「グッチ」の親会社、21年上半期は49%増収 北米とアジア市場が好調

 ケリング(KERING)の2021年1~6月期決算は、売上高が前年同期比49.6%増の80億4720万ユーロ(約1兆380億円)、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は同76.1%増の29億5090万ユーロ(約3806億円)、純利益は5倍以上(同442.5%増)の14億7900万ユーロ(約1907億円)の増収増益だった。

 19年同期比でも、売上高は5.3%増、EBITDAは同5.0%増、純利益は2.5倍以上(同155.1%増)となっており、コロナ禍以前の業績を上回る結果となった。なお、競合他社のLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)も、同じく19年同期比で売上高が14.2%増、営業利益は同44.7%増、純利益は同61.8%増となっている。

 ケリングの売上高を地域別で見ると、西欧が前年同期比1.7%増の16億9910万ユーロ(約2191億円)、北米は約2倍(同107.1%増)の19億7970万ユーロ(約2553億円)、日本を除くアジア太平洋地域は同64.8%増の33億7690万ユーロ(約4356億円)、日本は同14.9%増の4億5880万ユーロ(約591億円)だった。その他の地域は同74.5%増の5億3270万ユーロ(約687億円)だった。西欧で足踏みが続く一方で、北米とアジア太平洋地域の好調ぶりが業績に大きく寄与したことがうかがえる。なお、既存店かつ現地通貨ベースで見ると、北米は同124.8%増、日本は同25.2%増だった。

 ブランド別の売上高では、主力の「グッチ(GUCCI)」が同45.8%増の44億7930万ユーロ(約5778億円)だった。同ブランドは20年から販売網の見直しを行っており、直営店の売り上げが売上高全体のおよそ90%を占めている。こうしたことから、卸の売り上げは同9.6%減、19年同期比で40.8%減となった。「サンローラン(SAINT LAURENT)」は前年同期比53.5%増の10億4550万ユーロ(約1348億円)、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」は同40.6%増の7億760万ユーロ(約912億円)だった。ECも引き続き好調で、同78.5%増だった。

 フランソワ・アンリ・ピノー(Francois Henri Pinault)会長兼最高経営責任者は、「21年4~6月期(第2四半期)の売り上げが急激に伸びたこともあり、上半期の業績は非常に好調で、19年同期を上回る結果となった。これには全てのブランドが寄与している。収益性も十分に回復していることから、各ブランドや戦略的なイニシアチブへの投資ペースを速めていきたい」と語った。

The post 「グッチ」の親会社、21年上半期は49%増収 北米とアジア市場が好調 appeared first on WWDJAPAN.

ロレアル21年上半期は米国市場が復調し増収増益 フレグランスも急伸

 ロレアル(L'OREAL)の2021年1〜6月期決算は売上高が前年同期比16.2%増の151億9660万ユーロ(約1兆9600億円)、営業利益が同37%増の29億8810万ユーロ(約3854億円)、純利益が同29.8%増の23億6800万ユーロ(約3054億円)と増収増益だった。19年の同期間に比べても、売上高は2%増、営業利益は3%増、純利益は1%増だった。なお19年4〜6月期に比べても、第2四半期の売上高は同8.4%増とコロナ前の水準に戻った。引き続き好調な中国市場に加え、マスクの着用義務が緩和された米国事業が急速に復調しており、成長をけん引した。

 事業部別では、リュクス事業本部の売上高が同24.9%増で、スキンケア、メイクアップ、フレグランスと全てのカテゴリーが成長した。ここ数年グループ全体の成長を率いるアクティブ コスメティックス事業部は同32%増と引き続き好調だった。「セラヴィ(CERAVE)」は売り上げを倍増し、「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE POSAY)」も売り上げシェアを拡大した。プロフェッショナル プロダクツ事業部は同32.6%増で、「ケラスターゼ(KERASTASE)」がけん引した。メイクアップ比重が大きいコンシューマープロダクツ事業部も米国市場のリバウンドで同1.9%増を記録し、4〜6月は同14.2%増と復調しつつある。中でも「メイベリン(MAYBELLINE)」の新作マスカラや「ロレアル パリ(L'OREAL PARIS)」のパウダーが人気だった。ヘアケアも2ケタ成長し、スキンケアも「ロレアル パリ」が中国で引き続きトップセラーだった。

 地域別では北米の売上高が同13.8%増、北アジアが同23.2%増、南アジア・中東・北アフリカが同13.3%増、ラテンアメリカが同22.7%増だった。ロックダウンや外出に関する規制が緩和された米国や中南米は売り上げを伸ばした。日本と韓国は新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け続ける一方で、中国は海南島の免税事業が成長し続けた。カテゴリー別ではスキンケアが引き続き伸び続けたほか、フレグランスの売り上げが同24%増と最も伸びた。

 5月に最高経営責任者に就任したニコラ・イエロニムス(Nicolas Hieronimus)は決算会見で「ビューティ市場は、コロナ前の水準に戻りつつある。中国は引き続きビューティ需要が高く、中でもラグジュアリーが好調だ。またメイクアップの復調が中国と米国で始まり、他国にも徐々に広がっている。ロレアルは市場平均よりも2倍のペースで復調をしており、下半期も19年を上回る成長スピードを目指す」とコメントした。

The post ロレアル21年上半期は米国市場が復調し増収増益 フレグランスも急伸 appeared first on WWDJAPAN.

ロレアル21年上半期は米国市場が復調し増収増益 フレグランスも急伸

 ロレアル(L'OREAL)の2021年1〜6月期決算は売上高が前年同期比16.2%増の151億9660万ユーロ(約1兆9600億円)、営業利益が同37%増の29億8810万ユーロ(約3854億円)、純利益が同29.8%増の23億6800万ユーロ(約3054億円)と増収増益だった。19年の同期間に比べても、売上高は2%増、営業利益は3%増、純利益は1%増だった。なお19年4〜6月期に比べても、第2四半期の売上高は同8.4%増とコロナ前の水準に戻った。引き続き好調な中国市場に加え、マスクの着用義務が緩和された米国事業が急速に復調しており、成長をけん引した。

 事業部別では、リュクス事業本部の売上高が同24.9%増で、スキンケア、メイクアップ、フレグランスと全てのカテゴリーが成長した。ここ数年グループ全体の成長を率いるアクティブ コスメティックス事業部は同32%増と引き続き好調だった。「セラヴィ(CERAVE)」は売り上げを倍増し、「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE POSAY)」も売り上げシェアを拡大した。プロフェッショナル プロダクツ事業部は同32.6%増で、「ケラスターゼ(KERASTASE)」がけん引した。メイクアップ比重が大きいコンシューマープロダクツ事業部も米国市場のリバウンドで同1.9%増を記録し、4〜6月は同14.2%増と復調しつつある。中でも「メイベリン(MAYBELLINE)」の新作マスカラや「ロレアル パリ(L'OREAL PARIS)」のパウダーが人気だった。ヘアケアも2ケタ成長し、スキンケアも「ロレアル パリ」が中国で引き続きトップセラーだった。

 地域別では北米の売上高が同13.8%増、北アジアが同23.2%増、南アジア・中東・北アフリカが同13.3%増、ラテンアメリカが同22.7%増だった。ロックダウンや外出に関する規制が緩和された米国や中南米は売り上げを伸ばした。日本と韓国は新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受け続ける一方で、中国は海南島の免税事業が成長し続けた。カテゴリー別ではスキンケアが引き続き伸び続けたほか、フレグランスの売り上げが同24%増と最も伸びた。

 5月に最高経営責任者に就任したニコラ・イエロニムス(Nicolas Hieronimus)は決算会見で「ビューティ市場は、コロナ前の水準に戻りつつある。中国は引き続きビューティ需要が高く、中でもラグジュアリーが好調だ。またメイクアップの復調が中国と米国で始まり、他国にも徐々に広がっている。ロレアルは市場平均よりも2倍のペースで復調をしており、下半期も19年を上回る成長スピードを目指す」とコメントした。

The post ロレアル21年上半期は米国市場が復調し増収増益 フレグランスも急伸 appeared first on WWDJAPAN.

元「ランバン」メンズデザイナーが「セオリー」のカプセルコレクションを手掛ける

 2018年に「ランバン(LANVIN)」のメンズ・クリエイティブ・ディレクターを退任したルカ・オッセンドライバー(Lucas Ossendrijver)が「セオリー(THEORY)」のカプセルコレクションをデザインする。

 カプセルコレクションはメンズとウィメンズの両方を制作し、22年に発表予定。ブランドによると、オッセンドライバーが得意とする「アクティブウエアを取り入れたハイブリッドなテーラリングの美学」と素材に対する革新的なアプローチを活用した「近未来の都会的なラフスタイルコーデから着想を得た」コレクションになるという。

 オッセンドライバーは「ケンゾー(KENZO)」やエディ・スリマン(Hedi Slimane)時代の「ディオール オム(DIOR HOMME)」などでキャリアを積んだ後、アルベール・エルバス(Alber Elbaz)のもとで「ランバン」のメンズを確立。14年間メンズを率いた後、18年にメゾンを去った。

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中

The post 元「ランバン」メンズデザイナーが「セオリー」のカプセルコレクションを手掛ける appeared first on WWDJAPAN.

元「ランバン」メンズデザイナーが「セオリー」のカプセルコレクションを手掛ける

 2018年に「ランバン(LANVIN)」のメンズ・クリエイティブ・ディレクターを退任したルカ・オッセンドライバー(Lucas Ossendrijver)が「セオリー(THEORY)」のカプセルコレクションをデザインする。

 カプセルコレクションはメンズとウィメンズの両方を制作し、22年に発表予定。ブランドによると、オッセンドライバーが得意とする「アクティブウエアを取り入れたハイブリッドなテーラリングの美学」と素材に対する革新的なアプローチを活用した「近未来の都会的なラフスタイルコーデから着想を得た」コレクションになるという。

 オッセンドライバーは「ケンゾー(KENZO)」やエディ・スリマン(Hedi Slimane)時代の「ディオール オム(DIOR HOMME)」などでキャリアを積んだ後、アルベール・エルバス(Alber Elbaz)のもとで「ランバン」のメンズを確立。14年間メンズを率いた後、18年にメゾンを去った。

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中

The post 元「ランバン」メンズデザイナーが「セオリー」のカプセルコレクションを手掛ける appeared first on WWDJAPAN.

LVMH、21年上半期は55%増収 コロナ禍以前を上回る業績

 LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)の2021年1~6月期決算は、売上高が前年同期比55.8%増の286億6500万ユーロ(約3兆6977億円)、営業利益は約5倍(同400.8%増)の75億9800万ユーロ(約9801億円)、純利益は約10倍(同913.2%増)の52億8900万ユーロ(約6822億円)の大幅な増収増益だった。

 なお、19年同期比でも売上高は14.2%増、営業利益は44.9%増、純利益は61.8%増とコロナ禍以前を上回る業績になった。

 部門別の売上高では、主要事業のファッション・レザーグッズ部門が記録的な伸びを見せ、前年同期比73.5%増の138億6300万ユーロ(約1兆7883億円)だった。スターブランドの「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」と「ディオール(DIOR)」に加えて、「フェンディ(FENDI)」「ロエベ(LOEWE)」「セリーヌ(CELINE)」も非常に好調で、業績に大きく貢献した。

 20年12月に総額158億ドル(約1兆7380億円)で買収したティファニー(TIFFANY & CO.)を擁するウオッチ&ジュエリー部門は、同205.0%増の40億2300万ユーロ(約5189億円)と約3倍の伸びとなった。ワイン&スピリッツ部門は同36.2%増の27億500万ユーロ(約3489億円)、香水&コスメティクス部門は同31.2%増の30億2500万ユーロ(約3902億円)だった。免税店のDFSや化粧品のセレクトショップ、セフォラ(SEPHORA)などを運営するセレクティブ・リテール部門は、同4.9%増の50億8500万ユーロ(約6559億円)だった。

 19年同期との比較では、ファッション・レザーグッズ部門の売上高が32.9%増、ウオッチ&ジュエリー部門は同88.4%増、ワイン&スピリッツ部門は同8.8%増となった一方で、香水&コスメティクス部門は同6.5%減、観光客不在の影響が長引いているセレクティブ・リテール部門は同28.3%減となっている。

 ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼最高経営責任者は、「世界中が危機的な状況にある中でも、事業への投資やイノベーションを継続してきた結果として、素晴らしい業績を上げることができて大変うれしく思っている。上半期のハイライトは、グループ内への『ティファニー』の統合と、大規模なリノベーションを行っていた百貨店サマリテーヌ(LA SAMARITAINE)の営業を再開できたことだ。事態が落ち着き、世界経済が復活の兆しを見せている現在、当社は今後も成長を続け、グローバルなラグジュアリー市場をけん引するリーダーとしてのポジションをさらに強化できるものと確信している」と語った。

 コロナ禍が落ち着き、外出や旅行などが可能になるにつれて、ラグジュアリー消費の比重がモノからコト(体験)へと移るのではないかと見る専門家も多い。これについて、ジャン・ジャック・ギヨニー(Jean-Jacques Guiony)最高財務責任者(CFO)は、「中国のトレンドを注視しているが、現在のところそうした傾向は見られず、需要は減速していない。こうしたことから、旅行などができるようになっても、ラグジュアリーのモノ消費とは“別の財布”からの支出になるのではないかと希望を持っている」と述べた。同氏はまた、中国市場での業績は大変好調だが、売り上げに占める中国人顧客の割合は増加しておらず、中国への依存度は高まっていないと付け加えた。

 21年1~3月期(第1四半期)決算発表の際、検討している買収案件はあるかと問われたギヨニーCFOは、「ほかにやるべきことがある。現在は『ティファニー』をグループ内に統合し、長期的に成長させていくことが最優先事項だ」と答えている。しかし、ティファニーほどの大規模な案件ではないものの、LVMHはその後も投資を続けている。21年4月にはトッズ・グループ(TOD'S GROUP)の持ち分を10%に引き上げ、7月には過半数株式を保有する「エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)」の全株式を取得して完全子会社化。同じく7月には、17年に「セリーヌ(CELINE)」を去ったフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)が自身の名前を冠したブランドの立ち上げを発表したが、LVMHはその少数株主となっている。また、やはり7月には、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が率いる「オフ-ホワイト ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」の商標を所有するオフ-ホワイト合同会社(OFF-WHITE LLC)の株式60%を取得した。セフォラも、英ビューティE Cの「フィールユニーク(FEELUNIQUE)」を買収すると発表した。

 英金融機関HSBCのアーワン・ランバーグ(Erwan Rambourg)=コンシューマー&リテール・リサーチ・グローバルヘッドは、「現在は全般に企業のマルチプル(財務指標や企業価値などに基づいて算出した評価倍率)が高い売り手市場だが、LVMHほどの資金力があれば、今後も投資を続ける可能性がある」とコメントした。

The post LVMH、21年上半期は55%増収 コロナ禍以前を上回る業績 appeared first on WWDJAPAN.

LVMH、21年上半期は55%増収 コロナ禍以前を上回る業績

 LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)の2021年1~6月期決算は、売上高が前年同期比55.8%増の286億6500万ユーロ(約3兆6977億円)、営業利益は約5倍(同400.8%増)の75億9800万ユーロ(約9801億円)、純利益は約10倍(同913.2%増)の52億8900万ユーロ(約6822億円)の大幅な増収増益だった。

 なお、19年同期比でも売上高は14.2%増、営業利益は44.9%増、純利益は61.8%増とコロナ禍以前を上回る業績になった。

 部門別の売上高では、主要事業のファッション・レザーグッズ部門が記録的な伸びを見せ、前年同期比73.5%増の138億6300万ユーロ(約1兆7883億円)だった。スターブランドの「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」と「ディオール(DIOR)」に加えて、「フェンディ(FENDI)」「ロエベ(LOEWE)」「セリーヌ(CELINE)」も非常に好調で、業績に大きく貢献した。

 20年12月に総額158億ドル(約1兆7380億円)で買収したティファニー(TIFFANY & CO.)を擁するウオッチ&ジュエリー部門は、同205.0%増の40億2300万ユーロ(約5189億円)と約3倍の伸びとなった。ワイン&スピリッツ部門は同36.2%増の27億500万ユーロ(約3489億円)、香水&コスメティクス部門は同31.2%増の30億2500万ユーロ(約3902億円)だった。免税店のDFSや化粧品のセレクトショップ、セフォラ(SEPHORA)などを運営するセレクティブ・リテール部門は、同4.9%増の50億8500万ユーロ(約6559億円)だった。

 19年同期との比較では、ファッション・レザーグッズ部門の売上高が32.9%増、ウオッチ&ジュエリー部門は同88.4%増、ワイン&スピリッツ部門は同8.8%増となった一方で、香水&コスメティクス部門は同6.5%減、観光客不在の影響が長引いているセレクティブ・リテール部門は同28.3%減となっている。

 ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼最高経営責任者は、「世界中が危機的な状況にある中でも、事業への投資やイノベーションを継続してきた結果として、素晴らしい業績を上げることができて大変うれしく思っている。上半期のハイライトは、グループ内への『ティファニー』の統合と、大規模なリノベーションを行っていた百貨店サマリテーヌ(LA SAMARITAINE)の営業を再開できたことだ。事態が落ち着き、世界経済が復活の兆しを見せている現在、当社は今後も成長を続け、グローバルなラグジュアリー市場をけん引するリーダーとしてのポジションをさらに強化できるものと確信している」と語った。

 コロナ禍が落ち着き、外出や旅行などが可能になるにつれて、ラグジュアリー消費の比重がモノからコト(体験)へと移るのではないかと見る専門家も多い。これについて、ジャン・ジャック・ギヨニー(Jean-Jacques Guiony)最高財務責任者(CFO)は、「中国のトレンドを注視しているが、現在のところそうした傾向は見られず、需要は減速していない。こうしたことから、旅行などができるようになっても、ラグジュアリーのモノ消費とは“別の財布”からの支出になるのではないかと希望を持っている」と述べた。同氏はまた、中国市場での業績は大変好調だが、売り上げに占める中国人顧客の割合は増加しておらず、中国への依存度は高まっていないと付け加えた。

 21年1~3月期(第1四半期)決算発表の際、検討している買収案件はあるかと問われたギヨニーCFOは、「ほかにやるべきことがある。現在は『ティファニー』をグループ内に統合し、長期的に成長させていくことが最優先事項だ」と答えている。しかし、ティファニーほどの大規模な案件ではないものの、LVMHはその後も投資を続けている。21年4月にはトッズ・グループ(TOD'S GROUP)の持ち分を10%に引き上げ、7月には過半数株式を保有する「エミリオ・プッチ(EMILIO PUCCI)」の全株式を取得して完全子会社化。同じく7月には、17年に「セリーヌ(CELINE)」を去ったフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)が自身の名前を冠したブランドの立ち上げを発表したが、LVMHはその少数株主となっている。また、やはり7月には、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が率いる「オフ-ホワイト ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」の商標を所有するオフ-ホワイト合同会社(OFF-WHITE LLC)の株式60%を取得した。セフォラも、英ビューティE Cの「フィールユニーク(FEELUNIQUE)」を買収すると発表した。

 英金融機関HSBCのアーワン・ランバーグ(Erwan Rambourg)=コンシューマー&リテール・リサーチ・グローバルヘッドは、「現在は全般に企業のマルチプル(財務指標や企業価値などに基づいて算出した評価倍率)が高い売り手市場だが、LVMHほどの資金力があれば、今後も投資を続ける可能性がある」とコメントした。

The post LVMH、21年上半期は55%増収 コロナ禍以前を上回る業績 appeared first on WWDJAPAN.

「ヴェトモン」の新ブランドが始動 ジェンダーを記したTシャツなどを発表

 ヴェトモン(VETEMENTS)は22日、新ブランド「VTMNTS」を公開し、初のルックも発表した。新たにインスタグラムアカウント@vetements_secret_projectを開設し、テレビのテストパターンの模様を施したトップスやブラウンのパンツ、セーターなどを複数披露した。その後100ルックを公開し、「100のルックでこの業界に100%真摯に取り組むことを表現している」と述べた。

 コレクションルックには主に男性モデルを起用しており、ウエアにはバーコードと「VTMNS」の登録番号とされる「83 836 36 87」を記した。6月に新しいブランドを発表すると初めて公開した際には、「全てのジェンダーの人に向けたアイテムを手掛ける」としていたが、今回「She/Her」「He/Him」「They/Them」といった、女か男かという枠組みだけでない包括的なジェンダー・プロナウン(代名詞)を表示したTシャツを製作。1980年代の人気映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に敬意を表するパーカーも発表した。

 ヴェトモンは新ブランドの立ち上げとともに、今後コングロマリットとして発展する計画を発表。教育、技術開発、生産、サプライチェーンおよび財政支援を提供することで、トレンドや既存の枠組みにとらわれないユニークなブランドを生み出す機関を目指す。新ブランドの名称について「ファッション・ロー(The Fashion Law)」は、「ヴェトモンはフランス語で『衣服』と一般的に使われることから、同名での商標登録に難航した経験がある。このような理由から、今回のブランド名を選んだのではないか」と分析するが、同社からの正式な発表はない。

The post 「ヴェトモン」の新ブランドが始動 ジェンダーを記したTシャツなどを発表 appeared first on WWDJAPAN.

大坂なおみ選手のドキュメンタリーの見どころ5選 ネットフリックスで配信

 プロテニスの大坂なおみ選手の軌跡を追うドキュメンタリーシリーズ「大坂なおみ」がネットフリックス(NETFLIX)で配信された。シリーズは全部で3エピソードからなる。グランドスラム(ウィンブルドン選手権、全豪オープン、全仏オープン、全米オープンの四大大会)チャンピオンとしての実績に加えて、日頃から人種差別といった社会問題に触れて次世代のリーダーとしても注目を浴びる大坂選手の心の内に迫る。

 ドキュメンタリーでは、2018年の全米オープンで憧れのセリーナ・ウィリアムズ(Serena Williams)選手に打ち勝ち、優勝して以来激変した大坂選手のキャリアや私生活を、本人によるナレーションを交えて振り返る。ここでは、ドキュメンタリーの見どころ5つをお届けする。

1 子どもの頃からテニスに自信を持てなかった大坂選手が、プロを目指すときっかけとなった母親の存在

 大坂選手の両親は、子どもたちにはテニスを楽しめる子に育ってほしいと夢を抱いており、スポーツをしたことがないにもかかわらず他の選手のコーチングを見て学び、熱心にテニスを教えた。子どもの頃から大坂選手は姉のマリ(Mari)と毎日コートに足を運んでは、少なくとも8時間はプレーしていた。当時、大坂選手は自身のテニスの腕前に自信がなく「あまり得意ではなかった」と語る。

 そんな彼女がプロを意識するようになった背景には、母親の存在が大きい。テニスの大会にも参加するようになるなってから、大坂選手は送り迎えを通して母親と過ごす時間が増えた。「母が残業し、車の中で寝ているのも時々見かけていた。彼女に幸せになって欲しかったし、仕事を辞めてもらいたかった。それがテニスをする上で一番大事だった。チャンピオンになるか、ずっと苦しい生活を続けるかしかなかった」と語る。

2 故コービー・ブライアン選手の死が大坂選手に与えた影響

 バスケットボール界レジェンド、故コービー・ブライアント(Kobe Bryant)選手は大阪選手にとっても尊敬の的。2020年1月の訃報は世界中のファンを悲しみに包んだ。大坂選手はニュースの直後に動画を撮影し、「彼と初めて話した時、私たちはとても似ていると感じた。“敵”の懐に入り込む戦法など、私もやろうとしていることだ、と。だから彼をがっかりさせてしまった気がする。彼の教えをテニスで引き継いでいきたいのに、試合に勝てず精神的にも弱い。彼はそんな人ではなかったのに……」と自身とブライアント氏の写真を見せながら語った。

 ドキュメンタリーでは、彼女がブライアント氏に送ろうとしていたテキストメッセージも公開している。「彼に、苦しい時にどうやって向き合っているのかを聞きたかった。でも悩んだ末に結局送れなかった。その後事故が起こったので彼と話す機会を永遠に失ってしまった。信じられなかったよ」。その後大坂選手は、20年フェデレーション・カップで同じ選手相手に敗れている。大阪選手のコーチは当時を振り返り、「彼女は試合の時、心も体も完全でなかった。それだけブライアント氏の死は彼女の心を揺さぶった。とても近しい2人だった」という。

 20年全米オープンのインタビューで大坂選手は、「ブライアント氏が誇りに思ってくれるようなことを、続けていきたい。彼と友人になれて、いろんな話ができてとっても幸せだった。だから、私が何をしてもきっと彼は怒らないだろうし、見守っていてくれるだろう」と述べた。

3 黒人と日本人のミックスレースとしてのアイデンティティー

 日本語について、常々「もっとうまく話せたら」と思っている大坂選手。母親や妹とは日本語で会話しているが、「そもそもみんな文法も適当なので、お互いに指摘することはない」のだという。しかし脚光を浴びるにつれて、自身の言語能力について考えることが増えた。「私はメディアで取り上げられることも増えた。黒人と日本人のミックスレースの一人として、間違った“ハーフ”へのイメージを植え付けてしまっているんじゃないかと考えてしまう」と語る。

 ドキュメンタリーでは、彼女の両親が日本で“外国人カップル”として直面した数々のハードルについても触れている。彼女の父、ハイチ共和国南東県ジャクメルにルーツを持つレオナルド・フランソワ(Leonard Francois)は北海道に留学生として滞在していた時に母に出会った。大坂選手のアイデンティティーについて、「何をどうしても、移民として完全な日本人になることはない。娘の名前を選ぶ時に気をつけたのは、どの国に行っても通じるような名前にすること。(名前に惑わされず)彼女たちがどんな人物であるか、を見てもらいたかった」と述べた。

4 オリンピックに日本枠で出場することで受けた批判の声

 大坂選手は2019年に、20年の東京オリンピックで日本代表として出場するために米国籍を放棄すると決めた。彼女は人生の大部分をアメリカで過ごしているが、妹とともにいつも日本人としてのアイデンティティーも大事に生きており、22歳を迎えたタイミングで日本国籍を選択した。

 日本からプレーすることを決意したというニュースによって、アメリカでは多くの批判を受けたという。ドキュメンタリーでは、「私は14歳の時から、日本の国旗を掲げてプレーしてきた。だからアメリカを選ばなかったことはすごく自然な選択だった。オリンピックのために日本でプレーすることを隠していたわけでも、突然決めたわけでもない。すると、『ブラックアイデンティティーを捨てた』『黒人としての立場はこれで無くなる』と言われてしまった。アフリカ系アメリカ人だけが“黒人”ではないのに……。多くの人は国籍と人種の違いがわからないように感じる。ブラジルには黒人がたくさんいるが、その人たちはブラジル人なのだ」と語る。

5 BLM運動をきっかけに、発信のために立ち上がると決めた

 多くのアスリートや著名人が考えるように、大坂選手も“炎上”を避けるために自分とは関係のない問題には干渉しないべきだと思っていた時期があったという。さらに彼女は、自分の考えを発信することを「怖い」と感じていた。そんな大坂選手だが、20年5月に黒人男性のジョージ・フロイド(George Floyd)氏が白人の警察官に首を押さえつけられて死亡した事件を受けて派生したBLM運動に参加した。その背景について「私はいつも人の後を追って、誰かが残してくれたヒントをもとに生きていた。実際は自分の好きなこともやりたいことも見つかっておらず、すぐに行き詰まった。そこで、自分が自分のために道を作ってあげないといけないのだと気がついた」と語る。

 8月には、黒人男性のジェイコブ・ブレイク(Jacob Blake)氏が射殺された事件を受けて、米国の男子プロバスケットリーグ、ナショナル・バスケット・アソシエーション(National Basketball Association以下、NBA)などをはじめとする多くのアスリートがボイコットをした。ウエスタン・アンド・サザン・オープン(Western & Southern Open)の準決勝を控えていた大坂選手も、「声をあげる必要があった。トーナメントを棄権することが反響を呼ぶのなら、それを使って関心を向けるのが私の使命だと思った」とし、その日はプレーをしないと決めた。「声を上げるのは怖かった。でも今は自信も少し付いてきた。これが今自分のやるべきことだと迷いなく感じている」と振り返る。

 彼女のコーチは、「私たちは一緒にNBAの選手らが声を上げるのを見ていた。彼らはチームとして発信して選択し、チームメートとともに団結して立ち上がっていた。他のテニスプレーヤーに支えられることなく、彼女はたった一人で向き合った。自分で受け止めて考え、立ち上がった。歴史上初めてテニスの試合を止めた」と語る。

 その後も全米オープンで彼女は被害者の名前がプリントされたマスクをつけて抗議活動を続けた。その狙いについて聞かれると、「こうやって、人々の間に社会についての対話を生みだしたかった」と答えている。ドキュメンタリーでは、アクティビストとして社会課題に声を上げ続ける彼女について両親に尋ねるシーンも。2人とも「素晴らしいことだ」と支持を示し、父親のフランソワは、「マスクに関して言えば、彼女は私のためを思って立ち上がっているような気がしている。彼女が自分で考え抜いて決めた決断を、素晴らしいと思う。正しい歴史を築いている」と語った。

The post 大坂なおみ選手のドキュメンタリーの見どころ5選 ネットフリックスで配信 appeared first on WWDJAPAN.

LVMHが「オフ-ホワイト」の株式60%を取得 ヴァージルと新ブランド立ち上げへ

 LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が率いる「オフ-ホワイト ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH以下、オフ-ホワイト)」の商標を所有するオフ-ホワイト合同会社(OFF-WHITE LLC)の株式60%を取得した。取得金額は明らかにされていない。

 株式の残り40%は、引き続き「オフ-ホワイト」のクリエイティブ・ディレクターを務めるヴァージルが保有する。なお、同ブランドを擁するニューガーズグループ(NEW GUARDS GROUP以下、NGG)は、オフ-ホワイト合同会社とのライセンス契約に基づき、今後も運営パートナーとして「オフ-ホワイト」に携わる。NGGは、2019年にラグジュアリーECのファーフェッチ(FARFETCH)によって6億7500万ドル(約735億円)で買収されている。

 ヴァージルは、13年に「オフ-ホワイト」を設立。18年3月には、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のメンズ アーティスティック・ディレクターに就任した。今回の取引に加えて、LVMHとのさらなる協業についても合意しており、今後はLVMHと共に新たなブランドの立ち上げや、さまざまな分野のブランドとの提携などに取り組むという。

 ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼最高経営責任者(CEO)は、「成功を収めているヴァージルとのパートナーシップを拡大することができ、大変うれしく思っている。『オフ-ホワイト』のさらなる成長を支援すると共に、当社との協業によって、ヴァージルがそのユニークな感性をラグジュアリー分野でより幅広く発揮することを楽しみにしている」と語った。

 マイケル・バーク(Michael Burke)=ルイ・ヴィトン会長兼CEOは、「ヴァージルは壁を壊し、非常に多様で包括的な哲学を表現することで、『ルイ・ヴィトン』に長く続く影響をもたらすと同時に、『ルイ・ヴィトン』のラグジュアリーな世界をより多くの人々に届けてくれた。これまで共に歩んできた道のりを誇らしく思っており、今後の新たな旅路についてもワクワクしている」と述べた。

 ヴァージルは、「(今回の取引を)心から光栄に思っている。ブランドとクリエイティブ・ディレクターの関係性にはさまざまなパターンがあるが、これは全く新しい形だ。私に幅広い才能があると信じ、ファッションショーという枠に収まらない提案ができる現在の立場に至るまで私を育ててくれた、ベルナールとマイケルに感謝している」と話した。

 今後どのような分野を手掛けたいかについて、ヴァージルは、「ホテルなどのホスピタリティー分野や、ジュエリーなどに関心がある。また、以前からファッション、アート、カルチャーの融合に興味を持っているので、そうした面でも新たな分野に踏み出す機会になると思う」と説明した。

 バーク会長兼CEOは、LVMHが以前からオフ-ホワイト合同会社の少数株式を保有していたことを認めたものの、その取得時期や持ち分については開示しなかった。19年1月には、LVMHがNGGへの出資に向けて水面下で話し合いをしていると一部で報じられたが、その後の経緯については明らかにされていない。同氏は、「ヴァージルとの取引により、NGGとの関係ができて非常にうれしく思っている。彼らは『オフ-ホワイト』を傘下に収め、同ブランドを成功へと導いた。そうした主要なパートナーを変更する必要があると考えていたら、今回の取引はしなかっただろう」と述べた。

The post LVMHが「オフ-ホワイト」の株式60%を取得 ヴァージルと新ブランド立ち上げへ appeared first on WWDJAPAN.

エルメネジルド ゼニア グループがSPAC方式で上場へ

 エルメネジルド ゼニア グループ(ERMENEGILDO ZEGNA GROUP以下、ゼニア)は、ニューヨーク証券取引所に上場するためにインベストインダストリアル・アクイジション(INVESTINDUSTRIAL ACQUISITION CORP.)と最終事業契約を締結した。インベストインダストリアル・アクイジションは、特別買収目的会社(Special Purpose Acquisition Corporation、SPAC)と呼ばれる、特定の事業を持たず、未公開会社の買収を目的に設立する上場会社のことで、日本では認められていないが米国では注目されている上場手法。今回のケースでは、上場済みのインベストインダストリアル・アクイジションがゼニアを買収することで、事実上、ゼニアが上場したことと同義になる。

 インベストインダストリアル・アクイジションによるゼニアの買収完了は第4四半期中を予定しており、ゼニア一族は約62%の株式を保有し決定権を維持する。合併後の初期企業価値は32億ドル(約3480億円)、時価総額は25億ドル(約2725億円)と予想される。

 ゼニアのジルド・ゼニア(Gildo Zegna)最高経営責任者は、「111年以上前、創業者でもある私の祖父は、自然と人間の双方を大切にすることが最高のテキスタイルの創造とブランドの成功のための基盤だという信念の下、『ゼニア』を立ち上げた。それ以来、私たちは誇りを持って彼の足跡をたどり、イタリアの真のラグジュアリーメゾンの1つになった。上場後もゼニア一族は引き続き会社に留まり、世界のラグジュアリー市場におけるゼニアの地位を維持するため、創造性やイノベーション、才能やテクノロジーに投資を続けていく」とコメントしている。

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中

The post エルメネジルド ゼニア グループがSPAC方式で上場へ appeared first on WWDJAPAN.

ノードストローム、「トップショップ」など4ブランドの少数株主に 北米での独占販売権を獲得

 米百貨店ノードストローム(NORDSTROM)は、英アパレルECを運営するエイソス(ASOS)傘下のブランド「トップショップ(TOPSHOP)」「トップマン(TOPMAN)」「ミスセルフリッジ(MISS SELFRIDGE)」「HIIT」の少数株式を取得した。持ち分や取得額は明らかにされていない。

 ノードストロームはこれによってエイソスと協業することになるが、エイソスではなく各ブランドの株式を取得しており、ノードストロームがブランドに直接投資をした初のケースとなった。なお、4ブランドの運営やクリエイティブ面については今後もエイソスが権限を持つ。

 今回の取引で、ノードストロームは「トップショップ」と「トップマン」の北米における独占販売権を獲得。いずれもトレンドを取り入れたデザイン性の高い服を手頃な価格で提供する若者向けのブランドで、12年に米国市場に進出して以来、ノードストロームでのみ取り扱われている。一方、カナダでは大手小売りのハドソンズ・ベイ・カンパニー(HUDSON'S BAY COMPANY)が百貨店でインショップを展開しているが、これらは21年秋を目処に閉店するため、店舗での販売は世界中でノードストロームのみとなる。

 前述の4ブランドは、以前は英アルカディア・グループ(ARCADIA GROUP)が保有していたが、同社が2020年11月に経営破綻したことに伴い、21年2月にエイソスが知的財産なども含めて2億6500万ポンド(約405億円)で買収した。エイソスがEC事業に特化していることから、「トップショップ」などの店舗は買収対象に含まれなかった。

 ピーター・ノードストローム(Peter Nordstrom)=ノードストローム社長兼チーフ・ブランド・オフィサーは、「20代の消費者向けのファッションをけん引するエイソスは、当社にとって素晴らしいパートナーだ。今回の協業によって、卸と小売りの新たな関係性を構築していきたい」と語った。

 ニック・ベイトン(Nick Beighton)=エイソス最高経営責任者は、「米国の消費者に関する深い洞察力や北米市場での幅広いリーチを持ち、『トップショップ』と長年にわたって良好な関係を築いているノードストロームは、当社やその傘下ブランドのさらなる成長を促してくれる、またとないパートナーだ」と述べた。

 ノードストロームは以前からECの強化に取り組んでおり、オンラインで注文した商品を店頭で受け取れるシームレスなショッピング体験に力を入れている。この秋からは、エイソスのECで購入した商品についても、ノードストロームおよびそのアウトレット業態「ノードストロム ラック(NORDSTROM RACK)」での受け取りが可能となる。

 現在のところ、ノードストロームは「ミスセルフリッジ」と「HIIT」ブランドを取り扱っていない。今後の展開について、同社の広報担当者は、「エイソス傘下のブランドの販売について検討中だが、現時点で発表できることはない」とコメントしている。

The post ノードストローム、「トップショップ」など4ブランドの少数株主に 北米での独占販売権を獲得 appeared first on WWDJAPAN.

フィービー・ファイロがついにカムバック! 自身のブランド立ち上げへ

 2017年に「セリーヌ(CELINE)」を去ったフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)が自身の名前を冠したブランドを立ち上げる。

 「卓越した品質とデザインをベースにした」ウエアとアクセアリーのブランドで、22年1月に詳細を明らかにすると本人が米WWDに明かした。情報筋によると、20年後半にはすでにロンドンにチームを集めて準備を進めていたという。LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON、以下LVMH)が少数株主となる。

 フィービーは、「制作に戻ることはエキサイティングであり、とても充実している。世界中の人々と再会することが楽しみだ。独立して、自分の責任のもとブランドを運営していくことは私にとって非常に重要なこと」だとコメントしている。また、少数株主であるLVMHについては「長い間LVMHとは非常に建設的でクリエイティブな関係を築いてきた。したがって、この新しいプロジェクトでLVMHと再度手を組むことは自然なことだ。ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長兼最高経営責任者およびデルフィーヌ・アルノー(Delphine Arnault)=ルイ・ヴィトン エグゼクティブ・バイス・プレジデントと意見交換できたことに感謝しているし、新たな挑戦を始めるにあたって彼らのサポートを得られたことはとてもありがたいことだ」とコメントしている。

 フィービーはセントマーチン美術大学(Central Saint Martins)を卒業。1997年から「クロエ(CHLOE)」でステラ・マッカートニー(Stella McCartnery)のデザインアシスタントとして従事。2001~06年に同ブランドのクリエイティブ・ディレクターを務め、高い評価を得た。その後、10年間クリエイティブ・ディレクターを務めた「セリーヌ」ではフィービーのセンスを詰め込んだ、“上質で奇をてらわないがモダンな服”が女性たちの心をつかみ、人気ブランドへと押し上げた。18年のプレ・フォール・コレクションを最後に「セリーヌ」を去った際には“フィービー・ロス”といわれるほどの影響を与えた。「セリーヌ」退任後はファッション業界で活動することはほぼなかったが、21年にはフランス国立モード芸術開発協会が主催する「ANDAMファッション アワード(ANDAM Fashion Award)」の審査員に名を連ねている。

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中

The post フィービー・ファイロがついにカムバック! 自身のブランド立ち上げへ appeared first on WWDJAPAN.

