クリーンビューティについて編集部員が解説 日本市場におけるポテンシャルは?

 ビューティのニュースやトピックスを編集部が語り合う「WWDビューティポッドキャスト」も早4回目を迎えました。今回は昨今のビューティ業界を席巻するクリーンビューティについて解説します。「WWDビューティ」本紙では5月14日号にてクリーンビューティを取り上げた特集を企画したほか、「WWD Japan.com」でもコラムやニュースで同市場について幾度も取り上げています。ポッドキャストでは改めて「WWDビューティ」が定めたクリーンビューティの概念のほか、クリーンビューティが広がった背景や日本市場における可能性について語りました。福崎明子「WWD Japan.com」ニュースデスクが、特集を担当した北坂映梨「WWDビューティ」記者とともにお届けします。

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【動画】「人を楽しませることが僕の幸せ」 「ダブレット」井野将之が目指すハッピーな世界

 デザイナーが自らの思いを語る動画企画「DESIGNER’S VOICE」の第二弾は、井野将之「ダブレット(DOUBLET)」デザイナーが登場する。オンラインで開かれた2021年春夏パリ・メンズ・コレクションでは、「A VERY MERRY UNBIRTHDAY FOR YOU」をテーマに、主人公のクマがファッションを通じて人々に幸せを届けるストーリーの映像を発表した。その背景には、新型コロナウイルスによる自粛期間中でも「自分にできることはないか」と考え続けた井野デザイナーの思いが込められていた。ムービーについてや、パリ・メンズの公式スケジュールで発表を続ける理由を聞いた。

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マスク生活でメイクを楽しむにはアイシャドウを味方につけるべし! 2020年秋冬アイシャドウ新色をピックアップ

 2020年秋冬ベースメイク&新色を「WWD ビューティ」8月6日号で特集しました。新型コロナウイルス感染拡大の影響による在宅ワークの推進や外出機会の減少、日常的なマスク着用など、メイクアップブランドにとっては厳しい状況が続く中で各ブランドの秋冬コレクションが続々と発売されます。

 近年はリップを中心とした口元にフォーカスしたトレンドが続いていましたがマスクの着用が大きく影響し、リアルトレンドはマスクをしていても隠れないアイメイクやアイブロウといった目元のメイクが注目を集めています。アイメイクはリップメイクと違って、テクニックが必要、色選びが難しいと思われがちですが、各ブランドからはマスクの影響から売りとなるアイメイクで簡単にトレンドメイクがかなえられる提案が増えています。また、今季はテクスチャーや質感がパワーアップしており、繊細なニュアンスが表現できるようになったことで、指1本でも色を重ねて立体感を出せるアイテムも豊富に揃いました。マスク生活でもメイクを楽しむために、簡単に取り入れられるアイシャドウを紹介します。

グラデーションアイで上品さと立体感のある目元に

 今季はブラウン系カラーにオレンジ系やパープル系の差し色がセットになったものが豊富で、日常に取り入れやすいカラーメイク提案が目立ちました。また、処方の進化も目覚しく、マットやサテン、パール、ラメなどテクスチャーが繊細になったことや、肌なじみみやすいように工夫が凝らされていることで、今までは自分に似合わないと思っていたような濃い色も今季は取り入れやすいはずです。ベージュやグレージュ、モーブなど淡い色味をまぶた全体にのせて、ダークブラウンや、パープル、オレンジなど濃い色を少しだけ目の際や目尻にのせれば、上品なグラデーションに。イエローとオレンジといった同色系のグラデーションアイもニュアンスを効かせれば、ベーシックなグラデーションも今っぽく仕上げることができます。

 マット、サテン、グリッター、メタリックの4種のテクスチャーの9色で構成されたアイシャドウパレット。新色「No.03」はデイリー使いもしやすいダークブラウンからピンクをセットにした。クラシカルな組み合わせにアクセントカラーのパープルがモード感を引き立てる。(新1種)7600円

 ブランドを代表するアイシャドウパレットがオートクチュールドレスのランウエイルックから着想を得てリニューアル。きめ細かなクリーミーな生質感パウダーがあらゆるスキントーンにマッチし、素早くそして長時間鮮やかな発色をかなえる。新たにスキンケア成分も配合。(全13色※一部店舗限定)各7600円

 秋冬コレクションのテーマは「重なり合う、エナジーの昇華」。天然由来成分×洗練モードを追求した人気のアイパレットに新色が追加。限定の「EX03 ムーンサウンド」は、オレンジとレッドに締め色をセットにした。重なり合う色と質感で個性を表現できる。(新3種、うち限定1種)各6200円

 人気の4色アイシャドウにコレクションテーマ“NEW CHIC”を表現する、洗練された色と質感を表現する5種が登場。4色のうち1色は、濡れたようなメタリクな光沢と鮮やかな色が目元の立体感を演出する“クロムカラー”。クリームのような質感で、異なるカラーを重ねても内側からにじみでるような存在感を発揮する。(新5種、うち限定1種)各6200円

 ファッションやライフスタイルに合わせて目元を着替えるデュオアイカラーで、シック、キュート、カジュアル、クール、その日の気分に合わせて選べるカラーバリエーション。単色使いや2色のミックス、グラデーションなどさまざまな目元が作れる。クリアな発色で肌に溶け込み、2色を重ねてもくすまないのが特徴。(全8種)各4000円

クリームアイシャドウの重ねづけで
指1本でも簡単に立体感のある目元に

 さらに今季は剤形の進化にも注目したいところ。特にクリームアイシャドウの重ね塗りは、パウダータイプの重ね塗りとは一味違う透明感と深みのある目元を同時に演出できます。指で重ねづけするだけで色と色が、そして肌に自然ともなじみ、簡単に仕上がります。「THREE」の4色クリームアイシャドウパレットは、滑らかにまぶたになじむクリームタイプだからこそ、透明感のあるシームレスなグラデーションアイが完成します。また、ブランドを代表するシングルアイシャドウ「ザ アイシャドウ」をリニューアルする「アディクション」は、新たにクリームタイプとティントタイプを追加。“アイシャドウも肌の延長線上”と考え、肌に溶け込み無理のない立体的な目元づくりを提案します。色によるグラデーションではなく質感を重ねてつくる新しい立体感“質感レイヤード”は、指で質感の違う数色のアイシャドウを重ねるだけで簡単に仕上げることが可能です。アイメイクはテクニックが必要と尻込みをしがちですが、単色アイシャドウであれば1色から挑戦ができます。マスク生活が続く中でアイメイクに挑戦してみようと思ったらぜひ試してみてはいかがでしょう。

 ブランド初の4色クリームアイシャドウパレット。4種の色、光、質感でシームレスなグラデーションをかなえる。4色ともクリームは初めてで、クリームならではの色の交わり、巧妙なグラデーション、透明感を演出する。(全3種)各6500円

 パール配合で“セミ艶”な透明感のある仕上がり。しっとりクリーミーな使用感でベタつかず、さらりとした仕上がりをかなえる。(全14色)各2000円

 バームのような質感で素肌を透かし、濡れたような艶のある仕上がりになる。密着感があるのでベースとしても使用可能。(全6色)各2000円

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美術家の横尾忠則とアーティストの大友昇平が「グッチ」とコラボ ブランドのエレメントをテーマにしたオリジナル作品が完成

 美術家の横尾忠則とアーティストの大友昇平がGGパターンやブランドロゴなど「グッチ」のエレメントを自由にアレンジするというテーマのもと、オリジナル作品を発表した。決まった様式を持たず、自由自在なクリエ―ションが持ち味の横尾と、事務用のボールペンで描く緻密で繊細なモノトーンの圧倒的な画力が真骨頂の大友。2人のアーティストが自身の作品に取り込んだ「グッチ」のエレメントは、視認性の高いロゴをファンタジーなコラージュやストイックなドローイングに落とし込まれた。

極彩色の中に大胆に浮かぶ、
象徴的なGGパターン

 横尾は1960 年代から50年以上にもわたりキャリアを積み重ねてきた。日本では概念派と呼ばれるコンセプチュアルな作品が多かった1960年代において、当時の美術では考えられない色彩感覚と複雑な構図の作品は世界中を驚かせた。ニューヨーク近代美術館のピカソの回顧展に衝撃を受け、1981年に「画家宣言」を発表。以来、絵画に全力を注ぎ続けている。最近では展覧会『奇想の系譜展』のスペシャルビジュアルの他、Twitterで過去作や写真から街の風景、テレビ画面にいたるまであらゆる対象物にオリジナルのマスクをコラージュしたマスクアート『WITH CORONA』を発表している。そして、今回80歳を超えてなお、世界中のクリエイターに多大な影響を与え続ける奇才が、『HANGA JUNGLE』展のモチーフと『廣家/Kohke』の2作品に「グッチ」のエレメントであるGGパターンをコラージュした作品を作り上げた。

ボールペンで描いた作品に
メッセージと魂を込めて

 大友による2作品は、1つは躍動的で美しい女性のモチーフ、もう1つは漆黒の中に浮かび上がる獅子が描かれている。ともにボールペンで描いたとは思えないような細かく写実的な作品だ。両作品を見比べてみると、陰と陽という対の関係にあるように感じる。「グッチ」の総柄のエレメントを下から上へグラデーションで表している女性の作品が陽とするならば、かたや暗闇にダブルGが浮かび上がった獅子口は陰。このような対照性ゆえに、込められたメッセージが異なっているのかと推測すると、答えは違う。「白と黒、2作品でコントラストを持たせてみました。女性の絵は上昇していくイメージで、日本で古くから厄災や邪気を退散する意味を持つ獅子は、内に宿る力強さのようなイメージです」。両作品についてそう語る大友は、ボールペンをもってして作品に“希望”を込めている。

問い合わせ先
グッチ ジャパン クライアントサービス
0120-99-2177

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オンワード樫山・鈴木社長 起死回生の「1000万人のための服づくり」

 オンワードホールディングス(HD)は前期(2020年2月期)から今期(21年2月)にかけて国内外の約1400店舗の閉鎖し、店舗数をほぼ半分する荒療治を断行中だ。「メーカー機能を持ったデジタル流通企業」というグループの旗印のもと、中核会社であるオンワード樫山はどう変わろうとしているのか。3月に就任した鈴木恒則社長に聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):コロナ禍での社長就任。厳しい環境にどう臨むか。

鈴木恒則社長(鈴木):中長期戦略として大きく3つ考えている。第一に「23区」に代表される既存ビジネスを磨き上げること。第二にD2Cなどのスモールスタートビジネス。第三は少し先になるけれど、新たな顧客獲得のための新ビジネスだ。昨年から店舗撤退など構造改革を優先せざるをえなかった。不安に感じている社員も少なくないだろう。私の役割はオンワード樫山が進むべき道をしっかり示すこと。守りを固めることも大切だが、この困難な状況にあえてファイティングポーズをとって挑みたい。

「23区」の規模だからできることがある

WWD:既存ビジネスの磨き上げとは、百貨店を主力とする「23区」などの活性化か。

鈴木:「23区」は売上高300億円以上(小売りベース)を誇る当社の財産だ。その規模だからこそできることがある。今後、「23区」が目指すのは1000万人のための服。ユニクロが1億人の服だとすれば、われわれは感性や品質にこだわる1000万人のお客さまのための服を作る。川上(素材)までさかのぼったジャパニーズスタンダードで勝負する。「23区」の規模があれば(スケールメリットによって)他では作れない服が作れる。

私が専務の頃から大澤道雄社長(現会長)と話していたのは、商品寿命を延ばすことだった。シーズンの終盤にバーゲンで売り減らす手法は、積もり積もってお客さまに価格への不信感を持たせてしまった。こだわりぬいたスタンダードな服であれば商品寿命が3年、あるいは5年でもよい。実は(「23区」に限らず)20年春夏でもシーズンで売り切るべきトレンド商品はマークダウンしているが、商品寿命を長く設定したスタンダード商品はプロパー(定価)のまま売っている。7月商戦もプロパーに限れば2ケタ増だった。残れば翌年、翌々年に持ち越せばいい。バーゲン時期でも当社の売り場ではマークダウンの札がだいぶ減っている。

WWD:一方でメンズの「23区オム」の休止を発表した。

鈴木:「23区オム」はなくなるが、「23区」の中で新しくメンズウエアを出す準備をしている。1000万人の服は女性だけを対象にしているわけではない。バラエティを広げて「23区」をピカピカに磨くつもりだ。

1990年代に馬場彰社長(当時、現名誉顧問)が「東京発国際服」のビジョンを掲げて「23区」「組曲」「自由区」「五大陸」「ICB」などを次々に発表した。これらのブランドが今も当社の土台だ。ただ当時は、百貨店の売り場の良い場所を確保すれば、売り上げの目処がたった。今はそんな時代ではない。

各ブランドが百貨店の客層の真ん中に寄せていった結果、似た印象になったことは否めない。それぞれのブランドのトレンチコートを並べても区別がつかない。リアル店舗であれば、店舗の雰囲気で違いを出せるが、ECモールでフラットに並べられると見分けがつかなくなってしまう。「23区」のトレンチ、「自由区」のトレンチがあってしかるべき。あるいはトレンチを持たないブランドがあってもいい。ブランドの戦略の棲み分けがきちんとできるように3月からメンズカンパニー、レディスカンパニー、ライフスタイルカンパニーなどのカンパニー制を導入した。

店舗を閉めたエリアでも取り組みは続ける

WWD:顧客の若返りも課題では?

鈴木:確かに当社の顧客の年齢は高めだが、スタンダードであれば年齢はあまり関係ないと思っている。これまでの経験上、ブランドが若返りを前面に打ち出せば、既存のお客さまが離れ、若い世代も見向きもしなってしまう。磨き上げられた商品であれば、世代に関係なくお客さまの支持は広がる。結果として若返りにつながる。

WWD:オンワードHDとして昨年から今年にかけて1400店舗の縮小を発表している。地方都市ではオンワード樫山との接点がなくなるケースも出てくるのでは?

鈴木:残念ながら人頭効率が合わない店舗は撤退を進めている。地方の百貨店だけでなく、都心の百貨店でも同じだ。残った店舗にエネルギーを集中させるのはもちろん、撤退した店舗のお客さまのフォローも不可欠になる。(ブランドが撤退した)百貨店と話しているのは、年4回か2回くらいECと連動させたポップアップストアを開いて顧客を招くこと。地方の百貨店ではどうしても品番やサイズが満足にそろわない問題があったが、ECも駆使しながら解消していく。

百貨店との取引条件も見極めていきたい。オムニチャネル化は避けて通れない道だ。定借(定期借家賃貸)も選択肢になる。(コロナもあって)でも「待ったなし」の状況になっている。百貨店について悲観論ばかり飛び交っているけれど、やり方次第でお客さまの満足度を高めることはできると考えている。

WWD:オンワードHDの保元道宣社長は売上高に占めるECの割合(EC化率)が将来50%になる見通しを公言している。

鈴木:ECを増やすのは自然の流れ。ただECは手段に過ぎない。カギを握るのは、やはり差別化された商品だと思っている。あとは原価率の水準をあげて、適正な値段で供給できるか。EC化率が高まれば、その分を品質に還元できる。

一丸となったオンワードはすごい

WWD:中長期戦略の2番目に掲げるスモールスタートビジネスでは、D2Cブランドを始めた。滑り出しは?

鈴木:2月末にスタートした第1弾「アンククレイヴ(UNCRAVE)」は、自社ECサイトのオンワードクローゼットにおいて発売4日間で2000万円超を売った。春夏トータルでも計画を大きく上回った。「アンクレイヴ」は20〜30代の女性社員たちが外部のプロデューサーと協業して始めた。「朝、何を着たらいいのか」という等身大の悩みを解決するために、セットアップ中心で着まわしのきくMDを組んだ。リアル店舗のブランドに比べて品番数も大幅に絞る。クオリティーはオンワード樫山の百貨店ブランドと遜色がないのに、D2Cの事業モデルによって4割ほど安く提供している。

D2Cには若い社員に活躍の場を作る狙いもある。いま若い社員には新しい事業プランを出すよう促している。ベテラン社員が考えもしないようなアイデアが次々に出ている。

WWD:第2弾、第3弾のD2Cブランドも予定している?

鈴木:水面下でいくつか進めている。アイテム軸かもしれないし、アパレル以外かもしれない。リアル店舗ほどのコストがかからないため、お客さんの潜在的なニーズに即した商品が提供できる。スモールスタートビジネスは売上高20億〜30億円の規模でいい。原価率は高いけど、しっかり利益が出せる。

WWD:最後の新たな顧客獲得のための新ビジネスとは?

鈴木:まだ具体的に発表できる段階ではない。これからプロジェクトチームを作って進めていく。現時点で言えるのは、「23区」とは別の1000万人のための服の市場もあるということ。ボリュームの価格帯を想定しているが、他社の二番煎じは考えていない。あくまでもオンワードらしいブランド。コロナを受けてお客さまの買い物も変化する。都心には足が遠のく。自宅の周りの方が便利かもしれない。そんなことも踏まえながら、今の時代にあった服を作る。乞うご期待といったところだ。

WWD:今回のコロナは改革を加速させるきっかけになったか。

鈴木:どこに進むべきか、明確になった。一気に舵を切れるようになった。自分の会社ながらオンワードってすごいなと思うのは、やると決めたときの一丸になる結束力。今まで少し薄れていたかもしれないが、危機感を共有したことで迷いがなくなった。

WWD:消費回復が見えない中、秋冬商戦にどう臨むか。

鈴木:正直なところ、先行きが見えているわけではない。コロナによって状況は目まぐるしく変わる。柔軟に対応するため、発注量を決定する会議を毎週のように開いている。これまではシーズンで2回程度だった。シーズン前に発注量を決めるのではなく、市況を見ながら作り足していく。

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「国際化粧品展」が西日本で初開催 クリーンビューティやサステナビリティ企業も多数出展

日本最大級の化粧品展が
西日本で初開催

 リード エグジビション ジャパンは9月9~11日、大阪市のインテックス大阪で西日本最大級の化粧品専門展「国際化粧品展(COSME OSAKA 2020)」を開催する。これまで、東京で開催してきたが、関西地方での開催を望む声を受けて初めて大阪で実施する。

 同展は、国内だけでなく世界各国からも化粧品が一堂に会する日本最大級の化粧品専門展で、国内外の商社や小売店、サロンなどのバイヤーやディーラーが来場し、新製品の仕入れや代理店の最新コスメの仕入れに関する商談が活発に行われる。スキンケアやヘアケア、美容機器のほかクリーンビューティやサステナビリティ、オーガニックなど世界的なトレンドのコスメや企業が集結する。また同日、原料や容器、パッケージ、OEM、研究機器、販促品など化粧品の研究・企画開発に関する製品・サービスが一堂に出展する「化粧品開発展(COSME TECH)」も開催し、両イベントで計200社、約1万5000点の製品やサービスが出展する。新型コロナウイルス拡大下での実施にあたり、全来場者のマスク着用の徹底やサーモグラフィ検温、すべての会場出入り口にアルコール消毒液を設置、セミナー会場の消毒、医師・看護師が会場内に常駐するなど感染防止策を徹底する。

コスメのトレンドや
セミナーが充実

 出展社数の多さもさることながら、同イベントでは企業の担当者や分野のスペシャリストを招いた全80講演を予定している。製品開発についてや、コスメのトレンド、アジア市場における戦略など、現在のビューティ業界を取り巻く事象や企業戦略、消費者の動向など本会場以外でのコンテンツも充実している。

トレンドやアジア市場の動向が
学べるセミナーを実施

クリーンビューティや
サステナブルな製品が出展

 近年SDGs(持続可能な開発目標)や環境に配慮した原料・製造を意識する消費者が増えており企業はサステナビリティ施策などを進めている。また健康や環境に害の少ない容器や成分を使用し、環境と社会に配慮したクリーンビューティのトレンドも拡大する。「化粧品開発展(COSME TECH)」にはそういった環境問題に取り組む企業も多数出展する。

INFORMATION
国際化粧品展(COSME OSAKA 2020)

期間:2020年9月9日~9月11日
時間:10:00~17:00
会場:インテックス大阪
住所:大阪府大阪市住之江区南港北1-5-102
入場料:招待券持参者は無料(招待券がない場合は5000円)

問い合わせ先
リード エグジビション ジャパン
03-3349-8587

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モデルはアバター、3Dオンラインショップでも販売 ヘルシンキ・ファッション・ウイークが完全デジタル化

 7月27日から8月2日にかけて開催されたIT先進国フィンランドのヘルシンキ・ファッション・ウイーク(以下、HFW)は、デジタルの新たな可能性を探るものだった。「デジタル・ビレッジ(DIGITAL VILLEGE)」と呼ぶオンラインプラットフォームを舞台にした同イベントには、31組のデザイナーが参加。そのうち、「デザイナー・レジデンシー・プログラム」に取り組む国際色豊かな15組は数カ月前から3Dデザイナーとタッグを組んでデジタル化したコレクションを、リアルなモデルを3Dスキャンしたアバターに着せて披露した。

 今回の取り組みに関してラグジュアリーブランドやコンサルティング会社から問い合わせを受けているというエブリン・モーラ(Evelyn Mora)HFW創設者は、デジタル・ファッション・ウイークは物理的なファッション・ウイークの代替案や二次的な手段ではなく、特にサイバースペースにおけるファッションの未来を見据えた“今までとは異なる新しい方法”だと主張。「物理的なコレクションやそのための戦略があるなら、それらを必ずしもデジタルの世界にコピー&ペーストすべきではない。けれど、全く異なる戦略としてデジタルのチャンスを取り入れることはできる」と話す。

 そんなデジタル・ショーケースを最も直接的に活用できるのは、ゲームやオンラインコミュニティーだ。その中ではファッションデザインがデジタルアセット(資産)として扱われ、アバターに着せたりすることができるほか、ブランドに実際のアイテムをオーダーすることもできる。実際、HFWはブロックチェーンパートナーのルクソ(LUKSO)の力を借りて、3Dオンラインショップをオープン。同ショップには参加デザイナーのバーチャルなルックが並び、ユーザーは3Dデザインのアイテムをデジタル上で着用するというサービスを250ユーロ(約3万1000円)で購入することもできるようになっている。この取り組みについて、マージョリー・ヘルナンデス(Marjorie Hernandez)=ルクソ共同創業者は「テクノロジーの世界では皆、デジタル上での収集品における価値を理解しているけれど、ファッションの世界にとっては新しい概念」だとコメント。ブロックチェーン技術を活用することで、ファッションデザイナーたちはアセットとなるデジタル化されたプロダクトを生み出し、取引に用いることができると説明する。

 またHFWはもともとサステナビリティに力を入れており、新型コロナウイルスの感染が拡大する前からデジタル化を決めていた。8月下旬にスウェーデンの監査法人ノーマティブ(NORMATIVE)と共同で、デジタル・ショーケースの環境への影響をこれまでの物理的なファッション・ウイークと比較測定したデジタル・サステナビリティ・リポートを発表する予定だ。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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“丁寧に作られた服はモニター越しでも良さが伝わる” 「エルマンノ シェルヴィーノ」が考える変化への対応

 イタリア・フィレンツェ発のミラノ・デジタル・ファッション・ウイークで発表した「エルマンノ シェルヴィーノ」2021年プレ・スプリング・コレクション[/caption](ERMANNO SCERVINO)」は、伝統的なサルトリアの仕立てと、刺しゅうやレースなどの職人技に定評がある。2000年のブランド設立以来“スポーツクチュール”をコンセプトに、日常着からイブニングドレスまで幅広くそろえている。これまではミラノでランウエイショーを行ってきたが、このたび初のオンライン開催となったミラノ・ファッション・ウイークに参加し、7月16日に21年プレ・スプリングコレクションを動画で披露した。

 「エルマンノ シェルヴィーノ」は20-21年秋冬シーズンから、ウールン商会(大阪府中央区、岩井泰治・代表)と日本における代理店契約を結んだ。ウールン商会は7月から、これまでサン・フレールが運営してきた高島屋日本橋店、高島屋新宿店、高島屋大阪店、大丸心斎橋店の4店舗を引き継ぎ、9月1日には新店舗を東京の帝国ホテルプラザに開く。

 日本での新体制やコロナウイルスの影響などについてデザイナーのエルマンノ・シェルヴィーノにメールインタビューに答えてもらった。

WWD:新型コロナウイルスはブランドにどのような影響を与えたか?

エルマンノ・シェルヴィーノ「エルマンノ シェルヴィーノ」デザイナー(以下、シェルヴィーノ):自分の弱さ、小ささを感じる経験になりました。私たちには独自の世界があると思っていましたが、このウイルスにより私たちがどれほどもろく、壊れやすい存在であるかということに気付かされました。しかし私たちは強く、新型コロナとの戦いにも打ち闘てるはずですし、この変化に適応する必要があると考えています。今のファッションには、きらびやかな誇張ではなく、謙虚さが求められると思います。それは、これまでのミニマリズムではなく、全ての年齢の女性が持つ共通の価値のこと。私はこれまでも“美しさ”に焦点を当ててきましたが、それは今後も変わることはありません。

WWD:ロックダウン中はどのように過ごしたか?

シェルヴィーノ:私は幸運なことに、トスカーナの丘に囲まれたカントリーハウスに住んでいます。レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)も描いた歴史ある素晴らしい場所で、自然いっぱいの敷地内で、自然に触れ、美しさを再発見することができました。そこで、新たなニーズにも対応するクリエイションに取り掛かりました。

“これまで以上に着る人のニーズを見極める必要がある”

WWD:今後のコレクション発表はどうなっていく?

シェルヴィーノ:無観客ショーを行うということは、海のない砂浜に行くような感覚に似ていると思います。元の日常に戻るまで、テクノロジーを駆使したショーを発表することになるでしょう。イタリアの職人の手によって丁寧に作られた服は、モニター越しでもその良さが伝わると思っています。

WWD:日本ではウールン商会が新たなパートナーになった。

シェルヴィーノ:ウールン商会と取り組めることを楽しみにしていました。メード・イン・フィレンツェの私たちの哲学と魅力をお客さまに伝え、一緒にブランドを盛り上げていきたいと思います。

WWD:何か日本に関する印象的なエピソードがあったら教えてほしい。

シェルヴィーノ:日本は特別な場所だと思います。大都会の熱狂的なリズムと庭園や寺院の神聖な静寂が共存し、古代からの魂を現代も受け継ぐ魅力にあふれています。また、おもてなしの文化は本当に魔法のようです。東京を初めて訪れた日を今でもよく覚えています。それは“感情の旋風”とも言える経験で、目にするもの全てが、インスピレーション源になるというような感覚でした。日本の女性もまた独特の優雅さと謙虚さを併せ持っていますね。イタリアのクリエイションに理解が深く、素材やモノ作り、スタイルへの敬意を持っています。品質、洗練されたコンセプトを高く評価していただいています。

WWD:今後の課題や目標は?

シェルヴィーノ:これまで以上に着る人のニーズを見極める必要があると思います。シャツやストリートウエアなどを充実させる一方で、イブニングドレスなどは縮小していくでしょう。新型コロナはファッションを殺すことはできませんが、私たちはサステナビリティにも取り組みながら、洋服の個性を大切にしていくべきだと思っています。そして、これまで培ってきたDNAを生かしつつ、女性をさらに美しくする服をデザインし続けていきたいです。

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小島健輔リポート ユナイテッドアローズとワールドの明暗 難局を乗り切るガバナンスが問われる

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。今回は2020年4〜6月期決算からユナイテッドアローズとワールドを比較。そこから何が見えるのか。

 8月5日にユナイテッドアローズとワールドの第1四半期決算(4〜6月)が発表された。どちらもコロナ禍による休業などで売り上げが大きく落ち込んで少なからぬ損失を計上したが、苦境下での売り上げの確保や販管費の圧縮、過剰在庫の処理や資金繰りなど、ユナイテッドアローズが防戦一方だったのに対し、ワールドのしたたかさが対照的だった。

売り上げと営業利益のダメージに格差

 ユナイテッドアローズは売り上げが前年同期から40.8%、153億700万円減少し、営業損益も相応に50億1900万円の損失、四半期損益も35億1800万円の損失となった。対してワールドは売り上げが前年同期から45.0%、269億9600万円も減ったのに、営業損益は31億8400万円の損失、四半期損益も24億2800万円の損失と、ユナイテッドアローズに比べれば収益の落ち込みが小さかった。

 ユナイテッドアローズが販管費を前年同期対比15.7%しか抑制できなかったのに対し、ワールドはほぼ30%も切り詰めたことが要因だが、その中身を見るとワールドのしたたかさに驚かされる。

 売り上げ対比の人件費率はユナイテッドアローズが前年同期の16.9%から27.4%(+10.5ポイント)に、ワールドが同18.7%から24.3%(+5.6ポイント)と、売り上げの減少に対する負担率の上昇が倍近く違うし、前年同期からの圧縮率もユナイテッドアローズの4.5%に対してワールドは28.4%と6倍も違う。ユナイテッドアローズは残業の抑制程度でほとんど切り詰められなかったのに対し、ワールドは一時帰休でバッサリと切り詰めている。

 売り上げ対比の賃料負担率はもっと格差がある。ユナイテッドアローズが前年同期の14.2%から18.4%へと4.2ポイントも増大したのに対し、ワールドは同10.3%から4.1%へと逆に6.2ポイントも落としている。圧縮率もユナイテッドアローズの23.4%に対して78.1%と、いったいどんな手を打ったのかと驚愕するほどだ。

 ユナイテッドアローズが従業員に対してもデベロッパーに対しても慎重な対応にとどまったのに対し、ワールドはしたたかに踏み込んで大ナタを振るった。この差はどこから来たのだろうか。

キャッシュフローと在庫処分の格差

 「小島健輔リポート 上場アパレル6社は過剰在庫をどう処分したか」(7月28日掲載)と同様の計算で両社の在庫処分状況を推計してみた。
ユナイテッドアローズは売り上げが153億700万円減少して在庫が32億6400万円増加しているから、処分すべき在庫は54億円ほどだった。売上原価率が11.3ポイント上昇した分を値引きロスの増加と見れば、処分された在庫は42億6000万円ほどで、過剰在庫の78.9%が処理されたと推計される。

 ワールドは売り上げが269億9600万円減少して在庫が31億7600万円増加しているから、処分すべき在庫は84億3000万円ほどだった。売上原価率が6.1ポイント上昇した分を値引きロスの増加と見れば、処分された在庫は26億円ほどで、過剰在庫の30.9%が処理されたと推計される。
処分率が高いほど売上原価率が上昇して損益を圧迫する。在庫の期中処分率が両社で48ポイントも違うのは、ユナイテッドアローズの方がトレンド性が強く、期中処分せざるを得ない在庫が多かったこともあろうが、もっと大きかったのは両社のキャッシュフロー経営の格差だったのではないか。

 6月末純資産はユナイテッドアローズが前期末から52億4300万円減の368億2900万円(前期売り上げの23.4%)、ワールドが32億900万円減の783億1000万円(前期売り上げの33.1%)と、売り上げ規模相応から大きくは外れていない。自己資本比率もユナイテッドアローズは前期末の55.2%から6月末で43.7%に落ちたとはいえ、前期末の31.1%から6月末で29.2%に落ちたワールドよりひと回り余裕があるようにさえ見える。

 しかし純資産に対する必要運転資金比率で見ると、ユナイテッドアローズは前期末でも432億円の運転資金負担が重く117.2%と資金繰りがタイトで、6月末には509億円まで肥大して138.1%まで悪化。短期借入金(運転資金)を141億円も借り増して187億円に膨れ上がった。

 対してワールドは前期で2362億6500万円も売りながら83億円の回転差資金状態(運転資金が不要)にあり、売り上げが45%も減った非常事態の6月末でも140億円しか要しておらず、純資産に対する必要運転資金比率も17.9%と資金繰りには十分な余裕がある。

 ユナイテッドアローズは棚資産回転が前期の124.8日から226.1日へ、ワールドも89.2日から182.2日へ急失速したが、ユナイテッドアローズが買掛債務回転を51.0日から66.3日へ15.3日しか延ばさなかったのに対し、ワールドは通常時でも長い132.8日から198.7日へ65.9日(2カ月強!)も延ばしている。恐らくは商品調達の商社依存比率が相当に高いのだろうが、したたかさも極まれりの感がある。

 ワールドはユナイテッドアローズのように在庫の換金を急ぐ必要がなく、持ち越して有利に換金する選択が可能で、過剰在庫の30.9%しか見切らなかったのだ。

通期見通しにみるガバナンスの差

 ワールドは21年3月期の売り上げを15.7%減の1992億円、営業損益を67億8000万円の赤字、当期損益を77億8000万円の赤字と見通しているが、ユナイテッドアローズは売り上げを20.0%減の1259億1500万円〜16.7%減の1310億8300万円、営業損益を50億〜70億円の赤字と幅をもたせており、当期損益の見通しは発表していない。

 これをどう見るかだが、コロナ危機にあってもワールドが達成への経営手腕を確信しているのに対し、ユナイテッドアローズはダメージから立ち直れないまま達成への経営手腕を確信できないでいる、と受け止められる。実際の経営において、この差は決定的に大きい。「どこまでできるか確信できないが頑張ります」と「当社にはやり遂げる経営手腕があります」では、社員も取引先も銀行も出資者も受け止めかたが違う。コロナ危機でそんなガバナンスの格差が露呈したのではないだろうか。

 ユナイテッドアローズは顧客や取引先の支持を得て堅実に成長してきたように見えるが、09年に発するABCマートによる同社株式買い占めと資本提携、その解消と株式買い取りを経て12年4月に創業者の重松理氏が代表権のない会長に退き、現社長の竹田光広氏に交代して以降、会社のオーナーシップが見えなくなり、株主を向いた経営指標ばかり追って現場に根付いた経営理念が空洞化したきらいがある。

 顧客や現場より株主を向いた経営陣はユナイテッドアローズ創業来の専門店理念を軽んじ、重松氏が育ててきた生え抜きの幹部は大半が会社を去った。そんなユナイテッドアローズには、想定外の緊急事態を乗り越える組織の一体感や不屈のしたたかさなど、期待すべくもなかったのかも知れない。

リストラの踏み込みにも違い

 コロナ危機で露呈した事業構造の時代錯誤と脆弱さに対しては両社とも大なり小なりリストラ策を発表しているが、そこにも危機感と踏み込みの極端な格差が指摘される。

 ワールドが8月5日付の「構造改革の実施について」で5ブランドの撤退と358店(国内2460店の14.6%)の退店、200人の希望退職など構造改革を列挙し、それに要する具体的な項目別損失と会計処理(退店費用21億円、のれん減損17億円、商品廃棄4億円、希望退職加算金12億円など計57億円)まで開示しているのに対し、ユナイテッドアローズは同日の第1四半期決算発表会で漠然とした方向性を掲げるにとどまり、具体的なリストラ策もそれに要する費用も開示していない。踏み込みが甘いというより、経営陣としての当事者感覚さえ疑われる。

 ユナイテッドアローズの経営陣は瀬戸際に追い詰められてようやく、私が幾度も指摘してきた過剰在庫や賃料負担、売上金回収の問題(全て駅ビル偏重の出店政策の誤り)を痛感し、キャッシュフロー経営にも目覚めたようだが、遅きに失したとの指摘は免れない。そんな後手後手ではアフターコロナ(同時にウイズコロナでもある)のライフスタイルの急速なカジュアル化、衣料消費の生活圏シフトと一段の低価格化、C&C(クイック&コレクト)を軸としたローカルOMO(オンラインとオフラインの融合)化の奔流に置き去りにされかねない。

 何があっても組織一体で難局を乗り切る当事者感覚とガバナンスこそ、今のユナイテッドアローズに問われているものではないか。

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山下智久とゆで卵と「モンクレール ジーニアス」 エディターズレターバックナンバー

※この記事は2020年7月1日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

山下智久とゆで卵と「モンクレール ジーニアス」

 山下智久とゆで卵?何それ?ですよね。リンク先記事の下にあるショートムービーを見るとその意味がわかります。山下智久さん(以下、山P)扮する主人公が屋台でラーメンのゆで卵を食べようと箸でつかんだところ、ツルリと滑らせるところから物語はスタート。転がるゆで卵を追いかけて謎の空間に飛び込んだ山Pが選択の連続に迫られるという、やや不思議な展開ですがノリよく最後まで見てしまいます。

これは藤原ヒロシさんと「モンクレール ジーニアス」のコラボ“7 モンクレールフラグメント ヒロシ・フジワラ”のプロモーションムービーで、途中でちらりとヒロシさんが映ったり、ゆで卵がリアルに飛び跳ねたりと思わず二度見するカットも満載。全編に漂う1990年代感が心地よく、結果的に商品もしっかり見てしまいます。

 このムービーが印象に残った理由の一つは、白いウサギを追いかけて不思議の国に迷い込む「不思議の国のアリス」をほうふつとさせる物語性に加えて、伊東玄己監督が「人の性格や個性が日々の選択で形成されることから“選択”をテーマに制作した」と記事で読んだからです…。いい言葉。最近、この“選択”という言葉がやけに心に引っかかり、この記事を読んだときも「あ、まただ」と思い、気がつくと伊東監督の映像の世界観をウェブでリサーチしていました。

 唐突に聞こえると思いますが、特にサステナビリティについて考えるとき“選択”という言葉が頭に浮かびます。消費者はメーカーが作ってお店が売っているものの中からしか選べないし、買えない。だから作り手や売り手には責任があります。例えばファッションに目覚めた子どもが、服やバッグやシューズを初めて自分の意思で「選択する」ことになった時、そこに環境に優しい服やバッグという選択肢がなければ選ぶことができません。大人には、作り手には、売り手には選択肢を用意する責任がありますよね。

 山Pのゆで卵を追いかけて気がつけば話がだいぶそれました。プロモーションムービーですからつまりは広告ですが、このように思考のきっかけをくれるプロモーションは存在価値が高いな、と思います。

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今回は「やるか?やらないか?」の議論も大事︎ エディターズレターバックナンバー

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今回は「やるか?やらないか?」の議論も大事︎

 「ディオール」(無観客)に続き「ヴァレンティノ」(イタリア人のみ招待)、そしてパリコレ(デジタルで補完)がリアルなランウエイショーを再開します。アメリカを筆頭に「第2波」を思わせる感染拡大が続く中、率直に「大丈夫なの?」と思うのですが、ラグジュアリーからデザイナーズブランドのトップは、「ショーは、やはりコレクションのストーリーを伝える最高の方法。それは物語の始まりであり、その後の店舗展開において非常に重要だ」(シャネルのブルーノ・パブロフスキー=ファッション部門プレジデント)と切望しています。議論は「やるか?やらないか?」ではなく、「どうやるのか?」みたいです。

 私自身は普段「やるか?やらないか?」を議論するよりも、「どうやるのか?」を話し合いたいタイプです。だって「やるか?やらないか?」の議論って、大抵、(ものすご~く時間を費やして)「やらない」にたどり着いちゃう場合が多いから(笑)。「やるか?やらないか?」はスキップして「どうやるか?」を話し合ったほうが、結局、心にゆとりを持った状態で取り組めるとも思っています。会議ではまず、「この件については『やるか?やらないか?』ではなく、『どうやるか?』について話し合いたいです」と言い切ってしまうタイプ、それが私であります。

 でも、今回についてはどうでしょうか?「ランウエイショーをやるか?やらないか?」の議論が比較的短期間で終了し、いずこも「ランウエイショーをどうやるのか?」にシフトしているのは、そんな僕さえ、ちょっと残念に思っています。「ここで新しいことに挑戦しなければ、いつやるの!?」って思うし、そもそも「ストーリーを伝える最高の方法は、本当にランウエイショーなのか?」について、もう少しじっくり考えても良いと思うんです。そう1回くらい、「ランウエイショーをやらない」を経験し、そこでももう一回「ランウエイショーをやるか?やらないか?」を考えてみれば良いのに。

 そして、それを熟考するには、これまでのランウエイショーを比較対象とする相対論ではなく、それにとらわれない絶対論をベースにしてほしい。そうしたら、何か、まだ面白いことが生まれそうな気がするんです。「ストーリー」って言うくらいだから、絵本とかどうでしょう?上顧客にはカワイイ装丁、ニューカスタマーには電子版。たとえば、そんな突拍子もない考えだってアリだと思います。

 かつてのランウエイショーについて考えるのは、最初のほんの一瞬。「ランウエイショーでは、何が達成できて、今、私たちは何を実現したいんだっけ?」と取捨選択するときです。ランウエイショーは、洋服を見せる舞台として使っていたのか?ゲストの社交場として機能していたのか?とにかく「このメゾン、スゴい!!」というパワーを見せつけるものなのか?実際のランウエイショーは全てをある程度満たしてくれますが、おそらく、1つのデジタル施策で叶えられるのは、そのうちせいぜい1、2個です。今ブランドは、そのうち何を一番の目標とするべきなのか?それを考えるときだけはランウエイショーを思い出して欲しいけれど、あとは一度忘れても良いのに。正直、そんな風に思っています。

 個人的にはメンズシーズンの開幕を告げる、下で紹介する「エルメス」に期待しています。確固たるポリシーを有するブランドは、取捨選択上手。「エルメス」は、その代表的メゾンだと思うのです。メゾンが何を、どう見せたかったのか?反対に何は、重要度が低いから諦め、割愛したのか?プレゼンテーションのムービーから考えてみたいと思います。

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ビヨンセのビジュアルアルバム「Black Is King」 「ヴァレンティノ」や「バーバリー」などを着用

 ビヨンセ(Beyonce)の新作ビジュアルアルバム「Black Is King」が7月31日に公開され、そのファッションが注目されている。彼女は今回、自身も出演している実写版「ライオン・キング」の公開と同時に2019年に発表したアルバム「The Lion King: The Gift」を元に、90分のミュージックビデオを中心とした映像作品を制作。黒人文化を称えるとともにエンパワーするもので、ディズニープラス(Disney+)で視聴可能だ。

 衣装のスタイリングは、ビヨンセの長きにわたるパートナーであるゼリーナ・エイカース(Zerina Akers)が務めた。着用したのは「ヴァレンティノ(VALENTINO)」「バーバリー(BURBERRY)」「ミュグレー(MUGLER)」「アーデム(ERDEM)」といった名の知れたブランドから、「5:31ジェローム(5:31JEROME)」「ウェンディーニコル(WENDY NICHOL)」など比較的小規模なブランドまで。ここでは、「Black Is King」に登場した印象的なルックの数々を見てみよう。

1 「ウェンディーニコル」

 作品の冒頭を飾るのは、ビヨンセが「ウェンディーニコル」デザインの白いガウンを着てビーチを歩くシーン。スタイリストのエイカースは自身のインスタグラム(@zerinaakers)で、「オープニングシーンでの@wendynicolは、何もないところから始めるということを表現するのに最適だった」と感想を述べた。

2 「バーバリー」

 牛柄のセットアップは「バーバリー」のリカルド・テッシ(Riccardo Tisci)=チーフ・クリエイティブ・オフィサーによるカスタムメードだ。

3 「ヴァレンティノ」

「Mood 4 Eva」のパフォーマンスでは、「ヴァレンティノ」がデザインしたレパード柄ジャカードのジャンプスーツを着用。衣装にはたくさんのスパンコールやラインストーンが施されている。

4 「ミュグレー」

 娘のブルー・アイビー・カーター(Blue Ivy Carter)が「My Power」のパフォーマンスに登場。親子で「ミュグレー」のデザイナー、ケーシー・カドウォールダー(Casey Cadwallader)が手掛けたレインボーの衣装を着こなした。

5 「アーデム」

 ティーパーティーのシーンでは、歌手のケリー・ローランド(Kelly Rowland)とビヨンセの母親であるティナ・ノウルズ(Tina Knowles)が参加している。ビヨンセは「アーデム」の19-20年秋冬コレクションからオーバーサイズの花柄ドレスを着用。

6 「バーバリー」

再度「バーバリー」のルックが登場。グラフィティからインスピレーションを得たセットアップの衣装だ。

7 「エリア(AREA)」

 「エリア」の19-20年秋冬コレクションから採用したビーズをあしらったポンチョとヘッドウエアは、「Find Your Way Back」で登場するルックの一つ。

8 「モリー ゴダード(MOLLY GODDARD)」

 「Water」のパフォーマンスには、「モリー ゴダード」19-20年秋冬コレクションのボリュームのあるドレスを着用している。音楽プロデューサーのファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)も登場する。

9 「メアリー カトランズ(MARY KATRANTZOU)」

 「Water」では、「メアリー カトランズ」19-20年秋冬コレクションのフリルがあしらわれたドレスでもパフォーマンスを披露。

10 ミカエラ・スターク(Michaela Stark)

 ロンドンを拠点とするランジェリーデザイナーのミカエラ・スタークも「Water」の衣装を手掛けている。シルク製のコルセットと、ジーンズを特別に制作した。

11 「マリーン・セル(MARINE SERRE)」

「マリーン・セル」のアイコンである三日月模様のボディースーツで、バックダンサーと合わせている。

12 「ティモシー ホワイト」

 「Brown Skin Girl」のパフォーマンスには、「ティモシー ホワイト」によるカスタムメードの黒いチュールドレスを着た。

13 ローザ・マロンボ

 コートジボワールを拠点とするデザイナーのローザ・マロンボは、「Already」のパフォーマンスで着用されたボーダーのブレザーを手掛けた。彼女は16年にもビヨンセの「Formation」の衣装をデザインした。

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京大薬学部出身モデルの一ノ瀬遼、「趣味を凌駕する」料理の魅力を語る

 モデルを中心に俳優としても活躍する一ノ瀬遼は、料理好きが高じて、自身のインスタグラムアカウント「のせごはん」で料理の作り方アップしたり、できるまでをIGTVで配信したりしている。京都大学薬学部卒業の秀才らしく、投稿には材料の栄養素や調理方法などの「調理化学」に関するプチ解説もプラス。一ノ瀬に料理の魅力を聞いた。

WWD:そもそもナゼ、料理が好きになった?

一ノ瀬遼(以下、一ノ瀬):理由は特にないんです。むしろ意味は、「後からついてくる」くらいに思っています。自由な校風の学校に通っていたこともあり、高校・大学時代の服装は、個性的でした。「やりたいことをやればいい」とか「学問に意味なんて求めちゃいけない」という環境で育っています。意味を求め出すと学問は、世間が求める領域での意味にしか到達できないんです。意味のあることしかできなかったら、今のようにパラダイムが大きくシフトしている時(当然のことと考えられていた認識や思想、社会全体の価値観などが劇的に変化している時)、何もできなくなってしまいます。

WWD:料理は、いつ頃から?

一ノ瀬:一人暮らしが長くて、大学生の時から5、6年になります。最初は野菜炒めとかでしたが、飲食店でアルバイトしてから食に興味を持ったんです。しっかり作るようになったのは、ここ1年くらいですね。

WWD:所属事務所が開いた昨年のパーティーでは、料理を一手に担当した。大勢の人に料理を振る舞ったのは、初めて?

一ノ瀬:緊張しました。やっぱり、自分だけが食べるのとはワケが違いますから。「失敗できない」と思ってレシピを用意したけれど、結局、理屈とフィーリングの両方で料理した気がします。ガチガチに理論武装しただけでは、成功できません。特にイタリアンは、そんなカンジ。「コレ、美味しいんじゃね?」くらいの感覚で良いんです。プロも、そう言っています(笑)。

WWD:得意なジャンルは?

一ノ瀬:断然イタリアンです。アルバイトの経験もあるし、味もわかりやすい。食べて、すぐに「美味しい!!」ってわかるのが、自分にも、振る舞う相手にも良いんです。でも、盛り付けはフレンチが参考になります。

WWD:好きな食材は?

一ノ瀬:トマトです。イタリアンの根幹で、生で食べても、加熱しても美味しい。品種はもちろん、加熱の仕方によっても味が変わる、奥の深い食材です。果肉と種、そしてジェルっぽいところ、使う部分によっても違いが生まれます。

WWD:モデルの仕事は、料理に生きている?もしくは料理という趣味は、モデルという仕事に生きている?

一ノ瀬:見せ方にはこだわっています。自分は「こういう盛り付けがいい」と思っても、「こっちの方が映える」など代替案を考えて徹底的に極めるのは、仕事由来だし、仕事に生きているかもしれません。趣味と言いつつ、料理は、それを凌駕するくらいのテンションです。徹底してやっているから皆さんが興味を持ってくれるのは、仕事も同じだと思います。


 「WWD JAPAN.com」は8月から、一ノ瀬遼による料理番組「京大卒モデル一ノ瀬のモード飯~Cuisine à la mode~」をスタートします。ご期待ください。


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「フミト ガンリュウ」に変化 2021年春夏で見せた新時代のリアルクローズ

 丸龍文人デザイナーが手掛ける「フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)」は7月、2021年春夏パリ・メンズ・コレクションをデジタルプラットフォームで発表した。今季は、機能的な素材やディテールはそのままに、ジャージーやチェックシャツといったリアルクローズも多数盛り込んでグッと日常的なコレクションとなった。

シーンに左右されない自由な日常着

 テーマは“フリーアクセス”で、「どんな情勢やムードにも対応するファッションとは一体どんなものなのか?これが今シーズンのクリエイションの発端でした」と丸龍デザイナーは振り返る。「常識やオケージョンを限定した服ではミスマッチが生じます。固定概念を超え、インドア、アウトドアといった境界線を自由に再構築する事で、“外着のような部屋着”と“部屋着のような外着”のどちらともいえる新たな汎用性を見出すことを目指しました」。例えばナイロン製の超ロングコートは、自宅でガウンのように着用することもできるし、パジャマの上に羽織ってそのまま外出することもできる。「自分のいるシーンや感情に左右されることなく自由に着られる、新しいコンセプチュアルのかたちが提案したかったんです」。

 ルックにはイギリスのファッション誌「アリーナ オム プラス(Arena Homme +)」のファッションディレクターを務め、ショーや広告など幅広い分野で活動するスタイリストのトム・ギネス(Tom Guinnes)を起用。彼がスタイリングからモデル、撮影まで全てを担当した。「今回の服が持つ側面を描くにあたり、多角的な視点での表現が必要でした。そこで、彼に全てをお願いしました」と丸龍デザイナー。ルック撮影はトムの自宅周辺で実施し、コレクションを着用した彼が本棚を整理したり、洗濯物をたたんだり、娘との時間を楽しんだりする日常を切り取った。「トムには『リラックスした、リアルなビジュアルであること。そして、屋内と屋外両方のシチュエーションで撮影して欲しい』とだけ伝えました」。具体的な注文をせず、表現に余白を残すことで“フリーアクセス”というテーマにつなげた。

 トムは「彼はコレクションを初めてからずっと、ワークウエアとスポーツウエアの機能性を素直に取り入れていると思う。私は控えめでミニマリストなフミトが好きだ。服がそれを物語っている。今回のルックはiPhoneで撮影した。私は写真家ではないから技術的なミスはたくさんあるだろう。でも、だからこそほかにない作品に仕上がった。このルックを通して、自然なムードと何の制約もない自由なスタイリングを体感してもらえたらうれしい」と語る。

現代社会のジレンマを投げかける

 ルックの発表と同時に、映像も公開した。暗い草原や街中にモニターを置き、そのモニターでルック撮影の様子を映すという意味深な内容について聞くと、丸龍デザイナーは「二律背反」とだけ答えた。これは二つの要素が拮抗する状態やジレンマを表す言葉だ。ルック撮影の様子を映像で切り取り、それらを放映する複数のブラウン管テレビを公園や街中に設置し、ダークなムードとモニターで流れる明るい映像を対比させる。これらの演出を通して、自然と都市、アナログとデジタル、リアルとフェイクなど、現代社会の相反する要素を考えるきっかけを与えたかったのだろう。

 未曾有の状況で手探りするブランドが多い中、丸龍デザイナーは自分のやるべきことを冷静に考えて実行したようだ。「ショーは作り手の届けたい情報を一度に発信できるドラマチックかつ合理的な方法です。しかし、あくまでも伝えるための手段の一つであり、表現することが最終的なゴールではありません。プロダクトそのものに重きを置くこと。その上で、その瞬間に最も相応しい形で届けること。これができればよいのではないでしょうか」。

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コロナ休業中の在庫消化に手応え アダストリアが描く「ファッションロスのない世界」

 大量生産・大量廃棄といった従来型のアパレルのビジネスモデルに、社会から厳しい目が向けられるようになっている。これを受けて各社さまざまな策を講じているが、ここ数年、福袋の廃止、セールの抑制などで在庫圧縮を進めてきたのが、「ニコアンド(NIKO AND…)」「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」などを運営するアダストリア(福田三千男会長兼社長)だ。今春は同社も店舗休業を余儀なくされたが、いまだに在庫過多に苦しむ競合他社もある中で、アダストリアは在庫コントロールに一定の手応えを得ているという。在庫問題は、サステナビリティやCSR(企業の社会的責任)の意識にも直結するもの。同社のCSR担当役員である福田泰己取締役に聞いた。

WWD:毎年作成しているCSRレポートの2019年度版では、CSRポリシーとして「ファッションのワクワクを、未来まで。」を策定した。ビジョンとしては「ファッションロス(衣料品廃棄)のない世界」も掲げている。その意図は?

福田泰己取締役(以下、福田):アダストリアは上場が04年ということもあって、創業間もないヤングカジュアルファッションの会社と見られることもあるが、実は1953年に創業した企業だ。100年企業を目指す中で、「なくてはならぬ人となれ、なくてはならぬ企業であれ」を理念として掲げている。アパレル産業はモノ作りによって環境に負荷を与えてしまう部分もある。それを認識しつつ、「なくてはならぬ企業」となるべく、本業の中で負荷を一つずつ減らし、改善していくことを目指している。ただし、それを責務や義務として行うのではアダストリアらしくない。あくまで楽しんで行ってこそだ。それで、「ファッションのワクワクを、未来まで。」というポリシーを策定した。

毎年、CSRレポートは株主総会(5月)を目途に作成しているが、ポリシーやビジョンを策定したのは今回から。従来のレポートはその年に行った活動内容を紹介するのみだった。そこがこれまでとは違う点だ。ビジョンとして掲げた「ファッションロスのない世界」というワーディングは、お客さまと社員のどちらにとっても分かりやすい。他にも「未来に繋がるものづくり」というビジョンのもと、25年までに使用する全コットンをサステナブルなものに切り替えるといった目標も設定している。目標が具体的になったことで、サステナビリティの意識を行動により移しやすくなったと思う。会社のPL(売上高や損益)よりも、CSRがまず大命題としてわれわれの中になければならないと、いっそう感じられるようになったと思う。

WWD:7月1日からのプラスチック製ショッピングバッグ有料化に合わせて、アダストリアでは50万枚のエコバッグを客に無料配布した。また、買い物袋を辞退した客にポイント還元する取り組みは、既に5年間継続してきている。

福田:CSRやサステナビリティというとどうしても重々しくなりがち。われわれはコーポレートスローガン「Play fashion!」のもと、お客さま目線でどういったアクションならばサステナブルで同時に楽しめるか、楽しんでいただけるかを考えている。エコバッグの配布もその一環だ。洗濯して繰り返し使えるおしゃれなエコバッグをご提供すれば、お客さまには喜んでいただけるし、結果としてプラスチックごみも減らせる。そうした考えで、50万枚という少なくはない数のエコバッグを工場にあった残反を生かして生産した。これも通常なら「1枚あたりの工賃はいくら」といった考え方が先行してしまうものだと思うが、サステナブルな取り組みを楽しんで進めることができるようなムードになっている。

WWD:そうは言っても、CSRと経済活動の両立において難しいと感じる面もあるか?

福田:当社は生活者と近い目線を持った社員が多く、環境に無配慮で収益を追求する、といった考え方はそもそも薄い。「とにかく儲けたい」というような変な考え方の人がいない会社だと思う(笑)。若い世代の社員も多いため、彼らにとっては、「とにかく儲けたい」といった価値観自体が楽しくないんだと思う。だから、CSRを実現するために会社をコントロールをしているという意識はあまりない。

「春物の消化は例年通り、もしくはそれ以上の結果に」

WWD:アパレル業界の大量廃棄には、一般社会からも厳しい目が向けられるようになっている。

福田:アダストリアでは、少なくとも在庫の焼却処分はもう行わないと決めている。残った在庫は当社が出店していない地域のオフプライスストアで販売したり、第三国に輸出する業者に販売するなど、何らかの再利用やリサイクルにまわす。もちろん一番いいのは売り切って在庫をゼロにすること。しかし、店頭を商品で埋める以上、どうしても在庫ゼロにはならない。ゼロに近づけるために最大の努力をし、それでも残ってしまったものは、当社で手掛ける「キッズローブ(KIDSROBE)」という子ども・ベビー服のレンタル事業や、在庫をアップサイクルして販売する「フロムストック(FROMSTOCK)」事業に生かしている。このような、在庫にまつわるさまざまな施策や事業のアイデアが、17年にスタートしたアダストリア・イノベーションラボなどを通して、社内で有機的、自発的に生まれるようになってきた。

WWD:デベロッパーの反対を押し切り、18年初からは福袋販売も中止した。福袋のために新たに商品を生産し、それを大量に余らせるようなアパレルビジネスのあり方はあまりにも無駄が多いという考えからだ。セールを前提とした大量生産の仕組みについても、ここ数年変えようと努力してきている。

福田:セールの抑制にしても、期末在庫をいかにゼロに近付けられるかがカギだ。在庫に関しては、当社は業界内の平均よりもかなり高い水準で残さず進めることができている。ただ、今年は店舗が自主休業となった4、5月に相当な金額の在庫を抱えてしまったことは確か。休業を受け、既にできあがった商品を工場に発注キャンセルするケースも業界内では聞いた。ただ、当社は(福田三千男)会長の号令のもと、4、5月分の全量をキャンセルせず、工場への値引きも求めなかった。その分夏物の発注量を抑えることで在庫をコントロールし、春物を売り切れと指令が出た。その結果、春物の消化は例年通り、もしくはそれ以上という結果になった。

WWD:アダストリアの7月の国内既存店売り上げは前年同月比19.9%減だった。夏物の発注量を抑えたことで商品が足りず、その結果売り上げを落としたと見受けられたが、無駄に作って余らせるよりも、売上高を落としてでも売り切れる量を作るべきという考え方を象徴していると感じた。

福田:夏物の発注量を抑えた結果、在庫が薄いのではないかという懸念は確かに出ていた。ただ、今年に関しては在庫コントロールがよくできた方だと思う。特に6月は“リベンジ消費”で各社好調だったと思うが、それでも春夏の在庫をさばききれなかった企業はあったと思う。セールが長期化して価格が崩れており、安いから売れたという部分もある。秋以降、適価に戻った時に状況がどうなるかはまた別の問題で、今後もしっかり見ていく必要がある。

WWD:休業中の在庫の発注キャンセルについては、SNS上で批判を集める企業も出た。これまでなあなあで済まされてきたいびつな業界の商習慣が、いよいよ許されなくなっている。

福田:今は企業の姿勢が筒抜けになる時代だ。休業してしんどいのはどの店も同じだし、小売りが厳しければ工場だって苦しい。そこに発注キャンセルで商品を突き返すような動きはサステナブルではない。それでコロナ禍は切り抜けられたとしても、今後そういった企業にどこまでお客さまや取引先、社員がついていくのかは疑問だ。アダストリアは、「なくてはならない企業」という理念があるからブレないんだと思う。サステナブルはもちろんこれからの世の中のキーワードだが、真摯であること、公平・公正であることも同様だと思う。どこかが苦しい時には助けるという姿勢が、お客さまからも取引先からも共感を集める時代だ。発注キャンセルや大量廃棄などの問題でファッション業界を見る世の中の目は厳しいが、個別の企業の問題を業界全体の問題と捉えられてしまうと、店頭で頑張って働いている人(販売員)がつらい。だからこそ、当社なりに世の中に対してできるアクションをしていくことが肝要だと思っている。そうすれば、世の中のファッション業界を見る目も変わっていくはず。うちの社員は出戻り(他社を経験し、再び入社する人)が多いが、そんなふうに戻ってきたいと思えるような企業であることが大事だと思う。

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無印とローソンの接近 エディターズレターバックナンバー

※この記事は2020年6月24日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

無印とローソンの接近

 「無印良品」を運営する良品計画とコンビニ大手のローソンの提携が話題です。

 6月17日からローソンの都内3店舗で試験的に靴下や肌着、文具、レトルトカレー、化粧水などの販売を始めました。今後、取り扱い店舗の拡大やプライベートブランドの共同開発なども検討されているそうです。国内の「無印良品」の店舗数は437店(2020年2月期)、一方でローソンは約1万4000店。「無印良品」はローソンと手を組むことで、商圏を一気に広げることができます。

 このニュースの意外性はローソンと「無印良品」という組み合わせです。

 「無印良品」は長年ファミリーマートで販売されてきました。もともと良品計画とファミリーマートは旧セゾングループの仲間同士でした。その後、紆余曲折を経てファミリーマートは現在、伊藤忠商事の子会社になっています。両社は仕入れ条件などの面で折り合いがつかず、19年1月末に提携が解消されました。それから1年半、コンビニの棚から「無印良品」は消えていたのです。

 「無印良品」は衣食住の幅広いアイテムを取り扱い、「生活の基本となる、あらゆる分野の商品でお客さまがまず思い浮かべるブランドになる」(松崎暁・良品計画社長)ことを掲げています。消費者の生活の最も近くにあるコンビニに商品を置けないことは大きな機会損失でした。

 新型コロナウイルスの影響で自宅での過ごし方を見つめ直す機運が高まっています。リモートワークも当たり前になり、自宅を快適な環境にしたいと考える人は増えている。ハレの商材ではなく、身近な衣食住の商材を扱う「無印良品」にとっては追い風です。

 コンビニの棚に並べられる商品は靴下や文具など小ぶりなものに限られるでしょうが、「無印良品」は5月からアマゾン、6月から楽天市場での取り扱いを開始しました。1676万ダウンロードを誇るショッピングアプリ「MUJIパスポート」をはじめ、これまでは自社ECに囲い込むことを基本戦略にしてきたわけで、方針転換といえるでしょう。圧倒的な集客力を誇るアマゾンと楽天市場への出店によって新規顧客を取る。緊急事態宣言による店舗休業が背中を押した面もあるでしょう。消費者の生活圏とスマホの中に深く入り込む「無印良品」から目が離せません。

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センスと体形でブランドを体現するプラスサイズ販売員 プニュズ吉澤綾花

 2014年にタレントの渡辺直美がウィゴーとともに立ち上げたファッションブランド「プニュズ(PUNYUS)」。彼女の個性を打ち出しつつ、目玉焼きをモチーフにした総柄プリントは、多くのアパレル関係者に衝撃を与えた。当時、国内では大きなサイズを展開するメーカーはあっても、大きな売り場や専門的に打ち出す店はなく、いわゆるプラスサイズの服は通販での購入が多かった。デザインも通勤服のようなコンサバなものやフェミニンなものが主流だった。そうした中で「プニュズ」は、おしゃれをしたいプラスサイズ体形の女性にとって大きな驚きだった。ルミネエスト店の吉澤綾花店長も「プニュズ」との出合いで仕事を変え、今では太っていることをコンプレックスに思う人たちの気持ちを前に向かせようと奮闘している。

―もともとはフリーでヘアメイクの仕事をしていたそうですが、どんな働き方でした?

吉澤綾花さん(以下、吉澤): 例えば、午前中は写真館などで七五三とかの記念撮影のヘアメイクに入り、お昼ごろからはバンドのヘアメイクでライブ会場に行き、夜は出勤前のホストのヘアメイクという感じで、1日中働いていました。ただ、フリーランスなので働く時間も自分でコントロールでき、メリハリをつけて仕事をしていた感じです。ですが、あるときケガで入院をすることになり、休んでいたらやる気がうせてしまいまして(苦笑)。ヘアメイクの仕事は楽しかったんですけどね。なんだかんだで1年くらい休職していました。いつまでも休んでいるのもな…と思っていたときに、ずっとファンだった(渡辺)直美さんがプロデュースするブランドができると聞いて、すぐにオープニングスタッフに応募しました。

―その話を聞いたときに「コレだ!」と思いました?

