もはや芸術 ローマで体感した「フェンディ」クチュールの凄さ

 「フェンディ(FENDI)」は7月4日、ローマ・パラティーノの丘で2019-20秋冬オートクチュール・コレクションの発表イベントを行った。同ブランドは年1回、パリでオートクチュールを発表しているが、今年は、長年同ブランドのクリエイティブ・ディレクションを手掛けた故カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)に捧げるショーを本拠地であるローマで開催。 “ザ・ドーン・オブ・ローマニティー(THE DAWN OF ROMANITY)”と名付けられた同コレクションでは、カールがメゾンと共に歩んだ54年間にちなむ54体を発表した。ショー後には盛大なガラディナーを開催し、54年間にわたるカールとの協業と「フェンディ」の未来を祝福した。また、同ブランドはこれを機に、ウエヌスとローマ神殿(TEMPLE OF VENUS AND ROME)の修復に250万ユーロ(約3億250万円)を拠出すると発表。15年に完成したトレビの泉の修復に続くローマの遺跡修復への資金提供になる。

 ショーではマッシュルームカットのモデルらが登場。1970年代をほうふつとさせるテーラーリングのパンツスーツやジオメトリックな切り替えを施したドレス、「フェンディ」が持つ職人技を駆使して軽やかに仕上げたファーコートなどを発表した。

 テーマは3つ。カールが生前にクリエイションを共にしたシルヴィア・フェンディ(Sylvia Fendi)=クリエイティブ・ディレクターに渡したという世紀末ウイーンの書籍、イタリア特有の大理石、そして自然だ。大理石の模様はプリントや染め、ファーの加工などさまざまな技法で表現。ドレスやコートに施された麦のモチーフは豊かな自然を表し、ウイーン世紀末の絵画に見られる強い描線をパッチワークのステッチで表した。花弁のようなディテールやモザイクのような刺しゅうなど複雑なデザインを、メイン素材のファーにタフタやシフォンをミックスし軽やかに仕上げている。

 通常重くなりがちな印象のファーを軽やかに見せる「フェンディ」の職人技を翌日、本社で行われたショーピースの展示会で目の当たりにした。ショーはカールへのオマージュだが、受注会を兼ねて1週間一般にも公開される同展は「フェンディ」の未来を象徴するものだ。54体の中には、本社にあったファーやレザーをアップサイクルしたものが3体あった。「フェンディ」では今後もこのような取り組みを継続していくようだ。会場ではファー職人をはじめ、刺しゅう職人などが実際に作業する姿も見られた。本社地下1階がファーとオートクチュールのアトリエになっており、約40人の職人がいるという。

 「フェンディ」が目指すのは、“ファーとファブリックの境界をなくす”こと。デザイナーの想像力とそれをウエアに落とし込む職人のクラフツマンシップの高さの両方がなければ実現できない。ショーピースを間近に見ると、その2つがどれだけ複雑で高度なものかを実感できる。モザイクのように組み合わせて模様を描いたり、紐状にカットして編みこんだり、チュールの上に縫い付けたり、その緻密さは想像を絶するほどだ。通常のウエア以上にデザインにも時間がかかるし、1着完成するのに相当な時間を要するのは明らかで、「フェンディ」のクチュールがハイジュエリーと同じ価格帯だというのも十分納得ができる。世界で一着の芸術品を手に入れたいという富裕層を魅了する「フェンディ」のクチュールの真髄は、カール亡き後もシルヴィア・フェンディと職人たちにより受け継がれていく。

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「オフ-ホワイト」の2020年春夏メンズのショーに疑問の声多数 当日のリアルな舞台裏をレポート

 ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)は、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH以下、オフ-ホワイト)」2020年春夏メンズ・コレクションのショー会場にパリ北マレ地区にある文化センター、ル・カロー・デュ・テンプル(Le Carreau du Temple)を選んだ。セレブリティーやインフルエンサーが集結するショーとあって、会場外は大勢のストリートフォトグラファーや来場で混雑し、彼が現代を代表するデザイナーの一人であることを物語る光景だった。

村上隆らも来場、「オフ-ホワイト」2020年春夏来場者はストリートブーム終息の声を一蹴する強者ばかり

 ショーは午前11時スタート予定だったため、コールタイムは午前6時。46人のモデルたちは眠い目をこすりながら、ヘアスタイリストとメイクアップアーティストに身を任せる。会場には本物のカーネーション畑が設営され、スタッフがカーネーションを一本ずつ植えていく作業が本番ギリギリまで続いた。開場するころには、会場内には鳥のさえずりや風の音が流れ、自然の中にいるような穏やかな空気に包まれた。しかし、筆者がショーを待っている間に感じたのは生花の香りではなく、マリファナの臭いだった。入り口付近の座席で吸っていた十数名の中心にいたのは、フランスのラップデュオPNLの兄弟。ヴァージルは彼らのミュージックビデオ用の衣装として、カスタムジャケットを製作したことがある。2人はショーの最中もフロントローで堂々とマリファナを吸っていた。ファッションに対して敬意が感じられる態度ではなかったが、もしかしたらこれも現代を代表するデザイナーのショーならではの光景なのかもしれない。数十分間のマリファナの副流煙のせいか、筆者は少しぼーっとしながらもショーに集中するよう努めた。

 “プラスティック”をテーマに掲げた20年春夏コレクションは、アメリカ出身のグラフィティアーティスト、フューチュラ(Futura)とのコラボレーション作品が要となる。PVC素材のコートやポンチョ、ウインドブレーカーにはスプレーで描かれたグラフィティが彩る。“Off-White climbing club”というパッチが付いた登山ウエアのようにスポーティーなルックも多かった。シームが一箇所のみのハンドニットのセーターや、手縫いの刺しゅうでフューチュラのグラフィティを描いたブランケットなど、クラフト感のあるアイテムも登場した。ラグジュアリーな印象を発信するためか、最近のショーでは終盤にレッドカーペットを飾るクチュールのようなドレスを登場させるのが定番になりつつある。しかしショールームで見た現物のドレスは裁縫や裁断の甘さが目立っていたため、ここはクチュール“っぽい”と言っておこう。

 BGMはリアム・ロジャーズ(Liam Rogers)の「ブロッサム(Blossom)」からマッドヴィリアン(Madvillain)の「ミート・グラインダー(Meat Grinder)」へと変わり、フィナーレにはビートルズ(The Beatles)の「ブラックバード(Blackbird)」が流れた。モデルが花を踏みにじってウォーキングするフィナーレの演出には、多数のメディアでジャーナリストが「理解不能」と記していた。後味が悪かったせいか、コレクションに対しても厳しい声が聞かれた。仏新聞「ル モンド(LE MONADE)」のカリーヌ・ビザー(Carine Bizet)は「1990年代にヒップホップから生まれた本物のストリートウエアのファンは、今季の『オフ-ホワイト』のコレクションには満足しないだろう。ヴァージルの勢いは衰えている。それに、PNLがマリファナでハイになっている姿は、ショーの演出の足を引っ張っていた」とコメントした。パリのコンセプトストア「トム グレイハウンド(TOM GREYHOUND)」のバイヤー、エカテリーナ・グラズノヴァ(Ekaterina Glazunova)は「カーネション畑やスーパーモデルの登場など、方式に沿ったコマーシャルな演出は見られたが、マジックのような感動を得られることはなかった。アイテムは売れると思うが、グラフィックが変わっただけ。毎シーズン同じ内容に見える」と語った。

 フューチュラのペイントが多く残るニューヨークの南マンハッタンと、美しいカーネション畑がパリの街中で交差する空間演出はアブローらしい新鮮なアイデアだったが、コレクションは想像に容易い新鮮さに欠ける内容だった。アブローは紛れもなく影響力のあるクリエイターだが、ファッションの分野においてはデザイナー“っぽい”作品しか見当たらない。もしかしたら筆者が、副流煙の影響で洋服をしっかりと見られていなかっただけかもしれないが。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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メンズコレドタバタ日記 「トム ブラウン」に背筋が伸びる!?「カラー」は今季も依存症のオトナを増やしそう

 6月24日、快晴。最高気温は34度。むか〜し昔の遠足では先生から「家に帰るまでが遠足」と言われたモノですが、だとしたらメンズコレ取材も「家に帰るまでがメンズコレ取材」(笑)。てか、それは本当。感動的なランウエイショーは昨日で終わりましたが、翌日以降の展示会回りは、時間と心にちょっぴり余裕が生まれたせいか、何着もの洋服に袖を通し、デザイナーやPRのお話に耳を傾け、考えることができるので意義深いんです。ということで、本日も張り切って参りましょう。

 本日の展示会回りは、全部で6件。最初は「トム ブラウン(THOM BROWNE)」です。

11:30 「トム ブラウン」

 ショーやショールームでは、ランウエイショーやコレクションのみならず、スタッフの立ち居振る舞いなどからもメゾンの空気感や世界観、ポリシーなどが伺えます。ここ「トム ブラウン」のショールームも、ブランドの世界観がビシビシ伝わる独特の空間。なにせスタッフは、どんな時も「トム ブラウン」のフォーマルに身を包まなくちゃならないそうです。ショールームを訪れると、日本のPRはパーフェクトなグレースーツ。そのほかの皆さんも最低限白シャツをパンツインでミーティングに臨んだり、談笑したりしています。

 ここでは、スポーツにインスパイアされたコレクションのアクセサリーをパチリ。野球のボールを模したスニーカー、ステッチがカワイイなぁ。コレクションピースを着てみたかったけれど、凛とした空気に物怖じしました(笑)。

12:40 「コム デ ギャルソン・オム プリュス」
「コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン」
「コム デ ギャルソン・シャツ」

 お次はコム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)のパリ本社へ。「コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS、以下オム プリュス)」と「コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン(COMME DES GARCONS JUNYA WATANABE MAN)」、そして「コム デ ギャルソン・シャツ(COMME DES GARCONS SHIRT)」の3ラインを一気に拝見です。

 「オム プリュス」は、「ミキモト(MIKIMOTO)」と衝撃のパールネックレスコラボ(詳細は、コチラから)。ショーを拝見していた時、「あ、カワイイ。オーダーしようかな?」なんて思っていましたが、お値段はなんと「数百万円」。ぜんぜんカワイイ値段じゃないので、写真だけ撮影して満足しましょう(笑)。

 もちろん、「ナイキ(NIKE)」コラボも継続。青年貴族オーランドー(ORLANDO)にインスパイアされた、ドレープとフリルたっぷりのフォーマルを試着しました。サイズを間違えると“忠臣蔵”ですが、ジャストサイズで街を闊歩したら、袖や裾がエレガントに揺れることでしょう。

14:00 「カラー」

 「カラー(KOLOR)」は、定番のコートやセットアップに色や柄でポップを加えたスタイル。お気に入りはこの、ウィメンズのセットアップです。最近の「カラー」は、ルックブックとムービーがユニーク。今回は上野で撮影。早朝から夕方6時くらいまで、ひたすらカメラを回し、写真を取り続ける過酷なロケだそう(笑)。でもこのルック、街に馴染みつつ少しだけ目立てる「カラー」らしさを醸し出しているなぁ、って思います。「カラー」は、“着ると、誰でもオシャレに見えちゃう魔力”を持つブランドです。本当に袖を通すだけでカッコよくなれるのがスゴい。業界の友人には「カラー」依存症のオトナ、結構います。

14:30 ランチ

 時間と心に余裕が生まれた今日からは、ランチもちょっとだけ贅沢に。今日はパリにもようやくオープンした「イータリー(EATELY)」です。


15:00 「キディル」

 「キディル(KIDILL)」のショールームにGO!!デザイナーの末安弘明さんは、「今回もビジネスが広がりそう。パリに来て、良かったことしかない」と安堵した様子。ヨカッタ!!あの個性抜群のコレクションなら、その結果も納得です。

 プレゼンテーションで気になっていたレオパード × ゼブラのブルゾンを着て、サングラス&ネックレスで記念撮影。ちなみにこのネックレス、2つのキャラクターを合体して、ネットにくるんでいるんです。さぁ、わかりますか?

