またまたミラノ日記Vol.3 同僚ダウンで14カ所をタッチ&ゴー 「マルニ」について考え抜く

 ミラノ3日目は、後輩記者マミーノが、体調不良で戦線離脱!!昨日は3人だった「WWDジャパン」チームが、一夜明けたら1人になってしまいました(泣)。ということで、本日はいつも以上の高速バージョン。数多のブランドの皆様、タッチ&ゴーで駆け抜けてしまい、本当にごめんなさいでした。

9:55 トッズ

 本日一発目の「トッズ(TOD’S)」は、新クリエイティブ・ディレクターのヴァルター・キアッポーニ(Walter Chiapponi)によるファースト・コレクションです。ヴァルターは、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」「グッチ(GUCCI)」「ミュウミュウ(MIU MIU)」そして「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」で経験を積んだ、イタリアン・ファッションをよく知る人物。詳しくはコチラの記事をご覧ください。

 コレクション、良いですね!!チェスターコートは、今シーズンらしいウエストシェイプ。一方のジャケットは、ボーイフレンドシルエット。ウールやツイード、コーデュロイをたっぷり使ってシルエットに抑揚を効かせながら、基本はイタリアンな大人っぽいカラーパレットですが、時折強いレッドなどのフレッシュカラーを加えます。今、若いミラネーゼがお父さんやお母さん、ボーイフレンド、それに自分の洋服を自由奔放にコーディネイトしたら、こんなカンジってカンジ(笑)。アクセサリーの根幹を担うバッグ&シューズは、ラウンドシェイプのホーボーバッグにレトロスニーカー、キルティングレザーのワンハンドル、サイドゴアブーツ、パンプス、ポインテッドトーのフラットシューズ、それに「トッズ」と言えばなドライビングシューズの“ゴンミーニ”とバリエーション豊か。一押しのバッグは、大きさ的にちょっと売りづらそうですが、他のアイテムは格段にフレッシュになりました。好発進です。

10:45 ジェオックス

 お次は、「ジェオックス(GEOX)」。なんという大渋滞!!車が全く動かず、思ったよりかなり遅れての到着です。日本ではどうしても機能面がフォーカスされ、スニーカー、もしくは疲れないパンプスというイメージが先行してしまいますが、ちゃんとエレガントもございます。防水や通気性に優れたブランドのブーツ、案外イケるかもしれません。

11:50 エンポリオ アルマーニ

 ほぼ「トッズ」の場所に逆戻りして、「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」へ。ショーは、1月のメンズ・コレクションでも発表したサステナブルな「R-EA」コレクションからスタートです。リサイクルウールやポリエステルから作ったアイテム、メンズはストリート仕様でしたが、ウィメンズはコンパクト丈のジャケットやチェスターコート、キュロットなど、完全に「アルマーニ」ワールドなアイテムです。アルマーニファンの女性に、選べる選択肢をプレゼント、っていう感じでしょうか?

 コレクションは、ブラック&ホワイトの世界で始まりました。「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARANI)」が普遍性をテーマに柔らかな色使いを模索する昨今、「エンポリオ アルマーニ」はモードのテイストを強めています。序盤は、ひたすらにパンツスーツ&ベルベットのネクタイ。クロップド丈のジャケットに、リラックスシルエットのパンツ、それに大きなベルベットタイのコーディネートの連打に、アルマーニさんの、アンコンジャケットの先駆者の、ストリートスタイルからの回帰という想いを感じざるにはいられません。中盤は、そこにリボンが加わってラブリー度がアップ。


 そして終盤は、今季は推しましたね~。エメラルドとミッドナイトブルー。ベロアのセットアップからベアトップのミニドレス、フリルたっぷりのワンピースに至るまで、エメラルドとミッドナイトブルーのペアをランウエイに送り出しました。大きなコサージュにフリル&ラッフル、そしてリボン、大人っぽい色合いにキュートなディテールも素敵です。


12:50 スポーツマックス

今年で50周年の「スポーツマックス(SPORTMAX)」は、装飾は最小限に、シルエットにこだわりました。いずれのルックも、ウエストマーク。ダーツでウエストが大きくくびれたPジャケット、パターン状のレザーやベルベットをコルセットのように配置したジャケット、時にはハーネスのようなパーツも使ったベルトマーク……。今季、多くのブランドが工夫するウエストマーク1本勝負!!という感じです。終盤は、ベルベットに七色に光るクリスタルを散りばめたジャケットやドレス。ドレスにもルレックス(金属糸)を折り込み、ピカピカです。今季のトレンドが、目白押しや~。


13:15~ 怒涛の展示会周りスタート!!

 さぁ、ここからは一気に行きます。それぞれ、滞在時間は全て10分以内です。ホント、ブランドの方には申し訳ない。もう一回謝ります。ごめんなさい。

 「コリーニ(COLLINI)」は、いきなり魔法陣の中で呪文を唱える魔女みたいなスタイルが出迎えてくれました。アクセサリーは、おぅ、目玉(笑)。「普段着」と紹介いただいたスエットも、ナカナカのモンです。「無難は何にも生み出さない」。会場で首脳に聞いた言葉を聞いて、納得であります(笑)。

 「ジャンヴィト ロッシ(Gianvito Rossi)は、往年の名女優を思わせるコレクション。艶っぽいレザー、曲線のヒール、メリージェーンストラップが、そんなムードをかきたてますね。フラットなバレエシューズはベルベット、マウンテンブーツはメタリックレザーなど、イヴニングなムードを備えたカジュアルアイテムもユニークです。

 「ロロ・ピアーナ(LORO PIANA)」は、アクセサリーがめちゃくちゃ可愛くなってます。カメラバッグがカシミヤ製だったり、AirPodsケースにクロコダイルタイプも用意したり、値段はカワイくなさそうですが(苦笑)、大ぶりチェックのトートバッグ含め、コレは新たなガールズ&ボーイズが注目しそう!ウエアも、どうしてもポンチョとかざっくりニットのイメージが強いのですが、パステルカラーのチェスターコートやボディコンシャスなニットドレスなど、コンテンポラリーのムードは増すばかりです。良き!!

 「ポメラート(POMELLATO)」は、新作“ファンティーナ”コレクションを発表。馬術の世界にインスピレーションを得た、曲線なのにパワフルなリング、ネックレス、イヤリング、ブレスレットなどが揃います。聞けば「ポメラート」という名前、イタリア語で“まだら模様の馬”という意味だそう。「へぇ」であります。

 「プラン C(PLAN C)」のプレゼン会場は、光と影。ちなみに、影を作っているおもちゃは、デザイナーのカロリーナ・カスティリオーニ(Carolina Castiglioni)の私物オモチャです(笑)。力強いコートにロングドレス、クリーンなシャツにガウチョパンツとスポーティブルゾンなど、相反するテイストを融合したコレクションと、光と陰のプレゼンテーションがマッチです。

14:35 エトロ

 「エトロ(ETRO)」と言えばノマド(遊牧民)なワケで、今シーズンもテンガロンハット&カウボーイブーツや、アフガンストール、ペイズリー&ナバホ柄、ゴブラン織りのコートなどなど、あらゆるアイテムをエクレクティック(折衷主義)に取り入れます。でも今シーズンは、ロンドンとかパリなど、「エトロ」レディは都会も旅したみたいです。そりゃ、毎回砂漠とか荒野だけじゃ飽きますよね(笑)。

というワケでブリティッシュチェックのジャケット、シルクのボウタイブラウス、ヴィクトリアン調のドレスなどなど、今季はドレスアップのムードが強め。ニットカーデにもショルダーパッドが入ったり、やっぱり時代は今、ちょっと心構えがいるけれど、だからこそ袖を通せば“アガる”服を求めていますね。

15:40 マルニ

 さぁ、コレは一体、何でしょう(笑)。奇才フランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)の「マルニ(MARNI)」は、ボロボロのレザー、ニット、ヴィクトリアンなカーペットなどをハイパーパッチワーク。そこにレスリングシューズを合わせました。フィナーレのリッソは、なぜかウサギ姿(「FR2」を思い出したのは、私だけかもしれませんw)です。

 正直ビジネスは、このアイデアをかなり希釈したコマーシャルラインと、もはや別軸にあるようにさえ感じられるプレ・コレクション、加えて日本においては「ポーター(PORTER)」とのコラボレーションや「マルニ マーケット」があるので大きな問題はなく、その意味においても「コレは、誰が着るの!?」という疑問は、こと最近の「マルニ」のランウエイを語るにおいては愚問です。ここは、「そんなビジネスのプレッシャーから解放された(解放されていいのかどうか、はまた別問題ですがw)リッソは今、何を考えているのか、一緒に考えよう」と解釈することが大事でしょう。

 フィナーレのウサギ、そしてインビテーションとして送られてきた動画から考えると、今季は、「不思議の国のアリス」ですよねぇ。結局、まどろんでいただけのアリスの物語は、原作を読むと「?」な場面が多数存在し、ゆえに解釈は今なお無数に存在します。今季の「マルニ」は、そんな無数に存在する解釈までひっくるめての「不思議の国のアリス」な感じ。アリスの時代感のビンテージ、「不思議」の由縁にもなっている「?」な場面を思わせるヘンテコスタイリング、そして、渦巻くあらゆる解釈までもが「不思議の国のアリス」という物語の魅力となっている状況、リッソは、その全てをボロボロの材料、「誰が着るの!?」というアイテムやヘンテコスタイリング、そして、渦巻く意見を思わせるパッチワークやムラだらけのカラーパレットで表現したのではないか?と。ちょっと優しく解釈しすぎでしょうか(笑)?

 「一笑に付す」のは、正直簡単です。でも、ビジネスマンのレンツォ・ロッソ(Renzo Rosso)OTB会長が、わずか32歳で「マルニ」のトップに大抜擢した人物ですから、“勘ぐって”良いハズ。今季は、そう思い、こう勘ぐってみました。いかがでしょう(笑)?

16:30 プラダ

 昨晩の「プラダ(PRADA)」の展示会へ。透ける素材、フリンジ、そしてウエストマークなどで女性らしさを賛美したコレクションのアクセサリーなどをパシャリ。今季のキーディテールのフリンジは、バッグにもてんこ盛り。「何を入れるの!?」とも思いますが、女性の神秘を象徴するバニティケースは、ベルト、ネックレス、ブレスレットなど、あらゆるアイテムに取り入れられています。

17:30 セルジオ ロッシ

 先ほどの「ジャンヴィト ロッシ」同様、「セルジオ ロッシ(SERGIO ROSSI)」も砂時計のようなフォームのヒール。パンプスは、一気にセンシュアル(官能的)になりました。どうやら今季は、「女性であることの喜び」を素直に表現するのが、ミラノの根底に流れる価値観のようです。

 にしても驚きなのが、「セルジオ ロッシ」のヒールが「さぁ、頑張って履くぞ!!」というプレッシャーを感じさせないシルエットに仕上がっていること。今季は、9cmと6cmのヒールの2本勝負なのですが、いずれも7.5cmと4.5cmくらいに見えるのは、「セルジオ ロッシ」マジックでしょうか?会場全体がグリーンなのは、ブランドがずっとサステナブルに取り組んでいるから。自社の太陽光発電と、ドイツのクリーン企業からの買い取りにより、本社と工場、イタリア国内の店舗はアウトレットを含めて全てサステナブルな電力で賄っており、加えて工場の職人は、夏休みが4週間になったそう。労災も大きく減少しました。

19:30 ヴェルサーチェ

 さぁ、本日ラストは「ヴェルサーチェ(VERSACE)」。今回は、男女合同ショーです。会場は、こんなカンジ。目の前には大きなスクリーン。座ると、目の前には自分(笑)。強いエフェクトがかかっていて、ユラユラ揺れています。一人で遊んでいると、あっという間にショーが始まりました。

ドナテラの顔から始まったときはビックリしましたが(笑)、ショーは、このスクリーンを上手に使って疾走感たっぷり。序盤のウエストをシェイプしたブラックドレスから、レッド×ブラックのブリティシュチェックで作るトラッド、そこからストリート、グレーを基調としたイタリアンフォーマル、十八番のシルクスクリーン、そしてレザーとデニムのパッチワークと次々展開。見るものを飽きさせません。重低音の打ち込みと、スクリーンのエフェクト、終盤は歪んだゼブラなどのモチーフに覆われたセットアップやファーコートで迫力満点のランウエイショーは、まさにコレぞ「ヴェルサーチェ」!!素晴らしきランウエイに1日14カ所を回った疲れも吹っ飛びました~!

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またまたミラノ日記Vol.2 「プラダ」に来るBLACKPINKのLISA追跡司令下る 「フェンディ」は優しきパンク

9:45 マックスマーラ

 さて2日目の朝は「マックスマーラ(MAX MARA)」。最近、いいカンジであります。一緒に取材している後輩記者マミーノ(イタリア仕様)によりますと、若い世代の女の子が「一生モノ」としてキャメルのベーシックコートを買うこともあるそう。僕は、今季も登場したテディベアコート、いつか手に入れたいモノです(笑)。

 ショーは、オトナっぽいムードと、そんな若い世代がウキウキするラブリーなテイストが上手に融合しています。キーディテールは、フリル。いくつも連ねスカートの裾、ジャケットの肩口、コートの袖などに加えます。でも素材は、メンズウエアにも使うフランネルやウール、それにデニム。色もネイビーとキャメル、グレーなどベーシックなので、“子どもっぽい”とも違います。良きバランスです。

 ヘア&メイクも、そんなバランスを模索しているようでした。大人っぽいスモーキーアイなのに、髪の毛の一部は編み込んでミサンガみたいにアレンジです。

11:00 ニューガーズ グループ

 「マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン(MARCELO BURLON COUNTY OF MILAN)」や「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」を手掛け、最近は「アンブッシュ(AMBUSH)」や「オープニングセレモニー(OPENING CEREMONY)」を取り込んだニューガーズ グループ(NEW GUARDS GROUP)」のダヴィデ・ドゥ・ジーリオ(Davide De Giglio)最高経営責任者を取材。面白いエピソードたくさんだし、非常に勉強になりました!詳細は、「WWDジャパン」のミラの特集号と、「WWD JAPAN.com」で!

12:30 グッチ

 昨日、夢いっぱいのコレクションを見せてくれた「グッチ(GUCCI)」の展示会へ。幼き頃に戻ったかのようなコレクションには、レトロで、持ったり飾ったりするだけで昔夢中になったお人形遊びのお人形さんになれるようなアクセサリーがいっぱい。洋服は、とにかく首元や袖口にレースをあしらい、テクニックも盛り沢山だったことを再確認です。洋服は引き続き、装飾が少なめのリアル。明るい色使いは希望に溢れ、パフやフリル、ラッフルが「グッチ」らしさも醸し出しています。

 今、店頭にはミッキー・マウスがキーモチーフのコレクションが並んでいますが、来年は、デイジー・ダックだ!!

13:50 アンテプリマ

 さぁ、お次は荻野いづみサンの「アンテプリマ(ANTEPRIMA)」。ご覧ください、この動画。流れるようなシルエット、柔らかな素材使い、そこに、自然由来の優しい色と柄。こんなに穏やかな気持ちになれる、オトナなコレクションありますでしょうか?「アンテプリマ」のコレクションを見ると、リブニットと同じ素材のスカートルックだったら「オイルヒーターでポカポカの部屋で微睡みたいね」とか、薄くパッドを入れたコートだったら「落ち葉がいっぱいの公園を歩きたいね」と、勝手に心地よいシーンを思い浮かべてしまうのはなぜでしょう(笑)?

 名物ワイヤーバッグは、ワイヤーの幅が3mmから2mmに改良され(マニアックな情報ですw)、ハンドルが長く柔らかくなったり、異素材も編み込めるようになったりと進化を遂げています。バックステージでは、そんな鉄板バッグ改良の理由を、いづみサンにインタビューさせていただきました。詳細は、こちらも「WWDジャパン」のミラノ特集号で!!

14:45 ベネトン

 歩いて「ベネトン(UNITED COLORS OF BENETTON)」のプレゼンテーションへ。会場がだいぶ暗いのは残念ですが、レインボーなヒョウ柄やカモフラ、カレッジストライプ、それにキース・ヘリング(Keith Haring)モチーフのビッグTにダボダボパンツのストリートルックです。バンビコラボもあるみたい。にしても、もうちょっと明るくできなかったかしら(笑)?

15:20 モンクレール

 さぁ「グッチ」同様、昨日は楽しませていただきました「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」の展示会へ。昨日と同じ場所で、ディスプレイを変えて10以上の最新コレクションを全部見せ!!です。

 それぞれのラインの詳細は、コチラにお任せ。昨日は、「まるでダウンのテーマパークだ!!」と思いましたが、今日はほとんどお買い物気分♪。23日には、会場を一般解放。昨年は1万人が来場したそうです(驚)。

16:30 プラダ

 モンクレールの展示会から、「プラダ(PRADA)」へ!!超絶焦りながら、会場に向かいます。その理由は、「WWDジャパン」のソーシャルエディターがBLACKPINKのLISAの来場情報をキャッチしたから!!しかも「黒髪に変わって、今期最大のバズな予感」と彼女。当日も日本から、「この服装なハズです」「ELLE Koreaの表紙にもなっています」などなど、続々情報が寄せられます。こ、これは、死ぬ気で撮らなアカンやつや……。「プラダ」に向かう「WWDジャパン」トリオ、気が引き締まります。ぶっちゃければ、スナップは“若いモン”に任せたいのですが、後輩記者マミーノは「フルラ(FURLA)」の展示会からの道中が渋滞で到着できず(泣)!!こうなったら、42歳のオジサンも頑張るしかありません。

 会場には、モノすごい数のファン!!早くもハッシュタグ「#LISAxPRADA」が誕生したようで、タグをプリントした紙を握りしめたファンが大勢です。急いで会場入りしようとすると、「LISA~」の声が聞こえる!!ヤバイ!!もう入っちゃった!?慌てて、中に入ります。

 が、まだLISAらしき人はいない!「あれ~、ドウナッテルノ??」と慌てていたら、もう一人の同僚、ヨーロッパ通信員のヤブちゃんが華麗にカメラに納めてくれました!!神様、LISAサマ、YABUNOさま!!コレで、ソーシャルエディターに怒られずにすみます(笑)。遅れて会場入りしたマミーノは、最後の最後までLISAの周りで粘り、結果、この素敵なインスタ投稿が誕生しております

 さて、話をコレクションに戻しましょう。ショーは、2020-21年秋冬メンズとおんなじ作り。前回はパリを思わせる騎士像でしたが、今回はニューヨークのロッカフェラーセンターを彷彿とさせるアトラス像の周りを、モデルが縦横無尽に歩きます。

 アトラス像ということは、ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)の心の旅先は、ニューヨーク?

 そう言われると、序盤は“ザ・ワーキングウーマン”なパワフルなジャケット姿。ノートパソコンもガシガシ入れられちゃう大きなバッグに、フリンジや布地を縦に切り裂いたスカートのルックが続きます。ソルト&ペッパーのコートやジャケットには、パステルカラーのネクタイやフリンジスカート。

 フェイクファーのコートも加わってだんだん優しくなってくると、今度はシアーなチュールのパート。プリーツを寄せたビブ、NYの地下鉄では当たり前になった「ルルレモン(LULULEMON)」ガールを思わせるスパッツ&ブラトップと、あんなに力強かったフォーマルスタイルは、いつの間にか優しいスポーティに移り変わっているのでした。その後は、メンズ・コレクションとリンクする再生ナイロン“エコニル”を使ったアウター、ボアにラミネートのコート、パステルカラーで構成する「プラダ」の90年代ミニマリズムと、コレクションは目まぐるしく変化。とはいえ、今季はちゃんとしたジャケットとスカート推しと、相変わらずMDの断捨離傾向は顕著でした。

17:30 ファビアナ・フィリッピ

 ファビアナ・フィリッピ(FABIANA FILIPPI))は、自分たちらしさに原点回帰。正直、ちょっとデザイン性が高くなっていましたが、今回は控えめ。カラーパレットも落ち着いた1トーン主義に戻し、優しいニット、ストレスフリーのコートなどの提案に立ち返ります。

18:00 トラサルディ

 「ベネトン」以上にくらい会場です(苦笑)。思い出されるのは、大御所ジャーナリストのスージー・メンケス(Suzy Menkes)が、暗すぎてスマホの撮影に閉口していたことばかり。洋服も、「トラサルディ(TRUSSARDI)」のアイコンやコアバリューってなんだっけ?と再定義し切れていない印象で、正直、共感を誘ったり、あまたあるブランドからココを選ぶ決め手に欠けていたりの印象が否めません。

19:30 フェンディ

 シルヴィア・フェンディ(Silvia Fendi)の優しきパンクです!!「フェンディ」、大勝負!!シルエットのほとんど全てを、袖をもぎ取り、2サイズオーバーくらいの別の袖を取り付けたようなシルエットに改め、ニュー・プロポーションを提案です。プラスサイズモデルも登場するし、カレン・エルソン(Karen Elson)やリヤ・ケベデ(Liya Kebede)ら、40歳オーバーのスーパーモデルも登場して、明らかに何かから解放されようというムードが満載です。

 コートはおろか、ニットドレスにもコルセットやブラが内蔵された精緻なパターンが目白押しですが、少しふくよかになったカレン・エルソンさえ着こなせることを考えると、このコルセットは「画一的な体に導く」ためのアイデアではなく、ふくよかでもやっぱり美しい女性の曲線的な体を強調するためのアイデアのように思えます。出てくるのは、ノースリーブ、パワーショルダー、もしくは、ドロップスリーブのアイテムばかり。いずれも、二の腕が太くなってもなお着こなせそうなものばかりです。後半は、メッシュやレース、チュールなどの肌見せ素材も登場しますが、やっぱり、プラスサイズモデルも同じ素材のドレス姿。今季は「フェンディ」の誰でも着られる洋服、インクルーシブ・デザインなコレクションです。

19:50 ヘルノ

 お隣の(助かる!!)、「ヘルノ(HERNO)」へ。先月拝見したメンズ・コレクション同様、5年で土に還るナイロン、ベジタブルタンニン、リサイクルナイロン「エコニル」やリサイクルウールなど、いろんな方法でサステナブルの可能性を模索した商品が並びます。

 サステナブルについては、いろんな意見があり、現段階ではその全てに対応する素材や商品なんてありません。だからこそ「ヘルノ」は、あまたの選択肢を用意して、選んでもらうことに決めた。2020年の今時点においては、最も正しい選択だと思います。

21:05 モスキーノ

 さぁ、時差ボケで朝4時に起き、ランチなしで駆け抜た1日。もう限界であります。「モスキーノ(MOSCHINO)」さんよ、早く始まっておくれ。帰って、ジャンクなチーズバーガーが食べたいんだ(笑)。そう思っていた僕に、ジェレミー・スコット(Jeremy Scott)からケーキのプレゼントです。

 甘~い甘いケーキの世界。カラフルな色使いに、絞り口から出てくるフリフリのクリーム。それが、ドレスになっちゃいました!!正直彼のコレクションは、「よ~やるわ(苦笑)」って思うこともあるのですが、今回は、ステキ!!ラブいし、やっぱりケーキって、夢を見せてくれる!!ケーキの力を借りて、「モスキーノ」は今季、今の世界に必要な夢を届けてくれました。ありがとう、ジェレミー‼︎でもホテルに戻ったら、チーズバーガーも食べます(笑)。

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「モンクレール ジーニアス」3度目の秋冬を一挙公開 「JW アンダーソン」や「リモワ」も新たに参加

 「モンクレール(MONCLER)」はミラノ・ファッション・ウイーク期間中の2月19日、「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS 以下、ジーニアス)」2020-21年秋冬コレクションのプレゼンテーションを開催した。会場となったのは、もともとは市場だったという広さ1000平方メートルの巨大な建物。その中に、参加した9人の個性豊かなクリエイターがそれぞれの趣向を凝らしたブースを設け、新作を披露した。今回で3回目の秋冬シーズンを迎えた同プロジェクトのモットーは、 “1つのメゾン、異なるボイス(ONE HOUSE, DIFFERENT VOICE)”。協業を通してブランドの多様な可能性の探求し、進化を続けている。

 今季の「ジーニアス」の目玉は、なんと言っても新たにメンバーに加わったジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)によるコレクションだろう。アンダーソンは、自身のブランド「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」のコレクションで過去に発表したデザインを出発点に、ダウン素材を生かしたアイテムを提案。メンズとウィメンズで共通するスタイルも多く、彼らしいジェンダーの垣根を超えたコレクションに仕上げた。

 さらに新たな取り組みとして、ファッションだけでなくプロダクトの分野にもプロジェクトを拡大。ドイツのラゲージブランド「リモワ(RIMOWA)」との協業によるトラベラーの考えを映し出すLEDスクリーンを搭載したラゲージコレクション「モンクレール リモワ “リフレクション”」を発表したほか、デンマーク発の「メイト バイク(MATE.BIKE)」と共に制作した山道や雪道にも対応する折り畳み電動自転車もお披露目した。また、ドッグウエアブランド「ポルド ドッグ クチュール(PORDO DOG COUTURE)」とも引き続きコラボしている。

 その他の「ジーニアス」メンバーは、前回からの続投。「フラグメント デザイン(FRAGMENT DESIGN)」の藤原ヒロシや「1017 アリックス 9SM(1017 ALYX 9SM)」のマシュー・ウィリアムズ(Matthew Williams)、シモーン・ロシャ(Simone Rocha)、クレイグ・グリーン(Craig Green)、リチャード・クイン(Richard Quinn)らが名を連ねる。ここからは、各コレクションをリポートする。

1 MONCLER JW ANDERSON

 テーマは、“ノンバイナリー・エレガンス”。「男性にも女性にも分類されない性別認識」を指す「ノンバイナリー(Non-binary)」を掲げたコレクションは、まさにアンダーソンが自身のブランド「ジェイ ダブリュー アンダーソン」で早くから打ち出してきたジェンダーの固定観念を覆したデザインが着想源だ。ドットやスパイクのデザインをダウンで表現したジャケットと裾にラッフルを配したショートパンツのカラフルなルックや、質感の異なるマットとシャイニーな素材のコントラストを生かしたレイヤードルックで、カントリースタイルと都会的な装いを融合した。

2 MONCLER 1952 WOMAN

 ヴェロニカ・レオーニ(Veronica Leoni)が手掛ける「モンクレール 1952」のウィメンズは、赤い砂が盛られた空間でショーを開催。“洗練されたフェミニニティー”をテーマに「モンクレール」のアウターウエアとアウトドアの要素を再解釈し、フェミニンでエレガントなコレクションを披露した。素材は、テーラリングに用いられるウールやデヴォレ・ベルベット、ナイロンツイル、ダイヤモンドキルティング、ニットを多用。テクスチャーのレイヤードやミックスで、立体感のあるスタイルを生み出している。

2 MONCLER 1952 MAN

 “ロサンゼルスとのコラボレーション”がテーマにしたセルジオ・ザンボン(Sergio Zambon)による「モンクレール 1952」のメンズは、現地を拠点にするアーティストとの協業による巨大なオブジェやパネルを並べた空間を用意。LAのユースカルチャーを着想源に、グラフィカルなプリントやポップカラーと、1970年代を象徴するプレッピーやヒッピー、パンクなどの要素を掛け合わせ、若々しくリラックス感のあるスタイルを提案した。特にコーデュロイのダウンジャケットやダウンベストが印象的だ。

3 MONCLER GRENOBLE – SANDRO MANDRINO

 サンドロ・マンドリーノ(Sandro Mandrino)は、今季もユニークな演出でコレクションを発表した。それは、天井から横向きにワイヤーで吊るされたモデルたちが壁を歩き、その様子が鏡張りになった床に映し出されるというもの。モデルが着るスキーウエアのようなジャケットやパンツは真っ白でシンプルに見えるが、照明が消えると光る仕様になっている。ただ今季のコレクション全体のテーマは、“多種多彩なカラー”。手描き風のカラフルなプリントと鮮やかな色を駆使したスキースタイルを取りそろえる。

4 MONCLER SIMONE ROCHA

 “モダンロマンティシズムの躍動”をテーマにしたシモーン・ロシャは、イタリア人映画監督のフェデリコ・フェリーニ(Federico Fellini)の描く世界から着想。赤いベルベットで覆われた映画館のようなスペースを用意し、ショートムービーを通してコレクションを見せた。コレクションのキーワードは、「ダンスとドレスのファンタジー」。フレアシルエットやパフスリーブを取り入れた彼女らしいロマンチックでガーリーなシェイプを、アクティブなルックへと昇華した。装飾はパンジー、デイジー、ローズといった花々をモチーフにした刺しゅうやエンボス、プリント、そして、この上なく軽やかなチュールを用いたフリルがポイント。

5 MONCLER CRAIG GREEN

 クレイグ・グリーンが掲げたテーマは、“トランスペアレンシー(透明性)とプロテクション(保護)”。プレゼンテーションでは2つの部屋を用意し、その一つではところどころにスリットが入ったキルティングシートのようなアイテムをモデルが着用。もう一方では、中に空気を入れて膨らんだマイクロリップストップナイロンのカラフルなシート状のアイテムがモデルの体を包む。今季もかなりコンセプチュアルだが、どのように実際のアイテムに落とし込まれるか気になるところ。

6 MONCLER 1017 ALYX 9SM

 “マウンテンの都会的な探索”をテーマに、マシュー・ウィリアムズはガーメントダイを探求した。色は、くすみのある白やサンドベージュ、ネイビーと黒が中心。リサイクル・ナイロンラケなどサステナブルなテクニカルファブリックを用いたアウターウエアを軸にしたスタイルを展開する。デザインのアクセントとなるのは、アイコニックなバックルなどの金具をはじめ、ラバーのトリムや止水ファスナーといったインドストリアルなディテール。インパクト満点のスワロフスキーを全面にあしらったジャケットもある。会場では、垂直に印刷できるインクジェットプリンタを使い、巨大なパネルにルックビジュアルを描いた。

7 MONCLER FRAGMENT HIROSHI FUJIWARA

 テーマは“継続的な文化のプログレス(発展)”。歪んだ鏡で囲まれた空間の中で、ビンテージやミリタリーなどの要素を藤原ヒロシらしい視点で取り入れたストリートスタイルを提案した。今季のトピックスは、豊富なコラボレーション。ポケモンとの合同プロジェクト「サンダーボルト プロジェクト(THUNDERBOLT PROJECT)」との取り組みを継続している他、新たに「コンバース(CONVERSE)」「ルイスレザー(LEWIS LEATHERS)」「ラミダス(RAMIDUS)」と協業。アメリカのファンクバンド、クール・アンド・ザ・ギャングが1975年に発表したアルバム「Spirit of the Boogie」のグラフィックなど、アウターの背面に施されたデザインも目を引く。

8 MONCLER RICHARD QUINN

 “リュクスの拡大”をテーマにしたリチャード・クインは、今シーズンも自身のクリエイションを象徴するカラフルで大胆なプリントを活用。そこに刺しゅうやビジュー装飾を施すことで、華やかなコレクションを作り上げた。宇宙ステーションのような雰囲気の空間に登場したモデルは、60年代をほうふつとさせるミニドレスが印象的。加えて、ウエアからアクセサリーまで全身をプリントで覆ったインパクトのあるルックやクチュールライクなイブニングガウンまでを打ち出した。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

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またまたミラノ日記 Vol.1 「グッチ」!「ジル サンダー」!!「モンクレール」!!!初日からメインディッシュ連発でお腹いっぱい!!

 ボンジョルノ~。やって来ました、ミラノ。2020-21年秋冬シーズンは新型コロナウイルスの影響で、日本からの来場者はメディアも、バイヤーも、商社やブランド担当者も少なくてちょっぴり寂しいのが本音ですが、ミラノ・コレクションが始まりました。というワケで今回も、ランウエイに次ぐランウエイ、プレゼンに次ぐプレゼン、イベントに次ぐイベントてんこ盛りなミラノから、日記をしたためたいと思います。

 新型コロナの影響は、決して少なくありません。お話した通り、日本からは「ヴォーグ ジャパン(VOGUE JAPAN)」や「シュプール(SPUR)」「ギンザ(GINZA)」などがエディターの出張を取り止め。百貨店も三越伊勢丹や髙島屋は、バイヤーの派遣を見送り、現地の駐在員に任せています。商社では、伊藤忠商事もミラノ初日の19日以降、出張を見合わせるとの話。ブランドのジャパン社も、出張を見送ったり、最小人数を派遣したりの対応に追われています。アジアンメディアのインタビューリクエストが直前になって却下されるケースも相次いでいます。しかし、いずれの対応も止むなし。私たちだって不安なのだから、イタリア人だって不安に違いありません。でも街やショー会場では、特に差別的な扱いを受けることもなく、初日は無事終了しました。

11:00 ディースクエアード

 あさイチは、とあるブランドのCEOと秘密の会食(笑)。そのあとは、先月のメンズ・コレクション期間中に25周年のアニーバーサリー・ランウエイを開催した「ディースクエアード(DSQUARED2)」の展示会です。

 この日記に記した洋服が、勢ぞろい!!ボリューム満点のフェイクファーに覆われたアウトドアテイストのコート、懐かしきディーン&ダン・ケイティン(Dean & Dan Catin)のイラストスエット、ボヘミアンなフリンジいっぱいアクセサリーなどを撮影です。僕にとってのウィメンズの「ディースクエアード」と言えば、マイクロミニのホットパンツ。ランウエイに登場した“ホッパン”、改めて見ると、短いですねぇ(笑)。

11:45 ブルネロ クチネリ

 お次は、「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」。サステナブルが叫ばれる時代の最新コレクションは、ムダにならない洋服。つまりはいつでも、どこでも、誰でも着られるミニマルなスタイルです。クチネリさんの場合は、もっともエターナル(永続的)かつミニマルな洋服として、メンズのようなジャケットをチョイス。ムダにならない洋服としてのシンプルなジャケットという提案は、さまざまなブランドに広がりそうです。

 ジャケットルックをセンシュアル(官能的)に見せるのは、ガウチョパンツなどで提案する“肌見せ”や、ボウタイブラウス、そしてバッグ&シューズでも複数提案したメタリックカラー。カシミヤで作ったリラックスニットの上下に、将軍のようなミリタリーコートという提案のカッコよさ!「クチネリ」らしさ!豪華なランチをいただきながら、日本からやって来た新聞系メディアの皆さんと情報交換(ウソ、ただのおしゃべり)も楽しみました。

13:40 アーサー アルベッセ

 お次は、「アーサー アルベッセ(ARTHUR ARBESSER)」。心の中で「ごめんなさい!」と思いつつ、「14:15までにショーが始まらなかったら、退場する」と決めた上での会場入りです。その理由は、お次の「グッチ(GUCCI)」が14:40までに会場入りしないと、ドアを閉めてしまうらしいから!!「なんと!!」とも思いますが、一方で「だったら『アーサー アルベッセ』も、すぐにショーを始めるでしょう?」と都合良く考えていたんです。

 予定時刻の20分前に会場入りしたら、「だ、誰もいない……」。しかも、バックステージへの道はガラ空き。スタイリングをまとめたボードが、会場から見える位置に堂々と掲げられています。バックステージには、フツーに入れる(笑)。「『グッチ』に行っちゃうゲストのための、事前開放かしら?」と思いながらバックステージをウロウロして、14:15には絶対に始まらないカンジであることを確信し、本当に「ごめんなさい」ですが会場を後にしました。

14:20 グッチ

 初日に“いきなりメインディッシュ感”満載ですが、「グッチ(GUCCI)」です。

 さぁ、今回も長文にお付き合いください(笑)。今回は「再現することのできない儀式」をキーワードに、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)が「魔法のイベント」と話す、ランウエイショーの魅力に迫りました。ということで、まずゲストが通されたのは、バックステージ。「魔法のイベント」を、その舞台裏まで見せてしまおうという舞台設計です。

 通された空間は、本当にバックステージです(笑)。モデルはヘア&メイクの真っ最中だし、ミケーレもフツーに仕上がりをチェックしています。「わ~、楽しい」と思いながらパシャパシャ写真を撮っていると、「今回、フィナーレは一番最後を歩くんです!」と教えてくれた山田大地クンを発見。1月のメンズ・コレクションに続く登場で、“グッチ ボーイ”になる日も近いかもしれません。

 ショーは、バックステージでヘア&メイクを終えたモデルが、次のバックステージ、会場の中央に設けられたフィッティングルームに入場するところから始まりました。スモークが焚かれ、だんだんと中が見えるようになって、フィッティングに大忙しの“現場”がつまびらかになります。モデルが着るのは、“夢いっぱい”な、子どものように天真爛漫でピュアな洋服。このあたりは、「男性らしさ」という既成概念を否定すべく、「男の子なんだから」と言われ続けた幼年時代まで遡ることの価値を説いた1月のメンズ・コレクションに通じます。洋服の多くはパステルカラー、ミニ丈のワンピースを筆頭にシルエットは幼稚園に通うガールズ&ボーイズのよう。キーアクセサリーは、ヘンテコな帽子と十字架のネックレス、それにスクールソックスです。一方、ロングドレスは生地を何重にも重ね、お人形さんのよう。随所にフリルやラッフルを取り入れ、ガーリームードを高めました。ミケーレの幼年時代、70年代のレトロムードが漂います。

 これは別途ロングインタビューをアップしようと思いますが、フィナーレの後、ミケーレは、「ファッションはパワフル。終わることを知らない。特にファッションショーは、マジックだ。数多のプロがモデルを変え、夢の世界に誘う。生まれ変わったモデルは、皆パワフルだ。そして、ゲストを含めて私たちは、同じ場所で、同じ時間を過ごすという極めて親密度の高い状態になる。コレクションが好きか、嫌いかなんて関係ない。とにかく同じ空間で、私たちが一生懸命作ったものを、真剣に見てくれる。この関係性もまた、美しいものだ。でも、ショーはあっという間に終わる。終わらなければならない、儚さも宿している。それもまた、ファッションショーの神秘性を高めているし、終わるから次が始められる。パワフルに循環する、大きなシステム。これがファッションなんだ」と語ります。その言葉は、サステナブルが叫ばれて業界人の多くが既存のファッションシステムに疑問を感じるばかりでなく、その中で生きてきた自分に“後ろめたさ”を抱きかねない今、正直、「ファッションショーなんて古臭い」とか「何度も見ているから」といつの間にか当初の感動を忘れルーティーンとしてしまっている状況に対する、ミケーレのメッセージのように聞こえました。

16:30 アルベルタ フェレッティ

 ミケーレの熱弁に聞き入り、そして、一緒にカンファレンスに参加した皆さんと「良かったねぇ」とか「それにしてもミラノ、あったかいねぇ。地球は大丈夫かな?」なんて話をしていたら、「アルベルタ フェレッティ(ALBERTA FERRETTI)」に遅刻です(苦笑)。はるか後方で、なんとなく拝見させていただきました。

17:30 ヌメロ ヴェントゥーノ

 「ヌメロ ヴェントゥーノ(N21)」は、10周年のアニバーサリー・コレクション。序盤は、安全ピンを装飾に用いてチェスターコートやニットでパンクなムード。まだまだイケイケ。攻めの姿勢が続きそうです。端正なチェスターコート、一部をえぐるなどしてレイヤードするためのパーツのように変換したニット、そして、女性はドレスのように着こなすブルーのストライプシャツなど、アレッサンドロ・デラクア(Alessandro dell'Acqua)らしさ全開。ゴールドのチェーンや総スパンコールのドレスなど、いつも以上にゴージャスなドレス群で10周年を祝いました。

18:40 ジル サンダー

 「グッチ」で「“メインディッシュ感”満載」と書きましたが、今日はもう2皿、メインディッシュが出てきました(笑)」最初の“もう一品”は、「ジル サンダー(JIL SANDER)」です。

 ルーク&ルーシー・メイヤー(Luke & Lucie Meier)の「ジル サンダー」は、ミニマルというよりピュア、もしくは、ノイズの少ない洋服と言えるでしょう。彼らは、洋服の本質以外を削ぎ落とすというより、それ以外には心惑わされず本質を追い続けるスタンス。ゆえに今どき、インフルエンサーも、彼らへのギフティングも皆無です。

 バリエーションは、徐々に広がっています。当初から続くルークっぽい構築的なジャケットとざっくりニットのスタイルは変わらず、徐々にルーシーを思わせるドレスが加わり、ミニマルからピュアという印象にシフトしている印象です。シルクのフリンジが躍動的に揺れるIラインのノースリーブドレス、反対に肉厚の生地をウエストマークすることで極端な砂時計のシルエットを作ったケープ&スカート、プリーツを刻んだAラインのスカートなど、ピュアでありながら、素材とシルエットのバランスは一気に拡充。渾身の全54ルックです。

 欲を言えば、次はミディ丈のスタイルが見たいかな。飾り立てずにドラマティックなスタイルを描くブランドゆえ、どうしてもロングやマキシ丈になってしまうのは分かるのですが……。後、1つにまとめたツヤツヤヘアに真紅のリップというヘア&メイクも、そろそろバリエーションを見てみたい!!以上、毎回楽しみだからこそ、ついつい欲張ってしまうムラカミのワガママなお願いでした。

19:40 モンクレール ジーニアス

 さぁ、ラストは「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」。会場は、郊外の巨大な箱。この中に、いくつもの小さな箱があって、その中で「ジーニアス」の各ラインが、最新コレクションを独自の方法で発表しています。まるで、ダウンのテーマパーク(笑)。「次は、どこ行く?」みたいなカンジで、10近いブースを順に巡るイメージです。

 もう、ダウンならなんでもあります。藤原ヒロシさんの「7 モンクレール フラングメント ヒロシ・フジワラ」は、今回もポケモン(POKEMON)」とコラボ。ってコトでストリート&アニメがありまして、お隣の空間に行けば「1 モンクレール JW アンダーソン」のジェンダーフリュイド。さらに奥の「3 モンクレール グルノーブル」は純白の高機能ダウンなどなど、本格派からタウンユース、ストリートからモード、ダークからカラフル。そのどれもが楽しくて、優劣なんてつけられない。まさに「ジーニアス」が目指す、多様性とはコレなんだ!と体感できる空間でした。

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ロンドン・コレクションを斜め読み!前編 ブレグジットで分断された英国から出てくるクリエイション

 2020-21年秋冬シーズンのロンドン・ファッション・ウイーク(以下、LFW)も前半戦が終了。13~15日に発表されたブランドとイベントをピックアップしてダイジェストでお届けします。

2月13日(木)

「マーガレット・ハウエル」が50周年を記念したアーカイブ展

 日本でも人気の高い「マーガレット・ハウエル(MARGARET HOWELL)」は今年でなんと50周年。店舗で開催されたアニバーサリーパーティーへお邪魔しました。期間限定でマーガレット本人が選んだ、ブランドの歴史を語る上で欠かせない貴重なアーカイブを公開しており、スケッチやインスピレーション源となるムードボード、過去のキャンペーンイメージなどを展示しています。“50 YEARS OF DESIGN”という映像作品も上映していました。このアーカイブ展は日本でも開催予定だそうです。

2月14日(金)

期待の若手「ユハン ワン」でLFWがキックオフ

 ファッションショーの一発目は、中国出身でロンドンを拠点にする若手デザイナー「ユハン ワン(YUHAN WANG)」です。前シーズンは若手支援プログラム「ファッションイースト(FASHION EAST)」の合同ショーに参加していましたが、卒業して初の単独でのショー。当日には「LVMHプライズ」のセミファイナリストに選出されたというニュースも入ってきて、注目度がますます高まっている様子です。「シモーン ロシャ(SIMONE ROCHA)」らに次ぐロンドンの大人ガーリー枠の担い手ですが、得意なドレープの技術でボリューミーにならずに甘さを演出できているところで差別化できています。前回まではドレスが中心でしたが、コートやセットアップなど、アイテム幅も広がっており、今後も楽しみなデザイナーです。

「キコ コスタディノフ」の攻めと守りのよい塩梅

 前シーズンからオフスケジュールで発表している「キコ コスタディノフ(KIKO KOSTADINOV)」。「アシックス(ASICS)」とのコラボレーションでも話題で、日本にも男性ファンが多いブランドです。ウィメンズ・コレクションはデザイナーのキコのガールフレンドであるディアナ・ファニング(Deanna Fanning)とローラ・ファニング(Laura Fanning)の双子の姉妹が手掛けています。これまで“衣装感”が強くリアルに提案するのは難しいだろうな、と思っていましたが、今回は一歩リアルに歩み寄ってきた印象。ブランドのシグニチャーであるボールドな色使いと、パネルの切り替えテクニック(異素材の組み合わせ)はそのままですが、攻めと守りの塩梅を掴んできたよう。2人が得意とするニットウエアの強みも出ていて、トゲトゲしたニットをワンピースとレイヤードしているのが新鮮です。

透明性を備えた「リチャード マローン」

 「リチャード マローン(RICHARD MALONE)」もロンドンの若手の注目株の一人。17日開催の「2020 インターナショナル・ウールマーク・プライズ(2020 INTERNATIONAL WOOLMARK PRIZE 以下、IWP)」の決勝戦で唯一ウィメンズブランドでファイナリストに残っています。今季はIWPの審査対象のコレクションため、メリノウールを多く使っていることはもちろん、今回は素材の調達から生産までの透明性が審査の鍵になっているため、ブロックチェーンでトレーサブル(跡形などをたどれる)になっています。また後日、IWPのレポートで詳しく紹介します。

女王のスタイルから着想を得た「シュリンプス」

 人工ファーコートやパールのハンドバッグが看板アイテムの「シュリンプス(SHRIMPS)」。今季は英国王室の女王エリザベス2世のファッションスタイルやスコットランドのタータンから着想を得たコレクションです。今、イギリスはEU離脱“ブレクジット”やヘンリー英王子の“メグジット”(ヘンリー王子とメーガン妃の公務からの退任)など変化が大きい不安定な時期。特に“ブレクジット”ではEU離脱派52%、残留派48%という結果だったので国民の心を大きく分断してしまいました。「シュリンプス」をはじめ、改めて英国の良さにフォーカスを当てて、英国愛を伝えているブランドが今季は多い気がします。

2月15日(土)

ウィーン発「ペーター ペトロフ」のロンドンのデビューショー

 オーストリア・ウィーン出身の「ペーター ペトロフ(PETAR PETROV)」がロンドンでショーを初開催しました。クリーンでエレガントで好印象!これは「ジル サンダー(JIL SANDER)」「ザ・ロウ(THE ROW)」などと同じく、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)時代の「セリーヌ(CELINE)」ファンに受けそうな雰囲気です。しかし、全てマキシロング丈で想定プロポーションは背の高い欧米人向け。日本人の体型には難しそうだなと感じました。

サステナビリティの輪を広げる「フィービー イングリッシュ」

 サステナビリティで先進的な「フィービー イングリッシュ(PHOEBE ENGLISH)」はプレゼンテーション形式での発表です。見た目は超シンプルですが、話を聞いて驚きでした。「#NothingNew」というタイトルで、その名の通り、何も新しい素材がないんです。「シモーン ロシャ」や「マーティン ローズ(MARTINE ROSE)」などフィービーの仲のいいロンドンデザイナーたちから余った生地を回収して全てリサイクルしたものでコレクションを制作しています。サステナビリティの話題が広がっていても実際には取り組むことは難しい。でも、フィービーのように周りを巻き込むことができるデザイナーは稀有だと思います。

どこでも寝られる!?「トーガ」のダウンウエア

 日本を代表する「トーガ(TOGA)」は、テーラードをベースにアウトドアの要素などのミックスした安定のコレクションです。今季はふかふかしたダウンのパッファーが多く使われていて、リリース情報によると「どこでも寝られるように」という即席布団ようなの提案だそう(笑)。私が注目したのはバッグもシューズのアクセサリーの充実!ビッグなトラベルバッグ、フェザーのシューズなど手にとって確認したいものがいっぱい。後日、ライターのELIE INOUEさんによるバックステージレポートも上がりますのでそちらもお楽しみにお待ちください。

メンズ初登場の「モリー ゴダード」

 「モリー ゴダード(MOLLY GODDARD)」は図書館の中をレストランのように作り込んだ会場でした。テーブル席には、パンとバター、白ワインに水まで用意されていて、待ち時間に自由に食べられるんです。質素ではありますが、時間がなくランチをスキップしていた来場者たちには嬉しいサービス。自分のテーブルを探していると、前シーズンのフィナーレに登場したチュールドレスを着た来場者がいました。お姫様みたいで写真を撮らせていただきました。可愛い!肝心のコレクションでは、メンズが初登場!「モリー ゴダード」らしさは伝わらないですがキュートな印象。一方でウィメンズはカラーブロッキングニットにシグニチャーのギャザーを寄せたドレスを合わせた新提案。カジュアルな「モリー ゴダード」のドレスを着こなし方が伝わってよかったと思います。

ちょっとニクい「リチャード クイン」

 前回はオンタイムから1時間遅れてショーを行った「リチャード クイン(RICHARD QUINN)」は、今季も待ち時間は40分!開始前は会場にゲストのイライラを感じる空気が漂っていました。何故そんなに遅れるのかというと、歌手やオーケストラなどの生演奏を用意しているから。リチャードも“ブレクジット"などの影響からイギリスを意識したコレクションを発表しています。シグニチャーの花柄プリントは変わりませんが、全身にビジューを刺しゅうしたドレスはすごいの一言につき心を震わせます。でも、背中にはイギリスの国歌である「God Save the Queen」を文字って“God Save the Quinn”と自身の名前に変えていたり、歌手が歌った「ダンシング・クイーン」も、“クイン”に掛けていたりと(笑)ちょっとしたウィットも忘れないところがニクい。拍手喝采で、待ち時間の長さを忘れさせるファッションの魔法を感じたショーでした。

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「マイケル・コース」にキャメロン・ダラスやレッドベルベット、ドラマチックにNYコレを締めくくった「マーク ジェイコブス」 NYコレつれづれ日記 VOL. 5

 日々時差ぼけと寒さと戦うNYコレクション取材班ですが、気づけばあっという間に2020-21年秋冬ニューヨーク・ファッション・ウイークの最終日を迎えました。今季は「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」「トム フォード(TOM FORD)」「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」ら常連ブランドが不在だったに加え、「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」「ティビ(TIBI)」などがショー形式で発表しなかったせいか、ファッションウイークがかなり短いように感じています。そんな最終日はNYコレを代表する「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」から始まり、最後は「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」が華麗なるフィナーレを届けました。

「マイケル・コース」は眉毛を強調したヘルシーなメイクアップ

 最終日の朝は「マイケル・コース」コレクションのバックステージ取材から始まります。会場に着くとさすが「マイケル・コース」、豪華なモデルばかりです。中でもフレジャ・ベハ・エリクセン(Freja Beha Erichsen)はかなり余裕のある佇まいでベテランのオーラを醸し出していました。肝心のメイクですが、マイケルはナチュラルなメイクアップを好み、あるシーズンはすっぴんでモデルがランウエイを歩かせたことさえありましたが、今季も引き続き健康的なルックが印象的でした。ファンデーションは最小限にとどめ、アイライナーを目の周りにぼかすように入れて目元の陰影を演出し、チークにクリームカラーをなじませて血色感を出していました。でも実はコレ、リハーサルの前までは違うメイクだったんです。今回は会場が暗くて照明が真上から強く当たることで顔に影が出やすいことから、強めに入れていたシェーディングを血色感を演出するピンクのチークに変えたそう。こういう直前のハプニングもあるのがバックステージの醍醐味の一つ(!?)ですね。

レッドベルベットのジョイや
キャメロン・ダラス、
西内まりやがフロントロー

 バックステージ取材を終えて、そのまま「マイケル・コース」のショーを鑑賞。今季は“エクエストリアン(馬術)”や“ヘリテージ”からインスピレーションを受け、レザーのベルトやハーネスをアクセントにしたカシミヤのケープや千鳥柄のジャケット、ライディングブーツなどが登場。どれもクラシックでトラディッショナル、そして上品なムードが漂うアイテムでした。前シーズンのアメリカントラッドをテーマにしたコレクションに続き、マイケルはファストファッションの“悪”に気づき始めた若者に対し、どの時代でも着られるようなタイムレスなピースを打ち出しています。今季はそこに“シック”“コージー(着心地が良い)”で“イージー(着やすい)”がキーワードとして加わり、タイトなドレスやハイヒールは一切登場せず、着やすさ・動きやすさも重視したそうです。ランウエイを歩くモデルも豪華でしたが、フロントローもももちろんそうです。若い子に大人気のキャメロン・ダラス(Cameron Dallas)、K-POPグループのレッドベルベット(RED VELVET)のジョイ(Joy)、日本からは西内まりやが登場しました。

レッド・ベルベットのジョイ

キャメロン・ダラス

「マイケル・コース コレクション」ランウエイ

「マーク ジェイコブス」の
バックステージは100人以上の
モデルの支度でバタバタ

 続いて、「マーク ジェイコブス」のヘアメイクの取材へ向かいます。今回はモデルが90人以上、ダンサーが30人いるということで、全員分のヘアメイクをセットするのにバタバタしている様子でした。普通はショーが始まる3〜4時間前にモデルやスタッフが集合するのが普通ですが、「マーク ジェイコブス」は凝った演出を好むこともあり、8-12時間前が当たり前、今回も18:00と19:00(「マーク」はショーを2回、それぞれ別のお客さんに披露します)のショーのために、バックステージの取材は12:30に入りました。前回は61人全く異なるヘアメイクがとても印象的で「WWDビューティ」の表紙にもしましたが、今回は同じアイテムを使いながら人によって使い方を変えているそう。基本的には黒いアイライナーと赤のリップスティックを全員に用い、アイライナーをぼかす人もいればキャットアイにする人もいたり、リップも輪郭まできっちり塗るフルリップやティントのように中央だけに塗る人もいたそう。ダイバーシティー(多様性)が重視される今の時代において、みんな同じメイク、というのは通じなくなってきていますね。

「マーク ジェイコブス」のヘアメイク

「カルバン・クライン」がミレニアルズ向けに“映える”イベント開催

 「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」が2月13~15日に、ソーホーでポップアップイベントを開催するというのでお邪魔してきました。こちら、“CK ワン(CK ONE)”のアンダーウエアとジーンズ、香水の“CK エブリワン(CK EVERYONE)”の合同イベントなんですが、 “CK ワン”でこのようにカテゴリーを超えたキャンペーンを仕掛けるのは初めてだそう。1990年代にケイト・モス(Kate Moss)を起用し一世を風靡したCKのロゴが大人には懐かしいですが、ミレニアル世代にとっては新鮮!会場にはインスタ映えスポットを多数作り込んでいて、香水瓶やアンダーウエアに好きな文字や文章をプリントしてパーソナライズしてくれるサービスも支持されそうです。香水はパッケージに再生紙を利用したり、オイル使用を極力抑えるなど、今の時代の感覚に合わせた商品になっています。2月28日~3月31日には、渋谷スクランブルスクエアでも同様のイベントを開催するそう。

「トム ブラウン」がサムスンの
折りたためるスマホをデザイン

 「マーク ジェイコブス」のヘアメイク取材を終えて、今度は「トム ブラウン(THOM BROWNE)」とサムスン(SAMSUNG)のコラボイベントのために「トリー バーチ」がショーを行ったオークション会場、サザビーズ(SOTHEBY'S)へ。2月11日に発表したばかりの新作スマホ“ギャラクシー Z フリップ”は縦に折り曲げることができる画期的なデザインが特徴。それをトム・ブラウンがデザインしたということで、アイコニックなトリコロールのモチーフを外側に施したほか、画面の中のアイコンも「トム ブラウン」仕様になっています。スマホ以外にもイアフォンやスマートウオッチも登場し、3月発売予定とのことです。

ドラマチックなショーでNYFWを締めくくった「マーク」のマジック

 さて、ニューヨーク・ファッション・ウイーク最後のショー、「マーク ジェイコブス」の時間となりました。マークは以前大幅にショーを遅らせてエディターを怒らせたというエピソードがあり、以来きっちりオンタイムにショーを始めるため、30分前に会場に着くとすでに大勢のゲストが来場していました。日本からはけみおや松岡モナ、長谷川ミラ、けーしゃんらが呼ばれておりました。広大な会場の中に入ると、カフェのようにテーブルがいくつも並んでおり、テーブルを囲む椅子に座るスタイルです。19:00になった途端に会場が真っ暗になり、そこから爆音で音楽が流れ始めます。すると奥の方からモデルと一緒にダンサーが次々と異なる方向に歩き出し、踊り始めました。エモーショナルで時には激しい踊りで知られるコンテンポラリーダンスの振り付け師、キャロル・アーミタージュ(Karole Armitage)による演出です。右往左往に踊るダンサーの間をモデルが数人ずつに分かれて歩いてくるのですが、最初はどこに注目して見ればいいのか分からないほどインパクトのある演出です。洋服は過去、現在、未来の女性がテーマで、さまざまな年代のファッションをイメージしたルックが登場。柔らかなパステルカラーに染め上げた1960年代のAラインドレスやコート、70年代をほうふつとさせるパンツルック、さらに90年代を連想させるボディコンのバスチエとパンツは歌手のマイリー・サイラス(Miley Cyrus)が着用して登場しました。感情的な踊りと体の芯まで響き渡るような音楽が相まり、息を呑むようなドラマチックなショー。まるでランウエイショーを見ていることを忘れさせるのは、マークの“マジック”なのかもしれません。そんなドラマチックな演出で、マークはニューヨーク・ファッション・ウイークを締めくくったのでした。

けみお

「マーク ジェイコブス」のランウエイ

「マーク ジェイコブス」のランウエイ

「マーク ジェイコブス」のランウエイ

「マーク ジェイコブス」のランウエイ

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セレブ集結!! 「トム フォード」がロスで最新ランウエイショー、フィナーレで視線を送ったのは、誰?

 2月上旬。いつもならムラカミは、「やっぱナマ足は寒いねぇ」なんて言いながら、ニューヨーク・コレクション取材のためメガロポリスをショートパンツで駆けずり回っているハズです。でも、今はロサンゼルス!!今年はちょっぴり寒いみたいですが、それでも最高気温は20度オーバーのロサンゼルス!!NYにいる五十君&北坂記者、寒空の下、お疲れ様でございます。

 なぜムラカミはLAなのか?と言いますと、目的の一つは、今週記事をアップするビューティイベントのため。そしてもう一つは、「トム フォード(TOM FORD)」の2020−21年秋冬ファッションショーのため、なのでございます。トム樣は昨年、アメリカファッション協議会(COUNCIL OF FASHION DESIGNERS OF AMERICA)、つまりアメリカのデザイナーで構成する組合のトップに就きました。20-21年秋冬は就任2シーズン目ですが、なんと会長は昨年、「今回は、NYファッション・ウイークではなく、ロサンゼルスに」と宣言してしまったのです。「え~、会長がNYを離れちゃうの?」なんて意見もありましたが、トム様は「NYファッション協議会じゃなくて、アメリカファッション協議会だから。それにアメリカン・ファッションとセレブリティの関係は、切っても切り離せないもの。アカデミー賞の時期は、ロサンゼルスで見せる方が『トム フォード』、そしてアメリカン・ファッションらしいじゃないか」と反論して2月7日、アカデミー賞授賞式の前々日にLAで有名な撮影スタジオ、ミルク スタジオ(MILK STUDIO)でランウエイショーを開催してしまったのです。まぁ正直、「俺なら、どこでやっても来る人は来てくれる」と言う自信(そして、ムラカミはノコノコやってくるw)とか、「SNSの時代、メディアが減っても、セレブがくれば大丈夫」という戦略もあったことは間違いありません。

 さて、そんなトム様の言葉通り、20-21年秋冬ウィメンズ・コレクションには、そうそうたる顔ぶれのゲストが大挙襲来!!です。

 ご覧ください。この面々。カイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)は会場でお化粧直ししていると「それは、(自分が手掛けている)『カイリー・コスメティクス(KYLIE COSMETICS)』なの?」とパパラッチに質問され、ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)の隣には、レネー・ゼルウィガー(Renee Zellweger)。デミ・ムーア(Demi Moore)がやって来たかと思えば、音楽界からはドクター・ドレー(Dr. Dre)やリル・ナズ(Lil Naz)、K-Popのティファニー・ヤング(Tiffany Young)とCL(随分貫禄がつきましたw)。経済界からは、アマゾンのジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)最高経営責任者(驚)!!初めて見ました!!ブランドによると、残念ながらトム・ハンクス(Tom Hanks)は仕事の都合で来場叶わず、だったらしいのですが、さすがは「トム フォード」。そしてアカデミー賞ウィークのロサンゼルス!!ショーが始まるまでご一緒だったライターさんは、始まる前から「アフターパーティーはあるの?みんな、来るの?」と大興奮。そして改めて「トム フォード」って、セレブに似合うなぁ、と痛感します。

 肝心のコレクションは、「トム フォード」らしくもロサンゼルスらしく、しかも、とっても今っぽい。サイコーでした。

 「ロサンゼルスで見ているから」と言うのも大きかったと思います。まずは序盤の、切りっぱなしのスエットのノースリーブに、総刺しゅうのスカートのルックで、ほとんどすでにノックアウト。その後も、ピタピタのロゴスエットにしっかり肩の入ったジャケット、パッチワークデニムのスカートとか、深いVネックが特徴のタイダイポンチョにスエットのジョギングパンツなど、「トム フォード」らしい官能的なセクシーさと、LAっぽいカジュアル、それに齢を重ねてきた最近のトム様が志向するピースフルな雰囲気が絶妙に入り混じり、「カッコいい!!でも、(8頭身じゃなくても)着られるかもしれない。もちろん、値段はさておき」という“うっとり”スタイルが続きます。アクセサリーは、大きなフェザーのイヤリングに、彫刻を施した柱のようなヒールのウェッジソール。大きなトートか小さなショルダー、もっと小さなiPhone&AirPodsケース。たった3つのアクセサリーでも、迫力の「トム フォード」らしさ、変わらぬクラシックへの敬意、そして、新しきに挑戦する意欲を感じるのです。

 メンズは、ミラノでも拝見した、明るいパステルに彩られたシルクサテンのスーツ。するとウィメンズも鮮やかなカラーパレットに一転。フューシャピンクやスカイブルーのざっくりニットに、同系色のスパンコールスカートという、これまたカジュアルとセクシーが絶妙に入り混じるスタイルに変わります。

 フィナーレは、シースルーのレース、ボンテージ、バストに大胆に走ったスリットがセクシーなブラックドレス。と思いきや、ラストは日本代表のモデル美佳ちゃんが、なんと純白のウエディングドレスで現れました!!BGMは、FugeesのKilling Me Softly With His Song。トム様ワールド、全開です。

 フィナーレのトム様は、今回も誰よりも演技派でクールでした。でも帰り際に目線を送った先には、ベルベットのジャケット姿の小さな男の子。彼がパートナーのリチャード・バックリー(Richard Buckley)と共に迎えた、子どもの姿がありました。数年前のインタビューで、「この僕が、オムツの交換で四苦八苦している。その時、現実っていうのはこんなモノで、それが素晴らしいと感じたんだ」と話してくれたことを思い出しました。あの時の価値観は、今も彼のコレクションに脈々と流れています。どんなにセレブがたくさんいても、どんなにセクシーでも、どんなにピカピカでも、ロサンゼルスらしい開放感と、育児真っ只中のリアリティ、そして、そこから日々感じる小さな幸せ。「トム フォード」のコレクションには、そんなバリューがたくさん散りばめられているのです。

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ベルリン・ファッション・ウイークで際立ったブランド3選 この街で発表を続ける理由とは?

