「カナダグース」ダニー・リース会長兼CEOが語る 銀座の旗艦店、ハイダー・アッカーマン、暖冬への心構え

PROFILE: ダニー・リース(Dani Reiss)/カナダグース会長兼CEO

ダニー・リース(Dani Reiss)/カナダグース会長兼CEO
PROFILE: 1973年、トロント生まれ。1997年、祖父のサム・ティックが57年に創業したアウターウエアメーカーに入社。2000年にブランド名を「スノーグース」から「カナダグース」に改めると、01年にCEOに就任。その後、同ブランドを世界的なラグジュアリー・ライフスタイルブランドへと成長させた。19年にはグローブ・アンド・メール紙の「レポート・オン・ビジネス」で「グローバル・ビジョナリー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。20年に「カナダで最も称賛されるCEO」に選出。また16年にはカナダ勲章、19年にはオンタリオ勲章を授与された。現在はマウント・サイナイ病院の理事、カナダの学生向け慈善団体「ステューデンツ・オン・アイス(SOI)」の諮問委員も務める。 PHOTO:MIKA HASHIMOTO

ハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)を初のクリエイティブ・ディレクターに迎えた「カナダグース(CANADA GOOSE)」は9月14日、銀座店をリニューアルし、フラッグシップストアとしてオープンする。カナダの大地を感じるような“カナディアン ウォームス(CANADIAN WARMTH)”をテーマに、店内にはラウンジスペースやバーカウンターを備えるほか、マイナス20度の環境でフィッティングが体験できる“コールドルーム”も完備。オープンを記念して写真家・二階堂ふみの写真展も開催する。

来日したダニー・リース(Dani Reiss)会長兼最高経営責任者(CEO)に銀座の新店舗やハイダーの起用、プロダクトの多様化、暖冬化が進む中での心構えなどを語ってもらった。

銀座店のリニューアルとハイダー・アッカーマンの起用

WWD:銀座店を「フラッグシップストア」としてリニューアルオープンする経緯は?

ダニー・リース=カナダグース会長兼CEO(以下、リース):「カナダグース」は、アジア地域で非常に好調だ。日本も同じで、2年前にオープンした銀座店も調子が良い。世界有数のショッピングエリアである銀座の店舗でブランドの力強いメッセージを体現し、発信する場所として生まれ変わらせたい。旗艦店として、あらゆる層のお客さまを迎えるのを楽しみにしている。

WWD: 5月にはクリエイティブディレクターにハイダー・アッカーマンが就任した。彼に白羽の矢を立てた一番の決め手は?

リース:ブランドが大きく成長し、クリエイティブ・ディレクターを見つけるべき時が来たと感じていた。選考に2年をかけ、多くの候補者と面談したが、最終的にハイダーと出会い、起用を決めた。私はハイダーのスタイルを「本物」と感じたし、ハイダーも「カナダグース」を「オーセンティック(=本物)」なブランドとして認識していた。ハイダーは、高い経験値を備え、いかにブランドを構築し、成長させるべきかを心得ている。あらゆる面でブランドを次のレベルへと引き上げてくれる人材だ。

WWD:ハイダーは機能性が魅力の「カナダグース」に、クリエイティブ・ディレクターとしてどう関わっていくのか?

リース:私は、彼をファッションデザイナーというよりは、「強い美学」を持った個人として認識している。彼はブランドの価値を高めるだけでなく、ブランドのカテゴリーを押し広げ、今までにない表現を提示してくれるだろう。

WWD:昨年リリースしたスニーカーなどを見てもわかるように「カナダグース」は製品カテゴリーの幅を拡大している。プロダクトを多様化させる先にあるものは?

リース:第一に、消費者が新しい商品を求めていると感じる。ブランドの成長は、新しいプロダクトをどんどん開発してきたことも大きい。私が入社した頃、「カナダグース」のプロダクトは約20型のみで、すべてダウンジャケットだった。今では軽量ダウンからウインドブレーカー、レインウエア、帽子、靴、アクセサリーまで、数多くのプロダクトを扱う。これらのアイテムにも、主力製品と同様のクラフツマンシップを注ぎ、高い品質を担保している。ブランドの基準に沿い、顧客が求める製品を作れば、私たちは成功できると信じている。ハイダーは、この点にも大きく寄与してくれるだろう。

WWD:「環境問題」の研究者を自認するハイダーとの最初のプロジェクトとして、ホッキョクグマの保護活動を支援するためのプロダクトを発売した。

リース:ハイダーがブランドに合流してすぐ、彼と私はカナダ北部の都市、チャーチルに向かった。多くのホッキョクグマが生息し、「ホッキョクグマの首都」とも呼ばれる街だ。そこでハイダーは、ホッキョクグマの生息地とその周辺の自然環境を体験し、「カナダグース」とホッキョクグマ保護団体「ポーラーベア・インターナショナル(Polar Bear International)」との長年にわたる取り組みを理解し、共感してくれた。その体験をもとに5月に発売したのが、「ポーラーベア・インターナショナル」に売上を寄付するための“PBI フーディー”だ。キャンペーンには、環境活動家としての顔を持つ女優のジェーン・フォンダ(Jane Fonda)を起用した。

サステナビリティへの意識 循環型経済の確立を目指して

WWD:一方でダウンという素材に対して、動物倫理的な視点で批判にさらされることもある。

リース:まず、「カナダグース」にとってダウンが重要な素材であることは間違いない。またダウンは、今でも世界で最も暖かい天然の中綿素材だ。

それを踏まえた上で2つのポイントを伝えたい。第一に、私たちが使用するダウンは、原料となるアヒルやガチョウの生育環境や羽毛の採取方法を細かく規定した国際的な基準「レスポンシブル・ダウン・スタンダード(Responsible Down Standard)」に適った方法で、倫理的に調達されたものであること。第二に、ダウンは食肉産業から生まれた副産物だ。レザーと同様に、人々がアヒルやガチョウを食べる限りダウンは存在し続ける。一方で「カナダグース」には近年、合成繊維や植物性の中綿などを使用している製品もある。こちらも好調だ。

WWD:昨年は自社製品の二次流通プラットフォーム「カナダグース・ジェネレーションズ」をスタートした。今後「カナダグース」が自社でコントロールする二次流通のビジネスはどうなる?

リース:消費者が持続可能性の問題に大きな関心を寄せる今、企業としてこの問題を重視し、循環型経済を確立することは重要だ。

誰かが手放した製品を市場に戻し、他の人にもう一度楽しんでもらう。それは自然なことであり、必要なこと。新品で「カナダグース」を購入したことがなかった消費者が、「カナダグース・ジェネレーションズ」では購入する機会があるかもしれないし、その人はいつか新品に手を伸ばすかもしれない。消費者がブランドに関わる方法が一つ増えたということ。顧客が製品をリユース・リサイクルする機会を大切にしている状況を考慮すれば、この事業はビジネスを成長させるチャンスでもある。始めたばかりだが、5〜10年後には私たちのビジネスに占める割合はかなり大きくなると見込んでいる。

WWD:昨年の10~12月期には卸売が苦戦し、28.5%の売り上げ減を経験した。人員削減にも踏み切り、自社の成長を促すべく組織を再編成した。このような痛みや変化を経て、直近の売り上げ状況は?

リース:まず言いたいのは、「カナダグース」のアジア太平洋地域は非常に好調で、23年の第四半期期(24年1月〜3月)は、全体で約30%プラスに転じている。昨年の卸売りの売上減は、私たちだけではなく、業界全体の現象だった。コロナ禍、金利上昇、インフレ、戦争など、様々なことがある中で、多くの卸売業者が在庫を持ちすぎていた。その機会を利用し、卸売りのネットワークの合理化を図り、消費者への直販を強化した。卸売は依然として非常に重要だが、世界で起きているあらゆる要因によって、自然な形でリセットされたと言える。

WWD:カナダグースジャパンも銀座店をリニューアルするように、今後卸売よりも直販に力を入れていく?

リース:日本には数社、強力な卸売パートナーがある。彼らとの取引には満足しているし、私たちのブランド力を高めてくれる存在だ。一方で、今回銀座店をリニューアルしたように、今後も機会があれば日本でも直営店を拡大していきたい。卸売と直販の両軸を大事にしていく。

暖冬が進む中で 「オーセンティック」なブランドとして

WWD:暖冬が進むなか、東京のような都市部に住む人は、防寒という点においてはヘビーなダウンジャケットを必要としなくなりつつある。それでも人々が「カナダグース」にひかれ、ダウンジャケットを購入する理由をどう分析するか?

リース:先ほど話したことにも繋がるが、20年以上日本でビジネスをしてきて、日本の人々は「オーセンティック(=本物)」であることを重視していると感じる。本物のストーリーを持っているブランドであることが大切だ。

また、大抵の場合、何かを買う動機は、単に必要だからではなく、それを欲しいと感じるから。「必要性」だけを考えれば、多くの人が「ランドローバー」のような四駆車を購入する理由もないし、そもそも、私たちがこんなに多くのモノを購入する理由もない。人はあくまで欲しいと感じるものを買うのだ。

だからこそ常に成長する必要性を感じる。カテゴリーの多様化はブランドとしての成長の一つ。あくまで「オーセンティック」な方法で、進化し続けるからこそ、消費者にとって常に「今」のブランドであり続けられるのではないか。

WWD:プロダクトの幅が広がっていく中でも、共通して存在する「カナダグース」らしさとは?

リース:全プロダクトに共通するのは、「独自の機能性」。マイナス100℃の寒冷地用のプロダクトであれ、街用にデザインしたものであれ、機能性は重要。機能を十分に追求すると、ファッショナブルなものになっていくとも感じている。

クラフトマンシップに重きを置いた、作りの良さも「カナダグース」らしさの一つ。プロダクトごとに最適な場所を選んで製造していて、ほとんどはカナダ製。それ以外はヨーロッパで作っている。

もちろん気候変動という問題には、アクションしなければならない。世界とつながり続け、状況に対応していくことが肝心だ。そのための方法はたくさんある。世の中のためになる製品を作ること、そして人々が望む製品を作ることを大事にしたい。「カナダグース」の価値を大切に守り、適切に成長していけば、成功できると信じている。

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「カナダグース」ダニー・リース会長兼CEOが語る 銀座の旗艦店、ハイダー・アッカーマン、暖冬への心構え

PROFILE: ダニー・リース(Dani Reiss)/カナダグース会長兼CEO

ダニー・リース(Dani Reiss)/カナダグース会長兼CEO
PROFILE: 1973年、トロント生まれ。1997年、祖父のサム・ティックが57年に創業したアウターウエアメーカーに入社。2000年にブランド名を「スノーグース」から「カナダグース」に改めると、01年にCEOに就任。その後、同ブランドを世界的なラグジュアリー・ライフスタイルブランドへと成長させた。19年にはグローブ・アンド・メール紙の「レポート・オン・ビジネス」で「グローバル・ビジョナリー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。20年に「カナダで最も称賛されるCEO」に選出。また16年にはカナダ勲章、19年にはオンタリオ勲章を授与された。現在はマウント・サイナイ病院の理事、カナダの学生向け慈善団体「ステューデンツ・オン・アイス(SOI)」の諮問委員も務める。 PHOTO:MIKA HASHIMOTO

ハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)を初のクリエイティブ・ディレクターに迎えた「カナダグース(CANADA GOOSE)」は9月14日、銀座店をリニューアルし、フラッグシップストアとしてオープンする。カナダの大地を感じるような“カナディアン ウォームス(CANADIAN WARMTH)”をテーマに、店内にはラウンジスペースやバーカウンターを備えるほか、マイナス20度の環境でフィッティングが体験できる“コールドルーム”も完備。オープンを記念して写真家・二階堂ふみの写真展も開催する。

来日したダニー・リース(Dani Reiss)会長兼最高経営責任者(CEO)に銀座の新店舗やハイダーの起用、プロダクトの多様化、暖冬化が進む中での心構えなどを語ってもらった。

銀座店のリニューアルとハイダー・アッカーマンの起用

WWD:銀座店を「フラッグシップストア」としてリニューアルオープンする経緯は?

ダニー・リース=カナダグース会長兼CEO(以下、リース):「カナダグース」は、アジア地域で非常に好調だ。日本も同じで、2年前にオープンした銀座店も調子が良い。世界有数のショッピングエリアである銀座の店舗でブランドの力強いメッセージを体現し、発信する場所として生まれ変わらせたい。旗艦店として、あらゆる層のお客さまを迎えるのを楽しみにしている。

WWD: 5月にはクリエイティブディレクターにハイダー・アッカーマンが就任した。彼に白羽の矢を立てた一番の決め手は?

リース:ブランドが大きく成長し、クリエイティブ・ディレクターを見つけるべき時が来たと感じていた。選考に2年をかけ、多くの候補者と面談したが、最終的にハイダーと出会い、起用を決めた。私はハイダーのスタイルを「本物」と感じたし、ハイダーも「カナダグース」を「オーセンティック(=本物)」なブランドとして認識していた。ハイダーは、高い経験値を備え、いかにブランドを構築し、成長させるべきかを心得ている。あらゆる面でブランドを次のレベルへと引き上げてくれる人材だ。

WWD:ハイダーは機能性が魅力の「カナダグース」に、クリエイティブ・ディレクターとしてどう関わっていくのか?

リース:私は、彼をファッションデザイナーというよりは、「強い美学」を持った個人として認識している。彼はブランドの価値を高めるだけでなく、ブランドのカテゴリーを押し広げ、今までにない表現を提示してくれるだろう。

WWD:昨年リリースしたスニーカーなどを見てもわかるように「カナダグース」は製品カテゴリーの幅を拡大している。プロダクトを多様化させる先にあるものは?

リース:第一に、消費者が新しい商品を求めていると感じる。ブランドの成長は、新しいプロダクトをどんどん開発してきたことも大きい。私が入社した頃、「カナダグース」のプロダクトは約20型のみで、すべてダウンジャケットだった。今では軽量ダウンからウインドブレーカー、レインウエア、帽子、靴、アクセサリーまで、数多くのプロダクトを扱う。これらのアイテムにも、主力製品と同様のクラフツマンシップを注ぎ、高い品質を担保している。ブランドの基準に沿い、顧客が求める製品を作れば、私たちは成功できると信じている。ハイダーは、この点にも大きく寄与してくれるだろう。

WWD:「環境問題」の研究者を自認するハイダーとの最初のプロジェクトとして、ホッキョクグマの保護活動を支援するためのプロダクトを発売した。

リース:ハイダーがブランドに合流してすぐ、彼と私はカナダ北部の都市、チャーチルに向かった。多くのホッキョクグマが生息し、「ホッキョクグマの首都」とも呼ばれる街だ。そこでハイダーは、ホッキョクグマの生息地とその周辺の自然環境を体験し、「カナダグース」とホッキョクグマ保護団体「ポーラーベア・インターナショナル(Polar Bear International)」との長年にわたる取り組みを理解し、共感してくれた。その体験をもとに5月に発売したのが、「ポーラーベア・インターナショナル」に売上を寄付するための“PBI フーディー”だ。キャンペーンには、環境活動家としての顔を持つ女優のジェーン・フォンダ(Jane Fonda)を起用した。

サステナビリティへの意識 循環型経済の確立を目指して

WWD:一方でダウンという素材に対して、動物倫理的な視点で批判にさらされることもある。

リース:まず、「カナダグース」にとってダウンが重要な素材であることは間違いない。またダウンは、今でも世界で最も暖かい天然の中綿素材だ。

それを踏まえた上で2つのポイントを伝えたい。第一に、私たちが使用するダウンは、原料となるアヒルやガチョウの生育環境や羽毛の採取方法を細かく規定した国際的な基準「レスポンシブル・ダウン・スタンダード(Responsible Down Standard)」に適った方法で、倫理的に調達されたものであること。第二に、ダウンは食肉産業から生まれた副産物だ。レザーと同様に、人々がアヒルやガチョウを食べる限りダウンは存在し続ける。一方で「カナダグース」には近年、合成繊維や植物性の中綿などを使用している製品もある。こちらも好調だ。

WWD:昨年は自社製品の二次流通プラットフォーム「カナダグース・ジェネレーションズ」をスタートした。今後「カナダグース」が自社でコントロールする二次流通のビジネスはどうなる?

リース:消費者が持続可能性の問題に大きな関心を寄せる今、企業としてこの問題を重視し、循環型経済を確立することは重要だ。

誰かが手放した製品を市場に戻し、他の人にもう一度楽しんでもらう。それは自然なことであり、必要なこと。新品で「カナダグース」を購入したことがなかった消費者が、「カナダグース・ジェネレーションズ」では購入する機会があるかもしれないし、その人はいつか新品に手を伸ばすかもしれない。消費者がブランドに関わる方法が一つ増えたということ。顧客が製品をリユース・リサイクルする機会を大切にしている状況を考慮すれば、この事業はビジネスを成長させるチャンスでもある。始めたばかりだが、5〜10年後には私たちのビジネスに占める割合はかなり大きくなると見込んでいる。

WWD:昨年の10~12月期には卸売が苦戦し、28.5%の売り上げ減を経験した。人員削減にも踏み切り、自社の成長を促すべく組織を再編成した。このような痛みや変化を経て、直近の売り上げ状況は?

リース:まず言いたいのは、「カナダグース」のアジア太平洋地域は非常に好調で、23年の第四半期期(24年1月〜3月)は、全体で約30%プラスに転じている。昨年の卸売りの売上減は、私たちだけではなく、業界全体の現象だった。コロナ禍、金利上昇、インフレ、戦争など、様々なことがある中で、多くの卸売業者が在庫を持ちすぎていた。その機会を利用し、卸売りのネットワークの合理化を図り、消費者への直販を強化した。卸売は依然として非常に重要だが、世界で起きているあらゆる要因によって、自然な形でリセットされたと言える。

WWD:カナダグースジャパンも銀座店をリニューアルするように、今後卸売よりも直販に力を入れていく?

リース:日本には数社、強力な卸売パートナーがある。彼らとの取引には満足しているし、私たちのブランド力を高めてくれる存在だ。一方で、今回銀座店をリニューアルしたように、今後も機会があれば日本でも直営店を拡大していきたい。卸売と直販の両軸を大事にしていく。

暖冬が進む中で 「オーセンティック」なブランドとして

WWD:暖冬が進むなか、東京のような都市部に住む人は、防寒という点においてはヘビーなダウンジャケットを必要としなくなりつつある。それでも人々が「カナダグース」にひかれ、ダウンジャケットを購入する理由をどう分析するか?

リース:先ほど話したことにも繋がるが、20年以上日本でビジネスをしてきて、日本の人々は「オーセンティック(=本物)」であることを重視していると感じる。本物のストーリーを持っているブランドであることが大切だ。

また、大抵の場合、何かを買う動機は、単に必要だからではなく、それを欲しいと感じるから。「必要性」だけを考えれば、多くの人が「ランドローバー」のような四駆車を購入する理由もないし、そもそも、私たちがこんなに多くのモノを購入する理由もない。人はあくまで欲しいと感じるものを買うのだ。

だからこそ常に成長する必要性を感じる。カテゴリーの多様化はブランドとしての成長の一つ。あくまで「オーセンティック」な方法で、進化し続けるからこそ、消費者にとって常に「今」のブランドであり続けられるのではないか。

WWD:プロダクトの幅が広がっていく中でも、共通して存在する「カナダグース」らしさとは?

リース:全プロダクトに共通するのは、「独自の機能性」。マイナス100℃の寒冷地用のプロダクトであれ、街用にデザインしたものであれ、機能性は重要。機能を十分に追求すると、ファッショナブルなものになっていくとも感じている。

クラフトマンシップに重きを置いた、作りの良さも「カナダグース」らしさの一つ。プロダクトごとに最適な場所を選んで製造していて、ほとんどはカナダ製。それ以外はヨーロッパで作っている。

もちろん気候変動という問題には、アクションしなければならない。世界とつながり続け、状況に対応していくことが肝心だ。そのための方法はたくさんある。世の中のためになる製品を作ること、そして人々が望む製品を作ることを大事にしたい。「カナダグース」の価値を大切に守り、適切に成長していけば、成功できると信じている。

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人間の皮膚の模倣から肌・髪の分析、コンテンツ制作まで ロレアルで進む生成AIの活用術

ロレアル(L’OREAL)は、5月にパリで開催した世界最大級のテックイベント「ビバ・テクノロジー」で最新のビューティテック・イノベーションを発表した。製品テストの向上と動物実験減少のため、人間の皮膚を模倣したバイオスキンを開発。また、ブランドイメージに準拠したローカライズコンテンツ制作のため、生成AIによる美容コンテンツの研究所であるクリエイテック(CREAITECH)と協業している。

ロレアルのR&Iとテクノロジー部門で副最高経営責任者(CEO)を務めるバーバラ・ラヴェルノス(Barbara Lavernos)は、「ロレアルは美容技術のパイオニアとして、テクノロジーが美容の可能性を拡大し、世界中の人々の生活向上に寄与すると確信している」と話す。多様な人間の皮膚を模倣したスキンテクノロジーは、生物学や機械工学、電子工学を融合し、世界中の新興企業や研究機関と共に開発に取り組んでいる。

ロレアルはまた、3DやAR、AIの次世代クリエイターを奨励し、美容における新たなクリエイティビティを促進するためにメタ(META)と提携し、「ニューコード・オブ・ビューティクリエイター・プログラム」を実施している。ロレアル傘下の「ロレアル パリ(L’OREAL PARIS)」や「ランコム(LANCOME)」「ケラスターゼ(KERASTASE)」「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE-POSAY)」はすでに同サービスを活用してコンテンツを制作。アスミタ・デュベイ(Asmita Dubey)=ロレアル デジタルマーケティング責任者は、「テクノロジーは人間の創造性と掛け合わせることで、自己表現とブランド表現の強力なツールとなる」と話す。「生成AIに各ブランドのユニークなビジュアルコードを学習させれば、より迅速に革命的なキャンペーンが打てる。本物そっくりの画像を外部コミュニケーションに使用しないという、“責任あるAIの原則”を損なうことなくだ」と続ける。

「ロレアル パリ」の“ビューティ ジーニアス(BEAUTY GENIUS)”という生成AIを搭載したパーソナル・ビューティアシスタントは、24時間365日、パーソナライズした診断と提案をユーザーに提供。消費者は、美容知識を増やせる。「ロレアル プロフェッショナル(L'OREAL PROFESSIONNEL)」の“マイヘア ID ヘアリーダー(MY HAIR [ID] HAIR READER)”は、同グループ初のAIを搭載したヘアカラー分析ツールだ。超精密光学を用いて髪の健康状態を調べ、白髪率や毛髪の直径、密度などを測定し、それぞれのユーザーに相応しいヘアカラーを提案する。

「キールズ(KIEHL'S SINCE 1851)」の“ダーマリーダー(DERMA-READER)”は、臨床画像技術を使って顧客の肌を評価し、肌の表面だけでなく真皮まで測定して11以上の属性に分類、適切な成分やライフスタイル、毎日のスキンケア習慣を提案する。「ランコム」の“レナジー ナノ・リサーフェイサー 400 ブースター(RENERGIE NANO-RESURFACER 400 BOOSTER)”は、特許取得済みのナノチップ技術を搭載した家庭用美容機器で、化粧品の浸透を高め、商品の性能を増幅させる。

さらにロレアルは、デジタル活動から発生する二酸化炭素排出量を評価し、環境への影響を削減するため3つの企業とパートナーシップを結んでいる。仏スタートアップのインパクト(IMPACT+)とフラッガー(FRUGGR)はそれぞれ、デジタルメディアとウェブサイトのカーボンフットプリントを測定する。広告業界の二酸化炭素排出量削減を目指すイギリスのアドグリーン(ADGREEN)は、コンテンツ制作現場のカーボンフットプリントを測定。これらの数値をもとに、環境に配慮した予防策を講じている。

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人間の皮膚の模倣から肌・髪の分析、コンテンツ制作まで ロレアルで進む生成AIの活用術

ロレアル(L’OREAL)は、5月にパリで開催した世界最大級のテックイベント「ビバ・テクノロジー」で最新のビューティテック・イノベーションを発表した。製品テストの向上と動物実験減少のため、人間の皮膚を模倣したバイオスキンを開発。また、ブランドイメージに準拠したローカライズコンテンツ制作のため、生成AIによる美容コンテンツの研究所であるクリエイテック(CREAITECH)と協業している。

ロレアルのR&Iとテクノロジー部門で副最高経営責任者(CEO)を務めるバーバラ・ラヴェルノス(Barbara Lavernos)は、「ロレアルは美容技術のパイオニアとして、テクノロジーが美容の可能性を拡大し、世界中の人々の生活向上に寄与すると確信している」と話す。多様な人間の皮膚を模倣したスキンテクノロジーは、生物学や機械工学、電子工学を融合し、世界中の新興企業や研究機関と共に開発に取り組んでいる。

ロレアルはまた、3DやAR、AIの次世代クリエイターを奨励し、美容における新たなクリエイティビティを促進するためにメタ(META)と提携し、「ニューコード・オブ・ビューティクリエイター・プログラム」を実施している。ロレアル傘下の「ロレアル パリ(L’OREAL PARIS)」や「ランコム(LANCOME)」「ケラスターゼ(KERASTASE)」「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE-POSAY)」はすでに同サービスを活用してコンテンツを制作。アスミタ・デュベイ(Asmita Dubey)=ロレアル デジタルマーケティング責任者は、「テクノロジーは人間の創造性と掛け合わせることで、自己表現とブランド表現の強力なツールとなる」と話す。「生成AIに各ブランドのユニークなビジュアルコードを学習させれば、より迅速に革命的なキャンペーンが打てる。本物そっくりの画像を外部コミュニケーションに使用しないという、“責任あるAIの原則”を損なうことなくだ」と続ける。

「ロレアル パリ」の“ビューティ ジーニアス(BEAUTY GENIUS)”という生成AIを搭載したパーソナル・ビューティアシスタントは、24時間365日、パーソナライズした診断と提案をユーザーに提供。消費者は、美容知識を増やせる。「ロレアル プロフェッショナル(L'OREAL PROFESSIONNEL)」の“マイヘア ID ヘアリーダー(MY HAIR [ID] HAIR READER)”は、同グループ初のAIを搭載したヘアカラー分析ツールだ。超精密光学を用いて髪の健康状態を調べ、白髪率や毛髪の直径、密度などを測定し、それぞれのユーザーに相応しいヘアカラーを提案する。

「キールズ(KIEHL'S SINCE 1851)」の“ダーマリーダー(DERMA-READER)”は、臨床画像技術を使って顧客の肌を評価し、肌の表面だけでなく真皮まで測定して11以上の属性に分類、適切な成分やライフスタイル、毎日のスキンケア習慣を提案する。「ランコム」の“レナジー ナノ・リサーフェイサー 400 ブースター(RENERGIE NANO-RESURFACER 400 BOOSTER)”は、特許取得済みのナノチップ技術を搭載した家庭用美容機器で、化粧品の浸透を高め、商品の性能を増幅させる。

さらにロレアルは、デジタル活動から発生する二酸化炭素排出量を評価し、環境への影響を削減するため3つの企業とパートナーシップを結んでいる。仏スタートアップのインパクト(IMPACT+)とフラッガー(FRUGGR)はそれぞれ、デジタルメディアとウェブサイトのカーボンフットプリントを測定する。広告業界の二酸化炭素排出量削減を目指すイギリスのアドグリーン(ADGREEN)は、コンテンツ制作現場のカーボンフットプリントを測定。これらの数値をもとに、環境に配慮した予防策を講じている。

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JSFAがアパレルの温室効果ガス排出量算定方法のガイドライン公表 「まずは測る」一歩に

ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)は、環境省の「令和5年度製品・サービスのライフ サイクルを通じた温室効果ガス排出量算定・表示推進事業委託業務」支援を受け、日本アパレル・ファッション産業協会(JAFIC)と連携し「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量の算定方法基本ガイドラインに関する業種別解説(ファッション産業)」を策定した。 温室効果ガスの削減に向けて、会員企業はじめアパレル業界全体で、“まずは測る”アクションに活用されることを目指す。