吉澤:思いました(笑)。「プニュズ」立ち上げのときのビジュアルが本当にツボにハマりました。いろいろなジャンルのスタイル提案はありましたが、私自身がアメコミやフィフティーズが好きだったので、中でもフィフティーズっぽいスタイルとポップな目玉焼き柄のアイテムにすっかりとりこになりました。もともとロカビリーが好きで、ピンナップガール風のファッションに憧れていて、「こういうブランドならアパレルやってみたい」と思ったんです。

―ロカビリーとかフィフティーズに興味を持ったきっかけは?

吉澤:音楽からです。この曲調が好きだなと思って調べたら、それがロカビリーだった。私は何でもウィキペディアで調べるのが好きで、ロカビリーを深掘りしていったら当時のファッションやインテリアなど、時代背景も含めて全てが自分好みだったんです。

―ピンナップガールのイラストとか可愛いですよね。でも、それまでフリーで仕事をしていたのに、会社に所属することになることに抵抗はありませんでしたか?

吉澤:抵抗がないというより、想像できませんでした。大変そうな仕事という感覚もなく、人と話すことが好きだったので、お客さまと会話して楽しい買い物時間を過ごしてもらえればいいなとは思っていました。それにヘアメイク時代の経験を生かして、服だけでなく髪色や髪形、お肌の色などから、一味違うコーディネート提案をしていけるとも考えていました。

―確かに、それは接客の強みになりそうですね。

吉澤:なので、接客そのものは特に抵抗はなかったです。むしろヘアメイクの仕事よりも合っているんじゃないかと(笑)。実際にやってみると、それより毎日届く段ボールの量とその整理の方が大変でした。思った以上に体力を使う仕事なんだと、あらためて思い知らされましたね。仕事は楽しいけど、足はクタクタでした。でも、ショップに「欲しい服がない」という悩みを持ったお客さまが来られたり、「ブログを読んで、会いに来ました」と言ってくれるお客さまがいたり、「いつも参考にしています」なんて言われるとよかったなあって思います。今はプラスサイズ向けの雑誌もあって、専属モデルさんもいますが、まだまだ店にはプラスサイズのスタッフは少ないので、私が店頭で直接お客さまの悩みを聞いて、提案できる役目を担っているんだと実感しています。

―昔前はプラスサイズが買えるのは百貨店くらいで、あとは通販雑誌で買うのが主流だったと思いますが、今は?

吉澤:最近はネット通販の利用が多いようです。「プニュズ」も立ち上げの頃はネットで見ている方が多かったので、スタッフたちと「ショップに来て試着して買ってくれる人が増えるといいね」と話していました。

―吉澤さんは服を買うときどうされていたんですか?

吉澤:それまでは古着屋やヤフオク、メンズブランドなどで買っていました。ヤフオクとかで買うときは、ちゃんと着られるかサイズを何度も確かめていました。前から直美さんのSNSでいつもどんな服を着ているかチェックしていたんですが、インスタで海外のファッションサイトで服を買っていると紹介している投稿をきっかけに、私も海外から買うようになりました。

―服を買うにも一苦労ですね。

吉澤:国内のメーカーのプラスサイズの服は体形をカバーするデザインが多くて、胸から下は全てゆったりしている感じで、グッとくるデザインが少なくて……。特に体形を気にすることなく、ピンナップガールのようにウエストをキュッと締めて、胸元が開いたデザインでもいやらしさを感じないトップスで、ヘルシーでセクシーな服となると、もう国内で手に入れるのは絶望的でした。

―フィフティーズスタイルは個性的でかわいいけど、それを専門的に展開するブランドって少ない。そう考えると、直美さんのファッションセンスは体形に関係なく、憧れる人は多いですよね。

吉澤:そうなんです。だから絶対面接に受かりたくて、面接の前に開催された直美さんとチェキが撮れるとあるイベントには精一杯おしゃれして参加しました(笑)。当日はピンナップガール風のスタイルで行ったんですけど、会場にはプニュズの関係者もいて「あの派手な子は何だ!」とざわついたと後から聞きました。その後の面接でも「あのイベントにいた子だ!」となったそうです(笑)。面接も一般的な質問というより、「その服はどこで買ったの?」という感じで逆に質問され、不思議な感じで面白かったです。

―先ほど「試着をして買う方を増やしたい」と言っていましたが、試着されない方が多いのですか?

吉澤:体形にコンプレックスがあるからか「着られなかったらどうしよう」と思う方も多く、試着しているのを他人に見られたくないから試着をしたがらないのです。「プニュズ」は6Lサイズまで展開していて、私でも着られるサイズがあるからとにかくお店に来てみてくださいと、事あるごとに伝えています。来店される方も徐々に増えてきていますが、まだ不安をお持ちで通販で買う方もいるでしょうが、そういう不安も解消できると思うのでぜひ来店してもらいたいなと思います。

―ずいぶん試着に対してネガティブなイメージを持たれているのですね。

吉澤:なので、ショップもいろんなところに工夫をしています。フィッティングルームは大きい方でも試着しやすいように一般的なショップのより広くしていますし、常にスタッフみんなでどんな言葉を掛けたら気持ちよく試着してもらえるか話し合っています。少し極端ですが、お客さまには「買わなくてもいいから、一回着てみてくださいね」と声を掛けています。ショップに足を運んでくれたということは、少しでもブランドに興味があって、着てみたいという気持ちがあるのだと思うので、とにかく着て、どんなふうに見えるのか体験してほしいと思いながら接しています。どんな体形でも純粋にオシャレを楽しんでほしいので、脚を出したくないけどスカートにチャレンジしたいという方には「夏にタイツを履いてもいいんですよ」と伝えて、チャレンジしやすいアドバイスをしています。だってコーディネートには正解も間違いもないじゃないですか。

―そうですよね!

吉澤:最近はプラスサイズの方だけでなく、バレーボール選手や柔道選手といったアスリートの方がプライベートでお買い物に来られることも増えています。全方向的にいろんな体形の方に着ていただけるブランドとして定着しつつあるなと感じています。

―プニュズで働いていてよかったことはありますか?

吉澤:プニュズを通じてイメチェンされる方が本当に多くて、そこに関われるのはうれしいです。初めてのデートに着ていく服を一緒に選んだりするときなんかは、お客さまの大切な時間の一部に関わらせてもらって、こっちまでドキドキします。その後に素敵な報告をしに来てくれると、さらにうれしくなります。

―プニュズが一歩前に踏み出すきっかけになっているんですね。

吉澤:そうです。そのせいか、この何年かで試着したがらない人が前より減ったようにも感じています。

―それは良よった!では、最後にこれからの目標は?

吉澤:店頭に立ってはいたいとは思うのですが、私の分身のような…、というかオンラインストアのモデルをやったり、私の思いを受け継いでくれるスタッフを育てていきたいですね。

苫米地香織:服が作れて、グラフィックデザインができて、写真が撮れるファッションビジネスライター。高校でインテリア、専門学校で服飾を学び、販売員として働き始める。その後、アパレル企画会社へ転職し、商品企画、デザイン、マーケティング、業界誌への執筆などに携わる。自他ともに認める“日本で一番アパレル販売員を取材しているライター”

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「アディクション」の「ザ アイシャドウ」リニューアルでSNSに登場した“特定班”って何者? 編集部が勝手に妄想

 ビューティにまつわるニュースを編集部員が語り合う「WWDビューティポッドキャスト」は、「WWD JAPAN.com」や週刊紙「WWDビューティ」の中から編集部が気になるニュースやトピックスをピックアップし、解説と共にお届けします。

 第4回は、「WWDビューティ」7月16日号の巻末コーナー「ビューティパトロール」に掲載した、「アディクション(ADDICTION)」のブランドを代表するアイテム「ザ アイシャドウ」のリニューアルの発表からSNSで起きた“バズ”について詳しく紹介します。

 人気アイテムということもあり、今回のリニューアルで関心を集めたのが既存の全99色の“残留”“廃番”について。SNSに登場した“特定班”と呼ばれる熱心なファンについて、「WWD JAPAN.com」デジタルデスクの福崎明子と元ウェブメディアでエディターを務め、「WWDビューティ」でソーシャルパトロールを担当する浅野ひかる「WWDビューティ」記者が話します。

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ランジェリー業界のゲームチェンジャー vol.6 外務省勤務から下着デザイナーへ転身した「ナオランジェリー」の栗原菜緒

 下着業界はファッション業界に比べるとメディア露出が少なく、またサイズの展開が多いため、在庫管理が複雑、生産工程で使用する資材が多い、生産ロットが大きいなどの理由から新規参入が難しいといわれてきた。大手の下着メーカーやアパレルメーカーによる市場の寡占によってなかなか新陳代謝が進まない印象だったが、ここ数年でD2Cブランドが増加している。また、異業職種からのデザイナー転身やSNSを通じたコミュニティーの活性化など、下着業界では30代の女性を中心に新たなムーブメントが起こっている。下着業界に新風を吹き込むゲームチェンジャーらにインタビューし、業界の今、そして今後の行方を探る。

 第6回に登場するのは、栗原菜緒「ナオランジェリー(NAO LINGERIE)デザイナー。外務省勤務からランジェリーデザイナーを目指し、物作りの経験がほぼゼロからブランドを立ち上げたという異色の経歴の持ち主だ。個人デザイナーのブランドとしては珍しく日本橋高島屋にコーナーが常設されるなど、その経歴や活躍は人気テレビ番組の『ガイアの夜明け』や『セブンルール』などでも取り上げられ話題になった。下着を作って売るだけでなく社会活動にも熱心に取り組み、下着を通じて“女性の尊厳と自尊心を守る”というブランドコンセプトを実践している。

――服飾専門学校や美大卒のデザイナーが多い中、異色の経歴だが?

栗原菜緒「ナオランジェリー」デザイナー(以下、栗原):高校生のときから外交官を目指していたので大学在学中に外務省でアルバイトを始めて、卒業後もアルバイトをしばらく続けました。『日本の素晴らしさを世界に広めたい』という夢があったのですが、実際に勤務すると、官僚の仕事と私の夢の実現は異なることが分かりました。それに気付いたときには、大学の同級生らは有名企業に勤めて活躍していて焦りました。『私も好きなことを仕事にしたい、好きな仕事で夢を実現しよう』と思い、ランジェリーデザイナーとしてブランドを立ち上げようと決心しました。その後、補整下着専門店に勤めたのが下着に関わる初めての仕事で、1セット十数万円の補正下着を販売する中で、自分の理想のランジェリー像が具体的にイメージできるようになりました。コンサルティング会社に就職してからは多くの新規事業に携わり、ブランディングやマーケティングを約2年間経験したことが起業にも役立ち、28歳でランジェリーデザインを学ぶためにミラノに留学し、帰国後29歳で会社を設立して「ナオランジェリー」をスタートさせました。

――ランジェリーに興味を持った理由は?

栗原:中学生の頃からランジェリーが好きで、洋服よりも下着姿の自分の方が好きだし、きれいだと思ったんです。私の中学時代はヤマンバギャル全盛期。私も流行にのりたかったけれど、学校も家庭も厳しくてかないませんでした。肌を焼いてガングロには近づいたけれど、その中途半端な感じがすごく嫌で……。ただ、時代の流れや他人の視線に左右されるファッションの流行にはのれないけれど、限られたお小遣いの中で買ったお気に入りのランジェリーを身に着けると、人の目に触れなくても自分が表現できると感じました。また、家長(男性)を大切に扱う旧家に生まれ、女性である私は軽んじられていると思いながら育ったことも理由の一つです。そのような環境下でもきれいな下着を身に着けると自分が大切な存在で、自分が存在する意味があると感じられました。そんな経験から、ブランドコンセプトを“女性の尊厳、自尊心を守る”としました。

――ランジェリーブランドを設立するにあたっての一番の苦労は?

栗原:工場探しと資金の調達です。工場は十数社連絡をとって、会ってもらえたのは4社。下着業界には何のつてもありませんでしたから、ネットで検索と連絡の繰り返しでした。ワイヤー入りのブラジャー1枚の縫製工賃は5000円、ロットも1型400枚からと言われ途方に暮れる中、工賃も抑えて100枚から縫ってくださる工場が見つかりスタートできました。その工場は、ちょうどお父さまから息子さんへ代替わりするときで、「若い人を応援しよう、工場も変わっていこう」という思いがあり、オーダーを受けてくださいました。資金は貯金と銀行からの融資、あとは銀座のクラブで週5日働いてためました。ただ、そのお金も1年でなくなりましたから、銀座のクラブでのアルバイトはブランド設立後にまた復活。一時は伊勢丹新宿本店のポップアップストアで一日接客した後、夜は銀座のクラブで接客をすることもありました(笑)。投資してもらうという選択もあったと思いますが、私は自分のブランドをコントロールされるのが嫌でそれを選びませんでした。

児童養護施設にファーストブラを
寄付するなど、自らの体を
大切にする啓蒙活動も

――デビューコレクションは何型?

栗原:全てワイヤー入りのブラで6型、そのうち1型は2色展開で、700枚の在庫を抱えてスタートしました。コーディネートショーツはタンガ(Tバック)だけ。自分がタンガしかはかないから、それでいいかと思ったんです。今振り返るともちろん無謀だったと思いますし、何も知らなかったからできたとつくづく思います。こんなに大変だとは思いませんでしたが、もう後戻りできない状況でした(笑)。現在、経営は“安定”とまでは言えませんが、ブランドデビューしてから6年たって売り上げは年々順調に伸び、毎シーズン新型と新色を継続的に発表できるようになりました。

――ランジェリーデザイナーとして一番の喜びは?

栗原:“女性の尊厳を守る”というブランドのコンセプトがお客さまに伝わっていると感じることです。デザイナーである私自身が銀座本店や百貨店、地方のホテルでの出張販売などで直接接客することもあり、お客さまとの関係が近くて濃いんですね。「ナオランジェリー」を着けて「初めて自分の体が愛おしく感じられた」「女性としてステップアップできた」「パートナーとの関係が改善された」とお手紙をいただくこともあります。ランジェリーを通して、これからもお客さまの人生に寄り添っていければうれしいです。

――今後の夢は?

栗原:今年から来年にかけて海外進出に挑戦する予定で、海外の展示会出展も計画しています。また、社会活動もさらに積極的にやっていきます。現在、児童養護施設のファーストブラを着用する年齢の女の子たちに弊社のノンワイヤーコットンブラを寄付しています。それくらいの年齢の女の子にとって、自分の体を大切に思うこと、生まれ持った体を好きになることは、その後の人生にとても重要です。今後は商品を寄付するだけでなく、そんな話もできるようになりたいと思っています。

――下着業界に期待することは?

栗原:大きいメーカーも小さなブランドも、それぞれオリジナリティーを持ち、互いを尊重し合い、切磋琢磨できる業界になればいいと思います。ランジェリーは心と密接に関係するので、女性に自信を与え、活躍を後押しできる存在。下着業界全体で女性のエンパワーメントを底上げできればうれしいです。

川原好恵:ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルス分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身

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「店舗を良くしたい」の行動が誤解!? 元ファストリ上席執行役員の心に火をつけた“トーチング”回顧録Vol.1

 ファーストリテイリンググループで社内改革を推進する「有明プロジェクト」をけん引し、史上最年少で上席執行役員に昇格した神保拓也はこのほど、人の「心に火をつける。」ことを目指し、株式会社トーチリレーを設立した。まず取り組む同社の主たる事業は、「心に火をつけることを主題に置きつつも、ティーチングやコーチングとは一線を画すサービス」。ただ、その料金はタダだ。なぜ神保は、タダで「トーチング」を始めたのか?人の心に火が付くことで起こった、ファーストリテイリング時代の「奇跡」をたどり、「トーチング」の原点を探る。

 神保拓也・代表取締役“隊長”のトーチリレー、人の「心に火をつける。」素晴らしさの原体験は、ファーストリテイリング勤務時代、「ユニクロ(UNIQLO)」の関東のとある店舗にあるという。幹線道路のロードサイドにある、ごくごく普通の店舗だ。

 それは、5年前の話。神保“隊長”は、本部社員が店舗を定期的に訪問しサポートする制度で、その店舗を訪問。それは「ユニクロ」の「お客様第一」、そして「店舗が主役、店長が主役、スタッフが主役」というカルチャーを体現する制度だった。訪れた店舗の店長は、当時25歳。実力があれば最短半年で店長に昇格できる実力主義の人事制度で、その職に就いていた。ただ何かがうまく機能しておらず、店舗は監査を受けると低い評価を突きつけられた。

 一般的に、店舗の「問題」はさまざまだ。「在庫は揃っているか?」「欠品はないか?」「アルバイトスタッフの数は足りているか?」「清掃は行き届いているか?」などは巡回する時、上司が確認するポイントだろう。だが神保“隊長”は、「『店舗オペレーション』が主役ではなく、『人』が主役であるべき」と考え、「『人』にフォーカスした巡回を心がけた」。「そこで働いてくれている人の心に、火がついているか?」を確認して回ったという。すると見えてきたのは、「店長と、このロードサイド店を含め複数の店舗を束ねるスーパーバイザー(以下、SV)の関係性が良くなかった」という、この店舗最大の問題。SVは監査のたびに低い評価を受ける店長に不満を持ち、一方の店長は実力主義でのし上がった自分を評価してくれないSVに不満がある。そして店長とSVの不和が、「夫婦喧嘩に動揺する子どものように」スタッフを悩ませていた。

 店長は店舗に着任して早々、「20代で執行役員になります。だからさっさと結果を出して、半年で、大きな店に異動します」と、自分を追い込むためでもあるビッグマウスを吐き、スタッフに総スカンを食らっていた。しかし店長は間もなく、一人じゃ何にもできなくて、先輩スタッフの方が仕事ができることに気づく。そしてスタッフは、不器用ながら努力する店長を応援するように。結果、店長とスタッフの関係性は急速に改善。ただスタッフと仲良くなることと、店舗が改善することは別。なかなか成果が出なくて、店長とSVはコミュニケーション不全の状態に。そこで神保“隊長”は、店長室に自らの名刺を置き、店長とスタッフに「何かあったら、電話してこい」とのメッセージを残したという。

 するとある時、店舗の女性スタッフが泣きながら「このままでは、店長が壊れてしまう」と電話をかけてきた。

 店舗には相変わらず問題があり、SVは欠品やサイズの不備などを指摘していた。なのに店長は、社内公募のフィリピン短期留学に参加して2週間不在に。SVが激怒している最悪のタイミングで監査が入り、この店舗は再び低い評価を受けた。連続の低評価でSVは激怒し、店長は意気消沈。店長は監査の際に店舗を不在にしていたこと、連続して「低評価」だったことの責任を感じ、SVに責任感の欠如を問いただされ、激しく凹んでしまったという。赴任した当初は無鉄砲なくらいだった店長が小さくまとまり、「日に日に元気がなくなっている」という電話。スタッフは、「このままでは、辞めてしまうかもしれない」と心配した。店長とSVの信頼関係が悪化したため、店舗の雰囲気も日に日に悪くなったという。そこで神保“隊長”は改めて、SVと店長、そしてスタッフと面談することにした。

 面談で気付いたのは、店長も、SVも、スタッフも、3者3様で「店舗をよくしたい」と思い、自発的に動いていたこと。でも「その言動が、相手に誤解されて伝わっていた」。そこで神保“隊長”は、店長とは「SVに認めてもらうには、自身の何が課題なのか?」、SVとは「あの店長に変わってもらうためには、自身も何を変えなければいけないのか?」、そしてスタッフとは「店長とSVがあんな状態の時、みんなは一体、何をすればいいのか?」をディスカッション。その時それぞれは、「登る山がわからないから、登り方も何もない状態」。そこでそれぞれに複数回、「心に火をつける」トーチングを実施した(つづく)。

今週のトーチング格言

「0次産業が重要だ!!」

連載では最後に、神保“隊長”から取材中に飛び出した名言をお伝えします。今週の格言について神保代表は、「1次産業の農林水産業からさまざまな仕事が広がり、今は6次産業やインダストリー4.0や5.0と言われているけれど、1次以上の産業は、全て人のつながりの上に成り立っている。だから人は0次。そして0次が変わらないと、世の中は良い方向に変わらない。トーチングは、人の心に火を灯す0次産業のビジネスなんです」という。

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「鎌倉シャツ」を作った夫婦の物語 玉置美智子著「シャツとダンス」

 「鎌倉シャツ」の創業者で会長の貞末良雄氏(79)を描いた「シャツとダンス〜『アパレルの革命児』が起こした奇跡〜」(玉置美智子著、文藝春秋刊)に、次のような場面がある。1970年代半ば、貞末氏はヴァンヂャケットに勤務していた。酒の席で部下が愚痴をこぼし、貞末氏が諭す。

「百貨店からはしょっちゅう掛け率、掛け率といわれて大変ですよ」

 掛け率を下げるとは、つまり、百貨店がヴァンに支払う商品の仕入れ代金を安くすることだ。定価1万円の商品を7000円より5000円で仕入れて売ったほうが百貨店の利益が増える。利益は2000円増だ。

 「百貨店の掛け率を下げればヴァンは、自分たちの利益を確保するために原価率を下げる。そうやってどんどん落ちていくプロパー消化率(編集部注:定価で売れた割合のこと)に対して、掛け率と原価率を低くしてバランスをとっていったんだ。それでプロパー消化率が50%を切る頃には、原価率は20%、ってわけだ。そのうち15%になるよ。お客さんを犠牲にした負のスパイラルだ」

 半世紀近く前の話なのに、現在のアパレル業界の課題とあまり変わりないことに驚く。アイビーで一世を風靡したヴァンは、放漫経営がたたって78年にあっけなく倒産した。現在、アパレル業界ではコロナが引き金となった経営破綻や事業再編が相次いでいる。だが、コロナ前から「お客さんを犠牲にした負のスパイラル」に陥っていた。失敗の本質はいつの時代も変わらないのだ。

 貞末氏のアパレル人生は50歳過ぎまで挫折と苦労の連続だった。ヴァンを含めて勤務したアパレルや小売業5社は全て倒産する。顧客目線を忘れた企業はどうなるのか、嫌というほど体験してきた。

 53歳の貞末氏がこれまでの失敗を糧に立ち上げたのが、1993年創業のメーカーズシャツ鎌倉だった。どうすればお客さんは満足してくれるのかを、徹底的に考え抜いた。中間コストを削減したSPA(製造小売り)モデルを構築する。国内工場で作った高品質なシャツを4900円(当時)で提供する。商品をシャツ1本に絞って決して作りすぎない。価格への信頼性を守るためセールはせずに定価で売り切る。鎌倉市のコンビニの2階からスタートした小さなシャツ屋はじわじわと支持を集め、都心に店舗を持つ頃には鎌倉シャツの愛称で呼ばれるようになっていた。2012年には紳士服の聖地であるNYマディソンアベニューにも出店する。日本を代表するスペシャリティーストア(専門店)になった。

 ここで描かれているのは、貞末氏一人のサクセスストーリーではない。もう一人の主人公としてスポットライトが当てられるのが、貞末氏の妻で鎌倉シャツ社長(現在は退任)のタミ子氏だ。ヴァンの同僚だった二人のなれそめから、夫婦それぞれの複雑な生い立ち、ヴァン倒産で経済的にも苦労する家族の姿まで詳細に書かれている。

 専業主婦だったタミ子氏は、40代半ばで夫とともにシャツ屋の経営者になる。貞末氏がサプライチェーンの構築に注力する一方で、タミ子氏は毎日休まずに店頭に立ち、抜群のコミュニケーション力で鎌倉シャツのファンを増やしていく。ホスピタリティーが高く評価されている同社の販売スタイルを確立したのがタミ子氏だった。

 だが、創業25周年を目前にした18年8月、タミ子氏は脳出血で倒れる。貞末氏と家族による介護の日々が始まる。

 重度の後遺症を患ってしまったタミ子氏の体を支えながら、貞末氏は自問自答する。半世紀近く夫婦であり、その半分はビジネスパートナーであった。彼女をビジネスの世界に入れたために、いらぬ苦労をかけてしまったのではないか。心の中で詫びる。「タミ子さんの優しい夫になりたいんだ、なれるだろうか」――。そして、貞末氏は一つの決断を下す。

 この本はファッション小売業の要諦を学ぶビジネス書であると同時に、夫婦の飾らない愛情をつづったドラマでもある。タイトルの「シャツとダンス」は夫婦の絆を象徴するあるエピソードから取られた。

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「カラー」がパリコレに帰ってきた 超実験的なムービーに込めたデザイナーの思いとは?

 2017-18年秋冬を最後にパリから離れていた「カラー(KOLOR)」が、5シーズンぶりにパリ・メンズに帰ってきた。パリへの帰還を飾る2021年春夏メンズ・コレクションは、デジタルをプラットフォームとするプレゼンテーションでの発表となった。26台のiPhoneを駆使して360度からルックを切り取る全く新しい映像で、ブランド設立から15年以上経過しても攻める姿勢を崩さない阿部潤一デザイナーの強い意志を伝えた。

 取材班は7月上旬、都内のスタジオで行われた同撮影のバックステージに潜入した。その映像とともに、同コレクションに込められた阿部デザイナーの思いを探る。

スマートフォンを通じて過去のコレクションと現代の空気をつなぐ

 今シーズンは「『2011年秋冬コレクションの世界観を、現在の空気で表現したらどうなるのか?』という設定でコレクションを製作した」と語る阿部デザイナー。当時はスマートフォンが登場したばかりで、SNSも今ほど浸透していなかった。そんな過去と現在社会をつなぐ表現として、スマートフォンによる撮影を考案したのだろう。

 ただスマートフォンで撮影するだけでは面白くない。そこで、円型の装置に26台のiPhoneを搭載し、360度撮影できる機材を特注。縦方向でルックを切り取り、靴の裏から頭のてっぺんまでを見せた。誰もが驚いたこの手法は、単に奇をてらったわけではなかった。「ランウエイショーでは真上と真下からルックを見ることは出来ない。それを収めることで、ビジュアルやムービーで表現する意味が更に増すのではと考えた」。

 実験的な表現は今シーズンに限ったことではない。パリ・メンズから離れ、ルックのみで発表したシーズンでも、街中でのシューティングやコラージュなどほかにない表現に挑戦していた。「僕たちは服を作っている。アイテムのデイテールや空気感を感じられるのは、人間が着ている状態を目の前で見られるランウエイショー以上のものはないかもしれない。しかし、プレタポルテのランウエイは1960年代から変わっていない。何か違う形で表現ができないかと数シーズン試行錯誤してきた。今回もその延長で、僕らの伝えたい空気や気分を発信したつもりだ」。

ユース感と技術を備える新たなクリエイション

 コレクションの発表手段だけでなく、そのクリエイションも年々進化している。ナイロンやキュプラといった独特の素材使いでクラシックなムードに新鮮さを加えるクリエイションが人気で、ここ数年はキャッチーなモチーフ使いで若者のファンも増やしている。今シーズンも「コカ・コーラ(COCA-COLA)」のロゴをオマージュした“CONCLEAT”というレタープリントや、ブランドタグを無数に複製した柄のアイテムを用意した。しかし、上質な素材と確かな技術で作られるから、ユース感あるアイテムでも大人に受け入れられる。そのバランスは、長い経験を重ねる阿部デザイナーだからこそ実現するものだ。

 年齢を重ねても立ち止まらず、常にチャレンジングな姿勢を貫く。そこから新たなクリエイションと表現が生まれるーーこれが今の「カラー」の強さだ。今シーズンでその凄みを存分に見せつけた阿部デザイナーは、今後どんなコレクションを見せてくれるのか。パリ・メンズの“第2幕”に期待が高まる。

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新作の口紅を楽しめる透明マスク エディターズレターバックナンバー

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新作の口紅を楽しめる透明マスク

 今、ビューティ業界は秋冬の新製品発表会が盛んに行われています。緊急事態宣言が全国で解除になってから1カ月が経ちますが、ソーシャル・ディスタンシングを保つためにオンラインでの発表会が中心です(一部ブランドでは1媒体限定など少人数で対面発表会も行われています)。カラーメイクの新作では口元(口紅やリップグロスなど)にフォーカスしたブランドが数多くありました。商品企画は1年以上前から進行しているため、開発当時は新型コロナウイルスの影響などは予想できなかったので当然ですよね。しかし現状はマスクが必須の生活です。「WWDビューティ」6月4日号で「マスク必須でトレンドに変化の兆し アイビューティ特集」を掲載しましたが、マスク姿にはアイメイクがポイントになりますよね。

 個人的にはナチュラルメイクを好んでいるため、目元はおとなしめで、口元はオーガニックブランドの色つきリップクリームなどを使うことが多くなっていました。しかし、ここまでカラーメイクをしない生活が続くと物足りなくなってきています。特に「口紅をつけて外出したい」という思いが強くなっています。発表会で口紅の話を聞くとウキウキしている自分がいるんです。メイク好きの女性なら、それはなおさらですよね。でも新作の口紅をつけて外を歩くにはマスクの改良が必要です。ファッションブランドを見るとオリジナルのマスクを次々と販売して話題となっています。ブランドの世界観があって視覚的にも楽しめるのでいいですよね。

 そこでふと浮かんだのが透明マスクです。透明マスクがあれば口紅を楽しめますし、マスクにつかないベースメイクも売れると思うんです。この話を編集部のメイク好き若手記者にしたら「面白そう!ウチがプロデュースしたらいんじゃないですか」と盛り上がりました。通気性がよく、メイク崩れも起こしにくい透明マスク――開発してもらえませんか(笑)。

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構想10年!「バーチャル伊勢丹」発起人の大いなる野望

 コロナ禍の中、三越伊勢丹ホールディングスでは現実世界を超えたビジネスの発想も生まれている。同社は4月29日〜5月10日にかけて開催された世界最大級のバーチャルリアリティ(VR)上の展示即売イベント「バーチャルマーケット(以下、VM)」内の仮想都市「パラリアルトーキョー」に、伊勢丹新宿本店の仮装店舗(以下、バーチャル伊勢丹)をトライアル出店した。HIKKY(東京、舟越靖社長)の主催で18年に始まり、第4回となったVMには過去最多のクリエイター1400組超、企業43社が出展。来場者も過去最多の70万人超にのぼった。

 VMで販売されたのは「バーチャルアイテム」と呼ばれるアバター着せ替え用の3DCG素材。バーチャル伊勢丹では同社の婦人靴のPB「エヌティー(NT)」やメンズブランド「ミノトール(MINOTAUR)」がデザインした着せ替えアイテムなどを出品。さらに同社ECに誘導して、実在の商品も販売した。仮想現実の世界ではコロナの影響もなければ、集客の制限もない。バーチャル伊勢丹も想定の20倍を超える“来店客”で大いににぎわった。

 発案者は同社チーフオフィサー室関連事業推進部の仲田朝彦氏。「2021年中にはファッション領域でバーチャル伊勢丹を事業化したい」と意気込む。単なるアバター衣装の販売ビジネスにとどまらず、「アパレルブランドのCADデータを活用したデータ販売」「バーチャルファッションショー」などさまざまな可能性を思い描く仲田氏に、今後の展望を聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):VMに出店するというアイデアはいつから?

仲田朝彦・三越伊勢丹HDチーフオフィサー室関連事業推進部担当(以下、仲田):入社(2008年)からずっとですね。当時はアップルのiPhoneが登場したエポックメイキングな年でもあったのですが、(地図アプリの)「グーグル アース(GOOGLE EARTH)」でワシントンD.C.の街並みが3Dマップ上にリアルに映し出された姿を見て、驚愕しました。同時に、「いつかここ(仮想世界)に百貨店を建てたい!」とすごくワクワクしたのを覚えています。それから10年余り。社内プレゼンは3回失敗しましたが、今回ようやくトライアルにこぎつけました。CGのノウハウは独学で、バーチャル伊勢丹も僕の“手作り”です。でも特別な技術やスキルがあるわけではなくて、すごいのはCGソフトの方。しかもそれが無料で手に入る世の中です。バーチャル世界での不動産開発はリアルの世界と違って、膨大な労力も手間もいらない。やるかやらないか、それだけです。

WWD:なぜ百貨店がバーチャル領域でチャレンジすべきだと思ったのですか?

仲田:百貨店には販売員の接客はもちろん、商品自体の価値、陳列のノウハウなどさまざまな価値が凝縮しているのに、当社の営業利益率は2%ほど。“対価“としては、あまりに少ないのではないかと常々思ってきました。入社当時、大学の同級生に「百貨店?オワコンじゃん」と言われた悔しさも、ずっとくすぶっていましたね。それからしばらく働いているうち、お客さまと商品・サービスの間に立って付加価値を生み出す販売員の力は、百貨店の財産だと実感しました。同時に「接客の価値は、売るものがモノじゃなくても、リアルではなくバーチャルの世界でも、生かせるのではないか?」と感じて、今回のバーチャル伊勢丹はそれを実証する場でした。

バーチャルでも「おもてなし」 拡大するアバター市場に商機

WWD:成果は?

仲田:今回のVMには企業40社と約1400サークル(個人など小規模のコミュニティ単位)がブース出店しました。東京タワーや歌舞伎座など、東京のランドマークを再現した仮想都市に、伊勢丹新宿本店の1/10スケールのバーチャル伊勢丹を出店しました。当社の婦人服のPBである「エヌティ」から伊勢丹のチェックをあしらった商品や文化服装学園とのコラボアウター、メンズブランド「ミノトール」などの商品を用意し、一部商品はECに誘導して販売しました。アバターは現実世界とは性別が違う人間、猫やサルなどで作ることもできるので、尋常ならざる姿のお客さまが次々と伊勢丹新宿本店の中に入ってくる光景に私自身、「どう接客したらいいんだろう…」と硬直してしまいましたが……。チャットですぐに打ち解けることができました。リアルでもバーチャルでも、接客に求められるものはやはり「おもてなし」でしたね。ECへの流入率は、通常のウェブ広告の5倍という結果で、SNSでは「初任給でファッションデータを買いました」なんて方もいらっしゃり、もう感無量でした。

WWD:今後はバーチャル伊勢丹をどうブラッシュアップする?

仲田:バーチャル上なら、圧倒的な商品群はそのままに、現実の百貨店のフロア構成を超えて自由にカスタマイズすることができます。たとえば「こだわりの食器でワインを楽しむ」といったコーナーも、リアル店舗であれば地下1階と5階という垣根があって難しいですが、バーチャル上なら軽やかに飛び越えられます。販売員にはバーチャルソムリエとして常駐してもらい、アドバイスも受けられるようにするなど、百貨店のさまざまな価値を掛け合わせるアイデアが生まれます。今年12月には伊勢丹新宿本店の食品フロアを切り出してVMに再出店します。そこではアバターアイテムのほか、食品宅配ECの「イセタンドア(ISETAN DOOR)」と連携して販売します。そこでさまざまな課題を洗い出してブラッシュアップし、21年度中にはファッション領域で事業化を目標にしています。

WWD:アバター衣装販売はビジネスとしてのポテンシャルをどう見ていますか?

仲田:近年はSNSの浸透でオンラインとオフラインの垣根がなくなりつつあります。ここ数年は“ドラゴンクエスト10(スクウエア・エニックス)”や“ファイナルファンタジー(同)”といった家庭ゲーム内でもSNSのようなコミュニティが無数に生まれるなど、どんどんソーシャルな要素が色濃くなっています。そういった背景からアバターファッションの存在感が増しており、あるゲーム内の一つの衣装だけで数億円の収益につながっている事例も生まれています。IT専門の調査会社IDC Japan(東京都)の試算では、アバター用アイテムの世界市場規模は19年末で5兆円、23年で17兆円。しかも、これはコロナ禍以前の予測です。日本の百貨店の市場規模が6兆円弱(2019年度、日本百貨店協会調べ)ですから、それをもうすぐ上回ることになります。アバター市場の中で、圧倒的なけん引役は日本です。アニメやマンガなど文化的な土壌が豊かで、バーチャル世界とも親和性が高いことなどが要因です。アバター衣装はデータゆえ原価が圧倒的に安く、輸送費もかからない。ですから高収益な商品が無限に生み出せます。百貨店店舗は24時間営業。お客さまも現実の自分の体型に関わらず、着られないと諦めていた服も楽しめますから、ビジネスチャンスは大きいと思います。

他業種の参入でBtoBビジネスの可能性が広がる

WWD:とはいえ、アバターの着せ替えのためにで数十万、数百万円と買う人はいるんでしょうか?

仲田:相当レアだと思います(笑)。ですからゲームで終わらせず、興味をリアルの洋服につなげることが必要になってきます。バーチャル上でなら、たとえば全身柄物のような、現実世界よりも少し攻めたようなアイテムも着用できますよね。ファッションは「成功体験」が大事です。百貨店に身を置いて思うのは、50万〜60万のスーツを購入されるお客さまは、お金があるばかりではなくて、それに何らかの対価があると知っているからです。「おしゃれをしてみたら異性にモテた」とか「自分に自信がついた」とか。バーチャル上でもそういった成功体験が生まれるでしょうし、それが現実世界でのファッションの興味にもつながると思うのです。それも若い世代ほど、ネットの世界は現実世界と同等、それ以上に“リアル”ですから。ですが一番重要なのは、三越伊勢丹以外のプレイヤーがバーチャル世界に参入し、多様性が生まれることです。現在の取り組みのままでは着せ替えゲームの延長。バーチャル世界に小売業やそのほかの企業が参入すればそこに社会が生まれ、職業が生まれる。人々が仮想空間のピカデリーで映画を見たり、スポーツ観戦をしたり、レストランを利用したりするようになれば、TPOが生まれる。そうなると、アバターファッションの価値も高まるし、それ以外にも様々なビジネスチャンスが生まれると思います。

WWD:他社との協業では、どんなビジネスが考えられる?

仲田:今構想にあるのは、アバター衣装を活用したBtoBのソリューションビジネスです。現実では消費環境の変化で「服が余る時代」に突入しています。余らせないよう商品企画も売れ筋に走り、同じような服が増えて消費者のファッションへの意欲はますます萎んでいく。そういった構造的な問題にメスを入れるには、バーチャルという角度からのアプローチもあり得ると思います。具体的には、アパレルブランドやメーカーに、商品のテストマーケティングとしての場として活用して頂きたい。「挑戦的だけど、売れるかな……」というデザインを、まずはアバターアイテム化してもらってバーチャル伊勢丹で販売し、需要予測の指標として役立てていただく。商品化に至らぬまま倉庫に眠っていたラフやCADデータなどを元に、バーチャル上で作ってみたらヒットつながるかもしれません。また、若手デザイナーの発掘の場にもなるでしょう。仮想世界でデザインした服が話題になれば、百貨店やメーカーなどへの商談にもつながります。館の外では、商品のリードタイムがゼロであることを生かした即売形式のバーチャルファッションショーや、(バーチャル世界の)街中で素敵なファッションのアバターとすれ違ったときに、そのアイテムがワンクリックで買える仕組みなどを思い描いています。そこで私たちは何らかのマージン(手数料)をいただく。

WWD:すごい世界ですね。実現すれば、リアル店舗の役目はどうなるのでしょう?

仲田:めちゃくちゃハードルが上がると思います。現在、視覚と聴覚に関してはバーチャル上でもリアルをかなり再現できます。そして触覚、嗅覚、味覚も、これからの5G時代ではリアルだけのものであり続けるとは限らない。そうなると、現実の店舗の価値はどうなっていくのか?これはあくまで想像ですが、馴染みの販売員とお客さまの間で交わされる笑顔だったりとか、空気感だったりとか、そういった人と人が居合わせる現場にしか分からない「雰囲気」が価値として残っていく。そうなると、やはりそれを作り出せる人の価値がよりフォーカスされていくようになると思います。

WWD:なるほど。夢が広がりますね。

仲田:当社の現在の顧客平均年齢は40代後半ですが、バーチャルマーケットは若者20〜30代の若者が多く、ユーザーの7割が外国人。国内のスマホユーザーは5500万人といわれていますが、世界には20億人います。バーチャルの世界で三越伊勢丹ブランドを多方面で発信できれば、無限の可能性が眠っています。……と、ここまでの話を当社の上層部にプレゼンしたところ、失敗した3回目までは皆さん意識が飛んでいましたが(笑)、4回目では「すごい未来だね」と拍手をしてくれました。しかし、「これは夢のような話ではなくて、今やるべきなんだ」と分かってもらわなくちゃいけない。だから今は必死に足を動かして、絵に描いた餅で終わらせぬよう、ビジョンを共有しながら一緒に取り組めるパートナーを探しているところです。

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匠のメード・イン・ジャパンと“新しい生活様式”グッズに注目 「第15回 ライフスタイル Week 夏」が9月に開催

 リード エグジビション ジャパンは9月2~4日に、日常生活を豊かにする逸品が集結する商談展「第15回 ライフスタイル Week夏」を東京ビッグサイト(西展示棟)で開催する。

 今展は、雑貨EXPO、ベビー&キッズEXPO、ファッション雑貨EXPO、テーブル&キッチンウェアEXPO、DESIGN TOKYO、ヘルス&ビューティグッズEXPO、インテリア雑貨EXPO、文具・紙製品展(ISOT)の8つの専門展で構成され、初出展の110社を含む410社が出展する。新しいライフスタイルの提案をコンセプトとしたさまざまな領域の最新商品が一堂に会する総合展として毎年開催し、時代のニーズに合わせたコンテンツの充実を図っている。

匠の伝統と最新技術が融合した
メード・イン・ジャパン商品が集結

 中でも毎回話題を集めているのが、日本の伝統と最新技術を融合したメード・イン・ジャパンの商品群だ。例えば、ファンプロジェクトが手掛ける”LOCAセラミックフィルター”は、佐賀県の伝統産業品である有田焼の製造技術から生まれた独自のコーヒーギア。アルチザンの二重タンブラーは、新潟県燕三条の金属加工技術と富山県高岡市の着色技術がコラボレートして生まれた独特の機能と色合いが特徴だ。伝統の高い技術力をベースに生まれた“メード・イン・ジャパン”商品は、海外でも一つのブランドとして評価が高い。

ウィズコロナの“新しい生活様式”
グッズのエリアを新設

 そして今会期は雑貨EXPO内に“新しい生活様式グッズフェア”を設けた。新型コロナウイルス感染拡大の影響から日常生活や働き方が大きく変わり、“リモートワーク、感染対策、おうち時間、癒し、フィットネス”の関連商品を扱う企業が増えた。パソコンやスマートフォンの周辺機器、機能性マスクや非接触グッズ、家飲みグッズやおうち学習用品、自宅でできるトレーニング用品やフィットネスグッズなど、“新しい生活様式”を充実させる商品をそろえる。

次世代のビジネスモデルが
見つかる無料セミナー充実

 新型コロナが終息しても、商環境や消費者マインドはコロナ以前には戻らない。今後、経営環境はどう変わり、次世代のビジネスモデルに何が必要なのか――。このヒントととなるのが、各業界をリードするキーパーソンたちによる無料セミナー(事前申し込み制)だ。ネット販売とリアル店舗の融合、マーケットを作るブランディング、新しいリテールの在り方などポストコロナに必要なヒントが見つかるかもしれない。

 また、ノベルティーグッズやギフト商材を集めた「販促EXPO」も同時開催する。購買意欲を高めるためのノベルティー製作、印刷・DMサービスなどを手掛ける320社が出展。売り上げ増につながる効果的なプロモーションの強化やコミュニティ作りのために注目したい。

 リード エグジビション ジャパンは、政府、自治体及び展示会業界のガイドラインを基に新型コロナウイルス感染防止対策を講じて、出展社、来場者の安全を確保し開催するとしている。

INFORMATION
第15回 ライフスタイル Week 夏

構成展示会:雑貨EXPO、ベビー&キッズEXPO、ファッション雑貨EXPO、テーブル&キッチ
ンウェアEXPO 、DESIGN TOKYO、ヘルス&ビューティグッズEXPO、インテリア雑貨EXPO、
文具・紙製品展(ISOT)
日程:2020年9月2日(水)~4日(金)
時間:10:00~18:00(最終日のみ17:00終了)
会場:東京ビッグサイト(西展示棟)
住所:東京都江東区有明3-11-1
入場料:招待券持参者は無料(招待券がない場合は5000円)

問い合わせ先
ライフスタイル Week 事務局
(リード エグジビション ジャパン)
03-3349-8505

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オンラインとオフラインの前に、組織はマージしているか?︎ エディターズレターバックナンバー

※この記事は2020年6月29日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

オンラインとオフラインの前に、組織はマージしているか?︎

 先日、弊社の紙面紹介プログラム「Read More」で特集担当記者から「OMO(Online Merges with Offline)」と「O2O(Online to Offline)」の違いを聞いて、確立すべきは「OMO」なんだと納得した直後、下のリンクの記事を読み、改めて「会社として、OMOをどう推進すべきか?」を考えています。「Read More」をご覧になっていない方に簡単に説明しますと(お時間がある方は、リンクの2本目をどうぞ)、「O2O」は、オンラインとオフラインをつなぐという思考ゆえ、両者を区別しているのでアウト!!それは売る側の都合で、消費者には関係ありません。対する「OMO」の「M(Merge)」とは「融合する」の意味で、もはやオンラインとオフラインを区別しないのです。担当記者からは「リアルは、デジタルの一部」という名言、長年リアルを大事にしてきた皆さんにはショッキングなくらいの格言が飛び出し、「あぁ、そうだよな」と思った次第です。

 下の記事は、そんな「OMO」を推進するために大事なポイントを解いています。業界人が理解すべきは、「ポイントとなるのは(デジタルで)商品が売れた場合、売り上げの数パーセントがインセンティブ(成果報酬)として給与に加算されるのと同時に、その販売スタッフが所属する店舗の売り上げとして計上されるということだ」。ここです!コレ、試験に出ます。てか、出します(笑)。個人はもちろん、チームの評価になるって大事ですね。この評価基準の有無で、オフラインに携わるスタッフのオンラインに対するモチベーションは、大きく変わることでしょう。

 想像してください。もし、販売スタッフの着用コーデが売れても、個人もチームも評価されなかったら?それならだ~れも、わざわざ自分を晒して着用コーデをアップなんかしないですよね?リンクで紹介するアプリサービスを開発した社長も、「数億円かけて一元化しても店舗の販売員がECでの売り上げになることを嫌がり、ECサイトへの誘導をとめていた」と、個人もチームも評価しないサービス設計を反省しています。では、販売スタッフだけが評価されて、チームは評価されなかったら?個人は頑張るかもしれませんが、「あの子は、店頭での接客はおざなり。SNSばっかりじゃん!!」みたいな陰口や、「どうしても自分を晒せない私は……」みたいにクヨクヨするスタッフが出現することでしょう。でもそれが、販売スタッフはもちろん、チームも評価されたら?「あの子がSNSを頑張っている分、私たちは店頭を盛り上げようよ!」とか「私は自分を晒せないから、せめて撮影を手伝ったり、ハッシュタグを一緒に考えよう!」みたいな発想になるかもしれない。少なくともSNSでバンバン売るスタッフに「ありがとう!」という言葉を投げかけたくなるでしょう。他人のデジタル上での販売を“自分ごと”化できるのです。ステキ。

 評価基準一つで、組織は大きく変わりそうですね。そしてOMOの推進には、評価基準や組織の変革が不可欠であることも想像させます。余談ですが銀座三越の上層階にある免税店の失敗は、特選フロアのスタッフがインバウンド顧客の免税店への送客を敬遠したから、と言われました。自分が売れば評価につながる、でも、免税店への送客では評価にならない。となれば、知名度の低い上層階は苦戦するでしょうし、同じ店舗、時には同じブランドのスタッフにさえ不要な縄張り争いを生んでしまう。誰の得にもならなそうです。

 オンラインとオフラインのマージ(融合)には、組織のマージが不可欠です。アナタの組織は、マージしていますか?

FROM OUR INDUSTRY:ファッションとビューティ、関連する業界の注目トピックスをお届けする総合・包括的ニュースレターを週3回配信するメールマガジン。「WWD JAPAN.com」が配信する1日平均30本程度の記事から、特にプロが読むべき、最新ニュースや示唆に富むコラムなどをご紹介します。

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「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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クチュール&メンズ初のオンライン開催、結果はいかに? ユーチューブとSNSアナリティクス企業が分析

 フランスオートクチュール・プレタポルテ連合会(Federation de la Haute Couture et de la Mode以下、サンディカ)は、初めてオンライン開催した7月6〜8日の2020-21年秋冬パリ・オートクチュール・ファッション・ウイークと9〜13日の21年春夏パリ・メンズ・コレクションのデジタルショーにおける結果を明らかにした。サンディカによる詳細な分析結果はないが、ユーチューブ(YouTube)とSNSアナリティクス企業のリッスンファースト(LISTENFIRST)がそれぞれ詳細なデータを発表した。

 サンディカは、6〜13日の公式スケジュール用に制作された動画の再生回数が、合計で1940万回を記録したと発表した。各プラットフォームでの再生回数の内訳はユーチューブの560万回と、中国版のツイッターのウェイボー(微博、WEIBO)と動画配信サイトのビリビリ(哔哩哔哩、Bilibili)、そしてテンセント ビデオ(騰訊視頻、Tencent Video)を合わせた1380万回だ。

 動画コンテンツは、ファッション、ラグジュアリー、ビューティ分野のデータテクノロジー企業、ローンチメトリックス(LAUNCHMETRICS)の協力を得て立ち上げた2つのデジタルプラットフォームに投稿された。サンディカのウェブサイトで9月15日まで閲覧が可能なこれらのプラットフォームでは合計20万2000アクセスを記録し、閲覧回数は49万回に達した。

 サンディカのパスカル・モラン(Pascal Morand)会長は、「今回の結果に大変満足しているし、励みになる。フィジカルなファッション・ウイークの来場者が通常5000人程度であることを考えると、デジタル版はより多くのオーディエンスに向けて発信できた結果となった」とコメントした。

 ローンチメトリックスがSNS上の声をもとに独自のアルゴリズムを用いて割り出した計8日間のファッション・ウイークにおけるメディアへの影響の試算額(Media Impact Value、MIV)は、全体で6510万ドル(約69億円)に相当する。そのうち5080万ドル(約54億円)がクチュール、1430万ドル(約15億円)がメンズによるものだ。同社は19年に開催したクチュール・ウイークの影響試算を5670万ドル(約60億円)と推計しており、同年のメンズは3570万ドル(約38億円)だったとしている。

 モラン会長は、通常のショー形式のイベントではインフルエンサーをはじめとする参加者がコンテンツをオンライン上で投稿・シェアすることによりMIVが4〜5倍に上がるとした上で、「今回のオンラインイベントは通常の形式に匹敵こそしないが、失敗だったというわけでもない。ただし従来のファッションショーの代替ではない。今年のファッション・ウイークは普段と異なる形式で行ったが、私たちは従来のファッション・ウイークの重要性も再確認した。9月はフィジカルとオンラインの両方でショーを行う可能性もあるが、いい方向に向かうといい」とコメントした。

参加ブランドはユーチューブなどとパートナーシップ締結

 ローンチメトリックスによると、今回行われたデジタル形式のファッション・ウイークは従来に比べてより広く世界に発信され、アジアからのアクセスが全体の10%以上を占めていたという。なお通常はフランス、アメリカ、イギリスからの参加が中心だ。

 また、小さなブランドにとっては露出の機会が増えるというメリットもあった。拡散の見込みがあるデジタル資産の重要性を踏まえると、今後はフィジカルとデジタルの両方を活用した共有価値の高いコンテンツを生み出すブランドが勝者になると言えそうだ。

 今回のファッション・ウイークには公式カレンダーに名を連ねたオートクチュールの33ブランドと、メンズの67ブランドが参加したが、サンディカはコンテンツを広めるために、グーグル(GOOGLE)、ユーチューブ、インスタグラム(INSTAGRAM)、フェイスブック(FACEBOOK)などの主要プラットフォームや、フランスの放送局カナル・プリュス・グループ(CANAL + GROUPE)、「ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)」、中国のコミュニケーションエージェンシーのハイリンク(HYLINK)ともパートナーシップを締結した。

 ユーチューブのスポークスパーソンによると、80ブランドがサンディカとユーチューブのパートナーシップに参加しており、今回初めてオンライン動画シェアのプラットフォームに参入するというブランドも19あったという。なおクチュールでは、初参入の8ブランドを含む30ブランド、メンズでは初参入の11ブランドを含む51ブランドがユーチューブとの提携に参加した。

 動画再生回数が最も多かったオートクチュールのブランドは「ディオール(DIOR)」「シャネル(CHANEL)」「イリス ヴァン ヘルペン(IRIS VAN HERPEN)」で、メンズは「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「ディオール」「トム ブラウン(THOM BROWNE)」だった。

 また、ユーチューブがクチュールの傑作動画として選出したのは「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)」「ディオール」「イリス ヴァン ヘルペン」だった。メンズでは「ディオール」「トム ブラウン」「リース クーパー(REESE COOPER)」「ウェルダン(WE11DONE)」「ブルー マーブル(BLUE MARBLE)」「ヘンリック・ヴィブスコフ(HENRIK VIBSKOV)」「アミリ(AMIRI)」、新興ブランドの「キッドスーパー ストゥディオス(KIDSUPER STUDIOS)」「クール TM(COOL TM)」、そしてセーヌ川に浮かぶ船上でショーを撮影した「バルマン(BALMAIN)」だ。

期間中の関連ツイート数はオートクチュールが396件、パリ・メンズが3311件

 一方でリッスンファーストは、両ファッション・ウイークにおいて最もソーシャル・エンゲージメント(社会的関与)のスコアが高かったブランドのトップ10をランキング形式で発表した。ランキングは、反応の大きさやコメント、シェア、リツイート、“いいね”の件数、フェイスブック、ツイッター、インスタグラムのフォロワー数の伸びやツイッターでのメンションなどにより算出。最高スコアを獲得したクチュールのブランドは「シャネル」で、パリのグラン・パレ(Grand Palais)でショーを開催した前年同時期からは21.66%下がる結果となり、動画の視聴回数は約550万回だった。

 クチュールのスコアランキングは2位の「ラルフ & ルッソ(RALPH & RUSSO)」から順に「ジャンバティスタ ヴァリ(GIAMBATTISTA VALLI)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「ヴィクター&ロルフ」「ヴァレンティノ(VALENTINO)」「エリー サーブ(ELIE SAAB)」「ラウル ミシュラ(RAHUL MISHRA)」「メゾン ラビ ケイルーズ(MAISON RABIH KAYROUZ)」「アガノヴィッチ(AGANOVICH)」と続く。なお、パリ・オートクチュール・ファッション・ウイークについて直接言及したツイートは396件にとどまり、1万5000件以上のツイートが行われた19年7月1〜4日の結果を大きく下回る結果となった。

 「ジャンバティスタ ヴァリ」はソーシャル・エンゲージメントのスコアを前回から500%以上と大きくアップさせた。インスタグラム上のオーディエンスは大きなピンクのイブニング・チュールドレスに大きな反応を示し、同ブランドは多くのレスポンスを獲得した。 

 ソーシャル・エンゲージメントのスコアで1位を獲得したメンズのブランドは「ディオール」で、スコアは前年同時期と比べて51.25%アップした。今回のコレクションでコラボレーションを行ったガーナ人アーティストのアモアコ・ボアフォ(Amoako Baofo)から着想を得たコレクションのメーキング動画は、フェイスブックで17万回以上再生された。

 メンズのランキングは2位の「ルイ・ヴィトン」から順に「ロエベ(LOEWE)」「エルメス(HERMES)」「パロモ スペイン(PALOMO SPAIN)」「トム ブラウン」「ランバン(LANVIN)」「リック・オウエンス(RICK OWENS)」「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」と続く。ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)がメンズ アーティスティック・ディレクターを務める「ルイ・ヴィトン」は、“メッセージ・イン・ア・ボトル(Message in a bottle)”と題した21年春夏コレクションのランウエイショーを8月6日に上海で行う予定だが、そのプロモーション動画の再生回数はツイッター(TWITTER)、フェイスブック、ユーチューブで合わせて1450万回以上を記録した。

 また、今回のパリ・メンズに関するリアルタイムのツイート数は3311件にとどまり、19年6月18〜23日の11万7879件と比べて大きく落ち込む結果となった。
 
 リッスンファーストのトレーシー・デイヴィッド(Tracy David)=チーフ・マーケティング・オフィサーは、「それぞれのコレクションは注目を集めているが、通常のファッション・ウイークでの発表方法がもたらすほどの影響は感じられない。主催者は今後のデジタル・ファッション・ウイークについて、全ての動画をひとつのアカウントのもとで公開したり、ファッション・ウイークに華やかさを加えるためにオンライン上でセレブリティーと連携したりすることなどを検討した方がいいかもしれない」と指摘した。
 
 世界の有名ブランドに関するデータ、コミュニケーション活動、広報戦略を分析するDMRグループ(DMR GROUP)は、ロンドン、パリ、ミラノのデジタル・ファッション・ウイークにおいて、ソーシャルメディアでのキャンペーンにおける価値を意味するEMV(Earned Media Value)が1070万ユーロ(約13億円)に相当するとリポートした。なおこのEMV値は、10万のウェブサイトと2万5000のソーシャルメディアから算出されている。2021年春夏メンズやウィメンズ&メンズの21年プレ・スプリングを披露した7月14〜17日開催のミラノ・デジタル・ファッション・ウイークにおけるEMVは624万ユーロ(約7億7000万円)で、続いてパリの268万ユーロ(約3億3000万円)、ロンドンはこれら3つのファッション・ウイークにおけるEMVの合計の17%に相当する181万ユーロ(約2億2000万円)だった。

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あの頃、輝いていた「ギャップ」を訪ねて リニューアルした新宿店で創業当時のムードを体感

 「ギャップ(GAP)」が1969年に米サンフランシスコで創業した、「リーバイス(LEVI’S)」のジーンズやレコードのセレクトショップだったことを知っている人って、それほど多くはないと思います。かく言う83年生まれの私もその存在を認識した中学時代には既に、「ギャップ」はロゴスエットが看板アイテムのSPAになっていました。というわけで、私にとって「ギャップ」のイメージは、ザ・アメリカのSPA(アメリカの~というよりも、そもそもSPAというものの先駆け的な存在ですが)です。よほどの「ギャップ」通やジーンズ通、流通業界通を除いて、日本の多くの方の認識も同様ではないでしょうか。

 そんな「ギャップ」ですが、ご存知の通り近年はなかなか苦しい状況が続いています。「オールドネイビー(OLD NAVY)」なども含めたギャップ社全体の2020年第1四半期(2月2日~5月2日)の売上高は前年同期比43%減、純損益は9億3200万ドル(987億円)の赤字と発表されています。もちろんこれにはコロナ禍がダイレクトに影響していますが、コロナ以前からの業績不振と、それにまつわるてんやわんや(「オールドネイビー」の分社化断念、大規模な店舗閉鎖、トップの辞任など)は、この記事の一番下に貼り付けた関連記事群を読んでいただければと思います。

 言葉を選ばずに言えば、やや迷走気味に感じる近年の「ギャップ」。どんな組織にとってもこういった局面で重要なのは、自らの原点を思い出すことではないでしょうか。オリジナリティが何かを問い直し、元来自分たちが伝えたかった価値は何なのか、競合にはない個性が何かを見つめ直す。コロナ禍が負のスパイラルを加速させているファッション業界において、こういった原点の問い直しプロセスが必要だと感じるブランドは「ギャップ」以外にも非常に多くあります。もちろんブランドだけでなく、われわれメディアにとってもそれは同様なんですが。

 さて、その「ギャップ」の原点は冒頭にも書いた通り、1969年にカリフォルニアで創業したジーンズ&レコードショップです。しかし、そうしたストーリーは今や日本の多くの人に忘れられている。もしくはそもそも知られていない。……ですが、このほどリニューアルオープンした「ギャップ」の新宿フラッグス店は、そうした「ギャップ」の原点や背景にあるストーリーを感じさせる作りになっています。個人的に面白いなと感じたので、紹介させてください。

 新宿フラッグス店リニューアルの最大のポイントは、カフェ併設型の店舗になったこと。カフェがあるのは世界中の「ギャップ」でもここだけだそうです。ただ、カフェそのものよりも是非注目していただきたいのが、その横にある書籍やレコードのコーナー。座ってコーヒーが飲めるスペースになっているんですが、そこにブランドの歴史を解説したボードなどが飾ってあります。

 その解説ボードを見て、「ああ、『ギャップ』って、ヒッピームーブメントやカウンターカルチャー全盛の時代のアメリカで生まれた、ユース(若者)の店だったんだな」という事実に私は改めて出合いました。業界紙記者としてそういった知識は頭の片隅には入っていましたが、「ギャップ」創業者のフィッシャー夫妻の妻、ドリス(Doris Fisher、現会長のお母さん)がおしゃれなセブンティーズファッションでキメた写真を見て、「ギャップ」がどんな時代感の中で生まれてきたのか、初めてイメージを伴って理解できたような気がします。

 同コーナーには「ギャップ」創業当時にはやっていた曲のレコードなんかも展示してあります。音楽に詳しくない私にはスライ&ザ・ファミリー・ストーンくらいしか分かりませんでしたが、並べられたレコード群のややサイケデリックなジャケットを見るだけでも、「こういう雰囲気の時代だったのね~」と想像がしやすい。ドリス・フィッシャーの写真もそうですが、やはり、ビジュアル表現の持つ力って偉大ですね。ちなみにこのレコード群、新宿フラッグスの上層階に入っているタワーレコードで買えるそうです。

 「ギャップ」の過去のキャンペーンビジュアルを集めた写真集(2006年発行)も置いてあり、自由に閲覧ができます。これが今見ても色褪せず非常にかっこいいんですよ。キム・ベイシンガー(Kim Basinger)やブルック・シールズ(Brooke Shields)といった往年のハリウッドの大女優がいたり、ジャズトランぺッターのマイルス・デイヴィス(Miles Davis)がいたり、映画監督のスパイク・リー(Spike Lee)がいたり。なんてきれいな人なんだと改めて驚いたのがリー・ラジウィル(Lee Radziwill)でした。ジャクリーン・ケネディ・オナシス(Jacqueline Kennedy Onassis)の妹です。実にアメリカ的人選ですよね。日本人では工藤夕貴や冨永愛のビジュアルが収蔵されています。「ギャップ」のシンプルなカットソーやジーンズ姿で写真に映る彼らはみな、眼差しが強くてとてもかっこいい。フォトグラファーもアニー・リーボヴィッツ(Annie Leibovitz)やスティーブン・マイゼル(Steven Meisel)など、巨匠中の巨匠です。

 なんというかこの写真集、かつて世界が(言い過ぎ?少なくとも私が)憧れたアメリカのイメージの凝縮みたいに感じたんですよね。あの頃、「ギャップ」の広告にアメリカを感じていた人は少なくないと思います。そう考えると当時の「ギャップ」の存在感って本当にすごいですね。そして繰り返しになりますが、ビジュアルの持つ力って偉大だなと感じます。ただし、そういったキラキラしたアメリカのイメージそのものが幻想だったんだと気付かされたのが、トランプ大統領以降のアメリカ社会な気もしますが。

 というわけで、つらつら書いてきて結局何が言いたいかというと、こういった背景のストーリーを知ると、「ギャップ」の見え方がこれまでとはちょっと違ってくるよねということです。品質や価格、デザインの点で、今は「ギャップ」より「ザラ(ZARA)」や「ユニクロ(UNIQLO)」を選ぶという人が少なくないと思いますが、「ギャップ」ってそもそもこういった出自やマインドのブランドだったんだということを知ると、もう少し感じ方に奥行きが出ると言いますか。もちろん、それだけで人が「ザラ」や「ユニクロ」でなく「ギャップ」を買うようになるかというと、世の中そんなに甘くはありません。正直、今の「ギャップ」の商品や売り方からは、創業当時のストーリーやかつての強いビジュアルから伝わってくるような自由を貴ぶ雰囲気を感じることは難しいですから。

 ラグジュアリーブランドを取材すると、メゾンの歴史というものをいかに大切にしているか、それをどう価値判断の基準にしているかが繰り返し繰り返し語られます。メゾンの歴史や職人技を紹介する展覧会も、過去10年間でかなり増えました。モノが飽和し、モノそのものよりも文脈や物語を消費したがる時代の中では、歴史こそがブランディングになるからですが、これってなにもラグジュアリーブランドに限った話ではなく、「ギャップ」のようなより身近なブランドだって同じだなと思います。先日、「セシルマクビー(CECIL MCBEE)」の全店閉店の記事のために同ブランドの出自をたどった際も、改めてすごく面白いなと感じたんですよね。「セシルマクビー」は残念ながらその幕を降ろしますが、歴史を生かす企画(たとえば昔購入した商品とその思い出をタグ付けしてSNSに投稿してもらい、そこからどうにか新作購入につなげるキャンペーンなど)を試してみれば、また何らかの違う形のムーブメントを生む可能性もあったんじゃないかと考えたり。歴史だけはお金を払って買うことができません(M&Aなどは別)。歴史を重荷にするか財産にするかは、ブランドにとって分かれ道ですね。身近な存在のブランドほど、歴史が重荷になってしまいがちのように感じます。

 話を戻しますが、「ギャップ」は来年から、カニエ・ウェスト(Kanye West)の「イージー(YEEZY)」とのコラボラインを10年間の長期契約で販売すると発表しています。今を時めくカニエが10代の下積み時代に地元シカゴの「ギャップ」でアルバイトしていた(まさに「ギャップ」がキラキラ輝いていた時代!)縁から生まれたコラボだそうです。そう聞くと、「ギャップ」の歴史にカニエ自身の成功物語も重なって、ダブルでエモい。まさにヒップホップ的だしアメリカ的ですね。あの頃輝いていた「ギャップ」を知る世代にも、カニエ好きな新世代キッズにも響くコラボになるのかもしれないと期待が高まります。というわけで、新宿に立ち寄った際には「ギャップ」新宿フラッグス店で「ギャップ」の歴史に触れてみるのも楽しいと思います。

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「セリーヌ」2021年春夏メンズはティックトック上のユースを描写 20代と30代の記者がそれぞれの視点で解説

 エディ・スリマン(Hedi Slimane)による「セリーヌ(CELINE)」は7月29日、2021年春夏メンズ・コレクションを発表した。コレクションは“THE DANCING KID”と題してティックトック(TikTok)上でクリエイティビティーを発揮する若者をドキュメンタリーのように“記録”したもので、ティックトックが生んだE-boyや昨今のスケートカルチャーに着想を得たアイテムやスタイルを打ち出した。国内外のメンズコレクション担当としてエディのクリエイションを追いかけてきた30代記者・大塚千践「WWDジャパン」ニュースデスクと、ロックダウン中にティックトックにハマった25歳記者・丸山瑠璃ソーシャルエディターが対談し、それぞれの視点で今回のコレクションを読み解く。

丸山:「セリーヌ」の2021年春夏メンズは、見る人によって評価が分かれそうなコレクションでしたね。なので、「WWD JAPAN.com」でも異なる視点を持った記者がそれぞれの解釈を反映させたコレクション・リポートにすべく、対談形式でお届けします。早速ですが、長年エディのクリエイションを見てきた大塚さんは今回のコレクション、どう思いましたか?

