「WWDJAPAN」7月12日号は、2020年12月の売り上げに基づく度版「世界のビューティ企業TOP100」特集。ここでは、ロレアル(L’OREAL)やユニリーバ(UNILEVER)、エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)などトップを走る企業の商況を紹介。ブラジルのナチュラ&コー(NATURA & CO.)など、ニューカマーにも注目だ。
【10位】CHANEL LTD.
シャネル
プレステージブランドに比重を置く多くの企業と同様に、全地域、全カテゴリーで売り上げが減少したが、スキンケアは復調の傾向が見られた。世界的な旅行制限により、トラベルリテールが特に影響を受けた。
フレグランスでは“ココ マドモアゼル”や“ブルー ドゥ シャネル”が好調だった。19年に発売した“ガブリエル シャネル エッセンス”がアジアで人気を博した。今年誕生100周年を迎えた“No5”のキャンペーンには、フランス人女優のマリオン・コティヤール(Marion Cotillard)を新たな顔に起用した。
新型コロナの影響で、メイクアップ事業の中でも特にリップ製品の需要が落ち込んだ。男性用メークアップライン「ボーイ ドゥ シャネル(BOY DE CHANEL)」を拡充すると共に、スキンケア効果のあるファンデーション“レ ベージュ オー ドゥ タン”やロングラスティング処方のリップ“ルージュ アリュール ラック”も発売した。
スキンケア分野は主にアジアがけん引しており、“サブリマージュ”“ル リフト”が好調で、クレンジング“ムース ネトワイヤント”も引き続き人気だった。オンライン販売は、自社サイトおよびその他販売サイトでも売上高が大幅に増加した。ポルトガル、ルクセンブルク、オーストリアでは新たなeコマースサイトも導入した。また、アジアを中心に20店舗のビューティブティックをオープンした。
【9位】LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON
LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン
旅行やメイクアップ需要の低迷が業績に大きな影響を及ぼした。昨年のビューティ製品の売上高は、日本を除くアジア地域では前年比約13.6%減、その他の地域では同30%ほど減少した。日本を除くアジア地域での香水・化粧品部門の収益が全体に占める割合は、昨年の40%から45 %に増加した。「ゲラン(GUERLAIN)」「フレッシュ(FRESH)」はコロナ禍にもかかわらず持ち堪えたが、両ブランド共に売上高は減少した。下半期の「ディオール(DIOR)」の業績は中国、米国、日本、中東を中心に改善し、中国ではオンライン販売も増加した。「ゲラン」のスキンケア製品は中国で好調で、新しいデザインの導入やユネスコ(UNESCO)と協力したミツバチの保護活動なども実施した。
「ジバンシイ(GIVENCHY)」の看板製品“プリズム・リーブル”は中国で人気を博し、フランスを中心とした欧州ではフレグランス“ランテルディ”がマーケットシェアを拡大した。「ベネフィット コスメティクス(BENEFIT COSMETICS)」はオンライン販売が堅調に推移した。「フレッシュ」は中国を中心にデジタル化に焦点を当てており、プレミアムラインの商品が人気だった。「フェンティ ビューティ(FENTY BEAUTY)」はオンライン限定の「フェンティ スキン(FENTY SKIN)」シリーズが話題を呼び、「アクア ディ パルマ(ACQUA DI PARMA)」は中国での展開を拡大した。「パルファム ロエベ(PERFUMES LOEWE)」はホームフレグランス・シリーズを発売し、中国で堅調な伸びを示した。
「セフォラ(SEPHORA)」では、スターバックス(STARBUCKS)元幹部のマーティン・ブロック(Martin Brok)が9月に社長兼CEOに就任した。一方でケンドー事業部では、新型コロナの影響でおよそ10%の従業員が解雇された。「キャット ヴォン ディー(KAT VON D)」はブランド名を「KVD ビーガン ビューティ(KVD VEGAN BEAUTY)」に変更。「バイト ビューティ(BITE BEAUTY)」はビーガン仕様を取り入れて、さまざまな顔色に合わせた製品ラインアップも拡大した。
【8位】BEIERSDORF
バイヤスドルフ
最大ブランドの「ニベア(NIVEA)」は売り上げを11%近く落とし39億6000万ユーロ(約4791億円)となったが、進出している国の半分以上でマーケットシェアを増やした。「ユーセリン(EUCERIN)」「アクアフォー(AQUAPHOR)」などを擁するダーマ事業部は好調で、売上高は5.3%増の6億6100万ユーロ(約799億円)となり、北米、中南米、アジアでは2ケタ成長を記録した。なお、グループ全体ではeコマースの売上高が50%増加した。
