ブランドロゴを配したアイテムの数々も際立った。ロックバンドのナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)のロゴ風に仕上げた“NAP”の文字がまばらに付いたスエットやTシャツをはじめ、定番のトラックスーツはレッドとネイビーの新色で登場。「時代的にロゴが入っていた方が売れるじゃないですか?(笑)。何を着ているのかが誰でもわかるように意識してロゴは付けた」。
今季の出発点は、ローマの映画監督ピエル・パオロ・パゾリーニ(Pier Paolo Pasolini)の詩情あふれる作品。その世界を通して、フェンディの本拠地であるローマを探求したようです。「パゾリーニは近代化していくローマを目の当たりにした。時代をつなぎ、古きものと新しきもの、過去と現在を結びつけること、そこにこそ私は興味を引かれる」とキムが語るように、コレクションのポイントは異なる時代を重ね合わせるような手法です。例えば、1800年台半ばや1920年代に作られたドレスのファーやファブリックをスキャンして、シルクジャカードで表現。カットアウトやクリスタルビーズの刺しゅうを施し、新たなアイテムを生み出しています。また、「フェンディ」の象徴でもあるファーアイテムは、大半が再生されたものを使用しているそうで、タイルのような小さなファーパーツを並べたデザインも印象的でした。
ちなみに美しい映像は、映画「君の名前で僕を呼んで(Call Me By Your Name)」や「ミラノ、愛に生きる(Io sono l'amore)」で知られるルカ・グァダニーノ(Luca Guadagnino)監督が手掛けたもの。スローなカメラワークや意味深にカメラを見つめるモデル、神秘的かつ壮大な音楽でノーブルな雰囲気を演出しつつ、クローズアップを効果的に取り入れることで贅を尽くした服のディテールを伝えています。
最後のアポは、レバノン・ベイルート発の「エリー サーブ(ELIE SAAB)」。2月中旬〜3月初旬に発表された2021-22年秋冬のプレタポルテで台頭した“オプティミスティック(楽観的で前向きな感覚)”で明るい未来への希望を込めたようなクリエイションは、クチュールでも顕著で、こちらもテーマは“希望の芽(Bud of Hope)”でした。ただ新型コロナウイルスだけでなく、20年8月に起こったベイルート港の巨大爆発事故による被害などレバノンが抱える苦難を乗り越えた先をイメージしたそうです。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員
朝一番に訪れたのは、オランダ大使館。アムステルダムを拠点にする「RVDK ロナルド ファン デル ケンプ(RVDK RONALD VAN DER KEMP)」のプレゼンテーションを見に行ってきました。エントランスには注射器が置かれていたのですが、今季のテーマは“マインド ワクチン(Mind Vaccine)”。デザイナーのロナルドは、ヨーロッパでは新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、皆が解放感を感じると共に急速に元の生活に戻ろうとしていることを不安にも感じたそう。そこで、実際に気持ちを落ち着かせてくれるCBDオイルベースのペーストを開発。限定販売するらしく、「史上初のデザイナードラッグだよ。でも、合法でエシカルなやつね(笑)」と話していました。
ユーモアやアイロニーを感じるテーマを掲げることが多い「ヴィクター&ロルフ」ですが、今シーズンのテーマは“ザ ニュー ロイヤル(The New Royal)”。体裁を保ちながらも人間らしさが垣間見える新世代のロイヤルファミリーから着想を得たそう。「ファッション業界にも確固たるヒエラルキーがあり、それは王室や階級制に通じる。あえて“フェイク”と呼ばれるものを使って、高揚感のあるコレクションを作りたかった」とヴィクターは話していました。その言葉通り、上流階級を象徴するようなスタイルを、人工ファー(生分解可能なものだそう)やラフィア、キッチュなビジューやパール、「メリッサ(MELISSA)」とのコラボバッグやシューズなど伝統的なクチュールとはかけ離れた素材や装飾で解釈しているところが、“ファッション・アーティスト”と呼ばれる彼ららしいですね。“SIZE QUEEN”や“Don’t be Drag just be a QUEEN”など、コートの上にかけたサッシュのフレーズもウィットに富んでいます。
ちなみにショー中盤の音楽が日本語っぽく聞こえるなーと思っていたら、1983年に岩本清顕が発表した「Love Will Tear Us Apart」を、大阪を拠点に活動する2人組ミュージシャンの千紗子と純太が2020年にリワークした楽曲が使われていました。まさか本人たちも「シャネル」のショーに使われるなんて、想像もしていなかったでしょうね〜。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員
会場は、かつて創業者アズディン・アライアが暮らし、今でもアトリエや本店を構えるマレ地区のムシー通り「アライア」2022年冬春コレクション COURTESY OF ALAIA「アライア」2022年冬春コレクション COURTESY OF ALAIA「アライア」2022年冬春コレクション COURTESY OF ALAIA「アライア」2022年冬春コレクション COURTESY OF ALAIA
オランダ発の「イリス ヴァン ヘルペン(IRIS VAN HERPEN)」は、実際に見られることを楽しみにしていたブランドの一つだったのですが、パリにはコレクションを持ってこないことになったそうで、残念ながら映像で見ることに。手仕事とテクノロジーを掛け合わせて作られる彼女の服には、いつも異世界の生物のような神秘的な美しさや生々しさが漂います。今季の映像は、そんな服にマッチする壮大な岩山を舞台に撮影。スローモーションを生かして、羽衣のような生地が風をはらむ様子や神々しい雰囲気が存分に表現されていました。そしてラストには、なんとスカイダイバーが登場!繊細なクチュールを着てスカイダイビングだなんて、前代未聞ですよね(笑)。このドレスは時速300kmでの降下という負荷に耐えられるように何度もテストを重ねて作られ、4回ダイビングを行って撮影されたそうです。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員
イタリアのイスキア島で開催された「マックスマーラ」2022年リゾート・コレクションのショー Courtesy of Max Maraイタリアのイスキア島で開催された「マックスマーラ」2022年リゾート・コレクションのショー Courtesy of Max Maraイタリアのイスキア島で開催された「マックスマーラ」2022年リゾート・コレクションのショー Courtesy of Max Maraイタリアのイスキア島で開催された「マックスマーラ」2022年リゾート・コレクションのショーショー会場のホテル メッツァトーレ Courtesy of Max Maraイアン・グリフィス「マックスマーラ」クリエイティブ・ディレクター Courtesy of Max Mara
「マックスマーラ」2022年リゾート・コレクション Courtesy of Max Mara「マックスマーラ」2022年リゾート・コレクション Courtesy of Max Mara「マックスマーラ」2022年リゾート・コレクション Courtesy of Max Mara「マックスマーラ」2022年リゾート・コレクション Courtesy of Max Mara「マックスマーラ」2022年リゾート・コレクション Courtesy of Max Mara「マックスマーラ」2022年リゾート・コレクション Courtesy of Max Mara「マックスマーラ」2022年リゾート・コレクション Courtesy of Max Mara「マックスマーラ」2022年リゾート・コレクション Courtesy of Max Mara「マックスマーラ」2022年リゾート・コレクション Courtesy of Max Mara「マックスマーラ」2022年リゾート・コレクション Courtesy of Max Mara「マックスマーラ」2022年リゾート・コレクション Courtesy of Max Mara「マックスマーラ」2022年リゾート・コレクション Courtesy of Max Mara「マックスマーラ」2022年リゾート・コレクション Courtesy of Max Mara「マックスマーラ」2022年リゾート・コレクション Courtesy of Max Mara
ベージュやキャメル、白、黒といった落ち着いたカラーパレットに彩りを添えるのは、鮮やかな赤やフューシャ、そして優しいベビーピンク。「喜びに満ちた高揚感のある色合いは、“スワン”がパリで滞在していたオテル プラザ アテネ(Hotel Plaza Athenee)の外観を象徴するとともに、リサーチする中で彼女たちの写真にもよく写っていたゼラニウムのグラデーションからとったもの。それは、イスキア島のいたるところに見られる花々にも通じる」。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員
映像で発表した「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」は“Greetings From Antwerp”がテーマ。映像はデザイナーのドリスから届いたグリーティングカードのような内容で、ブランドの拠点であるベルギー・アントワープの街並みを背景にルックが次々に入れ替わります。全体的にイージーフィットで、ショーツやシャワーサンダルなどのラフなアイテムがリラックスムードを後押し。BGMのプライマル・スクリーム(Primal Scream)“Loaded”ともぴったりの雰囲気で癒されました。全体は落ち着いた色使いで、時折差し込むポップなカラーのグラフィックがエネルギッシュ。ドリスからのグリーティングカードを言葉で表現するなら、「僕はアントワープで元気にやってるよ。離れていてもお互い頑張ろうね!」といったポジティブなメッセージを受け取りました。