大塚:いろいろな意見があるけれど、誰が見ても一目瞭然で変えてきたよね。最近だと英国での滞在から着想した不良少年のテーラード“テッズ”や、セルジュ・ゲンズブール(Serge Gainsbourg)を想起させる直球のフレンチ、そしてそれらをよりクラシックにしたフォーマルなどさまざまな引用はあるけれど、全て“フレンチシック”であることにこだわっていた。でも今季は、一見するとアメリカ西海外のスケーター風なストリート路線。エディ好きなら「いよいよ出してきたな」感があって受け止められるかもしれないけれど、戸惑った人は多いだろうね。

丸山:「え、そこから?」な質問で恐縮ですが、エディはアメリカ西海岸のスケーター風なスタイルが実は好きなのでしたっけ?ひたすらロックなスタイルが好みなのかと思っていましたが……。確かに一見アメリカ西海岸のスケーター風なストリート路線なのですが、外出自粛期間中にティックトックをずっと見ていた自分からするともう、ティックトッカーが歩いているようにしか見えませんでした。「あ!ティックトックにこういうスタイルの人いる!わかる〜!」の連続でした。

大塚:スケーターのスタイルを追求したというより、ロックも含め身の回りのユースカルチャーを積極的にフックするのが彼のクリエイションの礎だから、今回はティックトッカーがズバリだったんでしょう。正直、完全に予想外だったわ(笑)。ただ「サンローラン(SAINT LAUREN)」にいたころはアメリカの西海岸に住んでいたし、今回のコレクションにもそのムードは当然入っているとは思うけどね。実際に「サンローラン」の16年春夏メンズでも、今回のようなパームツリーやアニマル、チェックやボーダーといった柄を連打していたから、2つのコレクションをつなげる人も多いんじゃないかな。

丸山:今「サンローラン」16年春夏メンズを見てきましたが、確かに似ていますね。両者の違いは何でしょう?それとも同じことを繰り返そうとしている?

大塚:いや、「サンローラン」ではカート・コバーン(Kurt Cobain)起点のグランジを、「セリーヌ」ではティックトッカーの自由なミックス感覚を描いたという明確な違いはあって、若者の価値観の移り変わりを見ているようで面白いね。正直、ティックトックについて全く知らないんだけど、ティックトッカーってこんな自由にファッション楽しんでるんだなーというのが伝わってきたから興味出たもん。

丸山:そう、ティックトックっていろんなスタイルの人がいるんですよね。そして一つのスタイルに縛られずさまざまなテイストのスタイリングを楽しむ人もいる。コレクションは、彼らのスタイルをそのまま描写してきたかリミックスしているようでした。今回大きな引用元となったE-boyからは、部分的なヘアカラーやゴツめのネックレス、TシャツとロンTのレイヤード、ボーダーシャツ、バンドTシャツ、動くたびに揺れるピアスなどをピックアップ。一方西海岸のスケーターからは、スケーターシューズやタイダイアイテムやパームツリーモチーフなどをピックアップしていました。

そのほかにも踊りやすいスエットパンツやそこからチラ見せするロゴ入りのアンダーウエア、ロックダウンで外に出れないからこそのパジャマっぽいパンツやユルいニット、さらに古着店で見つけてきたようなアイテムの数々も、ティックトックでよく見かけるアイテム。ジェンダーフリュイドな価値観を持つユーザーが多いティックトックではスカートをはくメンズも珍しくありません。そんな“ティックトッカーあるある”なアイテムや6人のアーティストの作品を取り入れたプリントやモチーフなど、さまざまな要素で構成されていたものの、スタイリングの妙はさすがでした。こんなに複雑なのにバランスがよいスタイリングのティックトッカーはなかなかいないですね。

大塚:なるほど、エディの強みってMDのバランス感で、“売るアイテム”をちゃんと意識的に作れること。でも最近の「セリーヌ」はスタイル先行の印象で、“売るアイテム”がコレクションとちょっとなじんでいないようにも見えていたんだよね。例えばロゴ入りのアイテムとかキャッチーなアクセサリーとか。それを今回はスタイルになじませてきた、もしくはなじむスタイルを選んできたのはさすがだなと思った。

あとヘルメットにも驚いたのだけど、さすがにティックトッカーにあんな人はいないよね(笑)?会場のポール・リカール・サーキット(Circuit Du Castellet)はF-1のフランスグランプリ開催地だからそれにちなんだものだと思うけれど、ショーの場所としてここを選んだのもF-1や音楽フェスなど開催中止になった数々のイベントに対するエディの思いが込められているんだよね。最後に登場したLEDライト付きのジャケットも、そんなイベントに捧げる「夜を取り戻す」ってメッセージがあるらしい。

丸山:自分はティックトック脳すぎてヘルメットは初心者のスケーターを表しているのか!?と一瞬思ったのですが、間違いなくF-1へのオマージュだと思います(笑)。光るジャケットはそのメッセージだけでなく、ティックトックユーザーたちのベッドルームからもインスパイアされているそうですよ。彼らの間で自分たちのベッドルームをLEDライトで装飾したり、夜空のプロジェクターをつけたりすることがはやっているんです。実はあのLEDライトは「アマゾン(AMAZON)」で15ドル(約1600円)くらいで買えちゃうのも、ティーンに普及した理由の一つかもしれません。いち早くコレクションを身につけていたチェイス・ハドソン(Chase Hudson)とアンソニー・リーヴス(Anthony Reevs)もコレクション発表後に早速暗いベッドルームでジャケットを着用していました。ちなみにティーザー動画で意味深に映っていたネイルは、モデルがほとんどポケットに手を突っ込んで歩いていたので全然見えず(泣)。商品化への望みはありますか?

大塚:ネイルはまだ情報がないけど、期待はできるんじゃない?ティーザー動画であれだけ主張していたってことはシーズンを象徴するピースの一つな訳だし。色もかわいかったもんね。あとLEDライト付きのジャケットも商品化されるかわからないけど、ちょっと着てみたい。ただショー会場でもこれを着るのはめちゃくちゃ勇気いるよね。暗がりで「あいつまだ光ってるよ」的な(笑)。そういえばショーのBGMもティックトック発なんでしょ?

丸山:会場が暗転してるときにピカピカ光ってたらめちゃくちゃ目立ちますね(笑)。自分は、ライブやフェスで出演アーティストにぜひ着用してほしい!と思いました。21年夏にはショーもフェスも開催できるといいですね……!そう、BGMはティックトックでヒット音源をリリースし続けているラッパー、ティアグス(Tiagz)の「They Call Me Tiago (Her Name Is Margo)」という曲。彼はティックトック上でバズっている音をサンプリングしてくるのが特徴で、その制作の裏側も公開しているのですが、ティックトックではやるビートやバズるポイントを徹底的に研究していて、かなりの戦略家です。

エディと音楽は切っても切れない関係ですが、ティックトックは音楽市場に絶大な影響力を持っています。ビルボードのチャート上位に入るにはティックトックでバズることがもはや必須なレベルです。大塚さん、この画像、8月1日のビルボードのトップ10なのですが、このうち何曲がティックトックでヒットしたものか当ててみてください。

大塚:ビルボードといえば音楽のトレンドがわかるランキングでしょ。僕が好きなロックはいつの間にかランキングとは縁遠くなってしまったけれど、丸山さんがそこまでいうならティックトックで人気の曲も2、3曲は入ってるんじゃないの?

丸山:実は、正解は8曲です。7月17日にリリースしたばかりのDJキャレド(DJ Khaled)とドレイク(Drake)の曲以外の8曲全て、ティックトックで2万以上の投稿があります。6位の「Savage」なんて3000万投稿もあります(計測は8月3日時点)。再生回数じゃなくて、投稿数ですよ!

大塚:えええ!?8曲ってほぼ全部じゃん。ティックトックってそんなに浸透しているんだ……。

丸山:そうなんです。でも、意外とみんなこれらの曲がティックトックでヒットしているからということを知らないのではないでしょうか。もしくは、まだ世間がティックトックによいイメージを持っていないから、知ってても隠しているのかもしれません。バズっている曲をユーチューブで見ると、コメント欄で「ティックトックから来てない人は“いいね”して」や「ティックトックがこの曲を台無しにした」というコメントに大量に“いいね”がついていたりします。これを見ると、ティックトック内でどれだけ評価されていても、実際に才能があっても、ティックトックというだけでバイアスがかかって評価が低くなるという現状があるのかもしれません。だからこそエディがティックトック発の音源を採用したのはすごく意味があることなんです。もともと彼は自宅のガレージでライブしていたようなインディーズバンドの曲をショーのBGMに採用したり、ショーに招待して彼らに注目が集まるように努めてきました。そんな彼がティックトック発の曲を採用したことは、ティアグスの才能を認めてスポットライトを当てようとしているのかもしれないと私は解釈しました。エディと世界的なブランドに認められることで、ティックトック発のクリエイターに降りかかるネガティブなイメージを払拭できるかもしれません。

大塚:まあでも新しい価値観が生まれるときって、反対の声も自然と大きくなりますから。それこそエディが「セリーヌ」で初めてコレクションを発表したときも否定的な声が多かった訳で。ただ裏を返せば注目度が高いということだし、ティックトックは安全性の面などで最近情報が錯綜しているけれど、今が文化として浸透していくかどうかの岐路なのかもね。

丸山:そうですね。このコレクションやアイデアは3月までには完成していたそうで、ここまで事が大きくなる前なのですが、疑惑の真偽にかかわらず、ティックトックのクリエイターの才能は正当に評価されるべきだと思います。「よくわからないけど若い子がキャピキャピ踊っているだけでしょ」という大人が少なくない中、そういったバイアスなしにエディがきちんと評価してくれたということは、クリエイターの励みになるのではないでしょうか。そして、自身が彼らの才能を評価していることをティックトック上の元ネタを知っている人にしかわからない方法で、いわば大人にはわからない方法でBGMやアイテムなどによって若者に伝えようとしたのかもしれません。ユースへの共鳴と大人への反骨精神みたいなものは、エディのクリエイションの根幹にあるものですし、今回のコレクションでエディがいつの時代も若者から人気を集める理由があらためてわかった気がします。

チェイス・ハドソンらと同様、発表前にいち早くコレクションを身につけていたカーティス・ローチ(Curtis Roach)も、ロックダウン中に作った「Bored In The House」という音源がヒットし、タイガ(Tyga)とコラボするほどのスターになった人物なんですが、彼の「エディ・スリマンが俺の名前知ってるんだって!」というツイートにはうるっときました。

大塚:そうそう。エディがフックして知名度が急上昇するバンドが昔は山ほどいたから。若い世代のスタイルをガラリと変えたし。10年以上前にエディがお気に入りのバンドのライブに行って客のファッションチェックをしていたら、大塚調べで4割がピチピチのパンツ、2割がピタピタのテーラードジャケットを暑いのに脱がない、1割がヒールブーツみたいな感じだった記憶(笑)。そしてさっきからティックトックについて無知をさらしまくっているわけですが、ファッション界で今後影響力を高めていきそうな、最低限覚えておいた方がいいティックトッカーを教えてください!

丸山:エディが19年末に撮影してキャンペーンに起用したノエン・ユバンクス(Noen Eubanks)は絶対覚えておいていただきたいです!今回も早速コレクションを着用した4人のうちの一人になっていますが、彼を起点にエディが10代のアイドルを撮影するポートレートシリーズ、“PORTRAIT OF A TEEN IDOL”が始まったので、かなり重要人物です。彼のスタイルはまさにE-boy。今回のコレクションへの影響も大きいのではないでしょうか。

それから、「プラダ(PRADA)」の20-21年秋冬のショーにも招待されていたチャーリー・ダメリオ(Charli D'Amelio)も最低限覚えておいた方がいい人物です。彼女はティックトックで現在一番フォロワーが多い(8月3日時点で7600万)のですが、彼女が使った音源やダンスはほぼヒットすると思っていいくらい、ティックトック内のエコシステムを回すほどの影響力があります。彼女が自分の音源を使ってくれると、作ったクリエイターは大喜びして、他の人にもわかるように曲名を「チャーリーが使ってくれた曲!」とかに変えたりするんです(笑)。

大塚:全然知らなかった……。でもリアルなユースカルチャーへの理解が深まると、今シーズンの「セリーヌ」もまた違って見えて面白いね。勉強します!

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リアーナの「フェンティ スキン」が始動 知っておきたい3つのこと

 歌手であり実業家としてファッション業界のダイバーシティーをけん引するリアーナ(Rihanna 本名:ロビン・リアーナ・フェンティ)が、スキンケアブランド「フェンティ スキン(Fenty Skin)」を立ち上げ、7月31日から販売している。「フェンティ スキン」のウェブサイトから購入可能で、日本にも発送を行っている。

 2年以上の歳月をかけて開発されたという同ブランドは、リアーナが手掛けるコスメライン「フェンティ ビューティ バイ リアーナ(FENTY BEAUTY BY RIHANNA以下、フェンティ ビューティ)」で打ち出した多様化と包括性の精神を継承。ジェンダーレスでどんな肌タイプにも合う商品開発に新たに取り組んでいる。ここでは、そんな新ブランドの知っておくべき3つのことを紹介する。

商品ラインアップは?

 まずは「トータル クレンズ リムーブ イット オール クレンザー」「ファット ウオーター ポア リファイニング トーナー セラム」「ヒドラ バイザー インビジブル モイスチャライザ ブロード スペクトラム サンスクリーン」の3種類を提案。ブランドの公式ツイッター(@fentyskin)によると、いずれの製品も「肌を輝かせるとともに、毛穴やシミを目立たなくする」ことを目指したという。価格は25〜35ドル(約2600〜3700円)だ。

 「トータル クレンズ リムーブ イット オール クレンザー」は皮脂のコントロールや洗浄、外部の刺激から肌を守る効果が期待できる。成分にはバルバドスチェリー、ギンクゴ・ビロバ、緑茶、イチジク、カリンが含まれている。

 「ファット ウオーター ポア リファイニング トーナー セラム」はナイアシンアミドを配合したハイブリッド製品で、シミの発生を抑え肌のトーンを均等に導く。とろみのあるテクスチャーでコットンいらずだ。

 「ヒドラ バイザー インビジブル モイスチャライザ ブロード スペクトラム サンスクリーン」はピンクがかった日焼け止めで、白浮せず塗ることができる商品。カラハリメロン配合で、肌に潤いも与える。

「フェンティ スキン」のターゲット層は?

 「フェンティ ビューティ」同様ダイバーシティーと包括性に重きを置いており、全ての肌タイプやジェンダーを対象にしている。リアーナは自身のツイッター(@rihanna)に「@fentyskinを手掛ける上ですべての肌タイプをカバーできるように取り組むのは難しかった。でもみんなは、私は挑戦が大好きだと知っているでしょう」と投稿した。

 また「フェンティ スキン」の公式インスタグラム(@fentyskin)に投稿した動画で、自身も有色人種の女性という立場からスキンケアに関する悩みをシェアし、「最高の材料を使いたかった。そして、値段が高くなるのは避けつつ、最高な製品を作りたかった。目指したのは、私が今まで使ってきたモノ、出合ったモノ、市場に出回っていて私を混乱させてきたすべてのモノより良いモノ。素晴らしい製品や美しい肌は、みんなが手に入れられるものであるべき」と語った。

キャンペーンに起用されたのは?

 「フェンティ スキン」の発売キャンペーンには、リアーナと交友のある数々の著名人が参加している。起用されたのは、ラッパーのエイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)やリル・ナズ・X(Lil Nas X)、トミー・ジェネシス(Tommy Genesis)、モデルのパロマ・エルセッサー(Paloma Elsesser)やハリマ・アデン(Halima Aden)といった面々だ。

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「マスク荒れ」増加! 女性のリアルな声と正しいスキンケア法を伝授

 最近目にする機会が増えたのが、「マスク荒れ」に関するニュースや美容記事だ。新型コロナウィルスの流行が始まってから4カ月以上、冬場から継続している場合は半年以上も(しかも夏場まで……!)マスク着用の習慣が続いているわけで、確かにこれは過去に経験したことのない状況といえる。果たして実際に「マスクによる肌荒れ」は増加しているのか?もしそうなら、肌とどう向き合えば良いのか? 今回は、資生堂 グローバルイノベーションセンターの、菊田雅之研究員にお話しを伺った。

20~30代では、過半数の女性が「マスク荒れ」を実感中

 資生堂には、接客をつとめる店舗のビューティーコンサルタントから「コロナ禍を経て肌が敏感に傾いている」「肌荒れしている」というお客さまの声が急増しているという意見が寄せられたという。「そこで実際に20~40代の女性にウェブを通じてアンケート調査を実施し、コロナ禍後に美容で変化したことを尋ねました。『マスクをつけることで肌荒れするようになった』が38.4%、同じくマスク着用により『肌がかゆくなるようになった』が43.3%。『ニキビができやすくなった』が、34.3%という回答を得ています」(菊田研究員)。

 内訳をひもとくと、年代によってマスクによる肌荒れの内容に差があるようだ。「『かゆみが気になる』は20~30代が多く、20代が52.9%、30代が51.5%と、ともに過半数を超えました。『ニキビが出来やすい』は20代が最も多く55.9%。『肌荒れするようになった』も20代が67.6と最も多く、これは敏感に傾く人とニキビが出来やすくなる人が混在していることや、生活習慣も関係していると考えられます」(菊田研究員)。

 いずれにせよ、マスク着用により肌荒れを感じている女性は、全体の約4割近くにのぼり、特に20~30代では過半数の女性が何がしかの肌不調を感じている。確かに「マスク荒れ」は増加しているといえそうだ。

夏のマスク内は「湿度」「汗」「皮脂」の三重苦

 「マスク着用によって肌荒れが生じる原因の1つは、マスク内の湿度が高くなることです」と、菊田研究員。湿度が高いと聞くと、一見肌には良さそうに思えるかもしれないけれど……?

 「一般的な生活シーンにおいて、快適な湿度は50~60%と言われています。湿度が過剰な環境下にいると、肌の最外層を守る角層がいわばふやけた状態となります。この状態の角層は外部環境の影響を受けやすくなり、マスク着脱時に水分量が急激に変化しやすい。バリア機能にも影響を及ぼし、水分が蒸散しやすくなる。これは、お風呂上がりの肌と似た状態ですね」(菊田研究員)。

 ちなみに医療現場で用いられる密閉性の高い「N95マスク」を着用した場合、内部の湿度は約80%まで上がるという論文も。一般的な不織布のマスクはそこまで気密性が高くないとはいえ、マスク内が高湿度であるのは間違いない。

 「加えて夏場は皮膚温が上昇し、汗や皮脂の分泌も増加します。過剰な汗が原因で、かゆみを引き起こすことがある。また同じく過剰な皮脂がアクネ菌のエサとなり、ニキビを誘発する原因となります」(菊田研究員)。

マスクの「つけ外し」に要注意。温度差も肌荒れの要因?

 実はマスク荒れの要因は「マスクをつけたり外したりする行為」にも存在するという。飲み物を口にする時など、日常生活の中には一瞬マスクを外すシーンが必ず存在するはずだ(ここ最近外を歩いている時など、暑くて一瞬マスクを外し『ぷはっ』と息をついてしまう)。1日に何度か繰り返すマスクの着脱によって、肌とマスクがこすれ、角層がダメージを受けること。さらにマスク内の高温・高湿環境から、いきなり肌が外気にさらされて、温湿度の変化を受けることも問題だ。

 「資生堂の研究で、急激な温度・湿度の変化により、肌内部で酵素カスパーゼ14の働きが低下することが判明しています。カスパーゼ14は、肌のバリア機能や保湿機能の育成に関与する酵素。つまり、肌が急激な温度・湿度の変化を感知すると、バリア機能や保湿機能の低下の要因となります」(菊田研究員)。

 マスク着用でただでさえ角層がふやけて弱っているところに、突然温度・湿度の急激な変化を経験することで、バリア機能低下に拍車がかかってしまうというわけだ。これらの要因が複合的に重なった結果、多くの女性がかゆみ、ニキビ、肌荒れといった「マスク荒れ」を実感しているように思う。

マスク荒れには「低刺激のスキンケア」を

 マスク荒れやストレスの影響か、コロナ禍後「スキンケアに対する女性たちの意識」も変化しているようだ。「前述のアンケート調査では、コロナ禍を経て『肌を守れるようなスキンケアを使いたい』という回答が71.1%にものぼりました。また『保湿を重視するようになった』という回答も55.2%と、過半数を超えています」(菊田研究員)。

 具体的には、どのようなお手入れをすべきなのか?バリア機能が低下すると、洗顔や保湿、衣服が肌に触れるなど、普段なら何でもないことが刺激になる。「このような肌状態の時には、まず低刺激性のスキンケアをお使い頂くと安心です。お手入れのうえで大切なのは、肌に摩擦をなるべく与えず、しっかり保湿することです」(菊田研究員)。

 汗や皮脂の分泌が増加する夏は、帰宅したらすぐに肌に付着した汚れを落とそう。クレンジングにはとろみやクッション性のあるテクスチャーを選び、肌に負担を与えずに汚れを浮き上がらせる。洗顔料はたっぷり泡立て、泡をクッションにして同じくやさしく汚れを落とすのがポイントだ。

 「バリア機能を立て直すために、夏場であっても手厚い保湿が必要です。肌がデリケートに傾いているときは、ちょっとした摩擦も刺激になることがあります。化粧水や乳液は、手のひら全体で丁寧に塗布を。クリームも手のひらでそっと肌を押さえるようになじませると良いでしょう」と、菊田研究員。手のひらを用いると「自身の肌状態を確かめながらお手入れできる」という利点もある。

 以下に、敏感肌用ベーシックケアの注目アイテムをご紹介したい。この夏から秋にかけては、高機能敏感肌ケアが続々登場する予定であり、新製品を中心にセレクトしてみた。

肌の常在菌バランスに注目し、自ら潤う力を育む化粧水 「d プログラム」

 資生堂の敏感肌総合ブランド「d プログラム(D PROGRAM)」のベーシックケアが、2020年8月21日に新処方へと進化を遂げる。今回新たに注目したのは、肌の上に存在する「皮膚常在菌」のバランスだ。スキンマイクロバイオーム研究を背景に、敏感肌特有の常在菌バランスを解明。肌に有効な働きを持つ「美肌菌」の働きを促し、自ら潤う状態へと導くことを目的としている。「モイストケア ローション MB」は、まろやかな感触で角層深部まで潤いで満たす化粧水。美肌菌を味方につけ、バリア機能を健やかに保ちたい。

ヒルドイドの成分とコーセーの技術を融合した敏感肌シリーズ 「カルテ」

 保湿・抗炎症薬「ヒルドイド」の開発を手掛けるマルホの技術と、コーセーが長年培った化粧品の製剤技術を融合し、9月16日に誕生するのが「カルテ(CARTE)」の「ヒルドイドシリーズ」だ。マルホから医薬部外品に始めて提供される「ヘパリン類似物質HD」を配合し、肌の保湿機能を担うラメラ構造の再構築をサポート。「モイスチュア クリーム」は、濃密な感触が肌の上で滑らかにとろけ、深い潤いで密閉するクリーム。バリア機能を立て直し、もっちりとした健やかな肌へと導いてくれる。

敏感肌特有の「老化サイン」に注目したエイジングケア 「ミノン」

 1973年から敏感肌を見つめ続けてきた「ミノン(MINON)」から、8月25日に誕生するのは待望のエイジングケアシリーズだ。敏感肌に生じるエイジングサインを研究し、弾力低下の根本要因として脂肪層に注目。9種類のアミノ酸に加え、新たにハリシェイプペプチドを配合し、内側からふっくらと満たされた肌へと導く。「アミノモイスト エイジングケアミルククリーム」は、乳液とクリームの中間のようにやわらかな感触。軽やかに広がり、しっかり潤いを閉じ込めて、ハリのある健やかな肌を手に入れたい。

サステナブルな低刺激ライン登場 「雪肌精」

 ブランド誕生35周年を迎えた、コーセー「雪肌精(SEKKISEI)」に、9月16日サステナブルな処方にこだわった「クリアウェルネスシリーズ」が誕生する。透明感を追求するブルーの高機能ラインに加え、新たにホワイトの「低刺激ライン」を設置。「クリアウェルネス ジェントル ウォッシュ」は、ポンプひと押しで、ふわふわの泡が誕生する低刺激処方の洗顔料だ。きめ細かくクッション性に優れた泡は、肌を摩擦することなく汚れを吸着。肌本来の潤う力をサポートしながら、スッキリ汚れを落とせるはず。

美容液オイル配合の、敏感肌用トリートメントクレンジング 「フリープラス」

 国内外で支持されているカネボウの敏感肌シリーズ「フリープラス(FREEPLUS)」。最新作は、美容液成分を配合した「オイルセラムクレンジング」だ。メイクとなじみの良いアミノ酸系の洗浄オイルと、保湿作用に優れた美容液オイルをベストなバランスでブレンドし、自然にメイクになじんで軽やかに浮き上がらせる。べたつきを残すことなく、こすらずにスルッと洗い流せる処方は、フィット感の高いUVケアを使用する夏場の敏感肌の頼もしい味方。洗顔後は、キメの整ったしっとり滑らかな肌へと導いてくれる。

今後ますます存在感を増す「敏感肌ケア」

 今回ご紹介したアイテムは、当然コロナ禍以前から開発が進められていたものだ。つまりそれだけ、近年女性たちの間に「敏感肌対策のニーズ」が高まっていた証といえる。「マスク着用」や「ライフスタイルの変化」といった、思いもかけないコロナ禍によるストレスで、その潜在的な敏感肌ニーズが一気に加速した面も大きい。

 「肌が敏感に傾く要因には、睡眠や食生活も関係しています。ストレスケアも含め、ライフスタイル全般の見直しが必要となります」と、菊田研究員。その肝心のライフスタイル自体が、大幅な変化を余儀なくされている今。これまで以上に「敏感肌スキンケア」の存在感は、高まるのではないだろうか。

 睡眠時間を確保する、リラックスする時間を取り入れる、など自分にできる可能な範囲でライフスタイルを見つめ直すと同時に、敏感肌ケアは「揺らぎやすい肌のために、今できること」の1つでもある。実は外出の機会が増えて以降、首筋や顔に赤みやかゆみが生じ、個人的にも敏感肌ケアのありがたさを実感中だ。肌の揺らぎを感じた時の1つの対策として、女性を心理的にもサポートしてくれる存在であると思う。

宇野ナミコ:美容ライター。1972年静岡生まれ。日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、ウェブなどで美容の記事を執筆。スキンケアを中心に、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、美容医療まで担当分野は幅広く、美容のトレンドを発信する一方で丹念な取材をもとにしたインタビュー記事も手掛ける

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さあ梅雨明け! ビジネス目線でキャンプを語ろう

 東京でも8月1日に梅雨明けが宣言されて、がぜん夏休みモードが高まる!……といかないのが今年です。国や都道府県の指針はちぐはぐで、それを差し引いても世間をおもんぱかって都外への外出ははばかられる状態……。そんなウィズコロナ時代のレジャーとして一躍注目を集めるのがキャンプです。車に乗って家族だけでキャンプ場に向かえば密にもならず、自然の中でマイナスイオンを満喫できます。

 また、“モノが売れない”時代にもかかわらずキャンプ関連商品は売り上げを伸ばしており、「WWD JAPAN.com」でも当該記事は人気です。

 ここでは上級者であるキャンプライター兼スタイリストの山田昭一さん、中級者で普段は動画制作を裏方として支えるINFASパブリケーションズ デジタルマーケティング部 森川竜生、“超”が付くほどの初心者である「WWDジャパン」編集部 三澤和也の3人がキャンプ事情について話します。場所はキャンプ場への道中(車内)で、もちろん全員マスク着用の上で録音しています。8月末を予定する動画「出張インタビュー」の“編集前記”として、お聞きいただけたらと思います。

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“ファッション業界の元気印”、死す 世界中から届く山本寛斎を悼む声

 ファッションデザイナーの山本寛斎が7月21日、急性骨髄性白血病により死去した。76歳だった。1971年に日本人として初めてロンドンでファッションショーを開催して以来、和洋折衷でアバンギャルドな作風や、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)への衣装に注目が集まり、世界にその名を轟かせた。90年代からはイベントプロデューサーとしても活躍。2004年には「世界中に“元氣”を発信したい」という思いで、ファッションやパフォーマンスを融合した「日本元気プロジェクト」を開始。親交の深い芸能人やアーティスト、アスリートらをゲストに迎え、世界に向けて熱いエールを送り続けてきた。7月31日開催のショーを前にこの世を去った山本氏に、多くの悼む声が寄せられた。(この記事はWWDジャパン2020年8月3&10日合併号からの抜粋に加筆しています)

 1971年にロンドンでコレクションを発表されて、その後パリ、ニューヨークでも披露されていた山本寛斎さん。デザイナーとして、同時期に海外で活動していた僕たちは、ある意味、同志のような存在でした。寛斎さんの元気な在りし日のお姿を偲びつつ、ご冥福を心よりお祈り申し上げます。パフォーミング・アートプロデューサーとしても、活動の幅を広げられて、いつもパワフルで“元気”をいただいておりました。

 世の中が落ち込んでいるときに、元気印の寛斎さんがいなくなると日本はより暗くなります。残念です。昔、遊び仲間でデザイナーの浜野安宏さんが船で渡米することになり、みんなで横浜の桟橋まで見送りにいくと、見知らぬ男の子がすごい勢いて私に走り寄ってきました。「すいません、裏を見せてください」といきなり私の服を掴むんです。そのとき私はショッキングピンクに中はグリーンのバラのプリントという超ド派手なジャケットを着ていました。男の子の不躾な態度に驚きはしたけど、なぜか腹は立たなかった。というのも実は私も自慢の服で、なにより男の子の目が真剣そのものだったからです。この痴漢もどきの若者が山本寛斎さん。裏を見てよほど感動したのか、「是非、弟子入りさせてください」と真顔でいう。「なら、六本木のアトリエに遊びに来たら」と行ったら、翌日本当にやってきた。彼は大学1年生。24歳の私は偉そうに「親の許可がなかったらダメ」と断ると、「僕、勘当されていますから無理です」。結局、その真剣さにほだされて入門を許可。それ以来、寛斎さんは私を師匠なんて呼んでいました。

 寛斎君は独自の美意識でイマジネーションをデザインに置き換える天才。彼のポップな表現力は時代を超えて人に強烈なインパクトを与え脳内に焼き付ける。デヴィッド・ボウイに与えた作品は素晴らしい。永眠につかれた寛斎君の魂よ安らかに。 寛斎君と私は1960年代後半、渋谷西武デパートのカプセルコーナーで一緒にそのコーナーのため、服作りと年2回、各々の作品を元にショーを行なった。私と寛斎君は真逆なデザインコンセプトを持っているのを強く意識して、それを楽しみにかえることで、それからの未来に向かった時代だった。いまから5年前、偶然私の弁護士事務所でばったり寛斎君に再会した。これも不思議な縁と強く感じたのを鮮明に記憶する。余談だが、弁護士氏によれば寛斎君は私のことを良きライバルと言っていたとか。

 山本寛斎さんは、私が手掛けたイギリス・ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館のスコットランド分館のダンディーをとても気に入ってくれて、是非イベントを開催したいと言っていました。今まで彼がロシア・モスクワなどの各都市で開催してきたイベントの集大成にしたいと思っていたようです。寛斎さんが病気になる直前まで、一緒にその構想について話をしていました。彼が病気から復活したら実現できると思っていたのに、とても残念です。私は、彼の直観的なスピード感に常に励まされてきました。寛斎さんの頭の中には国境がない。最近、建築やデザイン業界で世界に出ていくのに引っ込み思案な若者が多い中で、日本が今、本当に必要とする人でした。デザインに関しても世界に向けて勢いのある強い直球を投げていたから、デヴィッド・ボウイの心もつかめたのだと思います。

 私は彼が私の弟子になりたいとやってきた日のことを、少しだけ話します。白いブレザーを着て司会をやっている写真を見せてくれて、「僕は司会もやれるのです」と白い歯を見せて笑った。まだ貧しい頃だからあまり給料も出ないけどそういうチャンスが回ってきたら、がっぷり取り組んでくれればいと、会社(日大在学中に設立した造像団という会社)に置いていた。十分にブレークさせないまま、私が1964年大学卒業と同時にアメリカ貧乏旅行にでた時は横浜の埠頭までテープを持って送りに来た。その時コシノジュンコも石津謙介さんもいた。これを機に、もっとファッションをやると言ってコシノジュンコさんの弟子になった。そのあとの彼の活躍は誰もが知るところだろう。

 あの初々しい山本寛斎を知っている私は大仕掛けのイベント、例えばオリンピックの開会式などで爆発させてやりたかった。コロナがなければ彼は何か大きな噴水をあげられたかもしれない。命も保てたかもしれない。私より3歳も若かったらしい。来年80になる私は、彼に何かデカいことを頼みに行きたかった。

 私がロンドンに魅せられていた頃、寛斎さんと一緒に時代の空気を感じていました。私の中でロンドンのファッションとデヴィッド・ボウイと寛斎さんはずっと一緒にいます。デヴィッドが初めてジギースターダストの衣装を見てとても喜んだときの、寛斎さんの輝いたお顔が忘れられません。

 初めて東京を訪れたときに、寛斎さんのお店を訪れました。彼の服から力強さと魔法を感じ、その日に買った全ての服を今でも大切に持っています。それらは私がファッションデザイナーになるきっかけにもなった大切な宝物です。去年は寛斎さんとのコラボレーションが実現しました。自身と楽観生を兼ね備えた象徴的なデザインになり、私の夢が叶った瞬間でもありました。私が彼から刺激されたように、「日本元気プロジェクト スーパーエネルギー!!」は多くの若いデザイナーたちを鼓舞すると思います。寛斎さんは私に夢を与えてくれました。皆さんも夢に向かって生きてください!

 1980年、17歳のとき、私は山本寛斎さんに出会う機会に恵まれました。当時ニューヨークのパーソンズ美術大学の学生で、彼の並外れた創造力の大ファンでした。私はほかの学生とは大きく異なり、非常に社交的で意欲的で情熱を持っていて、エネルギーに満ちていました。好奇心旺盛でファッションの勉強に飢えており、憧れの人たちから学びたかったのです。ルームメイトの仕事先だったジュエリーデザイナーのロバート・リー・モーリス(Robert Lee Morris)のおかげで初めて彼のショーを見て、本人に会うこともできました。

 寛斎さんは私のデザインへの情熱に共感してくれ、次のコレクションのテーマとなる空想上の“寛斎レストラン”を祝した「ハプニング/アフターパーティー」の企画と準備の機会を与えてくださいました。その頃、私の才能を見ぬいてくれた寛斎さんには、感謝の気持ちでいっぱいです。彼からデザイナーとして羽ばたくための翼をいただいたと思っています。親愛なる友人がいなくなるのは寂しいです。

 山本寛斎描くユニークな日本文化は魅惑的です。日本の固定観念や“アール・ド・ヴィーヴル(仏語で暮らし方や生き方を表す言葉)”を超越した表現方法は、ファッションという枠組みを超えています。彼が「ルイ・ヴィトン」のために私と協業すると決まったとき、とても光栄に思いました。彼はとても誠実で、寛大な人でした。

 もし、寛斎さんがデヴィッド・ボウイの衣装を担当していなかったらどうなっていたのだろう。ボウイがあの時、あの片足のボディースーツを着用することになったことは奇跡的だと思います。

 寛斎さんには、沢山のインスピレーションと刺激、教えををいただきました。いつも背筋を伸ばし笑顔で、ストレートに言葉をいただき、大切なことを伝えたいときには時間を作り、相手の顔を見て伝えてくださる。さらに伝えたいことがあるときには筆を取り、気持ちをしたためて下さった。人と人が持つ無限のエネルギー、本能や情、化学反応を大切にする方でした。 

 コレクションや日本元気プロジェクトでは、「元気でいよう!元気には夢や希望、仲間との絆が不可欠」と、人間の躍動的な生命力の持つ力を教えて下さいました。TBS系列「林先生の初耳学!」内の「パリコレ学」では、パリコレを目指すモデルへのアドバイスに「パリコレ以前に、自分が"今"をどう楽しむかだ!」と、モデルとして以前に大切なことを教えてくださいました。 自分に限界を作らず、挑戦し、楽しむことを教えてくれた寛斎さんの精神は、心に生き続けます。天国でもそのエネルギーで、みんなを巻き込むのでしょう。

 ぼーちゃんのぱぱ、山本寛斎さん。あなたに出会えた事で私は自信が持てました。私も音楽、アートでこの世界を笑顔に出来ると信じてる一人です。ぼーちゃんのぱぱの行動力をとても尊敬しています。ぼーちゃんのぱぱがやり続けた事、ここで終わらせない!みんなでもっともっと世界に元気を届けるから!あたし達も100%全力でやりきるからね!少しだけ会えない時間はあるけどまた一緒に叫び合って笑いあう日まであなたの希望を背負って皆んなで力を合わせていくね!さぁまだまだこれからだ〜!

 山本寛斎さんは一つの時代を作った偉大なデザイナーであり、一点の曇りなくクリエイトしていくということに人生をかけた方だと思います。一つの時代の終わりを告げられたような、虚無感を覚えます。ご病気が分かったときにいただいたお手紙は大きなA3の厚紙に長崎のハウステンボスでショーを開催された時の写真をご自身で切り貼りし、イラストも添えて、とても心の篭ったものでした。暖かい心が伝わりましたし、ご病気が良くなられることを心から祈っていました。ハウステンボスでのショーでは、私が初めてランウエイを"歩く"のではなく表現者として、ウエアリスト山口小夜子さんのように舞うように歩いた。そんな私を認めてくださり、涙までながしてくれた寛斎さんが忘れられません。いつも笑顔で、そしてクリエイションには真剣に真摯に向き合い、これからのファッションを案じておられました。そんな寛斎さんの想いを、私は心の中に宿してこれからのファッションの世界に生きていきます。今まで暖かく見守ってくださって、ありがとうございます。そしてこれからも、私たちを見守っていてください。

 資生堂のCMで山口小夜子さんの不思議な魅力に取り憑かれてた中学生の僕は、そこからパリコレを知り、ケンゾーさんやミュグレーやモンタナやサンローランを知り、寛斎さんも知りました。ブティックに母に連れて行って貰った僕はすっかり寛斎さんの魅力にはまり、ねだって買って貰った服のことは忘れられません。高校生になって晴れてバイトがオッケーになった僕は、バイトしては高額なのにも関わらず、寛斎さんの服を買い求め、寛斎ボーイなどと呼ばれるくらいいつも寛斎さんの派手な服を学ランの下に忍ばせて着ていたものです。

 ケンゾーさんの影響をとても受けている僕ですが、自分で着るのは寛斎でした。その頃寛斎さんは、エンターテインメントなショーを精力的に、国技館や武道館、ありとあらゆるところでやっていて、その演劇的なアプローチは確実に今の自分の何かを形成しています。カッコ良かった。僕にとっての永遠のミューズの小夜子さんが舞い、心中したり、太鼓を叩いたり、それこそ夢の様に素敵でした。そう寛斎さんは僕にとってスーパースターでした。文化に入って装苑賞に挑戦。いつも寛斎さんが選んでくれました。装苑賞をとることはできませんでしたが、いつも寛斎さんが褒めてくださった。自分がデザイナーになってからお目にかかることがあったときもいつもポジティブな声がけをしてくださってとても励みになりました。 小夜子さんも寛斎さんも旅立たれてしまいましたが、同じ時代に生きたものとして、あのファッションの熱を次に伝えていかなければと思っています。

 私がニューヨークから日本に移ってきたばかりだった2009年、当時「WWDジャパン」編集長だった山室一幸さんのご紹介で寛斎さんに出会いました。「日本元気プロジェクト」にお誘いいただいたとき、寛斎さんがとても情熱に溢れていたのを覚えています。そして、私は寛斎さんによる力強く美しい作品のファンで、特にデヴィッド・ボウイや山口小夜子、レディー・ガガへの衣装に憧れを抱いていました。「日本元気プロジェクト」には2012年から8年間ご一緒することができ、文化、芸術、ファッション、音楽、ダンス、スポーツ、エンターテインメントを通して、人間の精神の美しさを見せていただきました。寛斎さんの優しさと愛情に感謝しています。

 一世代上の人だったが、良き時代に生きたファッションデザイナーでツイている人だなあと思っていた。今みたいにデザイナーにマーケティングなんてものが要求されない時代で、ある意味好き放題に思いつきのままデザインしていたが、それがちゃんとシャレになっていたのがスゴイ。田舎から上京して19歳の時に西武渋谷店で初めて買った花札がプリントしてある黒の Tシャツが忘れられないな。「こんなんでいいのかな?」と思ったもんだよ。デザイナーとしてレイレイに見てみると「ケンゾー」や「イッセイ ミヤケ」に対してはコンプレックスがあったのではないだろうか。それでプロデューサーの道を歩んだのだろうが。まぁ、ファッション業界の岡本太郎みたいなもので、体裁を気にせず元気を振り撒いた人だった。新幹線で同席したこともあるけど、ずーっと話しぱなしで、何を言っているのか分からないような人だったな(笑)。「フィッチェby ヨシユキコニシ」の商標を買ってくれて応援してくれたこともある。本当に生き様が素晴らしくてうらやましい人だったなあ。

 いつも「気」の字を「元氣」と記していた寛斎さん。
 当時担当バイヤーをしていた伊勢丹新宿店TOKYO解放区でのイベントを通じて、他にはかえがたい貴重な経験をいただきました。 人やファッションへの深い愛情、温かい心。 いつどんな時も前向きで決して弱音を吐かず粘り強くベストを尽くすこと。 言葉にすると一見当たり前のことを、終始一貫して常にしていた人。イベントの度にしていた勉強会ではいつも店頭のメンバーや関係スタッフ全員へ、熱心に全ての商品を一つ一つ丁寧に語ってくださり、 熱意とファッションへの深い愛を持って接してくださるその姿勢。どんな方々とも分け隔てなく接してくださるところ。イベントが終わるたびに直筆でお礼状をくださること。そして私自身の変化のタイミングの時には、不安がっているであろうと察してくださり、お仕事を超えたプライベートの場で、寛斎さんと高谷さん(寛斎さんの長年の敏腕右腕の方)とでお話しをきいてくださった。あんなお立場になられても、こんないち企業のいちバイヤーのことを気にかけてくださっているということに 驚きと共にありがたさを感じました。

 ファッション業界に残された私たちが今すべき事は、寛斎さんが残してくださった心、 ファッションを通じてみんなを“元氣”にすること。 ファッションで彩り豊かな世界にすること。 わたし自身も寛斎さんに深い愛情を頂いた寛斎チルドレンの一人だと自負し、 寛斎さんから頂いた大きなものを沢山の方々に伝えていく役割になりたいとおもいます。 いつかまた元氣な寛斎さんにお会いできる日まで。

 巨星が落ちた。国中がコロナに苦しみ、「元気」をもっとも必要としているそのときに。病室で書いた3月4日付のメッセージには「『元気な山本寛斎』として必ず戻ってきます」と書いてあった。何か感じていたのか。 訃報を聞いて、すぐ2019年1月22日に国際ファッション専門職大学の開学記念シンポジウムに登壇いただいたときのことが頭をめぐった。 「日本のファッション界にはビジネスとクリエーションの両方の才能を兼ね備えたひとがいない。そうした人材を育てなければ日本は世界からおいていかれる」と言って、開学直前のわれわれを激励してくれた。 2月の入院、4月初めの「日本元気プロジェクト2020」の延期、そして6月初めの、映像配信への切り替え。どれほど辛い決断だったか。

映像配信の「企画イメージブック」に次のような一文があった。「いのちある限り、挑戦者でありたい!苦しい今を、苦しいときを楽しんでやる!」 寛斎さん。あなたはその通りに生きました。苦しさを楽しさに変えて。だから死の床では、きっと笑顔だったのでしょう。いつもの、あの優しい目を閉じて。 だから泣きません、私は。

 42年に及ぶ寛斎さんとの付き合いでした。元気で、優しくて、視野がとてつもなく広くて、独創の本質をついた偉大なクリエイターでした。神は、いい人から先に召されるのでしょうか。天国でもお元気で。

 子供からお年寄りまで楽しめる、豪快で笑顔に溢れたファッションは寛斎さんしか作れない価値だと思っていますし、“元気”は“美意識”だと寛斎さんに教えていただきました。孫ほど離れた僕に対して、常に敬語で、フランクに接して頂き、いつも感激していました。寛斎さんと共にクリエイトさせていただいた経験は自分の宝物です。

 いつもパワフルで、寛斎にお話しするときはアッと驚かせようとパワーがみなぎってきました。これからもとばしていきますので、とびきりのスマイル下さい。

 1979年から日本から来ている唯一のフォトグラファーとして「カンサイヤマモト」のパリコレを撮影しました。黒子に徹して表に出てこないデザイナーが多い中で、寛斎さんはショーの冒頭に歌舞伎の黒子に扮してモデルより先に登場しては会場中に響き渡るような声で「いくぞ、いくぞ〜」など叫ぶわけ。それは、海外メディアも喜んで拍手を送りますよ。パリコレの中で日本人がまだ肩身が狭かった当時、その元気が嬉しかったです。それ以降、フォトグラファーがショーの始まりを催促する言葉は、日本語の場合は「いくぞ、いくぞ〜」になりました。本当に明るくて、サービス精神が旺盛な方でした。

 山本寛斎の死を前にして感じるのは、ファッション・デザイナーという存在の脆さである。山本寛斎のファッション・デザイナーとしての才能が突出しているのは述べるまでもないのだが、それが生涯にわたって十全に発揮されたかということになると疑わしい。ただし知名度ということになるとこれもまたファッション・デザイナーの中では突出した存在だったわけで、このあたりに山本寛斎という複雑な存在を読み解く鍵がある。実はその「人間 山本寛斎」のことを知りたいと思い、今年1月に弊紙「ファッション業界人物列伝」への登場を依頼した。すると、6月に六本木ヒルズでビッグイベントがあるから、それに合わせた連載にしてほしいとの返信が山本寛斎事務所からあり、さらにギャラの問い合わせもあった。ずいぶん「シツケ」がいいものだなぁと感心したのを覚えている。もう山本寛斎はイベントプロデューサーとしてタレント(太田プロダクションと業務提携)の道を歩んでいるのだった。思えば、1980年代半ばにやまもと寛斎社が経営破綻してからはイバラの道を歩んでいた。

 ファッション・デザイナーとしてのピークは、日本ファッションのパイオニアとして、71年にロンドン・コレクションに登場し、その後74年にパリコレクション、79年にニューヨークコレクションに参加して、世界主要都市に「ブティック寛斎」を出店したいたあたりだろう。自社経営破綻後は「鉄丸」という芸名で、イベントプロデューサーの仕事がメインになってしまった。「鉄丸」という名前を使ったのは、ファッション・デザイナーとしての自負がまだあったからなのだろうが、いつの間にか「鉄丸」という芸名も消えて、イベントプロデューサー山本寛斎が前面に出て、「元気」や「気合い」を前面に出すようになっていった。新型コロナウイルスが跳梁跋扈する今の時代に。沈滞する日本を元気にする男として活躍の機会はきっと増えていただろうに、実に残念な死だったと思わずにはいられない。

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ローランドベルガーとリバースプロジェクトがタッグ 環境スコアを算出するサービスを始動

 企業のサステナビリティへの取り組みの評価基準はこれまで極めて曖昧だったが、その取り組みをスコア化するサービスが始まる。伊勢谷友介が代表を務めるリバースプロジェクトはこのほど、ドイツを本拠とする経営戦略コンサルティングのローランド・ベルガー日本法人と連携して、アパレル製品の製造工程における環境負荷を測定するツール「リバースプロジェクトスコア(RPS)」のサービスの提供を始める。RPSは世界的な業界団体、サステナブル・アパレル連合(SAC)が開発した「ヒグ・インデックス(HIGG INDEX)」を参考にしたもの。ヒグ・インデックスは、①素材(素材ごとに環境への影響を定量評価)、②工場(サプライヤーレベルで工場の環境汚染状況を評価)、③ブランド(企業の労働条件)をもとに環境スコアを評価するものだが、RPSはより簡素化して「SDGsの取り組み」「素材の環境負荷」「労働環境と認証」の3軸を基準に評価を行い、その商品を100点を満点として点数化するものだ。スコアはタグに表示し、企業のサステナビリティへの取り組みを消費者に対して“見える化”していく。2021年春夏シーズン向けに一部のブランドで試験的に導入していく予定で、21-22年秋冬から本格的にサービスを提供する。同企画に携わるローランド・ベルガー日本法人パートナーの福田稔氏に、取り組みの背景を聞いた。

WWD:「ヒグ・インデックス」に注目した理由は?

福田稔ローランド・ベルガー パートナー(以下、福田):「ヒグ・インデックス」は、業界のグローバルな売り上げの約3割を占める200社以上の企業が加盟している、業界でも影響力の強いNPO団体SACが開発したもので、アパレル製品の環境負荷をもっとも詳細に“見える化”している指標だからだ。しかし、「ヒグ・インデックス」の課題はスコアリングの仕組みが詳細であるがゆえに複雑なところ。そこで今回日本の企業や消費者にとってもより分かりやすいツールが必要であると考え、RPSの開発に至った。

WWD:「ヒグ・インデックス」は複雑なツールだが、日本向けのRPSで改善した点は?

福田:RPSは消費者を啓発していくことが目的のため、できるだけ分かりやすい指標を提供したいと考えた。「ヒグ・インデックス」では、スコアが低い方が環境によいという表示で点数のスケールも幅があって複雑だ。そのためRPSではスコアを100点満点とし、点数が高い方が環境によいという直感的に理解できる表示にこだわった。またSACに加盟している日本企業はファーストリテイリングや東レなど5社しかない。RPSは日本企業にとってハードルとなる複雑さや言語の問題を解決し、日本でも“見える化”を推進する一助となるだろう。

WWD:企業はなぜ“見える化”に取り組むべきなのか?

福田:現在、グローバルでESG(環境・社会・ガバナンス)銘柄に対して投資が進んでいる。ESGにきちんと取り掛かる企業は成長性が高く、利回りがよいということが分かってきているからだ。当然ESGには透明性を持って活動内容を把握し、公表していくことが前提となる。投資家へのアピール以外にも、環境意識の高まっている消費者や従業員に対する影響もあるだろう。

WWD:日本国内では消費者や従業員の環境に対する意識はまだまだ低いが、それでも透明性を推進するべきか?

福田:中期的には日本でも消費者からの圧力が増してくるだろう。4月にわれわれが行なった消費者調査では、購買時にサステナビリティを意識する20代はかなり増えていることがわかった。特にファッションに対する関心が高い層では半数近い人が意識していると回答し、2割程度の人々はサステナブルなブランドを選ぶと回答した。20代のモード層の意識が高まると、5年ほどかけて一般にも普及していくというのがこれまでのわれわれの経験則だ。短期的には、NGOやNPOなどの第三者団体による情報公表が予想されるため、リスクマネジメントの一環としても取り組むべきだろう。

WWD:実際に情報を開示するなど透明性を担保して企業価値が上がった事例はあるか?

福田:ESG銘柄は成長性が高いことが前提だが、なかでもアディダス(ADIDAS)は、環境問題を事業機会としてうまく捉え、それがきちんと投資家に評価された企業の一つだ。彼らは20年以上前からサステナビリティに取り組み、2015年には海洋プラスチックゴミをリサイクルしたスニーカー事業を立ち上げた。かなり先行投資も行なっていたようだが、今は数百億円の事業に成長し、株価にも反映されている。最近ではESGや社会課題を事業機会にとらえるスタートアップも出てきており、資金調達に成功している。

WWD:今後はRPSを用いたスコア表示やカーボンフットプリントの表示など詳細な情報開示が求められていく?

福田:消費者は「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」や「グッチ(GUCCI)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」などを擁するケリング(KERING)のような、日本の企業とは違うレベルで環境問題に取り組む企業やブランドの存在に気付き始めている。これまでの“ちょっとエコ”のような柔らかい打ち出しでは消費者に響かなくなってきているのが現実だ。より本質的な活動が見られていく中でRPSのようなツールをうまく活用してほしい。

WWD:これから透明性に取り組む日本企業に向けてアドバイスはあるか?

福田:新型コロナウイルスの影響で多くの企業が苦戦を強いられているが、2~3年後に落ち着くタイミングがくる。その間に、先日「セシルマクビー(CECIL MCBEE)」が全店舗撤退したように業界の新陳代謝が進むだろう。ここで生き残るためにはまず足元をやりくりしながら企業の存続を図ることが最優先だが、消費者の価値観の変化を見据えて早めにサステナブルなビジネスへの転換を図っていくべきだろう。

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男性が肌で歳を感じたのはどんな時? オルビス「ミスター」新製品発売で調査

 オルビスが8月21日に発売する、メンズコスメ「ミスター(MR.)」の新製品オンライン発表会が少人数制で行われた。多くのブランドのオンライン発表会では、画面オフ、音声オフが求められる中、「良かったら画面も音声もオンにして、チャットも使って、みなさんご一緒に体験しながらやりませんか?」(川越由郁子マーケティング戦略部PRグループ)と呼びかけられ、アットホームな雰囲気で進んだ。

 今回の新製品はスペシャルケアの「ミスター フェイシャル ナイトクリーム」(50g、2700円)と、「ミスター ビアード&アイブロー ペンシル」(2色、各2000円)。「富士経済によると、2019年のメンズフェイスケア市場は、18年に比べて10%増と伸びています。男性はスキンケアで自分の肌への見方が変わってきます。だから、保湿力や感触など女性以上にこだわる人も多いですね」。ここで川越PRグループらクイズの出題が!

 「男性に肌で歳を感じたと思ったときは?と聞いた答えトップ3をチャットに書いてください」。周りの男性を思い浮かべながら、「1位シミ、2位たるみ、3位シワ」と回答。ほか男性出席者は「まぶたのたるみ、首のシワ」や「ほうれい線!」など。ここだけでも、なるほどと思ったが、オルビスの調査結果は、「1位肌の艶が感じられないように感じる、2位ハリの低下で表情が疲れて見える、3位肌荒れ」が正解。男性の美意識の高さに驚いた。

 そんな悩みを持つ男性に、ナイトクリームは週2、3回、夜のスキンケアの後に保湿液の代わりに塗って寝ると翌朝、潤いに満ちたイキイキとしたハリと艶の肌に導くというもので、アイブロウは、自信に溢れた印象を引き出すペンシルだという。

 ここでアイブロウ講座。彫刻刀のようなペン先で、太い部分や細い部分を使って自由自在に描き足すと説明を受けると、参加したプレスの男性たちが眉を描き描き。これは髭にも使えるというので、髭も描き描き。難しさはなさそうで、意識高い男性だけでなく、今からメイクに挑戦する男性にも受けそうなアイテムだ。

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ビューティがほぼ完全オンライン発表会なのは、なぜ⁉︎ エディターズレターバックナンバー

※この記事は2020年6月26日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

ビューティがほぼ完全オンライン発表会なのは、なぜ⁉︎

 先日、最近「WWDJAPAN.com」編集部に仲間入りした2年生から、「ビューティは全てオンラインなのに対して、ファッションはもう現地開催なんですね。。w(原文ママ)」というSlackが届きました。毎日、ファッション&ビューティのスケジュールを管理・運用しているからこその気づきです。

 そうなんです。ビューティは今、秋冬製品のオンライン発表会の真っ只中。対してファッションの秋冬コレクションの情報提供は、アポイントメント制による3密を避けたリアルな展示会か、プレスリリースの丸っと送信のいずれかがほとんどです。オンライン展示会を開いたのは、僕が知る限り「ギャップ」くらいだったでしょうか?ん~。多くは語りませんが、「やっぱビューティ、チャレンジしてるな」って思います。

 「WWDビューティ」スタッフに話を聞くと、課題の多いオンライン発表会もあるそうです。ただ体感する限り、完成度は日を追うごとにレベルアップ。小さなメーカーさえ、ちょっとしたムービーをインサートしながらのZoom発表会に挑戦しています。先日出席した「アディクション」のオンライン発表会は、YouTubeでライブを限定配信する仕様でしたが、「コレは、エンドユーザーに公開しても良いクオリティー。ブランドでここまでやれちゃうと、メディアは一体、何をすれば良いのだろう?」と考えさせられるレベルでした。MCによる淀みなき進行、冒頭(視聴者を掴むため、YouTubeでもっとも注力すべきパートです)に登場したクリエイティブディレクターKANAKOさんの事前収録動画、ブランドマネジャーによる解説は、リアルな製品発表会と遜色なし。アーティストによる実演はカメラが寄ってくれるからリアルより分かりやすいものでした。さすがアーティストは、5種類のテクスチャーのアイシャドウを全て使い、渾身のアイメイクを完成させます。その最中に同僚の福崎デスクと「アイメイクで5色塗るのね(笑)」なんてLINEをしていたら、今度は着任したばかりのPRがセルフで「2色でできる簡単アイメイク」を伝授してくれました(笑)。「このLINE、流出している?」と思ったくらい、視聴者の思いに答えるナイスな台本です。無論、限定公開とはいえブランドマネジャーやPRは“晒す・晒される”ことに慣れているワケではないかと思いますが、小姑のような気持ちになって見つけた“アラ”さえ気になりませんでした(笑)。例えばブランドマネジャーは「絶妙」という言葉を幾度となく繰り返していらっしゃいましたが、「そこまで言うって、本当に『絶妙』なんだろうな」と納得したほどです(笑)。

 視聴するこちら側も、福崎デスクとのLINEのように“ながら”参加ができて良かったです。私はランチを食べながら、時々メールを返しながら、でも「WWDジャパン」編集長の向からの突然のショートミーティングのお誘いは断るくらいは本気になって視聴しました(笑)。オススメは「スマホで見ながら、PCでは別の仕事をちょっとだけ」くらいかもしれません。オンライン発表会、良いな。「アディクション」の場合は事前に製品が届き、現物を確認しながら発表会に参加できます。コレができるのはビューティの特権でファッションは難しいかもしれませんが、トライしても良くないですか?

