内ECナンバーワン達成による自社株価上昇への期待。ヤフーのeコマース取扱高は19年3月期に2兆1000億円を超えました。ZOZOの3200億円が加わり、楽天の3兆4000億円へさらに一歩近づきました(ちなみにアマゾンジャパンの国内流通総額は非公開です)。ヤフーは国内ECナンバーワン達成に向け、もう一社、大きな買収などを仕掛けてくるかもしれませんね。

CKR Kondo : 大手通信会社に入社後、暗号技術/ICカードを活用した認証決済システムの開発に従事。その後、欧州/中東外資系企業向けITソリューションの提供、シンガポール外資系企業での事業開発を経験。企業とその先の利用者が必要とするもの、快適になるものを見極める経験を積み、ウェアラブルデバイスやFree WiFiを活用したサービスインキュベーションを推進。現在は、米国、欧州、アジア太平洋地域にまたがる、新たなサイバーセキュリティサービスの開発を推進中

The post ZOZO前澤氏の「人財投資家としての功績」 ヤフーの連携施策も予想 ITのプロ「WWDジャパン」最新号につぶやく appeared first on WWD JAPAN.com.

「私は私らしくありたい」 by アレッサンドロ・ミケーレ

Alessandro Michele「GUCCI」クリエイティブ・ディレクター

 私は私らしくありたい。美しいものを愛し、人と一緒に働くことや自分の表現したいものを正直に表現するのが好きな45歳の男性。それが私であり、重要なことはそれだけだ。私が取り組んでいることを人々が理解してくれるのは本当に光栄で、美しいことだと思う。(2018年2月3日掲載、「グッチ」のミケーレが明かす 「毎シーズンのコレクションは、映画の一章を見せるようなもの」から

The WORDS
ファッション業界人の残した名言を日々の糧に。デザイナーやバイヤー、社長、編集長らの心に響く言葉をお届け。

アレッサンドロ・ミケーレの取り組みや考えを知る

デムナの手掛けるコレクションを知る

The post 「私は私らしくありたい」 by アレッサンドロ・ミケーレ appeared first on WWD JAPAN.com.

デムナ・ヴァザリアが去る「ヴェトモン」 ハイライト10シーンをプレイバック

 デムナ・ヴァザリア (Demna Gvasalia)が、自身のブランド「ヴェトモン(VETEMENTS)」を去る。ヴァザリアは当面パリで「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のクリエイティブ・ディレクターに専念するようだ。

 ヴァザリアは「ヴェトモン」の2015-16年秋冬ショーをパリのゲイクラブの薄暗い地下部屋で開催したり、オーバーサイズのトレンチコートや、カニエ・ウェスト(Kanye West)やジャレッド・レト(Jared Leto)も愛用したパーカなど、常に新しく刺激的なファッションを生み出して人々を魅了してきた。

 ヴァザリアの、肩が大きく袖が長いビッグシルエットは瞬く間にトレンド全体に影響を与え、800ドル(約8万6500円)のロゴ入りパーカは熱狂的なスニーカーコレクターやファッショニスタの間で大人気アイテムとなった。

 DHLのTシャツからライターヒールブーツまで、「ヴェトモン」の歴史を10のシーンに分けて振り返る。

The post デムナ・ヴァザリアが去る「ヴェトモン」 ハイライト10シーンをプレイバック appeared first on WWD JAPAN.com.

「瞬間的ではなく、ずっと残っていくもの」by井野将之「ダブレット」デザイナー 連載「モードって何?」Vol.11

【#モードって何?】きっかけは読者から編集部に届いた質問「つまるところ、モードって何ですか?」だった。この素朴な疑問に答えを出すべく、「WWD ジャパン」9月16日号では特集「モードって何?」を企画し、デザイナーやバイヤー、経営者、学者など約30人にこの質問を投げかけた。答えは予想以上に多岐にわたり、各人のファッションに対する姿勢や思い、さらには現代社会とファッションの関係をも浮き彫りにするものとなっている。本ウエブ連載ではその一部を紹介。井野将之「ダブレット(DOUBLET)」デザイナーはモードについて聞かれると、ある人物に思いを馳せてこう答えた。

WWD:“モード”とは何でしょうか?

井野将之「ダブレット」デザイナー:瞬間的ではなく、ずっと残っていくもの。世間に衝撃を与えた後、たとえ何十年経っても風化しないのがモードだと思います。カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)さんが“モードの帝王”と呼ばれていた理由は、ずっと変わることなくデザインをやりきったから。「ダブレット」のジャンルが何なのかはわからないけれど、自分もカールさんのように最後の最後までデザインを続けていたい。

「#モードって何?」をもっと見る

The post 「瞬間的ではなく、ずっと残っていくもの」by井野将之「ダブレット」デザイナー 連載「モードって何?」Vol.11 appeared first on WWD JAPAN.com.

高機能素材、サステイナブル素材がそろう「国際 生地・素材 EXPO」話題のゴールドウイン×スパイバーの講演も

 生地・副資材専門の展示会「第5回 国際 生地・素材 EXPO 秋」が10月2~4日、東京ビッグサイトで開催される。商品の高品質化が進む現在のファッション業界において、生地・素材の重要性は年々高まっている。同展には、ウール、綿、絹、レース、ボタン、ファスナーなど、機能性豊かな生地・素材が世界中から出展。来場したアパレルメーカーとの間で活発な商談が行われ、「製品だけでなく、生地も買付けできる商談展」として来場者から高い評価を得ている。今回は、展示会内に特設ゾーンとして「Made in Japanフェア」 「皮革ゾーン」を設置。生地・皮革・副資材の選定のための展示会となっている。また、同展の目玉の一つでもある、毎回人気の併催セミナーも見逃せない。ここではアパレル業界で注目を集めるサステイナブル素材や高機能素材を開発する企業と、話題企業のキーパーソンたちによる関連セミナーを紹介する。

3つの注目セミナー 登壇企業には
話題のゴールドウインとスパイバーも

 併催セミナーでは、4年にわたり開発を続けてきた“ムーン・パーカ”を発表したことで注目が集まっているゴールドウインとスパイバーや、サステイナブルを推進するパタゴニア、日本のみならず世界のトップメゾンブランドからも愛されるテキスタイルメーカーのエイガールズなどが登壇する。セミナーは全46講演で各企業がさまざまな視点から生地・素材、そしてファッションの未来を語る。(聴講無料・事前申込み制)

革新的な新素材など、
注目製品をチェック

 同展には上質で機能性の高いテキスタイル・素材・副資材が、計11,000種出展。バイオ技術による菌糸体レザーや耐久性・耐水性を持つ和紙素材、ヘルスケア効果を持つ機能性繊維など、革新的なサステイナブル素材や高機能素材がそろう。

INFORMATION
第5回 国際 生地・素材 EXPO 秋

日程:10月2〜4日
時間:10:00~17:00
会場:東京ビッグサイト 南展示棟
併催:第5回 国際 ファッションOEM EXPO 秋
住所:東京都江東区有明3-11-1
入場料:招待券持参者は無料(招待券がない場合は5000円)


問い合わせ先
国際 生地・素材 EXPO
03-6746-4938

The post 高機能素材、サステイナブル素材がそろう「国際 生地・素材 EXPO」話題のゴールドウイン×スパイバーの講演も appeared first on WWD JAPAN.com.

眼鏡「アヤメ」が初の路面店オープン 千駄ヶ谷3丁目にこだわった理由は?

 日本のアイウエアブランド「アヤメ(AYAME)」が先ごろ、東京・千駄ヶ谷に初の路面店「アヤメ本店」をオープンした。建築ディレクションを手掛けるトリップスターによる店舗設計は全面ガラス張りで、明るく開放的なリラックス感のあるサロンのような雰囲気だ。来年ブランド設立10周年を迎える「アヤメ」創設者の今泉悠デザイナーに心境を聞いた。

WWD:なぜ千駄ヶ谷を選んだのか?

今泉悠「アヤメ」デザイナー(以下、今泉):まったく想定してなかったのですが、「アヤメ」の愛用者でもあるインテリアデザイナーの片山正通氏とお話した際、片山氏のオフィスがある千駄ヶ谷のよさを教えていただいたことが興味を持ったきっかけです。時間がゆるやかに流れる千駄ヶ谷は、ブランド独自の空間をゼロから作りたいと願っていた私の理想に近い場所だと感じました。にぎやかな商業エリアではありませんが、近くにはコアなファンを持つアパレルや雑貨の人気店も点在しています。そして近隣に競合する眼鏡店もないことから出店地に選びました。

WWD:ショップコンセプトは?

今泉:一般的に消費者が依然として持っている“眼鏡店は入店しづらい”という印象を払拭したいと思いました。そのため、店内が外から見えるように全面ガラス張りとし、音楽好きの店長がセレクトした心地よいBGMが流れ、ソファがあるリラックスできるスペースを設けています。眼鏡というパーソナルなアイテムをお客様自身のペースで選んでいただけると思います。“東京っぽい眼鏡店とは?”と自問した私の答えです。

WWD:来年のブランド設立10周年を前に、成長を感じさせる出店だ。そもそも「アヤメ」をスタートしたきかっけは?

今泉:私は眼鏡業界に入る前、ヘアメイクが好きで20歳ごろまでビューティサロンで働いていました。今でも顔をメイクする感覚で眼鏡をデザインしています。眼鏡作りに興味を持ったのは、自分に似合う眼鏡が市場になかったことから自分で作ろうと思ったことがきっかけです。そして、人生の転換点となったのは、東京・代官山のユニットでアルバイトをしていた時、同じアルバイトの大学生が素敵に眼鏡をかけていたことから興味が高じて、眼鏡の産地である福井県鯖江市を訪れたことでした。ある方のツテで現地の田中眼鏡本舗を紹介され、さらにつながった眼鏡ブランド「イエローズプラス(YELLOWS PLUS)」の山岸稔明デザイナーに眼鏡デザインの指導を受けることになりました。それから約4年間、鯖江に出向いたり、メールでやりとりをしながら修業を重ね、「アヤメ」のデビューにこぎつけました。ファーストサンプルを作っていただいたのも山岸氏です。まさに私の師匠ですが、私には今でも山岸氏のような美しい線のデザイン画は描けません。ビンテージへのこだわりを見事に具現化する「アイヴァン」の中川浩孝デザイナーと山岸氏は、眼鏡業界において私がとうてい及ばない才能を持った方として尊敬する2人です。

WWD:「アヤメ」のビジネスは順調だった?

今泉:スタートしてから4年は厳しい日々が続きました。“しがみついてきた”という表現が適切かもしれません。そして5年目を迎えたころにやっとかすかな光が見え出し、それ以降は売り上げが毎年10~20%成長するようになりました。“温故知新”をコンセプトとして、自分が欲しい眼鏡、自分が買える眼鏡を追求してきたことが実を結んできたのだと思います。私は眼鏡作りと経営の両面を担っていますが、”デザインする“という点で共通点があります。

WWD:念願のショップをオープンしたが、次の目標は?

今泉:現在の国内の取り扱い店舗数は約50で、これ以上拡大する考えはありません。私は全国に出向いて一店舗一店舗とのコミュニケーションを大切にしており、この店舗数が限界なのです。本店のこの1年の結果を見て、新しい動きを考えたいと思います。また、一つのきっかけ作りとして、9月27日から30日までパリで行われる国際眼鏡展「シルモ(SILMO)」を初めて視察します。15年に発表した「アヤメ」でトップレベルの売り上げがある代表的モデル“マンレイ(MANRAY)”を持参して現地のバイヤーに見てもらい、海外市場におけるビジネスの可能性を探りたいと思います。あまり先のことは明確に考えられませんが、これからも自由でわがままなブランドでありたいと思います。

The post 眼鏡「アヤメ」が初の路面店オープン 千駄ヶ谷3丁目にこだわった理由は? appeared first on WWD JAPAN.com.

「グッチ」が2050年までに温室効果ガスの排出を完全に相殺 「サプライチェーン全体に責任を持つ」

 ケリング(KERING)傘下の「グッチ(GUCCI)」は9月12日、世界の森林保全を支援するREDD+(レッドプラス:森林伐採による二酸化炭素排出量の増大とそれによる気候変動を防ぐための対策)のプロジェクトを通じて、2050年までに自社および全サプライチェーンの事業活動において温室効果ガスの排出を完全にオフセット(相殺)すると発表した。

 これは8月に発表された「ファッション協定(Fashion Pact)」を受けたもの。「ファッション協定」は今年4月にエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)=フランス大統領がフランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)=ケリング会長兼最高経営責任者に対して、ファッションとテキスタイル関連企業トップと共に環境に与える影響を削減するための実践的な目標を設定するというミッションを与えたもので、すでに32社が参加している。その目標に「現在から2100年までの間に気温上昇を1.5度未満に保つため、50年までに温室効果ガス排出量ゼロを達成するアクションプランを作成し、実践する」ことや「生物多様性の復元」などがある。

 「グッチ」はこれまでも、温室効果ガス排出を回避、削減、回復、そして相殺するという段階的な活動を行ってきたが、サプライチェーン全体を通じて完全なカーボンニュートラルを構築するのは大きな挑戦だ。

 「グッチ」はすでに、ケリングが開発した年次環境損益計算書(EP&L)を導入して環境負荷を数値により可視化しており、17年には、ファッションブランドとして初めてEP&Lを公開している。引き続きEP&Lを通じて、事業活動による環境への影響のすべてを測定、監視する。例えば、温室効果ガスの排出量の約90%はサプライチェーンによるものだが、EP&Lの2018年版では、サプライチェーン全体における全環境負荷が15年に比べて16%、温室効果ガス排出量も同じく16%削減されている。これは全環境負荷の35%相当だという。

 ケリングは19年の世界経済フォーラム、通称ダボス会議での「Global 100 Index:世界で最も持続可能な企業100社」においてアパレルではトップの2位にランクインしている。

「『グッチ』のサプライチェーン全体に対して責任を持つ」

 マルコ・ピッザーリ(Marco Bizzarri )=グッチ社長兼最高経営責任者(CEO)は、「企業の説明責任が問われる新時代を迎えて、私たちはサプライチェーン全体の温室効果ガス排出について、透明性と責任を持つことを含めて、環境への影響を軽減するためにあらゆる方策をとらなければならない。『グッチ』はこれからも、環境への影響を回避し削減するためのスマートで戦略的な方法を追求していくが、それと同時に、サステイナビリティーを推進するためのイノベーションに投資していく。しかし、私の個人的見解としては、私たちの業界が直面している課題、そしてグローバルな地球温暖化問題と生物多様性の危機という現実を見据えたとき、スピード感も含めてこれだけでは十分とは言えないと考える。早急な解決策が求められているという現実に対処するため、私たちはカーボンニュートラルへの取り組みを通じて、今までにない野心的な先例を作る。これは、『グッチ』のサプライチェーン全体におけるすべての温室効果ガス排出に責任を持ち、それを回避、削減、回復するために行動し、避けることができない排出をREDD+プロジェクトを通じてオフセットしていくという明確な施策に基づくものだ」というコメントを発表した。

 カーボンニュートラルへのアプローチにおける最重要課題として、「グッチ」は、環境への負担が少なくサステイナブルな素材の開発と調達や、製造効率改善への取り組みを展開している。これにより、「グッチ」は18年、二酸化炭素排出量を約44万125トン削減した。そして、強化のための新たな方針として、年次ベースで世界中の重要な生態系の保全と再生を支援し、サプライチェーン全体に残存する温室効果ガス排出を相殺していく。

製造プロセスから販売活動における主な取り組み

・事業活動、店舗、オフィス、倉庫における再生可能エネルギー使用量を現在の70%から20年までに100%にする。この施策により、すでに18年だけで約4万5800トンの二酸化炭素排出量が削減された。

・製作と製造プロセスの効率を改善し、最適化していく。スクラップレスプログラムもその一環で、レザーの処理に使用する水と化学物質の量を大幅に減らし、輸送にかかる温室効果ガスの排出量を削減する。18年には8カ所のレザーの加工工場が参加し、電気エネルギー(84万3000kW)、水の使用量と排水路に流れる廃水(1000万リットル)、化学物質の消費量(クロームなど28トンを含む145トン)、レザーの断片(66トン)の削減を達成した。同期間にこのプログラムの実施によって排出が回避された二酸化炭素は全体で約3400トンだった。

・製造中に発生するレザーとテキスタイルの端切れをアップサイクルする「Gucci-Up」プログラムを含む循環型アプローチを拡大する。18年にはこのプログラムの実施によって、レザー11トンが再利用され、約4500トンの二酸化炭素発生が抑えられた。またこのプログラムは、NGOや女性が活躍するプロジェクトとも連携して余剰素材を再利用し、イタリアの社会活動団体と連携して社会的に弱い立場にある人々の訓練やコミュニティーへの復帰を支援している。

原材料の処理プロセスにおける主な取り組み

・レザー加工工程において重金属の使用を排除する「メタルフリーレザープログラム」をはじめ、伝統的な加工技術をよりサステイナブルなものに替えていく。

・15年に始まったポリ塩化ビニール(PVC)の使用禁止とそれを追加的に補完するリサイクルプラスチックへの転換、アクセサリーやジュエリーへのリサイクルメタルの使用など、リサイクル技術とアプローチを最大化している。アクセサリーの金属部やジュエリーに従来使用されていたバージンメタルに替えて、リサイクルしたゴールドやシルバー、パラジウムを使用することにより、採鉱や精錬による環境への悪影響を回避し、18年には約1万1000トンの二酸化炭素排出を抑えることができた。

・オーガニック繊維の認証であるGOTS認証のオーガニックコットンやシルクなどの使用量を年々増やしており、その結果18年には二酸化炭素の排出を約2700トン回避することができた。

・ビスコースなどのセルロース系繊維は、FSC規格(森林管理協議会)の認証を得た森林、およびCanopyStyle監査の期待値を満たした生産者から調達している。さらに、化学物質を環境に漏出させないクローズドループ型の管理システムを導入している生産者からの調達に注力し、すべてのパッケージにはFSC認証の紙と段ボールを100%使用している。

・再生ナイロンの「エコニール(ECONYL)」、再生カシミア、信頼できる生産者によるエシカルゴールドなど、環境への影響が少なくよりサステイナブルな代替原材料への転換を継続する。

・原材料は、推奨される国から、環境への影響が比較的小さいシステムによって生産されたものを厳選調達している。例えばレザーは、この戦略によって自然への影響を最大で5分の1に抑えることができる。さらに、自然生態系を劣化させたり破壊したりすることのない営農システムからレザーを調達することにより、土壌の再生、さらには営農による森林破壊を防ぐことができる。18年には、こうした調達によって、約37万2800トンの二酸化炭素排出を回避することができた。

原材料の処理プロセスにおける主な取り組み

・原材料の調達を最適化し、土壌と生物多様性のための環境回復を実施している農業システムを厳選する。気候変動の影響を軽減し、ローカルコミュニティーにポジティブな経済的、社会的な影響を生み出し、野生生物とその生息地を保護するREDD+プロジェクトを通じて、革新的でグローバルなオフセットポートフォリオを展開する。

・原材料の開発・転換・生産、製品製造に関連するサプライチェーンの上流における温室効果ガスの排出すべてをオフセットする。18年には、840万ドル(約8億9000万円)を投じて、140万トン相当の二酸化炭素の排出を相殺した。「グッチ」の18年のオフセット対象だった約110万2000ヘクタールの生物多様性の保護地区の保全と回復を引き続き支援する。

「あらゆる産業のCEOに行動を促す声として受け取ってほしい」

 ビッサーリ社長兼CEOは「これは称賛すべき取り組みではあるが、グローバルコミュニティーとして私たちが現在取り組んでいる活動は、気温を産業革命以前の水準より1.5度高い範囲にとどめるという指標には十分ではなく、50年までに『ネットゼロ』を実現するためにも不十分だ。私たち企業はみな、気候変動と生物多様性の喪失という2つの課題に対して責任を持つとともに、前向きに闘うためのソリューションを実施しなければなりない。先に発表された『ファッション協定』は、ファッションおよび繊維産業が積極的に達成すべき一連の目標を掲げたもので、私はフランソワ・アンリ・ピノー=ケリング会長兼CEOのリーダーシップに勇気を得て、この重要なプロジェクトをまとめた。今回の決定はさらなるイノベーションと問題解決の完璧な触媒になると考えている。全サプライチェーンの温室効果ガス排出に責任を持つという新しいカーボンニュートラルのアプローチは、私たちのかけがえのない自然と気候に、迅速で具体的かつポジティブな影響を与える先進的な道だと考えている。回避、削減、回復、オフセット(相殺)するという論理的な施策を通じて『カーボンニュートラル』を再定義する私たちの取り組みを、あらゆる産業のCEOに行動を促す声として受け取ってほしい。これからの10年間の、そして未来の世代の自然と社会を救うための重要な責任を果たすために、今こそ企業が力を結集して行動を起こすことが求められている」と述べた。

The post 「グッチ」が2050年までに温室効果ガスの排出を完全に相殺 「サプライチェーン全体に責任を持つ」 appeared first on WWD JAPAN.com.

「これまでモードという言葉は使ったことがない。自分には無縁な言葉です」by阿部千登勢「サカイ」デザイナー 連載「モードって何?」Vol.10

【#モードって何?】きっかけは読者から編集部に届いた質問「つまるところ、モードって何ですか?」だった。この素朴な疑問に答えを出すべく、「WWD ジャパン」9月16日号では特集「モードって何?」を企画し、デザイナーやバイヤー、経営者、学者など約30人にこの質問を投げかけた。答えは予想以上に多岐にわたり、各人のファッションに対する姿勢や思い、さらには現代社会とファッションの関係をも浮き彫りにするものとなっている。本ウエブ連載ではその一部を紹介。今回は阿部千登勢「サカイ(SACAI)」デザイナーに聞く。

WWD:“モード”とは何でしょうか?

阿部千登勢「サカイ」デザイナー:これまでモードという言葉は使ったことがない。自分には無縁な言葉です。甘いと言われるかもしれないけれど、私はいつも自分がこの瞬間に捉えている空気、感覚を言葉にして周囲に伝えています。

「#モードって何?」をもっと見る

The post 「これまでモードという言葉は使ったことがない。自分には無縁な言葉です」by阿部千登勢「サカイ」デザイナー 連載「モードって何?」Vol.10 appeared first on WWD JAPAN.com.

実店舗代表ウォルマートのEC施策に学べ ファッションフリークOL「WWDジャパン」最新号につぶやく

 1992年生まれのファッションフリーク女子が、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。渋谷のファッションベンチャー企業に勤める等身大OL、Azuがリアルな目線を生かし、「このニュースからはコレが見える」という切り口でさまざまな記事につぶやきます。

今日のニュース:
「アマゾンVSウォルマート
米2強の小売戦争 勝敗の鍵となるのはアパレル?」

読み解きポイント:
「やりづらいからこそアパレルを
制すものがECを制す」

ニュースのポイント

 米小売最大手のウォルマート(WALMART)が“打倒アマゾン(AMAZON)”を掲げ、ECを強化している。アマゾンが2018年の米EC市場におけるアパレルとフットウエアの42.8%を占めた一方、ウォルマートは米国内に5000店舗以上を構えておりオフラインでのタッチポイントも多い。食料品での売り上げではアマゾンを圧倒するウォルマートが次に狙うのは、食料品よりも利益率の高いアパレルだ。

AZUはこう読む!

 コンタクトレンズの洗浄・保存液、猫のエサ、コーヒー缶etc……。まとめ買いする日用品は、アマゾンでワンクリック購入。必需品だから買い忘れたくないし、持って帰るのは重いし、比較・検討がすでに終わったものだから何も考えずにネットで買います。

 一方コモディティウエアではなく「コーディネートを楽しむための洋服」は、サイズや色、質感などを確認したいし、じっくり比較・検討したいのでアマゾンでは買いません。食料品などより高額なアパレルは購入の意思決定条件に「不足した情報をいかに補えたか」という点が追加されるので、出品者と消費者の間に情報格差が生じるネット販売に向いていないのです。

 だからこそ、ネット販売がまだまだ弱いとされるアパレル分野で勝てば小売競争で加速できるはず、というのがこのニュースの読みなのでしょう。私もその読みには同意します。そしてアマゾンVSウォルマートの勝負は、実店舗を多数抱える後者の方が、これから打てる手が多いので、有利なのではないかと。

 陳列や掃除といった店舗業務のオートメーション化や、ECで注文した商品を店舗駐車場でピックアップできるサービス「カーブサイド・ピックアップ」といったOMO施策に対し、今年中に1兆円の投資を行うというウォルマート。全ては顧客満足度を高めるためのデジタル・トランスフォーメーションです。

 ブリック&モルタルの代表だった同社が店舗体験をより強固にすることでEC売り上げを伸ばしている事実に、何かとD2Cブランドに押されがちな実店舗アパレル企業はヒントを見いだせるのではないでしょうか。

Azu Satoh : 1992年生まれ。早稲田大学在学中に渡仏し、たまたま見たパリコレに衝撃を受けファッション業界を志す。セレクトショップで販売職を経験した後、2015年からファッションベンチャー企業スタイラーに参画。現在はデジタルマーケティング担当としてSNS運用などを行う。越境レディのためのSNSメディア「ROBE」(@robetokyo)を主催。趣味は、東京の可愛い若手ブランドを勝手に広めること。ご意見等はSNSまでお願いします。Twitter : @azunne

The post 実店舗代表ウォルマートのEC施策に学べ ファッションフリークOL「WWDジャパン」最新号につぶやく appeared first on WWD JAPAN.com.

柳井社長が語る 「ユニクロ」ミラノ旗艦店と女性リーダー

 「ユニクロ(UNIQLO)」のミラノ旗艦店が13日、ドゥオーモ広場近くのコルドゥジオ通りにオープンした。イタリア初出店となる店舗は3階建てで、総面積は約1500平方メートル、130人のスタッフを採用しメンズ、ウィメンズ、キッズを展開する。

 店内はトスカーナ地方の土を使い、日本の土壁の技術で作られた壁や京都製のランプなどイタリアと日本の伝統工芸を融合した内装になっており、「UT」のグラフィックプリントコレクションの売り場では葛飾北斎の作品をディスプレー表示する。ミラノの窓からインスピレーションを得たミラノ出身アーティスト、オリンピア・ザニョリ(Olimpia Zagnoli)のインスタレーションや、同じくミラノのスニーカーショップ、ワン ブロック ダウン(One Block Down)とのコラボレーションによって「ユニクロ」がデニムの製造過程で水の使用を最大99%削減したことを祝した作品「Water is more precious than gold」も見ることができる。

 「イタリアと日本の伝統を完璧なスタイルで融合した建物に完璧なロケーション、品ぞろえも万全だ。理想のロケーション探しが第一だが、今後イタリアでは100店舗を構えたいくらいだ。実店舗がなくなることはないという確信がある」と柳井正ファーストリテイリング会長兼社長は語り、デジタルチャネルはあくまでコミュニケーション手段で、SNSの影響も認識してはいるが「最終目標にはなり得ない」とも付け加えた。ジョン・C・ジェイ(John C. Jay)=ファーストリテイリング・グローバルクリエイティブ統括は「素晴らしいタイミングでの開店だった。ミラノ店では50色のカシミアを特別に選んだように、地元の文化と建築に影響を受けつつ日本の伝統もブレンドするユニクロの店舗が、大量生産型でないことは今や欧州でも明白だ。適切な出店地を見つけ、単に売り上げを創出する以上に特別なものを作り出したいと考えている」とコメントした。

 柳井社長はイタリアの芸術や文化、「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」「プラダ(PRADA)」といったグローバルブランドを例に挙げて「ミラノは特にメンズにおいて右に出る者のいない都市であり、ファッションとデザインの首都。だからこそ旗艦店は観光客ではなくミラノの顧客に焦点を当てる」と地域を正しく理解する重要性も強調。「デザインとアートは衣服を作る上で不可欠な要素。われわれは全てを日常で使えるというコンセプトで開発している。顧客にはデザイナーズブランドと組み合わせて独自のスタイルを創り出してほしい」と語った。ファストファッションとの比較については「人々のファッションの定義は非常に狭く、最新のニュースを信じる傾向がある。われわれはより広範囲のファッションを提唱していて、それに対する独自の解釈も持っている」とよりクラシックかつ実用的で永続的な商品特性を掲げた。

 イタリアでの生産可能性については、まだ研究段階で少量の生産を開始できればと展望を述べ、想定売り上げなどに関する発言は控える中で「ミラノ店は最も生産性の高い店舗の1つになると信じている。在庫切れで顧客を失望させることはしたくない。幸せな気持ちで帰ってもらうために合理的なフローでなければならない」とも話した。

 柳井社長はまた今月初めに女性後継者の可能性を示唆したことに関して、「私は概して女性のリーダーを好む。詳細に注意を払い、男性よりも直感的で論理的で、より良い仕事をする女性は決定を下すリーダーとしてふさわしく、デザイナーとしても創造的だ。女性は男性よりも優れており、非常に奥深く、特にこの業界では有能なマネジャーでもある。イタリアのビジネスが女性によって推進されることを願っている」と言及した。

 「ユニクロ」は2001年のロンドンを皮切りに欧州で現在10市場90店舗を展開、今後マドリードやインド、ベトナムでのオープンを控えるが、国ごとに大幅な製品変更はせず、頻繁かつ短期的な販売やカプセルコレクションも避けているという。ジェイ統括は「サステイナビリティーが話題になる前から、ユニクロはマーケティング重視の誇大広告やトレンドのための使い捨て衣類を作ったことがない。われわれの主な目的はライフスタイルの改善を手助けすることだ」とブランドの“時代を超越した持続可能性”を強調し、22カ国で展開する「ユニクロ」をグローバルブランドとは考えておらず「われわれはまだ全地域、同じレベルで関与できていない。ユニクロは日本のブランドから日本発のインターナショナルブランドへとまさに移行している最中だ」ともコメントした。

大根田杏(Anzu Oneda):1992年東京生まれ。横浜国立大学在学中にスウェーデンへ1年交換留学、その後「WWD ジャパン」でインターンを経験し、ファッション系PR会社に入社。編集&PRコミュニケーションとして日本企業の海外PR戦略立案や編集・制作、海外ブランドの日本進出サポート、メディア事業の立ち上げ・取材・執筆などを担当。現在はフリーランスでファッション・ビューティ・ライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を行う。

The post 柳井社長が語る 「ユニクロ」ミラノ旗艦店と女性リーダー appeared first on WWD JAPAN.com.