「ラ・プレリー(LA PRAIRIE)」はトラベルリテールの閉鎖が大打撃となり、売上高は23.9%減の4億9700万ユーロ(約601億円)に止まった。中国では2ケタ成長し、最近出店したTMALL店舗に期待を寄せる。
7月には上海にハンブルクに次ぐ規模のイノベーションセンターを開設し、1000万ユーロ(約12億円)を投じた。また、19年に韓国で開始したニベア アクセラレーター プログラムから生まれたアジア市場向けの新スキンケアブランド「チャウル(CHAUL)」が、同社初のKビューティブランドとして韓国で発売された。
サステナビリティでは、欧州のコンシューマー部門で使用されるペットボトルの90%をリサイクル素材に切り替えたこと、サステナビリティ認証を受けたパーム油のみを化粧品の製造に使用すること、化学メーカーと共同開発した再生可能なPPプラスチックを化粧品のパッケージに採用するなどの取り組みを実施した。ドイツではドラッグストアのDMと共同でシャワージェルの詰め替えステーションを設置した。20年2月には、詰め替えシステムと生分解性処方を有し、水資源の保全に取り組むドイツの自然派パーソナルケアブランド「ストップ ザ ウォーター ワイル ユージング ミー!(STOP THE WATER WHILE USING ME!)」を買収した。
サステナビリティ、デジタル化、成長市場における位置付けを高めるために実施した「C.A.R.E.+」戦略プログラムでは、当初の予算に加えてさらに3億ユーロ(約363億円)を今後5年間で投じる予定だ。また、24年末までにハンブルクの本社にテクノロジーセンターを設立するため、6000万ユーロ(約72億円)を投じる。
【7位】NATURA & CO.
ナチュラ&コー
ナチュラ&コーがブラジルの企業として初のトップ10入り。エイボン・プロダクツ(AVON PRODUCTS)を買収したことで世界第4位のビューティ専門企業となった。グループ全体のデジタルの売上高は第4四半期に前年同期比79%増加、全体の売上高に対するオンラインの割合は前年度の10%から30%に増加した。
看板ブランドの「ナチュラ(NATURA)」はソーシャルセリングに力を入れ、ラテンアメリカ地域では100万人以上のコンサルタントがオンラインストアを開設。サンパウロには新しい旗艦店もオープン。
特に好調な「イソップ(AESOP)」は売り上げを前年比50%伸ばし、日本が最大の市場になった。オンラインの成長が著しく、アジア地域ではライブチャットや新しい決済方法、即日配送などのデジタル面を強化した。なお、パンデミックの影響で店舗の拡大は一時棚上げとなった。
「ザボディショップ」はこれまでイオンと協業して展開していた日本事業を本国直轄にシフト。今後は中国進出も狙う計画だ。
サステナビリティの施策では30年までにCO2排出量を実質ゼロにすること、アマゾン保護活動の強化、男女平等および人権意識の向上、完全な循環型パッケージや95%再生可能原料、天然の生分解性原料の導入などを計画している。20年末には、グループ全体でBコープ(B CORP)認証も取得し、同認証を取得した世界最大の企業になった。
【6位】L BRANDS
Lブランズ
コロナニーズで「バス アンド ボディー ワークス(BATH & BODY WORKS)」のハンドジェルやソープが好調で、同ブランドの売り上げは前年比20%以上増の64億ドル(約6784億円)だった。ホームフレグランスも合わせて購入する消費者が増加したことで、業績が底上げされた。
「ヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA’S SECRET)」は新型コロナの影響に加え、“男性目線のセクシーな女性像”を売りにするブランディングが時代遅れと見なされて苦戦した。これを受け、「セクシーの定義を顧客に委ねる」というメッセージに切り替える方針を掲げている。ブランド全体の年間売上高は同20%減だった。全体の売り上げのうちビューティ部門は約15%の8億1000万ドル(約858億円)を占めるとされている。なお、ダイレクトチャネルの売上高は31%増加した。
「バス アンド ボディー ワークス」は1年間で30店舗を閉鎖したが、新たに27店舗をオープン。一方で「ヴィクトリアズ・シークレット」は225店舗を閉鎖した。Lブランズ全体の実店舗数は、20年末の時点で前年比278店舗減の2669店舗となった。
さらに本社従業員の15%、およそ850人の解雇を発表したほか、児童買春の容疑がかけられていた米国の富豪、ジェフリー・エプスタイン(Jeffrey Epstein)との交友関係などを批判されていたLブランズ創業者のレス・ウェクスナー(Les Wexner)会長兼CEOが退任し、決定権を持たない名誉会長職に就いた。
また、投資会社シカモア・パートナーズ(SYCAMORE PARTNERS)に「ヴィクトリアズ・シークレット」を売却する予定だったが、コロナの影響で契約破棄となった。21年度中に売却を成立させる計画だ。
【5位】SHISEIDO CO.
