ブックファン95 (@bookfun95 )

オゾン(O3)を利用して、不純物等の除去と漂白をしたタオル。オゾンは水道水やプールの殺菌でも使用され低濃度だと全く問題のないもの。自然分解がはやく有害な残留物も残らない。

牧禎舎 藍染体験工房 (@makiteisha )

しかしひとのことは言えないのだ。「牧禎舎」の木の看板は年月が経って文字が見えにくくなってしまって。でも遠藤さんの手書き文字はそのまま残したいなぁ。周りの木を削ったら明るくなるだろうか?

石を敬い、石とともに生きる。国東半島で育まれた特別な精神。[DINING OUT KUNISAKI with LEXUS/大分県国東市]

石仏を前に何か心動かされた様子の川田シェフ。

大分県国東市

未だ知られぬ地域の魅力を伝え、そこから新たな価値を創出する『DINING OUT』。第13弾となる今回の舞台には、大分県国東市が選ばれました。ここは1300年の歴史を持つ神仏習合の宗教観「六郷満山文化」に代表される、独特な宗教観を持つ神秘的な土地。そんな神秘性を料理で伝えるという挑戦的な試みです。

そして静寂の中に凛と佇む石仏や巨岩、その裏に潜む神秘的で不可視の“何か”。そんな不思議な空気感を「ROCK SANCTUARY―異世界との対話」というテーマで表現しました。

国東を巡るごとに、心に去来する不思議な穏やかさ。造形そのものよりも、その裏にある精神性に圧倒される石造仁王像や磨崖仏。見えないけれど感じられるその“何か”は、どのように醸成され、どのように受け継がれてきたのでしょうか。

『DINING OUT』本番を前に、土地の背景と歴史を紐解いてみましょう。

両子山を中心に広がる山深い国東半島が今回の舞台。

大分県国東市原始宗教と神道、そして仏教が融合した独特な宗教観が誕生。

悠久の歴史を越え苔むした石が、ただ黙ってそこに在る。ときに人は、日々の疑問や鬱憤を、その石に問いかける。しかしその問いさえもやがて石に吸い込まれ、後には澄んだ湖面のような静かな心持ちが残される――
ここは大分県国東半島。ここを訪れ、その静謐の中に身を置くと、山岳信仰という独特な宗教観をすんなりと受け入れることができるでしょう。その深く澄みきった文化を、少しだけ紐解いてみましょう。

国東半島の最高峰は標高720.6mの両子山(ふたごやま)。古くから信仰の対象となったこの霊峰を中心に、奈良時代から平安時代にかけて数々の寺院が築かれたことから、山岳信仰と仏教が複雑に融合した特異な宗教観が生まれたといわれています。

自然を崇める原始宗教、近隣の宇佐神宮から広がった八幡信仰、そして仏教。その後、全国的に広まる神仏習合の流れは、ここ国東半島から生まれたといえるかもしれません。そしてその特異な文化は、半島内に開かれた6つの郷、それぞれに点在する寺院群を「満山」と称したことから、「六郷満山文化」と呼ばれました。当時は広さ900平方キロメートルに満たず、さらに大半を深い山々に囲まれたこの国東半島だけで1000を越える伽藍があったともいわれています。

伝説によると、六郷満山の起源は養老2年(718年)に仁聞菩薩が半島内各地に28の寺院を創設したことに遡るとか。つまり2018年は、六郷満山開山1300年の節目の年。文化財の特別公開や各種イベントなど、半島をあげての盛り上がりを見せています。

鳥居の内側に石仏が鎮座する神仏習合を象徴する景色。

巨岩、奇岩が半島内に随所に見られる。岩山そのものも信仰の対象に。

大分県国東市独自の宗教観を描き出す石と岩の世界。

さて話は戻り、「六郷満山文化」について。神仏習合の宗教観はみえてきましたが、実際に目に見える形としてはどのような特色があるのでしょうか。

その答えのひとつが、冒頭の石です。

たとえば仁王像(金剛力士像)。有名な東大寺南大門の仁王像は木造ですが、全国には石で造られた仁王像も200基程度あるといわれています。そして、その内の実に約8割もが、この国東半島に安置されているのです。
国東半島を歩くと、いたるところに残された石造仁王像を目にします。猛々しいもの、苔むしたもの、どこかユーモラスな表情をしたものなど、さまざまな姿を見せる仁王像。そのすべてに、この地域独特の、石への畏敬の念が込められているのです。

たとえば両子寺の参道前に佇むのは、2メートルを越える阿吽一対の仁王像。風雨にさらされ苔むしてもなお、その力強い存在感は褪せることはありません。江戸時代中後期の作と伝えられ、国東半島のシンボル的存在として知られています。あるいは六郷満山寺院の最初の寺といわれる千燈寺の跡地。本堂こそ喪われていますが、現在もその本堂後には石造りの仁王像がひっそりと佇んでいます。石段の横、参道の前、さらには国道の脇にまで。随所に佇む仁王像は、この地域の生活に溶け込んでさえいるのです。