世界のビューティ企業トップ100:11〜25位 花王やコーセー、アモパシなどアジア企業はインバウンドで打撃を受けるもダーマコスメで勝負

 「WWDJAPAN」7月12日号は、2020年12月期の売り上げに基づく「世界のビューティ企業TOP100」特集。ここでは、日系企業の花王やコーセーに加え、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JOHNSON & JOHNSON)やヘンケル(HENKEL)など日本でも馴染みのある企業がランクインした11〜25位企業の商況を紹介。今期は韓国で首位を走り続けてきたアモーレパシフィック グループ(AMOREPACIFIC GROUP)が初めて競合のLG ハウスホールド&ヘルスケア(LG HOUSEHOLD & HEALTHCARE)に抜かれ、Kビューティ市場の勢力図も変化した。

[wwdj_page_link_block]
[wwdj_internal_link postid=”1233338″ title=【世界のビューティ企業トップ100】1〜10位の企業ランキングはこちら]
[/wwdj_page_link_block]

【25位】GROUPE CLARINS
クラランス グループ

 20年3月、ロレアル(L’OREAL)に「ミュグレー(MUGLER)」「アザロ(AZZARO)」を売却した。大幅な売り上げ減はフレグランス事業から撤退したことによるが、同事業以外の売り上げは前年比10%減だった。

 20年は中国事業に加えてコロナ禍におけるデジタル面の強化が功を奏した。美容部員が消費者に診断や製品アドバイスを無料で提供する個別相談サービス「クラランス アンド ミー(Clarins and me)」を各国のウェブサイトで導入。フランスではサブスクリプションサービス「クラランス アンリミテッド(Clarins Unlimited)」の提供を開始。消費者は2カ月ごとに好きな製品またはサプライズパッケージの受け取りを選択することが可能で、3つの価格帯が設定されている。11月にはバーチャルストアもオープンした。

 21年1月には、創業者のジャック・クルタン・クラランス(Jacques Courtin-Clarins)の孫娘にあたるヴィルジニー・クルタン・クラランス(Virginie Courtin-Clarins)がデピュティCEO兼CSR担当のトップに就任した。

【24位】L’OCCITANE INTERNATIONAL
ロクシタン インターナショナル

 オンラインの成長および中国を中心としたアジア市場の回復により、20年の業績は比較的堅調に推移した。世界各地でソーシャルコマースに注力した結果、4〜12月はオンライン売り上げが前年同期比71.8%増加し、全体の38.1%を占めた。

 「ロクシタン(L’OCCITANE)」は、ボディーケアやハンドケアなどの分野にフォーカスしたことで売り上げを伸ばした。19年に買収した「エレミス(ELEMIS)」はアジアを中心に市場を拡大し、デジタル戦略に基づいて事業を展開。7月には中国のセフォラ(SEPHORA)で独占販売を開始し、フランス、ドイツ、イタリア、香港、台湾、シンガポールではECサイトも開設した。一方米国法人のロクシタンU.S.(L’OCCITANE U.S.)は、21年1月に日本の民事再生法に当たる米連邦破産法第11条の適用を申請した。

 サステナビリティでは、遅くとも23年までに「Bコープ(B CORP)」認証の取得を目指す。21年1月には、アジア市場で豊富な経験を持つシャネル(CHANEL)元幹部のイブ・ブルアン(Yves Blouin)が、エグゼクティブ・ディレクター兼グループ・マネジング・ディレクターに就任した。

【23位】WALGREENS BOOTS ALLIANCE
ウォルグリーンズ・ブーツ アライアンス

 米国のウォルグリーンズ、英国のブーツは共に薬局として生活必需品を販売しているとされていたものの、コロナ禍で来店客数が減少し、ビューティ分野の収益が年間を通じて減少した。一方でオンラインの売上高は大きな伸びを示した。

 ブーツでは、7月に従業員の7%に相当する4000人以上の削減計画を発表。21年初頭に発表された医薬品の卸売事業独立の動きに伴い、中核となるリテールの薬局事業にフォーカスできると見られている。

 英国を代表するスキンケアブランドの「No7」は、ブランド初のレチノール入り美容液を発売し、一時10万人が入荷待ちをしていたほど高い人気を博した。ロックダウン期間中にはバーチャルカウンセリングも開始し、デジタルにも力を入れた。

 人事では、スターバックス(STARBUCKS)やウォルマート(WALMART)で役員を歴任したロザリンド・ブリュワー(Rosalind Brewer)を3月に新CEOに任命。ブリュワーは同社最大の個人株主で、エグゼクティブチェアマンに就任したステファノ・ペッシーナ(Stefano Pessina)の後任だ。

【22位】REVLON INC.
レブロン

 昨年に続いてポートフォリオ全体で売上高が大幅に減少。スキンケアがけん引し好調だった「エリザベス アーデン(ELIZABETH ARDEN)」でも今期は2ケタ台の減少を記録。20年3月には2億3000万ドル(約243億円)超のコスト削減を見越してリストラ計画を発表した。またジェフリーズ ファイナンス(JEFFERIES FINANCE)が最大8億5000万ドル(約901億円)の資金を提供することでシニア債の借り換えを行うことも発表した。

 新型コロナの影響で20年4月には従業員に一時帰休や時短勤務を要請。7月にはこれまでフレグランスを手掛けてきた高級ランジェリーブランド「ラペルラ(LA PERLA)」とのライセンス契約が終了。「ラペルラ」は自社内で化粧品会社を立ち上げ、メイクアップやボディーケアの展開を開始した。

【21位】THE WELLA CO.
ウエラカンパニー

 20年末に投資会社のKKRとコティが合弁会社を設立し、コティのプロフェッショナル事業部を独立。KKRが株式の60%、コティが40%をそれぞれ保有している。これまでプロフェッショナルブランドはコティの下で安定した業績を上げていたが、ヘアサロン・ネイルサロン専売品が中心のため新型コロナの影響によるサロン休業が響き今年は売り上げが減少。プロフェッショナル用ヘアケアの売上高は19%、リテール用ヘア製品は6%減少した。

 人事では、10月にはCEOにアニー・ヤング・スクリブナー(Annie Young-Scrivner)前ゴディバ(GODIVA)CEOが就任した。デレン・タスキラン(Deren Taskiran)はチーフ・トランスフォーメーション・オフィサーに、ビル・ベイリー(Bill Bailey)はコーポレートおよびビジネス開発のシニア・バイス・プレジデントに就任した。

【20位】GROUPE ROCHER
グループ ロシェ

 ビジネスの大半が直販にもかかわらず、実店舗の休業が大きく響き売り上げを落とした。看板ブランドの「イヴ・ロシェ(YVES ROCHER)」の売上高は前年比15%減となった。一方で「アルボンヌ(ARBONNE)」は約23%増加し、グループ全体の売り上げの26%以上を占めるまでになった。

 サステナビリティに引き続き注力し、「イブ・ロシェ」は濃縮シャワージェルとシャンプーに加え、バイオ由来マニキュアを発売した。10月からは自社工場で製造する全てのペットボトルをリサイクルPETで製造し、2700トンのプラスチックを節約した。「アルボンヌ」はレチノールに代わる植物由来の成分、バクチオールを配合した“エイジウェル”シリーズを発売。またリサイクル事業を手掛けるテラサイクル(TERRA CYCLE)と提携して、製品回収にも力を入れる。

 生産拠点のローカル化も進め、製品の主要成分であるフローラルウオーターを自社生産に切り替えた。

【19位】KOSE CORP.
コーセー

 日本市場は外出自粛や訪日外国人旅行客の減少により打撃を受けたが、「コスメデコルテ(DECORTE)」や「アルビオン(ALBION)」は化粧品専門店での売り上げが急速に回復し、そのほかの主要チャネルでも復調の兆しが見られた。自社のECチャネル「メゾン コーセー(MAISON KOSE)」の売り上げも一貫して好調だった。しかし、新型コロナの影響で日本国内の売上高は第3四半期まで減少傾向にあった。

 中国ではeコマースの売り上げが引き続き増加しており、免税品が堅調に推移する中でデパートも回復。中でも好調だったのは「コスメデコルテ」。韓国、台湾、その他アジア諸国では、新型コロナの影響を受けつつも売上高は20%強の伸びを示した。欧米では「タルト(TARTE)」のeコマースが好調だったが、北米全体での売上高は12月までの9カ月間で19.4%減少した。

 コーセーは26年の創業80周年に向けて「ビジョン2026」の戦略を掲げ、グローバルかつボーダーレスな次なる成長ステージに向けて活動している。

【18位】COLGATE-PALMOLIVE CO.
コルゲート・パルモリーブ

 コロナの影響でハンドソープやスキンケアの売り上げが大幅に伸びた。近年プレミアムやクリニカルスキンケアブランドにも注力しており、ダーマコスメブランドの需要が伸びる中で「フィロルガ(FILORGA)」「エルタMD(ELTAMD)」「PCA スキン(PCA SKIN)」などがオンラインを中心に成長した。多くのパーソナルケアブランドが供給に支障を来たす一方で、サプライチェーンの混乱を最小限に止めた結果、「プロテックス(PROTEX)」「アイリッシュ スプリング(IRISH SPRING)」「ソフトソープ(SOFTSOAP)」などの売れ行きが好調となった。

 スキンケアのノウハウをオーラルケア事業に生かし、美容とオーラルケアの両方を兼ね備えた製品も発売した。20年初めに買収したオーラルケアの「ハロー(HELLO)」でもリップバームとデオドラントを発売するなど、ビューティ分野に更なる機会を見出している。25年までに全てのパッケージを100%再利用、堆肥化可能なものにする計画も発表した。

【17位】MARY KAY
メアリー ケイ

 2019年は新製品が少なく売り上げを落としたが、20年はコロナニーズに対応した製品を発売し前年の数字をクリア。ARを用いたバーチャルショールーム「スイート13(Suite13)」や、人工知能でユーザーの肌を分析し、50万枚以上の写真データを元に商品を提案する「スキンアナライザー(Skin Analyzer)」など、オンラインでの美容体験を可能にする新しいツールを開発しDXを推進した。

 今後は中国市場に注力すべく、ウェンディ・ワン(Wendy Wang)をアジア太平洋地域のチーフ コマーシャル オフィサーに任命した。一方で近年の業績の悪化を受け、1971年に参入した豪州およびニュージーランド市場から撤退した。

【16位】AMOREPACIFIC GROUP
アモーレパシフィック グループ

 実店舗の休業とトラベルリテールの制限が大打撃となる中で、国内外でライブコマースをはじめとするデジタルプラットホームの活用を強化した。その結果、韓国国内のオンライン売り上げを50%伸ばすことに成功した。

 「ソルファス(SULWHASOO)」の“ジャウムセン”シリーズや「レネージュ(LANEIGE)」の“ネオ クッション ファンデーション”、「アイオペ(IOPE)」の“レチノール エキスパート”、「リョ(RYO、呂)」のヘアケアライン“ジャヤンユンモ”といった看板商品が好調だった。さらに韓国で高級スキンケアブランド「シエヌ(SIENU)」やスカルプケアの「ラボ-H(LABO-H)」など、プレミアム市場向けの新ブランドをデビューさせた。

 海外では中国で「ソルファス」が好調で、米国ではセフォラ(SEPHORA)にも初出展した。欧州では「レネージュ」が好調だった。「エチュード ハウス(ETUDE HOUSE)」はアジアの主要マーケットで、「イニスフリー(INNISFREE)」は北米で直営店舗網を縮小し、グループ全体でマルチブランドストアへの出店を強化した。

 20年5月には豪州の高級スキンケア企業、ラショナル グループ(RATIONALE GROUP)に投資し、12月には美容専門のMCN(Multi-Channel Network)企業、DMILに30億ウォン(約2億7000万円)を投資することも発表した。

【15位】HENKEL
ヘンケル

 2020年1月に就任したカルステン・ノーベル(Carsten Knobel)CEOのもと、新たなビジネス戦略を掲げ、今後サステナビリティやDXを加速させる。戦略の一環として10億ユーロ(約1210億円)以上を売り上げるブランドの約半分を年内に終了・売却する予定だ。その代わり、最新のトレンドやニーズに応えるブランドの買収を視野に入れており、20年はドイツの自然派パーソナルケアのD2Cブランド「ハロー ボティー(HELLO BODY)」「バナナ ビューティ(BANANA BEAUTY)」などを擁するインビンシブル ブランズ ホールディング(INVINCIBLE BRANDS HOLDING)の株式75%を取得した。

 米国では理美容師と協業し性別やスタイルにとらわれないグルーミングブランド「ステートメント(STMNT)」を開発し、9月にウルタ(ULTA)に参入した。アマゾン(AMAZON)と開発したAI技術のデジタルヘアカラー試着ツール「チョイシファイ(Choicify)」も導入。「シュワルツコフ(SCHWARZKOPF)」では美容師が「サロンラボ(SalonLab)」のツールで髪をスキャンすることで、データに基づく提案が可能となった。「N.A.E.」「ネイチャー ボックス(NATURE BOX)」ではプラスチック不使用のパッケージを、主要ブランドのヘアカラーパッケージにはリサイクルのアルミチューブをそれぞれ採用した。また、社内のアイディア工場兼インキュベーターのフリッツ ビューティ ラボ(Fritz Beauty Lab)も立ち上げた。

 リテール部門は北米のボディーケア、ヘアカラー需要が2ケタ増と大きく成長したが、地域全体ではヘアサロンの休業によってプロフェッショナル部門が低迷し、売上高は横バイとなった。中国、東欧の売上高は好調だったが、西欧とアジアは減収となった。ヘアケア、スタイリング製品、スキンケアは全て売り上げを落とした。

【14位】COTY INC.
コティ

 16年以降CEOの交代が続いており、2020年頭にジミー チュウ(JIMMY CHOO)からピエール・デニス(Pierre Denis)を起用し、その後すぐにピーター・ハルフ(Peter Harf)が、その1カ月後にスー・Y・ナビ(Sue Y. Nabi)をCEOに迎え入れた。ナビCEOのもと「ウエラ(WELLA)」「クレオール(CLAIROL)」「OPI」「GHD」などを含むプロフェッショナル事業部を米投資会社のKKRに売却。また20年はカイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)の「カイリー・コスメティクス(KYLIE COSMETICS)」の過半数株式を取得し、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)の「KKW ビューティ(KKW BEAUTY)」の株式も20%取得するなど、ビッグニュースが続いた。

 新型コロナの影響やプロフェッショナル事業の売却により売り上げは大きく落としたが、年間を通じてeコマースに注力したことで第4四半期にはEC売り上げが40%増加した。コンシューマー部門は引き続き苦戦しており、第4四半期の売り上げは23%減となった。プレステージ事業部では「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」の契約が終了した一方で、「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」の新作フレグランス“パーフェクト”はトップセラーになった。

 今後はカイリー・ジェンナーが手掛けるスキンケアライン「カイリー・スキン(KYLIE SKIN)」のアジア進出や「KKWビューティ」のスキンケアラインの開発を計画するほか、ナビCEO自身のスキンケアブランド「オルヴェーダ(ORVEDA)」の買収も検討している。

【13位】JOHNSON & JOHNSON
ジョンソン・エンド・ジョンソン

 健康や身の安全に気を遣う人が増える中、サイエンスをベースにしたプロフェッショナルビューティブランドを中心に扱うジョンソン・エンド・ジョンソン(JOHNSON&JOHNSON)は、ビューティ事業の売り上げを前年比3.1%減にとどめた。

 中でも米国の皮膚科医から支持されるスキン・ボディーケアブランド「アビーノ(AVEENO)」がこの恩恵を受け、売り上げをけん引した。また「ニュートロジーナ(NEUTROGENA)」の“ラピッド リンクル リペア”が米国でエイジングケア製品の売り上げ第2位に輝き(IRI調べ)、“ハイドロ ブースト”シリーズの保湿クリームやクレンジングもそれぞれのカテゴリーで第2位、UVケアやニキビケア製品も好調だった。ヘアケアブランドの「OGX」は米国での人気が高く、シャンプー・コンディショナー共に年間トップセラーにランクインした。日本では「ドクターシーラボ(DR.CI:LABO)」をリブランディングし、好調だった。

 また、プラスチックの代替品や成分表示の透明性、UVケアの安全性に関する教育といった取り組み「ヘルシー ライブス ミッション」を20年9月に発表し、8億ドル(約848億円)を投じる。25年までには「ル プティ マルセイユ(LE PETIT MARSEILLAIS)」「ニュートロジーナ」「OGX」「アビーノ」などのパッケージを全て再利用、堆肥化、リサイクル可能なものに変更する計画も盛り込んでいる。

【12位】LG HOUSEHOLD & HEALTH CARE LG
ハウスホールド&ヘルス ケア

 プレステージブランドの強化やデジタル化を進めたことでホームケア&デイリービューティ事業部が成長。その結果、競合のアモーレオアシフィック グループ(AMOREPACIFIC GROUP)を抜き、初めて韓国国内最大の化粧品企業の座を獲得した。トラベルリテールの閉鎖でビューティ部門の全体の売上高は13.7%減少したが、ラグジュアリーブランドはわずかに成長した。

 前年比21%増を記録した中国市場がけん引し、ビューティ部門の海外売上高は12%増加した。オンラインの拡充やデジタルマーケティング、ライブコマースを強化したことで、パーソナルケアブランドによる収益も増加した。

 新製品にはマイクロバイオームの技術を取り入れており、ヘアケアブランド「ドクター グルート(DR.GROOT)」は頭皮の常在菌のバランスに着目してパラ プロバイオティクス、プレバイオティクスをベースにした製品を発売した。ボディーケアブランド「ヴェールメント(VEILMENT)」も同様の技術を製品に活用した。5月には英グラクソ・スミスクライン(GLAXOSMITHKLEIN)からダーマコスメブランド「フィジオジェル(PHYSIOGEL)」のアジア・北米における事業権利を1億2500万ポンド(約171億円)で買収し、中国、日本、米国でのローンチを進めている。

【11位】KAO CORP.
花王

 SRI+(全国小売店パネル調査)によると、訪日外国人旅行者の激減や外出自粛、マスク着用などで日本の化粧品市場の売り上げは前年に比べ22%落ちたという。中でもメイクアップ市場は同25%減、リップメイクは同51%減、ベースメイクは同28%減だった。花王はメイクアップ製品の比重が市場平均よりも10%ほど高いため、特に影響を受けたという。同社の化粧品事業を見ると11のグローバルブランド(G11)の社内における売り上げシェアは10%、国内戦略ブランド(R8)は28%減少した。

 一方でスキンケアの売上高は10%増加したほか、日本ではハンドソープの売り上げが3倍に膨らんだ。また、日本でのeコマースの売上高は同20%増、全体の売り上げに占める割合は19年の7%から10%に増加した。

 中国の売上高は同20%増と全体をけん引し、中でも「フリープラス(FREEPLUS)」や「キュレル(CUREL)」を中心に敏感肌にアプローチしたダーマブランドが人気だった。オンライン販売を強化した結果、EC事業は1.5倍に成長し、売上高に占める割合は70%となった。 

 その他アジア地域での売上高は前年比20%減となった。米国では「モルトン ブラウン(MOLTON BROWN)」のeコマース販売シェアが前年度の21%から46%に上昇したが、ブランド全体の売上高は7%下落した。

DESIGN:JIRO FUKUDA

ロレアルやエスティなどトップ企業はドクターズコスメと中国がけん引【世界のビューティ企業トップ100:1~10位】

 「WWDJAPAN」7月12日号は、2020年12月の売り上げに基づく度版「世界のビューティ企業TOP100」特集。ここでは、ロレアル(L’OREAL)やユニリーバ(UNILEVER)、エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)などトップを走る企業の商況を紹介。ブラジルのナチュラ&コー(NATURA & CO.)など、ニューカマーにも注目だ。

【10位】CHANEL LTD.
シャネル

 プレステージブランドに比重を置く多くの企業と同様に、全地域、全カテゴリーで売り上げが減少したが、スキンケアは復調の傾向が見られた。世界的な旅行制限により、トラベルリテールが特に影響を受けた。

 フレグランスでは“ココ マドモアゼル”や“ブルー ドゥ シャネル”が好調だった。19年に発売した“ガブリエル シャネル エッセンス”がアジアで人気を博した。今年誕生100周年を迎えた“No5”のキャンペーンには、フランス人女優のマリオン・コティヤール(Marion Cotillard)を新たな顔に起用した。

 新型コロナの影響で、メイクアップ事業の中でも特にリップ製品の需要が落ち込んだ。男性用メークアップライン「ボーイ ドゥ シャネル(BOY DE CHANEL)」を拡充すると共に、スキンケア効果のあるファンデーション“レ ベージュ オー ドゥ タン”やロングラスティング処方のリップ“ルージュ アリュール ラック”も発売した。

 スキンケア分野は主にアジアがけん引しており、“サブリマージュ”“ル リフト”が好調で、クレンジング“ムース ネトワイヤント”も引き続き人気だった。オンライン販売は、自社サイトおよびその他販売サイトでも売上高が大幅に増加した。ポルトガル、ルクセンブルク、オーストリアでは新たなeコマースサイトも導入した。また、アジアを中心に20店舗のビューティブティックをオープンした。

【9位】LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON
LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン

 旅行やメイクアップ需要の低迷が業績に大きな影響を及ぼした。昨年のビューティ製品の売上高は、日本を除くアジア地域では前年比約13.6%減、その他の地域では同30%ほど減少した。日本を除くアジア地域での香水・化粧品部門の収益が全体に占める割合は、昨年の40%から45 %に増加した。「ゲラン(GUERLAIN)」「フレッシュ(FRESH)」はコロナ禍にもかかわらず持ち堪えたが、両ブランド共に売上高は減少した。下半期の「ディオール(DIOR)」の業績は中国、米国、日本、中東を中心に改善し、中国ではオンライン販売も増加した。「ゲラン」のスキンケア製品は中国で好調で、新しいデザインの導入やユネスコ(UNESCO)と協力したミツバチの保護活動なども実施した。

 「ジバンシイ(GIVENCHY)」の看板製品“プリズム・リーブル”は中国で人気を博し、フランスを中心とした欧州ではフレグランス“ランテルディ”がマーケットシェアを拡大した。「ベネフィット コスメティクス(BENEFIT COSMETICS)」はオンライン販売が堅調に推移した。「フレッシュ」は中国を中心にデジタル化に焦点を当てており、プレミアムラインの商品が人気だった。「フェンティ ビューティ(FENTY BEAUTY)」はオンライン限定の「フェンティ スキン(FENTY SKIN)」シリーズが話題を呼び、「アクア ディ パルマ(ACQUA DI PARMA)」は中国での展開を拡大した。「パルファム ロエベ(PERFUMES LOEWE)」はホームフレグランス・シリーズを発売し、中国で堅調な伸びを示した。

 「セフォラ(SEPHORA)」では、スターバックス(STARBUCKS)元幹部のマーティン・ブロック(Martin Brok)が9月に社長兼CEOに就任した。一方でケンドー事業部では、新型コロナの影響でおよそ10%の従業員が解雇された。「キャット ヴォン ディー(KAT VON D)」はブランド名を「KVD ビーガン ビューティ(KVD VEGAN BEAUTY)」に変更。「バイト ビューティ(BITE BEAUTY)」はビーガン仕様を取り入れて、さまざまな顔色に合わせた製品ラインアップも拡大した。

【8位】BEIERSDORF
バイヤスドルフ

 最大ブランドの「ニベア(NIVEA)」は売り上げを11%近く落とし39億6000万ユーロ(約4791億円)となったが、進出している国の半分以上でマーケットシェアを増やした。「ユーセリン(EUCERIN)」「アクアフォー(AQUAPHOR)」などを擁するダーマ事業部は好調で、売上高は5.3%増の6億6100万ユーロ(約799億円)となり、北米、中南米、アジアでは2ケタ成長を記録した。なお、グループ全体ではeコマースの売上高が50%増加した。

 「ラ・プレリー(LA PRAIRIE)」はトラベルリテールの閉鎖が大打撃となり、売上高は23.9%減の4億9700万ユーロ(約601億円)に止まった。中国では2ケタ成長し、最近出店したTMALL店舗に期待を寄せる。

 7月には上海にハンブルクに次ぐ規模のイノベーションセンターを開設し、1000万ユーロ(約12億円)を投じた。また、19年に韓国で開始したニベア アクセラレーター プログラムから生まれたアジア市場向けの新スキンケアブランド「チャウル(CHAUL)」が、同社初のKビューティブランドとして韓国で発売された。

 サステナビリティでは、欧州のコンシューマー部門で使用されるペットボトルの90%をリサイクル素材に切り替えたこと、サステナビリティ認証を受けたパーム油のみを化粧品の製造に使用すること、化学メーカーと共同開発した再生可能なPPプラスチックを化粧品のパッケージに採用するなどの取り組みを実施した。ドイツではドラッグストアのDMと共同でシャワージェルの詰め替えステーションを設置した。20年2月には、詰め替えシステムと生分解性処方を有し、水資源の保全に取り組むドイツの自然派パーソナルケアブランド「ストップ ザ ウォーター ワイル ユージング ミー!(STOP THE WATER WHILE USING ME!)」を買収した。

 サステナビリティ、デジタル化、成長市場における位置付けを高めるために実施した「C.A.R.E.+」戦略プログラムでは、当初の予算に加えてさらに3億ユーロ(約363億円)を今後5年間で投じる予定だ。また、24年末までにハンブルクの本社にテクノロジーセンターを設立するため、6000万ユーロ(約72億円)を投じる。

【7位】NATURA & CO.
ナチュラ&コー

 ナチュラ&コーがブラジルの企業として初のトップ10入り。エイボン・プロダクツ(AVON PRODUCTS)を買収したことで世界第4位のビューティ専門企業となった。グループ全体のデジタルの売上高は第4四半期に前年同期比79%増加、全体の売上高に対するオンラインの割合は前年度の10%から30%に増加した。

 看板ブランドの「ナチュラ(NATURA)」はソーシャルセリングに力を入れ、ラテンアメリカ地域では100万人以上のコンサルタントがオンラインストアを開設。サンパウロには新しい旗艦店もオープン。

 特に好調な「イソップ(AESOP)」は売り上げを前年比50%伸ばし、日本が最大の市場になった。オンラインの成長が著しく、アジア地域ではライブチャットや新しい決済方法、即日配送などのデジタル面を強化した。なお、パンデミックの影響で店舗の拡大は一時棚上げとなった。
「ザボディショップ」はこれまでイオンと協業して展開していた日本事業を本国直轄にシフト。今後は中国進出も狙う計画だ。

 サステナビリティの施策では30年までにCO2排出量を実質ゼロにすること、アマゾン保護活動の強化、男女平等および人権意識の向上、完全な循環型パッケージや95%再生可能原料、天然の生分解性原料の導入などを計画している。20年末には、グループ全体でBコープ(B CORP)認証も取得し、同認証を取得した世界最大の企業になった。

【6位】L BRANDS
Lブランズ

 コロナニーズで「バス アンド ボディー ワークス(BATH & BODY WORKS)」のハンドジェルやソープが好調で、同ブランドの売り上げは前年比20%以上増の64億ドル(約6784億円)だった。ホームフレグランスも合わせて購入する消費者が増加したことで、業績が底上げされた。

 「ヴィクトリアズ・シークレット(VICTORIA’S SECRET)」は新型コロナの影響に加え、“男性目線のセクシーな女性像”を売りにするブランディングが時代遅れと見なされて苦戦した。これを受け、「セクシーの定義を顧客に委ねる」というメッセージに切り替える方針を掲げている。ブランド全体の年間売上高は同20%減だった。全体の売り上げのうちビューティ部門は約15%の8億1000万ドル(約858億円)を占めるとされている。なお、ダイレクトチャネルの売上高は31%増加した。

 「バス アンド ボディー ワークス」は1年間で30店舗を閉鎖したが、新たに27店舗をオープン。一方で「ヴィクトリアズ・シークレット」は225店舗を閉鎖した。Lブランズ全体の実店舗数は、20年末の時点で前年比278店舗減の2669店舗となった。

 さらに本社従業員の15%、およそ850人の解雇を発表したほか、児童買春の容疑がかけられていた米国の富豪、ジェフリー・エプスタイン(Jeffrey Epstein)との交友関係などを批判されていたLブランズ創業者のレス・ウェクスナー(Les Wexner)会長兼CEOが退任し、決定権を持たない名誉会長職に就いた。

 また、投資会社シカモア・パートナーズ(SYCAMORE PARTNERS)に「ヴィクトリアズ・シークレット」を売却する予定だったが、コロナの影響で契約破棄となった。21年度中に売却を成立させる計画だ。

【5位】SHISEIDO CO. 
資生堂

 2020年は5カ年計画の最終年だったが、パンデミックの影響で国内、海外共に売上高が大幅に減少。国内ではインバウンド需要が激減したことが大きな痛手となった。主力スキンケアシリーズ“アルティミューン”からハンドクリーム、マスクを付けていても落ちにくいBBクリームを発売するなど、コロナ禍での新たなニーズにも対応した。

 中国では3月以降売り上げが増加し、「シセイドウ(SHISEIDO)」「クレ・ド・ポー ボーテ(CLE DE PEAU BEAUTE)」「イプサ(IPSA)」「ナーズ(NARS)」などのプレステージブランドが大きく成長した。11月の「独身の日」の売り上げは倍増し、中国での年間売上高の40%以上をeコマースが占めた。その他アジア地域での売上高は減少したが、韓国、タイでは「シセイドウ」「専科」が人気を博した。

 アメリカ大陸ではメイクアップが業績不振で、「ベアミネラル(BAREMINERALS)」の立て直しに苦戦した。一方で、19年に買収した「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」は好調だった。欧州では「シセイドウ」のスキンケアの勢いが増し、「クレ・ド・ポー ボーテ」がイタリアとスペイン、「ドランク エレファント」がドイツに進出した。

 ナチュラルスキンケアブランド「バウム(BAUM)」の立ち上げや、「シセイドウ」が銀座の旗艦店での美容液の充填サービスの開始など、サステナビリティー活動も強化。20年11月には世界初の生分解性リップパレットを発売し、25年までに全てのパッケージをサステナブルなものにすると発表した。

 ヤーマンとは合弁会社エフェクティムを設立し、美容機器と化粧品を組み合わせたブランドを日本と中国で展開。また、上海の美容・健康産業特区「東方美谷(The Oriental Beauty Valley)」に研究開発拠点の中国イノベーションセンターを設立した。
21年2月には、投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズ(CVC Capital Partners)にパーソナルケア事業を15億ドル(約1590億円)で売却した。

【4位】PROCTER & GAMBLE CO. 
プロクター・アンド・ギャンブル

 新型コロナウイルスの影響で生活必需品を買いだめする傾向が見られ、その恩恵を受けた。ビューティ部門ではパーソナルケアやヘアケアの売れ行きが好調だったが、旅行者を対象としたトラベルリテールやインバウンドビジネスが低迷し、特に近年は好調だった「SK-II」の売り上げが伸び悩んだ。一方で幅広いラインアップが後押しして、ビューティ部門全体の売り上げは前年比3%増となった。

 パーソナルケアや新規ブランドの売れ行きは好調で、eコマースも成長の一因となった。20年下半期にはオンラインの売上げが約50%増加するなど大幅な収益増となった。中でもハンドサニタイザーや液体ハンドソープの売り上げが増加した「セーフガード(SAFEGUARD)」が好調。「オールド スパイス(OLD SPICE)」も年間で10億ドル(約1060億円)近い売り上げを計上した。

 ヘアケアは米国と中国での売れ行きが好調。「ヘッド&ショルダーズ(HEAD & SHOULDERS)」は成長を維持、「パンテーン(PANTENE)」もローズウォーター、バンブー、ビオチンなどを配合した“ニュートリエント ブレンド”シリーズを海外で発売。米国ではヘアケアの「オージー(AUSSIE)」が好調で、より黒人や縮毛向けの「マイ ブラック イズ ビューティフル(MY BLACK IS BEAUTIFUL)」「ヘッド&ショルダーズ」の“ロイヤル オイル”シリーズや「パンテーン」の“ゴールド ”シリーズもシェアを拡大した。

 新ブランドの「ネイティブ(NATIVE)」「ファースト エイド ビューティ(FIRST AID BEAUTY)」「ウォーカー&コー(WALKER & CO.)」も成長が続き、現在ではビューティ部門の年間売上高の約2%を占めている。21年初頭には女性用パーソナルケアブランド「ビリー(BILLIE)」の買収計画が連邦取引委員会(Federal Trade Commission)から認められず中止となった。

 新しいパッケージングの導入や、全事業において品質、パフォーマンス、安全性、透明性などを意識した幅広いアプローチでサステナビリティにも注力した。

【3位】THE ESTEE LAUDER COS.
エスティ ローダー カンパニーズ

 パンデミックの影響で売上高は他社同様マイナスとなったが、第4四半期はプラスに転じた。中でも中国の売り上げが大きく貢献し、アジア太平洋地域では全体の約3分の1を占めるおよそ48億ドル(約5088億円)を売り上げた。エスティ ローダー カンパニーズ(THE ESTEE LAUDER COS.)はアジア重視の戦略を掲げて日本に新しい工場を、上海にはイノベーションセンターを建設している。

 また20年度は、実店舗での売り上げが低迷する一方でオンライン販売が急増し、現在は事業全体の約30%を占めている。販売員も含めた各ブランドのチームは、オンラインでのアドバイス、ショッピングのサポート、ソーシャルメディアでの販売などを組み合わせることでオンライン販売に基軸を移した。

 スキンケアは年間を通じて好調で、全体の60%となる約82億ドル(約8692億円)を売り上げた。中でも19年に買収した韓国発のスキンケアブランド「ドクタージャルト(DR. JART+)」が高い業績を記録。一方でメイクアップは厳しい状況が続いており、現在はスキンケア事業の半分以下の規模となっている。21年9月にはメイクアップブランド「ベッカ(BECCA)」とラグジュアリースキンケアブランド「ロダン オリオ ルッソ」を終了する予定だ。また20年末には「プリスクリプティブ(PRESCRIPTIVES)」を終了し、「キートン(KITON)」とのライセンス契約も終了した。一方で21年2月には若年層に人気のスキンケアブランド「ジ オーディナリー(THE ORDINARY)」を手掛けるデシエム(DECIEM)を買収すると発表した。

 BLM運動が繰り広げられた20年はダイバーシティーへの取り組みで美容業界をけん引。黒人の従業員の雇用を増やす5カ年計画を発表し、積極的に活動を行っている。

 なお今後2年間は、20年8月に立ち上げた“ポスト COVID-19 ビジネス推進計画(Post-COVID-19 Business Acceleration plan)”に注力し、欧州、中東、アフリカ、北米の店舗の縮小・効率化を図る。オンライン販売やオムニチャネルの運営にも引き続き力を入れていく予定だ。

【2位】UNILEVER
ユニリーバ

 “地球および人類に世界一いい影響を与えるビューティ企業”を目指すユニリーバ(UNILEVER)は、BLM(Black Lives Matter=黒人の命も大切)運動や美の定義における多様性を認める動きの中で、ソーシャルイシューを意識した取り組みを積極的に行う。スキンケアブランド「フェア&ラブリー(FAIR & LOVELY)」のブランド名を「グロウ&ラブリー(GLOW & LOVELY)」に変更したほか、全ての製品のパッケージや広告などから“美白(fair/fairness)、ホワイトニング(white/whitening)、ブライトニング(light/lightening)”といった表現を廃止する方針も明らかにした。

 また米国では、「ダヴ(DOVE)」が人種によって異なる髪の毛の差別を禁止する法律を提唱し、「ヴァセリン(VASELINE)」は医療情報サイト、メドスケープ(MEDSCAPE)と提携して、皮膚科医や医療従事者がさまざまな肌の色の患者を適切に治療、診断、ケアできるようトレーニングした。メラニンを多く含む肌の女性と皮膚科医のための新スキンケアブランド「メレ(MELE)」も立ち上げた。ロックダウン期間中は、第一線で働くエッセンシャルワーカーにフォーカスした「ダヴ」の自己肯定感アップを目的としたキャンペーンや、「クリア(CLEAR)」によるメンタルサポートの“#ComeBackStronger”イニシアチブなど、ウェルビーイングに焦点を当てた活動も目立った。

 12月には、21年から気候変動対策の目標を株主投票にかける計画を発表。39年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという新たな目標も掲げた。また「サンシルク(SUNSILK)」や「スアーヴ(SUAVE)」などが、製造過程で動物実験が行われていないことを保証するピータ(PeTA)認証を取得しことで、ビューティ&パーソナルケア部門の全23ブランドがピータ認証を得た。

 業績面ではクレンジングが好調だった。また衛生用品の需要拡大により、「ライフブイ(LIFEBUOY)」がビューティ&パーソナルケア部門で6番目となる年間売上高10億ユーロ(約1210億円)を突破。一方でスキンケア、デオドラント、ヘアケア製品の需要は減少した。近年、戦略の要となっているプレステージ事業でも売り上げは減少したが、マーケット平均を上回る業績を達成。プレステージの売上高は合計で約7億ユーロ(約847億円)に達し、うちEC売り上げが50%を占めた。

 今後大きな成長が見込める米国、インド、中国では外部のインキュベーターを初めて擁し、事業家や技術系スタートアップとのコラボレーションも図る。中国ではTモールと提携して旗艦店「ユニ・トピア プラネット(UNI-TOPIA PLANET)」を立ち上げ、インドでは衛生用品を扱う「Vウォッシュ(VWASH)」を買収した。

【1位】L’OREAL
ロレアル

 ロレアル(L’OREAL)はデジタル分野への対応力、消費者の健康意識やスキンケア需要の高まりが追い風となったアクティブ コスメティックス事業部のおかげで、コロナ禍での損失を最小限にとどめた。eコマースの売上高は前年比62%増となり、全売り上げの26.6%を占めるまでになった。下半期は復調し、第4四半期はコンシューマー プロダクツ事業本部を除く全ての部門の売り上げが前年を超えた。
急速に伸びるアクティブ事業部は北米とアジアで好調で、売上高が初めて30億ユーロ(約3630億円)を突破。コロナ禍で健康意識が高まる中で、医師推奨の「セラヴィ(CERAVE)」は売上高が倍増、「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE POSAY)」や「スキンシューティカルズ(SKINCEUTICALS)」も大きな成長を遂げた。

 コンシューマー プロダクツ事業本部はメイクが大半を占めるにもかかわらず下半期から少しずつ安定し、メイクアップ以外の主要分野でマーケットシェアを拡大、さらにヘアカラーは2ケタ成長を見せた。スキンケアでは「ロレアル パリ(L’OREAL PARIS)」や「ガルニエ(GARNIER)」が好調だった。メイクアップは全体的に低迷したが、「NYX プロフェッショナル メイクアップ(NYX PROFESSIONAL MAKEUP)」や「スタイルナンダ(STYLENANDA)」のコスメライン、「3CE」はデジタルを強化したことで成果を得た。

 プロフェッショナル プロダクツ事業本部は下半期に回復し、サロンのデジタル化、フリーランスのスタイリスト育成、eコマースに注力したことから年間を通じて好調だった。米国ではサロン専売品のEC「サロン セントリック(SALON CENTRIC)」が大幅に成長し、中国ではTモール(T MALL)での販売が好調だった。

 リュクス事業本部はプレステージ市場が世界的に低迷する中で、EC事業に注力し、さらに中国市場にフォーカスしたことで第4四半期には成長基調を取り戻した。20年、世界のラグジュアリー市場の売り上げは推定14%減少したが、同部門は市場を上回る業績を残した。スキンケアでは「ランコム(LANCOME)」「キールズ(KIEHL’S)」「ヘレナ ルビンスタイン(HELENA RUBINSTEIN)」が好調で、「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」「ヴァレンティノ(VALENTINO)」「イヴ・サンローラン・ボーテ(YVES SAINT LAURENT BEAUTE)」の新作フレグランスも人気が高かった。

 20年3月末にはクラランス グループ(GROUPE CLARINS)のフレグランス事業の買収が完了し、「ミュグレー(MUGLER)」と「アザロ(AZZARO)」を傘下に収めたことでプレステージフレグランス事業の強化を図った。6月には米国発のスキンケアブランド「セイヤーズ ナチュラル レミディーズ(THAYERS NATURAL REMEDIES)」を傘下に収め、12月にはソーシャルセリングプラットホームのレプリカ ソフトウェア(REPLICA SOFTWARE)にも出資した。一方で6月には、「ロジェ・ガレ(ROGER & GALLET)」を仏投資会社のインパラ(IMPALA)に売却、11年に買収した洗顔機器ブランド「クラリソニック(CLARISONIC)」は業績不調により終了した。12月には日本発のドクターズブランド、「タカミ」を製造販売するタカミを買収すると発表し、21年2月に買収が確定した。

 またサステナビリティ分野では、30年に向けて新たなコミットメント、“ロレアル・フォー・ザ・フューチャー(L’Oreal for the Future)”を掲げ、サプライヤーが及ぼす地球環境への影響や消費者による製品の使用、自社の活動などを顧客みるさまざまな取り組みを行う。プログラムの一環として、生態系の再生、循環型経済の発展のために1億ユーロ(約121億円)、女性を支援する基金に5000万ユーロ(約60億円)を拠出した。

 人事では、定年を迎えたジャン・ポール・アゴン(Jean-Paul Agon)=ロレアル会長兼最高経営責任者(CEO)の後任として、ニコラス・イエロニムス(Nicolas Hieronimus)=前デピュティCEOが新CEOに昇格した。 なお、アゴン氏は会長職を継続する。

DESIGN:JIRO FUKUDA

「カルバン・クライン」の親会社、「ヴァン ヒューゼン」など4ブランドを売却

 「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」や「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」などを擁するPVHコープ(PVH CORP以下、PVH)は、「ヴァン ヒューゼン(VAN HEUSEN)」などヘリテージブランドの知的財産権やその他の資産を、ブランドマネジメント会社オーセンティック・ブランズ・グループ(​AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)に2億2000万ドル(約242億円)で売却した。

 PVHの売上高の約90%は「カルバン・クライン」と「トミー ヒルフィガー」によるものであり、これらの主軸ブランドに注力するため、ヘリテージブランドを手放す。売却対象には「ヴァン ヒューゼン」「アイゾッド(IZOD)」「ジェフリー ビーン(GEOFFREY BEENE)」「アロー(ARROW)」の商標などが含まれており、PVHのヘリテージブランド事業はこれをもって終了する。取引は21年8~10月に成立する予定。

 PVHコープという社名は、同社の前身であるフィリップス・ジョーンズ・コーポレーション(PHILLIPS JONES CORPORATION)が「ヴァン ヒューゼン」を買収し、1957年にフィリップス・ヴァン・ヒューゼン(PHILLIPS VAN HEUSEN)と改称したことに由来している。2011年にその頭文字を取ってPVHコープとなっているが、今回の取引後も、「ヴァン ヒューゼン」やヘリテージブランドへの敬意を込めて社名を維持するという。

 ステファン・ラーソン(Stefan Larsson)PVH最高経営責任者(CEO)は、「今回の売却は非常に難しい決断だった。ヘリテージブランドが事業を支えてくれたからこそ、後に『カルバン・クライン』と『トミー ヒルフィガー』を買収し、今日のPVHとなることができた。過去から現在に至るまで、ヘリテージブランドに携わった全てのチームメンバーに心から感謝する」と語った。

 ジェイミー・ソルター(Jamie Salter)ABG会長兼CEOは、「豊かな歴史を持つヘリテージブランドを迎えることができ、大変うれしく思っている。当社のグローバルなネットワークやブランド開発の経験を生かし、PVHが育ててきたこれらのブランドのライセンス事業をさらに発展させていきたい」と述べた。

 ABGはこの10年間で30以上のブランドを買収しており、20年は「バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」「フォーエバー21(FOREVER 21)」、米「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」を傘下に収めている。21年5月には、米アパレル運営会社スパーク・グループ(SPARC GROUP)とともに「エディー・バウアー(EDDIE BAUER)」を買収することを発表したばかり。

The post 「カルバン・クライン」の親会社、「ヴァン ヒューゼン」など4ブランドを売却 appeared first on WWDJAPAN.

「ギャップ」、英国とアイルランドの全店舗を閉鎖 伊仏では店舗売却へ

 「ギャップ(GAP)」は6月30日、英国とアイルランドで展開する直営店やアウトレットストアを全て閉店すると発表した。対象となるのは81店で、8月から9月末までに閉店するが、EC事業は継続する。またフランスとイタリアでも、店舗売却に向けて協議中だという。

 同ブランドは1987年に英国に出店し、欧州市場に初進出。2006年にはアイルランドに出店した。その後も店舗数を増やし、20年には欧州で137店を運営していたが、21年1月末では117店となっている。現在フランスに直営店を21店、イタリアに同じく11店を構えている。フランスの店舗は、FIBグループ(FIB GROUP)のハーマイオニー・ピープル・アンド・ブランズ(HERMIONE PEOPLE AND BRANDS)と10月を目処に売却交渉を進めており、イタリアでも買い手候補と協議中だとしている。

 「ギャップ」の担当者によると、北米ビジネスの21年2~4月期の売り上げは19年の同期間に比べ9%伸び、堅調に推移している。その一方で、グローバルの業績は同1%減となり、海外事業の見直しに至ったという(ともに既存店ベース)。

 「ギャップ」のほか、「バナナ・リパブリック(BANANA REPUBLIC)」や「オールドネイビー(OLD NAVY)」などを擁するギャップ社は、23年までの中期経営計画「パワープラン2023(POWER PLAN 2023)」を20年10月に発表。その中で、同社は「ギャップ」と「バナナ・リパブリック」の北米の店舗およそ350店を閉じる計画を明らかにしている。また「イギリス、アイルランド、フランス、イタリアの約120店については、21年7月までに外部と提携することを検討中だ」とコメントしていた。

The post 「ギャップ」、英国とアイルランドの全店舗を閉鎖 伊仏では店舗売却へ appeared first on WWDJAPAN.

