気鋭ブランド「ミカゲシン」や「ベースマーク」がノミネート 東コレ頂上決戦“T-1グランプリ”予選第2夜 

 2021-22年秋冬シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」が15日に開幕しました。国内外から51ブランドが参加し、4割がリアルショーを行います。「WWDJAPAN.com」では、今シーズンのベストブランドをユーザー投票で決定する“T-1グランプリ“を開催!それに先駆け、記者3人がその日に発表したブランドの中から独断でグランプリ候補を選出します。今日のノミネートブランドはこの3つだ!


東コレ取材2シーズン目の現場取材担当の美濃島
「ミカゲシン(MIKAGE SHIN)」

見どころ:テーマの“プロセス”は、「絶望の時代でも、長い目で見れば通過点でしかない」と思いを込めて掲げたもの。そのメタファーとして、馬の重心の変化を描いたイラストをビンテージの医学書から引っ張ってきたり、ニーチェの言葉をコラージュしてテキスタイルにしたりと、アカデミックな視点のモチーフが面白かった。ドレープが美しいプリーツスカートやきれいにクセ取りされたテーラードジャケットなどに落とし込まれていました。ショーの予算の一部をクラウドファンディングで賄ったり、デザイナー自身がSNSでバンバン意見を述べたりと、型にはまらない働き方に新時代の到来を感じさせました。


7都市のファッションウイークを取材してきたコレクション担当の大杉
「ヒロココシノ(HIROKO KOSHINO)」

見どころ:シーズンタイトルは“突破口”を意味する“BREAKTHROUGH”。その名の通り、正統派のスタイルを崩しながら、自由に着飾ることを楽しむという突き抜けたコレクションでした。グレーのジャケットにはアニマルプリントのポケットが付いていたり、クラシカルな千鳥格子のニットには、編み目を分解したような柄があったりと遊び心も満載。動画は開放感のある自然の中で撮影されており、協業を続けてきたピアニストの横山幸雄による音楽が美しく融合しています。また、ヒロコ先生はアートとファッションを両立するまれなデザイナー。60年以上のファッションデザイナーの経歴に加え、墨絵や絵画の作品を生み出し続けており、動画内にも先生の墨を使った絵が登場していました。自己表現の大切さを学ばせてもらえるようなコレクションでした。


若手随一の“ファッションバカ”で東コレ初取材の大澤
「ベースマーク(BASE MARK)」

見どころ:金木志穂が手掛ける「ベースマーク」は、東コレ2回目の参戦。“CROSS THE LINE”をテーマに、クラシカルな西洋の伝統とモダンな東洋のカルチャーを融合しました。得意とする異素材のミックスや、クラシックなアイテムをモードに昇華するテクニックは健在。東洋でお守りや魔除けとして使われるフリンジの装飾が付くアイテムをはじめ、オリジナル素材にジャージーを斜めにドッキングしたセットアップ、ダッフルコートの袖や後ろ身頃の半分をパイルジャカードで切り替えたアウターなどを提案しました。これだけのテクニックを駆使しながら、コレクションピースで約12万円というコスパにもビックリ。これまでウィメンズブランドとして活動してきましたが、今シーズンからは男性モデルをムービーに起用するなど、ユニセックスブランドとして打ち出しています。個人的ネクストブレイク筆頭候補です!

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進化するフード付き“パーカ服” きれいめにもリラックスにも変幻自在

 フードが付いたパーカ(フーディー)のバリエーションが拡大しています。これまではスエットトップスの定番でしたが、最近ではワンピースやジャケットもフード付きに。進化したパーカは、きれいめのスタイルにもリラックスしたスタイルにも使える優秀アイテム。小雨しのぎや風除けはもちろん、力まずこなれたスタイリングに仕上げてくれるオールマイティーな相棒です。

 おしゃれ面でのメリットは、高い位置にボリュームが生まれることで視線が上がり、小顔効果が期待できるところ。3月19日発売の「ユニクロ(UNIQLO)」の「+J」は、シルクブレンドのオーバーサイズのパーカを披露しました。共生地のフレアスカートと合わせ、パーカでも上品かつシックに見える新スタイリングを提案しています。今回は、進化するパーカ服を集めてみました。

ヘルシーコーデを狙うならニットトップスやシャツ

 「パーカ=スエット」の印象が強いですが、近年はフード付きのニットやシャツも増えています。素材が変わることで、スエット特有のストリート感が薄まり、ひと味違ったパーカルックに仕上げられます。「ババコ(BABACO)」はニットのプルオーバーにフードをプラス。レギンス風のパンツとそろえて、セットアップにまとめました。ショッキングピンクとホワイトのタイダイが気分を弾ませてくれます。

 フードアイテムは、シャツにまで広がってきました。2枚目の「ズッカ(ZUCCA)」は、ミリタリー風のカーキ色のシャツにフードをあしらい、“シャツパーカ”のような着映えに。体のラインを強調しないゆったりとしたシルエットなので、裾をウエストアウトしてアウターのようにまとえば、リラックスした雰囲気に。ドローコードでフードを絞って顔周りにシャーリングを施すスタイリングは、小雨時などに活用できそうです。

ワンピースに楽しさをプラス アウトドア気分とフェミニンを足し算

 フードの新たな提案がワンピース。軽やかでヘルシーな印象を添えるディテールとして効果的です。「ノントーキョー(NON TOKYO)」のワンピースは、フードのおかげで“フェミニン×ストリート”のハイブリッド服に様変わり。背中側はプリーツがたっぷり施された異素材のドッキング。フェミニンな後ろ姿との“ずれ感”が遊び心を演出しています。

 2枚目の写真「ヴァシュモン(VACHEMENT)」も仕掛けがいっぱい。ライトアウターのように見えますが、実はプルオーバー。しかもポンチョ風に着脱できるワンピース仕様です。裾広がりのシルエットは夏も涼やかに過ごせそう。足元もスポーツサンダルで合わせて、軽快にまとめるコーデは今の気分になじみます。

オールマイティーといえば、軽やかなライトアウター

 ライトアウターは、シーズンを超えて着回しできる通年ウエア。フードが加われば天候や気温への備えも効き、さらにオールマイティーに着回せます。「シュープ(SHOOP)」のライトアウターは、蚊帳(かや)のようなオーガンジー素材のフード付き。ウィズコロナ時代の“プロテクション”のムードが漂う、フェイスシールドのようなカバーもポイントです。

 2枚目の「ジードット(G.)」は、ユニセックスなライトアウター。夏は天候の変化が激しく小雨も珍しくないので、フード付きのライトアウターは心強い存在です。同色のキャップをあわせてトータル感をアップ。顔周りに目を惹くディテールを加えると、立体感が生まれバランスが整います。

 ニットやシャツ、ワンピースなど、フードの豊富なバリエーションでコーディネートもさらに多彩に。小顔効果を狙ったり、無造作に遊ばせてリラックスした雰囲気を漂わせたりと、カジュアルの枠を超えたスタイリングの引き出しを増やしてみてください。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

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「#️FR2」の石川涼がアトモスと仕掛けるスニーカービジネスの構想

 インスタグラム黎明期に“1億総カメラマン時代”を予言したかのような“カメラマンが着る服”というコンセプトのブランド「#FR2」を立ち上げたせーのの石川涼社長が、昨年12月に、今度はスニーカーヘッズ(熱狂的なスニーカーコレクターを指す)のためのブランド「ザ・ネットワーク ビジネス(THE.NETWORK BUSINESS)」を立ち上げた。今や世界的なスニーカーショップへと成長したアトモス(ATMOS)の全面協力のもと、これまでに“エア マックス95”や“エア ジョーダン1”など、ハイプなスニーカー5型に合わせた肉厚のフーディとスエットパンツを発売。公式オンラインサイトとアトモスの店舗で発売するや、次々に完売し、ヘッズの間で早くも話題になっている。「スニーカーは世界共通言語」と語る石川社長の次の一手は?石川社長とアトモスの小島奉文ディレクターにブランド立ち上げの経緯を聞いた。

WWD:ブランドを立ち上げたきっかけは?

石川涼せーの社長(以下、石川):コロナ前ももちろんスニーカーに対する熱狂はものすごいものだったと思うけど、コロナになってより加速している感じがした。毎日、SNSで「買えた」「買えなかった」と誰かがつぶやいているし、ヤフオクやメルカリでバンバン取引されているのを見て、これはビジネスになるな、と。ただ、自分たちはスニーカーとの接点を持ってないから、やろうと思っても自力ではできない。それで以前から知り合いだった小島さんに相談したんです。

小島奉文アトモスディレクター(以下、小島):スニーカーヘッズをターゲットにしたブランドって実は全然ないので僕らもそれは面白いと思い、全面的に協力させていただくことにしました。石川さんはスピード感もあるので、やろうと言ったら非常に早い。すぐに話が進んでスタートすることになりました。

WWD:「ザ・ネットワーク ビジネス」というブランド名の由来は?

石川:スニーカーが世界の共通言語なんで、世界中で発売日がほぼ一緒だし、同じものを世界中の人が見て、同じ日に世界中で熱狂している。世界中の人が同じ日に二次流通も巻き込んでワーワーと盛り上がっているわけじゃないですか。これを“ネットワークビジネス”と言わずしてなんと言うんだと思って。日本人にはネガティブなワードに聞こえるかも知れないけど、逆にその違和感を逆手に取った方が覚えてもらえるかなと思ったんです。

WWD:これまでの石川さんのビジネスはそのカルチャーの黎明期にブランドを始めることが多かったと思います。「ザ・ネットワーク ビジネス」はスニーカーブームの中ではかなり後発だと感じましたが。

石川:昔は洋服に合わせてスニーカーを選んでいたと思うけど、スニーカーのカラーリングに合わせたセットアップとか、今はスニーカーに合わせて洋服を選んでいる人が多いんじゃないかなと思ったんです。スニーカーの行列に並んでいる人たちも例えば“エア ジョーダン1”の“シカゴ(赤白黒のカラーリング)”を履いて「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」の黒いパンツに「シュプリーム(SUPREME)」の赤いダウンを合わせたりしてる。そうするとスニーカーに合わせた赤黒のコーデができるから。そういう視点で設計しているブランドが世の中にないな、と。盛り上がっているコミュニティーがあって、そこに足りないものや、ありそうでないものがあるからそれを提案している感じ。しかも90年代だったらできなかったけど、今だったら一斉に世界に向けて売れる。そうすればニッチなマーケットでも世界中にバラ撒けるんで、大きなうねりにできる。日本の中だけで(売上高)10億円売るより、世界で100億円売る方が供給量も多く感じないし、そういうイメージでビジネスができると思ったんです。

WWD:今後は海外にも販路を広げていくんですか?

小島:そうですね。アトモスもアジアやアメリカなど、世界で店舗を増やしています。世界のスニーカーショップといっても名店と呼ばれる店は決まっているので、種類が揃えばそういう店やスニーカーインフルエンサーとのコラボレーションもできると思います。スニーカーをフックに総合的に仕掛けていきたいですね。

WWD:最初に発売したスエットのセットアップ(3万6000円)には、「上下サイズ違いで着たい」という声があったと聞きました。それを受けてバラ売りにしたとか。ほかにも修正点はありましたか?

小島:インサイトのデータは集められるので石川さんにもフィードバックして、その都度改善しています。ほかに、バリエーションやグッズはないのかという問い合わせも多いです。

WWD:「#FR2」と同じ価格帯ですか?

石川:「ザ・ネットワーク ビジネス」の方が少しだけ安い。基本的にスニーカーが好きな人たちなので、ある程度の価格に抑えないとスニーカーと一緒に買えないから。

小島:第1弾の“エア マックス95”をイメージしたセットアップは、スニーカー合わせて購入すると6万円でした。それで買いやすいようにバラ売りにしたのもあるし、もっとシンプルに合わせられるように、スニーカーからインスパイアしたキャップやソックスも準備中です。

石川:ただ僕は別軸でもいいかなと思っていて、アイコニックなものは別に数が少なくてよくて、売り上げを取れなくてもいい。定番としてやりながら別のベーシックなものを売っていく。アイコニックなものに対して、最初「え?」って思う人もいると思うけど、やり続けて時間が経っていくとどこかのタイミングで誰かが着てくれて、争奪戦になるかも知れない。そういうことが起こるともっとスピード感が出てくるかな。

WWD:ハイプなスニーカーは欲しくてもなかなか買えなかったりします。

石川:だからいい。だから次に繋がっていく。ずっと買えていたり、受注生産になった瞬間に誰も欲しくなくなるんで。

WWD:今ブランドを存続させるために必要なことは?

石川:僕は毎日変わっていく環境が一番大事だと思ってるんで、そのときそのときの環境で意見が違うけど、今は数が売れないので、とにかくニッチな方にいって、他の人たちと違うってものがないと売れない。あとはとにかくセールをしないことと、2次流通はお客さんに任せること。「#FR2」は昨年春の緊急事態宣言が出たときに2回セールをしたけど、6年間で2回だけ。1次流通がセールをしないことで、お客さんがセールをしたり処分したりしてくれる。それがすごく大事だと思います。

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上下逆さにしても美しく着られる服 「ビューティフルピープル」が楽天支援のショーで披露

「ビューティフルピープル(BEAUTIFUL PEOPLE)」が楽天の支援プロジェクト「バイアール(by R)」の一環で、2021-22年秋冬コレクションのファッションショーを3月15日に東京・渋谷で開催した。「SELF-LOVE LIVE」と題した今回のショーは4日にオンライン開催されたパリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)で披露したコレクション動画「SELF-LOVE MOVIE」の続編。パリコレ動画では、洋服を上下ひっくり返しても着用できる新たなパターンテクニック「ダブルエンド(double-end)」を紹介し、冨永愛らモデルが、鏡のような演出で2パターンの着こなしを見せた。

 会場の中央にはピラミッドをかたどった2つのクリアボックスが並び、一つは上下逆さまに置かれた。ショーが始まると、ピラミッドの4面に冨永愛らモデルがポーズを取る映像が上下反転して映し出された。これはケイト・モス(Kate Moss)のホログラムがフィナーレに映し出された「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」06年秋冬の伝説のショーへのオマージュ。またBGMは、逆さの楽譜で演奏した「ゴルトベルク変奏曲」を流し、あらゆるものを反転させて、今回のテーマを結びつけた。

“間違い探し”を楽しめるコレクション

 パリコレではウィメンズモデルのみを起用していたところ、東京ではメンズモデルも登場。同性のそっくりなモデル2人組や男女2人組、背丈や肌の色も異なる2人組がペアとなって、それぞれ別のバックステージから入場し、ランウエイの中央ですれ違う。同一または色違いの服を、異なる着方で着用し、“1着で2通りの着方が可能”な「ダブルエンド」のスタイリングの幅を見せる。例えば、一人は通常の台襟付きの白シャツ(ワイシャツ)とサルエルパンツを合わせ、もう一人はシャツを逆さにしてボウタイブラウスに、パンツはファスナーを開いて反転そせることでワイドパンツとして着用できる。また一人がケープコートとして羽織るアウターは、逆さにすることでケープ部分がスカートのように垂れ下がってロングコートになる。全ルックで“間違い探し”を楽しむように発見がある。

 さらに先日発表されたばかりの「ミズノ(MIZUNO)」とのコラボレーション第2弾もお目見え。フロントローには冨永愛の姿もあった。ショー後にデザイナーの熊切秀典は冨永の元に駆け寄り握手。パリと東京の2都市のファッション・ウイークを結んだストーリーが完結した。

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東コレ頂上決戦“T-1グランプリ”予選第1夜 記者3人の「今日のベストブランド」

 2021-22年秋冬シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」が15日に開幕しました。国内外から51ブランドが参加し、4割がリアルショーを行います。「WWDJAPAN.com」では、今シーズンのベストブランドをユーザー投票で決定する“T-1グランプリ“を開催!それに先駆け、記者3人がその日に発表したブランドの中から独断でグランプリ候補を選出します。今日のノミネートブランドはこの3つだ!


東コレ取材2シーズン目で現場取材担当の美濃島
「ニサイ(NISAI)」

見どころ:持ち味である古着のアップサイクルが光ったコレクション。時代の流れからこの手法を取り入れるブランドは増えていますが、「ニサイ」は「誰かが不要としたものを、必要なものに変えてしまうのってめっちゃロマンチック」が服作りの原点なので、押し付けがましさがありません。どのアイテムも原型が想像できないほどごちゃ混ぜなのにチープさを感じさせないセンスの良さと、ブランド設立理由が「当時別れた彼女を見返したかった」という不純な感じもツボでした。ペンキが入ったボックスに足を突っ込み、垂れ流しながら白いランウエイを闊歩して軌跡を残すアイデアも面白かった。この日のリアルショーで一番エネルギーを感じたブランドで、今後の期待も高まりました。


7都市のファッションウイークを取材してきたコレクション担当の大杉
「ザ・リラクス(THE RERACS)」

見どころ:倉橋直実デザイナーによる「ザ・リラクス」はクリーンでストイックなイメージが強いブランドですが、今季は秋冬でも軽やかさを感じました。序盤は、トレンチコートなどのベーシックアイテムを合わせたオールブラックの安定のミニマルスタイルが登場しましたが、中盤にかけて白い花柄ドレスや、シアーな素材にタータンチェックを載せたトップス、レースのボトムスなど色柄をプラス。得意とするウールなどの重衣料と、シースルー素材の布帛アイテムとの素材のコントラストを効かせていました。耳元にはゴールドのタッセルチェーン付きのジュエリーが華やかに飾られ、歩くたびに揺れてキラキラ光っていたのが印象的でした。2021年春夏からロゴを刷新し、新たなバッグコレクションもローンチするなど、毎シーズン提案の幅が広がっています。余談ですが、カメラ機材などを含めた映像のクオリティーがとても高く、自慢の素材の美しさがしっかりと伝わってきます。毎日たくさんコレクション動画を見ているので、「本当にすごい!」とその違いに釘付けになりました。


若手随一の“ファッションバカ”で東コレ初取材の大澤
「シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)」

見どころ:ムービーで発表した「シンヤコヅカ」は、小塚信哉デザイナーが見た夢をインスピレーション源に、「意味がなくても見た人が素敵だと感じればうれしい」とあえてテーマを設けずにコレクションを制作しました。前回に続いてコラボレーションした、コラージュアーティストのヤビク・エンリケ・ユウジ(Yabiku Henrique Yudi)とのアイテムは、ペンキを乱雑に混ぜ合わせたような柄のジャケットやパンツ、格子柄のセットアップなど、強いデザインが目を引きます。若者が挑戦したくなりそうです。そのほか「ディッキーズ(DICKIES)」や「イーストパック(EASTPAK)」とのコラボアイテムも発表。相変わらず、モデルの顔は見せてくれませんでした(笑)。

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東コレ頂上決戦“T-1グランプリ”予選第1夜 記者3人の「今日のベストブランド」

 2021-22年秋冬シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」が15日に開幕しました。国内外から51ブランドが参加し、4割がリアルショーを行います。「WWDJAPAN.com」では、今シーズンのベストブランドをユーザー投票で決定する“T-1グランプリ“を開催!それに先駆け、記者3人がその日に発表したブランドの中から独断でグランプリ候補を選出します。今日のノミネートブランドはこの3つだ!


東コレ取材2シーズン目で現場取材担当の美濃島
「ニサイ(NISAI)」

見どころ:持ち味である古着のアップサイクルが光ったコレクション。時代の流れからこの手法を取り入れるブランドは増えていますが、「ニサイ」は「誰かが不要としたものを、必要なものに変えてしまうのってめっちゃロマンチック」が服作りの原点なので、押し付けがましさがありません。どのアイテムも原型が想像できないほどごちゃ混ぜなのにチープさを感じさせないセンスの良さと、ブランド設立理由が「当時別れた彼女を見返したかった」という不純な感じもツボでした。ペンキが入ったボックスに足を突っ込み、垂れ流しながら白いランウエイを闊歩して軌跡を残すアイデアも面白かった。この日のリアルショーで一番エネルギーを感じたブランドで、今後の期待も高まりました。


7都市のファッションウイークを取材してきたコレクション担当の大杉
「ザ・リラクス(THE RERACS)」

見どころ:倉橋直実デザイナーによる「ザ・リラクス」はクリーンでストイックなイメージが強いブランドですが、今季は秋冬でも軽やかさを感じました。序盤は、トレンチコートなどのベーシックアイテムを合わせたオールブラックの安定のミニマルスタイルが登場しましたが、中盤にかけて白い花柄ドレスや、シアーな素材にタータンチェックを載せたトップス、レースのボトムスなど色柄をプラス。得意とするウールなどの重衣料と、シースルー素材の布帛アイテムとの素材のコントラストを効かせていました。耳元にはゴールドのタッセルチェーン付きのジュエリーが華やかに飾られ、歩くたびに揺れてキラキラ光っていたのが印象的でした。2021年春夏からロゴを刷新し、新たなバッグコレクションもローンチするなど、毎シーズン提案の幅が広がっています。余談ですが、カメラ機材などを含めた映像のクオリティーがとても高く、自慢の素材の美しさがしっかりと伝わってきます。毎日たくさんコレクション動画を見ているので、「本当にすごい!」とその違いに釘付けになりました。


若手随一の“ファッションバカ”で東コレ初取材の大澤
「シンヤコヅカ(SHINYAKOZUKA)」

見どころ:ムービーで発表した「シンヤコヅカ」は、小塚信哉デザイナーが見た夢をインスピレーション源に、「意味がなくても見た人が素敵だと感じればうれしい」とあえてテーマを設けずにコレクションを制作しました。前回に続いてコラボレーションした、コラージュアーティストのヤビク・エンリケ・ユウジ(Yabiku Henrique Yudi)とのアイテムは、ペンキを乱雑に混ぜ合わせたような柄のジャケットやパンツ、格子柄のセットアップなど、強いデザインが目を引きます。若者が挑戦したくなりそうです。そのほか「ディッキーズ(DICKIES)」や「イーストパック(EASTPAK)」とのコラボアイテムも発表。相変わらず、モデルの顔は見せてくれませんでした(笑)。

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山本寛斎の弟子が渋谷スクランブル交差点で前代未聞のショー 「一歩踏み出す決意表明」

 渋谷からファッションとアートを発信する「渋谷ファッションウイーク2021春」が3月15日に開幕した。31日までの期間中、商業施設や路面店などを活用してアートを展示する回遊型イベントや、街中の壁面にルック画像を貼り付ける企画などを実施する。

 初日には、初参加の「カンサイ ヤマモト(KANSAI YAMAMOTO)」が渋谷スクランブル交差点を舞台とした無観客ショーを配信した。新作とアーカイブで構成したコレクション“TOMORROW“を着用したモデルたちが、深夜の渋谷を闊歩する映像だ。コレクションは、渋谷駅の通路に展示されている岡本太郎の作品「明日の神話」(1968-69年制作)に着想した。

 同ブランドは山本寛斎が他界した昨年7月以降、山本と活動を共にしてきたデザインチームがブランド事業を継続。今回もデザインチームが中心となりコレクションを制作した。ブランドを受け継いだクリエイティブ・ディレクターの1人、高谷健太にファッションウイーク参加の経緯と同コレクションに込めた思いを聞いた。

「苦しくても前へ前へ」
前代未聞への挑戦

WWD:渋谷ファッションウイークへの参加を決めた経緯は?

高谷健太クリエイティブディレクター(以下、高谷):渋谷ファッションウイークを運営する東急さんからのオファーがきっかけだ。昨年手掛けた「渋谷スクランブルスクエア」のクリスマスツリーの演出を評価してもらい、「目玉企画のランウエイショーをぜひお願いしたい」と熱い依頼を受けた。われわれは「誰もやったことのないことにチャレンジすること」と「世の中に元気を届けること」を目指し、企画を実施してきた。コロナでネガティブなイメージさえ生まれる渋谷をもっと元気にしたいと、ファッション・ウイークへの参加を決めた。

WWD:ファッションにフォーカスしたショーはおよそ30年ぶり。演出の肝は?

高谷:渋谷スクランブル交差点というロケーションだ。オファーを受けた翌日、800枚以上の写真を撮りながら渋谷を歩き回り、あらゆる場所で街のエネルギーをもらった。セルリアンタワーには能楽堂があり、文化村ではオペラ鑑賞ができる。その中間には欲望渦巻く円山町が位置する。形状は起伏に富み、谷底の交差点で人と文化が自然と重なり合う。渋谷を象徴する交差点でやりたいと思うのは自然な流れだった。通常なら撮影許可が下りない場所だが、自治会をはじめ多くの人に協力いただき、撮影にこぎつけることができた。本当に感謝している。

WWD:ルックの半分をアーカイブから選出した意図は?

高谷:アーカイブと新作は、いわば過去と未来。新たな一歩を踏み出す“決意表明”のようなコレクションにしたかった。アーカイブは、ファッション・ウイークのテーマ“クロスオーバー”を意識し、チベット密教の柄からロシアのイコン画の刺しゅう、インドの刺し子、江戸時代のボロなど、時代と場所を超越したモチーフのアイテムを選んだ。新作は、第五福竜丸(“明日の栄光”に描かれた船)に着想した竜や渋谷の写真をコラージュしたグラフィック、街中の落書きをイメージしたタギング、明治神宮に咲く花菖蒲の柄など、自分たちが渋谷の街で発見したエネルギーあふれるモチーフを散りばめた。デザイン構想に時間をかけた分、服作りは2~3週間の突貫工事。でも、だからこそぜい肉がそぎ落とされ、純度の高いクリエイションになった。

WWD:寛斎さんのデザインをどのように受け継いでいく?

高谷:寛斎のクリエイションは継承できるものではないと考えている。生前「あなたは私になれないし、私はあなたになれない」と言っていた。これが全てだ。ただ、僕は寛斎と23年一緒に動いてきたし、他のクリエイティブ・ディレクターも同じくらいの時間を共にしてきた。意識せずとも、寛斎に似た部分がにじむだろう。

WWD:寛斎さんとの思い出は?一番刺激を受けた言葉は?

高谷:「苦しくても前へ前へ」というメッセージ。あとは、「人が財産」という言葉だ。寛斎が亡くなっても絶えず仕事の依頼が舞い込んでくるのは、彼から刺激を受け、面白いと感じてくれた人がいるから。今回のショーも「寛斎さんのためなら」と、モデルや関係者が手弁当で作り上げたものだ。「何事も最後は人なのだ」と痛感している。思い出はたくさんありすぎて、どれを言えば良いかわからない(笑)。最後に同行した海外出張は、2019年10月に訪れたスコットランド・ダンディだった。そこには隈研吾さんが設計した博物館ヴィクトリア&アルバート・ミュージアム ダンディ(V&A Dundee)があり、「ここで来年ショーをやるぞ」と意気込んでいた。コロナによる渡航規制も重なり、寛斎の生前でのショーはついに叶わなかったが、われわれが必ず実現してみせる。彼の意志が消えることはない。

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「コーチ」がスプリングに続き、“コーチ フォーエバー2”を発表 豪華なファミリーが勢ぞろい

 「コーチ(COACH)」はこのほど、“コーチ フォーエバー 2”と銘打って2021フォール・コレクションを発表した。「コミュニティと責任、シーズンミックスのワードローブ」を表現した21年スプリングの“コーチ フォーエバー”に引き続き、コレクションを従来の約半分に厳選。スプリング同様にいつでも、誰でも、どこでも楽しめるタイムレスな商品に色や柄、キャラクターなどの遊び心を盛り込んでアップデートした。コレクションは、ちょっぴりノスタルジックで、“おうち”で見られるからコンフォート、何よりプレイフルな往年のTV番組風の映像で配信。ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)やマイケル・B・ジョーダン(Michael B. Jordan)、カイア・ガーバー(Kaia Gerber)、水原希子ら、“「コーチ」ファミリー”の出演も注目だ。

恐竜ニットや
フカフカのクロスボディバッグで
ノスタルジック&ポップ

 配信映像後半のデジタル・ルックブックは、シュールな世界観で有名なユルゲン・テラー(Juergen Teller)が監修。ニューヨークとロサンゼルス、コネチカット、バンクーバー、北京、上海、ソウル、そして東京という、8つの異なる場所で撮影した。ユルゲン・テラーはオンラインで世界とつながりながら、動画を監修したという。
 “コーチ フォーエバー 2”は、「コーチ」のアイコンである恐竜モチーフ”Rexy(レキシー)”のニットや、Cのシグネチャーパターンを前面に敷き詰めたスエットに、ボリュームたっぷりのシアリングブルゾンやチェック柄のネルシャツ、壁紙プリントのコットンドレスなどで自由奔放なスタイル。ノスタルジーとポップ、カントリーとグランジ、それにシーズンが入り乱れて、混じりあう、ハイパーミックスのコレクションだ。フカフカした質感のクロスボディバッグや、「コーチ」の60年代のアーカイブにインスピレーションを得た、がま口を二つ重ねたポーチ、厚底ブーツ、それにブローチなど、アクセサリーも充実している。

バラエティ番組をパロディー
ユニークな“コーチTV”をザッピング

 自宅でくつろぐマイケル・B・ジョーダンがリモコンで視聴し始めたのは、“「コーチ」TV”。架空のTVチャンネルは、あの海外ドラマや、MVがひたすら流れる音楽専門チャンネル、ニュース番組、TV通販、バラエティ番組をパロディーしたユーモアな映像を次々放映し、“コーチ フォーエバー 2”を紹介するファッションムービーに切り替わる。
 ユニークな番組に出演するのは、ブロンディの「Call Me」を歌うジェニファー・ロペスや、チアダンスを踊るミーガン・ジー・スタリオン(Megan Thee Stallion)ら。いずれもカルチャーやコミュニティをテーマにしたYouTubeの“コーチ カンバセーションズ”や、キャンペーンに登場する「コーチ」ファミリーのメンバーだ。

スチュアートは、
「新たな責任は、
1シーズンで終わるようなモノじゃない」

  「コーチ」のクリエイティブ・ディレクターを務めるスチュアート・ヴィヴァース(Stuart Vevers)はスプリングに引き続き、フォールコレクションも“コーチ フォーエバー”と銘打ったことについて、「前回は、オールシーズン楽しめるスタイルを提案するなどして、地球に生きるコミュニティの一員として、新たな責任を果たそうと思って大転換した。その決意と行動は、1シーズン限りで終わるモノじゃない。続けることが、責任を果たすこと。変わり続けることが、責任を担うこと。『いつ取り組むの?』と聞かれたら、『今だよ』って答え続けたかったから、前回同様のアプローチを心がけたんだ」という。シーズン1と2の違いを尋ねると、「ヘリテージとコンテンポラリーのミックスや、着心地よく、自分らしく楽しめてリアルという柱は変わらないけれど、今シーズンは前回よりカラフル。動物などのモチーフがたくさん登場する。今こそ、ファッションは楽しくなくっちゃ!って思ったんだ」と教えてくれた。
 コレクション同様に楽しい“「コーチ」TV”という発表方法については、「新しい挑戦でありながら、『コーチ』らしく懐かしい感じもするもする。何より『コーチ』のコミュニティ・メンバーと、世界中のファンと一緒に楽しみたかったんだ」という。

21年スプリングから
リサイクル&アップサイクルに
挑戦

 2021年スプリングの“コーチ フォーエバー”コレクションは、リサイクル素材やナチュラルレザーを使ったほか、アーカイブの復刻やアップサイクルにも挑戦して、コミュニティーや環境に対する責任を示した。使用しなかったレザーのスクラップを細く切り裂き編み込んだ“アップサイクル ウーブン”バッグや、ニンジンやウコンの根による染色など全行程ナチュラルなオリジナルレザーを用いた“スウィンガー”バッグ、使用済みのペットボトルを原料とするリサイクルポリエステルを100%使用したトートバッグなどを揃えた。
 昨年、双子の父親になったスチュアートは、「親になったことで、次世代のために、より良い未来を作りたいという気持ちが強くなった」と話す。

問い合わせ先
コーチ・カスタマーサービス・ジャパン
0120-556-750

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「コーチ」がスプリングに続き、“コーチ フォーエバー2”を発表 豪華なファミリーが勢ぞろい

 「コーチ(COACH)」はこのほど、“コーチ フォーエバー 2”と銘打って2021フォール・コレクションを発表した。「コミュニティと責任、シーズンミックスのワードローブ」を表現した21年スプリングの“コーチ フォーエバー”に引き続き、コレクションを従来の約半分に厳選。スプリング同様にいつでも、誰でも、どこでも楽しめるタイムレスな商品に色や柄、キャラクターなどの遊び心を盛り込んでアップデートした。コレクションは、ちょっぴりノスタルジックで、“おうち”で見られるからコンフォート、何よりプレイフルな往年のTV番組風の映像で配信。ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)やマイケル・B・ジョーダン(Michael B. Jordan)、カイア・ガーバー(Kaia Gerber)、水原希子ら、“「コーチ」ファミリー”の出演も注目だ。

恐竜ニットや
フカフカのクロスボディバッグで
ノスタルジック&ポップ

 配信映像後半のデジタル・ルックブックは、シュールな世界観で有名なユルゲン・テラー(Juergen Teller)が監修。ニューヨークとロサンゼルス、コネチカット、バンクーバー、北京、上海、ソウル、そして東京という、8つの異なる場所で撮影した。ユルゲン・テラーはオンラインで世界とつながりながら、動画を監修したという。
 “コーチ フォーエバー 2”は、「コーチ」のアイコンである恐竜モチーフ”Rexy(レキシー)”のニットや、Cのシグネチャーパターンを前面に敷き詰めたスエットに、ボリュームたっぷりのシアリングブルゾンやチェック柄のネルシャツ、壁紙プリントのコットンドレスなどで自由奔放なスタイル。ノスタルジーとポップ、カントリーとグランジ、それにシーズンが入り乱れて、混じりあう、ハイパーミックスのコレクションだ。フカフカした質感のクロスボディバッグや、「コーチ」の60年代のアーカイブにインスピレーションを得た、がま口を二つ重ねたポーチ、厚底ブーツ、それにブローチなど、アクセサリーも充実している。

バラエティ番組をパロディー
ユニークな“コーチTV”をザッピング

 自宅でくつろぐマイケル・B・ジョーダンがリモコンで視聴し始めたのは、“「コーチ」TV”。架空のTVチャンネルは、あの海外ドラマや、MVがひたすら流れる音楽専門チャンネル、ニュース番組、TV通販、バラエティ番組をパロディーしたユーモアな映像を次々放映し、“コーチ フォーエバー 2”を紹介するファッションムービーに切り替わる。
 ユニークな番組に出演するのは、ブロンディの「Call Me」を歌うジェニファー・ロペスや、チアダンスを踊るミーガン・ジー・スタリオン(Megan Thee Stallion)ら。いずれもカルチャーやコミュニティをテーマにしたYouTubeの“コーチ カンバセーションズ”や、キャンペーンに登場する「コーチ」ファミリーのメンバーだ。

スチュアートは、
「新たな責任は、
1シーズンで終わるようなモノじゃない」

  「コーチ」のクリエイティブ・ディレクターを務めるスチュアート・ヴィヴァース(Stuart Vevers)はスプリングに引き続き、フォールコレクションも“コーチ フォーエバー”と銘打ったことについて、「前回は、オールシーズン楽しめるスタイルを提案するなどして、地球に生きるコミュニティの一員として、新たな責任を果たそうと思って大転換した。その決意と行動は、1シーズン限りで終わるモノじゃない。続けることが、責任を果たすこと。変わり続けることが、責任を担うこと。『いつ取り組むの?』と聞かれたら、『今だよ』って答え続けたかったから、前回同様のアプローチを心がけたんだ」という。シーズン1と2の違いを尋ねると、「ヘリテージとコンテンポラリーのミックスや、着心地よく、自分らしく楽しめてリアルという柱は変わらないけれど、今シーズンは前回よりカラフル。動物などのモチーフがたくさん登場する。今こそ、ファッションは楽しくなくっちゃ!って思ったんだ」と教えてくれた。
 コレクション同様に楽しい“「コーチ」TV”という発表方法については、「新しい挑戦でありながら、『コーチ』らしく懐かしい感じもするもする。何より『コーチ』のコミュニティ・メンバーと、世界中のファンと一緒に楽しみたかったんだ」という。

21年スプリングから
リサイクル&アップサイクルに
挑戦

 2021年スプリングの“コーチ フォーエバー”コレクションは、リサイクル素材やナチュラルレザーを使ったほか、アーカイブの復刻やアップサイクルにも挑戦して、コミュニティーや環境に対する責任を示した。使用しなかったレザーのスクラップを細く切り裂き編み込んだ“アップサイクル ウーブン”バッグや、ニンジンやウコンの根による染色など全行程ナチュラルなオリジナルレザーを用いた“スウィンガー”バッグ、使用済みのペットボトルを原料とするリサイクルポリエステルを100%使用したトートバッグなどを揃えた。
 昨年、双子の父親になったスチュアートは、「親になったことで、次世代のために、より良い未来を作りたいという気持ちが強くなった」と話す。

問い合わせ先
コーチ・カスタマーサービス・ジャパン
0120-556-750

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「ジョン ローレンス サリバン」が11年ぶりの東京帰還で「集大成」のショー 宮下貴裕がスタイリング

 「ジョン ローレンス サリバン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)」は、2021-22年秋冬コレクションのランウエイショーを東京・寺田倉庫で開催した。同ブランドが東京でショーを行うのは10-11年秋冬シーズン以来11年ぶりで、柳川荒士デザイナーが「海外進出以降、ショーを直接見ることができなかった日本のファンの皆様に向けて披露したい」と企画した。会場にはメディアやバイヤーなど業界関係者のほか、モデルの鈴木えみやOKAMOTO'S(オカモトズ)のオカモトショウといったブランドと親交のあるセレブと、学生を含む幅広い世代の顧客が多数来場した。

“防御”を拡大解釈
強い服をシンプルに見せる

 「ブランドの集大成」と語る同コレクションのテーマは“PROTECT”。軸となるテーラードに、アイスホッケーのキーパーのユニホームに着想したキルティングパッド付きのコートや、日差しを避けるためのネックゲイターを応用したマスク付きのカットソー、カウボーイが足元を保護するために着用するチャップスを発展させ、前身頃をレイヤーさせたパンツ&スカートや、つま先に鉄板が入った工事現場の事故防止シューズを再解釈した金具付きのブーツなど、柳川デザイナーの“防御”の意識を反映させたアイテムを組み込んだ。「コロナは意識していない」と語るが、会場には“PROTECTED”の文字をプリントしたマスクも配布。「不透明な状況に屈せず生きていこう」というメッセージを感じずにはいられなかった。

 ランウエイは観客と観客の間にできた20メートルほどの道をモデルたちが闊歩するシンプルな内容で、特別な演出は一切なし。BGMも美しいピアノの音色が印象的なエイフェックス・ツイン (Aphex Twin)の「Avril 14th」で幕を開け、ルックをシンプルに見せた。「ロンドンでは過剰なほどアグレッシブに見せることもあったが、服が強ければ自然と観客に伝わる」。しっとりしたムードの後は、ナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)のゴリゴリなメタルソング「March Of The Pigs」が爆音で鳴り響き、会場のボルテージが急上昇。デジタルでは伝わらない、リアルショーならではの熱気に包まれた。

 スタイリングを担当したのは、柳川デザイナーが尊敬してやまないという「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)」の宮下貴裕デザイナー。「東京でしか実現できないコレクションにしたい」という柳川デザイナーの思いが宮下デザイナーと共鳴し、タッグが実現した。ルックには「タカヒロミヤシタザソロイスト.」と日本の眼鏡企業アイヴァンによる協業ラインのアイウエアが使われ、ブランドの垣根を超えたコレクションとなった。

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「バーバリー」が“男性向けのスカート”を提案する理由 リカルド・ティッシが語る

 「バーバリー(BURBERRY)」は、メンズに特化したファッションショーをロンドン・ファッション・ウイーク期間中に発表した。ブランドのチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務めるリカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)は発表した2021-22年秋冬メンズの着想源を「男性であることへの自信」とインタビュー動画で説明する。「男性はスーツやボンバージャケット、トレンチコートを着ることができ、同じくドレスも着ることもできる。自分自身が着ているものに自信を持ち、根本的に自由であって欲しいと思う」と続ける。今季は「バーバリー」が得意とするトレンチコートやテーラードスーツなど英国スタイルを基調としつつ、男性に向けたスカートが登場。リカルドはこれまでにも手掛けてきた「ジバンシィ(GIVENCHY)」などで男性向けのスカートを披露してきたが、「バーバリー」でもステレオタイプの“男性らしさ”を崩し、ジェンダーを超越するウエアを提案する。

“どんなセクシュアリティーでも誇りをもって”

 リカルドは「どのようなセクシュアリティーであっても自分に自信を持って、自分の中のフェミニニティー(女性性)やマスキュリニティー(男性性)に葛藤せず、自身のセクシュアリティーに誇りをもって生きていくべきだ」という。彼が重要視していることは、「ジェンダーの流動性」だ。「音楽家のデヴィッド・ボウイ(David Bowie)や、アーティストのリー・バウリー(Leigh Bowery)、 バレエ振付け師のマイケル・クラーク(Michael Clark)のように、自分の中のフェミニニティーとマスキュリニティーを楽しんでいる人もいる。英国人の彼らはとてもシックでエレガント。個性を自由に表現し、実にエキセントリックだ」と語る。

 また現在の状況下だからこそ「表現の自由を大切にするべきだ」と述べる。「世界中が止まってしまったかのように、身近な愛する人とコミュニケーションを取ることや、自由に外出し、レジャーに出かけることも容易にはできない。人々は自由を求めて逃げ出したくなるもの。20世紀初頭の戦後がまさにそうで、人々は街から離れ、自然の中で暮らすようになり、自分自身の考えやアイデンティティーを見出した。自然の美しさや色彩、動物から得る無条件の愛情に心を動かされる」。

 “動物への無条件の愛情”をリカルドが語るように、今季の「バーバリー」はアニマルモチーフが多く隠れていた。ジャケットのフードやビーニー帽にはウサギやバンビのような耳が付いている。スニーカーには鹿のひづめをモチーフにしたソールを施し、ファー風のトップスの毛皮はプリントで表現した。他にも動物とおもちゃをイメージしたキーリングや、巨大化したボアバッグなどの目新しいアクセサリーが登場した。

“悪いことが起こった後には必ず良いことが訪れる”

 リカルドは動画で「私たちの仕事は夢を見ることができ、そしてその夢を現実にすることができる。今季のコレクションも世界中でみんなが夢見ていることを描こうと制作した。人生には良いことと悪いことが繰り返し訪れる。どんなに暗い状況になっても、必ず太陽が顔を出し、雨の後の虹のように、悪いことが起こった後には必ず良いことが訪れる。このコレクションを“エスケープ(脱出)”と題したのは、今の状況が終わったら皆が自然と触れ合うことを求めて、人類が本来あるべき現実世界に戻ると感じたから。このショーで創造性とアイデンティティーを讃えたかった」 と締めくくった。

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編集部が注目する2021年春の美白スキンケア 今年はコロナニーズを意識したアイテムも

 毎年この時期になると美白系のスキンケアアイテムが出そろうが、今年も新技術を投入した注目の新作が目白押しだ。今年は長く愛されるロングセラーをパワーアップさせたリニューアル製品のほか、「美白しながら肌荒れもケア」といったコロナニーズにもアプローチした製品が登場。編集部注目の新製品を紹介する。

CHANEL

 健康的な肌の明るさを維持するために、アミノ酸の代謝が重要な役割を担うことに着目。肌の過剰な色素沈着を抑える美白有効成分のTXCに加え、肌を滑らかに整えるビタミンEと鎮静効果があるアラントインの2つの医薬部外品有効成分を新配合。さらにガーデニアフルーツエキスを組み合わせ、アミノ酸の代謝を活性化。滑らかで均一、明るさを持った健康的な“ヘルシー ロージー グロウ”肌に導く。

DIOR

 ブランドとして初めて4つの効果効能で医薬部外品の承認を取得した美白美容液がパワーアップ。エーデルワイスのエキスが配合された独自の複合成分がブライトニングや抗酸化作用を発揮。さらに過剰な皮脂分泌を抑制し、過酸化脂質の生成を防ぐグルコン酸亜鉛を新配合。肌の内側から明るさを目覚めさせ、色素沈着を防ぐ。

GUERLAIN

 最高峰エイジングケアラインから初のブライトニングローションが登場。さまざまなストレスにより肌細胞の低酸素状態に陥ることがエイジングを加速することから、細胞に十分に酸素を届けるライン共通の“セル レスピレーション”技術を採用。さらに色素沈着に根本的にアプローチする“オーキッド ブライト”テクノロジーを組み合わせ、肌の色むらやキメを整えるPHAを新配合。

SISLEY

 ブライトニングシリーズの洗顔料、化粧水、日中乳液が刷新。洗顔料は優れた抗酸化作用により肌の輝きを高めるモモ花エキスを配合。化粧水は4種の有効成分がメラニンの生成に関わるあらゆる段階に働きかける「ル コンセントレ コンプレックス」を配合するだけでなく、マイルドなピーリング作用で古い角質を優しく取り除く。日中乳液はSPF50+PA+++と高い紫外線カット効果を持ちながら、「ル コンセントレ コンプレックス」を配合。

L'OCCITANE

 美白シリーズの化粧水、美容液、クリームが刷新。シミに加え、肌荒れもくすんだ印象を与えることから、美白と肌荒れの双方の有効成分を配合しパワーアップ。甘草由来成分が高い抗炎症作用で肌荒れを鎮めオウゴンエキスが紫外線などの外的ストレスで発生する活性酸素除去を助け肌の炎症を抑える。レーヌでプレエキスやビタミンC誘導体、ホワイトアイリスエキスなどを組み合わせ、メラニン生成を抑制し透明感あふれる肌へ。

SHISEIDO

 シワと美白ケアを同時にかなえられる部分用クリームがリニューアル。今回、年齢を重ねるごとに肌の表面の角層は固く、奥の真皮は柔らかくなる「肌ギャップ」がシワの要因であることを新たに発見。そこで資生堂は32 年間に渡るレチノール研究を生かし、同社で初めて純粋レチノールを含む 5つの有効成分を配合。目まわりや口角まわりのゆるみジワまで、 異なる部位のシワに対応しながらクリアな肌へ。

IMMUNO

 肌の免疫機能を司り、加齢とともにその数が減少し機能が低下するランゲルハンス細胞に着目。美白有効成分「油溶性ビタミンC誘導体」を配合し、シミやそばかすを防ぐ。深海微生物由来のバイオバリアや紅藻、紅花エキスやツバキオイル、ローズヒップオイルなど自然界に存在する植物や微生物の力を生かし、肌本来が持つ美白機能をサポート。天然由来成分99%を実現。

ITRIM

 ブランド初の美白フェイス・ボディーケアライン。ジャーマンカモミール油のアズレンに美白有効成分のコウジ酸を組み合わせ、大人の肌の久住やシワを防ぎ透き通るような輝きをプラス。さらに肌を穏やかに整えるヘチマ水や活力を与えるメリッサ葉エキス、引き締め効果のあるローズマリー葉水を合わせて清らかに肌を整える。全製品天然由来成分98%以上にこだわっている。

DERMALOGICA

 日々の生活の中 で、少しずつ現れてきたスポットに有用成分がアプローチ。ヘキシルレゾルシノールやナイアシンアミドがキメを整えなめらかな肌に導く。さらに肌を均一なトーンに整えながら潤いを保つシイタケ菌糸体エキスや、古くからアーユルヴェーダでも取り入れられてきた保湿成分ウィタニアソムニフェラ根エキスも配合。潤いを与えることで乾燥によるくすみをケアしてワントーンアップしたような、透明感あふれるクリアな肌へ導く。

EXCELLULA

 佐藤製薬が手掛けるスキンケアブランド「エクセルーラ」。美白とシワ改善の効能が認められた薬用有効成分「ナイアシンアミド」を配合する薬用美白シワ改善美容液。美肌サポート成分として4つの和漢植物エキス、角層ケア成分としてセイヨウナシ果汁発酵液をプラスし、ごわつく肌をやわらげて美肌成分が届く肌へ。28 種の和漢植物エキスを配合。

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「アンリアレイジ × ピッタマスク」がパリコレへ 非日常が日常に変化した瞬間

 「アンリアレイジ(ANREALAGE)」は、「ピッタマスク(PITTA MASK)」との初コラボマスク“アンリアレイジ × ピッタマスク パッチワークマスク(ANREALAGE × PITTA MASK PATCHWORK MASK)”を2021-22年秋冬パリ・コレクションで3月8日に発表した。「ピッタマスク」がパリコレに登場するのは今回が初めて。

 コラボマスク(非売品)は、昨年発売して人気を博した“パッチワークマスク”をベースに3型製作。コレクションのカラーリングに合わせたブルー × イエロー × カーキ × ベージュの配色や、ダークトーンのブラック × グレー × ネイビー、ベージュのワントーンを提案した。森永邦彦デザイナーは「21年春夏コレクションを発表したとき、ファッションを通して人を守りたいという気持ちがより強くなった。マスクは販売していたが、これまで使用したことのないポリウレタンで“パッチワークマスク”に挑戦しようと思ったのがきっかけ」と話した。「同じ素材をつなぎ合わせ、日常をつなぐという意味合いを込めている。ポリウレタン特有の縫いにくさに加え、防護性の観点から二重にして作ったら大変で、一つに8時間を費やした」と達成感に溢れながらも苦笑いを浮かべた。

 「ピッタマスク」を選んだ理由については、「19年春夏、東京コレクションの会場で『ピッタマスク』を配布して頂いたのをきっかけに交流が深まりました。当時はマスクを着ける文化がなく、黒のマスクですら抵抗がありました。当時は非日常だったことが、現在は日常になっていることが、『アンリアレイジ』のブランドコンセプトにマッチしていると感じ、コラボさせていただいた。今後はさらに、マスクを含めたトータルコーディネートの提案をするブランドが増えると思う」と語った。

2021-22年秋冬パリコレクション
「東京コレクションのリベンジマッチ」

WWD:コレクションテーマ“GROUND”に込めた想いとは?

森永邦彦デザイナー(以下、森永):デジタルコレクションにより失われたものを表現しました。映像は綺麗だし、しっかりとした意図は伝わるけれど、本来誰しもが感じる重量はまったく感じ取れないことに気付いたんです。それを逆手に取り、あえて画面の中で重力を感じさせるようなコレクションを作りました。スクリーンで見るものは二次元なので、上下左右はあっても、三次元の天地という概念はありません。当たり前だった重力のルールを壊し、それに合わせて服作りのルールも壊して表現しました。

WWD:着想源はどこから?

森永:2011年春夏東京コレクションを発表したとき、当初は今回のように重力を壊したショーを考えていました。クレーンで人を宙吊りにしたり、人を宙吊りにできるマジシャンにお願いしたりしましたが、実現できませんでした。あの時の悔しさがずっと心に残り、空間自体を反転させれば、思い描いていたことができるかなと思い制作しました。今回発表したリンゴのニットは、10年前に製作したものなんです。

WWD:制作時間はどのくらい?

森永:逆転空間と通常の空間を作ったので、朝から深夜まで撮影しました。その後24時間編集したのですが、映像が全て逆なので僕も酔ってしまいました(笑)。

WWD:ショーの後、リアルな声を聞けない環境が続いている。

森永:見ている人が何かにつまずくような違和感を作り出し、実物を見に来ていただくことが狙いではあります。フィジカルとデジタルはどちらが良いではなく共存するもの。今回のコレクションのように、現実の世界では絶対に交わらないことも、今の時代では実現できます。とはいえ、僕はパリでフィジカルなショーをしたいです。誰でもデジタルでコレクションを発表できる環境になることで、これまで閉ざされていた世界の価値が高まるのではと思います。時間は掛かると思いますが、ファッションの魅力の一つであることは間違いありません。

WWD:デジタル上のパリコレで発表する意味は?

森永:今回はパリの公式スケジュール内で発表しなくても良いかなと考えていました。けれどパリという舞台に特別な感情を抱いている自分がいて踏み止まったんです。その正体は謎なんですけれどね(笑)。

WWD:同じタイミングで、「ビューティフルピープル」もウエアを反転させていましたね(笑)。

森永:21年春夏もホームウエアという大きなテーマで被っているんですよね(笑)。僕らは“HOME”で、「ビューティフルピープル」は家の中の物を着るというテーマでした。

WWD:今回もテーマが被った時の心境は(笑)?

森永:熊切さんらしいなと思いましたよ。

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ベルサイユ宮殿でファンタジーを見せた「ディオール」や新生「ジバンシィ」の初ショー パリコレ対談Vol.3

 2021-22年秋冬シーズンのパリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)が3月10日までオンライン上で開催されました。ここでは7日と8日に発表された中から厳選した6ブランドをご紹介。長年ウィメンズコレクションを取材する向千鶴「WWDジャパン」編集長とベルリン在住の藪野淳ヨーロッパ通信員が対談形式でリポートします。

アフターコロナを前向きに見据える「ジル サンダー」

藪野:ウィメンズでは初のパリコレ公式スケジュールでの発表となる「ジル サンダー(JIL SANDER)」は、1月に発表されたメンズ同様の世界観の映像でした。あえて粗い画質やボケを取り入れたノスタルジックな映像は、素材の質感やデザインを細かく見せるというよりも雰囲気重視。その背景には先シーズンにインタビューした時に聞いた「アイテムの持つエモーションを伝えたい」というルーシー&ルーク・メイヤーの思いがありそうです。

向:「アイテムの持つエモーションを伝えたい」とは、実に2人らしく、同時に日本では共感を得やすい言葉ですね。万物に魂や宿るという思想が日本には根付いているから。神仏につながる特別なモノではなく、日常生活で使用する物に対してもそうですよね。ファッション業界の人はサンプルを“あの子”と言ったりするし(笑)。「ジル サンダー」の素材選びや繊細なパターンなど一つ一つにその考えが反映されていると思う。そしてこの物としての服に真摯に向き合うデザイナーの態度は今季の全体傾向のひとつですね。

薮野:コレクションはというと、21年春夏シーズンはソフトな素材や体に寄り添いつつ締め付けないデザインのデイウエアを意識していました。一方、今シーズンはニットのボディースーツやウエストをニットで切り替えたドレス、ゆったりとしたブラウスでそういった流れを引き継ぎつつ、コンパクトウールやレザーのジャケットとコートや縦のラインを強調するシルエットも多かったですね。「意外性のある要素を組み合わせたレイヤード」というのが、キーワードの一つになっているようです。

向:今季のリリースにあった「変わるためには前向きさが必要」や「服で遊ぶこと。服を組み替えることの楽しさ」という言葉も印象的。アフターコロナの日常やファッションを照らすポジティブな言葉です。全身に使う幾何学柄や鮮やかな色使い、大振りのアクセサリーなどいつも以上に大胆な要素が多いのはそういう思いから来ているようですね。蝶々のプリントは復活の象徴だそう。

藪野:そうですね。もうファッション・ウイーク終盤ですが、今季はポジティブな気持ちでコレクション制作に取り組み、ファッションの楽しさや喜びを伝えたいと考えているデザイナーが本当に多いです。ヨーロッパではまだロックダウンや外出制限中の国が多いですが、デザイナーたちは前向きにその先を見据えています。そういう思いで作られたコレクションや映像を見ていると、ドレスアップしたり、友達とご飯に行ったりしたいな〜という気持ちが高まります!

まるでファンタジー映画な「トム ブラウン」

藪野:「トム ブラウン(THOM BROWNE)」は、バンクーバーオリンピックのアルペンスキー女子滑降で金メダルを獲得した元プロ選手のリンゼイ・ボン(Lindsey Vonn)を主役に迎えた銀世界でのファンタジー感あふれるショートフィルムを見せてくれました。ところどころ、「オズの魔法使い」を想起させる要素が入っていましたね。

向:すごく好きでした。トムのユーモアと、アスリートのち密さや大胆さが掛け合わさって見たことがない世界観を描いていました。この「見たことがない、しかも身に着けることができる新しい世界観」ってファッションデザイナーが世の中に提供できる最高のギフトだと思う。最初にリンゼイと登場する謎のキャラクターの動きに始まりオチの一言まで毎秒が面白い。ティザー動画では「トム ブラウン」を着たアスリートが実際にスキージャンプをして空を飛んでいました。プリーツスカートが風になびく姿はコロナで鬱屈する心を開放してくれましたよ。ショー開催以上にお金がかかってそうです。

薮野:もはや映画を作る意気込みですよね。NY版「WWD」のレビューでもトムの創造性を評価し、「いつか彼の作る長編映画が見てみたい」と書かれていました。コレクションは、シグネチャーのテーラリングをベースに、クラシックなイブニングドレスやアルペンのフォークロア的装飾、ダウン、ドローコードといったスポーツウエアの要素を融合。「NAGANO」「BEIJING」「SALT LAKE CITY」「OSLO」など冬季オリンピック開催都市名のワッペンが飾られたルックもかわいかったです。

マシューの「ジバンシィ」が初のランウエイショー

藪野:お次はマシュー・M・ウィリアムズ(Matthew M Williams)による「ジバンシィ(GIVENCHY)」です。昨年9月のデビューコレクションはルックブックでのお披露目だったので、今回が初のランウエイショーになりました。会場は、無観客の巨大なスタジアム。ステージ衣装からファッションのキャリアを積み、ミュージシャンとの親交が深い彼らしいチョイスです。マシューが「ジバンシィ」で描こうとしているタフでクール、そしてラグジュアリーなイメージがさらに明確になりました。

向:いや~強かったね。マシューがラグジュアリーをけん引するネクストリーダーであることは間違いないと思います。黒、白、赤。テーラード、スキニーなボトムスやドレス、ダウンジャケット。艶のあるレザー、レース、ボタンではなくファスナー。極太チェーンアクセサリーやニット帽に見るキャラクター性。ヨーロッパのブランドには必須なセクシーの要素とスポーツ&ストリートの要素を巧みに取り入れているし、バッグやアクセサリーに展開しやすいアイデアも豊富。マシューはアートディレクター的感覚が優れているよね。女性モデルのバストを見せちゃたのはナシ、とは思いましたが。

藪野:ですね。以前のミラノコレでも村上要「WWDJAPAN.com」編集長がコラムを書いていましたが、特にデジタル発表になり、限られた招待客だけでなく多くの人の目に触れたり、インターネットやSNSで拡散されたりする時代ですし、マシューは若者たちから支持されているデザイナーです。僕も若いモデルたちへの配慮が必要だと感じました。

リッチな若者たちにフォーカスした「ランバン」

藪野:「ランバン(LANVIN)」は、貴族の邸宅を改築した5つ星ホテルのシャングリ・ラ ホテル パリ(Shangri-La Hotel Paris)が舞台。リッチな若者たちが集まって、買ってきた服を着て見せ合ったり、踊ったりといった楽しげな雰囲気でした。そのままですが、使われていた曲もラッパーのイヴ(Eve)をフィーチャリングしたグウェン・ステファニー(Gwen Stefani)の「Rich Girl」でしたね。夢見る少年のような世界観の印象が強かったブルーノ・シアレッリ(Bruno Sialelli)ですが、今シーズンは大きくクリエイションをシフトしたように感じました。ウィメンズはグラマラスなドレスやコートとテーラリングが中心。一方、メンズはリラックス感のあるテーラリングとスポーツ&ストリートウエアのミックスでした。この変化を向さんはどう見られましたか?

向:アフターコロナの開放された世界を楽観的に描いたそうで、突き抜けていましたね。第1次世界大戦後の1920年代や第2次世界大戦後の40年代はファッションが一気に華やいだし、コロナ後はファビラスな世界が戻ってくるのかも。ただ、こんな風に“ガンガン消費する”価値観が2020年代に戻ってくるのかは疑問。「ランバン」は中国企業の傘下にあるし、ブランドの戦略としては中国の若い新興富裕層にフォーカスを当てているのかな。これほどバブリーなムードをリアルに体現できるのは中国くらいだと思う。創業デザイナーであるジャンヌ・ランバン(Jeanne Lanvin)と娘のマルグリットをモチーフにしたロゴが効果的でしたね。

夜のベルサイユ宮殿で見せる「ディオール」のファンタジー

藪野:「ディオール( DIOR)」は、20-21年秋冬や21年春夏のクチュール・コレクションの映像でも表現していたようなファンタジーの世界とファッションショーの融合を見せました。ショーの舞台は、なんとべルサイユ宮殿(Palais de Versailles)内の鏡の間。マリア・グラツィアはリアルショーのセットをアーティストのシルヴィア・ジアンブローネ(Silvia Giambrone)に依頼していたのですが、ショーが開けないことになり、そのために作られたトゲが飛び出た14枚の大きな鏡のようなオブジェを宮殿に運び込んだそうです。今シーズン、マリア・グラツィア・キウリが探求したのは、おとぎ話の世界。パフスリーブのブラウスやミニ丈のエプロンドレスなど前半のいつもよりガーリーなテイストが新鮮でした。

向:スケールの大きさが桁違いですね。京都御所にオブジェを持ち込んでショーを開くようなものですから。日中に訪れと黄金色がまばゆい鏡の間ですが、夜にショーを開いたのでしょうか、ほの暗く落ち着いた演出でしたね。そしてキーカラーは赤。月明かりが赤い服に影を落とし、また「赤ずきん」のようなフード使いもありミステリアスでした。今季のインスピレーションの一つに先日、「ディオール」のファッション&ビューティのグローバルアンバサダーに就任したBLACKPINKのJISOO(ジス)の名前が上がっていたのでその要素を探しながら見たけど、今一つ分からず。彼女のちょっと影を感じる部分かな?

藪野: うーん……そうですね。その点は僕も結局分かりませんでした。

モデルが天井を歩く!?「アンリアレイジ」

藪野:リアルショーでもいつも驚きの仕掛けや演出を用意して楽しませてくれる「アンリアレイジ(ANREALAGE)」ですが、今回はリアルでは絶対できない見せ方でしたね。セットはシンプルなファッションショーの会場なんですが、大半のモデルがランウエイではなく天井を歩いているような演出でした。

向:「アンリアレイジ」はデジタルコレクションになって輝きを増していると思う。デジタルという制約を受けたことでメッセージがシンプルかつクリアになって受け取りやすくなりました。頭が下に来るルックはリンゴの木から落ちたリンゴの柄がネック回りに散らばっているとか、重力に忠実なところが単純に面白い。ただ三半規管が弱い私は途中でちょっと“ウッ”となりました。これって写真を掲載する場合はやはい頭が下ですよね?

薮野:はい、そうです。パッと見間違いかと思われそうですが、それが正解です。でも結局、ルック写真がスマホの画面を逆にして見てしまいました(笑)。

飛行機の翼をランウエイにした「バルマン」

藪野:さて、8日のトリ「バルマン(BALMAIN)」です。先シーズンはパリでのリアルショーを行いましたが、その際はフロントローにスクリーンが並んでいて、そこに渡仏できなかったセレブや有名エディターたちがショーを見ているような映像が流れるというユニークな演出でした。今季も「バルマン(BALMAIN)」の演出は、ぶっ飛んでいます(笑)。飛行機の非常口からモデルが登場して翼の上を歩いたり、飛行機の真下をグループで闊歩したり。最後は合成ですが宇宙にまで行っちゃいました。

向:「エールフランス(AIR FRANCE)」だったね。夢を見させてくれたし、翼の上は歩けるのだ、ということを知りました(笑)。「バルマン」のお客さんはジェットセッターのセレブリティが多いだろうから、これを見て旅情をかき立てられたと思う。自家用飛行機で真似しちゃう人もいるんじゃないかな。登場した服も飛行機乗りの制服やカーゴパンツなどいつも以上にスポーティー。ハンドワークはもちろんたくさん使われているのだろうけど、その存在を主張せず、軽やかでした。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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気鋭のコラージュ作家ヤビク・エンリケ・ユウジ ファッション界も注目する23歳 Youth in focus Vol.2

 ミレニアルズやZ世代と呼ばれる若者たちは今何を考え、ファッションやビューティと向き合い、どんな未来を描いているのだろうか。U30の若者たちにフォーカスした連載「ユース イン フォーカス(Youth in focus)」では、業界に新たな価値観を持ち込み、変化を起こそうと挑戦する若者たちを紹介する。連載の2回目は、23歳のコラージュアーティスト、ヤビク・エンリケ・ユウジ(Yabiku Henrique Yudi)にフォーカスする。

 ヤビクはブラジル・サンパウロで生まれ、11歳で日本に移住。文化服装学院でファッションを学びながら“情熱を持って取り組める何か”を探し、19歳でコラージュアートと出合った。オカモトレイジ主催の展覧会「ヤギ エキシビション(YAGI EXHIBITION)」を皮切りに、ファッションブランドとのコラボやファッション誌への作品提供など活動の幅を広げ、2019年には初の個展「ファーストインプレッション(FIRST IMPRESSION)」を開催し、雑誌「ゼム マガジン(Them magazine)」に「ヴァレンティノ(VALENTINO)」とのコラボ作品を掲載。現在、東京・渋谷の「ディーゼル アート ギャラリー(DIESEL ART GALLERY)」で自身最大規模の個展「モーション(MOTION)」を5月13日まで開催中だ。ますます勢いを増す彼に自身のルーツや同展の見どころなどについて聞いた。

WWD:ブラジルではどんな幼少期を過ごした?

ヤビク・エンリケ・ユウジ(以下、ヤビク):小さいころから絵を描くことが好きで、よく模写をしていました。でもそのころは、アーティストを目指そうとは考えてもいませんでした。周りに芸術関係の仕事をしている人もいなかったので、家族は今も驚いています。

WWD:ファッションを学んでいた理由は?

ヤビク:「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」や「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」などモードの世界に憧れて、文化服装学院で服作りを学びました。ファッション業界を目指していたというより、漠然と好きなことに打ち込みたかったんです。服飾は少し違うなと思い1年で辞めましたが、文化で学んだことは今も生かされています。

WWD:コラージュアートとの出合いは?

ヤビク:文化の授業でコラージュが課題に出されたこともありましが、当時はあまり興味が湧かず、むしろ提出が遅れて単位を落とされたんです(笑)。本当の意味でコラージュに出合ったのは、休学中のことでした。将来について模索していた時期に、古本屋で手に取った昔の雑誌のグラフィックやフォントに衝撃を覚え、無意識に買い集めていました。ある時、久しぶりに何かモノ作りをしようと、家に積まれていた古雑誌でコラージュしてみたんです。そしたら意外とうまくできて(笑)。謎の自信が湧いてきて2作目、3作目と作り、インスタグラムに投稿しました。すると友達以外の人からも良い反応が返ってきた。それから間もなくしてオカモトレイジさんが主催する「ヤギ エキシビション(以下、ヤギ)」への出展の案内が届きました。

WWD:アーティストの道に進もうと決意したのはいつ?

ヤビク:「ヤギ」は自分の作品が初めて多くの人の目に触れる機会でした。遊びの延長で作っていたつもりが展覧会以降、ブランドのビジュアルや雑誌の仕事などの依頼が届くようになりました。最初は「こうやってお金が稼げるんだ」と新鮮でしたが、そのころはまだバイトもしていたし、「今できることはやっておこう」くらいの気持ちでしたね。ちゃんとアーティストになろうと決めたのは19年に初めて個展を開催したことが大きかったです。

WWD:影響を受けた人物は?

ヤビク:コラージュアーティストの河村康輔さんです。ちょうど個展を開催したころに、「アディダス(ADIDAS)」の店で河村さんの作品展示を見ました。河村さんが大きな企業を相手に幅広く仕事をしているのを見て「コラージュアートでそこまで行けるんだ」と驚いたんです。僕もそこにたどり着けるように頑張りたいと思いました。河村さんにはたまにお会いしていろいろ教えてもらっています。

ブラジルの混沌とした風景、生々しい現実の違和感

WWD:作品を制作する上で大切にしていることは?

ヤビク:作品を見た瞬間にはてなマークが浮かぶような、違和感を大切にしています。コラージュはもともと別の場所にあったモノ同士が合わさることで新しい価値観を生み出します。きちんと合わせようとするとあまりうまくいかないので、見た人が「ん?」と思うようなちょっとした違和感がありながら一つの作品として成立するくらいのバランスが好きです。

WWD:ブラジルで育った経験は作品にどう反映されている?

ヤビク:ブラジルはとにかく街がごちゃごちゃしています。いろんな人種の人がいて、貧富の差もすごい。お金持ちの女性が歩いている通りにホームレスの人がいたり、美しい建物の隣に古い建物があったり、矛盾だらけなんです。その生々しい現実の違和感があって一つの国として成立している。僕の作品も、異なる材質のものが融合して美しく見えた時が手を止めるタイミングなんです。子どものころはそんなふうに景色を見ているつもりはありませんでしたが、振り返ると今の作品に通ずるところがあります。

WWD:ブラジルと比べて、東京の風景は整頓されすぎているのでは?

ヤビク:いいえ。むしろ東京はサンパウロを凝縮した感じです。特に原宿は外国から来る人もたくさんいるし、モード系やメイド系のファッションをした人が同じ道を歩いていますよね。いろんなカルチャーがごちゃごちゃしているけど、それが素敵です。

ペインティングやインスタレーションまで 空間自体をコラージュ

WWD:今回の展示の見どころは?

ヤビク:アナログのコラージュ以外にも、プリントやインスタレーション、ペインティングなどさまざまな手法を用いた作品を展示しています。いろんな素材が同じ会場に集合し、それぞれが自分の持ち場に収まりつつ、空間自体をコラージュしているイメージです。フラワーベースは、現在一緒にクリエイティブチームとして活動する同い年のアーティスト、トトキサクラと制作しました。

WWD:トトキさんと組んだ理由は?

ヤビク:彼女の無機質でミニマルな作風に引かれてアプローチしました。正反対なスタイルですが、その中間くらいを目指して何かを作りたかったんです。フラワーベースは彼女が形をデザインし、僕がそこにテクスチャーやグラフィックでストリートの要素を混ぜました。インスタレーションは、スケーターが息抜きしている縁側をイメージしています。お互いここまで大きいものを作ったことがなかったので、すごいドキドキでした。会場で完成した状態を初めて見た時はホッとしました。今後もミニマルとストリートの融合をテーマにした作品を一緒に制作していきます。

WWD:同世代のアーティストやその道を志す人に伝えたいことは?

ヤビク:僕たちの世代はSNSのおかげで、たくさんのチャンスに恵まれています。僕もインスタグラムがなかったらアーティスト活動はしていなかったかもしれない。一方で、常にいろんな情報にアクセスできる分、選択肢がありすぎて一つに絞ることが難しい。僕も飽き性で、バイトは1年以上続いたことがありません。そんな僕でも、コラージュに出合った時の「あ、これ面白い」という直感を信じることができたから、今こうして継続できています。理由は分からないけど、ときめく感覚に敏感でいることや、なんとなく面白そうというアイデアを大切にしてほしいです。直感から生まれるものにはものすごいパワーがあるんです。その中にもしかしたら今後の人生に影響を与える何かがあるかもしれないと信じ、夢中になれることを見つけてほしいです。

WWD:今後の目標は?

ヤビク:河村さんも手掛けていたような店舗の内装など、形として残るモノや常に人の目に触れるモノを作れたら面白いですね。作品のクオリティーを上げ、新しい手法を発見しながら、いずれは河村さんのように海外でもきちんと評価されたいです。

■「MOTION」
会期:2月13日〜5月13日
場所:DIESEL ART GALLERY
住所: 東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti DIESEL SHIBUYA B1階
入場料:無料

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ヨガ、太極拳、ダンス、水泳のいいとこ取りのジャイロトニックをやってみた 【爆裂!健康美容マニア道】 

 1日8食、ジャンクフード漬けの超不健康児から超健康優良児へと大変身を遂げたフリーアナウンサーの名越涼。およそ15年かけて自らの体で人体実験を繰り返してきた結果、“超絶良かったもの”だけを余すことなくお伝えする。今回はニューヨーク発のつらくないエクササイズ「ジャイロトニック」について。

 日々、忙しく働く現代の女子たちに朗報!なんと「それ全部やりたい」が詰まったエクササイズがあるのだという。それは「ジャイロトニック」。何やらヨガ・太極拳・ダンス・水泳のいいとこ取りだという。一つ一つを習おうと思うと時間もお金もそれなりに必要だけれど、それがまとめてできるなんて。しかも、体の正しい使い方が身に付き、全身が内側から活性化、パフォーマンスも上がるという。それって一体、どういうこと?早速、体験しに行ってみた。

プロ御用達!ジャイロトニックとは?

 そもそもジャイロトニックとは、元バレエダンサーのジュリウ・ホバス(Juliu Horvath)氏が考案したニューヨーク生まれのエクササイズ。ヨガ、太極拳、ダンス、水泳の流れるような柔らかい動きを木製のマシンを使いながら行い、無理に圧をかけたり力を入れたりせず、体が持つ本来のしなやかさにアプローチするというもの。呼吸と体の動きを調和させ、背骨本来の機能や関節の可動域を、曲線的・らせん的に動かしながら高めていくという。左右対称に動くと筋力のバランスを自分で整えやすくなり、無理なく体のあらゆる機能が活性化。血液やリンパが流れやすくなり、巡りのいい土台を作ることができるそうだ。日本では認知度はまだまだ低いものの、海外ではバレエダンサーやスポーツ選手などのボディーメンテナンスやテクニック向上に活用されていたり、ヨーロッパでは病気やけがのリハビリの一環として取り入れられたりしているそう。それだけ体に優しく、効果も期待できるということか。すごいぞ、ジャイロトニック。

つらくないエクササイズ

 代々木公園近くの「スタジオナチュラルフロー」でプライベートレッスン。インストラクターの先生に指導していただきながら、まずは体の癖や可動域をチェック。名越の場合、左腰が縮んでいてうまく使えていないことが判明。重い荷物を持つときに、自然に左側ばかりに負荷をかけていたのだな、と自覚。そんなふうに自分の体に丁寧に向き合うと「え、こんなに使えていないの?」「こんなに余計な力がかかっていたのか!」とたくさんの発見がある。まだ知らぬ体のポテンシャルにわくわくしながら、いよいよエクササイズスタート。足に持ち手をかけて、マシンに装備された滑車の動きを使ってゆるやかにストレッチしていく。体の状態を見ながら先生が負荷設定を変えてくれるので、無理なく鍛えられるのがうれしい。「そう、ドルフィンのように流れるように〜」という先生の声。海を泳いでいるような、はたまたゆったりとダンスをしているような、不思議な運動。じんわり汗がにじんできてインナーマッスルにしっかりと効いている感覚はあるのだけれど、ぜんぜんつらくない。むしろ眠りそうなほど心地いいのだ。

筋肉の目覚め

 一言で表すと、「体のスイッチ・オン!」。知らず知らずについてしまった体の癖や、すっかり使うことを忘れていた筋肉に気付き、目覚めていく感覚なのだ。人間って面白いもので、意識した瞬間から不思議と筋肉は反応するし、自分の力で調整しようとする力が働く。自己流ではなく、機械がしっかりと動きをサポートしてくれるから、これまで伸ばせていなかった部分がストレッチされ、なんとも心地良い。終わった後は、体が本来の位置で動かせている感覚があって、歩いているだけなのに「ちゃんと使えているかも!」と興奮。こうやって体がきちんと機能すれば、日々の何気ない移動もきっと立派な運動になるのだな。自分の体の機能を根本的に見直したい人、違うアプローチでダイエットの土台作りをしたい人。この春、目覚めるストレッチにチャレンジしてみてほしい。

スタジオナチュラルフロー
住所:東京都渋谷区富ヶ谷1-11-12
アルシュ代々木ビル3・4階
TEL:03-3468-1921

名越涼/フリーアナウンサー。香港出身。福井と愛知のテレビ局アナウンサーを経て独立。司会やライター、セミナー講師、企画・プロデュースなど幅広く活躍するパラレルワーカー。趣味・特技は手作り発酵食、食文化研究、ヨガ(歴15年)eスポーツと農業にも精通

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「推し時計、燃ゆ」 日々ランチタイムに時計をニヤニヤ撮影する編集者の場合

 「推し、燃ゆ」が芥川賞を受賞し、“推し活”が豊かな生き方につながるとの認識が広まっている。そこで元来、推しの要素が強い時計の世界で、さまざまな人に“推し時計があることで得られる幸福感”や“そもそも、なぜ推しているのか?”などを聞き、時計の持つ“時間を知る”以上の価値について探ってみたい。

 1人目として登場してもらったのは、ニューヨーク発祥の時計オンラインメディア「ホディンキー(HODINKEE)」の日本版「ホディンキー・ジャパン」の和田将治ウェブプロデューサー兼編集者。彼の“推し活”は、ランチタイムの時計撮影だ。

WWD:毎日、昼休みに時計を撮影しているとか?

和田将治「ホディンキー・ジャパン」ウェブプロデューサー兼編集者(以下、和田):その日着けている時計に加えて、3本ほどを撮影用に常備しています。クライアントに急に会う場合にも、ストックは活躍してくれます。

WWD:時計の所有本数は?

和田:20本以上はあります。まずはブランドのシグネチャーモデルを集めようと思っていて、それが一周したらよりマニアックなものにトライしたいです。

WWD:和田さんのある一日について教えてください。

和田:当社はフレックスタイム制を導入していて、加えて現在は週に1~2日程度の出社なのですが、ランチタイムはだいたい12~15時の間です。東京・青山にある会社近くのフードトラックやコンビニで食べ物を買って、オフィスで食事時に撮影します。近所に住んでいたり起業していたりの友人もいるので、彼らを呼んでカフェやレストランに行くこともあります。友人も僕が時計マニアであることを知っているので、急に撮影を始めても放っておいてくれます(笑)。

WWD:この“推し活”を始めたのはいつごろ?

和田:「腕時計の読みもの」という個人ブログを立ち上げた2017年からです。その後、「ホディンキー・ジャパン」に参加して、本業が忙しくてブログは手付かず状態ですが……。ランチタイムに撮影して、帰宅時に電車の中でスマホで編集。2日に1度くらいのペースで、納得できる写真ができた時はインスタグラム(INSTAGRAM)にアップしています。編集には、アドビの有料アプリ「フォトショップ ライトルーム」を使っています。今はちょっと難しいのですがオフ会に参加して、人の時計を撮らせてもらうこともあります。また、これは役得ですが、ブランドから新作をお借りすることも。私的な活動ながら、撮影スキルが上がって媒体にも還元できているのではないかと思います。「ホディンキー」では編集者が自ら撮影することも多く、写真のクオリティーにもこだわっています。昨年末にアメリカで発売した紙版の「ホディンキーマガジン」にも僕の写真を掲載しました。

WWD:愛用のカメラは?

和田:「ライカ(LEICA)」のデジカメ“Q2”です。年始に約70万円で購入しました。「ライカ」は、「ホディンキー」の本国メンバーも使っていて憧れでした。貸してもらって撮りやすかったこともあり、“向こう10年使うから”と自分で自分に言い訳して決断しました(笑)。17cmまでオートフォーカスできるので、時計の着用自撮りや置き撮りに最適です。プロップとして映り込ませても絵になるのが「ライカ」の魅力ですね。“Q2”の前は富士フイルムの“X-E3”(約10万円)、さらにその前はiPhoneだったので、カメラもステップアップしていますね。

WWD:インスタグラムを通じてコミュニティーも広がっている?