資生堂
2020年は5カ年計画の最終年だったが、パンデミックの影響で国内、海外共に売上高が大幅に減少。国内ではインバウンド需要が激減したことが大きな痛手となった。主力スキンケアシリーズ“アルティミューン”からハンドクリーム、マスクを付けていても落ちにくいBBクリームを発売するなど、コロナ禍での新たなニーズにも対応した。
中国では3月以降売り上げが増加し、「シセイドウ(SHISEIDO)」「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」「イプサ(IPSA)」「ナーズ(NARS)」などのプレステージブランドが大きく成長した。11月の「独身の日」の売り上げは倍増し、中国での年間売上高の40%以上をeコマースが占めた。その他アジア地域での売上高は減少したが、韓国、タイでは「シセイドウ」「専科」が人気を博した。
アメリカ大陸ではメイクアップが業績不振で、「ベアミネラル(BAREMINERALS)」の立て直しに苦戦した。一方で、19年に買収した「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」は好調だった。欧州では「シセイドウ」のスキンケアの勢いが増し、「クレ・ド・ポー ボーテ」がイタリアとスペイン、「ドランク エレファント」がドイツに進出した。
ナチュラルスキンケアブランド「バウム(BAUM)」の立ち上げや、「シセイドウ」が銀座の旗艦店での美容液の充填サービスの開始など、サステナビリティー活動も強化。20年11月には世界初の生分解性リップパレットを発売し、25年までに全てのパッケージをサステナブルなものにすると発表した。
ヤーマンとは合弁会社エフェクティムを設立し、美容機器と化粧品を組み合わせたブランドを日本と中国で展開。また、上海の美容・健康産業特区「東方美谷(The Oriental Beauty Valley)」に研究開発拠点の中国イノベーションセンターを設立した。
21年2月には、投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズ(CVC Capital Partners)にパーソナルケア事業を15億ドル(約1590億円)で売却した。
【4位】PROCTER & GAMBLE CO.
プロクター・アンド・ギャンブル
新型コロナウイルスの影響で生活必需品を買いだめする傾向が見られ、その恩恵を受けた。ビューティ部門ではパーソナルケアやヘアケアの売れ行きが好調だったが、旅行者を対象としたトラベルリテールやインバウンドビジネスが低迷し、特に近年は好調だった「SK-II」の売り上げが伸び悩んだ。一方で幅広いラインアップが後押しして、ビューティ部門全体の売り上げは前年比3%増となった。
パーソナルケアや新規ブランドの売れ行きは好調で、eコマースも成長の一因となった。20年下半期にはオンラインの売上げが約50%増加するなど大幅な収益増となった。中でもハンドサニタイザーや液体ハンドソープの売り上げが増加した「セーフガード(SAFEGUARD)」が好調。「オールド スパイス(OLD SPICE)」も年間で10億ドル(約1060億円)近い売り上げを計上した。
ヘアケアは米国と中国での売れ行きが好調。「ヘッド&ショルダーズ(HEAD & SHOULDERS)」は成長を維持、「パンテーン(PANTENE)」もローズウォーター、バンブー、ビオチンなどを配合した“ニュートリエント ブレンド”シリーズを海外で発売。米国ではヘアケアの「オージー(AUSSIE)」が好調で、より黒人や縮毛向けの「マイ ブラック イズ ビューティフル(MY BLACK IS BEAUTIFUL)」「ヘッド&ショルダーズ」の“ロイヤル オイル”シリーズや「パンテーン」の“ゴールド ”シリーズもシェアを拡大した。
新ブランドの「ネイティブ(NATIVE)」「ファースト エイド ビューティ(FIRST AID BEAUTY)」「ウォーカー&コー(WALKER & CO.)」も成長が続き、現在ではビューティ部門の年間売上高の約2%を占めている。21年初頭には女性用パーソナルケアブランド「ビリー(BILLIE)」の買収計画が連邦取引委員会(Federal Trade Commission)から認められず中止となった。
新しいパッケージングの導入や、全事業において品質、パフォーマンス、安全性、透明性などを意識した幅広いアプローチでサステナビリティにも注力した。
【3位】THE ESTEE LAUDER COS.