 世界では数多くのファッション・ウイークが毎シーズン開かれているが、昨年はオスロやストックホルムが開催を取りやめるなど、パリやミラノなどの主要ファッション都市以外のファッション・ウイークは岐路に立たされている。多額の予算や労力をかけてまで開催する必要があるのかどうかは確かに疑問。その在り方自体が問われている。

 そんな中、1月13〜16日には、ドイツの首都ベルリンでも2020-21年秋冬ファッション・ウイークが開催された。ベルリン・ファッション・ウイークは、15のショーからなるメルセデス・ベンツ・ファッション・ウイーク・ベルリン(以下、MBFWB)を中心としたもので、期間中には非公式のショーやプレゼンテーションと、「プレミアム(PREMIUM)」や「シーク(SEEK)」「パノラマ(PANORAMA)」「ネオニット(NEONYT)」などの大型合同展が催されている。

 実際取材したベルリン・ファッション・ウイークはというと、合同展にはヨーロッパ各国からブランドやバイヤーが集まっているものの、MBFWBはブランドも、バイヤー、メディア、インフルエンサーなどの観客も国際色に乏しく、ドイツ語圏(ドイツ、オーストリア、スイス)が大半。かといって、現地の若い才能を積極的にサポートしたり、サステナブルに特化したりという強い個性がファッション・ウイーク全体にあるわけでもなく、ここ数シーズンの苦戦は続いているように感じられた。事実、「ゲーエムベーハー(GMBH)」や「オットリンガー(OTTOLINGER)」といったベルリンを象徴するユニークな若手ブランドは、パリで発表を続けている。

 その一方で今季は、音楽イベントや展覧会にも使われている元火力発電所を改装した巨大空間「クラフトヴェルク ベルリン(KRAFTWERK BERLIN)」に公式会場を移転。迫力のある音響設備や45mのランウエイを用意するとともに、アンダーグラウンドやクラブカルチャーを軸にする「DSTM」や「ラスト エアーズ(LAST HEIRS)」も参加するなど、ベルリンならではの“個性”を打ち出そうとする動きも見えた。ここでは、MBFWBの中で際立った3ブランドを紹介するとともに、デザイナーたちにベルリンで発表する理由を聞いた。

ODEEH

 約10年前からベルリンでショーやプレゼンテーションを開催している「オデー(ODEEH)」は、名実ともにベルリン・ファッション・ウイークをリードする存在だ。同ブランドは08年にオットー・ドレグスラー(Otto Droegsler)とイェルク・エールリッヒ(Joerg Ehrlich)が設立。今季も2人が得意とする多彩なオリジナルプリントとリラックス感のあるシルエットを生かしたエレガントなコレクションを披露した。流れるようなシルクのドレスやセットアップが特に印象的だ。

 ベルリンで発表を続ける理由を尋ねると、「私たちのような比較的新しいブランドにとって、シーズンの始まりにコレクションを発表することは重要。ベルリン・ファッション・ウイークの時期にはまだバイヤーもオーダーに融通が利き、新たな販路の開拓につながっている」と2人。現在は、パリでプレ・コレクションのセールスを行った後、ベルリンでメインコレクションを発表し、デュッセルドルフやミュンヘン、ニューヨーク、日本でセールスを実施。その後、パリ・ファッション・ウイーク期間中にはカプセルコレクションを披露するなど、長いセールス期間を設けているという。「実際、過去にはパリコレでコレクションを発表したこともあるが、バイヤーにとってはもう買い付けの終盤で、ほぼ予算を使い切った状態だった。また、コレクションのイメージを早い段階で活用できることは、露出面での効果も高い」とコメント。彼らがアトリエを構えるのは南ドイツだが、「ベルリン・ファッション・ウイークに参加することで、国内に加え、海外からもますます多くのサポートを得ている」と続ける。

LAST HEIRS

 これまで4シーズンは非公式のプレゼンテーションを行なってきた「ラスト エアーズ」は今回MBFWBの公式スケジュールに加わり、ランウエイデビューを果たした。2017年設立の同ブランドは、音楽やファッション業界でさまざまな経験を持つクリエイティブチームで構成される。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」や「ナイキ(NIKE)」「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」などでキャリアを積んだマックス・デルナー(Max Doerner)とレア・ロス(Lea Roth)がクリエイティブ・ディレクターとしてチームを率いている。「ベルリンに対する忠誠心と、この街のクラブシーンに根差したブランドであることからベルリンでのショーを決めた」と2人が話すように、同ブランドの代名詞はクラブシーンやアンダーグラウンドなカルチャーから着想を得たスタイル。今シーズンは、パテントやパイソン柄、ハンドペイントなどを取り入れながらも、ワークウエアの要素やアーストーンを中心に用いることで、いつもよりも落ち着いた印象に仕上げた。

 ショーの感想を尋ねると、「(ドイツの)ファッション協会とも話し合い、クラフトヴェルクという私たちにとって最高のロケーションで初のショーを開くことができた。他の都市のファッション・ウイーク同様、MBFWBは半年に一度のドイツにとって重要なファッションイベント。特に今回のラインアップに入れたことがうれしい」と話す。その会場には、個性的な装いのファッションキッズたちが集結。他のショーとは異なる熱気を見せ、地元での人気をうかがわせた。ただ、同ブランドはドイツ市場だけを視野に入れているわけではなく、パリ、ミラノ、ロサンゼルスでもセールスを行っており、近々東京でも始める予定。「地球上でも最も重要なブランドの一つになることを目指している」。

NOBI TALAI

 2015年設立の「ノビ タライ(NOBI TALAI)」は16年からパリにコレクション発表の場を移したが、先シーズン、ベルリン・ファッション・ウイークに戻ってきた。パリから復帰した理由を聞くと、「当時はグローバルにブランドをアピールするため、パリで発表することが重要なステップだった。しかし、その時にもベルリン・ファッション・ウイークでのイベントには参加していたし、いつかは再びベルリンでのショーを開くと決めていた。約30年暮らしているこの街は、私にとってのホーム。チームやアトリエも、家族や友達も、重要なつながりも、全てがここにある」とノビ・タラエイ(Nobi Talaei)=デザイナーは語る。イラン・テヘラン出身の彼女は今季、祖母の遊牧民の家系としてのヘリテージと伝統的なクラフトに着目。シャープなテーラリングとグラフィカルなプリーツに、ペルシャシルクやキリム絨毯といった自身のルーツを感じさせる要素を掛け合わせた。

 ベルリンでのショー後には、ベルリンを含む国内数都市でのセールスを実施。パリ・ファッション・ウイークの時期に合わせ、プレとメイン・コレクションのセールスも行なっている。既存の販路は、ベルリンの高級百貨店カー・デー・ヴェー(KaDeWe)や数都市に店舗を構えるセレクトショップのアプロポス(APROPOS)などで、ドイツが中心。「今は直営販売の準備を進めているところで、まずはオンラインショップをオープンさせる。自分のビジョンを表現する旅はまだ始まったばかり。シーズンごとに成長し、近い将来、日本をはじめとするアジア市場にも参入できることを願っている」とグローバルブランドへの飛躍を目指す。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。

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ゴルチエの最後のショーに豪華メンバーが大集結! 「ジャンポール・ゴルチエ」2020年春夏オートクチュール・コレクション

 1月22日に仏パリのシャトレ座(Theatre du Chatelet)で、ジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)による最後のオートクチュール・ショーが開催された。ゴルチエのショーはファッションとゲストパフォーマーたちが融合したエンターテインメント性溢れるものとして知られているが、現在67歳のゴルチエはこれを最後にランウエイから退く意向で、今回のショーは彼の50年間の歴史を振り返るような内容となった。

 ショーでは1時間以上にわたって、モデルやミューズ、ゴルチエの友人に至るまで多くの人物が彼の過去のコレクションを取り入れた230以上のルックを身にまとってステージに登場した。セーラー服、コルセット、タキシード、そしてトロンプルイユ(だまし絵)の技法を用いた作品など、ゴルチエのシグネチャー的作品がランウエイを彩った。

 今回のショーにはエリン・オコナー(Erin O’Connor)、ココ・ロシャ(Coco Rocha)、ジェイド・パーフィット(Jade Parfitt)、カーリー・クロス(Karlie Kloss)、ジジ・ハディッド(Gigi Hadid)、ベラ・ハディッド(Bella Hadid)、ジョーダン・ダン(Jourdan Dunn)、リリー・マクメナミー(Lily McMenamy)、カレン・エルソン(Karen Elson)、ナ・クリーブランド(Anna Cleveland)、エステル・ルフェビュール(Estelle Lefebure)、ノエミ・ルノワール(Noemie Lenoir)、ウィニー・ハーロウ(Winnie Harlow)、そしてブランドの前ミューズでありクチュール・ディレクターも務めたファリーダ・ケルファ(Farida Khelfa)までもが登場した。

 最も大きな喝采を浴びたのはゴルチエのショーに何十年もの間参加し続けてきたタネル・ベドロシアンツ(Tanel Bedrossiantz)で、最後のショーであっても落ち込む様子はなく、右肩に雄鶏を付けたレザージャケットを着てランウエイを闊歩した。

 ベドロシアンツを筆頭に、ボーイ・ジョージ(Boy George)、ディタ・フォン・ティース(Dita Von Teese)、パリス・ジャクソン(Paris Jackson)、女優のベアトリス・ダル(Beatrice Dalle)、ロッシ・デ・パルマ(Rossy de Palma)、ファニー・アルダン(Fanny Ardant)、シンガー・ソングライターのカトリーヌ・ランジェ(Catherine Ringer)、歌手のミレーヌ・ファルメール(Mylene Farmer)、元祖ディスコクイーンのアマンダ・リア(Amanda Lear)、そして90年代にゴルチエと共にテレビ番組「ユーロトラッシュ(Eurotrash)」を手掛けた司会者のアントワーヌ・ドゥ・コーヌ(Antoine de Caunes)らもステージに登場した。

 オーディエンスにはピエール・カルダン(Pierre Cardin)、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)、クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)、クリスチャン・ルブタン(Christian Louboutin)、ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)、イザベル・マラン(Isabel Marant)、ジュリー・ドゥ・リブラン(Julie de Libran)などの有名デザイナーたちの姿もあり、ゴルチエの最後のショーを客席から見守っていた。

 ショーはウィリアム・クライン(William Klein)による1966年のフランス映画「ポリー・マグーお前は誰だ?(Who Are You, Polly Maggoo?)」に登場する葬儀のシーンから始まり、ボーイ・ジョージがエイミー・ワインハウス(Amy Winehouse)の楽曲「Back to Black」を熱唱した。80年代初頭に発表され、マドンナ(Madonna)が90年に行った「ブロンド・アンビション・ツアー(Blonde Ambition Tour)」で着用して有名になった円すい形のブラをほうふつとさせる棺が登場するなど、葬儀シーンといえどもゴルチエらしくおふざけのある演出に会場は沸いた。

 フォン・ティースが着用したヌードカラーのサテンのベルト付きコルセットや、デ・パルマが着用した黒の短いビスチェドレスとマンティラ、ジジ・ハディッドのセーラーのトップスに白のパンツ姿や、ベアトリス・ダルが黒のネグリジェにサテンパンツ姿で行ったパフォーマンスなど、ショーは数々のハイライトで彩られた。

 ゴルチエが最後の挨拶に現れると、会場は総立ちの大歓声に包まれた。ボーイ・ジョージ率いるキャストの合唱と、男性モデルらによるゴルチエの胴上げによって最後のショーは大きな盛り上がりとともに幕を閉じた。

 ゴルチエは「とてもハッピーで感動的、よい気分だ。古くから知る多くの愛するモデルたちがこのショーに特別に参加してくれた。みんなと再会したことでたくさんの思い出がよみがえったと同時に、全員で新たなショーを創り出すことができた」と語った。

 ゴルチエはランウエイからは引退するが、デザイナーとしての活動を完全にやめるわけではないという。ロシアのモスクワとサンクトペテルブルクでは「ファッション・フリーク・ショー(Fashion Freak Show)」と題したキャバレーショーを行っているし、「Gaultier Paris(ゴルチエ パリ)」は新たなコンセプトで継続していくとしている。

 ゴルチエは「ファッションに携わるのはやめられないから、何かほかのことをするよ。クチュールは死んでいない。あの葬儀はおもしろくて新たな創造性もあった。だから、全く死んでなんかいないのさ」と語っている。

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「ボッター」が上々のパリコレデビュー 「ナイキ」との巨大シューズなどDIY精神溢れるハッピーなコレクション

 ルシェミー・ボッター(Rushmey Botter)とリジ―・ヘレブラー(Lisi Herrebrugh)のデザイナーデュオが率いる「ボッター(BOTTER)」が、パリ・メンズ・ファッションウイークで2020-21年秋冬コレクションを発表した。彼らは18年から「ニナ リッチ(NINA RICCI)」のアーティスティック・ディレクターを務めているが、自身のブランドでパリ・メンズ・ファッション・ウィークに参加するのは今回が初めて。

 筆者が彼らに取材をするのは今回が2度目だ。前回は「第33回イエール国際フェスティバル(33e Festival International de Mode, d'Accessoires et de Photographie à Hyères)」でグランプリを受賞した約2年前。ショー開始1時間前に筆者がバックステージへ入ると、「前にも取材してくれたよね?」と笑顔で挨拶を交わしてくれた。グランプリ受賞からの2年で心情に変化があったかたずねると、「自身のブランドのデザイナー、さらには『ニナ リッチ』を率いる立場として責任感は増したけど、心の内は変わらない。きっと僕らの関係性が何も変わらないからさ」と、少し離れた所に立っていたヘレブラーに目を向けながら答えた。彼らはビジネスパートナーであり、長年の恋人同士でもある。この2年でアントワープからパリへと拠点を移し、現在住居も共にしているという。

ポップでキャッチーなアクセが豊富

 環境や肩書きが変わっても、彼らのクリエイションの基盤はデビュー当時と変わらない。ハンドメイドでペイントや装飾を加え、身の回りにあるアイテムで自由にDIYを楽しむ精神だ。「アルト・ポーヴェラ(Arte Povera)による楽観的なバイブス」と、ボッターはブランドについて形容した。アルト・ポーヴェラとは、60年代にイタリアで始まった美術運動で、日本語では“貧しい芸術”と訳される。材木や石、古布など非芸術的な物に作り手の身体や思考を結びつけて表現される美術とされている。会場の真ん中にはキュラソー島(カリブ海に位置する島)を拠点にアーティストとして活動するティルゾ・マルタ(Tirzo Martha)が制作した、便器やタイヤ、扇風機がぶら下げられたアート作品が飾られており、ショーではルックを視覚効果で芸術的に見せる役割を果たした。

 今季のコレクションでは、カラフルなバルーン、商品値札の留め具、空気ビニールの中にパスポートを入れた小物などがアルト・ポーヴェラを示すアイテムと言えるだろう。ショー30分前のリハーサルで、モデルが着用した「ナイキ(NIKE)」とのコラボレーションによるスニーカーが故障するハプニングに見舞われた。分厚い靴底が外れて歩ける状態ではない。ボッターは釘と電動ドリルを持って急いで補修を施し、ショーには間に合った。予定にはなかっただろうが、結果的にそのスニーカーが最も「ボッター」らしいDIYに満ちたアイテムとなったようだ。ボッターが補修を行っている間、ヘレブラーはルックのスタイリングの最終確認や早着替えの練習を進行していた。通常バックステージには、フィッターと呼ばれるモデルに衣服を着用させる担当者が2ルックに対し1人程度備えているのだが、同ブランドに関しては29ルックに対して5人程度のフィッターしかいなかった。ボッターとヘレブラー自身がフィッティングからスタイリングまでをほぼ全て仕上げており、クリエイションだけでなくショーの作り方にもDIYの精神が宿っているようだった。

 「とにかく楽観的なメッセージを伝えたかったんだ」。ショー後の囲み取材でボッターがコレクションの詳細について説明する。「例えば、入院患者を励ますために贈り物として届けるバルーンって、人を元気付けるパワーを持っているよね。そんな風に『ボッター』はポジティブなエネルギーを、見る人や着る人に与えるブランドへ成長させたいという想いを込めたんだ」。続けてヘレブラーも口を開いた。「“醜い物を美しく見せる”ことこそ、私たちが日々学び、コレクションを通して見せ続けていきたいの」。故障したら補修して、長い期間をかけて育む——2人の関係性もブランドも、我流のDIY精神で無二の道を築いていくのだろう。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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片寄涼太がオフショット写真付きで独占寄稿 「ロエベ」秋冬メンズレポート&パリの食事&買い物日記

 片寄涼太はこのほど、自身にとって3回目となるパリに赴き、「ロエベ(LOEWE)」の2020-21年秋冬メンズ・コレクションを鑑賞した。そこで「WWD JAPAN.com」は、片寄にコレクションレポートを依頼。オフショットの写真付きで、彼の「ロエベ」レポートとパリ日記を独占公開する。

 自分にとって3年半ぶりのパリ・メンズ・ファッション・ウイークで、「ロエベ」のショーには初めてご招待頂きました。自分なりの目線でのパリレポートを「WWD JAPAN.com」独占で掲載して頂きます。

 「ロエベ」ショーの前日には、メゾンのパリ旗艦店にお邪魔させて頂きました。店のオブジェは楽しく温かくて、スタッフはスペインならではの明るさ。居心地が良く、思わずたくさんお買い物してしまいました。買ったのは、ブラウンの一枚皮のロングコート。今回のパリの思い出にもなる一生物のアイテムで、パリから帰る日に早速着ちゃってました。

 当日、新しいコレクションをパリで、しかも目の前で見ることができるなんて、やっぱりとってもワクワクします。会場に向かう車からニヤニヤが止まりません。会場は例年同様、パリのユネスコ本部。ファッションだけでなくアートやカルチャー、ライフスタイルを重んじる「ロエベ」だからこその会場選びです。会場内のランウエイは木造の黒い橋のようなデザイン。シンプルですが、だからこそ新たなコレクションのルックや細かなディテールまでが明確に見える工夫のように感じました。

 "Pretty Boy"をBGMに明るい世界観で始まったショーは、まるで太陽が思いっきり満ちたようなパワフルなエネルギーに溢れた雰囲気。まさに今回のパリの天気のような「ロエベ」2020-21年秋冬メンズ・コレクションがスタートしました。フェミニンの雰囲気も強めな今回のコレクションで印象的だったのは、女性のドレスっぽく見える、とても煌びやかなエプロンを身に纏ったルック。また象をモチーフにした「ロエベ」の代表的なバッグは、キラキラにデコレーションされていてすごく素敵でした。

 個人的に「これは気になる!」と思ったアイテムは、ハットとバケットの中間のような小さめの帽子。こちらもちょっとした装飾が幾何学的にあしらわれていてすごく可愛く、自分もワンポイントにかぶってみたいアイテムです。クリエティブディレクター、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)の「ロエベ」は素敵な色づかいが特徴。首元と袖に輝くストーンが装飾された鮮やかな黄色のニットは、ショーが終わっても頭のなかに強烈に印象に残るアイテムでした。

 素敵なショーはあっという間に終わり、ジョナサンとの対面。聞きたいこともイメージしていたのですが、彼の時間も限られるなかでの対面……。前日にある雑誌で「ロエベ」のファッションストーリーを撮影をしていたので、スタッフに無理をお願いして、撮影した写真を事前にもらっておきました。案の定、ジョナサンに挨拶するとすぐに記念写真の2ショットに。「なにかもっとコミュニケーションを……」と思い、「昨日、日本の雑誌のために撮影した写真を見てくれない?」とおもむろに自分の携帯を取り出し、写真を見せてみました。とても褒めてくれて、改めて記念撮影に応じてくれました。最初の記念撮影よりもグッと距離が縮まったような雰囲気で、自分のインスタグラムにもポストした、とてもお気に入りの写真になりました。「ロエベ」のショーで感じたのは、ブランドロゴを大々的に打ち出さないこと。あくまでジョナサンは自身のクリエーションに興味を集中させていて、仕事への取り組み方がすごくシンプルなんだなあと思いました。

 これを終わりにせず、この縁を大切にして関係性を深めていけたらと思います。彼が来日した際は、また別の形でお会いできたら嬉しいし、今後のファッションショーにも伺えたら嬉しいです。「ロエベ」はファッションだけでなく、アートのアワード「ロエベ ファンデーション クラフト プライズ」などにも取り組んでいます。自分もアートにとても興味があるので、今後はそんなフェーズでも関わりを深く持つことに意欲を燃やしたいと思います。

 寒い寒いと身構えていたパリは天候にも恵まれて、自分が滞在した約3日間ほぼ雨が降らず、毎日青空を見る事ができました。雨の予報だった日まで晴れてくれて、それは、まるでパリが歓迎してくれているかのよう。こんなことがあると、余計パリが好きになりますね。パリは今回が3度目。雰囲気や食事など、好きなものも沢山あります。基本ファッション以外では「食べること&飲むこと」が趣味。特にワインがとても好きなので、パリではワインを頂くのも楽しみでした。滞在中は運良くスタッフの方に予約していただき、「アレノ・パリ・オ・パヴィヨン・ルドワイヤン(Alleno Paris au Pavillon Ledoyen)」というミシュラン3つ星のフレンチのお店にも伺うことができました。前菜のトリュフに包まれたサラダから、メインのお肉まで、言葉に表せないほどの美味しさ。ペアリングしたワインも、泡のキメがすごく細かいキリッと冷えたシャンパンからお食事にきちんとマリアージュ。最後のエスプレッソまで全て完璧で、自分にとって最高のご褒美のようなディナーでした。

 パリの旅は自分のファッション感や美的感覚を養ってくれる時間で、自信に繋がる時間でもありました。パリにもまた来られたら嬉しいし、その時はさらに3つ星が似合う男性として帰ってこよう!!と心に決めました。

【片寄涼太が気になったルックは、コレだ!!】

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喜劇王「ダブレット」の笑いが国境を越えた ファミレスを再現し初のパリコレに「いらっしゃいませー」

 井野将之デザイナーの「ダブレット(DOUBLET)」が、2020-21年秋冬コレクションを1月16日パリで発表した。パリ・メンズ・ファッション・ウイークに参加するのは今回が初めて。井野デザイナーはLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)が若手を支援するために創設した「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(以下、LVMHプライズ)」のグランプリに18年に輝き、以降LVMHのエキスパートからのサポートを受けてきた。グランプリ受賞から約2年、満を持してのパリコレ参加である。

有名な某ファミレスを再現?

 プレゼンテーションの会場に選んだのは、北マレ地区にあるギャラリーだ。入り口には「D」から始まる、見覚えのあるファミリーレストランそっくりの“DOUBLET”と書かれた看板が掲げられている。ガラス張りの棚には、日本のレストランでよく見かけるメニューの食品サンプルが飾られていた。“たこやき 500”“スパゲッティ 800”とよく見るとフードの横に数字が付けられており、通貨の単位はなんと円ではなくユーロ表記。ということはたこ焼きは約6万円、スパゲッティは約9万6000円なの?すでに本気か冗談かもわからない「ダブレット」の世界観に引き込まれる。「いらっしゃいませー」というスタッフの掛け声とともに中に誘導され、超高級ファミレスへと入店してしまった。

スタッフやモデルも笑いが絶えず

 入り口付近の会計スペースを通るとドリンクバーが設置されており、来場者は自由にソフトドリンクやフローズンドリンクをカップに注いで中へと入っていく。ファッションショーの会場というよりファミレスをほぼ完全に再現した空間で、「ウィ・アー・ザ・ワールド(We Are The World)」のBGMとともにランウエイショーが始まった。テーラードジャケットとチャイナシャツをハイブリッドさせたアウターや、ロックシンガー風のコートにバビューシュカが描かれた靴下、フランスマダムが着ていそうなボーダーのニットウエアにエッフェルタワーの刺繍を装飾し、トップスや小物にはアメリカンインディアンの装飾品であるドリームキャッチャーを用いた。とにかく多国籍の要素をミックスさせた風変わりなムードが、ブランドの世界観を凝縮させたようなコレクションである。

あらゆる仕掛けに会場の反応は

 ショー後は、アメリカ版「ヴォーグ(VOGUE)」のジャーナリストや元コレット共同創業者サラ・アンデルマン(Sarah Andelman)が満面の笑みで、井野デザイナーへの元へ祝意を伝えに来た。「とっても面白かったわ!」と言われ、照れ臭そうだが満足気な様子の井野デザイナーに、コレクションのコンセプトについて尋ねた。「着想源は見ての通り、幼少期に家族で行ったファミリーレストラン。最近は色んな国へ行く機会が増えて、各国の食文化を体験した。すると改めて日本のファミリーレストランのメニューってとてもダイバーシティーだなと気づいた。パリという世界の舞台で人種や国籍、性別問わない『ダブレット』流“大人のファミリーレストラン”を作ってみようと思った」。そう語る彼はシェフ風の割烹着に、大きなフライパンとお玉を両手に持つシェフの出で立ちだ。聞くと、出国直前に急きょアマゾン(AMAZON)で購入したのだという。

 そして井野デザイナーから「楽しんでくれましたか?みんな笑っていた?」と逆に質問を投げかけられた。答えは、笑っていた。ファミレス文化が海外の来場者にどれだけ伝わったのかは正直わからない。でもショーの最中やショーが終わった直後には、笑顔でスマートフォンを方々に向けて撮影する来場者が見られた。彼は「LVMHプライズ」受賞の際やそのほかの取材でも、「周りの人が喜んでくれてうれしい」「何よりも周りの人に楽しんでほしい」と、いつもファッションを通じて“笑い”を届けることに挑むデザイナーである。井野デザイナーのことを、尊敬と愛を持って”平成の喜劇王”と筆者も呼ぶことにしよう。この類い希なデザイナーは、もしかするとファッションで世界に平和を届けてくれるかもしれない。なぜなら“笑い”こそが世界共通言語であり、ダイバーシティーなのだから。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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帰ってきたメンズコレドタバタ日記Vol.10 三浦春馬&森星が「ポール・スミス」50周年をお祝い 「アクネ」のメンズが見られない!?

 1月19日、晴れ。天候に恵まれたパリメンズも、いよいよ今日が最終日。例年この日は、「もう終わっちゃうのか~」と「やっと終わるのか~」というアンビバレントな気持ちが交互に訪れる穏やかな日曜日です。

10:40 ランバン

 さぁ、最終日のトップは「ランバン(LANVIN)」。「ロエベ(LOEWE)」でジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)のもとメンズウエア・デザイン・ディレクターを務めたブルーノ・シアレッリ(Bruno Sialelli)のメンズランウエイも2回目になりました。会場は、パリ市外(苦笑)。日曜日で渋滞こそないものの、疲れたカラダには堪えます。

 コレクションからは、まだまだ“ジョナサン臭”が漂います。出自ゆえニオイをゼロにする必要はないかと思いますが、ロング丈のジャケット、独特なシルエットのパンツ、リブ編みのニットで作るラペル、違和感を覚えるカラーコンビネーション、キッチュなアクセサリーのすべてが揃ってしまうと、どうしても既視感に繋がってしまうのは否めないところ。2日前に「ロエベ」、4日前に「JW アンダーソン」のショーを見ているので、尚更です。

 子ども服から大きくなった「ランバン」にとって、“キッチュ(ちょっと奇抜)”なムードは大事かもしれません。でもメンズのセットアップやウィメンズのドレスなどを見る限り、ブルーノは、同じく子ども服に欠かせない“イノセント(無垢)”なムードの表現も上手みたい。次は、そちらを強く意識して欲しいなぁ、と思うのです。

12:10 クレイグ グリーン

 お次は、ロンドンメンズから移籍した「クレイグ グリーン(CRAIG GREEN)」。「コレは洋服?それともアート?」と唸っちゃうクリエイションの持ち主です。

 今回も、終盤4ルックには度肝を抜かれます。完全にロボットです(笑)。「ワレワレハクレイググリーンナノダ」。そんなデジタル音が聞こえてきそう(笑)。細部を見ると、日除け用のブラインドが洋服の骨組みを担っています。奇想天外ではありますが、このあたりは「クレイグ グリーン」らしい、さ
まざまが繋がって構成される万物をシンボリックに表現するコレクションピースです。

 進化が際立っていたのは、そんなアイデアを希釈してリアルクローズに落とし込んだ前半のパートでした。アイデアは最後のコレクションピース同様、万物、この場合は「パーツ」と呼ぶのがピッタリの小さな布の組み合わせ。けれどその一個一個が、白いシャツ生地やダウン、パラフィン、サテンなどで作られており、「あぁ、着られそうだ」と思わせるのです。キャンバスに見立てた純白のコットンに大きな花を描き、それをイーゼルに立てかけるかのようにボディに貼り付けたワンピースは、秀逸な美しさでした。拍手喝采。パリに移って、大正解です。

14:00 ダンヒル

 パリのシンボル、グラン・パレに移動して「ダンヒル(DUNHILL)」へ。センス抜群のマーク・ウェストン(Mark Weston)による「ダンヒル」は、あくまでリアルクローズながら、ドラマティックな要素をひと匙。しかも、コレクションピースも店頭でしっかり売ろうという気概に溢れるステキブランドです。

 今シーズンは、ピカピカに光るパテントレザーのパンツを軸に、ボックスシルエットのジャケットやオーバーサイズのコートを合わせ、シルクサテンのストールを首にキュッと巻きつけます。これだけ正統派のエレガンスだと、正直ちょっと気疲れ・着疲れしてしまいそうですが、オーバーサイズだから大丈夫かな?

16:30 ポール・スミス

 お次は、なんとブランド創立50周年の「ポール・スミス(PAUL SMITH)」!!半世紀、しかも創業デザイナーが今も現役。加えてインディペンデントというのは、本当にたいしたものです。ショーの前には、日本人アンバサダーの三浦春馬さんと、森星ちゃんを撮影。2人はそれぞれ、ジャケットの着こなしが対照的で、写真に収まる姿もバラバラ。「ジャケットって、個性的に着こなせるし、個性的に振る舞えるモノなんだなぁ」なんて思います。

 ショーは、50年を振り返るムービーからスタート。うまく撮影できないアングルだったのが悔やまれます。コレクションは、近年トップラインでイメージ発信を強化する、大人カラーのセットアップがメーン。最近は、英国紳士もノーネクタイ。タートルネックのトップスや、ポールさん手描きのロゴを拡大プリントしたシャツなどを合わせます。終盤は、美しきスカイブルー。50年経っても明日のため、未来のために空を見つめているのかな?ベリー・エモーショナルです。

17:30 アンブッシュ

 お次は「アンブッシュ(ABMUSH)」。先日、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」などを擁するニューガーズグループ(NEW GURADS GROUP) が買収というビッグニュースが飛び込んだのは、記憶に新しいところです(詳細は、コチラ)。

 展示会場に行くと、ウエアの提案、メチャクチャ増えています。きっと次は、バッグやシューズですね。

 「カントリーサイド」と銘打ったコレクションは、作務衣や長着、市松模様など、日本の伝統文化とストリートを融合。着物合わせのMA-1(風)がベリークールです。ニューガーズ入りを決めた理由と今後のビジョンについて、日本に帰ったらVERBALさんに取材したい旨を伝えつつ、YOONさんには「ディオール(DIOR)」のシルバー&パールジュエリーが素晴らしかったこともお伝えして、失礼しました。

18:30 アクネ

 次はルーブル美術館で「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」。今回は同じ会場、同じ時間に2020-21年秋冬のメンズとウィメンズを同時に発表。でもランウエイは分かれていて、2つを同時に見ることはできません(苦笑)。「Why~、なぜに(by 矢沢永吉)」状態とはこのコト。なぜ、一緒に見られるようにしないのか?ナゾではありますが、「アクネ」っぽいカンジでもあるので、仕方なしに僕はウィメンズ、後輩オーツカはメンズに分かれ、会場入りです。

 会場は、こんなカンジ。中央に大きな壁がそびえ立ち、メンズ側からはウィメンズを、ウィメンズ側からはメンズを見ることができません。唯一、天井の鏡越しには、チラッと見えるのかな?

 ウィメンズは、タペストリーのように肉厚の生地や、洗いをかけたベルベットなどで作る、大人色のボディコンドレスが主軸。袖や裾はフレアでデカダン、退廃的なムードが漂います。

 一方のメンズは、どうだったんでしょう?あ、こんなカンジか。結構違ったんですね(笑)。

17:30 「1017 アリックス 9SM」

「1017 アリックス 9SM」のショー会場。パリメンズのフィナーレにこの混雑。マジでカラダにこたえます(笑)。

 さぁ、パリメンズのラストは、「1017 アリックス 9SM(1017 ALYX 9SM)」。会場は、ご覧の大混雑です。この手のブランドは毎回こんなカンジなので馴れっこですが、最後の最後にこの人混みは、実にキツい(笑)!!もみくちゃになって、会場入りです。

 コレクションは、正統派のフォーマル。「ちゃんと着る」価値観を提案した20-21年秋冬メンズを象徴するかのようでした。「アリクス」でタイドアップなのです。

 正直、皆が皆フォーマルを提案しなくて良いのでは?と思います。でもコレができないと、メンズブランドとして長生きできないのも分かっています。僕自身も、スーツの美しさをブランドの評価基準の1つにしています。でも働き方が自由になってリモートワークが増える世の中、スーツはどこまでメンズの中心であり続けるのでしょう?需要は再び、盛り上がるなんてコトあるのでしょうか?

 ショーのあとは、そんなことを考えながらホテルに戻りました。これから半年、みなさんと一緒にじっくり考え、悩み、アクションしていきたいと思います。

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メンズコレ裏街道記 パリメンズに初挑戦した「ダブレット」と「ターク」を見て思うこと

 1月16日。晴れ。日程が過密なパリ・メンズの中でも特にこの日はスケジュールがぎっちりで、朝から何だか落ち着きません。でもそのそわそわとした気持ちはスケジュールのせいだけではなく、この日にパリコレデビューを飾る日本の2ブランドがショーを控えているからでもありました。井野将之デザイナーの「ダブレット(DOUBLET)」と森川拓野デザイナーの「ターク(TAAKK)」です。

15:15 ターク

 前のショーから少し時間が空いたため、珍しく昼食をとる時間が作れました。しかも比較的ゆっくりと食べられるほどゆとりがあります。でも、気がつけばいつも通りの早食いをきめて、会場に到着していました。ショー開始は15時15分。僕が会場に着いたのが15時ちょうどぐらい。どんなショーでも基本的に20分前後遅れて始まるので、会場に着くのは早すぎるぐらいです。でも、なぜだか行かずにはいられませんでした。会場に到着すると、森川拓野デザイナーが入り口付近で忙しそうに挨拶まわりをしています。前日も会場で深夜2時まで作業や打ち合わせをしていたらしく、寝不足のせいか顔色はめちゃくちゃ悪い。日本から帯同している広報も目を充血させながら、にこやかに振る舞っています。みなさん明らかに満身創痍。(本番前にこのバタバタで大丈夫か……)と少し心配していたところに、森川デザイナーが駆け寄って来てくれました。僕からは「頑張ってください」としか言うことはできないなと考えていると、先に森川デザイナーから「良いショーを見せられると思う」とだけ言い残し、再びバックステージへと帰って行きました。ファッションの舞台でここまで真剣に戦っている人たちを目の当たりにし、まだ会場に入ってもいないのに泣けてきました。実際にショーを見ると、これまでとは明らかに違います。パリという大舞台で戦うために、洗練されたスタイルへと舵を切ってきたという印象でした。よく見るとこれまでの「ターク」のドロっとした濃厚な強さはあるものの、フロッキーに見立てたデニム素材やチュールを重ねたような奥行きのあるチェック柄、チェーンパーツの使い方など、これまでに感じることのなかったエレガンスを感じました。これまでよりもスタイルをぐっとハイファッションに寄せています。ショーを一緒に取材したジャーナリストのエリー・イノウエ(ELIE INOUE)さんやカメラマンの土屋航さんは、興奮気味に「めっちゃよかった」と口をそろえます。でも「ターク」の濃厚さが人間っぽくてが好きだったひねくれ者の僕にとって、本当にいいコレクションだったか、ショーの直後はいろいろ考えていました。

「ターク」2020-21年秋冬パリ・メンズ・コレクションより

16:30 ダブレット

 奇しくも「ターク」とほぼ同時間帯での開催となったのは、2018年の「LVMHプライズ」でグランプリを獲得した「ダブレット」です。会場に着くと、早くも異様なムードが漂っています。入り口横にはなんと、日本のレトロな定食屋のようにラーメンやステーキなどの料理サンプルがウインドウに並んでいます。その時点ですでにワクワクするのですが、会場内に入ってさらに度肝を抜かれました。外観は定食屋なのに、中身は完全にファミリーレストラン仕様だったからです。本物そっくりなメニューが置かれていたり、お菓子コーナーやおもちゃコーナーがあったり、フローズンの機械を設置していたりと、もう爆笑の連続。すでに「ダブレット」ワールドに引き込まれてしまいました。いよいよショーが始まると、BGMの「We Are the World」のしっとりしたイントロの違和感にじわじわきて、笑いすぎて頬が痛くなるほど。とはいえ、演出に服が付いてこなければショーをやる意味はありません。われに返って取材モードに切り替え、真顔でモデルの登場を待ちます。そして10秒後、再び爆笑していました。だってリアルな寿司のプリントや立体になったパンダのウエアやシューズ、くり抜く前のプラモデルを模したバッグやニットなど、これでもかというほどのユーモアが連続したから。でもただ面白いだけではなく、段ボール風の素材はピッグスキンに特殊な加工を施していたり、プラモデルのアイテムは一つ一つのパーツが精巧に計算されて作られていたりとものすごいテクニックで作られているからこそ、なおさら引き込まれます。「ダブレット」チームにしかできない特殊技術をこれ見よがしに主張するのではなく、“笑い”という全世界共通のフィルターを通して表現することで、より共感されて愛される服になる。涙した「ターク」とは一転、多幸感に溢れたショーとなりました——フィナーレを終えるまでは。

「ダブレット」2020-21年秋冬パリ・メンズ・コレクションより

 ショーが終わり、次の会場に向かおうとすると、井野デザイナーの奥様が「まだまだですね」と涙を流しながらダメ出しをしています。その姿を見て僕もハッピーな表情から一転し、必死に涙をこらえました。「ターク」のように大舞台に真っ向勝負するショーでも、「ダブレット」のように人を楽しませるショーでも、裏側には携わる人たちの個々の思いがあります。しかし僕たちの仕事は、ショーという“結果”を見て、クリエーションの質や現在のマーケットを開拓できる可能性があるかどうかというビジネス的な考察を綴ること。プロセスは大事ではありますが、その部分に左右されすぎると、フラットな視点が揺らいでしまう可能性がある。でも、これまでの2人のファッションに対する強い思いを見てきたからこそ、ブランドに携わる人たちを大切にする姿勢を見てきたからこそ2ブランドのショーの素晴らしさは必然であり、涙せずにいられませんでした。

 思い返せば2人に出会ったのは4年前で、今よりもブランドの規模はまだまだ小さかったころ。当時から共通して変わっていないのは、自分がデザインしたコレクションを心の底から愛しているという気持ちがにじみ出ていること。そしてそのムードを伝って人に感動を与える力を持っていることです。右往左往しながらも、そこだけは一貫していました。ショーの直後はいろいろと考えた「ターク」の“強さ”も、「ダブレット」の“笑い”も、昔からブレずにやってきたことであり、2人ともパリの舞台にまでたどり着いたのだからきっと両方正解なのです。暗いニュースが多いファッション業界で、ここまで前向きに、そして真剣にファッションと対峙する彼らの姿に、業界への希望すら見出すほどでした。彼らが残したエモーショナルな足跡は、きっと次世代にもつながるはずです。2人には、時には切磋琢磨し、時には協力しながら、日本のファッションを活気付けてもらいたい——そう強く願った、思い出に残る1日となりました。

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帰ってきたメンズこれドタバタ日記Vol.9 片寄涼太と「ロエベ」のメンズワンピを鑑賞 「ソロイスト」にタフな決断の時

9:15 コム デ ギャルソン・シャツ

 今日の朝イチは「コム デ ギャルソン・シャツ(COMME DES GARCONS SHIRTS)」のミニショー。通常、ファッションショーは20~30分遅れるのが当たり前。ギャルソンのブランドさえ、「コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS)」や「コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン(COMME DES GARCONS JUNYA WATANABE MAN)」は25分くらい遅れますが、朝イチのミニショーはオンタイム。しかも座席は早いもの勝ちです(分かりやすい!)。

 ということで、朝9時前には現地に到着。疲労もピークのパリメンズ後半戦で朝9時に会場に着くのは、正直ラクではありません。某バイヤーさんは「修行」と言っていましたが、気持ち、良く分かります(笑)。

 気になったのは、このスタイリング。スリット入りのポンチョを、カーディガンの中から外へ。カワイイです。シューズは、「アシックス(ASICS)」とのコラボでした。

12:25 ロエベ

 その後は、原稿を書いたり、エディターズレターをしたためたり。お昼過ぎに「ロエベ(LOEWE)」のショー会場、ユネスコ本部に到着しました。片寄涼太さんのお隣。片寄さんは昨日、「ロエベ」を着用してのシューティングに臨んだそうで、翌日ご挨拶するためにもジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)のインタビュー動画を事前にチェックしたそうです。昨日ご一緒した会食では、どこに、どう共感したかアツく語ってくれました。なんて勉強熱心でしょう。素直に感動です。

 そんな片寄さんと一緒に見たコレクションは、ジェンダーの概念を超越、というか最初から意識していないかのようです。コートの下は、もしかしたら何にも履いてないかもしれない(いや、下着は履いているでしょうがw)。コートをワンピース的な感覚で着ちゃいます。ファーストルックは、ドレープを寄せたドレス!!でもコレ、実はエプロンなんです(笑)。BGMはYoung GalaxyのPRETTY BOY。Shazamして初めて知りましたが、バンド名も曲名も、今季のコレクションにピッタリ。ヤングボーイが、パパやママの洋服を漁って、鏡の前でキャッキャしている。そんなプリティなシーンが思い浮かびます。今季のBGM大賞です。

14:30 サカイ

 お次は、今季はミリタリーの「サカイ(SACAI)」。MA-1の下にウールの将軍コート、その下にはモッズコートまで重ねたように見えるフェイクレイヤードのアウターなど、今季も「1着でキマるハイブリッド」がさく裂しています。レオパード、レッドベースのチェック、デニム、世界地図、ネイティブモチーフ、フリンジ、プリーツ、指輪を連ねたネックレス、「ナイキ(NIKE)」コラボのスニーカー……。終盤に出てきたアルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein)のTシャツにプリントされたメッセージ「本能と直感を信じる。自分は、正しいと思う時もある。でも、本当に正しいのかは分からない」というメッセージが印象的。思うままに、不安になる時もあるけれど、信じて突き進む。阿部千登勢さんの信念が滲むコレクションでした。願わくば、もっとメンズが見たいぞ!


15:05 アグ

 一昨日ローンチイベントがあった「アグ(UGG)」のスニーカーを手掛けた、アトモスの本明秀文社長にインタビュー。記事は近々にアップします!!

16:00 ディオール

 昨日のベスト、というか今のところのメンズベスト(の予感大な)「ディオール(DIOR)」の展示会へ。スゴいニュースもあるのですが、それはコチラの記事で。

 2020-21年秋冬コレクションは、一見するとシンプルですが、ものスゴく凝りまくっております。一番スゴかった、正直、今まで一度も見たことさえなかったド級のアイテムは、ミンクで作った“Gジャン”。遠目で見ると、縫製やボタンを模した線が見えてGジャンそっくりなのです。どうやって作っているのか⁉︎PRの方と一緒に考え、「まず表面をブリーチして、線を描きたい部分を少しだけカッティング。すると、ブリーチしていない黒い毛が現れ、線に見えるのでは?」との推論に達しました。正解は分からないけれど、いずれにしてもモノすごいクラフツマンシップ。「ディオール」、凄まじきです。

18:45 タカヒロミヤシタザソロイスト.

 地下鉄のストライキはだいぶ落ち着きましたが、いまだ運行本数は通常の1/5という13番線は大混雑!そして最寄駅はまさかのクローズ(モンパルナスというハブ駅なのに~!)。余裕だったハズが、結局小走りで「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATHESOLOIST.)」の会場にたどり着きました。

 すぐに始まるかと思いきや、1時間前にパリ市外でショーを開く予定だった「ジャックムス(JACQUEMUS)」のお客さんを待つと言います。けれど「ジャックムス」に向かった後輩オーツカによれば、ショーは55分押しで始まったとのこと……。そこから「ソロイスト.」の会場までは40分以上かかりますから、ゲストを本当に待つのであれば、ショーはまだまだ始まりません。でも、こちらも次のショーがあるワケで、正直、そんなに待ってられない……。さぁ主催者にとって、難しい判断が迫られる場面です。

 ブランドにとっては、「ジャックムス」帰りのゲストを待った方が、より多くの人の目に触れることになります。でも次のショーを考えると、どこかで決断しなくちゃいけない。一番悪いのは「ジャックムス」なワケですが、タフな決断をするのは「ソロイスト.」というなんとも可哀想な状況に。結局、ショーは45分遅れで始まりました。

 コレクションは、知ってた「ソロイスト.」よりもずっと開放的です。今季はあらゆるアイテムをプルオーバーで仕上げ、足りないラペルはストール状のアクセサリーで補うスタイルでした。

19:40 ホワイトマウンテニアリング

 「貧乏バス」で移動して「ホワイトマウンテニアリング(WHITE MOUNTAINEERING)」の会場へ。ピッティで「ラルディーニ(LARDINI)」とコラボしたカプセルコレクションを発表した時、相澤陽介さんが「今度のは、スゴいから。絶対来て!!」と熱弁を振るっていた(もちろん、参りますともw)、コレクションです。

 メロウなBGMで現れたのは、落ち葉プリントが郷愁、もしくは昔の日々を思い出させる「ホワイト」らしいレイヤード。今シーズンは「グッチ」や「ロエベ」を筆頭に、みんな子ども時代に戻っていますが、「ホワイト」もそんなカンジなのでしょうか?いずれにせよ、機能性素材の「無機的」という“短所”になりかねない特性を、郷愁が補完して、共感性を高めます。落ち葉色、ワインレッドがノスタルジックなムードをより一層引き立てますね。

 そして「アグ(UGG)」や「ダナー(DANNER)」「サッカニー(SAUCONY)」「コルマー(KOLMAR)」「ミレー(MILLET)」など、いろんなブランドとのコラボレーション。ブランドバリューを損ねず、デザインをブラッシュアップすることに長けた器用人の相澤さんならでは、です。コラボには懐疑的な人もいるかもしれませんが、こと日本人デザイナーのコラボについては、私、大賛成。日本人デザイナーはみんな器用だから、相手先にとってもメリットが大きい。何より大手に作ってもらうことにより手頃な価格帯で商品を供給できれば、消費者は嬉しいし、ブランドも海外での価格競争力がアップできる。デザイナー、コラボ相手、そしてエンドユーザー、みんなハッピーだと思うからです。

20:25 エルメス

 今日のラストは、「エルメス(HERMES)」。いつもより1サイズオーバーくらいのシルエットで、ジャケットはラペルが2重になったフェイクレイヤード。いつもよりストリートの感覚が増しています。でも、やっぱりとってもエレガント。オーバーサイズだと柔らかな素材感、つまりいいモノを正しく使っている「エルメス」の個性が光りますね。終盤は、不思議に輝く機能素材のパート。テクノ素材のようだし、ベルベットのようでもある。不思議なブルゾンに魅了され、1日が終わるのでした。

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帰ってきたメンズコレドタバタ日記Vol.7 「LV」のショーでヴァージルの心境変化を読み解き、「ダブレット」のファミレスにダッシュ

 1月16日。晴れ。パリに入って、スケジュールは一気に過密に。メトロのストは小康状態に向かいつつあるものの未だに一部区間・一部時間は運転見合わせや運行本数の削減が続き、結果、街は大渋滞です。ゆえに車に乗るとショーに間に合わない事態が頻発。特に“貧乏バス(BB)”なんて信用できないから、メトロとダッシュを繰り返しております。さぁ、疲れてきたね(笑)。でも、今日も元気に行ってみましょう~。

9:50 ジバンシィ

 本日の朝一番は、「ジバンシィ(GIVENCHY)」、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)のメンズランウエイも、すっかりメンズコレ取材陣の意識の中に溶け込んできました。

 前職「クロエ(CHLOE)」ではリラックスシルエットで描く自然体の女性像が共感を誘いましたが、「ジバンシィ」に移籍して以降、彼女は“強さ”にもこだわっています。正直、最初はぎこちないようにも見えて、「メゾンの前任、リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)のゴスっぽいカンジは踏襲しなくても」と思っていたのですが、今は少しずつ「やっぱり、ちゃんとした洋服が着たいね」というムードが高まっている時。彼女の決断は、正しかったのでしょう。

 今回のメンズも、そんなクレアの強さというか、潔さを垣間見ることができます。ベースはスリムなセットアップ。そこにセカンドスキンのようにピタピタの真っ赤なタートルネックをコーディネートしたり、ジャケットに赤のテープを貼り付けたり、コートのラペルに赤を差し込んだり、幾何学模様のニットを組み込んだりで、視覚効果においてもシャープネスを追求。今シーズン盛り上がっている、オプアートのムードも漂わせます。

 一方のケーブルニットは、ボリュームシルエット。長らく得意とするリラックスムードに溢れ、こちらはもはや安心感さえ覚えるのです(笑)。

10:45 ヴァレンティノ

 昨日感動した「ヴァレンティノ(VALENTINO)」の展示会へ。

 アクセサリーを中心に写真をパシャパシャ撮りましたが、ウエア同様に良いカンジ!実は「ヴァレンティノ」でピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)とタッグを組んでいたマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)が「ディオール(DIOR)」に移って以来、「ヴァレンティノ」のアクセサリーはちょっとパワーダウンした印象だったんです。で、「きっとピエールパオロはウエアの人、マリアはアクセサリーの人なんだろうなぁ」と勝手に思っていたワケですが、今回はその考えを改めるべきかも。

 バッグはどんどん小型化。「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」とのコラボも写真におさめました。

11:50 オム プリッセ イッセイ ミヤケ

 続いては「オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSE ISSEY MIYAKE)」。今回もさまざまなパフォーマーが最新コレクションを着用して、飛んだり跳ねたり回ったり、楽器を演奏したりと彼らの日常生活を再現。日々の生活に寄り添うブランドというコアアイデンティティーを発信します。これ以上は、説明不要。動画を見てもらうのが一番でしょう。コチラどうぞ、です。

12:50 リック オウエンス

 お次は「リック オウエンス(RICK OWENS)」。今回は、どんなフェティシズムを見せてくれるでしょうか?会場には、今回もツワモノが勢揃い。もはや顔タトゥーくらいでは驚かない自分が若干コワいくらいです。

 コレクションは、いつもどおりぶっ飛んでいるけど、ゴスっぽいカンジは本当に薄くなりました。黒の力を借りて恐怖さえ感じる迫力を生み出すのではなく、本当に強いシルエットで見せる振り切った強さです。柔らかで透明感のある素材と、スカイブルーまで登場する明るいカラーパレットで迫力を表現できるなんて、さすがリック様でございます。

 ファーストルックは、いきなりカシミヤニットのオールインワン。片足はフルレングスなのに、片足はもはやホットパンツ‼︎な丈感(笑)。しかもワンショルダーです。コレを着こなせるのは、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)だけでは?そう言えば、ジギーダストなジャケットもあったなぁ。

13:50 ジョン ロブ

 お次は、至高のシューズブランド「ジョン ロブ(JOHN LOBB)」。今年は代表的モデル“ウィリアム”が75周年。若干丸みを持たせてソールを厚くした日本人ウケしそうなタイプから、細長くて薄型のヨーロッパっぽいエレガントまで、同じシューズでも、細部で印象がだいぶ異なることを学びました。

14:55 ルイ・ヴィトン

 さぁ、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のお時間です。

 コレクションは、モノすごいフォーマルです。スーパーど直球。自身のブランド「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」もスーツメインでしたが、「ルイ・ヴィトン」はそれ以上。そして黒人モデルがちょっと減ったように思います。シルエットも、ストリート出身のデザイナーが生み出しがちな、ボックスシルエットのジャケットにリラックスパンツではなく、コンパクトなジャケットにスリムパンツ。キム・ジョーンズ(Kim Jones)の「ディオール(DIOR)」に通じる路線です。

 一体、ヴァージル何があったのでしょう?その答えのヒントは、きっとこの記事。「ストリートは終わった」とまで言い切る、自身の心の変化にあるのでしょう。「オフ-ホワイト」でも「ルイ・ヴィトン」でも感じましたが、ヴァージル、スリムになったし、フィナーレの挨拶も大人な立ち居振る舞いでした。その辺りも、心の変化の現れかもしれません。

 「ストリートは、終わった」。だからこそヴァージルは、仲間内で盛り上がっているヒップホップなカンジから一線を画したかった。出自のカルチャーではなく、その世界を超越した普遍のネクストステージで勝負したかった。そこで黒人モデルの数を減らし、フォーマルでガチンコ勝負し、シルエットもコンパクトにまとめたのではないか?そんな気がします。

 にしても、そんな心意気をちゃんと形にできるメゾンの偉大さ。改めて思い知らされました。正直、「オフ-ホワイト」のフォーマルとは全然違う。スーツに欠かせない美しさのレベルが格段に違うのです。アイデアソースは同じ人。なのに、こんなに変わるのだからトップメゾンとはスゴいモノです。

 一方、アクセサリーは今回もキャッチーです。建築に造詣の深いヴァージルは、ついにバッグの当たり前の形さえ疑い、“ひしゃげた”アクセサリーを並べました。コレが、モノは入れづらいだろうけど(笑)、モノすごく愛らしい!終盤は、キーモチーフになった空を映し出すミラーバッグ。頭の上には大空。カバンの中にも青空なんてハッピーすぎます。

16:05 ヘロン プレストン

 さぁ、ここからが殺人的スケジュール。どう考えても全部はクリアできないのですが、それでも、「1つでも多くのコレクションを見たい!」ダッシュが続きます。結局3回のミニショーに間に合わなかった「ターク(TAAKK)」、ゴメンなさい……。

 殺人的スケジュールの第一弾は、「ヘロン プレストン(HERON PRESTON)」。今回も「カーハート(CARHARRT)」や「CAT」などとコラボレーションして、ワークスタイルを生み出します。ワークスタイルだから、シーズン毎に大きく変わったりはしないのかな?ただ、そのスタイルの裏には意志がこもっているのか?正直、なかなか読み取れません。

16:30 クラークス

 定番のデザートブーツが50周年(‼︎)を迎えた「クラークス(CLARK’S)」の展示会に。そのバリエーションに驚きました。こんなにあるのね~。

 ソールを厚くしたり、それをラバーで覆ってみたり、色のバリエーションも豊富。ベジタブルタンニンやフェイクレザーまで、あらゆるデザートブーツが揃います。イベントでは、アーティストによる染色も。世界で一足のデザートブーツです。

17:40 ダブレット

 さぁ、今シーズン一番の爆走でたどり着いたのは「ダブレット(DOUBLET)」。パリで初めてのプレゼンテーションです。

 会場は、ファミレス⁉︎「ダブレット」同様に「D」から始まる、あの黄色と赤がイメージカラーのファミレスを模した空間には、テーブルと椅子、メニュー、それにナプキンが並んでいます。

 中のメニューは、こんなカンジ。相変わらず芸が細かい(笑)!でも、紙ナプキンの綴りは「DOUBELT」‼︎どこまでが本気で、どこからがジョークなのか⁉︎井野さんワールド、全開です。

 ショーのBGMは、「We Are the World」。モデルは奥まで行くと、ラーメンとか納豆ごはん、デラックスなお子様ランチ的セットを持ってテーブルまで戻ってきます。フェミレスでは、店員さんが持ってきてくれるケドね(笑)。で、みんなでおしゃべりして大爆笑。おいしいご飯は国境を越える。だから「We Are the World」なのですね(笑)。

 ということで、人種も性別も体型のバラバラなモデルたちが着るのは、刺しゅうスエットからスプレーアートのフェイクファーコート(今回の絵柄は、世界の風光明媚な町並みです)など、これまでの名作。新作は、パンダの顔が3Dなスエットやカンフーシューズ(嬉しいか嬉しくないかわかんないけど、「北京」って言葉をいっぱいのせてますw)、ニッパーで切り落とす前のプラモデルみたいに手袋とかビーニーがフレームにくっついてるセーター(冬のジュディ・オングになれること間違いなし)、アマゾン(AMAZON)の段ボールそっくりなトレンチコート(一歩間違えば、倫理的にもアブないw)など、これまた爆笑のアイテムばかり。爆走の甲斐がありました。

16:20 ジェイエム ウエストン

 さらにパリの街を駆け抜けて、シューズブランド「ジェイエム ウエストン(J.M. WESTON)」のプレゼンテーションに滑り込み!今回は新作ではなく、リメイクの発表会。実は「ジェイエム ウエストン」、今後、履かなくなった人から靴を買い取り、修理して、今度はそれを別の人にお手頃プライスで販売するというステキなプロジェクトをスタートします。予定ではリペアなのですが、今回はアーティスティック・ディレクターのオリヴィエ・サイヤール(Olivier Saillard)がリペアではなく、まったく違うシューズに変えてしまった全27足を発表です。

 このプロジェクト、そもそもサステナブルだし、「ジェイエム ウエストン」のシューズは高すぎて買えない人にもチャンスがあるし、思い入れのある一足を譲り受けるという“意志のバトン”みたいなフレームワークがとてもステキ。加えてオリヴィエの提案は本当にユニークで、「リペア以外もやればいいのに」と思ってしまうほどです。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」みたいに(本人もそう言ってたw)水玉を描いたり、タッセルが以上にデカかったり。老舗の、違う一面を垣間見せます。

 リペアもフルオーダー出来たら面白いし、完全にお任せで予期せぬ一足が届くなんてのもアリかもしれない。そんな風に思います。

19:25 ドリス ヴァン ノッテン

 さぁ、本日のゴールも見えてきました!「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」です。会場は、前回のウィメンズと同じ。ドリスがクリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)とコラボして、珠玉のコレクションを発表した新オペラ座。その大道具の保管エリアです。

 発表したのは、グラムロック。ハイヒールと大きなビジューがギラギラ輝くコスチュームジュエリー、それにフェイクのフォックスファーという、元来女性が楽しんできたアイテムを男性に委ね、性差を超越というか、蹴散らすかの如きのパワフル&エレガントなスタイルにまとめました。チュールのシャツ、サテンのパンツが、今シーズンのメンズに欠けている色をもたらし、気分を盛り上げます。

 スタイルのポイントとなったヒール付きのブーツは、奇しくも今シーズンのトレンドアイテム。徐々に、ではありますが、ヒール付きで、スクエアのトー(つま先)を持つブーツがメンズの世界にも広がっています。ドリスはそこからジェンダーの垣根を蹴飛ばすコレクション仕上げた雰囲気です。

20:50 ボッター

 さぁ、今日最後のランウエイは、「ボッター(BOTTER)」。「ニナ リッチ(NINA RICCI)」も手掛けるデュオ、ルシェミー・ボッター(Rushemy Botter)とリジー・ヘレブラー(Lisi Herrebrugh)がパリメンズに初挑戦です。応援するために、今日は1日「ボッター」のラガーシャツでパリの街を駆けずり回りました(笑)。

 正直まだまだ荒削りですが、面白いメンズです。クチュール級のDIYメンズ、って言うのかな?ベースは、「ボッター」と言えば、のラガーシャツだったりベーシックなスーツですが、そこに無数の“エノキだけ(洋服の値札を下げるための、プラスチックのアレです)”やガーゼ、パールで繋げたネットなどを合わせたり、解体したり、つまんだり、剥がしたり。工作みたいな感覚で、ストリートのムードを取り入れるのです。でも、どれもメチャクチャ手が込んでる。多分、スーパー高い(笑)。ただ、どこにもない一着ゆえ、面白い進化が見られるかもしれません。

21:30 アグ

 本日のラストは、「アグ(UGG)」。今年12カ月連続でローンチするスニーカーの第一弾お披露目のパーティーです。1月発売のスニーカーは、コレ。アトモスの本明秀文社長が手掛けました。モコモコのファーは、ネズミのイメージ?その証拠に、チーズのワンポイントがあしらわれています。そのほかも、「アグ」の生まれ故郷カリフォルニア州のヨセミテ国立公園をイメージした、コルク製のスニーカーなどが勢ぞろいです。

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帰って来たメンズコレドタバタ日記Vol.6 和洋折衷の「アンダーカバー」劇場と「ヴァレンティノ」の美しさに感動の1日

11:30 オフ-ホワイト c/o ヴァージル・アブロー

 さて、パリ一発目はいきなり「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)。会場はルーブル美術館です。ヴァージルは昨年、自分のブランドと「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」、それにさまざまなコラボプロジェクトで疲労がたまったのか一休みしていましたが、インスタグラムを見る限りでは復帰してバリバリ働いているみたい。特に直近は「ルイ・ヴィトン」と「オフ-ホワイト」の投稿が入り乱れています。

 ストリートキッズに大人への階段を登って欲しいのでしょうか?自分の服作りへの思いがフォーマルにも広がっているのでしょうか?それとも、ストリートがちょっと落ち着いた時流を踏まえているのでしょうか?ここ2シーズンくらい、「オフ-ホワイト」のメゾンはエレガントなフォーマル志向。所々に穴を開けてみたり、左右のラペルが非対称だったり、そもそも1サイズオーバーくらいのボックスシルエットだったりでストリートのムードは取り入れていますが、基本はジャケット。パンツにはプリーツを寄せました。

 でも、どうでしょうか~?やっぱり「オフ-ホワイト」は、フォーマルじゃなくて良いと思うんです。正直ジャケットは、よっぽどのヴァージルファンでない限り、ここで買う理由を見いだすのが難しい。エレガントなスーツはもちろん、ストリートマインドのスーツだって無数に存在する世の中ですから。実際、バイヤーの方に話を伺っても、やっぱりスーツは難しいそうです。

 敢えて挑戦する気持ちは大事ですが、正直スーツは経験値です。「オフ-ホワイト」のスーツが共感を誘えるようになるのは、まだしばらく先の話です。

12:25 ヘド メイナー

 「ヘド メイナー(HED MAYNER)」のコレクションは実にシンプル。肉厚のウールをブラッシングして起毛させ、ふっくら暖かい生地を作成。まるで毛布のような生地を、本当に毛布のようにバサッと羽織った雰囲気のガウンコート、両端だけ縫い合わせて顔出したかのようなトップスなどを生み出すのです。飾らず、素朴。穏やかで、心地よい。そんなムードを前面に押し出しました。

 小さいブランドは、やれることが限られています。ならば1つを徹底的にやりきって、他はノータッチ。そうやって強い印象を残そうと腹を括ったのようでした。

 ステキな覚悟。そして、それはしっかり伝わった!好きか嫌いかは別として、「ふんわり毛布は『ヘド メイナー』」という印象は、誰にも強く残ったことでしょう。そんな単純明快なインプレッションも大事です。

13:20 JWアンダーソン

 奇しくも今シーズンは、「JW アンダーソン(JW ANDERSON)」も提案を絞り込みました。デザイナーのジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)曰く「エディットした」コレクションです。

 ショー終了後にその理由を尋ねると、「(プレコレクションも含めれば)3カ月ごとに新作を生み出す業界だから、時間をかけて磨いたアイデアの一つ一つを大切にしたい」と話します。続けてジョナサンは、「『パテック フィリップ(PATEK PHILIPPE)』の時計は時間が経てば経つほどビンテージとして価値を増すのに、洋服がそうならないのは理不尽だ」と主張。なるほど。そのためには業界全体が大きく変わらなくちゃいけないけれど、目指す理想は共感します。

 で、そんな磨きあげたコレクションは、幼少期は父親の虐待に苦しみ、その後は愛するパートナーをAIDSで失った悲しみにくれた不遇のフォトグラファー、デイビット・ヴォイナロヴィッチ(David Wojnarowicz)に想いを馳せました。

 中央のゴールドチェーンがインパクト絶大でジョナサンらしい“アーティー”な感じを醸し出すAラインのボリュームコート、裾が雲のようにモコモコしたプリーツトップスが2大アイテム。ともにデイビッドの写真のように強いインパクトを残しますが、正直いつもの方が素敵に見える。ジョナサンのスタイルは、独特だけどパーツのように小さな部品感覚の洋服を組み合わせるようにレイヤードして作るもの。Aラインのコートやノースリーブのトップスなど、強いアイテム1着で完成スタイルは、着こなせる自分が想像しづらい印象です。

15:00 ファセッタズム

 「ファセッタズム(FACETASM)」は、ビーガン、なのにレゲエミュージックの音響が自慢というレストランでプレゼンテーション。ビーガンなのに音重視。新鮮です。ちなみに、ここのゴハンはマジで美味しかった!!10区の「JAH JAH」、オススメです。

 そんなところに集う仲間の、自由奔放なスタイルを描いたようなコレクションは、ネイティブアメリカンな柄を貼り付けたダッフルコートやオーバーサイズの3ピース、フレアとスキニーという左右非対称の足を持ったパンツ、ネオンカラーのニットなど「ファセッタズム」らしい。歴史を持つ洋服や素材、柄を、その印象をガラリと変えて元気いっぱいに提案するのが得意なブランドだと思っています。前回はブランドらしい“幸せなカンジ”をあえて封印しちゃって残念な印象でしたが、今回は洋服にも満足満足です。

普通ならバックステージにあるスタイリングパネルが会場内に。モデルの写真からもパーソナリティが滲みます

18:00 ヴァレンティノ

 なんて美しいのでしょう。ダークスーツへの回帰がいよいよ顕著な今シーズン、こうなると力を発揮するのはトップメゾン。その一翼を担う「ヴァレンティノ(VALENTINO)」です。

 良い服を、丁寧に作る。そして誰もが「素敵ですね」と共感できる範囲で最高峰を目指す。そんなカンジでしょうか?