2012年に設立された「オフィシン ジェネラーレ(OFFICINE GENERALE)」のショーはとってもリアルクローズ。会場はドーバー ストリート マーケット パリ(DOVER STREET MARKET PARIS)の店舗としてリノベーション中の、オテル・パティキュリエ(Hotel Particulier)です。今季は仕立て屋だった祖父のスタイルをベースに、ロックダウン中に見かけたパリジャンからインスピレーションを多く受け取ったそうです。テーラードとスラックスにTシャツを合わせたり、かぎ編みニットとショーツのスタイリングなど、パリの高級住宅地16区を歩いていると見かけるパリジャンそのもの!ルックの中で一番パリジャンらしくて“あるある”なのが、テーラードジャケットを腰に巻いちゃうラフなスタイルです。
6月25日 19:30 ヴェトモン
「ヴェトモン」が発表した映像より
「ヴェトモン(VETEMENTS)」はメンズとウィメンズの129ものルック画像が高速で切り替わる動画を約1カ月前に発表済み。今回のパリメンズの公式スケジュールでは“Secret Project”と題したティザー動画を公開しました。ただし動画だけでは詳しい内容は謎のまま。リリースには「ヴァザリア・ファミリー財団(Gvasalia Family Foundation)は、若い才能のための多次元プラットフォームとなる新しい実験的ラボを開始します。これはいつの日か、コワーキングスペースを再定義し、経験を共同制作することで、従来のコングロマリット構造に取って代わる可能性があります」と記されていました。プロジェクトは生産から流通、財政支援を提供するもので、ビッグプロジェクトの第1弾として7月22日に新ブランドをローンチするようです。今のところ情報は以上!とりあえず今は、焦らされながら待ちましょう。
6月25日 20:30 ゲーエムベーハー
「ゲーエムベーハー」2022年春夏パリ・メンズ・コレクション
パリメンズ4日目の最後は、「ゲーエムベーハー(GMBH)」のデジタル発表です。「なんともコメントしずらいなぁ」と、映像を見た直後にポロッと本音が漏れました。映像の最初にテーマ“White Noise”と表示された瞬間から何かイヤな予感が……。トルコ系ドイツ人のセルハト・イシク(Serhat Isık)とノルウェーとパキスタンにルーツを持つジャミン・A・フゼビー(Benjamin A. Huseby)の中東系のデザイナーデュオが付けたタイトルなので、Whiteは白ではなく“白人”を意味していると容易に分かりました。Noiseの直訳は“雑音”で、白人に対してあまりポジティブな表現ではありません。キャスティングされたのは、茶褐色系の肌の色をしたモデルのみ。ルックはどこかに白を使うか、白で薄めた色(淡いパープル、ピンク、ブルーなど)が用いて“白”を探求したのでしょう。上下デニムやファー、乗馬ブーツなどが登場しましたが、まとまりがないうえに新鮮さもなく、私の頭の中は(???)だらけ。“Free Palestine(パレスチナ解放)”の文字だけが、宗教と政治の問題により中東の国々で衝突が激しさを増す今を象徴するもので、それ以外のデザインは意図が正直分かりません。
「クレージュ(COURREGES)」は、アーティスティック・ディレクターのニコラ・デ・フェリーチェ(Nicolas Di Felice)が手掛ける初のメンズコレクションをデジタル形式で発表しました。「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「ディオール(DIOR)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の各ウィメンズウエアで経験を積んだ彼にとって、メンズウエアの制作は初めて。テーマはウィメンズの続編として“I can feel your heartbeat - Part II(あなたの鼓動を感じる)”と名付け、映像も白い壁のセットの中を歩く、同じ内容です。最後に壁が倒れて外の自然風景が現れた瞬間は、抑制からの解放を表現しているようでした。ウィメンズのデビューコレクションが素晴らしかったので期待しすぎたのか、インパクトのあるルックは残念ながら見当たりませんでした。ウィメンズでは、構築的なデザインで直線と曲線を巧みに交差させる視覚的効果によってドラマチックに映りましたが、メンズではそのような印象はなく、ミニマルにまとめすぎかも。実物を見ると、シルエットやデザインに特徴を見つけられるのか?後日行く展示会場でしっかり見てきますね。
「クレージュ(COURREGES)」は、アーティスティック・ディレクターのニコラ・デ・フェリーチェ(Nicolas Di Felice)が手掛ける初のメンズコレクションをデジタル形式で発表しました。「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「ディオール(DIOR)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の各ウィメンズウエアで経験を積んだ彼にとって、メンズウエアの制作は初めて。テーマはウィメンズの続編として“I can feel your heartbeat - Part II(あなたの鼓動を感じる)”と名付け、映像も白い壁のセットの中を歩く、同じ内容です。最後に壁が倒れて外の自然風景が現れた瞬間は、抑制からの解放を表現しているようでした。ウィメンズのデビューコレクションが素晴らしかったので期待しすぎたのか、インパクトのあるルックは残念ながら見当たりませんでした。ウィメンズでは、構築的なデザインで直線と曲線を巧みに交差させる視覚的効果によってドラマチックに映りましたが、メンズではそのような印象はなく、ミニマルにまとめすぎかも。実物を見ると、シルエットやデザインに特徴を見つけられるのか?後日行く展示会場でしっかり見てきますね。
見どころ:「タエ アシダ」から招待状と一緒に、桜とツツジの盆栽が届きました!植物の美しさに癒されつつ、自然に囲まれた邸宅の写真を載せた招待状のビジュアルに惹かれて、今日のコレクションを楽しみにしていました。今季は「La maison dans la foret(森のなかの邸宅)」というテーマの通り、邸宅内で撮影した動画を発表しました。室内ということで、ランウエイよりもリアリティーを演出でき、着用シーンも想像しやすいですね。特に目を引いたのは、モコモコしたシャギーニット。ニットドレスはほっこりした印象になりやすいですが、イエローとブラック、パープルの配色と、Aラインのシルエットで上品に提案していて、ドレスアップのオケージョンでも着用できそうです。またプレスノートに書かれた「長いコロナ禍を経て、一歩踏み出すエネルギーを込めた」という芦田多恵デザイナーのポジティブなメッセージにも共感しました。(大杉)
見どころ:金木志穂が手掛ける「ベースマーク」は、東コレ2回目の参戦。“CROSS THE LINE”をテーマに、クラシカルな西洋の伝統とモダンな東洋のカルチャーを融合しました。得意とする異素材のミックスや、クラシックなアイテムをモードに昇華するテクニックは健在。東洋でお守りや魔除けとして使われるフリンジの装飾が付くアイテムをはじめ、オリジナル素材にジャージーを斜めにドッキングしたセットアップ、ダッフルコートの袖や後ろ身頃の半分をパイルジャカードで切り替えたアウターなどを提案しました。これだけのテクニックを駆使しながら、コレクションピースで約12万円というコスパにもビックリ。これまでウィメンズブランドとして活動してきましたが、今シーズンからは男性モデルをムービーに起用するなど、ユニセックスブランドとして打ち出しています。個人的ネクストブレイク筆頭候補です!(大澤)
渡辺淳弥が手掛ける「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン(JUNYA WATANABE COMME DES GARCONS)」は2021-22年秋冬コレクションのファッションショーを3月15日に行った。従来パリで発表している同ブランドが東京でショーを行うのは、1993年4月の93-94年秋冬シーズン以来28年ぶり。会場となった東京・豊洲の大型ライブハウス、豊洲PITに入場するとギターやドラムセットが舞台上に並んでおり、今にもライブが始まる雰囲気だ。
ショーは米ロックバンド、エアロスミス(Aerosmith)の楽曲「Back in the Saddle」のライブ盤をBGMにスタート。スモークの中から出てきたファーストルックのモデルは、背面に「ヴェルサーチェ(VERSACE)」の代表的なバロッコ柄のスカーフ地を配したエアロスミスのロックTシャツに、サイドプリーツを加えたジーンズを着用。顔は黒く囲んだアイメイクに鼻ピアス、チェーンネックレスを合わせたロックガールで、曲に合わせて踊るようにポーズをとった。