 ファッション側はなぜ、リアルなのでしょう?デジタルは慣れてないから?発表会で伝えたいモノが、画面より大きいから?見せたい商品が、山のようにあるから?実際のコミュニケーションを欲しているから?考えられるさまざまは、新しいモノに挑戦しない言い訳に思える時もあります。だって「アディクション」も、アイシャドウは99色ありますが、事前に送ってくれたり発表会中に見せてくれたりの色はせいぜい十数色です。色はいっぱいあるけれど「推し」はハッキリしているのかもしれません。だとしたら、それも潔いですよね。仮にファッションの世界が、いっぱいあるから「推し」がハッキリしていないのなら、それはそれで問題なようにも思えます。

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即完売した「ニューバランス」の7万円越えスニーカー 競技用シューズの職人が2年がかりで挑んだ渾身の“1300”

 「ニューバランス(NEW BALANCE)」は、“M1300”の発売35周年を記念し、オールハンドメイドの日本製モデル“M1300JPJ”を7月に数量限定で抽選販売し、即完売した。発表直後から話題となり、予約サイトに抽選の申し込みが殺到。6万8000円(税抜)という高額にもかかわらず、激しい争奪戦となった。“M1300”は1985年に発売されて以来、衝撃吸収性の高い“エンキャップ(ENCAP)”を用いた履き心地の良さとクラシカルな見た目で長年愛されているモデルで、“M1300JPJ”は靴職人の三村仁司が率いる「ミムラボ(M.Lab)」が約2年をかけて制作した。「ミムラボ」は数々の競技用シューズを製造してアスリートを支えてきたが、タウンユースのシューズを手掛けたのは今回が初めてだ。「商品化にはさまざまな苦労があった」と語る三村修司「ミムラボ」専務取締役に、同モデルへの思いや制作過程のエピソード、今後の展望などについて尋ねた。

WWD:いつからこのプロジェクトに取り掛かった?
三村修司ミムラボ専務取締役(以下、三村):2年ほど前に声を掛けてもらい制作に取りかかりました。日本のクラフツマンシップを世界に発信するという大きなコンセプトはありましたが、アニバーサリーを祝うポップな雰囲気にするのか、あるいは上品に仕上げるのか、完成形のイメージは全く浮かんでいませんでした。「ニューバランス」とはパートナーシップを結んでいるとはいえ、最初は完成するのかどうかはとても不安でした(笑)。しかし、価格帯やマーケティングプランが定まってきたとき、「パッと見て上品なシューズ」という確かなイメージが持てるようになりました。その瞬間から、迷わず制作に打ち込むことができました。

WWD:ミムラボとしてタウンユースのシューズを作ったのは初めて。競技用シューズと異なり難しかった点は?
三村:いつもは選手のサポートだけを考え、最新技術を駆使したマーケットと別軸のシューズをゼロから作っています。一方、今回は「ニューバランス」の“1300”という確固たるベースがあるので、このモデルの持つ価値を継承し、新しい見え方にアレンジする必要がありました。デザインは無限大ですから、試行錯誤を繰り返し、何度もフィードバックをもらってじっくり作っていきました。サンプルをもらい、木型に当て込んでパターンを完成させるまではおよそ1年。その後もステッチ幅や縫製カーブの角度など、細かな部分までやりとりしながら、ベストなデザインを目指すために微調整を繰り返しました。

WWD:大まかなデザインが決まってからはスムーズに制作は進んだ?
三村:いいえ、その後もいろんな壁にぶつかりました。例えば、今回のモデルは本革をはじめとした自然素材のみを使うことで日本のクラフツマンシップを表現していますが、私たちが手掛けている陸上やランニングは人工皮革がメインです。本革を使うことはほとんどないんです。慣れない素材だったので、単純な加工でもいつもの感覚と異なるため、いつも以上に時間をかけて丁寧に制作していきました。

WWD:独特な色合いを出すのも苦労したとか。
三村:そうなんです。“1300“はメッシュ部分のブルーがかったグレーをはじめ、その独特な色味がオーソリティーにつながっています。これを本革で再現するのはとても難しく、試作品を何度も作りました。また、パーツ一つ一つのコンディションが微妙に異なるため、完成後の仕上がりが左右で違うこともありました。これを防ぐために、コンディションのいいパーツのみを選定し、それぞれに番号を振るなど、徹底した管理のもとで作り上げていきました。

WWD:本革で“1300“の形を三限するのは大変だった?
三村:とても骨の折れる作業ばかりでしたよ。木型を入れたまま2〜3日寝かすことで革を馴染ませ、パターンの再現性を高めるなど、高級シューズメーカーが行うような工程を採用し、一つも妥協することなく作りこみました。ニューバランスさんの本気の姿勢にも刺激を受けて、世界に誇れる仕事ができたと自負しています。

WWD:タウンユースも今後は積極的に制作していきたい?
三村:工房という雰囲気で一つのシューズを作り込めることが私たちの強み。この協業を経て、「この強みはトレーニングだけでなくファッションにも生かせるかも」と考えるようになりました。ニューバランスとのお仕事はもちろん、そのほかの可能性も含め、この工房からメイドインジャパンの価値を発信していけたらうれしいです。

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アトモス社長・本明秀文のスニーカーライフ番外編「世界のRIEHATA、そのすごさ」

 スニーカーにまつわる噂話のあれやこれやを本明社長に聞く「WWDジャパン」本紙での連載。今回は番外編として、日本人で唯一「ナイキ(NIKE)」のグローバルアンバサダーを務めるダンサーのRIEHATA(リエハタ)を迎え、「WWD JAPAN.com」でスニーカー対談を実施する。新型コロナで窮地に立たされたファッション業界と同様に、ダンス界もイベントやレッスンが中止になるなど影響は大きい。そんな状況やムードも踏まえ、スニーカーとダンスについて聞いていく。

WWD:6月にはウィメンズ業態の「アトモス ピンク(ATMOS PINK)」とRIEHATAさんのコラボアイテムを発売しました。お互いの共通点は何ですか?

本明秀文社長(以下、本明):RIEHATAさんはグローバルで生きているから僕たちのビジネスとも共感できるところが多い。一緒に作ったアパレルは海外からの問い合わせが本当に多いよ。それもアジアじゃなくて欧米から。今はコロナでEMS(国際スピード郵便)の料金が2.5倍するから発送できないんだけど、ビリーバー(信者)がすごくいる。コロナでビリーバーがいないブランドやモデル(型)は終わるってことが浮き彫りになった。僕たちもよくコラボするから分かるんだけど、インスタのフォロワー数と売れ行きは全く異なるから、大事なのはどれだけ深くファンとつながっているか。

WWD:RIEHATAさんはいつから「ナイキ」のアンバサダーを務めているんですか?

RIEHATA:3年ぐらい前に初めてあいさつさせてもらって、そのときはイベントに出演しただけだったんですけど、去年の夏に正式にグローバルキャンペーンのモデルに使ってもらいました。オフィシャルアンバサダーをさせていただいているのはここ1~2年ですね。

本明:ナイキにも“グローバル”と“ジャパン”があって、僕らが日本でなじみがあるのはナイキジャパンが声を掛けた日本のアンバサダー。でもやっぱり“世界のナイキ”だから、グローバルのナイキは世界で通用する人しか使わない。RIEHATAさんは個性的なファッションだけど、何から影響受けたの?

RIEHATA:やっぱり小さい頃に見ていた黒人のミュージックビデオですね。ミッシー・エリオット(Missy Elliott)とかTLCとか。その頃まねしていたファッションは今も好きなんです。自分で新しいファッションとして着るのも楽しくて、小さい頃から古着しか着ませんでした。ブランドのお店に行けば絶対かわいいモノがあるんだけど、たくさんある古着の中から選ぶのが楽しくて。そこからどんどんファッションが個性的になっていったんです。

本明:なるほどね。ちなみに、どんなスニーカーが踊りやすい?

RIEHATA:断トツ踊りやすいのは“エア フォース1(AIR FORCE 1)”ですね。“エア マックス(AIR MAX)”はソールが厚いからバランスがよく見えたり、重厚感があるからステップを踏んだときにかっこよく見えるんですけど、重いので長時間踊っていると疲れます(笑)。個人的には“エア フォース1”は汚れてもかっこいいから。同じオールホワイトだけでも5足ぐらい持っていますよ。

本明:オールホワイトは人気で欠品しているんだよね。入荷してもすぐに売り切れる。

WWD:ずっと「ナイキ」のスニーカーで踊っているんですか?

RIEHATA:実は10年ぐらい前は「バンズ(VANS)」や「コンバース(CONVERSE)」で踊っていたんです。西海岸でスケーターがスキニーパンツに「コンバース」で滑っているのを見てかっこいいなと思って。その頃の日本のダンサーのスタイルって、Tシャツにスエット、ハットが定番だったんですけど、ダンスしないような格好で踊るのがマイブームで。でもソールが薄いから脚にはよくないんですね。ダンスの量が増えてくるとファッション性だけじゃダメだなと思って、それで“エア フォース1”を履くようになったんです。

本明:僕も“エア フォース1”がかっこいいなと思ってずっと履いていた。長くスニーカーの仕事をしているから重労働もあるけど、一番長く履けて、作業しても壊れなかった。

RIEHATA:ダンサーが履いてもかっこいい靴だし、逆にダンス初心者でもそれさえ履けばおしゃれに見えちゃうというか。誰が履いても間違いないですよね。

本明:僕は“エア フォース1”のコレクターだったんだけど、数年前に「ナイキ」に私物のコレクションを全部売っちゃった。180足ぐらいあったんだけど、全部値段を出してくれて。今は本社(ポートランド)のアーカイブルームに展示されているよ。

WWD:一番高かったスニーカーを覚えていますか?

本明:まとめて売ったから覚えてないなあ。でも最初に発売された1982年のオリジナルの“エア フォース1”とかを箱付きのデッドストックで持っていたから、それかも。欲しいからって探しても見つからないからね。

WWD:なるほど。ところで、今RIEHATAさんが着ているのが「アトモス ピンク」とコラボしたカットソーですか?

本明:そう、変わったデザインだよね。僕も着たいから大きいサイズを作ってほしいとお願いしたんだけど断られた(笑)。みんなと同じようなスタイルだけど、ほかとは違う感覚を「ナイキ」は求めている。

WWD:違うものは受け入れられない可能性もありませんか?

RIEHATA:そうですね。見た目だけで判断したらみんな受け入れられないと思うんです。私には似合わないとか、合わせる服がないとか。だけど私はモチベーションから変えていきたい。これを着たら新しい自分になれるよとか、元気になれるよとかでもいいんです。インスタでも“#riehatachallenge”(ほかにも“#riehatatokyo”など複数)とかのハッシュタグを付けて、私と全く同じ格好でファンの子たちがダンスをあげてくれるんですね。今はコロナで出かけることも少ないけど、私の作った服を着ることでダンスしようとか、モチベーションアップになればいいなと思ってます。

本明:だからビリーバーが増えるんだね。それにRIEHATAさんはダンスがうまいから説得力がある。練習しないとうまくならないものだから、努力しているっていうことが説得力。それも言葉で言っているわけじゃなくて、肉体で表現しているからグローバルでも通用する。これって本当にすごいコミュニケーション能力。言葉で説得するんじゃない新しいコミュニケーションをファッションも取り入れていかないとこれからは発展しない。そういえば、スニーカーをファンに贈ったとか?

RIEHATA:そうなんです。先日200万円分ぐらい自腹でスニーカーを買って、100人ぐらいに贈りました。コロナの時期だったので、練習できないしイベントが中止になって、その間に目標がなくなったりプロのダンサーになる夢を諦めそうになるじゃないですか。だから希望を持ってもらいたいなと思って、そういう企画をしたんです。私のオンラインレッスンを受けてくれた1000人以上の投稿を全部見て、練習しているかとか忠実に再現できているかとか、情熱あるかで選びました。「ナイキ」のECで全部自分で選んで注文して、一人一人の住所も入力した(笑)。届いた人がインスタに載せてくれるんですけど、そういうのってその子もモチベーションが上がると思うんですよね。だから私は、その人のライフスタイル全部を応援したくてやってるんです。スニーカーを履いてSNSにアップすることで、ファッションやメイクのモチベーションも上がるし、スニーカーがライフスタイルを豊かにしてくれると思って。新品なので自粛中でも家でも踊れるし、ダンスをやめないでねという願いも込めています。

本明:スニーカーがみんなを幸せにしてくれるってことだね。

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進化する幸せ産業(4)フィットネス編 ピンチをチャンスに転換したオンラインレッスン

 人との接触や新たな交流を避け、ライター業の打ち合わせ、取材はオンラインのみとなった。初対面の相手とZoomでインタビューし、休業中の店舗が多いためリサーチもネット上で。今までにない方法で記事をまとめるという作業が続いた。

 プライベートではその場で出向くフィットネスの機会が皆無になった。週に数回通っていた空手道場は3月の時点で閉館した。ジムやヨガスタジオに定期的に通っていた友人たちも、体を動かす場がなくなったと途方に暮れていた。健康志向の高い層にとって日々のフィットネスは娯楽ではなく、必要不可欠なメンテナンスだからだ。体を動かさないとストレスがたまり、気持ちも落ち込む。さまざまなイベントがキャンセルされ、スタジオ閉鎖を余儀なくされたフリーランスのトレーナーや経営者にとっては経済的な大打撃だった。

自宅にいながら継続できるオンラインレッスンを発信

 そんな中、いち早く、オンラインによるレッスンを導入したフィットネス関係者も多かった。
たとえば元世界陸上日本代表のマラソンランナー市河麻由美氏は、ランナーのためのピラティス講座をZoomで立ち上げ、スタジオと各受講者の自宅をつないで発信した。市河氏はマラソン大会のゲストランナーとしても出演するトップランナーだけに、30分1500円でセミプライベートレッスンが受けられると話題になった。

 ランニングコーチ、大角重人氏はオンラインで「マラソンの学校」を開設。睡眠や栄養学など座学の講座や、Zoomでつながりながらそれぞれのコースでともにインターバル走に挑むトレーニングなどを実践し、“一体感”を共有できる場を提供した。お灸やケアなどの座学の講義は今も継続して人気だという。

 また元プロバスケット選手や元タカラジェンヌ、現役モデルや介護士など多彩なインストラクターがクラスを持つ京都の「テラスヨガスタジオ」では自粛期間中、毎日無料でレッスン動画を配信。日替わりでインストラクターがインスタライブで発信した。もともとはスタジオでレッスンを継続できない会員向けフォローではあったが、誰でも受講が可能だったので新たなファンの獲得にもつながった。

かくいう私もその一人だ。「体が硬いのでスタジオ内では気後れする」「あのぴったりしたウエアが恥ずかしい」とヨガには苦手意識があったのだが、自分の姿を他人に見せないインスタライブなのでビギナーでも気軽に参加でき、自宅なら攻めたヨガウエアにも挑戦できる。朝10時という決まった時間に体を動かす習慣ができたのも、自粛期間中にはいいリズムとなった。

 インスタライブではインストラクターへの質問などが書き込め、コミュニケーションが取れるのだが、京都を離れた元会員が再びレッスンを受けられてうれしいというコメントが印象的だった。スタジオ再開まで無料で続いたこのオンラインレッスンは今後、有料コンテンツとして開設されるという。

自由度の高いオンラインならではのメリットも

スタジオが再開し、リアルなフィットネスが日常となっても、「急場しのぎ」のはずだったオンラインレッスンの継続を望む声は多かったという。実際、オンラインならではのメリットがあるのだ。

●スタジオや道場まで行かずとも、どこでも(ユーチューブなどの場合)いつでも受講できる。多忙でも自宅で参加でき、通う時間や交通費をカットできる。
●通常のレッスンに比べて、受講料がリーズナブルであることが多い。
●一度に多くが参加できる場合も多く、予約のとりにくい人気講師のクラスでも受講しやすい。
●録画したレッスン動画をその後も配信している場合もあるので、気に入ったクラスを繰り返し受けるなど、反復できる。
●ユーチューブなどの場合は、キーワードが検索でき、面識がなくてもそのクラスにたどりつける。
●トライアルレッスンとして参加することで、自分に合ったタイプのインストラクターを選べる。
などハードルはぐっと下がる。オンラインレッスンを続けるうちに、リアルな場でも学びたいとスタジオに足を運ぶ人もいるだろう。オンラインレッスンは新たなファンへの門戸を広げる。

 また、好きな時間に好きな場所で受けられるので、子育てや介護などで家を空けられない状況でも継続しやすいという声も目立った。多忙なビジネスパーソンにとっても、忙しい週日はオンラインで、週末など時間に余裕があるときにスタジオに足を運ぶ、などオンラインとリアルなレッスンを組み合わせればフィットネスの機会は増える。

メディアイベントもオンラインを活用し新たな広がりを

遠隔での参加が可能になり、フィットネスはより身近に、より気軽になった。そのタッチポイントとしてオンラインレッスンはこれからも支持されるだろう。

 ハースト婦人画報社のオンラインマガジン「ウィメンズヘルス」でもインスタライブで人気インストラクターたちのオンラインレッスンを無料配信した。編集者自らが生徒役として参加することでより臨場感のあるコンテンツとなり、4カ月で延べ2万人が参加した。

 2019年に延べ2000人を動員したフィットネスフェスを開催した実績がある「ウィメンズヘルス」は、オンラインによるイベント「LOVE BODY+」をこの10月に企画している。多くの人気インストラクターが賛同し、1か月で50クラスを開講する。5000円の参加費で自由に受講でき、一部無料公開クラスの参加者も含めると、2万人が参加する見込みだという。「物理的な壁を越えて日本中、世界中の女性に届けたい」と影山桐子編集長は語る。「LOVE BODY+」では一部無料レッスンも配信されるので、新たな層がフィットネスに触れるきっかけとなるだろう。

 ちなみに私が通う日本空手協会は道場での稽古を再開しつつも、この期間に通えない道場生を対象にオンラインによる指導を開始した。指導員を派遣できない遠隔地や海外の道場へのフォローも兼ねている。

 リアルな場での交流を大切にしつつ、各所からつながることで頻度や層を広げる。オンラインはより快適な環境のためのツールになるのだ。

間庭典子(まにわ・のりこ)/フリーライター:婦人画報社(現ハースト婦人画報社)を退社後、ニューヨークへ渡る。現在は東京を拠点に各メディアに旅、グルメ、インテリア、ウエルネスなど幅広いテーマで執筆。著書に「ホントに美味しいNY10ドルグルメ」「走れば人生見えてくる」(共に講談社)など

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#敦子スメ「新月・満月」ノート 今回の満月(8月4日)は、みずがめ座の賢者ファウンダーが作ったコスメで進化を狙う

 この連載では、新月・満月の流れを最大限に引き出すためのサポートをしてくれるコスメやインナーケアアイテムも紹介していきます。第16回は8月4日の満月とおすすめコスメについてお伝えします。

今回の満月(8月4日)はみずがめ座

 今回の満月(8月4日)はみずがめ座で起こります。みずがめ座と関連しているのは天王星という星で、変化・改革・突破の星といわれています。理想をもとに今までなかったものを作り上げたり、今までの固定観念を壊すような新しいアイデアやコンセプトを生み出したりするのが得意な星座でもあります。この日の付近の会議ではプロジェクトのあり方やメッセージをあらためて考えてみる、なんていうアクションもおすすめです。

今回の満月コスメ

 みずがめ座のファウンダーに作られたアイテムをピックアップします。みずがめ座の賢者たちが作った商品はユニークでコンセプチュアルなんですよね。例えば、オーガニックコスメの根強い人気ブランド「アルジタル(ARGITAL)」のジュゼッペ・フェラーロ(Giuseppe Ferraro)博士の商品を生み出すきっかけは、身近な人の困っていることを解決したり、世の中に必要なものを創造したりすることだと聞いたことがあります。電子機器を使用する人のためのシャンプー「ピュリファイングシャンプー」は、これからの時代にまさに必要なもの。それを環境への負荷を少なく、有機的な材料で作るなんて自然の摂理に沿った素晴らしいアイデアですよね。

 トップネイリストの渡邉季穂さんが生み出した「ウカ(UKA)」は、ネイルに新しい価値を生み出したブランド。いつもわくわくさせるようなパッケージやネーミングのアイテムに飽きさせられることがありません。オンラインショップの名前が「ウカ カウ」なんてところも洒落が効いていてチャーミング!この夏のおすすめは、ハッとするようなはっきりとしたペディキュア用ネイルのグリーンカラー「ukaペディキュアスタディ 5/ペディ サボテン」。夏のサンダルが数倍おしゃれに見えるはずです。

 メイクアップアーティストの早坂香須子さんがディレクターを務める「ネロリラ ボタニカ(NEROLILA BOTANICA)」にも、約900年前の“媚薬”とされた錬金術のレシピを現代に再解釈した、コンセプトのこもったアイテムがあります。ハーブやオイル、クオーツなど自然の成分を絶妙にブレンドし、自分自身の男性性・女性性(陰陽)を統合して解放するという、現代女性にぴったりのアイデアが詰まった「エロス」シリーズの「インフィニティキット」に注目。おすすめはそのなかの「インヤンオイルインミスト」。満月の夜にぴったりなビターでミステリアスな香りです。

福本敦子(ふくもと・あつこ)/フリーランスPR・美容コラムニスト:コスメキッチンに14年間勤務後、現在はフリーランスPRとして活動するかたわら、ビューティコラムニストとしてイベント、SNSなど多方面で活躍。オーガニックに精通した知識を武器に、ライフスタイルに寄り添った独自のオーガニック美容論が、著名人やエディターをはじめ各方面から大人気。「#敦子スメ」は「読んだ瞬間試したくなる」と多くの反響を呼び、紹介した商品の欠品や完売も多数。2019年秋、初の書籍となる「今より全部良くなりたい 運まで良くするオーガニック美容本 by敦子スメ」を出版。発売前に増刷が決まるなど話題を呼んでいる。旅を愛し、占星術にも精通 instagram:@uoza_26

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京都生まれの反射材「レフライト」、カラフル化でかつての輝きを取り戻せるか

 東証ジャスダック上場の研磨剤大手マイポックス(MIPOX)が、リフレクトテープなどのアパレル向け反射材「レフライト(REF LITE)」のリブランディングを本格的にスタートしている。2015年12月に経営不振に陥っていた日本レフライト工業から「レフライト」事業を譲受し、事業の再構築を進めてきた。今年3月にはブランドコンセプトの刷新やロゴリニューアルなどのリブランディングに着手。同社のナンバー2である中川健二取締役兼執行役員が陣頭指揮を取り、多彩なカラー反射材を軸にした新戦略に取り組む。かつて世界市場を席巻した反射材「レフライト」は、再び輝きを取り戻せるか。

WWDジャパン(以下、WWD):なぜ「レフライト」を?

中川健二取締役兼執行役員(以下、中川):当社は日系研磨メーカーではナンバーワンを自負しており、「塗る・切る・磨く」をコア技術にM&Aを含めた事業の再構築を進めていました。反射材は高い研磨やガラスビーズを均一にコーティングする技術などが必要とされる分野で、「レフライト」の製造元である日本レフライト工業とは当社も一部の分野で競合していて、同社の技術力の高さを知っていた。日本レフライト工業の高い技術があれば再建できると考えた。

WWD:事業譲受の際には、日本レフライト工業が民事再生法の適用を受けた。この手の再生案件は大変では?

中川:その通りです。民事再生で当時の主力取引先だった商社や資材問屋は、「レフライト」から他社の反射材に切り替えてしまった。ある意味当然です。部材は安定供給と安定品質が重要なので。その際には大変ご迷惑をおかけした。当社がスポンサーになって製品供給の面ではバックアップする態勢にはなったが、一度切り替わったものをもとに戻すのは大変な努力が必要だと痛感している。ただ、逆に言えばもう失うものはない。反射材の市場を、もう一度ゼロから見直すいいきっかけになった。

WWD:どう戦う?

中川:あらためて事業を見直す中でわかったのは、「レフライト」の最大の強みはカラーバリエーションであること。市場に出ている反射材のほとんどはシルバーのみ。現にほとんどの人がシルバー以外の反射材を見たことないはず。この分野の最大手である米国スリーエム(3M)社でさえ、数色のカラーを加えたのはつい最近だった。でも京都の伝統的な染色産業の流れをくむ「レフライト」は、1990年代にも10色近いカラーバリエーションを作っていて、実際に大手ブランドのスニーカーなどにも採用されていた。当時は間違いなくオンリーワンであり、ナンバーワンの技術だったが、それがいつしか埋もれてしまっていた。

WWD:なぜでしょう?

中川:実際には反射の輝度や光度だけを考えたら色はシルバーがベストだし、大手の取引先である商社や資材問屋から来る発注はシルバーほとんどだったからです。オールド産業にはよくあるパターンですが、自分で市場を取りに行ったり、つくりにいくことをせず、カラーに需要がないと自分たちで決めつけてしまった。

WWD:リブランディングに伴い、新たな市場ターゲットをスポーツなどのファッション分野に定めた。その理由は?

中川:いったん切り替わった既存の市場を取り戻す必要はあるものの、「レフライト」はもはや後発メーカーのような立場。技術では負けていないといくら意気がったところで、巨人スリーエム社を筆頭にした競合の壁は厚い。だから最大の強みを持つカラーバリエーションに磨きをかけてここから突破していこうと考えています。シルバーは確かにハイスペックな輝度や光度がありますが、一般的なアパレル製品ならば、そもそもシルバー一択という時点で、デザイン的観点ではねられてしまうことが多いはず。当然ですが当社のカラー反射材には消防服で求められるほど輝度はなくても、深夜のジョギングやウオーキングで可視化するには十分なスペックがある。そもそもカラー反射材の存在が知られていない以上、まずはその存在を知ってもらうことが重要だと考えています。

WWD:今後の計画は?

中川:最初のゴールは、「レフライト」の指名買いを増やしていくこと。そのためにはまず、カラフルな反射材の市場を創出する。カラーリングはどんどん増やしていて、20色近くにまでなっています。今後も要望に応じて、新色も作っていきます。スポーツに限らず、さまざまなファッションブランドとのコラボレーションを積極的に仕掛けていきたいと考えています。ターゲットは日本に限らず、海外ブランドも視野に入れています。当社の主力である半導体の研磨事業の売上高は6〜7割が海外で、海外拠点も多い。「レフライト」もピーク時には欧州だけで10億円近い売上高があった。それだけでも現在の「レフライト」事業の10倍近い規模です。

WWD:最終のゴールは?

中川:いずれは反射材でグローバル市場を制することです。反射材に限らず、売り方が下手というだけで日本企業が負けてしまうことが本当に多い。そもそも「レフライト」事業も単純な数字の計算を考えたらもうかりそうになく、こういった技術に優れた企業のM&Aは投資ファンドが手を出さない。当社がメーカーだからこそこのM&Aは成立したし、これを成功させれば、一つのモデルケースにもなり得る。日本の繊維産業には優れた技術がまだまだ眠っています。「レフライト」の再生に成功すれば、日本の繊維産業の活性化にもつながるはずだと考えています。

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コロナで生まれた差が、そろそろ拡大し始める エディターズレターバックナンバー

※この記事は2020年6月24日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

コロナで生まれた差が、そろそろ拡大し始める

 コロナショックによって変革を迫られ、半ば慌てて立ち上げたプロジェクトや部門横断ミーティングが、一定の成果と課題、そして新たな“気づき”をもたらしてくれています。社内でのミーティングも、会議室の定員の半分までなら認められるようになり、対面コミュニケーションも活発になってきました。今、さまざまな同僚と話をしていますが、イロイロ気づきますね~(笑)。面白い!!彼らの夢が実現できれば、我が社はもっともっと面白くなる!!そんな風に確信している、パワーチャージ期間です。

 改めて気づいたのは、皆、デジタルに興味津々ということでした。「今更?」と思うでしょうか?思いますよね(笑)。でも、本当に予想以上だったんです。皆、デジタルをやってみたい。でも週刊紙は絶対的な締め切りがあるし(いや、ウェブもあるのですがねw)、なかなか注力できない。でもでも社内外でデジタルの存在感が増しているのは実感しているし……。そんな思いを抱えている人が多数です。管理職として改めて、各媒体の存在意義から再定義し、振り分ける労力を含めた仕組みを整えなければと感じています。念のために申し上げておきますが、私は「週刊紙の『WWDジャパン』は、絶対に必要」論者です。骨太なジャーナリズムの象徴、賛否両論を巻き起こすオピニオンドライバーは、プリントメディア(であって欲しい。無論、そのためには紙媒体も大きく変革すべきでしょう)。ウェブは、紙からSNS、オンラインセミナーなどのイベントまでを縦横無尽に結びつけるハブとなる。そんな未来予想図を思い描いております。

 「デジタルに興味津々」な同僚に話を戻しましょう。みんなとのミーディングで思い出すのは、あるラグジュアリー・コングロマリットが“組閣”しているシャドー・キャビネットの話です。皆さん、シャドー・キャビネットって、ご存知ですか?日本にもきっとある(ハズ。そう信じたい)と思うのですが、野党は通常、与党の内閣に相当する政策立案機関を構えています。これが、シャドー・キャビネット。シャドー・キャビネットは、財務大臣や外務大臣、防衛大臣など内閣同様のメンバーで構成され、現内閣の行動をチェック、批判し、代案を考案。一般的に政権を奪取した際は、このメンバーの多くが本当の大臣になるとされています。あるラグジュアリー・グループは、このシャドー・キャビネット制度を設けています。各ブランドから若手を選び、各大臣に任命し、政策を決める上で欠かせないさまざまな資料、つまり財務状況までを詳らかにして、未来を想像・創造させているそうです。どんな未来が生まれているのでしょうか?ある時シャドー・キャビネットが示した未来は、「百貨店が今に比べて半分の未来」だったと聞いています。そのラグジュアリー・コングロマリットの現段階での主たる販路は百貨店ですから、“現内閣”にとってはビックリ仰天でしょうが(笑)、シャドー・キャビネットとしての職務を全うしているとも言えますね。

 遅ればせながら、私たちの会社でも部門を横断するU-30会議が始まりました。初回こそ私が冒頭、みんなへの期待を示しながら、提案には必ず耳を傾け、実行に向けて社内のさまざまを調整するとだけ約束しましたが、今は完全にお任せ。何が起こっているのかは、U-30会議の連絡役から時々届くSlackでしか分かりません(笑)。どうやら、ビックリ仰天なプランがブラッシュアップされているようです(笑)。個別ミーティングやU-30会議、そして、ラグジュアリー・コングロマリットの“シャドー・キャビネット”まで。導入方法はさまざまでしょうが、やっぱりみんなの話を聞くと、面白くて仕方ない。コロナショックの副産物が、自分をアプデしてくれています。

 頭に戻りますが2カ月前に動けた企業と、クヨクヨするばかりで動けなかった企業の差は、ファースト・アクションの成果と課題、気づきが形となりつつある今、ますます開くでしょう。

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今ならセフォラは日本再上陸を果たせるのか? 編集部員が考えてみた

 ビューティのニュースやトピックスを編集部が語り合う「WWDビューティポッドキャスト」。今回はフランス発のビューティ専門店、セフォラ(SEPHORA)についてお届けします。

 セフォラは1999年に日本上陸して7店舗を展開しましたが、バブル崩壊やローカライゼーションの失敗、さらに当時はセミセルフ業態も普及していなかったためわずか2年で撤退。しかし今はセミセルフ業態も浸透し、6月には百貨店ブランドのみならずドラッグバラエティーブランドも集積したアットコスメトーキョーがオープン。日本の化粧品市場もだいぶ変わりました。またセフォラも近年は韓国やニュージーランドに進出し、香港には再進出するなどアジアパシフィック地域に力を入れており、今なら日本再上陸の可能性はあるのではないでしょうか。そんなテーマについて福崎明子「WWD Japan.com」ニュースデスクと、セフォラのビジネスを追ってきた北坂映梨「WWDビューティ」記者が考えてみました。日本再上陸の可能性だけでなく、米国における競合相手であるウルタ(ULTA)との戦略の比較などについても解説します。

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「脳内で鳴り響く」サイケデリックミュージックで世界を魅了するバンド、テーム・インパラ

 ケヴィン・パーカー(Kevin Parker)を中心としたオーストラリアのバンド、テーム・インパラ(Tame Impala)は、酩酊(めいてい)感のあるフレーズにダンスなどの要素を取り入れたサイケデリックミュージックを武器に世界中で人気を獲得してきた。そしてついには、ロックやインディーシーンが下火になっていた2010年代に、世界各国の主要フェスティバルでヘッドライナーを務めるまでに成長した。今年2月に5年ぶりとなるアルバム「The Slow Rush」をリリースしてさらに注目が集まる中、ヘッドライナーとして出演予定だった「フジロックフェスティバル '20(FUJI ROCK FESTIVAL '20)、以下、フジロック」は残念ながら来年に延期となってしまったが、来年の再登場を期待しつつ彼の思考の一端に迫った。

WWD:そもそもテーム・インパラというバンド名の由来は何でしょうか?

ケヴィン・パーカー(以下、ケヴィン):アフリカのインパラという動物が由来だよ。遠くに棲むなじみのない野生動物と、一瞬だけど何か刺激的なつながりを持てるんじゃないかという、単純な思いつきだった。

WWD:レコーディングではほとんどの楽器をご自身で演奏されていますが、最初に手にした楽器は何でしたか?

ケヴィン:11歳のときに習い始めたドラムだよ。10代の子にはよくあることだと思うけど、音楽は自分を表現するこれ以上ない方法だったんだ。僕はあまりスポーツをするタイプじゃなかったし、グランジを聴いたりはしていたけど没頭できるものがなかったから、ドラムは新鮮に感じられたね。

WWD:いつ音楽家になることを決心したのでしょうか?

ケヴィン:まさにドラムを始めた瞬間だったよ。自分のアイデンティティーを発見して、「僕はこれをやりたい」と確信したんだ。それに若かったし、ロックスターになることに憧れていたからね(笑)。

WWD:当時憧れていたアーティストは?

ケヴィン:ニルヴァーナ(Nirvana)やシルバーチェアー(Silverchair)、スマッシング・パンプキンズ(The Smashing Pumpkins)だね。フレンチデュオのエール(Air)もよく聴いていたし、レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)みたいなロックンロールも好きだったよ。

10代のときにたくさん音楽を聴くうちに、自分の好きなテイストが少しずつ分かってきたんだ。スマッシング・パンプキンズも長尺でサイケデリックな楽曲を作っているよね。僕は彼らのそういう曲が好きで、それが今の僕のスタイルになったんだと思う。

WWD:楽曲制作はいつ頃始めたのでしょうか?

ケヴィン:ドラムを始めて少し経った頃には取り組んでいたよ。でも、ソングライティングと呼べるレベルではなかったと思う。ドラム&ベースをやってみたり、両親のキーボードを借りて自分でレコーディングしていたけど、当時はギターの弾き方も分からなかったから、作った曲を友達に聴かせてみてもあまりうまく伝わらなかったな(笑)。

WWD:楽曲制作の際、世相を反映することは意識されますか?

ケヴィン:この地球に住む人類の一人としてもちろん世相を反映していると同時に、僕は音楽を目の前の世界から逃避させてくれるものとして作っている。音楽には自分が世の中の一人だと思わせてくれる“地球に生まれた子どもにとっての楽曲”と、反対に世の中から脱出するための“宇宙に消える楽曲”の2タイプがあって、テーム・インパラの音楽は後者だと思っているよ。

WWD:あなたの曲は初期から一貫してサイケデリックだと言われていますね。

ケヴィン:意識的にサイケデリックミュージックを作っているのではなく、僕の脳内で鳴り響く音楽をそのまま表現した結果、自然とそうなったんだと思う。僕にとってサイケデリックミュージックは“脳内の音楽”なんだよ。サイケデリックであればあるほど、作る人の脳内のBGMに近づいていく。僕はそういう音楽が好きだし、自分なりの感情表現なんだ。

WWD:ライブでは、あなたの頭の中の再現とバンドメンバーとの化学変化のどちらを重視していますか?

ケヴィン:両方重視しているね。バンドメンバーは友達だから、一緒にいる時間は大事にしたい。昔はみんなでシェアハウスに住んでいたし音楽が共通言語みたいになっていたけど、今はお互いそれぞれの家があってなかなか会えないから、一緒に演奏する時間は神聖で大切だよ。同時にステージ前の人に楽しい時間を過ごしてほしいし、僕はみんなを驚かせることが好きだし、みんなを楽しませることにも集中しているよ。

“時”とともに変化する人間の記憶を描いた楽曲群

WWD:4thアルバム「The Slow Rush」の楽曲は、サイケデリックがベースにありながらも、ジャンルでくくることがより難しくなったと感じました。ご自身では現在の音楽性をどのように定義づけているのでしょうか?

ケヴィン:僕の音楽のジャンルは分からないね。もちろんいい意味ではあるけど、アルバムを完成させるたびに「この作品はナンセンスだ」と感じるんだ——もちろんいい意味でだけど。僕の音楽は大衆的じゃなくて、真夜中の3時に踊りながら聴くような、ちょっとイカれた世界観にどっぷりハマるためのものだと思っているよ。

でも実はポップミュージックも好きなんだ。だからこれまでもポップな要素とイカれた要素を融合させることも試してきた。それが僕の脳の中の音楽でもあるからね。あらためて「The Slow Rush」を聴き直すと、わりと大衆的な曲もいくつかあるかな。

WWD:「One More Year」「Lost In Yesterday」などの収録曲名が象徴するように、アルバムのテーマは“時”でした。前アルバムから5年という“時”を経て、楽曲制作に変化はありましたか?

ケヴィン:同じアプローチをしたくないから、制作の仕方は毎回違うよ。しかも新しいアルバムを作ろうと思うたびに、前作の制作過程やテクニックを怖いくらいに忘れてしまっているんだ。意識的なのか無意識的なのかも分からない。結果として、毎回異なるアプローチをせざるを得なくなるわけ。

“時”というテーマにはずっと引かれていたんだ。子どもの頃、周りの環境が目まぐるしく変化していたこともあって、僕にとって“時”は自分がコントロールできない未来や、変化を恐れないためのセラピーのように感じることもあるんだ。音楽にも似た力を感じるよ。

WWD:“時”というテーマには着想源やきっかけとなる出来事があったのでしょうか?

ケヴィン:特別何かがあった訳ではないんだ。一つ言えることは、人生は前進している、時間は進んでいるということかな。

WWD:「Lost In Yesterday」の“Eventually, terrible memories turn into great ones(ひどい記憶もやがて素晴らしいものになる)”という前向きな歌詞が印象に残りました。

ケヴィン:そのフレーズは昨年、数年ぶりにパリに行って街の中を歩いているときに思いついたんだ。その前にパリに行ったときは、自分の周りで何が起こっているのか把握できなくて、一言で言うとダークな時期だった。でも時が経ったおかげでそのダークな時期さえもいとしくて懐かしく思えたんだ。人間ってそういうところがあるよね。今回のアルバムの中で特に好きなフレーズの一つだよ。

WWD:MVの一つの空間をぐるぐると同じカメラワークで繰り返し撮ることで、登場人物が変化していく構成が印象的でした。

ケヴィン:このMVを制作したチームが楽曲の意味をガッチリつかんでくれたよ。人間の記憶は正確じゃない。記憶は時が経つとロマンチックに脚色されたり、その逆もあったりと変化するからね。その理由がどうであれ、変化することは事実だから。

ロックの再燃はあるか?

WWD:10年代はヒップホップとEDMが音楽シーンを席巻し、ロックは下火といわれましたが、今後どうなっていくと思いますか?
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ケヴィン:そのことについてよく考えるけど、分からないよ。ロックはオールドファッションであることが問題なのかもね。今でもロックが好きな人は過去の古き良きロックを思い描いていると思うし、ミュージシャンも新しい提案をしていないのかもしれない。1960年代に間違いなく最も“ラウド”だったロックが、今では最も“ラウド“ではないんじゃないかな。ヒップホップフェスやEDMフェスのほうが、ロックフェスよりも“ラウド”だよね。ロックは“ラウド”でイカれていて反抗的なアイデンティティーを失ってしまったのかもしれない。

WWD:そのような状況の中でロックの復活はあると思いますか?

ケヴィン:うん、あると思う。でもそのときは単なる“リバイバル”じゃなくて、新しくてエキサイティングであることを願っているよ。リバイバルってことは、まるで救急車に助けてもらっているみたいに一度死んでいることを意味するから。だからこそ誰かがロックに新しく炎を燃やさないといけないね。

WWD:「フジロック '13」に出演し日本のファンも魅了しました。そのときの思い出があれば教えてください。またヘッドライナーとして再出演する意気込みをお願いします。

ケヴィン:自然の中で目を覚まして最高の気分だったよ。東京のような大きい街もいいけど、なかなか見ることができない日本の一面を体験できた。日本は僕の好きな国の一つだから、初めて「フジロック」でヘッドライナーを務めると聞いてとてもうれしかったんだ。「ロラパルーザ(Lollapalooza)」みたいな由緒あるフェスの一つだし、僕が“フェス”って言葉を知る前から「フジロック」という名前は聞いたことがあったくらいなんだ。とても楽しみにしているよ。

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夏の体づくりに効くデトックス品5選 食のセレクト「ビープル バイ コスメキッチン」で機能性ヘルシー飲料フェア

 マッシュビューティーラボは、オーガニック・ナチュラルフード・コスメのセレクトショップ「ビープル バイ コスメキッチン」でドリンクフェア「BIOPLE HEALTHY DRINKS」を8月6日まで開催中だ。渋谷スクランブル店を除いて全国に展開する19店舗で、夏を乗り切るための29種の機能性ヘルシードリンクを提案している。炎天下の水分補給向けの“ミネラル系”、植物から作られた“ベジミルク系”、生姜エキスなどを配合し体づくりをサポートする“栄養ショット系”などがラインアップする中から、あの手この手で体の中から不要なものを取り除くためのデトックス系商品5選を紹介する。

体内に蓄積した重金属を排出し
ミネラルを補給する
フルボ酸ウオーター

 奥長良川の天然水「高賀の森水」にフルボ酸を配合した「フルボ酸ウォーター」。フルボ酸は養分に富んだ堆肥化した土壌に含まれる微量の酸のこと。体内に蓄積された重金属を排出してミネラル分を補い、ストレスによって乱れたミネラルバランスを最適化するとともに、抗酸化力も期待できるという。

ベジタリアンもOK!
低カロリー、コレステロールフリー
の植物性ミルク

 牛乳、豆乳に続く第3のミルクとして注目されている植物性ミルク。ベジタリアンが多い欧米をはじめ、日本でもアレルギー疾患を持つ人や菜食志向の人を中心に市場は急速に拡大している。「有機ライスドリンクチョコレート」には有機米と海抜450mの山の湧き水を使用。ライスミルクには難消化性でんぶんのレジスタントスターチが含まれ、食物繊維のような働きをすることで腸内環境を整えてくれる。

美容と健康に、世界唯一の技術を
使った水素が逃げない水素水

 老化や不調の原因となる活性酸素に対する高い抗酸化力を持つ水素。活性酸素を体外に排出すれば、エイジングケア、ダイエット、美肌づくりなどさまざまなメリットが期待できる。「逃げない水素水36 ブルー」は奥長良川の天然水を使用して、岐阜大学と東京工科大学との共同研究により開発された商品で、特許技術によって開栓後に水素が発生するため約1週間後も水素が残っている状態を保つことができ、自分のペースで飲用することができる。

不要物を排出する
炭の力と生姜エキスで
腸内クレンズしながら温める

 不要物を吸着して体の外に排出する麻炭を1本あたり300mgと高配合した「麻炭ジンジャーショット」は、国産生姜やアロエエキス、昆布茶を加えて酢酸菌や乳酸菌を豊富に含む。腸内をきれいにするとともに菌活にもつながる。飲んだあとは体がじんわりと温かくなる。

コーヒー2杯分のカフェイン配合の新感覚炭酸水で
どんより気分をデトックス

 岐阜県高賀渓谷の地下からくみ上げた天然水「高賀の森水」にカフェインと炭酸を加えた「めざまし天然水」は、爽やかなレモンやミントの香りと糖類不使用のすっきりした味わいが、気分をリフレッシュしたいときや眠気を覚ましたいときにぴったり。

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渋谷の新名所ミヤシタパークのホテル「シークエンス」に潜入 渋谷を見渡せる開放感と自由度が魅力

 三井不動産によるホテルの新ブランド「シークエンス(SEQUENCE)」が東京・渋谷の宮下公園に8月1日開業する。当初6月に開業予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響でオープンを延期。公園や商業施設が一体化した「ミヤシタパーク(MIYASHITA PARK)」の北側に位置するシークエンス ミヤシタパーク(SEQUENCE MIYASHITA PARK)は地上18階建てで、240室。4階がロビーラウンジカフェ、ホテルのレセプション、5階がレストラン兼スタジオ、6~17階が客室、18階がルーフトップスパ兼バーになっている。「シークエンス」のキーワードは“誰にでも開かれた空間”“その町ならではの文化を楽しめる”“心豊かになれる時間”で、ブランドプロデュースは「ディーン&デルーカ(DEAN & DELUCA)」などを手掛けるウェルカムが担当し、企画や運営はトップ・クリエイターとタッグを組んだ、既成概念にとらわれない次世代型のホテルだ。17時にチェックイン、14時にチェックアウトという時間帯からしてユニークな同ホテルとは?ここではオープン前の潜入リポートをお届けする。

 4階のホテルレセプションに到着するとチェックインコーナーがあり、そこでセルフチェックインするようになっている。支払い情報などを入力して部屋のカードキーも自身で登録。スタッフも常駐しているが、基本的に宿泊者自身で行う。レセプションの奥には広々としたロビーラウンジがあり、宮下公園にそのまま続く開放的な空間だ。木製カウンターやスツールは、以前の宮下公園のケヤキの木をアップサイクルしたもので、温かい雰囲気だ。公園の手前にはカフェ兼ショップの「ヴァリー パーク スタンド」があり、コーヒーやカクテルなどさまざまなドリンクをはじめ、ピタサンドやファラフェルなどの食事を提供する。朝食やランチのパッケージセットがあり、ホテルの部屋や宮下公園でそれらを楽しむことができるようになっている。ショップでは「シークエンス」のオリジナルグッズやアメニティーなどを販売する。宿泊者はオリジナルタンブラーを購入すれば、滞在中に好きなだけコーヒーや紅茶を楽しめるサービスも。小川広純ウェルカム事業開発部マネジャーは、「ヴァリーは渋谷の“谷”の意味で、カフェでなくあえてスタンドとしたのは、気軽に誰もが立ち寄れる場所にしたかったから。レジャーシートの貸し出しやオリジナルのローカル情報マップの配布なども行うビジターセンターの役割も果たす」と話す。

 ホテルのホテルのカフェやレストランを一般客が使用することもあるが、日本ではふらりと立ち寄れるカジュアルな場所はまだまだ少ない。日中はカフェとして、夜はバーとしての顔を持つ「ヴァリー」はホテルと渋谷の街をつなぎ、宿泊者と一般客が自由に利用できる気軽さと利便性を備えており、ぜひ、使用してみたいものだ。

刻々と変わる渋谷の表情を眺められる客室

 6階から17階の客室は、渋谷を見渡せる大きな窓が特徴だ。周りに視界を遮る建物がないので、あらゆる部屋から渋谷の街を眺めることができる。宮下公園が見渡せる部屋もあれば、山手線が走る様子を眺められる部屋もあり、時間帯によって刻々と表情を変える渋谷の景色を楽しむことができる。各部屋の窓辺には縁側スペースがあり、そこに座って景色を眺めてくつろいでもよし、仕事をしてもよし。バスルームから景色が見渡せる部屋もある。なんといっても絶景なのが、17階のスイートルーム。新国立競技場や代々木競技場、明治神宮の森、天気がよければ富士山も見渡せる。部屋のデザインはいたってシンプル。無駄がない上質な空間だ。家具は、ウェルカムが輸入販売するデンマーク発「ヘイ(HAY)」の家具やオリジナル家具などで、シャンプーをはじめとするアメニティーもオリジナルで開発したオーガニック製品。スイートルームなど以外の部屋のテレビはコードレス、電話はなく全てタブレットでチェックアウトなどの操作を行う。

 部屋のタイプはスイート、ツイン、ダブルなどに加え、最大6人まで泊まれるバンクルームがあるのもユニークだ。2段ベッドが置かれたバンクルームは2人部屋、3人部屋、4人部屋、6人部屋の4タイプで、グループ旅行や家族旅行にぴったり。3人部屋には「ネットフリックス(NETFLIX)」などを壁に投影して見れるプロジェクターが用意されている。

 また、240の全ての部屋に、若手クリエイターを支援する目的で、アート関連のプラットフォームである「ザ・チェーンミュージアム(THE CHAIN MUSEUM)」からの作品が飾られているのも面白い。4階にも作品があり、ホテル内には243点のアート作品が存在する。18階はスパ&バーのオープンを予定しているという。

シルクロードがテーマの新感覚ダイニング

 5階にあるレストランも独創的だ。朝食ダイニングルームを兼ねたレストラン&バーの「ドンシー レストラン&酒場(DONGXI RESTAURANT & SAKABA)以下、『ドンシー』は、シルクロードの東と西のあいだに位置する国々から着想を得ている。総料理長は『ディーン&デルーカ』の元総料理長の境哲也氏で、『ヴァリー』の監修も行う。一般客の利用も可能で、1階から専用エレベーターで5階に到着すると本格的なバースペース(酒場)がお迎え。世界チャンピオンレベルのバーテンダー3人がニューヨークスタイルのクラフトカクテルを提供する。食事前のウェイティングバーとしても、カクテルを楽しむバーとしても利用可能だ。『ドンシー』に一歩入ると長いカウンターがあり、そこで朝食ビュッフェを提供する(当面はセットメニューを提供)。その奥にはテーブル席があり、宮下公園を見渡せる空間になっている。料理は、トルコ、イスラエルやイランなどの中東、中央アジア、タイ、ベトナムなどの食文化をベースに日本の食材を用いた、オリジナリティー溢れるメニューばかり。小皿料理、炉端、土なべ料理などを気軽に楽しめるようになっている。

 仕事やプライベートで世界中のさまざまなホテルに滞在したが、『シークエンス』はまさに今の時代を反映するホテルだと感じた。セルフチェックインやテイクアウトなどは、新型コロナウイルス感染拡大で需要が高まっているが、そのコンセプトは使用する側の利便性を考えたもので、決してパンデミックを見込んでのことでははない。宿泊者の目的は観光、仕事、家族旅行、都内のリトリート(隠れ家)などさまざまだ。『ヴァリー』の存在は、私が米ニューヨーク出張で滞在した「パラマウント ホテル(Paramount Hotel)内にあった『ディーン&デルーカ』をほうふつとさせる。私はホテルの部屋で一日中仕事をしなければならない状況で、『ディーン&デルーカ』でランチ、ディナーをテイクアウトして過ごし、その存在をありがたく、とても合理的だと感じたのを思い出す。滞在者の目的に寄り添い、渋谷とシームレスにつながる『シークエンス ミヤシタパーク』に注目だ。

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“ギルティー・プレジャー”という存在意義と消費行動 エディターズレターバックナンバー

※この記事は2020年6月25日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

“ギルティー・プレジャー”という存在意義と消費行動

 「そこに飛び火するんですか!」と思ったのが、下のリンクで紹介するジョンソン・エンド・ジョンソンのニュースです。BLM運動の高まりを受けて、アメリカで美白効果があるとされる化粧品の販売を中止します。

 記事にある通り、日本では「江戸時代から美白化粧品はブーム。 “色の白いは七難隠す”なんて言葉もあるほど、人種とかに関係なく美白は美意識にすり込まれたもの」などと考え、戸惑う人もいることでしょう。でもアメリカでは、大陸を発見したコロンブスさえ「先住民の虐殺を招いた人物」と捉えられ、像が破壊される状況です。私たちの意思が拠り所とする歴史観さえ白人中心に形作られたもので偏っていると言われてしまうと、「そうか……」以上の言葉が出てきません。いよいよ見解は千差万別で構わず、「各々が、それぞれの考えを主張できれば、それで良い」とさえ思い始めてきました。

 そんな時、メルマガ「ミレニアル マインド」の執筆者である北坂記者(通称エリー)に、面白い記事を教えてもらいました。“ハラハラ”ブランド「ブランディー メルヴィル」は、“ギルティー・プレジャー”という他媒体の記事です。ブランドも“ギルティー・プレジャー”もピンと来ない方にお伝えしますと、「ブランディー メルヴィル」は10~20代の女の子に向けたブランド(日本未展開)。「XSとSしかないの⁉︎」と思わずにはいられないピタピタなヘソ出しトップスと、マイクロミニのホッパンなどが人気のブランドでした(多分、最近は勢いが陰りがちな気がします)。で、“ギルティー・プレジャー”とは直訳の通り「罪悪感を抱く楽しみ」。アメリカでは「カラダに良くないってわかっているのに美味し過ぎるから食べてしまう」マカロニチーズやチョコレートファッジなどが“ギルティー・プレジャー”の代名詞です。日本では、居酒屋をハシゴしての朝帰りでしょうか?植木等が「分かっちゃいるけど、やめられない」って言ってますもんね(笑)。

 で、話を記事に戻しますと、「ブランディー メルヴィル」はハッキリ言えばこれまでの「ヴィクトリアズ・シークレット」同様、スレンダーで、若い、白人の女の子という多様性を欠く女性像を基にブランドビジネスを続けており、無論こんなご時世、ネットではネガティブな意見が噴出しています。でも、それでも、一部の女の子は「やっぱりカワイイんだもん!!」という感覚で「ブランディー メルヴィル」を買って、着てしまう。でも彼女たちはちゃんと、マカロニチーズに抗えない時に似た“ギルティー・プレジャー”を認識しているという内容でした。記事には、女の子の赤裸々なコメントが掲載されています。「ゴミブランドだって分かってるわ。でも、ブランドのTシャツやタンクトップは大好きなの」とか「仕事が終わって、もう誰とも会わなくて良い夕方になると『ブランディー メルヴィル』に着替えるの」など。なるほど。こんな消費も「アリ」かもしれないと思いました。それに嫌悪感を抱く人もいるかもしれませんが、ゴシップ的感覚や“ギルティー・プレジャー”という喜びはある程度、ファッションがファッションであるために欠かせない要素だと思っています。

 「ブランディー メルヴィル」が過度に地球環境を破壊していなかったり、地球のどこかで誰かの犠牲を強いたりしていなければ、たとえ画一的な女性像に立脚しているとしても、その女性像とリンクしない人たちを傷つけていなければ、アリなのかもしれない。消費者は、それも踏まえてモノが買える。この記事を読んでジョンソン・エンド・ジョンソンの記事を思い出すと、思考はグルグル回転し始めるのです。

SOCIAL & INFLUENTIAL:社会情勢によって変化するファッション&ビューティ業界を見つめます。インクルージョン(包摂性)&ダイバーシティー(多様性)な時代のファッション&ビューティから、社会に届けたい業界人のオピニオンまで。ジャーナリズムを重んじる「WWD JAPAN.com」ならではのメルマガです。

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“ギルティー・プレジャー”という存在意義と消費行動 エディターズレターバックナンバー

※この記事は2020年6月25日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

“ギルティー・プレジャー”という存在意義と消費行動

 「そこに飛び火するんですか!」と思ったのが、下のリンクで紹介するジョンソン・エンド・ジョンソンのニュースです。BLM運動の高まりを受けて、アメリカで美白効果があるとされる化粧品の販売を中止します。

 記事にある通り、日本では「江戸時代から美白化粧品はブーム。 “色の白いは七難隠す”なんて言葉もあるほど、人種とかに関係なく美白は美意識にすり込まれたもの」などと考え、戸惑う人もいることでしょう。でもアメリカでは、大陸を発見したコロンブスさえ「先住民の虐殺を招いた人物」と捉えられ、像が破壊される状況です。私たちの意思が拠り所とする歴史観さえ白人中心に形作られたもので偏っていると言われてしまうと、「そうか……」以上の言葉が出てきません。いよいよ見解は千差万別で構わず、「各々が、それぞれの考えを主張できれば、それで良い」とさえ思い始めてきました。

 そんな時、メルマガ「ミレニアル マインド」の執筆者である北坂記者(通称エリー)に、面白い記事を教えてもらいました。“ハラハラ”ブランド「ブランディー メルヴィル」は、“ギルティー・プレジャー”という他媒体の記事です。ブランドも“ギルティー・プレジャー”もピンと来ない方にお伝えしますと、「ブランディー メルヴィル」は10~20代の女の子に向けたブランド(日本未展開)。「XSとSしかないの⁉︎」と思わずにはいられないピタピタなヘソ出しトップスと、マイクロミニのホッパンなどが人気のブランドでした(多分、最近は勢いが陰りがちな気がします)。で、“ギルティー・プレジャー”とは直訳の通り「罪悪感を抱く楽しみ」。アメリカでは「カラダに良くないってわかっているのに美味し過ぎるから食べてしまう」マカロニチーズやチョコレートファッジなどが“ギルティー・プレジャー”の代名詞です。日本では、居酒屋をハシゴしての朝帰りでしょうか?植木等が「分かっちゃいるけど、やめられない」って言ってますもんね(笑)。

 で、話を記事に戻しますと、「ブランディー メルヴィル」はハッキリ言えばこれまでの「ヴィクトリアズ・シークレット」同様、スレンダーで、若い、白人の女の子という多様性を欠く女性像を基にブランドビジネスを続けており、無論こんなご時世、ネットではネガティブな意見が噴出しています。でも、それでも、一部の女の子は「やっぱりカワイイんだもん!!」という感覚で「ブランディー メルヴィル」を買って、着てしまう。でも彼女たちはちゃんと、マカロニチーズに抗えない時に似た“ギルティー・プレジャー”を認識しているという内容でした。記事には、女の子の赤裸々なコメントが掲載されています。「ゴミブランドだって分かってるわ。でも、ブランドのTシャツやタンクトップは大好きなの」とか「仕事が終わって、もう誰とも会わなくて良い夕方になると『ブランディー メルヴィル』に着替えるの」など。なるほど。こんな消費も「アリ」かもしれないと思いました。それに嫌悪感を抱く人もいるかもしれませんが、ゴシップ的感覚や“ギルティー・プレジャー”という喜びはある程度、ファッションがファッションであるために欠かせない要素だと思っています。

 「ブランディー メルヴィル」が過度に地球環境を破壊していなかったり、地球のどこかで誰かの犠牲を強いたりしていなければ、たとえ画一的な女性像に立脚しているとしても、その女性像とリンクしない人たちを傷つけていなければ、アリなのかもしれない。消費者は、それも踏まえてモノが買える。この記事を読んでジョンソン・エンド・ジョンソンの記事を思い出すと、思考はグルグル回転し始めるのです。

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「WWDビューティ」がオンラインで「ヘア&メイク トレンドセミナー 2020−21FW」を開催 今からでもアーカイブで視聴可能

 「WWDビューティ」は7月28日、オンラインで「ヘア&メイク トレンドセミナー 2020−21FW」を開催した。主に全国の美容師に向け、20−21年秋冬シーズンのコレクション映像を見ながら、村上要「WWD JAPAN.com」編集長と「WWDビューティ」コレクションスタッフが、最新のヘア&メイクトレンドを解説した。

 ファッション、ビューティともにパリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨークのトレンドキーワードを中心に解説。ウィメンズでは“プロテクション&タフネス”のキーワードでは、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で、デザイナーの間でも“外気から身を守る”ムードが高まったと紹介。「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」のように首まで完全に隠れるコートなどのアイテムがトレンドを形成したと解説した。

 “モダン ブルジョワ”のキーワードでは、アクセサリーやデザインディテールでアップデートしたトラディショナルで上品なルックが台頭したと話した。インナーとして登場したボウタイブラウスなどは“オンライン会議映え”するため、実際にセレクトショップで売れ始めていることにも言及した。

 ビューティトレンドでは“ボルドーリップ”というキーワードで、クラシックでエレガントなルックに合わせ、ひさびさに赤リップが戻ってきたことを解説。マットな赤リップが印象的だった「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」のルックなどを紹介した。

 その後、協賛した15社のスポンサーが制作した、“イチオシアイテム”にスポットを当てた1分間動画の紹介を挟み、人気ヘアサロン「アルバム(ALBUM)」のNOBUプロデューサーとNATSUMIディレクターがゲストスピーカーとして登場。「“ウィズコロナ時代”の美容師の働き方」についてトークした。

 NOBUプロデューサーは、新型コロナによる営業自粛期間中に取り組んだこととして新人教育について言及。「5人の幹部それぞれが得意とする技術を、オンラインで新人にレクチャーした。それと合わせて各自がSNSでの発信に取り組み、2カ月の間にインスタグラムのフォロワー数を7万近く増やしたスタッフもいた」と語った。

 NATSUMIディレクターは、自粛期間中の自身のインスタグラムの投稿で、最も反響が大きかった“2分で小顔になれるマッサージ”動画を紹介。その制作意図とともに「保存数が6万2000にまで広がっている」と驚きの数字を紹介した。

 同トレンドセミナーは半年に1回行っており、次回は2021年2~3月に行う予定だ。

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ZOZO傘下入りの26歳のyutori社長を直撃 「30歳までの上場、いけるんじゃない?」

 インスタグラムを中核に古着やビンテージ風ウエアのファンによるコミュニティを創出した後、「ナインティナインティ(9090)」や「スプーン(SPOON)」などのD2Cブランドをスタート、さらにはバーチャルインフルエンサーのプロモートまでを手掛けるyutoriの片石貴展(たかのり)社長はこのほど、株式の51%をZOZOに売却した。「ZOZOのオンラインと、僕らのコンテンツでyutoriの上場を目指す」という。

 yutoriという社名から連想する「『緩やかな成長で満足』みたいな気持ちはない?」と投げかけると、「一切ない」と今年も27歳を迎える片石社長。ZOZOグループ入りの狙いは?

WWD:今回のZOZOグループ入りの背景は?

片石貴展yutori社長(以下、片石社長):「コロナ、ヤバい」という感覚が働き、2月くらいから資金を調達すべく、いろんな人にお会いしてきた。話しているうちに、ZOZOとは「一緒にやったほうが、相互補完できる」と思うようになった。最近のアパレル企業の上場と言えば、TOKYO BASEくらい。TOKYO BASEは、店舗というアセットがある“手堅いビジネスモデル”。ZOZOのインフラと、yutoriのコンテンツの双方が揃えば、めちゃくちゃ強くなれる。

WWD:具体的には、どんなビジョンを描いている?

片石社長:アパレルの商品企画や製造でシナジーが発揮できる。今あるD2Cブランドを大きくすることもできるし、数を増やすことも可能だ。僕らはこれまで、自分たちだけでブランドを作ってきた。蓄積してきたノウハウをシェアし、誰かと一緒にやるだけでも、新しい展望が待っている。

WWD:これまでのノウハウとは?

片石社長:レガシーブランドと違って、「知らない人に、知ってもらう」を考えながらビジネスを拡大してきた。インスタグラムのフォロワーを伸ばし、コンバージョンを上げ、売り上げを積み上げる経験を重ねている。小さな正方形の画面の中でブランドを伝えるには、ディテールではなく、アティチュードやメッセージ、グラフィックが大事。その文脈をどう作るのか?コンセプトとルック、プロモーションを立体的に組み合わせてきた。

WWD:ならば、業績は伸びている?

片石社長:去年の4~6月と比べると、今年のD2Cブランドの売り上げは9倍に達している。

WWD:yutoriという社名だから「こんなに成長しているし、もう十分」なんて思うことはない?

片石社長:一切ない(笑)。いい会社になってきたとは思うけれど、今回の資本・業務提携をきっかけにダイナミズムを追求し、自分たちの考えを広めたい。創業以来、「臆病な秀才の最初のきっかけを、創り続ける。」を目標に、洋服は好きだけど、アパレルの経験はない人たちと数字を作ってきた。自信が生まれ、火がついたり、変わったりしてきた子が増えている。作家より編集者タイプの僕は関わる人数が増えたほうが楽しいし、yutoriで自分に自信が持てるファッション好きが増えればと思う。ネットが当たり前のゆとり世代やZ世代は、数字とともに生きてきた。今の売り上げがもっと大きくなれば、それぞれの自信も大きくなるし、自信を持てる人が増えると思う。

WWD:例えば今のyutoriには、どんな風に自信を持ったスタッフがいる?

片石社長:ZOZOの会見で使ったグラフィックを作ったのは、今ハタチのスタッフ。渋谷の街でリアルに写真を撮り、それをデジタル上でコラージュした「デジタル・ストリート」なビジュアル。18歳で入社した彼は高校生の時、引きこもりだった。それが今はバーチャルインフルエンサー事業を手掛けるVIMでグラフィックデザインを担当するなど楽しそうで、自分のことを好きになっているカンジがする。創業時からのメンバーは今、大学のミスコンに出ている。それまでは部活動のマネジャーをやっていて、でも実はあんまり楽しくなくって、服は大好きだけど、業界には飛び込めないってカンジだった。それが今は、「ナインティナインティ」というブランドのクリエイティブを担当している。今は社員とアルバイトで30人程度の会社だが、これを機に新たな人材を獲得したい。

WWD:今欲しいのは、どんな人?

片石社長:正直、ビジネスの経験者が欲しい(笑)。これまでは本当に若い子たちだけで、一緒に育つ感覚だった。その感覚は必要。でも業界での経験が3、4年あれば、成長への道のりをショートカットできそう。今の最年長は28歳なので、30歳くらいの、しっかりした、ファッション好きが入ってくれれば。

WWD:片石社長の働き方も変わる?

片石社長:僕は今後、もっとZOZOと協働することになる。yutoriとZOZOを組み合わせたらどうなるかを想像して、実践する。既存ブランドや事業は、他のメンバーだけで大丈夫。得意な、人が楽しめる環境づくりにも今以上に注力したい。

WWD:上場はいつまでが目標?