 ダブルのジャケット、ステンカラーコート、そして純白のホワイトシャツは、いずれもピュアでミニマル。織りや刺しゅうの花々がカラーに変わった瞬間、僕の心は一気にときめきました。正直コンサバなクリエイションが多くてイマイチ盛り上がっていなかった心が、「ヴァレンティノ」のフローラルコレクションと同時に開花した。そんな印象です。

 あまりに美しいから、見惚れてしまう。そんなコレクションでした。バリエーションは「豊か」とまではいかないけれど、見応え十分。「VLTN」のロゴは、洋服では背面に控えめに、その分ボディーバッグでは思いっきりなカンジです。リラックスを基調とする現代のシルエットに、メゾンが継承するクラフツマンシップというレガシー(遺産)が融合。久々に心の底から美しいと思えるプレタポルテを拝見させていただきました。

 あ、スニーカーは「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」とのコラボレーションです。

19:10 OAMC

 さぁ、「ヴァレンティノ」が30分遅れ、そこから左岸に移動しての「OAMC」は40分遅れ。ちょっとヤバい感じになってきました~。

 「ジル サンダー(JIL SANDER)」も手掛けるルーク・メイヤー(Luke Meier)の「OAMC」は、「ジル」同様に穏やかですが、今季はアウトドアムードを押し出すことで差別化を図りました。レインコート、ポンチョ(コレは「ジル サンダー」にもありますが)、ミリタリーシャツ、そしてレインブーツ。確かに「ジル」とは違います。

 でも、差異は非常に微細。よほどの洋服好きじゃないと、2つの違いはわからない。しかも素材が良い分、やっぱり良く見えるのは「ジル サンダー」。「OAMC」は正直、“「ジル サンダー」第2章”みたいな雰囲気に陥っています。それで良いのか?悪いのか?難しいところですが、既視感は気になるところです。

20:20 アンダーカバー

 「OAMC」の会場を出て、ダッシュでメトロの駅へ!ストライキで運行本数が少ない中、ラッキーなことに電車はすぐにやってきて、「アンダーカバー(UNDERCOVER)」に間に合いました。ちなみにパリの協会は、優雅なハイヤーに乗らない我々のために“貧乏バス(以下、BB)”を運行しているのですが、この“BB”に乗って移動した人は間に合わなかったそうです。

 そんな人は、本当に残念!!だって「アンダーカバー」、間違いなく本日のベストだったんです!!ショーのタイトルは「Fallen Man」、「堕落した男」という意味でしょうか?黒澤明監督作品の「蜘蛛巣城」にインスピレーションを得て、モダンバレエと日本の演劇を組み合わせたようなショー形式で、最新コレクションを発表します。

 帰って「蜘蛛巣城」の予告編を見ると、主役を務めた三船敏郎は、もののけが住む森にほど近く霧が立ち込める蜘蛛巣城で殿を殺し、腹心を殺し、最後は自らも狂ってしまう武士を演じています。ショーでも戦国武将のような男性が、もののけのような女性と交わり、最後には矢で射抜かれてしまう。その間を、東洋と西洋を融合したスタイルのモデルたちが歩いていくのです。

 例えば甲冑のようなスタイルは、キルティングのミリタリーやアウトドアベストにニットやネルシャツ、ドローコードでひざ下を絞ることができるパンツなどを複雑にレイヤードすることで描きます。そしてフーディーは、作務衣のような前合わせタイプ。そこに風呂敷を模したボディーバッグを抱えるのです。やっぱり着物合わせの巨大なダウンのモデルは、なんだか寺院の坊主のよう。「日本風」ではあるけれど、アイテムはどれも西洋由来。モダンバレエと演劇を組み合わせたショー同様、東洋と西洋の間を揺らめくのです。だから、どちらの側から見ても「新しい」し、どちらの側から見ても「コスプレじゃない」。無論、ジョニオさんらしいダークファンタジーの世界です。

 こんなコトを書くと怒られるかもしれませんが、僕(42歳)より年上でジョニオさん(50歳)くらいまでの世代、特にジョニオさんは“元祖リミックス世代”として、新しい時代を築いた人たちです。でも僕より下、もはやリミックスが当たり前だった世代から言わせると、「“元祖リミックス世代”は、日本の文化だけはリミックスしない。もしくは『敢えて』じゃないとリミックスしない」人たちなんだそう。数年前、そう分析されてドキッとしたことがありました。でも今回のジョニオさんは、自分のルーツである日本の文化さえ、高くも低くもなくフラットに捉え、それを自然と西洋の洋服をミックスしました。“元祖リミックス世代”の弱点を、軽やかに乗り越えている。そんな風に思ったんです。

21:40 ラフ・シモンズ

 さぁ、今日の最後は「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」。相変わらず、会場はパリ市外です。

 今シーズンの「ラフ」は、未来を見つめたようです。それは10年後?30年後?定かではありませんが、透明なPVC、ラミネート、コーティングが、ウールやフェイクファー、ボアなどのコートやジャケットを覆います。コートやジャケットの下は、セカンドスキンのようにピタピタのシルバーのタートルネック。足元は、ラバーのようなブーツです。真っ白いライナーのコートをひっくり返して着ているようなスタイルは、まるでラボの研究員でした。

 でも、だからと言って完全にフィーチャリスティックじゃない。未来的な素材で覆いこそしたものの、伝統的な素材から決別しないのは、その証。後半には、手編みのモヘアストールやへッドピースが現れ、現代の温もりにもまだ価値を置いているようなスタイルです。

 そんな姿勢は、BGMにも現れていました。大半は打ち込み、もしくはノイズのような重低音でしたが、フィナーレはデヴィッド・ボウイ(David Bowie)の“Life on Mars”。未来を志向しているものの、なじみあるボウイの声は郷愁さえ誘います。でも“Life on Mars”って、何かを批判しているような歌のハズ。「地球を出て、宇宙へ」「今を捨て、未来へ」なんてメッセージでもあるのだろうか?そんなことを考えながら、帰りのUberに揺られたのでした。

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多様なニーズに応える素材とデザインのバリエーション 「セリーヌ」2020年春夏バッグ&シューズ

 「セリーヌ(CELINE)」の2020年春夏コレクションは、昨秋冬シーズンに打ち出した1970年代風ブルジョアスタイルの流れを踏襲した。ただ今季の舞台はパリではなく、南仏にある高級避暑地のサントロペ。リゾートを訪れるブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)やシャルロット・ゲンズブール(Charlotte Gainsbourg)、ジェーン・バーキン(Jane Birkin)らパリジェンヌのスタイルからイメージをふくらませた。デニムシャツ&ジーンズの上に紺のブレザーを羽織ったルックからスタートしたショーは、デニムアイテムをはじめ、ひざ下丈のキュロットやスカート、軽やかなドレスがスタイルの鍵となった。

 バッグで大きくフィーチャーされたのは、パリの凱旋門を囲む鎖から着想を得た“トリオンフ”の金具を楕円で囲んだデザインが特徴的な“マイヨン トリオンフ”シリーズ。19年秋冬にデビューしたフラップ型チェーンショルダーバッグを多彩な素材バリエーションで見せたほか、バケットバッグやレザーストラップ付きの丸みのあるショルダーバッグなどの新作モデルを提案する。さらに、アーカイブのバックルをポイントにしたショルダーバッグやロゴをあしらったテキスタイルとレザーを掛け合わせたトート、大きな“トリオンフ”のレザーピースを飾ったラフィアのカゴバッグ、小ぶりなラタンのバケットバッグもラインアップ。ゴブラン織りの生地やスエードといった素材、そしてフリンジやスカーフの装飾が、ボヘミアンやエスニックのムードを醸し出す。

 足元は、キュロットやデニムスカート、ドレスにニーハイブーツをコーディネート。ジーンズやスラックスには、真っ白なローテクスニーカーや、プラットフォーム×ウェッジソールのサンダル、キューバンヒールのショートブーツを合わせた。また、ショーに登場しなかったアイテムには多彩なスタイルのフラットサンダルやエスパドリーユ、クロッグ、バブーシュ、ローファーなどもあり、欲しいアイテムが必ず見つかるようなラインアップの豊富さが魅力的だ。

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メンズコレ裏街道記 パリメンズ初日は汗と涙にまみれたカオスな状況で「キディル」が奮闘

 1月14日。くもり。パリに到着し、メンズのコレクションサーキットもいよいよ大詰め。でも、現地では史上最長となる交通ストがようやく終息したばかりのため、交通は乱れまくり。地下鉄が部分的にしか運行していないので、道路は渋滞し、道は人で溢れています。同日昼にはミラノで「グッチ(GUCCI)」のショーが開かれた後に夕方からはパリメンズがスタートするにも関わらず、イタリアの航空会社がストライキを行って便の欠航が相次ぐなど何もかもがカオスな状況。そんな中、この“裏街道”にぴったりなカオスなブランドから取材をスタートしました。

18:00「キディル」

 ドタバタを避けるために前日夜にパリ入りし、「キディル(KIDILL)」のショーに備えます。ホテルからは徒歩15分という距離だったため、ひとまずは安心して会場のライブハウスまで移動しました。モードの中心地パリでもアングラ感バッキバキなムードで、早くも期待が高まります。こういう空間でこそ「キディル」は映えるから。さらに今回はセックスピストルズをはじめさまざまなアートワークを手掛けてきたジェイミー・リード(Jamie Reid)やデニムの「エドウィン(EDWIN)」、パリ発のシューズブランド「ボース(BOTH)」とのコラボを事前に告知するなど、見所はたっぷり。さあ、ヒロ(末安弘明デザイナー)さん、準備は整いました。行きましょう……い、行きましょう……始まらん。いや、僕の気持ちがはやりすぎただけです。だってショー開始は大体20分遅れるのが通例ですもの。さあ、そろそろでしょうか。パリメンズ3回目のショー、ゴー……って、全然始まらんやんけ。気がつけば予定よりも1時間遅れています。もちろん今シーズンのメンズ・コレクション最長記録。ただ、コレクションは素晴らしかった。3回目のパリコレで、一番の出来ではないでしょうか。服の要素はめちゃくちゃパンクにも関わらず、丸みを帯びたオーバーサイズのシルエットによって急に近所の兄ちゃん的な親しみがわくのです。“極楽”“諸行無常”といった強烈な漢字の刺しゅうも、「キディル」の手にかかれば愛しきモチーフへと生まれ変わります。言葉を切り絵のようにコラージュするジェイミー・リードのグラフィックもバッチリとはまっていて、欲しいアイテムばかりでした。何より、「キディル」はこれで行くんだ!という強い意志と覚悟がコレクションからにじんでいたのが素晴らしかった。ただ、あまりこういうあくせくした状況で見たくなかったなというのが正直なところです。全部、ストのせいだ!

「キディル」2020-21年秋冬パリ・メンズ・コレクションから

19:30「フィップス」

「フィップス」2020-21年秋冬パリ・メンズ・コレクションから

 驚がくの60分押しの影響で次のショーをスキップし、フランス発のニューカマー「フィップス(PHIPPS)」の会場へ。歩道に溢れる人の波をかき分けながら、動いてるはずのメトロの駅にダッシュします。すると改札が常にフルオープン状態で、タダ乗りOKというこれまた異常なムード。当然、電車はめちゃ混雑します。冬のパリで汗だくです。会場には比較的スムーズに到着しました。昨年6月に同ブランドのショーを見たときはピンと来なかったものの、今回で印象がガラリと変わりました。ボーイスカウトやキャンプ、ネイティブアメリカンなど自然の中に暮らす男たちの普段着をベースに、シルエットを今っぽく膨らませたり、上質素材を使ったりと、都会的にアレンジ。アメカジにストーリー性を加える手法がユニークでした。

20:30「アミ アレクサンドル マテュッシ」

 公式スケジュール最後のショーは「アミ アレクサンドル マテュッシ(AMI ALEXANDRE MATTIUSSI)」のブランド設立9周年を祝したアニバーサリーショーです。え?10周年ではなく?はい、実はデザイナーのアレクサンドルにとって9はラッキーナンバー。だからこそ今回のショーには特別な思いが込められています。メンズは、ガラリと変わった前シーズンを踏襲するテーラリングがメイン。前回は見せたシャープなスタイルを打ち出しましたが、今季は素材のクラシックさと上質さをレトロなムードに落とし込んだ品の良さが印象的でした。キュロット風のショーツやスカートとスラックスのレイヤードといったボトムスの提案も素敵。ウィメンズは根底のフレンチシックは変わらないものの、よりきらびやかに進化しています。ショーの最後にステージの大きな幕が上がってパリの街並みを表現したセットが出現し、モデルたちがそこに佇むという劇仕立ての美しいフィナーレでした。9周年、おめでとう!でも10周年もやるのかな?

「アミ アレクサンドル マテュッシ」2020-21年秋冬パリ・メンズ・コレクションから

21:30コンパクトに進化した貧乏バス

 公式スケジュールが終わっても、まだまだファッション・ウイークは終わりません。最後の最後は「ナターシャ ジンコ(NATASHA ZINKO)」のショーが控えています。でも移動手段がない。徒歩で移動すると60分の距離で、タクシーもつかまらないし、地下鉄も動いていない。ハイヤーも手配していないし、ウーバーも高い。夜道を歩き続けるのもちょっと怖い。今日は諦めて帰るかと思った時、アレが目に飛び込んできました!メディアやバイヤーを次のショー会場へと運んでくれる俺たちの貧乏バス(通称BB)が!しかもめちゃくちゃコンパクトになっています。前はいわゆる旅行バスのような大きさだったのに、だいぶスリムになっていかにも貧乏バスっぽくなっているじゃないですか。聞くと、地下鉄がまだ動いているコンコルド駅まで最後にみんなを送ってくれるのだとか。なんてありがたいのでしょうと、早速乗り込みました。乗り心地は最悪でしたが、ぜいたくは言ってられません。

22:00「ナターシャ ジンコ」

 しっかり車酔いをいただいたところで、駅に到着。ここまでくれば「ナターシャ ジンコ(NATASHA ZINKO)」の会場はすぐ。ショーにも間に合いました。遠回りしながら苦労してたどり着いたからか、原宿っぽいブリブリの服やフィナーレに登場したデザイナーのナターシャとイヴァンのジンコ親子の笑顔がなんだか心にしみて、「ああファッション・ウイークってやっぱり楽しいなー」としみじみ感じながら徒歩40分かけてホテルまで帰りました。

「ナターシャ ジンコ」2020-21年秋冬パリ・メンズ・コレクションから

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帰ってきたメンズコレドタバタ日記Vol.4 「トム フォード」で元気をチャージ&天敵出現で今季もイライラ

 さぁ、今日はミラノメンズ4日目の日記です。それでは早速、行ってみよう!

10:25 フェンディ

 ガンダムっぽい。これが、2020-21年秋冬「フェンディ(FENDI)」メンズの、特に序盤の率直な感想でした。多用した漆黒のレザーが光を跳ね返し未来的なムードを醸し出すコレクションは、ウールとベルベット、フランネル、それにレザーを複雑に切り返し。そのパターンが未来の戦闘服のように見えるんです。長靴のような超厚底のレザーブーツも、スタイルのユニホーム感を高めます。なんだか宇宙戦艦の乗組員みたいなのです。あとで振り返れば、この未来的なムードこそ「アンリアレイジ(ANREALAGE)」を迎えるためにシルヴィア・フェンディ(Silvia Fendi)が構築した世界観なのかしら?

 でもシルヴィアは、茶目っ気たっぷりのクリエイター。いつでもクスッと笑えるアイデアを忍ばせるのを忘れません。今シーズンは漆黒のユニホーム的フォーマルとコントラストを成す、イエローのアクセサリーがぜ~んぶユニーク。手仕事の温もりに溢れるローゲージのざっくりニットで作ったマフラーやバッグ、それにショッピングバッグを模したレザーアクセサリーが、見る者を笑顔にさせてくれます。ショルダーバッグは、買った長財布や革小物を入れてくれるボックスにストラップを取り付けたみたい。なんだか「未来の乗組員、休日『フェンディ』にショッピングへ!」みたいなムードなんです。

 そしてラスト4ルックは、この記事にある通り「アンリアレイジ」ならではの技術を使ったアウターウエア。テクノロジーとクラフツマンシップ、森永さんのマジメなモノ作りとシルヴィアのユーモア。今シーズンも「フェンディ」メンズは、クリエイターとのコラボレーションで多面的なコレクションにたどり着いたのでした。

11:35 マリアーノ

 さぁ、僕の“天敵”ブランドが現れました。強敵です。「マリアーノ(MAGLIANO)」です。

 前回は招待状がホテルに届かず、おかげで大混雑の入り口で30分近く待たされるという苦行を強いられ、しかも英語が喋れないスタッフが友達ばかりを会場に次々入れるから「チッ」って思うコト10回以上(笑)。イタリアンストリート束ねるスラムジャム系のブランドは、オペレーションが未熟なコトも少なくありませんが「『マリアーノ』さん、アナタ、ちょっとヒドいんじゃございませんか!?(デヴィ夫人風にどうぞ)」と思ってしまったブランドなのです。

 あれから半年が経ちました。ランウエイも、気づけば3回目です。「マリアーノ」さん、少しは成長したでしょうか?そう思いながら「フェンディ」から歩いて15分の会場に到着すると、スタート予定時刻なのに開場さえしていない(泣)。しかも入り口はめちゃくちゃ狭い(号泣)。そして、友達ばっかり優先入場させるアイツがいる(チッ)。グロテスクな招待状を持つ手が、早くも震え始めます(あ~、イライラ)。予断ですがこのインビテーション、なんてグロいんでしょう!

 とはいえ、今回は招待状を持っていたので、入場は比較的スムーズ。でも、そこからも混乱続きです。僕の席は、まさかのトリプルブッキング(笑)。想定通りのオペレーションの未熟さで、新興ブランドのクセに今期一番の大遅刻であります(苦笑)。

 しかも薄暗いビリヤードバーは、開演直前にスタッフが1列ずつライトを点灯する演出なのですが、コレまた作業が遅いのなんの。リハーサルやってないのかしら……⁉︎今回も「『マリアーノ』さん、もうチョット頑張りなさいよ」と思ってばかりです。

 とはいえ、肝心のコレクションは、良くなっている!!

 アイコニックなジャケットは、「マリアーノ」らしい上半身にボリュームを置くシルエットはそのままに、かなりクリーンに進化。完成度も上がりました。次回は、オペレーションも進化させてくださいね。

13:10 ディーゼル

 お次は「ディーゼル(DIESEL)」の記者会見。サステナブルを意識したコレクションの発表(どうやらミラノのウィメンズ・コレクション期間中にお披露目のようです)、カーボンオフセット(排出した二酸化炭素を相殺するソーシャルグッドな活動)への取り組みなどを決意表明です。

14:05 ステラ マッカートニー

 「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」は、バイヤーとプレスだけにコレクションを先行公開。ゆえに多くは語れませんが、新しいロゴデザインが誕生です。新ロゴは、今流行りのサンセリフ体。既存のロゴも使い続けるそうですが、Tシャツやスエットには、新ロゴがプリントされていました。

14:45 トム フォード

 控えめ・コンサバな提案が目立つ2020-21年秋冬シーズンでも、「トム フォード(TOM FORD)」は大胆不敵。相変わらず唯我独尊。トム様ワールド全開です。

 コレクションは、1プリーツ(ちなみにトム様、プリーツは必ず体の内側にヒダを作ります。外側はありえない。美しくないんだそうです)のフレアパンツを合わせるスーツ“アティカス”にフォーカス。ヘンリーネックのインナーを合わせるカジュアルな提案ですが、シャツとシルクタイ、アウターを筆頭にさまざまなネオン、パステル、ビビッドカラーが勢ぞろいします。

 コッパー(銅)色のクロコダイルの型押しブルゾンにシルクサテンのフレアパンツ、そしてレトロスニーカーの1カラースタイルなんて、シビれます。ジョギングパンツは、ウエストがゴムなのにカッコ良すぎです。サテンのボンバーズ、MA-1、ムートン、それにカラーレンズのアビエイターサングラスは、いずれも文句なしにクール!!色を見ると、やっぱり人間元気になるものですね(笑)。

15:45 プラダ

 昨日の「プラダ(PRADA)」の展示会へ。キーワードは「シュール・クラシック」。“反英雄的な男らしさ”を模索したコレクションと伺い、「さすがはミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)!」とほくそ笑んでしまいました。分かるようで分からない、でも口に出して言いたいくらいカッコいい。今シーズンもそんなキーワードをひねり出してきます。ちなみに20年春夏のウィメンズ、キーアイテムを絞り込んだコンパクトなコレクションについては「複雑さに対する解毒」と表現しています。シビれる~!トム・フォードが本能レベルで「カッコいい!!」と思わせるなら、ミウッチャは知的レベルで「カッコいい!!」と思わせてくれる。どちらも両雄と言えましょう。

 モデルが凛と見えたのは、タイトなストレッチニットやスキニーなパンツのおかげ。これだけだと「英雄的男らしさ」なのでしょうが、そこに手編みのニット、薄くパディングを貼り合わせたコート、スポーティーなライン“リネアロッサ”のナイロンアノラックなどを合わせると、確かに英雄感は控えめになって、現実味がアップ。使った原材料のうち90%がサステナブルというコレクションには、再生ナイロン「エコニーレ」のウエアが登場しました。

 昨年発売した「エコニーレ」のバックパックは、早々に完売したそう。お待ちかねの第2弾商品です。

16:15 C.P. カンパニー

 お次はミラノメンズのトップバッターを務めた「C.P. カンパニー(C.P. COMPANY)」の展示会へ。プレゼンでは触れなかった商品が、ここではいっぱい触れます(笑)。過酷な環境にも耐えられるスペックウエアと、ガーメントダイが信条のブランド。キレイなグラデーションを描くように洋服を並べると、壮観です!

17:20 ジョルジオ アルマーニ

 さぁ、本日もいよいよラスト目前。夕方は「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」です。

 コレクションは、なんとビックリなスキーにも使えるハイスペックウエアからスタート!この手のスペックウエアは、若々しい「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」の専売特許かと思っていましたが、今ドキの紳士はアクティブですものね。スキーやスノボくらいするでしょう。

 ところがハイスペックなスポーティーラインのパートが終わっても、今シーズンの「ジョルジオ アルマーニ」は若々しい。ラグランコートは今時のオーバーサイズ、ジャケットに合わせるのはニットポロ、そしてサイドゴアブーツにはジョギングパンツ。ミリタリーコートやブルゾンも多数です。大人の男性も着実に変化している。アルマーニさんはそれを見逃さず、トップラインを思い切って、かなり若々しい方向に振ってみた。そんな意欲が伺えました。

 とはいえカーキのミリタリーコートは、実はベルベット製とゴージャス&エレガント。化繊のブルゾンも、アストラカンという毛皮の一種の表面のように生地をつまんで複雑な柄を手に入れます。そこには常に最高の素材と、根気強いクリエイションが潜んでいるのです。

 ちなみに「ジョルジオ アルマーニ」には、素材の調達と改良に情熱を燃やすベルベット担当がいるらしいですよ(笑)。毎回展示会でナデナデすると、本当にその心地よさと柔らかさには驚かされます。今期は、それがミリタリーコートですからね。世界で一番気持ち良い、オトナのミリタリーコートに間違いありません!!

19:25 ア-コールド-ウォール

 今日の最後は、「ア-コールド-ウォール(A-COLD-WALL)」。インダストリアルなムードと、シンプルなアイテムほどこだわる独特のパターンで定評があります。が、今回はイマイチ冴えません。大人の街、ミラノに移ったせいでしょうか?なんだか大人しく見えてしまい、それぞれのアイテムから「ア-コールド-ウォール」である必然性が感じられません。残念。次回に期待です。

 ということで、本日はこれにて。明日は最終日。残るショーは3つです。今日は会食ナシ!!パッキングして、早めに寝ます(Zzz……)。

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帰ってきたメンズコレドタバタ日記Vol.3 背筋が伸びる「プラダ」にイタリア版楳図かずおの「MSGM」

 さぁ、ミラノメンズも中盤戦。今日も晴天、張り切って街を駆けずり回りたいと思います。

11:25 サルヴァトーレ フェラガモ

 近頃「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」は、とても良きです。メンズは「ランバン(LANVIN)」出身で、僕が敬愛するルカ・オッセンドライバー(Lucas Ossendrijver)門下生のギョーム・メイアン(Guillaume Meilland)が、クリエイティブ・ディレクターのポール・アンドリュー(Paul Andrew)と作る体制。ポールが求める着心地と美しさの両立を、ギョームがツイストを効かせながら生み出すカンジがとても良いのです。「タイムレス」の価値が増している昨今の時代感にもマッチしています。

 取り立てて「ワォ!」と驚くアイテムはありません。中盤に1回だけ登場した、レザーのピタピタサロペットくらいでしょう(アレは一体、なんだったんだろうw?)。でもダブルのチェスターも、スキッパータイプのざっくりニットカーディガンも、スーツ地で作ったノースリーブのダウンベストも、程よいリラックスシルエットや機能性でちょうど良い。しかも長く着られそう。良い服とは装飾の多いモノではなく、細部まで工夫を凝らした洋服なんだと諭してくれます。

 これがもうちょっと店頭に並ぶようになると嬉しいなぁ。思いきってセレクトショップへの卸とか始めませんか?既存の顧客もしくは新たな消費者に、ウエアを中心とした新しい「フェラガモ」の世界が築けそうな気がします。

12:20 エトロ

 さぁ、お次はデザイナー業界随一の野生児(⁉︎)、本能に純粋。ゆえに誰よりも感受性が高く、それが共感の源となっている「エトロ(ETRO)」メンズです。

 ショー開始20分前のバックステージは、こんなカンジ。メンズのクリエイティブ・ディレクター、キーン・エトロ(Kean Etro)は、さすがの人気、そして余裕っぷりです。

 このキーンさん、「一体、どういう生き方をしたら、そうなるの⁉︎」というくらい素直で、大胆で、人間力の高い人。おそらく社内のスタッフは大変な場面も多いでしょうが(お察しますw)、外から見ると「なんて素敵!その通り‼︎共感しちゃう‼︎!」というオジサマです。今期のクリエイションも、そんな感じでした。バックステージで、「洋服選びは、宝探しみたいなもの。見つけたら嬉しくなっちゃって、だからこそ古くなっても愛し続けられる洋服が必要だ」と話したキーンさんの最新コレクションは、正統派のチェスターコート、艶っぽいシルクシャツ、パンツ、それに乗馬ブーツというクラシカルエレガンス。ストリート勢の一部が姿を消した、今期のメンズシーンと呼応します。

 そう、人間力の高いキーンさんは、多分トレンドなんてあんまり意識しないのに、結果、時流をキャッチするのです。彼の、そんな「大当たり〜!」な瞬間を何度か目の当たりにすると、「人間の本能って、スゴい!」と思わずにはいられません(笑)。

13:00 エルメネジルド ゼニア & Z ゼニア

 タクシーに乗って、「エルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)」の展示会へ。先シーズンにスタートした、自社で完全リサイクルする素材によるコレクションは、カシミヤからウール、化繊に至るまでのバリエーション。洋服を作る際に生まれる残布を糸に戻し、また生地にして洋服を生み出します。そんな洋服にのせたのは、なぜか今シーズン頻出のオプアート。「エルメネジルド ゼニア」の場合は、チェックやストライプなど、メンズにとって欠かせない柄を何階も重ねて、不思議な視覚効果を生み出します。柄を幾重にものせたのは、そもそもの洋服の生産はもちろんですが、リサイクルならなおさら、いろんな人の手、そして思いが重なり合っているから。ファクトリーから生まれたブランドゆえ重んじる生産の過程を柄にすると、こうなるワケです。

 「Z ゼニア(Z ZEGNA)」は、アレッサンドロ・サルトリ(Allessandro Sartori)らしい玄人っぽい色合い。こちらは、“目”が重なりシュールでした。

14:20 MSGM

 ファーストルックだけを見るとコンサバにシフトした「MSGM」ですが、 いやいや、ぶっ飛んだ一面も覗かせます。今シーズンは、デザイナーのマッシモ・ジョルジェッティ(Massimo Giorgetti)が10代の頃夢中だったというホラー映画を生み出した、イタリアの奇才ダリオ・アルジェント(Dario Argento)監督にオマージュを捧げました。マッシモのメンズは、イタリアで生まれ育った自らの原体験を、若々しいスタイルで描くのが上手です。みなさん昔「リング」とか「貞子」を友達と、暗い部屋でポテトチップスを食べながらドキドキ見たりしませんでした?あのときの映画の世界観を、今ドキなワンサイズオーバーのフォーマルに落とし込んだと言えば、わかりやすい気がします。

 ということで描かれたモチーフは、黒猫(不気味)、毒キノコ(毒々しいカラーリング)、食虫植物(リアル)、そして楳図かずお的なキャラクター。最近立て続けだった「アタッカーYOU!」「キャプテン翼」に続く、「日本のマンガへのオマージュ3部作の完結編?」と思うくらいイラストは楳図です。コレ、欲しいなぁ。でもこんな洋服で電車に乗ったら、誰も両隣に座ってくれないでしょうか(笑)?

14:45 マルニ

 「マルニ(MARNI)」の展示会へ。昨日、一番のナゾとお話したショーを解明すべく伺いましたが、「答えはフランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)の頭の中」とのお言葉だけを賜り、あとははぐらかされました(笑)。「そんな!もうちょっとヒントを‼︎」とも思いますが、フランチェスコに言わせれば、きっと「正解なんてない」のです。コレクションは、各々が自由に解釈してくれて良し。今期は、いつも以上にそんなカンジなのだと言います。重要なのは、「proportion with no imposition」、日本語で言えば「強制なき提案」と言ったところでしょうか?解釈の自由を保証します。

 ということでアイテムは、相変わらずバラバラなサイズ感。コレ、一応全部「48」というサイズなんですけれどね(笑)。自由に解釈し、自由に選んで、自由に着る。それが今の「マルニ」なのです。

15:20 アスペジ

 若干タッチ&ゴーになりましたが、「アスペジ(ASPESI)」の展示会へ。来月末には東京・南青山に旗艦店がオープンします。これまでの「アスペジ」と言えば、シャカシャカナイロンの機能的ブルゾンのイメージ。ところがそれは「アスペジ」のごくごく一部で、本当はシャツからパンツ、ジャケット、コートまで揃うトータルブランドなのです。ワンピースなども提案するウィメンズは、さらに大きなコレクションを有しています。

16:25 プラダ

 「プラダ(PRADA)」は、ファーストルックからいつもと違います。「精悍」なのです。ピタピタのニットベストにノースリーブシャツ、折り返しの大きなプリーツパンツというスタイルで始まった2020-21年秋冬メンズは、スリムなシルエット、フォーマル中心の洋服よりむしろ、コンパクトなシルエットゆえ背筋をしゃんと伸ばしたモデルの凛とした佇まいが印象的でした。その姿はまるで、広場を模した会場に設けた彫刻、いや、実際は紙で作った模型のようなオブジェなのですが、とにかく凛々しい貴族のようです。

 ただ、単なる懐古主義、今季のミラノメンズに蔓延している伝染病のような病を跳ね返すのがミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)。次第にひざ下丈のアノラックやレインブーツなど、ストリートやワークウエアと融合し、かつての貴族服を現代の男性像に近づけます。バリエーションは前回のウィメンズ同様、従来に比べるとかなり控えめ。キーアイテムを絞ってムダなモノは作らない、ミウッチャ流の“断捨離ミニマリズム”でサステナブルの価値を説くかのようです。

17:10 セラピアン

 お次は「セラピアン(SERAPIAN)」。工房取材を兼ねて、「カスタムオーダーのバッグを作ってみませんか?」とのお誘いをいただき、体験させていただきました。今回は、無数の切り込みを入れたレザーパネルに色とりどりのレザーを通す“モザイク”というラインのカスタム体験。ブランドはリシュモングループに買収されたばかりですが、先祖代々ブランドを守ってきた3代目のジョバンニ・セラピアン(Giovanni Serapian)がお手伝いしてくれます。

 僕がオーダーしたのは、こんなバッグ。今ファッション業界のみならず世界にとって欠かせない価値観、ダイバーシティー(多様性)を象徴するレインボーを本体にドカンとあしらってみました。と言うより、虹をバッグにしてみたかった、そんなカンジです。オーダー体験のレポートは、3カ月後に完成するバッグとともに別途お届けします。もうすぐギンザ シックスでポップアップが始まりますよ!

18:10 トッズ

 さぁ、夜も遅くなってきたけれど、まだまだ続きます。「トッズ(TOD’S)」です。メンズは新クリエイティブ・ディレクター、ヴァルター・キアッポーニ(Walter Chiapponi)が就任。ウエアからバッグ、シューズに至るまで一新です。ウエアは、クラシックで洗練されたムードを残しながら、スポーティーに。“ゴンミーニ”には、ブーツタイプが登場しました。スニーカーは、レトロランのムードかな?ブラウン、カーキ、そしてネイビー。メンズに不可欠な色からのスタートです。

18:50 ミッソーニ

 フィナーレは、「ミッソーニ(MISSONI)」。カラフルなニットで心ウキウキ。今日も楽しい会食で1日が終了です。

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帰ってきたドタバタ日記Vol.2 「アルマーニ」も「ジミーチュウ」も「マルセロ」までピカピカ&チカチカ

 1月11日、土曜日。晴れ。最高気温は10度。さぁ、ミラノメンズは今日からが本番!そしていきなり、展示会だらけで一番忙しい1日の始まりです。今回の出張は、毎朝6時に起きて、カラダを1時間動かすのが日課。今日はバーベルを担ぎながらのスクワットで足腰を鍛えました。たくさん歩けそうな予感です(笑)。

10:15 「ヌメロ ヴェントゥーノ」

 最初は「ヌメロ ヴェントゥーノ(N 21)」。前回は男女合同ショーでしたが、今回はメンズだけを単独で。2020-21年秋冬は、「ヴェルサーチェ(VERSACE)」や「トム ブラウン(THOM BROWNE)」が男女合同ショーを開くためメンズのファッションウイークを離れましたが、一方で「ヌメロ ヴェントゥーノ」や「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」はメンズの単独ショーを再開。各ブランドが理想の発表方法を模索する動きは、まだしばらく続きそうです。

 コレクションは、アレッサンドロ・デラクア(Alessandro dell'Acqua)らしさがいっぱい。色はもちろん、背中が全開ゆえ2重の意味で「ヌード」なニット、レースのTシャツ、モヘアのニットにオーバーサイズのブルゾンやAラインのステンカラーコート。シャツの襟は、まるでブラウスのボウタイ(リボン)のよう。今期もジェンダーの狭間を揺れ動きます。拡大ロゴのトレンチコート、カワイイぞ!

11:25 エンポリオ アルマーニ

 「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」は、ランウエイも洋服もピカピカです。ランウエイはピカピカの鏡面(この手のランウエイは、モデルもゲストもミニスカートの時はご用心ですw)。洋服は、クリスタルスタッズを打ち込んだり、ベルベットにラメスプレーを吹きつけたり、メタルヤーンを混紡したり、ごくごく薄いラミネート加工を施したり。壁面のサイネージ、ワイヤーで吊るされた無人のカメラに囲まれた空間は、未来都市のようでもあります。でも、ただのフューチャリスティックじゃない。素材はヘリンボーンのツイードウールやモヘア、ベルベットなど、むしろクラシック。伝統的な素材を加工や装飾で未来に継承するかのようです。さすが、昔を知り、未来を見据える御大であります。

 終盤は、リサイクル素材で作る新ライン「R-EA」のお披露目でした。たしかに素材からはリサイクル感、ちょっとゴワついていそうだったり、発色が完璧じゃなかったりの弱点を感じますが、それを逆手にとってストリートテイストのカーゴパンツやブルゾン、オーバーサイズのコートを提案します。モードなサステイナブル、ストリートなサステイナブル。別にサステイナブルは、ナチュラルやエコテイストじゃなくても良いワケですからね。共感する人も多いのではないでしょうか?

11:50 ザネラート

 バッグの「ザネラート(ZANELLATO)は、異素材コンビの新作がズラリ。定番“ポスティーナ”にも、ナイロンの本体にレザーの外付けポケットです。コレはなかなかユニークで可愛らしい!カスタマイズ企画は今後、日本でも売り場を巡回するそう。いろんな色で、文字をバッグに圧着できます。

12:20 ジミー チュウ

 イースト・ミーツ・ウエストの「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」が思い描く理想の男性は、ブルース・リー(Bruce Lee)です。アチョー!ということで目玉は、シルクジャカードでエレガントなカンフーシューズ。靴底はしっかりキルティングで、歩きやすさも保証します。

 ドレスシューズには、スタースタッズやスターチェーンのみならず、いよいよジュエリー、タイガーアイまで付いちゃうくらいゴージャス!全面クリスタルのスニーカーは40万円くらいだけど、「案外売れちゃう」のだそうです。彦摩呂にぜひ、「靴業界の宝石箱や~」と叫んでいただきたい。良き目の保養になりました。

12:40 ジュゼッペ ザノッティ

 と思っていたら、「ジミー チュウ」に宣戦布告するかのように、負けず劣らずピッカピカのシューズブランドが!!「ジュゼッペ ザノッティ(GIUSEPPE ZANOTTI)」です。全面スワロフスキーやエナメル加工のイヴニングは、スクエアトー。そこにクリスタルを「これでもか!」というくらいのっけます。しかもゼブラ柄とかですからね(笑)。バッシュにインスピレーション得た“タロン”も七色に輝いておりました。

13:15 フィリップモデル

 「フィリップモデル(PHILIPPE MODEL)」も負けてません。すごいカラー、そして素材のブロッキング。同じスニーカーでも素材の使い方で4万~8万円台までバリエーションに富んでいるスニーカーブランド。ランニングスニーカーはコンテンポラリーに進化しています。

14:20 ドルチェ&ガッバーナ

 「ドルチェ&ガッバーナ (DOLCE&GABBANA)」はデジタル全盛期だからこそ、手仕事の温もりフォーカス。ショー会場では、ざっくりニットを手編みするマンマのような女性職人、時計やジュエリーの彫金師(このブランドは、自社で彫金師を抱えています)が、ご自慢の手仕事を披露。コレクションは、そんな職人技の集大成です。

 1つのキーアイテムは、超巨大なローゲージニット。マフラーからガウンコートまで、マンマ、多分総動員です(笑)。ゴートファーのコートから着古した下着のようにクタクタなインナーニットまで、1990年代の「ドルチェ&ガッバーナ」メンズを彷彿とさせる、ナツいスタイルが次から次へと現れます。昨日の「ディースクエアード」同様、90年代から21世紀初頭ごろファッションにどっぷり浸かったアラフォーには、楽しいシーズンがやって来そうです。

15:20 マルニ

 さぁ、本日一番の難問でした(笑)。「マルニ(MARNI)」です。オールスタンディング、全員立ち見のショーは、パフォーマーがモデル代わり。レーザー光線が降り注ぐ光の中で抱き合っていたかと思うと、徐々に体を揺らし、歩き出し、通り過ぎる人を睨みつけ、最後は高速ウォーキングでバックステージに戻ります。

 洋服は、水玉やストライプが踊る、レトロな原色のニットやシャツ、それにパンツ。相変わらずチグハグなサイズ感で、スーパーオーバーサイズとピタピタが同居します。そこにオプアート、水玉やストライプなどの単純な模様を連続させることで視覚を混乱させるアートのようなモチーフがどっさり。フランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)の「マルニ」らしさ全開です。

 にしてもアレ、なんだったのだろう(笑)?どこかで「リッソって、宇宙人みたい。地球人として地球を『中』から見ているんじゃなくて、宇宙人として『外』から見ているカンジ」と思っている僕には、「世紀末」とか「終わりの始まり」、反対に「新しい時代」なんてフレーズが頭に浮かんできました。さて、彼の心の内は?明日の展示会で聞いてみようと思います。

17:20 ニール バレット

 お次は、16時スタート予定の「ニール バレット(NEIL BARRETT)」と思ったら、17時スタートでした。なんたる凡ミス。これまでずっと初日の16時、「マルニ」の後だったから無意識にシャトルバスに乗ってしまいましたが、ミラノメンズを抜けた「ヴェルサーチェ」の時間にスライドしていたとは……。これで16~19時の「ラルフ ローレン パープル レーベル(RALPH LAUREN PURPLE LABEL)」は、難しいコトに(がっくり)。「ラルフ」は後輩オーツカに任せて、「ニール」の場所で原稿書きに勤しみます。

 肝心のコレクションは、漆黒のセットアップやバッファローレザーのライダースなどモードなイメージの「ニール バレット」が真逆のアウトドアテイストを加えたり、デニムパンツにはレザーをハイブリッドしたり。スタイルから商品に至るまで、真逆のテイストをガンガン組み合わせます。パンパンに膨らんだダウンブルゾンやノルディック柄のソックス、デザートブーツで“ほっこり”ムードさえ漂うモード。肩の力が程よく抜けたカンジ、良きです。

18:20 マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン

 さぁ、本日のラストショーは、「マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン(MARCELO BURLON COUNTY OF MILAN)。会場には、中央に大きなボール。そして壁と床は一面、千鳥格子に似た「マルセロ」のモチーフです。

 コレクションは、このモチーフが、やっぱりオプアートのようにてんこ盛り。今日はピカピカだったり、チカチカだったり、目に刺激が走った一日だったなぁ。老眼の気配を感じるアラフォーには、正直ちょっと負担が大きめ。会食の後ホテルに戻ったら、蒸気が出るアイマスクで目を労わろうと思います(笑)。

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「ウェールズ ボナー」が変わった 気難しさから解放された「最もパーソナルなコレクション」

 柔和でニュートラル。鋭利なトゲの先が丸みを帯び、着る者・見る者を温かく包み込む——「ウェールズ ボナー(WALES BONNER)」2020-21年秋冬コレクションのショーを見た直後に抱いた感想を、思わずメモ帳に記した。同ブランドからこのような優しい感情をかき立てられると想定していなかった分、忘れまいとメモ帳に、心に刻みたくなったのだ。

 2年ぶりの開催となるショーはロンドン・メンズ・コレクション2日目の1月5日、リンドリーホール(Lindley Hall)を会場に催された。デザイナーのグレース・ウェールズ・ボナー(Grace Wales Bonner)はショー前、リラックスした雰囲気で会場のライティング、音楽、モデルのウォーキングの最終確認を繰り返し行っていた。まるでキャリア20年以上のベテランデザイナーのような手際の良さと落ち着いたムードだが、実際はブランド創設5年目の弱冠29歳だ。150cm程の小柄で華奢な彼女は、堂々とした態度で存在感を放っている。過去の取材では淡々と質問に答える真面目な職人気質という印象を受けていたが、目の前にいる彼女は笑顔が多く、友好的で穏やかな一面が見え隠れする。それが気の知れたチームに囲まれているからなのか、彼女自身に変化があったのか、この時には分からなかった。

スタイルは柔らかく、
アイデンティティーは強く

 彼女が「最もパーソナルなコレクション」と表現する今季はイギリス人アーティスト、ジョン・ゴトー(John Goto)の写真集「Lover’s Rock」から着想を得た。同写真集は、70年代にロンドン西部ルイシャムに暮らすアフリカ系移民2世の若者のポートレートを集めた作品だ。「私の祖父は50年代にイギリスへ渡り、移民2世の父はルイシャル通りに仕事場を構えていた。ジョン・ゴトーによるポートレート写真は、ルイシャムにあるユース・クラブで最初に見かけた」とシンパシーを感じる不思議な巡り合わせについて語った。彼女は写真に写る若者のアフリカンなヒッピーさと英国のスマートさや粋を、楽しく混ぜ合わせるスタイルに魅了されたという。

 彼女はショー直前、モデルに一人ひとりに声を掛けていた。「ウオーキングは、胸を張ってアイデンティティーを表現するようなイメージで。肩の力を抜いてリラックスしながらも、勇ましい姿で歩いてほしい」。レゲエやソール、R&Bの音楽が流れる中、メンズとウィメンズのルックがランウエイを飾る。美しいテーラリングのスーツはインナーにミスマッチな鮮やかな色彩のタートルネック、デニムで仕立てられたオフィサーコート、クルタ(民族衣装)の上にオフホワイトのブレザーを着用するなど、予想外の組み合わせで国籍を問わないスタイルが目立つ。「アディダス(ADIDAS)」とコラボレーションしたシューズや「スティーブン ジョーンズ(STEPHEN JONES)」のハットといった小物も良いスパイスを加えていた。ショー後には会場でアフリカ料理のフィンガーフードとドリンクが振る舞われ、カジュアルなアフターパーティーが開かれた。

「今の私は“帆を広げる”ように
心を開くことができる」

 「これは完全なる帰郷のようなもの。数年間世界中を周っていたけれど、帰るべき居場所へ戻ってきた」と、彼女はリラックスした表情でショー後の取材に応じる。欧米を周ってアフリカの歴史を学ぶ旅に没頭し、家族や古い友人といった自身のコミュニティーに戻った。そこで自己認識をさらに深めることができ、アイデンティティーを表現するコレクションに臨めたというのだ。「過去5年間を振り返り、統合し、『ウェールズ ボナー』というブランドが何を意味するのか表現したかった。今季は私のコミュニティーや、私自身を反映させたコレクションだ。多くの人が、その中から自分自身を見つけ出せるようにしたかった」。そう語る様子は気難しささえ感じた過去の取材対応とは明らかに違い、緊張を解いて笑顔を交えながら朗らかだった。肩肘を張り、背伸びをしていた20代の経験は、彼女に穏やかさや優しさ、帰るべき居場所を与え、自分自身を解放したような印象である。その過程には、コミュニティーを離れて一人の時間も必要だったとという。「コレクションを制作するために、泡の中で一人になければならない時がある。それは結果的に、世代や国籍を超えて多くの人と繋がる瞬間をもたらしてくれた。今の私は、まるで“帆を広げる”ように心を開くことができる」。アイデンティティーを探る旅は一旦終着を迎え、次は帆を広げて海原へと繰り出していく。彼女の精神面での変化と呼応した今季のコレクションは、先行き明るい未来を表しているようである。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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メンズコレ裏街道記 ロンドンメンズ最終日は運営の環境問題に対する取り組みに感心

 1月6日。曇り。あっという間にロンドンメンズの最終日。曇ったり晴れたりで、一番肌寒い日でした。

9:00「ハンツマン」

 若手のショーばかり見てきたせいか、老舗テーラーの「ハンツマン(HUNTSMAN)」で行われた朝食会兼プレゼンテーションは、いろいろな意味で安心感。既製服の新たなコレクションと、ツイードのビスポークという画期的な試みを紹介してくれました。過去に「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」とコラボレーションしたコートなどの貴重なアーカイブも展示されていました。朝食はどれも美味しくて、つかの間の優雅な時間を過ごしました。

9:30「ルー ダルトン」

 お次は「ルー ダルトン(LOU DALTON)」の会場へ。男臭い英国クラシックを若々しく軽やかにするのが得意な印象ですが、今回はいつもより土っぽさが強くモデルの年齢層も高め。「グローバーオール(GLOVERALL)」や「ジョンスメドレー(JOHN SMEDLEY)」とのコラボも気になりました。スポーツウエア仕立ての新しい提案はあったものの、正統派すぎる気も。

10:00「フェン チェン ワン(FENG CHEN WANG)」

 英国クラシック2連発の後に、いきなりスターウォーズの世界。スモークがもっくもくな会場の床からは複数のライトセーバーが突き出ているようです。肝心の服はジェダイでもシスでもなく、ど真ん中のストリートウエアでした。ブルゾンとコートのハイブリッドやチェスター風のダウンなど、アウターが得意そうな印象でした。今後はオリジナリティーをいかに発揮できるかが楽しみです。

「フェン チェン ワン」2020-21年秋冬ロンドン・メンズ・コレクションから

11:00「スタジオ アルケ」

 ロンドンメンズのラストのショー「スタジオ アルケ(STUDIO ALCH)」の会場へ。リサイクル&オーガニック素材で、今っぽいストリートウエアを提案します。英国ナイキ(NIKE)のサポートを受け、公式のリメイクアイテムも登場しました。ちょっと気になったのは、秋冬シーズンのコレクションなのに、春夏のような薄着がたくさん出てくること。同ブランドだけではなく、ロンドンメンズでいくつかのブランドに見られた傾向です。シーズンレスの提案なのか、サステナブルへの意識が高いがゆえの材料不足なのか。いずれにせよビジネスにつなげないと意味がないので、メンズコレクションの期間中にもう少し考えてみたいと思います。

「スタジオ アルケ」2020-21年秋冬ロンドン・メンズ・コレクションから

番外編 ロンドンメンズはここが変わった

「紙のインビテーションが半減」

 ロンドンのホテルに到着してまず焦ったのが、部屋に招待状がほとんど届いていなかったこと。何かの手違いかとあたふたしましたが、実はほとんどのブランドがメールでのインビテーション制に切り替えたからだったのです。招待状の束を持ち歩くストレスが軽減された反面、メールは転送できてしまうために入り口で画面のチェックが必要となり、混乱気味の会場もいくつか見られました。課題は多いものの、試みには賛成です。

「脱プラスチックでペットボトルゼロ」

 1年前までは公式会場内に山のように並べられていた協賛会社のペットボトルの飲料が、今回はゼロ。代わりに、水が入った「スウェル(S’WELL)」ステンレス製ボトルが来場者に配布されます。水はいつでも補充可能。かわいいデザインのおかげか、会場内や周辺でゴミにされている気配はほとんどありませんでした。さすが環境問題への意識が高いロンドンです。こういったショー以外の取り組みは、この先続くピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)やミラノ、パリも続くのでしょうか。いろいろな面に目や耳を傾けながら、この先も取材を続けます!

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メンズコレ裏街道記 ロンドンメンズ初日は骨太「サリバン」と次世代スター候補にワクワク

 1月4日。晴れ。正月気分も抜けきれないまま、ロンドン・メンズ・コレクションから2020-21年秋冬シーズンのコレクションサーキットがスタートしました。他の都市に比べてメジャーブランドが少なく、というかほぼゼロに近い今のロンドンメンズ 。でも、王道ではない“裏街道”だからこそ見えるものもあるはずです。例えば新進気鋭のデザイナーだったり、ファッションウイークの新たな試みだったり。そんな期待を込めて、現地からリポートします!

12:00「ジョーダンルカ」

 新年早々航空機のトラブルに見舞われ、ロンドンのヒースロー空港に着いたのがファッションウイーク初日の午前9時。予定よりも14時間遅れといういきなりのピンチ。「ジョーダンルカ(JORDANLUCA)」のショーまでは3時間というギリギリ具合ですから、最悪トップバッターのショーをスキップするという選択肢も頭をよぎりました。でもそこは諦めずに急いで準備し、滑り込みでなんとか会場に到着。結論は、見てよかったです。カルチャー系ストリートのロック仕立てはやや二番煎じ感こそあるものの、素材の品質やディテールの作り込みが1年前に比べて各段に成長しており(え、こんなにいいブランドだったっけ?)と思わず過去のルックをチェックしてしまいました。おそらく量産体制はほぼ度外視に近いのでしょうが、そんな自由奔放さは面白くもあり、伸び代を感じさせてくれました。

13:00「イーストウッド ダンソー」

 続く「イーストウッド ダンソー(EASTWOOD DANSO)」は、黒人のための服。さまざまな思想やクリエイティビティーがあるのだとは思いますが、この完成度ではちょっとまだ厳しそう。クリエイションにかける思いを直球で伝えるのではなく、あえて難解複雑にして背景に何かある風を演出するのは、よっぽど実力がないとチープに見えてしまう危うさがあるなと改めて思いました。

14:00「エドワード クラッチリー」

「エドワード クラッチリー」2020-21年秋冬ロンドン・メンズ・コレクションから

 新人デザイナーがスケジュールを埋める中、着実にキャリアを重ねている「エドワード クラッチリー(EDWARD CRUTCHLEY)」は貫禄すら感じさせるショーでした。どんなブランドのファッションショーでも15〜20分遅れでスタートするのが当たり前なのですが、会場がパンパンなせいかきっちりオンタイムでスタート。グラムロックと、1980年代後半から90年代の“あぶない刑事”やバブルのファッションをごった煮したジャンルレスな無国籍スタイルのセンスはピカイチ。テキスタイルの達人でもある彼のこだわりは今シーズンも随所でさく裂。身幅たっぷりのブルゾンやダブダブ袖のコートにはミンクファーを使ったり、エリック・ジョーンズ(ERIK JONES)の際どすぎるイラストをシルク素材に全面プリントしたりと、ビジネスというよりもライフワークとしてのクリエイションという印象でした。

15:00「プロナウンス」

「プロナウンス」2020-21年秋冬ロンドン・メンズ・コレクションから

 中国人デュオによる「プロナウンス(PRONOUNCE)」は、前シーズンのピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)でのショーを経験したからか、堂々とした潔いコレクションでした。アクセサリーやディテールのキャッチーな演出はまだまだ不器用なものの、ハイウエストのパンツとロングコートのバランス感やいつにも増して高級感溢れる素材使いなど、インディーズからメジャーに駆け上がりたいという覚悟を感じました。「ディーゼル(DIESEL)」との協業も決まり、自信がついたのかな。

15:30「1X1 スタジオ」

 ニットを得意とするデザイナーの、リサイクル素材を用いたコレクション。会場は地下のクラブで、バッキバキのアングラムードです。さぞかし面倒くさい服が出てきそうだなと予感していたのですが、実際に見てみると、やっぱり面倒くさかったです(笑)。とはいえ中にはかわいいピースもありじっくり見てみたかったのですが、残念ながら時間がなく駆け抜けるように次の会場へ向かいました。

16:00「パリア / ファルザネ」

 1年半前に見た「パリア / ファルザネ(PARIA / FARZANEH)」のコレクションにココロ奪われ、それ以降も個人的に注目していましたが、翌シーズン以降は引き出しの少なさと難解さが目立ち、手探りが続いている印象でした。でも今回はようやく本領を発揮。イラン風の結婚式の演出からスタートし、ショーは和やかに幕を開けます。デザイナーのルーツであるイランの伝統的な柄使いはそのままに、“ゴアテックス インフィニアム プロダクト”などのハイテク素材をふんだんに使用してアウトドア要素をミックス。伝統と現在の文化をファッションを通して結びつける手法は一歩間違うとこじつけっぽくなりがちな危険がある中、違和感なく融合させたセンスが好きでした。

17:00「べサニー ウィリアムズ」

「べサニー ウィリアムズ」2020-21年秋冬ロンドン・メンズ・コレクションから

 「べサニー ウィリアムズ(BETHANY WILLIAMS)」のショーも1年半ぶり。当時はまばらだった観客も今回は大入りで、またもオンタイムでのショー開始です。よくまあここまで注目されるブランドになったなと驚きました。サステナブルな生産や社会的弱者へのエンパワーメント、犯罪者の社会復帰の支援といった慈善活動をファッションを通じて行う姿勢が多くの人の心を動かした証なのでしょう。今回は子供のホームレスを支援する団体とコレクションを制作したそうです。クリエイションの幅も広がってきたので、荒さが取れて洗練されてきた時がより楽しみ。

18:00「ジョン ローレンス サリバン」

「ジョン ローレンス サリバン」2020-21年秋冬ロンドン・メンズ・コレクションから

 もはやロンドンメンズの看板ブランドの一つといってもいい、俺たちの「ジョン ローレンス サリバン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)」です。今回も突き出した肩のチェスターコートやスーツ、ピタピタのレザーパンツなど、ロックをベースにした得意の骨太テーラリング。ウエストにゴムを配して絞ったことで、肩がより際立ちます。きっと似合わないだろうけど、着てみたい。モデルは目を見開いて視線はまっすぐに向き、早足でランウエイを駆け抜けるという迫力のある演出でした。

18:30「バンド オブ アウトサイダーズ」

 「バンド オブ アウトサイダーズ(BAND OF OUTSIDERS)」は創設者のスコット・スターンバーグ(Scott Sternberg)がブランドを去ってブランド一時休止以降日本ではすっかりご無沙汰な印象ですが、その後新体制で復活し、まだまだ頑張っております。でもちょっと普通すぎて個性が不足気味。僕も全盛期のころはオックスフォードのBDシャツを買いまくっていたファンなだけに、今後の奮闘に期待します。

19:30「ロビン リンチ」

 急ぎ足で向かったのは、2019年8月に日本で開かれたファッションコンペ「ビッグ デザイン アワード(big design award)」の大賞に選ばれた「ロビン リンチ(ROBYN LYNCH)」のプレゼンテーション。デザイナーの出身地であるアイルランド伝統のアランセーターをストリートウエア仕立てにし、カラフルスポーティーだった前シーズンよりもぐっと大人びた印象でした。個人的には前シーズンの快活さが好きでしたが、これはこれで好きな人はいそうですね。

21:00「チャールズ ジェフリー ラバーボーイ」

「チャールズ ジェフリー ラバーボーイ」2020-21年秋冬ロンドン・メンズ・コレクションから

 本日のトリは「チャールズ ジェフリー ラバーボーイ(CHARLES JEFFREY LOVERBOY)」。ロンドンメンズ最後の切り札ともいえるヘンタイです(もちろんいい意味で)。ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivian Westwood)やジョン・ガリアーノ(John Galliano)、川久保玲らからきっと影響を受けているであろう彼のコレクションは、はっきり言って解読不能。とはいえ、それでも許せてしまうパワーと力強さを秘めており、とにかく俺が俺がの我の強さに圧倒されます。シーズンごとに、(今シーズンはそろそろクオリティーも向上しているかな)と淡い期待を寄せてはみるものの、これがまた何も変わらんのです(笑)。ただその変わらなさが人間ぽくもあり、愛される理由なのかも。服の品質はさておき、世界観を構築する力は群を抜いており、今シーズンも唯我独尊。ステージ中央のミラーボールの下には不気味で意味深な木が配置され、モデルたちは祈りを捧げたり、手を掲げたりして、新興宗教の儀式のような演出で観客を引きつけます。伝統衣装からパンクまで、時代感も性差も関係なく大胆に融合させたラバーボーイスタイルを引き立てていました。クリエイションの背景に何かをにじませたいなら、ここまで徹底してないとダメですね。でもこの巨大セットを組む資金はどうしているんだろうか。近日中に彼に取材予定なので、聞いてみようかな。

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「サカイ」のバックステージ撮影スタッフに一時退出命令! コレクション・バックステージ録

 2009年から「WWDジャパン」のバックステージ・フォトグラファーとして海外コレクションを撮影する景山郁が、現場で見た最新トレンドや業界ルール、珍事件などを紹介します。世界でも限られた媒体やフォトグラファーのみが入場を許されるファッションショーの舞台裏での出来事をお届け!

今回のテーマ:「サカイ」のバックステージで考えさせられたモデルの着替え中のプライバシー

 「サカイ(SACAI)」はここ最近、「ステラ マッカートニー(STELLA MCCARTNEY)」のショーの後に発表しています。また、売れっ子モデルを起用するので、「ステラ マッカートニー」のショーにも出演する人気モデルが10人前後そろいます。そのため、「ステラ」のショーが終わると大急ぎでモデルたちは「サカイ」のバックステージにやって来ます。

 今回もいつもと同じように、遅れて来るモデルたちを、スタッフとほかのモデルが待っていました。ヘアメイクを済ませたモデルは「サカイ」の美味しいと好評のケータリングを口にしながらおしゃべりをしたりと、遅れて来るモデルが来るまでバックステージはゆったりとした雰囲気に包まれていました。

 私はビューティの撮影とインタビューを終え、スタッフに指示されたスペースで残りのモデルを待っていました。ようやくモデルたちは着替えるように指示されると、モデルのキキ・ウィレムス(Kiki Willems)が進行スタッフに一言。「ここで着替えるとカメラを持った人の横でプライバシーがない、どうにかして」 。(気になるのはごもっとも)!

 そのスタッフは元々設置してあったパーテーションを少し移動させてフィッティング(着替え)スペースを隠そうとするものの、他のモデルが「着替え中はフォトグラファーを外に出してほしい」とコメントし、最終的に私たちはその部屋から出ることになりました。ちなみに(会場にもよりますが)、「サカイ」では基本的にフィッティングルームはヘアメイクの場所とは違う場所に設置されることが多く、モデルへの気遣いを感じます。

 今回は会場の都合上、パーテーションで撮影場所とフィッティングスペースを区切ってモデルのプライバシーを尊重していました。バックステージのスペースが狭いと、フィッティングスペースと撮影スペースが同じ場所だったり、隣り合わせになってしまうことはよくあることです。特にミラノコレクションは狭い会場が多いためか、その可能性が高いです。ニューヨークは結構前からフィッティングルームをヘアメイクルームとは別にしているブランドが大半だったのを覚えています。特定の取材パスがないとフィッティングルームには入れないほど、セキュリティーがしっかりしているブランドも多々あります。パリでコレクションを発表する「オフ-ホワイト c/o ヴァージル  アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」は着替え用のテントがあったりするくらいです。恐らくアメリカとヨーロッパの文化の違いも影響していると思います。

 何にせよ、大勢の人、しかもカメラやビデオカメラを持った人たちの前で着替えなければならないモデルたちの気持ちを想像すると、本当に痛々しいです。10年近く前のことでしょうか、私がまだバックステージで撮影を始めて間もないころは、ミラノとパリのバックステージで活躍する女性フォトグラファーは本当に少なかったです。モデルの着替え待ちをしている間、私は(モデルに気を遣って)モデルがいる部屋ではなく、フォトグラファーやビデオグラファーが立っている方向に視線を向けていました。そのときに気づいたことは、男性フォトグラファーが着替えているモデルを凝視してる数の多いこと!しまいにはこっそり着替え中を撮影したり録画する人までいました。完全にプライバシーの侵害ではありませんか!当時はそこまで大きな問題として扱われていませんでした。盗撮している人に直接話しかけたり、スタッフに通報したこともありますが、深刻に受け取られていなかったのを同じ女性の立場としても本当に残念に思ったのをはっきりと覚えています。

 今はフェミニズム運動や業界のセクハラ問題なども大きく取り扱われるようになり、そういった環境はかなり改善されてきています。そのため、着替え中の退出命令は増加傾向にあります。今後はどこのブランドのバックステージでも、モデルの着替え、そして彼女たちのプライバシーに関してはデリケートになってもらいたいものです。

景山郁:フリーランス・フォトグラファー。2003年からフォトグラファーとしてのキャリアをスタート。07年に渡米、09年より拠点をパリに移す。10年から「WWDジャパン」でパリ、ミラノなどの海外コレクションのバックステージと展示会などの撮影を担当。コレクション以外にもポートレート、旅やカルチャーなどエディトリアル、広告を手掛ける。プライベートでは動物と環境に配慮した生活をモットーにしている

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モデルしか入れない秘密の部屋とは? コレクション・バックステージ録

 2009年から「WWDジャパン」のバックステージ・フォトグラファーとして海外コレクションを撮影する景山郁が、現場で見た最新トレンドや業界ルール、珍事件などを紹介します。世界でも限られた媒体やフォトグラファーのみが入場を許されるファッションショーの舞台裏での出来事をお届け!

