VFはなぜ「シュプリーム」を買うのか 4度目のドメイン転換劇 小島健輔リポート

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。人気ブランド「シュプリーム」のM&A(買収、合併)で話題を集めた米VFコーポレーション。巨額投資の狙いは何なのか、そもそもVFとはどんな企業なのか。

 米国最大のアパレルメーカー、VFコーポレーション(VF CORPORATION以下、VF)が11月9日、ストリートブランドの「シュプリーム(SUPREME)」を21億ドルで買収すると発表して話題を呼んだが、その破格の買収額もともかく、これまで幾度もブランドの買収と放出を繰り返してドメインを転換して来たVFがアウトドアやワークよりラグジュアリーストリートにフォーカスしたことが注目される。

「シュプリーム」買収の背景

 VFはジーンズ部門をスピンアウトする前の19年3月期では過去最大の138億4866万ドル、スピンアウト後の20年3月期でも104億8856万ドルを売り上げた全米最大のアパレルメーカーで、アクティブ部門(「ヴァンズ(VANS)」「キプリング(KIPLING)」「ナパピリ(NAPAPIJRI)」)、アウトドア部門(「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」「ティンバーランド(TIMBERLAND)」「アイスブレーカー(ICE BREAKER)」「アルトラ(ALTRA)」)、ワーク部門(「ディッキーズ(DICKIES)」「レッドキャップ(RED KAP)」「ウォールス(WALLS)」)が売り上げの99.6%を占める。19年3月期で売り上げの18.0%(24億9177万ドル)、セグメント利益で13.7%を占めていたジーンズ部門(「ラングラー(WRANGLER)」「リー(LEE)」「ロック&リパブリック(ROCK&REPUBLIC)」)を19年5月にコントア・ブランズ(KONTOOR BRANDS)社としてスピンアウトし、ニューヨーク市場に上場している。

 20年3月期では卸しの売り上げが58.1%、直営店とEC(ネット通販)のD2C売り上げが41.4%を占め、ロイヤルティ収入は0.5%と限られる。ECはD2C売り上げの28%を占めると開示されているから、全社売り上げに占める比率は11.6%、12億1580万ドルほどになる。海外売り上げが過半だった「ティンバーランド」の買収を契機に海外売り上げ比率が年々高まり、買収前は3割にとどまっていた海外売り上げは47.4%まで上昇している。

 VFはこれまで何度もマーケットの変化を見据えてブランド資産を果敢に入れ替え、06年12月期の62億2000万ドルから14年12月期の118億8200万ドルまで売り上げを伸ばして全米最大のアパレルメーカーの地位を確固たるものにしたが、08年まで最大部門だったジーンズ部門の売り上げが年々減少する中、次のブランド資産入れ替えを迫られた。11年に「ティンバーランド」(買収額20億ドル)、17年に「ディッキーズ」(同8億2000万ドル)を買収してアウトドア&アクションスポーツ部門(18年4月にアウトドア部門とアクティブ部門に分割)を強化してきたもののジーンズ部門の売り上げ減少を補えず、業績が頭打ちになっていた。

 19年3月期までは順調に伸びてきたワーク部門とアウトドア部門も20年3月期では売り上げが伸びず減益に転じ、アクティブ部門も4%しか伸びず微増益に止まり、ジーンズ部門のスピンアウトで減少した売り上げを補うにも次の大型買収が不可避の課題となっていた。セグメント利益率を見てもワーク部門5.7%(前期7.6%)、アウトドア部門11.1%(同11.7%)に対してアクティブ部門は23.1%(同23.8%)とダントツだったから、買収対象はアクティブ部門に絞られた。その回答が「シュプリーム」の買収で、アクティブ部門にストリートラグジュアリーを加えて成長を加速させる戦略に出た。

 メンズカジュアル市場ではアウトドアやアクションスポーツが伸びてもアーバンカジュアルが苦戦する中、デジタルネイティブな若い成功者にカルト的人気を博しているのが「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」や「フィアー オブ ゴッド(FEAR OF GOD」「ヴェトモン(VETEMENTS)」「リック・オウエンス(RICK OWENS)」などストリートラグジュアリーブランドで、「ナイキ(NIKE)」から「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」までコラボが広がりプレミアムが付いて転売されるほど人気の「シュプリーム」はベストの選択だった。売り上げの60%以上をECで売り、45%が米国外からの売り上げで、店舗は全世界に12店舗(うち6店舗が日本)しかないプレミアムなD2Cというのも、今後の成長性を期待させる。

VFは3度、変身した

 VFは1899年に手袋メーカーとして創業。1920年代には社名に残る「バニティ・フェア(VANITY FAIR)」というランジェリーメーカーに転じ、69年には「リー」を展開するH.D.リー(H.D.LEE)社、86年には「ラングラー」を販売するブルーベル(BLUE BELL)社を買収してジーンズ部門が主力となり、全米最大のアパレルメーカーとなって社名もVFコーポレーションに変わった。

 00年には破綻寸前だった「ザ・ノース・フェイス」を買収、02年には「ノーティカ」も買収(17年に放出)、04年には「ヴァンズ」「ナパピリ」、05年には「リーフ」も買収してアウトドア&アクションスポーツ部門やスポーツウエア部門を拡大し、06年には祖業のランジェリー部門を売却している。07年には「セブン・フォー・オール・マンカインド(SEVEN FOR ALL MANKIND)」を買収(16年に放出)し、同年買収のヨガ&アスレチックウエア「ルーシー(LUCY)」と合わせてコンテンポラリー部門を新設。一時はセレブカジュアルのブームに乗ったがリーマンショックを契機にブームは終焉し、以降はジーンズ部門もコンテンポラリー部門も売り上げを落としていく。

 代わってけん引役となったのが成長著しい「ザ・ノース・フェイス」を柱とするアウトドア&アクションスポーツ部門で、09年12月期でジーンズ部門を抜いて最大部門となり、11年買収の「ティンバーランド」が加わって12年12月期には全社売り上げの53.9%と過半を占めるに至った。

 17年夏には「ディッキーズ」を買収してイメージウエア部門(ワーク&ユニフォーム)の拡大を図り、全社売り上げの62.7%に達したアウトドア&アクションスポーツ部門をアクティブ部門とアウトドア部門に分割した。18年を3カ月変則決算として体制を再構築し19年3月期の売り上げは12.1%伸びたが、20年3月期は期末にコロナ禍が始まって2.2%増とブレーキがかかり、営業利益率もピークの14年12月期の15.1%から19年3月期は12.1%(スピンアウトしたジーンズ部門を除くと11.6%)、20年3月期は8.8%と落ち込み、次の成長を牽引するパワーブランドが希求されるに至った。

 その答えが「シュプリーム」だったわけだが、これでVFは創業以来、手袋→ランジェリー→ジーンズ→アウトドア&アクションスポーツと3度の変身に続く第4の変身に挑戦することになる。

財務逼迫下での「シュプリーム」買収

 「シュプリーム」の買収でVFコーポレーションは少なくとも5億ドル、24年までに海外を合わせ10億ドルの売り上げも狙えるとしているが、19年5月にスピンアウトしたジーンズウエア部門は19年3月期で24億9177万ドルを売って3億50万ドルのセグメント利益を計上していたから、「シュプリーム」が10億ドル売れても減少した売り上げの4割しか埋められないし、売り上げ対比20%といわれる「シュプリーム」の収益力を持ってしても5億ドルでは営業利益は1億ドルでしかなく、10億ドル売ってもまだ1億ドル足らない。

 では次のストリートラグジュアリーブランド買収に動くかというと、コロナ以前から逼迫していたVFの財務状況では困難と言わざるを得ない。「シュプリーム」の売り上げを10億ドルどころか20億ドルにする方が確実で手早いはずだ。それだけのポテンシャルが「シュプリーム」にはあるし、VFの生産背景と流通体制に乗せれば容易に拡販できるだろう。だが、それではストリートラグジュアリーの規範を逸脱して「シュプリーム」の先鋭なイメージを損なうリスクがある。

 買収してもシュプリームの創業者も主要メンバーも残り、VFのスティーブ・レンドル(Steve Rendle)CEOも「何も干渉しない」としているが、逼迫した資金繰りの中で21億ドルも投資する以上、相応の見返りを求めるのは必定だ。「シュプリーム」の先鋭な魅力を損なわないでVFの売り上げに貢献させるには、これまでも傘下の「ヴァンズ」や「ザ・ノース・フェイス」「ティンバーランド」と散発的に行ってきたコラボ企画を拡大するのが現実的な選択と思われる。

 VFは「ティンバーランド」の買収で多額の負債を抱え、コロナ直前の20年3月期末でも純資産33億5700万ドルに対して借入金が38億3800万ドルと14.3%超過し、純資産に対する必要運転資金比率も98.0%と逼迫していた。コロナ禍の21年3月期上半期(4〜9月)では売り上げが前年同期の70.4%に落ち込み、営業利益こそかろうじて7314万ドルの黒字としたものの純損益は2889万ドルの赤字に沈み、運転資金回転日数が20年3月期の114.5日から180.6日に伸びて純資産対比の必要運転資金が122.2%と超過。借入金も56億9400万ドルに膨れ上がって純資産対比で193.3%と倍近くまで悪化した。それに比べればオンワードホールディングスの20年8月中間期の129.4%など、まだ余裕のうちかも知れない。

 財務がそこまで逼迫する中、21億ドルという「シュプリーム」の買収資金をどう捻出するのか不思議に思える。「ティンバーランド」の買収は手元現金5億ドル、コマーシャルペーパー7億ドル、タームローン8億ドルだったとされるが、現在の財務状況では手元資金からの捻出は難しい。「リーフ」に加えて「ディッキーズ」の企業向け作業服を含むワーク部門も売却を計画しているから、第4のドメイン再構築劇はかなりドラスティックなものになるだろう。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

The post VFはなぜ「シュプリーム」を買うのか 4度目のドメイン転換劇 小島健輔リポート appeared first on WWDJAPAN.com.

「ルメール」デザイナーデュオが語るブランド哲学 「衣服は着る人の個性を引き立てるもの」

 「ルメール(LEMAIRE)」は1990年の立ち上げ以来、さまざまな歴史を辿ってきた。フランス人デザイナーのクリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)は、「ラコステ(LACOSTE)」のクリエイティブ・ディレクターに就任していた2002年に自身のブランドを休止し、06年に再開。11年秋冬コレクションから14年まで「エルメス(HERMES)」のウィメンズウエアでアーティスティック・ディレクターを務めた。15年にパートナーのサラ=リン・トラン(Sarah-Linh Tran)が共同デザイナーとして参加して以降、着心地の良さとクリーンでミニマルなデザインが高く評価されている。クリストフがアーティスティック・ディレクターを務める「ユニクロ ユー(UNIQLO U)」は、16年から長期に渡るパートナーシップ契約で成功を収めており、18年にはファーストリテイリング(FAST RETAILING)が「ルメール」の株式49%を取得した。

 今年10月、パリに次いで世界二店舗目となる直営店を東京・南青山の多目的スペース「スクワット(SKWAT)」に期間限定でオープンさせた。「まだ足は運べていないがとても満足している」とクリストフとサラ=リンは、オープン3日後にパリのアトリエで嬉しそう語る。ブランド哲学やパンデミック後の変化、直営店をオープンさせた意図について聞いた。

WWD:今改めて「ルメール」というブランドをどのように定義する?

クリストフ・ルメール(以下、クリストフ):実生活のためにデザインされた衣服やアクセサリーを提案している。それらが長きにわたって着る人の“親密な仲間”となることが目的。機能性・快適性・美しさのバランスを取り、生活者にとって必要であると同時に望まれるものを届けたい。快適で長持ちする生地の品質選びに非常に慎重で、カットとディテールも実用性を重視した丈夫な作りに専念し、時を超越するタイムレスなデザインを追求している。衣服は着る人の個性を際立たせ、それぞれが持つ特異なパーソナリティを身ぶりによって導き出すと考えているから、デザインはミニマリズムで落ち着いた色で彩っている。クリエーションの過程では、偶然が生み出す非合理的な瞬間が好きだ。それは人生をひと味変えるスパイスとなってくれるから。

サラ=リン・トラン(以下、サラ=リン):コレクションは、異なるシーズンのアイテムを合わせて新しいスタイルを作れるように組み立てている。「ルメール」の衣服は気負わず着られて自信に満ちる、日常の防護服のようであるかもしれない。カラーパレットがニュートラル、アース、ミュートという柔らかな色合いなのは、色や生地が前に出すぎず、着る人に“添えられている”と個性が強調されるから。

WWD:ファッション業界での豊かな経験を通して、ブランド哲学は変化したか?

クリストフ:哲学はデザインを始めた頃から変わっていない。私のビジョンをサラ=リンと自然に共有できた時、強さと成熟さが付け加えられた。

サラ=リン:ブランドの信念は時間とともに強くなっていると思う。顧客は私たちの感覚を非常に敏感に感じ取ってくれる。また、新しい顧客が関心を示すのを見られるのは心温まるもの。私たちが変わらず一貫性を表現することは正しい道なのだと教えてもらっているようだ。

WWD:コレクションの制作過程において、二人の役割は?

クリストフ:大まかに言えば、サラ=リンがウィメンズウエアやバッグ、ジュエリー、そしてブランドのコンテンツ制作、ウェブサイト、SNSやファッションショーなどのイメージ制作を主に担当している。私はメンズウエアとユニセックラインに携わり、組織作りやビジネス面で多くの責任を負っている。

サラ=リン:新しいコレクションを発表する約1年前には、自分自身を未来へ投影してイメージを描く必要がある。それは夢を見ている感覚と似ている。そのイメージをデザインチームと共有し、生産、販売チームとの絶え間ない対話からコレクションを作り上げていく。料理のようなもので、少しの技術や多くの直感、想定外のヒントが材料になる。

WWD:ユニセックスの提案はシーズンを重ねるごとに強くなっているが、その理由は?

クリストフ:以前から、フェミニンなピースにメンズウエアを合わせて官能性を引き出す方法が好きだった。それに女性が男性、男性が女性の商品を購入したり借りたりするのを見てきた。ユニセックスラインは過去数年で成長を続け、商業的にも非常に成功を収めている。

サラ=リン:ウィメンズの流動性とメンズの安定性。双方が互いに影響を与え合っており、ユニセックスな提案をするのは自然な流れだ。性別を問わず、機能性を備えた衣服は常に必要とされる。

WWD:21年春夏コレクションは映像を制作してデジタル発表に切り替えたが、そのテーマは?デジタルプラットフォームで発表することで最も重要視したことは?

クリストフ:コレクションを明確で端的に提示したかった。シルエットの提案を可能な限り映像で見られるように、ディテールをクローズアップした。

サラ=リン:ロックダウン中、私たちは自宅で作業を続けていて、パリの街中を再び歩き回れる日を夢見ていた。そのため、動く体に合わせた衣服を制作することが着想源となった。流動的な生地や隠れたディテールをフィルムで表現したかった。デジタルを通してプレスやバイヤー、顧客など、より多くの人々が同時にアクセスできるのは理にかなっている。

WWD:今季からプレコレクションをなくし、メインのみにまとめる決断をしたのは何故?

クリストフ:ファッション業界全体が、2000年にアメリカのデパートに課された、プレとクルーズ、メインコレクションを発表しないといけないシステムに不満を募らせてきた。多すぎるコレクションによって作業が細分化され、時間とエネルギーを浪費していた。変革が求められていた中でパンデミックが起こり、長年考えていたプレコレクションの廃止を決断できた。これからもウィメンズとメンズのコレクションを同時期に発表し、3回のデリバリーに分けて提案する。このサイクルはクリエイションと生産プロセスの両方で合理的かつ効率的である上に、直営店と小売店にスムーズに商品を届けられる。バイヤーはメインのために予算を抑えてプレを買い付けするというリスクを伴っていたが、メインに絞ることでそれが解消されたはずだ。結果的に、今季のオーダーは30%の伸び、バイヤーからも高く評価された。コレクションを簡素化して商品数を少なくしたが、結果的に売り上げが上がるといった予想外の結果がもたらされた。

成長続くアジアとの親和性

WWD:パリに次ぐ直営店2店舗目を、東京に選んだのは何故?

クリストフ:ブランドを始動した当初から日本での売り上げは良く、過去数年でアジアでの売り上げが非常に伸びていることが理由の一つ。これは「ユニクロ ユー」を始めてから、新たな顧客層を獲得できたことが大きいと分析している。また、東京はファッションにおいてアジアの中心だと考えており、今回の提案を受けた時は自然な流れで決断ができた。ビジネス面だけでなく、文化や芸術、繊細な感覚にも親和性を感じている。

サラ=リン:アジアでの売り上げが伸びている背景には、色の独特な捉え方にもあると思う。中国のある顧客は「『ルメール』の色は二色の中間にある」と表現した。黒の違いを世界に提示したのも日本人デザイナーであるように、黒の中に何万通りの黒があることを理解していて、それを自然に捉えることができる感覚をアジア人は持っていると思う。

WWD:新規顧客獲得以外に、「ユニクロ ユー」での協業が「ルメール」に与えた影響は?

サラ=リン:「ユニクロ」の“生活ニーズから考え抜かれた普段着”というコンセプトは「ルメール」と共通しており、異なる点といえば価格帯と生産方法、そして民主的であること。異なる生活様式、生活基準を持つ世界中の人々へ届けるため、民主的なデザインの中に「ルメール」の個性を出すという課題がデザイナーとしての訓練になっている。

クリストフ:「ユニクロ ユー」を始めた頃は「ルメール」のビジネスにとってダメージがあるかもしれないと懸念したが、実際はその逆だった。顧客は両方の衣服を組み合わせ、新しいスタイルを作ることを楽しんでくれているようだ。

WWD:コロナ禍での実店舗出店はリスクも大きいが、このタイミングでの出店にはどんな理由がある?

クリストフ:21年に期間限定ではない直営店を東京に構える計画だったが、パンデミックが起きて、社内で優先させるべきことが変わった。その中で同プロジェクトの提案を受けて、限られた予算で実験的に直営店を持てる機会であると考え賛同した。現在のところ、次の実店舗オープンの計画については未定だ。

WWD:東京の直営店にはどのような役割を期待する?

クリストフ:パンデミックを機にECサイトを立ち上げたが、物理的な体験は必要だと信じている。「ルメール」の世界観を感じ、実際に商品に触れて、ローカルのコミュニティを強固にする役割を担うはずだから。

サラ=リン:直営店を持つことの意味は大きい。セレクトショップは予算があるうえに、1ブランドに与えられるスペースは限られていて、コレクションの全貌を見せることは難しい。直営店であれば同じスタイルでも異なる色や素材によってさまざまな商品を並べられて、各シーズンの世界観をより深く感じ取ってもらうことができる。また店舗に立つ販売員から、顧客のニーズやサイズについて細かな反応を共有してもらえる。販売員も「ルメール」独自の言葉でコレクションを説明できる。直営店はブランドと顧客との仲を深めるコミュニケーションの場だ。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

The post 「ルメール」デザイナーデュオが語るブランド哲学 「衣服は着る人の個性を引き立てるもの」 appeared first on WWDJAPAN.com.

これが「ファッションの力@ビューティ業界」かな? エディターズレター(2020年8月5日配信分)

※この記事は2020年8月5日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

これが「ファッションの力@ビューティ業界」かな?

 ユナイテッドアローズが化粧品事業に本格参入して、ジェンダーフリー設計のスキンケアブランド「ジュース」を立ち上げました。「WWDビューティ」の担当記者に話を聞くと、「真面目に作っていると思います」となかなかの高評価。ブランド自体、「美容はファッションの一部」と宣言しているそうですから、「ONE WWD JAPAN」として応援しないワケにはいきません。

 ボトルデザインは、超イマドキなシンプル。深めのグリーンという色も、まぁ珍しくないカラーリングです。ジェンダーフリー設計の場合、こういう色に寄せるのもアリですね。メンズコスメのパッケージについて「男性ターゲットだからって、黒じゃなくていいのよ」って思っている天邪鬼なので(苦笑)、ダークトーンの理由が他にあったり、「いや、女性にも使っていただきたいんです」というスタンスだったりすると共感度アップです。

 一番「へぇー」と思ったのは、ボトル裏の製品説明や成分表記が、全部英語だったことです。日本の会社が、日本で売っているのに、英語です。日本で売る製品は、その上に日本語のラベルを添付します。ビューティ担当者に話を聞くと、「UAは海外のお客さまも多いから」だそう。今の事情は異なるでしょうが、納得とともに「天晴れな大志である!」と、さらに応援したくなりました。

 主成分は、佐賀県に自生する日本原種の種から芽生える椿。いつの日か、外国人がUAで製品を発見し、使って心地よさを体感して、調べて日本原産の椿にたどり着いてくれたら……。なんてステキなストーリーを想像しました。そう考えると、このシンプルなボトルデザインは「ジェンダーフリー設計」であり、「ユニバーサル設計(いや、今はインクルーシブ・デザインって言ったほうが良いかな?)」なのかしら?なんて思いました。

 製品発表会にも参加していないブランドから、こんなストーリーが紡げてしまう。それはファッション・ブランドの力なのか?それとも自分自身が「ファッション・ブランドのコスメだから」と“ひいき目”だったり肩入れしたりしているからでしょうか?

FROM OUR INDUSTRY:ファッションとビューティ、関連する業界の注目トピックスをお届けする総合・包括的ニュースレターを週3回配信するメールマガジン。「WWD JAPAN.com」が配信する1日平均30本程度の記事から、特にプロが読むべき、最新ニュースや示唆に富むコラムなどをご紹介します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

The post これが「ファッションの力@ビューティ業界」かな? エディターズレター(2020年8月5日配信分) appeared first on WWDJAPAN.com.

これが「ファッションの力@ビューティ業界」かな? エディターズレター(2020年8月5日配信分)

※この記事は2020年8月5日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

これが「ファッションの力@ビューティ業界」かな?

 ユナイテッドアローズが化粧品事業に本格参入して、ジェンダーフリー設計のスキンケアブランド「ジュース」を立ち上げました。「WWDビューティ」の担当記者に話を聞くと、「真面目に作っていると思います」となかなかの高評価。ブランド自体、「美容はファッションの一部」と宣言しているそうですから、「ONE WWD JAPAN」として応援しないワケにはいきません。

 ボトルデザインは、超イマドキなシンプル。深めのグリーンという色も、まぁ珍しくないカラーリングです。ジェンダーフリー設計の場合、こういう色に寄せるのもアリですね。メンズコスメのパッケージについて「男性ターゲットだからって、黒じゃなくていいのよ」って思っている天邪鬼なので(苦笑)、ダークトーンの理由が他にあったり、「いや、女性にも使っていただきたいんです」というスタンスだったりすると共感度アップです。

 一番「へぇー」と思ったのは、ボトル裏の製品説明や成分表記が、全部英語だったことです。日本の会社が、日本で売っているのに、英語です。日本で売る製品は、その上に日本語のラベルを添付します。ビューティ担当者に話を聞くと、「UAは海外のお客さまも多いから」だそう。今の事情は異なるでしょうが、納得とともに「天晴れな大志である!」と、さらに応援したくなりました。

 主成分は、佐賀県に自生する日本原種の種から芽生える椿。いつの日か、外国人がUAで製品を発見し、使って心地よさを体感して、調べて日本原産の椿にたどり着いてくれたら……。なんてステキなストーリーを想像しました。そう考えると、このシンプルなボトルデザインは「ジェンダーフリー設計」であり、「ユニバーサル設計(いや、今はインクルーシブ・デザインって言ったほうが良いかな?)」なのかしら?なんて思いました。

 製品発表会にも参加していないブランドから、こんなストーリーが紡げてしまう。それはファッション・ブランドの力なのか?それとも自分自身が「ファッション・ブランドのコスメだから」と“ひいき目”だったり肩入れしたりしているからでしょうか?

FROM OUR INDUSTRY:ファッションとビューティ、関連する業界の注目トピックスをお届けする総合・包括的ニュースレターを週3回配信するメールマガジン。「WWD JAPAN.com」が配信する1日平均30本程度の記事から、特にプロが読むべき、最新ニュースや示唆に富むコラムなどをご紹介します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

The post これが「ファッションの力@ビューティ業界」かな? エディターズレター(2020年8月5日配信分) appeared first on WWDJAPAN.com.

話題の“グラニーニット”をどう着る? 野暮ったくならない着こなしテク

 “おばあちゃん”を意味する“grand mother”に由来するGranny knit(グラニーニット)の人気が広がっています。どこか懐かしげなムードが漂う柄や編み地が特徴。ほっこり感漂うニットは、リラックスした気分を求めるニューノーマル下の装いにうってつけ。そんなグラニーニットをファッショニスタはアクティブやきれいめといった別テイストとミックスして上手に着こなしています。

 古風なモチーフを編み込んだグラニー風ニットも、おしゃれエキスパートの手にかかれば、クールなジェンダーレスルックに一変。セーターの裾をウエストインして、キャメル系のデニムパンツと白ブーツを合わせ、凜々しさも引き出しました。近ごろはコテコテのグラニーではないタイプも増え、さらに着こなしやすくなっているので、この冬の参考になりそうな派生形スタイリングをピックアップしてみました。

決め手はパンツ選び クール×ソフトのめりはりコントラスト

 レトロ感強めなグラニーニットデビューにおすすめなのは、ダイナミックな柄を編み込んだタイプ。マルチカラーのアート系モチーフがさまになるデザイン。装いにスパイシーさを添えているのは、パテントレザー(エナメル)の細身パンツ。きっちりウエストインして、めりはりの効いたシルエットを描き出しました。クラッチバッグとパンプスのアニマル柄もインパクトを添えています。

 極太のボーダーセーターは量感が出やすいので、コンパクトなボトムスで合わせるともたつきを抑えられます。2枚目のオフショルダーのボーダーニットは、ショートパンツを合わせることでシャープな仕上がりに。さらに、インナーにノースリーブのハイネックを着込み、立体的なレイヤードルックで差をつけています。黒ストッキングとコンバットブーツで脚線を引き締める小技も効果的です。

エレガント派におすすめな同系色コーディネート

 おばあちゃんが持っていそうなカラートーンのセーターは、色味の近いニアカラーを選べば同系色でまとめる“トーン・オン・トーン”コーデに仕上げられます。マゼンタカラーの愛らしいムードのニットとジャケットの色を合わせてアンサンブルのような仕上がりに。さらにリップメイクとパンプスもピンクを選んで、きちんと感のある装いに整えました。

 うね編みの盛り上がりが鮮やかなニットもおばあちゃんムードを漂わせます。また、首を覆うタートルネックはほっこり感もプラス。全体を同系色でまとめるコーデは、このタイプにも効果的です。2枚目の写真では、エクリュカラーのざっくりニットが主役。同系色のワイドパンツを合わせて、大人っぽく上品にまとめています。また、異素材を組み合わせることで互いの違いを際立たせる効果も発揮。大ぶりのゴールドネックレスとボリュームイヤリングが、華やかでエフォートレスなコーデに仕上げました。

フェミニンなスカートでこなれた脱力感を演出

 ボリュームのある、ゆる系フォルムのニットをもたついて見せないアレンジは、ボトムスの選び方がポイントになります。グリーンのリブ編みニットがだぼついて見えないのは、裾に向かってたっぷりと広がるフェミニンなマキシ丈スカートのおかげ。帽子やミニバッグをアクセントに添えた大人かわいい小技も盗みどころです。

 夏に着ていたようなノースリーブのワンピースの上にざっくりニットを重ねれば、リラックス×フェミニンの“癒し系コーデ”に。2枚目の写真のグリーンニットは、左右がアシンメトリーなのに加え、スリットがリズム感を生み出します。さらに、ネオンカラーのパンプスで軽かな足元を演出しています。

 レトロな雰囲気が魅力のグラニーニットは、穏やかな気分を誘ってくれます。愛らしさやほのぼのした雰囲気は生かしながらも、きれいめのアイテムやアクティブなムードを取り入れて着こなすのが今季流。少しひねりを加えたアップデートがおすすめです。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

The post 話題の“グラニーニット”をどう着る? 野暮ったくならない着こなしテク appeared first on WWDJAPAN.com.

ビンテージ古着委託販売の先駆け、高円寺「サファリ」が逆風の中で進んだ19年

 “あそこに行けばなんでもある”――うるさ方のオールドファンにもそう言わしめる古着店が東京・高円寺にある。それが「サファリ」だ。今やその名は海外にも伝わり、世界的ブランドのデザイナーやハリウッドスターが、サファリを目的に来日することもある。にもかかわらず、認知度は局地的だ。理由の最たるものは同店が委託販売店であるから。それゆえ、「WWDジャパン」をはじめ多くのファッション誌がサファリを取り上げることは、なかば“ご法度”とされてきた。しかしここ数年、メルカリなどによる個人間古着売買が日常となり、百貨店が古着店のポップアップイベントを開催、老舗アパレル企業がブランド古着店を傘下に収めるなど環境は激変した。逆風の中で歩んだ19年について、サファリを運営するフォーリーフの村山佳人社長に聞いた。

WWD:簡単にサファリの“自己紹介”をお願いしたい。

村山佳人フォーリーフ社長(以下、村山):2001年、僕が23歳の時に1号店をオープンした。今の1号店とは別の場所で、わずか7坪の店だった。

WWD:サファリといえば委託販売だが、オープン当初からこのスタイルだった?

村山:起業する際に信頼する先輩に相談したところ、「ビンテージを中心とするアメリカ古着は今後、絶対的に玉数(供給量)が減少する。だから安定的に国内で仕入れできる委託販売を選択すべきだ」と言われて決断した。当時の日本が、世界のビンテージ市場の中心地だったことも後ろ盾となった。代々木公園のフリーマーケットには今では博物館級のアイテムが、青空の下でビニールシートの上に並んでいた。

WWD:サファリの売れ筋アイテムは?

村山:「リーバイス(LEVI'S)」をはじめとするビンテージデニムが圧倒的だ。価値がいっそう高まりオーナーが手放さなくなったことで、供給が需要にまったく追い付かなくなった。原宿のベルベルジンなど有名古着店が個人客からの買い取りを始めたこともあり、どう確保するか?が最大の課題となっている。

WWD:古着ディーラーなどプロからの買い付けは現在に至るまで行っていない?

村山:サプライヤーは個人客が100%だ。内訳は委託が6割、買い取りが4割。

WWD:委託販売は想像以上のアレルギー症状を生んだと聞いた。正直、われわれメディアにとっても、サファリは長らくアンタッチャブルな存在だった。

村山:おっしゃる通りで、“ここまで!?”というほどの拒否反応が出た。

WWD:その中で19年間スタイルを貫き、また店舗も増やした。

村山:現在、高円寺にはビンテージ古着の1号店、「ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)」や「ダブル アール エル(DOUBLE RL、RRL)」を扱うアメリカントラッドの2号店、イタリア物なども扱うドレス&革靴の3号店、3号店を増床して少し安価なアイテムを集積した3号店アネックス、アウトドア&ストリートの4号店の5店舗がある。またレギュラー古着を扱う、なない橋店が吉祥寺にある。実は、恵比寿にラグジュアリーブランド専門店を作ったこともあるが、すぐに閉店した。オールジャンルをフォローするのではなく、得意分野の精度を上げるべきと判断したからだ。

WWD:委託販売に対する風向きの変化を感じたのはいつ頃?

村山:3~4年ほど前だろうか。サファリでは委託主に一律、売り上げの85%を還元している。ヤフオク!やメルカリが手数料等を15%ほど取っているので、それを意識した数字でもある。かつてはジャンルやアイテムによって還元率を変えていたが、なるべく委託主に還元したいとの思いから今のシステムに落ち着いた。

WWD:委託主に手厚い理由は?

村山:古着は海外買い付けが主流だが、サファリではそれを一切していない。つまり、売りに来てくれる人がいなければ商売にならない。そのためスマホ用のシステムを開発して、販売状況を逐次分かるようにするなど、委託主の利便性を高めるための投資をしている。“こんなに予算を掛けていいのか?”と開発業者に確認されるほど、町の古着屋としてはがんばっている。

WWD:サファリのモットーを聞きたい。

村山:僕は、スペシャルなヒト・モノ・コトに会いたいからサファリを始めた。良い品を並べれば、良いお客さんが集まる。それは委託主も同じで、皆古着ファンなので、思い入れのある品を預けるなら信頼できる自分のお気に入りの店でとなる。

WWD:委託主を大切にするサファリにとってコロナの影響は?

村山:4~5月は持ち込み客が3割減った。また自粛期間中にデジタルに苦手意識のあった層がスマホでも売買できることに気付き、そちらに流れた。

WWD:サファリのEC化は?

村山:4月にEC制作サービスのベイス(BASE)を導入した。まさに救世主的活躍で、それまでEC化率はほぼゼロだったが、6~7月の売り上げの6~7割を占めるまでに急成長した。

WWD:最後に今後の目標について教えてほしい。

村山:古着の持ち込み客はもちろん、新客を増やしたい。そのためにはいっそうの認知拡大が必要で、そのためにユーチューブなど新たなデジタルツールの活用も考えている。

 ユーチューブへの参入や20代ファンによるバックアップ、ビンテージが投資対象となっていることへの危惧などについては、古着系ユーチューバーのゆーみん&きうてぃとの対談を近日公開予定なので、そちらを楽しみにしてほしい。

The post ビンテージ古着委託販売の先駆け、高円寺「サファリ」が逆風の中で進んだ19年 appeared first on WWDJAPAN.com.

ビンテージ古着委託販売の先駆け、高円寺「サファリ」が逆風の中で進んだ19年

 “あそこに行けばなんでもある”――うるさ方のオールドファンにもそう言わしめる古着店が東京・高円寺にある。それが「サファリ」だ。今やその名は海外にも伝わり、世界的ブランドのデザイナーやハリウッドスターが、サファリを目的に来日することもある。にもかかわらず、認知度は局地的だ。理由の最たるものは同店が委託販売店であるから。それゆえ、「WWDジャパン」をはじめ多くのファッション誌がサファリを取り上げることは、なかば“ご法度”とされてきた。しかしここ数年、メルカリなどによる個人間古着売買が日常となり、百貨店が古着店のポップアップイベントを開催、老舗アパレル企業がブランド古着店を傘下に収めるなど環境は激変した。逆風の中で歩んだ19年について、サファリを運営するフォーリーフの村山佳人社長に聞いた。

WWD:簡単にサファリの“自己紹介”をお願いしたい。

村山佳人フォーリーフ社長(以下、村山):2001年、僕が23歳の時に1号店をオープンした。今の1号店とは別の場所で、わずか7坪の店だった。

WWD:サファリといえば委託販売だが、オープン当初からこのスタイルだった?

村山:起業する際に信頼する先輩に相談したところ、「ビンテージを中心とするアメリカ古着は今後、絶対的に玉数(供給量)が減少する。だから安定的に国内で仕入れできる委託販売を選択すべきだ」と言われて決断した。当時の日本が、世界のビンテージ市場の中心地だったことも後ろ盾となった。代々木公園のフリーマーケットには今では博物館級のアイテムが、青空の下でビニールシートの上に並んでいた。

WWD:サファリの売れ筋アイテムは?

村山:「リーバイス(LEVI'S)」をはじめとするビンテージデニムが圧倒的だ。価値がいっそう高まりオーナーが手放さなくなったことで、供給が需要にまったく追い付かなくなった。原宿のベルベルジンなど有名古着店が個人客からの買い取りを始めたこともあり、どう確保するか?が最大の課題となっている。

WWD:古着ディーラーなどプロからの買い付けは現在に至るまで行っていない?

村山:サプライヤーは個人客が100%だ。内訳は委託が6割、買い取りが4割。

WWD:委託販売は想像以上のアレルギー症状を生んだと聞いた。正直、われわれメディアにとっても、サファリは長らくアンタッチャブルな存在だった。

村山:おっしゃる通りで、“ここまで!?”というほどの拒否反応が出た。

WWD:その中で19年間スタイルを貫き、また店舗も増やした。

村山:現在、高円寺にはビンテージ古着の1号店、「ポロ ラルフ ローレン(POLO RALPH LAUREN)」や「ダブル アール エル(DOUBLE RL、RRL)」を扱うアメリカントラッドの2号店、イタリア物なども扱うドレス&革靴の3号店、3号店を増床して少し安価なアイテムを集積した3号店アネックス、アウトドア&ストリートの4号店の5店舗がある。またレギュラー古着を扱う、なない橋店が吉祥寺にある。実は、恵比寿にラグジュアリーブランド専門店を作ったこともあるが、すぐに閉店した。オールジャンルをフォローするのではなく、得意分野の精度を上げるべきと判断したからだ。

WWD:委託販売に対する風向きの変化を感じたのはいつ頃?

村山:3~4年ほど前だろうか。サファリでは委託主に一律、売り上げの85%を還元している。ヤフオク!やメルカリが手数料等を15%ほど取っているので、それを意識した数字でもある。かつてはジャンルやアイテムによって還元率を変えていたが、なるべく委託主に還元したいとの思いから今のシステムに落ち着いた。

WWD:委託主に手厚い理由は?

村山:古着は海外買い付けが主流だが、サファリではそれを一切していない。つまり、売りに来てくれる人がいなければ商売にならない。そのためスマホ用のシステムを開発して、販売状況を逐次分かるようにするなど、委託主の利便性を高めるための投資をしている。“こんなに予算を掛けていいのか?”と開発業者に確認されるほど、町の古着屋としてはがんばっている。

WWD:サファリのモットーを聞きたい。

村山:僕は、スペシャルなヒト・モノ・コトに会いたいからサファリを始めた。良い品を並べれば、良いお客さんが集まる。それは委託主も同じで、皆古着ファンなので、思い入れのある品を預けるなら信頼できる自分のお気に入りの店でとなる。

WWD:委託主を大切にするサファリにとってコロナの影響は?

村山:4~5月は持ち込み客が3割減った。また自粛期間中にデジタルに苦手意識のあった層がスマホでも売買できることに気付き、そちらに流れた。

WWD:サファリのEC化は?

村山:4月にEC制作サービスのベイス(BASE)を導入した。まさに救世主的活躍で、それまでEC化率はほぼゼロだったが、6~7月の売り上げの6~7割を占めるまでに急成長した。

WWD:最後に今後の目標について教えてほしい。

村山:古着の持ち込み客はもちろん、新客を増やしたい。そのためにはいっそうの認知拡大が必要で、そのためにユーチューブなど新たなデジタルツールの活用も考えている。

 ユーチューブへの参入や20代ファンによるバックアップ、ビンテージが投資対象となっていることへの危惧などについては、古着系ユーチューバーのゆーみん&きうてぃとの対談を近日公開予定なので、そちらを楽しみにしてほしい。

The post ビンテージ古着委託販売の先駆け、高円寺「サファリ」が逆風の中で進んだ19年 appeared first on WWDJAPAN.com.

「紙カミソリ」は“成熟した技術”から誕生 貝印が部門横断メンバーで新たな開発に挑む

 1908年に創業した刃物メーカーの貝印はいま、次の100年に向けて新たなステージに向かっている。創業以来、刃物をはじめ、キッチン用品から医療用品まで1万点以上の商品を取り扱い、“気づけば貝印のアイテムを使っている”と日常生活には欠かせない存在だ。そんな中、今年の8月には先進的で大胆な広告が話題に。さらには、「紙カミソリ」の開発を手がけるなど新たな価値観を創出し、イノベーションを起こしている。

 「紙カミソリ」は、同社のSDGsに向けた取り組みを体現するモデルとして誕生した。開発には、部門を横断したメンバーが集結。なぜ、「紙カミソリ」だったのか。成熟した技術に新しい価値を与えることをモットーとする、プロジェクトリーダーの塩谷俊介・研究部次長に話を聞いた。

WWD:カミソリ市場の状況は?

塩谷俊介・研究部次長(以下、塩谷):いま、世界で1.8兆円、国内で400億~500億円の規模で、ここ数年の成長率はほぼ横ばいで推移しています(貝印調べ)。貝印のディスポーザブルタイプ(使い捨て)のカミソリは、男女共に国内トップシェア(19年9月~20年9月インテージSRIデータ)で幅広いユーザーに支持されています。

WWD:貝印は1930年代に日本初の安全カミソリの替刃製造に成功してから、同分野の商品開発を続け、安心・安全である刃物メーカーとしての存在感を放つ。

塩谷:創業110周年を越えたいま、企業としての変革期を迎えています。中長期計画で未開拓の新市場を創出する意味も込めて「ブルーオーシャンウェーブ」を打ち出したのですが、貝印に対して真面目で古典的なイメージを持たれているお客さまも多いため、新しい価値を創造する取り組みを始めました。そこで、カミソリという成熟した市場の中で、新しいカルチャーを生み出すべく、戦略の文字をなぞった「ブルーオーシャン“シェーブ”」という名のプロジェクトチームを発足しました。

WWD:塩谷次長がプロジェクトの発起人となり、第一弾となる「紙カミソリ」を開発した。

塩谷:研究・商品開発・デザインの3部門を横断した、次世代を担う30~40代のメンバー12人の有志が集い、通常業務と並行して開発に取り組みました。構想段階ではネタが多かったのですが、商談会で紙カミソリの原型となるコンセプトモデルを発表したところ多くの反響をいただき、開発することになりました。

WWD:なぜ紙だったのか?

塩谷:構想段階で、いつも清潔で快適さを提供する“1DAYカミソリ”のコンセプトを掲げていたので、サステナブルな観点を踏まえて紙を採用しました。それでも、耐水性のある紙でないと成り立たないので、最初は牛乳パックで試行し、徐々に発展させていきました。ただ、紙の専門家がいるわけではないので、紙のメーカーさんに声をかけるところからのスタートだったので苦労しましたね。現在は、環境に配慮した紙を使用していますが、将来的にはリサイクルも念頭に置いて、より環境にやさしいことができないか検討を進めていきたいと思っています。

デザイン面でも、持ち運びやすさを踏まえて薄さにこだわりました。紙で印刷ができるので、デザインの幅も広がり、デザイナーコラボやご当地のお土産用といった新しい販路を開拓し、機能面だけではなく、情緒的な側面でもアピールしていきたいですね。

WWD:どこで取り扱うのか?

塩谷:まずは来年の春、公式オンラインストアで販売します。新しい商品ということもあり、手探りな部分もありますので、お客さまからのフィードバックをもらいながら来秋の本ローンチに備えていきたいです。

WWD:貝印は脱プラスチックを通じてSDGsの達成に向けた取り組みを強化している。

塩谷:いま、時代の風潮としてサステナビリティが取り上げられていますが、もともと貝印のフレームワークとしてありました。1992年には植物原料から生まれた生分解性プラスチックを採用したカミソリを、96年には土中の微生物により分解されて自然に戻る「エコレ」を開発し、今も一部店舗にはなりますが現役で販売しています。

ただ、カミソリの刃は製造工程で高温の熱で処理をしているため、どうしてもCO2が発生してしまいます。2030年までにCO2排出量を半減にすべく、環境への押し売りではなくわれわれが継続できる取り組みを模索していきます。

成熟した技術に新しい価値を加える

WWD:塩谷次長は異業種を経て、17年に貝印に入社した。仕事をする上で大切にしていることは?

塩谷:これまでのキャリアも含めて、“新しい価値を世に出したい”という気持ちを持っていました。貝印は老舗であり、昔から形が変わらない商品を展開していますが、その“枯れた”技術に新しい価値を加えることに重きを置いています。ただ、既存品の品質を安定させることも重要であるため、技術の深堀と共に両輪で進めています。

WWD:今後のビジョンについて。

塩谷:カミソリは安い中国製品が台頭してきているので、日本で付加価値の高い商品を生み出していきたいですね。それはサステナブル含め、次の100年に向けたチャレンジだと思っています。お客さまに選んでいただける存在になれるよう、チャレンジを続けていきたいと考えています。

The post 「紙カミソリ」は“成熟した技術”から誕生 貝印が部門横断メンバーで新たな開発に挑む appeared first on WWDJAPAN.com.

アナタに若い友達はいますか? エディターズレター(2020年8月3日配信分)

※この記事は2020年8月3日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

アナタに若い友達はいますか?

 先日、とある学校で特別授業をさせていただきました。こんなご時世ですから、受講生の大半は画面越し。教室には10人足らずです。お題は、「ウィズコロナ時代、皆さんに期待すること」。新型コロナウイルスによって社会や業界がどう変わっているのかを話しながら、そんな中でも活躍している、受講生とほぼ同年代という、下のリンクの3人を紹介させていただきました。yutoriの片石クンがZOZOとタッグを組んだのは、その2日後のことです。

 授業のリアクションはトピックや学校によりますが、教室の数人からアツい質問を受け、安堵しました。別に“へりくだる”必要はありません。でも受講生の質問は、自分の感覚が若い世代にまだ響くことの証だとも思っています。

 連載を担当している菅付雅信さんにご紹介いただいた「カール・ラガーフェルドのことば」(河出書房新社)には、「一緒に写真を撮ろうと言ってくれる人が、若い人だと安心する」という言葉があります。ん~、毒舌風味ですが至言。「若い子が歩み寄ってくれる限り、俺はまだ大丈夫」。カール様も、そんなコトを考えていたのかもしれません。

 無論、年配者を斬りつけるワケではありません。でも、若者と交流できてない人は、頑張った方がいいのかもしれません(笑)。それは、自分をアップデートする一つの手段になるでしょう。月曜の朝から、結構重い質問をぶっ込みます。「アナタには、自分より結構若い友達がいますか?」。

 もし「いないよ。ヤバいかな?」と思う方がいらっしゃったら、ご連絡ください(笑)。若者とベテランの狭間を漂っている(つもりの)ムラカミが、生きのいい誰かを紹介させていただきます。yutoriの片石クンと、「フーフー」の高坂マールくんとは最近、取材などを通じてちゃんとお話させてもらいましたが、いずれも上の世代とちゃんとつながりたいと願っています。「いいオトナ、いるよ!」。そんなカンジで紹介させていただけると、嬉しいです(笑)。

FROM OUR INDUSTRY:ファッションとビューティ、関連する業界の注目トピックスをお届けする総合・包括的ニュースレターを週3回配信するメールマガジン。「WWD JAPAN.com」が配信する1日平均30本程度の記事から、特にプロが読むべき、最新ニュースや示唆に富むコラムなどをご紹介します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

The post アナタに若い友達はいますか? エディターズレター(2020年8月3日配信分) appeared first on WWDJAPAN.com.

教えて!パタゴニアさん 連載第1回 環境問題に取り組むことになったきっかけ

 サステナビリティ先進企業として知られるパタゴニア(PATAGONIA)。クライマー、スキーヤー、サーファー、カヤッカーであり鍛冶職人でもあるイヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard)が1973年米国カリフォルニアのベンチュラに創業しました。パタゴニアは環境や人権、社会の幅広い問題を、ビジネスを通じて解決する道を模索することで知られており、1970年代には環境団体の支援をはじめ、80年代には自社でのサステナビリティへの取り組みを本格化。90年代には、コットンをオーガニックコットンに切り替え、ペットボトルを再生したポリエステルでフリースを開発しています。今でこそ、多くの企業が取り組んでいることをずいぶんも前から行っていました。そんなパタゴニアのアクションにはヒントが多いはず――と考えて「WWDJAPAN.com」では「教えて!パタゴニアさん」と題して、パタゴニアの担当者に今知りたい疑問を聞く連載をスタートします。でもその前にー―プロローグとしてそもそもこうした問題に取り組むことになったきっかけは何だったのかをひも解きます。

 その歩みは、パタゴニアの前身、クライミングギアの製造を始めたころにさかのぼります。1957年、シェイナード氏は自身や仲間のためにクライミングの道具を鍛造する小さな会社、シュイナード・イクイップメント社を立ち上げました。きっかけは、繰り返し使用できるギアを作ろうと思ったことでした。当時、大きな岸壁へのクライミングに挑むときは何百本ものピトン(岩を登るときにクラックと呼ばれる割れ目にハンマーで打ち込み、かぎの役割をするもの)という金属製の道具が必要でしたが、当時のものは軟鉄製。一度ハンマーで打ち込んだら引き抜けず、岩壁に放置したまま降りるしかありませんでした。シェイナード氏は独学で鍛造を学び始め、刈り取り機についていた刃で最初のピトンを作りました。このピトンのうわさはすぐに広まり、仲間からの注文が殺到しました。

 シュイナード・イクイップメント社は1970年ごろには米国最大のクライミングギアのサプライヤーになっていたそうです。しかし同時に、そのギアが岩を傷つけていました。脆いクラックでは、ピトンを打ち込むときや回収する時に繰り返しハンマーでたたくため、自然のままだった岩が破損していたのです。シェイナード氏は2、3年前の夏には無垢だった岩が激しく変容しているのを目の当たりにし、ピトン事業をやめる決断をしました。これが、パタゴニアが長年にわたって歩む環境配慮の道を歩きはじめた瞬間でした。

 ピトンの代替品として、ハンマーを使用せずに手でクラックに押し込むことができるアルミ製の「チョック」を製造し、72年にシュイナード・イクイップメント社初のカタログに掲載して使用方法を紹介しました。このカタログの冒頭には、これまで製造してきたピトンが環境に及ぼす悪影響を紹介し、「クリーンクライミングに関するエッセイ」としてクライマーのダグ・ロビンソン(Doug Robinson)氏がチョックの使い方を説きました――「キーワードは“クリーン”。プロテクションとしてナッツとスリングだけを使用して登ることをクリーンクライミングと提唱したい。クライマーにより損なわれていない岩はクリーンであり、ハンマーでピトンを繰り返し打ち込んだり、引き抜いたりせず、次のクライマーがより自然な形で岩を経験できるためクリーンであり、またクライマーのプロテクションがほとんど痕跡を残さないという理由でクリーンである。クリーンとはつまり岩の形状を変えないことであり、人間が本来のクライミングに近づく第一歩でもある」。

 シェイナード氏は会社の運営を社員に任せて、製品のフィールドテストを行い、新しいアイデアを持ち帰るため、ヒマラヤや南米の極地環境で自社製品の摩耗試験を繰り返すようになりました。その過程で環境と社会の荒廃を目にするようになり、人口増加で森や草原が消えてゆくアフリカの状況、地球温暖化により氷河が解け始めている様子、アメリカとの軍事戦争に負けまいとロシアが自国の大半の自然を破壊している話などを会社に持ち帰りました。

きっかけは地元ベンチュラ・リバーの環境回復

 そして、パタゴニアが環境団体の支援を始めたのは70年代初めのこと。シェイナード氏が友人と地元の映画館にサーフィン映画を観に行ったときに、上映後に若いサーファーが観客に「市議会の公聴会に出席して、市当局の計画するベンチュラ川河口の水路計画と開発に反対の発言を行ってほしい」と呼びかけました。

 そこで数人の仲間とともに公聴会に出て、「この地域で最高のサーフポイントであるベンチュラ川河口の、いい波が失われるかもしれない」と抗議しました。シェイナード氏たちの頭にもおぼろげながら、ここがスチールヘッド(降海型ニジマス)の一大生息域だったという記憶がありました。実際に40年代には年間4000~5000匹ほどが遡上していましたが、その後ダムが2つ建設されたことで水の流れが変わり、雨の多い冬場以外は河口から流れ出すのは汚水処理施設からの排水だけになっていました。

 公聴会では、「川はもう死んでおり河口の流量を増やしても鳥などの野生生物やサーフポイントの状態が変化することはない」と市側の専門家複数名が証言しました。すると、若い大学院生のマーク・キャベリが、川岸で撮影した写真のスライドを上映し、ヤナギに営巣する鳥や水生のマスクラット、ミズヘビ、河口域で産卵するウナギなどの様子を次々に映し出しました。銀化したスチールヘッドが映ったときには、皆が立ち上がって歓声を上げました。“死んだ”はずの川に、数十匹のスチールヘッドが産卵に来ていたのです。結果、開発計画は撤回されます。シェイナード氏はマークに机と私書箱、若干の資金を与え、ベンチュラ・リバーを守る戦いを支援することにしました。

 この活動で、「草の根の活動で成果をあげられること」と「傷んだ生息域も努力次第で回復できること」を学びました。この経験から、シェイナード氏は動植物の生息域を守る活動やよみがえらせる活動をしている小さな団体に寄付をするようになります。86年には毎年利益の10%を寄付すると宣言。その後支援額を増やし、売上高の1%か税引前利益の10%いずれか多い方を寄付するとして、今に至ります。

 全米規模のキャンペーンに乗り出したのは88年。ヨセミテ渓谷の都会化を避ける基本計画を支援しました。その後はサケや川の再生を支援、遺伝子組み換え作物に反対、ワイルドランドプロジェクトを支持、アルプスに汚染物質をまきちらすトラックの通行に反対するなど、さまざまなキャンペーンを展開し、環境問題への関与を深めてゆきます。そして、社外の危機だけでなく、自社でもサステナビリティへの取り組みを始めます。

 84年には古紙のリサイクルを開始し、カタログも古紙配合率の高い再生紙に切り替えました。“シンチラ・フリース”の素材として使うリサイクルポリエステルを、ウェルマン社(Wellman)やモルデン・ミルズ社(Malden Mills)と共同開発を進め、1リットルのペットボトル25本から“シンチラ・フリース・ジャケット”1枚を作れるようにするなど、先駆的な取り組みを進めました。

教えてくれた人:太宰初夏(だざい・ういか)/コミュニケーション& PR担当:神奈川県出身。植樹活動を行うNPOでボランティアを行いながら八王子や神田のアウトドア用品店で勤務。その後カナダに留学。留学時に「パタゴニア」のバンクーバー店のゼロウエイストマーケットの取り組みに刺激を受けて、帰国直後の2017年、パタゴニア日本支社へ入社。好きなアウトドアアクティビティはトレイルランニングと山歩き。自身で行うサステナビリティへの取り組みはマイボトル、マイバッグ、カトラリーを持ち歩くほか、植樹ボランティアも行っている

The post 教えて!パタゴニアさん 連載第1回 環境問題に取り組むことになったきっかけ appeared first on WWDJAPAN.com.

嘘がないから、アスリートは影響力を高めているのだと思う エディターズレター(2020年9月29日配信分)

※この記事は2020年9月29日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

嘘がないから、アスリートは影響力を高めているのだと思う

 大坂なおみ選手の行動やメッセージ発信がたびたび話題になっていますね。私もインスタグラムをフォローしており、新しい写真が上がるたびに「応援しています!」と心でつぶやきながら「いいね」を押しています。BLMのスローガンを記したTシャツ姿で登場したり、犠牲者の名前を書いたマスクを連日着用して勝ち続けたりと、人種差別に対する抗議を堂々と発信する姿は時に批判の対象にもなっていますが、それ以上にポジティブなムーブメントを起こしています。自身の影響力の大きさを十二分に理解した上で、起こす行動を尊敬します。

 アスリートの社会的な影響力は年々高まっているように見えます。もちろん、以前からトップアスリートが着用するシューズやウエアはマーケットを盛り上げてきましたが、今はマーケットにとどまらず、一般の人たちの行動に影響を与えるアクティビストとしての側面が強まっていると思います。

 なぜだろう?それは彼らの仕事に「嘘がないから」だと私は思います。彼らの仕事は言うまでもなくスポーツです。鍛え上げ、全力の姿を見せ続け、そして勝ち続けること。その結果があってこそ、言葉に説得力が生まれます。嘘などつきようがない、実に過酷な世界ですよね。でもだからこそ、フェイクニュースが溢れて何が本当か見えにくかったり、耳に刺激的な強い言葉だけが先行したりする今の世の中で、彼らの言葉は信頼され、ファンはヒーローと同じものを自分も身につけたいと思うのでしょう。

 大坂選手が全米オープンで優勝した直後に「ナイキ」がインスタグラムの「NIKEWOMEN」というアカウントで出したお祝いメッセージがよかった。

 「You won on your own, but you played for many.」
 「あなたは独力で勝利をつかんだ。大勢のために闘いながら」

 嘘がない。これはとても大きな価値なんだとあらためて思います。ファッションはこのこととどう向き合えるでしょうか?

IN FASHION:パリコレもストリートも。ジュエリーもインテリアも。今押さえておきたい旬なファッション関連ニュースやコラムを「WWDジャパン」編集長がピックアップし、レターを添えてお届けするメールマガジン。日々の取材を通じて今一番気になる話題を週に一度配信します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在9種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

The post 嘘がないから、アスリートは影響力を高めているのだと思う エディターズレター(2020年9月29日配信分) appeared first on WWDJAPAN.com.

即完売のコスメブランド「リーカ」を手掛けるヘアメイク松田未来の“共感力”とは?

 コロナ禍の巣ごもり需要で“おうち美容”が盛り上がっているが、ネイルも同様に、ジェルネイルからセルフネイルに移行する人が増えており、ネイルポリッシュが再び注目されている。SNSでは大手メーカーに並び、ヘアメイクアップアーティストの松田未来が今年2月に立ち上げた「リーカ」のネイルが話題を集めている。彼女の人柄やセンスに共鳴するファンが多く、入荷したら即完売といった人気ぶりだ。さらに、9月に発売した自身初となるエッセイ本も好評を博している。ヘアメイクをはじめブランドプロデューサー、ラジオのパーソナリティーと幅広く活躍する彼女の仕事のあり方や書籍について話を聞いた。

WWD:ヘアメイクアップアーティストを志したきっかけは?

松田未来(以下、松田):中学生の頃に初めてパーマをかけた時の気持ちが忘れられず、今の仕事につながっています。可愛い髪型になった自分を見たあの瞬間、外見も内面も自信がついて自分のことを好きになれた。その経験が原点にあり、美容を通じて希望を持てる人が増えたらどんなに素敵なんだろうと美容の道に進みたいという気持ちが募り、専門学校卒業後に就職したサロンには11年勤務しました。そこではディレクターも店長も経験させていただいたのですが、もっと違う形の美容で、世の中に“還元したい!”と思い、ヘアメイクアップアーティストになる決意をしました。

WWD:ヘアメイクアップアーティストとしてのキャリアを積む中、今年2月には自身のコスメブランド「リーカ」を立ち上げ、瞬く間にSNSで話題に。ネイルは入荷すると即完売になるほど人気を博しているが、なぜ最初のプロダクトがネイルだったのか?

松田:それまでジェルネイルをしていたのですが、ジェルネイルを落としては、乾燥している爪にまた色を塗ってを繰り返していたので、素の爪がきれいな女性に憧れていました。そこで、ネイルサロンに行ってすっぴんの爪を整えてもらったんです。甘皮を処理し、爪の形を整え、透明のベースコートを塗っただけの自分の小さなパーツなのに、自信がもてました。

ブランドを立ち上げる際は、本来はわかりやすいアイテム、例えばブランドを象徴するアイテムとしてあげられるようなリップからがセオリーだと思っていました。ただ、自爪を整えた、あの時の感動が根幹にあったため、爪が美しいということはパワーがあるということを提案したかったのがきっかけです。

WWD:こだわったところは?

松田:“わたしが好きなこと”をテーマにしたカラーネームをつけたところです。容器にもこだわっているのですが、入手が難しいので、完売してから再販するまでにお時間をいただいている状態です。

WWD:ヒットしている理由をどのように捉えているか?

松田:タイアップもプロモーションもしていなく、タレントの方に依頼して拡散したわけでもないので、モノが売れない時代なのに売れているのはありがたいことですね。私のSNSも特徴的なフォロワー数を抱えていないので……。ただ、フォロワーの方と信頼できる関係性を築けているからかもしれません。

私自身、嘘がつけない性分なので、インスタグラムでPRの依頼があっても受けていません。自分が本当に良いと思ったモノを忖度しない紹介の仕方をしているので、共感していただけているのだと思います。私が紹介するコスメにフォロワーの方が考えてくれた#ミラマドコスメとタグをつけてみんなでシェアしてくれているのも嬉しいですね。そういったコミュニケーションの場があるので、ブランドを立ち上げたときにも、私が本当に作りたいと思っているんだなと感じてもらえたのだと思います。

WWD:ブランドデビューを果たし、さらに9月には初のエッセイ本を発売した。どういった内容か?

松田:講談社が運営していた「ホリックス」(現在サービス終了)で連載していたコラムを編集した内容になっています。「明日になるのが楽しみ」「私って、いいじゃん!」と思えるようなテーマを取り上げていた連載をベースにしていますが、美容論だけではなく、仕事をする上で感じたことや仕事柄で身についたコミュニケーションの力なども収録しているので、男性にもぜひ読んでいただきたいです。季節ごとにそれぞれのテーマに沿ってカテゴライズしているので、読者の皆さんが好きなところから読んで楽しんでいただけたら嬉しいです。装丁も控えめなデザインにしているので、最近元気がない子や忙しいあの人など相手のことを想像しながら、気使いの一つにギフトとして使ってもらえたらなと。いつかこの本をドラマ化するのが夢です(笑)。

WWD:ヘアメイクをはじめ、ブランドプロデューサーやアパレルコラボ、執筆、さらにはラジオのパーソナリティと幅広く活躍している。

松田:ラジオはタイミングよくお声がけいただいて。内容も、「未来さんが楽しめる番組だったらいいよ」と任せてもらえたので、リスナーの方の好きなものが増えたり、明日から取り入れてみようかなと思えるような話をしています。仕事柄、コスメブランドのキャラバンでブランドの歴史や商品の素晴らしさを聞くことが多く、これは私だけ聞くのはもったいない、全国に発信した方がいい!と思い、ゲストにPRの方を呼ぶこともあります。自分がワクワクしたり楽しいなと思えることは、どんどん皆さんにお伝えしたいですね。

WWD:今後チャレンジしたいことは?

松田:「リーカ」のアイテムを拡充したいです。“こういうのが欲しいのにどこにも売っていない!”というアイテムを作りたいと思っています。日々、初心忘れるべからず、自分が作りたいもの、お客さまにとって良いものとは何かを考えながら、あぐらをかかないようにしたいですね。長くずっと愛されるようなブランドに育てていきたいです。

The post 即完売のコスメブランド「リーカ」を手掛けるヘアメイク松田未来の“共感力”とは? appeared first on WWDJAPAN.com.

仕事が絶えないあの人の、“こうしてきたから、こうなった”コロナ禍でさらに注目の下地専門ブランド“ヌーディモア”泉祥子編

 転職はもちろん、本業を持ちながら第二のキャリアを築くパラレルキャリアや副業も一般化し始め、働き方も多様化しています。だからこそ働き方に関する悩みや課題は、就職を控える学生のみならず、社会人になっても人それぞれに持っているはず。

 そこでこの連載では、他業界から転身して活躍するファッション&ビューティ業界人にインタビュー。今に至るまでの道のりやエピソードの中に、これからの働き方へのヒントがある(?)かもしれません。

 新型コロナウイルスの影響による在宅勤務や外出自粛の増加にともない、美容に対する意識にも変化が生じています。「パナソニック(PANASONIC)」が10月に発表した調査によると、在宅勤務でメイクをしない時間が増加した女性は70%以上にのぼるといいます。“薄化粧”や“メイクがマスクに付かないこと”に関心が高まる今、改めて注目される“化粧下地”。今回は、下地専門ブランド「ヌーディモア(NUDYMORE)」プロデューサーの泉祥子さんに登場いただきます。飲食業界から化粧品業界へ転身を果たした泉さんのキャリア変遷に加え、不採算ブランドという立ち位置から“下地専門ブランド”として存在感を高める「ヌーディモア」の魅力をひも解きます。
※在宅勤務を行っている20~40代女性100名を対象にスキンケアについての調査を実施

WWD:化粧品に携わる前のお仕事から教えていただけますか?

泉祥子(以下、泉):山口県にある実家が喫茶店を営んでいたこともあり、飲食に関わる仕事に興味があったんだと思います。大学進学時に上京をし3年生のころ、渋谷にあるクリエイターやミュージシャンが集まる、“ザ・東京”とでもいうようなダイニングカフェでアルバイトをするように。しばらくしてお店の常連でもあったアパレルブランドの社長から、社内に飲食部門を立ち上げるため人を探していると聞き、「泉さん、やっちゃいなよ!」という軽いノリから、インターンをすることになりました。

WWD:具体的にはどのようなお仕事だったのでしょうか?

泉:レストランのメニュー開発から内装、制服決め、サービススタッフの研修まで何でもしましたね。とはいえ私自身が経験のない“ひよっこ”ですから、外部の方の協力を仰ぎながら全体のディレクションをするということが主な仕事。カメラマンや建築家、グラフィックデザイナーなどプロの仕事を間近で見ることのできる貴重な機会でした。何よりも五感をフル活用しながら、形のないコンセプトをゼロから形にしていくことは刺激的で、作る側と受け取る側(=お客さま)がいて初めてその空間が完成するということにも興奮しました。大学4年になり、就職活動もしていて内定までもらっていたのですが、結局そのまま飲食業界に進むことに決めました。

WWD:やりがいを感じていたのですね。

泉:はい。しかし3年半ぐらい経ったころ、燃え尽きてしまいました。立て続けに3店舗オープンし、それぞれの店舗のマネジメントや売り場でのサービスなど業務は多岐に渡っていたんです。朝8時半から深夜まで働き、タクシーで帰るような毎日でした。あるとき「もうやり切った!」と仕事を辞めて、ヨーロッパ旅行に行きました。半年ほどゆっくりしていたのですが、そろそろ家賃の支払いもやばいかも——そう思っていた矢先に友人から声をかけてもらい、化粧品会社でアルバイトをすることになりました。

その会社はベースメイクとスキンケア製品が主力で、スタッフによる販売力が売り。社内に商品開発といった部署はありませんでした。ほとんどの場合、創業以来のパートナーであったOEM (相手先ブランド生産)企業が企画からマーケティングまで行い、完成した商品を採用するというやり方でした。ほどなく社内から「お客さまのニーズに合った商品を作りたい」という話があがり、新たに商品部ができたタイミングで私もメンバーになったんです。25歳ごろですね。

WWD:元々美容の仕事への興味を持っていたのですか?

泉:いや、なかったです(笑)。初期メンバーは社長、秘書、私のみで、2カ月に1商品を出すということだけが決まっていました。商品開発のイロハも分かりませんし、大きな金額分の仕入れをするという緊張感ものし掛かってきました。OEMの方々には、文字通りゼロから教わりました。原料、成分、容器製造など化粧品作りに関わるすべての現場を見させていただきました。「原料だけでもこんなに取引先があるんだ」「ボトルのこのパーツを作る工場はまた別なのか」と驚きの連続。現場のプロの方を目の当たりにして、職人さんってクリエイティブだなと心底感じました。目には見えないコンセプトを形にするコスメ開発の作業ってレストランと同じだ!と気付いたんです。そうなるともう“異業種に転身した”という感覚や不安は消えて、お店づくりをしていたころのワクワク感でいっぱいになりました。

初めて手がけた商品での挫折から得た学び

WWD:初めて携わったのはどのようなアイテムだったのでしょう?