剛力彩芽より近くで前澤ZOZO前社長の涙を見守ったヨーロッパ生まれのアレ

 前澤友作ZOZO前社長は、ファッション業界屈指の時計好きとして知られる。では、前澤前社長が退任会見で腕に着けていた時計は何か?編集部ヨコヤマにふいに聞かれた僕は答えに窮し、「ちょっと、え~、あの~、あれだ、その、今ちょっと立て込んでるから……」と言い残し、すぐに「WWDジャパン」委嘱ジャーナリストの渋谷ヤスヒト オフィス・ノマド代表と、同編集アドバイザリーの山本晃弘「アエラスタイルマガジン」ウェブ編集長兼エグゼクティブエディターに連絡を取った。

 「WWDジャパン」も前澤前社長の退任会見に自前のカメラを入れていたが、当然ながら狙うのは前澤前社長の顔だ。時計にピントが合った写真は少なく、それを僕を含めた中高年3人が必死に見ている構図。なかなかにしんどい作業だ……。

 ブランドについては早々に「パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)」で間違いないだろう、ということで着地。同ブランドは1839年創業のスイスの時計ブランドで、「オーデマ ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」「ヴァシュロン・コンスタンタン(VACHERON CONSTANTIN)」と並んで“三大時計ブランド”と称される、時計ファンのあこがれの存在だ。

 2018年9月にカリフォルニア州の宇宙ベンチャー企業、スペースX(SPACE X)本社で行った“月旅行”会見でも、前澤前社長は「パテック フィリップ」の時計を着けていた。

 ああでもないこうでもないが続き、日の暮れかかった18時。「これだ!……(たぶん)」という一本にたどり着いた。それが“グランド・コンプリケーション3970”だ。機械式手巻き時計で、ケースはプラチナ製。永久カレンダーを搭載したクロノグラフモデルだ。04年で生産は終了し、現在は中古市場で1200万~1700万円ほどで販売されている。

 退任会見について書いた本紙編集部イシヅカの記事を自身のツイッターで紹介してくれた前澤前社長だから、きっとこの記事も見てくれていると信じて聞きます――「合っていますか?」。

 ちなみに前澤前社長は平均価格2000万円超のスイスの超高級時計ブランド「リシャール・ミル(RICHARD MILLE)」の日本有数のコレクターとしても知られており、SNSではオールブラックモデルを着用した写真などをアップしている。

The post 剛力彩芽より近くで前澤ZOZO前社長の涙を見守ったヨーロッパ生まれのアレ appeared first on WWD JAPAN.com.

ロンドンコレのドタバタ日記2日目 ショー会場は英国博物館からスポーツジム、再開発エリアまで

 こんにちは、ロンドン・ファッション・ウイーク(LFW)2日目の9月14日の取材日記をお届けします。土曜日の今日から一般公開の”パブリックショー(Public Show)”がスタートし、LFWのメイン会場である”180 ザ ストランド(通称ワンエイティー)”が学生をはじめとする若いお客さんでとても賑わっています。その代わり、従来のBtoBのランウエイショーは公式会場以外での開催となり、英国博物館やテート・モダンをはじめ、地元のスポーツジム、図書館などさまざまな公共の施設で行われます。街中を急ぎで移動することが多く「もう間に合わない!」とヒヤヒヤすることも……。そんなドタバタ劇を綴らせていただきます。

9:45 ロンドンコレの仕掛け人をインタビュー

 メイン会場のワンエイティー中のVIPラウンジで、LFWを主催する英国ファッション評議会(ブリティッシュ・ファッション・カウンシル/BFC)のキャロライン・ラッシュ(Caroline Rush)最高経営責任者(CEO)にインタビューを行いました。内容は”パブリックショー”について。10分のみのクイックインタビューですが、「なぜLFWの一部を一般開放するの?」「一般向けのチケットは売れた?」「LFWの来場者は年々増えている?減っている?」などの質問に答えていただきました。インタビューは後日アップ予定なので、そちらをご覧いただけたらと思います。

10:00「アレクサチャン(ALEXACHUNG)」パブリックショー

 第1回目のパブリックショーを取材するため、プレスパスで入場。チケットは1席135ポンド(約1万7700円)、フロントローは245ポンド(約3万2000円)とちょっと割高で、学生を中心とした来場者はやはり手が届かないのか、フロントローは埋まっていなかったです。ショーは一般客向けの”SEE NOW, BUY NOW”になっていて、今店頭で販売中の2019-20年秋冬商品を着たモデルたちが登場します。従来のLFWのランウエイショーに出席するような業界関係者は入場しておらず、会場の雰囲気は普段のショーとは別物です。友人同士で写真を撮りあったりと、来場客のワクワク感が漂っていました。席で待つこと30分。10:30になってもショーが開始しない……。11:00スタートの「ポーツ1961」のショーに間に合わない可能性が出てきたので、一緒に入場したライターのELIE INOUEさんに取材を託し、会場を後にしました。

11:00 ポーツ1961(PORTS1961)

 現代美術館のテート・モダンに到着し、無事にショーに間に合いました。今季の「ポーツ1961」は著名スタイリストのカール・テンプラー(Karl Templer)率いる新チームでのデビューショーです。到着してみるとロゴも変わっていて、この四角と丸の配置で”1961”を表しています。洋服もがらっと変わった印象。ショーのレポートはこちらをご覧ください。会場では日本からのゲストAMIAYAの2人もキャッチしました。

13:00 マーケス アルメイダ(MARQUES'ALMEIDA)

 先シーズンはパリで発表していた「マーケス アルメイダ」がロンドンにカムバック。ショー前には、パウロ(Paulo)とマルタ(Marta)のデザイナー夫妻の友人やモデルたちが未来の女性たちに向けたメッセージが映像とともに流れました。日本の原宿・竹下通りのような若者街ブリックレーンで行ったのですが、中心地から40分ほど離れた場所に位置しているため、ショー終了後の13:30は超ダッシュでバスに乗りました。

14:30 モリー ゴダード(MOLLY GODDARD)

 30分押しでスタートした「モリー ゴダード」はスポーツセンターの体育館で披露しました。来場者全員がフロントローで、うれしいシーティングでしたが、通路の狭さはモデルたちが通過できるのか不満なほどにギリギリ。案の定、ボリュームのあるチュールドレスが膝や手にバンバン当たります(笑)。

15:00 ハルパーン(HALPERN)

 「ヴェルサーチェ(VERSACE)」や「オスカー デ ラ レンタ(OSCAR DE LA RENTA)」で経験を積んだマイケル・ハルパーン(Michael Halpern)による「ハルパーン」は、シャンデリアが輝くボールルームで、イブニングドレスを見せました。アニマルプリントのタイツとドレスのコーディネートなどが目を引きます。このショーも30分押しで始まり、次のショーへと焦りながら移動します。

16:00 トーガ(TOGA)

 16:10に走って到着した時点で自分のシーティング席が埋まっており、位置を確保するとすぐにショーが開始。ヒヤヒヤしましたが、最初から見られてよかったです。昨春夏はテーラードジャケットにサイクリングパンツの提案だったのが、今季はテーラードジャケットにショートパンツになっていました。細身のショートパンツは今季、他のブランドでもたくさん見かけて気になるアイテムの一つ。難易度が高いサイクリングパンツよりもチャレンジしやすいので、個人的にも来春はいてみたいと思っています。

17:30 ハウス オブ ホランド(HOUSE OF HOLLAND)

 「ハウス オブ ホランド」は再開発が進むキングス・クロス地区でショーを開きました。こちらも急いで移動しましたが、着いた時にはまだリハーサル中でした。ラッキー!と、少し時間と心に余裕ができたので、再開発地域を15分ほどぶらぶら歩きまわってみました。ここはファッションの名門校セント・マーチン美術大学の真裏にある、ショッピングモールは古い車庫を生かして作られた建物。中庭は少し、ニューヨークのハイラインに似ています。ロンドンに詳しい人たちから聞いた話によると周りに建っているのは億ション(1億円以上の高価格な分譲マンション)だそう。住宅には見えないパイプが無数に配置されたユニークなデザインの建物も億ションだそう。

 「ハウス オブ ホランド」のショーは、球体アートを前にした野外で行い、フィナーレでは中国のスポーツメーカーのエクステップ(XSTEP)とのカプセルコレクションも披露しました。ショー後にはローンチパーティーを開催。コラボスニーカーもずらりと並んでいます。

18:00 レジーナ ピョウ(REJINA PYO)

 韓国人デザイナーの「レジーナ ピョウ」の会場は図書館。インビテーションも貸し出し用の貸出カードがモチーフになっていている!人気バッグシリーズ”オリヴィア(OLIVIA)”もいろんな出てきました。

19:00 アウェイク(A.W.A.K.E.)

 「アウェイク」は教会でショーを行いました。今日から一緒に取材に入ったパリ在住ライターのELIE INOUEさんは、ちゃんと「アウェイク」のブラウスを着用して来場していました。袖コンボリュームがかわいいです。これからINOUEさんのロンドンコレ取材記事が上がってきますので、お楽しみにお待ちください。

22:00 ファッション フォー リリーフ(FASHION FOR RELIEF)

 スーパーモデルのナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)がホストを務めるチャリティーショー「ファッション フォー リリーフ」が大英博物館で開催されました。開場を待っていると、「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」の小泉智貴デザイナーに再開。NYファッション・ウイークでのショー発表後、撮影などの予定がありそのままロンドンに来ていたそう。しかも、このイベントにもドレスを貸し出していてショーに登場しました。小泉さんの他にもキム・ジョーンズ(Kim Jones)やピーター・デュンダス(Peter Dundas)ら著名デザイナーの姿がありました。ゲストにはイブニングドレスを着用している人もたくさんいて、豪華なガラパーティーに訪れた気分を味わうことができました。ショーが始まったのは22:00と、夜は寒い会場での2時間待ちは体に堪えましたが、大英博物館でショーを見られる機会は滅多にないですし、「グッチ(GUCCI)」や「ディオール(DIOR)」などから、「イリス ヴァン ヘルペン(IRIS VAN HERPEN)」などのクチュールピースまでも登場し、待った甲斐はあったと思います。ランウエイにはナオミ本人も3回衣装チェンジをして登場しました。

The post ロンドンコレのドタバタ日記2日目 ショー会場は英国博物館からスポーツジム、再開発エリアまで appeared first on WWD JAPAN.com.

NYコレハイライトVol.6 NYコレ最終日の2ブランドをプレイバック

 2020年春夏ニューヨーク・コレクションの最終日の2ブランドをプレイバックする。

マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)

DESIGNER/マイケル・コース

 自身の祖母が移民として、アメリカンドリームを夢見てニューヨークに移住した話からインスピレーションを受けた今季は、アメリカのトラディショナルなスタイルがテーマ。金ボタン付きのネイビーのブレザーにプリーツスカート、星条旗の星をイメージしたスター型スタッズ付きのスカートとニット、フリル付きのトレンチコートなどプレッピーなアイテムが続々と登場。さらにはアメリカの伝統的なデザートであるチェリーパイから着想を得たチェリー柄のワンピースなど、遊びココロに溢れたルックも手掛けた。ショーの音楽はコーラス隊によるアメリカの愛国唱歌で、会場一体が希望に溢れたパトリオティックなムードに包まれた。

マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)

DESIGNER/マーク・ジェイコブス

 9月11日に発表した「マーク ジェイコブス」。ちょうど18年前の同日にニューヨークのワールドトレードセンターで同時多発テロ事件が起き、マークはその前夜に2001年春夏コレクションを発表した。当時のコレクションは人生の喜びやダイバーシティー、オプティミズムなどを祝うテーマだったが、今季はそのテーマを再び掲げ、カラフルで多様性に富んだアイテムをラインアップ。その振り幅はトラディショナルなセットアップやレトロなウエスタンスタイルから、メタリックなパンツを取り入れたフューチャリスティックなルックまで広く、過去、現在、未来のスタイルからインスピレーションを受けた。後半にはクチュールワークが光る全身フリルのミニドレスやガウンも登場し、華やかなコレクションでニューヨーク・ファッション・ウイークを締めくくった。

The post NYコレハイライトVol.6 NYコレ最終日の2ブランドをプレイバック appeared first on WWD JAPAN.com.

編集長は先週何した? バスキアを撮った女性、UAのバーで泡、眼鏡審査に忖度なし!

 こんにちは。「WWDジャパン」編集長の向(むこう)千鶴です。こちらの連載のアップは基本、月曜日の朝ですが、月曜日が祝日の週は火曜日朝に更新しています。という訳で今週もよろしくお願いします!

9月6日(金)
ウォーホルやバスキアも
彼女には自然体だった

 左の女性の大きな笑顔に引き込まれませんか?彼女の名前はペイジ・パウエル(Paige Powell)。写真家です。「グッチ(GUCCI)」がこのほど、ペイジの限定版写真集「PAIGE POWELL」を出版し、ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)で9月26日までインスタレーションを行っています。この日はペイジを迎えてのトークショーとブックサイン会でした。

 写真家の都築響一さんたちとのトークショーで展開されたのは、1980年代のニューヨークでのアーティストたちとの思い出です。毎晩ディスコから朝帰り、みたいな生活を送っていたペイジから出てくる名前は、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)やジャン・ミシェル・バスキア(Jean Michel-Basquiat)、キース・ヘリング(Keith Haring)などなど。彼女は一晩にいくつものディナーやパーティーを掛け持ちして彼らとの親交を深めたり、誰かと誰かをつないだりする中で写真を撮っていたそうです。携帯電話すらない時代に、ペイジは歩くSNSみたいな存在だったという訳です。

 彼女と私は初対面ですが、“あれ?会ったことあったけ?”と勘違いするほど人懐っこい笑顔で迎えてくれました。被写体の表情が自然体なのはきっとペイジの相手の懐に飛び込む笑顔があるから。相手が有名人であっても友人関係が先にあり、その次にシャッターが押されていたのだと思います。それにしても80年代のニューヨークのナイトシーンってめちゃくちゃ刺激的だったんですね。

9月6日(金)
女が一人で飲める場所を見つけた

 ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)青山 ウィメンズストアのオープニングに駆け込みました。強調したいのはこのストアがバーを併設していること。しかも、女がひとりでふらっと立ち寄れる雰囲気です。とか言いながら写真を撮り忘れて申し訳ございません。

 青山のど真ん中という点がいい。仕事終わり(もしくは合間)の一杯や、夜ご飯の待ち合わせ場所などに活用できそうです。もちろんバーだから対象は男女を問わず、です。阪急メンズ東京の3階に今夏オープンした「フランチャコルタ(FRANCIACORTA)」バーも当初の予想以上に女性で賑わっているそうで、洋服の近くにバーカウンター、ニーズがありそうです。

 この店のキーワードは“ローカル”だと思います。ローカルというと、都心以外の場所をイメージしがちですが、港区南青山だってそこで長時間過ごす人にとってはローカル。仕事に行くだけの場所ではなく、青山で過ごすこと自体をもっと楽しもうじゃないか、という視点がよいと思います。朝8時からのオープニングイベントや、「紀ノ国屋」とコラボしたダブルネームのエコバッグなどが象徴的です。

 店内に飾っていた花は南青山7丁目の「ル・ベスベ(Le Vesuve)」だそう。「ル・ベスベ」の店主だった故・高橋郁代さんは、コレクションマガジン「ファッションニュース」を愛読していて、その理由を尋ねると「旬なファッションの色使いはフラワーデザインの参考にもなるから」と教えてくれました。今の「ル・ベスベ」も高橋さんの感性を引き継いでいて、店内のファッションや壁のアートとリンクしながら店内を彩っています。

9月10日(火)
ミラノの癒しカフェ
「コヴァ」がやってきた

 ミラノコレクションで石畳を歩き回り、“もうダメだ、疲れた~”となった時に駆け込むのは街中にあふれるカフェですが、今日はリッチに行っちゃおう、という日はモンテナポレオーネの「コヴァ(COVA)」です。(以前は大聖堂ドゥオーモに駆け込み、静寂の中でしばし癒されていましたが、最近は観光客が増えすぎてドゥオーモには気軽に入れなくなりました)。

 その「コヴァ」がギンザ シックスにオープンしました。まもなく開業する渋谷スクランブルスクエアにもオープンするそうです。なぜ出店が相次ぐの?どこが運営しているの?など疑問に思った方はぜひ記事へ。ちなみに、店の前でシャンパンを掲げる首脳陣の顔ぶれが、世界と日本における「コヴァ」ビジネスの背景を端的に示しています。こういう写真をしっかり押さえるのが「WWDジャパン」の仕事でございます。ハイ。香港ではすでに多店舗展開をしている「コヴァ」は、今後日本でも店舗が増えそうです。

 レセプションには、J.フロント リテイリング関係者(写真2枚目)やイタリアとゆかりの深いブランド関係者などが来場していました。その中にイタリア料理の落合務シェフの姿もあり、落合シェフのレシピ本を愛用しているので、思い切ってご挨拶をしました。落合シェフのレシピ通りに作ったら美味しくできた!経験が何度かあるため少々興奮し、自己紹介の後、2言目に「ミートソースの肉は音が変わるまで触りません!」と自己アピール。肉を焼くときはやたらと触らず、耳を澄まして音の変化で焼き具合を察知せよ、がシェフの教えだからです。に、対して淡々と「はい、そうしてください」と返してくださったシェフ。ありがとうございます。教えを守ります。

9月11日(水)
「日本メガネ大賞」の審査会は
忖度なし

 昨年から参加している「日本メガネ大賞」の審査会に出席しました。洋服の審査と違い、メガネは機能面もポイントになるので難しい……。数百点あるメガネを一つ残らず試して決めました。これだけの量のメガネを一気に見る機会はなく、結果メガネがほしくなりました(笑)。

 審議は文字通り白熱。こういった審査会は業界と密接な分、メーカー側の事情が分かりすぎて忖度が発動されがちですが、“業界のためにもそういうことはやめよう”という空気があるのがこの審査会の良いところ。結果は10月8日にIOFT2019内で発表されるそうです。

9月12日(木)
ゴルチエは隠居せず 
パワフルでした

 

 デザイナーのジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)のクリエイションの軌跡をたどる企画展が10月13日まで東京・代官山のカシヤマ ダイカンヤマ(KASHIYAMA DAIKANYAMA)で開催されており、インタビューをしました。プレタのビジネスを止めて今はオートクチュールに専念している67歳のゴルチエ氏ですが、富も名声も得て半隠居生活かと思いきやとんでもない、めちゃめちゃ活動的でした。そして、今のファッション業界の課題や夢、若い世代へのメッセージなどをノンストップで語ってくれました。

 オンワード樫山とは2015年に契約が終了しています。その関係が今も蜜月な理由は、ゴルチエが若かった頃、資金が尽きてショー開催を諦めかけた時の救世主がオンワード樫山だったから、だそう。報恩謝徳の精神ですね。

 「エルメス(HERMES)」のウィメンズウエアのデザイナーでもあったゴルチエ氏ですが、04年に見たそのデビューショーは“これぞパリ!シック!そしてフェティッシュ!”なショーであり、馬の蹄の音とともに脳裏に焼き付いています。加えてその時、招待状に入っていた本物の馬蹄を日本に持ち帰ろうとしたところ、パリのシャルル・ド・ゴール空港の手荷物検査でひっかかり詳しい説明を求められたことも記憶に刻まれています。「お前はなぜ馬蹄を持っているのか?」と尋ねられ「『エルメス』のショーに行ったからだ」と言ったらすんなり通してくれて「『エルメス』ってすごい」と思いました(笑)。

9月12日(木)
最新号「モードって何?特集」
校了と本日のおやつ


 特集「モードって何?」が完成!「モードって何?」の問いかけに対して35人が言葉をくれました。協力いただいた皆様、ありがとうございました!表紙はこの問いに対する答えを言葉ではなくビジュアルで表現してもらいたいと思った写真家、スタイリスト、ヘアメイク、編集者、アートディレクターに丸っとお任せました。シンプルだけど難しいテーマだったと思いますが、結果、熱量を感じる表紙になったと思います!本日のおやつは「コヴァ」のオープニングのお土産。「コヴァ」にはおもたせにぴったりなスイーツもそろっていますよ。

The post 編集長は先週何した? バスキアを撮った女性、UAのバーで泡、眼鏡審査に忖度なし! appeared first on WWD JAPAN.com.

「“モード”は時代を反映する面と、時代を作る面の両方がある」by三木均リシュモンジャパン社長 連載「モードって何?」Vol.9

【#モードって何?】きっかけは読者から編集部に届いた質問「つまるところ、モードって何ですか?」だった。この素朴な疑問に答えを出すべく、「WWD ジャパン」9月16日号では特集「モードって何?」を企画し、デザイナーやバイヤー、経営者、学者など約30人にこの質問を投げかけた。答えは予想以上に多岐にわたり、各人のファッションに対する姿勢や思い、さらには現代社会とファッションの関係をも浮き彫りにするものとなっている。本ウエブ連載ではその一部を紹介。今回は三木均リシュモンジャパン社長に聞く。

WWD:“モード”とは何でしょうか?

三木均リシュモンジャパン社長:モードは、時代を反映する面と、時代を作る面の両方がある。ひとつの例が、自分も関わった(当時はクロエ日本法人の社長)フィービー・フィロ(当時の呼称、Phoebe Philo)による「クロエ(CHLOE)」だろう。フィービーは「クロエ」でファッションショーの在り方を根底から変えて“、リアルクローズ”という言葉を生み出した。それ以前はランウエイで見せる服と、ショールームや店頭で見せる服は違うことが当たり前だったが、フィービーの「クロエ」では、ランウエイでモデルが着た服を誰でも街で着ることができた。2000年代に入った頃のことで、時代の要請がありファッションも変わったとも言える。

「#モードって何?」をもっと見る

The post 「“モード”は時代を反映する面と、時代を作る面の両方がある」by三木均リシュモンジャパン社長 連載「モードって何?」Vol.9 appeared first on WWD JAPAN.com.

ロンドンコレ2日目のハイライト 「トーガ」や新生「ポーツ1961」など

 ロンドンコレ2日目の9月14日は、一般公開の“パブリックショー”が公式スケジュール内で開催され、多くの一般客もファッション・ウイークを楽しんだ。20ブランドから厳選3ブランドをレポートする。

ポーツ1961(PORTS 1961)

DESIGNER/カール・テンプラー

 クリエイティブなプロ集団による新生「ポーツ1961」のデビューコレクションが、美術館のテート・モダンでベールを脱いだ。「サカイ(SACAI)」のショースタイリストとしても知られるカール・テンプラー(Karl Templer)をアーティスティック・ディレクターに起用し、「ディオール(DIOR)」から「ザラ(ZARA)」までをクライアントに持つアートディレクターのファビアン・バロン(Fabien Baron)らから知恵を集めて新たなブランド像を発信する。今季はブランドの創業者である日系カナダ人実業家、ルーク・タナベが日本産シルクを輸入して世界へ広め、国際的な背景を持って60年代の女性たちに洋服を提案していったルーツをもとに、文化の融合をコラージュで表現した。60年代風の色鮮やかなプリントを左右対称に掛け合わせや、シルクを部分使いしたドレスをはじめとするクレイジーパターンと異素材ミックスがポイントだ。アクセサリー提案が豊作で、アニマル柄をコラージュしたストラップサンダルをはじめ、ミニショルダーバッグ、大振りのピアスやネックレスなどが登場した。これらのアクセサリーや、フィッシュネットのセカンドスキントップスなどの装飾性の高いアイテムは、スタイリストのテンプラーならではのアイデアだ。前任のナターシャ・チャガール(Natasa Cagalj)による“大人の女性のためのひねりのきいたクリーンな日常着”から、色柄を強調した大胆なデザインにシフトチェンジしたことで顧客はがらっと入れ替わる予感。

トーガ(TOGA)

DESIGNER/古田泰子

 今季の「トーガ」は、本質的に必要がないものに美しさを見出した。ビニール素材のコサージュを合わせたテーラードジャケット、大きなスリットから花柄の裏地が見えるスラックスなど、存在しなくてもいいが、あれば一味変わるデザインの可能性を模索。スーツ地のショートパンツや、ヘソ出しのクロップドトップス、大きな穴が無数にあいたニットなど、リアルとチャレンジングなアイテムのバランスも絶妙だ。

モリー ゴダード(MOLLY GODDARD)

DESIGNER/モリー・ゴダード

 ブランドの代名詞であるチュールドレスを核に、新たな素材やアイテムへの挑戦も著しい。今季はデニムのドレスやスカート、グログランテープを装飾したコートなどを始め、スタッズを付けたレザーのハンドバッグやショルダーバッグなど、アクセサリーのバリエーションを広げた。いずれもブランドの世界観を日常的にまとうことができるアイテムで、”大人ガーリー”層の心を掴みそうだ。その一方で原点のチュールドレスは今までよりも一層巨大化して登場した。

The post ロンドンコレ2日目のハイライト 「トーガ」や新生「ポーツ1961」など appeared first on WWD JAPAN.com.

「“モード”は高い位置にある神聖なもの」by久保光博「グレイト」オーナーバイヤー 連載「モードって何?」Vol.8

【#モードって何?】きっかけは読者から編集部に届いた質問「つまるところ、モードって何ですか?」だった。この素朴な疑問に答えを出すべく、「WWD ジャパン」9月16日号では特集「モードって何?」を企画し、デザイナーやバイヤー、経営者、学者など約30人にこの質問を投げかけた。答えは予想以上に多岐にわたり、各人のファッションに対する姿勢や思い、さらには現代社会とファッションの関係をも浮き彫りにするものとなっている。本ウエブ連載ではその一部を紹介。今回は久保光博「グレイト(GR8)」オーナーバイヤーに聞く。

WWD:“モード”とは何でしょうか?

久保光博「グレイト」オーナーバイヤー(以下、久保):僕は1975年生まれ。この業界に入るきっかけが、“モード”と言われるにふさわしい「マサキマツシマ(MASAKI MATSUSHIMA)」で、大好きだった。そこから入ったから“モードとは”の答えは明白で、キャットウオークで見せる、きちんとデザインされた服。アバンギャルドであることが大前提で“、どこに袖がついているの?”と思うジャケットや、極端に長いコートなんかをイメージする。古着のインスピレーションや要素があるものは僕にとってはモードにはなり得ない。

でも“モード”の捉え方は世代によって異なると思うし、今で言う“モード”は僕が言う“モード”とは様変わりしている。ショーで見せる服と実売は常に隣り合わせで、見せる服から着る服に変貌している。僕にとって“モード”は高い位置にある神聖なもの、という解釈なんです。今回質問に答えたいと思ったのは、改めて「グレイト」の品ぞろえを僕が言うところの“モード”にしたい、もっと強くしたいと思っているから。今の品ぞろえは、全然カジュアルです。もう少し艶感のあるモノに寄せたいし“、お前それ着てどこ行くの?”みたいな服を増やしたい。そこを掘っていくと、最近はロンドンのブランドや中国系のデザイナーが目に留まる。モードな服を買っていくのも日本人より断然中国人。その存在は心強い。

WWD:“モード”を体現しているブランド、クリエイターは?