和田:投稿をバイリンガルにしていることや、「ホディンキー」では日本版をアメリカにリフト(転載)することもあって、それを見たハリウッド俳優のマイルズ・フィッシャー(Miles Fisher)やプロサッカー選手のカルフィン・ヨン・ア・ピン (Calvin Jong A Pin)からDMをもらいました。海外の方からは「グランドセイコー(GRAND SEIKO)」について、「新作ってどうなの?」「日本での評価は?」などと聞かれることが多いです。現在、Jリーグの横浜FCに在籍するカルフィンとは、その後、家族ぐるみでバーベキューをする仲に。スイスの高級時計ブランド「パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)」や「オーデマ ピゲ(AUDEMARS PIGUET)」を所有していて、チームメイトである“キングカズ(三浦知良)”に時計の手ほどきを受けているそうです。

WWD:時計コミュニティーならではの濃密な関係ですね。

和田:時計ってニッチなわりに“流派”みたいなものもあって、チャネルが合う人はレアなんです。また「ホディンキー」の記事には主観が入ることが多いので、読者は書き手の好みも分かります。時計好きって話したがりが多いし、海外の方はディスカッション文化を持つので輪が広がっていきます。僕のキャラクターも奏功しているのかと。“先生”のような人ならカジュアルには話し掛けづらいけれど、ちょっと何か聞くのにちょうどいいんだと思います(笑)。

WWD:和田さんにとって時計とは?

和田:コミュニケーションツールであり、アイデンティティーの表明。お気に入りを常に身に着けられて、いつでもそれを見られる。ついでに時間が分かってしまうという機能まである(笑)。高価・安価に関係なく、「結婚記念にもらった」とか「〇〇が好きで選んだ」とか「祖父の形見だ」とか、時計とその所有者のストーリーを聞くのも好きなんです。

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業界の未来をスノーピークの女性社長らが語る ルミネと米「WWD」共催フォーラムレポ第2弾

 ルミネと米「WWD」は2月24日、「WWD オンライン リテール 2021 フォーラム」を開催した。日本のファッション・小売業界の活性化に向けて、国際色豊かなゲストスピーカーによる最新の知見を提供した。今に対処するだけでなく一歩先の未来を考えるきっかけづくりに生かしてほしいとの願いを込め、ほとんどのセッションは3月26日までオンデマンドで視聴可能だ。

 当日は編集部も、新しいアイデアや考えを楽しみに視聴した。登壇者はそれぞれの視点からサステナビリティやモノづくり、イノベーションなど、幅広いテーマについて語った。独自のオンライン戦略や小売りの活性化計画を通して、新型コロナのパンデミック前以上に「より良い社会」を見据えて動き出している。業界の最新ニュースを届ける1メディアとして、ファッション・小売業界の活性化のために企業の取り組みや情報を正しく・広く伝えることの必要性を実感。改めて、業界が抱える大量生産・消費・廃棄を生んでいる社会構造の変革に向けて、共に在りたいと思った。

 語られていた内容をもとに、フォーラムを理解するキーワード、「体験とつながり」「「パーパス(存在意義)」「”賢い“消費」「2次流通(セカンドハンド)」の4つを設定した。キーワードごとに第1弾と第2段に分け、各セッションの一部を紹介しながら参加企業の声や今後の展望をレポートする。

“賢い”消費

2次流通(セカンドハンド)

ルミネの展望

 今回のフォーラムでは、「ポストコロナ時代に向けての小売りの未来」「サステナビリティ」「企業価値について」など、われわれが向かうべき道について示唆に富んだ内容を聞くことができました。このフォーラムを契機として、さまざまな顕在的、潜在的な課題に対して議論を深化させ、ご参加いただいた各企業やブランドが多様に進化していくことを期待しています。結果、業界全体が活性化して、ひいては日本全体の活力につながれば、と考えております。

米「WWD」が
日本のファッション・
小売業界に期待すること

 本フォーラムが日本の小売りやブランドにとって、商品デザインからサプライチェーンの仕組み、店舗のコンセプト、カスタマーサービスまで、あらゆる側面のサステナビリティを見直すきっかけになることを願います。オンラインの活性化にも役立つコンテンツがそろっているので、日本の歴史や伝統の中にうまく取り込んでほしいと願っています。業界を追う一メディアとしても、今後プレゼンテーションで語られたトピックスを取り上げ、対話を深めていきたいと思います。

※オンデマンドの視聴は3月26日まで可能です。
※ダグ・スティーブンス=リテール・プロフェット創業社長のセッションはご視聴いただけません。
※参加費は無料です。
問い合わせ先
ルミネ海外事業部 フォーラム運営事務局
03-5334-0576

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被災した縫製工場、岩手モリヤ社長が見た「日本のアパレルの10年」 #あれから私は

 2011年3月11日、後にドラマ「あまちゃん」で知られることになる、海と山に囲まれた岩手県久慈市には高さ14メートルを超える津波が押し寄せた。600棟の家屋が被災し、死者・行方不明者は6人だった。市内の縫製工場、岩手モリヤにも津波が駐車場にまで迫り、ある従業員は家屋が流された。「WWDジャパン」は2011年の3月28日号で、震災から一週間後の3月18日に同社が早くも稼働を再開したことを伝えている。

 あれから10年。岩手モリヤの森奥信孝社長(67)は、今も忙しい日々を送っている。久慈市と隣の二戸市の縫製工場に呼びかけ、「北いわてアパレル産業振興会」を結成。地場発のファクトリーブランドを作ったり、ファッションショーを開催したりと、岩手発のものづくりを発信してきた。

 1988年創業の岩手モリヤは、月に約4000着のコートやジャケットを生産している。生産するアイテムは、業界ではいわゆる“プレタ”と呼ばれる高級ゾーンで、ジャケットで5〜8万円以上、コートだと10万円前後になる。主要な取引先はトゥモローランドやレリアン、三陽商会など。

 同社はもともと、婦人服の縫製工場としては卓越した技術で知られる企業だった。一時期技能実習生を採用したこともあったがすぐに止めて、ずっと地元雇用を続けており、現在も従業員の大半は地元久慈市の出身だ。難易度の高さで知られる、厚生労働省認定の国家資格である1級の婦人服製造の技能士を10人、2級だと26人も抱える。震災前に100人以上いた従業員は現在83人にまで減っているものの、技能士の資格保有者は4割を超える縫製工場はそう多くない。高価で知られる自動ハンガーシステムであるイートンや最新鋭の3DCAD、生地試験、従業員一人ひとりにタブレットを配布するなど、設備投資にも力を入れてきた。

 森奥社長の目から見て、日本のアパレル産業は何が変わり、何が変わらなかったのか。

WWDジャパン(以下、WWD):東日本大震災から10年。一番大きな変化は何でしょう?

森奥信孝・社長(以下、森奥):日本のアパレル産業が縮小したことです。海外生産がさらに増える一方で、日本の縫製産業が支える“メードインジャパン”はどんどん減っていて、縫製産業の従事者の数は10年前と比較すると3割も減っています。現場で仕事をしていると実感するのが、アパレル側にモノ作りが分かる人が本当に減ったな、と。今はパタンナーですら現場に来ることはかなり減っていますし、昔みたいに良くも悪くも注文をつけるような人も減りました。人という面で空洞化が進んでいます。

WWD:というと?

森奥:仕様書やサンプルが来ても実際には量産には乗せられないような滅茶苦茶なものも多い。発注する側が全く現場を知らないからです。もちろん昔から無茶を言う人はいました。でもそれは工程や手間が増えるとか、前例がないから、とかそういうことでしたが、いまは単に実際に手を動かしたことがないから、あるいは現場を知らないからわからない、そういったことが増えています。

WWD:先行きも厳しいそうですね。

森奥:いや、希望は全然捨ててないですよ。だって、日本のファッションは日本で作らないと成立しないじゃない?これから日本のアパレルやブランドが生き残って成長するためには海外に出る必要がある。そのときに必要なのは何ですか?日本のもの作りですよ。われわれ縫製業は、胸を張って“これがメードインジャパンだ!”と製品を世界に発信したい。それだけのことはやっているんです。

WWD:日本のもの作りの強さとは?

森奥:例えば岩手モリヤでは、前身頃、後ろ身頃、両袖のアーム部分にクセ取りという、アイロンでフォルムを作る工程を入れています。これは工賃の多い少ないにかかわらず、全アイテムを対象にした標準工程です。作業時間としては20〜30分ほどですが、これを入れるか入れないかで、製品になったときのフォルムやシルエットの美しさが全然変わってくる。当社にとっては標準工程で仕様書にも入れていないですし、当然工賃には反映されない。当社の場合は他にも、ほぼ全商品の生地試験もやります。同じ品番の生地でも色が違うだけで、縮率などが変わるからです。当社は最新の3DCADソフトを入れていて、その生地試験の結果を見ながら、取引先からもらったCADデータをこちらで修正します。そうすればいい製品を作れるし、不良品の発生率も下がる。ではなぜそんなことをやっているか。それはいいものを作りたいからです。取引先から求められているからではないんです。こうした細かいこだわりは例を上げればキリがない。これは当社だけじゃないですよ。少なくとも私の知っている久慈の縫製工場はどこもそうしたテクニックをたくさん持っている。自主的に誇りを持ってやっているんです。だから強い。

WWD:にも関わらず、もう随分前から日本の縫製産業は減少し続けています。なぜでしょう?

森奥:それはグローバル化や海外企業の技術力の向上など、いろいろあると思いますよ。日本の縫製産業だって技能実習生を入れることで、延命を図ってきたようなところもある。でも、縮小の一因として日本のアパレルがモノづくりの現場を軽視してきた部分も小さくない。先ほど話したアパレル側が現場に入らないのは、その象徴です。

WWD:昔は違ったのでしょうか?

森奥:昔は本当にこだわりの強いパタンナーやデザイナーがいて、よく彼ら/彼女らも工場に来て、あれこれ注文をつけたり、あーでもない、こうでもないと一緒になって考えたりしたものです。実際、先ほどの「クセ取り」工程はそうしたブランドのパタンナーと当社のベテラン縫製技能士とのディスカッションから生まれたアイデアです。それを経営者の私が工場としての付加価値を上げるために、当社の標準的な工程にした。先ほど20〜30分の工程だと言いましたが、縫製工場の経営者は誰もが、一着あたりの生産性を1秒でも短くしようとしている中で、この20分30分は大きい。それでもやっているのは、いい服が作れれば、その一念です。

WWD:10年前の東日本大震災のことを教えてください。

森奥:当社は幸いにも工場の敷地の一部が浸水しただけで、直接的な被害はそう大きくはなかった。それでも従業員の中には家が流された人もいたし、すぐ裏手にあった久慈ソーイングさんは津波が直撃して工場はメチャクチャになった。振り返ってみても、被害が少なかったのは僥倖です。地震が起こった直後、うちの会社はすぐに裏手の高台に従業員を全員避難させました。あのときに帰宅させていたら、津波の被害に合っていたかもしれない。震災から一週間はライフラインが止まり、私も避難所で生活していました。わずか一週間で再稼働できたのは、ラッキーだったとしか言いようがない。いま振り返ってみても、地震そのものよりも、やはり影響が大きかったのは津波です。工場が津波を被った、被っていないかでかなり違う。

WWD:当時はどんな支援があったのでしょう?

森奥:県や市、それに多くのアパレル企業からも支援をいただきました。本当に感謝しています。震災から1ヵ月後に上京して支援をお願いした際には、ある有力な取引先のトップはその場で社員を集めて「とにかく出せるオーダーを出しなさい」と言ってくれた。ある小さなブランドも「一型しか出せませんが」と言いながら、オーダーを出してくれました。嬉しかった。復興を考えた場合、仕事をもらうことが何よりも大きな支援になったからです。

森奥:その一方で、あるアパレルの生産担当役員に「海外に出す分の数%でもいいから発注を回してほしい。それが非常に大きな支援になる」とお願いしたら、即座に「無理だね。うちも苦しいから」と断られたこともあった。取り付く島もなかった。悲しさもありましたが、それ以上に悔しかった。こちらは必死に日本で作り、日本のもの作りを守りたい、と思ってやってきましたが、実際にアパレル側はそうではなかったと感じたからです。これは当社だけじゃない。実際に久慈の同業者の中には納入が遅れた分の補償を求められた企業もあって、これには久慈の縫製企業が一丸となって阻止しました。どこかで日本のアパレルは、日本でのもの作りを自分の都合のいいようにしか考えていないところがある。それはこの10年、縫製産業が減り続ける一因にもなっていると感じています。

WWD:どうすればいいのでしょう?

森奥:冒頭にも言いましたが、かつてのようにデザイナーやパタンナーが工場に入って、一緒のもの作りというのは難しいと思います。では、どうするか。すでに現場では、量産できるように仕様書の作り直したり、生産ラインに応じて納期を提案したり、工場側が主導権を握っていることが多いんです。日本製は確かに高い。でも、こんなこと海外の工場とできますか?そもそも海外の工場は受注元から来た仕様書を改善して戻す、なんてことしませんよ。だからこれからは工場の時代だと思っています。当社には一級技能士が10人もいて、中には40年以上のキャリアがあって自分でパターンを引ける技能士もいる。

森奥:現在の3DCADソフトは、3Dのグラフィックには目を見張るものがありますが、型紙データを3Dに反映することはできない。ですが、テクノロジーが進化して、型紙(2D)を修正すれば、それがそのまま3Dバーチャル服も修正できるような3DCADソフトができれば、当社の一級技能士がパターンメイキングもできるようになる。これは大きい。工数を劇的に減らすことができる。そうなると、小ロット多品種の服作りも可能になるかもしれない。

WWD:未来は明るいですか?

森奥:明るいですよ。そう信じています。でも、足元は不透明で、グラグラしている。実は3月までは医療用ガウンでしのいできましたが、その後の4月5月は受注がほとんどないような状態です。当社は大半が地元雇用で、こちらに家があって家族もいる。県や地域をまたぐような流動性がないから、もし当社が倒産したら、こうした人材は埋もれることになる。これまで倒産した縫製工場はすべてそうやって、貴重な技術が失われてきたのです。それだけは絶対避けないと。明るい未来のために、あともう少しだけ生き残る必要がある。そのために必要なのは、日本のアパレルメーカーの姿勢です。それが、いま問われているのだと思います。

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「トモ コイズミ」や「ショーフィールズ」創設者ら登壇 ルミネと米「WWD」共催フォーラムレポ第1弾

 ルミネと米「WWD」は2月24日、「WWD オンライン リテール 2021 フォーラム」を開催した。日本のファッション・小売業界の活性化に向けて、国際色豊かなゲストスピーカーによる最新の知見を提供した。今に対処するだけでなく一歩先の未来を考えるきっかけづくりに生かしてほしいとの願いを込め、ほとんどのセッションは3月26日までオンデマンドで視聴可能だ。

 当日は編集部も、新しいアイデアや考えを楽しみに視聴した。登壇者はそれぞれの視点からサステナビリティやモノづくり、イノベーションなど、幅広いテーマについて語った。独自のオンライン戦略や小売りの活性化計画を通して、新型コロナのパンデミック前以上に「より良い社会」を見据えて動き出している。業界の最新ニュースを届ける1メディアとして、ファッション・小売業界の活性化のために企業の取り組みや情報を正しく・広く伝えることの必要性を実感。改めて、業界が抱える大量生産・消費・廃棄を生んでいる社会構造の変革に向けて、共に在りたいと思った。

 語られていた内容をもとに、フォーラムを理解するキーワード、「体験とつながり」「「パーパス(存在意義)」「”賢い“消費」「2次流通(セカンドハンド)」の4つを設定した。キーワードごとに第1弾と第2段に分け、各セッションの一部を紹介しながら参加企業の声や今後の展望をレポートする。

体験とつながり

パーパス(存在意義)

参加企業インタビュー
当事者として何を思う?

 ファッション産業全体が世界レベルで抱えていた社会問題を当事者として正しく認識し、学ぶことができたらと期待して視聴しました。問題に対する迅速な対応の必要性と、課題解決の実現に対する責任を感じています。業界に携わる全ての方々と共感を生むことで、課題やビジョンは業界での共通認識となり、結果、活性化につながります。幅広いテーマを多角的に捉えていて、さまざまな刺激をいただきました。

これからのファッションについて、
考えや心持ちはどう変化した?

 世界の変化の潮流や事例、知見を聞いて、これからの戦略の参考にしたいと思いました。主催のルミネおよび米「WWD」にはこれら最新事例を、参加者を巻き込んで実現することを期待しています。アパレル産業の根本的な課題を再認識出来たので、改革へ向けたモチベーションが上がりました。小売りに携わる方で、現状を変えたいと思っている全ての人に視聴してほしいです。

※オンデマンドの視聴は3月26日まで可能です。
※ダグ・スティーブンス=リテール・プロフェット創業社長のセッションはご視聴いただけません。
※参加費は無料です。
問い合わせ先
ルミネ海外事業部 フォーラム運営事務局
03-5334-0576

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「午後の紅茶」発売35周年でリニューアル ロングセラー商品に学ぶ「愛され続ける」秘訣

 今年発売35周年を迎えるキリンビバレッジの「午後の紅茶」は、フラッグシップ商品である「ストレートティー、ミルクティー、レモンティー」をリニューアルし、3月9日に全国発売する。飲料市場における紅茶カテゴリーの売上シェア50%※1を占め、全清涼飲料において好意度第2位※2を誇るブランドは、35年でどのような商品開発やコミュニケーション戦略を行ってきたのか。「午後ティー」の愛称で親しまれる国民的紅茶ブランドのリニューアルから、ロングセラーであり続ける秘訣を探る。

「幸せなときめきを届ける」
味わいとパッケージ

「午後の紅茶」は、1986年に日本初※3のペットボトル入り紅茶として誕生した、市場のパイオニアだ。多くのロングセラー商品がそうであるように、消費者の嗜好に合わせてマイナーチェンジされる味わいや発信されるキャッチコピーは、時代の合わせ鏡として「売れ続ける商品」作りのヒントが隠されている。
 35年目のリニューアルでは、「いつでもお客様に幸せなときめきを届ける」というブランド・パーパス(社会的存在意義)を軸に、健康意識の高まりや、紅茶を飲むと“少し気持ちが上がる”ベネフィット(商品から得られる良い効果)に応えた施策を、商品とキャンペーンの双方から訴求する。
 まず味覚では、茶葉のブレンドを見直した。フレーバーごとに相性の良いスリランカ産の品種を使用して、「すっきり感」と「茶葉の香り」を高めることで「午後ティー史上最高おいしい!」を実現したという。パッケージでは、背景をダイヤ柄に変更して、ティーポットのイラストを大きく配置。おいしさと上品な可愛いらしさを同時に連想させるデザインにすることで、正統派で上質なイメージを強めた。

絶え間ない商品開発の努力で
ペットボトル紅茶を日本の“文化”に

 今でこそ、日本において「午後の紅茶」を知らない人は極わずかだろうが、商品が誕生した1986年は紅茶といえば本場・英国と同じく、家庭で淹れるホットティーが主流だった。「それから35年の間に、私たちの『午後の紅茶』が、ペットボトルで紅茶を飲むという今では当たり前の習慣を作ってきたという自負がある」と加藤麻里子シニアブランドマネジャー。ただ当時の商品開発に当たっては超えるべきハードルも数々あった。その一つが、「紅茶は冷やすと濁る」という性質で、当時は“おいしそうな透明感”をアイスティーで出すのは困難だった。この課題を解決したのが、キリンビバレッジの独自技術「クリアアイスティー製法」で、日本初のペットボトル入り紅茶の商品化を可能にした。
 発売から徐々に売上を伸ばしていった「午後の紅茶」は、1996年の小型ペットボトルの発売をターニングポイントに、紅茶を日常的に飲む習慣をさらに普及させていく。無糖茶市場が盛り上がる2006年には、“紅茶=甘い・高いカロリー”の固定概念を払拭するために、「20年目の新提案。実はヘルシー」のキャッチコピーで、「午後の紅茶」から遠のいていたユーザーの再トライアル化に成功。10年に発売した「エスプレッソティー」は男性の缶コーヒーユーザーを捉え、11年に登場した「おいしい無糖」は「おにぎり公式飲料!?」という意外性のあるキャッチコピーと新たな飲用シーンの提案で、無糖紅茶の市場定着に貢献した。19年に発売した、甘くない・微糖の“午後の紅茶 ザ・マイスターズ ミルクティー”は大人層の気分転換のシーンにマッチして、大ヒット商品へとつながっている。

 時代に合わせて、さまざまなフレーバーや企画商品を柔軟に打ち出す「午後の紅茶」だが、「ストレートティー、ミルクティー、レモンティー」は「ブランドイメージを形成するフラッグシップ商品。嗜好品としてのおいしさを追求している」と話す。リニューアルの商品開発では、通常の10倍となる約3000人の意見を参考にした。常温テストも行い、飲み切るまでの味わいにも徹底的にこだわった。「『午後の紅茶』を飲む人だけでなく、飲まない人にも『おいしい』と言っていただける商品を作るのに苦労した」と振り返る。
 徹底した市場調査から導き出される「午後の紅茶」流のマーケティングだが、過去のリニューアルでは苦戦もある。商品パッケージからブランドのアイコン、アンナ・マリア婦人の似顔絵を消したときに「約3年間、売り上げが低迷した。ブランドは無形資産と言われるように、「午後の紅茶」の明朝体のフォントだけでなく、婦人とセットで見ると直感的に『午後の紅茶』だと認識されていたことが分かり、何かが無くなったり加わったりするだけで、ブランド価値が揺らぐことに気付かされた」と話す。
 「午後の紅茶」は、今後さらに半世紀愛されるブランドを目指して「まずは今年1年、お客さまに支えられた感謝をさまざまなかたちで伝えていく」。リニューアル商品発売の3月以降も、やさしさ・おいしさ・ときめきをコンセプトにしたキャンペーンを続々と予定している。ビジネス面では「清涼飲料全体で紅茶市場のシェアは約5%※4と低く、まだ伸びしろがある。NO.1ブランド※5として、さらに多くの人に紅茶を飲んでいただけるきっかけを作っていきたい」と展望を語る。

茶葉から広がるCSV活動

 「午後の紅茶」は、商品と親和性のある地域や国でCSV活動を続けてきたが、今年はその取り組みを強化して、社外にも発信していく。日本に輸入される紅茶葉の46%※6占め、「午後の紅茶」にも使用するスリランカ紅茶葉の産地支援プロジェクト「キリン スリランカフレンドシップ」 の一環では、07年に農園の子どもたちが通う学校へ図書を寄贈する「キリンライブラリー」をスタート。13年からは、農園従事者の生活と労働環境の向上を目指して「レインフォレスト・アライアンス認証」取得の支援プログラムも続けている。茶葉をフックにした社会貢献からも、「午後の紅茶」のおいしさを伝えることを推進していく。

※1 ※4 2019年「清涼飲料関係統計資料」全国清涼飲料工業会調べ
※2 2020年3月 キリンビバレッジ調べ
※3 株式会社食品マーケティング研究所調べ(1986年当時の主要飲料販売メーカー及び製罐メーカーを対象としたヒアリング調査による)
※5 株式会社食品マーケティング研究所調べ(2020年実績)
※6 財務省「貿易統計」

のんだあとはリサイクル。
PHOTO:SHUHEI SHINE

問い合わせ先
キリンビバレッジお客様相談室
0120-595955

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新聞を発行した「ロエベ」と、映像でも余韻を感じさせる「ヨウジ ヤマモト」 パリコレ対談Vol.2

 2021-22年秋冬シーズンのパリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)が3月10日までオンライン上で開催中です。ここでは4〜6日に発表された中から厳選した9ブランドをご紹介。過去8年間パリコレやミラノコレを取材してきたベルリン在住の藪野淳ヨーロッパ通信員と、ウィメンズ・コレクションを担当する大杉真心「WWDジャパン」記者が対談形式でリポートします。

「ビューティフル ピープル」で冨永愛が熱演!鏡に映るもう一人の姿

大杉:「ビューティフル ピープル(BEAUTIFUL PEOPLE)」は2021年秋コレクションで発表した新たなパターンテクニック「ダブルエンド(double-end)」を発展させたコレクションでした。「ダブルエンド」は単なる2ウエイではなく、上下をひっくり返すことで新しい形の服になるアイデアです。動画では、日本を代表するモデルの冨永愛さんを起用していましたね!鏡のような演出で、鏡面に映った姿と同じ服を着ていても、別の着方をしているという表現でした。愛さんが鏡の向こうの自分に笑いかけたり、にらみ合ったりする演技が強く、別人格がいるようでドラマチック。引き込まれました。

藪野:パンツも上下逆にできるのには驚きでした。ちなみに「ビューティフル ピープル」の後に披露された「ヴィクトリア/トマス(VICTORIA/TOMAS)」も先シーズンからコンセプトを変えていて、今季も全てのウエアがリバーシブル仕様のコレクション。実際のところ、リバーシブルや2ウエイってどちらかの着方の方が好みだったり素敵だったりして、結局1パターンでしか着ないということも多いですよね。両方を高い完成度に持っていくのはなかなかチャレンジングですが、こういう“一着で二度おいしい“的な提案は増えてくるんですかね?

大杉:そう言えば、ミラノで発表した「エムエム6 メゾン マルジェラ(MM6 MAISON MARGIELA)」も、インサイドアウト(裏返し)、アップサイドダウン(逆さま)など、リバーシブルで2パターンの着こなしができる提案をしていました。「ビューティフル ピープル」は3月15日に東京でファッションショーを開催予定で、その内容は今回のパリコレ動画の続編となるそうなので、来週の発表も楽しみです!

風が吹き荒れる海辺を舞台にした「リック・オウエンス」

藪野:「リック・オウエンス(RICK OWENS)」はライブショーの配信でしたが、今回も舞台はパリではなくイタリア・ベネチアの南にあるリド島です。かつてはカジノだったという歴史ある建物をバックに開催した21年春夏シーズンに対し、今季のランウエイはビーチにあるコンクリートの桟橋。冬の海と曇り空という背景が、どこか物悲しい雰囲気を漂わせます。

大杉:風が吹き荒れる海辺で、冬の厳しい寒さが伝わってきました。バックステージも映し出され、リック本人もモデルへ着せ付けをしていましたね。今季のファッション・ウイークも終盤ですが、モデル全員がマスクを着用していた唯一のショーだったと思います。ただ普通のマスクではなく、黒やグレーで首元まで垂れ下がるロング丈で、ファッションとして提案されていたのがよかったです。

藪野:コレクションは1月に披露されたメンズ・コレクションと同じく「ゲッセマネ(Gethsemane)」という題名で、これはキリストが磔の前夜に祈りを捧げた庭のことだそう。メンズに通じる地面を引きずるほど長いコートやパワーショルダーのボンバージャケット、袖が取り外せるダウンジャケットなどが登場しました。ウィメンズではほぼ全てのモデルがレザーのボディースーツを着用。マーメイドラインのロングドレスも印象的でしたね。

「ロエベ」は新聞でコレクション発表

大杉:「ロエベ(LOEWE)」は前シーズン、ファッションショーが開催できない代わりに壁紙をプレス関係者に送って原寸大のルックを見せるという試みをしていましたが、今回は新聞を作っちゃいましたね!“【特報】ロエベ ファッションショーを中止”という見出しが入った“ロエベ新聞”は、朝日新聞の折り込みで都内一部の定期購読者に配布したそうですね。フランスでは「ル・フィガロ(Le Figaro)」 、イギリスでは「タイムズ(The Times)」、アメリカでは「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」と取り組んだそう。クリエイティブ・ディレクターのジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)の発想には驚かされます。

藪野:ジョナサンは毎朝、新聞を読むのが好きだそう。新聞を使った理由については、「多くの観客にショーを届けるためにメディアを手段として使うことを考えた。自分たちがやろうとしていることに対して、より多くの人に興味を持ってもらえるように広く配信したかった」と話していました。ちゃんと発行される国の言語に翻訳もされているというところから彼の本気度が伺えます。コレクションは視覚的に訴える鮮やかな色と幾何学なモチーフが印象的でしたが、ジョナサンはカラーセラピーについて考え、気持ちを明るくしてくれる色を取り入れたとのこと。ここ数シーズン顕著なドラマチックなボリュームやドレープの使い方も見られる一方で、1920年代の乗馬用ジャケットなどからヒントを得たという縦長シルエットのテーラリングやドレスのようにまとうレザーコートなどもあり、充実したラインアップで着飾ることの楽しさを伝えているように感じました。「ロエベ」と言えばレザーグッズも重要ですが、その辺りはどうでしょう?

大杉:弊紙が全国百貨店を対象に行った取材によると「ロエベ」は今、日本でとても好調です。映画「となりのトトロ」とのコラボレーションも話題になりまし、SNSで露出が多く、幅広い世代から支持を得ています。動画の中でジョナサンが「新しいアイコンとしてタイムレスで、ジュエリーのようなバックを目指した」と話していたショルダーバッグの“ゴーヤ(GOYA)”バッグに一目惚れ。個人的にも欲しいと思っています。

藪野:価格が気になるところですね。また、ブランドを代表する定番バッグ”アマソナ(AMAZONA)”も久々にコレクションでフューチャーされていました。オリジナルの南京錠付きデザインですが、より上質なレザーや進歩した技術力を駆使して、より洗練されたアイテムに仕上げたとのことです。形状は横長の長方形に加え、新たに正方形に近いものが登場。カラフルなレザーとアナグラムのジャカード生地で提案されています。

「イッセイ ミヤケ」の“静かだけど堂々としている服”

藪野:「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」のテーマは、“As the Way It Comes to Be -生まれたままで-“。是枝裕和監督の映画作品「そして父になる」や「海街diary」で撮影監督を務めた瀧本幹也さんがディレクションした映像を通して、コレクションを発表しました。無機質なビルと自然の中で、有機的なフォルムと色が際立っていましたね。特にしなやかな曲線を描くプリーツが目を引きました。大杉さんは、東京で実際のアイテムも見てきたんですよね?

大杉:はい。普段、展示会を行っているホールが上映室になっていて、編集長の向と私の2人で事前に映像を拝聴するという贅沢な機会をいただきました。その後、デザイナーの近藤悟史さんに説明を受けながら、実際のアイテムに袖を通してきました。今季は自然の普遍的な美しさに着目して、「静かだけど堂々としている服を作りたかった」という近藤さんの言葉が印象に残りました。特殊な素材加工を強みとする「イッセイ ミヤケ」には珍しく、無染色のウールやオーガニックコットンのそのままの色と風合いを生かしたウエアシリーズもありました。ウールコートは柔らかく、軽くて、細部まで近藤さんのこだわりが詰まっています。詳しいレポートも書いたので是非合わせて読んでいただけたら嬉しいです。

「ニナ リッチ」の無観客ショー(仮)

大杉:「ニナ リッチ(NINA RICCI)」は青い椅子を並べたランウエイをモデルが歩く、無観客ショーの映像でした。ルシェミー・ボッタ―(Rushemy Botter)とリジー・ヘレブラー(Lisi Herrebrugh)のデュオによる「ニナ リッチ」は透明感があって、近未来的な印象です。ジャケットのセットアップとスポーツウエアのようなパーカのレイヤードや、膝上丈のコートと千鳥格子のカラータイツの組み合せたスタイリングは、軽やかでフレッシュ。多数のモデルが被っていたクラウンの高い帽子もカラフルで目を引きました。藪野さんはZoom上で取材もしましたが、ルシェミーとリジーはどのようなことを話していましたか?

藪野:僕が取材したのは映像の公開前で「先シーズンよりもランウエイショーに近い形にしたけれど、普通とは違うクリエイティブな映像を目指した」とリジーが話していたのですが、実際に見て納得しました。確かに普通のショーのように始まりますが、スーパースローモーションや逆再生、合成を取り入れることで不思議な映像になっていましたね。コレクションはというと、2人は「クチュールメゾンとしてのヘリテージを大切にしながらも日常の中で着られるものを作りたい」という思いを持っていて、今季から価格帯を見直してより手の届きやすいブランドを目指すようです。コレクションも「アイテムの型数を絞ってより色と形にフォーカスした」と言います。デザインは、得意とするテーラリングにユーティリティーやスポーツウエアの要素、そしてクチュール由来の形状をミックス。細長いシルエットのスーツは、1940年代のアーカイブから着想を得たもので、ガーメントダイのナイロンやウールを使ったワークジャケットや取り外しできるスカーフ付きのダッフルコートは後ろが少しふくらんだコクーンシェイプが特徴になっています。遊び心のあるアクセサリーも彼らの魅力ですが、イヤリングはメゾンを代表する香水“レールデュタン(L’AIR DU TEMPS)”の瓶の蓋からヒントを得た鳥のデザイン。そして大杉さんが気になった帽子は、ファーストコレクションで披露したハットを作る時に使った木型の形を再現したそうですよ。

動きの余韻を感じさせる「ヨウジ ヤマモト」

藪野:「ヨウジ ヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」は、昨年9月のパリコレで見たリアルショーの中でも特に心に残っているブランドなのですが、やっぱりリアルで見たいな〜と思いました。というのも、「ヨウジ ヤマモト」のショーにはモデルが歩いた後に余韻が漂うような独特な雰囲気があるから。今回の映像では、モデルがゆっくりと歩く動画に、白黒の動画や写真を重ねるように織り交ぜることで、そんな余韻の表現を試みているようにも感じました。

大杉:そうですね。映像でもドレープが美しいカーテンのかかった会場と、少しさみしい女性の歌声の演出がエモーションに訴えかけてきて、ブランドの世界観が感じられました。大きな安全ピンがボタンになったロングジャケット、紐やチェーンを大胆に垂らしたロングドレスなどは、今の不安定な世の中や、脆さを表しているようで、世の中の心境とリンクしているように思います。ラストには「リミフゥ(LIMI FEU)」のコレクションも登場しましたね。

3都市をつないだ「エルメス」のパフォーマンス

藪野:「エルメス(HERMES)」は、「Triptych(三部作)」と題して、ニューヨーク、パリ、上海の世界3都市をつないだ壮大なコレクション発表でした。最初の舞台はニューヨークで、振付師のマドリーヌ・オランダー(Madeline Hollander)演出によるウォーキングとダンスを組み合わせたような生き生きとしたパフォーマンスを7人の女性ダンサーが披露。そこからパリでのランウエイショーへと移り、上海での振付師グ・ジャニ(Gu Jiani)監修による中国の伝統舞踊の動きを取り入れた女性ダンサー5人のパフォーマンスで締めくくられるというものでした。全体を通して、女性の力強さが表現されているように感じましたね。

大杉:オンタイムで映像を見ていたのですが、ちょうど音声SNS「クラブハウス」で「マルタン・マルジェラとパリで仕事をして着たカナコさんに当時の話をお聞きする」というトークルームが立ち上がって、副音声にして聞いていました。パリでスタイリストとして活動されている日本人女性のカナコ・コガさんは、マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)がウィメンズ・アーティスティック・ディレクター時代の「エルメス」のデザインチームに所属されていた方。現「エルメス」のウィメンズのアーティスティック・ディレクターを務めるナデージュ・ヴァンヘ・シビュルスキー(Nadege Vanhee-Cybulski)は当時、マルタンの元で「メゾン マルタン マルジェラ(MAISON MARTIN MARGIELA)」が「女性のためのワードローブ」を提案する“4”ラインのデザインを担当していたという話をしていました。今回のコレクションを見ていると、ナデージュは師匠であるマルタンのデザインを継承しているのが分かります。マルタンがかつて「エルメス」でデザインしたレザーストラップをコートの留め具に施したり、ブランケットのようなコートがあったり、腕には二重巻きの時計ストラップ “ドゥブルトゥール(Double Tour)”を付けたアップルウオッチ(Apple Watch)の新作もありました。とてもマニアックですが(笑)、そんな発見も面白いですよね。

藪野:なるほど。「クラブハウス」ではそんな貴重な裏話が聞けることもあるんですね。コレクションでは、多くのモデルがデニムやレザー、ギャバジン、ダブルフェイスカシミアのハリのあるコートやジャケットの下に、セカンドスキンのような透け感のあるハイネックニットを着用。ミディ丈のプリーツドレスやポルカドット柄のドレスもハイネックで、首元とウエストにスモッキングが施されているのが印象的でした。ショーに先駆けて公開されたドキュメンタリーの中で、ナデージュは「今回のコレクションは出かけたい、この服を着たいという気持ちを掻き立てることが重要だった。技巧や動き、センシュアリティーを忘れることなく、心地良さやプロテクションを表現できる素材にこだわった」と話していましたね。

大杉:アクセサリーでは、メゾンを代表するバッグの“バーキン(BIRKIN)”が登場しました。ネイビーのカーフレザーとデニムを合わせた異素材ミックスのデザインが新鮮です。また、スマートフォンを収納できるミニバッグや、口紅を入れて首から下げられるリップスティックケースもあり、売れそうですね。

独自のデザインコードを再考した「ロク」

藪野:「ロク(ROKH)」は毎シーズン、デザイナーであるロク・ファン(Rok Hwang)自身の思い出が出発点になっていますが、今季はブランドの歩みを振り返ったそう。そして、「ロク」のデザインコードとは何かを再考。トレンチコートやジーンズ、テーラリング、イブニングドレスといったカテゴリーごとに分析するとともに再構築し、折衷的に組み合わせたといいます。

大杉:いつもよりギラギラした雰囲気がありましたね。薄暗いコンクリート打ちっ放しの空間を歩くモデルたちは、黒い総レースのビスチェにデニムスカートを合わせ、レオパード柄のコートの上から太ベルトでウエストマークをするなど、ボディコンスタイルです。派手なデザインでも下品にならず、洗練された雰囲気を保てているのは「ロク」の絶妙な丈感や、装飾のバランスなのだと思いました。2ピースに分かれる変形トレンチコートや、ワンショルダーのテーラードジャケットなど、ギミックを入れたアイテムは“「ロク」らしさ”を確立していると思います。

藪野:これまでと比べてよりセンシュアルでフェティッシュな雰囲気でしたが、「ロク」らしいを感じるコレクションに仕上げていていましたね。「WWD」NY版には、「スタイルの衝突が新鮮で刺激的だと感じた。人々は社交的なアティチュードを持ったフェミニンなものを求めている」とアフターコロナのファッションについて話していましたが、まさにそれを形にしたコレクションでした。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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元エンジニアの学生からアントワープを代表する若手デザイナーに 気鋭ブランド「ナマチェコ」の深みを増す服作り

 2015年に始動した気鋭ブランド「ナマチェコ(NAMACHEKO)」が、メンズ市場で存在感を強めている。デビュー直後は10万円のシャツや30万円のコートなど上顧客向けのコレクションだったが、最近は3万円代のデニムなどリーズナブルなアイテムも増やして若年層の支持を拡大。現在、国内で約20、海外で約40のアカウントを持つまでに成長している。

 デザイナーのディラン・ルー(Dilan Lurr)は、大学で土木工学を専攻していた元エンジニア。服飾学校に通っていたわけではなく、プライベートワークで制作した映像作品の衣装がパリの有力ショップ「ザ・ブロークン・アーム(THE BROKEN ARM)」に買い付けられ、ブランドを設立した。以降、18年春夏シーズンからパリ・メンズ・コレクションに参加し、19年には若手デザイナーの登竜門「インターナショナル・ウールマーク・プライズ(INTERNATIONAL WOOLMARK PRIZE)」のファイナリストに選出されるなど、着実にキャリアを伸ばす。デビューから5年、「最初はデザイナーを続けるつもりはなかった」と語る彼に、深みを増す服作りの哲学を聞いた。

WWD:2021-22年秋冬コレクションはいつもよりもダークな印象を受けたが、テーマは?

ディラン・ルー(以下、ディラン):ドイツの映像作家ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー(Rainer Werner Fassbinder)から着想を得て、社会に抗う若いアウトサイダーをテーマにした。ファッションは時代をリフレクトすることが重要で、10年後にコレクションを見た時に「あの時の服だ」と分からないといけないと思う。今回は不透明な世の中を映しているから、ダークに見えるのは当然。でも、シリアスな面だけを切り取っているわけではないんだ。僕は若者たちから大きなインスピレーションを受けていて、彼らは気候変動やサステビリティなど、社会問題に向き合い、ずっと行動し続けてきた“闘争する世代”。コロナを悲観するだけじゃなく、世の中が変わるきっかけだとポジティブに捉えているから、そのエネルギーも感じ取ってくれたらうれしい。

WWD:時代のムードは具体的にどこに落とし込んだ?

ディラン:これまでは、外出するときにシーンに合わせたドレスアップが必要だった。でも今はほとんど家にいて、「快適な服を着ること」が命題になっている。家で快適に着られて、そのまま外出してもきちんとして見える服が作りたかったから、柔らかさと耐久性を備えるモヘアを、ニットやパンツ、コートなど多くのアイテムに使ってみた。モヘアは大好きだけどここまで多用したことはなかったし、リラックスし過ぎないよう毛を短くするなど、素材の特徴と向き合う良い機会にもなったよ。

WWD:コロナで服作りのプロセスは変わった?

ディラン:リモートでできる仕事じゃないから、実際それほど変わっていない。ブランドに携わる人たちの仕事を無くしたくないから、生産ラインもほとんど変えていない。昨日は車でニット工場とアーカイブの保管工場に行って、最新コレクションの打ち合わせをしてきた。オンラインのコミュニケーションが増えたけど、服は実物を見ないと分からないからね。

デザイナーとしての決意
土木工学で培った「実用性」

WWD:服作りの技術はどうやって習得している?

ディラン:コレクションを作りながら毎日勉強している。大学では土木工学を専攻していて、ファッションデザイナーになることが目標ではなかったんだ。でも服には興味があって、学生時代からドーバーストリートマーケット(DOVER STREET MARKET)をはじめいろんなブティックに通っていた。未経験からここまでブランドを拡大できたのは、パターンや生産、ディストリビューション、ニットプログラマーなど、素晴らしいチームとクリエイターに出会えたおかげ。でも、全工程が僕のシグネチャーでないとコレクションがブレてしまうから、デザイン以外もきちんとディレクションするように意識しているよ。

WWD:ブランドスタートから5年が経ち、服作りの姿勢は変化した?

ディラン:完全に変わった。正直に言うと、最初はファッションデザイナーを続ける明確なビジョンを持っていなかったんだ。ブランドを続けるうちにデザイナーとしての自覚が徐々に芽生えてきて、今季のコレクション制作中に「僕はデザイナーだ」と受け入れることができた。加えて、「アントワープを拠点とする新世代のデザイナー」という自覚も生まれた。アントワープシックスやマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)など、ここから生まれた素晴らしいブランドに恥じないよう、本気でコレクションに向き合う覚悟ができた。

WWD:逆に変わらないことは?

ディラン:自分が興味のあることをそのまま表現すること。アイデアは毎回異なっても、「僕」という軸があるからブランドに一貫性を持たせられる。あとは、土木工学で学んだ“実用性のあるデザイン”を服作りにも応用すること。例えば、一見難しく見えるコレクションでも、オーディエンスが「日常に取り入れてみたい」と思う絶妙なラインに挑戦し続けている。服である以上、毎日着られないと意味がないからね。“実用性”はサステナビリティにもつながる。廃棄を最小限まで減らし、100年使える建築物を作る姿勢は、建築業界の前提条件だから。

WWD:3万円代のデニムジャケットなど手ごろなアイテムを増やしているのも“実用性”を強化しているから?

ディラン:言われてみればそうかもしれない。こだわり抜いたカシミアニットも7000ドルでは一部の人しか着られない。最初はそれでいいと思っていたけど、今はもっと多くの人に繋がりたいと思っている。予算を考えず自由に作るのも面白いけど、手にとれる価格に自分のアイデアを最大限詰め込むのも腕の見せ所だし、若い世代にも手にとって欲しいからね。

WWD:「ナマチェコ」らしさをどう定義する?

ディラン:自分の存在の延長だから、特定のものはない。僕は毎日30~40のオークションサイトを開いて、気鋭ブランドの洋服から誰かが捨てた古いカーペットまで、自分が面白いと思うモノをくまなくチェックする。1日3本見るほど映画好きで、昨日は(ミケランジェロ・)アントニオーニ、(ピエル・パオロ・)パゾリーニ、黒沢(明)の作品を鑑賞した。それらの経験が全て絡み合って、一つのコレクションに帰着している。特徴を強いて言うなら、映画作りに近いことかな。コレクションを作るとき、ルックごとに明確なキャラクターを思い浮かべて、それらを組み合わせるように服を作って行くから、映画作りに似ていると思う。

WWD:今後の展望は?

ディラン:より多くの人に自分の服を届けるために、淡々と準備を進めるだけ。好きなことを突き詰めているから、今もフレッシュにデザインができている。ありがたいことにビジネスも好調で、「デザイナーは間違った道じゃないよ」と背中を押されてるみたいだ。落ち着いたらショーをやりたい。ショーのフィナーレに、モデル全員がランウエイに向かって行く瞬間が一番幸せだから。

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2020年統計に見る悲しい現実 日本は貧乏になり衣料消費は20年間で半減した 小島健輔リポート

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。アパレル市場の低迷が叫ばれるようになって久しいが、コロナ禍の2020年を経てアパレル消費はどう推移したのだろうか。

 コロナに蹂躙された2020年の消費統計が出そろったが、アパレル消費は業界の実感通り大幅に落ち込んだ。それ以上にシリアスだったのが、00年からの20年で日本人が本当に貧しくなり、不要不急の支出、とりわけ衣料消費が半減したことだ。コロナ禍のカタストロフィからのアパレル再生は、まず現実を直視することから始まるのではないか。

20年の衣料消費は8掛け弱に落ち込んだ

総務省の家計調査では消費支出総体が前年から5.3%減少し、「食料」支出が1.6%、「保険医療」支出が2.0%伸びる中、「被服・履物」支出は18.4%、「アパレル」(洋服・シャツ・セーター)支出は20.2%も落ち込んだ。経済産業省の商業動態統計でも小売業売り上げ全体(自動車・機械・燃料小売業を除く)が0.8%、スーパーの飲食料品が6.7%伸びる中、「織物・衣服・身の回り品」小売業売り上げは21.4%、百貨店+スーパーの衣料品売り上げも26.4%も減少しているから、アパレル消費は8掛け弱に落ち込んだと推計される。

米国商務省発表の小売統計(自動車・機械・燃料小売業、飲食サービスを除く)でも、食品スーパーなどエッセンシャル小売業が伸びて小売売り上げ全体が6.9%、無店舗小売業(大半がEC)が22.1%も伸びる中、衣料品・アクセサリー小売業は26.4%も売り上げを落としているから、わが国のアパレル消費が8掛け弱に落ち込んだのも不思議はない。日本百貨店協会の発表した20年の衣料品売り上げは前年から31.1%、身の回り品売り上げは27.1%も落ち込んだから、高価格帯ほど落ち込みが大きかったと推察される。

 そんな中でもユニクロやワークマン、しまむらや西松屋など低価格で定番商品や機能商品に強いチェーンは堅調だったから、アパレルでもエッセンシャルシフト(生活必需品志向)は確実に進んでいる。コロナ禍で表面化したとはいえ、実はコロナのはるか以前からエッセンシャルシフトは始まっていた。00年からの20年間で家計のアパレル消費支出は45.7%減とほぼ半減したが、世界の先進国で唯一、賃下げで所得水準が落ち込む一方、社会保障負担の肥大と度重なる増税で日本人はすっかり貧乏になり、不要不急のアパレル支出が真っ先に切り詰められていったのではないか。

経済の停滞と国民負担増で貧乏になった日本人

 家計調査の消費支出はコロナ禍で前年から5.3%減少したが、00年からは12.4%も減少している。どうしてこんなに消費支出が細ってしまったのだろうか。

 国税庁発表の国民平均給与は00年の461.0万円から20年は431.2万円と6.5%の減少だが、この間の社会保険料や所得税、消費税の増税で国民負担率は00年の36.0%から20年は44.6%と8.6ポイントも上昇しており、それを差し引いた実質消費支出力は00年の295.0万円が20年には238.9万円と19.0%も減少している。家計調査の消費支出は支払った消費税を含んでおり、それを差し引いた実質消費支出は00年の362.7万円が20年には303.2万円と16.4%も減少しているから、実質消費支出力の19.0%減少に近い。

 国税庁の平均給与は個人単位、家計調査の収入と支出は家族単位なので後者の方が大きくなるが、家計調査の勤労収入にはシリアスな変化が見られる。家計名目勤労収入は00年から20年に1.7%(10万8756円)しか増加しておらず、国民負担を差し引けば実質17.3%(109万5750円)も減少しており、この間に世帯主勤労収入が6.2%(34万0644円)も減少したのを64.1%(42万1068円)も増加した配偶者勤労収入が補った構図が見て取れる。女性の社会進出といえば聞こえは良いが、勤労戦士となって家計を支える必要に迫られたのが現実ではなかったか。

沈みゆく落日の日本

 少子高齢化に伴う社会負担増もともかく、異次元緩和による過剰な資本供給が株価と不動産価格を押し上げ企業の内部留保を肥大させてマネーゲームに走らせる一方、労働生産性の停滞と労働分配率の低下が勤労収入を低下させて来たことは否めない。

 19年の日本の人時生産性は47.9ドルと米国の6掛け強に過ぎずOECD37ヶ国中21位まで落ち、一人当たり生産性は81,183ドルとOECD主要37カ国中26位まで滑り落ちた。90年には15位、00年には21位だったから、まさに釣瓶落としの転落だった。これでは賃金は上がらず、97年を基準とした賃金指数は16年段階でスウェーデンが138.4、オーストラリアが131.8、フランスが126.4、イギリスが125.3、ドイツが116.3、米国も115.3と伸びたのに日本だけ89.7と賃下げで、97年にはOECD加盟国中11位だったのが15年には17位、OECD平均水準の86.7%まで落ちている。

 一人当たりGDPも96年には6位まで上昇したのに、19年は4万3279ドルとOECD平均4万6691ドルの93%ほどに甘んじ、OECD37カ国中21位、主要7カ国の最下位に落ち込んだ。GDP規模も00年までは米国に次ぐ世界第2位の経済大国を誇っていたのに10年には中国に抜かれ、19年は米国の4分の1、中国の36%ほどに過ぎない極東の小国に転落している。00年から19年のGDP成長率はわずか5.4%と、2.09倍に伸びた米国、11.64倍に爆発的成長を遂げた中国とは比較すべくもない(日本生産性本部、全労連の発表などから要約)。

 今日の日本には、もはやコロナを克服してオリンピックを強行する国力など残っておらず、東日本大震災の復興費用にコロナ対策の際限なき財政支出とオリンピックの清算が加わり、遠からず消費税率を15%に上げて財政赤字の圧縮を急がざるを得ない。そうなれば社会保険料の上昇と合わせて国民負担率は50%を超えるから、消費は凍り付いてしまう。極東の軍事情勢は日に日に緊張を増しているから国家と国民の安寧を守るべく軍備の増強にも財政支出が必要で、国民生活はますます貧しくなる。そんな非常事態下で華やいだおしゃれが復活すると期待するのは無理がありすぎる。もはや現実を正視するしかない。

アパレルの過剰供給は解消されたのか

 過半が売れ残る過剰供給に陥っていたアパレル需給はコロナ禍のカタストロフィでリセットされたのだろうか。結論からいうと売り上げの激減ほどには供給量は圧縮されず、コロナ禍で2次流通に放出されたり持ち越された在庫が積み上がったことに加え、巣ごもり生活での断捨離と収入減による換金で消費者のタンス在庫が大量に放出されたから、新古品と中古品に圧迫されて新作品の販売はさらに苦しくなる。

 衣料品供給量のピークは18年の38億8932万点で、19年は38億1672万点、コロナ禍の20年は34億1005万点と前年より10.7%減少した。これには下着やナイティ、手袋やストールなども含まれるから、貿易統計の品目ごとにアパレル(外衣)を選別して集計する必要がある。キャミソールやTシャツ、ルームウエアやエクササイズウエアなど判定の難しい品目が増えて誤差は避けられないが、今回、17年までさかのぼって再集計を試み、選別した品目の輸入数量に国内生産の外衣数量を合わせてアパレルの総供給数量とした。

 アパレル供給量のピークは18年の25億8810万点で、19年は1.6%減の25億4630万点、コロナ禍で発注が絞られた20年は10.3%減の22億8340万点だったと推計される。金額ベースの販売統計とはそのまま比較すべきでないが、20%強の販売減に対して10.3%の供給減では過剰供給はむしろ酷くなる。家計調査のアパレル平均購入点数も年間21.18点と19年から14.0%減少し、総世帯数を掛けたアパレル総購入点数も12億1970万点と19年から13.2%減少しているから、10.3%の供給減では在庫が積み上がったはずだ。

 家計調査の購入は20年中だが輸入数量は21年の春物も含んでおり統計的精度は問えないが、消化率は19年の55.2%(旧集計基準では48.2%)から20年は53.4%に1.8ポイント低下したと推計される。発注時点ではコロナ禍が21年春夏まで続くと想定しない発注も少なからずあっただろうから、昨年からの持ち越し品も加わって21年春夏も過剰供給が続くと見る。

非常時体制の手綱を緩めるな

 コロナ禍にも懲りずに過剰供給が解消されず、格段に安価な持ち越し流通在庫や消費者放出の中古衣料が市場に氾濫するから、割高な新作品の販売は圧迫され価格も通らない。ワクチンの供給が遅れてコロナの収束も遅れ、オリンピックの開催も困難になるのは明々白々で、国民の生計も国家財政も窮乏し日本が斜陽の坂を転げ落ちていく中、何が起きても事業と雇用の継続を守り抜く非常時体制を徹底するべきだ。

 いつかコロナが収束しても日本の凋落と国民の貧困化は止まらず、かつてのようなおしゃれ消費が戻るとはとうてい期待できない。ならば手堅い予算でリスクを避け、浮ついたトレンドを追うより質実なエッセンシャルアイテムの開発とサプライの継続に注力するべきではないか。

 ECやSNSによる顧客直結のD2C、DX(デジタルトランスフォーメーション)で受注生産するC2M※1.や製販同盟のVMI※2.など流通のコストとロスを最小化する事業革新、店舗発信のライブコマースやリモートオーダー、C&C(クイック&コレクト)やテザリング※3.など地に足が着いた販売努力を推し進め、価格とお値打ち、事業規模をわきまえるならファッションビジネスには生き残る余地があるが、その前に業界の過剰供給体質を徹底して潰しておく必要がある。加えて、現実を正視しようとせず見たい虚像だけを追う多幸症的ギャンブル体質、ものづくりを過信して販売現場を軽視し使い捨てるクリエイション至上体質も根底から是正する必要がある。

 3月12日から実施されるユニクロとジーユーの「税抜き価格」表示特例措置終了に伴う同一価格での「税込価格」移行は9.1%の実質一斉値下げで、アパレルのエッセンシャルシフトと低価格化が一段と加速し、アパレル事業者の淘汰が進んで業界の過剰供給体質と多幸症的ギャンブル体質も強制的にリセットされるかもしれない。アパレル業界は勝者による掃討戦の段階に入ったと腹をくくるべきだろう。

※1.C2M(Customer to Manufactory)…ネットやショールームで受注してからデジタル生産や3Dプリンタで素早く生産して“個客”に届けるパーソナル対応の無在庫販売手法

※2.VMI(Vendor Managed Inventory)…あらかじめ定めた陳列棚割と販売計画に基づいてベンダーに在庫管理と補給(補充生産も含む)を委任する取引形態

※3.テザリング…店舗間で在庫を融通して在庫効率を高めるローカル・ディストリビューション手法で、修理加工の集約やC&Cの店出荷と連携される

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。著書に店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)、12月11日に出版した「アパレルの終焉と再生」(朝日新書)

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「評価が曖昧」そんな組織には、一体どう働きかけたら? 業界の悩みを「心に火を灯して」解決しますVol.1

 ファッション&ビューティ業界は「変革」を謳っているけれど、実は「どう変わったらいいのか?」さえ見つからない人はいませんか?目指す姿は見えているけれど、実は迷っていたり、くじけそうになったりしている人はいませんか?そんな「登るべき山」が見つからなかったり、山は見えているけれど道を照らすトーチの火が消えそうだったりのアナタに、人の「心に火をつける。」ことを目指す神保拓也トーチリレー代表取締役“隊長”が向き合います。

 初回の「心に火をつけたい」と願う相談者は、国内の大手アパレルメーカーで長年現場を経験した後に昇進し、現在はセールストレーナーを務める女性Aさん。「私は、マネジャーに向いているのか?」「ブランドとして、何を目指したら良いのか?」「ブランドや組織は、変わることができるのか?」ーー。神保“隊長”は、絡み合う複数の悩みを紐解きながら、彼女の心に、登るべき山に向かうためのトーチの火を灯してくれました。

「店頭にいた頃から『評価基準が曖昧』と感じている」

神保拓也トーチリレー代表取締役“隊長”(以下、神保“隊長”):Aさん、こんにちは。ではまず、私のトーチングを受けようと思ったきっかけを教えてください。

Aさん:「ユニクロ(UNIQLO)」のスタッフの心に火を灯すまでを紹介した、「WWDJAPAN.com」の記事を見て、「ビビッ」と来ました。(ごくごく普通の「ユニクロ」の店舗をサポートしていた当時の神保“隊長”には)私と共通するところがあったんです。私は今、店舗向けのセールストレーナーとして、現場の士気やショップの想いを引き上げられないか?と思っています。でも現職での経験は浅く、私一人がアツくなってもダメ。自分のチカラも蓄えたいんです。記事を読んで、感動しました。「私が店長だった時にこんな人がいたら、もっと良い経験ができたのかな?」と思ったし、自分は熱量高く仕事に臨んでいると自覚もできました。でも心の火は、頻繁にくすぶります。火を灯し続けられるようになりたいんです。

神保“隊長”:セールストレーナーとしてのキャリアはどれくらいでしょうか?

Aさん:就任して2年半です。直近は、エリアトレーナー。その前は、店長を17年間務めました。

神保“隊長”:今の仕事は、自分に向いていると思いますか?

Aさん:正直、「プレイヤー向きなのでは?」とも思っています。もちろんアドバイスが結果に繋がったり、店長から「成果が出た」と報告を受けたり、うれしいこともあります。でも、成功体験を積むまでには至っていません。

神保“隊長”:一人のトレーナーが担当する店舗の数は、いくつくらいですか?

Aさん:今は5店舗。直営店を含む、関東近郊20の店舗を3人で分担しています。

神保“隊長”:私の前職では、店長の上司にあたるスーパーバイザーは教育のほか、エリアの売り上げについても責任を負っていましたが、Aさんの組織も同様ですか?

Aさん:同じです。売り上げは、評価の対象の1つです。ただ、数字責任は営業も負っています。

神保“隊長”:数字は、どこまで追いかけていますか?

Aさん:週明けには「何がよかったのか?悪かったのか?」を電話で聞いた後、「今週はどうする?どうやって戦う?」という店長の想いを聞き、アドバイスしています。また店舗では、オペレーションがうまく機能しているか?を確認しながら、店内美化も含めて総合的にアドバイス。自分が接客して聞いた、消費者の声をフィードバックすることもあります。

神保“隊長”:現在、最も悩んでいることを教えてください。組織の悩みでしょうか?それとも、自分が役目を果たし切れていないという悩みになるでしょうか?

Aさん:両方だと思います。会社の仕組みについては店頭にいた頃から、「評価基準が曖昧」と感じていました。もちろん個人の売り上げ、店舗の売り上げ、お客さまに対するサービスなどを評価してもらいましたが、試験があるワケではなく、何をもって昇格なのかは明確ではありません。上司によってバラバラで、ブランドして、会社として「ふわっとしている」と思います。「1つの基準を設けて欲しい」、上司にそう話しましたが、はぐらかされてしまいました。年間の予算に対して何%達成すれば評価してもらえるのか?インバウンドがない今は、国内のお客さまで予算の何%を達成したら良いのか?個人の目標なのか?店舗の目標なのか?SNSはどう評価するのか?曖昧なんです。

神保“隊長”:現場の悩みを吸い上げる仕組みがないから「暖簾に腕押し」なのかもしれません。会社で改革を担うのは、どの部署ですか?

Aさん:おそらく、経営企画がその権限を持っているんだと思います。

神保“隊長”:あいまいですね(笑)。

Aさん:あいまいですね(苦笑)。おそらく、経営企画とブランドの長が話をしているんだと思います。今の上司は割と「君なら、どうしたい?」と聞いてくれるのですが、「その声は、生かしてくれるのかな?」って思っています。

神保“隊長”:Aさんの周りに、「この会社、ブランドをもっと良くしたい」と思っている人は、どのくらいいるでしょうか?

Aさん:店長で言えば、20人中5人は間違いないと思います。セールストレーナーは、3人とも同じ意見です。販売部長は、話せばわかる人。販売課長は、私に近い人。営業も3人のうち1人は、かな?

「あるべき」論は、飲み会で気持ちよくなれるけれど……

神保“隊長”:安心しました。仲間になってくれそうなメンバーは少なくありませんね。だから、話を続けますね。本当に組織を変えたいのなら、正解や「あるべき」論を言っている場合じゃありません。今の話は、おそらく大勢の方が「そうだそうだ」と納得するし、理解している人がいて報われる想いの同僚もいるでしょう。飲み会で話をすれば、きっと盛り上がるし、気持ちよくなれるでしょう。でも変革者の仕事は、ここから。変革を山登りに例えたら、Aさんはまだ1合目にたどり着いただけです。歩みを進めないと。このままでは、何も変わりません。変わらない原因に目を向けないと、組織は変わらないんです。“変革者もどき”がハマるワナは、「あるべき」論を作っただけで世の中が変わると期待してしまうこと。普通の人は、これで終わりかもしれません。でも、変革者の仕事はここから。変えるためのボトルネックを見つけ、握りつぶされないために仕掛け、1人じゃダメなら仲間を募る。こういうコトに脳みそを使うんです。変わるときは、誰かが、面倒な役割を実行しないと。会社の経営が悪くなるのは、経営者の怠慢です。でも、変革者が現れなかったのも要因の1つです。面倒でもAさんは、「私がやるか」と立ち上がる“バッドコップ”にならないと。その役割を担う人は、シンドいだけです。なのに給料は変わらない。会社のことを思っているのに、嫌われてしまうかもしれない。矛盾との戦いです。でも、それをやる人しか、変革者にはなれません。

Aさん:私は、変革者なのでしょうか?

神保“隊長”:ここにいることが、変革者の資質があることの証明です。私に相談したいほど組織を救いたいと思っていて、頼まれてもいないのに今ここにいる。その時点で、周りから頭一つ抜きん出ているんです。Aさんは、自分の“守備範囲”を超えて、心に火を灯そうとしているんです。方法は、2つあると思います。まず1つは、「あるべき」論を考えるのは一休みして、押さなきゃいけないスイートスポットを見つけること。そして2つ目は、仲間づくりです。孤軍奮闘するだけでは、組織は変えられません。変革者は強引にでも仲間を作らないと、自分の心が折れてしまいます。僕も、自分の組織では同志を作ってきました。僕の心だってすぐにくすぶって消えちゃうし、「登るべき山」だって下山したいって思っちゃう(笑)。それでも前に進めるのは、僕がスゴいのではなく、へこたれた時でも前に進める環境づくりを頑張っているから。その代わり、旗を振るのは自分です。変革は、「なんで私が、こんなことまで?」と思ってからが変革です。そこで「やめた」と思うのなら、会社や組織を憂うこともやめるべきです。

Aさん:具体的には、どうすれば?

神保“隊長”:仲間を作るには、最初の1人を作ることです。まずは「あるべき」論を叫ぶのをやめ、誰に、どんな状況で、どう切り出せばいいのか?を考えましょう。自分が思っていることを別の人が話し始めると、「この人も、私と同じ想いなんだ」とその人の胸はざわつくものです。そうなれば、勝ちパターンです。できない話じゃないでしょう?もう、頭に候補は思い浮かんでいるはずです。

Aさん:そう言えば最近、優秀な方が経営企画に異動しました。

会社のゴミを拾う人は、重宝がられるに違いない

神保“隊長”:戦うべきものがわからないまま戦ってきたこれまでは、きっとシンドかったと思います。でも、組織の構図が見えていることは、大きなプラスです。僕の前職は、何か特別なことをやっていたわけではなく、地道に3足990円のソックスを積み重ねて年間で2兆円(神保“隊長”が勤務していた当時)を達成した会社です。現場で頑張った経験を持つ人が、例えば本部でマーケティングも頑張っています。そんな人は、店舗をないがしろにはしないんです。一方、そういう経験がない人は「マーケ最適」で考え、部分最適・部署最適に陥ってしまう。構図が見えてからが勝負なんです。面倒かもしれませんが、会社のゴミを拾いましょう。ゴミや落ち葉を拾ってくれる人がキライな人は、いないハズ。みんな、「どうして、そんな面倒なことをやってくれるの?」って思うでしょう。すると、悩みは向こうから寄ってきます。「あの人なら、やってくれるんじゃないかな?」というムードが醸成されます。そして色々話すと勘が良くなり、ゴミのたまりやすい場所、組織のガンがわかってきて、ガンの温床になっている仕組みの問題に気づきます。そんな人は、会社から重宝がられるに決まっていますよね?事実とともに、「人」を憎まず、「仕組み」を憎むことができるんですから。「あるべき」論を言って誰かのせいにしている人とは、全然違うんです。説得力が、ハンパじゃないんです。変革とは、そういうものです。変わることはシンドいけれど、変わらずに死を待つよりはシンドくない。僕にこう言わせているのは、変革者候補のAさんの想いです。きっと、変われるし、組織も変えられると思います。応援しています。

【心に火がついたAさんの感想】
 あの日の相談は、「評価制度を変えたい」がメーンでした。会社に長く勤めてはいるものの、現場で育ってきた私にとって「本部に入る」は転職に近いことでした。今まで店頭でやってきた職務やルーティーンは、ほぼ役に立たず、まして詳しい仕組みや問題は誰に言ったら解決するのか?未だにわからないのが現状です。

 神保さんが私に言ってくださった、「仲間を作ること」と「会社のガンは、どこにあるのかを知ること。『誰が悪いのか?』ではなく、『そうさせている仕組みは、何なのか?』を知ること」の2つは、私にとって新しい気づきとなりました。こんな風に教えてくれる上司は今までにいなかったし、仕事において大切なことを教えていただきました。本当にありがとうございました。


お知らせ:販売員のES(従業員満足)とCS(顧客満足)の改善を図るクラウド「SEEP(シープ)」と、人の心に火をつける“トーチング”を手掛けるトーチリレー、そして「WWDジャパン」は今春、DXやOMO時代におけるリアル店舗のあり方を考える大型セミナーを開催します。セミナーの申し込みはコチラ


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「評価が曖昧」そんな組織には、一体どう働きかけたら? 業界の悩みを「心に火を灯して」解決しますVol.1

 ファッション&ビューティ業界は「変革」を謳っているけれど、実は「どう変わったらいいのか?」さえ見つからない人はいませんか?目指す姿は見えているけれど、実は迷っていたり、くじけそうになったりしている人はいませんか?そんな「登るべき山」が見つからなかったり、山は見えているけれど道を照らすトーチの火が消えそうだったりのアナタに、人の「心に火をつける。」ことを目指す神保拓也トーチリレー代表取締役“隊長”が向き合います。

 初回の「心に火をつけたい」と願う相談者は、国内の大手アパレルメーカーで長年現場を経験した後に昇進し、現在はセールストレーナーを務める女性Aさん。「私は、マネジャーに向いているのか?」「ブランドとして、何を目指したら良いのか?」「ブランドや組織は、変わることができるのか?」ーー。神保“隊長”は、絡み合う複数の悩みを紐解きながら、彼女の心に、登るべき山に向かうためのトーチの火を灯してくれました。

「店頭にいた頃から『評価基準が曖昧』と感じている」

神保拓也トーチリレー代表取締役“隊長”(以下、神保“隊長”):Aさん、こんにちは。ではまず、私のトーチングを受けようと思ったきっかけを教えてください。

Aさん:「ユニクロ(UNIQLO)」のスタッフの心に火を灯すまでを紹介した、「WWDJAPAN.com」の記事を見て、「ビビッ」と来ました。(ごくごく普通の「ユニクロ」の店舗をサポートしていた当時の神保“隊長”には)私と共通するところがあったんです。私は今、店舗向けのセールストレーナーとして、現場の士気やショップの想いを引き上げられないか?と思っています。でも現職での経験は浅く、私一人がアツくなってもダメ。自分のチカラも蓄えたいんです。記事を読んで、感動しました。「私が店長だった時にこんな人がいたら、もっと良い経験ができたのかな?」と思ったし、自分は熱量高く仕事に臨んでいると自覚もできました。でも心の火は、頻繁にくすぶります。火を灯し続けられるようになりたいんです。

神保“隊長”:セールストレーナーとしてのキャリアはどれくらいでしょうか?

Aさん:就任して2年半です。直近は、エリアトレーナー。その前は、店長を17年間務めました。

神保“隊長”:今の仕事は、自分に向いていると思いますか?

Aさん:正直、「プレイヤー向きなのでは?」とも思っています。もちろんアドバイスが結果に繋がったり、店長から「成果が出た」と報告を受けたり、うれしいこともあります。でも、成功体験を積むまでには至っていません。

神保“隊長”:一人のトレーナーが担当する店舗の数は、いくつくらいですか?

Aさん:今は5店舗。直営店を含む、関東近郊20の店舗を3人で分担しています。

神保“隊長”:私の前職では、店長の上司にあたるスーパーバイザーは教育のほか、エリアの売り上げについても責任を負っていましたが、Aさんの組織も同様ですか?

Aさん:同じです。売り上げは、評価の対象の1つです。ただ、数字責任は営業も負っています。

神保“隊長”:数字は、どこまで追いかけていますか?

Aさん:週明けには「何がよかったのか?悪かったのか?」を電話で聞いた後、「今週はどうする?どうやって戦う?」という店長の想いを聞き、アドバイスしています。また店舗では、オペレーションがうまく機能しているか?を確認しながら、店内美化も含めて総合的にアドバイス。自分が接客して聞いた、消費者の声をフィードバックすることもあります。

神保“隊長”:現在、最も悩んでいることを教えてください。組織の悩みでしょうか?それとも、自分が役目を果たし切れていないという悩みになるでしょうか?

Aさん:両方だと思います。会社の仕組みについては店頭にいた頃から、「評価基準が曖昧」と感じていました。もちろん個人の売り上げ、店舗の売り上げ、お客さまに対するサービスなどを評価してもらいましたが、試験があるワケではなく、何をもって昇格なのかは明確ではありません。上司によってバラバラで、ブランドして、会社として「ふわっとしている」と思います。「1つの基準を設けて欲しい」、上司にそう話しましたが、はぐらかされてしまいました。年間の予算に対して何%達成すれば評価してもらえるのか?インバウンドがない今は、国内のお客さまで予算の何%を達成したら良いのか?個人の目標なのか?店舗の目標なのか?SNSはどう評価するのか?曖昧なんです。

神保“隊長”:現場の悩みを吸い上げる仕組みがないから「暖簾に腕押し」なのかもしれません。会社で改革を担うのは、どの部署ですか?

Aさん:おそらく、経営企画がその権限を持っているんだと思います。

神保“隊長”:あいまいですね(笑)。

Aさん:あいまいですね(苦笑)。おそらく、経営企画とブランドの長が話をしているんだと思います。今の上司は割と「君なら、どうしたい?」と聞いてくれるのですが、「その声は、生かしてくれるのかな?」って思っています。

神保“隊長”:Aさんの周りに、「この会社、ブランドをもっと良くしたい」と思っている人は、どのくらいいるでしょうか?

Aさん:店長で言えば、20人中5人は間違いないと思います。セールストレーナーは、3人とも同じ意見です。販売部長は、話せばわかる人。販売課長は、私に近い人。営業も3人のうち1人は、かな?

「あるべき」論は、飲み会で気持ちよくなれるけれど……

神保“隊長”:安心しました。仲間になってくれそうなメンバーは少なくありませんね。だから、話を続けますね。本当に組織を変えたいのなら、正解や「あるべき」論を言っている場合じゃありません。今の話は、おそらく大勢の方が「そうだそうだ」と納得するし、理解している人がいて報われる想いの同僚もいるでしょう。飲み会で話をすれば、きっと盛り上がるし、気持ちよくなれるでしょう。でも変革者の仕事は、ここから。変革を山登りに例えたら、Aさんはまだ1合目にたどり着いただけです。歩みを進めないと。このままでは、何も変わりません。変わらない原因に目を向けないと、組織は変わらないんです。“変革者もどき”がハマるワナは、「あるべき」論を作っただけで世の中が変わると期待してしまうこと。普通の人は、これで終わりかもしれません。でも、変革者の仕事はここから。変えるためのボトルネックを見つけ、握りつぶされないために仕掛け、1人じゃダメなら仲間を募る。こういうコトに脳みそを使うんです。変わるときは、誰かが、面倒な役割を実行しないと。会社の経営が悪くなるのは、経営者の怠慢です。でも、変革者が現れなかったのも要因の1つです。面倒でもAさんは、「私がやるか」と立ち上がる“バッドコップ”にならないと。その役割を担う人は、シンドいだけです。なのに給料は変わらない。会社のことを思っているのに、嫌われてしまうかもしれない。矛盾との戦いです。でも、それをやる人しか、変革者にはなれません。

Aさん:私は、変革者なのでしょうか?

神保“隊長”:ここにいることが、変革者の資質があることの証明です。私に相談したいほど組織を救いたいと思っていて、頼まれてもいないのに今ここにいる。その時点で、周りから頭一つ抜きん出ているんです。Aさんは、自分の“守備範囲”を超えて、心に火を灯そうとしているんです。方法は、2つあると思います。まず1つは、「あるべき」論を考えるのは一休みして、押さなきゃいけないスイートスポットを見つけること。そして2つ目は、仲間づくりです。孤軍奮闘するだけでは、組織は変えられません。変革者は強引にでも仲間を作らないと、自分の心が折れてしまいます。僕も、自分の組織では同志を作ってきました。僕の心だってすぐにくすぶって消えちゃうし、「登るべき山」だって下山したいって思っちゃう(笑)。それでも前に進めるのは、僕がスゴいのではなく、へこたれた時でも前に進める環境づくりを頑張っているから。その代わり、旗を振るのは自分です。変革は、「なんで私が、こんなことまで?」と思ってからが変革です。そこで「やめた」と思うのなら、会社や組織を憂うこともやめるべきです。

Aさん:具体的には、どうすれば?

神保“隊長”:仲間を作るには、最初の1人を作ることです。まずは「あるべき」論を叫ぶのをやめ、誰に、どんな状況で、どう切り出せばいいのか?を考えましょう。自分が思っていることを別の人が話し始めると、「この人も、私と同じ想いなんだ」とその人の胸はざわつくものです。そうなれば、勝ちパターンです。できない話じゃないでしょう?もう、頭に候補は思い浮かんでいるはずです。

Aさん:そう言えば最近、優秀な方が経営企画に異動しました。

会社のゴミを拾う人は、重宝がられるに違いない

神保“隊長”:戦うべきものがわからないまま戦ってきたこれまでは、きっとシンドかったと思います。でも、組織の構図が見えていることは、大きなプラスです。僕の前職は、何か特別なことをやっていたわけではなく、地道に3足990円のソックスを積み重ねて年間で2兆円(神保“隊長”が勤務していた当時)を達成した会社です。現場で頑張った経験を持つ人が、例えば本部でマーケティングも頑張っています。そんな人は、店舗をないがしろにはしないんです。一方、そういう経験がない人は「マーケ最適」で考え、部分最適・部署最適に陥ってしまう。構図が見えてからが勝負なんです。面倒かもしれませんが、会社のゴミを拾いましょう。ゴミや落ち葉を拾ってくれる人がキライな人は、いないハズ。みんな、「どうして、そんな面倒なことをやってくれるの?」って思うでしょう。すると、悩みは向こうから寄ってきます。「あの人なら、やってくれるんじゃないかな?」というムードが醸成されます。そして色々話すと勘が良くなり、ゴミのたまりやすい場所、組織のガンがわかってきて、ガンの温床になっている仕組みの問題に気づきます。そんな人は、会社から重宝がられるに決まっていますよね?事実とともに、「人」を憎まず、「仕組み」を憎むことができるんですから。「あるべき」論を言って誰かのせいにしている人とは、全然違うんです。説得力が、ハンパじゃないんです。変革とは、そういうものです。変わることはシンドいけれど、変わらずに死を待つよりはシンドくない。僕にこう言わせているのは、変革者候補のAさんの想いです。きっと、変われるし、組織も変えられると思います。応援しています。

【心に火がついたAさんの感想】
 あの日の相談は、「評価制度を変えたい」がメーンでした。会社に長く勤めてはいるものの、現場で育ってきた私にとって「本部に入る」は転職に近いことでした。今まで店頭でやってきた職務やルーティーンは、ほぼ役に立たず、まして詳しい仕組みや問題は誰に言ったら解決するのか?未だにわからないのが現状です。

 神保さんが私に言ってくださった、「仲間を作ること」と「会社のガンは、どこにあるのかを知ること。『誰が悪いのか?』ではなく、『そうさせている仕組みは、何なのか?』を知ること」の2つは、私にとって新しい気づきとなりました。こんな風に教えてくれる上司は今までにいなかったし、仕事において大切なことを教えていただきました。本当にありがとうございました。


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「イッセイ ミヤケ」が自然の普遍的な美しさを表現 “一枚の布”で大胆さとリアルな”着やすさ”を両立

 「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」は2021-22年秋冬コレクションをデジタル上で開催中のパリ・ファッション・ウイークで発表した。今季は「As the Way It Comes to Be(生まれたままで)」をテーマに、デザイナーの近藤悟史率いるデザインチームが自然の普遍的な美しさに向き合った。ブランドの核にある“一枚の布”というコンセプトをそのままに、大胆なデザインで、よりリアルな”着やすさ”も重視した。

 近藤デザイナーは「これまでは“風をはらむ”や“まわる”など抽象的なキーワードで服作りをしてきたが、今季はもっと具体性を持って表現しようと考えた。石、貝殻、卵の色、水の流れ、光など、誰でも想像できる自然を自分たちのモノづくりに載せて、内面から出るエネルギーを感じられるコレクションにしたかった」と語る。

時間をかけて作った
“静かだけど堂々としている服”

 デザインは「自然の有機的な形を服に取り入れた」手法と「自然の強さをありのままに服で表現する」手法の2つの切り口で挑んだ。ファーストルックは前者の表現で、一枚の四角い布に伸縮性のある糸を部分的に織り込んで成形したドレス。川の流れをイメージした、不揃いのプリーツが特徴だ。また大胆に湾曲したプリーツと、大きな穴があいたグレーのドレスは、“灯と影”を描写したもので、プリーツに沿ってコンパクトに折りたたむことができる。

 後者の「自然の強さをありのまま表現する」手法を代表するのが、京都の伝統技法である墨流しで石を描いたシャツやドレス。水面に染料を垂らしてマーブル模様を作り、手作業で染色しているため、一枚一枚で柄が異なる1点モノになる。“月影にかすむ大輪の花”をイメージしたドレスは、シルク織物にほぐしの技法で染めのような模様を描いたもの。1枚の四角い布をベースにしたパターンで、生地を端まで無駄なく使用している。さらに、素材本来の色や風合いを生かしたウエアにも取り組んだ。羊毛を脱色・染色せずそのまま色を使った“ロー ウール(RAW WOOL)”のコートや、茶綿と緑綿のオーガニックコットンで仕立てたトレンチ風のジャンプスーツを提案。合成繊維で形状記憶を生かしたモノ作りを得意とする「イッセイ ミヤケ」では目新しい素材使いだ。

 近藤デザイナーは「前シーズンに“コンパクトになる洋服”を作り、箱に詰めてパリへ送ったときに『次はこれまでとは違った新しいチャレンジをしたい』と感じた。自然と向き合って、よりパーソナルなものを作ろうというアイデアが浮かんだ。コロナ以前は半年に3週間〜1カ月出張することもあったが、今は日本でモノ作りに集中できる環境にある。今季は丁寧に素材を作って、一点一点の服に時間をかけて、静かだけど堂々としている服を作ることができた」と説明した。

 コレクション動画は関東にある建築物と自然を背景に撮影。ブランドのコンセプトやデザインの強さを失わずに、よりモダンでリアルな“静かだけど堂々としている服”を見せることに成功した。

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クラウドファンディング開始15分で目標金額達成 スピード感あるもの作りのD2Cブランド「シシ」

 SISIが展開する新クリーンビューティスキンケアブランド「シシ(SISI)」から今年1月、第1弾製品として“はがさないマスク”の「ロザリティ ウォータリーマスク」(50g、6400円)が誕生した。同製品は公式発売に先駆けてクラウドファンディングサービスのマクアケ(Makuake)で先行販売し、開始わずか15分で目標金額30万円を達成。達成率949%の284万9140円でプロジェクトを終了した。そして2月24日、同社はネイチャーラボとサティス製薬、個人投資家などから総額1億円の資金調達を実施。これによりマーケティングの強化、ユーザーニーズに応える新商品の開発、新サービスの投資、事業展開に向けた採用強化を推進する。いま勢いのあるSISIの澤田実加代表にクラウドファンディング早期達成の理由やスピード感のあるもの作り、今後の展開について聞いた。

WWD:第1弾製品「シシ」は、基本処方が完成してわずか 6 カ月でプレローンチするスピード感。開発の経緯は?