また、仁王像以外では、豊後高田市にある熊野磨崖仏も象徴的です。岩肌に直接彫られた巨大な大日如来と不動明王は、平安時代末期の作。岩への信仰と仏教思想が融合した文化財といえるでしょう。磨崖仏に至る石段には「鬼が一晩で築いた」という伝説が残り、ここにも石への特別な思いが垣間見えます。

石への畏敬、石への信仰心。そんな国東の人々の思いは、石像という形で具現化しているのです。

両子寺の仁王像。その堂々たる姿は国東を代表するシンボル。

千燈寺跡の仁王様。同じモチーフでもそれぞれ造形や技法が異なる。

石段、石碑、仏塔など、仁王像以外にも石にまつわる文化財が多い。

大分県国東市静寂のなかに垣間見える何者かの存在とは。

さて、そろそろ『DINING OUT』のテーマである「ROCK SANCTUARY―異界との対話」の意図がおぼろげながら見えてきた頃でしょう。そう、“おぼろげ”であることが大切なのです。

国東を訪れれば、石や岩は必然的に目に入ります。滞在するうちに、いつしかそこに石や岩があることが当たり前と思えてくるはずです。そして静寂に浸り、その“当たり前に”あるそれらを前にすると、やがて不思議な、神聖な気分がやってくるのです。それは古代の人々が岩山に神を見た気持ちと似ているのかもしれません。あるいはもっと曖昧な、未知なるものへの畏怖なのかもしれません。

「ROCK SANCTUARY」、つまり「岩の聖地」。これは言葉にできない、けれどもきっと誰しもが心のどこかで感じ取る神秘的な何かを、言葉で表した結果。おぼろげでも、何か心を揺さぶる存在がここに在ると仮定し、その何かとの対話を通して、より深く国東を知ることが、今回の『DINING OUT』の無謀とも思える挑戦なのです。

もちろん、幾枚かの写真と文章だけでは、その意味を完全に感じ取ることは難しいことでしょう。しかしこの地に足を運び、その静寂に身を置いた時、誰しもがこの言葉を思い出し、深く理解できることは間違いないのです。

神々しい岩山の姿に、信仰を集めた理由も腑に落ちる。

石と岩が織りなす静謐。その空気感を伝えることが今回のテーマの意図。

大分県国東市言葉にできない心の在りようを料理で表現する稀有な料理人。

受け継がれる文化と、それを育んだ歴史、そしてその根幹を支える精神性。今回の『DINING OUT』のテーマは、いわば誰にも見ることができない心の奥の概念に則したものです。この難しいテーマに「料理」という形を与え、ゲストの眼の前に提示してくれるシェフは果たしているのでしょうか。

心の奥深くを、具現化する。そんな深遠なるアプローチで料理に臨む料理人が、ひとり居ました。それこそが今回の担当シェフである川田智也氏です。2017年に開いた『茶禅華』がまたたく間に確固たる地位を築いたからではありません。開店わずか9ヶ月でミシュランの二つ星を獲得したという快挙も、いまは重要ではありません。

それよりも川田シェフが、心の在りようや土地の歴史という深い部分から料理を作り上げる稀有なる人物であることが重要なのです。

「和魂漢才」、つまり日本固有の精神と、中国伝来の技術を融合することを信条とする川田シェフ。日本古来の山岳信仰や神道と、中国から伝わった仏教を融合するこの地に、これほどピタリとはまる料理人はいないでしょう。

国東の寺院群を巡った川田シェフは、驚くほど長時間、ただ黙って石仏や岩山を見つめていました。具体的な料理のアイデアを練るよりもまず、この地の中に入り込み、その精神性を理解しようとするように。

「国東に来た感想は、“感動”の一言に尽きます。静かな寺社、深い山、岩山や石仏、火と水。その感動の理由をまずは深く考えなおし、それを料理に落とし込みたい」静かにそう語る川田シェフ。その穏やかな口ぶりからは、本番を飾る料理の輪郭は未だ見えてきません。しかしこの修行僧のような川田シェフの手により、「ROCK SANCTUARY」は思わぬ姿で私たちの前にその姿を表してくれることでしょう。

誰よりも長く手を合わせ、心静かに祈る川田シェフ。

山に登り、石に触れ、五感すべてで土地の空気を感じた。

1982年栃木県生まれ。東京調理師専門学校卒。物心ついた頃から麻婆豆腐等の四川料理が好きで、幼稚園を卒園する頃には既に料理人になる夢を抱く。2000年~2010年麻布長江にて基礎となる技術を身につけ、2008年には副料理長を務める。その後日本食材を活かす技術を学ぶべく「日本料理龍吟」に入社。2011年~2013年の間研鑚を積んだ後、台湾の「祥雲龍吟」の立ち上げに参加、副料理長に就任し2016年に帰国。中国料理の大胆さに、日本料理の滋味や繊細さの表現が加わった独自の技術を習得する。2017年2月「茶禅華」オープン。わずか9カ月でミシュランガイド2つ星を獲得すると言う快挙を成し遂げる。和魂漢才という思想の元、日本の食材を活かした料理の本質を追求し続けている。

http://sazenka.com/