久保:「ナジール マザー(NASIR MAZHAR)」、イサマヤ・フレンチ(Isamaya Ffrench)、ザンダー・ゾウ(Xander Zhou)、ディ・ドゥ。「ナジール マザー」は以前扱っていたが、今は卸売りをやめて舞台衣装などを作っている。これぞモードだよね、という服を作っている。

「#モードって何?」をもっと見る

The post 「“モード”は高い位置にある神聖なもの」by久保光博「グレイト」オーナーバイヤー 連載「モードって何?」Vol.8 appeared first on WWD JAPAN.com.

「大人の女性の日常服に疎外感」 ファッションフリークOL最新ファッションニュースにつぶやく

 1992年生まれのファッションフリーク女子が、「WWD JAPAN.com」で気になったニュースを要約してお届け。渋谷のファッションベンチャーに勤める等身大OL、Azuのリアルな目線を生かした「このニュースからはコレが見える」という切り口で、さまざまな記事につぶやきを添えます。

今日のニュース:サンエー・インターナショナルの「ル フィル」がニュウマン新宿に1号店 モダンと自然が調和する上質空間

読み解きポイント「いつになったら大人の女性になれるのかしら」

ニュースのポイント

 サンエー・インターナショナルは、2019年春夏に立ち上げた新ウィメンズブランド「ル フィル」の1号店をニュウマン新宿店に9月8日出店した。エレガントな見た目とノンストレスな機能性を揃えた「現代の大人の女性の日常に寄り添う服」が揃う。これまでポップアップストアを中心に展開してきた同ブランドは、新宿店を皮切りに今後10店前後の出店を見込む。

Azuはこう読む!

 「大人の女性のための」というキーワードを聞く度に、「私は一体、いつになったら大人になれるのだろうか?」と思います。上質なテキスタイル、シンプルなデザイン、それにほんのひとさじの「モード」を加えたエレガントな服。それを着こなせる大人の女性、とっても憧れます。(そういえば「モードって何?」連載が進んでますが、「大人の女性のための服に加えるほんのひとさじのモード」が指すところの「モード」って、なんでしょう。)

 もうすぐ30代。仕事も私生活も変化が訪れる微妙な時期を過ごしていますが、それに応じて着る服が変化していくのだろうな、というのは実体験としても周りを見ていても感じます。ビシッとスーツの方達との打ち合わせに着ていくものがなく、かろうじてモノトーンでまとめたものの「TPOも守れないなんて、私にファッションを語る資格なんてない」と落ち込みながら高層ビルへと向かったり……。

 だからと言ってアパレルブランドが掲げる「都会的な大人の女性のための服」を着てみても「馬子にも衣装」とはならず、身の丈にあってない感がすごいのでまだ手を出せません。それらの価格帯だと正直ちょっと買い揃えるのはキツイし、でもファストファッションの生地感に耐えられるフレッシュさなくなってきたし……(笑)。

 20代後半が大人の女性を演じなければいけない時には、一体何を着れば良いのか。ビジネスシーンで着られる、そういう服が欲しいんです。だってちょうど背伸びしないといけない年齢なんですもの。もう新米ではないし、でもナメられるし、だから絶対ナメられたくないし(笑)

 ということで「大人の女性のための」というキーワードがたくさん並ぶファッション業界で、ちょっと疎外感を感じてしまうお年頃なのでした。

Azu Satoh : 1992年生まれ。早稲田大学在学中に渡仏し、たまたま見たパリコレに衝撃を受けファッション業界を志す。セレクトショップで販売職を経験した後、2015年からファッションベンチャー企業スタイラーに参画。現在はデジタルマーケティング担当としてSNS運用などを行う。越境レディのためのSNSメディア「ROBE」(@robetokyo)を主催。趣味は、東京の可愛い若手ブランドを勝手に広めること。ご意見等はSNSまでお願いします。Twitter : @azunne

The post 「大人の女性の日常服に疎外感」 ファッションフリークOL最新ファッションニュースにつぶやく appeared first on WWD JAPAN.com.

ロンドンコレのドタバタ日記1日目 参加デザイナーが目指す“ポジティブ・ファッション”とは?

 皆さん、こんにちは。ロンドン・ファッション・ウイーク(LFW)が開幕しました!ニューヨークで「ドタバタ日記」を綴っていた編集長の村上からバトンを受け取り、私大杉がロンドンコレ取材の裏側を日記にしてお伝えしていきたいと思います。私はこれまで東京、ニューヨーク、ミラノ、パリのウィメンズ・コレクションの取材を経験しましたが、今季初めてLFWに参りました。日記ではロンドンの今や、他都市とのコレクションの違いなどにも触れていきたいと思っています。日記なので1日以上時差がありますが、4日間ぜひお付き合いいただけたらうれしいです。

8:30 LFWオープニングレセプション

 初日の朝はロンドンコレのキックオフ会見が行われました。主催者の英国ファッション評議会(ブリティッシュ・ファッション・カウンシル/BFC)からの挨拶があり、まずは英国のEU離脱(Brexit)問題について、離脱に伴う輸出入取り引きへの影響やリスクをデザイナーたちと共有し始めて対策していると言います。また今LFWが力を入れているのが“ポジティブ・ファッション”です。サステイナビリティーを意識したモノ作りをはじめ、多様性と平等性の尊重、職人技とコミュニティーの保護など、一言で言うと“世の中へ良い影響を与えるファッション”を発信することです。モデルとして活動しながら、アクティビストで“ポジティブ・ファッション”のアンバサダーも務めるアジョア・アボアー(Adwoa Aboah)がスピーチを行いました。私は個人的にアジョアの大ファンなので、彼女のスピーチを生で聞くことができてとても嬉しかったです。アジョアの素晴らしさについては、また後日どこかで記事にできたらと思います。

9:00 マーク・ファスト

 トップバッターはニットウエアを得意とする「マーク・ファスト(MARK FAST)」。LFWのメイン会場である”180 ザ ストランド(通称ワンエイティー)”でショーを発表しました。目が覚めるネオンカラーに、ボディコンシャスでタイトなニットドレス、フリンジはどことなくチアリーダーのポンポンのようです。モデルにはプラスサイズモデルも起用しています。NYコレのように分かりやすい表現ではないですが、多様性を重んじていて、早速“ポジティブ・ファッション”を感じました。

10:00 ジェイミー ウェイ ファン

 台湾人デザイナーの「ジェイミー ウェイ ファン(JAMIE WEI HUANG)」のショーに向かうため、会場の外に出るとカメラを持ってスナップハンターをしていたファッションジャーナリストの宮田理江さんにばったり!宮田さんは「WWDJAPAN.com」のリアルトレンドのマスターとして、トレンド解説の記事でおなじみです。私は宮田さんを逆にスナップし、素敵な笑顔をいただきました。

 宮田さんによる今秋冬のトレンド解説はこちら

 「ジェイミー ウェイ ファン」のショーでは、全面にビーズを使ったブラトップやバッグが気になりました。この“ビーズ使い”はこの後も出てくる一つの傾向になっていきます。ショーのフィナーレにはバックステージからスタッフが登場し挨拶。ロンドンにアトリエがあるブランドですが、全員アジア人ですね。

11:00 ネンシ ドジョカ

 メイン会場のワンエイティーに徒歩で戻り、「ネンシ ドジョカ(NENSI DOJAKA)」のプレゼンテーションをチェック。真っ暗闇で、黒とベージュのアンダーウエアとミニドレスを着たモデルたちがポーズを決めています。自撮り棒を持って撮影しているのもシュール。この手のプレゼンテーションは出入りが自由で、5分見て会場を去ります。

12:00 16アーリントン(16ARLINGTON)

 BFCに用意していただいたベンツの車で会場移動をスタート。「16アーリントン(16ARLINGTON)」はライブ会場で、ダンスパーティー風のプレゼンテーションを開催。1920年代のフラッパーのようなフリンジドレスから60年代風の色あざやかなミニドレスまで登場する時代をミックスした華やかでギラギラな世界観です。音楽に合わせて踊っているモデルたちがとても可愛い!

12:30 エフティシア

 メイン会場に戻り、「エフティシア(EFTYCHIA)」のプレゼンテーションに入場。BFCの若手育成プログラム「ニュージェン(NEWGEN)」に選ばれた注目デザイナーとして、モデルによる発表を行いました。2019年度のLVMHプライズのセミファイナリストにも選ばれていたブランドです。先ほど「ネンシ ドジョカ」も使っていた空間に、デスクなどを足してオフィス空間を作っていました。テーラードを中心にゆったりとしたスーツを着たモデルたちが登場しました。

 「ニュージェン」と言えば、「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」や「シモーン ロシャ(SIMONE ROCHA)」を輩出した若手育成の登竜門。プレゼンテーションが行われていた隣の部屋では、今「ニュージェン」がサポートするウィメンズ10ブランド、メンズ10ブランドの計20ブランドの前シーズンの19-20年秋冬ルック1体が並んでいました。私みたいにLFW初心者にとっては、先にブランドを予習できるありがたいスペースです。是非東コレでも取り入れて欲しいです。マネキンの隣のプレートには、それぞれのブランド名とともに”ポジティブ ファッション”の一環で、どんなことに注力をしているのかが解説されています。例えば、プリント技術で「リチャード クイン(RICHARD QUINN)」はサステナビリティー、「マティ・ボヴァン(MATTY BOVAN)」は職人技とコミュニティーなど、今はただ素敵なコレクションを作ればいい時代ではないことがよく分かります。

13:00 ボラ アクス

 メインのショー会場に戻り、「ボラ アクス(BORA AKSU)」のショーを見ました。20世紀初頭に女性の権利を求めるために活動したフェミニストであり、ペルシャ王宮のプリンセスだったタージ・アッサルタネ(Taj Saltaneh)が着想源になっています。フリル、小花柄、赤チェックなど、少し日本ガーリーの「ピンクハウス(PINKHOUSE)」や「ミルク(MILK)」に通ずるスタイルを感じました。スタイリングは、雑誌「ルラ(Lula)」元編集長で「ヴァイオレットブック(Violet Book)」を手掛ける有名スタイリストのリース・クラーク(Leith Clark)が担当しています。

14:00 キコ コスタディノフ

 今回は珍しくLFW非公式のオフスケジュールでショーを発表した「キコ コスタディノフ(KIKO KOSTADINOV)」の会場へ。会場には今季の着想源の一つにもなっている英国人アーティストのロージー・グレイス・ワード(Rosie Grace Ward)による大きな2つの鉄彫刻がドーンと並んでいます。日本でもメンズに人気ですが、ウィメンズの過去2シーズンは少々作品作りに比重が傾いていて、リアルな一般女性が着用できる印象がありませんでした。しかし、今季は少し“衣装感”が薄れて(まだありますが)、ウエアラブルになったと感じます。渦巻きのワンピースやトップス、アンモナイト型のポシェットなどもかわいかったです。詳しいミニレポートはこちらでチェックくださいませ。

16:00 ファッションイースト

 若手の合同ショー「ファッションイースト(FASHION EAST)」をチェックしてきました。中国人デザイナーのユハン・ワン(Yuhan Wang)は2週間前に日本のファッション展示会イベント「ルームス(rooms)」に出展していて、デザイナーにも会ったばかりでした。セント・マーチン美術大学を1年前に卒業したばかりですが、すでにドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)やLAのH.ロレンツォ(H.LORENZO)などで扱われています。「シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)」や「モリー ゴダード(MOLLY GODDARD)」などのロンドンの次なる“ガーリー枠”となるか期待です。

17:00 ドム セバスチャン

 メイン会場ワンエイティーに戻り、「ドム セバスチャン(DOM SEBASTIAN)」のプレゼンテーションへ。得意とする色鮮やかなグラフィックプリントを使ったコレクションを発表しています。同様のプリントを施した壺などの大道具の作りも凝っています。

18:00 マティ・ボヴァン

 「マティ・ボヴァン」のショーへ。種々雑多な生地を掛け合わせた造形的でダイナミックなコレクションです。横から見ていると分からなかったのですが、ショー終了後にルックを確認すると、モデルたちが付けていた反射板のような特殊なマスクは、顔を歪んで見せていたことが分かりました。改めて見ると本当にカオスです。スタイリストは「ラブ(LOVE)」マガジンの編集長で、「プラダ(PRADA)」などのショーも手掛ける有名スタイリストのケイティ・グランド(Katie Grand)でした。

19:00 ポーラ ノア

 「ポーラ ノア(PAULA KNORR)」のショーは英老舗百貨店、ハーヴェイ・ニコルズ(Harvey Nichols)のレストランで行われました。ラズベリー入りのカクテルをいただきながら、ビジューや刺しゅうがたっぷりあしらわれたドレスを拝見。イブニングドレスブランドではありますが、ドレスの共布で作ったミニポシェットを合わせたドレスルックは、少し新鮮でかわいかったです。

20:00 マルタ ジャクボウスキー

 車でワンエイティーに戻り、ドイツ出身デザイナーの「マルタ ジャクボウスキー(MARTA JAKUBOWSKI)」のショーへ。1998年のドイツ映画「ラン・ローラ・ラン (Run Lola Run)」の主人公のローラのタフな女性像が着想源になっていました。劇中の挿入歌「Believe」をBGMに、角ばったショルダーラインのジャケットやフェイクレイヤードのパンツなどが登場します。日本でも感度の高い人たちに支持されているショルダーラインを変形させたキャミソールやトップスは引き続き提案がありました。

21:00 0 モンクレール リチャード・クイン

 初日のラストストップは、老舗セレクトショップのマッチズ(MATCHES)で行われた「0 モンクレール リチャード・クイン(0 MONCLER RICHARD QUINN)」の発売を記念したローンチパーティーです。コレクションのプリントを用いたソファーが用意されていて、来場者たちが自由に撮影を楽しんでいました。特にコラボダウンコートを掛け布団にして寝っ転がって写真を撮っている子たちがキュートでした(笑)。会場のマッチズは最近、ファッションECの「マッチズファッション ドットコム(MATCHESFASHION.COM)」から知る人も多いですが、ロンドンの老舗セレクトショップです。時間があれば店内をゆっくり見たかったのですが、終了時間ぎりぎりに終了時間ぎりぎりの滑り込んだため断念しました。またゆっくり見にきたいと思います。

The post ロンドンコレのドタバタ日記1日目 参加デザイナーが目指す“ポジティブ・ファッション”とは? appeared first on WWD JAPAN.com.

同じ「愛国」なのに何が違う? NYデザイナーとドナルド・トランプの「パトリオット」

 「パトリオット(Patriot)」。

 日本語では「愛国心」を意味しますが、今、この言葉を口にするには勇気が必要です。特にアメリカでは、バッシングも覚悟しなければ。政策に対して疑問が募るばかりのドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の基本理念は「愛国主義」、そして、世界を見れば日本も含め右翼化の傾向が顕著で「コレでいいの?自分の国さえ良ければいいの?」という警鐘の音が日々大きくなっているからです。

 ところが2020年春夏ニューヨーク・コレクションでは、臆せず「パトリオット」を口にするデザイナーが何人も現れました。実に勇敢です。そして興味深かったのは、アメリカ人の彼らによる愛国のコレクションが、日本人の僕にとっても“共感ポイント”盛りだくさんだったこと。ドナルド・トランプに関するニュースを聞いている時のような“しかめっ面”にならなかったんです(笑)。それはデザイナーの「愛国心」が、ドナルド・トランプの「愛国主義」とは全く違うものだからでしょう。今日は、そんなお話です。

 ではまず、「今回のコレクションは、デザイナー人生で一番『パトリオット』」と話したデザイナーから紹介しましょう。マイケル・コース(Michael Kors)です。今回マイケルは、東欧出身の彼の祖母が、1900年代初頭から移民にとってニューヨークの玄関口だったエリス島を経て、ニューヨークで根を下ろしたパーソナルなヒストリーに焦点を当てました。人生で初めてエリス島を訪れ、当時の移民たちの力強さ、抱いていた希望の輝き、そして、前途多難ながらチャンスに溢れていたアメリカという国の魅力からコレクションを組み立てます。

 だからこそ、コレクションの根本はアメリカントラッド。袖を巨大なパフスリーブに変換した紺ブレにハイウエストパンツのスタイルは、アメリカそのものであり、実用主義を重んじる「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」らしくもあります。当時のアメリカに溢れていた開拓者精神、そして、彼らを広く受け入れたダイバーシティー(多様性)のマインドは、アメリカンプレッピーに組み合わせた真逆のテイスト、パンクとなって現れました。チェック柄のトラッドには、ピカピカのシルバースタッズ。レトロなクラシックバッグには、やっぱり輝くゴールドスタッズ。その煌めきは、1920年代のアメリカの輝きであり、現在アメリカが最先端のダイバーシティーの象徴です。

 お次は、「プラバル グルン(PRABAL GURUNG)」です。ブランド設立10周年の今回は、「アメリカの理想」と題してビューティ・ページェント、いわゆるミスコンを着想源にコレクションを組み立てました。「パトリオット」でミスコン、2重でドキドキしますね(笑)。かつてからミスコンは、「女性蔑視ではないか?」と批判されるものでもありました。ところがプラバルは、全米各地からさまざまな女性が集うミスコンは、ダイバーシティーの象徴であると解釈。この“コンテスト”にメンズも登場させることで「女性蔑視」という批判を回避しました。

 コレクションは、ビューティ・ページェントに欠かせないド派手なドレス、バラのモチーフが盛りだくさん。そこにアメリカらしいデニム、混じり合う色がダイバーシティーを表現するタイダイ、そして、打ち上がってから消えるまでの数秒間に色が次々変わる花火のモチーフが加わります。フィナーレは、全員がタスキをかけて登場。ミスコンっぽいですね(笑)。「WHO GETS TO BE AMERICAN?」、直訳すれば「アメリカ人(になれるの)は誰?」、転ずれば「願えば皆、アメリカ人」という意味かな?フィリピン生まれ・ネパール育ち、移民としてやってきたプラバルが考える、理想のアメリカ像が伺えます。国への想いに溢れたコレクションです。

 黒人デザイナー、カービー・ジーン・レイモンド(Kerby Jean-Raymond)の「パイヤー モス(PYER MOSS)」は、まるで牧師のような黒人による教会の日曜礼拝みたいな説教から始まりました。会場に集った黒人ゲストに、奴隷としてこの国にやってきてから400年がたった今こそ、アメリカの一員として高貴であることを自覚せよと説きます。ほんの少し前までファッションショーの世界における黒人は、白人に対するカウンターカルチャーとして存在していた感がありますが、もはやそんな対立構造はなく、1つなんだと実感しました。

 そう、この対立構造ではない「愛国」が、思わず苦い顔をしてしまうドナルド・トランプの「愛国主義」とは違うんだと思います。彼の「愛国主義」に基づく政策や主義・主張は、例えば、メキシコを相手とした国境の壁構想、中国を相手とした貿易摩擦など、対立構造の基に成立している。でも20年春夏のデザイナーによる「パトリオット」には対立構造なんて存在せず、インクルージョン(包摂・包括性)の延長線上にある、多様な人々を1つに結束させるキーワードだと思うのです。だからこそデザイナーの「愛国」は、「アメリカへの愛」でありながら、日本人の僕らを否定しない。それが「アメリカ人の愛国心」に日本人の僕さえ共感できた最大の理由だと思うのです。

 時を同じくしてニューヨークに渡り、演劇を通してアメリカンカルチャーを考えている大学教授の友人は、「パトリオットは、アメリカの長所であり短所、強みであり弱みだと思う」と話していました。その通りです。

 でも、マイケルやプラバル、カービーのパトリオットなら、アメリカは新しい一歩を踏み出すことができる。そんな気がするのです。

The post 同じ「愛国」なのに何が違う? NYデザイナーとドナルド・トランプの「パトリオット」 appeared first on WWD JAPAN.com.

ロンドンコレ初日のハイライト 「キコ コスタディノフ」「ファッション イースト」など

 2020年春夏ロンドン・ファッション・ウイークは9月13日に開幕。初日から20以上のブランドがランウエイショーやプレゼンテーションを発表した。厳選して4ブランドをレポート。

キコ コスタディノフ(KIKO KOSTADINOV)

DESIGNER/ディアナ・ファニング&ローラ・ファニング

 ディアナ・ファニングとローラ・ファニングの双子の姉妹が手掛ける3シーズン目のウィメンズ・コレクション。切り替えパネルのパターンテクニックを得意とする2人は、古代ギリシャの衣服の有機的なドレープを研究し、現在女性に向けた力強い日常着へと提案する。今季は、“渦巻き”のオンパレード。英国人アーティストのロージー・グレイス・ワード(Rosie Grace Ward)による鉄彫刻から着想を得たトライバル柄をはじめとする渦巻きは、メタルネックレスやトップスの装飾として用いて、キャッチーなアンモナイト形のバッグもお目見え。その“渦巻き”への執着は、「アシックス(ASICS)」とのコラボレーションウエアとシューズにも現れた。これまでも「キコ コスタディノフ」が扱ってきた巨大な「アシックス」のブランドマーク”スパイラル”を大胆にのせたスニーカーや、ジャージーのポロシャツ、アウターが登場。「カンペール(CAMPER)」とのコラボでは、グラゲのような柔らかいシェイプをかたどったトングが特徴的なヒールサンダルも発表した。依然、独創的なシルエットとボールドな色使いからコンセプチュアルなコレクションではあるが、過去2シーズンよりも軽いカットソーや、スポーティーなパンツなどが増えリアルに一歩近づいた印象だ。

ファッション イースト(FASHION EAST)

DESIGNER/アンクタ・サルカ、ユハン・ワン、ガレス・ライトン

 若手ブランドの合同ショープログラム「ファッション イースト」は、「ナイキ(NIKE)」のサポートの下、「アンクタ サルカ(ANCUTA SARCA)」「ガレス ライトン(GARETH WRIGHTON)」「ユハン ワン(YUHAN WANG)」の3ブランドが新作を披露した。会場は「ナイキラボ(NIKELAB)」店舗の跡地。アップサイクルのシューズブランドの「アンクタ サルカ」は、「ナイキ」のユーズドスニーカーをポインテッドトーのローヒールミュールに作り変えた。ランニングシューズの“エア マックス(AIR MAX)”シリーズから“ナイキフリー 5.0”、“トライアックス(TRIAX)”などのビンテージの風合いを生かしたデザインで、それぞれの異なる味が楽しめるアイテムだ。

 中国出身でセント・マーチン美術大学を卒業したユハンによる「ユハン ワン」は、「シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)」や「モリー ゴダード(MOLLY GODDARD)」に次ぐロンドンの“ガーリー枠”で新たな注目ブランドだ。サテンやシフォンで優美なドレープを作り出すギャザーテクニックが持ち味。今季もドレープを生かした花柄のプリントドレスやレース生地のジャケットやスカートなどなどを披露。

 「ガレス ライトン」は日本文化から着想を得た。“チェリー”をキーワードに、潰れたさくらんぼをプリントしたトップスやチェリーブロッサム(桜)の枝を大胆に使ったTシャツドレスなどが登場。ブランドが得意にするニットウエアでは、セーラー服をニットに変えてみせた。

The post ロンドンコレ初日のハイライト 「キコ コスタディノフ」「ファッション イースト」など appeared first on WWD JAPAN.com.

「レコ」の内田聡一郎が語る“美容師ライフワーク論”

 ヘアサロン「レコ(LECO)」の内田聡一郎代表がカルチャー系ウェブサイト「BUNCA(ブンカ)」で書いたコラム「美容師はブラック労働か」が、賛否両論を呼んで話題となっている。「美容師の仕事は“超絶ブラック”」「嫌々美容師するならすぐ辞めた方がいい」と語る内田代表に、美容師という職業についての思いを聞いた。

WWD:コラム「美容師はブラック労働か」を書こうと思ったきっかけは?

内田聡一郎(以下、内田):ウェブサイトBUNCAの人から何かコラムを書いてほしいという依頼があって、タイミング的には新卒採用の時期で、美容師として何を大事にするべきか、一度自分の頭を整理する意味でもこのテーマで書いてみようと思ったのがきっかけです。

WWD:あらためて聞くが、美容師はブラックな職業か?

内田:コラムにも書きましたが、“超絶ブラック”だと思います。特にアシスタント時代はいそがしいわりに給料が安い。朝から夜まで営業して、その前後の時間でウイッグやモデルを使って練習します。サロンによっては休日にセミナー、ヘアショー、撮影などもあります。ヘアサロン業界でも働き方改革が言われるようになって、そうした長時間労働も見直されてきていますが、まだまだ他の業界から見たらブラックな職業だと思います。だから離職率も高いわけで。これから美容師になりたいと思っている人には、大変な職業だよっていうのは伝えたいし、覚悟が必要だと思います。

例えば、「レコ」で働くアシスタントはサロンワーク以外にも撮影やセミナーなどやることがたくさんあって大変ですが、他のサロンでは経験できないことも多く経験できています。「レコ」で働くことで注目される部分もありますし。そこに価値を見出せるかどうかだと思います。自分でお店を経営するようになって、スタッフのモチベーション、熱量がすごく大事だなと実感しています。まだ1店舖なのでそこで効率や働き方を整えるというよりは、スタッフ全員がいいヘアスタイルを作ること、いい美容師になることに熱量を注ぐ方が重要だなと思っています。正直、外から見れば“ブラック”と思われるでしょうね。

WWD:コラムの中で“ライフワーク”と“ライスワーク”という言葉が興味深かった。美容師の仕事は“ライフワーク”であるべきだと考える理由は?

内田:いわゆる食べていくためにする仕事が“ライスワーク”だとすると、美容師は稼ぐためにはかなり努力が必要で、本当に美容師の仕事が好きじゃないと続けていけない。だから“ライフワーク”であるべきなんです。個人的には美容師も美容室も多すぎると思うし、もっと少なくてもいいと思っていて、極論を言うと楽しくなくて文句を言いながら嫌々美容師やっている人は今すぐにでも辞めた方がいい。そこで一度離れてみて、やっぱり美容師やりたくなったら戻ってくるのもありだと思います。実際、僕も一度美容師を辞めて復帰した人間なので、辞めることが必ずしもマイナスとは限らない。

WWD:美容師という職業は技術職でありながら接客業でもある。ある意味で求められるスキルが多い。

内田:そうですね。しかも技術がうまい=売り上げが伸びるというわけではないですし、10~20年やっても稼げない人もいます。だから厳しい業界といえば厳しいですよね。ある種、実力主義の世界ともいえる。ただ、美容師は仕事を通して自分のやりたいことを実現できるのも魅力の一つだと思います。自分の好きなヘアデザインを発信して認めてもらうといったクリエイターな一面もある。それは業界誌やSNSで作品を発表するだけではなく、サロンワークでも同じ。自分が作ったヘアがお客さまに喜んでもらえるとうれしいし、美容師をやっていると毎日それを実感できるんです。

WWD:でも売り上げも伸ばさないといけない。

内田:もちろん。ある意味、美容師はがんばればすごく稼げる可能性がある職業。もちろんそのためにはやるべくこともたくさんあって、自分自身の価値を高めていかないといけない。本当に好きじゃないとやっていけないですよね。でも売れている美容師ってやっぱりみんな努力していますよ。僕はクリエイティブ寄りの美容師ですが、集客もすごく考えています。クリエイティブでも集客できる――そこを目指しています。でも、集客って戦略っぽく語られることが多いですが、目の前のお客さまに満足してもらってファンを増やしていくことが一番大切だと思いますね。

The post 「レコ」の内田聡一郎が語る“美容師ライフワーク論” appeared first on WWD JAPAN.com.

「ディオール」メゾンコード研究 第9回 ムッシュ・ディオールと英国チェックの深いつながり

 歴史あるブランドはアイコンと呼ばれるアイテムや意匠を持ち、引き継ぐ者はそれを時代に合わせて再解釈・デザインする。アイコン誕生の背景をひもとけば、才能ある作り手たちの頭の中をのぞき、歴史を知ることができる。この連載では1946年創業の「ディオール(DIOR)」が持つ数々のアイコンを一つずつひもといてゆく。奥が深いファッションの旅へようこそ!