キーアイテムはロックTシャツだ。エアロスミスに続いて、クイーン(Queen)、ザ・フー(The Who)、キス(KISS)、デフ・レパード(Def Leppard)、セックス・ピストルズ(Sex Pistols)、AC/DC 、ブラック・サバス(Black Sabbath)、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)、ザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)など、主に1970年代に名を馳せたロックバンドのアルバムジャケットやロゴのモチーフを使用している。目を引くスカーフ風のテキスタイルは「ヴェルサーチェ」との初のコラボレーション。6種類の代表的なスカーフ柄を採用し、Tシャツやボトムスを彩った。デニムは「リーバイス(LEVI’S)」との協業で、定番モデルの“501”から37年、47年、66年、77年の4つの時代のモデルをベースに再構築している。「リーバイス」とはメンズの「コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン(COMME DES GARCONS JUNYA WATANABE MAN)」で長年コラボを続けているが、ウィメンズでは初。ウィメンズのデニムブランド「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン デニム(JUNYA WATANABE COMME DES GARCONS DENIM)」からのアイテムとなる。他にもミリタリージャケットやコートをはじめ、スタジャンやネルシャツ、テーラードジャケット、白シャツにネクタイなど、鉄板のロックスタイルに、異素材やプリーツを掛け合わせた。
■ショーのセットリスト
1. Back in the Saddle / エアロスミス
2. Seven Seas of Rhye / クイーン
3. Baba O'Riley / ザ・フー
4. Detroit Rock City / キス
5. Photograph / デフ・レパード
6. Anarchy in the U.K. / セックス・ピストルズ
7. Hells Bells / AC/DC
8. Sympathy for the Devil / ザ・ローリング・ストーンズ
見どころ:14年にスタートした「ミーンズワイル」は、テーマ“FORM FOLLOWS FUNCTION , FUNCTION FOLLOWS FORM”を掲げてコレクションを発表。前シーズンのテントを意識した立体的なフォルムの要素は抜け、フロントに2本のファスナーを用いたMA-1やマウンテンパーカ、ハンティングベスト、ムートンジャケットなど、リアルで着やすい機能的なアイテムを数多く提案しました。そのほかリフレクターのラインが特徴の異素材を組み合わせたスエットや、木目調のジャケットとラップパンツを合わせた新しいスタイルも提案しました。個人的にはオレンジのダウンジャケットにケープがレイヤードされたルックがツボでした。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員
「ジョン ローレンス サリバン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)」は、2021-22年秋冬コレクションのランウエイショーを東京・寺田倉庫で開催した。同ブランドが東京でショーを行うのは10-11年秋冬シーズン以来11年ぶりで、柳川荒士デザイナーが「海外進出以降、ショーを直接見ることができなかった日本のファンの皆様に向けて披露したい」と企画した。会場にはメディアやバイヤーなど業界関係者のほか、モデルの鈴木えみやOKAMOTO'S(オカモトズ)のオカモトショウといったブランドと親交のあるセレブと、学生を含む幅広い世代の顧客が多数来場した。
ランウエイは観客と観客の間にできた20メートルほどの道をモデルたちが闊歩するシンプルな内容で、特別な演出は一切なし。BGMも美しいピアノの音色が印象的なエイフェックス・ツイン (Aphex Twin)の「Avril 14th」で幕を開け、ルックをシンプルに見せた。「ロンドンでは過剰なほどアグレッシブに見せることもあったが、服が強ければ自然と観客に伝わる」。しっとりしたムードの後は、ナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)のゴリゴリなメタルソング「March Of The Pigs」が爆音で鳴り響き、会場のボルテージが急上昇。デジタルでは伝わらない、リアルショーならではの熱気に包まれた。
ジャズシンガーのビリー・ホリデイ(Billie Holiday)の伝記映画、「The United States vs. Billie Holiday(邦題未定)」を監督したダニエルズは、主役を演じるグラミー賞ノミネート経験もあるシンガーソングライター、アンドラ・デイ(Andra Day)が劇中で着用する衣装を「プラダ」に依頼した。ダニエルズは、「無観客のファッションショーではフロントローのセレブなどほかに目を向ける存在がいないため、コレクションから目を離さずにひたすら集中することになる」と指摘した。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員
大杉:「トッズ(TOD’S)」は詩を読み上げるようなナレーションが入った素敵な映像でした。“IN A MOMENT”をテーマに女性の多面性を、さまざまなアングルからとらえています。ヴァルター・キアッポーニ(Walter Chiapponi)による3シーズン目のコレクションとなりましたが、どんどんヴァルターらしさが分かってきた気がします。バッグとシューズはシンプルでモダンなデザインですが、どこか印象に残るキャッチーさがあります。
村上:それが真骨頂なのはわかっているけれど、今季の「カサブランカ(CASABLANCA)」はちょっとToo Much レトロだったかな。極彩色のボウタイ付きシルクブラウス、全面ダイヤモンド柄のニット、70’Sなロゴモチーフのバッグなど、ちょっとコスプレ感が強かったかも。でも今の時代に必要なポジティブさをギュギュっと詰め込んだのかな?「うわぁ」と歓声を上げてしまうようなムービーに仕上がっているのは確かです。
メディアのモニタリングや分析を行うDMRグループ(DMR GROUP)が算出したソーシャルメディアでのキャンペーンにおける価値を意味するEMV(Earned Media Value)の値を見ると、21年春夏シーズンに行われた4つファッションウイーク(ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリ)のうちEMV値が最も高かったのはパリコレで、SNSを含むウェブ上での視聴数も最高値を記録した。
フランスオートクチュール・プレタポルテ連合会(Federation de la Haute Couture et de la Mode以下、サンディカ)は、ファッション、ラグジュアリー、ビューティ分野のデータテクノロジー企業、ローンチメトリックス(LAUNCHMETRICS)と提携して、サイトの見やすさやマガジンセクションの流動性の向上やスケジュールページの明確化を図っており、今回のパリコレではデジタルプラットフォームの訪問者数が7月に行われたオートクチュール・コレクションおよびメンズ・コレクションを合わせた20万2000よりも多い23万を記録し、ページビューも7月の49万から60万6000に上昇した。
村上:「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は、他のブランドよりも一足早く、21年プレ・フォール・コレクションに相当する21年サマー・コレクションを発表ですね。このブランドのサイクルは独特で、メインと次のプレで1つのストーリーが完成。つまり今回の21年プレ・フォールは、7月に発表したコレクションの続き、ですね。確かに、全体のシルエットは7月発表のコレクションよりも落ち着いている印象だけど、ボロボロのニットやロゴ入りのスエット、カラフルなトートバッグなど似たようなアイテムもチラホラ。モノすごく新しいとは思わなかったけれど、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)らしいクリエイションですね。サステナブルへの取り組みを明言しているけれど、これまでの残反やアーカイブも使っているのかな?アイデアが枯渇しないためにも、考え自体も使い捨てず、次に繋げる考えは賛成です。気になったのは、BGMの「Sunglasses at Night」でしょうか?元々は、好きな女の子のウソを直視したくないから夜でもサングラスっていう男の子の歌だと思うんだけど、その曲を今、用いた理由はなんだろう?業界の悪しき慣習に対するアンチテーゼ??
丸山:音楽はコリー・ハート(Corey Hart)の1983年の曲「Sunglasses at Night」をデムナと長年組んでいるプロデューサー、BFRNDがカバーしたものでしたね。ちなみに最後に仲間と合流したラストルックのモデルがBFRNDです。映像では曲の通り夜なのにサングラスをしたモデルがパリの街をガツガツ歩きます。勝手に3Dを駆使したSFチックな映像が来るのではないかと想像して身構えていたので意外でした。でも、デムナは事前インタビューでこのコレクションでは2030年のファッションを思い描こうとしたと明かしています。2030年ですが「レトロフューチャリスティックなスタイルの提案ではなく、何が必要不可欠でサステナブルかということをより探求するということ」だそうで、見たこともない新しいものというより、デムナが10年後も残ると思うエッセンシャルなアイテムを集めたコレクションだったのではないでしょうか。1983年の曲を使ったのも、それが現代まで残っているからなのかなと思いました。ですがフーディーを着ずに頭からかけたり、イブニングドレスにスリッパを合わせたり、ティックトック(TikTok)のように歌詞に合わせてモデルが口パクする演出など、どこか違和感のある要素は健在でした。違和感というのは新しいものを初めて見るから生まれる感情でもあると思うのですが、昔からあるものを違う見せ方をしているので新しいように感じます。ちなみにユーチューブでは映像をずっとループさせて見せていて、かれこれ十数時間ライブしているのですがいつまでやるのでしょう?