シャネル、20年は営業利益41%減 21年上期はV字回復

「シャネル」2022年プレ・スプリング・コレクション ©︎FAIRCHILD PUBLISHING, LLC

 シャネル(CHANEL)の2020年12月通期の売上高は、前期比17.6%減の101億800万ドル(約1兆1118億円)、営業利益は同41.3%減の20億4900万ドル(約2253億円)、純利益は同42.4%減の13億8800万ドル(約1526億円)だった。

 地域別では、ヨーロッパが同36.3%減の28億8500万ドル(約3173億円)、南北アメリカは同15.0%減の19億6600万ドル(約2162億円)、アジア太平洋地域は同3.1%減の52億5700万ドル(約5782億円)だった。

 大幅な減収減益は主にコロナ禍の影響によるもの。20年6月8日の時点で、ブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)=シャネル ファッション部門プレジデントは「20年度の売上高は2ケタ減となることが予想される」と発言しており、予想通りの着地となった。

 シャネルは生産部門なども含めて仏国内におよそ8500人の従業員を抱えており、休業期間中もその全員に約8週間分(20年3月16日~5月8日)の給与を支払っている。仏政府が打ち出した緊急経済支援策には、休業期間中に従業員に支払う賃金を国が補填する制度が盛り込まれているが、同社はこれを利用しなかった。同社は当時、「公共財政に負担をかけないようにするためだ。その分をより困っている企業や、医療制度および医療従事者へのサポートに回してほしい」とコメントしているが、こうしたことも利益縮小の一因となったようだ。

 フィリップ・ブロンディオ(Philippe Blondiaux)最高財務責任者(CFO)は、「利益率やキャッシュフローが一時的に悪化することは承知の上で、これらのことを実施した。他社とは異なるアプローチかもしれないが、その後急激に業績が回復していることを踏まえると正しい判断だったと思う。危機的な状況の中、当社がどのような対応を取ったのかについて、従業員や顧客、取引先は長らく記憶してくれるだろうし、(費用対効果は)十分にある」と語った。

 欧州では20年秋以降、新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて再びロックダウンに踏み切った国もあり、経済活動が抑制されていたことから、多くの企業や小売店が苦境に立たされた。ラグジュアリーブランドも例外ではないが、シャネルはその中でも厳しい。例えば、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「ディオール(DIOR)」「フェンディ(FENDI)」などを擁するLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)の20年12月期における営業利益は前期比29.2%減となっており、シャネルの同41.3%減ほどの大きな落ち込みは見せていない。ほかにも、「グッチ(GUCCI)」や「サンローラン(SAINT LAURENT)」を擁するケリング(KERING)は同28.4%減、エルメス・インターナショナル(HERMES INTERNATIONAL)は同11.3%減だった。

 ブロンディオCFOは、「当社は競合他社と比べて、売り上げに対するフレグランス&ビューティ部門の割合が高いため、免税店の休業や観光客の不在が大きな打撃となった」と説明した。

 米「WWD」が毎年発表する「世界のビューティ企業ランキングTOP100社」の2020年版によれば、1位ロレアル(L’OREAL)、2位ユニリーバ(UNILEVER)、3位エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)、4位プロクター・アンド・ギャンブル(PROCTER & GAMBLE)、そして5位の資生堂といったビューティ企業と共に、9位にはLVMHが、10位にはシャネルがランクインしている。

 LVMHの20年12月期の売上高は446億5100万ユーロ(約5兆8939億円)で、香水&コスメティクス部門の売り上げは52億4800万ユーロ(約6612億円)と、全体の11%程度を占めている。一方、シャネルの売上高は前述のように101億800万ドル(約1兆1118億円)だが、「世界のビューティ企業ランキングTOP100社」の推計によるとフレグランス&ビューティ部門の売り上げは53億ドル(約5830億円)なので、全体のおよそ52%をビューティが占めている計算だ。

21年上期はすでにコロナ前を上回る

 ラグジュアリー業界全体の傾向として、20年前半はコロナ禍の影響で苦戦しつつも、後半には一足早く事態が落ち着いた中国本土などアジア市場で業績が回復し、上り調子のまま21年を迎えたケースが多い。シャネルも同様で、秋ごろから売り上げが戻り始め、21年1~6月期はコロナ禍以前の19年同期と比べて2ケタ成長となるなど予想以上のペースで回復しているという。ブロンディオCFOは、「予想を上回ることができ、大変うれしく思っている。売り上げはすでに19年並みを超えており、利益率も同様だ。20年の営業利益率は20.3%まで落ち込んだが、このまま行けば21年は28~29%に回復するだろう」と述べた。

 20年の業績を部門別で見ると、ファッション部門はコロナ禍で店舗が休業するまでは好調だったが、その後は落ち込んでいる。ウオッチ&ジュエリー部門は“ココ クラッシュ(COCO CRUSH)”ラインが2ケタ成長を見せるなど堅調だった。フレグランス&ビューティ部門はECでの売り上げが力強く成長し、観光客の不在や免税店が休業していることによる売り上げ減を部分的にカバーしている。

 なお、シャネルはウエアやアクセサリー類をECで販売していないが、それは今後も変えるつもりはないという。同氏は、「顧客との関係性は常に店舗を中心に考えており、買い物体験を向上させるために店舗のデジタル施策の拡充に力を入れている」と説明。その言葉通り、同社はここ数年は店舗網の拡大やデジタル化に投資を続けているほか、レザーグッズなど専門アトリエの株式を取得しており、20年における設備投資額は19年比で45.3%増の11億2000万ドル(約1232億円)に上った。

 例えば、20年10月にはロンドンのニューボンドストリートに構える旗艦店の建物などを購入しており、情報筋によればその価格は3億1000万ポンド(約474億円)程度だという。21年2月には、2年間かけて大改装していたパリ・カンボン通り31番地にあるオートクチュールサロンがリニューアルオープン。サロンのある建物には創業者ガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)のアパルトマンがあり、こちらも数カ月かけて復元された後、21年5月に正式にお披露目された。米ビバリーヒルズの店舗も改装中で、22年のオープンを予定している。

ヴェルタイマーCEOの後継者選びに着手

 シャネルはアラン・ヴェルタイマー(Alain Wertheimer)最高経営責任者(CEO)とその一族が所有する非上場企業だが、1910年の創業以来初めての決算発表を2018年6月に行った。以降は毎年発表しているため、身売りをするのではないかという憶測が何度も流れている。そのたびに同社は否定しており、今回もブロンディオCFOは「事業の売却や競合の買収予定はない」とうわさを一蹴した。

 一方で、ブロンディオCFOは72歳となったヴェルタイマーCEOの後継者について検討を始めたと発言。「アランの健康状態は非常に良好で、引き続き日々の業務を行っている。当社では何事も長期的な展望に立って進めており、後継者選びについても同様だ。本件について、当面は内々のこととしたい」とコメントした。

 シャネルは気候変動対策にも本腰を入れており、20年3月には「シャネル ミッション 1.5(Chanel Mission 1.5以下、ミッション)」を立ち上げた。このミッションは二酸化炭素排出量の削減、25年までの再生可能エネルギーへの100%切り替え、排出した二酸化炭素の相殺、気候変動に関する取り組みへの投資や支援という4つの柱で構成されており、調達やサプライチェーンなどの生産面はもちろん、小売りや物流、コレクションのショーなどにも適用されている。同社によれば、20年における直接的な温室効果ガスの排出量は前年比で27.1%削減することに成功したという。

 また20年9月には、およそ6億ユーロ(約792億円)相当の環境目標連動債(グリーンボンド)を発行した。これは環境に関連した目標の達成度合いによって支払い利息が変動する債券で、サステナビリティに取り組む企業の新たな資金調達の手段として注目されている。シャネルのケースでは、ミッションで定めた目標値を達成できなかった場合に、利息に加えてキャッシュプレミアムを償還日に払う仕組みとなっている。同社が公開市場で資金調達をしたのは、これが初めてのことだ。

 21年は、「シャネル」を代表するフレグランス“No5”の誕生100周年に当たる。これを記念して、同ブランドは新作ハイジュエリー“コレクション No5”を発表したほか、ビューティの限定コレクションを6月29日に発売した。

LVMHが余った生地をリサイクルするスタートアップとタッグ

 LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は、ファブリックのリサイクルに取り組むスタートアップ企業のウィーターン(WETURN)との提携を発表した。LVMH傘下のブランドが使用しなかったファブリックをリサイクルして再び糸に紡ぐなど、生地のリサイクルシステムを構築することが狙いだ。

 ウィーターンは、フランスで2020年に施行された循環経済法に商機を見出して同年に誕生したスタートアップ企業。創業者のソフィー・ピニエール(Sophie Pigneres)は「私たちは製品の価値が素材にあることを示し、欧州の繊維産業の復興に貢献していきたい」とコメントしている。

 LVMHは、サステナビリティへのパフォーマンス向上のために具体的な行動計画を示す“ライフ360(LIFE 360)”プログラムを推進しており、今回の提携もその一環だ。そのほかにも、余剰生地を販売するオンラインプラットホーム「ノナ ソース(NONA SOURCE)」を社内で立ち上げ、同グループが保管している高品質なファブリックやレザーを手ごろな価格帯で提供する事業を展開。またテキスタイルのリサイクルについては、ごみ収集業者のセードル(CEDRE)と提携するなど、サステナビリティに対する数々の取り組みを行っている。

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中

The post LVMHが余った生地をリサイクルするスタートアップとタッグ appeared first on WWDJAPAN.

「ルイ・ヴィトン」が「ナイキ」の“エアフォース1”とコラボ

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は24日に行われた2022春夏メンズ・コレクションで、「ナイキ(NIKE)」とコラボしたエアーフォース1”スニーカーを発表した。一般発売するかは未定で、詳細については追って公開するという。

 スニーカーは21色をそろえ、緑や青、白を基調とし、ソールには「Air(エアー)」のロゴを、靴紐にはフランス語の「Lacet(レース)」という文言を装飾した。側面にはネオングリーンのタグを、「ルイ・ヴィトン」と「ナイキ」のブランドタグをシュータンの部分に添えた。また、コレクションの一部としてブランドのモノグラムを生かしたネオンオレンジのスニーカートランクも手掛けた。

 メンズ アーティスティック・ディレクターのヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)は、自身のブランド「オフ-ホワイト ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」でも「ナイキ」とも多くの人気コラボを打ち出してきた。17年に「オフ-ホワイト」と「ナイキ」は初めてコラボスニーカーをデザインし、以降継続的にコラボしている。テニスチャンピオンのセリーナ・ウィリアムズ(Serena Williams)選手のカスタムウエアも手掛けた。

The post 「ルイ・ヴィトン」が「ナイキ」の“エアフォース1”とコラボ appeared first on WWDJAPAN.

バーバリーのCEOが2021年末で退任 フェラガモのCEOに

 バーバリー(BURBERRY)は、マルコ・ゴベッティ(Marco Gobbetti)最高経営責任者(CEO)が2021年末で退任することを発表した。後任は未定。退任後、同氏はサルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)のCEO兼ジェネラル・ディレクターに就任する。

 ゴベッティCEOは、「バーバリーのCEOとして、才能あふれるチームを率いることができて大変光栄だった。ブランドや事業は盤石であり、今後も成長軌道を進んでいくことは間違いないため、退任するのに良いタイミングだと感じている」と語った。退任する理由の一つとして、故郷であるイタリアに戻り、家族と一緒に過ごしたいことがあるという。

 ジェラルド・マーフィー(Gerald Murphy)=バーバリー会長は、「マルコは当社に多大なる貢献をしてくれた。退任をとても残念に思うが、彼は20年近くにわたって外国で仕事をしており、イタリアに帰国したいという意志を尊重したい」と述べた。

 ゴベッティCEOは17年1月にバーバリーに入社。それ以前は、セリーヌ(CELINE)会長兼CEOを務めていた。サルヴァトーレ フェラガモでは、ミカエラ・ル・ディヴェレック・レミ (Micaela Le Divelec Lemmi) CEOの後任となる。

The post バーバリーのCEOが2021年末で退任 フェラガモのCEOに appeared first on WWDJAPAN.

パリの老舗百貨店サマリテーヌが16年ぶりに再開 ヨーロッパ大陸最大のビューティフロアなど

 仏パリの老舗百貨店サマリテーヌ(LA SAMARITAINE)は6月23日、16年に及ぶ長期リノベーションを経て営業再開した。オープン前日に催された落成式には、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領やベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON、以下LVMH)会長兼CEOが出席した。

 約4万5000平方メートルあるプランタン(PRINTEMPS)や本館だけで約7万平方メートルあるギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)といった、パリ市内にある有名百貨店と比較すると、サマリテーヌの売場面積は約2万平方メートルと小さい。これについてアルノー会長兼CEOは、「大きい館はスペースを埋めるのが大変だ。小さい方が厳選できるから優位だ」と説明する。同館では約600ブランド扱い、そのうち50ブランドは同館限定出店となる。

 約3400平方メートルある地下1階は、ヨーロッパ大陸最大のビューティフロアだ。世界中から選りすぐった200のブランドを展開し、サステナブルを売りにしたビューティブランドも約50ブランドが出店するほか、スパやヘアトリートメント、メイクアップレッスンといったサービスも充実している。

 サマリテーヌは1870年創業。LVMHが2001年にサマリテーヌの過半数株式を取得し、10年には完全子会社化している。同社は7億5000万ユーロ(約975億円)をサマリテーヌに投資しているという。今回の改装は日本の建築事務所SANAAが担当。LVMHが運営する免税店のDFSや、同じく傘下の高級ホテルであるシュバル ブラン(CHEVAL BLANC)も併設。シュバル ブランはセーヌ川を見下ろせるように設計され、9月7日にオープン予定だ。

 サマリテーヌは建築的な観点からも、美術的な観点からも象徴的な建物になるとアルノー会長兼CEO。また、再開に伴いパリに3000人分の雇用を創出する点も、今般の状況に鑑みると非常にインパクトのあることだと説明する。サマリテーヌの経営陣によると、パリに観光客が戻ってくるのに2年はかかるとしつつも、3~4年以内に来館人数500万人を目指すという。

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中

The post パリの老舗百貨店サマリテーヌが16年ぶりに再開 ヨーロッパ大陸最大のビューティフロアなど appeared first on WWDJAPAN.

ユニリーバ、D2Cスキンケアブランド「ポーラチョイス」を買収

 ユニリーバ(UNILEVER)は6月14日、米国のD2Cスキンケアブランド「ポーラチョイス(PAULA'S CHOICE)」を買収した。買収額は明らかになっていないが、業界筋によればその額は20億ドル(約2180億円)程度だと見られている。

 「ポーラチョイス」は、化粧品の販売員だったポーラ・ビガウン(Paula Begoun)が1995年に設立。同氏が85年に出版した、化粧品の成分に関する問題点を指摘した著書「ブルーアイシャドー・シュッド・ビー・イリーガル(原題:Blue Eyeshadow Should be Illegal、“青いアイシャドーは法で禁じるべき”)」が大きな話題となり、読者から化粧品の安全性についての質問が多数寄せられたことから、安全だと科学的に証明された低刺激性の成分のみを使用したスキンケア製品を作るべく「ポーラチョイス」を立ち上げたという。同ブランドは製品開発の際に参照した学術論文の一覧を掲載しているほか、製品に含まれている全成分を公開している。

 販売は主に自社ECで行っているが、米百貨店ノードストローム(NORDSTROM)とビューティ専門店チェーンのセフォラ(SEPHORA)でも取り扱われている。海外でスキンケア需要が高まる中、若い世代の“美容ヲタク”からの評価が高いブランドで、SNSでもよく拡散されている。日本でも楽天やアマゾンなどで販売されている。

 買収後、同ブランドはユニリーバ プレステージ部門に属することとなる。サニー・ジェイン(Sunny Jain)=ユニリーバ ビューティ&パーソナルケア プレジデントは、「急成長している高級スキンケア分野のブランドを増やすことは優先事項の一つだったので、『ポーラチョイス』を迎えることができて大変うれしく思っている」と語った。

 ユニリーバは近年プレステージのスキンケアに力を入れており、ここ数年で「タッチャ(TATCHA)」「ミュラド(MURAD)」「ダーマロジカ(DERMALOGICA)」「ケイト サマビル(KATE SOMERVILLE)」「レン(REN)」を買収している。

The post ユニリーバ、D2Cスキンケアブランド「ポーラチョイス」を買収 appeared first on WWDJAPAN.

マスクの着用義務が解除された米国、リップの検索数が前年比1000%増

 米国ではカリフォルニアなど、一部州でワクチン接種完了者のマスクの着用義務が解除された。これを受け、リップスティックやリップアイテムへの注目が高まっている。

 トレンドを分析するトレンドアリティックス(TRENDALYTICS)によると、リップアイテムの検索数が昨年に比べ3ケタ増している。「ロングウエアリップスティック」の検索数は前年比1135%増、「シマーリップグロス」は同889%増、「プラムリップスティック」は同300%、「プランピングリップグロス」は同259%増だったという。

 同社のサラ・バーンズ(Sarah Barnes)=コンテントマーケティングマネジャーは「米国疾病予防管理センター(CDC)によるマスク着用義務の解除は、リップスティックカテゴリーへの関心の高まりを促している。コロナが収束したら、メイクアップの中でもまずはコンシーラーとリップスティック市場が復調すると予測していたが、CDCの発表がなければ、ここまで急激に(関心が)戻ることはなかったかもしれない。メーカー各社がこの需要にどのように対応するか注目だ」と話す。

The post マスクの着用義務が解除された米国、リップの検索数が前年比1000%増 appeared first on WWDJAPAN.

パリコレはサステナブルになれるか? 主催団体がエコデザイン支援ツールをブランドに提供

 本格的なファッションショーの再開にあたり、リアルイベントにおける環境問題への配慮が話題に上っている。そんな中、数年前からこの問題に取り組んできたフランスオートクチュール・プレタポルテ連合会(Federation de la Haute Couture et de la Mode以下、サンディカ)は、パリ・ファッション・ウイーク(以下、パリコレ)参加ブランドが環境への影響を測定するための2つの新たなデジタルツールを発表した。フランス服飾開発推進委員会(DEFI)の出資を受け、サンディカと共に開発を担当したのは世界的な会計コンサルティング企業のプライスウォーターハウスクーパース(PRICEWATERHOUSECOOPERS)。今年秋の本格ローンチを計画している。

 一つ目のツールは、ショーやプレゼンテーションなどのイベントに特化し、パリコレの環境的、社会的、経済的な影響を測るもの。ブランドが、制作会社との契約からキャスティングやフィッティング、デジタルコミュニケーションまでイベントの全段階を網羅する約120のKPI(重要業績評価指標)を設定するために役立てられる。このツールにより、参加ブランドはイベントの開催前に計算を行い、環境負荷の軽減や社会的影響の最適化のためにふさわしい選択ができるようになるという。またブランドは、その算出結果を非公開にしておくこともできるが、詳細を明かすことなく、パリコレ全体の負荷を計測するためにパフォーマンスのスコアを提供することも可能だ。同開発プロジェクトの運営員会は、「ディオール(DIOR)」や「クロエ(CHLOE)」のショーを手掛けるビュロー・べタック(BUREAU BETAK)、PR会社のDXL、パリコレの主要会場の一つである文化施設のパレ・ド・トーキョーで構成。ブランドやイベント制作会社からPR会社、モデルエージェンシー、関連機関まで、パリコレに携わる幅広いステークホルダーが開発に携わった。パスカル・モラン(Pascal Morand)=サンディカ会長は、同ツールについて「シンプルでちょっとした遊び心があるだけでなく、すぐに結果を算出できて、より良い取り組み方を提案できるようなものを目指した」とコメント。将来的には、パリだけでなく世界のファッションイベントの主催者にも提供される予定だ。

 もう一つは、企業が業界のバリューチェーン全体の環境的及び社会的影響を測定できるようにすることで、コレクションのエコデザインを支援する管理ツール。あらゆる規模のブランドがエコデザインのアプローチを全面的に取り入れられるようになるという。同ツールはフランス・モード研究所(Institut Francais de la Mode、IFM)と共同開発によるもので、ローンチ前にいくつかのメゾンが試験的に導入。技術委員会には、DEFIやフランス・ウィメンズプレタポルテ連合会(Federation Francaise du Pret a Porter Feminin)などの業界団体、素材見本市のプルミエール・ヴィジョン(Premiere Vision)などが名を連ねる。まずはサンディカ加盟ブランド向けに提供されるが、将来的にはアパレル業界で幅広く利用される可能性もあるという。

 サンディカが環境問題に対する取り組みに着手したのは、19年のこと。現在はさまざまなブランドで利用できる公式会場の設置や、市内の会場を巡るシャトルや自動車の電動化、廃棄物のリサイクル、セットの再利用などに取り組んでいる。今回のツールも、19年9月に開発を確約していたものだ。モラン会長は、「私たちには世界的なリーダーシップを発揮する義務がある」と社会的・環境的側面におけるパリコレの役割について話す。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

The post パリコレはサステナブルになれるか? 主催団体がエコデザイン支援ツールをブランドに提供 appeared first on WWDJAPAN.

ヴァレンティノ、20年は167億円の赤字 休業や観光客不在が打撃に

 ヴァレンティノ(VALENTINO)の2020年12月通期決算は、売上高が前期比27.7%減の8億8200万ユーロ(約1164億円)、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は同51.0%減の1億4600万ユーロ(約192億円)、純損益は前年の3300万ユーロ(約43億円)の黒字から1億2700万ユーロ(約167億円)の赤字となった。

 中国本土の売り上げが同44%増、ECは同62%増と好調な地域や部門があったものの、コロナ禍による店舗の休業措置や観光客の不在などが響き、上期のEBITDAは前年同期比75%減と大きな打撃を受けた。下期にやや持ち直したが、全体の売り上げ減をカバーするには至らなかった。なお、ECの売り上げは全体の14%を占めている。

 同社は、「こうした危機的な状況の中では、クリエイティビティ、人的資本、そして個別の顧客体験がいっそう重要となる。これを踏まえて新たな戦略の第一ステップを実施した結果、20年10〜12月期(第4四半期)から21年1〜3月期(第1四半期)にかけてポジティブな兆候が見え始めている」とコメントした。

 「ヴァレンティノ」は今年5月に、22年以降はリアルファーの使用を廃止することを発表した。ファーを含むコレクションは21-22年秋冬シーズンが最後となる。これに伴い、同社が18年から所有するファー専門の工場ヴァレンティノ ポーラー(VALENTINO POLAR)は、21年末に生産を終了する。またメインブランドの「ヴァレンティノ」に注力するため、より若者向けのブランドである「レッド ヴァレンティノ(RED VALENTINO)」は23-24年秋冬コレクションを最後に終了する。

 現在、「ヴァレンティノ」は中国本土に28店、韓国に15店を構えており、21年にはそれぞれ2店と6店を新規オープンする予定。なお、日本には直営店を31店構えている。

The post ヴァレンティノ、20年は167億円の赤字 休業や観光客不在が打撃に appeared first on WWDJAPAN.

アパレルブランドは信用できない? サステナに関する米消費者アンケート

 近年の消費者は環境問題に対する意識が高くなっており、サステナビリティに取り組む企業も増えている。バイオテクノロジー企業の米ジェノマティカ(GENOMATICA)が、米国の消費者2000人を対象に行ったサステナビリティに関する調査によれば、86%の人が「誰もがサステナビリティに取り組むべきだ」と回答。一方で、48%が「サステナブルな服をどこで買えばいいのか分からない」と答え、42%が「どういう服がサステナブルなのかが分からない」としている。環境保護に貢献したい意欲はあるものの、情報や認知度の不足によって行動に結び付けられていない状況が鮮明となった。

 例えば、55%の人はアパレル企業に対して「自社製品が他社と比べてよりサステナブルな理由を分かりやすく説明してほしい」と考えており、38%は「より分かりやすい情報があればサステナブルな服を買う」としている。そして31%の人は「サステナブルでない服には“ファストファッション税”をかけてもいいと思う」と答えており、低価格が強みの大量生産品に一定のブレーキをかけることで、サステナブルな製品の普及をサポートしたいという意識も垣間見える。

 ほかにも、52%の人が「よりサステナブルな商品を意識して選んでいる」と答えているが、「サステナブルな服を選びたいと思いつつも便利さを優先してしまう」という回答も47%に上り、ほぼ同程度となっている。手軽に購入できることはやはり非常に重要で、34%の人は「サステナブルな服のみを扱っている店がもしあれば、買い物は全てそこでする」とし、31%は「チェーン店で売っていればサステナブルな服を買う」としている。

 一方で、アパレルブランドをあまり信用していない消費者も多いようだ。88%の人は「環境保護に取り組んでいるというブランドの主張をそのまま信じることはできない」と考えており、51%は「ファッション業界では“グリーン・ウォッシング(見せかけの環境配慮)”が横行していると思う」と答えている。アパレルブランドのエシカル度(倫理的かどうか)の比較サイトを運営する英コンペア・エシックス(COMPARE ETHICS)が2020年11月に発表した調査結果でも、「サステナブルな商品を扱っているというブランドの説明を信頼する」と答えたのは回答者の20%にすぎなかったことからも、消費者が企業やブランドに対して漠然とした不信感を抱いていることがうかがえる。

 ジェノマティカのクリストフ・シリング(Christophe Schilling)最高経営責任者は、「消費者はよりサステナブルな服を買いたいと思っているし、多少高くても環境に優しい商品を選びたいと考えているが、企業やブランドのことをあまり信用していない。ブランド側は消費者の信頼を勝ち取る必要があり、サステナビリティに本腰を入れているブランドは、いっそう明確で分かりやすい情報発信を行うようになっている。カーボンフットプリント(温室効果ガスを二酸化炭素に換算した排出量)を服のラベルなどに記載することは、他社製品との差別化や競争力の向上につながるだろう。それに加えて、今後はサステナブルな選択肢を増やして広く提供していかなければならない」と語った。

 同社の調査では、ほかに注目すべき事項として、コロナ禍により消費動向が大きく変化したことを挙げている。49%の人は「コロナ禍によって“毎日違う服を着なければならない”というプレッシャーが軽減した」と答え、44%は「コロナ禍以前よりも買う服の枚数が減った」としている。なお、パンデミック中のほうが服を多く買っているという人の30%は、「不安感や気分の落ち込み、孤独感などを紛らわせるために買い物をした」と回答している。

The post アパレルブランドは信用できない? サステナに関する米消費者アンケート appeared first on WWDJAPAN.

ネットフリックスがECサイトをオープン 「ストレンジャー・シングス」グッズも

 ネットフリックス(NETFLIX)は6月10日、ECサイト「ネットフリックス・ドット・ショップ(Netflix.shop)」を立ち上げた。配信作品に関連したアパレル用品や雑貨などのほか、ビームス(BEAMS)と協業したネットフリックス公式アイテムを取り扱う。現在は米国のみの展開だが、将来的にはその他の地域にもサービスを拡大していく予定。

 ジョシュ・サイモン(Josh Simon)=ネットフリックス コンシューマープロダクト部門バイス・プレジデントは、「当社では、作品の世界観をユーザーにさらに楽しんでもらうにはどうすればいいかを常に考えている。『ネットフリックス・ドット・ショップ』は、作品に関連した限定アイテムなどを販売しており、ここでしか味わえないユニークな買い物体験を提供している」と、同社の公式ブログで述べた。

 ネットフリックスは現時点で1万5000以上の作品を配信しているが、今回発売したのは同社のオリジナルアニメシリーズ「YASUKE -ヤスケ-」とロサンゼルス発のストリートウエアブランド「ハイプランド(HYPLAND)」のコラボレーションアイテムと、同じく「エデン(Eden)」と「ビームス」が協業したカプセルコレクションだ。今後はドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界(Stranger Things)」や「ウィッチャー(The Witcher)」を着想源としたアイテムに加えて、「Lupin/ルパン」とルーブル美術館(Louvre Museum)のコラボ商品も販売するという。

The post ネットフリックスがECサイトをオープン 「ストレンジャー・シングス」グッズも appeared first on WWDJAPAN.

ネットフリックスがECサイトをオープン 「ストレンジャー・シングス」グッズも

 ネットフリックス(NETFLIX)は6月10日、ECサイト「ネットフリックス・ドット・ショップ(Netflix.shop)」を立ち上げた。配信作品に関連したアパレル用品や雑貨などのほか、ビームス(BEAMS)と協業したネットフリックス公式アイテムを取り扱う。現在は米国のみの展開だが、将来的にはその他の地域にもサービスを拡大していく予定。

 ジョシュ・サイモン(Josh Simon)=ネットフリックス コンシューマープロダクト部門バイス・プレジデントは、「当社では、作品の世界観をユーザーにさらに楽しんでもらうにはどうすればいいかを常に考えている。『ネットフリックス・ドット・ショップ』は、作品に関連した限定アイテムなどを販売しており、ここでしか味わえないユニークな買い物体験を提供している」と、同社の公式ブログで述べた。

 ネットフリックスは現時点で1万5000以上の作品を配信しているが、今回発売したのは同社のオリジナルアニメシリーズ「YASUKE -ヤスケ-」とロサンゼルス発のストリートウエアブランド「ハイプランド(HYPLAND)」のコラボレーションアイテムと、同じく「エデン(Eden)」と「ビームス」が協業したカプセルコレクションだ。今後はドラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界(Stranger Things)」や「ウィッチャー(The Witcher)」を着想源としたアイテムに加えて、「Lupin/ルパン」とルーブル美術館(Louvre Museum)のコラボ商品も販売するという。

The post ネットフリックスがECサイトをオープン 「ストレンジャー・シングス」グッズも appeared first on WWDJAPAN.

「ランバン」の親会社が「セルジオ ロッシ」を買収

 中国の投資会社フォースン ファッション グループ(FOSUN FASHION GROUP、以下FFG)は、イタリアのラグジュアリーシューズブランド「セルジオ ロッシ(SERGIO ROSSI)」を所有するセルジオ ロッシ SPAをインベストインダストリアル(INVESTINDUSTRIAL)から譲り受け、完全子会社化した。セルジオ ロッシの現経営陣は全員続投予定で、買収額などその他の契約内容は非開示。

 セルジオ ロッシ社の買収には多くの企業が名乗りを上げていたが、FFGのブランドを長期的に発展させていくという戦略と中国市場での優位性が売却先として選ばれた理由だとみられている。

 FFGは「この買収によってFFGの戦略的なブランドエコシステムがより充実したものになるだけでなく、『セルジオ ロッシ』が所有する最先端の工場を通じたブランド間のシナジー効果に期待する」とコメントを発表。「中国発のラグジュアリーコングロマリット立ち上げの第一歩だ」と続けた。

 FFGのジョアン・チェン(Joann Cheng)会長もブランド間のコラボを含めたシナジーに期待するとコメントする。また、中国市場に対応するためのローカルチームの強化や、デジタルおよびオムニチャンネルビジネスの強化、マーケティング費用の増加によるブランドの認知度向上を目指すという。

 チェン会長は、同ブランドのクラシックラインのアップデートや、「複数のクリエイターとのコラボや、今日の環境や消費者のニーズに合うストーリーテリングの方法」を用いて新しさを表現していくとコメントした。

 FFGは、「ランバン(LANVIN)」やオーストリア発のレッグウエアブランド「ウォルフォード(WOLFORD)」、イタリアのメンズウエアを製造するカルーゾ(CARUSO)、アメリカの「セント ジョン(ST. JOHN)」などを傘下に収めている。

 セルジオ ロッシは世界に64の店舗を展開し、そのうち45店舗が直営店。「グッチ(GUCCI)」や「サンローラン(SAINT LAURENT)」を有するケリング(KERING)が2015年に投資会社のインベストインダストリアルに譲渡し、この度FFGが傘下に収めた。20年4月には創業者のセルジオ・ロッシ氏が新型コロナウイルスで死去。84歳だった。20年の売上高は6000万ユーロ(約79億8000万円)。

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中

The post 「ランバン」の親会社が「セルジオ ロッシ」を買収 appeared first on WWDJAPAN.

「バレンシアガ」と「クロックス」のコラボ第2弾 ピンヒールやレインブーツが登場

 「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は、2022年春夏コレクションで「クロックス(CROCS)」とのコラボレーションシューズを発表した。18年の春夏コレクション以来、2度目の協業となる。

 “バレンシアガ クロックス 2.0(BALENCIAGA CROCS 2.0)”と銘打たれた今回のコラボでは、「クロックス」のアイコニックなアイテム“クロッグ(CLOG)”をベースにしたハイヒールや、厚底のビーチサンダル、レインブーツが登場。色味はグリーン、グレー、ブラックとなっている。発売時期や価格は未定だが、前回のコラボで発表され、即完売となった高さ10cmのプラットフォームシューズは850ドル(約9万2000円)だった。

 「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は、同じくケリング(KERING)傘下のブランド「グッチ(GUCCI)」が4月15日に発表したコレクションでの“ハッキング・プロジェクト”が大きな話題となったばかり。その際は、「グッチ」のアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)=クリエイティブ・ディレクターによる「バレンシアガ」へのトリビュート作品が登場した。その流れは継続しており、今回のコレクションでは、「バレンシアガ」のデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)​=アーティスティック・ディレクターによる「グッチ」へのトリビュート作品が発表され、再び大きな話題を呼んでいる。

The post 「バレンシアガ」と「クロックス」のコラボ第2弾 ピンヒールやレインブーツが登場 appeared first on WWDJAPAN.

カニエと「ギャップ」のコラボ、初アイテムは2万円のジャケット

 カニエ・ウェスト(Kanye West)が手掛ける「イージー(YEEZY)」と「ギャップ(GAP)」のコラボレーションライン、「イージー・ギャップ(YEEZY GAP)」がいよいよ動き出した。

 公開された初アイテムは再生ナイロンを使用したブルーのパフジャケットで、価格は200ドル(約2万1800円)。6月8日に米国内でプレオーダーを開始しており、発送は秋頃の予定。米国外での展開については、現段階では明らかになっていない。

 カニエと「ギャップ」は、2020年6月にパートナーシップ契約を締結。カニエは10代のときにシカゴで「ギャップ」の店員として働いていた経験もあり、久しぶりにブランドに“戻る”こととなった。両ブランド共に、協業によって新たな顧客層の獲得を狙う計画だ。

 なお「ギャップ」は、米小売最大手のウォルマート(WALMART)と提携し、6月下旬に初のホームコレクションを発売することも明らかにしている。

The post カニエと「ギャップ」のコラボ、初アイテムは2万円のジャケット appeared first on WWDJAPAN.

「ベイプ」に英ファンドが投資 海外展開やECを強化

 英投資会社CVCキャピタル・パートナーズ(CVC CAPITAL PARTNERS以下、CVC)は6月3日、「ア ベイシング エイプ®(A BATHING APE®以下、ベイプ)」への投資を発表した。投資額などの詳細は明らかにされていない。

 「ベイプ」を展開するノーウェア(NOWHERE)は、2011年に香港のアパレル企業I.Tリミテッド(I.T LIMITED以下、I.T)におよそ280万ドル(約3億円)で買収された。その後、I.TはCVCと手を組んで自社株買いを行うことを20年11月に発表し、21年4月に株式を非公開化。I.Tのシャム・カー・ワイ(Sham Kar Wai)会長兼最高経営責任者らの創業者一族がその50.65%を、CVCが49.35%を保有することになり、「ベイプ」はこれを機にI.Tから独立した。今回の投資によってCVCは「ベイプ」の共同経営権を取得しており、同ブランドの中国や米国、欧州市場などでの事業拡大を狙うほか、ECを強化する。

 CVCのヤン・ジャン(Yann Jiang)=ディレクターは、「『ベイプ』はストリートウエアの定義を作り出したアイコニックなブランドで、熱心なファンベースを持っている。シャム会長および『ベイプ』チームと組むことができ、大変うれしく思っている」と語った。

 I.Tのシャム会長は、「『ベイプ』のこれまでの成長を誇らしく思っている。さらなる長期的な成長に向けてブランドを変革するに当たり、CVCは適切なパートナーだ」と述べた。

The post 「ベイプ」に英ファンドが投資 海外展開やECを強化 appeared first on WWDJAPAN.

「カルティエ」親会社のリシュモン、第4四半期はコロナ禍前を上回りV字回復

 コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)の2021年3月通期決算は、売上高が前期比7.6%減の131億4400万ユーロ(約1兆7481億円)、営業利益は同2.6%減の14億7800万ユーロ(約1965億円)、純利益は同38.4%増の12億8900万ユーロ(約1714億円)だった。純利益の大幅増は、主に為替差損益や有価証券の公正価格の変動によるもの。新型コロナウイルスの影響で通期は減収となったが、ジュエリーや中国市場、ECビジネスが売り上げをけん引して業績は下期(20年10月〜)からV字復調を成し遂げた。

 通期の地域別の売上高では、ヨーロッパが同31.2%減の29億5500万ユーロ(約3930億円)、南北アメリカは同14.9%減の23億8800万ユーロ(約3176億円)、日本を除くアジア太平洋地域は同18.9%増の59億3700万ユーロ(約7896億円)、日本は同22.4%減の9億2400万ユーロ(約1228億円)だった。

 部門別の売上高では、「カルティエ(CARTIER)」や「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」が好調なジュエリー部門が同3.3%増の74億5900万ユーロ(約9920億円)だった。一方、ウオッチ部門は同21.4%減の22億4700万ユーロ(約2988億円)と落ち込んだ。

 販売チャネル別で見ると、小売りは同1.2%減の72億4800万ユーロ(約9639億円)だった。これには為替の影響もあり、現地通貨ベースでは同2%増となっている。卸はコロナ禍による百貨店や免税店の休業が響き、同27.0%減の31億200万ユーロ(約4125億円)だった。ECは好調で、同5.5%増の27億9400万ユーロ(約3716億円)となり、売り上げ全体の21%を占めている。

 四半期ベースの売上高では、21年1~3月期(第4四半期)は中国本土の売り上げが3ケタ成長となったことが寄与し、前年同期比29.6%増の34億8000万ユーロ(約4628億円)と大幅に回復。コロナ禍以前の19年同期比でも6.5%増となっており、成長軌道に戻ったと言えるだろう。

 ヨハン・ルパート(Johann Rupert)会長は、「コロナ禍の影響で上期は大幅な減収となったものの、中国本土を中心としたアジア地域やジュエリー部門が売り上げをけん引し、下期には業績が回復した。上り調子で新年度を迎えることができたが、ワクチン接種による集団免疫効果が表れるまでは不確定要素が多く、先行きの不透明感は続くだろう。引き続き従業員、取引先、資産の安全を優先しつつ、物事に柔軟に対応できるように準備しておきたい。事業のデジタル化や顧客中心主義をいっそう推し進めていく」と語った。

 同氏はまた、「戦略的パートナーシップについても継続的に検討している」と述べたが、一部で流れていた事業売却の噂については「リシュモンは独立企業であり続ける」とし、完全に否定した。

 リシュモンは、4月24日に死去したデザイナーのアルベール・エルバス(Alber Elbaz)氏の新ブランド「AZファクトリー(AZ FACTORY)」を担うベンチャー事業のパートナーでもある。同ブランドはデビューコレクションを1月に発表したばかりだった。ルパート会長は、「アルベールはとても繊細で優しく、才能とクリエイティビティーにあふれた、ユーモアのある人だった。彼の夢だった“配慮のあるスマートファッション”は、インクルーシブ(包括的)かつポジティブで、革新的だった。幸運にも彼と知り合うことができた人々は、みんな彼の不在を寂しく思っている」と悼んだ。

 「AZファクトリー」の今後の事業展開については「協議中」としているが、まずはエルバス氏が生前に完成させた最後の作品群を発売する。同ブランドはコレクションベースではなく“プロジェクト”を中心とした新たなビジネスモデルを打ち出しており、今回発売するのは“スーパーテック スーパーシック(SuperTech-SuperChic)”プロジェクトの新作と、全く新たなプロジェクト“フリートゥ(Free To)”のもの。前者はエルバス氏の誕生日である6月12日に、後者はそれ以降の発売となる。これらに加えて、新たなカテゴリーとしてハンドバッグも発表する。また今秋に開催されるパリ・ファッション・ウイークの期間中に、エルバス氏を追悼するメモリアルイベントを行う予定だ。

 リシュモンといえば、20年11月にラグジュアリーEC大手ファーフェッチ(FARFETCH)および中国最大手EC企業のアリババ(ALIBABA)とグローバルな戦略的パートナーシップ契約を締結して大きな話題となった。提携の一貫として、リシュモンは「カルティエ」「ヴァン クリーフ&アーペル」「IWC シャフハウゼン(IWC SCHAFFHAUSEN)」「ジャガー・ルクルト(JAEGER LECOULTRE)」「オフィチーネ パネライ(OFFICINE PANERAI」「ピアジェ(PIAGET)」「ヴァシュロン・コンスタンタン(VACHERON CONSTANTIN)」「クロエ(CHLOE)」などを含む11の傘下ブランドをアリババが運営する高級品に特化したEC「ラグジュアリー・パビリオン(LUXURY PAVILION)」に出店しており、これが売り上げに大きく貢献している。

 「カルティエ」は4月20日、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)およびプラダ グループ(PRADA GROUP)と共に、オーラ ブロックチェーン コンソーシアム(Aura Blockchain Consortium)を設立した。これは世界中のラグジュアリーブランドが共通のブロックチェーン上にデータを記録することで、顧客にいっそうの透明性や追跡性を提供することを目的としたもの。これによって消費者は原材料の調達から販売に至るまでの履歴や、商品の真正性(真贋)などを確認できるという。

The post 「カルティエ」親会社のリシュモン、第4四半期はコロナ禍前を上回りV字回復 appeared first on WWDJAPAN.

「マルジェラ」や「ジル サンダー」を擁するOTBとモンクレール、イタリアを代表する二人の実業家が語る

 OTBのレンツォ・ロッソ(Renzo Rosso)=プレジデントとモンクレール(MONCLER)のレモ・ルッフィーニ(Remo Ruffini)会長兼最高経営責任者(CEO)はこのほど、ミラノのビジネススクール、RCSアカデミーが主催するオンライン・トークセッションに登場した。その中で、ビジネスに対する考え方や後継者の計画から二人で行ったマウンテンバイクの旅まで、幅広い話題を語り合った。

 「ディーゼル(DIESEL)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「マルニ(MARNI)」「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR & ROLF)」「ディースクエアード(DSQUARED2)」などを傘下に抱え、3月には「ジル サンダー(JIL SANDER)」も買収したOTBについて、ロッソ=プレジデントは「(イタリアを拠点とする)ラグジュアリーブランド・グループを確立しようとしている。パンデミックによって拍車が掛かり、今は集合体を作るのにふさわしい時期だ」とコメント。かつてから親交のあるルッフィーニ会長兼CEOも「イタリアの実業家の中で、ラグジュアリー・グループを構築しようとしているのは、レンツォだけ。どんな時代にも資金力のある人はいるが、このようなビジネス文化がなければ成功する可能性はほぼない」と称える。そして、モンクレール自体も2020年12月に「ストーン アイランド(STONE ISLAND)」の親会社スポーツウェアカンパニー(SPORTSWEAR COMPANY)を買収しているが、ファッショングループを設立する考えがないことを改めて示した。

 二人のビジネスに対する考え方において共通しているのは、業界のため、従業員のため、そして自分たちが率いる会社の存続のために価値を創造するということだ。「今の時代に会社を経営するには、文化的な変化と新しいビジネスマインドセットが必要だ。全ての企業がこの変化に対応できるわけではないが、自分たちだけで成し遂げられない企業はいつでも提携することができる。OTBは各ブランドの飛躍的な発展を支援することに尽力するが、そのためには多くの投資と人材が欠かせない」とロッソ=プレジデントは語る。一方、ルッフィーニ会長兼CEOは「私の肩書きはモンクレールの会長兼CEOだが、実際にはそのどちらでもない。5人からなる委員会があり、毎週集まって意思決定をしている」と明かす。「私は所有権や出資比率にこだわるよりもむしろ価値を生み出すことに専念している。イタリアでは皆、完全な所有権を求めていて、自分の会社の99%を保持したいと考えているようだ。その気持ちは分かるが、そのせいでイタリアにラグジュアリー・グループができないのだと思う」。

 13年にミラノ証券取引所に上場したモンクレールにとって経営陣の後継者計画は最重要課題だが、同社の経営幹部の多くはすでに自分の跡を継ぐ人材を育成している。ルッフィーニ会長兼CEOは自身の息子たちに引き継ぐことも否定しなかったが、それは彼らが他の候補者を凌ぐことが条件になるという。一方、OTBではロッソ=プレジデントの7人の子どものうち3人がすでに社内で働いており、時期が来れば彼らにバトンタッチすることに前向きだと話す。それと同時に、これまでも語ってきたことではあるが、会社の存続を確実にするため、将来的にOTBグループを上場させる可能性も否定しなかった。そして、「上場企業では個人企業では得られない後援を生かすことができ、その成功により多くの人々が携われるという考え方を気に入っている」とコメント。「私たちも、数年後にはそういう段階に達するだろう。そうすれば、異なる方法で会社を経営することができるようになる。私も、自分だけの小さな庭を育てるような所有権にはこだわっていない。しかし、大きく重要な何かを作り上げるという責任感と、私たちのグループを素晴らしいものにしてくれている7000のファミリーに対しては満足している」と続けた。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

The post 「マルジェラ」や「ジル サンダー」を擁するOTBとモンクレール、イタリアを代表する二人の実業家が語る appeared first on WWDJAPAN.

手工芸品ECの米エッツィ、Z世代に人気のフリマアプリ「ディポップ」を1700億円で買収

 ハンドメイド品のECプラットフォームを運営する米エッツィ(ETSY)は、英フリマアプリ「ディポップ(DEPOP)」を16億2500万ドル(約1771億円)で買収した。同アプリはZ世代に人気で、アクティブユーザーの90%が26歳以下だ。

 取引は2021年末までに完了する予定。「ディポップ」の経営陣に変更はなく、今後も独立したマーケットプレイスとして既存チームが運営する。

 エッツィは05年にニューヨークで設立。個人のクリエイターによる手作りの衣服、アクセサリー、雑貨などを取り扱うECプラットフォームを主軸としている。19年7月には楽器専用のマーケットプレイス、リバーブ(REVERB)を2億7500万ドル(約299億円)で買収しており、「ディポップ」の取得後は3つのECプラットフォームを運営することとなる。

 11年にロンドンで設立されたディポップは、主にビンテージアイテムやストリートウエアを取り扱う同名のフリマアプリを手掛けている。およそ150カ国において2600万以上のユーザーを抱え、20年の流通総額(GMV)は約6億5000万ドル(約708億円)、売上高は約7000万ドル(約76億円)で、それぞれ前年比で2倍以上の伸びだった。

 エッツィのジョシュ・シルバーマン(Josh Silverman)最高経営責任者(CEO)は、「『ディポップ』はZ世代の消費者にとってのリセール拠点であり、今後もさらに発展すると確信している。当社のDNAやミッションとも合致しており、今回の買収によって大きな事業機会や成長シナジーがもたらされるだろう」と語った。

 ディポップのマリア・ラガ(Maria Raga)CEOは、「『ディポップ』は次世代の若者がユニークなファッションを探索する場所であり、古い物から新しいトレンドを作り出す人々のコミュニティーとして買い物の仕方に変化を起こしている。当社よりも大きな企業のリソースを活用して、このコミュニティーをさらに成長させていきたい」と述べた。

 近年、環境保護やサステナビリティに関心の高い消費者が若年層を中心に増加していることから、二次流通市場が急激に拡大している。21年3月には、ラグジュアリーブランドの古着やグッズを専門に扱うパリ発のリセールサイト「ヴェスティエール コレクティブ(Vestiaire Collective)」が1億7800万ユーロ(約236億円)の資金を調達。ラグジュアリーECのファーフェッチ(FARFETCH)も、今後は二次流通に本腰を入れることを20年12月に発表している。

The post 手工芸品ECの米エッツィ、Z世代に人気のフリマアプリ「ディポップ」を1700億円で買収 appeared first on WWDJAPAN.

