「エス・テー・デュポン(S.T. DUPONT)」は4月2日、”新コンセプトストア”として「エス・テー・デュポン 銀座フラッグシップ」をグランドオープンした。銀座7丁目に移転したその新店舗は、150年以上にわたるブランドの歴史と現在位置の双方を空間に落とし込んでいる。ウィメンズバッグコレクションを豊富に取りそろえ、新規客へのアプローチも開始する。
新コンセプトとは?
銀座フラッグシップを大解剖
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「エス・テー・デュポン」がうたう“新コンセプト”とは、「時を超えたエレガンス」と「革新の精神」を融合させたもの。伝統を受け継ぎながら未来へ進む、同ブランドのビジョンを体現している。
銀座店の外壁は、四角形を組み合わせた“ダイヤモンドヘッド”のギヨシェ彫り(彫金細工から派生した、金属に規則的な模様を彫る技巧)が目を引く。このギヨシェ彫りは、ブランドのシグネチャーであるライターにもあしらわれているパターン。天井や床など店舗の随所に取り入れ、銀座店全体をグラフィカルな空間に仕上げている。ライターの炎と、もう一つの主力商品であるペンのインクをイメージした深いブルーの什器とともに、ゲストを「エス・テー・デュポン」の世界へ誘う。
店内の向かって右側には、ブラックやグレー、ホワイトを基調としたメンズおよびユニセックスのレザーグッズを、左側には今季から拡充するというウィメンズバッグを配置した。銀座店限定カラーの“Xバッグ バゲットバッグ ライトブルー”など、軽やかな色使いのハンドバッグが、「エス・テー・デュポン」の新たな側面をアピールする。ブルーとオレンジの壁は、ライターのツインフレーム(二重炎)の色合いに基づいており、明るいブルーからネイビーへ、ソフトなオレンジから鮮やかなイエローへ移ろうグラデーションが、火がともる瞬間を品よく再現している。
店内奥には、銀座店限定の“蒔絵”コレクションのライターや筆記具など、フランスと日本のクラフツマンシップをたたえるエクスクルーシブコレクションが広がる。ライターのメタルからバッグのレザーへ移行する空間構成は、同ブランドが「金細工職人」と「トランク職人」の2つの顔を持つことを表現している。アラン・クルヴェ(Alain Crevet)=エス・テー・デュポン社長は、「銀座店は、単なる店舗ではなく、『エス・テー・デュポン』のエレガンスとクラフツマンシップを体験できる空間」と位置付ける。
同店において特筆すべきは、日本の伝統工芸の一つ、和紙をあしらった逆ピラミッド型の照明だ。メタルをダイヤモンド型に組み合わせた天井が、光を美しく反射させる。この空間デザインは、伝説的な“1941ライター”のダイヤモンドパターンに着想しながらも、日本の職人技への敬意を示したものであり、「エス・テー・デュポン」の伝統と日本文化の調和を印象付けている。銀座の新コンセプトストアの誕生は、フランス・パリ、香港、中国・杭州、韓国・ソウルに続くグローバル施策の一環であり、ブランドの成長と店舗体験へのこだわりを示している。この“新コンセプト”が今後、世界中の「エス・テー・デュポン」店舗の指針になると期待する。
ブランドのコアを受け継ぐ
ウィメンズバッグ
リヴィエラ スモール
俳優オードリー・ヘプバーン(Audrey Hepburn)のために製作した元祖“リヴィエラ”をアップデートする形で誕生した。バッグ底のコンパートメントが、裏地の“シークレットポーチ”に生まれ変わっている。ポーチは、ギヨシェ彫りを施した“ライターパドロック”を開けることで使用可能。バッグの外側はレザー・ワーキング・グループ(以下、LWG)認証のフルグレインカーフレザー、内側はフルグレインカウレザーで製作した。銀座店と公式EC限定で販売中。
Xバッグ スモール
レザーバッグの前面に大きく描いた“X”のデザインは、ライターやペンにあしらっているギヨシェ彫りにインスピレーションを受けたもの。3Dのエンボスを施すという斬新な試みで伝統を再解釈した。LWG認証のフルグレインカーフレザーをぜいたくに使用したバッグの本体に、パラジウムの金具がエレガントなムードを添えている。ストラップは調整可能。銀座店および公式ECで限定販売している。
アペックス ミニトランク
「エス・テー・デュポン」創業者のシモン・ティソ・デュポン(Simon Tissot Dupont)がかつて、王侯貴族のために作っていたトランクケースが着想源。150年の歴史が紡ぐ伝統に、デザインやカラーバリエーションで、さまざまなシーンで着用できる汎用性を加えた。外側はLWG認証のイタリア製のフルグレインレザー、内側はグレーのコットンライニングを使用。男女を問わず着用できるユニセックスのバッグとして打ち出す。
“特別な人”と共に歩んだ150年の歴史