 フランスを代表するメゾンの「ディオール」と、スコットランド・英国の伝統を象徴するタータンチェック柄の関係性がなぜ深いのか?その答えは、創業者、クリスチャン・ディオール(Christian Dior)の幼少期の思い出にあるという。ムッシュ・ディオールが幼少期を過ごしたフランス・グランヴィルの邸宅は海の上に張り出すように建ち、目の前にはイギリス海峡が広がっていた。少年は海の向こうの英国へと思いをはせ、タータンへの興味もこのころから抱いていたそうだ。誕生日パーティーでバグパイプ奏者の仮装を考えた時には、スカートを作るために自分でタータンのモチーフを描いたというほほえましいエピソードもある。後にクチュリエとなったムッシュは、「ファッション小辞典」を出版するが、その中にはもちろん「タータン」の項目があり説明には「おそらく、奇抜な生地で唯一、ファッションに耐えうるもの。毎シーズン再来し、常に若々しく陽気なモデルに登場」とある。

 タータンに限らず異国の文化への関心と探求心は、「ディオール」が多面的な魅力を持つひとつの理由である。このメゾンが広く世界で受け入れられる理由も異国・多民族への深い理解にあるのではないだろうか。ムッシュ以降、メゾンを引き継いだ代々のデザイナーたちもその精神を引き継ぎ、タータンをデザインに取り入れてきた。たとえばイヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)はウール製のグリーンとベージュのタータンコートをデザインし、マルク・ボアン(Marc Bohan)はウィンザー公爵夫人から特注を受けた。ジャンフランコ・フェレ(Gianfranco Ferre)はほぼ全てのフォルムとシーズンでタータンを用いている。英国人ジョン・ガリアーノ(John Galliano)はもちろんのこと、ベルギー出身のラフ・シモンズ(Raf Simons)もパステルカラーでタータンを取り入れている。現アーティスティック・ディレクターのマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)は、2019 -20年秋冬コレクションで英国を大きく取り上げた。マーガレット王女に着想を得たドレスからストリートのテディ・ガールをほうふつとさせるカジュアルなスタイルまでのハイ&ローの英国文化が「ディオール」の上で交差する。
 

 そして今秋、「ディオール」のチェックが伊勢丹新宿本店をジャックする。同ブランドの伊勢丹新宿本店出店20周年を記念し9月4〜17日まで、同店1〜6階でポップアップストアをオープンしている。ウィメンズ、メンズ、ジュエリーに加えて、コーデリア・ドゥ・カステラーヌ(Cordelia de Castellane)による“ディオール メゾン”も伊勢丹に初登場。パーソナリゼーション刺しゅうが可能な“ブック トート”の限定バージョンも扱っている。(開催期間は売り場によって異なる)

The post 「ディオール」メゾンコード研究 第9回 ムッシュ・ディオールと英国チェックの深いつながり appeared first on WWD JAPAN.com.

「WWD JAPAN.com」読者が注目した8月のスニーカーベスト5

 「WWD JAPAN.com」読者のアクセス数(PV)が多かった8月掲載のスニーカー記事をランキング形式でお届け。8月に「WWD JAPAN.com」で紹介したスニーカー記事は10本。その中で上位5位にランクインしたスニーカー記事はこれだ!

The post 「WWD JAPAN.com」読者が注目した8月のスニーカーベスト5 appeared first on WWD JAPAN.com.

佐々木希が語る 「アンティミテ」は“自然体の私”が望むもの

 アンセミックが運営する佐々木希プロデュースのワンマイルウエアブランド「アンティミテ(INTIMITE)」は、初となるポップアップストアを伊勢丹新宿本店で17日までオープンしている。25日~10月1日には名古屋三越栄店で開く。これまでECのみで展開してきたが、初めてリアルで服を見せる場を設けた。ポップアップイベントを前に取材に応じた佐々木本人に、ブランド立ち上げのきっかけから服へのこだわり、今後の展望までを聞いた。

 多くの洋服に袖を通してきたであろう彼女に「服に一番求めていることは何?」そう尋ねると、少しはにかんで答えた。「着心地も、機能も、見た目も、ですね。私、すごく欲張りなんです(笑)。20代のころに選んでいた服は、とにかくデザイン重視で、カッコよくて、可愛くなきゃ着たくなかった」。だが自身の女性としてのライフステージの変化につれ、「だんだん、自分の生活のリアルな部分と向き合う機会が増えました。いくら見た目がよくたって、チクチク、ごわごわしてたら……私自身、肌が弱いのに、こんなの着なくていいじゃんって思うようにもなりました」。

 「アンティミテ」はそんな自然体の彼女が届ける日常着だ。「そのまま外に行けるような部屋着」をコンセプトに2017年5月スタート。目指したのはアットホームな心地の良さとしっかりとしたたたずまいの両立。「子供がいる女性なら朝はなおさらバタバタするし。毎日アイロンかけなきゃしわくちゃで着られないような服よりも、洗ってハンガーに干して、乾いたらすぐに羽織って、近くまで出掛けられるものがあったらいいなと思っていました」。

 今回のポップアップストアで並ぶ商品は、洗濯干しでシワが伸びる素材で、胸元のレースがアクセントのブラウス(1万6000円)やウールのように見えて洗濯できるテーパードパンツ(1万3000)など。ニットのように上品な見た目の綿・ポリエステルのプルオーバー(9200円)はパジャマとして使えるようセットアップで提案する。どれも佐々木自身が試着を重ね、洗濯をしてもしゃんとしているかどうかまで確かめた。「自分で着て納得できてから売る。それがお客さまに寄り添うということだと思う」。ポップアップのインスタレーションも、佐々木自身が「アンティミテ」を着る女性のペルソナを思い浮かべ、淡いブルーをバックにドライフラワーを並べた。

 すべて日本の生地と国内製造で、長く着られる品質にもこだわったのも「心地いい服は、何回も着たくなるもの」だから。「私自身も『アンティミテ』を毎日のように着ていて、気付いたらもう3年目。生活に溶け込むように、長く愛用していただきたいからこそ、こだわるところにはこだわりたい」。価格も1-2万円台がメインで、佐々木自身が本当に必要だと思う仕様を取捨選択して、買いやすく抑えている。

 立ち上げから2年半がたち、コートやニット、ワンピースなど部屋着のカテゴリーを超えてラインアップを増やしている。「夢中になるほどやりたいことが広がっていくのも、私らしさなのかな(笑)。お客さまを、ワンマイルのその先へ連れ出したとしても、これまでと同じような安心感、包み込まれるような心地よさを感じてもらえる『アンティミテ』でありたい」。ポップアップでは、19-20年秋冬の新作として肌触りと心地よい膨らみにこだわったキルティングジャケット(2万5000円)、体型の変化を気遣い、前後差でシルエットをきれいに見せるボアコート(3万9000円)、英国チェック柄で端正な見た目ながらウエストゴムのスカート(1万7000円)などもそろえた。

 「でも、ブランドをこれからどんどん大きくしようみたいな野望を抱いているわけじゃない」と佐々木は言う。「たとえば『アンティミテ』では腹巻き付きのアイテムがすごく人気。お腹の中にお子さまがいる女性はもちろん、普段から冷えが気を気にされている方は多いようで。そういう声をいただくことが一番うれしい」と語る。「女性がこんなのがあったらいいのにと思う服って、意外とまだまだたくさんある。だからこそ、変に格好つけずに、自分が自然とほしいと思える服を素直に形にしていけたらと思う」。

The post 佐々木希が語る 「アンティミテ」は“自然体の私”が望むもの appeared first on WWD JAPAN.com.

NYコレクション終盤戦 5日目のハイライトは「コーチ」「プロエンザ」など

 2020年春夏ニューヨーク・コレクション5日目のハイライトをお送りする。

コーチ 1941(COACH 1941)

DESIGNER/スチュアート・ヴィヴァース(Stewart Vevers)

 数シーズン続いていたウエスタンなコレクションから一変、スチュアート・ヴィヴァース=クリエイティブ・ディレクターは1980年代のニューヨークのスタイルを引用した。スモーキーなカラーパレットのバイカージャケットやシアリングベストの代わりに、今季はトレンチコートやレザージャケット、ペンシルスカートなどの定番アイテムが登場。ファーストルックのトマトレッドのレザートレンチコートに続き、グリーンやブルー、イエローなどカラフルなレザーのアイテムを連発し、カラフルなアーバンウエアを手掛けた。70〜80年代、「インタビュー」マガジンの表紙を手掛けていた米イラストレーターのリチャード・バーンスタインのイラストをプリントしたタンクトップも登場した。

プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)

DESIGNER/ジャック・マッコロー(Jack McCollough )&ラザロ・ヘルナンデス(Lazaro Hernandez)

 ファーストルックは、80年代のバブリーなムード漂うパワフルフォーマル。ジャケットはラペルも大きなボックスシルエット、テーパードパンツでバランスを取る。ラペルをあしらいジャケットさながらのニットドレス、ジャケットの下にはサテンのドレープトップスなど、今シーズンはキャリアウーマンのムードが色濃い。2人の母親が、子育てしながらパワフルに働いていた時代に想いを馳せた。

 いつもなら生地をたくし込んだり結んだり、フリンジを垂らしたり、ハーネスのようなパーツウエアを組み合わせたりでモードなムードを高めるが、今シーズンは控えめ。リアルにシフトし、こちらの方が共感できる。

オスカー デ ラ レンタ(OSCAR DE LA RENTA)

DESIGNER/ ローラ・キム(Laura Kim)&フェルナンド・ガルシア(Fernando Garcia)

 フォーマルシフトが鮮明なニューヨーク・コレクションにおいて、リゾートで活躍しそうなドレスを提案。ピーチカラーのシフォンは斜めにドレープさせることでミニドレスに、マンダリンオレンジのスカーフプリントはカフタンドレスになど、フルーツカラーが盛りだくさん。シフォンの上で七色のリボンを交差させたドレスはベアトップ。全般深いスリットを刻んで若々しい。終盤はクラフツマンシップを駆使したラフィアのイヴニングドレス。モノトーンでフローラル柄描いた。

クラウディア リー(CLAUDIA LI)

DESIGNER/クラウディア・リー(Claudia Li)

 5年目に突入した「クラウディア リー」。今季は過去4年間を振り返り、ブランドの原点に戻った。ブランド創設から得意としてきたテーラードジャケットやワイドパンツ、プリーツスカートの新たなバリエーションで登場させた。プリーツスカートはプリントを施したシースルーの素材や異なるテクスチャーをミックスし、フェミニンでありながらモダンに仕上げた。一方でスポーティーなパーカーやレインコートはUVに反応して発光するテクニカルな素材を用い、テクノロジーを融合。両親の写真をモチーフにしたプリントや大胆なストライプ、ポルカドットなどグラフィカルなデザインを重ねたり、シアーな素材と合わせることによって全体的にバランスのとれたスタイルに仕上げた。

The post NYコレクション終盤戦 5日目のハイライトは「コーチ」「プロエンザ」など appeared first on WWD JAPAN.com.

週末お出掛けスポット ル・コルビュジェ建築の窓を被写体にした写真展などアート5選

 週末にオシャレして出掛けたいアートスポットをお届け。今週は週末お出掛けスポット ル・コルビュジェ(Le Corbusier)建築の窓を被写体にした写真展や野菜をデザインの視点から紹介する「野菜とデザイン」展など5つをラインアップ。また、「WWD JAPAN.com」の過去記事の中から今週末(9月14〜16日)に開催されるイベント情報やポップアップもまとめて紹介する。

【アート5選】

【開催中イベント】

シャネル銀座で新進写真家ヴァサンタ・ヨガナンタンが日本初個展 インド大叙事詩を現代に再解釈

「エルメス」の“ラジオ局”が原宿に出現 聴いて、見て、触れるメンズの世界観を体験してみた

「M・A・C」のビジュアルに超特急のカイが登場 本人来場のイベントも開催

「ブルガリ」と「ドン ペリニヨン」のマリアージュ ブルガリ銀座タワーの最上階に

「リモワ」がストリート誌と企画展 過去のアーカイブからアーティストの作品まで

「MCM」がサステナをテーマに展示会開催 未使用バッグをドレスにアップサイクル

松屋銀座が「美しくなるビアガーデン」開催 今年もクロスフィットトレーナーAYAとコラボ

【開催中ポップアップ】

「ミズノ」がDJ スネーク率いるパードン マイ フレンチとコラボ ヌビアン原宿店で限定発売

「ピエール・カルダン」日本上陸60周年 高島屋が1年間を通してフェア開催

「シャネル」が新リップ発売記念のポップアップ開催 図書館をイメージ

佐々木希プロデュース「アンティミテ」が初のポップアップストアをオープン

ワールドがスタートアップブランドを集めたポップアップ型百貨店をオープン 全13ブランドを集結

ECモール「ストデパ」が初の体験型リアルストアをオープン テーマはサステナ

「NARS」がブランド25周年で60色の「リップスティック」発売

「ナンバーナイン」と「アンダーカバー」の2000年代前半のコレクション300点を展示販売

「トフ&ロードストーン」がシップス、UA、ビームスと別注製作、フェア開催

仏老舗ニット「メゾン モンタギュ」が表参道ヒルズで初のポップアップショップをオープン

「カラー」が盛りだくさんの限定商品と共に3都市を巡るポップアップツアー

創業130周年の「ランバン」がポップアップブティックをオープン

ビートたけしプロデュースの「キタノブルー」が初ポップアップストアをオープン

The post 週末お出掛けスポット ル・コルビュジェ建築の窓を被写体にした写真展などアート5選 appeared first on WWD JAPAN.com.

下着ブランド「スロギー」、“気持ちよスロギー”な期間限定店レポート

 トリンプ・インターナショナル・ジャパンは9月13日、「スロギー(SLOGGI)」のポップアップストアを表参道ヒルズにオープンした。表参道エリアへの出店は初めて。 カラフルでポップな店内には、ブランドを知ってもらうためのさまざまな仕掛けを用意し、認知度アップを図る。オープン前夜のレセプションパーティには、丸山桂里奈ブランドアンバサダーも来店し、接客を行ったり、ファンとの記念撮影に応じたり、賑わいを見せた。店舗は9月23日まで。

 店内には4台のタブレットを設置。昨今、さまざまなノンワイヤーブラが人気を集めているが、「ラクなだけに、自分に合うものが見つからない……」という声も聞かれるため、このタブレットを使い、いくつかの質問に答えると、デジタル診断されてぴったりの「スロギー」が提案される。そのデジタル診断を体験した来店客は「スロギー」商品が当たるガチャガチャにもトライできる。また、累計販売枚数680万枚を突破した人気シリーズ「スロギー ゼロ フィール(SLOGGI ZERO FEEL)」の生地の伸びのやわらかさを全身で体感できるハンモックも設置されている。

 今回のポップアップストアでは、ロンドンを拠点に活躍するイラストレーター、クラーク志織さんとのコラボレーションも実現。「スロギー」のために特別に描き下ろされたポップでユニークな2タイプのプリントのハーフトップ&ショーツが同店限定で販売される(同商品以外は展示・試着のみ)。3600円(税別)以上購入すると、先着でクラーク志織さんによるイラストをプリントしたオリジナルトートバッグのプレゼントも用意されている。

店もオープンし、顧客に直接アプローチ

 中井直スロギー事業本部長は「錚々たるブランドが並ぶ表参道ヒルズの1階にポップアップストアをオープンするのはわれわれにとって挑戦。売り場では伝えきれない世界観が出来上がったので、お客さまにはこのポップでカラフルな世界観を存分に楽しんでもらい、スロギーの認知度を高めていきたい」と語った。河野智美スロギー事業本部プロダクト&マーチャンダイジング部マネージャーも「スロギーらしい空間が出来上がった。この表参道という立地で今までリーチ出来なかった方々にもスロギーの良さを知ってもらいたい」と期待を寄せる。

 今年ブランド誕生40年を迎える欧州生まれの「スロギー」は、6月27日に全ラインが購入できる公式オンラインストアをオープンさせており、9月13日には初のブランド直営店がららぽーと富士見にオープンした。「これまで卸しがほとんどだったが、直接お客さまにアプローチできる接点が増えた」(中井事業本部長)事で、発信力もさらに強まりそうだ。競合商品がひしめく中、一歩先ゆく攻めの戦略に注目が集まる。

■スロギー表参道ポップアップストア
期間:9月13日〜23日
時間:11:00〜20:00
住所:東京都渋谷区神宮前4-12-10 表参道ヒルズ西館1F

川原好恵(かわはらよしえ):ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルスの分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身

The post 下着ブランド「スロギー」、“気持ちよスロギー”な期間限定店レポート appeared first on WWD JAPAN.com.

最強の繊維商社、豊島の社長が減益決算で語ったこと

 繊維商社の豊島は9月13日、19年6月期決算を発表した。売上高は前期比1.2%増の2122億円、営業利益は同40.4%減の31億円、経常利益は同31.0%減の43億円、純利益は同19.3%減の33億円だった。売上総利益率は9.6%で、前期に比べ0.8ポイント悪化した。創業が天保12年(1841年)に遡る老舗企業で、年間1億枚のアパレル製品を日本の大手アパレルやSPAに供給する同社は、アパレル業界の大動脈のような存在だ。創業家出身の豊島半七社長の陣頭指揮の下、この数年は独資のCVCファンドを作り、国内外の新興ファッションテックに積極的に出資することで、従来型のアパレルのビジネスモデルの変革を推し進めてきた。日本のアパレル産業はどう変わるのか。決算会見での豊島社長の一問一答から読み解く。

ー19年6月期の結果をどう見る?

豊島半七社長(以下、豊島):4期連続の増収ながら、2期連続の減益。18年6月期までは7期連続で経常利益60億円以上を維持してきたので、かなり面目ない結果だ。日本のアパレル市場は正直言って厳しい。今期以降はそうした前提の上で立て直したい。

ー減益の要因は?

豊島:繊維製品部門が大幅な減益になり、苦戦を強いられた。天候不順に伴う在庫増加、機会ロスなどアパレル市況の厳しさに加え、全体的に供給ロットが小さくなっており、相対的にコストが上昇している。市場は軟調なのに、ロットの縮小に伴うコスト高というダブルパンチ。仕組み自体を変えていかないと。

ー産業構造の変化にどう対応する?

豊島:その前に、そもそもわれわれはサプライヤーとして一つ一つのブランドにピッタリの提案ができているかを突き詰めないと。生産地を変えてコストを落としましたよ、はやりのサステイナブル製品を持ってきましたよ、と言ってもお取引先が本当に求めていなければ結局は価格競争に陥ってしまう。アパレル市況が厳しいからこそ、ブランド側も価値の再構築やリブランディングを図っているわけで、そこにきちんと当てにされるような製品や存在になっているか。トレンドやコストばかりを打ち出すような従来型のやり方ではうまくいかない。

ー製品別の売上実績ではアパレル製品は前期比3%増の1179億円と、前年を上回っているが。

豊島:アパレルの供給量ベースではほぼ前年並みの約1億枚。販売額が増えているのは大口受注が減る一方で、小口受注が増えているため。その分コストが上昇し、利益を圧迫している。

ー10年以上前からオーガニックコットン「オーガビッツ」などサステイナブル素材の開発に取り組む一方、17年からは独資のCVCを作り、ファッションテックへの投資を積極的に行なってきた。手応えは?

豊島:CVCの出資は合計で海外企業も含め14社になった。出資先の取り決めで公開していないものもあるが、19年6月期にも6社に出資した。業績の数字やイグジットが目的ではなく、既存事業のサポートや連携が目的であり、試行錯誤しながらも(共同開発する)製品化も見えてきた。来春までにはいくつかの新製品をリリースできるだろう。現在も購買行動予測などのスタートアップ企業への出資を検討しているが、すべて海外企業だ。

ーサステイナブルについては?

豊島:世の中サステイナブルで溢れかえるようになってきた。当社も「オーガビッツ」や「フードテキスタイル」などの素材開発を行っているが、数ばかり多ければいいわけではない。言葉ではなんとでも言えるが、それがSDGsと連携しているのか、社会貢献につながるのか、そして商売になるのか、全社員がそうしたことをきちんと理解したうえでお客さまに提案しないと。改めてこの1〜2カ月で社員への周知を図る予定だ。

―廃棄野菜を使って染める「フードテキスタイル」がテレビなどに取り上げられて話題だが。

豊島:こうした素材ではつきものだが、やはり単価が高くてなかなか大きな商売単位につながりにくい。日本ではメディアにも多く取り上げられているし、海外ではさらに高い評価を頂いている。個人的にも非常にいいものだと思っているが、現在では製品化はノベルティなどの小さな商売にとどまってしまっている。もっとやれると思っているので、やり方を変える必要がある。

―消費増税の駆け込み需要は?

豊島:われわれへの影響はほとんどない。8%に上がった2014年には、そういった駆け込み需要のための在庫の積み込みはあった。今は時代が変わって、余分なものを作らないようになっている。

The post 最強の繊維商社、豊島の社長が減益決算で語ったこと appeared first on WWD JAPAN.com.

「グッチ」2019-20年秋冬広告キャンペーンが描く、ファッションへの讃歌

 “プレタポルテ”と題された「グッチ(GUCCI)」の2019-20年秋冬コレクションの広告キャンペーンは、「“服を作る”ということを今一度ファッションの主役にしたい」というアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)の思いから生まれた。舞台となったのは、ファッションが常にトップニュースとして扱われ、センセーショナルなキャッチコピーや斬新なカラーが雑誌の表紙を飾り、スカート丈のトレンドが世間を騒がせていた時代。意図的に過去の世界にタイムスリップし、輝かしいファッションの神話に敬意を表したビジュアルと共に、「グッチ」の秋冬コレクションの魅力を紹介する。

ファッションの
輝かしい神話を今一度

 グレン・ルッチフォード(Glen Luchford)の撮影によって生き生きと照らし出されたのは、人々がファッションに熱狂していた1950~80年代を彷彿とさせる架空のファッションショー。妥協することなく繰り返されるアトリエでのフィッティングと修正、慌ただしいバックステージ、期待に満ちたフロントローのゲストたちと華やかなランウエイ、そしてファッション誌のシューティング……ファッション界でシーズンごとに繰り返されるプロセスが、分かりやすいストーリーとなってキャンペーンビジュアルに落とし込まれた。

架空のファッションショー
を舞台に

 キャンペーンでは、モデルたちがストリートから会場に入り、バックステージ、ランウエイ、さらに最新コレクションをまとってスタジオで気取ったポーズをとるシューティングシーンまでをカメラが追う。そして、ストーリーはモデルが自分の登場するタブロイド誌を読んでいるシーンで完結する。服そのものが絶対的な主人公となったこのキャンペーンでは、「グッチ」の類いまれなるクラフツマンシップの記憶をたたえ、無形のものがファッションへと進化するプロセスへのオマージュが描かれている。

ウィメンズの注目は
“グッチ ズゥミ”の新作

 広告キャンペーンの印象的なシーンから、今秋冬のイチ押しアイテムにフォーカス。まず、ロサンゼルスを拠点に活動する女優兼アーティストのズゥミ・ロソウ(Zumi Rosow)にちなんで名付けられたアイコンバッグの“グッチ ズゥミ”は、「グッチ」を象徴するインターロッキングGのモチーフとホースビットをあしらったスタイリッシュで実用的なデザインが魅力。取り外し可能なシルクスカーフをハンドルに巻いたレザーショルダーバッグは、今季新登場のライン。1960〜70年代のアーカイブを忠実に再現した“シルヴィ 1969”は、光沢あるパテントレザーにメタルチェーンのアクセントがレディなムード。スニーカーの“ウルトラペース”や、大きなマスク(仮面)のモチーフが主張する“グッチ マニフェスト”のウエアも見逃せない。

メンズはスニーカー
“ウルトラペース”がヒットの予感

 メンズでは、ウィメンズでも登場したスニーカー“ウルトラペース”や、ECを中心に販売する“グッチ マニフェスト”のシリーズがイチ押し。“ウルトラペース”は、さまざまな素材やカラー、ロゴを大胆にハイブリッドしたキャッチーなデザイン。ライニングにはパイル地を使用しており、モードと機能性が両立したデザインが魅力だ。“グッチ マニフェスト”で取り上げているマスクのモチーフは、19-20年秋冬コレクションのインスピレーション源にもなったもの。キーメッセージ「THE MASK AS A CUT BETWEEN VISIBLE AND INVISIBLE(仮面―可視と不可視の間の存在)」をプリントしたスウェットシャツやTシャツをそろえる。さらに、ヴィンテージライクなルックスで、バックパック、ダッフルバッグ、ロングトート風と3通りに使える新作バッグも注目だ。

TEXT:MAKIKO AWATA
PRODUCED BY WWD JAPAN.com FOR GUCCI

問い合わせ先
グッチ ジャパン クライアントサービス
0120-99-2177

The post 「グッチ」2019-20年秋冬広告キャンペーンが描く、ファッションへの讃歌 appeared first on WWD JAPAN.com.

ロレアルやエスティ ローダー カンパニーズなど、海外美容企業の決算から見るスキンケアが好調な理由

 海外美容企業の2019年度通期および半期決算が発表された。引き続き全世界的にスキンケアが好調で、各社軒並み売り上げ、利益を拡大した。

 通期決算(2019年6月期)を発表したエスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)は、売上高が前期比8.3%増の148億6300万ドル(約1兆5754億円)、営業利益が同12.5%増の23億1300万ドル(約2451億円)、純利益が同60.6%増の17億9400万ドル(約1901億円)と増収大幅増益だった。売り上げをけん引したのは、スキンケアで売上高は同17%増の65億5100万ドル(約6944億円)と2ケタの成長となった。

 その好調の要因は、スキンケアトレンドが後押しするがそれ以外にも理由はある。「10年前から現在のスキンケアブームを予測し、イノベーションに投資してきた」とファブリツィオ・フリーダ(Fabrizio Freda)社長兼最高経営責任者。新製品の開発に加え、ロングセラー製品のより良い改良などを推し進め、さらには新旧問わず戦略製品の積極的なプロモーションを実施。それによりスキンケアが好調に推移、全体の売り上げを押し上げた。「09年から全社売り上げは毎年平均で8%伸び、その結果70億ドル(約7420億円)から150億ドル(約1兆5900億円)に倍増した」という。

 製品では、ロングセラーの「エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)」の「アドバンス ナイト リペアSR コンプレックス II」や「ドゥ・ラ・メール(DE LA MER)」の「クレーム ドゥ・ラ・メール」の強化で、より強固な売り上げを確保する一方で、「クリニーク(CLINIQUE)」から発売した初のカスタマイズスキンケアは、新たな層の獲得で全体の売り上げの底上げにつながった。

半期決算発表企業もスキンケア好調

 スキンケアの好調は、グローバル売り上げナンバーワンのロレアルの19年の上半期(1〜6月)決算にも表れている。売上高が前年同期比10.6%増の148億1150万ユーロ(約1兆7329億円)、営業利益が同12.1%増の28億8840万ユーロ(約3379億円)、純利益が同2.4%増の23億3270万ユーロ(約2729億円)の増収となった。

 同社の特徴は、「ランコム(LANCOME)」や「キールズ(KIEHL'S)」などのラグジュアリーブランドだけでなく、「ロレアル パリ(L’OREAL PARIS)」や「ガルニエ(GARNIER)」などのマス向けブランドもスキンケアが好調だった点だ。これは、これまでメイク製品に注目していた若年層のスキンケアへの関心の高まりを受けたものと予想できる。その流れでいえば、スキンケアブランドを中心としたアクティブコスメティックス事業部の「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE-POSAY)」(同2ケタ成長)や、「ヴィシー(VICHY)」「スキンシューティカルズ(SKINCEUTICALS)」「セラヴィ(CERAVE)」が好調に推移したのは当然だろう。

 そのほかユニリーバ(UNILEVER)の19年上半期決算も、スキンケアブランド「ダーマロジカ(DERMALOGICA)」「レン(REN)」などを擁するプレステージブランドが2ケタ成長と伸長する。

“補正”アプリ登場でスキンケアに投資

 戦略の背景には、グローバルなスキンケアトレンドが大きく影響していることは事実だ。これまで欧米では、メイクアップにお金をかける人が多く、スキンケアに対する関心は低いと言っても過言ではなかった。それが近年のグローバルなウエルネスブームを受け、体だけに留まらず、肌そのものへの健康をも意識。加えて、デジタルネイティブの若年層は、アプリなどで簡単に“補正”ができ、フィルターを掛けたような“完璧な肌”への憧れが強まった。そこで注力したのがスキンケアで、投資する人が増えてきた。加えて、エスティ ローダー カンパニーズのように、それを見据えた戦略が、各社でスキンケアの拡大、売り上げの拡大につながっている。

 一方で、メイクアップはプレステージブランドを取り扱う大手企業は堅調に推移したものの、レブロン(19年1〜6月期決算は売上高が同3.8%減の11億2340万ドル、約1190億円)などのマス向けメイクアップ市場は苦戦する。メイクアップは、ダウントレンドと見ていたが、「グロシエ(GLOSSIER)」「カイリー・コスメティックス(KYLIE COSMETICS)」「カラーポップ(COLOURPOP)」をはじめとする、デジタルを活用したブランドが人気を得ており、ダウントレンドではなく、購買の仕方が大きく変わったとことが、既存大手に影響を及ぼした。これら人気ブランドは、若年層をターゲットにインフルエンサーと積極的にコラボしたり、SNSを通じて消費者とコミュニケーションを取ったり、さらには消費者から発信されるトレンドをいち早くキャッチし製品に落とし込んだり、ターゲット層の心をしっかり掴んでいる。このスピード感に大手企業がついていけず、売り上げを落としているようだ。

 スキンケアブランドの中でも、こういったデジタルネイティブなブランドが出始めている。好調の大手企業のスキンケアビジネスも、うかうかとしてられないのが現状。スキンケアといえども、いかにスピーディーにトレンドを掴み、それに対応し、さらには消費者とのコミュニケーション力を発揮できるかが、次のステージの成功の鍵になってきそうだ。

The post ロレアルやエスティ ローダー カンパニーズなど、海外美容企業の決算から見るスキンケアが好調な理由 appeared first on WWD JAPAN.com.