「ナイキ」など複数のスポンサーが全仏棄権の大坂なおみを支持 「彼女の勇気を称える」

 プロテニス選手の大坂なおみが心の健康などを理由に全仏オープンを棄権したことを受け、ナイキ(NIKE)など複数のスポンサーが同選手を支持する声明を発表した。

 大坂選手は今大会への出場に先立ち、「選手のメンタルヘルスがないがしろにされている」として、自身の心の健康を守るため記者会見に出席しないことを5月26日に表明。30日に行われた初戦の後、実際に会見場での取材に応じなかったため、大会主催者は「契約上の義務を怠った」として同選手に1万5000ドル(約163万円)の罰金を科した。

 同選手は31日、「大会やほかの選手、私の健康のためにも棄権することが最良だと思う。みんなテニスに集中してほしいし、大会の邪魔をしたくない」と棄権を発表。その際には、2018年の全米オープン以来、長くうつ状態に苦しんできたことも明らかにした。

 こうした事態を受け、ナイキは31日、「われわれの思いはなおみと共にある。当社は彼女を支持し、心の健康に関する自身の経験を共有してくれた彼女の勇気を称えたい」との声明を出した。同社は19年に大坂選手とスポンサー契約を締結。キャンペーンなどに起用しているほか、コラボコレクションも発表している。

 21年1月に同選手をブランドアンバサダーに起用したスイスの時計ブランド「タグ・ホイヤー(TAG HEUER)」は、「当社はアンバサダーが勝利したときばかりでなく、難局にあるときも応援している。現在、なおみは困難に直面しているが、いずれ戻ってきてくれることを心から願っている。彼女は素晴らしいチャンピオンであり、プロのテニス選手としても、個人としても、この時期を乗り越えていっそう強くなると確信している」とコメントした。

 「タグ・ホイヤー」はLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)が擁するブランドだが、やはり同社の傘下である「ルイ・ヴィトン」も、21年1月に同選手をアンバサダーに起用している。

 大坂選手はほかにも、18年11月に資生堂とグローバル契約を結んでおり、サンケアブランド「アネッサ(ANESSA)」とミネラルコスメブランド「ベアミネラル(BAREMINERALS)」のブランドアンバサダーを務めている。「ベアミネラル」は、「われわれはなおみのテニスの技術はもちろん、その強さや勇気にもインスパイアされている。当社は彼女と共に立ち、心の健康を優先するという彼女の決断を支持する」と述べた。

 全仏オープンは、全米オープン、全豪オープン、ウィンブルドンと共に“テニスの4大大会(グランドスラム)”の一つ。4大大会の主催者らは当初、大坂選手が今後も記者会見に応じない場合は、グランドスラムへの出場停止処分などを受ける可能性があるとの共同声明を出していた。しかしこうした対応への批判の高まりや、同選手が今大会を棄権したことなどを受け、「大坂選手にできる限りの支援をしたい。メンタルヘルスは非常に難しい問題であり、彼女が感じているプレッシャーや不安を自らの言葉で語ってくれたことを称賛する」と1日に共同で発表。「選手、ツアー、メディア、そしてテニス界とより広範囲に協力し、意義ある改善を行うつもりだ」と表明した。

The post 「ナイキ」など複数のスポンサーが全仏棄権の大坂なおみを支持 「彼女の勇気を称える」 appeared first on WWDJAPAN.

高級ランジェリーの「ラペルラ」が化粧品を本格スタート

 イタリアの高級ランジェリーブランド「ラペルラ(LA PERLA)」が化粧品を本格スタートした。既存のフレグランスに加え、ボディーケアやスキンケア、メイクアップをラインアップし、5月27日に米国の店舗および公式ECで発売した。なお、日本での展開は予定していない。

 フレグランスは「デイリー使いできるラグジュアリー」をコンセプトに、ランジェリーなどから着想を得た8つの香りを発売。ボトルはパールをイメージしたフォルムと淡いカラーを特徴とし、価格は30mLで100ユーロ(約1万3200円)。ビーガン処方のシャワージェルやボディーバーム、ボディーセラムもそろえ、今後スクラブも仲間入りする予定だ。カラーコスメではマット仕様のリップスティック8色(各54ユーロ、約7100円)に加え、サテン仕上がりのリップバーム(52ユーロ、各6800円)やボリュームタイプのマスカラ、リキッドアイライナー(35ユーロ、約4600円)、アイブロウジェルをそろえる。なお全ての製品はサステナビリティにこだわり、レフィル対応もしている。

 同社は2019年10月にビューティ事業の子会社、ラペルラ ビューティ(LA PERLA BEAUTY)を立ち上げ、20年夏にはこれまでフレグランスを手掛けていたレブロン(REVLON)とのライセンス契約を終了させた。

The post 高級ランジェリーの「ラペルラ」が化粧品を本格スタート appeared first on WWDJAPAN.

バーバリー、21年1〜3月期でV字回復 通期で3倍増益

 バーバリー(BURBERRY)の2021年3月通期決算は、売上高が前期比10.9%減の23億4390万ポンド(約3562億円)、営業利益は同176.1%増の5億2110万ポンド(約792億円)、純利益は同209.1%増の3億7590万ポンド(約571億円)だった。なお、営業利益には新型コロナウイルスに関連した修正項目分として1億2500万ポンド(約190億円)が含まれており、これを除くと3億9600万ポンド(約601億円)となる。

 地域別の売上高では、アジア太平洋地域が同15.6%増の12億320万ポンド(約1828億円)、欧州・中東・インド・アフリカは同34.6%減の6億2800万ポンド(約954億円)、南北アメリカは同18.8%減の4億7470万ポンド(約721億円)だった。

 コロナ禍の影響によって世界中の店舗を一時的に休業せざるを得なかったことから、既存店ベースでの売り上げは同9%減だったものの、21年1〜3月期(第4四半期)で見ると前年同期比32%増となっている。これは中国と韓国が2ケタ成長となったアジア太平洋地域の売上高が同75%増だったことが大きく寄与しており、20年10〜12月期(第3四半期)が同9%減だったことを踏まえると、成長軌道に戻ったと言えるだろう。ECも好調で、南北アメリカと中国市場では前年と比べて2ケタ成長となった。

 マルコ・ゴベッティ(Marco Gobbetti)最高経営責任者は、「完全なラグジュアリーブランドとなるべく、ここ3年は新たな『バーバリー』を構築することに尽力してきた。ブランドイメージに新たな命を吹き込み、商品のリニューアルや顧客の買い物体験の改善を行うと同時に、環境や社会的な問題に関する取り組みも積極的に進めている。コロナ禍の影響があるにもかかわらず、今期の目標を達成し、素晴らしい業績を上げられたことをうれしく思っている」と語った。

 同社はラグジュアリーブランドとしての価値を高める戦略の一環として値下げを減らしており、21年1~3月期には定価での売上高が前年同期比63%増、19年同期と比べても12%増となっている。

The post バーバリー、21年1〜3月期でV字回復 通期で3倍増益 appeared first on WWDJAPAN.

ラルフ ローレンが「クラブ モナコ」を売却 事業戦略の見直しの一環

 ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)は、傘下ブランド「クラブ モナコ(CLUB MONACO)」を米投資会社リージェント(REGENT)に売却する。6月末までに手続きを完了する。

 パトリス・ルーヴェ(Patrice Louvet)=ラルフ ローレン 社長兼最高経営責任者(CEO)は、「この22年間、『クラブ モナコ』はラルフ ローレンファミリーの大切な一員だった。ブランドとそのチームの貢献に感謝する。今後われわれの主要ブランドの強化を図る上で、『クラブ モナコ』の長期的成長を視野に入れた最適な措置だと考えている。ブランド戦略や運営の面で豊かな専門知識を持つリージェントのもとで、絶え間ない発展を続けるだろう。最大のポテンシャルを引き出せると確信している」と語った。

 マイケル・ラインスタイン(Michael Reinstein)=リージェント会長は、「『クラブ モナコ』はモダンなスタイルでたくさんのロイヤルカスタマーに愛され続けているブランドだ。成長に向けてたくさんの可能性を秘めている。われわれの小売りやECの経験を生かして、ラルフ ローレンが20年以上にわたって築き上げたブランドのこれからを築けることが光栄だ」と述べた。

 ラルフ ローレンは2020年8月、事業戦略の見直しを実施。その中には社内組織の再編や、傘下ブランドのポートフォリオの見直しが含まれていた。その一環として同年の「チャップス(CHAPS)」のライセンス譲渡に加えて、今回「クラブ モナコ」も売却する。これによって、主要ブランドをよりサステナブルな成長へ導く。

The post ラルフ ローレンが「クラブ モナコ」を売却 事業戦略の見直しの一環 appeared first on WWDJAPAN.

ラルフ ローレンが「クラブ モナコ」を売却 事業戦略の見直しの一環

 ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)は、傘下ブランド「クラブ モナコ(CLUB MONACO)」を米投資会社リージェント(REGENT)に売却する。6月末までに手続きを完了する。

 パトリス・ルーヴェ(Patrice Louvet)=ラルフ ローレン 社長兼最高経営責任者(CEO)は、「この22年間、『クラブ モナコ』はラルフ ローレンファミリーの大切な一員だった。ブランドとそのチームの貢献に感謝する。今後われわれの主要ブランドの強化を図る上で、『クラブ モナコ』の長期的成長を視野に入れた最適な措置だと考えている。ブランド戦略や運営の面で豊かな専門知識を持つリージェントのもとで、絶え間ない発展を続けるだろう。最大のポテンシャルを引き出せると確信している」と語った。

 マイケル・ラインスタイン(Michael Reinstein)=リージェント会長は、「『クラブ モナコ』はモダンなスタイルでたくさんのロイヤルカスタマーに愛され続けているブランドだ。成長に向けてたくさんの可能性を秘めている。われわれの小売りやECの経験を生かして、ラルフ ローレンが20年以上にわたって築き上げたブランドのこれからを築けることが光栄だ」と述べた。

 ラルフ ローレンは2020年8月、事業戦略の見直しを実施。その中には社内組織の再編や、傘下ブランドのポートフォリオの見直しが含まれていた。その一環として同年の「チャップス(CHAPS)」のライセンス譲渡に加えて、今回「クラブ モナコ」も売却する。これによって、主要ブランドをよりサステナブルな成長へ導く。

The post ラルフ ローレンが「クラブ モナコ」を売却 事業戦略の見直しの一環 appeared first on WWDJAPAN.

「ルイ・ヴィトン」親会社が透明性の向上やエコデザインの目標を設定 中古品の取り扱いはせず

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」などのブランドを運営するLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)が、環境問題プログラム「ライフ360」の一環として目標を発表した。

 2026年までに包装で使用するプラスチックを全てリサイクルされたものにし、消費者に情報を開示するシステムの構築を掲げた。また、製造工程をたどるトレーサビリティー(追跡可能性)の追求を含め、透明性の向上を図る。エレーヌ・ヴァラド(Helene Valade)環境開発ディレクターはトレーサビリティーを「“畑から店舗まで”のバリューチェーン全体を見直す重要な指標」と定義。同じく26年までに再生可能エネルギーの使用を増やし、480万トンと換算されている二酸化炭素排出量を19年と比較して50%削減する。製造や輸送、通勤などで排出される二酸化炭素量を指すスコープ3を半分に削減する。

 30年までの目標としては、取引情報を安全に記録する手段として用いられるブロックチェーンなどを活用して、主要な素材の種類別に追跡可能なシステムを設けることをあげた。同グループのビューティブランドである「ゲラン(GUERLAIN)」が開発したデジタル追跡システム「ビー・リスペクト(BEE RESPECT)」や、「パトゥ(PATOU)」が導入したQRコードを使ったシステムを例にあげた。

 ほかにも、環境負担の少ない製品の提供やエコデザイン、循環型経済の導入などに重点を置く。ヴァラド環境開発ディレクターは「エコデザインの分野にはまだ多くの改善点がある」とし、2030年までに全ての新製品にエコデザインを適用すると発表。循環型経済の導入ではまず商品開発のプロセスを再考し、リサイクル素材の使用や再生農業から得られる材料の使用など、素材の選択から見直していくと強調した。製品の修理やブラッシュアップサービス、レザーやファーなどの材料のリメイク(アップサイクル)やリサイクルを開始する予定だ。

 同氏は「わたしを知っている人なら、わたしが循環型経済について専門家並みに知識を持っていることを知っているだろう。この新しい経済モデルによって何かが変わると強く信じている。LVMHではこれを具体的に適用していく。消費者とわれわれの双方によって、製品に“第2の人生”を与えられる仕組みを作る」と述べた。LVMHがセカンドハンドの分野に本格的に着手するかどうか尋ねられた際には、「われわれが目指すのはセカンドハンドの取り扱いではない。まずは製品を長持ちさせることに重きを置いている」と返答した。

 古着や廃棄物をデザインの力でよみがえらせ、新たな価値を生み出すことで知られる“アップサイクル”の動きは、LVMH傘下ブランドの数々で既に見られている。「ルイ・ヴィトン」の2021年春夏コレクションでヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)=メンズ アーティスティック・ディレクターは“アップサイクル スニーカー”をデザイン。「ロエベ(LOEWE)」は、廃棄予定だったレザーを集めてハンドバッグを作成した。「これらは、時間や自然との新しい関係から生まれたもの。われわれが目指すよりクリーンなラグジュアリーの形だ」とヴァラド環境開発ディレクター。

 加えて新型コロナのパンデミックでファッションショーの開催方法に変化があったことを受けて、「デジタル開催でも環境に影響を与えるということが明確になった。環境負担が少ないと想定されていたデジタル開催でも十分な影響を持つことがわかったので、これらの結果をリアルでの開催の時と厳密に比較しなければいけない。われわれはファッションウイークに対して、開催する地域の経済、文化、環境への影響を考慮しながらアプローチしている」とコメント。地域の経済状況への貢献やファッションエコシステムを視野に入れる必要性と、若手デザイナーが輝く場所としてのファッションウイークの意義を強調した。

 LVMHによる「ライフ」プログラムシリーズは、2012年にスタート。傘下ブランドも含めて、サステナビリティへのパフォーマンスの向上にアプローチした。2016年には「ライフ2020」プロジェクトを発足。「製品」「サプライチェーン」「CO2」「製造拠点」の4つの分野でそれぞれ目標を設定し、環境問題へのコミットメントを強化した。プログラムを通じてグループ内の再生可能エネルギーの使用量は40%増えた。シャンパンブランド「ルイナール(RUINART)」が実施した包装の見直しなどが功をなし、店舗でのエネルギー消費は31%削減した。グループが使用するダイヤモンドやゴールドの調達も、RJC(RESPONSIBLE JEWELLERY COUNSIL、責任あるジュエリー協議会)に認定されている。

 今回設定した目標は、3、6、10年という長期的かつ複数の展望を持つ。その理由にヴァラド環境開発ディレクターは、「特定の期間で幅広い課題を網羅するには、多様なチェックポイントを持つことが重要だ」と説いた。

The post 「ルイ・ヴィトン」親会社が透明性の向上やエコデザインの目標を設定 中古品の取り扱いはせず appeared first on WWDJAPAN.

死者1000人以上の事故「ラナ・プラザの悲劇」から8年 労働環境の改善はまだ遠く

 2013年4月24日、バングラデシュの首都ダッカ近郊で複数の縫製工場が入った複合ビルが崩落し、死者1000人以上、負傷者2500人以上を出す大惨事が起きた。ビルの名称から「ラナ・プラザ(RANA PLAZA)の悲劇」と呼ばれるこの事故は国際的にも注目を集め、15年にはアパレル業界のサプライチェーンにおける労働環境および人権問題を追ったドキュメンタリー映画「ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~(原題:The True Cost)」が公開された。

 その後、縫製業に従事する人々の労働環境は改善されたのだろうか。「ラナ・プラザの悲劇」から8年経った21年4月24日、短編ドキュメンタリーシリーズ「ファッションスケープス:ア・リビング・ウェージ(原題:Fashionscapes: A Living Wage)」がユーチューブ(YouTube)などで公開された。「ザ・トゥルー・コスト」を手掛けたアンドリュー・モーガン(Andrew Morgan)監督と、環境や人権問題に関するコンサルティング会社エコ・エイジ(ECO-AGE)のリヴィア・ファース(Livia Firth)共同創立者兼クリエイティブ・ディレクターが再びタッグを組んだ今作は、最低賃金以下で働かざるを得ない発展途上国の女性たちと、コロナ禍でさらに悪化した労働環境や搾取システムを改善しようと尽力する人権活動家らにフォーカスしている。

 モーガン監督は、前作を公開した当時から労働者の環境はあまり改善されておらず、もはや「事態を広く認知させる」段階ではなく「行動に移す」べき段階に来ているという。「しかし、実際に何をどうするべきなのか。これには複雑な問題がいろいろと絡みあっており、誰が対話を主導するのかを慎重に考えなければならない。これまでも、現状を維持したいアパレルブランドなどがその莫大な資金力によって対話を“ハイジャック”するのを何度も目にして来た」と語った。

 事業における人権侵害の根絶に取り組む非営利団体ビジネスと人権リソースセンター(Business & Human Rights Resource Centre)のタルシ・ナラヤナサミー(Thulsi Narayanasamy)=シニア・レイバー・リサーチャーは、「労働者が貧困状態にあるのは偶然ではなく、そうなるように制度が作られているからだ。生活できないほどの低賃金で働かざるを得ない女性は6000万から8000万人いる。こうした労働者らはコロナ禍以前から極貧状態にあり、その17%は飢餓に直面している。新型コロナウイルスよりも飢餓を恐れる労働者のほうが多いぐらいだ」と作中で話している。

 ファッション業界は世界全体で2兆5000億ドル(約270兆円)程度の市場規模を持つ巨大な産業だが、近年は人権を含めた環境問題で批判されることも増えている。国連の専門機関で、労働者の労働条件と生活水準の改善を目的とする国際労働機関(International Labour Organization)などが定める指針やイニシアチブに署名しているアパレル企業も多いとはいえ、縫製産業従事者の労働環境の改善を訴える非政府組織「クリーン・クローズ・キャンペーン(Clean Clothes Campaign以下、CCC)」が19年に発表したリポートによれば、発展途上国の労働者に生活賃金以上の賃金を支払っていると証明できるブランドはないという。

 ファース共同創立者兼クリエイティブ・ディレクターは、「ファストファッションブランドは生活賃金もしくはそれ以下しか支払っていないという人権活動家らの批判をはぐらかしてきたが、パワフルな女性たちが連帯してそれに立ち向かったことによって変化が起きている。ファッション業界は(労働環境を改善するという)約束を幾度となく破ってきたが、法整備が進めば、今後は人権を守る法的義務を怠ったということで異議申し立てなどを行うことができる」と述べた。

 女性の地位や権利の平等を目指す非政府組織ザ・サークル(The Circle)のジェシカ・シーモア(Jessica Simor)弁護士は、生活賃金や人権に関する課題は欧州連合(European Union以下、EU)など政策の実施機関が主体になるべきだという。これまではアパレル企業が主体となっていたが、彼らは既存のシステムを維持したいため、生活賃金について言葉を濁して対話を引き伸ばしてきたからだとその理由を説明する。なお、ザ・サークルはEUに対して、ファッションブランドや小売店が縫製業の労働者に生活賃金の支払いを保証する法案を提出することを4月に提案している。

 問題は、こうした法整備には時間がかかることだ。また労働者の安全に関する協定などが締結されても、期限が切れてしまうことがある。

 「ラナ・プラザの悲劇」から1カ月後の13年5月に、安全監視機関として「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全に関わる協定(The Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh以下、アコード)」が設置され、「H&M」や、「ザラ(ZARA)」の親会社であるインディテックス(INDITEX)など欧州を中心とする200社以上のアパレル企業が署名した。「ユニクロ(UNIQLO)」などを擁するファーストリテイリングも13年8月に署名している。

 アコードには法的拘束力があり、参加企業はバングラデシュにある縫製工場などの安全検査を実施し、問題があると判明した場合にはその改修費用を負担する仕組みとなっている。しかし5年間の期限付きだったため、活動停止を命じる判決をバングラデシュの下級裁判所が出していたが、その後も縫製工場などで火災が頻発している状況に危機感を覚えたアコード側が19年5月に上訴し、281日間の活動継続および後継組織への活動引き継ぎが承認された。その継続されたアコードの期限が21年5月31日までであるため、人権活動家や非政府組織は、これをアパレル企業への強制力を持った形で再継続させるべく奔走している。

 では、私たち消費者にできることは何だろうか。モーガン監督は、「ファッションは個人のアイデンティティーを示すものであり、自分の価値観に従って何かを選ぶ機会だと思う。ファッションを楽しむことに罪や恥の意識を感じてほしいわけではない。服の生産工程について疑問を持ったり、メーカーの取り組みについて調べて質問したりすることも、既存の非人道的なシステムに対抗する手段の一つだと知ってほしい」と話した。

The post 死者1000人以上の事故「ラナ・プラザの悲劇」から8年 労働環境の改善はまだ遠く appeared first on WWDJAPAN.

「ミュウミュウ」が「リーバイス」をリメイク スパンコールの輝く“501”ジーンズも

 「ミュウミュウ(MIU MIU)」は「リーバイス(LEVI'S)」とコラボレートし、リメイクジーンズのカプセルコレクションを発表した。1000着の数量限定で発売する。価格はデザイン次第で、980ドル(約10万5000円)や5800ドル(約62万6000円)など。5月中旬にロンドンのセルフリッジ(Selfridges)と上海のショッピングモール「IAPM」でデビューし、その後5月25日〜6月6日にロサンゼルスの「ドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)」で販売。「ミュウミュウ」の店舗やECには6月18日から並ぶ予定だ。

 「ミュウミュウ」を擁するプラダ・グループ(PRADA GROUP)のミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)は2020年12月、“アップサイクルド バイ ミュウミュウ(Upcycled by Miu Miu)”プロジェクトを発足。第1弾では、世界中から集めた1930~70年代のドレスやワンピースを同氏が刺しゅうやリボン、スパンコール、クリスタルビーズなどを使って「ミュウミュウ」らしくリメイクした。今回もアイテムは全て一点物。それぞれのアレンジは手作業で施されている。

 本コラボでは1980〜90年代の「リーバイス」のシグネチャーモデル“501”ジーンズやデニムジャケットに、スパンコールやパール、刺しゅう、レザーなどを加えてアレンジ。“501”ジーンズはメンズを使用し、膝丈とフル丈の2種類をそろえた。ジャケットはパフスリーブや白いレースを使ったフリルの襟などを施した。腰部分のジーンズのタグもライトピンクに変更し、両ブランドのロゴを記した。

 キャンペーンには、俳優のエマ・コリン(Emma Corrin)とモデルのリラ・モス(Lila Moss)、ジョージア・パーマー(Georgia Palmer)を起用した。フォトグラファーのジョニー・デュフォート(Johnny Dufort)が撮影。コリンはパフスリーブのデニムジャケットと、スパンコールが輝く“501”ジーンズを着用。モスは全体がビーズで飾られたセットアップに、パーマーはレザーで装飾されたアイテムを着ている。デザインを通してマスキュリニティー(男性性)やフェミニニティー(女性性)の揺らぎを遊び心満載に表現した。

The post 「ミュウミュウ」が「リーバイス」をリメイク スパンコールの輝く“501”ジーンズも appeared first on WWDJAPAN.

「ヴァンズ」の共同創業者ポール・ヴァン・ドーレンが死去 スケートカルチャーの必須ブランド

 「ヴァンズ(VANS)」は5月8日、ポール・ヴァン・ドーレン(Paul Van Doren)共同創業者が死去したことを明らかにした。90歳だった。死因は公表されていない。

 同社は、「ポールは単なる起業家ではなく、イノベーターだった。製品のデザイン、流通、マーケティングにおいて大胆な実験を行うと共に、その数字や効率性に対する才能によって家業の靴屋を世界的なブランドに育て上げた。ご家族の皆様と、数え切れないほどのヴァンズファミリーに愛と力をお送りする」とコメントを発表した。同氏は4月27日に、自伝「オーセンティック:ア・メモワール・バイ・ザ・ファウンダー・オブ・ヴァンズ(Authentic: A Memoir by the Founder of Vans)」を上梓したばかりだった。

 1930年にマサチューセッツ州ボストンで生まれた同氏は、14歳で学校を中退し、シューズメーカーのランディーズ・ラバー・カンパニー(RANDY'S RUBBER COMPANY)に就職。スニーカーの組立ラインの最適化を行った功績を認められ、カリフォルニア州の生産拠点に栄転した。64年には、ブランドの認知度を上げるためにサーフィンの世界的なイベントである全米オープン・オブ・サーフィン(The U.S. Open of Surfing)に出店した。その際、ハワイの伝説的なサーファー、デューク・カハナモク(Duke Kahanamoku)にカスタムメイドのスニーカーを提供したことから、同社はサーフィン・コミュニティーから注目されることとなった。その後、経営陣との意見の相違から同社を退職。66年に「ヴァンズ」の前身となる靴店、ヴァン・ドーレン・ラバー・カンパニー(VAN DOREN RUBBER COMPANY)を家族と共に創業した。

 グリップ力の強い“ワッフルソール”を特徴とする「ヴァンズ」のスニーカーは、まず西海岸のスケーターからの支持を得た。スケートボードでは利き足の靴底が早くすり減ってしまうと聞き、片方の靴のみでも購入できるようにするなど、顧客のニーズに応えることで人気を拡大していった。

 その後、「ヴァンズ」は伝説的なスケートボードチーム、ズィーボーイズ(Z-BOYZ)のメンバーであり、プロスケーターおよびサーファーであるステイシー・ペラルタ(Stacy Peralta)やトニー・アルバ(Tony Alva)を招き、デザインなどについて意見交換を行っている。こうしたつながりから後にスケートチームやサーフチームを保有することとなり、スケートやサーフィンなどのユースカルチャーに不可欠のブランドとなった。同社は現在、全米オープン・オブ・サーフィンのタイトルスポンサーでもある。

 82年に公開された映画「初体験/リッジモント・ハイ(原題:Fast Times at Ridgemont High)」ではショーン・ペン(Sean Penn)が演じたキャラクターが「ヴァンズ」のスニーカーを履いていたことからさらに人気が高まり、世界的なブランドとなった。

 ヴァン・ドーレン氏は80年に一度「ヴァンズ」を離れて引退しているが、同社はその4年後に1200万ドル(約12億円)の負債を抱えて経営難に陥り、日本の民事再生法に相当する米国連邦破産法第11章を申請。同氏は再建策の一環として社長職に復帰した。

 90年代にはディズニー(DISNEY)社やストリートブランドとして人気となりつつあった「シュプリーム(SUPREME)」などと、2000年代以降は「カール・ラガーフェルド(KARL LAGERFELD)」「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」「フィアー オブ ゴッド(FEAR OF GOD)」「オープニングセレモニー(OPENING CEREMONY)」「ケンゾー(KENZO)」など多数のブランドと協業している。

 2004年、「ヴァンズ」は「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」や「ティンバーランド(TIMBERLAND)」などを擁するVFコーポレーション(VF CORPORATION以下、VFC)に3億9600万ドル(約427億円)で買収され、売上高20億ドル(約2160億円)以上のブランドに成長した。なお、VFCは20年11月に「シュプリーム」を21億ドル(約2268億円)で買収する契約を締結している。

The post 「ヴァンズ」の共同創業者ポール・ヴァン・ドーレンが死去 スケートカルチャーの必須ブランド appeared first on WWDJAPAN.com.

「エディー・バウアー」をABGが買収 アウトドア分野の強化を図る

 ブランドマネジメント企業オーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)とスパーク・グループ(SPARC GROUP以下、スパーク)が、「エディー・バウアー(EDDIE BAUER)」を買収する。金額などは公開されていないが、ABGが同ブランドの知的財産権を獲得し、スパークがブランド事業を担うことで合意したという。6月1日に最終決定する予定だ。ABG広報は、「エディー・バウアー」の店舗閉鎖や従業員の解雇については「運営や人員配置に関する情報はまだ明らかでない」と述べた。

 「エディー・バウアー」は、シアトル生まれの伝統的なアウトドアブランド。1920年にエディー・バウアーがテニスウエアの販売のためにブランドを設立した。68年に売却して以来、ジェネラル・ミルズ(GENERAL MILLS)やスピーゲル(SPIEGEL)がブランドを運営したが、2009年にデラウェア州で日本の民事再生法に当たる米連邦破産法第11条の適用を申請。投資会社のゴールデン・ゲート・キャピタル(GOLDEN GATE CAPITAL)が買収し、その運営グループであるPSEBグループが所有した。従業員は1000人超で、推定年間売上高は5億ドル(約540億円)と見られている。契約成立後も本社はダミアン・ファン(Damien Huang)社長の下、シアトルに留まる。

 ABGはアメリカで経営破綻をしたファッション企業やブランドを買収し、再建に注力する投資ファンド。この15カ月の間にバーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)や「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」などを買収してきた。スパークは、ABGと米不動産投資信託会社サイモン・プロパティー・グループ(SIMON PROPERTY GROUP)が半々の出資比率で設立した合弁会社。今回の契約で「エディー・バウアー」の素材調達から製品設計・開発、販売、戦略、ECまでを管理し、アメリカとカナダに位置する300店舗も運営する。これによりスパークが運営する「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」「エアロポステール(AEROPOSTALE)」「ノーティカ(NAUTICA)」「フォーエバー21(FOREVER21)」といったブランドの売り上げは計86億ドル(約9300億円)になる見込みだ。

 ファッションに加えてエンターテインメントやメディア、ホームなど幅広い事業を手掛ける中、ABGは本契約でアウトドア事業に本腰を入れる。すでに他ブランドに適用している成長戦略を「エディー・バウアー」でもすぐに実施する計画だ。アメリカ中心のブランドをラテンアメリカ、ヨーロッパ、アジアなど国際的に展開し、アウトドアライフが人気のエリアにも進出する。中国と韓国の一部エリアでは、初期の成長を促すためにすでに商品の発売が計画されているという。またこれまでの消費者を維持しながら、若い消費者を引き付けるために同ブランドのマーケティングとブランド開発を図る。コンテンツを強化してオンラインフォロワーを開拓し、ブランドの核を生かしたコラボレーションに乗り出すという。

ジェイミー・ソルター(Jamie Salter)ABG会長兼最高経営責任者(CEO)は、「世界のアウトドア市場は20年、飛躍的に成長した。スパークとファン社長、『エディー・バウアー』チームと協力してこのブランドを新しい局面に導きたい」とコメント。また、「エディー・バウアー」のECビジネスを「堅調」とし、オンラインでの販売が20年の売上高の約50%を占めたことを評価した。

The post 「エディー・バウアー」をABGが買収 アウトドア分野の強化を図る appeared first on WWDJAPAN.com.

「グッチ」がアニメ「ばなにゃ」とコラボ カプセルコレクションを発売

 「グッチ(GUCCI)」が、日本のアニメ「ばなにゃ」とコラボした。海外でアニメを配信するプラットフォーム、クランチロール(Crunchyroll)との提携で実現した。

 コラボアイテムはキャラクターの“ばなにゃ”や“とらばなにゃ”のプリントが施されたTシャツとスエットにスニーカー、アクセサリーを14点そろえた。アクセサリーはネックレスや、ガラスビーズとスパンコースをあしらったブローチなど3種類。一部オンライン限定と、店頭で取り扱う。価格は、5万3900〜13万2000円。

 「ばなにゃ」は雑貨や文具を扱うクーリアが手掛けるオリジナルキャラクター。2016年に矢立きょう監督によりアニメ化が実現し、バナナにひそむ不思議な生物“ばなにゃ”の生態を描いている。2019年に同シリーズ第2部となる「ばなにゃ ふしぎななかまたち」を配信した。

The post 「グッチ」がアニメ「ばなにゃ」とコラボ カプセルコレクションを発売 appeared first on WWDJAPAN.com.

「メットガラ」2021のホストにティモシー・シャラメ、ビリー・アイリッシュ、大坂なおみ選手らが就任

 ファッションの祭典である「メットガラ(MET GALA)」2021のホストに、ティモシー・シャラメ(Timothee Chalamet)、ビリー・アイリッシュ(Billie Eilish)、詩人のアマンダ・ゴーマン(Amanda Gorman)、テニスの大坂なおみ選手が選ばれた。

 例年5月に開催されてきた「メットガラ」だが、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中止になった。21年は“イン・アメリカ:ア・レキシコン・オブ・ファッション(In America: A Lexicon of Fashion)”をテーマに9月13日に開催が決定。8〜12日に開催されるニューヨーク・ファッション・ウイークと同時期に行う。

 「メットガラ」を主催する「ヴォーグ(VOGUE)」は、「この4人は、アメリカンスタイルを象徴する“個人主義(インディビジュアリズム)”を体現する。コンセプトへのアプローチはそれぞれ違えど、ファッションを通して自身のことを表現してきた。テーマに関連する情熱を持っている人たちだ。アメリカのファッションをもとに、確固たるパブリックイメージを築いた」と語った。

 「メットガラ」を皮切りに同テーマで開催される展示会は9月18日に、メトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)でスタート。同美術館の衣装研究所(Costume Institute)の75周年を祝って、アメリカのファッションについて深く掘り下げる。衣装研究所によるエキシビジョンは、9月中旬と22年5月の2部構成で開かれる予定だ。

The post 「メットガラ」2021のホストにティモシー・シャラメ、ビリー・アイリッシュ、大坂なおみ選手らが就任 appeared first on WWDJAPAN.com.

「クロムハーツ」がカスタマイズした「ロールス・ロイス」車が誕生 ドレイクとコラボで制作

 ラッパーのドレイク(Drake)が新作アルバム「Certificated Lover Boy」の発売を記念して、「クロムハーツ(CHROME HEARTS)」とコラボした。アパレルやアクセサリーなどに加えて、「ロールス・ロイス(ROLLS ROYCE)」のSUV“カリナン(Cullinan)”をカスタマイズ。マイアミ現代美術館(Institute of Contemporary Art, Miami)に展示する。

 「クロムハーツ」を象徴するクロスモチーフでボンネットオーナメントを作成し、エアコン操作部分にはスターリングシルバーを使用。ホイールは“クロムハーツ プラス”モチーフで装飾し、外周に“F—k You”と彫られている。内装はほぼ全面に黒のキルティングとエンボス加工のレザーを使用。サンバイザーにはドレイクの名前が施されている。ボディーは黒を基調に、メタリック加工で仕上げた。

 制作は、オーダーメイドに特化する自動車メーカーのマンソリー(MANSORY)と共に2年にわたって進めた。ローリー・リン・スターク(Laurie Lynn Stark)「クロムハーツ」オーナーは、「シートベルトからエアバッグまで、全ての細かい部品まで共に手掛けた。われわれのジャケットの美学や心地よさをレザーのキルティングで表現し、車のインテリアとしての品質も保証されている。われわれのステッチを見せて、車用にアレンジしてもらった」とコメント。

 ドレイクと「クロムハーツ」のコラボコレクションではユニセックスジーンズ(3085ドル、約33万円)やプルオーバーパーカ(550ドル、約5万9000円)に加えて、胸にハートが施されたテディベアなどの限定アイテムも販売。マイアミの店頭で取り扱う。

The post 「クロムハーツ」がカスタマイズした「ロールス・ロイス」車が誕生 ドレイクとコラボで制作 appeared first on WWDJAPAN.com.

「ルイ・ヴィトン」「シャネル」「ディオール」などが中国で続々と価格改定 46%値上げしたバッグも

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「シャネル(CHANEL)」「ディオール(DIOR)」などのラグジュアリーブランドは、コロナ禍が一足早く落ち着いた中国市場での値上げに踏み切っている。

 例えば、「ルイ・ヴィトン」のエントリーモデルで肩に掛けられる小型バッグ“ポシェット・アクセソワール(Pochette Accessories)”は4200人民元(約6万7200円)から6150人民元(約9万8400円)と46.4%値上げされた。同様に、「シャネル」の“ミニ スクエア クラシック フラップ(Mini Square Classic Flap)”は2万1600人民元(約34万5600円)から2万8500人民元(約45万6000円)と31.9%の値上げとなっている。為替の影響も多少あるかもしれないが、かなり大幅な値上げだといえるだろう。なお、「エルメス(HERMES)」は3〜6%の値上げを実施している。

 こうした価格変動をモニタリングしている中国の人気ファッション・インフルエンサー、ミスターバッグ(Mr. Bags)によれば、ラグジュアリーブランドは全ての商品を一度に値上げするのではなく、特定のバッグやシリーズを値上げした後、しばらく様子を見てから別のバッグなどの価格改定を行っているという。

 値上げの多くは2020年に行われたが、21年にもこうした傾向が続きそうだ。「グッチ(GUCCI)」は3月9日に中国市場で“ネオ ヴィンテージ GGスプリーム(Neo Vintage GG Supreme)”シリーズを15%、“ホースビット 1955(Horsebit 1955)”シリーズを5%程度値上げした。これにより中国では2万500人民元(約32万8000円)となったバッグが、英国では1670ポンド(約25万円)とおよそ8万円近く安く購入できる。

 国内外でこれほど大きな価格差があることは、中国の代理購入業者にとってまたとないビジネスチャンスだろう。中国では19年1月にECを広くカバーする電子商務法(中華人民共和国電子商務法)が施行され、代理購入業者の登録と納税を義務付けているが、こうしたことを加味してもかなりの儲けが出ることは容易に想像できる。一方、中国の消費者が値上げを気にしている様子はあまりない。新価格に改定される前には店舗に行列ができるものの、それ以上の混乱はないようだ。

 20年から21年にかけて価格改定されたブランドバッグの値上がり幅トップ15を以下に紹介する。

1. 「ルイ・ヴィトン」“ポシェット・アクセソワール”
4200人民元(約6万7200円)→ 6150人民元(約9万8400円)、46.4%増

2. 「シャネル」“ミニ スクエア クラシック フラップ”
2万1600人民元(約34万5600円)→ 2万8500人民元(約45万6000円)、31.9%増

3. 「ルイ・ヴィトン」“ポッシュ・トワレ 26(Toiletry Pouch 26)”
3450人民元(約5万5200円)→ 4450人民元(約7万1200円)、28.9%増

4. 「ルイ・ヴィトン」“ミュルティ・ポシェット・アクセソワール(Multi Pochette Accessories)”
1万2500人民元(約20万円)→ 1万6000人民元(約25万6000円)、28.0%増

5. 「プラダ(PRADA)」“リ エディション(Re-Editon)2005”
8700人民元(約13万9200円)→ 1万1000人民元(約17万6000円)、26.4%増

6. 「ディオール」“サドル ミニバッグ(Saddle Mini Bag)”
2万人民元(約32万円)→ 2万5000人民元(約40万円)、25.0%増

7. 「シャネル」“スモール クラシック フラップ(Small Classic Flap)”
3万7600人民元(約60万1600円)→ 4万6800人民元(約74万8800円)、24.5%増

8. 「ディオール」“レディ ディオール ミニ バッグ(Mini Lady Dior)”
2万7000人民元(約43万2000円)→ 3万3000人民元(約52万8000円)、22.2%増

9. 「ディオール」“ブック トート ミニ(Mini Dior Book Tote)”
1万6000人民元(約25万6000円)→ 1万9500人民元(約31万2000円)、21.9%増

10. 「シャネル」“ミディアム クラシック フラップ(Medium Classic Flap)”および“2.55 リイシュー(2.55 Reissue)”
4万2600人民元(約68万1600円)→ 5万1500人民元(約82万4000円)、20.9%増

11. 「ディオール」“30 モンテーニュ(30 Montaigne)”
2万2500人民元(約36万円)→ 2万7000人民元(約43万2000円)、20.0%増

12. 「シャネル」“ラージ クラシック フラップ(Large Classic Flap)”
4万7100人民元(約75万3600円)→ 5万6100人民元(約89万7600円)、19.1%増

13. 「グッチ」“ジャッキー ミニ(Mini Jackie)”
1万4300人民元(約22万8800円)→ 1万6900人民元(約27万400円)、18.2%増

14. 「ディオール」“レディ ディオール ミディアム バッグ(Medium Lady Dior)”
3万4000人民元(約54万4000円)→ 4万人民元(約64万円)、17.6%増

15. 「グッチ」“GGマーモント スーパーミニバッグ(Super Mini GG Marmont)”
6450人民元(約10万3200円)→ 7500人民元(約12万円)、16.3%増

The post 「ルイ・ヴィトン」「シャネル」「ディオール」などが中国で続々と価格改定 46%値上げしたバッグも appeared first on WWDJAPAN.com.

「ステラ マッカートニー」「シャネル」「アディダス」も続々導入 ビーガン素材のレザーってどんなもの?

 動物の権利や環境問題への関心の高まりに合わせて、動物に由来する成分を使用しないビーガン素材の人工レザーが増えている。

 一般的にビーガンとは動物性のものや、動物に害のある生産過程を経たものを可能な限り搾取せずに暮らすライフスタイルを指す。肉から魚、卵、乳製品、はちみつまで、動物由来のものを一切口にしないことに加えて、食だけに限定するのではなく、身の回りの製品から動物由来のものをできるだけ避ける考えとして浸透している。そんな考えをもとにしたビーガンレザーは、パイナップルの葉やサボテン、キノコなどを使用する。

 中には動物由来の成分への代わりとして、石油に由来する合成繊維が使用されるケースも多い。これらは生分解(微生物の働きによって無機物まで分解されること)もできないので環境問題へのアプローチとして疑問視されることもある。植物由来のビーガンレザーはその点、動物に害を及ぼさないだけでなく、プラスチックの使用量も抑えられる。これら次世代の皮革は、より人道的で、資源を大量消費せず、環境汚染に加担しない新たな素材として急成長している。

 アメリカに住む成人を対象としたマテリアル・イノベーション・イニシアチブ(Material Innovation Initiative)とノースマウンテン・コンサルティンググループ(North Mountain Consulting Group)による調査では、回答者の55%が動物性レザーより“ビーガンレザー”を好むと述べ、興味のある事柄には動物福祉(アニマルウェルフェア)やサステナビリティをあげた。動物性のレザーを好む人の80%も植物ベースの代替品を購入することに抵抗はなく、25%は前向きと答えている。

より良い植物由来のレザー開発に励む企業の取り組み

 21年2月には、100%植物由来の“プラントレザー”の開発に成功した注目のスタートアップ企業ナチュラル・ファイバー・ウェールディング(NATURAL FIBER WELDING、以下NFW)とサンフランシスコ発のスニーカーブランド「オールバーズ(ALLBIRDS)」が提携を結んだ。同ブランドはサステナブルなレザー開発のために、NFWが持つ技術「Mirumテクノロジー」に200万ドル(約2億1000万円)を投資すると発表した。「Mirum」はコルクパウダーやもみ殻、ココナッツの繊維など、植物ベースの廃棄物を活用する新素材だ。見た目や手触り感にこだわり、さまざまなアレンジが可能だという。

 ほかにもサンフランシスコのスタートアップ企業ボルトスレッズ(BOLT THREADS)は、キノコの菌から作った人工レザー「マイロ(MYLO)」を開発。牛皮では数年かかる皮の成長が、「マイロ」は2週間で完成する。生産時の温室効果ガスや、工程にかかる水とエネルギーを削減した。同社は実際の商品開発に向けて、「アディダス(ADIDAS)」やケリング(KERING)、「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」、ルルレモン(LULULEMON)とパートナーシップを結んでいる。

 スー・レビン(Sue Levin)=ボルトスレッズ チーフマーケティング・オフィサーは、「牛皮は食肉産業の副産物であり、本来なら廃棄するものを使っているという見方もあるが、ファッション業界の抱える問題の一つであることは間違いない。工業的な畜産は倫理及び環境的観点から衰退傾向にある。明らかに大きな変革の流れが起こっている」と述べた。牛皮メーカーはよりクリーンな生産環境に改善を試みているが、依然として有害ななめし工程や動物虐待の可能性、労働者の健康と安全への懸念があり、アマゾンの森林破壊に影響を与えていると指摘する。

 「ブランドが植物由来のレザーを長期的に定着させるためにできることは、毎年一定量の材料の買い付けを約束することだ」と、英国ロンドン発のアナナス・アナム(ANANAS ANAM)、メラニー・ブロワイエ・エンゲルケ(Melanie Broye-Engelkes)最高経営責任者(CEO)。買い付けを確約することで、材料メーカーはより正確に需要を把握でき、コストの削減につながる“好循環”を生むと説明する。アナナス・アナムは環境負荷が極めて低い天然由来素材“ピニャテックス(Pinatex)”の開発で脚光を浴び、以来「H&M」「ヒューゴ ボス(HUGO BOSS)」「シャネル(CHANEL)」といったブランドが同素材を採用している。

 価格設定は、材料や調達を語る上で重要だ。牛皮とは異なり、“ピニャテックス”や他のビーガンレザーは単一のシートで販売されている。従来のレザーに多い穴や断片的な部分が少ないので廃棄物が削減でき、その結果コストの削減につながるという。エンゲルケCEOは「安価な合成レザーのポリウレタンやポリ塩化ビニル(Polyvinyl Chloride、PVC)と価格で競うことは難しい。しかしこれらビニール製の素材は、環境負担を考慮していないということに注意を払うべきだ。これらの材料はエンドユーザーやブランド、もしくは気候変動に対して規制を実施できる立場にある政府などの意識の変化に伴い段階的に衰退していくだろうから、われわれの使命は価格帯で争うことではない。より少なく、より賢い消費を訴えている」と語った。

“本当”のビーガンレザーの定着に向けて

 一方でアシュリー・ホールディング(Ashley Holding)循環イノベーション・コンサルタントは、“ビーガン”素材の多くは宣伝されるほどクリーンではなく、石油化学製品の使用量も高いのではないかと考えている。例えばブランドは特定の素材の使用をプロモートしても、実際の製品にはごく一部しか使用されていないケースや、強度と耐久性のために植物由来の成分をプラスチックポリマーと結合する場合もあると言う。これらはプラスチックとしてリサイクルも、自然成分として堆肥化もできないという最悪のケースで、“フランケンシュタイン”な物質になってしまっている。

 「“本当”の植物由来のレザーを見分けるには、成分を細かく調べることが大切だ。素材の一部か全体が生分解性かどうかで環境への影響は大きく変わる。一般的に、皮をなめす際に動物のレザーほど化学物質を使った処理はしないが、植物由来のレザーでもさまざまな結合剤や添加剤を使うことがあるため、注意が必要だ」という。柔らかさで評判の高い人工レザーの「マイロ」は、それでも仕上げにある程度の石油化学製品を使用しているため、ドイツのDIN-ゲプリューフト(DIN-Gepruft)規格に基づいて60〜85%がバイオベースと認定されている。

 完全に植物ベースでありながら、製品のクオリティーを維持することは非常に難しい。レビン=ボルトスレッズ チーフマーケティング・オフィサーは、「100%がバイオベースになることが目標であるべきだと信じている。しかしこれらの素材がどれほど進化できるかは、新素材を取り入れるブランドや消費者の数による。消費者の多くは、サステナビリティのために品質に妥協しないこともわかっている。柔らかさや耐久性、しなやかさでブランドや消費者が満足するバイオベースのレザーはまだ出会ったことがない。しかし努力は続けていく」と言う。

 アナナス・アナムは、欧州連合(EU)による化学物質を管理する規則「リーチ(REACH)」に準拠した水性ポリウレタンコーティングを使用しており、“ピニャテックス“の成分の10%を占める。同社は21年、ポリウレタンの使用量を半分にするバイオベースの樹脂の使用を開始。これにより、製品の95%がバイオベースになる。エンゲルケCEOは「今後100%植物由来となる見通しはついている。近いうちに、より正しい“レシピ”で作られた製品が出るだろう」と述べた。

 素材の成分の表記や宣伝方法は時に混乱を招くケースも多いが、それでも動物性のものの代わりとして発展するビーガン素材への関心は高まり続けている。レビン=ボルトスレッズ チーフマーケティング・オフィサーは、生物学に目を向けて政府を巻き込んだ規模の施策などが必要となると言う。NFWのルーク・ハヴェラール(Luke Haverhals)創業者兼CEOも「技術的な解決策を講じるには、まず問題を定義・認識することが大事」とし、業界全体でバイオテクノロジーの分野の透明性と、誇張表現を注視すべきだと語った。

The post 「ステラ マッカートニー」「シャネル」「アディダス」も続々導入 ビーガン素材のレザーってどんなもの? appeared first on WWDJAPAN.com.