15:40 「ビズビム」

 「ビズビム(VISVIM)」の展示会は写真NGですが、いいスニーカー、出来てました!!お値段7万円台。頑張れば買えますね。

 「ビズビム」の中村ヒロキ・クリエイティブ ディレクターは世界中を旅して、現地の民族衣装などにインスピレーションを得ています。ということで今回も南米、中国、福島などなど、話を聞いていると「あれ?これは地理・歴史の授業だっけ?」と思っちゃうくらい、現地の風土、技術、伝統の話が次から次へと登場します。ブランド史上最高、800万円台の着物コート、素敵でした。

16:30 「ケンゾー」

 ラストは「ケンゾー(KENZO)」の展示会。アクセサリーを激写しまくりです。キャロル・リム(Carol Lim)とウンベルト・レオン(Humberto Leon)=クリエイティブ・ディレクターのラストコレクションは、海女さんがミューズ。ということで、彼女たちが海に潜って拾い集めるウニやホタテ、それらを入れる網のモチーフがてんこ盛りです。2人は最後まで、「ケンゾー」のオリジンである日本を見つめ続け、何度も来日してくれました。感謝、感謝なのであります。にしても、ゴーグルをつけたマネキン、新鮮(笑)。アクセサリーについては、近日中に別の記事をアップします。

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メンズコレドタバタ日記 大渋滞で「セリーヌ」のゲートが閉まる、と思ったらマジで奇跡が 「ポール・スミス」には三浦春馬登場

 6月23日。晴れ。ずっと晴天だったパリ。週明けからは最高気温が37度!みたいな灼熱地獄に突入するそうですが、パリメンズ期間中は爽やかな初夏の晴天が続きました。さぁ、今日でパリメンズも最終日。張り切って行きましょう〜!

9:45 「ダブレット」

 本日一発目は、「ダブレット(DOUBLET)」です。僕は井野将之デザイナーを、ファッション界の“平成の喜劇王”だと思っていたのですが、さぁ令和の時代はどうでしょう(笑)?

 ショールームのドアを開けたら、こんな風に出迎えてくれました(笑)。井野さん、“令和も喜劇王”、確定です!!

 コレクションは「まだナイショ」なので写真はアップできませんが、今シーズンも爆笑(!)、クスッと笑っちゃう(!!)、もしくは苦笑い(!!!)アイテムと粒ぞろいです。僕一番のお気に入りは、“中を開けて顔にかざすだけでピンナップガールになれるクラッチ”でしょうか(←なんのこっちゃ!?、ですね)。

13:30 「ケンゾー」

観客の数で「バルマン」と1、2を競った「ケンゾー」のショー会場

 「ケンゾー(KENZO)」は、キャロル・リム(Carol Lim)とウンベルト・レオン(Humberto Leon)=クリエイティブ・ディレクターによる最後のコレクション。振り返ればこの2人には、いろんなことを教えてもらいました。一番は、“コミュニティー”という概念です。

 あれはロゴ入りのスエット、Tシャツ、キャップ、「ヴァンズ(VANS)」とのコラボスニーカーなどが大ブレイクしていた時の話です。とあるシーズンのショー直前、ウンベルトに「どうしてロゴをいっぱい使うの?」と質問したら、「昔、『カルバン・クライン』のロゴTシャツを手に入れたとき、『あぁ、これで僕もオシャレな人たちの仲間入りができたんだ』って思えて嬉しかったんだ。ロゴアイテムは、“コミュニティー”の一員だって実感するのに最高のアイテムなんだよ」と答えます。以降“コミュニティー”という価値観は、僕の中で大きな取材テーマになっています。

観客の数で「バルマン」と1、2を競った「ケンゾー」のショー会場

 そんな2人のラストショーは一昨日の「バルマン(BALMAIN)」同様、一般顧客も招待した壮大な規模感。僕らの席の反対側は、もう人だらけです(笑)。過去のコレクションをまとったダンサーのパフォーマンスで幕を開け、メンズ、ライブ、そしてウィメンズ、フィナーレ!という一大スペクタクル。この場にいた人は皆、ライブ同様の一体感を味わい、まさに“「ケンゾー」コミュニティー”の一員だったことを実感したでしょう。後任は、誰でしょう?僕は「高田賢三さんに3000点」です(笑)。ウンベルトは、「後任もぜひアジア人であってほしい」と祈っているそうですよ。

14:45 「リンシュウ」

 「ケンゾー」は、めちゃくちゃ楽しかったものの、ショーは延べ30分に及び、終わった時は既に14時。お次の日本代表「リンシュウ(RYNSHU)」が始まる時間です(汗)。慌ててバスに乗り、左岸から右岸に大移動。ところが、道路工事と交通封鎖でなかなか進みません。「パリよ、アナタは日曜日も大渋滞なのですね……」。40分遅れで到着し、漆黒のスーツに花々が咲き乱れたショーになんとか間に合いました。いや、これも「メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARAYASUHIRO)」同様、「待っていていただいた」という表現が正しいでしょう。ありがとうございました!

15:10 「ディオール」

 「ディオール(DIOR)」の展示会にGO!ここでの取材は、最新コレクションにまつわるポストカードをゲットすることから始まります(ソレは取材じゃないw)。お土産にぴったりなポストカードは、キム・ジョーンズ(Kim Jones)の優しい心づかい。アクセサリーの詳細については、コチラの記事をどうぞ。

16:30 「ポール・スミス」

 お次は「ポール・スミス(PAUL SMITH)」。ここでの最初のミッションは、日本人アンバサダーに就任した三浦春馬さんの写真を撮影することです(これは、ちゃんと取材w)。会場に入って“どセンター”のフロントローに目を凝らすと、三浦さん発見!!もちろん「ポール・スミス」の洋服がお似合いです。iPhoneのポートレートモードで爽やかな笑顔と愛らしいピースサイン、いただきました。感謝。

 コレクションは、三浦さんが着たらベリー似合いそうな優しいフォーマル。淡いパステルカラーやオーバーサイズのシルエットは、まさに2020年春夏のスーツです。前回まではブリティッシュトラッドな細身のシルエットにクラシカル&ビビッドな色合いで難易度高めでしたが、これは挑戦しやすい。「ポール・スミス」は、みんなに楽しんで欲しいブランド。素敵なブランドにカムバックです。

17:45 「ピガール」

 さぁ、「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」が遅刻常習犯なら、こちらはもはや“問題児”の「ピガール(PIGALLE)」です。もうね〜、このブランド、本当にショーが始まらないの、毎回(笑)。毎回大遅刻&大混雑なのに、反省の色ナシなブランドなのです。ゆえにいつもはどんなに遅れても構わないスケジュール(イヤ、われわれは構うのだけれどw)、つまり一日のラストバッターを務めてきたのですが、今回は、このあとまだ3ブランドが控える夕方の時間帯。大丈夫なのかしら?

 会場に着いたのは予定時刻より10分遅れた17時10分。すると、なんとまだ入場さえ始まっておりません(笑)!当然、入り口は大混雑です。17時20分になって、ようやく入場開始。ところが会場は建物の7階で、エレベーターは1基しかないと言うじゃあ〜りませんか。ステファン・アシュプール(Stephane Ashpool)よ、アナタたちはオペレーションが苦手なハズなのに、どうして、こんなに客入れが大変な会場を選んでしまったの?これは大遅刻確定!!でございます。

ステファンが、エレベーターでなければたどり着けない会場を選んだ理由は、この景色。確かに癒やされました

 ようやくエレベーターに乗って7階に上がれば、なんとまだリハーサル中だし、45分遅れで始まったショーは、まさかの牛歩で全然進まない!!「ピガール」、今シーズンも自由奔放すぎます(笑)。

 「コレは、会場前方に陣取ったら、帰りも大混雑に巻き込まれて次のショーに間に合わないな」……。そう思ったわれわれは、あえて最後尾のベンチに座り、およそ半分のルックを見たところでササっと退席させていただきました。急ぎ足でメトロの駅に向かいます。

18:30 「ダンヒル」

 「ダンヒル(DUNHILL)」のショーは、アーティストの小林健太さんのお隣。小林さんは今回、マーク・ウェストン(Mark Weston)クリエイティブ・ディレクターのためにアートを提供しています。ロンドンの写真展の作品を見たというマークから連絡があったとのこと。初ランウエイを「楽しみです」とドキドキして待っています。

 コレクションは、そんな小林さんのアートをさまざまなアイテムにのせただけでなく、全般的にオリエンタルなテイストです。着物合わせのジャケットやコートは、普通なかなかエレガントにキマらないシロモノですが、マークが手がけるとアラ不思議!!新しいスーツになっています。センスあるなぁ。小林さんも「楽しかったです」と終始笑顔でした。

19:30 「1017 アリクス 9SM」

 「1017 アリクス 9SM(1017 ALYX 9SM)」は、細身のフォーマル。左右の身頃の合わせに得意のメタルパーツを使います。にしても、ショー会場には日本人が少ないこと。周りは空席が目立ちます。みんな「セリーヌ」に遅れないよう、「1017 アリクス 9SM」はスキップしたのですね。いや「セリーヌ」も遅れるだろうし、大丈夫だとは思うけれど……。

20:30 「セリーヌ」

 と思ったらナント!「セリーヌ(CELINE)」に向かう道も大渋滞!!この連載を読んでくださっている方はご存知、「BB」こと「貧乏バス」は、遅々として進みません。今回この「BB」、かなりの頻度で大遅刻しており、2日目は「ヴァレンティノ(VALENTINO)」、3日目は「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」に間に合わないという大失態。「2度あることは3度ある」が、まさかエディ・スリマン(Hedi Slimane)の「セリーヌ」で訪れることになろうとは……。

 予定時刻を30分ほど過ぎ、「BB」が会場まで1km手前の地点で立ち往生していたとき、後方から叫び声が聞こえてきました。インスタグラムのライブストリーミングで、ショーが始まってしまったのです!!