泉:美容液のリニューアルでした。愛用者の方々の信頼を損なわずに期待を超えなくちゃ!という大きなプレッシャーがありました。試行錯誤の末生み出した新美容液は既存品に比べて、原料や効果感、使用感も向上させましたし「なんならパッケージもちょっとおしゃれにしたぞ!」と満を持して発売。それが、全然売れなかったんです。

ここではっきりと分かったのは、お客さまが求めているのは効果や数値といったスペックだけではないということ。お客さまにとって化粧品は使ってきた歴史や経験と切り離せないもので、その延長線上に置いておきたいと思ってもらえる商品でないと価値がないということを思い知らされました。効果効能だけではない商品の魅力というのは、化粧品独特の嗜好性だと感じましたね。商品の“人格”をどうやって形作って、息を吹き込むかが要なんだ、と。これは実際にコスメをゼロから作ってみて分かったことでした。

WWD:なるほど。そのご経験と“情熱”をどのように形にされていったのでしょうか?

泉:この化粧品なしには人に会えない!と思うぐらい自分がのめり込める製品を生み出そう、そして納得するまでは商品を出さない——そう心に決めました。とはいえ2カ月に1度のペースで新商品を出さなくてはないので、どうしてもお尻が決まっています。「間に合わない」も「まぁいいか」も許されません。自分がとことん惚れた製品ならきっと悩みや年代が違ってもお客さまに愛してもらえるポイントがあるんじゃないかと信じて、試作品を何度も作り直しました。いざとなったらメーカーに入り浸って細かな調整を重ねるという日々でした。

WWD:それはOEM側との信頼関係があってこその技ですね。

泉:OEMからしたら大迷惑ですよね(笑)。自分の思いを製品に落とし込むために大切なことは、関わるすべての人を尊敬し、その人たちに愛されるかどうかだと思うんです。「お前が言うならしょうがない」と思っていただけることが、もう一踏ん張りに効いてくるんです。だからこそ、メーカー側のミスによってトラブルが発生したときは、普段の恩返しの機会と捉えて「大丈夫です!こちらでなんとかしますので!」と責めない姿勢でいることを心掛けました。結局、1人では何もできないですから。少しずつですが売り上げが伸び、部署は10人のチームになっていきました。

約10年間この仕事に携わり、その間に商品開発室長を経て役員までに。しかしずっと“プレイヤー”でいたかった私は、最終的に業務委託の契約にして、自分の会社を作ることにしたんです。

不採算ブランドを“下地専門ブランド”へ

WWD:そこで「ヌーディモア」に出合うのですね。

泉:はい。14年に立ち上げたトオンという会社では化粧品プロデューサーとして、企業の製品開発やブランディングを手掛けていました。そのうち、大手ドラッグチェーンの子会社が経営するコスメブランドから相談を受ける機会があって。「98年のデビュー以降、テコ入れもしておらず不採算。売り先もなくどうしよう」と。そのブランドが「ヌーディモア」でした。デビュー当時は人気メイクアップアーティストのプロデュースブランドということが売りだったけれど、契約はすでに終了。ただ販売だけを続けている状況でした。

売り上げを見ると確かにひどい数字でしたが、全体の7割が2種類の化粧下地によるものだったんです。スキンケアからファンデーション、アイシャドウなど70近い商品数の中で、リピートと口コミで下地だけが売れ続けている。それって逆に強みになるのでは?——そう感じた私はブランドごと譲り受け、16年に新たに「ヌーディモア」の会社(「クチュール」)を立ち上げました。

WWD:そこからどのように立て直されたのでしょうか?

泉:購入履歴やお客さまの声に耳を傾けると、やはり下地への支持が圧倒的。ここで、前職の“美容液リニューアル大失敗”の経験が生きました。ブランドの価値って作り手である私たちのものではなく、お客さまのもの。だからこそ「そうだよね、『ヌーディモア』といえば下地だよね」——そう感じてもらいながら、さらに愛されるブランドにしたいと考えたんです。

下地に特化するためにまず、下地以外のアイテムのほとんどを廃盤にしました。看板アイテムである下地“ブライトンカラー”と“ビューティヴェール”の基本設計は、ほぼデビュー時のまま。私が初めて「ヌーディモア」の下地を使用したとき、薄膜のヴェールなのに確実にトーンが上がる仕上がりに感動したんです。塗っているのか分からないようなスキンケアに極めて近い下地が多いなか、手応え感のある「ヌーディモア」は新鮮でした。パッケージも変えず、ロゴだけ変えているんですよ。

WWD:“変えない”ということも大きな決断だと思います。

泉:98年の誕生から生き残っている商品というのは本質がはっきりしている証拠。だからこそ商品の“骨格”はそのままに、製法の技術や原料のクオリティーを常に更新するようにしています。

下地2種を混ぜてアレンジしながら使用できるということも後から知ったんです。販売履歴を見てみると、2つの下地の同時購入が最も多かった。コールセンターの人に聞いてみたら、「ご愛用者さまは、質感と仕上がりの異なる2つの下地を混ぜて使っているんですよ」と。こんなにも下地が愛さているブランドは他にない——その思いで“日本初の下地専門ブランド”というコミュニケーションを掲げたわけですが、それがしっくりきていたのかなと今、実感しています。

WWD:コロナ禍の“マスクメイク”で下地がさらに注目されているように感じます。

泉:4月の緊急事態宣言以降、下地の昨年対比は約126%と伸びています。特に広告をしているわけではないので、口コミを見た新規のお客さまが増えている印象です。下地の市場は、ファンデーションの7分の1程度といわれているんです。5年前は“下地を使いましょう”という啓蒙活動していたくらいですから。

在宅勤務の増加でファンデーションをしっかり塗る機会が減ったり、マスクを着けるとメイクが崩れるからという理由でベースメイクを見直した方も多いと思うんです。また、「自分に必要なものって何だろう?」と立ち止まって考えた時に“隠す”や“盛る”ではないメイクの価値観に気付いた方も多いのかもしれません。自分らしさを生かしながらも気になるところはカモフラージュしたい——その役割は下地が得意だと思いますし、これからもそんな気持ち寄り添えるブランドでありたいですね。

WWD:飲食業界での経験が生きていると感じることはありますか?

泉:レストランビジネスもコスメも嗜好品=人生を豊かにしてくれるものだと信じています。食の体験で心揺さぶられたことからインスピレーションを受けることもあります。例えばクレンジング料“カウンセリング クレンズ”の開発で目指したのは、お粥でした。1日頑張った肌をリセットするクレンジングこそ、肌に乗せたときにホッとして心にもじんわりと染み渡るような優しいテクスチャーにしたかったんです。もちろん化粧品ならではの専門的な用語を使うこともありますが、五感に作用するような製品作りやコミュニケーションの方法も大切にしています。

WWD:今後、力を入れていきたいことはありますか?

泉:つい先日まで国立北京中医薬大学の日本校に通い、中医学と薬膳の勉強をしていました。中医学って、陰陽のバランスが大切でプラスがいいわけでもなく、マイナスが悪いわけでもなく自分なりの良いゼロ地点(ベース)があるという学問なんですね。肌を爆上げする!とかそういうことではなく、その人にとってのベストのベースを見つけてあげたいという「ヌーディモア」の考えと通じるものがあるように感じました。中医学の勉強を続けながら、インプットしたものを製品としてアウトプットしていけたらと思います。

WWD:泉さんにとって仕事とは?

泉: 呼吸したり、ご飯を食べたりすることと同列かもしれません。生きていることの一部であってプライベートの中に仕事がある、という感覚ですね。私は集団行動がめちゃくちゃ苦手で学生時代の通信簿では協調性の項目が「1」でした。化粧品会社に10年もいたのに、社長と秘書以外とは一度もランチに行かなかったぐらいですから(笑)。そんな私でも、好きなことや得意なことを見つけて楽しく働いてきて今があります。コロナの影響もあり、働き方はますます多様になって肩書きに囚われずに働ける環境は加速していくと思います。自分に合った環境さえ作ることができれば、やりがいを感じながら働けるんじゃないかな。

The post 仕事が絶えないあの人の、“こうしてきたから、こうなった”コロナ禍でさらに注目の下地専門ブランド“ヌーディモア”泉祥子編 appeared first on WWDJAPAN.com.

「今年こそロングブーツが売れる」と言われ続けてはや数年 20-21年秋冬は本当に売れている!

 「今年の冬こそロングブーツが売れる……!」「ロングブーツのトレンドが戻ってくる……!!」。そう言われ続けて(弊紙編集部も言い続けて)はや幾年。毎年、「やっぱり今年もダメだった……」と失意のうちに終わってきたロングブーツが、2020-21年秋冬は本当に復活している。渋谷や原宿などの街を歩いていて、ロングブーツ姿の若い女性を見掛けたという人も少なくないはず。冬が深まるにつれ、街にさらに広がりそうだ。

 原宿で声を掛けた20代の女性は、「H&M」で今年買ったという膝下丈のブーツを、韓国ECで買ったテーラードジャケット、「ザラ(ZARA)」のミニスカートとコーディネート。彼女のように、ミニ丈のスカートやワンピースとロングブーツを合わせるのが王道のスタイルだ。ロングブーツも久々に見るが、ボトムスのトレンドも長いことミディ~ロング丈が続いていたため、ミニスカートやミニワンピースは新鮮。スクエアトウの黒いブーツを履いた20代の女性も、同様にミニ丈のボトムスとブーツを合わせていた。ブーツは 「カスタネ(KASTANE)」で今年購入したという。

 応用編として、スリムパンツをロングブーツにインする着こなしも。美容系の専門学校生だという19歳の女性は、「マウジー(MOUSSY)」のスクエアトウのロングブーツにブラックジーンズの裾をインして、シャープなスタイリングに。彼女たちが履いているような、筒周りの太いゆったりシルエットが主流ではあるものの、ストレッチ素材でぴっちり足に沿うニーハイブーツ姿も街ではちらほら見掛ける。

 店頭からもロングブーツ好調の声は聞こえてくる。シューズとバッグの専門店「ダイアナ(DIANA)」では、「8月からカタログやSNS、店頭でロングブーツを打ち出してきた結果、9月末から少しずつ売れ始め、10月に入り例年を超える売り上げにつながっている。特に35歳以下の若い客層の購入が多い」と広報担当者。1点が爆発的にヒットしているというより、さまざまなデザインが売れているという。「(ミニ丈ボトムスとのコーディネートはもちろん)ロング丈のボトムスと合わせてもさまになるような、ルーズシルエットのブーツ」が売れ筋商品の共通点で、秋口の好調を受けて急遽追加生産を決めた商品もあるという。

 「アプワイザー・リッシェ(APUWEIER-RICHE)」「リランドチュール(RIRANDTURE)」など、20~30代を中心に人気のウィメンズブランドを手掛けるアルページュでも、ロングブーツがヒット中。「ミニ丈のボトムスとブーツという組み合わせだけでなく、ロングスカートとロングブーツのスタイリングも、顧客の間で浸透しつつある」(アプワイザー・リッシェ広報担当者)、「ミニのティアードワンピースとロングブーツの組み合わせが現在店頭で好評。春物でも、まだまだ寒い1月投入分ではミニボトムスとロングブーツのスタイリングを推していく」(リランドチュール広報担当者)という。

 ダイアナによれば、前回ロングブーツが大ヒットしたのは「2000年代前半」までさかのぼる。ここ数年はストリートムードを背景に、冬の足元といえばサイドゴアなどのショートブーツやスニーカーが主流だった。トレンドがストリートからエレガンスに回帰する中で、単価の高いロングブーツ復活への期待は、この1~2年ファッション業界内で特に上昇。19-20年秋冬は「セリーヌ(CELINE)」がロングキュロット×ロングブーツのスタイリングを仕掛けていたこともあって、期待は最高潮レベルにまでに高まっていた。しかし、冒頭でも書いた通りリアルクローズのマーケットでは不発。街では今もショートブーツやスニーカーの着用者の方が多いが、今年、来年とロングブーツが浸透していけば、10年超ぶりのヒットも夢ではないかもしれない。

The post 「今年こそロングブーツが売れる」と言われ続けてはや数年 20-21年秋冬は本当に売れている! appeared first on WWDJAPAN.com.

#敦子スメ「新月・満月」ノート リフレッシュ&再スタートのタイミングのさそり座新月(11月15日)

 この連載では、新月・満月の流れを最大限に引き出すためのサポートをしてくれるコスメやインナーケアアイテムも紹介していきます。第23回は11月15日の新月とおすすめコスメについてお伝えします。

今回の新月(11月15日)はさそり座

 9、10月は行動の星、火星や連絡・交通・コミュニケーション の星、水星が逆行していた影響もあって、予定が狂ったりなかなかタイミングが合わなかったり、進めようとしていたことにブレーキがかかっていた……なんて人も多いかもしれません。普段が車の流れがスムーズな高速道路だとしたら、この時期は料金所の辺りで渋滞しているような状態。ちょっと立ち止まることで見えてきたものや気がついたこともあるかもしれません。

 世の中でもさまざまな変化や出来事がありましたよね。その逆行が終わって先週からいろんなことが動きはじめてきた、流れを取り戻しスッキリしてきた……なんて人も多いのではないでしょうか。今回はそのモヤモヤゾーンを抜け出してリフレッシュ&再スタートするというタイミングの新月です。2020年はいろいろありましたが、そろそろ1年のまとめの時期でもありますし、来年に向けて気持ちを切り替えたいところ。

 新月の起こるさそり座について少し説明します。さそり座は深い情熱や底力を内に秘めた星座として伝えられています。他者との深い結び付きを好み、相手も自分も変わっていくような“変容”のエネルギーに満ちた星座と言われ、普段表に出す感情は少なく一見静かに見えますが、内面はパワフルで、忍耐力や集中力の高い星座として知られることも。体の部位としては内分泌系やホルモン、生殖器系に関係が深いとされています。そんな今回の新月のテーマは“潤い”。折しも乾燥が気になる時期ですよね。「水の星座」に分類されるさそり座の新月は、体を内側から潤わせるアイテムをご紹介します。

今回の新月コスメ

 「シンプリス(SIMPLISSE)」の“センシュアル ネンマク ケア”は飲むことで口内やデリケートゾーンの潤いをサポートするというサプリメント。栄養豊富なスーパーフードのシーベリーやアグアヘから抽出したオイルなど8種類の成分を厳選し作られているそう。近年エイジングケアやホルモンケアとして「内側の乾燥を補うこと」も注目されています。「なんだか心身の調子がよさそうな人」がヘルシー美人の秘訣。ぜひチェックしてみてください。


 もうひとつは「アムリターラ(AMRITARA)」 の水“オージャス”。水は人間の体をほぼ作り上げている成分といっても過言ではありません。この“オージャス”は名水の郷“大分県日田”の美しい山々に囲まれた地の地下約700mからくみ上げられたミネラル温泉水。みずみずしくすっきりとした味わいが特徴です。普段飲んでいるお水を見直してみることもインナーケアの第一歩かもしれません。


福本敦子(ふくもと・あつこ)/フリーランスPR・美容コラムニスト:コスメキッチンに14年間勤務後、現在はフリーランスPRとして活動するかたわら、ビューティコラムニストとしてイベント、SNSなど多方面で活躍。オーガニックに精通した知識を武器に、ライフスタイルに寄り添った独自のオーガニック美容論が、著名人やエディターをはじめ各方面から大人気。「#敦子スメ」は「読んだ瞬間試したくなる」と多くの反響を呼び、紹介した商品の欠品や完売も多数。2019年秋、初の書籍となる「今より全部良くなりたい 運まで良くするオーガニック美容本 by敦子スメ」を出版。発売前に増刷が決まるなど話題を呼んでいる。旅を愛し、占星術にも精通 instagram:@uoza_26

The post #敦子スメ「新月・満月」ノート リフレッシュ&再スタートのタイミングのさそり座新月(11月15日) appeared first on WWDJAPAN.com.

「#鬼滅カラー」のポイント 人気美容師の内田聡一郎「レコ」代表が指南

 
 今や社会現象となった人気漫画「鬼滅の刃」は、ビューティ業界にも影響を及ぼしている。登場するキャラクターの髪色が鮮やかなピンクやブルーなどの“派手髪”で、中にはグラデーションや毛先だけ色が異なる“裾カラー”になっているキャラクターもいる。それを真似た“#鬼滅カラー”の投稿もSNSで盛り上がっているが、ほとんどが“コスプレ”になっている。

 “コスプレ”ではなく、鬼滅キャラの髪色を日常のヘアスタイルに取り入れ、まわりの人に「おしゃれだけど何となく鬼滅っぽい」と思わせるには、どうすればよいのだろうか。

 トレンドをけん引する人気美容師、「レコ(LECO)」の内田聡一郎代表は、昨年から自身のインスタグラムに“#鬼滅カラー”の投稿を行っている。“鬼滅カラー”に関しては、「“鬼滅カラー”は確かにトレンドになっているが、『鬼滅の刃』のキャラクターに見られるような“派手髪”は以前からあった。ただヘアサロン業界では数年前からハイトーンのブリーチカラーがトレンドになっていて、そのタイミングでちょうど“鬼滅ブーム”が重なったために話題性に拍車がかかったといえる。あと、あまりに流行っているため、少しでも明るいカラーリングをしたら『鬼滅カラー』と言いたくなる、という心理も働いていると思う」と話す。

 一般的に“鬼滅カラー”といわれるのは、一色でのカラーリングでなく、1つの面に対して2色以上使っているカラーリングのこと。「日常のスタイルに取り入れる初級編は、全体はシンプルなカラーでインナーだけハイトーンにすること。中間から毛先にいくにつれて明るくなるグラデーションが中級で、上級は全体をハイトーンの2色使いで仕上げるルックだ」。

 “鬼滅カラー”を日常に取り入れるポイントに関しては、以下のように語っている。「私も昨年からインスタグラムに“鬼滅インスパイアカラー”を投稿しているが、こだわっていることが1つある。それは“カラーだけではなくカットでも魅せる”ということ。カラーだけ派手にしてカットが普通だと、そのアンバランスな感じでいかにもコスプレっぽく見えてしまう。エッジィなカラーに合わせてカットにも技巧を加えてフォルム(カットライン)も個性的にすることで“コスプレ”から“おしゃれ”に変換できると思う」。

The post 「#鬼滅カラー」のポイント 人気美容師の内田聡一郎「レコ」代表が指南 appeared first on WWDJAPAN.com.

買い物難民エリアに出ていく「無印良品」に義侠心を見た MUJI特集担当記者座談会【後編】

 「WWDジャパン」11月9日号は「無印良品」特集です。誕生から今年12月で40周年を迎える「無印良品」を多面的に取材しました。本紙詳細はこちらから。ここでは、担当記者3人による紙面作りの振り返りや取材こぼれ話の後編をお届けします。

【座談会参加者】
林芳樹:デスク、ファッション担当記者
五十君花実:ニュースデスク、ファッション担当記者
中村慶二郎:ビューティ担当記者

林芳樹(以下、林):五十君さんは7月に開店した「無印良品」の直江津店(新潟県上越市)を取材したわけだけど、発見はありましたか。

五十君花実(以下、五十君):直江津店は「無印良品」の世界最大の店というだけでなく、良品計画が掲げる地域貢献のモデル店舗なんです。上越市には自動車がなければ食品や日用品の買い物に困ってしまうエリアがたくさんある。運転できない高齢者も多いし、公共のバスの本数も少ない。だから直江津店が定期的にバスによる移動販売を行なっています。

中村慶二郎(以下、中村):今週号の表紙になっていたワインレッドのバスだね。

五十君:そうです。そのバスの移動販売に密着したのですが、良品計画の金井会長やユニクロ(ファーストリテイリング)の柳井正会長兼社長がよく言っている「小売業はプラットフォーム」という意味を改めて実感しました。

中村:どういうこと?

五十君:モノを売るってことは人の生活にコミットできるんですよ。近隣にスーパーなどがないエリアにバスが到着すると、地元のおばあさんたちがたくさん待ち構えていて、すごく楽しそうに買い物をしたり、お客さん同士やスタッフでおしゃべりしたりしている。中にはボーダー柄のカットソー、肌着、カレーなど数点で4000円、5000円買う方もいました。高齢者はけっこうお金を持っている(笑)。移動販売は買い物の場だけでなく、地域のコミュニティの場も作っているのです。最近、ECの普及で(リアルの)小売業にはネガティブなイメージがあったけど、小売業には私が想像できなかった可能性があるのかもしれないと思いました。

中村:でも移動販売って採算取れているの?

五十君:そこですよね。移動の時間もかかるし、スタッフの人件費もある。今のところは地域社会で認知を広げることを優先しているようです。でも移動販売することで直江津店や「無印良品」自体への相乗効果は小さくないと思います。オープン景気は長く続かないけど、移動販売でファンを増やせば、もっとたくさんの商品を直江津店で見たくなる。

:直江津店は最も進んだ事例だけど、「無印良品」は個店経営を掲げて店舗ごとの取り組みを広げていこうとしているよね。金太郎飴のような画一的なチェーンストア運営ではく、地域の個人商店のように商店会や行政と協力して地域の課題解決に汗を流す。

中村:効率は良くないかもしれないけど、リアル店舗の役割って、そういった手間のかかることなのかもね。ECでは代替できない部分だから。

「ユニクロ」や「ニトリ」への対抗意識は?

:私が取材した団地での取り組みも印象的でした。団地って高度成長期に建てられたものが多く、住民の高齢化が全国的な問題になっている。池袋から近い光が丘団地(練馬区、板橋区)の中に「無印良品」を出店していて、住民同士が交流する起点にしようとしています。店内に3畳くらいの小上がりがあって、年配の住民が持参した弁当を食べていたり、若いお母さんが子供と休憩していたり。店側はたとえ買い物をしなくても、休憩だけでもウエルカムという姿勢です。生活の場の中にある小さな店なので、スタッフと客が自然に顔見知りになる。足腰が弱い高齢者の自宅に商品を届けたりもしていて、団地の人たちにとっては全国チェーンの「無印良品」というよりも気心の知れた○○さんのお店なのかもしれない。勝手口から御用聞きをしてくれる、「サザエさん」の三河屋さんみたいな。

五十君:取材していた不思議に感じたのは、良品計画って理念先行であると同時に売上高4000億円台の大企業でもある。相反するようでいて、けっこううまくっている印象です。

:たくさんのステークホルダーがいる上場企業だし、厳しい販売目標も立てているからね。高い理念を実現するためにも高収益が前提だから。

中村:「ユニクロ(UNIQLO)」は衣料品、「ニトリ」は家具・インテリアに特化しているけど、「無印良品」は総合的な品ぞろえ。ベンチマークしている企業はあるのかな。

五十君:取材すると、直接は言及しなくても「ユニクロ」や「ニトリ」への対抗意識を匂わせるコメントはありました。

:もちろんベンチマークしているでしょう。シンプルなセーターほしいと思ったとき、「無印良品」で買うか、「ユニクロ」で買うか。ベッドを買い換えたいとき、「無印良品」か「ニトリ」か。そんな比較をする消費者は多いはず。価格見直し戦略も競合対策だよね。

五十君:値下げに際しては、衣食住の生活の基本領域でお客さんがまず一番に想起する存在になると宣言しています。

中村:言い換えれば、それは衣料品でもインテリアでも一番のシェアを狙うってことだよね。イメージと違ってけっこう野心的な肉食系企業なのかもしれない(笑)。

:部屋作りや収納などの相談にのる「MUJIサポート」だけでなく、12月3日に開業する関東最大店舗の東京有明店では、家庭の不用品の回収、観葉植物のサブスクなども始めるようだね。国内2111万ダウンロードのアプリ「MUJIパスポート」のユーザー基盤を用いれば、スマホ経由の新しいサービスも広がりそう。

五十君:いろいろ考えているみたいですよ。C(コンシューマー、消費者)とCがつながるメルカリみたいなものとか。

中村:衣食住の守備範囲が広いから色々できそうですね。

:話していて思ったんだけど、「無印良品」がやろうとしていることは、かつての百貨店のポジションに近いかもしれないね。

中村:確かに。百貨とは言わないまでも、生活に必要な商品はほぼカバーしているし、お得意さんには御用聞きしたりする。

五十君:もともと総合スーパー(GMS)の西友のプライベートブランドですからね。

:現に、イオンモール堺北花田店(大阪)、京都山科店、直江津店、シエスタハコダテ店(北海道)など、最近の大型店は百貨店やGMSが撤退した跡地に出ている。

中村:特集で実施した2000人へのアンケートでも、「無印良品」の来店頻度は「月1〜2回」が一番多かった。百貨店以上、スーパー未満ということかもしれませんね。積極的な出店やアプリの活用、アマゾンや楽天への出店、ローソンでの販売開始などを通じて、これからもタッチポイントは増えて、もっと身近な存在になるのでしょう。

The post 買い物難民エリアに出ていく「無印良品」に義侠心を見た MUJI特集担当記者座談会【後編】 appeared first on WWDJAPAN.com.

ジル・サンダー氏に聞くユニクロ「+J」 最もデザインを楽しんだアイテムは?

 ユニクロ(UNIQLO)とデザイナーのジル・サンダー(Jil Sander)氏によるコラボコレクション「+J」が13日、世界各国の店舗とオンラインストアで発売された。両者は2009〜11年の間にも5シーズン継続してコラボコレクションを発表していたが、今回9年ぶりの販売となった。

 アイテムは、ウィメンズに袖の短いパファーダウンやメリノウールを使用したカーディガン、スタンドカラーのストライプシャツなどをそろえた。メンズのルックには、オーバーサイズのワークジャケットやダウンブルゾン、チノパンなど。

 サンダー氏はドイツ出身のファッションデザイナーで、1968年に自身のブランドをスタート。ミニマリズムなデザインが人気を獲得した。その後同ブランドを13年に去り、ファッション業界での活動を休止していた。17年にはフランクフルトの応用美術博物館(Museum of Applied Art)で回覧展が開催された。

 ここでは、新型コロナウイルスのパンデミックがデザイン制作にどのような影響を与えたか、コラボに関するものからデザイン全般に対する話などを米「WWD」が聞いた。

WWD:ユニクロとの最後のコラボレーションから約10年が経ったが、なぜ今再びコラボをしたのか?

サンダー:「ジル・サンダー」の最後のショーは13年だった。ここ数年ガーデニングや美術館での展覧会の開催などでクリエイティビティーを保っていた。その間もユニクロとは連絡を取り合っており、「+J」を再開する時期がきたと感じた。

WWD:これまでも度々ファッションシーンに戻ってきていたが。

サンダー:戻ってくることが私の運命のようだ。ユニクロとなら、使い捨てで消費されていくファッションに何かアクションを起こせるとわかっていた。ファーストリテイリングの交渉力や国内外の流通ネットワークによって、高品質なデザインを大衆向けの価格で作ることができる。

WWD:ベストセラーになりそうなアイテムや、自分に合っているアイテムの選び方などについてアドバイスはある?

サンダー:コレクションはかなり絞られているが、うまく構成している。1つだけでなく、全体のルックを購入することをお勧めする。また快適に着られるように作られているため、サイズを選ぶ際は注意してください。

WWD:パンデミックによってデザイナーはさまざまな影響を受けているが、あなた自身のファッションへのアプローチや、人々がどのような洋服を身につけたいかについて考えに変化はあったか?

サンダー:もちろん。パンデミックは私たちの頭の中にくっついてデザインに影響を与えた。私はより柔らかく優しさに溢れる、オーバーサーズのアイテムを追求するようになった。しかし全体的なアプローチは変わっていない。着用者の個性を活かすような洗練された3Dデザインを発展させたく、体に沿うようなデザインでアイテムのボリュームを調整した。自信を高め、新たなスタートに備えられるようなスマートで仕立ての良いアイテムを求める気分だと思う。

WWD:最もデザインを楽しんだアイテムはある?その理由は?

サンダー:チェスターフィールドコートかな。コートの作りは常に変化していて、現代の感性に合わせて調整したいディテールがたくさんある。

WWD:デザイナーのイヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)は、自分で発明したかったものにブルージーンズをあげていた。もしファッションで何かを発明できたとしたら?

サンダー:今ならライトダウンジャケット。20年前にハイキング店で初めてライトダウンを見たとき、これが新しい“毛皮コート”になるだろうと感じた。私は毛皮を軽くしようとデザインをしていたが、ライトダウンが代わりになっていた。生地だけでなく新しい制作方法など、発明を大切にしている。私たちは過去に多くの革新的なアイデアを生んできたと思う。

WWD:ファッション業界のデジタル化が加速しているが、オンラインで買い物をすることはある?

サンダー:オンラインで買い物はしないわ。

WWD:ファッション以外で、デザインしてみたいものはあるか?

サンダー:以前スポーツカーの内装をデザインしたこともある。私の経験と無垢なアイデアをビューティラインで生かしてみたいと思っている。

The post ジル・サンダー氏に聞くユニクロ「+J」 最もデザインを楽しんだアイテムは? appeared first on WWDJAPAN.com.

栗野宏文UA上級顧問が語るサステナビリティ 「出来るか出来ないかではない。やるしかない」

 「WWD ジャパン」は12月1日に、“サステナブルなファッションの未来を共につくる”と題した「WWDジャパン サステナビリティ サミット第1回」を開催する。その第3部では“服の廃棄物問題に対して若手研究者はどんな解決方法を考え未来を見ているのか?”をテーマに、栗野宏文ユナイテッドアローズ上級顧問クリエイティブディレクション担当が、若手研究者たちと対談する。LVMHプライズ設立当初から外部審査員を務め、若手クリエイターの発掘に長く携わってきた同氏は業界が抱えるサステナビリティの課題をどのように見ているのか、話を聞いた。

WWD:ご自身がサステナビリティについて考えるきっかけとなった出来事は?

栗野:サステナビリティという言葉を意識し始めたのはこの10年くらいですが、僕らの世代は光化学スモッグ世代で、小学生の頃から公害や地球環境について考えなければいけないと教えられてきました。1960年代末から70年代には「ホール・アース・カタログ(Whole Earth Catalog)」のようなカウンターカルチャーの中で“エコロジー”という言葉に触れていました。僕自身は常に環境問題に関心がありましたが、ファッション業界がサステナビリティを業界の課題として認識するようになったのは2013年にバングラデシュで起きたラナプラザ事件が大きかったと思います。ヨーロッパはこれからの時代に、サステナブルでなければもうモノを買ってもらう理由がないと考え、先進的に取り組みを開始しました。「もったいない」の精神が根付いている日本では生活者の意識は高いと思いますが、ビジネス面、特にファッション業界は取り組みが遅れていますね。

WWD:なぜ日本のファッション業界は遅れている?

栗野:「新しいものを作って買ってもらわなければ商売にならないよ」とか「エコな素材だけで服は作れないよ」とか「エコ素材はコストが上がってしまう」とか、ネガティブ要素ばかりを考えているのが原因でしょう。しかしそれらは言い訳に過ぎません。日本では世の中で新しいことに挑戦する時にできない理由を先に挙げる傾向がある。でも、それでは世の中は変わらない。例えば、グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)さんはたった1人で座り込み運動を始めました。そこからだんだんと賛同者が増え、世界的なうねりになりました。つまり、この問題はやるかやらないかなんです。

ニーズがあれば必ず人は発明する

WWD:ご自身の著書「モード後の世界」(扶桑社)の中では、これからのファッション業界で大切な要素にサステナビリティ、ダイバーシティ、西洋的価値観の行き詰まりをあげていた。

栗野:その3つの要素を乗り越えない限り、お客さまはモノを買ってくれない。それを乗り越えるところにビジネスが生まれると思います。遠い人と話したいと思ったから携帯電話が誕生したようにニーズがあれば必ず人は発明します。廃棄ゼロのパターンメーキングに取り組む川崎和也Synflux(シンフラックス)代表のようにすでに実行に移し始めている人もいます。

WWD:LVMHプライズでもここ数年、サステナビリティに取り組むデザイナーの活躍が目立っている

栗野:LVMHプライズは第1回から審査員を務め、7年目を迎えました。1回目からサステナビリティをテーマにしている人はいましたが、回を重ねるごとに増えています。7回目はベスト8に残った半分以上がサステナビリティをテーマにしていました。ファッションがサステナビリティに取り組むには「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」のように、服が持っている強さや魅力によって捨てられない服を作るという方法と、僕が注目している日本ブランド「テキスト(TEXT)」のように、環境に配慮したモノ作りを徹底する方法があります。その両方があってこそのファッションですし、LVMHプライズではどちらもありだと思います。しかし、業界の一番大きな流れはサステナビリティなので、LV側も応募者にそこを意識したものを出すように要請しているようです。

WWD:サステナビリティにはさまざまなアプローチがあるということか?

栗野:この問題は“反公害運動”や“環境保護”“エコロジー”など常に言葉を変え取り上げられてきました。現在はSDGs(持続可能な開発目標)としてより包括的な問題を指摘しています。しかし、SDGsとうたえば無駄なものを生み出して良いわけではありません。無駄を作らない、無理に売らない、作りすぎない、廃棄しない、これらを最優先にすべきでしょう。大変なことですが、やればできると思います。ファッションが好きなのであれば、正しく批判と弁護ができなればダメです。モノを生み出すということは、どこかで誰かに迷惑をかけていることも考えなければいけない。

WWD:サステナビリティの取り組みをしている注目ブランドは?

栗野:日本だと先ほど挙げた「テキスト」です。「テキスト」は“Farm-to-Closet(農場からクローゼットへ)”をコンセプトに掲げています。例えば、染色工程の汚染を最小限にすルために茶色と黒のチェックを作るには、茶色と黒のアルパカに会いに行くそうです。もちろん、カーボンフットプリントの観点で言えば負担はあります。けれど、極力環境負荷を軽減させようと努力している。僕はそういう人たちを応援したい。

サステナビリティを流行りにしてはいけない

WWD:宣伝としてのSDGsを使うブランドと、栗野さんが応援したくなるブランドの違いは?

栗野:本人と会って話して、人として信頼できるかどうかに限ります。その人がどこまで挑戦しようとしているのかをヒアリングします。それでもやはり、世の中に無駄なモノを生み出していないか、という視点は大事です。

WWD:サステナビリティは企業活動を前進させるエンジンとなりうるか?

栗野:捉え方次第でしょう。縛りがあると出来ないという人もいるでしょう。しかし、問題解決をすることで人々は進歩してきました。真剣に取り組めば必ず答えはあります。出来るか出来ないかではなく、やるかやらないかです。

WWD:「WWDジャパン サステナビリティ サミット第1回」では、服の廃棄物問題にテクノロジーで解決を試みる若手研究者と対談していただく。彼らに期待することは?

栗野:今のコロナウイルスのワクチンと同じように、それさえできれば解決すると期待するのは間違いです。ウイルスは変異します。では、何が一番大事かというと自己免疫力と抵抗力です。川崎さんのような事業はこれからどんどん業界に適応されていくと思いますが、それだけが解決策ではない。いわゆるモノを作るデザインとテクノロジーがいかに融合するかに注目しています。「もったいない」の精神がDNAに根付いている日本人は、その気になれば環境先進国になれると思います。ただ、サステナビリティを流行りにしてはいけない。電気自動車に乗れば良い、オーガニック素材の服を着れば良い、ではなく暮らしの全てにおいて地球環境と結びついていることをみなが自覚して、努力することが大事です。

The post 栗野宏文UA上級顧問が語るサステナビリティ 「出来るか出来ないかではない。やるしかない」 appeared first on WWDJAPAN.com.

悩みのサードプレイスという商機 エディターズレター(2020年7月31日配信分)

※この記事は2020年7月31日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

悩みのサードプレイスという商機

 取材させていただいた、リンク1本目の神保さんは本当にステキな方でした。実はワタクシ、2回目の取材でまさか涙がこぼれました(照)。取材で感動して泣いたのは、3回目(結構あるんですw)。前回は「ルイ・ヴィトン」のランウエイショーで、ファースト・コレクションを発表したヴァージル ・アブローがフィナーレで泣き始めた時でした。

 記事には、「家族(第1の場所)にも、職場(第2の場所)にも相談できない悩みが相談できるサードプレイスになること」の文言を加えました。実はコレ、次回以降の連載で盛り込もうと思っていた文言でしたが、同じようにステキな「悩みのサードプレイス」の話を聞き、なんだかここに商機を感じたので、「早めに盛り込んでみよっと」という判断に至りました。

 同じようにステキな「悩みのサードプレイス」の話を聞いたのは、化粧品ブランド「ポーラ」。同ブランドが擁する地域密着型ビューティスタッフのお話です。時に「時代遅れ」なんて言われた時もありましたが、それでも他社と差別化できる大きな財産として、消費者の美を育んできた「ポーラ」スタッフ。その中には、まもなく100歳という超・大ベテラン(‼︎)を筆頭に多数の経験豊かなスタッフがいらっしゃいます。

 彼女たちは、付き合い始めてウン十年、なんて顧客を抱えています。それだけでスゴいのですが、カウンセリングやタッチアップ、施術で肌と肌が触れ合うから、その関係性は「数十年来のお客さま」をさらに超え、ココでも家庭じゃ言えない悩みが飛び出してくるそうです。つまり神保さん同様、「ポーラ」のおばあちゃんスタッフ(に限らないでしょうがw)も、悩みのサードプレイスというワケです。

 ホラ、なんかコレ、商機がありそうな気がしませんか?思えば昨年「WWD居酒屋を開きたい‼︎」とメルマガにしたためたのも、悩みのサードプレイスに可能性を感じていたから、です。

 神保さんはZoomでも「トーチング」していますが、「ポーラ」はきっとリアルですね。僕も、現段階では「悩みを聞くサードプレイス」は、リアルでこそ価値を発揮する商機な気がします。特に、今は尚更ですね。

FROM OUR INDUSTRY:ファッションとビューティ、関連する業界の注目トピックスをお届けする総合・包括的ニュースレターを週3回配信するメールマガジン。「WWD JAPAN.com」が配信する1日平均30本程度の記事から、特にプロが読むべき、最新ニュースや示唆に富むコラムなどをご紹介します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

The post 悩みのサードプレイスという商機 エディターズレター(2020年7月31日配信分) appeared first on WWDJAPAN.com.

出店相次ぐオフプライスストアの差し迫った課題 小島健輔リポート

 ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。コロナによる在庫の増加を受けて、オフプライスストア事業への新規参入が目立つようになった。ビジネスとして軌道に乗せるポイントはどこにあるのか。

 昨秋冬の暖冬と消費税増税で持ち越した在庫に今春夏のコロナ禍による過剰在庫が加わってアパレル業界が抱える在庫は危機的に膨れ上がり、店舗やECで値引きしても処分しきれず、2次流通に放出される在庫も急増した。しかるに在庫処分の販路は急には広がらず、販売消化のスキルも欠いて2次流通の在庫が積み上がり、プロパー販売を圧迫するような場所での叩き売りも広がっている。このままでは過剰在庫の処分が進まないばかりか、2次流通がプロパー販売を追い詰めるという最悪の事態が危惧される。

2次流通の在庫処分が進まないわけ

 コロナ禍で2次流通に放出されたアパレル在庫は前年から2倍、3倍に急増したといわれるが、処分業者が買い取った在庫の販路は急には広がらず、処分業者の抱える在庫が限界まで積み上がっている。

 処分業者が買い取った在庫の販路は、ECでの消費者や転売ヤーへの直販、直営処分店での直販もあるが、地方や郊外のディスカウントショップやホームセンター、安売り衣料店や催事業者などへの卸が大半を占める。ブランドのプロパー販路と重なるメジャーなECモールや商業施設は使えないから急激な販路拡大が難しく、個性の強いブランドやベタークラスから上のブランドは大幅値引きしても売れる販路が限られる。副業転売ヤーを組織化したり直営処分店を増やしたりしても思うように売り上げが伸びず、買取在庫の急増に販売が追いついていない。

 処分が進まない要因は2つ考えられる。第一に処分業者には再販を前提としたMDの発想がなく選択的な買い取りをしておらず、持ち込まれる在庫を全量引き取る業者が多い。オフプライスストアチェーンは米国でも日本でもリテールMDを組んで必要な商品を探しており、捨て値で持ち込まれても不要な商品を買い取ることはない。

 ブランドディスカウント型オフプライスストアの「アンドブリッジ(&BRIDGE)」はタイプ別にブランドのクラス構成と8週サイクルのMD展開を組んで適合商品を調達しているし、激安プライスライン型オフプライスストアの「タカハシ」も8週サイクルでMD展開を組み量販ベンダーの過剰在庫から選択調達するだけでなく、足りない商品はベンダーに別注したり工場に発注して確保している。オフプライスストアは「先にMD在りき」で、受け身の処分業者とはスタンスが全く異なる。

 第二は、買い取った商品を仕分けて適切な販路に流し、販売消化するスキルを欠いていることだ。処分業者が全量買い取りした場合でも、まず衣料品として再販できるものとウエスや再生原料にしかならないものを仕分け、再販できるものは名の通ったブランド品(ディスカウント販売)とそうでない量販品(プライスライン販売)に仕分ける。ブランド品はクラスやターゲット別に仕分け、海外処分指定品や持ち越し指定品(今シーズン中に買い取っても販売は来シーズン)を分離する。量販品はターゲット、アイテム別に仕分けする。月度あるいは8週サイクルのシーズンMDを組んでアイテムを仕分けるのは、どちらも同様だ。

 処分業者の多くは引き取ったパッキンを開けることなくサンプル商談で転売する横々商売が基本で、仕分けて付加価値を付けるというリテール発想を欠いている。アパレルとしては処分業者に放出して終わりと思っているかもしれないが、彼らの再販力(実態は転売力)は疑わしく、キャパを超えれば在庫を抱えてしまう。転売主体の処分業者と自らMDを組んで売り切るオフプライスストア事業者は全く別物なのだ。

 適切に仕分けても、計画通りに販売消化できないと店舗は魅力を失い、倉庫は在庫であふれてしまう。ブランド品は最初こそブランド別ラックで訴求するが、消化が進んで欠落してくると類似ブランドをテイスト別にまとめ、売り切りサイクルではアイテム別にまとめ、最終はプライスライン別あるいは値引率別にまとめて売り切ってしまう。カラー展開アイテムは色が欠けてくるとカラー別にまとめ、サイズ展開アイテムはサイズが欠けてくるとサイズ別にまとめて購買プロセスを誘導するなど、通常店舗の売り切りで使われる編集スキルも駆使する。

 そんな編集スキルを駆使するには特有の可動什器体系が必要で、TJXやロス・ストアーズ(ROSS STORES)、ノードストローム・ラック(NORDSTROM RACK)などでは実際に使われているが、わが国のオフプライスストアは彼らのノウハウを全く学んでおらず、什器構成もレイアウトも編集運用も自己流にとどまっている。これでは米国のようにスムーズな在庫消化(TJXの在庫回転は6.32回、ロス・ストアーズは6.09回)は望めない。

オフプライストアの成功パターンは答えが出ている

 ワールドとゴードン・ブラザーズ・ジャパンの合弁事業「アンドブリッジ」、ゲオの「ラック・ラック クリアランスマーケット(LUCK RACK CLEARANCE MARKET)」、PPIH(ドン・キホーテ)の「オフプラ」、ショーイチの「カラーズ(COLORS)」などオフプライススアは次々と多店化しているように報道されているが、それらが全てうまくいっているわけではない。

 「オフプラ」は名古屋郊外の1号店が立地とMDがすれ違って離陸せず、仕切り直しを余儀なくされている。ディスカウントストアの単品量販MDがオフプライスストアの売り切りバラエティーMDと相いれず、若者狙いのストリート感覚も立地の顧客とすれ違ったのではないか。

 「ラック・ラック クリアランスマーケット」は10月30日のミーナ町田店(1320平方メートル)に続いて11月20日には名鉄百貨店名古屋本店のメンズ館(759平方メートル)、12月9日には松坂屋静岡店(催事契約で594平方メートル)にも出店し、2019年4月の1号店(コーナン港北インター店)開設から早くも8店舗に広がるが、大型化が先行して狙いを絞り込めておらず、販売効率や消化回転には課題が残る。

 販売効率が読めて在庫が回り収益を確保しているのはブランドディスカウント型の「アンドブリッジ」と激安プライスライン型の「タカハシ」くらいだと思うが、狙いの絞り込みと「先にMD計画在りき」の選択調達、販売消化運用と低コスト運営が共通している。

 「アンドブリッジ」は19年9月の西大宮店の開業から1年で4店舗(うち浅草ROX店とイオンモールKYOTO店は期間限定)まで増え、来春から出店を加速する。「タカハシ」は19年8月期で東京、神奈川、埼玉の郊外に36店舗を展開して73億円を売り上げ、20年8月期は41店舗まで増えて売上を87億円に伸ばし過去最高益を稼ぎ出している。コロナ禍による衣料消費の生活圏シフトも「タカハシ」の追い風に、ブランド商品の大量放出は「アンドブリッジ」の追い風になったのではないか。

 1月15日掲載の本リポート「日本にオフプライスストアは定着するか」で、わが国で成功するのは生活圏立地で継続的品ぞろえも可能な激安プライスライン型、次いで知名度の高い百貨店・駅ビルブランドのディスカウント型と結論づけたが、その通りの結果になっている。フルプライスからオフプライスへの分岐点はまだ先のことと思われていたが、コロナ禍で背に腹は変えられずブランド在庫の放出が広がり、一気に分岐点を超えた。供給が潤沢になった一方で販路の拡張は追いつかず、さまざまな課題が露呈している。

販路統制を欠いては正価流通を追い詰める

 ワールドは百貨店・駅ビルブランド主体の都心型「アンドブリッジ」を20年8月29日に浅草ROX、9月5日にはイオンモールKYOTOに出店(どちらも半年程度の期間限定店)。9月14日には名古屋郊外に開業した三井不動産の広域大型SC「ららぽーと愛知東郷」に、同じスタイルで自社ブランドに絞ったアウトレットストア「ネクストドア」を出店し、「アンタイトル(UNTITLED)」や「インディヴィ(INDIVI)」など自社百貨店ブランドの持ち越し品を6〜7割引きで売っている。

 オンワード樫山も9月18日、オフプライスストア「オンワード・グリーン・ストア(ONWARD GREEN STORE)」の1号店を千葉県柏市の生活圏型SC「モラージュ柏」に出店。「23区」「自由区」「組曲」「ICB」「J.プレス(J.PRESS)」など自社百貨店ブランドの婦人服や子供服、「シェアパーク(SHARE PARK)」「エニィファム(ANY FAM)」などカジュアルブランドの持ち越し品を6〜8割引きで販売し、他社ブランドの放出品も加えて21年春までに東海地区や関西地区にも出店する。

 サザビーリーグ傘下のセレクトショップ「エストネーション(ESTNATION)」も、銀座店の1階を20年10月2日にオフプライスの「エストネーション セントラル(ESTNATION CENTRAL)」に切り替え、21年の2月には全フロアをオフプライスストアにしてしまう。銀座店は2974平方メートルの六本木ヒルズ店に次ぐ2225平方メートルもある旗艦店で、至近には01年9月創業の有楽町店(1333平方メートル)もある。
サザビーリーグでアウトレット店を持たない「サザビー(SAZABY)」「カンペール(CAMPER)」「ハウス オブ ロータス(HOUSE OF LOTUS)」や「エストネーション」の仕入れ先ブランドの放出在庫も販売するからオフプライスストアであり、顧客から買い取ったハイブランドの中古品も販売するからリサイクルストアでもある。建前としては「エストネーション」の会員顧客に限定するが、その場で入会することもできるから、正面切った大型オフプライスストアに他ならない。

 「オンワード・グリーン・ストア」が出店したモラージュ柏は高島屋がある柏駅から3kmも離れておらずシャトルバスも通っているし、「ネクストドア(NEXTDOOR)」が出店したららぽーと愛知東郷も名古屋都心部から電車で45分かかる郊外とはいえ、「コーチ(COACH)」や「ラルフローレン( RALPH LAUREN)」も出店しているアップスケールな広域大型SCだ。「アンドブリッジ」が出店した浅草ROXやイオンモールKYOTOは期間限定とはいえ都心の百貨店から目と鼻の先、「エストネーション セントラル」は銀座のど真ん中で、もはやアパレルは在庫処分の場所を選んではいられないほど追い詰められている。そんな後先考えない在庫処分が広がれば、もはや「正価」で購入する顧客などいなくなってしまう。そんなありさまを見て、アパレル業界は「正価流通」の崩壊を悟ったに違いない。

 コロナ禍で放出された過剰在庫はアウトレットやオフプライスのストアやサイトに並び、消費者のタンスを経ていずれ中古衣料店やフリマアプリに放出されるから、長く新作品の販売を圧迫することになる。ましてやプロパー販路の至近で売れ残りの新品をたたき売ってはブランドの未来も絶ってしまうから、慎重な配慮が望まれる。

ビンテージMDという第3の可能性

 フランスでは20年2月に衣類、化粧品、家電、書籍などを対象とする「廃棄対策・循環型経済に関する法律」が施行され(食品は16年に施行)、分野によって21年から23年末までに適用される。売れ残り在庫の廃棄(焼却や埋め立て)を禁止するもので、寄付またはリサイクルが義務付けられる。

 これまでブランドイメージを守るべく売れ残り在庫を廃棄してきたフランスの高級ブランドは、おそらく売れ残り在庫を保管して“熟成”させるビンテージ商品を志向するだろう。LVMHやシャネルなど高級ブランド資本はワイン&スピリッツ部門も抱えており、気が遠くなるほどスローなビンテージMDに違和感を持たないからだ。

 完成度の高い商品はビンテージ品(旧作)としてアーカイブ価値が評価され、新作品と並んで長く流通する。コロナ禍を契機にサステナブルでない多産多死の生産と流通に終止符を打ち、アーカイブ価値が評価されるモノ作りとビンテージMDに目覚めてもよいのではないか。三陽商会など咋秋冬商品が暖冬と消費税増税で30%も売れ残り、今秋冬は新作品60%、旧作品40%の構成になると明かしているが、そんなアーカイブミックスを前向きに捉えてもいいはずで、ビンテージMDに特化した通なオフプライスストアが登場してもおかしくない。

 ならば安価な生活衣料としての激安プライスライン型、利口にファッションを楽しむブランドディスカウント型とは次元を画した、趣味性の高い第3のオフプライスストアを見いだせるかもしれない。

小島健輔(こじま・けんすけ):慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、小島ファッションマーケティングを設立。マーケティング&マーチャンダイジングからサプライチェーン&ロジスティクスまで店舗とネットを一体にC&Cやウェブルーミングストアを提唱。近著は店舗販売とECの明日を検証した「店は生き残れるか」(商業界)

The post 出店相次ぐオフプライスストアの差し迫った課題 小島健輔リポート appeared first on WWDJAPAN.com.

「ヨウジ」に称賛を送り「エルメス」「パコ ラバンヌ」に心打たれる 仏メディアはパリコレをこう見た

 未来は予測不可能である――パンデミックの経験から得た教訓の一つだ。まさかこれほど静かなシーズンになるとは予想していなかった。3月のパリ・ファッション・ウイークの時点では、新型コロナウイルス感染拡大の影響でアジアからの渡航者こそ少なかったものの、フランス国民は対岸の火事として楽観的に捉えていた。医療崩壊の危機が迫り、ロックダウンが施行されたのはパリコレが閉幕したわずかその数日後である。夏には落ち着くかと思われたが、9月には第2波を警戒して渡航制限が行われ、10月にはまたロックダウンが始まった。生活の自由が再び奪われたことで、未来に希望を抱くことさえ諦めかねない暗いムードが街を覆った。そんな異例の状況下で、2021年春夏シーズンのパリコレは開催された。デザイナーは自宅でどのようにクリエーションを磨き、リモートで制作したのだろうか。リアルのショーに参加した仏メディアの講評を抜粋した。

YOHJI YAMAMOTO
「いつものように、心地よい喪失感」

 変化を強いられる社会環境下で、人々はファッションの“変わらない価値”に安心感を覚えるようだ。「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」と「シャネル(CHANEL)」はその点で評価が高かった。山本耀司デザイナーは、リスク覚悟で日本から約11時間のフライトを経てパリでショーを行った。ショー翌日の10月3日に77歳の誕生日を迎えたベテランのアクションに、称賛の声が寄せられた。仏新聞紙「ル フィガロ(Le Figaro)」は「いつものように、心地よい喪失感に満ちていた。いつものように、フィナーレでデザイナーは幸せそうな顔で挨拶した。ビズ(挨拶や祝意を表して行われる頬を付け合わせる行為)は控えなければならないが、祝福に値する価値ある内容だった」と表現した。仏ウェブメディア「ファッション・ネットワーク(FASHION NETWORK)」のゴドフリー・ディーニー(Godfrey Deeny)は「ドレープの芸術的技術を習得している人物は山本耀司以外存在しない」と唯一無二のクリエーションを称えた。さらにディーニーが山本デザイナーに渡仏を躊躇したかを聞くと「いいえ、全く。パリコレが行われると聞いてすぐ『よし、行こう!』と言いました」と答えたと綴っている。山本デザイナーは1981年に初めてパリでショーを行い、来年で40年目を迎える。心意気と技術と継続する力、そしてデザイナーとしての生き様に脱帽した。

CHANEL
「派手ではないが、時代を超越している」

 「シャネル」は通常2000人の招待客を500人に減らし、例年通りグラン・パレを会場に選んだ。施設は間もなく大規模な改修工事に入るため、現在の様相で行われるのは今季が最後となる。10月1日からパリのガリエラ美術館では、創設者ガブリエラ・シャネル(Gabrielle Chanel)の回顧展が開催されており、約350点のアーカイブが展示されている。クリエイティブ・ディレクターのヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)はショー開催までにすでに2回も訪れたという。創設者シャネルが築いた知的で実用的、エレガンスのアプローチは、ヴィアールによって今季の「シャネル」で見事に表現された。仏新聞紙「ル・モンド(LE MONDE)」は「ツイードや白黒カラーの遊び、ロゴの流用は全てブランドが信頼を置く柱である。今回のショーでは、何十年にも渡ってスタイルに一貫性をもたらす『シャネル』コードの強さを強調した。パッチポケットが付いた黒いスーツスカートのように、最も美しい作品は派手ではないが説得力があり、時代を超越している」と評価した。「ファッション・ネットワーク」はヴィアールの言葉を掲載。「若返りを求めたり、20歳の女性に50歳の成熟さを表現してほしいとは思いません。みんなガブリエラ・シャネルになってほしいだけなのです。私は常に“彼女はこれを着るだろうか?”と自問しています」と、創設者が自分の着用したい服を作り続けたクリエーションの背景に立ち返ったことをヴィアールは語った。「ロブス(L’OBS)」のソフィー・フォンタネル(Sophie Fontanel)もコレクションがブランドのDNAを継承していると評価した。「カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)のようなユーモアに溢れた現実逃避の魔法はないが、それは問題ではない。人々がアパートかホテルの部屋にこもっている今、ファンタジーへアクセスするよりも、これらの衣服を着用したいという現実的な欲求を呼び起こす。それは生きる欲求でもある。ヴィアールは創設者シャネルが提唱した“欲望の目覚め”を継承しているのだ」。

CHLOE
「ロックダウン中に才能を解放したかのよう」

 「クロエ(CHLOE)」と「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」も、シンプルに着てみたいという欲求を掻き立てるリアルクローズだった。特に「クロエ」は演出も素晴らしかった。パレ・ド・トーキョーの会場周辺の道を歩いたり、会話を楽しんだり、セーヌ川を見るモデルを隠し撮りしたようなリアルタイムの映像が会場中央の巨大スクリーンに映し出された。会場内に四方八方から人が入場し、中央で交差する様子はパリの街角の風景とオーバーラップした。「ル・モンド」は「着用しているのはファッショナブルな未知の衣服ではなく、日常生活向けに構成された巧妙なアイデアが光る服。慣れ親しんだそれらを観察していると、自分自身を簡単に投影することができた」と綴った。コレクションとショーの演出はパリの街並みを恋しくさせるとともに、日常がいかに尊い存在であるかを物語っているようだった。「ロブス」のフォンタネルも「身近な衣服は実生活という意味で美しかった。まるでロックダウン中にナターシャ・ラムゼイ=レヴィ(Natacha Ramsay-Levi)は隠していた才能を解放したかのようだ。リブニット、コットンチュニック、ワイドパンツなど全部着てみたい!」と、欲求を相当くすぐられたようである。個人的にはクリエイティブ・ディレクター、ラムゼイ=レヴィによる衣服とスタイリングは柔らかさと強さ、反抗的な精神が伴っていて好きなのだが、ビジネスの核となるバッグやシューズのアクセサリーにアイコニックで売れ筋となりそうなアイテムがまだ見当たらないことが懸念点である。

PACO RABANNE
「これは連想ゲームである」

 「パコ ラバンヌ」クリエイティブ・ディレクターのジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)の評価は右肩上がりである。売り上げは17年から2年で3倍に伸ばし、今年3月にはパリのフォーブールサントノレ通りにテクノロジーを生かした新コンセプトの店舗をオープンした。前季はジャンヌ・ダルクに着想を得た幻想的なコレクションだったが、今季はドッセーナがロックダウン中にパリの日常に思いをはせ、街中で見かけるパリジェンヌの装いに着目したリアルクローズを披露した。「ル・モンド」は「これは連想ゲームである」と説明する。「色落ちしたジーンズはスーパーマーケットへ行くためのもので、スリットが入ったスカートは友人とアペリティフを楽しむため、テーラードジャケットは仕事の面接を受けるためなど、日常を思い起こさせる」。またランジェリーを日常着として着用するアイデアはフェミニズムの観点から批判を受けることもあるが、これにはデザイナーの強い意志が込められていたようだ。ドッセーナは同紙に対し「『パコ ラバンヌ』の一貫したテーマは女性を力強くすること。誇張された曲線と少し攻撃的な装いで女性らしさを意識しました。他人の好みに従わず、自分が好きな服を着用する勇気のある女性と対話しているのです」と述べている。その言葉通り、内側からにじみ出す官能とそれを楽しむ女性像が表現されていたし、ナチュラルなメイクと無造作なヘアがその雰囲気をさらに後押しした。ショーの後、エディ・スリマン(Hedi Sliman)が「セリーヌ(CELINE)」のデビューコレクションで披露したミニスカートや、胸元が大きく開いた服に対してアメリカのジャーナリストは「フェミニズムを侮辱している」と批判したのに対し、フランスのジャーナリストは「女性は自分のために好きな服を着たいだけ」と擁護した一件を思い出した。今季の「パコ ラバンヌ」のコレクションに対しても、賛否両論が起こっているのかもしれない。

HERMES
「これまで前例のない官能性」

 「パコ ラバンヌ」とは異なる手法で官能性を表現したのは「エルメス(HERMES)」だ。アメリカのジャーナリストに批判する余地を与えないほど、極めて上品に官能さが香り立つコレクションであった。仏新聞紙「ル・フィガロ(LE FIGARO)」は「厳格さと官能性を併せ持つコレクション」だと述べ、「最上級に上質な素材を用いているにもかかわらず冷たさはなく、親しみと温かさを持つ内容だった。確固としたエレガンスへの意志と、自由で柔軟な女性像を呼び起こす」と称賛した。「ル・モンド」も同様の見解のようだ。「背中の美しさを惜しみなくあわらにし、ローカットのボディースーツが腰を露出し、ストラップ付きのスリットスカートが脚を解放し、柔らかい革は女性特有の曲線的な身体を抱きしめる。ベーシックなカラーと上質な素材で心地良く、これまで前例のない官能性が表現されている」。

 ナデージュ・ヴァンヘ・シビュルスキー(Nadege Vanhee-Cybulski)「エルメス」アーティスティック・ディレクターは今回、12人の親しいアーティストと共にコラージュ作品を制作して会場を装飾した。このようなコラージュのアイデアは「クロエ」や「ディオール」など、今季のパリコレで多く見られた。コラージュは、異なるもの同士を調和させる手法である。人々の視点や思考も分断するものではなく、調和させることで再び新しい形が生まれるーー私たちがこれから向かうべき世界を示唆しているのではないかと感じた。

ファッションが教えてくれた希望の力

 今年を振り返ると、噛み合わないファスナーをいつまでもこねくり回して時間を無駄にしたような気分だった。きっと、自分の手には負えない問題にばかり気を取られていたからだろう。現在も新型コロナウイルスやテロの脅威が迫っているため未来を楽観することが難しく、不安は大きくなるばかりだ。パリコレでもなじみの人々に会えず、街の静けさに空虚さを覚えることもあった。しかしパリコレが終わってみると、充実感と希望でいっぱいになっている自分がいた。理想とするパリコレではなかったかもしれないが、ときに現実は理想よりも素晴らしいこともあるのだ。プレゼンテーションを行った「ロエベ(LOEWE)」の芸術美に涙しそうになった。「ロンシャン(LONGCHAMP)」がパリの日曜のブランチを再現した演出で心に平穏がもたらされた。「ロジェ ヴィヴィエ(ROGER VIVIER)」の魔法がかかった空間で白昼夢にひたった。コレクションの良し悪し以上に、その背景にある“理想を求めて何かを生み出そうとする人々の力”に心を揺さぶられた。この先もしばらくは未来への不安が消えることはないだろう。しかし明日に期待し、理想の実現に向けて進む過程は決して無駄にはならないということをファッションは教えてくれた。現在が過去になる頃には良い思い出、悪い思い出、心が引き裂かれた経験の全てを寄せ集めて、自分なりの美しいコラージュ作品ができるのだろうか――今は未来に希望を持ちたい。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

The post 「ヨウジ」に称賛を送り「エルメス」「パコ ラバンヌ」に心打たれる 仏メディアはパリコレをこう見た appeared first on WWDJAPAN.com.

パリコレで日系モデルが活躍 注目は六本木のスタバでスカウトされた21歳の新星

 2021年春夏のファッション・ウイークでは、前シーズンに紹介した日系ブラジル人のマリーエル・ウチダ(Maryel Uchida)さんがさらなる活躍を見せてくれました。「ディオール(DIOR)」「クロエ(CHLOE)」「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」などのランウエイに登場したほか、「ディオール」2020-21年秋冬と21年リゾートコレクションの広告に起用されるという躍進ぶり。マリーエルさんは前シーズンとの違いを「にぎやかさに欠けていました。バックステージではみんながマスクを着けてソーシャル・ディスタンスを保つなど異様な光景だったけれど、その分お互いをケアし合う精神が感じられました」と教えてくれました。

 日本とフランスのハーフである美佳さんも各ブランドのショーに相変わらず引っ張りだこでした。パリだけでなくミラノでも「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「ポーツ1961(PORTS1961)」「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」で堂々としたウオーキングを披露し、存在感を放っていました。

「バーバリー」に抜擢された新星

 そして今シーズンデビューした新たな注目株を発見!1999年生まれで神奈川県出身の樋口可弥子さんです。今季はリアルとデジタルを含めて7ブランドに起用されました。ロンドンの「バーバリー(BURBERRY)」のショーで無名の彼女がオープニングを飾ったことで、多くのブランドから注目を浴びました。結果、他の都市のキャスティングにも呼ばれてミラノで「マックスマーラ(MAX MARA)」「トッズ(TOD’S)」「ヴェルサーチェ」、パリで「ディオール」「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」「ミュウミュウ(MIU MIU)」に登場。「モデルズ ドット コム(Models.com)」にて、最も多くのショーを歩いた新人モデル6人の中で唯一のアジア系モデルとして紹介されています。

 モデルとしてのキャリアを本格的にスタートさせたのは「3年前に六本木のスターバックスでスカウトされたのがきっかけ」と教えてくれました。初めてのパリコレは驚きの連続だったそうで、「『ディオール』の集合時間は朝7時だったのですが、フィッティングは前日の深夜1時30分まで行われていました。でもその時点ではショーに起用されるかはまだ確定しておらず、ファッション・ウイークの仕事は色々なことが直前まで決まらないのだなと驚きました」と振り返ります。憧れのモデルはリトアニア出身で31歳のガードレ・ドゥカウスケート(Giedle Dukauskaite)で「ベーシックでありながら、独特な雰囲気を持っているモデルだと思います。モデルとして10年以上のキャリアがありながら、未だにメインストリームで活躍しているのがかっこよくて憧れています」。樋口さんは過去に過食症を患った経験があり、心身共に健康で仕事を続けていくことが今の目標とのこと。今後の展望については、「年齢や体型、人種など歴史と共に培われてきた美の固定概念がいい意味で壊され、“個の美しさ”が尊重されていくとよいなと心から思います。その流れの一端となれるように、モデルとして表現力を身につけていきたいです」と頼もしく答えてくれました。今後もショーだけでなく、雑誌や広告などでさまざまな表情を見せてくれそうな彼女に期待大です!

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

The post パリコレで日系モデルが活躍 注目は六本木のスタバでスカウトされた21歳の新星 appeared first on WWDJAPAN.com.

爆裂!健康美容マニア道 冷え症を根っこから改善!免疫力UPのほかほか生姜灸って?

 1日8食、ジャンクフード漬けの超不健康児から超健康優良児へと大変身を遂げたフリーアナウンサーの名越涼。およそ15年かけて自らの体で人体実験を繰り返してきた結果、“超絶良かったもの”だけをここで余すことなくお伝えする。今回は生姜灸について。

日本で唯一⁉︎うわさの「生姜灸専門」の温灸院に行ってみた

 「冷えは万病のもと」とはよく言ったもので、冷えによって婦人科系に問題が起きたり、胃腸が弱ったり、免疫力が落ちたりと、冷えるって本当に怖いのだ。名越自身、年々改善はしているものの、冬は足裏の携帯用カイロすら冷やしてしまうほどの雪、もとい、氷の女王。もう、こんな冷えとは今年こそおさらばだわ・・!と、降り立ったのはJR鶯谷駅。橋を渡って住宅街を進んでいくと、見えてきた。大正5年開業、生姜灸専門の「中村温灸院」だ。生姜灸専門だなんて、日本で唯一かもしれない。ここは婦人科系に悩みを持つ世の女子たちの駆け込み寺となっているという。扉を開けると、お灸のいい香り。優しい笑顔の先生たちが迎えてくれた。

生姜灸とは?