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「エス・テー・デュポン」は1872年、シモン・ティソ・デュポンにより創業した。ナポレオン3世のフォトグラファーとして活躍していた彼は、70年に勃発した普仏戦争でスタジオが全焼し失業。その当時滞在していた村がレザーを製造していたため、トランクや書類ケースをデザインするようになった。
ナポレオン3世の皇后ウジェニー・ド・モンティジョ(Eugenie de Montijo)を代表格に、デュポンのトランクは、皇帝や皇后をはじめとする上流階級の間で評判になった。1947年には、英・エリザベス女王の結婚祝いとして特注のトラベルケースも製作している。その後、1941年にパリを訪れたインド・パティアラのマハラジャから、「100人の妻のために100個のクラッチバッグ、そしてバッグに合うゴールドのライターを100個作ってほしい」と依頼があり、ライターの製造もスタート。73年には、ジャクリーン・ケネディ(Jacqueline Kennedy)から、「特注ライターに合うペンが欲しい」とリクエストを受け、ペンの製作も始まった。アラン・クルヴェ=エス・テー・デュポン社長は、「顧客の要望に応える形で、これら主力アイテムが誕生した」とブランドの礎を語る。
「エス・テー・デュポン」の歴史を語る上で、エリザベス女王やジャクリーン・ケネディ以外にも、欠かせない著名人がいる。ハリウッド黄金期を彩った俳優オードリー・ヘプバーンだ。53年に、彼女のためにデザインしたバッグ“リヴィエラ”は、底にコンパートメントを隠すという斬新なアイデアが特徴だった。このデザインは、今季登場した新たな“リヴィエラ”にも、裏地に施した“シークレットポーチ”として引き継がれている。
ほかにも、マリリン・モンロー(Marilyn Monroe)やパブロ・ピカソ(Pablo Picasso)、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)、レオナルド・ディカプリオ(Leonard DiCaprio)など、「エス・テー・デュポン」は世界的な著名人とともに歴史を歩んできた。「特別な人のために特別なものを」というモットーのもと、今日も“真のラグジュアリー”を届けている。
本国社長が見据える
これからの「エス・テー・デュポン」
WWD:今季、ウィメンズバッグを拡充した。レザーバッグはブランドの原点だが、どのようにヘリテージに新しさを加えたのか?
アラン・クルヴェ=エス・テー・デュポン社長(以下、クルヴェ):「エス・テー・デュポン」にとって、レザーグッズは単なる商品カテゴリーではなく、ブランドのDNAそのもの。今季のウィメンズバッグは、ブランドのルーツに立ち返った一方、現代の女性のためにデザインしている。例えば、“リヴィエラ”のコンパートメントは、より機能的な“シークレットポーチ”に。“Xバッグ”や“アペックス”シリーズは、ギヨシェ彫りや“ファイヤヘッド”モチーフといったブランドのアイデンティティーをデザインに取り入れた。素材選びから仕上げまで、全ての工程にクラフツマンシップが息づいており、時を超えて愛される“オブジェ・ド・デジール(憧れの対象)”になることを目指している。
WWD:どのような女性をターゲットとしているか?
クルヴェ:「エス・テー・デュポン」のウィメンズバッグは、ジャクリーン・ケネディやオードリー・ヘプバーンなど、既存の枠にとらわれず、自らの手で道を切り開く女性に愛されてきた。これからも、自分の個性を大胆に表現する人にふさわしいアイテムであり続けたい。また、ウィメンズバッグとうたっているが、どのバッグもユニセックスなデザインを採用している。より広い層にアプローチできると期待している。
WWD:日本市場をどのようなマーケットと位置付けるか?
クルヴェ:日本は長年、「エス・テー・デュポン」にとって重要な市場だ。売り上げはもちろん、クラフツマンシップへの深い敬意が私たちの価値観と一致していると感じている。コレクターの間で変わらぬ人気を誇るライターや筆記具、そして美意識と機能性に重きを置く日本市場は、レザーグッズのポテンシャルも秘めているだろう。今後も、日本市場に対するコミットメントを緩めることなく、顧客に寄り添っていけたらと思う。
WWD:今後の目標は?
クルヴェ:今後の戦略の核となるのは、グローバル規模のリテール展開の強化、そして店舗を通した顧客体験の提供だ。量より質を重視し、「エス・テー・デュポン」の世界観を深く味わえる空間にこだわりたい。このリテール展開と連動し、ウィメンズコレクションにも力を入れていく。現代を生きる洗練された女性のために、自由で型にはまらないスタイルを提案していきたい。そして、その製造過程は、環境に配慮されたものであるべきだと考えている。
営業時間:11:00〜19:30
定休日:なし(年末年始を除く)
住所:東京都中央区銀座7-6-2 1階
エス・テー・デュポン
03-5549-7420
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