 5分ほど遅れて、会場に到着。当然、入り口は閉ざされています。悲しいことに僕たちは、招待状を持っているのに、会場の外で、ライブストリーミングを見ているというナゾな状況に。諦めて帰る人もチラホラです。

 ところが、神は存在したのです。セキュリティーがバリバリ厳しい「セリーヌ」が、まさかの「招待状があれば、途中入場OK」という“お言葉”。当然、入り口には「BB」バスの乗客約70人が殺到します。僕は序盤ですんなりゲートを通過。後輩のオーツカは、「もうダメ!!」と再度封鎖されそうになった瞬間、警備員の脇の下をくぐり抜けギリギリ入場成功です。オーツカ、素晴らしい神がかり的フットワーク!!履いていた「セリーヌ」のモンクストラップシューズが、彼に力を授けたのでしょう。脇からショー会場に入り、ラスト10ルックとフィナーレを鑑賞。結構ちゃんと見えました。途中からではあったけれど、現場に入って、体感できてヨカッタ(笑)。オーツカは、「『セリーヌ』が見れなかったら、帰国できない」とさえ言っていましたが、彼も無事、日本に帰国できそうです(笑)。

 本日は、また会食でおしまい。ホテルに戻ったのは、深夜0時半ごろでした。明日からは展示会回り。合間にウェブと紙面の原稿を書いて入稿。校正&校了という地味な日々が始まりますが、展示会にもニュースはいっぱいです(ということで、この日記はもうちょっと続きますw)。

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メンズコレドタバタ日記 お待ちかねの「トム ブラウン」劇場開演、「サカイ」×「ナイキ」第三弾の朗報にバンザイ

 6月22日、晴れ。日差しがちょっと強くなってきたパリ。最高気温は26度。週末になって、交通渋滞も少しはマシになるでしょうか?けれどパリ市内は、収束しつつあるものの、「黄色いベスト運動」は今なお継続中。油断できません。

9:15 「コム デ ギャルソン・シャツ」

「コム デ ギャルソン・シャツ」2020年春夏メンズ・コレクション

 今日の朝イチは、「コム デ ギャルソン・シャツ(COMME DES GARCONS SHIRT)」。このブランドは定時きっかり、時には数分フライングする可能性さえあるので、早めにギャルソンのパリ本社に到着です。

 今シーズンは、ダイバーシティー(多様性)を意識しているのかな?マルチカラーのストライプシャツに1つだけ、PVCなどの光沢素材を縫い付けたシャツが気になりました。シャツ地のミリタリーベストも新鮮です。

10:30 「サカイ」

「サカイ」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

 「サカイ(SACAI)」は、フォーマルで得意のハイブリッド。ほどいたボウタイで繋がった大きさの異なるシャツ、ベルトでくっつけたタキシードとジャケット、ウィメンズではシャツとパンツのトロンプルイユドレスなど、モノトーン主体でエレガントです。

 連動してトロピカルテイストもダークなムード。そして皆さん、朗報です。あの「ナイキ(NIKE)」とのコラボスニーカーは、色が変わって第3弾が登場しました。コレ、パリでみんな履いてるんだよね〜(笑)。裏山。次は手に入れたい!!

11:20 「ナマチェコ」

 「ナマチェコ(NAMACHEKO)」は、スウェーデン拠点のクルド人という兄弟のブランド。見たことない色彩感覚やシルエットを、なかなかにシャープなモードテイストで見せてくれます。マルチカラーの細長いニットを交差したトップスは、北欧っぽい色使いだけれど、手仕事的アプローチは遊牧民のアイデンティティーによるものなのかな?われわれには未知のカルチャーゆえ、粗っぽいクリエイションだと違和感を禁じ得ませんが、心の奥底に“なんか引っかかる”感覚は新鮮です。

12:30 「ロエベ」

「ロエベ」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

 「ロエベ(LOEWE)」は、すべてが巨大なシルエット。チュニックやカフタンのようなフォームを、スエードやローゲージニット、デニムなど、さまざまな素材で描きます。シルエットが大きいのは、「皆が今の生活にちょっと疲れているから」と聞いてドキリ。さまざまな素材を使うのは、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が大ハマり中の世界中のクラフツマンシップ、手仕事を盛り込むため。バズを起こすコラボではなく、たどり着きたいゴールに向かうための協業という感覚は、大賛成です!

 ちなみに、おデコや耳の飾りは、最近ジョナサンが感じている“コスモ(小宇宙)”の表現らしく。そういえば、どことなく「聖闘士星矢」の世界に通じるでしょうか?「小宇宙は燃えているか⁉︎」。

13:30 「シエス マルジャン」

「シエス マルジャン」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

 お次は「シエス マルジャン(SIES MARJAN.以下、シエス)」。いつもはニューヨークでウィメンズメインのコレクションを発表しています。メンズ主体のランウエイは初めて。パリ挑戦も初めてという記念すべき舞台です。

 「シエス」と言えば、色使い。メンズも、得意技が炸裂しました。ごくごく淡いスカイブルーや、ピーチメルバみたいなピンクに始まり、ちょっぴり日に焼けたオレンジ、そして(フランスだから?)のボルドーが、コットン、肉厚のシルク、そしてガラス加工でピカピカのレザーを彩ります。アクセントは、ニットにプリントしたゼブラ模様。相当玄人ですが、上々のスタートです。

14:30 「トム ブラウン」

 パリメンズのお楽しみと言えば、「トム ブラウン(THOM BROWNE)」。勝手に“「トム ブラウン」劇場”と呼んでいますが(笑)、非常にコンセプチュアルで時に爆笑、時に「???」なランウエイを見せてくれます。

 今回も会場に入ると、すでに布団みたいなトロンプルイユスーツのモデルが何人もズラリ。その中央には、赤・青・白のトリコロールカラーに彩られたボールに向かって“おしっこ”する小便小僧です。

 あとは動画でご覧ください(笑)。


「トム ブラウン」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

 コレは一体、何だったのか?もちろん、スポーツですね。トムが生まれ育ったアメリカ、彼が作り続けるフォーマル、そしてスポーツと言えば、アイビーリーグ⁉︎アイビーのスタイルとは全然違いますが、コレがトム流のアイビーリーグであり、今欠かせないスポーツマインドなんでしょう。

15:30 「ウー ヨン ミ」

「ウー ヨン ミ」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

 「ウー ヨン ミ(WOOYOUNGMI)」は、トロピカル。タイダイのデニム&スエットに、南国モチーフの開襟シャツなど、トレンド盛りだくさんです。

 フィナーレには娘さんだけが登場。いつもは親子だったけれど、代替わりかな?

16:00 「アミ アレクサンドル マテュッシ」「ドリス ヴァン ノッテン」

 さぁ、ここからは展示会周り。ショーは拝見できなかった「アミ アレクサンドル マテュッシ(AMI ALEXANDRE MATTIUSSI)」は、写真で見る限りモードなコレクションにシフトチェンジした印象でしたが、メンズはダボダボパンツやフーディ、フレンチシックなブラック&ホワイトのギンガムシャツなど“ハズし”のアイテムもあって、色柄が控えめになったくらい。一方のウィメンズは、「テーラードとジャケットを売っていこう!!」という気概に溢れた、メンズよりワンランク上のオトナなコレクションです。狙うは、「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」などが存在感を発揮する価格帯(ジャケットはいずれも10万円オーバー、くらい)のマーケット。正直、最初聞いた時はちょっとビックリしましたが、「ジバンシィ(GIVENCHY)」出身のアミは、テーラード上手。オトナっぽいムード、素敵です。でも、アクセサリーはまだまだかな。

 「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」の展示会では、「ドリス」と蜷川実花、それにYOSHIROTTENのトリプルコラボ的な洋服をチェック。蜷川さんの写真をYOSHIROTTENがグラフィックに変換した作品を収めたアートジーン「NEW NOIR 2」の中から、ドリスが数点をピックアップして、洋服にのせました。その商品には、こんなタグがつくことに。なんて誇らしいんでしょう!

17:30 朝食?昼食?

 朝食?昼食?よくわかんないご飯。今日も10分で終了です。

18:00 「ヘンリック ヴィブスコフ」

 「ヘンリック ヴィブスコフ(HENRIK VIBSKOV)」のショーに行こうと思ったら、なんとセーヌ川左岸のショー会場ではなく、右岸のショールームに行ってしまうという大失態(苦笑)。やってしまった……。今から移動しても間に合いそうにないので、ここは気を取り直して、お次の「ホワイトマウンテニアリング(WHITE MOUNTAINEERING.以下、ホワイト)」へ。早く着いたので、「サルバム(SULVAM)」の藤田哲平デザイナーとビール飲んじゃいました(笑。「ヘンリック ヴィブスコフ」の皆さん、ごめんなさい)。

19:30 「ホワイトマウンテニアリング」

「ホワイトマウンテニアリング」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

 「ホワイト」は、ブレることなし。機能素材とマルチポケットなどでユーティリティー(機能性)を盛り込んだアーバンウエアが目白押しです。スパッツ、長靴、ポンチョなどを合わせると、ユーティリティーウエアはスポーツにも使えるし、ゲリラ豪雨にも便利って一目瞭然。「アウトドア以外で、どこでどう使うの?」という質問に答えてくれますね。

20:20 「エルメス」

「エルメス」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

 本日のラストは、「エルメス(HERMES)」。トレンドは追わず、永遠のスタイルを追求するメゾンですが、今シーズンはピンクやスカイブルー、クリームイエローが鮮やか。リネンの小さなスカーフは、それ以上に明度・彩度の高いビビッドカラーでフレッシュです。シャツの襟にドローコードを忍ばせたブルゾン、オーバーサイズのジャケットやニット、それにボディーバッグなど、ストリートのムードが力強さを増しました。一方で、エレガントなシルクはやっぱり別格。最後のシルクのジャケットは、どうやって作るんだ?スカーフでおなじみの「エルメス」のシルクで、“ちゃんとした”ジャケットが完成していました。クラフツマンシップ、すごい!!

 あ、モデルのUTAくんを発見!!「WWD JAPAN.com」は、彼の思い出の街、銀座でシューティングしながら、これまでとこれからを直撃したインタビューを掲載したばかりです。こちらからどうぞ!!