片石社長:自分が30歳になる2023年のうちに上場したい。「いけるんじゃない?」って思う。起業して2年でこうなるとは思わなかったので、「みんなで頑張れば、いけるんじゃないかな?」と。

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目の疲れをとる簡単アイケア ゴッドハンド山崎有香が教える1分間動画セルフエステVol.1

 スパ・エステティック業界で、卓越した手技や接客術を持ち話題を集めている“ゴッドハンド”が、1分間でできるセルフエステを動画でレクチャーする当連載。第1回は、昨年行なわれたエステ業界最大級のコンテスト“エステティックグランプリ”の顧客満足サロン部門でグランプリを受賞した、山崎有香「メディカルサロン Dr.いろは」代表兼エステティシャンが登場する。

3つのポイントで
目の疲れを軽減

 レクチャーするのは、簡単にできる3つのアイケア方法だ。1つは“目を疲れさせないマスクのつけ方”。マスクの上端が視界に入ると、目は対象物を見ればいいのかマスクを見ればいいのか分からずに混乱してしまい、必要以上に疲れてしまう。それを防ぐ対策として、マスクの中央をしっかりと折って鼻に沿わせ、視界に入らないようにすることを提案している。

テレワークや
オンライン会議後のケアに

 2つ目と3つ目は、最近特にテレワークやオンライン会議などで酷使しがちな、目の疲れを軽減させるマッサージ方法。ごく簡単な方法なのですぐに覚えることができ、仕事の合間でもできるメソッドになっている。

 山崎代表は、結婚を機にエステを学びはじめ、エステティシャンとしてサロンに勤務した経験を経て、3年半後に自宅でエステサロンをオープン。その後、中野区中野坂上、港区六本木へと移転し、現在は一戸建て風の隠れ家サロン「メディカルサロン Dr.いろは」を運営しスタッフ3人を抱える。

 「メディカルサロン Dr.いろは」では“細胞教育フェイシャル”と呼ばれる、マッサージと化粧品と機器を組み合わせ、肌の活性化を導くメニューが1番人気。使用する化粧品には徹底的にこだわり、常により良い商材を探していて、現在は再生医療に関する医療技術の研究開発を行っているサイセイが提供する、幹細胞培養液を導入している。

■メディカルサロン Dr.いろは
住所:東京都港区麻布台3-2-8
営業時間:11:00~18:00
定休日:月曜日

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6人の部門長が語るこれからの「WWDジャパン」 ファッション × ビューティ、デジタル × 紙で“ONE WWD”始動 

 INFASパブリケーションズは9月、ファッションとビューティ、デジタルと紙をシームレスにつなぐ組織改編を行う。キーワードは、“ONE WWD JAPAN”。両者をシームレスにつなぐことで変化に強い組織を目指す。ウィークリー「WWDビューティ」の編集部は「WWD JAPAN.com」編集部と統合し、ビューティ関連コンテンツは村上要「WWD JAPAN.com」編集長の下でSNS、デジタル、ウィークリー、新たにスタートする月刊誌、イベントの全メディアへ展開する。「WWDジャパン」編集部は引き続き向千鶴編集長のリードでファッションコンテンツの多くに責任を持ち、同じく各メディアへ届ける。1979年創刊のファッション業界紙にルーツをもつ「WWDジャパン」はどこへ向かうのか? “ONE WWD JAPAN”を形成する6つの部門長が方針を語った。

櫻井啓裕・取締役ビジネスプランニング部部長(以下、櫻井啓):大きな転換期の今、「WWDジャパン」はポストコロナ以降のファッションおよびビューティ産業の新たな歴史を作っていくためのプラットフォームでありたいと思っています。“ONE WWD JAPAN”のステートメントを強力に発信しながら組織を再編し、全ての部署が同じビジョンの下で業務を進める。

村上要「WWD JAPAN.com」編集長(以下、村上):“ONE WWD JAPAN”については、「『WWD JAPAN.com』で先陣を切らせていただきます!」と宣言したい(笑)。そのくらいの覚悟と信念で取り組む、大きなテーマだと思っています。ウェブは従来からファッション × ビューティでしたが、「WWDビューティ」編集部との統合により、そしてウィークリーの「WWDジャパン」におけるビューティコンテンツや月刊化する「WWDビューティ」まで手掛ける部隊となって、まさにファッションとビューティ、デジタルとプリントを跨ぐ集団となります。ユーザーの利便性を重視しながら、動画やライブ配信、音声、そしてオン&オフラインイベントやセミナーまでのコンテンツを生み出したいですね。

向千鶴「WWDジャパン」編集長(以下、向):ウイークリー「WWDジャパン」の肩書はこれまで“ファッション業界紙”でしたが、9月からは“ファッションとビューティの業界メディア”です。ビューティ市場はここ10年成長が著しく、「WWDビューティ」は2007年から独立して発行することで存在感を高めてきました。これからはその知見をもって再び一つになり毎週月曜日に紙と電子版を発行します。そもそも洋服もメイクもヘアも、広義の意味ではファッションだから、消費者はその間に壁を立てて考えたりはしませんよね。こと業界間となるとほぼ没交渉なのは産業構造が違うからという、作り手の理屈だけ。改めてもったいない!ファッションとビューティを仕事にする人たちが互いの可能性をもっと知る機会が増えれば、最終的には消費者に喜ばれる商品やオン・オフの売り場作りにつながると思う。“ONE WWD JAPAN”はそこをつなぐブリッジのような、サロンのような存在になります。

荒川晃久デザイン部部長(以下、荒川):たとえばファッション撮影を成功させるにはモデルをはじめ、スタッフのキャスティング、ヘア、メイク、洋服と全ての要素が一つのコンセプトをもとにした方程式で成り立つ必要があります。その要素の中でファッションとビューティの関係性、相性はかなり重要な要素です。その切っても切れない2つの業界が別々のコンテンツであることに違和感を覚えていました。ファッション業界とビューティ業界の橋渡しになる“ONE WWD JAPAN”のコンセプトは自然な流れであり、相互が理解を深めることのきっかけになり、その相乗効果は必ず撮影のクオリティーにも反映されていくと思います。

永松哲治販売部部長(以下、永松):販売部の仕事は“刊行物を売る”から“サービスを提供する”に変わっており、定期購読者には“ONE WWD JAPAN”だからできるサービスの提供を日々追求しています。デジタルの成長が著しいですが、ウイークリーの売り上げも好調です。4~5月の新型コロナウイルス感染拡大に伴う商業施設の休業やリモートワークが推奨された時期には、近年では例がないほど大変多くの定期購読のお申し込みをいただきました。この反響には驚き感謝する一方で、逆境の中でも有益な情報を得たい、前に進むのだ、というファッション業界、ビューティ業界の皆さんの気概を感じ、とても身の引き締まる思いでした。働き方が転換期を迎えている今、読者の環境にどれだけ寄り添えるのか、価値ある情報をどのような形でお届けするかが問われていると思います。

櫻井雅弘デジタルマーケティング部部長(以下、櫻井雅):“読者の環境にどれだけ寄り添えるか”は、重要ですよね。マーケティング視点で“ONE WWD JAPAN”を捉えると読者へ一方通行だった旧来のメディアモデルから“一人の読者”を中心として、その読者の行動、感情、目的などを伴った生活サイクルの中で、一貫したメディア体験を提供するモデルへ変化するためのコンセプトと言えます。「読者中心」を考えるときに最も注意しているのは「読者に求められている」ということを「量」で判断せず、「質」の視点に重きをおいて考えることです。今後の「WWDジャパン」は今まで以上に、ファッション・ビューティ業界の発展に必要なオピニオンを届けるメディアであることが役割だと考えています。そのためには今起きていることや今後の展望などに“気づき・動機・裏付け”を与えることが重要です。過去に基づくデータだけで施策を決定するのではなく、その人の今と将来に必要な本質的な価値を届ける目的のためのデジタル(データ)・マーケティングであることを念頭に、読者の皆さん「一人ひとりの“将来”の意思決定」に役立つ“ONE WWD JAPAN”をお届けしたいです。

デジタルは「60%でローンチ。
その後アップデート」

荒川:新型コロナの影響もあり、10年かかるだろうオンライン化が急速に発展していますよね。幸いにも、ここ数年で弊社は旧出版社という体質からメディアビジネスという体質に変化してきました。現在では、「WWDジャパン」というタブロイド紙の本質がさらに問われると同時に、ウェブでの情報提供のクオリティー担保は業界で生き残るための最低限の体制改革です。“ONE WWD JAPAN”が提供しようとしている“強化された”ファッションとビューティのあらゆるコンテンツは、アパレル業界に留まらず、他業界も巻き込む成長戦略として発展していくと期待しています。

村上:緊急事態宣言下で挑戦したライブ配信は、ユーザーとクライアントの双方からご評価いただき、新しい時代のビジネスにつながるであろう可能性を強く感じています。ただ、勢いでスタートした感もあり、そろそろアップデートが必要です。携わる人間の仕事が「作業化」した瞬間から、その意識を強く抱きました。8月には早速、週に2回お届けしていた紙面紹介プログラムを刷新します。デジタルの世界を取材して「60%でローンチ。その後アプデ」という考え方を学びました。デジタルは、修正できます(笑)。その特性を最大限に生かし、編集部員が常に、新たな気持ちで、興奮しながらコンテンツを生み出せる環境を整えるつもりです。

櫻井雅:デジタルに限らず全体に言えることですが、具体的に取り組んでいくことは、コンテンツ、コミュニケーション、フォーマットの3つを適切にパーソナライズすること。その時にも読者の個性や興味・関心などの今や過去のデータから導かれる提案に加えて、未来に向けて次に知るべきことが届けられるように、関心を拡張し、新たな気づきを提供する“ギフト”があることが大切だと考えています。そのためには、いわゆる“データ”だけでなく、個々の意見や感想を得ること、それに対してわれわれも丁寧に反応を示し、コミュニケーションをきちんと取ることを重ねて、それこそ読者の皆さんが店頭で行っているような接客・提案のような体験を、さまざまなタッチポイントで感じていただけるような仕組みやサービス作りを進めます。

櫻井啓:広告ビジネスという点では数字やメニューも大切ですが、それよりもより巨視的かつ長期的に捉えて、どういったコンテクストをクライアントと共に作っていくかがポイントになると思っています。それによりミクロの視点ではブランドのビジネスソリューションが提案できるし、マクロの視点では業界の活性化につながるから。ミクロとマクロを組み合わせて、一つの大きな物語を描く。それができるファッションメディアはBtoBに強いウイークリーに加え、より多くのオーディエンスを抱えるデジタルメディアを持つ「WWDジャパン」しかない。

向:「WWDジャパン」が今後注力したいキーワードは、サステナビリティとテクノロジー、そしてこれから業界を創るネクストリーダーの存在です。これらはファッションとビューティ共通ですが特にファッション業界は今、大量生産・大量廃棄からの脱却という課題に直面しており、サステナビリティの視点を持って業界自体を再設計するタイミングです。そもそもビジネスをデジタル上で始める若い起業家が増えており、“業界”の定義そのものが変わりつつあります。われわれの財産の一つが社会問題への意識が高い若い世代をフォロワーに持つSNSの存在。社内外の若い世代の声を“業界”に届けて揺り動かし発展に寄与したい。

6部門の連動で生み出す“ONE”の価値

櫻井啓:今まで以上に部門間を越えて連動して行きたい。売り上げの主体は広告や制作、イベントプロデュースなどビジネスプランニング部主導の領域がほとんどだったけれど、そのスキームも変えて行くべきだし、「WWDジャパン」はもっとビジネスを拡張できるポテンシャルがある。その一つは「WWDジャパン」しかできないような主催イベントだと思う。1月に開催した「ファッションロー」のセミナーなどが良い例で、エデュケーショナルなコンテンツは業界の活性化につながるし、われわれにも学びになります。ここはコンテンツを制作する編集部や販売部が主体になっていくし、デジタルマーケティング部が持つデータも活用できる。コロナ禍でリアルイベントは難しいかもしれないけれど、われわれが今一番力を入れている動画配信で行えればと思います。

櫻井雅:豊かな提案や読者の皆さんに届ける体験の元になるのは、やはり社内の各部門がそれぞれ現場で感じ取ってくる反応や意見ほど参考になるものはありません。デジタルマーケティング部としては個々の読者の反応や、コンテンツのパフォーマンスといったデータを取得、分析することはできますが、それを読者に良い形で還元するには、広告主に向き合うビジネスプランニング部、購読者に向き合う販売部、そして何よりファッション・ビューティ業界に向き合う編集部と今まで以上に連携・協調することが必要です。部門を横断して必要なメンバーが集まり、新しい施策を検討し、スピーディーに、村上が言うようにまずは60%で形にして読者の皆さんの満足度を測る。すでにいくつかの取り組みが動き出していますが、そういったプロジェクト型の協業をたくさん積み重ねていきたいと考えています。

向:記者の仕事は、本質的には10年前と変わっておらず、アウトプット先が紙に加えSNS、ウェブ、イベント、動画、時にコンサルティングと多面的になっているだけ。なんて、言うは易しでバランスが難しいのですが……。試行錯誤でようやく道筋が見えてきました。重要なのは、情報をいつ、どう届けるかを関連部署が連動して「設計」する視点です。だから記者が持ち込んだ情報を客観的に“研究”し、アウトプットに導くデジタルマーケティング部の存在は大きい。編集部についていえば、昔と大きく違うのは、記者一人一人の顔が見えること。これだけ個のメディアがあふれる中、有料メディアを選んでもらう理由は「信頼」にほかならない。「取材に基づく事実+分析、解説、オピニオン」を提供できる、年齢も嗜好もバラバラで顔が見える信頼できる個の集団、それが「WWDジャパン」です。

学びと交流の場として
セミナー・イベントを強化

永松:普段の取材を通して記者が感じる業界の課題や新しいビジネスの芽生えなどは、これまで記事を通して伝えてきましたが、今後は読者と直接コミュニケーションが取れるセミナーを積極的に開催します。4月に本格始動させる予定でしたが、コロナ禍の影響により仕切り直しを余儀なくされました。しかし、この間デジタルを活用したさまざまなトライができました。そして情報収集や学びの場としてニーズをとても感じています。記者や有識者を招き、読者の皆さんが抱えている課題を解決するための道筋やヒントになるような場を作りたいです。

村上:SNSの普及により「個」の時代となりました。インスタグラムはもちろん、TikTokやLINE LIVE、今はあらゆるプラットフォームに、身近なオピニオンリーダーが存在し、小さなコミュニティーを動かしています。私たちもそうなりたい。業界の革命児、ゲーム・チェンジャーを追い続けたいと思っていますが、最近は自身もゲーム・チェンジャーになりたいと思っています。そして願わくは、真面目な業界紙の記者だった同僚にもそうなってほしい。閉塞感の否めない業界を真面目に取材し続けるからこそ、自身にも閉塞感を抱いているスタッフがいるのだとしたら、私たち幹部の仕事は、彼らの前で、私たち自身の垣根を破壊することだと思っています。

荒川:“ONE WWD JAPAN”プロジェクトの社内への影響は大きい。“ONE WWD JAPAN”にいたるきっかけの一つにファッションやビューティ、編集コンテンツやタイアップ、プリントやウェブ、さまざまなソーシャルコミュニケーションツールなど、幅広いアウトプットが増えたことがあります。案件内容、進行、リソース、役割分担など、これまではプロジェクトを達成するための整理されるべき要素が散らかり、連携が困難でロスが多かった。これらが解決できれば、高い費用対効果が期待できると思います。また、部署の垣根を越えてプロジェクトごとにチームを結成できると、刺激し合い、新しい発見や学びを得て、モチベーションを上げるきっかけになる。デザイン部は発注を受ける際、最小限の情報でデザインを制作していましたが、 今後は“ONE WWD JAPAN”の一員としてキックオフからプロジェクトにかかわることにより、大きな流れや価値を理解し、プロジェクト自体への責任を感じ、クオリティーの高いデザインを制作できるようになると思います。

永松:「WWDジャパン」はファッションやビューティを学ぶ多くの学生たちに教材としても読んでいただいています。若い世代にはファッションやビューティに携わることの魅力をもっと伝えたいし、多様で多才な人材がどんどん業界に希望をもって飛び込んできてほしい。今回のパンデミックを経て、教育現場の方々もデジタル化の必要性と活用について試行錯誤されながら、新しい人材教育の形を探られていると思います。われわれも今、デジタル領域でさまざまなトライをしているので、一緒にできることや微力ながら貢献できることがないかと考えています。若い世代から得られる創造力や視点、感性は財産です。これを業界の皆さんと共有することも「WWDジャパン」のメディアとしての役割だと思いますし、なにより業界の未来を創ることだと思っています。

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ビジュアル・マーチャンダイジングがウィズコロナ時代に必要なわけ

 営業が再開されて店頭に活気が戻りつつあるが、かつてのようなにぎわいを取り戻し、さらに発展するためには“集客装置”が必要だ。そこで名乗りを上げたのが、ビジュアル・マーチャンダイジング(以下、VM)のプロフェッショナルであるVISUAL MERCHANDISING STUDIO(以下VMS)の堀田健一郎社長。堀田社長の言う、“VMの本質はコミュニケーションだ”の真意とは?旧知の仲であるラジーブ・シャルマ(RAJIV SHARMA)=マーク ジェイコブス ジャパン ジェネラルマネージャー(以下、GM)とのトップ対談から、VMの潜在能力を探りたい。

営業が再開された店頭で
VMはどう機能する?

ラジーブ・シャルマ=マーク ジェイコブス ジャパンGM(以下、シャルマ):自粛期間中にネットショッピングが活性化し、オンラインで事足りることに気付いた人も多い。だからこそ実店舗にはVMが必要だ。空間作りやその一部である販売員との会話を通じて、ブランドやショップの思考を感じてもらいたい。

堀田健一郎VMS社長(以下、堀田):コロナショックを受けて、僕の両親世代でもECで買い物ができるようになった。これからは、いっそう実店舗の力が試される時代だ。店舗をメディア化し、ますます個性を出していく必要がある。

シャルマ:事前にウェブでリサーチしてから買い物へ、という動きはさらに一般化するだろう。しっかり“助走”した上でたどり着いた店頭で、お客さまを落胆させないためにもVMが重要な役割を果たす。オンライン上で、われわれは常にターゲティングされている。つまり、自分の好きなものの情報は集まってくるが、“未知のもの”に遭う確率は減少している。通勤や通学の際に見かけるショーウインドーは、アナログに見えるがインパクトや気付きを与えるのに十分な装置と言える。

堀田:一方で、ビーコンを使った動線解析データなどによって什器の配置を換えたりディスプレーを替えたりと、デジタルとVMを融合した戦略も活発になるはずだ。

“VMの本質は
コミュニケーションである”(堀田)

堀田:僕が信念としているのは、“VMの本質はコミュニケーションだ”ということ。

シャルマ:確かにVMは、それまでそのブランドやショップのことを知らなかった人に気付いてもらうための、また既知の人には世界観や物語、コアバリューを伝えるためのツールだと言える。

堀田:MDを視覚化するという考え方から“VMD”としていたものを、2012年ごろから“VM”と呼ぶようになった。かつてはMDが用意した商品をもとにビジュアルを作っていたが、“どう見せたいのか?”からイメージを膨らませ、それに合わせて必要なSKUをMDに伝えて商品を準備するフローになった。VMSでは、この動きに合わせてSNSでの打ち出し方も提案している。VMDがMDに管理されMDのために活動していた時代から、現在はマーケティング活動の中で重要な役割を担い、新客を作り、同時に既存客を維持しながら売り上げを伸ばすためのキーファンクションとして機能し始めている。

VMのプロ人材を養成する
「VMアカデミー」を今秋開校!

 VMSは東京で9月5日から、大阪で9月12日から、ビジュアル・マーチャンダイザーを養成する「VMアカデミー」を開校する。従来のVMDの考え方から脱却し、最新のVM手法を理解して実践できるプロの人材を育てるという。第1弾となる基礎編では、初歩的な陳列テクニックなどは身に付いていることを前提に、今日的なVM知識をレクチャーする。堀田VMS社長は、「座学のほかにデモストアを使ったワークショップ、受講生同士のグループディスカッションも行い、手と頭を動かしてVMの理解度を深めていく」と説明する。2時間×10回の座学と研修(ワークショップ)を修めると修了証書が授与され、さらにVMのスペシャリスト資格である「VMS認定ディプロマ」の試験を受けられるようになる。

 2021年度からは応用編の開設も予定する。「ラグジュアリーブランドやセレクトショップ、大手SPAメーカーのVM担当者をゲスト講師に、リアルなVM制作現場や彼らの知見や考えを聞くことができる場にする」という。

“VMを通じて生まれる客・
店・販売員に良い環境に期待”
(シャルマ)

堀田:シャルマGMと出会ったのは、VMの潮流が変化し始めた12年ごろ。僕がVM責任者としてルイ・ヴィトン ジャパンに入社し、シャルマGMは当時一番の規模と売り上げを持つショップの店長だった。そして、そこではスタッフ全員がディスプレー作りに携わっていた。“優秀なVMD担当者に一任する”がまだ主流だった時代に、シャルマ店長が先頭に立って販売員によるレイアウト変更を行っていた。全スタッフにブランドおよびショップのビジョンが共有されていなければできないことであり、VMを通じてコミュニケーションが取れていた。シャルマ店長がVM作業を通じて各スタッフの能力を見いだして伸ばしているのも分かり、とても感動したことを覚えている。VMSでも、VMは店舗スタッフ全員で行うことが大事だと訴えている。“VMの本質はコミュニケーション”と言ったが、VMはチームワークの結束や人材育成にも役立つ。

シャルマ:店長からしたら、VMは売り上げを期待して戦略的に作るもの。一方でVM担当者が重要視するのは美しさ。どうしてもアート的な感覚になる。またショップスタッフは、機能的で販売しやすい空間を望む。それぞれの主張をくむのは難しいが、良いバランスが取れれば良い売り場になる。だからこそVMでコミュニケーションを図り、皆が理解を一つにする必要がある。そうして生まれるのが、お客さまにとって気持ちのいい環境、スタッフが誇りを持って仕事ができる環境、売れる環境だと思う。

堀田:「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」のショップに行くと、VMでコミュニケーションしていることがよく分かる。VMの専門家が設営すればその瞬間は美しいだろうが、絶えず流動する店頭をどう維持し、時にアレンジしていくかも課題となる。

シャルマ:例えばECサイトはいくらトラフィックがあっても見た目は変わらないが、実際のディスプレーは人が触れば崩れてしまう。触れたくなるディスプレーに仕上がったことはうれしいが、繁忙期こそ多くのお客さまにきちんとしたものを見せたいもの。そこでスタッフは接客する者、ストックを補充する者、それらをフォローする者といったふうに連携しなくてはならない。これもVMというコミュニケーションツールがあってこそ実現する。

堀田:VMによって店舗フローに芯ができ、全スタッフが共通のゴールを目指せるようになる。VMは点ではなく面、いや立体になってこそ、その力が最大限に引き出される。

PHOTO : TAKUYA FURUSUE
TEXT : KAORI TOMABECHI

問い合わせ先
VISUAL MERCHANDISING STUDIO
03-3320-2053

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「住民以外も巻き込んで、カルチャーを守る」 渋谷区が異例のクラウドファンディングを立ち上げた狙いを区長に直撃

 東京都渋谷区は、渋谷区商店会連合会、渋谷区観光協会、渋谷未来デザインと共に、新型コロナウイルス感染症拡大で影響を受けている区内のファッション、理美容、飲食、エンターテインメントなどの事業者を支援するために、「YOU MAKE SHIBUYA クラウドファンディング」を開始した。地方自治体がコロナで苦しんでいる産業支援のために給付金を支給する事例は多いが、渋谷区のようなクラウドファンディングでの商業振興は珍しい。渋谷区は全国で初めて同性のパートナーシップを認める(2015年)など、これまでも柔軟な取り組みが注目されてきた自治体。長谷部健区長に、クラウドファンディングの狙いを聞いた。

WWD:7月22日に、「YOU MAKE SHIBUYA クラウドファンディング」がCAMPFIRE上でスタートした。期間は9月6日までで、目標金額は渋谷区とかけた4289万円。集まった資金は区内の事業者の支援に充てられる。クラウドファンディングを立ち上げたのはどんな意図から?

長谷部健渋谷区長(以下、長谷部):意図は単純明快です。渋谷の街の魅力を構成する大きな要素である、ファッションや理美容、エンタメ、飲食といった業界が新型コロナの影響で困っていて、アクションが滞っている。僕自身も原宿で生まれ育っているので、周りにあった洋服屋などが(コロナで)つぶれているのも見ている。近年は中国を中心とした観光客の方が収益の中心だったので、売り上げが7割減になったといった声もきます。一方でオーバーツーリズムの問題は解決した部分もありますが、だからといってそれでよしとは思わない。やはりこの街は、ファッションやエンタメなど、さまざまなカルチャーの発信がアクティブにあるからこそ、僕も皆さんもシティプライドを持ってやってきた。だから、そういったカルチャーの分野はできるだけ応援しないといけない。

WWD:給付金での支援ではなく、クラウドファンディングという形がユニークだ。

長谷部:渋谷区は東京23区特別区ですが、地方自治体の仕事は基本的にはそこに住む生活者を支えることです。だから、どうしても住民の教育や福祉、それにまつわる土木などの事業が優先になるし、商業振興を行うにしてもその土地に住んでいる事業者を対象にしていることが多かった。ただ、渋谷のカルチャーの大きな原動力になっている人たちが、区民じゃないということもある。この街の昼間人口は、住民(約23万人)の何倍もいます。そこに大きなジレンマがありました。渋谷区は基本的に住民税で運営している自治体なので、(住民ではない事業者を含む)商業振興には原資をかけづらい。でも、商業振興も置き去りにできない。渋谷区の住民税だけで(商業振興を)まかなうのは財政的にきついし、この街には住んでいないけど関心を持っている人はたくさんいる。そういう人たちと一緒になって、この街のカルチャーを守っていきたい。それでクラウドファンディングという形になりました。

さらに言えば、ウィズコロナ、アフターコロナのライフスタイルを探っていく中で、社会が未来へ向かうスピードが速くなるという面もあると思うんです。インターネットとの親和性などによって、生活のあらゆる面がコロナで進む面もある。だから、単にコロナで苦しんでいる事業者を支援するということだけでなく、コロナを経た新しいライフスタイルや社会のあり方を見据える。そのために、区の予算としても1億円を拠出して、クラウドファンディングで集まった資金と共に商業振興を行っていきます。

「なぜ区が給付金を出して振興してくれないんだ」と言われてしまうかもしれませんが、それが一番誤解してほしくない部分。特別区としてできることを追求する中で、この街を発展させてきた区民じゃない方々にもできる限りのことをしたい。一緒になってやっていくために、クラウドファンディングとして力を貸してほしい。コロナは個人を主語にして乗り越えていくものではなく、社会を主語にして乗り越えていく課題。みなさんとまとまって力を出していきたい。

WWD:調達した金額と渋谷区の予算をあわせて、具体的に事業者にどのような支援を行っていくのか。

長谷部:たとえば飲食店などは、マスクやフェイスシールドが不足して困っているので配布します。ファッション関連の事業者は、来街者や観光客が減って商品が売れなくなっている。そこでECを作って売っていく。ただ、既に確立されている「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」などと同じことをやっても意味がないですから、街の魅力と一緒になったECにしていく。たとえば、街にリアルに出店している人しか出せないような仕組みなどを考えています。最初は既存のECモールの中に渋谷区の店としてまとまって出店するようなイメージを描いていますが、おいおいは5月にスタートした5Gの通信網を生かした渋谷区公認の仮想空間「バーチャル渋谷」の中で、ショッピングモールやコンサートを観る仕組みを作ることもできると思っています。そういう未来へのチャレンジを楽しみながら一緒に行ってもらえないかという呼びかけが、今回のクラウドファンディングですね。これまで、渋谷のスクランブル交差点でファッションショーをしたいという声などもありましたが、実際はなかなか難しい。そういったことも、バーチャル空間ではスムーズにできるようになるかもしれません。

WWD:ファッションや理美容などの事業者からは、コロナショックに伴ってさまざまな陳情が届いている?

長谷部:いろんな人から毎日情報は聞きますし、苦労しているお店、なくなっていくお店を実際見ています。同時に頑張っているなとも感じたりね。(陳情に来た人には)お金はサポートできないけど、(スクランブル交差点など)今までできなかった場所で何か行動をして、ノイズをあげるという行動なら積極的に応援すると伝えています。ただし、一つのブランドや店を盛り上げるためだけの行動では意味がなくて、(渋谷区のECモールなど)新しいサイトを作ったり、新しいムーブメントを生み出したりするためのきっかけになることなら、応援しますよと話している。

WWD:行政が、民間の事業者に対して何をどこまでやるのかというのは難しい部分もあると思う。

長谷部:繰り返しになりますが、渋谷を誇りに思ってくれている渋谷区民ではない人はたくさんいます。ハロウィンの翌朝の掃除などにまさにそれが表れていて、渋谷に住んでいない人たちが、自分たちの街として渋谷を掃除してくれる。ここはそういうパワーがある街です。そういう人たちは納税者ではないですが、渋谷区を応援することができるという空気を作りたい。そのようにいろんな人を巻き込んでいくという意味で行政の関わりはもちろんあると思うし、関わるべきだと考えています。渋谷区が政令指定都市並みの税制や権限を持っていたらもっと色々できると思いますが、今できる範囲内でのベストを考えている。渋谷区には給付金を配り続ける体力はない。だったら、釣った魚を渡すのではなく釣り竿を渡そうという考えです。ネット上で商品が買えるような仕組みができれば、万一コロナの第二波、第三波がきて実店舗が閉まっても売り上げにつながる。渋谷区公式のサイトとなれば、ECとしての見え方も違うんじゃないかと期待しています。

WWD:ファッションで言えば、渋谷区は個店も多い街。個店で自立心が強いゆえ、ファッション業界はなかなかまとまったパワーにならないという面もコロナでは明らかになった。

長谷部:(渋谷区の今の主だったファッション産業は)DCブランドのマンションメーカーからスタートしましたからね。現在も渋谷区は自立心のある人の集まる街、上を向いている人が集まる街だと思う。(ファッションの事業者があまり横とつながりたがらないのだとすれば)それこそ行政はやる意味があると思います。行政が(ECなどの事業を先導することが)一番フェアでしょう?

WWD:ファッション業界に対して要望はあるか。

長谷部:本当は、誰かに言えば業界全体に広がるといった仕組みになっているとありがたいですが……(笑)。たとえば理美容業だと、大手美容室も入っている区内のネットワークがあります。それは徒弟制度だからという部分もあるのかもしれないですが、ファッション業界はそういう(ネットワークがきっちりしている)部分もあるけれど全然そうじゃない部分もある。僕は絵本の「スイミー」みたいな組織になるといいと思うんです。区役所内の組織のあり方についてもよく言っていることなんですが、(ファッション業界も)みんなで大きな一つの船に乗るのではなく、個が集合することで大きな課題に立ち向かうことができる業界だと思う。コロナは、街とみんなと一緒になって乗り越えていかないといけない課題ですから。

今まで、区とファッション業界が膝を突き合わせて話をすることはあまりありませんでした。僕が区長になった後、(区内に本社を構える)ビームスやアダストリアとは協定を結んで、そういった大手企業との話し合いは少しずつ始まっていましたが、ファッション業界との連携をもっともっと進めていきたい。区役所の職員がクールビズでビームスが手掛けたポロシャツ着ていますが、所内が明るくなりました。やっぱりファッションの力ってありますよね。業界の側から、(行政と一緒になって何ができるか)もっともっとアイデアを寄せてほしいです。

WWD:長谷部区長が考える、ファッションビジネスのおもしろさとは?

長谷部:原宿で生まれて、小学生のころは竹の子族やロカビリー族がはやっていましたし、同級生の親にはDCブランドやマンションメーカーを手掛けていた人もいました。ぼんぼんビジネスを当てて行って、あっという間にいなくなった人もいましたが、そこから続けることは大変だけど、華やかですてきな業界だなと感じていました。もちろん、ファッションに限らず、デザイン関係、映画監督、カメラマンなどの親を持つ子どももいて、うちみたいなサラリーマンの家庭もあった。僕は自分自身がおしゃれだとは思わないですし、おしゃれとなるとどちらかというと気恥ずかしくなってしまうタイプですが、そういう街で揉まれて育ってきた中で、ファッションを通して成長していった仲間もたくさんいる。だから服自体というよりも、そういういろんな人たちが作り出すカルチャーには思い入れがあります。渋谷区では全国で初めて同性のパートナーシップを認めましたが、それもLGBTQの人たちが周りにいたから気付けたことです。そういうさまざまなカルチャーがある街は誇りなんですよね。街に育てられたという感覚はあります。

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「住民以外も巻き込んで、カルチャーを守る」 渋谷区が異例のクラウドファンディングを立ち上げた狙いを区長に直撃

 東京都渋谷区は、渋谷区商店会連合会、渋谷区観光協会、渋谷未来デザインと共に、新型コロナウイルス感染症拡大で影響を受けている区内のファッション、理美容、飲食、エンターテインメントなどの事業者を支援するために、「YOU MAKE SHIBUYA クラウドファンディング」を開始した。地方自治体がコロナで苦しんでいる産業支援のために給付金を支給する事例は多いが、渋谷区のようなクラウドファンディングでの商業振興は珍しい。渋谷区は全国で初めて同性のパートナーシップを認める(2015年)など、これまでも柔軟な取り組みが注目されてきた自治体。長谷部健区長に、クラウドファンディングの狙いを聞いた。

WWD:7月22日に、「YOU MAKE SHIBUYA クラウドファンディング」がCAMPFIRE上でスタートした。期間は9月6日までで、目標金額は渋谷区とかけた4289万円。集まった資金は区内の事業者の支援に充てられる。クラウドファンディングを立ち上げたのはどんな意図から?

長谷部健渋谷区長(以下、長谷部):意図は単純明快です。渋谷の街の魅力を構成する大きな要素である、ファッションや理美容、エンタメ、飲食といった業界が新型コロナの影響で困っていて、アクションが滞っている。僕自身も原宿で生まれ育っているので、周りにあった洋服屋などが(コロナで)つぶれているのも見ている。近年は中国を中心とした観光客の方が収益の中心だったので、売り上げが7割減になったといった声もきます。一方でオーバーツーリズムの問題は解決した部分もありますが、だからといってそれでよしとは思わない。やはりこの街は、ファッションやエンタメなど、さまざまなカルチャーの発信がアクティブにあるからこそ、僕も皆さんもシティプライドを持ってやってきた。だから、そういったカルチャーの分野はできるだけ応援しないといけない。

WWD:給付金での支援ではなく、クラウドファンディングという形がユニークだ。

長谷部:渋谷区は東京23区特別区ですが、地方自治体の仕事は基本的にはそこに住む生活者を支えることです。だから、どうしても住民の教育や福祉、それにまつわる土木などの事業が優先になるし、商業振興を行うにしてもその土地に住んでいる事業者を対象にしていることが多かった。ただ、渋谷のカルチャーの大きな原動力になっている人たちが、区民じゃないということもある。この街の昼間人口は、住民(約23万人)の何倍もいます。そこに大きなジレンマがありました。渋谷区は基本的に住民税で運営している自治体なので、(住民ではない事業者を含む)商業振興には原資をかけづらい。でも、商業振興も置き去りにできない。渋谷区の住民税だけで(商業振興を)まかなうのは財政的にきついし、この街には住んでいないけど関心を持っている人はたくさんいる。そういう人たちと一緒になって、この街のカルチャーを守っていきたい。それでクラウドファンディングという形になりました。

さらに言えば、ウィズコロナ、アフターコロナのライフスタイルを探っていく中で、社会が未来へ向かうスピードが速くなるという面もあると思うんです。インターネットとの親和性などによって、生活のあらゆる面がコロナで進む面もある。だから、単にコロナで苦しんでいる事業者を支援するということだけでなく、コロナを経た新しいライフスタイルや社会のあり方を見据える。そのために、区の予算としても1億円を拠出して、クラウドファンディングで集まった資金と共に商業振興を行っていきます。

「なぜ区が給付金を出して振興してくれないんだ」と言われてしまうかもしれませんが、それが一番誤解してほしくない部分。特別区としてできることを追求する中で、この街を発展させてきた区民じゃない方々にもできる限りのことをしたい。一緒になってやっていくために、クラウドファンディングとして力を貸してほしい。コロナは個人を主語にして乗り越えていくものではなく、社会を主語にして乗り越えていく課題。みなさんとまとまって力を出していきたい。

WWD:調達した金額と渋谷区の予算をあわせて、具体的に事業者にどのような支援を行っていくのか。

長谷部:たとえば飲食店などは、マスクやフェイスシールドが不足して困っているので配布します。ファッション関連の事業者は、来街者や観光客が減って商品が売れなくなっている。そこでECを作って売っていく。ただ、既に確立されている「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」などと同じことをやっても意味がないですから、街の魅力と一緒になったECにしていく。たとえば、街にリアルに出店している人しか出せないような仕組みなどを考えています。最初は既存のECモールの中に渋谷区の店としてまとまって出店するようなイメージを描いていますが、おいおいは5月にスタートした5Gの通信網を生かした渋谷区公認の仮想空間「バーチャル渋谷」の中で、ショッピングモールやコンサートを観る仕組みを作ることもできると思っています。そういう未来へのチャレンジを楽しみながら一緒に行ってもらえないかという呼びかけが、今回のクラウドファンディングですね。これまで、渋谷のスクランブル交差点でファッションショーをしたいという声などもありましたが、実際はなかなか難しい。そういったことも、バーチャル空間ではスムーズにできるようになるかもしれません。

WWD:ファッションや理美容などの事業者からは、コロナショックに伴ってさまざまな陳情が届いている?

長谷部:いろんな人から毎日情報は聞きますし、苦労しているお店、なくなっていくお店を実際見ています。同時に頑張っているなとも感じたりね。(陳情に来た人には)お金はサポートできないけど、(スクランブル交差点など)今までできなかった場所で何か行動をして、ノイズをあげるという行動なら積極的に応援すると伝えています。ただし、一つのブランドや店を盛り上げるためだけの行動では意味がなくて、(渋谷区のECモールなど)新しいサイトを作ったり、新しいムーブメントを生み出したりするためのきっかけになることなら、応援しますよと話している。

WWD:行政が、民間の事業者に対して何をどこまでやるのかというのは難しい部分もあると思う。

長谷部:繰り返しになりますが、渋谷を誇りに思ってくれている渋谷区民ではない人はたくさんいます。ハロウィンの翌朝の掃除などにまさにそれが表れていて、渋谷に住んでいない人たちが、自分たちの街として渋谷を掃除してくれる。ここはそういうパワーがある街です。そういう人たちは納税者ではないですが、渋谷区を応援することができるという空気を作りたい。そのようにいろんな人を巻き込んでいくという意味で行政の関わりはもちろんあると思うし、関わるべきだと考えています。渋谷区が政令指定都市並みの税制や権限を持っていたらもっと色々できると思いますが、今できる範囲内でのベストを考えている。渋谷区には給付金を配り続ける体力はない。だったら、釣った魚を渡すのではなく釣り竿を渡そうという考えです。ネット上で商品が買えるような仕組みができれば、万一コロナの第二波、第三波がきて実店舗が閉まっても売り上げにつながる。渋谷区公式のサイトとなれば、ECとしての見え方も違うんじゃないかと期待しています。

WWD:ファッションで言えば、渋谷区は個店も多い街。個店で自立心が強いゆえ、ファッション業界はなかなかまとまったパワーにならないという面もコロナでは明らかになった。

長谷部:(渋谷区の今の主だったファッション産業は)DCブランドのマンションメーカーからスタートしましたからね。現在も渋谷区は自立心のある人の集まる街、上を向いている人が集まる街だと思う。(ファッションの事業者があまり横とつながりたがらないのだとすれば)それこそ行政はやる意味があると思います。行政が(ECなどの事業を先導することが)一番フェアでしょう?

WWD:ファッション業界に対して要望はあるか。

長谷部:本当は、誰かに言えば業界全体に広がるといった仕組みになっているとありがたいですが……(笑)。たとえば理美容業だと、大手美容室も入っている区内のネットワークがあります。それは徒弟制度だからという部分もあるのかもしれないですが、ファッション業界はそういう(ネットワークがきっちりしている)部分もあるけれど全然そうじゃない部分もある。僕は絵本の「スイミー」みたいな組織になるといいと思うんです。区役所内の組織のあり方についてもよく言っていることなんですが、(ファッション業界も)みんなで大きな一つの船に乗るのではなく、個が集合することで大きな課題に立ち向かうことができる業界だと思う。コロナは、街とみんなと一緒になって乗り越えていかないといけない課題ですから。

今まで、区とファッション業界が膝を突き合わせて話をすることはあまりありませんでした。僕が区長になった後、(区内に本社を構える)ビームスやアダストリアとは協定を結んで、そういった大手企業との話し合いは少しずつ始まっていましたが、ファッション業界との連携をもっともっと進めていきたい。区役所の職員がクールビズでビームスが手掛けたポロシャツ着ていますが、所内が明るくなりました。やっぱりファッションの力ってありますよね。業界の側から、(行政と一緒になって何ができるか)もっともっとアイデアを寄せてほしいです。

WWD:長谷部区長が考える、ファッションビジネスのおもしろさとは?

長谷部:原宿で生まれて、小学生のころは竹の子族やロカビリー族がはやっていましたし、同級生の親にはDCブランドやマンションメーカーを手掛けていた人もいました。ぼんぼんビジネスを当てて行って、あっという間にいなくなった人もいましたが、そこから続けることは大変だけど、華やかですてきな業界だなと感じていました。もちろん、ファッションに限らず、デザイン関係、映画監督、カメラマンなどの親を持つ子どももいて、うちみたいなサラリーマンの家庭もあった。僕は自分自身がおしゃれだとは思わないですし、おしゃれとなるとどちらかというと気恥ずかしくなってしまうタイプですが、そういう街で揉まれて育ってきた中で、ファッションを通して成長していった仲間もたくさんいる。だから服自体というよりも、そういういろんな人たちが作り出すカルチャーには思い入れがあります。渋谷区では全国で初めて同性のパートナーシップを認めましたが、それもLGBTQの人たちが周りにいたから気付けたことです。そういうさまざまなカルチャーがある街は誇りなんですよね。街に育てられたという感覚はあります。

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顔認証とAIを駆使した無人店舗で化粧品を購入してみた

 以前から注目されていたものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり期待感が増している無人店舗。「アットコスメ」と協業し東京・新宿住友ビル地下にオープンした「セキュア AI ストア ラボ(SECURE AI STORE LAB)」もそのひとつだ。会員情報と顔認識システムを紐付け、入店から購入、退店までをデータで管理する同店。そのシステムを探りに店舗を訪れてみた。

◾︎顔認識の技術は
どこまで進んでいるの?

 この店舗を運営するセキュアは、オフィスや店舗のセキュリティーシステムやAI、クラウドサービスの企画や開発、販売、運営を手がける会社で、一般消費者向けのストア運営は初めてだ。自社で扱う最先端のAI技術、セキュリティー技術を店舗運営に生かすための実証実験の場が欲しくて、自分たちで運営しようと決めたんだそう。「失敗してもいいと思っているし、実際にトラブルはあるかもしれない。それでも自分たちで運営して何かあったらスピード感を持って対応し、作り上げたものを小売店に見ていただいた方が良いと思った」と平本洋輔セキュア取締役。

 店舗の特徴は、オフィスのセキュリティーでおなじみの⼊退室管理のデータに顔認識システム、ディープランニングによるAI技術を用いている点。会員カードやQRコードをかざすなどの必要はなく、モニターに顔を向けるだけで個人を認識する。ちなみに、顔認証システムは以前からあったが、2001年の米国同時多発テロを契機に注目度が加速。「顔認証システムは目鼻の位置を読み取る技術のほかに、顔の凹凸まで読み取る3次元の顔認識システムが生まれて精度が飛躍的に向上した」(平本取締役)そうで、技術も大幅に進化している。

◾︎会員登録と顔認証登録を済ませ
いざ店舗へ!

 店舗に入るには事前に会員登録をする必要がある。そこで名前や年齢のほか、クレジットカードの登録をしていざ店舗へ。店舗横には顔登録端末があり、そこに会員情報のQRコードをかざし、あらかじめ登録していた会員情報に顔のデータを追加する。それが完了したら入店ゲートへ……。入り口横にあるモニターに顔を向けてマスクを外したら顔の読み取りが完了し、ゲートが開いた。なお、現在の顔認証システムはマスクをしたままでも顔を読み取れる設定にもできるとのこと。

 ゲートの先にあるこぢんまりとした店内には、「アットコスメ ニッポン(@COSME NIPPON)」の製品がずらりと並び並び、ポップアップストアのような印象だ。「『アットコスメ』の製品や口コミ情報は貴重で、ぜひやらせていただきたいと声をかけた」(平松取締役)そうで、無人店舗を支えるものはデータと技術であることを改めて思い知る。

 天井にはセンサーとカメラが備え付けられていて、これにより来店客の動線を可視化しているという。棚の前に立ち商品を手に取ると、棚上部にあるモニターに製品説明が表示され、「アットコスメ」の製品紹介文や口コミ情報がモニターに表示される。購入を決めた製品があればそのままバッグに入れてOK。なんだか万引きをしているような気分になるが、製品が今どこにあるのか?はセンサーにより管理されていて、退店時の顔認証でクレジットカードから自動的に決済される。決済できなければ店から出ることができない(製品を棚に戻すしかない)ため、無人店舗でも万引きができないという仕組みだ。

 このシステムの便利なところは、什器に触れたりカードをかざしたりしなくても、顔を向けるだけで認証されるためタッチパネルなどに触れる回数を大幅に減らせるほか、会員情報を元に入店・退店の管理が行えるため、店内の人数制限が容易に行える点だろう。来店客の動線や製品を手に取る回数なども可視化でき、取り扱い製品の構成や陳列の変更などもデータを見ながら行える。そのほか、技術的には顔を認証する際に体温測定も可能とのことなので、ウィズ・コロナの時代に重宝されそうだ。同店は2021年3月末までオープンしている。

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ジェシカ・ジュンの美の秘訣とは? 「レブロン」グローバルアンバサダー就任

 「レブロン(REVLON)」のグローバルアブランドンバサダーに歌手、作家、女優、モデル、ファッションデザイナーとして活躍するジェシカ・ジュン(Jessica Jung)が就任した。アジアを中心に同ブランドのアイコン製品である「スーパー ラストラス」や「カラー ステイ」シリーズのほか、新商品の広告キャンペーンに登場する予定だ。

 ジェシカはアメリカ・サンフランシスコに生まれ、11歳で韓国に移住。パフォーマーとしてデビュー後、大人気ガールズグループのメンバーとして一躍スターとなった。その後、自身のファッション&ビューティーブランド「Blanc&Eclare」を立ち上げるなど、多岐にわたって活躍している。マルチな才能を持つ彼女の美しさの秘訣やアンバサダー就任の感想などを聞いた。

WWD:「レブロン」のグローバルアブランドンバサダーに就任した感想は?

ジェシカ・ジュン(以下、ジェシカ):すごくうれしいのと同時に、光栄に思います。幼少期をアメリカで過ごし、その頃から「レブロン」の広告を見て育ったということもあり、さらに特別に感じています。まだ実感が湧いていなくて、すごくドキドキしていますね。

WWD:ジェシカさんにとって“美”とは?

ジェシカ:私にとっての美しさは自由に自分自身を表現することです。外面の美しさも大事ですが内面の美しさのほうが重要で、いつもハッピーな人が美しい人だと思いますね。

WWD:美を磨くために普段から気を付けていることは?

ジェシカ:まず美しさを維持するために一番重要なのは、大切な人や好きな人たちと共に過ごすことです。好きな人たちと一緒にいることで内面的に強くなれるし、そういった気持ちが外面にも現れてくると思います。ケアに関しては、やっぱりスキンケアとベースメイクが大事ですね。土台が整っていると全てがキレイに見えますし、この2つは大事にしています。

ジェシカ・ジュンのメイクテクニックや注目のトレンドは?

WWD:「レブロン」の製品でお気に入りのものは?

ジェシカ:新製品「レブロン カラーステイ クッション ロングウェア ファンデーション」は、暑くなるこれからの季節にすごく使いやすいアイテムです。私も使っているんですが、皮脂をコントロールするパウダーが配合されているので、程よいマット感で端正な肌に仕上がります。パフでぽんぽんとタッチするだけできちんとカバーもしてくれて、すごく使いやすいです。さらに密着感があって崩れにくいロングラスティングなので、これからの季節は汗もかきますし、マスクも必須なので「レブロン カラーステイ クッション ロングウェア ファンデーション」はおすすめですね。

あと、「レブロン キス グロウ リップ オイル」です。カラーバリエーションも豊富で、単品で使ってもかわいいですし、ほかのリップの上から重ね塗りしてもふっくらとした艶のある仕上がりになるのでおすすめです。

WWD:ジェシカさんが実際に取り入れているメイクテクニックは?

ジェシカ:ベースメイクを大事にしているのですが、その中でも私のおすすめのテクニックは2色のファンデーションを混ぜて使う方法です。リキッドファンデーションもクッションファンデーションも同じように使っているんですが、自分の肌よりワントーン明るい色と暗い色をミックスして、自分の肌にぴったり合う色に調整して使っています。

WWD:この夏、注目しているメイクトレンドは?

ジェシカ:最近リップをオーバー気味に塗るのがトレンドなんじゃないかなと思っています。私のお気に入りは、アイシャドウブラシを使ってリップラインをぼかしながらオーバー気味に塗る方法です。そうするとナチュラルにボリューム感のある唇に仕上がります。

WWD:性別にとらわれず、メイクを楽しむ男性も増えていますがどう感じていますか?

ジェシカ:メイクは自己表現のひとつの方法なのですごくよいと思います。メイクで自分の表現の幅が広がるのは素晴らしいことですよね。

WWD:グローバルブランドアンバサダーとして伝えたいことは?

ジェシカ:新型コロナウイルスの影響もある中でとても不安な日々が続いています。新しい生活に慣れていかなくてはいけない大変な時期ではありますが、ポジティブな気持ちを忘れずに過ごしてほしいと思っています。アンバサダーとして、メイクを通じて新たなチャレンジをしていくので、皆さんに楽しく笑顔になっていただきたいです。

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東京・馬喰町の老舗ファッション書店「アスカブックセラーズ」、繊維問屋とのつながりが生んだ意外な大ベストセラー

 「アスカブックセラーズ」と聞いてピンと来た人は相当なファッション通、というかけっこうコアな業界人だろう。東日本最大のアパレル問屋街である東京・馬喰町エリアの、東日本橋駅B3出口から徒歩10秒、大手繊維商社モリリン東京支社のすぐそばの書店だ。30坪の店舗は、入り口でマスクと子ども用の数十種類のバスボムが出迎え、中に入ると左側には児童書や子ども向けの雑貨、右側にはファッション雑誌、正面に進むと文庫やマンガ、ビジネス書が雑然と並び、書店とも雑貨店とも言えない独特の品ぞろえだ。が、同時にふらりと立ち寄ったサラリーマンやOLが立ち読みをしていたり、ランドセルを背負ったまま学校帰りの小学生が座り込んでおもちゃを見ていたりする、昔ながらの書店の居心地の良さも漂わせている。

 かつてはイースト東京エリアで随一を誇るファッション専門雑誌&書籍をそろえていたユニークな書店は、「WWDジャパン」「ファッションニュース」の袖看板に名残りをとどめつつ、繊維問屋跡地に次々と建ったマンション、今なお残る繊維問屋、古き良き下町情緒など新旧の変化を映し出すユニークな書店として街に彩りを添えている。「アスカブックセラーズ」店主の河邊健太郎トリオ&カンパニー代表取締役に話を聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):ファッション雑誌からマスク、子ども用の雑貨まで、多種多様な商品を取り扱っていますね。

河邊健太郎店主(以下、河邊):いやあ、今は子ども向けの雑貨や日用品が売れてます。この場所に移転オープンをした当時はまだ繊維問屋や商社が多くて、ファッション専門の書籍や専門誌をかなり充実させたファッション専門書店にしたんですけど、正直あまり売れなかった。数年後に、ひょんなことから雑誌の納入先の繊維問屋から日用雑貨を仕入れられるルートができて、近隣のオフィスに勤めている女性をターゲットに、生活雑貨やキッチン雑貨、子ども用の日用品なんかを入れたら、それが売れた。ちょうどその頃から繊維問屋が減って、その跡地にマンションがどんどん建っていったので、若い女性に加え、小さな子ども連れの若い夫婦が増えました。一番売れているのは、小さい子ども向けの雑貨やおもちゃですね。このビルの2階も公文教室だし。書籍の仕入れは減らしましたが、ファッションの専門誌の方はむしろ休刊が多くて取り扱いが減った感じですね。

とはいえ、今でも外商を含めると本・雑誌の売り上げが全体の7割です。日用品や雑貨に比べて雑誌や本の方が単価は高いので。児童書もよく売れてます。

WWD:新型コロナの影響は?

河邊:4月から周辺のオフィスがクローズしたので街の人の数は激減しました。けど、うちのお客はオフィスワーカーだけでないので、お店はずっとオープンしていました。3月・4月はマスクや消毒液が売れました。

WWD:よく仕入れられましたね。

河邊:先ほども言ったように雑貨や日用品はファッション誌の納入先の地元の繊維問屋から仕入れていて、マスクなどもその繊維問屋から仕入れられたので。隣のドラッグストアチェーンではずっと売り切れているのに、なぜか「アスカブックセラーズ」では売っていました。価格も安かったですし、飛ぶように売れましたね。

WWD:高くしようとは思わなかった?

河邊:うちみたいな小さな店舗は、信用・信頼が第一なんです。そのときに売れても、高い値付けで地元の顔なじみのお客に嫌われたら主力の本や雑貨が売れなくなっちゃいますよ。とはいえ、マスクや消毒液を買っていったのは顔なじみのお客というより、見たことのない新規のお客でした。うちはSNSやウェブサイトもないのに、商品を並べるとどこからともなくお客が買いに来るので不思議でしたね。

WWD:開店は朝8時とかなり早く、街行事間は21時までと長い。なぜですか?

河邊:早いですか?先代、先々代からずっとそうだったからなあ。昔からやっている書店なら普通だと思います。朝の出勤前に立ち寄るお客さんも多いですよ。ただ、閉店時間は22時だったのを5年前に21時に変えました。隣のドラッグストアやドトールもそのくらいなんでね。1時間早めてだいぶ楽になりました。

WWD:1日の平均的なスケジュールは?

河邊:朝7時に店舗に来て、人形町の日本橋図書館に納品に行って戻ってきたら開店準備をして、8時に店を開けます。9時にアルバイトが来たら外商先への配達はお願いして彼・彼女が戻ってきたら、私は週1〜3回くらいのペースで雑貨を仕入れに馬喰町の問屋さんに打ち合わせに行っています。21時に閉店して家に帰るのは22時前くらいですね。

WWD:客層は?

河邊:店舗の方は男女問わず、このあたりのオフィスワーカーと近隣に住む若い夫婦と子どもがメーンです。移転オープンから考えると、客層に若い夫婦とその子どもはかなり増えました。あと、この数年で増えたお客はヘアサロンの人ですね。よくファッション雑誌を買いに来ます。この馬喰町エリアにオシャレなサロンや飲食店、デザイン事務所などが増えたことを実感しています。

WWD:小さな書店と言えば外商が重要だが、やはり売り先は繊維問屋?

河邊:そうです。書店の場合、外商と言っても配達料は無料だし、それほど積極的に営業を掛けているわけではありません。それでも近隣の書店が廃業すると引き継いでいるので、配達エリアはこの東日本橋・馬喰町を中心に浅草橋、岩本町くらいまで広がっています。それでもピーク時の半分くらいかなあ。納品の主力はやっぱりファッション雑誌です。最大の売り先は豊島さんで、その他はエトワール海渡さん、ブルーミング中西さん、コスギ(旧小杉産業)さんも多い。ご近所ですがモリリンさんは少ないです(笑)。けど社員の方には、よくご来店いただいています。

WWD:最近の売れ筋は?

河邊:うちに限らずだと思いますが、児童書ですね。「どっちが強いの?」シリーズ(KADOKAWA)、「科学漫画サバイバルシリーズ」(朝日新聞出版)は置くと飛ぶように売れていきます。ファッション雑誌・本だと売れているのは「ジゼル(GISELe)」と「ファッジ(FUDGE)」です。外商だと「ファッジ」が強く、来店客だと「ジゼル」の伸びがすごいです。きちんと個性があるからかな、と。あとマスクや消毒液などのコロナグッズも売れています。

WWD:ファッション関連の書籍や雑誌も店舗を見ると、まだ多いようにも見えるが。

河邊:面陳(雑誌や本を棚に立て、背ではなく表紙を見せて陳列すること)しているから、多く見えるのだと思います。実際に雑貨に比べて単価も高いですし、特に雑誌はこの数年で、付録のある宝島社を筆頭に価格が高くなってますよね。

WWD:これまでの最大のベストセラーは?

河邊:書籍だと岡本太郎の「自分の中に毒を持て」(1993年、青春出版社)と松下幸之助の「道をひらく」(1968年、PHP研究所)です。開店以来、コンスタントにずっと売れ続けているので、数百冊は行っているんじゃないかな。

WWD:書店経営の醍醐味は?

河邊:サラリーマンと比べて気楽なところですかね。朝早いのも、サラリーマン時代も朝7時から勤務していたので、そんなに変わりはないですし。もちろん苦労もあります。僕が跡を継ぎ、住居を兼ねていた店舗を移転させるときは、父とだいぶ揉めました。借金までして家賃を払う必要がなんであるんだってね。移転前は、それこそ外商が売り上げの8割の小さなお店でしたから。当初はファッション専門書店、その後は雑貨も売るようになって。自分で全部決められるところはやっぱり面白いですよ。

WWD:最後に「WWDジャパン」のイチオシは?

河邊:雑誌特集はいつも熟読しています。ファッション雑誌をずっと売っていますが、なかなか中の人の顔が見える機会はないので。

■アスカブックセラーズ
創業:1950年
店舗面積:30坪
営業時間:8時〜21時
休日:不定休
住所:東京都中央区東日本橋2-2-4 東日本橋駅前ビル
電話番号:03-3863-3417

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出版・メディア業界がコロナ禍で見た光明と課題

 コロナ禍でデジタルシフトが進む中、多くの雑誌・メディアが新しいビジネスを模索し、新施策を始めている。しかしながら、それらの試み全てが成功するわけではないし、周りと同じことをしても生き残れない。時流を読み、新しいことにチャレンジする精神も大切だが、各媒体の“らしさ”を追求した、独自のコンテンツを生み出していくことの重要性を改めて認識すべきだろう。ここでは、出版・メディア界のニュースやさまざまな雑誌・メディアのキーパーソンたちへの取材から見えた、今後に向けての光明と課題をピックアップして紹介する。(この記事は「WWDジャパン」7月27日号の雑誌・メディア特集の記事の抜粋です)

動画コンテンツに活路 媒体の独自性がキモ

 コロナ禍で各媒体が積極的に取り組んだものの1つが動画だ。すでに動画を取り入れているメディアは少なからずあったが、コロナ禍でライブ配信を中心にさらに加速。大手出版社では、講談社の「ViVi」が“ViViモデル”を起用したライブ配信企画「ViViフェス ライブ」をスタートし、小学館の「美的」は「美的.com」「美的GRAND」3媒体の編集長たちがニュース発信をする動画企画“美的サマーニュース”を立ち上げ、「小学館アドポケット」内で公開する。集英社の「シュプール」はコロナ禍で店頭でのタッチアップが難しいビューティ業界に対する解決策として、広告メニュー「チュートリアルBeauty動画プラン」をスタート。新製品やおすすめ商品の魅力・使い方を訴求する同プランを2020年末までの実施案件限定でスタートしている。

 各社が動画に本格的に着手し始めたことで、コンテンツが多数乱立している。その中で視聴される動画とは、どのようなものなのか。動画事業を軸に拡大しているワンメディアの明石ガクト代表取締役CEOは、メディアビジネスにおいては「調達」「加工」「配信」の3つのレイヤーに分かれるとし、中でも「調達」が重要であると説く。「動画の作り方という『加工』の部分はすぐにまねをされてしまうし、逆にうまくいっているところの真似をすればいい。『配信』に関しても今や、誰もが発信できる。そんな中でファッションメディアで優位性があるなと感じるのは、ほかでは連れてこられないような、『このメディアだったら出るよ』というインフルエンサーなど。そういった人をいかに見つけられるかだと考えている。重要なのはどんな動画を作るかではなく、どんな人を連れてきて動画を作るかだ」。

「おうち時間」&「学び」の情報への需要が高まる

 自粛期間や、テレワークで効率的に仕事をすることが可能になり時間ができたことから、日常生活における「工夫」や新しいことに対する「学び」への意欲が世間的に非常に高まっている。そのような状況下で、集英社の「LEE web」での「新型コロナ私たちの工夫」といった企画や「おうち時間」系のコンテンツに加え、マガジンハウスの「ハナコ(Hanako)」による「ハナコカレッジ」、光文社の「ヴェリィ(VERY)」による「ヴェリィ アカデミー」、コンデナスト・ジャパンの「ワイアード(WIRED)」による「ワイアード ユニバーシティ」といった“学校”も多数スタートしている。特に“学校”での教育系コンテンツは、もともと予備校などでビデオ授業が行われていたように、デジタルとの親和性が非常に高い。このことは企業のウェブセミナーなどでの反響を見ても伺い知ることができる。さらには、コロナ禍で時間が取れるようになった人が少なからずいることで、学ぶことへのハードルが下がったことも要因となっているのだろう。

オウンドメディア化が加速 編集者・企業の取るべき道は?