映画「ハウス・オブ・グッチ」をのぞき見! レディー・ガガが魅せるスタイルとは?

 レディー・ガガ(Lady Gaga)が出演するグッチ(GUCCI)創業者一族の争いを描いた待望の映画「House of Gucci(原題)」の撮影が、3月にイタリアでスタートした。今秋公開予定の同作は、グッチ創業者のグッチオ・グッチ(Guccio Gucci)の孫にあたるマウリツィオ・グッチ(Maurizio Gucci)が、元妻のパトリツィア・レッジアーニ(Patrizia Reggiani)が雇ったとされる殺し屋によって1995年に射殺された実話を題材としており、情熱、殺人、ファッション、並外れたキャラクターなど、映画化に相応しい要素が盛りだくさんとなっている。

 監督を務めるのはリドリー・スコット(Ridley Scott)、マウリツィオ・グッチ役はアダム・ドライバー(Adam Driver)、そしてパトリツィア・レッジアーニ役をガガが演じる。なお同作は、元「WWD」ミラノ支局長のサラ・ゲイ・フォーデン(Sara Gay Forden)の著書である「ザ・ハウス・オブ・グッチ(The House of Gucci: A Sensational Story of Murder, Madness, Glamour and Greed)」を基にしている。

 衣装選びに余念がないことがうかがえる映画「ハウス・オブ・グッチ」だが、公開を待ち望む声も多い中で、今回は衣装の着こなし等、徹底した役作りを行なっているガガのオフショットや、撮影でのファッションの数々を紹介する。

ローマのホテルに滞在中のレディー・ガガ

 ローマのホテルを出て撮影現場に向かうガガは、「セリーヌ(CELINE)」のシルクラメのレオパード柄ロングドレスに、黒のパンプスとブルーのハンドバッグを合わせたファッショナブルなイタリアの女性相続人風の装いで姿を見せた。ダークカラーに染め直した髪をルーズにまとめたエレガントなヘアスタイルや、オーバーサイズのサングラスを取り入れたことで、これ以上ないほど魅力的なスタイルに仕上がっている。

 次に見せたのは、「マックスマーラ(MAX MARA)」2021年春夏コレクションで発表されたケープのような袖が印象的なキャメルのベルト付きロングコートに、「セリーヌ」のトートバッグを合わせたコーディネートだ。白い手袋をプラスしたことで、レトロな雰囲気も漂っている。

 またある日には、「マックスマーラ」21年プレフォール・コレクションからオールホワイトのブレザーとパンツをチョイスして、黒いプラットフォームシューズと白のバッグを合わせた。ヘアスタイルも、当時に合わせてグラマラスなキャリアウーマン風に仕上げている。

印象的なファッションの数々を披露するレディー・ガガ

 ガガは、「オスカー(Oscar)」ノミネート作品の出演映画「アリー/スター誕生(A Star Is Born)」での数カ月に及ぶプレスツアーでも、一貫してテーマに沿ったレッドカーペット・ファッションを披露してきた。19年1月の「ゴールデン・グローブ賞(Golden Globes)」の授賞式では、「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のライラック色のドレスを着用し、ヘアスタイルも同作の1954年版の映画「スタア誕生(A Star is Born)」に出演したジュディ・ガーランド(Judy Garland)と同じ髪色に染めて、作品にオマージュを捧げた。

 続く19年2月の「アカデミー賞(ACADEMY AWARDS)」の授賞式では、映画「ティファニーで朝食を(Breakfast at Tiffany’s)」の宣伝ポスターでオードリー・ヘップバーン(Audrey Hepburn)が身に付けていた「ティファニー(TIFFANY & CO.)」のイエローダイヤモンドのネックレスを着用した。

 また21年3月9日には、「ハウス・オブ・グッチ」のファーストルックとして、1980年代のスキー後の社交ファッションに身を包んで、ドライバーと共にイタリアのスキーリゾート、グレッソネイ・サイント・ジェアンで撮影した写真を自身のインスタグラム(INSTAGRAM)に投稿した。写真では、黒のタートルネックとパンツに目立つベルトを合わせて、ふんだんにあしらったパールとゴールドのジュエリーと、白いファーの帽子でコーディネートを完成させている。演技をする上で常にファッションを重視しているガガだが、「グッチ」側は「ハウス・オブ・グッチ」の制作にあまり好意的ではないと噂されていることもあり、「グッチ」を着用したガガを見られるのはまだ先になるかもしれない。

レディー・ガガの映画「ハウス・オブ・グッチ」でのファッション

 「ハウス・オブ・グッチ」の撮影では、オールブラックの衣装に大ぶりのパール、ピンヒール、ドラマチックな帽子を合わせて80年代のスタイルを完璧に再現している。

 また、当時のイタリアにおける貴族階級の典型とも言える毛皮のコートのスタイルでは、赤いラップドレスにゴールドのジュエリーを合わせてグラマラスな悪女を演じた。

グッチ役のアダム・ドライバーのファッションも見逃せない

 マウリツィオ・グッチ役のアダム・ドライバーは、「グッチ」のアイコニックなメガネにクラシックなトレンチコートとフェアアイル柄のセーターを合わせた80年代のイタリア上流階級の定番スタイルを披露した。サイドパートの流れるようなヘアスタイルも印象的だ。

 ダブルのストライプスーツに同系色のネクタイ、チャンキーなネクタイピン、そしてアイコニックな革製のローファーを合わせたスタイルは、まさにイタリアファッション界のトップそのものだ。

The post 映画「ハウス・オブ・グッチ」をのぞき見! レディー・ガガが魅せるスタイルとは? appeared first on WWDJAPAN.com.

若い世代や女性に釣りが人気増加 アウトドアブランドもこぞって強化

 スポーツ釣りとして知られる趣味目的の釣りは、新型コロナのパンデミックとなって以来、安全かつ手軽に自然と触れ合う手段としてアメリカで人気を集めている。

 米メーン州を拠点にするアウトドアブランド「エル・エル・ビーン(L.L.BEAN)」は、2019年に比べて釣りアイテムの売り上げが4%増加し、中でもルアー釣り用のウエアは120%増加したと報告した。ほかにも穴釣りが20%増で、2020年5〜9月のフライフィッシングシーズンには同カテゴリーは60%増加したという。

 チャーリー・ブルーダー(Charlie Bruder)「エル・エル・ビーン」マーチャンダイジング・バイスプレジデントは、「2020年の間にアメリカでは、レクリエイション釣りが記録的な盛り上がりを見せている。すでに釣りにハマっていた人はより多くの時間を釣りに費やし、気分転換のために釣りを始めたビギナーも増加した。アウトドア産業協会によるデータでは、20年の淡水釣りプレーヤーは340万人にのぼる。息抜きにもなるし、他のアウトドアスポーツに比べて、スキルやコストのハードルが低いようだ」と述べた。

 これらの新しい参加者の多くは、若い世代や女性が占めている。レクリエーショナル ボート アンド フィッシング ファンデーション(Recreational Boating and Fishing Foundation)による最近の調査では、女性の釣りプレーヤーが過去最高の1800万人に達したと報告した。釣り用のアパレルウエアを展開するグルンデン(GRUNDENS)のアッシュ・ウィリアムス(Ash WIlliams)=マーケティング・バイスプレジデントも、釣りプレイヤーのジェンダーギャップは年々縮まっていると分析。21年現在プレイヤーの46%は女性で、「女性の中でも、13〜17歳の層が6%で最も増加した。ブランドはこの変化に目をつけ、女性をターゲットにした商品の開発に乗り出している」と言う。

 ファッションに関しては、他のスポーツウエア同様に高い機能性が求められる。同氏は「スポーツ釣り向けのアパレル製品の販売も好調だ。“シーニット ボート シューズ”の発売で、フットウエア市場への参入も成功した。消費者は防水性や通気性、軽量性を備え、釣り体験が向上する製品を求めている。動きを制限し、かさばる、通気性のないウエアの時代は終わった」と語った。

 続けて、釣りを楽しむ人の90%は幼少期に家族と釣りをした経験を持っていることから、「釣り業界を盛り上げるには、若い層にもっと魅力を伝えていかなければいけない。若い世代の参加者の増加はわれわれにとってもプラスなだけでなく、長期的に見て業界が存続するために良い影響をもたらすだろう。釣りの経済的利益は莫大で、年間売上高は500億ドル(約5兆4000億円)を超える。パンデミックにより他者と十分な距離を保つ必要があるので、釣り免許を取得する人も増加。免許に関連する収益の一部は水質と漁業の保全プログラムに向けられるため、環境問題にも良い効果をもたらしている」とコメント。

 一方釣りへの関心の高まりに合わせて、アウトドアブランド側もパンデミック中における消費者との新しいつながり方を模索した。釣り専門のアパレルと道具を扱う「オービス(ORVIS)」は、かねてより運営していたブログやポッドキャスト、釣り教室などをオンライン向けに強化。

 サイモン・パーキンス(Simon Perkins)「オービス」プレジデントは、「お客様と新たなつながりを生むために、バーチャル機能を生かした手段を開拓しなければいかなかった。対面で行う教室などに影響が出ることは早期からわかっていたため、バーチャルのキャスティングレッスンツールを作成し、そのほかのクラスもデジタルに切り替えた。毎週フェイスブック(FACEBOOK)とインスタグラム(INSTAGRAM)でライブイベントも開催し、釣り人同士の交流を深めた」と言う。

 同ブランドが展開する“50 50 オン ザ ウォーター”プログラムでは、女性による女性のためのウエアの開発やレクチャーを提供し、コミュニティー育成に乗り出した。同氏は「スポーツ釣りのみに情熱を注ぎすぎると、広い視野でその分野を見られなくなることがある。常に好奇心を持って新しい機会を探し、多様な声に耳を傾ける必要がある」と語った。

The post 若い世代や女性に釣りが人気増加 アウトドアブランドもこぞって強化 appeared first on WWDJAPAN.com.

NYのフラワーショップ4店が語るコロナ下での取り組み 「花は希望の象徴」

 コロナ禍に関連した休業要請や外出規制などの措置はあらゆる業種に影響を与えているが、企業イベントや結婚式などが中止または延期されている現在、そうした会場の飾り付けをするフラワーショップも苦難に直面している。一方、ロックダウンによって自宅にいる時間が長引くにつれ、花や植物など自然との触れ合いを渇望する人が増えており、観葉植物の売れ行きは好調だという。ファッションブランドとの取引も多いニューヨークのフラワーショップ4店の現状や今後の展望を、米「WWD」が聞いた。

 2002年に創業したルイス・ミラー・デザイン(LEWIS MILLER DESIGN)は、「シャネル(CHANEL)」「ブルガリ(BVLGARI)」「ティファニー(TIFFANY & CO)」など多くのラグジュアリーブランドに加えて、バーグドルフ・グッドマン(BERGDORF GOODMAN)などの老舗百貨店や美術館、ホテル、そしてアマゾン(AMAZON)やネットフリックス(NETFLIX)といった大企業とも取引のある人気のフラワーショップだ。

 同店のルイス・ミラー創業者は、「コロナ禍で自宅に居ざるを得ない中、人々は草花の美しさとそれがもたらす喜びをより有り難く思うようになった。以前よりも自然との触れ合いを求めるようになったし、花は季節や時の移ろいを示してくれる。咲いた花はいずれ枯れるが、室内にそうした目に見える“変化”があることで気分も変わる。花が持つ美はリアルでオーセンティック(本物)だからこそ癒やされるのだと思う」と語った。

 ニューヨーク州では20年3月中旬から断続的にロックダウンが実施されたため、企業のイベントやパーティー、結婚式などが次々と中止または延期された。これに伴い、ぎっしりと詰まっていた予定が瞬く間に白紙になっていったという。事業を継続するために政府による補助金を受けたものの、それだけでは費用をまかなえず、10人いた従業員は現在5人となっている。同氏は、「ショックでしばらく呆然としていたが、やがてこうしてはいられないと奮い立ち、“フラワー・フラッシュ・ボックス”を考案した」と話した。

 これはフラワーアレンジメントと、それを飾るシックな花器やキャンドルなどを同梱して送るサービスで、価格は250~525ドル(約2万7000〜5万6000円)。アメリカン・エキスプレス(AMERICAN EXPRESS)と提携し、同社のクレジットカードで支払うと金額の10%が医療施設に寄付されるキャンペーンが行われたボックスもあり、自宅用や贈答品として人気を博した。

 ルイス・ミラー・デザインは、「花を通じてニューヨークにポジティブな影響を与えたい」として、街角や公共のスペースに花を飾る“フラワー・フラッシュ”プロジェクトを16年から行っているが、コロナ禍でその重要性がさらに増したという。バス停や街灯、噴水などを色鮮やかな花で彩るこのプロジェクトは概ね好評を得ているが、時にはトラブルもある。医療従事者や入院患者を元気付けようと病院の前に作品を設置した際には、警備員にそれを移動させるよう言われたそうだ。しかしそこで諦めるのではなく、病院内で配布できるように作品を分解し、花を一輪挿しに小分けにして届けたら喜ばれたという。ほかにも、やはりアメリカン・エキスプレスと組んで行った“フラワー・フラッシュ”チャリティーでは、医療従事者向けの寄付としておよそ5万ドル(約540万円)を集めることに成功している。

 これらに加えて、同店ではオンラインでフラワーアレンジメント教室を開催したり、「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」やラグジュアリーECサイトを運営するモーダ・オペランディ(MODA OPERANDI​)と協業したりしているが、需要が本格的に回復するのは秋頃になると見込んでいるという。同氏は、「秋以降の結婚式やパーティー、企業イベントの問い合わせがすでにたくさん来ている。今後の展望は明るいと思うし、フル回転で頑張りたい」と述べた。

 単色でまとめたモダンなアレンジメントで知られ、30年以上の歴史を持つフラワーショップ、マイケル・ジョージ(MICHAEL GEORGE)は、配送エリアを拡大することでギフト需要を維持した。従来は店舗があるマンハッタン内としていたが、これをニューヨーク州ロングアイランドにある高級住宅地のハンプトンズやウェストチェスター郡、ブルックリンなどに広げた。これによって、例えばそうしたエリアで在宅勤務をしているエディターに、デザイナーが取材の礼状と共に花束を贈るといったニーズに応えられた。

 同店の創業者であるマイケル・ジョージ氏は14年1月に亡くなっているが、現在は妻のリサ・ジョージ(Lisa George)とビジネスパートナーが取り仕切っている。家族経営の小さな店として営業してきたことが幸いして、コロナ禍の中でも政府による事業支援は受けずに済んだという。同氏は、「20年は誰もが人生を見つめ直し、優先すべきものは何かを考えたと思う。そのためか、母の日の注文数はいつもより多かった。愛情や気持ちを伝えたいと思う人が増えたのだろう。その一方で、社会の先行きが不透明なことから値段を気にする顧客が増加した。最近は結婚式やイベント用の注文も増えてきたが、やはり費用について慎重になっていると感じる」と話した。

 コロナ禍以前、同店ではファッション・ウイークになるとさまざまなブランドや業界関係者から大量の注文を受けていた。デザイナーのマイケル・コース(Michael Kors)は、コレクションに参加するために海外から来るエディターらに贈る豪華なフラワーアレンジメントを多数注文していたという。そうした大口の取引はまだ戻っていないが、現在でも一部の顧客が450~600ドル(約4万8000〜6万4000円)と比較的高価なギフト用の花を購入してくれるので店が維持できていると同氏は説明した。

結婚式は予算そのままで「少人数でも豪華に」

 1997年に創業したフルリサ(FLEURISA)は、主に企業イベントや結婚式、富裕層の自宅などに飾るフラワーアレンジメントを手掛けている。2017年にピエール・ベルジェ=イヴ・サンローラン財団(THE FONDATION PIERRE BERGE-YVES SAINT LAURENT)がモロッコ・マラケシュにオープンしたイヴ・サンローラン美術館にも、同店によるアレンジメントが飾られたという。

 店舗を持たないため、オーナーのイザベル・ボスケ・モラ(Isabelle Bosquet-Morra)は20年7月にマンハッタンを離れ、ニューヨーク州の北部に引っ越した。同氏は、「みんなパーティーがしたくてうずうずしていると思うので、今後また需要が回復したら都心に戻ろうと考えている。花は気分を明るくしてくれるし、贈られるととても嬉しい気持ちになるものだ。インスタグラム(Instagram)を見れば分かるように、花は写真を撮るのも楽しい」と話した。

 コロナ以前とは異なることの一つに、感染予防策の徹底が挙げられる。花を飾る場所を実際に目にすることなくアレンジメントを作らなくてはならないケースが増えた。最近の注文では、顧客の邸宅にあるインテリアや食器類が分かる写真を何枚か送ってもらい、それを元に制作。完成したアレンジメントはマンションのドアマンに渡すという契約だったため、顧客とは一度も対面しなかったという。

 26年前にマリリン・ウェイガ(Marilyn Waga)が創業し、現在は娘のメレディス・ウェイガ・ペレズ(Meredith Waga Perez)と共同で運営されているベルフルール(BELLE FLEUR)は、法人顧客の60〜70%がファッションおよびビューティ企業のため、コロナ禍でイベントやコレクションの中止が相次いだ20年3月半ば以降からは注文が激減。14人いた従業員を6人にまで減らさざるを得なくなった。

 しかし6月頃になると、ファッションブランドが取引先に贈るフラワーアレンジメントの注文や、企業のチーム作りやコミュニケーションを目的としたオンラインでのフラワーワークショップの依頼が舞い込むようになった。メレディスは、「知り合いや自分を元気付けたいなどの理由で花を注文する個人客も多く、花束の需要は安定している。当店をサポートするために花を買ってくれる長年の得意客もいるので、事業を維持することができた」と話した。

 また、最近は延期されていた結婚式の需要も戻りつつある。21年秋以降の挙式予定で、招待客の人数は当初より少なくても、予算はそのままで豪華に行いたいというケースが多いという。

 同氏は、「花は希望の象徴であり、花を贈るのは相手とつながりたいという気持ちの表れだ。フワラーアレンジメントをデザインする際には、贈り主であるブランドのイメージだけでなく、彼らが伝えようとしているメッセージがうまく伝わるように気を配っている。現在は対面で会いにくいので、誰もが新たなコミュニケーション方法を模索しているが、花は気持ちを伝えるのにとても適していると思う」と語った。

The post NYのフラワーショップ4店が語るコロナ下での取り組み 「花は希望の象徴」 appeared first on WWDJAPAN.com.

BLACKPINKのROSEやヘイリー・ビーバーらが「サンローラン」のバーチャルフロントローに参加

 「サンローラン(SAINT LAURENT)」2021-22年秋冬コレクションが28日、バーチャルで開催された。ショー動画公開後には数々の著名人がインスタグラムにコレクションルックを着用した画像を投稿し、“バーチャルフロントロー”に顔をそろえた。BLACKPINKのROSE(ロゼ)やゾーイ・クラヴィッツ(Zoe Kravitz)、ヘイリー・ビーバー(Hailey Bieber)、インディア・ムーア(Indya Moore)、アビー・リー・カーショウ(Abbey Lee Kershaw)らが参加した。

 同ブランドのデニムキャンペーンにも起用されているロゼは、21年春夏コレクション発表の際にはSNSで「一緒にみよう」と投稿し、ショー動画の視聴数を大幅に増加させた影響力を持つ。今回はニットカーディガンにメタリックゴールドのスカートを合わせ、ベッドに横たわる姿を自身のインスタグラムに投稿した。ヘイリーはよりレトロなルックを選択。パープルのメタリックミニスカートと、ファージャケットに重量感のあるジュエリーを合わせた。

 アンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)=クリエイティブ・ディレクターは、最新コレクションをビーチや滝など、自然を背景にした動画で公開。カナダの歌手、ピーチズ(Peaches)から着想を得たファーアイテムやメタリック素材のスカート、コスチューム・ジュエリーを手掛けた。同氏が「“オシャレ”と“ダサイ”の境界線に挑戦した」と語る同コレクションを、それぞれが着こなす様子をお届けする。

The post BLACKPINKのROSEやヘイリー・ビーバーらが「サンローラン」のバーチャルフロントローに参加 appeared first on WWDJAPAN.com.

カニエ・ウェストの“ナイキ エア イージー 1”がオークションに スニーカーの最高落札額を更新

 オークションハウス「サザビーズ(SOTHEBY'S)」で、カニエ・ウェスト(Kanye West)と「ナイキ(NIKE)」によるスニーカー“ナイキ エア イージー 1(NIKE AIR YEEZY 1)”が180万ドル(約1億9000万円)で落札された。スニーカー投資を専門とするレアーズ(RARES)が27日、コレクターのリャン・チェン(Ryan Cheng)から購入。2020年5月に56万ドル(約6000万円)で取り引きされたマイケル・ジョーダン(Michael Jordan)着用の“ジョーダン 1(JORDAN 1)”を大きく上回り、スニーカーとして同オークションハウスの過去最高価格を記録した。

 今回落札されたスニーカーは、カニエと自身のブランド「イージー(YEEZY)」のスティーブン・スミス(Steven Smith)=フットウエアデザイナーがともに開発。2008年のグラミー賞で、シリーズ初披露とともにカニエが着用したプロトタイプだ。その後両者は“ナイキ エア イージー 2”も手掛けている。

 ジェローム・サップ(Gerome Sapp)=レアーズ 共同設立者兼最高経営責任者は、「今回のようなアイコニックでレアなスニーカーの取引を増やし、スニーカー業界の活性化と経済的支援につなげたい。『サザビーズ』と協力して、スニーカー文化の発展および維持に貢献できるようなレアな掘り出し物を引き続き探していきたい」と語った。

The post カニエ・ウェストの“ナイキ エア イージー 1”がオークションに スニーカーの最高落札額を更新 appeared first on WWDJAPAN.com.

ZOZO創業者の前澤氏特注の「ロールス・ロイス」と「エルメス」コラボ車が完成

 「ロールス・ロイス(ROLLS-ROYCE)」と「エルメス(HERMES)」のコラボにより、ZOZO創業者の前澤友作氏のためのオーダーメイド車“ファントム(PHANTOM)”が完成した。

 安土桃山時代の織部焼をモチーフに、ボディーは緑とベージュが基調。内装は“エネアグリーン”と呼ばれる「エルメス」のレザーを使用し、プライベートジェット風に装飾した。今回は特別にドアのアームレストに「エルメス」の代表的なキャンバス素材“トワルアッシュ(TOILE H)を使用し、乗馬を着想にした刺しゅうを施した。他にもウォールナットを使ったパネルには、同ブランドのシルクスカーフのデザインを手掛けるフランスのイラストレーター、ピエール・ペロン(Pierre Peron)による手描きのアートワークを施した。

 制作はパリの「エルメス」と「ロールス・ロイス」の英国本社から特注のスペシャリストチームが行なった。両者は2008年に、パリのフォー シーズンズ ホテル ジョルジュ V (Four Seasons Hotel George V)のために“ファントム”を作成。以来2度目のコラボレーションとなるが、プライベートの案件のために協業するのは初めてだ。

 トルステン・ミュラー・オトボス(Torsten Muller-Otvos)=ロールス・ロイス・モーター・カーズ 最高経営責任者は、「最高峰の製品を手掛けることができた。3世紀に渡るわれわれの経験やヘリテージ、2つのブランドの特色を見事に表現している。ロールス・ロイス・モーター・カーズの歴史に残るコラボレーションが完成した。挑戦的なクリエイティブと高度な技術を要するコラボレーションに参加し、前澤氏の意外性あふれるビジョンを実現できて非常に光栄だ」と語った。

The post ZOZO創業者の前澤氏特注の「ロールス・ロイス」と「エルメス」コラボ車が完成 appeared first on WWDJAPAN.com.

“地球に優しい”って本当? ビューティ誌「アルーア」がサステナビリティについて幾つかの表現を廃止

 「ヴォーグ(VOGUE)」などを発行する米コンデナスト(CONDENAST)によるビューティ雑誌「アルーア(ALLURE)」は、4月22日の「アースデー(EARTH DAY)」に際して、パッケージのサステナビリティをめぐる用語の使用について再考した。

 多くのプラスチックの容器がリサイクル可能ではあるものの、実際9%ほどしかリサイクルされていないという報告をもとに、“リサイクルが可能なプラスチック”という言葉の使用をやめる。ほかにも“地球に優しい”“環境に優しい”“エコフレンドリー”“生分解性”といった表現も雑誌内での使用を禁止にする。生分解性は微生物の働きによって製品や素材が無機物まで分解されることを指すが、この働きに時間の制限を明記していないことやほとんどのゴミ処理に使われる埋立地には分解に要する十分な酸素が足りていないと指摘する。

 “堆肥化が可能”という表現は、一般的なコンポスターで約90日間のうちに分解できるものとその過程で土壌の有毒性がゼロになる製品のみに適用する。環境に優しいことにしばしば用いられる“グリーン”という表現も、文字通り製品の色味を表す時のみに使用する。まずはパッケージにまつわる言葉から再考し、段階的に成分に関する用語も見直していくという。

 ジェニー・バイリー(Jenni Bailly)「アルーア」エグゼクティブ・ビューティ・ディレクターは、「過去数年間にわれわれがみたサステナビリティについての調査の中で、多くの言葉や表現がそれほどの意味を持たず使われていると感じた。耳触りの良い“バスワード(流行語)”が多用されている。現実とは違って、よりドラマチックな印象を与えているのではないか。こうした言葉の使用について立場を明確にしなければいけない。より多くの消費者が理解を深め、用語について考え始めることを願っている。購買活動は今や投票と同じ働きを持つ」と語った。

 2017年には同媒体は、「加齢はいたって自然なことにもかかわらず、良くない・抗うべきものだとする考えを助長している」という理由をもとに、“アンチエイジング”という用語の使用を廃止した。「当時の編集長とともに、加齢についての考えを変えるには、まず年をとるということについて話すときの言葉を変えるべきだと話し合った。今、サステナビリティも、考え方の視点を変えるべき地点にある。まずは言葉や表現を考え直したい」と述べた。

 「アルーア」はストア・グループ(STOUR GROUP)とライセンス契約し、21年秋、実店舗をオープンする。ニューヨーク市マンハッタンのラファイエット・ストリートに約260平方メートルを有する2階建の店舗を構え、300ほどのビューティやヘアケア、スキンケア製品をそろえる予定だ。

The post “地球に優しい”って本当? ビューティ誌「アルーア」がサステナビリティについて幾つかの表現を廃止 appeared first on WWDJAPAN.com.

アルベール・エルバスを哀悼する業界人の声 ラルフ・ローレンやアルマーニも

 4月24日、デザイナーのアルベール・エルバス(Alber Elbaz)氏が死去した。59歳だった。同氏のベンチャー事業、AZファクトリー(AZ FACTORY)のパートナーであるコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)によれば、死因は新型コロナウイルスによるものだという。

 エルバス氏はモロッコ生まれのイスラエル育ち。1980年代半ばにニューヨークに移住し、ブライダル会社を経て、ジェフリー・ビーン(GEOFFREY BEENE)に入社。シニアアシスタントとして7年間勤務した。96年に「ギ ラロッシュ(GUY LAROCHE)」に入り、その才能が注目を集め、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)の後継者として「リヴ・ゴーシュ(RIVE GAUCHE)」を引き継いだ。2001年から「ランバン(LANVIN)」のアーティスティック・ディレクターを14年間務め、復活に導いたことで知られる同氏は、新ブランド「AZファクトリー」のデビューコレクションを21年1月に発表したばかりだった。

 明るくユーモアのある人柄だったエルバス氏は友人も多く、その突然の死にファッション業界は悲しみに包まれている。同氏を悼む企業トップやデザイナーらの声を紹介する。

ヨハン・ルパート(Johann Rupert)=リシュモン会長
「アルベールの突然の死に、大きな衝撃と悲しみを感じている。その知性、繊細さ、温かく寛容な心、美的感覚、そして尽きることのないクリエイティビティーに常に感銘を受け、圧倒されていた。彼が夢を実現するべく取り組んだ最後のブランドで協業できたことを心から光栄に思う。当社とAZファクトリーを代表し、アルベールのご家族やご友人の皆様にお悔やみを申し上げる。私個人としても、同僚であり最愛の友人を失ってしまった」

ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)会長兼最高経営責任者(CEO)
「エルバス氏の突然の死によって、ファッション業界は輝かしく感性豊かなデザイナーを失ってしまった。その新鮮かつエレガントなクリエイティビティーは、ファッションの世界に永続的な影響を与えた。彼はフランスの最も古くてアイコニックなブランドの一つ(である『ランバン』)に、新たな息吹をもたらしてよみがえらせた」

フランソワ・アンリ・ピノー(Francois Henri Pinault)=ケリング(KERING)会長兼CEO
「親愛なる友人、アルベールの訃報に際し、深い悲しみを覚えている。人間味豊かでユーモアに満ちていた彼は、誰からも愛されていた。クリエイティビティーの面においても、フェミニンかつモダンなスタイルは天才的だと多くの人々から敬愛されていた」

ジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)
「エルバス氏が亡くなったと聞き、大きな悲しみを覚えている。彼はファッション業界に残る、数少ないプロフェッショナルの一人だった。クリエイティビティーにあふれ、女性を美しく見せる優れた腕を持っていた。以前どこかの空港で偶然会った際には足を止めて私の作品を褒めてくれたが、それが本心からの言葉だと伝わってきた」

マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)「ディオール(DIOR)」アーティスティック・ディレクター
「アルベールのファッションへの大きな功績の一つとして、グラマラスさを文化的かつフェミニンで、楽しく人間味のあるものとして再解釈したことが挙げられる。彼は、常にそれを着る人を念頭にデザインをした。また彼が『ランバン』を現代的によみがえらせたことは、私を含め、伝統あるメゾンでクリエティブ・ディレクターを務める全てのデザイナーの素晴らしい手本となっている。以前アルベールと食事をした時のことだが、彼は同席した私の母と意気投合し、3人で楽しいひとときを過ごした。翌日、アルベールから母に美しい花束が届き、母はそのお礼に手作りのジャムを贈った。私はアルベールのことを、そうした親しい友人、家族の一員として覚えておきたい」

ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)
「アルベールはとても優しく、寛容で謙虚な人だった。イベントや街で会うと、いつもそれは温かな挨拶をしてくれて、古い友人同士のように楽しく談笑した。彼はデザイナーとしても素晴らしく、女性が自分を美しいと感じられる、着心地のいい服をデザインした。近年、アルベールはファッションが大げさでうるさいものになってしまったのではと懸念し、“囁き”のようなデザインを好むと言っていた。彼の美しい“囁き”は、今後も長く愛されることだろう」

ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)「ヴァレンティノ(VALENTINO)」クリエイティブ・ディレクター
「ファッション界は最も大きな宝の一つを失い、私は誠実で特別な真の友人を失った。私がクリエィティブ・ディレクターとして歩み始めた頃、彼は誰よりも私を歓迎してくれた。彼の手による美しいデザインは、その活発で個性的な、生きる喜びに満ちた魂が込められている。アルベールがいなくなってとても寂しいが、その比類のない美しさを持つ作品を観賞することで、少しは慰められると思う。彼のビジョンや作品は、これからも私たちをインスパイアしてくれるだろう」

ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)
「アルベールの突然の訃報がとても悲しく、大きなショックを受けている。彼は天才的で、あらゆる意味で優れたクリエイターだったが、誰よりも優しくて、寛容で、遊び心に満ちた人だった。ファッション界で最も素晴らしい才能を持つデザイナーの一人だった彼の作品は永遠に残り続けるし、彼自身も人々の心の中で永遠に生き続けるだろう。本当に寂しいし、とてつもなく悲しいニュース」

リック・オウエンス(Rick Owens)
「本当に悲しい。アルベールの温かな人柄や比類のない才能が失われたことは、ファッション界に大きな穴を残すだろう。彼は近所に住んでいたので、我が家のテラスで私の母の手作りクッキーを食べながらよく談笑したものだ。彼と母が会う機会がなかったことが残念だ」

トミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)
「アルベールとは1990年代からいい友人で、彼のユーモアに満ちた人柄と地に足のついた態度が大好きだった。『ランバン』をよみがえらせた手腕が素晴らしいことは言うまでもないが、その際に消費者の声に耳を傾け、いかに実現していったのかを説明する様子に感銘を受けた。彼がトレードマークの蝶ネクタイ姿で、それは熱心に語っていたことを鮮やかに覚えている。彼がいなくなってしまい、多くの友人やファンたちが寂しく思うことだろう。今日は本当に悲しい日だ」

ジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)
「アルベールは才能にあふれていて、女性を美しく見せるにはどうすればいいのかを深く理解していた。いなくなる前に、彼は新たな世界に適合した夢のようなコレクションを見せてくれた。ありがとう、アルベール!」

クリスチャン・ルブタン(Christian Louboutin)
「アルベールは、自由で美しい魂の持ち主だった。既存の枠にとらわれない発想や行動をするだけでなく、全力で仕事に取り組んでいた。彼は卓越したクリエイティビティーとリアルな視点のあるファッションを敬愛していた。そうした意味で、彼は私やさまざまなデザイナーの手本であり続ける。アルベール、君は唯一無二の素晴らしいクチュリエとして、そして本当にいい人として、みんなの記憶に残るだろう」

ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)
「アルベールは輝ける光のような存在で、素晴らしい仲間であり、あふれんばかりの才能の持ち主だった。そのレガシーはファッションの歴史に刻まれるだろう。ご家族、ご友人の皆様に心からのお悔やみを申し上げる」

トム・フォード(Tom Ford)
「アルベールの訃報に、大きなショックと深い悲しみを覚えている。彼は人間的に素晴らしい人だった上に、才能あふれる偉大なデザイナーだった。本物の紳士だった。優しくて、面白くて、知的で、偽りのない温かさがある彼と会うのはいつでも嬉しい出来事だったし、誰もがそう感じていたと思う。彼がいなくなってしまい、本当に寂しい」

ダイアン・フォン・ファステンバーグ(Diane von Furstenberg)
「アルベールとは、彼がジェフリー・ビーンのアシスタントをしている頃に出会った。当時、私が結婚式に出席するためにロンドンに行く際、ペールグリーン色でギンガム柄のシルクのコートと、ホルタードレスを作ってくれた。それは予想外の組み合わせでいて、とても美しかった。その後、もっと親しくなってから、実は私のところに仕事の面接を受けに来たことがあると教えてくれたが、私はそのことを覚えていなかった。損をしたのは私のほうね。彼は才能のあるデザイナーで、ディテールにこだわりがあり、とても美しい服を作った。いなくなって、本当に寂しく思う」

The post アルベール・エルバスを哀悼する業界人の声 ラルフ・ローレンやアルマーニも appeared first on WWDJAPAN.com.

LVMHがトッズ・グループの株式6.8%を取得 約90億円で

 LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は、トッズ・グループ(TOD'S GROUP)の株式所有率を10%に引き上げる。トッズ・グループのディエゴ・デッラ・ヴァッレ(Diego Della Valle)会長兼最高経営責任者(CEO)が22日に公表した。取引は4月28日に実行。

 LVMHはトッズ・グループに長年投資しており、現在3.2%を所有しているが、子会社のデルフィーヌS.A.S.(DELPHINE S.A.S.)を通して、デッラ・ヴァッレ会長兼CEOが運営するディエゴ・デッラ・ヴァッレ&C S.r.lから株式の6.8%に相当する225万株を取得する。契約前15日間のトッズ・グループ株式の平均から、1株あたり33.10ユーロ(約4200円)とし、計7450万ユーロ(約90億円)で売買する。これにより、デッラ・ヴァッレ会長兼CEOが同グループの株式の63.64%を、LVMHが10%をそれぞれ所有する。

 ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼CEOは、「ディエゴ・デッラ・ヴァッレとは20年以上、家族ぐるみの友情を築いてきた。人としても、仕事人としても尊敬している。さらに深く強いパートナーシップを結べてとてもうれしい」とコメント。デッラ・ヴァッレ会長兼CEOもまた「LVMHとわれわれはラグジュアリー、品質、製品について共有の価値観を持っている。これからの可能性を考える良い機会だ」と語った。

 業界のアナリストは、トッズ・グループの持つブランド「トッズ」「ホーガン(HOGAN)」「フェイ(FAY)」「ロジェ ヴィヴィエ(ROGER VIVIER)」などを含むグループの売却の可能性を探っており、その買い手にアルノー会長兼CEOとLVMHをあげている。デッラ・ヴァッレ会長兼CEOは売却の可能性を繰り返し否定している。

 トッズ・グループは4月9日、メガインフルエンサーのキアラ・フェラーニ(Chiara Ferragni)を新たな取締役会のメンバーに任命してZ世代へのアプローチを強化した。デジタル化に焦点を当て、卸売のプロセスの合理化にも取り組んでいる。フェラーニの任命で同グループの株式は12.1%上昇した。2020年12月期の売上高は、前期比30.4%減の6億3700万ユーロ(約820億円)だった。

The post LVMHがトッズ・グループの株式6.8%を取得 約90億円で appeared first on WWDJAPAN.com.

伊ランジェリーの「インティミッシミ」から初のアクティブウエア 手頃でかわいい、サステナブルなアイテム

 イタリア発ランジェリーブランド「インティミッシミ(INTIMISSIMI)」が、ブランド初のアクティブウエアライン“イン アクション(In Action)”を発売した。 “ソフト”と“ハード”の2軸で、本格的なワークアウトウエアから普段使いもできるヨガウエアまで、カラーバリエーション豊かなスポーツブラやレギンスを12アイテムそろえた。日本のECサイトでは4月現在ブラトップのみを取り扱っている。価格は4990〜5990円。素材には環境負担を考慮したリサイクルピリアミドQ-ノヴァ(Q-nova)やオーガニック スピーマ コットン、海藻から作られたシーセル(SeaCell)を組み合わせたマイクロファイバーを使用した。

 ローラ・ゲスイート(Laura Gesuito)米「インティミッシミ」「カルツェドニア(CALZEDONIA)」ブランドマネジャーは、「パンデミックを経て、女性のファッションに大きな変化があった。今は快適さに加えて、ウエルネスを優先するファッションに重点が置かれている。アクティブウエアは多くの女性にとって欠かせないものとなった。『インティミッシミ』はランジェリーのブランドなので、アクティブウエアが中心になることはないが、女性が本当に必要だと思うものを提供するのは大事なことだ。同コレクションは、素肌に優しい生地で構成されている。手頃な価格で高品質な製品の提供を心掛けている」と語った。

The post 伊ランジェリーの「インティミッシミ」から初のアクティブウエア 手頃でかわいい、サステナブルなアイテム appeared first on WWDJAPAN.com.

「AG」から100%生分解性ジーンズ 「アースデー」に合わせて発売

 米国ロサンゼルスのジーンズブランド「エージー(AG)」は「アースデー(Earth Day)」の4月22日、100%生分解が可能なジーンズをそろえた“ジーンズ オブ トゥモロー(Jean of Tomorrow)”カプセルコレクションを発売する。同ブランドの人気シリーズ“TELLIS/スリムテーパード”、“ALEXXIS/ストレートデニム”、“SID/ジャケット”の3型で登場する。価格は210〜240ドル(約2万2000〜2万5000円)。「エージー」の公式ECサイト及び店頭で取り扱う。

 デニムに使われるコットンは全て栽培に農薬と除草剤、合成肥料を使用しないオーガニック。環境に優しいとされる麻と植物由来の生分解性リヨセルとブレンドした。麻はコットンよりも大幅に多い1エーカー(約4000平方メートル)あたりの収穫量を持つと言われている。ステッチには生分解性テンセル糸を使用。一般的に金属が使われるリベット(留め具)は補強ステッチで代用した。ボタンはコロゾナッツ製。コレクション内のアイテムには金属製の部品を一切使用していない。

 生産過程では生地の調達をメキシコの工場近くの生産場から行って、輸送に関する二酸化炭素排出量の削減を実現。デニムの着色には蒸留を活用したプロセスを採用し、染色の過程で大量に消費する水や化学物質、エネルギーを削減する。仕上げに環境に優しい洗剤と再生水、オゾンテクノロジーを使ってレーザー処理することでさらに抑える。取り扱い方法やサイズのラベルは、ダイズベースのインクで印刷した。販売時に使うフラッシャーやタグも、草花の種が入ったシードペーパーを使っている。

 サミュエル・クー(Samuel Ku)「エージー」プレジデント兼クリエイティブ・ディレクターは、「大規模な製造プログラムを持つ企業は、より環境に優しい生産を取り入れて推進する責任を持つ。大きなインパクトを与えるには、大胆な投資と新技術の導入が鍵だ。サステナビリティのハードルを下げ、多くのブランドに浸透させていくべき。『エージー』は常に挑戦を続け、環境への負担を軽減しながら、これからも目標を高く保ち続けていく。“ジーンズ オブ トゥモロー”はその一歩だ」とコメント。

 「エージー」はサステナビリティへの取り組みを強化し、21年現在、1日あたり約37万リットルの水をリサイクルして年間約1億8000リットルの水のリサイクルすることを目標に掲げている。達成すれば、20年度に比べて90%の削減となる。

The post 「AG」から100%生分解性ジーンズ 「アースデー」に合わせて発売 appeared first on WWDJAPAN.com.