遠い未来の宇宙からユーモアを届けた「トム ブラウン」
丸山:「トム ブラウン」はリアルのショーと同じようにデジタルでもユーモアたっぷりな映像を公開。まず設定から、22世紀の月で開かれたスポーツ大会「2132 LUNAR GAMES」の開会式の実況とぶっ飛んでます。会場は実在のスタジアム、ロサンゼルス・メモリアル・コロシアム(Los Angeles Memorial Coliseum)なのですが、実況者によれば過去のアーカイブから再現したものだそう。スタジアムを埋め尽くす観客は全員「トム ブラウン」を着用。オリンピックの開会式で選手が正装で入場してくるときのように、最新コレクションをまとった選手が、各競技を現したロゴが描かれた旗とともに入場してきます。最後はトム・ブラウンの愛犬ヘクターをモデルにした犬型の宇宙船がスタジアム上空に現れ、双子のスター選手が宇宙船から降りた後、「トム ブラウン」のライターで聖火を灯すという、ツッコミ満載な映像でした。コレクションは白を基調にしていましたが、これは希望を表しているそう。デジタルでも変わらないユーモアを希望とともに届けてくれたトム・ブラウンに感謝です。
村上:「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は、他のブランドよりも一足早く、21年プレ・フォール・コレクションに相当する21年サマー・コレクションを発表ですね。このブランドのサイクルは独特で、メインと次のプレで1つのストーリーが完成。つまり今回の21年プレ・フォールは、7月に発表したコレクションの続き、ですね。確かに、全体のシルエットは7月発表のコレクションよりも落ち着いている印象だけど、ボロボロのニットやロゴ入りのスエット、カラフルなトートバッグなど似たようなアイテムもチラホラ。モノすごく新しいとは思わなかったけれど、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)らしいクリエイションですね。サステナブルへの取り組みを明言しているけれど、これまでの残反やアーカイブも使っているのかな?アイデアが枯渇しないためにも、考え自体も使い捨てず、次に繋げる考えは賛成です。気になったのは、BGMの「Sunglasses at Night」でしょうか?元々は、好きな女の子のウソを直視したくないから夜でもサングラスっていう男の子の歌だと思うんだけど、その曲を今、用いた理由はなんだろう?業界の悪しき慣習に対するアンチテーゼ??
丸山:音楽はコリー・ハート(Corey Hart)の1983年の曲「Sunglasses at Night」をデムナと長年組んでいるプロデューサー、BFRNDがカバーしたものでしたね。ちなみに最後に仲間と合流したラストルックのモデルがBFRNDです。映像では曲の通り夜なのにサングラスをしたモデルがパリの街をガツガツ歩きます。勝手に3Dを駆使したSFチックな映像が来るのではないかと想像して身構えていたので意外でした。でも、デムナは事前インタビューでこのコレクションでは2030年のファッションを思い描こうとしたと明かしています。2030年ですが「レトロフューチャリスティックなスタイルの提案ではなく、何が必要不可欠でサステナブルかということをより探求するということ」だそうで、見たこともない新しいものというより、デムナが10年後も残ると思うエッセンシャルなアイテムを集めたコレクションだったのではないでしょうか。1983年の曲を使ったのも、それが現代まで残っているからなのかなと思いました。ですがフーディーを着ずに頭からかけたり、イブニングドレスにスリッパを合わせたり、ティックトック(TikTok)のように歌詞に合わせてモデルが口パクする演出など、どこか違和感のある要素は健在でした。違和感というのは新しいものを初めて見るから生まれる感情でもあると思うのですが、昔からあるものを違う見せ方をしているので新しいように感じます。ちなみにユーチューブでは映像をずっとループさせて見せていて、かれこれ十数時間ライブしているのですがいつまでやるのでしょう?
遠い未来の宇宙からユーモアを届けた「トム ブラウン」
丸山:「トム ブラウン」はリアルのショーと同じようにデジタルでもユーモアたっぷりな映像を公開。まず設定から、22世紀の月で開かれたスポーツ大会「2132 LUNAR GAMES」の開会式の実況とぶっ飛んでます。会場は実在のスタジアム、ロサンゼルス・メモリアル・コロシアム(Los Angeles Memorial Coliseum)なのですが、実況者によれば過去のアーカイブから再現したものだそう。スタジアムを埋め尽くす観客は全員「トム ブラウン」を着用。オリンピックの開会式で選手が正装で入場してくるときのように、最新コレクションをまとった選手が、各競技を現したロゴが描かれた旗とともに入場してきます。最後はトム・ブラウンの愛犬ヘクターをモデルにした犬型の宇宙船がスタジアム上空に現れ、双子のスター選手が宇宙船から降りた後、「トム ブラウン」のライターで聖火を灯すという、ツッコミ満載な映像でした。コレクションは白を基調にしていましたが、これは希望を表しているそう。デジタルでも変わらないユーモアを希望とともに届けてくれたトム・ブラウンに感謝です。
ハードウエアに加えて、今シーズンのウエアの鍵となるのは、直線的なテーラリングとハードなテクスチャーやプリントだ。「今の時代、メンズとウィメンズは流動的がいい」という考えから、共通した素材やシルエットを採用したアイテムも多い。テーラードジャケットやコートはボクシーなシルエットで、ウィメンズでは“グラブ・スリーブ”と呼ぶ袖を浮かせたようなデザインを提案。一方、メンズは隠しボタンもしくはハードウエアの留め具で仕上げた。そのクリーンな印象と相反するように組み合わせるのは、溶岩やひび割れた地表のような荒々しいテクスチャーに加工したジーンズや型押しクロコダイルレザーのアイテム、タトゥーのようなグラフィック。オーバーサイズのスタンドカラージャケットやアノラックなど、カジュアルなアイテムもある。また、「アーカイブから創業者ユベール・ド・ジバンシィ(Hubert de Givenchy)の透け感のある素材使いや装飾を研究し、それをいかにモダンに表現できるかに取り組んだ」とウィリアムズが語るように、ウィメンズのイブニングでは、ビジューやパールを飾ったシアドレスや背中の大きく開いたニットドレスなどセンシュアリティーを探求した。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員
「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」もデジタルでショー形式の映像を発表しましたが、パリのショールームでもインスタレーションを行うと聞きつけて行ってきました。今季のテーマは“UNPACK THE CONPACT”(「コンパクトにしたものを広げて」的な意味)なのですが、パリに小さく畳んだり丸めたりしてコンパクトにまとめたコレクションが到着。アートのように飾られていました。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員
丸山:「エマニュエル ウンガロ」は水玉模様がアイコンの一つなんですね。映像もそういったブランドヒストリーがわかるようなものにしたらよかったのに、と思ってしまいました。服をクロースアップで見たり質感をチェックしたい!というバイヤーやECサイトに掲載するのにはよさそうですが、他のブランドがコロナ禍を経て自らを振り返り、ブランドのヘリテージを打ち出すような映像やコレクションを見せている中で「エマニュエル ウンガロ」は素晴らしい創業者がいるにもかかわらずそうしたストーリーを読み取ることができなかったのは残念でした。パリコレの公式スケジュールに参加するのは数年ぶりとなるのですが、主催のフランスオートクチュール・プレタポルテ連合会(Federation de la Haute Couture et de la Mode、サンディカ)がパリコレを盛り上げるのに参加を頼みこんだのでしょうか。
村上:コレクションは、こんな時だからこそ「ファッションの芸術性を」と考えたジョナサンによる、ボリュームを誇張したドレスの目白押し。マリー・アントワネット(Marie-Antoinette)の世界のようでもあり、「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」のファッションショーのようでもあり、という印象でした。パフスリーブも、フィット・アンド・フレアのドレスのスカートも巨大。そこに細かなラッフルや、メンズでも登場したレザーのバスケット編みなどのクラフツマンシップも加わり、アートピースのようでもありました。「実際、着れるか?」と問われるとなかなか難しいところも多いけれど、多くのブランドがストレスフリーを意識してシンプルを目指す中、シンプルを目指す中、こういうアプローチがあっても良いよね。「洋服どころじゃない」という人が、「洋服って、やっぱり素敵」と思ってくれたら、ジョナサン、とっても喜びそうです(笑)。
村上:「UNPACK THE COMPACT」と題した「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」のムービーが面白かった!パッカブルで小さなバッグに収納できるジャケットとか、クルクル丸められるプリーツウエアなど、コレクションは全部「コンパクト(COMPACT)」な形に収まるんだけど、ひとたび広げて、重ねて、合わせて、なんて作業をすると、どれもが素敵なドレスやトップス、パンツに早変わり!!でしたね。