 生姜灸とは、厚めに切った生姜の上にもぐさ(ヨモギを乾燥させたもの)を置いて中低温でじっくりと体の芯から温めていくお灸のこと。もぐさの熱により生姜の温め成分が体に入っていくことで、終わった後もずっとほかほかが続く。さらには、もぐさに含まれるヨモギの成分が浸透し白血球が増え、血液をアルカリ性に傾ける作用があるのだとか。ツボに熱の刺激を与えることによって自律神経の働きが促され、全身の血液の循環を改善できることが期待できる。自律神経が整えば、必要なホルモンが分泌されるし、自然治癒力も高まる。なにこれ、いいこと尽くしじゃないか。
 

全身、お灸の煙に包まれる未知の世界

 どーん。どや、このインスタ映えしそうな生姜灸。体の大きさにもよるが、全身70〜90カ所のツボにお灸を据え、体調に合わせて45℃前後まで温度を上げていくそう。そうそう、私の体(155センチ)でも1.5キロ分の生姜を使うという。首回りから始まり、背面、前面と進んでいく。治療は基本、一人で完全プライベート空間の中、ゆったり施術してもらえるのがうれしい。「熱いときは我慢しないでくださいね〜」と、先生2人がかりでてきぱきとお灸が据えられ、熱が浸透したら違うツボへ移動。温められた場所はほんのりピンク色になるが、これは2〜3時間くらいで消えるのでご安心を。前面に進むころにはすっかりぽかぽかであまりの心地良さに眠くなってしまうほど。あ〜極楽、極楽。

ぽかぽかの持続力が半端ない。これぞ生姜パワー。

 正直、「え?もしかして今、燻製にされてる?!」と思うレベルで煙に包まれる。これくらい“ガチ生姜灸”ができる環境ってなかなかない。全身1時間かけてじっくりと温められたおかげで、その後一日冷え知らず。いつもなら夕方には酸化して茶褐色になっている顔もほんのりピンクで血色がいい。(これぞ、リアル・蒸気肌!)徹底的に冷えをどうにかしたいなら週に2回ほど通うのがおすすめ。今年の冬こそ冷え知らずでいたいあなた!食べるだけじゃない、生姜の底力を感じてみてほしい。

中村温灸院
〒110‐0003 東京都台東区根岸3丁目12-21
JR山手線/京浜東北線「鶯谷駅」北口から徒歩5分
要予約:090-6243-0837

名越涼/フリーアナウンサー。香港出身。福井と愛知のテレビ局アナウンサーを経て独立。司会やライター、セミナー講師、企画・プロデュースなど幅広く活躍するパラレルワーカー。趣味・特技は手作り発酵食、食文化研究、ヨガ(歴15年)eスポーツと農業にも精通

The post 爆裂!健康美容マニア道 冷え症を根っこから改善!免疫力UPのほかほか生姜灸って? appeared first on WWDJAPAN.com.

業務が作業に変わる恐怖 エディターズレター(2020年7月29日配信分)

※この記事は2020年7月29日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

業務が作業に変わる恐怖

 「ブルックス ブラザーズ」の破たんに次いで、「ザ・ロウ」が大規模リストラに着手。かつての「ルイ・ヴィトン」メンズのトップ、ポール・エルバースもブランドを去るようです。

 アメリカ企業の艱難辛苦は、まだまだ続きそうですね。無論、個別の企業やブランドにも問題はあったでしょうし、新型コロナウイルスの影響はどの国より顕著だと思いますが、こうなると市場そのものの問題、もしくは築き上げてしまったファッション・システムの問題とも言えそうです。

 最後にアメリカを訪れたのは、今年の2月。ニューヨークではなく、ロサンゼルスでした。破たんしたバーニーズ ニューヨークのビバリーヒルズ店に行き、NY同様のカオスに衝撃を受けました。中でも一番ショッキングだったのは、のちにブランド終了が報じられた「シエス マルジャン」の同じ洋服が、90%オフになってなお、色違いもあるとは言え10着単位で売れ残っていたこと。「簡単に売れる洋服ではないのに、こんなに大量に。ナゼ?」。考え始めたらキリがなく、「数の論理」や「内輪ネタ」「パワーゲーム」「肥大」「作業」などなど、自戒も込め、さまざまな反面教師的教訓を心に刻みました。もういずれも、通用しないモノばかりですよね。

 中でも今、一番危惧するのは「業務が作業に変わること」です。ここでは「業務」には思考が伴い、「作業」にはそれが伴わないと考えてください。「業務が作業に変わる」って、本当に恐ろしいこと。今はそれに気付いた瞬間、内容なのか人なのかアプローチなのか、なにかを変えなければと思っています。

 冒頭のアメリカに話を戻すと、アメリカン・ファッションは全体として、システムを巨大化させる作業にまい進してしまったのではないか?なんて考えます。日本は、同じ道を辿っちゃいけない。常々「アメリカは、日本の3年先を体現している」と思ってきたからこそ、そう思うのです。

FROM OUR INDUSTRY:ファッションとビューティ、関連する業界の注目トピックスをお届けする総合・包括的ニュースレターを週3回配信するメールマガジン。「WWD JAPAN.com」が配信する1日平均30本程度の記事から、特にプロが読むべき、最新ニュースや示唆に富むコラムなどをご紹介します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

The post 業務が作業に変わる恐怖 エディターズレター(2020年7月29日配信分) appeared first on WWDJAPAN.com.

美容男子からファッションデザイナーまで 「プロデュース101 ジャパン」元練習生によるパフォーマンスユニット「円神」とは

 グローバルボーイズグループJO1を輩出したオーディション番組「プロデュース101 ジャパン」の元練習生によるパフォーマンスユニット「円神」がデビューした。メンバーは、宮里ソル、A.rik(エーリック)、中本大賀、瀧澤翼、山⽥恭、草地稜之、中林登生、中谷日向、熊澤歩哉の9人で構成する。メンバーのエーリックは自身のアパレルブランド「ウップシュ(OOPSH)」を手掛けるなど、それぞれが歌手や俳優、モデルといったさまざまなフィールドで活躍する。エーリックとグループ最年少の高校生でリーダーの瀧澤翼、中谷日向に話を聞いた。

WWD:リーダーの瀧澤さんは現役高校生?

瀧澤:はい。普段は高校に通いながら、個人で俳優活動もしています。

WWD:芸能界を目指したきっかけは?

瀧澤:幼稚園の頃にたまたまテレビの取材を受けたんです。その時にテレビに映る自分を見て「将来はテレビの向こう側に行きたい!」と思い、小学校2年生くらいで子役事務所に入りました。

WWD:「円陣」の魅力を教えてください。

瀧澤:僕たちの最大の魅力は個性です。それぞれが違った特技やバックグラウンドを持っていて、良い意味でぐちゃぐちゃ。まとめるのは大変ですが、いろんな方面で活躍できるポテンシャルがあるグループです。

WWD:エーリックさんはファッションブランドも手掛けていますね。

エーリック:昔から洋服が好きで、オーディションを受ける前から自分でブランドを持ちたいと思っていました。オーディションに落ちてしまい、挑戦するなら今だと思い「ウップシュ」を立ち上げました。

WWD:ブランドのコンセプトは?

エーリック:“おっと、そうだ!子どもの気持ち“です。大人だからこうしないといけないとか、この年だからあの洋服は着られないよとか、そういうのに僕はとらわれたくない。年齢関係なく、好きなものに挑戦して欲しいという思いを込めました。アイテムはユニセックスで、子ども服までそろえています。今は、学生から僕のお母さん世代まで幅広く着てくれています。特に僕をキャラクター化したデザインのアイテムなどが人気です。

WWD:ファッションデザインの知識はどこで身に付けた?

エーリック:自分の好きなものを描くことを大事にしたかったので、あえて学校には通いませんでした。学校に行ったら既成概念にとらわれちゃうかなと思って。出身の沖縄のつながりで情報を集めて、ユーチューブでいろんな人がデザインを描いているのを見て勉強しました。

WWD:参考にしているブランドはある?

エーリック:実はブランドとかあんまり知らないんですよ。よくオススメのブランド教えてって言われたりするんですけど、全然わかんなくて。最近買ったのは「ナナナナ(NANA-NANA)」のバッグ。基本自由に組み合わせます。

WWD:中谷さんは美容に詳しいと聞きましたが?

中谷:はい。韓国に行ったことがきっかけで美容にハマりました。韓国の男性は普通にメイクもしていて肌もとても綺麗なんです。僕は肌に悩みがあったので、挑戦したら変われるかもしれないと思い、最初はとにかくその時に流行っていたコスメや美容アイテムを試してみました。

WWD:普段のメイクにはどれくらい時間かける?

中谷:トータルで45分〜1時間。毎日違う自分でいたいので、その日の朝の気分で「今日はちょっとピンクを入れよう」とか、「ブラウンにしてみよう」とか、髪型も合わせて考えています。最近スキンケアでハマっているのが「バニラコ(VANILLACO)」。メイクは「エスポワール(ESPOIR)」です。

WWD:今でこそジェンダー関係なくみんながメイクを楽しめるようになってきたが、最初は抵抗があった?

中谷:正直抵抗がありました。メイクをすれば女性的に見られるし、女々しいと思われる。でもやっぱり清潔感があった方が良い。韓国の男性がちゃんと日々スキンケアをして、メイクできちんと肌をきれいに見せる努力をしているところに感化されました。最近は周りもK-POPブームの影響でメイクに挑戦する男友達が増えて、お互いに情報交換しています。「円陣」のメンバーにも好きなブランドを紹介しています。

WWD:12月には初の舞台公演を控えている。

瀧澤:テーマは“出会い“です。メンバーの中には舞台の経験がない人もいます。ファンの皆さまが僕らの新しい一面に出会い、僕ら自身もこの舞台を通して新しい自分に出会うことができると思います。「円陣」の最大の魅力である個性を生かしながら、ダンスや歌、芝居を組み合わせて僕たちにしか出せない色を出すことを目指します。

エーリック:僕は沖縄出身なので、まずセリフのイントネーションが難しい。しかも、みんなそれぞれ違う演技の正解があって、僕はどう見られたらいい演技なんだろうって日々考えながら稽古しています。

WWD:最後にそれぞれの将来の夢を教えてください。

瀧澤:日本を代表する、歌って踊れる俳優になりたいです。三浦大知さんとか参考にさせていただいています。個人でユーチューブチャンネルを開設しようと思っているので、そこで僕にしかできない表現の場にしていきたいなと思っています。

エーリック:僕のロールモデルはジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)。ブランドをやりながらしっかりソロで音楽活動をしてみたり表に出るクリエイターを目指したいです。

中谷:正直芸能界にいると、「こうなりたい」の像が変わるんです。年々自分の課題が見つかって、やりたいこともたくさん増えます。だからこそ、ずっと芸能界にいていろんな自分を発見していきたい。今はモデルとしていろんな作品に携わって、ファッションや映像など、表現の幅を広げたいですね。

■円神 Debut Stage 「nonagon(ノナゴン)〜始まりの音〜」
会期:東京公演:12月4〜7日/大阪公演:12月11〜13日
場所:(東京)東京国際フォーラムホールC/(大阪)COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
チケット:前売り8000円

The post 美容男子からファッションデザイナーまで 「プロデュース101 ジャパン」元練習生によるパフォーマンスユニット「円神」とは appeared first on WWDJAPAN.com.

東武池袋が年に1度の時計フェアを11月12日から18日まで開催

 東武百貨店池袋店は「2020 東武ワールドウォッチフェア」を11月12日から18日まで開催する。テーマは“変化の時代に選びたい、自分だけの1本”。同フェアは2001年にスタートし、以来、年に1度の開催を続けて今年で20回目を迎える。毎年8月に行っていたが、今年は「コロナとは関係なく」(岩渕由希子リビング・時計宝飾部マネジャー)スライド開催する。その狙いや今打ち出したい時計について聞いた。

WWD:例年との違い、また11月開催の理由について聞きたい。

岩渕由希子東武百貨店池袋店リビング・時計宝飾部マネジャー(以下、岩渕):まずは会場を6階の時計売り場のみとした。昨年度で売り場の改装が完了し、催事場を使わずとも各ブランドの世界観を伝えられるようになったことが大きい。開催時期については、商品の入荷見通しなどから総合的に判断した。19年の出展ブランド数は57だったが、今年は41と縮小しての開催となる。これらは上半期スタート時(コロナ以前)に決定していた。

WWD:世界2大時計見本市中止による影響は?

岩渕:当社は買い付けを問屋に依頼しているため、直接的な影響ははかった。

WWD:困難な状況下で、より資産価値の高い時計に注目が集まっている。今回のフェアで東武池袋が打ち出したい時計とは?

岩渕:フェアのテーマが“変化の時代に選びたい、自分だけの1本”ということもあり、資産価値の高い時計だけでなく、それぞれのお客さまの価値観やライフスタイルに合った1本を提案したい。

WWD:「2020 東武ワールドウォッチフェア」で最も訴求したいものは?

岩渕:改装した売り場をあらためて見ていただき、そこから各ブランドの思いを発信したい。そして“時計の東武”のイメージをいっそう高めたい。

WWD:フェアの売り上げ目標は?

岩渕:今年は規模を縮小しており、かつ19年は増税特需もあったことから、前年割れの目標を組んでいる。

The post 東武池袋が年に1度の時計フェアを11月12日から18日まで開催 appeared first on WWDJAPAN.com.

言葉を大事にしたスキンケアブランド「イカウ」を立ち上げた白濱イズミとは誰か? そこに込めた思い

 白濱イズミがプロデュースするスキンケアブランド「イカウ(IKAW)」が公式ECサイトを立ち上げ、デビューした。第一弾商品の“スキンケアオイル”(60mL、6270円税込)は、最もバランスが良いとされる22歳の肌にある皮膚構造成分を植物由来で再現したオイルで、顔や体、髪にとマルチに使える。白濱イズミとは、タレント、表現者として活躍するラブリのこと。白濱イズミで挑むビューティについて、また子どもが生まれて“今”思うことについても聞いた。

WWD:スキンケアブランド「イカウ」を作った思いは?

白濱イズミ(以下、白濱):私はこれまで、言葉を書いてきました。例えば、本だったり、エッセーだったり、時には音楽だったり、言葉のさまざまな面を形に変えて伝えているんです。それで今回は、ビューティアイテムに変えてみたんです。

私は言葉を発信する側ですが、受け取る側の人によっては音楽から言葉が入ってくる人もいれば、映画から言葉を受け取る人もいるし、それが本であることも。言葉だけでは伝えられないことがあると思っています。日常の中で、触れられるもので表現できたらいいなあと思ったんです。

WWD:それが今回はビューティだったんですね。

白濱:私自身、女性にとっても言えることですが、肌がきれいになる、ならないって、心の変化につながると思うんです。肌がきれいになるだけで、余裕が生まれて誰かに優しくなれたりとか、関心がなかったことに対して関心が生まれたり。心に余裕ができると自分の感覚の中にスペースが生まれる。余白が生まれるという感じでしょうか。スキンケアでその人自身から変化が生まれるといいなと考えて、今回のブランドを作りました。

WWD:確かに、スキンケアアイテムはモノでありながら、人の心を動かす、変化を与えられるモノだと思います。そこで最初にオイルを選んだ理由は?

白濱:例えば、化粧水だと化粧水の使い方だけでしか、クリームだとクリームの使い方でしかアプローチができません。オイルは、その人の使い方になじむものと考えます。「イカウ」も使い方は一つじゃない。顔や髪、自分が気になるところ、胸の周り、デリケードゾーンにも使えます。これを使ってあなたの生活、スタイルに合う使い方をしてもらえたらいいなという思いを込めています。

WWD:OEMメーカーはオリオン粧品工業ですね

白濱:原価やコストを抑えることを考えると、海外などを活用する方がいいと思いますが、自分の目の届く範囲でモノづくりをしたくて国内生産にこだわりました。オリオンさんにお願いしたのは、使う人の気持ちを考えた人間味のある会社さんだと思ったからです。また、オリオンさんは新しいことをやってみよう、やってみますと言ってくれたんです。

WWD:最初にオイルを選んだ理由は?

白濱:だたオイルだと、どこにでもあるようなオイルになってしまいます。オリジナリティーとして、ベタつかない、軽い感覚にこだわりました。オイルってどうしても重たさがあって。塗ってすぐに出かけられないし、夜に使うモノ、という印象になりがち……。デイリーに使えて、夏でも使えて、すぐに作業、仕事に取り掛かれる軽さ。それを表現したいと思っていました。

「ラブリで出すと、ラブリとしての私が立ってしまう」

WWD:今回、ビジュアルや映像にもこだわっていますね。写真家の嶌村吉祥丸氏が撮影し、映像は夫である米倉強太氏が担当しました。普通の化粧品のビジュアルでは、肌が綺麗に見える画像や映像ですが、「イカウ」は肌の雰囲気を演出しているというか、イメージというかかっこよくもあるし、自然な感じがします。

白濱:「イカウ」はビューティぽさをなくしたかったというのではないですが、私が作る意味を考えると、ビューティブランドなんですが、自分らしいビューティぽさの表現を選んだんです。今回、私がビジュアルに出なかったのも、ブランドよりも先に、ラブリとしての私が立ってしまう。それではダメというか、私は後ろにいて「イカウ」という作品がちゃんと前にありたいと思ったからなんです。

ブランド名の「イカウ」は、(もう一つの母国である)フィリピン語で、日本語で「あなた」という意味を持ちます。「あなたに」というところに、私が登場しちゃうとごちゃまぜになってしまうと思って。あくまでも「あなたに」対するという意味を込めています。

WWD:オイルのパッケージは一般的に瓶の採用が多いというのもありますが、重い印象になりがちですが、「イカウ」はさらっとした見た目で、オイルっぽさがないですよね。

白濱:ビューティアイテムを作るぞ!っていうのがないというか、すごくフラットに考えて作っているんです。使う人が使いやすい、日常の中のどこにいても使いやすいオイルを考えてこういうスタイルにしました。外箱も内側に空の模様を描いたのですが、最初はそれが外でもいいのかなあと思ってたんです。でも受け取った人が開けた時に、ちょっとふわっとした気持ちになるというか、プレゼントという感じで内側にしました。

WWD:作っているときに失敗したことはありましたか?その解決策は?

白濱:ボトルのキャップの色ですね。本当は違った色にしようと思っていたんですが、間違った色が出来上がってきたんです。でもそれがいいねってなって。実際はもう少し本体となじむ感じをイメージしてたんです。今のピンクっぽいのはメリハリがあっていいかもねと決まったんです。

妊娠中にスキンケアの延長線で子どもと触れ合える

WWD:私生活ではお子さんも誕生し、生活はもちろん変化したと思いますが、価値観も変わりましたか?

白濱:「イカウ」は、妊娠中に作り続けていて、妊娠しているときでも使えられるテクスチャー、妊娠線にも対応できるようにしたいと思っていました。オイルを塗るときに自分のお腹に触れることにより、奥に赤ちゃんがいることを実感する。ただのスキンケアなんですけど、その延長線上で自分の子どもに触れ合えるという感覚を感じていました。

WWD:神秘的ですね。

白濱:作っているときにお腹に子どもがいたので、「イカウ」も神秘的な感覚を取り入れることができたと思います。香りも妊娠中は敏感になります。爽やかさだったり、軽さだったりを意識して香りも作ったので、妊娠してる私でもこの香り大丈夫だなってなりました。

WWD:心境の変化もあったんでしょうか?

白濱:子どもが生まれていろいろ考えますね。一緒にいるわけじゃないのに、常に娘が一緒にいる感じがあるんです。自分が2人になった感覚というか。一人じゃないって。テンパっていたことが落ちつて考えられるようになったというか。感覚が優しくなったというか、丁寧さが加わったような気がします。不思議なんですけどね、穏やかな気持ちです。

WWD:私も子どもがいるのでなんか分かります。生活はけっして穏やかじゃないんですけど、そのなんだか感覚が穏やかになったというか。

白濱:そうそう、生活はそうじゃないんですけどね(笑)。感覚として穏やかな空気が流れているんですよね。

WWD:「イカウ」の次の製品は決まっていますか?今後作ってみたいモノは?

白濱:今、化粧水を作っています。化粧水もオイルの延長線、オイルがベースで、それが化粧水に変化しているという感じでしょうか。姿は違うけど、何かが一緒というのを作ってみたいと思って。オイルを入れて2層式にしてまぜて使うとかを考えていて。3、4月ぐらいに出せたら。サンプルが出きているのですが、とっても柔らかな肌に導いてくれるんです。

ビューティブランドだけど感覚を超えた一つの表現が「イカウ」

WWD:今後の目標について教えてください

白濱:「イカウ」は、イカウという場所があってその中で自分の言葉だったり、写真や映像、音楽だったり、いろんなものを毎回組み合わせて、さまざまな形で「イカウ」を見せられたら。ビューティブランドなんだけど、ビューティの感覚を超えた、表現の一つであったらいいなと思っています。

私自身は、「イカウ」がありつつ自分の言葉というものをいろんな形に変えて、本でも、お母さんになったから子どものモノだったり、お母さんにモノだったり。誰かのためになるモノ、誰かの生活の中に意味のあるモノを生み出せたらいいと思います。

The post 言葉を大事にしたスキンケアブランド「イカウ」を立ち上げた白濱イズミとは誰か? そこに込めた思い appeared first on WWDJAPAN.com.

完全オーダーメイドジーンズのアンスパン “地球上のCO2排出量を最低でも1%削減”

 米サンフランシスコ発のスタートアップ企業アンスパン(UNSPUN)は、“地球上の二酸化炭素排出量を最低でも1%削減すること”を企業目標に掲げ、3Dボディースキャンで資源の無駄を最小限に抑えた完全オーダーメイドのジーンズを製造する技術を開発した。2017年にH&Mファウンデーションの「グローバル・チェンジ・アワード(Global Change Awards)」を受賞。今年11月には、H&M傘下のデニムブランド「ウィークデイ(WEEKDAY)」とのコラボアイテムを発売した。共同創業者のウォルデン・ラム(Walden Lam)に話を聞いた。

WWD:アンスパンの取り組みについて教えてほしい。

ウォルデン・ラム=アンスパン共同創業者(以下、ラム):アパレル業界が抱える課題の一つが在庫だ。売れ残った商品や売り場にすら出なかったサンプルなどが大量に廃棄されている現状を解決するためにわれわれは、消費者の確かな需要を基盤に商品を製造する仕組みを作れないかと考えた。そこで僕たちは主に2つのプロジェクトを動かしている。1つは消費者がアプリで体をスキャンして、好みのデザインのジーンズを作ることができるソフトウエアだ。価格は200ドル(約2万円)で、オーダーから2~3週間のうちに届く。2つ目は3Dテクノロジーを活用した織機だ。従来の製造工程では生地の約15%が無駄になっていると言われているが、3Dテクノロジーを活用することで、資源の無駄を最小限に抑えられる。

WWD:なぜジーンズだったのか?

ラム:最初はアンダーウエアやスイムウエア、スーツなどでも試作品を作っていた。しかし約300人の消費者を対象にアンケートしたところ、75%の人がフィットするジーンズを見つけるのが大変だと回答した。消費者の需要が最も高いうえ、デニムは環境負荷が高いのでこの分野に介入することで大きなインパクトを与えられると考えた。

WWD:開発で難しかったことは?

ラム:アイテムを決定してから3カ月後には香港でポップアップを開いた。僕たちはカスタマイゼーションの技術に集中しすぎてしまって、実際のはき心地や見た目をないがしろにしていたり、バックヨークのないものを作ってしまったりと課題はたくさんあった。

WWD:アドバイザーはいるか?

ラム:実は「リーバイス(LEVI’S)」の元グローバル・ヘッド・デザイナーのジョナサン・チャン(Jonathan Cheung)がアドバイザーとして参加してくれることになった。僕たちのチームのケビン・マーティン(Kevin Martin)がリンクトインでジョナサンにコンタクトしたところから始まって、ジョナサンに「是非、3Dスキャンを体験してみてほしい」と声をかけたら僕たちのサンフランシスコのショールームに来てくれた。僕たちのチームにはデニムのバックグラウンドを持つ人がいない。それなのにデニム界では神のような存在の彼に穿いてもらえることになり、みんなとても緊張した。2週間後にデニムを届けたら、彼はとても気に入ってくれてアドバイザーとして参加してくれるようになった。来年には彼が監修した商品ラインもローンチする予定だ。

WWD:あなた自身が環境問題に興味を持ったきっかけは?

ラム:大学を卒業した頃に、UNが主催する気候サミットに参加した。そこでもう僕たちには時間が残されていないことに気付いた。一方で消費者にサステナビリティを意識しながら買い物をするように説得することは非常に難しい。でも健康に良い食品が美味しかったらみんながそれを食べるように、“環境に良いもの”を“欲しいもの”に作り変えることができれば自然にみんなが環境に良いものを選択するようになると思った。アンスパンではき心地がよく、穿いていると自信が持てるようなジーンズを作ったのはそのためだ。

WWD:オリジナルの織機は実際に使用できる?

ラム:サンフランシスコではすでに稼働しているが、現在試作中だ。来年中にはこの織機で作る商品ラインアップをローンチしたい。

WWD:実際どれくらい売れている?

ラム:18年から本格的な販売を開始し、年間1000本は売れている。僕たちのチームには大きなマーケティングチームはいないので、サステナブルなイノベーターたちのコミュニティーを中心に口コミで広まっているようだ。

WWD:どのような人たちに人気?

ラム:僕たちの顧客には3つのタイプがいる。まずは環境意識の高い人。需要ベースで資源の無駄を最小限にしようというアンスパンのサステナビリティの部分に共感してくれる人。このような人たちから生地や環境負荷についてよく問い合わせがある。2つ目は体型に悩みのある人たちだ。アンスパンはそれぞれのユニークな体型をリスペクトしている。見た目は“ノーマル”な体型に見えても、実はフィット感に課題を持つ人は多い。3つ目は未来のファッションデザインに興味がある人や起業家たちだ。

WWD:今後の目標は?
僕たちの目標は地球上のCO2排出量を最低でも1%削減することだ。より大きなインパクトを生み出すために、他のブランドとも積極的にコラボしていきたいと思っている。

The post 完全オーダーメイドジーンズのアンスパン “地球上のCO2排出量を最低でも1%削減” appeared first on WWDJAPAN.com.

マーケティングよりまず理念、「無印良品」の企画の立て方に驚き! MUJI特集担当記者座談会【前編】

 「WWDジャパン」11月9日号は「無印良品」特集です。コロナによる休業明け以降、食品をフックに国内や中国で急回復を見せている「無印良品」を、記者3人で多面的に取材しました。読者2000人以上に聞いた人気商品ランキングや「無印良品」に望む改善点、「無印良品」が地方や郊外で模索する新しい小売業のあり方、「無印良品」の理念の発信者である金井政明・良品計画会長のインタビューなど、盛りだくさんの内容になっています。本紙詳細はこちらから。ここでは、担当記者3人による紙面作りの振り返りや取材こぼれ話を前後編でお届けします。

【座談会参加者】
林芳樹:デスク、ファッション担当記者
五十君花実:ニュースデスク、ファッション担当記者
中村慶二郎:ビューティ担当記者

林芳樹(以下、林):特集お疲れさまでした。まずは最大で計2850人にご協力いただいた(※設問により回答者数が異なる)アンケートから浮かび上がった、「私にとっての『無印良品』の定番といえばコレ!」ランキングを振り返りましょうか。アンケートの取りまとめを担当した中村さんはどんなことが印象に残っていますか。

中村慶二郎(以下、中村):「WWDジャパン」のメールマガジンやホームページ経由で募ったアンケート回答と、インスタグラムやツイッター経由の回答を合算しましたが、メルマガやホームぺージ経由とSNS経由の回答ではランキングに顕著な差がありましたね。メルマガ、ホームぺージ経由では収納用品を推す声が圧倒的だったんですが、若年層が多いSNS経由では収納用品は10位以下。その代わり、化粧水やレトルトカレー、お菓子の3つをあげる声が非常に多かった。年代によって人気商品が違うということですね。また、「『無印良品』に望む改善点」という記述式の設問では、ファッション商品に対する要望が非常に多かったですね。

五十君花実(以下、五十君):「WWDジャパン」はファッション関連職種に就いている読者が多い、ということも多分に関係しているのでしょうが、確かに「ファッションは価格を少し上乗せしてもいいから質を上げてほしい」という声は何件かありましたね。もちろん、「もう少し価格を抑えてほしい」という声もありましたが。

中村:「ユニクロ(UNIQLO)」と比較して、「デザイン性を高めてほしい」「カラー展開をもっと増やしてほしい」といった要望を書いているケースも多かったです。最終的にファッション、ビューティ関連では化粧水がランキング3位で、ファッションアイテムは6位の靴下が最高位。5位とは1票差だったので、惜しかったですね。校了日に、このアンケートページを編集部の他のメンバーが見ながら喋っていた内容が僕はすごく象徴的だなと思ったんですが、「俺は『無印良品』の商品は1つも持っていないよ」みたいに言っている人でも、深く突っ込んでいくと「あれも『無印良品』だ」「これもそうだった」みたいに気付くケースって多いですよね。

:確かに自分も今回改めて自分の生活の中の「無印良品」を数えてみたら、忘れていたけど使っていたということがすごく多かった。バスマットとかバスタオルとか。使っているうちに生活に溶け込んでいくから、これが「無印良品」だと自覚しなくなるのかもね。ベーシックで水とか空気みたいな存在。邪魔をせず、主張し過ぎず、生活に溶け込む。そこが「無印良品」の商品の一番のいいところだなと感じたね。

中村:「『無印良品』のどこが好きですか?」というアンケートに対する回答でも、「シンプル」っていう言葉が500回くらい見た気がします。

「取材がいつものように進まない!」

五十君:ではそういったアイテムを一体どのように作っているのかと、ファッションやビューティの開発担当者に取材しました。ファッションの担当者を取材した際に私が驚いたのは、商品企画も理念から入るところ。一般的なウィメンズのアパレルメーカーを取材していると、やっぱりシーズンのトレンドとか今何が売れているかといった話から入ることが多いですし、私自身もそれに慣れている。でも、それとは全く違う企画の立て方をしていることは新鮮でした。マズローの欲求5段階説(アメリカの心理学者アブラハム・マズローが唱えた人間の欲求に関する理論)の話が出てきたときは、「……御社のチームはアパレルの企画をする際にみんなマズローの説のことを考えているんですか!?」と思わず聞いてしまった。これについては、「マネージャー以上は自問自答していると思いますよ」という回答でした。

:“MUJIイズム”というか、そういう思想は脈々とあるよね。シャツにしろ化粧水にしろ食品にしろ、あらゆるアイテム1点1点がその思想に合致するか考えられて企画されている気がする。

中村:化粧品部門の担当者の取材でも、正直やり辛いというか、通常とは勝手が違うなと感じた部分もありました(笑)。普段、化粧品の取材をする際は「商品開発にあたってどのようにマーケティングしたか」「どうトレンドを取り入れたか」「それをどう宣伝するか」といったことを聞きますが、今回の取材では「本当に生活に必要なものだから化粧水を開発しました」といった話で、取材がいつものようには進まなかったんですよ。

:いわゆるマーケティングではない、理念型の商品開発と言えるのかもね。私が印象的だったのは、アパレルの担当者を取材する中で出たヤク(冬のセーターなどに使われる動物性素材)の話。カシミヤは高級素材として認知されていますが、温かさや肌ざわりでカシミヤに劣らないというヤクにフォーカスし、(カシミヤという)名より実を取るという点は、40年前の創業当初に「われ椎茸」を打ち出していたのと共通するなと思った。干しシイタケも、割れていて見た目が悪くても出汁は美味しくとれる。人気の食品「不揃いバウム」も、「ちょっと見た目が悪くてもおいしさは変わらない」という考え方でこれらと一緒だよね。

五十君:国内累計ダウンロード数2111万、海外も含めると約5000万という店頭送客のためのアプリ「MUJIパスポート」の担当者の取材でも、理念がまず先にあるんだということを強く感じました。普通それだけのユーザーを抱えているアプリなら、データを分析していかに売り上げにつなげるか、いかに買わせるかという話になると思うんです。でも、そうはしていない。「客をデータとして捉え、データに対してデータで商売するようなことはしません」と。そこはITオリジンの会社とは考え方が180度違う。こうやって「無印良品」らしさは作られ、守られているんだなと思いましたが、同時にそこがECがやや弱いということにもつながっているのかも、とは思いました。

:自社ECは今年の1月もメンテナンスが長引いて休業していたしね。基本的な商品の品切れもECでは珍しくない。

中村:ECの品切れについてはアンケート回答でも指摘が多かったですね。「テレビ番組で取り上げられるとあっという間に品切れになるケースが多い」といった声です。ちなみに今は「発酵ぬかどこ」が幻の商品みたいになっていますよ。店頭もECも出たらすぐに売り切れてしまうケースが多く、なかなか売っていないという声をツイッターなどで見かけます。

:そのように自然と話題になるケースは多いのに、「無印良品」自身は広告を仕掛けないという点も特徴だよね。今秋は何年ぶりかにテレビCMを制作していたけど、それもあくまでイメージ広告みたいな雰囲気で、何か1つの商品をアピールするという内容ではない。「無印良品」は取り扱い品目が7500もあって、デジタル機器と薬以外はほとんどある。これだけ品数が多いからこそ、「発酵ぬかどこ」「コオロギせんべい」「バターチキンカレー」「二重ガーゼパジャマ」など、いつも何かしら話題になるネタがある。それが強み。服だけ、化粧品だけの店ではやっぱりこうはいかないから。

The post マーケティングよりまず理念、「無印良品」の企画の立て方に驚き! MUJI特集担当記者座談会【前編】 appeared first on WWDJAPAN.com.

アトモス社長・本明秀文のスニーカーライフ番外編「爆速!シュプリーム買収劇」

 スニーカーにまつわる噂話のあれやこれやを本明社長に聞く「WWDジャパン」本紙連載の番外編。昨晩、「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」や「ヴァンズ(VANS)」「ティンバーランド(TIMBERLAND)」「イーストパック(EASTPAK)」などを傘下に持つ米VFコーポレーション(VF CORPORATION以下、VF)が「シュプリーム(SUPREME)」を買収すると複数メディアが報じた。買収額は21億ドル(約2163億円)。「シュプリーム」は2017年、巨大投資ファンドのカーライル・グループ(CARLYLE GROUP以下、カーライル)に株式の51%を5億ドル(約515億円)で売却しており、3年で企業価値が約2倍に上がったことになる。早速この買収劇について、本明社長に聞いた。

WWD:VFが「シュプリーム」を2000億円以上で買収するようです。

本明秀文社長(以下、本明):今VFの株式時価総額が3兆円以上。“シュプリーム買収”が報道されていきなり株価が11%も上がっているから、時価総額が3000億円以上も上がった。だから2000億円で買収しても、タダで買っているのと同じだし、むしろ1000億円も利益が出た。VFにとってはいい買い物だよね。(シュプリーム創業者の)ジェームス・ジェビア(James Jebbia)も残るみたいだし。

WWD:2000億円の価値については?

本明:どこまで真実か分からないけど、シュプリームの売上高が5億ドル(約515億円)と書いてあった。EBIT(利息及び税金控除前利益)っていうのがあって、これは経常利益と支払利息から受取利息を引いた利益なんだけど、このEBITが200億円ぐらいなんじゃないかなと。つまり単純に年間200億円の利益が出ていて、その10倍で計算して2000億円。この何倍かってのがブランド価値と一緒で、普通のアパレルだと良くて5倍とか、ダメだと1倍とか。「シュプリーム」もセールを始めちゃったし、カーライル的にもこれ以上企業価値が上がることはないという判断じゃないかな?いいタイミングで売ったと思う。

WWD:当初ジェームスはカーライルに株式の半分を売却したわけですけど、最終的には何%保有していたんでしょうか?

本明:契約内容は分からないけど、ジェームスは追加でカーライルに株式を売却していると思う。(初めの売却から)1年後に追加で5%、2年後にまた5%、3年後にさらに5%とか。売り上げが大きくなったらその時のEBITの何倍で買うよとかそういう契約もある。ファンドもバカじゃないから、初めに全ての株式を買いはしなくて、何%かは持っておいてもらった方が、本人(ジェームス)も売り上げを伸ばそうと頑張るからね。だから「シュプリーム」の生産数も増えた。

WWD:確かに生産数は増えましたね。VFは「シュプリーム」が傘下に欲しかったんでしょうか?

本明:「シュプリーム」「ザ・ノース・フェイス」、ハイプなスニーカーがスニーカーヘッズの3種の神器みたいになっているからVFが好調のように思われているけど、僕は逆に悪いんだと思う。

WWD:下馬評だと「VFが好調だから」と言われていますね。

本明:悪いんじゃない?だって、「ティンバーランド」も「ヴァンズ」も売れていないし、「ザ・ノース・フェイス」もゴールドウイン(日本での生産・運営元)は売れているけど、アメリカではそうでもない。だから自分たちでグローバルの市場をコントロールしたいはず。日本の「ヴァンズ」(ABCマートが商標契約をしており、日本での生産・運営元)の売り上げも欲しいはずだよ。だからまことしやかな話で、日本にVFジャパン(仮)やヴァンズジャパン(仮)が出来るんじゃないかと。そうなるとヴァンズジャパンがABCマートに「ヴァンズ」を卸すことになる。スニーカー市場が大きく変わるね。

WWD:そもそもメーカーが複数のブランドを所有するメリットってなんですか?

本明:例えば2ブランドを1カ所にまとめれば、これまで5人ずつ、10人でやっていたことを6~7人でできるようになるとか、人事面での相乗効果はある。だけど、もっとお金がかかるのは、信用調査だよね。例えば新しくアカウント(取引先)を開設しようとしても信用調査が一番難しい。だから帝国データバンクとかがもうかるわけ。情報をブランド間で共有できた方がシナジー効果は大きい。ナイキ(NIKE)だって、ナイキの傘下に「ジョーダンブランド(JORDAN BRAND)」や「ナイキ SB(NIKE SB)」「NSW」とかがいろいろあって、情報共有している。

WWD:なるほど。ちなみに本明さんがアトモスを売却するとしたらいくらですか?

本明:アトモスは(経営者である)僕の自由度が高いからスピード感もあるし、面白いこともできる。経営のシステムが変わると上手くいかないこともあるから、売却を考えるのはなかなか難しいね。まぁ値段は分からないし、言いたくないけど(笑)。

The post アトモス社長・本明秀文のスニーカーライフ番外編「爆速!シュプリーム買収劇」 appeared first on WWDJAPAN.com.

ミラノ&パリコレで配布されたベストマスク9選 バイオ技術を使った「クロエ」がナンバーワン

 私が今回参加した2021年春夏シーズンのミラノとパリのファッション・ウイークでは、ショー会場入り口でマスクが配布されていました。ブランドによってデザインは多種多様で、ファッション・ウイークの日を追うごとに「今日はどんなマスクがもらえるのかな」と楽しみにしている自分もいて、“マスクコレクター”として可能な限り収集してみました!ただ、私はマスクがとても苦手。日本を離れてからアメリカとフランスで約10年間はマスクを着用したことがなく、日本にいた頃も小学生のときに給食当番で着用していたのが最後の記憶……。風邪をひいてもマスクなしで過ごしてきたし、今だに息苦しくて抵抗感があります。そんな私ですが、ミラノコレとパリコレで収集したマスクを(勝手に)ランキング付けさせていただきました!ジャッジの基準は快適性、デザイン性、エコロジカルの観点です。洋服の好みや肌と髪色、顔の骨格など人それぞれなので、極めて個人的な意見としてご覧ください!

ラング外も魅力的なマスクばかり

 まずトップ3からは外れたブランドのマスクをダイジェストでご紹介します。「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」からは、ブランドのシグネチャーであるメタルを彷彿とさせる、シルバーに輝くマスクが招待状とともに届きました。ゴムがあまり伸びず、長時間が着けていると耳が痛くなるためランキングからは外れましたが、ショー会場や日付が入っているので記念品として大切に保管しておきたい一品です。

 初のパリコレ参加となった「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」は、ボルドーの古布を使用。生地が柔らかくて顔にフィットするのはいいのですが、逆にフィットしすぎて鼻息で布がペコペコ動くのが気になってしまいました。私の鼻息が荒いだけなのかな(笑)。

 「コシェ(KOCHE)」は黒色のサージカルマスクの上に黒のレースを貼り付けたデザインです。黒いレースってなんだか魅惑的な雰囲気を醸し出すので素敵。でも洗濯ができず使い捨てなので、エコロジカルの観点からベスト3は逃しました。

 「バルマン(BALMAIN)」は伸縮性のある厚手のニット素材。ブランドのグラフィックが描かれたアイキャッチーなデザインがかわいいんです。ただ、丸みがかっていて私の顔にはちょっとしっくりきませんでした。

 ランク外で最も魅力的だったのは「エトロ(ETRO)」です。ショーの各座席に色違いのペイズリー柄マスクが1枚ずつ置かれており、私はブルーをゲット。もちろん「エトロ」の洋服とは相性がいいですし、全身ワントーンのコーディネートにマスクをポイントにしたり、アクセサリー感覚で着けられたりできそうなのがいいですよね。座席には、マスクと一緒に消毒ジェルもありました。

第3位
ACNE STUDIOS

 デザインで最も好みだったのが「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」です。厚手のコットン素材で、アイボリーカラーが柔らかい印象。リボンのようなゴム部分も淡いオレンジ色で肌なじみが良く、服の邪魔もしません。ゴムは頭の後ろで結んで固定するか耳にかけて結ぶかの2通りで、私は耳にかけてリボンを垂らして着用しています。布部分が大きいのでしっかりとカバーされている感じがありますし、小顔効果もあってうれしいですね。

第2位
DIOR & SERAPIAN

 どちらかに選びきれなかったので第2位には「ディオール(DIOR)」と「セラピアン(SERAPIAN)」が両方ともランクイン!「ディオール」はシンプルですが、とにかく快適。鼻の下に少し空間が生まれて息苦しさもなく、マスクに不慣れな私でも長時間着けていられます。ゴム部分も長さ調整可能で、痛くなることがありません。個人的にはロゴが好きではないので、無地な点もプラスのポイント。イタリアの老舗レザーブランド「セラピアン」も同じく快適性に優れています。「ディオール」とは違いナイロン製で通気性が良く、息苦しさがありません。私は黒などのダークカラーの服を着ることが多いので、コーディネートに合う黒色のマスクは自然と出番が多くなります。

第1位
CHLOE

 バイオ技術を使ったマスク製造を行う企業のユーマスク(U-MASK)とのコラボレーションでマスクを制作した「クロエ(CHLOE)」がダントツの1位に輝きました!マスクはサーモンピンクのカバー部分と取り替え式のフィルターの二層構造。フィルターは最大200時間使用可能で、除菌と抗菌作用でウイルスや細菌から保護効果があるだけでなく、それらの増殖や拡散を防ぐ効果もあるとのこと。カバー部分は海洋プラスチックからのリサイクル糸が使用されており、超極薄で快適です。このマスクは公式サイトなどで販売(税込7700円)されており、マスク1枚ごとに11ユーロの収益金が、ユニセフ(国連児童基金)と「クロエ」が男女平等プログラムを支援するソーシャル・チェンジ・ファクトリー(Social Change Factory)に寄付されるようです。快適性やデザイン性、エコロジカルに加え、ソーシャルグッドなポイントも重なって堂々のナンバーワンでした!

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

The post ミラノ&パリコレで配布されたベストマスク9選 バイオ技術を使った「クロエ」がナンバーワン appeared first on WWDJAPAN.com.

ミラノ&パリコレで配布されたベストマスク9選 バイオ技術を使った「クロエ」がナンバーワン

 私が今回参加した2021年春夏シーズンのミラノとパリのファッション・ウイークでは、ショー会場入り口でマスクが配布されていました。ブランドによってデザインは多種多様で、ファッション・ウイークの日を追うごとに「今日はどんなマスクがもらえるのかな」と楽しみにしている自分もいて、“マスクコレクター”として可能な限り収集してみました!ただ、私はマスクがとても苦手。日本を離れてからアメリカとフランスで約10年間はマスクを着用したことがなく、日本にいた頃も小学生のときに給食当番で着用していたのが最後の記憶……。風邪をひいてもマスクなしで過ごしてきたし、今だに息苦しくて抵抗感があります。そんな私ですが、ミラノコレとパリコレで収集したマスクを(勝手に)ランキング付けさせていただきました!ジャッジの基準は快適性、デザイン性、エコロジカルの観点です。洋服の好みや肌と髪色、顔の骨格など人それぞれなので、極めて個人的な意見としてご覧ください!

ラング外も魅力的なマスクばかり

 まずトップ3からは外れたブランドのマスクをダイジェストでご紹介します。「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」からは、ブランドのシグネチャーであるメタルを彷彿とさせる、シルバーに輝くマスクが招待状とともに届きました。ゴムがあまり伸びず、長時間が着けていると耳が痛くなるためランキングからは外れましたが、ショー会場や日付が入っているので記念品として大切に保管しておきたい一品です。

 初のパリコレ参加となった「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」は、ボルドーの古布を使用。生地が柔らかくて顔にフィットするのはいいのですが、逆にフィットしすぎて鼻息で布がペコペコ動くのが気になってしまいました。私の鼻息が荒いだけなのかな(笑)。

 「コシェ(KOCHE)」は黒色のサージカルマスクの上に黒のレースを貼り付けたデザインです。黒いレースってなんだか魅惑的な雰囲気を醸し出すので素敵。でも洗濯ができず使い捨てなので、エコロジカルの観点からベスト3は逃しました。

 「バルマン(BALMAIN)」は伸縮性のある厚手のニット素材。ブランドのグラフィックが描かれたアイキャッチーなデザインがかわいいんです。ただ、丸みがかっていて私の顔にはちょっとしっくりきませんでした。

 ランク外で最も魅力的だったのは「エトロ(ETRO)」です。ショーの各座席に色違いのペイズリー柄マスクが1枚ずつ置かれており、私はブルーをゲット。もちろん「エトロ」の洋服とは相性がいいですし、全身ワントーンのコーディネートにマスクをポイントにしたり、アクセサリー感覚で着けられたりできそうなのがいいですよね。座席には、マスクと一緒に消毒ジェルもありました。

第3位
ACNE STUDIOS

 デザインで最も好みだったのが「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」です。厚手のコットン素材で、アイボリーカラーが柔らかい印象。リボンのようなゴム部分も淡いオレンジ色で肌なじみが良く、服の邪魔もしません。ゴムは頭の後ろで結んで固定するか耳にかけて結ぶかの2通りで、私は耳にかけてリボンを垂らして着用しています。布部分が大きいのでしっかりとカバーされている感じがありますし、小顔効果もあってうれしいですね。

第2位
DIOR & SERAPIAN

 どちらかに選びきれなかったので第2位には「ディオール(DIOR)」と「セラピアン(SERAPIAN)」が両方ともランクイン!「ディオール」はシンプルですが、とにかく快適。鼻の下に少し空間が生まれて息苦しさもなく、マスクに不慣れな私でも長時間着けていられます。ゴム部分も長さ調整可能で、痛くなることがありません。個人的にはロゴが好きではないので、無地な点もプラスのポイント。イタリアの老舗レザーブランド「セラピアン」も同じく快適性に優れています。「ディオール」とは違いナイロン製で通気性が良く、息苦しさがありません。私は黒などのダークカラーの服を着ることが多いので、コーディネートに合う黒色のマスクは自然と出番が多くなります。

第1位
CHLOE

 バイオ技術を使ったマスク製造を行う企業のユーマスク(U-MASK)とのコラボレーションでマスクを制作した「クロエ(CHLOE)」がダントツの1位に輝きました!マスクはサーモンピンクのカバー部分と取り替え式のフィルターの二層構造。フィルターは最大200時間使用可能で、除菌と抗菌作用でウイルスや細菌から保護効果があるだけでなく、それらの増殖や拡散を防ぐ効果もあるとのこと。カバー部分は海洋プラスチックからのリサイクル糸が使用されており、超極薄で快適です。このマスクは公式サイトなどで販売(税込7700円)されており、マスク1枚ごとに11ユーロの収益金が、ユニセフ(国連児童基金)と「クロエ」が男女平等プログラムを支援するソーシャル・チェンジ・ファクトリー(Social Change Factory)に寄付されるようです。快適性やデザイン性、エコロジカルに加え、ソーシャルグッドなポイントも重なって堂々のナンバーワンでした!

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

The post ミラノ&パリコレで配布されたベストマスク9選 バイオ技術を使った「クロエ」がナンバーワン appeared first on WWDJAPAN.com.

「ミナ ぺルホネン」のクリエイションの原点に触れる展覧会 都心で森林浴気分

 皆川明による「ミナ ペルホネン(MINA PERHONEN以下、ミナ)」による「風景の色 景色の風 feel to see」展が東京・青山のスパイラルで開催されている。同展は今年ブランド設立25周年を迎えた記念の展示で、クリエイションの原点であるテキスタイルを始め、「ミナ」として初めて手掛けたアイテムなどブランドの軌跡が読み取れる展示になっている。会期中には、皆川によるライブペインティングが予定されており、外からその様子が見られるほか、「ミナ」のオリジナル商品を展示販売する。

 入場無料で会期は12月1日まで。会場の一部は30分枠の予約制だが、当日券も用意されている。

 11月9日に開催されたプレス内覧会は朝9時にスタート。森を描いた背景に小鳥のさえずりが清々しい秋晴れの朝にぴったりの展示だ。内覧会では、小林裕幸スパイラル館長が「5年ごとに、『ミナ』の展示会を開催している。今年『ミナ』は25周年、スパイラルは35周年を迎えた。われわれには、コロナだから展覧会を中止するという選択肢はなかった。このような状況だからこそ、何かを感じ取ってもらえる展覧会になればと思う」と述べた。皆川は、「ブランドを立ち上げた当時は業界のこともよく分からないまま、ささやかなもの作りをしてきた。今では、プロダクトが人々の感情や思考につながっていくと思いながらもの作りをしている。そこから生まれる風景や景色を感じてもらえるとうれしい」とコメント。

 会場は3部構成になっており、受付左は“オーシャン”というスペースで「ミナ」を代表するテキスタイルを海の波に見立ててダイナミックに展示している。今「ミナ」のアーカイブには約3000種類のテキスタイルが保管されているそうだ。その奥のスペースは、“モーション“と名付けられ、テキスタイルを素材から解き放って映像で表現。森の中の木立にさまざまなテキスタイルの映像が映し出される。それは、森の背景や天井から降り注ぐ自然光と相まって、まるで森林浴をしているように心が安らぐ。この映像インスタレーションオランダを拠点に活動するクリエイターの遠藤豊が手掛けた。

 受付の右には、“0→1”というスペースで、「ミナ」が最初に作ったさまざまなものが展示されている。そのスタート地点には、いくらの箱が置いてある。ブランド設立当時は魚市場で働いていた皆川が、道具の仕分けに使っていたものだ。初めての展示会のインビテーションや初めてのニット、初めての家具などさまざま。皆川が”ささやかなもの作り“と言っていたが、その一つ一つに愛情が注がれているのがよく分かる。トレンドやマーケティングといったファッション業界のルールに囚われず、妥協せずに独自のスタンスで活動してきた「ミナ」のもの作りは一過性ではない。各クリエーションのについて考え抜き、丁寧に大切に作り上げるというプロセスがある。そのような背景がプロダクトに息づき、それを手に取る人々に伝わっているのだと感じた。コロナで自然を求める人が増えているようだが、都心にいながら森林浴した気分になれる、そんな展覧会だ。

The post 「ミナ ぺルホネン」のクリエイションの原点に触れる展覧会 都心で森林浴気分 appeared first on WWDJAPAN.com.

デリケートゾーンケアブランド「アイム ラフロリア」を展開するメリア 幼なじみで共同代表の2人に起業への思いを聞いた

 「もっと自由に」「一人一人が自分らしく輝ける毎日を」をビジョンに、2017年、メリア(Mellia)を立ち上げた原由記代表と和田由紀代表。18年9月にはフェミニンケアブランド「アイム ラフロリア(I’m La Floria)」をスタートし、デリケートゾーンケアの習慣化に向けて啓もうする。20年9月には累計約3億円の資金調達を実施し、D2Cの第一人者である佐々木康裕タクラム・ディレクター兼ビジネスデザイナーを社外取締役に迎えた。オウンドメディア「マイミューズ(my muse)」を立ち上げて発信にもさらに力を入れながら、D2Cブランドとして事業を推進する。「ゆき」という同じ名前で幼なじみ。Wゆきさんに起業から約3年、キャリアの異なる2人がタッグを組んだ理由や、デリケートゾーンケアに注目した理由について話を聞いた。

作り手が見えるプロダクトづくりで

女性の背中を後押しする

WWD:一見すると異色のコンビにも見えるお二人ですが、ともに起業した経緯を教えてください。

原由記代表取締役CEO(以下、原):実は和田とは30年来の友人なんです。徳島県出身で、同じ名前で、学校は違っても習い事のバレエを通じてほぼ毎日一緒に過ごした時期もありました。大人になって漠然とですが「いつか一緒に何かやりたいね」と話していましたが、それぞれ別の道に進んだんです。私は化粧品メーカーで商品開発やプロモーションに携わり、ヘアケアやボディーケア、シートマスク、歯磨き粉などさまざまなカテゴリーを手がけてきました。

和田由紀代表取締役CEO(以下、和田):私は外資系の証券会社で営業の仕事をしてきましたが、次のステージに踏み出したいと考えていることを原に話したところ、「そろそろ一緒に立ち上げる?」という話になりました。自分も原も約10年間会社員として仕事をしてきてやり切ったという思いもあり、タイミングも合致しました。会社を立ち上げるときに、どちらかのバックグラウンドを生かしたほうが経験をもとに成功できるはずと考えて、原がヘアケアやボディーケアを手がけてきたことから、プロダクトを通じて女性に寄り添いチャレンジのきっかけになるような会社づくりを目指すことにしました。お互いにやれることが全く違うので非常にバランスがよく、私はプロダクトの販路をはじめとした営業面や、資金調達といったファイナンス面での経験が生きています。

WWD:メリアは女性のエンパワーメントというメッセージ性も非常に強いですよね。

原:化粧品メーカーでは社内も自分が率いているチームも圧倒的に女性が多く、ホルモンバランスの変化による気持ちの浮き沈みや生理による体調不良などが仕事に影響を及ぼすということをよく感じました。そういった心身が不安定になりがちな女性に寄り添えるようなセルフケアプロダクトの開発を女性目線でしたいとかねてより考えていました。

和田:私は前職で管理職の方と仕事をする中で、子育てをしながら働いている私自身の働き方について聞かれることが度々ありました。年齢による制約や子どもがいることで能力を十分に発揮できないというような固定観念に囚われている人が多くてもったいないと思っていました。そういったことから真の意味で働き方改革や女性のエンパワーメントといったきっかけになれるような会社を作りたいという思いもありました。私たちが起業して奮闘している姿をみなさんに見てもらうことも、「私もがんばってみよう」という気づきになるのではないでしょうか。

デリケートゾーンケアを

歯みがきぐらい当たり前の習慣に

WWD:「アイム ラフロリア」をスタートした18年の時点では、デリケートゾーンケアはまだまだ耳慣れないカテゴリーでした。その中で注目したのはなぜですか。

原:ベンチャー企業としてどこのマーケットに注力するべきかを考えたときに、市場が小さく大手が進出していないカテゴリーのほうが、付加価値をつけて広げることができ、勝ち目があると考えました。また10年間ものづくりをしてきましたが、自分が使っている商品をどのような人が作っているのか気になっていました。女性向けの商品を男性が開発していることも多く、女性の気持ちにもっと寄り添って作れたらと。女性ならではの悩みが多いデリケートゾーンケアというカテゴリーでは、私たち女性が作っているというストーリーとともにプロダクトを届けることができれば、もっとこの市場は広がるはずと考えました。

WWD:デリケートゾーンケアを取り入れてもらうためにどのような工夫をしましたか。

原:「アイム ラフロリア」の立ち上げ当初はマーケットが小さく、デリケートゾーンケアという習慣をどう広げていくかを考えました。欧米では当たり前の習慣ですが、デリケートゾーンだけのケアは日本人にはなじみがなく、「効果的なケア方法が分からない」「めんどくさい」「恥ずかしい」という理由から、8割の人がしていないという現状がありました。そこでボディーウオッシュとして、毎日ケアをする中で“デリケートゾーンまでケアができる”という訴求方法で、“デリケートボディウォッシュ”を開発しました。

和田:ボディーに2種類使うのって結構面倒ですよね。せっかく手にとってもらっても、週に1回しか使わないようになってしまうのはもったいない。だからこそ泡立ちが良く1本で全身を洗える仕様にこだわって、毎日使ってもらうことでデリケートゾーンケアを歯磨きぐらい習慣化させたいと思いました。

原:また、若い世代のほうがデリケートゾーンケアに取り組みやすいのではないかとも考え、携帯しやすく外出先でもサッと使用できる“フレッシュクリアシート”を作りました。この2アイテムからスタートし、その後店頭で販売する中でお客さまの悩みを聞いたところ、保湿・乾燥が気になるという声が多数あったので“デリケートボディクリーム”を発売し、ラインアップを拡充していきました。

WWD:百貨店やセレクトショップなどリアル店舗はもちろん、D2CブランドとしてECでの販売にも注力していますね。

和田:私たちは、ブランドはお客さまとともに作り上げるものと考えています。お客さまのことを「ミューズ」と呼び、店頭やアンケートなどで声を拾いながら、黒ずみや乾燥、かゆみといった悩みに寄り添うために商品を増やしていきたいと考えています。百貨店やセレクトショップでの店舗販売からスタートしたのは、世界観を直接感じてもらうことでよりファンになってもらったり、生の声を拾うことでユーザーに寄り添ったもの作りにも繋がります。その次の段階ではD2Cブランドとして、より多くの人の手に届くようにECでの販売や定期便を行い、リアルとデジタルの両輪で進めています。現状はリアルが7割、ECが3割ほどですが、デリケートゾーンケアアイテムを購入することは恥ずかしいと思うことや、そもそも専用のケアが必要だと知らないという人もまだまだいるので、ストーリーやビジョンに共感してもらった上でECでの購入につながったらとも思います。

原:お客さまがどのようなものを求めているのかを直接知るためにも、コミュニケーションを取れる場所をたくさん作っていくという意味でもECは効果的です。買っていただいたあとも並走できるのはD2Cの良さですよね。LINEの公式アカウントや、インスタグラムのDMでコミュニケーションを取ることも、タッチポイントは多ければ多いほど、ブランドとして会社としての成長につながります。

WWD:「アイム ラフロリア」のユーザーの年齢層は?

原:顧客データでは20代、30代が7割を占めていますが、年齢によって悩みも変わりますし、年齢は単なるナンバーなのでターゲットを年齢で区切ることはしていません。悩みを解決して一歩を踏み出したいという人も、単に“パーツケアしているなんておしゃれ”という感覚でも、きっかけはどちらでも良いんです。何かしらわれわれのビジョンやプロダクトに共感してくださる人はみんなお客さまなので、年齢で区切るというような固定観念は持たずに発信しています。

デリケートゾーンケアから

性教育、ウエルネス、SDGsについて考える

WWD:最近ではタレントや芸能人など著名人がデリケートゾーンケアや性教育について発信することも増えてきましたよね。

和田:私の娘が8歳と9歳なのですが、毎日「アイム ラフロリア」のボディーウオッシュを使っているので、性の話も恥ずかしがらずに聞いてくれますし、自分からも話してくれます。顔よりも繊細な部分であることや、なぜ専用のアイテムが必要なのかをプロダクトを通して自然と話すきっかけを作ることができます。ゆくゆくは小学生に向けたエデュケーションプロダクトみたいなスターターキットも構想しています。

WWD:10月にはオウンドメディア「マイ ミューズ」をスタートしましたが、狙いは?

和田:セクシャルウエルネスのプラットフォームにしていきたいです。メリアのミッションでもある「もっと自由に」「一人一人が自分らしく輝ける毎日を」を軸に女性の生き方が一人一人違うということを応援するような一貫性のあるポジティブな発信を心がけています。コンセプトに“マイピンク マイチョイス”を据えていますが、マゼンタやコーラル、ベビーピンクというようにピンクは1色ではありません。セクシャルウエルネスからエンパワーメント、さらにはSDGsまで自分らしい選択をするために知っておきたい情報を届け、意志と知性で自分らしい選択ができるように後押ししたいんです。

原:「メリア」という社名は、フラワーアレンジメントの言葉で1枚1枚の花びらを束ねて1輪の大輪の花にするという手法の一つからとっています。それぞれが輝くことで一人ではできない大きなことが実現できます。「マイミューズ」の理念に共鳴するライターや読者、そして制作スタッフが重層的につながることもねらいの1つです。コンテンツの1つとしてポッドキャストもスタートし、毎回テーマを変えながら女性のエンパワーについても発信します。

和田:プロダクトではサポートできない部分を「マイミューズ」で発信していきます。「アイム ラフロリア」同様、いろいろな人と共に作り上げていきたいですね。そうすることでコミュニティーができてみんなが自分らしい魅力に気づける場所になれば良いと思います。

The post デリケートゾーンケアブランド「アイム ラフロリア」を展開するメリア 幼なじみで共同代表の2人に起業への思いを聞いた appeared first on WWDJAPAN.com.

新型コロナ禍でIOFTの出展社半減も「眼鏡業界が活況を取り戻す一助に」

 国内最大級のアイウエア国際展IOFTが10月27日から3日間、東京ビッグサイトで開催され、出展企業各社の新作が披露されたほか、眼鏡が似合う著名人に贈られる「第33回 日本 メガネ ベスト ドレッサー賞」の表彰式、出展社の優秀な商品に授与する「第24回 日本メガネ大賞」の発表、23のセミナーなどが行われた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で参加を見送った企業が多く、出展社数は146社、来場者数は5688人で、前年の実績(出展社数304社、来場者数1万182人)の約半分にとどまった。

 主催者の一つのリード エグジビション ジャパンは、「春先から世界中の眼鏡展が中止になっている中、年間最大の商談の場であるIOFTを開催できたことを大変うれしく思う。多くの出展社や来場者から“開催できてよかった”“久しぶりにリアルな商談ができた”という声をいただいた。今回のIOFTをきっかけに、業界が活況を取り戻す一助になることを願っている」とコメントした。

 もう一つの主催者である福井県眼鏡協会の谷口康彦会長(谷口眼鏡社長)にIOFTへの思いや福井産地の現状を聞いた。

WWD:福井県の眼鏡企業のIOFTの出展社数は?

谷口康彦・福井県眼鏡会長(以下、谷口):例年80社以上が出展するが、今回は約50社にとどまった。新型コロナ禍の厳しい商況の中で、産地の前向きな姿勢を示せたことは意義があった。日本のモノ作りの元気なパイオニアでありたい。

WWD:新型コロナ禍で福井産地の状況は?

谷口:2月に中国からの材料やパーツの入荷が止まり、製造の打撃を受けた。また、海外のOEM(相手先ブランドの生産)が軒並みキャンセル、またロックダウンにより眼鏡の納品もストップし資金回収ができなかった。2~4月の国内外の眼鏡展示会が中止となり、小売店の注文なくなったことで、鯖江市の眼鏡産業の売り上げは一時80%落ちた。鯖江市の眼鏡産業の工場出荷額は年間約500億円。6月から少し持ち直し、徐々に注文が増えたが、売り上げは今も例年の約半分で推移している。雇用助成金を受け、生産を調整し、雇用を維持しながら現状を乗り切っている。信号に例えると、黄から赤に変わろうとしている厳しい状況だ。

WWD:鯖江市と連携して、D2C事業などこれまでにない積極的な施策を打ち出している。

谷口:“さばえ産地活性化協議会”を設立し、総額1億5000万円キャッシュバックキャンペーンを来年3月31日まで実施中だ。これはキャンペーン期間中に福井・鯖江産の対象商品を購入した先着4万人に3000円を、抽選で100人に1人(先着15万人対象)に2万円をキャッシュバックするというもの。産地が全国の眼鏡購入者に向けた消費喚起事業として初めて行うものだ。眼鏡店上位20社を訪問して協力を募り、全国約1万2000の眼鏡店舗のうち4000店舗以上に賛同いただいた。また9月、SDGsの推進に向けて、鯖江市、福井県眼鏡協会、W TOKYO、国連の友Asia-Pacificと4者連携協定を締結した。国産の眼鏡フレームの96%のシェアを持つ眼鏡産業は、繊維、漆器とならんで鯖江市の基幹産業であり、鯖江市民の7人に1人が眼鏡産業に従事している。“サバエ”という地名の認知度はある程度広まったが、まだ十分に伝えきれていない。世界に誇る“さばえのめがね”の魅力を継続的に発信し、持続可能な産地を目指していきたい。

The post 新型コロナ禍でIOFTの出展社半減も「眼鏡業界が活況を取り戻す一助に」 appeared first on WWDJAPAN.com.

マスクによる唇荒れを防ぐトリセツ 冬でも注意すべきは日焼け!?

 マスクを着けることが日常となってから何カ月になるだろうか。暑い夏にも耐え、短い秋が過ぎようとし、乾燥の気になる冬が間もなく訪れようとしている。唇の荒れを訴える声をよく聞くようになったのは、確か、夏が終わろうかというころ。それを裏付けるかのようにリップケアアイテムやリップカラーの売り上げにも影響が見られ、「マスク着用の影響により季節を問わず唇の荒れを感じる人が増えたことから、一層ニーズが高まった」と「シスレー(SISLEY)」の郡司薫コミュニケーション マネージャーは話す。リップケアアイテムだけでなく、リップカラーは高い保湿効果を備えたアイテムは注目されており、「ナーズ(NARS)」でも、「“アフターグローリップバーム”の売り上げは1.5倍の伸長率」と福島まどかPRマネージャーはいう。

 「マスクは唇荒れの原因になると思う」という、皮膚科医の髙木実・新橋トラストクリニック院長に唇荒れを引き起こすメカニズムや良好な状態を保持するための対処法などの教示をもらいながら、たくさんの唇を美しく導いてきたリップケアアイテムの名品を紹介。健やかな唇をキープするためのヒントにしたい。

なぜ、マスクを着けることで唇荒れが生じるのか?

