ブックファン95 (@bookfun95 )

マイクロファイバーは、直径1マイクロメーター(1/1000mm)の超極細の化学繊維です。高い吸水性と乾燥性、そして細い繊維が細かな汚れをかき出すため、その高い洗浄性に注目されている。

土地の息吹まで汲み取り、自身の技とする料理人・川田智也。その高潔な精神が生む和魂漢才の料理とは?[DINING OUT KUNISAKI with LEXUS/大分県国東市]

常に自然体を崩さぬ川田智也シェフ。その瞳は常に、物事の奥深くの本質を見つめる。

大分県国東市

2018年5月26日(土)、27日(日)の2日間限定で開催される『DINING OUT KUNISAKI with LEXUS』。今回の舞台は、山岳信仰と神仏習合の宗教観を育んだ緑深き場所、大分県国東半島です。そしてこの静謐な土地、巨岩と石仏に囲まれる独特な空気感に触れるべく設定されたテーマは「ROCK SANCTUARY―異界との対話」。この地に棲む“何者か”との対話を通し、未知なる精神体験を生むこと。形はなくとも心に残る、深遠なるテーマと言えるでしょう。

そんなテーマに挑む料理人は、いま食通の間で話題に上らぬ日はないシェフ・川田智也氏。2017年2月に開いた『茶禅華』は開店わずか9ヶ月でミシュラン2つ星獲得。しかしそんな偉業ばかりではなく、この場所、このテーマにピタリとはまる数々の符合が、『DINIG OUT』の成功を予感させてなりません。まるで惹かれ合うように、国東を訪れた川田シェフ。そこで目にしたもの、体感したことが、川田シェフにどのような思いを運んだのでしょうか。穏やかで誠実で、けれども決して折れない芯を持つ川田シェフの言葉から、その心の裡が少しだけ見えてきました。

「食材と話をする」それが川田シェフの料理の根幹。

大分県国東市わずか5歳で料理人を夢見た少年が、師と出会い才能を開花する。

川田智也シェフの人物像には、”深い”という形容がふさわしいでしょう。決して圧倒してくる迫力があるわけではありません。むしろ物腰やわらかく、親しみやすい人柄の人物です。

旅先で出会う一人ひとりの目を見つめてしっかりと話を聞き、別れ際には深く頭を垂れてお辞儀をする。食材を前にすれば宝物のように丁寧に扱い、その本質を全身で読み取ろうとする。寺を訪れれば誰よりも長く手を合わせ、あるいは心を込めて鐘を撞く。

それはまるで修行僧のような、真摯で誠実で偽りのない姿でした。そしてそんな人柄の内側に、決して揺らぐことのない芯があることも同時に垣間見えるのです。どこまでも穏やかで、かつ”深い”人物。そんな川田シェフの現在までに至るその足跡を辿りながら、世に轟く独自の料理観を紐解いてみましょう。

1982年、栃木県に生まれた川田シェフ。外食が好きな両親の影響からか、物心つく頃には料理に関心を示し、5歳ですでに料理人になる夢を持っていたといいます。そんな川田シェフがまず選んだのは、中国四川料理の道。料理学校在学中の2000年に「修業するならここしかない」と思い定めた『麻布長江』の門を叩き、まずはアルバイトを開始。卒業後も同店で腕を磨き、2008年には副料理長まで務めました。

当時は中国本土志向、つまり本場の中華料理への思いが強かったという川田シェフ。その思いに変化を生んだのは、師である長坂松夫氏に言われた「食材と話をしなさい」という言葉でした。「日本の食材に中国語で話しかけても通じませんよね。日本の食材を使うからには日本語、つまり日本料理が必要だと感じたのです」人生の岐路に立った川田シェフは、日本料理を学ぶという決断を下しました。

『茶禅華』の厨房。開店1年を越え、少しずつ形を変えながら進化を続ける。

『茶禅華』の店内もまた、和漢の趣を取り混ぜた穏やかな空間。

大分県国東市日本料理の名店で学んだことは、食材に語りかける言葉。

やるからには半端ではいけない。川田シェフが日本料理の修業先として定めたのは日本最高峰の名店『日本料理 龍吟』でした。もちろん入店希望者も多い狭き門。簡単に入れるわけではありません。川田シェフは「とにかく通う」という愚直な方法を選びました。

