ラグジュアリーセクターは、23年から需要が世界的に“正常化”し、24年には減速傾向となっている。ラグジュアリー市場をけん引するLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)の24年12月期決算は、売上高が前期比1.7%減の846億8300万ユーロ(約13兆4645億円)、営業利益は同16.2%減の189億700万ユーロ(約3兆62億円)、純利益は同17.3%減の125億5000万ユーロ(約1兆9954億円)と減収減益に。不調が続く「グッチ(GUCCI)」を擁するケリング(KERING)も、24年12月期の売上高は同12.1%減の171億9400万ユーロ(約2兆7338億円)、営業利益は同50.2%減の23億1200万ユーロ(約3676億円)、純利益は同62.0%減の11億3300万ユーロ(約1801億円)と大幅な減収減益だった。
国内事業の売上高は前年同期比2.3%減の253億円。同社の最大ブランド「アズール バイ マウジー(AZUL BY MOUSSY)」などを含む、同社売上高の4割を占めるSCブランド群が同5.9%減と振るわなかった。「マウジー(MOUSSY)」「スライ(SLY)」などのファッションビル・駅ビルブランドは前年並みで推移。「エンフォルド(ENFOLD)」などの百貨店ブランドは同2.8%増も、売り上げのパイは小さくSCブランドの不振をカバーするには至らなかった。
スキンケア部門は「シャーロット ティルブリー」の主力商品である“マジック クリーム”がけん引したほか、22年に買収したコロンビナのナチュラルコスメブランド「ロト デル シュール(LOTO DEL SUR)」やインドのビューティブランド「カーマ アーユルヴェーダ(KAMA AYURVEDA)」の統合も2ケタ成長に寄与した。
同社はスキンケアカテゴリーの強化を図っており、過去2年間に皮膚科学研究に基づく仏スキンケアブランド「ユリアージュ(URIAGE)」やギリシャのナチュラルコスメブランド「アピヴィータ(APIVITA)」の研究開発への投資を拡大している。今年1月には独ドクターズスキンケアブランド「ドクター バーバラ シュトルム(DR. BARBARA STURM)」の買収を発表した。
同社のトレーシー・T・トラヴィス(Tracy T. Travis)副社長兼最高財務責任者(CFO)は米「WWD」に、「リストラに関する計画が2〜3ヶ月以内に我々に提出され、今後数ヶ月の内に承認する予定だ」と述べた。事業売却の可能性については、「現在の最優先事項ではないが、機動性を高めるために適切な事業構造を検討するにあたりあらゆる選択肢が議論のテーブル上にある」と説明した。
主力の化粧品事業は、売上高が同2.3%増の2404億円、営業利益が同29.7%減の178億円だった。ハイプレステージの主力ブランド「コスメデコルテ(DECORTE)」は、“リポソーム”を中心に日本で好調だったが、中国・韓国のトラベルリテール事業の苦戦や中国の景気回復の遅れなどが影響し、大幅に減収した。アルビオンが展開する「エレガンス(ELEGANCE)」は国内のインバウンド需要が高く、
「ジルスチュアート ビューティ(JILL STUART BEAUTY)」とともに伸長した。欧米で展開する「タルト」は、主力のコンシーラーや新商品のリップなどが寄与し、好業績となった。プレステージでは、「雪肌精」や「ワンバイコーセー(ONE BY KOSE)」の回復基調が継続し、同カテゴリーの増収に大きく貢献した。
事業別では日本事業の売上高は同9.4%増(実質10%増)の2599億円、コア営業利益は18億円の黒字(前期は130億円の赤字)だった。マーケティング投資を集中した中〜高価格帯の主力ブランド「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」「シセイドウ(SHISEIDO)」「エリクシール(ELIXIR)」が後押しした。「シセイドウ」は日本限定でリニューアル販売した“アルティミューン”や美容液処方の“エッセンス スキングロウ ファンデーション”が軒並みヒット。「エリクシール」は“リンクルクリーム”や“トータル V ファーミングクリーム”が成長をけん引した。インバウンドは、旅行客の増加で回復し、年間の客購買が同20%台後半と伸長した。
2025年度を最終年度とする中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」は、市場環境変化を踏まえ目標に再設定した。コア営業利益率を2025年に9%、将来的に15%を目指す。藤原憲太郎社長COOは、「25年までに持続的な利益成長と構造改革を両輪としたビジネストランスフォーメーションを完成する」と述べる。具体的には、1.400億円超のグローバルコスト削減(日本は250億円のコスト削減)、2.日本の構造改革アクションの完遂と成長加速、3.中国トラベルリテールの質の高い成長実現、4.売り上げが好調な米州、欧州、アジアパシックの成長加速、 5.コアブランドの成長モメンタムのさらなる加速、6.グロスプロフィット(売上総利益)の拡大を目指し、「これらの内容を25年までに完成することで、レジリエントな事業構造を構築する」と力強く話す。
LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)の2023年12月期決算は、売上高が前期比8.8%増の861億5300万ユーロ(約13兆8706億円)、営業利益は同7.4%増の225億6000万ユーロ(約3兆6321億円)、純利益は同7.7%増の151億7400万ユーロ(約2兆4430億円)だった。
同社は、「業績を損益分岐点まで戻す軌道に乗ることができた」とコメント。業務の効率化によるコスト削減や、ECの内製化による顧客サービスの向上が奏効したという。なお、同社は09年からキッズラインを発表しているが、22年春夏シーズンからはイタリアの子ども服メーカー、シモネッタ(SIMONETTA)とライセンス契約を締結。これによるロイヤリティーも業績の改善に貢献している。また、22年8月には、19年7月にパートナーシップ契約を締結したLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)と共に、99%ナチュラルでクルエルティフリー(動物実験を行わない)のスキンケアライン「ステラ バイ ステラ マッカートニー(STELLA BY STELLA McCARTNEY)」を立ち上げた。