ネットフリックス、9月からオフィス出勤を推奨

 パンデミック以来1年以上にわたって在宅勤務を推奨してきたネットフリックス(NETFLIX)は、米国の祝日である9月6日の“労働者の日”以降は、オフィス勤務に戻るよう従業員に通達した。同社には2020年の時点で9000人超の正社員が在籍しているが、この件に関して担当者からのコメントは得られていない。

 新型コロナによって在宅勤務が定着している人も多いが、これまでオフィス勤務を中心としてきた企業では、企業規模の大小に関わらず、従業員をいつ、どのようにオフィス勤務に戻すのか、という問題に直面している。コロナ禍において、当初は一時的措置と考えられていた在宅勤務だが、米国のオフィスワーカーの間ではリモートワークがすでに新しい生活様式として定着しており、ビジネスリーダーたちはさまざまな見解を示している。

 JPモルガン・チェース(J.P. MORGAN CHASE)のジェイミー・ダイモン(Jamie Dimon)会長兼最高経営責任者(CEO)は、最近公開された株主向けの年次書簡で「アメリカのビジネスにおけるリモートワークは今後も続くだろう」と予測しており、従業員の10%は在宅勤務を継続し、そのほかの従業員もリモートワークと出社を組み合わせた“ハイブリッド・ワーク”を行うとの見通しを立てている。一方で、リモートワークのマイナス要素として、従業員同士の交流が減ったことや、対面でのクリエイティビティーを発揮できない点を挙げた。

 片やリード・ヘイスティングス(Reed Hastings)=ネットフリックス創業者兼共同CEOは、リモートワークに対して真っ向から否定的な見解を示している。20年9月の「ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)」のインタビューで従業員の在宅勤務について質問された際には「プラス要素は1つもない」とコメントし、社員がオフィス勤務に戻るタイミングについては「ワクチンが承認されてから12時間後」といったジョークも飛ばしたほどだ。

 ヘイスティングス創業者兼共同CEOは、従業員の勤務スタイルをパンデミック以前の状態に戻したいと考えているが、実施するのはワクチンの承認から半年後になると述べている。ワクチンが初めてアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)に承認されたのが12月であったことから、オフィス出勤の再開にあたって当初の予定とはズレが生じたが、現在ネットフリックスではできるだけ多くの社員がワクチンを完全接種することを目指している。

 オフィス勤務に戻す計画を進めているネットフリックスだが、在宅勤務の選択肢が残るかどうかは不明だ。ヘイスティングス創業者兼共同CEOは、「多くの企業において、週4日はオフィス勤務で、残りの1日は在宅でバーチャル的に仕事をする状態になって“しまう”だろう」と予測している。

The post ネットフリックス、9月からオフィス出勤を推奨 appeared first on WWDJAPAN.com.

「グッチ」が「バレンシアガ」を“ハッキング” アナリストらの評価は?

 「グッチ(GUCCI)」は4月15日、創業100周年を祝う最新コレクションをデジタルプラットフォーム上で発表した。オペラやクラシックなどで歌われる独唱曲を指す“アリア(Aria)”と題された同コレクションでは、13日頃から噂されていた通り、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)=クリエイティブ・ディレクターによる「バレンシアガ(BALENCIAGA)」へのトリビュート作品が登場した。

 「グッチ」によれば、今回の試みはコラボレーションやカプセルコレクションではなく、「バレンシアガ」のデザインなどをミケーレ流に再解釈して取り入れた、特別な“ハッキング・プロジェクト”だという。「グッチ」のGGパターンやアイコンモチーフ“フローラ”の上に「バレンシアガ」のロゴが重ねられていたり、「バレンシアガ」に特徴的なシルエットと「グッチ」らしさを掛け合わせたジャケットがあったりと、相手ブランドの要素を“ハック(盗み取る)”したアイテムなどが注目を集めた。なお、生産や販売について現時点では未定となっている。

 ミケーレ=クリエイティブ・ディレクターは、「コレクションの視聴者を驚かせたかった。クリエイティビティーは対話や実験、自由を必要とするので、閉ざされた空間であるアトリエを出て対話を続けようと考えた。認知度の高い2つのブランドの特徴や要素、ロゴなどを混ぜ合わせるのは、冒涜的な遊びをしているようだった」と語った。

 「バレンシアガ」のデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)​=アーティスティック・ディレクターは、「デザイナー同士がある意味では互いに影響を受けあっているということを認め、それを形にした今回のプロジェクトは、とても素晴らしいし勇気のあるコンセプトだと思う。ファッションは影響を受けることで進化していくものであり、『グッチ』はそれを優れた方法で表現した。ブランド同士が互いをどう見ているかについて、新たな視点をもたらした」と述べた。

 今回のプロジェクトは、「グッチ」と「バレンシアガ」がいずれもケリング(KERING)の傘下であることから実現したものと思われる。同社のフランソワ・アンリ・ピノー(Francois Henri Pinault)会長兼最高経営責任者(CEO)は、「ファッションやラグジュアリーにおけるクリエイティビティーは、社会の絶え間ない変化を養分にして育つものだ。さまざまな変化によって新たなニーズが生まれ、クリエイターはそれに触発されて新鮮な作品を作り出す。アレッサンドロとデムナは両者とも画期的で多様性に満ちたビジョンを持っている、因習を打破するデザイナーだ。アリア・コレクションにおけるユニークでクリエイティブな試みは、彼らの独創性を示すと同時に、当社がいかに自由なクリエイティビティーを重視しているかの証左でもある」と話した。

 現代においてファッション業界でのコラボレーションは珍しいものではないが、人気の高いラグジュアリーブランド同士によるこの斬新なプロジェクトは、驚きと好感を持って受け止められたようだ。

 知的財産分野を専門とするジェフ・グラック(Jeff Gluck)弁護士は、「今回の取引の詳細については分からないが、一般的に知的財産権はデザイナーではなくブランド側が保有している。親会社が同じであることから比較的容易に合意に達したのではないかと思われるが、とても面白い試みで、いい意味で業界のルールを破った事例だ。個人的には『ナイキ(NIKE)』と『アディダス(ADIDAS)』のコラボレーションが見てみたい」とコメントした。

 ブランディングのコンサルティング会社、ザ・スタイルゲート(THE STYLE GATE)のアレッサンドロ・マリア・フェレーリ(Alessandro Maria Ferreri)CEO兼オーナーは、「共同ブランディングよりもさりげなくて、とても知的なプロジェクトだと思う。これにより、『グッチ』はさらに魅力的なブランドになった。今回のプロジェクト作品への反応を見て、好評であれば調整の上でアイテムを販売する可能性もあるのではないか」と分析した。

 マーケティングおよびコミュニケーションの専門家であるパオロ・ランディ(Paolo Landi)は、「今回の試みは高度にコンセプチュアルで、とても美しいアイデアだと思う。希少な作品ゆえに売り上げの面で利益をもたらす可能性も高いが、それ以上に、ブランドカルチャーの観点から『グッチ』と『バレンシアガ』の双方に大きな無形財産をもたらした。競合するのではなく、これまでにない画期的かつ現代的な方法で協力しあうことで、それぞれのブランドがさらに強くなると同時にファッション業界にも活力を与えた」と述べた。

 米投資銀行バーンスタイン(BERNSTEIN)のルカ・ソルカ(Luca Solca)=​アナリストは、「素晴らしいアイデアだと思う。『グッチ』は中国市場で人気が高いが、今回の試みは中国のSNS上で大きな反響を呼んでいる。新規性や希少性があり、これまでにないデザインの作品だということで、消費者の購入意欲はさらに高まるだろう。ブラボーだ」と高く評価した。

 ブランディング会社インターブランド(INTERBRAND)のレベッカ・ロビンス(Rebecca Robins)最高人材組織開発責任者兼最高文化責任者は、「ここ数年、ファッション業界におけるコラボレーションは新たな形を取るようになってきている。『モンクレール(MONCLER)』が世界中のクリエイターと協業する『モンクレール ジーニアス(MONCLER GENIUS)』や、ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・​シモンズ(Raf Simons)が共同で手掛ける『プラダ(PRADA)』などがその例だ。『グッチ』は以前からさまざまなコラボレーションを行っているが、今回はこれまでにない目新しい方法だ」と述べた。

 同じくブランディング会社コーリー・ポーター・ベル(COLEY POETER BELL)のジェン・セーケイ(Jenn Szekely)=マネジング・パートナーは、「今回のプロジェクトは一般的な意味でのコラボレーションとは少し異なるかもしれないが、こうした協業は顧客にとって魅力的なものだ。両方のブランドのエッセンスをうまく取り入れた、1足す1が3となっているユニークな商品であれば購買意欲を強く喚起できるので、そのブランドにおける通常の価格帯よりも高価格で販売できる」と説明。また、「コラボをする際には、共同ブランディングをしたりどちらかが主導したりとさまざまな方法があるが、双方のブランドにとって最適な形を見つけられるかどうかが成功のカギとなる」と語った。

 ケリングは4月20日に2021年1〜3月期(第1四半期)決算を発表しており、売上高は前年同期比21.4%増の38億9000万ユーロ(約5018億円)だった。20年10~12月期には同8.1%減だったことを踏まえると大幅に回復している。この理由として、スターブランドである「グッチ」の売り上げが10~12月期には同13.5%減と不調だったのが、今期は中国市場で3ケタ成長だったことが寄与して同20.1%増の21億6770万ユーロ(約2796億円)とV字回復していることが挙げられる。なお、ほかの傘下ブランドである「サンローラン(SAINT LAURENT)」は同18.8%増の5億1670万ユーロ(約666億円)、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」は同19.9%増の3億2820万ユーロ(約423億円)といずれも好調だった。その他のメゾンに含まれるため「バレンシアガ」単体での売上高は開示されていないが、同ブランドも非常に好調だったという。

The post 「グッチ」が「バレンシアガ」を“ハッキング” アナリストらの評価は? appeared first on WWDJAPAN.com.

「ギャップ」「カルバン・クライン」「ラルフ ローレン」など米系ブランドの2020年業績まとめ

 米国のアパレルおよび小売業界は引き続き厳しい状況にあるが、2020年10~12月期はホリデー商戦もあり、業績は少しずつ回復している。しかし中国を中心としたアジア地域は好調だったものの、欧州は新型コロナウィルスの感染再拡大を受けて再びロックダウンに踏み切った国もあり、回復が遅れている状態だ。20年通期の決算情報を中心に、主な米系ファッション企業の状況を解説する。

 「ギャップ」「バナナ・リパブリック(BANANA REPUBLIC)」「オールドネイビー(OLD NAVY)」などを擁するギャップ(GAP)の2021年1月通期決算は、売上高が前期比15.7%減の138億ドル(約1兆5042億円)、純損益は前年の3億5100万ドル(約382億円)の黒字から6億6500万ドル(約724億円)の赤字となった。

 ブランド別の売上高では、「オールドネイビー」は同5.6%減の75億3600万ドル(約8214億円)、「ギャップ」は同26.8%減の33億8800万ドル(約3692億円)、「バナナ・リパブリック」は同42.4%減の14億6200万ドル(約1593億円)だった。

 四半期ベースで見ると、20年11月~21年1月期(第4四半期)の売上高は前年同期比5.3%減の44億2400万ドル(約4822億円)、純損益は前年同期の1億8400万ドル(約200億円)の赤字から2億3400万ドル(約255億円)の黒字に回復している。ブランド別では、米国とカナダが好調だった「オールドネイビー」が同4.8%増の23億7500万ドル(約2588億円)と増収だった。「ギャップ」は同18.6%減の10億8800万ドル(約1185億円)、「バナナ・リパブリック」は同31.6%減の5億400万ドル(約549億円)だった。

 ソニア・シンガル(Sonia Syngal)=ギャップ最高経営責任者(CEO)は、「未曾有の事態となった20年はこれまでにないほど苦戦したが、長期的な成長を目指すべく社員一丸となって尽力した。アクティブウエアやフリースなど、時流にマッチしたカテゴリーに強いことも奏功した。危機的な状況はチャンスでもある。中期計画の“パワープラン2023”を実行し、21年は利益を上げてさらに成長したい」と語った。

 「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」などを擁するPVHコープ(PVH CORP)の21年1月通期決算は、売上高が前期比27.6%減の67億9870万ドル(約7410億円)、純損益が前年の4億1730万ドル(約454億円)の黒字から11億3610万ドル(約1238億円)の赤字だった。

 ブランド別に見ると、「トミー ヒルフィガー」の売上高は同22.8%減の36億3640万ドル(約3963億円)、「カルバン・クライン」は同28.0%減の26億3830万ドル(約2875億円)だった。販売チャネルでは、自社ECの売り上げが前年と比べて69%増と非常に好調で、売上高全体の25%近くを占めるようになっている。これは前年の倍程度だという。

 四半期ベースでは、20年11月~21年1月期(第4四半期)の売上高は前年同期比19.5%減の19億9600万ドル(約2175億円)、純損失は前年同期から970万ドル(約10億円)改善して5770万ドル(約62億円)の赤字だった。ブランド別では、「トミー ヒルフィガー」は同16.0%減の10億9640万ドル(約1195億円)、「カルバン・クライン」は同16.5%減の7億8120万ドル(約851億円)だった。中国市場は好調だったものの、ホリデーシーズンに再び外出規制が行われた欧州では70%、カナダでは同75%の直営店が一時休業していた。

 同社のステファン・ラーソン(Stefan Larsson)CEOは、「第4四半期は欧州で再びロックダウンが実施されたにもかかわらず、ほぼ予想通りの業績を上げることができた。危機的な状況の中、尽力してくれた世界中の従業員に心から感謝している。今後の展望としては、引き続き主力ブランドである『カルバン・クライン』と『トミー ヒルフィガー』に注力しつつ、カジュアルウエアやECなどをさらに強化していく」と述べた。

 リーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS & CO.) の20年11月通期決算は、売上高が前期比22.7%減の44億5300万ドル(約4853億円)、純損益は前年の3億9500万ドル(約430億円)の黒字から1億2700万ドル(約138億円)の赤字となった。

 20年9~11月期(第4四半期)では、売上高が前年同期比11.6%減の13億8600万ドル(約1510億円)、純利益は同40.6%減の5700万ドル(約62億円)だった。

 同社のチップ・バーグ(Chip Bergh)CEOは、「これまでにない逆境の中、予想以上の結果を残すことができた。コスト構造やキャッシュマネジメントを見直し、機敏に対応できるようにしたことが成果につながった。今後も『リーバイス』というアイコニックなブランドの存在感をさらに高めるべく尽力し、顧客とのエンゲージメントを高め、急激に成長しているデジタルをいっそう強化することで、より強くて利益性の高い企業になれるものと確信している」とコメントした。

 ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)の20年10~12月期(第3四半期)決算は、売上高が同18.1%減の14億3280万ドル(約1561億円)、純利益は同64.1%減の1億1980万ドル(約130億円)だった。

 「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」「ヴァンズ(VANS)」「ティンバーランド(TIMBERLAND)」などを擁するVFコーポレーション(VF CORPORATION)の20年10~12月期(第3四半期)決算は、売上高が同5.8%減の29億7154万ドル(約3238億円)、純利益は同25.3%減の3億4724万ドル(約378億円)だった。

 「コーチ(COACH)」「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」「スチュアート・ワイツマン(STUART WEITZMAN)」などを擁するタペストリー(TAPESTRY)の20年10~12月期(第2四半期)決算は、売上高が同7.1%減の16億8540万ドル(約1837億円)、純利益は同4.0%増の3億1100万ドル(約338億円)だった。

 同社のジョアン・クレヴォイセラ(Joanne Crevoiserat)CEOは、「大変な逆風の中、増益という予想以上の結果を残すことができて非常に誇らしく思っている。これには消費者のニーズにフォーカスして全てのブランドで新たな顧客を獲得したことや、ECおよび中国市場での売上増が貢献した。いまだ社会情勢は不透明だが、競争力をさらに高めることで長期的かつ持続的に成長できるものと楽観視している」と述べた。

The post 「ギャップ」「カルバン・クライン」「ラルフ ローレン」など米系ブランドの2020年業績まとめ appeared first on WWDJAPAN.com.

トミー・ヒルフィガーがビジネススクールを開設 経済学とファッション業界での実習を融合

 デザイナーのトミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)は、ニューヨーク州のエルマイラ・カレッジ(Elmira College)にトミー ヒルフィガー ファッション ビジネス スクール(Tommy Hilfiger Fashion Business School)を立ち上げた。

 同教育プログラムは、弟のアンディー・ヒルフィガー(Andy Hilfiger)と妹のベスティー・ヒルフィガー(Besty Hilfiger)と共に設立。一般教養を広く教育するリベラルアーツ系大学のエルマイラ・カレッジの経営学部のバチェラーコースの1つとして、経済学とファッション業界での実習を合わせた内容を提供する。2021年秋から受講可能。ファッションマーケティングとマーチャンダイジングに特化したカリキュラムを新たに組んだ。ファッションマーチャンダイジング専攻では市場調査やビジネスデザイン、データ収集・分析など、ブランドを運営する上で市場動向を読み解くスキルを教育する。ファッションマーケティング専攻では、ブランドを立ち上げるまでのマーケティング及びコミュニケーション戦略について教える。講義には、トミーとつながりを持つ業界人も登壇者として招待する予定だという。

 エルマイラ市はヒルフィガー一家が幼少期を過ごした場所で、トミーにもゆかりのある土地だ。高校を卒業してすぐ「ピープルズ プレイス(PEOPLE’S PLACE)」の事業を開始したトミーは、エルマイラに1号店をオープンした。「故郷のエルマイラに恩返しをして、ファッションでキャリア構築を目指す学生らを応援したい。ファッション業界には絶えず才能を持った新しい人材が加わっている。基礎知識と経営に関する経験を提供することで、これから何かしたいと考えているデザイナーや企業家の形成に貢献するだろう。エルマイラ・カレッジはクラスの内外での体験学習に定評がある。学生に新しいキャリアの道を開くだけでなく、業界にとっても豊かな人材の確保につながるはずだ」とコメント。

 エルマイラ・カレッジは1855年創立。35を超える専攻プログラムやコースを持つアメリカの歴史的なカレッジの一つだ。プレジデントを務めるチャールズ・リンジィ博士は、「より包括的で幅広い教育を求める生徒の期待に応えるだけでなく、働く上で求められるニーズの変化にも対応していかなければいけない。トミー ヒルフィガー ファッション ビジネス スクールのようなプログラムやパートナーシップは、リベラルアーツと専門教育をつなぐだろう。今まで以上に複雑化していくこれからの労働環境において、生徒に成功への近道を用意できるはずだ」と語った。一般教養に加えて、ファッションに関する業界共通の高いレベルの知識を次世代に託すことを目標の1つに掲げた。

 PVHコープ(PVH CORP)傘下の「トミー ヒルフィガー」は、1985年創業。創業者のトミーは21年現在、ブランドのプリンシパル・デザイナーを務める。19年の売上高は92億ドル(約9900億円)だった。

The post トミー・ヒルフィガーがビジネススクールを開設 経済学とファッション業界での実習を融合 appeared first on WWDJAPAN.com.

「クロムハーツ」と「バカラ」による最新コラボアイテム クラシックとロックな世界観を融合

 「クロムハーツ(CHROME HEARTS)」と「バカラ(BACCARAT)」は6月1日、新作コラボアイテムを発売する。「クロムハーツ」のモチーフを加えたデキャンタとタンブラーグラスのセットを数量限定で、限られた「クロムハーツ」店舗で取り扱う。

 アイテムにはそれぞれ、「クロムハーツ」の定番“ピラミッド スタッド”と“クロムハーツ プラス”を交互に並べた“ピラミッド プラス”モチーフを施した。両ブランドの世界観を融合させ、クラシックなボディーにロックなデザインを組み合わせている。

 「クロムハーツ」と「バカラ」は、10年以上にわたってコラボシリーズを手掛けている。これまでも「クロムハーツ」の代表的なモチーフに焦点を当て、灰皿やグラスなどを販売した。

The post 「クロムハーツ」と「バカラ」による最新コラボアイテム クラシックとロックな世界観を融合 appeared first on WWDJAPAN.com.

「H&M」がエチオピア発の「レムレム」とコラボ アフリカの職人技に光を当てる

 「H&M」は恒例となっているデザイナーコレボレーション企画で、エチオピア出身のスーパーモデル、リヤ・ケベデ(Liya Kebede)とタッグを組む。4月22日に、同氏が手掛けるアフリカの職人技を生かしたブランド「レムレム(LEMLEM)」とのコラボアイテムを発売。一部の店舗とECで30アイテムを取り扱う。

 ケデベはモデル・俳優として活躍する傍ら、妊婦や子どもの健康のために活動する慈善家だ。2005年にリヤ ケベデ ファウンデーション(LIYA KEBEDE FOUNDATION)を設立し、06年にエチオピアの公用語アムハラ語で開花と繁栄を意味する“レムレム”から、レムレム ファウンデーション(LEMLEM FOUNDATION)に改名。同財団を通じて女性の職人に向けて、平等な雇用機会や医療へのアクセス、安定した生産環境などの提供に取り組む。社会的企業ともパートナーシップを結んで、エチオピアおよびケニアを拠点とする職人のスキルアップを支援。アフリカだけでなく、世界のファッション業界で活躍できるようトレーニングを提供している。07年には、故郷エチオピアを訪れた際に衰退していく伝統工芸品市場を目の当たりにしたことをきっかけに、アパレルブランド「レムレム」を立ち上げた。ブランドを通してアフリカの伝統的な織物や職人技にフォーカスを当て、現地での生産拡大と雇用の創出に力を注いでいる。

 コラボレーションではカフタンドレスや半袖ワンピース、スイムウエアなど、夏に向けたアパレルの数々をそろえる。それぞれに“Lemlem x H&M”タグを付与し、オーガニックリネンやリサイクルポリエステル、テンセルリヨセルといったサステナビリティを考慮した素材を使用。「レムレム」を象徴する鮮やかなブルーやネオンカラーに加えて、淡いピンクやグリーンを取り入れてタイムレスな雰囲気を創出した。ゆったりとした爽やかなアパレルアイテムのほかにも、ゴールドを基調としたジュエリーやバッグといったアクセサリーも充実させた。またコラボレーションの一環として「H&M」は、レムレム ファウンデーションに10万ドル(約1000万円)を寄付する。

The post 「H&M」がエチオピア発の「レムレム」とコラボ アフリカの職人技に光を当てる appeared first on WWDJAPAN.com.

「コーチ」CEOが正式に決定 暫定役がそのまま就任

 「コーチ(COACH)」「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」「スチュアート・ワイツマン(STUART WEITZMAN)」などを擁するタペストリー(TAPESTRY)は、2020年7月より「コーチ」のブランドプレジデント兼最高経営責任者(CEO)を暫定的に務めてきたトッド・カーン(Todd Kahn)を4月15日付で同職に正式に任命した。

 「コーチ」はここ数年、トップの異動が続いていた。17年6月から同ブランドを率いていたジョシュア・シュルマン(Joshua Schulman)元ブランドプレジデント兼CEOが20年3月に退任した後、ジデ・ザイトリン(Jide Zeitlin)前タペストリー会長兼CEOが同職を兼任していた。しかし、同氏は07年に女性を誘うためにフォトグラファーを装ったという疑惑が表面化したことを受けて20年7月に退任。このため、当時は社長兼最高管理責任者兼書記役を務めていたカーン=ブランドプレジデント兼CEOが暫定的に就任していた。

 ジョアン・クレヴォイセラ(Joanne Crevoiserat)=タペストリーCEOは、「トッドは入社以来、当社の戦略策定に欠かせない人物として活躍してきた。またここ9カ月間にわたって素晴らしい業績を上げ、コロナ禍の中でリーダーシップを発揮している。『コーチ』はデジタル強化などの戦略によって、より若い新規客を獲得して勢いを増している。トッドは同ブランドを率いるのに最適な人物だと確信している」と語った。なお、同氏はザイトリン前タペストリー会長兼CEOの後任として20年7月から暫定CEOを、同10月からは正式にCEOを務めている。

 カーン=ブランドプレジデント兼CEOは、「『コーチ』という長い歴史と素晴らしいチームを持つブランドを率いることができ、大変光栄に思っている。『コーチ』はデータを駆使して消費者とコミュニケーションを取り、顧客志向のブランドとして成長してきた。今後もマジックとロジックをバランスよく配分して差別化を図り、エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターであるスチュアート・ヴィヴァース(Stuart Vevers)によるオーセンティックで魅力的な商品を世界中の顧客に提供していく。またオペレーションを磨き上げ、利益性をさらに向上させたい」と述べた。

 同氏は08年にシニア・バイス・プレジデント兼ジェネラル・カウンセル兼書記役として入社。最高法務責任者などの要職を経て現在に至る。米証券取引委員会に提出された書類によれば、同氏の基本報酬は年間95万ドル(約1億円)で、業績ベースのボーナスも支払われるという。

 タペストリーの20年10~12月期(第2四半期)決算は、売上高が同7.1%減の16億8540万ドル(約1837億円)、純利益は同4.0%増の3億1100万ドル(約338億円)だった。

The post 「コーチ」CEOが正式に決定 暫定役がそのまま就任 appeared first on WWDJAPAN.com.

「ヴェトモン」がベジタリアンバーガー ロシアのコンセプトストアで限定発売

 「ヴェトモン(VETEMENTS)」は15日、モスクワのコンセプトストア「KM20(ケーエムトウェンティ)」内のカフェでベジタリアンバーガーを発売した。バーガーはフライドポテトとレモネードのセットで、包み紙には「ヴェトモン」ロゴを使用。2000食限定で販売する。

 「KM20」は2009年にオルガ・カープット(Olga Karput)創業者が設立。「ヴェトモン」とは2014年のブランドデビュー以来、セレクトショップ内で商品を多く扱ってきたつながりを持つ。またカフェメニューのハンバーガーは消費者からも厚い人気を集めるが、グラム・ヴァザリア(Guram Gvasalia)=ヴェトモン最高経営責任者(CEO)のお気に入り。今回、新たにポルトベッロマッシュルームやチーズを加えて、インスタグラム映えもする“ファッション ミール”に仕上げた。トレンドセッターとしても注目を集めるカープット創業者は、「ヴェトモン」2021-22年秋冬コレクションを着て同バーガーの広告キャンペーンに登場している。

 「ヴェトモン」は、2020年春夏コレクションをパリのシャンゼリゼ通りにあるマクドナルドの店内でショーを開催した。今回なぜファッションからファストフードに進出を決めたのか尋ねられたグラムは、「いいと思ったから。わたしたちはいつも何か新しいことができないか考えているし、そのためにはとにかく始めてみないと。今年はもっと胸が躍る仕掛けを各国で展開する予定だ。食べ物に限らずね」と語った。

The post 「ヴェトモン」がベジタリアンバーガー ロシアのコンセプトストアで限定発売 appeared first on WWDJAPAN.com.

「ヴァレンティノ」の工場火災に「プラダ」から支援の手

 ヴァレンティノ(VALENTINO)の伊トスカーナ州の靴製造工場、ヴァレンティノ シューズ ラボ(VALENTINO SHOES LAB以下、VSL)で4月1日の夜間から2日にかけて発生した大火災を受けて、競合相手でもあるプラダ(PRADA)がいち早く支援を表明し、靴の製造と仕上げを行うための工場施設をヴァレンティノに提供した。

 ヤコポ・ヴェントゥリーニ(Jacopo Venturini)=ヴァレンティノ最高経営責任者(CEO)は「われわれの製造拠点からわずか数km先にある工場施設を提供するべく、即座に連絡をしてくれたパトリツィオ・ベルテッリ(Patrizio Bertelli)=プラダCEOには心から感謝している。社会的、経済的影響を最小限に抑えるために製造拠点の稼働を再プログラムするなど、出来る限りの方法で今後の課題に取り組んでいる」と語った。

 火災発生時は夜間で工場が無人であったことから、死者、負傷者は共にゼロであったが、工場の90%および3万8000足の靴が焼失した。火災の原因については現在も調査中だが、損失額は数百万ユーロに達すると予想されている。

 VSLでは160人の従業員が勤務し、1日に1300足の靴を製造。高価かつ人気の高い「ヴァレンティノ」のアイコン、“ロックスタッズ(ROCKSTUD)”のシューズやサンダルなども製造していた。

 ヴェントゥリーニCEOは「今回の工場火災時に限ったことではないが、社内の結束力には深く感銘を受けている。効果的な行動計画を迅速に立案することができたのは、社員たちがヴァレンティノを愛しているからに他ならない。工場は火災に見舞われたが、5月からはモンテルーポ・フィオレンティーノにある近隣の工場で交替制のシフトを組み、以前とほぼ同じペースで製造を行う予定だ。また一部の従業員は、近隣のVSLロジスティクス ハブ(VSL Logistics Hub)に移動する。さまざまな取り組みを同時に行ったことによって、季節ごとの注文の大部分を通常通りに製造することができそうだ」とコメントした。

The post 「ヴァレンティノ」の工場火災に「プラダ」から支援の手 appeared first on WWDJAPAN.com.

「ルイ・ヴィトン」、中国第2位のEC企業JDドットコムと提携

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は、中国第2位のEC企業JDドットコム(JD.COM)と提携した。

 これはJDドットコムのアプリ内で“LV”と検索すると、中国のインターネットサービス企業大手のテンセント(騰訊、TENCENT)が運営する人気SNSウィーチャット(微信、WeChat)上にある「ルイ・ヴィトン」の公式ミニプログラムストアに誘導されるというもので、4月15日(現地時間)からスタートする。なお、JDドットコムとテンセントは2014年3月に戦略的パートナーシップ契約を締結している。

 ケビン・ジャン(Kevin Jiang)JDファッション&ライフスタイル国際事業プレジデントは、「中国におけるラグジュアリーECをいっそう充実させるにあたり、『ルイ・ヴィトン』と提携することができて大変うれしく思う。今回のビジネスモデルはこれまでにないもので、高級志向の消費者にシームレスな買い物体験を提供できる」と語った。

 「ルイ・ヴィトン」は基本的に直営店および自社ECでのみ商品を販売しているが、およそ4億7000万の年間アクティブユーザーを抱えるJDドットコムとの提携により、中国市場でのリーチを拡大できる。

 同ブランドの親会社であるLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は、傘下の主要ブランドでオンラインショップを展開しているほか、傘下の百貨店ボン・マルシェ(LE BON MARCHE)が小規模なECサイト「24セーブル(24 SEVRES)」を手掛けているものの、ECにはあまり積極的でないことで知られている。アマゾン(AMAZON)が20年9月に公開したラグジュアリーブランドを取り扱うアプリ「ラグジュアリーストア(Luxury Stores)」は、LVMHが擁するブランドにも出店を打診したが、すげなく断られたという。

 LVMHは4月13日に2021年1~3月期(第1四半期)決算を発表しており、売上高は前年同期比31.7%増の139億5900万ユーロ(約1兆8146億円)だった。売り上げ全体の41%が中国を含むアジア地域によるものとなっている。

 ラグジュアリーブランドが中国のECプラットフォームに出店する際は、中国最大手EC企業のアリババ(ALIBABA)が運営する中国大手EC「Tモール(天猫、TMALL)」や、その完全招待制のラグジュアリーECサイト「ラグジュアリー パビリオン(LUXURY PAVILION)」を利用するケースが目立つ。19年7月には「シャネル(CHANEL)」、20年1月には「カルティエ(CARTIER)」、21年1月には「エルメス(HERMES)」が出店している。

 また20年11月には、アリババ、ラグジュアリーEC大手ファーフェッチ(FARFETCH)、そして「カルティエ」などを擁するコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT)がグローバルな戦略的パートナーシップ契約を締結。提携の一環として、ファーフェッチはアリババの「ラグジュアリー・パビリオン」、同アウトレット専用プラットフォーム「ラグジュアリー ソーホー(LUXURY SOHO)」、同越境ECサイト「Tモールグローバル(TMALL GLOBAL)」に、ラグジュアリー専門のショッピングチャネルを開設した。

 一方、JDドットコムが提携しているほかのブランドとしては、「サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)」「トッズ(TOD'S)」「エルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)」などが挙げられる。

The post 「ルイ・ヴィトン」、中国第2位のEC企業JDドットコムと提携 appeared first on WWDJAPAN.com.

「ルイ・ヴィトン」親会社、21年1~3月期は30%増収 時価総額は39兆円を突破

 LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)の2021年1~3月期(第1四半期)決算は、売上高が前年同期比31.7%増の139億5900万ユーロ(約1兆8146億円)だった。コロナ禍以前の19年同期と比べても、既存事業および現地通貨ベースで8%増だった。

 部門別の売上高では、「ルイ・ヴィトン」「ディオール(DIOR)」「フェンディ(FENDI)」「ジバンシィ(GIVENCHY)」などのブランドを抱える主要事業のファッション・レザーグッズ部門が同45.1%増の67億3800万ユーロ(約8759億円)、香水&コスメティクス部門は同12.1%増の15億5000万ユーロ(約2015億円)、ワイン&スピリッツ部門は同28.5%増の15億1000万ユーロ(約1963億円)といずれも好調だった。

 20年12月に総額158億ドル(約1兆7222億円)で買収したティファニー(TIFFANY & CO.)が今期から組み込まれているウオッチ&ジュエリー部門は、「ブルガリ(BVLGARI)」が好調だったこともあり、同137.7%増の18億8300万ユーロ(約2447億円)と2倍以上の伸びとなった。「ティファニー」の売り上げは、19年同期との比較で8~9%増となっている。 

 免税店のDFSや化粧品のセレクトショップ、セフォラ(SEPHORA)を運営するセレクティブ・リテール部門は、観光客の不在が響き、同11.0%減の23億3700万ユーロ(約3038億円)だった。

 なお19年同期との比較では、既存事業および現地通貨ベースで、ファッション・レザーグッズ部門が37%増、香水&コスメティクス部門は4%減、ワイン&スピリッツ部門は17%増、ウオッチ&ジュエリー部門は1%増、セレクティブ・リテール部門は30%減となっている。

 全体として非常に好調だった決算内容を好感し、LVMHの時価総額は4月13日に初めて3000億ユーロ(約39兆円)を突破。17年と比べ、およそ3倍に膨らんでいる。

 ジャン・ジャック・ギヨニー(Jean-Jacques Guiony)最高財務責任者(CFO)は、「『ティファニー』のブランド力はとてつもなく強く、極めて大きな可能性を持っている。そこに疑いの余地はない。しかしその可能性を最大限に引き出すには販売網、マーチャンダイジング、マーケティングなどにおいて適切な戦略が必要であり、それを実行するには何年もかかる。大変な仕事だが、腰を据えてじっくりと取り組んでいきたい」と語った。

 ラグジュアリー業界では、臆測の段階にあるものも含めて買収の話題に事欠かない。アナリストやメディア向けの決算説明会で、検討している買収案件はあるかと問われたギヨニーCFOは、「ほかにやるべきことがある。現在は『ティファニー』をグループ内に統合し、長期的に成長させていくことが最優先事項だ。全てのリソースをそこに注ぎたいので、次の買収を検討している場合ではない」とこれを否定した。

 LVMHは四半期ベースでの地域別の売上高を開示していないが、米国とアジア地域が力強く成長した一方で、欧州は再ロックダウンなどの影響により回復が遅れているという。21年1~3月期では、売り上げ全体の41%がアジア地域によるものであり、中でもコロナ禍の影響から一足早く回復している中国市場は非常に重要な存在だ。

 中国では最近、新疆ウイグル自治区で生産されたコットンの使用中止を発表した企業に対する批判が高まっており、そうしたブランドの一つである「H&M」に対しては不買運動が起きている。LVMH傘下のブランドが同じようにボイコットされるリスクを考えたことはあるかという質問に対し、ギヨニーCFOは、「どの国においても成功することに脅威を感じたことはない。中国問題に関して誰もが話題にしているが、個人的には(脅威ではなく)ビジネスチャンスだと捉えており、中国で展開している事業について満足している。中国が複雑な国であることは否定しないが、それはどの国や事業も同じだと思うので、何か悪いことが起きるかもしれないというような心配はしていない」と述べた。同社はこれまで、新疆綿やウイグル問題に関する声明などは発表していない。

The post 「ルイ・ヴィトン」親会社、21年1~3月期は30%増収 時価総額は39兆円を突破 appeared first on WWDJAPAN.com.

「グッチ」が「バレンシアガ」とコラボか 15日発表の最新コレクションで

 「グッチ(GUCCI)」が15日に発表する最新コレクションについて、業界ではアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)=クリエイティブ・ディレクターが「バレンシアガ(BALENCIAGA)」とコラボレーションをするのではないかと噂が立っている。デムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)=アーティスティック・ディレクターが手掛ける「バレンシアガ」と「グッチ」は共にケリング(KERING)傘下だ。「グッチ」広報は噂へのコメントを拒否し、「バレンシアガ」広報からは返答が得られなかった。

 「グッチ」は2021年1月に米「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」や「ドラえもん」とのコラボコレクションを発表し、3月26日からEXOのKAI(カイ)とコラボレーションしたカプセルコレクションの販売している。数々の話題のコラボレーションを打ち出す同ブランドは、ファッションECの検索プラットフォーム、リスト(LYST)によるデータでは21年1〜3月の検索ランキングでトップだったという。「バレンシアガ」は20年12月、2021年秋コレクション(2021-22年秋冬に相当)をオンラインゲーム形式で発表したことで話題を集め、2位となった。

 「グッチ」最新コレクションは、オペラやクラシックなどで歌われる旋律的な独唱曲を指す“アリア(Aria)”と題した短編動画を通して発表する。創業100周年を迎える同ブランドの21年初めてのコレクション発表だ。

The post 「グッチ」が「バレンシアガ」とコラボか 15日発表の最新コレクションで appeared first on WWDJAPAN.com.

「トミー ヒルフィガー」から“循環型”ジーンズ 商品に廃棄以外の未来

 「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」は、より丈夫でリサイクルが可能な“循環型”ジーンズを限られた店舗とECで発売した。商品は、サステナブルなジーンズ開発をリードするエレン・マッカーサー財団ジーンズ・リデザイン(Ellen MacArthur Foundation Jeans Redesign)プロジェクトへの参加により実現した。

 ジーンズ5型とデニムジャケット2型で、耐久性や素材にこだわり、リサイクル可能であることや、商品の生産から廃棄までを開示するトレーサビリティー(追跡可能性)を考慮して作られた。100%オーガニックの生地の使用に加えて、ボタンは取り外しが可能で、一般的に金属が使われるリベット(留め具)は補強ステッチで代用。金属ファスナーやレザーパッチも取り除いてよりリサイクル・再利用しやすく設計した。各アイテムのポケットには洗濯や手入れに関する説明を明記し、アイテムの修理や寄付、リサイクル方法へのアドバイスも加えた。

 マーティン・ハーグマン(Martijn Hagman)=トミー ヒルフィガー グローバル・PVHヨーロッパ最高経営責任者は、「われわれには大手ファッションブランドの一つとして、循環型経済への移行を推進する責任がある。循環型ファッションを実現するには、バリューチェーン(価値連鎖)の再考が必要だ。今回生まれたアイテムのそれぞれは、デザインと製造の両チームによる高い専門知識と技術があってのもの。完全な循環型ファッションに向けた一歩だ」と語った。

 フランソワ・ソシェ(Francois Souchet)=エレン・マッカーサー財団 循環型繊維イニシアチブ リードは、「『トミー ヒルフィガー』はデニム業界のリーダー的存在で、当初から『ジーンズ・リデザイン』プロジェクトに賛同していた。今回実際にプロジェクトに沿って商品開発を手掛け、業界全体にファッションの向かうべき方向を提示した。好きな洋服をただ廃棄しないで済む循環型ファッションの実現に向けて動き出したことにワクワクする」と述べた。

 「トミー ヒルフィガー」はほかにも、デザイナーの80%以上に循環型デザインについて教育しており、消費者から使用済みの商品を受け取って新品同様に整え再販する循環型ビジネスモデル「トミー フォー ライフ(Tommy For Life)」も立ち上げている。大手企業の中でいち早く100%リサイクルコットンを取り入れ、使用する水とエネルギーを削減。環境負担が少ないとされるジーンズをこれまでに200万枚以上生産している。

 2020年8月には「メイク イット ポッシブル(Make It Possible)」プログラムを立ち上げ、30年に向けた循環性と包括性に関する24の目標を設定した。“何も捨てず、何でも受け入れる(Wastes Nothing and Welcomes All)”ことをミッションに、環境と社会の両方の観点からサステナビリティに取り組んでいる。

The post 「トミー ヒルフィガー」から“循環型”ジーンズ 商品に廃棄以外の未来 appeared first on WWDJAPAN.com.

「トミー ヒルフィガー」から“循環型”ジーンズ 商品に廃棄以外の未来

 「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」は、より丈夫でリサイクルが可能な“循環型”ジーンズを限られた店舗とECで発売した。商品は、サステナブルなジーンズ開発をリードするエレン・マッカーサー財団ジーンズ・リデザイン(Ellen MacArthur Foundation Jeans Redesign)プロジェクトへの参加により実現した。

 ジーンズ5型とデニムジャケット2型で、耐久性や素材にこだわり、リサイクル可能であることや、商品の生産から廃棄までを開示するトレーサビリティー(追跡可能性)を考慮して作られた。100%オーガニックの生地の使用に加えて、ボタンは取り外しが可能で、一般的に金属が使われるリベット(留め具)は補強ステッチで代用。金属ファスナーやレザーパッチも取り除いてよりリサイクル・再利用しやすく設計した。各アイテムのポケットには洗濯や手入れに関する説明を明記し、アイテムの修理や寄付、リサイクル方法へのアドバイスも加えた。

 マーティン・ハーグマン(Martijn Hagman)=トミー ヒルフィガー グローバル・PVHヨーロッパ最高経営責任者は、「われわれには大手ファッションブランドの一つとして、循環型経済への移行を推進する責任がある。循環型ファッションを実現するには、バリューチェーン(価値連鎖)の再考が必要だ。今回生まれたアイテムのそれぞれは、デザインと製造の両チームによる高い専門知識と技術があってのもの。完全な循環型ファッションに向けた一歩だ」と語った。

 フランソワ・ソシェ(Francois Souchet)=エレン・マッカーサー財団 循環型繊維イニシアチブ リードは、「『トミー ヒルフィガー』はデニム業界のリーダー的存在で、当初から『ジーンズ・リデザイン』プロジェクトに賛同していた。今回実際にプロジェクトに沿って商品開発を手掛け、業界全体にファッションの向かうべき方向を提示した。好きな洋服をただ廃棄しないで済む循環型ファッションの実現に向けて動き出したことにワクワクする」と述べた。

 「トミー ヒルフィガー」はほかにも、デザイナーの80%以上に循環型デザインについて教育しており、消費者から使用済みの商品を受け取って新品同様に整え再販する循環型ビジネスモデル「トミー フォー ライフ(Tommy For Life)」も立ち上げている。大手企業の中でいち早く100%リサイクルコットンを取り入れ、使用する水とエネルギーを削減。環境負担が少ないとされるジーンズをこれまでに200万枚以上生産している。

 2020年8月には「メイク イット ポッシブル(Make It Possible)」プログラムを立ち上げ、30年に向けた循環性と包括性に関する24の目標を設定した。“何も捨てず、何でも受け入れる(Wastes Nothing and Welcomes All)”ことをミッションに、環境と社会の両方の観点からサステナビリティに取り組んでいる。

The post 「トミー ヒルフィガー」から“循環型”ジーンズ 商品に廃棄以外の未来 appeared first on WWDJAPAN.com.