アパレル企業が温室効果ガスの測定に取り組むべき理由についてJSFAは「温室効果ガスの排出が多いと言われている繊維産業が2050年にカーボンニュートラルを達成するためには、川上・川中・川下企業の連携がとても重要だ。また温室効果ガス削減には、製品作りの段階で環境配慮設計などを考慮した創意工夫が必要。連携を深め、アパレル企業が排出量の測定に着手し実態を把握、認識することが削減に向けた創意工夫の駆動力の1つとなる」とコメントしている。

日本のアパレル業界において排出量の算定を行っている企業は「確実に増えているが、特にスコープ3に関しては社内リソースや適切な原単位の不足などにより難航している企業は多い印象」との見解だ。そのため本解説はアパレル製品のスコープ3の中でもカテゴリー1(購入した製品・サービスの繊維製品)の算定方法を解説し、ワールドやTSIホールディングスなどの具体例を掲載している。

ガイドラインは、JSFAウェブサイトのニュースに掲載しているダウンロードフォームから、必要事項をご記載の上ダウンロードできる

なお、JSFAは2027年末に会員企業の50%、2030年に全会員企業の算定完了を目標としている。

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スノーボードの「バートン」、今年も太陽光で簡易リフトを動かすイベントに協賛

スノーボードの「バートン(BURTON)」を手掛けるバートン ジャパンは一昨年、昨年に続き、太陽光発電で簡易リフトのロープトーを動かし、スノーボードやスノースケートを楽しむイベント「フューチャーラボ」をサポートしている。同イベントはスノーボードカルチャー誌「ディギンマガジン」が主催。今年は3月30、31日に山形・鶴岡の湯殿山スキー場で開催される。

初回の一昨年は曇天や雪不足で太陽光発電によるロープトーの稼働は叶わなかったが、昨年4月8、9日に湯殿山スキー場で行った際は、天気に恵まれて太陽光発電でのロープトー稼働に成功した。「ディギンマガジン」によれば、太陽光発電でのロープトー稼働はこれが日本初だったという。ロープトーは通常のチェア型リフトよりも、小さなエネルギーで稼働ができるのが特徴。

イベントのサポートにあたり、バートン ジャパンは「日本各地の雪国では近年、気候変動による降雪の減少やコロナの影響、施設の老朽化などで、ローカルスキー場が閉鎖するケースが増えている。莫大なコストがかかるリフトの稼働も、スキー場の経営を圧迫する要因の一つ」とコメント。「太陽光発電と蓄電の併用や、バイオディーゼルを利用することでコストを抑えてロープトーを稼働させられるようになれば、中小規模のスキー場が経営継続の活路を見出すと共に、スキー場跡地の有効活用などにつながる可能性もある」と意図を説明する。山をフィールドとして楽しむブランドとして、スキー場が抱える課題やその解決に向けた取り組みをイベントを通して広く発信するのが狙いだ。

「フューチャーラボ」は、昨年と同様に地形変化を楽しむ滑走イベント「ドリームセッション」とのコラボレーションとして開催。イベント2日目の31日は、湯殿山スキー場の今季の営業最終日となる。米バートンは2019年に、スノーボードメーカーとして初めてBコープ認証を取得している。

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スノーボードの「バートン」、今年も太陽光で簡易リフトを動かすイベントに協賛

スノーボードの「バートン(BURTON)」を手掛けるバートン ジャパンは一昨年、昨年に続き、太陽光発電で簡易リフトのロープトーを動かし、スノーボードやスノースケートを楽しむイベント「フューチャーラボ」をサポートしている。同イベントはスノーボードカルチャー誌「ディギンマガジン」が主催。今年は3月30、31日に山形・鶴岡の湯殿山スキー場で開催される。

初回の一昨年は曇天や雪不足で太陽光発電によるロープトーの稼働は叶わなかったが、昨年4月8、9日に湯殿山スキー場で行った際は、天気に恵まれて太陽光発電でのロープトー稼働に成功した。「ディギンマガジン」によれば、太陽光発電でのロープトー稼働はこれが日本初だったという。ロープトーは通常のチェア型リフトよりも、小さなエネルギーで稼働ができるのが特徴。

イベントのサポートにあたり、バートン ジャパンは「日本各地の雪国では近年、気候変動による降雪の減少やコロナの影響、施設の老朽化などで、ローカルスキー場が閉鎖するケースが増えている。莫大なコストがかかるリフトの稼働も、スキー場の経営を圧迫する要因の一つ」とコメント。「太陽光発電と蓄電の併用や、バイオディーゼルを利用することでコストを抑えてロープトーを稼働させられるようになれば、中小規模のスキー場が経営継続の活路を見出すと共に、スキー場跡地の有効活用などにつながる可能性もある」と意図を説明する。山をフィールドとして楽しむブランドとして、スキー場が抱える課題やその解決に向けた取り組みをイベントを通して広く発信するのが狙いだ。

「フューチャーラボ」は、昨年と同様に地形変化を楽しむ滑走イベント「ドリームセッション」とのコラボレーションとして開催。イベント2日目の31日は、湯殿山スキー場の今季の営業最終日となる。米バートンは2019年に、スノーボードメーカーとして初めてBコープ認証を取得している。

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「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2023」12月11日にオフライン開催  エントリー受付中

INFASパブリケーションズは、「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2023」を12月11日(月)に東京ポートシティ竹芝 ポートホールで開催します。2020年にスタートした同サミットは毎年、ファッション×サステナビリティに関してそのときどきの最先端、グローバルな話題を取り上げて、ファッション業界を牽引してきました。

4回目を迎える今回の特徴はオフライン限定開催であること。国内外からキーパーソンを招き、「環境危機下でのモノ作りとデザイナーの役割」「社会課題の解決や地域振興におけるデザイン」「時代のキーワード“生物多様性“を理解する~ファッションとの関わり~」「大量廃棄の現状 古着の最終地点ケニアの視点を交えて考える」といったテーマで4つのトークセッションを行います。いずれのセッションも大きなスクリーンを生かした映像で没入感を演出し、Q&Aタイムを充実させて登壇者と来場者の対話を重視します。また、体験を通じてサステナビリティを考えるブースも多数用意します。

過去3回は、ビジネスパーソンやデザイナー、学生、研究者、行政関係者など幅広いジャンル、世代の方から参加申し込みをいただいております。立場や職種、年齢は異なれど、多くの方が共通の疑問やビジョンを抱いています。地球や誰かを傷つけないファッションって可能なの?ビジネスはどう成長させるのが理想だろう?「いずれも難題だからこそサステナビリティを前提としたデザイン・設計の力が生かされるときです。ここで出合う新しい視点と、新しい人との出会いを通じて一人一人の方が自分なりの答えをみつけてほしい」と向千鶴・執行役員編集統括サステナビリティ・ディレクターは話しています。

参加は無料で、事前エントリー制

申込先着順で定員になり次第締め切りとなります。
詳しくは、公式サイトをご覧ください。


■イベント概要

名称:「WWDJAPANサステナビリティ・サミット2023」
日時:2023年12月11日(月) 13:00開場、13:30~20:00
場所:東京ポートシティ竹芝ポートホール
住所:東京都港区海岸1丁⽬7-1 東京ポートシティ⽵芝 オフィスタワー1階
参加費:無料
問い合わせ先: support@infaspub.co.jp
ハッシュタグ:#WWDサステナビリティ
参加方法:下記アドレスから事前エントリーが必須。申込先着順で定員になり次第締め切り


▽ 申し込みはこちら ▽

プログラム

キーパーソンによる4つのトークセッション

【13:50 - 14:50(同時通訳)】

■「環境危機下でのモノ作りとデザイナーの役割」

マーク・リトル/パタゴニア メンズ・ライフ・アウトドア グローバル・プロダクト・ライン・ディレクター
アパレル製品は貴重な地球の資源を使い、環境に負荷をかけながら作られます。その負荷は非常に大きく、従来型のビジネスモデルでは地球のダメージを加速させるばかりです。環境危機下で製品をデザインするときに必要な視点とは何でしょうか?製品の生産・販売を核に「ビジネス通じて地球を救う」ことに取り組むパタゴニアのマーク・リトル=メンズ・ライフ・アウトドア グローバル・プロダクト・ライン・ディレクターが会場で登壇し、皆さんと考えます。

【16:00 - 17:00】

■「社会課題の解決や地域振興におけるデザイン」

金井政明/良品計画 代表取締役会長
山縣良和/リトゥンアフターワーズ代表、ここのがっこう代表

循環型社会の実現に向けて「社会・地域の課題解決とデザイン」は大きなテーマになりつつあります。そこで、金井政明 良品計画代表取締役会長をお招きし、同社が進める「地域密着型の事業モデル」について解説してもらうと同時に、ファッションデザイナーによる社会・地域の課題解決のアクション例として山縣良和リトゥンアフターワーズ代表にその実にユニークな取り組みをお話しいただきます。

【17:30 - 18:30(同時通訳)】

■「時代のキーワード“生物多様性“を理解する~ファッションとの関わり~」

サブリナ・ゴンサルヴェス・クレブズバッハ/ケリング ソーシングおよび生物多様性スペシャリスト アカウントナシ
ジュール・アメリア/コンサベーション・インターナショナル・ジャパン カントリー・ディレクター

地球上には3000万種類もの生き物がいて、直接・間接的に支え合って存在しています。その生物多様性の損失が今、大きな問題となっています。ファッションは生物多様性とどう関わりがあり、そして、損失を止め自然を回復するために何ができるのでしょうか?専門家である、ケリングのサブリナ・ゴンサルヴェス・クレブズバッハ =ソーシングおよび生物多様性スペシャリストとジュール・アメリア=コンサベーション・インターナショナル・ジャパン カントリー・ディレクターをお迎えし、実は深いその関係性について理解を深めます。

【19:00 - 19:45(同時通訳)】

■「大量廃棄の現状 古着の最終地点ケニアの視点を交えて考える」

鎌田安里紗/unisteps共同代表
イオナ・マクレス/「キコロメオ」クリエイティブ・ディレクター

大量生産・大量廃棄の問題は、持続可能な業界の未来を設計する上で避けては通れないトピックです。先進国から途上国へ輸出される大量の古着は、現地で売りさばききれずに環境汚染を引き起こしたり、安い古着が現地の産業成長の障壁になったりして問題視されています。今夏、古着の行き着く先を見るためケニアを訪れた鎌田安里紗unisteps共同代表と、ケニア発の気鋭ブランド「キコロメオ」のイオナ・マクレス=クリエイティブ・ディレクターをお招きし、大量生産・大量廃棄の現状を考えます。

ブースで“できること”を体験しよう

■VEOCEL

どちらに一票?“プラ製”or“CO2削減に貢献する樹木由来の再生繊維製”  

日頃使っているウェットティシュやコスメのシートマスクなどの不織布製品の素材はなにかご存知ですか。レンチングファイバーズの「ヴェオセル」の製品は適切な条件下で生分解し、マイクロプラスチックになりません。その原料はサステナブルに管理された森林由来。CO2の削減にも貢献しています。ブースでは不織布業界初のカーボンニュートラルなリヨセル繊維を紹介。投票ゲームを通じ皆さんの考えをぜひシェアしてください。4コマ漫画クイズに回答した方にはサンプルのプレゼントも!(なくなり次第終了)

■CONSERVATION INTERNATIONAL JAPAN

世界の自然環境問題をVRで体験

国際NGOコンサベーション・インターナショナルは、1987年創設以来、世界30カ国に拠点を持ち、100カ国以上で2000を超えるパートナーと協業しながらグローバルスケールで自然保護を行っています。今回会場に用意する映像「DROP IN THE OCEAN」の世界では、小さなプランクトンの視点から、息をのむようなバーチャルリアリティの世界で海を探検し、大切な海を守る必要性がいかに緊急かを体験することができます。ヘッドセットをつけて大いなる海の世界に没入してみては?

■SOILMATEZ STUDIO

撮影の環境負荷低減を目指すサーキュレーションスタジオを体験

会場のフォトブースでプロのフォトグラファーによる記念撮影を体験しませんか?撮影してくれるのは、”フォトグラファー×循環”をコンセプトに、環境負荷を低減した撮影を目指す「ソイルメイツ スタジオ」を運営するRIKKI UENO氏。フォトブースに使用する背景紙は、都内の撮影スタジオで廃棄された背景紙を回収し、リサイクルしたものです。ピンクが映える空間で、記念の一枚をぜひ撮りに来てください。

■DOKKA VIVID

飽きて着なくなった服にスパイスを

「着る人の人生にスパイスを」をモットーに、カラフルなアップサイクルデザインを得意とする若手デザイナーデュオ「ドゥッカ ヴィヴィット」によるワークショップを開催します。飽きて着なくなってしまった服を持参いただくと、「ドゥッカ ヴィヴィット」のオリジナルカスタムシールを施すことができます。彼女たちが熱意を持って取り組む、シーチング(仮縫いなどの試作段階で使われる布)のリサイクルプロジェクトについてのプレデンテーションも必聴です。

■VOICE=ART PROJECT

参加者の「一言」がつながり、12/11にアートが生まれる

本サミットでは、参加者が考えるサステナビリティに関するメッセージを集めてビジュアルアートを完成させる「VOICE=ART PROJECT」を実施します。集まったメッセージと、参加者全員のお名前をイベント当日に巨大スクリーンで投影し共有します。アートを手がけるのは注目のクリエイター2人。ビジュアルはManami Sakamoto、音楽はSakura Tsurutaが担当します。サステナビリティ×ファッションはまだまだ手探り。場に集まる皆さんの声が誰か、そして社会を変えてゆくきっかけになります。会場での発表をお楽しみに!(メッセージの受付は11月29日(水)で終了します)。

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パタゴニアの気張らないコミュニティの作り方 北極先住民族を撮る写真家遠藤励と協働

「パタゴニア(PATAGONIA)」は環境危機と闘うためのコミュニティを広げるために、さまざまなイベントを開催している。京都店(11月3日)、福岡店(11月11日)、軽井沢店(11月24日)で行う「北極先住民族のいま」もその一つ。ただし、イベント自体は直接環境危機を訴えかけるものではない。

今回のイベントは写真家の遠藤励を招き、遠藤が撮影したグリーンランドのイヌイットの狩猟の様子を紹介したり、地元バンドのライブ演奏やビール販売を行ったりした。今回はこれまでのパタゴニアのイベントとは異なる方法を採り、間口を広げて来場者を募った。イベントを担当するパタゴニア日本支社の内野宗一郎カテゴリーマーケティング アシスタントマネージャーは「われわれが環境問題をテーマにしたイベントを考えるとどうしても真面目な着席形式の講演のような形になり、伝えたいメッセージを一方的に発信しがちだった。ご来場いただく方もすでに関心が高い方が多く、同じ顔触れになることもある。地球環境は待ったなしの状況で、スピード感を上げて環境・社会問題解決につなげていくには、すでにつながっている仲間だけでは社会に変化をもたらすことはできないと考えた」と話す。加えて、「これまでは伝えたいことをなるべくたくさん持ち帰っていただくためのどうしたらいいかと考えていたが、今回は10伝えたとしたら何か1つでも持ち帰ってもらえればいいと考えた」と内野。

店頭で掲示された遠藤の作品は、グリーンランドの今を写したもので、ナイロンジャケットとアザラシの毛のパンツをまとうイヌイットの少女や、一部がえぐられた氷床、ごみだらけのグリーンランドの海岸線などだ。美しいだけではなく、見る者に危機感を訴えかけてくる。「北極圏で暮らす人々に気候危機と資本主義のしわ寄せがきていることを伝えたいと考えた」。

京都店で行ったイベントには60人以上が参加し(通常は着席で行うので35人程度)、顧客だけではなく新規で来店する人がとても多かったという。「来場者が食い入るように遠藤さんの写真(スライドショー)を見つめながら、話に耳を傾ける姿が印象的だった。今回のイベントの形式は遠藤さんからの提案によるところがあったが、われわれにとっても大きな気づきになった」。

気候変動と資本主義の影響を強く受ける先住民の暮らし

もともと遠藤は雪をテーマに撮り続けてきた写真家で、中でも大きなテーマはスノーボードカルチャーだった。遠藤は「温暖化が深刻化し、エクストリームスポーツとしてのスノーボードだけではなく、自然と社会とのつながりを、雪や氷河を通じて表現していきたいと考えた。そうした活動の延長線上に北極と先住民文化があった」と話す。北極圏の先住民にフォーカスしたのは「自然のサイクルと直結した先住民の暮らしが最もサステナブルなのではないかと思った」から。リサーチの結果、最も先住民族の暮らしが残っていると言われている「地球上最後ともいえる大型哺乳類の狩猟生活を営むグリーンランドの先住民の狩猟の撮影に挑んだ」と遠藤。しかし、実際に訪れてみると予想以上に資本主義に侵食されている現実を知る。先住民族の文化の継承が難しくなっていることや、暮らし自体が変化していた。「人々が安定を求め始めたことや資本が入ることで狩りをする必要がなくなってきている。数年でなくなるか、あるいは観光としてのビジネスになっていくかどちらかではないか」と遠藤。記録を残すという意味もあった。

撮影を通じて自身の気づきも多かったという。「獲物を捕って解体して食べるーー一連の作業を目の当たりにして、複雑な気持ちになった。彼らはホッキョクグマなど絶滅危惧種も狩るし、『やめて』と思う自分がいたりして胸が苦しくなった。命をいただくことに責任を持つとはどういうことかを考えると、普段僕たちが口にする牛や豚の命の重さも同じではないか。僕自身、解体される動物や血を見たことがなかっただけで、彼らの狩猟を本当はどこか好奇な目で見ていたことにも気付いた。そして、日本での暮らしは、都合が悪いことが見えない仕組みになっていることに気付かされた。切り身になったものが提供され、食べるときも罪悪感や感謝の気持ちを持ちづらい。解体を手伝うと命の重みを体感するし、食べるときは感謝していただく。こうした気持ちが自分の生活に抜け落ちていたし、その社会や状態が怖いと感じた」。

「人と自然をつなぐ中間に存在したい」

気候変動の影響で狩猟自体にも変化があるという。「海氷が張らない期間が延びることで狩猟期間が変化しているし、ホッキョクグマの個体自体も20年前に比べると平均で40kg程度軽く小さくなっているという報告がある」。先住民の生活の変化も著しい。「グリーンランドはかつてアルコールの持ち込みが禁止されていたのに、ここ数年で簡単に買えるようになった。そもそもグリーンランドには発酵文化がないからアルコールもなかったし、そこに住む人々は、アルコールを分解する能力が弱い。だから、アルコール中毒や酒乱が増えていることが社会問題になっている。また、アルコールをはじめとした輸入品を購入するためや、外貨獲得のため狩猟という認識が変わり始めた猟師もいる」。

「資本主義代表の僕らが発展するな、というのも違う。僕らが辿ってきたことを辿っていて、生活や選択、需要やニーズがそこに表れている」。それでも写真を撮り続けるのは、「人と自然をつなぐ中間に存在したいから」だ。「関心を高めるきっかけになれば」と語った。

■プロフィール

PROFILE:遠藤励

(えんどう・つとむ)長野県出身、写真家。スノーボードカルチャーに精通。90年代から地元白馬のバックカントリーシーンの開拓に携わり、現在まで日本や世界各地の雪山・コミュニティを訪れ専門誌やメディアに作品を寄与。また、雪にまつわる作品表現に傾倒し、「snow meditation」や「水の記憶」などのシリーズを発表。近年は「雪の民族」を撮影するプロジェクトに注力し、北極圏に通いながら、変容する自然環境や先住民族の暮らしを撮影している。 作品集に「inner focus」(小学館)、「Vision quest」(自主制作)がある

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パタゴニアの気張らないコミュニティの作り方 北極先住民族を撮る写真家遠藤励と協働

「パタゴニア(PATAGONIA)」は環境危機と闘うためのコミュニティを広げるために、さまざまなイベントを開催している。京都店(11月3日)、福岡店(11月11日)、軽井沢店(11月24日)で行う「北極先住民族のいま」もその一つ。ただし、イベント自体は直接環境危機を訴えかけるものではない。

今回のイベントは写真家の遠藤励を招き、遠藤が撮影したグリーンランドのイヌイットの狩猟の様子を紹介したり、地元バンドのライブ演奏やビール販売を行ったりした。今回はこれまでのパタゴニアのイベントとは異なる方法を採り、間口を広げて来場者を募った。イベントを担当するパタゴニア日本支社の内野宗一郎カテゴリーマーケティング アシスタントマネージャーは「われわれが環境問題をテーマにしたイベントを考えるとどうしても真面目な着席形式の講演のような形になり、伝えたいメッセージを一方的に発信しがちだった。ご来場いただく方もすでに関心が高い方が多く、同じ顔触れになることもある。地球環境は待ったなしの状況で、スピード感を上げて環境・社会問題解決につなげていくには、すでにつながっている仲間だけでは社会に変化をもたらすことはできないと考えた」と話す。加えて、「これまでは伝えたいことをなるべくたくさん持ち帰っていただくためのどうしたらいいかと考えていたが、今回は10伝えたとしたら何か1つでも持ち帰ってもらえればいいと考えた」と内野。

店頭で掲示された遠藤の作品は、グリーンランドの今を写したもので、ナイロンジャケットとアザラシの毛のパンツをまとうイヌイットの少女や、一部がえぐられた氷床、ごみだらけのグリーンランドの海岸線などだ。美しいだけではなく、見る者に危機感を訴えかけてくる。「北極圏で暮らす人々に気候危機と資本主義のしわ寄せがきていることを伝えたいと考えた」。

京都店で行ったイベントには60人以上が参加し(通常は着席で行うので35人程度)、顧客だけではなく新規で来店する人がとても多かったという。「来場者が食い入るように遠藤さんの写真(スライドショー)を見つめながら、話に耳を傾ける姿が印象的だった。今回のイベントの形式は遠藤さんからの提案によるところがあったが、われわれにとっても大きな気づきになった」。

気候変動と資本主義の影響を強く受ける先住民の暮らし

もともと遠藤は雪をテーマに撮り続けてきた写真家で、中でも大きなテーマはスノーボードカルチャーだった。遠藤は「温暖化が深刻化し、エクストリームスポーツとしてのスノーボードだけではなく、自然と社会とのつながりを、雪や氷河を通じて表現していきたいと考えた。そうした活動の延長線上に北極と先住民文化があった」と話す。北極圏の先住民にフォーカスしたのは「自然のサイクルと直結した先住民の暮らしが最もサステナブルなのではないかと思った」から。リサーチの結果、最も先住民族の暮らしが残っていると言われている「地球上最後ともいえる大型哺乳類の狩猟生活を営むグリーンランドの先住民の狩猟の撮影に挑んだ」と遠藤。しかし、実際に訪れてみると予想以上に資本主義に侵食されている現実を知る。先住民族の文化の継承が難しくなっていることや、暮らし自体が変化していた。「人々が安定を求め始めたことや資本が入ることで狩りをする必要がなくなってきている。数年でなくなるか、あるいは観光としてのビジネスになっていくかどちらかではないか」と遠藤。記録を残すという意味もあった。

撮影を通じて自身の気づきも多かったという。「獲物を捕って解体して食べるーー一連の作業を目の当たりにして、複雑な気持ちになった。彼らはホッキョクグマなど絶滅危惧種も狩るし、『やめて』と思う自分がいたりして胸が苦しくなった。命をいただくことに責任を持つとはどういうことかを考えると、普段僕たちが口にする牛や豚の命の重さも同じではないか。僕自身、解体される動物や血を見たことがなかっただけで、彼らの狩猟を本当はどこか好奇な目で見ていたことにも気付いた。そして、日本での暮らしは、都合が悪いことが見えない仕組みになっていることに気付かされた。切り身になったものが提供され、食べるときも罪悪感や感謝の気持ちを持ちづらい。解体を手伝うと命の重みを体感するし、食べるときは感謝していただく。こうした気持ちが自分の生活に抜け落ちていたし、その社会や状態が怖いと感じた」。

「人と自然をつなぐ中間に存在したい」

気候変動の影響で狩猟自体にも変化があるという。「海氷が張らない期間が延びることで狩猟期間が変化しているし、ホッキョクグマの個体自体も20年前に比べると平均で40kg程度軽く小さくなっているという報告がある」。先住民の生活の変化も著しい。「グリーンランドはかつてアルコールの持ち込みが禁止されていたのに、ここ数年で簡単に買えるようになった。そもそもグリーンランドには発酵文化がないからアルコールもなかったし、そこに住む人々は、アルコールを分解する能力が弱い。だから、アルコール中毒や酒乱が増えていることが社会問題になっている。また、アルコールをはじめとした輸入品を購入するためや、外貨獲得のため狩猟という認識が変わり始めた猟師もいる」。

「資本主義代表の僕らが発展するな、というのも違う。僕らが辿ってきたことを辿っていて、生活や選択、需要やニーズがそこに表れている」。それでも写真を撮り続けるのは、「人と自然をつなぐ中間に存在したいから」だ。「関心を高めるきっかけになれば」と語った。

■プロフィール

PROFILE:遠藤励

(えんどう・つとむ)長野県出身、写真家。スノーボードカルチャーに精通。90年代から地元白馬のバックカントリーシーンの開拓に携わり、現在まで日本や世界各地の雪山・コミュニティを訪れ専門誌やメディアに作品を寄与。また、雪にまつわる作品表現に傾倒し、「snow meditation」や「水の記憶」などのシリーズを発表。近年は「雪の民族」を撮影するプロジェクトに注力し、北極圏に通いながら、変容する自然環境や先住民族の暮らしを撮影している。 作品集に「inner focus」(小学館)、「Vision quest」(自主制作)がある

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CO2が繊維に!? 「ガニー」が米新興企業ルビと提携 試作の糸発表

米サンフランシスコ発のスタートアップ、ルビ(RUBI)とコペンハーゲンのファッションブランド「ガニー(GANNI)」は6月27日、コペンハーゲンで開催されたグローバル・ファッション・サミットでCO2を回収して作られたセルロース繊維を発表した。今回発表されたのは、CO2から作られたリヨセル20%とセルロース80%の混紡糸。

ルビは回収したCO2を、酵素を活用した生化学的プロセス(セルフリー合成バイオ技術)を通じてセルロースに変換し、セルロースからリヨセル糸を作る技術を開発。現在、特許出願中だ。樹木が光合成で成長する様子に着想を得たという。同社はファッション産業向けの繊維製品開発に取り組むが、その技術を建材や梱包材、食品、医療、その他の先端素材など、製造業のあらゆる分野に応用することを目指す。現在の資金調達額はクランチベースによると1320万ドル(約18億2000万円)。セルフリー合成バイオ技術は、経済産業省 産業構造審議会 商務流通情報分科会 第11回バイオ小委員会で発表された資料によるとスケール化が課題とされている。

ルビとガニーは今年2月、炭素を原料とする糸から衣服を作ることを目的にパートナーシップを発表。ガニーは革新的な生地開発を支援する「ファブリック・オブ・ザ・フューチャー(Fabrics of the Future)」プログラムを発足しており、今回の取り組みはその一環。現在同プログラムで30種類の生地を開発しており、25年までにコレクションの10%に開発した素材を使用することを目標にしている。

ガニーのニコライ・レフストラップ(Nicolaj Reffstrup)創業者は「究極の目標は、真の意味で気候中立な製品を作ることだ。ルビの炭素隔離技術、すなわち大気中から炭素を取り出し、それを素材にすることによって、私たちはその目標に一歩近づいた。こうした生地の革新は、ファッションを脱炭素化するうえで重要な役割を果たすだろう。そのためには、ブランドはリスクを取ってイノベーションに投資する必要がある。ルビのような革新的なパートナーと協力することで、未来がどのようなものになるのか、楽観的に考えることができる」とコメントを発表した。