澤田実加SISI代表(以下、澤田):いいプロダクト作りの条件はチームに良い開発者がいること。そのため請負型のOEMではなく、パートナーシップという形で開発者を巻き込めるようなチーム編成を組んでいるため、スピード感を持ちながら肌への本質的な効果としての有効性、使いやすさ即時的な効果実感という意味での機能性、毎日使い続けたくなる嗜好性を兼ね備えたもの作りができる。また、開発だけが頑張ってもビジネスサイドの意思決定が遅くてローンチが遅れることも起こりやすい。そのため、ビジネスの意思決定をスムーズに行うようにしっかりとユーザー感覚のある少人数ビジネスチームを編成している。

WWD:なぜ第1弾製品は“はがさないマスク”に?

澤田:世の中に飽和しているクリームや乳液などのカテゴリーを新ブランドから出しても、ユーザーにとっては選択肢が多すぎてわざわざ使う理由が見い出しにくい。そして現代女性にとっては、ブランドが製品の使い方を定義するよりも、ライフスタイルや肌質に合わせた使い方の幅があることがとても重要だと思った。普段のスキンケアにプラスしたり、スリーピングマスク使いしたり、疲れたときはオールインワンでも対応できたり。塗るタイプの美容マスクは競合製品が少なく新規性がまだまだあると考えている。いま、スキンケアが毎日の義務的なルーティンから楽しむものへと意識が変わっている理由もあり、美容マスクの需要が伸びている。一方、忙しい女性にとっては毎日シートマスクをするたった15分が取れないという課題も。当社はそんな悩みを、プロダクトを通じて解決していきたい。

WWD:「ロザリティ ウォータリーマスク」のキー成分である “Rosality”の特徴、開発のこだわりや苦労点は。

澤田:この商品は世界のエキスパートが集結し、現代ストレスと肌の関係に着目して開発したレスキューアイテム。ローズの香り成分を、効果をもたらす機能性成分に変革した“Rosality”を配合している。チャレンジした点は、みずみずしい感触でありながら保湿感をキープする製品へと仕上げたこと。保湿感を求めるとベタつきが気になる一方、軽すぎると冬場は物足りない。朝も夜も、夏も冬もどんな肌質でも気持ちよく使えてしっかり潤う商品を目指した。

WWD:なぜクラウドファンディング(マクアケ)を活用したのか。早期達成した理由は。

澤田:クラウドファンディングを選んだ理由は2つある。1つ目は、公式販売前にプロダクトマーケットフィット(PMF)を確認したかったから。時代に合った良いものを作っている自負がありつつも、店頭販売ではないD2C の新ブランドは最初の1個を買ってもらうことが大変であるということも痛感していた。コミュニケーションがお客さまに伝わるか、どんな層が興味を持ってくれるかを確認したかった。2つ目は、クラウドファンディングで化粧品を取り扱えるようになったこと。数ある化粧品の中で早期にオピニオンリーダーに注目してもらえるようにPR視点でクラウドファンディングを活用した。クラウドファンディングが成功した理由は、初日の売上目標を高く設定して何が何でも初速をつけることに注力したから。マクアケと注目されているD2Cブランドとの合同イベント実施やビジネスメディアへの寄稿を含め、精力的にPR 活動を行なった。そういった入念な準備が非常に大事。そして、なによりも支援してくれるお客さまがいたからに尽きる。

WWD:ブランドの今後の展開について。

澤田:「自分を思い大切にする習慣をつくるブランド」の「シシ」は、美容を基軸にしながらプロダクトを通じてお客さまの日々の悩みに寄り添える製品展開をしていく。あえて製品のラインアップを持たず、一つ一つのアイテムに個性があるユニークなパワーアイテムを展開していくブランド作りをしていきたいと考えている。そして今の時代に必要とされている製品をスピード感を持って届け、製品だけでなくブランドのファンになってくれるお客さまを増やす。お客さまとリアルで会えるポップアップも今後やっていきたい。

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アパレル販売員歴12年以上の佐藤篤が答えるファッションとSNS インフルエンサー名鑑Vol.9

 インスタグラムを筆頭とするSNSの普及で、「憧れの人」「なりたい人」が細分化している。今は、誰もが、それぞれの「なりたい人」を持っている時代。ならば、そんな身の回りの人を改めて知るべきではないか?そこで「WWDJAPAN.com」は、インフルエンサーをはじめとするソーシャルリレーション マーケティング事業を手がけるリデルの協力を得て、身近な新世代インフルエンサー名鑑を作成する。

 今回はアパレル販売員として12年以上働いたキャリアを生かして、「モノ」を中心に発信する佐藤篤。内容や色味など緻密に計算した投稿が特徴で、アニメや玩具などファッション以外の分野にも精通する彼にはフォロワーから、買い物するときのポイントや趣味、情報収集の方法のほか、今後の展望や目標などに関する質問が寄せられた。全ての質問と回答を公開する(2021年3月8日号の「WWDジャパン」には、彼にSNS運用などについて聞いたインタビュー記事を掲載します)。

「モノ」の情報収集について

Q.1:インスタグラムを始めたきっかけは?

A.1:前職で、とあるブランドのスーパーバイザーを務めていた時、若者へのブランド認知を拡大するためにWEARなどのSNSを活用していました。インスタグラムも、その一環です。

Q.2:トレンドなどの情報はどこから得ている?

A.2:媚びを売るつもりはありませんが、「WWDJAPAN.com」の記事やコレクションルックなどを参考にしています。あとはインスタグラムで感度の高い友達の投稿を見たり、インターネットで調べたりしてトレンドを知ることもありますね。

Q.3:インターネットで検索するときはどんなことを意識している?

A.3:まず興味のあることや知らないことを調べて、検索結果で気になることがあれば、また調べてと納得がいくまでひたすら繰り返します。意識的に行っているというより、子どもが親に「なんで?どうして?」と尋ねるような純粋な好奇心です。

ファッションやパーソリティについて

Q.4:月にいくら買い物に使う?

A.4:1カ月に10万〜20万円くらいだと思います。革靴やスニーカー、革小物のほか、玩具やカードなども収集しているので、結構な額です。今年は節約が目標です(笑)。

Q.5:買い物をするときのポイントは?

A.5:モノとして、一本筋が通った作り方かどうかです。例えば「質のいいレザーで経年変化が楽しめる」と謳う革靴でも、ソールの張替えや修理ができなければ経年変化を楽しめるほど長く使えません。聞こえのいい売り文句を謳いながら、裏では利益だけを優先している品質の低いモノは買わないようにしています。逆にトレンドアイテムはすぐに使わなくなるので、長く使える素材や作りは求めずに、安さで選びます。

Q.6:普段どこで買い物をする?

A.6;販売員をしているのにも関わらず、接客を受けるのが苦手なので「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」やアマゾン(AMAZON)、楽天などのECサイトで買うことが多いです。

Q.7:自身のブランドを出す予定は?

A.7:先日、革靴を中心としたブランド「イル(IRU)」をローンチしました。さらに革小物とアクセサリーブランドを立ち上げる予定です。インフルエンサーが手掛けるブランドをよく思わない人がいることは十分理解しているので、本気で取り組んでいきます。

Q.8:現在はどんな仕事をしている?

A.8:高校を卒業してから現在まで約12年間、アパレルの販売員をしています。会社やブランドこそ転々としてきましたが、この職業が大好きで、培ったノウハウがインスタグラムの投稿にも生きています。

Q.9:趣味は?

A.9:漫画やアニメはもちろんのこといまだにポケモンGOにハマってます(笑)トランスフォーマーや戦隊ヒーローなどのロボット、玩具、マジック:ザ・ギャザリングと遊戯王のカードも集めています。僕はインスタグラマーである以前にポケモントレーナーでありデュエリストなんです!

Q.10:今後の目標は?

A.10:自分の好きなことだけで生きていきたいです。YouTuber的な心構えでこれからも頑張ります。

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創業70周年を迎えた「マックスマーラ」 女性の役割の変化と共に歩んできた軌跡を表現

 「マックスマーラ(MAX MARA)」は今年、創業70周年を迎えた。2月25日にミラノ・ファッション・ウイークで発表された2021-22年秋冬コレクション「1951」もそんなブランドの節目を祝うものだ。設立当初から同ブランドが追求しているのは、女性たちに寄り添い、自信や心地よさをもたらすウエアラブルな服づくり。今季はブランドらしいイタリアのアクセントを効かせたブリティッシュスタイルに、英国のカントリームードを取り入れた。今年で勤続34年になるというイアン・グリフィス(Ian Griffiths)=クリエイティブ・ディレクターに、初めてデジタルのみでの発表となった今シーズンのクリエイションから、長いキャリアの中でのブランドや環境の変化までを尋ねた。

――今シーズンのコレクション制作において、70周年という点は意識しましたか?そして、コレクションを通して表現したかったメッセージとは?

イアン・グリフィス「マックスマーラ」クリエイティブ・ディレクター(以下、グリフィス):もちろん!アーカイブを見ることに多くの時間を費やしました。今シーズンのコレクションの出発点は、「マックスマーラ」が1951年から70年間、いかに女性の役割の変化と共に歩んできたかを反映することです。50年代当時、多くの女性は結婚して妻になり、必ずしも自分自身のキャリアがあるわけではなかった。しかし、創業者のアキーレ・マラモッティ(Achille Maramotti)は、志の高い女性たちの役割が変わっていくことを感じ取り、彼女たちに向けた服を作るために「マックスマーラ」を立ち上げました。その方向性は正しく、やがて“妻”でしかなかった女性たちは自分の会社を経営したり、弁護士や医師として活躍したりと素晴らしいキャリアを築くようになりました。そんな女性たちの変化を祝い、女性たちのエネルギーや高揚感を表現したかったのです。

――では、アーカイブが今シーズンのインスピレーションとなったのでしょうか?

グリフィス:アーカイブを見ると、「マックスマーラ」は昔からずっとブリティッシュスタイルを愛していることが分かります。それはオーセンティックかつクラシックでありながら、着こなし方によって個性が生まれるもの。今回は英国人である私自身が田舎に行った時に着るようなアイテムに着目し、カントリースタイルを都会的に仕上げました。つまり、英国からのインスピレーションをイタリアが誇る最高級の素材や職人の力で形にしたのです。そして、私は「マックスマーラ」を着る女性たちを自身の力で称号を手にしたクイーンのように考えているので、“クイーン”の代表格である英エリザベス2世からもインスピレーションを得ました。彼女のスタイルは、まさに英国クラシック。ワックスジャケットとキルトを着用している写真などから、デザインのアイデアをふくらませました。

――ショー冒頭に登場したキャメルは、色としても素材としても「マックスマーラ」にとって重要な要素ですが、キャメルに対する思いを教えてください。

グリフィス:いつだってキャメルについて考えていて、私の世界はキャメルに染まっています。夢に出てくることさえあるくらいですよ(笑)。キャメルはもともと1950年代にメンズウエアのワードローブから借りてきたのが始まりでしたが、やがて「マックスマーラ」を特徴付けるカラーとなり、今回も含め多くのショーでオープニングを飾っています。今では、「マックスマーラ」に自分のコートを探しに来られる男性もいるんですよ。

――今回は初めてデジタルのみでコレクション発表となりましたが、実際に取り組んでみてどうでしたか?

グリフィス:リアルなショーを開くのとは、全く異なるプロセスでした。コレクションのビデオは普通のファッションショーのように見えますが、さまざまなアングルで撮影する必要があるので、実は6回ショーをやりました。ヘアメイクなどの準備も含めると、1日がかりの撮影でしたね。そして、ディテールやシーン別の撮影もあるので、編集を経て完成するまで実際のショーのようなエネルギーやワクワクを感じられないというのは、なんとも不思議な感覚でした。一方、デジタルになったことで世界中のたくさんの人に同じものを届けることができるようになりました。なので、リアルなショーは再開させたいですが、閉ざされたショーに戻ることはないでしょう。これからはデジタルの要素を取り入れたリアルなショーに取り組んでいきたいと考えています。

――ロケーションも印象的でしたが、会場についても教えてください。

グリフィス:会場に選んだのは、ミラノにあるトリエンナーレ・デザイン美術館の一部。そのカーブしたデザインをロンドンのリージェントストリートと重ね合わせました。リージェントストリートには、特別なお祝いの時にいくつもの英国旗が吊るされます。そのアイデアを取り入れ、「マックスマーラ」の1950年代のブランドの広告に使われていたグラフィックを用いた旗を吊るしました。窓から大きな公園を見渡せるという点も、ケンジントン宮殿など英国王室の宮殿を少し感じさせます。

――長年「マックスマーラ」で働いてきからこそ分かるずっと変わらないこと、そして変わったことは?

グリフィス:まず変わっていないとはっきり言えることは、アキーレ・マラモッティが掲げた「リアルな女性のためのリアルな服」という考え方です。それはクラシックな服ですが、重要なのは必ずしもクラシックは保守的ではないということ。モダンにも、時には少し反骨的にだってなります。そして変わったのは、女性の仕事着に対する考え方。私が「マックスマーラ」に入ったころ、職場で女性が真剣だと認めてもらうためには“パワー・ドレッシング”、つまりとても厳格なドレスコードやユニフォームがありました。しかし今では、女性は自分に似合うものや自分が心地よく感じるものを着られるようになった。スーツだけでなく、選べる服のバリエーションが格段に広がったのです。

――34年のキャリアの中で最も印象的だった出来事や思い出を教えてください。

グリフィス:どこから始めればいいでしょう(笑)。たくさんありますが、最も誇らしかった瞬間の一つは、2018年に当時のナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)米下院議長がドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領との会談に「マックスマーラ」の赤いコートを選んだ時のこと。彼女がホワイトハウスから出てくるところを捉えた写真はインターネットを通して世界に広がり大きな話題になりました。そのコートは、彼女が8年前から愛用していて、13年のバラク・オバマ(Barack Obama)大統領の就任式でも着用していたものです。“勝負”の時に選ばれたことで、「マックスマーラ」が服を通して表現し続けている女性のエンパワーメントの象徴となりました。

――この時代にファッションが持つ役割とは?

グリフィス:私は、着る人を特別な気分をもたらしてくれるファッションの力を信じています。ファッションには自意識過剰に陥らせるようなネガティブな部分もありますが、私はポジティブな面を探求し続けていきたい。コロナ後の世界では、新しいファッションに挑戦したり、ドレスアップを楽しんだりすることから生まれる喜びを再発見できるのではないでしょうか。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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アシックスが16万円のランプログラム提供 初心者でもやる気アップなサービスを体験してみた

 コロナ禍になってもうすぐ1年。健康意識が高まり、スポーツやアウトドアを日常に取り入れる人が急増しています。昨年夏にスポーツ担当になった僕は、各社の最新モデルやマーケティングプランなどを取材して座学的な知識が増える一方、なかなか腰が上がらず運動不足が加速中。「これではマズイ」と思っていたところ、アシックスから市民ランナーのサポートサービス“アシックスプレミアムランニングプログラム”の体験会のお誘いが届きました。「行くしかないでしょ!」と意気込み、早速アシックスストア東京銀座に向かいました。

ランニングを包括的に支援
対象は“サブ3.5”狙うランナー

 この春スタートする“アシックスプレミアムランニングプログラム”は、一人一人に合ったランニング体験を提供し、ランナーの成長と継続を促すプログラムです。専門施設でのランニング能力の計測をはじめ、コーチやトレーナーによる悩み相談サービス、オンライン交流会、シューズ&デジタルデバイスの進呈、東京マラソン2021出走資格の提供、トレーニング施設利用権利などのサービスを提供します。実施期間は4月11日〜6月30日で費用は16万5000円、定員は30名。フルマラソン経験者で記録向上に興味がある人、自己ベストが3時間30分以内あるいはそれを目標としている人を対象に、3月5〜21日まで応募を受け付けています。

 今回は、月に1回程度しかランニングしない超初心者ながら、この高額プログラムの目玉「ランニング能力測定」の簡易版にトライしちゃいました。

波乱の幕開け
“脚筋力測定”

 測定スタッフへのあいさつを済ませ、早速スタート。まずは専用機器に腰かけ、足を伸ばす力と曲げる力の最大筋力を測ります。空手・剣道・バスケの経験がある僕は、筋力には割と自信アリ。運動不足とはいえ、意外といい結果を出しちゃうのでは?と鼻息荒げて足を動かしました。

 期待しながら結果を見ると、10段階評価で左が「6」で右が「4」、曲げる力は両足ともにまさかの「2」。「え、めっちゃ低いじゃん」と内心焦っていると、測定スタッフから「動きが意外と難しいので、通常は2回測定してベストの値を採用しています。もう一度やれば伸びますよ」とフォローされました。太ももがピクつくほど全力を出し切っていましたが、「そ、そうですよね」と返答してしまいました。すみません。

「クセのない走り」にかすかな希望
“持久力&フォーム測定”

 筋力測定のショッキングな結果にくじけそうになるも、「肝心なのは次だ!」と言い聞かせて持久力&フォーム測定に移ります。二酸化炭素排出量を調べるマスクや心拍数を測る装置をつけ、ランニングマシーンを15分前後走行すると、持久力が科学的に算出されるシステムです。マシーンは1分ごとにスピードが上がっていき、終盤に近づくほどキツくなる設定。レベル別に4コースが用意されており、僕は迷うことなく「レベル1(最もやさしい)」をチョイスしました。

 いざ測定スタート!んん、慣れないマスクのせいか、怠惰な私生活のせいか、開始早々息切れしました。ランニングマシーンも初体験で、足運びがうまくいきません。「測定が終わるまで持つのか⁉︎」と不安がよぎりましたが、スタッフの「頑張りましょう!」の声で正気を保って走り続けること14分。なんとか測定が終了し、胸をなでおろします。

 結果は、有酸素運動と無酸素運動の境界線「ATペース」が時速9.5km(1キロ当たり6分18秒)、ATペースを越えて「キツい!」と感じ始める「RCTペース」が時速11.5km(1キロ当たり時間5分13秒)。「ランニング初心者としては人並み」の結果でした。4台のカメラで分析したフォームは、「ストライドが広めでピッチが少ない、一般的な高身長タイプ」で、「股関節の動きが小さく太ももの引き上げが不十分」でした。

 またしても不甲斐ない結果で残念がる僕に、「クセのないフォームで、腕をしっかり振っていたのが良かったです。しっかりとトレーニングすればどんどん伸びますよ!」と測定スタッフがまたしてもやさしい言葉をかけてくれました。お世辞かもしれませんが、まんざらでもありません。気持ち良く体験会場を後にできました。

夜に届いた詳細リポート
モチベーションが爆上がり

 これだけでは終わらないのがこのサービスのすごいところ。測定現場では簡単な結果のフィードバックのみでしたが、当日の夜には具体的なトレーニング例を添えた詳細リポートがメールで届きました。「ランニング頻度、トータルの量ともに不足しています」と厳しい声に一瞬ひるんだものの、「まずはランニングが生活の一部になるように、週3回のトレーニング実施を目指しましょう。ATペースより遅いジョギングから始め、徐々にペースを上げてATペース付近で1時間程度気持ちよく走れるように」という優しい助言に救われます。筋力についても片脚スクワット、ヒップリフト、サイドレイズなどのトレーニングをあげ、「1~2セット、回数はきついと感じてからしばらく辛抱できる程度を行いましょう」とコメント。心身ともに疲れ切っていましたが、「明日も走ろう」とやる気が湧き上がりました(翌日15分だけ走りました)。

目指すは「ランニングエコノミクスの構築」
アシックスの今後に注目

 3カ月で16万円超えという高額なプログラムですが、豊富なサービスと質の高さを踏まえると、決して高くはないと感じました。アシックスは、コロナ禍でランニングのニーズが拡大したことから、「ランニングエコノミクスの構築」に注力しています。中上級者を対象とした同プログラムは、その第1弾。幅広いランナーに向けて、これからどんな仕掛けを行うのか?今後の動きに注目です。

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気鋭ブランド「CFCL」が見た「国際標準のサステナビリティのリアル」

 「サステナビリティ、何から始めていいか分からない」――サステナビリティ担当になり、こうした相談を受けることがとても増えた。多くのサステナビリティ関連の取材をして記事を書いている私も実は分からない。サステナビリティに正解はなく、企業によって取り組むべきことは異なるため、時に有識者や専門家の力を借りて答えを出すほかない。だからこそ、これまで先進企業、推進企業の具体的な事例を紹介することでヒントを探してきた。

 取材を進める中で、どの企業にとっても実践に役立つ“ガイドライン”を見つけたのでシェアしたい。「Bコーポレーション(以下、Bコープ)」だ。先に言っておくと「Bコープ」認証取得へのハードルは極めて高い。評価項目は248。企業の経済的、環境的、社会的影響を測定するために設計された認証で、利益と社会的意義を両立させ、社会・環境に配慮した事業公的な透明性、法的説明責任において基準を満たしているかを評価される。そもそも、「サステナビリティって何?」という問いの答えにもなっていて、これからの企業のあるべき姿を描いていると思う。近年では、サステナビリティといえば切迫した課題である“環境への配慮”が取り上げられがちだが、人権、社会、プロダクトやサービス、コミュニティー、働き方、顧客などさまざまな側面を含んでおり、企業はビジネスを通じてそれらをよりよい状態にする“装置”と考えるのがいいだろう。そうしたことも理解しやすいのが「Bコープ」だ。

 「Bコープ」はファッション業界に限らず、人権や環境の問題に関してリードしている業界やマーケットから支持されていて、現在、全世界で約3500社以上が認証を得ている。ファッション&テキスタイル分野では、パタゴニア(PATAGONIA)やオールバーズ(ALLBIRDS)、イタリアのテキスタイルメーカーのレダ(REDA)といったサステナビリティ先進企業が取得している。

 これまで日本企業で「Bコープ」を取得した企業はわずか5社。理由は、取得するための内容はもちろん、言語や商習慣の違いといった壁も立ちはだかるからだ。米国発信の認証で、文書に日本語訳はない。アセスメントの内容などを和訳するのは、内容も難しいうえ量が膨大、日本の商習慣や企業文化に合わせ意訳しないと理解できるものではない。

「CFCL」が日本のアパレル初の「Bコープ」取得へ挑む

 しかし、今、その難関に挑む日本のアパレルブランドがある。「CFCL」だ。代表兼クリエイティブ・ディレクターの高橋悠介は、「イッセイ ミヤケ メン(ISSEY MIYAKE MEN)」を6年にわたって率いた後、2020年2月に独立。2021年春夏シーズンに「CFCL」を立ち上げた。

undefined 伊勢丹新宿本店で開催された「CFCL」のポップアップストアの様子。1月27日に先行発売され、2月9日まで行ったポップアップストアでは、伊勢丹新宿本店で春夏シーズンに売る分の7割が売れた

 高橋はブランドを立ち上げるにあたり、環境や社会に配慮したブランドでありたいという気持ちはあったが、サステナビリティの知識は乏しかった。「例えば、少し前に話題になった毛皮問題。毛皮をやめて、アクリルが入った人工ファーを使うブランドが見受けられたが――マイクロプラスチックは問題ではないのか?サステナブルという言葉だけが一人歩きしていて、分からなくなった。企業として何を正義とするか、目指すものを明確にしなければいけないと思った」と高橋。ブランドを立ち上げてすぐに、チーフ・サステナビリティ&ストラテジー・オフィサー(以下CSO)を設け、長年企業のCSRに取り組んでいた岡田康介氏と組むことにした。

 岡田CSOと話す中で、「Bコープ」の存在を知った。岡田CSOは「Bコープ」をこう評価する。「世界共通かつ緊急のテーマであるSDGsは正しく健全な視点と積極的なアクションのセットが必要不可欠。実践するための具体的なアクションにブレイクダウンできる仕組みが『Bコープ』。KPIの設定や各企業のベンチマークができる」。

 高橋は「これだ!」と思ったというが、前述したように、ハードルは高い。

「Bコープ」の具体的な評価項目と岡田CSOの分析

 岡田CSOは「Bコープ」取得を進めるなかで「エネルギーや水をどの程度使用し、温室効果ガスをどれだけ排出しているか、離職率は何%か、ガバナンス面で審査しているサプライヤーは全体の何%か、といった定量的な質問も多くあるが、それ以上に『どうやってSDGsに対応しているか?』という自社のアクションやポリシーを、記述で描写することを求める設問が印象に残っている」という。

 具体的にいくつかの項目を例にしたい。地球環境分野の「社員が在宅リモートワークなどバーチャルオフィス勤務のとき、どのような管理体制で、地球環境保全を社員に奨励しているか?」という項目に対して、岡田CSOは「一般的な在宅やバーチャルオフィス勤務を想定した質問で、『新型コロナウイルス感染拡大以降の在宅勤務の広がり』を意識した質問ではないことを理解して回答する必要がある」という。

 また、「自社の製品あるいはサービスは、地球環境保全のためにどのような成果物をもたらすか?」という項目では「単純な質問に見えるが、自分(自社)の言葉で説明をする、ということは容易ではない。“環境にやさしい”“エコ”という言葉を用いずに、定量的、定性的に説明する必要がある」と分析する。

 従業員分野の「アルバイトが正社員のような福利厚生サービスを受けられるようになるのはいつか?」という項目に対しては「日本でも中小企業含めて、同一労働同一賃金制度が実施されるが、実運用に落とし込めている企業はまだ多くないという環境で、このような質問を社外から受け、回答していくことはチャレンジングなこと」だと指摘する。

 顧客分野に関しては「自社のプロダクトが、顧客や受益者に与える潜在的な影響を、顧客の状態・変化(ウェルビーイングであるかどうか)を通してモニターしているか?」という項目がある。「企業のKPIは、売り上げなど財務的な数値に傾倒しがちだが、非財務指標も含めて検討する必要がある」。

 ガバナンス分野の「会社の所有者(所有権保持者)が誰で、経年による経営陣の変遷に左右されず、地球環境負荷、地域社会、従業員などのステークホルダーに配慮したパフォーマンスをいかに改善していくかを、会社のさまざまなオペレーション上の意思決定要素であることを法的に確約させるために、どのような対応を行っているか?」に対しては「例として、米国では会社定款によってそれらをうたい、会社の活動を株主への利益還元のみに縛られないようにするために有志者が制度変更した歴史があり、日本の背景とは異なることを理解しておく必要がある」という。

 コミュニティー分野では「多様性、平等性、包含性を有する労働環境・職場環境を、どのように運用しているか?」に対しては、「ダイバーシティーとは男性・女性の働き方といった性別の違いだけではなく、ここでは、人種、宗教、慣習、バックグラウンド、過小評価グループ、などのあらゆる“違い”を指し、社内に在籍しているというだけではなく、事業運営や業務プロセスなどの意思決定に関わっているかどうかが問われる」と指摘する。

 6つの項目を見ても“気付き”が多く、自社で具体的に何ができるのかを考えるきっかけになる。自社のオリジナリティを生かした強みも見えてくるのではないか。認知度が上がれば「『Bコープ』に取り組む企業で働きたい」と考える人も増えてくるだろう。

認証取得後にもハードル

 認証はあくまでガイドラインであり、大変なのはその先だ。「全てのサプライヤーを巻き込み、例えば、温室効果ガスの算定や削減をしていくことになる。そもそも認証を取得すればいいということではなく、続けていくことが重要だ」(岡田CSO)。

 製品サプライヤーやエネルギーや物流会社などとの取り組みは簡単ではない。サステナビリティはまだまだ新しいコンセプトだし、“変化”を嫌う人も多い。そうした企業を説得してベクトルを合わせていくことが必要になる。「すぐにシャットダウンするのではなく、説得し続けることに力を注ぐべきだと考えている」(高橋)。仕事は増える。しかし、ファッション業界に限らず、地球に暮らすみんなでスクラムを組んで取り組まないと、この先も“変わらず”皆が幸せに地球に暮らし続けることはできない。変化しないための変化が必要で、それが今なんだと思う。

 多くの人を巻き込むために大切になるのが「ビジョン」だ。高橋は、「ビジョンを共有すること」を重視する。もちろん本業は「時代に合った、時代に訴える服を作ること」だが、増えたデザイン領域に対しての丁寧なコミュニケーションを大切にしている。サステナビリティの推進力として岡田CSOに参画してもらい、ストラテジーも一緒につくる。

 高橋はコレクションブランドを経験して、SNSの台頭でファッションショーの意味が急速に変わったと感じていた。「モデルがランウエイを歩いているのを見て『これ新しい!』という価値観ではなくなった。その裏側にあるストーリーやフィロソフィーをいかに発信できるか。今はビジョンがあって、社会をよりよくするため服を作りたいと思っている人には、ポジティブな時代なのではないか」(高橋)。

 実は、岡田CSOはこれまで他業種のメーカーで経営管理を手掛けてきているが、ファッションは今回が初めて。ビジネスの在り方、投資の仕方で異なる部分はあるが、モノ作りという意味では同じで、サプライチェーンの課題はどの業界でもあるし、ブランド作りという点では共通項は多いという。岡田CSOはファッション業界にポジティブな力があると可能性を見いだしている。「ファッションは消費者が代弁するツールでもある。信念を持って取り組んでいるブランドを知ることは今の時代いくらでもできるし、そうしたブランドを買いたいと思う消費者は今後増えていくだろう。それは私たちがどのように活動して、働きかけていくかにもかかってくるし、ポジティブにコミュニケーションをしていけば新しい価値観が構築できて、新しいビジネスをつくっていけるはず」。

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「マーティン ローズ」が恋した20歳の日本人バンドマン 無名の学生がドレイクと共演するまで

 英ブランド「マーティン ローズ(MARTIN ROSE)」は、2021年春夏コレクションのムービーを1月に限定期間公開した。映像では世界中の老若男女の日常シーンが切り取られ、日本からはサラサラ髪のナイーブなムード漂う若者と、スリムな金髪の2人が登場。彼らの後にはフォロワー数7600万以上を誇る世界的ミュージシャンのドレイク(Drake)がカメオ出演したため、その異質な存在感はますます際立った。この謎の2人は、インスタグラムのフォロワー数が600にも満たない無名バンド、サイコヘッズ(Psychoheads)のヴォーカルを務めるヒトシ・ヴァイオレット(Hitoshi Vioret)とギターのワイロウ(Yllow)。共に20歳の大学生だ。「マーティン ローズ」は、遠く離れたイギリスからどのようにして素人同然の若者2人を発掘し、モデルに起用したのだろうか。狂気じみたバンド名と2人のルックス、そしてバンドマンという3大警戒要素がそろっていたため、緊張感を持って取材現場であるワイロウの自宅に向かった。しかし玄関で出迎えてくれたのは、絵に描いたような好青年だった。

「最初はスパムメールかと思った」

WWD:「マーティン ローズ」の映像に起用された経緯を教えてください。

ヒトシ・ヴァイオレット(以下、ヴァイオレット):ブランドのキャスティングディレクターからインスタグラムのDMで「出演できるチャンスがあるから、オーディションを受けないか」と昨年の夏にいきなりオファーが届いたんですよ。

ワイロウ:イギリスに知り合いがいたわけでもないし、最初はスパムメールかと思ったよね。僕らが高校のときから流行していたブランドだったので、本当にビックリ。本当は半年以上前に撮影する予定でしたけど、延期が続いたので無くなるのかドキドキでした。

WWD:どういった部分が評価された?

ヴァイオレット:何なのでしょうね。世界中の国でキャスティングしていたので、日本人を探していたらたまたまキャスティング・ディレクターの目に止まったんでしょうか。デザイナーのマーティン・ローズは音楽が好きなので、僕らがバンドをやっていたのも大きいのかもしれません。

ワイロウ:でも俺らの後にドレイクが出るのは本番の映像で初めて知ったから、びっくりしましたよ。撮影中はどんな仕上がりになるかを知らされなかったので、本番を見たらかっこよくてうれしかったです。

WWD:撮影の様子は?

ヴァイオレット:まずはムード写真やイメージが送られてきて、それらを参考に撮影しました。当日はブランドのスタッフ4、5人からZoomで指示を受けながら、スマートフォンで撮影したんです。指示は「自由に盛り上がって!」だけ。だから本当にアドリブなんです。

ワイロウ:遠隔で指示をくれるスタッフも子どもの面倒を見ながらだったので、自由な感じで面白かったですよ。撮影場所は、サポートしてくれた工藤司「クードス(KUDOS)」デザイナーのアトリエでした。最初は全く気づかなかったのですが、部屋中にブランドのポスターが貼ってあって「おお、ここってあの『クードス』のアトリエじゃん!」って。

WWD:公開後の反響はどうだった?

ワイロウ:インスタグラムで外国人のフォロワーが増えましたね。まあ、70ぐらいですけど。でもあの映像だけで僕らのことをフォローするぐらいなので、相当な変わり者かもしれないね(笑)。

ヴァイオレット:確かに。あとはやっぱり知り合いから「サイコヘッズがドレイクの前かよ」とは突っ込まれますよね。

WWD:音楽に興味を持ったきっかけは?

ワイロウ:僕は父親がミュージシャンだった影響が大きいです。中学生の頃にハードロックカフェに連れて行ってもらい、ディスプレーされているギターと写真を撮ることがうれしかったんですよ。この金髪のルックスも、スタジアムロックに憧れた名残かも。AC/DCは今でも大好きですし。

ヴァイオレット:僕はこんな感じですけど、中学生まで野球部でした。でも高校生の頃にロックに目覚めてザ・フー(The Who)を聴き始め、ザ・ストロークス(The Strokes)やザ・リバティーンズを好きになっていきました。

WWD:バンド結成はいつ?

ヴァイオレット:僕が大学の新入生歓迎会で3人に声を掛けました。楽曲は全て僕が手掛けていて、インディー・ロックやガレージロック、70’sパンクを中心に、結成当初はジーザス&メリーチェイン(The Jesus and Mary Chain)から影響を受けて制作していました。現在は約20曲発表していて、下北沢を中心にライブ活動をしています。

「たんぽぽハウス」に通うバンドマン

WWD:ファッションで影響を受けた人は?

ヴァイオレット:ロックスターたちですね。今日は「ビートルズ」がライブで来ていた衣装を参考にし、パジャマにファーコートを合わせています。

WWD:なるほど。ヴァイオレットさんが今日の取材に30分遅刻したのは寝坊ではなかったのですね。

ヴァイオレット:違います。忘れ物をしてしまって。たまたまパジャマなだけで、寝坊ではないです。

ワイロウ:彼はいつもこういう自由な感じなので。すみません。

WWD:では、服はロックのスピリットを感じさせる「サンローラン(SAINT LAURENT)」や「セリーヌ オム(CELINE HOMME)」「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」、もしくは国内だと「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.)」や「ジョン ローレンス サリバン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)」などを買う?

ヴァイオレット:いえ、「たんぽぽハウス」ですね。もしくは「ハードオフ」。お金がないので、リサイクルショップでとにかく安くてかっこいい服を貪欲に掘り起こしています。ときにはクーポン券も使いながら。サイコヘッズのメンバー4人は、全て僕がスタイリングをしているんですよ。ロックバンドの過去の映像を参考に、自分のフィルターを通してメンバーの私物から選んでいます。

ワイロウ:彼は記憶力がハンパないので、本当に全員分の私物を完璧に把握していて怖いんです(笑)。新しいものを買ったらすぐに反応してくるし。

WWD:憧れのブランドは?

ヴァイオレット:「セリーヌ オム」や「ゴーシャ ラブチンスキー(GOSHA RUBCHINSKIY)」が好きです。ワイロウも好きだよね?

ワイロウ:エディ・スリマン(Hedi Slimane)のスタイルはバンドマンとして憧れます。「セリーヌ オム」2021年春夏の“THE DANCING KID”は最初ピンとこなかったのですけど、何回もショー映像を見ているうちにじわじわと良さが分かってきました。僕らは「ディオール オム(DIOR HOMME)」の世代ではないけれど、彼が「サンローラン」を手掛けている頃から夢中でした。ただ学校にもこういうファッションで通うから、知らない女子学生のインスタストーリーズに勝手に載せられるんですよ。まあ目立つのは当たり前なんですけど。

ヴァイオレット:その割に全くモテないけどね。

WWD:将来の夢は?

ヴァイオレット:ミュージックステーションに出演することです。

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子どもの頃からの夢「社会貢献」を店頭で マザーハウス足立志織

 東京・立川駅の北地区に2020年4月開業した「立川グリーンスプリングス」は、物販や飲食店のほか、宿泊施設、オフィス、多機能ホールなどが連なるオープンエアーの複合施設だ。昭和記念公園に隣接して自然を感じる、いわば「市民の憩いの場」という場所に、マザーハウス立川グリーンスプリングス店はある。店舗面積は「マザーハウス」としては最大の80坪(約264平方メートル)で、全カテゴリーのアイテムを展開している。足立志織店長は、こどもの頃のホームステイ体験をきっかけに社会貢献に関心を持ち、「マザーハウス」で販売の仕事をしている。販売職と社会貢献について話を聞いた。

―マザーハウスと言えば『途上国から世界に通用するブランドをつくる』の理念を掲げ、バッグを通して社会貢献できるブランドと認識しています。やはりそこに惹かれて入社したのですか?

足立志織さん(以下、足立):マザーハウスのことは大学在学中に知りました。インターン先のスリランカで、服飾製品を途上国で作り途上国に貢献するビジネスをしたいと話をしていたら「それならマザーハウスという会社があるよ」と教えてもらったのがきっかけでした。当時はまだ、スリランカで事業展開をしていなかったのですが、ちょうど入社した頃にスリランカでモノづくりが始まりました。

―そもそも、途上国と関わる仕事がしたいというのは?どういうきっかけで、いつから考えるように?

足立:ずっと誰かの役に立ちたい、社会に貢献したいという思いが強くありました。小学6年生の時に、母の薦めでスリランカに国際交流でホームステイした経験が大きいです。当時は海外に行くのも初めてですし、ましてやスリランカがどんな国かもよく分からず行ったのですが、ホームステイ先の家族ともとても仲良くなることができました。この時には国境や国の経済規模の違いなどに関係なく、人は仲良くできると感じたのです。でも、その後ホストシスターから「通学のためにお金を送ってほしい」と連絡があり、それがとてもショックで……。それから途上国のことや貧困について、より身近に感じるようになりました。

―国境を越えて友達ができたと思っていたのが、お金をきっかけに考えさせられる出来事があったんですね……。お金は送金したのですか?

足立:いえ、送りませんでした。送金を断ったら、その後連絡が取れなくなってしまって…。その理由を聞きたくて何度か手紙を送っていたのですが、返事はもらえず。大学のインターンでスリランカに行ったときにも会おうとしたのですが、結局それも叶わず、今に至ります。SNSでつながっていますが、うまくコミュニケーションは取れていません。私の実家はそこまで裕福ではありませんし、ホームステイしていた時には自分の家庭環境と大きな違いを感じていなかったのに、そう言われた時はショックでした。国が違うので多少は生活レベルが違うとは思うのですが、その差も越えて本当に仲良くなれたと思ったので、小学生ながら当時は色々考えさせられました。

―それはとてもショックでもあり、考えさせられますね。でも、それから社会貢献について考えるように?

足立:そうです。将来はアパレル関係で途上国とビジネスすることを目指していたので、ビジネスやモノづくりの勉強のために服飾系の商社を希望しました。モノづくりについて調べ、商社でもモノづくりに携わっていった先に社会に対して良いインパクトがあるのだろうかと考えるようになったのですが、結局はそれに納得できない自分がいて、一旦就活をリセットして、マザーハウスに卒業ギリギリで内定をいただいたのです。

―今でこそSDGsや持続可能なモノづくりをしていこうという動きにはなっていますが、5~6年前は今よりもまだそういった考えを持っている人は少なかったと思います。

足立:正直言うと今でもモノを作るということについての疑問はあります。

―それはどんな?

足立:モノはそんなに必要なのか?ということです。

―モノによって精神的に満たされる量は人それぞれ違うので、永遠の課題ですよね。

足立: 大学で学んだ結論として、途上国とビジネスすることで社会問題を解決できる可能性はあると感じました。衣食住やサービスなど色んな業種の中でもファッションなら、社会問題などを知らない人にアプローチできるのではないかと思ったのです。食でもファッションでも、わざわざフェアトレードの商品だからといって手に取る人はまだ少ないと思いますし、食品よりファッションの方がデザインが気に入れば、多少価格が高くても「これが欲しい」という気持ちで価格の壁を越えることができる。たまたま、手に取った商品が社会や環境に配慮した商品だったというストーリーがファッションならば作りやすいのではないか、と。商社では、自分の中でどうしても会社の利益を大きくすることがゴールに見えてしまい…。マザーハウスの入社の決め手になったのは、理念や思いがあるところで働けると思ったからです。

―入社して、今は店頭に立つようになりましたが、この仕事はどうですか?

足立:接客を通じて、お客さまの物語の一部になれるのが面白いです。一番嬉しかったのは、マザーハウスでバッグをお買い上げくださったことをきっかけに、その後の買い物の仕方が変わったと報告しに来てくれたお客さまがいたことです。

―どんな接客だったんでしょう?

足立:京都店に配属された時にことですが、いつも通りに接客をしていて、マザーハウスの事や先ほど話した社会貢献に関心を持ったきっかけなどを流れでお話ししました。もちろんバッグの良さもお伝えして、お客さまも気に入ってお買い上げくださったのですが、その後、そのお客さまからお買い物するときに「どこで、どうやって作っているんですか?」と質問してから買い物されるようになったと言いに来てくださって。それがとても嬉しかったですね。

―思いが伝わりましたね。でも一方で、接客だけでブランドのストーリーは伝わらないし、お客さまも聞いてくれないこともあるのではないかと思ったんですが、接客トークはどうされていますか?

足立:そういう時はお客さまの物語を想像するようにしています。観察して、どんなことに興味や関心がありそうか考えます。なぜこの施設に来たのか、立川に来たのか?なぜこの時間なのか?ここには仕事で?それとも休日だから?など、一言で言えば、その方のライフスタイルを想像して、この店にいる時間を少しでも有意義な時間にできるような会話を心がけています。

―なるほど。では、接客全般で心がけていることは?

足立:お客さまを想像することももちろんなのですが、一番はお客さまが主語であることかもしれません。「マザーハウス」や「自分」が主語になって話すのではなく、「お客さまは…」と考えることです。究極はブランドストーリーを知ってもらわなくても良くて思っています。知らない方が良いという方もいると思うので、いつも生産地の話をしなくてもいいとも意識しています。

―たまたま買ったものがフェアトレードの商品だったということですね。良いものを買ったと家に帰ってから調べてみたらフェアトレードのモノだったと。

足立:そうです!

―マザーハウスで働いたことで、子どもの頃の経験を払拭できたというか、自分が思い描いた社会貢献ができていると感じていますか?

足立:ファクトリービジットというマザーハウスの生産地に行く研修で、インドネシアで働く全ての職人の家を訪問しました。そこで職人さん全員に「マザーハウスと働いて変わったことはありますか?」と聞いたのですが、全員が全員「生活が変わった」と答えてくれて、その言葉を聞いて販売をしている意味があるなと思いました。例えば「キッチンがこんなにきれいになった」「子どもが大学に行けた」とか、工房まで長距離移動をしている職人さんは「バイクを買えた」とか。一人ひとりが生活がより豊かになったことと話してくれました。

―生産者さんの喜んでいる姿を目の当たりにし、一方で店頭でもお客さまが「良いものが買えた」と喜んで暮れているのを見ると「つながっている」と感じたのですね?

足立:そうです。

―マザーハウスでの経験を生かした将来のビジョンは?

足立:将来自分がどうするのか、ということに対してのハングリーさは今はなくて、ファッションと途上国をつなげるモノづくりの仕組みはマザーハウスでできているので、一緒に働く人が増え、生産地が増え、マザーハウスが拡大していくことで、自分の思いが実現できていると納得しています。立川店はこの広さを生かして、大人も子どもも楽しみながら学べるワークショップを開催しているのですが、最近はそこに集まる子どもたちと対話をして、何か気づきになるような仕事ができればと思っています。

苫米地香織:服が作れて、グラフィックデザインができて、写真が撮れるファッションビジネスライター。高校でインテリア、専門学校で服飾を学び、販売員として働き始める。その後、アパレル企画会社へ転職し、商品企画、デザイン、マーケティング、業界誌への執筆などに携わる。自他ともに認める“日本で一番アパレル販売員を取材しているライター”

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現代版「不思議の国のアリス」のような「マルニ」、ゴリラが登場した「ジョルジオ アルマーニ」 ミラノコレリポート第2弾

 2021-22年秋冬シーズンのミラノ・ファッション・ウイークが2月24日〜3月1日までオンライン上で開催されました。ここでは3〜5日目までに発表された中から厳選した5ブランドをご紹介。長年ウィメンズコレクションを取材する向千鶴「WWDジャパン」編集長と、大杉真心「WWDジャパン」記者が対談形式でリポートします。

現代版「不思議の国のアリス」のティーパーティーのような「マルニ」

大杉:「マルニ(MARNI)」は、ブレックファースト、ランチ、ディナーの3部構成でZoom上で発表するという新しい形式でした。招待状はクリエイティブ・ディレクターのフランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)からのフレンドリーなメール。「ミラノのショーで会えないのは残念だけど、我が家の朝食に招待するね。自分の食べ物は持参してテーブルに集まって」というような内容で、メディアやバイヤーの業界関係者だけでなく、顧客にも送ったそうです。プレスの話によると、「フランチェスコからメールが来たんですが、これは間違いメールではないですか?」というような問い合わせが来たそう(笑)。

向:靴がスープに浸っている写真には正直ギョッとしました。夢と現実の狭間で食卓を囲む様子は現代版「不思議の国のアリス」のティーパーティーみたい。「マルニ」の根底には永遠の少年少女のファンタジーみたいな要素があって、フランチェスコは創業デザイナーのコンスエロ・カスティリオーニ(Consuelo Castiglioni)からはそこを引き継いでいると思う。ただファンタジーの種類は変わったよね。フランチェスコは人間のきれいな部分だけでなく、もっと奥底の本音や素の部分をとらえてそれを楽しんじゃおうとしている感じ。だから引力と同時もエグさもある。私はどうしても前の「マルニ」が恋しいけど若い世代は違うのかな。

大杉:フランチェスコにオンラインインタビューをする機会があったのですが、撮影はフランチェスコの自宅で行ったそうです。このカオスな演出は「夢と現実の狭間」を表現したそう。「コロナ禍、政治、厳しい現状に向き合う中で、触覚的なロマンティシズムを探求した。ヒーリング(治癒)になるようなコレクションを作りたかった」とフランチェスコは話します。布団のようなジャケットやドレス、実験のように時間をかけたグラデーション染めのドレスが象徴的です。

向:発想がホント自由で大胆。彼が「ヴィヴィアン・ウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD)」をデザインしてもおもしろいかもね。

“自由”を服に込めた「エトロ」

大杉:「エトロ(ETRO)」はLAで収録した歌手のアリッサ(Arlissa)のパフォーマンスをBGMに、無観客ショーの映像を配信しました。美しい夜景を望むLAと、陽が差し込む明るいミラノをつなげた、オンラインでしかできない演出でした。

向:開放感あるルーフトップで体を揺らしながらジーンズとブラトップにガウンで踊って歌うアリッサの姿が幸福そうでよかったな~。これまでも「エトロ」から一貫して受け取ってきた“生きる喜び”を体現していたと思う。あんな風に夜空に下で「エトロ」を着て踊りたい!できれば酒を片手に。“自由”は今季のキーワードなんですよね?

大杉:はい、今季はロシアのバレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフ(Rudolf Nureyev)とアメリカのギタリスト、ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)の精神やスタイルを着想源に、ブランドのDNAである“自由”を表現したそうです。ヌレエフといえば、1961年に自由を求めてソ連からフランスに亡命をしたことで有名。天才ダンサーで振付師としても活躍し、同性愛を公言していました。またヘンドリックスは同じく60年代にロックギターの基礎を築いたギタリストとして、レジェンド的な存在ですね。

向:この原稿は当時27歳のジミ・ヘンドリックスの「パープル・ヘイズ」をユーチューブで見ながら書いていますが彼が好んだサイケデリックなシャツやベルベットのパンツ、ナポレオンジャケットのエッセンスが反映されていますね。ニット帽の使い方や、編み込みでアレンジしたヘア、古着風のコーディネートなどが若々しいな。

大杉:あらゆる形で“自由”を服に込めていました。アイコニックなペイズリーとレオパードとミックス柄のコートや、肩パッドの入ったブロケードのテーラードスーツ。レギンスやフーディなど、スポーツウエアの要素も多く取り入れていました。終盤には、フリンジディテールが美しいベルベットのドレスなどが登場しました。

向:私はインスタのハイライトにまとまっているストリーズで見たのですが、ティザーから始まりバックステージでのヘアメイクやモデルの素顔、ショー本番、さらにキールックの静止画までを一気に見ることができてオススメです。

大杉:「エトロ」のTikTokアカウントもできていて、バックステージでモデルたちがダンスにチャレンジしていました!かわいくて、微笑ましい。イタリアの老舗ブランドが取り組むことで、新しい世代とのタッチポイントになりますね。

女性の多面性をとらえた「トッズ」

大杉:「トッズ(TOD’S)」は詩を読み上げるようなナレーションが入った素敵な映像でした。“IN A MOMENT”をテーマに女性の多面性を、さまざまなアングルからとらえています。ヴァルター・キアッポーニ(Walter Chiapponi)による3シーズン目のコレクションとなりましたが、どんどんヴァルターらしさが分かってきた気がします。バッグとシューズはシンプルでモダンなデザインですが、どこか印象に残るキャッチーさがあります。

向:その印象が映像と見事にリンクしていましたね。モデルは4人だけ、舞台は1つの建物。エフェクトなどは使用していませんが、アイコンとなる鍵穴風の構図を定期的に差し込みつつ、シーンがどんどん切り替わるから飽きさせません。その軽快さが今の「トッズ」のモダンさと合っていて好感度が高いです。ルックはしなやかなレザー使い、きれいな色使いが印象的で、押しつけがましくなく、着る人のスタイルを尊重する余白があります。

大杉:チャンキーヒールのローファーは、レモンイエローなどの鮮やかな色使いがとてもかわいいですね。前シーズンから継続のホーボーバッグ“オーボエ バッグ”は、スタイリッシュな見た目で仕事バッグにもなる容量があり、次なる「トッズ」のITバッグになる気がします。ブランドの“T”のマークも新たにアコニックに提案していて、アクセサリーのいたるところに見られます。

「オニツカタイガー」の初ミラノコレは次世代クリエイターとタッグ

大杉:「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」がミラノ・ファッション・ウイークに初参加しました。ミラノはデザインを手掛けるアンドレア・ポンピリオ(Andrea Pompilio)の拠点であり、20年12月にはミラノに旗艦店をオープンしたそうです。動画ではイタリアの女性ラッパー、M¥SS KETAや、ダンサーのガブリエーレ・エスポージト(Gabriele Esposito)が登場して、モデルと一緒にポーズをとっていましたね。M¥SS KETAのギラギラのシルバーのマスクに驚きましたが、彼女はコロナ以前からあのマスクとサングラスがトレードマークなんだそう。

向:「オニツカタイガー」のミラノデビューは現地で見て、その反響を取材したかったな。日本のブランドで海外でも成功している数少ない例ですからね。音楽もパフォーマーもミラノの次世代クリエイターたちが参加していて濃厚。日本やアメリカ、イギリスなどとは違うミラノ独特のストリートのムードが色濃く見えて面白かったです。ルネッサンス彫刻のような肉体美や絵画の中と交錯してゆく世界観もイタリアらしいですよね。

大杉:「オニツカタイガー」は今までも東京ファッション・ウイークに参加するなど、ファッションショー形式で発表を続けて、日本とイタリアのファッションを融合した新しいスポーツウエアやシューズを見せてきました。今季のデザインは冬のヒマラヤ山脈がそびえる雄大な自然、70年代のトレッキング・ハイキングブームから着想を得たそう。トレッキング風のショートブーツを、白や黒のシンプルな色合いでモダンに提案していましたね。

向:ウエアも鮮やかなナイロンジャケットなどスポーツウエアを軸にしつつメンズストライプのダブルのパンツスーツも登場するなどよく見ると幅が広い。いずれにしてもジェンダーレスで着方はその人次第、という提案が「オニツカタイガー」らしかったです。

ゴリラが意味する「ジョルジオ アルマーニ」のコミットメントとは?

向:ゴ、ゴリラがいたね。しかも大きかったね。

大杉:はい。「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」の映像はゴリラのオブジェのドアップからスタートし、アルマーニさんとゴリラのツーショットで終わります(笑)。これは何か意味があるはずだ!と調べて見ると、アーティストのマルカントニオ(Marcantonio)が映画のセットとして作ったウリ(Uri)という名前のゴリラで、アルマーニさんが引き取り自宅のリビングにディスプレーしているものだとか。実はゴリラは絶滅危惧種に指定されているため、ブランドは2020年にはWWF(世界自然保護基金)に寄付をしたそう。アルマーニさんにとって、ウリは映画との結び付きと、環境と自然保護へのコミットメントを示すものになっているようです。

向:なるほど、深いですね。ショー終了後にモデルが集合してアルマーニさんと記念撮影を撮るシーンは恒例ですが、今回はそこにもウリがいてインパクト大でした。この“インパクト”はデジタルコレクションにおいて重要です。溢れる情報の中で、記憶に残る工夫は絶対に必要ですから。

大杉:今季のウィメンズは「夜行性(Nocturnal)」をテーマに、夜をイメージしたコレクションだったそうです。夜空のようなにキラキラ輝くクリスタルをあしらったベルベット、朝焼けのようなマーブルまで、さまざまな青や黒が登場します。メンズはまた別テーマを設けていて、「それぞれの道(Passage)」と題して、アルマーニさんが魅了されてきたという、スタイリングが持つ心理的な側面にフォーカスしたそうです。

向: “精密さ”はアルマーニの魅力のひとつですが、今回はそれよりもロマンチックであること、リラックスしていることが優先されているようです。特にウィメンズは全体的にリラックスしていてロマンチック。花をモチーフにした刺しゅうなど、ここにも自然を想起させる要素が散りばめられています。窮屈な思いをしている世界中の女性の気分を解きほぐすようなフルレングスのスカートやワイドパンツなどが印象的でした。

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イオンとウエルシアHDが共同出資で販売の仏「イヴ・ロシェ」 “手に届くナチュラルコスメ”のヒット商品は?

 イオンとウエルシアホールディングスが共同出資会社イオンレーヴコスメを設立して独占販売を開始したフランスのボタニカルビューティケアブランド「イヴ・ロシェ(YVES ROCHER)」により、イオンは利便性の高い店舗でラグジュアリーから手ごろな価格帯、ナチュラル・オーガニックのPBブランドまでを取りそろえ、多様なニーズに応える体制を整えた。環境や健康意識の高まりから日本のナチュラル・オーガニックコスメ市場のさらなる伸長が予想される中、世界約90カ国6700以上の店舗で展開し世界的知名度の高い「イヴ・ロシェ」の日本上陸から現在までの商況と今後について中島裕子イオンレーヴコスメ社長に聞いた。

フランスでは誰もが知るメジャーブランド

WWD:2019年11月の日本でのブランドデビューから約1年以上が経過した。これまでの商況は?

中島裕子イオンレーヴコスメ社長(以下、中島):関東地区112店舗からスタートしましたが、21年1月時点で全国に970店舗、4月には1500店舗まで拡大する予定です。上陸時は25年までの2000店舗体制が目標でしたが、前倒しで達成できそう。デビュー直後に新型コロナウイルスの感染が拡大して、店頭ではテスターを撤去して接客販売を自粛。GMS(総合スーパー)とドラッグストアの販路は店舗休業という影響は受けていませんが、想定より厳しいスタートでした。ただ、スター商品のヒットと手に取りやすい価格帯も手伝って、後半は大きな成果を上げました。

WWD:取扱店舗拡大を早めた理由は?

中島:「イヴ・ロシェ」はフランスではNo.1ビューティケアブランドですが、日本では無名。まずは手に取って、使用感や効果を実感していただくのが一番と考えたためです。当初は関東エリアでブランド認知を高めてから全国に広げる予定でしたが、ヘアトリートメントの“リンシングビネガー”(150mL、1000円)が非常に好評で、全国から導入の要請が多く、まずは取扱店舗を拡大してリアルなタッチポイントを増やす戦略に変更しました。

WWD:改めてブランドの特徴は?

中島:創業はナチュラルコスメの中でも歴史が長い1959年。創業者イヴ・ロシェの「全ての女性にボタニカルビューティを届けたい」という思いから、自然と女性をリスペクトし、植物と愚直に向き合い研究を続け、他社に先駆けて自然を守る活動にも取り組んできました。植物の専門性と革新性、機能性、それに伝統が詰まった商品は、天然成分をぜいたくに高配合しながらもリーズナブルな価格。日本では「ナチュラルコスメはぜいたく品」というイメージが根強いかもしれませんが、「イヴ・ロシェ」はナチュラルコスメ市場の裾野を広げる可能性を持っています。

WWD:ターゲットと展開アイテムは?

中島:ブランド認知を広げるという意味では、10~20代の女性と親世代の40~50代の女性です。手ごろなので若年層も使い続けられるでしょう。若年層は新しい商品に敏感で、サステナビリティへの意識も高いのでターゲットに設定しています。トータルビューティケアブランドとして本国フランスではスキンケアからボディーケア、ヘアケア、メイクアップ、フレグランス、メンズラインまで幅広いカテゴリーで多彩な商品を販売。どこでも買える身近なブランドであり、年齢や性別を問わず誰にでも合う商品があるのも魅力です。膨大な商品の中から日本市場に合う商品を厳選し、約1割を導入しています。

WWD:日本市場でのカテゴリー別売り上げ構成比は?

中島:一番大きいのがヘアケア、次いでボディーケア、フレグランスと続きます。シーズンによっては、ギフトが上位に。ホリデーシーズンには香り豊かな商品のギフト提案を行うなどシーズナブルなマーケティングを展開し、ベーシックケアでのファン作りと同時に新客獲得にも注力しています。現状ではヘアケアが主力ですが、今後は各カテゴリーをバランスよく訴求したい。ゆくゆくはメイクアップの導入なども視野に入れています。

酢の力でサラ艶髪になる“リンシングビネガー”が大ヒット

WWD:最も売れているスター商品は?

中島:ヘアトリートメントの“リンシングビネガー”は、シャンプー&コンディショナーの後に使うものですが、水のようにさらさらのテクスチャー、一番人気のラズベリーなど豊かな香り、髪が重たくならずツルツル・サラサラになる使用感。そんな驚きの連続が口コミにつながっています。ここ数年は時短コスメがトレンドでしたが、コロナ禍で“おこもり美容”のニーズが高まり、ヘアケアは好調カテゴリーの一つに。「もうひと手間かけたい」というニーズに対応するプラスワンアイテムとしての新鮮さもご好評いただいています。まずは使っていただきたいので、取扱店舗を増やしたほか、美容誌の付録などを実施。社内外で行ったアンケートでは9割以上から「効果を感じる」「さらさら艶々になる」との回答をいただきました。特にアジアで人気で、韓国でも大ヒットしています。

WWD:他社に先駆けてきたサステナビリティの取り組みとは?

中島:「自然から得たものは自然に返す」を基本理念に創業期から取り組んでいます。例えば環境保全への取り組みや全工場用地において生物多様性の保護に努めていることが評価され、96年と2011年にはフランス環境省から表彰されました。工場では排水の削減、再生可能エネルギーの使用に取り組むほか、プラスチックバッグは2006年に撤廃。これにより200トンのプラスチックを削減しました。1989年には動物実験を廃止したほか、昨年には2008年にスタートした植樹活動が5大陸35カ国で1億本を達成。通常のシャワージェルと比べて水分を1/4に圧縮することで、プラスチックの使用量や輸送にかかる環境負荷を削減した“濃縮シャワージェル”を1本購入いただくごとに1本の植樹を行う取り組みで、世界で約3秒に1本のペースで植樹を行っています。日本では19年11月の発売以来、約7万本を輸入販売しています。植樹はグローバルな取り組みですが、今後は日本独自の取り組みをスタートする計画もあります。

WWD:今後のプロモーション戦略は?

中島:店頭に並んでいるだけでは手に取ってもらえないので、口コミがとても大切。デジタル上で話題の商品が身近なGMSやドラッグストアの店頭で目に留まり、実際に触れることで購入への障壁が一気に下がり購入につながります。デジタルとリアルの融合で、さまざまな場所で話題にしてもらえるきっかけ作りを行います。店頭での存在感を示すため、店舗との信頼関係を築きたい。信頼関係がなければ、無名のブランドが人通りの多い一等地に並ぶことはありませんからね。ブランドの理解が深まるとお客さまに知っていただきたくなりますから、商品開発にかける思いや研究の深さは店舗にも伝えるようにしています。その次は、伝えきれていなかったブランドのポリシー、地球環境を考えたモノ作りの姿勢で認知を高めたいと思います。4月にはメディア向けにサステナビリティ活動をお伝えする機会を設け、夏までに環境に配慮したヘアケアカテゴリーとスキンケアの新商品を発売する予定です。

WWD:コロナ後に向けた戦略は?

中島:われわれの一番の強みは、リアル店舗でのタッチポイントがたくさんあること。コロナが収束すれば、その強みをさらに生かせます。収束後も、わざわざ遠方まで買いに行くのではなく、近場で気軽に体験したいというニーズは続くと考えています。そのニーズに応えるブランドとして、取り扱い店舗の拡大とデジタルでの情報発信を同時に進めブランドを育成し、今までナチュラルコスメに出合ってこなかった客層を取り込むことでナチュラルコスメ市場を拡大していきたいと思います。

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マイクロインフルエンサーと協業 老舗アパレル、テットオムの新たな一歩

 クラウドファンディングプラットフォームの「マクアケ(MAKUAKE)」で 3月2日現在、“いつでも、どこでも着られる”と銘打ったセットアップの販売プロジェクトが資金調達を行っている。調達金額はすでに目標の2倍を超えた。

 「レシー(LESSY)」と銘打ったこのプロジェクトは、かつて1970年代のDCブランドブームの一角を担った老舗アパレル企業テットオムと、インスタグラムを中心に活動するファッションインフルエンサーの中田和真さんの協業によるもの。企画第一弾として仕込んだのがこのセットアップだ。

 商品企画ではテットオムのアパレルメーカーとしての知見と、中田さんの感度をうまく同居させた。1950年代の米軍のパジャマをベースにしたシャツは、ゆったりとしたトレンドシルエットに修正。生地は尾州(愛知県一宮市)の高密度なウオッシャブルウールを使用し、しなやかな質感や素材本来の防汚性を生かした、外で着てもサマになるワンマイルウエアだ。

 自宅に帰ってきてからも、洗い物などで腕まくりをしやすいよう計算された袖の折り返し幅、ベッドに寝転んでも不快感を感じないよう採用した、ベビー服用の小さめのボタンなどの工夫が生きる。体に負担をかけないための緩めのウエストゴム、ワンタッチで丈の長さが調節ができるアジャスターなども、試着と修正を繰り返して生まれたアイデア。アシンメトリーな前身頃のデザインやバンドカラーのデザインは中田さんの提案だ。

 テットオムがインフルエンサーとタッグを組むのは、今回が初めて。中田さんはインスタグラムでフォロワー1万人。インフルエンサーの中では比較的限定的な規模だが、テットオムはなぜ協業相手に選んだのか。「インスタグラムのSNSプラットフォームとしての成長に伴い、インフルエンサーはどんどん巨大化・飽和している。ファンの顔も見えなくなっているのではないか」と、テットオム側の仕掛け人である白井隆事業部長は語る。「いわゆるインフルエンサーブランドも、本来彼らの強みであったはずの、ファンの“生の声”を反映させた商品開発は難しくなっている。比ベて、彼(中田さん)はファンの顔も、彼らの必要としている服もくっきり見えていた」。商品企画にあたっては、中田さんのフォロワーへのアンケートなどを通じ、意見を反映していった。

 普段はウェブマーケティングの企業に勤務している中田さん。「僕よりも規模が大きいファッションのインフルエンサーはいくらでもいる。だから、よそ行き『以外』の服を充実させようと思ったんです。このセットアップはオシャレよりも“課題解決”のような感覚で作りました」と振り返る。「僕の(フォロワーを含めた)周りの感覚だと、外に出る時のコーディネートを考えるのに少し疲れている人が多いように感じます。一方で、家の中ではクローゼットの2軍とか古着とかテンションの上がらない服を着ている。その両方を解決できるのは、何も考えずに着てもサマになって、家でも外でも気分を上げてくれる、ちょっと贅沢なセットアップだったんです」。

 セットアップの上代設定は2万5000円。白井事業部長は「実際、売れてももうけはほとんど出ない」と笑うが、プロジェクトにより得られた成果は、すでにそれを補ってあまりあるようだ。白井氏は35歳の若さで、この春からブランド事業全体を統括する立場につき、社内の枠組みを超えて新しいビジネスの可能性を模索してきた。今回の取り組みは、白井氏の個人的なつながりの飲み会がきっかけで始まったものだ。「僕らのような老舗だからこそ、フットワーク軽く取り組んでみるということが本当に大事だなと実感する。取り組みとしてはまだまだ小粒だけれど、彼を通じて消費者の“生の声”を聞けたことで、次回のプロジェクトはもちろん、自社の商品企画にもつながる学びがきっとあるはずだ」。

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ビジネスリポートの好調ファッションジュエリー「ヴァンドーム青山」は幅広い年齢層から支持

 「WWDジャパン」2月22日号の付録として、定期購読者向けに発行した「2020年秋冬ビジネスリポート」(単体での販売も実施中)では、全国41店舗の百貨店に20年8~12月の好調ブランドについて聞いたアンケートをまとめている。ファッションジュエリー部門で2位にランクインした「ヴァンドーム青山(VENDOME AOYAMA)」に話を聞いた。同ブランドはベーシックかつ上質なジュエリーを求める女性に人気で、ダイヤモンドネックレスなどの定番品に対して高い支持を得ている。コロナ禍では、幅広い年齢層による自家需要およびブライダルも好調だ。コロナ禍における売れ筋や需要の変化について、山田稔子ヴァンドーム・ヤマダMD推進部部長に聞いた。

 一番の売れ筋はシーズン限定品やイエローゴールドやプラチナのネックレス、リングで中心価格帯は3万〜10万円。山田部長は、「20〜60代と幅広い年齢層が来店した。クリスマスの時期にはギフト需要で男性やカップルの来店もあったが、自家需要による女性客が多かった」と話す。高額品は10万〜20万円のプラチナやゴールドのダイヤモンドネックレスが人気で、シーズン限定の色石を使用したものも好調だったようだ。
 コロナ前後の売れ筋の変化に関しては、「コロナ前は、大ぶりの耳周りアイテムが人気だったが、コロナ禍ではリモートワークなどにより顔周りが華やかになるネックレスやマスクでも付けやすいイヤカフ、小さめでも存在感のあるイヤリングへ需要が変化した」と山田部長。また、コロナ禍ではお守りとしてジュエリーを身につける需要が高まっているようだ。同部長は、「しずく形、馬蹄などのラッキーモチーフがよく動いた。高めの年齢層になると外出を控えるケースが多く、長く使える品質の高いものを購入する傾向にある」と説明する。

コロナによる絆需要でペアアイテムが好調

 ブライダルに関しては、エンゲージメントリングは30万円台、マリッジリングに関してはペアで20万円台が中心という。山田部長は、「エンゲージメントリングは数量限定品をはじめ、シンプルなデザインから王道ベーシックなものに加えデザイン性の高いモデルの人気も高かった。マリッジリングは、女性はダイヤモンド入り、男性はハーフマットのタイプが人気だった」という。
 コロナ禍で絆需要も高まっており、クリスマス時期を中心にペアリングやペアネックレス(ペアで4万〜6万円)がよく動いたという。コロナ禍におけるコミュニケーションについては、「このような状況に来店いただけることに感謝し、丁寧かつ心こもった接客をしている」。手書きの礼状やDMなども活用しているようだ。

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韓国で“皮膚再生”と話題! 「シカクリーム」に新たなトレンド

 世界に目を向けると、日本とは異なる美容トレンドが生まれている。そこで連載「海外ビューティ通信」ではパリやニューヨーク、ソウル、ベルリンの4都市に住む美容通に最新ビューティ事情をリポートしてもらう。

シカクリームブームのきっかけは?

 韓国では皮膚再生クリームとも呼ばれるシカクリームは、日本でも注目を集めている。人気のきっかけをさかのぼると、2000年代に韓国で大ブームとなったBBクリームにたどり着く。ドイツ発祥のBBクリームは元来、医薬品として皮膚科で使われていたもので、紫外線などの外部刺激を遮断し、肌を保護しながら赤みをカバーし、肌の再生を促す機能を持ったメイクアップクリームとして生まれた。ドイツから韓国に入ってきたのは1980年代。皮膚科やエステサロンで浸透した後、2000年代に入って韓国女優がこぞって使い始め、ナチュラルメイクブームのきっかけになった。

 シカクリームの「シカ(CICA)」は、ツボクサ(学名:Centella Asiatica、センテラアジアチカ)を指す。ツボクサの抗酸化力や抗炎症力が肌の回復を促すほか鎮静効果があるといわれていることから肌再生クリームと呼ばれている。ツボクサは欧米などでも昔からポピュラーなスキンケア成分ではあるものの、美容大国の韓国で「シカ」と名付けて売り出されたことで、18年ごろから人気が爆発してデイリーなスキンケアアイテムとして定着。世界中でトレンドとなり、さまざまなブランドが独自の機能を加えたシカクリームを続々と発売している。

話題の次世代シカクリーム

 そんな中で最近話題になっているのが、韓方ベースの次世代シカクリームだ。昨年7月にロダム韓方クリニック(ソウル市江南区)が発売した“バイロダム リペア ゴールドライン”は、現代医学と韓方医学を融合したハイブリッド再生クリームだ。同クリニックのホン・ムソク(Hong Museok)代表院長が、ニキビ痕の再生治療を通じて発見した肌の力に注目し開発した。シカ成分のほか、西洋医学で注目されている次世代再生成分のタマネギ抽出成分や、韓医学で肌に良いとされている韓薬剤を配合。タマネギに多いスピレオシード成分は、紫外線などでダメージを受けた肌を鎮静、保護すると同時に肌の再生を促進する。低刺激なので乳幼児や敏感肌にも安心だ。

 敏感肌向けスキンケアブランド「ラゴム(LAGOM)」も昨年10月、“センシティブ シカクリーム”を発売した。ツボクサから得られる4つのシカケア成分と、亜鉛とカルシウム、マグネシウムの3つのミネラル成分が肌トラブルを沈静して保護する。高い保湿効果が肌の回復を促し、過剰な皮脂と毛穴を集中的にケア。べたつかないテクスチャーも特徴だ。有害成分20種は無添加、皮膚刺激テストとニキビ肌の適合化粧品テスト済みで敏感肌でも安心して使える低刺激処方だ。

 ほかにも製薬会社が最新の肌研究に基づく製品を発売するなど、シカクリームの開発競争が活発化している。環境や時代の変化により生まれるさまざまな肌悩みに対応する、進化したシカクリームの登場に期待したい。

チョン・ジャキョン:フリーランスコーディネーター兼ライター。ソウル生まれ。アート関連会社と映画製作会社の演出部を経てメディアコーディネーターに転身。雑誌を中心にテレビ、広告、スポーツなど幅広い分野で活躍。携わった書籍は「ソウル美容完全ガイド」(講談社刊)など多数

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理想のヘアスタイル&美容師が探せる「ヤフービューティー」が本格始動 先端のIT技術は業界を変えるか

 理想のヘアスタイル・美容師を探せる検索サービス「ヤフービューティー(Yahoo! BEAUTY)」がローンチから約1年経過し、本格始動している。美容師が投稿した画像から、ユーザーに理想のヘアスタイルを見つけてもらうサービスで、ユーザーと美容師をスムーズにマッチングさせる。
 ユーザーは“ボブ”や“マッシュ”といったヘアスタイル名、“インナーカラー”や“アッシュ系”といったヘアカラー名、さらには髪の長さや悩みなどフリーワードでの検索が可能。見付けたスタイルから手掛けた美容師のページへとつながり、(外部サイトを通じて)予約することもできる。1月に登場したiOSアプリでは、投稿と検索がよりスムーズになり、ヘアチェンジした自分のヘアスタイルのユーザー投稿も可能になった。
 最大の特徴は、国内最大級の検索サービス“ヤフー検索”と連動していること。登録した美容師にとって大きなメリットを、以下で1つずつ紹介する。ヘアスタイル検索サービスとしては後発組だが、「ヤフービューティー」の担当者は「後発組だからこそ、美容師にとって本当に必要なサービスを提供したい。登録美容師のヒアリングはこまめに行っており、頂いた意見を柔軟に取り入れて反映させている。常に美容師にとって身近な存在でありたい」と話す。その言葉の通り今も日々進化している検索サービスで、蓄積された膨大なデータに基づいた新サービスを生み出せるポテンシャルは計り知れない。

美容師にとってのメリット➀:
自分の指名予約サイトにリンクできる

 登録美容師は「ヤフービューティー」内に作った自分のプロフィールから、自らの指名予約サイト(外部サイト)にリンクできる。そのため、投稿したスタイル画像を気に入ったユーザーを、ネット予約まで誘導することができる。

美容師にとってのメリット②:
人気のスタイル画像は“ヤフー検索”に表示される

 「ヤフービューティー」の最大の特徴は、ヤフー検索と連動していること。人気の投稿は、ヤフー検索に表示されることがある。例えばヤフー検索で“ショートボブ”と検索すると、トップに“ショートボブの人気ランキング”として人気スタイル画像が表示されるので、影響力は絶大だ。

他にも美容師にとってのメリットが多数

有名美容師も「ヤフービューティー」に期待

問い合わせ先
ヤフービューティー事務局
beauty-inquiry@mail.yahoo.co.jp

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キム・ジョーンズが原点に戻した「フェンディ」、モードを強めた「プラダ」 ミラノコレ前半リポート7選

 2021-22年秋冬シーズンのミラノ・ファッション・ウイークが開催中です。ここでは1日目から3日目までに発表された中から厳選した7ブランドをご紹介。長年メンズとウィメンズのコレクションを取材する村上要「WWDJAPAN.com」編集長と、ウィメンズコレクション担当の大杉真心「WWDジャパン」記者が対談形式でリポートします。

「ミッソーニ」のニットは在宅勤務の最高級アイテム

大杉真心「WWDジャパン」記者(以下、大杉):「ミッソーニ(MISSONI)」は引き込まれてしまう動画でした。映像はボウリング場からスタートし、"どこでもドア"のような窓をくぐって、路上や部屋の中など別の空間へとワープしていきます。ニットワンピースなどを着用した若々しいモデルたちが楽しそうに会話をしている姿や、カメラの前を横切る姿は魅力的に見えました。

村上要「WWDJAPAN.com」編集長(以下、村上):ファーストカットのボウリング場から、なぜか全員リゾートウエアの学校でのシーン(笑)、そして屋外のペデストリアンまで、全部が1カットに見える不思議で素敵な映像でしたね。今の時代はオンもオフも境界は曖昧で、僕らの日常も全然違う場面の組み合わせというよりは、いろんなシーンに行ったり来たりするカンジ。そんな日常生活を映像で表現しているように思えました。

大杉:洋服はブランドらしいマルチストライプで従来と大きく変化はありませんが、ニットワンピースやトップスとパンツのセットアップなどシンプルな構造のアイテムが多かったように感じます。秋冬ですが、重たい印象がなくて着心地がよさそう。またパーカやショートパンツをスニーカーに合わせるなど、スポーツ要素が増えていたのも新鮮でした。私も着たい!と思ったので、アラサー層にも受け入れられそうな印象です。

村上:アラサーどころか、軍資金さえあれば、もっと若い女性も「挑戦してみたい!!」って思ってくれるだろうスタイルでした。従来よりスポーツやストリートのムードにシフトしながら、健康的な素肌ならチョットくらい大胆に見せても大丈夫、という雰囲気を漂わせている。でも、「ミッソーニ」らしいカラフルなジグザグや、柔らかなニットの軸はブレないから、セクシーというよりヘルシー。ニットのセットアップは、在宅勤務の最高級アイテムとしても使えそう。

スタート地点に立ったキム・ジョーンズの「フェンディ」

大杉:いよいよ、キム・ジョーンズ(Kim Jones)による「フェンディ(FENDI)」のプレタポルテがお披露目になりましたね!先月発表したオートクチュールとはまた異なる雰囲気で、とてもソリッドでシンプル。ファーストルックは、毛皮ビジネスから始まったメゾンを象徴するキャメル色のファーコートでした。その後も全身ワントーンでそろえたコーディネートが続き、ホワイト、ペールピンク、モーブ、グレーへと変化していくカラーパレットが美しかったです。これらは、ブランドを現在に導いたフェンディ家の5人姉妹のワードローブから着想を得ているそうです。

村上:「フェンディ」の「FF」は、「ファン ファー(FUN FUR)」の頭文字。だからこそユーモアは忘れちゃいけないブランドだけど、ここ数年は“インスタ映え”とかストリートを意識しすぎていた感もありました。もう一回原点に立ち返り、「『フェンディ』のお客さま、洋服も、長く愛してくれる人たちって誰だろう?」と考え直したようなコレクションです。本人も「今回は、ボールが転がりだすスタート地点なんだ」って言っているね。シルクやオーガンジーを多用して、ジャケットのような肩周りのワンピース、ドレスのように流れるシャツなど、メンズ由来とウィメンズ由来のアイテムを融合。メンズ出身、ウィメンズは初挑戦のキムらしいなぁ、と思いました。

大杉:前任の故カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)による「フェンディ」はキャッチーな柄やアイテムの提案を得意としていましたが、キムは正統派のイタリアのエレガンスに着目したようですね。昨年からの流れですが、イタリアンブランドが得意とするタイムレスなアイテムが見直されていると思います。私が唯一、物足りなさを感じたのはアクセサリーです。今回はクラッチやハンドバッグ、トートバッグなど実用性を考慮した"きちんとバッグ"がそろっているんですよね。シューズも無駄な装飾がなく、とても削ぎ落とされた印象です。これまでの「フェンディ」は、アイコンバッグの"バゲット"をマイクロサイズで提案するなど、「何が入るの!?」とツッコミたくなる雑貨が心をくすぐりました。

村上:確かに、バッグやチャーム、ストラップも、まずは一旦“オールリセット”だった。物足りなく思う人もいるかもしれないね。こういうご時世だから賛否両論あるんだろうけれど、バッグでもファー使いが印象的だったね。昔、ハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)にインタビューした時、「ラグジュアリーやデザイナーズの洋服が決定的に違うのは、コミュニケーションを誘う点だ。見るからに肌触りの良い素材の洋服を着ている人には、『触ってみて良い?』と話しかけてしまう。そうやってコミュニケーションを喚起するのが、ラグジュアリーの魅力だ」と聞いて、とっても納得したんだけれど、ファーバッグを見て、そんなことを思い出しました。アクセサリーの注目は、ジュエリーかな?キムとともにクリエイションを手がけるシルヴィア・フェンディ(Silvia Fendi)の娘で4代目に当たるデルフィナ・デレトレズ・フェンディ(Delfina Delettrez Fendi)のゴールドアクセサリーが首元や耳を彩っていたね。キムはクチュールの時から、「僕は、シルヴィアからデルフィナへのスムーズな継承を支えるリリーフだから」と言い切っています。今後は、アクセサリーを起点に、どれだけデルフィナの現代的な感覚がコレクション全体に浸透するか、注目ですね。

常に女性を応援してきた「マックスマーラ」の70周年

大杉:「マックスマーラ(MAX MARA)」は今年でなんと創業70周年。今季は70年間で変化した女性たちの環境や地位がキーワードになっているそうです。というのも創業時の顧客は、医師の妻など"富裕層の奥さま"だったけれど、今はエグゼクティブや経営者などの"ビジネスウーマン"が増えている。常に女性を応援してきた歴史は、ブランドの価値につながっています。ブリティッシュとイタリアンの正統派と遊び心あるスタイルを掛け合わせて、社会的にも精神的にも自立した女性のワードローブにまとめました。私も「マックスマーラ」の上質なアイコンコートは永遠の憧れで、いつか着こなしたい!と思っています。

村上:僕も、一昨年も去年も「“テディベアコート”、やっぱり買うべきかしら?」と思っています。今回もファーストルックは“テディベア”チェスターと、ボンバージャケットのレイヤードでしたね。キャメル、カーキ、ネイビー、ガンクラブチェック、レオパード……。70年間、リアルな女性のワードローブの一翼を担ってきたプライドを感じました。でもケーブル編みのニットをオーバーサイズにして、合わせるガンクラブチェックのパネルスカートをウールからチュールに変えるだけで、1951年から続くスタイルも2021年っぽく見えますね。70周年のシンボルマーク(なのかな?)に使っていた「!」のマークには、「素材で遊んだら、昔ながらのスタイルも今風に!」という驚きが表現されているのかな?と勝手に想像しました。キルティングのプルオーバーや“テディベア”コートを含めて、名門のイタリアンブランドには、もっと素材で遊んで欲しいな。余談ですが「マックスマーラ」や「スポーツマックス」にはぜひ、カワイイアイメイクにも挑戦して欲しいです。毎回アイラインもリップも強めで、正直、チョット間口を狭めて、ソンしちゃってる気がするので。

大杉:このようなコレクションはシンプルな無観客ショーで見せて正解ですね。編集部では長年クリエイティブ・ディレクターを務めるイアン・グリフィス(Ian Griffiths)の取材も行いました。後日インタビュー記事を公開予定ですので、そちらも合わせて読んでいただければと思います。

ラフ加入で「ミュウミュウ」との差別化が明確になった「プラダ」

大杉:ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)によるウィメンズは2シーズン目ですね。「プラダ(PRADA)」はいつも同じ空間演出でメンズとウィメンズ・コレクションを発表していますが、今回もラフが加わって初のメンズだった1月のメンズと共通テーマでした。色鮮やかなフェイクファーと大理石を床や壁に施した部屋をモデルたちが駆け抜けて行くので、どこでスクショしても可愛く撮れます(笑)。村上さんはこのコレクションをどのように見られましたか?