 表は、ここ1年の雑誌・メディアの創刊(ローンチ)・休刊(休止)リストだ。これを見ると、意外にも創刊(ローンチ)が多いことに気づくが、出版社が新しいメディアを立ち上げているのかというとそうではない。休刊は基本的に出版社発の雑誌が中心なのに対し、創刊に関しては企業がオウンドメディアとして立ち上げているケースが大半を占めている。中でも「ユニクロ(UNIQLO)」の雑誌「LifeWear magazine」を元「ポパイ(POPEYE)」編集長の木下孝浩氏が手掛けたり、楽天の「アールエフ マグ」を元「ギンザ(GINZA)」編集長の中島敏子氏が手掛けたり、はたまたアーバンリサーチが自社メディアを小学館とタッグを組んで作っていたりと、編集者や出版社が絡んでいることも多い。

 この流れは当分続くのだろうか。ファッション誌やIT業界を経て、起業後はオウンドメディアの立ち上げや運営のほか、地方創生など「編集視点」で幅広く活動をしているPomaloの澄川恭子チーフ・コンテンツ・オフィサーは、企業のオウンドメディアについて「現在は、自社ブランドのブランディング向上に関与する内容であれば、自社ブランドのアイテムが必ずしも登場しないコンテンツでも配信している。ただ、今後は会員誌やPR誌、機内誌、企業が出版する雑誌など、企業専用にカスタマイズされた雑誌・メディアで、それ自体で収益を上げられるメディア=ブランドパブリッシングに変わっていくのではないか」と予測する。今後は企業のオウンドメディアが従来の出版社が発行していたメディアと肩を並べ、その裏で編集者が活躍する時代が来そうだ。

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異色のシューズブランド「オールバーズ」が投資家からも支持される理由

 「地球にやさしい」「サステナブルな〇〇」――こうしたキャッチフレーズを目にすることが増え、多くの企業が環境や社会に配慮した製品を提案するようになってきている。しかし生活者の視点でなるべくサステナブルな製品を選ぼうとすると、それらの表現が意味するところは極めてあいまいだ。そもそもサステナビリティの解釈は十人十色で正解はなく、数値化することも難しい。しかし、企業はその曖昧さを少しでもわかりやすく、そして顧客をはじめとするステークホルダーとどうコミュニケーションするか、その方法も問われ始めていると言えるだろう。

 そんな中で、明確なメッセージを発信し、わかりやすい形で示して支持を集める企業がある。サンフランシスコ発のシューズ企業オールバーズ(ALLBIRDS)だ。2020年4月から全製品にカーボンフットプリント(温室効果ガス排出量)を表示し、“カーボンニュートラルを目指す”と宣言。オールバーズは、サッカーの元ニュージーランド代表のティム・ブラウン(Tim Brown)とバイオテクノロジーの専門家ジョーイ・ズウィリンジャー(Joey Zwillinger)という異色のタッグが2016年に創業し、「カーボンフットプリントを抑えながら、自然由来の原料を用いたモノ作り」を推進する。スニーカーから始まり、20年6月にはアンダーウエアの販売を開始。今後もカテゴリーを広げるという。これまで累計1億4000万ドル以上(約148億円)の資金を調達し、現在、世界主要都市に直営の20店舗を展開するまでに成長した。20年5月にはアディダス(ADIDAS)とカーボンフットプリントの低いスポーツシューズ開発のためのパートナーシップを結んだことでも話題になった。

科学的にも学術的にも証明できる方法

 カーボンフットプリントの削減には創業当時から取り組んで計測してきたというが、その数値の公開を始めたのは19年のこと。「企業として責任を持つために公開を決めた。加えて、業界内でカーボンフットプリントの対話を推し進めたいという思いもあった」と、ハナ・カジムラ(Hana Kajimura)=サステナビリティ・マネジャーは公開に至った経緯を語る。彼女は28歳の若さで同社の核となるサステナビリティ分野のマネジャーを務める。同社には“カロリー表示のように地球のためにカーボンフットプリントを知る”ことを当たり前にしたいという考えがあった。近年、食品でのカーボンフットプリントの表示は少しずつ増えてきたが、ファッションアイテムでは初めてのことだ。

 カーボンフットプリントを重視したのは「気候変動対策が地球で生きていくために最も大きな要素だから」だ。「カーボン排出の削減 で寄与することが一番わかりやすく、感覚的にではなく、科学的にも学術的にも証明できると考えた」と説明する。

 現在、企業に“透明性”を求める動きが加速しているが、透明性の考え方についてはどう考えるのか。「アカウンタビリティー(説明責任)の要素が大きい。つまり、ステートメントや企業方針、進捗状況などを顧客と共有することだとも言える。私たちは環境における透明性から着手した。加えて、*Bコープを取得し、その基準に沿って取り組んでいる」。サプライヤーの選定に関してもBコープの基準に照らし合わせて選んでいるという。「私たちは顧客や株主だけでなく、サプライチェーンの人々や従業員を含めて、われわれのビジネスに関与するあらゆる数値を計測・公開することで透明性を担保している」。

*Benefit Corporationの略で、米非営利団体B Lubが運営する認証制度。環境、社会に配慮した事業活動を行っているかや、アカウンタビリティー、透明性などから評価される。具体的にはガバナンス、従業員、コミュニティー、環境、顧客の観点からなる200点満点の認証試験において80点を獲得することが条件

 カーボンフットプリントを抑えるために、例えば再生エネルギーを用いているサプライヤーを選んでいるのかというとそうではない。「目標はもちろん再生エネルギーを用いて環境基準を満たしている相手だけれど、今組んでいるパートナーとは日常会話レベルで改善を目指して取り組んでいる」という。「製造業におけるサステナビリティは比較的新しいコンセプトでしょう?だからサプライヤーの中には当初戸惑う人も少なくなかった。でも日々対話を重ねることで理解してもらえるようになり、今ではサプライヤーからアイデアが来るようになった。皆がサステナブルな思考になってくれたのが本当にうれしい」とハナは笑顔で話す。今では「廃棄物の削減やリサイクルを推進したり。環境負荷が低い素材の提案もしてくれている」という。

環境負荷の低い素材開発にも取り組む

 オールバーズでは、すでにある環境に配慮した素材を用いることはもちろん、自社開発にも取り組む。「靴底のフォームはもともと石油由来が多かったが、ブラジルでパートナーを見つけてサトウキビ由来の原料で作ることができるようになり、今では業界全体に供給できるようになった」。もちろん100%サトウキビ由来は難しいが、「機能性とのバランスを大切にしている。これからさらにサトウキビ由来の比率を高めるように改善していく」。機能性と環境への負荷とのバランスは非常に難しいとされていることに関しては、「アートと科学のバランスのようなところはあるわね。ブランドコンセプトとして、自然由来の素材とリサイクル素材の利用を重視しながら、カーボンフットプリントゼロを目指していく。どうやってゼロを目指していくのか、その過程も公開することこそ私たちの透明性への取り組みよ」。

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1440万通りから「お気に入り」を決められるか!? 「ロンシャン」の孝行バッグ“ル プリアージュ”をカスタム

 個性を尊重する潮流と、1点モノの制作が容易・可能になった技術革新の結果、ファッション&ビューティ業界では「パーソナライズ」や「カスタマイズ」、いわゆる世界に(ほぼ)1つの品物を作るサービスを提供するブランドや企業が増えています。そこで「WWD JAPAN.com」は、トレンドや最新ムーブメントを知るからこそのアイデアを形にしてもらいながら、サービスの利便性や価格、パソコンやスマホ使ったパーソナライズのユーザビリティーなどを検証します。

 今回挑戦するパーソナライズは、「ロンシャン(LONGCHAMP)」の定番バッグ“ル プリアージュ”。皆さん、多分一度はご覧になったことがあるだろう、折りたたみ可能な“アレ”です。このバッグは実に頑張り屋さんで、僕がバッグ業界の取材を担当していた10年以上前から、「ロンシャン」を支える大事な存在。コレが今なお売れているからこそ、「ロンシャン」は冒険できる。そして、コレは売れ続けるためにアップデートを重ねている。最近はこんな風に思いながら、ソフィ・ドゥラフォンテーヌ(Sophie Delafontaine)=アーティスティック・ディレクターの、案外エッジィなコレクションを取材しておりました。

 そんな「ロンシャン」の“ル プリアージュ”は、2003年にカスタムオーダーをスタート。バッグ本体(ナイロンやレザー、コットン)やフラップ&ハンドル(だいたいレザー)の配色を、それぞれ数色から選ぶカスタムオーダーは進化し続け、表参道や銀座のフラッグシップストアは、上層階にカスタムオーダー専用のスペースを設けるにいたりました。全国の百貨店などでは、カスタムオーダーのイベントにも積極的でしたねぇ。なんて思ったら、春からはついにパーソナライズに特化した“プリアージュ”の“マイ プリアージュ”が登場。7月にはバリエーションが大幅に広がり、3通りのサイズ、720万通りにも及ぶカラーリングパターン(!!)と、2万通り以上のアルファベット&数字を組み合わせ、世界で1つの“ル プリアージュ”を作るいうスーパー・パーソナライゼーションがデジタルで実現!!数学的に考えると、720万通りのカラーリング&2万通り以上の文字って、つまるところ1440億通りの組み合わせというケタ違いのバリエーションです(笑)。

 というワケで早速、オンラインサイトで挑戦してみましょう。初挑戦の人は、イラストレーターのfoxcoさんによるスペシャルサイトを見ると、何を、どう選んだら良いのか理解できると思われます。

 決めなきゃいけないのは、大きく分けて6つ。モデル、ボディの色、ハンドル&フラップの色、パーツの色、文字の色、文字の影の色、そしてフラップに施す刻印の文字と色です。全ては画面上で確認できるので、案外カンタン。1440億通りという数字にビビりましたが、特に色を変えると印象がダイナミックに変わるボディを考えるのは楽しいです。文字は7月から、アルファベットのみならず数字も可能に。さらにピリオドを入れる必要がなくなったので、例えば「NYC」や「CDG」「TYO」などの街、「BTS」などの推し(笑)、そして「YES」や「BLT」などの単語もイケるようになりました。一番悩むのは、ボディの色と文字の色&影でしょうか?個人的には今は、アクアグリーンやパウダーピンクなどのパステルカラーの気分。“元気いっぱい感”が表現できるイエローも気になります。文字の色と影は、それぞれの色を選択し直さなくても「入れ替える」ボタンをクリックすればカンタンに変わります。コレが、なかなか便利です。

 そして完成品は、誰が、どう見ても「カナメ ムラカミ」な“ル プリアージュ”です(笑)。これでお値段は4万700円!!悪くありません。しかもバッグのキャンバス地には、リサイクルポリエステルを採用。大きなトラベルバッグには、ペットボトル23本分のリサイクル素材を用い、プリントにおいても水の使用量を大きく削減しているそうです。

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進化した「スック」の“諭吉ファンデ”を試してみた 「艶が増しスキンケア効果を実感」

 「スック(SUQQU)」が、人気のクリームファンデーション「エクストラ リッチ グロウ クリーム ファンデーション」をリニューアルし、「ザ クリーム ファンデーション」として9月4日に発売する。初代は16年9月に「エクストラ リッチ クリームファンデーション」として誕生したが、1万円というそれまであまりなかった高価格帯ながら、その使い心地のよさから、SNSでもたびたび話題になるほど人気のアイテムで、“諭吉ファンデ”の愛称で親しまれる存在だ。2代目の誕生後には、日本の人気ユーチューバーらが拡散したことでさらに人気が加速。その“諭吉ファンデ”が進化したという。さて、どう進化したのか?

 今回の進化のポイントは3つ。1つ目は、すべてのピグメントにアミノ酸誘導体コーティングを施すことでしっとりと粉感の少ないテクスチャーを実現したこと。2つ目は新たに緑茶エキスとシルクプロテインを追加し、計13種類の国産美容保湿エキスを配合したことでさらにスキンケア効果がアップしたこと。3つ目は明度だけでなく色調も選べる12色展開だ。イエローベージュオークル、ベージュオークル、ピンクベージュオークルの3つの色調をそろえたことで、使う人の肌色に合わせてより近いものを選ぶことができるようになった。

 名前も、「ザ クリーム ファンデーション」とシンプルに生まれ変わった。「特徴をあれこれ詰め込まず、『スック』が最も旬だと考えているファンデーションはまさにこれ!という意味合いも込めている」と小野芽以子エキップ「スック」PRマネージャーが話すように、新しい名前はそれだけでアイテムが何かを理解できて手が伸びやすくなりそうだ。

 一方で、進化したファンデーションをどうアピールするのか?日本人はもちろんだが、実は「スック」はインバウンド人気が非常に高いブランドだ。ただ、19年の中国電子商取引法(EC法)の施行や今回の新型コロナウイルスの影響で、これまでのようなインバウンドの拡大は望めないのが現状だ。小野PRマネージャーは、「日本人のお客さまにはポイントメイクが特に好評なので、“メイクの映える肌づくり”としてベースメイクを紹介していく」という。SNSでは自然発生的な“suqqu沼”などのハッシュタグがあり、そこから拡散されているカラーメイクとあわせてベースメイクを提案するという。加えて、10月にはスキンケア「ヴィアルム」の発売も控えており、多角的なアプローチが行われる。この戦略が「スック」人気をさらに後押しするかどうかに注目したい。

 さて最後に、実際に新旧クリームファンデーションを半分ずつ顔で塗り比べて1日過ごしてみた。塗った直後はあまり差を感じなかったが、時間がたつにつれてより艶が増したと感じたのは新しい方だった。「スック」が提案する“時間とともに肌の上で艶が成熟していく”というコンセプトを体感することができた。また、昨今はマスク生活による肌荒れも気になるところで、肌に負担がかからないようにしたいと思っている。新クリームファンデーションは塗っている間は乾燥せずにもちっとした肌の質感が続き、落とした後も肌が突っ張らず赤くなったりかさついたりしなかった。新 “諭吉ファンデ”はスキンケア成分がパワーアップしており、それも実感して心強く感じた。

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【動画】さよなら「ブルックス ブラザーズ」青山店 紺ブレをオーダーして表参道店オープンをお祝いしよう!

 米ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)が7月8日に、日本の民事再生法に当たる米連邦破産法第11条の適用をデラウェア州の破産裁判所に申請したことで、一躍“時のブランド”となった「ブルックス ブラザーズ」だが、今回の「出張インタビュー」の収録はその直前の7月2日に行った。目的は、8月30日で41年の歴史に“一時的”に幕を閉じる青山店で「ブルックス ブラザーズ」の、そしてアメリカントラッドの象徴である紺ブレをオーダーして、9月4日に予定される表参道店のオープンを迎えよう!というものだ。案内をお願いしたのは、日本で唯一のブランドアンバサダーである大平洋一さん。

 ブルックス ブラザーズ ジャパンの株式の60%は破たんした米本社が保有するが、同社広報は「当社はダイドーリミテッドとの合弁会社であり、財務的にも独立している。米本社から融資などの支援を受けていないし、未回収の債権もない。つまり重大な影響を受けることはない」と話す。事実、日本でのビジネスは継続するし、青山店の閉店を“一時的”と書いたのは、本計画が青山エリアの再開発に伴うものであり、小布施森一ブルックス ブラザーズ ジャパン社長が、「建て直されるビル内に、あらためて“新・青山店”を開店する予定だ」と話すからだ。

 個人的に、アメトラにはメンズ服の(ほぼ)全てが詰まっていると思う。つまりそれは服装の基本であり、基本が分かった上でのハズシなのか否かは、着こなしに大きく影響する。とはいえ表参道を歩く人が皆、紺ブレになるとは思えず、ファンとして“200年ブランド”の火を消さないために、今回はオーダーという方法で少しだけ協力した。米本社の整理の一環として米国内の3工場が8月15日で閉鎖され、“MADE IN USA”が失われてしまうのでは?という一抹の寂しさはあるものの、「挑戦の場」(小布施社長)と位置付ける表参道店のオープンは楽しみでならない。

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コロネット新社長 「インポーターでなく“ナビゲーター”」と語るビジネスの展望

 伊藤忠商事子会社で海外ブランド輸入卸大手のコロネットの新社長に、七宮信幸氏(51)が7月1日付で就任した。同社は1947年創業の老舗インポーターで、2003年から伊藤忠商事傘下に入っている。七宮新社長も同社で長年ブランド畑を歩んできた商社マンだ。新型コロナウイルス感染症という未曾有の事態でトップについた七宮社長は、この時代をどう切り抜けるのか。またインポートビジネスをどう展望し、社員を導くのか。それらについて話を聞いた。

WWD:新社長としての抱負は?

七宮信幸社長(以下、七宮):コロネットという伝統ある会社の企業価値を継承し、かつ進化させながら基盤を作っていく。創業者の桃田(有造)さんの言葉にある「最高級の商品と最新のブランドを消費者に届けていく」という姿勢は貫きつつ、ブランドのナビゲーターとしてキラりとひかる会社にしたい。そのためには社員一人一人に輝いてもらわないといけない。私を含む経営陣は、その土台をつくることが最大のミッションだ。

WWD:ブランドの“ナビゲーター”とは?

七宮:われわれはインポーターと呼ばれているが、本質としてはナビゲーターという表現の方が適切だと思っている。最高級のブランドをただ引っ張ってくるだけじゃなく、新たなエリアでどんなビジネスを行うかーーその指南役として、ブランド成長の一翼を担っているからだ。これまではビジネスエリアが日本市場だけだったが、これからはアジアを中心とした海外市場にも裾野を広げていきたい。会社を成長させるためだけでなく、日本のデザイナーズの海外での継続的なビジネス展開という積年の課題のソリューションとしても提案できるだろう。そのカギとなるのは、伊藤忠商事が業務提携を結んだ「ジョア(JOOR)」だ。世界最大規模のBtoBマーケットプレイスである「ジョア」を用いて、われわれがショールーム機能をもちつつ、海外で売ることもできる。

WWD:いわゆるインポーターの役割も変化している。

七宮:その通り。そもそもインポーターが成長してきた理由は、洋服に知りたい情報がたくさん詰まっていたからだ。ネットがない時代は、雑誌を読んだりテレビを見たりすることに加え、洋服が新しい情報の発信源だった。ところが、今は状況が大きく変わってきている。SNSによって洋服の情報は瞬時に伝わってしまうし、だれでも理解できる。そして、情報自体がお金になる。その一方、手軽に情報が享受できる分、本当に面白いものが少なくなったのも事実だ。ではそんな時、どんな情報を伝えていくのか。服だけじゃなく、美と健康の商材が大きな価値を持つようになっている。この新たな分野を積極的に開拓したい。もちろんそれらの商材の伝え方も、オンラインとオフラインを超えたやり方になる。

WWD:つまり、ビューティの扱いを増やしてECも強化する?

七宮:そうだ。ビューティはこれまでも「フィンギー(THE FINGGY)」というブランドを扱っていたが、もっと拡大したい。もちろん何でもいいわけではなく、最高級の品質を保つブランドに限定していく。ECについても、まだ発表はできないがいろいろと考えていることがある。その他、洋服のインポートも人気のテイストは強化していく。メンズは「ヤコブ コーエン」「ムーレー(MOORER)」など強い特徴を持つ上品なブランドが人気だ。このカテゴリーでいくつか交渉しているブランドがある。ウィメンズは本来コロネットが得意とするゾーン。ラグジュアリーなデザイナーズという会社の新たな顔となるブランドと、サステナビリティという新たな価値観を持つブランドの話を進めている。

WWD:この状況でも、かなりの攻めの姿勢だ。

七宮:これらはあくまでセカンドステップだ。この危機を乗り越えるために、まずは“削る”“防ぐ”をとにかく進める。秋は新商品の仕入れを若干抑制し、身軽にする。減らすという意識ではなく、過剰な供給はすべきでないという判断だ。そして、厳選したものを着実に売っていく。6月は、セールを前倒したから悪くなかった。次の焦点は秋の売り場の鮮度をいかに保つかにある。

WWD:コロナを機にビジネスの考え方は変わったか?

七宮:一時は海外ブランドがジャパン社を作り、自分たちで運営する流れがあった。しかし、ローカルのパートナーやリスク分散のためのラインが必要だという考えが再浮上し、インポートビジネスのチャンスが拡大しているように感じる。そのほか、卸が主軸のビジネス構造が、われわれにとっては適当なのではと考えるようになった。これまで、ブランドのアライアンスを高めるためのフィジカルストアをどんどんつくる時代が続いていた。しかし、コロナによってそれが一気にリスクとして表面化した。リテールの比率を高めれば高めるほどリスクが高まり、アメリカではこのブランディングがすでに崩壊している。われわれの現在の売上比率は卸が60%、直営で40%。アフターコロナでもこれをキープしていきたい。

WWD:とはいえ、卸もなかなか厳しいご時世だ。

七宮:もちろん商売自体は厳しい。しかし、特に地方の専門店には、コンセプトや志を貫き、「ウチはこうだから、これを扱うんだ」という熱量があるお客さまも多い。そんなお店と一緒に新たなブランドを育て、ホールセールを盛り上げていくことは可能だと思っている。

WWD:ところで、ご自身がファッションに目覚めたきっかけは?

七宮:子どものころからずっと洋服が好きだった。小学6年〜中学1年のころは、原宿の「ラフォーレ(LAFORET)」の裏に復活した「ヴァン(VAN)」という店に電車で通い、ボタンダウンやチノパンといったアイビースタイルに触れた。中学から高校まではDCブーム全盛期。「メンズビギ(MEN’S BIGI)」のスタジャンを目指してマルイに並んだし、渋谷の「バックドロップ(BACK DROP)」でアメカジやメジャーリーグ、NBA関連のウエアに親しんだ。大学では「バナナ リパブリック(BANANA REPUBLIC)」や「リーバイス(LEVI'S)」「ハンティングワールド(HUNTING WORLD)」などが支持され、インポートブランドへの熱がどんどん高くなった。特に好きだったのは「アルマーニ(ARMANI)」。「このブランドってどんな会社がやっているんだろう」と興味を持ったのが、伊藤忠商事入社のきっかけだった。

WWD:改めてファッションビジネスの面白さは?

七宮:ミーハーであることが仕事につながることだ。ミーハーということは、世の中の流れに敏感であること。服もコスメも音楽もカルチャーも、最先端のものを知っていたいという気持ちがある。全社員総会でも「究極のミーハーになり、半歩先を見て欲しい」と伝えた。「こんな面白いブランドがあるんだ」「こんなアイテムがあるんだ」という発見が、ファッションビジネスの第一歩となる。そのミーハー心を忘れず、会社一丸となって成長させていきたい。

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「エバーレーン」に学ぶ“徹底した透明性”とは 「時代遅れのビジネスに変革を」

 2011年に誕生したサンフランシスコ発のオンラインSPAブランド「エバーレーン(EVERLANE)」は、“徹底した透明性(Radical Transparency)”を理念に掲げ、倫理的なサプライチェーンの構築を目指す。公式ホームページでは、それぞれの製造工場との出合いに関する背景ストーリーが紹介されているほか、各商品の材料費から人件費、出荷コストに至るまでの製造原価も分かりやすく開示されている。

 今、人種問題や一時解雇などで批判されている同ブランドだが、モノ作りのコンセプトとしては新しく受け入れられ、現在は日本を含む世界38カ国で展開するまでに成長。共同創業者のマイケル・プレイズマン(Michael Preysman)最高経営責任者(CEO)に透明性にこだわる理由をメールで聞いた。

WWD:なぜ透明性にこだわるのか?

マイケル・プレイズマン(Michael Preysman)最高経営責任者(CEO)(以下、プレイズマン):透明性を追求することは信頼を築くことにつながるからだ。私たちは商品の質やモノの真価を伝えるための情報を開示することで、消費者が賢い選択をするための力を与えたいと思っている。製造原価の開示に加え、各工場では、適正な賃金、妥当な労働時間、労働環境などの要素を評価するためのコンプライアンス監査を行なっている。さらに、主要な製品ラインで新たにライフサイクルアセスメント(LCA:製品の“一生”、またはその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法)を実施して、製造工程における環境への影響も把握しようと努めている。これらの全ての情報によって、私たちは説明責任を果たすことができ、周りの人々と地球を守ることにもつながっていると考えている。

WWD:全ての商品において完全な透明性を実現しているのか?

プレイズマン:パーフェクトではないが、常に倫理的な素材の調達のために何ができるかを考えている。何年もかけて現在の最高の工場とパートナーを見つけたが、毎年、第2次サプライヤーおよび第3次サプライヤーにも追加の監査を行うなどして、原材料から完成品までのサプライチェーンを完全に透明化するための改善を日々行なっている。

WWD:あなたは「エバーレーン」を始めるまでファイナンスの世界に身を置いてきた。異業種でのバックグラウンドによるメリットはあったか?

プレイズマン:ファイナンスの分野に身を置いたのはごくわずかな期間だったが、そこでの経験は今の仕事のための基盤となった。日々店を訪れ、買い物をするなかで、小売業界の時代遅れのビジネスモデルを変革し、何か新しいことを始めるチャンスがあるのではないかと思った。そして私は幸運なことに、「エバーレーン」を成長させるための素晴らしいチームをつくることができた。

WWD:創業以来顧客層に変化はあったか?

プレイズマン:最初の顧客層はニューヨークやサンフランシスコのような米国の主要都市が中心だったが、ここ数年でビジネスがグローバルに拡大し、私たちの商品は多くの人から共感を得られることがわかった。今は1000万人以上のグローバルコミュニティーを持っている。

WWD:今年4月に約290人の従業員を一時解雇したことが報道されたが、それについてのコメントはあるか?

プレイズマン:新型コロナウイルスは世界的に大きな影響を及ぼしていて、「エバーレーン」も例外ではない。3月に店舗を無期限に閉鎖したとき、運営コストを削減するために難しい決断を迫られた。あらゆる面から検討した結果、才能のあるチームメンバーの多くを手放さなければならなかった。私はこんなことが「エバーレーン」で起こるとは想像してもいなかった。二度とこのような措置をとる必要が生まれないことを望む。私たちのビジネスが正常化するにつれ、元チームメンバーを再度迎え入れることを待ち望んでいる。

WWD:今後挑戦したいことは?

プレイズマン:私たちは真に倫理的なサプライチェーンを構築する必要があり、環境を考慮することなくして真に透明であることができないことに気付いた。今、地球が危機に瀕している事実は否定できず、私たち全員に気候変動を止める義務がある。そこで私たちは2021年までにサプライチェーンから全てのバージンプラスチックを取り除くことで、バージンプラスチックへの依存度を減らすことに取り組む。再生ペットボトルから作られたアパレルとアクセサリーのコレクションである“リニュー(RENEW)”を通じて、これまでに650万本のプラスチックボトルをリサイクルした。今年からは、従来使用していたコットンを23年までに全て認定オーガニックコットンに替えることに取り組んでいる。今後も「エバーレーン」は、業界に永続的な影響を及ぼす必要な変化を生み出していきたい。

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小島健輔リポート 「セシルマクビー」が超えられなかったアパレル専門店の壁

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。かつて一斉を風靡した「セシルマクビー」が事実上の事業撤退を発表した。アパレルビジネスの視点から挫折の背景を読み解く。

 「セシルマクビー(CECIL MCBEE)」で知られるジャパンイマジネーションが展開する105店中、「セシルマクビー」の全43店舗を含む92店舗を閉店するというニュースは業界のみならず青春期に顧客だった多くの女性たちの関心を呼んだが、長年の変化を乗り越えてきた「アパレル専門店」の終焉を象徴する“事件”でもあった。

 破綻して従業員や取引先に迷惑をかける前に自ら事業を整理するという木村達央オーナー会長兼社長の決断の過程と心情は松下久美氏※1、 “白ギャル”モテ服でブレイクしたが若者のファッション離れと同質化に呑み込まれたという若者ファッションカルチャーからの解説は増田海治郎氏の記事※2が秀逸だから、私は「アパレル専門店が時代の波をどう乗り越え、どんな変化に行き詰まったのか」というビジネス視点から同社の軌跡と挫折を語ってみたい。

※1:Yahoo!ニュース個人「セシルマクビーが店舗・ECともに事業終了、マルキューで14年間トップを独走、決断した木村社長を直撃」(7月20日)
※2:東洋経済オンライン「セシルマクビー撤退示す『今後危ないブランド』」(7月24日)

ギャルブランドの人気沸騰と凋落

 渋谷にギャル文化が芽生えたのは渋カジと同じく、バブルがはじけた1992年ごろからといわれるが、渋谷109にギャルブランドがそろって爆発的に売れ出し“ギャルの聖地”となったのは、「エッグ(EGG)」(当時ミリオン出版)が創刊されて安室奈美恵がデビューした95年から96年にかけてと記憶している。

 当時のギャルファッションは「アルバローザ(ALBA ROSA)」や「ミジェーン(ME JANE)」に代表されるガングロ系の“黒ギャル”と、「バーバリー・ブルーレーベル(BURBERRY BLUE LABEL)」や「ラブボート(LOVE BOAT)」に代表されるアムラー系の“白ギャル”が対照的だった。「セシルマクビー」は前身の「新宿デリカ」のOL感覚をどこかに残してか、渋谷109の中ではおとなしめの白ギャル派で、とんがり過ぎない安心感とファストな新規商品投入が高校生中心にボリューム客を捉えていた。

 ギャルファッションが全国的なブームとなったのは規制緩和で経済が活気づいた00年以降で、黒ギャルが衰退する一方、白ギャルが“モテ系”“愛され系”に変貌してギャルからOLへ広がり、04年から08年にかけて渋谷109の屋号は金沢や福岡、町田や静岡に広がっていった。総本山の渋谷109の売り上げも年々伸びてピークの09年3月期には286億5000万円に達したが、08年9月の「H&M」、09年4月の「フォーエバー21(FOREVER21)」の上陸以降はファッストファッションに押されて年々売り上げを落とし、19年3月期は138億6000万円まで落ち込んだ。20年3月期は改装効果とインバウンドで11年ぶりに回復し146億円に迫ったが、コロナ禍で振り出しに戻ってしまった。

 ギャルファッションの衰退要因は、(1)支持世代が卒業して駅ビルのOLや郊外SCのギャルママとなり、(2)後継世代の人口が減少して“通過市場”(中学・高校の数年間で卒業してしまう)と化し、(3)ブランドが乱立して価格競争に陥りODM依存に流れ、(4)同質化してバラエティーも魅力も失ったことだった。そこに(5)ファストファッションが上陸して急速に多店化し、OLやギャルママ層が駅ビルや郊外SCに流れたと総括されるが、何よりギャルブランドが開発力と独自性を失ったことが大きいと思う。

ジャパンイマジネーションの成長と挫折

 06年にデリカから社名を変更したジャパンイマジネーションの売り上げも00年代に伸びてピークの07年1月期には242億2400万円、「セシルマクビー」も160億円に達したが、地方のファッションビルなどにも店を広げて販売効率も在庫回転も陰り出し、経常利益率は05年1月期の18.4%をピークに、売り上げピークの07年1月期には13.7%まで落ちていた。

 「セシルマクビー」は幾度リコンセプトしても勢いを回復せず、ギャルを卒業したOL層を追って開発した「ビーラディエンス(BE RADIANCE)」などお姉さんブランドも伸び悩む中、「スタニングルアー(STUNNING LURE)」(17年、瀧定大阪から買収)や「デイシー(DEICY)」「ナイン(NINE)」(16年、破綻したディータイムスシーから事業譲受)、キャラクター性の強い「アンクルージュ(ANK ROUGE)」(10年スタート)や「ジェイミー・エーエヌケー(JAMIE ANK)」(18年スタート)などは小粒でも固定客がついて収益性が高く、今回の事業整理でも「ナイン」を除き事業を継続する。

 09年以降の売り上げの暗転でギャルファッションのアパレルも次々と業績が悪化。09年2月期には売り上げ125億4000万円まで伸ばしたララ・プランも、わずか2年後の11年2月期には79億円まで落ち込んで23億円の赤字を計上し、11年8月末に民事再生法を申請して破綻した。その後もギャルアパレルの身売りや事業再編が続き、14年8月には「リップ・サービス」などを展開していたオルケスが破綻している。

 ジャパンイマジネーションの売り上げも落ち込みに歯止めがかからず、15年1月期(4億2500万円の純損失)以降は赤字経営が続き、19年2月期(16年から決算期変更)では売り上げが131億5000万円まで落ち込んで損失が15億円にも達し、直近の20年2月期も121億1000万円まで落ちてかなりの損失を出していた。過去の蓄積があって無借金とはいえ、根本的な事業整理が急務となっていた。そこにコロナ危機がのしかかったのだから、もはや一刻の猶予も許されなかったのだろう。

事業整理で破綻を回避

 今回の事業整理では、リコンセプトしても浮上しない基幹事業の「セシルマクビー」など凡庸な5ブランドの店舗とECを撤退し(「セシルマクビー」はライセンス事業に絞る)、小粒でも独自性があってECやD2Cに適し、今後も高い収益性が望める4ブランドに絞った。実際、「ジャパンイマジネーション全社ではEC化率が2割に満たないが、『アンクルージュ』は25~30%で、コロナ禍ではもっと高まっていた」と木村会長兼社長は松下氏のインタビューに答えている。

 整理後の事業規模は4ブランドの26店舗とECで、年商40億〜50億円まで縮小するから、全従業員570人のうち70人ほどしか残せないが、退職金は規定通り支給し、人材紹介会社と契約して再就職も支援する。仕入先への支払いも遅滞なく行うと答えているから、大蔵省出身の父親が創業したデリカを引き継いだ学習院大卒の紳士にふさわしいきれいな引き方だ。土壇場まで引っ張って破綻し、従業員を路頭に迷わせ取引先に多大な損失を負わせる例が多い中、無借金のまま事業を整理するという木村氏の決断は称賛に値する。

 同社の財務状況を知っているわけでなく近年の決算推移からの推察になるが、営業損失の出血を根本的に止めるには、財務が耐えられるうちに不採算店舗と不採算事業を整理撤収し、退職金が払えるうちに従業員を解雇して再就職も支援するという決断になったと思われる。

生業型品ぞろえ店からバイイングSPAへ

 アパレル業界は需要に倍する供給が常態化して値引き販売が繰り返され、店舗も増えすぎて人口当たりのアパレル店舗数が米国の2.52倍、英国の1.82倍に達する状況では、コロナ危機がなくてもいずれブランドも店舗も半減せざるを得なかったはずだ。

 アパレル専門店を取り巻く環境は調達面と販売面の両方から幾度も変化に直面し、そのたびに流通コストが上がり、調達原価率が切り下げられ、プレーヤーが世代交代してきた。

 80年代前半まではアパレル専門店の大半が商店街の自前店舗であったため家賃負担が軽く、ブランド商品を65%前後で買い取り仕入れしても、正価販売率が高く期末セールでほとんど売り切れるため、家業経営なら十分に成り立っていた。ブランドメーカーの生産原価も小売正価の40〜45%と高く、今日より格段にお値打ち感があった。

 その後、百貨店が消化仕入れになり、アパレル専門店も企業化して多数の従業員を雇用し、駅ビルやSCへのテナント出店が大半になって出店投資や家賃の負担がかさんだため、利幅の薄いブランド商品からオリジナル商品に変わり、調達原価率も切り下げられていった。

 とはいえ、アパレルチェーンが商品開発チームを抱えるのは例外的で、メーカーやODM業者が次々に持ち込む企画を短サイクルに仕入れて自店ブランドで売るという日本型ファストファッションが生まれた。「セシルマクビー」の黄金期はこの「バイイングSPA」の典型的な成功例で、毎週のように新商品が入り、国内縫製に徹して原価率が45〜48%と高くお値打ち感があって、年間に20回近く高速回転していた。H&Mの商品回転が2.92回、「ザラ(ZARA)」のインディテックス(INDITEX)でも5.01回だから(いずれも前期本決算)、格段にファストな生鮮商売だった。今日でも「スプレイ」や「リビー&ローズ」(どちらも同じ会社)は似たような仕組みで高速回転しているから(海外縫製だが)、年商100億円規模までなら効率的な商売なのではないか。

バイイングSPAから自社企画型一括調達SPAへ

 90年代には多くのバイイングSPAが駅ビルやSCに全国展開してナショナルチェーン時代を築いたが、2000年の定期借家契約導入を契機に没落し、多少なりとも社内に商品企画機能を持って、より低コストに商品調達する「自社企画型SPA」に世代交代していった。

 90年代までの普通借家契約では出店時に基本家賃の50カ月分以上もの差し入れ保証金を要し、運転資金が圧迫されて短サイクル仕入れのバイイングSPAにとどまり、価格の切り下げに限界があった。それに対して、00年以降の定期借家契約で多店化した新手のアパレルチェーンは出店時の負担が10カ月分程度の敷金に収まり、運転資金が豊富で自社企画商品の一括大量買い取りが可能になり、売価も原価率もナショナルチェーンより切り下げて世代交代が進んだ。

 今日の上位を占めるアパレルチェーンの多くは、そんな「一括調達SPA」だが、低コストで調達するためにロットがケタ違いに大きくなり、店舗を増やしても正価では売り切れず値引き販売が常態化するようになった。原価率は高くても正価の36.5%(ユニクロ)から44.3%(ワークマン)で、多くのアパレルチェーンは31〜33%、タイムセールなど値引き販売を乱発するチェーンでは20%を切る。大ロット一括調達で調達コストは下がっても値引きや売れ残りが増え、ユニクロやワークマンを除けば、お値打ち感は80年代の半分ほどに落ちたように感じられる。

時代の変化を乗り越えたアパレル専門店の終焉

 70年代の駅ビルに発して90年代にバイイングSPAの仕組みを確立したデリカは高回転・高収益で、巨額の保証金を差し入れても資金力に余裕があり、普通借家から定期借家への世代交代も乗り越え、00年代中葉の爆発的成長期を迎えてジャパンイマジネーションに社名を変更した。
08年以降はマーケットに逆風が吹く中、突出した商品開発力と巨大ロット調達でコストを切り下げてシェアを伸ばす巨人ブランドと、ファンを捉えて少数の店舗とECで直販する魅力的なミニブランドに挟撃され、短サイクルODM調達のバイイングSPAゆえ同質化してお値打ち感もアピールできず、業績が悪化していった。

 そんな経緯を振り返っても、凡庸なバイイングSPAの基幹ブランドを廃止して、小粒でも独自性がある自社開発型のブランドを残す、という同社の事業整理の判断は極めて的確だ。

 私が学生アルバイトとして人生で初めて売り場に立った「セシルマクビー」(当時は「デリカ」)がなくなるのも、多くの人々が同社を離れるのも寂しいが、整理再編されたジャパンイマジネーションが新たなサクセスストーリーを歩むことを祈りたい。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

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ファストリ上席執行役員が独立してタダで始めた「トーチング」 正気で商機を感じているの!?

 ファーストリテイリンググループで社内改革を推進する「有明プロジェクト」をけん引し、史上最年少で上席執行役員に昇格した神保拓也はこのほど、人の「心に火をつける。」ことを目指し、株式会社トーチリレーを設立した。まず取り組む同社の主たる事業は、「心に火をつけることを主題に置きつつも、ティーチングやコーチングとは一線を画すサービス」。ただ、その料金はタダだ。おそらく世界屈指の高給取りのサラリーマンだった神保は、どうしてタダで「トーチング」を始めたのか?ボランティアなのか?その背景に迫った。

 ティーチングでもコーチングでもない「トーチング」について神保は、「目標という山を見つける、目標という山に登るためのトーチに火をつけるサービス」と話す。心に火が灯れば、山は見つかる。心に火が灯っていれば、山に登っていける。目標が見つからなかったり、目標はあるけれど「悪天候で、心の火がくすぶって」いたりする人に向け、手を差し伸べ、背中を押す仕事だ。

 6月にスタートしたトーチングの最初の客は、現役高校生だった。大学の付属高校に通っていた彼の悩みは、そのまま進学するか、海外の大学にチャレンジするか?さまざまな切り口から「登る山を見つけるお手伝いをさせてもらった」結果、「何をすべきか?目標は何なのか?を明確にでき、以前より肩の力を抜いて物事に取り組めるようになった」との連絡があったという。トーチング料は、高校生の彼に限らず本当にタダ。依頼者には各人に約2時間を費やしてトーチングを重ねている。直近の主たる収入源は、毎月2時間だけ時間を割くB to Bのコンサルティングで、時給は20万円。時給としては非常に高額だが、ファーストリテイリングの上席執行役員だった神保の月収は、40万円まで下がった。

 なぜ、無料なのだろう?そう聞くと神保は、フリースに代表される「ユニクロ(UNIQLO)」の「服の民主化」の話をする。フリースは、「アウトドア好きなど、一部の人に向けた商材を一般に解き放って」大ヒット。ファーストリテイリングの柳井正・代表取締役会長兼社長の間近に身を置き、「一部に独占されていた何かを、世に解き放つ」ビジネスにチャンスを感じたという。そこで目指したのは、「コーチングの民主化」。「コーチングも、一部の人に利用が限られているサービス。人の悩みに高尚や低俗などの違いはなく、進路相談も夫婦喧嘩も本人には重要」と考えた。民主化に際しては、「『傾聴しなければならない』『質問しなければならない』『評価(承認)しなければならない』などのルールに縛られているコーチングでは、心に火はつかない」と、独自のトーチングに昇華した。

 心に火がついて大変身を遂げた人や組織も、ファーストリテイリング時代に目の当たりにした。それは、本社勤務の人間が店舗をサポートする「スポンサー制度」での出来事。神保は、店長とスーパーバイザー(複数の店舗を統括する店長の上司)の“わだかまり”が、店舗スタッフにも悪影響を与え、結果低迷しているロードサイド店舗のスポンサーを務め、1年で全国800以上の店舗の中でNo.2に選ばれるまでのサクセスストーリーを目の当たりにした。神保は、「店舗の心に火をつけるために巡回したが、僕がやったのは、そこまで。火はどんどん燃え広がった。そこから先の奇跡は、僕ではなく、彼ら自身が起こしたこと」と話す。店舗スタッフは、全国No.2に喜ぶのではなく、「優勝できなくて悔しい」と涙を流したという。「山が見つかり、山の登り方がわかった人間は、ここまで変われるんだ」と実感した。

 とはいえ、月商40万円では、従業員を抱える会社は成り立たない。本人は、「1日、午前と午後で2組にトーチングできれば、1年で700人、2年で1400人の心に火がつき、コアなファンはトーチングを口頭伝承してくれる」と言うが、それでも稼ぎは月間40万円のままだ。マネタイズの第一弾は、これまで、そしてこれからのトーチングのやり取りや金言・格言、心に火がつくまでのプロセスを、神保自らが記した“秘伝”の「トーチング日記」。月額1000円でオンライン配信する。「日本で100人なら、中国では1300人に販売できるはず」と日記は多言語化。加えて7月下旬からは、「トーチング日記」の“あとがき”を動画で届ける「トーチングラジオ」の配信もスタートした。引き続きトーチングは無料だが、それは、日記やラジオとして届けるコンテクストの素になるコンテンツを「無料で仕入れること」でもあるという。

 ファーストリテイリングでも「特定の人たちに限られていたものを、世の中の大勢に解き放った」。ただ、「心に火をつけるトーチングは、ファーストリテイリングに携わる人だけが求めていることなのか?世の中は、悩みだらけ。このままファーストリテイリングで高い給与をもらいながら、特定の人の悩みだけに向き合うべきなのだろうか?」と考え、「柳井さんのためより、大勢のために」と独立した。トーチングをサステイナブルなモノ、持続可能なビジネスにしたいと思っている。目標は、「家族(第1の場所)にも、職場(第2の場所)にも相談できない悩みが相談できるサードプレイスになること。そして、全ての根源である人の心に火を灯すことで、世の中をもっと明るくする」ことだ。


 「WWD JAPAN.com」は8月から、神保拓也トーチリレー代表取締役“隊長”が「ユニクロ」時代、スポンサーを務めた店舗のスタッフの心に火を灯し、奇跡に導くまでを振り返る連載をスタートします。ご期待ください。


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ゲームカルチャー解体新書Vol.2 ゲーム課金とファッションの相性とは?

 約15年にわたり、ファッションに軸足を置きながら、セールスやPR、企画立案の立場で国内外のブランドビジネスに関わらせていただいています。ファッション業界に携わる私が、ファッション業界をはじめ、ゲーム業界で活躍している方々、ゲーム好きのゲストとの対談を交えながら、「ファッション × ゲーム」の可能性や新しい価値を提供することができたら。そんな想いで新連載をスタートさせていただきました。

戸簾俊広(以下、戸簾):ゲストを迎えての初回は、ゲームカルチャー協会の松岡政幸・代表理事に来ていただきました。ゲームカルチャー協会とは、どういう団体なのでしょう?

松岡政幸ゲームカルチャー協会代表理事(以下、松岡代表理事):大義を持って活動している団体です。海外に比べると日本は、大会の賞金が少額。ゲーマーのポジションや法的なルールも課題が多く、スケールし辛い環境です。そんな課題を内閣府と通じて、ユーザー目線で解決しようという機関です。首相官邸のホームページにも紹介してもらっているんですよ。

戸簾:松岡さんの大義を聞いて、「ゲーム業界とファッション業界がつながったら、面白そう」って思ったんです。ファッション業界は、ゲーム業界と最も積極的にコラボレーションすべき業界だと思っています。

松岡代表理事:日本独自の課金モデル「ガチャ」は、ヨーロッパでは法律で禁止されているんです。逆にそのくらい「ガチャ」には市場力がありますから、海外の主流であるアバター課金のビジネスモデルは、日本人には馴染みが薄いかもしれません。でも日本でもアバター課金が広がれば、ファッションが絡むのは当たり前になりそう。最近、良い事例が出始めましたね。「あつまれどうぶつの森(あつ森)」です。「あつ森」のマイデザインには企業やブランドが参入していて、ブランドの洋服やメイクが登場しています。

戸簾:普及すればファッション業界にとって、明るい未来の可能性になりますね。

松岡代表理事:海外市場の大きさも魅力的ですよ。特にリーチを増やすなら、インドネシアなどのスマホ大国を狙うべきです。スマホが当たり前の国は、ページビューが圧倒的に多いんです。今日本で一番メジャーなスマホゲームは「モンスターストライク」で、ユーチューブの公式チャンネル登録者数は約105万人。ところが海外では「リーグ・オブ・レジェンド」という作品が有名ですが、MOBAという同様のゲームジャンルのモバイルバージョン「モバイル・レジェンド」っていうゲームのユーチューブの公式チャンネル登録者数は約715万人です。インドネシア専用のアカウントだけでも約90万人が登録しています。母数が全然違うんです。こうした視点でゲーム業界を見ると、ファッション業界の方にも魅力的に映りませんか?

戸簾:日本と海外では、なぜこんなに市場成長も大会の賞金も、ゲーマーポジションも違うのですか?

松岡代表理事:もちろん人口の影響も大きいのですが、一番の問題は法的環境です。日本のゲーム業界は、景品表示法と賭博法、風俗営業法という3つの法律で規制されています。まず景品表示法では賞金の最高額が10万円までと規制され、賭博法では参加費の一部を賞金に充てることが禁止され、風営法ではゲームセンターなどの施設ではイベントを主催することさえできません。非常に厳しい、日本らしい法環境です。それをくぐり抜けるべく、日本eSports協会(JeSU)が立ち上がりました。JeSUはプロライセンスを発行できる機関で、消費者庁に申し込み大会開催の許可を得たものだけにプロライセンスを発行。パフォーマーやインフルエンサーなどのプロの人には、「出演料」という名目でギャラを支払います。そうすると、金額が変わるんです。

戸簾:なるほど!ゲーマーの方々は、そういう事情を知ってるんですか?

松岡代表理事:人それぞれですが、僕みたいにゲームの大会で知り合った人とコミュニティを広げたい人もいれば、好きな事で稼ぎたい人もいます。単純に名誉で頑張っている人もいるんですよ。

戸簾:オリンピックの公式種目なんて話もあるんだから、国は夢を見られる環境を整えて欲しいですね。ファッション業界がサッカーや草野球チームみたいに「ゲームチーム」を作って、ゲームのコミュニティーの中で人気者になって、その販売員とコミュニケーションできる機会があっても良いですね。

松岡代表理事:ゲームカルチャー協会は立ち上げて1年ぐらいですが、メンバーには東京大学を卒業後にアクセンチュアを経てアプリ開発のスペシャリストになった吉積礼敏さんや、スクエア・エニックス米国法人の最高執行責任者だった岡田大士郎さんら強いネットワークを有しています。面白い事ができますよ。

戸簾:最近、ネガティブな話も多かったから、とても楽しかったです。今回は本当にありがとうございました。

戸簾俊広: ジェムプロジェクター代表:2009年に国内外のファッション・ライフスタイルブランドのブランディング、PR、セールス、コンサルティングを手掛けるブランディングカンパニーGEM PROJECTORを設立。現在は、地方創生プロジェクトや会員予約制のテンポラリーレストランの立ち上げに向け奮闘する一方、「受信者から発信者へ」をテーマにしたオンラインサロンを運営

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今年で創刊25周年 雑誌「VERY」がコロナ禍で開拓する新たなビジネスとは?

 光文社の「ヴェリィ(VERY)」は今年、創刊25周年を迎えた。現在は「ファッションの力でママたちを応援する」ことと「ジェンダーギャップを埋める」ことの2つを軸に、コンテンツを生み出している。同誌の今尾朝子編集長は「ターゲットである30〜40代のママたちの中では、新しい夫婦像が生まれている一方で、未だに変わらない価値観に苦しんでいる人もいるという状況。仕事の面においても、働くママがここ数年増えており、読者の中では7~8割が有職者だが、復職や共働きなどの面で、いろいろな葛藤を感じている人たちも多い。それは取材を重ねていて感じている」とここ数年の読者像の変遷を説明する。(この記事はWWDジャパン7月27日号の雑誌・メディア特集を加筆したものです)

 読者像の変化に合わせて企画も徐々に変わってきている。「“頑張らない”や“簡単”といったキーワードから、“ロジカル”“効率的”に変わってきていたが、それにも限界が来ているような印象を受ける。やはり夫や会社などの考え方が変わらないと難しい」。そういった考えをもとに実施した企画の1つが、同誌2019年1月号の「『きちんと家のことをやるなら働いてもいいよ』と将来息子がパートナーに言わないために今からできること」だ。掲載ボリュームとしては大きくはない企画だったが、雑誌にしては珍しい、長めのタイトルとママたちの実態を捉えた内容で、大きな話題となった。

 そんな「ヴェリィ」は現在、チャネルの多様化を進めている。3月にはラグジュアリー・メディア「ヴェリィ ネイヴィ(VERY NAVY)」をスタート。表紙には2019年12月号で「ヴェリィ」のカバーモデルを卒業した滝沢眞規子を起用し、本誌の4〜6月号と10〜12月号の別冊として出すほか、インスタグラムアカウントや「ヴェリィ」のウェブサイト内にカテゴリーを新設した。同メディアスタートの背景について「滝沢さんは専属モデルとして光文社に所属してくれていたので、『ヴェリィ』卒業前から、彼女の次を考える責任を感じていた。彼女は私生活にラグジュアリーをうまく取り込み、楽しんでいる。そして光文社には、ラグジュアリー誌がなかった。さらには『ヴェリィ』の読者の中にも、ラグジュアリーに興味を持っている人がいたが、『ヴェリィ』としてはマスを狙っていたので、なかなかラグジュアリーを取り扱えなかった。そこで滝沢さんを起用して、『ネイヴィ』を始めてみようと考え、まずは広告を見込める4〜6月と10〜12月の特別付録として出した」と語る。今のところ「ネイヴィ」は好調で、4〜6月の3号合計で33社が協賛に付き、集広目標の115%を達成。付録として出したことにより「ヴェリィ」本誌の実売も好調だという。

コロナ禍のデジタル施策の成果は?

 デジタル施策に関してはどうなのか。「コロナ禍で、本誌は6月・7月を合併号として、25年の歴史の中で初めて発売を見送ったが、その間『おうちVERY応援月間』として、ウェブやSNSのコンテンツに編集部一丸となって取り組んだ。それも要因にあり4月19日〜5月15日の約1ヶ月間で、PV数は43%増、新規ユーザーは67%増と良い結果が出ている。また、自粛期間中のママたちの“3食疲れ(3食食事を作ることへの疲れ)”にも対応できればと思い、更新が止まっていたインスタアカウントの『クッキングヴェリィ』も再スタートしたところ、あっという間に1.6万から3万フォロワーに増えた」と手応えを感じているようだ。

 また、同誌はママのための学びの時間を提供するコンテンツ「ヴェリィ アカデミー」も6月6日にスタート。第一弾は車のサブスクリプションサービスである「キントー」の協力のもと、“話題のサブスク「キントー」から考える、子育て世代の『変化に強くなる』3つのヒント”をテーマに、ツイッター上でライブ配信を実施。当日は10万人以上が視聴し、総再生回数は14万回を超えた。「ママたちにはインプットをする時間が足りない。その中でどうインプットをするのかを考えた時、デジタル上で空いている時間に学ぶイベントを立ち上げたらいいのではないかと考えていた。同じタイミングで『キントー』さんとはリアルイベントを行う、という話をしていて。コロナでリアルイベントはできなくなってしまったけど、オンラインでならできるだろう、というところで私たちのアイデアと合致し、スポンサーが付いたという形で大きな規模でイベントが実施できた」と経緯を話す。今後は料理に関する「クッキングアカデミー」なども検討しているという。

 チャネルを多様化している「ヴェリィ」だが、これまでのコンテンツ制作で培ってきた、30〜40代のママたちへのインサイトを活用したビジネスの多角化も模索中だ。「クライアントの広告予算の中でも、雑誌に振り分けるようなことはやはり減ってきている。『ヴェリィ』がターゲットとしている世代に響くようなキャッチコピーを考えたり、ニーズに合った商品開発をしたり、PR施策をしたりと、今後はある種のコンサルティング会社のような役回りもこなしていくことになると思うし、既にやっていることもある。『ヴェリィ』は25年間、若いママたちが考えていること、感じていること、欲していることにせいいっぱいの答えを返せるよう、考え続けてきた。その強みを生かしていきたい」。

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ランジェリー業界のゲームチェンジャー vol.5 世界に一つのビスポークランジェリーで女性に自信を与える「チヨノ・アン」のイェガー 千代乃・アン

 洋服に比べると使用する資材やサイズ展開が多く生産ロットも大きい下着は新規参入が難しく、大手下着メーカーやアパレルメーカーによる市場の寡占が顕著だ。新陳代謝もあまり進まなかった印象の下着業界だが、ここ数年D2Cブランドが増加したり、SNSを通じた情報発信が活発になったりして、30代の女性を中心に新たなムーブメントが起こっている。そんな下着業界に新風を吹き込むゲームチェンジャーらにインタビューし、業界の今、そして今後の行方を探る。

 第5回に登場するのは、ビスポークランジェリーブランド「チヨノ・アン(CHIYONO ANNE)」のイェガー 千代乃・アン 代表兼デザイナー。海外で育ち、日本に留学中に下着が女性のマインドにもたらす影響について研究した。ロンドンでデザインと技術を学び、日本で起業というプロフィールからも分かるように、国際的な感覚と独自の感性を併せ持つデザイナーで、その物作りに対する姿勢はテレビ番組の「情熱大陸」で紹介され注目を浴びた。一対一の会話から生まれる世界で一つのランジェリーを身に着けることで、その人自身の美しさを表現し、自信を持ってほしいと願いながら製作に取り組む。

――オーダーメード、オートクチュールでなく“ビスポーク”とする理由は?

イェガー 千代乃・アン代表 / デザイナー(以下、イェガー):“ビスポーク”とは、私がテーラー技術に触れたサヴィル・ロウで使われる言葉です。ご存知のように“bespeak(to be spoken for/会話する)”が語源で、顧客とデザイナー兼クラフツマンが会話しながらともにイメージする一点ものを作り上げていくというもので、その2者の関係性に深さがあります。それは私のデザイナーとしての哲学です。こちらのデザインを押し付けるのではなく、顧客とのコミュニケーションから生まれるデザインを大切にしたいと常に思っています。顧客が心地よいと感じるもの、美しいと感じるものを一緒に発見するプロセスはとても貴重な経験です。自分の中の新しい一面を知り、自分のために作られたランジェリーを身に着けることで自信が生まれ、幸せをさらに感じられるようになっていくと信じています。

――さまざまな選択肢がある中で“ランジェリー”を選んだ理由は?

イェガー:いくつか理由がありますが、その一つが、10代のころに自分に合う下着が見つけられなかったことです。当時、イギリスに住んでいたのですが、小柄な私の体形に合う小さなサイズのブラジャーはジュニア用で少しある程度。私はファッションが大好きで、友人たちはランジェリーのおしゃれを楽しんでいるのに、私はそれができないことにすごくコンプレックスを感じていました。もう一つは3歳から習っていたバレエのレッスンでの経験です。私が所属していたロイヤル・バレエ団には採寸して体にぴったり合ったコスチュームを作ってくれる衣装係がいて、その衣装はどの服より、どの下着より体にフィットして動きやすく、最高の着心地。それを着て踊ると心から自由になれ、自分を表現することができました。その忘れられない感覚と経験が、ビスポークランジェリーを選んだ主な理由です。

19歳のときに見た下着広告に
カルチャーショックを受け、
日本での起業を決意

――イギリスで起業するという選択もあったと思うが、なぜ日本で?

イェガー:私が通っていたロンドン大学の東洋アフリカ学院は非常にリベラルで、マイノリティーの声を大事にし、フェミニズムに対する関心が高く、活動家の友人もたくさんいました。そのような環境の中で生活していた私は、19歳で日本に留学したときに見たある下着の広告にすごく驚きました。それは、体の段差を防ぐ下着を紹介するものでしたが、年齢を重ねた女性の体を否定するもののように感じられ、大きなカルチャーショックでした。似たような表現はほかにも多くあり、固定概念によるプレッシャー、それがコンプレックスにつながるのだと強く感じました。美しさの在り方は人それぞれであるということを伝えたい、ありのままの体が美しいということを伝えたい、それを実現するには完璧にフィットするランジェリーを作ることだと思い、日本での企業を決心しました。留学を終えてイギリスに戻り、大学院でファッションビジネスやデザイン、技術について学び、再び日本へ帰ってきました。しばらくはモデルをしながら起業のための資金をためて、24歳のときにブランドを設立しました。

――イギリスから移住し、24歳で起業するまでの苦労は?

イェガー:当時は日本語もあまり話せませんでしたから、確かにハードルは高かったです。本気でランジェリーの仕事をやろうとしているのに、ハーフだから、若いから、モデルだからという理由でなかなかビジネスの中身を見てもらえず、スタートまで困難がありましたが、今、振り返ればその経験も日本文化を理解するために役立ちました。そのとき感じたことがブランドコンセプトやビジネスモデルにも生かされ、エンジンにもなりましたし、女性たちに自分の体を好きになってほしい、自信を持って欲しいと思うようになりました。

――現在、オーダーのサイクルは?

イェガー:週1〜2日を顧客との時間に充てて、1日3枠をご用意しています。6割以上がリピーターになってくださっているのは、技術者にとって大きな励みです。回を重ねるごとに顧客の満足度のレベルも上がりますから、それにチャレンジするのも大好きです。家族や友人を紹介してくださる顧客も多く、自分の喜びを大切な人とシェアしてもらえるのはうれしいですね。

――今後の目標は?

イェガー:現在いる4人の縫製スタッフを育ててチームを大きく、そして強くし、地方や海外でもさらに多くの注文を受けられるようにしたいと思っています。スタッフがそれぞれの得意分野の技術を磨き、その分野では私を超えてほしいです。生産能力を上げること、プロモーションを強化すること、リピーターを大切にすること、そのバランスが永遠の課題です。

――現在の下着業界をどう見るか?

