ツク之助 (@tukunosuke )

ホーキング博士亡くなられたんですね。 「知識における最大の敵は無知ではなく、知っていると錯覚すること」という言葉をいつも心の片隅に置いてます。

とん吉&藍染暮らし (@nakamuratomie )

行きつけの皮膚科へ。この症状は乾燥が原因だと前々から言われてる。「今の時期はとにかく乾燥するでしょ」と先生。わかってまーす、と無言で抵抗するも「失礼だけど歳もあるからね」だと。いつもながら口悪し(笑)

ブックファン95 (@bookfun95 )

オゾン(O3)を利用して、不純物等の除去と漂白をしたタオル。オゾンは水道水やプールの殺菌でも使用され低濃度だと全く問題のないもの。自然分解がはやく有害な残留物も残らない。

舞台は人間国宝第一号の富本憲吉氏の生家。陶芸家を育てた空間にただ浸る、贅沢な時間。[うぶすなの郷 TOMIMOTO/奈良県生駒郡]

奈良県生駒郡OVERVIEW

『うぶすなの郷 TOMIMOTO』の取材に訪れたのは、小雪が舞う冬の日でした。気温は氷点下。凍える取材班を、この宿は温かく迎え入れてくれました。建物、サービス、料理、全てに満ち満ちている温もり。それが際立って見えたのは、何も寒さばかりのせいではないでしょう。名宿は人の心を溶かす――ここで時を過ごすにつれて、そんな言葉が思い出されます。

ここ『うぶすなの郷 TOMIMOTO』は、陶芸家・富本憲吉氏の生家であり、2012年まで富本憲吉記念館として使われていた建物を改装してできた宿です。もちろん、ゲストがこの宿に向ける興味の先には、人間国宝第一号でもある偉大な陶芸家の存在があることでしょう。巨匠の人生に触れ、その創作意欲を育んだ空間に身を置くことは、ファンならずとも有意義な体験に違いありません。

しかし、この宿に滞在し心を溶かす時間を過ごした後では、ゲストにとって富本憲吉氏の生家であるという情報は、この宿の一側面に過ぎないものとなっているはず。それほどまでに、多彩な魅力が潜んでいるのです。著名人の知名度にあやかった「出オチ」の宿ではなく、十分な魅力と実力を兼ね備えた名宿。その魅力をひとつずつ紐解いてみましょう。

Data

住所: 〒639-1061 奈良県生駒郡安堵町大字東安堵1442番地 MAP
電話:0743-56-3855 

滞在の目的は“何もしないこと”。ただ空間に浸り、心静かに過ごす贅沢。[うぶすなの郷TOMIMOTO/奈良県生駒郡]

客室「日新」の和室。窓の向こうには手入れの行き届いた日本庭園が広がる。

奈良県生駒郡重厚な古民家に心を込めて手を入れることで、温かい宿として蘇る。

奈良駅から車で30分ほど。安堵町というなんとも穏やかな名前の町に入り、細い路地をしばし走ると、住宅街の一角に突如、豪壮な門構えが見えてきました。ここが『うぶすなの郷 TOMIMOTO』。「富本憲吉氏の生家」という事前情報から想像していたよりも、ずっと大規模な建物です。外から眺めた限りでは、圧倒されるような存在感がある印象でした。

ところが門をくぐると、ふっと空気が変わります。建物自体の重々しい存在感は変わらないものの、どこか両手を広げて来客を迎えるような温かさが感じられたのです。その温かさの源を探しつつ、中へと足を進めました。

まずは入口右手の建物へ。ここは、記念館時代は本館として使われていた大正時代築の建物。現在は柱や梁を残しつつ、床を板張りに変えてレストランとして使っています。窓には千鳥格子、行灯(あんどん)風の柔らかな照明、正面にある窓の外には手入れの行き届いた日本庭園。一見すると、凛とした佇まいです。

しかし、もっとクローズアップして見るとどうでしょう。柱には使い込まれた傷があえて残されています。庭園には庭師の遊び心なのか、瓦で描いた花模様が埋め込まれています。生けられている花は、庭に咲く野草でしょうか。設えの一つひとつに人の営みの痕跡があること、もてなしの心が込められていること。そう、それらがこの古民家を、ただの「箱」ではなく、生きた「宿」に変えているのです。