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電力エネルギー消費実質ゼロ、「いとまちホテルゼロ」が愛媛県西条市に誕生

愛媛県西条市に5月27日、「いとまちホテルゼロ(ITOMACHI HOTEL 0)」がオープンした。

同ホテルは、半導体関連の機器製造を中心に再生エネルギーや地方創生・まちづくり事業も運営するアドバンテックが事業主となり、ソラノホテル(東京都立川市)や白井屋ホテル(群馬県前橋市)を手がけるグッドタイムが企画運営を担う。実質的に電力エネルギーを消費しない「ゼロエネルギーホテル」として、国内ホテル初となる環境省のゼブ(ZEB、ネット・ゼロ・エネルギー・ゼロ、Net Zero Energy Building)認証を取得した。

館内ではエネルギー循環を学べる体験ツアーの提供や、ゼロエネルギーの仕組みを説明するインフォグラフィックスの掲示を行う予定。また内装には、木質由来の再生可能な非可食バイオマスを使用したタルケット(Tarkett)社の再生塩ビシートや、ジーンズの端切れを活用したステラポップ(STELAPOP)社の天板、再生ガラスを活用したベンチなどを使用した。インテリアとランドスケープデザインはダグアウト・アーキテクツ(Dugout Architects)、設計は隈研吾建築都市設計事務所がそれぞれ手がけた。

ホテル内のカフェでは、地元愛媛で仕入れた旬の野菜や果物を多く使用した食事を提供する。監修するのは、代々木上原のビストロ「メゾン サンカントサンク(MAISON CINQUANTECINQ)」などを運営するシェルシュ代表兼エグゼクティブシェフの丸山智博氏。厚生労働省が定める日本人の栄養摂取基準から、抗酸化作用等のある栄養素が+10%、カロリーは−10%になるよう基準を設けた。

アメニティや館内演出も、愛媛の特産物や伝統工芸品、クリエイターらを多く起用することで、地元の魅力を再発見する体験の創出を目指す。

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米化粧品小売大手「セフォラ」が化粧品容器回収プログラムを開始 アメリカとカナダの全600店舗で

 LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON、以下LVMH)傘下の化粧品小売店セフォラ(SEPHORA)はこのほど、空き容器回収プログラム「ビューティ・リパーパスド(Beauty (Re)Purposed)」を開始すると発表した。昨年7月にパッケージ容器の廃棄削減を目指すNPO団体パクトコレクティブ(PACT COLLECTIVE)と提携しパイロットプログラムをスタート。今回、アメリカとカナダの全600店に導入店舗を拡大し本格ローンチする。

 同プログラムは、消費者が自宅で使用済み容器の包装を外して洗い、中身が残っていないことを確認して店舗に返却する。容器は廃棄される代わりに、カーペットや再生ペレット、アスファルト、新たなパッケージ、エネルギー源などに生まれ変わる。米環境保護庁の推定では、米国のプラスチックのリサイクル率は9%にとどまる。米海洋大気庁によるとプラスチックは海洋環境に数百年残る可能性があり、ペットボトルは450年分解されずにとどまると言われている。

 セフォラのデスタ・レインズ(Desta Raines)=サステナビリティディレクターは、「多くの消費者が化粧品の容器の廃棄を複雑で手間だと感じている。廃棄・リサイクルが全ての人にとって身近なプロセスになるよう、価値観を共有し消費者と業界内外のサプライチェーン全体を啓蒙できるパートナーと組むことが重要だった」と語る。

 LVMH傘下の化粧品ブランド「ベネフィット・コスメティクス(BENEFIT COSMETICS、以下ベネフィット)」も、パクトコレクティブと提携する。消費者は空き容器を月に5個までパクトコレクティブに郵送でき、配送料は「ベネフィット」が負担する。郵送する化粧品のブランドは問わない。

 これらの取り組みはLVMHが推進する環境戦略“ライフ360(LIFE 360)”プログラムの一環で各ブランドが行なっている。“ライフ360”では、生物多様性の保護と気候変動に対する取り組み、循環経済の推進、透明性の保証の4つを柱に、2023年、26年、30年までのロードマップを掲げる。

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スノーボードの「バートン」が太陽光発電でリフトを動かす! 山形のスキー場でイベント開催

 スノーボードブランド「バートン(BURTON)」を手掛けるバートン ジャパンは、4月8、9日に山形・鶴岡の湯殿山スキー場で行われる、太陽光発電でロープトー(簡易リフト)を動かすイベント「フューチャーラボ 2023(FUTURE LAB.2023)」をサポートしている。スノーボードをはじめとするスノースポーツ愛好者にとって、気候変動による雪不足、また燃料費高騰によるリフト稼働難などでスキー場の経営が難しくなっていることは、切実な問題。現に今年も全国的に雪は少なく、4〜5月までの運営を見込んでいたスキー場にとっては痛手となっている。イベントによって、気候変動やスキー場が抱える課題と、その解決に向けた取り組みを発信していく。

 「フューチャーラボ」は、スノーボードカルチャー誌「ディギンマガジン(DIGGIN’ MAGAZINE)」が主催し、バートン ジャパンがサポートしている。昨年3月に初回が開催されたが、曇天によって太陽光発電でのロープトー稼働は叶わなかった。今年3月に新潟・南魚沼の八海山麓スキー場で2回目を予定していたが、雪不足で開催できなかった。

 3度目のチャレンジとなる今回は、湯殿山スキー場で行われるスノーボード滑走イベント「ドリームセッション(DRRREAM SESSION)」の中で「フューチャーラボ」を開催。「ドリームセッション」の参加費は1日4000円。ただし小中学生は無料、それ以外の18歳未満は3000円。ロープトーは一般的なチェア型のリフトとは違い、ケーブルに専用の搬器を引っ掛けて、雪面を自身の板で滑りながら斜面を登り上げる簡易リフトのこと。通常のリフトよりも稼働に必要なエネルギーが小さい。

 バートンは、1977年にジェイク・バートン・カーペンター(Jake Burton Carpenter)が米国バーモント州のガレージで作り始めた自作のスノーボードが原点となっているスノーボードの大手メーカー。ショーン・ホワイト(Shaun White)、平野歩夢、テリエ・ハーコンセン(Terje Hakonsen)、クロエ・キム(Chloe Kim)ら多数のスーパースター選手と契約している。2019年に、スノーボードメーカーとして初めてBコープ認証を取得。自然をフィールドにする企業として、気候変動や持続可能な成長、サプライチェーンの透明性といった課題への意識も高く、「2025年までのクライメート・ポジティブ(二酸化炭素排出量よりも吸収量の方が多い状態のこと)達成」を掲げている。

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平野歩夢選手がホームゲレンデで子どもたちとハーフパイプセッション ユニクロの次世代育成プロジェクト

 ユニクロは3月5日、スポーツを通じた次世代育成活動の一環として、グローバルブランドアンバサダーを務めるプロスノーボーダー、スケートボーダーの平野歩夢選手が子どもたちとスノーボードセッションをするイベント「UNIQLO LifeWear Day 2023 with Ayumu Hirano」を開いた。会場は、平野選手が幼少期から通い詰めて練習していたという横根スキー場(山形・小国町)。小学4年生から中学1年生までの計17人が参加した。

 平野選手は、ユニクロと共同開発した“ハイブリッドダウンスノーボードパーカー”とそろいのパンツで登場。子どもたちは平野選手の滑りを直近で見学し、平野選手とハーフパイプを一緒に滑りながらアドバイスを受けた。その後、屋内でのトークイベントでは平野選手が夢を持つことやチャレンジすること、日々の積み重ねの重要さなどを語った。平野選手は、「自分のルーツである横根スキー場で、子どもたちとスノーボードを通して直接触れ合うことができとても貴重な経験になった。小さなころは可能性と夢に熱心になれる時期。僕が練習で重視していることや日々の過ごし方で心がけていることなど(を伝えたので)、学びが少しでもあったら嬉しい」とコメントしている。

 雪山とも密接な関係がある、気候変動の問題について学ぶ時間も設けた。ユニクロのサステナビリティ担当者が講師となり、子どもたちに日々実践できることを伝えた。

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LVMHがCOP27に参加 環境再生型農業や生物多様性の取り組みについて言及

 LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は、エジプト・シャルムエルシェイクで開催中の国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)に出席し、生物多様性と土壌の回復にコミットすることを発表した。

 同社は2020年にイギリス国王のチャールズ3世(King Charles III)が設立した「サーキュラー・バイオエコノミー・アライアンス(Circular Bioeconomy Alliance)」に参画し、アフリカのチャド共和国で行われる環境再生型農業にまつわる研究活動を支援する。最新の研究では、綿花の栽培によって1960年以降90%の面積が失われたチャド湖の保全を目的に、リジェネラティブ・アグロフォレストリー(再生型の森林農業)に焦点が置かれている。地域コミュニティーと協力し、苗床の整備や植樹を行うほか、農家に機材や灌漑技術を提供する。

 また同社は、ケリング(KERING)やロレアル(L'OREAL)、シムライズ(SYMRISE)、ユニリーバ(UNILEVER)などが加盟する「ワン・プラネット・ビシネス・フォー・バイオダイバーシティー(One Planet Business for Biodiversity)」と、土壌の健康や影響分析を行うジェネシス(GENESIS)社とラウンドテーブルを共催し、自社のグローバル戦略やサプライチェーン上での技術の実装方法などを紹介した。

 LVMHのエレーヌ・ヴァラド(Helene Valade)環境開発ディレクターは、「これらの新たな取り組みは、生物多様性や水資源の保全につながるはずだ。主な目的は、偏った単一品種の作物栽培から、多毛作へと移行することだ。これにより、土壌を回復させ炭素の貯蓄量を増大させることができる」と話し、生物多様性と環境再生型農業は、原材料の調達強化につながると指摘した。

 COP27の主催国であるエジプトは、「実行のCOP」をビジョンに掲げ、具体的な行動を求め、過去の公約を実行するための解決策を見つけるよう参加者に呼びかけている。

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「ディオール」が再生型花栽培を中心とする新サステナビリティ計画「BEAUTY AS A LEGACY 2030」を策定

 「ディオール(DIOR)」はこのほど、持続可能な事業活動の促進に向けたロードマップ「BEAUTY AS A LEGACY 2030」計画を発表した。再生型花栽培に投資し、バリューチェーン全体を通じて生物多様性保護と地域コミュニティーへの悪影響の軽減に取り組む。

 同計画は、再生型花栽培、気候変動への取り組み、エコデザイン、責任ある原料調達と透明性、文化的責任の5つの活動で構成する。「ディオール」では、生態系の保全における花々の役割を重視。ローラン・クレットマン(Laurent Kleitman)社長兼最高経営責任者は、「花々は昆虫や鳥類、哺乳類よりはるかに早く絶滅に直面すると報告されている」と指摘し、花をサステナビリティ戦略の先頭に据える。再生農業に特化した世界最大の組織ヘクター(HECTAR)とパートナーシップを組み、2023年までに教育プログラムを開始する。新規事業開発の支援団体や研究プログラムを取り上げ、科学的な研究機関と連携して、生態系における花農業の影響の調査や他農業との相乗効果の研究を行う。

 気候変動への取り組みでは、バリューチェーン全体の二酸化炭素排出量を削減すべく科学的根拠な基づく目標を設定。30年までに19年比で46%削減を目指す。そのほかエコデザインや透明性の活動では、28年までに化石原料由来のプラスチックの使用停止、公式サイトにおける成分や配合目的の掲載、ブランドコミュニケーションを通じた多様性の支持、女性が活躍できる組織政策の強化、生産者の専門知識の認知と評価向上に注力する。

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「バーバリー」がSBT認証取得 2040年までにネットゼロを目指す

 バーバリー(BURBERRY)はこのほど、温室効果ガスの削減目標において科学的根拠に基づくことを証明する国際的な環境イニシアチブSBT(Science-Based Targets)の認定を取得した。気候変動による世界の平均気温上昇を1.5度未満に抑えるというパリ協定に沿って、2040年までに温室効果ガス排出量の実質ゼロ(ネットゼロ)の実現を目指す。

 スコープ1(自社による直接排出)と2(自社が購入したエネルギーによる間接排出)では40年までに95%以上の削減することを目指すと同時に、スコープ3(自社がかかわるサプライチェーン全体での間接排出)では90%の削減を目指す。

 バーバリーのキャロライン・ローリー(Caroline Laurie)=コーポレート・レスポンシビリティ・バイスプレジデントは、「SBTiは、最新の気候科学に沿った野心的な目標を企業が設定できるようにする重要な役割を果たしている。サステナビリティの取り組みを加速するため、サプライヤーやパートナー企業と引き続き協力していく」とコメントした。

 現在、同社で使用する電力は再生可能エネルギー由来のものに切り替えており、全世界の事業でカーボンニュートラルを達成している。

 SBTiのルイス・アマラル(Luiz Amaral)最高経営責任者は、「科学的知見に基づけば、世界全体でネットゼロを達成し気候変動による最悪の状況を防ぐためには早急かつ大幅な排出量の削減が必要だ」と述べ、他の企業もこれに続くことを願っているという。

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ミランダ・カーのスキンケアブランド「コーラ オーガニックス」がクライメイト・ニュートラルに

 ミランダ・カー(Miranda Kerr)が手掛けるオーガニックスキンケアブランド「コーラ オーガニックス(KORA ORGANICS)がクライメイト・ニュートラル(気候中立)認証を得た。非営利団体クライメイト・ニュートラル(CLIMATE NEUTRAL)と協業し、2021年分の温室効果ガス排出量をオフセット(相殺)できたという。気候中立とは、人や企業、団体などが、活動により排出する温室効果ガスをオフセットする取り組み。カーボンニュートラルが二酸化炭素にフォーカスするのに対し、クライメイト・ニュートラルはメタンガスなど温室効果ガス全てをオフセットする。

 2022フェアチャイルド メディア サステナビリティ フォーラム(2022 Fairchild Media Sustainability Forum)でミランダは「原料から製造まで、あらゆるステップでサステナビリティを意識している。今後は二酸化炭素排出量を減らすることにさらに力を入れる」と話した。クライメイト・ニュートラルを実現できたことについて「大変だったけれど誇りに思う。カーボンクレジットを購入したり、気候変動に対して取り組むさまざまなプロジェクトに貢献した。常に自社のカーボンフットプリントを削減し、よりサステナブルなビジネスの構築を目指している」と振り返った。

 今後は今後一年間で空輸を20%減らし、30年までにオフィスで使用する電気やガスの量を50%削減することを目標に掲げる。ペース グループ(PACE GROUP)と協業して植樹活動に取り組むほか、リサイクル・リサイクル可能・レフィル可能・生分解性の原料をパッケージに可能な限り使うという。

 ミランダはブランドを立ち上げ当時から第三者機関やエキスパートにビジネスを監査してもらうことにこだわっている。「最初から製品は独立した機関である国連経済社会理事会(ECOSOC)からオーガニック認証を受けている。彼らはわれわれの原料が真にオーガニックで栽培方法も倫理的でサステナブルかを厳しくチェックしており、原料調達から製造まで、彼らの認証なしに活動できない。パッケージや製品の載せる文字まで、全てECOSOCのチェックを経ているの。でもこれによって、消費者が本当に信頼してわれわれの製品を購入できるようになる」。

 オーストラリア出身のミランダは13歳の時に母親が脾臓がんと診断され、それ以来健康やウエルネス、環境とのつながりに対する考えを見直させられたという。「家族全員で、健康的な選択肢を常に模索していた。私たちが知らないうちに健康被害を及ぼしているものが家の中にたくさんあることに気づき、それをきっかに食品から掃除用品、ヘアケア、スキンケアまで全てをオーガニックのものに変えた」。このことを友人に話したところ、オーガニックのエッセンシャルオイルを作っているメーカーを紹介してくれて、そこから「コーラ オーガニックス」が始まったのだという。

 最近はレフィル可能なパッケージにこだわるミランダ。セフォラ(SEPHORA)で唯一のオーガニックブランドとして、オーガニックというブランドDNAから離れることなく、今後も新製品を作るという。「数ある研究によると、オーガニック原料はそうでないものに比べ抗酸化物質を60%も高く含んでいるそう。そのためわれわれの製品はパラベンや硫酸塩、GMO、人工着色料・香料を含まないだけでなく、肌が喜ぶ栄養素がたくさん含まれているの」。

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「メイトバイク」が窪塚洋介を起用した新キャンペーン“先、行ってるね。”を発表 E-バイクを通じてサステナブルな社会変革を目指す

 世界一の自転車都市として知られるデンマーク・コペンハーゲン発のE-バイクブランド「メイトバイク(MATE. BIKE)」はこのたび、日本上陸1周年を記念した新コーポレートスローガン“この星の、走り方までデザインする。”を発表した。またこれと同時に、日本上陸時からブランドアンバサダーを務める俳優・窪塚洋介を起用した新キャンペーン“先、行ってるね。”も4月7日から展開している。

 そもそもE-バイクとは、スポーツバイクに電動アシストユニットを搭載し、免許不要で公道を走ることが可能な電気自転車を指す。スポーツバイクの走行性能と電動自転車のアシスト機能を持ち合わせたハイブリッドバイクのため、長距離や坂道でも軽快に移動することが可能で、なおかつ二酸化炭素を排出しないサステナブルな移動手段として世界的に注目を集めている。その中で「メイトバイク」は、交通渋滞や気候変動などの環境問題を危惧したクリスチャン・アデル・ミシェル(Christian Adel Michael)とジュリー・クロンストラム・カートン(Julie Kronstrom Carton)の姉弟が、2016年に自転車王国デンマークで創業。クラウドファンディングから始まったスタートアップ企業で、E-バイクが機能的にもデザイン的にも優れ、より社会的地位の高い交通手段として根付いてほしいという願いから生み出した初代“メイト(MATE)”は、680万ドル(約8億4300万円)の資金調達に成功。さらに2代目“メイトエックス(MATE X)”では、ヨーロッパ史上最高調達額となる1700万ドル(約21億800万円)を達成し、世界80カ国以上の街で乗られるなど、興隆著しいE-バイク文化を早くからけん引してきた。また、ジャンルの壁を越えた協業にも積極的で、これまでに「モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)」や「パーム エンジェルス(PALM ANGELS)」とのコラボを実現している。

 現在「メイトバイク」が展開しているのは、“メイトエックス”と“メイトシティ”の2モデルだ。“メイトエックス”は、街乗りだけでなくオフロード走行も視野に入れ、幅4インチ(約10cm)のファットタイヤが目を引くストリートライクなシルエットが特徴。新キャンペーン“先、行ってるね。”で窪塚が乗っているのは、本モデルだ。一方“メイトシティ”は、タイヤサイズを1.5インチ(約4cm)にすることで小回り性能をアップし、重量も30%近い軽量化に成功した街乗り特化モデル。両モデルとも、3ステップで簡単に折り畳むことができるほか、スマートフォンなどが充電可能なUSBポート付きカラーディスプレイ、優れた安定性を提供するフルサスペンション、ブレーキ性能の高い油圧式ディスクブレーキ(機械式との選択)など、購買意欲を駆り立てるギミックを数多く搭載している。だが最大の魅力は、電気エネルギーで走行することから二酸化炭素を排出しない移動手段という点だ。「メイトバイク」は、E-バイクが人々の暮らしに根付くことで自然なかたちでサステナブルな社会変革に貢献できることを目指しており、今回の新コーポレートスローガン“この星の、走り方までデザインする。”にはこの思いが強く込められている。

 新コーポレートスローガンと窪塚を起用した新キャンペーンのローンチ前夜、関係者らを招いたパーティーが都内某所で開催された。会場では、西麻布のイノベーティブレストラン「81(エイティワン)」でシェフを務める永島健志によるフードが振る舞われ、ミュージックプロデューサーの宇山ヒロトによるDJが行われた中、窪塚本人が登場。巧みなMCと共に来場者に向けキャンペーンムービーを一足早く披露し、特別な一夜に自ら華を添えた。なお「メイトバイク」は現在、ブランドの公式ツイッターをフォローし、対象ツイートに「#MATEと先行ってるね 」とコメントをつけて引用リツイートした方の中から、抽選で2人に“メイトエックス”もしくは“メイトシティ”をプレゼントするSNSキャンペーンを行っている。期間は5月8日までで、当選者は恵比寿にある旗艦店で走り方のレクチャーなどを受けることができる。

PHOTOS : KAZUSHI TOYOTA
TEXT : RIKU OGAWA
問い合わせ先
メイトバイク トウキョウ
03-6277-3987

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気候危機の対応急務 IPCCの最新報告書がサステナブルファッションに意味すること

 国連の気候変動に関する政府間パネル(INTERGOVERNMENTAL PANEL ON CLIMATE CHANGE、以下IPCC)はこのほど、気候危機に関する最新の報告書を発表した。ジム・スキー(Jim Skea)=IPCC第3作業部会共同議長は、「社会全体での迅速かつ大幅な温室効果ガス排出量の削減なしには、地球の平均気温の上昇を1.5度以内に抑えることは不可能である」と危機感を強めた。

 報告書では、各国が定めた2030年までの温室効果ガス削減目標では21世紀中に温暖化が1.5度を超える可能性が高いとし、再生可能エネルギーの普及や化石燃料依存からの脱却など対策の強化を呼びかけた。

 報告書によると、10年以来再生可能エネルギーの価格は下がっているが、化石燃料に依存している現状は変わらず、移行コストを高めている。ウォーリック・ビジネス・スクールでエネルギー分野を専門とするマイケル・ブラッドショー(Michael Bradshaw)教授は、「ロシアのウクライナ侵攻以前から、世界は新型コロナウイルスによる経済的打撃から回復するにつれ、エネルギー価格の危機に直面していた。その結果、原油や天然ガスの価格が高騰し、イギリスやヨーロッパ全域の多くの消費者の生活に支障が出ている。化石燃料からできるだけ早く脱却し脱炭素化を加速して、より持続可能で安価なエネルギーシステムを構築しなければならない。それ自体も、将来的なエネルギー安全保障の課題となるだろう」とコメントした。

 引き続き、世界全体の温室効果ガス排出量は地域ごとに大きな差があり、富裕層ほど温暖化の加速に加担している。経済的に余裕のある上位10%の世帯が世界全体の温室効果ガス排出量の36〜45%を占め、下位50%の貧困世帯の排出量は約15%にすぎないことがわかった。

 また、藻類や菌糸体の発酵技術なども進んでおり、こうした植物由来のテキスタイルへの置き換えは削減効果があると同報告書は見込む。ファッション業界では次世代素材分野への関心が高まっており、マテリアル・イノベーション・イニシアチブ(Material Innovation Initiative)によると、投資額は187の投資家と95の企業で9億8000万ドル(約1225億円)に達した。これは、20年の4億2600万ドル(約532億円)の2倍の数字。同団体は、世界の次世代素材の卸売市場は26年までにおよそ22億ドル(約2751億円)になると試算する。

 ケリング(KERING)やP&Gがすでに実践しているような炭素排出を抑え、植林などの森林保護の活動も不可欠だ。しかし、年間5〜6ギガトンのCO2を吸収するためには、2050年までに4000億ドル(約50兆円)のコストがかかると言われている(IPCCの8月の報告書では、気温上昇を1.5℃に抑えることを前提に、世界が排出できる量は年間500ギガトンとしている)。

 各国は、気候変動対策のため20年までに年間1000億ドル(約12兆円)を動員するというパリ協定の目標に達しておらず、貧困国は毎年必要とされる投資資金を調達できていない状況がこの10年続いている。ESGに注目が集まる一方で、世界は気候変動の緩和のために現在の3倍から6倍の投資が必要となる。資金の拡大やイノベーション、団体の新設など、さまざまな努力が行われているが、さらに取り組みを加速させる必要がある。

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気候危機の対応急務 IPCCの最新報告書がサステナブルファッションに意味すること

 国連の気候変動に関する政府間パネル(INTERGOVERNMENTAL PANEL ON CLIMATE CHANGE、以下IPCC)はこのほど、気候危機に関する最新の報告書を発表した。ジム・スキー(Jim Skea)=IPCC第3作業部会共同議長は、「社会全体での迅速かつ大幅な温室効果ガス排出量の削減なしには、地球の平均気温の上昇を1.5度以内に抑えることは不可能である」と危機感を強めた。

 報告書では、各国が定めた2030年までの温室効果ガス削減目標では21世紀中に温暖化が1.5度を超える可能性が高いとし、再生可能エネルギーの普及や化石燃料依存からの脱却など対策の強化を呼びかけた。

 報告書によると、10年以来再生可能エネルギーの価格は下がっているが、化石燃料に依存している現状は変わらず、移行コストを高めている。ウォーリック・ビジネス・スクールでエネルギー分野を専門とするマイケル・ブラッドショー(Michael Bradshaw)教授は、「ロシアのウクライナ侵攻以前から、世界は新型コロナウイルスによる経済的打撃から回復するにつれ、エネルギー価格の危機に直面していた。その結果、原油や天然ガスの価格が高騰し、イギリスやヨーロッパ全域の多くの消費者の生活に支障が出ている。化石燃料からできるだけ早く脱却し脱炭素化を加速して、より持続可能で安価なエネルギーシステムを構築しなければならない。それ自体も、将来的なエネルギー安全保障の課題となるだろう」とコメントした。

 引き続き、世界全体の温室効果ガス排出量は地域ごとに大きな差があり、富裕層ほど温暖化の加速に加担している。経済的に余裕のある上位10%の世帯が世界全体の温室効果ガス排出量の36〜45%を占め、下位50%の貧困世帯の排出量は約15%にすぎないことがわかった。

 また、藻類や菌糸体の発酵技術なども進んでおり、こうした植物由来のテキスタイルへの置き換えは削減効果があると同報告書は見込む。ファッション業界では次世代素材分野への関心が高まっており、マテリアル・イノベーション・イニシアチブ(Material Innovation Initiative)によると、投資額は187の投資家と95の企業で9億8000万ドル(約1225億円)に達した。これは、20年の4億2600万ドル(約532億円)の2倍の数字。同団体は、世界の次世代素材の卸売市場は26年までにおよそ22億ドル(約2751億円)になると試算する。

 ケリング(KERING)やP&Gがすでに実践しているような炭素排出を抑え、植林などの森林保護の活動も不可欠だ。しかし、年間5〜6ギガトンのCO2を吸収するためには、2050年までに4000億ドル(約50兆円)のコストがかかると言われている(IPCCの8月の報告書では、気温上昇を1.5℃に抑えることを前提に、世界が排出できる量は年間500ギガトンとしている)。

 各国は、気候変動対策のため20年までに年間1000億ドル(約12兆円)を動員するというパリ協定の目標に達しておらず、貧困国は毎年必要とされる投資資金を調達できていない状況がこの10年続いている。ESGに注目が集まる一方で、世界は気候変動の緩和のために現在の3倍から6倍の投資が必要となる。資金の拡大やイノベーション、団体の新設など、さまざまな努力が行われているが、さらに取り組みを加速させる必要がある。

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パタゴニアが日本酒とワインを発売 環境再生型農法と伝統的な醸造方法で

 パタゴニアの食品事業であるパタゴニア プロビジョンズは12月9日、自然酒「五人娘 - 寺田本家」とオーストリア産の自然派ワイン「エスタライヒ - マインクラング」を発売する。同社が日本酒を販売するのはこれが初めて。日本酒は直営店と自社ECサイト、ワインは自社ECサイトで販売する。

 「五人娘 - 寺田本家」は、千葉県神崎町で1673年に創業した寺田本家が、全ての工程で蔵付き菌を使って醸造したもの。用いた米は、地元産の酒米「美山錦」に加え、兵庫県豊岡市「坪口農事未来研究所」がコウノトリを育む農法で育てたコシヒカリを掛米に使った。無ろ過でアルコール度数は15%で価格は1650円(720ml)。