村上:なるほど。正直「プラダ」は、デジタル戦略がそんなに上手じゃなかったのに進化してるね(笑)。ラフが加入してから3つ目のコレクションですね。正直、ウィメンズの方が「2人の協業が、良い結果につながっているな」って思います。メンズは、けっこうシルエットとキーアイテム、そしてスタイリングのいずれもラフ・シモンズ、いやブランドとしての「ラフ・シモンズ」だったと思っていて、チョット心配だったんです。でもウィメンズは、ピタピタのニットやブーツ、反対にブカブカのMA-1などラフっぽいアイテムさえ、チュールのスカートや不思議な絵柄のカーディガン、スパンコールのセットアップなどミウッチャらしいアイテムと組み合わさるから、「2人の協業」を感じやすい。

大杉:どのルックにも登場するキーアイテムは、幾何学柄や花柄のセカンドスキン。ジャカードニットのボディースーツで、シャツやジャケットの下に忍ばせるとレイヤードが楽しめるアイテムです。カラータイツのようでかわいいですね!ミウッチャとラフは「変化と変容、開かれた可能性」というテーマで対話を重ね、このコレクションで人間の本質に迫ったそうです。人間、誰もが持つ"男性らしさと女性らしさの両極間に存在する「シンプルさと複雑さ」「上品さと実用性」「制限と解放」の間を表現しているとのこと。分かりやすいのが、プレーンなスーツと複雑な柄のニットの組み合わせ。テーラードスーツは厳格さがあり、ボディースーツは性別を問わない体の自由を象徴しています。

村上:「制限と解放」、2人はどんな話をするんだろう(笑)?ラフとの協業については、「プラダ」の視点のみならず、会社としてのプラダグループの視点で考えるのも大事だと思っています。僕は半年前の2021年春夏シーズン、「プラダ」はもちろんだけど、「ミュウミュウ(MIU MIU)」も大好きでした。レトロスポーツなスタイルを見て、「そう!『ミュウミュウ』って、こういうチョット不思議な女の子の世界だよ!」って嬉しくなって。ここ数年の「ミュウミュウ」は、「プラダ」との差別化が難しくなっていた印象で、グループ内で食い合っていた印象がありました。それがラフの加入で、モードの性格を強めた「プラダ」と、ミウッチャらしい「ミュウミュウ」の違いが再び明確になったと思っています。だから「プラダ」は、ちょっとラフっぽいくらいでちょうど良いのかもしれない、とも思い始めています。

大杉:最後にはおなじみとなったミウッチャとラフの対話が収録されていて、今回はゲストにブランドと所縁のある建築家のレム・コールハース(Rem Koolhaas)をはじめ、マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)、映画監督のリー・ダニエルズ(Lee Daniels)、音楽家のリッチー・ホゥティン(Richie Hawtin)、トランスジェンダーのモデルで俳優のハンター・シェーファー(Hunter Schafer)が登場します。マークが笑いをとって場を和ませていたのが印象的で、「プラダらしさ(Pradaness)とは?」という質問にマークが「ミセスプラダ(ミウッチャ)そのもの。彼女の着眼点、知性、スタイル、テイスト、文化、ファッションへの愛が詰まったもの」と話していたのがその通りだと思いました。

着る人をやさしく包み込む「ブルネロ クチネリ」

大杉:「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」は今季、ニットの質感で“フィール・グッド・スタイル”を目指したそうです。不安やストレスを抱えやすい状況下で、着る人を包み込んでくれるエレガントな服がそろっていますね。やさしい色使いに、上質な素材の美しさが伝わって、本当に直接触れたいと思うコレクションです。

村上:これまで以上に淡い色彩でしたね。ベージュやグレー、デニムでさえ、今季は総じてペールトーン。映像の舞台、「ブルネロ クチネリ」の古里であるソロメオ村の朝霧に包まれているような気持ちになりました。映像ではコーデュロイがクローズアップで何度か映ったけれど、このブランドのコーデュロイはコットンだけじゃないからね(笑)。カシミヤとか入ってて、直接触れると、驚愕します(笑)。

大杉:特にプライベートとバブリックの境を曖昧にしてジャケットにニットパンツを合わせるなど、1月のメンズ・コレクションで編集部が提案したホームとフォーマルを掛け合わせた“ホーマル”トレンドを体現するコレクションでした!クチネリさんはいつも世の中が必要とする服を的確に提案されていますね。

“オールドハリウッド”を表現した「モスキーノ」の豪華ショー

村上:「モスキーノ(MOSCHINO)」は、“おうち時間”が長くなっている今、まさかのスーツから始まったよ(笑)。さすがジェレミー・スコット(Jeremy Scott)、パンクなのか、何も考えていないのか?どっちだろう?と思ったら、今度は田舎の牧場に来ちゃったよ!!でもスタイルは、壁紙やタペストリー柄のウールをハイブリッドしたペプラムスーツ。お次の美術館では、スーパークラシックなセットアップに、ドレスです!今はまだ、どこにも着ていけないよ(笑)!!

大杉:ジェレミーはLAを拠点にしている利点を生かしているなと思いました。まずはモデルの豪華さです!ディタ・フォン・ティース(Dita Von Teese)をはじめ、アンバー・ヴァレッタ(Amber Valletta)、ミランダ・カー(Miranda Kerr)、ヘイリー・ビーバー(Hailey Bieber)、テイラー・ヒル(Taylor Hill)ステラ・マックスウェル(Stella Maxwell)ら世代の異なるモデルや女優、パフォーマーまで出てきました。確かに、今はどこへも着ていけない服ばかりでしたが、ハリウッドのようなショービジネスのお膝元ではこのようなドレスの需要があるのだと納得しました。コレクションテーマもずばり“オールドハリウッド”でした。

村上:大都会、牧場、美術館、サファリ、そしてシアター。映像作品として、大いに楽しみました。「モスキーノ」の映像に登場するモデルって、みんな芸達者だよね(笑)。コレクションのデジタル配信が始まったばかりの頃は「やっぱりモデルと役者って、違うんだなぁ」なんて思っていたけれど、「モスキーノ」はモデルが完璧な役者で、役者が完璧なモデル。ウィニー・ハーロウ(Winnie Hallow)も、めちゃくちゃ演技上手でした。

大杉:動物や絵画になりきるポージングも面白かったですね。キャッチーで着るだけで気持ちが高揚しそうなウエアばかりなので、出演者も皆楽しそうでした。そして最後にはディタ・フォン・ティースの美尻のドアップで幕が閉まるシーンが衝撃的でした(笑)。

ポジティブな気持ちになれる「エンポリオ アルマーニ」

村上:ネオンカラーの照明が瞬く「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」のメンズ&ウィメンズ・コレクションは、鮮やかなパープルやフューシャピンク、エメラルドグリーンなど元気いっぱい。グレーベースのセットアップにピンクのシャツくらい、さりげなく取り入れているメンズが良かったな。リアルショーでは顔色変えずに歩く姿しか見られないけれど、映像ではウォーキングを始める前のポージングやちょっとしたダンス、笑顔が見られて、「あぁ、こういうビビッドな色を着ると、こんな風に楽しい気持ちになれるだろうな」って素直に思えます。

大杉:得意とするリラックスエレガントな世界観に、1980年代のポップカルチャーのムードをプラスしたコレクションでしたね。見ているだけで、ポジティブな気持ちになれる演出でした。ウィメンズはハイウエストで細身。ベルベットなどの上質な素材感に相反するスポーツのエッセンスも加わっていました。

村上:メンズは、いつもよりゆとりのあるシルエット。元気になれる色と、リラックスできるシルエットの対比がユニークでした。素材では、いつも以上にベルベットが多かったかな?アルマーニと言えば、のベルベットは触り心地が抜群だから、イヴニングだけじゃなくデイリーウエアに取り入れても良いかもね。

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コクヨ黒田英邦社長が理想とする「Be Unique.」な会社 音声座談会「蓉子の部屋」Vol.9

 「蓉子の部屋」は、川島蓉子・伊藤忠ファッションシステム取締役/ifs 未来研究所所長が、毎回ゲストを招き“未来”について考える音声番組です。未曾有の状況の中、業界は“未来”について考えなければならない現実に直面しています。そんな中、少しでも業界人に役立つヒントやカケラを音声配信でお届けします。近所のスーパーに行く時や、通勤・通学時に気軽に聞いてください(笑)。

 第9回は、事務用品大手のコクヨの黒田英邦社長に迫りました。黒田社長はこれまで、別会社だった文房具のコクヨS&Tとオフィス家具を手掛けるコクヨファニチャーの統合、創業以来の企業理念の刷新など、116年続く巨大企業に新たな風を吹き込んできました。音声座談会では、新型コロナウイルスの影響で変化した自身の考え方、社員の評価基準のほか、コラボアイテムや新ブランド、「価値を高めるモノづくりを大事にしたい」理由などを聞きました。

川島蓉子:1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている

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通勤シューズはフラットパンプスが定着 在宅勤務で“脱ヒール”が進む 

 婦人靴の売れ筋が、ヒール付きのパンプスからヒールの低いカジュアルシューズへと変わっている。コロナ禍による在宅勤務の推進や、オケージョン需要の減少でその傾向が強まった。全国20店の百貨店を対象にした2020年8〜12月の売れ筋調査では「主力だったパンプスの売り上げは前年同期比40%減と大幅に減少」(高島屋日本橋店)、「オケージョンのニーズが減り、カジュアル傾向が益々進んでいる。フラットヒールやカジュアル系のソールでファッション性の高いアイテムが支持されている」(小田急百貨店新宿店)という声が上がった。

 通勤靴として支持を得ているのは、低めのヒールやフラットのローファーやカッターシューズ(ローヒールパンプス)だ。全国百貨店の婦人靴売り場で伸長率ランキング1位だった「卑弥呼」では、かかとを折っても履けるローファータイプのバブーシュ(2万円)や、はっ水素材を使用したポインテッドトゥのフラットパンプス(1万9000円)が売れ筋になった。京王百貨店新宿店では、「ちょっとしたお出かけにおしゃれで履きやすいシューズやソリューションシューズが売れている。今後はワンマイルシューズとしてデザイン性があり、履きやすさを重視したソフトパンプス、ウォーキングシューズの打ち出しを強化していく」という。

 また数年続くスニーカーブームの影響から、スニーカーがトレンドから定番化。コロナ禍で運動不足を解消する人たちがウオーキングシューズを買い求める傾向もあった。「運動不足を解消する人に向けてスニーカーが好調。幅広い年代、顧客グレード層に受け入れられ、数字につながっている」(大丸札幌店)。

ヒール靴はショートブーツで 都心ではロングブーツが復活

 パンプス需要が減少する中、ヒール靴を求める人にはショートブーツが人気だった。「パンプスが苦戦したが、ショートブーツの動きは好調だった」(そごう横浜店)、「20年秋冬はブーツが早くから動き出した。お客さま自身でイメージしている商品がある方が多く、人気商品は偏りが出てしまい、早期完売してしまうこともあった」(松屋銀座本店)という。

 ショートブーツではブランドの定番品に注目が集まり、「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」の“タビ”ブーツや「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」の定番のレースアップブーツ“1460 8ホールブーツ”が売れている。「メゾン マルジェラ」の“タビ”は1989年に発売したブランドを代表するシューズで、日本の足袋から着想を得て2つに分かれたつま先が特徴。「SNSでの影響から指名買いが増加している。“タビ”ブーツの8cmヒールが人気」(岩田屋)。また「ドクターマーチン」の“1460 8ホールブーツ”は2020年に60周年を迎えた定番モデル。「韓国アイドルが履いていた影響で購入が見られた」(伊勢丹京都店)などの声もあった。

 都心では久しぶりにロングブーツも売れ筋に上がった。「トレンド復調のロングブーツや筒の細いショートブーツ、ブライトカラーのショートブーツなど、新しいトレンドも出現した」(西武池袋本店)。中でも「サルトル(SARTORE)」や「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」などの老舗シューズブランドのロングブーツが支持された。「『サルトル』は定番のロングブーツ、ショートブーツとも堅調に推移。お手入れ方法もご紹介するイベントを開催。いいものを大切に長く履きたいというお客さまニーズが増加している」(阪急うめだ本店)という。

 「WWDジャパン」では、2月22日号で「2020年秋冬に売れたものは何だった?」と題した特集を掲載。連動して、全国41の百貨店に化粧品、特選、ジュエリー、時計、婦人服、紳士服、バッグ、シューズ、ファッションジュエリーの9カテゴリーの商況をアンケート調査した別冊の「20年秋冬ビジネスリポート」も発行した。「ビジネスリポート」は定期購読者向けの特典という位置づけだが、個別で販売もしている。

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高島屋新宿店「ウェルビーフィールド」の3つの提案 ウィズコロナ時代に対応のグッズとは?

 高島屋新宿店8階の「ウェルビーフィールド」は2017年3月のオープン以来、“美と健康”をテーマにアスレジャーやヨガなど、百貨店があまり扱わなかったジャンルを集積、提案してきた。そんな「ウェルビーフィールド」が21年、①自宅で手軽にできるフィットネスグッズ、②スポーツの前後に使えるボディーケア・リラックスグッズ、③ランやウオーキングに最適な機能・デザインを兼ね備えたウエア&シューズを打ち出す。コロナの影響でスポーツや健康への意識が高まる中、スポーツビギナーにも対応するアイテムをそろえる。

女性専用ジム推奨の3点セットと
癒やし系セルフケアアイテム

 ①自宅で手軽にできるフィットネスグッズをそろえるのが「ウーマンズ シェイプ ジム」だ。男女問わず使えるトレーニング器具からサプリメントまでラインアップするフィットネス専門ショップで、キックボクシングやヒップトレーニングをインストラクターが直接指導する女性専用のジムも併設する。「テレワーク疲れを軽減するアイテムが人気」(プレス担当者)だという。

 ②スポーツの前後に使えるボディーケア・リラックスグッズを提案するのは、ビューティ編集ショップの「ベルアクティーヴ」。“健康的で美しい人”をテーマに、日常的な自分磨きを啓蒙する。「自宅で過ごす時間が増えたことで、セルフケアアイテムやリラックス効果のあるアロマグッズが支持されている」。

モチベーションアップや
“映え”を意識したウエア&シューズ

 ③ランやウオーキングに最適な機能・デザインを兼ね備えたウエア&シューズについては、「アディダス(ADIDAS)」や「ダンスキン(DANSKIN)」を中心に多くのブランドの新作を集めた。コロナをきっかけにスポーツを始める人も増えており、「その際に“いつもの”Tシャツやスエットではなく、機能・デザインを兼ね備えたウエア&シューズでモチベーションを上げたいという声が高まっている」という。オンラインレッスン時に画面上で“映える”カラフルなアイテムが人気だ。

問い合わせ先
高島屋新宿店8階ウェルビーフィールド
03-5361-1111

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日常にエナジーをもたらす#充電ラン 「アディダス」“ウルトラブースト 21”

  「アディダス(ADIDAS)」は、ランニングの人気シリーズ“ウルトラブースト(ULTRABOOST)”の最新モデル“ウルトラブースト 21”(2万2000円)を発売した。クッション性と反発性をバランスよく融合し、幅広いレベルのランナーが着用できるシューズだ。発売に合わせて、ランニングで日々のエネルギーを得る「#充電ラン」という価値観を提案するキャンペーンも始動。ここでは「アディダス」のグローバルアンバサダーを務め、「#充電ラン」を日常に取り入れる福田萌子にその魅力を聞く。

「『#充電ラン』は、
人生をよりよい方向に導くツール」

 リアリティー番組への出演をきっかけに、テレビや雑誌で見かけない日はないほど活躍する福田萌子。無駄のないプロポーションと、常に笑顔でポジティブな考えを発信するキャラクターが魅力だ。彼女のエネルギー源は、「毎日の『#充電ラン』」だという。「携帯電話を充電するように、体も充電しないとダメ。私はランニングをすると、心と体が満たされるんです。毎朝10km前後のランニングは欠かさず、時には仕事現場に走って向かうこともありますよ(笑)」。
 「#充電ラン」を長く続けるポイントは「to doにしないこと。日常のためのエナジーを得ることが目的なのに、“やらなきゃいけない”と意識するとランニング自体が嫌になってしまう。走りたいときに、走りたいだけランニングするのがコツです。自分のペースなら無理なく続けられるし、距離やスピードの成果は後から付いてきます」。ランニング中は無駄な情報がシャットアウトされ「自分自身を見つめ直す時間」にもなる。「例えば仕事がうまくいかなかったときは『ああ、あそこの準備が足りなかったんだな』と気づけるし、友達に強く当たってしまったときは『疲れが溜まってイライラしてたな。今度謝ろう』と素直に受け止められる。『#充電ラン』は、人生をよりよい方向に導くツールでもあるんです」。
 大会中止などでモチベーション維持が難しくなったランナーも少なくない。お気に入りのシューズは、走るきっかけをあたえてくれる。「人間って単純で、見た目が良ければ自然とやる気が出てくるし、逆に悪ければモチベーションがとガクンと下がる。特に初心者の人には、お気に入りの一足を早めにゲットして欲しいです」。“ウルトラブースト 21”は「白と黒、蛍光イエローの組み合わせが大好き。いろんなウエアとなじむから、コーディネートを考える時間も楽しくて毎日のように履いています。過去のモデルも着用していましたが、フィット感とクッション性が格段に上がりました」。前足部の幅も広めで、日本人になじみやすい。「初心者から上級者まで、ランナーを選ばないシューズ。“ウルトラブースト 21”と一緒に『#充電ラン』を始めて、素敵な毎日を送りましょう!」。

かつてない反発力と快適性を
全てのランナーに

 “ウルトラブースト 21”は、ミッドソール“ブーストフォーム”を前モデルよりも6%増量し、これまで以上の快適性とクッショニングを実現したモデルだ。アウトソールには新技術“アディダス LEP(リニアエナジープッシュ)”を付けて前足部の屈曲剛性を15%向上させ、高い反発力を加えた。イエローと黒、白のコントラストも効いたニットアッパーは、海洋プラスチック廃棄物を再利用した“プライムブルー”を使用した新たなニット素材”プライムニット+”を使用している。
 “ウルトラブースト 21”は、アディダス直営店およびアディダス オンラインショップ、またABC-MART GRAND STAGE各店、アルペングループオンラインストア、スポーツデポ一部取扱店舗など、全国のアディダス ランニング取扱店舗で販売中。

問い合わせ先
アディダス お客様窓口
0570-033-033

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「ニュートラルワークス.」で見つける! ありのままの自分

ゴールドウインの「ニュートラルワークス.(NEUTRALWORKS.)」はアクティブなシーンと日常をつなぐウエアやグッズを提案する新しいコンセプトのスポーツライフスタイルブランドだ。伝えたいのは、「心と体を最適な状態を保つこと」の重要性。コロナ禍で社会や環境が激しく揺らぐ中、「ニュートラルワークス.」が提案するモノ・コトのトータルサービスは強い味方になるはずだ。
より高く、より速く、より遠く。これまでアスリートたちはより優れた記録を求めて、自らを鍛え続けてきた。近代スポーツは、そんなチャレンジの積み重ねの歴史でもある。「だが、現代社会を生きる人たちにとって、スポーツが果たす役割はそれだけであるべきなのか。私たちはそんな問題意識を投げ掛けたい」と安倍季隆「ニュートラルワークス.」事業グループマネージャーは話す。スポーツはトップアスリートたちのためだけのものではない。これからの社会におけるスポーツの役割とは?そんなところからゴールドウインの「ニュートラルワークス.」はスポーツの聖地、東京・神宮外苑で始動した。
これまでゴールドウインは、デザインや機能性の高いウエアやグッズの開発に力を注いできた。目指すのは、その技術を惜しみなく注ぎながら、ストレスフルな現代社会を生きる人に寄り添うブランドだ。日々変化する体調や環境の影響を受ける中、24時間カラダが持つ本来の力を最大限に発揮できるように「心身を最適化すること=ニュートラルを保つ」ということをモノ・コト・食までサポートするのが「ニュートラルワークス.」の役割だと考える。
同ブランドが提案するアイテムは、優れた機能美とデザイン性を両立するディテールを備えつつも、ミニマルに表現されているのが特徴だ。目指したのは、日常とアクティブなシーンを軽やかに飛び越えることができる万能ウエア。「ニュートラルワークス.」はスポーツを「心身を本来の姿に整えていくための1つの要素」と捉えている。「まずは、自分の体へ興味を持ち、その状態や変化に気づいてもらうことが重要。動きやすいウエアを着れば、体を動かしたくなるし、動けば健康への意識が芽生えて体にいいものを摂取したくなる。私たちが提案するさまざまな商品やサービスを通じ、心と体を整える好循環を作るきっかけをつかんでほしい」。
そのきっかけの集合体であり、発信拠点が都内に3カ所ある店舗だ。東京・外苑前の旗艦店「ニュートラルワークス.トーキョー」では、ウエアやグッズ物販のほか、リカバリー、メンテナンス、トレーニングにまつわるサービスコンテンツをセレクトした“ニュートラルワークス.ルームス”を併設。さらにオリジナルスムージーなどを提供する“ニュートラルワークス.スタンド”もあり、心身を整えるためのモノ・コトをトータルでそろえている。

アクティブシーンと日常の
垣根を超える機能とデザイン

 コロナ禍で体を動かすことがより身近になり、オンとオフのシーンがシームレスになってきている。「よく働き、よく遊ぶ」そんなバランスの取れたライフスタイルをイメージし、「そういう垣根をシームレスに行き来できるウエアがあったら」との思いをプロダクトへ落とし込んだのが、2021年春夏新作のテーラードセットアップスーツだ。スポーツウエアのような感覚で着用できるスーツで、「ニュートラルワークス.」が培ってきたアスレチックスポーツウエアの機能性と、これまで提案してきた日常に馴染むミニマルなデザイン性が加えられている。撥水性、速乾性、ストレッチ性に優れたポリエステル100%の高機能素材を採用。縫い目のないフラットな仕上がりを可能とする圧着技術などにより、ジャケットとしての美しさも担保し、ビジネスの場にも対応するデザインに仕上げた。家庭用洗濯機で洗うことが出来るため、自宅での手入れができる。“スポーツライフスタイル”を求める人に向け、時代にマッチしたボーダレスなアイテムを提案し続けている。
一方、カラダをニュートラルな状態(=心身の健康な状態)に整えるためには適度な運動が必要だと考える「ニュートラルワークス.」では、「ザ・ノース・フェイス」「ダンスキン」「スピード」などゴールドウインで取り扱うさまざまなブランドの中から、ランニング・ヨガ・ジムなど運動をする時に求める機能性とデザイン性が両立された感度の高いアイテムがセレクトされている。
また、「ニュートラルワークス.」のオリジナルアイテムはスポーツメーカーとして培ったテクノロジーを生かし、ハードなスポーツシーンでも安心して着られる一方、通気性、ストレッチ性などの「機能」をあくまで日常の延長線上で活躍するものと考え、無駄を削ぎ落としたデザイン、計算されたパターンに仕上げている。デイリーユースもできるファッション性も兼ね備えた、完成度の高いアイテムを生み出している。「単にスポーツウエアをファッションに落とし込むというアプローチではなく、現代人のライフスタイルにフィットしたデザインであることが先立ってある。日常に役立つ工夫を散りばめているからこそ、袖を通せば毎日をもっと自由にしてくれるウエアだということを感じていただけるはず」。
軽量でストレッチ性の高い布帛素材で作られたマルチアクセス ジャケット(1万6000円)とパンツ(1万2000円)は、アクティブなシーンでも使いやすいように、サイド部分をストレッチ性の高いトリコットニットで切り替え、サイドラインでアクティブな印象を醸し出す。一方で、全体的に表面をマットな質感に仕上げることで、普段遣いしやすいこなれた雰囲気にも仕上げている。右前身頃に入る、ブランドネームを表す「N/」のリフレクターロゴもデザインのアクセントになっている。

忙しく過ごす現代人の
心と体を整える

 ニュートラルワークス.トーキョー3階には、カラダの「メンテナンス・トレーニング・リカバリー」を目的としたサービスコンテンツをセレクトしたフロア「ニュートラルワークス.ルームス」がある。
プロスキーヤー佐々木明氏監修のパーソナルストレッチルームでは、専用マシンを使い、疲れをとるだけではなく本来のカラダの動きを取り戻せるプログラムがそろう。また、標高2000〜3000mの低酸素環境を再現した室内ではランニングマシンやバイク、ウェイトを使った低酸素トレーニングができ、平地より強い心肺負荷をかけられる。筋肉や関節などに無理な負荷を強いることなく安全にトレーニングが可能だ。完全予約制でトレーナー指導のもとプログラムに取り組める。ほかにも身体のエネルギー・バランスチェックをはじめ、動体視力や状況判断力を磨く目のトレーニングプログラム、アフターケアとして休息の質を高める水素吸引サービスなどを用意している。
また、自宅でもケアが行えるよう、セルフメンテナンスグッズも豊富にそろう。店舗では筋膜リリース用のグッズや機械など、本格的な最新ケアグッズが売れ筋アイテム。忙しく過ごす現代人の心と体を上手に「オン・オフ」できるヒントが見つかるはずだ。
1階には、カラダの内側からも整えるためのドリンクやフードをセレクトした「ニュートラルワークス.スタンド」を併設している。6つの効能をメニューにしたオリジナルスムージーなどがそろっていて、カラダのコンディションに合わせて選べるスムージーは、その場で作り提供している。自分に足りない栄養素をここでチャージすることが可能だ。また、栄養価が高い旬の果物や野菜をふんだんに使用した、期間限定のシーズナルスムージーも提供している。そのほか、間食や運動前後など用途に合わせて手軽に補給できる、カラダが喜ぶおやつなども取りそろえている。

問い合わせ先
ゴールドウイン カスタマーサービスセンター
0120-307-560

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心地よく、自分らしく ヨガインストラクター渋木さやかのヘルシーなライフスタイル

 「夕陽がきれいな日は自然と近所の人たちが砂浜に集まるんです」。穏やかな笑顔で語るのは、鎌倉で家族と暮らすヨガインストラクターの渋木さやかさんだ。自宅から浜辺までは歩いてすぐ。5年前に東京から移住した鎌倉での生活を通じて、日常の中にある身近なサステナビリティを意識するようになったという。そんな渋木さんのライフスタイルやモノ選びの視点を教えてもらった。

ヨガを通して伝える
身近なものへの感謝の気持ち

 “現代女性の心と体に寄り添うヨガ”をコンセプトに、ヨガインストラクター・ヨガライフアドバイザーとして活躍する渋木さんは、ポーズや技術といった体を動かすことだけではないヨガの考え方や哲学を伝えている。「ヨガのクラスで出会う女性たちの心の悩みにも耳を傾けてきました。恋人、友人、家族、仕事、全ては人間関係の悩み。思い悩んでしまう人は多いと思います。問題が一気に解決するわけではないかもしれないけれど、身近な人やモノに改めて目を向けて感謝をすることで、隠れていた幸せが見つかることもある。そうした考えをヨガの教えや知恵を借りて伝えています」。それはサステナビリティに向き合う姿勢にも通じている。「『今日から地球に感謝しましょう』と言われても難しい。大きなことを掲げる前に、まずはできることを続けていけたらいいですよね。例えば、自分たちが出す排水やゴミが子どもたちの遊ぶこの海にダイレクトに影響するんだと思うと、選ぶ洗剤にも配慮するようになりました」。
 古着を着たり、近所でのフリーマーケットを楽しんでいるという渋木さん。顔の見える農家の人から無農薬の野菜を買うことも多いという。「スーパーはもちろん便利ですが、地域の人と関わりを持つことや身近な環境に心配りをすることって、とても“豊かな“生き方だと感じています」。

心地よく高機能な
「サスティナレッチ」
素材のヨガウエア

 渋木さんのお気に入りのヨガウエアのひとつは、「サスティナレッチ」素材のもの。「サスティナレッチ」は、廃棄されるはずであった糸を原料として再利用した旭化成のリサイクルストレッチファイバー「ロイカEF」にリサイクルナイロンを組み合わせたサステナブルなストレッチ素材だ。生地を提供する旭化成アドバンスと、マッシュスタイルラボが展開する「エミ(EMMI)」との共同開発によって誕生した。「サスティナレッチ」素材を使用したブラトップやレギンスなどのアイテムは、UVカット、吸水速乾、接触冷感の機能を備えている。「さらさらと滑らかな肌触りとフィット感がいいですね。しっかりとした伸縮性は、どんなヨガの動きもサポートしてくれて動きやすい。優しいニュアンスカラーや女性らしいデザインにもときめきます」。
 機能性やデザインに加えて「サスティナレッチ」素材の背景にも共感しているという。「かわいいというだけではなく、その奥にある生産過程や携わる人の思いを知ると、より心地よく感じられます。こうしたアイテムを知って選び取ることも、私のできるサステナブルなことのひとつですね」。

オンラインイベントが開催決定

 ヨガインストラクター、そしてヨガライフアドバイザーとして、女性の自立をサポートする活動にも力を入れたいという渋木さん。「女性って、結婚や妊娠、出産、更年期などライフステージによって体だけではなく心も揺れ動きやすいと思うんです。状況や悩みは人それぞれですが、その人が『踏み出したい!』と思った時に背中を押せるような取り組みを仲間や友人たちと形にしていきたいですね」。今後の夢をそう教えてくれた。
 3月7日には、中目黒のイエススタジオ(YES TOKYO STUDIO)で渋木さんと「エミ」の豊山YAMU陽子ディレクターによるライブ配信イベントが行われる。当日は2人の対談に加えて、渋木さんによるヨガレッスンを配信する。イベント詳細と事前申し込みはYES TOKYOの公式サイトから。配信は15時からを予定しており、参加費は無料だ。

PHOTOS:KENTA YOSHIZAWA
MOVIE DIRECTION:NORICHIKA INOUE
MOVIE CAMERA:SHINJI YAGI
MOVIE PRODUCE:RYO MURAMATSU
HAIR & MAKEUP:YURIE TAKEDA
SPECIAL THANKS:VERY GOOD

問い合わせ先
旭化成 パフォーマンスプロダクツ事業本部
ロイカ事業部 ロイカ営業部 テキスタイル担当
06-7636-3547

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まだ、あなたが知らないニューヨーク最新トレンド 大混雑のセレブビューティ市場

The crowded market of celebrity beauty brands

 ニューヨークのファッション業界で活躍するクリエイティブ・ディレクター、メイ(May)と、仕事仲間でファッションエディターのスティービー(Stevie)による連載も第17回。“You’d Better Be Handsome”では、セレブ情報に敏感なレイチェル(Rachel)も加わって、ニューヨークのトレンドや新常識について毎回トーク。JLOとセレーナ・ゴメスの参入で、益々混み合うセレブリティによるビューティ市場について。水面下で準備中のブランドも多々あり。

スティービー:毎日寒くて気が滅入りそうになるけど、二人とも元気?

メイ:1月も年始からいろいろあったね。2021年になってすでに数カ月経ったかのような疲れを感じている。

レイチェル:そろそろステイホームも1年だし。あれこれ工夫するのにも飽きてきた。着飾って出掛けたいけど、行く場所もないし。

スティービー:そう言えば大統領就任式で、詩を読み上げて一躍スターになったアマンダ・ゴーマン(Amanda Gorman)と、カマラ・ハリス副大統領の継娘でパーソンズ・スクール・オブ・デザイン(Parsons School of Design)の4年生エラ・エムホフ(Ella Emhoff)を、モデル事務所のIMGモデルズが就任式直後に契約したね。

メイ:ルックスで言うと二人とも個性派。でも着こなしにスタイルがあって印象的だった。エラは「ミュウミュウ(MIU MIU)」のコートに、「バットシェバ(BATSHEVA)」のドレス、アマンダが着ていたイエローのジャケットは「プラダ(PRADA)」だったらしい。

レイチェル:アマンダはハーバード出身の将来政治家志望。エラは根っからのアーティストで、これまでのファーストファミリー、いやセカンドファミリーにはいなかったキャラ。早速この間、「プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)」のデジタルショーでランウエイデビューを果たした。バイデン大統領の孫、ナタリーもまるで若き日のジェニファー・コネリー(Jennifer Connelly)。「エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)」あたりから声がかかるか日も近い?

スティービー:エマのお兄さん、コール・エムホフ(Cole Emhoff)にはモデルエージェンシーから声が掛からなかったのかな?好青年なルックスだったけど。

メイ:このご時勢、見た目で判断するのはどうかと思うけど、父親同様弁護士とかなのかなーと勝手に思っていたら、映画プロデューサーの母親の影響か、大学卒業後は大手タレントエージェンシーWMEに勤め、現在は「プランB(PLAN B)」で働いているとか。

レイチェル:ブラッド・ピット(Brad Pitt)の製作会社よね?どんなことしているんだろう。どちらにしても、父親の再婚で人生ここまで変わる人たちも珍しいかも?

大統領就任式でもアピール?
2大セレブビューティブランド対決

スティービー:大統領就任式では、「シャネル(CHANEL)」の白いジャケットスーツに身を包んで歌ったJLOことジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)が新年早々、ビューティブランド「ジェイロービューティー(JLO BEAUTY)」を発売したよね?

メイ:“Beauty has no expiration date(美には消費期限がない)”っていうあれね。いくつになっても現役でいなくちゃね、っていうこと?

レイチェル:現在51歳のJLOだけど、1年前のスーパーボールのダンスとハイレグルックで、現役感を見せつけてくれたからね。今思えば、あれはロックダウンになる前の最後の晩餐だったのかも。

スティービー:そういえばセレブビューティブランド発案者のもう一人、レディー・ガガ(Lady Gaga)も大統領就任式で歌っていた。なにか関係あるのかな。

レイチェル:ガガのドレスは、「スキャパレリ(SCHIAPARELLI)」だったらしい。よく似合っていた。

メイ:ガガのブランドといえば、アマゾン(AMAZON)と組んでやっている「ハウス ラボラトリーズ(HAUS LABORATORIES)」。買いやすさではピカイチだし、ガガがやりたいことにいちいち口出ししないということでAMAZONと組むことになったらしい。

レイチェル:ただその割にはパッケージもウェブサイトも安っぽい印象なのが残念だけど。

スティービー:そうそう、なんだかパッとしない印象だし周りでも話題になっていないから、売れていないのかと思っていたら、リアーナ(Rihanna)の「フェンティ ビューティ バイ リアーナ(FENTY BEAUTY BY RIHANNA)」、カイリー・ジェナー(Kylie Jenner)の「カイリー・コスメティクス(KYLIE COSMETICS)」に続いて、去年の売り上げは3位だったらしい。

メイ:セレブビューティブランドの中で、ということよね?それでも「フェンティ」が「ハウス」の約4倍ある。それでも、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)の「KKW ビューティ(KKW BEAUTY)」を押さえて3位ってすごい。

レイチェル:個人的には、ネーミングがしつこい気がするんだけど。“ル・モンスター・マット・リップクレヨン(Le Monster Matte Lip Crayon)”とか。”リキッド・アイ・ライ(嘘)・ナー(Liquid Eye-Lie-Ner)“、“アイ・デンティファイ・ジェルペンシル(Eye-Dentify Gel Pencil)”などなど。

スティービー:まあ彼女のファンはうれしいのかもね。そのダジャレも。

歌姫たちのブランドも続々登場

レイチェル:去年の夏にローンチして、今かなり力を入れてプロモーションしているのが「レア ビューティ(RARE BEAUTY)」。歌手のセレーナ・ゴメス(Selena Gomez)のブランド。リキッドファンデーションが48色といろんな人種に向けてアピールしていて、「フェンティ」の50色に迫る勢い。

スティービー:自分だけのユニークさを見出し、レアな存在感であることを受け止めることが大切というメッセージを発信。

メイ:同時に立ち上げたレアインパクト基金(RARE IMPACT FUND)に1億ドル(約100億円)の募金を今後10年間で集めることを目標としているらしい。同基金の狙いは、メンタルヘルスのサポートを高いお金を払わなくても受けられるようにすること。売り上げの1%がこの基金に行くらしい。どこのセレブブランドも、大抵何かのチャリティと組んでいるよね。ただのお金儲けに見えないようにということと、意識の高さをアピールすることがマーケティングにも繋がっている。

レイチェル:価格帯は、ガガの「ハウス」とほぼ一緒。ただパッケージはベビーピンクが基調になっていて、かわいいのが特徴かな。セレーナは最近料理番組「セレーナ+シェフ(SELENA+CHEF)」にまで登場するなど多方面で活躍中だけど、彼女のファン以外の人がこのブランドを買うかが気になるところ。

スティービー:歌姫のカテゴリーに新入りがいろいろ参入しても、今も売れているのは「フェンティ」ってこと?どれくらいの数字なの?

メイ:一時ほどではないのでは?と思っていたんだけど、2019年は6億ドル(約600億円)の売り上げ、2020年は少し減って5.5億ドル(約550億円)くらいだったみたいだから、まだまだすごい。

スティービー:歌姫のカテゴリーでぜひ入れたいのは、アリシア・キーズ(Alicia Keys)の「キーズ ソウルケア(KEYS SOULCARE)」。去年末に出たばかり。化粧品ではなくライフスタイルビューティブランドというくくり。モイスチャライザー(30ドル、約3000円)、キャンドル(38ドル、約3800ドル)、フェイシャルローラー(28ドル、約2800円)の3点のみの展開で、今後商品を増やしていくんだとか。

レイチェル:ミュージシャンというなら、ファレル・ウィリアムス(Pharell Williams)も「ヒューマンレース(HUMANRACE)」というスキンケアラインを去年発表した。緑色のポップなパッケージデザインはリサイクルプラスティックが50%使われていて、一度買うと次からはリフィルを買えばいい仕組み。

メイ:それは賢い!いつも大袈裟なパッケージを捨てるときに心が痛むからね。でも完売してしまっているみたいで、なんと入手不可能。

スティービー:皮膚科医が携わっていてコンセプトがおもしろいだけじゃないから、ちゃんとした効果が期待できそう。ファレル自身、スキンケアにはこだわってそうだから説得力がある。

レイチェル:もう一人、ティーンに絶大な人気のホールジー(Halsey)も今年に入って自分のビューティブランド「アバウト フェイス(ABOUT FACE)」を発表。みんな去年の春からこもっている間に、すごい勢いで作ってしまったのかなと思ってしまう。

ビューティに夢を見るハリウッド

メイ:女優枠だとどんなのがあるかな?パッと思いつくのは、グウィネス・パルトロウ(Gwyneth Paltrow)が「ジュース ビューティ(JUICE BEAUTY)」と組んで展開している「グープ ビューティ(GOOP BEAUTY)」。グウィネスが主催するライフスタイルウェブ兼ショップ、グープ(GOOP)のオリジナルブランド。

スティービー:グープにはコンテンツが豊富だから、そこで提案されるデトックスの記事を読みながらフェイスオイルを買ったりする人も多いはず。

レイチェル:セレクトショップ風になっていて、オリジナルのエプロンから話題のキャンドルまでいろいろそろっているし。

スティービー:この道ではグウィネスが一人勝ちだけど、実はいろいろ計画を練っている女優とか、きっといるよね?

メイ:私が分かる範囲では、一度失敗してはいるけどブレイク・ライブリー(Blake Lively)もライフスタイル帝国というか、ビューティブランドを計画中みたい。そんな高級なラインではなさそうだけれど。

レイチェル:ブレイクの場合、夫のライアン・レイノルズ(Ryan Reynolds)が素敵に笑ってくれるだけでプロモーションになりそうだもんね。

スティービー:いや消費者は実際のところ、もっとシビアだと思うよ。実際に一度失敗しているし。夫よりもビジネスパートナーが大事かも。

メイ:過去には、「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE & GABBANA)」の化粧品の広告に出ていたり、「リュックス(LUXE)」のヘアケアの広告にも出ていたスカーレット・ヨハンソン(Scarlett Johansson)も自分のビューティブランドを夢見る女優の一人。私のエージェンシーでよくビューティの広告に彼女を起用したいという話が上がるんだけど、その度にスカーレットのエージェントから彼女が近々自分のラインを出すかもしれない可能性について説明されるの。ここ数年ずっとそう。

スティービー:実際に、ビューティブランドを立ち上げるってすごい大変なこと。こんなに商品が溢れている世の中で、ユニークなコンセプトを考え、特徴のあるプロダクトを開発し、パッケージやロゴのデザイン、マーケティングや広告を準備して店頭に並べても、 売れ続けるのは難しい。もちろん自分だけではできないからいいチームを築かないと。そういう意味では、ハリウッドの中でも稼ぎがトップクラスの女優だけに許される夢かも?

レイチェル:トップ女優のチームからは外れるけど、意外と成功しているのがダイアナ・ロス(Diana Ross)を母に持つ女優のトレイシー・エリス・ロス(Tracy Ellis Ross)が展開するカーリーヘア用ブランド「パターン ビューティ(PATTERN BEAUTY)」。基本的には、黒人特有のカーリーヘアに対応するために開発されたとは思うんだけど、私のカーリーな髪の悩みが見事になくなった。

メイ:普通のヘアケア商品だと分かれていたとしても、ストレートヘアかカーリーヘアくらいしかないからね。カーリーの中にもうねりヘア、コイルヘアなどいろいろある。インクルーシブな世の中にうまく対応したことが成功の秘訣かも。もちろん前からニーズがあったはず。

レイチェル:私のようなくせ毛の場合、乾燥しやすく、すぐにチリチリになってしまうのだけど、「パターン ビューティ」の商品を使うと、髪に水分をたっぷり与えてくれるからか、クセをきれいにキープしながら、艶を保てるようになった。カーリーヘアを無理にストレートにするという考えは根っからないところがいい。

スティービー:「パターン ビューティ」は、公式ウェブとウルタ(ULTA)で売られているけど、やっぱりどこかが独占的に売っている感じだね。JLOはセフォラ(SEPHORA)、ガガはアマゾン、フェンティもセフォラ、みたいな。あとはダイレクト トゥ コンスーマー(D2C)というか、自分のウェブショップで売る。百貨店をベースにしているビジネスモデルが見当たらない。

レイチェル:ティーンの中で人気なのは、女優ミリー・ボビー・ブラウン(Millie Bobby Brown)の「フローレンス バイ ミルズ(FLORENCE BY MILLS)」とかかな。ネットフリックスシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界(Stranger Things)」で一躍有名になった子役で、現在17歳。最近まで知らなかったけどイギリス人らしい。

スティービー:「ストレンジャー・シングス」は好きだけど、そんな若いときからコスメブランドをする必要があるのかと思ってしまう。ビジネスに積極的な大人たちが周りにいるのかもね。

マスマーケットで成功のセレブブランド

メイ:でも大成功と言えば、ジェシカ・アルバ(Jessica Alba)の「オネスト カンパニー(HONEST COMPANY)」が一番では?どこでも見かけるし。特に大手のスーパーとかでは。

レイチェル:「オネスト カンパニー」は、ビューティというよりはベビープロダクツとホームプロダクツのイメージ。ローンチ後、急成長したけど、そのあと一時見えなくなった気がするけど?

スティービー:数年前に、訴訟問題がいくつかあってビジネスの立て直しを図った。2020年は売り上げが3億5,000万ドル(約350億円)にまで戻ったらしい。ジェシカ・アルバはまだ女優としての道も明るかったはずなのに、このブランドに専念してすごい。

レイチェル:「オネスト カンパニー」を立ち上げたのが、11年。その後15年に、新しいカテゴリーとして「オネスト ビューティー(HONEST BEAUTY)」が加わって、総合ライフスタイル的な位置付けに。子ども向けのドリンクとかスナックとかも人気だし。

メイ:もう一つ地味に売り上げをキープしているのが、ドリュー・バリモア(Drew Barrymore)の「フラワー ビューティ(FLOWER BEAUTY)」。最初はウォルマート(WALMART)、その後ウルタ、現在は米国中にあるドラッグストアCVSと組んで展開していて、年商は約5,000万ドル(約50億円)と言われている。しかもドリューはビューティ以外にもホームのカテゴリーもやっていて、そちらは年商7,500万ドル(約75億円)らしい。もちろん彼女の手元に残るのは、もっと少ないとは思うけど。

レイチェル:女優がビューティブランドを始めるのは、女優業以外で収入を得たいというのがあるのかもね。資金もあるわけだし。ある一定の年齢を超えると役柄が減るとは聞いたことがあるし、みんながみんないつまでもニコール・キッドマン(Nicole Kidman)のようにありとあらゆる役柄に挑戦したいかどうかはわからない。

スティービー:ニコール・キッドマンは、ビューティブランドとかには手を出さずにずっと女優でいてほしいけど。

メイ:番外だけど、ダコタ・ジョンソン(Dakota Johnson)はセクシャルウェルネスブランド「モード(MAUDE)」に投資している。ミニマルなパッケージのおしゃれコンドーム、セックスジェル、キャンドル、ボディーオイル、バスソルトなどを展開。

知名度では測れないモデルによるブランド

メイ:シンガー、女優ときたら、次はやっぱりモデルかな。

レイチェル:ここにもまた山のようにブランドが。

スティービー:分かりやすいところでは、ミランダ・カー(Miranda Kerr)の「コーラ オーガニックス(KORA ORGANICS)」とか?2〜3年くらい前かな、パッケージを一新し海外にも積極的に売りに走ったという記憶が。

レイチェル:ちょうどスナップチャット(SNAPCHAT)の創業者と再婚した頃よね?

メイ:彼にビジネスアドバイスをもらったと言っていたような。いろんな国でパートナーを探していた。

レイチェル:ややスピリチュアルな感じもあってユニークだけど、実際に使ってみると早くこのボトルなくならないかなと思ってしまう。

スティービー:ジゼルもスキンケアブランドを10年くらい前に立ち上げた記憶が。いつの間にかなくなってしまった。シンディ・クロフォード(Cindy Crawford)の「ミーニングフル ビューティ(MEANINGFUL BEAUTY)」はまだ続いているみたいだけどね。

メイ:元祖はなんと言ってもイマン(Iman)じゃない?1994年からあるらしいし、みんなが“インクルーシブ”だの言う前から彼女は市場に自分の肌の色に合うファンデーションがない女性のためにこのブランドを立ち上げた。

レイチェル:今の話題はなんと言ってもヘイリー・ビーバー(Hailey Bieber)が2度目のブランド名申請をしたってことかな。

スティービー:ヘイリーがジャスティンと結婚してすぐに、「ビーバー ビューティ(BIEBER BEAUTY)」で商標を申請したところ却下された。その理由が、すでに10年くらい前にジャスティンのビジネスチームが、将来のためにといろいろなビューティカテゴリーの商標をすでに押さえていたから、ということらしい。

レイチェル:もしかしたら「ビーバー ビューティ」を作りたくてジャスティンと結婚したかもしれないのにかわいそうなヘイリー。

メイ:そうだったら結婚する前に調べるでしょ。でも私の経験上、もちろん商標は確保しているでしょ、と信じてパッケージデザインを進めていたら、途中で商標が取れなかったということもあったから。

スティービー:2月2日のニュースによると、ヘイリーは自身のミドルネームでもある「ロード(RHODE)」という商標を申請したらしい。どの程度まで計画が進んでいるのかは不明だけど。実際にヘイリーは、まだ「ベアミネラル(BARE MINERALS)」の広告塔だしね。

レイチェル:セレブリティビューティブランドの特典って一体何かなって考えてみたんだけど、キャンペーンモデルにお金がかからないことかな?

メイ:毎回自分で出るのも大変だと思うけど、ミューズがはっきりしているのがいいこともあるし、マイナスな時もあるかも?私もエンターテイナーとしてのJLOは好きだけど、彼女みたいになりたいかって言われたら違う気もするし、彼女が本当に自分のプロダクトだけに頼っているとは思えないし、その辺りが難しいところかもね。

スティービー:プロじゃなくても、今後この分野での競争が過熱化するのは見えている。カーダシアン家だけでも混み合っている感じだし、実はユーチューバーやインフルエンサーによるブランドも結構ある。

メイ:今後販売体系も変化していきそうだし。例えばウルタは、21 年のうちにターゲット(TARGET)100店舗内に売り場を作ると発表。一方セフォラも23年までに850店舗のコールズ(KOHLS)内に売り場を設置するらしい。

レイチェル:都会にしかなかったセフォラが、これで一気に郊外進出ってことね。そういえば最近ファッションデザイナーのジェイソン・ウー(Jason Wu)も、ビューティブランドを量販店のターゲット(TARGET)で発売している。

スティービー:アレキサンダー・ワン(Alexander Wang)もスキンケアのラインを考えているという噂はあったけど、それを言ったら大抵のデザイナーのトゥドゥリストに入っているんじゃない?

メイ:10年、いや20年くらい前かもしれないけれど、セレブがこぞってフレグランスを出したときがあったよね?ビヨンセ(Beyonce)からブリトニー・スピアーズ(Britney Spears)まで。そのあとアパレルの時代があって、JLOのファッションショーに行った記憶もあるし。ケイティ・ホームズ(Katie Holmes)のファッションブランドっていうのもあった。

レイチェル:その流れで残っているのって、オルセン姉妹の「ザ ロウ(THE ROW)」とか、ヴィクトリア・ベッカム(Victoria Beckham)のラインくらい?

スティービー:ヴィクトリア・ベッカムは、エスティ ローダーとコラボレーションした後に、自分の会社に2人ヘッドハントして自分のビューティブランドを19年に立ち上げたらしい。さすがビジネスウーマン!

レイチェル:実は夫のデイヴィッド・ベッカム(David Beckham)もロレアルと組んで2018年に「ハウス99 (HOUSE 99)」というグルーミングブランドを立ち上げたようなんだけど、知ってる?

スティービー:その頃は今と違ってヨーロッパにも頻繁に行ってたんだけど、見たことがあるようなないような。

レイチェル:静かに終わったみたい。デイヴィッド・ベッカムの名前と顔を使っても売れないものは売れないということね。

スティービー:でもデイヴィッド・ベッカムは、大麻(カンナビス)を使用した商品を展開するセルラーグッズ(CELLULAR GOODS)というベンチャーに投資し、社外取締役に就任したらしい。自分の名前を使わずに、大麻ビジネスという今後大きくなりそうなビッグドリームに投資とは。

メイ:シビアなビジネスだけど、それだけ魅力的ってこと。ヘイリー・ビーバーのビジネス手腕も楽しみ。

メイ/クリエイティブディレクター : ファッションやビューティの広告キャンペーンやブランドコンサルティングを手掛ける。トップクリエイティブエージェンシーで経験を積んだ後、独立。自分のエージェンシーを経営する。仕事で海外、特にアジアに頻繁に足を運ぶ。オフィスから徒歩3分、トライベッカのロフトに暮らす

スティービー/ファッションエディター : アメリカを代表する某ファッション誌の有名編集長のもとでキャリアをスタート。ファッションおよびビューティエディトリアルのディレクションを行うほか、広告キャンペーンにも積極的に参加。10年前にチェルシーを引き上げ、現在はブルックリンのフォートグリーン在住

レイチェル/プロデューサー : PR会社およびキャスティングエージェンシーでの経験が買われ、プロデューサーとしてメイの運営するクリエイティブ・エージェンシーで働くようになって早3年。アーティストがこぞってスタジオを構えるヒップなブルックリンのブシュウィックに暮らし、最新のイベントに繰り出し、ファッション、ビューティ、モデル、セレブゴシップなどさまざまなトレンドを収集するのが日課

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フォトグラファー米原康正が13の写真&映像で振り返る中国の13年

 「WWDJAPAN.com」は中国戦略の先駆者として、中国版ツイッター、ウェイボー(Weibo)のフォロワーを約280万持つ“ヨネちゃん”こと編集者・フォトグラファーの米原康正にロングインタビュー(下記リンク参照)を行った。ここでは「活動を本格化した」という2009年からの13年を、13の写真&映像で振り返ってもらう。

 「最初に中国に招かれたのは09年。『アウトモビリ・ランボルギーニ(AUTOMOBILI LAMBORGHINI)』上海店のパーティーに、元セクシー女優の蒼井そらちゃんを呼びたいと相談されて。行ってみたら中国メディアが50社くらい押し寄せてた(笑)。そのひと月後には、初の展覧会も上海で行った」。


 「11年当時、中国で約2500店舗を運営していたアパレルブランド『メタスバンウェイ(METERS/BONWE)』で、僕のTシャツライン“エムティー(MTEE)”がスタート。記者発表会やパーティーも開催した」。


 「中国に招かれると、イベントの主催者やスポンサーが所有するクラブで、同じく彼らの持ち物である高級車と女の子を絡めて撮影することが多かった。僕の純粋なファンもいたけど、当時の中国で公の場所で露出度が高い女性が大挙するのは珍しかったから、それ見たさで男の子が集まっていた印象(笑)」。


 「05年にAKB48のビジュアルディレクターに就任したんだけど、それが縁で15年には上海を中心に活動するSNH48の写真集をサイパンで撮影することに」。


 「11年に北京でスタートしたストリートファッションの合同展『シック-ヤングブラッド(CHIC-YOUNGBLOOD)』の会場前で。横浜発のアパレルブランド『アイリーライフ(IRIE LIFE)』が僕をフィーチャーして、会場にはグラビアアイドルの杉原杏璃ちゃんと一緒に撮ったビジュアルを巨大パネルにして飾ったりした」。


 「これも11年の北京。こうやって振り返ってみると、11~12年頃が最も訪中していたんだね。月2~3回のペースで、ターミナルシティーということもあり上海や北京を訪れることが多かった。こちらはアートショーに参加した際の、アフターパーティーでの一葉。俳優のサム・リー(SAM LEE)とDJしているね。イベントは、ライブシューティング(撮影)とDJの組み合わせがテッパンだった」。


 「カメラに向かって両手を広げるギャルポーズって、僕が雑誌『エッグ(egg)』時代に流行らせたと思っているんだけど、確たる証拠がないのが残念なところ……(笑)。で、こちらは間違いないんだけど、僕が中国で意識的に流行らせたのがこの腕組みポーズ。ウェイボーのアイコンもこの写真にして、その内に“ヨネポーズ”って呼ばれるように。今でも中国人フォロワーには、『このポーズで一緒に写真を撮ってほしい』ってリクエストされる」。


 フォロワーから届いた“ヨネポーズ”の数々。「修学旅行の集合写真で、クラス全員が“ヨネポーズ”なんてのもあったな。あと11年当時、僕の主な活動は“エロい”女の子の撮影だったから、おっぱいの自撮り写真もフォロワーから毎日何百枚って寄せられた。それを僕がウェイボーで“転発(リツイート)”することで、3000フォロワーが一夜で10万フォロワーくらいに成長して、その女の子がスターになるなんてこともあったね」。


 12年には中国の大手乳業メーカー、新希望乳業のブランド“V美”のキャンペーンを担当。「成都市を中心に女子大生を対象としたコンテストを行い、入賞者は僕のモデルになってもらって撮影。さらに、韓国に行って演技のレッスンを受けることができるって内容だった」。

 「この映像は13年の上海。僕が撮った女の子の写真をコラージュして映像化、それをプロジェクションマッピングしている。この頃、中国の夜遊びシーンも急激にデジタル化していった」。


 16年、中国最大手のEC企業アリババ(ALIBABA)が行ったライブ配信プログラムにゲスト出演。「各界のプロフェッショナルの仕事ぶりを伝える内容で、ほかにシェフやミュージシャンなんかもいたね」。


 「17年の、中国のスマホメーカー『メイズ(魅族、MEIZU)』の新機種発表会。僕がバリ島で撮り下ろした写真を見られるサービスもあった」。


 「21年2月4日には、日本人としてウェイボーの発展に寄与したとして『WEIBO ACCOUNT FESTIVAL IN TOKYO 2020』で表彰された。そういえば、もう1年以上も中国に行っていないんだなぁ……」。

 「“新しい中国”の誕生を主語に近い場所で見られたのは、とてもよい経験だった。僕は世代的に日本のバブルも知っているけれど、その何倍ものパワーを感じたし、人もシステムも一切合切が変わるのに立ち会えたのは本当に貴重。訪中するたびに街並が変わっていった。そのスピードは週単位だったはず。それと多少おこがましいけれど、僕が行ったイベントやその様子を伝えたウェイボーによって『中国でも女の子の水着イベントをやっていいんだ』になったんだと思う。実際、“弟子”と称する輩も出てきて、イベントも模倣された(笑)」。

 「ただ、12年には国のトップが習(近平)さんに代わって、“自由な中国”が一気に転換。分かりやすいところで言うと、SNSで水着がNGになった。胸の谷間なんかも画像を削除されたり、アカウントそのものが停止されたり。習さん以降は、特に性風俗と政治について厳しくなった印象。それに12年にはいわゆる“尖閣問題”も起きて、こちらでも風向きが変わった」。

 「10年の上海万博の頃から中国では金持ちが増えて、彼らが外で遊び出した。それに伴って、さまざまな舶来カルチャーも拡散した。富裕層ジュニアが親の金でクラブを作り、僕を呼んでくれたのもそういった20代を中心とした若年層だった。ウェイボーで僕を知った層。彼らのような若い男の子が興味があるのは女の子。そして、僕はそれと直結していた。エロがもたらすパワーは万国共通だよね(笑)」。

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コロナから1年 中国ファッション業界に起きた「7つの変化」 上海在住コンサルが報告

 パンデミックから1年。新型コロナウイルスの感染が最初に広がった中国では、消費が急回復を見せている。この間、中国の小売市場はどんな変化を遂げたのか。上海在住のVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)コンサルタントの内田文雄氏が報告する。

 2020年は中国ファッション市場において忘れ去りたいことも多い1年でしたが、同時に未来に向けた新たな事業戦略を考え実行した重要な1年でもあったと思います。変化のポイントを以下の7つに整理してみました。

1.ライブコマースの加速

 何といってもライブコマース抜きでは2020年の中国のファッション企業の存続は厳しかったと実感しています。20年1月、武漢を中心に中国全土に広がった新型コロナウィルスは、全国のほとんどの実店舗、商業施設を一時閉店に追い込みました。大量の冬物や春物在庫を消化させる必要があるアパレルブランドや小売業は、本部および営業を継続するわずかな実店舗の両面で打開策を考えました。その柱がライブコマースでした。

 本部ではウェブやSNSを通じてKOL(キー・オピニンリーダー、いわゆるインフルエンサー)が商品特徴を説明し、その場で視聴者の反応を見ながら価格を決めて、販売していくという手法が採用されました。アパレルブランドの社長も出演し、KOLとおもしろおかしく掛け合い、商品の魅力を伝えていきます。

 一方、実店舗でも店舗スタッフ総動員で店舗在庫の割引販売に励んでいました。店舗スタッフは実店舗から遠ざかっていた顧客に対し、ティックトックなどを駆使してコミュニケーションをとるのです。アウター+インナー、アウター+ボトムスなど極力セット販売を強化して販売していました。

 本部、実店舗ともにお買い上げいただいたお客さんには全国無料配送を行い、来店できない方々へのサービスを強化していました。

 ライブコマースは、コロナが激しかった昨年2月から4月頃は、多くのアパレルブランドが本部、実店舗ともに午前1回・午後1回の1日2回を週に3日ほど実施していました。1年後の今でもライブコマースは継続されています。ブランドにもよりますが、本部、実店舗で週1回程度実施して新商品をアピールし、同時にシーズン過渡期のセール商品を販売しています。

 コロナ前は各店舗の売上予算にはライブコマース予算という項目は存在しなかったのですが、昨年秋頃からしっかりと組み込まれています。この1年の経験を踏まえ、不測の事態が起こってもライブコマースに置き換えられるようにあらかじめ備えるようになったのです。

2.オンライン販売の強化、実店舗の新規出店の減速

 これは日本も含め世界中で取り組まれている施策ですが、中国においてもオンライン販売(EC)の強化が顕著でした。

 コロナ前のオンライン販売は実際のところ、旧在庫商品を処理したり、価格が比較的安いオンライン専用商品の販売をしたりすることが主目的でした。しかしコロナを機に、旧在庫商品も販売しつつ、実店舗と同じタイミングで新商品(当期商品)を販売するブランドが増えています。

 私見ですが、「ユニクロ」の手法をまねるブランドが増えていると感じています。つまりオムニチャネル化を推し進め、顧客接点を強化する動きです。オンラインで買って実店舗で受け取るクイック&コレクト(C&C)は「ユニクロ」の得意技ですが、ここまで細かなことはまだできていません。まずはオンラインと実店舗で同じ商品を同価格で販売する、といった当たり前のことからスタートさせています。

 私のクライアントの婦人服ブランドは、中国全土に約600店舗(直営200、加盟店400)を展開していますが、20-21年秋冬商戦を終えてオンラインの売上比率(ライブコマース含む)が全体の40%まで達しています。

 一方で実店舗の新規出店は厳選されるようになりました。コロナのような事態が再び起これば、実店舗は容赦なく営業停止になることが分かったからです。加盟店(代理商)と組んでいるアパレルブランドは、在庫リスクを考えて新規出店は控え気味にするようになりました。直営店政策のアパレルブランドは収益性を重視したスクラップ&ビルドに切り替えています。

3.リモート展示会の定着とTOCの拡大

 アパレルブランドの展示会も様変わりしました。昨年は3月展(秋物商品)、5月展(冬物商品)の展示会が中止になったり、開催されても規模縮小を余儀なくされたりしました。省を越えた移動の禁止や、感染者が多い都市間での移動の禁止という厳しい措置が政府によって取られたからです。

 中国の多くのアパレルブランドは全国津々浦々に存在する加盟店で成り立っています。年間4〜6回の展示会を開き、そこで加盟店から注文をとる。展示会がなくなるのは死活問題でした。 

 では、どう対応したか。まず3月、5月の展示会は多くのアパレルブランドが開催を見送りました。その代わりにアパレルブランドの本部と各省の加盟店をリモートでつなぎ、商品を発注する方式を取りました。本部でモデルさんが強化商品を着て、そのコーディネートのバリエーションを披露するのです。有力な加盟店には強化商品のサンプルを事前に届けて、現物を見てもらう方法も採用しました。

 加盟店の発注によって強化商品以外での人気商品が見えてきたら、次は直営店の発注を行います。こうした方法で売りづらい商品を生産しないというリスク回避を行っているのです。ただリモートでは発注者が商品を直接触れないので、モノの良さが伝わりづらいという課題も多く残りました。

 まだコロナが収束していない時期だったため、加盟店が20年春物の在庫を秋に再販売するなどの理由で発注しないケースもありました。20-21年秋冬の発注金額や枚数は、前シーズンと比較して5〜6割にも満たなかったアパレルが多かったようです。

 今後、展示会そのものの開催も小規模になったり、リモートの発注に切り替わったりすることが予想されます。

 9月展(21年春)頃からTOC(Theory of constraints)と呼ばれる期中企画商品政策が台頭してきました。半年前の展示会による一斉発注では精度が低く、売れない確率も高いため、期中に小まめに発注をしてQR(クイックレスポンス)で商品投入をするやり方です。

 TOCは優先的に直営店や一部の有力加盟店に対して行います。発注方式はリモート。店舗は本部から届いたサンプル、あるいは動画や写真を吟味します。加盟店(商品買い取り方式)からすると、これまでのように半年前の展示会で大規模な発注をする必要がありません。TOCなら少量の発注が可能で、かつ売れる確率が高い。値引き率を抑え、高い消化率も期待できることから歓迎する声が多いようです。

4.IPコラボの台頭

 IP(知的財産)コラボ商品もこの1年で目立つようになりました。もちろん背景にはハイブランドを中心にした世界的なIPコラボブームもあるでしょう。中国のアパレルブランドは差別化の切り札としてアニメキャラクターや異業種とのコラボを積極的に仕掛けるようになりました。

 コラボといっても奇をてらったことではなく、自社のブランドの代表的なアイテムにキャラクターをプリント、刺繍するといったオーソドックスなやり方です。ディズニーのほか、日本の漫画やアニメキャラクターが人気を集めています。例えばハローキティは同じ時期に複数のウィメンズブランドがコラボ商品を展開しています。通常商品と比べ若干価格は高いのですが、販売数量限定でお客さんの気持ちをくすぐり、よく売れています。

5.ファストファッション人気の陰りと撤退

 中国でもファストファッションが失速しています。中国には2000年代から「ザラ」「H&M」「C&A」「フォーエバー21」「ニュールック」といった欧米のファストファッションブランドが進出を果たしました。コロナ前から陰りが出ていましたが、コロナが駄目押しになったといえるでしょう。

 今年1月、「ザラ」を運営するインディテックス(INDITEX)が、中国市場で傘下の「PULL & BEAR」「ベルシュカ」「ストラディバリウス」の実店舗を全て閉めると発表しました(オンライン販売は継続)。中国アパレル業界には衝撃が走りました。もはや低価格のトレンドデザインだけでは中国市場で勝てません。品質が伴わないブランドは淘汰されるという事象だと思います。

 「中国のザラ」を目指すと宣言していた中国のアパレルメーカー、La Chapelle(拉夏贝尔)が、昨年8月に破産宣告を受けて全国5000店舗以上もの閉店を余儀なくされました。ウィメンズを中心にメンズ、キッズなど合わせて十数のブランドを擁していた大手企業です。社内競合もあって差別化ができていなかったことと、実店舗を重視し過ぎオンライン販売の施策に乗り遅れたことも倒産の要因といわれています。La Chapelle同様に実店舗の出店拡大に依存していた中小アパレルメーカーも、倒産や縮小の憂き目に遭っています。オンライン販売の戦略の有無で明暗が分かれたかたちになりました。

6.アクティブウエアブランドが勢いを増す

 コロナ前からアスレジャーが盛り上がりを見せてきた中国では、健康やスポーツへの意識がますます高まっています。「ルルレモン」「ナイキ」「アディダス」など欧米のブランドのアクティブウエアを求める女性が急増しました。コロナ禍で在宅勤務が増え、1日のほとんどを家で過ごすことが多くなったため、自宅で運動する習慣が定着しました。

 日常生活が戻り出した昨年秋、「ルルレモン」は上海の新天地に旗艦店を出店しました。ここがチャンスとばかりにブランディング確立のため、屋外でのヨガレッスンを開催したりしていました。上海でもニューヨークばりに街着として「ルルレモン」で闊歩する女性を見かけるようになりました。

 「ルルレモン」は高価格(中国ドメスティックアクティブウェアの4〜5倍)にもかかわらず、割引を一切せずプロパー販売を強気で通してきました。競合の「ナイキ」「アディダス」でさえ大幅割引で在庫消化を図っていたのに、「ルルレモン」はブランディングを徹底しています。トレーニングウエアとしては高価ですが、街着としても活用できるのなら経済力のある女性にとって高くないのでしょう。

 アクティブウエア人気に中国のアパレルも黙っていません。いくつかのカジュアルブランドが新カテゴリーとしてヨガウエアを展開したり、中国の大手スポーツブランドがアクティブウエアの強化に乗り出したり、さらに新興の専門アパレルが次々に登場したりしています。コロナがもたらしたファッション市場の最大の変化を挙げるなら、この領域商品への関心の高さと、将来の可能性だと思います。

7.オフプライスストアが受け皿として拡大

 中国のオフプライスストアは大都市に近いエリアに5000〜1万平方メートル規模の店舗を構えて、キャリー在庫商品と一部シーズンを過ぎた商品を決められた期間、激安価格で委託販売します。

 先行きの見えないコロナ禍では、生活必需品が第一に求められました。ファッションの需要は非常に低くかった。誤解を恐れずにいえば「服は着られれば、靴は履ければいい。安ければさらに良い」という状況でした。つまりファッション性や付加価値を売りにした服や靴が売なかなか売れにくい。そんな中、在庫商品を信用がおける先で換金したいアパレル側と、買い取りでなくリスクのない委託方式で販売するオフプライスストア側との思惑が一致し、中国でオフプライスストアが台頭したのです。

 アパレルブランド側からすると在庫は1日でも早く、1つでも多く消化したい。でも、変なバッタ屋に任せると異常に安く、かつとんでもない売り場に回されてしまい、ブランドを毀損する恐れがある。信頼のおけるオフプラスストア なら売り場はブランドごとに明確に分けられ、ブランドロゴもキチンと出し、専任販売スタッフも付けて販売してくれる。コロナによる在庫過多を受けて、あっという間にオフプラスストアが業態として確立された感があります。

内田文雄(うちだ・ふみお):福岡県福岡市生まれ。ワールドで22年間のVMD経験、1993年に上海交通大学留学、上海駐在を経て、その後はアジア事業で海外を飛び回る。2005年ユニクロへ転じ、海外の大型店などのVMDを手がける。2011年、独立して上海に拠点を移す。中国のアパレル、小売企業に対しての実務指導、セミナー講演を行う

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ファッション業界でキャリアを積んだ夫妻がサステナブルなセレクトEC立ち上げ エシカル消費には“ワクワク感”が大事

 2020年2月にオープンしたオンラインセレクトショップ「ボーダーレスクリエーションズ(BORDERLESS CREATIONS)」は、世界中のサステナブルな雑貨やファッションアイテムをそろえている。創業者はファッション業界に長らく身を置いてきたチャン・ユーチンと若井康弘夫妻だ。トレンドを追い、大量生産大量廃棄を繰り返す業界に違和感を抱いていた2人は、子どもの誕生を機に「次世代のためにできること」を探し始め、人々にサステナブルなライフスタイルを提案するECショップを立ち上げた。現在「サステナブルな選択を、知って感じて、想像して、できることから」をコンセプトに、バッグやアクセサリー、インテリア雑貨、日用品など28ブランドを取り扱う。

 3月3〜9日には初のポップアップストアを三越銀座店3階にオープン予定。セレクトショップに留まらず、ワークショップやコンサルティングなどサステナビリティにまつわる発信に取り組む2人に話を聞いた。

WWD:2人の経歴は?

チャン・ユーチン(以下、チャン):私は東京生まれの台湾人です。日本でインターナショナルスクールに通った後、アメリカの大学でコンピューターサイエンスを学びました。卒業後はモルガン・スタンレー(MORGAN STANLEY)のIT部に勤務。ちょうどECの走りの時期でした。2002年には日本上陸3年目のアマゾン(AMAZON)に転職し、リテール部のプロジェクトマネージャーを経験しました。一方で、小さい頃からファッション業界に憧れがあり、思い切って仕事を辞めて、イタリアのフィレンツェにあるファッション専門学校のポリモーダ(POLIMODA)へ留学。そこで運良く「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」でインターンをすることができ、帰国後は「ジル サンダー(JIL SANDER)」でアシスタントMD、その後「ユークス ジャパン(YOOX JAPAN)」の立ち上げに携わってカントリーマネジャーを務め、「ラコステ(LACOSTE)」や「ボンポワン(BONPOINT)」などで経験を積みました。「ボーダーレスクリエーションズ」はこれまでのキャリアの集大成です。

若井康弘(以下、若井):僕には彼女のように華やかな転身ストーリーはありませんが、昔から古着がとても好きで、卒業後は渋谷の洋服屋で働きはじめました。もう少しモノづくりの深い部分を見てみたいと思い、「アー・ペー・セー(A.P.C.)」に転職。代官山店の店長や本社の営業、店舗を統括するマネージャーなどを経験しました。13年ほど働いた後、リムジン・インターナショナルのアパレル部門に転職。別の部署にアメリカの古材を扱う「ギャラップ(GALLUP)」があり、古い納屋などの解体で生まれる古材を再利用して国内のセレクトショップやカフェに販売しているのに興味を持つようになりました。古着もしかり、資源をリユースするサステナブルな感覚は、キャリアを積むうちに自然と身につきましたね。

次世代のために出来ることは何か

WWD:「ボーダーレスクリエーションズ」の構想はどのように始まった?

チャン:彼とは「アー・ペー・セー」で働いていた友人の紹介で知り合いました。付き合っていた頃から、「将来、2人で何かやりたいね」と話していたんです。モノを作ることも選択肢にありましたが、子どもができたときに「この子が大きくなった時に地球ってどうなっているんだろう?私たちは、次世代に何が残せるのだろうか?」と考えるようになり、世界のエシカル商品を取り扱うECサイトの立ち上げを決めました。私には学生の頃から自分でセレクトショップを開くという夢があって、お店の名前は「ボーダーレス」と考えていたんです。

WWD:「ボーダーレスクリエーションズ」のコンセプトは?

チャン:あらゆる垣根を越えて、世界中のクリエイションを発信したいという思いで名付けました。消費者一人一人がクリエイションに触れて、サステナブルな選択を気軽にできる世の中になってほしい。生活に取り入れやすく、使っていてワクワクするようなモノを提案しています。

WWD:商品はどのように買い付けた?

チャン:まずは日本エシカル協会が主催する日本エシカルコンシェルジュ講座を受けました。サステナブルリサーチツアーと題して、5歳の息子を連れてフランス、スウェーデン、イギリス、イタリアの計7都市を3週間かけて回りました。

若井:目星をつけていたショップを回ったり、現地でのサステナブルな取り組みを見聞きしたりして、とても刺激的でした。スウェーデンは認証マークやフェアトレード商品などがかなり浸透していましたし、フィレンツェではアテンドしてくれた人の娘さんが「今、おばあちゃんたちが着ていたようなビンテージアイテムがトレンド」と教えてくれました。ロンドンでは親がペットボトルを持っていると子どもたちに怒られるなんて話も聞きました(笑)。子どもからボトムアップで親世代を教育する仕組みができているんだと感心しましたね。同行した息子もとても感化された様子で、帰国後にコンビニに行くと、店員さんに「フェアトレード商品ありますか?」と聞くようになりました。

チャン:実際にこの旅で取り引きが始まったブランドもあります。店を回りながら「ボーダーレスクリエーションズ」の構想を話すと、皆さんとても協力的で「(取り引きする商品の数は)ミニマムの半分でいいよ」と言ってくださるところもありました。サステナビリティを広めるには連携が不可欠であるという姿勢を学びました。

共感できるストーリーと生活に取り入れたくなるデザインを重視

WWD:現在の売れ筋の商品は?