 マスクを着けることで唇荒れが起きてしまうのはなぜか。「口唇トラブルの原因は大きく7つが考えられる」と髙木先生。1使用する口紅などが唇と合わない、2日焼け、3乾燥、4細菌などの感染、5繰り返す刺激、6トラブル発生時に使用する薬剤などの過ち、7ヘルペスなどの疫病の見逃し、を挙げた上で、「この中でマスクが弊害となるのは3、4、5だろう」。ダメージを受けやすいのは夏と思いがちだが、一概に言えないそうだ。髙木先生は諭す、「マスクをすると湿度が高くなることで蒸れる状態と思われがちだが、マスクを外した際に蒸発するために乾燥する。それにより皮膚が乾燥し防御機能が低下。この状態で、マスクの触れる外的刺激によりさらに口唇の荒れが悪化するのは当然だろう。また、マスクについている菌が防御機能の落ちた唇に付いた環境は、菌にとって適度な湿気や温度があれば繁殖するのは容易に想像できる」と。つまり、これからの季節を問わず留意しなければならない。

マスクを頻繁に使用する上で、注意すべきことは?

 マスクを着用することが日常となって半年以上もの時間が経過したが、以前よりもマスクを着用することに慣れてきたとはいえ、不快感を持たなくなったという人は少ないだろう。「口唇を健やかに、美しく保つためにマスクには通気性を求めたいが、コロナなどの感染予防とは矛盾が生じる。朝晩のケア時も保湿することを心掛けてほしい」と髙木先生は言う。また、少しでもトラブルを感じた場合には「自己判断しないこと。医師に正しい対処方法を指導してもらうことも肝要だ」と続ける。さらに、良質で清潔なマスクを使うことと常に保湿するための薬剤などの併用が鍵とした上で、「マスクの着脱を頻繁にすることは、かえって乾燥を進めることになるため注意が必要」と述べた。

 これから迎える冬に注意すべきことは「日焼け。夏ほど紫外線は強くないので油断しがちだが、口唇は最も注意してほしいパーツ」と言い、それは「口唇は他の部位と異なり、色素沈着を改善させることは大変に困難」と説明する。加えて、部屋の湿度を保つように心掛けることも大切。「理想は、50度前後」とし、「口唇を美しく保つことだけでなくインフルエンザの感染予防になる」と教示する。

長く、たくさんの人に愛され続ける保湿に優れたリップケアの名品4選

ザ・リップ バーム「ドゥ・ラ・メール(DE LA MER)」

 2002年9月7日発売し、19年5月にパッケージを一新したヒット作。「マスクが必携必至となり、唇のケアの関心が高まりトレンドになっていることを実感している。お客さまからは圧倒的な効果を感じて頂いており、パンデミック前以上にご愛顧いただいている」(柏木孝之・営業本部長)。独自成分ミラクルブロスを配合。優しくタップするようにつけることで、荒れやすく薄い唇の皮膚も健やかに導き、マスク下のデリケートな唇をふっくらと柔らかく整える。公式オンラインおよび一部店舗で実施中のエングレービングサービスは、大切な人へのプレゼントにも最適。“ザ・リップ バーム”(9g、6500円)

バーム コンフォール「シスレー(SISLEY)」

 05年2月の発売以来、美容業界や著名人にもファンの多いアイテム。「人気の高いロングセラー製品で、年間を通して上位をキープ。ベスト3にも複数回ランクインするほどの売れ行きとなっている」(郡司コミュニケーション マネージャー)皮脂腺のない唇は、他のどのパーツよりも繊細で外的ストレスを受けやすい。水を一滴も入れない濃密な処方で保護、保湿、栄養補給、癒やし、弾力性アップの要素を備えたリップクリームは、こっくりと重いテクスチャーで美しい唇へと育む、攻めの一品。“バーム コンフォール”(9g、7200円)

ルージュ ココ ボーム「シャネル(CHANEL)」

 独自成分のイドゥラ タンドゥル コンプレックスを配合したフォーミュラが、即効性と持続性のある潤いをプラス。とろけるようなテクスチャーはこの上なく心地良く、ケアする時間を豊かにする1本。オイルと補修効果を持つ糖類をベースにする成分がつけた瞬間から滑らかな艶を付与し、使い続けることでふっくらとしなやかな唇へとアプローチ。リップスティックを塗る日常的な所作をも計算したリップケアアイテムが、心地良い唇を生む。「12年1月発売以来、リピーターが多く長年愛され続けているアイテム。マスクによる荒れや乾燥対策として持ち歩いて気軽に保湿ができるため、さらに需要が高まっている」(関菜美子PR)“ルージュ ココ ボーム”(3g、4000円)

ナリッシング リップバーム SQ「スリー(THREE)」

 粘膜に近いため防御作用が弱く、ダメージが受けやすい唇のためのトリートメント。ネロリ 油やオレンジ果皮油などの4種の精油に、アマニ油やイブニングリムローズオイルなどの6種の植物油と4種の植物脂から成る豊かな処方で、みずみずしい美しさを唇に蘇らせる。また、唇が纏った芳しい被膜が嗅覚を刺激して、心地よい睡眠をパワフルにサポートする。「12年2月発売したアイテムだが、マスクによる唇の荒れを気にする人が増え、問い合せが増加。唇だけではなく、気持ちをゆるめリラックスするような芳香は心地よい睡眠のサポートにも」(齋藤未奈PR)。鼻腔に近い唇のケアは、口紅などを落とした状態が最も効果を実感できやすいと考える「スリー」、練り状リップクリームは夜のケアアイテムとして発表された。“ナリッシング リップバーム SQ”(7g 3200円)

唇を潤してくれるリップカラー その人気色2本

「ナーズ(NARS)」“アフターグロー リップバーム”の1356

 唇を滑らかに保つ保湿力で、淡い色づきをもたらす、アフターグローリップバーム。高い保湿力が唇の乾燥によるかさつきを防ぎながら滑らかにし美しく整える。唇に潤いを与える独自のモノイハイドレイティングコンプレックスを配合することで、スムースに伸びる⼼地よいテクスチャーにした。シアーな色付きで、マスクににも付きづらく、極めてナチュラルで輝きの仕上がりをかなえる。今春3月に6シェードを追加し、現在8⾊をラインアップする。“アフターグロー リップバーム”(3500円)

「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」“ルージュ ヴォリュプテ シャイン”のN°80 チリ チュニック

 2019年にグローバル ビューティー ディレクターのトム・ペシューの監修により発表された“チリ チュニック”。あらゆる肌トーンにもなじみ、すべての⼥性を魅⼒的にするカラーとして計算された1本。マカデミアナッツ、ウリカガーデンで栽培した美容効果の⾼いザクロエキスなどの美容オイルをたっぷり配合。体温でみずみずしくクリーミィーにとろける質感が贅沢な潤いと艶でやさしく唇を包む。絶妙なレンガ色のブラウンレッドは発売後1年以上経った今も35色を備えるシリーズで人気ナンバー1を保持する。“ルージュ ヴォリュプテ シャイン”(4100円)

The post マスクによる唇荒れを防ぐトリセツ 冬でも注意すべきは日焼け!? appeared first on WWDJAPAN.com.

「イヤホンをつけっぱで来店」ってOMOらしいよ エディターズレター(2020年9月17日配信分)

※この記事は2020年9月17日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

「イヤホンをつけっぱで来店」ってOMOらしいよ

 仕事柄、でしょうか?「OMO(Online Merges with Offline)を実現するには、どうしたらいいのですか?」と時々聞かれます。

 さぁ、皆さんが私なら、なんと答えるでしょう?「店頭とECで一元化したデータから~」とか言えればカッコ良いのですが、その手の話は、テックの人に聞いたほうがずっと血となり肉になりそう(笑)。と言うワケで私は最近、「アナタは、どんなOMOをしていますか?」と聞き返します。コレを考えると、「あ~、その実現に向かって、何かをやればいいのかな!?」と、ゴールではないかもしれないけれど「向かう先」が見える気がするのです。

 「私のOMOって、何よ⁉︎」って思う人もいるかもしれませんね。例えば「店頭で実物をチェックして、ECでポチる」は立派なOMOですが、「だったら店頭で買います。そっちの方が好きです」と言う方もいらっしゃるでしょう。では、「店頭で実物をチェックして、スマホでレビューをさらに確認」はどうでしょう?「アマゾン」や「@コスメ」「食べログ」で、こんなコトする機会は多いハズです。私に言わせれば、これってまぁまぁ立派なOMOだと思うのです。だって店頭と言うオフラインで、オンライン上のレビューをチェックしているんですから。コレがOMOだと認識できると、ECサイトにレビューを実装とか、他社ECのレビュー向上施策とか、やることが見えてきますね。「ようこそ、OMOの世界へ!!」です。

 最近は、「いつもはリアル店舗で買うけれど、体調が悪い今日はオンラインでポチる」とか「リアル店舗に出かけるため、配車アプリでタクシーを呼ぶ」とかもOMOかも?って思っています。そう考えると皆さん、案外毎日、めちゃくちゃOMOしているでしょう?

 こんな風に思えるようになったのは、今春新宿のリアル店舗に併設する形でオープンした「シロ」の新業態、「シロ セルフ」のお話を今井社長から伺ったのがきっかけでした。この店舗は、製品近くのQRコードをスマホで読み込むと、その説明ページにアクセスできる空間。立派なOMOストアです。その店舗について今井社長は、「若いお客様の中には、イヤホンを外したくない方も多いでしょう?」とおっしゃいます。なるほど。イヤホンを外したくない消費者は、リアル店舗で何をするか?美容部員に話しかけないし、話しかけて欲しくないから、スマホで製品をチェックするのですね!だから製品脇のQRコードと言うワケ。「OMOを、お客様が“自分ごと”できるように解釈しているなぁ」と感動したのです。

 と言うワケで、OMOも“自分ごと化”のススメです。アナタはどうやってオン&オフラインを股にかけ、買い物を楽しんでいるでしょうか?そこから見つかる施策は、きっと、たくさんあるのです。

SOCIAL & INFLUENTIAL:社会情勢によって変化するファッション&ビューティ業界を見つめます。インクルージョン(包摂性)&ダイバーシティー(多様性)な時代のファッション&ビューティから、社会に届けたい業界人のオピニオンまで。ジャーナリズムを重んじる「WWD JAPAN.com」ならではのメルマガです。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

The post 「イヤホンをつけっぱで来店」ってOMOらしいよ エディターズレター(2020年9月17日配信分) appeared first on WWDJAPAN.com.

「イヤホンをつけっぱで来店」ってOMOらしいよ エディターズレター(2020年9月17日配信分)

※この記事は2020年9月17日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

「イヤホンをつけっぱで来店」ってOMOらしいよ

 仕事柄、でしょうか?「OMO(Online Merges with Offline)を実現するには、どうしたらいいのですか?」と時々聞かれます。

 さぁ、皆さんが私なら、なんと答えるでしょう?「店頭とECで一元化したデータから~」とか言えればカッコ良いのですが、その手の話は、テックの人に聞いたほうがずっと血となり肉になりそう(笑)。と言うワケで私は最近、「アナタは、どんなOMOをしていますか?」と聞き返します。コレを考えると、「あ~、その実現に向かって、何かをやればいいのかな!?」と、ゴールではないかもしれないけれど「向かう先」が見える気がするのです。

 「私のOMOって、何よ⁉︎」って思う人もいるかもしれませんね。例えば「店頭で実物をチェックして、ECでポチる」は立派なOMOですが、「だったら店頭で買います。そっちの方が好きです」と言う方もいらっしゃるでしょう。では、「店頭で実物をチェックして、スマホでレビューをさらに確認」はどうでしょう?「アマゾン」や「@コスメ」「食べログ」で、こんなコトする機会は多いハズです。私に言わせれば、これってまぁまぁ立派なOMOだと思うのです。だって店頭と言うオフラインで、オンライン上のレビューをチェックしているんですから。コレがOMOだと認識できると、ECサイトにレビューを実装とか、他社ECのレビュー向上施策とか、やることが見えてきますね。「ようこそ、OMOの世界へ!!」です。

 最近は、「いつもはリアル店舗で買うけれど、体調が悪い今日はオンラインでポチる」とか「リアル店舗に出かけるため、配車アプリでタクシーを呼ぶ」とかもOMOかも?って思っています。そう考えると皆さん、案外毎日、めちゃくちゃOMOしているでしょう?

 こんな風に思えるようになったのは、今春新宿のリアル店舗に併設する形でオープンした「シロ」の新業態、「シロ セルフ」のお話を今井社長から伺ったのがきっかけでした。この店舗は、製品近くのQRコードをスマホで読み込むと、その説明ページにアクセスできる空間。立派なOMOストアです。その店舗について今井社長は、「若いお客様の中には、イヤホンを外したくない方も多いでしょう?」とおっしゃいます。なるほど。イヤホンを外したくない消費者は、リアル店舗で何をするか?美容部員に話しかけないし、話しかけて欲しくないから、スマホで製品をチェックするのですね!だから製品脇のQRコードと言うワケ。「OMOを、お客様が“自分ごと”できるように解釈しているなぁ」と感動したのです。

 と言うワケで、OMOも“自分ごと化”のススメです。アナタはどうやってオン&オフラインを股にかけ、買い物を楽しんでいるでしょうか?そこから見つかる施策は、きっと、たくさんあるのです。

SOCIAL & INFLUENTIAL:社会情勢によって変化するファッション&ビューティ業界を見つめます。インクルージョン(包摂性)&ダイバーシティー(多様性)な時代のファッション&ビューティから、社会に届けたい業界人のオピニオンまで。ジャーナリズムを重んじる「WWD JAPAN.com」ならではのメルマガです。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

The post 「イヤホンをつけっぱで来店」ってOMOらしいよ エディターズレター(2020年9月17日配信分) appeared first on WWDJAPAN.com.

「LV」「ディオール」など異例のパリコレを取材した2人が明かす現地の裏側

 2021年春夏シーズンのパリ・ファッション・ウイークが9月28〜10月6日に開催されました。フランスが渡航者に対して14日間の隔離や一部の国に対して入国制限を設けていることから、今季は来場者が大幅に減少。「WWDジャパン」「WWD Japan.com」も日本からの記者の渡航は見送ったため、現地でのパリコレ取材はベルリン在住の藪野淳「WWDジャパン」ヨーロッパ通信員とパリ在住のフリーライターの井上エリさんの2人に託しました。街の様子から来場者、現地取材したからこそ感じたことまで、2人がざっくばらんに対談形式で振り返ります。

フロントローの顔ぶれが激変

藪野淳「WWDジャパン」ヨーロッパ通信員(以下、藪野):なんとも奇妙なシーズンでしたね。いろんな理由がありますが、とにかく来場者が少なかった。アジア、アメリカからの渡航者が皆無なのは想定していましたが、イギリスやイタリアといったヨーロッパ隣国から来る常連組がいなかったのは意外で驚きました。フランス拠点以外の人で見かけたのは、イギリス版「ヴォーグ(VOGUE)」のファッション批評家アンダース・クリスチャン・マドセン(Anders Christian Madsen)くらい。イギリスのスージー・メンケス(Suzy Menkes)やサラ・ムーラ(Suzy Menkes)、ティム・ブランクス(Tim Blanks)らたくさんのアイコニックなジャーナリストが不在で、フロントローの顔ぶれは大きく違いました。

井上エリ(以下、井上):ドイツからは元「グラムール(GLAMOUR)」編集者でフリーに転身したヴェロニク・トリストラム(Veronique Tristram)をはじめ、数人見かけました。私はパリコレの前にミラノ・ファッション・ウイークにも参加しましたが、ミラノにはイギリスから訪れた業界人は結構いましたよ。雑誌「タンク(TANK)」の編集長キャロライン・イッサ(Caroline Issa)とミラノで話したときは「パリに行くから」と言っていたのですが、直前でキャンセルしたそうです。フランスの感染者数が増加しているため、パリから自国に戻ったら隔離が義務付けられていることが要因のようです。

藪野:ヨーロッパ在住の僕らにとって、日本のプレス担当者や業界関係者、そして世界から集まる友人に会える機会という意味でも年2回のパリコレは大事だから、顔を合わせられなかったのがとても残念。同時に、パリコレというのはこの業界に携わるさまざまな人にとってのコミュニケーションの場なのだと実感しました。

井上:良かった点といえば、ショーが遅れないからスケジュールが後ろ倒しにならず、渋滞も少なかったことぐらいでしょうか。アフターパーティーのようなイベントも開催されなかったため、夜も街中静かでした。予約必須のレストランも、人がまばらで閑古鳥が鳴いていましたし。例年なら、ファッション関係者でなくても街の誰もがパリコレシーズンだと気付くのに、今回はタクシーの運転手に「今パリコレやってるの!?」と驚かれました。

藪野:確かに通常ならショーはだいたい30分遅れるけれど、今回は遅れても15〜20分という感じで何度かヒヤッとしました。それに今回パリに来て、道路に自転車レーンが増えていることにびっくり!ロックダウン後にフランス政府が車線を減らして自転車レーンを設置しているみたいですが、もしもパリコレが元の規模に戻ったら例年以上の恐ろしい渋滞が発生しそうだなと怖くなりました(笑)。今季は大規模な合同展示会もかなり縮小しての開催で、ショーの来場者だけでなく世界中から集まった業界関係者は例年の5分の1以下ではないでしょうか。ホテルはガラガラでしたし、レストランやタクシーといった他業種にも大きな影響が出ているのではないかと。もちろん観光客がほぼいないというのも大きいですが。

井上:リアルからデジタルに切り替えたことで、ショーの裏方であるヘアスタイリストやメイクアップ、会場を設営する建築関係や清掃業者、ショー会場にいる警備員などさまざまな業種にも影響があったと思います。展示会場にはキレイな花が飾られていることが多かったのに、展示会自体が少なかったので花屋も出番が限られてしまいました。招待状に書かれたキレイな筆記体を見るのが好きなのに、今回はリアルな招待状も少なかったのでカリグラファーも暇を持て余してそうだなと考えちゃいました。もちろん、デジタルによって仕事が増えた業種もたくさんあるのだとは思いますが。

藪野:特にフランスにとって、ファッションは経済を支える大きな柱の一つです。パリコレというのはファッション業界だけのイベントではなく、経済を動かす重要な役割を果たしていることが分かります。

従来との違いは“親密さ”

井上:コレクション取材を8年間続けている藪野さんにとって、今季に感じたこれまでとの大きな違いは何でしたか?

藪野:“親密さ”というキーワードがまずは浮かびました。デザイナーやブランドの関係者が何度も口にしていた言葉でもあるのですが、僕自身、いつも以上にデザイナーと直接もしくはZoomで取材する機会がありました。ショー会場の規模も小さかったので、例年ならショー後のバックステージで何人ものジャーナリストがデザイナーを囲んで3分ほどコメントをもらうのですが、普段はなかなかアポイントメントが取れないデザイナーと話せたのは貴重な機会でした。あとは衛生基準に準じて招待枠や座席数は限られているものの「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」が3回、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」が2回に分けてショーを行うなど、可能な限り多くの人にショーを見てもらおうという工夫もありました。

井上:リアルクローズを提案するブランドが多く、コレクションからも“親密さ”を強く感じました。「クロエ(CHLOE)」はパリジェンヌが街を行き交う日常の光景をショー会場で演出したり、「パコ ラバンヌ」のジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)クリエイティブ・ディレクターはロックダウン中に恋しくなった、近所の通りを行き交うパリジェンヌの日常着から着想を得たと話していました。柔らかい素材やニュートラルなカラー、体を締め付けないシルエットなど安心感や快適さのある衣服で、優しい提案が多かったように思います。デザイナーが消費者の心に寄り添う“親密さ”がありましたし、日常がいかに貴重であるかを感じられました。

藪野:そうですね。今は皆、無意識に“安らぎ”や“優しさ”を求めているし、それに応えるようなクリエイションが圧倒的に多かったです。また、パリという街へのオマージュを示すブランドも多かったですね。井上さんが前途したブランドに加え、「アミ アレクサンドル マテュッシ(AMI ALEXANDRE MATTIUSSI)」はセーヌ川沿いをランウエイにしたり、プレゼンテーションを行った「ロンシャン(LONGCHAMP)」も“現代のパリジェンヌ”をテーマにしたりと、デザイナーが暮らすパリという街の日常を改めて見つめ直し、その魅力を表現してくれました。

井上:衛生面への配慮なのか、屋外を会場に選ぶブランドも多かったです。でもミラノに比べると会場入場時のチェックなどは甘かった。ミラノコレは入り口で風邪や熱の症状などを申告する書類のサインに加え、体温計測やマスク着用、消毒液の使用が必須でした。でもパリコレではマスク着用と消毒液くらいで、ショー会場で体温計測を求められたのは「ディオール(DIOR)」だけでした。

藪野:ソーシャル・ディスタンスに関しても、座席は区切られているものの長椅子の場合は真横に座ってくる人もいました。どこにでもルールを守らない人はいるんですよね……。1人用のイスの配置も十分に距離が確保されているのか微妙な会場もありました。逆に会場内を衛生担当のスタッフが見回りして、きちんと観客同士が距離を置いているかをチェックしているところは好感が持てましたね。もしも会期中に体調を崩したら取材を続けられないため、体調管理にはいつも以上に気を配り常に緊張感を持っていました。このような状況下での開催が続くのであれば、衛生面の徹底は今後も改善が必要かなと思います。

井上:今後の課題といえば、リアルとデジタルの両軸で開催されるファッション・ウイークについても多々見えてきたと思います。藪野さんはどのように感じましたか?

藪野:リアルなショーは今後も必要で、デジタルが取って代わることはできないと思います。ストーリーを伝えるという目的ではデジタルも適しているから、テクノロジーの進化によって今後さまざまな見せ方の可能性が広がっていくことには期待大。しかし、映像でいかにキレイに見えたとしても、リアルほど感情を掻き立てられたり、心が動かされたりすることはないと感じました。「リアルのショーはオペラやコンサートのようなもの。テレビでも確かにオペラは見られるが、生で見るのと同じではない」。これはシドニー・トレダノ(Sidney Toledano)LVMHファッショングループ会長兼最高経営責任者(CEO)の言葉ですが、まさにその通りだと思いますね。

「ルイ・ヴィトン」はやっぱりすごかった

井上:デジタル発表で印象的だったブランドはありますか?

藪野:「マリーン セル(MARINE SERRE)」がパリの映画館で上映会も開いたのは良かった。デジタルは、画面のサイズや音響設備、電波状況など視聴者の環境によって体験の質が大きく変わりますね。「プラダ(PRADA)」と「ミュウミュウ(MIU MIU)」が主要都市で先行視聴会を開いたように、デジタルで発表しながらコミュニティーを体感できるローカルイベントを開くというのは今後広がるのではないかと思いましたね。そして、さすが!と感心したのは「ルイ・ ヴィトン」。不参加の一部ゲストには会場に座席を用意して、バーチャルではあるけれどそれぞれの視点でショーを見られるようにしていましたし、一般向けの配信では会場の緑の壁や椅子に映画「ベルリン・天使の詩」のシーズンを合成して全く異なる体験を用意していました。さらに、「ロエベ(LOEWE)」が大掛かりなキットをプレス向けに送り、ルックの等身大ポスターを壁に貼ってコレクションを見てもらうというアイデアもユニーク。“目”だけではなく“手”も使うというところでエモーショナルな体験を生み出していると感じました。井上さんはどうですか?

井上:リアルのショーの現場で来場者を観察し、座席の座り心地や会場に響き渡る音楽など、五感をフルに使うからこそ感じられるものがありますよね。そして、そこでしか得られない感覚を伝えたいという思いが原稿に向かう糧にもなります。個人的には、ジャーナリストの役割って何だろう?と自問しました。同じ瞬間に同じショーを見ていても個々に異なる視点を持ち、それぞれのフィルターを通して生まれる感情が違って、だからコレクション記事を読むのが好きです。今後もジャーナリストを続けていきたい私としては、記事を通して情報を届けるというよりも、感情と体験の共有を読者としたいと思いました。デジタルの場合は全ての人が全く同じ映像を視聴できるため、意見交換する場を設けることで一緒に楽しめるという感覚があるのが魅力です。

藪野:これまではリアルなショーやプレゼンテーションを行うのが“常識”というか“正解”という考えがファッション・ウイークにはありましたが、今シーズンを機に表現方法に対するより柔軟な考え方が広がったことはよかったですね。もちろんリアルなショーの魅力は大きいですが、実際、今はやるべきタイミングではないとあきらめたブランドもありました。そこに正解・不正解はなく、それぞれの考え方があっていいし、それぞれにとって適した表現方法を模索していけばいいと思います。リアルでもデジタルでも、今後はいろんな表現方法が出てくることが楽しみですね。

井上:デジタルの成長は今後も確実でしょうし、ブランドにとってはリアルかデジタルの二者選択ではなく、両方での見せ方を考慮する必要があるということですね。ファッション・ウイークの在り方は変化し模索は続きますが、今後もファッションが持つポジティブなパワーで世界を明るい方向へと導いてほしいもの。先行き見えない現状ではありますが、来季はどんな発見があるのか早くも楽しみです!

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

The post 「LV」「ディオール」など異例のパリコレを取材した2人が明かす現地の裏側 appeared first on WWDJAPAN.com.

ウィズコロナで進化する幸せ産業 自転車編 移動とフィットネスを兼ねた自転車ライフ

 10万円の給付金が入ったら手に入れようと思ったのがスポーツバイク。自転車なら、満員電車に乗るのも、繁華街の人混みを歩くのも避けられる。ついでにエクササイズできれば一石二鳥くらいの気持ちだった。なんとなく消えてしまいそうな10万円を、継続的に使えるものに残したかった。そこで向こう数カ月の交通費をカバーするぞ、くらいの意気込みで街乗りに適したクロスバイクを購入することを決意。

 ところが!同じようなことを考える人はやはり多かった。7月の時点で、まあまあ手頃なレベルの自転車は品薄状態に。在庫があるものでも配送に時間がかかり、1カ月以上待たなくてはならないという。部品を扱う中国の工場がコロナ禍で閉鎖され、需要が生産に追い付かないことも一因だったようだ。各店舗をあたっても似た状況。自宅から近い自転車専門店の店内に、たまたま気に入ったモデルがあったため即購入し、そのまま乗って帰ることに。かくして私の自転車ライフが始まった。

高校生以来の自転車移動ライフ 街は自転車フレンドリーに

 高校時代の通学以来、ひさびさに自転車移動を日常に取り入れて気づいたのは、街は意外と自転車フレンドリーになっていたということ。新宿や渋谷などのターミナル駅で2時間以内なら無料の駐輪場が完備され、ちょっとした打ち合わせや食事には困らない。自転車専用レーンがある幹線道路も(まだまだ少ないが)増えているようだ。階段以外にスロープのある施設も東京オリンピック開催を機に増えている。そうか、ユニバーサルデザインは車いすやベビーカーだけでなく、自転車ユーザーにもうれしい設備だったのか。今まで電車や地下鉄に頼っていたため、駅という「点」を拠点にしていた移動が、自らが描く「線」でつながり自在になったのが一番の変化。街が「面」で見えてきた。

 自転車フレンドリーなお店が増えているのも実感。ウエルネス志向が強い店舗ではサドルをひょいと引っ掛けられる自転車スタンドを設置していたり、駐輪スペースがあったりする。よく通っている表参道の編集部の裏手にあるのが自転車のパーツメーカー、シマノによる「OVE南青山」。自然派メニューが頂けるカフェであり、セレクトショップ。店内にスタンドがあるので自転車を持ち込め、ゆったりと過ごせる。ちなみにこの店には自転車ライフをより快適にするためのサイクルライフ・コンシェルジュなるデスクがあり、選び方、おすすめのサイクリングコースなどをアドバイスしてくれる。全国各地のサイクリングマップを並べたコーナーも。すっきり汗を流せるシャワーまで完備されている。

 同じく青山エリアにはブリヂストンサイクルによるコンセプトショップ「RATIO&C」もある。店内に最新モデルが並び、こちらはバイクショップの中にカフェがあるという印象。「アンカー(ANCHOR)」というブランドを扱い、競技志向の強いサイクリストも集まる。パーツにこだわったロードバイクだと1台100万円以上することもあり、盗難やダメージの心配なく、店内にマイバイクを持ち込める店はありがたい。愛犬家がペットフレンドリーなカフェに通うような感覚で、サイクリストはひいきの店を見つけ、リピートするのだ。

レジャーとしてのサイクリングも より身近でスタイリッシュに

 茨城県土浦市では街ごと自転車フレンドリーにするという取り組みを進めている。JR土浦駅構内の「プレイアトレ土浦(PLAY ATRE TSUCHIURA)」には飲食店や店舗の並ぶ館内にも自転車で乗り入れられ、最新型モデルがレンタルでき、シャワーのある施設もある。駅を拠点に日本三大サイクリングロードの一つ、「つくば霞ヶ浦りんりんロード」を満喫できるのだ。

 10月には「プレイアトレ土浦」内に「星野リゾート BEB5土浦」がグランドオープン。「居酒屋以上旅未満」をコンセプトに、飲食の館内持ち込みOK、ラウンジを24時間開放、29歳以下なら、よりリーズナブルな価格設定という、若い層をターゲットにした軽井沢に続く「BEB」ブランドだが、自転車に特化した宿でもある。90室ある部屋の中で30室は自転車と泊まれるサイクルルームで、壁面にラックがあり、マイバイクを眺めながら過ごせる。メンテナンスルームを自由に使え、ラウンジや室内には自転車に関する本やディスプレーが。マイバイクと共に添い寝できるというユニークなプランも話題だ。夜明け前に宿を出て、珈琲と茨城の名産、干し芋を味わいながら、霞ケ浦の絶景朝焼けを眺めるアクティビティーもある。

 都内の大自然、奥多摩でもとびっきりのサイクリングを楽しめる。JR奥多摩駅からすぐのレンタサイクル店「トレックリング(TREKKLING)」では借りた自転車を青梅駅や河辺駅で返すことも可能なので、坂道を20キロほど下り続けるという爽快なライドができるのだ。

 日本酒の味比べが楽しめる澤乃井ガーデンで乗り捨てることも可能。またサイクリングしながら、英語を学べるツアーも開催している。これはガイドも参加者もインカムをつけて会話するため、飛沫を気にする必要がない。レジャーとしてのサイクリングもハードルが低くなったと感じる。

 先日、サイクリストの聖地と言われている広島県尾道を訪れた。愛媛県今治市との間を結ぶしまなみ海道があるため、気軽に自転車をレンタルできるスポットや、空気入れの貸し出し、給水、トイレの利用ができる休憩所「サイクルオアシス」が各所にある。トラブル時のレスキュー対応なども整っていた。

 密が避けられれば、交通費をセーブできれば、ついでにカロリーも消費できればと始めた自転車ライフだったが、続けなければ意味がない。都内でもこれくらい手厚いサポートが可能になれば、地球にも、お財布にも優しい自転車移動を選ぶ層がもっともっと増えるかもしれない。目指せ、サステナブルで自転車フレンドリーな街!

■OVE南青山
住所:東京都港区南青山3-4-8
TEL:03-5785-0403
10:00~19:00 月定休(月曜が祝日の場合は火曜)

■RATIO&C
住所:東京都渋谷区神宮前3-1-26
TEL:03-6438-1971
平日:カフェ9:00~19:00 ショップ10:00~19:00
土・日・祝:カフェ・ショップ10:00~19:00
定休日:水曜

■TREKKLING
住所:東京都西多摩郡奥多摩町氷川197
TEL:0428-74-9091
9:00~17:00 平日は不定休

■星野リゾート BEB5土浦
住所:茨城県土浦市有明町1-30
TEL:0570-073-022

間庭典子(まにわ・のりこ)/フリーライター:婦人画報社(現ハースト婦人画報社)を退社後、ニューヨークへ渡る。現在は東京を拠点に各メディアに旅、グルメ、インテリア、ウエルネスなど幅広いテーマで執筆。著書に「ホントに美味しいNY10ドルグルメ」「走れば人生見えてくる」(共に講談社)など

The post ウィズコロナで進化する幸せ産業 自転車編 移動とフィットネスを兼ねた自転車ライフ appeared first on WWDJAPAN.com.

ウィズコロナで進化する幸せ産業 自転車編 移動とフィットネスを兼ねた自転車ライフ

 10万円の給付金が入ったら手に入れようと思ったのがスポーツバイク。自転車なら、満員電車に乗るのも、繁華街の人混みを歩くのも避けられる。ついでにエクササイズできれば一石二鳥くらいの気持ちだった。なんとなく消えてしまいそうな10万円を、継続的に使えるものに残したかった。そこで向こう数カ月の交通費をカバーするぞ、くらいの意気込みで街乗りに適したクロスバイクを購入することを決意。

 ところが!同じようなことを考える人はやはり多かった。7月の時点で、まあまあ手頃なレベルの自転車は品薄状態に。在庫があるものでも配送に時間がかかり、1カ月以上待たなくてはならないという。部品を扱う中国の工場がコロナ禍で閉鎖され、需要が生産に追い付かないことも一因だったようだ。各店舗をあたっても似た状況。自宅から近い自転車専門店の店内に、たまたま気に入ったモデルがあったため即購入し、そのまま乗って帰ることに。かくして私の自転車ライフが始まった。

高校生以来の自転車移動ライフ 街は自転車フレンドリーに

 高校時代の通学以来、ひさびさに自転車移動を日常に取り入れて気づいたのは、街は意外と自転車フレンドリーになっていたということ。新宿や渋谷などのターミナル駅で2時間以内なら無料の駐輪場が完備され、ちょっとした打ち合わせや食事には困らない。自転車専用レーンがある幹線道路も(まだまだ少ないが)増えているようだ。階段以外にスロープのある施設も東京オリンピック開催を機に増えている。そうか、ユニバーサルデザインは車いすやベビーカーだけでなく、自転車ユーザーにもうれしい設備だったのか。今まで電車や地下鉄に頼っていたため、駅という「点」を拠点にしていた移動が、自らが描く「線」でつながり自在になったのが一番の変化。街が「面」で見えてきた。

 自転車フレンドリーなお店が増えているのも実感。ウエルネス志向が強い店舗ではサドルをひょいと引っ掛けられる自転車スタンドを設置していたり、駐輪スペースがあったりする。よく通っている表参道の編集部の裏手にあるのが自転車のパーツメーカー、シマノによる「OVE南青山」。自然派メニューが頂けるカフェであり、セレクトショップ。店内にスタンドがあるので自転車を持ち込め、ゆったりと過ごせる。ちなみにこの店には自転車ライフをより快適にするためのサイクルライフ・コンシェルジュなるデスクがあり、選び方、おすすめのサイクリングコースなどをアドバイスしてくれる。全国各地のサイクリングマップを並べたコーナーも。すっきり汗を流せるシャワーまで完備されている。

 同じく青山エリアにはブリヂストンサイクルによるコンセプトショップ「RATIO&C」もある。店内に最新モデルが並び、こちらはバイクショップの中にカフェがあるという印象。「アンカー(ANCHOR)」というブランドを扱い、競技志向の強いサイクリストも集まる。パーツにこだわったロードバイクだと1台100万円以上することもあり、盗難やダメージの心配なく、店内にマイバイクを持ち込める店はありがたい。愛犬家がペットフレンドリーなカフェに通うような感覚で、サイクリストはひいきの店を見つけ、リピートするのだ。

レジャーとしてのサイクリングも より身近でスタイリッシュに

 茨城県土浦市では街ごと自転車フレンドリーにするという取り組みを進めている。JR土浦駅構内の「プレイアトレ土浦(PLAY ATRE TSUCHIURA)」には飲食店や店舗の並ぶ館内にも自転車で乗り入れられ、最新型モデルがレンタルでき、シャワーのある施設もある。駅を拠点に日本三大サイクリングロードの一つ、「つくば霞ヶ浦りんりんロード」を満喫できるのだ。

 10月には「プレイアトレ土浦」内に「星野リゾート BEB5土浦」がグランドオープン。「居酒屋以上旅未満」をコンセプトに、飲食の館内持ち込みOK、ラウンジを24時間開放、29歳以下なら、よりリーズナブルな価格設定という、若い層をターゲットにした軽井沢に続く「BEB」ブランドだが、自転車に特化した宿でもある。90室ある部屋の中で30室は自転車と泊まれるサイクルルームで、壁面にラックがあり、マイバイクを眺めながら過ごせる。メンテナンスルームを自由に使え、ラウンジや室内には自転車に関する本やディスプレーが。マイバイクと共に添い寝できるというユニークなプランも話題だ。夜明け前に宿を出て、珈琲と茨城の名産、干し芋を味わいながら、霞ケ浦の絶景朝焼けを眺めるアクティビティーもある。

 都内の大自然、奥多摩でもとびっきりのサイクリングを楽しめる。JR奥多摩駅からすぐのレンタサイクル店「トレックリング(TREKKLING)」では借りた自転車を青梅駅や河辺駅で返すことも可能なので、坂道を20キロほど下り続けるという爽快なライドができるのだ。

 日本酒の味比べが楽しめる澤乃井ガーデンで乗り捨てることも可能。またサイクリングしながら、英語を学べるツアーも開催している。これはガイドも参加者もインカムをつけて会話するため、飛沫を気にする必要がない。レジャーとしてのサイクリングもハードルが低くなったと感じる。

 先日、サイクリストの聖地と言われている広島県尾道を訪れた。愛媛県今治市との間を結ぶしまなみ海道があるため、気軽に自転車をレンタルできるスポットや、空気入れの貸し出し、給水、トイレの利用ができる休憩所「サイクルオアシス」が各所にある。トラブル時のレスキュー対応なども整っていた。

 密が避けられれば、交通費をセーブできれば、ついでにカロリーも消費できればと始めた自転車ライフだったが、続けなければ意味がない。都内でもこれくらい手厚いサポートが可能になれば、地球にも、お財布にも優しい自転車移動を選ぶ層がもっともっと増えるかもしれない。目指せ、サステナブルで自転車フレンドリーな街!

■OVE南青山
住所:東京都港区南青山3-4-8
TEL:03-5785-0403
10:00~19:00 月定休(月曜が祝日の場合は火曜)

■RATIO&C
住所:東京都渋谷区神宮前3-1-26
TEL:03-6438-1971
平日:カフェ9:00~19:00 ショップ10:00~19:00
土・日・祝:カフェ・ショップ10:00~19:00
定休日:水曜

■TREKKLING
住所:東京都西多摩郡奥多摩町氷川197
TEL:0428-74-9091
9:00~17:00 平日は不定休

■星野リゾート BEB5土浦
住所:茨城県土浦市有明町1-30
TEL:0570-073-022

間庭典子(まにわ・のりこ)/フリーライター:婦人画報社(現ハースト婦人画報社)を退社後、ニューヨークへ渡る。現在は東京を拠点に各メディアに旅、グルメ、インテリア、ウエルネスなど幅広いテーマで執筆。著書に「ホントに美味しいNY10ドルグルメ」「走れば人生見えてくる」(共に講談社)など

The post ウィズコロナで進化する幸せ産業 自転車編 移動とフィットネスを兼ねた自転車ライフ appeared first on WWDJAPAN.com.

「ウイイレ」世界2位のプロゲーマー、うでぃ「世間のイメージを払拭したい」 ゲームカルチャー解体新書Vol.4

 ファッションに軸足を置きながら、セールスやPR、企画立案の立場で約15年もの間、国内外のブランドビジネスに関わらせていただいています。ファッション業界に携わる私が、ファッション業界をはじめ、ゲーム業界で活躍している方々、ゲーム好きのゲストとの対談を交えながら、「ファッション × ゲーム」の可能性や新しい価値を提供することができたら。そんな想いで新連載をスタートさせていただきました。

戸簾俊広(以下、戸簾):今回は吉本興業に所属し、「ウイニングイレブン(以下、ウイイレ)」の世界大会で2位に輝いたプロゲーマーのうでぃさんに来ていただきました。よろしくお願いします。

うでぃ:よろしくお願いします!

戸簾:まず「ウイイレ」を始めたのはいつ?

うでぃ:2014、15年あたりですね。

戸簾:実際にサッカーはやられていたんですか?

うでぃ:はい。小学生から大学生の途中まで続けていました。

戸簾:実際に選手としてプレーしていたんですね。

うでぃ:はい。よくあるパターンだと思います。

戸簾:5、6年で世界2位まで上り詰めることができた要因はなんでしょう?

うでぃ:うーん……。難しい質問ですけど、努力はかなりしましたね(笑)。ゲームは体を鍛える必要がないので、コントローラーを握り、勝つためのコツを掴めばある程度強くなれると思います。周りの強い人に教えてもらい、勉強することが上達への一番の近道だと思います。

戸簾:現在は元Jリーガーと共演したイベントも行っていますよね。

うでぃ:そうですね。元サッカー日本代表選手の那須大亮さん、石川直宏さんらと一緒にイベントを行ったり、播戸竜二さんと対談をしたりしました。最近は元サッカー選手が「ウイイレ」のイベントに出演してくださることが多く、共演の機会が増えました。普通にサッカーをしていたらありえなかったことですからね。夢みたいに幸せです。

戸簾:僕も以前、元サッカー日本代表の中田英寿さんと商品を作らせていただいたことがあります。彼にとって最後の「ワールドカップ」のころ。思い出深い一人です。プロとして活動しようと思ったのはなぜ?

うでぃ:ある大会で優勝した時、吉本興業から声を掛けていただいたのがきっかけです。その後、ゲーム業界で生きる決心をしました。

戸簾:うでぃさんのSNSを拝見していると、特に髪色にこだわりを持っているように感じます。これまで数多くの大会に出場してきた中で、ゲーム業界の人たちを見て感じた事はありますか?

うでぃ:世間のゲーマーに対するイメージは良くないのが現実です。それを払拭したいから、積極的な自己表現を心掛けています。今後も今のイメージ通りのまま進んでいくのなら、業界の発展は絶対ありません。だからファッション業界とのコラボには、可能性をすごく感じています。自分なりのこだわりを一つ持ち、「ファッションに興味あるのかな。ゲーム以外のことにも興味があるのかな」と思ってもらえたら、それだけでプラスですよね。ゲームに興味がない人と会話する機会も増えますし、「ゲーマーにもオシャレな人がいるんだ」と認識してもらえるかもしれません。だから僕が髪の毛を紫に染めているときは、ゲームイベントで企業の会長・社長さんから「君、髪色にこだわっているね」と声を掛けて頂けます。やって良かったなと思っています。服はフランスのフットボールチーム、パリ・サンジェルマンFC(PARIS SAINT-GERMAIN FC)のアイテムなど、サッカーに関するものをよく着ています。

戸簾:ユーチューブで配信をしている人と、そうでない人だと、見られる意識や発信する意識に違いがありそうですね。

うでぃ:それは少なからずあると思います。

戸簾:自分のキャラクターを表に出していく人は少ない?

うでぃ:そうですね。そこまで多くはないと思います。

戸簾:今後はユーチューブメインの活動が増えますか?

うでぃ:現在はプロゲーマーとしての活動よりユーチューブが主になっています。プロとしての活動は、「ウイイレ」を発表しているコナミさんから依頼された仕事や吉本興業からいただくイベントです。そのほかは地方で小さい大会を開いて「ウイイレ」の面白さを伝えたり、大会に出たりしていますね。日本は大会での賞金が海外に比べて圧倒的に少額なので、プロとして生活するのはかなりきついと思います。将来は資金を貯めて、「ウイイレ」好きが集うゲームバーを作りたいと考えています。そのためには自分自身をもっと売っていかないと。ゲームチャンネルから自分を出していくことへの難しさも感じています。それこそゲーム以外で、ファッションなどの一つの軸を作りたいです。

戸簾:配信以外の活動も増えそうですし、それこそ違うストリーマーのポジションを確立できたら良いですね。ゲーム業界とファッション業界がよりシームレスになれる気がします。例えばモデルの活動に興味はありますか?

うでぃ:とても興味あります!

戸簾:うでぃさんにモデルや企画、コラボ商品を検討されるブランド、店舗の皆さん、是非ご連絡ください!募集中です(笑)。

うでぃ:是非お願いします(笑)。

戸簾:本日はありがとうございました。

うでぃ:ありがとうございました。

戸簾俊広: ジェムプロジェクター代表:2009年に国内外のファッション・ライフスタイルブランドのブランディング、PR、セールス、コンサルティングを手掛けるブランディングカンパニーGEM PROJECTORを設立。現在は、地方創生プロジェクトや会員予約制のテンポラリーレストランの立ち上げに向け奮闘する一方、「受信者から発信者へ」をテーマにしたオンラインサロンを運営

The post 「ウイイレ」世界2位のプロゲーマー、うでぃ「世間のイメージを払拭したい」 ゲームカルチャー解体新書Vol.4 appeared first on WWDJAPAN.com.

オフプライスストアがウィズコロナ時代に果たす役割

 米国を追う形で日本でも見られるようになった余剰在庫を仕入れて販売する「オフプライスストア(以下、OPS)」。ゲオ(2019年4月に1号店)やワールド(同9月に1号店)などがけん引する形で郊外や地方を中心に裾野を広げてきたが、都心や百貨店への出店、さらなる大手アパレルの参入など、新たな動きもある。OPSは、在庫問題にあえぐアパレル業界の処方箋になるのか。(この記事はWWDジャパン2020年11月2日号からの抜粋です)

 白を基調とした空間に、ゆったりと陳列された商品の数々。一目で上質と分かるニットやコートはどれもハイブランドの商品ばかりだが、手にとって値札を見てみると、どれも「40%オフ」のシールが貼られていることに気がつく。

 10月2日、サザビーリーグの「エストネーション」銀座店1階はOPS業態「エストネーション セントラル」としてリニューアルした。滑り出しは計画通りの進捗で、2、3階で営業する既存のエストネーション業態も2月末にはOPSに改装する。

 OPS市場において先行するゲオの「ラック・ラック クリアランス マーケット」やワールドの「アンドブリッジ」はいずれも郊外や地方商圏でアパレルと生活雑貨などをミックスして販売。SCであれば並びのテナントは100円ショップやホームセンターなどで、消費者には生活必需品の延長として捉えられている。そういった意味で、ハイブランドが中心の「エストネーション セントラル」は異色だ。

 これまでアパレルは、旬を過ぎたアイテムを、一部の顧客や関係者向けのファミリーセール(ECを含む)、都心から離れたアウトレットモールで処分してきた。これは在庫の安売りはブランド価値の毀損につながるという考えに基づいている。しかし、エストネーションの考え方は異なる。「郊外では価格競争に陥りやすく、取り扱いも雑になりやすい。ブランド価値を守りながら、余剰品であっても丁寧に一点一点を届けていきたい」(堀江俊サザビーリーグエストネーションカンパニーCCO)。

ショップの新しい世界観を演出

 「エストネーション セントラル」の1階で取り扱うブランドは「プラン C」「ストーンアイランド」「ニール バレット」「ヴェトモン」「パーム エンジェルス」など。「単なる“安売り”の店ではなく、商品に新しい価値を与える店だということを、地道に取引先に理解してもらおうと努力している最中」。

 旗艦店の業態転換に踏み切ったのは、ショップとしての可能性を広げるため。現在の取り扱い商品は以前のシーズンの自社在庫のみだが、今後は取引先在庫の仕入れ販売も念頭に置く。売れ筋化は狙えないものの、スタイリングに鮮度を与えるユニークなアイテムも、余剰在庫の仕入れであればリスクも小さく済む。「エストネーション」のオリジナルブランドやサザビーリーグの「メゾン・スペシャル」もミックスし、既存店舗にはない自由なMDを組む。「業態転換前はブランドの世界観やファンが確立していた一方、『エストネーション』らしい、そうではない、という枠組みに縛られて停滞していた側面もあった。ここで既成概念にとらわれないチャレンジをして、既存の『エストネーション』業態にも波及効果を生み出していきたい」。

地方百貨店へのソリューション

 OPSは取引先の退店で苦しむ百貨店の売り場を変えていく可能性もある。在庫買取販売のショーイチは、小田急百貨店新宿店に9月1〜29日、OPS業態「カラーズプラス」を出店した。百貨店にも出店しているミセスブランドが中心の商品構成で、正価の7〜9割引で販売。百貨店のブランド顧客名簿を活用してDMで集客するなどし、販売計画を達成した。今後、地方店を中心に他の百貨店でも催事が決まっているという。

 コロナ禍で、同社全体での買い取り依頼は前年比で3倍に膨れ上がった。「アパレルが困ったときに頼れるプラットフォームになりたい」と山本昌一社長は語る。「メーカーが原価率を抑えていい商品を作るには、需要を見込んである程度の量を作らなければならず、その流れは今後も止まらない。ならば、その業界と共存共栄できる仕組みを作る」。

 そのような考えのもと、平均約165平方メートルで「カラーズプラス」の長期の催事を、いくつかの地方百貨店の空いた売り場で行うことがすでに決まっている。「(売り場の)隣が空いたブランドからは、『一緒にそこで売り場を作らないか』という持ち掛けをいただく。このスキームならば、リスクを少なく売り上げを拡大したいブランド側にとっても、また空いた売り場を埋めたい百貨店側にとっても悪い話ではないはずだ」。

仕入れ増が売り場の魅力に直結

 ワールドの「アンドブリッジ」も都市部への出店をテストしており、8〜9月にかけて東京・浅草と京都駅前に期間限定店(〜21年1月)を出した。西大宮店(埼玉県)、相模原店(神奈川県)とは違う「都心型」(松下剛アンドブリッジ社長)の店舗として、テストマーケティングを兼ねる。「アンドブリッジ」でよく売れるのが、正価1万〜3万円前後の比較的高単価な百貨店アパレルの商品だ。浅草店は近隣に住む高感度な30〜40代の女性向けにインポートのアパレルなどを充実させて、客単価は6000〜6500円(他店平均4500〜5500円)を狙う。

 郊外でも比較的高単価なものが売れる秘けつは、「売り場の編集力」。商品調達を担うゴードン・ブラザーズ・ジャパンが多彩な商品を確保し、ワールドは売り場の運営に専念する。売り場にマネキンをたくさん立たせてコーディネートで訴求し、特定のジャンルにフォーカスしたポップアップスペースなどの仕掛けで購買動機を作っている。

 「売れ筋の商品・ブランドに偏ることなく、さまざまな商品のバリエーションがあってこそ、面白い売り場が作れる」という考えから、今期からはワールド単体での買い付けも開始する。古着店の「ラグタグ」などグループ企業とも連携して、取り扱いは160社250ブランドへ拡大した。今後は出店拡大とともに仕入れ量を増やし、売り場のさらなる魅力向上につなげる好循環を作る。「(百貨店を含めて)商業施設の出店要請があれば、これまでの知見を元に、最適な形で積極的に店を出していきたい」とし、23年3月期までに15店以上の出店を計画している。

 一方、オンワード樫山も「オンワード・グリーン・ストア」を柏に9月出店。東海や関西にも出店を計画するなど、OPS市場は一層熱を帯びてきている。

The post オフプライスストアがウィズコロナ時代に果たす役割 appeared first on WWDJAPAN.com.

非常時に強いアウトドアブランド エディターズレター(2020年9月17日配信分)

※この記事は2020年9月17日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

非常時に強いアウトドアブランド

 ファッション冬の時代といわれる中、例外的な存在がアウトドアブランドです。

 「ザ・ノース・フェイス」「スノーピーク」「モンベル」などを筆頭に、商業施設からは引っ張りだこ。「WWDJAPAN.com」の「『ららぽーと愛知東郷』にみるアウトドア集中とオフプライスの違和感 小島健輔リポート」でも、新規開業した郊外型ショッピンセンターにアウトドアブランドの店舗が過熱気味に集積されている様子が報告されています。大阪の駅ビルであるルクア大阪は1フロアを丸ごと使ったアウトドアゾーンを9月18日にオープンします。昨年から絶好調のワークマンだって、作業服をベースにしたアウトドアウエアが人気の中心です。

 かつてのアウトドアブランドは、ヘビーデューティーに代表されるダウンジャケットやマウンテンパーカ、フリースなど男性の重衣料が代表的な商材でしたが、今はカットソーやパンツ、バックパック、サンダルなど季節を問わずに選ばれるようになり、女性や子供にもすっかり定着しました。登山やキャンプを楽しむ人はもちろん、気がつけば普段着としてすっかり浸透しています。「ザ・ノース・フェイス」のバックパックをスーツに合わせているビジネスマンや、「モンベル」のインナーダウンを冬の必需品にしている人はたくさんいますね。機能的なアウトドアブランドは私たちの普段の生活の選択肢の一つになりました。

 これは私の個人的な感想の域をでませんが、アウトドアはかつてのカジュアル市場の主流だったアメカジ(ジーンズカジュアルなど)のポジションに取って代わっているように思えてなりません。特に30〜40代の男性の普段着は定番的なアメカジブランドから、現代的で機能性の高いアウトドアブランドに変わっているのではないでしょうか。作り手が頭の中でこねくり回したブランディングよりも、厳しい自然環境に挑む登山家らが支持する実績の方が説得力を持つ。実際にその機能を体験してみたくなる。

 矢野経済研究所が発表したスポーツ用品分野別国内出荷額によると、2020年のアウトドア用品の市場規模(予測)は15年に比べて約1.4倍の2748億円。ゴルフ用品の市場規模を初めて抜きます。

 コロナ後も比較的安定成長を予想されます。飛行機などの移動を伴う国内外の旅行、あるいは劇場やスポーツジムなど屋内の娯楽について感染リスクを心配しなくてはいけません。密にならず自然の中で非日常感を味わえるアウトドアはレジャーの受け皿として期待されているのです。

MARKET VIEW:ファッション市場で日々発信されるホットなニュースを、「WWDジャパン」のビジネス担当記者がコンパクトに解説するメールマガジン。ニュースを読み解くヒントを提供します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

The post 非常時に強いアウトドアブランド エディターズレター(2020年9月17日配信分) appeared first on WWDJAPAN.com.

コロナに負けず、「ルブタン」や「リック・オウエンス」には負けた「WWDジャパン」スタッフのベストバイ 

 新型コロナウイルスが猛威を奮い始めて半年以上が経ちました。落ち着きを取り戻しつつある今も、マスク着用や消毒の徹底など置かれている状況は変わりません。今年は東京オリンピックが中止となり、各地でのイベント・ライブ開催も断念せざるをえず、世界中で暗いニュースが続いているのも事実です。またこの状況がいつまで続くかも定かではありません。ですがこんな時こそ、ファッション、ビューティの力を信じる時ではないでしょうか。弊社のスタッフがコロナに負けず、テンション爆上げで自粛期間中に買ったアイテムをご紹介します。

ソールの“赤いマニキュア”にあこがれて

 特別給付金を利用して、「クリスチャン ルブタン(CHRISTIAN LOUBOUTIN)」のシューズを購入しました。以前から女性がはいた細いハイヒールの先にのぞく官能的なレッドソールにあこがれており、今年パリで行われた大型展覧会のニュースを見て、自分もあのアート作品のようなシューズをはいて気分を上げたいと思いました。20年以上前に、デザイナーのクリスチャン・ルブタン(Christian Louboutin)に行ったインタビューは貴重な思い出です。シンプルなデザインなので仕事中のスーツだけでなく、休日にはくジーンズにも合わせたいと思います。
(WWDジャパン編集部 相川克彦)

癒やしの香りでオンオフをコントロール

 家に居る時間が長い上、在宅勤務でオンとオフも曖昧な毎日でインドア派の私もさすがにじわじわとストレスが……。無意識のうちに癒やしを求めていたのか、香りの良いボディーケアアイテムが増えていました。仕事の合間にはさっぱりした香りのものを使って気分転換したり、1日の終わりには甘いバニラが香るボディークリームでゆっくりとマッサージをしたり。香りのパワーを日々実感しています。
(デジタルマーケティング部 浅野ひかる)

数年越しの出合い 黒染めUSレインデッキパーカ

 通称N-2と呼ばれるこのレインデッキパーカは、年代によってフロントのレースがフックになっていたりポケットがなかったりと仕様もさまざま。今回買ったのは、本来オリーブ色のところを黒に後染めした1960年代のもの。はっ水機能が薄っすら残ったゴム引きのコットンに刻まれたシワや退色にロマンを感じます。東京で同様の黒染めしたレインデッキパーカを着用していた人を見かけ、その出で立ちに一目ぼれしたのがきっかけで探し始めました。しかしいくら探しても、黒染めのものが見つからず、ある日ふと学生時代に通っていた名古屋の古着屋のSNSを見ていたところ、たまたまアップされていたのを見てすぐにスタッフさんに連絡!ずっと探していたのでサイズや価格も聞かず購入を決めちゃいました(笑)。
(WWD JAPAN.com編集部 川井康平)

「リック・オウエンス」ファンの争奪戦に見事勝利!

 見た目は無骨で重そうな印象を受けますが、実際に着用すると重さは全く気になりません。デザインはシンプルですが、かなりのインパクトがあり、コーディネートのアクセントとして多用しています。また「リック・オウエンス(RICK OWENS)」がアクセサリーを販売することはほとんど無く、このプライスも激アツ!人と被らないところもポイントです。これは速攻ソールドアウトになると思い、発売日当日にゲットしました(笑)。その後すぐに、ソールドアウトになっていたので、危なかったです。取るか取られるか、誰が手にするか、これもファッションの醍醐味のひとつかもしれません。
(WWD JAPAN.com編集部 大澤錬)

今年の7月に待望の第一子が産まれ、スリーパーを購入

 普段、自宅用や贈答用に選んでいるタオルブランドの「テネリータ(TENERITA)」で、“ベビータオルスリーパー”を購入しました。赤ちゃんは足をバタバタさせてしまうので、こういったものが必要だと分かり、肌触りの良いタオル地のものを買ってあげたいと思い選びました。胸元のロバの刺しゅうも気に入っており愛用しています!もう一枚、買おうか検討中です(笑)。
(ビジネスプランニング部 中野昌宏)

浮腫み体質には嬉しい着圧アイテム

 「メディキュット(MEDIQTTO)」を愛用して8年。超浮腫み体質の私は、旅行にも必ず持参するほどのヘビーユーザーです。そんな「メディキュット」から“パジャマレギンス”が発売されると聞いて、すぐにバラエティーショップに走りました。着圧など連想できない、モコモコで肌触りの良い素材感ですが、はいてみると程よく圧がかかっているのを実感。圧がかかりすぎないので休日には部屋着としても重宝しています。かわいい見た目なので、これなら友人との旅行にも堂々と持っていけそうです。
(販売部 山脇佳那子)

The post コロナに負けず、「ルブタン」や「リック・オウエンス」には負けた「WWDジャパン」スタッフのベストバイ  appeared first on WWDJAPAN.com.

21年春夏パリコレ、ランウエイショーの効果が浮き彫りに

 9月28日〜10月6日に開催された2021年春夏パリ・ファッション・ウイーク(パリコレ)を終えて、リアルショーとデジタル要素を織り交ぜて発表したブランドはリアルショーを行わなかったブランドよりも世界的に健闘したことが明らかとなり、ランウエイショーの重要性が浮き彫りとなった。また、コロナ禍下で新たな手法を取る機会が増えたことにより、最低でも5分以上の動画が好まれることや、インフルエンサーのリモート参加に効果があることなども明らかとなった。

 データアナリティクス企業、リッスンファースト(LISTENFIRST)のトレーシー・デイヴィッド(Tracy David)=チーフ・マーケティング・オフィサーは、「今年のSNS上でのパリコレへの関心度合いは昨年に比べて大きく減少しており、SNSで反響が大きかったのは最小限ながらもプレゼンテーションを行ったブランド群だった。当面の間パンデミックが続くことを考慮すると、今後のファッションイベントでSNSの関心を集めるのは、安全かつクリエイティブな方法でスペクタクルなランウエイショーを復活させることのできるブランドということになるだろう」とコメントした。
 
 メディアのモニタリングや分析を行うDMRグループ(DMR GROUP)が算出したソーシャルメディアでのキャンペーンにおける価値を意味するEMV(Earned Media Value)の値を見ると、21年春夏シーズンに行われた4つファッションウイーク(ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリ)のうちEMV値が最も高かったのはパリコレで、SNSを含むウェブ上での視聴数も最高値を記録した。

 フランスオートクチュール・プレタポルテ連合会(Federation de la Haute Couture et de la Mode以下、サンディカ)は、ファッション、ラグジュアリー、ビューティ分野のデータテクノロジー企業、ローンチメトリックス(LAUNCHMETRICS)と提携して、サイトの見やすさやマガジンセクションの流動性の向上やスケジュールページの明確化を図っており、今回のパリコレではデジタルプラットフォームの訪問者数が7月に行われたオートクチュール・コレクションおよびメンズ・コレクションを合わせた20万2000よりも多い23万を記録し、ページビューも7月の49万から60万6000に上昇した。

 サンディカのパスカル・モラン(Pascal Morand)会長は、「デジタルプラットフォームによって影響力が拡大し、パートナーシップの有効性も見られた。公平な競争の場が生まれたことで、比較的目立たないブランドも含め、全てのブランドが新しいシステムを支持している。パリのファッションには公平性という原則がある」と語った。

メディアへの影響値が最も高かったのはランウエイショーを行った「ディオール」

 一方で、ローンチメトリックス(LAUNCHMETRICS)が割り出したメディアへの影響度合いの試算額を表すMIV(Media Impact Value)のトップはまたも「ディオール(DIOR)」で、以下「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「シャネル(CHANEL)」と続く。なお、同3ブランドを含む18のブランドがゲスト数を大幅に抑えた上でランウエイショーを開催している。

 ローンチメトリックスのアリソン・ブランジ(Alison Bringe)=チーフ・マーケティング・オフィサーは、「ファッション・ウイークのあるべき姿や業界における絶対的な歴史あるイベントという点を踏まえても、パリとミラノは最も守られている存在だ。素晴らしいことに、わずか数カ月でデジタル技術の活用化が進み、パンデミックのさなかで窮地に立たされながらも、ファッション業界は創造性を発揮することができた。パンデミックを通じていくつかの大きな課題に対する答えは見つかったが、ブランドにとっては創作活動のスタート地点に過ぎない。ラグジュアリーブランドは、インスタグラム(INSTAGRAM)にショーの画像を何枚も投稿するのではなく、厳選したアプローチ法を選択するなどしてSNSを上手く活用し始めている」とコメントした。

 「ディオール」の公式インスタグラムで最も大きな反響があったのは、韓国のガールズグループ、ブラックピンク(BLACKPINK)のジス(Jisoo)の画像で、MIVは20年秋冬ショーで最も反響の大きかった投稿と比べて2倍以上となる61万4000ドル(約6385万円)を記録した。なお、今シーズンの「ディオール」の投稿全体のMIVの平均値は33%上昇している。

ソーシャル・エンゲージメントのトップは「シャネル」と「ルイ・ヴィトン」

 リッスンファーストが明らかにしたソーシャル・エンゲージメント(社会的関与)のスコアランキングでは、トップが「シャネル」と「ルイ・ヴィトン」、それに続いたのがデジタルでの発表を選択した「バレンシアガ(BALENCIAGA)」だ。4位以下は順に「バルマン(BALMAIN)」「ジバンシィ(GIVENCHY)」「ロエベ(LOEWE)」「エルメス(HERMES)」「ケンゾー(KENZO)」「クロエ(CHLOE)」「ミュウミュウ(MIU MIU)」と続く。

 また、21年春夏のパリコレ開催期間に当たる9月28日〜10月6日にかけて、#PFWのハッシュダグ付きで投稿されたツイートは1万8192件にとどまり、前年度の9月23日〜10月1日にツイートされた13万9403件を大きく下回る結果となった。

 「シャネル」では、ブランド名をLAのランドマークでもあるハリウッドサインに模した写真と共に、インスタグラムのストーリーズで21年春夏ショーのライブ配信を行う旨を告知した投稿に対する反響が最も大きく、約22万件のいいねを獲得した。

 また「シャネル」は、SNSで影響力のある著名人たちと提携したブランドの1つでもある。インフルエンサーはリモートでショーに参加するユーチューブ(YOUTUBE)動画を作成しており、ティックトック(TikTok)で人気を博したディクシー・ダメリオ(Dixie D’Amelio)が、同じくインフルエンサーのカミラ・コエーリョ(Camila Coelho)をゲストに迎えたユーチューブ動画は約350万回も再生されている。

 ユーチューブは、今シーズンのニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリのファッション・ウイークで209のショーのホストを務めたが、そのうち半数以上の108のブランドは、ユーチューブに動画を投稿するのが初めてだったという。

 ブランドはユーチューブのプレミア機能を使ってショーの動画にフラグを立て、コメントやライブチャットを通じたオーディエンスとの交流を持つことでエンゲージメントを高めることもできる。ユーチューブを効果的に利用するためには、動画のタイトルを検索エンジン向けに最適化することや、最低5分以上の動画を作成することも重要だ。また、試聴回数の多かったブランドは、ショーの動画の他にもバックステージ映像をはじめとした3〜5本のコンテンツを追加で作成していた。

 サンディカのパートナーでもあるユーチューブのファッションおよびビューティ部門のトップ、デレク・ブラスバーグ(Derek Blasberg)は、「多くのプラットフォームは即時の試聴回数に注目するが、ユーチューブのファッションショー動画の総再生回数の半数以上は、動画がアップロードされてから少なくとも1カ月後のものだ。例えば、2月にアップロードされた『グッチ(GUCCI)』の20年秋冬ショーの1週目の再生回数は数十万だったが、半年後には360万回になっていた。再生回数のチェックは、動画が一定期間視聴されることを考慮してシーズンの後半に行なっている。ユーチューブでファッションショーを試聴する人は、ショーを最初から最後まで試聴し、全てのルックを見たいと思っている。リアルなショーを体験したいということだ」と語った。

 「またブランドにとって、インフルエンサーの多くがショーに来ることのできない状況下で動画を拡散するのは難しい。そんな中で、リモートで対応するブランドやクリエイターを見てうれしく思った。ブランドは従来に比べてコントロールの力を弱め、クリエイターの作品により大きな信頼を寄せている。今の方が明らかに簡単だ。パンデミックの影響でファッション・ウイークの勢いは削がれているが、人気を博して間もないインフルエンサーだけでなく、これまで目立たずにいたモデルやデザイナーにとっても活躍の場が与えられている。インフルエンサーやモデル、デザイナー自身を含む私たち全員が、これまで気付いていなかった何かに気付き始めたのではないか」とコメントした。

The post 21年春夏パリコレ、ランウエイショーの効果が浮き彫りに appeared first on WWDJAPAN.com.