今回のテーマ:モデルしか入れない秘密のスペース「モデルラウンジ」とは?

 「ディオール(DIOR)」と「ロエベ(LOEWE)」のバックステージで「モデルラウンジ」というスペースを発見!以前「ジバンシィ(GIVENCHY)」のバックステージで「サイコロジールーム(心理相談所)」を見かけましたが、今回見つけた「モデルラウンジ」は長年バックステージの撮影をしている私にとっても今年初めて見た新しいスペースです。

 「モデルラウンジ」はヘアメイクを終えたモデルがフィッティング(着替え)するまでの間、スタッフやフォトグラファーから離れてリラックスできるような小さなスペースのようです。なので、モデル以外は入れません。「ディオール」「ジバンシィ」ともにショーのコールタイムが早朝で、かつ長時間拘束の仕事だったので、今回ラウンジが設置されたのかもしれません。

※コールタイム…モデルやスタッフの入り時間

 また、バックステージに雑誌やウェブのエディターやフォトグラファーが入ると、モデルたちは(任意ではありますが)ビューティショットのためのポーズをしたり、ビデオインタビューに答えたりしなければならなく、ショーが始まるまで忙しくなるモデルも多いです。少しでもショー前はリラックスしたいと思うモデルには、この「モデルラウンジ」はいいのかもしれませんね。仮眠も取れそうなスペースだったので、ファッション・ウイーク中の連日の仕事で寝不足なモデルにとってはうれしいことでしょう。こういったスペースの開設も、ショー進行スタッフのモデルへの気遣いですね!

景山郁:フリーランス・フォトグラファー。2003年からフォトグラファーとしてのキャリアをスタート。07年に渡米、09年より拠点をパリに移す。10年から「WWDジャパン」でパリ、ミラノなどの海外コレクションのバックステージと展示会などの撮影を担当。コレクション以外にもポートレート、旅やカルチャーなどエディトリアル、広告を手掛ける。プライベートでは動物と環境に配慮した生活をモットーにしている

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パリコレで見た“日本らしい光景” コレクション・バックステージ録

 2009年から「WWDジャパン」のバックステージ・フォトグラファーとして海外コレクションを撮影する景山郁が、現場で見た最新トレンドや業界ルール、珍事件などを紹介します。世界でも限られた媒体やフォトグラファーのみが入場を許されるファッションショーの舞台裏での出来事をお届け!

今回のテーマ:
小さな配慮がいき届く日本ブランド

 日本発ブランド「アンリアレイジ(ANREALAGE)」のパリコレのバックステージでの話。フィッティングスペースで、他ブランドでは見かけた事のない白いシートが足元に敷かれていました。これは恐らく、モデルが靴を脱いだり着替えたりする際に靴下が汚れたり、ボトムスの裾が汚れたりするのを避けるためだと思います。リハーサル後にはスタッフたちが一生懸命、そのシートについたほこりをテープで取っていました。そんな細かいところにも気を使う、とても日本らしい光景だと思いました。

 欧米では靴を履いたまま試着室や家に入る文化があり、人によっては靴を履いたままソファーやベッドに寝そべったりする人もいるので、この「アンリアレイジ」のシートの発想はなかなかないと思います。あるとしても床を拭くことくらいでしょうか。また「アンリアレジ」のバックステージには細かな指示が入ったルック写真や、モデルの動き方を示した図などが掲示してあり、あらゆる部分に細かい配慮がされています。こういう小さな事でも徹底することは大事だと思います。

 話は少し逸れますが、今季初めて「アンリアレジ」の撮影に入ったフォトグラファーがオンタイムにファッションショーがスタートしなかったことについて「おかしい、日本人なのに時間通りに始めないなんて」と一言。私は「それはブランド側の意向でなく、来場者が会場に時間通りに来ないから」と伝えました。忙しい来場者たちは、ほとんどのショーが時間通りに始まるとそもそも思っていないのです。「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」はオンタイムにショーを始めるポリシーを持っているのでそういった例外もありますが。

 しかし、特殊な演出を仕掛けたり、モデルが遅刻して来ない限りは、日本ブランドはオンタイムで開始出来るくらいの完璧なスケジューリングをしている場合が多いと感じます。

景山郁:フリーランス・フォトグラファー。2003年からフォトグラファーとしてのキャリアをスタート。07年に渡米、09年より拠点をパリに移す。10年から「WWDジャパン」でパリ、ミラノなどの海外コレクションのバックステージと展示会などの撮影を担当。コレクション以外にもポートレート、旅やカルチャーなどエディトリアル、広告を手掛ける。プライベートでは動物と環境に配慮した生活をモットーにしている

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ジジ・ハディッドの人気の秘訣は礼儀正しさ!? コレクション・バックステージ録

 2009年から「WWDジャパン」のバックステージ・フォトグラファーとして海外コレクションを撮影する景山郁が、現場で見た最新トレンドや業界ルール、珍事件などを紹介します。世界でも限られた媒体やフォトグラファーのみが入場を許されるファッションショーの舞台裏での出来事をお届け!

今回のテーマ:売れっ子モデルの秘密はマナーにあり

 今日は売れっ子モデルのジジ・ハディッド(Gigi Hadid)についての裏話です。ジジは以前、お騒がせリポーターのヴィタリ・セディウク(Vitalii Sediuk)に出待ちされ、いきなり抱きかかえられるという事件が起きて以来、全てのショーに個人用SP(ボディーガード)が同行しています。妹のベラ(Bella Hadid)も同様です。

※ヴィタリ・セディウク…ウクライナ人のセレブリティーリポーターでいたずらの常習犯。被害者はマドンナ、ウィル・スミス、アデルらまでに及び、ブラッド・ピットを襲ったことによる逮捕歴もあり

 バックステージへの入場は厳密なパスのチェックがあるので、私の経験上では変質者が潜り込んでいることを目撃したことはありません。私はカメラマンとして入場しているため、モデルを撮影することが仕事なのですが、ハディッド姉妹の撮影は制限されています。ヘアやメイク中も基本的にNG(広告モデルなどを務めている化粧品ブランドなどがある商業的なニューヨーク・コレクションは例外)。一度、ヘアメイクを記録するためにジジの後頭部を撮影しようと近づいたら、ジジのSPが近づいてきて「おい、写真はだめだ!」と注意された経験もあります。私は「顔は写さないよ?後頭部だけでもダメ?」と聞くと「ダメだ。近づくな!」の一点張りでした。

 今季「プラダ」のバックステージへファッションジャーナリストの藪野淳さんと取材に入りました。注目モデルのインタビューため、どのモデルに話しかけるか相談していたところにジジを発見!藪野さんはジジの隣の男性スタッフを気にされたのですが、私はその方がSPではないことを確認するなり、話しかけることを提案しました。

 藪野さんが恐る恐るジジに話しかけると、「ハロー!私はバックステージではインタビューには答えないの。ごめんね。良い一日を過ごしてね!」と笑顔で返答。インタビューはできませんでしたが、ジジの丁寧な対応に「何て丁寧な断り方。やはり育ちが違うね」と私たちは感動したのでした。

 他にも育ちの良さを感じさせるモデルがいます。往年のスーパーモデル、パット・クリーブランド(Pat Cleveland)の娘、アナ・クリーブランド(Anna Cleveland)です。アートのような美しい表現力を持っているのですが、撮影後には自らお礼の言葉をくれる丁寧な対応も素晴らしいのです。私も藪野さんも彼女のファンです。ジジとアナに共通しているのは、母娘の二世代モデルというところ。彼女たちの身につけているマナーは、きっとお母さまたちのアドバイスによるものかもしれませんね。スタッフ受けがいいというのも、売れっ子の秘訣なのかもしれません。

景山郁:フリーランス・フォトグラファー。2003年からフォトグラファーとしてのキャリアをスタート。07年に渡米、09年より拠点をパリに移す。10年から「WWDジャパン」でパリ、ミラノなどの海外コレクションのバックステージと展示会などの撮影を担当。コレクション以外にもポートレート、旅やカルチャーなどエディトリアル、広告を手掛ける。プライベートでは動物と環境に配慮した生活をモットーにしている

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カメラマンの大喧嘩にベラ・ハディッドが喝! コレクション・バックステージ録

 2009年から「WWDジャパン」のバックステージ・フォトグラファーとして海外コレクションを撮影する景山郁が、現場で見た最新トレンドや業界ルール、珍事件などを紹介します。世界でも限られた媒体やフォトグラファーのみが入場を許されるファッションショーの舞台裏での出来事をお届け!

今回のテーマ:場所取り合戦!カメラマンの大喧嘩の一部始終

 事件は9月、ミラノ・コレクションの「フェンディ(FENDI)」のバックステージで起きました。ショー開始直前のコレクションルックを着たモデルたちを撮影する “ファーストルック”は、世界中から集まるフォトグラファーたちにとって重要な仕事。しかし、フォトグラファーエリアは非常に狭く、テープの括りなどで居場所が限られています。さらに制限区域から出ないように、セキュリティーが厳重に監視していて、場所取り合戦が発生することもしばしばです。皆、いい写真を撮るために必死なのです。

※“ファーストルック”撮影…ファッションショーのバックステージ撮影には種類があり、ヘアメイクアップ中の撮影を“バックステージ”、モデルたちが衣装チェンジをした本番前の撮影を“ファーストルック”と呼ぶ。

 今回の「フェンディ」では、50代後半〜60代半ばくらいの大柄なイギリス人の男性カメラマン2人が私の左右に移動してきました。彼らのアグレッシブさは業界でも有名。彼らを避けるカメラマンもいるほどです。撮影中には押されたり、持ち場を取られたり、故意にカメラで頭を殴られたりすることも珍しくありません。

 撮影が始まってしばらくすると、私を挟んで左右にいた2人が口喧嘩を始めました。仕事を忘れ、ありとあらゆる汚い言葉でお互いをののしり合います。その口喧嘩は徐々にヒートアップしていき、ついにはド突合いに発展しました!大きな2人の間に挟まれた小さな私は、2人のおじさんたちの汗臭い胸元でぎゅーぎゅー押され、自分の仕事にも支障が出るくらいの被害になってきました。

 その喧嘩を目にしたモデルのベラ・ハディッド(Bella Hadid)が2人を止めようとしましたが、2人は聞く耳を持ちません。終いには一人が胸元を強くド突き始めたので、私は急きょセキュリティーにヘルプを出しました(囲いからはみ出ないように見ているだけでなく、ののしり合っている時点で彼らをどうにかしてよ!という話ですが……)。

 セキュリティに「追い出すぞ!」と脅された後、ようやく喧嘩をやめた2人。一部始終を見ていたベラは「私は全部見ていたわよ。あんたたちの幼稚な行動、忘れないからね」と言い放ちました。いい年のおじさんたちが、まだ若い20代の美女にあきれられていた姿は本当にかっこ悪かったですし、同業者としても見ていて非常に恥ずかしかったです。

 実はその片方のカメラマンとは毎度会うたびにハグして挨拶する仲ではあるので後日会った際には謝罪とともに私に喧嘩の理由を説明してきました。怒る気持ちは理解できましたが、欧米の人の感情の爆発は本当にすごいものです。仕事中でも場所もわきまえない喧嘩を目の当たりにし、パリのシャンゼリゼ通りで起きた暴力的な黄色いベスト運動を思い起こしました。何事においても、暴力的な言葉や行動ではなく、お互いを尊重し合って仕事をしたいものです。

※黄色いベスト運動…フランスで18年11月17日から発生している政府への抗議運動。これまでに28万人以上が参加し、黄色い反射チョッキを着てデモ活動を行っている。過激な破壊を伴い、これまでに2800人以上の負傷者を出している。

景山郁:フリーランス・フォトグラファー。2003年からフォトグラファーとしてのキャリアをスタート。07年に渡米、09年より拠点をパリに移す。10年から「WWDジャパン」でパリ、ミラノなどの海外コレクションのバックステージと展示会などの撮影を担当。コレクション以外にもポートレート、旅やカルチャーなどエディトリアル、広告を手掛ける。プライベートでは動物と環境に配慮した生活をモットーにしている

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若き才能が芽吹くロシア 一般客に開かれたファッション・ウイークをリポート

 10月に開催されたメルセデス・ベンツ・ファッション・ウイーク・ロシア(MERCEDES-BENZ FASHION WEEK RUSSIA)に参加するため、ロシアの首都モスクワへ初めて足を運びました。今季、主催者側から招待を受けて世界から訪れたゲストはピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)のディレクターや、イタリア版「ヴォーグ(Vogue)」をはじめ、オーストラリア版「GQ」、中国版「エル(Elle)」、米経済誌「フォーブス(Forbes)」、インディペンデント雑誌「インディ(Indie)」の編集者のほか、ストリートフォトグラファーやインフルエンサーにプレス関係者を加えた約60人で、日本からは私一人でした。滞在したホテルは5つ星の「メトロポール(Metropol)」で、過去にマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)や各国首脳が滞在したこともあるそうです。観光名所の赤の広場や聖ワシリイ大聖堂などが目と鼻の先に位置しています。

きらびやかすぎる超豪華ホテル

 5日間の滞在中は、オーガナイザーによって組まれたスケジュール通りにほかのゲストと一緒に行動します。「メトロポール」の朝食は今まで泊まったホテルの中で最もゴージャスで、朝から優雅な気分に浸りました。舞踏会が開催されるようなきらびやかな内装で、ステージ上ではハープの生演奏がスタート。ビュッフェ形式の朝食は洋食と少しの和食が並び、ロシアの名産物であるキャビアやイクラ、さらにシャンパンまで並んでいました。

 ファッションショーが始まるのは16時からとゆっくりなので、ショーが始まるまでにプーシキン美術館(Pushkin Museum of Fine Arts)や、現代芸術美術館(Museum of Modern Arts)などの美術館や蚤の市ヴェルニサージュを訪れるスケジュールをオーガナイザーが立ててくれました。ランチタイムの後は、いよいよショー会場へ。移動はもちろん、スポンサーのメルセデス・ベンツの車です。

一般客も入れるコレクション会場

 ロシアのファッション・ウイークはほかの都市と違い、プレスやバイヤーといった業界関係者だけでなく、登録すれば一般客も参加可能です。一般客向けのショーのシートは有料で、ブランドによって料金は異なりますがだいたい5000ルーブル(約8500円)ほど。ロンドン・ファッション・ウイーク(LONDON FASHION WEEK)で初めて行われた一般入場可能なパブリックショー(Public Show)が135ポンド(約1万7700円)〜という料金設定だったので、ロンドンに比べると安価です。会場には、この時とばかりに着飾る一般客の若者が集結し、ファッションへの熱狂ぶりをひしひしと感じました。

 会場内1階には大きなホールがあり、フォトスポットやDJブース、化粧品ブランドのポップアップと飲食スペースが設けられ、それらを抜けた一番奥にショーやプレゼンテーションが行われる約350人収容可能なショー会場があります。バイヤー向けの合同展示会はなく、地下に設けられた受注会兼ポップアップショップで、一般客向けに商品販売が行われます。ロシアのファッション・ウイークはブランドや業界関係者のためのビジネスの場というよりも、一種のお祭りのように認識されているようでした。若手ブランドはオンラインショップで販売するか、独自ルートで国外にセールスする方法しか今のところないようで、ファッション・ウイークに参加することで認知度向上を目指します。ショーを行い、バイヤーなどから連絡が来るのを期待するのだそうです。

ショーは全て同じ会場で爆音BGMと映像が変わるだけ

 会期中は70ブランドがコレクションを披露しました。全て同じ会場で、ブランドによってスクリーンの映像とBGMが変わるのみ。16〜22時で1時間ごとにショーが行われるのですが、待ち時間にも大音量の音楽が流れるナイトクラブのような会場内で半日を過ごすのは、正直かなりぐったり……。パリの自宅に帰宅した後は体調を崩しました(苦笑)。

 ブランドの傾向は、ロシアのアイコン的存在である「ゴーシャ ラブチンスキー(GOSHA RUBCHINSKIY)」のようなカルチャー色強めのストリートスタイルが多かったようです。特に印象に残っているのは、SF映画「ストーカー(Stalker)」から着想を得て未知の地に住む宇宙人の世界を描いた「クルゾフ(KRUZHOK)」や、世界で最も寒い定住地ヤクーツク出身のデザイナーが手掛ける「ザザ(ZA_ZA)」、デザイナー自身が脱毛症を患っていることから脱毛症患者をモデルに起用して話題を呼んだ「マッド デイジー(MAD DAISY)」です。注目ブランドについての詳細は別記事をご覧ください。

 各日18〜21時には地下のスペースでトークショーやワークショップも開催されました。今季は、ロシアと東欧のユニセックスブランドを集めた原宿のキャットストリートのショップ「バンカートーキョー(BUNKER TOKYO)」のディレクター兼リバーヘッドショールーム代表の森一馬さんと、「サカイ(SACAI)」「ジャックムス(JACQUEMUS)」などをクライアントに持つパリの大手PR会社ルシアン パージュ(LUCIEN PAGES)代表のルシアン・パージュ、ストリートフォトグラファーのアダム・カッツ・シンディング(Adam Katz Sinding)とスタイル・ディレクターのジャン・ミカエル・クアミー(Jen-Michael Quammie)によるトークセッションが催されました。

若手支援の具体的な中身は

 最終日に、今回が2度目の参加という森さんとお話しする機会がありました。「前シーズンはコンサバティブなブランドが多かったけれど、今回は挑戦的な若手のよいデザイナーが増えています」と満足気な様子。「特に『ローマ ウバロフ(ROMA UVAROV)』と『ザザ』はロシア・アヴァンギャルド(1910〜30年代初頭、戦争と革命のさなかに生まれた前衛芸術運動)をしっかり表現していました。旧ソビエトの歴史をコレクションに落とし込み、裏に隠された意味を持たせるのがロシアブランドの特徴です。今季は国外の若手デザイナーも参加する“グローバル・タレント(Global Talent)”枠の質が高く、ベルリンが拠点の『ソージ ソラリン(SOJI SOLARIN)』や中国人デザイナーの『リーフ シア(LEAF XIA)』にも引かれました」。トークショーではパージュさんやクアミーさんも森さんの意見と同じで、2人は「現在はブランドと物に溢れているため、デザイナーはストーリーテラーとなり、差別化を図ることが成功のカギ」と若手デザイナーにエールを送っていました。森さんが語る“グローバル・タレント”は、若手支援に力を入れる同ファッション・ウイークが今年始めた若手支援プロジェクトです。オンラインでエントリーが可能で、サラ・ソッツァーニ・マイノ(Sara Sozzani Maino)伊「ヴォーグ」シニアエディターを含む審査員が全世界から10ブランド前後を選出。選ばれたブランドはモスクワで単独ショーを行う権利を得て、経費や渡航費の全面サポートが受けられます。審査員を務める森さんは「アジア各国からのエントリーは多いけど、日本からは極端に少ない。挑戦してみてほしい!」と語っていました。

 初めてロシアを訪れて感じたのは、豊かな歴史があることと、ロシア芸術の深みです。まだファッションの文脈でそれらを十分に語ることはできてはいないものの、発展途上である産業が成長し、さらに国外に出る若手が増えてくると、「ゴーシャ ラブチンスキー」をもしのぐスターデザイナーが生まれる可能性は十分にあると思いました。私が今回の渡航で感じたロシアの魅力については、また別記事で詳しくご紹介します。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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楽天初スポンサーの2020年春夏東コレランウエイを最も歩いたモデルTOP3は?

 楽天が冠スポンサーとして初めての「楽天 ファッション ウィーク東京(以下、RFWT)」が10月に開催された。モデル事務所のトゥモロートウキョウ(TOMORROW TOKYO)は、公式スケジュールで発表された全42ブランドにおけるモデルの出演数を調査した。対象は海外から招いたモデルを除いた女性モデル。今シーズンのトップはアンノウンモデルマネージメント(UNKNOWNMODELMANAGEMENT)所属のTSUKINAで、5ブランドのランウエイを歩いた。TSUKINAに続くトップ3、計15人を紹介、ブランドのルックと共に振り返る。

1位(5ブランド):

TSUKINA

アンノウンモデルマネージメント所属。身長177cm。RFWTでランウエイを歩いたブランドは「タチアナ・パルフェノワ(TATYANA PARFIONOVA)」「アジアンファッションミーツトーキョー フィリピン(ASIAN FASHION MEETS TOKYO PHILIPPINES)」「フェイス.A-J(FACE.A-J)」「メルシーボークー、(MERCIBEAUCOUP,)」「ショーヘイ(SHOHEI)」の計5ブランド。

2位(4ブランド):

AIKA

アンノウンモデルマネージメント所属。身長176cm。RFWTでランウエイを歩いたブランドは「タチアナ・パルフェノワ」「アジアンファッションミーツトーキョー フィリピン」「ウィシャラウィッシュ(WISHARAWISH)」「ショーヘイ」の計4ブランド。

AMANE

アンノウンモデルマネージメント所属。身長178cm。RFWTでランウエイを歩いたブランドは「タチアナ・パルフェノワ」「アジアンファッションミーツトーキョー フィリピン」「フェイス.A-J」「ショーヘイ」の計4ブランド。

TSUGUMI

ドンナ(DONNA)所属。身長176cm。RFWTでランウエイを歩いたブランドは「ティート トウキョウ(TIIT TOKYO)」「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」「ハレ(HARE)」「ディーベック(D-VEC)」の計4ブランド。

長田侑子

ホリデイ マネジメント(HOLIDAY)所属。身長173cm。RFWTでランウエイを歩いたブランドは「ティート トウキョウ」「アジアンファッションミーツトーキョー フィリピン」「ネグレクトアダルトペイシェンツ(NEGLECT ADULT PATIENTS)」「フェイス.A-J」の計4ブランド。

福士リナ

イプシロン(IPSILON)所属。身長176cm。RFWTでランウエイを歩いたブランドは「ヨシキモノ(YOSHIKIMONO)」「トモ コイズミ」「ユキ トリヰ インターナショナル(YUKI TORII INTERNATIONAL)」「タエ アシダ(TAE ASHIDA)」の計4ブランド。

3位(3ブランド):

浅川ありあ

メタリンク(METALINK)所属。身長175cm。RFWTでランウエイを歩いたブランドは「アジアンファッションミーツトーキョー フィリピン」「フェイス.A-J」「ディーベック」の計3ブランド。

太田莉菜

エイジアクロス(ASIA CROSS)所属。身長170cm。RFWTでランウエイを歩いたブランドは「ノントーキョー(NON TOKYO)」「ボディソング(BODYSONG.)」「バルムング(BALMUNG)」の計3ブランド。

MIKI EHARA

ドンナ所属。身長177cm。RFWTでランウエイを歩いたブランドは「ヨシキモノ」「トモ コイズミ」「タエ アシダ」の計3ブランド。

ENYA

オレンジ(ORANGE)所属。身長175cm。RFWTでランウエイを歩いたブランドは「アジアンファッションミーツトーキョー フィリピン」「フェイス.A-J」「ショーヘイ」の計3ブランド。

佳野

ビーナチュラル(BE NATURAL)所属。身長175cm。RFWTでランウエイを歩いたブランドは「アジアンファッションミーツトーキョー フィリピン」「フェイス.A-J」「タエ アシダ」の計3ブランド。

SHEN

イマージュ(IMAGE)所属。身長177cm。RFWTでランウエイを歩いたブランドは「ノントーキョー」「フェイス.A-J」「ディーベック」の計3ブランド。

橘モニカ

イマージュ所属。身長174cm。RFWTでランウエイを歩いたブランドは「ノントーキョー」「フェイス.A-J」「ジェニー ファックス(JENNY FAX)」の計3ブランド。

丹保ふぶき

イプシロン所属。身長178cm。RFWTでランウエイを歩いたブランドは「タチアナ・パルフェノワ」「フェイス.A-J」「ウィシャラウィッシュ」の計3ブランド。

矢野ディアラ

ディヴァイン(DIVINE)所属。身長173cm。RFWTでランウエイを歩いたブランドは「スリュー(SREU)」「フェイス.A-J」「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」の計3ブランド。

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世界のプロが注目するジョージア発ブランド4選 最高評価は「シチュエーショニスト」

 10月31〜11月4日にジョージアの首都トビリシで「メルセデス・ベンツ・ファッション・ウイーク・トビリシ(MERCEDES-BENZ FASHION WEEK TBILISI)」が開催された。今季は2015年にスタートしてから10シーズン目の節目を迎えた。資源が少ないことや国自体の経済的な問題から生地や縫製の質にはやや難はあるが、独自の美意識から生まれる創造性は多くの人を魅了していた。世界中から来場した約100人の招待者の中から、複数のバイヤーとプレスに注目ブランドについて聞いた。

SITUATIONIST
「抜きん出た独自性」と絶賛

 数シーズン前にショールームのトゥモロー(TOMORROW)と契約した「シチュエーショニスト(SITUATIONIST)」と「マテリアル(MATERIAL)」は、世界中にアカウント数を一気に増やして消化率も好調のようだ。特に「シチュエーショニスト」は、今季インターナショナルゲストから最も高い評価を得た。イタリア版「ヴォーグ(VOGUE)」の編集者リカルド・テルツォ(Riccardo Terzo)は「トビリシで最も良質なブランド」と称した。「ジョージアの歴史と遺産を、完璧にウエアラブルな衣服に転換できる唯一のブランドだ。1990年代の『ヘルムート ラング(HELMUT LANG)』っぽいミニマルなアプローチと、くすんだカーキやサンドといった色彩も毎シーズン非常に効果的である。アクセサリーやスタイリングが十分ではないが、今季も一番クールなコレクションだった」とコメントした。

 柴田麻衣子リステア(RESTIR)クリエイティブ・ディレクターも同ブランドに高評価をつけた。「デザインから生産までを全てジョージアで行っていることが本当にすごいと感心したし、第三国の商品には見えないほど品質も高い。(資源が少なく選択肢が限られていることから)ジョージア発ブランドの世界観は似通ってしまうものだが、『シチュエーショニスト』は抜きん出て独自性が明確だ」と説明した。日本ではカシヤマ ダイカンヤマ(KASHIYAMA DAIKANYAMA)で販売するほか、伊勢丹での取り扱いも決まっているという。

TAMRA
高いセンスは評価されるも品質が課題

 スケートカルチャーがベースのストリートウエア「タムラ(TAMRA)」は2シーズンぶりにショーを行った。ホテル「スタンバ(Stamba)」のインダストリアルな雰囲気の地下スペースを会場に、回転する丸いボードの上に順にモデルが乗るといった突飛な演出だ。解体した古着の布を使った衣服と、ワークウエアやジャケット、スキーウエアなどを無作為に組み合わせたルックがコレクションを飾った。筆者にとっては今季最も印象に残ったショーで、中国版「エル(ELLE)」やポーランド版「ヴォーグ」などプレスからは注目を集めた。柴田氏に感想を求めると「演出や音楽、キャスティングがほかと違うアプローチでセンスが良い。『タムラ』に限らずほかのブランドも、トビリシという独特の雰囲気の中で見ると、まるで魔法がかかったのように素敵に映ることがある。しかし、商品を店頭に並べただけだと高円寺っぽい古着感も否めない。冷静になって考えると、買い付けにまでは至れないケースが多々ある」とバイヤーらしい視点を述べた。

BABUKHADIA
時代感を捉えた品の良いモノ作り

 「タムラ」とは全く異なる毛色ながら、筆者の印象に残っているのは「バブカディア(BABUKHADIA)」だ。ショーで見たルックからは、新生「ボッテガ ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」をほうふつとさせる、エレガントで程よく肩の力が抜けた都会的な女性像が浮かんだ。凝ったディテールや洗練された雰囲気、レザーと刺しゅうの上質さは格別。パリのコンセプトストア、トム グレイハウンド(TOM GREYHOUND)のバイヤーを務めるエカテリーナ・グラズノヴァ(Ekaterina Glazunova)も気に入った様子で、実際にショールームでサンプルを試着しながら細部をチェックしていた。「イタリア産の上質なレザーと絶妙なニュアンスカラーが美しい。ボタンやベルトの付け替えによって、シェイプやデザインを何通りにも変えることが出来るディテールも気に入った」とかなりの高評価だったが、オーダーまでには至らなかったという。「価格帯が高過ぎた。コートで約20万円だと、『ジル サンダー(JIL SANDER)』『ロエベ(LOEWE)』『マルニ(MARNI)』と同じフロアに陳列することになる。たとえ品質が高くても、顧客は知名度の高いブランドと比較して『バブカディア』に手を伸ばすことは少ないだろう。トビリシを過去数シーズン訪れて素敵なブランドをいくつか見つけたが、高い価格帯が買い付けへのネックになっている。マーケティングを強化し、税金や配送料も考慮した上で価格帯を見直すべき」と語った。

INGROKVA
メンズ誌編集長が目をつけた注目株

 世界中から訪れた招待客はウィメンズ担当のプレスやバイヤーが多い中で、メンズ雑誌「ファッキン ヤング(Fucking Young)」の編集長アドリアーノ・バティスタ(Adoriano Batista)はメンズブランドに注目。彼が評価したのは「シチュエーショニスト」と「インゴロヴァ(INGROKVA)」だ。ウィメンズブランドとしてスタートした「インゴロヴァ」は、ジジ・ハディッド(Gigi Hadid)やレディ・ガガ(Lady Gaga)といった著名人が着用したことでメディアでの露出が増え、19-20年秋冬からはドーバー ストリート マーケット ロンドン(DOVER STREET MARKET LONDON)で取り扱いが始まった勢いのあるブランドである。今季のショーではメンズモデルを起用し、ユニセックスとしてのイメージを打ち出した。バティスタは「将来的にメンズラインを展開していく場合、今季提示したルックはとても良い出発点となるだろう。潜在的な可能性を感じた」と述べた。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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2020年春夏は透ける素材と“変化球袖”がトレンドに 新顔の“ジゴ袖”って一体何?

 

 2020年春夏の「楽天 ファッション ウィーク東京」(東京コレクション)で目立ったのは、透ける素材と“変化球袖”です。オーガンジーやシフォンなどの透ける素材は、ミニマルなシルエットに、軽やかさをまとわせました。一方、“変化球袖”は、過去数シーズンで広がった“袖コンシャス”のトレンドが進化したもの。中でも、ひじから先を絞った“ジゴ袖”はクラシックな新顔です。

 「ハイク(HYKE)」はネックの詰まったTシャツとつやめいた白系レギンスというスポーティな組み合わせに、テーラードジャケットをオン。さらに、その上から透けるプリーツスカートをエプロンのように巻いて、入り組んだレイヤードに仕上げました。一見、シンプルに見えて、実はひねりを効かせたアレンジは、20年春夏の着こなしキーワード「ツイスト(ひねり)」に通じています。今回は透ける素材と変化球袖の2つにフォーカスし、東コレ参加ブランドの提案を見ていきましょう。

「透ける×つやめき」フェミニン素材のダブル使い

 まずは透ける素材の新提案を見ていきましょう。「ステア(STAIR)」はビスチェの上に、透ける素材のハイネックトップを重ねました。透ける素材を重ねれば、肌見せをさりげなくコントロールできます。ボトムスのほうも、透け感を生かし、フィルムのようなラミネート素材のラップスカートを巻いて、見え具合を抑えています。程よいシースルーのおかげで、軽やかさとフェミニン感が両立しました。

 光沢を帯びた生地は、透ける演出との相性に優れています。「ハレ(HARE)」(写真2枚目)はパンツの上から、つやめくスカートをかぶせました。オーバーサイズのシースルートップスも重ねて、異素材ミックスのレイヤードに。光沢のあるスカートに、ダークカラーの透かしトーンが融合し、3Dのような効果を発揮。装いに深みが加わりました。このように“光る×透ける”の重ね使いは、ニュアンスのあるフェミニンコーデに導いてくれます。

カジュアル服を透け感でワンランクアップ

 チュールに代表される、上品なムードの透け素材を使うと、着姿をぐっと大人っぽく変えられます。リメイク風の提案で見せた「スリュー(SREU)」(写真1枚目)は、古着やストリートを思わせるウエアの袖や裾に、チュール素材をあしらって、全体のフェミニン濃度をアップ。夏に重たく見えがちなブラックコーデですが、シースルーのおかげで、涼やかに見えています。黒ならではのミステリアスな雰囲気を強めるうえでも、透ける素材は有効です。

 黒と同じく、白も、透ける素材と相性のよい色です。写真2枚目の「バルムング(BALMUNG)」は白いオーバーサイズのレーストップスを重ねて、かげろうのような立体フォルムを描き出しました。来春夏にも勢いが続きそうなオールホワイトのコーデに生かしやすいスタイリングです。同じホワイト系でも、微妙に色味の異なる白同士を引き合わせれば、装いに奥行きを出せます。

クラシックとロマンティックが交差 新顔ジゴ袖で華奢見えも

 ここからは“変化球袖”に移ります。来季の目玉は古風なジゴ(gigot)袖。フランス語の「gigot」は「羊の脚」という意味です。その名前が示す通り、まるで羊の脚のように、ひじから上に膨らみを持たせる一方、ひじから先は肌にぴったりした細い袖になった、「太>細」のボリューム変化が面白い袖です。

 膨らんだ部分に19世紀風のロマンティックで貴族的なムードがあります。引き締まった部分には、緊張感やほっそりイメージが備わっていて、袖全体で気品や華奢感を印象づけやすいデザインです。少し時代が下ったヴィクトリアン時代のテイストが来春夏に盛り上がる気配があり、ジゴ袖もクラシックトレンドの流れに組み込めます。

 「ティート トウキョウ(TIIT TOKYO)」のワンピースは、ロマンティックで優しげなジゴ袖を提案。肩口から二の腕にかけては、パフスリーブ風にたっぷり。ひじでいったん、絞っていますが、ひじから先は腕を締め付けすぎず、細感だけを巧みに引き出しました。パンツと組み合わせて、落ち感の高いコーデに整えたのも今のムードにはまります。

 「ノントーキョー(NON TOKYO)」(2枚目)は、二の腕ゾーンを大胆に膨らませました。そして、ひじのあたりで一回、ギュッと絞りを加えています。そして、袖先に向かっては再びベルスリーブ状に広がるという、新たな解釈でジゴ袖を披露。思い切った量感のおかげで、小顔や着痩せの効果まで期待できそうです。

「ドラマティック×エレガント」を両立 優美なルックがかなう

 ダイナミックなジゴ袖を、エレガントに変形させる試みも広がっています。「ヒロココシノ(HIROKO KOSHINO)」のシャツは、ひじから手首にかけてを優美に膨らませました。逆に、二の腕とカフスは絞って、袖フォルムにメリハリを加えています。ドロップショルダーの伸びやかなシルエットも、穏やかなたたずまい。片側の肩だけからの吊りスカートで、きちんと見えと華やかアシンメトリーを、ダブルでかなえています。

 品格ドレスに組み込んで、袖を主役級に見せる演出も提案されました。「タエ アシダ(TAE ASHIDA)」(写真2枚目)のドレスは、ワンショルダーからつながった袖を、たおやかに膨らませています。透ける素材のおかげで、涼やかな見え具合に。光沢を帯びたグレーシルバー系の色も、リュクスな雰囲気を呼び込みました。縦に流れ落ちるようなシルエットと、生地の細い縦縞が調和して、流麗な着映えに仕上がっています。

 装いの基本線がシンプル志向へと移り変わる気配が見えてきました。ただし、ミニマルに削り込みすぎないで、程よい主張を素材感やディテールで盛り込むのが、新しい流れに。クラシックムードが続くこともあって、透け素材とジゴ袖は貴重な“スパイス”になってくれます。軽やかさやメリハリが欲しくなる秋冬コーデにも応用が利くから、今シーズンから取り入れて、早めに手なずけてしまう選択肢もありでしょう。

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

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2020年春夏トレンド分析Vol.6 輝きをシンプルにまとう

 スパンコールやメタリックなど、光沢感のあるドレスやスーツも2020年春夏トレンドのキールックだ。「リック・オウエンス(RICK OWENS)」や「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」「ヴァレンティノ(VALENTINO)」などは、シルエットと輝きに焦点を当て、単色でシンプルにその華やかさを強調した。

 「エコーズ ラッタ(ECKHAUS LATTA)」のデザイナーデュオ、マイク・エコーズ(Mike Eckhaus)とゾーイ・ラッタ(Zoe Latta)は、フルレングスとミニ丈という異なるアプローチによる2種類のドレスを同色で製作し、カジュアルでミニマリスティックな雰囲気を最大限に見せた。

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2020年春夏トレンド分析Vol.6 輝きをシンプルにまとう

 スパンコールやメタリックなど、光沢感のあるドレスやスーツも2020年春夏トレンドのキールックだ。「リック・オウエンス(RICK OWENS)」や「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」「ヴァレンティノ(VALENTINO)」などは、シルエットと輝きに焦点を当て、単色でシンプルにその華やかさを強調した。

 「エコーズ ラッタ(ECKHAUS LATTA)」のデザイナーデュオ、マイク・エコーズ(Mike Eckhaus)とゾーイ・ラッタ(Zoe Latta)は、フルレングスとミニ丈という異なるアプローチによる2種類のドレスを同色で製作し、カジュアルでミニマリスティックな雰囲気を最大限に見せた。

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ロンドンで見つけた次世代スターモデル 世界が注目する17歳から39歳の2児の母まで

 スーパーモデルのケイト・モス(Kate Moss)やナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)、カーラ・デルヴィーニュ(Cara Delevingne)といった時代を彩るスーパーモデルを多く輩出してきたのがイギリスです。昨今は世界的に二世モデルの活躍が目立ちますが、2020年春夏シーズンのロンドンは少し違った傾向が見られました。ケンダル・ジェンナー(Kendall Jenner)やジジ・ハディッド(Gigi Hadid)らセレブリティーを起用したのは「バーバリー(BURBERRY)」ぐらいで、メトロポリタンなロンドンという街を象徴するかのようにモデルの顔ぶれは多様性に満ちていたのです。そして、各ブランドの確立したいイメージやターゲット層などの狙いもモデル選びに現れていました。今回のバックステージを取材した4ブランドで見つけた、注目美女モデルをご紹介します!

SIMONE ROCHA
“今っぽい”人選に共感

 私が最も共感し、現代らしいキャスティングだと思ったのは「シモーネ ロシャ」です。昨シーズンから幅広い年代の女性やプラスサイズモデルを起用しており、デザイナーのシモーネ・ロシャはかつてキャスティングについて「Anybody, Any body(全ての人、全ての体形)」とコメントしています。アイルランドの伝統行事をテーマに掲げた今季は、アイルランド出身の女性も数名起用していました。アイルランド人の女優兼映画監督オルウェン・フエレ(Olwen Fouere)は、長い芸能生活の中でランウエイを歩いたのは初めての経験だったそうです。2019年プレ・フォール・コレクションのキャンペーンに起用された南スーダン出身のアドゥ・アケチ(Adut Akech)をはじめ、2000年代初頭に活躍し現在は2児の母である39歳のカレン・エルソン(Karen Elson)や、今季がモデルデビューで初のランウエイだというサーラ(Xara)ら、キャリアや人種も多種多様なモデルをそろえていました。

JW ANDERSON
モデルの審美眼はピカイチのジョナサン

 最もアップカミングなモデルを起用していたのは「ジェイ ダブリュー アンダーソン」です。旬のモデルとして華々しい活躍を見せているのは、昨シーズン41ブランドのランウエイを歩いた19歳のジゼル・ノーマン(Giselle Norman)です。イギリス人の彼女は、個性的な顔立ちというよりも変幻自在のカメレオン系。昨シーズンの彼女を見ると「シャネル(CHANEL)」ではエレガントに、「クロエ(CHLOE)」ではガーリッシュに、「サンローラン(SAINT LAUREN)」ではセクシーに、「ディオール(DIOR)」ではクールにと全く異なる印象を見せています。「ジェイ ダブリュー アンダーソン」のバックステージではモデル仲間と楽しくダンスをしたりスタッフと笑い合ったりと、お茶目で明るい性格が見て取れました。2018-19年秋冬シーズンにモデルデビューした彼女の初ランウエイは「ジェイ ダブリュー アンダーソン」だったそうで、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)の審美眼はさすがと言うべきでしょう。

 そんなアンダーソンが今季起用したモデルの中で目を引いたのは、各都市で大活躍中の17歳、モナ・トーガード(Mona Tougaard)です。デンマーク出身の彼女は、15歳の時に大手モデル事務所「エリート(Elite)」のコンペティションで優勝し、昨シーズンにランウエイデビューを果たしました。初シーズンで「ルイ・ヴィトン(LOUISE VUITTON)」「プラダ(PRADA)」「シャネル」などそうそうたるメゾンに起用され、今季も「シモーネ ロシャ」「バーバリー」、ミラノでは「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「フェンディ(FENDI)」も歩いて大いそがし。20年春夏シーズンのパリ・メンズ・ファッション・ウイークで人気が出そうなメンズモデルとして紹介したジーヌ・マハデヴァン(Jeenu Mahadevan)と共通する、南アジアっぽいダークトーンの肌色にエキゾチックな顔つきが印象的です。ショーだけでなくキャンペーンモデルとしても、今後どんなブランドに起用されるのか要注目です。

REJINA PYO
175cm超の長身ぞろい

 「レジーナ ピョウ」のコレクションは、クラシックなアイテムに色使いやシルエット、ボリューム感、素材感、スタイリングなどで少しひねりを加えた合理的なデザインが「北欧っぽいなぁ」といつも感じています。コペンハーゲン・ファッション・ウイークに参加したとき、実際に来場者の着用率が高かったブランドでした。今季のバックステージで見かけたモデルは、私のそんな印象をさらに強めるかのように北欧系美女が多く見られました。その代表格がオランダ出身の2人ヴェラ・ヴァン・エープ(Vera Van Erp)とドゥミ・デ・ヴリース(Demy de Vries)です。どちらもエラが張ったベース型の輪郭に頬骨が少し出ていて、彫りが深いわけではないのに目力がある顔つきです。そしてジャケッタ・ウィラー(Jacquetta Wheeler)とクレア・コリンズ(Claire Collins)の二人はイギリス出身ですが、系統的には同じ北欧系美女。可愛いというよりもクールでキレイ、そしてとにかく背が高い!175cm前後の美女に囲まれ、152cmの私はすっぽり埋もれてしまいました。ただし、北欧系美女が多かったというだけでランウエイにはほかにもアフリカ系やアジア系モデルも登場していて、“多様性”を主張しています。

TOGA
女子校でモテそうな“イケメン”美女

 個性的なモデルが多かったのは「トーガ」です。肌色だけでなく、顔立ちも雰囲気もそれぞれ異なり、「トーガ」の衣服をまとってさらに個性が際立っていました。今季はショートヘア率が高く、やんちゃなトムボーイっぽい雰囲気のモデルに目を引かれました。天然パーマのカイラ(Kayla)とラクエル(Raquel)、前髪パッツンのメイジー・ダンロップ(Maisie Dunlop)とキアラ・ルナ(Chiara Luna)のほか、男前美女のアゴスティーナ・マーティネス(Agostina Martinez)とサラ・ブルサン(Sarah Boursin)は美しさとカッコよさを兼ね備えており、女子校にいたら絶対にモテそう。ファビエンヌ・ドーバ(Fabienne Dobbe)とポピー・マイルズ(Poppy Miles)は、そばかすがとってもキュート!美を再定義する個性派ビューティぞろいで、“みんな違って、みんないい”——そんなメッセージが感じられる顔ぶれでした。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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2020年春夏トレンド分析Vol.3 ひねりを利かせたクラシック

 “クラシックなスポーツウエアの再考”は、2020年春夏シーズンの重要なキーワードだ。キーアイテムは数え切れないほどのランウエイに登場したデニム。そのスタイルは、スタンダードなラインから「バルマン(BALMAIN)」のカラフルなスーツ、「ヴェルサーチェ(VERSACE)」のパワーショルダー、「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」の斜めにストライプが走ったジーンズまでさまざまだ。

 また、白のタンクトップも注目を集めた。「パイヤー モス(PYER MOSS)」のカービー・ジャン・レイモンド(Kerby Jean-Raymond)は再利用のポリエステルを使い、タンクトップをジャンプスーツとして再生。一方、オートクチュール・デザイナーのクリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)をゲストに迎えた「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」はタンクトップをコレクションのベースとし、スエットシャツやパーカを製作した。「マイケル コース(MICHAEL KORS)」では、赤、白、青の3色のプルオーバーや“HATE”の文字に取り消し線を引いたセーターなどが見られた。

 そして、20年春夏コレクションの中でひねりの利いたクラシックをうまく表現していたブランドといえば、今年の第6回「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE)」のファイナリストに選ばれた「アンリアレイジ(ANREALAGE)」の森永邦彦デザイナーだろう。胸元の大きく開いたブレザーやシャツなど、ちょっとした発想の転換によってユニークなコレクションを作り上げていた。

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「東コレに伝えたい」デザイナーたちの本音 連載Vol.13 「開催時期が早い、遅いの問題ではない」

 日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)が運営する2020年春夏の「楽天 ファッション ウィーク東京(RFWT)」が10月14〜19日に開催された。冠スポンサーがアマゾン ファッションから楽天にかわって初めてのファッション・ウイークとなるため、関係者からの注目は高い。しかし結局は、人を呼べるブランドが参加しないとファッション・ウイークは盛り上がらない。そこで、海外で活躍する日本人デザイナーや「RFWT」に参加するブランド、新進気鋭の若手らに「どんな東コレだったら参加したい?」というテーマで「RFWT」開催前にアンケートを実施した。10月28日の「WWDジャパン」東京ファッション・ウイーク特集発売の週まで、回答の一部を連載形式で紹介する。。今回は「ジュン オカモト(JUN OKAMOTO)」「モトヒロタンジ(MOTOHIRO TANJI)」「ユハ(JUHA)」「ユウキ ハシモト(YUKI HASHIMOTO)」「ナンバー(NO.)」が登場。

JUN OKAMOTO
岡本順デザイナー

 過去に東コレに参加し、多くの方に見てもらえてブランドの世界観を知ってもらえたところはよかったです。しかし現在は展示会を早めるブランドが国内で大半を占めてきており、現在のスケジュールのままで参加するのは難しいかなと思います。

MOTOHIRO TANJI
丹治基浩デザイナー

 東コレでショー形式の発表をし、PR効果はありました。開催時期や参加費、取材メディアの質やバイヤー誘致などで改善は必要ですが、また参加したいとは考えています。

JUHA
武長遼デザイナー

 今後は海外展開を進めるためにスケジュールの前倒しがブランドとして必要になります。現在の東コレの開催スケジュールでは、仮に参加してもバイヤーに展示会でアイテムを先に見せてから、ショーを行う順番になってしまいます。ブランドの提案をより強く伝えるためには、ショーを見てから展示会に来てもらう日程が理想です。

YUKI HASHIMOTO
橋本祐樹デザイナー

 東コレには参加したいです。しかし日本に帰国して間もないので、ショーを行うために必要な演出家やクリエイターにまだ出会えていないません。これからブランドが成長するとともにさまざまな人と仕事をする機会も増えていくはずなので、ショーのビジョンが具体的に見えてきたら東京でランウエイショーを開きたいです。

NO.
一宮武史ディレクター

 ファッション業界で目まぐるしく変化していく中で、東コレの開催時期が早い、遅いの問題ではなく、従来通りのスケジュールから変わろうとする姿勢がないことが問題。また渋谷ヒカリエなどショーに不向きな場所が公式会場ではブランドの個性が出せないのでは。

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2020年春夏の新トレンド“ヴィクトリアン”を先取り! “姫ワンピース”はロンドン女子がお手本

 古風な英国“ヴィクトリアン”のムードが盛り上がったのは、2020年春夏ロンドン・ファッション・ウイークの目立った新傾向でした。ショー会場に現れたファッショニスタたちもこの動きを先取り。フリルやロング丈が特徴の“姫ワンピース”をまとっていました。英国から火がついたヴィクトリアンは、来春夏の大きなトレンドに育ちそうな予感があります。

 英国ブランドの「アーデム(ERDEM)」は2020年春夏のショーで、クラシックなワンピースを繰り返し披露しました。レディーライクがトレンドの今、その起源を時代的にさかのぼるのは自然な流れです。ヴィクトリアンはヴィクトリア女王が在位した1837~1901年当時のファッションを指します。フリルや刺しゅう、レースを施した装飾のほか、コルセットで絞ったウエスト、腰周りを膨らませたロングスカートなどが象徴的で、現代のゴシックロリータに通じる装いです。

 でも、当時の装飾性をそのままワンピースに落とし込むのでは、リアリティーがありません。フェミニンが過剰になるのを避けて、ヴィクトリアンをモダンにアレンジするのが20年春夏の着こなし方です。一足早くヴィクトリアンを自分流にスタイリングしていた来場者のコーディネートには、ロンドンらしいウィットがあふれていました。トレンドを先取りの彼女たちのスタイルを見ていきましょう。

お嬢さまとダンディーを
クロスオーバー

 襟や裾をフリルやラッフルで飾るのは、ヴィクトリアンの象徴的な演出です。ロマンティックな花柄で彩られたマキシ丈ワンピース、その上からダブルブレストのテーラードジャケットを羽織ってマニッシュに締めるのは、鉄板の合わせ技です。姫ワンピースを自分のものにするには、まずこのコーディネートが入門編として取り入れやすいでしょう。写真の女性はヘアピンを添えてトレンド感をアップ。足元にはトラッドなローファーを合わせて、お嬢さまテイストをハズすのが今の気分です。

前開けと袖まくりで“こなれ感”演出

 布をたっぷり使ったマキシ丈ワンピースは“姫感”もマックス。シャツワンピースは正面を全部開けられるので、この写真の女性のようなスリット風の見せ方も可能です。堂々とした脚見せは、凜々しいワンピース姿に導いてくれます。裾からのぞかせたのは、レースアップのコンバットブーツ。さらにテーラードジャケットを重ねることで、女っぽさを薄めています。たくし上げたジャケットの袖先からワンピースの袖を見せて、ラフに着崩しました。華やかなドレスをデイリー使いするときのお手本になりそうです。

ジャケット × ブーツで凜々しく

 ヴィクトリアンムードを取り入れるときは、ロマンティックになり過ぎないよう、ジャケットとブーツといったクールなアイテムで全体を整えるのがこなれた雰囲気に仕上げるコツです。この写真の女性はロング丈のブラウスとスカートのコーディネートですが、ワンピースのようにも見える着こなしです。これはワンピース見えするセットアップなどでも使える手です。ノーカラーのジャケットを重ねることで、きりっと感をプラス。ロングブーツで脚を隠す小技は今秋冬にヒットする兆しが見えています。

紳士とストリートの逆ムードを
サンドイッチ

 裾のフリルが愛らしいコットンワンピースは、ノスタルジックな雰囲気です。淡いグリーンも夢見心地の甘口テイスト。だから、スイートになり過ぎないよう、チェック柄のジャケットで英国トラッド調のスパイスを投入しました。さらに、ダッドスニーカーでストリートテイストもミックス。服のボリュームとスニーカーの量感は、チラリとのぞく足首を細く見せてくれる効果も発揮しています。甘め服にはこのような“上下サンドイッチ技”を使うと、狙い通りに印象をコントロールできます。

CPOジャケットとアウトドア靴で
甘さダウン

 ミリタリー由来の“CPOジャケット”をスタイリングに取り入れる、おしゃれ上手な女性が街に急増中です。CPOジャケットはシャツとジャケットの長所を兼ね備えているため、“シャケット”とも呼ばれています。ざっくりラフに着られるうえに、ちょっとした温度調節にも便利なアイテムです。風をはらむ薄手ワンピースははかなげなムードを帯びるので、過剰なガーリー感を遠ざけるうえでは“CPOジャケット”のようなミリタリー系ウエアとのマッチングが効果的。ごつめのトレッキングブーツもワンピースの甘さをトーンダウンしています。

 ヴィクトリアンな姫系ワンピースは、ロリータ感があって着るのをためらいがちですが、ロンドン女子を見習って異なるテイストをミックスすれば、大人も着こなしに取り入れやすくなります。クラシックの流れは20年春夏に向けてさらに勢いづいているので、姫系ワンピースもこれからどんどん人気が広がる気配。ロンドン流のテイストミックスで、着こなしレパートリーに加えてみては?

ファッションジャーナリスト・ファッションディレクター 宮田理江:
多彩なメディアでコレクショントレンド情報、着こなし解説、映画×ファッションまで幅広く発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かし、自らのTV通版ブランドもプロデュース。TVやセミナー・イベント出演も多い

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2020年春夏「ヨウジヤマモト」を徹底解説 山本耀司が背中で語った“NO FUTURE”の意味から本人の曲を含むBGMまで

 「WWDジャパン」10月21日号は、2020年春夏パリ・ファッション・ウイークの特集第2弾を掲載している。世代が異なる3人が見たパリの新潮流とそこから得られるビジネスのヒントを9つのトピックにわたって紹介し、「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」はそのうちの1つのトピックス、「コミュニティー」の形成が上手いブランドとして取り上げた。9月27日にパリで開催されたショーはファンがうなる仕掛けが盛りだくさん。ここでは、そんな20年春夏コレクションを展示会で取材した追加情報も加え、5つのポイントで解説する。

ブランドタブーへの挑戦

 今季「ヨウジヤマモト」は、無駄を削ぎ落とした美を追求する同ブランドだからこそタブーとしてきた2つのことに挑戦した。1つめはビーズとレースなどをふんだんに使った装飾、2つめはフラワーモチーフだ。これらをどうしたら「ヨウジヤマモト」らしく取り入れることができるかに挑戦したという。まず装飾部分は、手描きのペイントと手作業で施された刺しゅう、そしてビーズの3重構造という手の込んだクチュールワークとなっている。ただし、レースなどをギザギザにカットすることでブランドらしい不規則性を見せる。またこれだけ手が込んだ装飾を前面に見せるのではなく、シャツドレスの内側に施して歩くたびに見え隠れするようにしたのもブランドらしい。

 フラワーモチーフは、アーティストの朝倉優佳とのコラボレーションの中で表現した。朝倉は16年の「画と機」の展覧会以来、同ブランドとコラボレーションを続けているが、今回彼女が頼まれたのは“beautiful but crazy(美しくも狂気的)”な挑戦的で毒気のある花を描くことだったという。「コレクションで見せたドレスは毒々しい花々を全面に描いていましたが、最初は花と花の間にすき間がある絵を描いていました。ですが、より毒気や花のエネルギーを出すために隙間を埋めるように花を足していきました。実在する花もあれば、想像上の花も描いています」と朝倉は制作の裏側を語る。かわいらしさや可憐さを表現するために使われることが多いフラワーモチーフだが、毒々しい花でブランドらしさを表現することで「耀司さんは服飾史の中の“花”(という概念)に挑戦したのだと思う」という。

マグネットの招待状の意味

 「ヨウジヤマモト」の今季の招待状はマグネットで、その一つ一つにブランドのロゴや会場の住所がプリントされていた。「なぜマグネット?」と疑問に思ったが、展示会でその理由が明らかになった。ワンピースの布地につけられていた円のモチーフは、実は強力なマグネットで、布地に留め合わせてボタンのように見せたり、布地を手繰り寄せて美しいドレープを生みだしていた。ちなみにマグネットにのせられた絵の具は、山本耀司の直筆だという。

シューズは台湾ブランドとのコラボ

 ショーではクリノリンを用いたエレガントなドレスやクチュールワークが美しいドレスに、キャンバススニーカーを合わせてストリート感を取り入れていた。このスニーカーは実は台湾のアイドルグループF4のメンバー、ヴァネス・ウー(Vanness Wu)が立ち上げたファッションブランド「Xヴェセル(XVESSEL)」とのコラボだ。同ブランドのアイテムの中でも特に脱構築したソールデザインで人気を集めるスニーカー“G.O.P.”をピックアップし、ソール部分は「Xヴェセル」のデザインを生かしつつ、アッパー部分にレザーを取り入れるなどして「ヨウジヤマモト」流に仕上げた。ローカットはホワイトとブラックの2色、ハイカットはホワイト、ブラック、レッドの3色を用意する。

“NO FUTURE”の意味

 フィナーレに登場した山本耀司デザイナーが着用していたコートの背中には、“NO FUTURE”の文字があった。日本語で「未来はない」の意味だが、いったいそのこころとは?誰の「未来」がなぜ「ない」というのか。展示会会場に山本耀司の姿はなく直接聞くことはできなかったが、その真意とは、深刻化する地球環境に警鐘を鳴らし、このままでは「未来はない」という意味だったという。コレクションも、温暖化で気温上昇が著しい夏でも快適に過ごせるようにと、今季は麻やリネンなどの素材を多用した。また服の一部を円や三角形の形にカットアウトし、素肌を見せるディテールも通気性を配慮してのことだという。20年春夏はパリだけでなく、各都市のコレクションでサステイナビリティーが一大潮流となっており、ショーで使用した機材の再利用やアップサイクリングを打ち出すブランドが多かったが、「ヨウジヤマモト」の場合、山本耀司本人の言葉が一番人々の心に響きそうだ。

BGMは本人の歌声!「神田川」も流れる

 コレクションの制作からスタイリング、キャスティング、出番表、ヘアメイクまで、ショーの過程を全て監督しているという山本耀司だが、ショーのBGMまで自身で制作してしまうのは衝撃だった。曲を作るのはショーの直前、コレクションなど全てが整った後に、イメージを形にして即興レコーディングするのだという。今回のショーでは「Notebook」と名付けられた曲を披露。他にもショーではかぐや姫の「神田川」などが流れた。是非動画でショーのBGMとともに「ヨウジヤマモト」の世界に浸ってほしい。

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「東コレに伝えたい」デザイナーたちの本音 連載Vol.6 「自国のファッションウィークを盛り上げることはデザイナーの社会的役割」

 日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)が運営する2020年春夏の「楽天 ファッション ウィーク東京(RFWT)」が10月14〜19日に開催される。冠スポンサーがアマゾン ファッションから楽天に変わって初めてのファッション・ウイークとなるため、関係者からの注目は高い。しかし結局は、人を呼べるブランドが参加しないとファッション・ウイークは盛り上がらない。そこで、海外で活躍する日本人デザイナーや「RFWT」に参加するブランド、新進気鋭の若手らに「どんな東コレだったら参加したい?」というテーマでアンケートを実施した。「RFWT」開催期間中から10月28日の「WWDジャパン」東京ファッション・ウイーク特集発売の週まで、回答の一部を連載形式で紹介する。今回は20年春夏「RFWT」の大トリを飾る「ドレスドアンドレスド(DRESSEDUNDRESSED)」と「ターク(TAAKK)」が登場。

DRESSEDUNDRESSED

北澤武志デザイナー

 2012年3月に東京のファッション・ウイークに参加し、現在まで発表を継続して今回で16シーズン目になります。コレクションの内容は冠スポンサーによって左右されるものではありません。大切なのは、クリエイションのベストを尽くすこと。自国のファッション・ウイークを盛り上げることもデザイナーの社会的役割の一つであると考えています。

TAAKK

森川拓野デザイナー

 過去に東コレに参加し、PRやセールス面でいい効果がありました。しかし海外のメンズ・コレクションは1月に秋冬、6月に春夏シーズンの発表があり、納品時期も年々早まっています。東コレ開催中の3月(秋冬)と10月(春夏)は量産期間と重なるため、参加するのは現実的に難しいです。

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3人の東コレ担当記者が選ぶ5日目の“私的BEST LOOK”

 10月14日から19日までの6日間、楽天を初の冠スポンサーに迎えた2020年春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」が開催される。期間中は、非公式スケジュールを含めると50近いブランドがランウエイショーやイベントを行い、合計すると1000近いルックが披露される。しかし、よほどのことがない限り全てのルックをチェックするのは難しい。

 そこで「RFWT」を取材する3人の「WWDジャパン」記者が、各日の“私的BEST LOOK”をご紹介。東コレを4年連続で取材する30代男性記者K.O、海外コレクションの取材経験も豊富な女性記者M.O、東コレにはスナップカメラマンとして参加していた20代男性記者R.Oという、偶然にもファミリーネームが「O」縛りの3人が選ぶルックとは?5日目に登場した「ウィシャラウィッシュ(WISHARAWISH)」「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」「ジェニーファックス(JENNY FAX)」「ショーヘイ(SHOHEI)」「ディーベック(D-VEC)」「タエ アシダ(TAE ASHIDA)」「リト(RITO)」の7ブランドから3ルックをピックアップしお届けする。


男性記者K.O
TAE ASHIDA / LOOK 26

 前シーズンに東コレを取材した男性若手記者が“衝撃”という見出しをつけて記事化した「タエ アシダ」のメンズコレクションデビュー。後輩の興奮した様子にずっと気にはなっていたのですが、2シーズン目でようやく生で見ることができました。ひと言でいうと、超贅沢。シャープなテーラードやスクールライクなブルゾン、ストリートムードの巨大カーディガンなどアイテムは一見すると普遍的なメンズウエアなのですが、よく見ると刺しゅうや装飾のきめ細かさがドレスウエアのようで、ジャパニーズメゾンの意地と底力を見ました。長い歴史をもつ会社なのに、伝統を守ることだけに固執せず、変化を恐れないでチャレンジする姿勢には、同じ業界で働く身として刺激を受けます。僕と同じかもっと若い世代の男性にはあまりなじみがなかった世界かもしれませんが、だからといって壁を作らず、この勇敢なチャレンジ精神と本気のモノ作りを一度は目撃すべし!です。


女性記者M.O
JENNY FAX / LOOK 21

 「ジェニー ファックス」と「ミキオサカベ」が高田馬場のゲームセンターで発表しました。1回50円でプレイできる古い対戦ゲーム械が並ぶ、1980〜90年代から時間が止まっているような懐かしい空間です。「ジェニー ファックス」は今季も「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のスタイリングでおなじみのロッタ・ヴォルコヴァ(Lotta Volkova)をスタイリストに起用。ブランドの安定的な“レトロガーリー感”はそのままに、スカートから“パンチラ”させるなどロッタによるアレンジが加わって、ドキッとする着こなしが多かったです。中でも一番びっくりしたのは、ショーツに合わせた花柄のトイレットペーパーでできたドレスです。デザイナーのジェンファンいわく今回のコレクションには「身の回りの小さいものでも、宝物のような存在になる」という思いを込めたそう。日常に密接なものですが、水に溶ける繊細なトイレットペーパーを可憐なドレスに変えてしまうアイデアは痛快でした。


男性記者R.O
D-VEC / LOOK 16

 釣りの文化をライフスタイルに根付かせるべく、釣り用品メーカーのダイワ(DAIWA)が手掛けているのが「ディーベック」です。アウトドアカルチャーを背景に持つだけありアイテムの多くが機能的なウエアで、都市部はもちろん釣りの際にも問題なく着用できるという優れもの。街着のまま釣りに行けるというのは、釣り好きの1人としてたまりません。特にこのルックは“ルック買い”したいくらいドンピシャ。釣りをしていると地面に膝をつくことがよくあるのですが、膝パッドが入っているのは流石の目の付け所。シリンダー式の鍵をモチーフとしたベルトも可愛いです。男女問わず何か新しいことに挑戦する際、「適した服がない」というのは大きな障壁です。特に釣りはオシャレというイメージが正直なく、見た目を気にする人にとっては始めづらいですが、「ディーベック」はそんな人たちにもってこいだと改めて思いました。

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3人の東コレ担当記者が選ぶ2日目の“私的BEST LOOK”

 10月14日から19日までの6日間、楽天を初の冠スポンサーに迎えた2020年春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」が開催される。期間中は、非公式スケジュールを含めると50近いブランドがランウエイショーやイベントを行い、合計すると1000近いルックが披露される。しかし、よほどのことがない限り全てのルックをチェックするのは難しい。

 そこで「RFWT」を取材する3人の「WWDジャパン」記者が、各日の“私的BEST LOOK”をご紹介。東コレを4年連続で取材する30代男性記者K.O、海外コレクションの取材経験も豊富な女性記者M.O、東コレにはスナップカメラマンとして参加していた20代男性記者R.Oという、偶然にもファミリーネームが「O」縛りの3人が選ぶルックとは?2日目に登場した「ノントーキョー(NON TOKYO)」「アジアンファッションミーツトーキョー フィリピン(ASIAN FASHION MEETS TOKYO PHILIPPINES)」「ヒロココシノ(HIROKO KOSHINO)」「ボディソング(BODYSONG.)」「ステア(STAIR)」「イル イット(ILL IT)」「バルムング(BALMUNG)」「ネグレクトアダルトペイシェンツ(NEGLECT ADULT PATIENTS)」「ハイク(HYKE)」の9ブランドから3ルックをピックアップしお届けする。


男性記者K.O
NON TOKYO / LOOK 15

 東コレに毎シーズン設けられているパルコが支援する参加枠は個人的にいいブランドがそろっている印象で、2日目トップバッターの「ノントーキョー 」も例に漏れずかわいかった。朝から元気をたっぷりもらいました。ギャザーでモコモコ、レースでフリフリなガーリーの要素もありつつ、ミリタリーウエアのディテールやカモフラ柄を勢いよくミックスして東コレという“戦い”に挑む姿勢がかっこよかった。それもそのはず、今シーズンのテーマはズバリ“愛の戦士”。BGMにはセーラームーンのイントロが流れ、反応するか否かで世代が分かるのもちょっと面白かったです。照明が独特なのでちょっとダークに見えるかもしれませんが、服からはハッピーなムードがしっかり伝わってきましたよ。中でも、わかりやすいハイブリッドのこのルックが今日イチです。


女性記者M.O
HIROKO KOSHINO / LOOK 1

 「ヒロココシノ」は今季、長年ショーを披露してきた東京・恵比寿の会場を離れて、江東区の東京都現代美術館で発表しました。自然光が降り注ぐ、明るい会場でのショーは服も細部までよく見えましたし、光のエネルギーを感じました。コレクションは音楽から着想を得ていて、ランウエイではピアニストの演奏が披露されました。ルックで最も特徴的だったのは、柄使い。幾何学柄はバイオリンの曲線、ストライプはピアノの鍵盤をイメージしているようです。ペールトーンのブルーやベージュの色合いは、奏でられた旋律にぴったりでやさしいハーモニーを感じました。


男性記者R.O
HYKE / LOOK 42

 惜しまれながらも先シーズン限りで「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」との協業を終了した「ハイク」ですが、16-17年秋冬ぶりにアディダス(ADIDAS)とのコラボレーションが帰ってきました。ランウエイではルックが現れた瞬間、来場者の多くがカメラを構えるほど人気が高いこのコラボ。以前までは「アディダス オリジナルス(ADIDAS ORIGINALS)」とでしたが、今回は「アディダス」がパートナーということで、ロゴもトレフォイルではなくパフォーマンスという点がポイントでしょう。来シーズンも展開され詳細は1月に発表とのことですが、どんなアイテムが展開されるのか待ちきれません!