チャン:掃除や食材を洗う時に使えるホタテパウダーが人気です。テレビで紹介されると、15分ほどで完売。乾燥させた貝を高温で粉末状にした強いアルカリ性の万能パウダーで、洗濯洗剤や歯磨き粉、入浴剤としも使えます。洗濯の乾燥時に使えるドライヤー・ボールもオススメです。洗濯物と一緒に乾燥機に入れると、柔軟剤が必要なく乾燥時間も短縮できます。うちではホタテパウダーと合わせて使っていて、液体洗剤も柔軟剤も使わなくなりました。

若井:カナダのブランド「ウラット(ULAT)」のドライヤー・ボールは、世界で唯一特許を取得しています。原料となる羊毛を刈り取る時には羊が傷付かないように配慮しているので動物愛護の観点からも安心です。

チャン:竹の歯ブラシは今さまざまなブランドから出ていますが、私たちが取り扱う「ハンブルブラッシュ(HUMBLE BRUSH)」はスウェーデンの歯科医が立ち上げました。彼は子どもたちに歯磨きの仕方を教えにアフリカに行ったときに、そもそも子どもたちが歯ブラシを持っていないことに衝撃を受けたそうです。歯ブラシが1本売れるごとに製造コストと同額、もしくは歯ブラシ1本をNGO団体に寄付する仕組みです。

若井:創業者の彼がただ寄付するだけでなく、現地で磨き方を教えているストーリーまで素晴らしいと思いました。取り扱う商品は、手にとって気分が高揚するデザインであることと、その背景やストーリーを重視しています。いろいろな角度から下調べをして、本当にこれを世の中に伝えたいか吟味しています。

チャン:商品の梱包も簡易包装にこだわっています。メーラーバッグ(発送袋)は完全に堆肥化できるもので、商品タグは切り込みを入れてiPhoneスタンドとして再利用できるようにデザインしました。すぐに捨てない意識を持つきっかけになればと思います。

WWD:商品のストーリーを伝える工夫は?

チャン:サイトには商品一つ一つのストーリーや私たちの思いを載せていて、SNSにはブランドのインタビューや商品のハウツー動画もアップしています。地球は深刻な環境問題を抱えていますが、シリアスに語るのではなく「楽しくみんなで生活を変えていきましょう」というメッセージを込めています。

若井:きっと一歩踏み出すと、「次はここを変えてみよう」など新たな悩みが出てくると思います。僕たちは初めの一歩を踏み出すきっかけを提供したい。インスタグラムには息子も登場し、積極的に商品を紹介しています(笑)。

ファッション業界に“まずは一歩踏み出してほしい”

WWD:今のファッション業界について思うことは?

若井:特に日本の大手アパレル企業は、大きいことに取り組もうとするあまりに初動が遅れている印象です。身近なことからでもいいと思うので、まずは一歩踏み出してほしい。小規模のブランドには、環境意識を高く持ってモノづくりしているところも多く見かけるようになりました。ぜひ、連携していきたいと思います。

チャン:ファッション業界にいる友人たちからも「情報を発信してくれてありがとう」という声をもらっています。「うちの会社が展示会を開くんだけど、プラスチックと缶だったらどっちがいい?」とか「ショッパーはどうだろう?」なんて相談も受けるようになり、周りの意識を少しずつ変えられていると実感しています。

WWD:今後の目標や計画は?

チャン:売り上げは毎月伸長しています。テレビでもSDGsが取り上げられるようになり、消費者の意識の変化が反映されているようです。オンラインでのセレクトショップはスタート地点。私たちの想いを発信するため、ポップアップやワークショップなどさまざまなイベントを企画しています。今年は3月に三越銀座店、6月に高島屋玉川店でポップアップを開く予定です。企業と一緒に企画を考えるなどコンサルティングも行いたいと考えています。

若井:現在、サステナブルな商品の購入者は女性が多く、男性への浸透はこれからです。一緒にサステナビリティーを広めていけるメンバーを募り、もっと男性たちにも呼びかけたいです。古着ファッションを楽しんでいる若者には、そこを入り口に環境問題に関心を寄せてほしい。最近は週末、家族でゴミ拾いイベントに参加し、生ごみを堆肥(土の栄養)に変えるコンポスト活動に取り組んでいます。このようなことが普通になって、皆が楽しみながら環境活動に取り組むめればと思います。

■「ボーダーレスクリエーションズ」ポップアップ
日程:3月3〜9日
場所:銀座三越本館3階ルプレイス内
住所:東京都中央区銀座4-6-16

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環境問題に立ち向かう「ジェン」の“世界初”ソール

 アパレルブランドをプロデュースするファイブ トウキョウは、ソールブランド「ジェン」を設立した。名前の由来は“GENERATION TO THE NEXT”。次世代のために環境に配慮したソールづくりを目指す。今、世界で廃棄される靴の大半は埋め立て処分されている。石油系素材を使用しているため生分解性が低く、地中に残ることで放出される揮発性有機化合物や温室効果ガスは、健康被害や地球温暖化の温床ともいわれている。「ジェン」の土に還る世界初の“天然ゴム特殊発泡ソール“は、その解決策となる。

革新的な天然ゴム発泡技術で
従来のソールが抱える課題を解決

 「ジェン」最大の特徴は、天然ゴムの特殊発泡素材を生成する技術でつくられたソールだ。これまでゴム素材を発泡させるには石油系、または人工的な薬品が必要といわれていたが、ファイブ トウキョウは一部の自然鉱物で発泡させることに成功。この自然科学による特殊発泡技術は、現在PCT国際特許出願中だ。

 原料となる天然ゴムはインドネシアとタイから調達しており、生ゴムを中国の工場でビーズ状の細かいペレットに加工して発泡ソールを製造している。ペレット作成時に、物質が安定して混ざるための比率と混入方法も研究を重ねた。

 環境に優しいだけでなく、機能面でも優れた特徴を有する。一般的なシューズに用いられるラバーソールに比べて2倍以上の軽量化に成功し、同時に高いクッション性も実現させた。また、足のいかなる動きにも適応する屈曲性と適度な反発性を兼ね備えて足運びを軽快にし、高い耐摩耗性によって一般的なシューズよりも長く履き続けられることが同社の調査で証明されている。

 販売メニューは「オーダーメイドソール」とセミオーダーの「オープンモールドソール」の2種。「オーダーメイドソール」ではより自由度の高いデザインはもちろん、ペレットの調合や発泡率によるソールの密度、硬度やグリップ力、クッション性などの機能性、重量を細かく調整できる。「オープンモールドソール」でも機能面の調整は可能で、ソールのデザインは、アッパーの形状によって汎用性の高い2種類から選択する。

 同社は「ジェン」でのビジネスを通して社会貢献にも意欲的だ。世界には靴のない子どもが3億人いるといわれており、足からの寄生虫感染症やけがによる破傷風の問題が深刻化している。子どもたちの安全を守るために、同社は2030年までに「ジェン」の売り上げの一部で貧困地域に現地法人をつくり、工場や設備の導入、技術指導を行い、地域雇用を生み出しながら、靴のない子どもたちに安価で靴を届けることを目標に掲げる。また次世代にも事業が継承するよう、学校などの教育機関の設立も計画し、地域と協力して持続可能な事業の構築を目指していく。

1. 生分解性 100%天然素材使用。埋め立て後に生分解され土に還るので環境にも人体にも優しい
2. 防滑性 ドライ、湿潤、氷上を問わず滑りにくい〈EVAソール比較〉ドライ3倍 / 湿潤2倍 / 氷上5倍
3. 軽量性 天然ゴムを発泡させることで軽量化〈ラバーソール比較〉2.7倍軽量
4. 耐摩耗性 高い耐摩耗性を有し、機能が長期間持続する〈ラバーソール比較〉6倍〈EVAソール比較〉2.6倍
5. クッション性 クッション性が高く、卵を3mの高さから落としても割れない
6. 屈曲性 柔らかな屈曲性により、さまざまな体勢にも適応。耐屈曲性も併せ持つ

“靴底のパートナーになることで、
社会問題の解決に
取り組んでいきたい”

 「ブランドを立ち上げたのは、靴の埋め立て問題を知ったことがきっかけでした」。そう語るのは、ファイブ トウキョウの齊藤裕介社長だ。「ソールはシューズの快適性と機能性を支えますが、その代償として環境への影響が最も大きいパーツ。解決するには新しい技術と適切な方法を結び付けなければいけません」と続ける。

 リサイクルという手段もあるが、埋め立て処分される靴を生分解させ、有害なガスを発生させず土に還すことで環境負荷を減らす方が近道だと考え、天然ゴムを使用し、生分解性を実現した土に還るソールブランド「ジェン」を設立した。

 一番の特徴である天然ゴムの特殊発泡素材を使ったソールは、親交のあった技術者たちが15年の開発期間を経て生み出したもの。「天然ゴムを主体とした100%天然由来の成分で発泡させることで、従来の天然ゴムソールが抱えていた、重い、耐摩耗性が低くグリップ力が低下する、熱に弱い、汚れやゴミが付きやすいといった技術的な課題を解決し、高機能性なソールが完成しました。『ジェン』がさまざまなシューズブランドの靴底のパートナーになることで、環境負荷を可能な限り抑え、社会問題の解決に取り組んでいきたい。いずれは、世界で年間250億足生産されているといわれる靴のソールを、この技術を使って全て土に還したいです」。

PROFILE:齊藤裕介(さいとう・ゆうすけ)/ファイブトウキョウ社長:アパレルメーカー勤務を経て、2006年にメディアやブランドのクリエイティブを総合的に制作、ディレクションするライドメディア&デザイン取締役として創業に参画。16年にアパレルブランドを主にプロデュースするファイブ トウキョウを設立。現在はサステナビリティやウェルネスも含むブランドクリエイターとして活動する

問い合わせ先
ファイブ トウキョウ
03-6451-0288

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「リアルに欲しい!」がそろう“シブスク”で佐田真由美と新居由梨がプレゼント選び

 渋谷スクランブルスクエア(通称:シブスク)は、渋谷の新たなランドマークとして注目を集めるショッピングスポットだ。渋谷駅直結という抜群のアクセスに加えて、ラグジュアリーからコスメ、セレクトまで多彩なブランドがそろうため、目当てのものを一気にチェックできるのも大きな魅力。そんなシブスクに、モデルの佐田真由美さんとスタイリストの新居由梨さんが訪れた。今回は二手に別れて、互いへ贈りたいトレンドアイテムをショッピング。春の買い物計画の参考にしてみては?

プレゼント選びに奮闘する
2人のスペシャルムービーを公開

本スペシャルムービーをご覧の方に抽選でプレゼントをご用意。詳しくは動画をチェック(応募期間は3月12日まで)

おしゃれ心を刺激する
こだわりのアイテム探しから

 3階には、「ティファニー(TIFFANY & CO.)」「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」などラグジュアリーブランドのストアが並ぶ。佐田さんがまず訪れたのは、「ティファニー」。壁面のホワイトとティファニーブルーが印象的なコンセプトストアだ。自動販売機でフレグランスを購入できるという特別な体験もできる。ジュエリーにもこだわる新居さんへのプレゼントに選んだのは、“ティファニー T ワン ワイド リング”だ。女性の肌をより美しく引き立てるローズゴールドに繊細なダイヤモンドが並ぶ。そして、こっそり自分用にバングルもゲット。「いつも頑張っている自分にもご褒美!というのは言い訳ですね(笑)」と佐田さん。
 「ジミー チュウ」では、新作バッグとシューズをチェック。アイコンバッグ“ヴァレンヌ”のトップハンドルと、べっ甲素材仕上げで90’sの雰囲気漂うサンダルが気になる模様。実際に身に着けながら吟味をした結果、「サイズ感もイエローカラーもかわいい。ショルダーにもなるから、アクティブな由梨さんにぴったり」と、プレゼントはバッグに決定。
 新居さんの買い物は「ステラ マッカートニー」からスタート。「サステナビリティを重視したブランドの先駆け的存在ですよね。デザインのみならず、素材やモノづくりへの姿勢にも注目しています」とじっくり店内を見ていく。中でも目に留まったのは、オーガニックコットン素材のフーディだ。「今季のトレンドアイテムであるフーディは、こんな愛嬌のあるカウ(牛)プリントで着こなしにアクセントをプラスするのも良さそう。ドレスからカジュアルまでなんでも着こなす真由美ちゃん。きっと似合うはず!」

デイリーを彩る最旬アイテムをゲット

 7階に移動した新居さんが訪れたのは「トゥモローランド(TOMORROWLAND)」。「仕事のリースではもちろん、プライベートでもよく利用するブランドです。ショップスタッフの方の知識も豊富なので、とても信頼しています」と新居さん。広い店内をくまなく見て選んだのは、顔まわりが華やぐミントグリーンのニットとプルオーバーブラウスだ。「ブラウスのフロントリボンはそのまま垂らしても、アレンジをしても。寒い季節は中にタートルニットを入れたりとオールシーズン活躍するはず。デニムに合わせても素敵そう」。
 一方の佐田さんは6階のコスメフロアへ。「コンパクトなのにブランドが充実!それでいて閉塞感がないのがいいですね」と、今回はお目当ての「セルヴォーク(CELVOKE)」へ向かう。さっそく手に取ったのは、まぶたに溶け込むようになじむ植物オイル配合のアイシャドウ“ヴォランタリー アイズ”の新色。「由梨さんは普段、ピンクのメイクアイテムは選ばないはず。けれど、くすみを帯びたこんなカラーならモードに決まりそう!」と2色をゲット。さらに、「まだまだ乾燥しがちな今の季節にも肌状態を底上げしてくれます」というスタッフのアドバイスで、人気の導入美容オイル“コンセントレートオイル”を追加し、買い物終了。

買い物を終えて再会。
大満足なショッピングに

 お待ちかねのプレゼント交換タイムは大盛り上がりだ。「うれしい!」「普段は選ばないかもしれないけれど、絶対に似合うはず!」というやりとりは、互いの好みを熟知している2人だからこそ。
 「ネットショッピングはもちろん便利だけれど、実際に手で触れて身に着けて買い物ができるってやっぱり楽しい」と佐田さん。新居さんは「旬のブランドがギュッと詰まっている“シブスク”は、シーズン始めのトレンドチェックにもぴったり!」と振り返った。

佐田さん衣装:ジャケット9万5000円、ニット10万5000円、パンツ6万9000円、バッグ8万7000円/以上ステラ マッカートニー(ステラ マッカートニー カスタマーサービス03-4579-6139)新居さん衣装:すべて私物
※RG=ローズゴールドを表します
※撮影のためマスクを外しています
MODEL:MAYUMI SADA
STYLING & MODEL:YURI ARAI 
PHOTOS:YOKO NAKATA(MAETICCO)[MODEL], OSAMI WATANABE[STILL]
MOVIE DIRECTION:RYOJI KAMIYAMA
MOVIE PRODUCE:RYO MURAMATSU
HAIR & MAKEUP:MIKAKO KIKUCHI(TRON)

問い合わせ先
渋谷スクランブルスクエア
03-4221-4280

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「リアルに欲しい!」がそろう“シブスク”で佐田真由美と新居由梨がプレゼント選び

 渋谷スクランブルスクエア(通称:シブスク)は、渋谷の新たなランドマークとして注目を集めるショッピングスポットだ。渋谷駅直結という抜群のアクセスに加えて、ラグジュアリーからコスメ、セレクトまで多彩なブランドがそろうため、目当てのものを一気にチェックできるのも大きな魅力。そんなシブスクに、モデルの佐田真由美さんとスタイリストの新居由梨さんが訪れた。今回は二手に別れて、互いへ贈りたいトレンドアイテムをショッピング。春の買い物計画の参考にしてみては?

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 「ジミー チュウ」では、新作バッグとシューズをチェック。アイコンバッグ“ヴァレンヌ”のトップハンドルと、べっ甲素材仕上げで90’sの雰囲気漂うサンダルが気になる模様。実際に身に着けながら吟味をした結果、「サイズ感もイエローカラーもかわいい。ショルダーにもなるから、アクティブな由梨さんにぴったり」と、プレゼントはバッグに決定。
 新居さんの買い物は「ステラ マッカートニー」からスタート。「サステナビリティを重視したブランドの先駆け的存在ですよね。デザインのみならず、素材やモノづくりへの姿勢にも注目しています」とじっくり店内を見ていく。中でも目に留まったのは、オーガニックコットン素材のフーディだ。「今季のトレンドアイテムであるフーディは、こんな愛嬌のあるカウ(牛)プリントで着こなしにアクセントをプラスするのも良さそう。ドレスからカジュアルまでなんでも着こなす真由美ちゃん。きっと似合うはず!」

デイリーを彩る最旬アイテムをゲット

 7階に移動した新居さんが訪れたのは「トゥモローランド(TOMORROWLAND)」。「仕事のリースではもちろん、プライベートでもよく利用するブランドです。ショップスタッフの方の知識も豊富なので、とても信頼しています」と新居さん。広い店内をくまなく見て選んだのは、顔まわりが華やぐミントグリーンのニットとプルオーバーブラウスだ。「ブラウスのフロントリボンはそのまま垂らしても、アレンジをしても。寒い季節は中にタートルニットを入れたりとオールシーズン活躍するはず。デニムに合わせても素敵そう」。
 一方の佐田さんは6階のコスメフロアへ。「コンパクトなのにブランドが充実!それでいて閉塞感がないのがいいですね」と、今回はお目当ての「セルヴォーク(CELVOKE)」へ向かう。さっそく手に取ったのは、まぶたに溶け込むようになじむ植物オイル配合のアイシャドウ“ヴォランタリー アイズ”の新色。「由梨さんは普段、ピンクのメイクアイテムは選ばないはず。けれど、くすみを帯びたこんなカラーならモードに決まりそう!」と2色をゲット。さらに、「まだまだ乾燥しがちな今の季節にも肌状態を底上げしてくれます」というスタッフのアドバイスで、人気の導入美容オイル“コンセントレートオイル”を追加し、買い物終了。

買い物を終えて再会。
大満足なショッピングに

 お待ちかねのプレゼント交換タイムは大盛り上がりだ。「うれしい!」「普段は選ばないかもしれないけれど、絶対に似合うはず!」というやりとりは、互いの好みを熟知している2人だからこそ。
 「ネットショッピングはもちろん便利だけれど、実際に手で触れて身に着けて買い物ができるってやっぱり楽しい」と佐田さん。新居さんは「旬のブランドがギュッと詰まっている“シブスク”は、シーズン始めのトレンドチェックにもぴったり!」と振り返った。

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MODEL:MAYUMI SADA
STYLING & MODEL:YURI ARAI 
PHOTOS:YOKO NAKATA(MAETICCO)[MODEL], OSAMI WATANABE[STILL]
MOVIE DIRECTION:RYOJI KAMIYAMA
MOVIE PRODUCE:RYO MURAMATSU
HAIR & MAKEUP:MIKAKO KIKUCHI(TRON)

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若返りの点滴!? 世界が注目する「NMN」を試してみた【爆裂!健康美容マニア道】

1日8食、ジャンクフード漬けの超不健康児から超健康優良児へと大変身を遂げたフリーアナウンサーの名越涼。およそ15年かけて自らの体で人体実験を繰り返してきた結果、“超絶良かったもの”だけを余すことなくお伝えする。今回は若返り成分といわれるNMNについて。

 いつまでも若々しく、健康でいたい。見た目はもちろんだけど、10代のころの「限界って何?」って言えちゃうほどの底知れぬ体力を維持したい。そんなことは妄想なのさ、と諦めかけていたところに一筋の光が差した。何やら若返りの成分が発見され、世界で注目されているという。その成分の名は「NMN」。それは一体何なのか。早速、調査開始!

ハーバードが認めた若返り成分NMN

 NMNとは「ニコチンアミドモノヌクレオチド」のこと。「呪文か!」とツッコミたくなる長い名前の成分こそが、加齢を遅らせ、若返ることができるといわれているのだ。注目されるきっかけとなったのは、ハーバード大学医学部の研究。生後2年(人間でいうおよそ60歳)のマウスにNMNを1週間投与したところ、運動能力、活動レベル、細胞活性化レベルなどが生後6カ月(人間でいうおよそ20歳)まで若返ったという。60歳から20歳まで、たった1週間でタイムスリップできるなんて。NMN、すごすぎでしょ……!

 そもそも、私たちはなぜ老化するのか。それをひもとくのに重要な存在は、長寿遺伝子と呼ばれる「サーチュイン遺伝子」だ。人間の老化や寿命に深く関わる遺伝子は、活性化させると、肌の細胞や身体機能が改善され、結果、若返りがかなうという。その活性化に大活躍してくれるのが、NMNというわけだ。

ブロッコリー40kg分のNMN点滴

 NMN自体はビタミンに似た物質で体の中で自然に作られるのだが、年齢を重ねるほどに体内での生産量が減少してしまうそう。仮に、NMNを1日に100mg摂取しようと思うと、ブロッコリーの場合はおよそ40kg、2000房の量が必要だという。体が緑色に染まりそうなほどフードファイトする自信はないので、今回は点滴をチョイス。しかし、このNMN点滴。いいお値段なのだ。名越調べによると、都内のクリニックは100mgで3万円から8万円。「さすがに8万円はきついぜよ……(汗)」ということで、グーグル先生に聞き続けてたどり着いたのが、大田市場の事務棟にある「東海渡井クリニック」。改めてNMN点滴による治療効果を聞いてみると、エイジングケアだけでなく、神経疾患や糖尿病、眼機能やアルツハイマー病、肥満など、幅広く期待ができることが分かった。

おすすめはサプリ+点滴

 人によって感じ方はさまざまなようだが、名越の場合は1回の点滴でかなりの疲労回復を実感。体にまとわりついていた鉛のようなものがスキッと取れ、羽が生えたような軽やかさ。これはぜひとも毎週受けたい……が、清水の舞台から飛び降りる覚悟をもってしてもお値段的に厳しいのが本音。ということでクリニックの先生に勧めていただいたのが、「TRU NIAGEN」というサプリ。NMNは、体内に吸収されるとNAD+という物質に変換されるのだが、このサプリにはNADの成分が含まれているため、体内のNAD+濃度を上げることができるそう。点滴と点滴の間はこのサプリで維持しながら少しずつ若返りのベースをつくっていくのがベストということで、名越も継続中。エイジングケアもいよいよ、もう一段上へ。もはや、「老化」という言葉や概念がなくなる未来を妄想しながら、若返りに励んでみよう。

名越涼/フリーアナウンサー。香港出身。福井と愛知のテレビ局アナウンサーを経て独立。司会やライター、セミナー講師、企画・プロデュースなど幅広く活躍するパラレルワーカー。趣味・特技は手作り発酵食、食文化研究、ヨガ(歴15年)eスポーツと農業にも精通

 

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「フミエ タナカ」がMIKIKO&ライゾマティクスと協業 ロンドンコレに挑む

 田中文江によるファッションブランド「フミエ タナカ(FUMIE TANAKA)」は、デジタル上で開催中のロンドン・ファッション・ウイーク(以下、LFW)に初参加し、2021-22年秋冬コレクションを発表した。東京都と繊維ファッション産学協議会が主催する「東京ファッションアワード 2020(TOKYO FASHION AWARD 2020)」の受賞特典としてLFWへの参加が決まり、他の5ブランドとともにオンライン上で映像を公開した。

重なり合いで生まれる美しさを表現

 田中デザイナーはLFWヘの参加を大きなチャンスと捉えており、「このコロナ禍でも記憶に残り、“ワクワク”が伝わるような映像を、妥協をしないメンバーで作り上げ、もう1段階上のレベルに上がりたかった」と話す。前シーズンに引き続き、演出振付家のMIKIKO率いるダンスカンパニー、イレブンプレイ(elevenplay)とタッグを組み、メディアアート集団のライゾマティクス(RHIZOMATIKS)の真鍋大度と初めて協業した。

 今季は“ミルフィーユ(millefeuille)”をテーマに、ベージュのレイヤードスタイルで統一。6つのキールックはジャケットとシャツを一体化させたトップスや、スカートとパンツをドッキングしたボトムスをはじめ、段々に連なった襟のニットトップス、アシンメトリーのフリルを大胆に施したドレスなど、アイテムや素材が重なってできる美しさを表現している。「たくさんの人と関わって、多くの経験の積み重ねて今があり、モノ作りができている。軽やかにレイヤーしながら、心を豊かにするファッションを生み出したかった」と田中デザイナー。

 舞台は、築100年の赤レンガ造りが特徴的な早稲田奉仕園のスコットホール(講堂)。映像の監督はMIKIKOが務め、モデルとカメラマンをイレブンプレイのダンサーたちが担当した。MIKIKOは「休館または廃館した誰もいない劇場に、ダンサーの魂だけがやってきたというのが裏テーマ。コロナ禍の自粛でなかなかライブができず、ファッションショーもオンライン上で発表されるような、今のもどかしい心境とリンクさせている。振り付けはゴーストやアンドロイドのようなイメージで、気持ちのいい違和感のある映像を目指した」と説明する。体を揺さぶって“もやもや”を表現する動きや、宙を舞うように滑らかなカメラワークが特徴的だ。MIKIKOと15年以上協業を続けているライゾマティクスの真鍋は「ダンサーでなければ撮れない映像になった。これまではダンサーが動ける手持ちのカメラの選択肢は少なかったが、今はiPhone 12 Proを使って、撮影やスキャニングまですることができる」という。真鍋は今回のために製作したソフトウエアを活用して、デジタル上で会場外に飛び出すような視覚効果を加えている。BGMにはニューヨークのバンド、ブロンド・レッドヘッド(Blonde Redhead)のリードボーカルで、海外を拠点にする日本人女性アーティストのKAZUの楽曲「Salty」を採用した。

 メイクやネイルの細部にまでこだわりが詰まっている。ヘア&メイクは「フミエ タナカ」の前身ブランド「ザ・ダラス(THE DALLAS)」から担当する資生堂のトップヘアメイクアップアーティスト進藤郁子によるもの。モデル全員が日本人女性だったため、漆黒の前髪ウィッグを制作してモード感を演出した。前髪は、踊っても割れて見えないよう額の上にチュールを合わせているほか、ブラックアイシャドーでのスモーキーなアイメイクを施した。ネイルは気鋭ネイルアーティストのディスコ(DISCO)の金子渚が担当し、コレクションの生地を用いてベージュのレイヤードスタイルを爪先まで表現した。

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マックイーンに影響を受けた「ファイナルファンタジー」の衣装デザイナー ゲームカルチャー解体新書Vol.5

 ファッションに軸足を置きながら、セールスやPR、企画立案の立場で約15年もの間、国内外のブランドビジネスに関わらせていただいています。ファッション業界に携わる私が、ゲーム業界で活躍している方々、ゲーム好きのゲストとの対談を交えながら、「ファッション × ゲーム」の可能性や新しい価値を提供することができたら。そんな想いで新連載をスタートさせていただきました。第5回は「ファイナルファンタジー14(FINAL FANTASY 14以下、FF 14)」のキャラクターコンセプトアーティスト、生江亜由美氏に迫ります。生江氏は、キャラクターの容姿や装備の2Dデザインを担当しているほか、「FF 11・12」の2Dアートも手掛けてきました。

学生時代は「『ヴォーグ』のフォトグラフを制作しました」

戸簾俊広(以下、戸簾):なぜゲームの衣装をデザインする職に就いたのですか?

生江亜由美(以下、生江):元々「ゲーム業界に入りたい」と思っていたわけではなく、学生時代は西洋服装史を専攻しました。美術大学に行くほど本気でデザインがやりたかったわけではありませんが、自分でそういう世界を創りたかった。在学中にiMacが普及したことで、デジタルペイントにハマり、独学に近い形でイラストを描き始めました。卒業作品ではイラストから写真に変わった時代の「ヴォーグ(VOGUE)」のフォトグラフを制作しました。

戸簾:趣味としてやっていた?

生江:趣味で約4年続けました。学校に「ヴォーグ」のイラストを描いていた先生が学校に特別講師でいらっしゃり、その人にギャラリーを紹介してもらい、3カ月に1回のペースで個展を開催しました。作品がある程度溜まったところで、現スクエアエニックスに応募しました。当時のスクエアエニックスは、「グラフィック技術はナンバーワン」と言われるくらいすごかった。私自身、代表作「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト(DRAGON QUEST)」はプレーしていましたが、会社については何も知らない状態で入社しました。「帽子や靴のデザイナーになれるし、そのモデルすら自分で創れる」と考えていたら、いつの間にかのめり込んでいきましたね。

戸簾:創作に対するストレスは?

生江:全くないですね。発注を受けてからの仕事なので、ファッションデザイナーというよりは舞台や映画衣装の方に近いと思いますが、元々得意ではなかったり興味がなかったりジャンルに対しても、調べてアプローチできるのが面白いです。「世の中にこんなものがあったのか」という喜びを感じながら、それを材料として組み上げる過程が楽しい。

戸簾:現在デザイナーは何人くらい?

生江:私が所属する「FF 14」のチームは、服と装備品をデザインする人で10人くらいかな。多分、社内では一番大きいチームだと思います。

戸簾:男女比はどのくらい?

生江:私が入った時は男性が大半、女性は1、2人でした。今は全体の4割くらいが女性になりましたね。

過去には「ヴィヴィアン」をイメージした装備も

戸簾:当時、マックイーンに多大な影響を受けたとか。

生江:はい。アレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)とジョン・ガリアーノ(John Galliano)が大好きでした。深夜放送の「ファッション通信」などで情報を集めるのは、本当に苦労しました。当時は「ショーの中に夢の世界が詰まっている」と感動していました。本当に美しいものだけを集めた“人工美の極み”みたいな(笑)。それなのに10分ほどで終わってしまうという儚さも含め、凄い衝撃を受けました。 

戸簾:実際に購入されていたんですか?

生江:はい。半年に一回くらい購入していました。今でもヤフオクやメルカリのフリマサイトでアーカイブを探しています。

戸簾:ゲーム開発者は「イラストを描き続けている人」というイメージだったので、「マックイーンという人物が出てくる」こと自体が衝撃的でした。

生江:最近装苑賞を取った男性が入社したんですよ。10年ほどアパレルに携わり、そこからCGを学ぶため専門学校に入ったそうです。実際メーキング動画を作ると、パターンを引くスピードがめちゃくちゃ早いんですよね。周りは「息をするようにパターンを引いている」って騒いでいました(笑)。彼からは“マーヴェラスデザイナー”というアパレルが使っているツールについてレクチャーしてもらっています。現場のデザイナーも新しいことを学ばないと。今の技術だと、現状はどうしても布の表現が弱く、硬いものを重ねるような表現に頼っています。ここから技術がもう一段上がったときには、よりリアリティーのある質感をお届けできるかもしれません。

戸簾:そういう形でファッションとリンクするパターンもあるんですね。

生江:とても珍しいケースですけどね。

戸簾:コラボしてみたいファッションブランドはありますか?

生江:親和性が高いのは「ヴィヴィアン・ウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD)」ですかね。「FF」のセクシースチュワーデスのような装備“コーティ”は、「ヴィヴィアン」をイメージしています。「グッチ(GUCCI)」との相性も良さそうです。

戸簾: ファッション業界に対して、近寄りがたいイメージを持つ人は多いですか?

生江:そういう声は社内でも聞きますね。私の友人も伊勢丹に連れていくと嫌がるんですよ(笑)。店員さんと話すことに尻込みしている人もいます。でも私が入社したときに思ったのは、ファッション業界の人もオタクなだけだと思うんです。ジャンルは違いますが、好きな人が好きなことをやっていることに変わりはないんですよね。話すと勉強になることが沢山あります。

戸簾:そうなんですよね。何かに没入している人たちは一つのオタクだし、何かしらのスキルを身に付けています。でもゲームをきっかけにファッションに交わってくれた人に、まだ僕は出会ったことがありません。このコラムをきっかけに色々な結びつきが生まれ、「面白いことができたらいいな」「業界の発展につながれば」と強く思っています。

戸簾俊広: ジェムプロジェクター代表:2009年に国内外のファッション・ライフスタイルブランドのブランディング、PR、セールス、コンサルティングを手掛けるブランディングカンパニーGEM PROJECTORを設立。現在は、地方創生プロジェクトや会員予約制のテンポラリーレストランの立ち上げに向け奮闘する一方、「受信者から発信者へ」をテーマにしたオンラインサロンを運営

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神童・那須川天心はスニーカー愛でも「圧倒的勝利」 夢は「ジョーダン」とのコラボ

 プロ通算43戦無敗という実績を積み上げ、「キックボクシング史上最高の天才」と称される那須川天心。格闘家としての魅力はもちろん、トレードマークの奇抜な髪色や愛嬌のあるキャラクターから、若い世代を中心に人気を集めている。そんな彼が格闘技と同じくらい夢中になっているのがスニーカーだ。「格闘技のトロフィーよりも、スニーカーが欲しい」と話すほどのスニーカーマニアで、インスタグラムのスニーカー専用アカウントは7万2000フォロワーを抱える。昨年6月にはユーチューブアカウントも開設した那須川に、スニーカーについてのあれこれを聞いた。

所有200足は「全て外履きです」

WWD:スニーカーに興味を持ったきっかけは?

那須川天心(以下、那須川): 3〜4年前から興味を持ち始めました。知人にもらった「ナイキ(NIKE)」の“エア マックス デイ3.26(AIR MAX DAY 3.26)”で一気にスイッチが入りましたね。

WWD:現在、何足所有している?

那須川:衣装部屋と玄関に200足ほどあります。全て外履き用で、毎日違うものを履いています。観賞用のスニーカーはないですね。一番のお気に入りは「ナイキ」とカニエ・ウェスト(Kanye West)の“エアイージー2(AIR YEEZY 2)”で、履き口の赤とミッドソールの緑のカラーリングや、未来感のあるフォルムが気に入っています。

WWD:スニーカー専用のインスタアカウントを開設している理由は?

那須川:本アカウントにスニーカーばかりアップすると、離れていくフォロワーもいるかなと思ったので分けるようにしました。

WWD:これまでスニーカーの抽選に並んだことはある?

那須川:ありますよ。アトモス(ATMOS)千駄ヶ谷店で“エア ジョーダン 1(AIR JORDAN 1)”のバーシティーレッドの抽選に朝8時ぐらいから並びました。結局、前に並んでいた人が当たり、僕は外れました。周りから盗撮されるし、早朝で寒いし、おまけにスニーカーは当たらずで萎えましたね(笑)。

WWD:年間何足購入している?今後狙っているスニーカーは?

那須川:約50足です。「アンブッシュ(AMBUSH)」と「ナイキ」がコラボした“エア ジョーダン 1”のシカゴカラーが発売するのであれば手に入れたいです。デザイナーズブランドとのコラボは、既存モデルにはない新しい要素が加わっているのでつい欲しくなりますね。

日本人選手初コラボの願いは叶わず

WWD:ファッションのこだわりは?

那須川:特にこだわりはないですけど、似合う人は何を着ても似合うんだろうなとは思います。知人の紹介で知り合ったVERDYさんが作った洋服をよく着ます。VERDYさんには入場時のコスチュームをデザインしてもらったこともあり、普段からお世話になっていて、僕はそういう人の洋服を着たいです。

WWD:「トロフィーよりも、スニーカーが欲しい」と過去に発言していた理由は?

那須川:トロフィーは小学生の頃から貰っているので、家に沢山あるんですよ(笑)。だから試合を見に来てくれた子どもたちに渡して、少しでも夢を持ってくれたらいいなと思っています。もしスニーカーが勝利者記念品だったらめちゃくちゃ嬉しいですけどね。

WWD:無敗を誇る強さの秘訣は?

那須川:探究心ですかね。現在の立ち位置がいいとは思ってないし、満足しないことが一番です。格闘技は一日で有名になれる可能性を秘めているけど、一日で地獄にも落ちる。だから自分自身を日々高めていかないといけません。

WWD:今後挑戦したいことは?

那須川:ゆくゆくは「ジョーダン ブランド(JORDAN BRAND)」と“エア ジョーダン 1”を作りたいです。日本人スポーツ選手で初のシグネチャーモデルを狙っていたけど、男子バスケットボールの八村塁選手に先を越されてしまいました。格闘技では2021年が大事な年になります。キックボクシング選手としての現役は残りわずかなので、ボクシングに転向するためにも勝ち続けないといけません。

WWD:格闘家界でもスニーカーに関しては誰にも負けたくない?

那須川:すでに圧倒的勝利じゃないですか?(笑)。情報が多過ぎて、ほかの格闘家は追い切れないと思いますよ。

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意外と使い回し優秀 ゴツめのゴールドチェーン愛用者が続々!

 ゴツめのゴールドチェーンネックレスがおしゃれ好きの間でじわじわと主流になってきました。好まれる理由は、太めタイプならではのゴージャスな雰囲気。パンチが効いているので、“強い女性”を印象づけやすいアクセサリーです。シンプルなデザインでもゴールドの質感が強さを感じさせるので、ミニマルな装いにも適度なアピールが加わります。さらに、素肌の透明感も引き出して顔周りに華やぎを添えてくれるだけでなく、首をほっそり見せる効果も期待できます。

クールなパンツスーツにグラマラスな印象を注入

 ハンサムに決まりがちなパンツスーツを華やかなムードに昇華させたいなら、チェーンネックレスはうってつけのスパイスになります。ボリューム感のあるクロップド丈のジャケットにワイドパンツを合わせて、メリハリを持たせました。ジャケットの大きな襟に負けない、インパクトのあるゴールドネックレスでさらに存在感を高めました。トップスとバッグ、シューズを白で統一して、クリーンな印象を添えたのが賢いコーデのポイントです。

 2枚目の写真は、ボクシーなジャケットとパンツのセットアップ。全体的にややオーバーサイズ感があり、メンズライクなたたずまい。ポイントは、トップスをVゾーンからのぞかせないこと。ゴールドネックレスを素肌に重ねて、センシュアルなムードを引き出しました。ここでも白のクラッチバッグとポインテッドトーで、きれいめの印象を添えています。

スエットやカットソーにも リッチストリートに“味変”

 ゴールドチェーンはクラス感があるので、カジュアルなデイリーなスタイルに合わせても、ほどよいリッチテイストが加わります。人気継続中のオールホワイトコーデは、スエットシャツにスニーカーと気負わないスタイリングですが、異素材ミックスでめりはりをプラス。トップスの上にゴールドネックレスを重ねて、控えめなゴージャス感を演出しています。

 ネックレスをコーディネートにうまく取り入れるには、イヤリングと指輪の組み合わせも効果的です。2枚目の写真は、プレーンな白タートルネックにゴールドネックレスをオン。大ぶりのゴールドイヤリングと指輪とも好相性です。ペールイエローのジャケットが、ゴールドアクセサリーをつなぐブリッジの役割を果たしています。

ロングアウターを好バランスに

 見た目の印象が強いロングアウターを羽織る際は、それに匹敵するアクセサリーを迎えると好バランスに整います。写真は、ピンクベージュ系でまとめたロングアウターとパンツの組み合わせ。長さの違うネックレスを重ね付けすることで、ロングアウターの重さを削いでいます。

 ロングアウターを主役に迎えて縦長効果を狙いつつ、Vゾーンからチラリとゴールドネックレスをのぞかせる控えめな使い方も効果的。抑えた露出がかえって気品を薫らせます。2枚目の写真では、ブルーと黒でまとめたクールなコーディネートに合わせたゴールドアクセサリーが華やぎを加えています。

 インパクトが強いイメージのゴールドチェーンネックレスは意外にもアレンジしやすく、使い回しに優れたアイテム。ジャケットやアウターからチラリとのぞかせてみたり、Tシャツやスエットと合わせてリッチに格上げしたりと、手持ちのアイテムに別のムードを引き出してくれます。薄着になり、顔周りが目立ちやすくなる春先は、さらにいい仕事をしてくれるはずです。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

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得意のメンズパーマスタイルを発信 人気メンズサロン「ゴールド」の佐藤拓弥が語るインスタ活用術

 いま勢いのあるメンズヘアサロンの一つ「ゴールド(GOALD)」の渋谷店で、佐藤拓弥・店長は同サロンの飛躍を支えている。得意のメンズパーマスタイルをインスタグラムで発信し、現在フォロワー数は1万8000を超える。佐藤店長がゴールドに参画した経緯や、約8割の来店を促しているというインスタグラムの発信方法を聞いた。

WWD:「ゴールド」に参画した経緯は?

佐藤:都内1店舗を経て「ゴールド」に入社しました。前サロンは歴史があって会社の規模も大きくさまざまな経験を積ませてもらいましたが、自分の力で一から作り上げていくことも楽しそうだなと思い、「ゴールド」に入社しました。当時からメンズパーマを提案していたので、それに特化したメンズサロンをやりたかったというのも理由の一つです。まずは副店長を務め、昨年の9月、店長になりました。

WWD:店長として託されたミッションは?

佐藤:自分は今年30歳になりますが、代表の中村の次に美容師歴が長いのが僕。スタッフは若手がそろっているので、美容師として一番大切な技術力や接客において、僕のやり方を一つの正解として見てもらうことです。

WWD:男性はカットが中心になりがちだが、パーマも提案している。

佐藤:サロンワークの中で、強くかかりすぎたり、反対にゆるすぎて扱いずらかったり、カラーよりもパーマの方がイメージとかい離するから「もうやらない」と決めてしまう人が多いことに気づきました。特に地方から来店してくれたお客さまにはパーマで失敗した経験がある人が多くて。そういう人を減らしたいなと思って、まずは自分のお客さまのパーマに対するマイナスイメージをなくす、「むしろ思っていたよりもいいじゃん」って思ってほしいと考えました。

WWD:中村代表は「ゴールド」を立ち上げた18年、カラーやパーマなど、ワンランク上の上質なものを提供したいと言っていた。アイロンやコテを使ってスタイリングで仕上げる美容師も多い。

佐藤:パーマが得意だから入れたのかも(笑)。現在はヘアスタイルの写真や動画がSNSなどでいっぱい見れるので、その通りのヘアスタイルにしたいと来店してくれるお客さまがたくさんいます。そんなときにスタイリングでの仕上げは、来店したその日はかっこよくなれますが、次の日以降はお客さまご自身でスタイリングするから同じスタイルに仕上げることが難しくなってしまう。パーマの良いところはリアリティがあって、再現性があるところ。10代はアイロンで雰囲気を楽しむのもありですが、20、30代にはスタイリングを簡単にすませたいというニーズもある。がんばりすぎなくても毎日をかっこよく過ごせるというのは、今のムードにもあっているんだと思います。

男性に響きやすいSNSとは
美容師としての活用術

WWD:現在インスタグラムのフォロワー数は1万8000人。昨年かなり増えたが、その背景は?

佐藤:何が受けるのか色々と試していた中、昨年の4月ごろの自粛期間中に投稿したヘアスタイルの動画がとてもヒットしました。それ以来、動画を使ったスタイル紹介を継続しています。コロナ下で作品撮りもしにくいですし、毎日投稿が続けられるように、お客さまを撮影するようになりました。お客さまを動画で撮影しているのでリアルなヘアスタイルが届けられているとも思います。今では8割ほどがSNSを見て来店してくれています。

WWD:動画にスタイルの説明が文字で載せてあるのもオーダーするときにわかりやすい。

佐藤:ハッシュタグ検索より、ぱっと見てわかりやすいようにしたいと思っています。自分の投稿の中でも似ているスタイルが多いので、オーダーされたときに、僕自身が思い出すための工夫でもあります。発信することも大事ですが、それで終わりではありません。自分で把握することも大切です。

WWD:男性に響く発信のポイントは。

佐藤:フォントはポップにしすぎず毎回同じものを使用して、文字は白で色は使わないこと。ぱっと見て洗練されていて統一感があるように意識しています。男性は面倒くさがりなところがあるので、わかりやすさは必要です。美容師として人柄がわからないと単なる仕事アカウントになってしまうので、自分のファッションやライフスタイルも投稿しています。

WWD:続けるためのコツは。

佐藤:フィードの列ごとにヘアスタイルやファッションなどカテゴリーを分けている人もいるますが、なるべく続けられるように細かい決めごとは作ってはいません。本職は美容師なので、あくまで空いた時間にささっと、毎日続けられることを重視しています。1つの投稿にかける時間も5分ほどです。

WWD:店長としてスタッフにも活用術をシェアしている?

佐藤:それぞれの人間性や、やりたいスタイルがあるので、単純にフォロワー数が多い人の真似すればいいというものではありません。最近はバズらせようという風潮が強いですが、自分のスタイルを見つけ出すには時間がかかるものです。自分はこれができるようになったから、どうやって発信しようかという順番が理想的ですよね。発信のノウハウを教えるよりも、まずは美容師としての技術力が一番。一人ひとりと向き合ってそれぞれのスタイルを見つけるようにしています。接客や技術、サロンワークで細かいことにこだわれる人は、SNSにもこだわることができます。発信するための動機はなんでも良いと思いますが、得意分野や他の人と違って何ができるのかスキルを整理するよい機会です。

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スーツビジネスは終わったのか 既製スーツからアクティブスーツへ 小島健輔リポート

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。リモートワークの浸透が追い討ちをかける格好で、男性のスーツ離れが止まらなくなっている。スーツ市場はこれからどうなるのか。

 WWDJAPAN.comに掲載された「アクティブスーツ」に関する2つの記事のギャップがすごかった。2月16日の「“スーツに見える作業着”がブランド刷新、目指すは『上場&5年後100億円』」はオアシスライフスタイルグループ(以下、オアシス)の「ワークウエアスーツ」がブランド名を「WWS」に変えてロゴも刷新し、アスリートの寺田明日香さんをアンバサダーに起用してリブランディングするという華やかな記事。17日の「ワークマンが4800円でスーツ販売 裏返すと作業服に早変わり」は高機能・低価格が売りのワークマンが裏表ツーウェイの「ワークスーツ」を激安価格で売り出したというショッキングな記事だった。ビジネススーツ市場の縮小が加速する中、華やかなリブランディングとエッセンシャルな激安価格という両極の「ワークスーツ」がどう評価されるのか、価格も両極なだけに注目せざるを得ない。

「WWS」とワークマンの価格差をどう見る

 オアシスの「WWS」は2018年にローンチして早くも年商10億円規模に成長し、「アパレル界のアップル」を標榜して25年2月期の年商100億円を目指している。水道工事現場から生まれた「スーツに見える作業着」は撥水・速乾・ストレッチ・通気性・イージーケアという「ワークスーツ」の機能性を備え、セットアップで税別2万8000円・3万円という「適正価格」が企業のユニフォーム需要を捉えて伸びてきた。

 ワークマンの「ワークスーツ」は帝人フロンティアの「ソロテックス」や東レの「ドットエア」を使って開発したPB(プライベートブランド)のセットアップで、撥水・速乾・ストレッチ・通気性・イージーケアに加えてスーツとワークウエアをリバーシブルで使える優れものながら、セットアップで税込4800円(ジャケット2900円、パンツ1900円)という激安価格で売り出した。

 どうしてそんな激安価格で売れるのかというと、全量をFC(フランチャイズチェーン)店中心に「正価」販売できるからだ。初年度は2型で20万着しか生産しないから、人気の「ワークマンプラス」「ワークマン」902店舗(20年12月末、うちFC店が857店舗)で販売すれば容易に消化できるし、一部の色・サイズが残っても来シーズンに持ち越して「正価」販売するから消化歩留まりは100%で、値引きや残品のロスを価格に乗せる必要が全くない。スペックを改善しながら同一アイテムを何年も「正価」で売り続けるサステナブル MDだから(プロ向けアイテムは10年継続をうたっている)、シーズンごとに売り切る必要がないのだ。

 コロナ禍の21年3月期第3四半期累計(4〜12月)もチェーン全店売り上げは22.0%、既存店売り上げは16.0%も伸び、通期のチェーン全店売り上げは13.9%増の1389億9800万円、既存店売上は10.1%増と手堅く見込んでいる。本部の営業総収入990億900万円中の営業総利益39.8%に対して販管費は17.8%(チェーン全店売上対比12.6%!)と極めて低く22.1%の営業利益を確保すると見込んでいるから、ユニクロ以上に価格を安く抑えることができる。

「アクティブスーツ」の拡大と低価格化

 「アクティブスーツ」とか「ワーキングスーツ」とか呼び方はさまざまだが、軽量・撥水・透湿通気・ストレッチ・イージーケア・パッカブルを売り物にする高機能合繊素材のワークスーツで、17年頃からデサントやミズノなどスポーツウエアメーカーが競技用高機能合繊素材を使ってビジネスウエアに進出したのが始まりだった。当初はジェットセッターなビジネス・ライフスタイルを訴求してスタイリッシュなデザイン、ツイードなど織り組織プリントでファッション性も売り物に百貨店やセレクトショップとも取り組んだが、18年10月に青山商事がデサントと共同開発して税抜3万9000円で売り出したのを契機に実用的なビジネスウエアとして広がって低価格化も進み、2万円を切る商品も珍しくなくなったが、さすがにワークマンの税込4800円は三段跳びだった。

 もとより合繊織物やジャージのトラックスーツと大差ない製造方法だからテーラードデザインにしても縫製コストは変わらず、卸流通でも2万円を切るのは当たり前で、直開発のSPA(製造小売業)なら素材をおごっても1万円を切るのは難しくなかった。ワークマンのようにほぼ全量を「正価」販売できて大ロットで計画生産すれば、税込4800円という激安価格も無理ではなかった。紳士服のAOKIも税込4800円でセットアップ(ジャケット2900円、パンツ1900円)を売り出しており、「税込4800円」が量販ワークスーツの標準価格になりそうだ。

 高機能「アクティブスーツ」がお値頃になって急拡大すれば、既製スーツの多くが取って代わられる。革製ビジネス靴同様、高価で窮屈で時代ずれしていくテーラーリングの既製スーツは経済的にも身体的にも勤労者の負担が重く、はるかに手頃で使い勝手がよく着心地も楽でカジュアル化するビジネスシーンにフィットする「アクティブスーツ」に代わっていくのは必然だ。

崩壊する既製スーツ市場

 もとよりビジネスウエアはエグゼクティブ階級の「誂えスーツ」、オフィサー(中間管理職)階級の「ブランドスーツ」や「ビジカジ」(ジャケット+センタープレスパンツ)、セールスマン階級の「吊るし既製スーツ」、ワーカー階級や非正規就業者の「カジビジ」(ブルゾン+カジュアルパンツ)や「アスビジ」(パーカ+トラックスーツのアスレジャー通勤着)と組織階級や雇用形態で分かれており、スニーカー通勤やオフィススタイルのカジュアル化で「ブランドスーツ」や「吊るし既製スーツ」、「ビジカジ」は年々衰退してきた。コロナ禍でリモートワークが広がる中、機能性ニーズの強いセールスマン階級やオフィサー階級が「アクティブスーツ」にシフトするのは必然で、既製テーラードスーツやジャケットは加速度的に減少していかざるを得ない。

 古典的なビジネススタイルは1991〜92年をピークに減少を続けており、2020年の百貨店紳士服売り上げは91年の4分の1に落ち込み、ロードサイド紳士服専門店売上も94年の43%ほどまで落ちた。百貨店紳士服より落ち込みが小さいように見えても、青山商事の売り上げに占める紳士服売上比率は年々落ちて20年3月期は54.6%、紳士スーツ売り上げは19.9%、約434億円、160.1万着でしかなく、AOKIでも同期の紳士服売り上げは42.5%、紳士スーツ売り上げは14.5%、約261億円、104.3万着でしかない。21年3月期の紳士スーツ売上は両社合わせて190万着まで落ち込むのではないか。

 紳士スーツ市場は92年の1350万着、7750億円をピークにリーマンショック後の11年には670万着、2180億円まで落ち込んだ後、14年にかけてやや回復したが15年以降は再び減少が続き、消費増税が秋冬商戦を直撃した19年は480万着まで落ち、コロナ禍でビジネス需要が激減した20年は350万着まで落ち込んだと推計される。

 ここまで落ち込むとシルエットやサイズ、素材の最低限の品ぞろえも維持できなくなるから、顧客の選択肢が狭まり修理のコストもかさむようになり、既製スーツ販売が成り立たなくなってしまう。もとより既製スーツは年々、3分の1前後が売れ残って持ち越され、新規調達でサイズや素材のバランスを補正して品ぞろえしてきたのだから、ここまで落ち込むと品ぞろえも採算も不可能になる。紳士服チェーンが形振り構わず異分野事業に走るのも必然なのだ。

アフターコロナのスーツ市場はこうなる

 11年の670万着から20年に350万着まで落ちた320万着はどこへ行ったのだろうか。そんな統計は存在しないから想像の域を出ないが、ざっくりと仕分けてみたい。

 ジャケットスタイルの「ビジカジ」はデジタル化に伴う中間管理職の減少でかえって縮小したから移行先には数えられない。ビジネススタイルのカジュアル化や非正規雇用の拡大でブルゾンスタイルの「カジビジ」やパーカスタイルの「アスビジ」に多くが移行し、リモートワークが広がって以降は急拡大したと思われる。「カジビジ」「アスビジ」へほぼ230万着、「アクティブスーツ」に50万着、PO(パターンオーダー)に40万着が移行したのではないか。

 では21年以降はどうなるのだろうか。コロナが収束したら、いずれ既製スーツ市場が回復するという期待は100%裏切られる。350万着からさらにジリジリと減り続けると見るのが賢明だ。非正規雇用とリモートワークはさらに増えて「アスビジ」が拡大し、セールスマン階級だけでなくオフィサー階級も「アクティブスーツ」に流れるから早々に100万着を超える市場を形成するが、単価の下落と競争の激化で紳士服業界に恩恵はないだろう。既製スーツの品ぞろえが細れば1週間以内の短納期POに移るビジネスマンも多そうだが、リモートワークと生活圏シフトはテーラードスーツの着用機会を激減させるから、コロナを契機にPOの拡大は止まる。

 紳士服業界に残された可能性は婦人のビジネスウエアで、売り上げの絶対額は減少に転じたとはいえ20年3月期段階の青山商事で紳士服売り上げの21.4%、紳士スーツ売り上げの58.8%、AOKIで紳士服売上の23.9%、紳士スーツ売り上げの70.2%まで上昇している。伸びるのは紳士同様に「アクテイブスーツ」とPOスーツだが、「アクティブスーツ」は紳士ほど広がらないわりに婦人アパレルとの競争が厳しく、POスーツも限られたパイの奪い合いになる。

 結局のところ、紳士服業界にとって既製スーツの激減を穴埋めするアパレル商材は見当たらず、紳士服チェーンは立地や顧客を活かした別事業を模索するしかない。自社商品のC&C(クリック&コレクト)に留まらず広範なEC事業者の商品を取り寄せて試したり受け取ったり返品するC&C 拠点ビジネスは顧客の広がりと売上増も期待できるから、カフェやシェアオフィスなどと組み合わせてチャレンジする価値があるのではないか。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。著書に店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)、12月11日に出版した「アパレルの終焉と再生」(朝日新書)

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ベルリン在住モデルに聞く、お手軽美容法&日本と異なるモデル事情

 世界に目を向けると日本とは異なる美容トレンドが生まれている。そこで連載「海外ビューティ通信」では、パリとニューヨーク、ソウル、ベルリンの4都市に住む美容通に最新ビューティ事情をリポートしてもらう。

 ベルリンは例年より雪の日が多く、ロックダウンも重なったことから外出が億劫になりがち。運動不足になるだけでなく、日照時間が少ないことからビタミンDが不足し、ウィンター・ディプレッション(Winter Depression)と呼ばれる冬季うつ病の可能性も高くなる。私たちはどう美と健康を維持すれば良いのか?インターネットには大量の情報が溢れており、どれを選べば良いのか分からず、調べているだけで疲れてしまう。

昨年から海外でのキャリアをスタート

 「とにかく何でもいいので気になったものから試すのが大事。始めるまでが一番大変なので、まずは始めて、いろいろなエクササイズを試すと合うものが見つかるはず」。そう語るのは、ベルリンでモデルとして活躍中の長谷川彩華さん。日頃から私たちの何倍も美容と健康に気を使いながら生活しているモデルという職業は、日々の努力の賜物といえる。

 日本でもモデルとして活躍した彩華さんは、2020年1月にベルリンへ移住し、すぐに現在のエージェンシー、ヴィヴァ・モデルズ(VIVA MODELS)に所属。海外でのキャリアスタートは順調と思ったところに、新型コロナウイルスのパンデミックとなった。当然ながら撮影の仕事は減り、慣れない土地での自粛生活を余儀なくされた。そんな現役モデルの彼女に、自粛生活でも気軽にできるエクササイズや美容法を教えてもらった。自宅で過ごすことが多い日々の中で、毎日実践していることは下記の通りだという。

「美は1日にしてならず」

1.早寝早起き、きちんと7時間眠る
2.朝昼晩、3食きちんととる
3.よくかんで、ゆっくり食べる
4.食物繊維やカリウムが多く、加熱後も成分が変わらないセロリを中心とした野菜とビタミンが豊富なグレープフルーツなどのかんきつ系の果物を食べる
5.1日5分でもいいから毎日欠かさずエクササイズを行う。体幹を鍛えるエクササイズを実行中
6.サプリメントに頼らない
7.可能な限り湯船につかる

 今すぐ実行できそうなことも多い。しかし「美は1日にしてならず」という言葉があるように、ただやればいいというのではない。毎日欠かさず継続しなければ効果は期待できない。まず自分に合った美容法や健康法を見つけることが重要だ。例えばスポーツジムに通えない今、エクササイズはユーチューブでお気に入りのインストラクターの動画チャンネルを見つけて参考にすれば、プロからの正しい知識やアドバイスを得ることができる。自宅で行う際もスポーツジム同様、専用のトレーニングウエアを着用すると体形の変化をリアルに知ることができてモチベーションが上がるという。

 「私は実は太りやすい体質なんです。東京にいた時はもっと忙しかったこともあり、不規則な生活に。ストレスからお酒を飲む機会も多かったんです。今よりハードなダイエットをしていたし、食事制限やサプリメント摂取もしていました。移住で生活はガラリと変わったんですが、不思議なことに体重は東京でダイエットをしていた時と変わらないんですよね。規則的な生活で健康は維持できるし、ストレスをためないことが何よりも大切だと気付きました。ベルリンは自然が多いので、公園までジョギングやウオーキングをして新鮮な空気を吸ったり、毎日ルートを変えて景色を変えたり、ロックダウン中でもできることはいろいろあるので、普段と変わらないモチベーションを保てています」。

個性が求められるベルリンのモデル業界

 日本でのモデルの仕事はまず美を追求されるというが、ベルリンでは個性が重要視され、多様性を求められるという。多国籍、LGBT、プラスサイズモデルなどが活躍するヨーロッパならではといえるが、ゲイカルチャーが確立しているベルリンは、特にそういった傾向が強いかもしれない。「まず、日本人どころかアジア人モデルと撮影現場が一緒になることは少ないし、自分と比べる対象がいないんです。ヨーロッパ人の美しさは、もう別物なんですよね。彼らは、私の黒髪のカーリーヘアがすてきだと言ってくれる。モデル同士がライバル視するのではなく、お互いに褒め合って、高めていくことが多いです。とはいえライバルからの刺激も必要なので、インスタグラムで日本のモデル仲間の近況を見ながら、自分も頑張ろうと気合いを入れています」。

 環境の変化は新たな価値観を生み、自粛生活は改めて自分と向き合うために有効な時間になっている。先の見えない状況の中で、今できることをポジティブに続けることが、心身ともに健康でいられる方法ではないだろうか。

宮沢香奈(みやざわ・かな):フリーランスライター兼コラムニスト。プレス、ブランドディレクターなどを経て、フリーランスとしてPR事業をスタート。その後、ライターとして執筆活動を開始。2014年に東京からベルリンに拠点を移し、ヨーロッパを中心に現地情報を多数の媒体で執筆中

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イラストレーターfaceが原宿の「セカンドストリート」旗艦店を初体験

 中古マーケット専門メディア「リサイクル通信」(リフォーム産業新聞社)によると、リユース市場は調査開始以来9年連続で成長を続け、2020年には約2兆5000億円、22年には約3兆円に拡大するという。そんなリユース市場をけん引するのが、業界大手ゲオホールディングス(愛知県、遠藤結蔵社長)傘下の「セカンドストリート」だ。自身も「よくリユースショップを利用する」というイラストレーターのfaceさんに、原宿にある旗艦店を初体験してもらった。

専門店の上を行く
ビンテージの品ぞろえ

 車で郊外に出掛けたときなど、道沿いにリユースショップを見つけるとつい立ち寄ってしまう」というfaceさん。気になる商品をネットオークションで見つけたところセカンドストリートが出品していたもので、実物を確認したいと取り寄せサービスを利用した経験もあるという。ただ原宿店を訪れたのは初めてで、地下1階のビンテージを中心としたアウトドア、ミリタリーの品ぞろえに驚いた様子だった。セカンドストリート 原宿店のある裏原宿にはビンテージ専門店が軒を連ねるが、引けを取らない充実ぶりに関心仕切りだった。2階にはストリート&デザイナーズブランドもラインアップされ、「いわゆるリユースショップの枠組みを超えた、セレクトへの強いこだわりを感じた」と話した。

服好きも納得・安心の買取査定

 リユースショップでは買う専門だったfaceさんに、買取査定にも挑戦してもらった。店舗ごとに持ち込まれる商品にも土地柄が出るとのことで、「原宿店ではファッション感度の高いお客さまから、旬のアイテムや過去の名品が持ち込まれることが多い」(三沢卓也セカンドストリート 原宿店店長)。また持ち込まれるアイテムは「販売する商品とリンクする」そうで、服好きの持ち込み客にも納得・安心してもらえる品ぞろえを意識しているという。原宿店で売り、それを元手にあらためて原宿店で買い物をするヘビーユーザーも少なくない。

 査定は同社の買取データベースを基に状態やトレンド性などで判断され、「真贋に最も気を付ける」という。原宿店で買取を強化しているのが、「ナイキ(NIKE)」のスニーカーや「リーバイス(LEVI'S)」をはじめとするビンテージのデニムウエアだ。査定を終えたfaceさんの感想は、「想定以上に高値が付いたものもあって驚いた」だった。三沢店長は、「ドイツのハイテク系ウエアブランド『アクロニウム(ACRONYM)』はリユース市場に出回ることが少なく、6万円を付けさせてもらった」と説明する。

2月26日から買取金額
20%アップキャンペーンを実施

 セカンドストリートでは2月26日から3月29日まで、アパレルおよび日用雑貨、家電などの買取金額を20%アップするキャンペーンを実施する。店頭、ウェブ(宅配)買取のどちらにも対応し、査定は1点からでも無料で受け付ける。

※取扱品は店舗および買取の形態によって異なる

2020年6月に
リニューアルした原宿店

 セカンドストリート 原宿店は2012年にオープン。20年6月にリニューアルして什器やその配列を変え、また商品数をあえて減らして「見せ方にこだわった」。併せて原宿の買物客に合わせて、ストリート&デザイナーズブランドを拡充。「原宿店の強みを前面に押し出した」。おかげで客から「見やすく、探しやすくなった」との声が届いているという。一方、オープン当初から強化してきた地下1階のビンテージは、競合他社である専門店のスタッフやそれら専門店の常連客も訪れるクオリティーで、裏原宿での認知を広めている。

※セカンドストリートでは新型コロナウイルス対策として、レジ前に飛沫防止用のビニールカーテンを設置。また客に対しても、来店時のマスク着用や手指消毒の協力を依頼している

PHOTO : SHIMPEI SUZUKI
TEXT : KAORI TOMABECHI

問い合わせ先
セカンドストリート 原宿店
03-5772-3427

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次世代の表現者 アオイヤマダの魅力

 「WWDジャパン」2月22日号の別冊付録「ラン&フィットネス」の表紙を飾ったのは、ダンサーのアオイヤマダ。2000年生まれの20歳ながら、数多くのMVや広告ビジュアル、雑誌モデルなどに起用され、枠にとらわれないユニークな活動で着実にその名を広めている。ダンスを始めたきっかけや新常態における心境の変化など、彼女の素顔に迫る。

WWD:あなたにとってダンスとは?

アオイ:自分の感情を伝える手段です。例えば緊急事態宣言下にインスタグラムで始めた「野菜ダンス」は、体を心配して連絡をくれるおじいちゃんとおばあちゃんに向けたもの。「私はたくさん食べてるし、元気だよ」と言葉で伝えても安心しなかったおじいちゃんとおばあちゃんが、動画を見て「元気なんだね。良かった良かった」と満足してくれた。言葉はすごく直接的だけど、ダンスはふにゃふにゃな輪郭で、受け手が自由に解釈する余白がある。それが面白いし、私には合っているんです。

WWD:ダンスを始めたきっかけは?ずっとそのスタイル?

アオイ:小さいころ、ダンスを習っているお姉さんが近所にたくさんいて、その影響で始めめました。長野の小さな町で育ち、「環境を変えたい」と高校は東京のダンスを学べる学校に通ったのですが、スタジオで鏡を見ながらひたすら練習する日々で「なんか違うな」と思いました。ある日、山口小夜子さんや勅使川原三郎さんがセッション的に踊っている動画を見て「これだ!」と思い、感情のままに踊るスタイルにシフトしました。

WWD:その後、ダンスとの向き合い方に変化は?

アオイ:最近まで、ただ街を歩いている人のように“ダンスを見ようと思っていない人”に踊りを見せ、その人の感情がどう変化するかに興味がありました。でも今は、“ダンスを見ようと思っている人”に向けて踊ることに興味があります。去年、舞台「星の王子さま―サン・テグジュベリからの手紙―」(森山開次演出・振付)の王子役をやらせてもらったのがターニングポイント。王子という一つのキャラクターに向き合い、どんな王子を見せればいいのかをただひたすら考えました。落ち込んだり悩んだりもしましたが、“確固たるキャラクターを提供する”というダンスの新たな魅力を発見でき、表現者としてすごくいい経験になりました。

WWD:ダンスは心を満たしてくれる?

アオイ:内部と外部が繋がる瞬間は、すごく気持ちがいいです。普段は物を持つときに「よし、腕を動かそう」と意識しないけど、ダンスは全神経を集中させて一つ一つの動きをコントロールしなきゃいけない。その中で、心と体が完全にリンクする動きができた時に、「あっ、今、つながった」ってすごく高揚するんです。これがダンスを続ける理由の一つかもしれません。

WWD:ダンス以外でも体は動かしている?

アオイ:最近は、朝のお風呂上がりにヨガをするのにハマってます。以前は筋トレをやっていたのですが、必要ない部分にも筋肉がついちゃうのでヨガに変えました。体を動かしやすくなったし、呼吸も無理なく続くようになり、効果を実感しています。体はあくまで入れ物だから、自分で手入れしないと長続きしない。手入れの仕方は人それぞれなので、いろんなアクティビティーを試して、体が求める動きを見つけると面白いと思います。

WWD:ファッションではどんな服が好き?

アオイ:作り手を身近に感じられる服です。おばあちゃんが作ったブローチとか、あるお店で満月の日にしか作られていないスカーフとか。作り手の背景を聞くと愛着が湧いて、自然と身に付けたくなる。ハイブランドの服でも、デザイナーさんの話を聞く機会があったら絶対に好きになっちゃうな。

WWD:モデル活動の楽しさは?

アオイ:モデルをやりたいと思っていたわけではないですが、自分の動きがモデルのポージングとして機能するのが面白いし、何でもアリな今の時代を表していると思います。これからも、広い意味での“表現者”としていろんなことに挑戦していきます。

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2021-22年秋冬ウィメンズコレが開幕 米コレは副大統領の継娘がモデルデビュー、「ゴシップガール」とのコラボも

 2021-22年秋冬ウィメンズ・コレクションが開幕した。これまでのニューヨーク・ファッション・ウイークがアメリカン・コレクションズに改称し、2月14日にシーズンをキックオフした。ここ数年ニューヨーク・コレクションのファッションとバックステージを取材してきた北坂映梨「WWDJAPAN.com」ビューティデスクと、今季はメンズコレクションもリポートしてきた大澤錬「WWDJAPAN.com」記者が新生アメリカン・コレクションズをレビューする。

北坂映梨「WWDJAPAN.com」ビューティデスク(以下、北坂):あっという間にウィメンズコレクションもスタート!最後に出張に行ったのが昨年2月のNYコレなので、ちょうど一年が経ちました。本当に、時が経つのが早い(笑)。

大澤錬「WWDJAPAN.com」記者(以下、大澤):今季はデジタル・プラットフォーム「ランウエイ360(Runway360)」を使って、場所や時期に関係なく、アメリカを拠点とするデザイナーがコレクションを発表できるようになりました。アメリカファッション協議会(以下、CFDA)のトム・フォード(Tom Ford)会長によると、昨今デザイナーがNY外やシーズン外で発表することが増えていることを受け、より柔軟な体制が必要と感じての決断だそうです。

北坂:そんな「トム・フォード(TOM FORD)」は、新型コロナウイルスの影響で急遽コレクション発表を延期せざるを得なかったみたいです(NY時間の2月26日に発表予定)。さて、大澤君はどのショーが気に入りました?

「ゴシップガール」を意識した「アリス+オリビア」

大澤:「アリス+オリビア(ALICE + OLIVIA)」が個人的ナンバーワンです。世の中が暗い状況の中で、改めてファッションの楽しさを実感することができました。赤いカーペットが敷かれた螺旋階段に、赤や黒のドレス、地面に擦れるほどの超ロングコートで“お嬢さま感”満載。

北坂:人気ドラマ「ゴシップガール」をイメージしたんだってね。もともと2007年に放映開始したドラマですが、10年以上立った今、ちょうどリブート(復活)版を制作しています。撮影現場の写真がSNSやネットで出ていますが、原作よりも人種やジェンダーが多様になっていたり、スタイルも今っぽくなったりしていて話題になっていますよね。「セックス・アンド・ザ・シティ(以下、SATC)」もそうだけど、「ゴシップガール」は当時のファッションに大きな影響を与えたドラマ。ヘッドバンドに、制服とハイブランドをミックスしたスタイルが懐かしいです。

大澤:実際、今季は「SATC」「ゴシップガール」のコスチュームデザイナー、エリック・ダマン(Eric Daman)とコラボしたそうですよ。チェック柄のセットアップ、シルバーのレザーパンツ、半丈ニットなど、ファッショナブルなアイテムも数多く発表しました。「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」の“9ホールブーツ”を着用したモデルがいましたが、コラボなんですかね?(笑)

北坂:そうかも!?タータンチェックのプリーツスカートやツイードジャケットなどいわゆる“プレッピー”スタイルに合わせていたのがかわいかったね。モデルもドラマを意識しているのか、ちょっと性格悪い感じの演技をしていて、面白かったです(笑)。

今話題のイットガールがデビューを果たした「プロエンザ スクーラー」

北坂:私は「プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)」が印象に残っています。服ももちろんそうだけど、話題のエラ・エムホフ(Ella Emhoff)がランウエイデビューを果たしました。

大澤:カマラ・ハリス(Kamala Harris)米副大統領の継娘で、就任式に「ミュウミュウ(MIU MIU)」のコートを着て話題になっていましたね。

北坂:そうそう!その後モデル事務所のIMG モデルズ(IMG MODELS)と契約し、早速「プロエンザ スクーラー」のデジタルショーに出るなんてスゴイ。新人とは思えない余裕を醸し出していたよね。CFDAのサイトではデザイナーの2人とエラの対談の動画も見れます。

大澤:上質な素材にカッティングやパターンで変化を加えたテーラードやトレンチコートは大人の女性に人気を集めそう。トレンドのヘソ出しトップスの後ろ身頃にスリットを入れるなど、細かいディテールにも抜け目がありませんね。3本ライン入りのレザーコートは男性でも着こなせそうです。

北坂:たしかに、スリットやちょっとした肌見せが絶妙に色っぽくて素敵でしたね。対してボトムスはゆったりしたシルエット、足元もフラットシューズでリラックスした雰囲気も感じ取りました。「着心地の良さ」のトレンドはコロナ禍で一気に進んだ印象ですが、しばらく続きそうですね。

1960年代にタイムスリップした「アナ スイ」

大澤:続いてNYコレの常連、「アナ スイ(ANNA SUI)」。作家兼映画監督のジョー・マソット(Joe Massot)が手掛けた映画「ワンダーウォール」がインスピレーション源でした。前回のノスタルジックなコレクションから、レトロ感漂うBGMやムービーにより、さらに時代を遡った印象を受けました。今回は色鮮やかな柄やモチーフを施したアイテムが盛り沢山。特にアニマル柄のファーを使用したアウターは数多くのモデルが着用していました。

北坂:1960年代のサイケデリック感と、ブランドが大好きなファンタジーを掛け合わせた感じでしょうか。これこそ気分が上がりそうな柄とカラーのミックスですよね。そういえば前季は“Zoom映え”を意識して柄を上半身に集中させたなんて言っていたけれど、今回もトップスにボリュームを持たせたり、袖や襟にアクセントを置いたりしたデザインが印象的でした。今回も意識したのかな?

日常的に取り入れられるグラマーを表現した「3.1 フィリップ リム」

大澤:「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」はルックでコレクションを発表しました。同ブランドは、サステナブルな取り組みを積極的に行うほか、オンライン限定のコレクションを発表するなど、昨今さまざまな活動をして話題を集めています。アイテムは穴あきニットやアウトドアのマウンテンパーカ、カーゴパンツ、プリーツスカートなど。全ルックに一体のモデルを起用した背景には何か意図があるのか、資金面の問題なのかは分からない(笑)。

北坂:コロナ対策なのかもね。毎日着られるワードローブを提案しているブランドですが、今季は「グラマー」をキーワードに、定番アイテムにひねりを加えたそう。スパンコールをあしらったシフォンドレスや大胆なボウタイを加えたシャツなど、やりすぎ感のないグラマラスな雰囲気で確かに日常的に着られそうです。個人的には、ビンテージのテキスタイルから着想した馬のプリントのスカートやシャツが可愛いかったです!

ジェンダーニュートラルラインを初披露した「アディアム」

北坂:「アディアム(ADEAM)」はお得意のフェミニンで上品なスタイルを披露しましたが、動画の途中で急に雰囲気がガラリと変わり、男性モデル!?と思ったら、後半はジェンダーニュートラルライン「アディアム イチ(ADEAM ICHI)」の発表でした。ブランド初のジェンダーニュートラルラインで、さらにサイズインクルーシブなんだとか。同じアイテムを男性と女性モデルがいろいろなコーディネートで着こなしていましたね。ユニセックスラインはシンプルになりがちですが、異なる色や柄をドッキングしたりしてちょっとした遊び心を感じました。ブランドらしい品のあるデザインで、とても好印象!ブランドにとって、新たな客層を取り込めそうです。

大澤:新ラインは、東京のユースカルチャー、ストリートファッションにインスピレーションを得て製作したそうです。またメインラインはデザイナーの前田華子が森美術館で開催されていた「STARS展」を訪れた際に影響を受け、現代アートを着想源にしています。BGMはYunaの「Dance Like Nobody’s Watching」を採用し、笑顔を見せるモデルとのマッチングが最高でした。今回は新デザインとして、同ブランドのモノグラムプリントがブラウス、ドレス、パンツに登場。編集部には一足早く、モノグラムのスカーフが届きました!レトロ感漂うカラーリングに、ファッションの要素をプラスした可愛らしいところが現代のムードに合っていますね。ドレスやスカート、パンツの裾に施されたオリジナルのプリーツが素敵でした。

90年代の米ユースカルチャーにオマージュを捧げた「アール サーティーン」

大澤:ボーイッシュでロック感漂う「アール サーティーン(R13)」は、定番のデニムをはじめ、カジュアルなパーカやスエット、マキシ丈のコート、チェックワイドパンツなどを発表しました。路上喫煙や中指を突き立てる仕草、茶色の紙袋で隠されたドリンクなど、Tシャツにプリントされた“YOUTH”の文字通り、アメリカのユースカルチャーをイメージしているのでしょうか。

北坂:白いサングラスをみた途端、私はカート・コバーン(Kurt Cobain)を連想しました(笑)!グランジロックな雰囲気はブランドの鉄板ですよね。アイテムはベーシックなものが多いけど、スタイリングがいつも秀悦でランウエイを観ながら「可愛い!」と思った記憶があります(笑)。今季はそれがあまり感じ取れなかったのがちょっと残念でした。そろそろこのレビューも超大作になってきたので、最後に気になったブランドを一つどうぞ!

大人の女性を魅了する「ガブリエラ ハースト」

大澤:「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」ですかね。水浸しの古びた倉庫でコレクションを発表した同ブランドは、父から引き継いだというウルグアイの牧場で生産するカシミヤ、ウールなどの高級素材を巧みに使うクリエイションが特徴。今シーズンも自身の強みを活かしたニットやガウン、ポンチョのほか、レザーを使用したバッグやコートなどを提案しました。

北坂:リサイクルした素材を用いることも多く、サステナブルなブランドとしても注目を集めています。カシミヤのアイテムは見るだけでも着心地の良さが伝わりますね。先シーズンのトレンドとして浮上したパッチワークも、ポンチョなどに登場。繊細なレースとレザーやニットの切り替えがとても上品でありながら、フェミニンなタッチを加えていました。後半はシアーな素材や艶やかなサテン生地を用いた、大人の女性に似合いそうなアイテムを連発していましたね。

大澤:デザイナーのガブリエラ・ハースト(Gabriela Hearst)は昨年12月に、「クロエ(CHLOE)」の新クリエイティブ・ディレクターに起用されました。今後はどのように両ブランドの差別化を図るのかにも注目です!

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三上悠亜がアパレルブランドをスタート、260万フォロワーをどう生かす?

 抱えているSNSのフォロワー数で考えれば、三上悠亜は圧倒的なインフルエンサーだ。インスタグラムで263万人、ツイッターで163万人のフォロワー、YouTubeのチャンネル登録者数は41.9万人を抱える。とはいえ、その大多数はセクシー女優としての、つまりは服を着ていない三上悠亜のファンなのだ。そんな彼女がアパレルブランド「ミーユアーズ(MIYOUR’S)」をスタートし、アパレルブランド事業に本腰を入れるという。パートナーは韓国の人気モデルのテリのマネジメントや韓国コスメブランド「ミルクタッチ(MILKTOUCH)」を運営するクージー(Coogee)で、インフルエンサーのマネジメントやD2Cブランドのプロデュースではよく知られた会社だ。服を脱ぐことを仕事にしているセクシー女優が、なぜアパレルブランドを始めるのか。三上本人に直撃した。

WWDジャパン(以下、WWD):SNSでものすごい数のフォロワーを抱えていますが、誰が運用を?

三上悠亜(以下、三上):私一人でやっています。どんな写真を撮影してから、いつ何を投稿するのか、インサイトはどうかなども私ひとりで見ています。というか、投稿作業自体も私しかやっていないです。

WWD:運用を外部に相談をしたことは?

三上:それもないですね。ツイッターもインスタグラムもずっと自分だけで管理してきました。

WWD:ではなぜここまでフォロワー数が伸びたのでしょう?

三上:うーん。投稿に対してどうリアクションがあったかはそれなりに注意して見ていますが、それ以上に見ているのはファンからのコメントです。返事はできないですが、基本的にはすべて目を通しています。そのことが自然とフォロワーさんのたちの考え方が見えているようになっているのかもしれません。あとツイッターとインスタグラムは少し使い方を変えていて、ツイッターは男性向けにセクシー女優関係の情報発信に、インスタグラムはプラス自分の好きなもの、ファッションやコスメ、あとはボディケアなどの情報を入れています。それも本当に最初は女性ファンを意識してというより、インスタグラムのオシャレな雰囲気に合わせて、自分の好きなファッションやコスメ情報を入れていた、という感じです。

WWD:インスタグラムのフォロワー数の内訳は?

三上:260万人のフォロワー数のうち90%が男性です。1割の26万人くらいの女性フォロワーですが、インスタグラムを始めた当初はそうなることを全然予想していませんでした。先ほども言ったようにファッションやコスメの情報を入れていたら、あるときから女性からのいいねやコメントも多くなっていったという感じです。以前に一度、意識的に女性向けの投稿を増やしたことがあったのですが、それも大変だったので、今はまた自然体に戻しました。

WWD:投稿に対するリアクションはどうでしょう?