地面に瓦で描いた花模様。ただ整備するだけではない「人の息吹」が温もりを添える。

かつての母屋はレストランに。一般客の利用の他、宿泊者の朝食の会場ともなる。

奈良県生駒郡落ち着きと快適さを両立する和モダンスタイルの客室。

客室は2室。元が民家のため趣は異なりますが、それぞれが魅力を放っています。
まずは「日新」と名づけられた二間続きの客室。母屋から続く離れのような位置にあり、手前の和室はかつて富本憲吉氏の居室だったといいます。床の間、飾り障子、縁側、窓の向こうの日本庭園。極めてシンプルな和室ですが、アイデアを練る本丸として、そして工房として人間国宝の創作を支えたこの部屋。ファンならずとも、何か感じるものがあるに違いありません。なお、襖の絵は、富本憲吉氏の直筆画です。美術館でガラスケースに入れられてもおかしくないような名画が、そのままにされているというのは、なんとも贅沢な話です。

一方、奥のベッドルームは宿のオープンに当たって設えられた洋室。ゆったりとした時間を過ごすのは古式ゆかしい和室、しっかりと身体を休めるのは近代的な洋室。この2部屋の使い分けは、落ち着きと快適性を両立するための英断といえそうです。ベッドルームの奥には、日本庭園を臨む陶板の半露天風呂が設えられています。

もうひとつの客室の名は「竹林月夜」。大正時代の蔵を改装したメゾネットタイプで、モダンなリビングルームの他、和室、ツインとセミダブルのベッドルーム、そして檜が香る半露天風呂が設えられています。洋室でありながらどことなく漂う和の風情、モダンな中に垣間見える蔵の面影。和洋新旧が混在しながら、独特な穏やかさを醸し出しているのがこの部屋の魅力です。窓の外には育ち始めたばかりの竹林。決して過剰ではないものの、必要なものはすべて揃う。そんな絶妙なさじ加減が、この特異性を生んでいるのかもしれません。

「年に一度だけ揃うというご家族がこの部屋をご利用になった時、滞在中一歩もこの部屋からお出になりませんでした。我が家のような寛ぎを感じて頂けたのでしょうか」と話すマネージャーの巽千加代氏の言葉が印象的でした。

「日新」のベッドルーム。奥には陶板で作られた半露天風呂がある。

「竹林月夜」のリビングルーム。名前のとおり、窓の外には育ち始めたばかりの竹林が広がる。

檜が香る半露天風呂にはゲストの到着に合わせて湯が満たされる。

奈良県生駒郡木々に囲まれ、偉大な陶芸家の思考をたどる静かな時間。

隣町に法隆寺や太子道(たいしみち)がありますが、それ以外には目立った観光地もないエリア。600坪以上ある敷地内にも、あえて余計な施設は造られていません。「ここ自体を目的地としてもらうこと。旅の途中に身体を休める宿ではなく、“何もしない”時間そのものを楽しんで頂く旅です」と巽氏。

考えてみると「何もしない」という選択は、そう簡単ではありません。特に都会で生きる人にとっては、2~3日の旅行で急に生活のペースを変えることは難しいことでしょう。観光地を巡り、名産品を食べ、そうして短い旅行を少しでも充実させようと思うのが人情です。時には宿に滞在しながら、インターネットやメールをチェックしてしまうことだってあるでしょう。それでも山下支配人は、あえて「何もしない」時間を提案します。ただ和室に佇み、窓の外を眺める。何も考えずに湯に浸かり、心の垢を落とす。そんな贅沢な時間の使い方こそが、ここ『うぶすなの郷 TOMIMOTO』の真骨頂なのです。

今は裸の枝垂れ桜ですが、見事な枝振りが春の姿を想像させます。庭の大くすのきには、富本憲吉氏の代表的な創作モチーフであるテイカカヅラが絡みついています。慌ただしく過ごすとつい見過ごしてしまいそうな光景が、この宿の随所にきっと潜んでいます。気付けば窓際に座っていて、かなり時間が経ったような気がします。そもそも部屋に時計が置かれていないことに気付いたのは、部屋に入ってもうずいぶん経ってからでした。

庭の大くすのきには、テイカカヅラが絡む。富本憲吉氏の創作意欲を刺激した光景。

石碑には「樹を楽しむ 陶器を見るに似たり」という富本憲吉氏の言葉が刻まれる。

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住所:〒639-1061 奈良県生駒郡安堵町大字東安堵1442番地 MAP
電話: 0743-56-3855