 寺田本家は、地元の米と湧き水を使って銘酒を醸造しており、20世紀半ばから日本酒業界を席巻した近代的な工業型発酵技術を採用したものの、30年以上前に伝統的な醸造方法に立ち返ったという。また用いる米は農薬や化学肥料を使用せずに育てられた地元の米で神崎神社の近くで湧き出る水のみを使って米を洗い、浸水させるという。江戸時代から続く発酵工程を採用し、炭で発酵の場を整えた蔵内に住む蔵付き麹菌を採取して、自家培養した麹菌を使用している。また、今回用いたコシヒカリを生産する「坪口農事未来研究所」は、パタゴニアがソーラーシェアリングを行う農家で、環境再生型農法に取り組む。

 「エスタライヒ - マインクラング」は世界第2位の広大なバイオ・ダイナミック農場で栽培され手摘みしたブドウを、添加酵母を一切用いずに天然酵母のみで発酵熟成している。デメター認証(バイオ・ダイナミック農法を用いて生産された製品であることを証明)取得。

 「エスタライヒ – タイム ブラン」はピノ・ブランとタイムを用いており、柑橘系の華やかな味に、タイムのようなハーブの風味が加わった爽やかな味わい。手軽な野菜料理やスクランブルエッグ、穀物を使ったサラダに最適だという。「エスタライヒ – ロゼ」はツヴァイゲルトを用いており、ダークフルーツやフローラルな紅茶の風味を持つ、爽やかでスパイシーな味わい。塩漬け肉や缶詰の魚、またはゆったりとしたランチに最適だという。いずれも価格は2970円(750ml)でアルコール度数は12%。瓶詰は清澄作業やろ過作業を一切行わずに瓶詰前のみ、酸化防止剤の亜硫酸塩をデメター認証の基準内でごく少量を添加している。生産者は、オーストリア・パムハーゲンのマインクラング社(Meinklang)。

 マインクラング社の創業者であるアナリーサとワーナー・ミヒリッツは3人の息子とともにこの地方の生物多様性の回復に取り組む。19~20世紀にかけて、土壌を肥沃にしていた浅い湖や沼地は工業化のために排水されてしたというが、ミヒリッツ家の再生型農法により、やっと生産性を取り戻しつつあるという。また、ミヒリッツ家は、無濾過のワインを瓶詰めしている。

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バーバリーが生物多様性戦略を発表 原材料調達先の農場支援など

 バーバリー(BURBERRY)は11月6日、環境保護活動の一環として生物多様性戦略を発表した。同社は今年6月、CO2の排出量よりも削減量の方が多いクライメート・ポジティブを2040年までに達成すると宣言しており、今回の発表はそれに続くもの。生物多様性はCOP26(コップ26)の主要な話題となっており、期間中に具体的なアクションプランを示すことで国際社会にアピールした。

 戦略のポイントは次の3点。①同社のバリューチェーン内外の自然環境の保護、回復②原材料を調達している農場コミュニティへの支援拡充③放牧や農業における再生可能な土地管理システムの適用。

 戦略を立てるにあたっては、英国のコンサルタント会社バイオダイバーシティ・コンサルタンシ―と共同でファッションビジネスにおける生物多様性の基礎評価を実施。その結果、生態系への影響が大きい要因をレザー、カシミア、ウールと特定し、同社のカーボンフットプリントにおいてもこれらが高い割合を占めていることを明らかにしたという。両社は共同で「自然に基づく解決策の原則とガイドライン」を策定。2020年に設立したバーバリー再生基金を通じて支援するプロジェクトに適用し、自然生態系の保護、回復、再生を目指す。また、非営利団体セイボリー研究所のプログラムを通じて、レザーのサプライチェーンにおける放牧地の再生と、そこに住む人々の生活基準の向上にも取り組む。

 パム・バティ=バーバリー コーポレート・リスポンシビリティ・バイスプレジデントは、二酸化炭素の排出量削減と同時に生物多様性戦略に取り組むことの重要性について次のように話している。「ネット・ゼロ・ターゲットは、測定可能で科学的根拠に基づいているため、今では多くの人が理解しているが、自然を取り戻すことにも同じ論理が当てはまる。その方法論はまだ確立されていないが、私たちはその議論に参加したいと考えた。私たちのプロセスや目標は、時間をかけて進化させていく必要があるが、確固たる基準ができるまで待つことはできない」。

 また自社のサプライチェーン以外の再生プロジェクトにも資金を投じており今年、LEAF連合に加盟した。同連合は、2030年までに熱帯林伐採を削減、終息させる取り組みを加速させるために設立された官民連合体でラグジュアリーブランドとしては同社が最初の加盟となる。「気候変動にポジティブであるためには、自社の取り組みを超えて活動することが重要だ」とバティ・バイスプレジデント。「再生基金の一部を保護と修復が切実に必要な地域の支援に使うことは、バーバリーが事業を行っているかどうかにかかわらず、戦略の重要な柱である」と説明する。さらに加盟するファッションパクトの一環としてはNGOと協力しモンゴルではヤギが草を食む草原を回復させるプロジェクトを、オーストラリアではカーボン・インセットや森林再生の取り組みを支援している。

 「気候変動は、将来の環境リスクであるだけでなく、現在世界中の何百万人もの人々に影響を与えている社会経済的な危機でもあり。自然を保護し、回復させ、再生させることは、次の世代のために地球を守るための鍵であり、私たちは野心的な意図を持ち、行動を重視したアプローチをしなければならない」とバーバリー会長であるジェリー・マーフィー(Gerry Murphy)博士は話している。

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英ウィリアム王子創設の「アースショットプライズ」授賞式、エマ・ワトソンがアップサイクルしたウエディングドレスで登場

 英国のウィリアム王子(Prince William, Duke of Cambridge)と動植物学者で作家のデイビッド・アッテンボロー(David Attenborough)が設立した、環境問題の解決に取り組む個人や団体を表彰する「アースショットプライズ(THE EARTH SHOT PRIZE)」の授賞式が、10月17日にロンドンのアレクサンドラ・パレス(Alexandra Palace)で行われた。

 2019年12月に創設が発表されたこの賞は、「自然を保護し回復する(Protect and Restore Nature)」「大切な大気を浄化する(Clean Our Air)」「海をよみがえらせる(Revive Our Oceans)」「ゴミの出ない世界を作る(Build a Waste-Free World)」「気候変動を修復する(Fix Our Climate)」という5つのカテゴリーから構成されており、それぞれの受賞者に100万ポンド(約1億5600万円)の賞金が贈られた。

 第1回目である今回の授賞式には、ウィリアム王子とケンブリッジ公爵夫人ケイト・ミドルトン(Duchess of Cambridge, Kate Middleton)に加えて、エマ・ワトソン(Emma Watson)などのセレブリティーも参加した。俳優として活躍するかたわら、女性の地位向上や気候変動などの社会問題に取り組む活動家としても知られるエマは、新進ブランド「ハリス リード(HARRIS REED)」による中古のウエディングドレスをアップサイクルしたドレスと黒のフレアパンツを着用。プレゼンターとして登壇し、「過去には不可能だと思われていたことも、よりよい世界にしたいと考えた人々の努力によって実現されてきました。同様に、気候変動も私たちの努力によって改善できると確信しています」とスピーチした。
 
 また、エド・シーラン(Ed Sheeran)、ショーン・メンデス(Shawn Mendes)、コールドプレイ(Coldplay)などのアーティストもパフォーマンスを披露した。コールドプレイの演奏には、60人のサイクリストによって作られたエネルギーが使用されたという。

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「気候変動」「ジェンダー」「選挙」などを議論 5日間オンラインで開催

 衆議院選挙に際し、社会問題について議論するイベント「WILL FESTIVAL」が10月25日から29日の5日間、オンラインで開催される。サイボウズの青野慶久社長、メルカリの小泉文明会長ら第一線で活躍する経営者やビジネスパーソンが登壇し、日本の未来を話し合う。

 主催は、社会提言を行うプロデュース集団・VISIONING COMPANY NEWPEACE(東京、高木新平社長)。5日間で「気候変動・環境問題」「教育」「働き方」「新しい問い」「ジェンダー」「多様性」「選挙」の7つのテーマについて、計24人で議論する。開始時間はテーマによって異なるが、夕方から夜にかけてそれぞれ1時間ずつとなる。無料で参加できる。

 ファッションやビーティ業界の関係者も登壇する。初日の25日(月)17時30分からの「気候変動・環境問題」にはパタゴニア日本支社の中西悦子氏、オールバーズの蓑輪光浩氏ら、27日(水)17時30分からの「ジェンダー」にはポーラの大城心氏、SHEの福田恵里氏らが登場する。

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ケリングと「カルティエ」がタッグ ウォッチ&ジュエリー業界の新たなサステナ指標を設立

 コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)傘下の「カルティエ(CARTIER)」と、大手ラグジュアリーコングロマリットのケリング(KERING)は6日、サステナビリティの共同イニシアチブを設立した。「責任ある宝飾品業のための協議会(以下、RJC)」と協力し、「ウォッチ&ジュエリー イニシアティブ 2030」を立ち上げた。

 同イニシアチブは、サステナブルな未来のために手を取り合い、より良い行動を開始することを目的とする。「気候レジリエンスの構築」、「資源の保護」、「インクルージョンの促進」という3つの分野を設けてアプローチ。RJCのほか「科学的根拠に基づく目標(Science Based Targets)」などを基にしており、業界全体を巻き込んだ変化を促す。国内外で展開するブランドからディストリビューター、サプライヤーなど、ウォッチ&ジュエリーに関わる全業態を対象に、賛同する企業らを募る。署名した企業やメゾンは、科学的根拠に基づく炭素排出量の削減目標の設定や、定期的に3つの分野での達成状況などを報告する。

 「気候変動レジリエンスの構築」の分野では、世界的な平均気温上昇を1.5度に抑える努力を追求する「1.5度目標」をもとに、二酸化炭素排出量の削減や、30年までに「ネットゼロ」の実現を掲げる。ネットゼロは温室効果ガス等の排出量から、吸収量と除去量を差し引いた合計を実質ゼロにすることを目指すこと。「資源の保護」は、自然や生態系への影響を視野に入れてビジネスを営む目標。署名企業は原材料の調達から生物多様性や水源に負担のかからない行動計画を策定することが求められる。最低限のコミットメントとして同イニシアチブが掲げるのが、「インクルージョンの促進」。バリューチェーン全体で包括的であることを念頭に、人権や労働者の権利、採掘慣行などを監査する倫理規範(Code of Practices、COP)認証の取得を2年以内と期限付きで設けた。

 シリル・ヴィニュロン(Cyrille Vigneron)「カルティエ」プレジデント兼最高経営責任者(CEO)は、「ケリングとともにより持続可能な業界を目指した取り組みを開始すること、そして同業他社と手を取り合っていけることを期待している。全てのメゾンとサプライヤー、ビジネスパートナーが、地球と人々にポジティブな影響をもたらすプロジェクトに協力して取り組むビジョンをこれまで以上に共有したい」と述べた。

 ケリングのフランソワ・アンリ・ピノー(Francois Henri Pinault)会長兼CEOの右腕を長年務めるジャン・フランソワ・パル(Jean-Francois Palus)=マネジング・ディレクターも、「ケリングでは、ラグジュアリーは環境や社会の基盤を作る存在であると考えている。地球を守るために必要な変化を起こすことが、業界をけん引する一企業としての責任だと信じている。ウオッチ&ジュエリーの分野でも、テーマを設けて持続可能なゴールを設定し、行動を起こすことが変化を起こす確かな方法であるはずだ」と語った。

 リシュモンは2017年に、ケリングのアイウエアの株式30%を購入することで、パートナー関係を築いた。ケリングとリシュモンは以前にもカラージェムストーンのトレーサビリティ(追跡可能性)の向上に努めるイニシアチブに参加している。19年にはケリングが「ファッション協定」を設立。自ら旗振り役となり、企業の枠を超えて気候変動、生物多様性、海洋保護の3分野で実践的目標を達成する同協定を主導する。21年現在、傘下ブランドの「グッチ(GUCCI)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」はもちろん、シャネル(CHANEL)、ナイキ(NIKE)、H&Mヘネス・アンド・マウリッツグループなど主要企業70社が署名する。

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ナイキが考える持続可能性をサステナビリティ責任者に聞く 複雑なサプライチェーンの対応策 【後編】

 ナイキ(NIKE)は、1990年代に企業活動におけるサステナビリティに取り組み始め、2000年代に入ると情報公開を始め、05年にはサプライチェーンを公開した。これには、90年代に同社が製造を委託する工場での児童労働が明らかになり、不買運動につながったという経緯がある。サプライチェーンを把握しておくことは企業の責任であると同時にリスクを回避することができるともいえる。複雑なサプライチェーンを把握するのは容易ではないが、ナイキはどのように対応してきたのか。ノエル・キンダー(Noel Kinder)チーフ・サステナビリティ・オフィサーに聞く。

WWD:アパレルやシューズのサプライチェーンの複雑さへの対応について教えてください。ナイキは透明性を確立していますが、どのように確立したのでしょうか。

ノエル・キンダー=チーフ・サステナビリティ・オフィサー(以下、キンダー):グローバル規模で非常に複雑なバリューチェーンの中で、私たちはシステムの変革に注力しています。そして、業界の中でも大手の企業として、より良いことをし、より良い規模で、そしてより良くなるために、自らの役割を果たすことを決意しています。透明性と説明責任から始まり、メーカーやサプライヤーのコンプライアンスを達成するために、一連の厳しい基準を策定しています。

 また、科学的根拠に基づく大胆な目標を設定し、25年までに私たちと業界全体がより持続可能なものへと移行することを目指しています。例えば、所有または運営している施設で再生可能エネルギーを100%使用することや、主要な事業においてエネルギー使用量とCO2排出量を単位当たり25%削減すること、デザインや業務効率の改善により製造、流通、本社、包装において廃棄物を単位当たり10%削減することなどが挙げられます。また、繊維の染色・加工における1kg当たりの淡水使用量を25%削減することを目標としています。当社の綿花サプライチェーン内の水不足に苦しむ生態系やコミュニティの長期的な回復力を支援する流域プロジェクトのポートフォリオを通じて、すでに130億リットルの水量が回復しています。

WWD:複雑なサプライチェーンの把握と改善に向けた取り組みは、一社だけではどうにもならない部分もあると感じます。

キンダー:ええ。政府間、業界間、地域のステークホルダーとの強力な連携と理解も大切で、私たちはこの分野でも提携しています。 20年5月、私たちはサプライヤー気候行動プログラム(SCAP)を開始しました。このプログラムに参加することで、サプライヤーはナイキ関連の生産以外でも排出量を削減することを約束し、業界全体の大幅な排出量削減に貢献することになります。

 私たちは、エシカルで責任ある製造を行い、製品を製造する全ての人々が尊重され、大切にされることに深くコミットしていることを忘れてはなりません。 そのために、25年までに、戦略的サプライヤーの100%が、製品を作る人々のために、世界水準の安全で健康的な職場を構築するという目標も設定しています。 また、サプライチェーンにおける女性の活躍の場をいかにして増やすかについても検討しています。 サプライヤーの施設で働く人々の約70%は女性ですが、その割合は職位が上がるにつれて減少します。そこで私たちは、2025年までに100%の戦略的サプライヤーが、施設で働く女性の就業機会へのアクセスと上昇志向を高めるという目標を設定しました。

WWD:ナイキが考える環境に配慮したプロダクトデザインとは。

キンダー:私たちの地球を守ることは、多様で革新的なチームが協力して解決策をまとめ、引き出すことから始まります。私たちには、よりサステナブルな新製品を生み出し、インパクトを与える責任があります。そのため、サステナビリティはデザインプロセス全体に組み込まれています。

 最初から廃棄物を出さないようにデザインし、廃材を新しい製品に変え、循環型のソリューションを拡大しています。また、業界をリードするマテリアル・サステナビリティ・インデックス(サステナブルアパレル連合が運用する環境負荷を評価するツール。ナイキはこれまでフットウエアサステナビリティインデックスを用いており、このインデックスは業界標準に遅れをとっていたことがわかったという。また以前は素材の種類や工程ごとに具体的な炭素削減目標を設定しておらず、サプライチェーンにまで目標が及ぶことはほとんどなかった)を使用し、デジタルツールを活用してチームを教育し、より持続可能な意思決定ができるようにしています。

WWD:現在重視していることは?

キンダー:スポーツはナイキの中核であり、私たちの活動全ての中心です。残念ながら、気候変動はスポーツにとって本質的な脅威です。だからこそ、サステナビリティは私たちのブランドとビジネスへの取り組み方の根幹にあるのです。 持続可能性は、大きな問題を提起することで革新的な解決策を導き出し、可能性を再定義するのに役立ちます。 しかし、これは単に「正しい」ことではなく、より効率的な戦略がナイキの成長を促進するため、長期的な価値を生み出します。

 今日、私たちは重要な瞬間を迎えています。2020年目標の章を閉じ、私たちがどこにいたか、どこで成功し、どこでつまずいたか(CO2削減目標は未達)を振り返ることで、次の章を開き、ゼロカーボン、ゼロウェイストの未来というビジョンを達成するために、新たな25年目標に向けて学び、進化していきます。この目標は、私たちの活動を支えるものであると同時に、私たちに責任を持たせ、私たちが達成できることを数値化するものでもあります。

WWD:ナイキはメッセージを生活者に伝えることに最も長けている企業の一つだと感じます。サステナビリティをどのように消費者に伝えていきますか?

キンダー:今、私が最も興奮しているのは、消費者がこの運動に参加し、変化の一部になりたいと思っていることです。私たちは、スポーツの力を使って世界を前進させることができると信じています。そのためには、持続可能性を実現し、真のインパクトを与えるためのハードワークを行うと同時に、製品やサービス、体験を通じて、消費者により責任ある選択をしてもらうこと、あるいは製品のライフサイクルの最後にある廃棄物の削減に貢献することが重要です。私たちは、人々が私たちのブランドに寄せる情熱と、私たちが地球、人々、コミュニティのために、より持続可能な未来を再構築し、創造することに貢献できる文化的影響を理解しています。

WWD:社内における多様性をどういう形で実現していますか?また、社員のモチベーション向上やスタッフとの意識共有や教育はどのように行っていますか

キンダー:私たちの社員は、ソリューションの創造と運用にとても情熱を持っています。19年には「Move to Zero Employee Challenge」を開始しました。これは、ナイキがスポーツの未来を守るためのアイデアを社員が提出し、そのアイデアを実現するための資金やメンターシップを獲得する機会です。製品作りから物流、リテールまで、さまざまな分野を対象にし、世界中から信じられないようなアイデアが寄せられました。私たちはそれらの多くを実行に移しています。例えば、余剰原材料のデータベースの作成、製品発売までの航空貨物への依存度の低減、ニューヨークオフィスの照明を調整するための占有センサーの設置などです。私たちは、無駄を省き、従業員を教育し、行動を促すことに注力しています。今後も、循環型社会、再利用、使い捨て廃棄物の排除を体現した空間を創造し、運営していきたいと考えています。

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ナイキが考える持続可能性をサステナビリティ責任者に聞く 複雑なサプライチェーンの対応策 【後編】

 ナイキ(NIKE)は、1990年代に企業活動におけるサステナビリティに取り組み始め、2000年代に入ると情報公開を始め、05年にはサプライチェーンを公開した。これには、90年代に同社が製造を委託する工場での児童労働が明らかになり、不買運動につながったという経緯がある。サプライチェーンを把握しておくことは企業の責任であると同時にリスクを回避することができるともいえる。複雑なサプライチェーンを把握するのは容易ではないが、ナイキはどのように対応してきたのか。ノエル・キンダー(Noel Kinder)チーフ・サステナビリティ・オフィサーに聞く。

WWD:アパレルやシューズのサプライチェーンの複雑さへの対応について教えてください。ナイキは透明性を確立していますが、どのように確立したのでしょうか。

ノエル・キンダー=チーフ・サステナビリティ・オフィサー(以下、キンダー):グローバル規模で非常に複雑なバリューチェーンの中で、私たちはシステムの変革に注力しています。そして、業界の中でも大手の企業として、より良いことをし、より良い規模で、そしてより良くなるために、自らの役割を果たすことを決意しています。透明性と説明責任から始まり、メーカーやサプライヤーのコンプライアンスを達成するために、一連の厳しい基準を策定しています。

 また、科学的根拠に基づく大胆な目標を設定し、25年までに私たちと業界全体がより持続可能なものへと移行することを目指しています。例えば、所有または運営している施設で再生可能エネルギーを100%使用することや、主要な事業においてエネルギー使用量とCO2排出量を単位当たり25%削減すること、デザインや業務効率の改善により製造、流通、本社、包装において廃棄物を単位当たり10%削減することなどが挙げられます。また、繊維の染色・加工における1kg当たりの淡水使用量を25%削減することを目標としています。当社の綿花サプライチェーン内の水不足に苦しむ生態系やコミュニティの長期的な回復力を支援する流域プロジェクトのポートフォリオを通じて、すでに130億リットルの水量が回復しています。

WWD:複雑なサプライチェーンの把握と改善に向けた取り組みは、一社だけではどうにもならない部分もあると感じます。

キンダー:ええ。政府間、業界間、地域のステークホルダーとの強力な連携と理解も大切で、私たちはこの分野でも提携しています。 20年5月、私たちはサプライヤー気候行動プログラム(SCAP)を開始しました。このプログラムに参加することで、サプライヤーはナイキ関連の生産以外でも排出量を削減することを約束し、業界全体の大幅な排出量削減に貢献することになります。

 私たちは、エシカルで責任ある製造を行い、製品を製造する全ての人々が尊重され、大切にされることに深くコミットしていることを忘れてはなりません。 そのために、25年までに、戦略的サプライヤーの100%が、製品を作る人々のために、世界水準の安全で健康的な職場を構築するという目標も設定しています。 また、サプライチェーンにおける女性の活躍の場をいかにして増やすかについても検討しています。 サプライヤーの施設で働く人々の約70%は女性ですが、その割合は職位が上がるにつれて減少します。そこで私たちは、2025年までに100%の戦略的サプライヤーが、施設で働く女性の就業機会へのアクセスと上昇志向を高めるという目標を設定しました。

WWD:ナイキが考える環境に配慮したプロダクトデザインとは。

キンダー:私たちの地球を守ることは、多様で革新的なチームが協力して解決策をまとめ、引き出すことから始まります。私たちには、よりサステナブルな新製品を生み出し、インパクトを与える責任があります。そのため、サステナビリティはデザインプロセス全体に組み込まれています。

 最初から廃棄物を出さないようにデザインし、廃材を新しい製品に変え、循環型のソリューションを拡大しています。また、業界をリードするマテリアル・サステナビリティ・インデックス(サステナブルアパレル連合が運用する環境負荷を評価するツール。ナイキはこれまでフットウエアサステナビリティインデックスを用いており、このインデックスは業界標準に遅れをとっていたことがわかったという。また以前は素材の種類や工程ごとに具体的な炭素削減目標を設定しておらず、サプライチェーンにまで目標が及ぶことはほとんどなかった)を使用し、デジタルツールを活用してチームを教育し、より持続可能な意思決定ができるようにしています。

WWD:現在重視していることは?

キンダー:スポーツはナイキの中核であり、私たちの活動全ての中心です。残念ながら、気候変動はスポーツにとって本質的な脅威です。だからこそ、サステナビリティは私たちのブランドとビジネスへの取り組み方の根幹にあるのです。 持続可能性は、大きな問題を提起することで革新的な解決策を導き出し、可能性を再定義するのに役立ちます。 しかし、これは単に「正しい」ことではなく、より効率的な戦略がナイキの成長を促進するため、長期的な価値を生み出します。

 今日、私たちは重要な瞬間を迎えています。2020年目標の章を閉じ、私たちがどこにいたか、どこで成功し、どこでつまずいたか(CO2削減目標は未達)を振り返ることで、次の章を開き、ゼロカーボン、ゼロウェイストの未来というビジョンを達成するために、新たな25年目標に向けて学び、進化していきます。この目標は、私たちの活動を支えるものであると同時に、私たちに責任を持たせ、私たちが達成できることを数値化するものでもあります。

WWD:ナイキはメッセージを生活者に伝えることに最も長けている企業の一つだと感じます。サステナビリティをどのように消費者に伝えていきますか?