新型コロナで死去の創業者に捧ぐ復刻コレクション 「セルジオ ロッシ」CEOが語る

 イタリアのシューズブランド「セルジオ ロッシ(SERGIO ROSSI)」は、4月に新型コロナウイルスに感染して死去した創業者に敬意を表する復刻コレクション「グラッツェ セルジオ(Grazie Sergio)」をスタートする。まずは1969年のレザーパンプスをはじめ、2003年までの全10モデルをピックアップ。工房で復刻し、当時のロゴをプリントして、特別なパッケージに包んで販売予定だ。価格帯は、通常のコレクションと同水準。以降も毎シーズン10型のペースで、1度だけの復刻を続けるという。リカルド・シュット(Riccardo Sciutto)=セルジオ ロッシ最高経営責任者に、その狙いを聞いた。

WWD:「グラッツェ セルジオ」をスタートする理由は?

リカルド・シュット=セルジオ ロッシ最高経営責任者(以下、リカルドCEO):一番の理由は、4月に亡くなったマエストロ(芸術家の意味。セルジオ・ロッシ創業者を指す)の功績、そして彼が生み出した素晴らしい靴を“セレブレート”したかったから。彼とアーカイブについては、常々なんらかの形で「祝いたい」と思っていたが、亡くなって、決心した。彼とシューズのストーリーを後世に正しく語り継ぐことができるのは、私たちしかいない。会社には6000足のアーカイブがあり、私もたくさんの私物を持っているが、彼による1970年代のシューズは今だって身につけられる素晴らしいもの。トライアングルのヒールなど、私たち以外では再現できない名作も多い。だから1回だけ復刻して、当時のロゴとスペシャルパッケージで販売し、完売してしまったら、それでおしまいというプロジェクトに挑むことにした。「1回だけの復刻」「売り切ったらおしまい」という、通常とは異なるビジネスモデルを採用するのは、ブランドとして、もっと「勇敢になるため」。ミスしても、次に改善すれば良い。「1度だけの復刻」や「売り切ったらおしまい」なら、攻めることができるだろう。

WWD:6000足のアーカイブから、どんな基準で最初の10足を選んだ?

リカルドCEO:60年代以降、各年代のシューズを満遍なく選んだ。とはいえ、90年代は「ゴールデンピリオド」。名作が多すぎて、絞りきれない(笑)。だから91年から2000年のシューズをたくさん選んでしまった。69年のシューズは誕生から50年以上経過しているのに色褪せていないし、ビーズのフリンジを無数にあしらったアヴァンギャルドなシューズは今見てもエッジーだ。履き心地を考え、新しい技法を搭載した商品もある。ただ色使いはオリジナルと変わらない。

WWD:新型コロナウイルスの蔓延によるロックダウン、創業者の死を乗り越えた後ゆえ、工房の職人も「やる気」を見せたのでは?

リカルドCEO:その通り。工房の職人は、すぐにハートをアツく燃え上がらせてくれた。中には、「昔、先輩が作っているのを見たことがあるシューズだ」とか「私の家族が、このパンプスを手掛けていた」なんて職人もいて、リアクションは総じてポジティブだ。自分の過去、そして家族と「グラッツェ セルジオ」がリンクするスタッフにとっては、ロックダウンで止まっていた時計が、大きく動き出したような感覚さえあるだろう。そんなスタッフを見て、「グラッツェ セルジオ」は創業者のセルジオ・ロッシのみならず、あらゆる人を“セレブレート”する素晴らしいプロジェクトになると確信した。自分や家族の歴史が回顧できるなんて、イタリアで長年モノづくりをしてきたブランドらしいプロジェクトだ。

The post 新型コロナで死去の創業者に捧ぐ復刻コレクション 「セルジオ ロッシ」CEOが語る appeared first on WWDJAPAN.com.

ビューティ記者の「ファッションのこと知らない」をファッション記者が回答 コレクションやショーは何のため?

 11月9日号の「WWDジャパン」では、ビューティ業界を取材する記者からファッションに関する疑問を募集し、ファッション記者が回答する「往復書簡」を実施した。ファッション業界を熟知する記者でもハッとするような新鮮な疑問や質問が多く集まった。ショーの歴史から何故読みづらいブランドが多いのなどエンドユーザーに知ってほしい質問・回答をお届けする。(ファッション記者の質問はこちら)

Q.1:「ジル・サンダー(JIL SANDER)」のルーク・メイヤー(Luke Meier)=クリエイティブ・ディレクターは元「シュプリーム(SUPREME)」のヘッドデザイナーだったなどユニークな経歴だが、そのほかにも面白い経歴のデザイナーがいる?

A.1;大半のファッションデザイナーは他ブランドで下積みの経験を持っていることが多い。職種を超えたデザイナーはファッションエディターとしてキャリアをスタートさせた「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」の創業者のケイト・スペード(Kate Spade)や、イギリス発「ハウス オブ ホランド(HOUSE OF HOLLAND)」のヘンリー・ホランド(Henry Holland)ら。ロンドン・ファッション・ウイークに参加するウクライナ発の「ナターシャ ジンコ(NATASHA ZINKO)」のナターシャは元弁護士だった。

Q.2:「ジル・サンダー(JIL SANDER)」のルーク・メイヤー(Luke Meier)=クリエイティブ・ディレクターは元「シュプリーム(SUPREME)」のヘッドデザイナーだったなどユニークな経歴だが、そのほかにも面白い経歴のデザイナーがいる?

A.2;大半のファッションデザイナーは他ブランドで下積みの経験を持っていることが多い。職種を超えたデザイナーはファッションエディターとしてキャリアをスタートさせた「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」の創業者のケイト・スペード(Kate Spade)や、イギリス発「ハウス オブ ホランド(HOUSE OF HOLLAND)」のヘンリー・ホランド(Henry Holland)ら。ロンドン・ファッション・ウイークに参加するウクライナ発の「ナターシャ ジンコ(NATASHA ZINKO)」のナターシャは元弁護士だった。

Q.2:ビューティ業界ではチャイボーグメイクなど、中国発のビューティトレンドやブランドに注目が集まっているが、ファッション業界では?

A.2:中国ではインスタグラムなどのSNSの使用が規制されていることから、現地のファッションブランドの情報も少なく、日本には広く入ってきていないのが現状だ。しかし、中国発のショートムービープラットフォームのTikTok(ティックトック)では、中国のストリートスタイルを紹介するアカウントが話題であることから今後、中国発ファッションブランドが注目される可能性も高い。海外のファッション・ウイークに参加する中国人デザイナーズブランドは「ディオール(DIOR)」のクチュールで経験を積んだ「フーシャン ザン(HUISHAN ZHANG)」、ネットフリックスのファッションコンペ番組「ネクスト・イン・ファッション」に出演した「エンジェル チェン(ANGEL CHEN)」などがある。

Q.3:ファッションブランドのデザイナーをメインにした映画が度々公開されるが、こういった映画を製作する意図や目的は?

A.3:従来見ることのできない舞台裏などを公開し、ブランドやファッション業界全体の発展につなげる目的がある。ドキュメンタリー映画では、「ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男」、「ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス」などがデザインプロセスからビジネス、デザイナーのプライベートまで赤裸々に映し、資料性の高い映像作品だ。また伝記として、ココ・シャネル(Coco Chanel)を題材にした映画「ココ・アヴァン・シャネル」、イヴ・サンローラン( Yves Saint Laurent)をモデルにした「イヴ・サンローラン」などデザイナーの偉業を称えつつ、ドラマチックな人生を再現した作品もある。

Q.4:コレクションやショーって何のため?いつからある?

A.4:起源は19世紀、パリの高級仕立て服(オートクチュール)店が、店員に新作を着せて顧客に見せたことに始まる。1970年代以降は、既製服(プレタポルテ)が主流となり規模を拡大したが、ショーの目的がビジネスであることに変わりはない。 “ファッション・ウィーク”に参加するブランドは、バイヤーには買い付けを、メディアには報道をそれぞれ期待して招待をする。ショー形式が長年採用されているのは、服の魅力を伝えるのに効果的かつ効率のいい方法だから。ただし今年は、コロナ禍で多くのブランドがデジタル上で新作を発表し、まさにその意義が問い直されている最中だ。

Q5:たまにランウエイにアクティビストたちが勝手に乱入したりする。そのようなアクティビストに対してメゾンはどのような対応をとるのか?そもそも、彼らはどうやってショーに入れている?

A.5:以前は、動物保護団体が毛皮反対を訴えるため全裸でカメラマンの前に飛び出すなど“意思”ある活動家がランウエイに乱入するケースが多かったが、ここ数年はお騒がせユーチューバーが“ネタ”として乱入するケースが目立っている。その多くは招待状やスタッフパスを偽造するなどして紛れ込むようだ。ラグジュアリーブランドの場合、ショー会場には屈強かつ一流のセキュリティーが配置されており、彼らはこういったトラブルを前にしても大騒ぎすることなく静かに乱入者を取り押さえ、会場の外へと追い出す。そのため会場にいると乱入者に気がつかないことも多い。

Q.6:「PLST」「N°21」「A.P.C.」など、ファッションブランドって読みづらい名前が多いの?

A.6:ファッションとは主に西洋社会から日本に持ち込まれた“洋服”文化を指すので、ブランド名は自然と英語やフランス語、イタリア語のブランド名が多い。特に「ジバンシィ(GIVENCHY)」や「エルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)」などフランス人やイタリア人の名前を冠するブランドは私たち日本人には読みづらいのは仕方がないこと。ビューティブランドでも一緒では?そして、日本のブランドでもアルファベットを使って、インターナショナルでオシャレなイメージを演出することも。簡単に読めないブランドの方が意外に記憶に残ったりすることも。

Q.7:ビューティ業界ではサステナビリティを意識した企業やブランドの動きが活発だが、ファッション業界ではどういった取り組みがある?

A.7:どんな原料を使いどんな工場で誰が作っているかなど、消費者がわかるような“透明性”のある経営にシフトしている企業が増えている。デザイン面でいえば、作って売って終わりの直線的なビジネスから、限りある資源を効率よく使って生産し、再生産や再利用を前提としたモノ作りで廃棄物を減らし、地球環境への負荷を減らす“循環型”デザインへシフトしている。例えば、「アディダス(ADIDAS)」はTPU単一素材で作ることで100%リサイクル可能なスニーカー”フューチャークラフト.ループ“を来年発売する。使用済みのスニーカーを回収してそのスニーカーを原料にして新たなプロダクトを作ろうという試みだ。「ナイキ(NIKE)」は、生産工程で出る廃棄物の再利用を推進し、廃棄物をデザインに組み込んだ”スペース ヒッピー“を今年発売しました。

Q.8:ファッションとヘアスタイルは切り離せない関係のはず。しかしファッション業界はあまりへアサロンに注目していない気がする。例えば、ヘアサロン業界最大のコンテスト「JHA」ですら、ファッション業界からはほとんど注目されていない。それはなぜなのか?

A.8:個人的には「JHA」などのアワードには、適切な人をできるだけたくさん巻き込むことが重要だと考える。審査員のラインアップを見ると、ヘアメイクアップアーティストや美容師がほとんどで、メディアもヘアカタログや美容雑誌が名を連ねている。例えば、ここにコレクションブランドのデザイナーやファッション誌、そのファッション誌がファッション的な視点で審査した賞などを設けるのはどうだろうか。きっと、ファッション分野からの注目度ももっと上がるだろう。

Q.9:東京のファッション・ウイークを盛り上げたい。ファッション業界だけで盛り上げるには限界があるのでは?ここはメイク業界とヘア業界がもっと深く絡み、東コレを「最新のファッション・メイク・ヘアを提案する場」として明確に位置づけ、ドラスティックに変える(例えば全てのショーをヘアサロンで行うとか)しかないと考えるが、ファッション業界の人はどう考えているのか?

A.10:東京のファッション・ウイークは、近年は注目が高く集客のあるブランドが発表の場を海外に移したことで、世間からの興味関心がますます下がりつつある。旧来は服を見せてジャーナリストが批評し、バイヤーが買い付けるというBtoBの場で、主役はあくまで服そのものだった。しかし昨今は、SNSなどの発達でBtoCの側面も強くなり、消費者にいかに世界観を発信するかが大事になった。服をより魅力的に見せるメイクとヘアとの深い関わりは今後より重要になるだろう。コロナ禍でデジタル上での発表が増え、これまで裏方としての役割が大きかったメイクやヘアの存在感は増しており、今後は業界同士があらゆるかたちで協業していく期待はある。ただし、あくまでコレクションを売るビジネスの場という目的を忘れてはいけないと考える。

Q.11:今注目のD2Cブランドは?

A.11:ウィメンズでは、マークスタイラー出身で「アメリ(AMERI)」「アメリ ヴィンテージ(AMERI VINTAGE)」を率いる黒石奈央子・代表兼ディレクターと、同じくマークスタイラー出身の藤井亮輔ドットワンCEOの率いる「エイミーイストワール(EIMY ISTOIRE)」が2大ブランド。いずれもインスタグラムなどを駆使して設立から4〜6年で年商30億円に達している。ポイントは、リアル店舗と同等、あるいはそれ以上の顧客体験の提供を掲げている点。また、両ブランドともファッションビルなどに3〜4店舗のリアル店舗も出店している。

Q.12:最近ランニングシューズなどでは新素材や新機能を搭載したシューズが登場しているが、研究や開発期間はどれくらいなのか?

A:新素材や機能開発には3年はかかっていると思われる。その期間でテクノロジーの開発に加え、マーケティング戦略も立てている。新機能が搭載されたモデルは従来よりも高価なケースがほとんどのため、足数をある程度絞ってトップ層に販売することで話題性をつくり、その後に廉価版を主に一般層に向けて発売するケースが定番化している。そのためコンセプトモデル発表の段階で複数のモデルが完成している必要があり、相応の準備期間を要する。

Q.13:コロナ禍で売れているアイテムは何?

A:リモートワークで“おうち時間”が増えたため、消費者の関心も自然と外より内へ動いている。ルームウエアやオンライン会議できちんと見えるトップス、ニットなどが好調だ。インナーではナイトブラが絶好調。自宅で快適に仕事ができる便利グッズ(チェア、クッション、整理バッグ)やガーデングッズなども売れている。

The post ビューティ記者の「ファッションのこと知らない」をファッション記者が回答 コレクションやショーは何のため? appeared first on WWDJAPAN.com.

白スニーカーの次は白ブーツ! 秋冬コーデが軽やかな印象に

 白ブーツの人気がじわじわ広がっています。もはや“白スニーカー”の次といった感じで、この秋冬はさらに広がる気配。支持される理由は、今の時代に望まれる清潔感やフレッシュさを印象づけやすいのに加え、冬ルック特有の重たさを遠ざけられるから。今回は有力ブランドによる白ブーツの提案をスタイリング別に集めてみました。

 「レキサミ(REKISAMI)」は、カットワークレースのサックドレスに白ブーツを合わせてクラシック&フェミニンのコーディネートに。クールな白ブーツが芯の強さも感じさせます。白を生かせば、軽やかに見せたりパンツルックを格上げしたりとアレンジパターンが増やせそう。提案の豊作ぶりも白ブーツブームを証明しています。

ボリュームを削いで軽やかな印象に

 秋冬はレイヤードが楽しめるシーズン。重ね着でボリュームを出しつつもクリーンなムードを出したいときに、アイキャッチーな白ブーツはいい仕事をしてくれます。

 ロングシャツにニットポンチョを重ねた「アメリ(AMERI)」流のスーパーレイヤード。さらにワイドパンツも投入してボリュームを出しつつも、ポンチョやパンツとリンクした白ブーツのおかげで凛とした雰囲気に仕上がりました。

 白は膨張色といわれますが、靴に関して言えば、すっきり見せてくれるメリットのほうが大きそう。2枚目写真の「ジェーン スミス(JANE SMITH)」は、ロングスカートの上から羽織ったボアコートがコーデの主役。見るからにあたたかそうな風合いと着丈ですが、過剰にモコモコして見えないのは、白ブーツのお手柄です。

パンツルックの脱マンネリ

 防寒面からも冬はパンツの出番が増えます。スタイリッシュな印象を与えるうえでも、白ブーツは絶好の相棒です。

 アウターでかさばって見えがちなときに白ブーツを投入すれば、重たさを削ぐ効果が期待できそう。白ならではのピュア感や上品さが備わるのも魅力。ロング丈のパンツやスカートとのコンビネーションで、縦長イメージを強める使い方が効果的です。

 2枚目の写真「レンズ(LENZ)」は、どちらもベージュ系でそろえたシャツとパンツのセットアップ風ルックに白ブーツをスタイリング。パンツの裾下から白い爪先だけをチラ見せしています。白スニーカーに比べると、足元にシャープさを演出できるのも利点と言えます。

ロマンチック×ハンサム ブーツインですっきりしたレッグラインに

 パンツの裾をロングブーツにインすれば、さらに白ブーツの魅力を生かせる着こなしに。レッグラインがシャープに映るのに加え、ブーツの見える面積が広がることでホワイトの主張が際立ちます。

 「ポステレガント(POSTELEGANT)」は、白パンツ×白ロングブーツですがすがしい装いにまとめました。オールホワイトの着こなしですが、異素材ミックスで適度な“ずれ感”が生まれ、どこかロマンチックでハンサムなパンツコーデの出来上がり。

 2枚目の「ヨウヘイ オオノ(YOHEI OHNO)」はベージュ系のスリムパンツを白ブーツにイン。“細×細”の相乗効果が生きてスリム効果もアップ。パンツスーツを意外性のある着こなしにアップデートさせたいときにうってつけです。

 重ね着でふくれがちな冬コーデからかさばり感を削ぎ落としてくれる白ブーツは、これからのシーズンの重宝アイテム。今の時代に求められる清潔感も漂わせやすいので、手持ち服との相性を試してみてはいかが。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

The post 白スニーカーの次は白ブーツ! 秋冬コーデが軽やかな印象に appeared first on WWDJAPAN.com.

日本のジュエリー業界でも高まるエシカル&サステナブルなムーブメント

 宝石の代表格であるダイヤモンドの背景には、環境破壊や内戦の資金源、児童労働など多くの問題がある。ティファニー(TIFFANY&CO.)によるダイヤモンドのトレーサビリティーへの取り組みを筆頭に、ジュエリー業界でもエシカル、サステナブルな動きが広まっている。ジュエリーブランド「ビジュー・ド・エム(BIJOU DE M)」と「ミオ・ハルタカ(MIO HARUTAKA)」のデザイナーである春高未欧は都内でダイヤモンドの人道的な採掘を支援するNGO「ダイヤモンド・フォーピース(DIAMONDS FOR PEACE以下、DFP)」の村上千恵代表と、双方の取り組みについてトークショーを開催した。

 ダイヤモンドというと、宝石のイメージが大きいが、半導体や研磨器具などにも使用される鉱物の一種だ。ダイヤモンドは南アフリカを始め、カナダやオーストラリアなどで大規模な採掘が行われる。採掘量の約2割が西アフリカや中央アフリカの国々では小規模な採掘が行われており、今後増加する傾向にあるという。村上代表は「エンゲージメントリングをもらったときに、ダイヤモンドに関心を持ち、その採掘の実態を知りショックを受けた」と話す。そして人道的かつ倫理的なダイヤモンドの採掘を支援する「DFP」を2015年に設立。リベリアに現地法人を置き、採掘者をサポートしている。村上代表は、「ダイヤモンドのサプライチェーンはクモの巣状態。それをトレーサブルにするのが課題だ」という。リベリアの採掘者のほとんどは小学校も出ておらず、ダイヤモンドの評価ができないのが実情だ。「DFP」は彼らが鉱山の出資者に頼らず自立できるように、副業として養蜂のノウハウを教えている。「収入の安定が心の安定につながる」と村上代表。

 春高は、「過酷な労働条件で採掘されることもあるダイヤモンドを扱うことについて葛藤を感じ、ジュエリービジネスのあり方について考えた」という。そこで、ダイヤモンドの採掘に関して何かできることはないかといろいろとリサーチをしたそうだ。そこで「DF P」の存在を知り、村上代表にメールを送ったという。そして、今年4月から売り上げの一部を「D F P」に寄付している。今までに養蜂の巣箱200個を寄付。今後は、トイレの設置などにも寄付するようだ。春高は、「ダイヤモンドは自然が生み出した神からの贈り物。その物語を伝えられるジュエリーを作っていきたい。ジュエリーを通して社会を豊かにするサイクルを生み出したい」と述べた。

 ほか、「ハム(HUM)」による「リファイン メタル」プロジェクトによる再生機金属を使用したジュエリーや「アルティーダ ウード(ARTIDA OUD)」によるインドの女性自立を支援する目的のインドに学校を建てるための「アイ・アム・ドネーション」プロジェクトなど、日本のジュエリー業界でも、エシカル&サステナブルな取り組みが広がっている。

The post 日本のジュエリー業界でも高まるエシカル&サステナブルなムーブメント appeared first on WWDJAPAN.com.

「サカイ」のショーで覚えた違和感の正体 エディターズレター(2020年9月15日配信分)

※この記事は2020年9月15日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

「サカイ」のショーで覚えた違和感の正体

 8月にデジタルで発表された「サカイ」の2021年春夏メンズコレクションとプレ・スプリング・コレクションを見ていて、“何か引っかかる”と15回くらい思いました。ムービーは、ファッションショーのバックステージを再現したものでその場にいるような没入感を体験できます。それはそうなのですが、流れるように進む映像を観ながら10秒に一回くらい頭に?が浮かび、何かヘンだと思うのです。

 よろしければまずはムービーを見てください。

 例えば0:43のフィッティングを終えたモデルがナンバープレートを手に持っているシーン。時間にして1秒以下と、初見では数字を認知できるかできないかくらいの短い時間ですが、私は引っかかりました。なぜならナンバープレートの数字が「261」だから。「261」という数字はルック番号にしては大きすぎます。ヘンですよね。こんな感じで2分27秒の間、数秒に1回、違和感を覚え続けました。

 この“?”の正体は、デザイナーの阿部千登勢さんにインタビューしたことで明らかになりました。実は阿部さん、ショーの中にいくつもギミックを仕掛けていたのです。全て今季のテーマである「Love Over Rules(愛はルールを超える)」に関連し、人種・文化・セクシュアリティーなどの多様性と団結のメッセージに関連した映画や物語の中から抽出しています。「サカイ」から正式に「あれはあの映画からだよ」といった正解は提示されず自分で探す必要があるのですがそれが楽しい。

 例えば「261」はどうやら1967年に女性として初めてボストン・マラソンに出場したキャサリン・スウィッツァー選手のゼッケン番号。そのレース中、主催者の一人が彼女のゼッケンを無理やり外そうとしたのを振り切って完走したそうです。当時の報道写真を見るとスポーツ界における性差別の激しさを知り、衝撃を受けます。彼女の勇気を讃える数字が「261」なのです。

 おもしろいですね〜。探究心をそそられ、ショーを通じてデザイナーと対話をするうちに新しい価値観を知り、知識を得られることに興奮します。

 コレクション関連のセミナーに登壇すると、質問タイムでよく受ける質問が 「ファッションショーの何を見ているのですか?」です。私の場合は、答えはまさに「違和感を探している」です。「サカイ」のように、意図的にギミックを仕込むショーは多くありませんが、デザイナーが伝えようとしている新しい「何か」は、それが自分はまだ知らない価値観やまだ見ぬ新しい世界だった場合違和感として心に引っかかります。その場では違和感の正体は分からずとも取りあえず受け止め、後でその違和感について考えを巡らせたり調べたります。良いショーというのは、こうやって新しい価値観について考えるきっかけをくれるものです。

 そういった意味でもこの「サカイ」の映像は、違和感に満ち、記憶に残るものとなりました。 昨日から2021年春夏のファションウィークが始まりました。デジタルを通じてこんな風に好奇心をそそられる違和感がたくさん見つかるといいな、と思います。

IN FASHION:パリコレもストリートも。ジュエリーもインテリアも。今押さえておきたい旬なファッション関連ニュースやコラムを「WWDジャパン」編集長がピックアップし、レターを添えてお届けするメールマガジン。日々の取材を通じて今一番気になる話題を週に一度配信します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在9種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

The post 「サカイ」のショーで覚えた違和感の正体 エディターズレター(2020年9月15日配信分) appeared first on WWDJAPAN.com.

「サカイ」のショーで覚えた違和感の正体 エディターズレター(2020年9月15日配信分)

※この記事は2020年9月15日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

「サカイ」のショーで覚えた違和感の正体

 8月にデジタルで発表された「サカイ」の2021年春夏メンズコレクションとプレ・スプリング・コレクションを見ていて、“何か引っかかる”と15回くらい思いました。ムービーは、ファッションショーのバックステージを再現したものでその場にいるような没入感を体験できます。それはそうなのですが、流れるように進む映像を観ながら10秒に一回くらい頭に?が浮かび、何かヘンだと思うのです。

 よろしければまずはムービーを見てください。

 例えば0:43のフィッティングを終えたモデルがナンバープレートを手に持っているシーン。時間にして1秒以下と、初見では数字を認知できるかできないかくらいの短い時間ですが、私は引っかかりました。なぜならナンバープレートの数字が「261」だから。「261」という数字はルック番号にしては大きすぎます。ヘンですよね。こんな感じで2分27秒の間、数秒に1回、違和感を覚え続けました。

 この“?”の正体は、デザイナーの阿部千登勢さんにインタビューしたことで明らかになりました。実は阿部さん、ショーの中にいくつもギミックを仕掛けていたのです。全て今季のテーマである「Love Over Rules(愛はルールを超える)」に関連し、人種・文化・セクシュアリティーなどの多様性と団結のメッセージに関連した映画や物語の中から抽出しています。「サカイ」から正式に「あれはあの映画からだよ」といった正解は提示されず自分で探す必要があるのですがそれが楽しい。

 例えば「261」はどうやら1967年に女性として初めてボストン・マラソンに出場したキャサリン・スウィッツァー選手のゼッケン番号。そのレース中、主催者の一人が彼女のゼッケンを無理やり外そうとしたのを振り切って完走したそうです。当時の報道写真を見るとスポーツ界における性差別の激しさを知り、衝撃を受けます。彼女の勇気を讃える数字が「261」なのです。

 おもしろいですね〜。探究心をそそられ、ショーを通じてデザイナーと対話をするうちに新しい価値観を知り、知識を得られることに興奮します。

 コレクション関連のセミナーに登壇すると、質問タイムでよく受ける質問が 「ファッションショーの何を見ているのですか?」です。私の場合は、答えはまさに「違和感を探している」です。「サカイ」のように、意図的にギミックを仕込むショーは多くありませんが、デザイナーが伝えようとしている新しい「何か」は、それが自分はまだ知らない価値観やまだ見ぬ新しい世界だった場合違和感として心に引っかかります。その場では違和感の正体は分からずとも取りあえず受け止め、後でその違和感について考えを巡らせたり調べたります。良いショーというのは、こうやって新しい価値観について考えるきっかけをくれるものです。

 そういった意味でもこの「サカイ」の映像は、違和感に満ち、記憶に残るものとなりました。 昨日から2021年春夏のファションウィークが始まりました。デジタルを通じてこんな風に好奇心をそそられる違和感がたくさん見つかるといいな、と思います。

IN FASHION:パリコレもストリートも。ジュエリーもインテリアも。今押さえておきたい旬なファッション関連ニュースやコラムを「WWDジャパン」編集長がピックアップし、レターを添えてお届けするメールマガジン。日々の取材を通じて今一番気になる話題を週に一度配信します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在9種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

The post 「サカイ」のショーで覚えた違和感の正体 エディターズレター(2020年9月15日配信分) appeared first on WWDJAPAN.com.

スター不在、激動の中のNYコレの見所は? エディターズレター(2020年9月11日配信分)

※この記事は2020年9月11日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

スター不在、激動の中のNYコレの見所は?

 いよいよ始まりますね、2021年春夏コレクション・サーキット。

 ニューヨークは現地時間13日17時の「ジェイソン ウー」に始まって、16日19時の「トム フォード」で終了の3.5日間に短縮。デジタルプラットフォーム「ランウエイ360」を使ってオンライン配信します。

 今シーズンは「マーク ジェイコブス」も「マイケル・コース コレクション」も「ラルフ ローレン コレクション」も「プロエンザ スクーラー」も不参加。正直、だいぶ華やかさに欠けます。果たしてどれだけの視聴を集め、ビジネスチャンスを生むことができるのか。オンライン開催によって世界同時発表になることで、「ニューヨーク」であることの意義についても考える機会になりそうです。見る側にとっては都市名はもう記号程度にしかならないかもしれないですね。

 ただ、スターの不在は新しい芽に注目が集まる好機でもあります。特にアメリカはコロナ禍、BLM運動、大統領選挙と、まさに激動のタイミング。コレクションが社会的なメッセージで溢れることは間違いないでしょう。

 クリスチャン・シリアノや「パイヤー モス」のカービー・ジーン・レイモンドらは早い段階で新型コロナ感染拡大防止のために最前線で働く人のための防護服を製作しましたし、サステナブルなアクセサリーブランドを手掛けるオーロラ・ジェームズはショップの棚の15%を黒人経営者による商品にすることで、彼らのビジネスを支援しようと活動しています。多様性を問われたアメリカファッション協議会は初めて有色人種の女性をプレジデントに迎えましたし、直近では多くのデザイナーが民主党のジョー・バイデン氏を支持してグッズを作っています。

 さて、激動の時代がコレクション自体やその見せ方にどう反映されるのか。米「WWD」の本拠地ニューヨークからのニュースにも期待。新しい芽を探したいです。

VIEWS ON WWD U.S.:米「WWD」の翻訳記事から、注目すべきニュースの紹介や記事の面白さを解説するメールマガジン。「WWDジャパン」のライセンス元である米「WWD」は1910年から続くファッション業界専門紙。世界中のデザイナーや企業のトップと強く繋がっており、彼らの動向や考え、市場の動きをいち早く、詳しく業界で働く人々に届けています。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選び頂けます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

The post スター不在、激動の中のNYコレの見所は? エディターズレター(2020年9月11日配信分) appeared first on WWDJAPAN.com.

「YSL」はコロナによる“リップ不況”をどう乗り越えるのか? 新事業部長が描く戦略

 日本ロレアル傘下の「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT以下、YSL)」が新事業部長の下、スキンケアの強化を掲げ新たな戦略を進めている。近年はメイクアップ、中でも艶やかな仕上がりとみずみずしい発色が特徴の“ルージュ ヴォリュプテ シャイン”を中心としたリップカテゴリーがけん引し、5年で売り上げが4倍と急成長したが、今年に入り多くのブランド同様、新型コロナウイルスの影響は「YSL」にも及んでいる。5月に就任した長谷由紀子・新事業部長の、「逆境をチャンス」と捉えたビジョンは明確だ。

 長谷新事業部長は、2010年にシュウ ウエムラのマーケティングマネージャーとして日本ロレアルに入社。直近では5年間、「シュウ ウエムラ」の事業部長として手腕を発揮。若年層をターゲットにした戦略で同ブランドは急成長した。その手腕を買われ、次はメイクアップで成長してきた「YSL」を総合ブランドとして確固たる地位に押し上げる。

 長谷事業部長は、「メイクアップを強みとしつつ、今後はスキンケアとフレグランスの比率を上げ、総合ブランドとしてロイヤリティーを上げていく」。そう話すのも、新型コロナ前は売り上げの約80%がメイク、15%がスキンケア、5%がフレグランスとメイクが大きなシェアを占める状況だったからだ。「単価が低いメイクアップは新客の獲得はしやすく、リップはこれまで若年層を筆頭に多くの新客獲得に貢献した。しかしメイクアップでは顧客の固定化が難しく、(コロナ前から)スキンケアを伸ばして顧客化を進めなければいけないと課題を感じていた」と説明する。
 

 コロナはどのブランドにとってもマイナスな面がクローズアップされがちで実際、店舗の閉鎖やタッチアップの自粛など影響は大きいが、「おうち時間が長くなったことにより、スキンケアの需要が高まったことは大きなチャンスだ」と捉え前を向く。実際、今年1月に発売した“ピュアショット”シリーズが好調な動きを見せているという。外的・内的ストレスにより肌が疲労した“過労肌”にアプローチしたシリーズで、現代女性のニーズにマッチしていることから20〜30代の女性を中心に支持を集めている。特にコロナによる生活の変化のストレスを感じる女性が増える中でその人気は高く、すでに当初の年間目標を達成しているという。

 また、明確なコンセプト以外に、サステナビリティーへの取り組みも人気の要因だ。「同シリーズは『YSL』がモロッコに構えるウリカガーデンから原料をエシカルに調達しているほか、パッケージもレフィル・リサイクル対応しているなど、サステナビリティやクリーンビューティにこだわっている。その結果、環境への意識が高い若年層からの関心を集められている」と語る。レフィル対応や公式ECで行う“定期便”サービスはリピートにもつながり、課題としていた顧客化への第一歩となっている。

 こういった状況から、スキンケアの需要はすでに高まっており、現在はカテゴリー別売り上げ比率はメイクが約60%、スキンケアが約30%、フレグランスが約10%にシフトしたという。現状、全体の売り上げは難しいところだろうが、総合ブランドへの道が築かれているだろう。

 一方で強みとするメイクアップも強化アイテムを明確化する。しばらくマスク生活が続くと予測される中でベースメイクに注力。中でも9月4日にリニューアル発売した“アンクルドポールクッション”を戦略商品として打ち出す。同製品はマスクをつけても落ちにくいということで人気だが、人気ボーイズグループのJO1を起用したプロモーションが奏功し、発売当日も大きな反響を呼んだ。また公式ECではレフィルの“定期便”サービスも提供し、メイクでもリピート客の獲得を図る。10月以降は毎年人気のホリデーコレクションに大きな期待を寄せ、年末まで限定アイテムやコフレを順次発売する。

 今後は、ブランドイメージのアップデートにも取り組む。“ヤング、エッジィ、ラグジュアリー”をコンセプトとして掲げている同ブランドだが、「リップの影響でヤングなブランドのイメージは定着していると考える。しかし調査をすると、近年は意外にも可愛らしいイメージも持たれていることも分かった。ファッションメゾンから派生したビューティブランドとして、今後よりエッジィとスタイリッシュさを引き立たせたい。加えて、男性でも使えるジェンダーレスなイメージも打ち出す」。

The post 「YSL」はコロナによる“リップ不況”をどう乗り越えるのか? 新事業部長が描く戦略 appeared first on WWDJAPAN.com.

日本最大規模のオーガニック祭典「オーガニックライフスタイルEXPO」開催 初のオンライン交流会も

 オーガニックフォーラムジャパンは、このほど日本最大規模のオーガニック祭典「第5回オーガニックライフスタイルEXPO」を東京・浜松町の東京都立産業貿易センター浜松町館で開催した。5回目の今回は会期を拡大し8月に開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため10月に実施。出展社数を当初予定の半分程度に減らし、来場者数も絞り込んだ。132小間に107社・団体・生産者が出展し、3日間の会期中は1万185人が来場した(前回は2日間で1万8285人)。今回、安全対策の一環として、オンライン展示会サービス「エグジブ(EXIV)」の活用や、Zoomを使ったセミナーのライブ配信など、オンライン上でも商談会やコミュニケーションの場を広げた。

 「オーガニックライフスタイルEXPO」は、オーガニックの裾野を広げ生活に根付かせ購入につなげるため、ビジネス関係者と一般消費者がともに、「見て、学んで、おいしくて、買い物ができる」BtoBtoCの祭典。ビューティ関連製品はもちろん、ファッションや寝具、野菜、建材、電力などオーガニックライフスタイルを網羅する製品がそろった。

 ビューティ関連では、小松和子=オーガニック・ナチュラルコスメプロデューサー兼ナチュラルコスメメイクアップアーティストが国内外のオーガニック&ナチュラルコスメブランドを一堂に会す“リアルオーガニック・ナチュラルコスメゾーン”をこれまで同様に監修した。小松プロデューサーは、「熱心に話を聞かれる方が多く、『出展が多すぎて全部見られない』という声もあったため、今回はゆっくり見られるように前回の半分まで出展数を減らして構成した」と話す。また、オーガニック・ナチュラル化粧品と一般化粧品が混在しているブランドがあり、消費者の混乱を招いている問題点を挙げ、「来年はさらに出展の基準を高めて厳選する」と、明確にする予定だ。

 同ゾーンでは、ホリスティックビューティを提案する福岡発の「イ・ミューン(IMYOON)」が初出展した。「イ・ミューン」は、ホリスティック美容家の安村侑笑氏がクリエーション。同氏が行なっているカウンセリングから、 “パワフルなメイク落としや洗顔料”の使用が、ニキビや乾燥といった肌悩みの原因の一つになっていると分析。「体や環境に優しいクレンジング専用石けんを作りたい」という思いから、今年3月にクラウドファンディングを活用して立ち上げた。オリーブオイルやシアバターなど4種類の天然オイルを配合したクレンジングと保湿をかなえる手作り石けん“クレンジングバー”(80g、3000円)を展開する。

 さらに、富山の特産品のへちまを使った商品をそろえる「へちまここち」や、オーガニックカカオをメイン成分とした天然由来成分100%の国産スキンケア・コスメブランド「ヤエコ(YAECO)」など、13社が出展した。

 このほか、エシカルファッション雑貨コーナーでは、アタッシェ・ドゥ・プレスの4Kが出展し、“社会課題を解決するファッションブランド”の「ココ(COXCO)」などをPRした。また、“オーガニックなまちづくり”を掲げる木更津市オーガニックシティプロジェクト推進協議会は、11月3日に開催する「木更津オーガニックシティフェスティバル2020」をPRするなど、木更津市が取り組む持続可能な町作りについて周知した。

The post 日本最大規模のオーガニック祭典「オーガニックライフスタイルEXPO」開催 初のオンライン交流会も appeared first on WWDJAPAN.com.

コスメのベストセラーの理由教えます! 「キャンメイク」編

 ドラッグストアやバラエティーショップで取り扱われているアイテムにはロングセラー商品が数多く存在する。なぜ安定した売り上げが続いているのか、何をきっかけに人気に火がついたのかなど、毎回、一つのブランドをピックアップ。ブランド誕生から現在までを振り返りながら、ブランドのターニングポイントとなった出来事について探っていく。

“プチプラ”のイメージが
「安かろう悪かろう」から
「安くても安心」に変化

 グループ会社である井田両国堂は化粧品の卸をしていたが、1963年に担当者が欧米に化粧品の視察に行ったところ、現地のドラッグストアやGMS(総合スーパー)で手に取りやすい価格で化粧品が販売されていたことに感銘を受けた。「日本でも安価にコスメを提供したい」と思い、井田ラボラトリーズを設立し1985年に「キャンメイク(CANMAKE)」を立ち上げた。最初はリップやチーク、アイシャドウなどのポイントメイクとネイルアイテムを発売。価格は500〜1000円に設定し、種類も豊富にそろえたことから特にネイルが売れ筋になった。

 ただ当時は、低価格かつドラッグストアやバラエティーショップで手軽に購入できる“プチプラコスメ”は、「安かろう悪かろう」というイメージがまだ強いとき。「特にベースメイクアイテムは苦戦しており、認知度はまだまだだった。しかし、98年発売のコンシーラー“カラースティック”をヘアメイクアップアーティストの嶋田ちあき氏が雑誌で紹介したことが転機となった」と同社キャンメイク部PRチーフの山口裕紀氏は振り返り、コンシーラーは想像以上の反響で、これまで10代後半〜20代前半がメインだった客層が大人層にも広がったという。

 「キャンメイク」の認知度が上がり幅広い層に愛されるようになった後も10代後半〜20代前半のメインターゲット層は変えずに、「年代を選ばない可愛さのエッセンスを残したシンプルなパッケージデザインを心がけている」と述べる。また、セルフ販売のため使い方が誰にでもわかるように、パッケージにできる限りの情報を詰め込んでいるのもこだわりだ。

 「キャンメイク」といえば、アイシャドウやチークなどが一番人気と思われるが、ダントツの人気を誇るのは2011年に発売したフェイスパウダーの“マシュマロフィニッシュパウダー”で、シリーズ累計2800万個を突破している。「口コミでじわじわと売り上げを伸ばしたアイテム。フェイスパウダーは化粧直しなどに使用されることが多い“人前需要”があるため、例えばトイレで同僚や同級生と一緒に化粧直しをする際、『プチプラだと恥ずかしい』という意識も生まれる。そのため“マシュマロフィニッシュパウダー”は、ブランドロゴをパッケージに溶け込ませたさりげないデザインにしている点も支持された」と分析する。同製品は来年3月末にリニューアルを控え、パッケージもよりシンプルに進化する予定だ。「トレンドを押さえた新製品を毎月登場させており、今後も引き続き、飽きさせない製品と売り場作りを提供いていく」と話す。

ここがターニングポイント!

 1990年代後半にヘアメイクアップアーティストの嶋田ちあき氏が、大物女性アーティストに使用していると“カラースティック”を紹介。伸びが良くてヨレにくく、カバー力もあるのに580円という価格に加え、特に01のイエローが「日本人の肌のくすみにぴったりなカラー」として人気に。これまでの“プチプラコスメ”の「安かろう悪かろう」というイメージが、アーティストや女優が使用していることから「安くても安心して使える」と見直されたきっかけになった。

The post コスメのベストセラーの理由教えます! 「キャンメイク」編 appeared first on WWDJAPAN.com.

まだ、あなたが知らないニューヨーク最新トレンド おしゃれセックスビジネスが急成長

ニューヨークのファッション業界で活躍するクリエイティブ・ディレクター、メイ(May)と、仕事仲間でファッションエディターのスティービー(Stevie)による連載も第14回。“You’d Better Be Handsome”では、トレンドに敏感なレイチェル(Rachel)も加わって、ニューヨークのトレンドや新常識について毎回トーク。新型コロナと大統領選挙疲れのアメリカではあるが、女性の視点から提案されるおしゃれなセックスビジネスのあれこれについて。

今回のランチは、オーナーの引退により昨年の夏に惜しまれつつも閉店したトライベッカの「アーケード ベーカリー(ARCADE BAKERY)」跡地にできた「フレンチェッテ ベーカリー(FRENCHETTE BAKERY)」でテイクアウト。本連載第1回で紹介したレストラン「フレンチェッテ(FRENCHETTE)」のオーナー2人が、「アーケードベーカリー」のパンをお店で提供していたことから、遺産を受け継ぎたいと再建。「フレンチェッテ ベーカリー」として店名を新たにしつつも前店の雰囲気を引き継ぎ開店直後から客が列をなす。
フレンチェッテ ベーカリー:220 Church Street, New York, NY 10013 Tel 212 227 1787

メイ:旅行はもちろん、海外出張も自由にできなくなって早7カ月。今週は、ロンドンからこのフォトグラファーがとうとう来るから何かプロジェクトがない?みたいな連絡が何本かあった。みんなビザを取ってくるらしい。

スティービー:僕も、移民弁護士にいい人がいるから紹介してあげる、と2日連続で言われた。海外出張に弁護士を雇わないといけなくなる日が来るとはね。

レイチェル:11月3日はとうとう大統領選挙。なんだか自分の力が及ばないものに振り回されることに疲れてきたから、とりあえず選挙は早く終わってほしい。トランプは嫌われているのを自覚しているからか、出身地であるニューヨークを毎回テレビで「ゴーストタウン化している」って言うけど、あれもやめてほしいよね。

スティービー:ところでまだ11月になったばかりなのに、すでにクリスマス商戦が始まっている気がしない?

メイ:売ってしまわないといけない在庫がたくさんあるのでは?すでに大もうけのアマゾン(AMAZON)がプライムメンバーに向けて10月半ばに2日間開催するセール、プライムデー定着してきた感じが。あれって前からやっていたのかな?以前は気付かなかったけど。

レイチェル:プライムデーは、アマゾンが20周年を記念して2015年に始めたイベント。2日間のみだけど結構安くなるから、11月末のブラックフライデーまで待てない人たちにはうれしいイベント。

メイ:私もキンドル(KINDLE)を30%オフで購入!前から欲しかった美顔器も買ってしまった。

スティービー:この冬は、例年より家で過ごす時間が長くなりそうだから、ガジェットをいろいろと準備しておくのは必須だね。

ハイエンド化、オーガニック化が進むセックス関連ビジネス

メイ:コロナでみんなが家にこもるようになる前からだと思うけど、セックス関連のビジネスは成長株よね?

スティービー:例えば、ハイエンドなセックスジェルとか?

メイ:そうそう、ちょっと前にはなかったカテゴリーやプロダクトが次々に出てくるし、買いやすい。最近ではホールフーズ マーケット(WHOLE FOODS MARKET)でオーガニックなセックスジェルが買えるし、なんとホールフーズのプライベートレーベルのジェルまである。もはやボディークリームを買うくらいの気軽さ。

レイチェル:パッケージも、ナチュラルなハンドクリーム風のものから、高級なセラムみたいなものまで。敏感肌用とかもあるし。

スティービー:ユニセックスボディーケアブランドの「ネッセサリー(NÉCESSAIRE)」は最近よく見かけるし、ミニマルなデザインが気になっている。大人気の「グロシエ(GLOSSIER)」の創業メンバーのニック・アクセルロド(Nick Axelrod)が、エスティ ローダー(ESTÉE LAUDER)社のマーケティング部に16年在籍したデンマーク人のランディ・クリスチャンセン(Randi Christiansen)とスタートしたブランド。ボディーウォッシュやボディースクラブにまじって、セックスジェルが売られている。

レイチェル:ある意味トレンドでもあるCBD(カンナビジオールの略。大麻の茎や種子から抽出されているが幻覚性や依存性はなく、不安を鎮めるリラックス効果があると医学的にも認められている成分)入りのセックスジェルも人気みたい。ほかにも、ココアバター、オリーブオイル、ピュアココナッツオイルなどでできている、まるでヘルシーなデザートみたいな製品も。

スティービー:パッケージを変えただけかもしれないけれど、セックスブランドの暗いイメージがここ数年で払拭されたのは事実。中身も何が入っているか分からないというところから、すごくクリーンになっている。

メイ:そういえば去年よく分からず泊まったパリのホテル、シナー(SINNER)もセックスがテーマのブティックホテルだった。一見普通のおしゃれホテルなんだけど、ベッドにはセックスピローが置かれ、バスルームにはシャンプーと一緒にセックスジェルが並んでいた。クローゼットの中にはムチまで常備されていたし…。

スティービー:そういえば、テレビドラマシリーズ「セックス・アンド・ザ・シティ(SEX AND THE CITY)」でサマンサが、今はもうない電化製品店ブルックストーン(BROOK STONE)に電動マッサージ器を買いに行くエピソードがあったけど、最初に上映されたのは2002年。当時から、いかにバイブレーターが発展したかがよく分かるエピソードだね。

グウィネスがけん引するセックスポジティブ・ムーブメント

メイ: セックスグッズも美容と健康に役立つなら大歓迎、みたいなオープンな感じは、女優グウィネス・パルトロウ(Gwyneth Paltrow)と、彼女が率いるウェブマガジン兼オンラインショップの「グープ(GOOP))の存在があると言っても過言じゃないよね?

レイチェル:彼女のことを煙たがっている人たち、特に女性が多いようだけど、ウエルネスに関してはオピニオンリーダーであることは確か。

メイ:グウィネス=セックストイのプロモーターという印象さえある。ウエルネスを追求していったら、そこにたどり着いてしまった?

スティービー:そういえば2年前には訴訟があって、「グープ」が14万5000ドル(約1500万円)の罰金を支払ったというのは記憶に新しい。あれも確かセックストイが問題になったような。

レイチェル:セックストイという表現が当てはまるのか微妙だけど、「グープ」のオンラインショップには、“Between The Sheets“というカテゴリーがあって、各種バイブレーターはもちろん、アロマテラピー系のセックスオイル、最近見たらセックスジャーナルからセックスピローまであった。

メイ:訴えられた要因は、卵の形をした翡翠のオブジェ。これを定期的に膣に入れたり出したりするエクササイズをすることで、ホルモンのバランスが整い、生理も定期的になり、尿漏れを防ぐ、と当時は商品説明に書かれていたらしい。まったくのでたらめではなさそうだけど。以前からある骨盤底筋を鍛えるケーゲルエクササイズとかと同じ原理では?

レイチェル:100%天然由来の成分を使用し合成物を含まない香水ブランド「ヘレティック・パルファム(HERETIC PARFUM )」の創業者兼調香師のダグラス・リトルと友人のグウィネスは、衝撃的な名前のキャンドルを共同制作。その名も「ディス・スメルズ・ライク・マイ・ヴァジャイナ(This Smells Like My Vagina)」75ドル(約7800円)。そんな名前とは裏腹に、 ジェラニウム、ベルガモット、杉にダマスクローズなどがアクセントとなる、洗練された温もりのある香りのキャンドル。販売直後に完売し、再販を求める多くの声が上がり今でも販売している。

スティービー:ただ科学的根拠を立証するのは難しい。同じことを言っている会社はたくさんあると思うけど、グウィネスが有名人だから攻撃されたのでは?でも結果的にはネガティブキャンペーンというか、これで彼女はこのジェードエッグをたくさん売ったと思うよ。

レイチェル:ジェードエッグは現在もサイトで販売中。それをチェックしているときに見つけたんだけど、ネックレスにもなるおしゃれなバイブレーターまである。

メイ:「グープ」は、読み物の中にウエルネスのセクションがあり、その中に「フィットネス」「マインドフルネス」「スピリチュアリティー」とかと並んで「セクシャルヘルス」がある。セックスセラピストや科学者が真面目に得意のトピックについて語っていたり。

スティービー:そういえば「ネットフリックス(NETFLIX)」のシリーズ「ザ・グープ・ラボ(THE GOOP LAB)」が今年の頭に放映された。エピソードが6つあって、ヒーリング、若返り、エネルギーなどなど、深く突っ込んでいてどれも興味深かった。

レイチェル:グウィネスを含め、「グープ」のスタッフが体を張って、いろんなプロからアドバイスをもらうという内容。科学的根拠に欠けると一部からは問題視されていたけれど、エネルギーヒーリング、アンチエイジングダイエット、そして女性のセクシャリティーなど、科学的根拠があるなしは別にしても、知りたいトピックばかり。私はけっこう共感したし、実際にこの人に診てもらいたい、みたいな各種ヒーラーたちも登場していた。

メイ:「私たちの快楽」エピソードでは、オーガズムはストレス低下、食欲の調整、睡眠の改善にも効果的、としめていたから。科学的な根拠がなくても、信じる人には効くものは効くわけだし。現代の宗教みたいなものでは。奇妙なトレンドとも言える。

スティービー:セックスポジティブ・ムーブメントのいちばんのポイントは、女性視点で語られ、モノが作られていること。女性の体だから当たり前のことなのに、長い歴史を振り返ると主に男性視点で語られてきたカテゴリーだから。

女性が活躍するフェムテック産業

メイ:「グープ」は、グウィネスと同年代の40代あたりが中心かと思うけど、例えばアーバンアウトフィッターズ(URBAN OUTFITTERS)とか、ジェネレーションZ世代が通うような店にも、低価格帯のカラフルなセックストイが並んでいる。

スティービー:シンプルなデザインで注目されている「ダム(DAME)」は、カテゴリーがセックストイというだけで、おしゃれガジェットのようなプロダクトデザイン。創設者の女性二人は、20代半ばでブランドを立ち上げた。コロンビア大学のマスターを持っているレキサンドラ・ファイン(Alexandra Fine)と、マサチューセッツ工科大学出身のエンジニア、ジャネット・リバーマン(Janet Lieberman)のミッションは、女性と男性の快楽の差を縮めること。

レイチェル:頼もしい!快楽系のことだけではなく、オーガニックの生理用品はもちろん、経血を吸収する下着「シンクス(THINX)」、経血を膣で受けるディスクを作る「フレックス(FLEX)」など、女性の生理事情もすごく変化してきている。

メイ:何十年も、ナプキンかタンポンの選択肢しかなかったカテゴリーなのにね。

スティービー:最近のフェムテック系の広告ビジュアルは洗練されていて、地下鉄の駅全体をハックするステーションドミネーションをやっていて、スタートアップの他のブランドと重なるところがある。

レイチェル:女性のセクシャルウエルネスをサポートするアプリなども急ピッチで浸透している。そういうところでは、必ずと言っていいほど、女性CEOが活躍しているのもポイント。

メイ:フェムテックという分野は最近のものだと思うけど、どれも女性のセクシャリティーを前向きに表現し、ハイデザイン、ハイテクなライフスタイルに合わせているのが特徴的。しかもサステナビリティも考慮されている。

スティービー:時代とともに進化していて、まだまだ伸びしろがあるカテゴリー。

メイ:例えば「クルー(CLUE)」というアプリは、生理と排卵日を教えてくれるだけでなく、自分の体のパターンを割り出してくれるというもの。出産に関連したもの、乳児のいるママ向けの授乳のアプリなども充実しているみたい。ちょっと前までは、紙に書いていたようなことを、全部アプリに管理してもらって分析してもらえるというのは便利。

レイチェル:アプリも便利だけど、自分にとって必要なもの、胸に響くデザインを選びとっていける消費者でいないといけないよね。

メイ/クリエイティブディレクター : ファッションやビューティの広告キャンペーンやブランドコンサルティングを手掛ける。トップクリエイティブエージェンシーで経験を積んだ後、独立。自分のエージェンシーを経営する。仕事で海外、特にアジアに頻繁に足を運ぶ。オフィスから徒歩3分、トライベッカのロフトに暮らす

スティービー/ファッションエディター : アメリカを代表する某ファッション誌の有名編集長のもとでキャリアをスタート。ファッションおよびビューティエディトリアルのディレクションを行うほか、広告キャンペーンにも積極的に参加。10年前にチェルシーを引き上げ、現在はブルックリンのフォートグリーン在住

レイチェル/プロデューサー : PR会社およびキャスティングエージェンシーでの経験が買われ、プロデューサーとしてメイの運営するクリエイティブ・エージェンシーで働くようになって早3年。アーティストがこぞってスタジオを構えるヒップなブルックリンのブシュウィックに暮らし、最新のイベントに繰り出し、ファッション、ビューティ、モデル、セレブゴシップなどさまざまなトレンドを収集するのが日課

The post まだ、あなたが知らないニューヨーク最新トレンド おしゃれセックスビジネスが急成長 appeared first on WWDJAPAN.com.

コンプレックスから化粧品開発、インスタ活用にも独自性 「ミース」ソンミ代表に聞く

“美肌は最高のジュエリー”をコンセプトに、美肌研究家のソンミが2019年3月に立ち上げたスキンケアブランド「ミース(MEETH)」。第1弾製品の炭酸ガスパック「モアリッチパック」はECのみの販売にもかかわらず発売後すぐに在庫が1分で完売、続くローション、洗顔、クレンジング、オイル、限定品なども品切れを繰り返すほどの人気だ。ブランド誕生わずか1年でリブランディング、秋には表参道に実店舗オープン、「モアリッチパック」が台湾の美容大賞である「女人我最大賞」パック部門において大賞受賞など勢いが収まることはない。自身のコンプレックスから「ミース」は誕生したというソンミ代表に、当時の思いやブランドについて聞いた。

WWD:1周年を迎えた「ミース」だが、ブランド立ち上げのきっかけは?

ソンミ・ミース代表兼美肌研究家(以下、ソンミ):スキンケアに興味を持ち出したのは、自分自身のコンプレックスからでした。芸能活動をしていた頃、周りにかわいい人やスタイルの良い人が多く、「この人みたいに足が長ければ」「もっと顔が小さければいいのに」という悩みを持っていたんです。そんな毎日の中で、「じゃあ自分のチャームポイントはなんだろう」と考えてみることにして……。

WWD:それでチャームポイントはなんだと思ったんですか?

ソンミ:そのとき、肌を褒めていただくことが多かったんですね。だったらここを伸ばしていこうと。そこから、スキンケアに興味を持ち出したと思います。20代前半からいろいろ試して“自分がいいと思ったスキンケア”にたどり着きました。例えば、あらゆる肌悩みを改善するためにはどんな成分が効くんだろう、なりたい肌質になるためには何を使ったら良いんだろう……とか。そういうのを5年前からインスタグラムで発信してみることにしたんです。そしたら「同じものを使って肌がきれいになりました」という声を多くいただくことになりました。

WWD:そこから自身のブランド「ミース」に結びつくのですね。

ソンミ:はい。良いモノを発信していたのですがただ、本気で自信を持って発信できるアイテムは片手に収まる程度だったんです。またサロン専売品など購入場所が限られるものだったことから、「自身がいいと思ったスキンケアを作り、誰でも購入できるECで販売しよう」という思いで化粧品を作ることにしたんです。それでできたのが「ミース」です。

WWD:ブランド立ち上げには不安もありましたか?

ソンミ:不安しかなかったですね。借り入れも出資もなく、貯金300万円を握りしめてのスタートでしたから。失うものが何もなかったというより、失うほど何も築き上げられていなかったのかもしれません。たった1人で在庫だけ抱えて始めたので、どんなに時間が掛かっても売り続けないといけないという覚悟はありました。

「自分がほしいもの」目線で製品開発

WWD:「ミース」のこだわりについて教えてください。

ソンミ:化粧品の主成分である水、なるべく出来立てで届けたいという鮮度、そして成分といった中身はもちろん、「すでに流行っているものは出さない」というこだわりがあります。最初に発売した、保湿効果の高い炭酸ガスパック「モアリッチパック」は、まさに自分が「使い続けたいな」と思ったアイテム。私は32歳になりますが、同年代が欲しいものや共感を得られるもの、自分が購入したいものを作るという思いが念頭にあります。会社としてではなく、個人としてどういうものがほしいかという目線で製品開発していますね。

WWD:「ミース」にとってソンミ代表はどんな存在と思っていますか?

ソンミ:私は、映画「アベンジャーズ」に出てくるヒーローたちをまとめる監督のような感覚です。当社の強みはアイテムごとに工場を選定していて、化粧品OEMメーカーにもそれぞれ得意分野があるので、「自分が作りたいアイテムをどこが一番良く作ってくれるか」を調べ、現在は6社の工場と取り引きをしています。まとめる役割ですね。どんなにがんばっても博士や研究員たちには勝てないんですけど、美容論を持った素敵な人たちが周りにたくさんいるので処方も凝り固まらないですし、「ほしかったもの」を作り、あらゆる角度からバージョンアップさせていけることが当社の強みだと思います。

WWD:ブランドデビューからわずか1年でリブランディングを行った理由は?

ソンミ:ブランドを立ち上げたときはブランディングの意味も分かっていなかったですし、
こんなに使用者も増えるとは思っていなかったんです。製品の中身さえ良ければいい!と思っていましたね。しかし、“日本からアジア女性の肌を美しく整えてアジアを代表するブランド”にしたいという思いを持っています。この思いやブランドのあり方、世界観を知ってもらう必要があると考えるようになりました。そこでリブランディングではブランドロゴや製品パッケージデザインを一新。中身だけでなく環境のことも考え、箱の紙には森林循環紙、印刷インクにはベジタブルインクを採用しました。

WWD:9月には表参道に初の実店舗「ミース タッチアップ ラボ」をオープンしました。

ソンミ:多くのお客さまに、実際にブランドの世界観と製品に触れていただける場を提供したいと考え、ショールームを兼ねた実店舗をオープンしました。表参道はファッションだけでなくビューティも敏感な人が集まる場所。ここに店舗を出したいという憧れはありましたね。化粧品の常識を変えていきたいので、店舗で売り上げをたてる売り方はしたくない。また、店舗スタッフには売り上げに縛られず気持ち良い接客を徹底してほしかったのでラボは“製品を売らない”店舗にしました。お客さまにとっては、ショップに入って「いらっしゃいませ」と言われることに緊張してしまうこともありますよね。ラボでは「こんにちは」と挨拶し、製品を試してもらい、お客さまがほしいと思えばECで購入していただければ。ラボはスタッフもお客も気持ちよくいられる空間を目指しました。

ラボスタッフはインスタで募集

WWD:ラボのスタッフはどうやって集めたのか?

ソンミ:当社のスタッフは全てインスタグラムで募集です。2人の募集に400人の応募があったりしました。まずは写真もなくDMのみで審査をしました。履歴書のように決まったフォーマットがないので、文章だけでも人間性が見えやすい。志望動機もさまざま。スタッフはみんな「ミース」が大好きな愛用者のみなので、ラボのスタッフの接客も個人の感想が入っていたりして。フォロワーのみなさんも「自分たちと同じような人がスタッフにいる」という感覚でブランドをより身近に感じているでしょうね。インスタグラムでは、日々どんなふうに開発しているか、工場での製造過程など全てストーリーズでアップしています。12月にはまつ毛美容液の発売を予定していますが、これはインスタグラムを見ている人たちの「作ってほしい」という声から始まった企画。「じゃあ、どんなものがいい?」と質問を投げかけたりコミュニケーションをとったりしながら作り上げたので、見ている人も一緒に作ったという思いがあると思います。リアルタイムの工程を発信すると、「楽しみです!」など反響も多い。今後も、一緒に製品を作り上げている感覚になるような発信は積極的に続けていきます。

WWD:今後の予定は?

ソンミ:肌が変わると人生も変わると思っています。実際に私も肌がきれいだと自分の振る舞いも変化し、そこからチャンスが生まれて人生が変わりました。そして「ミース」に出合って自分が変わったという声もいただきます。この先も、とことん肌作りを応援するブランドとして頑張っていくために、ただ製品を売るだけでなく正しい美容知識も発信していきたいと考えています。きれいになる喜びや人生が変わる喜びを伝え続けていきたいですね。

The post コンプレックスから化粧品開発、インスタ活用にも独自性 「ミース」ソンミ代表に聞く appeared first on WWDJAPAN.com.

人はギャップに萌える。“ちょい悪”男子とぬいぐるみの「ルイ・ヴィトン」 エディターズレター(2020年9月8日配信分)

※この記事は2020年9月8日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

人はギャップに萌える。“ちょい悪”男子とぬいぐるみの「ルイ・ヴィトン」

 「ルイ・ヴィトン」2021年春夏メンズコレクションが9月2日に東京で発表されました。先に上海で発表した内容を東京仕様にアップデートしたショーは、メンズのアーティスティック・ディレクターであるヴァージル・アブローのアイデアとこだわりが詰め込まれていてさすがでした。ヴァージル本人は当然来日せず、他国間で密なオンライン打ち合わせを重ねて作り、打ち上げた花火の色や形までヴァージル自身がこだわったそうです。

 今回、改めてメンズっておもしろいな~と思いました。なぜか?それはギャップがあるからです。メンズ服はそのルーツがミリタリーやスーツなど仕事着、制服、機能服に由来するものが多く、何をどう着るかの規則・ルールがウィメンズ以上にありますよね。そのルールを知ることも面白いですが、同時にそれをどう崩すかも面白い。ウィメンズの服はスカートもパンツも楽しみますが、メンズのスカートはいまだ極少数。それだけメンズの方が、社会・自己規制が強いのだと思います。だからこそ、その規制の中でのアイデアと同時にそれを外したときのギャップが魅力です。

 などとショーを見ながら考えてました。だって、丹精なスーツの袖にはでっかいぬいぐるみが縫い付けられているのですよ!ギャップ萌え、です。

 同時に発表されたデジタルコレクションでは、ナイジェリア出身の英国人詩人カレブ・フェミと三池崇史監督による映像も公開されました。映像にはところどころに三池監督・浅野忠信主演の映画「殺し屋1」がインサートされています。映画に登場する徒党を組むエグくて色っぽい日本の不良と、ランウエイに集団で登場したモデルがオーバーラップして進みます。“徒党を組むってちょっと悪い男子の世界共通のストリートカルチャー(!?)なんだな”と妙に納得します。

 ベースにはあくまで「ルイ・ヴィトン」のラグジュアリーがあり、さらにそこにヴァージルのルーツであるガーナの文化も絡まり、アップサイクルでもある。そんな2重3重に意味がある世界観をまとめあげるのが……ぬいぐるみ!なのです。これでもか!と仕掛けてくるギャップに萌えました。萌えるって言葉、時代遅れかもしれませんが、他に適切な言葉が浮かびません。

 それにしても一番すごいのは、これだけのスケールの屋外ショーであるにもかかわらず、雨天時の “プランB”は用意していなかったらしい、という話です。ショーの数日前に台風が発生して東京へとぐんぐん近づいていましたが、関係者いわく「心配していなかった」そうですから、やはりその度胸が一番すごいかも(笑)。ランウエイを飾ったカラフルな巨大バルーンキャラクター(や富士山)はねぶた祭の山車級の大きさ。夏祭りも花火大会も相次ぎ中止で“ロストサマー”だった日本に最後の最後に夏祭りがやってきた。そんな印象のショーでした。

IN FASHION:パリコレもストリートも。ジュエリーもインテリアも。今押さえておきたい旬なファッション関連ニュースやコラムを「WWDジャパン」編集長がピックアップし、レターを添えてお届けするメールマガジン。日々の取材を通じて今一番気になる話題を週に一度配信します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在9種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

The post 人はギャップに萌える。“ちょい悪”男子とぬいぐるみの「ルイ・ヴィトン」 エディターズレター(2020年9月8日配信分) appeared first on WWDJAPAN.com.

メンズビューティに未来はあるか? 先駆的ユーチューバー2人の本音 

 アクロによるメンズの総合コスメブランド「ファイブイズム バイ スリー(FIVEISM × THREE)」や、「シャネル(CHANEL)」のメンズメイクアップラインがデビューするなど、ビューティ市場ではメンズ領域が盛り上がっているように見える。では、このジャンルの情報を扱うユーチューバーは現状をどう捉えるのか?今後さらに拡大させるには企業やメディアにどんなことが求められるのか?10月5日号の「大解剖 ユーチューバー時代」特集では、ジェンダーレスなメイクで人気を集める車谷セナと、大人もまねできるハウツー動画で支持を得る宮永えいとの2人が、メンズビューティの今と未来を語った。(この記事はWWDジャパン2020年10月5日号からの抜粋です)

WWD:美容に目覚めたきっかけは?

車谷セナ(以下、車谷):14歳の時にルックスをいかにキープするか興味を持ち、美容を始めました。年齢を重ねて魅力を増すことに価値を見いだす人もいれば、若々しい見た目を維持することを目指す人もいますが、僕は後者ですね。

宮永えいと(以下、宮永):僕は最近まで美容にまったく興味がありませんでした。以前は都内の美容室で店長を務めていたんですが、仕事に没頭するあまり「宮永さん、疲れてますね」とお客さんに言われたことがあったんです。しかも2週連続で。「サービス業なのにお客さんに気を使わせちゃマズイ」と思って、ドラッグストアでBBクリームを手に取ったのが美容の始まりでした。あくまで身だしなみとして関心を持ちましたね。

WWD:動画配信を始めた経緯は?