価格も一流の名店に、毎月のように通うまだ20代の川田シェフ。1年も過ぎる頃、店主・山本征治氏にその熱意が伝わり、ようやく入店が叶います。川田シェフ28歳の頃でした。

「繊細さの中に力強さがある料理。とくに下処理のレベルはずば抜けています。食材に語りかけるためにも『龍吟』での経験は他に代えがたいものでした」

それからときは流れ2013年。『龍吟』の厨房に立ち腕を磨く川田シェフに、もうひとつの転機が訪れました。それは台湾に開かれる『祥雲龍吟』立ち上げへの参加。「台湾という場所で、台湾の食材で、日本料理を作る。その考え方に大きな気付きがありました」

これは「日本で、日本の食材で、中華料理を作る」という現在の川田シェフの鏡写しのような試み。川田シェフは『祥雲龍吟』で副料理長も務め、2年後に帰国すると自身の店の開店準備に取り掛かりました。

一番出汁のイメージという雉のスープ。お湯のように澄んだスープは、味わいにも透明感がある。

お茶のペアリングも店の名物のひとつ。中国茶ばかりではなく、日本茶も登場する。

大分県国東市和魂漢才。根底にいつも日本の心が流れる独自の料理。

2017年2月に誕生した川田シェフの店『茶禅華』は、オープンわずか9ヶ月でミシュラン2つ星を獲得という快挙を成し遂げます。その原動力は、長い修業と数々の転機の末に到達した「和魂漢才」の思想。日本の心と中国の技。その両者の融合こそが、『茶禅華』の料理を唯一無二の味として輝かせているのです。

食材への敬意、日本料理の繊細さ、滋味深さ、そして中華料理の大胆さ。そのどれが欠けても生まれ得ない『茶禅華』の味。加えて川田シェフが大切にするのは、日本料理に由来する「温度感」です。たとえば名物の叉焼は、醤油、砂糖、スパイスに3時間漬け込んだ後、ゲストが着席してから焼き上げます。「時を捉えること。どんなに良い料理でも、その一瞬を外れると魅力が半減します」

季節感ある付け合せ、お茶のペアリングに登場する玉露など、直接的な日本だけではなく、より深い精神的な部分にも、このような日本らしさが潜んでいるのです。

あるいは懐石料理での椀物の位置付けにある澄んだスープ、炭火を使った焼き物、無駄がなく凛とした佇まいの盛り付け。「中心部に日本らしさが残る料理」とシェフ自らが評する料理の数々は、中華料理でも日本料理でもなく、かといって表面的な“フュージョン”というわけでもなく、ただ”川田智也の料理”として独特の存在感を放っているのです。「調理が主役の中華料理、下処理を重視する日本料理。良いとこ取りというわけではありませんが、互いに補い合うことで、さらなる高みを目指したいと思います」

名物の叉焼。クラゲにはスダチの香りと酸味を添えて。ウドと大豆には和の技法が活かされる。

2種の調理で楽しむ鳩。胸肉は藁で燻製にした後、炭火焼きに。もも肉は中国スタイルの揚げ物に。

調理場に炭火を入れたのも、日本らしい技法を取り入れる川田シェフのこだわり。

大分県国東市国東で出会った数々の符合、そして生まれるインスピレーション。

はじめて大分県に、そして国東半島に降り立った川田シェフは、この地に心惹かれている様子でした。あれこれ騒ぎ立てるタイプではありませんが、その言葉の端々に、土地や人に接する態度に、その思いが溢れ出ていました。

そして思わぬ符合も、数多くありました。たとえばこの地が神仏習合の宗教観に縁の深い場所であること。寺院の境内に鳥居があり、鳥居の内側に仏教建築がある。そんな歴史ある混在は、日本料理と中華料理を融合する川田シェフの思いと共鳴するのでしょう。

あるいは山号を峨眉山とする寺の存在。峨眉山は四川省にある霊山であり、四川料理をベースとする川田シェフも足を運んだことがある場所。これも国東と四川省との思わぬ共通点でした。また、護摩焚きに代表される炎と、清冽な湧き水の両者が集う土地であることも、ひとつの符合でした。「中華料理は火の力、日本料理は水の力。その両方の力が強いこの土地は、さまざまなインスピレーションが浮かびます」川田シェフは少しだけ声を弾ませながら、そう語りました。
「現在メニューは6割くらい完成しています。でもここに足を運んで、さまざまなことに感銘を受けて、新たな思いも浮かびました。東京に戻って、もう一度考え直してみます」それから川田シェフは、いたずらっぽい笑顔を浮かべて少しだけメニューのヒントを教えてくれました。「この地で信仰を集める岩を、料理で表現してみます」