キンダー:今、私が最も興奮しているのは、消費者がこの運動に参加し、変化の一部になりたいと思っていることです。私たちは、スポーツの力を使って世界を前進させることができると信じています。そのためには、持続可能性を実現し、真のインパクトを与えるためのハードワークを行うと同時に、製品やサービス、体験を通じて、消費者により責任ある選択をしてもらうこと、あるいは製品のライフサイクルの最後にある廃棄物の削減に貢献することが重要です。私たちは、人々が私たちのブランドに寄せる情熱と、私たちが地球、人々、コミュニティのために、より持続可能な未来を再構築し、創造することに貢献できる文化的影響を理解しています。

WWD:社内における多様性をどういう形で実現していますか?また、社員のモチベーション向上やスタッフとの意識共有や教育はどのように行っていますか

キンダー:私たちの社員は、ソリューションの創造と運用にとても情熱を持っています。19年には「Move to Zero Employee Challenge」を開始しました。これは、ナイキがスポーツの未来を守るためのアイデアを社員が提出し、そのアイデアを実現するための資金やメンターシップを獲得する機会です。製品作りから物流、リテールまで、さまざまな分野を対象にし、世界中から信じられないようなアイデアが寄せられました。私たちはそれらの多くを実行に移しています。例えば、余剰原材料のデータベースの作成、製品発売までの航空貨物への依存度の低減、ニューヨークオフィスの照明を調整するための占有センサーの設置などです。私たちは、無駄を省き、従業員を教育し、行動を促すことに注力しています。今後も、循環型社会、再利用、使い捨て廃棄物の排除を体現した空間を創造し、運営していきたいと考えています。

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ワコールが2030年の環境目標 自社排出量・製品廃棄ゼロ、環境配慮型素材の使用を50%に

 ワコールは4日、気候変動課題の解決に向けて2030年の環境目標を発表した。温室効果ガスの自社排出量(Scope1.2)ゼロを目指し順次再生エネルギーへの切り替えを実施する。20年3月期に1%だった製品破棄をゼロにするとともに、工場での残材料破棄削減に向けた取り組みを行う。また、再生繊維やリサイクル糸などの環境配慮型素材の使用率を50%にする。

 同社は7月、「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出算定に関する基本ガイドライン」に従い、ワコール事業のサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(Scope3)を初めて算定。また、気候変動など環境分野に取り組む国際的非営利団体のCDPの気候変動質問書にも回答した。ワコールの温室効果ガス排出量はサプライチェーンによるものが約90%を占める。Scope3の削減目標は22年3月期に新中期経営計画とともに発表予定だ。Scope3の削減はサプライヤーとの協働が重要なため、中長期的視野で計画や実施方法を検討しながらサプライヤーに働きかけていく。

 ワコールは9月中旬に、“優しい世界を、身に着ける”がコンセプトの環境配慮型商品グループ“ナチュレクチュール(NATURE COUTURE)”を発売。オーガニックコットンやセルロース繊維など自然由来の素材を使用し、無染色、または、植物から抽出したカラーで染めたインナーウエアで、生産時の廃棄材料をいとに再生して次のシーズン以降に使用する“廃棄材料リサイクルシステム”の確立を目指す。

 また、今までも不定期で行っていた”ワコール ブラリサイクル“活動を10月1日〜22年3月31日に実施する。部品が多いため捨てるのが困難なブラジャーを、ブランドを問わず、全国約750箇所の店舗で回収する。

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ワコールが2030年の環境目標 自社排出量・製品廃棄ゼロ、環境配慮型素材の使用を50%に

 ワコールは4日、気候変動課題の解決に向けて2030年の環境目標を発表した。温室効果ガスの自社排出量(Scope1.2)ゼロを目指し順次再生エネルギーへの切り替えを実施する。20年3月期に1%だった製品破棄をゼロにするとともに、工場での残材料破棄削減に向けた取り組みを行う。また、再生繊維やリサイクル糸などの環境配慮型素材の使用率を50%にする。

 同社は7月、「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出算定に関する基本ガイドライン」に従い、ワコール事業のサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(Scope3)を初めて算定。また、気候変動など環境分野に取り組む国際的非営利団体のCDPの気候変動質問書にも回答した。ワコールの温室効果ガス排出量はサプライチェーンによるものが約90%を占める。Scope3の削減目標は22年3月期に新中期経営計画とともに発表予定だ。Scope3の削減はサプライヤーとの協働が重要なため、中長期的視野で計画や実施方法を検討しながらサプライヤーに働きかけていく。

 ワコールは9月中旬に、“優しい世界を、身に着ける”がコンセプトの環境配慮型商品グループ“ナチュレクチュール(NATURE COUTURE)”を発売。オーガニックコットンやセルロース繊維など自然由来の素材を使用し、無染色、または、植物から抽出したカラーで染めたインナーウエアで、生産時の廃棄材料をいとに再生して次のシーズン以降に使用する“廃棄材料リサイクルシステム”の確立を目指す。

 また、今までも不定期で行っていた”ワコール ブラリサイクル“活動を10月1日〜22年3月31日に実施する。部品が多いため捨てるのが困難なブラジャーを、ブランドを問わず、全国約750箇所の店舗で回収する。

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ナイキが考える持続可能性をサステナビリティ責任者に聞く CO2排出と廃棄のゼロに向けて 【前編】

 ナイキ(NIKE)は2020年度に同社が排出したCO2量が1170万6664トンだったと公表した。同社は1500以上の拠点を有し、約7万5400人の従業員を抱え、サプライヤーの工場には100万人を超える従業員が働いており、その排出量と人口の規模はオランダ・アムステルダム市に匹敵する。同社はサステナビリティ戦略のコンセプトを“MOVE TO ZORO”とし、CO2排出量と廃棄物、2つのゼロを目指している。1170万6664トンから排出ゼロをどのように達成していくのか。ノエル・キンダー(Noel Kinder)=チーフ・サステナビリティ・オフィサーに聞く。

WWD:ナイキの考えるサステナビリティとは?サステナビリティ戦略でCO2排出と廃棄のゼロを目標にしていますね。

ノエル・キンダー=チーフ・サステナビリティ・オフィサー(以下、キンダー):ナイキは世界の都市1つ分のCO2を排出しており、気候変動に影響を与えています。これは、私たちが行う全てのことに目を向ける動機となっています。一企業が果たすべき重要な役割であり、小さな調整が大きな変化につながります。この精神に基づき、私たちは解決策を待つのではなく、解決策を生み出し、その規模を拡大するために取り組んでいます。私たちのサステナビリティ活動は、炭素、廃棄物、水、化学に焦点を当てており、科学的根拠に基づく大胆な目標を設定して、地球の保護に貢献する責任を果たしています。 さらに私たちは、どのような製品を、どのようにして作り、どのようにしてアスリートに届け、どのようにして回収して新しいものに変えていくのか、というナイキのあらゆる側面を常に考え直し、新しいソリューションを生み出してビジネス全体で迅速にスケールアップする方法を模索しています。

WWD:先日公開した資料で、2020年度のCO2排出量が1170万6664トンというリポートがありました。その数字をゼロにするには現状のビジネスの見直し、改良を積み重ねていくことだけでは難しいようにも思います。

キンダー:気候変動の緊急性に対処するために必要な変化の規模は、ナイキのあらゆる部分で革新を必要とします。私たちはただ解決策を待つだけではなく、解決策を生み出さなければならないのです。そして、新しい解決策を見つけたら(あるいは業界内の他の人から学んだら)、スケールアップするためのハードワークを迅速に行わなければなりません。

 私たちはCO2排出量を削減することを決意し、その規模と影響力を利用して他の企業が同じことをするのを支援しています。気候変動対策には集団行動が不可欠なので、私たちは業界内外でパートナーとなり、共通する影響を軽減しています。

WWD:CO2排出量に並び、水リスクに関しても深刻化しています。ナイキの対応策は?

キンダー:水資源の使用量を削減するために、私たちは原材料が生産されている現場での取り組みに重点を置いています。また、製造の効率化と廃水のリサイクルにより、繊維の染色・仕上げに使用する淡水の使用量を削減しています。実際、私たちの繊維製品の染色・仕上げを行うサプライヤーは、20年の目標を大幅に上回る30%の淡水使用量を削減しました。

WWD:環境負荷の低減を考えたときに重視されるのが素材ですが、ナイキが考える環境配慮型素材とはどういうものですか?

キンダー:私たちは持続可能な素材を、化学的に優れ、資源強度が低く、廃棄物が少なく、リサイクルが可能であることにより、製品の環境影響を低減するものと定義しています。材料を大規模に改善するためには、製品開発、材料、製造において、材料サプライヤーを含めてナイキチーム間の関係の調整が必要になります。私たちは、リサイクル素材やリサイクル可能な素材、素材を最も効率的に使用するための新しい機械や製造方法、新しいリサイクル技術の飛躍的な向上を可能にするために、イノベーションへの投資を計画しています。また、廃棄物を新製品に使用する新しい方法を見つけたいと考えています。重量に対して25%以上のリサイクル素材を使用したスニーカー“スペース ヒッピー”をはじめとし、今後の新製品にも採用することでスケールアップしていきます。

WWD:近年、キノコの菌糸体由来の“マッシュルームレザー”やリサイクル可能なセルロース繊維の革新、人工たんぱく質素材など、これまでになかった新素材が登場しています。注目している素材があれば教えてください。

キンダー:私たちが注力しているのは、影響の少ない素材を拡大し、廃棄物を新素材に変えることで、より持続可能な選択肢を新たに提供することです。具体的には、スタイルや性能を損なうことなく、大量生産される製品の素材に低炭素の代替素材を使用する方法を検討しています。

 例えば、主要素材(ポリエステル、コットン、レザー、ゴム)の低炭素素材の使用率を50%にすることで、25年までに50万トンの温室効果ガス排出量を削減することができます。この例を基に、私たちはリサイクルポリエステルを全製品に拡大しています。 現在、リサイクルポリエステルは当社の全ポリエステルの26%を占めており、そのおかげで、年間平均10億本のペットボトルが埋め立て地や水路に行くのを回避しています。廃棄物の削減に加えて、リサイクルポリエステルはバージンポリエステルに比べてCO2排出量を最大30%削減します。

WWD:生産工程で出る廃棄物を再資源化した“ナイキ グラインド”をデザインに活用していますね。

キンダー:はい。このプログラム(Reuse-A-Shoe)では、ゴム、フォーム、レザー、テキスタイルの混合物など、回収可能な価値を持つ余剰のフットウエア素材と、使用済みのシューズを回収し、リサイクルして新しい製品に再利用しています。このプログラムは25年以上続いていますが、今も成長し、進化し続けています。“ナイキ グラインド”で部分的に作られた最も新しいイノベーションは、ナイキ クレーター フォームです。この新しいフォームは、“スペースヒッピー”プロジェクトから生まれたもので、現在ではライフスタイルやパフォーマンスフットウエアのさまざまなスタイルに採用されています。

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教えて!パタゴニアさん 連載第8回 食品事業を通じて農業に“変革”をもたらす意義

 サステナビリティ先進企業のパタゴニアの担当者にその取り組みを聞く連載第8回。今回は、パタゴニアが2013年に立ち上げた食品事業「プロビジョンズ」について(日本では16年秋から販売)。オーガニック栽培された豆や野菜のスープ、フルーツがぎっしり詰まったエナジーバー、多年生穀物カーンザを世界で初めて使ったクラフトビール、天然のスモークサーモンやサバ、ムール貝など――なぜ、アウトドアブランドが食品事業に取り組むのでしょうか。連載第7回では熱心に取り組む農業について紹介しましたが、今回も引き続き農業の話をメーンに、近藤勝宏パタゴニア・プロビジョンズ・ディレクターに聞きます。

WWD:パタゴニアはなぜ食品事業を始めたのですか?

近藤勝宏パタゴニア・プロビジョンズ・ディレクター(以下、近藤):アパレル会社が食品について気遣うというのは奇妙に聞こえるかもしれませんね。私たちパタゴニアが行う全てのことと同じく“私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む”(編集部注:2018年12月に改訂された企業理念。以前の理念は“最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する”)ことを目的にしています。創業者のイヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard)は、「手掛けたプロジェクトの中で一番重要なものだと言える」とも語っています。

WWD:なぜ食品事業への参入が重要だったのでしょうか。

近藤:今日の地球温暖化は、もはや議論の余地のない事実です。地球の気温が上昇し続け、沿岸地域は海面上昇に直面し、海は酸性度が増して生命を支えられなくなり、多くの種が通常の生息地で繁栄できなくなっています。気候変動の原因となる温室効果ガスをもたらしている最大の原因の一つが、世界最大の産業である食品生産にあります。そしてこの業界ほど変革の必要性を緊急に感じられる分野はありません。

WWD:食品生産の問題点についてもう少し詳しく教えてください。

近藤:効率と利益を最大化する中で、現代の工業型農業は年に一度の単作、有毒な除草剤、殺虫剤と農薬、遺伝子組み換えの種と化学肥料、持続不可能なほどの水の利用に依存してきました。そしてそれにより、地球が復元するよりもはるかに速いスピードで表土は損なわれ、空気も土地も水も汚れ、さらには炭素の排出量も増えて、昨今の急激な気象の変化にも耐性を持つことができません。

WWD:表土はどのくらい失われているのでしょうか。

近藤:この150年間に世界全体で半分が失われたといわれています。私たちの食品の95%が直接的もしくは間接的に土壌に由来している中で、まさに危機的状況です。世界各地では農地から流れ出した養分によりデッドゾーンと呼ばれる酸欠状態の海域が生まれ、生物多様性の損失にも大きな影響を与えています。

WWD:工業型農業によって生産された食品を摂取するリスクも叫ばれていますね。

近藤:抗生物質と成長ホルモンを摂取した肥育場の牛、身動きの取れないケージの中で育てられた鶏、化学物質に浸された遺伝子組み換え作物、風味や栄養よりも大きさと見た目や生育率が高いものが選ばれる果物や野菜など、このようなシステムで育てられた食品は有毒化学物質によって、人間と生態系への危険性の増大、栄養価の低下などのリスクがあります。私たち自身も多大なリスクを負わなければなりません。

WWD:「プロビジョンズ」はそのようなシステムに変革をもたらすためのビジネスということ?

近藤:はい。私たちは長い間、アパレルビジネスを通じて、調達、製造、販売をどのようにすべきかを学んできました。次はそれを食品産業に応用します。水や空気、土壌を再生しながら、野生動物を保護するような方法で食品が作られるようになったら――私たちが抱えている大きな課題の解決策になると考えています。

WWD:リジェネラティブ・オーガニック農法(土壌を修復・改善しながら自然環境の回復を目指す農法)にも取り組まれていますね。

近藤:リジェネラティブ・オーガニック農法は最も注目しています。できるだけ耕すことなく、被覆作物や堆肥、輪作や牧草と放牧を基本とした飼育を行うことで、土壌を健全な状態に再生しながら、大きな作物を生み出します。土壌が回復すれば水も少なくて済むし、干ばつなどの気象の変化にも耐性ができる。収穫量が落ちにくく、たいがいは低コストになります。また、健全な土壌では光合成を通して、より多くの炭素を土壌が吸収、固定してくれることが判明してきました。このような健全な土壌を再生する農業への転換により人間が毎年放出しているくらいの炭素を土の中に隔離することができるとも言われています。

WWD:生物多様性の保全にもつながりますね。

近藤:はい。本来その土地にいるべき動物を戻すことは土壌を健全に保つことにつながります。自由に歩きまわるバッファローがいるところの草は良く育つし、根も深くはり、地球で最も優れた炭素固定システムのひとつである大草原を復元します。

ロープで養殖されるムール貝は、生育中に海水をきれいにしながら、人間にとって美味なたんぱく質を生み出します。場所を定めた選択的な魚の収穫漁法は、個体数が減少している種に害を与えることなく、真に持続可能な魚の個体群を狙うことができます。

多年生で育つ古代穀物は肥料や農薬は少なくて済むし、耕したり種を植えたりする手間も省けます。何よりも重要な特質は土壌深くまで伸びる根が水や窒素、リンを吸収するとともに土をしっかりと固定して浸食を防ぎ、干ばつにも強くなります。加えて大気中の炭素を土壌に有機物として隔離することにもつながります。

これらの方法は決して新しいものではありません。得てして昔ながらの知恵や自然サイクルに寄り添った方法です。そして、そのようにして作られた食べ物には多くの利点があります。とてもおいしく、栄養価が高く、人々の健康に良いもの。さらには環境を再生して、生物多様性を促進して地球を救えるかもしれないものなのです。

WWD:パタゴニアはアパレルビジネスを通じて、長年環境や社会問題に警鐘を鳴らしつづけてきました。次は食を通じて警鐘を鳴らすと。

近藤:私たちが今経験しているパンデミックは地球からの警告のように聞こえます。果たして今までのように、まるで無限に存在するかのように地球資源を使い、大量に物を生産し消費するようなライフスタイルを止められるか――大きな変化を求められるでしょう。
けれど、人間は食べることだけはやめることができません。さまざまなシステムがいったんリセットされたこのタイミングで、生きるうえで欠かせない食の生産方法や私たちの日々の一食一食をより思いやりをもった、愛ある選択に変えていくことで、地球の抱える問題を解決していけると信じています。そして、「パタゴニア・プロビジョンズ」がその革命の一部になりたいと考えています。

答えてくれた人:近藤勝宏/パタゴニア・プロビジョンズ・ディレクター:1973年生まれ。神奈川県出身。95年、パタゴニア鎌倉ストアにパートタイムスタッフとして勤務。正社員として入社後、ストア、マーケティング部門のマネージャーを経て、2016年のプロビジョンズ上陸時に日本担当マネージャーになる。日頃からサーフィンやスノーボードなどを愛好し自然と親しみながら、仲間との有機栽培の米作りや家庭菜園などを通じて、より環境負荷の少ないライフスタイルを探求している

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アディダスのキーマンが語る “キノコの菌製”人工レザーの課題と可能性

 キノコの菌から作った“人工マッシュルームレザー”が注目を集めている。動物を犠牲にすることなく、環境への負荷も従来の動物の皮革と比較すると極めて低いことから、有力ブランドが新興企業と組んで開発を進めている。

 “マッシュルームレザー”は再生可能なキノコ類の菌糸体(マイセリウム)から作られており、約2週間で製造できる。一方、皮革1キログラムを生産するのに要する水の量は1万7000リットルにのぼり、畜産は、世界の温室効果ガス排出量の約18%を占めている。水リスクが高いエリアで行われていることも多く、現在アマゾンの森林伐採地域の70〜80%が家畜の牧草地として使用されているなど、生態系の破壊の要因のひとつになっている。また、一般的な合成皮革は布地をベースに合成樹脂を塗り、表面層を天然の革に似せているため石油由来だ。

 「エルメス(HERMES)」は米国のスタートアップ企業のマイコワークス(MYCOWORKS)と開発した「シルヴァニア」を用いたバッグを3月に発表し、今年中に発売する。アディダス(ADIDAS)もまた4月15日に、米ボルトスレッズ(BOLTTHREADS)が運用する「マイロ(MYLO)」を用いた“スタンスミス”を発表し、今後12カ月以内に商品化する予定だ。しかし、革新的技術を用いた新素材だけに量産化に向けた課題は多い。スケールアップをどうするのか、強度をどのように担保するのか、均一性をどう保つのか、使用中のケアや廃棄はどうするのか、100%バイオベースが可能か――ちなみに「マイロ」は、強度を担保するために仕上げに石油化学製品を用いているため、ドイツ規格協会に60~85%がバイオベースと認定されているが生分解はしない。

 アディダスで「マイロ」に取り組む、デイヴィッド・カス(David Quass)ブランド サステナビリティ・グローバルディレクター、ダーラン・キル=フューチャーチーム テクノロジークリエイション シニアマネジャー、ニコラ・グルーネウェフ(Nicholas Groeneweg)フューチャー・シニアマネジャー、マーティン・ラヴ(Martin Love)オリジナルズ カテゴリーディレクター、4人のキーマンに「マイロ」運用への課題とその可能性を聞いた。

WWD:「マイロ」を用いたプロダクトの拡大をどのように進めるのか?

ニコラ・グルーネウェフ=フューチャー・シニアマネジャー:近い将来、「マイロ」素材の商業化の可能性が立証されることに期待を寄せている。今後12カ月以内に“マイロ スタンスミス”の限定版第1号モデルを発売できるよう取り組んでいる。価格帯は同じカテゴリーの類似プロダクトに合わせられるよう目指している。その後、少しずつ規模を拡大しながら種類を増やし、「マイロ」をほかのプロダクトやシリーズに導入していく予定だ。

デイヴィッド・カス=ブランド サステナビリティ・グローバルディレクター(以下、デイヴィッド):アスリートや消費者のニーズに合わせて革新的なコンセプトを生み出すことは、市場におけるポジションを高め、当社のビジネス戦略の重要な要素になっている。われわれは当社のバリューチェーン全体で、サステナビリティの実現につながること――画期的で新たなテクノロジーやプロセスを生み出す技術への投資を行っている。また、デジタル化の可能性を探りながら、われわれの革新的なコンセプトの源を確保することに努めている。

WWD:「マイロ」は「リサイクルを前提に開発された素材」とオンラインカンファレンスで話していた。将来、“スタンスミス マイロ”は“フューチャークラフト.ループ(Future Craft. Loop)”のようなモノマテリアル化/単一素材化を目指すのか?

デイヴィッド:今のところは“スタンスミス マイロ”はコンセプトフットウエアで、ケミカルリサイクル(使用済みの資源を科学的に分解して原料に戻し再度活用すること)に対応させる計画はない。

ダーラン・キル=フューチャーチーム テクノロジークリエイション シニアマネジャー:現時点で“スタンスミス マイロ”はコンセプトにすぎないが、そう遠くない未来に必要なテストを実施し、リサイクル可能か、まだその段階ではないかの判断ができるだろう。

われわれの目標は“END PLASTIC WASTE (廃棄プラスチックをなくす) ”だ。そのために、2024年までに全てのポリエステルをリサイクルポリエステルに切り替えることを目指している。また、30年までにCO2排出量を30%削減し、50年までにカーボンニュートラルを実現するという、壮大な目標を立てている。この目標を実現するために、成長を維持しながら、ビジネスの抜本的な見直しを図っている。そこでまず行っているのは、どんな素材をどのように活用するかを見直すこと。次に目を向けているのは、再生や再構築が可能な“Made with nature (自然とのコラボレーション)”のプロダクトを作ること。これが“END PLASTIC WASTE” に向けたイノベーションの長期戦略となっている。

新素材「マイロ」の導入は、“Made with nature”コンセプトのプロダクトを通じて未来を築くというアディダスの大きな目標において重要な進展だ。

当社が掲げるモノ作りのコンセプト“再生のループ(Regenerative Loop)”の最終目標は、天然由来の成分から開発された素材や、研究室で開発された細胞由来・タンパク質由来の素材を用いてプロダクトを作ることだ。

WWD:「マイロ」の優位性は?

デイヴィッド:「マイロ」には農業分野から見ても土地利用面積の削減につながり、しかも14日のリードタイムで収穫できるという2つの点で環境に利点がある。また、「マイロ」は汎用性が高く、多種多様な着色や仕上げ加工が可能なので、アディダスではゲームチェンジャーとなる最新素材を使用する初のモデルにクラシックな“スタンスミス”を選択した。

WWD:規模拡大に関して現在の課題は?

マーティン・ラヴ=オリジナルズ カテゴリーディレクター:規模拡大はそれほど困難ではない。むしろプロセスの方に手間がかかる。素材からフットウエアを生み出すために、12カ月かけて開発を進めてきた。開発が完了した現在、次のステップとして、段階的に量産化の試験を行いながら、大量生産への対応とその際の品質を分析する段階に入っている。1足のフットウエアなら多くの手間をかけて神経を注ぐことができるが、今後は数百足、数千足でも均一に作らなければいけない。当然、ある程度の時間がかかる。

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気候危機への平和的な訴えに600人が“共鳴” デプトのエリと小野りりあんがハンガーストライキに挑んだ理由

 デプトカンパニー代表のエリ(eri)とモデルで気候アクティビストの小野りりあんはこのほど、気候危機への対応を求める「ピースフル クライメイト ストライキ(Peaceful Climate Strike以下、PCS)」をオンラインで実施した。

「PCS」は日本政府に対して、温室効果ガス削減目標(NDC)を60%以上に引き上げることや、脱原発・脱炭素社会に向けた対策を求める活動だ。4月17日からの1週間、著名人やアーティスト、専門家を招いた気候危機に関するトークショーや音楽ライブなどのコンテンツをオンラインで発信し、20日からの4日間は水と塩のみを口にするハンガーストライキに挑んだ。最終日には約600人が彼女たちに“共鳴”し、24時間のハンガーストライキを実施した。大きなムーブメントを起こした2人に「PCS」にかけた思いを聞いた。

WWD:「PCS」を終えて約1週間が経ちました。体調は?

エリ:ハンスト中は吐き気や筋肉痛などの低血糖の症状が出ましたが、精神的には元気でした。現在体調は問題ないですが、食欲がまだ戻っていません。

小野:私はだいぶ回復しています。ハンスト中は本当に辛くて、体力的にもギリギリの状態でしたが、とても良い時間でした。

WWD:前回りりあんさんを取材したのは2年前、飛行機を使わずに世界の活動家に会う旅をしていた時でした。帰国後はアクティビストとしての注目度がかなり高まった印象です。

小野:2020年の2月に帰国してからはとにかく目の前のことに精一杯でしたが、これまでの活動の積み重ねでエリと「PCS」を実行できました。やっと今、大きな変化を生み出せている実感があります。

2人の女性が平和的に強く訴えることに意味がある

WWD:そもそも2人の出会いは?

エリ:りりあんとは15年程ほど前に一緒に仕事をしたことがありました。私もIPCC(気候変動変動に関する政府間パネル)の「1.5℃特別報告書」を読んだことがきっかけで声を挙げる活動に取り組むようになり、彼女のアクションに賛同したり、参加したりするようになって再会したんです。

WWD:2人はこれまでもSNSやイベントなどさまざまな発信を積極的に続けていました。今回なぜ、体に負担がかかるハンガーストライキを選択したのですか?

小野:NGO団体の350.orgが気候変動解決に向けた運動をまとめた「クライメート・レジスタンス・ハンドブック」を参考にしました。そこには社会を動かすためには、ハッシュタグや署名などと同時に、みんなが真似できないような切実さが伝わるものも実践することでパワーが大きくなると書かれていました。これまで気候ムーブメントの中でハンガーストライキを実践した人はいませんでしたが、日本が意思決定をする大事なタイミングの今だからこそ挑戦する価値があると思ったんです。

エリ:気候危機の問題は本当に時間がありません。現実と社会が取り組むスピードの遅さに、今の発信だけでは足りない、ほかに何ができるだろうかと悩んでいました。そんな時にりりあんからの誘いがあり、挑戦したいと思えました。ハンガーストライキは男性が実践する印象があるので、女性2人が平和的に、かつ強く抗議することにも意味があるんです。

WWD:どんな反響がありましたか?

エリ:企画してから約3週間で、40人近いサポートメンバーがボランティアで集まってくれたことに驚き、これこそ市民運動だと感じました。最終日には24時間限定の「共鳴のハンガーストライキ」を実施し、約600人が参加してくれました。これだけの人々が苦痛を伴うアクションに参加し、共に意思を表明してくれたことは大きな収穫でした。前半は、水原希子さんや二階堂ふみさん、コムアイさんらに出演してもらい、普段リーチできないような多くの人にこの問題を知ってもらうことができました。

WWD:出演者もコンテンツも、従来の気候ムーブメントとは違ったクリエイティビティーを感じました。

エリ:私たちはそれぞれアプローチの仕方が違うので、今回はそれがパズルのようにうまくマッチしたと思います。ファッションがベースの私のスキルを使って、従来の気候アクションとは違う見せ方をする手伝いができました。今後も変化を加速させるためには、さまざまなアクションが同時多発的に起こることが理想です。

小野:私はこれまで活動家の子たちと一緒に動いてきましたが、コロナで一体感がなくなってしまったと感じていました。でも今回をきっかけに再び点と点が強くつながれたのではないでしょうか。自宅で24時間行うハンガーストライキというアプローチによって、気候危機に対して強い思いを持つ多くの人たちを巻き込むことができました。本来は国会の前で実施して、大きな渦を起こすことが理想でしたが、期間中は毎日たくさんのリポストやハッシュタグの投稿があり、人々のつながりを可視化できたことはオンラインならではのメリットでした。

WWD:一方で、日本政府は22日の気候サミットでNDCを2030年比で46%減とし、「PCS」が目指していた60%以上の引き上げには至りませんでした。

小野:若い子たちが命がけで戦ってきて、たくさん泣いているのも見てきました。私自身この子たちの未来を守るのに不十分だったなと悔しい思いでいっぱいでした。一方で、今回の「PCS」を通して多くの人が声を挙げるスタートラインに立ってくれました。NDCは何度でも再提出できるので、ここからだという気持ちです。

エリ:気候危機を語るには科学的根拠が大切です。私たちは国際環境シンクタンクNGO「クライメート・アクション・トラッカー」のデータに基づいて、「産業革命以降の気温上昇を2度未満に抑えるためにはNDCを60%以上に引き上げることが必要」と訴えてきました。46%減は、国民の生活を守れる数値だとは到底思えない。もちろん決定権のある層に訴えることは大切ですが、小泉環境大臣と話をしたときに「国民からのプレッシャーが足りない」という意見も聞きました。国民がNDCを理解し、話題にしていくこと、未来を作っていく意思をちゃんと持つことが今後の課題です。

ファッション業界に求められる変化 何を作るかではなく、どう作るか

WWD:「PCS」が18日にユーチューブで配信していた「ファッションと気候変動」の回は衝撃でした。世界の温室効果ガス排出量に占めるファッション業界からの排出は、飛行機や船などの移動手動の排出量よりも多く、30年までに30%増えるという推計などの数値に驚きました。

小野:ぜひ業界の人に見てほしい。そして知るプロセスを、仲間と一緒に共有してほしいです。誰かと一緒に知ることで対話が生まれ、アイデアが実現できると思うから。

エリ:人間は創造することを許された動物で、創造をやめるべきではありません。ただ、ゼロからイチを生み出すだけがモノ作りではなく、既存の物を新しく生まれ変わらせたり、循環させることもモノ作りなのです。今まではどんなものにニーズがあるのか、どうしたら安くたくさん売れるのかといった目標のためにプロセスを構築していました。しかしこれからは、何を作るかではなく、どう作るかを先に考えることが大切です。むしろそうではないともうファッションは成り立ちません。ファッションに携わる人たちは、環境問題に興味があるないに関わらず、きちんと学ぶことが必須です。

WWD:「PCS」で起こったムーブメントを次にどうつなげますか?