車谷:周りに勧められて始めました。最初は物申す系だったんですが、自分の美容の知識を自由に話した動画が伸びて手応えを感じたので、そこに特化していきました。

宮永:身だしなみとしてどんなアイテムが最適か、どうすれば自然な仕上がりになるかを自分なりに考えていた時、「これって動画にしたら需要あるんじゃないか?」と思ったのがきっかけでした。男性の身だしなみに関する情報って、ビジネス目線の記事はたくさんあるのに、日常でまねできるコンテンツは圧倒的に少ないんです。

WWD:動画作りで意識していることは?

車谷:エゴをなくすこと。常に美容について勉強しているのでどんどん詳しくなるのですが、それをそのまま伝えることが視聴者のためになるかはまた別の話。なるべく短く動画をまとめて、ニーズに刺さる情報を凝縮するように意識しています。あと、ドラッグストアなどで10万〜20万円くらい一気に購入して、徹底的に使い込んでから扱う商品を決めます。

宮永:自分自身がペルソナになりきって視聴者のニーズをくみ取っています。先ほど話したように、本来ズボラな性格で美容大好きな人間ではないから、素の自分でいるとアイデアはまったく湧いてこない。でも、“身だしなみ程度に美容を気にする男子”という明確なペルソナがあるので、それになりきると、自分の気付きがそのまま視聴者のニーズに合致するんです。

“メンズビューティ”という言葉では共感されない

WWD:メンズビューティ市場の現状をどう見て、今後をどう展望する?

車谷:盛り上がりはごく一部だけで、一般のレベルにはまだまだ達していません。その要因は、男性が美容を気にしていると「男らしくない」と後ろ指さすような風潮が残っていることだと思います。例えば男性の新入社員がメイクして出社してきたら、先輩社員は面白おかしくツッコむと思うのですが、これって若い人はそんな意識を持っていないのに上の世代が変わってないから起こるんです。でも、カッコイイ芸能人でさえメイクしてテレビなどに出演するんだから、一般人がメイクするのは何もおかしくないんです。

宮永:分かります!あと、メンズビューティっていう言葉も好きじゃない。必ずしも美を追求したいわけじゃないから“ビューティ”と言われてもピンと来ないし、言葉が独り歩きしてネガティブなイメージを持たれかねません。僕が“身だしなみ”という言葉を意識的に使っているのもこれが理由です。欲を言えば、もっと共感できる言葉を生み出したいです。

WWD:もっと盛り上がる可能性はある?

車谷:あります。僕のチャンネルは、昔は男性の視聴者が1割程度だったのですが、最近は3割近くまで増えていて、ニーズの広がりを実感しています。

宮永:僕もユーチューブを始めて1年半でチャンネル登録者数10万を突破したわけですから、ポテンシャルはすごく高い。あとは発信する側の取り組み次第だと思います。例えば、今でこそヘアに関心があることは当たり前で、ワックスは55%の男性が使っていると言われてますが、20年前はワックスを使う人なんていなかったし、美容室で髪を切る人も少なかった。これだけワックス文化が浸透したのは、雑誌「チョキチョキ」が男性のヘアセットを肯定し、イメージアップさせたのが大きく影響していると思う。男性の美容もポジティブなイメージを浸透させられたら、BBクリームがワックスと同じく55%の使用率に達するのも無理じゃないと思います。

車谷:もっと発信者が増えればメンズビューティの認知拡大に寄与しますよね。メディアはもちろん、僕らみたいに個人で発信する人も少ない。「オレが市場を作るんだ」くらいの意気込みでどんどん参入してくれると、もっと楽しい分野になると思う。

WWD:今後の目標を教えてください。

車谷:いろいろやりたいことはあるのですが、まずは去年立ち上げたブランド「ベラベラ」をもっと成長させたい。美容の意識を高めていって、男性にも手に取ってもらえる商品になればうれしいですね。

宮永:僕は現在“大人男子の身だしなみをアップデート”をテーマにブランドを作っていて、それを成功させるのが直近の目標です。フェイスブックに約1300人が参加するクローズドのコミュニティスペースも運営していて、コンテンツとコミュニケーションの場はすでにある。あとは商品作って、僕の周囲で美容の循環を構築したいです。

The post メンズビューティに未来はあるか? 先駆的ユーチューバー2人の本音  appeared first on WWDJAPAN.com.

メンズビューティに未来はあるか? 先駆的ユーチューバー2人の本音 

 アクロによるメンズの総合コスメブランド「ファイブイズム バイ スリー(FIVEISM × THREE)」や、「シャネル(CHANEL)」のメンズメイクアップラインがデビューするなど、ビューティ市場ではメンズ領域が盛り上がっているように見える。では、このジャンルの情報を扱うユーチューバーは現状をどう捉えるのか?今後さらに拡大させるには企業やメディアにどんなことが求められるのか?10月5日号の「大解剖 ユーチューバー時代」特集では、ジェンダーレスなメイクで人気を集める車谷セナと、大人もまねできるハウツー動画で支持を得る宮永えいとの2人が、メンズビューティの今と未来を語った。(この記事はWWDジャパン2020年10月5日号からの抜粋です)

WWD:美容に目覚めたきっかけは?

車谷セナ(以下、車谷):14歳の時にルックスをいかにキープするか興味を持ち、美容を始めました。年齢を重ねて魅力を増すことに価値を見いだす人もいれば、若々しい見た目を維持することを目指す人もいますが、僕は後者ですね。

宮永えいと(以下、宮永):僕は最近まで美容にまったく興味がありませんでした。以前は都内の美容室で店長を務めていたんですが、仕事に没頭するあまり「宮永さん、疲れてますね」とお客さんに言われたことがあったんです。しかも2週連続で。「サービス業なのにお客さんに気を使わせちゃマズイ」と思って、ドラッグストアでBBクリームを手に取ったのが美容の始まりでした。あくまで身だしなみとして関心を持ちましたね。

WWD:動画配信を始めた経緯は?

車谷:周りに勧められて始めました。最初は物申す系だったんですが、自分の美容の知識を自由に話した動画が伸びて手応えを感じたので、そこに特化していきました。

宮永:身だしなみとしてどんなアイテムが最適か、どうすれば自然な仕上がりになるかを自分なりに考えていた時、「これって動画にしたら需要あるんじゃないか?」と思ったのがきっかけでした。男性の身だしなみに関する情報って、ビジネス目線の記事はたくさんあるのに、日常でまねできるコンテンツは圧倒的に少ないんです。

WWD:動画作りで意識していることは?

車谷:エゴをなくすこと。常に美容について勉強しているのでどんどん詳しくなるのですが、それをそのまま伝えることが視聴者のためになるかはまた別の話。なるべく短く動画をまとめて、ニーズに刺さる情報を凝縮するように意識しています。あと、ドラッグストアなどで10万〜20万円くらい一気に購入して、徹底的に使い込んでから扱う商品を決めます。

宮永:自分自身がペルソナになりきって視聴者のニーズをくみ取っています。先ほど話したように、本来ズボラな性格で美容大好きな人間ではないから、素の自分でいるとアイデアはまったく湧いてこない。でも、“身だしなみ程度に美容を気にする男子”という明確なペルソナがあるので、それになりきると、自分の気付きがそのまま視聴者のニーズに合致するんです。

“メンズビューティ”という言葉では共感されない

WWD:メンズビューティ市場の現状をどう見て、今後をどう展望する?

車谷:盛り上がりはごく一部だけで、一般のレベルにはまだまだ達していません。その要因は、男性が美容を気にしていると「男らしくない」と後ろ指さすような風潮が残っていることだと思います。例えば男性の新入社員がメイクして出社してきたら、先輩社員は面白おかしくツッコむと思うのですが、これって若い人はそんな意識を持っていないのに上の世代が変わってないから起こるんです。でも、カッコイイ芸能人でさえメイクしてテレビなどに出演するんだから、一般人がメイクするのは何もおかしくないんです。

宮永:分かります!あと、メンズビューティっていう言葉も好きじゃない。必ずしも美を追求したいわけじゃないから“ビューティ”と言われてもピンと来ないし、言葉が独り歩きしてネガティブなイメージを持たれかねません。僕が“身だしなみ”という言葉を意識的に使っているのもこれが理由です。欲を言えば、もっと共感できる言葉を生み出したいです。

WWD:もっと盛り上がる可能性はある?

車谷:あります。僕のチャンネルは、昔は男性の視聴者が1割程度だったのですが、最近は3割近くまで増えていて、ニーズの広がりを実感しています。

宮永:僕もユーチューブを始めて1年半でチャンネル登録者数10万を突破したわけですから、ポテンシャルはすごく高い。あとは発信する側の取り組み次第だと思います。例えば、今でこそヘアに関心があることは当たり前で、ワックスは55%の男性が使っていると言われてますが、20年前はワックスを使う人なんていなかったし、美容室で髪を切る人も少なかった。これだけワックス文化が浸透したのは、雑誌「チョキチョキ」が男性のヘアセットを肯定し、イメージアップさせたのが大きく影響していると思う。男性の美容もポジティブなイメージを浸透させられたら、BBクリームがワックスと同じく55%の使用率に達するのも無理じゃないと思います。

車谷:もっと発信者が増えればメンズビューティの認知拡大に寄与しますよね。メディアはもちろん、僕らみたいに個人で発信する人も少ない。「オレが市場を作るんだ」くらいの意気込みでどんどん参入してくれると、もっと楽しい分野になると思う。

WWD:今後の目標を教えてください。

車谷:いろいろやりたいことはあるのですが、まずは去年立ち上げたブランド「ベラベラ」をもっと成長させたい。美容の意識を高めていって、男性にも手に取ってもらえる商品になればうれしいですね。

宮永:僕は現在“大人男子の身だしなみをアップデート”をテーマにブランドを作っていて、それを成功させるのが直近の目標です。フェイスブックに約1300人が参加するクローズドのコミュニティスペースも運営していて、コンテンツとコミュニケーションの場はすでにある。あとは商品作って、僕の周囲で美容の循環を構築したいです。

The post メンズビューティに未来はあるか? 先駆的ユーチューバー2人の本音  appeared first on WWDJAPAN.com.

ヘパリン類似物質配合製品が続々誕生 King & Prince永瀬廉を起用したCMも

 ここのところ、ヘパリン類似物質を配合した商品が続々登場している。医療機関で処方される医療用保湿剤「ヒルドイド(成分名:ヘパリン類似物質)」を美容目的で使う人が急増し、社会問題になったことが発端ではあるが、乾燥が気になるこれからの季節、手軽に手に入る最適なアイテムとして人気を集めている。

 ここでは市販されている5ブランドを紹介。人気タレントをCMで起用するブランドも今、話題だ。冬に向けて、乾燥肌やマスク荒れ、さらには肌の潤いを感じたい人は必見。

マツモトキヨシ「ヒルメナイド」

 「ヒルドイド」の利用問題にいち早く動きを見せたマツモトキヨシホールディングスは、18年9月、ヘパリン類似物質を配合した第2類医薬品の皮膚疾患薬「ヒルメナイド油性クリーム」(50g、1186円)を、プライベートブランド「マツキヨ(MATSUKIYO)」から発売した。「今後の医療費圧迫の推移によっては、処方制限によりヘパリン類似物質含有クリームを本当に必要とする患者さんの不利益になってしまうことが危惧される」と、類似クリームの開発に着手。同商品は発売と共にSNSで話題になり、発売後3日で供給が困難になったほど注目を集め、その後も買い求める人が後を絶たなかった。

 翌年の19年6月には、べたつきを気にせず夏でも使いやすい乳液タイプの「ヒルメナイドローション」(第2類医薬品。50g、1186円)、20年9月にはさっぱりタイプの「ヒルメナイドローションライト」(第2類医薬品。100g、1980円)が“ヒルメナイド”シリーズに仲間入りした。今後もラインアップを拡充していく予定だ。

大正製薬「アドライズ」

 大正製薬からは、保湿と美白を同時にアプローチするスキンケアブランド「アドライズ(ADRYS)」が19年5月にデビューした。製薬会社として長年の研究から培ったノウハウやデータ、そして20年前から着目していたヘパリン類似物質による“保湿”とプラセンタによる“美白”にこだわったブランドとして誕生した。

 同ブランドの洗浄シリーズは、肌を優しく洗い上げるアミノ酸を配合しており、クレンジングミルク、洗顔フォーム、洗顔せっけんをそろえる。洗顔後のスキンケアにはアルコールやオイルフリーの薬用化粧水と薬用クリームをラインアップする。価格帯は1000〜7500円。

健栄製薬「ヒルマイルド」

 アルコール消毒薬などを展開する健栄製薬は、20年6月に「ヒルマイルド」の販売をスタートした。ヘパリン類似物質を0.3%配合した第2類医薬品で、クリームとローション(各1550円)をラインアップする。CMにはジャニーズ事務所のアイドルグループ、King & Princeの永瀬廉を起用。9月に放送されたTVCMはSNSでも話題を集めた。

コーセーマルホファーマ
「カルテ ヒルドイド」

 コーセーとマルホの合弁会社であるコーセーマルホファーマからは20年9月、高保湿スキンケア「カルテ ヒルドイド」(全6品、500〜2700円)がデビューした。「カルテ ヒルドイド」ラインは、“肌あれしやすい乾燥肌も使うたび潤い向上”をコンセプトに、成分を補うだけではなく肌が自ら潤いを作り角層内に溜めておける肌を目指している。

 化粧水、乳液、クリーム、オールインワンゲルをそろえる同ラインの特徴は、1.肌の保水に大切な“潤い構造”に働きかける、マルホが保有する保水有効成分「ヘパリン類似物質HD」を全品に配合。2.ナノカプセル化技術を応用した潤い浸透カプセルや、肌に水分を抱え込む製剤技術などコーセーの技術と研究を凝縮した全方位アプローチの処方。3.肌に優しい使い心地。なお、マルホが医薬部外品向けに保水有効成分を他社に供給するのは初。今後は、乾燥ケアやニキビケア、シミケア、エイジングケアの対応に取り組む予定だ。

アンファー「ナチュラブルプラス」

 アンファーは20年9月、新ブランド「ナチュラブルプラス」を立ち上げ、第一弾製品として日本初の泡で出てくるヘパリン類似物質配合OTC医薬品(処方せん不要で購入できる医薬品)「ナチュラブルプラス ヘパフォーム」(180g、4500円)をブランドサイト「アンファーストア」で販売を開始した。同製品は乾燥による肌トラブルケアに最適な乾燥性皮膚疾患治療薬で、赤ちゃんから大人まで幅広い世代に使用できる。

The post ヘパリン類似物質配合製品が続々誕生 King & Prince永瀬廉を起用したCMも appeared first on WWDJAPAN.com.

メディコム・トイの「アカシック レコーズ」に70以上のブランドなどが参加 赤司社長の“超人的”なコラボ力に迫る

 メディコム・トイ(MEDICOM TOY)は11月3日まで、ジュンが運営する渋谷パルコ1階の「ポップ バイ ジュン(POP BY JUN)」で、ポップアップイベント「アカシック レコーズ(AKASHIC RECORDS)」を開催中だ。同イベントは、メディコム・トイの赤司竜彦社長が自ら全面的にキュレーション。ギャラリーに見立てた店内には、「ベアブリック(BE@RBRICK)」をはじめとするトイやファッションアイテム、雑貨、人の身長ほどある大型のフィギュアなど、多種多様なものが並ぶ。それもそのはずで、今回のイベントには総勢70近いアーティストやブランド、コンテンツが参加している。キービジュアルに書き示した「超人的な分裂家さ」という言葉が表すように、まさに“超人的”なコラボレーションを成し遂げる赤司社長の原動力とは?

WWD:なぜ70以上のブランドやアーティスト、コンテンツなどとコラボしようと思ったのか?

赤司竜彦メディコム・トイ社長(以下、赤司):ジュンさんからお話をいただき、やるならきちんと成功させたいという気持ちがあった。見せたいものを見せながら数字も作らなければならないというのがスタートの段階にあって、その数字の裏付けを一つのメガコンテンツで作るより、小さな数字を積み重ねていこうと思った。それで、自分自身が懇意にしている作家やカルチャーをリコメンドすることにした。

WWD:最初に思い浮かんだアイテムは?

赤司:最初に作りたいなと思ったのは、「ナグナグナグ(NAGNAGNAG)」の作品だ。彼はトイカルチャーにおいて、バンクシー(Banksy)の名前が広く知られるずっと前からバンクシーのような活動をしているアーティストで、表には一切出てこない。ただし、世界中のトイをベースにしたアーティストで、彼の影響を受けていない人は恐らくいないだろうと思う。幸いなことにこれまでもさまざまなプロジェクトをご一緒させてもらっている。

WWD:「ナグナグナグ」の作品は180cmほどもある大型のもの。280万円の価格についてはどう思う?

赤司:安いと思う。スタッフとももう少し高く値付けしてもよかったかな?と話したばかり。彼の作品は小さなサイズ(20~30cmほど)でも、セカンドマーケットで50~60万円はするので。

WWD:メディコム・トイの商品はセカンドマーケットでも定価以上で取引されているものが非常に多いが、セカンドマーケットを意識している?

赤司:結果的にそうなっているのは認識しているが、セカンドマーケットの人気を基準にすることはない。どういったモノがマーケットに求められているのかの物差しにはなるかも知れないが、だからといってたくさん作るということでもないので。

WWD:他に思い入れのある作品は?

赤司:実際にはどれも思い入れがあるが、今回のイベント全体の20%を占めるのがアン・ヴァレリー・デュポン(Anne Valerie Dupond)とのプロジェクト。アンとも繰り返しコミュニケーションをとったが、彼女が率先していろんなアイデアをくれたので、ありがたかった。

WWD:店内はギャラリーのような雰囲気がある。内装については?

赤司:本当は「ツイン・ピークス」のように床を真っ赤にして、カーテンを黒にしようと考えていた。でも最初の構想と予算がマッチせず、結果的に過度な演出ができなかったので、最終的には作品が生きるようなナチュラルな内装に振った。スタッフは「ツイン・ピークス」の執事をイメージしていたので、執事だけが残ってしまったという感じ(笑)。

WWD:店内に置いているものは全て売り物?

赤司:はい。基本的に並べているものは全て売りたいという気持ちがある。自分が買い物をしているときに欲しいなと思っても、“NOT FOR SALE”と書かれているととても残念で、そういうのにフラストレーションが溜まっていたから。だから非売品は作らない。いいモノが出来上がったら、誰かの手に渡って欲しいという気持ちが前提にあって、“売らないけど見せたい”という気持ちは全くない。売らないモノは見せないというのを基本にしている。

WWD:今回は「アモク(AMOK)」や「キディル(KIDDIL)」「ベッドフォード(BED J.W. FORD)」などファッションブランドとのコラボも多い。新興ブランドが目立つが、新しい情報はどのように仕入れている?

赤司:コラボレーションしたブランドは普段から私が実際に着ているブランドで、今回のイベントのことを話すととても面白がってくれた。新しいブランドは、常にチェックの対象というか、“オッ”と思うとすぐにコンタクトを取って、「何かしようよ」というパターンが多い。それはブランドもそうだし、アーティストや作家も。「ルームス(rooms)」とか「プロジェクト東京」とか「デザインフェスタ」とか、ほとんどの合同展示会やアートイベントに行っているし、そういうところで出合うことも多い。すごく感覚的だと思う。

WWD:有名無名も関係ない?

赤司:全く関係ない。今回の「アカシック レコーズ」のキービジュアルを描いてくれた茶獣君もまだ20代前半なので。彼のイラストをキービジュアルに使った理由も常に新しい才能と巡り合いたいということの裏返しだったりする。一番知られていない人をここで見せたかった。最高齢が82歳のつげ義春さんだったり、大御所もたくさん協力してくださっているので、「なにこれ?」と思った人もいると思うけど、実はすべての作品が並列の中にあって、その中から自分が気に入ったモノや感覚的に引っかかったモノを選んでほしいという思いだったりもする。ほぼ全世代のいろんなクリエイターやコンテンツを一堂に会せたのはよかった。

WWD:コラボレーションしようと思うときの良し悪しは何か?

赤司:全て感覚に過ぎない。悪いという思いもなく、面白いか何も感じないか。何も感じないモノはやっちゃいけないと思っているので。それは私一人のメガネじゃなくて、会社の中でもいろんな感性を持っている者がいるし、私的には「それどうなの?」と思っても「いやこれがスゲー面白いんだ」って言われると「じゃあやってみる?」という感じ。

WWD:イベントの狙いは?

赤司:開催させてもらうのが渋谷パルコであることもあり、私自身が過去の渋谷パルコからたくさんの影響を受けていて、たくさんのデザイナーや作家のクリエイティブを見てきた。当時、種だった私が発芽して今がある。それと同じように「アカシック レコーズ」が若い子に影響を与えられるようなイベントになればいいと思う。

The post メディコム・トイの「アカシック レコーズ」に70以上のブランドなどが参加 赤司社長の“超人的”なコラボ力に迫る appeared first on WWDJAPAN.com.

メディコム・トイの「アカシック レコーズ」に70以上のブランドなどが参加 赤司社長の“超人的”なコラボ力に迫る

 メディコム・トイ(MEDICOM TOY)は11月3日まで、ジュンが運営する渋谷パルコ1階の「ポップ バイ ジュン(POP BY JUN)」で、ポップアップイベント「アカシック レコーズ(AKASHIC RECORDS)」を開催中だ。同イベントは、メディコム・トイの赤司竜彦社長が自ら全面的にキュレーション。ギャラリーに見立てた店内には、「ベアブリック(BE@RBRICK)」をはじめとするトイやファッションアイテム、雑貨、人の身長ほどある大型のフィギュアなど、多種多様なものが並ぶ。それもそのはずで、今回のイベントには総勢70近いアーティストやブランド、コンテンツが参加している。キービジュアルに書き示した「超人的な分裂家さ」という言葉が表すように、まさに“超人的”なコラボレーションを成し遂げる赤司社長の原動力とは?

WWD:なぜ70以上のブランドやアーティスト、コンテンツなどとコラボしようと思ったのか?

赤司竜彦メディコム・トイ社長(以下、赤司):ジュンさんからお話をいただき、やるならきちんと成功させたいという気持ちがあった。見せたいものを見せながら数字も作らなければならないというのがスタートの段階にあって、その数字の裏付けを一つのメガコンテンツで作るより、小さな数字を積み重ねていこうと思った。それで、自分自身が懇意にしている作家やカルチャーをリコメンドすることにした。

WWD:最初に思い浮かんだアイテムは?

赤司:最初に作りたいなと思ったのは、「ナグナグナグ(NAGNAGNAG)」の作品だ。彼はトイカルチャーにおいて、バンクシー(Banksy)の名前が広く知られるずっと前からバンクシーのような活動をしているアーティストで、表には一切出てこない。ただし、世界中のトイをベースにしたアーティストで、彼の影響を受けていない人は恐らくいないだろうと思う。幸いなことにこれまでもさまざまなプロジェクトをご一緒させてもらっている。

WWD:「ナグナグナグ」の作品は180cmほどもある大型のもの。280万円の価格についてはどう思う?

赤司:安いと思う。スタッフとももう少し高く値付けしてもよかったかな?と話したばかり。彼の作品は小さなサイズ(20~30cmほど)でも、セカンドマーケットで50~60万円はするので。

WWD:メディコム・トイの商品はセカンドマーケットでも定価以上で取引されているものが非常に多いが、セカンドマーケットを意識している?

赤司:結果的にそうなっているのは認識しているが、セカンドマーケットの人気を基準にすることはない。どういったモノがマーケットに求められているのかの物差しにはなるかも知れないが、だからといってたくさん作るということでもないので。

WWD:他に思い入れのある作品は?

赤司:実際にはどれも思い入れがあるが、今回のイベント全体の20%を占めるのがアン・ヴァレリー・デュポン(Anne Valerie Dupond)とのプロジェクト。アンとも繰り返しコミュニケーションをとったが、彼女が率先していろんなアイデアをくれたので、ありがたかった。

WWD:店内はギャラリーのような雰囲気がある。内装については?

赤司:本当は「ツイン・ピークス」のように床を真っ赤にして、カーテンを黒にしようと考えていた。でも最初の構想と予算がマッチせず、結果的に過度な演出ができなかったので、最終的には作品が生きるようなナチュラルな内装に振った。スタッフは「ツイン・ピークス」の執事をイメージしていたので、執事だけが残ってしまったという感じ(笑)。

WWD:店内に置いているものは全て売り物?

赤司:はい。基本的に並べているものは全て売りたいという気持ちがある。自分が買い物をしているときに欲しいなと思っても、“NOT FOR SALE”と書かれているととても残念で、そういうのにフラストレーションが溜まっていたから。だから非売品は作らない。いいモノが出来上がったら、誰かの手に渡って欲しいという気持ちが前提にあって、“売らないけど見せたい”という気持ちは全くない。売らないモノは見せないというのを基本にしている。

WWD:今回は「アモク(AMOK)」や「キディル(KIDDIL)」「ベッドフォード(BED J.W. FORD)」などファッションブランドとのコラボも多い。新興ブランドが目立つが、新しい情報はどのように仕入れている?

赤司:コラボレーションしたブランドは普段から私が実際に着ているブランドで、今回のイベントのことを話すととても面白がってくれた。新しいブランドは、常にチェックの対象というか、“オッ”と思うとすぐにコンタクトを取って、「何かしようよ」というパターンが多い。それはブランドもそうだし、アーティストや作家も。「ルームス(rooms)」とか「プロジェクト東京」とか「デザインフェスタ」とか、ほとんどの合同展示会やアートイベントに行っているし、そういうところで出合うことも多い。すごく感覚的だと思う。

WWD:有名無名も関係ない?

赤司:全く関係ない。今回の「アカシック レコーズ」のキービジュアルを描いてくれた茶獣君もまだ20代前半なので。彼のイラストをキービジュアルに使った理由も常に新しい才能と巡り合いたいということの裏返しだったりする。一番知られていない人をここで見せたかった。最高齢が82歳のつげ義春さんだったり、大御所もたくさん協力してくださっているので、「なにこれ?」と思った人もいると思うけど、実はすべての作品が並列の中にあって、その中から自分が気に入ったモノや感覚的に引っかかったモノを選んでほしいという思いだったりもする。ほぼ全世代のいろんなクリエイターやコンテンツを一堂に会せたのはよかった。

WWD:コラボレーションしようと思うときの良し悪しは何か?

赤司:全て感覚に過ぎない。悪いという思いもなく、面白いか何も感じないか。何も感じないモノはやっちゃいけないと思っているので。それは私一人のメガネじゃなくて、会社の中でもいろんな感性を持っている者がいるし、私的には「それどうなの?」と思っても「いやこれがスゲー面白いんだ」って言われると「じゃあやってみる?」という感じ。

WWD:イベントの狙いは?

赤司:開催させてもらうのが渋谷パルコであることもあり、私自身が過去の渋谷パルコからたくさんの影響を受けていて、たくさんのデザイナーや作家のクリエイティブを見てきた。当時、種だった私が発芽して今がある。それと同じように「アカシック レコーズ」が若い子に影響を与えられるようなイベントになればいいと思う。

The post メディコム・トイの「アカシック レコーズ」に70以上のブランドなどが参加 赤司社長の“超人的”なコラボ力に迫る appeared first on WWDJAPAN.com.

「カルティエ 」がジュエリーイベントを開催 離れた顧客にはデジタル接客で対応

 「カルティエ(CARTIER)」は10月、東京のホテル「エディション(EDITION)」でジュエリーイベント「カルティエ サロン(以下、サロン)」を開催した。同ブランドは2015年からハイジュエリーイベントを東京で開催し、世界中から顧客が来日。今年は新型コロナウイルス感染拡大により日本国内のイベントとしてハイジュエリーはもちろんのことファインジュエリーやウオッチもそろえ、より幅広い層にアピールするイベントを開催した。

 会場は3つのエリアから構成され、エントランスにはアイコンの“パンテール”を中心にしたハイジュエリーや新作コレクションの“シュル ナチュレル”などを展示。その他、ダイヤモンドやカラーストーンを使用したジュエリーやウオッチの数々を紹介した。また、メゾンの170年を超える歴史に刻まれたスタイルとクリエイションを物語る“カルティエ コレクション”や過去に生み出したクリエイションを買い戻して販売する“カルティエ トラディション”も特別に展示された。“カルティエ コレクション”の12点は通常、世界でも有数の美術館や博物館などで開催される展覧会でしか見ることができない貴重な作品ばかりだ。その中には、1914年に制作されたメゾンにとって初の“パンテール”モチーフを採用したウオッチや具象化された“パンテール”を施したバニティケースなど、「カルティエ」における”パンテール”の軌跡が読み取れるものも。アートギャラリーのような空間で顧客はゆったりとジュエリーやウオッチ、過去の名品を見て回れるようになっている。

 「カルティエ」は日本市場でハイジュエリーを強化しており、国内5店舗で計300点の在庫を常時キープしている。今回のイベントではハイジュエリーを中心とした500点以上のジュエリーやウオッチが集結。全国から顧客を招待し、各顧客にアテンドできるよう商談ルームも多く設置した。奥にはラウンジスペースがあり軽食やドリンクのサービスを提供。サロンやラウンジの入り口では赤い制服に身を包んだお馴染みのページボーイが「ボンジュール、マダム」と挨拶してくれる。以前は国立博物館などで大々的にイベントを開催していたが、今年は日本に初上陸したブティックホテルを会場に選ぶことで、特別感をキープしつつも、より軽やかな雰囲気のイベントになった。新型コロナウイルスの影響もあり、同イベントに来場できなかった顧客に向けてデジタル商談も実施。夏に実施したウオッチのデジタル商談会をさらに進化させ、専属のカメラマンを起用して、モデルに着用させることでボリューム感や着用イメージを伝えやすく工夫した。コロナの影響で多くのジュエラーがデジタル接客を始めており、どんどん進化している。

 通常、多くのジュエラーが新作ハイジュエリーを月オートクチュール・ファッションウイーク中に発表するが、今年はコロナの影響で発表イベントを行ったジュエラーは少なかった。しかし、10月に入ってから東京で各ジュエラーのハイジュエリーイベントが開催されている。富裕層の多くにはショッピングや旅行などの娯楽の年間予算がある。コロナで海外旅行も海外でのショッピングもできないため、その予算を高額なジュエリーやウオッチ、車などに充てる富裕層が増えている。日本市場におけるハイジュエリーへの需要の高まりはまだまだ続きそうだ。

The post 「カルティエ 」がジュエリーイベントを開催 離れた顧客にはデジタル接客で対応 appeared first on WWDJAPAN.com.

「カルティエ 」がジュエリーイベントを開催 離れた顧客にはデジタル接客で対応

 「カルティエ(CARTIER)」は10月、東京のホテル「エディション(EDITION)」でジュエリーイベント「カルティエ サロン(以下、サロン)」を開催した。同ブランドは2015年からハイジュエリーイベントを東京で開催し、世界中から顧客が来日。今年は新型コロナウイルス感染拡大により日本国内のイベントとしてハイジュエリーはもちろんのことファインジュエリーやウオッチもそろえ、より幅広い層にアピールするイベントを開催した。

 会場は3つのエリアから構成され、エントランスにはアイコンの“パンテール”を中心にしたハイジュエリーや新作コレクションの“シュル ナチュレル”などを展示。その他、ダイヤモンドやカラーストーンを使用したジュエリーやウオッチの数々を紹介した。また、メゾンの170年を超える歴史に刻まれたスタイルとクリエイションを物語る“カルティエ コレクション”や過去に生み出したクリエイションを買い戻して販売する“カルティエ トラディション”も特別に展示された。“カルティエ コレクション”の12点は通常、世界でも有数の美術館や博物館などで開催される展覧会でしか見ることができない貴重な作品ばかりだ。その中には、1914年に制作されたメゾンにとって初の“パンテール”モチーフを採用したウオッチや具象化された“パンテール”を施したバニティケースなど、「カルティエ」における”パンテール”の軌跡が読み取れるものも。アートギャラリーのような空間で顧客はゆったりとジュエリーやウオッチ、過去の名品を見て回れるようになっている。

 「カルティエ」は日本市場でハイジュエリーを強化しており、国内5店舗で計300点の在庫を常時キープしている。今回のイベントではハイジュエリーを中心とした500点以上のジュエリーやウオッチが集結。全国から顧客を招待し、各顧客にアテンドできるよう商談ルームも多く設置した。奥にはラウンジスペースがあり軽食やドリンクのサービスを提供。サロンやラウンジの入り口では赤い制服に身を包んだお馴染みのページボーイが「ボンジュール、マダム」と挨拶してくれる。以前は国立博物館などで大々的にイベントを開催していたが、今年は日本に初上陸したブティックホテルを会場に選ぶことで、特別感をキープしつつも、より軽やかな雰囲気のイベントになった。新型コロナウイルスの影響もあり、同イベントに来場できなかった顧客に向けてデジタル商談も実施。夏に実施したウオッチのデジタル商談会をさらに進化させ、専属のカメラマンを起用して、モデルに着用させることでボリューム感や着用イメージを伝えやすく工夫した。コロナの影響で多くのジュエラーがデジタル接客を始めており、どんどん進化している。

 通常、多くのジュエラーが新作ハイジュエリーを月オートクチュール・ファッションウイーク中に発表するが、今年はコロナの影響で発表イベントを行ったジュエラーは少なかった。しかし、10月に入ってから東京で各ジュエラーのハイジュエリーイベントが開催されている。富裕層の多くにはショッピングや旅行などの娯楽の年間予算がある。コロナで海外旅行も海外でのショッピングもできないため、その予算を高額なジュエリーやウオッチ、車などに充てる富裕層が増えている。日本市場におけるハイジュエリーへの需要の高まりはまだまだ続きそうだ。

The post 「カルティエ 」がジュエリーイベントを開催 離れた顧客にはデジタル接客で対応 appeared first on WWDJAPAN.com.

赤札のある9月 エディターズレター(2020年9月9日配信分)

※この記事は2020年9月9日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

赤札のある9月

 例年であれば8月の盆明けくらいからセールがほぼなくなり、9月に入れば正価(プロパー)の秋冬商品に切り替わるのが、衣料品売り場のカレンダーでした。しかし今年は全く様相が違います。

 日本橋、新宿、池袋などの百貨店を見て回りました。さすがにメインのディスプレーやマネキンは秋物の服をまとっていますが、至るところで「SALE!」「再値下げ」といった赤札が目立ちます。ご存知の通り、コロナ禍によって春夏の服が大量に余っており、これらの処分のために9月でもセールを継続せざるをえない状況になっているわけです。

 百貨店は4月から5月のほぼ2カ月近く休業を余儀なくされ、その後も消費が回復しませんでした。背に腹は変えられないというのが百貨店およびアパレル企業の現状でしょう。

 さらに追い討ちをかけたのが、コロナ以前から進められていたアパレル企業の事業整理です。オンワードホールディングスが昨年から今年にかけて国内外で約1400店を閉めるのをはじめ、三陽商会、ワールド、TSIホールディングスといった大手が構造改革を発表しました。経営破綻したレナウンは「ダーバン」「アクアスキュータム」といった主力事業を小泉グループに売却しましたが、それでも店舗数は大幅に縮小せざるをえません。平時なら新しいブランドで埋められたかもしれません。しかし消費回復の見通しが立たない中、それも望めない。その空いたスペースが特設のセール売り場になっていたりします。

 小田急百貨店新宿店では、衣料品の在庫処分を手がけるshoichi(大阪)が1カ月間の期間限定でオフプライスストアを開いていました。「オフプライスストア」とは、アパレル企業の余剰在庫を安く販売する業態で米国では巨大なマーケットを構築しています。日本では商習慣の違いや、百貨店とアパレルとの長年の関係性もあって、発達していませんでした。昨年あたりから郊外立地でちらほら増え出しましたが、新宿のど真ん中の、しかも百貨店の6階婦人服の中で期間限定とはいえオフプライスストアが営業することは衝撃的です。半年前なら考えられないことだったと思います。

 コロナによって新常態(ニューノーマル)と呼ばれる新しい生活スタイルや働き方が広がっています。とはいえ、赤札が常態化する光景は望ましいものではありません。困難なこの時期を乗り越えて、適正な価格で商品が動く日が来てほしいものです。

MARKET VIEW:ファッション市場で日々発信されるホットなニュースを、「WWDジャパン」のビジネス担当記者がコンパクトに解説するメールマガジン。ニュースを読み解くヒントを提供します。

エディターズレターとは?
「WWDジャパン」と「WWDビューティ」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在7種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。

The post 赤札のある9月 エディターズレター(2020年9月9日配信分) appeared first on WWDJAPAN.com.

ファッション記者の「ビューティのこと知らない」をビューティ記者が回答 美容家の定義や韓国コスメが人気の理由とは

 11月2日号の「WWDジャパン」では、ファッション業界を取材する記者からビューティに関する疑問を募集し、ビューティ記者が回答する「往復書簡」を実施した。ビューティ業界を熟知する記者でもハッとするような新鮮な疑問や質問が多く集まった。その中でもファッションとは切り離せないヘアメイクアップアーティストについてや、アルビオンの看板製品“スキコン”が売れ続ける理由などエンドユーザーに知ってほしい質問・回答をお届けする。

Q.1:アルビオンの“スキコン(薬用スキンコンディショナー)”は何故ずっと売れている?年間の売上高は?

A.1:国産ハトムギエキスなどの潤い成分が肌荒れや乾燥を防ぐなど肌実感の高い点が支持され続けている理由の一つだろう。3世代で使用している人も少なくないという。1974年の誕生から46年経った今でも、毎年新客が20%ほどいて20代から幅広い層まで支持を集める。外国人からも人気で、特に中国では“健康水”と呼ばれているほど製品への信頼度は高い。2017年ごろには年間300万本を生産しており、年間150億円以上(小売ベース)売り上げているのではないかと予測する。

Q.2:美容家の定義って何?どんな人がいるの?

A.2:「WWDビューティ」2018年10月18日号で「美容家とは何者か?」という特集を掲載したが、明確な定義づけがないのが現状だ。美容家と語る大半が、化粧品会社で長年勤務していたりファッション誌や美容誌のビューティ担当者だったりと、肌の構造や化粧品の知識が豊富であることが前提にある。代表的な人物としては、80歳を過ぎて今なお活躍されている小林照子さん(娘の小林ひろ美さんも美容家)や今年亡くなられた佐伯チズさん。最近目にする機会が多いのはドラマにも出演している神崎恵さんや、アイラッシュサロンの経営も行う石井美保さんなどがいる。美容家のほか、美容ジャーナリスト、美容愛好家、美容編集者、美容ディレクターなどといった肩書きもあり、どういった肩書きかは本人が決めている。

Q.3:今注目のヘアメイクアップアーティストは?

A.3:取材で多くの美容師と話をする中で名前が上がる、また日々ビューティ関連の広告を見ていて注目しているのは根本亜沙美ヘアメイクアップアーティスト。アートディレクターの吉田ユニとタッグを組むことも多く、刷新した「エテュセ(ETTUSAIS)」のビジュアルは記憶に新しい。

 また資生堂のメイクアップアカデミー&スタジオ「サブファ(SABFA)」の校長も務めた原田忠資生堂トップヘアメイクアーティストは、オタクとしても有名で、人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」や「テラフォーマーズ」などのキャラクターをヘアメイクで再現して話題に。最近では「ユニクロ(UNIQLO)」のグローバル旗艦店「ユニクロ トウキョウ」とコラボしてTシャツを作ったり、店頭のインスタレーションのマネキンのヘアを手掛けるなど自由なクリエイションが注目されている。

Q.4:なぜ男性を広告に起用してもその人自身がメイクしないの?

A.4:そもそもは男性タレントを起用することで、その男性タレントの女性ファンに買ってもらおうというのが狙い。なので、そのタレントがメイクをするというよりは、商品を使ったら「素敵だよ」と“彼”が思ってくれるということでの起用だった。ただ近年は男性タレントがリップまでつけて広告に登場することが多く、男性タレントは広告以外の仕事でもメイクをしているケースも増えている。女性ファンを囲い込む狙いはもちろんだが、今は男性へのアプローチの役割も大きい。

Q.5:今売れているメンズビューティ・ベスト3アイテムは?

A.5:メンズコスメ担当記者が、最近の取材の中で売り上げを伸ばしていると感じる3つのアイテム。まずは「乳液」。メンズのスキンケア事情として、「洗顔」はかなり普及しており、「化粧水」を使う男性も増えた。そこで「次のステップである『乳液』を使う男性が増えれば、本当にメンズコスメ市場は盛り上がる」と考えているメンズコスメ関係者も多い。それで意識的に「乳液」を推しているメーカーが多いこともあり、意識の高い男性の間で“化粧水よりも肌のベタつきを押さえられて潤いが長持ちする”という乳液の特徴に気付く人が増えた。乳液タイプのオールインワンアイテムも売れているようで、「乳液」には注目している。

 2つ目は「除毛クリーム」。ここ数年、夏になると売り上げを伸ばしているアイテムだが、今年は新型コロナの影響で海やプールに行く機会がなく、売り上げは落ちると思われていた。ところが、自粛期間中に自らの肌と向き合ってケアを始める男性が多かったらしく、ロフトや楽天市場でも売り上げを伸ばしているという。

 3つ目は、マスクにひと噴きして除菌・消臭・香りづけをする「マスクリフレッシャー」。マスクをつけたときに自分の口臭が気になる男性が多く、エチケットアイテムとして売り上げを伸ばしている。口臭ケアアイテムを使えばいいと思われがちだが、口臭ケアアイテムは自分でいい香りを感じられないが、マスクに振りかけるアイテムならば、いい香りを自身で感じられる、というメリットがあるようだ。

Q.6:ビューティ初心者の男性にオススメの入門ビューティグッズは?

A.6:上述のように「洗顔」はかなり普及しており、美容に興味を持ったばかりの男性にはまず化粧水をオススメする。皮脂の過剰分泌や髭剃り後など男性特有の肌トラブルも肌質に合わせて選ぶことで理想の肌に近づける。また一歩踏み出したい方は、視覚的に効果を実感しやすく、肌の悩みやトラブルをカバーしてくれるBBクリームがオススメだ。資生堂「ウーノ(UNO)」の“フェイスカラークリエイター”は、肌の色に合わせて毛穴やニキビ跡、ひげの青み、クマといった悩みをカバーし、補正する。

Q.7:化粧品メーカーの宣伝や女性誌などで、「肌をきたえる」「肌を甘やかす」というような表現を見かけますが、化粧品で本当にそのようなことは可能なの?

A.7:ひとつには薬機法(医薬品医療機器等法)ではっきりと「効く」と言えないことも大きいのではないか?それもあり、曖昧な表現も多くなっている。「きたえる」や「甘やかす」は、主観によるところが大きい。若い肌にはエイジングケアの高いクリームは必要ないだろうし、それを使ってしまうと「肌が甘やかされて、それじゃないと肌の調子はよくなさそう」と思う。逆に同じ化粧水でも異なるブランドを使うことで、肌はきたえられる、というのもあながち嘘ではないと、あるブランドの人から聞いたことがある。

Q.8:韓国コスメは何故に人気なの?

A.8:韓国アイドルやK-POPのブームが広がるとともに、韓国コスメも人気を集めている。低価格で美容成分を多く配合する画期的なアイテムが多く、斬新なパッケージが多いのも特徴だ。クッションファンデーションや眉ティントといったユニークなアイデアの商品も話題となり、注目を集めている。海外ビューティ企業による韓国企業の買収の動きも活発的で、ロレアル(L‘OREAL)は「3CE」などを展開するナンダ(NANDA)を買収、エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)は韓国のドクターズコスメ「ドクタージャルト(DR. JART+)」と「ドゥ ザ ライト シング(DO THE RIGHT THING)」を展開するハブ&ビー(HAVE & BE)を買収している。

Q.9:コスメは製造年月日より、使用期限を記載したほうが便利だと思うが、そうしない理由は?

A.9:医薬品や化粧品などの品質・有効性および安全性を確保することを目的とした法律である薬機法では、製造後3年以内で変質する化粧品を除いて使用期限を表示する必要がないとされているからだと考える。ちなみに未開封で3年、開封後は3〜6カ月で使い切るのが基本となっている。薬機法に基づき、自然由来原料を使用するオーガニック・ナチュラル化粧品は、使用期限が明記されているケースが大半。

The post ファッション記者の「ビューティのこと知らない」をビューティ記者が回答 美容家の定義や韓国コスメが人気の理由とは appeared first on WWDJAPAN.com.

ファッション記者の「ビューティのこと知らない」をビューティ記者が回答 美容家の定義や韓国コスメが人気の理由とは

 11月2日号の「WWDジャパン」では、ファッション業界を取材する記者からビューティに関する疑問を募集し、ビューティ記者が回答する「往復書簡」を実施した。ビューティ業界を熟知する記者でもハッとするような新鮮な疑問や質問が多く集まった。その中でもファッションとは切り離せないヘアメイクアップアーティストについてや、アルビオンの看板製品“スキコン”が売れ続ける理由などエンドユーザーに知ってほしい質問・回答をお届けする。

Q.1:アルビオンの“スキコン(薬用スキンコンディショナー)”は何故ずっと売れている?年間の売上高は?

A.1:国産ハトムギエキスなどの潤い成分が肌荒れや乾燥を防ぐなど肌実感の高い点が支持され続けている理由の一つだろう。3世代で使用している人も少なくないという。1974年の誕生から46年経った今でも、毎年新客が20%ほどいて20代から幅広い層まで支持を集める。外国人からも人気で、特に中国では“健康水”と呼ばれているほど製品への信頼度は高い。2017年ごろには年間300万本を生産しており、年間150億円以上(小売ベース)売り上げているのではないかと予測する。

Q.2:美容家の定義って何?どんな人がいるの?

A.2:「WWDビューティ」2018年10月18日号で「美容家とは何者か?」という特集を掲載したが、明確な定義づけがないのが現状だ。美容家と語る大半が、化粧品会社で長年勤務していたりファッション誌や美容誌のビューティ担当者だったりと、肌の構造や化粧品の知識が豊富であることが前提にある。代表的な人物としては、80歳を過ぎて今なお活躍されている小林照子さん(娘の小林ひろ美さんも美容家)や今年亡くなられた佐伯チズさん。最近目にする機会が多いのはドラマにも出演している神崎恵さんや、アイラッシュサロンの経営も行う石井美保さんなどがいる。美容家のほか、美容ジャーナリスト、美容愛好家、美容編集者、美容ディレクターなどといった肩書きもあり、どういった肩書きかは本人が決めている。

Q.3:今注目のヘアメイクアップアーティストは?

A.3:取材で多くの美容師と話をする中で名前が上がる、また日々ビューティ関連の広告を見ていて注目しているのは根本亜沙美ヘアメイクアップアーティスト。アートディレクターの吉田ユニとタッグを組むことも多く、刷新した「エテュセ(ETTUSAIS)」のビジュアルは記憶に新しい。

 また資生堂のメイクアップアカデミー&スタジオ「サブファ(SABFA)」の校長も務めた原田忠資生堂トップヘアメイクアーティストは、オタクとしても有名で、人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」や「テラフォーマーズ」などのキャラクターをヘアメイクで再現して話題に。最近では「ユニクロ(UNIQLO)」のグローバル旗艦店「ユニクロ トウキョウ」とコラボしてTシャツを作ったり、店頭のインスタレーションのマネキンのヘアを手掛けるなど自由なクリエイションが注目されている。

Q.4:なぜ男性を広告に起用してもその人自身がメイクしないの?

A.4:そもそもは男性タレントを起用することで、その男性タレントの女性ファンに買ってもらおうというのが狙い。なので、そのタレントがメイクをするというよりは、商品を使ったら「素敵だよ」と“彼”が思ってくれるということでの起用だった。ただ近年は男性タレントがリップまでつけて広告に登場することが多く、男性タレントは広告以外の仕事でもメイクをしているケースも増えている。女性ファンを囲い込む狙いはもちろんだが、今は男性へのアプローチの役割も大きい。

Q.5:今売れているメンズビューティ・ベスト3アイテムは?

A.5:メンズコスメ担当記者が、最近の取材の中で売り上げを伸ばしていると感じる3つのアイテム。まずは「乳液」。メンズのスキンケア事情として、「洗顔」はかなり普及しており、「化粧水」を使う男性も増えた。そこで「次のステップである『乳液』を使う男性が増えれば、本当にメンズコスメ市場は盛り上がる」と考えているメンズコスメ関係者も多い。それで意識的に「乳液」を推しているメーカーが多いこともあり、意識の高い男性の間で“化粧水よりも肌のベタつきを押さえられて潤いが長持ちする”という乳液の特徴に気付く人が増えた。乳液タイプのオールインワンアイテムも売れているようで、「乳液」には注目している。

 2つ目は「除毛クリーム」。ここ数年、夏になると売り上げを伸ばしているアイテムだが、今年は新型コロナの影響で海やプールに行く機会がなく、売り上げは落ちると思われていた。ところが、自粛期間中に自らの肌と向き合ってケアを始める男性が多かったらしく、ロフトや楽天市場でも売り上げを伸ばしているという。

 3つ目は、マスクにひと噴きして除菌・消臭・香りづけをする「マスクリフレッシャー」。マスクをつけたときに自分の口臭が気になる男性が多く、エチケットアイテムとして売り上げを伸ばしている。口臭ケアアイテムを使えばいいと思われがちだが、口臭ケアアイテムは自分でいい香りを感じられないが、マスクに振りかけるアイテムならば、いい香りを自身で感じられる、というメリットがあるようだ。

Q.6:ビューティ初心者の男性にオススメの入門ビューティグッズは?

A.6:上述のように「洗顔」はかなり普及しており、美容に興味を持ったばかりの男性にはまず化粧水をオススメする。皮脂の過剰分泌や髭剃り後など男性特有の肌トラブルも肌質に合わせて選ぶことで理想の肌に近づける。また一歩踏み出したい方は、視覚的に効果を実感しやすく、肌の悩みやトラブルをカバーしてくれるBBクリームがオススメだ。資生堂「ウーノ(UNO)」の“フェイスカラークリエイター”は、肌の色に合わせて毛穴やニキビ跡、ひげの青み、クマといった悩みをカバーし、補正する。

Q.7:化粧品メーカーの宣伝や女性誌などで、「肌をきたえる」「肌を甘やかす」というような表現を見かけますが、化粧品で本当にそのようなことは可能なの?

A.7:ひとつには薬機法(医薬品医療機器等法)ではっきりと「効く」と言えないことも大きいのではないか?それもあり、曖昧な表現も多くなっている。「きたえる」や「甘やかす」は、主観によるところが大きい。若い肌にはエイジングケアの高いクリームは必要ないだろうし、それを使ってしまうと「肌が甘やかされて、それじゃないと肌の調子はよくなさそう」と思う。逆に同じ化粧水でも異なるブランドを使うことで、肌はきたえられる、というのもあながち嘘ではないと、あるブランドの人から聞いたことがある。

Q.8:韓国コスメは何故に人気なの?

A.8:韓国アイドルやK-POPのブームが広がるとともに、韓国コスメも人気を集めている。低価格で美容成分を多く配合する画期的なアイテムが多く、斬新なパッケージが多いのも特徴だ。クッションファンデーションや眉ティントといったユニークなアイデアの商品も話題となり、注目を集めている。海外ビューティ企業による韓国企業の買収の動きも活発的で、ロレアル(L‘OREAL)は「3CE」などを展開するナンダ(NANDA)を買収、エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)は韓国のドクターズコスメ「ドクタージャルト(DR. JART+)」と「ドゥ ザ ライト シング(DO THE RIGHT THING)」を展開するハブ&ビー(HAVE & BE)を買収している。

Q.9:コスメは製造年月日より、使用期限を記載したほうが便利だと思うが、そうしない理由は?

A.9:医薬品や化粧品などの品質・有効性および安全性を確保することを目的とした法律である薬機法では、製造後3年以内で変質する化粧品を除いて使用期限を表示する必要がないとされているからだと考える。ちなみに未開封で3年、開封後は3〜6カ月で使い切るのが基本となっている。薬機法に基づき、自然由来原料を使用するオーガニック・ナチュラル化粧品は、使用期限が明記されているケースが大半。

The post ファッション記者の「ビューティのこと知らない」をビューティ記者が回答 美容家の定義や韓国コスメが人気の理由とは appeared first on WWDJAPAN.com.

アナログ接客でコロナ禍でも前年クリア、オーガニックコットンのアバンティ

 アバンティ(AVANTI)は、オーガニックコットンの原綿を輸入し糸や生地を製造するほか、自社ブランド「プリスティン(PRISTINE)」では、ウエアや下着、ベビー服、ライフグッズなど幅広いアイテムをメード・イン・ジャパンにこだわって提案している。オーガニックコットンの認知やエシカル消費の啓蒙活動にも尽力してきた同社は、2020年7月期決算でコロナ禍にもかかわらず前年の売上高をクリアした。その要因は、ECに頼りすぎない心の通ったアナログ接客だという。その背景について奥森秀子アバンティ社長に聞いた。

――コロナ禍での前年クリアだが、その要因は?

奥森秀子アバンティ社長(以下、奥森):売上高が12億3200万円で昨年に比べて100万円だが上乗せすることができた。営業利益も5%増で直営店の売り上げ構成比が高くなっている。4月7日の緊急事態宣言発令後、ほとんどの店舗が休業する中、前年の売り上げをクリアすることを最大の目標としてスタッフ一丸となって頑張り結果が出せたことをうれしく思う。好調な要因は、ECの売り上げが4月は前年同月比137%増、5月は同190%増だったのに加え、路面店が健闘した。特に自由が丘店の5月の売り上げは、23日まで休業していたにも関わらず、前年同月比21%増を達成した。通常の営業日の3分1以下で前年の売り上げを超えるのは奇跡的だが、それを起こしたのは顧客だ。

――奇跡が起こった背景は?

奥森:新型コロナ感染が深刻化してきた3月下旬、店舗休業を見据えて急遽下着や布ナプキンなどの定番商品を掲載した10ページのカタログと最新の春夏コレクションを掲載した12ページのカタログを作った。製本まで外注すると納品が遅れるので製本は社内で行い、約500冊を完成させた。急いで作ったのでクオリティーが落ちたのは否めないが、必要だと判断し制作した。それを直営店に配布し、各スタッフが顧客1人1人に手書きの手紙を添えて送付。文面はスタッフが顧客の顔を思いながら書いたもので、不安な気持ちに寄り添い少しでも「プリスティン」が癒しになって欲しいという想いを綴った。それに先駆け、私も顔見知りの50人の顧客に「不安が募る日々ではあるけれど、共に乗り越え、元気にお会いしたい」という手紙を送付した。カタログにはFAX注文シートを添えると同時に、メールでも受注できるようにした。それらを店舗スタッフが回収して商品を発送。ECではないリアル店舗でのこのような小さな努力の積み重ねが売り上げを支えた。

――反響が大きかった理由は?

奥森:暮らしに寄り添うブランドだからこそ、顧客と心を通わせることができる。不安な時だから安心して使える癒される物を買いたい、誰かとつながりたい、支え合いたいという想いに響いたのだと思う。スタッフや私が送った手紙に多くの返事があり、胸が熱くなるような文面に感動した。6月に休業再開してからは、再開と再会を共に喜ぶ感謝の会を催した。その際に、過去に購入して古くなったアイテムを染め直したりリメイクしたりするサービス料金を無料にすることで喜んでもらえた。

――デジタルファーストが叫ばれる中、あえてアナログな販促を打つ理由は?

奥森:もちろんECの強化は不可欠で力を入れていく。ただ、偏りすぎないバランスが必要なのではないかと思う。今回カタログを送付したのは、ECを利用しない年配の顧客ばかりでなく20代や30代も多く含まれている。デジタル化が急速に進んでいるとはいえ、人の温もりや心のつながりは大切だ。

――社長に就任して2年が経つが、今後の目標は?

奥森:行動指針である、売り手良し、買い手良し、作り手良し、まわり良しの「四方良し」の精神をベースに社員全員が笑顔で幸せであることが第一だ。具体的な目標は、30年までに循環型のビジネスを確立させ、物を作るプロセスにおける“廃棄ゼロ・プラスチックゼロ”を目指す。1年先の目標は、種まきから収穫まで携わる日本で育てる綿を「プリスティン」の製品に使用するための一歩を踏み出すことだ。来年4月に、全国の約30の拠点で種まきをスタートし、収穫時には顧客も巻き込めればと考えている。オーガニックコットンに対する需要が高まり、環境問題に対する消費者の知識も深くなっている。その中で35年前からそれに携わるわれわれへの期待値は非常に高い。それに真摯に応えていきたい。

The post アナログ接客でコロナ禍でも前年クリア、オーガニックコットンのアバンティ appeared first on WWDJAPAN.com.

発売後1年でリニューアル 吸水ショーツ「ピリオド」をプロデュースする寺尾代表のこだわり

 日本発の吸水ショーツブランド「ピリオド(Period.)」は、従来品よりもさらに薄く性能をアップした4タイプを11月4日に公式オンラインストアで発売する。必要な全ての人が使用できるようにSからXLサイズまでの4サイズをそれぞれ展開し、国内生産へと切り替えた。

 初代のスポーツタイプをベースに、お尻に優しくフィットし通常のショーツやサニタリーショーツよりも締め付けを軽減した「スポーツゼロ」は、“何も身につけていないかのようなゼロ感覚”の履き心地を追求。「クラシック」は手持ちのランジェリーともマッチするようなウエスト部分に透ける素材を取り入れたエレガントなデザインに仕上げた。腹部まですっぽりと包み込む「ハイウエスト」、「ピリオド」は40代のユーザーも多く要望があったことから今回加わった。

 そして、「ボクサー」はストレッチ素材でお尻をすっぽりと覆う安心感のあるデザイン。「ブランドを始めた当初から要望があり、私自身作りたいと思っていたデザインでした。『ピリオド』が全ての広告やホームページでの表現において、“わたしたち”や“女性”という言葉を用いていないのは、LGBTQの人たちにも使用してもらいたいから。特にボクサータイプはジェンダーに捉われずに着用してもらえると思います」と寺尾彩花ピリオド代表は語る。

 また「ニオイの不安をもっとなくしたい」「早く乾くようになって欲しい」という声から、吸収部分のクロッチも大きく改良した。従来の5層構造から4層構造に層を減らし、スリムでより衣服に響きにくく進化。上層部分には速乾吸収素材を採用し、瞬時に水分を吸収し速乾させることで肌トラブルの軽減が期待できる。さらに防臭抗菌加工の生地を取り入れて、臭いの原因菌の増殖を防ぐことでより衛生的に安心して着用できるようになった。

「ピリオド」が支持されるわけ

 寺尾代表がプロデュースする吸水型ショーツブランド「ピリオド」は、昨年9月にクラウドファンディングで目標金額を大幅に超える180万円を調達し、“ありそうでなかった”“かゆいところに手が届く”という共感の声が集まった。寺尾代表は「生理の悩みに触れ、ヒアリングを続ける中で、生理のときに下着を変える習慣に気づき疑問を持ち始めました。生理がきそうなときや終わりかけのときの下着を選択するストレスを軽減すること、生理やそのほかのホルモンバランスの不調によって着る服を制限されることなどを解消するために毎日身につけられるデザインにこだわりました」と話す。「ピリオド」の公式サイトでは“小さいバッグじゃ荷物も入らない”というフレーズもあり、生理用品も持ち歩くこともストレスなっていたことに気づく。

 「生理の期間は1カ月のうち1週間ほど。とりあえず乗り越えよう、耐えればいいと思っている人も多いいと思います。でも実は1カ月のうち4分の1を犠牲にすると思うと悲しくなりますよね。生理中も自分らしく制限されずに行動できたら」と語る。
 
 ブランドを立ち上げてからおよそ1年というスピード感のある改良になったが、「ブランドを立ち上げた当初はこんなにも生理の話を公共の場でできるようになるとは思っていませんでした。まずは啓蒙していこうと考えていましたが、このパンツを手にすることが生理について、さらには自分の身体・健康について知るきっかけになったら嬉しいです」と話す。

The post 発売後1年でリニューアル 吸水ショーツ「ピリオド」をプロデュースする寺尾代表のこだわり appeared first on WWDJAPAN.com.

#敦子スメ「新月・満月」ノート 五感を使って味わうインナーケアを おうし座の満月(10月31日)

 この連載では、新月・満月の流れを最大限に引き出すためのサポートをしてくれるコスメやインナーケアアイテムも紹介していきます。第22回は10月31日の満月とおすすめコスメについてお伝えします。

今回の満月(10月31日)はおうし座

 おうし座はもともと、五感を使って自分自身の感覚を確かめていく星座と言われています。対象を一つ一つかみ砕いて深く味わいながら自分の内側に問いかけていくようなそんな「実質的、ゆっくりだけれど着実なコミュニケーション」を通して自分の好きなものを味わい尽くす星座と伝えられています。物質的で形になっているものに縁深いとされ、“モノ”が好きな人が多いのも特徴です。季節的には食欲の秋のタイミングですね。

 ちょうど満月は収穫や実り、物事が形になって表面化するときとも言われています。今回は実りの秋におすすめのフードをテーマに紹介します。ちなみに火星や水星が同じ時期に逆行していて、たまった疲れが出てきたり、ちょっと小休止して自分の体を見直そうと感じたりしている人も多いのではないでしょうか。そういう意味でも体のメンテナンスとして取り入れたい、おいしいフードとドリンクのラインナップです。

今回の満月コスメ(フード)

 まずは基本のお米から。「結わえる」の“寝かせ玄米6個入りお試しセット”は、 “寝かせ玄米”という炊いてから4日間熟成させる柔らかくて、もっちもちな玄米ごはんが簡単に食べられるパックになっているセットです。はと麦や国産雑穀などがブレンドされた6種類の玄米がセットになっています。もっちりした寝かせ玄米はとても食べやすく、お腹にも満足感があります。ちょっと食べ過ぎが続いたタイミングなどに、このパックのごはんと簡単なお味噌汁などのシンプルなごはんに置き換えるだけで、体のプチリセットになる気がしてよく取り入れています。ちなみに素材の良さを楽しむ、というのもおうし座的です。


 そんなごはんにセットで食べたいのが「アコメヤ トウキョウ(AKOMEYA TOKYO)」の“じゃこオイル漬け 唐辛子味”。かつお節、さば節、昆布、ニンニクのうまみを独自製法で抽出した究極の香味オイル「だしオイル」をベースにしたごはんのおともです。化学調味料はもちろん、酵母エキス、たんぱく加水分解物なども使用していないシンプルだけど味わいが深くてとてもおいしい一品で、ごはんがすすみます。コンセプトになっている“素のもの、そのまま”というキーワードも、星占いに当てはめるとおうし座の満月にぴったり。シンプルだけど質の良いおうちごはんが楽しめます。


 最後にドリンクは、「アムリターラ(AMRITARA)」 の“自然栽培 モリンガティー”をご紹介。自然栽培で育てられた沖縄のモリンガでできたお茶は独特の深みと香ばしさがあり、冷えた体も内側から温めてくれます。モリンガは、ミラクルツリー(奇跡の木)とも呼ばれ、ビタミン類や亜鉛、 カルシウムやカリウム、食物繊維や必須アミノ酸などたくさんの栄養が詰まった植物だと伝えられており、免疫強化や抗酸化作用など今まさに取り入れたい成分がたっぷり含まれています。さらにモリンガは成長する際に大量のCO2を吸収すると言われており、気候変動も無視できない昨今、再度注目したい植物です。


福本敦子(ふくもと・あつこ)/フリーランスPR・美容コラムニスト:コスメキッチンに14年間勤務後、現在はフリーランスPRとして活動するかたわら、ビューティコラムニストとしてイベント、SNSなど多方面で活躍。オーガニックに精通した知識を武器に、ライフスタイルに寄り添った独自のオーガニック美容論が、著名人やエディターをはじめ各方面から大人気。「#敦子スメ」は「読んだ瞬間試したくなる」と多くの反響を呼び、紹介した商品の欠品や完売も多数。2019年秋、初の書籍となる「今より全部良くなりたい 運まで良くするオーガニック美容本 by敦子スメ」を出版。発売前に増刷が決まるなど話題を呼んでいる。旅を愛し、占星術にも精通 instagram:@uoza_26

The post #敦子スメ「新月・満月」ノート 五感を使って味わうインナーケアを おうし座の満月(10月31日) appeared first on WWDJAPAN.com.

博報堂ケトルの大木秀晃氏がストリートオフィスを開設した理由とは? 音声座談会「蓉子の部屋」Vol.5

 「蓉子の部屋」は、川島蓉子・伊藤忠ファッションシステム取締役/ifs 未来研究所所長が、毎回ゲストを招き“未来”について考える音声番組です。未曾有の状況の中、業界にはこれからの“未来”について考えなければならない現実に直面しています。そんな中、少しでも業界人に役立つヒントやカケラを音声配信でお届けします。近所のスーパーに行く時や、通勤・通学時に気軽に聞いてください(笑)。

 第5回は、2018年に東急東横線の渋谷〜代官山間の線路跡地にストリートオフィス「トレイン トレイン トレイン(TRAIN TRAIN TRAIN以下、トレイン トレイン)」を開設した大木秀晃氏に迫りました。大木氏は05年に博報堂に入社以降、10年から博報堂ケトルに参加し、クリエイティブディレクターを務める。またアイスタイルのチーフクリエイティブオフィサーを務めるなど、幅広い分野で活躍されており、国内外問わずさまざまな賞を受賞。今年8月には自身の会社OOAAを設立した。音声座談会では、「トレイン トレイン」を立ち上げた理由、またその目的、「発想力だけでなく着地力も大事」と話すわけについても語ります。

川島蓉子:1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている

The post 博報堂ケトルの大木秀晃氏がストリートオフィスを開設した理由とは? 音声座談会「蓉子の部屋」Vol.5 appeared first on WWDJAPAN.com.

随時更新:中国や韓国、フランスなど世界のビューティブランド読み方クイズ 「卡婷」はなんて読む?