ロレアルやエスティ ローダー カンパニーズなど、海外美容企業の決算から見るスキンケアが好調な理由

 海外美容企業の2019年度通期および半期決算が発表された。引き続き全世界的にスキンケアが好調で、各社軒並み売り上げ、利益を拡大した。

 通期決算(2019年6月期)を発表したエスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)は、売上高が前期比8.3%増の148億6300万ドル(約1兆5754億円)、営業利益が同12.5%増の23億1300万ドル(約2451億円)、純利益が同60.6%増の17億9400万ドル(約1901億円)と増収大幅増益だった。売り上げをけん引したのは、スキンケアで売上高は同17%増の65億5100万ドル(約6944億円)と2ケタの成長となった。

 その好調の要因は、スキンケアトレンドが後押しするがそれ以外にも理由はある。「10年前から現在のスキンケアブームを予測し、イノベーションに投資してきた」とファブリツィオ・フリーダ(Fabrizio Freda)社長兼最高経営責任者。新製品の開発に加え、ロングセラー製品のより良い改良などを推し進め、さらには新旧問わず戦略製品の積極的なプロモーションを実施。それによりスキンケアが好調に推移、全体の売り上げを押し上げた。「09年から全社売り上げは毎年平均で8%伸び、その結果70億ドル(約7420億円)から150億ドル(約1兆5900億円)に倍増した」という。

 製品では、ロングセラーの「エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)」の「アドバンス ナイト リペアSR コンプレックス II」や「ドゥ・ラ・メール(DE LA MER)」の「クレーム ドゥ・ラ・メール」の強化で、より強固な売り上げを確保する一方で、「クリニーク(CLINIQUE)」から発売した初のカスタマイズスキンケアは、新たな層の獲得で全体の売り上げの底上げにつながった。

半期決算発表企業もスキンケア好調

 スキンケアの好調は、グローバル売り上げナンバーワンのロレアルの19年の上半期(1〜6月)決算にも表れている。売上高が前年同期比10.6%増の148億1150万ユーロ(約1兆7329億円)、営業利益が同12.1%増の28億8840万ユーロ(約3379億円)、純利益が同2.4%増の23億3270万ユーロ(約2729億円)の増収となった。

 同社の特徴は、「ランコム(LANCOME)」や「キールズ(KIEHL'S)」などのラグジュアリーブランドだけでなく、「ロレアル パリ(L’OREAL PARIS)」や「ガルニエ(GARNIER)」などのマス向けブランドもスキンケアが好調だった点だ。これは、これまでメイク製品に注目していた若年層のスキンケアへの関心の高まりを受けたものと予想できる。その流れでいえば、スキンケアブランドを中心としたアクティブコスメティックス事業部の「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE-POSAY)」(同2ケタ成長)や、「ヴィシー(VICHY)」「スキンシューティカルズ(SKINCEUTICALS)」「セラヴィ(CERAVE)」が好調に推移したのは当然だろう。

 そのほかユニリーバ(UNILEVER)の19年上半期決算も、スキンケアブランド「ダーマロジカ(DERMALOGICA)」「レン(REN)」などを擁するプレステージブランドが2ケタ成長と伸長する。

“補正”アプリ登場でスキンケアに投資

 戦略の背景には、グローバルなスキンケアトレンドが大きく影響していることは事実だ。これまで欧米では、メイクアップにお金をかける人が多く、スキンケアに対する関心は低いと言っても過言ではなかった。それが近年のグローバルなウエルネスブームを受け、体だけに留まらず、肌そのものへの健康をも意識。加えて、デジタルネイティブの若年層は、アプリなどで簡単に“補正”ができ、フィルターを掛けたような“完璧な肌”への憧れが強まった。そこで注力したのがスキンケアで、投資する人が増えてきた。加えて、エスティ ローダー カンパニーズのように、それを見据えた戦略が、各社でスキンケアの拡大、売り上げの拡大につながっている。

 一方で、メイクアップはプレステージブランドを取り扱う大手企業は堅調に推移したものの、レブロン(19年1〜6月期決算は売上高が同3.8%減の11億2340万ドル、約1190億円)などのマス向けメイクアップ市場は苦戦する。メイクアップは、ダウントレンドと見ていたが、「グロシエ(GLOSSIER)」「カイリー・コスメティックス(KYLIE COSMETICS)」「カラーポップ(COLOURPOP)」をはじめとする、デジタルを活用したブランドが人気を得ており、ダウントレンドではなく、購買の仕方が大きく変わったとことが、既存大手に影響を及ぼした。これら人気ブランドは、若年層をターゲットにインフルエンサーと積極的にコラボしたり、SNSを通じて消費者とコミュニケーションを取ったり、さらには消費者から発信されるトレンドをいち早くキャッチし製品に落とし込んだり、ターゲット層の心をしっかり掴んでいる。このスピード感に大手企業がついていけず、売り上げを落としているようだ。

 スキンケアブランドの中でも、こういったデジタルネイティブなブランドが出始めている。好調の大手企業のスキンケアビジネスも、うかうかとしてられないのが現状。スキンケアといえども、いかにスピーディーにトレンドを掴み、それに対応し、さらには消費者とのコミュニケーション力を発揮できるかが、次のステージの成功の鍵になってきそうだ。

The post ロレアルやエスティ ローダー カンパニーズなど、海外美容企業の決算から見るスキンケアが好調な理由 appeared first on WWD JAPAN.com.

「テクノロジーをファッションをアップデートする一つの切り札として盛り上げていけたらなと」by川崎和也スペキュラティブ・ファッションデザイナー/シンフラックス主宰 連載「モードって何?」Vol.6

【#モードって何?】きっかけは読者から編集部に届いた質問「つまるところ、モードって何ですか?」だった。この素朴な疑問に答えを出すべく、「WWD ジャパン」9月16日号では特集「モードって何?」を企画し、デザイナーやバイヤー、経営者、学者など約30人にこの質問を投げかけた。答えは予想以上に多岐にわたり、各人のファッションに対する姿勢や思い、さらには現代社会とファッションの関係をも浮き彫りにするものとなっている。本ウエブ連載ではその一部を紹介。今回は川崎和也スペキュラティブ・ファッションデザイナー/シンフラックス主宰に聞く。

“新しい欲望を生み出すメカニズム”

WWD:“モード”とは何でしょうか?

川崎:めちゃめちゃ大きいテーマですが僕なりに答えますと、“新しい欲望を生み出すメカニズム”だと思います。“モード”には現象面での“モード”、あと制度としての“モード”の2種類があると思っています。現象としての“モード”は美意識や流行などを司るもので、制度としての“モード”は人間の体にまとうものを生産する川上から川下までの生産構造、パリを中心にしたシステムとして動いている。

最近はテクノロジーが“モード”に影響を与えていると考えています。テクノロジーには2つの要素“コード”と“ミーム”があり、これが“モード”に大きな影響を与えていると思います。

WWD:“コード”とは何でしょうか?

川崎:“コード”という言葉は、“記号”という意味や、“コンピューターのプログラム”という意味があります。日常的にSNSに接していたり、eコマースを使っていることを考えると、コンピューターの設計やウェブサイトの設計、インターフェイスの設計に洋服の選択が依存せざるを得ない。

例えば「アマゾン(AMAZON)」で買ったときと、「グッチ(GUCCI)」の公式サイトで買ったときでは、同じ人が買ったとしても選択の結果が違ったりする。その時のインターフェイスの権力はすさまじくて、そこに我々は洋服の選択や自分たちの美意識を結構託していると思います。なので、“モード”は“コード”、つまりコンピューターのアルゴリズムにある程度影響されていると言わざるを得ないです。

“モード”と“コード” 
アルゴリズムの可能性

WWD:ネガティブな印象を受ける話でもあります。

川崎:このようなコンピューターが洋服を選択する際に影響しているという話はネガティブに聞こえるかもしれませんが、AIの機械学習や深層学習、あるいはブロックチェーンなどの技術をよくよく見てみるとそういうわけではない。

例えばブロックチェーンは素材の産地・生産者を追跡してその洋服の生産プロセスをオープンにできる、トレーサビリティーを担保できるテクノロジーでもあります。こういった“コード”がより普及していくと“モード”が開かれる可能性がある。そういう意味で、いけないことだけではなくよいこともあるのではないかと思っています。もちろんこれもまだ兆しが見えてきている段階なので、一般層の手元に届くにはまだ時間がかかるかもしれないですが。

WWD:AIに関してはどのような可能性がありますか?

川崎:現在はAIが、デザイナーの強烈な個性が担ってきた役割との共存、あるいはなり代わるかたちでトレンド予測をしたり、提案をしてくれる。個人的にデザイナーの個性をいまでも素晴らしいと思っていますが。

しかし、レコメンドしたものは人間が本当に欲しいものなのか?あるいはコンピューターは、いままで人間が着てきた洋服のアーカイブなどから計算するものだから、その枠から出られないんじゃないか?予想外のものを“コード”が人間にオススメできるのか?などの声もあります。このように“コード”にはできることとできないことがあると思います。いずれにしてもファッションサービスの一部に応用され始めている過渡期なので、その是非を各方面と議論したいです。

“モード”と“ミーム” 
インターネットカルチャーの合流

WWD:“ミーム”とは何でしょうか?

川崎:“ミーム”とはそもそも生物学者のリチャード・ドーキンス(Clinton Richard Dawkins)が提唱した概念です。日本語でいうと模倣子(もほうし)。これは文化にも遺伝子のようなものがあるという考え方で、文化が発展していくときに、それを司るなんらかの要素があるという話です。例えばコラージュ画像がすごい勢いで拡散されたりするインターネットミームなどの現象。あれは結構“モード”に似ているところもあると思います。

北山晴一・立教大学名誉教授は“モード”を社会学者のゲオルク・ジンメル(Georg Simmel)の理論を引いて、人と同じになりたい、あの人と似た姿になりたいという同化と、人とは違う姿になりたいという差異化の矛盾する2つの力が働くことでファッションのサイクルが回っていると整理しました。現在それがインターネットを通してすごい勢いで拡散している。

最初のものがインターネット上でリミックスされていき、同じようで少しずつ違うものが何万何億という膨大な量でパクりパクられ、改変と模倣を繰り返して進化していくということが起きている。そういったインターネット上のコミュニケーションの変容が“ミーム”という現象を通して現れている。その“ミーム”を敏感に察知して“モード”が影響を受けているのではと思います。

WWD:クリエイターとして注目されている方は?

川崎:長見佳祐「ハトラ(HATRA)」デザイナーです。長見さんは「JFLFアワード 2018」も受賞されていますが、もともとは日本のいわゆるオタクカルチャー、インターネットカルチャーに刺激を受けてストリートに出てきたブランドです。彼のアイデンティティーの中にインターネット文化、オタク文化が根強くあり、彼自身が敏感に察知して製作に取り入れています。洋服のデザインはもちろん、ネット上でPRするときの画像の使い方やSNSの使い方、あるいは型紙のパターンカッティングのプロセスにアパレルCADのCLO3Dを取り入れているなど、デジタルに親和性を持ったブランド運営をされているため注目だと思います。

分野越境の対話

WWD:ファッション業界はテクノロジーを不安視しているところもある。

川崎:僕はファッションの王道にいるというより“水野一派”というか(川崎は慶應義塾大学SFC水野大二郎研究室出身)、外側から切り込んでいくポジションです。テクノロジーは不安をあおるものでもありますが、むしろ不安を解消するものとして期待していただいても大丈夫なのかなと思っています。個人的にも頑張ろうと思いますが、テクノロジーをファッションをアップデートする一つの切り札として盛り上げていけたらなと。

WWD:盛り上げるためには何が必要ですか?

川崎:テクノロジーとファッションをドロドロに混ぜることが重要だと思います。とりあえずやってみて一つコレクションを出して終わり!という話はよくあると思うんですけれども、お互いに影響し合うような関係が望ましいです。テクノロジーとファッションの融合自体がサステイナブルにならないとトレンドで終わってしまう。もう少し本質的なレベルでお互い議論し、勉強し合い、一緒にものを作るということをやっていきたいと考えています。

WWD;最近自分をさらけ出すことの重要性をよく感じる。

川崎:テクノロジーが発展することでパリコレが崩壊する、みたいな単純な話ではない。それぞれがオープンにしつつ各自の専門分野で頑張る。それでお互い影響し合えるようになれば、劇的な置き換わりではなく、新陳代謝するようにファッションは変わっていくと思います。

WWD:対話が大事なのかなと思います。

川崎:今回の企画「#モードって何?」ではそれがある程度実現され得るのではと思います。最初はカオスだと思うのですが、優れた調整役として編集者がいればうまくつながっていけるんじゃないかと。これが1回だけじゃなく、定期的にできればいいですね。

「#モードって何?」をもっと見る

秋吉成紀(あきよしなるき):1994年生まれ。2018年1月から「WWDジャパン」でアルバイト中。

The post 「テクノロジーをファッションをアップデートする一つの切り札として盛り上げていけたらなと」by川崎和也スペキュラティブ・ファッションデザイナー/シンフラックス主宰 連載「モードって何?」Vol.6 appeared first on WWD JAPAN.com.

「UZUはメンズも使えるユニバーサルコスメ」 ファッションフリークOL「WWDビューティ」最新号につぶやく

 1992年生まれのファッションフリーク女子が、今週のファッション週刊紙「WWDビューティ」で気になったニュースを要約してお届け。渋谷のファッションベンチャー企業に勤める等身大OL、Azuのリアルな目線ファッションフリークOLがビューティニュースに一言/UZUへのアツい思い語る/健康的に美しいとモテる⁉︎を生かし「このニュースからはコレが見える」という切り口で、様々な記事につぶやきを添えます。

今日のニュース:P.4「『ウズ』から新リップスティックが誕生」

読み解きポイント:「日本発のユニバーサルコスメブランドへ」

ニュースのポイント

 「モテマスカラ」などのヒット商品を連発し人気絶頂だった2018年末、突如ブランドを休止した「フローフシ(FLOWFUSHI)」。今年「ウズ バイ フローフシ(UZU BY FLOWFUSHI)」として新たなスタートを切った同ブランドから待望の新製品が登場。ブランド初のリップスティック「UZU 38℃/99°F Lipstick<TOKYO>」と「フローフシ」名義でも大ヒットとなったリップトリートメントのリニューアル版「UZU 38℃/99°F Lip Treatment」だ。今後はグローバル展開を見据えた商品展開やプロモーションを行って行く予定。

Azuはこう読む!

 「ウズ」としてのスタートは、メイクが楽しくなる14色展開のアイライナーからでした。今年2月の2019-20年秋冬ニューヨーク・ファッション・ウイークで「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」のバックステージブランドとして発表というサプライズもあり、毎回そのコミュニケーション方法でも楽しませてくれます。ブランド休止前最後の製品を買った時には「2019への特別なInvitation」がもらえたり、最近では「モテマスカラ」の名前を継続するか否かというアンケートをユーザー10万人にとったり、とにかくインタラクティブでユーザーファーストなブランドという印象。まるでブランドと対話できているようで、キャンペーンがある度にちゃっかり参加しています(笑)。

 そして待ってました、新製品!「フローフシ」時代から新製品は片っ端から使い、理想的な唇の色温度をかなえるという発想から生まれた「LIP38℃ リップトリートメント」は塗ったら唇がふわっとする効能、わくわくするサイエンス感のあるコンセプト、そして眺めていたくなるクリスタルのようなパッケージ、その全てに惚れてしまったので4色持っています。ベッドサイド、デスク、ポーチ、とりあえず使いたい時に使えるように、身の回りに忍ばせて愛用中です。

 コスメを買う時は(それ含めて気分を上げたいから)少なからずパッケージの良さを考慮するのですが、「ウズ」ブランドの製品はどれも見た目がとても良い。その辺にポンと置いても様になってしまう佇まいなんですよね。今回発表された新製品のパッケージは、かつての「LIP38℃ リップトリートメント」をそのまま引き継いだ涙型の美しいボトルと、同じくクリスタルの結晶のようなミニマルなリップスティックケースです。コンセプトに掲げる「UNFRAME THE BEAUTY」の通り、誰もが手に取りたくなる、そして手に取ることができる美しさが表現されています。

 「WWD JAPAN.com」編集長の村上さんもEditors’ Letterなどで男子メイクの面白さについて語られていますが、「UNFRAME THE BEAUTY」を提唱する「ウズ」はメンズとかウィメンズとかの決められた枠を越え、誰でもその人自身の美しさを描くことができるユニバーサルコスメなのです。NYを再出発の舞台に選んだのも、それにふさわしい街だったからなのでしょう。もはやメイクは女子だけの特権ではないので、リニューアルを機にぜひメンズの皆さまも唇の色温度をあげてみてください。大げさじゃなく、唇の色が健康的に美しいだけで人間全般から今よりちょっと、モテると思います。

Azu Satoh : 1992年生まれ。早稲田大学在学中に渡仏し、たまたま見たパリコレに衝撃を受けファッション業界を志す。セレクトショップで販売職を経験した後、2015年からファッションベンチャー企業スタイラーに参画。現在はデジタルマーケティング担当としてSNS運用などを行う。越境レディのためのSNSメディア「ROBE」(@robetokyo)を主催。趣味は、東京の可愛い若手ブランドを勝手に広めること。ご意見等はSNSまでお願いします。Twitter : @azunne

The post 「UZUはメンズも使えるユニバーサルコスメ」 ファッションフリークOL「WWDビューティ」最新号につぶやく appeared first on WWD JAPAN.com.

「情熱がなければ靴はただの物体にすぎないし、情熱があるからこそ靴にキャラクターが出て、オーラが発せられるの」 by クリスティーナ・ブラニク

Kristina Blahnik

 情熱がなければ靴はただの物体にすぎないし、情熱があるからこそ靴にキャラクターが出て、オーラが発せられるの。遺跡などは、何百年も前に作られて今もここにあるしこれからもそこにあり続けるでしょう?しかも不思議なエネルギーを発している。「マノロ ブラニク」の靴もマノロ本人やチームの思いや経験がこめられていて、長く残るものであってほしいと願っています。(2018年11月2日掲載、「マノロ ブラニク」CEOを務める姪が語る“シューズ界の王様”と“ブレないビジネス”

The WORDS
ファッション業界人の残した名言を日々の糧に。デザイナーやバイヤー、社長、編集長らの心に響く言葉をお届け。

The post 「情熱がなければ靴はただの物体にすぎないし、情熱があるからこそ靴にキャラクターが出て、オーラが発せられるの」 by クリスティーナ・ブラニク appeared first on WWD JAPAN.com.

「情熱がなければ靴はただの物体にすぎないし、情熱があるからこそ靴にキャラクターが出て、オーラが発せられるの」 by クリスティーナ・ブラニク

Kristina Blahnik

 情熱がなければ靴はただの物体にすぎないし、情熱があるからこそ靴にキャラクターが出て、オーラが発せられるの。遺跡などは、何百年も前に作られて今もここにあるしこれからもそこにあり続けるでしょう?しかも不思議なエネルギーを発している。「マノロ ブラニク」の靴もマノロ本人やチームの思いや経験がこめられていて、長く残るものであってほしいと願っています。(2018年11月2日掲載、「マノロ ブラニク」CEOを務める姪が語る“シューズ界の王様”と“ブレないビジネス”

The WORDS
ファッション業界人の残した名言を日々の糧に。デザイナーやバイヤー、社長、編集長らの心に響く言葉をお届け。

The post 「情熱がなければ靴はただの物体にすぎないし、情熱があるからこそ靴にキャラクターが出て、オーラが発せられるの」 by クリスティーナ・ブラニク appeared first on WWD JAPAN.com.

退任後は月旅行に新規事業 ZOZO前澤前社長の今後を知る一問一答

 「Yahoo!JAPAN」を運営するヤフーは12日、同日朝方発表したZOZOの買収に関する記者会見を行った。会見にはヤフーの川邊健太郎社長とZOZOの澤田宏太郎新社長、そして前澤友作前社長の3人が登壇。前澤前社長が自身の今後について「新しい道に進みたい」と説明した。会見の終盤には提携のきっかけを作ったという孫正義ソフトバンク社長兼会長がスペシャルゲストとして登場した。「当分は前澤さんが社長をやったら?とも言ったが、前澤さんは『スッパリ辞めたい』と。月に行くためのトレーニングもあるし、彼女とも仲良くしないとね(笑)。うらやましい限りです」と語り、会場の笑いを誘った。ZOZOの買収は朝から大きな話題を呼んでいたこともあり、会見には多くのメディアがつめかけ、質疑応答では前澤社長の今後についての質問が殺到した。本記事では、記者団からの前澤前社長への質問とその回答をまとめて掲載する。

―前澤氏の借金について。今回のヤフーの売却にどの程度影響したのか。自力で返そうとしていたのか、それが無理だからZOZOを売却したのか。

前澤友作(以下、前澤):高額品を買う際に、借金やローンをする方も多いと思いうが、ゼロが何個か違うだけで、それと一緒。使用用途は宇宙の渡航チケットや現代アートなどで、自分の信用の範囲、人に迷惑をかけない範囲で借金をしていた。宇宙渡航によって得る体験や人脈はかけがえのないものだし、現代アートは購入後価値が上がっており、得るものも多い。そうして作った借金は、アートなどの現物資産を売却して返せばいいだけ。借金のせいで首が回らなくなって、提携したというのは憶測にすぎない。

―ここまで成長させてきたZOZOに愛着もあると思うが、その社長を退くことに対して、どういう気持ちなのか。後悔はしていないのか

前澤:これは悩みに悩んだ。無責任なのではないか、と言われることも予想していたし、ネット上で実際にそう書かれている。しかし、自分の地位や権力に甘んじて、ZOZOの事業拡大や成長を見過ごす経営を行うことこそが無責任だと思う。ZOZOは成長にあたり一つの課題を抱えている。それはこれまでの自分のワンマン、トップダウン経営の一つ。ZOZOはもっと社員それぞれの個を生かしたチーム力や総合力を磨かなければならない。そういう意味で後継者である澤田新社長にZOZOを譲り、さらなる成長を遂げていく。苦渋の決断だったが、退くことにした。よく「経営者は孤独」と言われるが、個人的にはそんなことはないと思ってきた。しかし、社長退任という最後の決断を一人で悩んでいた時に、孤独を感じた。

―「新しい道に進みたい」とのことだが、具体的に考えていることは?

前澤:考えているのは2つ。1つ目は宇宙渡航だ。2023年に月に行くが、それよりも前に宇宙に行く予定がある。外国語の勉強や、トレーニングもしなければならない。2つ目は新規事業をしたいということ。社会や人の役に立つビジネスをやりたい。もう43歳で頭も鈍っているので、早めに取り掛かりたいなと思っている。まだ決まっていないが、チャンスがあれば事業に積極的に取り組んでいきたい。

―孫氏が提携のきっかけを作ったとのことだが、それはいつ頃のことか?また、ソフトバンクではなくヤフーと組むことに対してどう思ったのか?

前澤:時間軸は正確性を欠くため話さないが、孫さんに「もっとロックに行きたい」と相談したところ、ヤフーの川邊さんを紹介してもらった。そこで川邊さんから提携の話が出た。ヤフーとはいろいろな提携の話をさせていただき、議論を重ねて今回の提携に至った。

―今日の率直な気持ちは?

前澤:正直実感はまだわいていない。今日は朝8:45に提携と退任の情報を開示した。7時には出社して、社員たちと思い出話をしていた。この後社員を集めて、改めて自分の口から説明はする。社員の話をすると本当に感極まってしまう。辞めていく分際で何を言ってるんだ、何を古臭いこと言ってるんだとも思われるかもしれないが、社員は本当に家族だと考え、創業から21年間やってきた。それを思うと……(涙ぐむ)。今日のために普段は持っていないハンカチを持ってきた(笑)。これ以上は勘弁してください。

―“Let’s Start Today”のメッセージが書かれたTシャツを着てきた理由は?

前澤:創業以来、毎日が始まりだと思っていた。日々、社会や人の役に立とうと進んできた。今回の提携で、ZOZOとは別々の道を歩むことになったが、ZOZOにとってスタートトゥデイという名前は非常に重要な意味があるし、僕にとっても非常に大切。毎日が始まりだというシンプルな考え方をもとに、これからもお互いに一生懸命生きて、一歩一歩楽しい人生を歩んでいければいいなと考えてこのTシャツを着てきた。

―孫氏からは彼女の話もあったが、交際は順調か?

前澤:今日は資本業務提携の話なので、プライベートの話は別の機会にしようと思う。

―彼女に今回のことを相談した?

前澤:今回は誰にも相談していない。先ほど「経営者は孤独だと感じた」と言ったように、実の家族にも相談せず、一人で悩み抜いた。

―今後は第二の人生ということで結婚もあるのでは?

前澤:今回の会見とは全く関係がないので(笑)、回答は控えたい。

―新事業に関して。すでにやりたいことはある?社会に対してどのようないい影響を与えたいと考えている?

前澤:やりたいことは困っている人を助けたり、不便だと思われることの解決に着手したい。「ゾゾタウン」を始めた時も、遠方でなかなか服を買えない人や、試着が苦手な人などのためにスタートさせた。そういったユーザー意識からビジネスを行うのが得意でもある。その考え方は変わっていない。

―社長人生を振り返って、ZOZOだけに一番“ゾゾっ”としたことは?

前澤:(笑)。真面目に答えると、ミュージシャンをやりながら、プログラミング・エンジニアリングなどを全てやっていたことがある。その当時、サーバーのアップデートをした時に、サーバーがクラッシュし、お客さまのデータなど全てを失いかけた。あの時は“ゾゾっ”としたが、幸いなことに前日に自動バックアップが働いていて助かった。それがあったから今のZOZOがある。

―社長を退任しようと思ったのはいつ頃?また、どういった理由で?

前澤:ズバリ9月に入ってから。先ほども話したが、今後ZOZOが成長していくために必要なものは何かを考えて辞任に至った。最初は続投のリクエストを受けていたが、そこは持ち前の直感で、このまま数年・数カ月いてもいいことはないと感じ、急きょ辞任することになった。

―冒頭の質問と関連するが、これまで金融機関に入れていた担保は2000億円を超えると言われている。月の旅行が100億円、現代アートも「バスキア」が143億円ほどと見られており、計算が合わないが、何にそんなにお金が必要だったのか?

前澤:なぜ、僕が買ったものを全部言わなきゃいけないんですか?という話で、他にもいろいろと買っている。発表しているのは一部で、それ以外にも多くのものを買ったり、提携に使ったりしている。あとの計算はご自由に。

The post 退任後は月旅行に新規事業 ZOZO前澤前社長の今後を知る一問一答 appeared first on WWD JAPAN.com.

「モードは終わった」by栗野宏文上級顧問 連載「モードって何?」Vol.5

【#モードって何?】きっかけは読者から編集部に届いた質問「つまるところ、モードって何ですか?」だった。この素朴な疑問に答えを出すべく、「WWD ジャパン」9月16日号では特集「モードって何?」を企画し、デザイナーやバイヤー、経営者、学者など約30人にこの質問を投げかけた。答えは予想以上に多岐にわたり、各人のファッションに対する姿勢や思い、さらには現代社会とファッションの関係をも浮き彫りにするものとなっている。本ウエブ連載ではその一部を紹介。今回は栗野宏文ユナイテッドアローズ上級顧問クリエイティブディレクション担当に聞く。

WWD:ずばり“モード”とはなんでしょうか?