エリ:6月には主要7カ国首脳会議(G7サミット)、11月には「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」(COP26)が予定されています。都度「PCS」のみんなでアクションを起こしていくつもりです。

小野:今回一歩踏み出してくれた人たちとさらに学なびを深める場を設けるなど、このパワーを継続させるための方法を考えています。政府の人たちとの意見交換会や海外の活動家らとの協働方法も模索していきたいです。

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気候危機への平和的な訴えに600人が“共鳴” デプトのエリと小野りりあんがハンガーストライキに挑んだ理由

 デプトカンパニー代表のエリ(eri)とモデルで気候アクティビストの小野りりあんはこのほど、気候危機への対応を求める「ピースフル クライメイト ストライキ(Peaceful Climate Strike以下、PCS)」をオンラインで実施した。

「PCS」は日本政府に対して、温室効果ガス削減目標(NDC)を60%以上に引き上げることや、脱原発・脱炭素社会に向けた対策を求める活動だ。4月17日からの1週間、著名人やアーティスト、専門家を招いた気候危機に関するトークショーや音楽ライブなどのコンテンツをオンラインで発信し、20日からの4日間は水と塩のみを口にするハンガーストライキに挑んだ。最終日には約600人が彼女たちに“共鳴”し、24時間のハンガーストライキを実施した。大きなムーブメントを起こした2人に「PCS」にかけた思いを聞いた。

WWD:「PCS」を終えて約1週間が経ちました。体調は?

エリ:ハンスト中は吐き気や筋肉痛などの低血糖の症状が出ましたが、精神的には元気でした。現在体調は問題ないですが、食欲がまだ戻っていません。

小野:私はだいぶ回復しています。ハンスト中は本当に辛くて、体力的にもギリギリの状態でしたが、とても良い時間でした。

WWD:前回りりあんさんを取材したのは2年前、飛行機を使わずに世界の活動家に会う旅をしていた時でした。帰国後はアクティビストとしての注目度がかなり高まった印象です。

小野:2020年の2月に帰国してからはとにかく目の前のことに精一杯でしたが、これまでの活動の積み重ねでエリと「PCS」を実行できました。やっと今、大きな変化を生み出せている実感があります。

2人の女性が平和的に強く訴えることに意味がある

WWD:そもそも2人の出会いは?

エリ:りりあんとは15年程ほど前に一緒に仕事をしたことがありました。私もIPCC(気候変動変動に関する政府間パネル)の「1.5℃特別報告書」を読んだことがきっかけで声を挙げる活動に取り組むようになり、彼女のアクションに賛同したり、参加したりするようになって再会したんです。

WWD:2人はこれまでもSNSやイベントなどさまざまな発信を積極的に続けていました。今回なぜ、体に負担がかかるハンガーストライキを選択したのですか?

小野:NGO団体の350.orgが気候変動解決に向けた運動をまとめた「クライメート・レジスタンス・ハンドブック」を参考にしました。そこには社会を動かすためには、ハッシュタグや署名などと同時に、みんなが真似できないような切実さが伝わるものも実践することでパワーが大きくなると書かれていました。これまで気候ムーブメントの中でハンガーストライキを実践した人はいませんでしたが、日本が意思決定をする大事なタイミングの今だからこそ挑戦する価値があると思ったんです。

エリ:気候危機の問題は本当に時間がありません。現実と社会が取り組むスピードの遅さに、今の発信だけでは足りない、ほかに何ができるだろうかと悩んでいました。そんな時にりりあんからの誘いがあり、挑戦したいと思えました。ハンガーストライキは男性が実践する印象があるので、女性2人が平和的に、かつ強く抗議することにも意味があるんです。

WWD:どんな反響がありましたか?

エリ:企画してから約3週間で、40人近いサポートメンバーがボランティアで集まってくれたことに驚き、これこそ市民運動だと感じました。最終日には24時間限定の「共鳴のハンガーストライキ」を実施し、約600人が参加してくれました。これだけの人々が苦痛を伴うアクションに参加し、共に意思を表明してくれたことは大きな収穫でした。前半は、水原希子さんや二階堂ふみさん、コムアイさんらに出演してもらい、普段リーチできないような多くの人にこの問題を知ってもらうことができました。

WWD:出演者もコンテンツも、従来の気候ムーブメントとは違ったクリエイティビティーを感じました。

エリ:私たちはそれぞれアプローチの仕方が違うので、今回はそれがパズルのようにうまくマッチしたと思います。ファッションがベースの私のスキルを使って、従来の気候アクションとは違う見せ方をする手伝いができました。今後も変化を加速させるためには、さまざまなアクションが同時多発的に起こることが理想です。

小野:私はこれまで活動家の子たちと一緒に動いてきましたが、コロナで一体感がなくなってしまったと感じていました。でも今回をきっかけに再び点と点が強くつながれたのではないでしょうか。自宅で24時間行うハンガーストライキというアプローチによって、気候危機に対して強い思いを持つ多くの人たちを巻き込むことができました。本来は国会の前で実施して、大きな渦を起こすことが理想でしたが、期間中は毎日たくさんのリポストやハッシュタグの投稿があり、人々のつながりを可視化できたことはオンラインならではのメリットでした。

WWD:一方で、日本政府は22日の気候サミットでNDCを2030年比で46%減とし、「PCS」が目指していた60%以上の引き上げには至りませんでした。

小野:若い子たちが命がけで戦ってきて、たくさん泣いているのも見てきました。私自身この子たちの未来を守るのに不十分だったなと悔しい思いでいっぱいでした。一方で、今回の「PCS」を通して多くの人が声を挙げるスタートラインに立ってくれました。NDCは何度でも再提出できるので、ここからだという気持ちです。

エリ:気候危機を語るには科学的根拠が大切です。私たちは国際環境シンクタンクNGO「クライメート・アクション・トラッカー」のデータに基づいて、「産業革命以降の気温上昇を2度未満に抑えるためにはNDCを60%以上に引き上げることが必要」と訴えてきました。46%減は、国民の生活を守れる数値だとは到底思えない。もちろん決定権のある層に訴えることは大切ですが、小泉環境大臣と話をしたときに「国民からのプレッシャーが足りない」という意見も聞きました。国民がNDCを理解し、話題にしていくこと、未来を作っていく意思をちゃんと持つことが今後の課題です。

ファッション業界に求められる変化 何を作るかではなく、どう作るか

WWD:「PCS」が18日にユーチューブで配信していた「ファッションと気候変動」の回は衝撃でした。世界の温室効果ガス排出量に占めるファッション業界からの排出は、飛行機や船などの移動手動の排出量よりも多く、30年までに30%増えるという推計などの数値に驚きました。

小野:ぜひ業界の人に見てほしい。そして知るプロセスを、仲間と一緒に共有してほしいです。誰かと一緒に知ることで対話が生まれ、アイデアが実現できると思うから。

エリ:人間は創造することを許された動物で、創造をやめるべきではありません。ただ、ゼロからイチを生み出すだけがモノ作りではなく、既存の物を新しく生まれ変わらせたり、循環させることもモノ作りなのです。今まではどんなものにニーズがあるのか、どうしたら安くたくさん売れるのかといった目標のためにプロセスを構築していました。しかしこれからは、何を作るかではなく、どう作るかを先に考えることが大切です。むしろそうではないともうファッションは成り立ちません。ファッションに携わる人たちは、環境問題に興味があるないに関わらず、きちんと学ぶことが必須です。

WWD:「PCS」で起こったムーブメントを次にどうつなげますか?

エリ:6月には主要7カ国首脳会議(G7サミット)、11月には「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」(COP26)が予定されています。都度「PCS」のみんなでアクションを起こしていくつもりです。

小野:今回一歩踏み出してくれた人たちとさらに学なびを深める場を設けるなど、このパワーを継続させるための方法を考えています。政府の人たちとの意見交換会や海外の活動家らとの協働方法も模索していきたいです。

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オールバーズがカーボンフットプリントの計測ツールをオープンソース化

 サンフランシスコ発のスタートアップのオールバーズ(ALLBIRDS)はこのほど、専門家と共同開発したカーボンフットプリント(CO2e・温室効果ガス)を算出できるライフサイクルアセスメント(LCA)ツール(英語版)を自社ウェブサイトで公開した。LCAは、商品やサービスの原料調達から廃棄、リサイクルまでのライフサイクル全体を通しての環境負荷を定量的に算定する手法で、近年、非常に重視されるようになっている。
 
 同社は気候変動を最重要課題ととらえ、“カーボンニュートラル”を目指すと宣言。2020年4月から、製造過程から廃棄までに排出されるカーボンフットプリントを全てのアイテムに表示している。「測ることは減らすことにつながり、気候変動を逆転させる大きな一歩になる」という信念がある。

 また、4月27日に開いたオンラインミーティングで、2025年までにウールの調達を環境再生型の農場から行うと発表した。環境再生型農業は土壌を修復・改善しながら自然環境の回復を目指す農法。土壌が健全化することで、温暖化の原因である炭素を土壌に閉じ込めることができるため、気候変動や生物多様性の損失に対しての有効的な方法の一つとして注目を集めている。ウールに着目した理由をハナ・カジムラ(Hana Kajimura)=サステナビリティ・マネジャーは「『オールバーズで調達する素材の20%がウールで、CO2排出量は全体の80%を占める。ウールの調達は優先事項だと考えた』と話した。

 オールバーズがすでにオープンソース化した“100%植物由来のレザー”は、「ティンバーランド(TIMBERLAND)」や「アグ(UGG)」が用いており、今回のLCAツールが業界にどれだけ浸透するかも注目だ。

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デプトのエリと小野りりあんが気候変動危機を訴えるハンガーストライキ 二階堂ふみや水原希子らによるトークショーも

 古着屋デプト(DEPT)を運営するデプトカンパニー代表のエリ(eri)と、モデルで気候アクティビストの小野りりあんは4月17〜23日までの期間、気候変動危機を訴える「ピースフル クライメイト ストライキ」を行う。

 17〜20日は、気候変動を基礎から学ぶことができるトークセッションなどをユーチューブ(YOUTUBE)でライブ配信する。モデルの水原希子や歌手でアーティストのコムアイ、二階堂ふみ、根岸由香里・ロンハーマン(RON HERMAN)事業部長兼ウィメンズ・ディレクターらも参加する。20日からは、エリと小野りりあんによるハンガーストライキを実施し、その様子を配信する。紗羅マリーや坂本美雨らによる音楽ライブも予定。最新のスケジュールは随時、公式ホームページで発表する。

 今回のストライキを通して、日本政府の温室効果ガス削減目標(NDC)を60%以上に引き上げることと、脱原発・脱炭素社会に向けたアクションを求める。日本は現在2030年までに温室効果ガスを13年比で26%削減することを目標に掲げているが、50年までに実質排出ゼロに向けては不十分であると指摘されている。

 エリは「温暖化を1.5度未満に抑えなければ、この地球で人類が暮らすことが難しくなると科学者たちが警報を鳴らしている。生きられる未来が欲しいというシンプルな願いが、声をあげなければ得られないことを知った。すべての人へ公平で安全な世界を作るために、一緒に声を上げる仲間に加わってほしい」とコメントした。

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教えて!パタゴニアさん 連載第7回 本気で農業に取り組む理由

 サステナビリティ先進企業のパタゴニアの担当者にその取り組みを聞く連載第7回。今回は、パタゴニアが熱心に取り組む農業がテーマです。気候変動や人口増加に伴う需要増大への対策として、 “リジェネラティブ・オーガニック農法”(土壌を修復・改善しながら自然環境の回復を目指す農法)に注目し、2017年には、他の米国ブランドとともにリジェネラティブ・オーガニック認証制度を作り、農地の切り替えを推進。なぜ、今農業が重要なのでしょうか。木村純平・環境・社会部門リジェネラティブ・オーガニック リサーチ担当に聞きます。

WWD:パタゴニアが農業に注目した理由を教えてください。

木村純平・環境・社会部門リジェネラティブ・オーガニック リサーチ担当(以下、木村):「新しいジャケットは5年か10年に一度しか買わない人も、一日3度の食事をする。われわれが本気で地球を守りたいのなら、それを始めるのは食べ物だ」――これは創業者のイヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard)の言葉です。農業は、繊維や食物を生み出す、私たちに必要不可欠な産業です。しかしながら、工業型農業は土壌劣化などのさまざまな問題を引き起こしており、気候変動の主要な原因の一つになっています。

WWD:パタゴニアは農業を「問題」ではなく、「解決策」へと転換するために、健康な土壌を構築する環境再生型農業、リジェネラティブ・オーガニック農法への切り替えと普及を推進していますね。

木村:リジェネラティブ・オーガニックは、気候変動と闘うとともに、増加する人口を支えるための食物を供給し、さらに地球の健全性を維持することのできる最も効果的な方法の一つだからです。また、人口増加に伴う需要の増大に応えるためにも必要です。20年の世界人口は78億人に上り、50年には97億人に達するといわれています。私たちは今後、食の変化はもちろん農業の生産性を向上させる必要があります。

WWD:従来の工業型農業が抱える問題とは?

木村:工業型農業は地球環境を犠牲にしながら、生産力の向上を図ってきました。しかし、現在世界中で広く行われている工業型の農業は、化学肥料や農薬、遺伝子組み換え技術やプラスチック資材の利用、大型耕耘機やかんがい設備などの多投入型の工業的システム、単一栽培のような効率を求めた農地利用を採用しています。そのため、生産と輸送で膨大な量の化石燃料を使い、地下水汚染や河川の富栄養化、土壌汚染や健康被害といった問題を引き起こしています。

またグローバルな問題として、農地拡大を原因とする森林減少によって生物多様性に悪影響を及ぼし、安価な窒素肥料の合成と使用によって窒素循環を乱しています。これは、私たちが21世紀に優先的に取り組まなくてはならない重大な環境問題です。工業型の従来農業は、「私たちの繊維や食物を生産する」ことを理由に、地球環境を食いつぶしているのです。

WWD:工業型農業は、外部環境に高い負荷をかけるだけにとどまらず、土壌を劣化させています。

木村:土壌が劣化する根本的な原因は2つあります。1つ目は農地を頻繁に耕すことで土壌侵食を促進し、肥沃な土壌そのものを物理的に失ってしまうこと。2つ目は、土壌のさまざまな機能を担う土壌有機物が年々減少してしまうこと。そのため、これら2つの課題を克服しなければ、持続的な農地利用はできません。

WWD:持続可能性を考えると工業型の従来農業は、多数の課題や問題を抱えていますよね。

木村:ええ。しかし、幸いなことに私たちには選択肢があります。それは、それらの問題に個別に対応するのではなく、これまでの歴史と最新科学に基づいて、多くの問題を根本から解決できる農業システムへと切り替えていくことです。それが、パタゴニアがこれから国内でも取り組むリジェネラティブ・オーガニックです。

WWD:改めてリジェネラティブ・オーガニックについて教えてください。

木村:リジェネラティブ・オーガニックは、時間をかけて土壌の有機物を増やすことで気候変動への適応と緩和を同時に実現します。また、農業従事者や牧場に長期的な経営安定をもたらし、レジリエンスのある生態系と地域社会を築くことができます。結果的に世界中の何十億もの人々に食と衣類を提供するという役割を果たしながら、地球と人間の健康の維持に貢献できます。必要なものを生産し、それと同時に土壌を健全化することによって、温暖化の原因である炭素を土壌中に隔離できるのです。

WWD:パタゴニアはその農法を推進するために国際認証制度を作りましたね。いわゆる環境再生型農業(リジェネラティブ農法)とリジェネラティブ・オーガニックにはどのような違いがありますか?

木村:環境再生型農業は概念的なものであるために認証制度はなく、農薬や化学肥料、遺伝子組み換え技術などの利用も自由です。もちろん、これらを利用していない農業者もいます。そのため、リジェネラティブ(環境再生的)が意味するものが明確ではありません。不耕起栽培などの一部の管理方法を個別に採用しただけで「リジェネラティブ」という言葉を使うことにより、用語としての混乱を招いています。

WWD:なるほど。リジェネラティブ・オーガニック認証はどのような基準がありますか?

木村:認証に基づいた有機農業を基盤として、そこにリジェネラティブな管理方法を追加的に要件化することで厳格に定めています。これは①土壌の健康、②動物福祉、③社会的公平性の3つの柱から構成されています。必須条件は有機認証の取得で、「土を守ること」を重視した認証制度であるため、「なるべく耕さない省耕起栽培または不耕起栽培であること」「植物による土壌被覆が農地の25%以上を占めること」「生産者が作物の種類と作付けする場所を周期的に変える輪作を行い、3作物種以上の作物または多年生作物を利用していること」「リジェネラティブな(再生を促す)管理方法を3つ以上採用していること」など。この農法は全体論的な農業手法を促進することで、①気候変動緩和の方策となるように土壌有機物を増やし、植物と土壌により炭素隔離を行うこと、②動物福祉を向上させること、③農業者・牧場主・労働者に対して経済的な安定と公平性を提供することを目指しています。この認証制度は、リジェネラティブ・オーガニック・アライアンス(Regenerative Organic Alliance)という団体によって管理・運営されます。

WWD:私たちが抱えるさまざまな問題の解決への鍵の一つになる農法ですね! 一方で導入が簡単ではないではとも思います。

木村:私たちはリジェネラティブ・オーガニックを普及する道が容易ではないことを理解しています。気候風土や伝統的な農業技術、地域社会やサプライチェーンなど、多くのことに深い注意を払う必要があります。しかし私たちは、食や衣類とさまざまな害悪を生み出している農業という産業を転換させなくてはいけない時期にいます。そうしなければ、気候危機はより一層深刻化し、従来型の農業により引き起こされる深刻な環境問題はなくならず、土壌劣化により生産量が低下し続けることが明らかだからです。

健全な土壌は地球を救いながら良質な食べ物と衣類を生み出し、そして私たちの生命の健康と健全な環境を育みます。つまり、健康な土壌を育むことは地球・農業者・食べる人、地球に住むすべての人々と動植物を育むことなのです。

答えてくれた人:木村純平/環境・社会部門リジェネラティブ・オーガニック リサーチ担当:群馬県出身。「生態学に根差した再生可能な農業」を専門に研究。「リジェネラティブ・オーガニックに非常に強い共感と自身の専門性との整合性を感じ」2020年3月入社。リジェネラティブ・オーガニックに対する共感者・賛同者・実践者を国内に増やし、農業とその生産物(繊維と食料)を環境再生可能なものへと移行するサポートを行う。好きなアクテビティーはジョギングと陸域の自然散策。自身は、環境負荷の少ない食生活への挑戦、家庭ごみの堆肥化とミミズコンポストを、自然の則した農法での畑の管理を行う

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コーセーが温室効果ガス削減目標を上方改定 国際承認機関から「SBT」認定取得

 コーセーは、温室効果ガス(GHG)削減目標設定を求める国際的団体のSBTI(SCIENCE BASED TARGETS INISIATIVE)から、パリ協定が掲げるGHG排出量削減目標に適合した企業を認定する「SBT(SCIENCE BASED TARGETS)」を取得した。

 同社は2030年をゴールとするサステナビリティ戦略と目標をまとめた「コーセー サステナビリティ プラン」のテーマの一つに「事業活動全体での環境負荷低減」を掲げ、気候変動問題に取り組んでいる。今回の「SBT」認定は、同プランで定めた自社が使用するエネルギーや電力を由来とするGHG排出量の削減目標を従来の28%から35%へ改定し、バリューチェーン全体での削減目標を新たに30%と設定したことが認められた。

 同社はGHG排出量削減活動として20年度に主力生産拠点である群馬工場の全ての購入電力を再生可能エネルギーに切り替えたほか、プラスチック廃棄量を削減することで廃棄処理によるGHG排出量を低減するという観点から、主力のスキンケアブランド「雪肌精(SEKKISEI)」でプラスチック容器の回収プログラム「セッキセイ アースビューティプログラム」などを実施している。

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YKKがSBT「1.5℃目標」の認定取得

 YKKはこのほど、同社の2030年度に向けた温室効果ガス排出量削減目標が「SBT(SCIENCE BASED TARGETS)イニシアチブ」に地球の平均気温上昇を産業革命前と比べ1.5 度未満に抑えるという「1.5 度目標」に認定されたと発表した。

 「SBTイニシアチブ」は、気候変動による地球の気温上昇を産業革命前に比べ2℃未満に抑え、1.5℃未満を目標にする「パリ協定」に向け、企業が提出する温室効果ガスの削減目標に科学的根拠があると認定するもの。14年9月にWWF、CDP、UNGC(国連グローバル・コンパクト)、WRI(世界資源研究所)によって、共同で設立された。

 YKKは20年10月に策定した「YKK サステナビリティビジョン2050」の中で、自社およびサプライチェーンにおける温室効果ガスの排出量を30年までに18年比でスコープ1、2(スコープ1 は、自社の燃料の燃焼等による温室効果ガスの直接排出。スコープ2 は、自社が購入した電力・熱の使用による温室効果ガスの間接排出)で50%削減、スコープ3(サプライチェーン全体の温室効果ガスの間接排出)を18年比で30%削減すると掲げている。

 「SBTイニシアチブ」は、日本ではソニーが15年10月に認定されたのを皮切りに、18年3月に丸井グループが、同年8月にアシックスが認定されている。

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教えてパタゴニアさん! 連載第6回 店舗やオフィスでできること

 サステナビリティ先進企業のパタゴニアの担当者にその取り組みを聞く連載第6回。カーボンニュートラルへの取り組みや廃棄物削減は、あらゆる企業にとって大きな課題になっています。パタゴニアは2025年までにカーボンニュートラルになると宣言し、目標達成に向けて店舗や事務所での取り組みも強化しています。篠健司環境社会部ブランド・レスポンシビリティ・マネージャーに聞きます。

WWD:パタゴニアは2025年までにサプライチェーン全体でカーボンニュートラルになると宣言していますが、そのために店舗や事務所で行っていることを教えてください。

篠健司環境社会部ブランド・レスポンシビリティ・マネージャー(以下、篠):世界中に所有・運営するストアや事務所で使用する電力を、100%再生可能エネルギーから調達する目標を立てました。この目標を達成するためには、電力消費そのものを削減するために運営効率を向上した上で、電力会社を変更し、再生可能エネルギーに投資する必要があります。

WWD:日本支社で取り組んでいることは?

篠:一部の店舗やオフィスにおいて再生可能エネルギー発電所に由来する電気の比率がより高い電力会社に変更しました。一方で、マルチテナントビルに入居している施設の電力会社の変更にはビルオーナーの協力が必要で、現在働きかけを進めています。

WWD:再生可能エネルギーに由来する電気に切り替えることが困難な施設があるとも聞きます。

篠:そうした施設で使用する電気については、その相当量を相殺できる電気を発電する新たな太陽光発電プロジェクトに投資しています。私たちは、営農しながら太陽光発電を行うことのできる「ソーラーシェアリング」を選びました。ソーラーシェアリングは既存の場所の従来の用途を持続でき、中でも農業とクリーンなエネルギーの発電が共存する営農型太陽光発電は、化石燃料への依存を減らし、健康的な食料を供給しながら地域社会に多様なメリットをもたらします。大規模な森林伐採などの自然破壊を伴うメガソーラー発電とは異なり、既存の農地を活用することで生態系に対する影響を最小限に抑え、有機農業と組み合わせることにより地域社会や環境面で利益をもたらすことができます。

WWD:千葉県匝瑳市のソーラーシェアリングに参加されましたね。

篠:ここで発電した電気は、国内最大規模の直営店である渋谷ストアの年間電力使用量をほぼ賄っています。匝瑳市でより規模の大きいプロジェクトに、また、兵庫県豊岡市で4つのソーラーシェアリングに参加しています。

WWD:コウノトリの野生復帰を果たした兵庫県豊岡市で有機農法「コウノトリ育む農法」による米作りを行う坪口農事未来研究所のソーラーシェアリングにも投資されました。

篠:現在、坪口農事未来研究所では5基のソーラーシェアリングによって、月平均26.447kwの電力を発電しています。これは約107世帯分の家庭の電気使用量に相当します。いずれのプロジェクトも、太陽光パネルの下では有機農業が営まれ、クリーンな電気だけでなく、2次的、3次的な社会的ベネフィットを生み出しています。

WWD:2次的、3次的なベネフィットを生まないとカーボンニュートラル実現への道は険しいということでしょうか。

篠:CO2排出を削減するためには、店舗やオフィスを再生可能エネルギーに由来する電気に切り替えるだけでなく、リサイクル素材や炭素を土壌に隔離するリジェネラティブ・オーガニック農法で栽培したコットンの採用などにより、パタゴニアの総排出量の97%を占める製品サプライチェーンの圧倒的な影響を軽減する必要があります。カーボンニュートラルを25年までに達成するという目標は、最終的には、排出量をオフセットすることへの依存を減らし、いずれは排出量全体をゼロにすることを目指しています。

関内店で始めた取り組みがグローバルに

WWD:ゼロウエイスト(廃棄ゼロ)への取り組みはどのようなことを行っていますか?

篠:まず、廃棄物に関して世界規模でみると25年までに人間は毎年22億トンの廃棄物を発生させると科学者は予想しています。そのうちリサイクルやコンポスト(堆肥化)にされるのは平均でわずか35%、ほとんどが埋立地や焼却炉行き、またはポイ捨てされ、やがてお気に入りのサーフブレイクなどに漂着することになります。

私たちは長い間、再利用可能なカップやお皿や再生紙の使用、コンポストとリサイクルのための分別容器の増設、製品やサンプルの梱包用ポリ袋のリサイクル・システムなどにより、ごみ箱行きとなるものの削減に取り組んできました。しかしそれでは不十分で、さらに改善できることも知っています。

WWD:具体的にどのようなことを行っていますか?

篠:日本支社でのゼロウエイストに向けた一歩は、2017年横浜・関内ストアのスタッフが自主的に開催した海洋プラスチックごみの勉強会から始まりました。最初のプロジェクトは、スタッフ一人一人が、海洋ごみの中でも最も多い使い捨てのレジ袋、ペットボトル、ストロー、飲料カップの使用をやめる自主宣言を事務所に掲示し、ゼロウエイストに関する日々の会話を奨励することでした。
そして、その年の店舗改装を機に、横浜・関内ストアのコミュニケーション・スペースに「ZERO WASTE(ゼロウイエスト))」のメッセージとともに行動リストを掲示しました。店頭ではお客さまへのマイバッグ持参の呼びかけに一層力を入れ、取引先と交渉して環境に配慮した洗剤の量り売りを開始しました。18年からは近隣の有機農家の方々やお店と協力してゼロウェイスト・マーケットを定期的に開催し、ごみを出さないライフスタイルのヒントを提供してきました。

WWD:店舗運営で行っていることは?

篠:事業系ごみを徹底的に分別することで排出源を特定し、関係部署に素材やオペレーションの変更を働きかけています。プラスチック梱包材からテープまで、リユースやリサイクルが難しいありとあらゆる資材が含まれています。その一部は、関係部署、お取引先の協力によってプラスチック素材から紙素材に変更するなど前進しています。また、新型コロナウイルス感染症対策の影響で開始は延期されましたが、昨年秋からパタゴニア直営店全店で持ち帰り袋の提供を廃止しました。

横浜・関内ストアのスタッフの問題意識から始まったゼロウエイストの取り組みは他ストアやオフィス、US本社にも波及しています。日本支社のオフィスでは19年、有志による廃棄物の現状把握と、どうすればゼロウエイストを達成できるのかを分析、実践を始めています。またオンライン・セッションを開催し、多くのスタッフがそれぞれの業務、そして日常生活でゼロウエイストに向かって行動を始めています。

答えてくれた人:篠健司(しの・けんじ)/環境社会部ブランド・レスポンシビリティ・マネージャー:東京生まれ。1988年、パタゴニア日本支社設立直後に入社。広報、店舗運営を経て99年に退職。2001年に再入社し、物流部門、環境担当を経て現在はサステナビリティ業務を担当。好きなアウトドアアクティビティは、美しい自然の中を走るトレイルランニング。日常的に可能な限りの脱プラに取り組む。10年以上、ペットボトル飲料は購入していない

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教えてパタゴニアさん! 連載第6回 店舗やオフィスでできること

 サステナビリティ先進企業のパタゴニアの担当者にその取り組みを聞く連載第6回。カーボンニュートラルへの取り組みや廃棄物削減は、あらゆる企業にとって大きな課題になっています。パタゴニアは2025年までにカーボンニュートラルになると宣言し、目標達成に向けて店舗や事務所での取り組みも強化しています。篠健司環境社会部ブランド・レスポンシビリティ・マネージャーに聞きます。

WWD:パタゴニアは2025年までにサプライチェーン全体でカーボンニュートラルになると宣言していますが、そのために店舗や事務所で行っていることを教えてください。

篠健司環境社会部ブランド・レスポンシビリティ・マネージャー(以下、篠):世界中に所有・運営するストアや事務所で使用する電力を、100%再生可能エネルギーから調達する目標を立てました。この目標を達成するためには、電力消費そのものを削減するために運営効率を向上した上で、電力会社を変更し、再生可能エネルギーに投資する必要があります。

WWD:日本支社で取り組んでいることは?