21:45 ディナー

「エッセンス」の会食は、エッフェル塔を覗くトロカデロ広場で

 今日のディナーは、カナダ・モントリオール発のECサイト「エッセンス(SSENSE)」の会食。先日ピッティでスターリング・ルビー(Sterling Ruby)が発表したコレクション「スターリング ルビー スタジオ. LA. CA.(S.R. STUDIO. LA. CA.)」を独占販売中ですが、日本は売り上げ上位TOP5に入っている国だとか。

 会食では、「フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)」の丸龍文人さんとお隣でした。「チームが充実してきたので、次はもっと仕掛けます!!」とのこと。早くも2020-21年秋冬が楽しみになっちゃいます(笑)。

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メンズコレドタバタ日記 “ギャルソン・デー”に訪れた今季最大の危機「『ミハラ』、もう間に合わない……」

 6月21日、晴れ。最高気温は23度。湿度も低くてベリー爽やか。昨日は久々に6時間寝て、元気いっぱい!朝ごはんも1時間半食べ続け(原稿を書きながら、ですよw)、ますます元気いっぱいです!さぁ、張り切って参りましょう。

10:20 「コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン」

 パリメンズの金曜日は、“ギャルソン・デー”。「コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン(COMME DES GARCONS JUNYA WATANABE MAN以下、ジュンヤ マン)」と「コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS以下、プリュス)」が競演する日だからです。先攻は「ジュンヤ マン」。コンセプチュアルでアヴァンギャルドなウィメンズに対して、リアルクローズのメンズというブランド。どっちもできるんだから、渡辺淳弥さんとはつくづく多才なデザイナーです。余談ですが、ウィメンズの正式名称は「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン」で、「コム デ ギャルソン」と「ジュンヤ ワタナベ」の順番もメンズとウィメンズでは異なっています。記事を書く人間としては、気を使うところです(笑)。

 コレクションは、朝日を浴びる男性にぴったりの気取らないキレイめ。麻混でパリッとしたジャケパンに始まり、ステッチワークの効いたシャツや数少ないビビッドカラーのブルゾン(チューリップを描いた胸のワッペンがカワイイ)まで、「ジュンヤ マン」らしいハイブリッドを駆使しつつ、誰でも、気負わず着られる洋服ばかり。正直、派手好きな僕なんかは「もうちょっとなにか見たい」って思っちゃうけれど、「これくらいがちょうどいい」と思う人の方が多いのは事実でしょう。

11:30 「アン ドゥムルメステール」

 お次はパリコレの遅刻常習犯「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」です。今回も、この後に影響しそうなプチ遅延。「アン」流のマリン。スモークで満たされた空間が、フラジール(繊細な)少年たちの世界に誘います。

12:30 「ジュン.J」

 韓国代表「ジュン.J(JUUN.J)」のショーを見るため、再びセーヌ川左岸に逆戻りです。後半に向かうにつれてスポーティーなムードを増して独自性と説得力あるスタイルに進化しましたが、前半のフォーマルは再考の余地アリ。突飛すぎるし、二番煎じ感も否めません。

13:30 「ベルルッティ」

 「ベルルッティ(BERLUTI)」は、今季も冴えています。クリス・ヴァン・アッシュ(Kris Van Assche)には、時代を切り開くモードな「ディオール(DIOR)」より、現代をモダンに進化させる「ベルルッティ」の方が合っています。靴の手染め“パティーヌ”で名を馳せるメゾンならではの、色鮮やかなセットアップがエネルギッシュ。ウィメンズほどではありませんが、オーストリッチの羽根を多用しました。リアルファーから距離を置くブランドが増える今、羽根は新たな“ドラマティック素材”として注目を集めています。

14:40 「メゾン ミハラヤスヒロ」

 「ベルルッティ」が終わり、後輩オーツカが言うところの「BB」、つまり「貧乏バス」に乗り込みましたが、全く動きません。このクソ忙しい中(おっと失礼!)、界隈の大渋滞で15分経っても微動だにしない。

 「ヤバい!『メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA YASUHIRO)』に間に合わない!一昨日、あんなにワインをご馳走になったのに!」と焦ってバスを降り、大通りまで走ってUberをキャッチ。車でまた右岸に戻ります。Uberを捕まえた時点で、時刻は14:00スタートという予定時刻より20分遅れ。到着予定は14:33と出ております(OMG!)。慌ててPRの方にLINEしたら、「待ってます!」との心強いお返事!Uberの運ちゃん、頑張ってくれ!

 車は、後輩オーツカはもちろん、「ファッションプレス(FASHION PRESS)」の堀越さんと一緒。彼女、僕らがUberを待っている時、「乗せていただけませんか?」と声をかけてきたのです。エラい!アンタはエラい!話したことのない相手に勇気を持って直談判。なかなか出来ないですよ。焦りつつ、ムラカミは堀越ちゃん(ほぼ初対面ですw)の勇気と熱意に感動しました。

 なんてジーンとしている場合じゃない!時間は刻一刻と迫ります。PRの方からは電話が来て、いよいよ待っていられない様子!ショー開始10分前まではセーヌ川を挟んで反対側にいましたが、そこから右折、左折、カーブで旋回が全て上手く行き、間に合いました~!いや、正確に言えば、間に合わせていただきました~!ありがとう「メゾン ミハラヤスヒロ」!

 そんなドタバタの末拝見したショーは、大好き。大好物。最近の三原さんが得意とする、別の一着を前身頃か後ろ身頃にペタンとしたフェイクレイヤードな洋服はもちろん、クラフト感たっぷりのスニーカー(カラーブロッキングバージョン、オーダーしよっとw)、「ディスクユニオン(DISKUNION)」とのコラボアクセサリーまで大豊作。いやぁ、最後、「RIZAP」で鍛えた脚力でダッシュした甲斐がありました(笑)。

15:30 「ジル サンダー」

 そして、またセーヌ川の反対へ(も~、めんどくさい!)。「またUberか……」と思っていたら、香港のセレクトショップ「ジョイス(JOYCE)」のマネージャー、マイケルが「車、乗る?」と神の一声。マイケル!アンタええ奴やー!10数年、一緒にコレクションを見てきてヨカッタ!

 ってコトで余裕で着いた「ジル サンダー(JIL SANDER)」は、今回も優しいボリューム感でした。でも前回の方が、素材とパターンにどこよりもこだわっているカンジが強く伝わってきたかな。

 夫妻デザイナーは、今回も仲良く手を繋いで登場でした。

16:15 「ルイ・ヴィトン」

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の展示会では、気になっていたアクセサリーを激写!そちらは別記事でお楽しみください。

 3色のオーガンジーを重ねた洋服は、縫い付けられていて離れません。でも、それがいいんです。だってそれがヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の思い描くダイバーシティーだから。異なる個性の人間が1つになるのが大事で、バラバラになっちゃイカンのです。

16:45

 ようやく今日の昼ごはん。10分メシです。

17:20 「コム デ ギャルソン・オム プリュス」

 ゴハンを食べて向かうは「コム デ ギャルソン・オム プリュス」。歩いて10分と思ってたら、後輩オーツカの情報が間違っており、現在地から歩いて27分!間に合わん!どないなっとんのや、オーツカ!

 慌ててダッシュで地下鉄に向かい(今度はルーブル美術館前を爆走ですw)事なきを得ましたが、ファッションウイークは油断大敵です。

 「プリュス」も最高でした。いつも通り性差なんてカンケーなくて、いつも通りスーツの力を訴えるけれど、何かにファイティングポーズとって「反骨」の精神を示しているというよりは、既成概念をフワッと「超越」、もしくはハナっから気にしてないカンジ。「反骨」だと時々息苦しく思えるのですが、今シーズンのセットアップはスカートルックばかりなのに“重たさ”とか“息苦しさ”とは無縁です。初めてスカートのセットアップをオーダーしようと思っています。

18:40 「ディオール」

 またセーヌ川を渡って、「ディオール」。キム・ジョーンズ(Kim Jones)になって2回目の春夏は大きく方向転換せず、引き続き端正なフォーマル。新時代のスーツは、キムに任せておけば安心です。大理石カラー、ライトグレー、ベージュ。色と素材、シルエットを使い分け、多彩なフォーマルを打ち出します。よ~く見ると、コートやジャケットのポケットは、ジョン・ガリアーノ(John Galliano)が生み出したアイコン“サドルバッグ”の形。オーガンジーのブルゾンやシャツには、同じくガリアーノによる新聞プリントが施されています。

 スニーカーやブーツには、「ディオール」3代目デザイナーのマルク・ボアン(Marc Bohan)が生み出した“オブリーク”のモチーフが今季もしっかり。健在の“オブリーク”と言えば、キムが先シーズン提案した斜めに走るストール使いのフォーマル“タイユール(「斜め」を意味するフランス語) オブリーク”も健在です。キムの「ディオール」は、1年前のアイテムだって最新コレクションとコーディネイトして楽しめそう。マシュー・ウィリアムズ(Matthew Williams)とのチームワークで誕生したキャップ被っていた僕は、ホッと一安心、胸をなでおろしたのです。

 そのキャップは今季、色覚異常のアーティスト、ダニエル・アーシャム(Daniel Arsham)と協業しました。コレクション全体を貫く褪せた色彩は、彼から刺激を得たものです。「リモワ(RIMOWA)」とコラボしたトランクも含め、相変わらず最高を提案するためベストパートナーとタッグを組むインクルージョン(包摂・包括性)なマインドが滲みます。

20:20 「カサブランカ」

 この時間(と言っても、本来の開始予定時刻は19:30でしたがw)は、「ゲーエムベーハー(GMBH)」と「カサブランカ(CASABLANCA)」がドン被り。“先輩権限”で「カサブランカ」を選んだら、場所がまさかのモンマルトルの丘の上!「ディオール」会場の左岸からは、メトロを乗り継いで50分の大冒険です。

 失敗した(笑)!5歳若いオーツカに任せれば良かった(笑)。最寄り駅を降りてからの風景と動画はこんなカンジ。坂と階段を登りまくりです。今日は左岸と右岸の往復ばっかり。走ったり、登ったり、なんて日だ。

 でも、ショーは予想以上に面白かった。こういうレトロテイストのストリート、新鮮です。

 フィナーレの映像を、カメラワーク抜群のお兄さんの奮闘と共にお楽しみください(笑)。

21:25 「バルマン」

 そして最後は、また左岸に!どないなっとんのや!

 「バルマン(BALMAIN)」は、もはやライブ。一般向けのチケットを1500枚販売した、壮大なB to B & Cのランウエイです。

 「カサブランカ」からの大移動だったため入場が遅れ、ステージははるか彼方。とりあえず、ピカピカしていることはわかります(笑)。全然見えないので周辺をウロウロすると、ホットドッグやお酒はもちろん、今日だけの限定グッズまで販売中!この売り上げは、HIV/AIDS撲滅のために使われます。

 昨日の「ヨシオクボ(YOSHIO KUBO)」含め、ショーにはいろんな形があって良い時代。だって、そこで見せる洋服がダイバーシティーに富んでいるんだから、その器だって多様であるべきです。そんなことを考え、パリメンズは4日目終了です。さぁ、この後は会食だ!