栗野宏文上級顧問(以下、栗野):語源としては「誰もが理解できる記号」という意味です。ジャズには、一つのコードを基本として自由に演奏する“モード奏法”というプレースタイルがあるなど、ファッション以外の分野でも用いられる言葉ですね。ファッションの文脈では、「衣服を通してすべての人に共有される美意識」を意味すると思う。非常に簡単に言えば“流行”ですね。そしてこの言葉は、「特権階級と非特権階級」という図式なしには語れません。

WWD:「特権階級と非特権階級」の図式とは?

栗野:現代ファッションに通ずるオートクチュールは、王侯貴族や近代的ブルジョワジー、限られたセレブリティーといった特権階級の富の象徴として誕生しました。そして彼・彼女らは、それらをまとうことで自らの美意識を発信しました。一方、その他の大多数の非特権階級の人は、特権階級の衣服を見て、同じ美意識を享受することしかできませんでした。この絶対的な構図によって、一つの美意識が時代の潮流として大きな力を持ちえたのです。

WWD:オートクチュールからプレタポルテへ移行した後はどうでしょうか?

栗野:オートクチュールからプレタポルテへ、さらにプレタポルテから量産品へと移行する間も、「特権階級と非特権階級」の構図は存在し、モードは機能し続けました。各国のVIPやムービースター、スポーツ選手、ミュージシャンなど、特権階級の姿は変容したものの、メディアやテレビは彼・彼女らの美意識をあがめ、一般人もそれを享受していました。

WWD:「特権階級と非特権階級」の構図が存在する限り、モードは機能したのですね。

栗野:はい、そうです。しかし、「特権階級と非特権階級」の構図も、ついに崩壊する時を迎えます。それは2010年以降、ソーシャルメディアが台頭したタイミングです。ソーシャルメディアによって、出生・職業・年齢・性別といったステータスに関係なく、誰もが自らの嗜好を発信できるようになった結果、かつてのように特定の美意識だけが大きな力を持つということはなくなりました。つまり、モードは終わったのです。

WWD:モードは終わった――たしかに今は、美意識として享受された価値観が広範囲で共有されるのではなく、小さなコミュニティー内で完結する美意識が、世界のあちらこちらに点在している感覚があります。では、その新たなあり方を表現する言葉、モードに代わる言葉はあるのでしょうか?

栗野:よく用いられるのは“ダイバーシティー”ですよね。日本では言葉が一人歩きして、ダイバーシティー本来の意味が理解されていない気もしますが、(新たな時代の形容詞として)間違いはないと思います。現代は、10人いれば10通りの、千人いれば千通りの美意識が発信され、それらの価値が認められる時代です。ファッションアイコンで言えば、かつては冨永愛さんでしたが、今は渡辺直美さんも同じくらいの人気があります。ただし、今は「極端な美」が支持される傾向にありますね。これからはもっと微妙なニュアンスの美にも光が当たって、それらの価値も認められていくでしょう。

WWD:ダイバーシティーの時代には、モードのような大多数の人に共有される美意識は生まれないのでしょうか?

栗野:モードは終わり、美意識は多様化していきますが、広範囲で多数の人に受け入れられる美意識は今後も存在しうるでしょう。“知性”や“カルチャー”を反映した美意識がその一つだと思います。

WWD:知性とカルチャーですか。栗野さんから見て、その美意識を発信するクリエイターは誰でしょうか?

栗野:「グッチ(GUCCI)」のクリエイティブ・ディレクターであるアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)です。彼のクリエイションは、知性とカルチャーをひしひしと感じさせます。彼は「グッチ」のコレクションをつくるとき、誰よりもブランドの歴史を研究し、それをどう反映させるか熟考します。“アーカイブを研究する”という表現は、近年、頻繁に用いられるようになりましたが、彼ほど対象を深掘りし、その価値と向き合うデザイナーはほかにいないと思いますよ。コレクションだけでなく、毎シーズンの広告にもその姿勢は見て取れます。ノアの箱船から黄金時代のハリウッドミュージカル、イタリアの神殿まで、シーズンの世界観を発信するのに最適なモノ・コトを広大な文脈から汲み上げ、現代に通用するビビッドな形に仕上げるのは、並大抵のクリエイターにはできません。彼の母親はイタリアの映画撮影所、チネチッタで衣装を担当し、父親はシャーマニズムの研究者だったそうです。生まれ持ってのセンスももちろんあると思います。しかしそれ以上に、日頃から物事を深く考えているから素晴らしいクリエイションが生まれるのです。彼のように、カルチャーへの造詣の深さ、インテリジェンスの振り幅を感じさせるクリエイターは、今後も価値を持ち続けるでしょう。

「#モードって何?」をもっと見る

The post 「モードは終わった」by栗野宏文上級顧問 連載「モードって何?」Vol.5 appeared first on WWD JAPAN.com.

編集長ムラカミに物申す! モノ作りのあり方とステートメントの多様性

 「WWD Japan.com」が5月にスタートした登録制のメールマガジン「エディターズレター」をご存知でしょうか?「まだ」という方は、ぜひ今すぐ申し込みを。本紙とウェブの2人の編集長と副編集長が執筆を担当し、今後続々と書き手が増える予定です。このエディターズレター、実は“内部(編集部内や社内)”に向けたメッセージ性が強いのでは?と感じており、毎朝の僕の楽しみともなっています。

 以下は、ニューヨーク・コレクション取材中の「WWD Japan.com」編集長ムラカミが発信した9月12日付のエディターズレターからの一節です。タイトルは「クオリティーよりステートメント」で、「『日本に数台の、現存する織機で』とか『吊り編み機でゆっくりと』なんて話は正直、もう以前ほど魅力的に聞こえません。『で?』と聞き返してしまう自分がいます」とつづり、続けて「それを追うあまり没個性的になるくらいなら、違う何かを見つけた方が賢明だと思うのです」とムラカミは書いています。

そのうえで、工場取材好きを自負するデニム担当の僕からも一言――「ステートメントよりクオリティー」だってあってしかるべき!

 確かに“古い機械で作ったからエラい(スゴい)”は極めて限定的なエリアでしか認められない価値でしょうが、認める人がいることは事実なわけで、そこにはれっきとした商業活動があります。そういう機械を稼働させ続けるために、現場ごとにチューンアップがなされ、足りない部品は自作しています。古い機械を調達し、それをメンテナンスする専門職もいます。1999年にスタートした「リーバイス(LEVI'S)」のセルフリバイバルライン“リーバイス ビンテージ クロージング(LEVI'S VINTAGE CLOTHING)”の立ち上げ時、当時のディレクターは「往年の糸やミシンはもちろん、買えるものなら空気も買いたい」と話しました。そのときはクレージーだと思いましたが、今では気持ちが理解できます。

 8月に発売したデニム特集では、本澤裕治ドクターデニムホンザワ社長に話を聞きました。本澤さんはジーンズブランド「レッドカード(RED CARD)」のプロデューサーも務めており、同ブランドは2009年のデビュー以来10年連続で2ケタ成長を続けています。ダウントレンド真っただ中の国内ジーンズ業界において独り勝ち状態。そんな本澤さんの話で印象的だったのは、「日本のモノ作りを今一度見直し、あらためて体系化しなくてはいけない」というものでした。“メード・イン・ジャパン”や“岡山(児島)ジーンズ”といった言葉が独り歩きし、無策な量産の結果生まれた粗悪品が市場に流通しています。昨今流行りの“サステイナブル”のように言葉だけが先行して、実たる部分は形骸化しているんです。ついでに言わせていただけば、サステイナブルの分野でも“錬金術化”を図る輩がおり、そのあたりは11月25日発売のサステイナブル特集で、現在ロンドン取材中のサステイナブル担当が一刀両断にしてくれると信じています。

 閑話休題。「リーバイス」と「エドウイン(EDWIN)」、国内外2大ジーンズブランドを渡り歩き、業界をリードし続ける本澤さんが憂えて放ったのが前述の言葉でした。真摯にモノ作りを行う工場をしっかりと認め、そこで働く人も幸せになれるよう前進しようというもので、それこそサステイナブルだと思います。

 もう一つ心に響いたのは「ジャスト・ジーンズ」という表現。たかがジーンズ、されどジーンズ。名称だけが異なる、似たような素材や加工が多過ぎないか?そもそもこんなにたくさんのジーンズブランドが必要なのか?大量生産されたジーンズは、当然大量廃棄の対象になります。「オリジンたる『リーバイス』よ、もっとがんばってくれ!」といった声は、デニム特集を通じて各方面から聞こえました。ひとしきり憂えた本澤さんが、「これ見てよ」と笑顔で大きなバッグから取り出したのは自身がプロデュースするアイテムではなく、「リーバイス」の“501”でした。それも「アメリカの量販店で普通に売っている」59ドル50セント(約6420円)の“501”。「皆、頭でっかちになり過ぎ。だから今は、こういうシンプルなものをはきたいんです」と本澤さん。「ずっとはけるように」と、バッグの中にはサイズ違いの「普通の“501”」が何本も入っていました。

 大量廃棄させないためには、“的確に”モノ作りを行う必要があります。「ジーンズは『リーバイス』だけが作ればいいし、Tシャツは『ヘインズ(HANES)』に任せておけばいい」と極論を唱える人もおり、あながち間違ってもいないなと思います。一方で、それはファッションとは真逆の考え方でもあります。答えは一つではないし、僕らは賢者ではないので、たくさん間違いを犯しながら答え(もしくは答えらしきもの)に近づかなければなりません。それがメディアの役割であり、現場としての面白みでもあります。ムラカミはこう思うし、ミサワはこう思う――そういう多様性も必要でしょう。本当は吊り編み機についても触れたかったんですが、ますます長くなるのでこのへんで筆を置きます。言いたかったのは、エディターズレターをよろしくってことです(笑)。

The post 編集長ムラカミに物申す! モノ作りのあり方とステートメントの多様性 appeared first on WWD JAPAN.com.

読者が注目した今週の新作 「ハイク」 × 「ザ・ノース・フェイス」など(9月13〜19日)

 「WWD JAPAN.com」が今週発売の新商品を「ファッション部門」「ビューティ部門」「スニーカー部門」別にまとめてお届け。「ファッション部門」と「ビューティ部門」は読者の注目度(PV)から1〜3位までをランキング形式で紹介。今週の「ファッション部門」では「ハイク(HYKE)」 × 「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」のラストコレクションが最も注目され、「ビューティ部門」ではアメリカ発メイクブランド「スティラ(STILA)」が1位に輝いた。

【ファッション部門】


【ビューティ部門】


【スニーカー部門】

The post 読者が注目した今週の新作 「ハイク」 × 「ザ・ノース・フェイス」など(9月13〜19日) appeared first on WWD JAPAN.com.

NYコレハイライトVol.4 NYコレ中盤4日目の4ブランドをプレイバック

2020年春夏ニューヨーク・コレクションの後半に差し掛かり、4日目の4ブランドをプレイバックする。

トム フォード(TOM FORD)

DESIGNER/トム・フォード

 これまではインスピレーション源を公にすることをためらってきたトム。なのに今季は、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)やモデルのイーディー・セジウィック(Edie Sedgwick)がマンホールから出てくる時を捉えた1965年の写真、イーディーが身につけていたシルバーのブラジャー、リュック・ベッソン(Luc Besson)の映画「サブウェイ」、「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」のアーカイブ、息子のクラスメートが着るナイロンのバスケットボールショーツ、カリーヌ・ロワトフェルド(Carine Roitfeld)のインスタグラムなど、脈絡のないインスピレーション源を列挙した。

 ここから昔の地下鉄の駅をショー会場に、ボックスシルエットのジャケットや、シルクタフタのボリュームスカート、シルクジャージーのタンクトップ、レザーのホットパンツ、それにオブジェのようなメタリックブラなど、一貫性のないアイテムを提案。それを自由奔放に組み合わせることで、フォーマル、スポーティー、マスキュリン、フェミニン、エレガント、テディ、アクティブなど、さまざまなスタイルを導いた。アイテムは数種類に絞ったが、スタイルは無限大だ。

3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)

DESIGNER/フィリップ・リム(Phillip Lim)

 久しぶりにメンズ・ウィメンズの合同ショーを開催。ブランドの根底にある“ワークウエア”(仕事に着ていく服)は、テーラードのジャケットやパンツ 、クリーンなシルエットのシャツとして登場。そこにドローストリングでボリュームを調整できるようにしたり、ワンショルダーの非対称的なシルエットに仕上げたり、ダイナミックなラッフルやワイドなラペルなどを施したりして、ツイストを加えた。メンズもセットアップやシャツなどの定番アイテムにグラフィカルプリントをあしらったり、少しゆったりとしたシルエットに仕上げたりして、現代男性のためのワードローブを提案した。

ザ・ロウ(THE ROW)

DESIGNER/アシュリー&メアリー・ケイト・オルセン(Ashley & Mary-Kate Olsen)

 NY随一のボリュームシルエットブランドが、ジャストサイズまでフォームをコンパクトに改めた。フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)由来のコクーンシルエットが長き一時代を終え、エディ・スリマン(Hedi Slimane)が導いたコンパクトシルエット時代が到来するであろうことを予感させる。

 ハイゲージのニット、砂時計シルエットのジャケット、クロップド丈のリラックスパンツ、ミディ丈のスカートは、体に沿うが締め付けることはない。モノトーンとごくごく淡いパステルカラーが穏やかな印象を強化し、ブランドらしい自然体の優しいムードはそのままだ。

アナ スイ(ANNA SUI)

DESIGNER/アナ・スイ(Anna Sui)

 イタリア人コスチュームデザイナー兼イラストレーターのリラ・ド・ノビリのイラストレーションからインスピレーションを受けた。シフォンや透け感のあるシアーな素材を多用し、エアリーでフェミニンなムードのアイテムが多数登場。パステル調のブルーやピンク、イエローといった淡いカラーパレットを用いたほか、ふわりとしたボリュームを袖や肩に入れ、さらに歩くたびに揺れるフリルを施すなどして、いつもに増してフェミニンでロマンチックなコレクションに仕上がった。

The post NYコレハイライトVol.4 NYコレ中盤4日目の4ブランドをプレイバック appeared first on WWD JAPAN.com.

使用済みペットボトルが洋服に生まれ変わる 「H&M」秋の“コンシャスコレクション”が登場

 「H&M」は9月12日、地球への環境負荷が少ないリサイクル素材などを用いたサステイナブルな“コンシャスコレクション(CONSCIOUS COLLECTION)”を発売する。これは「2030年までにすべての素材をサステイナブル素材に切り替える」という、同社の目標に近づくものだ。

 パスカル・ブルン(Pascal Brun)=グローバル・サステイナビリティー・マネジャーは、「『H&M』の規模を活かし、循環型で再生可能なファッション業界への変換をリードしていきたい。“コンシャスコレクション”は従来の素材をリサイクル素材に置き換える技術的革新と、私たちが歩んできたこれまでの道のりを示すものになる」とのコメントを発表した。

使用済みペットボトルを
再生したポリエステルがカギ

 キー素材は使用済みペットボトルをはじめとする石油由来の廃棄物から生まれたリサイクルポリエステルだ。チェック柄のテーラードジャケットやトラウザー、深いスリット入りやアニマル柄のワンピ―ス、ボックスシルエットのジャケットなどで提案する。いずれもトレンドを押さえた柄や色、シルエットで今すぐ着たいアイテムに仕上がっている。またニットドレスではリサイクルポリエステルのほか、オーガニックコットンや、パルプ由来のビスコースを用いた。
 
 今回は“コンシャスコレクション”をイメージしたユニークなキャンペーン動画も制作した。リサイクルポリエステルに注目した動画は、ペットボトルの状態から洋服に生まれかわるまでの工程を、一人の女性の日常生活に置き換えて表現している。

あなたはいくつ分かる?
女性の日常生活とペットボトルの
状態をリンクさせてみて

9月12日から放映されている“コンシャスコレクション”のキャンペーン動画

 “求めて”:楽しそうにボーイフレンドと歩いているシーンは、「何かを、そして誰かを求めている」ことを表現。

 “楽しんで”:女性が回転するシーンは「ペットボトルを転がす」ことを表現。

 “ひっくり返して”:2人でストレッチしていてカメラが上下逆転するシーンは「ボトルフリップチャレンジ」をイメージ。

 “クールダウンして”:屋上にいるダウンジャケット姿の女性が少し寒そうにしているシーンは「飲み物の入ったペットボトルを冷蔵庫で冷やす」イメージ。

 “踊って”:女性が楽しそうに踊っているシーンは「炭酸の入ったペットボトルを振って開けたら泡があふれ出す」イメージ。

 “もし手放されたら”:女性たちが寝そべっているシーンは「ペットボトルをポイ捨てする=失恋」をイメージ。

 “あるべき場所へ戻そう”:女性が友人に挟まれて楽しそうに座っているシーンは、「ペットボトルが潰されてあるべき場所=リサイクルボックスにある」イメージ。

 “そして新しい1日を”:ベッドで目覚めるシーンは、「ペットボトルを処理して新しい洋服に生まれ変わったこと」を表現。

 “大切にして”:女性がボタンを留めているシーンは「長く着られるように大切にしよう」という思いを込めた。

 “着よう”:女性がお気に入りの洋服を着て歩いているシーンは「お気に入りの洋服を着る」イメージ。
 
 “また何度でも着よう”:女性が同じ洋服を違うスタイリングで着て同じ道を何度も歩くシーンは「お気に入りの服を何回も大切に着回す」ことをイメージ。

 かなり誌的に描かれているが、あなたはいくつ分かっただろうか。

問い合わせ先
H&M カスタマーサービス
0120-866-201

The post 使用済みペットボトルが洋服に生まれ変わる 「H&M」秋の“コンシャスコレクション”が登場 appeared first on WWD JAPAN.com.

50ブランドのリーダーが織りなすパルコの秋スタイル


 パルコは2019年秋の新作アイテムの広告キャンペーン「50 STYLES 50th PARCO」を12日に開始した。今回は同社の開業50周年にちなみ、総勢50ブランドの新作を使ったコーディネートを紹介。キャンペーンに起用されたモデルのNikiとともに、各ブランドのスタイルアイコンが個性あふれるコーデを披露する。自分にぴったりの秋スタイルを見つけよう。

多彩な秋の装いを見せる
ブランドアイコンたち

 キャンペーンに登場するのは、「グレース コンチネンタル(GRACE CONTINENTAL)」のアイテムをまとうNikiをはじめ 、「ビームス(BEAMS)」の土井地博コミュニケーションディレクター、「ステュディオス(STUDIOUS)」の中根大樹ディレクター・バイヤー、「トゥモローランド(TOMORROWLAND)」の山野邉彩美バイヤー、「ダブルクローゼット(W CLOSET)」の花井千春執行役員販売部部長ら。“5 THINGS ABOUT MY STYLE”をテーマに、それぞれが大切にしているファッションルールに基づいたスタイリングを着用し、自身のファッションにまつわる5つの質問に答えた。

着用アイテムが当たる
プレゼント企画も

 パルコ館内での対象ブランドで買い物した客には、ブランドアイコンたちの着用アイテムのプレゼント企画も用意する。購入時に手渡されるステッカーから応募が可能だ。応募期間は9月12日~10月6日。当選者には10月中旬以降に賞品が届く。

Nikiのファッションルールは?
動画をチェック

 特設サイトでは、新作カタログとともに出演者のファッションルールを紹介するキャンペーン動画も公開している。秋服にバッグ、アクセサリー……次々と切り絵のように飛び出すアイテムは、「あれもこれもほしい」とわくわくするNikiの頭の中をイメージしたもの。ポップでキュートなポスターはデザイナーの小池アイ子、ムービーは映像作家の吉岡美樹が手掛けた。

問い合わせ先
PARCO
campaign@parco.jp

The post 50ブランドのリーダーが織りなすパルコの秋スタイル appeared first on WWD JAPAN.com.

「アンリアレイジ」森永デザイナーが振り返る「LVMHプライズ」 土や太陽光を必要とする服を作った理由

 「アンリアレイジ(ANREALAGE)」の森永邦彦デザイナーは、第6回「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE以下、LVMHプライズ)」でファイナリストまで勝ち残った。9月4日にパリのフォンダシオン ルイ・ヴィトン(Fondation Louis Vuitton)で行われた最終審査では、“光合成(PHOTOSYNTHESIS)”と題した“自然と共生することで完成する”新作コレクションを披露。土と水と温度により生分解される“バイオデグラデーションガーメント”、太陽の光で色が変わる“フォトクロミックガーメント”、世界地図が輝く球体型の“リフレクトグローブガーメント”を用意し、審査員や取材に訪れたジャーナリストの度肝を抜いた。

 結果、受賞には至らなかったが、「LVMHプライズ」への参加はブランドにとってプラスになることが多かったようだ。グランプリ発表直後の会場で、森永デザイナーに半年以上をかけた戦いを振り返ってもらった。

-まずはお疲れさまでした。今回は過去最高の1700組以上の応募があったようですが、「LVMHプライズ」に応募するのは何度目だったんですか?

森永邦彦「アンリアレイジ」デザイナー(以下、森永):ありがとうございます。「LVMHプライズ」への応募は、今回が初めてです。面識はなかったのですが、元コレット(COLETTE)のサラ(・アンデルマン、Sarah Andelman)からホームページ経由で「プライズに応募した方がいいと思う」というメールをいただいて。年齢的に応募できる最後の年でもあったので、挑戦してみようという気持ちになりました。

-最初で最後の挑戦だったということですが、どのような思いで臨みましたか?

森永:ファイナルまで残るとは正直思っていなかったのですが、自分たちがパリで発表するようになり5年が経つ中で「LVMHプライズ」に参加することが次のステップにつながると考えていました。

-ファイナリストに選出された感想は?

森永:率直にうれしかったです。パリコレで発表を続けていてもなかなか届かない人や出会えない人はいるのですが、2月から9月までこのプライズに関するやりとりをする中で本当にいろいろな人と出会うことができました。また同時に、LVMHグループで働く人と関わることも増え、巨大なファッション産業への捉え方や自分たちが今まで持っていなかったファッションへの視点などを与えてもらいました。受賞はできませんでしたが、この半年はブランドにとって力になることやプラスになることばかりでした。

-最終審査のために制作されたコレクションは、いつもとはまた異なるアプローチを感じました。今回、サステイナブルを意識した理由は?

森永:「LVMHプライズ」に携わる間に他のファイナリストと話す機会も多かったのですが、その中には根からのサステイナビリティーに対する意識を持っているデザイナーもかなりいて。僕自身は彼らとはまた違う価値観で服を作っていましたが、一緒に取り組む中で影響を受けた部分もたくさんありました。それに今後自分が作るものを考えると、避けては通れない課題になってくると。「LVMHプライズ」のためのコレクションは、それを意識する第一歩であり、今回限りというわけではなく取り組みとして続けて行くつもりです。“自然と共に作る”というのは、例えば飛騨の雪ざらしのように、日本人が昔からやってきたこと。そのコンセプトを現代のテクノロジーを使って「アンリアレイジ」なりに表現していくというのは、欧米のデザイナーと異なる独特の美意識だと思いますし、自分たちにはテクノロジーと自然の両軸が必要で、それが交わるところに描きたいファンタジーがあります。

-実演も交えた展示ブースはひときわ盛り上がっていましたが、審査員のフィードバックはいかがでしたか?

森永:審査員の反応は非常に良かったです。(非公開で行われた)最終プレゼンテーションも本来は10分間と決められていたのですが、質問が止まらずに15分以上やらせてもらいました。新たに取り組んだ“バイオデグラデーションガーメント”や“フォトクロミックガーメント”という洋服自体が自然と共生して完成するコレクションには、どの審査員も驚いていましたし、興味を持ってもらえたと思います。

-実際に参加されてみて、「LVMHプライズ」は若手デザイナーにとってどんなものだと感じましたか?

森永:やはり夢がありますよね。30万ユーロ(約3540万円)という賞金を差し置いても、これだけのスターデザイナーとファッション業界を動かす重要人物に自分のクリエイションを直接プレゼンテーションできる機会は他にない。僕らやそれより下の世代のデザイナーが夢を見られる場所であり、今回の挑戦を通して僕も夢を見せてもらいました。

パリコレに発表の場を移してからの変化

-パリでの発表に切り替えて5年が経ちます。海外での反応は、どのように変わりましたか?

森永:東京で発表していた時は全然海外での展開や広がりは感じられなかったし、パリに出ても最初の1、2年はあまり変わらないという印象で、箸にも棒にも……という感じでした。ただ続けていく中で、「ANDAMファッション・アワード(ANDAM FASHION AWARD)」のファイナリスト選出やパリでの展覧会への参加といった機会がじわじわと増え、3年目くらいから手応えを感じられるようになってきました。「アンリアレイジ」は、パリコレで発表するブランドの中でも独特の道を歩んでいますが、それがすごくポジティブに受け止められるようになっていると感じます。

-森永さん自身の中でも考え方や価値観の変化はありました?

森永:最初はとても力んでいて、パリの中で独行するぞ!という気持ちでした。でも今はパリ自体が自分たちに馴染みのあるものになり、すごく活動しやすいですし、理解が生まれているように感じます。今日ブースに来てくれた方も、「アンリアレイジ」を知っていて応援してくれている人が多かったですし。やはり継続することは重要だと思います。

-パリコレデビュー以降は「光」をテーマにさまざまな可能性を模索してきましたが、先シーズン(2019-20年秋冬シーズン)はまた大きく方向転換しました。そのきっかけは?

森永:東京でも大きなショーをやるということが大きかったです。それにパリに出てきた頃は“非日常的なこと”を力んでやっていたけれど、それをもう一度巻き戻し、日常的にウエアラブルな洋服の中で少し視点の違うことをより追求しようと思いました。その結果、今までジャーナリストだけだった広がり方がしっかりバイイングにもつながり、ビジネス的にもいい影響が出ています。9月24日にパリ・ファッション・ウイークで発表するコレクションも、その方向性をさらに発展させていきます。

-海外での発表に切り替えて良かった点、逆に難しいと感じた点は?

森永:難しいのは、やはり日本で発表するよりも費用がかかること。そして最初は英語が話せなかったので、コミュニケーションにおけるストレスが大きかったです。今も流暢なわけではないですが、次第にコミュニケーションはできるようになるし、費用に関してもそれを前提として進めているので問題はありません。逆に費用をかける分だけの広がりを実感していますし、自分たちが東京でやっていたことを客観的に見られるようにもなりました。具体的に言うと、いろんな人種や体型、価値観の人がいる中で洋服を作るというボーダーレスな感覚が生まれ、考え方がオープンになりましたね。昔は、海外は敵だと思っていたので(笑)。

-今後、どのようにブランドを発展させていきますか?

森永:「アンリアレイジ」を立ち上げてから15年以上が経ちましたが、ブランド名に「AGE」とついているだけに、その時代時代での戦い方があると思っています。そういった約5年ごとの周期で変わることと、“日常と非日常の境界線を探る”という設立当初からずっと変わらないことを続けていくのみです。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

The post 「アンリアレイジ」森永デザイナーが振り返る「LVMHプライズ」 土や太陽光を必要とする服を作った理由 appeared first on WWD JAPAN.com.

NYコレもドタバタ日記 2つの百貨店を見比べた後は記者会見へ ファッション・ウイークはランウエイショーだけじゃない!!