篠:一部の店舗やオフィスにおいて再生可能エネルギー発電所に由来する電気の比率がより高い電力会社に変更しました。一方で、マルチテナントビルに入居している施設の電力会社の変更にはビルオーナーの協力が必要で、現在働きかけを進めています。

WWD:再生可能エネルギーに由来する電気に切り替えることが困難な施設があるとも聞きます。

篠:そうした施設で使用する電気については、その相当量を相殺できる電気を発電する新たな太陽光発電プロジェクトに投資しています。私たちは、営農しながら太陽光発電を行うことのできる「ソーラーシェアリング」を選びました。ソーラーシェアリングは既存の場所の従来の用途を持続でき、中でも農業とクリーンなエネルギーの発電が共存する営農型太陽光発電は、化石燃料への依存を減らし、健康的な食料を供給しながら地域社会に多様なメリットをもたらします。大規模な森林伐採などの自然破壊を伴うメガソーラー発電とは異なり、既存の農地を活用することで生態系に対する影響を最小限に抑え、有機農業と組み合わせることにより地域社会や環境面で利益をもたらすことができます。

WWD:千葉県匝瑳市のソーラーシェアリングに参加されましたね。

篠:ここで発電した電気は、国内最大規模の直営店である渋谷ストアの年間電力使用量をほぼ賄っています。匝瑳市でより規模の大きいプロジェクトに、また、兵庫県豊岡市で4つのソーラーシェアリングに参加しています。

WWD:コウノトリの野生復帰を果たした兵庫県豊岡市で有機農法「コウノトリ育む農法」による米作りを行う坪口農事未来研究所のソーラーシェアリングにも投資されました。

篠:現在、坪口農事未来研究所では5基のソーラーシェアリングによって、月平均26.447kwの電力を発電しています。これは約107世帯分の家庭の電気使用量に相当します。いずれのプロジェクトも、太陽光パネルの下では有機農業が営まれ、クリーンな電気だけでなく、2次的、3次的な社会的ベネフィットを生み出しています。

WWD:2次的、3次的なベネフィットを生まないとカーボンニュートラル実現への道は険しいということでしょうか。

篠:CO2排出を削減するためには、店舗やオフィスを再生可能エネルギーに由来する電気に切り替えるだけでなく、リサイクル素材や炭素を土壌に隔離するリジェネラティブ・オーガニック農法で栽培したコットンの採用などにより、パタゴニアの総排出量の97%を占める製品サプライチェーンの圧倒的な影響を軽減する必要があります。カーボンニュートラルを25年までに達成するという目標は、最終的には、排出量をオフセットすることへの依存を減らし、いずれは排出量全体をゼロにすることを目指しています。

関内店で始めた取り組みがグローバルに

WWD:ゼロウエイスト(廃棄ゼロ)への取り組みはどのようなことを行っていますか?

篠:まず、廃棄物に関して世界規模でみると25年までに人間は毎年22億トンの廃棄物を発生させると科学者は予想しています。そのうちリサイクルやコンポスト(堆肥化)にされるのは平均でわずか35%、ほとんどが埋立地や焼却炉行き、またはポイ捨てされ、やがてお気に入りのサーフブレイクなどに漂着することになります。

私たちは長い間、再利用可能なカップやお皿や再生紙の使用、コンポストとリサイクルのための分別容器の増設、製品やサンプルの梱包用ポリ袋のリサイクル・システムなどにより、ごみ箱行きとなるものの削減に取り組んできました。しかしそれでは不十分で、さらに改善できることも知っています。

WWD:具体的にどのようなことを行っていますか?

篠:日本支社でのゼロウエイストに向けた一歩は、2017年横浜・関内ストアのスタッフが自主的に開催した海洋プラスチックごみの勉強会から始まりました。最初のプロジェクトは、スタッフ一人一人が、海洋ごみの中でも最も多い使い捨てのレジ袋、ペットボトル、ストロー、飲料カップの使用をやめる自主宣言を事務所に掲示し、ゼロウエイストに関する日々の会話を奨励することでした。
そして、その年の店舗改装を機に、横浜・関内ストアのコミュニケーション・スペースに「ZERO WASTE(ゼロウイエスト))」のメッセージとともに行動リストを掲示しました。店頭ではお客さまへのマイバッグ持参の呼びかけに一層力を入れ、取引先と交渉して環境に配慮した洗剤の量り売りを開始しました。18年からは近隣の有機農家の方々やお店と協力してゼロウェイスト・マーケットを定期的に開催し、ごみを出さないライフスタイルのヒントを提供してきました。

WWD:店舗運営で行っていることは?

篠:事業系ごみを徹底的に分別することで排出源を特定し、関係部署に素材やオペレーションの変更を働きかけています。プラスチック梱包材からテープまで、リユースやリサイクルが難しいありとあらゆる資材が含まれています。その一部は、関係部署、お取引先の協力によってプラスチック素材から紙素材に変更するなど前進しています。また、新型コロナウイルス感染症対策の影響で開始は延期されましたが、昨年秋からパタゴニア直営店全店で持ち帰り袋の提供を廃止しました。

横浜・関内ストアのスタッフの問題意識から始まったゼロウエイストの取り組みは他ストアやオフィス、US本社にも波及しています。日本支社のオフィスでは19年、有志による廃棄物の現状把握と、どうすればゼロウエイストを達成できるのかを分析、実践を始めています。またオンライン・セッションを開催し、多くのスタッフがそれぞれの業務、そして日常生活でゼロウエイストに向かって行動を始めています。

答えてくれた人:篠健司(しの・けんじ)/環境社会部ブランド・レスポンシビリティ・マネージャー:東京生まれ。1988年、パタゴニア日本支社設立直後に入社。広報、店舗運営を経て99年に退職。2001年に再入社し、物流部門、環境担当を経て現在はサステナビリティ業務を担当。好きなアウトドアアクティビティは、美しい自然の中を走るトレイルランニング。日常的に可能な限りの脱プラに取り組む。10年以上、ペットボトル飲料は購入していない

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伊発自然派スキンケア「コンフォートゾーン」の都市生活向けエイジングケアラインを刷新

 コンフォートジャパンは4月14日、イタリア発スキンケアブランド「コンフォートゾーン(COMFORT ZONE)」のエイジングケアライン「スキンレギメン(skin regimen)」を全面刷新する。アイテムラインアップはスキンケアのほかハンドクリーム、ループスプレーなど全11種で、価格帯は3200~1万2800円。コンフォートゾーン公式オンラインショップのほか「ダヴィネス(DAVINES)」直営店でも取り扱う。

 今回のリニューアルではコンセプトや処方、ロゴデザインやパッケージなどを刷新。都市生活のストレスや生活習慣、紫外線や大気汚染が引き起こす肌のエイジングに着目し、“ファストリビング スローエイジング”のテーマを掲げる。モダンプラントケミストリー処方のコンセプトの下、抗酸化・抗炎症が期待できるオーガニック植物エキスと最先端分子のテクノロジーを融合した独自の複合成分「ロンジェヴィティ・コンプレックス」を配合した。100%自然の香り、マッサージしやすく冷却効果のあるテクスチャー、合成香料・シリコン・パラベン・動物由来成分・人工着色料不使用など、サステナブルで機能的な処方を採用した。 

 スキンケアは全9種の中から肌状態に合わせたカスタマイズが可能で、洗浄、補給、補整、保護の4ステップによるシンプルケアを提唱する。パッケージは可視光線を遮断する黒ガラスを含めて全ての包装資材がリサイクル可能。製造には100%自然エネルギーを使用している。

 「コンフォートゾーン」は1983年にイタリアで創業のダヴィネスが展開するスキンケアブランド。現在世界90カ国以上に販売網を有し、高級スパやエステサロンでも導入されているプロフェッショナルユースのアイテムをそろえる。都会に住み健康志向でスキンケアに関心の高い人、エシカルなブランドに価値を感じる人をターゲットとしている。企業活動の透明性や地球環境への取り組みが評価され、2016年にBコーポレーション認定を受けた。日本における輸入販売元のコンフォートジャパンは、かながわSDGsパートナーに認定されており、横浜市にある風力発電所ハマウィングへの協賛、湘南国際村「めぐりの森」における植樹祭への参加、「横浜ブルーカーボン」クレジット購入によるカーボンオフセットの取り組みなどを行っている。

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伊発自然派スキンケア「コンフォートゾーン」の都市生活向けエイジングケアラインを刷新

 コンフォートジャパンは4月14日、イタリア発スキンケアブランド「コンフォートゾーン(COMFORT ZONE)」のエイジングケアライン「スキンレギメン(skin regimen)」を全面刷新する。アイテムラインアップはスキンケアのほかハンドクリーム、ループスプレーなど全11種で、価格帯は3200~1万2800円。コンフォートゾーン公式オンラインショップのほか「ダヴィネス(DAVINES)」直営店でも取り扱う。

 今回のリニューアルではコンセプトや処方、ロゴデザインやパッケージなどを刷新。都市生活のストレスや生活習慣、紫外線や大気汚染が引き起こす肌のエイジングに着目し、“ファストリビング スローエイジング”のテーマを掲げる。モダンプラントケミストリー処方のコンセプトの下、抗酸化・抗炎症が期待できるオーガニック植物エキスと最先端分子のテクノロジーを融合した独自の複合成分「ロンジェヴィティ・コンプレックス」を配合した。100%自然の香り、マッサージしやすく冷却効果のあるテクスチャー、合成香料・シリコン・パラベン・動物由来成分・人工着色料不使用など、サステナブルで機能的な処方を採用した。 

 スキンケアは全9種の中から肌状態に合わせたカスタマイズが可能で、洗浄、補給、補整、保護の4ステップによるシンプルケアを提唱する。パッケージは可視光線を遮断する黒ガラスを含めて全ての包装資材がリサイクル可能。製造には100%自然エネルギーを使用している。

 「コンフォートゾーン」は1983年にイタリアで創業のダヴィネスが展開するスキンケアブランド。現在世界90カ国以上に販売網を有し、高級スパやエステサロンでも導入されているプロフェッショナルユースのアイテムをそろえる。都会に住み健康志向でスキンケアに関心の高い人、エシカルなブランドに価値を感じる人をターゲットとしている。企業活動の透明性や地球環境への取り組みが評価され、2016年にBコーポレーション認定を受けた。日本における輸入販売元のコンフォートジャパンは、かながわSDGsパートナーに認定されており、横浜市にある風力発電所ハマウィングへの協賛、湘南国際村「めぐりの森」における植樹祭への参加、「横浜ブルーカーボン」クレジット購入によるカーボンオフセットの取り組みなどを行っている。

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オールバーズが“100%植物由来レザー”に投資、スタートアップ企業と共同で技術開発

 サンフランシスコ発のスタートアップでサステナブルファッションの提案で注目を集めるオールバーズ(ALLBIRDS)は、⽶国イリノイ州のナチュラル・ファイバー・ウェールディング(NATURAL FIBER WELDING、以下NFW)と提携し、同社が持つ技術「Mirumテクノロジー」に200万ドル(約2億1000万円)を投資すると発表した。NFWは100%植物由来の“プラントレザー”の開発に成功した注目のスタートアップ企業。今後、「Mirumテクノロジー」を用いた製品を開発し、またその技術をオープンソース化していく。

 “プラントレザー”は、植物油や天然ゴムなどのバイオ素材を原料としていて生分解し、従来の天然⽪⾰に⽐べ1/40、⽯油由来の合成⽪⾰と⽐べても1/17もカーボンインパクト(⼆酸化炭素による環境への影響)を軽減することに成功している。

 オールバーズは、“カーボンニュートラル”を目指すと宣言し、2020年4月から全商品にカーボンフットプリント(温室効果ガス排出量)を表示。測定・削減・相殺することに取り組む。同社が問題視していたという、靴底フォームに用いるEVA(通常は石油由来)を100%植物由来で作ることに成功し、その技術をオープンソース化している。

 オールバーズのジョーイ・ズウィリンジャー(Joey Zwillinger)共同創業者は「多くのファッション企業は、環境より⽣産スピードとコストを優先させるために、環境に悪影響な⽯油由来の合成素材やサステナビリティに⽋けるレザーを⻑く使⽤し続けてきた。NFW社はスケーラブルかつサステナブルなプラントレザーを開発しており、これらの素材は⼆酸化炭素排出量を98%も抑えられるポテンシャルを秘めている。今回のパートナーシップ及びそのテクノロジーによって開発される“プラントレザー”は、ファッション業界から⽯油系素材を失くすための⼤きな⼀歩となる」とコメントを発表。

 NFWのルーク・ハヴェラール(Luke Haverhals)創業者も「今、社会に蔓延している⽋乏感――これはプラスティックや⽯油系製品に頼り続けてきた結果だ。しかしサステナブルで再⽣可能な⼿法に基づいた技術は、この問題を解決し、まったく新しい時代を切り開くだろう。新しい時代に向けた取り組みを牽引するオールバーズ社とパートナーシップを結ぶことは、私たちにとっても⼤きな意味があり、⼤変喜ばしいことである」とコメントした。

 NFWは2015年、ルーク・ハヴェラールが創業。中核技術は天然ポリマーのリフォーマットで、「Mirum」は天然由来の⽣分解性ポリマーで作られており、ポリウレタンでコーティングせず、合成接着剤も不使用で、⼿触り感の調整や複雑な構成など、さまざまなアレンジが可能な素材だという。

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教えて!パタゴニアさん 連載第5回 外部組織と協働してコミュニティーを作る方法

 サステナビリティ先進企業のパタゴニアの担当者にその取り組みを聞く連載第5回。環境と人権に配慮したビジネスを行うには、個人・一企業での取り組みでは限界があり、NPO・NGOをはじめとする外部組織との協働が不可欠です。パタゴニアは1970年代から環境団体と協働をはじめ、85年からは自然環境の保護・回復のために売り上げの1%を利用することを誓約。これまでに総額1億ドル(約104億円)相当の寄付を環境助成金プログラムや製品寄付を通じて行ってきました。そんなパタゴニアは、現在の環境危機をどのように捉え、どのような行動を起こしているのでしょうか。中西悦子環境社会部門アクティビズム・コーディネーターに聞きます。

WWD:現在の気候危機をはじめとする環境危機をパタゴニアはどのように見ていますか?

中西悦子環境社会部門アクティビズム・コーディネーター(以下、中西):パタゴニアは一企業として、科学者が「ここから正念場の10年」という気候危機、そして地球上全ての生物が絶滅の危機に瀕しているという事実を重く見ています。この問題に対して、私たちの声、想像力、ビジネス、コミュニティー、全てのリソースを活用して行動します。

WWD:自社だけでは難しいことも多そうです。

中西:その通りです。そのため、再生可能エネルギーを促進する運動に取り組んだり、気候変動によって最も深刻な影響を受ける人々の権利のために闘ったりしている数百のNPO・NGO組織を支援しています。2018年11月には、気候危機に取り組む複数の組織に、トランプ政権による減税政策の結果発生した予定外の現金1000万ドル(約14億円)を提供しました。

WWD:寄付だけではなく、社員が自らボランティアなどで環境団体と共にアクションを起こしていますね。

中西:社員の多くはアウトドアで過ごすだけではなく、それを保護することにも情熱を傾けています。当社では1994年にスタートした環境インターンシップ・プログラムを通して、最長2カ月間職場を離れ、給与と福利厚生を受けながら各自が選んだ世界各地の環境保護団体の活動に参加することができます。今期は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で実施できていませんが、昨年は43団体、延べ約1万時間のボランティア活動を行いました。地域コミュニティーで活動する小規模の草の根団体にとって、パタゴニア社員のインターンが提供する無償ボランティアは貴重なリソースであり、また、インターンシップを経験した社員もまた、本人の体験を通じた言葉で語り、インスピレーションをもらい、自然環境を守るための取り組みへの深い理解、そしてパタゴニアのミッションを再確認して職場に戻っているのでいい相乗効果を生んでいます。

WWD:そうした経験が社員一人一人の環境への理解を深め、店頭や地域から広がるコミュニティーの輪につながっているのですね。

中西:私たちはいち早く地域の自然環境の変化に気づき、その生態系を守るために活動する方々を、共に未来をつくるパートナーと考えています。自分たちのビジネスや暮らしに必要な水や土や空気を守り、健全な地球を望む点が共通していますから。互いに関係し、影響し、持ち場を守るというような気持ちでいます。

WWD:その輪は確実に広がっています。

中西:2002年には、(パタゴニア創業者の)イヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard )と、ブルー・リボン・フライズのオーナーであるクレイグ・マシューズ(Craig Mattews)が、売り上げの1%で自然環境保護に貢献するビジネスの奨励を目的とする非営利団体「1%フォー・ザ・プラネット(1% FOR THE PLANET)」を設立しました。1社だけで行動するのではなく、自然環境保護の必要性を理解する企業の同盟です。参加企業は「ビジネスでの利益と損失は地球環境の健全性にも直接関連する」ことを理解し、産業が与える社会的・環境的影響に関心を持っています。

WWD:この他にも協業している主な組織は?

中西:テキスタイル・エクスチェンジ(TEXTILE EXCHANGE)、サステナブルアパレル連合(SUSTAINABLE APPAREL COALITION)、公正労働協会(FLA)、ブルーサインテクノロジーズ( BLUESIGN TECHNOLOGIES)、コンサベーション・アライアンス(CONSERVATION ALLIANCE)、革新的な気候・エネルギー政策を求める企業グループ(BICEP)、フェアトレードUSAなどです。

WWD:日本の組織との協業はありますか?

中西:一般社団法人コンサベーション·アライアンス·ジャパンや気候変動イニシアチブ、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)などに参加しています。JCLPは気候危機に速やかな脱炭素社会への移行を実現し、1.5℃目標の達成を目指す企業グループです。30年までに再生可能エネルギー比率50%を目標とすることなど、政策提言なども行い、企業の立場から脱炭素社会への具体的な道筋について意見を述べています。昨年10月26日、菅首相が所信表明演説で、50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにし、脱炭素社会の実現を目指すという日本政府の目標を示し、11月には国会で「気候非常事態宣言」が採択され、遅ればせながら日本も脱炭素社会に向けて動き出しました。

WWD:菅首相のカーボンニュートラル宣言はインパクトがありました。

中西:世界の潮流、ESG投資など金融の動きなど要因はさまざまにありますが、これまでの市民活動、NPO・NGOによる働きかけはもちろん、最も気候変動の影響を受ける若い世代の声の広がりもこの動きを後押ししています。実現に向けた対策を加速させていくためには、企業やNPO・NGOだけでなく、スポーツコミュニティー、市民、学生、自治体職員、一次産業従事者など、地域やテーマによってさまざまなステークホルダーとともに取り組んでいくことが重要であると考えています。

WWD:環境保護活動を成功に導くスキルの提供も行っていて、助成先を対象とした宿泊型ワークショップ「草の根活動家のためのツール会議」(米国は1994年、日本は2008にスタート)からさまざまな活動に広がっています。

中西:18年に実施した「草の根活動家のためのツール会議」は気候変動をテーマに行い、その後、長野県白馬村ではスノーボーダーによる気候変動問題に取り組むグループ一般社団法人プロテクト アウワ ウィンターズ ジャパン(PROTECT OUR WINTERS JAPAN、以下、POWJ)が設立されました。自然エネルギー信州ネットや白馬村職員など、会議に参加したメンバーが中心となって地元企業の支援を集めながら、長野県知事や白馬村長も出席した「気候変動&地域経済シンポジウム―雪を守る、白馬で滑り続けるー地域を豊かにする山岳リゾートを目指して」を開催しました。この活動をきっかけに、スノーボーダーだけではなく、住民や高校生の積極的な取り組みも生まれて国内3番目となる白馬村の「気候非常事態宣言」また「カーボンゼロ宣言」を後押ししました。

WWD:店頭と連動した署名活動もありますね。私も署名したことがあります。

中西:パタゴニア直営店も協力したPOWJによる再生可能エネルギー100%のスキー場を目指す1万4509筆の応援署名が、20年10月29日に一般社団法人白馬バレーツーリズム(HAKUBAVALLEY TOURISM)へ届けられました。これに先駆けて、エリア内のスキー場ではナイター営業を再生可能エネルギーで行うなどの具体的な取り組みが始まり、スキー場だけでなく飲食業や宿泊業などさまざまな企業の皆さんがSDGsの取り組みに着手し始める動きになっています。

また、昨年12月には「草の根活動家のためのツール会議」の一環で「クライメート・アクティビズム・スクール」を15〜24歳の若い世代を対象にオンラインで実施し、26日は143人、27日は140人が参加しました。10月に募集を開始し1カ月で100人の定員に449人の応募があり、うち150人が高校生です。気候危機時代を見据えて新たに学び、行動することを実践したいと手を挙げてくれました。未来は明るいなんて簡単に言わず、彼らに未来を任せるだけではなく、何ができるのか考え、大人の私たちも持ち場の役割を果たしていかなければいけません。パタゴニアも行動し続けます。

WWD:今、日本で注目しているNPO・NGOは?
中西:ジャパン・ビヨンド・コール(JAPAN BEYOND COAL)の動きや、実際に影響を受けることになる若い世代によるFRIDAYS FOR FUTURE、NO YOUTH NO JAPAN、などの活動にも注目しています。ジャパン・ビヨンド・コールは気候変動の進行を止め、持続可能なエネルギー社会を実現するために要因である温室効果ガスCO2を排出する石炭火力発電所を30年までにゼロにすることを目指し、国内で気候変動に取り組むNPO・NGOが協力して活動しています。その声を社会に反映させ、社会をつくる担い手としてともに取り組みたいと考えています。

答えてくれた人:中西悦子(なかにし・えつこ/環境社会部門アクティビズム・コーディネーター:2002年パタゴニア日本支社入社し、渋谷店に配属。07年から環境部門で環境助成金、非資金的な環境NPO・NGOの支援、環境キャンペーン、イニシアチブを担当。アクティビズムの責任者として、気候危機をはじめとする環境・社会問題の解決に向けて社内外のさまざまなステークホルダーと協働、共創する。助成先を対象とした宿泊型ワークショップ「草の根活動家のためのツール会議」を企画運営。パタゴニア製品との出合いのきっかけでもあるスキーを楽しみ、ボランティアでは、北海道に生息するシマフクロウの研究者ともに保護活動に参加。日々行っているサステナビリティの取り組みは堆肥づくり、応援したい活動への寄付

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コーセーがサステナ活動を加速 主力工場を再エネに切り替えや再生プラ使用の買い物かご製作

 コーセーは、環境・気候変動問題への対応が「事業成長」と「持続可能な社会の実現」の両立を図るために、欠かすことのできない重要な経営課題の一つとしてサステナブル活動を進める。その取り組みは今年に入り加速している。

 1月からコーセー群馬工場で購入している全ての電力を再生可能エネルギーへ切り替えた。これは、2030年度までに温室効果ガス排出量を28%削減(2018年度比)するという目標値の実現に向けたものだ。コーセー群馬工場は敷地面積が8万9000平方メートルあり、スキンケアやメイクアップ製品を生産するマザー工場。温室効果ガス排出量は同社グループ全拠点の約23%分(2018年度)に相当する。今回の再生可能エネルギーへの切り替えによって、30年度をゴールとする温室効果ガス排出量の削減目標を35%に引き上げることも検討しているという。

 09年から同社の主力ブランド「雪肌精」で進める海の環境保全活動でも新たな動きがある。長年活動を続ける中で、海洋汚染や海の生態系に影響を及ぼす海洋プラスチックごみの問題に直面した。これら問題を消費者に知ってもらうきっかけづくりとして、イオンスタイル上尾とテラサイクルジャパンと協業し、海洋プラスチックごみを再利用した買い物かごを製作した。

 イオンスタイル上尾は同社の事業所跡地に昨年12月4日にオープン。ゆかりある土地でもあることから1月8日から店内で使用される買い物かご全てを、日本国内の海岸で回収した海洋プラスチックごみを由来とする再生樹脂を一部に使用した「SEKKISEI/雪肌精」ロゴ入りのタイプに変更した。さらに店内では「Gift from the Earth & Return to the Earth」のメッセージを訴求したポスターを掲示し、「雪肌精」を通じた地球環境保全の啓発にも取り組む。

 同社は昨年4月にグループ全体のサステナビリティに関する取り組みと30年までの目標をまとめた「コーセー サステナビリティ プラン」を発表。持続可能な社会の実現へ貢献するため今後も意欲的に実施する。

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コーセーがサステナ活動を加速 主力工場を再エネに切り替えや再生プラ使用の買い物かご製作

 コーセーは、環境・気候変動問題への対応が「事業成長」と「持続可能な社会の実現」の両立を図るために、欠かすことのできない重要な経営課題の一つとしてサステナブル活動を進める。その取り組みは今年に入り加速している。

 1月からコーセー群馬工場で購入している全ての電力を再生可能エネルギーへ切り替えた。これは、2030年度までに温室効果ガス排出量を28%削減(2018年度比)するという目標値の実現に向けたものだ。コーセー群馬工場は敷地面積が8万9000平方メートルあり、スキンケアやメイクアップ製品を生産するマザー工場。温室効果ガス排出量は同社グループ全拠点の約23%分(2018年度)に相当する。今回の再生可能エネルギーへの切り替えによって、30年度をゴールとする温室効果ガス排出量の削減目標を35%に引き上げることも検討しているという。

 09年から同社の主力ブランド「雪肌精」で進める海の環境保全活動でも新たな動きがある。長年活動を続ける中で、海洋汚染や海の生態系に影響を及ぼす海洋プラスチックごみの問題に直面した。これら問題を消費者に知ってもらうきっかけづくりとして、イオンスタイル上尾とテラサイクルジャパンと協業し、海洋プラスチックごみを再利用した買い物かごを製作した。

 イオンスタイル上尾は同社の事業所跡地に昨年12月4日にオープン。ゆかりある土地でもあることから1月8日から店内で使用される買い物かご全てを、日本国内の海岸で回収した海洋プラスチックごみを由来とする再生樹脂を一部に使用した「SEKKISEI/雪肌精」ロゴ入りのタイプに変更した。さらに店内では「Gift from the Earth & Return to the Earth」のメッセージを訴求したポスターを掲示し、「雪肌精」を通じた地球環境保全の啓発にも取り組む。

 同社は昨年4月にグループ全体のサステナビリティに関する取り組みと30年までの目標をまとめた「コーセー サステナビリティ プラン」を発表。持続可能な社会の実現へ貢献するため今後も意欲的に実施する。

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「モンクレール」が新作ダウンジャケット発売 気候変動や循環型への取り組みを体現

 「モンクレール(MONCLER)」はこのほど、サステナビリティへの取り組みの強化計画「ボーン トゥ プロテクト サステナビリティ プラン(Born to Protect Sustainability Plan)」の一環として、サステナブルな素材のみを使用したダウンジャケット“ボーン トゥ プロテクト ジャケット”を発売した。

 同ジャケットは2020年10月に同ブランドが発表した「ボーン トゥ プロテクト サステナビリティ プラン」の柱である気候変動やサーキュラリティーへの取り組みなどを体現したアイテムで、ダウン以外の生地やジップ、ボタン部分には再生ナイロン素材の「エコニール」を使用した。これにより通常の生産工程と比較して、二酸化炭素排出量の約40%を削減した。ダウンはトレーサビリティーや徹底した品質管理が行われている製品に付与されるDIST認証(Down Integrity System and Traceability)を取得。袖には“MONCLER BORN TO PROTECT”の文字を施し、内側には1960年代から「モンクレール」のジャケットの裏地に登場してきたキャラクターのモンダックを描いた。パッケージにもこだわり、ショッピングバックやギフトボックスには再生紙を使用した。