村上:こういう工夫は男子が大好きな気もするけれど、女性にも響くのかな?深読みかもしれないけれど、「おうち時間」が長くて、生活圏が「コンパクト」になっている今だからこそ、響くのかもしれません。遠くない将来、再び世界中を自由に行き来できるようになったら、それはまさに人類の「UNPACK THE COMPACT」。小さなバッグを広げると素敵に早変わりする「イッセイ」の洋服のように、僕らの未来も近いうちにまた素晴らしいものになるというメッセージを発信してくれたように感じます。それぞれの洋服の動きを収めたムービーも楽しかった。プリーツの入ったプルオーバーはクリオネみたいに見えたけれど、「あぁ、一枚の布って、ホントに命を持っているようだなぁ」と感じました。
丸山:そうですね。最近はアーティストとのコラボなどで色鮮やかなアイテムが登場するコレクションもあったのですが、今季はフォルムを大事にしたミニマルなコレクションでした。最後に出てきたワイヤーで形作ったクリノリンをベースにしたドレスは、凛とした強さもありながら脆さや儚さもあり、美しかったです。最後は百合の花びらのようなフォルムのオールホワイトのルック群がショーを締めくくりました。フィナーレに登場した耀司さんの背中には、“HEART OF GLASS(ガラスのハート)”とありました。ブロンディ(Blondie)を代表する曲でもありますよね。ただ、自分はショーの音楽を聴いて終始ドキドキしていました。というのも、「ヨウジヤマモト」のショーの音楽は耀司さんの歌声であることが多いのですが、今回は“This is the very last to sit this chair(この椅子に座るのはこれが本当に最後)”という歌詞が登場したり、“Sayonara”というフレーズを振り返して歌うので、「まさかこの後引退発表したらどうしよう」「だからショー後のバックステージ取材を受けてくれた?」「しかも耀司さんは今日が誕生日!これは偶然?」などあらゆる考えが頭をぐるぐる回ります。しかし、藪野さんによるバックステージ取材で完全に私の早とちりだったことが判明。ショーの曲は男女の別れを歌ったそうです。早とちりで本当によかった!
美濃島:「ケンゾー」から少し時間が空いて、パリコレの公式サイトに戻ってきたんですが、「ゴシェール(GAUCHERE)」は定刻になっても全然始りませんね……。“Digital available soon”の表記が出されたまま更新されず、次のショーの時刻になってしまいそうです。“soon(もうすぐ)”とは一体いつなんでしょう(笑)。リアルでもショーをしているはずなのですが、もしかしてその映像はライブ配信せず、編集したものを後日公開するのでしょうか?
丸山:ブライダルドレスやイブニングドレスを得意とする「エリー サーブ(ELIE SAAB)」の今季のテーマは“HYMNE A LA VIE(人生の賛歌)”。孤独から目覚め、人生を謳歌するエネルギーあふれる女性を描きました。「エリー サーブ」はレバノンのベイルート拠点で、アトリエも8月に起こった大爆発の被害に遭ってしまったんだけど、それを乗り越える気概を見せてくれるような強いテーマです。
丸山:ランウエイでは序盤にデイリーウエアを、終盤でイブニングドレスを見せるのが王道だけど、「エリー サーブ」が公開した映像も徐々に空が暗くなって、ルックもより装飾的でフォーマルになっていったね。少し気になったのは、有色人種のモデルが少なく、カメラのフォーカスも全然当たっていなかったこと。ブランドから届いたリリースには、「not one woman is the same nor wants to be(女性は誰一人として同じではないし、同じになりたくもない)」というメッセージがあっただけに、違和感を感じたな。
美濃島:中東系の人はところどころで見られましたが、アジアやアフリカ系はほとんどいませんでしたね。ただ、僕はそれほど気になりませんでした。「Behind The Scenes」と題して裏側を切り取った映像も同時公開していたのですが、モデルたちが移動の際に手を取り合ったり、和やかに会話していたりと、楽しそうな現場の雰囲気が伝わってきました。むしろこっちをメインにしたほうがコレクションの魅力を伝えられたのでは?と思ったほどです。
丸山:さて、いよいよパリコレがスタート!の前に、「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」がオフスケジュールで発表しました。前日には豪華なキットが編集部に到着。前回のメンズコレクション同様、“show in a box(箱の中のショー)”というアイデアで、箱の中から大きなバインダーが現れました。バインダーには、リリースのほか、さまざまな色の紙やルックや写真などが詰まっており、ルックを切り取ってみたり、展示したりと受け手が好きに「各々のインスタレーション」を作りコレクションと関わることができます。
丸山:「キムへキム(KIMHEKIM)」が公開した映像は、モデル同士がふざけあったりライトで遊んだりとルック撮影の現場の裏側のようでほっこり。コレクションテーマは“Dreams in the City”。眩い都市の中で自分自身を探す人に捧げたコレクションだそうです。ブランドはパリ拠点で生産はデザイナーのキミンテ・キムへキム(Kiminte Kimhekim)の出身の韓国で行っているのですが、キミンテはソウルでロックダウンを過ごし、自分を信じることや情熱を持つことの大切さを再確認したそう。そう考えるとテーマが“Dreams in the City”となったのも納得です。
丸山:スターリング・ルビー(Sterling Ruby)による「S.R. STUDIO. LA. CA.」が配信したのは、“VEIL FLAG”と題し、米50州を表す星がない星条旗をまとったモデルが跪いた状態からゆっくりと立ち上がるという映像でした。音声は教えを叩き込むように男性一人が言った言葉をもう一人の男性が繰り返すというものでしたが、最後の“President of Grand Dragon”はドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領のことを揶揄しているのでしょう。“Grand Dragon”はKKK幹部の呼び名。プレジデントはこの場合は総統ではなく大統領ととらえられます。さらに“marching against leaderless leadership(リーダーなきリーダーシップに行進する)”という文言は、ホワイトハウスに向かって行進したBLM運動を想起させますね。白人至上主義と往々にして指摘されている現大統領を批判し、11月の選挙で退陣させることを呼びかけているのだと捉えました。
大塚:ちなみに彼はラフ・シモンズ(Raf Simons)とあらゆる形で協業しているもの有名だよね。ラフの「プラダ(PRADA)」デビューは、盟友のピーター・デ・ポッター(Peter de Potter)のグラフィックを採用していたけれど、今後はスターリング・ルビーも絡んできたりして。ああ、妄想が勝手に膨らんでいく!ちょっと、今日面白くない?知名度でいうとまだまだこれからなブランドばかりで、個々で見るとクオリティーや方向性はバラバラなのに、続けて見るとアイデンティティーを強く打ち出そうとする姿勢が共通してる。しかも自分たちのルーツを発展させて表現しているから、ファッションを通じて異文化が競演する様が映像を通してでもわかるぐらい面白い。
大澤:「アンドレア ポンピリオ(ANDREA POMPILIO)」は、“INVOCATION OF MY DIVINE BROTHER”というタイトルのもと、ムービーを4つのチャプターに分けてスタート。米ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性のジョージ・フロイド(George Floyd)氏が白人の警察官に押さえつけられて死亡した事件を再現したり、香港のデモのニュース映像を流したりしました。新作コレクションの発表ではなく、過去の痛ましい事件を振り返るムービーでした。洋服は最後まで出てこず、コレクションとの結びつきはわかりませんでした……。
美濃島:「サン アンダース ミラノ(SAN ANDERS MILANO)は野原が舞台でした。全く同じ服装の男女が出会い、固定的な性差を超えたファッションの自由さを発信するストーリー。フリル付きのシャツやギンガムチェックのシャツ、パールのネックレス&イヤリングというフェミニンなコレクションでしたが、男性モデルも違和感なく着こなしていました。「あなたが誰なのかは重要じゃない、どんな人になりたいかが大事なんだ」というコピーもしっかりと伝わってきました。
美濃島:「フィロソフィ ディ ロレンツォ セラフィニ(PHILOSOPHY DI LORENZO SERAFINI)」はオランダ人モデルのルーナ・ビル(Luna Bijl)を起用したイメージムービーで勝負。真面目な撮影風景を収めたシーンから始まったと思いきや、途中から撮影を抜け出し、テニスを始めたり、散歩したり、最後にはプールに入っちゃうというフリーダムな内容。とびきりキュートな彼女の振る舞いも相まって、すごくハッピーな気分に浸りました。