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花に溢れた「ルイ・ヴィトン」2020年春夏メンズ 仮想の街に込められたダイバーシティーへの思い

 2020年春夏シーズンのメンズコレクションを取材する記者2人が、見たまま感じたままにコレクションをレビューします。先輩記者Mは15年間メンズコレクションを見続けてきたベテラン、後輩記者Oは取材歴3年目。時には甘く時には辛口に、それぞれの視点で最新コレクションを語り合います。

後輩O:さて、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」はヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)がメンズ アーティスティック・ディレクターに就任して3シーズン目となりました。会場はドフィーヌ広場。モノグラム入りのベンチを設置したり、クレープやジェラートをサーブする屋台があったりして、一帯を街にしてしまいました。僕が「ルイ・ヴィトン」のショーを見たのはまだ2回目ですけど、ポップアップやパーティーといい、観客をワクワクさせる演出が本当に上手い。風船で作った帽子を被ってショーを見てる人もいましたし。

先輩M:それは、ワタクシのことですね。今更思ったのですが、後ろの方にジャマでしたかね(笑)。失礼しました。演出は、ヴァージルのプランを実行できるLVMHの資本力にもビックリだけど、最初から初志貫徹しているのは、誰でも共感できる価値にフォーカスを当てること。虹色のランウエイで大勢を巻き込むこと、キング・オブ・ポップのマイケル・ジャクソン(Michael Jackson)の影をチラつかせること、晴れた日に公園に行ってお茶したりジェラートを食べたりすること。どれも、人種や性別、宗教、価値観に関係なく「そうそう、いいよね」って言える当たり前を大事にしてる。

後輩O:そうですね。素直に感動できます。今回の演出もとても響きました。一瞬、旅行にでも来たような気分にさせてくれましたし。コレクションは、またまたボリューミーなシェイプでしたね。一点一点のサイズが大きいし、オーガンジーを3重にレイヤードしたシャツや、プリーツが入って裾に向かって広がるアウターなんかはさらに巨大。スーツもストリートウエアの感覚で作っているから、自由で面白い。反面、顧客幅はかなり絞られそうな気はしました。この春からメンズのプレを強化したり、ベーシックな定番アイテムを“ステープルズ エディション バイ ルイ・ヴィトン(STAPLES EDITION BY LOUIS VUITTON)”としてブランド化したりと、着やすいアイテムを増やした分、コレクションは自由な感覚で作っているということなんでしょうか?

先輩M:そうだね。ベーシックは別ラインでしっかり提案する体制を整えた分、今回のコレクションは冒険が多かった。身頃を全部切り離した後にヒモでつなぎ直したブルゾンとか、総プリーツのブルゾンとか。セットアップは上下が異なるパステルカラーで、シルエットこそ変わらないけれどフレッシュ。若い世代が憧れてくれそうだった。とはいえ、やっぱりポイントはアクセサリー。今回は“モノグラム”も“ダミエ”も、フロッキープリントみたいな3Dモチーフ。こちらはネオンカラーゆえにキャッチーで、またも争奪戦が繰り広げられそう。

後輩O:3Dのダミエかわいかったですねー。ヴァージルは本当にアクセサリーが上手い。コレクション取材をしていても、チェーン付きのボックス型のショルダーバッグ“ソフトトランク”を持っている人をたくさん見かけます。バリエーションで見せていた三角形のボストンバッグも良かったし、ほかにも色々ありました。トートやワンショルダー、クラッチを連ねた“着るバッグ”もついに出てきましたね。ここ数シーズンはポケットがたくさんついたブルゾンやベスト、パーツウエアが数多く出てきて、それらのことを分かりやすく“着るバッグ”と表現していましたが、まさか本気のやつが出てくるとは。

先輩M:ずっと「トランクやバッグからスタートした『ルイ・ヴィトン』らしい洋服とは?」って考えているからね。色も、素材も、形もさまざまなバッグは、ダイバーシティー(多様性)を何よりも重んじているヴァージルらしいし、やっぱりアクセサリーがビジネスの柱の「ルイ・ヴィトン」らしい。今シーズンは、「花は1つとして同じものがない」って考えのもと、SMAPの「世界で一つだけの花」みたいなコレクションを見せてくれました。いろんなバッグを、いろんな人が、いろんな風に楽しんでくれると、ファッション業界はまだまだ元気になれるね。

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メンズコレドタバタ日記 パリ3日目は「LV」パークで遊んでカール様にお別れ告げる

 6月20日、雨のち曇り。最高気温の予想は21度。肌寒い。今日も睡眠時間は‪4時間未満。猛烈に眠い‬……。眠すぎる。多分、横になったら1分で寝られる(笑)。でも木曜日は、毎週発行する週刊紙の山場。寝てられない。というワケで、大量のゴハンを食べつつ、ホテルで校正と原稿作りの嵐。

 ちなみに朝は、このくらい食べております(笑)。

‪9:00 「バレンシアガ」

 今日の朝イチは、「バレンシアガ(BALENCIAGA)」。プレコレクションの展示会は毎シーズン、メンズコレ期間中に開かれます。

 普通プレは「前」という名前の通り、そのあとすぐに発売するメインと連動するのが一般的ですが、今回から「バレンシアガ」のプレは前のメインコレクションとリンク。つまりこちらの20年プレスプリングは、19-20年秋冬と同じ世界観を有しています。デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)は20年プレスプリングを19-20年秋冬と一緒に考えて、その分20年春夏について考える時間を増したそう。相変わらず、ベストの追求が最優先で、業界の慣習にはとらわれません。

 ということで春夏にもかかわらず、コレクションにはフェイクファーやウールのコートも登場。シルエットは引き続き、合わせの位置をずらした“シフテッド(Shifted)”です。

‪10:50‬ 「キディル」

「キディル」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

 お次は「キディル(KIDILL)」。ランウエイ形式のプレゼンテーションです。80’sパンクの潔い直球勝負!原色に動物モチーフ、“改造”と言うべきハイブリッドなど、朝からパンチをガツンと食らったカンジ。

 モデルも、エラそうって言うかナマイキって言うか、いいカンジ!スーパーモヒカンヘアは、前が見えるのかな?

 なんて思ってたら、ゲストもパンク!彼、パンツ丸見えなんですけど(笑)!

11:25‬ 「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」

「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

 イッセイミヤケは今シーズン、「イッセイ ミヤケ メン(ISSEY MIYAKE MEN)」に代わり「オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSE ISSEY MIYAKE)」の2020年春夏を発表。こちらもネオンカラーの原色が盛りだくさん。モデルも走ったり、飛んだり、回ったり元気いっぱいです(笑)。雨が止んで、爽やかな空気に包まれた公園でのプレゼンは、幸せな気持ちにさせてくれます。

「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

 フィナーレでは七色のテープを持ったモデルが、そのテープを編み込むようにグルグル回ります。6月10日発売の「WWDジャパン」インクルージョン(包摂・包括性)&ダイバーシティー(多様性)特集では、I&Dの先進企業ピンタレスト(PINTEREST)が多様な人間と交わることを「編む」と表現しているという話を紹介しました。この演出を見て、「まさに『編む』だなぁ」なんて思い。清々しい気分です。

12:00‬ 「サルバム」

 続く「サルバム(SULVAM)」も今シーズンは爽やか。ピュアにキレイでクリーンなセットアップ。そこにほんのり「サルバム」っぽい荒々しさの“かけら”を残しました。でも時間がメチャクチャなくって、5分で退散。デザイナーの藤田さんにもご挨拶できず(涙)。スケジュールとは言え、どうにかならないものですかね、こういうの。

13:00‬ 「リック オウエンス」

「リック・オウエンス」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

「リック・オウエンス」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

 と思ったら、今度はダークサイド⁉

 出ました、「リック オウエンス(RICK OWENS)」です。会場はセメントの山。このためにぶちまけたセメントは固まっておらず、溶岩のようにおどろおどろしい。続いてローブのような洋服を羽織った男性が現れ、祈りとも呪いともとれる声を出しながらタイコをポンポン。それがBGMです。アナーキーだわ~。

 とは言え、ショーにはスパンコールのジャケットなども登場し、いつもより洗練されたムード。「チャンピオン(CHAMPION)」とのコラボスエットは、ロンパースみたいなパターンです(笑)。

13:45‬ 激混みのバス

 本日、パリは市内いたるところで大渋滞。どうやら60カ所以上で道路工事の真っ最中らしく、朝乗ったタクシーも通行止めに遭遇しました。ってことでバス移動するも、これがまた激混み!!全然進みません(泣)

‪14:00‬‬ 「ヴァレンティノ」

 昨日コレクションを発表した「ヴァレンティノ(VALENTINO)」の展示会へ。ニードルパンチや総刺しゅうにうっとりしたり、驚いたり。アクセサリーは別記事をお楽しみに。

‪14:40‬ 「ルイ・ヴィトン」

「ルイ・ヴィトン」のショー会場

 さぁ、待ってましたの「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」です。会場は、セーヌ川に浮かぶ小島のドフィーヌ広場。ここには公園を取り囲むようにカフェやレストランが立ち並んでいますが、なんと、この一角をぜ〜んぶ借り切ってショー会場にしちゃいました。もちろん周辺の店舗は臨時休業。となると営業補償を支払わなくちゃなワケで、「『ルイ・ヴィトン』は一店舗につき幾ら払うんだろう?」「ここには何軒あるんだろう?」なんて“いやらしい”ことを考えてしまいがちですが、素直に、ありがたく楽しみましょう!!