イェガー:最近はインディペンデンドなランジェリーブランドやそれらを販売するセレクトショップが増え、経血吸収型ショーツへの参入も多いですね。しかも、それらを手掛けるのは同世代の女性たちで、誇らしいしすごくわくわくします。アプローチはそれぞれ違うかもしれませんが、女性を幸せにしたいという目的は同じのはず。さまざまな個性がそろうことで発信力も強まり、大きなパラダイムシフトになると思います。

川原好恵:ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルス分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身

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ソーシャルディスタンシングもUVカットもお手のもの! つば広ハットで魅せる夏の装い

 暑い日射しを遮ってくれる夏の味方は、つばの広い帽子です。どこか懐かしいバケットハットはしばらく前から人気ですが、2020年春夏シーズンのランウエイでは、多くのブランドがエレガントでボリューム感のある新モデルを投入。広いつばはソーシャルディスタンシングや紫外線(UV)カットの両面で役立つので、この夏はつば広帽をコーディネートのキーピースに迎えたくなります。

 「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」は、背中側がすだれのように長くなった、異形のつば広ハットを披露。後頭部の日焼けを防ぐ効果が期待できるうえ、背中側からの視線も受け止めてくれそう。不規則に波打つつばも、気負わない雰囲気を印象づけます。この夏に向けて、さまざまなブランドから、普段使いにも役立つ帽子コーデが提案されています。

深めクラウンはノーメークでも安心 小顔効果も発揮

 髪と頭を収めるクラウン部分が深いタイプは、程よく顔の上半分が隠れて、ノーメークでも安心してかぶれます。マスクとの兼ね合いで、メイクを控えたい昨今の事情にも好都合。ミステリアスなムードだけでなく、小顔効果まで引き出してくれます。

 「アルベルタ フェレッティ(ALBERTA FERRETTI)」の帽子ルックは、どこかサファリ気分のたたずまい。軽やかトレンチコートにショートパンツを引き合わせて、“街中アウトドア”の装いにまとめ上げました。バケットとクロッシェ(釣鐘帽)をミックスしたかのような、深いクラウンのハットで、クール&マニッシュのムードを全体にまとわせています。

甘めレーシーワンピースを上品クールに味付け

 つばが広く、リボンをクラウンに巻いた優美なタイプは“女優帽”とも呼ばれ、装いにエレガンスを寄り添わせてくれます。麦わら帽子のように、つばがフラットな形はサマールックになじませやすいシルエットです。

 「セリーヌ(CELINE)」のニットワンピースはレース編みが涼しげ。つばの広いハットで、さらに夏のムードを濃くしています。70年代ヒッピーの感覚がどこか漂うスタイルを、上品テーストにアレンジ。帽子の黒リボンと、レザーバッグ、ロングブーツを響き合わせて、清涼感の高い“白×黒”コーデに整えました。

バケット×ストローで休日リラックスムード

 帽子を取り巻く近ごろの新傾向は、異なるタイプを融け合わせたような“ハイブリッド”のシルエット。夏のカジュアル帽子の代表的なストローハットも、人気の続くバケットハットの形と組み合わせた新顔が登場しています。

 オーバーサイズのリラクシングなトップスを主役に迎えて、伸びやかなコーデを組み上げたのは「ディオール(DIOR)」。フロントポケットが印象的なゆったりパンツは、ワンマイルのお出かけにぴったり。植物素材のバケットハットがナチュラル感をプラス。オフ感たっぷりの自然体コーデに仕上がりました。

特大日除けハットでマリン気分を満喫

 紫外線をブロックしたい夏にこそかぶりたいのが、つばが破格に広い“スーパー女優帽”。広いつばに主張があるから、着こなしのイメージチェンジャーを任せられます。周囲とのスペースを確保できるソーシャルディスタンシング効果が見込める点でも、この夏に使える帽子です。

 「ランバン(LANVIN)」はスカーフ柄のようなモチーフを全面にあしらったプリントワンピースで、リゾートやマリンのテーストを呼び込みました。海のムードを漂わせる決め手は、海賊風のつば広ハット。正面を折り上げて、顔周りを明るく演出。ビッグバッグでボディの華奢感を印象づけています。

顔をくるんで、ドラマチックな特別感

 大胆なビッグハットは、さっぱりしがちなサマールックに華やぎをもたらしてくれます。時に試したいのは、帽子をキーピースに据えたスタイリング。全体をワントーンでまとめれば、ドラマチックな着映えが完成します。

 「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」は、布をふんだんに使った、たっぷりドレープのドレスで、ファビュラスな装いに導きました。艶美でミステリアスなドレス姿に、同じ色のつば広ハットが主張と特別感を上乗せ。大ぶりのフラワーモチーフも添えて、顔周りを華やがせました。

 つば広ハットはかぶるだけで、夏コーデのムードを変えてくれるため、手軽な着回しに役立ちます。手持ちのワードローブから別の表情を引き出すうえでも重宝するので、UVカットとソーシャルディスタンシングも兼ねて、夏の装いに取り入れてみては。



ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

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音声座談会「蓉子の部屋」 Vol.2藤野英人レオス・キャピタルワークス代表取締役会長「一人一人がユーチューバーになる時代に」

 「蓉子の部屋」は、川島蓉子・伊藤忠ファッションシステム取締役/ifs 未来研究所所長が、毎回ゲストを招き“未来”について考える音声番組です。未曾有の状況の中、業界はこれからの“未来”について考えなければならない現実に直面しています。そんな中、少しでも業界人に役立つヒントやカケラを音声配信でお届けします。近所のスーパーに行く時や、通勤・通学時に気軽に聞いてください(笑)。第2回は、藤野英人レオス・キャピタルワークス代表取締役会長兼社長に迫りました。「お金そのものに価値はない」「お金は“過去の努力の缶詰”であり“未来の可能性への缶詰”」「一人一人がユーチューバーになる時代に」など、藤野会長兼社長が考える“自分自身の人生のための投資”について語ります。

川島蓉子:1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。

藤野英人レオス・キャピタルワークス代表取締役会長兼社長:国内・外資大手投資運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークス創業。JPXアカデミーフェロー、明治大学商学部兼任講師。一般社団法人投資信託協会理事。主に日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用するほか、投資啓発活動にも注力する。著書に「お金を話そう。」(弘文堂)、「投資家みたいに生きろ」(ダイヤモンド社)などがある

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伊勢丹新宿本店の新サービス“マッチパレット”に予約続々 5秒の全身計測でスタイル提案

 伊勢丹新宿本店は7月15日、本館3階のイセタンパーソナルラボ(以下、パーソナルラボ)で、新サービス“マッチパレット”をスタートさせた。このサービスは、ワコール(WACOAL)の3Dボディースキャナーを利用して全身のサイズを計測し、販売員が体形に合うアイテムやスタイリング、ブランドを提案するというものだ。

 伊勢丹新宿本店の3階にあるパーソナルラボは、カスタムメードやリフォームなどのサービスを提供するサロンのようなスペースだ。そこの一角に3Dボディースキャナーが設置されている。担当の販売員に案内され、セルフでボディースキャナーの測定を行う。下着での測定か、またはヌード寸法を希望する場合は専用のブラジャーが用意されている。測定が終わりタブレットに個人情報を入力すると、計測データと体形が分析されたプリントを渡され、左には18カ所の採寸データが、右には、採寸データに基づくサイズチャート(号、サイズ、インチ)とボディーサイズ(体の丸み、ウエストから上半身、下半身の形状)が記されている。ここまで詳細に自分の体のデータを見たことがない人がほとんどのはずだ。バストやウエストだけでなく、左右の腕の長さや太さ、股下などの計測データにより客観的に自分の体を知ることができる。
 
 “マッチパレット”は“似合うに出合う”マッチングサービスで、効率よく新たなブランドやアイテムを探せるというもの。3Dボディースキャナーの計測データをもとに、ブランドごとのサイズ感やトレンドを熟知した販売員がタブレットで9タイプの体形に振り分け、それぞれに合うアイテムやブランドを紹介してくれる。 “マッチパレット”公式LINEアカウントからオンラインチャットサービスを受けることもでき、伊勢丹新宿本店の公式オンラインショップで購入することも可能だ。3階の約50ブランド約1万点から商品を提案するというサービスだが、ゆくゆくはフロアを超えて買い回りのできるパーソナルショッピング体験を提供するという。

 3Dボディースキャナーのシステムはワコールの提供で、“マッチパレット”を体験すると3階のマ・ランジェリーのワコールコーナーで「ブラてびき」とボディー用美容液「ナイトピージェル」のサンプルが進呈される。さらに、ワコールのブラジャーを購入すると、下着専用洗剤“ランジェリーウォッシュ”のプレゼントがある(先着、数量限定)。

 三越伊勢丹の宮田雅文クロージング&アクセサリー1グループ 新宿婦人・婦人雑貨営業部ブランドショップ担当(婦人・肌着)フロアマネジャーによると、7月17日の時点で、“マッチパレット”の予約は約150人程度ということだった。内訳は30分のワンポイントコースが約4割、90分のコンサルティングコースが約6割。初日には50~60代の女性客の利用があり、コンサルテーション後に婦人服フロアでの買い周りがあったという。一方で、予約の内容は20~30代のデジタルに抵抗のない若い層も取り込めているようだ。“マッチパレット”のサロンで選んだ洋服のフィッティングも可能だが、館内の各売り場でもフィッティングできるよう臨機応変に対応していくという。

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通販ブランドから“ビューティブランド”へ 「オルビス」初の体験型施設が表参道にオープン

 オルビス(ORBIS)が、旗艦店「スキンケア ラウンジ バイ オルビス」を7月17日に東京・表参道にオープンした。自身の肌状態を理解し、正しいスキンケアを学ぶためのコンテンツやアプリ会員限定のスキンケアトリートメント、ワークショップ、さらには初のジュースバーなど、“パーソナル““体験”がキーワードになるショップだ。

 1987年の創業以来、通信販売と直営店舗での展開を行なってきた「オルビス」が、なぜ今、体験型の店舗を?と思うかもしれないが、これはブランドが2018年から行なっているリブランディングの一つだという。オルビスの小林琢磨社長は、「リブランディングではブランドロゴ・コーポレートカラーの変更や『オルビスユーシリーズ』『ディフェンセラ』といった戦略的商品も登場させている。今回の旗艦店は、リブランディングの一環として、心地よくいられる生活をサポートするために、“自身を知る”ためのショップだ」とコメントした。

 では、“自身を知る”とはどういうことなのか。同社がメイクもファッションも大好きという“今どき”の女性に調査したところ、「正しいスキンケアの方法がわからない」「自分に合っているアイテムを知りたい」という声が多かったそうで、おしゃれの感度が高い人でも、意外と基本的なことを理解していなかったのだ。そこで「スキンケアを学ぶきっかけがない人に向けて、五感で心地よさを満たしながら、自分らしい“美しさ”を見つける場所を提供したい」とショップを作った。続けて、「モノ作りには自信があるので、店舗以外でも製品を正しく使ってほしく、それを伝えるためのお客さまの拠点作りをしたかった」とブランド統括グループ クリエイティブディレクターの小椋浩佑氏。

 そして誕生した「スキンケア ラウンジ バイ オルビス」のコンセプトは、“自分の肌を知り本来の力を引き出す体験”の場。2フロア構成で、1階は誰もが入りやすいオープン&インクルーシブなフロア、2階はプライベート&エクスクルーシブなアプリ会員限定のフロアとなっている。「FEEL」「LEARN」「TAKE」を軸に、自身の心地よさや美しさを見つけるコンテンツを豊富にそろえているのが特徴だ。

 以前の「オルビス」は30〜50代がメインだったが、リブランディング後はその構成に変化が出始めているという。「『オルビスユー』の登場が新客を獲得し、20代後半〜30代のナチュラル・オーガニック志向のお客さまが増えた。今回の出店目的の1つとして、これまでのお客さまとのつながりの強化はもちろん、表参道エリアへの出店で、“ブランドの世界観に共感してもらえる人”との接点を増やすという目的もある。これまで接点を設けられていなかった表参道エリアに訪れる年間5万~6万人規模の来街者との、新たなブランド体験としての接点の構築を目指す」と小椋氏は語る。

 では、ショップの中に入った人に対する接点はどうか。これまでブランド体験の一つとして、18年から全国の直営店で、肌の水分や油分、くすみ、ハリ、キメなどを測定して“肌偏差値”を診断する「パーソナルスキンチェック」を導入していたが、新たに一人一人のファンデーションとメイクを提案する「パーソナルファンデーションチェック」サービスも開始した。今後、“未来肌”診断など新サービスの提供を控えており、“体験型”の進化も続いていきそうだ。

 また、朝8時からオープンするジュースバーは、その日の気分や状態を診断して選ぶ「インナー カラー ジュース」(Sサイズは650円、Lサイズはボトル入りで1200円。“飲むスキンケア”の「オルビス ディフェンセラ」もついている)を提供する。さらに、アプリ会員限定だが2階のパウダールームは無料で利用でき、半個室で1時間、メイク直しはもちろん、仮眠、瞑想もできてしまうのは忙しい毎日を過ごしている人の強い味方になりそうだ。

 「“通販ブランド”というイメージから脱却し、“ビューティブランド”としてブランドの世界観や思いが選ばれる存在になりたい」(小椋氏)という、その「思い」の体現の場に期待したい。

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「エクセル」史上最年少の若さで部長に就任 どんなキャリアでも常に“楽しんでいたい”

 常盤薬品工業の人気メイクブランド「エクセル」は30年以上の歴史を持ち、売り上げは右肩上がりが続いている。その好調の裏には、昨年11月にマーケティング統括部の部長に30歳という史上最年少の若さで就任した田島奏氏の功績も大きい。兼務する商品プランナー業ではブランドの全製品の企画開発を手掛け、トレンドと使いやすさを兼ね備えたアイテムでヒットを連発している。

WWD:常盤薬品工業に入社した経緯や理由は。

田島奏・常盤薬品マーケティング統括部部長(以下、田島):中学生の頃から、“化粧品は自分の目で選んで自由に試したい”という思いがあったため、セルフ化粧品を好んで使用していました。当時から「なめらか本舗」のスキンケアや「エクセル」のアイシャドウなどは愛用していましたね。学生時代にドラッグストアでアルバイトもしていましたが、常盤薬品工業の製品はいつもインパクトが強く、毎回新製品の入荷を楽しみにしていました。消費者と販売者の目線、そのどちらにも魅力を感じたことが入社の決め手となりました。

WWD:入社後の、これまでの業務について教えてください。

田島:入社1年目は営業、その後は商品企画部に異動となり、現在はマーケティング統括部部長兼「エクセル」ブランドをメイン担当とする、化粧品全般の商品企画(プランナー)です。もともと、もの作りをしたい気持ちで入社しましたが、作った商品がどんなふうに商談され、どんなインパクトがあれば小売側に魅力的だと思われるかが約1年の営業経験を通じて理解出来たと思います。どれだけ頑張って作った商品でも店頭に並ばなければお客さまの手にも届かないので、このやりとりを肌で感じ経験できたことは大きかったですね。とはいえ、営業的な視点に偏りすぎると「売りやすいもの、確実に売れるもの」という考えに陥りやすくなる懸念もあるので、やはり基本はメーカーの商品企画を担う者として、新たな価値を世に送り出すことを念頭に置くよう心がけています。

WWD:史上最年少でマーケティング統括部部長に就任。どういった点が評価されたと思いますか。

田島:評価いただいた点は、ここ数年間担当してきた「エクセル」の成長に寄与したことだと思います。昨年までの約6年間は、ブランド全体のマネジメントを行いながら全商品の企画を一人でやっていました。私が「エクセル」に携わるようになった2013年当時は、売り上げの半分近くがアイブロウだった。同アイテムを軸にしながら、ここ数年はアイシャドウやそのほかのアイテムの強化と充実をし、最大のターニングポイントは15年に発売したアイシャドウ「スキニーリッチシャドウ」です。この商品をきっかけに、爆発的にブランドの知名度が上がり、売り上げも大幅に伸長しました。ただ、これらのヒット商品を世に送り出せたのも先輩方が長年作り上げてきた礎があって成し遂げられたこと。正直、部長拝命は全く想像もしていなかったので当初は戸惑いしかなかったです。キャリアについても、自分の感覚が衰えない限りずっと商品企画を続けたいというタイプだったので……。しかし、商品企画との兼任を認めてもらったことや、これまで積み重ねてきた経験を生かし部全体に波及させていくことも私の使命であると感じたことから、とにかくチャレンジという気持ちで一歩踏み出してみることにしました。

WWD:部⻑としての苦労ややりがいは。

田島:まだまだ手探りの状態ではありますが、マーケティング統括部は商品企画やデザインなど部内で5つのグループに分かれているので、それらの横のつながりをどう作っていくかが課題でもありやりがいだと感じています。当社のメンバーは各々の思いやこだわりが強い分、意見がまとまらないこともしばしば。ただ、向かうべき方向はブランドチーム皆同じはずなので、そこをどう束ねていくか、道筋を示していくかが私に課せられた責務だと思っています。

WWD:では、プランナー業務での苦労ややりがいについては。

田島:薬機法や商標の関係で、言いたいことや付けたい商品名、色名がほぼ使用できないのが最も苦労している点です。そのしがらみの中で語彙やアイデアを絞り出すのがプランナーの腕の見せどころであり、醍醐味ともいえるかもしれません。最もやりがいを感じるのは、SNSで「色が可愛い!」「お気に入りのコスメ」などの生の声に触れた瞬間ですね。自分が生み出したもので誰かが少しでも嬉しい気持ちになれたり、可愛くなって自信を持てたり、もしかすると人生まで変えることが出来るかもしれないこの仕事を、心から誇りに思います。大切にしているのは、常に自分の企画を客観視し、疑いを持つこと。「本当にこれがベストな配色なのか」「使い方の説明は本当にこれで十分か」など、あらゆる角度から客観視することを重視して、企画の進行途中で大きく色味を変えることもしばしばです。

WWD:これまで携わった製品で思い出深いものは?

田島:どのアイテムも壁にぶち当たっていますが、「スキニーリッチシャドウ」の開発は、ブラウンとベージュ系だけでアイシャドウを作ると決めたものの、4色入り×4SKUで一度に16色開発せねばならず、微妙な色の差やニュアンスをつけることなど、当時は一人だったので本当に苦労しましたね。デザインについても、これまでの「エクセル」のパレットアイシャドウに比べて薄くしたり、社内の反対を受けながらも容器色を既存品と異なるブラウンカラーにしたりするなどデザイナーと二人三脚で何度も改良しました。さまざまな苦難を乗り越え最後までこだわり抜いたことが、結果としてこの商品がこれほど多くの人に愛されることにつながったと思うので、本当に頑張ってよかったと感じています。

WWD:今後、「エクセル」をどのように成長させていきたいですか。

田島:「エクセル」はこれまで、「こんなコスメがあったら毎日のメイクが楽しくなる」というリアルな発想で商品を生み出してきました。その結果、多くの人がブランドのファンとなって、新商品を心待ちにしてくれています。今後もわれわれのスタンスは基本変えるつもりはありません。これからもお客さまの毎日に心地よくフィットしながらも、どこかきらりと光る存在でありたいと願っています。10月20日には、4種の質感の異なる単色アイシャドウ「エクセルアイプランナーS/R/F/D」と、粉っぽさのない新感覚のマットリップ「リップベルベティスト」が登場します。このアイテムも、色、質感、きらめきなどに徹底的にこだわり抜きました。普段使いにもアクセント使いにも必須な一品となると思います。

WWD:仕事によって自身がどのように成長したいですか。

田島:何事においても、全体像から物事の本質を捉えられるようになりたいですね。今の立ち位置になってからは、その必要性をより肌で感じています。この見方は仕事だけでなく人生においても重要なことだと思い、今後も仕事を通じて養っていきたい力です。また、この先の具体的なキャリアは未知ですが、トキメキやワクワクを生み出すメーカーで働く以上、どんな状況でも常に“楽しんでいたい”と思っています。

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不屈の「コム デ ギャルソン・オム プリュス」 2021年春夏のショーで見せた8分間の輝き

 「コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS以下、オム プリュス)」は、2021年春夏コレクションを東京・南青山の本社で発表した。7月にオンラインで開かれたパリ・メンズ・コレクションには参加せず、国内でバイヤー、スタッフ、メディア向けに3回のミニショーを行った。会場は本社7階のフロア。新型コロナウイルスの感染予防対策で約40の座席は間隔をとって配置されていた。パリでのショーはいつも大混雑で、スタンディングの場合は服が見えるポジションを素早く確保したり、ランウエイが見える隙間を探すのに苦労したりしていることを考えると異様な空間であり、張り詰めた空気に緊張感が高まった。

逆境に屈しない“メタル アウトロー”たち

 定刻の10時になると壁面にはアーティストのアルベルト・ビタール(Alberto Bitar)が手掛けた映像が投影され、無機質なフロアをモノクロのパリの街が彩る。登場したモデルたちはその風景と呼応するような無彩色で、全身メタリックな素材のウエアをまとっていた。デザイナーの川久保玲がテーマに掲げたのは“メタル アウトロー”。宇宙服のようにギラギラした化繊から、アルミホイルのようなシワっぽいもの、箔をプリントした素材まで、服にメタリックなポイントを取り入れて逆境を乗り越える強さを表現した。細身のスーツや燕尾服、ラップスカートや膝丈のショーツなど「オム プリュス」らしいウエアが、さまざまな光沢によって異質な強さを手に入れる。

 ほかにも共通していたのは、全てのルックがテーラードを中心に構成されていたことだ。パンクなピタピタのスーツやパステルカラーのリラックスフォーマル、ライダースジャケットのカジュアルやシックなブラックドレスなど、あらゆるスタイルでジャケットやコートを打ち出した。メンズの定番服を重ねて縫い付けたり、破いたり、再構築したり、左右非対称にしたりすることで“王道”を破壊していく。とはいえ退廃的な重たさはなく、複雑な構造を読み解いていく楽しさがある。定番となった「ナイキ(NIKE)」とのコラボシューズも軽快だ。ショー開始前に抱いていた緊張感はいつしか高揚感へと変わり、8分間のショーはあっという間にフィナーレを迎えた。

 新型コロナウイルスの影響でファッション業界全体が窮地に立ち、現在は上質でタイムレスな服さえも売れない状況が続いている。またファッションショーに対しても、合理性の観点から懐疑的な声が増えつつある。そんなファッションの魔法が解けつつある中でも“アウトロー”を貫く「オム プリュス」の強い姿勢はたくましく、フィジカルのショーだからこそ感情がここまで揺さぶられたのかもしれない。「簡単で楽な服ばかり選んではいないか?」「つくられた価値観に無意識に流されてはいないか?」「意志と覚悟をもってファッションと向き合っているか?」――「オム プリュス」のショーはいつもそんなメッセージとともに見る者の背中をぐいっとつかみ、思考をファッションの本質へと引き戻してくれる。

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「オーシャンズ」を傘下に収めた「フォーブス」運営会社の成長の秘けつ

 アメリカを拠点に、世界40カ国で展開するグローバル経済誌「フォーブス」の日本版「フォーブス ジャパン(Forbes Japan)」は、紙面やウェブ、イベント、そして外部メディアの支援など多角的なビジネスを行っている。特に日本でのビジネスは世界各国の「フォーブス」の中でも、一つの成功例として評価されているという。日本版を発行するリンクタイズの角田勇太郎・取締役社長は同誌のビジネスモデルについて「部門横断でありとあらゆるアセットを使い、ニーズによって組み替えながら、各クライアントに合わせたソリューション型のスタイルでビジネスを行なっている。これは紙媒体の販売から始まった、縦割り型の構造の出版社とは大きく異なる」と語る。(この記事はWWDジャパン7月27日号の雑誌・メディア特集の記事を加筆したものです)

 また、同社は、2019年8月にメンズ誌「オーシャンズ(OCEANS)」を発行するライトハウスメディアを傘下におさめ、ライフスタイル領域への拡大も図っている。このことについて角田社長は「『フォーブス ジャパン』が立ち上がって、今年で6周年となるが、企業としての成長曲線を描いていくためには、『フォーブス ジャパン』がこれまで培ってきたネットワークやノウハウなどを使い、新しいことに取り組まないといけないと考えていた。そんな中で、『オーシャンズ』から、デジタル戦略で相談や協業の話があった。お互いにいろいろと議論を重ねていく中で、ブランドイメージやユーザー像、コンテンツなどの面で『オーシャンズ』と『フォーブス ジャパン』は相性がよいのではないかという結論に至った」と経緯を話す。

 しかしなぜ、提携や協業ではなく、子会社化する必要があったのか。「『よくライトハウスメディアが経営難で、それを買い取ったのか?』と聞かれるがそうではない。『オーシャンズ』は14年間、出版社のビジネスモデルでしっかりと利益を出していた。現在も紙媒体の定期購読者を2万人も抱えている。ただ、デジタルが経営課題であり、かつ伸び代だった。『オーシャンズ』が今後、成長するためには、デジタル戦略を推進するパワーが必要不可欠だろう、と話し合った末、提携や協業といった分離状態よりも、経営の指揮をわれわれが取った方が『オーシャンズ』としてもより拡張しやすいだろうという話になった」と説明する。

「オーシャンズ」と「フォーブス」の相乗効果

 その後は「オーシャンズ」の働き方やKPIの見直しなどを徐々に進め、1月にはオフィスを統合した。「手前味噌だが、『オーシャンズ』のスタッフは本当にいい人たちばかりで、働き方や進め方が変わっても、心がブレるような人がほとんどいなかった。今年は“デジタルブースト”を目標に掲げ、『フォーブス ジャパン』のノウハウやリソース、アセットを注入している。実際にPV数も過去最高数を更新しているほか、動画の制作能力やイベントの実施体制など、準備も整っている。今年の下期は仕掛けていきたい。リンクタイズとしても、『フォーブス ジャパン』と『オーシャンズ』とを横断した広告の提案などを始めている。ビジネス誌で“オン”の側面が強い『フォーブス ジャパン』と、余暇、つまり“オフ”の部分を提案できる『オーシャンズ』との組み合わせで、より立体的な広告になることができると考えている」と期待を見せる。

 ただ、拡大を続けている同社にも、コロナ禍の影響はもちろんあった。販売部数への影響は軽微だったものの、6月発売の号は「フォーブス ジャパン」「オーシャンズ」共に発行見送り。3〜5月は広告出稿の突然のキャンセルが起きたり、リアルイベントの開催が不透明になったりした。ただ、角田社長は前向きだ。「7月発売号はオンラインでの取材や、紙面づくりの大きな見直しを行い、リモートでの校了が可能となった。現在はコロナ後にも生かせる編集スタイルを模索中だ。また、イベントに関しても年内は全てオンラインで実施すると決め、さまざまな取り組みを行なうことで、既にいくつかのスポンサーもついている。その中で、リアルでやるべきこと、オンラインでやるべきことが見えてきた。コロナ後はリアル、オンライン双方で複合的にイベントができるのではないかと考えている」。

 「フォーブス ジャパン」としては今後、「グローバルとの連携の強化」と「新規ビジネスの開拓」に力を入れていく計画だ。「『フォーブス』のグローバルとしての強みを活用し、イベントやデジタル領域で複数国を横断したようなプロジェクトを考えている。実際に日本でもコロナで中止になってしまったが、中国・蘇州と大阪でコラボしたイベントを企画していた。新規ビジネスでは、『フォーブス』からの派生ビジネスや、他メディアのDX(デジタルトランスフォーメーション)の支援の強化を考えている。派生ビジネスでいうと、昨年スタートした『フォーブス ジャパン キャリア』が好調で、今年は2〜2.5倍の成長を見込んでいる。今後もいろいろと仕掛けていきたい。DXの支援では、“modify”というデジタルメディアのためのCMSを35メディアに導入している。今後は導入先の拡大はもちろん、新たなプロダクトの開発も行なっていくつもりだ」。

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「現代ビジネス」「FRIDAYデジタル」月刊1億PV達成の立役者が語る開発の裏側

 講談社はデジタルメディアの研究・開発に特化した100%子会社のKODANSHAtech合同会社(以下、tech社)を設立した。設立にはtech社の前身として2018年6月に発足した通称「techチーム」がこの2年間で実績を残してきた背景がある。(7月27日号の「WWDジャパン」の雑誌特集で掲載した記事を再編集しています)

 同チームはまず「現代ビジネス」で継続的なデジタルの改善を行い、19年8月に月間1億PVを達成。さらに同チームが一から立ち上げた「FRIDAYデジタル」も開設から約1年半で月間1億PVを達成した。その技術的知見を生かし、また講談社のメディアを横断して、さらにそれぞれを伸ばすべく設立されたのがtech社だ。「フラウ(FRaU)」「ヴィヴィ(ViVi)」「ヴォーチェ(VoCE)」といったファッション、ビューティ分野でもその知見が発揮されおり、成果を上げている。その中心人物は、同社の長尾洋一郎ゼネラルマネージャーだ。自ら編集者として携わっていた「現代ビジネス」で手探りの状態からウェブサイトを構築していた。

 当時を振り返る長尾マネージャーは「総合出版社というのは編集長の意向が強く、各編集長が社外のベンダー会社に業務委託することが多かった。いろんなベンダーと組むことは否定しない。ただ、デジタルを成長させる上で、ある程度基本的なやるべきことは決まっている。業務やコストの重複は無駄だと思った。さらに社内の自分たちが技術を持っているべき。編集者はパッケージ屋でもある。雑誌の場合はコンテンツを作るだけでなく、紙の斤量を決めるなど一連の実物のパッケージで商材を生み出す。読者がどう受け取り享受するかを考えるまでが仕事。デジタルでやりたいことだけ伝え、契約しているベンダーに丸投げでは仕事をしているとは言い難い。デジタルでどういった施策が出せるのか、パッケージで考えられる状態にしておくことが重要」と話す。

 そのような技術的なことのみならず、エンジニアと編集者のコミュニケーションの重要性も唱える。「エンジニアと編集者の両者が腰を据えて関係を築いた方がよいのではと思ったのも、会社を設立したことの理由の一つ。それぞれの立場でやりたいこと、やるべきことを理解できる通訳機能が必要だと思った。編集者はあれもこれもやりたいと言うが、それを真に受けて全てやってしまうと心理的に疲弊する。お互いが結果にも満足できるポジティブな関係を築くべき」と長尾マネージャー。実際にtech社がそれぞれのメディアと取り組む際にまずは、ユーザーに届けるべき価値は何か?何を大事にしてきたのか?という価値基準を明確にし、共有することだという。「それによってやるべき優先順位が見えてくる」。

 そもそも「FRIDAYデジタル」が1年強で1億PVを達成した時点で「techチーム」に対する期待も高まり、社内の他のメディアからも相談が来るようになっていた。女性誌やビューティ誌も手掛け、「フラウ」のウェブサイトは月間30万PVから1200万PVへと飛躍させた。「ヴォーチェ」もこの秋にリニューアルを控えている。「あまり手の内は明かせないが、ビジネス系と女性誌などメディアの特性によって伸ばし方が異なる。加えてPV増だけが媒体の伸長ではない。PVの成長には限界がある。たとえば『フライデー』は写真を軸に閲覧のしやすさ、速さ、軽さといった動作性を意識して設計している」。

 エンジニアを採用する際、講談社として採用してもいいのではという意見もあったという。「エンジニアは専門性が高い。講談社に入社した場合、人事によってほかの部署に配属になる可能性はゼロではない。そのため合同会社を設立することで評価体系を別で作り、人事プロセスを構築した。どの分野でもエンジニアは引く手あまたで、エンジニアが全員フリーランスの業務委託で来てもって、事業を拡大させていくのはしんどい。幸福な働き方ができるように契約条件もある程度柔軟に設定し選択できるようにしている。エンジニアには共感を持って参加してほしい」。

 またこのtech社が編集部門の中にあるのも大きいという。「コンテンツを技術によって届けるわれわれは、日々編集者のマインドを見ていく必要がある。当初は編集者でもある私が通訳者になっていたが、関係性を築いていくうちにエンジニアも編集側がやりたいことが分かるようになってきた。編集部も人任せではいけない。『それは違うでしょう』と言えなければ。それぞれのカルチャーが混合し、衝突し、実感しないと有機的なコンテンツにならない」。

 現在、試行錯誤しながら成功体験を積み重ねている。「いわゆる一般的なIT技術会社は、箱はあるけどコンテンツはない。一方、われわれはコンテンツを最大化させることを自分たちで考えることができる。コンテンツにおいて、長年出版社としての外部との信頼関係もあるし、クリエイターにも信頼されている。それが強みだ」。

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“スポサン”で魅せる夏の足元コーデ きれいめスタイルとも好相性

 楽な履き心地のほか、涼しさ、元気な印象などの長所を持つスポーツサンダル(スポサン)が出番を増やしています。少しタフでゴツい見た目は、ミックスコーディネートで着こなしをあえてはずしたいときのアクセントにもうってつけ。蒸し暑い夏のご近所ルックにも好都合。人気が広がって、幅広い世代に浸透しつつあります。

 おしゃれ上手たちの間で支持されているのは、“きれいめ”の装いにスポサンを組み込むという“ずらし”のミックスコーデ。こなれ感が出るうえ、健やかムードやヌーディーさも加わって、さっぱりしたサマールックも味わい深くまとまります。スポサンで絶大な人気を誇る「キーン(KEEN)」の春夏ルックをお手本に、スポサンとの賢い付き合い方をつかんでいきましょう。

◆しとやかワンピース姿を
“楽ちんフェミニン”にシフト

 スニーカーよりも素足がのぞく面積が広いので、ロングボトムスと合わせたときに、スポサンはフェミニンな雰囲気を漂わせることができます。写真1枚目は白のコットンワンピースにスポサンを合わせて、抜け感を添えました。夏はエスパドリーユやオープントーのサンダルで合わせるのが一般的ですが、あえてスポサンを選ぶことによって、意外さとスポーティーテーストを呼び込めます。

 2枚目の海辺ショットは、人気の“袖コンシャス”系ワンピースにあえて、スポサンを引き合わせました。大人女性が履いているのは、キーンの看板商品「ユニーク(UNEEK)」シリーズ。ベージュカラーを選べば、まるで素足のよう。砂が入っても、簡単に取り出せます。親子でのリンクコーデは気持ちもつなぎます。

 スポサンを上手に生かすには、適度な「ずれ感」を意識して。スポサンはアウトドアやアスレチックテーストが持ち味なので、その逆方向にあたるエレガンスやきれいめのテイストとマッチングさせるのがおすすめです。

◆お仕事コーデを足元から快適な
クールビズに

 カッチリ主義の職場でもなければ、スポサンをオフィスルックに忍び込ませるのも試したい“拡張プラン”です。写真1枚目のさわやかな白のパンツ・セットアップは、真夏でもきちんと感を寄り添わせてくれます。スポサンを合わせて、足元だけ少しはずすアレンジもトライしやすくなりそう。リモートワークが広がって、チェックがゆるんでいる今だからこそ試せるコーデ。涼しさとジェンダーレス感も呼び込めます。

 黒ベースのシャツをまとった2枚目のルックは、黒シャツと黒スポサンでパンツをサンドイッチ。サマーコーデをクールに引き締めました。メンズテイストのシャツに、センタープレスを利かせたパンツという、ややマニッシュな装いに、スポサンが程よいリラックス感を添えています。ダブルベルトのタイプは足首から先を伸びやかに演出してくれます。

 お仕事コーデでおなじみのシャツ・ジャケットの装いから気負いを遠ざける“引き算”のツールとしても、スポサンは役に立ちます。ペディキュアを塗った爪先を露出すれば、ほのかな差し色アクセントにもなります。

◆アウトドア気分をアクティブな
街中コーデに“移植”

 キャンプを筆頭に、アウトドアの人気が続く中、アクティブな装いも勢いが加速。真夏は水辺シーンが加わって、水に強いスポサンが本領を発揮するシーズンです。ビーチ感覚を街中に持ち込むコーデは、サマームードを薫らせます。写真1枚目のようなシンプルな装いにもスポサンは動きを加えます。爪先を保護するカバーもアクセントに。機能性を感じさせる、黒のゴツめウオッチがコーデを引き締めています。

 岩の上を歩くこともある山遊びでは、足をしっかりガードしてもらえるタイプのスポサンが頼りになります。2枚目の山歩きルックは、色をワントーンで整えて、スタイリッシュな着映え。街中コーデにも使いやすいカラーバランスです。丸みを帯びたスポサンのおかげで、装いにやわらかい表情が加わりました。ボリューム感もあるから、ショートパンツ姿でも愛嬌が備わって見えます。

 カジュアルな装い以外に、きれいめコーデにも組み込みやすい新顔スポサンは履きこなしのバリエーションがいっぱい。ソックスと合わせる選択肢もあり、コーデの幅はさらに広がります。軽快で涼しい履き心地が味わえるのに加えて、おしゃれのムードチェンジャーも任せられるから、夏はスポサンを足元おしゃれの味方につけてみませんか。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

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ジャニーズJr.の「トラビスジャパン」と「ジバンシイ」のコラボはなぜバズった? 編集部が勝手に妄想

 ビューティにまつわるニュースを編集部員が語り合う「WWDビューティポッドキャスト」は、「WWD JAPAN.com」や週刊紙「WWDビューティ」の中から編集部が気になるニュースやトピックスをピックアップし、解説と共にお届けします。

 第2回は、ジャニーズジュニアのグループ「トラビスジャパン」がビューティブランド「ジバンシイ」とユーチューブでコラボし、SNSを中心に話題を集めた件に注目。「WWD JAPAN.com」デジタルデスクの福崎明子と元ウェブメディアでエディターを務め、現在は「WWDビューティ」でソーシャルパトロールを担当する浅野ひかる「WWDビューティ」記者がコラボレーションの反響について話しました。昨今増えつつあるビューティブランドでの男性芸能人の起用についても考えます。

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コロナ禍の出版・メディア業界のニュースを振り返る

 雑誌・メディア特集では、今年のテーマを“ポストコロナのニューメディア”と定め、「コロナ後のメディアのあり方」を探った。日々状況が変わる中で、各企業はどのように対応し、未来に向けて何をすべきなのか。まずは出版・メディア業界がどのような状況に置かれているのかを把握すべく、各社がコロナ対策を講じ始めた2月末からのニュースを振り返る。

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小島健輔リポート 上場アパレル6社は過剰在庫をどう処分したか コロナの打撃を検証

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。アパレル企業の2020年3〜5月期決算が発表された。新型コロナウイルスによる臨時休業によって多くの企業が強烈な打撃を受けたわけだが、とりわけ注目されるのが在庫の扱いである。

 コロナ禍に直撃された3〜5月期の決算を上場アパレル各社が発表したが、売り上げの減少や営業損失、減損による株主資本の毀損はともかく、行き場を失った在庫はどう処理されたのだろうか。値引きして叩き売るか次期へ持ち越すか、資金繰りと損益を両にらみした上場各社の決断を探ってみた。精査したのはファーストリテイリング、しまむら、良品計画、アダストリア、オンワードホールディングス、TSIホールディングスの6社。変則決算の三陽商会は前年同期比較不能で外した。ユナイテッドアローズとワールドは4〜6月期決算なので発表が8月5日になる。

3〜5月期はファーストリテイリングさえ赤字に

 コロナ休業が直撃した3〜5月期、前年同期からの売り上げ減少はTSIホールディングスの49.4%減が最も大きく、40.9%減のアダストリアと39.4%減のファーストリテイリングが僅差で続いた。オンワードホールディングス(HD)は34.9%減、良品計画は29.9%減で、休業が最大80店舗(全1432店)にとどまったしまむらは19.9%減に踏みとどまり、6月は既存店が27.0%も伸びた。

 営業利益は全社赤字だったので減少率での比較はできないが、赤字額が最も大きかったのが64億4500万円のTSIホールディングスで、47億5800万円のアダストリア、43億5300万円のファーストリテイリングが続き、しまむらは12億8100万円と最も損失が軽微だった。前年同期からの落ち込みはファーストリテイリングの791億円がケタ違いに大きく、良品計画の135億5300万円、アダストリアの99億7900万円、TSIの83億5600万円、しまむらの68億7300万円、オンワードHDの50億5200万円と続く。

 休業期間中の人件費などを減損処理した企業もあり、四半期赤字はファーストリテイリングの119億6900万円にTSIの104億9400万円が大差なく続き、やはりしまむらが12億2100万円と最も軽微だった。前年同期からの落ち込みも営業利益同様、ファーストリテイリングが610億3200万円と突出して大きく、TSIの129億5300万円、良品計画の112億4400万円が続き、オンワードHDの40億5900万円はしまむらの50億1400万円より小さかった。前年同期が高収益だった企業の落ち込みが目立つのはやむを得まい。

 とはいえ、これを額面通りに受け取るのはアパレル経営の門外漢か素人で、長期休業で行き場を失った在庫の処理如何で決算損益は大きく動く。期中に値引き処分したり評価損を計上すれば赤字が大きくなるが、来期に持ち越してしまえば今期の赤字を抑制できるし、その赤字を丸々来期に先送りするわけでもない(今期末のセール販売より来期のプロパー販売の方が粗利益率が高い)。

 その分かれ目は商品の性格と資金繰りで、ベーシックな商品は来期に持ち越しても売れるが、トレンド性が強い商品は来期に持ち越しても売れる可能性が低く、鮮度が落ちれば価値も急激に落ちる。それはバッタ屋の買い取り相場を見ても明らかで、トレンド品は期中に放出しないと二束三文になりかねないが、ベーシック品の値落ちはそこまで激しくない。資金繰りに余裕があれば来期に持ち越せるが、余裕がなければたたき売ってでも換金するしかない。取り上げた6社の在庫処分率には大差があり、商品の性格と資金力の格差をストレートに反映している。

各社は過剰在庫をどう処理したか

 売上原価の前年同期からの減少額を発生した余剰在庫と見れば(正確には売り上げ減少額を原価換算する)、実際に増えた在庫との差額から買掛金の減少額を相殺すると、処分するか先送りすべき過剰在庫が推計できる。実際に値引き処分された在庫の推計は難しいが、前年同期からの売上原価率の上昇分が過剰在庫の値引きロスに見合うと見て、平均33%オフで処分されたと仮定して計算すれば、過剰在庫の何%が処理されたか大まかだが推計できる。

 ファーストリテイリングは買掛金を抑制せず増やしており、原価率も逆に0.4ポイント下がっているから(前年同期の仕入れ抑制とロスが大きかった)、コロナ休業による過剰在庫のほとんどは当四半期中には値引き処理せず、次四半期(6〜8月)以降に先送りしたと推計される。持ち越しても売れるベーシック商品が大半であることに加え、今四半期で120億円近い損失を出しもなお、1兆円以上の純資産が積み上がっており、在庫の換金を急ぐ必要もなかったのだ。

 ダメージが最も軽かったしまむらは計算上の過剰在庫から実際の在庫増価額と買掛金の減少額を差し引くと17億4400万円しか処理する余剰在庫がなく、原価率の1.7ポイント増加で100%処分が済んでいる。良品計画は計算上は381億円余も処分すべき過剰在庫が生じたが、原価率の3.5ポイントの上昇ではその11.6%しか処分できず、余剰在庫の9割近くを次四半期以降に先送りしたと推計される。ベーシックな商品がほとんどだから的確な判断だが、資金繰りはタイトだったはずで、業績不振の米国子会社を切り捨てている。

 オンワードHDも85億円の過剰在庫が生じたが、その18%ほどしか期中に処理しておらず、82%は次四半期以降に先送りしたと推計される。資金繰りは良品計画ほどタイトではないが余裕があるわけでなく、銀行団の融資枠を200億円積み増している。

 今四半期中に過剰在庫の多くを処理したのがアダストリアとTSIだ。アダストリアは50億円近い過剰在庫が生じたが、原価率を5.2ポイントも切り上げて49%を今四半期中に処理したと推計される。資金繰りには余裕があったが、トレンド性の強い商品(あるいは初夏物)は期中に処分し、ベーシックな商品(あるいは盛夏・晩夏物)は次四半期以降に先送りと割り切ったようだ。TSIは70億円近い過剰在庫が生じたが、トレンド性の強い商品が大半であるため、原価率を15.6ポイントも切り上げて86%を今四半期中に処理したと推計される。

資金繰りは必要運転資金に左右される

 各社の抱えた過剰在庫のうちいかほどを今四半期中に処分し、いかほどを次期以降に先送りしたか、その判断を左右したのが商品の性格に加えて各社の資金繰りだった。資金繰りにゆとりがあるか逼迫するかを見る指標はいくつもあるが、私は現実的な指標として「必要運転資金とそれが純資産に占める比率」を重視している。

 必要運転資金は「運転資金回転日数×年間売り上げ÷365」で算出され、運転資金回転日数は「(A)売上債権回転日数+(B)棚資産回転日数−(C)買掛債務回転日数」で決まる。要は売上金の回収と在庫の回転が速く、買掛金の支払いが遅いほど運転資金は少なくて済む。その改善策は7月14日の当リポートで詳説したから、ぜひとも読み返してもらいたい。

 今回取り上げた6社のうち、最も運転資金回転日数が長く資金負担が重いのが良品計画で、131.4日も要して1579億5000万円もの運転資金を必要としている。それが20年5月末純資産に占める比率は80.1%にも達しており、2000億円近い純資産があっても資金繰りにはそれほど余裕はない。オンワードHDも70.1日を要して476億5400万円の運転資金を必要とし、20年5月末純資産に占める比率は58.7%と高い。TSIも61.7日を要して287億3000万円の運転資金を必要とするが、20年5月末純資産に占める比率は35.3%とオンワードよりふた回り軽い。

 逆に運転資金回転日数が短く資金負担が極端に軽いのがアダストリアで、たったの9.3日しか要さず、年商2200億円超の企業にして56億6000万円しか運転資金を必要としていない。もっと上手なのが「ザラ(ZARA)」のインディテックス(INDITEX)で、20年1月期では運転資金回転日数がマイナス33.6日で、29億ユーロ(約3130億円)もの回転差資金を手にしている。コロナ禍の20年2〜4月期でもマイナス63.9日だったから、コロナ休業によるダメージを相当カバーしたと推察される。逆にH&Mは19年11月期で108.3日も要して690億3800万SEKもの運転資金を必要としており、コロナ禍のダメージはインディテックスの比ではなかった。

 ファーストリテイリングは棚資産回転が147.9日と長いため運転資金回転も92.7日と相応に長いが、棚資産回転が159.9日と大差ない良品計画の運転資金回転131.4日より38.7日も短いのは商社機能活用のメリットと推察される。5月末純資産に対する運転資金比率は57.6%と良品計画の80.1%より格段に軽いが、しまむらの15.0%、アダストリアの10.8%と比較すれば改善の余地は大きい。

 必要運転資金は決算数値からの計算値に過ぎず、売り上げの起伏が激しいと必要資金が計算値を超えてしまうし、コロナ危機のような急激な売り上げ減少に直面すれば大幅に不足してしまう。日頃から運転資金回転日数の圧縮に努め、毎月の売り上げを平準化するよう緻密で無理のないMD展開を図るべきだろう。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

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デジタル用に服を買う時代がやってくる コンテンツビジネスの未来とは?

 めまぐるしく進化するデジタルの世界において、コンテンツビジネスは今後どのように変化を遂げるのだろうか?当時35歳の若さでサンリオの米国法人最高執行責任者に就任した鳩山玲人・現鳩山総合研究所所長は、物販からライセンスビジネスへと戦略をシフトし、ハローキティをグローバル化させたことで業績をV字回復させた人物だ。現在はヒカキンやはじめしゃちょーをはじめとする人気ユーチューバーを抱えるウーム(UUUM)のアドバイザーを務め、LINEの社外取締役も兼務する一方で、Sozoベンチャーズのベンチャーパートナーとして、Zoomやツイッター社にも投資を行い、現在20社ほどの顧問を務める。長きにわたってキャラクタービジネス、コンテンツビジネスに携わってきた鳩山氏にこれからのコンテンツビジネスについて尋ねた。

WWD:コンテンツビジネスを長年見てきた鳩山氏が今注目しているメディアは?

鳩山玲人・鳩山総合研究所所長(以下、鳩山):何といっても「マスタークラス(MASTER CLASS)」が面白い(編集部注:アメリカで人気に火が付いた世界の一流講師陣に学べるオンライン講座。1年間受講無制限やコースごとの料金プランがある)。ファッション分野では、米「ヴォーグ(VOUGE)」のアナ・ウィンター(Anna Wintour)編集長のリーダーシップ論やマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)のファッションデザイン講座、ほかにもスケートボード界のレジェンド、トニー・ホーク(Tony Hawk)によるレクチャー、テニス選手のセリーナ・ウィリアムズ(Serena Williams)、スターバックス(STARBUCKS)の元CEOから、脚本家、映画監督、ドラァグクイーンのル・ポール・チャールズ(RuPaul Andre Charles)による自己表現についての考えまで85を超える講座があり、それぞれの分野の一流が出演している。

「ネットフリックス(NETFLIX)」の教育版と言われていて、教育コンテンツはスケールしないと思われていたけれど、ハリウッド級のシナリオライター、映像クリエイターが制作しているから見ていて本当に面白い。僕は最近では経済学者のマクロエコノミーを勉強し直している。

WWD:日本でもそのような教育コンテンツは拡大する可能性はあるか?

鳩山:「マスタークラス」の日本進出の手伝いをしたいと思ったこともあったが、ファッション業界の問題と一緒で、タレントやインフルエンサーが国をまたがなくなっている。たとえばキム・カーダシアン(Kim Kardashian West)やアナ・ウィンターが六本木を歩いていても誰も注目しない。カイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)、ジジ・ハディッド(Gigi Hadid)、ベラ・ハディッド(Bella Hadid)がイベントで来日しても誰も気づかない。気づくのは本当に一部の人たちだけ。今のコンテンツが日本では通用しない。逆もしかり。「マスタークラス」みたいなコンテンツは、グローバリゼーションによってとん挫してしまう。正確にいうとヨーロッパやアジアの一部では通用するけれど、ローカリゼーションにしてしまうと規模が小さすぎてビジネスが成立しない。日本のコンテンツはなかなか海外に行かないので、そうなると日本ではやらない方がいいという結論になる。

WWD:最近では「あつまれどうぶつの森」でファッションブランドが服のデザインを配布しているが、今後のデジタルにおけるキャラクタービジネスをどう見ているか?

鳩山:僕が思い描く世界は、デジタル用の服のブランドが新たに生まれる――デジタル用に服を買う時代が来るということ。それを売り買いする、その感覚がZ世代にはある。たとえば「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」で「あつ森」用にデジタルの服を買い、それがいらなくなったらヤフーオークションで売るようになるということ。そういう世界が10年後にはある。デジタルで着ていることの意義、意味、アイデンティティーが強くならないといけない。だからブランドのアイデンティティーが出ないものはむずかしい。

さらに僕が注目しているのは、米エピック ゲームズ(EPIC GAMES)社の「フォートナイト(FORTENITE)」のオンラインゲーム。ラッパーのトラヴィス・スコット(Travis Scott)が「フォートナイト」の世界でライブを行い、そこで新曲を世界初披露したり、トラヴィスになれる“スキン(操作キャラの姿を変更することができる)”を販売したりしている。彼にはおそらく数億、数十億円のロイヤリティーが入っているはず。20~30ドル(約2100~3200円)でトラヴィスになれて、実際には数万円する「ナイキ(NIKE)」のエアジョーダンのトラヴィスモデルをゲーム中では履ける。そっちのビジネスの方がインパクトは大きい。実際の服も買わせようとする考え方ではなく、デジタルはデジタル上で取引されるようになる。10年後を見据えてビジネスを考えるべき。

WWD:その話でいうと、現在はトラヴィスのようにグローバル規模で通用する日本のインフルエンサーはあまりいない。

鳩山:デジタルインフルエンサーは海外では盛り上がるが、もともとインフルエンサーの市場の厚みが異なるため、日本はおそらく盛り上がらないのでは。キム・カーダシアンが自分でプロデュースするコスメはあれだけ売れるが、日本はインフルエンサーの力では売れない。カラコンくらい。ファッションに関しては根源的なパワーが日本には足りない。ただ、デジタルジャニーズ的なものはアリだと思う。デジタルのファンも付くし、スキャンダルもない(笑)。

テクノロジー企業が消費者の行動をどう変えるのかにも注目すべき

WWD:デジタル化がますます加速し、消費者の意識も変化している。その変化にどう対応していくべきか?

鳩山:消費者の動きがどう変わるのかが重要なのと同じくらいに、テクノロジー企業が人の行動をどう変えるのかにも注目すべき。たとえばECのツールは年々すごく軽くなっていて、動画と連動しやすく、しかも低価格で実現できるようになっている。ECプラットフォーム「ショッピファイ(SHOPIFY)」は、インスタグラムからeコマースにつなげてすぐに買える機能と、APIを充実させて画像を見ながらクリックするとすぐに買えるような機能があり、「アマゾン(AMAZON)」にも接続されるようになっているのが特徴。コロナ前の「ショッピファイ」の株価は400~500ドル(約4万3000~5万3000円)だったのが、今は1000ドル(約10万7000円)を超えている。時価総額は1210億ドル(約12兆円)。1年前の株価は約100ドル(約1万円)だったため、1年強で10倍になっている。株や時価総額に興味がないかもしれないが、実際にはZOZOの時価総額より、裏側のテクノロジー企業の方がはるかに大きい。そのダイナミクスが好きなので、シリコンバレーに住んでいる。アパレルで一番注目しているのは「ショッピファイ」。これからまだまだ伸びる、絶対伸びます(笑)。

さらにはオンラインで自宅にいながらイントラクターによるクラスを受けることができるインターネット接続のエクササイズ・バイク「ペロトン(PELOTON)」もコロナで時価総額がぐんと上がり、5000億円から約2.5倍の1兆7000億円にまで上がっている。エクササイズ・バイクだけでなく、ランニングタイプのトレッドミルも発売しており、クラスはサイクリング、ランニングをはじめ、ヨガ、メディテーション、ストレッチなど、現在10種目のクラスがある。それぞれの種目の豊富なクラスから選べるのが大きな特徴。外でスポーツができない中、インストラクターがついて月約40ドル(約4200円)は安い。日本で1兆7000億円の時価総額の会社はそんなにない。テクノロジーを掛け合わせることで起こるダイナミクスが大きいかたちで時価総額に現れている。

WWD:日本でもそのようなダイナミクスは起こるか?

鳩山:Zホールディングス(旧ヤフー)とLINEが統合するにあたり、僕はLINEの社外取締役を務めており、LINE側の特別委員会の構成委員も務めている。大きなダイナミクスが日本でも起きている。それに貢献できるのを嬉しく思っている。統合が実現するとZOZOが孫会社になる。これまでは小さい規模での“部分最適”だったものの規模が大きくなっていく。それに期待している。

動画は料理と同じ。みんながプロのように作れるわけではない

WWD:鳩山氏はユーチューバーのヒカキンやはじめしゃちょーが所属しているUUUMの顧問でもある。彼らと後発の参入組で何か大きな差があるとしたら何か?

鳩山:特にUUUMでいえば、彼らは圧倒的に企画、撮影、編集能力が高い。テレビの場合、タレントを呼んだ企画なら脚本、スタッフ含め10人いても作れない。それが一人でできる、いわゆる一人総合監督。料理と同じで誰でも作れるようになるけれど、みんながプロのようなおいしい料理を作れるわけではない。動画でも同じこと。自分で作れる能力がある人が集まっているのがUUUM。そして圧倒的に若い世代が活躍している。個人がプラットフォームによって広告収入を得られるようになった。しかもテレビと異なり、流せる時間は無限大。ユーチューブには何億時間、何兆時間のコンテンツがある。その分、コンテンツ力がないと勝ち残れない。座っていれば見られますという時代ではなくなった。アイデア一発ではなく、継続してやらないとむずかしい。

WWD:ライブコマースは今度どう進化していくと思うか?

鳩山:ライブコマース自体はそもそもあまり新しいものとして認識していない。QVCなどのテレビショッピングでは、アパレルはもともと大きなカテゴリーだった。これまでは番組枠を買うコストが高いため、“商品を販売するには単価が高いものか、利益率が高いものか、数量が売れるものしか販売しない”というのがテレビショッピングの基本だった。これまではQVCのような企業規模じゃないとできなかったことが、コロナによってやる人も見る人も増えた。それでいうと今度も定着するし進んでいくが、もともと新しいものではないというのがベース。今回はテレビショッピングのメイン層だった主婦層以外の若い人を含めオーディエンスも広がるというのが新しい潮流。テクノロジーによりコストが下がって、数百万円、数千万円のテレビ枠を買わなくても気軽にできるようになった。単純にテクノロジーの発達で一気にできるようになったのが大きい。

店員が光っている、個が際立つブランドはライブコマースに向いている。セレクトショップ型なども向いている。ラグジュアリーブランドは、店頭で1人の顧客に1時間、2時間かける分、単価が高いからその分の利益も大きい。一方で1000円の商品を買う人に2時間も費やせない。そこが損益分岐点の分かれるところ。ライブコマースは同時に多くの人を接客できるので、1000円でも15分かけることができる。だからカジュアルな低価格商品の方が向いている。ラグジュアリーブランドではサービスが低下したよう感覚になるかもしれない。立ち位置によって売り方も違う。ライブコマースがうまくいっているのは、ビジネスモデルがワークする理由があるから。

WWD:中国ではインフルエンサーがライブコマースで商品を売ることが盛んだが、日本もそのようになるか?

鳩山:まず、中国のテクノロジーがどうなっているのか。EC化率、国土の大きさ、ウィーチャット(微信、WeChat)やアリババ、JD.comといったプレーヤーが相対的に活躍していることにより、分け合えるものがデジタルに移行することでロジスティクス費用が安くなり、コストが低く抑えられる。そうなれば、その分インフルエンサーに投資できる。店舗のコストがない分ライブコマースに投資できるのであって、店舗経営との両方は共存しない。コストが合わなくなる。中国が進化しているように見えるのは無店舗販売にすることでEC比率が高くなっているから。だからウェブマーケティングやインフルエンサーに費やせる。ライフスタイルの変化というより、理にかなった行動をしているだけ。

WWD:デジタルシフトで店舗を減らしてコスト削減した場合、その資源をどう活用していけばよいのか?

鳩山:商品開発をeコマース限定、もしくは店舗限定にするのか――実際にどちらの反応がいいのかは、ユーザー特性とか消費者特性に合わせてやっていかないといけない。百貨店が閉店しても、そもそも若い人が行かなくなっているから埋め合わせができている感じがしない。店舗を減らしライブコマースをしたからといって売り上げが伸びるわけでもない。若い世代のブランドを作らないとそもそもライブコマースに置き換わらない。中国は国土が広く、2年前のデータでも国民の一人あたりのジーンズ所有は1本にも満たない。日本は飽和状態だが、中国はまだまだいっぱい買いたいというフェーズ。単純に起こっている事象だけを比較すると間違える。

WWD:ユーチューブ、SNS、ポッドキャストといった、コンテンツをアウトプットするプラットフォームが多様化し細分化している。とくにブランドやメディアは何をどのように活用して戦略立てて発信していくべきなのか?

鳩山:ユーチューブは過去のアセットが積み上がる“積み上げ型メディア”。インスタ、ツイッターなどのSNSは、リアルタイムに今のエンゲージメントを高めて上手に回していくもの。ポッドキャストは、本を読む代わりとかニュースを見るのと同じような感覚で学び系を聴くようなイメージ。僕はベンチャーキャピタル界のポッドキャストを聴いていることが多い。セミナーに参加しているのと同じ感覚。僕は先ほど話した「マスタークラス」は車の移動中に聴いている。一方、ラジオは音楽やトークを聴いたりする目的が多い。

全部をランダムにやろうとするとコストがかかりすぎてしまう。ファン層、顧客層をよく理解してエンゲージメントを考え、個々に合ったプラットフォームを活用すること。それはブランドや産業によっても全く異なる。大きいプラットフォームだとエンゲージメントが低かったり。どういうタイミングで何回くらい見てもらいたいのか。ユーチューブチャンネルを作ったとすると、毎日2つアップするのかとか、その労力、コストは?根源的なニーズがあるのかなどを考えるべきだが、10代だけが買ってくれるわけではないから。若い世代に売ろうと思えば動画だけど、60代に売ろうと思ったら従来のメディアの方がよい。30代、40代は難しいところ。誰に対して売りたいかによってアプローチも変わってくる。

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【ミヤシタパーク見どころ6】“日本初”がたくさんのスポーツ&アウトドア 「アディダス」や「アンドワンダー」など

 三井不動産による東京・渋谷の複合施設「ミヤシタパーク」が、7月28日から段階的にオープンする。90店舗を集積する。「ルイ・ヴィトン」をはじめとしたラグジュアリーブランドやストリートブランドなどのほか、レコードやアートなどのカルチャー、全長100mに居酒屋やレストランが集まる「渋谷横丁」など、個性的な90店舗が入る。

日本最大級の「アディダス」はサステナビリティエリアを設置

 明治通り沿いの「アディダス(ADIDAS)」新店舗「アディダス ブランドセンター RAYARD MIYASHITA PARK」は、1階と2階の2層構造で店舗面積が944平方メートルだ。さらに8月下旬には2階に「アディダス オリジナルス(ADIDAS ORIGINALS)」コーナーも開き、日本最大となる1028平方メートルに増床する予定だ。

 1階にはメンズ商品に加え、東京をテーマにしたデザインのTシャツをそろえる“トーキョーショップ”、同社が推進するサステナビリティに関する商品が並ぶ“サステナビリティエリア”、サッカー日本代表のエンブレム型の什器を設置した“フットボール ID”を併設。新コーナーはすべて日本初の試みだ。

 2階にはウィメンズとキッズアイテムが並ぶ。キッズエリアは日本最大面積となり、休憩スペースも設けている。ほかにも大型のデジタルスクリーンや、アーティストと協業した店内装飾など、多彩なディスプレーで全カテゴリーの商品が一堂に集まる。

 同ブランドの大型直営店は渋谷・原宿エリアで4店舗目となるが、「立地的に集客は見込める」と同社担当は自信を見せる。

「アンドワンダー」最大規模の直営店 システマチックな機能美

 アウトドアウエア「アンドワンダー(AND WANDER)」は、最大規模の直営店を出店した。スキーマ建築計画の長坂常氏による内装の店内は、機能的でシステマチックなデザイン。6月にリニューアルオープンした1号店の元代々木の直営店とも異なる雰囲気になっている。

 同店にはファッションブランドで見られるような装飾的な什器やマネキンは置かない。天井に格子状に張り巡らされたフレームにハンガーポールやラックを吊り下げることで、自由にレイアウトできるようにした。天井のフレームに沿ったカーテンで仕切れば広い試着室の空間も作れる。輸送用のコンテナを思わせる台車は商品を陳列するだけでなく、在庫を収納させる箱としても機能するなど、同ブランドの機能美の考え方を店内の隅々まで反映させた。

「エレッセ」はスポーツファッションの新機軸に挑む

 ゴールドウインの「エレッセ(ELLESSE)」は、これまでパフォーマンスとファッションに分けていたカテゴリーを統一し、2020年から再始動。初の単独店となる「エレッセ トーキョー」では、“ア・ニュー・ウインド”をコンセプトに掲げ、ファッション性強化の姿勢を若い世代に向けて訴求する。ルーツであるテニスウエアやスキーウエアの機能性を街着として提案し、音楽やアートなどさまざまなカルチャーの切り口と共に発信する。オリジナルアイテムに加え、アパレルやシューズは他ブランド品も一部扱う。オープンに合わせ、アーティストのとんだ林蘭とコラボレーションしたカプセルコレクションを販売している。

アウトドアの“実直系”「マムート」は汎用性を若者にアピール

 スイス発のアウトドア「マムート(MAMMUT)」の新店は、コアであるクライミング用品の機能を都市生活向けにアレンジしたカテゴリー“アーバニアリング”の商品を中心にそろえる。汎用性の高いアパレルやバッグは、アウトドアアクティビティーに耐えうる本格的な機能を備えている。ブランドが貫いてきた実直な物作りの姿勢は強みである一方、「山屋に行かないと出合えないブランドというイメージも持たれている」と担当者。新店では「若い客層にとってブランドの入り口となり、街になじむ一面を訴求したい」と期待する。高機能かつタウンユースの象徴的アイテムとして、防水素材「ゴアテックス(GORE-TEX)」を表地に用いた軽量の“ゴアテックス シェイクドライ”のポンチョ(5万5000円)を限定数販売する。

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父の故郷への愛を込めた「ディオール」2021年プレ・スプリング 3万灯のイルミネーション輝く広場を舞台に

 「ディオール(DIOR)」は7月22日夜、南イタリア・プーリア州のレッチェで2021年プレ・スプリング(クルーズ)・コレクションの無観客ショーを開催した。会場は街のシンボルであるドゥオモ(大聖堂)の前にある広場。ルミナリエ(イルミネーション)のセットが広場を囲い、3万灯のLEDが輝く中で90ルックを披露した。12日間をかけて設営されたセットは、フェミニズムを題材とした作品で知られる現代アーティストのマリネッラ・セナトーレ(Marinella Senatore)がデザインしたもの。伝統的なスタイルの中に取り入れられた力強いメッセージは、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)=ウィメンズ・アーティスティック・ディレクターによるこれまでの「ディオール」のショー会場にも通じる。さらに、心と体のカタルシス(浄化)を象徴する民族舞踊のピチカをベースにしたダンスとオーケストラによる生演奏が儀式的なショーを盛り上げ、フィナーレ後には南イタリア出身の歌手ジュリアーノ・サンジョルジ(Giuliano Sangiorgi)がピアノの弾き語りを披露した。

 キウリは今季、南イタリアの伝統と職人技への敬意を表すことを目指し、同地に受け継がれる素朴な美学とフランスのクチュールメゾンらしい華やかさやファンタジーを掛け合わせた。ショーは、ラフィアの刺しゅうで小麦の穂のモチーフを描いたチュールドレスからスタート。ベルトやレザーのコルセットなどでハイウエストをマークしたドレスやスカートスタイルと、ジャケットにミニ丈のショートパンツを合わせたセットアップが豊富にそろう。アイコンのバージャケットは、マルチカラーストライプのジュート素材で再解釈。裾にフリンジが施された幾何学柄のエプロンドレスやロングスカート、白の素朴なレースで仕立てたドレスなど、昔から家庭で使われてきた生地を想起させるアイテムも目を引く。

 そして、ナチュラルカラーやモノトーンが中心のコレクションに彩りを添えるのは、アーティストのピエトロ・ルッフォ(Pietro Ruffo)による17世紀の植物図鑑にインスパイアされた花柄。グリーンやピンクなどサイケデリックな色使いが1970年代のイメージにつながる。アクセサリーはターラント国立考古学博物館に所蔵されているアンティークジュエリー・コレクション“オリ・ディ・ターラント(Ori di Taranto)”から着想を得たもので、モデルの頭を覆うスカーフがフォークロアムードを際立たせる。

 今回のコレクションとショーの背景についてキウリは、「父がプーリア州で生まれたので、私のルーツにとても近い場所で何かをすることは夢だった。そして、自分のバックグラウンドと、それがどのように私のファッション的な視点に影響を与えたかを示したかった」とコメント。祖母や親戚が玄関先で布地を織っているのを見て職人技への愛を感じたという思い出に触れ、「コレクション制作は私の記憶の中の旅をしているようなものであり、なぜそういうことに興味があるのかなど自分自身をより深く理解することができた」と話した。

 そんなコレクションを、彼女は「ディオール」で手掛けてきた中で最もパーソナルなものと表現。昨年11月に地元の職人とともに制作を始めた。当初5月9日に予定していたショーは新型コロナウイルスの影響により延期となったが、ロックダウン中も職人たちは自宅で作業を続け、キウリ自身もZoomを使って実現に向けて計画を進めてきたという。そのため、「このコレクションを完成させることができたのは、正直言って奇跡」と振り返り、「このプロジェクトに携わっていた全ての人に未来への希望を与えることは、私たちにとってとても重要だと感じていた」と明かした。

 ショー中にグループで踊るダンサーたちの間をモデルが通り抜けていくシーンは、ライブ配信の画面上では服が見づらいと感じる部分もあった。せっかくショーという形式を選んだのであれば、もう少し服に目が行く演出でもよかったのではないかとも思う。ただ、多くの人が制限された生活を送る今の状況下では単に服を見せるというのは十分ではなく、ブランドとしてグローバルなエンターテインメントを提供しなければいかなかったということだろう。ピエトロ・ベッカーリ(Pietro Beccari)=クリスチャン ディオール クチュール(CHRISTIAN DIOR COUTURE)会長兼最高経営責任者は、今回のショーにはモデルやフォトグラファー、ヘア&メイクアップアーティスト、イベントプロデューサーをはじめ、職人やアーティスト、ミュージシャン、パフォーマー、大工、電気技師など1000人以上が携わっているとし、「単なるファッションショーではなく、本物のスペクタクルだ」と語った。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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「ブルックス ブラザーズ」は仕事着の変化に対応できなかった 鈴木敏仁USリポート

アメリカ在住30年の鈴木敏仁氏が、現地のファッション&ビューティの最新ニュースを詳しく解説する連載。今回は経営破綻したブルックス ブラザースについて。誰もが知る名門ブランドはなぜ低迷したのか。

 米ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)が7月8日に連邦破産法11条の適用を申請して破綻した。創業は1818年、衣料専門店としては世界で最も長い歴史を持つ企業である。

 今時の若い人たちにとっては数あるブランドの中の一つに過ぎないだろうが、一定の年齢以上の人にとっては憧れのブランドだった。私が社会人として仕事を始めた頃は、ブルックスやラルフ ローレン(RALPH LAUREN)を着ている上司たちを見て「イカしている」と感じ、「あれを着るような大人の男になりたい」思い、せっせと買って着たものである。だからとりわけ私にとっては、この破綻は青春時代を思い出して切ないのである。

原因はデジタル化の遅れにあらず

 1988年にイギリスのマークス&スペンサー(MARKS & SPENCER)に買収されて英資本となり、2001年には富豪のクラウディオ・デル・ベッチオ(Claudio Del Vecchio)が買収し今に至る。ベッチオはイタリアの多国籍眼鏡メーカー、ルックスオティカ(LUXOTTICA)創業者の子息で、ブルックスのブランドのアイウエアをライセンス販売していることが接点となっている。

 この20年間、ブルックスが輝きを取り戻したことは一度もなかった。ベッチオの経営力欠落が破綻に至った根本的な原因ではないか。
既述のごとくブランドがすり込まれている私はモールに行くと必ずブルックスの店舗に足が向いてしまう、しかしこの20年ほど何かを買った記憶がない。店内はいつも閑散としていてどうやって事業が回っているかといつも不思議に感じた。おそらく富豪の資金力によって長い低迷状態を許容していたのだが、営業停止によって手元の流動性が急速に悪化して破綻を決断したのだろう。