「グッチ」の親会社、イタリアに新たな物流拠点 年間最大8000万個を出荷

 「グッチ(GUCCI)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」などを擁するケリング(KERING)は、伊ピエモンテ州トレカーテに新たな物流拠点を設立した。

 トレカーテはミラノから車で1時間程度、ミラノ・マルペンサ国際空港からも20kmほどの距離にある。2019年4月に着工した同施設はおよそ16万2000平方メートルの広さで、ラグビー場にして20面ほど。第1期分はすでに竣工しており、20年3月から稼働している。第2期分は21年4〜6月(第2四半期)に稼働する予定。現在は約250人の従業員が働いており、22年末にはこれを1000人程度まで拡大する。運営は長年の物流パートナーであるXPOロジスティクス(XPO LOGISTICS)が行う。

 ケリングのジャン・フランソワ・パルー(Jean-Francois Palus)=副最高経営責任者は、「ラグジュアリー業界においてもECの売り上げは伸び続けており、より迅速な配送サービスが求められている。現在および将来的な業務要件を見据えて、アジア、アメリカ、欧州における当社の物流網を一から見直して再構築し、完全なオムニチャネル化に向けて改革を進めている」と語った。同氏はこの施設の建設費用などは明らかにしなかったものの、「イタリアへの投資額としてはこれまでで最大」だと述べた。

 同社の物流拠点の基幹となるこの施設は20の倉庫を備えており、取り扱い可能な出荷量は年間最大8000万個、保管量は最大2000万個。世界中の店舗や倉庫からの注文に応じて80カ国以上に出荷でき、ECの注文は3時間以内に処理される。これによってリードタイムを50%短縮できるほか、アイテムごとの配送コストは25%削減されるという。

 最新鋭の設備があるこの施設は環境にも配慮されており、欧州で最大級の屋上太陽光発電システムを導入する。建物完成時には合計12.7MWp(メガワット・ピーク)の太陽光パネルが設置され、二酸化炭素排出量を年間7500トン削減できるという。同施設はイタリアで初めて生産エネルギーが消費エネルギーを上回る複合工業施設であり、余剰電力は配電網を通じて同国内にあるケリングのオフィスや傘下ブランドの店舗に供給される。

 また同施設は、建物や都市に関する環境性能評価システムLEED(Leadership in Energy and Environmental Design)のプラチナ認証を取得する予定であり、それに加えて建物利用者の健康面に配慮した室内環境評価システムWELL(WELL Building Standard)のゴールド認証を目指している。

 ケリングは米国における物流拠点をニュージャージー州に移設したほか、中東の拠点をドバイに建設した。アジア地域の拠点は現在計画中だが、シンガポールが有力な候補地として挙げられているという。

The post 「グッチ」の親会社、イタリアに新たな物流拠点 年間最大8000万個を出荷 appeared first on WWDJAPAN.com.

ナイキの元従業員が電信・郵便詐欺で逮捕 約1億6000万円をだまし取った疑い

 電信・郵便詐欺などの疑いで逮捕されていたナイキ(NIKE)社の元マーケティング・マネジャー、エロル・アンダム(Errol Andam)が電信・郵便詐欺の事実を認め、司法取引に応じた。米オレゴン州の新聞「ザ・オレゴニアン(THE OREGONIAN)」が第一報を報じた。この件についてナイキの担当者からはコメントを得られなかった。

 2月初旬、連邦検察当局はアンダムがナイキ社から約150万ドル(約1億6500万円)をだまし取り、詐欺行為の計画の一環としてマネーロンダリングとローン申請書への虚偽記載も行ったとして起訴した。

 アンダムは2001年から18年に解雇されるまでオレゴン州にあるナイキ本社に勤務。ナイキの北米地域のリテール・ブランド・マーケティング部門マネジャーを務め、米国内のスポーツ大会やそのほかの特別なイベントに出店する「ナイキ」のポップアップストアの店舗デザインや建設、運営を統括していた。

 アンダムは16年夏に幼少期からの友人に会社を立ち上げさせ、「ナイキ」のポップアップストアのデザイン・建設の依頼先として契約し、自分のマネジャーとしての立場を利用して友人の会社に仕事をあっせんしたとみられている。アンダムは友人の会社で公式には役職に就いていなかったが、同社の財務運営の大部分を監督し、口座の管理を行っていたという。また、「フランク・リトル」という偽名を使用してナイキ社に請求書を発行していたとされている。

 司法取引に関する裁判期日は4月12日に予定されている。本件を報じた「ザ・オレゴニアン」によると、アンダムが電信詐欺やマネーロンダリング、虚偽の住宅ローン申請書提出の罪を認めた場合、24~37カ月の懲役刑が下るという。また、ナイキ社に149万ドル(約1億6000万円)、別の会社に17万3172ドル(約1900万円)の賠償金を支払うことになるという。

 2月初旬に起訴された当初、アンダムは最高で30年の懲役刑と450万ドル(約4億9500万円)の罰金刑、釈放後も5年間の監視が付く可能性があった。

The post ナイキの元従業員が電信・郵便詐欺で逮捕 約1億6000万円をだまし取った疑い appeared first on WWDJAPAN.com.

「ディオール」のスナップチャット活用術 試着ARプロモーションで6倍の費用対効果

 「ディオール(DIOR)」はスナップチャット(SNAPCHAT)と協業し、2020年11月に拡張現実(AR)体験を使った“B27”スニーカーの発売プロモーションを実施した。「ディオール」は、同キャンペーンをこれまでのプロモーションで最も成功した1つと評価する。

 消費者はスナップチャットの“レンズ”(フィルター)を使い、カメラで自分の足を写すことで6種類の「ディオール」最新モデルのスニーカーがバーチャルで試着できる。「ディオール」公式アカウント内のほかにも、カメラ内で選択できる“レンズ”としてプロモーション展開し、さらにランウエイモデルやユーザーが同レンズで遊ぶ様子を動画で紹介。ユーザーはフィルター画面から直接商品を購入できる。

 「ディオール」によるとその結果、ARフィルターの導入とスナップチャット内の広告のみで3.8倍の費用対効果を生み、カメラ内で選択できるレンズからの使用を含むと6.2倍となったという。またアプリのビジネスアカウント向け機能を活用して、商品発売時にはアカウントのホーム画面をバーチャル試着ができるコンテンツのみにしてデジタルショールーム化した。これにより230万回以上のARフィルターの利用につながったという。

 24時間で消える写真・動画共有アプリとして人気を集め、現在はビジネスのマーケティングにも使われるスナップチャットにとっても、同キャンペーンはユニークだったという。ジェフリー・ペレス(Geoffrey Perez)=スナップチャット ラグジュアリー担当は、「ブランドがビジネスアカウントを通して、スニーカーの発売からすぐにキャンペーンを開始し、話題を集めていたのは初めてのことだった。加えて自社ウェブサイトやSNSチャンネルへの誘導など、さまざまなタッチポイントを生み出した。AR機能とこれらを結びつけて展開することで、オリジナリティーが際立った」とコメントした。

 「ディオール」は、19年には「リモワ(RIMOWA)」とのコラボカプセルコレクションに際してAR機能を搭載したフィルターをスナップチャットで公開した。ほかにも20年ホリデーキャンペーンでは、パッケージと関連したARフィルターをフェイスブック(FACEBOOK)とインスタグラム(INSTAGRAM)、スナップチャットで公開した。ブランド広報担当は、「Z世代はスマホからの購入に抵抗がなく、SNSでのショッピングに前向きであるため、われわれは常にARに関心を持っていた。デジタルでの購買体験の向上にいち早く取り組んできたが、新型コロナウイルスの感染拡大によるパンデミックで消費者との新しいつながり方を考えなければいけない。AR機能を使うことで、安全性を保ちながら商品を身近に届けることが可能になる」と語った。

 スナップチャットはほかにも、「グッチ(GUCCI)」や「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」「メイベリン ニューヨーク(MAYBELLINE NEW YORK)」「ニックス プロフェッショナル メイクアップ(NYX PROFESSIONAL MAKEUP)」とパートナーシップを結んでいる。新しい技術やトレンドに対して一般的に懐疑的である傾向を持つラグジュアリー業界でも、パンデミックが後押しとなって新しいデジタルツールの導入に乗り出しているという。今後の課題としては、AR機能を一過性のトレンドではなくクリエイティビティーの新しい発表方法と認識し、若い消費者にリーチするためのビジネスのツールと捉えることが必要になる。

 デジタルマーケティングとカスタマーエンゲージメントのコンサルタントを行うスライブ・アナリティクス(THRIVE ANALYTICS)とVR・AR関連のリサーチを行うアーティレリィ・インテリジャンス(ARTILLERY INTELLIGENCE)の最新データによると、AR機能の利用者は増加しており、中でも一度使ったことのある人は日常的に使う傾向にあるという。消費者の29%は携帯端末でARを使用したことがあり、59%は少なくとも週に一回は使用している。78%が少なくとも月に一度は使用しているという。またスナップチャットの2020年12月期締結決算では、ユーザーが12カ月間で22%増加し、2億6500万のアクティブユーザーを持つと報告している。

 いわゆる“スナップチャット世代”であるミレニアル世代とZ世代にとって、ビジュアルを使ったコミュニケーションが主流になりつつあることを受けてペレス=スナップチャット ラグジュアリー担当は、「ミレニアル世代とZ世代の消費者は、これからの鍵となる将来性の高い顧客だ。いますぐにでもアプローチをかけ始めないと、ほかに流れてしまう恐れがある。ラグジュアリーブランドの発展と成長のためには、消費者の関心が集まる場所を狙うべきだ」と語った。

The post 「ディオール」のスナップチャット活用術 試着ARプロモーションで6倍の費用対効果 appeared first on WWDJAPAN.com.

ヴィヴィアン・ウエストウッドが80歳を短編動画で祝う 現代のパンクは環境・社会活動

 デザイナーでアクティビストでもあるヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)が8日、80歳の誕生日を祝して短編動画「ドゥー ノット バイ ア ボム(Do Not Buy A Bomb)」を公開した。ミュージカルの「マイ・フェア・レディ(My Fair Lady)」の楽曲「ウィズアウト ユー(Without You)」の替え歌を通して、環境・社会的問題へのメッセージを発信した。10分弱の同動画は毎月異なるアーティストの作品をデジタルとリアルで披露する「サーカ(CIRCA)」と協業で作成し、ロンドンの繁華街、ピカデリー・サーカスにあるビッグスクリーンで上映された。アーカイブ動画は「サーカ」のウェブサイトから視聴可能だ。

 動画の中でヴィヴィアンは改装されたロンドンのメイフェア店のウィンドウから、環境問題の実態や、社会の無関心に対して警鐘を鳴らしている。ロックダウンで人が消えたロンドンについて考えを巡らせながら、武器取引やそれに関連する環境へのインパクトについて、「私には、世界を救うための計画がある。現在資本主義は戦争の経済的な支えとなっており、戦争は環境汚染の原因だ。戦争をやめて経済の仕組みを変えて、平等に富を分配しよう」と語った。

 パートナーでデザイナーのアンドレアス・クロンターラー(Andreas Kronthaler)は、長い白い髪に緑のフェイスペイントを合わせた同氏のポートレートを公開。1970年代にパンク文化を牽引し、不動の地位を獲得した同氏のこれまでのコレクション作品や、自身のポートレートを振り返る。

The post ヴィヴィアン・ウエストウッドが80歳を短編動画で祝う 現代のパンクは環境・社会活動 appeared first on WWDJAPAN.com.

“文化の盗用”問題で、ファッション業界にできることは? メキシコ文化相が語る

 メキシコのアレハンドラ・フラウスト・ゲレロ(Alejandra Frausto Guerrero)文化相は、フェアチャイルド・メディア・グループ(FAIRCHILD MEDIA GROUP)が3月24日にオンラインで開催した「ダイバーシティー・フォーラム(Diversity Forum)」に登壇し、ファッション業界が先住民の文化を尊重する重要性について語った。

 同氏は、メキシコの先住民に特有の模様などをデザインに使用するのは“文化の盗用”だとして、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「キャロリーナ ヘレラ(CAROLINA HERRERA)」「イザベル マラン エトワール(ISABEL MARANT ETOILE)」などのブランドにそれを非難する書簡を送ったことでも知られている。

 メキシコはアステカ、マヤ、サポテカ文明などの豊かな文化遺産を有しているが、こうした文化や民族が過去のものだと誤解されている場合が多いという。同氏は、「メキシコには先住民の人々の子孫がおり、その文化は現代に脈々と受け継がれている。彼らのコミュニティーはクリエイティブ性が高いので、国際的なファッション市場に参入して経済的に発展できる可能性がある。しかし彼らの民族衣装などをインターネット上で見た人々は、それを自分のものとして勝手に流用してしまう」と説明。「ファッション業界における“文化の盗用”問題は、盗用された側とブランド側が協業する機会にもなり得るが、それはあくまでも盗用された側が了承した場合に限られる。これは尊厳の問題だ」と述べた。

 同氏はまた、「ファッション業界は、先住民の文化が持つ美しさやそれがいかに洗練されているかを理解することはできても、その衣装や模様の真の価値、すなわち文化的な背景や意味を理解していないのではないか」と話した。

 例えば、先住民族の衣装の一つであるウィピルは、主にチュニックやワンピース型をしており、刺しゅうで模様が施されている。この模様は民族や地域ごとに異なっていて、人々の間で大切に育まれてきた。同氏は、「物事の背景を知らずに、それを尊重することはできない。文化遺産は誰か一人のものではなく、コミュニティー全体に属するものだ」と述べた。

 また民族衣装や模様に基づいたデザインをした場合、それを“トリビュート”だと呼ぶだけでは十分でないと同氏は説いた。「トリビュートだというなら、その元になった相手を招くのが筋だと思う。そもそも、その対象となった民族やコミュニティーの了承を先に得るべきだ」と語った。

 メキシコには50以上の先住民族が住んでおり、伝統的な衣装や工芸品作りに携わる職人が数百万人いるといわれているが、貧困状態にあるケースも少なくない。こうした状況を踏まえて、同国では2021年中に職人らの作品を展示するファッションの見本市、オリジナルズ(Originals)を開催する予定だ。来場者として多数のブランドが招かれているが、ブランド側が提携する職人を選ぶのではなく、職人側がブランドを選べるようになってほしいと同氏は話した。「この見本市を機会に、さまざまな対話が生まれることを期待している。われわれは、(搾取されている)コミュニティーでよく掲げられているスローガンの一つ、“私たち抜きに、私たちのものを使うな(Nothing from us without us)”ということを推進したいと考えている」。

 メキシコ政府は国連およびユネスコと協力し、同国の職人などクリエイティブなコミュニティーの保護や育成に取り組んでいる。また、同国の工芸品などに対する集団的権利を与える法案を議会で審議中だという。

 ゲレロ文化相は、ゆっくりとではあるものの、“文化の盗用”問題についてファッション業界の意識の変化を感じると話した。最近では、「ナイキ(NIKE)」や「ルイ・ヴィトン」などのブランドから相談を受けたという。「『ナイキ』はメキシコ文化の要素をコレクションに使うことについて、『ルイ・ヴィトン』はウィピルについての問い合わせだった」と述べた。

 “文化の盗用”問題が起きないようにするため、ファッション業界にできることはあるのだろうか。同氏は、「デザインの元となった文化を作った民族の声に耳を傾け、理解を深めることが重要だ。豊かな歴史や文化を持ちながらも経済的な貧困状態にある地域について知り、彼らが望むのであれば、仕事や収入につながるように開発してほしい。民族衣装の裏にはそれを生み出した文化があり、コミュニティーがある。彼らと共に、未来を織ることを考えていきたい」と締めくくった。

The post “文化の盗用”問題で、ファッション業界にできることは? メキシコ文化相が語る appeared first on WWDJAPAN.com.

グローバルSPAの中国事業の撤退や売却相次ぐ 市場攻略のヒントは?

 ギャップ(GAP)社や「ザラ(ZARA)」の親会社であるインディテックス(INDITEX)など、グローバルSPA企業の中国市場での不調が続いている。

 ギャップは傘下ブランドの「オールドネイビー(OLD NAVY)」の中国撤退を決定しているが、今後について中国事業自体の売却を含めて検討しているようだと米「ブルームバーグ(BLOOMBERG)」が報じた。インディテックスは2021年1月、傘下ブランドの「ベルシュカ(BERSHKA)」「プル&ベアー(PULL & BEAR)」「ストラディバリウス(STRADIVARIUS)」の中国にある全店舗約100店を閉じると発表。ECに専念する方向に切り替えた。ほかにも、オランダのシーアンドエー(C&A)は中国事業を北京を拠点とする金融企業へ売却すると決定。投資持株会社のミュルザンヌ・グループ(Mulsanne Group)と提携して中国ビジネスの強化を図った「エスプリ(ESPRIT)」も、その後中国本土での事業を終了した。19年には「フォーエバー21(FOREVER 21)」が、18年には英国発の「ニュールック(NEW LOOK)」がそれぞれ撤退している。

 「ザラ」は21年1月末時点で、141店を中国に構えるがそれまでの12カ月間に38店を閉店している。H&Mは約500店舗を運営し、さらなる強化に向けて今後姉妹ブランド「アンド アザー ストーリーズ(& OTHER STORIES)」を上海に、同じくベーシックウエアを中心に生活雑貨などをそろえる「アーケット(ARKET)」を北京に、それぞれ旗艦店をオープンする予定だ。しかし19年12月〜20年11月に中国で17店減らしており、売上高は現地通貨ベースで前期比17%減だった。一方、「ピースバード(PEACEBIRD)」や「メタスバンウェイ(METERS/BONWE)」「セミル(SEMIR)」といった中国ファストファッションブランドはより厚い人気を獲得しており、数1000店舗規模でビジネスを展開する。

 グローバルに展開するブランドなら、その国によってデザインを変えるなど、地域に合わせる工夫も時には必要となる。アパレル業界のベテランであるエディー・リム(Eddie Lim)は、「不調の大きな要因は、商品のデザインだろう。制作チームの拠点はデザインにも影響を持つ。欧米ブランドの多くは商品を地域に根付かせる努力が足りなかった」と語る。例えば、中国で人気のブランド「ジャック&ジョーンズ(JACK & JONES)」「ヴェロモーダ(VERO MODA)」などを擁するデンマークのアパレル企業、ベストセラー グループ(BESTSELLER GROUP)は中国に独立事業を設立し、国内独自のコレクションを販売する。

 続けてリムはベストセラー グループでの経験を振り返って「在籍した7年間、デンマークからアイテムを取り寄せたことはほとんどない。中国で生活する女性の多くは細いストラップのワンピースにTシャツを合わせて着るか、時にはジャケットを羽織る。しかし欧米ではそのまま肩を出して着る人が多い。こういった違いを理解して、ディスプレイ方法などの教育を行うことが大事だ」と言う。地域ごとの文化や気候など考慮しなければいけない要素はさまざまだが、今は新型コロナからの回復程度も重要な要素だ。中国では新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きを見せ始めており、生活様式がコロナ前に戻りつつあるという。3、4度目のロックダウンに突入する欧米諸国では、ルームウエアコレクションの需要が高いかもしれないが、中国で今求められるのはお出かけに着られる洋服だ。

 また、ギャップや「フォーエバー21」、「ニュールック」「エスプリ」を見てみると、そもそも本国で苦境にさらされた結果から撤退などに至っており、中国ビジネスでのみ失敗したとは言えない。10年前は5000店をこえる店舗を持っていた人気中国ブランド「ラ・シャペル(La Chapelle)」であっても、20年上半期のうちに504店を閉鎖している。またローン返済が停滞したことで、上海証券取引所から強制的に下される可能性があると投資家に報告している。ジェーン・ドゥ(Jane Du)=チャイナ・ワールド・エキシビジョンズ ジェネラルマネジャーは、「新鮮味を加えるコラボレーションを行ったり、インフルエンサーと共同でライブ配信を活用したり、マーケティングとコミュニケーションにも工夫が必要となる。『ユニクロ(UNIQLO)』の商品開発やコラボレーションは、消費者を絶えず惹きつけている。また、日本のブランドでサイズの調整がいらないのもポイントだ」と評価する。

 「ユニクロ」などを運営するファーストリテイリング(FAST RETAILING)の2020年9~11月期決算(国際会計基準)は、営業利益が同23.3%増の1130億円と大幅な増益となった。国内と中国本土、台湾のユニクロ事業が増収増益で全体に寄与したと報告しており、セールを調整しながらブランディングの強化と新商品情報の発信に工夫を凝らした戦略が功を成したという。ドゥ=チャイナ・ワールド・エキシビジョンズ ジェネラルマネジャーは、「今の30代の人々は、20代の時には『ザラ』などから洋服を買っていただろう。しかし年齢に合わせて、より高価なブランドを買うようになる。そして今の20代は『ザラ』に魅力を感じていない。マーケット層の移り変わりに合わせて進化しなければいけないが、対応できず撤退するものが多い」と分析。

 中国市場を生き抜くには、目まぐるしく変化するスピードへの対応も必要だ。中国では国内最大手ECのアリババグループのECサイト「タオバオ(淘宝)」に絶えず新しいEC専業ブランドが登場し、商品の制作にかかる時間もどんどん短縮されている。中国ファストファッション関係者は「流行のサイクルがどんどん短くなっているので、トレンドを掴むことがますます難しくなっている。ブランドはよりタイトなスケジュールで新商品を展開して追いつく必要がある。中国で『タオバオ』は、価格設定や再編のスピードなどに大きな影響を持つ」と語る。

 続けて、「中国の消費者はサステナビリティを意識することなく、価格の安いアイテムを簡単に見つけることができる。まだ価格が優先事項の高いところにあるのも、グローバルブランドが成功しない一因だ。しかし、少しずつ志向に変化はみられ、サステナビリティを意識するマインドが普及しつつある」と述べた。

The post グローバルSPAの中国事業の撤退や売却相次ぐ 市場攻略のヒントは? appeared first on WWDJAPAN.com.

2021年SAGアワードのベストドレッサー 「プラダ」を着たエマ・コリンら9選

 第27回「全米映画俳優組合賞(Screen Actors Guild Awards、以下SAGアワード)」の授賞式が4日(現地時間)、デジタルで開催された。「SAGアワード」は通称「オスカー(Oscar)」こと「アカデミー賞(Academy Awards)」の前哨戦とも言われており、全米俳優組合に所属する俳優たちの投票によって受賞者が決定する。

 開催時期を例年の1月最終日曜日から延期し、式の時間も短縮して開催した。参加者は現地でレッドカーペットに登場することはかなわなかったが、それぞれのドレスアップした姿をオンラインで公開して盛り上げた。SAGアワードの最高賞とされるキャスト賞にはネットフリックス(NETFLIX)の映画「シカゴ7裁判」が輝いた。映画部門の主演男優賞はチャドウィック・ボーズマン(Chadwick Boseman)、主演女優賞はヴィオラ・デイヴィス(Viola Davis)がそれぞれ受賞した。助演女優賞は、映画「ミナリ」から韓国出身の女優であるユン・ヨジュン(Youn Yuh-Jung)が受賞するという快挙を成し遂げた。

 デジタル授賞式では、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のライムグリーンのドレスを着用したヴィオラ・デイヴィスから、足先まで覆う真っ赤なロングドレスを着こなしたグレン・クローズ(Glenn Close)らが明るい色をふんだんに使用したルックを披露。「ロエベ(LOEWE)」に身を包んだジョシュ・オコナー(Josh O’Connor)は70年代のレトロな雰囲気も表現した。

 それぞれがルックを自ら公開する“バーチャル レッドカーペット”ということもあって、伝統的なドレスコードを覆す個性的なスタイルも数々登場した。2021年SAGアワードから9つのベストルックを紹介する。

The post 2021年SAGアワードのベストドレッサー 「プラダ」を着たエマ・コリンら9選 appeared first on WWDJAPAN.com.

「トミー ヒルフィガー」の障害者のニーズに寄り添う“アダプティブ”ラインから新コレクション

 「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」は、見た目は変えず、障害のある人のために着脱しやすい機能を加えた“トミー ヒルフィガー アダプティブ(TOMMY HILFIGER ADAPTIVE以下、アダプティブ)”の2021年春コレクションを発売した。アメリカと日本、オーストラリア、ヨーロッパの限られた小売店とECで扱っている。

 新コレクションでは、正統派なスポーツスタイルとプレッピースタイルを融合し、チノパンやポロシャツ、ルームウエアセット、ジーンズなど定番のアイテムをそろえた。トップスやパンツの留め具にはマグネットやベルクロなどを取り入れ、座ったままの着脱や片手でのコントロールがしやすいよう設計した。スエットパンツのウエスト部分には、ひもを引くことでシルエットや締まり具合を調整できるドローコードを採用。アウターにはファスナーの開け閉めがしやすい機能を、パンツの裾にはマグネットでの開閉機能を付けるなど、体ごとに異なる悩みを考慮しつつ、ほかの「トミー ヒルフィガー」のアイテムと変わらないデザインに仕上げた。またアイテムは、開封や返却もしやすいパッケージで送られる。アメリカでは、音声サービス「アレクサ(Alexa)」を利用して購入も可能だ。

 自身も自閉症の子どもの子育てをした経験のあるデザイナーのトミー・ヒルフィガーは、「“アダプティブ”では、いろいろな人が身近に感じられるようなアイテムを作っている。新しい洋服を着たり、出かける際に支度するという行為は、自己肯定心をあげたりワクワクする体験とつながっている。みんなにとって楽しいことであるべきだ。コレクションを通して障害のある人のファッションに変化をもたらして、個性を表現するための自立心と自信を届けたい」と語った。

 “アダプティブ”ラインは、子ども向けアイテムを中心に2016年に開始。ブランドのスタイルと着心地を保ちながら、毎日の着替えを楽にするアパレルをそろえる。日本でも20年からしている。「トミー ヒルフィガー」は、2025年までに全てのカテゴリーに“アダプティブ”版をそろえることを目標に掲げている。

The post 「トミー ヒルフィガー」の障害者のニーズに寄り添う“アダプティブ”ラインから新コレクション appeared first on WWDJAPAN.com.

ルルレモン、20年は10%増収 ホームフィットネス需要が追い風に

 ルルレモン・アスレティカ(LULULEMON ATHLETICA以下、ルルレモン)の2021年1月通期決算は、売上高が前期比10.6%増の44億187万ドル(約4842億円)、営業利益は同7.7%減の8億1998万ドル(約901億円)、純利益は同8.7%減の5億8891万ドル(約647億円)だった。

 地域別の売上高では、北米が同8%増、海外が同31%増だった。ルルレモンが20年6月に5億ドル(約550億円)で買収したホームフィットネスのスタートアップ企業ミラー(MIRROR)は、1億7000万ドル(約187億円)の売り上げとなり、予想の1億5000万ドル(約165億円)をやや上回る結果となった。

 四半期ベースでは、20年11月~21年1月(第4四半期)の売上高は前年同期比23.7%増の17億2955万ドル(約1902億円)、営業利益は同9.9%増の4億5790万ドル(約503億円)、純利益は同10.6%増の3億2983万ドル(約362億円)だった。地域別では、北米の売上高が同21%増、海外が同47%増だった。

 カルバン・マクドナルド(Calvin McDonald)=ルルレモン最高経営責任者(CEO)は、「前例のない危機的な状況の中、引き続き業績を伸ばすことができ、非常に誇らしく思っている。日常的に運動をしてアクティブに過ごしたいという風潮は以前からあったが、パンデミックによってそれが高まったことが追い風となった。事態の収束後も、こうした傾向は続くだろう。当社はまだ成長の初期段階にあり、画期的なアイデアなどによって今後さらに多くの事業機会があると確信している」と語った。

 コロナ禍の影響によりさまざまな外出規制措置が取られていたため、ECの売り上げが大幅に増加した企業も多いが、ルルレモンも例外ではない。20年の売上高を販売チャネル別に見ると、D2Cが前期比101%増とおよそ2倍の売り上げとなったのに対して、直営店は同34%減だった。四半期ベースで見ても、第4四半期はD2Cが前年同期比94%増となっており、売り上げ全体の52%を占めている。一方、直営店の売り上げは既存店ベースで同28%減だった。しかし、同社は新規出店を積極的に行っていく予定で、21年には40~50店をオープンする。そのうち15~20店は中国本土に出店するという。

 マクドナルドCEOは、「主に店舗で買い物をするという顧客もおり、そうした顧客とのつながりを再び深めたいと考えている。中国市場はもちろん、全ての海外市場についてワクワクしている」と述べた。

The post ルルレモン、20年は10%増収 ホームフィットネス需要が追い風に appeared first on WWDJAPAN.com.

アディダス、20年は77%減益 ウィメンズとサステナビリティを強化

 アディダス(ADIDAS)の2020年12月通期決算は、売上高が前期比16.0%減の198億4400万ユーロ(約2兆5598億円)、営業利益が同71.7%減の7億5100万ユーロ(約968億円)、純利益が同77.5%減の4億4300万ユーロ(約571億円)だった。

 地域別の売上高では、ヨーロッパが同12.3%減の53億2000万ユーロ(約6862億円)、北米が同10.3%減の47億6200万ユーロ(約6142億円)、アジア太平洋地域が同18.5%減の65億4600万ユーロ(約8444億円)だった。南米やロシアなども含め、全ての地域で減収となった。

 ブランド別の売上高では、「アディダス」が同15.8%減の180億9500万ユーロ(約2兆3342億円)、「リーボック(REEBOK)」は同19.3%減の14億900万ユーロ(約1817億円)だった。アディダスは「リーボック」の売却を21年2月に発表しているが、買い手候補などはまだ明らかになっていない。

 四半期ベースで見ると、20年10~12月期(第4四半期)の売上高は前年同期比4.9%減の55億4800万ユーロ(約7156億円)だった。7~9月期(第3四半期)が同6.9%減、4~6月期(第2四半期)が同35.0%減だったことを踏まえると、業績は順調に回復しているといえるだろう。現地通貨ベースでは、第4四半期は同1.0%増だった。

 第4四半期における地域別の売り上げは、現地通貨ベースでヨーロッパが同6.2%減だったが、北米は同2.2%増、アジア太平洋地域は同1.4%増となっている。なお中国本土は同7.0%増となっており、ほかのアジア太平洋地域との差異が大きいことから、今後の決算報告書では別個に扱うという。

 カスパー・ローステッド(Kasper Rorsted)最高経営責任者は、「20年はこれまで経験したことのないような年だった。さまざまな苦難に直面したものの、アディダスをよりよい会社にするための努力を続けることができ、尽力してくれた全ての従業員に感謝している。第4四半期には成長軌道に戻っており、21年の業績は15~19%の成長率になると予想している」と語った。

 販売チャネル別ではECが前期比53%増と非常に好調で、40億ユーロ(約5160億円)超の売り上げだった。同社ではこうした傾向が続くと見ており、オンラインでの売り上げは実店舗の3倍の速さで成長すると予想。25年にはECとD2Cが売り上げ全体の半分程度、つまり80億~90億ユーロ(約1兆320億~1兆1610億円)に達すると見込んでいる。

 ハーム・オルマイヤー(Harm Ohlmeyer)最高財務責任者は、「本当に劇的な変化だ。卸からD2Cに比重を移したことで中間業者が減り、結果的に売り上げに対する利益率が上昇した。D2Cを強化するには物流やマーケティングにより多く投資する必要はあるが、売上高の増加が見込める上に、純利益が速いスピードで成長するという利点がある」と述べた。同氏はまた、ECを展開している小売店とは提携を継続する予定だとしながらも、より小規模な小売店とは提携を解消する可能性があることを示唆した。

 アディダスは今回の決算とともに、21~25年の事業戦略「オウン・ザ・ゲーム(Own the Game)」の詳細を投資家やメディア向けの説明会で発表した。同戦略は2つに分かれており、前半はコロナ禍からの回復および21年について、後半は22~25年の成長戦略にフォーカスしている。

 同社はこの事業戦略の一環として、スポーツ(サッカー、ランニング、トレーニング、アウトドア)とライフスタイルに注力することを策定。これに伴い、アスレジャーなどのライフスタイル用品と、アスリート向けの機能性用品を分けるため、新たなブランドポジショニングを設定した。「アディダス オリジナルス(ADIDAS ORIGINALS)」は高価格帯のプレミアム商品やセレブリティーとのコラボアイテムを、「アディダス スポーツウエア(ADIDAS SPORTSWEAR)」は主にアスレジャー用品を、「アディダス パフォーマンス(ADIDAS PERFORMANCE)」は機能性アイテムを取り扱う。

 また今後の成長分野として、同社はウィメンズとサステナビリティを挙げている。21年3月には、世界の女性アスリートの声を反映したアクティブウエアのコレクションを発売した。サステナビリティに関しては、25年までに10のアイテムのうち9つがサステナブルであることを目指している。

The post アディダス、20年は77%減益 ウィメンズとサステナビリティを強化 appeared first on WWDJAPAN.com.

「ナイキ」が独自のソーシャルコマース・アプリを開発 ショッピングを超えた交流の場を創出か

 ナイキ(NIKE)は、独自のソーシャルコマース・アプリ「ナッシング・バット・ゴールド(NOTHING BUT GOLD)」のローンチを告知するウェブページを開設し、ベータ版の試用希望者を募った。実験的試みとなる今回のプロジェクトでは、若い女性たちを対象にナイキのコミュニティー構築を図る。同社はウェブサイト上で、「『ナッシング・バット・ゴールド』に参加してナイキと共に未来を作ろう」と呼びかけており、参加希望者はリンク付けされた同アプリの公式インスタグラムにダイレクトメッセージを送る。またウェブページの上部には、“GOOD VIBES ONLY”や“Surround yourself with love”といったポジティブなワードが流れるバナーも表示されている。

 「ナッシング・バット・ゴールド」はスポーツ、生活スタイル、セルフケアに特化しているが、そのほかの詳細は明らかにされていない。同アプリのインスタグラム公式アカウントのフォロワー数は4月1日現在9000超で、ナイキの公式アカウントは1億4000万超、ナイキ・ウーマンの公式アカウントは750万ほどとなっている。

 同アプリについてナイキからのコメントは得られていないが、関連の求人情報を見る限りでは、ナイキがZ世代がすでにショッピングなどに利用しているインスタグラムやティックトック(TikTok)と同様の仕組みのブランドスペースを構築しようとしていることは明らかだ。

 求人情報によると、「ナッシング・バット・ゴールド」はナイキのチーフ・サステナビリティ ・オフィサーを務めていたハンナ・ジョーンズ(Hannah Jones)が2018年に立ち上げた同社のビジネス・インキュベーション部門、バリアント・ラボ(Valiant Labs)から生まれたプロジェクトで、発足後約3年にして初めて一般向けにローンチすることとなる。

 また現在ナイキは、“女の子のためにショッピングの未来を創る”ことを使命としており、同アプリを“組織内でソーシャルコマースを手掛けるためのモバイルアプリ”と位置付けている。なお現段階では、スポーツ、生活スタイル、活発さ、マインドフルネスといったテーマをミックスしており、若い女性たちがナイキの製品を購入する際に、ほかのユーザーのコーディネートを参考にすることでインスピレーションを得ることができるとしている。

 ナイキがアプリのコンテンツ制作のためにクリエイターやインフルエンサーを探しているのは明白だが、報酬に関しては一切言及されていない。同社は広告に巨額の費用を投資して収益を得ているため、アプリの正式ローンチ以降は知名度の高いセレブリティーやインフルエンサーを起用する可能性もある。なお同社は20年に、約36億ドル(約3924億円)をマーケティングに投じている。

 ナイキは15年にショッピング専用の公式アプリ「スニーカーズ(SNKRS)」を立ち上げて、限定商品や新作シューズの販売を行ってきた。同社はこうしたアプリがオンライン販売を成功させる上での原動力だとしているが、独自のソーシャルチャネルの開発は初めての試みだ。

 20年1月のジョン・ジョセフ・ドナホー2世(John Joseph Donahoe II)社長兼CEO就任後、ナイキはデジタル事業や女性向け事業に再び焦点を当てて、マタニティーラインやヒジャブを着用するムスリムの女性向けの水着コレクションなどを発表している。コロナ禍でeコマースが爆発的に普及したことを踏まえても、こうした取り組みを進めていくことは急務だ。ナイキは20年に行った投資家会議で、デジタルおよびeコマースでの売上げが常時少なくとも売上高の50%を占めるようになると予測し、ショッピング向けデジタルチャネルの開発に力を注ぐと発表した。ドナホー2世社長兼CEOは、「パンデミックによって消費者の行動は根本的に変化しており、元に戻るとは考えていない」と述べた。

The post 「ナイキ」が独自のソーシャルコマース・アプリを開発 ショッピングを超えた交流の場を創出か appeared first on WWDJAPAN.com.

「コンバース」とデザイナーのキム・ジョーンズがコラボ アパレルもそろえる

 「コンバース(CONVERSE)」は4月8日から、デザイナーのキム・ジョーンズ(Kim Jones)とのコラボレーション商品を限られた小売店とECで販売する。「コンバース」の定番モデル“チャック70(CHUCK 70)”に加えて、Tシャツやカーゴパンツ、スエット、マウンテンパーカーなどのアパレルも豊富にそろえる。

 “チャック70”の同コラボモデルは白と黒をベースに、半透明のTPU素材で装飾を加えた。シュータンにはキム・ジョーンズの名前をプリントした。アウターは撥水加工のほか、フードに雨風を避けるストーム・フラップを装備。カーゴパンツにはメッシュ加工やスナップボタンなどを取り入れた。

 「ディオール(DIOR)」のメンズ・アーティスティック・ディレクターを務めながら、「フェンディ(FENDI)」でウィメンズウエアも手掛けるキムはコラボについて、「『テイクアイビー(TAKE IVY)』の雰囲気を現代的に表現した。当時アメリカのスポーツウエアを日本で流行させたデザイナーから着想を得て、50〜60年代の雰囲気を再現した。さまざまな角度からデザインをまとめる中で、『コンバース』はなくてはならないアイテムだった」とコメントした。「テイクアイビー」は1965年に発行された、アメリカの名門大学のファッションを取り上げた日本の書籍。正統派なアメリカスタイルが人気を集め、“アイビールック”が日本独自の文化となって流行した。

The post 「コンバース」とデザイナーのキム・ジョーンズがコラボ アパレルもそろえる appeared first on WWDJAPAN.com.

渦中のH&M、「中国での信頼回復に尽力」と声明 ウイグル問題で

 H&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ以下、H&M)は3月31日、「中国は非常に重要な市場であり、その顧客や取引先からの信頼回復に尽力する」との声明を発表した。

 同社は中国による少数民族ウイグル人への強制労働問題などが報じられたことから、新疆ウイグル自治区に工場を持つ中国企業との取引停止や、同自治区で生産された綿花の調達の中止を2020年9月に発表している。しかし3月24日に、中国共産党の青年組織である中国共産主義青年団が、中国版ツイッターのウェイボー(Weibo)に「新疆綿について虚偽のうわさを流してボイコットしておきながら、中国で儲けようだって?それは甘い考えだ」とH&Mの声明とともに投稿したことがきっかけとなり、中国側からの批判が激化。中国の大手ECサイトなどから「H&M」の商品が消え、モバイルアプリも中国の大手アプリストアから削除されている。H&Mは中国でおよそ500の店舗を運営しているが、3月31日の時点で20店ほどが休業しているという。

 こうした動きを受けて同社は、「中国は非常に重要な市場であり、当社の中国に対する長期的なコミットメントは強固なままである。当社は中国および世界のどの国においても責任あるバイヤーでありたいと考えており、原料の調達について将来を見据えた戦略を策定中だ。関係する全てのステークホルダーと協力しあい、よりサステナブルなファッション業界を実現するためのソリューションを開発していきたい。当社はグローバルな企業として各市場の法律や規制に準拠しており、信頼、尊重、誠実さ、そして対話を大切にしている。中国の顧客、同僚、取引先の信頼回復に尽力する」と表明した。

 新疆綿の使用中止を発表しているほかのブランドとしては、「ナイキ(NIKE)」「アディダス(ADIDAS)」「ユニクロ(UNIQLO)」「バーバリー(BURBERRY)」などが挙げられる。中国ではこれらのブランドに対しても批判が高まっているものの、「H&M」ほどの猛反発は受けていない。

 観測筋によれば、その理由の一つとして、H&Mがスウェーデンという中国にとって政治的な脅威が比較的低い国の企業だということがある。ナイキは米国、アディダスはドイツ、バーバリーは英国、「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングは日本の企業であり、中国としてもこれらの国と外交問題になるのは避けたい思惑があると見られている。

 また中国の消費者からすると、「H&M」はいわば“替えのきく”存在であることも大きいようだ。専門家らによれば、「H&M」と似たような商品を同じ価格帯もしくはより安く提供する中国産ファストファッションはいくつもあるが、ブランド力の高い「ナイキ」や「アディダス」、そして世界的なラグジュアリーブランドである「バーバリー」は代替できないため、不買運動に発展しにくいという。

 外国企業の中国進出を支援するマーケティング会社、チャイナスキニー(CHINA SKINNY)のマーク・タンナー(Mark Tanner)=マネジング・ディレクターは、「中国での重要な販売チャネルであるECを元に戻すには、繊細な舵取りが求められる。中国当局の意向に沿った対応をしない限り、かなりの時間がかかるだろう」とコメントした。

 カナダロイヤル銀行(ROYAL BANK OF CANADA)は顧客向けのリポートで、「中国では過去にも『H&M』や『ナイキ』のようなブランドが同様の問題に巻き込まれているが、その後は業績が回復しているので、今回の件も慎重ながら楽観視している。しかし中国市場はH&Mの売り上げ全体の6%程度を占めているため、短期的にはマイナスの影響があるだろう」と分析している。

 H&Mは3月31日に20年12月~21年2月期(第1四半期)決算を発表しているが、売上高は前年同期比27.0%減の400億6000万スウェーデンクローナ(約4807億円)、純利益は前年同期の19億2800万スウェーデンクローナ(約231億円)の黒字から10億7000万スウェーデンクローナ(約128億円)の赤字となった。

The post 渦中のH&M、「中国での信頼回復に尽力」と声明 ウイグル問題で appeared first on WWDJAPAN.com.

スーパーモデルのナタリア・ヴォディアノヴァによるマスクが登場 環境への配慮と高い性能を両立

 ロシア出身のスーパーモデルのナタリア・ヴォディアノヴァ(Natalia Vodianova)は31日、循環型のアイテムを手掛けるテック企業ペンタトニック(PENTATONIC)と共同で手掛けたマスクライン「マスク(MASUKU)」を発売した。第1弾の“マスク ワン(Masuku One)”は、リサイクルされた素材とリサイクル可能な素材を使用して、洗えて繰り返し使用できる。フィルター効果は約94%で、米国医師会が報告する一般的なサージカルマスクのフィルター効果の40〜70%を上回り、医療用のN95マスクが持つ90〜99%に近い性能を持つ。価格は49ポンド(約7300円)。

 ナタリアとペンタトニックは、日本語のローマ字読みから取った合同企業マスク(MASUKU)を設立。都市部で特に問題となっている大気汚染への対策として、2018年にスタートした。開始当初は中国を拠点にしていたが、パンデミックによって生産に影響が出たことでヨーロッパに移動。パンデミック以降増加した使い捨てマスクの廃棄問題に目をつけ、循環性に重きを置くサステナブルなマスク開発を行う。制作には多様な材料を細かく紡糸するエレクトロスピニング法を採用し、人間の髪の毛より1000倍細い素材の使用を実現した。

 ナタリアは20年9月、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)の創業者ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)の息子で実業家のアントワン・アルノー(Antoine Arnault)と結婚した。モデルとして活躍する傍ら、慈善家・投資家としても活動する。ナタリアは「“マスク ワン”は環境負担を軽減して作られている。マスクの機能性がどれほど高くても、サステナブルでないと意味がない。今後マスクを使用しないで済むことを願うが、最も機能的でサステナブルな選択肢を用意したい。一方でポストコロナの世界でも健康やウエルネスのためのマスク着用に期待する。私たちは日常的に紫外線から肌や目を守り、浄水された水を飲んでいる。汚染された空気の中で過ごすことの健康への害をもっと考慮するべきだ」と語った。

 ヨハン・ボーデッカー(Johann Boedecker)=ペンタトニック最高経営責任者は、「多大な時間と労力をかけてマスクを開発した。高いフィルター性能や通気性、快適さ、さらにスタイルにも妥協していない」とコメント。今後、“マスク ワン”同様にエレクトロスピニング法で作られた素材を使用した多様なマスクの開発に取り組むという。

The post スーパーモデルのナタリア・ヴォディアノヴァによるマスクが登場 環境への配慮と高い性能を両立 appeared first on WWDJAPAN.com.