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3人の東コレ担当記者が選ぶ1日目の“私的BEST LOOK”

 10月14日から19日までの6日間、楽天を初の冠スポンサーに迎えた2020年春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO以下、RFWT)」が開催される。期間中は、非公式スケジュールを含めると50近いブランドがランウエイショーやイベントを行い、合計すると1000近いルックが披露される。しかし、よっぽどのことがない限り全てのルックをチェックするのは難しい。

 そこで「RFWT」を取材する3人の「WWDジャパン」記者が、各日の“私的BEST LOOK”をご紹介。東コレを4年連続で取材する30代男性記者K.O、海外コレクションの取材経験も豊富な女性記者M.O、東コレにはスナップカメラマンとして参加していた20代男性記者R.Oという、偶然にもファミリーネームが「O」縛りの3人が選ぶルックとは?初日に登場した「ヨシキモノ(YOSHIKIMONO)」「ディスカバード(DISCOVERED)」「ティート トウキョウ(TIIT TOKYO)」「タチアナ・パルフェノワ(TATYANA PARFIONOVA)」「アクオド バイ チャヌ(ACUOD BY CHANU)」の5ブランドから3ルックをピックアップしお届けする。


男性記者K.O
TIIT TOKYO / LOOK 23

 カラーリングが鮮やかな印象があった「ティート トウキョウ」ですが、今シーズンはなんだかグレイッシュで落ち着いたトーン。途中までは正直、(あれ?ちょっと物足りないぞ)と感じていたのですが、岩田翔デザイナーの「雨の都市を表現した」という理由を聞いて納得。曇天好きの僕は一気に共感しました。単純ですね。素材の切り替えでメリハリをつけたり、細かい刺しゅうで市松模様を描いたりするテクニックよりも、渋い色使いだからこそより際立った心地よさそうな素材感のこのルックが今日イチでグッときました。リアルクローズに徹したメンズも捨てがたかったのですが、欲をいえばウィメンズのキャッチーさを取り入れたメンズも次回は見てみたいです。


女性記者M.O
TATYANA PARFIONOVA / LOOL 11

 ロシア・サンクトペテルブルク出身のベテランデザイナーが、東京で初のショーを行いました。画家の家系ということもあり、絵画を繊細な刺しゅうで再現し、アートとファッションの融合を試みているようです。テーマに掲げた“黒いとんぼ”は、チュールを重ねた装飾から羽根の透け感をイメージできます。クロード・モネの「睡蓮」を彷ふつとさせる刺しゅうからは、職人技のすごさがダイレクトに伝わってきました。


男性記者R.O
YOSHIKIMONO / LOOK 30

 実は呉服屋の子どもというバックグラウンドを持つYOSHIKIが、3年ぶり3度目となる「ヨシキモノ」のショーを披露しました。これまでのショーも観てきたのですが、毎回着物への造詣の深さと伝統を重んじているからこそのYOSHIKIらしい柔軟な発想には驚かされます。特に今回は、若者にも親しみやすいようにメタリックな素材を採用したり、自身が主人公でスタン・リー(Stan Lee)原作の「ブラッド・レッド・ドラゴン(Blood Red Dragon)」と「進撃の巨人」を着物に落とし込んだりと離れ業を披露。「着物にアニメなんて!」と考える方もいるかもしれませんが、今やアニメは着物と同じく日本を代表する文化の一つ。賛否両論があるかもしれませんが、「進撃の『ヨシキモノ』」。僕は好きです。

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連載「東コレに伝えたい」デザイナーたちの本音 Vol.1 「東コレを『ダサい』で終わらせている時点でブランドにそれ以上の伸び代なし」

 日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)が運営する2020年春夏の「楽天 ファッション ウィーク東京(RFWT)」が10月14〜19日に開催される。冠スポンサーがアマゾン ファッションから楽天に変わって初めてのファッション・ウイークとなるため、関係者からの注目は高い。しかし結局は、人を呼べるブランドが参加しないとファッション・ウイークは盛り上がらない。そこで、海外で活躍する日本人デザイナーや「RFWT」に参加するブランド、新進気鋭の若手らに「どんな東コレだったら参加したい?」というテーマでアンケートを実施した。「RFWT」開催期間中から10月28日の「WWDジャパン」東京ファッション・ウイーク特集発売の週まで、回答の一部を連載形式で紹介する。今回は、10月11日にオフスケジュールでショーを行った「マラミュート(MALAMUTE)」の小高真理デザイナーと、東京から海外に飛躍した「ファセッタズム(FACETASM)」の落合宏理デザイナーが登場。

MALAMUTE
小高真理デザイナー

 東コレに参加し、ブランドの認知度向上やイメージの確立に役立ちました。ただせっかく参加するのならば、ブランド単体では借りることが出来ない東京ならではの建造物など、メイン会場以外の提案もほしいです。またオーダーの締めや生産、納期のことを考えると少しでも早い方がより参加しやすくなります。

FACETASM
落合宏理デザイナー

 東コレに参加したことで、国内外のさまざまな人に見ていただくことが増え、認知度が上がったことが世界でデビューするきっかけとなりました。中でも、東コレを介してジョルジオ・アルマーニさんの目に留まり、ミラノメンズの公式スケジュールでショーを発表する機会を頂いたことはブランドにとって大きな転機になりました。だから東京でファッションを発表できることは、本当に貴重なこと。ブランドが表現したいことが明確であれば、やり方次第で東京から世界に面白い発信はいくらでもできます。東コレを「盛り上がっていない」や「ダサい」などで終わっている時点で、ブランドにそれ以上の伸び代はないんじゃないかな。

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連載「東コレに伝えたい」デザイナーたちの本音 Vol.1 「東コレを『ダサい』で終わらせている時点でブランドにそれ以上の伸び代なし」

 日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)が運営する2020年春夏の「楽天 ファッション ウィーク東京(RFWT)」が10月14〜19日に開催される。冠スポンサーがアマゾン ファッションから楽天に変わって初めてのファッション・ウイークとなるため、関係者からの注目は高い。しかし結局は、人を呼べるブランドが参加しないとファッション・ウイークは盛り上がらない。そこで、海外で活躍する日本人デザイナーや「RFWT」に参加するブランド、新進気鋭の若手らに「どんな東コレだったら参加したい?」というテーマでアンケートを実施した。「RFWT」開催期間中から10月28日の「WWDジャパン」東京ファッション・ウイーク特集発売の週まで、回答の一部を連載形式で紹介する。今回は、10月11日にオフスケジュールでショーを行った「マラミュート(MALAMUTE)」の小高真理デザイナーと、東京から海外に飛躍した「ファセッタズム(FACETASM)」の落合宏理デザイナーが登場。

MALAMUTE
小高真理デザイナー

 東コレに参加し、ブランドの認知度向上やイメージの確立に役立ちました。ただせっかく参加するのならば、ブランド単体では借りることが出来ない東京ならではの建造物など、メイン会場以外の提案もほしいです。またオーダーの締めや生産、納期のことを考えると少しでも早い方がより参加しやすくなります。

FACETASM
落合宏理デザイナー

 東コレに参加したことで、国内外のさまざまな人に見ていただくことが増え、認知度が上がったことが世界でデビューするきっかけとなりました。中でも、東コレを介してジョルジオ・アルマーニさんの目に留まり、ミラノメンズの公式スケジュールでショーを発表する機会を頂いたことはブランドにとって大きな転機になりました。だから東京でファッションを発表できることは、本当に貴重なこと。ブランドが表現したいことが明確であれば、やり方次第で東京から世界に面白い発信はいくらでもできます。東コレを「盛り上がっていない」や「ダサい」などで終わっている時点で、ブランドにそれ以上の伸び代はないんじゃないかな。

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まるで夢の世界 女性が輝くステージの舞台裏を見せる「ロジェ ヴィヴィエ」の新作プレゼンテーション

 ゲラルド・フェローニ(Gherardo Felloni)=クリエイティブ・ディレクターが手掛ける「ロジェ ヴィヴィエ(ROGER VIVIER)」は毎シーズン、パリコレ期間中に“ホテル ヴィヴィエ(HOTEL VIVIER)”と題したプレゼンテーションを開き、エンターテインメント性あふれる演出で見るものをファンタジーの世界へといざなう。3回目となる2020年春夏シーズンもその期待を裏切ることなく、「カワイイ」と言わずにはいられないゲラルド・ワールドが炸裂した。今シーズンのテーマは、役者などの集合時間を意味する“コールタイム(Call Time)”。「パフォーマンスで披露されるのは、いつも本番という表側だけ。今回はホテル ヴィヴィエの裏側、つまり隠されたバックステージの部分を見てもらいたかった」とゲラルドが語るように、女性を主役にしたさまざまなシーンの舞台裏で、新作を披露した。

 入り口にはいつものようにフロントデスクが置かれ、今季はグラマラスな女性が来場者を迎える。後ろの棚に飾られているのは、色とりどりの“RV ミニ バッグ(RV MINI BAG)”だ。階段を上がると、2階では異なる設定で作られたいくつもの小部屋の中で、個性豊かなキャラクターたちが本番に向けて準備中。そこには、類い稀な演技力で知られるモデルのアナ・クリーヴランド(Anna Cleveland)とコミカルなオートクチュールデザイナーがフィッティングを行うアトリエもあれば、キャバレーのショーガールがステージを待つバックステージや、チアリーダーが集うロッカールーム、バレリーナが練習に励むスタジオもある。また、廊下ではミスユニバースの候補者が笑顔を振りまき、奥に隠されたスモーキングラウンジではマリリン・モンロー(Marilyn Monroe)、ブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)、マレーネ・ディートリッヒ(Marlene Dietrich)、エリザベス二世(Elizabeth II)という創業者のロジェ・ヴィヴィエ(Roger Vivier)にゆかりのある人物に扮した役者たちが密会を楽しんでいる。

 そんな中で披露されたコレクションは、部屋によってテイストの異なるアイテムを展示しているだけあって、バリエーション豊富だ。特に印象的なのは、フェザーとラフィアの装飾を手作業で施した“ティキ(TIKI)”シリーズのドラマチックなミュールとバッグ。ブラック×ベージュのコンビネーションに加え、ピンク、オレンジ、イエロー、ラベンダーで提案する。さらに、アンティークジュエリーから着想を得たフラワーモチーフのスクエアバックルも多用し、ポインテッドトウのパンプスやサンダルのアッパーとバッグのフラップに華やかさを添える。クロッグスタイルが新鮮な新作サンダル“ヴィヴ クロッグ(VIV’ CLOG)”は、ナチュラルなウッドソールにレザーや柄入りのグログランのアッパーを合わせたタイプと、ウッドソールまでを鮮やかなワントーンでまとめたタイプをラインアップ。イブニングシューズは、エリザベス二世の戴冠式のために作られたシューズから着想を得たという、アイリスモチーフの紋章がクリスタルであしらわれた“ヴィヴィエ クイーン サンダル(VIVIER QUEEN SANDAL)”が目を引く。スニーカーなどのカジュアルなアイテムは、「RV」のロゴや「ROGER VIVIER」のレタリングがポイントに。バッグでは、アイコンバッグ“ヴィヴ カバ(VIV’ CABAS)”や“トレ ヴィヴィエ(TRES VIVIER)”をデニムやラフィア、ベルベットなどの素材と繊細な花の刺しゅうでアレンジしたモデル、バニティバッグのミニサイズ、キャンバスのトートなどが登場した。

 そして、1時間に1回ベルが鳴ると、“本番”がスタート。各部屋にいたキャラクターたちが1階に集合し、広間に用意された真っ赤なランウエイをそれぞれの個性を生かして思い思いに闊歩した。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める

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ロンドンコレ最終日の回想 BLACKPINK探しの「バーバリー」やジョナサン・アンダーソンの誕生日会など

 皆さんこんにちは。飛び飛びになってしまったロンドン・ファッション・ウイークのドタバタ日記の4日目をお届けします。私にとって取材最終日となった9月16日は、スマッシュヒットが連発しました。前日までは、ブランド単体で見ると物足りなさを感じるショーもありましたが、この日で返上。ウィークの中で一番充実した一日でした。

10:00「ロクサンダ(ROKSANDA)」

 朝からワクワクする会場でした。ロンドンの王立公園ケンジントンガーデンズ内のサーペンタイン・ギャラリーです。毎年夏季限定で、世界的な建築家によるパビリオンが建てられますが、今年は日本人建築家の石上純也さんによる岩肌を再現した屋根が特徴的な洞窟のような作品でした。

 パビリオンを望むイエローカーペットを敷いた野外のランウエイは、ファンタジーの世界に入り込んだような高揚感がありました。自然光の下で見るショーは格別です。少し曇り空というのも、コレクションの美しい色彩を引き立たせていたと思います。

11:00「アーデム(ERDEM)」

 「アーデム」の会場への移動中の車で、ロンドンの中堅ブランドの未来について他媒体の人たちと話していました。今季のロンドンコレは、設立10年前後の「メアリー カトランズ(MARY KATRANTZOU)」「アシュリー ウィリアムズ(ASHLEY WILLIAMS)」「シュリンプス(SHRIMPS)」などの中堅ブランドがごっそり抜けていて、頭打ち感が出てきたデザイナーズがショー発表を継続する難しさ、ショーを行う意義を熟考するタイミングになっています。

 そんな中、「アーデム」は世界観の詰まったロマンチックなドレスと、エレガントな日常着をバランスよく打ち出して支持を得ているブランドです。グレイ法曹院の広い庭園で行ったショーは高貴な雰囲気が漂いながらも、鮮やかな色とプリントが生えてとても心地いいショーでした。

12:00「フーシャン ザン(HUISHAN ZHANG)」

 著名デザイナーを多く輩出しているセント・マーチン美術大学には、年々多くの中国人留学生がファッションを学びに来ていることもあり、ロンドンでの中国人デザイナーの存在感が増しています(ニューヨーク、パリなど他の都市でも見られる傾向です)。その中でも堅実成長を続けているのが「フーシャン ザン」です。8年目になるブランドですが、LVMHプライズのファイナリストに選ばれた実績や、老舗百貨店のセルフリッジのドレスコーナーにもしっかりと大きな展開があります。他のショーの待ち時間に仲良くなった中国人ライターも「フーシャンの成功に憧れを持つ中国人学生が増えている」と話していました。もともと財力を感じるブランドですが、素材や技術のクオリティーは劣っていません。裾にパールを付けたフリルドレスが目を引きました。

13:00「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」

 会場の入口には珍しくセレブを撮影するためのバックボードが立っています。そこにサングラスをかけた女性が現れてポーズを決めていて「誰だろう?」と見ていたのですが、なんと歌姫クリスティーナ・アギレラ(Christina Aguilera)でした。

 コレクションはスマッシュヒット。ジュエリーと洋服の融合、シルエットの探求、いいショーを見ると心が踊り、見ていてゾクゾクするものを感じます。ショー後に「ジョナサンの話を聞かなくては」と思いそのままバックステージに入り、囲み取材に参加しました。他のジャーナリストたちも同じ思いを感じていたのでしょう、皆興奮していました。ジョナサンがVIP来場者のアギレラや、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長の照代夫人との撮影を終えると、囲み取材が始まり、質問攻めにあっていました。コレクションリポートはバックステージ取材を行ったELIE INOUEさんの記事も公開中ですが、「WWDジャパン」11月11日号のロンドン特集でも解説予定です。

14:00「ミントデザインズ(MINTDESIGNS)」

 東京発の「ミントデザインズ」がロンドンのアートギャラリーPOCKOで企画展「ブラックシンデレラ」を開催しました。東京で行った19-20年秋冬プレゼンテーションに訪れたギャラリストの誘いで出展が決まったそう。取材前まで、ブランド初の海外展示会と思い込み20年春夏の新作を見に行く感覚で伺ったのですが、今回は3シーズンの連動性を見せたインスタレーションでした。

 展示はブランドの19年春夏のガラスの靴をイメージしたクリアサンダル”シンデレラ”が出発点となり、シンデレラのビフォーアフターを描いています。19-20年秋冬の刺しゅうを入れたゴミ袋から着想したコレクションは変身する前、新作20年春夏はガラスの模様を使った透け感のあるドレスで、魔法にかけられたシンデレラを表現しています。割れ物注意の”Fragile”のシールが貼られたダンボールに包まれている演出もユニーク。また、同ギャラリーに所属するアーティストのアレッサンドラ・ジェヌアルド(Alessandra Genualdo)とのコラボレーションで、シンデレラをイメージして描き下ろされたプリント入りのドレスも発表しました。

 デザイナーの勝井北斗さんと八木奈央さんはこの企画展の他にも、ロンドンの街中でアートプロジェクトの制作に取り掛かっていたそうでその内容は今後公になるそうです。

15:00「クリストファー ケイン(CHRISTOPHER KANE)」

 こちらもスマッシュヒットが出ました。深刻化する環境問題を背景にした「自然を愛しましょう」というド直球なメッセージを、ブランドらしいセンシュアルなテイストで表現したコレクションです。公園で撮影したというガーデンの写真を使ったプリント、“ECO SEX”などのスローガンアイテムも強いですが、新鮮さとリアルのバランスがとてもよかったです。昨今、主婦の性生活などをシリーズ化したコレクションは賛否両論で、1年前のケリングから独立した際も今後を懸念する声を聞いたので、今季いいコレクションを見られて一安心。フィナーレのケインも自身に満ち溢れていて、いい笑顔でした。

17:00「バーバリー(BURBERRY)」

 私のLINEには日本のSNSチームから「BLACKPINKのJISOOとWayVのLUCAが来ているからキャッチして!」というミッションが届き、意気込んで臨みました。ショー前に客席をぐるぐる回って、いろんなセレブを撮影しましたが、なかなかJISOOだけは見つからない……。結局断念しショー開始ギリギリで着席したのですが、「バーバリー」PRチームの皆さまに挨拶もせずに会場をさまよっていたので、私が来場できていないのではないかと心配をかけてしまいました。本当にすいませんでした。

 ショーでは、フェザードレスや繊細なレースの装飾が美しかったです。メンズモデルがレース付きのパーカやTシャツを着用していて、ジェンダーニュートラルの流れを感じました。またモデルとして登場した00年代に一世を風靡したモデルのアギネス・ディーン(Agyness Deyn)や、フレーヤ・ベハ・エリクセン(Freja Beha Erichsen)を生で見ることができたのも感激ポイントでした。

20:00「リチャード クイン(RICHARD QUINN)」

 「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」にも抜擢され今をときめくデザイナーです。注目ブランドは会場の着用者の数で図ることができますが、着こなしの難易度が高いのか着用者は少ない傾向でした。会場外の列に並ぶこと40分。リハーサルでトラブルが発生したとのことでなかなか入場できず周囲がイライラし始めています。

 オンタイムの1時間後にようやく会場に入ると、オーケストラとコーラス隊の姿があり大掛かりなセットを確認できました。しかし、サプライズはそれだけではありません。ショーのラストにはプリントドレスを着用したキュートな子どもたちが現れ、舞台の幕が開くとウエディングコレクションを着たモデルたちが登場。盛大なオーケストラの演奏もクライマックスで、拍手喝采で幕を閉じました。

21:00 ヤウアチャ(Yauatcha)取材

 ライターのELIE INOUEさん主導のロンドンの食とライフスタイル取材に同行し、SOHOにある人気の中華料理店ヤウアチャへ行きました。すでにロンドンに来て6日目でしたが、なかなか食事に有り付けず実はこれが最初の外食でした(涙)。記事について打ち合わせをしながら、モダンにアレンジされた中華料理に舌鼓。看板メニューの海老と湯葉のチョンファンが美味でした。

24:00 ジョナサン・アンダーソンの誕生日会

 「ジェイ ダブリュー アンダーソン」ショーのアフターパーティーにお誘いいただき、INOUEさんと共に郊外のパーティー会場へ。日付の変わる17日がジョナサンの誕生日ということで、盛大な誕生日会を取材すべく向かいましたが、ジョナサンは早々にパーティーを去っており、到着した頃には関係者たちのだけのダンスフロアになっていました(笑)。ちょっぴりカオスな会場に「ハッピーバースデー」を言い残して、私の濃厚なロンドンコレ取材が終了しました。

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パリコレ8日目のハイライト オペラ座を交尾の映像で染めた「ステラ マッカートニー」、クリントンが駆け付けた「サカイ」、物語を秘めた「アレキサンダー マックイーン」

 パリコレもいよいよ残すところあと1日。8日目は、「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」「サカイ(SACAI)」「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」がショーを行った。

「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」

DESIGNER/ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)

 「ステラ マッカートニー」はオペラ座の壁や天井に動物たちが交尾をする映像を映し出した。座席には「これまでで一番サステイナブルなコレクション」とデザイナーからのメッセージ。動物と地球の命を大切につないでいこうとするステラのぶれない姿勢をユーモアを交えて伝えた。オーガニックコットンや再生ナイロンなどを用いた服は、サークルモチーフやスカラップヘムを多用し、甘くて優しい雰囲気。多く登場したデニムは100%オーガニックはアップサイクルだという。

サカイ(SACAI)

DESIGNER/阿部千登勢

 ショーは鮮やかな世界地図プリントのウエアと、地球儀をモチーフにしたバッグのルックでスタート。クリエイションの原点となったのは「1つの地球」というアイデア。さまざまな要素を再構築し、見事に調和させるハイブリッドはブランドの大きな特徴だが、これはさまざまな大陸、人種、要素がありながら、全ては1つの星の上にある地球と通じる。一見シフォンのボウタイブラウス、カーキパンツ、トレンチをスタイリングしたように見えるルックは、実は全てつながっているオールインワンだ。ツイードやニットにあしらわれた立体的なフリンジは、大陸をイメージしている。会場にも姿を見せたジョージ・クリントン(George Clinton)率いるファンくバンド、ファンデリックの楽曲「One Nation Under a Groove」のジャケ写をプリントしたTシャツが、そのメッセージをより明確に伝えた。

アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)

DESIGNER/サラ・バートン(Sarah Burton)

 「一着一着にストーリーがある」と前書きされたリリースには42ルックの素材説明に加えて、いくつかは生産背景か記されている。オートクチュールのようにひとつひとつの服に力が注がれたコレクションだ。アイルランドに唯一残るリネンを使ったダマスク織の職人の仕事やセント・マーチン美術大学の学生との協業などが彩る。パフスリーブのドレスやタキシードジャケットなど得意とするアイテムがそろい奇抜さはないが心に響く仕上がりだ。

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ファッションショー招待企画 2020年春夏「楽天 ファッション ウィーク東京」を見に行こう!

 2020年春夏シーズンの「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」が10月14〜19日に開催されます。そこで「WWD JAPAN.com」は、さまざまなブランドにご協力いただき、「実際に見てみたい!体験してみたい!」という皆さまをファッションショーにご招待。招待状を希望する方は、見たいブランドや開催日、場所を確認し、下記応募フォームからエントリーしてください!

※ブランド名をクリックすると過去のルックを見ることができます。
※座席の仕様・席数は予告なく変更となる場合がございます。
※予め設定された会場の収容制限数に達した際は、入場を制限する場合がございますので、ショー開始30分前には会場にお越しください。
※応募にまつわる個人情報は、開催ブランドと共有させていただきます。また情報は本企画にのみ使用し、終了後は速やかに破棄いたします。
※抽選結果のご連絡は、当選者のみにメール又は郵送にて通知いたします。
※メール・インビテーションがうまく表示されない場合があるため、メールアドレスを記載する際はなるべくPC用アドレスでお願い致します。

10月14日(月)

■「タチアナ・パルフェノワ(TATYANA PARFIONOVA)」
時間:18:30〜
場所:ヒカリエホールB
募集:4人

10月15日(火)

■「ノントーキョー(NON TOKYO)」
時間:11:30〜
場所:ヒカリエホールB
募集:5人

「アジアンファッションミーツトーキョー フィリピン(ASIAN FASHION MEETS TOKYO PHILIPPINES)」
時間:12:30〜
場所:ヒカリエホールA
募集:50人

「ヒロココシノ(HIROKO KOSHINO)」
時間:15:30〜
場所:東京都現代美術館
募集:10人

「ステア(STAIR)」
時間:16:30〜
場所:非公開
募集:未定

■「イルイット(ILL IT)」
時間:17:30〜
場所:表参道ヒルズ スペース オー
募集:5人

「バルムング(BALMUNG)」
時間:18:30〜
場所:ヒカリエホールB
募集:5人

「ネグレクトアダルトペイシェンツ(NEGLECT ADULT PATIENTS)」
時間:19:00〜
場所:ヒカリエホールA
募集:未定

10月16日(水)

「レインメーカー(RAINMAKER)」
時間:12:00〜
場所:ヒカリエホールb
募集:1人

「ノブユキマツイ(NOBUYUKI MATSUI)」
時間:12:30〜
場所:非公開
募集:5人

■「スリュー(SREU)」
時間:15:30〜
場所:非公開
募集:10人

「ティボー(THIBAUT)」
時間:16:30〜
場所:ザ・グローブ
募集:10人

「チノ(CINOH)」
時間:19:00〜
場所:ヒカリエホールA
募集:1人

■「フェイス.A-J(FACE A-J)」
時間:21:00〜
場所:非公開
募集:20人

10月17日(木)

「トクコ・プルミエヴォル(TOKUKO 1ER VOL)」
時間:12:30〜
場所:ヒカリエホールA
募集:3人

「グローバルファッションコレクティブ(GLOBAL FASHION COLLECTIVE)」
時間:13:30〜
場所:ヒカリエホールB
募集:10人

■「シンヤ コヅカ(SHINYA KOZUKA)」
時間:15:00〜
場所:非公開
募集:未定

「メルシーボーク、(MERCIBEAUCOOUP,)」
時間:16:00〜
場所:非公開
募集:3人

「チルドレン オブ ザ ディスコーダンス(CHILDREN OF THE DISCORDANCE)」
時間:17:00〜
場所:表参道ヒルズ スペース オー
募集:未定

「グローバルファッションコレクティブ(GLOBAL FASHION COLLECTIVE)」
時間:18:00〜
場所:ヒカリエホールB
募集:10人

10月18日(金)

「ウィシャラウィッシュ(WISHARAWISH)」
時間:12:00〜
場所:ヒカリエホールA
募集:50人

「ミキオサカベ(MIKIO SAKABE)」
時間:12:50〜
場所:非公開
募集:未定

「ショーヘイ(SHOHEI)」
時間:14:30〜
場所:非公開
募集:20人

「ディーベック(D-VEC)」
時間:15:30〜
場所:表参道ヒルズ スペース オー
募集:50人

「タエ アシダ(TAE ASHIDA)」
時間:16:30〜
場所:グランド ハイアット 東京(六本木ヒルズ)3階グランドボールルーム
募集:3人

「リト(RITO)」
時間:17:30〜
場所:トランク ホテル 屋上チャペル
募集:8人

「ダイエットブッチャースリムスキン(DIET BUTCHER SLIM SKIN)」
時間:18:30〜
場所:ヒカリエホールB
募集:5人

「ミスター・ジェントルマン(MISTERGENTLEMAN)」
時間:20:00〜
場所:ヒカリエホールA
募集:未定

10月19日(土)

「ミツル オカザキ(MITSURU OKAZAKI)」
時間:12:00〜
場所:ヒカリエホールB
募集:未定

「アール エー ビー ディー(RABD)」
時間:18:30〜
場所:ヒカリエホールB
募集:未定

■「ガッツダイナマイトキャバレーズ(GUT’S DYNAMITE CABARETS)」
時間:19:00〜
場所:ヒカリエホールA
募集:1人


※ご応募には会員登録が必要です

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ロンドンコレのドタバタ日記3日目 反ファッション・ウイークのデモ隊現る!癒しのベッカムファミリーなど

 皆さん、こんにちは。パリコレ真っ最中ですが、ミラノコレ取材を終えて2週間遅れでロンドン・ファッション・ウイークの日記の続きを綴らせていただきます。ロンドンの天気は朝昼夜の寒暖差が激しく体調管理が大変でした。朝はコートを着る人を見かけるくらい寒いのに、昼には30度近くでTシャツでも汗ばみ、夜には10度に戻り冷え込みました。しかし、雨が降らないだけ幸運だったと思います。この日のバタバタ模様をお送りします。

11:00「アニヤ・ハインドマーチ(ANYA HINDMARCH)」プレゼンテーション

 会場は立体駐車場。スロープを上がっていくと真っ赤な迷路が用意されていました。今季の新作は郵便ポストをイメージしたコレクションということで、迷路をさまよいながら、さまざまな年代に送られた手紙の朗読を音声で聴くことができます。

 印象に残ったのはエルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)の熱心なファンたちが当時のアイゼンハワー(Eisenhower)米国大統領に送った手紙の音声です。徴兵令で軍隊に入るエルヴィスを心配してホワイトハウスに数千枚の手紙が届いたそう。その一枚には「どうか、エルヴィスの髪型だけは変えないであげて下さい!彼のもみあげを剃るなんてことをしたら、私たちはショック死します」という内容で、ファンの必死さが伝わってきました。

 迷路を出ると、ポストマンに扮したオールインワン姿のスタッフたちが出迎えてくれました。新作バッグのデザインとリンクさせたかわいい切手や手紙をかたどったクッキーなどのケータリングもかわいい。また筆記体の練習体験コーナーや郵便にまつわる雑貨コーナーもありました。テーブルには便箋と封筒が用意されており、どこへでも手紙を出していいということだったので、私も祖母に向けて一筆とってみました。

13:00「マーガレット・ハウエル(MARGARET HOWELL)」

 「アニヤ・ハインドマーチ」でゆっくりし過ぎてしまい、「マーガレット・ハウエル」の会場に向かう車が先に出発してしまいました(苦笑)。結局バタバタしながら、会場を後にしてチューブ(地下鉄)に飛び乗り、猛ダッシュして到着。40分押しのスタートで間に合いましたが、走ってきたので汗が引かず、会場も空調が効いておらず蒸し風呂状態。みんな招待状をパタパタとうちわ代わりにして扇いで待っていました。

 ショーのルックで気になったのは襟もと。この襟巻きトカゲのようなラッフルカラーはこの後もいろんなブランドで見かけました。セーターやカーディガンの下に着てもアクセントになります。ショーには今や日本を代表するメンズモデル、コウヘイも歩いていました。

14:00「ヴィクトリア ベッカム(VICTORIA BECKHAM)」

 会場は外務省。入口前には「XR ボイコットファッション」という団体のデモ隊の姿があり、プレートを持ってファッション・ウイークのシステムに反対運動を起こしていました。写真を撮られることや質問されることに前向き。話を聞いてみると、彼らは大量生産、大量消費のファッション産業に対して、スピーチを行う団体で、イギリスには彼ら以外にもファッション産業に対するデモ団体がいくつか存在しているそう。

 建物内には入ると、フロントローにはベッカム一家の姿がありました。子どもたちに「写真を撮ってもいい?」と聞くと、「もちろん!」と笑顔で返してくれました。パパのベッカムを探していると、デザイナーのキム・ジョーンズと一緒に立ち話をしていました。タイミングを見計ろうと少し待ってみたものの、ショーが始まりそうだったので、撮影を断念して席に着きました。

15:00~17:00「ハウス オブ ホランド」&「セルフ-ポートレイト」のパブリックショー

 2日目の一般公開のファッションショー“パブリックショー”の取材に来ました。今日のラインアップは「ハウス オブ ホランド」&「セルフ-ポートレイト」の2ブランドですが、昨日と打って変わって満席です!「ハウス オブ ホランド」のデザイナーのヘンリー・ホランド(Henry Holland)は英バラエティー番組にも登場しているのでお茶の間でもよく知られた存在ということもあり、マスの知名度も高いということでした。

 フロントローのチケットを購入した来場者に話を聞いてみると、石油系の会社に務めるクロアチア出身イギリス・ブリストル在住の30代女性は「ファッションショーを生で見るのがずっと夢だった」といいます。一人で来場していましたが、すでに隣に座っていたお一人さまと仲良くなりファッショントークを楽しんでいました。日本でも同じ思いを持った人はたくさんいるんだろうなとしみじみ感じながら、テイストは異なりますが「東京ガールズコレクション」は先駆けてそのニーズに応えていたんだと思いました。会場内ではショーのコレクションが購入できるポップアップストアも開かれていました。

16:30「チャラヤン(CHALAYAN)」

 会場はバレエやコンテンポラリーダンスで有名なサドラーズウェルズ劇場。ロンドンの中心から離れていますが、「チャラヤン」は長年この会場でウィメンズのショーを続けているそうです。ファーストルックは顔が覆われたドレス。日本から着想を得ているそうですが、確かに折り紙的なテクニックが見て取れます。

18:00「シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)」

 この会場も遥かに遠かった…。渋滞に巻き込まれながら50分ほど車に揺られ、少し車酔いしながら到着したのはアレクサンドラ・パレス。北ロンドンに位置するビクトリア朝様式の宮殿で展示場でした。丘の上に建てられていて、ロンドンの街を一望できる穴場スポットです。側の公園は家族やカップルで賑わっていました。

 ショーは透け感のある花柄のオーガンジードレスにラフィアを編んだヘアアクセサリーなど異素材の組み合わせが素敵です。このウエアへのラフィア使いは今季のトレンドの一つです。キャスティングは、異なる人種の起用はもちろん、40~60代のマダムモデルたちも登場していたところにも共感が持てました。バックステージ取材を行ったELIE INOUEさんのリポートはこちらからご覧ください。

20:00「アシッシュ(ASHISH)」

 演奏者たちが床に座っていて、彼らが鳥の鳴き声や風の音など、自然が発する音を再現しながらショーがスタート。インドの伝統的な刺しゅうを施したワークジャケットやデニム、シャツなどの日常着が登場しました。キラキラと光るのは刺しゅうのミラーワーク。このミラーを一つ一つ縫い付ける工程を考えると気絶しそうになりますが(笑)、職人技の賜物ですね。

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パリコレ7日目のハイライト 個性豊かなモデルが歩いた「バレンシアガ」、クチュールのような「ヴァレンティノ」、90年代調デニムの「ジバンシィ」

 パリコレもいよいよ残すところあと2日。7日目は、「ヴェトモン(VETEMENTS)」を去ったデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)の「バレンシアガ(BALENCIAGA)」や、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」「ジバンシィ(GIVENCHY)」がショーを行った。

バレンシアガ(BALENCIAGA)

DESIGNER/デムナ・ヴァザリア (Demna Gvasalia)

 カタツムリのように渦を巻くランウエイを、建築家や俳優といった肩書を持つ91人の男女が歩いた。キーワードは「仕事着の再考」。スーツを着るような職業であれば肩のラインを極端に強調し“フツウだけどフツウじゃない”アイテムへ変容させ、着る人の個性を際立たせる。中綿ジャケットは肩が倍ほどの盛り上がり迫力があるが超軽量だったり、“ボールルームドレス”は取り外し可能なクリノリンで造形したりなどエキセントリックに見えて着心地も考えられている。キティちゃんの顔をした黒、白、ピンクのバッグが話題になりそうだ。

ヴァレンティノ(VALENTINO)

DESIGNER/ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)

 ショー会場はアンヴァリッド。同場所には9月26日に死去したジャック・シラク(Jacques Chirac)元フランス大統領の棺が安置されていたため、弔問する市民の行列が周辺をぐるりと囲む。ショーも混乱するのかと思いきや、意外やスムーズにスタートした。クリスプな白いカシュクールシャツとプリーツスカートで始まったコレクションは、細かなティアードフリルや羽根飾り、象がん、刺しゅうなどの手法が今季もふんだんに盛り込まれており、もはやクチュールの域だ。ため息が出るようなエレガンスを、目の覚めるようなネオンピンクやアップルグリーンで引き締める。ジャングルを描いたプリントや象がんの中にはサルのモチーフも登場。ゴージャスなゴールドアクセサリーにも、よく見るとサルのモチーフが隠れているのが楽しい。

ジバンシィ(GIVENCHY)

DESIGNER/クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)

 招待状はデニム生地で、会場で配られたのはもちもちのプレッツェル。今季は“パリからニューヨークへ”をキーワードに、洗いをかけたりクラッシュドさせたりした90年代調のデニムを、エレガントなボウタイブラウスや柔らかいレザーアイテムと合わせた。もうひとつのキーワードは世界中から集めた植物で、ザクロなど服の柄ではあまり見ない植物をプリントや刺しゅうで採用している。マリゴールドのイエローなど優しい色合いが目に優しい大人のリアルクローズがそろう。

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ロンドンコレ後半戦のダイジェスト 創業者のロマンチックな一面を描いた「バーバリー」、“宝物になる服”を追求した「ジェイ ダブリュー アンダーソン」など

 2020年春夏シーズンのロンドン・ファッション・ウイークは最終日、多くのブランドがスマッシュヒットを連発した。「バーバリー」「ジェイ ダブリュー アンダーソン」「クリストファー ケイン」の3ブランドをリポートする。

バーバリー(BURBERRY)

DESIGNER/リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)

 ティッシは就任から3シーズン目のランウエイで、新たな「バーバリー」像の一つの土台を完成させた。この1年間、ブランドアーカイブの研究を重ねたティッシは、創業者のトーマス・バーバリー(Thomas Burberry)へ強い関心を持った。すでに彼のイニシャルである“TB”ロゴやモノグラムなどの新たなシグニチャーを生み出しているが、今季目に留めたのはトーマスが描いたというブランドを象徴する騎士のロゴだ。騎士が跨るのは馬ではなくユニコーン。「(ユニコーンを選んだトーマスは)大胆な革新者であると同時に、ロマンチストだったということが分かった」とティッシは話した。

 ブランドが創業したビクトリア朝(1830年代~1900年代前後)の繊細な刺しゅうをイメージしたフリルドレスや、アンティーク風のイラストを入れたスカーフなどをドッキングしたブラウスなどが登場。また、ユニコーンを思わせる長いフリンジを施したスカート、翼のようなフェザードレスや、背中にレースを合わせたTシャツなども披露した。

 代名詞のトレンチコートはクリスタル装飾を施してアップデート。またユニークな新アイテムとして、裾を折り返して丈を調整できるシャツや、キャップとハットの中間のような帽子などもそろった。カラーパレットは、ニュートラルでタイムレスなグレー、ベージュ、ブラック、ホワイト。淑女から紳士、少女、少年のさまざまな世代に愛される「バーバリー」らしいインクルージョンを“バーバリー キングダム”として表現。創業者に敬意を払いながら、アーカイブに新たな時代の価値観を加えてその先の未来を描いた。

ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)

DESIGNER/ジョナサン・アンダーソン

 「なぜファッションは重要なのか?なぜここまで人を真剣にさせるのか?」-大量生産・大量消費が繰り返される世の中で“サステイナブル”の言葉が切り離せない今、ジョナサンは「どうしたら、長く愛される服を生み出せるのか」を追求している。会場にディスプレーされたカナダ人のアーティスト、リズ・マゴー(Liz Magor)による作品は、古いぬいぐるみなど、かつては誰かに大事に扱われていたものをクリアボックスに入れたオブジェだった。それを見て「私もこういうものを持っていたことがある。今はどこに行ったのだろう?」と考えさせられるものだ。

 今季はマゴーの作品を通して、“誰かにとって宝物になるような洋服”を提案した。ファーストルックは、ギリシャ神話の女神のドレスようにドレープを効かせ、ジュエリー風のブラやネックレス、ベルトを合わせたワンピース。高貴を象徴するジュエリーをウエアに取り入れることで特別な一着へとグレードアップさせた。全体的に丸みを帯びたシルエットは「マリー・アントワネットのドレスように誇張をした後、空気を抜いたような形を探求した」とジョナサン。ウエストから裾にかけて緩やかなカーブを描くテーラードジャケットは、ウエスト部分に空洞ができる変形型。ワードローブに加えて、ベースボールキャップ型のショルダーバッグや、ロープとリボンを絡ませたエスパドリューのレースアップサンダルなど、外しに効かせたアクセサリーも面白い。

 ジョナサンによるアート作品に着想を得たコレクションは難解だが、見る人によって捉え方の異なる知的なアプローチだ。服のデザインについて「これは素敵」というシンプルな直感は重要だが、込められたメッセージを読み解くことが“ラグジュアリー”であり、服が人の心を豊かにするものだと気づかせてくれる。

クリストファー ケイン(CHRISTOPHER KANE)

DESIGNER/クリストファー・ケイン

 「風と愛し合い、星と眠り、花を感じる……(Make Love with the Wind, Sleep with the Stars, Feel the Flowers…)」- ロンドンで、自然愛をダイレクトに示したのが「クリストファー ケイン」だ。これまでも題材に掲げてきた花や植物、そして得意とするセクシュアリティーの表現を融合。「エコセクシュアル(the Ecosexual)」と題した今季は、ケインの自信がみなぎる力強いショーだった。

 ショー開始前にデジタルサイネージに映し出した草原の映像を、ファーストルックのコートとスカートのセットアップのプリントとして登場させた。花びら型のスカートのドレスや、胸元に深いスリットを入れたペイズリー柄のタフタドレスは、ただナチュラルな自然を出すのではなく、光沢感のあるタフタで仕立てたてたり、ネオンカラーをポイントに取り入れたりすることでフューチャリスティックな雰囲気を醸し出している。

 「クリストファー ケイン」が「グッチ」を擁するケリングから独立して早1年。ここ数シーズンの性のタブーに切り込むクリエイションは賛否両論だったが、今季は環境問題への意識をブランドらしくセンシュアルに描くことで新たな道を開いたようだ。今後も独自の世界観を失わずに、共感されるメッセージを組み込んで前進して欲しい。

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2020年春夏パリコレ6日目のハイライト 「コム デ ギャルソン」は迫力の「オーランドー」三部作、「エルメス」の上質タイムレス

 パリコレ6日目は、「コム デ ギャルソン」「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン」など、ギャルソン一門がパワフルなショーを実施。「エルメス」はブランドの魅力である上質レザーに改めてフォーカスしたコレクションを見せた。

コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)

DESIGNER/川久保玲

 優雅なクラシック音楽の調べと共に現れるのは、金糸を織り込んだ重厚なジャカード織りや立体的な花飾りの造形的なスタイル。襟が立ち上がるデザインや腰をおおうティアードの華美なボリュームは宮廷服を思わせる。それもそのはず、着想源となっているのは6月に発表したメンズに続き、ヴァージニア・ウルフ(Virginia Wolf)の文学作品「オーランドー」だ。「コム デ ギャルソン」は今冬ウィーン国立歌劇場で上演される同オペラの衣装制作も担当しており、いわば今回のコレクションは三部作の中の1つ。エリザべス1世時代のイギリス貴族の美青年が時を超え、性別を超える話として、ジェンダー研究で取り上げられることもある同作品は、男らしさ、女らしさの既成概念を揺さぶり、常に新しい美を追求してきた「コム デ ギャルソン」と親和性が高い。男性服の象徴であるスーツは内太ももが大きく開き、どきりとさせる。後半は一転、アートのような黒い造形を並べ、「あなたにはこれが理解できますか?」と問われているかのよう。

ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン(JUNYA WATANABE COMME DES GARCONS)

DESIGNER/渡辺淳弥

 ファーストルックは肩がずるりと落ちるボリュームフォームのトレンチコート。それを脱構築・再構築し、さまざまなアイテムに変化させていく。プリーツやレース生地をトレンチコートのベルトやポケットなどのディテールと組み合わせたドレスに、トレンチコートをいくつもはぎ合わせた複雑なパターンのアシンメトリースカート。トレンチコートのフロント部分のみをビスチエのように載せたTシャツや蛍光カラーのレギンスなどでスポーツムードも取り入れ、軽さを出している。アメコミ風プリントやビビッドなグラフィックもポイント。スニーカーは、イギリス発のシューズブランド「ハイ-テック(HI-TEC)」とのコラボレーションだ。

エルメス(HERMES)

DESIGNER/ナデージュ・ヴァンヘ=シビュルスキー(Nadege Vanhee Cybulski)

 洋服の大量廃棄問題がクロースアップされる中、タイムレスな魅力と価値がある服に改めて光が当たっている今シーズン。その代表格と言える「エルメス」は、ブランドのコアバリューであるレザーにフォーカスした。布のように柔らかなレザーを用いて、カジュアルなアイテムからスーツ、ドレスまでをそろえる。エクリュ、グレー、キャメル、ピンク、ネイビーなど繊細な色使いやパッチワークなどの職人技を生かしたデザインは時を経るほど魅力が増しそうだ。

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2020年春夏パリコレ5日目のハイライト 「セリーヌ」のキュロットが進化、「ヨウジヤマモト」と「ロエベ」に見るそれぞれのエレガンス

 パリコレ5日目は、パワーブランドが目白押し。その中から、「セリーヌ」「ヨウジヤマモト」「ロエベ」。パワーブランドの見どころを速報する。新デザイナーによる「イッセイミヤケ」のレポートはこちらから

セリーヌ(CELINE)

DESIGNER/エディ・スリマン(Hedi Slimane)

 「セリーヌ」のショー会場は、今季もナポレオンが眠るアンヴァリッド。カトリーヌ・ドヌーヴやBLACKPINKのリサなど、「セリーヌ」を身にまとった華やかなゲストが詰めかけ、ファンの絶叫がこだまする会場外は大混雑だ。会場に足を踏み入れると中は真っ暗。やはりエディには夜が似合う。会場前方で陽炎のように赤い光がゆらめくと、デニムシャツとデニムパンツに、紺のブレザーを羽織ったモデルが現れる。顔をおおうのはもちろんティアドロップのサングラス。前シーズン打ち出した1970年代のパリのブルジョワスタイルの踏襲ではあるが、今季はそれをデニムやベアショルダーのフリルドレスなどで、南仏のリゾートムードに味付け。高級避暑地サントロペに出掛けた、不良に憧れるブルジョワのお嬢さんといったイメージだ。前シーズンの最注目アイテム、キュロットパンツも今季はデニムで提案する。後半はぐっと70年代ボヘミアンのムード。フリルブラウスやギャザードレスは2020年春夏のトレンド本命になりそうだ。

ロエベ(LOEWE)

 

DESIGNER/ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)

 今季も会場はユネスコ本部。シアーな白いドレープカーテンで区切られた空間には、鉢に植えられたススキや大きなアメジストが置かれ、クリーンで静ひつなムードが流れる。ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)のクラフツマンシップへの探求は今季も続いており、いっそう研究熱に拍車がかかっているようにも感じられる。キーになるのは、ギピュールレース、シャンティイレース、マーガレットレースなど多様なレース。それをマットなコットンやサテンなどと組み合わせ、ギャザーたっぷりのドレスやブラウスに仕立てる。ジャケットやコートは、絞ったウエストから切り替えによって優美に生地が広がる作りが美しい。バレリーナのチュチュのようなパニエシルエットやラッフル襟もポイント。バッグの注目は、バケット型の新作“バルーン バッグ”だ。

ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)

DESIGNER/山本耀司

 最近の「ヨウジヤマモト」のショーはいくつかのパートで構成される。前半はパターン力を生かした新しいカタチ作りへの挑戦で、今回は服の一部を丸や三角のグラフィックで構成し、ちらりとのぞく素肌もデザインの一部として見せた。中盤は画家の朝倉優佳とのコラボレーション。さらに終盤には珍しくバッグをたくさん登場させた。斜めがけをする大きな布のバッグはいずれも服と一体となる。バッグだけが主張をしない、さらには両手が自由になるデザインが「ヨウジヤマモト」らしい。

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新デザイナー近藤悟史が考える「イッセイ ミヤケ」イズムとは? ブランドの原点を軽やかに表現

 「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」が、新デザイナー近藤悟史による初のコレクションを2020年春夏のパリ・ファッション・ウイークで披露した。日の光が差し込む空間でダンスと共に見せたショーは、タイトルが“センス・オブ・ジョイ”。三宅一生が追求したコンセプト“一枚の布”に立ち返った内容に、ベテランジャーナリストからは「昔の一生さんのショーを見ているかのよう」といった声も聞かれたが、単に昔をなぞるのではなく、現代流に、そしてハッピーに表現しているのがポイントだ。

 会場は、パリ中心地からやや距離がある19区。「なぜこんな遠い場所で?」といった声もあったが、会場に行ってみて納得。現代アートやグラフィックなどを扱う公共の文化施設は、気がきいていておしゃれなムード。広く明るい倉庫のような空間の会場を見上げると、丸い3枚の生地が天井にセットされている。

 きれいな電子音とアーティストのクリーンな歌声が重なる中でまず登場したのは、淡いピンクのドレープたっぷりのコート姿のモデル。和装のように四角い布を体に巻き付けて美しい造形を追求したパターンは、まさに“一枚の布”を象徴するものだ。その後に続くのは、ジャージーのドレスやスカートを身に着けた笑顔のモデルたち。手をつないでくるくる輪になって踊ると、スカートやドレスの裾がひらひら広がって揺れる。

 その後もダンサーによるパフォーマンスが続き、マクラメ編みのフリンジが揺れたり、パラシュートクロスのような極薄生地のドレスが花が開くように広がったり。極薄生地のつなぎ姿のモデルがスケボーに乗って現れると、風を受けてつなぎは凧のように広がる。マクラメ編みに見えたものはブランドらしい一体成型のニットでできており、パラシュートクロスも恐らく最新技術を盛り込んで作られたもの。原点回帰に思えても、それを支える素材は進化して表現に広がりを持たせている。ただし、そういった技術面を全面に押し出すのではなく、まず純粋に「楽しい」と感じさせるショーだ。これまでに比べてぐっと軽やかになった色合いも、それを後押しする。

 盛り上がりの最高潮は、天井に吊るされていた丸い生地がモデルのもとに下りてくる仕掛け。ニットでできた生地がモデルの体を通ってドレスになると、ダンスに合わせてピョンピョン飛び跳ねるように生地が揺れる。最後はモデルたち全員が手をつないで輪になって踊る演出だ。

 ショー後の取材で近藤は、「原点に回帰したというつもりはないけれど」と前置きしつつ、「僕なりに、『イッセイ ミヤケ』イズムを現代的に表現した」とコメント。イズムとは何か?と聞かれると、「人種や年齢を問わず、さまざまな人に届けるエネルギー」だと即答。輪になって踊る演出や笑顔のモデルは、まさにそれを表現するものだ。「社会に向き合いながら服を作っていくことがこの会社では大切。そこに僕なりのユーモアを取り入れていきたい」と抱負を語った。「(近藤のクリエイションに対し)今すぐ何かを求めるというよりも、何シーズンか重ねて、こういうことだったのかと分かるようになれば」と、伊勢孝彦イッセイ ミヤケ社長も話した。

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渡辺直美も注目する“イタリアン・カワイイ”「GCDS」のスゴさとは? けみおのランウエイデビューも

 イタリア発の「GCDS」は、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長しているストリートウエアブランドです。名前は「God Can't Destroy Streetwear(神はストリートウエアを破壊できない)」の頭文字。31歳のデザイナー、ジュリアーノ・カルツァ(Giuliano Calza)と、33歳の兄でビジネスを担うジョルダーノ(Giordano)がブランドを開始して4年目ですが、世界中で400店舗以上の取り扱いがあり、売上高は1000万ユーロ(約11億8000万円)を超えています。

 ベラ・ハディド(Bella Hadid)らセレブモデルの心も掴んでおり、少し毛色は異なりますがヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の「オフ-ホワイト ヴァージル アブロー(OFF-WHITE ℅ VIRGIL ABLOH)」のような成長で、ジュリアーノによるド派手なデザインは、“ネクスト ジェレミー・スコット(Jeremy Scott)”の呼び声も高いです。日本での知名度はまだ高くないものの、ミラノ・ファッション・ウイークで行ったショーのフロントローには渡辺直美の姿がありました。このブランドがなぜそんなにスゴイのか、2020年春夏のショーから解説していきたいと思います。

上海でファッションを学んだアジア好きデザイナー

 「GCDS」のジュリアーノは31歳のイタリア人でポップカルチャーが大好物。上海の大学でデザインを学んだという背景もあり、アジア文化に大きな影響を受けています。1年前の19年春夏では「ポケモン」、今回はサンリオのハローキティとマイメロディとのコラボも発表しています。天井に巨大なタコ足が張り巡らされた会場入口を抜けると、大きなGCDSのサイン前でスナップ撮影が行われていて、ハローキティのバブルティースタンドがありました。メニューはタピオカミルクティーもあれば、フルーツフレーバーのゼリー入りドリンクなど数種類などが自由に楽しめます。また、招待状は本物のココナツで、ストロー付きで飲むことができました。私はコレクション期間中にお腹を壊すのを恐れて飲みませんでしたが、会場では「あれ飲んだ?」という会話を何度も聞きました(笑)。このドリンクにまつわる仕掛けは序の口で、その先にはさらなるサプライズが待っていました。

しっぽを振った恐竜現わる キティやジュラシック・パークのコラボ祭り

 「K-HAWAII」と題したショーは文字通り、ハワイの南国感と日本のカワイイカルチャーのミックス。会場は大きなホールで、デジタルサイネージには金魚の泳ぐ姿が映し出されていて、ランウエイの真ん中には大きな箱が置かれています。ショーが開始すると恐竜の鳴き声と共に、箱の中からティラノサウルスが出現。これには度肝を抜かれました(笑)。会場内がザワザワと写真撮影を開始する中、アメリカ発のクマのキャラクター「ケアベア(Care Bears)」の顔型をかたどったビキニを着たモデルが登場します。そこから、ハローキティのバッグやマイメロディのトップス、映画「ジュラシック・パーク」のロゴを使ったTシャツやブーツなどのコラボのオンパレード。終盤には“ストリートウエアは永久不滅”と書かれたアダルトアニメ風のアキバ系プリントのウエアを着た、人気インフルエンサーのけみおもランウエイを歩いていました。

 コラボアイテムのほか、ショーではブランドの認知度を押し上げた定番人気のロゴ入りセーターやソックスなどのストリートウエアもしっかりとラインアップ。テイストも、テーマの“カワイイ”を象徴するフリルなどの要素に、イタリアらしい色気のあるクロップドカシュクール、オフショルダーのトップス、ドレスもそろえています。アメリカや日本の文化を融合しながらも、モノ作りは100%地元のイタリア生産にこだわっているのも特徴です。ショーには出てきていませんが、キッズラインもあります。

アニメの目を再現した!? コスプレーヤー風メイク

 4年目のブランドと思わせないのは、すでにコスメラインもローンチしていること。昨年末に発表されたイタリアのカラーコスメメーカーのインターコス(INTERCOS)との協業によるリップスティックとネイルはコンパクトなラインアップですが、今季のショーでも使用されていていました。ネイルチップにはブランド名のチャームを装着。ヘア&メイクはコスプレーヤーを意識したのでしょう。アニメのキャラクターになりきるかのように、ほぼ全員のモデルに真っ黒のカラーコンタクトを入れ、黒目の位置にアイラインを引いて強調。ヘアも現実離れしたツヤのあるハーフツインテールやボブのウィッグで、モデルたちを人形顔に変身させていました。

 ウエアもメイクも海外目線のジャポニズムの解釈でしたが、私の感想は嫌な気持ちになることもなく、ファニーな世界観を楽しめました。20年春夏は全体的に脱ストリートウエアの傾向が見られます。「GCDS」の急成長は間違いなくこの数年間のストリートブームが追い風になっていますが、ショーの仕掛けやSNS、商品のコラボレーション、ドロップ形式の商品販売を見る限り、ブランド力を強く感じるので、独自の発信力でファンを魅了するのではないでしょうか。

 また、ある日本人来場者はショー会場を出た後に、外で待機していたブランドファンに「何でもいいから、会場内でもらった紙をくれませんか?」とねだられたと言います。そんな熱狂的ファンを抱えるジュリアーノが、どのようにブランドを成長させていくのか今後も興味深いです。

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渡辺直美も注目する“イタリアン・カワイイ”「GCDS」のスゴさとは? けみおのランウエイデビューも

 イタリア発の「GCDS」は、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長しているストリートウエアブランドです。名前は「God Can't Destroy Streetwear(神はストリートウエアを破壊できない)」の頭文字。31歳のデザイナー、ジュリアーノ・カルツァ(Giuliano Calza)と、33歳の兄でビジネスを担うジョルダーノ(Giordano)がブランドを開始して4年目ですが、世界中で400店舗以上の取り扱いがあり、売上高は1000万ユーロ(約11億8000万円)を超えています。

 ベラ・ハディド(Bella Hadid)らセレブモデルの心も掴んでおり、少し毛色は異なりますがヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の「オフ-ホワイト ヴァージル アブロー(OFF-WHITE ℅ VIRGIL ABLOH)」のような成長で、ジュリアーノによるド派手なデザインは、“ネクスト ジェレミー・スコット(Jeremy Scott)”の呼び声も高いです。日本での知名度はまだ高くないものの、ミラノ・ファッション・ウイークで行ったショーのフロントローには渡辺直美の姿がありました。このブランドがなぜそんなにスゴイのか、2020年春夏のショーから解説していきたいと思います。

上海でファッションを学んだアジア好きデザイナー

 「GCDS」のジュリアーノは31歳のイタリア人でポップカルチャーが大好物。上海の大学でデザインを学んだという背景もあり、アジア文化に大きな影響を受けています。1年前の19年春夏では「ポケモン」、今回はサンリオのハローキティとマイメロディとのコラボも発表しています。天井に巨大なタコ足が張り巡らされた会場入口を抜けると、大きなGCDSのサイン前でスナップ撮影が行われていて、ハローキティのバブルティースタンドがありました。メニューはタピオカミルクティーもあれば、フルーツフレーバーのゼリー入りドリンクなど数種類などが自由に楽しめます。また、招待状は本物のココナツで、ストロー付きで飲むことができました。私はコレクション期間中にお腹を壊すのを恐れて飲みませんでしたが、会場では「あれ飲んだ?」という会話を何度も聞きました(笑)。このドリンクにまつわる仕掛けは序の口で、その先にはさらなるサプライズが待っていました。

しっぽを振った恐竜現わる キティやジュラシック・パークのコラボ祭り

 「K-HAWAII」と題したショーは文字通り、ハワイの南国感と日本のカワイイカルチャーのミックス。会場は大きなホールで、デジタルサイネージには金魚の泳ぐ姿が映し出されていて、ランウエイの真ん中には大きな箱が置かれています。ショーが開始すると恐竜の鳴き声と共に、箱の中からティラノサウルスが出現。これには度肝を抜かれました(笑)。会場内がザワザワと写真撮影を開始する中、アメリカ発のクマのキャラクター「ケアベア(Care Bears)」の顔型をかたどったビキニを着たモデルが登場します。そこから、ハローキティのバッグやマイメロディのトップス、映画「ジュラシック・パーク」のロゴを使ったTシャツやブーツなどのコラボのオンパレード。終盤には“ストリートウエアは永久不滅”と書かれたアダルトアニメ風のアキバ系プリントのウエアを着た、人気インフルエンサーのけみおもランウエイを歩いていました。

 コラボアイテムのほか、ショーではブランドの認知度を押し上げた定番人気のロゴ入りセーターやソックスなどのストリートウエアもしっかりとラインアップ。テイストも、テーマの“カワイイ”を象徴するフリルなどの要素に、イタリアらしい色気のあるクロップドカシュクール、オフショルダーのトップス、ドレスもそろえています。アメリカや日本の文化を融合しながらも、モノ作りは100%地元のイタリア生産にこだわっているのも特徴です。ショーには出てきていませんが、キッズラインもあります。

アニメの目を再現した!? コスプレーヤー風メイク

 4年目のブランドと思わせないのは、すでにコスメラインもローンチしていること。昨年末に発表されたイタリアのカラーコスメメーカーのインターコス(INTERCOS)との協業によるリップスティックとネイルはコンパクトなラインアップですが、今季のショーでも使用されていていました。ネイルチップにはブランド名のチャームを装着。ヘア&メイクはコスプレーヤーを意識したのでしょう。アニメのキャラクターになりきるかのように、ほぼ全員のモデルに真っ黒のカラーコンタクトを入れ、黒目の位置にアイラインを引いて強調。ヘアも現実離れしたツヤのあるハーフツインテールやボブのウィッグで、モデルたちを人形顔に変身させていました。

 ウエアもメイクも海外目線のジャポニズムの解釈でしたが、私の感想は嫌な気持ちになることもなく、ファニーな世界観を楽しめました。20年春夏は全体的に脱ストリートウエアの傾向が見られます。「GCDS」の急成長は間違いなくこの数年間のストリートブームが追い風になっていますが、ショーの仕掛けやSNS、商品のコラボレーション、ドロップ形式の商品販売を見る限り、ブランド力を強く感じるので、独自の発信力でファンを魅了するのではないでしょうか。

 また、ある日本人来場者はショー会場を出た後に、外で待機していたブランドファンに「何でもいいから、会場内でもらった紙をくれませんか?」とねだられたと言います。そんな熱狂的ファンを抱えるジュリアーノが、どのようにブランドを成長させていくのか今後も興味深いです。

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2020年春夏パリコレ4日目のハイライト 「クロエ」「Y/プロジェクト」「イザベル・マラン」など春夏トレンドが見えてきた

 パリコレ4日目は、「クロエ(CHLOE)」「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」などを速報する。トレンドはストリートからエレガンスへとシフトが進み、ジャケットがキーアイテムに。同時で、70年代のボヘミアンムードも浮上してきた。

クロエ(CHLOE)