 みなさん、こんにちは。昨日は、ついに1日日記を休んでしまいました(苦笑)。いよいよ、限界が近づいております。携帯電話で言えば、今の充電は「18%」くらい。もう、電池は赤色、そんな感じです。

 ということで、今日は趣向を変えまして、ファッションショー以外の取材からスタートしてみました。

9:30 ノードストロム

 今日の朝イチは、10月21日にマンハッタンにグランドオープンする百貨店ノードストロム(NORDSTROM)の内見会。と言っても、前日の9月9日に建築が一段落、什器と商品の搬入はこれからという段階ですから、まだ全貌はつかめません。とは言え、地下2階・地上5階、合計7層の百貨店のオープニング取材なんて、もしかしたら僕の記者人生の中で最初で最後かもしれません。日本では、改装はあれど、新装なんてないですからね。

 改装の詳細については、コチラの記事をご参照。EC化率が30%を超える百貨店は、「ヴァンズ(VANS)」から「ヴァレンティノ(VALENTINO)」までが一堂に会するシューズフロアや、全面ガラス張りの壁面など、日本の百貨店とは全然違いました。

10:45 セオリー

 ノードストロムの内覧会が予想以上に長く、しかも「セオリー(THEORY)」はプレゼンテーションと思いきやランウエイショーだったようで、間に合わず……。残念でした。

12:20 ガブリエラ ハースト

 お次は、「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」。世界的な売り上げはようやく10億円越え。ゆえに日本での知名度はまだまだですが、今年の頭にはLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY- LOUIS VUITTON以下、LVMH)が擁する投資ファンドのLVMHラグジュアリー・ベンチャーズ(LVMH LUXURY VENTURES)が資金を注入した注目ブランドです。ちなみに彼女のダンナ様は、出版社ハースト・コーポレーション創業者の孫であるジョン・オーガスティン・ハースト(John Augustine Hearst)。つまり、ええトコの奥様なのです。

 出自で人をジャッジするつもりはありませんが、ええトコのお嬢様や奥様は、ラグジュアリーのセンスと、社会的な使命感の双方を得るに恵まれた環境にあると思います。彼女はまさしくそんな環境を生かした人物で、サステイナブルなモノ作りに基づくラグジュアリーが、セレブを魅了しています。

 今シーズンもオフホワイト、つまり余計に漂白していないリネンを使い、ダーツを複数走らせることで体にフィットするシルエット手に入れたジャケットなどを提案。ハイゲージのサマーコットンを天然染料でカラフルに染めたタンクトップやマルチなカラーブロッキングのワンピース、編み込みやフィッシュネットと組み合わせたトレンチコートやドレスなど、オーガニックなムード漂う手仕事ウエアを連発しました。

 そして出ました、今シーズンのマストハブ、ハンカチーフワンピです。「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」や「トリー バーチ(TORY BURCH)」でも登場。嫌いな人なんていない、清涼感と清潔感たっぷりのワンピは、フィット&フレアシルエットを楽しみたいものです。

1:25 TOM FORD

 昨晩拝見した「トム フォード(TOM FORD)」の展示会へ。

 昨日のトム様、非常に多くの刺激を得てコレクションに至った様です。アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)やモデルのイーディー・セジウィック(Edie Sedgwick)がマンホールから出てくる時を捉えた1965年の写真、イーディーが身につけたシルバーのブラジャー、リュック・ベッソン(Luc Besson)の映画「サブウェイ」……etc。他にもイタリアの映画、「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」のコレクション、(息子には着せないけれどw)クラスメートが着るだろうナイロンのバスケットボールショーツ、カリーヌ・ロワトフェルド(Carine Roitfeld)のインスタグラムなど、過去から現在、アートからストリート、そして男性から女性、さまざまから得た刺激をモリモリ加えたそうです。なるほど、いかようにも変幻自在なスタイルの源は、多彩な着想源にあったんですね。

1:40 バーニーズ ニューヨーク

 次まで歩いて移動しようとすると、目の前にはバーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)。この記事のように、最近日本の民事再生法相当する法律の適用を申請つまり破たんした名門です。

 入り口には、「私たちは倒産しましたが、まだ営業しています。これからも皆さんに文化を紹介します。これでお別れではありません」というメッセージ。中は、そこそこ賑わっていました。

 破たんの主因は、ここニューヨーク・マディソンアヴェニュー地代などと言われますがどうでしょうかね?正直、「マノロ ブラニク(MANOLO BLAHNIK)のパンプス積み上げたディスプレーとか見ると、「え、もったいない」と“罪の意識”が湧いてしまいますが、皆さんはどうでしょうか?高価なもの、ゆえに長く価値があるべきものを積み上げるディスプレーには共感できませんでした。

 店内にも入ってみましょう。地下ビューティ売り場の販売員は、そろって皆フレンドリーです。ただ、“手ぐすねを引いて待っている”感じがある。「カモられてる?」そうも感じます。

 朝イチのノードストロムとは、なにかが違います。キラキラしているのは、バーニーズです。でも、今買い物するならノードストロムなのかも。「私たちの世界にようこそ」というバーニーズと、「あなたの世界にジョインして良いですか?」というノードストロム、そんな感じがしてしまいました。

 ちなみに、これはアメリカの話。日本のバーニーズは、資本も含め、今はけっこう別モノです。

14:15 マイケル・コース

 毎回恒例、ランウエイショー前日の「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」のプレスカンファレンスへ。デザイナーのマイケル・コースが、ユーモア交え、事前に数ルックだけ見せてくれながら、さまざまを語ってくれました。

 これ、毎回楽しいんです。マイケルは人気TV番組「プロジェクト・ランウェイ(PROJECT RUNWAY)」に出演していたことも手伝い、トークが完璧。ユーモアを交えながら、明日発表するコレクションについて話してくれました。その中身は、この次の記事でお楽しみに。

15:30 ケイト・スペード ニューヨーク

 こちらも、先日拝見した「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」の展示会へ。もともとアクセサリーデザイナーだったニコラ・グラス(Nicola Glass)体制になってから、デザイン性と機能性を兼ね備えたバッグが増えました。ここでは、その写真をどうぞ(笑)。

17:30 コーチ

 全米最大の百貨店メイシーズ(MACY’S)の旗艦店をブラブラしながら、「コーチ(COACH)」のショーへ。会場は、ハドソンヤード。最新ショッピングスポットながら、所有者がドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領に政治献金しているため、イロイロ言われている施設です。「コーチ」は、そのドタバタ劇の前から、ここに本社を構えています。

 スチュワート・ヴィヴァース(Stuart Vevers)、大胆なクリエイションの方向転換です。

 今まで「コーチ」と言えば、シフォンのガーリーなドレスにボリュームコートのレイヤード。そこにフリンジやスタッズでデコったアクセサリーをプラスするスタイルでしたが、まずはシルエットが激変。色も随分大人っぽくなりました。バッグもシンプル路線です。コレは、なかなか思い切った決断です。特にアクセサリーは、ここ数年の努力でデザイン性の高い、比較的高単価のバッグが売れてきた「コーチ」。このシンプル回帰は、ビジネスにどう影響するでしょうか?とは言え、いつでも、どこでも、誰でも使えるシンプリシティと、スマホ時代らしいサイズ感は、時代の流れをちゃんと掴んでいる証拠。この変化は、吉と出るか、凶と出るか?その後、来場者の反応をイロイロ聞きましたが、賛否両論です。でも、それで良いんじゃないか、と思います。一番怖いのは、無反応、な世の中です。

 ショーには、モデルとして水原希子ちゃんも登場。1年前より堂々としたウォーキングで、周りのモデルと比べても遜色がありません。

19:30 オスカー デ ラ レンタ

 さぁ、今日のゴールも近づいてきました。お次は「オスカー デ ラ レンタ(OSCAR DE LA RENTA)」。会場には、リンゴやオレンジ、それにレモン。フルーツいっぱいの会場は、「マンサー ガブリエル(MANSUR GAVRIEL)」と一緒だな。

 ドレスは、そんなフルーツ同様、元気いっぱいのビタミンカラー。ミニ丈やベアトップも多く、どんどん若くなっています。

20:35 プロエンザ スクーラー

 さぁ、最後はジャック・マッコロー(Jack McCollough)とラザロ・ヘルナンデス(Lazaro Hernandez)の「プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)」。前回同様、ボックスシルエットでラペルの大きいジャケットを軸とした、1980年台のキャリアウーマンスタイルです。80年代のワーキングウーマンとは、2人のお母さん世代。クリエイションをパーソナルな家族と結びつけるのは、コレクションの共感性を高める良き手段です。

 前回は着脱自在なパーツウエア、まるで部品のような、洋服ともアクセサリーとも言えるハーネスのようなアイテムを組み合わせることでモード感を高めましたが、今回はドレープするインナーを組み合わせる程度で比較的シンプル。マニアック感は薄れ、永続性を手に入れました。たくし込み、結び、垂らすことで手に入れるドレープは、このブランドの真骨頂。ラペルの大きなフォーマルも、パンツが柔らかくドレープするだけで身近に感じられるモノですね。

The post NYコレもドタバタ日記 2つの百貨店を見比べた後は記者会見へ ファッション・ウイークはランウエイショーだけじゃない!! appeared first on WWD JAPAN.com.

「かつて感じていた可能性、ワクワクするような感じはこの10年くらいない」by成実弘至教授 連載「モードって何?」Vol.4

【#モードって何?】きっかけは読者から編集部に届いた質問「つまるところ、モードって何ですか?」だった。この素朴な疑問に答えを出すべく、「WWD ジャパン」9月16日号では特集「モードって何?」を企画し、デザイナーやバイヤー、経営者、学者など約30人にこの質問を投げかけた。答えは予想以上に多岐にわたり、各人のファッションに対する姿勢や思い、さらには現代社会とファッションの関係をも浮き彫りにするものとなっている。本ウエブ連載ではその一部を紹介。今回は成実弘至・京都女子大学家政学部生活造形学科教授に聞く。

パリを中心とした生産と流通

WWD:“モード”とは何でしょうか?

成実弘至・京都女子大学教授(以下、成実):“モード”はフランス語なので、シンプルに「パリを中心としたファッションのグローバルな生産と流通」だと思っております。多くの事物はアメリカが中心になりますが、ファッションだけはフランスが中心です。以前に比べればパリコンプレックス、とにかくパリコレで認められなければ一人前じゃないみたいな風潮はないですが、パリを中心としたシステムが世界のファッションを動かしているということは疑うべくもないことだと思います。

WWD:デザインや表現の段階だけではなく、生産流通までを含むものであると。

成実:“モード”にはさまざまな捉え方があります。一つは“流行”。“流行”をつくるということをパリがやってきたという事実は歴史的に確かなことです。19世紀ごろのオートクチュールから世界のファッションのシステム、“流行”、あるいは服の進化などはパリが切り開いてきたと思うので、そういうふうに考えたいです。

WWD:現在の“モード”はなにを反映しているのですか?

成実:いまの“モード”が反映しているのは、グローバリゼーションだと思います。もともとオートクチュールなども西ヨーロッパ限定のシステムであり現象だったわけで、それが戦後アメリカを媒介として全世界に広まっていった。

1990年代前後から、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)などが産業の多国籍化、コングロマリット化を進め、現在もグローバルで成長している。対抗するかたちでファストファッションが出てきましたが、現在でもそのトレンドは続いています。

クリエイターはそこそこの力が
あれば誰でもいい

WWD:“モード”を体現しているクリエイターは?

成実:クリエイターとは言えませんが、ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼最高経営責任者(CEO)とアナ・ウィンター(Anna Wintour)=コンデナスト(CONDENAST)アーティスティック・ディレクター兼米「ヴォーグ(VOGUE)」編集長だと思います。

21世紀のファッション産業は、クリエイターがつくっていく時代ではなくなっていて、ある意味クリエイターはそこそこの力があれば誰でもいい。そこそこ力のある人を巨大資本が、言い方は悪いですけれども使っていくような状況になっています。クリエイターが時代を切り開くような表現をしていた80~90年代までの状況と現在は少し違います。ファッション業界をつくっているのは、その上に立っている人です。

WWD:クリエイティブ・ディレクターでもなく、彼らを採用する側であるビジネスマンが“モード”を作っていると。

成実:80年代だったら「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS以下、ギャルソン)」、90年代だったら「メゾン マルタン マルジェラ(MAISON MARTIN MARGIELA、現メゾン マルジェラ)」など、クリエイターが“モード”をつくっていく時代がありましたが、この20年ほどはそういう状況にない。自分で切り開いてやっていく人は極端に少なくなってしまっていて、いたとしても目立たない。どちらかというと既存の“モード”の中で活動していく人が多い。

べつにそれが悪いわけではないですし、それなりに面白いものは作られているとは思うのですが、かつて感じていた可能性、ワクワクするような感じはこの10年くらいないです。だから若い世代が何を面白いと思っているかということの方が僕は興味がある。

クリエイターが切り開いていく時代は決着した

WWD:アルノー、アナはお互い作用しあってビジネスをつくっていっているパートナーのような部分もあります。アルノー・アナ方式的なものは今後も続く?

成実:ファッションは変化していく世界ですからもうそろそろ……とは思うので、次のモデルが必要だと思います。大量生産はもうやめようよ、みたいな社会になっていますから。

WWD:次のファッションのシステムはどのようなものになるのでしょうか?

成実:むしろ私が知りたい(笑)。

WWD:著書の「20世紀ファッションの文化史 時代をつくった10人 」の続編を書くとしたら誰を書くのか?あるいは書けるのか?

成実:紹介する最後の1人がマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)だったのですが、本当にそこで終わってしまっているなという気がします。クリエイターが切り開いて行く時代は最終的に決着した気がします。

ローカルなリアリティーから作られるもの

成実:僕が最近関心があるのは、グローバルを意識せずローカルで活動する人たちです。例えば、長賢太郎「オサケンタロウ(OSAKENTARO)」デザイナーや居相大輝「イアイ(IAI)」デザイナー。2人とも京都で服を手作りしていて、ある意味アルノーたちと対極にあるような人たちです。

WWD:なぜその2人に興味を持った?

成実:“モード”ではない服作り、もう少しローカルなリアリティーから作られるものってなんだろうということを考えたかったからです。

WWD:彼らはグローバル企業とは逆で成長拡大願望はない?

成実:そういうことを考えていない人たちですね。彼らが既存のファッションシステムの代わりになるということはあり得ないかもしれませんが、一つの服の可能性として面白いなと。水野大二郎・京都工芸繊維大学特任教授はもっとラボを使ったデジタルな服作りなどを目指しているでしょうけれども、僕の場合は「服ってなんだろう?」みたいなことを人文的に考える方向です。

例えば、京都新聞の行司千絵さんは記者をやりながら服を作っている人で、自分の母親に服を作ったり、知り合いに頼まれて服を作ったりなどのアートっぽい活動をしている。人ありきなんですよね、この人にこういう服を着てほしいとかで、ビジネスではない。

WWD:どこか原点回帰に近い気がします。

成実:オートクチュールみたいなことがもう一回復活してもいいわけです。いまと違うものが面白い。もちろん「ギャルソン」とかも面白いんですけれどもね。

「#モードって何?」をもっと見る

秋吉成紀(あきよしなるき):1994年生まれ。2018年1月から「WWDジャパン」でアルバイト中。

The post 「かつて感じていた可能性、ワクワクするような感じはこの10年くらいない」by成実弘至教授 連載「モードって何?」Vol.4 appeared first on WWD JAPAN.com.

「かつて感じていた可能性、ワクワクするような感じはこの10年くらいない」by成実弘至教授 連載「モードって何?」Vol.4

【#モードって何?】きっかけは読者から編集部に届いた質問「つまるところ、モードって何ですか?」だった。この素朴な疑問に答えを出すべく、「WWD ジャパン」9月16日号では特集「モードって何?」を企画し、デザイナーやバイヤー、経営者、学者など約30人にこの質問を投げかけた。答えは予想以上に多岐にわたり、各人のファッションに対する姿勢や思い、さらには現代社会とファッションの関係をも浮き彫りにするものとなっている。本ウエブ連載ではその一部を紹介。今回は成実弘至・京都女子大学家政学部生活造形学科教授に聞く。

パリを中心とした生産と流通

WWD:“モード”とは何でしょうか?

成実弘至・京都女子大学教授(以下、成実):“モード”はフランス語なので、シンプルに「パリを中心としたファッションのグローバルな生産と流通」だと思っております。多くの事物はアメリカが中心になりますが、ファッションだけはフランスが中心です。以前に比べればパリコンプレックス、とにかくパリコレで認められなければ一人前じゃないみたいな風潮はないですが、パリを中心としたシステムが世界のファッションを動かしているということは疑うべくもないことだと思います。

WWD:デザインや表現の段階だけではなく、生産流通までを含むものであると。

成実:“モード”にはさまざまな捉え方があります。一つは“流行”。“流行”をつくるということをパリがやってきたという事実は歴史的に確かなことです。19世紀ごろのオートクチュールから世界のファッションのシステム、“流行”、あるいは服の進化などはパリが切り開いてきたと思うので、そういうふうに考えたいです。

WWD:現在の“モード”はなにを反映しているのですか?

成実:いまの“モード”が反映しているのは、グローバリゼーションだと思います。もともとオートクチュールなども西ヨーロッパ限定のシステムであり現象だったわけで、それが戦後アメリカを媒介として全世界に広まっていった。

1990年代前後から、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)などが産業の多国籍化、コングロマリット化を進め、現在もグローバルで成長している。対抗するかたちでファストファッションが出てきましたが、現在でもそのトレンドは続いています。

クリエイターはそこそこの力が
あれば誰でもいい

WWD:“モード”を体現しているクリエイターは?

成実:クリエイターとは言えませんが、ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼最高経営責任者(CEO)とアナ・ウィンター(Anna Wintour)=コンデナスト(CONDENAST)アーティスティック・ディレクター兼米「ヴォーグ(VOGUE)」編集長だと思います。

21世紀のファッション産業は、クリエイターがつくっていく時代ではなくなっていて、ある意味クリエイターはそこそこの力があれば誰でもいい。そこそこ力のある人を巨大資本が、言い方は悪いですけれども使っていくような状況になっています。クリエイターが時代を切り開くような表現をしていた80~90年代までの状況と現在は少し違います。ファッション業界をつくっているのは、その上に立っている人です。

WWD:クリエイティブ・ディレクターでもなく、彼らを採用する側であるビジネスマンが“モード”を作っていると。

成実:80年代だったら「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS以下、ギャルソン)」、90年代だったら「メゾン マルタン マルジェラ(MAISON MARTIN MARGIELA、現メゾン マルジェラ)」など、クリエイターが“モード”をつくっていく時代がありましたが、この20年ほどはそういう状況にない。自分で切り開いてやっていく人は極端に少なくなってしまっていて、いたとしても目立たない。どちらかというと既存の“モード”の中で活動していく人が多い。

べつにそれが悪いわけではないですし、それなりに面白いものは作られているとは思うのですが、かつて感じていた可能性、ワクワクするような感じはこの10年くらいないです。だから若い世代が何を面白いと思っているかということの方が僕は興味がある。

クリエイターが切り開いていく時代は決着した

WWD:アルノー、アナはお互い作用しあってビジネスをつくっていっているパートナーのような部分もあります。アルノー・アナ方式的なものは今後も続く?

成実:ファッションは変化していく世界ですからもうそろそろ……とは思うので、次のモデルが必要だと思います。大量生産はもうやめようよ、みたいな社会になっていますから。

WWD:次のファッションのシステムはどのようなものになるのでしょうか?

成実:むしろ私が知りたい(笑)。

WWD:著書の「20世紀ファッションの文化史 時代をつくった10人 」の続編を書くとしたら誰を書くのか?あるいは書けるのか?

成実:紹介する最後の1人がマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)だったのですが、本当にそこで終わってしまっているなという気がします。クリエイターが切り開いて行く時代は最終的に決着した気がします。

ローカルなリアリティーから作られるもの

成実:僕が最近関心があるのは、グローバルを意識せずローカルで活動する人たちです。例えば、長賢太郎「オサケンタロウ(OSAKENTARO)」デザイナーや居相大輝「イアイ(IAI)」デザイナー。2人とも京都で服を手作りしていて、ある意味アルノーたちと対極にあるような人たちです。

WWD:なぜその2人に興味を持った?

成実:“モード”ではない服作り、もう少しローカルなリアリティーから作られるものってなんだろうということを考えたかったからです。

WWD:彼らはグローバル企業とは逆で成長拡大願望はない?

成実:そういうことを考えていない人たちですね。彼らが既存のファッションシステムの代わりになるということはあり得ないかもしれませんが、一つの服の可能性として面白いなと。水野大二郎・京都工芸繊維大学特任教授はもっとラボを使ったデジタルな服作りなどを目指しているでしょうけれども、僕の場合は「服ってなんだろう?」みたいなことを人文的に考える方向です。

例えば、京都新聞の行司千絵さんは記者をやりながら服を作っている人で、自分の母親に服を作ったり、知り合いに頼まれて服を作ったりなどのアートっぽい活動をしている。人ありきなんですよね、この人にこういう服を着てほしいとかで、ビジネスではない。

WWD:どこか原点回帰に近い気がします。

成実:オートクチュールみたいなことがもう一回復活してもいいわけです。いまと違うものが面白い。もちろん「ギャルソン」とかも面白いんですけれどもね。

「#モードって何?」をもっと見る

秋吉成紀(あきよしなるき):1994年生まれ。2018年1月から「WWDジャパン」でアルバイト中。

The post 「かつて感じていた可能性、ワクワクするような感じはこの10年くらいない」by成実弘至教授 連載「モードって何?」Vol.4 appeared first on WWD JAPAN.com.

地球の17%を占める微生物の力を借りるスパイバーにワクワク ITのプロ「WWDジャパン」最新号につぶやく

 大手通信会社に入社後、国内外でITソリューションを提供するビジネスマンが、今週のファッション週刊紙「WWDジャパン」で気になったニュースを要約してお届け。最先端のテクノロジーから企業と、その利用者が必要とするものについて考え続けたITのプロ、CKRが未来的視点からニュースにつぶやきを添えます。

今日のニュース:P.6「スパイバーはアパレル産業をどう変えるのか」

読み解きポイント:「Brewed(ブリュード)」に込められた意味を考える。ビールの作り方を知れば、人工タンパク質素材のすごさが分かる!

ニュースのポイント

 ゴールドウインとスパイバーが共同で、“ムーン・パーカ”を発表。天然素材、化学繊維でない、第3の繊維である人工タンパク質素材「ブリュード・プロテイン」を使用。全く新しい素材のため、加工、染色、縫製、全ての工程をゼロベースで設計しており、プロセスそのものも知的財産に値する。

CKRはこう読む!

 「17%」。地球上の全ての生物の重量のうち、微生物が占める割合です。ちなみに植物が82.5%、動物は0.5%、人間は、たったの0.01%です。この割合だけでも、微生物の可能性を感じます。

 人工タンパク質素材も、食卓で馴染みのあるビールも、地球上に多く存在する微生物の発酵という力を借りて、作られています。

 「タンパク質素材は、石油のような枯渇資源依存ではなく、再資源化が可能。だからサステイナブル」というふんわりしたイメージから、もう一段踏み込み、発酵という循環型プロセスと科学的アプローチに成功したスパイバーのすごさについて、考察してみたいと思います。

 「Brewed Protein(ブリュード プロテイン)」。直訳すると、醸造されたタンパク質です。醸造とは、発酵作用を利用して製造するという意味で、「Brewery(ブリュワリー)」は、ビール醸造所のことです。

 ビールは、以下の工程で製造されます。

・麦芽、米などとお湯を混ぜ、麦汁を作る。
・麦汁をろ過し、ホップを加え煮沸。
・酵母(微生物)を加え、麦汁に含まれる糖分をアルコールと炭酸ガスに分解。
・貯蔵、熟成させ、ろ過すれば、ビールの出来上がり。

 酵母は生きるために糖を食べて、アルコールと炭酸ガスに分解するという循環型プロセスを持っています。ビールの香りや味は、どんな麦芽、ホップ、水を使い、どの酵母を組み合わせるかで決まります。また自然生物を活用した製造のため、理想の香りや味を生み出すまでには、トライ&エラーを繰り返す必要があります。

 人工タンパク質素材の“ムーン・パーカ”も、遺伝子データを解析し、微生物による糖の分解プロセスというトライ&エラーを繰り返し、最適な仕込み方、ノウハウを蓄積した上に誕生したものです。今回の発表は、科学的アプローチで一定の品質、ノウハウを確保できたということを意味します。

 今までの服は、生地を選択し、色やサイズ、カッティングによって、デザイン、カスタマイズを行なってきました。これからは素材そのものも、同じ生態系に生きる微生物の力を借りてデザインする、という時代へ入ったことにワクワクしませんか?

 科学的アプローチでレシピを増やし、繊維だけでなく、フィルムや樹脂など適用領域拡大に挑戦するスパイバーの活動をこれからも応援したいですね。

CKR Kondo : 大手通信会社に入社後、暗号技術/ICカードを活用した認証決済システムの開発に従事。その後、欧州/中東外資系企業向けITソリューションの提供、シンガポール外資系企業での事業開発を経験。企業とその先の利用者が必要とするもの、快適になるものを見極める経験を積み、ウェアラブルデバイスやFree WiFiを活用したサービスインキュベーションを推進。現在は、米国、欧州、アジア太平洋地域にまたがる、新たなサイバーセキュリティサービスの開発を推進中

The post 地球の17%を占める微生物の力を借りるスパイバーにワクワク ITのプロ「WWDジャパン」最新号につぶやく appeared first on WWD JAPAN.com.

花も実もあるシンガーソングライター、ロロ・ズーアイ

 2017年に発表した楽曲「High Highs to Low Lows」で一躍有名となったシンガーソングライターのロロ・ズーアイ(Lolo Zouai)。現在23歳の彼女は、アルジェリア人の両親のもとにフランスで生まれ、その後サンフランシスコやロサンゼルスで育ち、現在はブルックリンを拠点に活動している。このようなバックグラウンドから多様な音楽やカルチャーに影響を受け、それらを折衷して自身の音楽として昇華し表現。フレンチミュージックとトラップの要素を混ぜ合わせたような物憂げでノスタルジックなサウンドに、ズーアイのミステリアスな声を乗せている。また英語やフランス語を織り交ぜたソングライティングのセンスも高く、女性R&Bシンガーのハー(H.E.R.)が今年のグラミー賞を獲得したアルバム「H.E.R.」には、ソングライターとして「Still Down」を提供している。

 4月に楽曲「High Highs to Low Lows」と同名のデビューアルバムをリリースし、8月には「サマーソニック 2019(SUMMER SONIC 2019)」の出演に加え、ファッションアイコンとして「コーチ(COACH)」のグローバルキャンペーンに抜擢されるなど、勢いを見せるズーアイ。彼女がいったいどのように楽曲を制作しているのかルーツとともに迫ったほか、ファッション観や意外な交友関係についてまで話を聞いた。

WWD:活動のきっかけは?

ロロ・ズーアイ:小さい頃からシンガーになることが夢で、自分を信じて歌の練習をずっと続けて、いろんな音楽を聴いて、だんだんうまくなって、形になり始めたのが2014年ごろ。それで「サウンドクラウド(SoundCloud)」に自分の部屋で作ったビートやほかのアーティストのカバーをアップするようになったんだけど、アップしては非公開にしたりしてたの。それからニューヨークに移り住んだタイミングで「本気で音楽をやろう」と思って、まずはじっくりと時間をかけて“私の音作り”をしたのよ。50曲ぐらい録音したけどそれは練習のためだから発表しなくて、17年に「High Highs to Low Lows」ができたときにようやく「最初にアップしたい曲はこれだ」って思って発表したの。

WWD:カバーは誰の何を?

ズーアイ:高校生の頃にT-ペイン(T-Pain、米シンガーソングライターでラッパー)の「Up Down(Do This All Day)」をカバーしたのは覚えてるわ。5万回ぐらい再生されたの。数週間前に「アップルミュージック(Apple Music)」の番組で彼の曲を流したら本人がツイッターで反応してくれて、「人生は素晴らしい!」って思ったばっかり(笑)。

WWD:T-ペイン以外に好きなアーティストや影響を受けたアーティストは?

ズーアイ:好きなアーティストはたくさんいるし、誰か1人のアーティストを崇拝しているわけじゃないから答えるのが難しいわね。高校生時代はトゥー・ショート(Too $hort、米西海岸出身のラッパー)がアイドルだったけどいまの私はラッパーじゃないし、T-ペインは影響は受けていないけど好きなアーティストの1人。子どもの頃から今にいたるまで、本当にいろんな人たちから影響を受けているだろうし……この質問は好きじゃないわ(笑)。

WWD:自分の部屋でビートを作っていたということは、家に宅録などの機材があったんですか?

ズーアイ:マックブック(MacBook)を買って、「ロジック(Logic)」(音楽制作ソフト)で作ってたの。マイクはシュアー(SHURE)の“SM7B”を使ってたんだけど、理由は「自宅での録音に最適なマイクは?」ってググって出てきたから(笑)。マイケル・ジャクソン(Michael Jackson)が「Thriller」の録音で使ったマイクって書いてあって、「あのアルバムは最高だから私もこのマイクを使えばいい音楽が作れるかも」ってね。あとはマイクをマックブックにつなぐインターフェースとMIDIキーボードかな。それだけあれば音楽を作るには十分だった。まぁマックブックがあれば何でもできちゃうからMIDIキーボードはいらなかったんだけど、コードを弾くにはキーボードの方が使いやすくて。でもマックブックを買う前からiPhoneの「ガレージバンド(GarageBand)」(音楽制作ソフト)でビートを作っていたし、今じゃもっと機材はいらないと思うわ。

WWD:いまの20代の音楽好きは、一度は「ガレージバンド」を使ってますよね。私も例に漏れず試してみたんですが、才能がなかったようでダメでした(笑)。

ズーアイ:誰でも向いているわけじゃないから落ち込まないで(笑)。

WWD:制作するジャンルは当時から変わっていませんか?