破産とパンデミックを経た「フォーエバー21」の今 事業再生なるか

 米ファストファッションチェーン「フォーエバー21(FOREVER 21)」は、破綻後初めての店舗をニューヨーク州ヨンカーズ市のモール内にオープンした。同社は2019年9月、日本の民事再生法に当たる連邦破産法11条の適用を申請。10月末には日本国内の全14店舗とオンラインサイトを閉鎖し、日本事業も撤退した。アメリカでのビジネスを中心に破綻からの再生を計っていたところに新型コロナのパンデミックとなった。しかし現在、新たなビジネスモデルとともに、業績は以前より回復傾向にあるという。

 「フォーエバー21」は破産申請して以来、5カ月の間にオフィススタッフの数を900人から450人に、店舗は550店から410店にそれぞれ減らした。20年2月には事業再建に向けてバーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)の親会社、オーセンティックブランズグループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP)などによる3社連合への売却が決定。同時にECプラットフォームの開発を主導するなどしてH&Mの北米事業を大きく成長に導いたダニエル・クレ(Daniel Kulle)前H&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ以下、H&M)北米事業プレジデントを最高経営責任者(CEO)に任命して新体制を整えた。

 クレCEOは前職任期中に600店のオープンを指揮したほか、米国、カナダ、メキシコをカバーする統合されたECプラットフォームの開発を主導し、北米事業の売上高を10億ドル(約1000億円)から40億ドル(約4300億円)規模へと成長させた経営手腕を持つ。その業績に目をつけ、3社連合のうちの一社である、モール家主の米不動産投資信託会社のサイモン・プロパティー・グループ(SIMON PROPERTY GROUP)のデイビット・サイモン(David Simon)CEOが同氏にアプローチをかけた。

 「22日、金曜日に退任してすぐ翌週の月曜日にはロサンゼルスに引っ越し、火曜日にCEOとしてのスタートをきった。私が『フォーエバー21』に加わった時、創業者であり経営を担っていたドン・チャン(Do Won Chang)とジン・チャン(Jin Sook Chang)夫妻が去ったので、経営幹部が誰もいない状態だった。そして就任して4週間後の3月末には、ロックダウンでほぼ全ての店舗が閉店していた」とクレCEO。

 ロックダウンによる店舗休業は小売業界全体に大きな打撃となり、「フォーエバー21」も新たに150人の従業員の解雇をした。商品調達先や不安を抱えるスタッフにはブランドの再建計画を示しながら、「われわれを信じてほしい。今は堪えて、みんなで手を取り合うときだ」と説いた。すでに大きな負債を抱えていたJ.Cペニー(J.C.PENNY)やニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)は破綻を免れなかったが、フォーエバー21はすでに破綻して負債を整理し、ビジネスを大幅に縮小していたこともあって危機を乗り越えられたと言う。

 コロナ禍で強制的に変化を強いられる事態でもあったが、クレCEOはこの機会に「フォーエバー21」のビジネスをアップデートし、新しい時代に向けて刷新することを決意した。クレCEOによる再建計画では、商品調達先との関係をリセットし、不動産から店舗運営、新しい倉庫の設置までを見直すことに焦点を当てた。「そうするほかなかった」と言うが、同ブランドは今もビジネスの支えとなっている大規模な店舗を複数持ち、モールなどの商業施設の一角を担う。「そこにおくべき適切な製品を見つけて、ワクワクするファッションを提供する。サプライヤーに寄り添って不安を解消する。会社の方針を見直してみる、といった手順を踏んだ。多くの人はわれわれが破産して業界からいなくなったと思っているので、オープンして前を向いていることを伝えなくてはならない」と述べ、消費者を再び夢中にさせることを目指していると言う。

 「フォーエバー21」の特徴である手頃な価格での店頭販売は変わらず、ベーシックなアイテムは3.99ドル(約430円)からそろえる。しかし新体制のもとでは、新たに99.99ドル(約1万700円)のフーディなど、これまでよりも高額な商品も発売。メンズウエアやスポーツ・ラウンジウエアにも焦点を当て、価格やデザインを見直すという。20年のホリデーシーズン中には、アイテムの購入が寄付につながるキャンペーンも実施した。ほかにも、アメリカの黒人歴史月間(2月1日〜3月1日)や、女性史月間(3月1日〜4月1日)に関連するキャンペーンも登場。社会貢献に結びつけたキャンペーンは小売業界ではたびたび見られるアプローチだが、「フォーエバー21」にとっては全く新しい視点だ。同様にサステナビリティへの強い関心を表明し、今3月末にはベーシックアイテムにオーガニックコットンを使うプログラムを導入する。

 デジタルの分野でも改革を推し進めており、ファッション業界の中でもいち早く旬のトレンドを捉え、商品開発につなげてきた「フォーエバー21」の強みを生かす。「ECを通じて消費者にリーチし、店頭かECでの購買につなげる。統合された“オムニ体験”を構築しなければいけない」と語った。

The post 破産とパンデミックを経た「フォーエバー21」の今 事業再生なるか appeared first on WWDJAPAN.com.

スウォッチ グループ、20年は62億円の赤字 香港の店舗の半数以上を閉店

 「オメガ(OMEGA)」や「ブレゲ(BREGUET)」などを擁する世界最大の時計企業スウォッチ グループ(SWATCH GROUP)の2020年12月通期決算は、売上高が前期比32.1%減の55億9500万スイスフラン(約6546億円)、営業利益が同94.9%減の5200万スイスフラン(約60億円)、純損益が前年の7億4800万スイスフラン(約875億円)の黒字から5300万スイスフラン(約62億円)の赤字となった。

 同社はPVHコープ(PVH CORP)が擁する「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」とのライセンス契約を20年以上にわたって継続していたが、スマートウオッチにシェアを食われ、中間価格帯市場で苦戦していることなどから、21年中にこれを終了する。この非継続事業分を含めると、営業利益は9900万スイスフラン(約115億円)となる。

 地域別の売上高は、本拠地であるスイスが同54.8%減の3億4000万スイスフラン(約397億円)、スイス以外のヨーロッパが同36.1%減の9億9800万スイスフラン(約1167億円)、南北アメリカが同30.6%減の4億9000万スイスフラン(約573億円)、中国本土など中華圏が同16.0%減の24億8700万スイスフラン(約2909億円)、中華圏以外のアジア地域が同43.6%減の11億8700万スイスフラン(約1388億円)と、全ての地域で減収だった。

 半期ベースで見ると、1~6月期は観光客の不在が大きく響き、売上高は前年同期比43.4%減だった。しかし6月以降は一足早くコロナ禍から回復した中国本土が2ケタ成長となったことに加えて、米国市場が年末のホリデー商戦で前年並みの売り上げと好調だったことから、7~12月期は同14.3%減だった。なお、中華圏は同社にとって最大の市場であり、20年の売上高の44.5%を占めている。

 ピーター・スタイガー(Peter Steiger)=コーポレートコントロール部門ヘッドは、「米国市場が力強く回復していることもあり、20年11~12月には前年同期の売り上げを超えるなど、コロナ以前の水準に戻った。21年1~2月も2ケタ成長を続けており、1~3月期(第1四半期)には19年の実績を15%程度上回ると予想している」と語った。

 ニック・ハイエック(Nick Hayek)最高経営責任者は、「危機的な状況が落ち着いてくると、消費意欲が高まるものだ。アジア地域や米国でその傾向が顕著に出ている」と述べた。アジア地域では特に中国本土、台湾、マカオ、韓国、タイが好調だという。一方、ヨーロッパ市場は観光客の不在やホリデーシーズンにおける再度のロックダウンなどが響き、業績の回復にはまだ時間がかかりそうだ。

 スウォッチ グループは世界でおよそ1800の店舗を運営しているが、コロナ禍の影響による売り上げ減のため、20年には約380店を閉じ、全体で約10%の人員削減を行った。特に不調だった香港では92店から38店に減らしているものの、世界の主要都市を中心に55店を新規オープンしている。ECは非常に好調で、売り上げは前年と比べて70%の伸びとなっている。

 スイス時計協会(Federation of the Swiss Watch Industry)の調査によれば、21年2月におけるスイスから米国への時計総輸出額は前年同期比8.8%増の2億2390万スイスフラン(約261億円)となっており、11カ月ぶりにプラスに転じた。中国は同161.0%増、日本は同1.0%減となっている。

The post スウォッチ グループ、20年は62億円の赤字 香港の店舗の半数以上を閉店 appeared first on WWDJAPAN.com.

2021年「LVMHプライズ」準決勝に日本から「ターク」「ミドリカワ」が選出 アンバサダーに大坂なおみ

 LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は3月30日、2021年度「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE以下、LVMHプライズ)」のセミファイナリストを発表した。

 24歳の若さで「ロシャス(ROCHAS)」のクリエイティブ・ディレクターに抜擢されたシャルル・ドゥ・ヴィルモラン(Charles de Vilmorin)による「シャルル ドゥ ヴィルモラン」をはじめ、ダンサーとしての才能も持つサウル・ナッシュ(Saul Nash)が手掛ける流動性の高いデザインが特徴の「サウル ナッシュ」、上海を拠点とするシュティン・キュウ(Shuting Qiu)によるウィメンズブランド「シュティン キュウ」など、20ブランドが選ばれた。日本からは森川拓野による「ターク(TAAKK)」、緑川卓の「ミドリカワ(MIDORIKAWA)」のメンズ2ブランドが入選している。

 8回目の開催となる今回のLVMHプライズでは、アンバサダーにプロテニスの大坂なおみ選手を迎える。エキスパート委員には新たに、モデルのベラ・ハディッド(Bella Hadid)、サミラ・ナサー(Samira Nasr)「ハーパーズ バザー(Harper's BAZAAR)」エディター、俳優のレア・セドゥ(Lea Seydoux)、アレクサンドラ・ヴォロニェツカ(Aleksandra Woroniecka)仏「ヴォーグ(Vogue)」ファッション・ディレクター、マーガレット・チャン(Margaret Zhang)中国「ヴォーグ」新編集長が加わる。

 通常、最終選考に駒を進める8人のセミファイナリストの選出は3月のパリ・ファッション・ウイークで発表するコレクションをもとに行われてきた。今年は変化するコレクションの発表方法や感染症対策を考慮して、4月6〜11日の間、公式ウェブサイトにオンライン展示会を設立。60人のファッション業界人の審査に加えて、ウェブサイトを通して一般からの投票も募集する。

 LVMHプライズを取りまとめるデルフィーヌ・アルノー(Delphine Arnault)=ルイ・ヴィトン エグゼクティブ・バイス・プレジデントは、「一般投票を通して、より多くの人がデザイナーの世界観や個性を発見するだろう。若手デザイナーは前向きで、明るい未来へのビジョンを共有している。またリサイクルした繊維の使用や新しい技法を開発に取り組むなど、環境問題への意識も高い。ジェンダーニュートラルなコレクションも多様で、新世代による多様性(ダイバーシティー)やアイデンティティー、平等に関する問題へのアプローチにはワクワクするものがある。世界中の若き才能を包括することで、多様な声を取り上げ、業界の変革につなげたい」と語った。

 最終選考は6月に行われるが選考方法は4月末、ファイナリストの発表と同時に公開する。勝者は賞金として30万ユーロ(約3870万円)を受け取るほか、LVMHグループのエキスパートによる1年にわたるメンターシップ(指導)を受けられる機会を獲得する。創設当初から審査員として参加していた故カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)氏の功績を称えて「カール・ラガーフェルド賞」と改称された特別賞の勝者は賞金15万ユーロ(約1935万円)と、グランプリ同様に1年間の指導を受ける機会を手にする。加えて、20年と21年の卒業生の両方を対象に、ファッション学校の卒業生3人を選出する。受賞者はLVMH傘下メゾンの1つで1年間学ぶことができる。

 「LVMHプライズ」は13年11月、若手ファッションデザイナーの育成・支援を掲げ、アルノー=ルイ・ヴィトン エグゼクティブ・バイス・プレジデントが中心となりスタートした。応募資格は、40歳未満で少なくとも2つのコレクションを製作していること。20年度の「LVMHプライズ」は中止となり、ファイナリストに選ばれていた小泉智貴「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」デザイナーやピーター・ドゥ「ピーター ドゥ(PETER DO)」デザイナーら8組には、グランプリ賞金を平等に分配してそれぞれ4万ユーロ(約516万円)が与えられた。

The post 2021年「LVMHプライズ」準決勝に日本から「ターク」「ミドリカワ」が選出 アンバサダーに大坂なおみ appeared first on WWDJAPAN.com.

女性の歴史と貢献を学ぶ3月の「女性史月間」 企業やブランドの取り組みは?

 毎年3月8日は「国際女性デー(International Women’s Day)」と制定し、ジェンダー平等に向けて女性の権利向上を喚起する日となっている。アメリカでは3月いっぱいを「女性史月間(Women’s History Month)」と定めており、期間中は日頃の取り組みに加えて女性の歴史や貢献、活動により一層深い焦点を当てる。ファッション業界からは、自信と勇気が湧き出るエンパワーメントを目的としたカプセルコレクションやトークイベント、キャンペーンの数々が登場している。

 ファッション業界による女性支援に特化したキャンペーンや、女性によるビジネスを紹介する取り組みなどを行うブランドや企業を紹介する。

■H&M USA
 H&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ、以下H&M)のアメリカ法人は、黒人女性が運営するビジネスに焦点を当てて黒人コミュニティーの支援をする非営利団体「バイ・フロム・ア・ブラック・ウィメン(Buy From a Blackwomen)」と1年間にわたるパートナーシップを結んだ。同団体が21年6月に開催する、アメリカで起業など何か新しいことを始めたいと考えている黒人女性に向けた「ザ・ブラック・ウィメン・インスパイア・ツアー(The Blackwoman Inspire Tour)」のスポンサーを務める。

■ギャップ
 ギャップ(GAP)は「女性史月間」に合わせて、2007年から続く女性のエンパワーメントプログラム「パーソナル・アドバンスメント&キャリア・エンハンスメント(Personal Advancement & Career Enhancement以下、P.A.C.E.)」のさらなる強化を25年まで行うと発表した。これまで80万人以上の女性が同プログラムに参加しており、22年までに100万人の加入を目指す。

 加えて人権やジェンダー平等に焦点を当てたサステナビリティを展開する団体と協力して、「エンパワー@ワーク(Empower@Work)」プログラムを立ち上げた。同プログラムではサプライチェーンにおけるジェンダー平等を目指しており、ギャップの主要工場は全て加入している。2025年までに全てのブランドが持つ工場が加入する予定だ。

■バーバリー
 「バーバリー(BURBERRY)」は、現代社会を生きる女性を称えるため、著名人を集めたオンライン対談を開催した。登壇者は「バーバリー」の衣服を身につけて参加し、女性であることで感じる喜びなどを共有。モデルのジョーダン・ダン(Jourdan Dunn)は、「シスターフッドの連帯の中にいられることがうれしい」と語った。2021年に女性であることの体験や気持ちを語り合い、現代社会を生きる上でのヒントなどを提供した。

 国際女性デー当日には、若者の就職支援を行う「ザ・プリンスズ・トラスト(The Prince’s Trust)」が立ち上げた女性の自立をサポートするプログラムへ寄付キャンペーンを実施した。「バーバリー」のアイテム1点の購入ごとに、1ポンド(約150円)を寄付した。

■リーバイス
 リーバイ・ストラウス(LEVI STRAUSS & CO.以下、リーバイス)は、2010年に開始した「パイオニア・イン・ジャスティス(Pioneers in Justice)」イニシアチブの第3弾を開始した。これまで同取り組みを通じて社会貢献を行うリーダーに焦点を当ててきたが、今回は有色人種の女性と自認するリーダーを募集する。アパレルで働く人を対象に、パンデミックへのサポートやサプライチェーンにおけるジェンダー平等を支援する。

■「ピンタレスト」
 幅広いウェブ画像をそろえ、それらをブックマークする機能などを提供するオンラインプラットフォームの「ピンタレスト(PINTEREST)」は、ショップ機能に女性による25小企業をキュレートしたページを公開した。

■「トリー バーチ」
 「トリー バーチ(TORY BURCH)」は社会の変化につながるニュースや情報を届ける「アップワーシー(UpWorthy)」と連携して、「エンパワード・ウィメン(Empowered Women)」キャンペーンを開始した。自身のコミュニティーに変革をもたらした5人の女性を取り上げ、その功績を称えた。キャンペーンが続く1年間を通して新しいことに挑戦する女性を随時募集し、毎月選考を行って1人にスポットライトを当て、その女性が希望する非営利団体に5000ドル(約54万円)を寄付する。

■「マイテレサ」
 ドイツの高級ファッションEC「マイテレサ(MYTHERESA)」は女性のアーティストに着目し、「アート・フィメール・フューチャー(Arts Female Future)」を立ち上げた。女性のアーティスト4人に焦点を当てて支援を行う。また4人それぞれが選んだチャリティー団体に1万ユーロ(約129万円)を寄付する。

■ユークス ネッタポルテ グループ
 大手ECのユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP)は、歌手のザラ・ラーソン(Zara Larsson)やコメディアンのインカ・ボキニ(Yinka Bokinni)、チェス選手のアレキサンダー・ボテル(Alexander Botel)、プロスケートボーダーのレティシア・ブフォーニ(Leticia Bufoni)など、さまざまな分野で活躍する女性によるエンパワーメントをテーマにしたオンライントークを開催した。

 ほかにも、連帯感を表現した「私がついてるよ(I Got You)」というロゴがプリントされたTシャツや、女性の体の形をした花瓶など、女性が手掛けるアイテムを集めたカプセルコレクションを展開した。売り上げは全て慈善団体「ウィメン フォー ウィメン インターナショナル(Women for Women International)」に寄付する。SNSでは「#PowerToChange」というハッシュタグを作成し、良い世の中に向けて行っていることを投稿するよう促した。合わせて、1投稿につき1ドル(約108円)を寄付する。

■ニーマン マーカス グループ
 米百貨店のニーマン マーカス グループ(NEIMAN MARCUS GROUP以下、NMG)は、アパレル業界での女性のエンパワーメントと環境問題へのアクションを行う「ファッション メイクス チェンジ(Fashion Makes Change以下、FMC)」とパートナーシップを結んだ。店頭で買い物をした消費者にFMCへの寄付を募るほか、女性による商品を扱うキャンペーンからの売り上げを「エンパワー@ワーク」の支援に当てる。

The post 女性の歴史と貢献を学ぶ3月の「女性史月間」 企業やブランドの取り組みは? appeared first on WWDJAPAN.com.

高級ECのファーフェッチ、20年度は63%増収 次なる一手はビューティ

 ラグジュアリーECのファーフェッチ(FARFETCH)の2020年12月通期決算は、商品取扱高(GMV)が前期比48.9%増の31億8701万ドル(約3473億円)、売上高は同63.9%増の16億7392万ドル(約1824億円)、調整後EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は前期から7394万ドル(約80億円)改善して4743万ドル(約51億円)の赤字に、純損失は前期の3億7368万ドル(約407億円)の赤字から大幅に悪化して33億3307万ドル(約3633億円)となった。

 20年10~12月期(第4四半期)で見ると、GMVは前年同期比42.8%増の10億5699万ドル(約1152億円)、売上高は同41.3%増の5億4010万ドル(約588億円)、調整後EBITDAは前年同期の1792万ドル(約19億円)の赤字から1037万ドル(約11億円)の黒字に、純損失は前年同期の1億1012万ドル(約120億円)の赤字からやはり大幅に悪化して22億8103万ドル(約2486億円)となった。20年7~9月期(第3四半期)の売上高が同71.3%増だったことを踏まえると、値引きを減らしたことなどによって成長率は鈍化しているものの、四半期ベースで調整後EBITDAが黒字になったのは今回が初めてだ。

 なお、純損失が大きく膨らんでいる理由として、同社の株価が高騰していることが挙げられる。20年4月2日には6.84ドル(約745円)だったが、20年7~9月期(第3四半期)決算を発表した翌日の11月13日には45.67ドル(約4978円)を付けるなどしており、第4四半期には資金調達のために発行した転換社債の公正価格の変動などによる負債が18億9060万ドル(約2060億円)発生したことが影響している。

 ジョゼ・ネヴェス(Jose Neves)会長兼最高経営責任者(CEO)は、「20年は当社のプラットフォームが試される年となったが、高度な機能性と運営力によってラグジュアリーECにおけるリーディングカンパニーとしての地位を確固たるものにできた。また戦略的なパートナーシップ契約を締結しており、ラグジュアリー業界のプラットフォームとしてさらに発展できるものと確信している」と語った。

 この“戦略的パートナーシップ契約”とは、同社が中国最大手EC企業のアリババ(ALIBABA)、そして「カルティエ(CARTIER)」などを擁するコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)と11月5日に締結した契約を指している。アリババとリシュモンはファーフェッチに3億ドル(約327億円)ずつ出資したほか、ファーフェッチが新たに設立した合弁会社ファーフェッチ・チャイナ(FARFETCH CHINA)に2億5000万ドル(約272億円)ずつ出資して、合計25%の株式を取得している。またこの協業とは別に、「グッチ(GUCCI)」などを擁するケリング(KERING)のフランソワ・アンリ・ピノー(Francois Henri Pinault)会長兼CEO一族のプライベートな投資会社アルテミス(ARTEMIS)は、ファーフェッチに対する既存の出資に加えて、新たに5000万ドル(約54億円)の出資をしている。

 提携の一環として、ファーフェッチは3月1日、アリババが運営する高級品に特化したEC「ラグジュアリー・パビリオン(LUXURY PAVILION)」、同アウトレット専用プラットフォーム「ラグジュアリー ソーホー(LUXURY SOHO)」、同越境ECサイト「Tモールグローバル(TMALL GLOBAL)」に、ラグジュアリー専門のショッピングチャネルを開設した。これにより、ファーフェッチに出店するブランドはアリババが抱えるおよそ7億6000万のユーザーにリーチできるようになった。

 ネヴェス会長兼CEOは、「『ファーフェッチ』では約3500のブランドを取り扱っているが、その95%は『Tモール』に出店しておらず、中国でECを展開していなかった。それが7億以上ものユーザーを抱える世界最大のECプラットフォームに出店できることにとても興奮している。コロナ以前にはミラノ、パリ、ニューヨークなどで買い物をしていた中国の消費者にとっても、楽しい買い物体験となるだろう」と述べた。

 一方で、同氏はマーケティングなどの重要性も指摘。「アリババが運営する『Tモール』などのチャネルは、アマゾン(AMAZON)にグーグル(GOOGLE)とインスタグラム(Instagram)を組み合わせたような、巨大なプラットフォームだ。ただ出店しただけではトラフィック増は見込めないので、広告やマーケティングに投資する必要がある。当社としても、最初から大成功できるとは思っていない。トライアンドエラーを繰り返し、さまざまなことを学ばなくてはならないので、多くの人が想像するよりもゆるやかなペースで成長していくものと考えている」と説明した。なお、ファーフェッチは中国本土に約500人から成るチームを置いている。

 ネヴェス会長兼CEOは、ECは今後も伸び続けるものの、小売業界の売り上げ全体の35%程度にとどまり、65%は実店舗によるものになると予測しているという。そうした店舗でのデジタル化を推し進めるべく、ファーフェッチは19年から「シャネル(CHANEL)」と協業し、「未来のブティック(Boutique of Tomorrow)」プロジェクトを行っている。これは販売員用と顧客用の2種類のアプリ、そして試着室に置かれた“コネクテッド・ミラー”を使用して顧客ごとのパーソナル接客を目指すというもので、パリのカンボン通りにある「シャネル」本店の近くに建つ新旗艦店などで導入されている。

 同氏は、「当社のビジョンは、業界のオペレーティングシステム(OS)となること。テクノロジー部分を担うパートナーとなることで、ファッション業界の発展をサポートできると考えている。最も重要な問いかけは、『5~10年後、人々はどのようにしてラグジュアリーブランドで買い物をするだろう?』というもので、それ以外は些末なことに過ぎない」と話した。

 中国市場での事業拡大に当たり、欧州のラグジュアリーコングロマリット2強と提携するというウルトラCを成し遂げたファーフェッチが、次に目を向けているのがビューティ市場だ。同社のステファニー・フェア(Stephanie Phair)最高顧客責任者は、「顧客は当社のプラットフォーム上で、ファッションからビューティまで、欲しい物を全てそろえられたら便利だと考えている。以前から検討していたが、隣接分野だからではなく本腰を入れて取り組みたい。ビューティでは最近AR(拡張現実)などの最新技術が取り入れられているが、当社はテック系のプラットフォーム企業であり、必要に応じて画期的なスタートアップなどとの提携もできる」と述べた。

The post 高級ECのファーフェッチ、20年度は63%増収 次なる一手はビューティ appeared first on WWDJAPAN.com.

高級ECのファーフェッチ、20年度は63%増収 次なる一手はビューティ

 ラグジュアリーECのファーフェッチ(FARFETCH)の2020年12月通期決算は、商品取扱高(GMV)が前期比48.9%増の31億8701万ドル(約3473億円)、売上高は同63.9%増の16億7392万ドル(約1824億円)、調整後EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は前期から7394万ドル(約80億円)改善して4743万ドル(約51億円)の赤字に、純損失は前期の3億7368万ドル(約407億円)の赤字から大幅に悪化して33億3307万ドル(約3633億円)となった。

 20年10~12月期(第4四半期)で見ると、GMVは前年同期比42.8%増の10億5699万ドル(約1152億円)、売上高は同41.3%増の5億4010万ドル(約588億円)、調整後EBITDAは前年同期の1792万ドル(約19億円)の赤字から1037万ドル(約11億円)の黒字に、純損失は前年同期の1億1012万ドル(約120億円)の赤字からやはり大幅に悪化して22億8103万ドル(約2486億円)となった。20年7~9月期(第3四半期)の売上高が同71.3%増だったことを踏まえると、値引きを減らしたことなどによって成長率は鈍化しているものの、四半期ベースで調整後EBITDAが黒字になったのは今回が初めてだ。

 なお、純損失が大きく膨らんでいる理由として、同社の株価が高騰していることが挙げられる。20年4月2日には6.84ドル(約745円)だったが、20年7~9月期(第3四半期)決算を発表した翌日の11月13日には45.67ドル(約4978円)を付けるなどしており、第4四半期には資金調達のために発行した転換社債の公正価格の変動などによる負債が18億9060万ドル(約2060億円)発生したことが影響している。

 ジョゼ・ネヴェス(Jose Neves)会長兼最高経営責任者(CEO)は、「20年は当社のプラットフォームが試される年となったが、高度な機能性と運営力によってラグジュアリーECにおけるリーディングカンパニーとしての地位を確固たるものにできた。また戦略的なパートナーシップ契約を締結しており、ラグジュアリー業界のプラットフォームとしてさらに発展できるものと確信している」と語った。

 この“戦略的パートナーシップ契約”とは、同社が中国最大手EC企業のアリババ(ALIBABA)、そして「カルティエ(CARTIER)」などを擁するコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)と11月5日に締結した契約を指している。アリババとリシュモンはファーフェッチに3億ドル(約327億円)ずつ出資したほか、ファーフェッチが新たに設立した合弁会社ファーフェッチ・チャイナ(FARFETCH CHINA)に2億5000万ドル(約272億円)ずつ出資して、合計25%の株式を取得している。またこの協業とは別に、「グッチ(GUCCI)」などを擁するケリング(KERING)のフランソワ・アンリ・ピノー(Francois Henri Pinault)会長兼CEO一族のプライベートな投資会社アルテミス(ARTEMIS)は、ファーフェッチに対する既存の出資に加えて、新たに5000万ドル(約54億円)の出資をしている。

 提携の一環として、ファーフェッチは3月1日、アリババが運営する高級品に特化したEC「ラグジュアリー・パビリオン(LUXURY PAVILION)」、同アウトレット専用プラットフォーム「ラグジュアリー ソーホー(LUXURY SOHO)」、同越境ECサイト「Tモールグローバル(TMALL GLOBAL)」に、ラグジュアリー専門のショッピングチャネルを開設した。これにより、ファーフェッチに出店するブランドはアリババが抱えるおよそ7億6000万のユーザーにリーチできるようになった。

 ネヴェス会長兼CEOは、「『ファーフェッチ』では約3500のブランドを取り扱っているが、その95%は『Tモール』に出店しておらず、中国でECを展開していなかった。それが7億以上ものユーザーを抱える世界最大のECプラットフォームに出店できることにとても興奮している。コロナ以前にはミラノ、パリ、ニューヨークなどで買い物をしていた中国の消費者にとっても、楽しい買い物体験となるだろう」と述べた。

 一方で、同氏はマーケティングなどの重要性も指摘。「アリババが運営する『Tモール』などのチャネルは、アマゾン(AMAZON)にグーグル(GOOGLE)とインスタグラム(Instagram)を組み合わせたような、巨大なプラットフォームだ。ただ出店しただけではトラフィック増は見込めないので、広告やマーケティングに投資する必要がある。当社としても、最初から大成功できるとは思っていない。トライアンドエラーを繰り返し、さまざまなことを学ばなくてはならないので、多くの人が想像するよりもゆるやかなペースで成長していくものと考えている」と説明した。なお、ファーフェッチは中国本土に約500人から成るチームを置いている。

 ネヴェス会長兼CEOは、ECは今後も伸び続けるものの、小売業界の売り上げ全体の35%程度にとどまり、65%は実店舗によるものになると予測しているという。そうした店舗でのデジタル化を推し進めるべく、ファーフェッチは19年から「シャネル(CHANEL)」と協業し、「未来のブティック(Boutique of Tomorrow)」プロジェクトを行っている。これは販売員用と顧客用の2種類のアプリ、そして試着室に置かれた“コネクテッド・ミラー”を使用して顧客ごとのパーソナル接客を目指すというもので、パリのカンボン通りにある「シャネル」本店の近くに建つ新旗艦店などで導入されている。

 同氏は、「当社のビジョンは、業界のオペレーティングシステム(OS)となること。テクノロジー部分を担うパートナーとなることで、ファッション業界の発展をサポートできると考えている。最も重要な問いかけは、『5~10年後、人々はどのようにしてラグジュアリーブランドで買い物をするだろう?』というもので、それ以外は些末なことに過ぎない」と話した。

 中国市場での事業拡大に当たり、欧州のラグジュアリーコングロマリット2強と提携するというウルトラCを成し遂げたファーフェッチが、次に目を向けているのがビューティ市場だ。同社のステファニー・フェア(Stephanie Phair)最高顧客責任者は、「顧客は当社のプラットフォーム上で、ファッションからビューティまで、欲しい物を全てそろえられたら便利だと考えている。以前から検討していたが、隣接分野だからではなく本腰を入れて取り組みたい。ビューティでは最近AR(拡張現実)などの最新技術が取り入れられているが、当社はテック系のプラットフォーム企業であり、必要に応じて画期的なスタートアップなどとの提携もできる」と述べた。

The post 高級ECのファーフェッチ、20年度は63%増収 次なる一手はビューティ appeared first on WWDJAPAN.com.

リセールECの米「スレッドアップ」が上場 新品を買うときのような喜びを古着にも

 中古衣料ECの米スレッドアップ(THREDUP)は26日、ニューヨークのナスダック・グローバル・セレクト・マーケット(NASDAQ Global Select Market)に新規上場した。14ドル(約1500円)で公開し、終値は約1.5倍の20ドル(約2100円)。これにより、スレッドアップの時価総額は18億ドル(約1900億円)となった。

 スレッドアップは2009年に創業。ファッション産業による環境負荷の軽減を目標に、中古品売買の手間とリスクを効率化したオンライン転売システムを持つ。自社サイトでは3万5000ものブランドを取りそろえ、最大90%オフの価格で販売。パッケージにもこだわり、手元に商品が届いた時の喜びが新品同様となるよう気を配ったサービスを提供している。米百貨店のメイシーズ(MACY'S)やJ.C.ペニー(J.C.PENNY)とパートナーシップを結び、売り手と買い手の橋渡し役を通して循環型ファッションの定着を目指す。

 ジェームス・ラインハルト(James Reinhart)最高経営責任者兼共同創業者は、「新品を売ることが主流のファッション業界に新しいカテゴリーを構築するためには多大な時間を要する。われわれはこの10年間、消費者の行動に変化を呼びかけ、どのように業界を革新できるかを理解してもらうことに重きをおいた。これからの10年、新品の商品は長く使われることを前提に、より品質と価格の高いものが増えると考えている。そうしたビジネスによって中古品も増えるだろう。何か変化を起こすためには、マインドのシフトは必須だ。目先のことに対処するだけでなく業界の全体の傾向を抑え、消費者と市場に新しい提案を続けたい」と語った。

 パトリシア・ナカシュ(Patricia Nakache)会長は、「創業以来、1億点を超える中古衣料品を扱ってきた。21年現在550万点を抱えているが、年末までに650万に達する見込み。1日当たり10万点を超える処理能力も今後さらに拡大するだろう。買い手から売り手、RaaS(販売ノウハウとIT技術を掛け合わせたサービス)パートナーにサービスを提供すべく、急速に能力を高めている。スレッドアップはお客さま優先でビジネスを展開している分、短期的な成長はむずかしい。しかし、長期的影響を与えることに期待している」と述べた。

 近年2次流通(リセール)の分野への関心は、サステナビリティの観点からZ世代を中心に高まっている。グローバルデータ・マーケット・サーベイ(GlobalData Market Survey)は、同分野の市場価値は19年の70億ドル(約7600億円)から、24年には360億ドル(約3兆9400億円)に達すると予想する。スレッドアップのほかにも、ラグジュアリーブランドの中古品を扱う会員制ECのザ・リアルリアル(THE REALREAL)やフリマアプリのポッシュマーク(POSHMARK)などが上場している。スレッドアップの直近の年間売り上げは前期比14%増の1億8600万ドル(約200億円)で純損失は4700万ドル(約52億円)、アクティブユーザーは124万だった。

The post リセールECの米「スレッドアップ」が上場 新品を買うときのような喜びを古着にも appeared first on WWDJAPAN.com.

「H&M」に中国が猛反発、大手ECサイトらが取り扱い中止 ウイグル問題を巡って

 中国の新疆ウイグル自治区で生産されたコットンの調達を中止したH&Mヘネス・アンド・マウリッツ(H&M HENNES & MAURITZ以下、H&M)が、中国側からの激しい反発に合っている。

 3月24日夜(現地時間)の時点で、中国最大手EC企業のアリババ(ALIBABA)が運営するECサイト「Tモール(TMALL)」や「タオバオ(淘宝)」のほか、同第2位のEC企業JDドットコム(JD.COM)や同第3位のEC企業ピンデュオデュオ(拼多多、PINDUODUO)が運営するECサイトなどから「H&M」の商品が姿を消した。これらのプラットフォームで同ブランドを検索しても、結果はゼロとなっている。また「H&M」のモバイルアプリも、中国の大手アプリストアなどから削除されているという。

 こうした措置が一時的なものなのか、恒久的なものなのかは不明だが、現在のところ中国国内にある「H&M」の店舗は通常通り営業している模様だ。しかし中国企業によるナビゲーションシステム上では、同ブランドの店舗情報が表示されなくなっている。

 H&Mが、中国による少数民族ウイグル人への強制労働問題などが報じられたことを受け、新疆ウイグル自治区に工場を持つ中国企業との取引停止や、同自治区で生産された綿花の調達の中止などを発表したのは2020年9月のこと。しかし3月24日に、中国共産党の青年組織である中国共産主義青年団が、中国版ツイッターのウェイボー(Weibo)に「新疆綿について虚偽のうわさを流してボイコットしておきながら、中国で儲けようだって?それは甘い考えだ」とH&Mの声明とともに投稿したことが、今回の対応のきっかけになったと見られている。

 H&M中国法人は24日夜、「H&Mグループはグローバルなサプライチェーンを常に透明かつオープンに管理してきており、経済協力開発機構(OECD)による『責任ある企業行動に関するガイドライン』など、当グループが掲げるサステナビリティに関するコミットメントに世界中のサプライヤーが準じることを確かにしている。われわれは、いかなる政治的立場も代表しない」との声明をウェイボーに投稿した。

 なお、中国における「H&M」のブランドアンバサダーを務めていた中国出身の俳優ホアン・シュアン(Huang Xuan)とビクトリア・ソング(Victoria Song)は、「中国の信用を傷つけようとする全ての試みに断固として反対する」として、同ブランドとの契約を解除したことを発表した。

 新疆綿の使用中止を発表しているほかの企業としては、「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」や「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」などを擁するPVHコープ(PVH CORP)、「ザラ(ZARA)」を擁するインディテックス(INDITEX)、ナイキ(NIKE)、アディダス(ADIDAS)、ギャップ(GAP)、パタゴニア(PATAGONIA)、「ユニクロ(UNIQLO)」や「ジーユー(GU)」を運営するファーストリテイリングなどが挙げられる。中国ではこれらの企業に対しても反発が広がっており、ブランドアンバサダーを務める中国の芸能人らの降板が相次いでいる。

 株価にも影響が出ており、3月25日の香港証券取引所では中国のスポーツウエアブランドなどの株価が上昇する一方で、アディダスは前日比5.7%安、ナイキは同3.4%安、H&Mは同1.8%安だった。

 近年、消費者の意識の高まりなどによって企業は責任ある行動をいっそう求められるようになっており、ファッション業界も環境および社会的な問題に取り組んでいるが、その中には強制労働や低賃金での労働といった人権問題も含まれている。しかし多くの企業にとって、コロナ禍の影響からも一足早く回復している中国の巨大な消費市場は非常に重要な存在だ。厳しい小売環境の中、各社は難しい舵取りを迫られている。

The post 「H&M」に中国が猛反発、大手ECサイトらが取り扱い中止 ウイグル問題を巡って appeared first on WWDJAPAN.com.

2030年、ラグジュアリーの形はどうなっている? リセールやレンタル、“シンクフルエンサー”に注目

 コンサルティング会社のベイン&カンパニー(BAIN & COMPANY)と、持続可能な取り組みを積極的に行うラグジュアリーブランドにバタフライマーク認証を付与しているポジティブ ラグジュアリー(POSITIVE LUXURY)は3月10日、“LuxCo 2030:サステナブルなラグジュアリーの展望(LuxCo 2030: A Vision of Sustainable Luxury)”と題したリポートを公開。成功しているサステナブルなラグジュアリーブランドの2030年の様子を予測した。

 ベイン&カンパニーのマッテオ・カペッリーニ(Matteo Capellini)=アソシエイト・パートナーは、「ブランドがサステナビリティに取り組む上で最も難しいことの1つが、短期目標と長期目標の橋渡しを行って総合的に考えることだ。このリポートが、ブランドや経営者が行動を起こすきっかけになればいい」とコメントした。

 リポートは、以下の5つの戦略的要素から成る“サステナビリティ ・チャンピオン”こそが、各ブランドが取り入れるべき指標であるとしている。

1.ブランドの目的
2.成長性を売上高と切り離して考えること
3.100%透明かつ追跡可能なサプライチェーン
4.インクルーシブであること
5.サステナビリティを根本に据えた事業

 ラグジュアリーブランドが将来的に成長していく上で、思考の転換は必須だ。株主たちも成長性と売上高を切り離して考える必要があると認識しており、リポートでは「少ない方がより確実に豊かである」として、大量生産に頼らない成長を促している。

 同じ品質の製品を繰り返し生産することで利益を得る手法は、サステナビリティに逆行する。そこで、リセールやレンタルといった循環型ビジネスモデルを有効戦略として掲げることが重要となる。2030年には、ラグジュアリーブランドは自社商品をリセールすることで利益率を40%上げられるようになるという。同様に、リセールを行うだけで商品1つ当たりの売り上げも最大65%増える可能性があるとしている。

 一方で、レンタルビジネスも同様の利益を生み出すことができる。1点のラグジュアリー製品を貸し出すごとに商品1つ当たりの利益率は高まり、同時に高額な商品を購入することのできない新規顧客層の獲得にも繋がる。

 また、インクルーシブを持続可能なラグジュアリーの支柱とするためには、より多様性のある役員を選出することや、単にSNSで商品のPRを行うだけでなく、ブランドと顧客のパイプ役として、メッセージが顧客に響いていないことをブランド側に伝える役目を持つ “シンクフルエンサー(think-fluencers)”、つまり“考えるインフルエンサー”たちと提携することも重要だ。

 リポートでは、2030年に向けた“サステナブルな10年”はすでに始まっていると指摘した上で、1990年代半ばから2010年代初頭に生まれたZ世代の成長にも焦点を当てている。成人したZ世代は環境や社会にいい影響を与えるブランドを評価し、そうでないブランドからは離れていくとされている。新型コロナウイルスのパンデミックによって、こうした購買行動の変化に拍車がかかる形となった。

 また、意識の高い顧客向けに作成されたサプライチェーン・マップには、洋服やアクセサリーに使用されているすべての素材が細かく明記してあり、こうした取り組みはサプライチェーンの地域化、デジタル化、縦割り化などのトレンドを抑えた将来のビジョンとしても注目されている。そして、2030年には循環型ビジネスや使用済み製品の取り扱いに関する詳細な情報の提供も主流になると考えられている。

 また、かつて成功の指標とされていた財務実績は、現在ではサステナビリティに関する評価指標であるESGと合わせて見るべきものだとも考えられている。最近は財務上の利益が高すぎる場合、環境や社会に対する取り組みが引き合いに出されて詳しい調査が実施されており、英国の環境監査委員会(Environmental Audit Committee)が、英ファストファッション「ブーフー(BOOHOO)」に対して繰り返し調査を実施していることなどが例に挙げられる。

 今回のリポートでは、全体を通して“総合的”と言う言葉がキーワードとなっており、ベイン&カンパニーのクローディア・ダルピツィオ(Claudia D’Arpizio)=シニア・パートナーは、「ラグジュアリー業界におけるサステナビリティへの取り組みは、ブランドとしての目的とクリエイティブな展望を再定義することから始まる」とコメントしている。

The post 2030年、ラグジュアリーの形はどうなっている? リセールやレンタル、“シンクフルエンサー”に注目 appeared first on WWDJAPAN.com.

ラルフ ローレンが米国で“定額レンタル”サービスを開始 変化する消費動向に合わせて

 ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)によるウィメンズブランド「ローレン ラルフ ローレン」が、レンタルとサブスクリプションサービス「ザ・ローレン・ルック(The Lauren Look)」を開始する。BtoB向けにレンタル事業の管理から必要なテクノロジーなどを提供するカースル(CaaStle)と提携を結んだ。ラルフ ローレンが商品を提供し、カースルは衣類のクリーニングや配送管理を行う。同サービスはブランド公式サイトからアクセス可能で、北米限定だ。

 レンタルは月額125ドル(約1万3500円)からで、ドレスからトップス、ジャケットなど幅広いカテゴリーのアイテムを600種以上そろえた。5月までに新たに170アイテムを追加する予定だ。また、サイズインクルーシブのメンバーシップもある。ユーザーが選んだお気に入りのアイテムからキュレートした4着をまず発送し、着用期間後は割引価格で販売、または新たなアイテムと交換手続きを行う。割引は基本的に30%前後を目安とするが、アイテムの種類やシーズンによって異なるという。ウェブサイトではアイテムの紹介に加えて、スタイリストによる着回しのアドバイスも提供する。送料とクリーニング費用は無料だ。

 レンタル回数に上限を設け、それに達したアイテムは貧困状態にある人々に洋服を提供する非営利団体「デリバリーイング・グッド(Delivering Good)」に寄付する。購入して数回しか着用されない洋服の使用期間を延長して無駄を減らすことに加えて、使用後のプログラムも導入することで、洋服の循環性を高める取り組みだ。デイビッド・ローレン(David Lauren)=ラルフ ローレン チーフ・イノベーション・オフィサーおよび取締役副会長は、「『ザ・ローレン・ルック』は、共有経済(シェアリング・エコノミー)への関心の高まりに注目し、洋服の消費についてこれまでにない視点を加える。新しい消費モデルの探究につながる」とコメント。

 同氏はまた、新しい顧客層の呼び込みにも意欲的だ。「レンタルに興味を持っているのは、若者が中心だ。コレクションから購入する金銭的余裕を持ちづらい層なので、需要が合うはず。これまではCDや映画を所有し、車も気軽に購入していた。しかし現代のオンデマンドおよびレンタル事業はビジネスの在り方に影響を与え、カルチャーを変えてきた。若者は今、頻繁に自分が何者であるかについて考え、アイデンティティーを変化させている。そういうときにレンタルは、自由を与えてくれる。ものを持たなくなった層にアプローチする有効な手段だ」と語った。

 洋服のオンラインレンタル市場は、2019年に12億6000万ドル(約1300億円)に達し、25年までに20億8000万ドル(約2200億円)に拡大すると予想されている。環境に優しい購買を意識し、ものを所有する傾向が薄いミレニアル世代の中でも、細かく変わるファッショントレンドに対応するための手段としても需要が高まっている。ほかにも、「ヴィンス(VINCE)」「レベッカ テイラー(REBECCA TAYLOR)」「ニコル ミラー(NICOLE MILLER)」、グウィニー・ビー(GWYNNIE BEE)、ブルーミングデールズ(BLOOMINGDALE'S)、アン テイラー(ANN TAYLOR)といったブランドや企業がレンタル事業に取り組んでいる。

The post ラルフ ローレンが米国で“定額レンタル”サービスを開始 変化する消費動向に合わせて appeared first on WWDJAPAN.com.