大澤:本日最後の「フィリップ プレイン(PHILIPP PLEIN)」は、“FASHION IS DEAD”というタイトルのもと、コレクションをスタート。冒頭は過去のコレクションを振り返りながら、これまでの来場者の数を計算。その中で、今年は0人ということをアピールしたほか、昨年8月に経営破綻したバーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)のニュースを流し暗いムードを漂わせていました。後半ではフィリップ プレイン=デザイナー本人が自らモデルとして登場。アップテンポの曲に合わせて、ドクロをモチーフにしたカジュアルなアイテムや、ライダースジャケットに細身のホワイトのスエットパンツを合わせるなど、終始イタリアっぽい装いを披露していました。
大澤:同ブランドは、名前を聞いたことがある程度でしたので、冒頭は真面目な方で「ロエベ」のようにインタビュー形式なのかなと思っていました。そしたら、あの巨大ロッキングチェアを人力で動かしているんですよ、本当にびっくりしました。思わずコメディー映画のエンディングシーンかと。あれだけ盛大にセットをそろえての撮影は、今回が初めてかもしれませんね。他ブランドと違い、メイクシーンを映しているのが印象的でした。黒い粉のようなものって何だったんだろう…。あのアップと、人柄からして普通のものではなさそう(笑)。もしかしたら、奇抜な演出のショーをする人ほど真面目なのかもしれませんね。ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク(Walter Van Beirendonck)しかり。
大澤:おっと次の「ルード」は少しだけお金持ちになった気分になりました。同ブランドは13年に米・LAで誕生。フィリピン出身のルイージ・マーク・ビラセナー(RHUIGI MARK VILLASENOR)が手掛けるストリートブランドです。一戸建ての家の中や、その周りの広い庭、プール、生い茂る森林での撮影で、細身のスエットパンツやロゴパッチを使用したMA-1、Tシャツなどをいつも通りの提案。今回も変わらずじまいだったのが残念でした。「ルード」好きはいいかもしれないですが、この手のブランドはジェリー・ロレンゾ手掛ける「フィアー オブ ゴッド(FEAR OF GOD)」がチラつきます。ラグジュアリーストリートは今、まさに転換期を迎えていると思うので一捻り欲しかったのが正直なところ。あ、サングラスを推したいのはとても伝わりましたよ(笑)。
村上:と、テンションが盛り上がったところで、おそらく本日一番の問題作が来たよ(苦笑)。「アルド マリア カミッロ(ALDO MARIA CAMILLO)」。3分のムービーで、出てきたのは1ルック。真っ黒のセットアップ。でも、一回もピントが合わない(泣)。全然わかんない(怒)。世界観がステキならそれでもいいけど、お風呂場にハエがいる部屋で、寝転がるオトコ。。。退廃的にも程がある。新型コロナで1年苦しんだあとの21年春夏、この世界にどっぷり染まりたい人って、ほとんどいないんじゃないかしら?
大澤:と、要さんに愚痴りたいところでしたが、オヤスミチュウでした。一人で完結しておきます(笑)。続いては「アンドレア クルーズ」。「イザベル マラン オム」の時に、今日一番短いかも。と言っていたらめちゃくちゃ短いのが来ました。53秒。逆にどんなものが見られるんだろうと心を踊らせて再生ボタンを開くと、あらこれまた酷い(泣)。ストリート感満載でユニークなデザインを売りにしているブランドなのに、出てくるのはメッセージが書かれたTシャツのみ。“WE ARE OUR CHOICES(人生は選択の積み重ね)”、“BRIGHTER THE LIGHT,DARKER THE SHADOW(光が当たると、影はますます暗くなる)”、“INTERNAL PEACE(内なる平和)”など全8メッセージを紹介。新型コロナウイルスの影響で、世界が暗い状況にある今を明るくするために!というメッセージ性は伝わるけど、うん、伝わったよ。という感じ(笑)。21年春夏コレクションは、謎に包まれたままです。
大塚:次の「アーネスト ダブル ベイカー(ERNEST W. BAKER)」はまさかのおじいさんのホームビデオつなぎ。ええっ!と思ったけど音楽含めてめちゃくちゃ感動的で、自宅で見てたら泣いてた自信がある。こういうパーソナルなホームビデオにファッションを絡める表現が、いかにもインディーズっぽい試みで僕は好きでした。服も、良くも悪くもインディーズ感という印象です。
大塚:「オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSE ISSEY MIYAKE)」最高!ショーではいつも凝った演出で楽しませてくれるので楽しみにしていたんだけど、期待以上の出来栄えで感動しました。“Meet Your New Self”と題した、普通の人が服によってエネルギーを得て、最終的には分裂までして(笑)外に飛び出して行っちゃうストーリーが3人分。タイダイ柄やパッチワーク柄などのパターンもいつにも増して際立っていて、セットで着たくなったよ。バスケットボールのパートも出て来たけど、元バスケ少年としも興奮したんじゃない(笑)?
村上:その次の「ルイス ガブリエル ヌイッチ(LOUIS GABRIEL NOUCHI)」は、存じ上げないブランドですが、こういう新興ブランドも公式スケジュールで発表できるのは、デジタルならではかもしれないね。ユーチューブで拝見しましたが、チャンネル登録者数は14人(7月9日現在)……。もうちょっと仲間に協力を依頼してせめて3ケタにはできなかったのでしょうか?ロックダウンの最中に、最新コレクションを着たモデルを1人ずつスタジオに呼んでの朗読だったね。正直、意味はわからなかった(笑)。洋服はパリの若手にありがちな、華のない日常着の印象でした。サテンのシャツ、背中に穴が開いてたけれど、アレはデザインですか?って、オーツカさんに聞いてもわかんないよね(笑)。
村上:めっちゃ良かった!ムービーの落ち着いた雰囲気も好きだし、コレクションも最高。クリス・ヴァン・アッシュ(Kris Van Assche)は、「メゾンに来て2年。最初はブランドのDNAを理解し、自分がやりたいことに挑戦したかったから、コラボレーションをする余地がなかった。でも、今は違う」と話していたけれど、まさにニューチャプター。ブライアンのカラフルな陶磁器を写真に撮ってシルクのシャツにプリントしたり、ニットで柄を再現したり、メゾンならではの染色技術の“パティーヌ”で描いたり――すっごく美しい。デジタルで興味を持ち、「早くリアルで見たい!」とモチベーションをかき立てられました。ブライアンが、「陶器を、伝統工芸ではなくアートのように見せる感覚がスキ」って話してたのも、「ベルルッティ」に通じるよね。クラフツマンシップを次世代に継承しようというクリスの思いと合致してる。とっても良いコラボレーションだなぁと思いました。
「フェンディ」2020-21年秋冬コレクション「フェンディ」2020-21年秋冬コレクション「ボス」2020-21年秋冬コレクション「ボス」2020-21年秋冬コレクション PHOTO : IKU KAGEYAMA「ボス」2020-21年秋冬コレクション PHOTO : IKU KAGEYAMA「ボス」2020-21年秋冬コレクション PHOTO : IKU KAGEYAMA「MSGM」2020-21年秋冬コレクション PHOTO : IKU KAGEYAMA「MSGM」2020-21年秋冬コレクション PHOTO : IKU KAGEYAMA「MSGM」2020-21年秋冬コレクション PHOTO : IKU KAGEYAMA「MSGM」2020-21年秋冬コレクション PHOTO : IKU KAGEYAMA「GCDS」2020-21年秋冬コレクション PHOTO : IKU KAGEYAMA「エンポリオ アルマーニ」2020-21年秋冬コレクション PHOTO : IKU KAGEYAMA「エンポリオ アルマーニ」2020-21年秋冬コレクション PHOTO : IKU KAGEYAMA「ヌメロ ヴェントゥーノ」2020-21年秋冬コレクション
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向千鶴(以下、向):「トム ブラウン(THOM BROWNE)」のBGMがすごくポジティブで、今季のキーワードである“ラブ”を象徴していたよね。サミー・デイヴィスJr. (Sammy Davis Jr.)の「Beautiful Things」やニナ・シモーン(Nina Simone)の「Here Come the Sun」、そしてフィナーレはビートルズ(The Beatles)バージョンの「Here Comes the Sun」ととてもロマンチックだった。前回の「ディオール(DIOR)」もフィナーレがビートルズの「Across the Universe」で、苦難屈強の中で戦って勝ち取る平和の象徴としてビートルズの曲が使われることが増えているのかも。
藪野:デザイナーの青春時代の曲といえば、「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン(JUNYA WATANABE COMME DES GARCONS)」は説明不要なくらいブロンディ(Blondie)でしたね。ショーの冒頭は無音の演出でしたが、その後は「Heart Of Glass」や「Call Me」などブロンディのヒットナンバーが続きました。ヘアメイクのブロンドヘアと赤リップもまさにボーカルのデボラ・ハリー(Deborah Harry)で、アクセサリー感覚でつけるハーネスなど、服もロックなイメージ。ブロンディということは70年代末〜80年代初めですが、まさに渡辺淳弥さんが若い頃に聴いていた曲なのでしょうね。