DESIGNER/ナターシャ・ラムゼイ・レヴィ(Natacha Ramsay-Levi)

 カジュアルを得意とする「クロエ」がフォーマルへぐっとシフトした。メンズスーツの素材で仕立てたジャケットスタイルを核にコレクションを構成。ただしジャケットは、ノーカラーだったり、オーバーサイズとしたり、ウエストにギャザーを寄せたりと、堅苦しくならないようさまざまな工夫がこらされている。合わせるアイテムも、得意とするボヘミアン調のロングドレスやカットオフパンツなどジャケットがフォーマルになりすぎないアイデアが多彩だ。

Y/プロジェクト(Y/PROJECT)

DESIGNER/グレン・マーティンス(Glenn Martens)

 アレクサンドル3世橋ふもとの会場は、ショーを見たいと集まったキッズたちでいっぱい。会場外の橋の下にもびっしり人が並んで始まったショーは、ブランドらしい脱構築のコレクション。コンセプチュアルなデザインが持ち味のブランドではあるが、これまでに比べると、今季はやや考え方がシンプルになった印象だ。デニムジャケットやステンカラーコート、ボタンダウンシャツは、パターン変化によってドレープが生まれ、デコルテやウエストから肌がのぞく。地厚なサテンのテーラードジャケットは、フロントが二重になった作り。肩の落ちるボリュームシルエットのテーラードコートやセットアップはやや見慣れてしまったバランス感のようにも思うものの、レーステープをバイアスにはぎ合わせたドレスなどで今季のムードも盛り込んだ。

イザベル マラン(ISABEL MARANT)

DESIGNER/イザベル・マラン

 インビテーションは笛。ショーでも力強い笛の音に合わせ、モデルがテンポよく歩く。イリーナ・シェイク(Irina Shayk)やアンバー・ヴァレッタ(Amber Valletta)、エヴァ・ハーツィゴヴァ(Eva Herzigova)、ジジ・ハディッド(Gigi Hadid)ら有名モデルが行進する様子は圧巻。ボトムスは超ミニ丈に変化。中には脚の付け根ギリギリの丈のホットパンツも登場した。ナチュラルなメッシュニットに小花柄やタイダイなど「イザベル マラン」らしいボヘミアン的要素はそのまま、ウエストマークやミニ丈シルエットで力強さを見せる。

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ヴァージル不在の「オフ-ホワイト」2020年春夏はどうだった? キッズは引き続き熱狂で大混雑

 ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が健康上の理由で不在と、事前にアナウンスされていた「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH以下、オフ-ホワイト)」の2020年春夏ウィメンズ。トレンドがストリートからクラシックに回帰していることも重なって、「以前より盛り下がっているのでは?」といった前評判もあった。しかし、蓋を開けてみたら今季もエントランスはヴァージルファンのキッズでごった返し、招待状を持っていても入れないのではと危惧するほど。おかげで、ショーは50分押しでのスタートとなった。

 ショー前にバックステージを尋ねたが、こちらもヴァージル不在で意気消沈、といったムードとは無縁。このブランドにはおなじみなジジ・ハディッド(Gigi Hadid)、ベラ・ハディッド(Bella Hadid)姉妹がリラックスした様子でヘアメイクを受け、日本人モデルではヴァージルと親交の深い「アンダーカバー(UNDERCOVER)」高橋盾の娘、高橋ららの姿も。ショー開始直前はファーストルックを写真に収めようとするカメラマンたちが押せや押せやの状態で、エントランス同様、こちらも大混雑だった。

 ショー会場であるポンピドゥー・センターの地下には、丸く作られたランウエイの中心にイスが並ぶ。陸上競技場のように会場を作り込んだ19年春夏、自動車レースのチェッカーフラッグよろしく床が碁盤の目状になっていた19-20年秋冬に比べると、かなりシンプルで正統派な作り。そこに登場したモデルは、白いシャツドレスやノットやラッフルをポイントにしたトップスにドレスと、こちらも比較的シンプルだ。テーマは“メテオ シャワー(流星群)”。ランニングトップスやパンツは、隕石が落ちた穴のような丸いカットアウトから肌がのぞくが、ブーツやハンドバッグも丸く穴が開いていて、それはどことなくチーズの断面のよう。

 マクラメ編みや、ブランドアイコンのクロス印などのキラキラアクセサリーが今季らしさを添える。メイクもラメやグロスでキラキラにしているのがポイント。ブランドらしさを象徴する、パラシュートクロスを使ったスポーティー×エレガンスなドレスは今季も健在だ。ただ、ルック数が37といつもより少ないこともあってか、迫力や新鮮さはこれまでよりもやや薄まった印象。しっかり休養を取って、元気になったヴァージルが、またいつものようにパワフルなショーを見せてくれることを願うばかりだ。

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韓国生まれの「レジーナ ピョウ」は等身大の視点で女性の支持を集める リアルとアートを行き来する2020年春夏コレクション

 コンセプチュアルな作品を生み出すデザイナーが多いロンドンで、「レジーナ ピョウ(REJINA PYO)」は現代女性に寄り添ったリアルクローズを打ち出す女性デザイナーとして独自の立ち位置を築き始めている。デザイナーのレジーナ・ピョウ(Rejina Pyo)は、韓国・ソウル出身。セント・マーチン美術大学MA(CENTRAL SAINT MARTINS)の卒業作品が高評価を得て、「ロクサンダ(ROKSANDA)」のロクサンダ・イリンチック(Roksanda Ilincic)のアシスタントなどでキャリアを積んだ後、2014年に自身のブランドをスタートさせた。色気と力強さを併せ持つ着心地のよさを追求した衣服は、働く女性であり妻であり、母でもある彼女自身の生活から生まれたものだ。多様なライフスタイルを過ごす世界中の女性から支持を集め、現在は世界で約130アカウントと取引している。

94歳の芸術家の創作意欲に刺激受ける

 ピョウは、シーズンごとに異なる芸術家の作品から着想を得る。今季は画家兼詩人のエテル・アドナン(Etel Adnan)の絵画と詩がインスピレーション源となった。ショーの招待状にはアドナンの詩の一節である「死に際だと気づくとき、未来のすさまじさを実感する。決してたどることのない時間にほれてしまうのだ」と記されていた。アドナンは94歳になる今もなお現役で作品を作り続けており、その姿勢にピョウは自身を投影させて想像を膨らませたようだ。ショー後のバックステージで「“人生の終わり”を感じたとき、究極の自由を手にする。ほかのことは一切何も考えず、自分自身を表現する力を手に入れる。そんなアドナンの姿勢と作品に感銘を受け、“自分らしく人生を楽しむ大切さ”がコレクションの軸になった」と説明した。

 会場に選んだのはホルボーン図書館。ファーストルックを飾ったのはイギリス出身のモデルで2児の母でもある36歳のジャケッタ・ウィラー(Jacquetta Wheeler)で、スクエアネックのブラウスとショートパンツのリネン素材のセットアップで登場した。アドナンの風景画に見られるさまざまな色味のグリーンを軸に、ニュートラルカラーや鮮やかなチェック柄のスーツ、ハワイアンプリントのシャツなどがランウエイを彩った。オーガニックコットンのシャツドレスやリサイクルポリエステルの透け感のあるドレス、シルクのスリップドレスなど素材もアイテムもバリエーション豊かだ。陶芸家のルーシー・リー(Lucie Rie)の作品をイメージして、スリーブには特徴的な曲線を加えて膨らみを持たせた。初となるユニセックスコレクションは、サマーニット素材のポロシャツやウオッシュドデニムのジーンズ、セットアップなどが登場した。オリジナルで製作しているウッド調のボタンは不ぞろいのさまざまな形状で、スカートの裾やキャミソールトップスのストラップにあしらわれた。ツバが大きなハットなどのアクセサリーやビキニスタイルのルックなど、全体を通して南国の風をまとっていた。

新たな提案や驚きを与えるまでには至らず

 「私はファンタジーを与えるデザイナーではない。人々の日常にこそ関心があり、彼らの人生とワードローブに私のコレクションが加わることを望んでいる」と語るピョウ。その願い通り、フロントローに座るインフルエンサーが今すぐにでも着用できそうな、フェミニニティーがほどよく香り立つ日常着であることは間違いない。しかし今シーズンのコレクションは、彼女の素晴らしい想像力とテーマ性が十分に発揮されておらず、新たな提案や驚きを与えるまでには至らなかった。会場に選んだ図書館と南国風のムードもリンクしておらず、インタラクティブなショー演出には達していなかったため、次シーズン以降に期待したいというのが率直な感想である。たとえ今回のコレクションが“人生の終わり”を想像して取り組んだものだとしても、現実にはそうはならないだろうから。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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パリコレ3日目のハイライト 「ドリス」がラクロワを迎え“ザ・モード”なショー キャンプでドラマチックな「マルジェラ」

 パリコレ3日目は、「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」や「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」が、ファッションショーが今より華やかだった1990年代を方彷彿とさせるショーを行った。ギョーム・アンリ(Gullaume Henry)による新生「パトゥ(PATOU)」もプレゼンテーションを実施、その様子はこちら。

ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)

DESIGNER/ドリス ヴァン ノッテン(Dries Van Noten)

 ドリス ヴァン ノッテンは今季、クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)を迎え、全コレクションを共に作りあげた。ラクロワは、2009年に自身のブランドを閉鎖するまで、色彩とプリントの巧みな使い手として名をはせたオートクチュールデザイナーだ。花とアニマルなど柄と柄をぶつける情熱的なコディネートや、金銀糸も織り込んだ華やかなジャカード使い、大きく丸い袖がドラマチックなクチュールライクなドレスなどにラクロワの仕事を見る。見上げるような高いランウエイを含め、華やかだった1980~90年代のファッションショーをほうふつとさせる“ザ・モード”なショーに多くの拍手が送られた。

メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)

DESIGNER/ジョン・ガリアーノ(John Galliano)

 ミリタリーや従軍看護師といったイメージをベースに、アトリエが作り出すクチュール的なボリュームシルエットや、テクノロジーを盛り込んだ。クラシックなツイードやヘリンボーンのオーバーサイズコートやジャケットは、柄が割れたように部分的に色を失っている。実はこれ、「ハックされた」ように作られたプリントなのだという。スーツやビスチエドレスなど、さまざまアイテムに使われた丸いレーザーカットは、柄を重ねることで目の錯覚を生む。兵士が腰から下げるパラシュートのような腰飾りは、クチュールドレスのようにも見えてとてもエレガント。男性モデルも含めて足元はヒールブーツ。異性装などの“キャンプ”な要素も感じさせるコレクションは、ガリアーノらしく非常にパワフルでロマンチック。

ルメール(LEMAIRE)

DESIGNER/クリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)

 ライトトーンのきれいな色使いを得意としているが、雨の音に載せて始まった今季のコレクションは全身黒のスタイル。「黒でシルエットを見せたかった。それに、同じ黒といっても、濡れたように光る黒など、さまざまな黒があるでしょう?」とルメール。フロントの合わせがカシュクール風に見えるスーツスタイルや、ギャザーたっぷりのロングドレスやブラウスは、黒ということもあっていつもより少し強くシャープな女性像。ただし、仰々しくはならない知的なバランスがこのブランドらしい。後半は徐々に色が差されるものの、全体的にトーンは抑えめ。ブルーグレーやグレーベージュなどの、一言では表現しづらい色使いがきれい。

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「LVMHプライズ」選出で注目度上昇の「アンリアレイジ」 名刺代わりの2020年春夏は引き続き原点回帰

 先日、最終審査会が行われた若手デザイナーの登竜門、第6回「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE以下、LVMHプライズ)」。「アンリアレイジ(ANREALAGE)」の森永邦彦はグランプリこそ逃したものの、ファイナリストとして最終審査会で“光合成”と題した“自然と共生する服”を披露した。2020年春夏のパリ・ファッション・ウイークでも当然それを見せるのかと思いきや、「あれはまた別の機会に見せるんですよ」と、ショー前のバックステージで森永はニヤリ。では一体、今季のパリでは何を見せたのかというと、“アングル”と題したブランドの原点ともいえるクリエイションだ。

 15年春夏に発表の場をパリに移して以来、「アンリアレイジ」が追求してきたのは、フラッシュ撮影すると柄が変わるといった、テクノロジーを全面に打ち出したコレクション。しかし、19-20年秋冬は一転し、ブランド立ち上げ間もないころに追求していた、服の形そのものへのアプローチに立ち返った。「昔と同じことをやっている」といった意地の悪い意見もあったが、海外を中心に特にバイヤーからは分かりやすいと高評価。さらに、「LVMH プライズ」ファイナリスト選出効果もあって、「今季のショーや展示会への問い合わせは非常に増えた」と森永は話す。

 そんな状況の中で見せる今季のコレクションは、いわばようやくブランドを知るようになった各国のバイヤーやプレスへの名刺代わり。満を持して森永が披露したのは、前シーズンの続編のような原点回帰のコレクションだ。写真に撮られた服(2次元)を、実際に生身の人間が着る(3次元)とどうなるかという試みで、「洋服は画像に変換されて伝えられることが当たり前になった。画像になった洋服には、必ずカメラアングルが付随する。画像化されたデジタルな洋服イメージを、アングルと共にそのまま現実に引っ張りだす」とリリースには説明がある。

 カメラアングルが上からなのか、斜めからなのか、下からなのかによって、同じ服でも写真の中では形が異なる。紺のブレザーやオックスフォードシャツ、ジーンズにTシャツといった普遍的なアイテムを3つのアングルから捉え直し、それを人が着ることで、思わぬフォームが生まれる。前シーズンに続き、ショー前にインスタグラムに商品画像を掲載し、2次元から3次元へというコンセプトをより明確化した。

 素材によって、きれいにシルエットが出るものとそうではないものがある。例えば、ローアングルから捉えたデニムジャケットは、テントラインを描く背中のラインがチャーミング。一方で、ハイアングルから捉えたセーターなどはずるりと垂れ下がって、コンセプト優先で服としての魅力がおざなりな印象だ。ただ、そんな批判は森永は今まで何百回と聞き続けてきた。それでも、既存の考え方に対し、別の視点からロジカルにアプローチしていくというのがこのブランドのやり方だ。

 パリに進出して丸5年が経った。「あくまで、この規模でショーをしているからだけど」と前置きしつつも、「ショーをして、ビジネスを回していくという循環ができている」と森永。「『アンリアレイジ』で自分たちのやりたいことをしっかり見せて、アシックスなどの外部企業やブランドとの協業によって、より幅広い層にリーチしていく形が取れている」とも。そうした協業依頼は「LVMH プライズ」をきっかけにさらに増えているといい、聞けば、次シーズンに向けて大きな協業企画も進行中だ。この波に乗って、ビジネスをどこまで安定拡大できるかに、今後の自由なクリエイションがかかっている。

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編集長はパリコレで何した?Vol.1  「マメ」「キムヘキム」「ロク」若いアジアパワーで初日がスタート!

 こんにちは。「WWDジャパン」編集長の向(むこう)千鶴です。今週からパリコレ取材に来ています。そこで、毎週頭に掲載している連載「編集は先週何した?」の番外編をパリからお届けをします。1回目は、初日から。アジアの若手デザイナーが元気です!

9月23日(月)18:00
「マメ」を着ると女になれます

 パリコレは「マメ(MAME KUROGOUCHI)」で幕開けです。会場はリュクサンブル公園近くの薬科大学。初日でショーは3つだけで荷物も少ないので、中身がほとんど入らない「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のワンコバッグを連れて、秋の公園を気持ちよく散歩しながら向かいました。

 「マメ」を着ると女になれます。女の子ではなく大人の女性、つまり“ありのまま”を楽しんでいる自分を見つけます。なんて、ナルシストっぽいけど袖を通したことがある方ならわかるはず!繊細な色の重ね方や、サテンやレースなどの素材選び、嫌らしくならない肌の見せ方、見た目はぴったりなのに実は着ていてラクなカッティングなどがその理由です。洗練度が増した今季はさらにバイヤーから引っ張りだこなのでは?個人的には緑色の使い方が特に好きです。

 長年、「マメ」を取材してきた五十君記者によるバックスステージリポートはこちらからどうぞ

19:00
「キムヘキム」

 うわ!これは韓国版「バレンシアガ」だ!と思ったら「バレンシアガ(BALENCIAGA)」出身のデザイナーでした。鮮やかな色、エディ・スリマン(Hedi Slimane)の「セリーヌ(CELINE)」的なロックな黒、極端な形、ゲーム感覚のロゴ使い、スポーティーかつセクシー。自己主張強めで勢いがあります。ベースには伝統衣装のチマチョゴリの存在があり、鮮やかな色彩はそこから。日本と韓国のファッションセンスの違いは、着物とチマチョゴリの色彩の違いなのかな、とふと思いました。会場外で撮らせてもらった2人は「キムヘキム(KIMHEKIM)」のペアルック。似合っています。

20:00
「ロク」で韓国勢の
勢いをビシバシ感じる

 ポスト“オールド「セリーヌ(CELINE)」”の呼び声高く、日本人バイヤーの姿も多数の「ロク(ROKH)」。アウトドアのディテールをトレンチコートなどに取り入れるアイデアが◎で、デザイナーがデザインを楽しんでいる様子が伝わってきます。最後の2ルックで見せたドレスにスケートボードの組み合わせもよい、です。「キムヘキム」と続けて見ると韓国勢の勢いをビシバシ感じます。まだ初日だけど、70年代のフラワーチルドレンは今季のキーワードになりそうかな。

番外
弊社ソーシャルエディターが
パリコレデビュー

 今季のパリコレ取材は、初めて弊社のソーシャルエディターが参戦。これは2日目の「マリーン セル(MARINE SERRE)」の会場前で、招待状でもある折りたたみ傘を片手に、私に無理やりポーズを取らされている彼女です。張り切ってフロントローなどを走り回っていますので、「WWDジャパン」のインスタグラムSNSもぜひチェックしてください!

番外2
「ドリス ヴァン ノッテン」を
衝動買い

 ホテルの近くに「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」の直営店があり、うっかり入ったらうっかり買ってしまいました。パンツスーツ。と、ワンピース。やっぱり今シーズンはジャケットの気分なんですよね。写真はパリコレ中のどこかであげたいと思います。

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「マメ」2020年春夏はパリコレトップバッターでも自然体 「トッズ」とのコラボも公開

 「マメ(MAME KUROGOUCHI)」が、2020年春夏パリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)公式スケジュールのトップバッターとして、9月23日にランウエイショーを行いました。18-19年秋冬からパリでの発表を続けており、今回で4シーズン目。公式スケジュールでの発表はブランド初です。公式スケジュールになると、注目度はぐっと上がります。そんな節目のシーズンをガッチリ取材しようと、ショー開始の少し前にバックステージを訪ねました。

 会場は、緑いっぱい花いっぱいのフランス庭園が美しいリュクサンブール公園そば。薬科大学の回廊です。公式スケジュールのトップバッターということで、現場はさぞピリピリしているのかと思っていましたが、モデルもヘアメイクもフィッターも、皆さん非常にリラックスしたムード。構内で挨拶した黒河内さんもふんわり柔らかく自然体で、思わずちょっと拍子抜けしました。

 黒河内さんに今から約4年前にインタビューした際、「(ブランドとして認知が上がり、スタッフも増えて責任は増しているけれど、だからこそ)作ることにもっともっと自由でいたい。ブランドの成長に合わせて変わらなきゃいけないというより、むしろ子どものような感覚や初心に戻ろうとしている」といったことをおっしゃっていたんですが、パリでも自然体の黒河内さんを見て、それを思い出しました。この人はパリに行って、また一つ階段を上がってもそういった部分は変わらないんだなと実感。

 いや、いつでも自然体でいるということは、そうあるように黒河内さんが猛烈に努力している結果なのかもしれません。アスリートが心身を鍛えて常に最高のパフォーマンスを出すように、黒河内さんも強い精神力でどんな時も平常心であるよう努めているのかも。それを周囲に感じさせないところが彼女のすごいところです。そういう、たおやかだけれど芯の強い女性像って、まさに「マメ」の描くイメージと重なりますよね。

 さて、前置きが長くなりましたが、肝心の服はというと、今シーズンはグリーンの色使いが印象的です。そして何層にも重なるレイヤードがポイント。ジャケットの肩からバッグを掛けて、その上からメッシュのドレスを重ねてすっぽり包んでしまうといったスタイリングが目を引きました。「マメ」の服って、11年春夏のスタート以来、黒河内さんの日々の生活や心の動きに非常に密着していて、彼女のパーソナルな部分のダダ洩れといってもいいものです。今シーズンは一体どんなことに心が動いたのかと黒河内さんに尋ねると、まず最初に返ってきたのは「勉強のために、カイコをアトリエで飼い始めたんです」という言葉。……えっ、カイコですか?

 黒河内さんが素材研究に非常に熱心で、日本各地の素材産地を頻繁に回っていることは有名です。ゆえに、彼女は産地の職人さんたちからすごく愛されています。それが高じて、とうとうアトリエでの養蚕につながったということなんでしょう。「カイコの幼虫がサナギになり、自身を繭で包んでいくのを観察していると、神秘的ですごく美しかった」と話は続きました。そこから“包む”ということのリサーチを始め、日本のアートディレクターの草分け的存在、岡秀行さんの書籍「包む」に行きついたとのこと。「マメ」の服には、色使いやディテールに日本的な感覚が色濃く漂いますが(特に、パリで発表するようになってからそれは強まっていると思います)、着物や風呂敷に代表される“包む”という概念って、まさに日本的な感覚だなと納得。

 “包む”という発想から、何層にも繊細に重なるレイヤードが生まれているわけですが、その着想源を細かく聞いていくとさらに面白い。たとえば、キラキラ光るメッシュは「東京でたくさん見る、ゴミ置き場のカラス除けのネット」から発想したものだそう。他は、衣服を運ぶ際に被せる「透明のガーメントケース」や、「前回の展示会終了後に、飾っていた花がゴミ袋に入れられて捨てられていた様子」など。彼女の目を通すと、日常の意外な場面も生き生きキラキラとしてきます。「カイコをきっかけに“包む”ことに心が奪われて、その意識で日常の中で美しいものを探した」というクリエイションは、ブランドが毎シーズン続けていることですし、ブランド名に通じる“まめまめしさ”といった日本の美学も感じます。

 そして、忘れてはいけない今季の重要ニュースは、「トッズ(TOD’S)」とのコラボレーション。キトゥンヒールのバックスリングパンプスを、白、黒、ネイビーの3色で展開していました。「『マメ』と『トッズ』に一体どんなつながりが?」と疑問に思いましたが、「前シーズンのショーに、トッズのディエゴ会長(ディエゴ・デッラ・ヴァッレ=Diego Della Valle)が来てくださって、クラフツマンシップに対する考え方にお互い共感した」と黒河内さん。最初は意外な組み合わせだと感じましたが、日本の産地の技術をリスペクトする「マメ」と、職人を大切にするイタリア企業トッズは、確かにモノ作りに対して共感する部分は多そう。同時に、トッズの会長が若手ブランドのショーをしっかり見て回っていることにも驚きました。日本で大手アパレルや小売りの会長が東コレに現れて、デザイナーと意気投合してコラボに至ったといった話は、ほぼ聞いたことがないですから。

 公式スケジュールでの発表になったことで注目度が上がり、これまでのミニショー形式よりもぐっと客数は増えたようです。さらに「来場者のうち、約半数は海外の方になりました」と広報担当者は手応えを話していました。ブランドスタートからまだ丸10年経っていない中で、ここまで来たのはやはりすごいこと。ビジネスの本番である展示会はこれからですが、バイヤーがどう反応したのかは、また追って取材していきます。

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2020年春夏のパリコレ開幕 新緑の煌めきで会場を包んだ「マメ」と「セリーヌ」「バレンシアガ」出身の若手勢に期待

 2020年春夏シーズンのパリ・ファッション・ウイークが9月23日に開幕した。トップバッターを飾ったのは、今回初めて公式スケジュールに参加した「マメ(MAME KUROGOUCHI)」だ。初日はその他「バレンシアガ(BALENCIAGA)」出身の韓国人デザイナーによる「キムへキム(KIMHEKIM)」や、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)時代の「セリーヌ(CELINE)」で経験を積んだ韓国人デザイナー「ロク(ROKH)」がコレクションを発表。アジア出身の若手勢が勢いを見せた1日になった。

 「マメ」の今季は「包む」という概念を中心にコレクションを構築した。蚕虫の繭、草木を守るように広げられたネット、無造作に捨てられていた漁網、そしていつの間にか美しい新緑に包まれている初夏、それら全ての「包む」を服に落とし込んだ。ルーズに編まれたメッシュトップスやメッシュドレス、「マメ」らしい繊細なジャカード、刺しゅう、ニッティングで体を優しく包む。バイカーパンツというブランドには一見意外性のあるアイテムも、メッシュスカートやワンピースをレイヤードすることでスポーティーになりすぎず水々しく健康的な印象を与えた。

 カラーパレットは新緑のグリーンと夏の眩しい日差しを想起させるホワイト。曇りガラス越しに見る夏の緑の景色を表現した。また、「トッズ(TOD'S)」とコラボしたパンプスも発表した。カラーはブラック、ネイビー、ホワイトの3色で、「マメ」らしい優雅なシルエットに仕上げた。

 「キムへキム」も今季初めて公式スケジュールに参加。デザイナーのキミンテ・キムへキム(Kiminte Kimhekim)の出身国である韓国の民族衣装にインスパイアされた柔らかなシフォン素材を用いたアイテムと、「バレンシアガ」などの経験で培ったテーラーリングが人気のブランドだ。前シーズンはテーラーリングに注力し“ポスト・フィービー枠”の一角に食い込んできたかと思いきや、今季は一転しシルエットはぐっとシャープに、ボトムスもワイドパンツからミニスカートに変化。大きなパールのボタンを重ねて素材にたるみを持たせたブランドのアイコン的なデザイン、“ヴィーナス”も、しっかりとウエストをマークしている。

 “ME(私)”と題したコレクションには、SNSで注目を浴びようとする人々をやゆするように、自撮り棒を持って歩くモデルや、“SICK”と書かれたTシャツを着て点滴を引くモデルが登場。今までには見られなかったユーモアでブランドの新たな可能性も垣間見れた。サングラスをかけ、ポケットに手を突っ込んで会場を駆けるように歩くモデルを見ると、“ポスト・フィービー枠”というよりもむしろエディ・スリマン(Hedi Slimane)の影を感じる。

 フィナーレに登場したデザイナーのキムへキムは照れながらもアレキサンダー・ワン(Alexander Wang)のように会場を走り抜け、歓声が湧いた。間違いなくブランドの勢いを感じた瞬間だった。

 前シーズンにパリコレデビューを果たした「ロク」は、フィービー・チルドレンとして名前があがることも多い韓国系アメリカ人、ロック・ファン(Rok Hwang)が手掛けている。自身が育ってきた1990年代のユースカルチャーを感じさせるフレッシュな感覚と、クリーンなムードのミックスが持ち味だ。今季は、自身が10歳だった1994年に、家族と共にニューヨークからヨセミテまでロードトリップした思い出が着想源。得意のトレンチコートを変形させたシャープなドレスでスタートしつつ、登山用ロープやカラビナなどのディテールで遊びを加える。チェック柄ドレスに重ねたほつれ穴のようなプリントは、グランジのムード。スーツにバックパックを背負っているようなスタイリングは、実はバックパックのベルト風の飾りを付けているだけ。スカートスーツにボリュームたっぷりなスニーカーといったスタイルも目立つ。「僕ら1980年代生まれの世代は、スタイリングは何でもアリだから」とファンは説明する。

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ミラノコレ実質最終日のハイライト 装飾が控えめな「グッチ」とアマゾンの熱帯雨林を描いた「ドルチェ&ガッバーナ」

 2020年春夏シーズンのミラノ・ファッション・ウイーク、実質最終日の5日目。期間中は暖かく晴天が続いたが、ミラノ取材班の今季ラストショーとなった「グッチ」終了後には雨が降り注いだ。2ブランドをピックアップする。

グッチ(GUCCI)

DESIGNER/アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)

 過去5年で自らが築き上げた新しい「グッチ」像を、早くに古きものと捉え、それを軽やかに裏切った。性差を超えたスタイルや、カラフルな色使いはそのままだが、刺しゅうやパッチワークなどの装飾は皆無。柄もいつになく控え目だ。「正直、少し飽き始めていた」とミケーレが話す通り、大きなインパクトを放ったがゆえに瞬く間に世界中に広がって記号化した、ミケーレ「グッチ」の装飾主義が転換した。

 古典的なセクシーを否定してきた、もしくはそこに興味を示さなかったスタンスも改める。肌をあらわにするチュールドレスやネグリジェには、ハーネスやムチ、首輪のレザーアクセサリー。今シーズンは、「セクシー」を語ることを恐れない。

 飾らなくても良いこと、セクシーでも良いこと。振り切った新生「グッチ」を構築するがゆえに、振り返れば偏っていた方向性をフラットに戻し、ブランドの解釈の幅、何より着こなしの可能性をさらに一段階押し広げた。

ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)

DESIGNER/ドメニコ・ドルチェ(Domenico Dolce)&ステファノ・ガッバーナ(Stefano Gabbana)

 壁面は生い茂る緑に、床はレオパードのカーペット。”ジャングルへようこそ(Welcome to the Jungle)”というBGMでスタートした今季は、まさしくアマゾンの熱帯雨林から着想を得たコレクションだ。全124ルックの序盤は、ベージュのサファリルックがずらり。ジャケットとショートパンツのセットアップ、オールインワンをはじめ、大きなポケット付きのサファリジャケットをドレスとしても提案する。そこから、森林柄やフルーツのほか、ヒョウ、ゼブラ、ジラフ、オウムなど野生動物のプリントや刺しゅうを入れたドレスをラインアップ。中盤にはラフィアを編み込んだ立体的なミニドレスも登場させた。

 今季はブラジルのアマゾン熱帯雨林の火災など環境問題が深刻化するなか、自然の美しさを表現したブランドが多かった。それは直接的なサステイナビリティーにはつながらないものの、環境保全や自然愛護のマインドへの喚起にはなるだろう。

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ミラノコレ4日目のハイライト 七色に輝く「ジョルジオ アルマーニ」と10周年の「MSGM」など

 2020年春夏シーズンのミラノ・ファッション・ウイークもいよいよ残り2日。ショーだけでなく、展示会やプレゼンテーションの開催も多い4日目から、4ブランドをリポートする。

サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)

DESIGNER/ポール・アンドリュー(Paul Andrew)

 レザーで作った、リラックスシルエットのシャツドレス、サロペット、ストレートパンツなどで幕開け。ピュアホワイト、スカイブルー、バターブラウンに彩られたレザーには、重厚感は微塵もない。2020年春夏メンズ・コレクションにも登場した、「フェラガモ」が改修施設を投じたフィレンツェの観光名所、シニョリーア広場のネプチューンの噴水をモチーフにしたマリンリゾート、厚底エスパドリーユなど、古典的芸術とメゾンのアイデンティティーを絡めつつ、清潔感に溢れ誰でも着られるアイテムを提案する。

 シフォンのマキシドレスや、その上にのせるフリルやラッフルのドラマ性に頼らず、むしろ装飾は削ぎ落とすことで、着られる人と汎用性を高めるアプローチ。カフタン、カシュクール、メンズならワンサイズオーバーくらいのブルゾンやジャケットが、レザーウエア唯一の欠点、通気性の悪さをカバーする。

ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)

DESIGNER/ジョルジオ・アルマーニ

 光沢あるベルベット、幾重にしても軽やかさを失わないチュール、レザーのカットアウトやビーズを通したフリンジで作る、ジャケット&ドレスのスタイルは、ごくごく淡いスカイブルーやピーチピンク、七色に輝き、素材の軽やかさをより一層際立たせる。チュールは幾重にも重ねたり、大きなコサージュにして首元にあしらったり、大きなストールに仕立てたり、オンにも使えるジャケットスタイルをイブニングにまで格上げした。

 ランウエイとした鏡のように、チャコールからライトまでグレーの素材は、いずれも強い光沢を放つ。生地を重ねたり、ファスナーを這わせることでうねらせたり、そもそも得意な流線型のパターンワークを多用したりで、その光沢を丸みを帯びた優しいオーラへと変換。袖を通す女性を“主役”に格上げしてくれるよう。

MSGM

DESIGNER/マッシモ・ジョルジェッティ(Massimo Giorgetti)

 ブランド設立10周年を記念したランウエイショーをトリエンナーレデザイン美術館の中庭で行った。招待状に同封されたジンの表紙には、“決して振り返らず、先にあるものを見ていく(Never look back, It’s all ahead)”というメッセージがスクラブルのアルファベットで表現されていた。この10年間、音楽や映画、時には日本の漫画やアニメまでさまざまなカルチャーに焦点を当ててきたマッシモだが、今季はこれまで築いてきた「MSGM」のブランドイメージそのものが着想源だ。楽天的なビビッドカラーのブロッキングや、フェミニンな花柄とレース柄、若々しいストリートフィーリングなど、ブランドが確立した要素をミックス。キャッチーな大きなボウタイブラウスを主役にしたジャケットスタイルから始まり、ネオンカラーのフリルドレス、花柄のシフォンドレス、総レースのセットアップなど、顧客が求めるブランドらしさが溢れるラインアップだ。その一方で、ショー終盤には、未来の「MSGM」を暗示させるロングドレスも数型提案した。色はポップなマルチカラーストライプもあれば、シックな黒もあり、アシンメトリーなフリンジディテールがエレガントだ。

ミッソーニ(MISSONI)

DESIGNER/アンジェラ・ミッソーニ(Angela Missoni)

 会場はロマンチックな雰囲気が漂う、電飾でライティングされた野外プール。客席には、ひまわりの形をした太陽光発電式LEDランプの”リトルサン”が置かれ、「今、地球にとって私たちが行動を起こす重要なタイミング。太陽と手を取り合いましょう」というデザイナーのアンジェラと、”リトルサン”を手掛けたアーティストのオラファー・エリアソン(Olafur Eliasson)からのメッセージが残されていた。今季はアンジェラが自然の美しさに思いを馳せたコレクションだ。朝日と夕日をイメージしたグラデーションから植物を連想されるグリーンのバリエーション、マルチカラーのフローラルプリントなど、鮮やかでありながら、自然の豊かさを感じられる色とモチーフを多用している。一方で、アイテムは1970年代のジェーン・バーキン(Jane Birkin)とセルジュ・ゲンズブール(Serge Gainsbourg)のカップルの服装から着想を得ている。ジェーンのタイトドレスとカゴバッグを持ったスタイルと、ゲンズブールの開襟シャツとジャケットスタイル。また水着を合わせたサマーニットをはじめとするモダンなリゾートルックへと広げた。

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ミラノコレ3日目のハイライト 自然をダイナミックに表現した「マルニ」と「ヴェルサーチェ」をリポート

 2020年春夏シーズンのミラノ・ファッション・ウイークも中盤戦。3日目のブランドの中から、「マルニ」と「ヴェルサーチェ」をピックアップしてリポートする。

マルニ(MARNI)

DESIGNER/フランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)

 ”アクト1”と題した6月に発表したメンズに引き続き、海洋プラスチック汚染を問題提起する”アクト2”と題したコレクション。「マルニ」を象徴するフラワープリントや色の掛け合わせの表現を更新しながら、自然の危機と愛しさを視覚的を訴えかけた。会場は、アーティストのジュディス・ホプフ(Judith Hopf)によるプラスチックの廃棄物で作ったジャングル空間を、リッソが”フラワー ソルジャー(花の戦士)”と呼ぶルックをまとったモデルたちが歩いた。”フラワー ソルジャー”たちは、リッソ本人がペイントした力強い花柄のスモックドレス群や、ドレープとギャザーを効かせたビビッドカラーのドレス、大花を刺しゅうしたフィッシュネットドレスを着ている。いずれもカラフルでダイナミックで、シルエットもユニーク。エプロン型のドレスからサイドスリットを入れたものまでレイヤードアイテムとして機能するアイテムがそろった。ジュリアン・ディス(Julien D'ys)によるヘアメイクは、全体をクレイで白く固めて、一部のモデルには花を装飾し、朽ちていく自然を比喩しているようだった。

ヴェルサーチェ(VERSACE)

DESIGNER/ドナテッラ・ヴェルサーチェ(Donatella Versace)

 序盤は、2020年春夏最大のトレンドである、ボックスシルエットの“ジャケットルック”でスタート。とはいえ、ファーストルックは、ドレス。ジャケット同様の構築的なショルダーライン、深いVゾーンを有するスーツ地仕立てのボディコンドレスという「ヴェルサーチェ」らしい幕開けだ。ジャケットもシャツも、このブランドはパワフルに。タップルの肩パッドを入れて、ジャケットなら構築的かつパワフルに。ドレスならそこを起点に美しくドレープするジャージーの素材感を楽しむ。装飾はウエストマークするための細ベルト、それにゴールドのボタンだ。

 中盤以降はグリーンのボリュームが増え、次第にボタニカルモチーフに侵食される。気づけばドレスは、ジャングルのように。かつてジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)がグラミー賞で着用し、「あのドレスは、一体どのブランド」と世界の人々がGoogle検索した”ジャングル・ドレス”をミニ丈にアレンジした。会場が暗転すると、「OK、Google。本当のジャングルドレスを着たセレブは誰?」というコメントとともに、本物のディーバが降臨。たっぷりのシフォンにジャングルをプリント。胸元をバックリ開けた、オープンバッグのドレスを見せつけ、ミラノ一番の拍手喝采に包まれた。

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ミラノはますますドタバタ日記Vol.2 「マックスマーラ」は「どや!」感アップ 新生「ボッテガ・ヴェネタ」は本能むき出し

 さぁ、ミラノ・コレクションは2日目。昨日から一転、今日はなんだか肌寒く、秋の気配が漂っています。でも、コレクションは今日もアツい!!「どや!」ブランドから、インフルエンサー大集結の人気メゾン、そして、大胆な方向転換が心地よい若手まで、できるだけインプットするために、今日もミラノ市内を駆けずり回ってみましょ〜。

10:00 マックスマーラ

 さて、本日最初の取材は、「マックスマーラ(MAX MARA)」。このブランドと言えば前回……、

 記者がこんなレビューを書いちゃうほど「どや!」という勢いにあふれているワケですが、「どや!」感、まだまだ健在でございます。てかむしろ、強まってるのです(笑)。

 前回同様、同じスタイルの色違いのモデルが隊列を組んでやって来るし、そもそも、スタイルがミリタリー。メイクはダークな黒リップ。すごく乱暴にいえば、多くのデザイナーが普通の女性の、何気ない日常を描くことで彼女たちに共感してもらおうと思っているなかで、「マックスマーラ」は女スパイを描きます。唯我独尊。自分たちに確固たる自信がなければ、こんなコトはできません(笑)。

 でも、参考にした着想源の1つが、アメリカの連続ドラマ「キリング・イヴ」(冷酷な暗殺者と、優秀な捜査官の攻防戦を描いているそう)。かつては映画でしたが、イマドキのデザイナーはTVドラマ、特にNetflixで視聴できる連ドラなんかにインスピレーション源を得るのですが、その潮流にうまく乗っており「唯我独尊」なだけでもないのです。

 フィナーレは、3人一組だった隊列が増殖。まるで戦隊、僕の世代で言うならゴレンジャーです。

10:50 ジル サンダー

11:45 エンポリオ アルマーニ

 「ジル サンダー(JIL SANDER)」の展示会の後は、「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」へ。チュールには優しいパステルカラー、合わせるのはシルバーのスパンコールやステッチがピカピカ光る流線型のコンパクトジャケット。スカイブルーにシルバーの組み合わせは、まさにテーマの「空」を連想する優しさと軽やかさ、そして壮大さです。

 イヴニングのパートは、「空」が「夜空」に変身。ウエアはモノトーンに、その代わり装飾が一気に増えて、星が瞬く夜空そのものです。

 それでは、ビーズがいっぱいのフリンジが揺れ、流れ星のように瞬くドレスの動画をスローでお楽しみください(笑)。

12:25 ヘルノ

 歩いて「ヘルノ(HERNO)」の展示会へ。ピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMAGINE UOMO)で拝見したメンズ同様、モノグラムがレトロムードを醸し出すコートなどを拝見です。

 メンズではアーバンモードな雰囲気に溢れている、高機能素材“ラミナーシリーズ”。ウィメンズは、淡いピンク色に彩られるなど、デザイン性が増して全然違う商品に仕上がっています。面白い!

13:05 フェンディ

 さぁ、お隣の建物の「フェンディ(FENDI)」へ(笑)。カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)がいなくなって、最初の、ゼロから作り上げたコレクションです。シルヴィア・フェンディ(Silvia Fendi)、頑張って!

 と応援するつもりで拝見しましたが、シルヴィア、期待に見事応えたと思います。先に発表したメンズ同様ほっこりするガーデニングムードで、同じリーフモチーフもたくさん。キルティングで作るボリュームドレスは、なんだか“オフトゥンドレス”みたいで愛らしく(そのまま横たわったら、安眠できそうw)、シフォンにギンガムチェックをのせたミニワンピは「フェンディ」らしい、カールらしい意表を突いた素材選びと、遊び心たっぷりのモチーフ選び。がま口のショルダーバッグや、メッシュとレザーを組み合わせた“ペカン(メゾンが呼ぶストライプ柄のこと)”トート、日よけの大きな防止など、キッチュなアクセサリーも豊富です。なんの心配もいりません。

 にしても、インフルエンサー、多数集結!会場は終始大混雑でした。

14:10 アンテプリマ

 お次は「アンテプリマ(ANTEPRIMA)」。ニットでリゾートです。マルチカラーのボーダーニットを何枚も用意してパネル上につなげたドレス、プリーツの中にコミカルな人物を描いたスカート、そして、涼しげなニットの開襟シャツ。ワイヤーバッグも大量放出‼︎でした。

15:00 プラダ

 昨日の「プラダ(PRADA)」の展示会へ。

 昨日、「『プラダ』のショーは、禅問答」と話しましたが、ショーを見ながらそれぞれがミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)の心の内を考えるランウエイショーの、答え合わせの時間がやってまいりました。

 答えは、「複雑さに対する解毒剤」。アイテムを絞り、シンプリシティーに徹することで、ファッションではなく、スタイルとしての強さを表現したそうです。僕が考えた「プラダ」流の、こんまりの“ときめき”断捨離、まぁまぁいい線行ってたんじゃないでしょうか(笑)。

16:05 M ミッソーニ

 「M ミッソーニ(M MISSONI)」からは、結構キツめなテンションで、「15:55からの“ライド”になるから、遅れないで」というメールをもらいました。“ライド(RIDE)”って、なんだろう?搭乗?乗車?まさか乗船??頭の中ではクエスチョンマークがクルクル回りつつ、イタリアだから時間通りには始まらないとわかりつつ、それでも、なんとなく小走りになりつつ(マジメだw)15:55にたどり着きますと、20人弱のゲストはすでにスタンバイ。しばらくすると、ピンクのおキャワなトラムがやってきました。ミラノでは今も大事な市民の足が、「M ミッソーニ」仕様になって、この日はミラノ市内を走っているんです。

 クリエイティブ・ディレクターが一族の3代目マルゲリータ・ミッソーニ(Margherita Missoni)に変わった「M ミッソーニ」の2020年春夏プレゼンテーションは、このトラムに乗って25分間、市内を旅するプログラムです。席に座って発車を待っていると、カラフルニットの男女がやってきました。彼女たちが、今回のモデルです。

 ローゲージのロゴニットから、ハイゲージのフレアパンツ、スプレープリントのGジャンまで、「ミッソーニ」もカラフルですが、「M ミッソーニ」はもっと大胆。さまざまなモデルが集まっている様子もカラフル。ブランドらしいプレゼンテーションでした。

17:05 ファビアナフィリッピ

 糸を紡ぐところからクリエイションをスタートする「ファビアナ フィリッピ(FABIANA FILIPPI)」は、砂、水、そして緑などの自然をイメージしたコレクション。トレンチコートもギャバジンのようにハリのある素材感ではなく滑らか。ニットで提供する極上の着心地を妨げません。

17:50 シモーナ マルツィアーリ

 イタリアの若手コンテスト「Who’s on Next?」で今年グランプリに輝いた「シモーナ マルツィアーリ(SIMONA MARZIALI)」のコレクションは、うれしい発見でした。レトロなテニススタイルを描いたニットの主軸のコレクションは、若手らしいスポーティーとストリートでイタリアのクラフツマンシップを若々しく表現します。

 ミラノって、本当に新人ブランドには冷たい街なんです。パリは、若手のコレクションに比較的多くの業界人が集まって「まずはチェック」という姿勢を感じることができるのですが、ミラノは全然違う。「まずはチェック」なんて心意気があまりないので、新人のランウエイショーは時に可哀想なくらいガラガラな時もあるんです。でも「シモーナ マルツィアーリ」のショーは、初登場ながら結構大勢で賑わいました。現地の期待も、大きいです。

18:55 ボッテガ・ヴェネタ

 さぁ、本日の最後は、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」。32歳の若手ダニエル・リー(Daniel Lee)を大抜擢したブランドが、彼にとって2回目のコレクションを発表です。

 このレビューの通り、前回のコレクションは写真や動画で見る限り、ダニエルの“思い切り”、つまりブランドにとっては突然の大変身に“ついていける人・ついていけない人”がパッキリわかれそうなコレクションでした。正直、僕は後者だったのですが、その後店頭に並び始めた若々しいバッグ、何より今シーズンの広告ビジュアルを見て、「なんか、新しくていいかも」と思い始めた中でのランウエイショー。その期待は、間違っていなかったみたいです。

 コレクションは、前回同様、ちょっとした、いや時に結構な違和感を覚えるボリューム感です。しかも極端なオーバーサイズは、ストリートムードの沈静化により正直ダウントレンド。でも、ダニエルによる80年代風とも言えるセットアップ、ビッグシルエットのアノラック、それに対してボディコンシャスなミニドレスは、ディスクリート・ラグジュアリー(控えめなラグジュアリー)というアイデンティティを持つブランドらしい落ち着いたカラーパレットのせいか、それとも、装飾を極力排除してシンプリシティに徹したおかげで直接的・本能的になったせいか、新たなフォームに対する抵抗感がありません。むしろ、「新しいシルエットに挑戦するなら、『ボッテガ・ヴェネタ』かも」とさえ、思ってしまうくらい。独特のボリューム、徹底した非装飾主義、そしてボリュームアウターから連想する着心地と、ボディコンワンピの緊張感。どれも割り切ったくらい大胆で潔いので、「わかりやすい」んだと思うんです。

 ということで僕も「わかりやすく」お話すれば、「新しいスタイルを見つけたいけれど、『グッチ(GUCCI)』や『バレンシアガ(BALENCIAGA)』は、“てんこ盛り”すぎて、難しいかもなぁ」と思う人は(実際、これらのメゾンにもシンプルなアイテムはあるのですが)、「ボッテガ・ヴェネタ」を新たな候補に選ぶかも。もしかしたら、“ポスト・フィービー”枠ではなく、“「グッチ」&「バレンシアガ」対抗枠”なのかも?と思ったのでした。

20:30 A|X アルマーニ エクスチェンジ

 さぁ、本日最後は、なぜかバスケットボールコートへ(笑)!!「A|X アルマーニ エクスチェンジ(A|X ARMANI EXCHANGE)」がユニホームを提供するミラノのバスケットボールチーム、オリンピア・ミラノの試合観戦にやってまいりました。

 イタリアと言えばサッカーですが、バスケもサッカーみたいに応援するんですね(笑)。

 そして会場には、アルマーニさん!!アナタ、今朝は2回もランウエイショーを開いたのに、こんなに夜遅いバスケ観戦って、どれだけパワフルな80代ですか(驚)!?

 アルマーニさんが会場を去るときは、バスケファンも彼に手を振っていました。この人はやっぱり、ファッション業界のみならず、イタリア中で愛されているんですね。

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ロンドンコレ初のショーチケット一般販売は売り上げ上々 主催者が語る狙いと今後

 2020年春夏シーズンのロンドン・ファッション・ウイーク(LONDON FASHION WEEK 以下、LFW)は、一般入場可能なパブリックショー(Public Show)を初めて開催した。イベント内容は9月14日に「アレクサチャン(ALEXACHUNG)」の単独ショー、15日に「ハウス オブ ホランド(HOUSE OF HOLLAND)」と「セルフ-ポートレート(SELF-PORTRAIT)」の合同ショーの2種だ。LFWの公式ホームページ上で販売したチケットの価格は1日分のスタンダードが135ポンド(約1万7700円)、フロントローが245ポンド(約3万2000円)で、業界人を招いたトークショーや9月に開催予定のイベントに参加する権利も含まれている。

8割は埋まるも高額のフロントローはまばら

 会期中は両日3回のショーが行われた。9月14日の「アレクサチャン」の初回は約300人のキャパシティーの会場に250人ほどが来場し、高額なフロントローに空席はあったものの上々の集客だった。会場はLFWのメーン会場である「180 ザ ストランド」内で、場内に目立った装飾はなく、ただ白い真っ直ぐのキャットウオークとスクリーンが設置されていた。ショー前にLFWを紹介する約5分間のムービーが放映され、ショー前にもデザイナーのアレクサ・チャン自らがブランドについて語る約3分間のムービーが流れた後に本番がスタートした。ランウエイで見せたのは19-20年秋冬コレクションで、同ブランドが2月のLFWで行ったショーとは内容が異なり、ジーンズやジャンプスーツなどを組み合わせたリアルなスタイリングの27ルックだった。会場内にはポップアップショップが開かれ、ショーで見た商品がすぐに購入できる仕組みになっていた。ショーの費用は主催するLFWが負担し、ポップアップの商品もそれぞれの店頭用在庫なのでブランドのリスクは少ない。デザイナーのビジョンや世界観を発信する場である業界人向けのファッションショーとは違い、消費者の販売促進が目的といえるだろう。

来場客に聞く
「イベントどうでした?」

 客席は頭から足先まで着飾った一般客が大半で、業界人の姿はほとんど見られなかった。女性客が多く、中にはカップルらしき男女もいた。ショーが始まるまで待ちきれずにキョロキョロと会場を見渡したり、友人同士でセルフィーを撮ったり、来場者が一大イベントとして楽しそうな様子が印象的だった。ショーの後、女性客数人に感想を聞いた。15歳のスザンナは高校卒業後に専門学校へ通う予定のデザイナー志望。「ファッションショーに参加するのがずっと昔から夢だったけど、どうやったら参加できるのか分からなかったの。だからパブリックショーが開催されると知った時は大喜びしたわ!しかも私にとってアレクサ・チャンは憧れの存在だから絶対に参加したくて、すぐに両親に頼んでチケットを買ってもらい1人で来たの。ショーで見た洋服はとても可愛かったけれど、あっという間に終わってしまったのが少し悲しいな。この後のトークショーにも参加する予定よ」と興奮冷めやらぬ様子だった。

 ピンク色のヘアとホログラムの洋服でひときわ華やかな姿だったクリスティーナは、現在ロンドン郊外のファッション専門学校でマーチャンダイジングを学ぶ学生だ。「パブリックショーは消費者が業界の一員になれるような素晴らしい取り組みだと思う。次回もあれば来たいし、今後はアフターパーティーなども開催してほしいわ。半年後までにお金を貯めて、次はフロントローのチケットを購入するの」とポジティブな意見を述べた。

主催者に聞く
「チケット売れました?」

 LFWを主催する英国ファッション評議会(ブリティッシュ・ファッション・カウンシル/BFC)のキャロライン・ラッシュ(Caroline Rush)最高経営責任者(CEO)は、パブリックショー開催の理由について「SNSの台頭によってブランドと顧客の繋がりはますます強くなっており、ブランドはBtoC事業に注力するようになった。一方で、一般消費者はインスタグラムなどを通じてファション・ウイークの華やかな様子が拡散されることで、より一層注目度や憧れが増している。ファッションに関心がある消費者にファッションショーを見てもらい、英国発のデザイナーや業界内で何が起きているのかを知る貴重な機会を提供することが目的の一つ。会場内の展覧会では、ファッションが世の中や環境にいい影響を与える“ポジティブ・ファッション”という考えを共有し、消費者にこれまでとは違った視点を持ってもらいたい」と語った。選定した3ブランドについては「SNSで認知度が高く、価格帯が高すぎない。すでに取引先をいくつも持っていて消費者が店頭でも気軽に商品を見られること」を理由に決めたという。チケットは2日間のうち「ハウス オブ ホランド」と「セルフ-ポートレート」の合同ショーが行われた日は完売し、好調な売れ行きだったという。今季の「LFW」はファッション業界人が約5000人、一般客が約3000人参加した。「毎シーズン来場者数に大きな変化はないが、LFWへの関心は世界中の小売業者やインフルエンサーを中心に高まっており、市場も広がっている」とラッシュ最高経営責任者。今後の展望について「2030年までにビジネスも生産も循環型システムを構築し、業界内から“ポジティブ・ファッション”を推進すること。100%サステイナブルまでいかなくとも、温室効果ガスの純排出量ゼロを目指し、クリエイティビティー面でも強化していきたい」と述べた。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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「トーガ」がファッションの“無駄”を楽しみに変えた 自由を手に入れ活気づくベーシック

 時には、寄り道先で思わぬ素敵な拾い物をすることがある。乗り間違えた電車で、美しい景色に出くわすこともある。無駄に見える人生の余白を持つことこそ、本質的に心を満たす一つの方法になる——「トーガ(TOGA)」2020年春夏コレクションのショーを見た筆者はそう思った。

 同ブランドは今シーズンもロンドン・ファッション・ウイークに参加し、ショー会場には王立英国建築家協会を選んだ。コレクションノートには、“包む(wrapping)”“再開発(redevelopment)”“能率(efficiency)”の3語がテーマとして並んでいた。「生産性最優先の現代において、生産性を優先しないという空気感をどのように作れるのかを考えた」というデザイナーの古田泰子の言葉で、コレクションの背景についての説明が始まる。今季はメキシコシティーを拠点に活動するベルギー出身のアーティスト、フランシス・アリス(Francis Alys)の作品から着想を得たという。数ある彼の作品の中で例に挙げたのは、1997年に発表された「実践のパラドックス1(ときには何にもならないこともする)」だ。これは彼が朝から晩までメキシコシティー内で巨大な氷の塊を完全に溶け切るまで押し続けた様子を撮影した映像作品だ。

 「生産過程において“不必要”なことにもっと多くの時間を費やし、そこから何が生まれるのかを見たかった」と古田デザイナーは説明する。ドレスには伸縮性のあるスポーツティーな素材を付け加え、フロントが大きく切り開かれたテーラードジャケットやパンツにはスカーフを当て、ビーチサンダルにはPVC素材のエレメントが加えられた。体を覆ったり、バッグに使用されたパラコードメッシュは魚を釣る網のようだったり、ビニール素材の花のコサージュやねじ曲げられた金属のピンなどルックを彩った装飾品は、海洋ゴミからヒントを得たのではないかと想像させた。スーツや白シャツ、トレンチコートなどのクラシックな服は、古田デザイナーの“不必要”から発展させたアイデアによって自由を手に入れ、活気づいていた。まるで“無駄”の中に価値を見出す楽しみを訴えかけてくるようだった。

 必ずしも理にかなっているわけではないし、着用することで生産性が上がるような機能的な衣服ではないかもしれないが、“不必要”を楽しむのがファッションの醍醐味でもある。「結局のところ、ファッションを作ること自体が不必要なこと。でも、それこそが大切な道楽」と古田デザイナーは締めくくった。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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ミラノコレ初日のハイライト 「プラダ」「ジル サンダー」「N°21」

 9月18日、2020年春夏シーズンのミラノ・ファッション・ウイークが開幕した。15以上のブランドが新作を発表した初日から3ブランドをレポートする。

プラダ(PRADA)

DESIGNER/ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)

 提案する洋服は、リブ編みニットのポロシャツ、コットンガーゼのナチュラルドレス、コンケーブドショルダーのシングル&ダブルジャケット、ペンシルシルエットのミディ丈スカートなど、決してバリエーションには富んでいない。むしろ型数を絞り、それらを縦横無尽に組み合わせることで、それぞれの女性の、異なるパーソナリティーを表現するのが狙いだ。

 アクセサリーは、カゴバッグから、ワンハンドルのクラシック、ミニ巾着、編み込みのフラットシューズ、レインブーツを模したレザーのニーハイ、ロープを通したサンダルなど、コチラのバリエーションは豊か。メシの種のアクセサリーは豊富に、世界観を描くウエアは型数を絞ることでイメージを強調しつつサステイナブルなマインドを表現する。

ジル サンダー(JIL SANDER)

DESIGNER/ルーク&ルーシー・メイヤー(Luke & Lucy Meier)

 2020年春夏のマストアイテムと化しつつある、ボックスシルエットのジャケットにドレスを組み合わせて、オンとオフ、強さと優しさ、フォーマルとエレガンスの双方を提案しつつ、脱ぎ着することで異なる女性像を描く。ジャケットスタイルの、1つの絶対的正解を提案した印象だ。

 引き続きモノトーンを基調に、ハリコシのあるギャバジン風の素材から、贅沢な肉厚のシルクタフタまでさまざまな素材をチョイス。前者は形を維持できる特性を生かして強めのショルダーラインを持つトップスに、後者は光沢とドレープを楽しむシャツにと、特性を生かしたパターンを追求。細かく刻んだプリーツ、ギリシャの女神のドレスを思わせるタッキングやドレープが、白黒の世界にドラマを与えた。叩きつけたラフィア、それを緻密に這わせることでレースのように仕上げたパーツをラペルやヘムラインにプラスしたドレスやコートもドラマチック。

ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)

Designer/アレッサンドロ・デラクア

 ウィメンズとメンズ初の合同ショーを披露した。招待状として用意されたベージュのチュールショーツがジェンダー・ニュートラル(性別を問わない)なアイテムだったように、男女共通アイテムでありながら色気を感じられるコレクションがそろった。巧みなのはヘルシーな肌見せだ。序盤に登場させた小花柄のセットアップをはじめ、殆どのルックの袖下や背中に大胆なスリットを入れることで野暮ったさを打ち消した。また、男女で共通するひざ下丈のハーフパンツと肩パッド付きのノースリーブシャツは、リラックス感のあるカジュアルアイテムでありながら、素材と仕立ての良さでエレガントに昇華した。

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ミラノコレ初日のハイライト 「プラダ」「ジル サンダー」「N°21」

 9月18日、2020年春夏シーズンのミラノ・ファッション・ウイークが開幕した。15以上のブランドが新作を発表した初日から3ブランドをレポートする。

プラダ(PRADA)

DESIGNER/ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)

 提案する洋服は、リブ編みニットのポロシャツ、コットンガーゼのナチュラルドレス、コンケーブドショルダーのシングル&ダブルジャケット、ペンシルシルエットのミディ丈スカートなど、決してバリエーションには富んでいない。むしろ型数を絞り、それらを縦横無尽に組み合わせることで、それぞれの女性の、異なるパーソナリティーを表現するのが狙いだ。

 アクセサリーは、カゴバッグから、ワンハンドルのクラシック、ミニ巾着、編み込みのフラットシューズ、レインブーツを模したレザーのニーハイ、ロープを通したサンダルなど、コチラのバリエーションは豊か。メシの種のアクセサリーは豊富に、世界観を描くウエアは型数を絞ることでイメージを強調しつつサステイナブルなマインドを表現する。

ジル サンダー(JIL SANDER)

DESIGNER/ルーク&ルーシー・メイヤー(Luke & Lucy Meier)

 2020年春夏のマストアイテムと化しつつある、ボックスシルエットのジャケットにドレスを組み合わせて、オンとオフ、強さと優しさ、フォーマルとエレガンスの双方を提案しつつ、脱ぎ着することで異なる女性像を描く。ジャケットスタイルの、1つの絶対的正解を提案した印象だ。

 引き続きモノトーンを基調に、ハリコシのあるギャバジン風の素材から、贅沢な肉厚のシルクタフタまでさまざまな素材をチョイス。前者は形を維持できる特性を生かして強めのショルダーラインを持つトップスに、後者は光沢とドレープを楽しむシャツにと、特性を生かしたパターンを追求。細かく刻んだプリーツ、ギリシャの女神のドレスを思わせるタッキングやドレープが、白黒の世界にドラマを与えた。叩きつけたラフィア、それを緻密に這わせることでレースのように仕上げたパーツをラペルやヘムラインにプラスしたドレスやコートもドラマチック。

ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)

Designer/アレッサンドロ・デラクア

 ウィメンズとメンズ初の合同ショーを披露した。招待状として用意されたベージュのチュールショーツがジェンダー・ニュートラル(性別を問わない)なアイテムだったように、男女共通アイテムでありながら色気を感じられるコレクションがそろった。巧みなのはヘルシーな肌見せだ。序盤に登場させた小花柄のセットアップをはじめ、殆どのルックの袖下や背中に大胆なスリットを入れることで野暮ったさを打ち消した。また、男女で共通するひざ下丈のハーフパンツと肩パッド付きのノースリーブシャツは、リラックス感のあるカジュアルアイテムでありながら、素材と仕立ての良さでエレガントに昇華した。

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ロンドンコレのドタバタ日記2日目 ショー会場は英国博物館からスポーツジム、再開発エリアまで

 こんにちは、ロンドン・ファッション・ウイーク(LFW)2日目の9月14日の取材日記をお届けします。土曜日の今日から一般公開の”パブリックショー(Public Show)”がスタートし、LFWのメイン会場である”180 ザ ストランド(通称ワンエイティー)”が学生をはじめとする若いお客さんでとても賑わっています。その代わり、従来のBtoBのランウエイショーは公式会場以外での開催となり、英国博物館やテート・モダンをはじめ、地元のスポーツジム、図書館などさまざまな公共の施設で行われます。街中を急ぎで移動することが多く「もう間に合わない!」とヒヤヒヤすることも……。そんなドタバタ劇を綴らせていただきます。

9:45 ロンドンコレの仕掛け人をインタビュー

 メイン会場のワンエイティー中のVIPラウンジで、LFWを主催する英国ファッション評議会(ブリティッシュ・ファッション・カウンシル/BFC)のキャロライン・ラッシュ(Caroline Rush)最高経営責任者(CEO)にインタビューを行いました。内容は”パブリックショー”について。10分のみのクイックインタビューですが、「なぜLFWの一部を一般開放するの?」「一般向けのチケットは売れた?」「LFWの来場者は年々増えている?減っている?」などの質問に答えていただきました。インタビューは後日アップ予定なので、そちらをご覧いただけたらと思います。

10:00「アレクサチャン(ALEXACHUNG)」パブリックショー

 第1回目のパブリックショーを取材するため、プレスパスで入場。チケットは1席135ポンド(約1万7700円)、フロントローは245ポンド(約3万2000円)とちょっと割高で、学生を中心とした来場者はやはり手が届かないのか、フロントローは埋まっていなかったです。ショーは一般客向けの”SEE NOW, BUY NOW”になっていて、今店頭で販売中の2019-20年秋冬商品を着たモデルたちが登場します。従来のLFWのランウエイショーに出席するような業界関係者は入場しておらず、会場の雰囲気は普段のショーとは別物です。友人同士で写真を撮りあったりと、来場客のワクワク感が漂っていました。席で待つこと30分。10:30になってもショーが開始しない……。11:00スタートの「ポーツ1961」のショーに間に合わない可能性が出てきたので、一緒に入場したライターのELIE INOUEさんに取材を託し、会場を後にしました。

11:00 ポーツ1961(PORTS1961)

 現代美術館のテート・モダンに到着し、無事にショーに間に合いました。今季の「ポーツ1961」は著名スタイリストのカール・テンプラー(Karl Templer)率いる新チームでのデビューショーです。到着してみるとロゴも変わっていて、この四角と丸の配置で”1961”を表しています。洋服もがらっと変わった印象。ショーのレポートはこちらをご覧ください。会場では日本からのゲストAMIAYAの2人もキャッチしました。

13:00 マーケス アルメイダ(MARQUES'ALMEIDA)

 先シーズンはパリで発表していた「マーケス アルメイダ」がロンドンにカムバック。ショー前には、パウロ(Paulo)とマルタ(Marta)のデザイナー夫妻の友人やモデルたちが未来の女性たちに向けたメッセージが映像とともに流れました。日本の原宿・竹下通りのような若者街ブリックレーンで行ったのですが、中心地から40分ほど離れた場所に位置しているため、ショー終了後の13:30は超ダッシュでバスに乗りました。

14:30 モリー ゴダード(MOLLY GODDARD)

 30分押しでスタートした「モリー ゴダード」はスポーツセンターの体育館で披露しました。来場者全員がフロントローで、うれしいシーティングでしたが、通路の狭さはモデルたちが通過できるのか不満なほどにギリギリ。案の定、ボリュームのあるチュールドレスが膝や手にバンバン当たります(笑)。

15:00 ハルパーン(HALPERN)

 「ヴェルサーチェ(VERSACE)」や「オスカー デ ラ レンタ(OSCAR DE LA RENTA)」で経験を積んだマイケル・ハルパーン(Michael Halpern)による「ハルパーン」は、シャンデリアが輝くボールルームで、イブニングドレスを見せました。アニマルプリントのタイツとドレスのコーディネートなどが目を引きます。このショーも30分押しで始まり、次のショーへと焦りながら移動します。

16:00 トーガ(TOGA)

 16:10に走って到着した時点で自分のシーティング席が埋まっており、位置を確保するとすぐにショーが開始。ヒヤヒヤしましたが、最初から見られてよかったです。昨春夏はテーラードジャケットにサイクリングパンツの提案だったのが、今季はテーラードジャケットにショートパンツになっていました。細身のショートパンツは今季、他のブランドでもたくさん見かけて気になるアイテムの一つ。難易度が高いサイクリングパンツよりもチャレンジしやすいので、個人的にも来春はいてみたいと思っています。

17:30 ハウス オブ ホランド(HOUSE OF HOLLAND)

 「ハウス オブ ホランド」は再開発が進むキングス・クロス地区でショーを開きました。こちらも急いで移動しましたが、着いた時にはまだリハーサル中でした。ラッキー!と、少し時間と心に余裕ができたので、再開発地域を15分ほどぶらぶら歩きまわってみました。ここはファッションの名門校セント・マーチン美術大学の真裏にある、ショッピングモールは古い車庫を生かして作られた建物。中庭は少し、ニューヨークのハイラインに似ています。ロンドンに詳しい人たちから聞いた話によると周りに建っているのは億ション(1億円以上の高価格な分譲マンション)だそう。住宅には見えないパイプが無数に配置されたユニークなデザインの建物も億ションだそう。

 「ハウス オブ ホランド」のショーは、球体アートを前にした野外で行い、フィナーレでは中国のスポーツメーカーのエクステップ(XSTEP)とのカプセルコレクションも披露しました。ショー後にはローンチパーティーを開催。コラボスニーカーもずらりと並んでいます。

18:00 レジーナ ピョウ(REJINA PYO)

 韓国人デザイナーの「レジーナ ピョウ」の会場は図書館。インビテーションも貸し出し用の貸出カードがモチーフになっていている!人気バッグシリーズ”オリヴィア(OLIVIA)”もいろんな出てきました。

19:00 アウェイク(A.W.A.K.E.)