三上:例えば、財布やコスメなど私が映っていない投稿は2万いいね、服を着ている私が映っていると5万いいね、服を着ていないと10万〜12万いいね、という感じです。

WWD:なるほど。わかりやすいですね。それでは、なぜファッションブランドを?

三上:ファッションは昔から好きでしたが、一番のきっかけは、インスタの服やコスメの投稿にいいねがたくさんついたり、イベントに20代前半のすごい可愛い子が私の投稿した服とお揃いの服を着用して遊びに来てくれたりして、女性のファンが増えていることを実感したからです。セクシー女優をはじめたときは考えもしなかったのですが、インスタグラムの投稿へのリアクションを通して、私が好きなものに共感してくれる女の子が沢山いるんだなって。

WWD:「ミーユアーズ」について詳しく。

三上:プロデュースという形で、自分のワードローブをクージーのスタッフに見せて、それをベースに服を作ってもらって、最終的にサンプルの色や形をチェックしています。なので服は基本的に私の好きな甘いテイストがベースになっています。19日のオープンで、まずは9〜10型を販売し、月に10型を投入していきます。ワンピースやブラウスで、商品単価は1万円前後です。先行して行ったテスト販売では3回とも、それぞれ500万円ほどの在庫が数分で即完しました。すごく嬉しかったです。

WWD:プロデュースとは具体的にどんな役割?

三上:服作りからECサイトの運営、ブランドのSNSの運用まではパートナーのクージーになります。私はインスタグラムなどを通じてファンの声を受け止めて製品にフィードバックしつつ、きちんとプロモーションもしていく。「ミーユアーズ」に関しては、お金を稼ぐ、というより女性ファンとの繋がりのため、という方が大きいです。

WWD:顧客像は?

三上:イベントやインスタのフォロワーを見ると、20代前半の本当に可愛い女の子が多いんですよ。スイート系のテイストがすごく似合う人が多くて、テスト販売でも実際にそういった人に購入いただいています。

WWD:服作りにもっと関わる気持ちは?

三上:もちろんインスタライブやコメントなどでいただいたファンからの声は製品に落とし込みたいと思っていますし、その点ではクージーさんとも一致しています。任せられることはきちんとプロに任せたい、というかリニューアル前の「ユアーズ」のときはかなり自分でやらないといけないことが多くて大変だったので、クージーさんみたいなプロの方と一緒にできるのが、すごく嬉しいです。

WWD:好きなブランドは?

三上:ハイブランドだと「ディオール」「セリーヌ」「フェンディ」が好きです。やっぱり財布やバッグはハイブランドだとテンションが上がります。服だと「スナイデル」「セルフォード」とかマッシュ系のブランドが大好きで、お店にも行きますし、それ以上にウサギオンラインでかなり買っています。

WWD:ショッピングはどんな感じ?

三上:本当に稀にですが、アウトレットでテンションが上がりすぎて100万円分の買い物をしちゃうこともありますが、基本はそんなに無駄遣いをするタイプではありません。ネット通販を使うことが多いですが、たまのショッピングはマネージャー(男性)や、ずっと担当してもらっているヘアメイクさん(男性)の、気心の知れた3人でビームスやユナイテッドアローズなどのセレクトショップに行くことが多いです。つい先日もみんなでビームスインターナショナルに行って、私とマネージャー(男性)で一つのコートを試着して、お互いに「これいいね」「似合う似合う」とかあれこれ言って買い物しました。マネージャーさんと行くと、買った服を持ってもらえて楽というのもありますが。

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教えて!パタゴニアさん 連載第5回 外部組織と協働してコミュニティーを作る方法

 サステナビリティ先進企業のパタゴニアの担当者にその取り組みを聞く連載第5回。環境と人権に配慮したビジネスを行うには、個人・一企業での取り組みでは限界があり、NPO・NGOをはじめとする外部組織との協働が不可欠です。パタゴニアは1970年代から環境団体と協働をはじめ、85年からは自然環境の保護・回復のために売り上げの1%を利用することを誓約。これまでに総額1億ドル(約104億円)相当の寄付を環境助成金プログラムや製品寄付を通じて行ってきました。そんなパタゴニアは、現在の環境危機をどのように捉え、どのような行動を起こしているのでしょうか。中西悦子環境社会部門アクティビズム・コーディネーターに聞きます。

WWD:現在の気候危機をはじめとする環境危機をパタゴニアはどのように見ていますか?

中西悦子環境社会部門アクティビズム・コーディネーター(以下、中西):パタゴニアは一企業として、科学者が「ここから正念場の10年」という気候危機、そして地球上全ての生物が絶滅の危機に瀕しているという事実を重く見ています。この問題に対して、私たちの声、想像力、ビジネス、コミュニティー、全てのリソースを活用して行動します。

WWD:自社だけでは難しいことも多そうです。

中西:その通りです。そのため、再生可能エネルギーを促進する運動に取り組んだり、気候変動によって最も深刻な影響を受ける人々の権利のために闘ったりしている数百のNPO・NGO組織を支援しています。2018年11月には、気候危機に取り組む複数の組織に、トランプ政権による減税政策の結果発生した予定外の現金1000万ドル(約14億円)を提供しました。

WWD:寄付だけではなく、社員が自らボランティアなどで環境団体と共にアクションを起こしていますね。

中西:社員の多くはアウトドアで過ごすだけではなく、それを保護することにも情熱を傾けています。当社では1994年にスタートした環境インターンシップ・プログラムを通して、最長2カ月間職場を離れ、給与と福利厚生を受けながら各自が選んだ世界各地の環境保護団体の活動に参加することができます。今期は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で実施できていませんが、昨年は43団体、延べ約1万時間のボランティア活動を行いました。地域コミュニティーで活動する小規模の草の根団体にとって、パタゴニア社員のインターンが提供する無償ボランティアは貴重なリソースであり、また、インターンシップを経験した社員もまた、本人の体験を通じた言葉で語り、インスピレーションをもらい、自然環境を守るための取り組みへの深い理解、そしてパタゴニアのミッションを再確認して職場に戻っているのでいい相乗効果を生んでいます。

WWD:そうした経験が社員一人一人の環境への理解を深め、店頭や地域から広がるコミュニティーの輪につながっているのですね。

中西:私たちはいち早く地域の自然環境の変化に気づき、その生態系を守るために活動する方々を、共に未来をつくるパートナーと考えています。自分たちのビジネスや暮らしに必要な水や土や空気を守り、健全な地球を望む点が共通していますから。互いに関係し、影響し、持ち場を守るというような気持ちでいます。

WWD:その輪は確実に広がっています。

中西:2002年には、(パタゴニア創業者の)イヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard )と、ブルー・リボン・フライズのオーナーであるクレイグ・マシューズ(Craig Mattews)が、売り上げの1%で自然環境保護に貢献するビジネスの奨励を目的とする非営利団体「1%フォー・ザ・プラネット(1% FOR THE PLANET)」を設立しました。1社だけで行動するのではなく、自然環境保護の必要性を理解する企業の同盟です。参加企業は「ビジネスでの利益と損失は地球環境の健全性にも直接関連する」ことを理解し、産業が与える社会的・環境的影響に関心を持っています。

WWD:この他にも協業している主な組織は?

中西:テキスタイル・エクスチェンジ(TEXTILE EXCHANGE)、サステナブルアパレル連合(SUSTAINABLE APPAREL COALITION)、公正労働協会(FLA)、ブルーサインテクノロジーズ( BLUESIGN TECHNOLOGIES)、コンサベーション・アライアンス(CONSERVATION ALLIANCE)、革新的な気候・エネルギー政策を求める企業グループ(BICEP)、フェアトレードUSAなどです。

WWD:日本の組織との協業はありますか?

中西:一般社団法人コンサベーション·アライアンス·ジャパンや気候変動イニシアチブ、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)などに参加しています。JCLPは気候危機に速やかな脱炭素社会への移行を実現し、1.5℃目標の達成を目指す企業グループです。30年までに再生可能エネルギー比率50%を目標とすることなど、政策提言なども行い、企業の立場から脱炭素社会への具体的な道筋について意見を述べています。昨年10月26日、菅首相が所信表明演説で、50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにし、脱炭素社会の実現を目指すという日本政府の目標を示し、11月には国会で「気候非常事態宣言」が採択され、遅ればせながら日本も脱炭素社会に向けて動き出しました。

WWD:菅首相のカーボンニュートラル宣言はインパクトがありました。

中西:世界の潮流、ESG投資など金融の動きなど要因はさまざまにありますが、これまでの市民活動、NPO・NGOによる働きかけはもちろん、最も気候変動の影響を受ける若い世代の声の広がりもこの動きを後押ししています。実現に向けた対策を加速させていくためには、企業やNPO・NGOだけでなく、スポーツコミュニティー、市民、学生、自治体職員、一次産業従事者など、地域やテーマによってさまざまなステークホルダーとともに取り組んでいくことが重要であると考えています。

WWD:環境保護活動を成功に導くスキルの提供も行っていて、助成先を対象とした宿泊型ワークショップ「草の根活動家のためのツール会議」(米国は1994年、日本は2008にスタート)からさまざまな活動に広がっています。

中西:18年に実施した「草の根活動家のためのツール会議」は気候変動をテーマに行い、その後、長野県白馬村ではスノーボーダーによる気候変動問題に取り組むグループ一般社団法人プロテクト アウワ ウィンターズ ジャパン(PROTECT OUR WINTERS JAPAN、以下、POWJ)が設立されました。自然エネルギー信州ネットや白馬村職員など、会議に参加したメンバーが中心となって地元企業の支援を集めながら、長野県知事や白馬村長も出席した「気候変動&地域経済シンポジウム―雪を守る、白馬で滑り続けるー地域を豊かにする山岳リゾートを目指して」を開催しました。この活動をきっかけに、スノーボーダーだけではなく、住民や高校生の積極的な取り組みも生まれて国内3番目となる白馬村の「気候非常事態宣言」また「カーボンゼロ宣言」を後押ししました。

WWD:店頭と連動した署名活動もありますね。私も署名したことがあります。

中西:パタゴニア直営店も協力したPOWJによる再生可能エネルギー100%のスキー場を目指す1万4509筆の応援署名が、20年10月29日に一般社団法人白馬バレーツーリズム(HAKUBAVALLEY TOURISM)へ届けられました。これに先駆けて、エリア内のスキー場ではナイター営業を再生可能エネルギーで行うなどの具体的な取り組みが始まり、スキー場だけでなく飲食業や宿泊業などさまざまな企業の皆さんがSDGsの取り組みに着手し始める動きになっています。

また、昨年12月には「草の根活動家のためのツール会議」の一環で「クライメート・アクティビズム・スクール」を15〜24歳の若い世代を対象にオンラインで実施し、26日は143人、27日は140人が参加しました。10月に募集を開始し1カ月で100人の定員に449人の応募があり、うち150人が高校生です。気候危機時代を見据えて新たに学び、行動することを実践したいと手を挙げてくれました。未来は明るいなんて簡単に言わず、彼らに未来を任せるだけではなく、何ができるのか考え、大人の私たちも持ち場の役割を果たしていかなければいけません。パタゴニアも行動し続けます。

WWD:今、日本で注目しているNPO・NGOは?
中西:ジャパン・ビヨンド・コール(JAPAN BEYOND COAL)の動きや、実際に影響を受けることになる若い世代によるFRIDAYS FOR FUTURE、NO YOUTH NO JAPAN、などの活動にも注目しています。ジャパン・ビヨンド・コールは気候変動の進行を止め、持続可能なエネルギー社会を実現するために要因である温室効果ガスCO2を排出する石炭火力発電所を30年までにゼロにすることを目指し、国内で気候変動に取り組むNPO・NGOが協力して活動しています。その声を社会に反映させ、社会をつくる担い手としてともに取り組みたいと考えています。

答えてくれた人:中西悦子(なかにし・えつこ/環境社会部門アクティビズム・コーディネーター:2002年パタゴニア日本支社入社し、渋谷店に配属。07年から環境部門で環境助成金、非資金的な環境NPO・NGOの支援、環境キャンペーン、イニシアチブを担当。アクティビズムの責任者として、気候危機をはじめとする環境・社会問題の解決に向けて社内外のさまざまなステークホルダーと協働、共創する。助成先を対象とした宿泊型ワークショップ「草の根活動家のためのツール会議」を企画運営。パタゴニア製品との出合いのきっかけでもあるスキーを楽しみ、ボランティアでは、北海道に生息するシマフクロウの研究者ともに保護活動に参加。日々行っているサステナビリティの取り組みは堆肥づくり、応援したい活動への寄付

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パントンが選ぶ2021年秋冬トレンドカラー14 アリアナ・グランデらの着こなしにも注目

 パントン・カラー・インスティテュート(PANTONE COLOR INSTITUTE以下、パントン)は、2021-22年秋冬ニューヨーク・ファッション・ウイーク・カラートレンド予測を発表した。

 20年12月に「パントン・カラー・オブ・ザ・イヤー(PANTONE Color of the Year)」として、太陽をイメージさせる“イルミネイティング(Illuminating、明るい黄色)”と雲を思わせる“アルティメット グレー(Ultimate grey)”を選出したが、21-22年秋冬トレンドカラーも同様に自然に基づいたものや、明るく落ち着いたカラーの数々を選んだ。大胆でホットなピンクや、濃いオレンジなど、明るい色も多く並ぶ。ここではカラートレンドに挙げられた14色と、20年にすでにトレンドを先取りしたセレブリティーのファッションと共に紹介する。

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若手筆頭株「エムエーエスユー」 世界を見据えた28歳デザイナーの挑戦

 OEMやブランド事業を行うソウキ(SOHIKI)が2017年春夏に立ち上げたメンズブランド「マス(M.A.S.U)」。18-19年秋冬シーズンに当時25歳の後藤慎平デザイナーが加入し、現在のブランド名「エムエーエスユー(MASU)」に改称してリブランディングを行った。複雑な加工や繊細な縫製、キャッチーなデザイン、手に届く価格帯を武器に20年春夏シーズンには、卸先がビームス(BEAMS)やトゥモローランド(TOMORROWLAND)など25アカウント、30店舗にまで拡大し、存在感が増している。海外進出も視野に入れて、2月18日には初のランウエイショーを控える。若手デザイナー筆頭株の後藤慎平「エムエーエスユー」デザイナーに現在に至るまでの経緯や苦悩、若手から見るファッション業界の在り方などを聞いた。

WWD:現在までの経歴を教えてください。

後藤慎平(以下、後藤):高校卒業後、文化服装学院に入学しました。在学中はビンテージショップのライラ(LAILA)でアルバイトをしていました。店にはフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)在籍時の「セリーヌ(CELINE)」やマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)が手掛けていた時代の「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」などの貴重なコレクションピースやアーカイブが並び、リメイクやお直し担当として1年間働きました。卒業後はそのままライラに入社して、21歳で同社のオリジナルブランド「セブン バイ セブン(SEVEN BY SEVEN)」の立ち上げに参加し、企画や生産管理を4年間務めました。その後、知人の紹介で現在の会社にデザイナーとして入社しました。

WWD:「エムエーエスユー」のコンセプトは?

後藤:丁寧語の「ます」に由来しています。「ます」は、日常で当たり前に使われてすぎて、あらためて意識されていない言葉。そういった普遍性に、服を通してフォーカスしたいという思いを込めました。そして、文字通り丁寧なクリエイションをしようという姿勢や気持ちも反映しています。クリエイションを通して新しい男性像を提案したいです。

WWD:新しい男性像とは?

後藤:「男だから泣くな」「男だから闘え」のような「男性だったらこうあるべきだ」という固定概念や風潮が昔から苦手でした。男性も繊細な感情や弱い部分、細やかさ、優しさを持っています。そういった小さな幸せに気付けるような感性は素敵ですし、人生が豊かになる。だから、その視点を洋服で伝えたいです。ファッションにハマったきっかけがビンテージなので、ポケットの裏に何かが書いてあったり、ほこりやごみに混じってメモが入っていたりすることに気付くのも、一種の感性だと考えています。「エムエーエスユー」のアイテムでいうと、ウエストの裏地に無数のクローバーの刺しゅうをあしらったテープが付くパンツがあるんですが、その中にランダムで四葉のクローバーを入れており、気付いた人だけが楽しめるポイントです。

WWD:ほかのブランドにない強みは?

後藤:僕はライラでデザイナーズからジャンクな物まで膨大なビンテージ服に触れてきました。時には博物館に入るような貴重な資料(服)を解体して作りを学びました。それが、僕の知識と経験になり、ほかにはない服作りに役立っていると思います。また、親会社の出資元が、中国・大連で縫製工場を運営する会社というのも強みです。大連の工場の職人が難しい縫製にも取り組んでくれているのでデザインの幅が広がり、コストを抑えることができます。

WWD:インスピレーション源は?

後藤:日常的に感じる不満や疑問、怒りなどの感情の原因を突き詰め、クリエイションとしてプラスに表現できるかを考えます。文化服装学院の図書館で過去の資料やコレクションブックなどで気になったルックをいくつも記録して、スタイルやディテールなどの共通点を探すときもあります、そうすれば自分自身の内面を理解することができて、コレクションの表現にもつながります。

WWD:前身の「マス」に参加したときは、ブランドをどのように変えていこうと思った?

後藤:自分のスタイルを無理に変えても、上手くいかないと思いました。だからブランドをただ引き継ぐのではなく「リブランディングさせてくれ」と伝えました。当時はストリートが全盛期で、僕にはその背景がなかったので、時代に迎合した服作りをしても、自分にずっと嘘をつき続けることになる。であれば例え受け入れられなくても、自分が積み重ねてきたものに賭けたいと思いました。

WWD:取り扱いも年々増えるなど順風満帆なイメージだが。

後藤:ストリート全盛期に現れた得体のしれない若者のブランドなので、最初はビジネス的には厳しかったです。みんなに好かれるような “売れる”スタイルは理解しつつも、そこに舵を切りたくないという葛藤と周囲の期待に早く応えなきゃというプレッシャーがありました。自分の感覚を100%信じたクリエイションだけで勝負するのは、賭けにも近い感覚でしたが、幸いなことに評価してくれるお店やスタイリストが少しずつ増えていったので、徐々に軌道に乗ってきたという感覚です。当時も今も変わらず、大変ですが。

WWD:28歳という立場からファッション業界をどう変えていきたい?

後藤:「ファッション業界は華やかさと苦しさが隣り合わせだ」と、この業界に入る前からよく耳にしてきました。やりがい搾取でネガティブなイメージを持つ人が業界内外にもたくさんいると思います。でも社会は流れに身を任せるのではなく、作っていくものです。自身がこうなりたい、こうしたいという気持ちに貪欲であるべき。僕は子どもの頃に思い描いていた、結婚して家や車を持つ大人像を今も諦めたくないです。業界の若い人たちも同じ気持ちじゃないでしょうか。ファッション業界でその思いを貫くために、どうしたらいいかを常に考えるべきだし、ファッションの魅力や地位をもっと高めていく努力を絶やしちゃいけない。僕はこれから先も今の姿勢でやり続けたいです。

WWD:5年後、10年後にブランドはどうなっていたい?

後藤:まず国内で人を熱狂させて、その熱量が他国からどう評価されるのかを感じたいです。新型コロナウイルスの影響で、海外で展示会やショーを行うのが難しいので、国内で実直にコツコツ伸ばしていきたいです。今は海外進出が難しいので、国内でしっかり発信していこうという意識が強くなりました。

WWD:東コレには出たいと思わない?

後藤:東京はパリコレのように多くの海外バイヤーが買い付けに来るわけではないので、今は出たいとは思いません。会場選びの面白さや演出での表現など単独ショーだからこそ伝えられるテーマやコンセプトがあるので、2月にブランド初のランウエイショーを開催すると決めました。

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ブシュロンCEOに聞く新作ハイジュエリーとコロナによる教訓

 フランス発ジュエラー「ブシュロン(BOUCHERON)」は1月、新作ハイジュエリー“ヒストリー オブ アール・デコ”を発表した。テーマはコレクション名にあるように“アール・デコ”。「ブシュロン」といえば、本物の花びらやエアロゲルなどを使用した既成概念を超えたハイジュエリーが印象的だ。今回、ジュエリーでは定番的な“アール・デコ”というテーマを採用した理由やコレクションの見どころ、そして、コロナによるビジネスの影響についてエレーヌ・プリ・デュケン(Helene Poulit Duquesne)最高経営責任者(CEO)にオンラインインタビューした。

WWD:新作ハイジュエリーのテーマに、ここ数シーズン続いた独創的なテーマではなく定番的なアール・デコを選んだ理由は?

エレーヌ・プリ・デュケンCEO(以下、プリ・デュケン):「ブシュロン」では年に2回ハイジュエリーを制作している。1月はどちらかというとクラシックなテーマを採用し、7月は新素材や新しい技術を使用した革新的でクリエイティブな面を強調したコレクションになっている。昨年の1月はメゾンのアイコンの一つであるクエスチョンマークがテーマだった。今回の“アール・デコ”というテーマはクリエイティブ・ディレクターのクレール・ショワンヌ(Claire Choinne)が選び、現代的な解釈を加えた。「ブシュロン」は自然やアール・ヌーヴォーのイメージが強いが、ほかのジュエラーよりもアール・デコと深いつながりがある。1925年に開催されたパリ万博では、アール・デコ作品を232点発表し、高く評価され、3点は受賞作品に選ばれたが、一般にはあまり知られていない。それを知ってもらうきっかけとなるコレクションだ。

WWD:今回のコレクションの見どころは?いちばん高額なアイテムは?

プリ・デュケン:アール・デコが過去のものではないということを実感してもらえるはずだ。今回のコレクションはフレッシュでコンテンポラリーな解釈を加えている。1925年の作品と2021年の作品を比べてみると、普遍性がありデザインされた50年後も通用するはずだ。最も高額な“プラストロン エメロード”ネックレスは約1070カラットのエメラルドを使用しており、価格は約400万ユーロ(xxxxxx円)。そのほかにも、コロンビアから28個ものエメラルドを調達して21年らしいアール・デコを表現した作品もある。オニキスやロッククリスタルを使用したり、配置を水平にしたりV字にしたりすることで現代的に見せている。

WWD:毎回ジュエリーの概念を超えるクリエイションに挑戦しているが、今回のコレクションでは?

プリ・デュケン:今回のコレクションのチャレンジは、調達が困難なエメラルドを見つけることあった。約1070カラットものエメラルドのビーズやクオリティーの揃った28個ものエメラルドを見つけられたことは奇跡とも言える。これはクレールの力によるところが大きい。

WWD:前シーズンからハイジュエリーのプレゼンテーションビデオに若い男女を起用しているが、その意図は?

プリ・デュケン:必要だと感じるときに男女モデルを採用しているだけで、特にステートメント的なものではない。社会学的な視点から見ると、皇帝やマハラジャといった権力のある男性がハイジュエリーを着用していた。ところが、フランス革命以降、男性は石付きのジュエリーを付けなくなった。現在の男性が付けるのはリングとウオッチくらい。だからウオッチ市場は伸びているのだと思う。それは、残念なこと。一方でアジアの男性は、ファッションにジュエリーを取り込んで楽しんでいる。ヨーロッパの男性にもアジアの男性同様にジュエリーを付けてほしいと思う。今回のテーマである“アール・デコ”は、クリアなシェイプやライン、そしてブラックとホワイトのコントラストが特徴だ。クレールはそのコントラストがフェミニンとマスキュリンに置き換えている。だから、このコレクションは男性が付けても自然で美しい。その姿をコミュニケーションに反映した。「ブシュロン」には、既に“キャトル”というジェンダーレスなコレクションがある。それは、メゾンのDNAといってもいい。“ジャック ドゥ ブシュロン”も同様だ。男性、女性という性別に関係なく、個人の好みで選んでもらえるジュエリーを提供している。

コロナは急速な変化をもたらした教訓

WWD:コロナでジュエリーの紹介や販売方法はどのように進化したか?

プリ・デュケン:コロナになってからは、ライブストリームやクレールにコレクションについて語ってもらうビデオを作成するなどデジタルを活用している。フランスでは曜日を限定して、実際にコレクションを見てもらう機会も作っており、デジタルとアナログ両方をミックスしている。コロナ以前は、顧客にコレクションを見にきてもらっていたが、今はコレクションが世界各国を巡回するようになった。バーチャル・セールスにも注力している。スタッフ3人とカメラマン2人が必要で、何を見せるかスムーズに見せることが大切だ。なぜなら、顧客は15分程度で飽きてしまうから。高額品の場合は、実際みたいというリクエストもあるので、ジュエリーを送るなどして対応している。

WWD:コロナ禍におけるビジネスの状況は?

プリ・デュケン:全体的に売り上げは落ちていない。以前は、パリや海外で購入するというケースが多かったが、移動が制限される中、どうやって実物を見せるかが課題。販売方法が複雑になってきている。

WWD:コロナ前後で富裕層や顧客の消費傾向に変化は見られるか?

プリ・デュケン:あまり変化はない、投資と考えてジュエリーを購入する人もいるが、売れ筋の平均価格帯には変化はない。一方コロナでブライダル需要が伸びている。20年5月にヴァンドーム本店営業を再開した際は、多くの若いカップルによる来店が見られた。また、誕生日や記念日などのギフト需要も増えている。

WWD:コロナで先行きが見えない中における課題と対策は?

プリ・デュケン:昨年の状況を克服してビジネスをどう継続していくかが課題だ。リモート販売をはじめ、ECではクリック&コレクト、またチャットボードを設けた。スタッフもそれらに慣れ始めている。これらはコロナが終焉しても使い続けるサービスだ。いろいろな販売方法をミックスして顧客が満足いくものを提供するべき。コロナによって選択の余地なくスピーディーな変化が求められた。コロナがなければ3~4年かかったことを優先して実現しなければならなかった。それは、ある意味、コロナのポジティブな面だった。コンフォート・ゾーンをでて変化するときだという教訓だと考える。

WWD:コロナでデジタル化が加速しているが、その対局にあるクラフツマンシップなどをどのように伝えるか?

プリ・デュケン:クラフツマンシップはデジタルと対局ではない。アトリエでの制作風景などを撮影たり工夫をしてクラフツマンシップを前面に押し出す。クラフツマンシップを伝えることはとても大切だ。ハイジュエリーは資産価値があり、代々受け継がれるもの。その品質の背景にあるのがクラフツマンシップで、それを見せるべきだと思う。職人の仕事ぶりだけでなく、われわれが挑戦している革新的な研究開発についても動画などを使って伝えていくつもりだ。

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会心の「セリーヌ オム」に辛口な仏メディアも絶賛 「エルメス」「ディオール」など海外紙のメンズコレ評

 1月19〜24日に2021-22年秋冬シーズンのパリ・メンズ・ファッション・ウイークがデジタルで開催された。フランスは20年10月30日に2度目のロックダウンが始まり、クリスマス前に小売店が再開するも、年明けからは感染力の高い変異種が拡大。ファッション・ウイーク期間中は夜6時から翌朝6時まで外出が制限され、1月21日にはヨーロッパ内の移動でも陰性証明が必須となった。フランスが拠点のブランドはパリでバイヤー向けに展示会を開いたが、密の状態を避けるためにほとんどのメディア関係者は招待されなかった。そのためフランス各紙に掲載されたレビューは例年よりも少な目。ここでは、ビッグメゾン中心に各紙のコレクション評を紹介する。

HERMES
「最も優れたカラーリスト」

 各紙から最も高く評価されたのは「エルメス(HERMES)」だった。前季に続き、舞台演出家のシリル・テスト(Cyril Teste)とコラボレーションした映像でコレクションを披露した。会場は、フランスの公的機関で使用される家具や調度品、テキスタイルを製作しているモビリエ・ナショナル(Mobilier National)。約30人のモデルが行き交い、あいさつを交わし、階段で雑談を楽しむといった内容だ。色使いが特徴的で、クミンやワームウッド、藤といった刺激的な名前のニュートラルカラーに心を奪われたジャーナリストが多かったようだ。仏新聞「ル・モンド(LE MONDE)」は、アーティスティック・ディレクターのヴェロニク・ニシャニアン(Veronique Nichanian)を「最も優れたカラーリスト」と評した。仏新聞「ル・フィガロ(LE FIGARO)」のマチュー・モージュ・ズッコーニ(Matthieu Morge Zucconi)は「ニシャニアンは快適性や素材の品質、服の変形と多様性、生地の再利用と製造に対する信念を映像でも伝えた。これらのアイテムは多くの方法で、多くのシチュエーションで着用できる」と説明。ニシャニアンは同紙に対し「新しい生き方や着こなし、働き方の概念を分かりやすく表現したかった」と語る。仏ウェブメディア「ファッション・ネットワーク(FASHION NETWORK)」のゴドフリー・ディーニー(Godfrey Deeny)も「カジュアルとラグジュアリーを両立した、ロックダウンに最適なウエア」とするも、若く美しい青年ばかりのモデルの人選にはやや不満だったようだ。「キャスティングを再考してほしい。彼らのルックスは理想的な義理の息子、もしくは最近スタートアップ企業を立ち上げた才能ある若手実業家のようだ。でも美しいスニーカーを履くべきなのは、彼らのような若い世代だけではない」。

DIOR
「尊敬せずにはいられない」

 キム・ジョーンズ(Kim Jones)率いる「ディオール(DIOR)」も高評価だった。今季はスコットランド生まれの現代アーティスト、ピーター・ドイグ(Peter Doig)との協業で、魅惑的な異国情緒とポップな軍服主義をミックスしたようなコレクションだった。キムは「ル・フィガロ」に対して「オプティミズム(楽観主義)を保つために祝杯を挙げたかった。世界で起きていることに反応するのは大切だから。世界には心の潤滑剤が必要なんだ」とコメント。「ディオール」のアーカイブを再解釈し、1947年に登場したアイコニックな“バー”ジャケットをはじめ、60年代に同ブランドのデザイナーを務めたマルク・ボアン(Marc Bohan)が制作したドレス、フランス芸術アカデミーのコスチュームに着想を得た刺しゅうや装飾が付くユニフォームなど、インスピレーションソースは多岐にわたる。「ル・フィガロ」は「キムは『ディオール』の財産であるアーカイブと、クチュールの技術をメンズ服で見事に表現した。尊敬せずにはいられない」と称賛。レモンイエローやブラッドオレンジなどの鮮やかなカラーと、ネイビー、モーブ、グレーといった落ち着いた色調を組み合わせて、ピーター・ドイグの作品のように繊細なカラーリングも高評価だったようだ。

LEMAIRE
「彼らはさらに成功する」

 色彩の美しさでは、「ルメール(LEMAIRE)」も強く印象に残っている。グラデーションのコートやレイヤードすることで深みが増すカラーパレットには、“着る人の個性を強調するための衣服”というデザイナーデュオ、クリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)とサラ=リン・トラン(Sarah-Linh Tran)の哲学が今季も貫かれていた。「通気性のあるコットンやコーデュロイ、シェットランドウールなどの素材の品質と、使いやすさを優先したカッティングは日常生活のための全てが合理的かつ知的に考えられている。半年ごとにワードローブに革命を起こすのではなく、追加することで更新していくというアプローチは、パンデミックによって強化された。今年の冬は、彼らがさらに成功する姿を私たちは見ることになるだろう」と「ル・モンド」紙は予期している。

LOUIS VUITTON
「批判者を納得させる出来ではない」

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は壮大な映像とキャッチーなアイテムが多く登場したものの、各紙のレビューは意外に少なかった。今季の着想源は、アフリカ系アメリカ人の小説家ジャームズ・ボールドウィン(James Baldwin)が、スイスの村で唯一の有色人種として過ごした経験を綴った1953年出版のエッセイ「ストレンジャー・イン・ヴィレッジ(Stranger in Village)」だ。会場はパリのテニスクラブで、大理石のブロックや鏡の装飾を設置し、ソール・ウィリアムズ(Saul Williams)が詩を口ずさんだり、ヤシーンベイ(YASIIN BEY)がラップを披露したりする中をモデルが行き交う演出だった。キルトやカウボーイハット、ガーナの民族衣装ケンテを再現するなど、多国籍の文化を象徴するアイテムで多様性を表現した。最も目を引いたのは、ノートルダム寺院やエッフェル塔といったパリのランドマークを立体的に組み合わせたトップスだ。「ル・フィガロ」は、昨年8月に発表した同ブランドのコレクションが、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク(Walter Van Beirendonck)のコピーではないかと一部から批判されたことを振り返り、皮肉交じりにこう評価した。「彼のファッションスキルは定期的に疑問視されている。今季も彼の批判者を納得させる出来ではないかもしれないが、コピーではないという彼の署名を雑多に残すことはできた」。

CELINE HOMME
「アンチを黙らせる出来」

 「セリーヌ オム(CELINE HOMME)」はパリメンズの公式スケジュールには参加せず、2月8日にデジタル形式で発表。“ティーン・ナイト・ポエム(Teen Knight Poem)”と題したコレクションは、ゲーム・オブ・スローンズ風の約13分間のフィルムで、16世紀に建てられたシャンボール城が舞台だ。アーティスティック、クリエイティブ&イメージディレクターのエディ・スリマン(Hedi Slimane)は、同コレクションを「若者とルネサンスへの頌歌」とし、「新しいロマン主義。若者は、ゲームと新しいアイデンティティーの架空のコードで自分自身を表現している」と説明している。さらに、エディは十代の頃にシャンボール城を訪れて、荘厳なモノクロの光景に魅了されたと付け加えている。城を築いたフランソワ1世は20歳にして王位継承後、レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)らの芸術家をフランスに招き入れた人物であり、フランスの芸術の礎を築いたとされる重要人物だ。コレクションにはケープやスパンコールが刺繍されたパンツ、レザージャケットにベスト、肩を落としたコート、スタッズが散りばめられたフーディーなどを着用し、メイクをした若いモデルが鋭い視線で力強く歩く。「ル・フィガロ」は「靴下が見える丈のパンツやチェックシャツ、細いネクタイ、トレンチコート、ゴシックなどエディのおなじみのアイテムを、これまでとは違ったシルエットで構成し、新しいロマン主義を表現した」と評した。辛口批評家として知られる「ファッション・ネットワーク」のディーニーも「今回のコレクションで、エディが『セリーヌ』を去る日を指折り数えていたアンチを黙らせただろう。今季のメンズ・コレクションの中で一番の出来」と称賛している。

次こそリアルショーの復活を

 今季のパリ・メンズ・ファッション・ウイーク期間中は、イベントなども一切開催されなかった。唯一開かれていたのが、ルイ・ヴィトン本社の1階に位置するスペースで行われた限定ショップだ。ヴァージルのこだわりで、ポップアップではなく“レジデンス(居住)”と呼ばれ、2021年春夏メンズ・コレクションと限定品が販売された。話題と盛り上がりに欠けるファッション・ウイークではあったものの、次シーズンにはリアルのショーが復活することを期待したい。今年はパリに、ニューヨーク発のスニーカーセレクトショップ「キス(KITH)」やミラノのコンセプトストア「モーズ(MODES)」、LVMHグループの複合施設「サマリテーヌ百貨店」がオープン予定と話題が豊富なので、街に人と活気が戻ってくることを願っている。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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会心の「セリーヌ オム」に辛口な仏メディアも絶賛 「エルメス」「ディオール」など海外紙のメンズコレ評

 1月19〜24日に2021-22年秋冬シーズンのパリ・メンズ・ファッション・ウイークがデジタルで開催された。フランスは20年10月30日に2度目のロックダウンが始まり、クリスマス前に小売店が再開するも、年明けからは感染力の高い変異種が拡大。ファッション・ウイーク期間中は夜6時から翌朝6時まで外出が制限され、1月21日にはヨーロッパ内の移動でも陰性証明が必須となった。フランスが拠点のブランドはパリでバイヤー向けに展示会を開いたが、密の状態を避けるためにほとんどのメディア関係者は招待されなかった。そのためフランス各紙に掲載されたレビューは例年よりも少な目。ここでは、ビッグメゾン中心に各紙のコレクション評を紹介する。

HERMES
「最も優れたカラーリスト」

 各紙から最も高く評価されたのは「エルメス(HERMES)」だった。前季に続き、舞台演出家のシリル・テスト(Cyril Teste)とコラボレーションした映像でコレクションを披露した。会場は、フランスの公的機関で使用される家具や調度品、テキスタイルを製作しているモビリエ・ナショナル(Mobilier National)。約30人のモデルが行き交い、あいさつを交わし、階段で雑談を楽しむといった内容だ。色使いが特徴的で、クミンやワームウッド、藤といった刺激的な名前のニュートラルカラーに心を奪われたジャーナリストが多かったようだ。仏新聞「ル・モンド(LE MONDE)」は、アーティスティック・ディレクターのヴェロニク・ニシャニアン(Veronique Nichanian)を「最も優れたカラーリスト」と評した。仏新聞「ル・フィガロ(LE FIGARO)」のマチュー・モージュ・ズッコーニ(Matthieu Morge Zucconi)は「ニシャニアンは快適性や素材の品質、服の変形と多様性、生地の再利用と製造に対する信念を映像でも伝えた。これらのアイテムは多くの方法で、多くのシチュエーションで着用できる」と説明。ニシャニアンは同紙に対し「新しい生き方や着こなし、働き方の概念を分かりやすく表現したかった」と語る。仏ウェブメディア「ファッション・ネットワーク(FASHION NETWORK)」のゴドフリー・ディーニー(Godfrey Deeny)も「カジュアルとラグジュアリーを両立した、ロックダウンに最適なウエア」とするも、若く美しい青年ばかりのモデルの人選にはやや不満だったようだ。「キャスティングを再考してほしい。彼らのルックスは理想的な義理の息子、もしくは最近スタートアップ企業を立ち上げた才能ある若手実業家のようだ。でも美しいスニーカーを履くべきなのは、彼らのような若い世代だけではない」。

DIOR
「尊敬せずにはいられない」

 キム・ジョーンズ(Kim Jones)率いる「ディオール(DIOR)」も高評価だった。今季はスコットランド生まれの現代アーティスト、ピーター・ドイグ(Peter Doig)との協業で、魅惑的な異国情緒とポップな軍服主義をミックスしたようなコレクションだった。キムは「ル・フィガロ」に対して「オプティミズム(楽観主義)を保つために祝杯を挙げたかった。世界で起きていることに反応するのは大切だから。世界には心の潤滑剤が必要なんだ」とコメント。「ディオール」のアーカイブを再解釈し、1947年に登場したアイコニックな“バー”ジャケットをはじめ、60年代に同ブランドのデザイナーを務めたマルク・ボアン(Marc Bohan)が制作したドレス、フランス芸術アカデミーのコスチュームに着想を得た刺しゅうや装飾が付くユニフォームなど、インスピレーションソースは多岐にわたる。「ル・フィガロ」は「キムは『ディオール』の財産であるアーカイブと、クチュールの技術をメンズ服で見事に表現した。尊敬せずにはいられない」と称賛。レモンイエローやブラッドオレンジなどの鮮やかなカラーと、ネイビー、モーブ、グレーといった落ち着いた色調を組み合わせて、ピーター・ドイグの作品のように繊細なカラーリングも高評価だったようだ。

LEMAIRE
「彼らはさらに成功する」

 色彩の美しさでは、「ルメール(LEMAIRE)」も強く印象に残っている。グラデーションのコートやレイヤードすることで深みが増すカラーパレットには、“着る人の個性を強調するための衣服”というデザイナーデュオ、クリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)とサラ=リン・トラン(Sarah-Linh Tran)の哲学が今季も貫かれていた。「通気性のあるコットンやコーデュロイ、シェットランドウールなどの素材の品質と、使いやすさを優先したカッティングは日常生活のための全てが合理的かつ知的に考えられている。半年ごとにワードローブに革命を起こすのではなく、追加することで更新していくというアプローチは、パンデミックによって強化された。今年の冬は、彼らがさらに成功する姿を私たちは見ることになるだろう」と「ル・モンド」紙は予期している。

LOUIS VUITTON
「批判者を納得させる出来ではない」

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は壮大な映像とキャッチーなアイテムが多く登場したものの、各紙のレビューは意外に少なかった。今季の着想源は、アフリカ系アメリカ人の小説家ジャームズ・ボールドウィン(James Baldwin)が、スイスの村で唯一の有色人種として過ごした経験を綴った1953年出版のエッセイ「ストレンジャー・イン・ヴィレッジ(Stranger in Village)」だ。会場はパリのテニスクラブで、大理石のブロックや鏡の装飾を設置し、ソール・ウィリアムズ(Saul Williams)が詩を口ずさんだり、ヤシーンベイ(YASIIN BEY)がラップを披露したりする中をモデルが行き交う演出だった。キルトやカウボーイハット、ガーナの民族衣装ケンテを再現するなど、多国籍の文化を象徴するアイテムで多様性を表現した。最も目を引いたのは、ノートルダム寺院やエッフェル塔といったパリのランドマークを立体的に組み合わせたトップスだ。「ル・フィガロ」は、昨年8月に発表した同ブランドのコレクションが、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク(Walter Van Beirendonck)のコピーではないかと一部から批判されたことを振り返り、皮肉交じりにこう評価した。「彼のファッションスキルは定期的に疑問視されている。今季も彼の批判者を納得させる出来ではないかもしれないが、コピーではないという彼の署名を雑多に残すことはできた」。

CELINE HOMME
「アンチを黙らせる出来」

 「セリーヌ オム(CELINE HOMME)」はパリメンズの公式スケジュールには参加せず、2月8日にデジタル形式で発表。“ティーン・ナイト・ポエム(Teen Knight Poem)”と題したコレクションは、ゲーム・オブ・スローンズ風の約13分間のフィルムで、16世紀に建てられたシャンボール城が舞台だ。アーティスティック、クリエイティブ&イメージディレクターのエディ・スリマン(Hedi Slimane)は、同コレクションを「若者とルネサンスへの頌歌」とし、「新しいロマン主義。若者は、ゲームと新しいアイデンティティーの架空のコードで自分自身を表現している」と説明している。さらに、エディは十代の頃にシャンボール城を訪れて、荘厳なモノクロの光景に魅了されたと付け加えている。城を築いたフランソワ1世は20歳にして王位継承後、レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)らの芸術家をフランスに招き入れた人物であり、フランスの芸術の礎を築いたとされる重要人物だ。コレクションにはケープやスパンコールが刺繍されたパンツ、レザージャケットにベスト、肩を落としたコート、スタッズが散りばめられたフーディーなどを着用し、メイクをした若いモデルが鋭い視線で力強く歩く。「ル・フィガロ」は「靴下が見える丈のパンツやチェックシャツ、細いネクタイ、トレンチコート、ゴシックなどエディのおなじみのアイテムを、これまでとは違ったシルエットで構成し、新しいロマン主義を表現した」と評した。辛口批評家として知られる「ファッション・ネットワーク」のディーニーも「今回のコレクションで、エディが『セリーヌ』を去る日を指折り数えていたアンチを黙らせただろう。今季のメンズ・コレクションの中で一番の出来」と称賛している。

次こそリアルショーの復活を

 今季のパリ・メンズ・ファッション・ウイーク期間中は、イベントなども一切開催されなかった。唯一開かれていたのが、ルイ・ヴィトン本社の1階に位置するスペースで行われた限定ショップだ。ヴァージルのこだわりで、ポップアップではなく“レジデンス(居住)”と呼ばれ、2021年春夏メンズ・コレクションと限定品が販売された。話題と盛り上がりに欠けるファッション・ウイークではあったものの、次シーズンにはリアルのショーが復活することを期待したい。今年はパリに、ニューヨーク発のスニーカーセレクトショップ「キス(KITH)」やミラノのコンセプトストア「モーズ(MODES)」、LVMHグループの複合施設「サマリテーヌ百貨店」がオープン予定と話題が豊富なので、街に人と活気が戻ってくることを願っている。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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“スーツに見える作業着”にUA重松&アートディレクター葛西、超大物2人がタッグを組んだ理由

 「水道屋が作った“スーツに見える作業着”」として知られる「ワークウェアスーツ」(WORKWEAR SUIT)こと「WWS」が、飛躍に向けて新たなステップを踏み出す。2月16日には新ロゴのお披露目とともに、海外進出を含めた成長戦略を発表する。見逃せないのが、力強いサポーターの存在だ。1人はブランドの可能性を確信して2019年11月から顧問を務めているユナイテッドアローズの創業者であり現名誉会長の重松理氏。もう1人はアートディレクターの葛西薫氏。西武百貨店の往年の広告やサントリーの烏龍茶のCM、ユナイテッドアローズの広告、さらには虎屋グループ全体のクリエイティブディレクターを務めた、サン・アド顧問でもある重鎮だ。オアシスライフスタイルグループの関谷有三代表取締役を交えた鼎談から、その魅力と将来の可能性を探る。

UA重松名誉会長が
「WWS」にほれ込んだ理由

WWDジャパン(以下、WWD):今回、「WWS」のブランディングに際して、大御所の葛西さんがアートディレクションを手掛がけると聞き、正直、驚いた。重松さんからお声がけしたとのことだが、お2人の出会いとは?

重松理ユナイテッドアローズ名誉会長兼オアシスグループ顧問(以下、重松):1996年に初めてユナイテッドアローズ(UA)が広告を打つときのアートディレクションに携わっていただいてから、25年以上の付き合いになる。実はUAはワールドから出資を受けて89年に創業した当初から株式公開を目指していた。90年に渋谷店、92年に原宿店を出店し、5~6期目に初めて黒字化した際、次の目標である株式公開に向けてどう助走するかを考えたときに、社会性を持つため広告を打とうと考え、行き着いた答えが、葛西さんだった。

葛西薫アートディレクター(以下、葛西):間を取り持ってくれたのはスタイリストの山本康一郎さん。当時サントリーのウイスキーの広告の仕事で、指揮者の岩城宏之さんや脚本家の倉本聰さんなど著名人の男性のスタイリングを山本康一郎さんに担当いただいていた。その山本さんからある日突然、「ユナイテッドアローズが初めて広告を打つので、紹介させてほしい」と言われて驚いた。トレンドに疎くて若者風は苦手でファッションの広告は遠ざけていたけれど、「その素の感じがいい」といわれた。普段は年上の社長と仕事をすることが多い中で、重松さんとは同い年だったこともあって意気投合して、それからはずっとお付き合いさせてもらっている。

WWD:では、重松さんが「WWS」を知ったきっかけは?

重松:UAの顧客である佐藤修(マスターピース・グループ会長兼社長)さんから「今興味を持っている経営者がいる。おやじの会社を引き継いだ水道工事会社の社長で、「スーツに見える作業着」というものを作った。3Kのイメージがある中で人を採用するにはものすごく努力が必要な中、高い伸縮性と撥水性を持ち、かっこよくて、通勤着にもなり、そのまま作業をして、軽く表面を払えば、食事やデートにも行ける優れものだ」と聞かされて。本当かな、と最初は半信半疑だったけれど、自分が着物の上に羽織る雨がっぱを作ってもらえたら、という下心もあって会うことにした(笑)。

関谷有三オアシスライフスタイルグループ代表取締役(以下、関谷):重松さんを紹介いただきありがたかったが、実は正直、戸惑ってもいた。憧れの経営者なのでお会いしてみたい、感想やアドバイスが欲しいとは思いつつも、僕らなりの問題意識を持ち、アパレルの人間じゃないからできた服だという自負もあった。しかも、「究極のマルチウエア」「服を買い替えないサステナブルな考え方」など、アパレルの方々の観点とは真逆だと思う。その中でアパレル界の神様みたいな人にお会いしたときに、プラスになるのか、お叱りを受けるか……。でも、服を見た瞬間、第一声で「この生地はいいね」と言っていただき、「君たちがやろうとしているこの服のコンセプトは、これからの時代に合っている」「アパレルの人間では絶対に考えられない発想だ」「何色にも染まらずにやっていったほうがいい」と言われ、自信をいただいた。

WWD:商品の第一印象は?また、顧問を引き受けることを決めた理由は?

重松:素材を見たときに、「これはスゴイ!」と感動した。ぬめり感があって高級感があって。触れても羽織っても気持ちいいし、よく伸びる。しかも、雨や水にも強い。企業の制服として続々と採用され右肩上がりで伸びているのも納得だった。同業他社だとさすがに(顧問は)できないが、普通のアパレルとは違うジャンルだし、社会にとって絶対不可欠なものなのでもっと需要が高まるだろうと思い、お手伝いしようと決めた。まずは素材が一番の特徴だから、素材をブランドにしようと、「アルティメックス(ultimex)」と名付けた。究極という意味で、“ダントツ”“ぶっちりぎ”という好きな言葉を付けた。もう一つ、この事務所に初めて来たときに、ZOZOを初めて訪ねて創業者の前澤友作さんに会ったときと同じ匂いがした。自分たちの感性ではないクリエイティブだなと思った。若さや独特のエネルギーがあり活気があった。成長するなと直感した。

オアシス関谷代表の
「WWS」の開発に込めた思い

WWD:では関谷さん、あらためて「WWS」の開発に込めた想いとは?

関谷:もともと水道屋からスタートし、台湾で出合った「春水堂」を情熱だけで日本に持ってきて運営したりもしていた。そんな中、水道会社が10周年の節目に記念事業として「作業着をかっこよくしたら、若い人材の採用が増えるのでは」という人事の発案が「WWS」の出発点になった。僕も子どものころから作業着を着た大人に囲まれていたので、かっこいいと思う反面、気になるときもあった。クリスマスに家族でイタリアンレストランに食事に行ったときも父親はいつも通り作業着姿で。たまたま同級生の家族が隣の席にいて、パリッとスーツを着た友達のお父さんを見て、恥ずかしくなってしまって。そこから、作業着は動きやすくて毎日洗えて機能性が高いのは当たり前だけれど、スマートではいけないのかという疑問が潜在意識に刻み込まれた。また、作業着が当たり前の家だったので、スーツは堅苦しくて嫌いだった。その思いが混在していたからこそ、「作業着ともスーツとも違う、これからの時代にニュースタンダードになる服を作る!」とエネルギーを注げた。

WWD:開発は順調に進んだ? 一番苦労したことは?

関谷:素材の壁だ。スペックとして耐久性や撥水性など機能性の良いスポーツ素材はあるけれど、機能性が高いと重くなったりシャカシャカ音がしたり着心地が悪くなってしまう。逆に着心地を重視すると耐久性が失われたり。100種類近い生地を検討したが、理想的なものはなかった。結局、2年間と数千万円をかけてオリジナルの生地を開発した。すごくいいものができたという自負はあったが、社内向けだけに開発しているなんてもったいないと知人に指摘され、事業化しようと決意。三菱地所から高級マンションの管理人用に採用したいと依頼され、そこから事業がスタートした。

WWD:葛西さんが今回、アートディレクションの仕事を引き受けた経緯は?

重松:新しいモノやコトが、社会の中でどういう位置付けになるかは広告次第で大きく変わってくる。葛西さんは社会性やフィロソフィーを作ってくれる方。その重要な部分を葛西さんに託したいと思った。お忙しいし、誰でも彼でも仕事を受けてもらえるものでもない。これまでも僕の方から、葛西さんに紹介した企業は、1社だけ。けど、世の中の課題を本気で解決しようとしているところは、絶対に断らないという確信があった。

葛西:重松さんに紹介いただいたのは19年の終わりごろ。実は仕事に対して慎重だった時期だったが、関谷さんからお話を伺えば伺うほど、ムラムラと僕の頭の中にやる気が湧いてきて、これは面白そうだな、と。新しいジャンルなので丁寧に世の中に出すべきで、だからこそ、むしろやりがいも感じた。スティーブ・ジョブス(Steve Jobs)が起こしたアップル(APPLE)のようでありたいと互いに話が盛り上がった。何よりも、未来に向けた熱意と、論理的なものを両方感じたのが大きかった。実際、「WWS」は雨の日にも重宝で、柔らかくて軽くてシワになりづらい。いくらでも自由に着られる重宝さを体感した。いわゆる作業着でもないし、洋服なのか何なのか。形としてはファッションだけど、全く新しいカテゴリー、新しいジャンルの、新しい究極のもの、まさにアルティメイトだと驚いた。

ロゴは究極のシンプル、
葛西アートディレクターが
行き着いた“答え”

WWD:今回の新ロゴ「WWS」と「ワークウェア スーツ」に託した思いは?

葛西:“ニュースタンダード”という言葉が何度か出ているが、突飛なものではなく、永遠に続くもの、ジャンルを問わないようなものを目指した。広範囲に考えて、さまざまな角度のものを関谷さんにご覧いただき、試しながら広げながら探るという形を取ったが、言葉も選ぶ視点も明快で、(関谷さんには)アートディレクターの気質があるとも感じた。提案ではまず、「WORK WEAR SUIT」をWORKWEARとSUITの2単語にした。「WWS」のためにつくったロゴも「WとW」をくっつけてSの間にスペースを入れた。そして「WWS」のために考えたマークが結果的に「ultimex」のマークになり、関谷さんとの話し合いから霧が晴れるようにロゴやマークが決まっていった。生地の伸張性、撥水性や、水道に欠かせない水の象徴の色として、さわやかな水色を採用し、フレッシュさ、青春の青、青さや若さ、これから成長していく誕生感、変幻自在さなどを込めた。印刷では青100%という色で、仕事に向き合う際に気持ちにスイッチが入るようなものとした。

WWD:ブランドロゴのスローガンは?

葛西:“Be Borderless”です。企業のコンセプトから“平等”という言葉が浮かび、年齢も性別も職業も人種も全てが貴賤がなく平等であろうとしているから「ボーダーレス」だと。これから国境も国籍も超えて世界に出ていこうとしている姿勢にも合う。コロナ禍でウイルスの広がりには国境は関係ないことが際立ったが、逆に、アメリカ、中国、北朝鮮など政治的問題による国と国との対立は深刻化している。そんな世にあって、「WWS」は平等の象徴になるのではないかと思う。地球を守ろうという思想もつながっている。仕事着でもフォーマルでもカジュアルでも使えるこの服の存在はとても貴重だ。しかも、仕事に臨むというのはどんな仕事でも身が引き締まる行為だ。いい意味で儀式的な気分、フォーマルな気分をもたらしてくれる存在でもある。働く喜びを知る、そういう意味でも平等であり、平等の喜びを表す象徴的なものになればと願っている。

新アイテムも続々、
目指すは“次世代の標準服”

関谷:スーツの形をしたワークウェア、作業着としてスタートしたが、ニューノーマルな時代に、作業着でもスーツでもない、「今の時代に合うボーダーレスウエア」として、スーツだけでないものを作ろうとしている。それがウィメンズ向けのワンピースやコートだ。次世代のニューノーマルなスタンダードブランドとして打ち出していきたい。「リーバイス」が作業着からデニムをブランド化したように、今後はワークウェアやスーツを「WWS」に昇華させ、象徴的なブランドになりたい。そして、アップルやテスラのような存在になりたい。テスラは自動車メーカーではなく、しがらみや過去の研究開発を度外視した車づくりをしているところに価値がある。僕らもアパレル出身でない服作りによって、これからの時代のニュースタンダードをつくり、世界の新しいシンボルになるブランドになりたい。

WWD:今後の事業計画は?

関谷:法人の採用企業は800社を超え、直営店、ECに加えてポップアップストアを展開しているところだ。ただ、通常のアパレルメーカーは店を100店舗、200店舗と広げるが、D2C、DX型でアップルやテスラのようなショールームを全国で15カ所前後展開し、実際手で触れて体験できる場所とし、販売はECを中心に行っていく予定だ。社会に評価される企業として、上場も目指していきたい。海外についてもロンドンを皮切りに中国やアメリカにも積極的に進出していきたい。

INTERVIEW & TEXT:KUMI MATSUSHITA
PHOTO:KAZUO YOSHIDA

問い合わせ先
オアシススタイルウェア
営業・広報窓口
suhara@oasys-inc.jp

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フェムテックは企業が導入する時代?! 低用量ピルや卵子凍結の福利厚生、セックストイと“ウエルネス”の関係性

 昨今、女性が抱える健康問題をテクノロジーで解決するモノやサービス“フェムテック”の新たな生理用品などが登場しているが、従業員の健康を経営的な課題として捉える健康経営として、女性の健康問題に取り組む動きが海外のIT企業を中心に出てきている。「WWDジャパン」は2月8日号では、その最新事情を取り上げた記事「女性を働きやすくする最新福利厚生」を掲載した。ここではフェムテック分野を取材する記者2人が、低用量ピルや卵子凍結に関する福利厚生や、セクシャルウエルネスのトレンドについてそれぞれの視点で語り合った。

【対談参加者】

木村和花「WWDジャパン」記者:2020年に「WWDジャパン」編集部に配属以降、フェムテック分野を担当する20代女性記者。フェムテックの個人向けプロダクトが注目を集める中、企業制度の見直しの必要性を感じ「WWDジャパン」は2月8日号では「女性を働きやすくする最新福利厚生」の記事を執筆。

大杉真心「WWDジャパン」記者:19年からフェムテックを取材する30代女性記者。普段から新しいプロダクトを試し、フェムテックは“生活を楽に、豊かにするもの”だと身をもって体験している。19年春に使い捨ての生理用品を卒業。取材を通して、卵子凍結にも興味を持ち始める。

木村:現代女性の健康問題の解決を目的にする医療コンサルディング会社、ファムメディコ(FEMMES MEDICAUX)の取材で気付きがたくさんありました。女性特有の疾患を対象にした「YOU健診」のセミナーでは、自分の体のことなのに知らないことが多く、自分のリテラシーの低さに驚きました。でもそれは、周りに誰も教えてくれる人がいなかったからだと思います。

大杉:私も「YOU検診」で「女性の死因の第1位は大腸がん」と聞いたのが衝撃で、取材後に初めて大腸内視鏡検査と、経腟超音波検査(エコー)を受けに行ったよ。会社の健康診断は年に1回は受けたいと思っているけど、仕事が忙しいとなかなか行けないことも多い。取材を続ける中で、もっと自分の体と向き合うべきだと思ったよ。

木村:会社の健康診断では、女性特有の疾患に関する検診がカバーされていないことも驚きでした。もっと企業制度を見直す必要性があると感じ、いろいろ調べて見てみると、海外ではグーグルやアップルなどの企業が卵子凍結の費用を福利厚生でサポートする事例や、国内でも低用量ピルの服薬支援もあることを知りました。こういうことを、私たちが普段から取材するファッションやビューティ企業の人たちや、経営者の人たちにももっと伝えたいです。

婦人科に気軽に相談できる環境作りを

大杉:特にIT企業では「優秀な人材を確保するためにいい福利厚生を備える」っていう考えが進んでいるらしいね。日本でもミクシィなどの企業が婚活コンシェルジュサービスの「ファミワン」を福利厚生制度として提供しているんだって。そういえば、私は検査を受けた婦人科で、生理痛の悩みを伝えたら漢方薬を処方してもらえて、飲み始めてからは生理痛が緩和されたよ。やはり不調を感じたら我慢しないで相談する重要性を実感したな。

木村:私はこれまで婦人科に行く機会があまりなかったのですが、去年からピルを飲み始めたこともあり、気軽にいろんなことを相談できるようになりました。女性向けの健康情報サービス「ルナルナ(LUNA LUNA)」を運営するエムティーアイは、ピルの服薬支援を福利厚生に導入したのですが、社員から「生理周期が整うことでスケジュール管理がしやすくなった」という声もあったと聞きました。まさに私もピルのおかげで仕事のペースを体の状況に合わせて調整できるようになって、これまで“自分でどうにかするもの”だったのが、ちょっと視野を広げてみると助けてくれるサポートがあることに気が付きました。

大杉:私も「ルナルナ」が開催した生理にまつわるトークイベントに出席したときに、婦人科の先生が「生理痛で困っていたら病気なんです」と説明していて、すごく救われた気持ちになりました。ピルは避妊薬というイメージが強いけど、生理痛やPMSの治療薬として処方されていることを知らない人も多いよね。もっと世の中の理解を深めたいと思ったな。

木村:最近では、生理周期に着目したサプリメントのサブスクリプション(定期購買)のサービスも多く出てきていますね。

大杉:生理痛やPMSの悩みがあるけど、婦人科に行くのは抵抗がある人が気軽に試せるのがいいよね。自分の体に向き合うためのエントリーアイテムになると思うな。

働き盛りの女性の不安を解消する卵子凍結サービス

木村:将来の妊娠に備えて、卵子を保管する卵子凍結に関するサービスも増えていますね。大杉さんはどのように感じましたか?

大杉:これまではまだ自分には関係ないことだと思っていたんだけど、周りにも20代から不妊症で高額の治療している子もいて、少しずつ考えるようになった。選択制だから、“誰でも”ということでもないけど、漠然と「いつか子どもを授かりたい」という思いがある働き盛りの女性には、知って欲しいサービス。今パートナーがいるとか、子どもが欲しいかどうかは関係なく、自分の未来を考えたときの不安を解消するための選択肢としてあったほうがいいなと思う。でも課題は金額面。少子化問題が深刻化しているのにも関わらず、現状は保険がきかず、国からのサポートもないので、個人の女性が数十万円の費用を払い続けるのは負担が大きすぎる。そこを企業がサポートしてくれたらありがたいよね。

木村:妊活・不妊治療・卵子凍結のクリニック検索サイト「婦人科ラボ」を運営するステルラの西史織代表は、当初企業向けのサービスを考えていたそうですが、「実際の企業の反応は厳しかった」と話していました。一般的にはキャリアとライフプランは別物で、企業が積極的にサポートするものではないと思われてきたのだと思います。「卵子凍結して働いてくれ」というメッセージにもなりかねないことを企業は心配しているようです。

大杉:選択的卵子凍結保存サービス「グレイスバンク」を立ち上げた勝見祐幸グレイスグループ代表取締役は、コンサルティングの仕事をされていた時に色々な企業の方と話す中で卵子凍結サポートの重要性について気付いたと話していたね。早速、福利厚生サービスの「ベネフィット・ワン」との提携もスタートさせたね。

木村:「(福利厚生サービスを)提案するべきは人事部ではなく、経営者の方だ」とおっしゃっていたのが印象的でした。勝見代表はすでに企業の経営者層の方とのネットワークがあるから、そこが強みになる。これはフェムテックを広める上で心強いなと思いました。取材の中では「(卵子凍結などの)サポートを企業に求めることには抵抗がある」「女性だけのサポートは不平等じゃないか」という意見があるのも気になりました。

大杉:よりよい未来を作るためには、今まで当たり前に見過ごされてきたことに疑問を呈することが大事だと思う。例えば、生理や卵子凍結について先輩たちが「私たちの時代はそんな支援はなかったから、あなたたちも我慢しなさい」と却下してしまったら、この先なかなか働きやすい世の中へは変わっていかない。日本の企業健診の検査内容が1970年から変わっておらず、現状は男性の健康を検査するための内容であり続けているように、男性中心だったこれまでの仕組みを一旦受け入れて、改善していくときだと思うな。

セクシャルウェルネスの分野がポジティブに発信され始めている

木村:そうですね。最近はセックストイをはじめとするセクシャルウェルネスの話題も増えていますね。

大杉:海外ではセレブリティーが参画しはじめているのが新展開!アメリカのプレジャーテックブランド「ローラ ディカルロ(LORA DICARLO)」は女優でモデルのカーラ・デルヴィーニュ(Cara Delevingne)を共同創業社に迎え、ウーマナイザー(Womanizer)というセックストイブランドはイギリスの歌手リリー・アレン(Lily Allen)とコラボしているよ。あの、映画「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ(Fifty Shades of Grey)」でセンセーションを起こした女優のダコタ・ジョンソン(Dakota Johnson)もセクシャルウェルネスブランド「モード(MAUDE)」をスタートしたし、ファッション界ではクリストファー・ケイン(Christopher Kane)の新ライフスタイルブランド「モアジョイ(MORE JOY)」が “Sex”“Special”などのロゴがプリントされたアパレルや下着、雑貨のほか、セックストイも扱っている。セクシャルウェルネスの分野がポジティブでおしゃれにかつオープンに提案されているのが素敵だと思った。

木村:確かに今まで“話してはいけないこと”と抑圧されてきたことで、本当に必要なサポートやプロダクトの開発の遅れなどいろいろなところで弊害があったと思います。セクシャルウェルネスの話題から女性の体に関する話題をポジティブに捉える雰囲気を作ることで、社会の制度も変わっていけばいいなと思います。

大杉:その中でもネットフリックス(NETFLIX)の影響力は大きいよね。コメディドラマの「セックス・エデュケーション(SEX EDUCATION)」は性教育を楽しく伝えているし、女優のグウィネス・パルトロウ(Gwyneth Paltrow)のライフスタイルブランド「グープ(GOOP)」のドキュメンタリー番組「グウィネス・パルトロウのグープ・ラボ(原題:The goop lab with Gwyneth Paltrow)」では、セックス教育者が登場して「グープ」のスタッフたちがオーガズムを体験するエピソードがある。あと、今注目のドラマ「エミリー、パリへ行く(原題:Emily in Paris)」の第1話では、主人公のエミリーがセックストイを使うシーンがオチになっているよね(笑)。これまでも「セックス・アンド・ザ・シティ(Sex and the City)」みたいな強烈なドラマはあったけど、ネットフリックスでよりグローバルに、若い層も入りやすくなったんじゃないかな。YouTubeでも取り上げられるトピックにもなってきているよね。木村さんは、今後フェムテック市場はどうなっていくと思う?

木村:考えてみたら、「グレイスバンク」の取材で初めてフェムテック分野の男性起業家と話しました。勝見代表も男性にとっては自分ごと化しづらいことも、同じ男性が話すと伝わりやすいことがあるとおっしゃっていて、そういうこともあるだろうなと思いました。当事者ではない人がこの分野に入ることも盛り上がっていくために必要だと思います。

大杉:大事だね。私はもっとフェムテックが当たり前になる気がする。コロナ禍で多くの人が健康や、体と向き合う機会が増えたと思うけど、この健康というキーワードは今後もファッションやビューティ業界とも密接になっていくと思うな。市場が大きくなって健康経営も、セクシャルウェルネスももっとたくさんのプレイヤーが参入してくるだろうし、そういった企業をどんどん取材していきたいね!

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フェムテックは企業が導入する時代?! 低用量ピルや卵子凍結の福利厚生、セックストイと“ウエルネス”の関係性

 昨今、女性が抱える健康問題をテクノロジーで解決するモノやサービス“フェムテック”の新たな生理用品などが登場しているが、従業員の健康を経営的な課題として捉える健康経営として、女性の健康問題に取り組む動きが海外のIT企業を中心に出てきている。「WWDジャパン」は2月8日号では、その最新事情を取り上げた記事「女性を働きやすくする最新福利厚生」を掲載した。ここではフェムテック分野を取材する記者2人が、低用量ピルや卵子凍結に関する福利厚生や、セクシャルウエルネスのトレンドについてそれぞれの視点で語り合った。

【対談参加者】

木村和花「WWDジャパン」記者:2020年に「WWDジャパン」編集部に配属以降、フェムテック分野を担当する20代女性記者。フェムテックの個人向けプロダクトが注目を集める中、企業制度の見直しの必要性を感じ「WWDジャパン」は2月8日号では「女性を働きやすくする最新福利厚生」の記事を執筆。

大杉真心「WWDジャパン」記者:19年からフェムテックを取材する30代女性記者。普段から新しいプロダクトを試し、フェムテックは“生活を楽に、豊かにするもの”だと身をもって体験している。19年春に使い捨ての生理用品を卒業。取材を通して、卵子凍結にも興味を持ち始める。

木村:現代女性の健康問題の解決を目的にする医療コンサルディング会社、ファムメディコ(FEMMES MEDICAUX)の取材で気付きがたくさんありました。女性特有の疾患を対象にした「YOU健診」のセミナーでは、自分の体のことなのに知らないことが多く、自分のリテラシーの低さに驚きました。でもそれは、周りに誰も教えてくれる人がいなかったからだと思います。

大杉:私も「YOU検診」で「女性の死因の第1位は大腸がん」と聞いたのが衝撃で、取材後に初めて大腸内視鏡検査と、経腟超音波検査(エコー)を受けに行ったよ。会社の健康診断は年に1回は受けたいと思っているけど、仕事が忙しいとなかなか行けないことも多い。取材を続ける中で、もっと自分の体と向き合うべきだと思ったよ。

木村:会社の健康診断では、女性特有の疾患に関する検診がカバーされていないことも驚きでした。もっと企業制度を見直す必要性があると感じ、いろいろ調べて見てみると、海外ではグーグルやアップルなどの企業が卵子凍結の費用を福利厚生でサポートする事例や、国内でも低用量ピルの服薬支援もあることを知りました。こういうことを、私たちが普段から取材するファッションやビューティ企業の人たちや、経営者の人たちにももっと伝えたいです。

婦人科に気軽に相談できる環境作りを

大杉:特にIT企業では「優秀な人材を確保するためにいい福利厚生を備える」っていう考えが進んでいるらしいね。日本でもミクシィなどの企業が婚活コンシェルジュサービスの「ファミワン」を福利厚生制度として提供しているんだって。そういえば、私は検査を受けた婦人科で、生理痛の悩みを伝えたら漢方薬を処方してもらえて、飲み始めてからは生理痛が緩和されたよ。やはり不調を感じたら我慢しないで相談する重要性を実感したな。

木村:私はこれまで婦人科に行く機会があまりなかったのですが、去年からピルを飲み始めたこともあり、気軽にいろんなことを相談できるようになりました。女性向けの健康情報サービス「ルナルナ(LUNA LUNA)」を運営するエムティーアイは、ピルの服薬支援を福利厚生に導入したのですが、社員から「生理周期が整うことでスケジュール管理がしやすくなった」という声もあったと聞きました。まさに私もピルのおかげで仕事のペースを体の状況に合わせて調整できるようになって、これまで“自分でどうにかするもの”だったのが、ちょっと視野を広げてみると助けてくれるサポートがあることに気が付きました。

大杉:私も「ルナルナ」が開催した生理にまつわるトークイベントに出席したときに、婦人科の先生が「生理痛で困っていたら病気なんです」と説明していて、すごく救われた気持ちになりました。ピルは避妊薬というイメージが強いけど、生理痛やPMSの治療薬として処方されていることを知らない人も多いよね。もっと世の中の理解を深めたいと思ったな。

木村:最近では、生理周期に着目したサプリメントのサブスクリプション(定期購買)のサービスも多く出てきていますね。

大杉:生理痛やPMSの悩みがあるけど、婦人科に行くのは抵抗がある人が気軽に試せるのがいいよね。自分の体に向き合うためのエントリーアイテムになると思うな。

働き盛りの女性の不安を解消する卵子凍結サービス

木村:将来の妊娠に備えて、卵子を保管する卵子凍結に関するサービスも増えていますね。大杉さんはどのように感じましたか?

大杉:これまではまだ自分には関係ないことだと思っていたんだけど、周りにも20代から不妊症で高額の治療している子もいて、少しずつ考えるようになった。選択制だから、“誰でも”ということでもないけど、漠然と「いつか子どもを授かりたい」という思いがある働き盛りの女性には、知って欲しいサービス。今パートナーがいるとか、子どもが欲しいかどうかは関係なく、自分の未来を考えたときの不安を解消するための選択肢としてあったほうがいいなと思う。でも課題は金額面。少子化問題が深刻化しているのにも関わらず、現状は保険がきかず、国からのサポートもないので、個人の女性が数十万円の費用を払い続けるのは負担が大きすぎる。そこを企業がサポートしてくれたらありがたいよね。

木村:妊活・不妊治療・卵子凍結のクリニック検索サイト「婦人科ラボ」を運営するステルラの西史織代表は、当初企業向けのサービスを考えていたそうですが、「実際の企業の反応は厳しかった」と話していました。一般的にはキャリアとライフプランは別物で、企業が積極的にサポートするものではないと思われてきたのだと思います。「卵子凍結して働いてくれ」というメッセージにもなりかねないことを企業は心配しているようです。

大杉:選択的卵子凍結保存サービス「グレイスバンク」を立ち上げた勝見祐幸グレイスグループ代表取締役は、コンサルティングの仕事をされていた時に色々な企業の方と話す中で卵子凍結サポートの重要性について気付いたと話していたね。早速、福利厚生サービスの「ベネフィット・ワン」との提携もスタートさせたね。

木村:「(福利厚生サービスを)提案するべきは人事部ではなく、経営者の方だ」とおっしゃっていたのが印象的でした。勝見代表はすでに企業の経営者層の方とのネットワークがあるから、そこが強みになる。これはフェムテックを広める上で心強いなと思いました。取材の中では「(卵子凍結などの)サポートを企業に求めることには抵抗がある」「女性だけのサポートは不平等じゃないか」という意見があるのも気になりました。

大杉:よりよい未来を作るためには、今まで当たり前に見過ごされてきたことに疑問を呈することが大事だと思う。例えば、生理や卵子凍結について先輩たちが「私たちの時代はそんな支援はなかったから、あなたたちも我慢しなさい」と却下してしまったら、この先なかなか働きやすい世の中へは変わっていかない。日本の企業健診の検査内容が1970年から変わっておらず、現状は男性の健康を検査するための内容であり続けているように、男性中心だったこれまでの仕組みを一旦受け入れて、改善していくときだと思うな。

セクシャルウェルネスの分野がポジティブに発信され始めている

木村:そうですね。最近はセックストイをはじめとするセクシャルウェルネスの話題も増えていますね。

大杉:海外ではセレブリティーが参画しはじめているのが新展開!アメリカのプレジャーテックブランド「ローラ ディカルロ(LORA DICARLO)」は女優でモデルのカーラ・デルヴィーニュ(Cara Delevingne)を共同創業社に迎え、ウーマナイザー(Womanizer)というセックストイブランドはイギリスの歌手リリー・アレン(Lily Allen)とコラボしているよ。あの、映画「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ(Fifty Shades of Grey)」でセンセーションを起こした女優のダコタ・ジョンソン(Dakota Johnson)もセクシャルウェルネスブランド「モード(MAUDE)」をスタートしたし、ファッション界ではクリストファー・ケイン(Christopher Kane)の新ライフスタイルブランド「モアジョイ(MORE JOY)」が “Sex”“Special”などのロゴがプリントされたアパレルや下着、雑貨のほか、セックストイも扱っている。セクシャルウェルネスの分野がポジティブでおしゃれにかつオープンに提案されているのが素敵だと思った。

木村:確かに今まで“話してはいけないこと”と抑圧されてきたことで、本当に必要なサポートやプロダクトの開発の遅れなどいろいろなところで弊害があったと思います。セクシャルウェルネスの話題から女性の体に関する話題をポジティブに捉える雰囲気を作ることで、社会の制度も変わっていけばいいなと思います。

大杉:その中でもネットフリックス(NETFLIX)の影響力は大きいよね。コメディドラマの「セックス・エデュケーション(SEX EDUCATION)」は性教育を楽しく伝えているし、女優のグウィネス・パルトロウ(Gwyneth Paltrow)のライフスタイルブランド「グープ(GOOP)」のドキュメンタリー番組「グウィネス・パルトロウのグープ・ラボ(原題:The goop lab with Gwyneth Paltrow)」では、セックス教育者が登場して「グープ」のスタッフたちがオーガズムを体験するエピソードがある。あと、今注目のドラマ「エミリー、パリへ行く(原題:Emily in Paris)」の第1話では、主人公のエミリーがセックストイを使うシーンがオチになっているよね(笑)。これまでも「セックス・アンド・ザ・シティ(Sex and the City)」みたいな強烈なドラマはあったけど、ネットフリックスでよりグローバルに、若い層も入りやすくなったんじゃないかな。YouTubeでも取り上げられるトピックにもなってきているよね。木村さんは、今後フェムテック市場はどうなっていくと思う?

木村:考えてみたら、「グレイスバンク」の取材で初めてフェムテック分野の男性起業家と話しました。勝見代表も男性にとっては自分ごと化しづらいことも、同じ男性が話すと伝わりやすいことがあるとおっしゃっていて、そういうこともあるだろうなと思いました。当事者ではない人がこの分野に入ることも盛り上がっていくために必要だと思います。

大杉:大事だね。私はもっとフェムテックが当たり前になる気がする。コロナ禍で多くの人が健康や、体と向き合う機会が増えたと思うけど、この健康というキーワードは今後もファッションやビューティ業界とも密接になっていくと思うな。市場が大きくなって健康経営も、セクシャルウェルネスももっとたくさんのプレイヤーが参入してくるだろうし、そういった企業をどんどん取材していきたいね!