 ショーの前にはクレープやジェラートの屋台が登場し、エッフェル塔の模型やシャボン玉のお土産も。大道芸人は風船の帽子を作ってくれました。それを被って、ランウエイショーを楽しみましょう(笑)。


「ルイ・ヴィトン」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

 今シーズンもヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の「ルイ・ヴィトン」は、キャッチーなアクセサリーが目白押し。もともとアクセサリーブランドだった「ルイ・ヴィトン」における洋服の在り方を考える彼はデビュー以降、“着られるバッグ”を提案し続けています。今回はついに、バッグがマジで洋服になっちゃいました(笑)。

‪15:30‬ 「ヨシオ クボ」

 お次は「ヨシオ クボ(YOSHIO KUBO)」。すでに記事化した、船上でのVRランウエイを体験です。セーヌ川に浮かぶ船に入ると、椅子&VRゴーグル。

 装着すると、この写真のみんなが、三重県・尾鷲の海岸を歩くランウエイショーが見れちゃうワケです。


「ヨシオ クボ」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

 こんな風にゴーグル姿でランウエイを見る様子は、相当シュールです(笑)。でもVRでほとんど全部、洋服のことはわかっちゃいますね。素材感さえ、実際のランウエイで見るのとあまり変わりません。となると実際のショー会場では、僕たちは何を見たらいいのか?何を感じるべきなのか?そんなことを考える良いきっかけになりました。

‪‪17:00‬‬ 「ドリス ヴァン ノッテン」

「ドリス ヴァン ノッテン」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

 さぁ、セーヌ川の左岸、サン=ジェルマンから4番線に長いこと揺られ、「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」にやってきました。現代の男らしさを考えるスーツ、そして花柄とレオパード。肩にパッドをしっかり入れた、ウエストマークのスーツが主流です。かっちりしたスーツで男らしく、そこに光沢素材の花柄シャツを堂々合わせる。それが一番男らしい。そんなメッセージを受け取りました。

18:30‬ カール・ラガーフェルドのお別れ会

カール・ラガーフェルドのお別れ会の会場の様子

 今日のパリメンズは特別スケジュール。カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)のお別れ会のためです。「シャネル(CHANEL)」と「フェンディ(FENDI)」、そして「カール ラガーフェルド」が共催したイベントの中身は、別記事をご参照。パリのシンボルであり、カールが「シャネル」で幾度となく壮大なショーを開いたグラン・パレが舞台です。

 イベントは、カールの半生を捉えたでっかいパネルに囲まれながら、アラン・ヴェルテメール(Alain Wertheimer)=シャネル共同オーナーからシルヴィア・フェンディ(Silvia Fendi)=「フェンディ」クリエイティブ・ディレクター、それに親交の深かったデザイナーやジャーナリスト、スタイリストを書籍に囲まれたカールの自室に招き、思い出を語ってもらった映像の上映会。もちろんカールの秘蔵映像も満載で、「『フェンディ』のFFロゴ(FUN FURという意味なのですよ)は3秒で思いついた」とか、その「フェンディとの契約の時、大遅刻した」とか、「部屋中に散らかる紙は一枚一枚、何を描き、どこに置いたか覚えている。3つの部屋に散らかるのは、ドイツ語、イタリア語、そしてフランス語を付したデッサン。あ、領収書だらけの部屋もあるから、汚い部屋は全部で4つ(笑)」など、お茶目なシーンも盛りだくさんでした。

 残念ながら映像は撮影NGでしたので、会場の雰囲気だけをお伝えします。映像、映画化されるんじゃないかな?

21:00‬ 「ヴェトモン」

「ヴェトモン」2020年春夏パリ・メンズ・コレクション

 本日のラストは、「ヴェトモン(VETEMENTS)」です。会場は、シャンゼリゼ通りの「マクドナルド(McDONALD'S)」。「LV」には及びませんが、こちらも丸ごと貸し切りました。コレクションは、いつもどおりの誇張したシルエットと、古着を大解剖したような足し算のピースのオンパレード。フライドポテトを持ってウォーキングするモデルは、もはやただの「『マクド』のお客さま」ですね(笑)。

 ということで、本日は‪21:30‬に終了!健全!久しぶりに、ちゃんと寝ます。

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怒れる「ラフ・シモンズ」、2020年春夏は「カルバン・クライン」へのメッセージなのか 取材記者2人のレビュー

 2020年春夏シーズンのメンズコレクションを取材する記者2人が、見たまま感じたままにコレクションをレビューします。先輩記者Mは15年間メンズコレクションを見続けてきたベテラン、後輩記者Oは取材歴3年目。時には甘く時には辛口に、それぞれの視点で最新コレクションを語り合います。

後輩O:さあ、パリメンズがいよいよ本格スタートしています。2日目のラストは 「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」。いつも郊外の会場を選ぶことが多いですが、今回もやっぱり遠かった。中心地から車で40分、電車だと1時間ぐらいかかるショー会場でした。広々として会場内にはビニールがグルグルに巻きつけられたシートがランダムに置かれていて、何かが起きそうな空間のように感じました。ただ、ショー開始時間の21時は過ぎているのに、人の集まりがまばらだったような気がしました。

先輩M:もうね、マジ遠すぎる。こんな遠い場所、オートクチュール・コレクションでヴェルサイユ宮殿に行った時以来、経験がないもん(笑)。1回しかないけど。加えて21時って言う遅い時間帯だし、「『ラフ』だからきっと遅れるよねぇ。帰りは22:30?じゃあやーめた」なんて人もいたハズ。「ラフ」が大好きなボーイズが聞いたら、怒りそうな話だけどね。「怒る」と言えば、ラフ、このショーで誰かに怒ってたよね(笑)?

後輩O:激ギレでした(笑)。まず「STONE(D) AMERICA(アメリカに石つぶて)」という強いレタリングを見て、ああアメリカにメッセージを発信してるんだな思いましたけど、星柄のTシャツをペンキで荒々しく塗りつぶしたり、パンツをズタズタに引き裂いたりしていて、おおーこれはアメリカに怒ってるなと。そしてアメリカといえば、ラフを見放した「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」ですよ。

先輩M:英語が苦手なOさんは分からなかったかもだけど冒頭、BGMの中に「嘘つき!アメリカンメディアの嘘つき!アメリカの会社の嘘つき!独裁的なアメリカの嘘つき!」ってセリフがあったんだよね。その瞬間、「あ、こりゃ『カルバン・クライン』を手掛けるアメリカン企業PVHコープにキレてるな」って思った(笑)。コレクションは、「R&D(リサーチ&デベロップメント)」って文字を刺しゅうした白衣みたいなコートから始まったよね。「俺にもうちょっとやらせれば、いろんな実験を通して『カルバン・クライン』を変えられたのに」ーー。そんなメッセージに思えてしまった。

後輩O:ショー後のインタビューでは、何かに巻きつけられる、縛られることがコレクションテーマの一つだったと言っていたそうで、それも何だか意味深です……。個人的にラフは好きだし、本当にアメリカやPVHコープへの直接的な怒りのメッセージだったら少し大人気ないなとは思いますが、怒りでも悲しみでも、デザイナー自身のパーソナリティーがにじみ出ているコレクションってやっぱり引きつけられます。難易度スーパーハードなアイテムばかりでしたけど(笑)。

先輩M:切って重ねてくっつけての“実験”ラインは、生産されるのかな(笑)?オーバーサイズの白デニム、チビ&ビッグシルエットのニットあたりは、着やすそうだけどね。これだけ怒ったコレクションを「大人気ないと思う」か、それとも「強い意志の結果だから共感する」かは人それぞれだけど、そもそもデザイナーズブランドって、「好かれるか、嫌われるか」のどっちかのハズだから、感情を喚起できるだけで成功だったんだと思う。最近はそのブランドも「一番コワいのは無関心・無反応」って思っていて、嫌われても意志を表明する勇気を持ち始めているから。数年後(来年じゃない、残念ながら。ラフは早すぎるw)のトレンドセッターのラフが、これだけ強い意志を表明したんだから、数年後のファッションの世界は、みんなの意見が渦巻いている面白い世界になっているかもね。

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メンズコレ取材チームが好き勝手に語る2020年春夏レビュー「ジョルジオ アルマーニ」編

 2020年春夏シーズンのメンズコレクションを取材する記者2人が、見たまま感じたままにコレクションをレビューします。先輩記者Mは15年間メンズコレクションを見続けてきたベテラン、後輩記者Oは取材歴3年目。時には甘く時には辛口に、それぞれの視点で最新コレクションを語り合います。

記者M:「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」は、いつものショー会場アルマーニ / テアトロを離れて、モンテナポレオーネ通りの旗艦店裏にある本社の中庭で最新コレクションを発表したね。恥ずかしながら、本社がここだとは知りませんでした。昔、この近くでSPに囲まれてジョギングしてるアルマーニさんを見たことがあるんだけれど、ようやくその理由がわかりました。あの時はダッシュで近寄って、握手してもらったの。SPに取り押さえられなくてヨカッタ(笑)。

記者O:それはすごい!うらやましすぎます。ちなみにいつものアルマーニ / テアトロにはきれいなトイレがあるので、1日中取材周りをしているメディア関係者にとってはとてもありがたい施設なんですよね(笑)。そこを離れて本社での発表、とても素敵な雰囲気でした。僕は隅っこのスタンディング席で人と人との間からかろうじて見ていたんですけど、5月に12年ぶりに来日した影響って何かありましたか?アジア系のモデルが多いな、とは思いました。

記者M:トップモデルのKOHEIはもちろん、日本人モデルが何人か。いつもよりアジア系が多かったね。序盤のフォーマルは、ジレを中心に着物合わせが多くて、日本っぽいなぁって思いました。御年84歳ゆえ来日してすぐ働くのは大変だから、結構長い間滞在したんだよね。京都では修学旅行生と記念撮影した、なんて話も(笑)。長く滞在した分、いろんな刺激を得てくれたみたい。

記者O:それは嬉しい!記念撮影した修学旅行生たちよりも、親の方がもっとビックリするでしょうね(笑)。僕も距離だけは近かったので、素材の上質さがよくわかりました。春夏シーズンはあらゆるブランドからリネンやシルク混の素材が出てきますが、「ジョルジオ アルマーニ」の美しさはちょっと別格な気がします。特にスーツは表面の素材感や歩く際のなびき方などがすごくきれいで、見ほれてしまいます。秋冬のベルベットしかり、光沢系の素材を本当に上手く使いますよね。

記者M:風になびくリネンシャツは、末広がりのシルエットに仕立ててエアリーなムードを強調。反対に柔らかなベルベットはタイトに仕上げて着る人が柔らかさを堪能できるように。素材とシルエットを考えるって、こういうコトなんだって改めて思いました。あと、自然光だからリネンやコットンリネンのパステルブルーやライトグレーが本当にきれいだった。

記者O:確かに!いつもは屋内のライティングで見ていたので、今回は余計に見え方が違ったのかもしれませんね。フィナーレに登場したアルマーニさんはもいつもより長い時間来場者からの歓声に応えていたのも感動的でした。僕たちはすぐパリに移動しないといけなかったのでそそくさと会場を出発しましたけど、アフターパーティーではアルマーニさんや俳優のサミュエル・L・ジャクソン(Samuel L. Jackson)と記念撮影できたみたいですよ。なんて贅沢な。

記者M:フィナーレ直後から、アルマーニさん、いろんな人と記念撮影してたよね。場所も変わって、コレクションも“集大成”っていうくらいの出来栄えで、記念撮影まであって、なんだかホロリとしちゃいました。ホスピタリティー含め、1回1回のコレクションに全力を注ごうとする意思みたいなものを感じた。関係者に伺ったら、最近は結構エモーションを揺さぶられるみたい。御年84歳。生み出せるコレクションは限りがあるから、1つ1つを大切にしようと決意したんだなぁって感動しました。80代のアルマーニさんがあんなに頑張ってるんだから、我々はもっと努力しないと!