 グローバルでのビジネスが普通になった現代社会では、多くの海外ブランドが日本に上陸。インターネットの普及はそれを加速させ、一気にブランドが増えた印象だ。そこで発生したのが、「このブランド、なんて読むの?」。英語はそこそこ読めても、フランス語やイタリア語、中国語などは至難の技!? グローバルで有名なこのブランド名、何問読めた?

第1問

<L'OCCITANE>

答え「ロクシタン」
 1976年に誕生した、ヘアケアやスキンケア製品などを展開する南フランス・プロヴァンス地方発祥のライフスタイルコスメティックブランド。植物原料とエッセンシャルオイルをベースにしたスキンケアやヘアケア、フレグランス製品などを展開する。

第2問

<CLARINS>

答え「クラランス」
 創業者のジャック・クルタン・クラランス(Jacques Courtin-Clarins)が1954年に、「美の治療センター」としてフランス・パリのトロンシェ通りに開業したエステティックサロン「アンスティテュクラランス」に由来して生まれたスパブランド。創業以来、肌と植物の可能性を研究し続け、製品を開発している。大きなグループに属さずファミリービジネスを中心に拡大する。

第3問

<GUERLAIN>

答え「ゲラン」
 1828年、ピエール・フランソワ・パスカル・ゲラン(Pierre Francois Pascal Guerlain)がフランス・パリで創業したコスメブランド。皇后ウジェニーに献上した香水「オー・デ・コロン・イムペリアル」により帝室御用達となる。30年にはワイン入りのリップクリームや40年代にはコールドクリームを発売するなど画期的な製品を多く誕生させている。現在は、フレグランス、スキンケア、メイクアップなどを中心に展開する。1994年からLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENESSEY LOUIS VUITTON)の傘下。

第4問

<KIEHL'S SINCE 1851>

答え「キールズ」
 1851年に「キールズ」の起源となる調剤薬局がニューヨークにオープン。94年に薬剤師だったジョン・キールが調剤薬局を買収しブランドが誕生。創業当初から世界中の植物を研究し、天然由来成分を多く配合したスキンケアやヘアケア製品などを展開する。

第5問

<LES MERVEILLEUSES LADUREE>

答え「レ・メルヴェイユーズ ラデュレ」
 アルビオンが手掛けるコスメブランドで、フランス・パリの洋菓子屋「ラデュレ」をルーツに持つ。メイクからスキンケア、フレグランスまで幅広くラインアップする。

第6問

<CLE DE PEAU BEAUTE>

答え「クレ・ド・ポー ボーテ」
 資生堂のグローバルラグジュアリーブランド。独自のブレインスキン理論に基づき、生まれ持った輝きを保つための“肌の知性”を研究し、スキンケア製品に落とし込んでいる。ブランドを代表する製品は、美容液「ル・セラム」や、クリーム「ラ・クレーム」など。

第7問

<MISEEN SCENE>

答え「ミジャンセン」
 韓国の化粧品メーカー、アモーレパシフィックが2000年に立ち上げたヘアケアブランド。さまざまなスタイルや悩みに合わせたシャンプーやトリートメントを揃えるほか、スタリング剤や男性向けのスカルプケア製品なども展開する。

第8問

<LAURA MERCIER>

答え「ローラ メルシエ」
 ニューヨークとパリを拠点に活動するメイクアップアーティストのローラ・メルシエが創設したブランド。“すべての女性を美しく輝かせるメイク”をコンセプトに、ベースメイクを中心に約30の国と地域で展開している。資生堂ジャパンが日本代理店を務める。

第9問

<IOPE>

答え「アイオペ」
 韓国発の高機能スキンケアブランド。皮膚の状態や配合する成分を研究し、バイオ技術で植物由来成分を肌に届ける。4300人以上の女性の肌データに基づき、独自技術で開発したクッションファンデーションや美容液など中心に展開する。

第10問

<ZEESEA>

答え「ズーシー」
 中国発のコスメブランド。イギリスの大英博物館やパブロ・ピカソ(Pablo Picasso)などをモチーフにした鮮やかでユニークなパッケージがSNSで“バズ”るなどで人気に。 中国のインフルエンサーなど、まるでサイボーグのように完璧な美しさを持つ中国美女を指す“チャイボーグ”(チャイナとサイボーグを掛け合わせた造語)といった言葉が生まれるなど、「ズーシー」をはじめ中国ブランドに注目が集まっている。

第11問

<COFFRET D’OR>

答え「コフレドール」
 カネボウ化粧品が展開するメイクアップブランド。"BE PALYFUL"をコンセプトに本来の肌の良さを際立たせるベースメイクとそれを生かすポイントメイクを中心に展開する。

第12問

<CEZANNE>

答え「セザンヌ」
 1964年に誕生したコスメブランド。"ずっと安心、ずっとキレイ"をコンセプトに地球や肌への優しさをポリシーに、ピンレス容器を採用したり、全品無香料処方(ネイル製品を除く)にしたりと環境や人に配慮した製品を開発する。

第13問

<卡婷(CATKIN)>

答え「カトゥキン」
 1998年に誕生した中国発のコスメブランド。パッケージやリップの中華風のデザインがSNS映えもすることや、低価格で手に取りやすくいことも相まって若者中心に注目され、話題を呼んでいる。

第14問

<BYREDO>

答え「バイレード」
 スウェーデン・ストックホルム発のフレグランスブランド。ミニマリスティックなパッケージとシンプルながらもユニークな名称の香りが人気で、ファッショニスタからも支持を集める。元プロ・バスケットボール選手という経歴を持つ創業者ベン・ゴーラム(Ben Gorham)が2006年に設立した。10月には初のカラーメイクコレクションが登場した。

第15問

<OFFICINE UNIVERSELLE BULY>

答え「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー」
 パリ発の総合美容専門店で、アルコールやエタノールを一切使用しない水性香水は大手セレクトショップでも取り扱われており、美容好きはもちろんファッショニスタの愛用者も多い。

第16問

<OFFICINA PROFUMO FARMACEUTICA DI SANTA MARIA NOVELLA>

答え「オフィチーナ・プロフーモ・ファルマチェウティカ・ディ・サンタ・マリア・ノヴェッラ」
 1221年にフィレンツェで創業した世界最古の薬局。現在は、昔ながらのパッケージが特徴的なフレグランスやスキンケア、ソープ、キャンドルなど600種類以上の製品を展開し、世界の約300店舗で販売している。

The post 随時更新:中国や韓国、フランスなど世界のビューティブランド読み方クイズ 「卡婷」はなんて読む? appeared first on WWDJAPAN.com.

アーバンリサーチがシーズンレスで少量限定の新ブランド「アイ」をスタート

 アーバンリサーチは、ECのセレクトショップ「URBS(ユーアールビーエス)」のウィメンズバイヤーを務める森口愛による新ブランド「アイ(iI)」を11月13日に立ち上げる。

 ブランド名の「iI」は“自分”と“アイデンティティー”、名前の“愛”に由来する。「わたしのカラーであり、あなたのカラーであってほしい」「体型や髪の色、肌の色、色々あるけれど、このアイテムたちがその人なりの“アイデア”になってほしい」「その日、その場所、そのときの気持ちに合わせてアレンジができるものを」の3つをコンセプトに掲げ、シーズンにとらわれず、少量ずつアイテムを販売する。

11月13日にタートルネックニット(3万4546円)とニットケープ(2万3000円)の2型を、12月にブラウス(2万7000円)とワンピース(3万8000円)の2型を発売する。「URBS」とアーバンリサーチのオンラインサイト、アーバンリサーチの表参道ヒルズ店、三宮店、福岡パルコ店で取り扱う。

The post アーバンリサーチがシーズンレスで少量限定の新ブランド「アイ」をスタート appeared first on WWDJAPAN.com.

「ポジティブになっていない事柄に対して向き合う」 「ナギ」をプロデュースする石井リナ・ブラストCEOにフェムテック市場について聞いた

 女性向けエンパワーメントメディア「ブラスト(BLAST)」を運営し、生理用品ブランド「ナギ(Nagi)」を立ち上げた石井リナCEO(最高責任者)。「ブラスト」立ち上げから資金調達を実施し事業を推進。今年5月に発売した「ナギ」の第一弾のアイテムである吸水ショーツは、発売開始後1週間ほどで完売するほど人気を集め、直近の再入荷時でも1、2時間ほどで完売するほどだという。石井CEOに今、注目のフェムテック市場や増える起業家、投資家についての考えを聞いた。

WWD: ここ1年ほど、日本でも吸水ショーツの存在感が強くなってきましたよね。

石井CEO:女性にとって身近だけれどまだまだ選択肢が少なくポジティブではない問題のひとつに「生理」があると思います。海外では月経ディスクや吸水ショーツ、CBD入りのタンポンなど、新しい生理用品が多くあります。欧米ではフェムテック市場も盛り上がり、ブランドもプロダクトも多様化していて、ライフスタイルに合わせて自分に合うものを選択することが可能です。しかし、日本ではおよそ7割の女性が紙ナプキンを使用しています。加えて、日本の女性たちはほかの生理用品の種類や選択肢を知らないという状況を知り、自分の体をコントロールすることに対して選択肢を提示しようと思いました。

WWD:「ナギ」のこだわりは?石井さん自身の経験も生かされていますか。

石井CEO:実際に海外の吸水ショーツを使用した経験があり、機能面でまだまだ改善の余地があると思ったものの「生理を忘れる体験だ」と感動しました。そういう意味では、吸水ショーツを作る上で機能性をアップデートしながら履いても違和感のない厚みや仕様にこだわりました。

また日本では海外に比べて生理用品のプロダクトもデザイン性も選択肢が少ないと実感しています。例えば女性の用品=ピンクというブランドやモノもまだまだ多いと感じています。紙ナプキンでは経血を吸収するとハートが浮き上がるという経験もあり、女性性やステレオタイプの押し付けにうんざりしたこともありました。そういった意味では「ナギ」ではメインカラーをグリーンにしており、ラブリーさやフェミニンさは排除し、女性たちが自然に選択できるものを目指しました。「ナギ」のパッケージや世界観に共感いただけることが多いと実感しています。「これこそが女性の私にとって、本当に欲しいと思えるデザインだ!」などとツイッターで書いてくださる方もいました。またパッケージもスタイリッシュに仕上げており、ライフスタイルの中で再利用して使っていただいているユーザーの方も多いです。

WWD:公に話しにくい風潮のある生理の話題ですが、自身の悩みや経験を話すことに躊躇はありませんでしたか。

石井CEO:「ナギ」を始める前に女性向けエンパワーメントメディア「ブラスト」運営をしていました。メディアで取り上げるテーマは社会問題からセックスとしており、日本の女性をエンパワーメントするというミッションはその頃から変わりありません。当時から身体や性にまつわるコンテンツを多く取り上げており、生理や体のことについて話すことに躊躇はありません。

フェムテック分野の盛り上がりには
女性起業家に伴走する女性投資家も必要

WWD:これまでに3回の資金調達を実施していますが、フェムテック分野に関して投資家からはどのような反応がありましたか。

石井CEO:スタートアップ業界は企業家だけでなくベンチャーキャピタルや個人投資家に女性が少ないのが現状です。「そもそも生理の課題がわからない」「共感することが難しい」などと言われることも多かったです。生理の悩みを解決するといった事業アイデアをプレゼンしても必要性を理解されにくく、投資に至らないケースも多々ありました。ブランドのローンチ後は、プロダクトに対する反響がかなり大きかったため、その初動の数字や反響をもって男性の投資家にも理解されやすくなったと実感しています。

WWD:世界には遅れをとっている日本のフェムテック市場ですが、盛り上げていくために必要なことは?

石井CEO:9月にベンチャーキャピタルANRI(アンリ)と赤坂優氏が率いるファンドから資金調達を行いましたが、ANRIの担当は江原ニーナさんという女性でした。ANRIはこれまでに130社ほど投資していますが、そのうち女性企業家への投資は7社だけ。しかし、彼女たちもスタートアップ界のジェンダーギャップに関しては課題意識を持っていて、今後ファンドとして女性起業家への支援や投資も接客的に行っていくと明言していらっしゃいます。フェムテックの盛り上がりに関しては、女性起業家だけでなくそれに伴走する女性投資家の増加も必要だと思います。

The post 「ポジティブになっていない事柄に対して向き合う」 「ナギ」をプロデュースする石井リナ・ブラストCEOにフェムテック市場について聞いた appeared first on WWDJAPAN.com.

潜在意識が求める香りで心身を癒やす 「ラッシュ」初のパフュームを使ったスパを体験!

 英国発のナチュラルコスメブランド「ラッシュ(LUSH)」は、香りの瞑想を楽しむブランド初のパフュームを使ったスパトリートメント“ルネサンス”の提供を開始した。今回、“ルネサンス”を実際に体験。折り重なっていく香りに包まれながら、“瞑想”にも似た深いリラクゼーションに導かれるという感覚を味わった。

 “ルネサンス”はイタリア・ルネサンス期の医療の“四体液説”にインスピレーションを得た、香りと瞑想を取り入れたスパトリートメントだ。“四体液説”とは、体は4つの体液(血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁)からできているとする説。さらに世の中にある生きとし生けるものは全て熱・冷・乾・湿の4つの性質を有するとも考えられていて、この4つの性質のバランスがとれているときは健康でいられるが、どれかが過剰にあったり、欠乏したりしているときには病気になる、という当時の考え方がスパのベースとなっている。

 体験のスタートはコンサルテーションから。4つのスペース(血液、粘液、黄胆汁、黒胆汁)に仕切られた円が描かれたシートが登場し、それぞれのスペースには“落ち着き”“嫉妬深い”“ぶれない”“遊び心がある”など多数の言葉が記してあった。担当してくれたスパセラピストのサエ氏から「この1週間の自分の感情を最も表した言葉を1つ選んでください」と言われ、記者は“忍耐強い”を選択。すると、4種類あるパフューム(“ネロ”“フランジパニ”“コンフェッティ”“サッポー”)の中から“ネロ”が差し出された。

 「香りをかいでパフュームを選んでしまうと、自分が好きだと信じている香りしか選ばない人が多い。そうではなく、自分の潜在意識が求めている香りを見つけることが重要で、ルネサンス期の4体液説の考え方を取り入れたコンサルテーションでそれを可能にした。お客さまからは『自分が思ってもいなかった香りと出合えた』などと好評で、選んだ香りを最初に嗅いだときはぴんとこなくても、施術を終えて帰る際にはそのパフュームを購入する人も多い」とサエ氏は話す。

 また、自分が選んだ言葉に合った香りは“今の自分の感情にバランスをもたらしてくれる香り”で、選んだ言葉の対角線上の言葉に合った香りは“今の自分に足りないものを補ってくれる香り”なので、そのどちらを使うことも可能(対角線上の香りを使ってバランスをとることを“逆療法”という)。実際に2つをかいでみて、施術に用いるパフュームを決める。

 トリートメントルームに入ると、選んだパフューム“ネロ”のベースノートの香りを、スパセラピストがトリートメントに使用するベッドに振りかける。続いて、ミドルノートの香りを取り入れたマッサージバーで、肩からデコルテをマッサージ。その際、施術内容に合わせて手を冷やしたり温めたりし、温度にまで気を配っていた。ラストには、トップノートの香りの温かなミストで部屋が満たされた。そして、最後に完成された香りが“ネロ”の香りなのだという。トリートメントルームを出たあとは、独自の演出が施されたティータイムがあり、スパは終了となった。

“旅する感覚”を求めて来店する顧客も

 トリートメントとして行われたマッサージは、“穏やかな振動”程度の軽いもの。あくまでもメインは香りで、“香りを道しるべに瞑想の世界へ”というコンセプトの通り、香りと振動、そしてルネサンス期の宮殿や教会でレコーディングした音楽で、休息や深いリラクゼーションをもたらす“異空間”へと導いてくれるスパだった。一般的にマッサージを主体としたスパが多い中、全く新しいリラクゼーション体験で、香りの可能性を最大限に感じさせてくれた一方、もう少し多くの種類の香りを体験したいとも思った。

 「“ルネサンス”に限らず、ラッシュスパのコンセプトは“あなたに贈る、特別な時間と空間”。旅をするかのように、日常の生活からエスケープするような体験を提供している。コロナ禍で海外旅行が制限される中、旅するような感覚を求めて来店するお客さまも多く、客数は昨年よりも増えている」という。

 「ラッシュ」には調香師がいて、パフュームの香りも自社で作っている。その中の一人、エマ調香師は「香りは音楽や本、旅や感情などからインスピレーションを得て開発している。“ルネサンス”に関しては、歴史学者のローズ・バイフリート氏が、ルネサンス期に関するたくさんの情報や本を持って私たちのラボを訪れたときから開発がスタート。そして半年間一緒に仕事をして開発に至った。開発した香りの中で、“ルネサンス”に使うパフュームは4種類。例えば“ネロ”は、花々と香水で編成した豪華な宴会で有名な皇帝ネロなどからインスピレーションを受けた、ネロリやベルガモットの香り。“フランジパニ”は、ルネサンス期に革製の手袋についたタンニンの香りを隠すためや、皮を柔らかくするために使われていたアーモンドオイルが含まれた、ライトでつけやすい香りとなっている」と話す。

The post 潜在意識が求める香りで心身を癒やす 「ラッシュ」初のパフュームを使ったスパを体験! appeared first on WWDJAPAN.com.

「ブルックス ブラザーズ」はパーソナルオーダーに光明 コートは前年同期比35%増

 米ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)が、チャプター11を申請して経営破たんしたのが今年7月8日。同社が株式の60%を持つブルックス ブラザーズ ジャパンが、日本における旗艦店青山店を閉店したのが8月30日。表参道店のオープンが9月4日と、激動の4カ月を過ごした「ブルックス ブラザーズ」。当然、これらを覆うようにコロナショックによる影響があり、コロナ以前から仕事着のカジュアル化が“スーツの「ブルックス ブラザーズ」”に暗い影を落としていた。表参道店の初速や好調だというパーソナルオーダーについて、大平洋一ブランドアンバサダーに聞いた。

WWD:逆風とも言える状況の中で、表参道店がオープンして約2カ月。初速は?

大平洋一「ブルックス ブラザーズ」ブランドアンバサダー(以下、大平):オープンからひと月ほど、1階入り口付近に“シャツラボ”という特設スペースを設けていたこともありシャツの売り上げがよかった。

WWD:取材を通じて日々“シャツは厳しい”と聞くが、「ブルックス ブラザーズ」では売れている?

大平:われわれが“ポロカラーシャツ”と呼ぶボタンダウンシャツは、「ブルックス ブラザーズ」が1896年に作ったものだ。「ブルックス ブラザーズ」にとってのアイコンであり、ここ2年ほどはポロカラーシャツや紺ブレなど、われわれのアイデンティティーと言えるアイテムを特にプロモーションしており、それが20代を中心とする若年層にも響いていると感じる。雑誌「ポパイ(POPEYE)」(マガジンハウス)や「ビギン(Begin)」(世界文化社)が、編集コンテンツとして取り上げてくれたことも大きい。また3年ほど前からはビームスやユナイテッドアローズなどへの卸にも力を入れており、これが新客の掘り起こしにつながっている。

WWD:ほかに売れているものは?

大平:日本上陸40周年を記念して2019年に明治神宮外苑で行ったランウエイショーで、ショーピースとして作ったベースボールキャップを表参道店オープンに合わせて商品化した。“B.B.”のロゴを大きくあしらったウール製で初回生産分はMade in USAだ。完売したカラーもあり、現在は日本製に切り替えて多色化展開している。税込みで9900円という価格から、“ファースト・ブルックス ブラザーズ”として購入される方も多い。

WWD:旗艦店機能を青山店から表参道店に移したことで客層も変わった?

大平:採光性の高いガラス張りの店構えによる入りやすさや、周りにアパレルショップが多い立地から気軽に入店される新客が増え、それが売り上げにつながっている。青山店は重厚感があり、通り沿いに他店もなく目的買いのリピーターが中心だったので。

WWD:スーツで9万9000円~のパーソナルオーダーも人気だと聞いた。

大平:毎年、秋冬シーズンの立ち上がり時に全国でパーソナルオーダーフェアを行っており、今年はコロナ禍にもかかわらず好調だった。仕事着のカジュアル化やリモートワークの常態化に伴い既製スーツの売り上げは落ちているが、ありがたいことにオーダー数は横ばいだ。特に、今年はカシミアなど高級生地を使った30万~60万円のオーダーが増えている。またコートの受けもよく、前年同期比35%増だ。スーツについては集計中だが、こちらも前年の数字をクリアする見込みだ。コロナ疲れを打破したいという消費マインドや、特別定額給付金の後ろ支えもあるものと見ている。

WWD:パーソナルオーダー利用客の顔ぶれは?

大平:中心は40〜50代のブランドファンで、パーソナルオーダーを5、6回経験しているリピーターが多い。仕事着のスーツは減っているが、“ここぞ!”の時のハレ着としてのスーツは健在な印象だ。そして「ブルックス ブラザーズ」は、そういう大人をこれからもつくっていかなければならないと思う。

WWD:ずばりパーソナルオーダーの魅力は?

大平:既製スーツの場合、“マディソン”“リージェント”“ミラノ”と主に3種類あるフィッティングを上下で変えることはできず、上下のサイズバランスも決まっている。パーソナルオーダーなら、これをアレンジ可能だ。例えば“マディソン”のパンツのウエストを1インチ上げて、一方でワタリ幅を狭くするなどのパーソナライズができる。

WWD:好調さキープのための次なる施策についても教えてほしい。

大平:オーダーにつきまとう敷居の高さを払拭して、より多くの方に体験してほしいとの思いから10月24日に多摩南大沢、入間、幕張のアウトレット3店舗でもパーソナルオーダーの受付を開始した。価格は思い切って50%オフにした。実は“アウトレットの「ブルックス ブラザーズ」にしか行ったことがない”という方も多く、ここにビジネスチャンスを感じている。またウィメンズには引き続き“ジャケット”のトレンドがあり、ここに紺ブレを提案したい。アラウンド管理職はもちろん、20代にもダッドジャケット的にオーバーサイズを勧めたい。カーディガン感覚で、紺ブレを肩掛けするスタイリングを想定する。

WWD:最後に、大平ブランドアンバサダーの見る「ブルックス ブラザーズ」のビジョンについて聞きたい。

大平:「ブルックス ブラザーズ」は200年を超える歴史を持つ。ポロカラーシャツや紺ブレのみならず、ナンバーワンサックスーツやレップタイなど今日のメンズ服の根幹をなすオリジナルも多く、こういった定番品は困難な状況に強いと思う。このストロングポイントを売り場からいっそう発信していきたい。

The post 「ブルックス ブラザーズ」はパーソナルオーダーに光明 コートは前年同期比35%増 appeared first on WWDJAPAN.com.

「美容室で服を売らない理由がない」 エザキヨシタカ「グリコ」代表が語るサロンの収益力アップ術

 人気ヘアサロン「グリコ(grico)」では、店内と独自のECサイト“グリコ クロージング”で服を販売している。売り上げは非常に好調で、サロンの収益性向上に大いに貢献しているという。ここではエザキヨシタカ代表に、服の販売の仕組みと可能性について聞いた。

WWD:取り扱う服はどうやって入手している?

エザキヨシタカ「グリコ」代表(以下、エザキ):服は、日本の若手デザイナーとコラボして制作したり、海外で買い付けたりしています。買い付けは、以前はイタリアやタイなどへも行っていましたが、最近は韓国で行うことが多いですね。

WWD:どのような服を仕入れている?

エザキ:「グリコ」が提供するヘアデザインに合わせ、モード系や“大人めストリート系”のデザインの服を多く仕入れています。1回の買い付けで100着くらい仕入れ、それが大抵1カ月~1カ月半で完売となります。価格帯は8000~4万円程度ですね。売り上げは非常に好調で、サロンの収益性向上に大いに貢献しています。

WWD:好調の秘訣は?

エザキ:好調の秘訣は“美容師ならではのバイイング”にあります。一人のお客さまをイメージし、「あの人に着てほしい」と思える服を買い付けます。実際にそのお客さまが購入してくれなくても、「グリコ」のヘアデザインを気に入って通ってくれている人の嗜好には共通点があるので、他のお客さまが購入してくれる可能性も高い。美容師はお客さまのライフスタイルを熟知しているので、例えば「来月から新生活が始まるのでこれまでとは違うテイストの服を」とか「旦那さんに似合いそう」とか、美容師ならではの提案もできるんです。また、ヘアサロンの最大の強みは、お客さまが平均して2時間近くも鏡の前に滞在してくれること。服を取り扱えばその分会話のネタも増えるし、結果的に会話が服の宣伝にもつながります。服を購入してくれたら、それに合わせたヘアアレンジを提案してあげることもできるんです。

WWD:「グリコ」で服の取り扱いを始めたきっかけは?

エザキ:2011年の東日本大震災がきっかけでした。美容師は技術職なので、体を動かさないと稼ぐことができません。そうである以上、思わぬ災害や病気で体を動かせなくなった時点で収入が絶たれてしまいます。スタッフが安心して働ける環境作りのためには物販の強化が必要で、最もビューティにマッチした商材としてファッションに目をつけたんです。

WWD:服は顧客以外にも販売している?

エザキ:現在は、仕入れた服を他のサロンにも卸していて、取り扱いサロンは増えつつあります。もちろん、どんなサロンでも取り扱えば成功するわけではありません。取り扱うには、ヘアサロンとして明確なヘアアデザインを打ち出せていることが重要。ヘアとファッションは一体なので、ヘアデザインのテイストにマッチした服を提案することができます。逆に言うと、それができていれば服を取り扱わない理由がなく、美容師にとってもファッション関係者にとっても、ビューティとファッションの融合には可能性しか感じないですね。

The post 「美容室で服を売らない理由がない」 エザキヨシタカ「グリコ」代表が語るサロンの収益力アップ術 appeared first on WWDJAPAN.com.

異業種含めコラボ連発で勢いを増す「ベイプ」 “意外性こそがアイデンティティー”

 90年代の裏原カルチャーを牽引してきたブランドの1つ「ア ベイシング エイプ(R)(A BATHING APE(R)以下、ベイプ)」にとってコラボレーションはブランドカルチャーに根付くものだが、昨今はストリートの枠を超え飲食や自動車業界など多岐にわたり、そのスピード感にも驚かされる。改めて今、業界の内外で存在感を増している同ブランドの狙いを山野辺一徳クリエイティブ・ディレクターに聞いた。

WWD:最近とくにコラボアイテム発売のニュースが続いているが、その背景は?

山野辺ディレクター:転換期は2018年にブランド設立25周年を記念して行った「BAPE XXV」プロジェクトだった。表参道ヒルズで開催したアニバーサリーイベントでは国内外の40以上のブランドやアーティストとのコラボが実現した。その中で「スワロフスキー(SWAROVSKI)」や「フォーミュラ1(F1)」などの異業種とコラボしたことで、われわれだけでは実現できないアイデアが形になり、コラボの新たな可能性を感じた。

WWD:ストリートブランドのイメージが崩れる心配はなかったのか?

山野辺ディレクター:ストリートブランドとして始まったが、もうその枠には括られたくない。28年間変わらず大事にしているのは多様性や意外性をそなえた発信力のあるブランドであり続けることだ。

WWD:コラボ先にとって「ベイプ」の魅力は何?

山野辺ディレクター:圧倒的な認知度は武器だ。「ベイプ」の名前は知らなくても、サルのアイコンやカモフラージュは多くの人が認知している。知り合いの子どもが「ベイプ」ばかり着ていたことで興味を持ち、声をかけてくれたというコラボ相手もある。28年経った今、いろんな人のライフスタイルに「ベイプ」が入り込んでいるのを実感している。

WWD:「NARUTO-ナルト- 疾風伝」や「ドラゴンボール」など、日本のアニメとコラボする狙いは?

山野辺ディレクター:アニメを題材にしたコラボはとくに海外で人気で、供給が追い付かないくらいだ。ヒップホップアーティストの中にも「ドラゴンボール」ファンがいるなど、音楽文化とのつながりも深い。“ベティ・ブープ(BETTY BOOP)”や “ガーフィールド(GARFIELD)”、サンリオキャラクターなどは日本では意外に思われるかもしれないが、グローバルでは根強い人気。広くアンテナを張る「ベイプ」のフィルターを通すからこそ実現できたコラボだ。

WWD:客層はどのように変化してきた?

山野辺ディレクター:最近はとくに海外出店に注力し、アジア、欧米など海外ファンが増えた。国内では1990年代の原宿カルチャー世代から、今の若い子たちまで広くリーチできている。過去のアーカイブをアップデートして発表するアプローチが功を奏し、昔からの「ベイプ」ファンには懐かしく、若い層には新鮮に受け止めてもらっているようだ。

WWD:今後はどんなコラボを企画している?

山野辺ディレクター:これまで以上にコラボする業種の幅を広げたい。とくにインテリアなどのライフスタイルを強めたい。また現在ロンドンやニューヨークに新店舗を準備中だ。オープン記念のコラボアイテムに加えて、今後は出店先の文化を反映したコラボなども企画する。

The post 異業種含めコラボ連発で勢いを増す「ベイプ」 “意外性こそがアイデンティティー” appeared first on WWDJAPAN.com.

「ジル サンダー」のデザイナー夫婦が語るデジタルとリアルそれぞれの良さ

 「ジル サンダー(JIL SANDER)」は9月中旬に開かれた2021年春夏ミラノ・ファッション・ウイークには参加せず、10月8日に映像を通してウィメンズ・コレクションを発表した。映像は、暗闇にスポットライトで作られたランウエイを歩くモデルの姿をさまざまなアングルから捉えたもの。スローモーションやディテールのアップも取り入れ、同ブランドに欠かせない素材の質感やシルエットの美しさの表現を試みた。ルーシー・メイヤー(Luci Meier)とルーク・メイヤー(Luke Meier)=クリエイティブ・ディレクターは、なぜこの手法を選んだのか?ミラノにいる2人に今シーズンのクリエイションの背景やこれからのファッション業界に対する考えを聞いた。 

WWDジャパン(以下、WWD):リアルなショーではなく、モデルが歩く姿を多角的に捉えた映像という方法を選んだ理由は?

ルーシー・メイヤー(以下、ルーシー):今はゲストを招いたリアルなショーを開くのにふさわしいときではないと考えていたので、服の動きやショーの雰囲気を体験できるような映像を作ることにしました。暗闇の中に光が差す演出やチェリストのケルシー・ルー(Kelsey Lu)による音楽を交えて、親密なムードを生み出したかったんです。

ルーク・メイヤー(以下、ルーク):ショーで最も重要なのは、各アイテムの持つエモーションを感じてもらうこと。ただ、今はたとえリアルなショーを開いたとしても皆が会場に来られるわけではありません。コレクションを直に見てもらえなくてもエモーションを伝えられるような映像を作るプロセスは興味深く、楽しいものでした。

WWD:ルック写真も一般的なランウエイ写真とは異なり、動きや雰囲気を重視したものでした。これもエモーションを伝えるということを意図したものですか?

ルーク:実際のショーではないのにランウエイ写真のように撮るのは違うと感じたので、映像の世界観とマッチするものが良いと思いました。

ルーシー:そうですね。映像と写真が呼応するものになっています。

WWD:新型コロナウイルスのパンデミック収束後にはショーを再開させたい?

ルーク:私たちはショーが大好きですし、その制作過程をとても楽しんでいます。これからのショー開催には大きな責任が伴いますが、ふさわしいときが来たら、また開きたいと考えています。それと同時に、実際にショーに来られない人も体験できるような映像などのメディアにも取り組んでいくことも大切だと考えています。もちろん全ての人を会場に招待したいけれど、物理的にそれはできないですから。

WWD:より多くの人に届けられるというのはデジタルの優位性の一つです。それ以外にデジタルとリアルそれぞれの良さをどのように考えていますか?

ルーク:デジタルは、自分の好きなタイミングで発表できるという点や、世界中の人々に渡航を強いる必要がないという点でも興味深いですね。そしてより多くのことをコントロールできるので、完璧に作り上げることができます。その一方で、リアルなショーのような “魔法がかった瞬間”は生まれません。ショーではスタイリングやキャスティングから照明、音楽まで全てがうまくいくように最善を尽くしますが、いつだって予想外の変更が生じます。それが現実世界での体験に“魔法”をかけるのです。これはデジタルではどうしても再現できないことであり、リアルショーならではの魅力。なので、将来的には両方を合わせることがベストだと考えています。

WWD:常に素材への強いこだわりを感じますが、21年春夏コレクションでこだわった点は?

ルーシー:今シーズンはデイウエアを意識して、いつもよりも柔らかく軽やかな素材を使いました。そしてデザイン自体も構築的ではなく、より体に寄り添いつつも締め付けないもの。例えば、オーガンジーのテーラーリングのようなアイテムです。そして、レイヤードによって異なる色の強さを表現しています。バッグもいつもは立体的なものが多いですが、今シーズンはソフトで体やシルエットの一部になるような触り心地の良いものを提案しています。

WWD:今は皆、ファッションにも“優しさ”や“心地よさ”を求めています。今季の提案はそういったことを考慮したからでしょうか?

ルーク:私たちは無意識のうちに自分たちのいる環境からの影響を受けているので、そういった部分もあるかもしれません。このような深刻な状況下で、より柔らかく軽やかで心地よいものに囲まれたいというのは自然ですよね。それがパンデミックから直接的な影響だったかは分からないけれど、潜在的な反応とは言えるでしょう。今の時代にふさわしいものが何かを感じ取るのも、私たちの仕事ですから。

WWD:ロックダウンは、クリエイションにどのような影響をもたらしましたか?

ルーク:全ての必要なものにアクセスできる恵まれた環境だったのでロックダウン自体は問題ありませんでしたが、自分たちの仕事やどのように地球に貢献できるかなどを考え、ファッション業界が大きく変わらないといけないという思いは強まりました。私たちのアイデアは、長く着られるようにクオリティーを極め、シーズンごとに新しいものを買わなくていいように使い捨てられないアイテムを作るということ。これは就任当初から取り組んでいることですが、その方向性が間違っていないということを確信しました。

WWD:長く着られるものを提案するというのは、持続可能なファッションの一つの形だと思います。他にブランドとして、取り組んでいることは?

ルーク:私たちが用いている全ての素材は、サステナビリティの基準を達成したサプライヤーから仕入れていて、選択肢があるときはよりサステナブルなものを選ぶようにしています。原料の栽培や素材の再利用から染色まで基準にはさまざまな項目があり、100%を達成するのは難しいですが、できる限り高めていくために挑戦を続けているところです。これは、もはや選択肢ではなく、皆が取り組むべきこと。私たちのアプローチが業界の変化に貢献できればうれしいですね。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

The post 「ジル サンダー」のデザイナー夫婦が語るデジタルとリアルそれぞれの良さ appeared first on WWDJAPAN.com.

セカオワFukaseに聞く、Tシャツに作品プリントのアマゾン新サービスに参画した理由

 アマゾン(AMAZON)の日本法人であるアマゾンジャパンは10月21日、アメリカやイギリス、ドイツで先行スタートしたオンデマンドのプリントサービス「マーチ バイ アマゾン(以下、マーチ)」を日本でも開始した。「マーチ」は、ブランドや作品のクリエイターがオリジナルの作品をアップロードし、Amazonがプリントして消費者に届けるオンデマンド・サービス。クリエイターにとっては先行費用や投資、在庫管理が不要ながら、サービスを先行展開している欧米にも作品提供が可能だ。アマゾンは、半袖・長袖のTシャツとトレーナー、パーカなどに作品をプリント。注文に応じてクリエイターにロイヤリティーを支払う。日本では、SEKAI NO OWARIで音楽活動を行うほか、架空の5人組バンドを通して世の中を風刺的に描くアニメーション「バッド ムード(BAD MOOD)」のデザイナーでありクリエイターを務めるFukasaら6人が作品提供を開始した(当面、アーティストの登録は招待制)。アマゾンジャパンはFukasaを起用した理由について、「鋭い感性と才能で幅広い活動をしている。特にファッションは独自のスタイルが評価されており、新しいトレンドを作る存在」とコメント。Fukasaによる「バッド ムード」は同月、アマゾンプライムでのアニメ放映も始まった。Fukasaに「マーチ」や「バッド ムード」について話を聞いた。

WWD:今回「マーチ」のサービスを利用して、「バッド ムード」のアパレル展開をスタートした理由は?

Fukasa:「バッド ムード」のアニメ放映がアマゾンプライムで始まることが大きかった。「バッド ムード」は僕の落書きからスタートした、アニメ主軸のプロジェクト。ファッションに広げるときも、キャラをプリントするだけの“二番煎じ”にはしたくなかった。自分でストーリーも考えるアニメを起点に、いろんなキャラクターをファッションで表現したい。その上で「アット トウキョウ(AT TOKYO)」などのプログラムで尖ったブランドと協業してきたアマゾンが魅力的だった。

WWD:そもそも「バッド ムード」にこれだけ注力する理由は?

Fukusa:各回18分間のストーリーの大枠を考えるのは、正直に言えば簡単じゃない(笑)。ただ、自分のメッセージや言葉は独特。外部の脚本家に委ねると、個性が失われてしまう。自分が生み出したものだから、逃れられないし、頑張ればいいって思っている。毎回のストーリーは、結構切り込んでいる。「バッド ムード」で社会の一部を切り取っている感覚だ。さまざまな社会問題は勉強しているが、意志・意見があるストーリーだから、批判はある程度覚悟している。

WWD:「マーチ」のサービスで、どんな洋服を世界に届けたい?SEKAI NO OWARIのツアーグッズとは何が違う?

Fukasa:バンドのグッズのようなものは、望んでいない。バンドや僕は知らなくても、アマゾンプライムで放映が始まった「バッド ムード」のキャラクターが可愛いと思って、洋服を買ってくれたら嬉しい。その逆もあると思う。目指すのは、「グッズ」ではなく「ファッション」。だから改めてキャラデザインは描きなおし、ロゴの配置なども再検討した、ファッションから離れすぎず、「バッド ムード」で伝えたいストーリーを補うような存在になれば。

WWD:普段のファッションは?衣装に着替える時などには洋服の「力」を感じる?

Fukasa:私服は、割とこんな風にカジュアル。一方のステージ衣装は、ピチッとしたものが多い。ステージ衣装に着替えると、集中力が高まるのがわかる。

WWD:今後、「バッド ムード」で挑戦したいことは?

Fukasa:本当はオフラインのイベントを開きたかった。引き続き、エンタメ性の高いイベントを考えたい。「コンプレックスコン(ComplexCon)」に行った時、エンタメ性の高い複合イベントのあり方に感動した。音楽はもちろん講義形式のエデュケーションも含め、俗っぽくないのに入りやすい。「バッド ムード」で、そんなイベントを開いてみたい。

The post セカオワFukaseに聞く、Tシャツに作品プリントのアマゾン新サービスに参画した理由 appeared first on WWDJAPAN.com.

スキンケアでも注目される肌の常在菌「マイクロバイオーム」ってなぜ重要なの? 「ランコム」研究員が指南

 「ランコム(LANCOME)」は、全世界でベストセラーの看板製品“ジェニフィック”シリーズでも着目する肌の常在菌「マイクロバイオーム」研究に関するシンポジウムを開催した。近年、スキンケアでマイクロバイオームに注目した製品は増えており、その重要性は明らかだ。先駆者である「ランコム」の研究者らが、その効果とほかとの違いについて語った。

ーーそもそもなぜ、このタイミングでシンポジウムを開催したのか?

アニー・ブラック(Dr. Annie Black)=「ランコム」インターナショナル・サイエンティフィック・ディレクター(以下、ブラック):ここ数カ月で、私たちの生活や人との交流の仕方に大きな変化がありました。マスクの着用で肌に変化を感じている人も多いはずです。長期間使用すると、肌に刺激を与える可能性があり、さらに皮膚を閉塞します。マスクの下の皮膚は高温多湿な環境にさらされ、皮膚バリアの弱体化、乾燥、発疹、さらにはニキビにつながる可能性があります。そんな今だからこそ、肌のバリア機能を高めることが大切だと感じており、その役割の一つをはたすのがマイクロバイオームなのです。

ーー肌のバリア機能とは?
ブラック:私たちの体の最外層である皮膚は、外部刺激や乾燥から守ります。簡単に言えば、肌に良いものを入れたり、悪いものを入れないようにしたり機能します。このバリア機能には、健康なマイクロバイオームが不可欠なのです。

ーーマイクロバイオームとは?

ガブリエル・アーマッド・コードル(Dr. Gabriel Ahmad Khodr)=ロレアル アドバンスド リサーチ インターナショナル・マイクロバイオロジー・サイエンティスト(以下、コードル):人の体に存在する微生物のことを指します。皮膚の表面に存在するマイクロバイオームは私たちの皮膚の防御に大きな役割を果たし、体と環境の間の交換を調節します。マイクロバイオームを形成するさまざまな微生物間のバランスは、私たちの肌の健康と美しさに欠かせません。 しかし、このバランスは日常のさまざまな刺激や生活習慣により頻繁に脅かされます。

ーー日常にあるさまざまな刺激とは?

コードル:紫外線や大気汚染、加齢、喫煙、投薬、栄養不足、さらには心的ストレスなどが含まれます。基本的に肌は、私たちのライフスタイルを反映しています。また、洗顔やクレンジングも(良い菌を)攻撃する可能性もあるのです。これらの要因によりマイクロバイオーム内のバランスが崩れると、乾燥や感染症、湿疹、ニキビなどさまざまな皮膚障害を引き起こす可能性があります。つまり、マイクロバイオームのバランスを維持することは皮膚の健康のために非常に重要なのです。

ーーこのバランスを取り戻すには?

コードル:起こってしまった刺激のケアには、やはりスキンケアでいたわることが大切でしょう。ただし、上から塗布する化粧品だけでなく、生活習慣を見直したり、食事に気をつけたり、内側からのアプローチも同様に大切です。内臓のマイクロバイオームを健康に保つことは、肌のマイクロバイオームにも作用されるとも言われています。

ーー最近はマイクロバイオームに着目したスキンケアも多く見かけるが、“ジェニフィック”はほかと何が違うのか?

コードル:“ジェニフィック”の処方には、マイクロバイオームの“エサ”となるプレバイオティクスと、美容効果をもたらすプロバイオティクス由来成分を特許取得済みの方法でバランスよく配合しています。

ブラック:なお、全てのプレバイオティクス・プロバイオティクスが皮膚のマイクロバイオームに有益であるわけではありません。
「ランコム」は、何百もの組み合わせを研究して、皮膚のマイクロバイオームに作用するものはごくわずかであることを発見しました。私たちが厳選した7種のプレバイオティクス・プロバイオティクスは、肌を保護、制御、回復する能力をサポートするのに優れた組み合わせです。また、「マイクロバイオティックスが入っている」とうたう他社製品もありますが、本当はプロバイオティクスをそのまま入れようとすると、冷蔵保存する必要があるんです。われわれはバイオテクノロジーを生かし、常温保存できるようにマイクロバイオティクスを処理し、処方に配合することに成功しました。

 以前から内臓のマイクロバイオームについての研究は盛んに行われてきましたが、皮膚のマイクロバイオームを16年前から行ってきたわれわれはパイオニアと言えるでしょう。ただ、まだまだ明かされていないことも多く、日々進化している分野でもあります。だからこそ今回シンポジウムを開催しましたが、今後も多くの研究が生まれると思いますし、スキンケア分野において最もホットなトピックスの一つでもあると思います。

The post スキンケアでも注目される肌の常在菌「マイクロバイオーム」ってなぜ重要なの? 「ランコム」研究員が指南 appeared first on WWDJAPAN.com.

AIが分析したビジュアルで消費者の心をつかめ LV親会社も利用するソフトウエア会社が提言

 人々が思うように外出できない状況が続く中、集客や売り上げ維持に悩むブランドや小売店も多いだろう。顧客を引き付ける手段としてソーシャルメディアが有効だと分かっていても、うまく活用できていないケースも少なくないと専門家は言う。

 画像解析AI(人工知能)を核としたビジュアル・マーケティング・ソフトウエアを開発するダッシュ・ハドソン(DASH HUDSON)のミシェル・ベルシック(Michelle Belcic)=ブランドストラテジー担当バイス・プレジデントは、「コロナ禍の影響が大きい地域ほど、フェイスブック(FACEBOOK)、インスタグラム(Instagram)、ワッツアップ(WhatsApp)などの利用者数が増えており、ツイッター(Twitter)は前年同期と比べて23%増加した。また米国の成人が一日にソーシャルメディアに費やす時間は平均で82分も増加している。自由に出かけられず、リアルでのイベントもあまり行えない状況下で、ソーシャルメディアは消費者との数少ない接点だ。そうしたプラットフォーム上で顧客の心をつかむような魅力的なビジュアルを展開できるかどうかが成功へのカギとなる」と語った。

 ダッシュ・ハドソンは、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「ディオール(DIOR)」「フェンディ(FENDI)」などを擁するLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)や、「コーチ(COACH)」「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」「スチュアート・ワイツマン(STUART WEITZMAN)」を擁するタペストリー(TAPESTRY)、そして米百貨店ノードストローム(NORDSTROM)などにソフトウエアを提供している。

 ベルシック(Michelle Belcic)=バイス・プレジデントによれば、実店舗での売り上げがコロナ禍以前のレベルに戻るには5年程度かかると予想される一方で、2020年におけるECの売り上げは前年比18%増が見込まれている。「新型コロナウイルスの影響で小売り環境は急激に変化した。ECの強化に乗り出す企業が多く、ナイキ(NIKE)は21年末には売り上げの30%がECとなる見込みだが、いずれはこれを50%にまで引き上げたいとしている。また『ザラ(ZARA)』などを擁するインディテックス(INDITEX)は21年までに1000~1200の店舗を閉じ、今後3年間でECの強化に10億ドル(約1050億円)を費やすと発表している」と述べた。

 ソーシャルメディアには毎日膨大な量のコンテンツが投稿されているが、消費者の目に留まるにはどうすればいいのだろうか。ベルシック=バイス・プレジデントは、「人間の脳に伝達される情報の90%は視覚によるもので、画像や動画はテキストの6万倍の速さで処理されるといわれている。つまりソーシャルメディア戦略ではビジュアルが非常に重要となるが、どのようなコンテンツが消費者に“刺さる”かを考えるには、固定客などコミュニティーの意見に耳を傾けることが大切だ。現在業績を伸ばしている企業の多くは、コミュニティーとの対話から得たデータに基づいてビジュアルを作成している」と説明する。

 その好例が、ロンドンを拠点にラグジュアリーECサイトを手掛けるマッチズファッション(MATCHESFASHION)だという。「同社はコミュニティーの意見を取り入れたコンテンツを作成し、それをウェブサイトやメール広告などで使用している。顧客はブランド側が自分を理解し、大切にしてくれていると感じるので、売上増へとつながる」。

 同氏はまた、より大規模にデータを収集する方法としてAIの活用が有効だとしている。「当社のビジョン(Vision)というソフトウエアは、マシンラーニングとコンピュータービジョン技術を組み合わせたもので、膨大な量の“ビジュアルキュー(視覚的な手がかり)”を分析してビジュアルの特性や、ソーシャルメディア上でのパフォーマンス予測を行う。こうして解析されたブランド独自のアルゴリズムに基づいて、クリエイティブ戦略を効率的に策定できるようになる」と話す。

 オーストラリアのアパレルチェーン、コットンオン(COTTON ON)もビジョンを導入している企業の一つだ。同社でソーシャルコマース(SNS上での商品販売)用の画像を選択する際、ビジョンのデータを活用して選んだものは、そうでないものと比べてクリックスルー率(広告をクリックして広告主のコンテンツに移動した率)や商品購入のコンバージョン率が一貫して高いという。

 これらに加えて、さまざまなソーシャルメディアの特性を理解することも重要だ。ベルシック=バイス・プレジデントは、「何かを買おうと思っている消費者が多く集まるSNSとして、ピンタレスト(Pinterest)が挙げられる。同ユーザーの84%は購入を計画する段階でピンタレストを見ており、98%のユーザーはピンタレストを見ているうちに購買意欲が刺激されて商品を購入したと答えている。こうしたデータを踏まえて、『アンソロポロジー(ANTHROPOLOGIE)』が手掛けるブライダルブランドの『ビーホールディン(BHLDN)』は、ピンタレスト上で画像や動画をまとめておけるボード機能を使い、取り扱っているウェディングドレスや小物類のビジュアルコレクションを作成した。そこでオフショルダードレスの人気が非常に高いことや、好まれるビジュアルイメージの傾向などが分かったので、そうした情報を提携ブランドと共有して売り上げを伸ばしている」と述べた。

 ベルシック=バイス・プレジデントは、「ウェブ広告では、クリエイティブの質が売り上げを直接左右する。もうすぐホリデー商戦の時期だが、AIのサポートなしに挑もうとしているのであれば、大きな機会損失となる可能性がある」と締めくくった。

The post AIが分析したビジュアルで消費者の心をつかめ LV親会社も利用するソフトウエア会社が提言 appeared first on WWDJAPAN.com.

秋の夜長にオススメ、デリケートゾーンケアアイテム&ウエアを紹介 美容通の4人が座談会

 「第二の顔」とも言われるデリケートゾーン。最近では、バイオ療法と植物バイオメソドロジーを取り入れたライフケアブランド「ワフィト(WAPHYTO)」がデビューし、マッシュビューティーラボが主催するプレス向けイベント「ビープルフェス(BIOPLE FES)」でもデリケートゾーンにフォーカスしたフェムテックブースが出展されるなど、定番と化しているデリケートゾーンケア。そもそも、デリケートゾーンとは、膣周りを取り囲む大陰唇、小陰唇などを指し、近年では洗浄剤、保湿クリーム、オイル、サプリメントなどさまざまなアイテムが販売されている。どのようなアイテムが支持され、どういった効果が期待できるのか――。美容業界に従事する4人のプロたちに、愛用しているアイテム、ウエアを上げてもらい、選ぶ際に意識しているポイントを聞いた。

――:デリケートゾーンケアは、いつから始めた?

南上夕佳=植物療法士・ルボア フィトテラピースクール副代表(以下、南上):約10年前から。当時、日本では選択肢も少なく手軽に買うことができず、海外のネットショップなどで購入していました。日本では「アンティームオーガニック(INTIME ORGANIQUE)」が誕生した2013年以降、さまざまなブランドから商品が生まれて選べる時代になりうれしいです。

佐藤香菜フリーランスブランディングディレクター(以下、佐藤):コスメキッチン(COSME KITCHEN)の店頭で働いていた20代前半から。「アロメディカ(AROMEDICA)」の“フェミノール”(100mL、3000円)というデリケートゾーンケア用のオイルを取り扱っており、それを使ったことから始まりました。私にとって、オイルで洗う習慣を取り入れるキッカケとなったブランドです。

――:デリケートゾーンケアによって、どのような効果が期待できる?

南上:女性ホルモンバランスが整うので、生理不順が整うこと、月経痛が軽くなること、おりものが正常の範囲内で分泌するようになることや、ニオイ・ムレの解消が期待できます。プロダクトに入っている植物によって、香りによるリラックス効果、リフレッシュ効果、また普段はあまり見ることのない自身の大切な箇所をケアすることは、女性らしさの開花や自愛の心が持てて自身と向き合う時間にもなります。デリケートゾーンケアは、女性であることを喜び、自分を愛でるイメージです。また、プレ更年期や更年期ケアへのアプローチとしても注目を集めています。膣の乾燥を防ぎ、粘液を出しやすくすることもケアの役割と言えるでしょう。

谷口智美ビープル バイ コスメキッチン ディレクター(以下、谷口):私は7年前からケアを始めています。日々デリケートゾーンをケアすることで、自己愛が高まり、気分も明るくなれました。まず、ケアをスタートする前にVIOの脱毛をオススメします。毛がないと状態や状況が把握しやすくなり、それに合わせたケアが可能になります。具体的なケア方法ですが、まず専用のソープで洗い上げた後に保湿をします。するとフカフカでツヤツヤになるので、とても心地よい素肌に。乾燥から生成されるメラニンや、黒ずみが気になる方はケアするだけでワントーン明るいお肌に。また、ショーツで締め付けられる部分でもあるので、私は寝るときは履かずに、圧迫された血管や皮膚を解放しています。

――:実際に使用しているアイテムは?

佐藤:オススメは3つあります。「アロメディカ」の“フェミノール”、オイルタイプの洗浄料「リップ インティメイトケア(LIP INTIMATE CARE)」の “クレンジング モイスチャライジングオイル”(75mL、3200円)、月経カップの「フルムーンガール(FULLMOON GIRL」(4000~8000円)。6年ほど前から月経カップを使用しています。「フルムーンガール」は日本でも購入でき、初心者にオススメ。生理用品もデリケートゾーンケアの一環として捉え、こだわることで私はそれまでに感じていた生理痛や不快感が軽減されました。また、「リップ インティメイトケア」は、保湿も兼ねているのでとても使いやすい。体を保湿するように、デリケートゾーンも保湿が大切です。


谷口:私が推薦するのは、洗うアイテムと、潤すアイテム。洗うケアには、「ビオトゥルム (BIOTURM)」の“フェミニンウォッシュジェル”(250mL、2500円)、「ザ レディ(THE LADY.)」の“デリケート ローズプラセンタ ウォッシュ”(150g、2500円)を愛用中。潤すケアは、「アンティームオーガニック」の“ホワイトクリーム”(100g、2600円)、「イエス(YES)」の“インティメイト・オイルローション”(40mL、3500円)を使っています。


勝田小百合アムリターラ代表兼商品開発担当(以下、勝田):膣は、乳酸菌によってpH3.5~4.5の酸性に保たれているので、アルカリ性の石鹸では洗わず、お湯洗いにするようにしています。また、インナーから整えることを意識しています。「アムリターラ(AMRITARA)」“ヒマラヤ岩塩バスソルト”(520g、1800円)をお風呂に入れて42℃くらいのお湯に15分浸かってよく温まるようにしています。血流改善をうながすサプリ「アムリターラ」“スパイスフルビューティ”(3000円)も併用し内側からもアプローチしています。


南上:専用ソープは、「アンティームオーガニック」の“アンティーム フェミニン ウォッシュ”(120mL、2000円)を使用しています。イランイラン、オレンジの甘いけれどさわやかな香りで癒やされながらリフレッシュできます。女性ホルモン作用の植物も多くホルモンバランスが整うと感じますね。「ワフィト」の“インティメイトウォッシュ”(120mL、2500円)は、肌を美しく保つゴツコラやスギナなどを配合していて使い心地もいいです。保湿には、「ワフィト」の“インティメイトオイル”(30mL、8000円)。デリケートゾーン専用のマッサージオイルを使います。保湿クリームは、「アンティームオーガニック」の“ホワイトクリーム”は気になる、肌の黒ずみをケアしてくれる万能保湿クリームです。生理中などでスッキリと衛生的に保ちたいときには、流せるタイプのふき取りシート「アンティームオーガニック」の“ハイジーンシート”(1500円)がオススメです。

――:インナー・下着を選ぶ際にこだわっていることは?

勝田:静電気が起きやすい化繊をやめ、湿度を保ち静電気が起きにくい天然素材のものにしてから、トラブルもなく過ごせるようになりました。「マアル(MARRU)」の新月ショーツは、とてもいいです。オーガニックコットンで、鼠径部を締め付けないタイプのものを選ぶようにしてから、骨盤内の血流も良くなったと感じます。

南上:締め付け感なく適度にホールドされているもので、素材、女性らしい気持ちになれるかどうか、デザインなど総合的に見て選んでいます。シルク素材は着け心地もよくて使いやすいので、コットンシリーズもある「バサラ(BASARA)」「シュット! インティメイツ(CHUT! INTIMATES)」、そのほか「クリスティーズ(CHRISTIES)」や「リズシャルメル(LISE CHARMEL )」などインポートの繊細なレースの下着が好きです。

佐藤:「ハンキーパンキー(HANKY PANKY)」や「ホォアナデアルコ(JUANA DE ARCO)」。ゴムがきつくないものを選びます。あまりきついものだと、股関節の部分が擦れて黒ずみにつながってしまうので、肌あたりの優しいレースやコットンなどで負荷がかからないものを選びます。

谷口:「ムーンパンツ」“デイタイム ブラックレース”(4800円)がオススメ。漏れない、蒸れない、臭わない、履くだけでOKなサニタリーショーツ。20mLの液体を吸収するショーツで、薄く速乾性に優れていてとても使いやすいです。繰り返し使えるので環境に優しく、経済的。サニタリーには見えない、ヒップを美しく見せるレースデザインで気分もアップします。

 デリケートゾーンの「洗浄&保湿」は日常的に行っている人が多く、ケアの一貫として「サニタリーアイテム」を捉えている人が多いことも印象的だ。単なるボディーケアの延長というよりも、ポジティブに自分と向き合うためのケアとして、更年期へのアプローチとして、またパートナーへのエチケットなど、非常に多面的な役割があると感じる。さまざまな世代に関わりのあるトピックであり、これから、ますます“デイリーなルーティン”として受け入れられそうだ。

小竹美沙:1984年生まれ。女性誌やウェブマガジンで、ナチュラル&オーガニック&サステナブルなコト、モノ、人びとについて取材&発信中。2009年から恵比寿のファッションスクールのオフィシャルライターとして広報資料のライティングにも携わる

The post 秋の夜長にオススメ、デリケートゾーンケアアイテム&ウエアを紹介 美容通の4人が座談会 appeared first on WWDJAPAN.com.

「ピーチ・ジョン」の第2期リアルサイズモデルに1200人の応募 共感集まる

 2017年頃から、「美しさの形はさまざま。ありのままの自分の体を愛して、自信を持って」というメッセージが込められた“ボディーポジティブ”という言葉が下着業界に広がり始めた。その動きは「#MeToo」運動の広がりと重なっている。ボディーポジティブを象徴するブランドの代表格としてリアーナ(Rihanna)による「サヴェージ×フェンティ(SAVAGE×FENTY)」が挙げられる。10月初旬に配信された同ブランドのショーでは、あらゆる体型と世代のモデルが登場した。

 振り返れば14年に「アメリカンイーグル アウトフィットターズ(AMERICAN EAGLE OUTFITTERS)」の姉妹ブランドで下着を主力に展開する「エアリー(AERIE)」が、広告ビジュアルに多様な体型のモデルを起用し、修正を一切加えないと宣言した。それを支持する声が広がり、今では高級ブランドからSPAブランドまでが多様な体型のモデルをビジュアルに起用している。スリムで長身のセクシーなモデルばかりをショーに登場させた「ヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA’ S SECRET)」さえ、昨年にプラスサイズモデルを起用している。

 一方、日本では多様なサイズのモデルを起用するのが困難だった。そもそも日本人の下着モデルが少なく、下着姿で公の場に登場させるにはハードルがかなり高い。その突破口となったのが「ピーチ・ジョン(PEACH JOHN)」が起用したリアルサイズモデルだ。19年6月にSNSを通してリアルサイズモデルを募集したところ約600人が応募し、13人を選出(20年に入り3人追加)。現在、彼女らはSNS広告をはじめとするオンライン媒体を中心に活躍している。

 東ひかるピーチ・ジョン広報宣伝課課長は、「リアルサイズモデルを募集した目的は、消費者に、より自分に近い着用イメージを持ってもらいたいから」と話す。「特にインスタグラムでのリアルサイズモデルによるビジュアルは消費者からのエンゲージメントが非常に高く、ストーリーからオンラインショップへの誘導率も高い。自分と近い体型のモデルが登場したことで、ブランドとの距離が近くなったと感じてもらっている」。リアルサイズモデル起用は実際、売り上げアップにも効果を上げている。

デビューから1年を経て、憧れる存在へと成長

 リアルサイズモデル第2回の最終オーディションが10月10~11日に東京・ピーチ・ジョン本社で開催された。今回は、第1回の2倍の約1200人が応募、年齢は20~50代までと幅広く、職業も多岐にわたる。一次審査、二次審査に合格した約100人が最終オーディションに臨み、審査には来年初旬にコラボコレクション第2弾を発売するお笑いコンビ、フォーリンラブのバービーも参加した。彼女はコラボ第1弾に続き、第2弾のビジュアルでもリアルサイズモデルと共演する予定だ。

 応募が増えた要因を東課長は「リアルサイズモデル1期生が想像以上に活躍し、受け入れられたから」と分析する。ファッション誌「ジンジャー(GINGER)」やウェブサイト「エルガール・オンライン(ELLE GIRL ONLINE)」でリアルサイズモデルの特集が組まれたこともあり、先日のオーディションでは「リアルサイズモデルの〇〇さんに憧れて募集した」「ありのままで自然体の一般人でもこんなに素敵なんだと思えた」「自分を肯定するきっかけになった」という声が多かったという。「自分を変えたい、一歩踏み出したいと思って応募した女性らがリアルサイズモデルとして自信を得て1年が経過した今、憧れの存在にまで成長した。その姿は『ピーチ・ジョン』のコンセプトである“元気・ハッピィ・セクシー”そのものだ」と東課長。

フェミニズムやルッキズムに対する高い意識

 東課長は、「今回のオーディションでは多様性に対する意識の高さを感じた」。二次審査の書類選考ではボディーポジティブに対する考えを書いてもらったが「大学の授業やSNSで得た知識から、フェミニズムやルッキズムに対する知識も豊富で、体型だけでなく、パーソナリティーや生き方もそれぞれ違っていいという考え方を持っている人が多い」と言う。リアルサイズモデルは売り上げに貢献するだけでなく、ビジュアルやSNSを通してメッセージを発信しており、消費者はそれを自分ごととして捉えているようだ。

 20年4〜9月の売り上げトップスリーの“ナイスバディブラ” “いつでもジャストブラ” “スマートブラ”の商品は機能性を打ち出しつつ、リアルサイズモデルの起用により女性のマインドの変化を反映したビジュアル表現をしている。その巧みさは1988年から発刊してきた通販カタログで女性が共感するビジュアル表現にこだわってきた「ピーチ・ジョン」の真骨頂だ。第2期生リアルサイズモデルのデビュー、そしてさらなる活躍を期待したい。

川原好恵:ビブレで販売促進、広報、店舗開発などを経て現在フリーランスのエディター・ライター。ランジェリー分野では、海外のランジェリー市場について15年以上定期的に取材を行っており、最新情報をファッション誌や専門誌などに寄稿。ビューティ&ヘルス分野ではアロマテラピーなどの自然療法やネイルファッションに関する実用書をライターとして数多く担当。日本メディカルハーブ協会認定メディカルハーブコーディネーター、日本アロマ環境協会認定アロマテラピーアドバイザー。文化服装学院ファッションマーチャンダイジング科出身

The post 「ピーチ・ジョン」の第2期リアルサイズモデルに1200人の応募 共感集まる appeared first on WWDJAPAN.com.

ファッション通信簿Vol.59 ネットフリックスの人気ドラマ「エミリー、パリへ行く」のファッションを米「WWD」が辛口ジャッジ!

 米「WWD」の人気企画「ファッション通信簿」では、ストリートからパーティー、レッドカーペットに至るまで、海外セレブたちのファッションを厳しくチェック。評価を絵文字でお伝えするとともに、それぞれのファッションポイントを勝手に辛口ジャッジ!

 第59回は、ネットフリックス(NETFLIX)の人気ドラマ「エミリー、パリへ行く(Emily in Pris)」でリリー・コリンズ(Lily Collins)が演じる主人公、エミリー・クーパー(Emily Cooper)の劇中ファッションが登場。同作は、人気ドラマシリーズ「セックス・アンド・ザ・シティ(SEX AND THE CITY)」や 映画「プラダを着た悪魔(The Devil Wears Prada)」を手掛けた有名スタイリストのパトリシア・フィールド(Patricia Field)が衣装を担当するとあって、ファッションへの注目度も高い。パリに行くはずの主人公がファッション修行にでも行っているかのような米「WWD」の辛口コメントもお楽しみに。

The post ファッション通信簿Vol.59 ネットフリックスの人気ドラマ「エミリー、パリへ行く」のファッションを米「WWD」が辛口ジャッジ! appeared first on WWDJAPAN.com.

マルチな才能を発揮する人気ラッパー、マシン・ガン・ケリー「友人と呼べる存在は全てヘッドホンの中にいた」

 192cmの高身長に端正な顔立ち、独自のスタイルを持ち、欧米の若者の間で人気を集めるラッパーのマシン・ガン・ケリー(Machine Gun Kelly以下、MGK)。この名は彼の早口なラップ・スタイルからファンが名付けたと言われている。ヒップホップ好きには名の知れた存在であるが、その名をメインストリームにまで広げた一曲がある。2016年10月にリリースした、カミラ・カベロ(Camila Cabello)をフィーチャーしたシングル「Bad Things」だ。同曲は、全米シングル・チャート最高4位という自身最大のヒットになったほか、ビルボードミュージックアワードで、グラミー賞 最優秀ラップ/サング・コラボレーション賞にノミネートされた。

 現在30歳の彼は、14年の映画「Beyond The Lights」や「ネットフリックス(NETFLIX)」で放送されたモトリー・クルー(Motley Crue)の伝記映画「ザ・ダート:モトリー・クルー自伝」でトミー・リー役を演じるなど、俳優としても活躍するマルチな才能を開花させている。また18年にはエミネム(Eminem)やG・イージーらとビーフ(楽曲を通してディスり合うこと)を繰り広げるなど、超攻撃的なMCとしての一面も持つ。

 昨年には「サマーソニック 2019(SUMMER SONIC 2019)」に出演したほか、今年8月30日に行われた世界最大級の音楽の祭典「2020 MTVビデオ・ミュージック・アワード(2020 MTV VIDEO MUSIC AWARDS以下、2020 VMA)」では「最優秀オルタナティブ・ビデオ賞(BEST ALTERNATIVE)」を受賞した。また9月25日に発売した最新アルバム「Tickets To My Downfall」(国内盤は11月13日発売)では自身初の全米アルバム・チャート1位を獲得するなど、輝かしい実績を持つMGK。彼に自身のターニングポイントや最新アルバムへの思い、ファッション観、「日本の観客は世界一だ」と話す理由について聞いた。

WWD:音楽にハマったきっかけは?

マシン・ガン・ケリー(以下、MGK):俺は子どもの頃、狭量な人間で「ルーザー(負け犬)」だった。だから友人と呼べる存在は全てヘッドホンの中にいた。

WWD:当時聞いていた音楽は?