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たった1人のミラノ・メンズ取材 「プラダ」に感動し静かな街で文化施設探訪

 1月15〜19日まで、2021-22年秋冬シーズンミラノ・メンズ・ファッション・ウイークが開催されました。リアルのショーを予定していた「エトロ(ETRO)」「フェンディ(FENDI)」は直前でデジタルのみの発表に切り替えたため、今シーズンは完全デジタルのファッション・ウイークとなりました。パリからミラノに渡航した私が取材できたのは結局「プラダ(PRADA)」の展示会のみでしたが、結果的には行く価値があったと大満足しています。

「プラダ」会場はほぼ貸し切り状態

 その理由の一つは、素晴らしい「プラダ」のコレクションをいち早く生で見られたこと。昨年9月に披露したウィメンズよりもミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)のバランスが良くてしびれました。「プラダ」などビッグメゾンの展示会は来場者でごった返すのが普通なのに、私が訪れたタイミングで展示会場にいたプレス関係者はなんと1人だけ。おかげでゆっくり写真を撮ることができ、レポート記事はほぼ独占で公開できました。

 展示会場はショーの撮影が行われたセットの中だったため、映像で観ていたフワフワフェイクファーの壁や床、高い天井の空間の中を体感できました。会場で生地に触れ、担当者からコレクションの詳細を聞き、(ミウッチャとラフが最も表現したかったことは何だろう)と想像を巡らせていると時間はあっという間に過ぎました。デジタルにはデジタルの良さがあるとしても、実際に足を運んで得られるリアルな体験に勝ることはありません。理屈では説明できない感覚が心に働きかけてくるからです。

ミラノの街はガラガラ

 「プラダ」で素晴らしい体験はしたものの、ミラノの街は寂しかった。生活必需品を扱うスーパーや薬局などを除いてほとんどの小売店は閉店し、レストランもデリバリーのみ。多くの人でにぎわうドゥオーモやスカラ座周辺も人がほとんどいません。ミラノ在住者によると、美容室も生活必需とみなされ営業許可が出ていたようです。私が住むフランスは本屋の営業が認められており、何を生活必需品としてみなすかでお国柄が出ているように思いました。

 コロナ禍、対人を避けたいという消費者の需要に応えるため、イタリア全土で展開する大手スーパー「エッセルンガ(Esselunga)」は実験的に無人レジの導入を開始しました。店内は生鮮食品や生活用品を扱う普通のスーパーで、清算はバーコードを機械に読み取らせて支払う仕組みになっており、従業員との接触が一切ありません。日本でも徐々に導入されていますが、もともとは人件費削減の目的で誕生した無人レジ。今後はウイルス感染予防対策としてニューノーマルの生活で当たり前になっていくのかもしれません。

アート好き必見エリアを散策

 パンデミックの影響があるとはいえ、人がいる限り街は生きるように変化し続けるもの。特に、世界最大級デザインの祭典「ミラノサローネ(MILANO SALONE)」の開催地として知られる、トルトーナ地区は再開発エリアとしてここ数年発展し続けています。90年代には、ミラノ市が工場跡地だったこのエリアを文化的目的で開発する案を発表し、現在「モンクレール(MONCLER)」「フェンディ(FENDI)」「ジョルジオ・アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」のオフィスも近隣に集まります。ミラノ・メンズが通常開催されていた頃はこの付近で数多くのショーが行われていたものの、なかなかゆっくり見る機会がなかったので今回は散策してみました。

 2015年にはこのエリアに大規模なミラノ文化博物館(Museo delle Culture)が開業。展示室のほかに、世界の文化に関する学術的な研究を行うセクターも設けています。そして「ミラノ文化博物館」のすぐ隣に、芸術と文化の発展を目的として複合施設「ベース(Base)」が18年にオープンしました。製鉄所を改修した6000平方メートルの敷地には、ギャラリーやワークショップなどが行えるイベントスペースのほか、コワーキングカフェやゲストハウスもある。「ミラノサローネ」開催地ということで、会期中はアーティスト向けにゲストハウスとしても提供しています。

 「ベース」続き、翌年には複合施設「コンボ(Combo)」もこのエリアに開業。1600年代に主流だった、中庭を囲ってコの字型に建てられた鉄の欄干アパート“カーザ・ディ・リンギエーラ”を改修して、ゲストハウスやギャラリー、レストラン、ラジオ局を併設しています。「ベース」同様、「ミラノサローネ」会期中は主にアーティストが宿泊しており、世界中から訪れる人たちの展覧会も定期的に行っています。ミラノの定宿が営業していなかったので、私はこの「コンボ」に滞在しました。ゲストハウスといっても部屋にはシングルベッド2つとユニットバスがあり、ベッドメイキングのサービスがない以外は至って普通のビジネスホテル感覚で快適。ゲストハウス以外のサービスは停止しているため、文化的ハブとして誕生したこの施設の醍醐味を感じることはできませんたが……。受付の方に聞くと、19年9月のオープン当初は、地元客にコワーキングスペースが大人気だったそうです。「フリーランスのクリエイターがそれほど多くないミラノだけれど、パソコン一台でどこでも仕事できる職種が増えているんだなと実感した」とのこと。パンデミックによってイタリアでもテレワークが普及したため、コロナ終息後にはより多くの人がこのエリアに集まって新たな文化が生まれることを期待しています。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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返品コストをどう抑えるか EC時代に欠かせない対応 鈴木敏仁USリポート

 アメリカ在住30年の鈴木敏仁氏が、現地のファッション&ビューティの最新ニュースを詳しく解説する連載。前回(「ネット通販のアパレル3割も 『返品が当たり前』のアメリカ」)で報告したように、米国ではEC(ネット通販)の普及で返品問題が改めてクローズアップされている。各社はどんな対応をしているのか。

 商品の流れは大きく、上流から下流へのフォワードロジスティクスと、下流から上流へのリバースロジスティクスの2つに大分類できる。アメリカの大手企業はフォワードだけではなくてリバースの効率化にも長く取り組んでいて、ウォルマート(WALMART)やターゲット(TARGET)といった大手企業は返品専用センターすら持っている。

 ところがEC市場の成長でフルフィルメントからラストマイルへと新たな商品フローがここ数年で膨らみ、合わせてラストマイルのリバースロジスティクスも急速に拡大している。従来ならば店舗が返品デポとなるため、店舗で返品を集約できるのだが、ECの場合は単品が逆宅配でフルフィルメントセンターに戻ることになるので、これを小売企業負担とすると大変なコストがかかる。

 数年前の調査数字だが、返品商品をお客が自社店舗に持ってきた場合の返品処理コストは1パッケージあたり3ドル、お客がEC企業に直接送り返した場合は6ドル、そしてすべてを返品に特化していない3PL(サード・パーティ・ロジスティクス。物流代行)にアウトソースすると8ドルを要するという。また物流だけではなく顧客サービスや商品の流動化といった要素を加味すると、50ドルの原価に対して29.50ドルのコストがかかるという試算もある。

 つまりECの返品はリアルの返品よりもコスト高なのである。そのため各社ともにEC返品の効率化を急ピッチで進めている。

返品をどこに集約するかがカギ

 カギはどこで集約するかだ。フォワードにおいて物流の真ん中にハブを一つ置くことで物流線を減らすことができるのはロジスティクスのイロハのイだが、リバースにもこれがあてはまる。

 例えばアマゾンは衣料チェーンのコールズ(KOHL'S)店内に専用返品カウンターを設置したり、ドラッグストアチェーンのライトエイド(RITE AID)で返品できたりと、リアル小売企業と提携する戦略を取っている。お客に返品を一つ一つセンターに返送してもらうのではなくて、チェーンストアの店舗でいったん集約するのである。

 一方のウォルマートは当然店舗で返品を受け付けているのだが、店舗に加えてフェデックス(FEDEX)と提携し宅配人が返品を集荷するプログラムを開始している。アメリカの宅配業界は、集荷はオフィスのみで、宅配人がお客から荷物を受け取るということをしてこなかったので、大きな変化だ。宅配車の帰り便が空、つまりバックホールで空気を運ぶという無駄を続けているわけなので、これを変えることにつながるのかどうか。またウォルマートはフェデックスのオフィスでも返品可能としている。

 おそらくウォルマートの店舗だけではさばききれなくなってきているので、返品の集荷場所を増やそうとしているのだろう。

 私が注目しているのはEC返品に特化した企業である。スタートアップ企業のハッピーリターンズ(HAPPY RETURNS)は「リターンバー」と呼ぶ返品専用カウンターをショッピングモールや小売店舗内に設置し、契約するEC企業(エバーレーンやアンタックイットといった著名衣料EC企業を含む)の返品を処理するシステムで成長している。

 ECの返品処理に特化した企業は他にも複数存在する。ナーバー(NARVER、契約企業はリーバイス、パタゴニア、セフォラなど)、オプトロ(OPTORO、契約企業はステープルズ、イケア、ベストバイなど)といった企業が知られている。

 またアマゾンやウォルマートは、ユーザーが返品の意思を示したときに、返品させずにそのままとし、返金するか代替品を送ってしまう政策を取り始めているという。既述のように返品は高くつき、とりわけ低価格商品は返品させないほうがコスト安となる場合がある。これは私自身がアマゾンで経験したことがあるので、今に始まったことではなくて返品政策として公に認めたと言うことなのだろう。

 昨年は大きなECシフトが起きた年だったが、それに付随するようにEC返品の効率化が大きな取り組み課題となっている。

鈴木敏仁(すずき・としひと):東京都北区生まれ、早大法学部卒、西武百貨店を経て渡米、在米年数は30年以上。業界メディアへの執筆、流通企業やメーカーによる米国視察の企画、セミナー講演が主要業務。年間のべ店舗訪問数は600店舗超、製配販にわたる幅広い業界知識と現場の事実に基づいた分析による情報提供がモットー

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延べ13万個を販売したスマホケース「エジュー」のシンデレラストーリー

 パーククリエイションのバッグブランド「エジュー(AJEW)」のジップバッグ付きスマホケースが人気を集めている。小銭入れやポーチとして使えるのはもちろん、スマホスタンドにもなって、取り外せるリングやストラップも付く。それらの機能に加えデザインのかわいらしさも支持されて、ファッション感度の高いインフルエンサーやファッション業界人から火が付いた。一度愛用すると、“無くては困る”機能も買い替えを後押しし、iPhoneがバージョンアップされるごとに売れるという。8000円というスマホケースとしては高価格帯であるにも関わらず、これまでに延べ13万個を販売した。2021年3月期の売上高3億円(予想)のうち、約2億円が「エジュー」のたった1型のスマホケースの売り上げだ。人気の秘密を「エジュー」のデザイナーでもあるパーククリエイションの新井愛子社長に聞いた。

WWD:「エジュー」を立ち上げる以前もアパレルブランドを手掛けられていたそうですね。

新井愛子パーククリエイション社長(以下、新井):2004年に大学を卒業してアパレル業界に就職しました。ちょうどその頃に読者モデルブームが起きて、私も少し参加させてもらっていたんです。当時は読モが何かモノを作るとか販売するとかが意外と簡単にできてしまっていました。結局会社は2年で辞めて、アクセサリーブランドを立ち上げ、雑誌に掲載してもらったりしながら韓国で仕入れたモノを、個人のホームページで販売し始めました。自分で何かしたいとは思っていたんですけど、素人だし、自分でできる精一杯のことがそれだったんですね。たまたま韓国の工場の知り合いから「デザインしてみない?」と言われて、デザインもするようになりました。当時、スタイリストの風間ゆみえさんらの影響でカゴバッグがはやっていたこともあり、09年にバッグブランドとして「エジュー」をスタートして、バッグを2型作ったんです。今でも「エジュー」でカゴバッグを作っているのはその名残です。

WWD:スマホケースは何をきっかけに作り始めたんですか?

新井:バッグを作ってすぐにフリーズショップ(当時)と契約して販売することになりました。雑貨がすごく強いお店だったので、スマホケースのリクエストがあって作ることにしたんです。それが16年で、出産を機にブランドごと辞めちゃおうかなと思っていた頃でした。それで最後のコレクションだと思いながらバッグの実績を生かして、スマホケースにもバッグを付けたら面白いんじゃないかなと、ジップバッグを付けたケースを作ったんです。当時はiPhone6のときで最初は黒、グレー、ピンクの3色でした。売れるとも思ってなかったし、それから1年ぐらいは本当に売れなかったんです。

WWD:機能面や形は当時のままですか?

新井:形や機能自体は最初から変わっていません。昨年斜め掛けできるように取り外しできるショルダーストラップを付けました。当初はストラップも有り無しで選べるようにしていたんですが、今は全てにストラップが付いていて、必要ないお客さまには取り外して使ってもらえるようになっています。iPhoneは毎シーズン新しいモデルが発売されるので今だと7サイズ展開。靴のサイズと同じように在庫を抱えないといけないので、もっと分かりやすく販売したいし、卸先の在庫リスクも減らしたいと思い、型数はできるだけ少なくしています。

WWD:人気が出たきっかけは?

新井:インスタグラムの影響が大きくて、本当に口コミだけでいろんな人が使ってくださるようになりました。最初はモデルの田中里奈さんだったと思います。そこから新木優子さんや馬場ふみかさん、ローラさんらが次々にSNSにアップしてくださって、ファッション感度の高い女の子たちが毎日SNSにアップしてくれるような現象が起きたんです。もう毎日社内で大騒ぎでした。

WWD:定価の8000円は、ほかのiPhoneケースと比べると高めですよね?

新井:ブランドごと辞めようと思っていたので、当時は本来だったら5000円ぐらいで付けていたはずの上代を「もう売れるか分かんないしこれでいこうか」みたいな感じで、うちの平均単価よりも高く値付けしました。でも今、人間が一番触る道具ってスマホだと思うんです。バッグと比べても触る頻度が高くて経年劣化も早いので、素材もいい素材を使わないといけない。そういう意味では、上代を上げたことで素材を選ぶ幅もバリエーションも広がりました。

WWD:買い替えの頻度は?

新井:平均だと1年です。でもブランドとしては付けっ放しじゃなく、アクセサリー感覚で使い分けてほしいなと思っています。「エジュー」は定番としてケースの形を変えることはしないので、多種多様なシーンに合わせて使い分けられるようにと、17年に「エーシーン(A SCENE)」というスマホケースブランドも始めました。パンツのポケットにも入れやすいようにバッグの部分が取り外せたりカードケースを付けたり、「エジュー」にはない機能性を持たせています。

WWD:iPhoneの新しいモデルが発売されるごとに新しいケースも売れるんですか?

新井:そうですね。例えば、昨年のiPhone12の発売に合わせて自社サイトで「エジュー」を発売すると、5時間で600個が完売しました。リピート率が高いんです。iPhoneを買い替えなくても一度気に入ってくださると毎シーズン違うカラーで購入してくださるので、きちんとデザインと機能を訴求できているのかなと思っています。

WWD:今は“ちい財布”がブームで財布も小型化していますが、ポーチの部分には何を入れているんですか?

新井:キャッシュレスが普及してお財布はどんどん持たなくなってきたけど、お財布の機能は欲しいという人が多い気がします。「エジュー」にはお財布付きスマホケースという側面があるのかも知れません。小銭はもちろん、それぞれの生活に合わせてお薬から指輪、名刺、レシート、鍵、髪の留めゴムまでさまざまです。最近ではモデルのクリス-ウェブ佳子さんがエコバッグを入れて使ってくださっています。

WWD:ケース部分とバッグの一部を外すことでスマホを自立させられる機能については?

新井:普通に動画も観られますけど、コロナ禍でリモートでの打ち合わせが増えたので「Zoomを使うのに便利」という話を聞きました。ゴルフのレッスンでスイング動画を撮るために使っている人もいるみたいです。「それまでは缶コーヒーで支えていたんだけど」って。

WWD:最近のファッション業界におけるスマホケースの立ち位置は?

新井:これまで百貨店の1階で売っていたいわゆるシーズン商品に区画編成が起きているのは事実です。これまでだったら財布が売れ筋の雑貨だったけど、それに代わるものとしてスマホケースが出てきました。

WWD:今後スマホはどうなっていくんでしょう?

新井:将来的にはパソコンがなくなると思っています。iPhoneが折りたたみできるようになるという噂もあるし。電話の機能とパソコンのもっと間みたいなものが出てくるから、それに合わせられるガジェットのアクセサリーの提案ができたらと思いますが、本当にガラッと変わるから想像するのも難しいですよね。ただ、今スマホケースを作っている会社は以前、携帯電話のストラップを作っていた会社が多いんですね。だから時代とともに移り変わるけど、ガジェットに対してできることはあるのかなと思っています。

WWD:今後のブランドの目標は?

新井:「エジュー」は海外でも認知してもらえるようなブランドを目指しています。欧米でも日本と同じようなマーケットがあるんじゃないかな。昨年9月にパリのプルミエールクラス(展示会)に出展したかったんですが、コロナでできなくなってしまったんです。今年もしタイミングがあれば海外にもチャレンジしたいです。「エーシーン」は多種多様なライフスタイルに向けて、まずはもっと認知度を高めていきたい。「エジュー」の姉妹ブランドとして見られることが多いので、まずはそれを脱却して、本当は全然視点も違うしデザインや機能性も違うというところをしっかり訴求していきたいと思ってます。

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延べ13万個を販売したスマホケース「エジュー」のシンデレラストーリー

 パーククリエイションのバッグブランド「エジュー(AJEW)」のジップバッグ付きスマホケースが人気を集めている。小銭入れやポーチとして使えるのはもちろん、スマホスタンドにもなって、取り外せるリングやストラップも付く。それらの機能に加えデザインのかわいらしさも支持されて、ファッション感度の高いインフルエンサーやファッション業界人から火が付いた。一度愛用すると、“無くては困る”機能も買い替えを後押しし、iPhoneがバージョンアップされるごとに売れるという。8000円というスマホケースとしては高価格帯であるにも関わらず、これまでに延べ13万個を販売した。2021年3月期の売上高3億円(予想)のうち、約2億円が「エジュー」のたった1型のスマホケースの売り上げだ。人気の秘密を「エジュー」のデザイナーでもあるパーククリエイションの新井愛子社長に聞いた。

WWD:「エジュー」を立ち上げる以前もアパレルブランドを手掛けられていたそうですね。

新井愛子パーククリエイション社長(以下、新井):2004年に大学を卒業してアパレル業界に就職しました。ちょうどその頃に読者モデルブームが起きて、私も少し参加させてもらっていたんです。当時は読モが何かモノを作るとか販売するとかが意外と簡単にできてしまっていました。結局会社は2年で辞めて、アクセサリーブランドを立ち上げ、雑誌に掲載してもらったりしながら韓国で仕入れたモノを、個人のホームページで販売し始めました。自分で何かしたいとは思っていたんですけど、素人だし、自分でできる精一杯のことがそれだったんですね。たまたま韓国の工場の知り合いから「デザインしてみない?」と言われて、デザインもするようになりました。当時、スタイリストの風間ゆみえさんらの影響でカゴバッグがはやっていたこともあり、09年にバッグブランドとして「エジュー」をスタートして、バッグを2型作ったんです。今でも「エジュー」でカゴバッグを作っているのはその名残です。

WWD:スマホケースは何をきっかけに作り始めたんですか?

新井:バッグを作ってすぐにフリーズショップ(当時)と契約して販売することになりました。雑貨がすごく強いお店だったので、スマホケースのリクエストがあって作ることにしたんです。それが16年で、出産を機にブランドごと辞めちゃおうかなと思っていた頃でした。それで最後のコレクションだと思いながらバッグの実績を生かして、スマホケースにもバッグを付けたら面白いんじゃないかなと、ジップバッグを付けたケースを作ったんです。当時はiPhone6のときで最初は黒、グレー、ピンクの3色でした。売れるとも思ってなかったし、それから1年ぐらいは本当に売れなかったんです。

WWD:機能面や形は当時のままですか?

新井:形や機能自体は最初から変わっていません。昨年斜め掛けできるように取り外しできるショルダーストラップを付けました。当初はストラップも有り無しで選べるようにしていたんですが、今は全てにストラップが付いていて、必要ないお客さまには取り外して使ってもらえるようになっています。iPhoneは毎シーズン新しいモデルが発売されるので今だと7サイズ展開。靴のサイズと同じように在庫を抱えないといけないので、もっと分かりやすく販売したいし、卸先の在庫リスクも減らしたいと思い、型数はできるだけ少なくしています。

WWD:人気が出たきっかけは?

新井:インスタグラムの影響が大きくて、本当に口コミだけでいろんな人が使ってくださるようになりました。最初はモデルの田中里奈さんだったと思います。そこから新木優子さんや馬場ふみかさん、ローラさんらが次々にSNSにアップしてくださって、ファッション感度の高い女の子たちが毎日SNSにアップしてくれるような現象が起きたんです。もう毎日社内で大騒ぎでした。

WWD:定価の8000円は、ほかのiPhoneケースと比べると高めですよね?

新井:ブランドごと辞めようと思っていたので、当時は本来だったら5000円ぐらいで付けていたはずの上代を「もう売れるか分かんないしこれでいこうか」みたいな感じで、うちの平均単価よりも高く値付けしました。でも今、人間が一番触る道具ってスマホだと思うんです。バッグと比べても触る頻度が高くて経年劣化も早いので、素材もいい素材を使わないといけない。そういう意味では、上代を上げたことで素材を選ぶ幅もバリエーションも広がりました。

WWD:買い替えの頻度は?

新井:平均だと1年です。でもブランドとしては付けっ放しじゃなく、アクセサリー感覚で使い分けてほしいなと思っています。「エジュー」は定番としてケースの形を変えることはしないので、多種多様なシーンに合わせて使い分けられるようにと、17年に「エーシーン(A SCENE)」というスマホケースブランドも始めました。パンツのポケットにも入れやすいようにバッグの部分が取り外せたりカードケースを付けたり、「エジュー」にはない機能性を持たせています。

WWD:iPhoneの新しいモデルが発売されるごとに新しいケースも売れるんですか?

新井:そうですね。例えば、昨年のiPhone12の発売に合わせて自社サイトで「エジュー」を発売すると、5時間で600個が完売しました。リピート率が高いんです。iPhoneを買い替えなくても一度気に入ってくださると毎シーズン違うカラーで購入してくださるので、きちんとデザインと機能を訴求できているのかなと思っています。

WWD:今は“ちい財布”がブームで財布も小型化していますが、ポーチの部分には何を入れているんですか?

新井:キャッシュレスが普及してお財布はどんどん持たなくなってきたけど、お財布の機能は欲しいという人が多い気がします。「エジュー」にはお財布付きスマホケースという側面があるのかも知れません。小銭はもちろん、それぞれの生活に合わせてお薬から指輪、名刺、レシート、鍵、髪の留めゴムまでさまざまです。最近ではモデルのクリス-ウェブ佳子さんがエコバッグを入れて使ってくださっています。

WWD:ケース部分とバッグの一部を外すことでスマホを自立させられる機能については?

新井:普通に動画も観られますけど、コロナ禍でリモートでの打ち合わせが増えたので「Zoomを使うのに便利」という話を聞きました。ゴルフのレッスンでスイング動画を撮るために使っている人もいるみたいです。「それまでは缶コーヒーで支えていたんだけど」って。

WWD:最近のファッション業界におけるスマホケースの立ち位置は?

新井:これまで百貨店の1階で売っていたいわゆるシーズン商品に区画編成が起きているのは事実です。これまでだったら財布が売れ筋の雑貨だったけど、それに代わるものとしてスマホケースが出てきました。

WWD:今後スマホはどうなっていくんでしょう?

新井:将来的にはパソコンがなくなると思っています。iPhoneが折りたたみできるようになるという噂もあるし。電話の機能とパソコンのもっと間みたいなものが出てくるから、それに合わせられるガジェットのアクセサリーの提案ができたらと思いますが、本当にガラッと変わるから想像するのも難しいですよね。ただ、今スマホケースを作っている会社は以前、携帯電話のストラップを作っていた会社が多いんですね。だから時代とともに移り変わるけど、ガジェットに対してできることはあるのかなと思っています。

WWD:今後のブランドの目標は?

新井:「エジュー」は海外でも認知してもらえるようなブランドを目指しています。欧米でも日本と同じようなマーケットがあるんじゃないかな。昨年9月にパリのプルミエールクラス(展示会)に出展したかったんですが、コロナでできなくなってしまったんです。今年もしタイミングがあれば海外にもチャレンジしたいです。「エーシーン」は多種多様なライフスタイルに向けて、まずはもっと認知度を高めていきたい。「エジュー」の姉妹ブランドとして見られることが多いので、まずはそれを脱却して、本当は全然視点も違うしデザインや機能性も違うというところをしっかり訴求していきたいと思ってます。

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“プロデューサー巻き”の次はこれ! セーターをマフラー風に巻く“ニット肩巻き”

 プルオーバーのニットセーターをマフラー風に巻く“ニットの肩巻き”が街に出現しました。かつてはカーディガンを肩に巻く“プロデューサー巻き”がはやりましたが、“ニットの肩巻き”はそのセーター版。このイレギュラーな着こなしは、意外性に加え、落ち感や小顔効果といったメリットもいっぱい。真冬の必需品であるセーターを、遊び心たっぷりに様変わりさせられる新テクニックです。

 例えば、「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」のルックは、同じセーターを2枚重ねたような見え具合。首と肩を覆ったケーブル編みニットがいたずらっぽいムードを醸し出します。首周りが暖かいのはもちろん、デコルテに立体感が備わり、着やせ効果も期待できそう。垂らした袖はマフラーのようで、落ち感を演出。春先まで使える、防寒とおしゃれをダブルでかなえてくれる“ニットの肩巻き”を試してみませんか?

ワンピースに無造作巻き 色を合わせて好バランスに

 印象的な色のセーターを選べば、顔周りのアクセントに役立ちます。「ミントデザインズ(MINTDESIGNS)」はパステルミントのふわふわしたニットセーターを、ワンピースの上から無造作にくるっと巻きました。ゆったりしたワンピースに程よいボリュームが加わり、一段と朗らかな表情に。ほっこりした量感のおかげで、顔周りも優しげに映ります。全体を調和させるコツは、セーターの色をワンピースやスカートにも落とし込むこと。写真のような好バランスに整います。

同系色の“ニットonニット”でこなれ感 片側の肩にずらし掛け

 “首巻き”を組み込みつつ、落ち着いた着映えにまとめるなら、同系色でそろえる“ニットonニット”が効果的です。「アンスリード(UN3D.)」はベージュのニットプルオーバーの上から、同じニットを重ね巻きしました。こなれて見える理由は、わざと片方の肩にだけ掛かるようにずらしているから。あでやかな赤のスカートとの、色味の強弱も際立ちました。同じニットを2枚持っていなくても、近いトーンで合わせる“ずらしワントーン”でニュアンスを出す技も使えます。

縦長レイヤードを強調 袖垂らしがアイキャッチー

 縦に長いイメージを引き出すうえでも、ニットの“肩巻き”は使えます。グレー系のセーターを巻いたのは「ロゼッタ ゲッティ(ROSETTA GETTY)」のレイヤードルック。袖部分を正面に長く垂らしてマフラーのよう。チェック柄のパンツにワンピースを重ねた、細長い着映えのシルエット作りに、リブ編みの“垂らしニット”が一役買ってくれました。首周りのニットが高い位置に視線を引き込み、縦長コーデの印象を強めています。“柄on柄”コーデに“肩巻き”ニットを加えると、たおやかさがアップするのもこのコーデのいいところです。

スエットを垂らしてカジュアルなテイストを強調

 肩からの掛け垂らしに使えるのは、セーターだけではありません。スエットを使えば、カジュアルなテイストで着こなせます。「マニュアル アルファベット(MANUAL ALPHABET)」はスエットトップスを肩掛け。袖はあえて正面で結ばず、だらりと垂らしています。ロングシャツと合わせてレイヤードの落ち感を際立たせました。垂らした袖を遊ばせる掛け垂らしは、ロング丈のカーディガンやライトアウターにも生かせる小技です。

着ている途中? トリッキーな奇想天外コーデ

 “着る”と“掛ける”をミックスしたトリッキーな着こなしも誕生しました。トレンドの先端を行くおしゃれ好きにおすすめです。「アー・ペー・セー(A.P.C.)」のルックは、プルオーバーをかぶった状態で、腕を通さず袖を体に巻き付けました。裾をウエストまで下ろさないことでドレープが生まれて、おしゃれ感がアップ。下に着たセーターとのレイヤードも味わい深い見え具合に。遊ばせた袖のアシンメトリーがこなれ感を印象づける仕掛けです。

 ルールや既成概念にとらわれず、自由な感覚でファッションを楽しみたい人にぴったりな、ウィットフルなスタイリングです。マルチに使いこなすユーティリティー的発想にも通じるアイデア。顔周りにボリュームが生まれる分、小顔効果も期待できる“ニットの肩巻き”。マフラー感覚で冬のおしゃれに取り入れてみてはいかがでしょう。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

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抽選販売で5%しか買えないブランド「グッドナイトストア」、仕掛け人が全てを語る

 いま、ファッション好きな若者たちの間で話題になっている「goodnight5tore(グッドナイトストア)」というブランドをご存知だろうか。公式のインスタグラムアカウト(@goodnight5tore、フォロワー数:3.5万人)と公式サイト(通販サイト)のabout欄にはdreamy artsと一言書いてあるだけ。アイテムはTシャツ(1万1000円)、ロンT(1万4300円)、パーカ(2万4500円)とベーシックなカジュアルウェアのみの展開で、値段もそれなりだ(というか結構高い)が、こちらはブランドの説明以上に、商品説明は全くない。しかも商品は現在、全て売り切れている。

 公式サイトの【特定商取引法に基づく表記】には、事業運営者としてKenji Tsukaharaという名前が出ている。D2Cブランドに詳しい人ならピンとくるかもしれない。インスタのフォロワー数557万人を抱える「イチナナキログラム(17kg)」などいくつかのD2Cブランドを運営するイチナナキログラムの社長として知られる塚原健司だ。「グッドナイトストア」の全てを塚原本人が話した。

WWDジャパン(WWD):不思議なブランドですね。

塚原健司(以下、塚原):そうですか?そういった意図は特にありません。僕にとっては実験的なプロジェクトではありますが。「グッドナイトストア」の製品は実は19年ごろから遊びで作っていて、たまに商品をアップしては3〜4カ月に一回くらい再販していました。20年春から本腰を入れて月1回のペースで販売していましたが、毎回数分で即完してしまい、新製品を出したり、過去の製品を再販したりしていました。最近になって高額転売が起きていたので、1月分(1月23日販売)は抽選販売にしたのですが、600万円分の在庫に対して、7000人から1億3000万円分の申し込みがありました。

WWD:そもそも、なぜこのブランドを?

塚原:自分の好きな世界観で自分の好きな服を売ろう、というのが「グッドナイトストア」の出発点です。細かく採寸を繰り返したり、素材を探したり、1年近くをかけて製品を作り込みました。なので製品の価格も、原価があって、そこに経費などを載せていって決めています。

WWD:原価率は?

塚原:あえて言う必要性を感じないので言いませんが、普通です。本当に。原価率は高くもなければ低くもないと思います。これまで、「17kg」を筆頭にこれまでは綿密なリサーチを重ねてターゲット層を設定し、商品も常にニーズを徹底的に分析して売れ筋を販売してきました。だから「グッドナイトストア」」のアプローチは真逆のやり方です。
WWD:商品やブランドの説明を徹底的に省いている。その理由は?

塚原:ブランドを本格的にやろうと決めた時点でグローバル展開を考えていたので、できる限り日本語、というより言語を使わないやり方をかなり研究しました。公式サイトやインスタの公式アカウントではほぼ言葉は使わず、空気感や世界観を伝えるビジュアルを投稿しています。特にロゴに関しては「ひと目見て印象に残るか」という点でかなり考え抜きました。

WWD:インスタ公式アカウントのインサイトは?

塚原:男女比は半々くらい、年代だと20代が一番多いですね。海外の割合は2割ですが、今もどんどん伸びています。台湾や中国、韓国が多いです。これはかなり嬉しいです。

WWD:ユニセックスというのは意識した?

塚原:そもそもアイテムがベーシックなカジュアルウエアなので、ユニセックスかどうかというのは見せ方だけの問題ですよね。その部分は変にこちらが決めつけるようなことはしないようには気をつけました。

WWD:運営体制は?

塚原:ブランドの運営に関わっているのは僕とあともう一人だけです。商品企画や撮影、インスタの運用、グラフィック制作などは自分でやっています。ロゴも自分で作りました。ビジュアルにはこだわっていますが、できるだけコストを掛けないようにしています。広告はほぼというか、全くしていません。基本はギフティングです。商品の販売数が少ないのもあえて絞っているわけではなく、単に工場のキャパも人手も資金も限られていて、単に作れないからです。

WWD:ギフティングのやり方は?

塚原:業界未経験でほぼゼロから立ち上げた「17kg」のときもそうでしたが、基本的には着てほしい人を見つけて、DMを送ってお願いする、というやり方です。今回は特に個人的に思い入れの強いプロジェクトなので、(バズるかどうか)というよりも純粋に着てほしいと思ったインフルエンサーにDMして、連絡先を聞いて商品を送っただけ。いつもは「もしよかったらSNSに上げてください」くらいの一言は入れるのですが、今回はそれも入れませんでした。かっこいいと思ったら着てもらえるだろうし、自慢したいと思ったらインスタにもアップするので。でもどのインフルエンサーにも、ブランドロゴや商品のディテールへのこだわりは伝わって共感していて、こちらが何も言わなくても、ある種思った通りの写真を上げてくれて、それがどんどん増殖して波及していきました。

WWD:「17kg」で培ったインフルエンサーとのつながりも役に立った?

塚原:逆に、そういったインフルエンサーの方々にはお願いできないです。「17kg」も好きで着てくれていて、それがきっかけになってタイアップに発展していますが、「新ブランド立ち上げるのでお願いします」みたいなことをしたら、信頼を損なうし、そーゆう“やらせ”はファンからの信頼を一瞬で失うことにもなる。「グッドナイトストア」もほぼゼロからここまでファンを増やせたことが、エンゲージメントの高さにつながっていると思います。

WWD:今後は?

塚原:グローバルに展開していきたいと思っているので、ビッグネームのブランドとコラボレーションをしたいと思っていますし、いずれは東コレやパリコレにも出たい。「グッドナイトストア」を通して、自分が好きなものを夢中で作って広げられた、ということは知ってほしい。やり方次第では、一人でも自分の好きなものを貫いてここまでできる。そのためにも、世界規模で広げたい。本気でそう思っています。

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資生堂トップヘアメイクアップアーティストの原田忠が語る“自粛期間中にたどり着いたクリエーションの新境地”

 2020年4月、ヘアメイクアップアカデミー“SABFA”の校長を後任にバトンタッチし、再び個人的なクリエーション活動に注力できる環境となった原田忠・資生堂トップヘアメイクアップアーティスト。しかし、新たなスタートはコロナ禍のただ中で、思うようなクリエーションができず悶々とした日々が続いたという。そうした状況下で試行錯誤し、たどり着いた“クリエーションの新境地”とは?

WWD:昨年春からの自粛期間中はどのようなことを考え、どういった活動をしてきた?

原田忠・資生堂トップヘアメイクアップアーティスト(以下、原田):僕らヘアメイクアップアーティストの仕事は、目の前に人(モデル)がいないと成り立たない仕事だと思っていたので、接触を避けなければいけない状況下で、クリエーションをどうすれば継続できるか悩んで悶々としていた時期もありました。そこで「今できることは何か」を考え、ユーチューブチャンネルを開設したり、メディアプラットフォーム“ノート”をやり始めたりしました。

WWD:いろいろと試行錯誤した。

原田:そうですね。あと会社に一人で行って、アジアの美容師に向けた教育コンテンツなどを作っていました。試行錯誤しながらも、そうした蓄積をしたり、これまで発信できていなかったコンテンツを発信したり、文章化したりするような取り組みも始めました。動画の見せ方や照明の使い方を工夫していくうちに動画編集のスキルアップがかない、ストーリー立てた文章の書き方も向上しましたね。クリエーションを発信する新たなベースを築くことができて、それらを使って“届けたい人にどう届けるか”を考えるきっかけになりました。

 

WWD:“コンテンツの蓄積”と“新たな発信ツールの創出”ができた。

原田:その意味では、2020年は例年以上にクリエーションできた年でもありました。ただ、作品作りができていないという点でフラストレーションは溜まっていて、そんな時に「ユニクロ トーキョー」がアーティストとコラボレーションする企画が立ち上がったんです。展示するマネキンにヘアメイクを施すという内容だったのですが、マネキンにヘアメイクをするのは初めての経験でした(笑)。メイクといってもツルンとしたところに目や鼻を描くのはどうかと思ったので、衣装に合わせたペイントを施そうと考えました。「ユニクロ トーキョー」がグローバルな旗艦店ということで、大航海時代の帆船をイメージし、帆船からインスパイアされたアートペイントを施して8体作りました。

WWD:好評だったと聞いている。

原田:評判が良かったので、秋冬のニットのプロモーションの際にコラボ第2弾が実現し、ニットのファッションスタイリングに合わせた編み込みヘアで20体のマネキンを作りました。モデルを起用しなくても作品作りができるという新たな発見があり、個人のアーティストとして企業とのコラボレーションができ、かつ自分の色も出せたという貴重な体験でした。

WWD:「UTme!」(「ユニクロ」が提供している、オリジナルのTシャツやトートバッグを作れるサービス)の取り組みは?️

原田:実は以前から個人的に申請していて、その売り上げを医療従事者に寄付しようと思っていたのですが、コラボする中で「だったらオフィシャルで作りましょう」という話になったんです。Tシャツなどにプリントするモチーフに関して、最初は自分のお気に入りの作品にしようと考えていたのですが、モデルの版権などの問題があり悩んでいたところ、自分の担当プロデューサーから「顔は入れなくて、ヘアだけでもいいんじゃないでしょうか」とアドバイスを受けたんです。それで、以前に作った編み込み作品のヘアの一部分をフォーカスしてピックアップしたり、角度を変えてデフォルメしたりしてモチーフにしたんです。“髪をまとう”というコンセプトで、新鮮なデザインになったと思います。

WWD:斬新でかっこいい。

原田:一般的に、ヘアメイクアーティストの作品というとモデルの写真をイメージしますが、“見方を変えるだけで違ったクリエーションができる”という新たな発見でした。また、普通の作品ではこういうことはできなかったので、これまで“編み込み”にこだわった独自の作品を作ってきた“自分に感謝”という思いもあります。今まで高い熱量で創作してきた作品が、形を変えて息を吹き返すというのはとても面白い経験で、今後の創作の幅も広がりそうです。

WWD:他に取り組んだことは?

原田:10月に行われた“ジャパンキャンサーフォーラム2020”で、がん患者やその家族、医療関係者らに向けたイベント“ラベンダーリング 2020 powered by SHISEIDO”に初めて参加しました。その中の男の整容コーナーで、がん治療の副作用で抜けてしまう眉や、肌のアピアランスケアをテーマに、男性向けメイクのやり方をレクチャーしました。治療をして眉毛が抜けてしまった方の気持ちを考えたら、生えている眉毛の上から描くことは考えられないし説得力もないので、自分の片眉を全剃りしてから眉の描き方を伝えたんです。全剃りして初めて“何もないところから描くのは難しい”と気付きましたね。

WWD:昨年2月には「男の整容本」も作っていた。

原田:がん治療による外見上の変化へのアドバイスをまとめた男性用小冊子ですね。アピアランスケアは、治療による外見の変化をケアすることで、患者さんが仕事や日常生活を前向きに送ることができるようにお手伝いすることです。例えば“ヘアウイッグを使うときにどういったアレンジができるか”などのソフト情報が不足していて、自分にお手伝いできることがまだまだあるので、引き続き注力していきたいです。

WWD:アーティストとのコラボレートも。

原田:以前からアーティストの布袋寅泰さんのヘアイクを、“布袋組”の一員としてサポートしていて、そのつながりでさまざまなアーティストと仕事をする機会が増えました。2月1日の布袋さんのバースデーには、布袋さんのアイコンでもあるギタリズム柄(G柄)をモチーフにしたヘアカラー作品を創作し、プレゼントさせていただきました。G柄のデータを拡大してプリントし、クリアファイルに貼って切り抜き、それを髪に貼ってブリーチして……本当に手の込んだ作業でした(笑)。ほかにも、きゃりーぱみゅぱみゅさんの初春ビジュアル“2021:A Beauty Odyssey(2021年美の旅)”で作ったヘッドピースを、資生堂ビューティ・スクエア内にマネキンを使って展示するなど、立体的な試みにも攻めの姿勢で取り組んでいます。

WWD:クリエーションで今年やりたいことは?️

原田:まだ構想段階ですが、これまでになかったジャンルとのコラボレーションを考えています。例えば作品と音楽の融合とか……。これまで“ビューティカテゴリー”での表現をしてきましたが、「美しい表現はそれ以外にもある」と昨年改めて気付きました。また、自粛期間中に考える時間ができ、考えを実行するエネルギーをためることができました。まだ自粛は続きそうですが、今年も新たなヘアメイクの表現にチャレンジしていきたいです。

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編集長は先月何した?「ロエベ」とトトロで癒され、「ディオール」で南国恋しく、服作りの仕組みは激変の予感

 初売りも福袋も控え目でどうにも盛り上がりにくい新年を迎えたと思った矢先に10都道府県が緊急事態宣言下に。いい加減にして〜と空に向かって叫んでも自分に飛沫が戻ってくるだけ。顔を上げて、笑顔で、自分たちの仕事と生活に誇りを持って頑張りましょう!

1月7日(木)
まるで心の湯たんぽ
「ロエベ」とトトロのコラボにほっこり

 「ロエベ(LOEWE)」と「となりのトトロ」のコラボのお披露目に行ってきました。朝一番に見て、心がじんわり暖かくなりその効果は冬空の下を歩いても消えず、夜まで続きました。まるで心の湯たんぽです。ほっこりの背景には2年に及ぶ制作期間があったとか。ファッションとアニメーメーションの違いこそあれ、クラフツマンシップの高さは両者とも世界最高レベル。互いへのリスペクトがあるから実現するのですね。

1月7日(木)

ストライプインターナショナルで前「WWDジャパン」編集長と再会

 月末の「CEO特集」のために連日企業トップの取材が続く中、この日はストライプインターナショナルの立花隆央社長兼CEO(写真左)に取材をし、基幹の「アース ミュージック&エコロジー」の改革などたっぷり聞きました。右の女性はハイ、そうです!「WWDジャパン」の前編集長である都築千佳さんです。今は同社広報チームのマネージャーです。メディアの酸いも甘いも知り尽くし、ファッションとビューティの業界の端から端まで知っている広報責任者だなんて、実に頼もしいですね。日々の業務に「WWDジャパン」を活用してくれているとのこと。あざっす!店頭に立つこともあるそうで「コロナ下でも仕事帰りと思われる女性たちがきれいな色や艶のある素材使いの服を手に取るのを見てファッションの力を再確認している」と都築さん。ホントそう思います。

1月8日(金)
「ディオール」の展示会で
トロピカルに逃避行

 南の島へ逃避行。この言葉がこんなに恋しくなる日が来るなんて。ハワイ島沖へシーカヤックで繰り出しシュノーケリングでイルカと泳いだり、浜辺でウミガメをそっと見守ったり、フルーツをたっぷり飾ったベタなカクテルを注文したりしたいです。そんな夏の日へ思いを馳せたのが「ディオール(DIOR)」の2021年春夏展示会。フランスの伝統的なデザイン“トワル・ド・ジュイ”(18世紀頃の人物や風景、神話、動植物をモチーフにした柄のことです)の水着や大ヒットバッグ“ブックトート”などは夏のバカンスが似合うだろうな。

1月14日(木)
「ルイ・ヴィトン」の展示会へ
手仕事には吸引力がある

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の展示会へ。こちらはウィメンズ・レザーグッズ・ディレクターに就任したジョニー・コカ(Johnny Coca)が手がけたバッグです。ジェンダーレスへとドライブをかけているニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)と相性がぴったり。そして2枚目以降はメンズのコレクションです。ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)=メンズ アーティスティック・ディレクターのストリートのセンスと手仕事が融合している様をぜひご覧ください。

1月15日(金)
「カラー」のショーからの
激ウマのイタリアンをテイクアウト

 パリメンズに参加している「カラー(KOLOR)」は、東京・目黒の八芳園で2021-22年秋冬コレクションをショー形式で発表しました。夜の空気がどんどん流れ込んでくる半分屋外みたいな会場だから感染対策もしっかり。展示会ではその素材やディテールの面白さに夢中になる「カラー」の服ですが、こうやってコーディネートで見るとそのハイセンスっぷりが際立ちます。

 いいものを見たからか、金曜日の夜だからか、コロナ疲れか、ただの食欲か、無性に最高に美味しいイタリアンが食べたくなり、閉店間際の目黒「古澤亭」に駆け込んでトリュフかけのパスタなどをテイクアウト(写真2枚目)。自宅までの帰路のバス車中をいい匂いで充満させてしまいました。良い素材に良いガーリック、良いオリーブオイルに良い塩胡椒、そして古澤シェフの腕。美味しくないはずがない。フランチャコルタを合わせてあぁ至福。早く店内でどんちゃん騒ぎたいです。

1月20日(水)
服作りの常識が根底から変わる予感

 デジタルにより服作りの仕組みが数年以内に激変する。そんな胎動をあちこちから感じています。大量生産・大量廃棄から脱却する一助となるサプライチェーンの改革です。服作りの仕組みが変わるということはすなわち服飾専門学校の教育が変わるということ。特にパターンメイキングは常識が根底から覆るかもしれません。その先陣を切っているのが東京ファッションテクノロジーラボ(TFL)で、繊維商社のヤギとジョイントベンチャーをスタートしたとのことで取材をしました。目からウロコの話の続出で面白かった!そして一番印象に残っているのは代表の市川さん(写真左)の次の目標は四万十川でワサビ作りというお話。デジタル化は場所という制約を解くからそんなライフスタイルも可能になるみたい。夢がありますね!

1月27日(水)
オートクチュール取材中
「ユイマ ナカザト」の配信現場へ

 この週は2021年春夏オートクチュールでした。デジタルコレクションの取材にもすっかり慣れたとはいえ日本から発信するデザイナーの取材はできればリアルにしたい!というわけで「ユイマ ナカザト(YUIMA NAKAZATO)」のオフィスへ。オンラインで質疑応答をする中里さんの様子を取材しました。部屋の中は人の数こそ少ないですがオンライン配信独特の緊張感が漂っていました。でもコミュニケーションが進むと和やかに。デザイナーと受け手の対話が気軽にできる点がデジタルコレクションの一番の魅力だと私は思います。ある意味最高のフロントローでありバックステージ取材になりました。やっぱり私は現場取材が大好きだー。

1月28日(木)
最新号紹介
と在宅のお供

 「WWDジャパン」が今年力を入れる2大キーワードはサステナビリティとデジタル。1月の最初の2号はそのメッセージを込めて特集を組みました。そしてドカンとぶ分厚く仕上げた1月25日号はファッションとビューティ47社のCEOに登場いただきました。おそらく多くの企業が創業以来一番の苦難を抱えている今、トップが何を語るのかじっくりとどうぞお読みください!

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爆裂!健康美容マニア道 柿渋の超抗酸化力で花粉症に喝っ!

 1日8食、ジャンクフード漬けの超不健康児から超健康優良児へと大変身を遂げたフリーアナウンサーの名越涼。およそ15年かけて自らの体で人体実験を繰り返してきた結果、“超絶良かったもの”だけを余すことなくお伝えする。今回は花粉症対策に最適な柿渋飲料について。

 今年もあの恐ろしい季節が鼻水という音を立ててやって来ようとしている。いや、やって来ている。すでに私の周りの花粉症持ちから「ズズ……ヘックシ!早くもやって来たか……」という声が漏れ聞こえ始めているのだ。かつては私もひどい花粉症持ちだった。発症は高校生のころ。つらい春を何度も経験し、腸内改善を繰り返しながら少しずつ克服してきた。そして今年、その生活に終止符を打つであろう、とてつもなくマニアックな、もとい、こだわりの強いアイテムと出合った。

気合いの入った本物の逸品

 パッと見て「え?塗料?」と感じたあなた。安心してほしい。これは紛れもなく飲用の柿渋である。シンプルさを突き詰めた渋すぎるデザイン。とことん無駄を省いた一本気な姿勢。これ、マニアにとってはたまらないポイントで、中身に対する尋常じゃないこだわりと気合を感じさせる。さて、柿渋といえば塗料や染料のイメージが強く、私自身も「え⁈飲むことなんてできるの⁈」と目を真ん丸にしたのだけれど、しばらく続けて納得した。昔から受け継がれてきたものには理由があるのだなと。まず、一切のムズムズを感じなくなった。そして疲労感が明らかに和らいで、朝の目覚めが良くなった。その秘密は3〜10年発酵・熟成した柿渋パワーにある。

赤ワインの10倍のポリフェノールの力よ

 昔から民間薬など幅広く活用されてきた柿渋。「柿が赤くなると医者が青くなる」ということわざは言い得て妙だなと感心してしまうほど、そもそも柿のポテンシャルは高いし、柿渋の栄養価は驚くほど素晴らしい。まず、悪玉活性酸素を抑えてくれるポリフェノールが赤ワインの10倍もある。そのポリフェノールの内訳を見てみると、ウイルスや菌の増殖を抑え、抗酸化作用があり、血液をきれいに掃除してくれるタンニンをはじめ、脂肪の吸収を穏やかにするカテキン、血流を穏やかにサポートしてくれるフラボンなど優等生大集合!体内の美容液である血液がきれいになり全身を巡るのだから、それは目に見えて調子良くなりますわな。

良薬口に苦すぎるわ!でも飲み続ける理由

 この柿渋ドリンクは正直、「良薬口に苦……すぎるわ!(笑)」と猟奇的に笑いながら叫びたくなるほどインパクトのある独特な味わい。香りはギンナンがいぶされたような、はたまた自然由来のペンキのような、とにかく衝撃的なのである。が!不思議と慣れるのが人間のすごいところで、そもそも栄養価や効能を考えると1日10〜30mLの一瞬のもがきなんて気にするレベルのことじゃないのである。ちなみに名越は毎日30 mLを3倍くらいに薄め、息を止めてくいっと飲んでいる(笑)。おかげさまで鼻のムズムズはないし、腸の調子は絶好調だし、疲れすら感じなくなっているしで柿渋さまさま。花粉症とおさらば&免疫力UPしたいのであれば、日本古来のスーパードリンク「柿渋」は家に常備したい強力なパートナーとなるだろう。

名越涼/フリーアナウンサー。香港出身。福井と愛知のテレビ局アナウンサーを経て独立。司会やライター、セミナー講師、企画・プロデュースなど幅広く活躍するパラレルワーカー。趣味・特技は手作り発酵食、食文化研究、ヨガ(歴15年)eスポーツと農業にも精通

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学生活動家が音楽ライブで気候変動危機を訴える 「クライメイトライブ」が日本など世界40カ国で同時開催

 学生環境活動家らによる音楽ライブイベント「クライメイトライブ(CLIMATE LIVE)」が4月24日と10月16日にオンラインで開催される。同団体は音楽を通じて若い世代の気候変動への理解を広め、未来に向けたアクションを共に起こそうと呼びかけたイギリスの高校生から始まり、2019年に世界40カ国に広がった。日本支部の「クライメイトライブ ジャパン(CLIMATE LIVE JAPAN)」は高校生と大学生の20人で構成し、“ウチらの声で世界は変えられる”をスローガンに掲げて活動する。賛同者にはモデルのAMIAYA、環境活動家でモデルの小野りりあん、経済思想家の斎藤幸平、アーティストのコムアイらが名を連ねる。共同代表を務める高校生の山本大貴さんと大学生の田代マホさんに同イベントにかける思いを聞いた。

WWD:二人が気候変動問題に興味を持ったきっかけは?

田代マホ(以下、田代):私は福島県いわき市で育ちました。東日本大震災の原発事故をきっかけに東京に引っ越してから、台風などで休校になることが多く気候変動問題がどんどん身近になっていることに危機感を覚えました。たまたま映画「不都合な真実」を監督したアル・ゴア(Al Gore)さんの来日講演に参加したとき、危機感を持つだけでなく具体的なアクションを起こしている人たちに数多く出会いました。私も何かできるかもしれないと思うようになりました。

山本大貴(以下、山本):僕は昨年、学生環境団体「フライデーズ・フォー・フューチャー(FRIDAYS FOR FUTURE、以下フライデーズ)」に加入しました。「フライデーズ」のメンバーの多くは同団体の創始者であるグレタ・トゥンベリ(Greta Thunberg)に感化されていますが、僕は大きなきっかけがあったわけではなく、小学校の授業で気候変動の話題に触れた頃から関心がありました。19年の台風19号が大きな被害をもたらした時は、ボランティアで栃木に行きました。現場を直接見てあらためて「気候変動でこんなに悲惨なことが起こるんだ」と痛感しました。解決するにはどうしたらいいんだろうとモヤモヤしながら過ごしていたときに「フライデーズ」に参加していた友人と出会い、とにかく飛び込んでみよう決めました。

WWD:「フライデーズ」ではどんな活動を?

山本:SNSなどでの情報発信に加えて、最近僕たちの間でホットな話題はやはりNDC(温室効果ガス削減努力目標)。NDC改定にあたり、エネルギー基本計画の見直し会議が行われているんです。政府の会議を文字起こしして、それぞれの議員の意見を分析し、直接議員の方に話に行くこともあります。

同世代に気候変動への理解を広めたい

WWD:「クライメイトライブ」とは?

田代:発端は18歳のイギリス人の女の子。彼女が同世代に気候変動問題を広める方法を考えていたところ、ロックバンドのクイーン(Queen)のメンバー、ブライアン・メイ(Brian May)が「気候危機を訴えるライヴ・エイドのようなイベントがあれば出演したい」と発言したことに背中を押され、同団体を立ち上げました。各国の「フライデーズ」に声がかかり、日本にも支部が誕生しました。現在、実行委員会は学生20人で構成しています。

山本:「フライデーズ」は企業や政府に直接何かを訴える政治的なアプローチを取りますが、気候変動への関心が低い層にどうアプローチするかという課題を抱えていました。「クライメイトライブ」は、音楽を通じて若い世代に気候危機に興味を持ってもらうきっかけづくりを目的としています。「フライデーズ」の活動が影響力を持つためにも、気候危機を訴える人々の母数は大きくなければいけません。その橋渡しに貢献したいと思ったんです。

WWD:イベントはなぜ4月と10月に行うのか?

田代:11月に開催予定の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)では、各国のNDCの数値が決定されると言われています。各国政府が自国の数値を見直すデッドラインが4月。これを見据え、若者が能動的なアクションを起こすことでNDCの引き上げにつながればと願っています。10月はCOP開催の認知度向上を狙います。

WWD:イベントはどんな内容に?

田代:ライブの出演者はまだ未定ですが、若い世代に人気のアーティストを中心に出演していただきたいと考えています。一番の理想は、アーティストのファンの子がたまたま参加して、ライブをきっかけに気候変動に興味を持ってくれること。参加者の方が次の日から何か具体的なアクションを実践できるようなコンテンツも準備しています。

山本:僕や田代はたまたま出会いに恵まれて、この活動に参加することができました。チャンスさえあれば、アクションを起こしたいと思ってくれるポテンシャルのある同世代は多いと思います。今回のライブが多くの人たちのアクションを起こすきっかけになるとうれしいです。

WWD:若い世代は気候変動への意識が比較的高いと言われているが、世代内でも意識の差は感じるか?

田代:私は差を感じるからこそ、今回の活動に参加しました。ただ最近は「ViVi」(講談社)や「エル・ジャポン(ELLE JAPON)」(ハースト婦人画報社)などでもSDGsが取り上げられ、環境問題がカッコいいものとして広まっているような気がします。気候変動問題について理解することはもちろん、どんなアクションを取るべきかを広め、仲間を増やすことが大切だと思います。

WWD:普段買い物をする時に、環境負荷や生産背景を意識する?

田代:コスメは必ず購入前にブランドのコンセプトを調べます。国内で作られているか、パッケージがリサイクルされているかどうか、認証ラベルなどもチェックします。紙箱なしの製品を購入すると価格の3%が値引きされる“エシカル割”がある「シロ(SHIRO)」や、「スリー(THREE)」はお気に入りです。ファストファッションは買わないようにして、なるべく気に入ったものを長く大切に着るように心がけています。「コスメキッチン(COSME KITCHEN)」のマッシュホールディングス系列のブランドなら安心できるな、といった具合に生産背景を気にかけるようになってからは会社のホームページをよく見るようになりました。

山本:僕は昨年7月からヴィーガンになりました。温室効果ガスの排出量削減の観点から、お肉を食べないという選択は車に乗らないことに匹敵すると知ったからです。普段はファラフェルブラザーズや仙川のキックバックカフェなどを利用します。最近ではファミリマートも大豆ミートを販売していますね。通販で買うこともありますが、包装がプラスチックだから後ろめたさもあって………。

WWD:家族の理解を得るのも大変だった?

山本:そうなんです。僕がヴィーガンになると話すと、2週間ほど家族会議が続き、ヴィーガンの健康的なメリットなどをプレゼンしました(笑)。特に母親に響いたのは気候変動的な観点ではなく動物愛護。畜産動物が劣悪な環境下で育てられていることを伝えると、家で飼っている犬と重ねて共感してくれました。おかげで、今の家庭の料理はすべてヴィーガンになりました。昨晩は、大豆ミートの麻婆豆腐でした。友達とファミレス行った時には、僕だけがヴィーガンで困る時もあります。こういった選択は煙たがられることも多いので、「肉を食べるのはやめた方がいいよ」と相手にも同じことを求めるのではなく、あくまで自分の行動や選択を見せることを意識しています。

WWD:最後に、ファッションやビューティ業界に伝えたいことは?

山本:サステナブルな商品を取り扱うことは、人の命を救ったり、誰かを笑顔にしたりすることにつながっています。それってとてもかっこいいことです。誰かのためにモノを作ったり、売ったりすることが素晴らしいというメッセージをもっと堂々と発信して広めてほしいです。

田代:エシカルなモノがかっこいいという文化を醸成するカギを握るのはファッションだと思います。周りで支持されているブランドは「ラッシュ(LUSH)」や「パタゴニア(PATAGONIA)」など。日本でもサステナブルで背景にこだわり、長く使える商品を提案してくれるブランドがもっと増えてほしい。例えば、店頭で生産背景へのこだわりを消費者に伝えるコミュニケーションが当たり前になったらいいなと思います。

■「クライメイト ライブ ジャパン」
日時:4月24日、10月16日
時間:未定
方法:オンライン配信
料金:無料〜1000円想定

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【動画】ファッション業界人辞典Vol.1 向千鶴「WWDジャパン」編集長の仕事とは? 

 「ファッション業界人辞典」は、ファッション業界で働く人にフォーカスし、その仕事柄を伝えます。業界のさまざまな職業を紹介しながら、「実際、どんな仕事をしているの?」「どうしたらその職に就けるのか?」などの疑問を解決。これからの若者たちの指針になるような情報や、業界人が気になるあの人の素顔や過去を、日々の仕事姿や過去の映像・写真を通して発信します。

 第一弾は業界歴30年の向千鶴「WWDジャパン」編集長に迫ります。これまでの経歴や32歳で就いた編集長までの道のりから、記者との違い、自分自身が考える編集長の色までを聞きました。動画内では“周りの人からの声”も紹介し、在仏40年のコーディネーターの古堅克己とアデライデ(ADELAIDE)の長谷川眞美子エグゼクティブ・ディレクターが登場します。

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イーラルの最高峰ブランド「イーラル プルミエ」がリブランディング 加齢と女性特有の悩みをプロテクトする新機能を追加

 美容室向け化粧品の販売を行うイーラルは、創業10年を迎えたことを機に、3ブランドにおいて初の全面リブランディングを実施する。商品は全面刷新し、第1弾として2月17日にイーラル最高峰ブランド「イーラル プルミエ」を発売。第2弾として4月7日に基幹ブランド「イーラル」と、男性向けブランド「イーラル オム プライム」を発売する。

 同ブランドは植物と科学の力を融合させた商品と、独自メソッドの“ヘッドキュア”を提供する、頭皮と髪のエイジングケア*1ブランド「イーラル」の最高峰ライン。加齢を“正しいケアによりより美しくなるチャンス”と考え、先端のエイジングメカニズムを徹底的に追求し、商品化。限られたサロンでしか購入できない希少性も価値となり、1万円を超える商品にもかかわらず、美容感度の高い、本物志向の女性から高い支持を得て「プルミエから離れらない」との声も多く寄せられるほど人気となっている。

 女性は加齢や環境の変化でダメージを受けやすく、体調やバランスの乱れが生じやすくなっている。リニューアルした「イーラル プルミエ」は、 加齢へのアプローチに加え“女性特有の悩み”に着目し、ダメージを受けた頭皮と髪を守り、コンディションを整える新機能を追加。新機能は“トウキ根エキス(保湿成分)”によりサポートされ、“頭皮年齢”をケアし、美しく若々しい髪へと導いていく。トウキ根エキスは全商品に配合しているほか、潤いに満ちた頭皮と髪に導くプルーン分解物、頭皮に潤いと柔らかさを与えるチンピエキス、保湿や引き締めなどの作用が期待できるクララ根エキスも共通成分として配合し、健やかな状態に整える。

アウトバス商品が増えて
“プラスワンアイテム”
を求めるお客さまに
よりおすすめしやすくなった

志賀功祥/
「エアー(air)」マネージャー

 「イーラル プルミエ」はリブランディング前から使っているが、“いいシャンプーを使っているお客さまにおすすめすると必ず使ってもらえる”、そして“「今まで使っていたシャンプーより断然いい」と言ってもらえる”という印象がある。一般的に、シャンプーを提案すると大抵1~2回は購入してもらえるが、数回すると「やっぱ元のシャンプーがいい」とか「ほかのシャンプーも試してみたい」と言われるケースが多い。しかし「イーラル プルミエ」は、数回すると逆にお客さまから求められる。だからお客さまから背中を押されている感覚になり、僕らも自信を持っておすすめできる。
 リブランディング後の新「イーラル プルミエ」は新機能成分がオンされ、細毛や軟毛、クセ毛など加齢による悩みを持つ方にさらに提案しやすくなった。“女性特有のストレス”のケア効果もオンされているが、最近はコロナ禍を経て外見の美しさだけでなく内面の美や癒やしを求める女性が増えたので、時代のニーズにマッチしていると思う。
 また最近は、エステに通って定期的にフェイスケアを行っているような意識の高い女性が、“(顔を引き上げるための)頭皮のリフトアップ”につながるアイテムを探し求めている傾向がある。そうした背景もあり、リブランディングにより頭皮エッセンスやアウトバス美容液など “プラスワンアイテム”として使用できる商品が増えたことはうれしい。特に「バランシングスカルプエッセンス」は、僕の妻も気に入って使っている。

新「イーラル プルミエ」のラインアップは
シャンプー、トリートメント、エッセンスなど

パッケージデザインは
堀口徹氏とのコラボレート

 豊かな黒髪の光と影を想起させるパッケージデザインは、日本を代表する伝統的ガラス工芸の1つ、江戸切子作家の三代秀石 堀口徹氏とのコラボレート。同氏はシンプルでミニマルな表現で高い評価を受け、江戸切子新作展最優秀賞、グッドデザイン賞など多数の受賞歴を誇る。その代表作のひとつである“束(たばね)”にインスパイアされ、美のエレメンツを束ねる“新生プルミエ”をシンボライズする“別格”のパッケージが完成した。

 同氏は「『イーラル プルミエ』のクオリティーにこだわった姿勢に親近感を感じることができ、とても楽しい取り組みだった。パッケージデザインは自分らしく、かつ『プルミエ』らしい最大公約数を探ったもので、仕上がりにはすごく満足している。樹脂成型ならではの精度も、世界観を作り上げる大事な要素になったと思う」とコラボレートの感想を語っている。

これまでのヘアケアの概念から脱却し
“別格”を目指した「イーラル プルミエ」

*1.年齢に応じたケア
*2.ヤシ油脂肪酸加水分解大豆たん白カリウム液
*3.ラウロイル加水分解シルクナトリウム液
*4.ヤシ油脂肪酸加水分解コラーゲンカリウム液
PHOTO:HIROKI WATANABE

問い合わせ先
イーラル
0120-36-1186
(月~金 9:00~17:00)
祝祭日を除く

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コロナ禍で露呈した大手アパレル4社の深刻度 小島健輔リポート

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。ワールド、オンワードホールディングス、TSIホールディングス、三陽商会の老舗アパレルはコロナによってさらなる構造改革を余儀なくされた。直近の財務諸表から4社の現状を分析する。

 昨年12月28日発表の三陽商会に続き、1月8日にはオンワードホールディングス(以下、オンワード)、13日にはTSIホールディングス(以下、TSI)、2月3日にはワールドとコロナ禍の2021年2月期・3月期第3四半期(以下、3Q)決算が出そろったが、コロナ禍のダメージと財務状況の逼迫度は必ずしも一致せず、コロナ禍以前からの失策のツケが露呈した感がある。各社の実態をどう捉えるべきだろうか。

3月期決算のワールドを除く3社は2月期決算。三陽商会は前期が14カ月変則決算のため前期比数値が算出できない

4社の売り上げダメージと衣料消費の激減

 3Q累計売り上げの前年同期からの落ち込みは三陽商会が最も大きく(月次単純平均で37.9%減、三陽商会は以下同)、オンワードの28.3%減、ワールドの27.2%減が続き、TSIの22.7%減が最も軽かった。いずれも緊急事態宣言に直撃された1Qの落ち込みが大きく、百貨店比率の高かった三陽商会の65.0%減に対し、TSIは49.4%減、ワールドは45.0%減とやや落ち込みが浅く、ECの急伸に救われたオンワードは34.9%減に収まった。2Q、3Qの回復はTSIが最も早く、ワールド、オンワードが続き、三陽商会が最も鈍かったのも百貨店依存度に相応している。

 店舗の休業などで上半期のEC・通販売上比率が前期の12.7%から24.4%に急伸したとはいえ、三陽商会の百貨店売上比率は前期の62.3%から56.9%と高止まりしており、3Q累計国内売り上げでECが32.4%と百貨店の29.6%を凌駕したオンワードと比べれば百貨店依存の高さが際立つ。ワールドは3Q累計でECは22.2%に過ぎないが、駅ビルやSC(ショッピングセンター)など非百貨店が42%ほどを占めて百貨店は20%程度まで落ちたと推計される。TSIは3Q累計で非百貨店が42.7%、ECが29.8%を占め、43%も減少した百貨店は9.7%と1ケタに落ち込んだ。

 コロナ禍の20年は消費が冷え込み、経済産業省の商業動態統計では「衣服・身の回り品小売売り上げ」が16.8%減少、総務省家計調査でも「被覆及び履物支出」が19.8%減少したが、日本百貨店協会による商品別売り上げで衣料品は31.1%、身の回り品は27.1%、化粧品は39.1%も落ち込んだ。衣料消費全体では20%前後落ち込んだと見られるが、百貨店を中心とした高額品の落ち込みが大きく、低価格の生活衣料は落ち込みが浅かった。

 ロックダウンが続いた米国(米国商務省小売統計)では食品スーパーなどエッセンシャル消費が伸びて「小売売り上げ」総体(自動車・機械・ガソリン・飲食を除く)が6.9%増加し、ECが大半を占める無店舗小売が22.1%も伸びた中、衣料・服飾小売りは26.4%も減少した。米国に比べればわが国の衣料・服飾売り上げの落ち込みは浅かったが、日本の「衣服・身の回り品小売売り上げ」は「小売売り上げ」(自動車・機械・ガソリンを除く)の7.96%も占め、米国「小売売り上げ」に占める「衣料品・服飾小売売り上げ」の4.95%の1.6倍にも及ぶから、コロナ禍による市場縮小が一過性で済むと見てはなるまい。

4社の財務的ダメージ

 売上対比の営業損失は三陽商会が25.2%と突出して大きく、他3社は7.3〜8.5%に収まる。三陽商会は純損失を12億6900万円に抑えたが、固定資産売却益67億円や有価証券売却益、助成金収入で補填した結果で、経常損失は68億1200万円に上る。オンワードは経常損失102億4500万円に特別損失85億9200万円が加わり、固定資産売却益25億9200万円、助成金収入16億9700万円等で補填しても142億円の純損失を計上している。TSIは経常損失70億1200万円に特別損失49億600万円が加わり、固定資産売却益18億2800万円や有価証券売却益、助成金収入等25億8500万円を補填しても111億9600万円の純損失を計上している。ワールドは営業損益段階で構造改革費用52億800万円を計上して78億8200万円の純損失を計上しているが、3Q段階では固定資産売却益などによる補填は見られなかった。

 結果、三陽商会の純資産は365億2000万円と前期末から23億200万円減少、オンワードは678億8700万円と261億4900万円減少、TSIは804億400万円と150億4700万円減少、ワールドは747億300万円と85億9400万円減少したが、コロナ禍の今期だけで評価するべきではない。各社ともその前から業績が行き詰まり、純資産が大きく減少していた。15年2月期と比較すれば、オンワードは1174億2800万円/63.4%、TSIは414億5900万円/34.0%、三陽商会は286億2700万円/43.9%も減少している。ワールドは17年3月期の129億1000万円から20年3月期は832億6300万円と年々積み上げたが、今3Qは747億3400万円と85億9400万円減少している。

財務の逼迫度と構造改革

 今3Qの有利子負債はオンワードで887億円と前期から223億1300万円、TSIも423億3600万円と同87億8800万円、ワールドも799億2100万円と同15億6400万円増えたが、固定資産売却益などで補填した三陽商会は60億2000万円と同30億1200万円減少している。ワールドは05年のMBO(経営陣が参加する買収)の借金2300億円の残債など1059億3800万円(18年3月期)を18年9月の再上場で引き継ぎ、20年3月期までに781億1800万円に圧縮していたが、コロナ禍で圧縮が止まった。

 純資産対比負債比率はオンワードが130.7%と突出し、虎の子の欧州子会社オンワードラグジュアリーグループを20年12月11日付で売却することになった(22年2月期に計上予定)。次いで高いのがワールドの106.9%で、含み資産も限られることから2月3日、新たに7ブランドの事業廃止と450店の閉店、子会社2社での100人の希望退職募集に踏み切っている。それに比べればTSIの52.7%はまだ健全だが、今期末までに243店を閉め、300人の希望退職を募集する。

 意外に健全なのが三陽商会の16.5%で財務的には逼迫していないが、営業損失があまりに大きく(3Qで売り上げの25.2%)、今期中に160店を閉めて販売員を500人削減し、4度目の希望退職(150人)も募集する。三陽商会の希望退職は13〜18年で770人にも達しており、今回を合わせると920人を超えることになる。なまじっか財務に余裕があったことが抜本的な改革を遅らせ、度重なる希望退職もあって人材の流失も激しく、脱百貨店もECシフトも遅れ、後手に回って出口が見えなくなっているが、それでも破綻には遠いアイロニーが悲しい。

 傷が軽かったように見えるTSIとワールドだが、両者はコロナ以前に構造改革を断行してある程度、贅肉を落としていた。TSIは13年2月期、14年2月期に941店を閉め、16年2月期には528人が希望退職していたし、ワールドは16年3月期に500店を閉めて453人が希望退職し、20年3月期にも294人が希望退職している。オンワードも20年2月期に423人が希望退職しているが、大量閉店は21年2月期からだ。

 財務的な余裕がそれほどなく(ワールドは借金を抱え)先んじて構造改革に踏み切った非百貨店系大手アパレルとて、コロナ禍では少なからぬダメージを受けて追加の構造改革を強いられたが、長年の蓄積で財務的に余裕があった百貨店系大手アパレルは構造改革に遅れを取り、コロナ禍で急激に追い詰められたと総括されよう。

商品財務と運転資金負担

 在庫回転はSC向け低単価商品も多いワールドが前年同期から0.36回減速の3.07回、在庫を17.2%絞ったTSIは逆に0.17回加速の2.81回、オンワードが0.37回減速の2.36回と大差なかったが、百貨店比率が突出して高かった三陽商会は前期から0.6回減速の1.66回(棚資産回転220.2日)と過剰在庫が積み上がった。2Q末では1.45回(棚資産回転250.9日)だったから3Qで多少は在庫圧縮が進んだが、危機的水準であることは変わらない。

 運転資金回転日数も三陽商会が206.2日と最も長く201億6300万円、純資産対比55.2%の運転資金を要しているが、オンワードも118.4日と短いものの564億2900万円、純資産対比では83.1%の運転資金を要している。TSIは92.3日、326億4100万円、純資産対比では40.6%と抑制できており、ワールドは以前からのマイナス日数を維持して163億1900万円の回転差資金を稼いでいる。商品財務は各企業のサプライチェーンを反映しており、コロナ禍以前から政策的に運転資金回転を制御できていたかが問われた。

4社の将来性

 通期の売上見通しはオンワードが前期比24.5%減、ワールドが24.7%減、TSIが22.3%減と落ち込み幅は大差なく、三陽商会は380億円(前々期比35.7%減)と落ち込みが大きい。

 来期以降の売り上げも百貨店比率とEC比率で趨勢が決まるが、百貨店比率が際立って高く人材の散逸も激しい三陽商会はもちろん、大量閉店と事業撤退、急激なECシフトの反動でオンワードも売り上げの回復は鈍く、コロナが長引けばさらに落ち込むリスクも指摘される。大量閉店とブランド廃止、人員整理でワールドもTSIも厳しいが百貨店比率が低く、回復に転ずるのは三陽商会やオンワードよりは早いと思われる。

 売り上げの回復にはDX(デジタルトランスフォーメーション)やロジスティクスなど新たな投資も必要で、財務基盤から見ればTSIが優位にあり、三陽商会も経営主体次第でチャンスはあるが、オンワードとワールドは財務の立て直しを先行せざるを得ず、反転攻勢に出るのは一歩遅れるかも知れない。

 コンテンツ(ブランドや商品)の市場性という点では、価格が高く旧態な通勤服が大半を占める三陽商会やオンワードは再構築が必要で、市場と大きく乖離した価格の抜本的訂正も必須だから、マーケットに受け入れられるには長い時間がかかる。D2C・C2Mブランドは売り上げのスケールが小さく、全体を押し上げるパワーは期待できない。ワールドやTSIが抱える多様なブランドもアフターコロナのマーケットに受け入れられるのは一部であり、新たなライフスタイルに応えるエッセンシャルなブランドや商品の開発には時間がかかるが、百貨店系2社に比べればまだ組織も思考も柔軟だから可能性は小さくない。

 大手アパレル、とりわけ百貨店系アパレルは幾度、警鐘を鳴らしても、見たい未来と見たい顧客の幻影ばかりを追って現実に目を向けようとしなかった。もはや「レナウンとどこが違うのか」と問われても答えに窮する状況であることは否めないのではないか。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。著書に店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)、12月11日に出版した「アパレルの終焉と再生」(朝日新書)

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オオスミタケシを悼む 大きな男がくれた小さな勇気

 「フェノメノン(PHENOMENON)」や「ミスター・ジェントルマン(MISTERGENTLEMAN)」を手掛けてきたオオスミタケシさんが1月24日に敗血症で死去した。47歳だった。3月の「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で発表予定の「ミスター・ジェントルマン」の2021-22年秋冬コレクションは、亡くなる直前まで病室で制作していた同氏によるラストコレクションとなる。ブランドの今後については現在未定。東京ストリートをけん引してきたデザイナーの突然の訃報に、関係者やファンの間では驚きと悲しみが広がっている。(この記事はWWDジャパン2021年2月8日号からの抜粋です)

 オオスミさんはヒップホップユニット「シャカゾンビ(SHAKKAZOMBIE)」のBig-Oとして活動し、ストリートブランド「スワッガー(SWAGGER)」の立ち上げを経て2004年に「フェノメノン」を始動させた。ストリートウエアに音楽やカルチャーなどを大胆に融合し、オオスミさん自身を体現するような服が若者を中心に徐々に人気を博す。10年には東京ファッション・ウイークに参加し、鎧のようなMA-1やジャケット、デフォルメしたフォームや強いマテリアルなど、ジェンダーを超越する振り切ったミックス感でストリートの既成概念を思い切り突き破り、鮮烈なデビューを飾った。ショーは海外でも評価され、当時モード一辺倒だった自分自身も衝撃を受けた。エディ・スリマン(Hedi Slimane)や「プラダ(PRADA)」のシャープなスタイルに夢中になっていたころだったが「フェノメノン」の異質な強さはとてもまぶしく、今思えば全く似合わないアイテムでも物欲を強烈に刺激されてつい購入してしまった。

 東コレデビューの2年後には、ショーをきっかけに出会った吉井雄一氏と「ミスター・ジェントルマン」を立ち上げる。吉井氏がオーナーを務めているセレクトショップ、ザ・コンテンポラリー・フィックスのオリジナルブランドとして、ベーシックなトラッドにストリートの要素を加えた“みんなから愛される服”を作り続けた。13-14年秋冬シーズンに東コレデビューを果たすと、16年春夏シーズンをもって「フェノメノン」のデザイナーを退任してからはクリエイションの強さは徐々に加速し、大胆なハイブリッドや、ベーシックの中に違和感をにじませた提案型のスタイルへと進化していった。16-17年秋冬シーズンに同ブランドのショーを初めて目の当たりにしたときは、普遍性と強さの巧みなバランス感に鳥肌がたち、「東コレはこの2人がいれば大丈夫」と希望を抱いたのを鮮明に覚えている。フィナーレでチャーミングにあいさつする2人も大好きだった。

 同ブランドのクリエイションは服だけにとどまらず、2人の強みである音楽から食、アート、カルチャーまでライフスタイル全てを融合して多面的に世界観を拡張し、いつしかショップオリジナルのブランドから独立したファッションブランドへと存在感を強めていった。17年にマッシュホールディングスの傘下に入ってからその側面はさらに色濃くなり、他業種との積極的なコラボレーションで商品の幅を広げている。最近ではアンダーウエアや、同グループの「ジェラート ピケ(GELATO PIQUE)」とのルームウエア、「ウカ(UKA)」と協業したスカルプブラシなど生活を意識したアイテムを拡充。ここでも“つい買ってしまう衝動”でひと通りそろえ、外着にしかお金をかけてこなかった生活にささやかな豊かさを与えてくれた。

 オオスミさんは「フェノメノン」で新たなスタイルに挑戦する勇気をくれ、「ミスター・ジェントルマン」で生活の新たな価値に気づかせてくれた。ファッションを通じて踏み出した小さな一歩が、たくさんの人やカルチャーとの出合いへとつながり、人生を大きく変えることだってある。それを教えてくれた1人がオオスミさんだった。世間から「ファッションは不要不急」と言われようが、彼が残した服や音楽はこれからも生き続けて多くの人の人生を変えていくだろう。ラストコレクションとなる3月の東コレをしっかりと見届け、そこで得た力をファッション業界の未来のために少しでも役立てていきたい。

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【動画】コロナ太りで悩むあなたへ、ヘルシーなガーリックライスはいかが? 「京大卒モデル一ノ瀬のモード飯~Cuisine à la mode~」Vol.3

 「京大卒モデル一ノ瀬のモード飯~Cuisine à la mode~」は、モデル兼俳優の一ノ瀬遼による料理番組です。「オシャレな料理を作りたい!!」「たまにはお家でご飯を食べたい!!」という、多忙な業界人でも、簡単に作れる料理を学びます。また京都大学薬学部出身の知識を生かした、料理にまつわるさまざまなウンチクや雑学もプラス。一ノ瀬についてもっと詳しく知りたい人は、下記の関連記事をチェック!!

 今回は、ハワイ料理のガーリックシュリンプとガーリックライスを合わせた料理を学びます。ガーリックライスはカロリーが高そうですが、具材のキノコを空焼きし、米と油をよく絡ませ、油の使用を最小限にすれば約350キロカロリーに!!コロナ太りで悩んでいるけれど、ガッツリ食べたい方にオススメです!エビの頭と殻をビールのおつまみに変えてしまうマル秘テクニックも紹介します。

【レシピ】
・白米(炊飯後)0.5膳
・キノコ 80g
・エビオイル 10g
・有頭エビ 3、4尾
・白ワイン 15ml
・キャベツ 1枚
・プチトマト 3個

【衣装協力】
「ジョン メイソン スミス」シャツ(3万1000円)
(HEMT PR)
「アレム」メガネ(5万2000円)
(グローブスペックス エージェント)
「ボイリーストア」エプロン(4500円)
(「ボイリーストア」)

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「バレンシアガ」「ルイ・ヴィトン」で経験を積んだ実力派が語る新生「クレージュ」

 2020年9月、「クレージュ(COURREGES)」にニコラス・デ・フェリーチェ(Nicolas Di Felice)新アーティスティック・ディレクターが就任した。「バレンシアガ(BALENCIAGA)」や「ディオール(DIOR)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」で10年以上キャリアを磨いてきた彼は、一体どんな人物なのか?そして、20年5月に就任したエイドリアン・ダ・マイア(Adrien Da Maia)社長兼最高経営責任者とタッグを組み、どのように歴史あるブランドの再生に取り組んでいくのか?まだ謎の多いその人物像とビジョンを探る。

学生時代は音楽に没頭

 ニコラスが生まれ育ったのは、ベルギー南西部にある石炭工業で発展してきたシャルルロワ近くの田舎町。「“黒い国”とも呼ばれている地域で、重々しくダークな雰囲気が漂う場所だった。よく山で真っ黒になるまで遊んだよ」と当時を振り返る彼は、何事にも積極的な少年だったという。中でも強い関心を抱いたのは音楽で、「放課後にクラリネットやフルート、ピアノを学び、12歳から学生時代はずっとエレクトロニック・ミュージックの制作に没頭していた」と明かす。

 そんなニコラスがファッションデザイナーを志したきっかけもまた、音楽だった。「正直言うと、進路を選ぶときの直感のようなものだった。カトリックの一般的な学校に通っていて、全く芸術的ではなかったし、『ヴォーグ(VOGUE)』などの雑誌をかかさず読むようなタイプでもなかったからね。でも、ミュージックビデオを通して、ファッションへの興味が湧き、もっと知りたいと思った。それまでの自分は井の中の蛙で、服をまとうことによってさまざまなアイデンティティーを表現したり、誰かになれたりすると気付いたんだ」。そして、首都ブリュッセルにある有名校ラ・カンブル(La Cambre)に進学。5年をかけてファッションを専門的に学んでいたが、卒業前の08年に「バレンシアガ(BALENCIAGA)」で働くチャンスを得て、パリに移りキャリアをスタートさせた。

 そこでのニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)との出会いが、デザイナーとしての考え方に大きな影響を与えることになった。「バレンシアガ」と「ルイ・ヴィトン」で計10年以上ニコラの下で働いてきた彼は「多くの時間を一緒に過ごしてきたニコラから学んだのは、細かいところにまで気を配ること。そして、好奇心を持つことだ。ニコラはこれまでの長いキャリアの中で、同じことをやったことがない。オープンな姿勢で探求し続けることの大切さを教えてもらったよ。それからメゾンの中で働く中では、我慢強くあることも重要だと学んだ」と話す。
 

新たな「クレージュ」の方向性は?