岩を使う料理とは想像できませんが、土地の歴史や文化に思いを馳せ、その精神を汲み取り昇華する川田シェフの手で、きっと思いもよらぬ料理となることでしょう。

巨岩が連なる国東の自然を前に、さまざまなアイデアが生まれたという。

はじめて訪れた国東の自然に触れ、感動の面持ちを見せる場面も。

生産者の話を聞きながら必ずメモを取る川田シェフ。その真剣な姿が多くの生産者の心を動かした。

1982年栃木県生まれ。東京調理師専門学校卒。物心ついた頃から麻婆豆腐等の四川料理が好きで、幼稚園を卒園する頃には既に料理人になる夢を抱く。2000年~2010年麻布長江にて基礎となる技術を身につけ、2008年には副料理長を務める。その後日本食材を活かす技術を学ぶべく「日本料理龍吟」に入社。2011年~2013年の間研鑚を積んだ後、台湾の「祥雲龍吟」の立ち上げに参加、副料理長に就任し2016年に帰国。中国料理の大胆さに、日本料理の滋味や繊細さの表現が加わった独自の技術を習得する。2017年2月「茶禅華」オープン。わずか9カ月でミシュランガイド2つ星を獲得すると言う快挙を成し遂げる。和魂漢才という思想の元、日本の食材を活かした料理の本質を追求し続けている。

http://sazenka.com/

『DINING OUT KUNISAKI with LEXUS』[DINING OUT KUNISAKI with LEXUS/大分県国東市]

大分県国東市OVERVIEW

『DINING OUT』第13弾となる今回の舞台は、山岳信仰と神仏習合の地として知られる大分県国東半島です。

両子山という岩山を中心に6つの山稜に分かれた国東半島には、総称して「六郷満山」と呼ばれる無数の寺院が点在。日本古来の宗教観である神仏習合もこの地で生まれたといわれ、土地に根付いた山岳信仰と混淆し、この地独自の六郷満山文化として発展しました。目を奪う奇岩が聳え、寺社の山門には苔むした石造仁王像が立つ。その静謐で神秘的な空気は、宗教という枠組みを抜きにしても、誰しもの心に響くことでしょう。

そんな印象的な空気感を伝えるべく、今回設定されたテーマは『ROCK SANCTUARY―異界との対話』。耳に沁みるような静寂の裏に、ふと感じられる人知を超えた何者かの存在。それは近現代の神仏のように、明確なイメージを伴うものではなく、より得体の知れない何か。その何者かに問いかけているのか、それとも自分自身に語りかけているのか。この半島に足を踏み入れた人は、きっとそんな思いにとらわれるに違いありません。そしてそんな独特な空気感を、『ROCK SANCTUARY(岩の聖地)』という言葉に込めたのです。

捉えどころのない、難しいテーマです。しかし今回の料理人である川田智也シェフなら、それを形にして私たちに提示してくれるはずです。「和魂漢才」をポリシーに掲げ、中華料理の大胆さに、日本料理の精緻さ、滋味深さを加え独自の料理を生み出す気鋭のシェフ。その実力は、2017年に開いた『茶禅華』が、オープンわずか9ヶ月でミシュラン2つ星を獲得したことからも明らかです。

そしてホスト役には、「世界のベストレストラン50」の評議委員長を務める中村孝則氏が登場。過去5回にわたり『DINING OUT』に出演した経験と、多岐にわたる深い知識で、国東らしい不思議な体験へとゲストを誘ってくれることでしょう。

静謐で神秘的で、それでいてどこか懐かしい。そんな国東半島の『DINING OUT』。どうぞご期待ください。

Data
DINING OUT KUNISAKI with LEXUS

開催日程:①2018年5月26日 (土)~ 27日(日) / ②2018年5月27日 (日)~ 28日(月) ※2日間限定
開催地:大分県国東市
出演 : 料理人  川田 智也(「茶禅華」 )/ホスト  中村孝則(コラムニスト)
オフィシャルパートナー:LEXUS http://lexus.jp)、YEBISU(http://www.sapporobeer.jp/yebisu/
オフィシャルサポーター : 大分県国東市