エスティ ローダー カンパニーズ
パンデミックの影響で売上高は他社同様マイナスとなったが、第4四半期はプラスに転じた。中でも中国の売り上げが大きく貢献し、アジア太平洋地域では全体の約3分の1を占めるおよそ48億ドル(約5088億円)を売り上げた。エスティ ローダー カンパニーズ(THE ESTEE LAUDER COS.)はアジア重視の戦略を掲げて日本に新しい工場を、上海にはイノベーションセンターを建設している。
また20年度は、実店舗での売り上げが低迷する一方でオンライン販売が急増し、現在は事業全体の約30%を占めている。販売員も含めた各ブランドのチームは、オンラインでのアドバイス、ショッピングのサポート、ソーシャルメディアでの販売などを組み合わせることでオンライン販売に基軸を移した。
スキンケアは年間を通じて好調で、全体の60%となる約82億ドル(約8692億円)を売り上げた。中でも19年に買収した韓国発のスキンケアブランド「ドクタージャルト(DR. JART+)」が高い業績を記録。一方でメイクアップは厳しい状況が続いており、現在はスキンケア事業の半分以下の規模となっている。21年9月にはメイクアップブランド「ベッカ(BECCA)」とラグジュアリースキンケアブランド「ロダン オリオ ルッソ」を終了する予定だ。また20年末には「プリスクリプティブ(PRESCRIPTIVES)」を終了し、「キートン(KITON)」とのライセンス契約も終了した。一方で21年2月には若年層に人気のスキンケアブランド「ジ オーディナリー(THE ORDINARY)」を手掛けるデシエム(DECIEM)を買収すると発表した。
BLM運動が繰り広げられた20年はダイバーシティーへの取り組みで美容業界をけん引。黒人の従業員の雇用を増やす5カ年計画を発表し、積極的に活動を行っている。
なお今後2年間は、20年8月に立ち上げた“ポスト COVID-19 ビジネス推進計画(Post-COVID-19 Business Acceleration plan)”に注力し、欧州、中東、アフリカ、北米の店舗の縮小・効率化を図る。オンライン販売やオムニチャネルの運営にも引き続き力を入れていく予定だ。
【2位】UNILEVER
ユニリーバ
“地球および人類に世界一いい影響を与えるビューティ企業”を目指すユニリーバ(UNILEVER)は、BLM(Black Lives Matter=黒人の命も大切)運動や美の定義における多様性を認める動きの中で、ソーシャルイシューを意識した取り組みを積極的に行う。スキンケアブランド「フェア&ラブリー(FAIR & LOVELY)」のブランド名を「グロウ&ラブリー(GLOW & LOVELY)」に変更したほか、全ての製品のパッケージや広告などから“美白(fair/fairness)、ホワイトニング(white/whitening)、ブライトニング(light/lightening)”といった表現を廃止する方針も明らかにした。
また米国では、「ダヴ(DOVE)」が人種によって異なる髪の毛の差別を禁止する法律を提唱し、「ヴァセリン(VASELINE)」は医療情報サイト、メドスケープ(MEDSCAPE)と提携して、皮膚科医や医療従事者がさまざまな肌の色の患者を適切に治療、診断、ケアできるようトレーニングした。メラニンを多く含む肌の女性と皮膚科医のための新スキンケアブランド「メレ(MELE)」も立ち上げた。ロックダウン期間中は、第一線で働くエッセンシャルワーカーにフォーカスした「ダヴ」の自己肯定感アップを目的としたキャンペーンや、「クリア(CLEAR)」によるメンタルサポートの“#ComeBackStronger”イニシアチブなど、ウェルビーイングに焦点を当てた活動も目立った。
12月には、21年から気候変動対策の目標を株主投票にかける計画を発表。39年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという新たな目標も掲げた。また「サンシルク(SUNSILK)」や「スアーヴ(SUAVE)」などが、製造過程で動物実験が行われていないことを保証するピータ(PeTA)認証を取得しことで、ビューティ&パーソナルケア部門の全23ブランドがピータ認証を得た。
業績面ではクレンジングが好調だった。また衛生用品の需要拡大により、「ライフブイ(LIFEBUOY)」がビューティ&パーソナルケア部門で6番目となる年間売上高10億ユーロ(約1210億円)を突破。一方でスキンケア、デオドラント、ヘアケア製品の需要は減少した。近年、戦略の要となっているプレステージ事業でも売り上げは減少したが、マーケット平均を上回る業績を達成。プレステージの売上高は合計で約7億ユーロ(約847億円)に達し、うちEC売り上げが50%を占めた。