 十分な経験を積み、満を持してのアーティスティック・ディレクター就任となったが、ニコラスは「クレージュ」に対する思いを次のように語る。「手掛けてみたいメゾンは数あるけれど、『クレージュ』はある意味、唯一無二の存在だ。僕はあまり装飾や複雑なものが好みではなくて、『クレージュ』はまさにシンプルで幾何学的なシェイプと色に尽きる。そういったミニマルな考え方は自分が表現したいこととマッチしているから、とても心地よく感じているよ。そして、『クレージュ』は“スペースエイジ”と共に語られることが多いけれど、ファッションの歴史を振り返ると、それは1960年代のトレンド。ブランドの本質を掘り下げると、夢を形にしたいという情熱によって生み出されたのだと思う。だから“情熱”はブランドにとっての核となる価値だ。これからは、インテリアやフレングランスなどを含め全方位的にその世界観を表現していく。DNAやヘリテージを大切にしつつ、そこにベルギー出身の自分らしさ、例えばロマンチックな要素や若い頃に通っていたナイトクラブを感じさせるようなラディカルなムードを加えていきたい」。

 そんな新生「クレージュ」の第一歩として、20年末にはブランドのアイコンを現代に合わせて再解釈したコレクション“リエディション(REEDITION)”を発売した(日本ではミラベラやレボリューションで2月から順次取り扱い予定)。「原点に立ち戻り、アーカイブの中から好きなシルエットを選びシンプルにアレンジした」という同コレクションは、71年に発表されたビニールジャケットや72年に発表されたトレンチコート、リブニットなどを豊富なカラーバリエーション(ビニールジャケットは15色展開)と環境に配慮した素材で仕上げたもの。エッセンシャルアイテムとして、シーズンを越えてショップで扱う。またローンチに合わせ、アトリエの下にあるフランソワ・プルミエ通りの旗艦店も、オープンした67年当時の内装や修復した家具を生かしてリニューアルした。

 すでにあるデザインやヘリテージを大切にするという考え方は、これからのコレクションへのアプローチにも通じるものだ。「今のファッションには脱構築というアプローチが多すぎると感じる。しかし、今でも通用する美しいデザインを崩す必要はない。例えば、美術館にも所蔵されているトラペーズ(台形)スカートのようにね。より軽くしたり、時代に合った素材を変えたりすることでアップデートして、今後のコレクションにも織り交ぜていく」。
 

未来に向けたクリエイションへの取り組み方

 これからのクリエイションを考える上で重要なサステナビリティやインクルージョンについて尋ねると、「今はもう2021年。サステナビリティやインクルージョンについて考えたり取り組んだりするのは、もはや当たり前のことだ」とニコラス。「アイテムはできる限りエコ・コンシャスな素材や生産背景で仕上げる努力をしている一方で、売り上げのためにそれを前面に押し出すようなことはしたくない。ここ数年、コレクションのテーマ自体が“エコ・コンシャス”になっているものをたくさん目にするけど、それは取り組むべきプロセスであって、テーマにするのは意味がないと思う。そして、何よりも捨てられずに世代を超えて受け継いでもらえるような服を生み出すことがベスト。だから、コレクションでファッション世界に革命を起こすつもりはないし、ステップ・バイ・ステップで1シーズンで廃れることのないものを作りたい」と説明する。

 また、インクルージョンに対するアプローチは男女が同じアイテムを着て登場した“リエディションズ”のビジュアルやビデオからも垣間見えるが、彼はジェンダーの流動性についてとても柔軟だという。「現在制作しているファーストコレクションは、正確に言うと二つに分かれているけど、それはフィットによりタイトなものとゆったりボクシーなものがあるという感覚。異なる体形やアイデンティティーを持つそれぞれの人が好きなものを選んでくれたらいいと考えている。自由であることは、『クレージュ』の大事な価値でもあるからね」。

 本格的なデビューを飾る2021-22年秋冬コレクションは、3月のパリ・ファッション・ウイークで披露予定だ。フランスの新型コロナウイルスの感染状況を考えると、現時点で先のことを決めるのは難しいが、「自分にとって大きな夢だったから、可能ならばショーでコレクションを披露したい」とコメント。「今は会場の候補をチェックしたり、コンセプトや招待状について話し合ったりと、開催を想定して準備を進めている。最終的な判断はショーの2、3週間前にならないとできないけど、ダメなら臨場感のあるビデオを制作するつもり。1番怖いのは、どうすればいいか分からずに立ち止まってしまうことだ」と着実に歩を進めている。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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「ビーツ」×「フラグメント」のコラボイヤフォン 藤原ヒロシが“シンプルを極めたかった”その理由とは?

 アップル(Apple)傘下の「ビーツ・バイ・ドクタードレ(Beats by Dr. Dre以下、ビーツ)」はこのほど、藤原ヒロシの「フラグメント デザイン(FRAGMENT DESIGN)」とコラボしたワイヤレスイヤフォン“パワービーツ プロ(POWERBEATS PRO)”(2万4800円)を発売した。「ビーツ」と「フラグメント」がコラボするのは2014年以来の2度目。今回はブラックを基調に無駄をそぎ落としたシンプルなデザインで、片方のイヤーパッドに「フラグメント」の稲妻モチーフを、もう片方にブランドネームをあしらった。ルックブックにはハードル・短距離選手のシドニー・マクラフリン(Sydney McLaughlin)を起用し、未来感と退廃的なムードから「フラグメント」の美学を表現したという。コラボについて、藤原ヒロシにメールインタビューした。iTunesでは、発売に合わせてプレイリストも公開した。
なお、アップルのオンラインストア(完売)、「ゴッドセレクションXXX(GOD SELECTION XXX)」の原宿旗艦店、ドーバーストリートマーケットギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)で販売中だ。

WWD:2014年以来となる「ビーツ」とのコラボレーションについて、率直な感想を教えてください。

藤原ヒロシ(以下、藤原):「ビーツ」は普段からいつも使っているので嬉しいです。

WWD:今回“パワービーツ プロ”を選んだ理由は?

藤原:先方からのリクエストがあり、僕もこれを使ってみたかったので。

WWD:デザインのポイントと最もこだわった部分は?

藤原:色変更とか、いくつかサンプルを作って何か特別になるようにやってみたんですが、結果的にシンプルな黒が一番よかった。既存のモデルにロゴをプリントしているだけとか、サボっているとか思う人もいるかも知れませんが、自分が一番使いたいのはこれでした。

WWD:オーディオ製品をデザインする上での難しさとは?

藤原:いろいろ規制もあるので、オーディオ製品のデザインはかなり難しいんじゃないですかね?

WWD:「ビーツ」の優れていると思う点は?

藤原:使いやすい。いつも身につけられるという点。

WWD:今後の「ビーツ」とのプロジェクトの予定。また、やってみたいことがあれば教えてください。

藤原:シンプルでウエアラブルなイヤフォンが僕には必要なので、また機会があればぜひ何か作りたいです。

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仕事が絶えないあの人の、“こうしてきたから、こうなった”香水サブスク展開のセントピック川島匠編

 転職はもちろん、本業を持ちながら第二のキャリアを築くパラレルキャリアや副業も一般化し始め、働き方も多様化しています。だからこそ働き方に関する悩みや課題は、就職を控える学生のみならず、社会人になっても人それぞれに持っているはず。

 そこでこの連載では、他業界から転身して活躍するファッション&ビューティ業界人にインタビュー。今に至るまでの道のりやエピソードの中に、これからの働き方へのヒントがある(?)かもしれません。
連載第12回目に登場するのは、香水のサブスクリプションサービス(定期購入)を展開する「セントピック(SENTPICK)」代表の川島匠さんです。コンサルティングファーム・ボストンコンサルティンググループ(以下、BCG)などを経て、2019年4月から「セントピック」をスタート。外資系コンサルティングから現在に至るキャリア変遷と香水ボトルに乗せて届けたい思いを聞きました。

WWD:まず前職のお話から教えてください。

川島匠(以下、川島):大学卒業後、ATカーニーやBCGなど外資系のコンサルティングファームに勤めていました。飲料や化粧品などいわゆる消費財を扱うクライアントを担当することが多かったですね。2010年ごろ、大きな企業とスタートアップのアライアンスを通して、新規事業の立ち上げを行う機会がありました。その頃はまだ、“ベンチャーと言えばサイバーエージェントかDeNAは聞いたことがあるかな”くらいの時代。初めてベンチャーの方々とご一緒することで、「ゼロから何かを生み出す仕事っていいな」という気持ちが芽生えたように思います。その後、当時国内最大級のスタートアップカンファレンス「IVS(インフィニティベンチャーサミット)」に参加し、今ある悩みや課題を解決する最新のテクノロジーやサービスに圧倒されました。人のためになり、話題になるようなプロダクトを作ってみたい——そんな思いが湧き上がりました。28歳ごろですね。

WWD:香水に関わる事業を始めようと思った実体験はありますか?

川島:社会人2~3年目に遡ります。当時、心を寄せていた女性が付けていた香りが気になりつつも、本人に聞くことができませんでした。その香りが何の香水なのかを探すべく、百貨店のフレグランスフロアに通いました。とはいえ、何百種類も並ぶボトルを試すうちに鼻が効かなくなりますし、香りの説明には「戦いの前の戦士の香り」などと書かれていて……。当時の僕の理解を大きく超えてくるわけです。さらに販売員の方から、付けたてとしばらく経ってからの香りは変わるということを教えてもらい絶望しました(笑)。恋愛感情というエンジンを積んでも、目的の香りを探し当てられないんだと悟りましたね。

WWD :その香りは見つかりましたか?

川島:まだ見つかっていません(笑)。18年1月に独立して、フリーのコンサルタントになりました。そうして、以前よりも少し自分の時間ができたときにこれから自分が本当にやりたいことは何かを突き詰めて考えてみたんです。自分が求めている香りと出合うことの難しさという実体験と、これまでにないプロダクトを生み出したいという気持ちがクロスして香水のサブスクというサービスを思いつきました。18年12月ごろですね。

WWD:サービス開始は翌年の4月ですよね?ものすごいスピード感です。

川島:誰にも先を越されたくない、という一心でした。最初の1カ月で会社の登記から事業計画といった書類、ウェブサイト、香水を入れる小分けボトルの製作交渉や契約などできる限りの準備を進めました。化粧品製造販売業許可免許も取得しています。この免許はコスメの通販サイトでも取得していないことが多いのが実情ですが、少しでもユーザーに安心してサービスを利用してもらうためにも取得しておきたかった。申請のための書類自体は形式的なものですが、都の担当者に事業内容を理解してもらうのが難関でした。「香水を小分けにしたサブスクリプションって何ですか?」といったことから丁寧に説明しましたね。
現在、メンバーは僕とマーケティング担当、薬剤師の資格を持つスタッフの数名です。香水の小分けや発送という作業はOEM(受託製造メーカー)に委託しています。
※市場に対する最終責任を負って化粧品を日本国内市場に出荷・流通させる業者に対する許可

WWD:「セントピック」のサービスについて改めて教えていただけますか?

川島:月額1680円(送料別)から試したい香水を1カ月分(5mL)のサイズで毎月届ける定期便です。約330種(21年1月時点)から気になる香水を選んでいただくのはもちろん、いくつかの質問に答えることでAIが自動でおすすめする“香りのお任せコース”もあります。価格設定に関しては、この価格ならハイブランドを含む良質な香水を提供でき、かつ持続可能な利益率を生み出せるだろうという事業主目線によるところが大きいです。ラインアップは、僕が女性もしくは男性につけて欲しい香りをセレクトしています。

WWD:香水を事業とすることでの壁はありましたか?

川島:当初、あるメーカーさまから「小分けして売るのは便利だけど風情もないだろう」と言われたことがありました。香水は、香りへのこだわりはもちろんボトルデザインや詩的なテキストといったことも含めてブランドの世界観があります。パフューマーだけでなく、ブランドから流通に至るまで、一つ一つの香水に関わる人たちが皆プライドを持っているんですよね。現在は卸を通して購入することがほとんどで、直接ブランドと契約などのやりとりは実現できていません。末端価格で購入したものを小分けで売ること自体は違法なわけではありませんが、メーカーさまからはそういう買い方をして欲しくないという意見も真摯に受け止めています。

香りは自分のワードローブを広げてくれるもの

WWD:「セントピック」以外の香水のベンチャーや香水を解説するユーチューバーなども人気です。こうした香りのサービスの多様化についてどのように感じていますか?

川島:以前から香水の小分け業は存在していましたし、現状の国内の香水市場が盛り上がっているとも思いません。特定の香りを探せて届けてくれるサブスクや、モテ香水などを紹介するユーチューブにアクセスするのは、元々興味があったり香水好きな人だと思うんです。「セントピック」のユーザーの多くは、AIによるお任せコースを選んでいます。月に一回の自分へのご褒美や占いのような感覚で、気軽な気持ちで使ってもらえているのだと考えています。

実際に香水を届けてはいますが、香水という価値提供よりも、“自分のワードローブ”を増やしてもらいたいという思いが強いんです。こうなりたいと思う自分に近づけたり、気づいていない自分のキャラクターを知るヒントを届けられたらと思います。来月にはラインアップを今より100種以上増やす予定ですが、品揃えを増やすことを追い求めているわけではありません。“ラットレース”になってしまいますから。
戦略と聞くと“どう戦うか”や“どう競争を仕掛けるか”を考えてしまいがちですが、本来はそうではなくて。いかに戦いを略すか、つまり、“戦わないで勝つか”を考えるのが戦略だと考えています。価格や品揃えで競争していたら難しい。そうじゃない価値で選ばれるサービスになっていきたいですね。

WWD:そのように常に冷静に状況把握をしたり、ご自身の感度を高めるために意識していることはありますか?

川島:“自分KPI”を作っています。今自分は一人の人間として魅力的なのかどうか、という非常に個人的な指標です(笑)。例えば1週間のうちに後輩から誘われる回数と自分から誘う回数を計測して、前者が高ければまだ自分はイケてるかもなと判断するわけです。一般論ですが、後輩が先輩を誘うことって、年上の人が後輩を誘うことよりもハードルが高い設定だと思うんです。すると、じゃあ誘われる人間になるにはどうしたらいいかを考えます。後輩からすると先輩というのは、説教してくる面倒な存在となることも多い。それでも、僕と話すと何か変わった考え方を得られたり楽しいと思ってもらえるような、求められる人になりたいです。そのための知識のアップデートや振る舞いをできるだけ心がけています。何よりも、異なる世代や世界観を持つ人と話すことで視野を広げたいという気持ちがありますね。

WWD:コンサルから香水事業へと、“畑”が変わったことで変化したことはありますか?

川島:独立して自分で事業を展開する今、いかに“今”を最大化させるかに重きを置くようになりました。前職のコンサルでは、理想の姿を設定し現状を把握して、そのギャップの課題を解決することが基本的な任務です。それを個人の生き方にも求められていましたね。企業にいた時は「5年後にどんな自分になっていたいかをまず決めろ」と言われていたので、それを達成するために半年後、今月、今週は何をしなくてならないかを考えるという合目的主義的なプレッシャーが常にありました。“成長しないことは悪である”という考えが前提にあるんです。でもそれだと定義上、一生幸せにはならないんですよね。「セントピック」でも、やみくもに事業を拡大することよりも“今”をチームと楽しみたい。そして、ユーザーにとっての利便性とメーカーやブランドからの信頼をいただけるような実績を積み重ねていきたいですね。

コロナ禍のニーズにも沿うサービス

WWD:前職での経験が活きていることはありますか?

川島:事業計画の立て方はやはりこれまでのコンサルの経験が役に立っています。顧客獲得コストや継続率といった数字も想定から乖離をしていません。会員数は現在2万数千人でそのうち85%が女性ですが、男性ユーザーも増えています。実は、昨年3月末時点の会員数から倍以上に増えているんです。コロナ禍で外出が減る=香りをまとう機会が減るのでは?と考えていましたが、そうではなくて。「人に会わないからこそ自分の好きな香りを存分に楽しめる」「在宅勤務の気分転換に香水を使っている」「ポスト投函で届けてくれるのは人に接触しなくて安心」といったコメントをツイッターやインスタグラムでいただくことも多いです。“香りは自分のワードローブを広げてくれるもの”という僕らが一番伝えたいメッセージを、ユーザーの皆さんが体現してくれているのかなと思うと、うれしいですね。

WWD:川島さんにとって仕事とは?

川島:労働自体は“食べて生きるため”のものではあるけど、それよりももっと社会市民的な活動でありたいです。それによって満たされる対象が昔は自分一人だったけれども、それが次第に家族や友人、恋人、仲間へと広がって、そして今はユーザーという自分から遠い人にも幸せを届けることが今の僕らの仕事だと考えています。それを1センチでも広げていきたいですね。

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オケージョン消滅で絶体絶命のピンチ マッシュの「セルフォード」復活劇の舞台裏

 マッシュスタイルラボの「セルフォード(CELFORD)」がコロナ禍の大ダメージから復調している。

 同ブランドは結婚式や入学式など、いわゆるオケージョンと呼ばれるシーンで活躍する華やかなデザインのワンピースを1〜2万円台でリーズナブルに提供。20〜50代の幅広い女性から支持を受け、2018年春夏のスタートからファッションビルや百貨店など19店舗(2021年1月末時点)へ広げるなど順調な成長を続けてきた。

 だが、コロナ禍では結婚式などのイベントが次々中止になり、「セルフォード」の需要そのものが蒸発。20年4〜5月に掛けて売り上げが激減し、一気に苦境に立たされた。「私たちは、“オケージョンなら『セルフォード』”というブランドイメージをしっかり植え付け続けてきたという自負がある。だが、(コロナ禍では)それが裏目に出てしまった」と一(はじめ)真由子セルフォードプレス。

 しかし、その後は復調軌道に乗り、6〜12月期の売上高は前年比を上回る好調を見せている。21年春にはルミネ横浜(2月26日)、博多阪急(4月)に新規出店する。「このピンチを乗り越えたことで、『セルフォード』はひと回りもふた回りも大きく生まれ変わることができた」と語る一プレスに、復調の舞台裏を聞いた。

 20年6月、東京・麹町のマッシュスタイルラボの本社オフィス。「セルフォード」の一プレスは、浮かない表情でブランドの売り上げなどに関する資料に目を落としていた。緊急事態宣言での店舗休業(4〜5月)が明けた後も、リアル店舗への客足は止まったまま。急伸するECがかろうじて支えてはいるものの、ブランドは危機的状況だった。

 「セルフォード」はコロナ禍以前から、オケージョンを超えて日常使いできるデザインにも徐々に取り組んできた。「でも、私たちの服をデイリーに求めてくれる人がこんなにも少ないという事実が浮き彫りになって、(当時は)大きなショックを受けた」。このままではブランドが立ち行かなくなってしまうーー。そんなムードがチーム全体を包んでいた。

全ての新作に袖を通すと
発信の重みが増した

 だが、悩んでいても20-21年秋冬シーズンがやってくる。コロナ禍では展示会の形も変わった。同社では毎シーズン、全国の店長が東京本社に集まり、新作コレクションの内容を見て店舗への仕入れの量を決める。だがそれができなくなり、プレスチームはリモートで商品の着用イメージやディテールなどを伝える必要が出てきた。そこで同シーズンは、従来はモデルに着せて撮影していたシーズンビジュアルを、プレス自ら着用するようにした。

 店長らからは「リアルな着用感が分かる」と好評だったが、「それ以上に私にとって収穫だったのが、商品そのものへの理解が深まったこと」(一プレス)。「セルフォード」の商品型数は毎シーズン80程度に及ぶが、今回の撮影に当たっては自らその全てに袖を通した。「今までは、分かっていた気になっていただけかもしれない。そう思えるほど、着用した時の素材感や服に施されたディテールの意味まで、肌感覚で理解できた」。

 同時期には、店舗への来店客が減る中で「セルフォード」もライブコマースにも本腰を入れ、一プレスが出演する場面も増えていた。「試着を繰り返したことで、どういう動きをすればワンピースのドレープが綺麗に見えるかも分かったし、商品の細部のこだわりも自分の言葉で語れるようになった」。インスタライブの熱量は、商品の売れ行きにダイレクトにつながった。

 「矢面に立つ分、売れなかったらどうしようという不安は大きい。でも一方で、ブランドや数字に対する責任感が出てきたようにも思う」。9月からは公式ホームページで「はじめの活躍服」と題し、自分の言葉でおすすめアイテムや着こなしを紹介する月1〜2回の連載も始めた。

「セルフォード」なら“間違いない”
期待に応え、ファンの心をつかむ

 ブランドの状況が本格的に好転しはじめたのもこの頃からだ。「それまで巣ごもりで我慢していた女性にも『おしゃれをしたい』という欲が出てきた。華やかな気分になれる服を求める方が、徐々にだが(『セルフォード』に)戻ってきてくれた」。現場からは、20代であれば「彼氏とのお家デート」、より年齢が高い層であれば「予約の取れないレストランに行く装いを求めて来店される」という声が上がった。「こんな状況でも、女性にはとっておきの場面で着る服が必要とされていることを実感した」。

 企画とプレス、販売が一丸となり、吸い上げた意見をスピーディーに期中企画に反映した。目指したのは、ブランドらしい華やかなデザインと、快適性を両立させた服。「手洗い可能」「ゴムウエストで快適」といった機能性を強化した。売り場では「結婚式で映える」「入学式でもオシャレに見える」といったコロナ禍以前のセールストークを封印し、あくまで商品そのものの魅力を伝えるべく方針転換。すると、確実に数字にもつながってきた。

 「ブランドのテイストやデザインが多少変わっても、『セルフォードなら間違いない』という期待に応え続ければ、お客さまがついて来てくれるという自信がついた」。そう一プレスが語るように、2021年春夏は商品テイストの幅を大きく広げた。カラーでは翡翠(ひすい)をイメージしたブランドらしいエレガントな緑をプッシュする一方、刺しゅうを駆使したボヘミアンテイストにチャレンジ。これまでのワンピース一辺倒ではなく、ビックカラーブラウス(1万4000円)などの一枚で映えるトップス、2ウエイ、3ウエイで使えるアイテムやUVプロテクションなどの機能も積極的に取り入れる。

 一プレスにとっても、「コロナ禍でもがいた経験が、プレスという仕事に対する向き合い方が変わるきっかけになった」という。「ありがたいことにインスタライブの出演などで、私に会いたい、私が提案する服を着たいというお声をいただいている。いろいろ欲ばるとキリがないけれど(笑)、これからはもっと店頭に足を運びたいし、商品作りにも関わってみたい」と前を見据える。

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渡辺直美とYOPPYが受注生産でブランド立ち上げ 「私は自分を太っているとは思わない」

 お笑い芸人であり、インスタグラムのフォロワー数は937万で日本一!近年は多様な美を広めるアクティビストとしての役割も担う渡辺直美が、ウィメンズブランド「リトルサニーバイト(LITTLE SUNNY BITE)」のデザイナーであり、10年来の友人だというYOPPYと新ブランド「テン(10)」(エイト)を立ち上げた。全て受注生産で、2月5~11日にウェブ上で予約を受け付ける。昨年春の緊急事態宣言中、「クリエイティブな思いが盛り上がった」という2人に話を聞いた。

WWD:渡辺さんは「プニュズ(PUNYUS)」、YOPPYさんは「リトルサニーバイト」と、既にファッションブランドを手掛けていますが、あえて新ブランドを立ち上げようと思ったのはなぜ?
渡辺直美(以下、渡辺):お互い作っているのは違うジャンルの服だし、10年前にYOPPYに出会ってからこれまで、一緒にブランドをやりたいって考えたこともなかったんですが、YOPPYの作るデニムアイテムやフリルの使い方は好きでした。ただ、サイズが合わないから「リトルサニーバイト」は買えないものも多いんだけど。そうしたら、YOPPYが「プラスサイズにも興味はあるけど、パターンなど分からない部分が多くて手が出せない」って言っていたので、「じゃあ一緒にやろう」となったんです。ユーチューブの番組で話している中で決まったので、言わば友達になって10周年の記念イベントみたいなブランドですね。

WWD:つまり、ガッチリ決め込んで「よし、売っていくぞ!」という感じではない?
YOPPY:はい、違います。とりあえず、この春夏物をやってみようという感じ。お互い本業があるし、どんな反応がくるかも分からないし。この次どうするかはそこから考えます。受注販売で売り切れたらそれでおしまいです。
渡辺:万一この7型が各5億(!)着くらい売れて、「……そんなに求められる!?」ってなったらお店を出出すことも考えますけど。あんまり「ビジネス、ビジネス」という感じではなくて、これがかわいいと思ってくださる人に届いてほしいし、大切に着てほしい。もちろん自分たちもたくさん着てSNSに投稿していくけど、「SNSではこういうPR戦略を立てています」といったこともないです。

WWD:コロナで時間に余裕ができたことがブランド立ち上げのきっかけの一つになった?
渡辺:これは表現することを仕事にしている多くの方と同じだと思いますが、昨年4~5月に緊急事態宣言が出て家に居なくちゃいけなかったときに、「この盛り上がったクリエイティブな思いをどうしよう!」っていう気持ちだったんですよ。それが最終的に行き着いたのが「テン」だった。当時既に私はユーチューブを始めていたので、最初はファッションブランドではなくミュージックビデオを撮りたいっていう案を話していたんです。ゴリゴリのヒップホップをバックに、私の地元の茨城県の農家のおじいちゃんとかが登場する、茨城県の名産品アピールのビデオ。そこに私がときどきトレーラーに乗ってカメラ目線で登場するという。
YOPPY:私も出身が栃木県なので、「それ、すごくいいじゃん」って。それで一緒に盛り上がりました。とは言え、こんなご時世なのでなかなか現地まで行って撮影するということは叶わなかったんですが、「ミュージックビデオを撮るならどんな衣装にする?」といったことは話していました。

WWD:「プニュズ」のストリートカジュアルムードに比べると、「テン」はガーリーな雰囲気が新鮮です。
渡辺:私がストリート育ち、ヒップホップ育ちなんで、「プニュズ」はそういうところが出ちゃっているんだと思います(笑)。「プニュズ」はより日常的でポップな雰囲気で、男性も着られるものを意識している。ガーリーな服って、(細かいギャザーなど)凝ったディテールが重要になるので値段が高くなるんですよね。「プニュズ」は(高くなり過ぎないように)価格を決め込んでやっている部分もあるので、あえてガーリーなものには手を出してきませんでした。
YOPPY:「テン」はデニムアイテムは素材も日本製、縫製も日本の工場で、ブラウスやワンピースはギャザーやシャーリングなどのディテールにこだわっています。みんなが着たときにきれいに見えるボリューム感を追求しました。サイズはS~XXLの4サイズですが、そこは直美ちゃん一緒にやったからこそ分かることがいっぱいあった。「体形が変わっても、骨格自体は変わらないよ」って言われたのはすごく納得しました。単純なグレーディング(拡大)じゃないんですよね。
渡辺:それね。「プニュズ」でも最初同じことが起こったけど、XXLで作るとなるとワンピースの肩ヒモ部分まですごく伸ばしたファーストサンプルが上がってきたりするんですよ。「いやいや、肩の骨の大きさ自体は体形が違っても変わらないんだよ」って。あと、「プニュズ」では肌を露出させるデザインがあまりないけど、「テン」ではそこをやっています。肌を出した方がシュッと見えることもあるし。やっぱり出したくないという場合は重ね着をしてもいいし。
YOPPY:カシュクールワンピースは肩の少し内側からボリュームが出るパフスリーブの作りにして、肩幅が大きくてもきゃしゃに見えるパターンを追求しました。鎖骨がきれいに見えるオフショルダーのトップスも作っています。ボディバランスが整って見える服にしたい、ということにはすごく熱い思いがあります。

「太っている人は白い服は着ない」の固定観念に挑戦

WWD:コロナで外出機会が減っていることで、ファッション業界では部屋着に力を入れるブランドも増えています。
YOPPY:今日2人が着ているロングスリーブTシャツの袖には「BE HERE NOW, BEST FRIEND FOREVER」って刺しゅうを入れているんですけど、心のつながっている友達とファッションでもつながりたい、おそろいにしたいっていう気持ちを「テン」には込めました。今はなかなかおそろいの服で外出をすることはできないですが、それだからパジャマを作るといったことではなく、「テン」は未来への希望を込めた服です。
渡辺:あと、皆さんに“選択”をしてほしいっていう気持ちも込めて作っています。今って与えられた情報ではなく、自分で気になった情報をチョイスしていく時代だと思うんです。サイズも与えられたサイズではなく、体形に関わらず好きなシルエットを選んでほしいから4サイズ展開しています。私たちが着る人を決めるのではなく、「テン」を着ることであらゆる人にワクワクしてほしいので、お客さまの対象年齢も12歳から120歳までって言っています。「太っている人は白い服は着ない」みたいな固定観念は昔に比べて随分なくなってきたと思うけど、「テン」では白のワンピースも作っているので是非挑戦してほしいですね。
YOPPY:「40歳になったらもうピンクは着てはいけない」とかもよく言うけど、どんな人にも似合うピンクはあるよって言いたいよね。そんなふうに、「テン」で新しい自分を見つけてほしい。

WWD:渡辺さんはここ数年で広がったボディーポジティブムーブメントの伝道者のような存在でもあります。多様な美を伝える立場として、改めて世の中にメッセージを。
渡辺:世の中の固定観念というか、人それぞれ考えのキャパシティーってあると思うんですよ。だから、その人が見てきたものや経験してきたことの範囲外の価値観がやってくると、びっくりして手で払いのけてしまうこともある。ただ、私のことで言えば、私は自分を太っているとは思っていないんですよ。もちろんサイズは大きいし、膝が痛いといった悩みはあるけど、この体と付き合ってきたので改めて太っているとは思わない。大切なのは、あらゆる人を体形や見た目ではなく、個々の人として見ていくこと。だから、あらゆる人にまずは自分がやりたいこと、挑戦したいことをやってみてほしいし、私はそれをやらなきゃいけないと思っています。
 ボディーポジティブという言葉が広がったことで、逆にそこに固定観念も生まれて、苦しんでいる人もたくさんいると思う。ボディーポジティブの考え方は、一律に「太っている人ももっと肌を出していいんだよ、出しちゃいなよ!」っていうこととは本来違うんですよね。例えそこに何かコンプレックスがあるとしても、それを乗り越えられる人、乗り越えられない人、乗り越えたくない人がいる。人それぞれで違うから難しいけど、それをお互いが認め合えるようになっていったらいいなって思いますね。

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ファッション通信簿Vol.63 トレンドの単色コーデからネット騒然の新生スターまで バイデン大統領就任式のファッションを米「WWD」が辛口ジャッジ!

 米「WWD」の人気企画「ファッション通信簿」では、ストリートからパーティー、レッドカーペットに至るまで、海外セレブたちのファッションを厳しくチェック。評価を絵文字でお伝えするとともに、それぞれのファッションポイントを勝手に辛口ジャッジ!

 第63回は、1月20日(現地時間)にワシントンで行われた第46代米大統領就任式から、ジル・バイデン(Jill Biden)夫人、カマラ・ハリス(Kamala Harris)副大統領の夫のダグ・エムホフ(Doug Emhoff)、歌手で作曲家のガース・ブルックス(Garth Brooks)、レディー・ガガ(Lady Gaga)、ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)、ハリス副大統領の継娘のエラ・エムホフ(Ella Emhoff)、詩人のアマンダ・ゴーマン(Amanda Gorman)、ミシェル・オバマ(Michelle Obama)夫人、バーニー・サンダース(Bernie Sanders)バーモント州上院議員が登場。

 ジョー・バイデン(Joe Biden)新大統領の就任が正式に決定した歴史的なシーンでも、米「WWD」の辛口コメントはとどまるところを知らない。サンダース上院議員の毛糸の手袋からガガのドレスやジェニファーのオールホワイトコーデまで、注目のファッションが目白押しだ。

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キム・ジョーンズによる「フェンディ」や24歳の新たな才能に感嘆 クチュール後半5選

 2021年春夏オートクチュール・ファッション・ウイーク(1月25〜28日)は、コロナ禍での2度目のデジタル開催。クチュールメゾンはどのような服を、どのような方法で発信するのか、コレクションを長年取材する向千鶴「WWDジャパン」編集長と、「WWDジャパン」のSNSアカウントも運営する丸山瑠璃ソーシャルエディターがそれぞれの視点から語り合います。今日は1月27日、28日の2日間の参加ブランドから厳選した5ブランドについて紹介。

丸山:27日に発表予定していた「メゾン マルジェラ “アーティザナル” デザインド バイ ジョン ガリアーノ(MAISON MARGIELA 'ARTISANAL' DESIGNED BY JOHN GALLIANO)」「エリー サーブ(ELIE SAAB)」「ズハイル・ミュラド(ZUHAIR MURAD)」が発表を延期しました。パリ警察当局からの指示でショーやイベントに観客を招待できないことも影響したのかもしれません。少しスケジュールが寂しくなりましたが、27日は今季の目玉、キム・ジョーンズ(Kim Jones)による「フェンディ(FENDI)」が控えています!

FENDI

向:これぞラグジュアリー、これぞオートクチュール!パリ旧証券取引所で発表されたキム・ジョーンズによる「フェンディ」は歴史と手仕事と資本力とクリエイティビティが余すことなく注がれた素晴らしいコレクションでした。わずか19体だけど一つ一つの存在感が際立ち、一人一人のモデルの個性と呼応して見応えがありました。「家族」「ルーツ」というキーワードを受け取りましたが実際、親子で登場したモデルもいたよね?

丸山:はい、ケイト・モス(Kate Moss)と娘のライラ・モス(Lila Moss)が親子で、アジョワ・アボアー(Adwoa Aboah)と妹のケセワ・アボアー(Kesewa Aboah)、クリスティ・ターリントン(Christy Turlington)と甥のジェームス・ターリントン(James Turlington)も家族で登場していました。さらにナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)、カーラ・デルヴィーニュ(Cara Delevingne)、デミ・ムーア(Demi Moore)、ベラ・ハディッド(Bella Hadid)らキムやブランドと親交のある“ファミリー”と呼べるモデルが登場。超豪華なキャスティングにも驚きましたが、ジュエリーを手掛けるデルフィナ・デレトレズ・フェンディ(Delfina Delettrez Fendi)という本物の「フェンディ」ファミリーもモデルとして登場していたのにも驚きました。代々家族経営である「フェンディ」がいかに“ファミリー”に価値をおいているか、象徴していましたね。

向:インスピレーションの一つがイギリスの小説家ヴァージニア・ウルフ(Virginia Woolf)の「オーランド(Orlando)」でした。男性として生まれ、ある日目覚めたら女性の体となった主人公が最後は女性として生をまっとうする物語です。「フェンディ」が創業した3年後である1928年に書かれていますが当時としてはかなり前衛的な内容だったでしょう。それをキムはさらりと当たり前のこととして扱っている。ウルフがこのショーを見たら盛大な拍手を送るのではないでしょうか?1ルック目、2ルック目と丁寧に続けて見ていると、男性性や女性性は、自分の意思で選び取れるものだ、と思えます。

丸山:本をかたどったクラッチバッグが登場したほか、パールのクラッチバッグやブーツには「オーランド」からの引用が施されているそうです。キムは「『フェンディ』の経営は3代目、私は4代目が継ぐまでのゲストだ」とコメントしていましたが、「フェンディ」と同時期に誕生し、今ようやく理解されつつある「オーランド」のジェンダーやセクシュアリティは流動的なものという認識をメゾンのクリエイションに組み込み、当たり前のこととして次の世代に伝えたかったのかなとも思いました。

向:もう一つ、重要なのが「フェンディ」の創業池であるローマの存在感だね。ボルゲーゼ美術館の大理石のカラーパレットや、ジャン・ロレンツォ・ベル二ーニ(Gian Lorenzo Bernini)の彫刻を思わせるドレープ。アクリスケースの中に立つモデルは美術館の彫刻のようでした。これはもう、アトリエの手仕事のなせる技以外の何物でもない。ファッションデザイナーの多くはローマの街とルネッサンス美術への憧れを抱いていますが、キムもそうなのか、見事な表現でした。

VIKTOR&ROLF

向:「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)」はコロナ下でモヤモヤ溜まったうっぷんを吹き飛ばすかのようなコレクションでしたね。ギラギラして軽快で、同時にサステナブルという。アンダーグランドなムードが漂いましたが会場は元軍需工場なんでしょ?

丸山:はい、「Het HEM」というアムステルダム郊外の施設なのですが、現在はコンテンポラリーアートの中心地となっているようです。コレクションのテーマは“クチュール レイヴ”。想像上のパーティー、またはこれから開催されるパーティーにインスパイアされたのだとか。メタルやレース、クリスタル、ジュエリーがどっさり施されたブラに合わせるのはボリューミーなチュールスカートやパフ、そしてリサイクルプラスチックで作られたピンクやシルバーのブーツ。ユーチューバーのジョジョ・シワ(JoJo Siwa)の宝箱をひっくり返したようなキラキラ&カワイイ要素とボディーコンシャスなシルエットやブラ、タイツが生み出すギラギラしたアングラ感とのギャップがよかったです。ショーの背景となっていたアートは、アーティスト集団RAAAFの「Still Life」というインスタレーション。工場の弾丸生産で残された材料で作られたものだそうです。コレクションもアップサイクルしたアイテム多数でしたね。

向:ヴィンテージレースやドレスの破片などアトリエに残るあらゆる素材をアップサイクルしています。このアイデアって今や多くのデザイナーが取り入れています。でも欲しくなるものとならないものがある。その違いって丸山さんはなんだと思う?

丸山:確かにそうですね。うーん、一概には言えませんがただアップサイクルするだけじゃなく、そこにブランドらしさが加えられていたりなど、何かしら付加価値がプラスされていると個人的には欲しくなるかもしれません。サステナブルであること自体が付加価値なのですが、サステナブルに生きたいならもっとそれに特化したブランドがある。でもそこで買わずにそのブランドで買う・買いたいと思うのは、デザイン性であったり何かしら付加価値があるからなのではないでしょうか。

向:ところでショーにおける音楽の重要性について思いを馳せたショーでもありました。デジタルコレクションって音楽が良いと、目では見ずともループして聴き続けたりしない?

丸山:分かります!ショーのために作られた音楽であることも多いので、ユーチューブなどでショーを繰り返し再生するしかないのですがスポティファイなどでも配信してほしいです。「ヴィクター&ロルフ」は“クチュール レイヴ”の名の通り、BGMはゴリゴリのクラブミュージックでしたね。カワイイ要素がありながらも、音楽のおかげでアンダーグラウンドなパーティー感もしっかり感じ取ることができました。

CHARLES DE VILMORIN

丸山:ゲスト枠でクチュールに参加した24歳のシャルル・ドゥ・ヴィルモラン(Charles de Vilmorin)は、初めてこうしたファッション・ウイークに参加。個人的に今季のクチュールでかなり注目していました。彼自身が描く色鮮やかな絵画をそのまま服に落とし込んだような世界観に圧倒されます。インスタグラムで初めて作品を見かけたときに「一体この人の頭の中はどうなっているんだろう」と思いました。

向:Z世代から新しい才能が飛び出しましたね。シャルル・ドゥ・ヴィルモランはどんなキャリアなの?

丸山:幼い頃からファッション業界を志していたそうで、中学生のころ学外研修でアルベール・エルバス(Alber Elbaz)がトップだった「ランバン(LANVIN)」で研修したのだとか。ちなみにヴィルモラン家はフランスの園芸と農業界のトップ企業を営む家系で、多くの男性を虜にした作家、ルイーズ・ドゥ・ヴィルモラン(Louise de Vilmorin)もその血筋。サンディカ・パリクチュール校(Ecole de la Chambre Syndicale de la Couture Parisienne)で学んでいるときは、そのルックスを生かしてモデルもしていたそうです。19年に卒業したのですが、その卒業制作のコレクションをコレクターが買い占め、その資金を元手にパンデミック最中の20年4月に自身の名を冠したブランドと公式サイトを設立。9月に初めてのカプセルコレクションを発表し、11月には「グッチ(GUCCI)」が行っていた映画祭「グッチフェスト(GUCCI FEST)」にも参加して、自身が制作したフィルムを公開していました。圧倒的スピードでオートクチュールに参加した訳ですが、その作品を見れば納得しますよね。

向:米「WWD」とのインタビューの中でシャルルが「オートクチュールには限界がありません」と語っていてこれはまさにオートクチュールの存在理由の一つだと思います。顧客のニーズに忠実に応えるのがオートクチュールの一面だけど、それだけじゃない。「スキャパレリ(SCHIAPARELLI)」のシュールなデザインを好んで買い上げる顧客がいるように、富裕層の顧客はデザイナーの才能に投資するパトロンでもあるのです。「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)」は美術館などアートシーンがパトロンの役割を果たしていますしね。オートクチュールではこれまで伝統的にリミッターを外したクリエイティビティが賞賛されてきた。シャルルもその一人になり得ると思います。

丸山:そうですよね。インタビューでは「服は安く簡単に手に入るように売られ、着られるようにできていない。そこが好きなところだ」とも話していました。ファストファッションブランドが当然のように存在し、安く簡単に服を買うことが当たり前な世代でこのような視点が持てることは、本当に貴重だと思います。これからがとても楽しみです!

向:シャルルは「私は、メイクで人の性別に関係する部分を消して、本当の自分を明らかにするというアイデアが大好きです」とも話していますが、実際ファッションと同じくらいインパクトがあったのがメイクですね。顔だけではなく服にもメイクアップするという考え方かな?スポンサーと思われる「M・A・C」のカラーコスメが大活躍です。

丸山:ムービーでは鳥の鳴き声をBGMに、シャルルが銃口を通してモデルを見て、銃を打つとオレンジ色のペンキが飛び散るという演出でしたね。メイクは、ビューティ系インフルエンサーでもある友人のアナエル・ポストレック(Anaelle Postollec)が手掛けたそうです。インスタグラムを見たのですが、彼女のメイクアップもアーティスティックでした。

YUIMA NAKAZATO

丸山:人工クモの糸のスパイバー(SPIBER)の傘下に入った「ユイマ ナカザト(YUIMA NAKAZATO)」が、そのバイオテクノロジーを活用して新たな服づくりの可能性を見せてくれました。クモは自ら作り出した糸の構造を水分によって変化させ何度でも復元できるそうなのですが、「ユイマ ナカザト」はこの自然のデザインと最先端のバイオテクノロジーで自由に形を変化させることができる生地を発明。そして、人の身体情報を生地に記憶させたそう。起用したのは義足モデルのローレン・ワッサー(Lauren Wasser)。彼女の身体情報を生地に記憶させて完成したのがムービーの最後に登場したカラフルな継ぎ目のない波打つドレスということですよね?向さんは「ユイマ ナカザト」のアトリエにも伺ったそうですが、中里唯馬デザイナーからお話を伺っていかがでしたか?

向:はい、オンラインインタビューを受けている中里さんをリアルに取材しました。作り手側の景色も確認したくて。3分42秒あたりから登場する不思議な機械にぜひ注目してください。あれは服に水分を加えるためのオリジナルのマシーンで、アトリエにありました。スパイバーが発明した糸が料理で言うところの“素材”なら、中里さんはそれを料理する“シェフ”。何℃のお湯に何分浸して何分乾かせば一番美しい形になるかなど、最高の仕上がりを求めて日夜研究しているそうです。

 中里さんの仕事は非常にハイテクですが、印象的だったのは中里さん自身がローレン・ワッサーに何度もインタビューをしてそのコミュニケーションから“ぴったり”の服を導き出したということ。結果、あの体の周りに浮遊するようなドレスが生まれています。それはワッサーの内なる強いエネルギーを会話から受け取ったから。“ぴったり”は必ずしもサイズ通りの“ぴったり”じゃない。そこにファッションデザイナーの感性が加わるのがオートクチュールの仕事なんですよね。ワッサーの義足は美しいゴールド色で、ドレスはそれともマッチしていました。

丸山:外出自粛期間の最中だった前シーズンは、着る人の思い出がこもったシャツを募集し、中里デザイナー本人が持ち主と対話しシャツをリメイクして返すという企画で、後にこのサービスの一般提供もスタートさせました。この“服に宿る人の記憶”というアイデアを、生地にバイオテクノロジーで身体情報を読み込ませるというところまで拡張させたのが驚きでした。

向:アルゴリズムにより導き出されるネット上の“オススメ”は、その人が過去に選択した言葉や情報をもとになっていますよね。結果、人々の嗜好がどんどん細分化されていて、私は最近そこに疑問を抱くし、時に恐怖すら覚えます。中里さんの対話から生まれるデザインはAIには今はまだできない領域だと思います。忘れかけた記憶を掘り起こし、ともすれば狭くなる私たちの意識をぐいっと広げるところが面白いです。

S.R. STUDIO. LA. CA.

丸山:ゲスト枠でクチュールに参加したスターリング・ルビー(Sterling Ruby)の「S.R. スタジオ. LA. CA.(S.R. STUDIO. LA. CA.)」は、“APPARITION(幻影)”と名付けた映像を発表。モデルがウオーキングする映像に重ねられた戦争跡のような映像は、ルビーが南カリフォルニア州のサバイバルゲーム施設で撮影したものだそう。BGMはエンジェルズ・オブ・ライト(Angels Of Light)の「Promise Of Water」という07年の曲なのですが、これは当時行われていたイラク戦争など世界で起きている暴力をメディアを通じてゴシップなどと同等に受け取ることについて歌った曲だそうです。 

向:なるほどですね。合成とはいえお墓でゲーム感覚のファッションショーとは不謹慎だな、と一人眉をひそめていたのですがサバイバルゲーム施設と聞いて安心しました。デジタルを生かし、社会的メッセージを込めるなどある意味とても今っぽい。ただ肝心な服はどんな人たちに好まれるのかイメージがわきませんでした。

丸山:ルビーは「顧客は25歳のミュージシャンから70歳のアートコレクターまで幅広い。だがみんなユニークな限定ものがほしいと思っている」と米「WWD」の取材に対し語っていました。確かにお値段も決して安くはないですが、顧客は“着るアートピース”を購入する感覚なのかもしれません。大きなフードと襟は、イギリスからアメリカに渡り、後に開拓者となった清教徒のファッションを着想としたそう。長細い形のバッグは、楽器を入れる道具箱にも見えれば、銃を入れるバッグにも見えます。ルビーは自身の作品で社会の中の暴力や圧力を扱いますが、ファッションや映像表現においてもさまざまな揶揄が発見できて興味深いですね。9月のパリコレで発表した映像もコレクションの発表はなかったもののトランプ政権や白人至上主義者を批判する含蓄のある内容でした。

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伊勢丹・神谷バイヤーに聞く、「リ・スタイル」の“個”が際立つ売り場の作り方

昨年8月にリニューアルした伊勢丹新宿本店の自主編集売り場「リ・スタイル」。1996年の誕生以来、ファッションのトレンドの最先端をゆく編集で一目置かれる売り場だ。今回のリニューアルでは、これまでのセレクションの個性に加え、スタッフの“個”が際立つ売り場が誕生した。神谷将太・三越伊勢丹 クロージング&アクセサリーⅠグループ 新宿婦人・婦人雑貨営業部リ・スタイル バイヤー にその意図について聞いた。

WWD:今回のリニューアルの経緯は?

神谷将太リ・スタイル バイヤー(以下、神谷):実は2019年6月ぐらいから計画していたリモデルです。そのころ肌感覚で行なっていたMDでは世の中の変化に対応できないのでは?と薄々感じていました。今、変化しなければいけないと。その時点でリモデルのポイントは、ブランドやMDの積み上げではない、“人”を軸にと考えていました。お客さまの心理や消費の変化を感じていたんです。

WWD:消費者の心理や購買の変化とは?神谷さん自身がその変化をどこから感じていた?

神谷:昔はお客さまがファッションに求めること、共感することに対して、大きなホームランが結構打てたんです。「パリコレでこういうのが出てきたので、今年はこれがトレンドです。だから着ましょう」みたいな。それが近年は大きなトレンドって見えづらい。お客さまはトレンドだから買うのではなく「自分がどうありたいか」で選んでいますよね。

今、モノ自体はECもあって、手に入れることのハードルは下がっています。だからこそその分、お客さまが「このブランドほしい」「このショップで買いたい」といった忠誠心というか、エンゲージメントを高めることが大切だと感じていました。

WWD:新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけではない?

神谷:違います。機能的なプラットフォームでは楽天やアマゾンなどには絶対勝てません。もう少し精神的というか、気持ちをつないでいけるデザイナーやお客さま、ブランド、そしてもちろん我々も含めて“人”を軸にしたプラットフォームを作りたいと思いました。ただ実はコロナの感染拡大により、リモデルオープンが2カ月以上も遅れたんです。工事が止まってしまって……。

MDはホームランではなく、小さな共感の積み上げが重要

WWD:人を軸にしたプラットフォームとは?

神谷:「リ・スタイル」というお店が、物の足し算で成り立っているショップとして見られるよりも、きちんとショップとしてのフィロソフィーやブランディングが見えるショップにしたい。それを構成するのが、ブランドや洋服はもちろんですが「人」もです。僕らバイヤーだったり、販売スタッフだったり。そういう人がいてショップは成り立っています。それがお客さまの愛着心や忠誠心など、エンゲージメントを裏付けるものとして確立しないと。モノ勝負ですが、百貨店の存在意義はもうそこではないと思います。お客さまとどうありたいか、共感ですね。

昔は週に何本もホームランを打つことがマーチャンダイズに求められましたが、今は小さくても共感の数を丁寧に積み上げることで、結果的にそれがショップのエンゲージメント、強みになることが重要だと思います。

WWD:リモデルオープン後の状況は?思い描いたプラットフォームは構築できているか?

神谷:休業明けの営業再開後のリベンジ消費は実際ありましたし、リモデルオープンの効果で売り上げは良かったです。その後、コロナの感染拡大なので落ち着いている印象ですが、ECは好調に推移しています。プラットフォームは出来ていると思います。たとえば、メインプロモーションの隣でスタイリストによる編集ゾーンも作る。前回は「ベージュ」を、今回は「白」をテーマに、違うスタイリストが色のキュレーションで編集しました。それを「リ・スタイル」の販売スタイリストが、個人のインスタアカウントで発信しています。リアル店舗がさまざまなイベントで変化しながら、それを目的に来る人、たまたま来た人、取り組むデザイナー、そして販売スタイリストと、みんなが集う場が割と作れていると思います。

課題はホームページでも同様の表現ができたらと思っていて、モノの情報はもちろんですが、「リ・スタイル」を構成する人やバイヤーなどの情報も載せたい。お客さまへのカスタマージャーニーというか、購買経験のつながりを出していきたいです。

WWD:どう購買経験のつながりを作る?

神谷:これまではバイヤーが買い付けたモノ、販売員がオススメしたモノを売るだけでした。でもリモデルで販売スタイリストは自主的にどういったショップを作るか、いわゆる「リ・スタイル」で取り扱う洋服以外のコスメやリビングアイテムなどを集積して、お客さまをお迎えしています。自主編集であり、自社社員がいる。それはかけがえのない強みだと思います。

個人アカウントの公認で、業務時間内作業が変わる

WWD:私自身、「リ・スタイル」の販売スタイリストの一人のインスタをフォローしています。百貨店の社員が個人アカウントを活用することは、昔の伊勢丹さんでは考えられないことだったのでは?ハードルはありましたか?

神谷: ありましたね。OKが出たのは最近です。みんな個人的にプライベートではSNSは使っていたと思うんです。それを会社が公認にしてバックアップする。たとえば、新宿本店のオフィシャルアカウントと、その子たちのアカウントを結びつけて発信することで、人を巻き込めると思います。また公認にすることで、ちゃんと業務時間内にインスタライブをやったり、スタイリングを発信したり……。ここ数年で業務内容が大きく変わりました。ただ業務時間内ですがビジネス目的ではないというか、自分の楽しみとしてやっているところがあると思う。

WWD:確かにみなさん、本当に楽しんで発信していると感じます。だから見ていて楽しいし、「これ、かわいい」と素直に思えます。

神谷:公認アカウントだとしても、プロモーション告知やインスタライブ、商品を紹介するだけじゃなく自宅で過ごしているシーンを投稿するなど、プライベートも織り交ぜていて。そこも含めて公認です。お客さまが共感するのは、自分を接客してくれている販売スタイリストがどういった生活をしているのか、リアリティーなんです。そういうことができるようになったのは、大きな変化ですね。

WWD:何か会社に働きかけをしたのですか?

神谷:はい。若い子たちはまさにSNSなどデジタルネイティブで、生まれた時からそれが普通でしょう?と。それが理解できると、バックアップしてくれるようになりましたね。昔みたいに新聞の折り込み広告を入れれば売れる、ではありません。一方的ではなくつながっていくことが大事で、そういう必然性や意義を会社が分かってくれたと思います。

WWD:販売スタイリストの人たちもやりがいがありますね。

神谷:あると思います。1年目、2年目からそういう発信ができるので。僕が若手のときはストック整理とか、そんなのばっかりでしたから(笑)。

WWD:先ほど出た、コスメやリビングアイテムなどをそろえるのも昔は難しかったのでは?

神谷:リモデルで蔦屋さんや香水ブランドさんと協業して商品を集めました。単にバイイングするのではなく、テーマを伝えてそれに合う商品を一緒に選ぶということです。昔ならば洋服以外をセレクトすることさえ難しかったと思いますが、変わりましたね。僕はこう解釈しているのですが、「リ・スタイル」で作る売り上げだけでなく「リ・スタイル」が起点となり全館への買い回りを活性化させる。だからこそ垣根を越えて「リ・スタイル」に商品をそろえる。そういう役割を自主編集は担っていると思います。

「バレンシアガ(BALENCIAGA)や「クロエ(CHLOE)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」など、ほかのセレクトショップが主力としてセレクトしているブランドが、百貨店ではショップとして存在しているので、セレクトだけのリソースでいうと限られます。ただお客さまから見たら境界線は分からない……。フロア全体で楽しんでもらうために、お客さまには「気付き」を感じてもらいたい。そのために「リ・スタイル」は存在したいです。

WWD:とはいえビジネスであり、利益を出さないといけない。

神谷:もちろん商売として構造を作っていかなければなりません。当然、ものすごく売れるブランドと、100人中1人が共感するブランドとありそのバランスは見極めています。さらにECはスタジオを内製化して戦略的に多数の型数を掲載するなどで、売り上げを上げています。こういった土台がしっかりしている。店頭の販売スタイリストはそういう土台があるからこそ、思い切ったキュレーションもできます。“個”を際立たせることができるんです。

WWD:どういった“個”なのでしょうか?

神谷:昔はみんなが同じようにできないといけませんでしたが、今は多様性ですよね。得意なことを見極めてあげるのはすごく大事です。インスタなどで自己を表現することが得意な人もいれば、そうじゃない人ももちろんいます。そうじゃない人が実はお客さまをすごく抱えていたりとか、新規のお客さまへの接客技術が優れているとか。そこをきちんと評価する風土はあると思います。インスタやメディアがビジネスにおいて重要な時代に、目立つ人がいるのは仕方ないことですが、百貨店の土台として大事なのは接客力です。店頭チームには新卒の子から60代までいて、60代の男性スタッフは人生経験がありめちゃくちゃオシャレで僕もアドバイスを受けることもあります。メディアで目立つ人、コンテンツを複数集めて面白いキュレーションをする人、ブランドを徹底的に深めて広げる人、ブランドとタッグを組むのが得意な人……。“個”をどんどん際立たせたいですね。

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もうファンデはベージュでなくていい? マスクで激変のベースメイク事情と注目の新作

 昨年の今頃、1年以上もマスク着用の習慣が続くとは、いったい誰が想像できただろうか?コロナ禍で最も変化した美容習慣は間違いなく、マスク着用の影響による「ベースメイク」であると思う。そして現在進行形で、女性の関心事でもあるはずだ。

 確かにこの1年、電車や街中で見かける女性で「ファンデーションをきっちり塗っている人」は減少したように思える。その一方で(特に大人の女性で)、「完全にスッピン」と思われる人も、あまり見かけなかった。近所の外出時は別として、出勤もしくは、不特定多数の人とすれ違う場所に出かける場合、日本女性にとって「ファンデーションをつけること」は、それだけ重要な習慣なのだと思う。それゆえに、多くの女性がファンデーションの機能や仕上がりに対して、今も一定の試行錯誤をしているのではないかと想像している。

美しい仕上がりより「崩れない」「肌に負担をかけない」こと

 マスクでほとんど顔が隠れている以上、「他者の目から見た美しい仕上がり」は、以前ほど重視されなくなった。代わりに必要とされるのが「湿気でヨレない」「こすれに強い」機能である。フィット感は以前からあるニーズだけれど、ファンデがマスクにつくことを通して「見える化」された面が大きい。

 もう1つ、マスク着用で浮上した機能が「肌に負担をかけない、ストレスフリーの使い心地」だ。マスク内の高温・高湿度環境によって、肌が敏感に傾く女性が増えたこと。さらに昨年のコラムでも記した通り、女性は肌の上にファンデーション、その上をマスクで覆うという「二重の密閉状態」にある。感覚的な話しで恐縮だが「素肌が楽に呼吸できるような」ベースメイクを求める気持ちは、とても共感できる。

多くの女性が「メイク習慣を変えた」ことのポジティブな側面

 マスク着用によって、多くの女性が「強制的にベースメイクを見直さざるを得なかった」こと。これは長期的に考えると、ポジティブな側面もあるように思う。この期間にファンデーションではなく下地を試してみた人、また顔全体に塗らず部分的にカバーするなど、塗り方の工夫をした人もいるだろう。

 その結果「ファンデーションでなくても、肌は均一に見える」「肌全部をカバーしなくてもいい」という気づきがあったのではないか。実は前述のような下地の使用や塗り方は、プロのメイクアップアーティストが実践する「自然な肌作り」のテクニックでもある。コロナ禍の強制的な経験により、まずはファンデーションの常識から解放されること。そして自然な肌作りの方法を体験することは「いつかマスクを外す日」にきっと役立つはずだ。

 そして、2021年春はまさに「これまでのファンデーションの概念」を越えるような、ベースアイテムが続々登場する。マスク着用が続きそうな今、次世代のベースメイクのキーワードとともに、注目の新作アイテムをご紹介したい。

ファンデーションは「ベージュでなくていい」という新発想

 これまで日本女性の間には、ファンデーション=「ベージュ」という概念が存在していたはず。ファンデ選びの重要なテーマは「いかに自分の肌色に合ったベージュを見つけるか」でもあった。一方マスク着用を通して俄然注目度が高まったのが「ピンク」や「パープル」のトーンアップ下地である。これらの下地は、女性たちに「ベージュでなくても、肌の均一感や明るさを際立てる」「1品でも案外美しく仕上がる」という美肌体験をもたらした。

 このようなトーンアップ下地は、今後も引き続き注目されると思う。個人的に最も印象的だったのは、「スリー(THREE)」の“アドバンスドエシリアルスムースオペレーター プライマー”だ。木材を原料とした、軽量かつ弾力性に優れた「スムースファイバー」を配合し、実に不思議な感触を実現している。プライマーのほうから肌に吸いついてくるようなフィット感を叶え、密着後は肌の上でネット構造を形成し、保湿効果も期待できる。肌のノイズを解消しながら、ほんのり血色感を添え、素肌美が際立つ仕上がりが手に入る。

 ファンデーションの分野で斬新なコンセプトを打ち出したのが、「RMK」の“カラーファンデーション”である。「ファンデーションは、ベージュだけじゃない」という、KAORIヘアメイクアーティストの発想から生まれ、ベージュは一色も存在しない。ピンクやグリーン等の明るいパステルカラーは、肌色をコントロールする顔料を中心に構成され、透明感に優れているのが特徴だ。薄膜で素肌の質感を生かしながら、足りない色を補って明るいトーンへと導いてくれる。双方ともにストレスフリーの使い心地とマスクへのつきにくさ、そしてリモートワークでも活躍する自然な仕上がりを叶えるアイテムといえる。

高機能UVケアで「見えないダメージ」から肌を守り抜く!

 外出の機会が減り「UVケア」の使用頻度が減ったことは、「意外な落とし穴」ではないかと考えている。一般的な不織布のマスクは一定量の紫外線を透過すること。リモートワークの際に日差しの入る場所で過ごしていると、気づかぬうちに紫外線ダメージを蓄積する可能性があるからだ。この状況が長期化するほど、やがてシミやくすみを自覚する女性が増えるのではないだろうか。そこで注目したいのが、1品で何役もこなす「多機能 UVケア」である。

 花王が展開する「ビオレ(BIORE)」の“ビオレUV バリア・ミー ミネラルジェントルミルク”は、自然界に存在する植物や、食品業界の技術からヒントを得て、肌に微粒子を付着しにくくする新技術を搭載。ナノサイズの紫外線散乱剤を用いて、肌表面にキメより微細な凹凸を作りだし、ホコリやPM2.5、花粉などの付着を防ぐ働きがある。新型コロナウイルスの流行で高まった「目に見えないダメージ要因から肌を守りたい」というニーズに応える製品といえる。肌をトーンアップする働きで、下地としても活躍するはず。

 カネボウ化粧品のベストセラー「アリィー(ALLIE)」から登場する“カラーチューニングUV”は、「ノーファンデ UV」というコピーの通り、日焼け止め1品で肌を作り込めるアイテムだ。PUはくすみを飛ばし毛穴をぼかす光の効果で、まるでもともと肌の透明感が優れていたかのような仕上がりが手に入る。「アリィー」が誇る国内最高基準の紫外線防止効果、そしてマスクのこすれに強いフリクションプルーフ効果、マスク内の湿気に強いスーパーウォータープルーフ効果も頼もしい。

 日焼け止め単体のニーズは減ったとしても「1品でメイクが終わる」「崩れにくい」「見えないダメージから肌を守る」となれば話しは変わってくる。加えて多機能UVケアは、手頃な価格帯&ドラッグストアで手に入る製品が充実しており、今後ベースメイクの定番アイテムとして浸透するのではないかと思う。

パウダーに注目。メイクに加え「スキンケア効果の持続」も?

 マスク着用が続くにあたり、注目したいのが「仕上げにパウダーを使うこと」だ。本来パウダーはファンデの定着を高め、きめ細かな質感に整えるアイテムだが、プラスアルファの効果が期待できるからである。

 効果の1つは、メイクとスキンケアの中間的な存在である「スキンケアパウダー」の働き。「SHISEIDO」の“資生堂 ホワイトルーセント ブライトニング スキンケアパウダー N”は、美白有効成分m-トラネキサム酸を配合した、医薬部外品だ。サラリと軽やかな感触で、スキンケアの最後になじませると、素肌そのものをケアする働きが期待できる。もちろんメイクアップの仕上げに使うことも可能で、肌の均一感を高める働きも。リモートワーク時に、薄化粧効果によって活躍してくれそうだ。

 もう1つ注目したいのが「パウダーによるスキンケア効果の持続」である。資生堂の研究によると、マスク着用時、ベースメイクの仕上げにパウダーを使うと、ファンデの下に塗布したスキンケアの持続効果が認められるという。前述のホワイトルーセントのようなスキンケアパウダーだけでなく、一般的なパウダーでも同じ効果が期待できる。個人的におすすめなのは、「ジバンシイ(GIVENCHY)」の“プリズム・リーブル”だ。シルキーな感触でキメを整え、白色光を構成する色を再現した絶妙な4色が、明るさと透明感を演出。1989年に初代が登場して以来、32年愛され続ける名品であり、こちらも薄化粧ニーズに応えてくれる。

 改めて(美容に限らず)何ごとにおいても、長年の価値観や習慣を変えるのは本当に難しい。そういう意味で、マスク着用習慣はある種ベースメイクの常識を変える、思わぬきっかけになるのではと思う。今後ますます、女性たちの間にナチュラルなベースメイクのテクニックが浸透したり、今回ご紹介したような既存の枠を越えるベースアイテムが登場することを、心から願いたい。それは「いつか、マスクを外す日」に、きっと役立ってくれるはずだから。

宇野ナミコ:美容ライター。1972年静岡生まれ。日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、ウェブなどで美容の記事を執筆。スキンケアを中心に、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、美容医療まで担当分野は幅広く、美容のトレンドを発信する一方で丹念な取材をもとにしたインタビュー記事も手掛ける

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「ディオール」のタロットの世界や「シャネル」の小さな結婚式 クチュール前半7選

  2021-22年秋冬メンズ・ファッション・ウイークが終了し、21年春夏オートクチュール・ファッション・ウイーク(1月25〜28日)が開幕しました。コロナ禍での2度目のデジタル開催で、クチュールメゾンはどのような服を、どのような方法で発信するのか、コレクションを長年取材する向千鶴「WWDジャパン」編集長と、ウィメンズブランド担当の大杉真心記者がそれぞれの視点から語り合います。今日は1月25日、26日の2日間の参加ブランドから厳選した7ブランドについて紹介します。

“ムキムキ筋肉ドレス”の「スキャパレリ」

向千鶴「WWDジャパン」編集長(以下、向):オートクチュール・ファッション・ウイークが開幕しました。ライブ配信のコアタイムが日本の夜ですがから、仕事や家事が終わって一段落した時間にリラックスして見るのがオススメです。ファンタジー溢れるオートクチュールを通じて多くの方にショートトリップを楽しんでいただきたい。

大杉真心「WWDジャパン」記者(以下、大杉):トップバッターは「スキャパレリ(SCHIAPARELLI)」です。デザイナーのダニエル・ローズベリー(Daniel Roseberry)は、「トム ブラウン(THOM BROWNE)」で経験を積んだアメリカ人デザイナーで、先日の大統領就任式でレディー・ガガ(Lady GaGa)の衣装を担当したことでも話題になりましたね。

向:私は就任式を最後までライブで見て寝不足になった派なのですが、厳重な警備体制下で常に緊張感があった式典の空気をガガは一気に華やかに盛り上げました。特にボリュームのあるスカートの後姿がガガを最高に美しく見せており、 “一世一代の場では、やはりパリのオートクチュールが選ばれるのだな”と思ったけど、そうか、ダニエルはアメリカ人でしたね。納得です。

大杉:今回のテーマは「231 second of Haure Couture(オートクチュールの231秒間)」で、3分51秒にコレクションの制作現場やフィッティング風景、撮影、モデルの着用シーンが凝縮されていました。

向:「スキャパレリ」と言えば1920年代にパリで勃興した“超現実”表現のシュールレアリスム。創業者のエルザ・スキャパレリ(Elsa Schiaparelli)は芸術家のサルバドール・ダリ(Salvador Dalí)などと親交が深く、現代的な表現をすれば“ぶっ飛んだ”デザインを世に送り出していました。現代のダニエルはそのDNAをしっかり引き継ぎ、痛快に“ぶっ飛んで”くれましたね。

大杉:序盤からムキムキな筋肉をかたどったコルセットに釘付けに!これ、去年のクリスマスにキム・カーダシアン(Kim Kardashian)のためにデザインしたムキムキドレスの進化系なんですね。「スキャパレリ」といえばショッキングピンクがDNAですが、あのイヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)による有名なリボンルックがムキムキに再現されていました(笑)。

向:創業当時に独創的な「スキャパレリ」を支持したパリの上流階級の女性たちの懐の深さや好奇心の強さには脱帽ですが、今の時代にその役割を果たしているのがキムやガガのようなアーティストたち。オートクチュールとショービジネスの関係は密接ですね。奇抜であると同時にクチュールメゾンの技を生かしてどこまでも真面目に美しさを追求し、着る女性をきれいに見せています。

大杉:他にも大振りの茄子のようなゴールジュエリーや、大きな南京錠も迫力がありましたし、聖母像の絵画のように乳を飲む赤ん坊が付いたルックもぶっ飛んでました。今スポットライトが当たっているアメリカ人クチュリエとして、ダニエルは今後も注目していきたいですね。

神々しい「イリス ヴァン ヘルペン」のクリエイション

大杉:前回は不思議な雰囲気の映像作品に挑んだ「イリス ヴァン ヘルペン(IRIS VAN HERPEN)」でしたが、今回はシンプルなランウエイ形式になりましたね。このブランドは3Dプリンターを駆使して、ドレスそのものがSF映画の衣装のように細かく、奇抜なので、全身をしっかり見れる見せ方でよかったと思いました。コクーンに包まれているかのように立体的なケープのドレス、生物のひだのよう広がったスカートなどから、創造性の豊かさを感じます。

向:まるでボディーペインティングかのように身体と一体化したドレスが美しかったです。身体と装飾、身体と服と空間の関係性を追求するその探求心がすごい。服というより、もはやボディーメッセージですね。私、日本に点在する縄文文化の資料館を見て回るのが趣味なのですが、そこで展示されている縄文人の装飾に通じるものがあるな~なんて思いながら見ていました。

大杉:往年のスーパーモデル、ナタリア・ヴォディアノヴァ(Natalia Vodianova)も登場しましたね。羽のような装飾が付いたラストルックは本当に神々しく、気高さを感じてしまいました。細かく見てみるとネイルアートもとても素敵で、これらは日本出身のネイルアーティストの松永英知さんが担当したそう。

「ディオール」のミステリアスで多元的な美しさ

大杉:また1本の映画を見終わったように、惹き込まれてしまいました。前回に引き続き、イタリア人映画監督マッテオ・ガローネ(Matteo Garrone)による映像です。タロットの世界が広がったお城の中で、1人の女性がジェンダーを超えた自分探しの冒険をするという内容で、愚者、節制、女教皇、吊るし人、悪魔などお馴染みのカードのサインたちが登場人物として出てくるのもワクワクしました。

向:インビテーションがズシリとしているから何かと思えばタロットカードそのもの!ショーはそこから始まりました。映像は非常に美しく、非常にミステリアス。以前、「ディオール(DIOR)」のオートクチュールのショーの後に “仮面パーティ”に参加したことがあります。そのときに感じた「仮面をつけていると人は素直に大胆になる」という体験を思い出しました。タロットに導かれることで女性たちがどんどん自分の本心や本年に忠実になってゆく。そんな束の間の解放感を提供してくれた気がします。

大杉:ムッシュ、クリスチャン・ディオール本人も占星術に惹かれていたという話がありますが、アーティスティック・ディレクターのマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)は「不確実な時代に、ミステリアスで多元的な美しさを探った」という風に語っています。まさにコロナ禍に入ってから「風の時代」についてなどスピリチュアルな話を聞く機会が増えて、占星術関連の書籍も売れているそう。そういった占いへの注目が高まる中、今このような提案するマリア・グラツィアは本当に時代を捉えているな、と感心してしまいます。

向: 12星座を刺しゅうしたドレスはマリア・グラツィアのお気に入りで今回も登場しましたね。ちなみに「ディオール」には12星座のリングも定番であります。私はマリア・グラツィアへのインタビュー当日に「話のネタに」と思って自分の星座であるおうし座のリングを購入したことがあります。慌てて買ったので実はそれが牡羊座のリングだったというオチつきなのですが……。マリア・グラツィアと大いに盛り上がったからよいのですけどね。

大杉:なんと!SNSのコンテンツでは、実際にマリア・グラツィアをはじめ、アトリエのスタッフたちがタロット占いを受ける姿も紹介していたのも面白かったです。これまで通り、このコレクションに合わせて世界中のアンバサダーたちのスナップがSNSで掲載されていましたが、日本からは新木優子さんが登場していました。

少人数が参列する結婚式のような「シャネル」ショー

向:「シャネル(CHANEL)」は、家族が集う少人数の結婚式をイメージしたそう。花のアーチをくぐってモデルたちがグラン・パレの階段を降りてくる開幕のシーンは、一点の曇りもない幸福感に満ちていました。今こそ「シャネル」にはこうあってほしい。厳しさやシリアスさは「シャネル」には不要です。ザ・ロネッツ(The Ronettes)の「ビー・マイ・ベイビー」のアレンジ曲が胸にしみました。

大杉:無観客ショーと思いきや、ペネロペ・クルス(Penelope Cruz)やマリオン・コティヤール(Marion Cotillard)、リリー・ローズ・デップ(Lily Rose Depp)ら豪華なアンバサダーたちが客席にいましたね。段々に重なったフリルスカート、マクラメ刺繍のロングドレスなどから、紳士服から着想を得た、ウエストコートとパンツのセットアップまで、華やかなパーティの参列客のようなウエアがそろっていました。

向:ロング&リーンの1920年代調が軸にありましたね。それを彩るのは刺しゅうや羽根飾りといったシャネル傘下の工房の仕事です。ヴィルジニーは、「私は常に女性たちが自分のワードローブにどんなアイテムを加えたいのかと考えています」と話していますが、 この顧客に寄り添うヴィルジニー流の「シャネル」がすっかり安定感を得たと思います。

大杉:最後には白馬に乗った花嫁が登場しましたね。この祝福ムードは、カンボン通り31番地のオートクチュール サロンのリニューアルに関連しているとのことです。

ローマから無観客ショーを行った「ヴァレンティノ」

向:「ヴァレンティノ(VALENTINO)」は本拠地のローマにあるコロンナ美術館で無観客ショーを発表しました。映画「ローマの休日」のラスト、アン王女が記者会見を開いたシーンのロケ地で、天井のフレスコ画など会場は見どころ満載です。ローマはイタリアの中でも特別な場所であり、「ヴァレンティノ」はその歴史の中から生まれたことを再確認しますね。パリコレではこの荘厳な光景を見ることはできません。

大杉:前回、巨大ドレスに度肝を抜かれましたが、今回はよりリアルなレイヤードスタイルを楽しむクチュール、という新しい方向性に切り替えてきましたね。クチュールといえば、装飾をたっぷりのせたドレスをイメージしますが、ドレスのオケージョンが減る中でピッチョーリはリアルな世界で着用するクチュールを目指したのではないか、と思いました。スパンコールをのせたタートルネックインナーの上からワンピースを重ね着したり、ふんわりとしたコートドレスがあったりと日常着のようなアイテムばかり。クチュールでは初めてのメンズも登場していました。顔一面に金色のグリッターを塗ったメイクも目を引きましたね!1ルックずつ商品説明と製作者の名前が記載されていて、リスペクトを感じました。

向:どこか着物を思わせる直線的なフォームと鮮やかな色が力強かったです。ところで音楽は、マッシヴ・アタック(Massive Attack)のロバート・デル・ナジャ(Robert Del Naja)が担当です。ナジャってバンクシーの正体か!?なんて噂されたこともある人でしょ?そのナジャとアーティストのマリオ・クリンゲンマン(Mario Klingemann)が組んだ「ヴァレンティノ」の映像作品が29日に発表されるそうですね。なんと人口知能に「ヴァレンティノ」のオートクチュールのメイキング映像などを3か月間学習させて作ったとか。究極の手仕事であるオートクチュールとAIのコラボレーションだなんて未知でゾクゾクするわ~。楽しみ。

総刺しゅうにうっとりする「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ」

向:「ジョルジオ アルマーニ プリヴェ(GIORGIO ARMANI PRIVE)」で特に見てもらいたいのは、ブルーのベルベットの美しさかな。ピークドショルダーのジャケットやドレスに合わせる帽子などいろいろなところに艶のあるブルーのベルベットが使われていて効果的でした。

大杉:今回はデザイナーのジョルジオ・アルマーニが、ミラノへの思いを込めて制作したコレクションだったそうですね。キラキラ輝く総刺しゅうのジャケットとパンツのセットアップからはじまり、素材の美しさにうっとりとしました。歴史的建造物であるオルシーニ宮殿を舞台に、部屋の鏡に反射して、バックスタイルが見える演出も素敵でした。

向:「手入れたが行き届いている」という言葉がショーを見ている間、ずっと頭にありました。服のカッティング、モデルの身のこなし、「ジョルジオ アルマーニ ビューティ(GIORGIO ARMANI BEAUTY)」を使っているのであろう肌の質感や指先のネイル、それらはごく自然に見えるけど緻密に計算されているに違いない!外光と鏡の反射の光も考慮して生まれているのでは?と思いました。ショーのバックステージでデザイナーのミスター・アルマーニは自らモデル一人一人のメイクをチェックしますが、その美意識の高さがデジタルコレクションにも表れていますね。

「AZファクトリー」でエルバスがついにカムバック!

向:いよ!待ってました!アルベール・エルバス(Alber Elbaz)がファッションビジネスに戻ってきました。「AZファクトリー(AZ FACTORY)」はコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)とのジョイントベンチャーによるプレタポルテの新ブランドです。2015年に彼が「ランバン(LANVIN)」を去ったときは「着る服がなくなる」と本気で嘆く女性がたくさんいました。それほどアルベールが作る服は女性にとっての強い味方なのです。私も嬉しいです。

大杉:テレビ番組風のコミカルな演出で、見ているのが楽しかったです。それぞれのウエアごとにエルバス本人が作った思いを語っていて、XXXSからXXXXLまで対応するストレッチ素材のドレス、女性一人で着脱が楽なファスナー、ポインテッドスニーカーの“スニーキーパンプス”、ヨガやストレッチができるアクティブウエア、最後には“ハグ”や“キス”の温もりを感じるパジャマまで、おしゃれな通販番組みたいでした(笑)。

向:アルベールはクリエイティブ・ディレクターというより、ファッション・デザイナーなのですよね。ブランドのためにブランディングを請け負うのではなく、女性のために服をデザインし仕立てる人。以前「僕はすべての年代のすべての女性を美しくしたい。彼女たちに尽くすデザイナーなんだ」といった趣旨のことを語っていたのが印象的で、今回のコンセプトもそこにあります。多様性あるモデルキャスティングなどから変わらぬポリシーを見ました。

大杉:最後にはアナ・ウィンターをはじめ、マーク・ジェイコブス、リック・オウエンス、「クロエ」の新クリエイティブ・ディレクターで注目を集めるガブリエラ・ハーストらの声援のコメントがあり、見所も満載。しかも、すぐ買える「シーナウ、バイナウ(SEE NOW, BUY NOW)」形式で、今日から公式サイト、「ネッタポルテ」「ファーフェッチ」で発売しましたね。ドレスは9万~21万円、トップス3万~4万円、スニーカー6万7000円、アクセサリが3万~9万円と、クチュールと身構えずとも、手に届く価格帯にも驚きがありました。

向:さあ、日本ではどこの店が販売するのでしょうか?ディストリビューターはどこ?記者としては次はそこを追いかけないとね。

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