そして、僕のベストは、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)。実は全部通して聴いたのは初めてかもというくらいちゃんと聴いたことがなかったのですが、気になるダークな雰囲気の曲をシャザムでチェックすると大体出てくるのはビリーの曲。「ヴァレンティノ」は弦楽器の生演奏とビリーの「all the good girls go to hell」などの音源を融合させていてすごくエモーショナルでした。
前回に続き終末後の世界を描いた「マリーン セル(MARINE SERRE)」もダークでしたね。BGMは、コレクションの着想源になったフランク・ハーバート(Frank Herbert)による小説「デューン/砂の惑星」の一説の朗読。曲ではないのでプレイリストには入れられませんが、その中には「月が友人となり、太陽は敵になる(The moons will be your friends, the suns your enemy)」という一説もあり、「トム ブラウン」の「Here Comes the Sun」とは真逆ですね。
丸山:BGMはソフィア・ボルト(Sofia Bolt)の「Get Out of my Head」。70年代の曲かと思ったら、なんと18年リリースなんですね。パリ出身でロサンゼルスを拠点にするインディーロックミュージシャンで、彼女が家のガレージで行ったイベントに「セリーヌ」のチームメンバーが来て、エディに紹介したのだとか。ショーのわずか3週間前に連絡が来て、2分30秒の曲を22分に伸ばしたそうです。当日会場にも若いミュージシャンの姿が多かったですよね。彼らに話を聞けばエディやチームのメンバーがバンドの“ギグ”に来たそうで。
向:エディが選ぶインディーズの曲って同じフレーズと音を繰り返すものが多いよね。ずっと聴いていると呪術的というか、洗脳されやすくなる気がする(笑)。ずっと同じものを繰り返して染めていくみたいなところは、エディのクリエイションにもあるよね。「セリーヌ」はショーを通じて1曲だけを使っていたけれど、ルックごとに曲が変わった「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」はどう思った?
ケインは着想源について「生意気でセクシーな三角ビキニや下着を見かけたところから始まった。三角形は自然界において最も強力な形状であり、“神の目”という意味もある」と語る。三角形はキリスト教絵画において、三位一体を表す一つのシンボルである。ケインは宗教的な内容については言及しないが、BGMで「エデンの園(The Garden of Eden)」のフレーズが繰り返し流れ、プレスリリースにアダムとイブの名称が出てきたことから、三角形はキリスト教の思想とリンクしていると考えられる。
ケリング(KERING)から独立した後のケインは明らかに自信をつけ、独自の世界観を表現できている。アダムとイブが楽園を追放された後のように、ケインは自我を持ち、考え、創造しているのだ。ショーの最後は、女性の官能的な声で「夢こそ地球上で最後の楽園(Dreams are the last paradise on earth)」というフレーズが流れた。ブランドの行く末が楽園か失楽園かを決めるのは、彼の夢にどれくらいのエンドユーザーが追随するかにかかっている。
古田泰子による「トーガ(TOGA)」は2月に開催されたロンドン・ファッション・ウィークで、2020年-21年秋冬コレクションを発表した。会場として選んだのは、かつてビール醸造所だった施設オールド・トルーマン・ブルーワリー(The Old Truman Brewery)内にある倉庫のような広々とした空間。筆者がバックステージに到着したショー開始1時間前にはリハーサルもすでに終えていた。メイクアップとヘアスタイリングを済ませたモデルたちは楽しそうに踊っており、時間にも心にも余裕のある和やかな雰囲気だった。メイクを手掛けた伊藤貞文「NARS」グローバルアーティストリーディレクターは、最後のリタッチを加えている。ヘアを担当した高橋詩織はコーンロウのヘアスタイルに時間がかかっていたようで、本番ギリギリまでほぼ付きっきりであった。そこに古田デザイナーの姿は見当たらない。彼女はランウエイで、最終的な会場内の調整を行っていたようだ。
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1998年からLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)の傘下にある「ジバンシィ」だが、さまざまなタイプのデザイナーらがこの数カ月間にLVMHからアプローチを受けたことを明かしており、水面下での動きがあったようだ。同ブランドはこの件について一切コメントしていないが、情報筋によると新デザイナーとの契約はまだ締結されていないという。
英国人デザイナーのクレアは、2018年にメーガン・マークル(Meghan Markle)=サセックス公爵夫人(メーガン妃)のウエディングドレスをデザインし、18年にロンドンで開催された「ザ ファッション アワード(The Fashion Awards)」では「ブリティッシュ・デザイナー・オブ・ザ・イヤー・ウィメンズウエア(British Designer of the Year Womenswear)」を受賞した。また、米雑誌「タイム(TIME)」が19年に選出した“世界で最も影響力のある100人”にも名を連ね、ブランドと共に彼女自身も大きな注目を集めた。
クレアは「ジバンシィ」のアーティスティック・ディレクターへの就任直後に、それまで在籍していた「クロエ(CHLOE)」での6年間について、「本当にやりたいことができたわけではなかった」と明かしている。クレアは「クロエ」で手掛けたコレクションでも大きな支持を獲得しており、ブランドの勢いを回復させるなど確かな実績を残している。なお、11年に「クロエ」に入る以前は、「プリングル オブ スコットランド(PRINGLE OF SCOTLAND)」でデザイナーを6年間務めていた。
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勝井北斗と八木奈央によるファッションブランド「ミントデザインズ(MINTDESIGNS)」は、「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO 以下、RFWT)」の中止を受けて、ショーを開催予定だった3月21日の午後9時45分に無観客ショーの動画を配信した。会場は東京・渋谷パルコ1階の歩行者専用通路であるナカシブ通り。渋谷パルコにはかつて「ミントデザインズ」の1号店があり、現在も小規模な店舗が入るブランドのホームと言える場所。さらに2007年にも、同館にあったパルコブックセンター内でショーを行ったことがあるゆかりの地でもある。今回は貸し切りの真っ赤なロンドンバスを歩行者専用通路に停車させて、閉店後の通路をランウエイにモデルたちが歩いた。
コレクションの出発点は
ロンドンの多様な人々
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勝井北斗と八木奈央によるファッションブランド「ミントデザインズ(MINTDESIGNS)」は、「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO 以下、RFWT)」の中止を受けて、ショーを開催予定だった3月21日の午後9時45分に無観客ショーの動画を配信した。会場は東京・渋谷パルコ1階の歩行者専用通路であるナカシブ通り。渋谷パルコにはかつて「ミントデザインズ」の1号店があり、現在も小規模な店舗が入るブランドのホームと言える場所。さらに2007年にも、同館にあったパルコブックセンター内でショーを行ったことがあるゆかりの地でもある。今回は貸し切りの真っ赤なロンドンバスを歩行者専用通路に停車させて、閉店後の通路をランウエイにモデルたちが歩いた。
コレクションの出発点は
ロンドンの多様な人々
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今年で38歳になる自分が「ネグレクト アダルト ペイシェンツ(NEGLECT ADULT PATiENTS以下、ネグレクト)」の3月20日の無観客ショーを取材してよいのだろうか——会場となった東京・豊洲のライブハウス豊洲ピットに向かう道中、そんな葛藤をしていました。だって、出演するのがBiSH(ビッシュ)、BiS(ビス)、豆柴の大群という人気アイドルばかりだったから。不安な気持ちを少しでも奮い立たせるため、道中はゴリゴリな米ロックバンドのレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(Rage Against the Machine)を聴きながら、同バンドのギタリストであるトム・モレロ(Tom Morello)の攻撃的リフで闘魂注入します。