記者O:はい、気が引き締まります。パリメンズも頑張りましょう!

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メンズコレドタバタ日記 パリ初日に心奪われた期待の新星!「ソロイスト」「フミト ガンリュウ」など日本の実力派も登場

 6月18日晴れ。昨夜遅くにミラノからパリへと移動しました。最高気温は28度の予想で、ミラノに比べて少し涼しいです。先輩の村上はホテル到着後、5時間後にフィレンツェへと旅立ったので、本日は後輩の僕が書かせていただきます。

 「WWDジャパン」はロンドン、フィレンツェ、ミラノ、パリの4都市のメンズコレクションを取材しているため、パリはいよいよ最後の都市というわけです。ただ、パリメンズは他の都市よりも日程が倍近くあるのでここからがめちゃくちゃ長い!定期購読者に向けて毎日配信しているデジタルデイリー用のコレクションレビューを始め、日々の原稿がボディーブローのように体にじわじわ効き始めるころですが、そんなことは言ってられません。パリメンズ初日、はりきって行きますよ!

10:30 なかなかしんどいパリのメトロ

 朝イチのショーはメトロでの移動です。特に夏場のパリの地下鉄は結構キツい。中は蒸し暑いわ激しく揺れるわで、乗り物酔いしやすい人にはちょっと辛いかも。僕もかなり酔いやすい体質なので、電車移動やタクシーでの移動が多くなりそうな日は酔い止めを飲んで出掛けます。移動中のメールチェックや原稿もはかどりますからね。

12:20 「ボーディ」

 電車に揺られること約20分、本年度の「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(以下、LVMHプライズ)」ファイナリストにも選ばれた米ブランド「ボーディ(BODE)」のショー会場に到着しました。2016年のブランド設立以来初のランウエイショーでしたが、これがかなり面白かった!チュニックシャツやビーズ刺しゅう、マクラメ編みのトップスなどはエスニックなムードで、とてもアメリカのブランドとは思えません。ほかにも古い漫画のようなタッチのゆるカワなイラストなど要素はてんこ盛りなのに、一つのスタイルへの落とし込むセンスが秀逸です。素直に着てみたくなりました。ミラノメンズの若手ブランドはなかなか厳しかったので、朝からなんだか嬉しい気分。

13:00 通称“貧乏バス”

 次の「フィップス」へは大型のプレスバスで移動します。スケジュールに沿って動く場合は本当に便利な移動手段なのですが、ハイヤーで優雅に移動する業界人も多いので、一部では愛情を込めて“貧乏バス(BB)”と呼ばれています(笑)。でもみんなでワイワイしながら移動するのも楽しいですし、中ではドリンクが配られるなどホスピタリティーもなかなかなんですよ。

13:30 「フィップス」

 「フィップス(PHIPPS)」のショーが30分押しでスタート。こちらも「LVMHプライズ」のファイナリストで評価が高いブランドです。アウトドアの無骨さを今っぽいストリートのムードで押し切ったマッチョなスタイルがたくさん。「ミレー(MILLET)」とのコラボレーションアイテムは、結構本気のスペックっぽいです。アメリカ拠点の「ボーディ」は繊細でヨーロッパっぽいし、フランス拠点の「フィップス」はゴリっとしてアメリカっぽいし、対照的な世界観の「LVMHプライズ」ファイナリスト対決が面白かったです。僕は圧倒的に「ボーディ」派かな。

14:20 「ヘロン・プレストン」

 再び“BB”に揺られて、日本でも人気の「ヘロン プレストン(HERON PRESTON)」の会場に移動。コンコルド広場周辺の大渋滞によって間に合うか微妙でしたが、何とか滑り込みセーフ。前シーズンのショーでは会場内全体にモヤがかかるほどハッパの煙がすごかったのですが(笑)、今シーズンはクリーンでした(たぶん)。服自体はいつものベーシックなストリートウエアだったものの、これまでとはちょっと違うアプローチにもチャレンジしようとする姿勢も見られましたのが好感です。

15:20 「フミト ガンリュウ」

 次の「フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)」はすぐ近くにだったので徒歩で移動。ここへ来て日本のファッション関係者もぐっと増えました。今シーズンは若手スタイリストの姿も何人か見られて、日本のクリエイターも頑張ってるなと励まされました。会場前に着くと、「エトセンス(ETHOSENS)」の橋本唯デザイナーを発見!「勉強するためにショーをいくつか見にきました」と話していたので、もしかしたら海外でのショーを考えているのかな!?「フミト ガンリュウ」のショーはこれまでのミニマル路線から一転、色やパターンが豊富で開放感溢れる気持ちいいコレクションでした。もうすっかりモードなブランドですね。「サロモン(SALOMON)」や「スイコック(SUICOKE)」とのコラボシューズも話題になりそう。

15:40 ル・ムーラン・デ・ローザ

 ここでふと朝から何も食べてないことに気づきました。そして気づいた瞬間、空腹感が倍増。次の会場までは徒歩で移動だったので、たまらず道中のブランジェリー「ル・ムーラン・デ・ローザ(LE MOULIN DE ROSA)」でクロワッサンを購入。空腹と激ウマで、丸呑みする勢いでガッつきました。やっぱりコレクション取材中は体力勝負なので、朝食は無理してでも食べないとダメだ……。

16:30 「コモン スウェーデン」

 日本では陽が傾き始める時間ですが、ヨーロッパのサマータイムはここからが暑さの本番です。「コモン スウェーデン(CMMN SWDN)」の会場は窓がなく、蒸し風呂状態。そんな中、雑誌「センス(SENSE)」を代表してパリに来ている中里俊介副編集長が爽やかに挨拶しに来てくれました。「初めてのパリですし、最初に見た『ヘロン プレストン』では何を見ればいいのかわからずテンパりました(笑)でも、頑張ります!」と力強いお言葉。その気持ち、痛いほどわかります。共に頑張りましょうね!

19:00 「タカヒロミヤシタザソロイスト.」

「タカヒロミヤシタザソロイスト.」2020年春夏パリ・メンズ・コレクションのフィナーレ

 さあ、残るショーもあと2つとなりました。まずは2シーズン目のパリメンズ参加となる孤高の天才「タカヒロミヤシタザソロイスト.(TAKAHIROMIYASHITATHESOLOIST.)」。ここで日本人率がさらに増えました。パリの空港に着いてほぼその足で会場に来た人たちもいて、みなさん分刻みのスケジュール。お疲れ様です!ショーは“DUET”と題し、男女の服を融合したようなスタイルを提案。全てモノトーンカラーで構成し、アイテム一点一点はよく見るとベーシックなのに、大胆な再構築と凝視してもわからないほど複雑な構造に思わず引きつけられます。若手スタイリストの高田勇人さんは「あのスタイリングはすごい。展示会で見てもよくわかんないすから(笑)」と感心していました。ショーBGMはスピリチュアライズド(SPIRITUALIZED)!

20:30 「アミ アレクサンドル マテュッシ」

 本日ラストのショーは「アミ アレクサンドル マテュッシ(AMI ALEXANDRE MATTIUSSI)」。会場はヌケ感が気持ちいグラン・パレです。心地いいフレンチカジュアルを提案した前シーズンから一転し、モノトーンでシャープなスタイルに、ちょっぴりロックなムードを加えてきました。デザイナーのアレクサンドルも少しスリムになったようにも見えたので、今はミニマルに削ぎ落とす気分なのかもしれませんね。さあ、ラストのショーも終わったし打ち上げや!と言いたいところですが、イベント取材はまだまだ続きます。

21:30 「ジェイエムウエストン」

 “BB”はショー会場間しか稼働しないため、ここからは再び自力で移動。「ジェイエムウエストン(J.M. WESTON)」のイベント会場へ向かいました。フランス共和国親衛隊の宿舎施設で行われたイベントは、同ブランドが親衛隊のブーツを手掛けて40周年を記念したもの。音楽隊によるパフォーマンスや米歌手のシーラ・Eによるパフォーマンスなど、想像以上に大掛かりなイベントが楽しく、疲れも吹き飛びました。

22:40 「イザベル マラン」

 よーーーやく最後の目的地、「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」初のメンズ単独店の出店予定地に到着。でも9月にオープン予定なので、当然何も出来上がっておりません。ちょっと気が早すぎないかい?と疑問を抱きつつ店内に入ると、飲み放題のビールサーバーやおつまみが豊富で、「居酒屋 マラン」状態(笑)。外では明らかに近所迷惑だろうという爆音で音楽がガンガンに流され、自由って素晴らしいなと感じたパリメンズ初日の夜でした。

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メンズコレ取材チームが好き勝手に語る2020年春夏レビュー「フェンディ」編

 2020年春夏シーズンのメンズコレクションを取材する記者2人が、見たまま感じたままにコレクションをレビューします。先輩記者Mは15年間メンズコレクションを見続けてきたベテラン、後輩記者Oは取材歴3年目。時には甘く時には辛口に、それぞれの視点で最新コレクションを語り合います。

記者M:ミラノメンズ最終日の「フェンディ(FENDI)」は、朝イチの公園が気持ちよかったね。お土産のバスケット詰まったパンも美味しかった。朝ゴハンで、パン3つも食べたのに(笑)。

記者O:朝からすごい食べますね(笑)。僕はパッキングがギリギリになってしまって朝食を食べられなかったのでめっちゃ助かりました。アテンドするスタッフも全員つなぎを着ていてかわいかった。「フェンディ」は毎シーズン大掛かりなセットを組んだり、ゲストを呼んだりと“バズる”演出で楽しませてくれていたので、今回は意外なロケーションでした。

記者M:2020年春夏は、ガーデニング男子を思い描いたんだって。ということで、ショー会場は屋外の公園。ファーストルックもつなぎだったね。ブランドにとってアイコニックなストライプ“ペカン”のバスケットに、“FF”ロゴのガーデニングブーツの組み合わせ。このブーツは、日本のシューズメーカー、ムーンスターとのコラボレーション。ヴァルカナイズ製法のブーツなんだって。野暮ったいデニムとか、異素材を組み合わせたドンキージャケットにカーゴパンツなど、休日の気取らないスタイルに可愛らしさを潜めていて、心に染み入りました。ハッとするんじゃなくって、ジンワリするカンジ(笑)。

記者O:へぇームーンスターとのコラボですか。でも何だか納得です。それとほとんど全てのアイテムがブラウンやカーキ系のアースカラーだったのも印象的でした。アースカラーってつい重たくなりがちですけど、シアー素材のジャケットやコート、優しいタッチのボタニカル柄が軽やかで、見ているだけでも気持ちよかったです。今シーズンは環境問題と向き合う姿勢をコレクションで表現するデザイナーがすごく多いですが、「フェンディ」も「自然と共に生きていこう」というメッセージが感じられました。