MGK:ラッパーのDMX、バンドのリンキン・パーク(LINKIN PARK)、ブリンク-182(BLINK-182)、カニエ・ウェスト(Kanye West)のファースト・アルバム「ザ・カレッジ・ドロップアウト(THE COLLEGE DROPOUT)」を聞いていた。当時流行っていたメタル・バンドのリンプ・ビズキット(LIMP BIZKIT)も聞いていたよ。

WWD:ミュージシャンになろうと思ったのはなぜ?

MGK:普段からいつも叫んで世間に対する不満を爆発させていた。だったらマイクに向かって叫んでやろうと思ったのがきっかけだよ。

WWD:最初からソロで活動しようと決めていたのか。バンドをやろうとは思わなかった?

MGK:ラッパーになる前は、3人編成のパンク・バンドをやっていた。大勢の前で演奏したのは、誰かの家のガレージで友達が5人見に来てくれたときだけ。今でも、自分がフロントマンじゃなきゃ駄目だというわけではないんだ。たまたまそうなったというだけで、仲間と一緒にやっているという意識は常にある。だからマシン・ガン・ケリーという名前で活動しているけど、使う言葉は「俺たち」と決めている。

WWD:これまで数々の賞を受賞し、早くからその才能を認められてきたが、自身のターニングポイントとなったことは?

MGK:今年の「2020 VMA」で、「最優秀オルタナティブ・ビデオ賞」を受賞した時だと思う。アルバム5作目でようやく取れたからね。実際にグラミー賞や「VMA」の賞を取る夢を途中で諦めてしまう人も多い。俺もこれまで一度もノミネートされたことがなかった。それが活動を始めてから、これだけの日数を経てようやく受賞できて、新人にまた戻ったような気持ちになったよ。もともと、ファースト・アルバム「Lace Up」で成し遂げたかったことだったから。本当に嬉しかったよ。希望を捨てないことは必ず大きな力になる。

WWD:世界中で人気を博した、カミラ・カベロとの「Bad Things」は今振り返るとどうだった?

MGK:あれは俺が型にとらわれず、意外性のあることができることを証明できたよ。当時はまだハードコア・ラッパーとして認識されていたけれど、メインストリームのリスナーにも受け入れられる曲ができるということをね。ヒップホップのアルバム・チャートだけではなくて、ポップ・シングルのチャートでも1位を取れたことは、かなり常識破りだったと思うし、やって良かったと思う。

WWD:「いい意味で人の期待を裏切る」という姿勢は常にあるの?

MGK:もちろん。だってそうしていなかったら、今こうして君の取材に答えていることもなかっただろう。とっくに飽きられて、8年前のファースト・アルバムで終わっていた。あるいはアンテナに引っ掛からなくて、存在すら知ってもらえなかったかもしれない。実際に後から知ったというリスナーは多い。いつだって周りで起きていることに目を向けて、刺激を受けていかなければ、つまらないアーティストになるだけ。周りに無関心でつまらないほど最悪なことはない。アーティストは常に進化して、リスナーの思考や感情を刺激し続けなければいけないんだ。

「運命に委ねなかった時、それは裏目に出た」

WWD:最新アルバム「Tickets To My Downfall」ではどんなことを表現した?

MGK:運命の力に任せて、なすがままを表現したよ。というのも、「こういう作品を作るぞ」という明確なものがない状態でスタジオに入った。エグゼクティブ・プロデューサーに起用したトラヴィス・バーカー(Travis Barker)とは10年来の付き合いになるけど、今回初めて一緒に作品を作ることになった。そして口を開けて最初に出てきたのが「Bloody Valentine」だった。はっきりと手応えを感じたんだ。書き上げるのに1時間くらいしか掛からなかったよ。

WWD:その「Bloody Valentine」のMVには女優のミーガン・フォックスを迎え、現在ユーチューブで約4100万回再生を記録している。彼女を起用した背景は?

MGK:誰がその場を支配しているかという立場を逆転させるという発想に興味がある。実際にスターやヒーローといったアイコニックな存在が多大な影響力を持っている世の中だけど、彼らは金でできた彫刻のようなもの。だけど本人たちは大抵の場合、普通の人と変わらない。彼らを拝み倒し、崇拝する理由なんてないんだ。だからMVでは、朝起きたら、あるスターのファンがそのスターを支配していて、代わりに贅沢な生活を満喫しているという設定にしたんだ。そして皮肉を込めて、そのファンにミーガン・フォックスを起用した。笑えるはずだと思ってね(笑)。

WWD:最初から「彼女しかいない」と思ったの?

MGK:ああ、そうだ。このアルバムに関しては、全てを運命に導かれるがままに直感で決めた。皮肉なことに唯一直感で決めなかったのが、アルバム・ジャケットだった。そしたら見事に裏目に出たよ。ジャケットを手掛けたアーティストが、別の人の写真のイメージをパクったような形になってしまい、全てやり直さなきゃいけなくなったんだ(笑)。そのお陰で、一瞬だけ公開された元のジャケットが限定数しかないレア物になったわけ。それで一から新しいジャケットを作り直したけど、凄くいいものができたと思っているよ。

WWD:プロデューサーに起用したバーカーと知り合ったきっかけは?

MGK:19歳くらいの時に地元の米・オハイオ州のクリーブランドのコンサートで出会った。その後にLAで、彼らが10周年コンサートをしている時にゲスト・ボーカルとして参加させてもらったり、いろいろなイベントに呼んでもらったりした。もともと大ファンだったからね。俺も自分の音楽をやっていたけれど、彼とはとにかくお互いに馬が合ったんだ。だからようやくこうやって一緒に作品を作ることができて本当に嬉しい。

WWD:彼はどんな存在?

MGK:信頼できる相談相手なのは間違いない。レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(Red Hot Chili Peppers)がアルバム「Blood Sugar Sex Magic」を作った時のリック・ルービン(Rick Rubin)がそうだったようにね。自分にとっては兄貴的存在だよ。

WWD:今年6月には二人で抗議運動「ブラック・ライブズ・マター」に参加していましたね。またその時の映像をMVに使用したレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの「Killing In The Name」のカバー曲も公開した。

MGK:メインストリームのメディアは、世の中の大衆が物事をどう見て・考えるかを左右する部分で大きな責任がある。だから間違ったことに対する抗議の姿勢を、バーカーや俺が先頭に経ち、メディアを通して模範を示すことが戦術として大事だと思ったんだ。火花を起こしたかった。そして世界中のどこにいようと、どんな問題に対してだろうと、みんな闘うべきなんだ。誰もが知っているような人たちは、何もせず高みの見物をしているわけではなく、こうして闘っている。声を上げないことが一番の罪だから。

WWD:なぜあの曲を選んだ?

MGK:俺が伝えたい事柄に当てはまると思った。あの曲を書いたザック・デ・ラ・ロッチャ(Zack de la Rocha)にとっては、ある特定の事象について書いた曲かもしれないけれど、曲のメッセージは俺たちが今闘っていることにも当てはまるし、今後出てくるであろう幾つもの闘いにもピッタリだと思う。人を高揚させるのには最高の曲だよ。

WWD:ロックダウン中に改めて気付かされたことはあった?

MGK:もし今回のロックダウンで強制的に一旦立ち止まらず、ペースを落とさなかったら、そのまま破滅の道にまっしぐらだったと思う。今回のアルバムのテーマがまさにそれで、俺はこれまで、とにかく生き急いでいた。大勢の人がきっと俺が転落していく様子を見て楽しんでいたと思う。「あいつこのまま行ったらヤバいんじゃないか。破滅するぞ。見ている分には面白い」とね。その時は俺も人生で一番多くの友達に囲まれていると感じていたのに、今思えば人生最悪の時でもあった。だから、こうして強制的に腰を落ち着かせて、自分の心と向き合い、問題と対峙することができたのは、不幸中の幸いだったと思う。ロックダウン前よりも、人間として成長したと感じるよ。

「ヘアスタイルで共感したのは日本のアニメの世界」

WWD:好きなスタイル・ブランドはある?

MGK:「リック・オウエンス(RICK OWENS以下、リック)」と「ヴィヴィアン・ウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD以下、ヴィヴィアン)」が好き。朝起きて、まず手に取るのが「リック」のTシャツやタンクトップ、パンツだね。俺の長身で細身の体型によく合うんだよ。「ヴィヴィアン」のパンツもよく穿くんだけど、昨日すれ違った男に「そのパンツ、超ファンキー・モンキーだな!」と言われたよ(笑)。俺は街を歩いていて、そういう反応がもらえる服を着たいと思っている。スニーカーは「ヴァンズ(VANS)」「コンバース(CONVERSE)」「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」をはくよ。

WWD:フォーマルに決めたいときは?

MGK:「ディオール(DIOR)」と「サン・ローラン(SAINT LAURENT)」を良く着るね。あと「ジョン バルベイトス(JOHN VARVATOS)」でモデルの仕事をしたことがあるんだけど、同ブランドのようなロックなテイストの服も好きだよ。

WWD:ブランドとのコラボやキャンペーンビジュアルのモデルに興味はある?

MGK:モデルに興味はあるよ。自分が共感できるブランドとは是非やってみたい。あとは懐かしいブランドのリバイバルキャンペーンとかね。「十年くらい名前を聞かなかったブランドだけど、MGKのお陰でまた好きになった」と言われるようになりたい。

WWD:自身が参考にしているファッションアイコンはいるか?

MGK:「カウボーイビバップ」のスパイク・スピーゲル(即答)。

WWD:アニメの(笑)?

MGK:うん。

WWD:自身のSNSでは、日本の人気アニメ「ドラゴンボールZ」に登場する超サイヤ人化した“孫悟飯”のモノマネをしていたね(笑)。

MGK:孫悟飯は大好きだ!超サイヤ人の髪型をどうしてもやってみたかったんだ。というのも子どもの頃に日本のアニメを見て育ってきたから。アニメに出てくるキャラクターの髪型は全部好きだった。俺はいつも、ブロンドヘアで前髪を長く前に垂らした髪型をしていたんだ。他の連中はみんな必ずおでこ全開で、髪の毛を後ろに流していたよ。唯一共感できたのが日本のアニメの世界で、「俺と同じような髪型をしている奴らがいる」と初めて思えた。

WWD:どんなアニメを見て育った?

MGK:「ドラゴンボールZ」と「カウボーイビバップ」は鬼のように見た。あと、俺のお気に入りの映画の一つが「もののけ姫」だ。

WWD:ネイルにも自身のこだわりを感じるが。

MGK:アクセサリーが好きなんだ。俺は身に着けるものだけではなくて、ネイルもアクセサリーだと思っている。ギターの弦を抑える左手しかやらないんだけど、フェスで演奏していてカメラが手元のアップに寄った時に、「あのリングかっこいい」「あのネイル活かしてる」とファンが見て楽しめる要素が増える。「なんであのデザインにしているんだろう?」と思わせるのがかっこいいと思う。

WWD:2019年のサマソニのライブはどうだった?また日本の印象は?

MGK:大阪で一晩中歩き回ったのを覚えている。寿司屋の大将が俺たちのことを気に入らなくて追い出されたのもね(笑)。あとは東京のライブの観客が、スタートから熱く盛り上がってくれたのを覚えている。それは予想していなかったから。俺を目当てで来ている人は日本でまだ少ない中、その場にいた大勢の観客は「これを試しに見て、盛り上がるぞ」と、俺たちを受け入れてくれた。ライブが終わった後に、日本の観客は世界一だと思った。世界中を回ったけど、またすぐに戻りライブをやりたい。本当にまた早く行きたいよ。特に今作のアルバムは日本のロック・ファンにも受けると思うんだよね。

WWD:今日はどうもありがとう。また日本に来てくれるのを楽しみにしているよ!

MGK:俺も楽しみだよ。ありがとう!

The post マルチな才能を発揮する人気ラッパー、マシン・ガン・ケリー「友人と呼べる存在は全てヘッドホンの中にいた」 appeared first on WWDJAPAN.com.

玄人から若者にまで支持を広げる「フィル ザ ビル」の“ちょうどいい服”

 2012年にスタートした「フィル ザ ビル(FIIL THE BILL)」は、トレンド感を盛り込みながらも古着やビンテージを軸とした日常に馴染むクリエイションが人気のブランドだ。ブランドを手掛ける金田淳一デザイナーはかつてアパレルの企画・生産を手掛けていたこともあり、縫製や生地、パターンなどの品質の高さにも定評がある。現在はメンズで13、ウィメンズで16のアカウントに卸し、ユナイテッドアローズやエストネーションといった有力ショップでも扱われている。

 今年8月には15年から恵比寿に構えていた直営店を青山に移転オープンさせた。新型コロナウイルス感染症で不安定な状況が続く中で移転を決めた金田デザイナーに、リアル店舗にかける思いや服作りの変化などについて尋ねた。

WWD:青山への移転を決めた理由は?

金田淳一「フィル ザ ビル」デザイナー(以下、金田):この物件に「おっ!」と思ったから。これまでお店が恵比寿、事務所が白金台にあって、同じ場所に統合したいなと思いながら物件を探してたんですけど、ここが一番グッと来ました。そういう勘がすごく大事だと思っています。立地にこだわりはないですが、みんなが青山と聞いて連想するエリアから2本くらい裏通りなのは気に入ってますね。

WWD:内装のこだわりは?

金田:白を基調にゆったりした空間になってます。恵比寿のお店も白がベースだったし、什器も継続して使っているものがあるなど、昔のお客さんも楽しめる雰囲気です。ちなみに空間作りは内装業時代の先輩にお願いしていて、そういう繋がりも大事にした店舗です。

WWD:リアル店舗の運営をリスクだと考える人も少なくありません。

金田:移転の話を聞いた知り合いから「コロナだけど大丈夫?」って言われることもありました(笑)。たしかに時代と逆行してるかもしれませんが、僕はブランドにとってお店はマストだと思っているんです。買うのはECでも全然良いんですが、実際に手にとって着られる場所はそれ自体にすごく価値がある。あと直営店は世界観を伝えやすいので、卸メインでもブランドの核になる。初めてお店に来る理由は、インスタを見たからとか、友達に勧められたからとかが多いと思いますが、そういうお客さんがブランドの世界観に触れて、「なんかいいな」と感じてもらって、ブランドのファンになってもらえたらうれしいです。

WWD:ブランド立ち上げまでの流れを教えてください。

金田:東京モード学園を中退して、生地屋やプリント屋、内装屋、OEM会社などで働き、2012年にブランドをスタートさせました。最初はブランドなんて考えてなかったんですが、独立してからフリーでOEMをやってる時期に、商品サンプルを見た友人から「ブランドやったほうがいいよ」と言われたのがきっかけでした。

WWD:今はウィメンズが拡大している印象です。

金田:OEMでウィメンズを多くやっていたので、ブランドもそっちの方に興味がありました。途中から作り始めたらやっぱり楽しくて、今はウィメンズとメンズが3:2くらいの構成になるまで増えました。売り上げもメンズより拡大しています。

WWD:古着を軸とするものづくりの姿勢は変わらない?

金田:そうですね。古着は時代背景をストレートに反映しているので、それが面白いのかな。だた、服作りに関する考え方は少し変わりました。昔は古着があって、それをいかに今の時代にフィットさせるか、どんなパターンを作るかを考えていたんですが、今は時代とか関係なく、いかにオリジナルな商品に進化させるかにフォーカスしています。本当に微妙な違いなんですけど、お客さんの反応がけっこう違っていて、昔はベテランのバイヤーさんやビンテージ好きのお客さん気に入ってもらうような玄人好みな服だったのに、ここ2〜3年は20代のお客さんがかなり増えてます。インスタグラムのタグ付けを見ると、若い子たちにいろんなテイストをミックスして着ていて、それがすごく新鮮です。

WWD:ブランド名の由来は?

金田:“ちょうどいい料理を出す”という意味合いの料理人の褒め言葉らしくて、その感じが気に入りました。“世の中に適応しながら、バランスをとってやっていこう”という意味を込めてます。着てもらわなきゃ意味がないので、独りよがりの服を作らないという考えもあります。売れ線に寄せすぎてもダメですけど。

WWD:今、ジャンルレスな若者に支持されているのも“ちょうどいい”からかもしれませんね。

金田:そうですね(笑)。たまたまなのか、時代にフィットしたからなのかはわかりませんが、これまでより多くの人に楽しんでもらえてるのは純粋にうれしいです。

WWD:シーズンテーマを設けないことにもこだわりがある?

金田:たぶん、テーマを設けて服を作ることにハードルの高さを感じてるんです(笑)。ランウエイならテーマを設けた方がいいかもしれないけど、展示会とルックだけのウチが、シーズンテーマを明確に伝えるのってけっこう難しい。もちろんショーに興味がないわけではないんですが、今の体制のままじゃ“ショーがあるから作った”ような無理やりコレクションになっちゃう気がしていて。無理せず、マイペースに作るのが自分には合ってると思います。

WWD:ブランドの展望を教えてください。

金田:先ほど言ったように、マイペースにやれればいいのかな。発表の形式やブランド規模にとらわれず、作りたいものを愚直に作っていきたい。オリジナリティーを追求する服作りをもっと練習して、ほかにないブランドにしたいです。このアウトプットに慣れて、ワンシーズンにたくさんのアイデアがひらめくようになったら、ショーにチャレンジしても面白いかも。あ、こんなこと言うとやらなきゃいけない感じになっちゃいますかね(笑)。

The post 玄人から若者にまで支持を広げる「フィル ザ ビル」の“ちょうどいい服” appeared first on WWDJAPAN.com.

パリコレデザイナーに聞く コロナ禍でのショーに踏み切った理由

 2021年春夏パリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)はコロナ禍での開催となったが、18ブランドがリアルなランウエイショーを行った。特にフランスでは感染状況が悪化しつつあり、日々変わる状況に対応しながらの実施となった。パレ・ド・トーキョーの中庭を会場にした「クロエ(CHLOE)」や70人規模のショーを3回開いた「パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)」など4ブランドのデザイナーに、ショーにこだわった理由とその意義を尋ねた。

AMI ALEXANDRE MATTIUSSI

“リアルなショーはコレクションのストーリーを語る最良の方法。人々が生み出すエネルギーや音楽、照明が合わさることで“魔法”を起こすことができる。それがコレクションをより美しく見せるんだ。(セーヌ川の遊歩道をランウエイを設けた)ロケーションに関しては、衛生面を考えて屋外を選んだ。セーヌ川はこの街を象徴する場所だし、パリジャンによるパリらしいショーにしたかったからね。そしてショーを通して、希望のメッセージと共に、人には社会の中での出会いやコミュニケーションが必要であることを強調したかった。”
―――アレクサンドル・マテュッシ(Alexandre Mattiussi)「アミ アレクサンドル マテュッシ」デザイナー

CHLOE

“私たちは皆、ロックダウン中にショーの開催について考えたけれど、それでもやはり必要だと思った。人々が集まるリアルなショーはエモーショナルな瞬間であり、編集もごまかしもない一度きりのパフォーマンス。実際に動く様子を見せるのがコレクションのストーリーを伝えるのには最適だと思うので、この状況でも開催することにこだわった。ただ、リアルと同様に今回はデジタルでの見せ方も大事。実際にパリに来られない人も多いからね。どちらの観客も同様の体験をしてもらえるように、(パリの街角にいるモデルがランウエイへと歩いてくる様子を映した映像から始まる)新しい演出を取り入れた。それはある意味、パリという街やパリジャンのアティチュードへの美しいオマージュでもあるの。”
―――ナターシャ ・ラムゼイ・レヴィ(Natacha Ramsay-Levi)「クロエ」クリエイティブ・ディレクター

 

KOCHE

“パリではリアルなファッションショーが広く認知されているけれど、今回実施するメゾンが少なかったのは通常より複雑だったから。チームにとって平時以上のエネルギーを必要とするし、「コシェ」では保健衛生上のガイドラインを守って進行したわ。私にとって、パリコレ中にフィジカルに発表することはとても重要。その中で起こる“魔法”を再現するのにデジタルはまだ不十分だと思うし、そんな“魔法”のために私がファッションの仕事をしているの。デジタルプラットフォームやソーシャルメディアでも配信できるけれど、リアルな人間が目の前を歩いてゆくという雰囲気は何ものにも代えられない。今この時がどんなに複雑であっても、可能な限り諦めてはいけないと世界の人々に示したかった。”
―――クリステル・コシェール(Christelle Kocher)「コシェ」デザイナー

PACO RABANNE

“ショーはファッション業界にとってクリエイションを称える半年に一度の機会であり、皆に会うことを楽しみにしていた。チームも賛成してくれたしね。それに自分たちだけでなく、ヘアやメイクアップ、キャスティングなど毎シーズン携わってくれている全ての人にとって、ショーは重要な仕事でもある。今シーズンはやらないという選択肢はなかった。もちろんデジタルも活用はするけれど、リアルな女性たちが本物の服を着て歩くのを見せる以上に親密かつ正確に伝えることはできないと思う。ショー開催には衛生基準を遵守する必要があったから、今回はそれを考えていつもならキャパシティー的に選べないような小さな会場を選び、3回ショーを行った。ギャラリーのアートインスタレーションのような親密な雰囲気を出したかったからね。モデルはそこを訪れた人というイメージだったんだ。”
―――ジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)「パコ ラバンヌ」クリエイティブ・ディレクター

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

The post パリコレデザイナーに聞く コロナ禍でのショーに踏み切った理由 appeared first on WWDJAPAN.com.

ショッピングモール運営会社がブランドを買収する理由 鈴木敏仁USリポート

 アメリカ在住30年の鈴木敏仁氏が、現地のファッション&ビューティの最新ニュースを詳しく解説する連載。経営破綻したフォーエバー21、ブルックスブラザーズ、J.C.ペニーなどの再建計画に登場するデベロッパー企業の狙いとは?

 J.C.ペニー(J.C.PENNY)が連邦破産法11条の適用を申請し破綻したのは5月のことだ。大きな企業だけに利害関係者が多くプロセスに時間がかかることが予想されたが、一方で時期が時期だけに赤字が膨らみ早急に対処しないとケガが大きくなることも見込まれ、債権グループが急ぎ調整したようで救済計画が発表されたのは9月のことである。

 買収で合意したのはモールを運営するサイモン・プロパティ・グループ(以下、サイモン)とブルックフィールド・プロパティ・パートナーズ(以下、ブルックフィールド)だ。サイモンは破綻したフォーエバー21(FOREVER21)とブルックスブラザーズ(BROOKS BROTHERS)の買収にも絡んでいるのだが、ショッピングモール運営企業がテナント企業を買収するという興味深い事例が続いている。

サイモンとブルックフィールドはどんな会社か

 サイモンは全米最大手のショッピングモール運営企業であり、最大の商業施設REIT(不動産投資信託)でもある。ブルックフィールドも同じく商業施設を運営する企業だが、オフィスなどショッピングモール以外も手がけており売上高はサイモンよりも大きい。J.C.ペニーはこの2社が所有するモール内に160店舗出店しており、モール運営企業がテナントを買収し救済する目的は、単純に考えればテナントが消えていなくなることによるダメージを防ぐということになるだろう。

 一般的にはサイモンとブルックフィールドが175億ドルのディール(取引)に合意したと報じられているのだが、実際は債権グループや金融機関も出資することになっており、両社が供出するのは3億ドルである。2社が筆頭となった救済スキームという表現が正しいだろう。両者の規模からすれば3億ドルは大きな投資というわけでもなく、“巨額を投じて核テナントを救う不思議なディール”というわけでもない。

 さて、このJ.C.ペニー救済計画、本稿を執筆している10月半ばの時点では裁判所より最終認可は下りていないのだが、これから追加の投資企業として絡んでくるかもしれないと噂されているのがオーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)である。破綻したブルックスブラザーズを買収したのはスパークグループ(SPARC GROUP)という企業だが、このスパークはサイモンとABGが50対50で出資して設立された企業で、つまりひょっとするとブルックスブラザーズと同じ顔ぶれがディールに関与することになるかもしれない。

 このスパークによる破綻企業買収はブルックスブラザーズが最初ではない。16年のエアロポステール(AEROPOSTALE)、18年のノーティカ(NAUTICA)、今年に入ってからフォーエバー21、そしてブルックスブラザーズ買収とほぼ同時期にラッキーブランズ(LUCKY BRANDS)を手に入れている。

 はっきりした情報がないので推定だが、傘下のブランドを合算すると1000店舗を超えているはずである。破綻企業を買い集めて4ケタを超えるチェーンストアが存在するのだ。

本命は知的資産の運用

 ABGの本業はブランドのライセンシングである。「マリリン・モンロー(MARILYN MONROSE)」「エルビス・プレスリー(ELVIS PRESLEY)」「バーニーズ ニューヨーク((BARNEYS NEW YORK))」「ナインウエスト(NINE WEST)」等々、多数のブランドを所有しており、18年の時点で年商は4億ドルと報じられているが、今はすでに10億ドルを超えていると報じるメディアもある。

 サイモンがABGと組んだ最初の案件はエアロポステールで、当時は否定的な見解がほとんどだった。「モール運営企業が破綻したテナントを買ってどうするんだ」という論旨である。

 CEOのデイビッド・サイモン(David Simon)氏は今年の決算報告時に、16年に2500万ドルで買収したエアロポステールからはすでに1300万ドルの配当を受け取り、1億ドルの赤字が8000万ドルの黒字へと転換しているとコメントした。批判する投資家たちには「儲からないと思ったら買わない。そういう人たちはアマゾン(AMAZON)に書籍ビジネスだけやっていろと言うのだろう。コアビジネス以外に対してスマートな投資はできないというのは意味がない」と反論している。

 店舗だけで考えるからポテンシャルが見えないのだろうと私が気づいたのはABGのビジネスモデルが知的資産の運用だということを理解してからである。ブランドは知的資産だが、知的資産はそれだけではない。パテント、販売データ、システム、ノウハウ、顧客データといった無形資産の多くが知的資産で、つまりECとは知的資産そのものなのである。

 ECも含めた知的資産を破綻後に底値で買い、包括的に運用して利益を上げる。EC市場が急成長している今は、知的資産のポテンシャルがどんどん広がっているといってもよい。

 当然ABGやサイモンだけではない。リテール・Eコマース・ベンチャー(RETAIL E-COMMERCE VENTURES)という企業が、東海岸に約130店舗を展開するモデルズ・スポーティング・グッズ(MODELL’S SPORTING GOODS)の知的財産を360万ドル、家庭用品のピア・ワン・インポーツ(PIER 1 IMPORTS)の知的財産を3100万ドルで手に入れている。またサインライズ・ブランズ社は破綻したニューヨーク&カンパニー(NEW YORK&COMPANY)の知的資産を2000万ドルで買収している。

 著名な企業の破綻後に、店舗という目に見える資産を外して知的資産のみを安く入手し、成長しているEC市場で有効活用するという動きはこれから増えるだろうと思っている。

 知的資産の運用をビジネスとするABGと、固定資産の運用をビジネスとするサイモンが、合弁でスパークを設立し、ABGのノウハウで安く手に入れた知的資産から利益を生みながら、店舗という固定資産がそれを補助する。そのように理解すると分かりやすい。これでテナントが減ることを回避できればサイモンとしては大成功だろう。

 サイモンは子会社を通じでさまざまな企業に投資している。これからテナントとして育ちそうな企業や、モール関連のテクノロジーを開発する企業など様々で、スパークもバラエティーに富む投資対象の一つである。ショッピングモールというビジネスの変革の道筋を模索しているのだろうと私は考えている。

The post ショッピングモール運営会社がブランドを買収する理由 鈴木敏仁USリポート appeared first on WWDJAPAN.com.

良品計画やユニクロが志向する“ソーシャルな企業”とは? 「本当に世の中のためになる企業しか生き残れない」

 「WWDジャパン」「WWDJAPAN.com」編集部では現在、11月9日発売の「無印良品」特集の取材や編集作業を進めています。同特集に反映するために、読者の皆さんに「あなたにとって『無印良品』の定番は何ですか?」などを尋ねるアンケートも行っています。まだご回答されていない方は、是非こちらからご協力ください(10月25日回答締め切り)。

 さて、今回の「無印良品」特集ですが、キーワードはずばり“ソーシャル(な)企業”です。そんなふうに書くと「“ソーシャル企業”って一体何のこと?」という声が多数聞こえてきそうですが、端的にいえば、会社という経済活動を通して、社会の課題解決に臨む姿勢を持った企業のことでしょうか。コロナ禍を経て価値観が大きく変わった社会では、自社や株主だけの利益を短期的に追求するような企業はもう支持されない。他を利することができる企業が長い目で見て成長していく――。ESG(環境、社会、ガバナンスの頭文字)経営という言葉とも共通しますが、そのような考え方を持った企業が“ソーシャル企業”であり、それを先進的に実践してきた企業の一つが「無印良品」を率いる良品計画だと「WWDジャパン」「WWDJAPAN.com」編集部は考えました。それが特集を企画した経緯です(……と、エラそうに語ってきましたが、企画の言い出しっぺはデスクの林芳樹です)。

 “ソーシャル企業”たる良品計画が、過疎化・高齢化に悩む地方都市などでどのような取り組みを行っているか、それをどう実践しているかといった詳細は、是非11月9日号をお手に取ってご確認ください。ニューノーマルで求められる企業像を明らかにしていくような特集にできればと考え、現在取材チームで鋭意製作中です。

ユニクロは「国家に代わるプラットフォーム」になる?

 さて。話は変わりますが、「ユニクロ(UNIQLO)」や「ジーユー(GU)」を抱えるファーストリテイリングも良品計画と同様に、事業活動を通して社会課題を解決していくような存在であるべき、ということを近年強く打ち出しています。柳井正会長兼社長は、これまでもいくつかの会見や発表の場で、「社会課題を解決する企業でないと生き残れない」「ソーシャルな存在になる」といったことを繰り返し語ってきました。

 先日行われた2020年8月期決算会見でも、非常に印象的な発言がいくつかあったので引用しておきます。「われわれは、服の領域で社会を支えるインフラになる」「世界的に経済格差や政治対立が拡大しているが、優れた経営者や知識人と話していると、これまでの国という基盤に代わる、グローバルなプラットフォームが育ちつつあると感じる。(中略)今私が描いている夢は、世界の優れた個人や企業と連携し、国家や民族に代わる真にグローバルなプラットフォームを作ること。これは私の個人的な願望ではない(=夢物語ではなく企業として目指す形だ)。本当に社会のためになる企業しか生き残ることはできないし、世界中の消費者がそういう企業のことを商品を買って応援してくれる」。

 以上は、決算会見の中で柳井会長が行った「ファーストリテイリングの今後の展望」というプレゼンの中に出てきたものですが、「国家に代わるプラットフォーム」という話のスケールの大きさに驚くとともに、「経済人というよりも、なんだか哲学者ないしは国際政治学者の話を聞いているような気分だ」と思った人も少なくないと思います。私もその一人です。米中対立や欧州をはじめ各国で深まるマイノリティ排斥の動きへの危機感などを反映しているのでしょうが、「自社がこの混沌とした世の中の問題にどうコミットできるか」「どう役に立てるか」という視点をこんなふうに明確に言葉にする存在って、前述の良品計画とファーストリテイリングを除くと、日本のファッション関連企業にはあまりないのかもと思います。内には秘めているが口には出していないというケースもあるんでしょうが、「口には出さずに結果を残す」的な日本的美学は、残念ながらもう時代に合いません。

 柳井会長はコロナ禍の中でも他アパレル企業と比較すると業績が好調である理由を問われて、「自分のために(商品を)作っているんじゃない、誰かのために作っている。それが基本理念としてわれわれにはある。何のために事業をしているのか、何のために企業を運営しているのか、そういうことを突き詰めて考える企業が、この業界(ファッション業界)にはこれまで少なかったんじゃないですか」とも話していました。確かに、「このデザイン、カッコいいでしょ?」「他にはないでしょ?」といった、いわば自らのエゴでモノ作りをするのがこれまでのファッションビジネスだったと思います。しかし、商品が飽和しきっている時代&コロナ禍という危機の中では、もうそういったあり方ではなかなか消費者の支持を得られない。アパレル企業は根本的なマインドセットを変えるべき転換期に差し掛かっているんだなと、改めて感じます。

The post 良品計画やユニクロが志向する“ソーシャルな企業”とは? 「本当に世の中のためになる企業しか生き残れない」 appeared first on WWDJAPAN.com.

良品計画やユニクロが志向する“ソーシャルな企業”とは? 「本当に世の中のためになる企業しか生き残れない」

 「WWDジャパン」「WWDJAPAN.com」編集部では現在、11月9日発売の「無印良品」特集の取材や編集作業を進めています。同特集に反映するために、読者の皆さんに「あなたにとって『無印良品』の定番は何ですか?」などを尋ねるアンケートも行っています。まだご回答されていない方は、是非こちらからご協力ください(10月25日回答締め切り)。

 さて、今回の「無印良品」特集ですが、キーワードはずばり“ソーシャル(な)企業”です。そんなふうに書くと「“ソーシャル企業”って一体何のこと?」という声が多数聞こえてきそうですが、端的にいえば、会社という経済活動を通して、社会の課題解決に臨む姿勢を持った企業のことでしょうか。コロナ禍を経て価値観が大きく変わった社会では、自社や株主だけの利益を短期的に追求するような企業はもう支持されない。他を利することができる企業が長い目で見て成長していく――。ESG(環境、社会、ガバナンスの頭文字)経営という言葉とも共通しますが、そのような考え方を持った企業が“ソーシャル企業”であり、それを先進的に実践してきた企業の一つが「無印良品」を率いる良品計画だと「WWDジャパン」「WWDJAPAN.com」編集部は考えました。それが特集を企画した経緯です(……と、エラそうに語ってきましたが、企画の言い出しっぺはデスクの林芳樹です)。

 “ソーシャル企業”たる良品計画が、過疎化・高齢化に悩む地方都市などでどのような取り組みを行っているか、それをどう実践しているかといった詳細は、是非11月9日号をお手に取ってご確認ください。ニューノーマルで求められる企業像を明らかにしていくような特集にできればと考え、現在取材チームで鋭意製作中です。

ユニクロは「国家に代わるプラットフォーム」になる?

 さて。話は変わりますが、「ユニクロ(UNIQLO)」や「ジーユー(GU)」を抱えるファーストリテイリングも良品計画と同様に、事業活動を通して社会課題を解決していくような存在であるべき、ということを近年強く打ち出しています。柳井正会長兼社長は、これまでもいくつかの会見や発表の場で、「社会課題を解決する企業でないと生き残れない」「ソーシャルな存在になる」といったことを繰り返し語ってきました。

 先日行われた2020年8月期決算会見でも、非常に印象的な発言がいくつかあったので引用しておきます。「われわれは、服の領域で社会を支えるインフラになる」「世界的に経済格差や政治対立が拡大しているが、優れた経営者や知識人と話していると、これまでの国という基盤に代わる、グローバルなプラットフォームが育ちつつあると感じる。(中略)今私が描いている夢は、世界の優れた個人や企業と連携し、国家や民族に代わる真にグローバルなプラットフォームを作ること。これは私の個人的な願望ではない(=夢物語ではなく企業として目指す形だ)。本当に社会のためになる企業しか生き残ることはできないし、世界中の消費者がそういう企業のことを商品を買って応援してくれる」。

 以上は、決算会見の中で柳井会長が行った「ファーストリテイリングの今後の展望」というプレゼンの中に出てきたものですが、「国家に代わるプラットフォーム」という話のスケールの大きさに驚くとともに、「経済人というよりも、なんだか哲学者ないしは国際政治学者の話を聞いているような気分だ」と思った人も少なくないと思います。私もその一人です。米中対立や欧州をはじめ各国で深まるマイノリティ排斥の動きへの危機感などを反映しているのでしょうが、「自社がこの混沌とした世の中の問題にどうコミットできるか」「どう役に立てるか」という視点をこんなふうに明確に言葉にする存在って、前述の良品計画とファーストリテイリングを除くと、日本のファッション関連企業にはあまりないのかもと思います。内には秘めているが口には出していないというケースもあるんでしょうが、「口には出さずに結果を残す」的な日本的美学は、残念ながらもう時代に合いません。

 柳井会長はコロナ禍の中でも他アパレル企業と比較すると業績が好調である理由を問われて、「自分のために(商品を)作っているんじゃない、誰かのために作っている。それが基本理念としてわれわれにはある。何のために事業をしているのか、何のために企業を運営しているのか、そういうことを突き詰めて考える企業が、この業界(ファッション業界)にはこれまで少なかったんじゃないですか」とも話していました。確かに、「このデザイン、カッコいいでしょ?」「他にはないでしょ?」といった、いわば自らのエゴでモノ作りをするのがこれまでのファッションビジネスだったと思います。しかし、商品が飽和しきっている時代&コロナ禍という危機の中では、もうそういったあり方ではなかなか消費者の支持を得られない。アパレル企業は根本的なマインドセットを変えるべき転換期に差し掛かっているんだなと、改めて感じます。

The post 良品計画やユニクロが志向する“ソーシャルな企業”とは? 「本当に世の中のためになる企業しか生き残れない」 appeared first on WWDJAPAN.com.

今冬のオーガニックのトレンドはフェムテックと“浄化”の力 オーガニックの祭典「ビープルフェス」開催

 マッシュビューティーラボは、食やコスメのセレクトショップ「ビープル バイ コスメキッチン(Biople by CosmeKitchen)」で取り扱う新商品を紹介する展示会「ビープルフェス(BIOPLE FES)」を10月8、9日に開催した。11回目となる今回は、“With your five senses~研ぎ澄ます、新しい時代~”をテーマに、五感にフォーカスした約50ブランドを集めた。毎回、1500〜2000人のメディア関係者やモデル、インフルエンサーなどが来場するが、今回は密を避けるために招待客を減らした結果、来場者は1000人だった。一方で、来場できない人に向けて、インスタグラムで青木源太フリーアナウンサーによる現場リポートや著名人によるトークショーのライブ配信を行いイベントを盛り上げた。

 会場は4つのコーナーで構成。一つ目は今回初めて集積して打ち出す、デリケートゾーンやセクシャルウェルネスに着目したフェムテックコーナー。「フェスを通じて、コンタクトポイントが少ないフェムテックの重要性を打ち出せたら」と椋林裕貴マッシュビューティーラボ副社長。他ほかのコーナーよりも広いスペースを確保し、現代女性が抱える問題点や生理ナプキンの情報などをパネルボードで掲げ、来場者の興味関心を喚起した。ブランドは、吸水ショーツを打ち出す生理用品ブランド「ナギ(NAGI)」や膣トレグッズを展開する「エルビー(ELVIE)」、日本初上陸となるフェミニンケアソープを展開する韓国発の「セイブ(SAIB)」などが出展した。

 二つ目は、五感を研ぎ澄まし、第六感を磨くことを提案するクリーンエナジーのコーナー。“浄化”効果を期待できるブランドが集結。浄化の力を持つといわれる水晶を入れた風呂用のバスチップを発売するボタニカルプロダクトブランド「フォートメント(FORETMENT)」や、純度の高いクレイを展開する「アロマフランス(AROMAFRANCE)」、ペルーの塩田で作られた“インカ天日塩”などを紹介した。また、会場の入り口には“空間を浄化”するために、塩を敷き詰めた上に置かれた多くの水晶が来場者を出迎えた。椋林副社長は、「新型コロナの影響もあり、物欲から幸福度について考える人が増えている」と話す。

 三つ目は、“温めと巡り”を訴求するウォームルーティンのコーナー。遠赤外線効果のある光電子繊維を使った冷えやむくみに着目したアイテムを展開する「イウミー(EUME)」をはじめ、インナーケアでは、医薬品メーカーの金陽製薬と「ビープル」がコラボした和漢ドリンクや、日本コカ・コーラが展開する小腹を満たす飲料「ゴーグッド(GO:GOOD)」から、新商品となるキッコーマンが監修した“和だし”ドリンクを紹介した。 ここが良く分からず。。。ゴーグッドの新商品がキッコーマンが監修したドリンク?ということでいいの?

 四つ目は、冬を快適に過ごすために、ポイントケアなどの商品を紹介するコーナー。「琉白(RUHAKU)」は、日本で初めて製品コスモスエコサート認証を取得した国産のシートマスクをお披露目した。さらに、タブレットタイプのCBDを展開する日本初上陸の「タブレッツ シービーディー(TABLETZ CBD)」も初出展し、注目を集めた。

 会場では、「ビープル バイ コスメキッチン」とのコラボアイテムや限定商品、同店先行の商品を多く紹介していた。

The post 今冬のオーガニックのトレンドはフェムテックと“浄化”の力 オーガニックの祭典「ビープルフェス」開催 appeared first on WWDJAPAN.com.

爆裂!健康美容マニア道 この秋、本気でデトックスしたいなら納豆菌を食べよ

 1日8食、ジャンクフード漬けの超不健康児から超健康優良児へと大変身を遂げたフリーアナウンサーの名越涼。およそ15年かけて自らの体で人体実験を繰り返してきた結果、“超絶良かったもの”だけをここで余すことなくお伝えする。今回は納豆菌のすごさについて。

納豆菌のすごさを知ってほしい

 要するに、美の秘訣は腸にあるのだとつくづく思う。“第二の脳”にして体の免疫細胞の6割が集まる腸の環境を整えることは、心身の健康と美容の基本中の基本である。では、必要な栄養素を吸収できるぴかぴかの腸になるにはどうしたらよいのか。はっきり言おう。その答えは、納豆だ。「え?今さらすぎない?」そう思う気持ちも十分分かる。日本の伝統的な発酵食品であり、冷蔵庫のスタメンである納豆はあまりにも私たちの生活になじんでしまった。が、そこに含まれる納豆菌のデトックス力がメガトン級なのだ。かくいう私、3時のおやつは納豆だった。全国区で有名なあのおかめ顔を見ると今でも懐かしさで胸がきゅっとなる。そんな納豆好きの名越が感動した納豆パワー全開の商品を紹介したい。

老廃物を根こそぎ排出、美肌菌ドリンク

どーん。1つ目にご紹介するのは、「納豆菌パワードリンク」。なんとも怪しい、失礼、まっすぐに伝わってくるこのドリンク。これを毎朝、30mLくいっと飲む。数日後、結果はすぐに出た。「え……こんなに体にたまっていたの?」と。便通は悪くない。むしろ快調な方だと思う。しかし、そんな私でも驚くほどのデトックス力だったのだ。そして数週間たって気づいた。「あれ?まだ疲れてない……!」結構ハードなスケジュールの時でも動ける。朝もスキッと起きられる。え、これってすごいかもしれない、と。

色は無色透明。ほんのり納豆の香りがするだけで、ほぼ味もしない。お酒を飲みすぎた日には倍にして飲んで寝ると、翌日はすっきり。改めて納豆菌のすごさを思い知ったドリンクだった。調べてみると、このドリンクには納豆菌KB-19と呼ばれる美肌菌が含まれているということが分かった。その菌が生きたまま腸に届き、腸内で発酵を始めることにより、ビタミンや酵素など、美肌の素となる成分を生成してくれるのだ。体の内側から栄養がつくられ、全身が潤っていくことが期待される。さらに乳酸菌の働きも助けてくれるというのだから、もうこれ、飲むしかないでしょ。

納豆の限界を超えた納豆

 2つ目は“食べる納豆”のご紹介。納豆はこの何十年かの間にとてつもなく食べやすくなり、その技術の進化によって食卓のスタメンになった。もちろんあのスタイルの納豆も好きなのだが、もっと、昔ながらの納豆を食べてみたい。咀嚼しながらぶつかり稽古する勢いでこっちに向かってくるような、パンチのある納豆が食べたい。そう思い、あれこれ探していた時に偶然見つけたのが、この納豆「ヒリュウ(HIRYU)」の“吟醸納豆ふくふく”だった。

 なんと、300gで2200円。「どんだけ高いねん!」と思わず声が漏れてしまったけど、中身や作り方のこだわりが尋常じゃない。大豆は有機栽培された栃木県産の塩谷在来種。わらはもちろん無農薬で、天日干ししたものを使用。このわらにひそむ天然の納豆菌から納豆をつくっているのだ。もはや職人にしかなせない技。今の時代には考えられないほど手間ひまかけてつくられたからこその、このお値段。そして肝心の味は、悶絶するほど……おいしかった。大粒で食べごたえがあり、粘り気も力強い。「私は今、納豆を食べている!」と当たり前のことを言いたくなるほど、納豆がこっちに向かってくる(どゆこと)。冷蔵庫中が納豆臭にジャックされるが、そんなの関係ない。こんなにもおいしいのならばと思えるほど。納豆に含まれるタンパク質やカリウム、ビタミンなど豊富な栄養素がこれまたダイレクトにとれるのもうれしい。

 ため込みやすい冬の前、今年は納豆で徹底的に体内をクリーンにしてみてはいかがだろうか。

健康メモ
 納豆菌がつくる「ポリグルタミン酸」も見逃せない栄養素。あのネバネバの主成分で、胃の壁を守り老廃物の排出を促してくれる心強い味方

名越涼/フリーアナウンサー。香港出身。福井と愛知のテレビ局アナウンサーを経て独立。司会やライター、セミナー講師、企画・プロデュースなど幅広く活躍するパラレルワーカー。趣味・特技は手作り発酵食、食文化研究、ヨガ(歴15年)eスポーツと農業にも精通

The post 爆裂!健康美容マニア道 この秋、本気でデトックスしたいなら納豆菌を食べよ appeared first on WWDJAPAN.com.

爆裂!健康美容マニア道 この秋、本気でデトックスしたいなら納豆菌を食べよ

 1日8食、ジャンクフード漬けの超不健康児から超健康優良児へと大変身を遂げたフリーアナウンサーの名越涼。およそ15年かけて自らの体で人体実験を繰り返してきた結果、“超絶良かったもの”だけをここで余すことなくお伝えする。今回は納豆菌のすごさについて。

納豆菌のすごさを知ってほしい

 要するに、美の秘訣は腸にあるのだとつくづく思う。“第二の脳”にして体の免疫細胞の6割が集まる腸の環境を整えることは、心身の健康と美容の基本中の基本である。では、必要な栄養素を吸収できるぴかぴかの腸になるにはどうしたらよいのか。はっきり言おう。その答えは、納豆だ。「え?今さらすぎない?」そう思う気持ちも十分分かる。日本の伝統的な発酵食品であり、冷蔵庫のスタメンである納豆はあまりにも私たちの生活になじんでしまった。が、そこに含まれる納豆菌のデトックス力がメガトン級なのだ。かくいう私、3時のおやつは納豆だった。全国区で有名なあのおかめ顔を見ると今でも懐かしさで胸がきゅっとなる。そんな納豆好きの名越が感動した納豆パワー全開の商品を紹介したい。

老廃物を根こそぎ排出、美肌菌ドリンク

どーん。1つ目にご紹介するのは、「納豆菌パワードリンク」。なんとも怪しい、失礼、まっすぐに伝わってくるこのドリンク。これを毎朝、30mLくいっと飲む。数日後、結果はすぐに出た。「え……こんなに体にたまっていたの?」と。便通は悪くない。むしろ快調な方だと思う。しかし、そんな私でも驚くほどのデトックス力だったのだ。そして数週間たって気づいた。「あれ?まだ疲れてない……!」結構ハードなスケジュールの時でも動ける。朝もスキッと起きられる。え、これってすごいかもしれない、と。

色は無色透明。ほんのり納豆の香りがするだけで、ほぼ味もしない。お酒を飲みすぎた日には倍にして飲んで寝ると、翌日はすっきり。改めて納豆菌のすごさを思い知ったドリンクだった。調べてみると、このドリンクには納豆菌KB-19と呼ばれる美肌菌が含まれているということが分かった。その菌が生きたまま腸に届き、腸内で発酵を始めることにより、ビタミンや酵素など、美肌の素となる成分を生成してくれるのだ。体の内側から栄養がつくられ、全身が潤っていくことが期待される。さらに乳酸菌の働きも助けてくれるというのだから、もうこれ、飲むしかないでしょ。

納豆の限界を超えた納豆

 2つ目は“食べる納豆”のご紹介。納豆はこの何十年かの間にとてつもなく食べやすくなり、その技術の進化によって食卓のスタメンになった。もちろんあのスタイルの納豆も好きなのだが、もっと、昔ながらの納豆を食べてみたい。咀嚼しながらぶつかり稽古する勢いでこっちに向かってくるような、パンチのある納豆が食べたい。そう思い、あれこれ探していた時に偶然見つけたのが、この納豆「ヒリュウ(HIRYU)」の“吟醸納豆ふくふく”だった。

 なんと、300gで2200円。「どんだけ高いねん!」と思わず声が漏れてしまったけど、中身や作り方のこだわりが尋常じゃない。大豆は有機栽培された栃木県産の塩谷在来種。わらはもちろん無農薬で、天日干ししたものを使用。このわらにひそむ天然の納豆菌から納豆をつくっているのだ。もはや職人にしかなせない技。今の時代には考えられないほど手間ひまかけてつくられたからこその、このお値段。そして肝心の味は、悶絶するほど……おいしかった。大粒で食べごたえがあり、粘り気も力強い。「私は今、納豆を食べている!」と当たり前のことを言いたくなるほど、納豆がこっちに向かってくる(どゆこと)。冷蔵庫中が納豆臭にジャックされるが、そんなの関係ない。こんなにもおいしいのならばと思えるほど。納豆に含まれるタンパク質やカリウム、ビタミンなど豊富な栄養素がこれまたダイレクトにとれるのもうれしい。

 ため込みやすい冬の前、今年は納豆で徹底的に体内をクリーンにしてみてはいかがだろうか。

健康メモ
 納豆菌がつくる「ポリグルタミン酸」も見逃せない栄養素。あのネバネバの主成分で、胃の壁を守り老廃物の排出を促してくれる心強い味方

名越涼/フリーアナウンサー。香港出身。福井と愛知のテレビ局アナウンサーを経て独立。司会やライター、セミナー講師、企画・プロデュースなど幅広く活躍するパラレルワーカー。趣味・特技は手作り発酵食、食文化研究、ヨガ(歴15年)eスポーツと農業にも精通

The post 爆裂!健康美容マニア道 この秋、本気でデトックスしたいなら納豆菌を食べよ appeared first on WWDJAPAN.com.

2020年のホリデーネイル5選 今年は“品格のある輝き”がキーワード

 ホリデーコレクションの発売時期となり、例年であればキラキラと輝く限定色や限定デザインのアイテムを心躍らせながら眺めているはず。しかし「今年は、消費者の方のリアルな“気分”はどうなんだろう」と、少々気になっている。マスク生活が続く限り、ファンデーションや口紅のニーズは減少するはずなので、可愛いリップキットを見かけると「いつもなら争奪戦だろうに」と、ちょっと切ない気持ちになる。一方で、コロナ禍を経てスキンケアへの関心が高まっているのは事実だが、スキンケアキットはお値段もそれなりに張るものが多い。

 しかし、現実的に考えすぎかもしれない。今年は世界中の誰もがライフスタイルの変化を余儀なくされた。さまざまなストレスと対峙した1年だったからこそ、ホリデーシーズンには「気分が上がる色を」「キラキラしたアイテムを」身につけたいというのも、素直な気持ちであるのは間違いない。この「楽しい」「ワクワクする」という高揚感こそ、美容が持つ偉大な力の1つでもある。

 そこで、2020年のホリデーコレクションで大人の女性におすすめするなら、断然「ネイル」だ。まず、ネイルはメイクアップアイテムの中で唯一視界に入る(鏡に映さなくても自分自身で見て楽しめる)アイテムであること。不思議なもので、指先にダークな色をつけるとそれだけでモードな雰囲気を演出することが出来るし、強い意志を持って行動する気持ちになる。鮮烈な赤をつけると気分が引き締まり、手元の動きが女性らしく見えたりもする。私が単純なだけかもしれないけど、視界に入る色が「気分」や「所作」にまで(大なり小なり)影響する効果は、案外見逃しにできないと思う。

 そして何より、今年のホリデーネイルは、これまでのキラキラ感とは一線を画す「奥行きのあるシックな輝き」が特徴なのだ。大小の変形パールを巧みに組み合わせたり、微細なカラーパールの力で角度によって色のニュアンスが変わったり。アンティーク風の落ち着いたゴールドや、工芸品のように格調高いシルバーなど、大人の女性にこそ似合う質感が充実している。今回はそんな大人のための、珠玉のホリデーネイルをご紹介したい。

シャネル
温かみのある発色、
格調高いアンティーク調ゴールド

 「シャネル(CHANEL)」のホリデーは、同ブランドを代表する“ゴールドのチェーン”にインスパイアされたコレクションだ。中でも「今までこんなゴールドのネイルは見たことがない……!」と息をのんだのが“ヴェルニ ロング トゥニュ 773”。年代を経たアンティークのように落ち着きのある質感で、華やかでありながら、同時に荘厳な趣もある。発色は温かみのあるローズゴールドで、手元に女性らしさを添えてくれるはず。シンプルなシャツにもドレスアップした装いにも、そして和装にも映える、大人のためのゴールドといえる。

ディオール
まるで雪の結晶のよう。
幻想的にゆらめく繊細なゴールド

 雪の結晶が揺らめく、幻想的な世界を表現した「ディオール(DIOR)」のホリデーコレクション。“ディオリフィック グリッター トップ コート 001”は、まるで雪の結晶のような、多角形のラメをぎっしり閉じ込めた1品だ。ボトル中では白っぽく見えるけれど、実際に塗ってみると“ゴールデン スノー”の名前の通り、淡いゴールドの輝きを放つ。トップコートとして重ねてもいいし、単品で使用すると、薄型のラメが重なり合い澄んだ輝きが美しい。指先が動くたびに、チラチラと舞う雪片のように繊細な光をまき散らす。

THREE
グラムロックにインスパイア
された、大人の辛口シルバー

70年代グラムロックの衣装にインスパイアされた「スリー(THREE)」のホリデーは、ゴージャスかつまばゆい輝きあふれるコレクションだ。特に“ネイルポリッシュ X38”は、大人の女性に似合うメタリックシルバー。これまでもあったつるんと鏡のようなシルバーから、一歩先を行くざらりとした砂糖菓子風の質感へと進化。銀細工の工芸品のように格調高いカラーを実現した一方で、輝きはどこまでも澄んだクリアな質感。シック×ピュアのバランス感が絶妙で、モノトーンの装いには華やかさを、カラフルな装いにはクールな雰囲気を添えてくれる。

アナ スイ
女性らしさが匂い立つ、
官能的なダークカラー

 「今つけているネイル、どこの?」と、最近最も聞かれたのが、「アナ スイ コスメティックス(ANNA SUI COSMETICS)の“ネイルカラー 020”だ。11月1日にリニューアルするネイルの中で、ひときわ存在感を放つ1色。ダークカラーのベースに大粒のゴールドラメ、微細なゴールド&コッパーを散りばめ、角度によって赤みを帯びた発色に。ベースの影とラメの光のコントラストで、奥行き感を演出し、ダークカラーなのに女性らしいという希有なカラーでもある。ドレスアップ時も、日常のスタイルにも、モードな印象をプラスしたい。

ジルスチュアート
ゴールドの粒子を散りばめ、
指先に宝石の輝きを

 最後は年末年始の気分を上げる、クリスマスらしいゴールドラメを。「ジルスチュアート(JILLSTUART)」のホリデーは、暗がりの中でまばゆい光を放つ“サーカス”がテーマ。“ネイルラッカー ダズリングワンダーランド 05”は、透明なベースに大粒の多角形ラメと、サイズが違うゴールドの粒子を散りばめた、ラグジュアリーな1品。単色でリッチなゴールドの質感を楽しむもよし、どんなカラーとも相性が良く、お気に入りのネイルに重ねてジュエリーのような輝きを添えるのも一案。手元が動くたびにスパークする光を楽しみたい。

 今回ご紹介したのは、いずれも洗練された質感と輝きを誇る、大人のための「キラキラ」ネイル。1500~3200円という価格帯で、指先に輝きを添え、視界から気分を上げるという意味では、ホリデーアイテムの中で最もコストパフォーマンスが優秀だと思う。

 余談になるけれど、我が家のアシスタントは、普段ネイルを全くつけない学生だ。しかしここ数ヶ月というもの、鮮やかな原色やラメのネイルをつけているので、理由を聞いてみると、「外出自粛期間以来、もう1つの飲食系のアルバイトがお休みなんです。仕事中はネイルできないから、この機会に楽しもうって。キレイな色をつけると、めっちゃ気分が上がりますね~」という答えが返ってきた。

 「ああ、このひと言に尽きるな」と、改めて思ってしまった。

 接客業や飲食業など、仕事上の制約で、普段ネイルをつけられない方も多いだろう。職種によるけれど、一般的に職場で華やかなネイルは控えるのがマナーとされている。オフィシャルな人間関係から解放される年末年始の休暇こそ、あえて「自分のために」指先に大人のキラキラネイルをまとってみてはいかがだろう?

 視界から明るい気分を呼び覚まし、希望を持って新たな1年をスタートできるかもしれない。

宇野ナミコ:美容ライター。1972年静岡生まれ。日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、ウェブなどで美容の記事を執筆。スキンケアを中心に、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、美容医療まで担当分野は幅広く、美容のトレンドを発信する一方で丹念な取材をもとにしたインタビュー記事も手掛ける

The post 2020年のホリデーネイル5選 今年は“品格のある輝き”がキーワード appeared first on WWDJAPAN.com.

中国の化粧品やファッションの”あだ名”クイズ 「元彼マスク」って何?

 中国では人気のファッションやコスメアイテムに、消費者があだ名を付ける文化がある。日本でも“婚活リップ”として「エスティ ローダー」の“ピュアカラー クリスタルシアー リップスティック”や、“諭吉ファンデ”と呼ばれる「スック」の“エクストラ リッチ クリームファンデーション”が話題になったがそのように商品の特徴を抜き出したあだ名が付けられているのだ。しかも消費者は、本当の商品名をほぼ覚えておらず、ECサイトやSNSでもあだ名で投稿や検索がされている。しかし中には、その由来を聞かないとアイテムが連想できない難しいネーミングも。そこで今回は、クイズ形式で有名な“あだ名アイテム”を紹介する(画像の右をクリックすると答えを見ることができます)。

第1問<神仙水>

 多くの消費者がこのスキンケアを使用した後、その魔法のような効果に衝撃を受けて「妖精の水(神仙水)」だと崇められたことがきっかけ。使用することで妖精のような美しさを手に入れられると評判だ。

第2問<小黒瓶>

 そのあだ名の通り、ボトルが小さな黒い瓶であることから名付けられた。このように見た目をそのままあだ名とする例は数多く、「シセイドウ(SHISEIDO)」の“アルティミューン パワライジング コンセントレート N”は赤くボトルの腰の部分に曲線があることから「紅腰子」、「エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)」の“アドバンス ナイトリペア SMR コンプレックス”は小さな茶色い瓶なので「小棕瓶」と呼ばれる。

第3問<キラーバッグ(殺手包)>

 2012年に公開された映画「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」でレア・セドゥ(Lea Seydoux)が演じた女暗殺者がこのバッグを持っていたことから。中国では映画やドラマの影響が強く、今年流行ったドラマ「三十而已(まだ30歳)」では劇中に登場した「エルメス(HERMES)」のバッグが爆売れ。

第4問<元彼マスク(前男友面膜)>

 このアイテムを使用することで、元彼が別れたことを後悔してしまうほどの効果があるという意味が込められている。また、「1度使って捨てる」という意味も含まれているそう。

第5問<小さな鉄(小熨斗)>

 鉄のようにシワが一切ない肌になれるという意味で名付けられた。ほかにも鉄をあだ名に入れているものはエイジングケアの作用を持つものが多く、「ロレアル パリ(LOREAL PARIS)」の人気製品”リバイタリフトフィラー ヒアルロン酸アイクリーム“のあだ名も「パープルアイアン(紫熨斗)」だ。

第6問<野菜カゴ(菜篮子)>

 小さいながらたっぷりと収納が可能な樽型のバッグは、実際に野菜を入れている人はいないが、見た目以上に大容量で実用的だという特徴は一緒。高級なバッグに名付ける名前として相応しくはないが、分かりやすさ重視であだ名が広まった。

第7問<反重力エッセンス(反重力精華)>

 重力に反するかのようなリフトアップ効果が感じられると評判になったことから。中国では肌の衰えを感じる前からエイジングケアを取り入れて対策を行う人が多く、20代後半からのエイジングケア製品として人気が高い。

第8問<黒と白の包帯(黑白绷带)>

 エイジングケアのための包帯と言われている2つのクリーム。包帯と名付けられたのは、まるで医療のように、肌の修復と保護をしてくれることから。中国では朝使うものと夜使うものを分けている人も多く、このクリームも昼夜でセットで使う。

The post 中国の化粧品やファッションの”あだ名”クイズ 「元彼マスク」って何? appeared first on WWDJAPAN.com.

インスタとテックを駆使、28歳の“雑草系起業家”野田貴司が目指す「アパレルDX革命」

 28歳で現在、「ステラヴィアナ(STELLA VIANA)」「リーンモーメント(LEANN MOMENT)」など6つのD2Cブランドを運営するグッドバイブスオンリー(GOOD VIBES ONLY以下、GVO)の野田貴司CEOは、一言で表すなら“雑草系起業家”だ。

 野田は、野球進学した九州産業大学を2年生のときに中退して単身で上京。最初の2カ月はネットカフェ暮らしと路上生活を交互に繰り返すような有様だった。体力を生かし運送やパチンコ屋のアルバイトを経て、ようやく家賃5万円のアパートを借りた後はホームページの制作を個人で請け負うようになった。いろいろな企業に出入りするようになっていた4年前、ある関西の事業家と知り合いになり、紹介されたのが「エイミーイストワール(EIMY ISTORE)」を準備中の藤井亮輔(現ドットワンCEO)氏だった。藤井氏は全くのアパレル未経験だった野田をなぜか気に入り、新ブランドの立ち上げメンバーに加えた。藤井氏とともに宮地洋州(現ワンセックCEO)氏の率いる3ミニッツに合流した野田は、2人の下で寝食を忘れて仕事に打ち込んだ。それから1年半後に会社を辞めるまで、文字通り毎日会社に寝泊まりして働いたので、賃貸していたアパートを解約するほどだったという。「アパレル未経験でまともな職歴もない僕を藤井さんが誘ってくれたのは、単にガッツと体力がありそうだったから(笑)。でも、D2Cブランドの先駆者である『エイミーイストワール』で“20時間365日”くらいの勢いで死ぬ気で働いて得たことは、本当に多かった。1年半と短い期間だったけど服をどう作ってどう売るか、インスタグラムをどう使うかといったことから、インフルエンサーとの接し方や話し方まで、ファッションビジネスに関わるありとあらゆることを学ばせてもらいました」という。

 野田は知人が18年4月に創業していたGVOの株式を引き取り、19年9月にCEOに就任。6ブランド合計の直近の月商は、3000万円を超えるまでになった。8月にはシードラウンドで丸井グループのディーツーシーアンドカンパニー(D2C&CO.)から5000万円、その他エンジェル投資家の出資などで合計1億円を調達。その大半を、革新的なアパレルの3DグラフィックCADシステムとライブコマースプラットフォームに投じる。

 GVOの強みは、インスタグラムを駆使した需要予測のノウハウだ。GVOはディレクターを務めるインフルエンサーや元販売員の投稿に対するいいねや保存数、リーチ数などを基に販売数を決めている。「例えばあるブランドの場合は保存数に対して28.3%が発注枚数。つまり保存数が100あれば28着を発注する。このほかにも10項目ほどのKPIを設定して、発注枚数を決めている。僕らはインスタに先に商品を投稿して、そのリアクションを見てから発注するから当然、売れ残ることはほとんどないし、在庫の回転率も高い」。GVOの在庫日数はおおよそ50日間ほどで、これはしまむらとほぼ同水準だ。「しかもインスタの情報発信をベースにしているのでウェブ広告費をほとんど使っておらず、損益分岐点がかなり低い。GVOの場合は1ブランドあたり月商400万円が損益分岐点になっている」。

 GVOは、アパレルビジネスのデジタル・トランスフォーメーション(DX)革命を掲げる。自社ブランドで蓄積してきたSNSのノウハウに加え、3Dグラフィックを駆使したバーチャルサンプルによるネット販売を、外部にも提供を始めた。その第一弾が、インフルエンサーのAMIAYAがプロデュースする「ジュエティ()」と協業だ。ロングスリーブTシャツやオーバーサイズのパーカなど4アイテムを、3Dグラフィックで制作したバーチャルサンプルを通販サイトに掲載し、販売する。「3Dグラフィックを使えば、AMIAYAの1枚の写真を使って全部のアイテムを着せ替えることだってできる。実際に『ジュエティ』で販売した4アイテムはAMIAYAからマネキンの着用画像まですべてを3Dグラフィックで制作した。この仕組みを使えばインスタで先に画像を公開し、人気のあるものだけを作るということも可能」という。

 ただ、実は現在でもどんな高性能のアパレルCADソフトウエアでも、3Dグラフィックで制作したデータを2次元のパターンデータに落とし込むことはできない。GVOもインスタグラムのインサイトから必要な発注枚数を推測できても、シームレスに生産現場とつなぐことはできていない。だが野田はそこに大きな商機があると感じている。「実はアパレルCAD会社のKLO、東証マザーズ上場のテック開発ベンチャーのサンアスタリスクと組んで、この部分の開発を進めている。世界中の優れたCAD会社が取り組んでいてもまだ実現できていないほど難しいことはわかっている。ただ、だからこそ挑戦したい」と意気込む。

 来年4月には出資を受けた丸井と組んで、新宿マルイに新たなライブコマース売り場の開設を計画する。先行して販売員1000人を採用しライブコマース型のECモールを開設、30坪ほどの新宿マルイの売り場には端末と試着サンプルを配し、これまでにないライブコマース売り場をスタートさせる計画だ。

 野田CEOは今、来年3月をめどにシリーズAラウンドの資金調達のため、投資家たちを訪ね歩いている。すでにいくつもの自社ブランドを持ち、安定した収益構造を持つGVOは大風呂敷を広げがちな他のスタートアップとは一線を画す。つい数年前までアパレルの知識も経験もなく、それどころかまともな職歴すらなかった28歳の野田CEOが、アパレル業界の経験豊富なベテランこそが直感する、“2次元と3次元を融合した完全なアパレル3DCAD”を軸にしたアパレルDX革命という大本命の答えに行き着いたのは、現場で泥臭く仕事をしてきたからだ。雑草発アパレルDX革命のゆくえに注目したい。

The post インスタとテックを駆使、28歳の“雑草系起業家”野田貴司が目指す「アパレルDX革命」 appeared first on WWDJAPAN.com.