 メンズはボリューム感のある“ニケーズ(21万2000円)”やフロントポケットが特徴的な“ゲイト”(17万8000円)、ウィメンズはショート丈の“テレンバ”(16万1000円)とスリムなラインが特徴のロングジャケット“ルメネ”(19万9000円)などをそろえる。“ゲイト”(8万4000円~)と“ルメネ”(8万9000円~)はキッズサイズも用意した。カラーはブラックのみで、国内店舗と公式ECサイトで取り扱う。

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佐久間裕美子著 「Weの市民革命」 「消費アクティビズム」の時代に、企業はどう成長していくべきか

 ニューヨークに在住し、これまで「ヒップな生活革命」(朝日出版社)、「ピンヒールははかない」(幻冬舎)、「真面目にマリファナの話をしよう」(文藝春秋)などを上梓してきた佐久間裕美子氏による新刊「Weの市民革命」(朝日出版)が発売されました。佐久間氏には昨年4月にアメリカのサプライチェーンの現状について寄稿してもらい(「佐久間裕美子のNYリポート 新型コロナ禍を機にサプライチェーンを再考する」)、コロナ禍で浮き彫りになったサプライチェーンの問題点を的確に解説していただきました。

 新刊「Weの市民革命」では、新型コロナやアメリカ大統領選挙によって、社会変革を求める力が消費文化や企業にどんな影響を及ぼしたのかというグローバルな視点から、ニューヨークに暮らす一人の消費者として見た、まわりのコミュニティーの変化、さらには差し迫った地球温暖化や廃棄問題などに関するグローバルな動きと、「自分ごとのサステナビリティ」や「自分はどんな消費者でありたいか」といった一消費者の目線で書かれた環境問題に焦点を当てています。

「消費アクティビズム」の時代が到来

 「消費」によって自身のスタンスを表明し、社会の変革を求めて声をあげていくミレニアル世代や、それより若い世代のジェネレーションZに対し、企業側がそれにどう向き合い、これまでの利益重視型から新たな一歩を踏み出そうとしているかの事例は、その流れが強くなってくるであろう今後の日本においても、知っておくべき内容です。

 「自分が反対する政治家とつながりのある企業やブランドには不買の姿勢を表明する『ボイコット』と、自分が信じる大義や価値にコミットする企業やブランドには喜んでお金を使う『バイコット』の二本柱からなる、『消費アクティビズム』の時代が到来した」といいます。それをけん引するミレニアム世代は、モチベーションも高く独立精神も強いが、同時に自我も強いため、皮肉を込めて「ミー(Me)」世代と呼ばれていましたが、財力と消費力がある彼らを中心に「消費」を通じた社会運動を先導するようになったといいます。そのあとに続くのはミレニアル世代同様に、社会意識や環境への関心が高く、ミレニアル以上に世界を変えたいというモチベーションと危機感の強いジェネレーションZ世代。彼らは環境、差別、移民問題といった人権問題に対し、「個人の自由より世界全体の人権を重んじ、過去に抑圧されてきた人たちの真の社会的平等追求することが自分たちの『共同責任』」であり、それが「『We』の時代の到来」の背景にあるといいます。

 アメリカなどの海外のみならず、日本に目を向けてみても、若者による企業や社会への投げかけは、少しずつ顕著になってきています。つい最近では、女子高生たちがファミリーマートの総菜シリーズ「お母さん食堂」のネーミングを変えてほしいと訴える署名活動を行い話題になっています。お母さんが食事を作るのは当たり前という“無意識の偏見”につながりかねないとしているのです。

 SNSの発達であっという間に運動が世界に拡散されていく時代に、企業側はどう変化していくべきなのでしょうか?著書にある「革命が中継されている」という言葉は決して大げさなものではないということを、紹介されている事例を読み進めるうちに理解していきます。

企業の政治的スタンスを表明させる若者のエネルギー

 これまで、政治的立場の表明を避ける姿勢を貫くことで政治的立場が違ったり、中立の消費者を遠ざけてしまうリスクを避けてきたりした企業も、若い消費者たちの購買力と発信力が、企業に政治的スタンスを表明させる原動力になっていると言います。加えて、人権問題などの政策の変更により、直接的に影響を受ける従業員や顧客の権利を守るためにもスタンスを表明するようになってきているとしています。事例の一つとして紹介されていたのは、中絶の権利を制限しようとするいくつかの州の運動に対して、大企業から中小のファッション企業までが連名で「(中絶を制限することは)従業員や顧客の健康、独立性、経済的な安定を脅かすもの」とする書簡をニューヨーク・タイムズ紙の全面広告に掲載したという内容でした。

 「企業の存在意義は利益を出すことだけではなく、具体的な社会課題の解決、『パーパス(目的)』の達成を目指す企業の方が組織として強く、長期的な成功を実現できる」。そのシフトを促しているのは、主にミレニアル世代の従業員や消費者であり、企業に対する彼らの目線がコロナ禍においてますます厳しくなっている。――彼らの声に柔軟に耳を傾ける企業と、変革に腰の重い企業では、それこそ長期的な成長に差が出るのではと示唆する内容でした。近年、「パーパス・ドリブン(目的に動かされる)」という言葉を耳にすることも増えましたが、目的に向かって邁進する企業が最終的には企業の存在意義を強め、社会に支持され必要とされるのではないでしょうか。

 実際に、新たなビジネスのシステムや考え方も生まれています。株主だけでなく、従業員や顧客を含むステークホルダーを大切にしているかといった評価軸に従って、証券の価値が決まる証券取引所、ロングターム証券取引所が2020年9月にオープンしたそうです。四半期ごとの短期の財務諸表で判断する社会システムに替わり、長期的なバリューを創出できるかを重視しており、企業に長期的持続性を求める投資家と、長期的なビジョンを持つ企業とをマッチングすることで、「社会全体に対して責任を負うことへのインセンティブを創出する」というのが特徴です。

自社の事業に関わる全ての人々がステークホルダーである

 2000年代になって、「株主へ利益を還元することよりも、『社会全体の利益』を優先する企業形態が登場し、社会や地域全体を自分のコミュニティーとみなし、それを守るための経済活動にコミットする企業が増えてきた」と言います。「従業員、コミュニティー、サプライヤー(物資の供給元)やベンダー(出入りの業者)、顧客、株主といった、自社の事業に関わる全ての人々をステークホルダー(利害関係の保持者)とし、事業に関わる全員の勤務・商業環境を整備したり、フェアな賃金を確保したりするだけでなく、彼らの幸せを実現しようと努めることが組織を強くし、事業の持続性を高める」という考え方です。

 調査会社デロイトのミレニアルの動向を分析するリサーチ結果によると、ミレニアル世代は、仕事のやりがいよりもワーク・ライフ・バランスや勤務形態の柔軟性を重要視する一方で、17年以降の結果では、彼らにとって働く企業を決める上で大切なのは、雇用主の経営方針がサステイナブルあるいはエシカルであるか、従業員や顧客を大切にしているか、商品やサービスのクオリティーが良いかといったことであり、経営陣に求めるのは、「競争ではなくコラボレーション、権力闘争ではなく透明性を重んじる企業文化」だと言います。

 アクティビストでもある従業員が増えていく中で、今後企業はどのように彼らと向き合い、変革を求める声に耳を傾けるか、それが企業評価、ひいては、社会における企業価値につながっていくのではないかと思います。「社会のプログレスを信じる従業員との良好な関係が、ビジネスとしての成功に必要な要素の一つであることを企業側も理解しつつある」という流れは、ますます加速していきそうです。

 佐久間氏はあとがきで、「新時代の『We』は社会全体の集合的な利益だけを追求するものではない。一人ひとりが差別や抑圧を受けずに生きられる世の中を目指し、自分以外の誰かのために、声を上げたり、行動を起こすから『We』なのだ」と締めくくっています。

 著書の中ではこのほかにも、アパレル産業のサステナビリティから、佐久間氏がゼロ・ウェウスト(ごみをゼロにすることを目標に廃棄物を減らす取り組み)を実践してみた話まで、住んでいるニューヨークの環境問題を織り交ぜながら、とても分かりやすく書かれています。まだまだここでは書ききれませんので、興味のある方はぜひ手にとってみてください。

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アシックスが「ファッション協定」に日本企業として初めて加盟

 アシックス(ASICS)は12月10日、ファッション産業の環境負荷軽減に向けた国際的な枠組みである「ファッション協定(THE FASHION PACT)」に、日本企業として初めて加盟したと発表した。

 「ファッション協定」は2019年8月、フランス・ピアリッツで開催されたG7サミットで欧米を中心とするファッションおよびテキスタイル企業32社が、気候変動、生物多様性、海洋保護の3分野で共通の具体的な目標に向かって取り組むことを誓約したもので、現在までにグッチ(GUCCI)やサンローラン(SAINT LAURENT)を擁するケリング(KRING)、シャネル(CHANEL)、エルメス(HERMES)、ナイキ(NIKE)、アディダス(ADIDAS)、H&Mへネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ)、ザラ(ZARA)を擁するインディテックス(INDITEX)などが加盟している。

 廣田康人アシックス代表取締役兼COOは、「将来世代にわたり、多くの人々が心身ともに健康的になる世界を実現させるためには持続可能な地球環境が不可欠であると考えている。ファッション業界における環境負荷軽減をさらに加速させるために、『ファッション協定』加盟企業と連携し、業界一丸となった取り組みを推進していく」とコメントを発表した。 

 また、かねてから小泉進次郎環境大臣は「ファッション協定」への日本企業の参加を促しており、「WWDジャパン」が11月に行ったインタビューでも「どれだけいい取り組みをしていても『ファッション協定』に日本企業の参加がゼロの時点で日本のファッション企業はサステナビリティに関心がないと見られても仕方ないだろう。協定の指標が日本と合わないという懸念もあるようだが、国際社会にメッセージを届けるという大局から考えると参加せずに外で発言していても始まらない。まず土俵に上がり、日本の意見や立場を伝え始めないと非常にもったいない」と言及していた。

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「モンクレール」がダウ・ジョーンズのサステナブル企業ランキングで首位

 モンクレール(MONCLER)が、ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(Dow Jones Sustainability Index以下、DJSI)のテキスタイル・アパレル・ラグジュアリーグッズ部門で「DJSI ワールド(DJSI WORLD)」と「DJSI ヨーロッパ(DJSI EUROPE)」のトップに輝いた。DJSIはサステナビリティ推進企業を、経済と環境、社会的責任からなる基準でランク付けする。調査は信用格付けプロバイダーであるS&Pグローバル(S&P GLOBAL)が行っている。

 モンクレールのレモ・ルッフィーニ(Remo Ruffini)会長兼最高経営責任者(CEO)は、「われわれの会社の発展において、サステナビリティが戦略的資産であるということを証明している。ステークホルダーへの決意の表明であり、子ども達や未来への道徳的義務である。モンクレールでは人々や環境を反映して敬意を示し、守ることのできるビジネスモデルを構築するために日々取り組んでいる。次世代に確かなビジョンや新しいインスピレーション、希望を残していきたい」とコメントした。

 同社は10月、2025年までにサステナビリティへの取り組み強化計画として、気候変動対策、持続可能な循環型経済、公正な資源調達、多様性の強化、そして地域社会への還元という5つの戦略的要素を主軸とする「ボーン トゥ プロテクト サステナビリティ プラン(Born to Protect Sustainability Plan)」を発表した。また、「ナーチャー ジーニアス(Nurture Genius)」プロジェクトの一環として、21年1月までにダイバーシティー&インクルージョン協議会を発足し、社内外文化の改革にも取り組んでいる。

 これまでも製品パッケージの90%にサステナブルな素材を使用し、17〜19年には二酸化炭素排出量を30%削減してきた。同プランでは新たに21年までにカーボンニュートラルを世界的に実現し、23年までに100%再生可能なエネルギーを世界規模で採用するなどの目標を設定した。

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コーセー、気候リスク経営を求めるTCFD開示への賛同を表明 「雪肌精」の容器回収プログラムもスタート

 コーセーはこのほど、企業の気候変動に対する情報開示、経営戦略などを検討する「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures以下、TCFD)」の提言への賛同を表明するとともに、国内賛同企業による組織「TCFDコンソーシアム」に加入した。今後、TCFDの提言に基づいて気候変動が事業におよぼすリスクと機会についてステークホルダーへの積極的な情報開示を進め、グループ全体でCO2排出量削減にも積極的に取り組んでいく。

 同社は4月、中長期ビジョン「VISION2026」の中で、今年度から3つの基盤戦略の一つに「バリューチェーン全体にわたるサステナビリティ戦略の推進」を掲げ、グループ全体のサステナビリティへの取り組みと2030年までの目標をまとめた「コーセー サステナビリティ プラン」を発表した。環境・気候変動問題への対応について、欠かすことのできない重要な経営課題の一つとしていた。

 TCFDは主要国の中央銀行や金融監督当局、財務省などが参加する金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示および金融機関の対応を検討することを目的に15年12月に設立されタスクフォース。化粧品業界では資生堂や花王などが昨年、TCFDの提言へ賛同を表明した。気候変動が事業に与えるリスク・機会を把握し、経営戦略に織り込もうとする動きが広がっている。

 コーセーでは環境保全活動の一環として、11月1日から同社を代表するスキンケアブランド「雪肌精」を対象に、イオングループが展開する全国の「イオン」「イオンスタイル」33店舗でプラスチック空容器の回収プログラムを開始する。リサイクルにあたっては、テラサイクルジャパン合同会社が運営する回収プログラムを活用する。

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花王と和歌山市がSDGs推進で連携協定を締結

 花王は10月21日、和歌山市とSDGs推進に関する連携協定を結んだ。4つの項目を掲げ、地域社会の持続的な発展に向けて幅広い事業領域とそれを支える研究技術で貢献する。期間は同日から1年間となる。
 
 1つ目は海をはじめとした豊かな自然環境の継承。海洋プラスチックごみの調査やリサイクルの推進、海洋環境保全に向けた活動に着手する。中でもリサイクルに関しては、2015 年から同社が提案する循環型社会への新しいシステム・ライフスタイル「リサイクリエーション」と連携する。海洋プラスチック汚染などから海を守るため、和歌山市内で回収した海洋プラスチックごみを再生樹脂に加工する。現状では机や椅子として海辺施設での再利用や道路用高強度剤として海沿いのサイクリングロードに活用する予定だ。

 2つ目は暮らしやすい地域社会の実現。家事育児の視点で、子育てしやすい環境づくりの実現のため、 和歌山市内の子育て世代のモニタリング協力による、魅力ある講座内容や取り組みなどを検討する。 3つ目が未来に向けた人材の育成。プラスチックごみ問題などを題材とした授業プログラムを和歌山市内の小学校で先行実施するなど、 地域や社会の課題解決の視点で検証を行ないながら、市全域の活動に広げていけるよう検討する。4つ目が和歌山市における SDGs の達成に向けた連携協力となる。

 同社は1944年から和歌山市に自社工場を有し、ファブリック&ホームケア、ビューティケア、ケミカルとさまざまな事業の製品を生産する。現在、研究所も含めた和歌山事業場は、国内で最大の事業拠点となっている。

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YKKが2050年までに「気候中立」 サステナビリティの新ビジョン発表

 YKKは2050年までに「気候中立(climate neutral、実質排出ゼロ)」を達成するための「YKKサステナビリティビジョン2050」を策定した。同ビジョンは、19年に策定した「YKKグループ環境ビジョン2050」と10項目のSDGs(国連サミットによって採択された持続可能な開発目標)の達成に向けて5つのテーマで構成した。

 1つ目のテーマは「気候変動」。世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べ、1.5℃に抑える努力を追求するパリ協定の目的を支持し、ファスニング事業における温室効果ガスの削減に取り組む。

そのための取り組みは下記のとおり。
・18年と比べてScope1(自社の直接排出量)とScope 2( 電力など自社で消費したエネルギー起源の間接排出量)で50%削減、Scope3(サプライチェーン等その他の間接排出量)で30%削減を目指す。
・50年までに温室効果ガス排出ゼロ(カーボンニュートラル)を目指す。
・製造方法と設備の改良、オペレーションと各工程の効率化を追求し、エネルギー使用量を削減する
・19年以降石炭使用設備の新設を廃止する。30年までに全ての石炭使用設備を廃止する
・ファスニング事業拠点に再生可能エネルギー発電施設を可能な限り設置する
・Scope2の排出削減のために、可能な限り外部から再生可能エネルギーを購入する

 2つ目は「資源」。持続可能な資源の採用を増やす。ファスニング事業で製造される商品や使用される梱包材の材料の環境負荷を低減し、持続可能な素材へと移行することで商品のライフサイクルを通じて発生する廃棄物を削減、石油由来材料の使用を削減、および循環型社会の実現への貢献を目指す。

そのための取り組みは下記のとおり。
・30年までにファスニング商品の繊維材料を100%持続可能素材(リサイクル材、自然由来材料等)に変更する
・30年までに、ファスニング事業で使用する全てのビニール・プラスチック製梱包材を持続可能な素材や回収・再利用など持続可能な形態に変更する
・全ての製造拠点において埋め立て、あるいは焼却される廃棄物の排出量を削減する
・30年までに廃棄物の再資源化率を90%まで向上する

 3つ目は「水」。水の利用量の削減と排水管理を強化する。深刻な水資源の枯渇・劣化問題に対して、ファスニング事業において取水量の削減や排水の環境負荷低減等に取り組む。

そのための取り組みは下記のとおり。
・水資源問題が懸念される地域の製造拠点で、水使用の効率化・再利用などの取り組み強化し取水量を削減する
・政府の規制および、ZDHC(有害化学物質排出ゼロ)のような業界基準を基に制定した自社基準に従い、全ての製造拠点において排水管理を徹底する

 4つ目は「化学物質」。将来世代に豊かな生活を残すため、ファスニング事業に関わる化学物質による環境への影響・負荷を最小限にとどめる。

そのための取り組みは下記のとおり。
・ZDHCの製造時制限物質リスト(MRSL)などの業界基準を基に制定した自社基準に従い、商品製造における入口から出口までの化学物質使用を管理し、化学物質の使用削減をさらに進める
・安全な繊維製品の証明「スタンダード100(Standard 100 by OEKO-TEX)」のような業界基準を順守し、商品における規制物質の使用を廃止する
・有害化学物質を削減し排除するような新しい製造方法を開発する

 5つ目は「人権」。人権の尊重と公正で安全な労働環境の維持に努める。全ての人間の尊厳と権利を尊重するという世界共通の理念を重要視し、多様で持続可能な社会に貢献する。
そのための取り組みは下記のとおり。
・多様性を認めた包括的な人権の尊重と労働環境の整備の徹底により、一人ひとりが個性を活かして働ける安心安全な職場環境をサプライチェーン全体で形成し、健康で幸せに満ちた生活を支援する
・YKKの精神“善の巡環”とISO26000(企業における社会的責任に関する国際規約)に基づいたYGCC (YKK Global Criteria of Compliance)監査を全YKKグループの製造拠点を中心に実施し、第三者機関による定期的な監査も実施することで、透明性を維持しつつ持続可能な活動への更なる改善を行う

 大谷裕明社長は「当社は本業を通じた持続可能な社会の構築を常に追求し続けている。こうした企業活動全ての根幹にあるのが創業者の吉田忠雄による企業精神“善の巡環”だ。『他人の利益を図らずして自らの繁栄はない』という思想は社会や関連業界と共に栄え続けようとするYKKグループの企業精神を鮮明に表しており、サステナビリティに通ずる考え方であると捉えている。当社は“善の巡環”のもと、事業・商品を通じてサステナビリティの本質に向き合い、ソーシャルグッドな企業であり続けるためにチャレンジを続ける」とコメントを発表した。

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CO2計測ツールを開発・提供するティンバーランドに聞くCO2排出量削減に必要なこと

 米国屈指のサステナビリティ先進企業のティンバーランド(TIMBERLAND)は、2005年からCO2排出量の計測をはじめ、15年までに自社および自社運営施設での排出量の絶対値を06年と比較して半分にするという目標を設定し、事業拡大の中でも達成した。独自開発したCO2計測ツールは、他社も活用できるようにとサステナブル・アパレル連合(Sustainable Apparel Coalition)とアウトドア産業協会(Outdoor Industry Association)に無償で提供している。CO2排出量削減をリードする同社のザック・アンジェリーニ(Zack Angelini)環境スチュワードシップ マネジャーにCO2排出量削減のために必要なことを聞く。

WWD:ティンバーランドは「環境負荷を測る」ことを自社および運営施設における温室効果ガスの測定から始めているが、なぜCO2からだったのか。

ザック・アンジェリーニ環境スチュワードシップ マネジャー(以下、アンジェリーニ):地球温暖化は、私たちの社会が現在直面している最も差し迫った問題の一つだからだ。アパレルおよびフットウエアブランドである「ティンバーランド」は、そうした問題が発生する責任の一端を負っているので、解決するために尽力する責任も負っている。

最初に温室効果ガス(および廃棄物など)の排出量削減に取り組んだのには理由がある。バリューチェーンの取引先企業にそうした排出量の削減について責任ある行動を求める前に、まずティンバーランドがそれを実行しているということを、自社や消費者に、そしてベンダーやサプライヤーなどの取引先に示したかったからだ。

当社は温室効果ガスの排出量を2005年から計測しており、自社が所有もしくは運営している全ての施設と、従業員の出張などによる排出量を15年までに06年の50%とする目標を設定した。これは絶対値での目標だったので、その後の事業の成長やそれに伴う人員の増加や施設の拡大は計算に入れていなかったが、それにもかかわらずこの目標を達成できて大変うれしく思っている。結果として、事業を大きく成長させながらも温室効果ガスの排出量を50%以上削減することができた。

WWD:具体的な運用方法は?

アンジェリーニ:08年に、個別の商品が環境に与える影響を測定する「グリーンインデックス」という自社開発の指標を発表した。10年までは当社でのみ使用していたが、環境への影響を測定するツールであるヒグ・インデックス・プロダクト・モジュール(Higg Index Product Module)で使用できるようにするため、サステナブル・アパレル連合とアウトドア産業協会に無償で提供した。

個別の商品が環境に与える影響を測定する方法が開発されたことで、商品開発部門やデザイナーは大きな学びの機会を得ることができた。素材や製造方法の違いによって、地球環境にどのようないい影響が、もしくは悪い影響があるのかが分かるようになったからだ。測定ツールがあることで商品カテゴリー別に目標値を設定できるようになった。

WWD:苦労した点は?

アンジェリーニ:同じ商品であっても、複数の仕入先や生産国から素材を調達していたり、異なる場所で最終仕上げをしていたりと、世界にまたがる複雑なサプライチェーンであることから、同一の商品に対して複数のシナリオを組め、それらを考慮してスコアを出せるようにする必要があった。また当社だけで取り組んでも、ベンダーやサプライヤーにとっては当社からの発注は彼らが請け負う全体量の数パーセントにしか過ぎないので、スコアを改善しようというインセンティブにならないことが分かった。

こうした高いレベルでの透明性は現在の消費者の関心を引いたし、「ティンバーランド」の顧客はそうした情報に基づいて商品を選ぶことが可能となったが、業界全体として進化するには、ほかのブランドにも同様の取り組みをしてもらう必要があることに気づいた。

アウトドア産業協会とサステナブル・アパレル連合に「グリーンインデックス」を無償で提供したのはこうした理由からだ。「グリーンインデックス」は現在、デザイナーや商品開発者がよりサステナブルな素材や製造方法を選ぶためのツールとして業界全体で使われているヒグ・プロダクト・モジュールに、その他のブランド測定ツールと共に組み込まれている。

WWD:気候変動対策、すなわちCO2排出量の削減は今すぐ取り組みたいテーマだが、CO2削減に取り組んできたティンバーランドのノウハウのシェアをしてほしい。CO2削減のために企業がまず取り組むべきことは何か?

アンジェリーニ:業界として、私たちは互いから学び、協力しあって、地球温暖化の解決に取り組んでいく必要がある。ブランドの温室効果ガス排出量の削減に関する目標値を設定するに当たっては、企業に対して科学的な知見と整合した削減目標を設定するよう求める、サイエンスベース・ターゲット・イニシアチブ(Science-Based Targets Initiative以下、SBTI)と提携することを推奨したい。目標値を設定する過程では、地球温暖化を防ぐために自社の排出量をどの程度削減する必要があるのかに加えて、事業のどの部分で努力すれば最も効果的かなども明らかになるからだ。19年には、ティンバーランドの親会社であるVFコーポレーション(VF CORPORATION以下、VFコープ)も科学的な根拠に基づいた目標値を設定している。

当社もこの過程を経ることで、温暖化への影響を最大限減らすにはどこに注力すればいいのかを理解することができた。当社の場合、排出量の大半はサプライチェーンにおける生産段階、特に原材料の選択に関係していた。アパレルやフットウエアブランドの多くも同様だと思われたので、素材の持続可能な調達と製造の循環性に注力することにした。その後、「ティンバーランド」ではVFコープが設定したSBTをさらに推し進め、CO2排出量を削減するだけでなく、排出量よりも吸収量が上回る“クライメート・ポジティブ”となるように目標を設定している。

WWD:環境負荷の計測ツール、ヒグ・インデックスを用いているか?

アンジェリーニ:ヒグ・インデックスは、企業の事業、サプライヤー、商品が環境に与える影響を測定するさまざまなツールで構成されている。分野別にモジュール(ツール)があって、それぞれの影響を測定するという仕組みだ。当社では毎年、ヒグ・ブランド・アンド・リテーラー・モジュール(Higg Brand and Retailer Module)を完了しているが、これはブランドおよび小売業として環境負荷の削減に関してどれぐらい努力したか、また消費者にもそうするように啓発したかを評価する指標となっている。

ほかにも、当社では生産工場の環境保護に対する取り組みを評価するヒグ・ファシリティー・モジュール(Higg Facilities Module)を導入している。また「ティンバーランド」は環境保護に関する基準を全商品に設けているが、それを裏付けるに当たってどの素材を使用するべきかを比較するために、ヒグ・プロダクト・モジュール(Higg Product Module)や、マテリアル・サステナビリティ・インデックス(Materials Sustainability Index)を使用している。

WWD:環境負荷に関してCO2排出量はもちろん、水使用量や土地利用、化学物質の削減、廃棄量などさまざまな指標があるが、注力して取り組んでいることは?

アンジェリーニ:カーボン・アカウンティング(炭素会計。ある事業活動が、どれだけ温室効果ガスの排出あるいは削減に寄与したかを算定し集計する取り組み)や、自然なCO2吸収源(再生可能な農業など)は、まだ発展途上にある分野だ。当社とその親会社であるVFコープは、再生可能な農業における吸収量を測定するガイドラインを策定する、複数の業界にまたがった取り組みに積極的に携わっている。これによって、「ティンバーランド」やその他のブランドはクライメート・ポジティブの実現に向けて(排出量や吸収量を)より正しく測定し、進捗を報告できるようになるだろう。

また当社は、生物の多様性や水などの分野においても、測定基準や戦略をさらに開発する機会を模索している。気候温暖化だけではなく、環境に影響を与えるほかの分野の測定手続きなどに関する業界グループ、サイエンスベース・ターゲット・ネットワーク(Science-Based Targets Network)にも携わっている。

循環性に関しては、業界のコンサルタントと協業し、さまざまな循環型ソリューションの環境に対する影響を測定するプロトコルを開発したり、パイロット版を試したりしている。現在は循環型および再生型の両方における社内的なマイルストーンを設定している段階で、ほかのサステナビリティに関する取り組みと同じく定期的に報告していく予定だ。

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