記者M:たしかに再生ポリエステルやウールを使った「エルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)」や、過去のコレクションをRe-Coup(回収)、Re-Cycle(再利用)した「マルニ(MARNI)」、ポジティブに生きることを訴えた「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」を筆頭に、地球環境に向き合ったブランドが多いよね。ポイントは、シリアスな問題をどれだけ“自分ごと化”させて、頭で理解するのではなく、心で共感するメッセージに変えられるか?ということ。今シーズン、デザイナーはその技量が試された気がします。みんな地球がヤバくて、ファッションが負荷をかけていることはわかっているけど、だからって堅苦しい洋服、ハッピーじゃない洋服、ガマンを強いられるは着たくない。多少高くてもいいから、難しい問題を“自分ごと化”している、共感できる洋服に袖を通したい。そんな風に思い始めた中で、それをどうやって成し遂げるか?これが今シーズンのミラノメンズの優劣を決めたよね。その意味で「フェンディ」は、“ほっこり”ガーデニングっていう、誰もが“自分ごと化”できて共感できる角度から地球のことを考えた。ミラノメンズの「勝ち組」だね。

記者O:派手にランウエイショーを行っているだけではなく、スーツが主軸の「コルネリアーニ(CORNELIANI)」も展示会で天然素材と染料を使用したサステイナビリティーを意識した若々しいスタイルの新ラインを発表していましたし、ファッション業界全体が真剣に考えようとしているのは間違いありませんね。でも、やっぱりMさんの言う“自分ごと化”できるかという視点で見ると、「フェンディ」が個人的に一番すんなり入ってきました。服以外でも、バスケット型のバッグや巨大ジョウロなどの小物類もキャッチーでかわいかったです。

記者M:ジョウロは売らないと思うけどね(笑)。アクセサリーでは、メンズサイズでちょっと大きな“バゲット”が出てきたね。小さなスクエアバッグからビッグトートまで、素材も雑材からファーの編み込みまでバリエーション豊か。個人的には、FFロゴをエンボスしたスエードのハイカットスニーカーがオトナっぽくて好きでした。

記者O:僕は小物だとボタニカル柄のトートバッグが素敵だなと思いました。それとジャケットにひざ丈のロングシャツを合わせていたルックも好きでした。テーラリングがベースなんですけど、の力が抜けてとてもきれいだったので真似してみたいです。1月の2019-20年秋冬コレクションではこういう新しいフォーマルを提案するブランドがたくさんありましたけど、20年春夏のミラノメンズはまだまだストリートが強い印象でした。パリメンズではどんなスタイルが出てくるのか今から楽しみです!

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中国の奇才「ザンダー ゾウ」がCGキャラによる仮装ランウエイで探求する人類の未来

 北京を拠点に活動する「ザンダー ゾウ(XANDER ZHOU)」の視線は常に未来へと向いている。彼は中国でインダスリアルデザインを学んだ後、オランダでファッションデザインの修士号を修め、帰国後の2007年に自身の名を冠したブランドを立ち上げた。国外でコレクションを発表する初の中国人デザイナーとして、18-19年秋冬シーズンからロンドン・メンズ・コレクションでショーを行っている。現在の卸先はロンドンの「マシーンA(MACHINE-A)」やミラノの「ディエチコルソコモ(10 CORSO COMO)」、日本の「グレイト(GR8)」など有力店を含む20以上のアカウントを有する。

 これまでのショーでは、妊娠した男性や宇宙人を彷彿とさせる奇抜なルックが話題を集め、ストリートウエアとクチュールを融合させた近未来のビジョンを示す試みが見られた。しかし2020春夏シーズンでは、彼のルーツである中国の美意識や伝統的衣装からのインスピレーションを強く感じさせる内容だった。

 コレクション発表方法は「SHOW」と記載していたが、会場を訪れるとそこにキャットウオークはなく、巨大なスクリーンにはロサンゼルスを拠点に活動する映像作家リック・ファリン(Rick Farin)が制作した森の中のCG映像が映し出されていた。会場入り口で腰に巻くスカートのようなアイテムを手渡され、それを巻いて床に座りながらスクリーンを観るよう指示を受けた。ショーは、スクリーンに足踏みをするCGキャラクターと人間のモデルが次々と登場し、仮装ランウエイショーの演出で行われた。法衣や着物、大きな数珠のようなアクセサリーなどオリエンタルな雰囲気漂うルックが続く。ゾウは「今季のコレクションは中国の神話や武術、おとぎ話から派生した要素をたくさん含んでいる。ひすいのジュエリーやホットストーンは、“気”を導くため体のツボに配置した。金木水火の文字は、地球の要素。これらは私の未来と過去の両方が、ある独特の方法で結びつけらた結果なのだ」と説明する。

「今シーズンは“超越”させた」

 仮装キャットウォークの演出を行った理由についてはAIと人間、デジタルとアナログの境界線を曖昧にする試みだったようだ。「CGキャラクターを作成することで、実際のモデルでは不可能な方法でキャットウォークに登場させたいという思いから始まった。このショーのために作った最初のCGキャラクターは、体にたくさんのスクリーンが貼られ世界各地からのあらゆる種類の情報が表示する、“情報の神”のような人物だった。しかし、情報の未来が完全にデジタルであるべきではないと思い、このCGキャラクターをショーには登場させなかった。2カ月かけてさまざまなCGキャラクターを生み出し、結果的には2人だけがラインナップした」とゾウ。さらに、会場で配られたスカートについては「コレクション制作にあたってリサーチを進めていると、世界中の異なる文化の中で、ある特定の儀式を行う男性の衣装には類似性があることを知った。その一つは、スカートのような衣服を身につけること。ここでは、性別の境界線を曖昧にするアイテムという考えとは無関係だ。私は単純に、スカートが男性の日常着として自然に溶け込むことに、コレクション制作の間に喜びを感じるようになった」と続けた。ゾウがショー後の会場周りのオフランウエイを眺めたのなら、非常に誇りに思ったはずだ。なぜなら彼の思惑通り、会場で手渡されたスカートをそのまま着用した多くの男性がストリートフォトグラファーからのフラッシュを浴びていたからだ。

 ゾウは「19春夏コレクションで“創造”し、19-20年秋冬で“進化”し、そして今シーズンは“超越”させた。コレクションを通して、私は人類の未来を探求し続けている。今季のコレクション制作にあたって、心理学の概念“意識の流れ”が最初に浮かんだ」とも述べる。これは人間の意識は静的な部分の配列によって成り立つものではなく、動的なイメージや観念が流れるように連なったものであるという考え方のことだ。彼のコレクションは非常にスピリチュアルで穏やかさを与えてくれた。本音を言えば、洋服はスクリーン上ではなく実物で、体に合わせて揺れる動きや素材感を見たかったというのが筆者の感想だ。しかし、スケールが大きすぎる問題は自分事として捉えにくい傾向にある中、彼のメッセージはしっかり心に留めておきたいと思った。「地球が私たちと共に呼吸するのを感じて。私たちは一つのシステムの一員なのだ。内なる自己に目を向けて、心に平穏を」。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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メンズコレ取材チームが好き勝手に語る2020年春夏レビュー「マルニ」編

 2020年春夏シーズンのメンズコレクションを取材する記者2人が、見たまま感じたままにコレクションをレビューします。先輩記者Mは15年間メンズコレクションを見続けてきたベテラン、後輩記者Oは取材歴3年目。時には甘く時には辛口に、それぞれの視点で最新コレクションを語り合います。

記者O:今シーズンはいつにも増してアート感が強く、好き嫌いが分かれそうだなという印象でしたが、どうでしたか?

記者M:サイコー!インスピレーション源になったチェ・ゲバラ(Che Guevara)のキューバスタイルは、着こなすのがメチャクチャ難しそうだけど、ゲバラみたいな革命の必要性を説いてる心意気が好き。しかも戦うのは、海洋汚染や人種差別、セクシャルマイノリティーなど、地球のあらゆる問題。1つにフォーカスするブランドは多いけれど、一度に全部、それをスーパーミックスっていう発想がフランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)らしい。

記者O:特に帽子が凄かったです。さすがに商品化はしないでしょうけど(笑)。リッソはシーズンを重ねるごとに良くなってますね。就任当初は創業デザイナー時代の「マルニ」と比べられて否定的な意見も少なくなかったですが、ここ最近のコレクションを見ていると、自分のやりたいことを徐々に表現できているのかなと思っていました。そして今回のスーパーミックス。またひと皮むけましたね。ただ、ビジネス的にはどうなんでしょうか?

記者M:ウィメンズのメイン・コレクションとプレコレクションを見るとよくわかるけど、「マルニ」って、コレクションのムードを反映したコマーシャルピースが上手だからね〜。メンズもコレクションピースは強すぎて着づらい時もあるけれどコマーシャルピースがちょうどいい。「ポーター(PORTER)」コラボとか、マルニマーケットの効果もあって、顧客はかなり若返ったみたいだよ。

記者O:なるほど。若年層にはやや手が出しづらい価格帯かなとは思っていましたが、顧客の若返りは順調に進んでいるのですね。定番スニーカーの“ビッグフット”は街で若い子も履いているのを確かによく見かけます。今回のコレクションピースはまるで一点モノのアートのようだったので、どのようにコマーシャルに落とし込まれるのか楽しみです。でもMさんはきっとコレクションピースを着るんですよね(笑)。

記者M:ただ今回は、帽子やサンダル、バッグはもはやアートピースなカンジだよね(笑)。でも、「マルニ」流のチェ・ゲバラになって、ファッション界に革命を起こしたい(笑)。フランチェスコの洋服を着たら、そんな勇気が湧いてくるような気がします。デザイナーズブランドには、そんな“魔法”があるから、高いけれど一人でも多くの人に袖を通してほしいんだよね。

記者O:僕もその“魔法”は大好きです!ちなみに、フランチェスコの革命は9月のウィメンズコレクションへと続くストーリー仕立てになっているようですよ。最近の「マルニ」は着こなしのハードルが高すぎて少し遠ざかってましたが、久しぶりにチャレンジしてみようかな。

記者M:スキッパー襟のニットに開襟シャツのコーディネイトは、ピッティでも多かったコーディネートだし、チャレンジしやすそう。とは言え、シャツとニットのサイズ感はバラバラだから、お店で試着しながらスタッフとワイワイお話して選ぶのが楽しいかもね。実際、「マルニ」のメンズは、そんな買い方・売り方が多いみたい。表参道ヒルズの旗艦店オープンの時、フランチェスコにインタビューしたけれど、彼は本当に人間が大好きで、いろんな人と話をしたいタイプ。もちろん、彼とは直接話せるワケではないけれど、洋服を通じて、“フランチェスコ・ワールド”の住人であるスタッフと触れ合い、最終的に彼を知ることができるのは楽しいよね。つくづく、新しいタイプのデザイナーであり、ブランドに進化したなぁって思いました。

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