 ちなみにデジタルやECへの対応の遅さが破綻の要因とする日本の記事を散見したが、私の知る限りブルックスは積極的な方だった。業界に先駆けての取り組みもかなりあった。主要な敗因はやはりマーチャンダイジング(MD)にあったと見るのが妥当だ。

ネクタイやスーツが不要になった

 私がアメリカの小売業界に仕事で関与し始めたのは20年以上前だ。当時から小売り、卸、メーカーの本社を訪問したときにネクタイをする機会はほとんどなかった。本社がネクタイ不要で、店頭でも不要。フォーマルな着こなしをする場面は非常に少ない。経営層が金融業界向けにプレゼンするようなときしか着ることはなかったのではないだろうか。ウォルマート(WALMART)は数年前に公的な場でネクタイ不要となり、ドレスコードをさらに緩めている。

 そのため私自身のネクタイが不要になった。締めるのは日本人と会うときだけとなってしまい、いつの間にかネクタイをするのを止めてしまい、そのためスーツを着る機会もなくなってしまった。ブルックで買うものがなくなったのはこれが大きい。

 このアメリカのカジュアル化を引っ張っているのがフリーランスである。2年前のNYマンハッタンでの試算では働いている人の38%がフリーランスで、そのためオフィスのデザインが急速に変化していると報じられている。ウィワーク(WE WORK)の成長もフリーランサーが増えていることが背景にある。
もう一つはかっちりしたフォーマルな着こなしを好んだベビーブーマーのリタイヤが始まり、ミレニアルズやジェネレーションZが職場に増えてきたことも大きい。彼らは小さいときからすでにカジュアル化が始まっていた世代である。

 また彼らは1つの服に複数の機能を求める世代だと言われている。仕事場でもプライベートでも着ることのできる服を求めていると。

 個人的な話をすると、ナイキ(NIKE)やアンダーアーマー(UNDER ARMOUR)のポロシャツやモックネックを仕事で着て、普段も着ているので、このトレンドは腑に落ちるのである。例えば高級スポーツウェアのルルレモン(LULULEMON)にはストレッチ素材を使ったカジュアルパンツのラインがある。高級素材を使っているのでチノパンの代替として仕事着として着ることが可能だ。ストレッチ素材なのでハードな運動もできる。128ドルと高いけれど衝動買いした。これを着てワークアウトすることはやはりないのだが、フィットネスなオーラを持つブランドを身にまとう方が、クラシカルなブランドを着るよりもいまや満足感が高いのである。

 これは女性のアスレジャーの流行に通じるマインドだと思う。ルルレモンはヨガウエアに高級素材を持ち込んで日常着として成功した。これが一大トレンドとなったわけだが、いまやヨガタイツは仕事着としても受け入れられている。

 この大きな嗜好の変化にブルックスは無縁でいたことに敗因があったのだろうと思っている。

再生に名乗りをあげる3企業

 ブルックスの今後はこれを執筆している時点ではいまだ流動的だ。店舗はどのぐらい閉店するのか、またはすべて閉じてネットに集中するのかといった具体的な再生戦略はまだ分からない。分かっていることは資本の売却で、複数企業による競争入札になるだろうとみられている。

 現時点ではブランド管理企業のWHPグローバル(WHP GROUP)、同じくブランド管理企業のオーセンティック・ブランズ・グループ社(AUTHENTIC BRANDS GROUP)とモール運営会社のサイモン・プロパティ・グループ(SIMON PROPERTY GROU)の2社による合弁企業、イタリアのネット通販関連企業、以上3企業が候補に挙がっている。2つめの合弁企業はフォーエバー21(FOREVER21)やノーティカ(NAUTICA)を買収しているのだが、なぜモール企業がリテーラーを買収するのかはまた別の機会に書こう。

 店舗はなくなるかもしれないが、ブランドが消滅することはないだろう、ということだけが少なくとも現時点で言えることである。

鈴木敏仁(すずき・としひと):東京都北区生まれ、早大法学部卒、西武百貨店を経て渡米、在米年数は30年以上。業界メディアへの執筆、流通企業やメーカーによる米国視察の企画、セミナー講演が主要業務。年間のべ店舗訪問数は600店舗超、製配販にわたる幅広い業界知識と現場の事実に基づいた分析による情報提供がモットー

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“なんとなく”を続けたその先に アートブックフェアでの偶然の出会いが生んだ「ミッドナイトトークマガジン」

 SF映画についてだらだらと語るというテーマで制作された「ミッドナイトトークマガジン(0:00 midnight talk magazine以下、0:00)」は200部のみの少部数発行の自費出版物、いわゆるジン(ZINE)だ。新潟在住の美術家・飯塚純さんと、東京在住の写真家・龍崎俊さんと鈴木理恵さん夫婦、そして新潟在住のデザイナー2人の計5人で制作されている。新潟と東京という離れた距離でジンを作り始めたのは、「東京アートブックフェア(TOKYO ART BOOK FAIR以下、TABF)」がきっかけだったという。飯塚さん、龍崎さん、鈴木さんに、創刊の経緯とジンという発行形態にこだわる理由を聞いた。

 アート出版に特化して2009年にスタートした日本で初めてのブックフェア「TABF」は昨年10周年を迎え、回を重ねるごとに盛り上がりを見せている。第1回目は、アイオブジャイル(EYE OF GYLE、現ジャイルギャラリー)とヴァカント(VACANT、2019年に閉業)の2会場で100組にも満たないアーティストや出版社、ギャラリーが集うイベントだったが、近年は約350組が出展し、来場者は2万人以上というビッグイベントとなっている。出版物の売買だけでなく、アートブックにまつわる展示やトークイベント、紙や印刷のプロによるプリンターセクション、フードトラックなどによる飲食コーナーなどもあり、まるでフェスのようだ。近年は台湾や上海などアジア圏のアートブックシーンが活気づいているが、「TABF」は現在アジアで最大規模のアートブックフェアであり、その文化をけん引する存在ともいえる。

 そんな「TABF」をきっかけにジンと呼ばれる自費出版物に興味を持ったり、ジンを作り始めたりと、新たなコミュニティーが生まれて出版物に発展するケースは多々あると思う。今回紹介する「0:00」も、「TABF」で出会った作家同士の交流で生まれたジンだ。

 新潟県在住の美術家・飯塚純さんは、16年の「TABF」に初めて出展した。出展の少し前に知ったという、金沢市でアーティスト・ラン・スペース「アイアック(IACK)」を主宰する写真家・河野幸人さんの写真に惹かれて、別の階に出展している河野さんのブースに行くと、そこにいたのが写真家の龍崎俊さんだった。河野さんと龍崎さんは13年に「ステイアローン(STAY ALONE)」というプロジェクトを立ち上げ、タブロイド誌を発行(現在休刊中)していた。「龍崎さんのお名前も活動自体も全く知らず、初めてお会いした龍崎さんのジンをその場で見ました。僕は美術大学の映像科出身なのですが、映画的な作品だなと感動して何冊か購入しました。そのうちの1冊が『ブレードランナー』から引用した作品だとすぐにわかったんです」と飯塚さんは当時を振り返る。すぐにフェイスブック経由でメッセージを送り、交流が始まった。

 その後愛知県名古屋市のギャラリーを併設した本屋「オンリーディング(ON READING)」で開催された龍崎さんの個展に飯塚さんが足を運び、翌日、龍崎さんとそのパートナーで写真家の鈴木理恵さんと一緒に朝食を食べながらいろいろな話をした。龍崎さんが「スター・ウォーズ」が好きで、武蔵野美術大学造形学部映像学科に入学したことを知ったのもその時だ。龍崎さんは、「ばかげた夢なんですけど、『スター・ウォーズ』が大好きで当時はまだ予定がなかった“エピソード7”を撮りたいがために映像学科を目指しました。ただ、実際に映画を撮るという勉強を始めると、監督は人を動かす仕事だし、作るという行為からはかけ離れている。会社に属して映画を撮るというのが今の大きな映画の主流で、個人で映画を撮るというのはあまり現実的ではないというのが実際だと思うんです。そうなると、たくさんの人を動かすというのは、自分が想像していた映画作りの方法と全然違うものだったということに気づいたんです」と話す。

 その頃に写真の授業を受け、朝撮影したネガが夜にはプリントになっているという状況を新鮮に感じたのだという。「写真は未来に見ることを目的として撮る行為で、タイムカプセル的な要素がある。人に宛てる手紙も、それが読まれるのは未来ですよね。それが自分が求めているSF映画の主題だなと感じて」。そこから龍崎さんは写真を撮り始め、もう20年近くになる。

 飯塚さんは龍崎さんの話を受け、「作っている作品は全然違うけれど、似たきっかけで僕も映像を志している部分があったのですごくシンパシーを感じたんです。理恵さんも話を聞きながらたまに突っ込んでくれて、3人で話すバランスもよかった。僕はジム・ジャームッシュ(Jim Jarmusch)が好きなのですが、『コーヒー&シガレッツ』のようなとりとめもない会話の中に垣間見られる美学というか、そんな映画を撮りたいと前から思っていたんです。内輪の話から開けるものがあるのではと感じていました」。そして、この3人での会話をなんらかの形にしようと模索を始めた。

ページをめくるにつれ、夜明けが近づくような紙の色が印象的なデザインの創刊号。当初は左開きにしようと考えていたが、映画の脚本を意識し右開きに変更した

 1年ほどかけてコンセプトと内容を考え、ジンとして発行することを決めた。同時に自分たちがやろうとしていることに共感してくれるデザイナーも探した。デザイン会社に所属していて、以前から顔なじみだった川田朋史さんと安達早百合さんに依頼したが、これが想像以上によい結果をもたらすことになった。1号目はページをめくっていくと背景の黒の濃度が薄くなり、まるで夜明けに近づく空の色を表しているようだ。「コスト的な面も考慮しながら動きをつけたかったのですが、モノクロながらカラーに見えるようなグラデーションの演出を2人が考えてくださいました。このほかにも全ページカラーのバージョンや、写真の編集を変更したものも作ってくれています」。また、本文の下についている注釈もデザイナーによるもの。これについては2号目の本文中で明かされている。「注釈については一言も依頼していなかったと思うのですが、安達さんが入れてくださっています。デザインというよりも編集の領域まで携わってくださって、安達さんのセンスに感謝しています」。デザイナーと制作者の絶妙なバランスで成立しているジンなのだ。

 当初は映画ではなく、単なる雑談の雑誌にしようとも考えた。テーマを映画にしたのは、「映画評論家や、詳しく語るユーチューバーの方もたくさんいて、批評的に見せるものはいっぱいあるけれど、あれ楽しかったよね、みたいな気軽な感想を言い合えるものはないと思ったんです」。タイトルの「0:00」は、時計の針が重なっている瞬間が面白いと感じて命名した。「僕が好きな映画はタイトルで状況が分かるものが多くて。深夜0時という、夜だけど朝にも近いという設定の方が入り口としてはいいのかなと。たぶん話も脱線するし、ずれたとしても“深夜のテンションで”と言える。そしてタイトルをアイコン的な記号にしたいとも思ったんです。僕と龍崎さん・理恵さんの1対2のような形が『0:00』で表せそうだとも思いました」。

 飯塚さんは記憶の3段階である記銘・保持・想起を主題に、ファウンドフォトやリ・フォトグラフという手法で作品作りを続ける美術家だ。本として初めて出版したのはハードカバーの作品集だった。一方で龍崎さんと鈴木さんは、ハードカバーではなくコピー機で印刷してとじるような、自身で気軽に制作できるジンという形態にこだわっている。飯塚さんとは対照的な作品作りを続けているからこそ、2人に憧れを抱いていた。

 龍崎さんが初めてジンを制作したのは08年で、鈴木さんは09年。以来2人は10年以上にわたり制作を続け、個展も精力的に行っている。鈴木さんがジンというものを知ったのは、龍崎さんと同じ武蔵野美術大学の映像学科に在籍していた頃、友人が見せてくれたスイスのレーベル「ニーブス(Nieves)」が発行したスパイク・ジョーンズ(Spike Jonze)のジンだった。「いつも学校で見ていたハードカバーの重厚なものではなく、面白い友人をただ撮っているだけの薄い冊子でした。気軽に出したいものを出すという感じがすごく軽やかに見えたんです」と鈴木さんは話す。龍崎さんがジンにこだわる一番の理由は、即時性だ。「作ろうと思ってからアウトプットまでのスピードの速さはジンならでは。作り始めた頃は、データ制作の作業を除くと1日や2日で仕上げていました」。2ケタの少部数発行も多いためエディション番号が付き、ジンはアートピースとも言えると龍崎さんは続ける。「同じアートブックでもハードカバーの本は権威の象徴だと思うんです。お金もかかりますし、すぐにできることではないですよね。一方でジンは、キンコーズなどを利用して誰でもできるスタイルです。僕が展示で扱う写真はもちろん手焼きのプリントも交ざっていますが、A0サイズのコピー用紙にコピーした作品もあります。美術館やギャラリー以外でもアートが根付くというコンセプトといいますか、そういうスタイルを重要視したいんです」。

 さらに、ジンを作り続ける楽しさとして「飯塚くんのように、僕のジンをバッグに忍ばせて持ち歩いてくれている人もいて、そこから生まれる縁がある。ハードカバーの写真集をわざわざ持ち歩くことはないと思うので、そういう縁はジンや雑誌だからこそだと感じます」。経済的にも作りやすく、「“なんとなく”だけど続けられる」と鈴木さんは話す。龍崎さんも、「“なんとなく”という言葉はネガティブに聞こえるかもしれませんが、継続した先にはその“なんとなく”がすごく重みを持って存在することになるんです。ジンと出合っていなかったら僕は写真をやめていたかもしれません」と言い切る。

 アートブックフェアというコミュニティーで、作品へのアプローチが真逆の作家たちが出会い、ジンというアウトプットにつながる。オンライン上で作品を見せたり、世界中どこにいてもやり取りができる便利な世の中ではあるが、偶然の出会いはかけがえのないものを生むのだと、3人の話を聞いてあらためて強く思った。顔を突き合わせて話すからこそ感じられる空気感もある。だからリアルのイベントは面白いのだ。そしてジンと雑誌は継続することで、読者はもちろん、作り手にとっても見える景色が変わっていく楽しさがある。これから新しく作り始める人も、今まで作ってきた人も、どうか作り続けてほしいと願う。その先には想像もしない未来が待っていると思うから。

※今回をもって本連載は終了させていただきます。長きにわたり今まで読んでくださったたくさんの皆さまに心より感謝申し上げます。また別の場所でお会いしましょう。ありがとうございました!

高山かおり(たかやま・かおり)/独断と偏見で選ぶ国内外のマニアックな雑誌に特化したオンラインストア、「マガジンイズントデッド(Magazine isn’t dead.)」主宰、ライター、編集者:北海道生まれ。北海道ドレスメーカー学院卒業後、セレクトショップのアクアガールで販売員として勤務。在職中にルミネストシルバー賞を受賞。4歳からの雑誌好きが高じてその後都内の書店へ転職し、6年間雑誌担当を務める。18年3月に退社し、現在に至る

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“なんとなく”を続けたその先に アートブックフェアでの偶然の出会いが生んだ「ミッドナイトトークマガジン」

 SF映画についてだらだらと語るというテーマで制作された「ミッドナイトトークマガジン(0:00 midnight talk magazine以下、0:00)」は200部のみの少部数発行の自費出版物、いわゆるジン(ZINE)だ。新潟在住の美術家・飯塚純さんと、東京在住の写真家・龍崎俊さんと鈴木理恵さん夫婦、そして新潟在住のデザイナー2人の計5人で制作されている。新潟と東京という離れた距離でジンを作り始めたのは、「東京アートブックフェア(TOKYO ART BOOK FAIR以下、TABF)」がきっかけだったという。飯塚さん、龍崎さん、鈴木さんに、創刊の経緯とジンという発行形態にこだわる理由を聞いた。

 アート出版に特化して2009年にスタートした日本で初めてのブックフェア「TABF」は昨年10周年を迎え、回を重ねるごとに盛り上がりを見せている。第1回目は、アイオブジャイル(EYE OF GYLE、現ジャイルギャラリー)とヴァカント(VACANT、2019年に閉業)の2会場で100組にも満たないアーティストや出版社、ギャラリーが集うイベントだったが、近年は約350組が出展し、来場者は2万人以上というビッグイベントとなっている。出版物の売買だけでなく、アートブックにまつわる展示やトークイベント、紙や印刷のプロによるプリンターセクション、フードトラックなどによる飲食コーナーなどもあり、まるでフェスのようだ。近年は台湾や上海などアジア圏のアートブックシーンが活気づいているが、「TABF」は現在アジアで最大規模のアートブックフェアであり、その文化をけん引する存在ともいえる。

 そんな「TABF」をきっかけにジンと呼ばれる自費出版物に興味を持ったり、ジンを作り始めたりと、新たなコミュニティーが生まれて出版物に発展するケースは多々あると思う。今回紹介する「0:00」も、「TABF」で出会った作家同士の交流で生まれたジンだ。

 新潟県在住の美術家・飯塚純さんは、16年の「TABF」に初めて出展した。出展の少し前に知ったという、金沢市でアーティスト・ラン・スペース「アイアック(IACK)」を主宰する写真家・河野幸人さんの写真に惹かれて、別の階に出展している河野さんのブースに行くと、そこにいたのが写真家の龍崎俊さんだった。河野さんと龍崎さんは13年に「ステイアローン(STAY ALONE)」というプロジェクトを立ち上げ、タブロイド誌を発行(現在休刊中)していた。「龍崎さんのお名前も活動自体も全く知らず、初めてお会いした龍崎さんのジンをその場で見ました。僕は美術大学の映像科出身なのですが、映画的な作品だなと感動して何冊か購入しました。そのうちの1冊が『ブレードランナー』から引用した作品だとすぐにわかったんです」と飯塚さんは当時を振り返る。すぐにフェイスブック経由でメッセージを送り、交流が始まった。

 その後愛知県名古屋市のギャラリーを併設した本屋「オンリーディング(ON READING)」で開催された龍崎さんの個展に飯塚さんが足を運び、翌日、龍崎さんとそのパートナーで写真家の鈴木理恵さんと一緒に朝食を食べながらいろいろな話をした。龍崎さんが「スター・ウォーズ」が好きで、武蔵野美術大学造形学部映像学科に入学したことを知ったのもその時だ。龍崎さんは、「ばかげた夢なんですけど、『スター・ウォーズ』が大好きで当時はまだ予定がなかった“エピソード7”を撮りたいがために映像学科を目指しました。ただ、実際に映画を撮るという勉強を始めると、監督は人を動かす仕事だし、作るという行為からはかけ離れている。会社に属して映画を撮るというのが今の大きな映画の主流で、個人で映画を撮るというのはあまり現実的ではないというのが実際だと思うんです。そうなると、たくさんの人を動かすというのは、自分が想像していた映画作りの方法と全然違うものだったということに気づいたんです」と話す。

 その頃に写真の授業を受け、朝撮影したネガが夜にはプリントになっているという状況を新鮮に感じたのだという。「写真は未来に見ることを目的として撮る行為で、タイムカプセル的な要素がある。人に宛てる手紙も、それが読まれるのは未来ですよね。それが自分が求めているSF映画の主題だなと感じて」。そこから龍崎さんは写真を撮り始め、もう20年近くになる。

 飯塚さんは龍崎さんの話を受け、「作っている作品は全然違うけれど、似たきっかけで僕も映像を志している部分があったのですごくシンパシーを感じたんです。理恵さんも話を聞きながらたまに突っ込んでくれて、3人で話すバランスもよかった。僕はジム・ジャームッシュ(Jim Jarmusch)が好きなのですが、『コーヒー&シガレッツ』のようなとりとめもない会話の中に垣間見られる美学というか、そんな映画を撮りたいと前から思っていたんです。内輪の話から開けるものがあるのではと感じていました」。そして、この3人での会話をなんらかの形にしようと模索を始めた。

ページをめくるにつれ、夜明けが近づくような紙の色が印象的なデザインの創刊号。当初は左開きにしようと考えていたが、映画の脚本を意識し右開きに変更した

 1年ほどかけてコンセプトと内容を考え、ジンとして発行することを決めた。同時に自分たちがやろうとしていることに共感してくれるデザイナーも探した。デザイン会社に所属していて、以前から顔なじみだった川田朋史さんと安達早百合さんに依頼したが、これが想像以上によい結果をもたらすことになった。1号目はページをめくっていくと背景の黒の濃度が薄くなり、まるで夜明けに近づく空の色を表しているようだ。「コスト的な面も考慮しながら動きをつけたかったのですが、モノクロながらカラーに見えるようなグラデーションの演出を2人が考えてくださいました。このほかにも全ページカラーのバージョンや、写真の編集を変更したものも作ってくれています」。また、本文の下についている注釈もデザイナーによるもの。これについては2号目の本文中で明かされている。「注釈については一言も依頼していなかったと思うのですが、安達さんが入れてくださっています。デザインというよりも編集の領域まで携わってくださって、安達さんのセンスに感謝しています」。デザイナーと制作者の絶妙なバランスで成立しているジンなのだ。

 当初は映画ではなく、単なる雑談の雑誌にしようとも考えた。テーマを映画にしたのは、「映画評論家や、詳しく語るユーチューバーの方もたくさんいて、批評的に見せるものはいっぱいあるけれど、あれ楽しかったよね、みたいな気軽な感想を言い合えるものはないと思ったんです」。タイトルの「0:00」は、時計の針が重なっている瞬間が面白いと感じて命名した。「僕が好きな映画はタイトルで状況が分かるものが多くて。深夜0時という、夜だけど朝にも近いという設定の方が入り口としてはいいのかなと。たぶん話も脱線するし、ずれたとしても“深夜のテンションで”と言える。そしてタイトルをアイコン的な記号にしたいとも思ったんです。僕と龍崎さん・理恵さんの1対2のような形が『0:00』で表せそうだとも思いました」。

 飯塚さんは記憶の3段階である記銘・保持・想起を主題に、ファウンドフォトやリ・フォトグラフという手法で作品作りを続ける美術家だ。本として初めて出版したのはハードカバーの作品集だった。一方で龍崎さんと鈴木さんは、ハードカバーではなくコピー機で印刷してとじるような、自身で気軽に制作できるジンという形態にこだわっている。飯塚さんとは対照的な作品作りを続けているからこそ、2人に憧れを抱いていた。

 龍崎さんが初めてジンを制作したのは08年で、鈴木さんは09年。以来2人は10年以上にわたり制作を続け、個展も精力的に行っている。鈴木さんがジンというものを知ったのは、龍崎さんと同じ武蔵野美術大学の映像学科に在籍していた頃、友人が見せてくれたスイスのレーベル「ニーブス(Nieves)」が発行したスパイク・ジョーンズ(Spike Jonze)のジンだった。「いつも学校で見ていたハードカバーの重厚なものではなく、面白い友人をただ撮っているだけの薄い冊子でした。気軽に出したいものを出すという感じがすごく軽やかに見えたんです」と鈴木さんは話す。龍崎さんがジンにこだわる一番の理由は、即時性だ。「作ろうと思ってからアウトプットまでのスピードの速さはジンならでは。作り始めた頃は、データ制作の作業を除くと1日や2日で仕上げていました」。2ケタの少部数発行も多いためエディション番号が付き、ジンはアートピースとも言えると龍崎さんは続ける。「同じアートブックでもハードカバーの本は権威の象徴だと思うんです。お金もかかりますし、すぐにできることではないですよね。一方でジンは、キンコーズなどを利用して誰でもできるスタイルです。僕が展示で扱う写真はもちろん手焼きのプリントも交ざっていますが、A0サイズのコピー用紙にコピーした作品もあります。美術館やギャラリー以外でもアートが根付くというコンセプトといいますか、そういうスタイルを重要視したいんです」。

 さらに、ジンを作り続ける楽しさとして「飯塚くんのように、僕のジンをバッグに忍ばせて持ち歩いてくれている人もいて、そこから生まれる縁がある。ハードカバーの写真集をわざわざ持ち歩くことはないと思うので、そういう縁はジンや雑誌だからこそだと感じます」。経済的にも作りやすく、「“なんとなく”だけど続けられる」と鈴木さんは話す。龍崎さんも、「“なんとなく”という言葉はネガティブに聞こえるかもしれませんが、継続した先にはその“なんとなく”がすごく重みを持って存在することになるんです。ジンと出合っていなかったら僕は写真をやめていたかもしれません」と言い切る。

 アートブックフェアというコミュニティーで、作品へのアプローチが真逆の作家たちが出会い、ジンというアウトプットにつながる。オンライン上で作品を見せたり、世界中どこにいてもやり取りができる便利な世の中ではあるが、偶然の出会いはかけがえのないものを生むのだと、3人の話を聞いてあらためて強く思った。顔を突き合わせて話すからこそ感じられる空気感もある。だからリアルのイベントは面白いのだ。そしてジンと雑誌は継続することで、読者はもちろん、作り手にとっても見える景色が変わっていく楽しさがある。これから新しく作り始める人も、今まで作ってきた人も、どうか作り続けてほしいと願う。その先には想像もしない未来が待っていると思うから。

※今回をもって本連載は終了させていただきます。長きにわたり今まで読んでくださったたくさんの皆さまに心より感謝申し上げます。また別の場所でお会いしましょう。ありがとうございました!

高山かおり(たかやま・かおり)/独断と偏見で選ぶ国内外のマニアックな雑誌に特化したオンラインストア、「マガジンイズントデッド(Magazine isn’t dead.)」主宰、ライター、編集者:北海道生まれ。北海道ドレスメーカー学院卒業後、セレクトショップのアクアガールで販売員として勤務。在職中にルミネストシルバー賞を受賞。4歳からの雑誌好きが高じてその後都内の書店へ転職し、6年間雑誌担当を務める。18年3月に退社し、現在に至る

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展示会で洋服を(あんまり)見ていない私 エディターズレターバックナンバー

※この記事は2020年6月22日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

展示会で洋服を(あんまり)見ていない私

 少しずつ再開している展示会で再認識したのですが、僕、展示会であんまり洋服を見ていません。先日お邪魔した展示会では、1時間喋りっぱなし、聞きっぱなし。慌てて「あ、チョットだけ見ます!!」ってカンジで、ラックの間を駆け抜け、失礼させていただきました。

 きゃ~、怒らないで(笑)!!でも、そんな展示会になっちゃうブランドほど、その姿を理解しているし、だからスキな気がします。その洋服を着ているスタッフの皆さんとの会話から、人となりを知り、そのブランドの洋服を着るとどんな気分になるかを悟り、何を考え、どこに向かっているかを学ぶ。そんなコミュニケーションをしている時、隣に並んでいる洋服は究極「おしゃべりを通して悟ったものが、形になっただけ」です。いや、「形になっている」のはスゴいことですが、こんな風に思ってしまった時、改めて「洋服至上主義」に陥ってはいけないのだと痛感しました。

 「ファッションを生業にしながら、洋服のことだけを考えちゃいけない」。難しいことですが、真実かと思います。僕、洋服オタクとはあんまり会話が続かず(苦笑)、ことファッションショーでは洋服のディテールを書き連ねるだけ記事のPVは低調です。むしろ「あぁ、なんの感情も湧かなくって、洋服だけを語る記事を書いてしまった……」と反省さえするほどです。なんか、ここにヒントがありそうな気がするんですよね~。例えば皆さん1日だけ、いやきっと無理だから1時間だけ、「洋服本体にまつわる話以外は禁止!!」なコミュニケーションに挑戦してみるのはいかがでしょう?きっと、それは恐ろしく苦痛な1時間です。洋服オタクじゃない限り。そして、そんな経験をすると「ファッション業界とはいえ、洋服を作るだけじゃダメだ~」と気づくのでは?と思うのです。

 なぜこんな話を?と言いますと、このメルマガで度々お話しています「ファッションの拡張性」について、僕は「ここに気づかなければ、未来はない!」と思っていますが、やっぱり気付くことは結構難しそうなのです。「展示会」というフォーマットは、みんなが「洋服のことを伝え、学ぶ場だから」と思っているせいか、洋服のディテールばかりを話し、聞いてしまいがち。袖を通すことで得られる感情や、長きにわたり着ることで育まれる人格や個性みたいなものは置き去りです。で、そんな展示会で洋服のディテールだけを学んだ編集者やライターは、ゆえに携わるメディアで洋服のことしか書けずに終了。「あぁ、個々人が体験に基づく情報を発信しているインスタグラムが面白くって、オールドメディアがつまらなくなるワケだ」など、思考はどんどん発展します。

 業界の皆さん、どうでしょうか?久しぶりの洋服の展示会、ビューティの発表会は思い切って、商品・製品の詳細を語らない場や時間を設けてみては?リアルなコミュニケーションが渇望しがちな今、袖を通すことで、肌に塗ることで得られる感情についての言及やプレゼンがあったら、それは、来場者の琴線に今まで以上に響きそうです。

FROM OUR INDUSTRY:ファッションとビューティ、関連する業界の注目トピックスをお届けする総合・包括的ニュースレターを週3回配信するメールマガジン。「WWD JAPAN.com」が配信する1日平均30本程度の記事から、特にプロが読むべき、最新ニュースや示唆に富むコラムなどをご紹介します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在9種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

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【ミヤシタパーク見どころ4】高級ダウンウエアの初旗艦店&白Tシャツだけの期間限定店

 三井不動産による東京・渋谷の複合施設「ミヤシタパーク」が、7月28日から段階的にオープンする。90店舗を集積する。「ルイ・ヴィトン」をはじめとしたラグジュアリーブランドやストリートブランドなどのほか、レコードやアートなどのカルチャー、全長100mに居酒屋やレストランが集まる「渋谷横丁」など、個性的な90店舗が入る。

カナダ発ダウン
「ムースナックルズ」が
日本初の旗艦店

 カナダ発の高級ダウンブランド「ムースナックルズ(MOOSE KNUCKLES)」が初の旗艦店を開く。伊藤忠商事が日本市場における独占輸入販売権を持ち、インポーターのグルッポタナカを通じて販売している。主力のダウンウエアはカナダ・マニトバ州の自社工場で生産。カナダの厳しい自然に対応した機能性を持ちながら、ロゴマークのヘラジカの足跡とメリケンサックに象徴される遊び心あるデザインが魅力になっている。定番のダウンジャケットで14万9000円。

 旗艦店ではダウンウエアを中心にそろえながら、「TOKYO」のロゴが入った日本限定のスエットアイテムのコレクションも展開する。

白Tシャツだけの専門店が
期間限定で出店

 知る人ぞ知る白無地のTシャツのみを販売する白Tシャツ専門店「#FFFFFFT(シロティ)」が、9月30日までの期間限定店「#FFFFFFT.zip(シロティジップ)」を出店している。「シロティ」は2016年4月から、東京・千駄ヶ谷に土曜日だけ営業、扱うのは白Tシャツのみ、オンライン販売もしない、というユニークなやり方を貫いてきた。

 「レイヤード ミヤシタパーク」の「シロティ ジップ」では、厳選した3000〜1万7000円の30種類のアイテムを販売している。「千駄ヶ谷の『シロティ』は今年で5年目に入るが、実は1日に多いときで200万円、平均でも夏は100万円の売り上げを稼いでいる。研ぎ澄ましたコンセプトがあれば、小さくても”ディスティネーションストア”になれる、そのことを証明できた」と、運営者で”白Tハンター”の夏目拓也さん。夏目さんは、今年4月にこれまで努めていた広告代理店大手の博報堂から独立しており、「出店で白Tシャツ専門店の新しい可能性に挑戦したい」として、今後は「シロティー」の運営やマーケティングのコンサルティングも手がけていく予定だ。

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ベタつく季節のお手入れに、汗・汚れを優しく洗い流すボディーウオッシュ6選

 梅雨が明けると、予想最高気温が35℃を超える猛暑日が続くそうで、少しの移動でも汗のベタつきは気になるところだ。そこで、汗や皮脂を優しく洗い流したい人にオススメのボディーソープを紹介する。植物オイルを主体としたカスチールソープ、天然鉱物配合でニオイケアにもオススメのソープ、水だけで汚れを落とすサステナブルなボディーウオッシュパッドなどタイプが異なる製品を厳選した。

低刺激で洗い上げたい人に――精油の香りも柔らか 「ザ パブリック オーガニック」

 国産オーガニックコスメブランド「ザ パブリック オーガニック(THE PUBLIC ORGANIC)」のボディーソープ。同ブランドは、“精油シャンプースーパーポジティブ”シリーズが人気だが、ボディーソープも知る人ぞ知る良品だ。天然オレンジ精油と天然ユーカリ精油がほのかに香る「スーパーリフレッシュ」(480mL、980円)をオススメする。

 成分表をチェックすると「カリ石ケン素地」とあり、洗浄成分は石けんベースであることが読み取れる。また、洗浄成分のコカミドプロピルベタインはベビーソープにも配合される成分で、比較的低刺激であることがうかがえる。大容量なのに価格は手ごろなのもポイントだ。ジェンダーレスな香りなので、家族や恋人とシェアしてもいい。

ボディーだけでなく、洗顔、クレンジングと万能 「ザ・パーフェクトアンカー」

 植物オイルを主体としたカスチールソープの「ザ・パーフェクトアンカー(THE PERFECT ANCHOR)」(236mL、1000円/944mL、3600円)。処方されているヤシ油、オリーブ果実油、ヒマワリ種子油、シア脂油は、有機栽培された原料から抽出した100%オーガニックオイルを使用している。また、生物分解される処方のため、地球にもやさしい。

 ボディーウオッシュとしてだけでなく、クレンジング、洗顔、ハンドソープなど1本でマルチに使えるのも魅力。ラベンダー、ローズマリー、ペパーミントなど香りのバリエーションも豊富だ。

ニオイやニキビが気になるボディーと顔の洗浄に 「ジオソープ」

 
 多孔質の天然鉱物ゼオライトを配合した、「ジオソープ(GEOSOAP)」の固形石けん「フェイス&ボディ」(105g、880円)。ゼオライトとは、火山灰が固まってできた天然鉱物のこと。目に見えない無数の穴を持っていて、吸着力、脱臭力に優れている。このため、ニオイが気になるワキや足などの洗浄に適している。さらに、ニキビの原因となる汚れや古い角質を落とす働きが期待できるので、毛穴ケアにもピッタリだ。

 流し終えた後の廃水も、環境負荷がかからないように設計されているサステナブルなソープ。コスメキッチンでボディー石けん売り上げ1位(期間:1月1日~6月30日)を記録しているというのもうなずける。

特殊ファイバーが、角質、毛穴汚れをオフ 「フェイスハロー」

 6月25日に新発売されたのが、オーストラリア生まれのブランド「フェイスハロー(FACE HALO)」の「ボディウォッシュパッド」(1枚3960円)。水だけで汗や皮脂をオフできる新発想のアイテムだ。スクラブ(白面)とクレンジング(黒面)からなるパッドで、使い方もシンプル。まず、お湯で白面を濡らし、ボディーのざらつきが気になる部分をマッサージしながら洗う。仕上げに、黒面で肌をなでるように洗って水で流すだけ。ボディーソープそのものを使わず、水だけで洗い上げられるというのが斬新だ。パッドは約200回繰り返し使えるので経済的でもある。

オーガニックセサミオイルを11%配合し、高い保湿力 「ヴェレダ」

 「ヴェレダ(WELEDA)」の100%天然由来成分ボディーウオッシュ「フィールグッドシャワー」(200mL、1800円)。オーガニックゴマ油を約11%も配合したモイストリッチ処方で、みずみずしい洗い上がりだ。植物由来の洗浄ベースのため生分解性があり環境にも優しい。スパイシーなジンジャーと爽快感のあるシトラスがほのかに感じられる、夏らしい香りに心癒やされる。

心もほぐれる、シトラス調の爽やかな香り 「アルジタル」

 シチリア生まれのオーガニックコスメブランド「アルジタル(ARGITAL)」。7月21日に発売されたのが、「シャワージェル リラクシング」(250mL、2900円)だ。同ブランドの代名詞的存在とも言えるグリーンクレイが配合されているため、皮脂汚れを吸着しスッキリと洗い流せる。
 特筆すべきはその香りだ。天然・合成を問わず強い香りが苦手で、ついつい無香料タイプを選びがちな人にも、強い香りでありながらもキャップを開けて何度でも嗅ぎたくなるような香りが楽しめる。別名レモンバームとも呼ばれるメリッサは、その名の通りシトラス調の芳香が特徴。イランイラン花油も配合されているため、メリッサの爽やかな柑橘系の香りにイランイランの甘やかな香りが絶妙に調和している。
 
 また、各製品のおおよその使用回数を独自に算出してみた。一度に使用する量を約6mLと仮定すると、「ザ パブリック オーガニック スーパーリフレッシュ」は約80日、「ザ・パーフェクトアンカー」は約39日、「フェイスハロー ボディウォッシュパッド」は約200回、「ヴェレダ フィールグッドシャワー」は約33日前後、「アルジタル シャワージェル リラクシング」は約42日使える計算になる。ボディーソープを充実させて、うだるような暑さも健やかに乗り切りたい。

小竹美沙:1984年生まれ。女性誌やウェブマガジンで、ナチュラル&オーガニック&サステナブルなコト、モノ、人びとについて取材&発信中。2009年から恵比寿のファッションスクールのオフィシャルライターとして広報資料のライティングにも携わる

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【ミヤシタパーク見どころ3】クリエーターや地場産業とコラボした実験的ショップ お土産ニーズにも応える

 三井不動産による東京・渋谷の複合施設「ミヤシタパーク」が、7月28日から段階的にオープンする。90店舗を集積する。「ルイ・ヴィトン」をはじめとしたラグジュアリーブランドやストリートブランドなどのほか、レコードやアートなどのカルチャー、全長100mに居酒屋やレストランが集まる「渋谷横丁」など、個性的な90店舗が入る。

ワンオーの「イコーランド シブヤ」でトラストファッションを体感

 PRやイベント制作などを手掛けるワンオーは、3階にショップとプレスルームなどを複合した店舗「イコーランド シブヤ(EQUALAND SHIBUYA)」をオープンした。約264平方メートルという広い空間は、手前がショップやギャラリーのスペース、奥がプレスルームという作り。ショップは2~3カ月ごとにテーマを変えていく予定で、立ち上げ時のテーマは生産過程や素材などが信頼できるもの、といった意味の“トラスト”。福井県のプリーツ工場が手掛けているという、生分解性素材のプリーツ地のエコバッグ(3600円)や、パーソナライズ石けんブランド「キュウ(9.KYUU)」の手作り石けんキット(4000~5000円前後中心)などがそろう。「ケイタ マルヤマ(KEITA MARUYAMA)」を手掛ける丸山敬太が、自身のアーカイブをヤフオクやメルカリなどで集め、クリーニングやほつれなどのケアをしたり、雑貨に作り変えたりして再び送り出すプロジェクト“リ・マリアージュ”のコーナーも話題を集めそう。東京・落合で作られているクラフトコーラ「伊良コーラ」の自動販売機もあるので、ショップ巡りで乾いたのどを潤すのにもピッタリ!

 同店は、ワンオーが昨年立ち上げたショップと同名のEC専業ブランド「イコーランド」を実際に手に取れる初の場所でもあり、夏は植物染めのTシャツなどを充実している。

 ショップオープンと同時にウェブサイトも立ち上げ、ウェブ上でさまざまなワークショップも行っていく予定。

クリエーターと協業した新しい渋谷土産「ザ シブヤ スーベニア ストア」

 観光事業などを手掛ける野田グループ(東京、野田和彦社長)は、渋谷カルチャーをテーマにした新感覚の土産物店「ザ シブヤ スーベニア ストア(THE SHIBUYA SOUVENIR STORE)」を出店した。渋谷カルチャーを生み出してきたクリエーターたちと協業した菓子や雑貨をバラエティ豊かにそろえる。

 ミュージシャンの高木完と石倉酒造によるスパークリング日本酒「シブヤスパーク」、食通としても知られる小宮山雄飛と千鳥屋総本舗による菓子「シブヤレモンロール」、DJの沖野修也による焼酎、イラストレーター長嶋五郎と松月堂布川のどら焼き「ドラスト」、フォトグラファー米原康正によるカルチャーTシャツなどを並べる。「東京ばな奈」「江戸うさぎ」など人気のお土産も充実している。

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生理用品や性教育に悩んでいます エディターズレターバックナンバー

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生理用品や性教育に悩んでいます

 今日は生理や性教育について話します。不快に思われる方もいらっしゃるかもしれません。今回、なぜこういった話をしようと思ったかというと、今、経血吸収ショーツが続々と誕生している、というニュースが上がってきたからです。女性にとって生理は基本的には長い“お付き合い”で、毎月の1週間は多かれ少なかれ、気持ちも左右されてしまいます。その不快感は身体的なことはもちろんですが、ナプキンやタンポンなどの使用感でも思うことがあります。最近は技術の進歩により、昔に比べると吸収力も高く、付け心地も良いのですが、それでもその後処理などに気持ちが滅入ることはよくあるんですよねえ。

 今、たくさん出てきている経血吸収ショーツは、その名の通り、ショーツそのものが経血を吸収してくれるので、基本的にはナプキンやタンポンが不要です。それってかなりのストレスフリーなんじゃないかな!そう思って試してみると、量が少なくなった時に使用するとかなり快適です。海外ブランドが中心でしたが、今は日本の女性起業家さんたちが日本製のブランドを立ち上げていて、日本人の体型も考えたショーツが出てきているので、一度試してもらえるといいなと思います。

 なぜ試した方がいいかというと、子どもへの教育にも必要と感じているからなんです。今、経血吸収ショーツにはじまり月経カップなど、これまでにない新しい生理用品が誕生しています。テックの力で女性のライフスタイルを快適にしたいという、フェムテック市場が盛り上がってきています。「WWDジャパン」「WWDビューティ」合同のフェムテック特集にも大きな反響が寄せられました。今後、きっともっと生理にまつわる新商品が出てくるのではないかとも思います。

 ここで子どもに使い方をどう教えるかで、悩むんですよね。これまでナプキンとタンポンが長年の主流であったことから、私は母からその2つについては使い方を教わりましたが、ほかは誰からも教わっていません。せっかく良いモノがあっても自分が使ってないと、うまく教えられないんじゃないかな。今の子どもは、私の時代よりも早熟で、頭より体の方の発達が早いと感じているので、自分で学ぶよりも教えることが重要かもと思います。

 学校で教えてくれる性教育は、子どもがどう産まれてくるかが中心なのかなあと思っています。生命の誕生の授業が保護者見学可で行われていた時、赤ちゃんが産まれてくるところなんかは真正面から映像を見せていて、結構衝撃でした。後日、娘からは「痛かった?」と聞かれたので、「そりゃもう、痛いなんていうもんじゃないよ」と答えると、眉間にシワを寄せていました(笑)。学校教育は、生命の誕生なので生理が来ることや性交渉までは簡単に教えてくれますが、じゃあ生理が来たらどうするか?ナプキンの使い方は一斉には教わりません。さらにいえば、どうやって避妊するか、なぜ避妊するのか、までは教わらないでしょう。確かにここは親に責任があるのではないかと私は思います。中1の息子と小3の娘。待ったなし、というよりも遅いかもと思う性教育をいつ、どこで、どう教えるか、悩みどころです。いや、悩んでいる場合じゃないですね。

HER OPINION:ママ、女性に関連するファッション&ビューティ業界の話題をお届けします。今、働くママを含めた社会進出が進む女性に関わる情報が増えてきました。彼女らにまつわるニュースをピックアップすることで、彼女らを支える彼らにも役立つニュースを紹介します。

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持続可能な企業になるためには?「信頼を勝ち取る最短距離は情報開示」 オルタナ編集長が指南

 これまでにアパレル業界の不正義を告発してきたNGO/NPO団体は多数存在する。つい先日も米国のアニマルライツ運動団体PETAがアルパカの残虐な毛刈りの実態を告発し、ギャップやH&Mヘネス&マウリッツは世界最大規模のアルパカ農場のマルキニとの取り引き停止を決めた。

 動物福祉だけでなく、2013年にバングラデシュで起きたラナプラザ事件をきっかけに発足したNPO団体ファッションレボリューション(Fashion Revolution)は、アパレル企業に透明性を求める活動を続け、企業の変革を後押ししている。

 これらの団体は企業にとって“リスク”として消極的に捉えられてきたが、最近では彼らと連携して課題に取り組む企業も多い。例えば、「グッチ(GUCCI)」の親会社のケリング(KERING)は、NGO団体コンサベーション・インターナショナルと連携して生物多様性保全に向けた取り組みを進め、「ゴアテックス(GORE-TEX)」で知られるゴア(W. L. GORE & ASSOCIATES)社は、環境NGOのグリーンピース(GREEN PEACE)と協業して環境負荷の軽減に取り組む。

 NGOの世界的影響力が強まっている今、サステナブル・ビジネス情報誌「オルタナ(alterna)」の森摂・編集長は「企業の社会対応力が問われる時代になってきた」と語る。森編集長に話を聞いた。

WWD:これまで企業やブランドは、NGOの過激なパフォーマンスに対して相手にしない態度が主流だったように思うが、海外ブランドを中心にNGOに対する意識が変わってきている?

森:グローバルではNGOに対する信頼度が上がっている。PR会社のエデルマンが行なった調査では、企業、NGO、政府、メディアのうち、人々はNGOを最も信頼しているという結果が出ている。

WWD:彼らの活動の中身が変わってきているのか?

森:世代の変化が大きいだろう。特に1995年以降に生まれたZ世代は企業に、環境や社会に対する公平さや誠実さを求める傾向がある。NGOの活動は市民の支えで成り立っており、彼らは市民の声の代弁者である。つまり社会全体が、企業に対し児童労働やLGBTQ、非白人など社会的弱者への配慮を期待しているということだ。

WWD:アパレル業界の事例として英国のNGOファッションレボリューションを筆頭に、サプライチェーンの透明性を求める動きが活性化している。

森:透明性は、企業の説明責任、つまり“アカウンタビリティー”と言い換えることができるのではないか。サプライチェーンにおけるネガティブな要素について、目に見える形で説明するということだ。そして、そのネガティブな要素をポジティブな要素に転換することこそが透明性に取り組む意義だろう。Z世代が企業に求める誠実さと通ずるところがある。ただし、透明性は数値化できないし曖昧になりがちで、証明ができない。今さまざまなイニシアティブが透明性を数値化して評価したり、フェアトレードラベルのような第三者機関を通した認証制度で透明性を証明したりする動きがある。

WWD:具体的に透明性をうまく実現している企業はあるか?

森:代表格はユニリーバ(UNILEVER)だ。ユニリーバが2010年に開始した「サステナブル・リビング・プラン」では環境と社会、サステナビリティの領域で目標を設定し、達成したことだけでなく達成できなかったことも公表している。例えば、同報告書では「2020年までに当社の製品に関連する消費者の水の使用量を半分にするという目標を掲げていたが、実際は10年以降消費者の水の使用量は約1%増加してしまった」という具合にだ。企業は普通、できていないことに関しては語りたがらないが、ユニリーバはそこをあえて公表した世界初の企業だった。

WWD:達成していない項目についても情報開示をすることは企業のメリットになり得るのか?

森:そうだ。日本企業はネガティブな情報を積極的に開示することに慣れていない。NGOからの批判も無視したり、隠れて解決したりしようとすることが多い。しかし、企業のNGOや社会に対する対応力そのものが問われている今、それらにオープンになることが結果的には消費者からの信頼を勝ち取る最短距離と言えるだろう。「ユニクロ(UNIQLO)」は、同ブランドのサステナビリティチームを中心にNGO対応が上手なブランドだ。以前PETAにミュールシングの問題(※)を指摘されたときにも素早く対応した事例がある。

※ミュールシングとは清潔なウールの毛を刈り取るために子羊の臀部や陰部を無麻酔で切り取る行為。現在「ユニクロ」は、メリノウールのサプライヤーに対してミュールシングを行う農家からの調達を廃止していく取り組みを進めている。

WWD:企業は透明性に取り組むためにまず何から始めるべきか?

森:まず、経営陣がサプライチェーンにはリスクがあると知るところから始まる。次にそれぞれのリスクの大きさを把握すること。そして、大きなリスクに対応すること。最後に将来的なリスクの芽を摘んでおくことだ。また、リスクを社内で共有して説明できる態勢を整えておくことが重要だ。

WWD:アパレル業界の中には、そもそもサプライチェーン全体を把握していない人たちもいる。それではリスクの存在にも気が付かない。

森:サプライチェーンには必ず問題がある。自社のリスクを知らないままに経営することはヘッドライトをつけないで夜道をドライブするようなものだ。とても危険だ。日本もこれからミレニアルズやZ世代が中心になる中で消費者の情報感度が上がってくる可能性は高い。さらに外国人投資家や自社の社員からの信頼を得るためにも透明性への取り組みが重要になってくるだろう。

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ファッションは白黒つけない“グレー”でいい エディターズレターバックナンバー

※この記事は2020年6月19日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

ファッションは白黒つけない“グレー”でいい

 手前味噌になりますが、この記事のタイトル「PRの極意は“白黒つけず、グレーで受け止める”」を気に入っています。インタビューに登場してくれたベテランPRの根道さんの言葉「ファッションの仕事は全部が白と黒ではないから、グレーをグレーのまま受け止めることが大切」にビビッときて選びました。「話しかけにくい上司では、グレーな課題が入ってこなくなる」にも納得です。

 そうなんですよね。ファッションは白黒つけられないし、つけないほうが面白い。「これってかっこいいのか?」とか「おしゃれだと思う?」の問いに正解はありませんから。

 テレビ番組のファッションの切り取り方は画一的だな、と違和感を覚えることが多いのですがそれはテレビというメディアが「白黒つける」クリアな見せ方と相性が良いからかもしれません。テレビ的ファッションの鉄板といえば「ファッションチェック」や「ビフォー&アフター」ですが、誰かが提示する「正解」に向けてストーリーを組み立てる方が視聴者的は見やすいし楽しめるのでしょう。30分や1時間の枠の中で、「ここまでにこう盛り上げてこう落とす」という起承転結や時間配分がかっちりした台本の存在も「グレー」の存在を遠ざけます。

 テレビと比べてユーチューブがファッションと相性良いのは「本人が悩みながらダラダラと話すグレーなムード」が魅力となり得るからではないでしょうか。人気ユーチューバーの方は、人を惹きつけるストーリーの組み立てやたたみかけるような進行が上手な人が多いですが、同時に個が立っているからか「む〜んと悩み込む」とか「決めかねてダラダラ話す」といったグレーな振る舞いも共感につながります。時間制限もありませんしね。

 ファッションに限らず、不確実・不透明な時代である今は、何事もグレーをグレーのまま受け止める度量がある方が生きやすのかもしれませんね。

IN FASHION:パリコレもストリートも。ジュエリーもインテリアも。今押さえておきたい旬なファッション関連ニュースやコラムを「WWDジャパン」編集長がピックアップし、レターを添えてお届けするメールマガジン。日々の取材を通じて今一番気になる話題を週に一度配信します。

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ペン型やクッションタイプまで 人気上昇中の“変わり種”香水5選

 日本のフレグランス市場では近年、スティック型の練り香水や持ち運べるミニサイズのロールオンフレグランスなどの人気が高まっている。香りの楽しみ方が多様化し、今年も続々と登場している “変わり種”フレグランス5選を紹介する。ペン型やクッションファンデーションのような形状などさまざまな変型フレグランスが登場するが、どれもバッグに入れて持ち運べる軽量サイズで、スプレー式ではない固形やジェル状など周りを気にせず楽しめるのが特徴だ。

「シャネル」の「チャンス」からは繰り出し式ペンシル型の練り香水

 「シャネル(CHANEL)」は人気フレグランス「チャンス」から、ペンシル型フレグランス「チャンス クレイヨン ドゥ パルファム」を6月5日に数量限定で発売した(現在は販売終了)。ペンシルのキャップをはずすと繰り出し式の練り香水になっていて、肌に塗布するとやわらかな香りが広がる。4つの香りのセットで、温かみのある香りの「チャンス」、みずみずしくはじけるような香りの「チャンス オー フレッシュ」、スイートでやさしい「チャンス オー タンドゥル」、ジューシーな「チャンス オー ヴィーヴ」がそろう。

「ロードゥ イッセイ」のチューブ型クッション香水

 「イッセイ ミヤケ パルファム(ISSEY MIYAKE PERFUMS)」は、シリーズ初のチューブ型クッションフレグランス「クシュクシュ タッチパルファム」を8月19日に数量限定で発売する。サテンのような感触のクッション状スポンジをヘッドに採用し、肌にタッチするとクリーム状のフレグランスが染み出て塗布することができる。香りは3種を用意。アクアティックフローラルの「ロードゥ イッセイ」、ウッディームスク調の「ネクタードゥ イッセイ」、フローラルフルーティーの「ロードゥ イッセイ ローズ&ローズ」がそろう。香りの濃度や密着度は従来のボトルタイプと同様で、アルコールフリーながらべたつかずに使える。

「フラワー バイ ケンゾー」のクッション型ジェル状オーデパルファム

 「ケンゾー(KENZO)」からはクッション型のジェル状フレグランス「フラワー バイ ケンゾー ポピー ブーケ クッション」が8月28日に数量限定で登場する。「フラワー バイ ケンゾー」シリーズは“本来香りがないポピーの花に「ケンゾー」が香りを与えたら?”をコンセプトに2000年に誕生。ブランドのルーツである日本のフルーツ、ジャパニーズペア―やブルガリアンローズ、ガーデニアなどが華やかに香る。コンパクトに付属するスポンジに含ませて、首元や手首に塗布して使用する。ジェル状のテクスチャーは、オーデパルファムと同様に香りが持続する。

「ビュリー」のえんぴつ型ディフューザー

 「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー(OFFICINE UNIVERSELLE BULY)」は3月、えんぴつ型のフレグランスを発売した。セラミックのペンシルに香りのオイルのエッセンスを5~7滴染み込ませ、ディフューザーとして使用する。エッセンシャルオイルは全8種がそろう。

日本未発売、「ジョー マローン」のペン型コロン

 英国発「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」からは、ペン型のジェル状コロンが登場。セラミックの先端を肌の上に滑らせるとひんやりとした感触で、ロンドンのコベント・ガーデンの朝の市場から着想し、ネクタリンの花やピーチ、カシス、ハニーなどのプレーフルな香りが広がる。ほかのコロンとの重ねづけも可能だ。日本未発売。

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【動画】「デザイナーなら自分の才能を信じろ」 三原康裕が逆境のファッション業界で貫く信念

 デザイナーが自らの思いを語る動画企画「DESIGNER’S VOICE」がスタート。第一弾は、三原康裕「メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA YASUHIRO)」デザイナーが登場する。デザイナー歴20年以上のキャリアながら、6月に東京・神宮前に新店舗「マイ フット プロダクツ(MY FOOT PRODUCTS)」を開いたり、7月にはパリのデジタル・ファッション・ウイークに参加したりするなど、新たなチャレンジを次々と仕掛けている。ファッション業界を長く見てきたベテランは、かつてない逆境を迎えている業界全体に何を思うのか。若手デザイナーへの提言とともに聞いた。

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【ミヤシタパーク見どころ1】ビームス、デイトナは個性際立つ業態でそれぞれのカルチャーを発信

 三井不動産による東京・渋谷の複合施設「ミヤシタパーク」が、7月28日から段階的にオープンする。「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」をはじめとしたラグジュアリーブランドや日本初上陸のスニーカーショップ「キス(KITH)」、ストリートブランドなどのほか、レコードやアートなどのカルチャー、ビューティ、全長100mに居酒屋やレストランが集まる「渋谷横丁」など、個性的な90店舗が入る。セレクトショップを運営するビームスとデイトナ・インターナショナルも個性際立つ業態を構えた。

ビームスのサーフ&スケートレーベル「SSZ」の“仮店舗”は物流倉庫をイメージ

 ビームス(BEAMS)は加藤忠幸バイヤーが手掛けるサーフ&スケートレーベル「SSZ(エス エス ズィー)」のショップをオープンする。2階のポップアップスペースで、9月13日までの期間限定。仮店舗を意味する“テンポラリー ストア オブ SSZ(TEMPORARY STORE OF SSZ)”と名付けられた店内には、加藤バイヤーの私物やZINEが壁を覆いつくし、ビームスの物流倉庫で実際に使用されていた荷捌き用のコンテナや、「SSZ」のオリジナル段ボールを什器として使用する。加藤バイヤーは「やるからにはポップアップといいながらもいつ実店舗を出してもおかしくない店舗づくりをしたかった。ただ、ガチガチに世界観を出すのは『SSZ』らしくない。出張先のアメリカで実際に倉庫を見たときに、店じゃないのに店以上のインパクトがあった。作り込まれた店内よりも実は店の裏側の方がすごく生々しいしリアル。『SSZ』は自分が着たいリアルな服をコンセプトにしているので、そういったリアリティーを感じる内装にしたかった」と話す。

 オープン時には、スタイリストの長谷川昭雄による「A.H」と共同で製作した、「ニューエディションファニチャー(NEW EDITION FURNITURE)」製の段ボールから着想したレコードボックス(8万円)や、アメリカの物流倉庫で働いている人たちをイメージしたワークシャツ(1万5800円)とショーツ(1万7000円)、段ボール素材に見えるトートバッグ(6500円)などを店舗限定で販売する。

デイトナは「ファーストハンド」の2号店でサステナブルなモノ・コトを発信

 デイトナ・インターナショナルは東京・南青山に構えるサステナビリティを意識したコンセプトストア「ファーストハンド(FIRST HAND)」の2号店をオープンした。店内には、産廃業者から集めた家電の什器や、貯水タンクと水まきホースを再利用したソファなどを設置し、ファッション業界の大量生産・大量廃棄に対して問題提起する。また、みんな電力との協業で自然エネルギーを使った充電サービスなども実施。ガラス越しに見える奥の工房では洋服のリペアなども行う。「1号店よりも視覚的な分かりやすさを重視して、自然エネルギーやリユースを感じられるような店内を意識した」と福留聖樹ディレクターは語る。

 「ア ラブ ムーブメント(A LOVE MOVEMENT)」や「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」「キャンプ ハイ(CAMP HIGH)」などをそろえるほか、店内の自動販売機ではチームラボとコラボし、佐賀のお茶「エンティ-(EN TEA)」(1000円)を販売。切子のグラスなども並べる。

 オープン時にはLA発のサステナブルフレグランスブランド「デッドクール(DEDCOOL)」(8月30日まで)ほか、アーカイブストア「ブルールーム(BLUE ROOM)」による1990~2000年代の裏原宿をテーマにしたTシャツ販売、NYを拠点にするデザインスタジオ「プレースホルダ―(PLACEHOLDER)」のエキシビション(共に8月10日まで)の3つのポップアップイベントを開催する。

 購入者には繊維商社の瀧定名古屋の協力で作った、生地の端切れを使ったトートバッグをプレゼントする。

 なお、新型コロナ対策としてミヤシタパーク自体の入場には施設の公式サイトからの予約が必要だ。

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ファッション業界は財テクサービスを待っている エディターズレターバックナンバー

※この記事は2020年6月19日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

ファッション業界は財テクサービスを待っている

 下のリンクで紹介した高島屋のファイナンシャルサービス、「へぇ」と思いながら、後輩記者の記事を興味深く読みました。グループ会社は実に多彩な高島屋らしくもあり、「丸井の成功に感化されているのかなぁ?」なんて勘ぐったり。十人十色な読後感がありそうな良き記事です。

 もし自分だったら、どんなファイナンシャルサービスを構想したでしょう?ズバリ、ファッション業界人の財テクサービスです。

 自戒、今回ばかりはいつも以上の自戒を込めて(苦笑)ですが、“ファッションピーポー”は財テク下手だと思います。なにせ手元にお金があったら、使ってしまいますから(私だけですか?)。だから、私たちに向けてファイナンシャルサービスを手掛けてくれたら、需要、とってもありそうな気がします。例えば、年間の買物額と購入した主たる商品をヒアリングして(言うのはチョット勇気が必要ですがw)、「カードや利回りの良い商品券を使えば、ホラ、コレだけ節約できます!」なんてカウンセリングを、百貨店のコンシェルジュと開いてくれるとか?高島屋の皆さん、いかがでしょうか?

 そんな需要を感じているのは、私だけではありません。会社では現在、十数分から数十分の動画のシリーズで構成するオンライン授業のサービスをローンチしようと画策していますが、社内の有志によるヒアリングの中で「開発してみたい」と一番人気だった講座は、財テクにまつわるモノでした。どうやら少なくとも弊社のスタッフは私同様、使うのは得意でも貯めるのが苦手なようで(笑)。財テク講座を含むサブスクリプション型オンライン授業のサービスについては、アイデアも募集しております。

 財テクの難しい言葉、正直不安が募りがちな算数的「倹約」の発想を、ファッションやビューティの世界に向けて翻訳できたら、業界のニーズは高そうです。そして、私たちが財テクを始められたら、同じく人生設計している消費者の気持ちにもっと共感できるようになるのかな?なんて思います。「あぁ、そうか。目の前の方は今、将来に向けて貯蓄中なんだ。だったら、このアイテムはどうだろう?」なんて思考につながりそうな気はしませんか?

FROM OUR INDUSTRY:ファッションとビューティ、関連する業界の注目トピックスをお届けする総合・包括的ニュースレターを週3回配信するメールマガジン。「WWD JAPAN.com」が配信する1日平均30本程度の記事から、特にプロが読むべき、最新ニュースや示唆に富むコラムなどをご紹介します。

エディターズレターとは?
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巨大なドレスに映像を投影 ファッションの夢を見せた「ヴァレンティノ」 2020-21年秋冬オートクチュール

 「ヴァレンティノ(VALENTINO)」は7月21日、イタリア・ローマ郊外にある映画撮影所チネチッタ・スタジオで2020-21年秋冬オートクチュール・コレクションを披露した。会場に少数のジャーナリストを招待したものの、今回の核となるのはオンラインでの配信。そのため、長年デジタルでのファッション表現を探求している写真家でフィルムメーカーのニック・ナイト(Nick Knight)と協業し、美佳(Mika)やアドゥ・アケチ(Adut Akech)、マリアカルラ・ボスコーノ(Maria Carla Boscono)ら人気モデルを起用した幻想的なパフォーマンスをライブ配信した。

 パフォーマンスは、約5mもある極端なプロポーションのドレスをまとうモデルやドレスを風になびかせながら宙を舞うモデルに、花や自然の風景を投影した映像からスタート。後半はさまざまなアングルとスローモーションを生かして、暗闇から浮かび上がる純白と銀の15着のドレスを1ルックずつ見せた。音楽を担当したのは20-21年メンズのショーにも起用されたロンドンを拠点に活動するシンガー・ソングライターのFKAツイッグス(FKA twigs)。叙情的かつ個性的な歌声で見るものの心を揺さぶった。

 ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)=クリエイティブ・ディレクターは今季のコレクションに関して、「ファッションと女性、そして詩情を中心に据えたかった。これまでとは全く異なり、(ロックダウンにより)束縛されているという感情を乗り越える必要があった」とコメント。「ナイトと取り組むことが、ショーに取って代わるのではない。というよりも、水や風、大地、炎などを表現したデジタルプロジェクションを刺しゅうや花の装飾、色の代わりに用いながら、クチュールの背景にある人間的な要素を最大限際立たせることを目指した。ナイトの表現には“冷たさ”を感じるが、ある意味、そこに惹かれた。そして、それはアトリエの人々が持つ人間らしい温かみと対極にあるものだ」と続ける。披露されたドレスはそんなアトリエの手仕事と卓越したクラフツマンシップを称えるもので、実際ピッチョーリは制作に携わったお針子の名前をショーノートに記している。中には4000時間をかけて製作されたドレスもあるという。

 また今回の会場に選んだ歴史あるチネチッタ・スタジオについては、夢が生み出される場所であり、皆が最も夢を見られるクチュールにとって最適な場所だったとし、「私たちは夢のない状態になんてなりたくない」と語った。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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