ショーの前座となったのは、前日の日曜朝にブッフ・デュ・ノード劇場(Bouffes du Nord theater)で行われた「サンデーサービス(Sunday Service)」。日曜礼拝を意味する「サンデーサービス」ですが、カニエは自身の楽曲をゴスペル風にアレンジして披露するコンサートをそう銘打っています。こちらは限られた人数だけを招待したようで、残念ながら行けずじまいでしたが、行った米「WWD」によれば、「90分間の幸福体験」だったそう。
ショー開催の3月2日は、アメリカからの来場者の多くが帰国を早めたようで、スタンディングのはずだったのに席に座れたり、人気なはずの「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」でも空席がみられ、私が座った席の前の席にはスタッフ3人が座るなど、ファッション・ウイークに来ている人の数が減ったように感じます。特にカニエが支持を集めるアメリカ勢が帰ってしまったので、いくらカニエ様でも人が集まるのか?なんてことを考えます。しかし、同日午後に行われた「エルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)」と「フィアー オブ ゴッド(FEAR OF GOD)」のコラボお披露目パーティーでは、ショー会場ではあまり見かけなかったストリート勢の姿も見られ、ここにいる人たちがそのまま「イージー」に流れるのだろうと予感しました。
またまた人混みを掻き分け会場入りすると、BGMが流れ、かわいいラップが聞こえてきました。カニエの娘、ノース(North)です(動画18秒から)。「子どもを使うのはずるくない(笑)?しかも良い子は寝る時間では?」と思いつつキュートな歌声と、娘の活躍を優しい笑顔で見守るカニエに、こちらまで癒されて笑顔に。なお、ノースは公の場で初めてラップを披露。5歳のアーティスト、ザザ(Zaza)による「What I do?」をリミックスしました。
ショーから帰ってホテルに着くと、今更「イージー」のインビテーションが届いていました。ウール素材の何も書かれていない袋ですが、この布の感じ、完全にカニエだと確信。開けるとショーにも登場したふわふわのパファーに包まれた干し草、住所などが書かれた紙、「Rattlesnake eggs CAUTION:Keep in cool place to prevent hatching...(ガラガラヘビの卵 危険:孵化しないように冷たい場所に保管してください)」と書かれた封筒が出てきました。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員
もうひとつのポイントはスコットランドのキルト。故リー・アレキサンダー・マックイーン(Lee Alexander McQueen)が好んで着用していたように、キルトはブランドにとって大切な存在だ。動物柄のドレスは赤ちゃんをくるむキルトから、ベビーピンク色のドレスは女性の肌着からそれぞれヒントを得ている。シルバーのドレスのフリンジはよく見るとラッキーチャームであるスプーン。民族の物語をさりげなく、随所の取り入れている。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員
今季表現したのは、平等性や包括性。さまざまな人種に加え、異なる年齢、体型、性別のモデルを起用し、それぞれの持つ人間性を描き出した。ベースとなるのは、“個性を消すもの”と捉えられることの多いユニフォーム。黒やグレー、ネイビーのチェスターコートやジャケット、オフィサーコート、腰履きした太いパンツといったテーラリングに加え、センシュアルなシルエットやクリーンなカットのドレスなどで作るワントーン中心のシンプルなルックをそろえる。アクセントを加えるのは、メゾンを象徴するや赤やピンクベージュ、そして、1月のメンズ・コレクションにも用いられたイネス&ヴィノード(Inez and Vinoodh)による花の写真。メンズと同デザインのコートをまとう女性モデルもいて、インクルーシブなスタイルを体現している。
足元は、今季のランウエイで多く見られ、来秋冬のITアイテムになりそうなゴツいブーツ。一方、バッグには大きなボウ(リボン)や花びらのような装飾をあしらい、ルックに甘さを加える。ショーの音楽はビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)の「All the good girls go to hell」。弦楽器の生演奏と合わさり、エモーショナルに心を揺さぶる。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員
PHOTO : GIOVANNI GIANNONI / WWD (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLCPHOTO : GIOVANNI GIANNONI / WWD (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLCPHOTO : GIOVANNI GIANNONI / WWD (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLCPHOTO : GIOVANNI GIANNONI / WWD (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLCPHOTO : GIOVANNI GIANNONI / WWD (c) FAIRCHILD PUBLISHING, LLC
DESIGNER/川久保玲
「コムデギャルソン(COMME DES GARCONS)」がまたひとつ新しいフェースに入ったようだ。今季、川久保玲が残した言葉は、「ネオ・フューチャー」。12月にウィーン国立歌劇場で発表した「オーランドー」の衣装デザインを通じてジェンダーとは?の問いを観る者に投げかけたが、川久保の視点はどうやら次の “まだ見たことないもの”へ向けられている。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員
ランウエイに銀のシートが敷かれていて、コレクションのテーマも“Age of Silver(銀の時代)”。これは同会場で開催された英国人写真家のセシル・ビートン(Cecil Beaton)の1920〜30年代の作品にフォーカスした写真展の題名と同じです。ビートンといえば、英国女王エリザベスII世らはじめとする王室写真から女優のオードリー・ヘップバーン(Audrey Hepburn)らを長年撮影してきた有名写真家です。中流階級の生まれだった彼が上流階級に受け入れられたのは、独創的な構図や演出、衣装が認められたからだったといいます。ビートンは若い頃から家族をモデルにしたり、自分自身も女性服を着てセルフポートレートを撮影し続けたりと、自分のスタイルを磨いていったそうです。今季の「アーデム」はその当時の写真からインスパイアされた贅沢なパールの装飾や、アールデコを意識した柄使いで高貴な印象になっています。
テーマは“ネオロマンチック”。創業者ニナ・リッチ(Nina Ricci)が手掛けたシルエットからフォームの探求を続けているようだ。中心となるのは、メンズブランド「ボッター(BOTTER)」も手掛ける2人が得意とするテーラードの再解釈。今季はジャケットを大胆なクロップド丈にしたり、ウエストを絞ったジャケットやロングチェスターコートを仕立てたり。そこにエアリーなシャツや極太のパンツを合わせた。ドレスは、バルーンシェイプやマキシ丈のテントラインなど、ボリュームのあるシルエットを楽しむデザイン。ニュアンスにある色合いは、オランダ出身の画家キース・ヴァン・ドンゲン(Kees van Dongen)による作品から着想を得た。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員
テーマは“ネオロマンチック”。創業者ニナ・リッチ(Nina Ricci)が手掛けたシルエットからフォームの探求を続けているようだ。中心となるのは、メンズブランド「ボッター(BOTTER)」も手掛ける2人が得意とするテーラードの再解釈。今季はジャケットを大胆なクロップド丈にしたり、ウエストを絞ったジャケットやロングチェスターコートを仕立てたり。そこにエアリーなシャツや極太のパンツを合わせた。ドレスは、バルーンシェイプやマキシ丈のテントラインなど、ボリュームのあるシルエットを楽しむデザイン。ニュアンスにある色合いは、オランダ出身の画家キース・ヴァン・ドンゲン(Kees van Dongen)による作品から着想を得た。
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員
JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。
ショーの中止は終盤だけでしたが、ミラノ・ファッション・ウイークには序盤から中国人メディアとバイヤーの姿がありませんでした。これを受け主催者は、デジタルキャンペーン「China, we are with you.(中国よ、私たちは貴方とともに)」をスタート。中国版ツイッターのウェイボー(微博、WEIBO)の協力を得て、会期が終了するまでに18のショーをデジタル配信。主催者側の発表によれば、延べ1600万のアクセスがあったと言います。主催者は現在も各ショーのアップロードに取り組んでおり、間もなく公式スケジュールの全てのショーが中国でも楽しめるようになるそうです。