ズーアイ:ん〜どうだろう。自然に成長しているとは思うから、昔と変わっていないとは言えないかな。

WWD:アルジェリアにルーツを持ち、フランスで生まれ、アメリカで暮らして、と多様なバックグラウンドをお持ちですが、楽曲制作にはどのような影響を与えていますか?

ズーアイ:生まれ故郷がフランスだから歌詞にフランス語を使っているけど、育ったわけじゃないからポップカルチャーや新しい音楽は知らなくて、音楽で影響を受けたのはエディット・ピアフ(Edith Piaf、仏シャンソン歌手)やブリジット・バルドー(Brigitte Bardot、仏女優で歌手)、フランソワーズ・アルディ(Francoise Hardy、仏歌手)ら1960年代のクラシックなフレンチミュージックばかり。「High Highs to Low Lows」はアルジェリアの伝統音楽の影響を受けていて、子どもの頃に聴いていたハレド・ハジ・ブラヒム(Khaled Hadj Brahim、アルジェリアのライ歌手)のメロディーをそのままアドリブやコーラスで使っているの。そして、サンフランシスコで育ったからウエストコースト・ラップっぽさが節々に出ていると思うーー全部混ぜたものが私の曲を私らしくしているの。

WWD:フランス語で「私」を意味する楽曲「moi」は、そういったバックグラウンドや環境を題材にしているそうですね。

ズーアイ:フランスで6カ月くらい暮らしていた19歳の頃の歌なんだけど、「Je ne suis pas chez moi」という歌詞は「私は(自分の)家にいない」という意味で、常に移動していたり、たくさん旅をしていたり、異常なくらいあちこち飛び回っていたからホーム(家)だと感じられるところがないことを書いているの。そして、私は音楽活動に専念したいからひとところに縛り付けることはできないという内容でもあって、自由でいたいから今は恋愛関係にフォーカスしたくないしできない、って意味もあるわ。

「They think it's all gucci, but it's 99 cents(全部グッチだと思ってるけどこれは99セント)」という歌詞も印象的な「High Highs to Low Lows」

WWD:あなたを代表する「High Highs to Low Lows」で何かエピソードがあれば教えてください。

ズーアイ:「High Highs to Low Lows」は私とステリオス・フィリ(Stelios Phili、ニューヨークを拠点とするプロデューサー)が初めて一緒に完成させた曲で、私が音楽業界で活躍しようとしている頃の苦労を描いたものだからとっても重要な曲。「I can't wait to really get paid not just minimum wage(最低賃金で働くのはもう嫌)」って歌詞があるように、当時はレストランで働いていたの。そこでは4年くらい働いていたんだけど、レストランの仕事は私の思い描く道とは全くの別世界で本当に嫌だった。実際は最低賃金よりほんのちょっと高い時給だったから、歌詞はちょっと大げさなんだけどね(笑)。

それでも時々、ロサンゼルスやマイアミやアトランタにいるプロデューサーが呼んでくれて一生に曲を作っていたんだけど、彼らの家に行くと私とはぜんぜん違うセレブの贅沢な暮らし(ハイ)をしていて、私には慣れない環境が彼らにとっては普通。それから狭いアパート(ロウ)に帰ると……って気持ちのアップダウンの対比がすごかった。そうやっていろんな人と曲を作ることでまとまりがなくなって、“私のサウンド”を見失う時期があったの。そんな苦悩の中、ステリオスと出会って「この人なら私のストーリーを伝えて一緒に曲作りができる」って感じたのよ。「High Highs to Low Lows」ってフックはすでにあって、方向性を彼に伝えたら案の定完璧に作ってくれた。その週はずっと2人でヴァースを書いて、「ちょっとフランス語を入れてみようかな」って最初に出てきたのがイントロの「Des hauts et des bas(浮き沈み)」で、それをアラビア風のメロディーをつけて歌ってみた。だからさっきの話に少し戻るけど、最初の曲を作った時点で3つの文化が混じっていたのよね。この曲で私の進むべき方向が決定したし、手応えも感じたわ。

WWD:思い入れがある曲だからこそ、発表から2年がたったいまアルバムのタイトルにしたんですね。

ズーアイ:その通り。私のキャリアの転機になった重要な曲だし、基盤となった曲だからアルバム全体を表すタイトルとしてこれしかないと思ったの。

「ファッションには設計図なんてない」

WWD:個人的にあなたのスタイルがとてもツボなんですが、あなたらしいファッションといえば何でしょうか?

ズーアイ:私は他の人が何をしているのかあんまり気にしないから自分が好きなようにやってるんだけど、スタイルという意味では高校生の頃からあまり変わってないの(笑)。古着屋やリサイクルショップは、努力をしないと好きなもの、例えば好みの色合いのビンテージウエアとかが見つからないからよく行ってるわ。その分愛着も湧くしね。つい手に取っちゃうのはカラフルでビッグサイズのジャケットとか、ルーズなシルエットの服。足元は最近「ナイキ(NIKE)」がイケてるって聞くから「じゃあ履こうかな」って履き始めたくらいで、もともとは「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」が好きだから人生で一番よく履いていると思うわ。

ハーレーダビッドソン(Harley-Davidson)やナスカー(NASCAR、米最大のモータースポーツ統括団体。「moi」のリリックにも登場する)も好き。簡単に言うと車好きで、バイカーの服が好き。(笑)。モータースポーツは運転したことがなくて車も持ってないし、誰がデザインしているのか知らないけれど、そういう服は本当にかっこいいと思うの。こういうレース用のキャンディーみたいな色のジャケットは特に大好きで、男性的な洋服にどこかフェミニンなタッチを加えるのが得意ね。

WWD:なぜ男性っぽいものに惹かれるのでしょうか?

ズーアイ:最近はだいぶフェミニンになってきたけど、昔からおてんばでボーイッシュなタイプだったの。ママがボーイッシュなタイプだから子どもの頃はそういう服を着せられてたんだけど、当時の写真を見ると今の私とほとんど同じ格好だったりするから母の影響が大きいわね。タイトな洋服は着にくくてあんまり好きじゃない。男性っぽい服は着ていて楽でもあるの。

WWD:話を聞く限りいないと思うのですが、スタイルアイコンはいますか?

ズーアイ:私のことよく分かっているじゃない、答えはノーよ(笑)。ときどき「わお、なんてクールでスタイリッシュなんだろう!」と思うような、説明できない“何かを持った女の子”に会うんだけど、「このアイテムがかっこよかったな」「あの着こなしが素敵だったな」って街ゆく女の子たちを参考にしたり、ただ自分が好きなものを着たりしている感じかな。私はサンフランシスコってスタイリッシュな街で育ったから、特にそうかもしれない。

あ、“何かを持った女の子”はみんな街で見かける普通の女の子たちの話ね、私はセレブに憧れたことがないから。自分じゃない誰かになろうとするのは健康的じゃないと思うし、ファッションは設計図なんてなくて思いつきでランダムにやるからこそ楽しいの。一夜にして誰かがトレンドをつくり出すかもしれないしね。

WWD:「コーチ」や「トミー ジーンズ(TOMMY JEANS)」などのビジュアルに起用されていますが、それについてどう思いますか?

ズーアイ:「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」は昔から大好きで、古着屋でビンテージを探したりするぐらいだからとてもうれしかったわ。「コーチ」はユルゲン・テラー(Juergen Teller)が撮ってくれるというし、コンセプトの“ニューヨークで夢を実現する”に共感したからいい機会だと思って引き受けたの。もともと好きだったり、そうでなかったりしても、ブランドと仕事をすることは好きよ。もっと私を広く知ってもらえる機会だし、音楽業界とは違ったアプローチでオーディエンスを増やせる方法だからね。

WWD:ではコラボしたいブランドは?

ズーアイ:いつか「ドクターマーチン」とコラボしてみたいかな。「トミー ジーンズ」との提携はこれからも続けたいし、いつかデザイン面でもコラボしてコレクションを発表してみたいわ。

WWD:あなたのSNSを見ているとポケモンなど日本アニメに関するものをよく見かけるのですが、日本のサブカルチャーが好きなんでしょうか?

ズーアイ:ポケモンが好きで、特にプリンが大好きなの。プリンはかわいくて歌うから私の分身って言っているぐらいにね(笑)。あとはサンリオのキャラクターが大好きで、子どもの頃はショッピングセンターに行くとまずサンリオのショップに行っていたわ。日本のアニメって本当にかわいいから、私が意識していなくても受けた影響はスタイルに表れているはずよ。

WWD:最後に、「サマソニ」のライブはどうでしたか?友達のケミオくんも観に来ていましたね。

ズーアイ:初めての日本でのライブだったけど最高だった!本当に楽しかった!ケミオとはネットを通じて5年くらい前から友だちで、私がアーティストとして活動する前から知ってくれていた1人のフォロワーだったの。今年初めてニューヨークで会って、その後もロサンゼルスで遊んだし、今夜もこれから一緒に遊びに行く予定!

The post 花も実もあるシンガーソングライター、ロロ・ズーアイ appeared first on WWD JAPAN.com.

2020年春夏NYコレハイライトVol.3 NYコレ中盤3日目の3ブランドをプレイバック

 2020年春夏ニューヨーク・コレクションの折り返し、3日目の3ブランドをプレイバックする。

シエス マルジャン(SIES MARJAN)

DESIGNER/サンダー・ラック(Sander Lak)

 メイクアップやネイルポリッシュからインスピレーションを受けたカラーパレットには、鮮やかなレッドやイエロー、エメラルドグリーンが登場。テーマは「アイロニーや悪趣味、リアリティー番組、風刺などを批判し、ゆっくり時間をかけて自分らしさを発見することの美しさを捉えた」と話すサンダー・ラック。そんな思いを込めた洋服は、シルクをドレーピングしたドレスやテーラードデニムなど、ラグジュアリーなムードが漂う。今回はクロコダイル柄をさまざまな素材にエンボス加工を施したピースも多出。サテンやシルクはネイビーやアプリコットなどの落ち着いたカラーでそろえ、光沢感のあるレザーはレッドに染めることによりリップグロスをイメージ。得意とする色とドレーピングは健在だったが、今季は少しクチュールテイストは薄くなり、シンプルなピースが多かった。

パイヤー モス(PYER MOSS)

DESIGNER/カービー・ジーン・レイモンド(Kerby Jean-Raymond)

 黒人デザイナーのカービーは、歴史的に無視されてきた黒人にスポットライトを当て、“抹殺された黒人の歴史を取り戻す”ことを目的にコレクションを過去2シーズンに渡り作ってきた。その3部作の最終編だった今季は、ロック音楽の元祖と言われる黒人女性アーティストのシスター・ロゼッタ・サープにオマージュを捧げ、約3000人を収容するブルックリンのキングスシアターで開催した。聖歌隊が歴代の黒人ミュージシャンの有名曲を歌う中をモデルが歩き、まるで教会の日曜礼拝の中にファッションショーがあるかのような演出。ワイドショルダーのジャケットやフレアパンツなど、80年代を連想させるレトロなスタイルに、ストリートのテイストをミックスして現代風にアップデートした。さらに後半のルックはカービーがアーティスティック・ディレクターを務める「リーボック」とのコラボアイテムを連発。ロゴ入りのトラックパンツやレギンスなどのスポーツウエアにオーバーサイズのジャケットやシースルートップスを合わせたハイとローファッションの掛け合わせを提案した。

プラバル グルン(PRABAL GURUNG)

DESIGNER/プラバル グルン

 アメリカらしいビューティ・ページェント、いわゆるミスコンに焦点を当てた。大きなパフスリーブ、真紅のバラプリント、パワフルなジャケット、フェザーをふんだんにあしらったイヴニングなど、ミスコン決勝戦さながらのスタイルにダイバーシティー(多様性)のアイデアをプラスする。

 ダイバーシティーを表現するのは、色が混じり合うタイダイ、素材と色のハイブリッド、水着&パレオにジャケットというオン・オフを横断するスタイリング、それに花火のモチーフ。花火は、打ち上がってからわずか数秒で色を変える。さまざまな色が1つの花火に詰まっているのが、ダイバーシティーなマインドに通じるという解釈だ。

The post 2020年春夏NYコレハイライトVol.3 NYコレ中盤3日目の3ブランドをプレイバック appeared first on WWD JAPAN.com.

米ラグジュアリーリセール企業が人気ブランドランキングを発表 1位は「グッチ」

 ラグジュアリーブランドの中古品を扱う会員制ECサイトを運営するザ・リアルリアル(THE REALREAL)は人気ラグジュアリーブランドと再販市場におけるトレンド傾向に関するリポートを公開した。同リポートは過去1年間に同サイト内で販売された数百万点のアイテムと購買客から収集したデータに基づいている。

 同社は2011年の創業以来目覚ましいスピードで成長しているラグジュアリー2次流通の代表的な存在で、現在はeコマースに加えてニューヨーク・ソーホーなどに3つの実店舗をオープンし、全米11カ所に宝石鑑定士や時計職人など専門家が常駐する委託品受付オフィスを構える。今年6月には株式の新規上場(IPO)を実施し、開始数分で株価がほぼ50%増の29.9ドル(約3169円)まで上昇、時価総額は約25億ドル(約2650億円)となった。

 リポートによれば人気トップ10の1位は「グッチ(GUCCI)」、2位は「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」、3位は「シャネル(CHANEL)」。「グッチ」は2位、3位との差を広げ続けているという。ダッドスニーカー“トリプルS(Triple S)”の人気が寄与した「バレンシアガ(BALENCIAGA)」もランクインし、成長率が102%増でトップ10のブランドの中で最も高い成長率を記録。スニーカーがブランドに与える影響は大きく、「ディオール(DIOR)」は同99%増、「フェンディ(FENDI)」は同89%増だった。これら3ブランドの需要が最も大きい層はミレニアル世代だ。

 ラティ・レヴェスク(Rati Levesque)=ザ・リアルリアル最高執行責任者は「上位の2ブランドは新鮮な視点のコレクションを提供することで、人口構成が変化するラグジュアリー・ショッパーにうまく順応した。『グッチ』の大胆なマキシマリズムから『ルイ・ヴィトン』のストリートウエアに影響を受けたデザインまで、ミレニアル世代の支持を得る独自性がある」と述べた。

 同社のサーシャ・スコーダ(Sasha Skoda)=ウィメンズ・マーチャンダイズ・ディレクターは「ルイ・ヴィトン」が躍進した理由を「より楽しみがあり、独自のプリントをうまく活用している」と語り、ほぼ全てのカテゴリーでトップを占拠する「グッチ」については、「1次流通市場での成長が鈍化しているという情報があるが、再販市場ではまだその傾向は見られていない」と言及した。

 18年にフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)が退任し、エディ・スリマン(Hedi Slimane)が新たにアーティスティック、クリエイティブ&イメージディレクターに就任した「セリーヌ(CELINE)」はトップ10から外れており、同氏はエディのファーストコレクションに対する痛烈な反応について言及し「新生『セリーヌ』で何が起こるか人々は見守っている」と語った。また「消費者は次なるビッグブランドを探している。それは『ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)』かもしれないし、最も検索された新興ブランドの一つかもしれない」とも述べた。新興ブランドには「スタウド(STAUD)」や「カイト(KHAITE)」「トーテム(TOTEM)」「レジーナ ピョウ(REJINA PYO)」そして「サンディー リアング(SANDY LIANG)」も挙がっている。

投資するなら、やはり「エルメス」

 時間が経っても再販価値が落ちないインベストメント・バッグについては、購入価格に対して平均93%で再販される「エルメス(HERMES)」の“ケリー(Kelly)”といったクラシックな定番がけん引。一方で“IT”バッグは平均再販価値が80%から始まり5年目には60%を下回るため、売り手は投資収益率を最大化するために迅速に動く必要があるという。「ラグジュアリーハンドバッグは真に投資対象になるが、スタイルに持続力があるかどうかがリセール市場での価値に劇的な影響を与え得る」とスコーダ=ディレクターは話し、購買客は最終的に再販することを考えて商品を選ぶことに精通しているとも付け加えた。価値が上昇して再販が増えている新たなバッグには「ジャックムス(JACQUEMUS)」の“ル・チキート(Le Chiquito)”や「クロエ(CHLOE)」の“クロエ C(Chloe C)”、「フェンディ」の“モン トレゾール(Mon Tresor)”、「プラダ(PRADA)」の“シドニー(Sidonie)”、「ルイ・ヴィトン」の“ドーフィーヌ(Dauphine)”があるという。

 カテゴリーごとのマクロトレンドも明らかになっており、検索数が前年の4.8倍だったストーン付きヘアクリップや4.6倍だったタイダイ柄アパレル、4.5倍だったネオンカラー、2.6倍だったブレザーのほか、カーディガンやシアー素材のアイテム、PVCなどが挙がった。

ストリートブランドへの需要は爆発的に伸長

 ストリートウエアは1次市場で供給に制限を設けたことが再販の急増をもたらし、検索需要の伸びが3.8倍だった。スニーカーとストリートウエアの専門家ショーン・コンウェイ(Sean Conway)氏は「過去1年間で(需要の)大きな上昇が見られた」と語り、ユニセックスの概念と目立つ商品デザインが成長に寄与しているとも述べた。ミレニアル世代やジェネレーションX、女性層からの需要も伸長しており、女性のメンズのストリートウエアの購買率は前年比95%増だった。

 同カテゴリーのブランドで成長率が高かったのは前年の27倍だった「パーム エンジェルス(PALM ANGELS)」で、次いで26倍だった「ナイキ×オフ-ホワイト(NIKE X OFF-WHITE)」、10倍の「ベイプ(BAPE)」「オフ-ホワイト(OFF-WHITE)」、6倍の「フィアー オブ ゴッド(FEAR OF GOD)」だった。スニーカーブランドのトップは7倍の「イージー(YEEZY)」で、そこに「プラダ」「バレンシアガ」「ナイキ(NIKE)」「ゴールデン グース(GOLDEN GOOSE)」が続いた。

 ストリートウエアのバイヤーのほとんどがラグジュアリー・ブランドでは「グッチ」、次に「プラダ」そして「ルイ・ヴィトン」を買い付ける。ドミニク・ハラス(Dominik Halas)=ザ・リアルリアル メンズウエア・アーカイブ・エキスパートは「ヴィトンはヴァージル・アブローのメンズウエア・アーティスティック・ディレクター就任と素早いドロップで2番手に近づくだろう。イージーが依然として最高位なのは非常に認知度が高く、履くために購入する人々にとってエントリーレベルのスニーカーであるからだ」と語った。

 同社はまた環境そしてサステイナビリティーへのファッションの影響も重視されていると述べ、顧客の82%が同社で買い物をする大きな理由にサステイナビリティーを挙げたと指摘した。消費者の93%がサックス・フィフス・アベニュー(SAKS FIFTH AVENUE)やノードストロム(NORDSTROM)、ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)、ブルーミングデールズ(BLOOMINGDALE’S)といった百貨店で買い物をする一方で、32%はファストファッションからザ・リアルリアルへ移ったと回答したという。

大根田杏(Anzu Oneda):1992年東京生まれ。横浜国立大学在学中にスウェーデンへ1年交換留学、その後「WWD ジャパン」でインターンを経験し、ファッション系PR会社に入社。編集&PRコミュニケーションとして日本企業の海外PR戦略立案や編集・制作、海外ブランドの日本進出サポート、メディア事業の立ち上げ・取材・執筆などを担当。現在はフリーランスでファッション・ビューティ・ライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を行う

The post 米ラグジュアリーリセール企業が人気ブランドランキングを発表 1位は「グッチ」 appeared first on WWD JAPAN.com.

「服の見た目のかっこよさや意味だけに特化した“モード”がほぼ終わりを迎えている」by水野大二郎特任教授 連載「モードって何?」Vol.3

日本だけを見ていてもしょうがない

WWD:“モード”とは何でしょうか?

水野大二郎・京都工芸繊維大学特任教授(以下、水野):みなさんの“モード”の解釈を統合したらなんとなくの輪郭は出てくるとは思いますが、一般的な意味としては“流行” “慣習” “時勢に合った様相”です。ファッションが取り立ててあからさまだったから“ファッション”=“モード”と思われていましたが、“モード”は必ずしもファッションのことだけじゃない。プリンもプリン・アラ・モードですし。

要は“人の生活全般に関わるある一定の期間にだけ立ち現れてくる慣習的なもの”と考えています。それは消費するものごとと関係している場合が多いため、車や電化製品など消費対象になっているもの全てに“モード”がある。

WWD:2019年現在の“モード”ではなにが起きていますか?

水野:僕は日本だけに限定した一過性の社会現象やファッションだけをあまり見ないようにしています。日本だけを見るのも面白いですが、日本が持っていた文化的な発信力はすごい弱くなってきていると思うので、そこだけ見ていてもしょうがないと思っているのが正直なところです。

ではなにを見てるのかというと、僕が慣れ親しんでいたイギリス(水野特任教授は英国王立美術大学ファッションデザイン博士課程後期修了)を中心としたヨーロッパでのデザインを取り巻く“モード”です。“デザイン”といってもプロダクトなどのことだけではなく、社会や政治、環境問題を対象にする広い意味での“デザイン”がヨーロッパにおいてどのように扱われているのかに興味を持っています。

バイオ・デザインの潮流

WWD:ヨーロッパにおけるデザインに関して、どのような現象が起きていますか?

水野:現在、京都工芸繊維大学KYOTO Design Labで海外プロジェクト連携・海外交渉を担当しており、夏の海外出張でセント・マーチン美術大学(Central Saint Martins以下、セント・マーチン)やロンドン・カレッジ・オブ・ファッション(London College of Fashion)があるロンドン芸術大学(University of the Arts London)、オランダのアーネム芸術アカデミー(ArtEZ Academy of Art & Design Arnhem以下、アーネム)、同じくオランダのアイントホーフェン・デザイン専門学校(Design Academy Eindhoven)などの研究者と話をしてきました。

出張を通してわかったことは、服の見た目のかっこよさや意味だけに特化した“モード”がほぼ終わりを迎えているということ。見た目のかっこよさや意味などは、環境系の問題に対してなんのインパクトもないので、その上にどのようなものを作るか?ということについて議論して、成果を発表しようとしている状態にある。例えばセント・マーチンの、素材からのデザインを研究するマテリアル・フューチャーズ(Material Futures)という修士過程に、かつてだったらコンセプチュアルなデザインを志したであろう学生が流れている。

WWD:特に顕著な動きは?

水野:現在、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)のような方向性に共感する人が増えています。成果物もラディカルで素材からデザインを始めるような事例が多い。いままでのコレクションでコンセプチュアルなものを出す、みたいなものとは違う次元に来ています。

セント・マーチンやアーネムなどではバイオ・デザインの潮流が顕著です。アーネムでは世界的に評価の高い農学部を擁するワーヘニンゲン大学(Wageningen University)とコラボして彼らのバイオ技術を参照しながら、“マイコテックス(MYcoTEX)”というキノコ由来のバイオ素材などを使った新しい服作りを実践している。“美しさ”のようなこれまでの価値観を守りつつ、新しい素材やアプローチで服を作ることで社会的な問題に対して新しい解決の可能性を提示しようとしている。

名付けようのないクリエイター?

WWD:日本国内ではどのような動きがありますか?

水野:日本は長見佳祐「ハトラ(HATRA)」デザイナーがCLO3Dを導入するなど、デジタル技術を使ったデザインがようやく普及定着し始めたという段階。僕がそれを言い始めたのが2012年なので、やっとだなと思います。12年頃デジタルファブリケーション領域で活動していた人たちは現在バイオ・デザインに流れている。だからデジタルファブリケーション技術を前提にしてバイオマテリアルを作る方向性はまた5〜6年後くらいに日本にも来るのではないでしょうか。

WWD:バイオマテリアル技術のような理工知にデザイン的思考、感性はどのように関係してくるのでしょうか?

水野:それがないと意味がないと思います。紹介したセント・マーチンやアーネムはいわば美大。強度や堅牢度などの工学的な評価基準だけに終わらせない視点も必要です。

デジタルファブリケーション領域で新しいデザインを模索している名付けようのないデザイナーなのかエンジニアなのかよくわからない人たちはもう次の次くらいの段階まで行っています。おそらく“モード”はファッションのこれまでの価値基準を守りながら、バイオマテリアルなどを中心にしたデジタルファブリケーション・バイオ技術を前提に実験的なものを作っていくことになると思います。

WWD:その名付けようのない存在にはどのような人がいますか?

水野:例えば、川崎和也主宰のシンフラックス(SYNFLUX)(川崎は慶應義塾大学SFC水野大二郎研究室出身)。情報系にも強く、サステイナビリティーなどの課題を意識しながら実践している。なんと言ったらいい人なんですか――という感じです。

シンフラックスが開発したAIを活用したパターンメーキングシステム「アルゴリズミック・クチュール」のイメージ動画

ありうる可能性を提案する

WWD:課題を解決するという意味だと、従来のプロダクトデザイナーが言うところのデザインに近いように思える。ファッションデザイナーは課題を解決するというより、欲望を後押しするようなところがあったと思う。

水野:欲望を駆動させるという90年代的な発想はもう終わったと思います。お金は必要だけれども、消費を喚起するよう記号的に操作して資本主義経済を駆動させるという考え方だけだとやばいと思っている人たちはすごく多くなっている。

課題解決としてのデザインも2000~10年代に定着したデザインの一つの解釈だと思いますが、これも終わりを迎えつつあります。例えばレザーをやめるだけで解決するような簡単な話ではない。課題解決案を単純に出せるほど甘くないですから。いまの若い世代は課題を解決するということだけではなく、課題がそもそも何で、どこに解決の可能性があるのかということを考え、ありうる可能性を提案しているという状況にいます。

WWD:ファッションデザインにはどのような可能性があるでしょうか?

水野:ありうる可能性を提案することはファッションがいままで散々やってきたこと。これまでのラディカルでコンセプチュアルなファッションが好きな人でもそこは納得、共感できるはずです。いずれにしても、次の次くらいの社会を目指したありうる提案をして、そこに向けて生き延びうるくらいの生態系、それはビジネスの生態系でもあり社会の生態系でもあり環境の生態系でもあるようなものを作ろうとしている。

アルゴリズムと人間の創造性のハイブリッド

WWD:現状において何を突き詰めたい?

水野:サステイナブルな生態系作りやコンピューターを使った新しい服作りなど、いままでデザインスタジオがやってきたことでは補い切れないことをラボでやることです。スタジオでの作業からラボでの実験に向かっていかないといけない。実験・実践で生まれた実物とともに説明するということを、取り合えずやろうかなと。これは産業だけではなく学校の話でもあり、従来の教育制度を超えた授業のやり方、研究のやり方に変えないと実現できない。

先ほどのセント・マーチンの事例のように、一つの学校で補い切れない場合は外部とコラボしていく必要がある。それをやるには教員・学校が旧態依然としいては不可能です。ただ、その仕組みを日本で実現できるのかはわからない。専門学校がどうなるのか皆目検討がつかないです。だからほとんどつぶれるんじゃないですか?

WWD:理工知を持たなければ生き残れないのではという不安が頭をもたげます。

水野:服作りに焦点を当てて話すと、手作業の時代からアパレルCADなどで手作業をコンピューターに置き換えた時代を経て、最終的にはコードを書くことでコンピューター自体が得られた情報を自動で深層学習し、形を自動算出するという時代になりうると思います。多くのデザイナーがいなくなるかもしれませんが、これは何十年もかかることですし全員が駆逐されるわけではない。全体のパイの比率が大きく変わるということ。

素材に関してもバイオ繊維などが出てくると、サステイナブルではない素材はおそらく消えていく。ビジネスモデルの生態系にしても、単純に人間の経済的な考え方だけではなく、環境系の問題が人間の構造を制約するようになる可能性はある。また、アルゴリズムが人間の行動を決定するようなサービスがたくさん出てくるだろうし、それがやがて主流にはなると思います。これらを総して理系の話ということになるかもしれませんが、人間はアルゴリズムだけで動かないと思います。レコメンドされているものをいいと感じるとは限らない。

WWD:今後、どのような課題があるのでしょうか?

水野:ビジネス、素材、デザインプロセスなどがごちゃ混ぜの状態ですが、明らかにコンピューターが介入してくるような世界観に向かっている。他方で、人間の創造的な行為はそれなりには残ると思うので、そのハイブリッドをどう作り出すかがいまのファッションデザインに限らないデザインの課題になるのではないでしょうか。

「#モードって何?」をもっと見る

秋吉成紀(あきよしなるき):1994年生まれ。2018年1月から「WWDジャパン」でアルバイト中。

The post 「服の見た目のかっこよさや意味だけに特化した“モード”がほぼ終わりを迎えている」by水野大二郎特任教授 連載「モードって何?」Vol.3 appeared first on WWD JAPAN.com.