今後大きな成長が見込める米国、インド、中国では外部のインキュベーターを初めて擁し、事業家や技術系スタートアップとのコラボレーションも図る。中国ではTモールと提携して旗艦店「ユニ・トピア プラネット(UNI-TOPIA PLANET)」を立ち上げ、インドでは衛生用品を扱う「Vウォッシュ(VWASH)」を買収した。
【1位】L’OREAL
ロレアル
ロレアル(L’OREAL)はデジタル分野への対応力、消費者の健康意識やスキンケア需要の高まりが追い風となったアクティブ コスメティックス事業部のおかげで、コロナ禍での損失を最小限にとどめた。eコマースの売上高は前年比62%増となり、全売り上げの26.6%を占めるまでになった。下半期は復調し、第4四半期はコンシューマー プロダクツ事業本部を除く全ての部門の売り上げが前年を超えた。
急速に伸びるアクティブ事業部は北米とアジアで好調で、売上高が初めて30億ユーロ(約3630億円)を突破。コロナ禍で健康意識が高まる中で、医師推奨の「セラヴィ(CERAVE)」は売上高が倍増、「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE POSAY)」や「スキンシューティカルズ(SKINCEUTICALS)」も大きな成長を遂げた。
コンシューマー プロダクツ事業本部はメイクが大半を占めるにもかかわらず下半期から少しずつ安定し、メイクアップ以外の主要分野でマーケットシェアを拡大、さらにヘアカラーは2ケタ成長を見せた。スキンケアでは「ロレアル パリ(L’OREAL PARIS)」や「ガルニエ(GARNIER)」が好調だった。メイクアップは全体的に低迷したが、「NYX プロフェッショナル メイクアップ(NYX PROFESSIONAL MAKEUP)」や「スタイルナンダ(STYLENANDA)」のコスメライン、「3CE」はデジタルを強化したことで成果を得た。
プロフェッショナル プロダクツ事業本部は下半期に回復し、サロンのデジタル化、フリーランスのスタイリスト育成、eコマースに注力したことから年間を通じて好調だった。米国ではサロン専売品のEC「サロン セントリック(SALON CENTRIC)」が大幅に成長し、中国ではTモール(T MALL)での販売が好調だった。
リュクス事業本部はプレステージ市場が世界的に低迷する中で、EC事業に注力し、さらに中国市場にフォーカスしたことで第4四半期には成長基調を取り戻した。20年、世界のラグジュアリー市場の売り上げは推定14%減少したが、同部門は市場を上回る業績を残した。スキンケアでは「ランコム(LANCOME)」「キールズ(KIEHL’S)」「ヘレナ ルビンスタイン(HELENA RUBINSTEIN)」が好調で、「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」「ヴァレンティノ(VALENTINO)」「イヴ・サンローラン・ボーテ(YVES SAINT LAURENT BEAUTE)」の新作フレグランスも人気が高かった。
20年3月末にはクラランス グループ(GROUPE CLARINS)のフレグランス事業の買収が完了し、「ミュグレー(MUGLER)」と「アザロ(AZZARO)」を傘下に収めたことでプレステージフレグランス事業の強化を図った。6月には米国発のスキンケアブランド「セイヤーズ ナチュラル レミディーズ(THAYERS NATURAL REMEDIES)」を傘下に収め、12月にはソーシャルセリングプラットホームのレプリカ ソフトウェア(REPLICA SOFTWARE)にも出資した。一方で6月には、「ロジェ・ガレ(ROGER & GALLET)」を仏投資会社のインパラ(IMPALA)に売却、11年に買収した洗顔機器ブランド「クラリソニック(CLARISONIC)」は業績不調により終了した。12月には日本発のドクターズブランド、「タカミ」を製造販売するタカミを買収すると発表し、21年2月に買収が確定した。
またサステナビリティ分野では、30年に向けて新たなコミットメント、“ロレアル・フォー・ザ・フューチャー(L’Oreal for the Future)”を掲げ、サプライヤーが及ぼす地球環境への影響や消費者による製品の使用、自社の活動などを顧客みるさまざまな取り組みを行う。プログラムの一環として、生態系の再生、循環型経済の発展のために1億ユーロ(約121億円)、女性を支援する基金に5000万ユーロ(約60億円)を拠出した。
人事では、定年を迎えたジャン・ポール・アゴン(Jean-Paul Agon)=ロレアル会長兼最高経営責任者(CEO)の後任として、ニコラス・イエロニムス(Nicolas Hieronimus)=前デピュティCEOが新CEOに昇格した。 なお、アゴン氏は会長職を継続する。
DESIGN:JIRO FUKUDA