 「アウェイク」は教会でショーを行いました。今日から一緒に取材に入ったパリ在住ライターのELIE INOUEさんは、ちゃんと「アウェイク」のブラウスを着用して来場していました。袖コンボリュームがかわいいです。これからINOUEさんのロンドンコレ取材記事が上がってきますので、お楽しみにお待ちください。

22:00 ファッション フォー リリーフ(FASHION FOR RELIEF)

 スーパーモデルのナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)がホストを務めるチャリティーショー「ファッション フォー リリーフ」が大英博物館で開催されました。開場を待っていると、「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」の小泉智貴デザイナーに再開。NYファッション・ウイークでのショー発表後、撮影などの予定がありそのままロンドンに来ていたそう。しかも、このイベントにもドレスを貸し出していてショーに登場しました。小泉さんの他にもキム・ジョーンズ(Kim Jones)やピーター・デュンダス(Peter Dundas)ら著名デザイナーの姿がありました。ゲストにはイブニングドレスを着用している人もたくさんいて、豪華なガラパーティーに訪れた気分を味わうことができました。ショーが始まったのは22:00と、夜は寒い会場での2時間待ちは体に堪えましたが、大英博物館でショーを見られる機会は滅多にないですし、「グッチ(GUCCI)」や「ディオール(DIOR)」などから、「イリス ヴァン ヘルペン(IRIS VAN HERPEN)」などのクチュールピースまでも登場し、待った甲斐はあったと思います。ランウエイにはナオミ本人も3回衣装チェンジをして登場しました。

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NYコレハイライトVol.6 NYコレ最終日の2ブランドをプレイバック

 2020年春夏ニューヨーク・コレクションの最終日の2ブランドをプレイバックする。

マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)

DESIGNER/マイケル・コース

 自身の祖母が移民として、アメリカンドリームを夢見てニューヨークに移住した話からインスピレーションを受けた今季は、アメリカのトラディショナルなスタイルがテーマ。金ボタン付きのネイビーのブレザーにプリーツスカート、星条旗の星をイメージしたスター型スタッズ付きのスカートとニット、フリル付きのトレンチコートなどプレッピーなアイテムが続々と登場。さらにはアメリカの伝統的なデザートであるチェリーパイから着想を得たチェリー柄のワンピースなど、遊びココロに溢れたルックも手掛けた。ショーの音楽はコーラス隊によるアメリカの愛国唱歌で、会場一体が希望に溢れたパトリオティックなムードに包まれた。

マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)

DESIGNER/マーク・ジェイコブス

 9月11日に発表した「マーク ジェイコブス」。ちょうど18年前の同日にニューヨークのワールドトレードセンターで同時多発テロ事件が起き、マークはその前夜に2001年春夏コレクションを発表した。当時のコレクションは人生の喜びやダイバーシティー、オプティミズムなどを祝うテーマだったが、今季はそのテーマを再び掲げ、カラフルで多様性に富んだアイテムをラインアップ。その振り幅はトラディショナルなセットアップやレトロなウエスタンスタイルから、メタリックなパンツを取り入れたフューチャリスティックなルックまで広く、過去、現在、未来のスタイルからインスピレーションを受けた。後半にはクチュールワークが光る全身フリルのミニドレスやガウンも登場し、華やかなコレクションでニューヨーク・ファッション・ウイークを締めくくった。

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ロンドンコレ2日目のハイライト 「トーガ」や新生「ポーツ1961」など

 ロンドンコレ2日目の9月14日は、一般公開の“パブリックショー”が公式スケジュール内で開催され、多くの一般客もファッション・ウイークを楽しんだ。20ブランドから厳選3ブランドをレポートする。

ポーツ1961(PORTS 1961)

DESIGNER/カール・テンプラー

 クリエイティブなプロ集団による新生「ポーツ1961」のデビューコレクションが、美術館のテート・モダンでベールを脱いだ。「サカイ(SACAI)」のショースタイリストとしても知られるカール・テンプラー(Karl Templer)をアーティスティック・ディレクターに起用し、「ディオール(DIOR)」から「ザラ(ZARA)」までをクライアントに持つアートディレクターのファビアン・バロン(Fabien Baron)らから知恵を集めて新たなブランド像を発信する。今季はブランドの創業者である日系カナダ人実業家、ルーク・タナベが日本産シルクを輸入して世界へ広め、国際的な背景を持って60年代の女性たちに洋服を提案していったルーツをもとに、文化の融合をコラージュで表現した。60年代風の色鮮やかなプリントを左右対称に掛け合わせや、シルクを部分使いしたドレスをはじめとするクレイジーパターンと異素材ミックスがポイントだ。アクセサリー提案が豊作で、アニマル柄をコラージュしたストラップサンダルをはじめ、ミニショルダーバッグ、大振りのピアスやネックレスなどが登場した。これらのアクセサリーや、フィッシュネットのセカンドスキントップスなどの装飾性の高いアイテムは、スタイリストのテンプラーならではのアイデアだ。前任のナターシャ・チャガール(Natasa Cagalj)による“大人の女性のためのひねりのきいたクリーンな日常着”から、色柄を強調した大胆なデザインにシフトチェンジしたことで顧客はがらっと入れ替わる予感。

トーガ(TOGA)

DESIGNER/古田泰子

 今季の「トーガ」は、本質的に必要がないものに美しさを見出した。ビニール素材のコサージュを合わせたテーラードジャケット、大きなスリットから花柄の裏地が見えるスラックスなど、存在しなくてもいいが、あれば一味変わるデザインの可能性を模索。スーツ地のショートパンツや、ヘソ出しのクロップドトップス、大きな穴が無数にあいたニットなど、リアルとチャレンジングなアイテムのバランスも絶妙だ。

モリー ゴダード(MOLLY GODDARD)

DESIGNER/モリー・ゴダード

 ブランドの代名詞であるチュールドレスを核に、新たな素材やアイテムへの挑戦も著しい。今季はデニムのドレスやスカート、グログランテープを装飾したコートなどを始め、スタッズを付けたレザーのハンドバッグやショルダーバッグなど、アクセサリーのバリエーションを広げた。いずれもブランドの世界観を日常的にまとうことができるアイテムで、”大人ガーリー”層の心を掴みそうだ。その一方で原点のチュールドレスは今までよりも一層巨大化して登場した。

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ロンドンコレのドタバタ日記1日目 参加デザイナーが目指す“ポジティブ・ファッション”とは?

 皆さん、こんにちは。ロンドン・ファッション・ウイーク(LFW)が開幕しました!ニューヨークで「ドタバタ日記」を綴っていた編集長の村上からバトンを受け取り、私大杉がロンドンコレ取材の裏側を日記にしてお伝えしていきたいと思います。私はこれまで東京、ニューヨーク、ミラノ、パリのウィメンズ・コレクションの取材を経験しましたが、今季初めてLFWに参りました。日記ではロンドンの今や、他都市とのコレクションの違いなどにも触れていきたいと思っています。日記なので1日以上時差がありますが、4日間ぜひお付き合いいただけたらうれしいです。

8:30 LFWオープニングレセプション

 初日の朝はロンドンコレのキックオフ会見が行われました。主催者の英国ファッション評議会(ブリティッシュ・ファッション・カウンシル/BFC)からの挨拶があり、まずは英国のEU離脱(Brexit)問題について、離脱に伴う輸出入取り引きへの影響やリスクをデザイナーたちと共有し始めて対策していると言います。また今LFWが力を入れているのが“ポジティブ・ファッション”です。サステイナビリティーを意識したモノ作りをはじめ、多様性と平等性の尊重、職人技とコミュニティーの保護など、一言で言うと“世の中へ良い影響を与えるファッション”を発信することです。モデルとして活動しながら、アクティビストで“ポジティブ・ファッション”のアンバサダーも務めるアジョア・アボアー(Adwoa Aboah)がスピーチを行いました。私は個人的にアジョアの大ファンなので、彼女のスピーチを生で聞くことができてとても嬉しかったです。アジョアの素晴らしさについては、また後日どこかで記事にできたらと思います。

9:00 マーク・ファスト

 トップバッターはニットウエアを得意とする「マーク・ファスト(MARK FAST)」。LFWのメイン会場である”180 ザ ストランド(通称ワンエイティー)”でショーを発表しました。目が覚めるネオンカラーに、ボディコンシャスでタイトなニットドレス、フリンジはどことなくチアリーダーのポンポンのようです。モデルにはプラスサイズモデルも起用しています。NYコレのように分かりやすい表現ではないですが、多様性を重んじていて、早速“ポジティブ・ファッション”を感じました。

10:00 ジェイミー ウェイ ファン

 台湾人デザイナーの「ジェイミー ウェイ ファン(JAMIE WEI HUANG)」のショーに向かうため、会場の外に出るとカメラを持ってスナップハンターをしていたファッションジャーナリストの宮田理江さんにばったり!宮田さんは「WWDJAPAN.com」のリアルトレンドのマスターとして、トレンド解説の記事でおなじみです。私は宮田さんを逆にスナップし、素敵な笑顔をいただきました。

 宮田さんによる今秋冬のトレンド解説はこちら

 「ジェイミー ウェイ ファン」のショーでは、全面にビーズを使ったブラトップやバッグが気になりました。この“ビーズ使い”はこの後も出てくる一つの傾向になっていきます。ショーのフィナーレにはバックステージからスタッフが登場し挨拶。ロンドンにアトリエがあるブランドですが、全員アジア人ですね。

11:00 ネンシ ドジョカ

 メイン会場のワンエイティーに徒歩で戻り、「ネンシ ドジョカ(NENSI DOJAKA)」のプレゼンテーションをチェック。真っ暗闇で、黒とベージュのアンダーウエアとミニドレスを着たモデルたちがポーズを決めています。自撮り棒を持って撮影しているのもシュール。この手のプレゼンテーションは出入りが自由で、5分見て会場を去ります。

12:00 16アーリントン(16ARLINGTON)

 BFCに用意していただいたベンツの車で会場移動をスタート。「16アーリントン(16ARLINGTON)」はライブ会場で、ダンスパーティー風のプレゼンテーションを開催。1920年代のフラッパーのようなフリンジドレスから60年代風の色あざやかなミニドレスまで登場する時代をミックスした華やかでギラギラな世界観です。音楽に合わせて踊っているモデルたちがとても可愛い!

12:30 エフティシア

 メイン会場に戻り、「エフティシア(EFTYCHIA)」のプレゼンテーションに入場。BFCの若手育成プログラム「ニュージェン(NEWGEN)」に選ばれた注目デザイナーとして、モデルによる発表を行いました。2019年度のLVMHプライズのセミファイナリストにも選ばれていたブランドです。先ほど「ネンシ ドジョカ」も使っていた空間に、デスクなどを足してオフィス空間を作っていました。テーラードを中心にゆったりとしたスーツを着たモデルたちが登場しました。

 「ニュージェン」と言えば、「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」や「シモーン ロシャ(SIMONE ROCHA)」を輩出した若手育成の登竜門。プレゼンテーションが行われていた隣の部屋では、今「ニュージェン」がサポートするウィメンズ10ブランド、メンズ10ブランドの計20ブランドの前シーズンの19-20年秋冬ルック1体が並んでいました。私みたいにLFW初心者にとっては、先にブランドを予習できるありがたいスペースです。是非東コレでも取り入れて欲しいです。マネキンの隣のプレートには、それぞれのブランド名とともに”ポジティブ ファッション”の一環で、どんなことに注力をしているのかが解説されています。例えば、プリント技術で「リチャード クイン(RICHARD QUINN)」はサステナビリティー、「マティ・ボヴァン(MATTY BOVAN)」は職人技とコミュニティーなど、今はただ素敵なコレクションを作ればいい時代ではないことがよく分かります。

13:00 ボラ アクス

 メインのショー会場に戻り、「ボラ アクス(BORA AKSU)」のショーを見ました。20世紀初頭に女性の権利を求めるために活動したフェミニストであり、ペルシャ王宮のプリンセスだったタージ・アッサルタネ(Taj Saltaneh)が着想源になっています。フリル、小花柄、赤チェックなど、少し日本ガーリーの「ピンクハウス(PINKHOUSE)」や「ミルク(MILK)」に通ずるスタイルを感じました。スタイリングは、雑誌「ルラ(Lula)」元編集長で「ヴァイオレットブック(Violet Book)」を手掛ける有名スタイリストのリース・クラーク(Leith Clark)が担当しています。

14:00 キコ コスタディノフ

 今回は珍しくLFW非公式のオフスケジュールでショーを発表した「キコ コスタディノフ(KIKO KOSTADINOV)」の会場へ。会場には今季の着想源の一つにもなっている英国人アーティストのロージー・グレイス・ワード(Rosie Grace Ward)による大きな2つの鉄彫刻がドーンと並んでいます。日本でもメンズに人気ですが、ウィメンズの過去2シーズンは少々作品作りに比重が傾いていて、リアルな一般女性が着用できる印象がありませんでした。しかし、今季は少し“衣装感”が薄れて(まだありますが)、ウエアラブルになったと感じます。渦巻きのワンピースやトップス、アンモナイト型のポシェットなどもかわいかったです。詳しいミニレポートはこちらでチェックくださいませ。

16:00 ファッションイースト

 若手の合同ショー「ファッションイースト(FASHION EAST)」をチェックしてきました。中国人デザイナーのユハン・ワン(Yuhan Wang)は2週間前に日本のファッション展示会イベント「ルームス(rooms)」に出展していて、デザイナーにも会ったばかりでした。セント・マーチン美術大学を1年前に卒業したばかりですが、すでにドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)やLAのH.ロレンツォ(H.LORENZO)などで扱われています。「シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)」や「モリー ゴダード(MOLLY GODDARD)」などのロンドンの次なる“ガーリー枠”となるか期待です。

17:00 ドム セバスチャン

 メイン会場ワンエイティーに戻り、「ドム セバスチャン(DOM SEBASTIAN)」のプレゼンテーションへ。得意とする色鮮やかなグラフィックプリントを使ったコレクションを発表しています。同様のプリントを施した壺などの大道具の作りも凝っています。

18:00 マティ・ボヴァン

 「マティ・ボヴァン」のショーへ。種々雑多な生地を掛け合わせた造形的でダイナミックなコレクションです。横から見ていると分からなかったのですが、ショー終了後にルックを確認すると、モデルたちが付けていた反射板のような特殊なマスクは、顔を歪んで見せていたことが分かりました。改めて見ると本当にカオスです。スタイリストは「ラブ(LOVE)」マガジンの編集長で、「プラダ(PRADA)」などのショーも手掛ける有名スタイリストのケイティ・グランド(Katie Grand)でした。

19:00 ポーラ ノア

 「ポーラ ノア(PAULA KNORR)」のショーは英老舗百貨店、ハーヴェイ・ニコルズ(Harvey Nichols)のレストランで行われました。ラズベリー入りのカクテルをいただきながら、ビジューや刺しゅうがたっぷりあしらわれたドレスを拝見。イブニングドレスブランドではありますが、ドレスの共布で作ったミニポシェットを合わせたドレスルックは、少し新鮮でかわいかったです。

20:00 マルタ ジャクボウスキー

 車でワンエイティーに戻り、ドイツ出身デザイナーの「マルタ ジャクボウスキー(MARTA JAKUBOWSKI)」のショーへ。1998年のドイツ映画「ラン・ローラ・ラン (Run Lola Run)」の主人公のローラのタフな女性像が着想源になっていました。劇中の挿入歌「Believe」をBGMに、角ばったショルダーラインのジャケットやフェイクレイヤードのパンツなどが登場します。日本でも感度の高い人たちに支持されているショルダーラインを変形させたキャミソールやトップスは引き続き提案がありました。

21:00 0 モンクレール リチャード・クイン

 初日のラストストップは、老舗セレクトショップのマッチズ(MATCHES)で行われた「0 モンクレール リチャード・クイン(0 MONCLER RICHARD QUINN)」の発売を記念したローンチパーティーです。コレクションのプリントを用いたソファーが用意されていて、来場者たちが自由に撮影を楽しんでいました。特にコラボダウンコートを掛け布団にして寝っ転がって写真を撮っている子たちがキュートでした(笑)。会場のマッチズは最近、ファッションECの「マッチズファッション ドットコム(MATCHESFASHION.COM)」から知る人も多いですが、ロンドンの老舗セレクトショップです。時間があれば店内をゆっくり見たかったのですが、終了時間ぎりぎりに終了時間ぎりぎりの滑り込んだため断念しました。またゆっくり見にきたいと思います。

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同じ「愛国」なのに何が違う? NYデザイナーとドナルド・トランプの「パトリオット」

 「パトリオット(Patriot)」。

 日本語では「愛国心」を意味しますが、今、この言葉を口にするには勇気が必要です。特にアメリカでは、バッシングも覚悟しなければ。政策に対して疑問が募るばかりのドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の基本理念は「愛国主義」、そして、世界を見れば日本も含め右翼化の傾向が顕著で「コレでいいの?自分の国さえ良ければいいの?」という警鐘の音が日々大きくなっているからです。

 ところが2020年春夏ニューヨーク・コレクションでは、臆せず「パトリオット」を口にするデザイナーが何人も現れました。実に勇敢です。そして興味深かったのは、アメリカ人の彼らによる愛国のコレクションが、日本人の僕にとっても“共感ポイント”盛りだくさんだったこと。ドナルド・トランプに関するニュースを聞いている時のような“しかめっ面”にならなかったんです(笑)。それはデザイナーの「愛国心」が、ドナルド・トランプの「愛国主義」とは全く違うものだからでしょう。今日は、そんなお話です。

 ではまず、「今回のコレクションは、デザイナー人生で一番『パトリオット』」と話したデザイナーから紹介しましょう。マイケル・コース(Michael Kors)です。今回マイケルは、東欧出身の彼の祖母が、1900年代初頭から移民にとってニューヨークの玄関口だったエリス島を経て、ニューヨークで根を下ろしたパーソナルなヒストリーに焦点を当てました。人生で初めてエリス島を訪れ、当時の移民たちの力強さ、抱いていた希望の輝き、そして、前途多難ながらチャンスに溢れていたアメリカという国の魅力からコレクションを組み立てます。

 だからこそ、コレクションの根本はアメリカントラッド。袖を巨大なパフスリーブに変換した紺ブレにハイウエストパンツのスタイルは、アメリカそのものであり、実用主義を重んじる「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」らしくもあります。当時のアメリカに溢れていた開拓者精神、そして、彼らを広く受け入れたダイバーシティー(多様性)のマインドは、アメリカンプレッピーに組み合わせた真逆のテイスト、パンクとなって現れました。チェック柄のトラッドには、ピカピカのシルバースタッズ。レトロなクラシックバッグには、やっぱり輝くゴールドスタッズ。その煌めきは、1920年代のアメリカの輝きであり、現在アメリカが最先端のダイバーシティーの象徴です。

 お次は、「プラバル グルン(PRABAL GURUNG)」です。ブランド設立10周年の今回は、「アメリカの理想」と題してビューティ・ページェント、いわゆるミスコンを着想源にコレクションを組み立てました。「パトリオット」でミスコン、2重でドキドキしますね(笑)。かつてからミスコンは、「女性蔑視ではないか?」と批判されるものでもありました。ところがプラバルは、全米各地からさまざまな女性が集うミスコンは、ダイバーシティーの象徴であると解釈。この“コンテスト”にメンズも登場させることで「女性蔑視」という批判を回避しました。

 コレクションは、ビューティ・ページェントに欠かせないド派手なドレス、バラのモチーフが盛りだくさん。そこにアメリカらしいデニム、混じり合う色がダイバーシティーを表現するタイダイ、そして、打ち上がってから消えるまでの数秒間に色が次々変わる花火のモチーフが加わります。フィナーレは、全員がタスキをかけて登場。ミスコンっぽいですね(笑)。「WHO GETS TO BE AMERICAN?」、直訳すれば「アメリカ人(になれるの)は誰?」、転ずれば「願えば皆、アメリカ人」という意味かな?フィリピン生まれ・ネパール育ち、移民としてやってきたプラバルが考える、理想のアメリカ像が伺えます。国への想いに溢れたコレクションです。

 黒人デザイナー、カービー・ジーン・レイモンド(Kerby Jean-Raymond)の「パイヤー モス(PYER MOSS)」は、まるで牧師のような黒人による教会の日曜礼拝みたいな説教から始まりました。会場に集った黒人ゲストに、奴隷としてこの国にやってきてから400年がたった今こそ、アメリカの一員として高貴であることを自覚せよと説きます。ほんの少し前までファッションショーの世界における黒人は、白人に対するカウンターカルチャーとして存在していた感がありますが、もはやそんな対立構造はなく、1つなんだと実感しました。

 そう、この対立構造ではない「愛国」が、思わず苦い顔をしてしまうドナルド・トランプの「愛国主義」とは違うんだと思います。彼の「愛国主義」に基づく政策や主義・主張は、例えば、メキシコを相手とした国境の壁構想、中国を相手とした貿易摩擦など、対立構造の基に成立している。でも20年春夏のデザイナーによる「パトリオット」には対立構造なんて存在せず、インクルージョン(包摂・包括性)の延長線上にある、多様な人々を1つに結束させるキーワードだと思うのです。だからこそデザイナーの「愛国」は、「アメリカへの愛」でありながら、日本人の僕らを否定しない。それが「アメリカ人の愛国心」に日本人の僕さえ共感できた最大の理由だと思うのです。

 時を同じくしてニューヨークに渡り、演劇を通してアメリカンカルチャーを考えている大学教授の友人は、「パトリオットは、アメリカの長所であり短所、強みであり弱みだと思う」と話していました。その通りです。

 でも、マイケルやプラバル、カービーのパトリオットなら、アメリカは新しい一歩を踏み出すことができる。そんな気がするのです。

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ロンドンコレ初日のハイライト 「キコ コスタディノフ」「ファッション イースト」など

 2020年春夏ロンドン・ファッション・ウイークは9月13日に開幕。初日から20以上のブランドがランウエイショーやプレゼンテーションを発表した。厳選して4ブランドをレポート。

キコ コスタディノフ(KIKO KOSTADINOV)

DESIGNER/ディアナ・ファニング&ローラ・ファニング

 ディアナ・ファニングとローラ・ファニングの双子の姉妹が手掛ける3シーズン目のウィメンズ・コレクション。切り替えパネルのパターンテクニックを得意とする2人は、古代ギリシャの衣服の有機的なドレープを研究し、現在女性に向けた力強い日常着へと提案する。今季は、“渦巻き”のオンパレード。英国人アーティストのロージー・グレイス・ワード(Rosie Grace Ward)による鉄彫刻から着想を得たトライバル柄をはじめとする渦巻きは、メタルネックレスやトップスの装飾として用いて、キャッチーなアンモナイト形のバッグもお目見え。その“渦巻き”への執着は、「アシックス(ASICS)」とのコラボレーションウエアとシューズにも現れた。これまでも「キコ コスタディノフ」が扱ってきた巨大な「アシックス」のブランドマーク”スパイラル”を大胆にのせたスニーカーや、ジャージーのポロシャツ、アウターが登場。「カンペール(CAMPER)」とのコラボでは、グラゲのような柔らかいシェイプをかたどったトングが特徴的なヒールサンダルも発表した。依然、独創的なシルエットとボールドな色使いからコンセプチュアルなコレクションではあるが、過去2シーズンよりも軽いカットソーや、スポーティーなパンツなどが増えリアルに一歩近づいた印象だ。

ファッション イースト(FASHION EAST)

DESIGNER/アンクタ・サルカ、ユハン・ワン、ガレス・ライトン

 若手ブランドの合同ショープログラム「ファッション イースト」は、「ナイキ(NIKE)」のサポートの下、「アンクタ サルカ(ANCUTA SARCA)」「ガレス ライトン(GARETH WRIGHTON)」「ユハン ワン(YUHAN WANG)」の3ブランドが新作を披露した。会場は「ナイキラボ(NIKELAB)」店舗の跡地。アップサイクルのシューズブランドの「アンクタ サルカ」は、「ナイキ」のユーズドスニーカーをポインテッドトーのローヒールミュールに作り変えた。ランニングシューズの“エア マックス(AIR MAX)”シリーズから“ナイキフリー 5.0”、“トライアックス(TRIAX)”などのビンテージの風合いを生かしたデザインで、それぞれの異なる味が楽しめるアイテムだ。

 中国出身でセント・マーチン美術大学を卒業したユハンによる「ユハン ワン」は、「シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)」や「モリー ゴダード(MOLLY GODDARD)」に次ぐロンドンの“ガーリー枠”で新たな注目ブランドだ。サテンやシフォンで優美なドレープを作り出すギャザーテクニックが持ち味。今季もドレープを生かした花柄のプリントドレスやレース生地のジャケットやスカートなどなどを披露。

 「ガレス ライトン」は日本文化から着想を得た。“チェリー”をキーワードに、潰れたさくらんぼをプリントしたトップスやチェリーブロッサム(桜)の枝を大胆に使ったTシャツドレスなどが登場。ブランドが得意にするニットウエアでは、セーラー服をニットに変えてみせた。

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NYコレクション終盤戦 5日目のハイライトは「コーチ」「プロエンザ」など

 2020年春夏ニューヨーク・コレクション5日目のハイライトをお送りする。

コーチ 1941(COACH 1941)

DESIGNER/スチュアート・ヴィヴァース(Stewart Vevers)

 数シーズン続いていたウエスタンなコレクションから一変、スチュアート・ヴィヴァース=クリエイティブ・ディレクターは1980年代のニューヨークのスタイルを引用した。スモーキーなカラーパレットのバイカージャケットやシアリングベストの代わりに、今季はトレンチコートやレザージャケット、ペンシルスカートなどの定番アイテムが登場。ファーストルックのトマトレッドのレザートレンチコートに続き、グリーンやブルー、イエローなどカラフルなレザーのアイテムを連発し、カラフルなアーバンウエアを手掛けた。70〜80年代、「インタビュー」マガジンの表紙を手掛けていた米イラストレーターのリチャード・バーンスタインのイラストをプリントしたタンクトップも登場した。

プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)

DESIGNER/ジャック・マッコロー(Jack McCollough )&ラザロ・ヘルナンデス(Lazaro Hernandez)

 ファーストルックは、80年代のバブリーなムード漂うパワフルフォーマル。ジャケットはラペルも大きなボックスシルエット、テーパードパンツでバランスを取る。ラペルをあしらいジャケットさながらのニットドレス、ジャケットの下にはサテンのドレープトップスなど、今シーズンはキャリアウーマンのムードが色濃い。2人の母親が、子育てしながらパワフルに働いていた時代に想いを馳せた。

 いつもなら生地をたくし込んだり結んだり、フリンジを垂らしたり、ハーネスのようなパーツウエアを組み合わせたりでモードなムードを高めるが、今シーズンは控えめ。リアルにシフトし、こちらの方が共感できる。

オスカー デ ラ レンタ(OSCAR DE LA RENTA)

DESIGNER/ ローラ・キム(Laura Kim)&フェルナンド・ガルシア(Fernando Garcia)

 フォーマルシフトが鮮明なニューヨーク・コレクションにおいて、リゾートで活躍しそうなドレスを提案。ピーチカラーのシフォンは斜めにドレープさせることでミニドレスに、マンダリンオレンジのスカーフプリントはカフタンドレスになど、フルーツカラーが盛りだくさん。シフォンの上で七色のリボンを交差させたドレスはベアトップ。全般深いスリットを刻んで若々しい。終盤はクラフツマンシップを駆使したラフィアのイヴニングドレス。モノトーンでフローラル柄描いた。

クラウディア リー(CLAUDIA LI)

DESIGNER/クラウディア・リー(Claudia Li)

 5年目に突入した「クラウディア リー」。今季は過去4年間を振り返り、ブランドの原点に戻った。ブランド創設から得意としてきたテーラードジャケットやワイドパンツ、プリーツスカートの新たなバリエーションで登場させた。プリーツスカートはプリントを施したシースルーの素材や異なるテクスチャーをミックスし、フェミニンでありながらモダンに仕上げた。一方でスポーティーなパーカーやレインコートはUVに反応して発光するテクニカルな素材を用い、テクノロジーを融合。両親の写真をモチーフにしたプリントや大胆なストライプ、ポルカドットなどグラフィカルなデザインを重ねたり、シアーな素材と合わせることによって全体的にバランスのとれたスタイルに仕上げた。

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NYコレハイライトVol.4 NYコレ中盤4日目の4ブランドをプレイバック

2020年春夏ニューヨーク・コレクションの後半に差し掛かり、4日目の4ブランドをプレイバックする。

トム フォード(TOM FORD)

DESIGNER/トム・フォード

 これまではインスピレーション源を公にすることをためらってきたトム。なのに今季は、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)やモデルのイーディー・セジウィック(Edie Sedgwick)がマンホールから出てくる時を捉えた1965年の写真、イーディーが身につけていたシルバーのブラジャー、リュック・ベッソン(Luc Besson)の映画「サブウェイ」、「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」のアーカイブ、息子のクラスメートが着るナイロンのバスケットボールショーツ、カリーヌ・ロワトフェルド(Carine Roitfeld)のインスタグラムなど、脈絡のないインスピレーション源を列挙した。

 ここから昔の地下鉄の駅をショー会場に、ボックスシルエットのジャケットや、シルクタフタのボリュームスカート、シルクジャージーのタンクトップ、レザーのホットパンツ、それにオブジェのようなメタリックブラなど、一貫性のないアイテムを提案。それを自由奔放に組み合わせることで、フォーマル、スポーティー、マスキュリン、フェミニン、エレガント、テディ、アクティブなど、さまざまなスタイルを導いた。アイテムは数種類に絞ったが、スタイルは無限大だ。

3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)

DESIGNER/フィリップ・リム(Phillip Lim)

 久しぶりにメンズ・ウィメンズの合同ショーを開催。ブランドの根底にある“ワークウエア”(仕事に着ていく服)は、テーラードのジャケットやパンツ 、クリーンなシルエットのシャツとして登場。そこにドローストリングでボリュームを調整できるようにしたり、ワンショルダーの非対称的なシルエットに仕上げたり、ダイナミックなラッフルやワイドなラペルなどを施したりして、ツイストを加えた。メンズもセットアップやシャツなどの定番アイテムにグラフィカルプリントをあしらったり、少しゆったりとしたシルエットに仕上げたりして、現代男性のためのワードローブを提案した。

ザ・ロウ(THE ROW)

DESIGNER/アシュリー&メアリー・ケイト・オルセン(Ashley & Mary-Kate Olsen)

 NY随一のボリュームシルエットブランドが、ジャストサイズまでフォームをコンパクトに改めた。フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)由来のコクーンシルエットが長き一時代を終え、エディ・スリマン(Hedi Slimane)が導いたコンパクトシルエット時代が到来するであろうことを予感させる。

 ハイゲージのニット、砂時計シルエットのジャケット、クロップド丈のリラックスパンツ、ミディ丈のスカートは、体に沿うが締め付けることはない。モノトーンとごくごく淡いパステルカラーが穏やかな印象を強化し、ブランドらしい自然体の優しいムードはそのままだ。

アナ スイ(ANNA SUI)

DESIGNER/アナ・スイ(Anna Sui)

 イタリア人コスチュームデザイナー兼イラストレーターのリラ・ド・ノビリのイラストレーションからインスピレーションを受けた。シフォンや透け感のあるシアーな素材を多用し、エアリーでフェミニンなムードのアイテムが多数登場。パステル調のブルーやピンク、イエローといった淡いカラーパレットを用いたほか、ふわりとしたボリュームを袖や肩に入れ、さらに歩くたびに揺れるフリルを施すなどして、いつもに増してフェミニンでロマンチックなコレクションに仕上がった。

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2020年春夏NYコレハイライトVol.3 NYコレ中盤3日目の3ブランドをプレイバック

 2020年春夏ニューヨーク・コレクションの折り返し、3日目の3ブランドをプレイバックする。

シエス マルジャン(SIES MARJAN)

DESIGNER/サンダー・ラック(Sander Lak)

 メイクアップやネイルポリッシュからインスピレーションを受けたカラーパレットには、鮮やかなレッドやイエロー、エメラルドグリーンが登場。テーマは「アイロニーや悪趣味、リアリティー番組、風刺などを批判し、ゆっくり時間をかけて自分らしさを発見することの美しさを捉えた」と話すサンダー・ラック。そんな思いを込めた洋服は、シルクをドレーピングしたドレスやテーラードデニムなど、ラグジュアリーなムードが漂う。今回はクロコダイル柄をさまざまな素材にエンボス加工を施したピースも多出。サテンやシルクはネイビーやアプリコットなどの落ち着いたカラーでそろえ、光沢感のあるレザーはレッドに染めることによりリップグロスをイメージ。得意とする色とドレーピングは健在だったが、今季は少しクチュールテイストは薄くなり、シンプルなピースが多かった。

パイヤー モス(PYER MOSS)

DESIGNER/カービー・ジーン・レイモンド(Kerby Jean-Raymond)

 黒人デザイナーのカービーは、歴史的に無視されてきた黒人にスポットライトを当て、“抹殺された黒人の歴史を取り戻す”ことを目的にコレクションを過去2シーズンに渡り作ってきた。その3部作の最終編だった今季は、ロック音楽の元祖と言われる黒人女性アーティストのシスター・ロゼッタ・サープにオマージュを捧げ、約3000人を収容するブルックリンのキングスシアターで開催した。聖歌隊が歴代の黒人ミュージシャンの有名曲を歌う中をモデルが歩き、まるで教会の日曜礼拝の中にファッションショーがあるかのような演出。ワイドショルダーのジャケットやフレアパンツなど、80年代を連想させるレトロなスタイルに、ストリートのテイストをミックスして現代風にアップデートした。さらに後半のルックはカービーがアーティスティック・ディレクターを務める「リーボック」とのコラボアイテムを連発。ロゴ入りのトラックパンツやレギンスなどのスポーツウエアにオーバーサイズのジャケットやシースルートップスを合わせたハイとローファッションの掛け合わせを提案した。

プラバル グルン(PRABAL GURUNG)

DESIGNER/プラバル グルン

 アメリカらしいビューティ・ページェント、いわゆるミスコンに焦点を当てた。大きなパフスリーブ、真紅のバラプリント、パワフルなジャケット、フェザーをふんだんにあしらったイヴニングなど、ミスコン決勝戦さながらのスタイルにダイバーシティー(多様性)のアイデアをプラスする。

 ダイバーシティーを表現するのは、色が混じり合うタイダイ、素材と色のハイブリッド、水着&パレオにジャケットというオン・オフを横断するスタイリング、それに花火のモチーフ。花火は、打ち上がってからわずか数秒で色を変える。さまざまな色が1つの花火に詰まっているのが、ダイバーシティーなマインドに通じるという解釈だ。

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「ショーの日程はカブらない?」 アナタの疑問にNYから答えますVol.5

 ニューヨークからお送りしている「コレクションにまつわる、アナタの質問にお答えします」企画は、同行するビューティ担当記者の頑張りもありまして、早くも5回目です。本日は「ショーの開催日時は、カブらないようにお互い配慮しているのですか?」について、お答えしようと思います。

 この答えはズバリ、「メジャーなブランド同士、仲間のブランド同士はカブりません」。つまり、そうじゃないときは「カブる時もあります」です(笑)。そんな時、私たち取材陣は二手に分かれたり、断腸の思いでどちらかを諦めたりしています。

 そもそも上のリンクのように、アメリカ・ファッション評議会の会長に就任したトム・フォード(Tom Ford)が日程を大幅短縮したニューヨーク・コレクションは今回、スケジュールがパツパツ気味。スケジュールは短くなっても、参加ブランド数は変わりませんから、ショーの時間がカブるブランドが複数出てくるのは必然です。

 例えば今回は、9月7日の20:30から「クロマット(CHROMAT)」が、30分後の21:00から「ラルフ ローレン コレクション(RALPH LAUREN COLLECTION)」がそれぞれのショーを開催しました。2つの会場はそれほど離れていませんでしたが、「クロマット」はおよそ1時間、「ラルフ ローレン コレクション」は約40分遅れてのスタートでしたから、どちらもショーが始まったのは21:30ごろ。となると、両方見に行くのは不可能です。

 でも、正直コレで困るのは、「WWDジャパン」くらいで、ほかの皆さんには大きな影響がありません。理由は、「2つのブランドは違いすぎて、ゲストも全く異なるから」です。

 この2枚の写真を見ていただければ、その違いは歴然でしょう。「ラルフ ローレン コレクション」と「クロマット」の観客は、全然違います。取材するメディアも、洋服を買い付けるバイヤーも、顧客だって違います。だから2つのショーは、カブってもぶっちゃけ問題ないんです。

 とはいえメジャーなブランド同士は、お互いがカブらないよう配慮し合うし、最近はこうした有力ブランドがファッション・ウイークの最初から最後までまんべんなく散りばめられるよう、皆で相談し合っています。

 上のリンクはまもなく開幕するミラノ・コレクションのスケジュールに関する記事ですが、これによると「グッチ(GUCCI)」や「プラダ(PRADA)」「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」「マルニ(MARNI)」などのメジャーブランドは、会期中のある数日に集中しないよう、まんべんなく散りばめられました。理由は、「みんなに、なるべく長くミラノに滞在して欲しいから」です。

 メジャーブランドのショーが集中してしまうと、来場者は旅程を短縮しがち。すると若手ブランドのショーやプレゼンなどを訪れる時間がなくなってしまいます。ファッション・ウイークの主催者にとっては、憂慮すべき問題です。そこでニューヨークやミラノはメジャーブランドをまんべんなく散りばめ、来場者になるべく長く現地に滞在してもらう作戦を展開。合間に他のブランドも見てもらおうと画策しているのです。

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「ショーの日程はカブらない?」 アナタの疑問にNYから答えますVol.5

 ニューヨークからお送りしている「コレクションにまつわる、アナタの質問にお答えします」企画は、同行するビューティ担当記者の頑張りもありまして、早くも5回目です。本日は「ショーの開催日時は、カブらないようにお互い配慮しているのですか?」について、お答えしようと思います。

 この答えはズバリ、「メジャーなブランド同士、仲間のブランド同士はカブりません」。つまり、そうじゃないときは「カブる時もあります」です(笑)。そんな時、私たち取材陣は二手に分かれたり、断腸の思いでどちらかを諦めたりしています。

 そもそも上のリンクのように、アメリカ・ファッション評議会の会長に就任したトム・フォード(Tom Ford)が日程を大幅短縮したニューヨーク・コレクションは今回、スケジュールがパツパツ気味。スケジュールは短くなっても、参加ブランド数は変わりませんから、ショーの時間がカブるブランドが複数出てくるのは必然です。

 例えば今回は、9月7日の20:30から「クロマット(CHROMAT)」が、30分後の21:00から「ラルフ ローレン コレクション(RALPH LAUREN COLLECTION)」がそれぞれのショーを開催しました。2つの会場はそれほど離れていませんでしたが、「クロマット」はおよそ1時間、「ラルフ ローレン コレクション」は約40分遅れてのスタートでしたから、どちらもショーが始まったのは21:30ごろ。となると、両方見に行くのは不可能です。

 でも、正直コレで困るのは、「WWDジャパン」くらいで、ほかの皆さんには大きな影響がありません。理由は、「2つのブランドは違いすぎて、ゲストも全く異なるから」です。

 この2枚の写真を見ていただければ、その違いは歴然でしょう。「ラルフ ローレン コレクション」と「クロマット」の観客は、全然違います。取材するメディアも、洋服を買い付けるバイヤーも、顧客だって違います。だから2つのショーは、カブってもぶっちゃけ問題ないんです。

 とはいえメジャーなブランド同士は、お互いがカブらないよう配慮し合うし、最近はこうした有力ブランドがファッション・ウイークの最初から最後までまんべんなく散りばめられるよう、皆で相談し合っています。

 上のリンクはまもなく開幕するミラノ・コレクションのスケジュールに関する記事ですが、これによると「グッチ(GUCCI)」や「プラダ(PRADA)」「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」「マルニ(MARNI)」などのメジャーブランドは、会期中のある数日に集中しないよう、まんべんなく散りばめられました。理由は、「みんなに、なるべく長くミラノに滞在して欲しいから」です。

 メジャーブランドのショーが集中してしまうと、来場者は旅程を短縮しがち。すると若手ブランドのショーやプレゼンなどを訪れる時間がなくなってしまいます。ファッション・ウイークの主催者にとっては、憂慮すべき問題です。そこでニューヨークやミラノはメジャーブランドをまんべんなく散りばめ、来場者になるべく長く現地に滞在してもらう作戦を展開。合間に他のブランドも見てもらおうと画策しているのです。

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2020年春夏NYコレハイライトVol.2 「ラルフ」や「ロンシャン」etc. 序盤戦のベスト6を紹介

 2020年春夏ニューヨーク・コレクションの序盤戦から、6つのベストブランドをピックアップする。

ラルフ ローレン コレクション(RALPH LAUREN COLLECTION)

DESIGNER/ラルフ・ローレン

 金融街の会場に入ると、そこは大人の社交場だった。ジャズの生演奏をBGMに発表した2019-20年秋冬コレクションは、そんな社交場に集う男女のスタイル。マニッシュなパンツスーツ、シルクサテンのイヴニングドレス、そして、イヴニングシャツにチュールのスカート。総スパンコールのジャケット、原色のビビッドカラー、そして大胆なカットオフ。ドレスコードを遵守するというよりは、ドレスコードを自信満々に楽しむイメージで、フォーマルなイヴニングなのにエロスさえ感じるほどセクシーだ。

 フィナーレには、新世代の歌姫ジャネール・モネイ(Janelle Monae)が登場。歌い続けるとジャケットを脱ぎ捨て、セクシーなイヴニングシャツにチュールを重ねたボリュームスカート姿に変身。客席さえ縦横無尽に駆け巡り、大人の社交場とそこで生まれるコミュニケーションを若い世代に継承する重要性を訴える。

トリー バーチ(TORY BURCH)

DESIGNER/トリー・バーチ

 いわゆるダイアナ妃、ダイアナ・スペンサー(Diana Spencer)がインスピレーション源。皇室のマドンナでありながら人間性に富み、愛らしい笑顔を忘れなかった彼女の魅力をノスタルジックに描いた。

 イングリッシュガーデンに咲き誇る花々をのせたコレクションは、大きなリボンのブラウス、ふんわりとしたテーラードジャケットとフレアパンツ、袖にプリーツを刻むことでクラフツマンシップをアピールするドレスなどがキーアイテム。白をベースにラベンダーやレモンイエローを差すが、随所にレッドとブルー、そしてビビッドイエローを差し込み、大胆さも忘れない。バッグは、かっちりしたトップハンドル。一方で、そんなレザーバッグをPVCで覆ったり、大きなリボンをあしらったり、洋服同様の遊び心も健在だ。

ロンシャン(LONGCHAMP)

DESIGNER/ソフィー・ドゥラフォンテーヌ(Sophie Delafontaine)

 ニューヨーク・ファッション・ウイークでの発表が3度目となった今季、ソフィー・ドゥラフォンテーヌ=クリエイティブ・ディレクターは米女性アーティストでフェミニストとしても知られるジュディー・シカゴの作品から着想を得た。ジュディーの作風の一つでもあるグラデーションや鮮やかな色使いは、ピンクのグラデーションを作ったドレスやソフトなオレンジやコーラルピンクなどのトップスやスカートに反映された。ショートパンツは超ミニ丈、スカートも膝上のミニ丈で健康的な肌見せが印象的だったが、クリーンなシルエットとレザーやシルクなどの上質な素材で品のあるスタイルに仕上げた。ドローストリングのウィンドブレーカーはウエストを絞り、肩にボリュームを持たせた。スニーカーはロングのレザーブーツを模したデザイン。さらに、さりげないフリルのディテールなどをあしらい、全体的にフェミニンなムードは健在。素材使いといい、シルエットといい、ニューヨークのブランドにはないパリジェンヌなフェミニンらしさが際立った。

ラグ & ボーン(RAG & BONE)

DESIGNER/マーカス・ウェインライト(Markus Wainwright)

 久しぶりにランウエイ形式で発表した「ラグ & ボーン」は、「コントラストと視点」がテーマ。バンドとコーラスが演奏し、ダンサーが踊る中をモデルが歩き、同時にロボットがショーの様子を実写フィードと点群キャプチャ(コンピュータービジョン)を使用してキャプチャー。ロボットと人間という対照的なものの視点を同時に捉え、そのコントラストを捉えた演出が印象的だった。

 服はブランドが得意とするイギリス人が見たアメリカンクラシック(デザイナーのマーカスはイギリス出身)なスタイルが多出し、イギリスとアメリカの視点をミックス。英国スタイルのテーラリングをしっかり残しつつも、テーラードジャケットにトラックパンツやバーシティーニット、トレンチコートにスニーカーを合わせた。定番のアイテムを、丈や質感を混ぜながらレイヤリングしたコーディネートが目立った。

ティビ(TIBI)

DESIGNER/エイミー・スミロヴィック(Amy Smilovic)

 バックステージでデザイナーのエイミーがさらっと、「リスキーなプラクティカリティー(実用性)」がテーマと説明。大胆で一見リスキーなデザインを、実用的に、そしてエフォートレスに着られるような、絶妙なバランスに仕上げた。やり過ぎないけど印象に残るような袖のボリューム感、スカートのスリット、パンツの光沢感がポイント。多方面に活躍する現代女性をイメージし、オフィスでもパーティーでも、さらには休日にも着られるルックが多出した。上品なスカートやジャケットも多かったが、柔らかな素材やカラーを用いることによって肩の張らない、リラックスしたムードが漂う。そんなムードからは、しなやかで柔軟なエイミー自身の考えや姿勢が伝わった。

トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)

DESIGNER/トミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)

 黒人文化が花開くハーレム地域の由緒ある劇場、アポロシアターが会場だった今季は、黒人のダンサーやシンガーがノリノリでパフォーマンスしながらモデルが歩き、まるで1980年代のハーレムにタイムスリップしたかのようなエンターテイメントにあふれた演出!女優のゼンデイヤとの2回目のコラボとなった今回は、アフリカン・アメリカンカルチャーにオマージュを捧げ、1970〜80年代のスタイルを引用した。物クロマティックなカラーパレットをベースに、レトロなフレアパンツや千鳥柄のセットアップ、ポルカドット柄のワンピース、大きめの丸型サングラスなどが登場。さまざまな体型や年齢のモデルが音楽に合わせてノリノリでランウエイを歩き、会場は大盛り上がり。アフロやスモーキーアイ、リップライナーで輪郭を強調したリップなど、ビューティもレトロな雰囲気が漂った。

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NYコレもドタバタ日記3日目 トム・フォード会長が意地のスマッシュヒット!! 「アリス アンド オリビア」のガールズパワーに召天寸前!?

 9月9日のニューヨークは、今日も晴天。最高気温は26度。台風一過の日本に比べればマシですが、ニューヨークも暑いです。さぁ、今日も含めてファッション・ウイークは残り3日!!ラストスパートです。

11:40 ザ・ロウ

 今日の一発目は、「ザ・ロウ(THE ROW)」。予定開始時刻は、11:30です。

 いやぁー、昨日の「パイヤー モス(PYER MOSS)」が終わってUberで車を呼んで、ホテルに戻ったのが24:00。そこから原稿書き始めて、寝たのは2:30くらい。時差ボケも治らない42歳男子にとって、今日のスケジュールは実にありがたい!しかも「ザ・ロウ」はホテルから近いし、毎回ほとんど遅れないから時間も読めてなおさらありがたい(笑)。天気も良いし、ウキウキしながら向かったショーで、トレンドがいよいよ変わってきたことを感じます。

 「ザ ロウ」は、今までボリュームのブランドでした。ドレスは時にテントラインで、コートは軒並みコクーンシルエット、ジャケットもボックスシルエットが主流で、体を“なぞる”というよりは“覆う”ブランドでした。

 それが今シーズンは、なんということでしょう(「大改造!!劇的ビフォーアフター」風に)。ジャケットはショルダーラインがほぼ水平で力強く、ウエストは高めの位置でしっかりくびれています。ブルゾンは、スタンドカラーのジャストフィット。ドレスもボディコンとまではいかないものの、ストンと真下に落ちるシルエットが多く、ボリュームウエアとは一線を画しました。とはいえバイアスに裁った生地、ジャージー、リネン混のハイゲージニットが変わらぬリラックスムードを提供します。ごくごく淡いパステルカラーのシャツは、センスの良さだなぁ。

12:40 ディーゼル レッドタグ プロジェクト

 気持ちの良い天気の中、ソーホーまで歩いて拝見したのは、「ディーゼル(DIESEL)」のアーティストコラボプロジェクト「ディーゼル レッドタグ プロジェクト(DIESEL RED TAG PROJECT)」。今回は「ア コールド ウォール(A-COLD-WALL)」のサミュエル・ロス(Samuel Ross)とタッグを組み、12月4日にコレクション発売します。

 サミュエルらしい、近未来感漂うワーク、マルチポケットやファスナー使いが特徴のブルゾンやベストをペイントデニムで提案です。「ディーゼル」のレッドタグが付く洋服ですが、もちろん、このロゴも入ります。

13:20 アリス アンド オリビア

 さぁ、今日イチ気合いを要するプレゼンテーションの時間がやってまいりました。「アリス アンド オリビア(ALICE + OLIVIA)」です。

 「え、意外⁉︎」って思うかもしれませんが、このプレゼン、実に体力勝負なのです。

 というのも、まずはこの行列。毎回、オペレーション悪いですねぇ(笑)。会場のキャパシティーに対して、ゲストを呼びすぎじゃないかしら?まずはこの行列&会場の大混雑で、42歳男子は、魂を吸い取られるような感覚に陥るのです(笑)。

 そして昨日の「パイヤー モス」が「黒人の、黒人による、黒人のためのブランド」なら、「アリス + オリビア」は「女子の、女子による、女子のためのブランド」。42歳男子、これほど“アウェイ感”を覚えるプレゼンは、なかなかありません(苦笑)。今回は、「女子の夢の中のボヘミアン」的なコレクション。女の子の夢だから、色はパステル。何がなんでもパステル。そしてお花とフワフワ。「ラブ度」120%です。

 「インスタ映えするなぁ」。42歳男子は、このくらいの感覚でコレクションを見ていますが、隣のガールズ2人組は揉みくちゃにされながら「アタシ、あのドレス絶対買うの!」「え、丈長すぎるよ。もっとミニが良いって‼︎」とキャッキャしています。パワーあるなぁ(笑)。

 洋服にいろんな想いを散りばめるクリエイションもアリですが、本能的に「カワイイ!」っていう(だけの)コレクションもアリ。「アリス アンド オリビア」の洋服でキャッキャ言ってる女の子たちを見ると、ブランドが築くべきはコミュニティーなんだなぁと再認識します。

15:30 3.1 フィリップ リム

 お次はブルックリンに移動して「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」。今回からメンズとウィメンズの合同ショー。昨日のインタビューでフィリップは、「一番サステイナブルなのは、いつまでも着られる洋服を提案すること。最新コレクションは、そのニュー・バージョンであることが望ましい」と話していましたが、その通りのコレクションでした。

 独特のシルエット、ドローコードやサッシュベルトによる自由自在なボリュームコントロール、タイムレスに着られることを約束するベーシックカラー。そこにシーズナルなレザースカーフや、着脱式のレザーラペルを組み合わせれば、2020年春夏バージョンに大変身です。独立系デザイナーとして、まさに独立独歩で大きくなったブランドは、クリエイションにブレがありません。ものすごく新しいかと問われたら、そうじゃない。でも、ピュアホワイトやコットンポプリンなど、20年春夏らしさはちゃんとある。そのバランス感覚を再発見しました。

 メイクは、今回も「UZU」がサポート。業界で話題の理系経営者、今村洋士さんにもご挨拶できて、大満足です。モデルのアイラインには今回、「UZU」のアイライナーがガッツリ入りました。

17:30 アナ スイ

 昔、大好きな安野モヨコのマンガ「ジェリー ビーンズ」の中で、パジャマみたいな洋服が「パジャミー」と表現されていて、「なんてカワイイ形容詞なんだ!」と思った記憶がありますが、「アナ スイ(ANNA SUI)」は、まさに「パジャミー」でした。

 パジャマシャツとパンツ、ネグリジェ、その上から羽織るスエットのカーディガン、そしてシーツをリメイクしたようなカフタンドレス。それらがレトロなパステルカラーと、小花柄やペイズリー、フリルとレースで彩られます。ヘアなんか、完全に寝起きです(笑)。

 余談ですが、安野モヨコは「寝起きも魅了的な女性」を「寝ぐさい女」と表現し、憧れていたように記憶しています。今回の「アナ スイ」のモデルは、「パジャミー」な洋服で、実に「寝ぐさい」。さては、読んだな、安野モヨコ(笑)!?

18:25 ジプシー スポーツ

 「ジプシー スポーツ(GYPSY SPORT)」は、な〜んにもお知らせしてくれなかったのに、入場にはIDがマスト。僕はその時、クレジットカードしか持っておらず、交渉しましたが屈強なガードマンはウンともスンとも言わず(苦笑)、後輩に託しました。

20:25 トム フォード

 さぁ、本日のラストは、アメリカ・ファッション評議会の会長に就任したトム様の「トム フォード(TOM FORD)」です。会場は、使われなくなった地下鉄のホーム!今回の招待客は、100人強かな(会長なのに!!)?非常にレアな会場の、貴重な機会にお招きいただきました。

 さすがは会長。スマッシュヒットでした。新しい!!スポーティなタンクトップに贅沢なシルクタフタのスカートから始まったコレクションは、サテンのような光沢素材をギャザリングするなど手仕事満載なのにジャンプスーツとか、生地をバイアスに断ったキュロットを軸にしたテディボーイスタイルなど、ミックステイスト半端なし。エレガントなのにスポーティーでリラックス。ストリートなのにラグジュアリー。フォーマルなのにセクシー。そしてレトロなのにビビッド。ビビッドカラーなサテンのパワフルジャケット、ソフトなキュロット、ピカピカレザーのブラトップ(いや、ブラジャー)、上質素材のタンクトップ、そしてマイクロミニのホットパンツ。こうした基幹アイテムを自由奔放に組み合わせると、こんなにいろんなスタイルが楽しめるのか!というコレクションです。「グッチ(GUCCI)」の頃のエロスとは全然違う、イケイケというよりは自然体のセクシー。

 フィナーレのトム様は、相変わらずサングラスでキメてましたが、かつてのアンタッチャブルというムードではありません。ゲストの数は少ないけれど、大きな拍手に囲まれて堂々のご挨拶でした。

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「どうしたらコレクションのヘアメイクアーティストになれるの?」 日本人アーティストを直撃してアナタの疑問にNYから答えますVol.4

 今回は、「どうしたらコレクションのヘア&メイクアップアーティストになれるの?」という質問にお答えしようと思います。ファッションとビューティが好きで、ランウエイショーにも興味があれば、一度はコレクションのバックステージに携わりたい、覗き見したいと思ったことがある人も多いのではないでしょうか?バックステージは、世界トップクラスのヘア、メイク、ネイルアーティストと仕事ができる貴重な機会です。

 では、どうしたらビューティ・アーティストとしてバックステージに携わることができるのか?お答えしたいところですが、私はアーティストではなく記者なので、今回は実際バックステージで活躍している日本人アーティストに突撃インタビューしてみました。「トリー バーチ(TORY BURCH)」のショーは、資生堂が協賛。日本人アーティストが多くいらっしゃるので、「どうしたらバックステージ・アーティストになれるの?」と聞いてみました。

 まずは資生堂のビューティクリエーション研究所に所属する渋沢知見ヘアメイクアップアーティストを紹介します。渋沢さんは2010年に資生堂入社。宣伝広告や広報活動のほか、ニューヨークとパリのコレクションで活躍してきました。彼女に直接聞いてみたので、動画をご覧ください。(バックステージで撮った動画のため、ガヤガヤしていたり、途中で人が通ったりします。ご了承ください!)

 続いて、同じく資生堂の伊藤礼子ヘアメイクアップアーティストにお話を聞きました。資生堂美容専門学校を卒業後、02年に資生堂に入社。現在は「SHISEIDO」ブランド担当でメイクアップアイテムの商品開発、広告撮影、トレーニングなど、アジアを中心に世界的で活躍されています。 ヘルシーだけどエッジの効いたメイクが得意で、コレクションシーズンにはメイクアップアーティストとしてリードを務めるなど、国内外のデザイナーから人気です。

 彼女は、「美容学校を出てから美容師を経て、メイクアップやヘアアーティストの道に進むのが一般的かなと思います。今は美容師免許を持っていなくともフリーのアーティストのアシスタントを務め、3〜4年間の修行を積んで独立される方も多いですね。コレクションのバックステージに入りたい場合は、やはりバックステージのアーティストにつくのが確実な道です」と話します。自身のキャリアについては「美容学校に2年間通い、美容師免許を取得してから6年ほどサロンワークを行いました。その傍ヘアメイクのお手伝いをして、ヘアメイクアップアーティストとしてコレクションや撮影に携わるようになりました。ショーに対する憧れが強く、バックステージに入りたいという思いもあって、コレクションを協賛している資生堂に入社しました。ショーに初めて入ったのは、24歳のころ。その時はモデルの爪にネイルを塗ったり、モデルをケアしたりするだけ。コツコツと経験を積みました」と続けます。「日本人でもバックステージで活躍するチャンスはありますか?」と聞くと「全然あります!今はSNSもあるし、コネクションの作り方も多様です。必ず何年間か修行しなければならない、なんて決まりもないし、本人のコミュニケーション力と熱い思いがあれば、チャンスはたくさんあると思います」と勇気づけてくれました。

 今度はフリーで活躍するKUMAメイクアップアーティストです。「メイベリン ニューヨーク(MAYBELLINE NEW YORK)」メイクアップディレクターのMIZUヘアメイクアップアーティストのアシスタントを経て、ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリと各都市のコレクションでバックステージに参加。現在は広告やエディトリアル、ショーなどで活躍しています。彼も動画インタビューをしたので、ご覧ください。

 ダイアン・ケンダル(Diane Kendal)のチームで活躍中の山内啓人メイクアップアーティストは、「昔から海外でメイクをしたいという思いがあり、9年前に渡米を決断。ダイアンのチームに入りたくて、ひたすらメールを送ってアピールしました。その時は別のアーティストのアシスタントだったのですが、その方の所属エージェントが昔ダイアンのエージェントを務めていたこともあり、プッシュをしてもらい、チームに入ることができました。今は撮影のアシスタントもしています」と言います。

 どの仕事もそうですが、やはり積極的に色々な人にアプローチをし、コネクションを作ることが大事みたいです。今は仕事の依頼がSNSのダイレクトメールで届いたり、「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」のようにインスタグラムで発見されて海外デビューなんてケースもあるので、SNSは大きな武器の1つかもしれません。

 皆さんが一番心配している「英語はできないとダメですか?」という質問は、もちろんできれば有利なのは当たり前ですが、今回お話を伺った日本人アーティストは、全く英語ができないまま渡米された方がほとんどでした。現地に行けば、自然と英語力は身につくのでしょう。それよりも熱意とアピール力の方が大事な気がします。

 私もバックステージ取材を始めて2年強ですが、本当に多くの日本人アーティストが活躍しています。そして資生堂やコーセー、フローフシ(UZU)、「RMK」など、今は日本のメーカーの協賛も増えています。もちろん、「NARS」「M・A・C」「アヴェダ(AVEDA)」「エッシー(ESSIE)」などの外資系ブランドが協賛するバックステージでも、日本人アーティストを見かけます。「M・A・C」の池田ハリス留美子シニアアーティストは、店頭の美容部員からコレクションに参加するトップアーティストになりました。BAからコレクションアーティストに進む道だってあるのです。

 ファッションショーに行くとついデザイナーに目を向けがちですが、ビューティ担当記者としていつも思うのは、一つのコレクションを作り上げるには、本当に大勢の人の力が必要なこと。そして表舞台には出ないものの、バックステージで活躍されているアーティストは、皆同じ目標に向かって懸命に働きつつ、とても楽しそうです。言葉にはしないものの、バックステージのバタバタした雰囲気の中でも、プロフェッショナルとしての熱意は伝わります。そんな皆さんの輝いている姿を見て、私も活力をもらうことさえあります。読者の皆さんも、熱意を持って、チャレンジしてほしいと思います。

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2020年春夏NYコレハイライト Vol.1  「ケイト・スペード」「ヘルムート ラング」

 2020年春夏ニューヨーク・ファッション・ウイークは、9月4日に開幕。初日は中国勢が中心で、実質的なスタートは6日の夕方以降となった。

 ここでは6、7日のトップブランドを2つピックアップ!!

ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)

DESIGNER/ニコラ・グラス(Nicola Glass)

 会場は、土曜の太陽光がふんだんに降り注ぐ、マンハッタン・ノリータ地区のピースフルな庭園。コレクションも、全てが優しく穏やかだ。ハンカチーフのような純白のコットンポプリン、総レース、ボタニカルモチーフをプリントしたシャツドレスは、いつも以上にリラックスしたシルエットでストレスフリー。パフスリーブのブラウスに重ねたクロシェ編みのドレス、スキッパーポロタイプのリブ編みボーダーニットは、ブランドらしいキッチュと、ニコラ・グラスのレトロテイストの合作だ。シルバーを編み込んだサマーツイードのジャケットも、カーディガンのように羽織る感覚。肌寒い日の公園のお散歩にピッタリのトレンチコートやキルティングコートは、コットンギャバジンではなく、タフタやビスコースで柔らかく仕上げた。

 バッグは、定番ショルダーの素材をカゴに変換したクロスボディや、スペードを組み合わせて作った花柄が鮮やかな大容量トートなど。年齢、性的指向、体型を問わず、モデルに混じって親子や同性愛カップルを含む一般人が現れるインクルーシブ演出も心に染み入る。

ヘルムート ラング(HELMUT LANG)

DESIGNER/マーク・トーマス(Mark Thomas)&トーマス・カーソン(Thomas Cawson)

 デザイナーが代わって2シーズン目。引き続き、過去の迷走で揺らいだアイデンティティーを、再び強固なものにしようと原点に回帰する。ピュアホワイトからネオンまでのさまざまな色、パラシュートナイロンから大理石プリントをのせたシルバーレザーなど、さまざま素材。多様な色と素材で生み出したのは、クロップド丈のブルゾンやGジャンにスキニーパンツやシンプルなドレス主軸とするストイックでミニマル、シャープなスタイルだ。

 スタイルとシルエットは頑な。色と素材のバリエーションで魅せる。90年代の「ヘルムート ラング」の記憶が蘇る。次回はいよいよ、そこからの前進を期待したい。

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NYコレもドタバタ日記2日目 “おてんばお嬢様”から黒人カルチャーまでをブルックリンで堪能する

 9月8日のニューヨークは晴天。最高気温は25度。さぁ、街は穏やかな日曜日ですが、我々は今日もちょっとドタバタな1日の始まりです。

10:25 トリー バーチ

 早朝いきなりドタバタなのは、「トリー バーチ(TORY BURCH)」のショーが、まさかのブルックリンだからです。“おてんばお嬢様ブランド”の「トリー バーチ」が、ブルックリンでショーなんて!これはNYコレの常連にとって、ちょっとした驚きです。

 土地勘のない人に向けて、実に乱暴な説明をしますと、マンハッタンが東京の中央、千代田、港、渋谷、新宿区辺りだとしたら、ブルックリンは僕の中で世田谷区のイメージ。「トリー バーチ」の会場はブルックリン・ミュージアムでしたから、都心から砧の世田谷美術館に行く感覚でしょうか(笑)。そんなに近くないでしょう?実際、マンハッタンからは地下鉄に乗っておよそ30分という立地です。

 さて、そんな場所でのコレクション。日本からのセレブは、2000年生まれのダンサー、アオイヤマダです!斬新!そして「良き」。「トリー バーチ」の“おてんば”なところを、ダークサイド気味なニュアンスで独特に表現しています。このセレブ起用は新しいし、日本っぽくて良いわ~。正直普通じゃない彼女の起用は、英断だったと思います。

 コレクションは、いつも以上にリラックスムードなドレスが印象的でした。でも袖周りのギャザリングやプリーツはとても細かくて、クラス感はむしろ1年前よりアップ!!柔らかな素材で作るカッターシャツ、大きなリボン付きブラウス、そしてゴールドのメタルボタンをあしらったツイードのロングジャケットは、安心感満載でした。ケータリングのクレープをモグモグしながら、マンハッタンに戻ります。

11:30 フィリップ リム

 9日のショーに先立って、デザイナーをインタビュー。フィリップ流サステイナブルのススメに感銘を受けました。詳細は、また別の記事で~。

13:20 マンサー ガブリエル

 「見て、すぐ買えるコレクション」、いわゆる“See Now, Buy Now”の「マンサー ガブリエル(MANSUR GAVRIEL)」は、プリーツを寄せたパステルカラーの巾着バッグにぴったり、もしくはワニ柄を型押ししたキッチリバッグとコントラストを描く、淡い色のモコモコニットが盛りだくさん。でも会場にはココナッツやスイカ、ランブータンなど南国のフルーツが敷き詰められ、「スタイルは冬、会場は夏」というナゾな空間に仕上がりました。ゲストは、フルーツジュースで乾杯。オシャレガールたちが、なかなかサイズのスイカ、ココナッツ、パイナップルを片手に談笑……、不思議な光景です。

14:35 ティビ

 お次の「ティビ(TIBI)」は、ショー会場がシアター。モデルはステージを歩き、階段を上り下りして、と文字通り舞台を所狭しと駆け巡ります。

 ファーストルックは、デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)による「バレンシアガ(BALENCIAGA)」のファーストメンズ、2017年春夏並みのスーパーパワーショルダーのセットアップ!「こ、これは……」と、しばし衝撃にペンが止まりましたが、その後はいつもの安定感。柔らかな素材、背面を中心にちょっと誇張したボリューム感、目に優しい1トーンコーディネートが復活です。ただ“パワショル”スタイルは、ニットなどでも時々登場。あの時の「バレンシアガ」も、今季の「ダブレット(DOUBLET)」も、今回の「ティビ(TIBI)」も、まだまだ驚き以外の感情を抱けない自分がいますが、慣れる時は来るのでしょうか?

15:40 シエス マルジャン

 ミッドタウンからダウンタウンに移動して「シエス マルジャン(SIES MARJAN)」。柔らかな素材と、強い色の魔術師です。今シーズンは、ネイルラッカー、つまりマニキュアがインスピレーション源。トップコートを塗った後のようにピカピカのレッド、グリーン、イエローなどは、下品ギリギリの強さです。そんな色をのせるのは、パテントレザーから肉厚のシルクタフタ、ピカピカのフィルム風素材までさまざまですが、ネイルラッカーを意識してか、いずれも光沢を放ちます。

 マニアックだし、正直着こなすのはカンタンじゃない。値段も決して安くない。でも独特の色彩感覚と素材使いは、大切にしたい存在です。とてもニッチなマーケットではありますが、40分待っても見たい(遅刻の常習犯であります)。遅れるとわかっていても、会場に向かう時は「間に合うかしら?」とソワソワして小走りになっちゃう。「シエス マルジャン」は、そんな期待の星なんです。

19:40 プラバル グルン

 お次は、ファッション界のアクティビスト「プラバル グルン(PRABAL GURUNG)」。今年でブランド設立10周年のアニバーサリー・コレクションです。

 フィリピンで生まれ、ネパールで育ち、インドやイギリス、オーストラリアを経て、移民としてアメリカに渡ったプラバルは、ドナルド・トランプ(Donald Trump)が大統領に就任して以降、ずっと声を発し続けてきました。ある時は「私たちは皆、移民」というメッセージTシャツをモデルに着せ、メキシコ国境に壁を築こうとするトランプ大統領に反旗を翻したくらいです。

 そんな彼は今シーズン、今のアメリカを嘆くのではなく、理想像を描くことでトランプ大統領に警鐘を鳴らしました。アメリカンカルチャーのビューティ・ページェント、いわゆるミスコン(そもそもこれについて賛否両論あるでしょうが)に登場するようなドレスを、純白のコットンポプリン、タイダイ、スポーティなナイロンなどで描き、デニムと組み合わせます。何色にも染まる純白のコットン、さまざま色が混じり合うタイダイ、そしてアクティブウエアに使うナイロンは、いずれもアメリカのあるべき姿。そこにアメリカンなデニムを組み合わせたのです。

 随所に散りばめたのは、打ち上げて以降瞬く間にさまざまに色を変える花火のモチーフ。アメリカントラッドの象徴シアサッカーにはストライプ柄をのせました。加えてミスコンの象徴、バラの花です。正直テイストミックスはミスマッチ。融合は完璧ではなく、幾らかの違和感を残している。でも、それはワザと、な気がします。人は組織に完璧に馴染む必要なんかなくって、共生しつつも「個」として生きれば良いからです。プラバルの、そんな理想を垣間見た気がします。

20:55 トミー ヒルフィガー

 世界を巡業する「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」の“See Now, Buy Now”、「見て、すぐ買えるコレクション」。19-20年秋冬シーズンは、舞台にニューヨークをチョイスしました。会場は、ハーレム。黒人音楽の殿堂、アポロシアターです。今タッグを組む、黒人と白人の間に生まれた女優ゼンデイヤ(Zendaya)が選んだのかな?会場に入ると、記念のTシャツやスエットの売店がありました。

 会場は、昔のアメ車が並んでいたり、上を見上げると階段の踊り場に女性がたむろしていたり、ジャズ奏者が談笑していたり、古き良き60~70年代のブラックカルチャーのムード。次々現れるコレクションも、まさにそんな感じです。千鳥格子のコートやベルベットのジャケット、水玉のブラウスなど大人っぽい雰囲気は、前回のゼンデイヤとのコラボライン同様のレトロテイスト。彼女らしいセクシネスもギュッと詰め込みました。プラスサイズも含めた黒人モデルたちが、音楽に合わせて体を揺らしたり、両手を振ったり、ご自慢のアフロをアピールしてみたり。そんな一挙手一投足のたびに歓声が上がり、本当に50~60年前のハーレムにタイムスリップしたようです。

22:30 パイヤー モス

 さぁ、「トミー ヒルフィガー」のショーが終わったのは、21:15。でも今日は、まだもう一個あるのです。しかも会場は世田谷区、いやブルックリン(笑)。今いるハーレムは台東区くらいのイメージなので(笑)、この時間からニューヨークを大縦断&大横断です。

 本来のスタート時刻は、21:30。どう考えても間に合わず、「パイヤー モス(PYER MOSS)」が用意してくれた車に乗り込みましたが、到着したのは22:15でした。

 会場は、またもシアター。しかも、めちゃくちゃデカい箱です。これまでの「パイヤー モス」からは考えられない規模感に急成長しました。トム・フォード(Tom Ford)がCFDA(アメリカファッション協議会)のトップに就任して以降、「パイヤー モス」のデザイナー、ケルビー・ジャン・レイモンド(Kerby Jean Raymond)は、委員の1人を務めています。黒人デザイナーとして、アメリカン・ファッションをけん引する役割を託されたワケです。この急成長には、こんな事情が影響しているに違いない。注目度はメキメキ上昇か?事実、今回は日本メディアも勢ぞろいでした。

 ショーは、もはや牧師のような黒人による、400年前は奴隷だった黒人に贈る決起のメッセージから始まりました。ファッションショーというよりは、教会の日曜礼拝みたいなムードです。確かに、今日は日曜か(笑)。BGMは、オール黒人の聖歌隊のような合唱団の歌でした。

 洋服は、今黒人コミュニティーがけん引するストリートをベースとしながら、彼らが愛し続ける光沢素材、貧しい時代に“ハレ”の服として着用した自慢の一着を思わせるスーツやドレスも現れます。正直、日本人には難しい。でも登場するたび、そして合唱団の音楽が変わるたびに会場からは大きな歓声が沸き上がります。ゲストの3/4は、壇上の合唱団やモデルと同じ黒人。「パイヤー モス」はまさに、「黒人の、黒人による、黒人のための」でした。

 盛り上がるゲストの洋服を見ると、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」や「ア コールド ウォール(A-COLD-WALL)」「グッチ(GUCCI)」などもたくさん。およそ30分のショーを終えた直後の会話に聞き耳を立てると、「お腹すいたけど、この辺りだと『マクドナルド』や『KFC』しかやってないよね。移動しよっか?」なんて話していて、自分のアンコンシャス・バイアスが軽やかに裏切られます。黒人は、アメリカ社会で確実に存在感を増しています。購買力のある、次なるファッションをドライブする原動力として認識されるようになっているのです。NYコレ中盤の夜は、ハーレム、そしてブルックリンで、彼らの力を見せつけられました。

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コペンハーゲンはパンがブーム! 注目5店の食べ歩きで食文化を体感

 8月6〜9日に開催された2020年春夏シーズンのコペンハーゲン・ファッション・ウィーク(以下、CFW)に参加してきました。過去3回訪れたのは全て極寒の真冬だったため、今回は初めて夏のコペンハーゲンです。デンマークは白夜が続く6月が真夏で、8月は日本よりひと足早く秋手前の感覚です。気温は毎日20度ほどでとても快適でした。今季のCFWには百貨店のプランタン(PRINTEMS)やギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)、ユークス・ネッタポルテ(YOOX NET-A-PORTER)のバイヤーをはじめ、米「WWD」や「ビジネス・オブ・ファッション(The Business of Fashion)」のジャーナリストら、世界各国からゲストが訪れていました。デンマークをはじめとする北欧諸国といえば、デザイン性と機能性を両立させたインテリア用品が豊富なことで有名。そして“世界一幸福な国”ランキングで常に上位を占めることや、環境保護を目的としたサステイナブルの取り組みでは世界をけん引するなど、ここ20年ほどで注目度は高まり続けています。中でもデンマークの首都であるコペンハーゲンが北欧の中でも抜きん出て活気があるのは、レストラン業界の発展が大きいのです。

 税金の高い北欧諸国に暮らす人々は、外食という文化自体がほとんどありませんでした。自宅に友人らを招いて食卓を囲むホームーパーティの方が経済的だし、ヒュッゲ(温かく居心地がよい)に感じられます。そんな概念に変革をもたらしたのが、03年にコペンハーゲンにオープンしたノルディック・レストラン「ノーマ(NOMA)」です。イギリスの飲食業界誌「レストラン・マガジン(Restaurant Magazine)」による世界のベストレストラン50で4度も1位に輝き、世界中からフードジャーナリストや美食家、観光客らを多く呼び込みました。同誌には「北欧だけでなく、世界の料理界に革命を起こした天才シェフが『ノーマ』のレネ・レゼピ(Rene Redzepi)」と記されています。北欧は気候的に収穫できる食材が限られていることから、調理方法を変えて食事を楽しむ工夫に長けています。レストラン業界は以前、地元の食材不足をカバーするために輸入食品に頼っていましたが、レゼピさんは欠点と特徴の両方を取り入れて、地産地消をコンセプトにした新たな食文化の構築に成功しました。本人に会ったことはないのですが、レゼピさんには大感謝しております!なぜなら、コペンハーゲンが美食の街として発展を続け、訪れるたびに食で感動する素晴らしい街にしてくれたから!北欧は何をするにも高額なイメージを持っている人も多いと思うので、今回は私が訪れたお店を価格とともにご紹介します。

現地は空前のパンブーム!

 食に目覚めたコペンハーゲンの人々が今最も熱狂しているのが、パンなんです。早朝から行列を作る話題店の出店ラッシュが続いています。高級住宅地フレデリクスベアにある「ハート・ベアリィ(HART BAGERI)」は、昨年秋にオープンした新店です。「ノーマ」にパンを卸していたことが口コミで広がり、オープン前から話題を呼んでいました。サンフランシスコの伝説的ベーカリー「タルティーヌ(TARTINE)」でヘッドベーカーだった、イギリス出身のリチャード・ハート(Richard Hart)がオーナーを務めています。プロレスラーのような体格と両腕のタトゥーで一見コワモテですが、彼の手で作られるシグネチャーのローフはどこか懐かしくて優しく、素朴でほっこりする味でした。デンマークの伝統的なパンであるデニッシュを、モダンにアップデートさせた甘いパンも多く並びます。アプリコットジャムと実がゴロっとのった酸味が効いたデニッシュや、季節の果実であるブルーベリーとレモンの組み合わせ、エッグタルトのような濃厚カスタードクリームがのったものなど数々の魅力的なパンを差し置いて、一番人気はカルダモン・デニッシュ。カルダモンはスウェーデン発祥のスイーツによく使われる、シナモンに似たスパイスです。外サクサク&中ふんわりのカルダモンを練り込んだデニッシュ生地にメープルシロップが染み込んでいて、かむたびに舌の上でジュワッと溢れ出す蜜とカルダモンの香りが絶品です!カルダモン・デニッシュとフィルターコーヒー1杯で53クローネ(約840円)でした。今年2月に同店を訪れてからすっかりとりこになり、今回はわざわざ同店の近くのホテルを選んで数回通い、店員さんともすっかり顔なじみになりました。パリに住んでいると美味しいパンは日頃からたくさん食べられますが、「ハート・ベアリィ」は常に新しいレシピを開発していて、ここでしか食べられない味があるのです!

フワフワ&もっちりの人気店

 街の北まで足を伸ばして、閑静な住宅地ウスタブロにある小さなお店「ジュノ・ザ・ベーカリー(JUNO THE BAKERY)」にも行きました。「ノーマ」で6年シェフを務めたエミール・グラセア(Emil Glaser)が17年秋にオープンしたベーカリーで、「今はコペンハーゲンで一二を争う人気店」だと地元の方からもお墨付き。平日10時に行くとすでに10人ほどが列をなしていました。この時はクロワッサン、パン・オ・ショコラ、デニッシュなどの甘い系と数種類のライ麦パンが店頭に並んでいましたが、私は行く前からカルダモン・バンにすると心に決めていました。なぜなら、カルダモンを使ったパンのブームの火付け役は同店と聞いたからです。デンマークではフワフワしたパン生地やカルダモンを使ったパンになじみがなく、スウェーデン出身のグラセアさんが母国の味を同店で発信したことから人気になりました。バンはフワフワ&もっちりで、食べた後も香り高いカルダモンが口の中にずっと余韻を残し、長く味に浸ることができました。一緒に行ったフランス人の友人は、フランスの国民食ともいえるパン・オ・ショコラを食べておいしいと感動していました。カルダモン・バンは33クローネ(約520円)でした。

揚げパンの人気店に行くも……

 かつて工場地帯として栄え、今は再開発で最もホットなエリアと呼ばれるレフスハルウーン地区には、「ノーマ」の弟分レストラン「108」の元副料理長イェスパー・グッツ(Jesper Gøtz)が手掛ける「リル・ベーカリー(LILLE BAKERY)」があります。倉庫のような外観の同店は工房とイートインスペースが隣り合わせで、とても開放的な空間でした。デンマークで主流の揚げパンをアレンジしたメニューやオープンサンドが人気だと聞いていたのですが、15時に訪れた時には全て売り切れ……残念。ちなみに、同地区に「ノーマ」が昨年2月に移転したことでも話題です。さらに元「ノーマ」のシェフ、マット・オーランド(Matt Orlando)が13年にオープンした人気レストラン「アマス(AMASS)」と、彼の新店のクラフトビールレストラン「ブローデン&ビルド(BROADEN & BUILD)」もこの地区にあります。元王立劇場の大道具用倉庫を改装した1400平方メートルの広い空間で、オリジナルのクラフトビールを製造しているそうです。以前「アマス」を訪れて忘れられない感動的な食体験をしたので、同シェフがB級グルメを提供する「ブローデン&ビルド」にも期待大です。今回は行くことができなかったので、「リル・ベーカリー」とともに次回のお楽しみにしておきます。

味わいたくなるタコス

 ベーカリー以外にも「ノーマ」のDNAを受け継ぐレストランはたくさんあります。私のお気に入りは、メキシカンレストラン「サンチェス(SANCHEZ)」。「ノーマ」でパティシエを務めたメキシコ系アメリカ人のロジオ・サンチェス(Rosio Sanchez)が手掛けたお店で、市内にはレストランとスタンドの2店舗を構えています。私はスタンドの方にしか行ったことがないのですが、メニューは豚のロースト、牛肉のグリル、じゃがいもとチーズという3種類のタコスと付け合わせ数種類です。3種類ともハラペーニョが効いた辛味に酸味・甘味・うま味がバランスよく楽しめる、刺激的な味!これまでタコスってB級グルメ的にジャンクな味を楽しむ印象でしたが、ここのタコスは一口一口をかみ締め味わいたくなるような、奥深い感じがするのです。本場メキシコにはまだ行ったことはありませんが、メキシコ系移民の多いカリフェルニアやニューヨークで食べたタコスよりも断トツでここが美味しいです。3種類のタコスとソフトドリンクで135クローネ(約2135円)でした。

うなるほど美味なタルタルステーキ

 「ノーマ」関連のお店はどこも信頼の置ける味だと分かったところで、地元の方に聞いたオススメ店「マンフレッズ(MANFREDS)」に初めて行ってみました。コペンハーゲン郊外にあるオーガニック農家と契約し、農場からキッチンまで40分以内に食材が届いて調理される“ファーム・トゥ・テーブル”をコンセプトに、新鮮な旬の野菜を使った料理が人気のタパスレストランです。平日13時のランチタイムは予約で満席でしたが、唯一空いていたカウンターの1席をゲット!私のオーダーはタルタルステーキと豆サラダです。タルタルステーキは生の牛肉にオリーブオイル、ケッパー、ピクルス、薬味などを混ぜたフランス料理の定番で、ユッケの洋風版のような味です。メニューに見つけたらほぼ必ずと頼むタルタルステーキ愛好家の私もうなるほど美味しくて、感激しました。パリのものとは違い、牛肉がかなり粗めのみじん切りでかみ応えが結構あり、薬味の味付けが薄い分、肉の味をしっかり感じられました。奥にはマヨネーズとサワークリームを合わせたようなソースが隠れていて、これがまた今まで食べたことのない絶妙な味わい!豆サラダには、柔らかいグリーンピースとほっくりしたソラ豆、ボールガード・スノーピーと呼ばれる皮が紫色のシャキシャキした豆(サヤエンドウの一種)が野菜の濃厚なブイヨンソースに絡む、食感と味を楽しめる一皿でした。タルタルステーキと豆サラダとミネラルウオーターで185クローネ(約2925円)でした。

 ファッション・ウィークの取材ということを忘れてしまいそうなほど食いしん坊な旅になってしまいましたが(笑)、個人的には大満足!味覚を刺激したり、他人と料理を共有して交流を深めたり、オシャレしてレストランへ出掛けたり。食べるという人間の自然の行動が、お腹を満たすためだけではなく人生を豊かにする一つの方法であるという新たな考え方が数十年間でこの地に根付いたことが、あらためてすごいと感じました。半年に1回訪れるたびに街が進化していて、まだまだ魅力を発掘できそうなコペンハーゲンです。私のグーグルマップには行きたいお店がたくさんピン付けされており、次シーズンも待ちきれません!でもまず今は、食べ過ぎた分ダイエットに励むことにします……。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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パリコレモデルはショーの前に何してる? 旬なイケメンモデルたちに直撃

 2020年春夏シーズンのパリ・メンズ・ファッション・ウイークが終わり、パリはすっかりバカンスモードに突入しています。ファッション・ウイークの後半は38度の猛暑日が続いたうえに、道路整備の多いこの時期は特に渋滞がひどく、いつも以上に体力を消耗しました……。バックステージ取材やショールーム回りに奔走した私は暑さにやられてしまいましたが、同時にデザイナーたちからたくさんパワーを受け取りました。そして何より私のエナジーチャージは、イケメンモデルたち(笑)。ファッション・ウイーク前に「WWD Japan.com」のインスタグラムで読者に「海外メンズコレクションで気になることは?」とリサーチした結果、モデルに関する質問が多数寄せられたこともあり、今季はバックステージでモデルたちにも取材を敢行!あまり表に出ることのない、モデルたちの素顔やショー前の舞台裏をのぞいてみました。

前シーズンに見つけたイケメンモデルの記事はコチラ

ショー前のモデルはこう過ごしている

 モデルのコールタイム(呼び出し時間)は、ショーが始まる4〜5時間前が通例です。ヘアやメイクアップに時間がかかるウィメンズの場合は、もっと早いこともあります。ショー当日は何が起こるか分からないので早めに呼び出されるのですが、モデルたちにとってそのほとんどが待ち時間。退屈な時間の過ごし方はさまざまですが、コールタイムが早朝6時だった「サカイ(SACAI)」のバックステージでは、仮眠をとるモデルがたくさんいました。レミントン(Remington)とクリスティン(Krystin)のように、女性モデルはガールズトークを楽しんでいる姿も見られました。活躍が続く日本人モデルのコウヘイ(Kohei)は「僕の場合はヘアのセットに時間がかからない分、他のモデルよりも1時間ほど遅いコールタイムです。待ち時間はずっとしゃべって過ごすことが多いですね」と、仲の良いモデル仲間と談笑してました。多くのランウエイを経験している分、友人も多いようです。「シャネル(CHANEL)」のキャンペーンに起用されたこともあるアデスワ(Adesuwa)は、チャームポイントであるドレッドヘアのセットに時間がかかっていたようで、他のモデルよりも鏡の前に長く座っていました。「ファッション・ウイークはモデルにとってサバイバル!体力勝負だし、体調を崩したら地獄だから、しっかり栄養のバランスがとれた食事を心がけているよ」と売れっ子モデルならではのコメントを残し、ケータリングの食事を楽しんでいました。どのブランドのバックステージでも一番多かったのは、スマートフォンでネットサーフィンやゲームをして一人で過ごす方法です。中には読書をしたり、イヤホンで音楽を聴きながらダンスをしたりする自由なモデルもいました。何かに集中していつの間にか何時間も経過していたときよりも、ひたすら待っているだけの1〜2時間の方が、意外と疲れますもんね。キャットウオークでスポットライトを浴びる1分足らずのために、何時間も準備と待ち時間を重ねるのがモデル業。華やかですが、決して楽な仕事ではありません。

今、旬のメンズモデルはこの2人

 最旬メンズモデルといえば、業界人は口をそろえてアルトン・メイソン(Alton Mason)の名を挙げるはず。18年の「モデルズドットコム(Models.com)」でモデル・オブ・ザ・イヤーに輝いた彼は、16年のデビュー以来「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「グッチ(GUCCI)」「H&M」など数々のキャンペーンに起用され、初の黒人男性モデルとして「シャネル」のランウエイも歩きました。今季のパリコレでも1日にいくつものランウエイをこなした彼を「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH以下、オフ-ホワイト)」のバックステージでキャッチしました!ジャマイカ人とガーナ人の両親のもと、アメリカで生まれ育った22歳のアルトン。ロサンゼルスのアメリカン・ミュージカル&ドラマ・アカデミー(Amerian Musical and Dramatic Academy)でダンスを学び、振付師ローリー・ギブソン(Laurie Gibson)のアシスタントとしてダンサーをしていた15年に、インスタグラムを通じてモデル事務所にスカウトされたのだとか。16年に「イージー(YEEZY)」のプレゼンテーションでデビューを飾ると、瞬く間に人気モデルへと駆け上がっていきました。恵まれた外見はもちろんのこと、ダンスで培ったしなやかな体を生かした表現力が強い武器です。アルトンは「インスタグラムのDMで連絡が来た時は、絶対に冗談だと思ったよ。モデルになることなんて想像もしていなかったけれど、人生は何があるか分からないものだね!」と目を輝かせます。インスタグラムの写真だけでモデルの素質を見出したスカウトの人もすごい!

 アルトン以外で「WWDジャパン」取材陣が今季注目したメンズモデルは、ジーヌ・マハデヴァン(Jeenu Mahadevan)です。ロンドンやミラノのショーで大活躍だった彼は、「キコ コスタディノフ(KIKO KOSTADINOV)」「チャラヤン(CHALAYAN)」「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」「フェンディ(FENDI)」など数々のランウエイで見かけました。南アジアか中東っぽい、国籍不明でエキゾチックな外見に目が引かれましたし、各ショーでも絶妙なスパイスを与える存在感のあるモデルでした。しかし今季のパリコレには2つのブランドのキャンペーン撮影と「ヴォーグ(VOGUE)」のエディトリアル撮影が重なって、ほとんど参加していなかったそうです。パリで見かけたら絶対取材したいと意気込んでいたので残念でしたが、メールでの取材に応じてくれました。気になっていた彼の国籍はノルウェーで、両親のルーツはスリランカだと教えてくれた20歳のジーヌ。地元オスロのバスの車内でスカウトされたことがきっかけで17年にモデルデビューを果たすと、すぐさま「ジバンシィ(GIVENCHY)」や「バーバリー(BURBERRY)」といったビッグネームの仕事が舞い込んできたのだとか。「将来の夢はファッションとは無関係な分野で、天体物理学者になること」ときっぱり言い切ります。アルトンやジーヌ、その他インフルエンサーなども、最近は本業とは別に人生の軸となる夢を持っている人が活躍しています。男女問わず、夢中になれるものを見つけて情熱を注いでいる人って、やっぱり魅力的ですよね。

おまちかね!バックステージでキャッチしたイケメン24連発

OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH / 将来有望な万能系イケメン

 ここからは、昨シーズン好評だったイケメンハントの続編をお届けします!まず、パリ・メンズの目玉の一つである「オフ-ホワイト」のバックステージで見かけたのは、将来有望な若手イケメン。全体的に年齢層は低く、18歳〜20代前半が大半でした。ランウエイではプロらしく堂々としたウオーキングを見せるため大人っぽく見えますが、バックステージではまだあどけない瞳で半分少年のような表情が見え隠れします。若手ということもあり、強い個性というよりも、ストリートからフォーマルまで幅広いスタイルが似合う、何色にでも染まれるようなイケメンぞろいでした。何でも似合うというのはモデルとしてはかなりの強みです!地毛のスパイラルヘアが特徴のナイジェルは「ロエベ(LOEWE)」「ジャックムス(JACQUEMUS)」に、目力の強いヘンリーは「ポール・スミス(PAUL SMITH)」「ベルルッティ(BERLUTI)」に、少女のようなかわいさを持つリオは「ルイ・ヴィトン」「アミ アレクサンドル マテュッシ(AMI ALEXANDRE MATTIUSSI)」に起用されていました。うれしかったのは、昨シーズンのイケメンハントでキャッチしたラトビア出身の19歳、エデュアードを今季のさまざまなショーで見かけたほか、「フェンディ」「サン ローラン(SAINT LAURENT)」のキャンペーン広告も飾っていたことです。一見クールで近寄りがたそうなのに、数日後に「1017 アリックス 9SM(1017 ALYX 9SM以下、アリックス)」のバックステージで再会すると気さくに話しかけてくれて、私の中で好感度が急上昇!

1017 ALYX 9SM / プロアマ入り混じるちょいクセ系イケメン

 そんな「アリックス」のランウェイには、デザイナーのマシュー・ウィリアムズ(Matthew Williams)の友人や家族が大勢登場しました。写真6人のうち、何人がプロのモデルだと思いますか?正解は、アンドリューとアブドゥラエの2人がプロで、ほかの4人はアマチュアの一般人なのです!アンドリューの顔を見たことがある人は多いかもしれません。4年程度が平均というメンズモデル界で、9年という長いキャリアを持っており、最近ではアーティストとしてベルリンやニューヨークで個展を開いたり、ミュージシャンとして作曲も行ったりしているそうです。バックステージではマシューの娘アリクスちゃんを優しい表情であやしていました。アブドゥラエはアフリカにルーツを持つフランス出身の21歳で、モデル業をスタートしたばかりという新顔です。ジェイデンはニューヨーク在住のアーティストでウィリアムズの旧友、ほかの3人は全員「アリックス」で働く従業員で、コレクションがよく似合うのも納得です。アマチュアといっても長身のイケメンで、ランウエイではプロアマの見分けが難しいほど立派なウオーキングを披露していました。類は友を呼ぶと言うように、「アリックス」やマシューの周りにはイケメンが集まってくるみたいです。もしくは「アリックス」を着用するとイケメン度アップするのかも!?

SACAI / 奇抜ヘアだけどナチュラル系イケメン

 「サカイ(SACAI)」は今季、ヘアもメイクもかなりナチュラルで、各々が持つ素質をそのまま生かしているような印象でした。ルックの最終チェックでも、阿部千登勢デザイナーがわざと片方の襟を立てたり、袖を無造作にたくし上げたりと、キメ過ぎずナチュラルに見えるスタイリングの仕上げを加えていました。メンズモデルは甘い感じの正統派イケメンが多く目移りしましたが、私が注目したのは彼らのヘアスタイルです。ドレッドやスパイラル、天然パーマっぽいクルクル、男らしい坊主頭とこれだけ多様なヘアスタイルがそろうのはなかなか珍しいことです。全員のフィッティング時の写真(ヘアメイクを施さない普段の姿)と見比べると、ショー本番でもヘアは整える程度で全員が地毛を活かしていたようでした。もしも、コウヘイさんがアントワーヌのようなクルクルヘアで、ウィロウがトリスタンのようなドレッドだったら……。と勝手に妄想を楽しむという、イケメンハントならではの醍醐味(?)も見つけました。「サカイ」は数シーズン続けて同じモデルを起用することが多いため、どのイケメンも阿部デザイナーと親しく言葉を交わしていたのが印象的でした。男性も女性も売れっ子モデルぞろいですが、なかでもクリステルスは今季私が取材した全てのバックステージで見かけるという活躍ぶり!彼はラトビア出身の22歳で、先にモデルをしていた友人にインスタグラムでタグ付けされたことがきっかけでモデル事務所にスカウトされたのだとか。趣味を聞いてみると「普段は4歳の息子の子育てをしているよ」と、何とも驚きの回答です。

 モデルの流行り廃りはファッション同様にとても早いですが、個人の好みというのはなかなか変わらないものですね。私は今季もやっぱりラトビア出身男性のイケメンぶりに胸キュンの連続でした!

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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パリメンズに挑んだ日本ブランドのリアルな評価 海外メディアやバイヤーはこう見た

 6月18〜23日に開催された2020年春夏シーズンのパリ・メンズ・ファッション・ウイークの公式スケジュールには、前シーズンに続いて多くの日本ブランドが名を連ねた。パリという古い服飾文化が根付く場所にとって、日本ブランドは新しい風を吹き込むような存在である。彼らのコレクションを仏メディアがどのように評したのか、可能な限り多くのメディアに目を通した。しかし結論から言うと、残念なことに今季は日本ブランドへの関心は低かったようだ。実際に記事として掲載されたブランドは数えるほどだった。

最も高評価は「ソロイスト」

 そんな中、最も評価が高かったのは宮下貴裕が手掛ける「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATHESOLOIST.以下、ソロイスト)」だろう。パリ大学医学部のキャンパス内にある回廊をキャットウオークに、ヴィクトリア調の紳士服ユニホームのパーツを切り取って合成されたデザインが、繊細でロマンティックな「ソロイスト」の独特な世界観へと見る者を引き込んだ。仏新聞「ル・モンド(Le Monde)」は「会場内に強い西日が差し込み描かれる陰影は、それだけでもすでに素晴らしく美しい。(文字プリントは)失読症にとっては悪夢だが、コレクションは詩を愛する人にとっての夢だ」と詩的なコレクションを称えた。「ル フィガロ(Le Figaro)」も「宮下デザイナーは、毎シーズン全く異なるコレクションを生み出す。テーマが何であっても共通しているのは、彼の創造性が極端に発揮されているということだ」と記した。刺しゅうやグラフィティー、アクセサリーなどにあしらわれたミッキーマウスについて記述するジャーナリストは多く、それは制服のコードを再構築したコレクションに甘いスパイスを与える役割として機能したようだ。

「タカヒロミヤシタザソロイスト.」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

「サカイ」は安定感に支持

 阿部千登勢が手掛ける「サカイ(SACAI)」は安定したコレクションを見せた。映画「ビッグ・リボウスキ(原題:THE BIG LEBOWSKI)」からインスピレーションを得て、フォーマルなテーラードからカジュアルなスポーティーまで、アイテムだけではなくスタイルもハイブリッド。プレスとバイヤーの両方から支持を得たようだ。米雑誌「エスクァイア(Esquire)」のジャーナリストはショー直後に「白黒のゼブラ柄、森林のタペストリー、境目があいまいなイブニングジャケットなど異なるスタイルが混在していたが、最終的にはまとまりがあり、新鮮さを感じる内容だった」とコメントした。英百貨店セルフリッジ(SELFRIDGES)のメンズバイヤーは「彼女のメンズとウィメンズに共通する明確なビジョンとディレクションがコレクションに表れていた。さまざまなテーマがミックスされた今季は『サカイ』ファンを満足させながら、新たな客層にもアプローチできそうなアイテムが並んでいた」と満足気に会場を後にした。

「サカイ」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

「アンダーカバー」は賛否分かれる

 ショーを見て、大きな賭けに出たと感じたのは高橋盾の「アンダーカバー(UNDERCOVER)」だ。ストーリー性のある趣向を凝らしたショー演出と、ストリートとモードの境界を行き来するようなスタイルを打ち出してきたが、今季は黒を基調としたスーツスタイルがルックの大半を占めた。真っ暗な会場内は、キャットウオークをライトが照らすだけのシンプルな演出で、落ち着いたクラシック風のBGMが流れる中ショーが行われた。19-20年秋冬コレクションは「ヴァレンティノ(VALENTINO)」とのコラボレーションが好評で、ラグジュアリーブランドの顧客にも「アンダーカバー」の名を広める機会となった。さらに新しい層の顧客を獲得するための賭けか、もしくは色や要素を削ぎ落としたごまかしの利かない服でも勝負できるという自信かは定かではないが、「アンダーカバー」が新たな方向へと舵を切ったことは確かだ。仏「ヴォーグ オム(Vogue Hommes)」のジャーナリストは「期待を裏切られた。長きにわたり築き上げてきた高橋デザイナーの印象は美しい形で崩壊し、全く新しい才能を見せつけられたのだから。今季のパリコレは全体的に多彩な柄と色が多いだけに、『アンダーカバー』の黒の印象が強く残る」と絶賛した。その他の仏メディアでもおおむね称賛する声が多かったが、バイヤーの視点は違ったようだ。匿名を希望したフランス人のバイヤーは「一つ一つ丁寧にデザインされた美しいコレクションだったが、数字に直結するかどうかは分からない。百貨店では売れるだろうが、一つの方向性を打ち出すコンセプトストアでは売るのが難しいかもしれない。展示会場でコマーシャルピースを見なければ何とも言えないが、今のところ私の店では誰が購入するかという明確なイメージが湧かない」と話した。

「アンダーカバー」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

 壮大な自然を取り入れた「フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)」や「リーバイス(LEVI’S)」とのコラボレーションによってデニムの七変化を見せた「ファセッタズム(FACETASM)」、ウィメンズからメンズに発表の時期を早めた「オーラリー(AURALEE)」、パリで初めてショーに挑んだ「キディル(KIDILL)」、セーヌ川に浮かべた船の上でVRでの演出を行った「ヨシオ クボ(YOSHIO KUBO)」など、多くの日本ブランドが今季のパリで健闘した。

 筆者は、日本ブランドだからといって無条件に活躍してほしいという心情にはあまりならない。自らの創造性を磨き続け、ファッションに真摯に向き合いながら売り上げを伸ばすブランドは、国籍に関係なくきちんと評価されるべきだと考えている。しかし今季は、個人的に日本のブランドから触発されることが多々あった。その大きな要因は、彼らの挑戦する姿勢を目の当たりにしたことだ。コレクションやショーの良しあしではなく、彼らが奮闘する姿に純粋に心の底から尊敬の念が湧いてきた。日本ないしはアジアですでに地位を確立し、一定規模の売り上げがある日本ブランドは、国内にとどまっていればリスクを回避できるし、周囲からはある程度尊重されることもあるだろう。井の中の蛙のままでいる選択肢だってあったはずだ。しかし彼らは、そんな安楽な環境を飛び出して、異国の地で膨大なコストとリスクを抱えて挑戦している。インターネットなどの発達によって海外進出の障壁が下がったとはいえど、その壁を超えるには勇気と覚悟が必要だ。会社のトップも兼務するデザイナーであればなおさらだろう。ただ夢を語るだけの人と、実際に行動を起こす人の間には決定的な境界線があると改めて感じたし、筆者は後者でありたいと思う。「安楽な環境で惰性的になっていないか?」ーー彼らを見てそんなことを自問し続けた今季のパリ・メンズであった。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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東京発「キディル」のパリコレデビューに密着最終日 初のショーは満員御礼、巨額費用が必要でも海外挑戦を続ける理由

 「キディル(KIDILL)」がパリで初めて行なったショーの舞台裏に3日間密着し、取材はいよいよ最終日を迎えた。

東京発「キディル」のパリコレデビューに密着1日目 モデルオーディションは70人相手にてんやわんや

東京発「キディル」のパリコレデビューに密着2日目 本番前日に世界からスペシャリストが集結

 デザイナーの末安弘明とスタイリストの島田辰哉がタッグを組んで東京で10シーズン以上ショーを開催してきたとあって、異国の地パリでもここまでトラブルなく準備は進められてきた。初挑戦となった前季のプレゼンテーションでは主にバイヤーが来場したが、今季はプレスも加わり会場は満席だった。来場者の誘致に一役買ったパリの有力PR会社に広報を依頼した経緯とは?そして、ショーは無事に成功したのか?緊張感漂うバックステージで末安デザイナーを見守りながら取材した。

巨大モヒカンやゴスクイーンも合流

 ショーは午前10時30分開始予定で、コールタイムは7時。たっぷり時間があるようだが、末安デザイナーはほとんど息つく暇もなく動いていた。到着したモデルから順にヘアとメイクが施されていく。バックステージでは、モデルに洋服を着用させるためのフィッターと呼ばれるアシスタントたちに対して、島田がルックの細部や注意点について指示を出していた。

 今回のモデルで特に強烈な存在感を放っていたアドラ(Adora Bratbat)、ナース 3D(Nurse 3D)、パルマ・ハム(Parma Ham)の3人は、異なるゴスバンドに所属する本物のパンクスで、音楽をベースにする「キディル」の世界観に共鳴しているようだ。自前のメイクで会場入りした彼らは、他のモデルよりも遅れてショー開始1時間前に到着。彼らの地毛をヘアスタイリストの森元拓也が仕上げている間、会場にはバイヤーやプレスが入ってきた。全席が埋まり盛況だったのは、パリのPR会社「リチュアル プロジェクツ(Ritual Projects)」が協力しているからだろう。「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」」「ゲーエムベーハー(GMBH)」など気鋭ブランドを扱う同社にアプローチすると、ロックミュージックのファンだという代表ロビン・メイソン(Robin Meason)と意気投合して、「PRをやらせてほしい」とすんなり契約が決まったという。

大胆なコレクションに込めた細部へのこだわり

 「キディル」の20年春夏コレクションは、多様なコラボレーションが彩った。メインはイギリスのゴシックロックバンド、バウハウス(BAUHAUS)でフロントマンを務めたピーター・マーフィー(Peter Murphy)の作品だ。NYを拠点に活動するイラストレーターのエリ・ワキヤマ(Eri Wakiyama)のイラストや、ロンドンのバイクメーカーと共に制作したバイカージャケット、キャラクターの人形を合成したアクセサリーはグラフィックアーティストのコウスケ・シミズ(Kosuke Shimizu)との共作だ。彼らとのコラボレーションによる相乗効果もあり、パンク魂が宿るコレクションには、世間のトレンドに流されずクリエイションに打ち込む末安デザイナーのアイデアが光る。「スタイルについてのトレンドは気にしないが、素材については意識している。例えば、最近は重たい素材は敬遠されがちで、軽い素材がトレンド。僕は生地から作っているため、重いウールは使わず化学繊維を選ぶようになった」。糸から染色してその上にプリントを重ねたり、生地に釣り糸を交ぜて独特の光沢を持たせるなど、生地には末安デザイナーのこだわりが詰まっている。彼の服作りの基盤は、かつて暮らしていたロンドンでの生活にあるようだ。もともとファッションデザイナーになりたいという夢を持っていたが、「手に職をつけた方がいい」という親の勧めで美容師の道を選んだ。パンクミュージック好きが高じて本場ロンドンへ留学すると、古着を解体してリメイクしながら服作りを独学した。その頃に体験したロンドンのアンダーグラウンドなカルチャーシーンが投影される「キディル」の世界観は、多くのミュージシャンやアーティストが支持している。

 数カ月かけて作り上げたショーは、10分にも満たないランウエイと45分間のフィルムインスタレーションで無事に終わった。バックステージには通常キャットウオークを映すモニターが用意されることが多いが今回はなく、末安デザイナーがリアルタイムでショーの様子を見ることはできなかった。フィナーレの大喝采が彼の緊張の糸をほどいたようで、安堵の表情とともに少し涙を浮かべながらスタッフたちと喜び合っていた。ショー直後に声を掛けると「まぁ、ショーは見られなかったからどうだったのか分からないけど(笑)、とりあえず終わった!」と晴れ晴れしい笑顔を見せた。

自費での参加にこだわる理由

 昨今は、ショーという発表手法に疑問を投げかける業界人は少なくない。特にニューヨークでは数年前からファッションショー見直しの動きが強まって、多くのブランドが発表方法を模索している。巨額の費用がかかるわりにはバイヤーやエンドユーザーの消費に直結しにくく、旧来のショー構成にはかねてから疑問が呈されてきた。だが筆者の意見としては、ファッションショーが一概に難しいわけではなく、ブランドによっては有効な手段にもなると考えている。バイヤーや顧客と密な関係を築く方がブランディングにも売上にもつながるブランドもあれば、ショーで世界観を発信することで認知度を上げてコミュニティーを構築することが有効なブランドもある。強烈な個性を持つ「キディル」は後者である。密着初日に、出資者を探しているのかと末安デザイナーに尋ねると、「もちろん資金面でのサポートは欲しい。しかし、出資者をつけたことでクリエイションの面で自由が奪われることは避けたい、そういうブランドをたくさん見てきたから」と語っていた。2度のパリコレで結論を出すのはまだ早過ぎるが、自費で海外進出したブランドとして成功例になれば、若手ブランドにとっては希望となるはずだ。アカウント数だけでなく、売り上げや消化率といった数字も上がり、海外挑戦での成果が出たかどうかを、来シーズンのパリ・メンズで聞くのが早くも楽しみである。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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東京発「キディル」のパリコレデビューに密着2日目 本番前日に世界からスペシャリストが集結

 東京のメンズブランド「キディル(KIDILL)」がパリで行なったショーの舞台裏に3日間密着した。1日目のキャスティングではモデルが決まり、ショーに携わる全ての人がそろった。

東京発「キディル」のパリコレデビューに密着1日目 モデルオーディションは70人相手にてんやわんや

 ショー前日となる2日目は、デザイナーの末安弘明とスタイリストの島田辰哉が数カ月にわたり構成を練った演出を実際に作り込んでいくために、会場の設営やヘアメイクのテストが行われる。ヘアスタイリストやメイクアップアーティスト、設営スタッフなど、異国の地でのショー開催にあたりどのようにチームを構成したのか?また会場を決めるまでの過程は?約1000万円という限られた予算の中でショーを実現させた、末安デザイナーの動きを追った。

日本人で結成した“チーム キディル”

 ショー会場に朝から「キディル」チームが集結した。末安デザイナーがパリ初のショー会場に選んだのは、マレ地区にあるギャラリー&イベントスペースのレオン・クール・マレ500(Leon Coeur Marais500)。大きな天窓から日差しが降り注ぐ、全面真っ白の明るい空間だ。会場費はショー前日と当日の2日間で約200万円。「モノトーンでミニマルな、何も無い“箱”のような場所を探していた」と話す末安デザイナー。パリ在住の知人に現場の写真撮影を依頼するなどし、会場選びにはさほど時間がかからなかったという。会場が決まると島田と演出について打ち合わせを重ね、数カ月かけてイメージを固めていった。

 そんな「キディル」のショーを具現化させるのは、日本人チームだ。ヘアスタイリストはロンドンを拠点にする森元拓也、メイクアップも同じくロンドンが拠点のメグミ・マツノ(Megumi Matsuno)。ブッキング済みのモデル一人一人の写真を見ながら、ヘアとメイクの細かな部分までを決める。実際にプロのモデル1人を使って本番さながらに施し、実際のキャットウオークをイメージしながら最終決定が下された。ロンドンチームと組むのは今回が初めてだったが、多くを語らずとも順調に打ち合わせは進んでいった。彼らとは、ロンドンに留学していた際のルームメイトの紹介で知り合ったという。

椅子を八の字状に配置した独特な空間演出

 末安デザイナーのショー演出にはこだわりがあった。八の字状に観客が座る椅子をセッティングし、2つの円の真ん中には1脚ずつ椅子を用意する。モデルは観客の前をウォーキングしたら、2脚の椅子に座ってそれぞれ4秒ずつポーズを取るといったものだ。ショーが終わると、奥のスペースにある壁を背に一列にモデルが並び、その上にプロジェクターで映像を映し出すフィルムインスタレーションを45分間行う。ショーのディレクションは日本のプロダクションのボン、ライティングを担当したのはアートブレーンカンパニーで、両社ともに以前から付き合いがある顔なじみだ。末安デザイナーが実際に動きながら演出について説明し、会場の設営が始まった。バックステージにもサンプルが運び込まれて段取りよく会場がセッティングされ、いよいよショー本番を迎える準備が整った。

ショー本番に観客は来てくれるのか?密着最終日の様子は7月20日(土)に公開予定

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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東京発「キディル」のパリコレデビューに密着1日目 モデルオーディションは70人相手にてんやわんや

 末安弘明が手掛ける東京のメンズブランド「キディル(KIDILL)」は6月20日にパリで、2020年春夏コレクションをショー形式で発表した。東京のファッション・ウイークで数々のショーを開催してきた同ブランドだが、海外での発表は2回目。初挑戦は19年1月のパリ・メンズ期間中にオフスケジュール(公式スケジュール外)でプレゼンテーションを行い、2度目は満を持してのショー形式での発表だ。世界中からブランドが集まるパリ・メンズの公式スケジュールには新参者が入る隙は現在なかなかないうえに、タイトな予定のためオフスケジュールに足を運ぶ業界人は少ない。1月に初めてパリでプレゼンテーションを行う前に末安デザイナーは「おそらく、見に来てくれる人は少ないと思う」と笑いながらも、主にバイヤーに向けてパリでの発表に臨むと意気込んでいた。ショーにかかるコストも当然安くはなく、今回かかった費用は合計約1000万円。リスクも高いため、出資者やサポートもなく自費でパリ進出するブランドは少ない。しかし、「キディル 」は2シーズン続けて自費で挑戦した。パリで発表する意義や成果、そして異国の地で自己流にショーを作り上げる過程を見届けるため、末安デザイナーにショー当日までの3日間密着した。

15畳のアパート1室にモデル70人をキャスティング千本ノック

 「キディル」のショーはデザイナー末安弘明とスタイリスト島田辰哉の二人三脚で作られる。ショー本番2日前、島田が滞在するパリのマレ地区にあるアパートメントの一室でキャスティングが行われた。15畳ほどの部屋にはコレクションのサンプルが並べられ、朝から日が暮れるまで一日中モデルがひっきりなしにやって来る。モデルは部屋に入ったらすぐにコンポジットを末安デザイナーに手渡す。コンポジットとは、ポートレート、全身写真、3サイズとモデル事務所が書かれた、モデルにとって名刺代わりになるものだ。モデルの雰囲気、身長、体形、肌の色を考慮して、2人で試着するルックを検討する。ルックを着用したモデルを見ながら「この人の場合サングラスは無しの方がいいかも」「トップスを違う色に変えてみよう」などと二人で相談しながら、キャスティングの途中にも細かくルックを改善して、コレクションがどんどん磨かれていく。「今回のショーで採用したいモデルは、ストリートで見かける普通の男の子というよりも、顔立ちが整っていてどこか貴族っぽい、気品を感じるような男性を求めている。血の気がなく平気な顔して人を刺すような、不気味な感じにしたくて」と話す末安デザイナー。パリコレ会期中には、一流から駆け出しのモデルまでが世界中から大集結するとあって「狭いスペースにこんなに大勢が来るとは想定外だった」と反省しながらも、期待以上に質の高いモデルがキャスティングに来たことに満足気な様子だった。
 
 予算に余裕のあるブランドは、キャスティング時にルックを着用する手助けをしたり、サンプルを整理したりするためのアシスタントを雇うが、「キディル」は全て2人で進行した。また、モデルのブッキングはキャスティング会社に依頼することが多いものの、その部分もカットしたようだ。モデル1人のブッキング費用は700〜1200ユーロ(約8万5000〜15万円)が相場。エージェンシーによってはインスタグラムに掲載するか否かでさらに追加料金が発生した。今回のショーでは知人の紹介で本物のゴスバンドのミュージシャンや、海外コレクションでストリートスナップを行う日本人の服部恭平などをモデルとして起用したため、結果的にプロモデルは12人をブッキングした。数名のモデルは2ルック着用するなど、工夫を凝らして予算内に収めた。

「Tシャツが似合うモデルがいない」ピンチの中、救世主が現れる

 30度まで気温が上がったキャスティングの日、エアコンのない部屋(パリはほとんどのアパートメントにエアコンがない)に一日中こもって、約70人のモデルと対面した。「Tシャツが似合う人って意外となかなかいないな……」とこぼしながら英バンド、バウハウス(BAUHAUS)のピーター・マーフィー(Peter Murphy)をプリントしたTシャツのルックを着用するモデルを決めるのに最も苦戦したようだ。来るモデルほぼ全員にそのルックを着用させるも、なかなか決まらない。洋服のボタンを閉めたり靴紐を結んだり、立ったり座ったりを繰り返す作業は結構な重労働で、二人の集中力と体力は消耗していく。

 全ルックのモデルが決まったころ、ある1人のモデルが部屋に入ってきた瞬間に2人のテンションが露骨に上がった。「散々見てきて、グッときた」と末安デザイナーに数時間ぶりに笑みがこぼれ、スタイリスト・島田と顔を見合わせた。キャスティングの1日を終える頃、西日が差し込む部屋は少々散らかっていたが、二人の頭の中に描かれたショー当日のイメージはどんどん明確になっているようだった。

世界で活躍するスタッフがそろった密着2日目の様子は7月19日(金)に公開予定

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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「アリックス」の2020年春夏はテーラリングで新境地 ブランドを進化させるコミュニティーの力

 パリ・メンズ・コレクション最終日の6月23日に「1017 アリックス 9SM(1017 ALYX 9SM以下、アリックス)」がショーを開催した。創始者であるマシュー・M・ウィリアムズ(Matthew M. Williams)はアメリカ・シカゴ出身の33歳。2012年にヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)らと立ち上げた「ビーントリル(BEEN TRILL)」を人気ブランドに育て上げ、15年に自身の娘の名を冠した「アリックス」(18年に現ブランド名に変更)を始動した。「モンクレール(MONCLER)」や「マッキントッシュ(MACKINTOSH)」「ナイキ(NIKE)」との協業に加え、キム・ジョーンズ(Kim Jones)率いる「ディオール(DIOR)」メンズ・コレクションではキャップやバッグのバックルをデザインするなどチームへの参加も後押ししてコミュニティーはますます広がり、それを自身のコレクションに還元している。今季のショーに携わったモデルや音楽プロデューサー、ヘアメイクアップなどは昔からの友人が大半を占めており、妻のジェニファー・ウィリアムズ(Jeniffer Williams)もモデルとしてランウエイに登場し大歓声を浴びていた。

 ショーの会場に選んだのは、19世紀に大手銀行の本社として使用されていた歴史的建築物のル セントリアル(Le Centorial)。テーラードコートをまとったウィリアムズはバックステージで、「テーラリングは若いブランドにとって非常に難易度が高い。『アリックス』なりの解釈でテーラーリングを再定義し、共通言語の一つにすることが僕にとっての新たな挑戦だ」と目を輝かせながら語る。ショーの前半はメンズ・ウィメンズ共に色気が香るテーラードのルックが続いた。ブランド設立当初から品質の高さにこだわってきたウィリアムズは現在、テーラードの本場であるイタリアを拠点にしている。ショーの中盤以降は再生皮革のコートやミリタリー風のベスト、バリスティックナイロン製のバッグなど、「アリックス」の代表的なアイテムがランウエイを飾った。ブランドのシグネチャーであるローラーコースターバックルはルックにニュアンスを加え、さらにシューズやジュエリーにも用いて装飾するなどバリエーションが広がっていた。仏新聞「ル フィガロ(LE FIGARO)」のジャーナリスト、ヴァレリー・グエドン(Valerie Guedon)は「非常に質の高いテーラーリングはラグジュアリーを印象付けるようだった。しかし、特筆するほどの新しい概念や楽しみ方の提案があったとは言い難い」とコメントを寄せた。

 全体的には非常に洗練されたコレクションだったが、本格的なテーラリングが、「アリックス」が得意とするストリートの要素にうまく融合しているようには感じなかった。決して反発はしていないものの、異質なもの同士がまだ溶け合っていないような状態だ。だが「アリックス」にとってはきっと筆者の見解よりも、コミュニティーの一員である顧客がテーラーリングにどのような反応を示すのかが重要であるはずだ。コミュニティーの中でクリエイションが磨かれていく「アリックス」には、今後も独自の進化と新たな提案を期待したい。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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20年目でもブレない「サカイ」 2020年春夏メンズは「世界に暮らす全ての人のために」

 「サカイ(SACAI)」は今年で設立20年目を迎えた。2009年にメンズラインをスタートし、11-12年秋冬コレクションから発表の場をパリに移し、今ではパリメンズの目玉ブランドの一つとして定着した。グラン・パレのギャラリー内を会場にショー形式で発表した2020年春夏メンズ・コレクションのショーにも、多くのセレブリティーやバイヤー、ジャーナリストらが駆け付けた。

「サカイ」2020年春夏メンズコレ来場者は「ナイキ」コラボばかり ベストスニーカーを華麗に履きこなす18人

 メンズとウィメンズに加え、母親としての顔も持つデザイナーの阿部千登勢は、どこからそんな力が生まれるのかと不思議に思うほど小柄で華奢な女性だ。最終リハーサルを終えるとハットのかぶり方やシューズの乱れなど、スタッフに的確に指示を出していた。「サカイ」の洋服に身を包むスタッフらは互いにルックの最終チェックをしたり、洋服にスチーマーをかけたりと手慣れた様子で本番までの時間を過ごす。ファーストルック(本番直前にバックステージで行われる撮影)では、阿部デザイナーが一人ひとりのモデルに笑顔で言葉をかけながら、ルックの最終チェックを行い、本番を迎えた。

「ナイキ」コラボの新色も登場

 今季の着想源となったのは、米映画「ビッグ・リボウスキ(原題:THE BIG LIBOWSKI)」だという。同映画は、 同姓同名の大金持ちと間違われて誘拐事件に巻き込まれる男の騒動を描いたコーエン兄弟製作によるコメディーだ。主人公の見解を引用しながら、阿部デザイナーは“結ぶ(Tie Together)”ことに着目した。大小の異なるシルエットのタキシードシャツは片方をステッチで結び、二重になったテーラードジャケットは内側に付属するベルトで前身頃を結んで絶妙なシルエットを生み出す。タキシードやグレースーツ、トレンチコードなどフォーマルなアイテムを「サカイ」流ハイブリッドの手法で進化させた今季は、ボウタイのディテールが多用された。「The rug really tied the room together(あのラグは部屋にすごく合っていた)」という劇中のセリフは、アートディレクターのファビアン・バロン(Fabien Baron)によるグラフィックでTシャツにプリントされた。アメリカのパンツブランド「グラミチ(GRAMICCI)」とのコラボレーションによるクライミングパンツは、“結ぶ”アイデアによって可動域を最大限にするよう設計されている。ショー終盤は、アロハシャツブランド「サン サーフ(SUN SURF)」とのコラボレーションによるトロピカルな柄のニットウエアやドレスが登場した。来場者らはルックの足元に多く集まり、「ナイキ(NIKE)」とのコラボスニーカーの新色に目を光らせていた。

 ショーを終えると、少し涙目になりながらスタッフらと抱き合い感謝を伝える阿部デザイナー。しかし、ほっと一息つく暇もなく、バックステージへとやって来た著名なジャーナリストらに囲まれて取材の対応に追われていた。「男女だとか国籍だとか何も分類せず、世界に暮らす全ての人に向けたコレクション。フォーマルやカジュアルとも意識しておらず、とにかく私が個人的に好きなアイテムを集めました」とコレクションについて語る。「ヴォーグ ランウェイ(VOGUE RUNWAY)」ジャーナリストのエイミー・ヴェルナー(Amy Verner)は「毎シーズン、彼女がどのように“サカイ化”させるのか、期待せずにはいられない。今季は、異なるアイテムを衝突させたハイブリッドではなく、MA-1やテイラードジャケット、ストライプシャツなどワードローブで見慣れたアイテムを結び付けており、彼女が口にした『全ての人に向けたコレクション』という言葉がとても理にかなっている」とコメントした。

 20年前にわずか5型のニットウエアでデビューした「サカイ」は今、さまざまなブランドからラブコールが絶えず、商品のバリエーションも幅広くなっている。拡大する会社の規模に伴い彼女を取り巻く環境が変わっても、「サカイ」のDNAがブレることはない。デザインの複雑さは増し、価格レンジも広がったが、全ての商品に“サカイらしさ”は宿っているのだ。チームや顧客との結び付きを強め、これからも「サカイ」の歴史は紡がれていく。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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ラフ・シモンズが意味深なショーに込めた思い ひも解くカギは2本の映画

 ラフ・シモンズ(Raf Simons)は、2020年春夏コレクションでアメリカに対する復讐劇を開幕させた。会場に選んだのは、パリの郊外ノアジー・ル・グラン(Noisy-le-Grand)にあるエンジニアリングスクールのキャンパス内。淡い紫色に染まったフロアには、黒いビニールがグルグル巻きになったイスがいくつも並べられている。現場を汚したくない殺人鬼が犯行準備を整えたかのような不気味な雰囲気の会場内は、嵐の前の静けさを予感させた。

 アメリカに対する批判的なメッセージを読み上げるBGMでスタートしたショーには、「STONE(D) AMERICA」と「MY OWN PRIVATE ANTWERP」いうスローガンが並ぶアイテムがいくつも登場した。

怒れる「ラフ・シモンズ」、2020年春夏は「カルバン・クライン」へのメッセージなのか 取材記者2人のレビュー

 「MY OWN PRIVATE ANTWERP」の直訳は「私だけのアントワープ」だ。おそらく1991年公開の米映画「マイ プライベート アイダホ(原題:MY OWN PRAIVATE IDAHO)」から引用したと考えられる。同映画は男娼として働く二人の若者が、家族と自身のアイデンティティーを求めて旅するロードムービーだ。主人公が何度旅に出ても、結局アイダホの荒涼とした地にある一本道に戻ってきてしまうという内容が、ラフのファッション業界でのキャリアとどこか重なるようだった。ショーで使用されたBGMは、2014年公開の映画「アンダー・ザ・スキン 種の捕食(原題:UNDER THE SKIN)」でミカ・レヴィ(Mika Levi)が手掛けたサウンドトラックだ。同映画は起承転結がなく非常にアーティスティックな内容なのだが、筆者には「人間は物事を表面上で判断し過ぎている」というメッセージが感じ取れた。ラフが抱くアメリカ、もしくは「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」に対する感情が映画のメッセージと共鳴し、サウンドトラックがその思いを代弁してくれていると感じたのは、想像に難しくなかった。改めてもう一度同映画を観て、ラフの気持ちを考察してみたいと思う。

 白衣のようなラボコートや、危険な化学物質を扱う実験者のためのパッド入りゴム手袋とボクサーショーツは、コレクションに深い意味を含ませるかのように、ゾクゾクとさせる効果があった。ショー後にラフは何人もの人に囲まれていたが、基本的に取材はNGだったようだ。あるフランス人のジャーナリストへの質問には「自由を奪う“巻きつける”ものというイメージから着手したが、決して暗いだけの内容にはしたくなかった」と回答した。おそらく彼に巻きついていたものは解かれたはずだ。「カルバン・クライン」を去った今、彼は上司の顔色を伺う必要はない。自身のブランドで自由にクリエイションに打ち込めるという意志を、不気味で怒りに満ちた今季のコレクションが示している。

 ラフが「カルバン・クライン」を去ることが発表された際、スティーブ・シフマン(Steve Shiffman)=カルバン・クライン最高経営責任者(現在は退任)は以下のように述べていた。「チーフ・クリエイティブ・オフィサーのラフ・シモンズとは、方向性の違いにより、互いに別々の道に進むことを友好的に合意した。(中略)ラフの今後の活躍、そして彼のブランドのますますの発展を心より願っている」。今読むと、丁重で堅苦しい形式張ったコメントが少々不気味にも思える。見境なく感情を露わにする人間よりも、丁寧な言葉で繕って腹に一物を抱える仮面を被った人間の方が、残酷だったりするものだ。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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