雨降りの一日

雨降りの一日だったけど、 ゆっくりお話しができたり ゆっくり見て頂いたり 雨のおかげで時間が止まったような 素敵な時間を過ごす事ができました ありがとう 明日もどうぞよろしくおねがいします

Shunya.Asami(asa.) (@shichizu )

【作品展示のお知らせ】 5/17まで。「のぼうの城」や「陸王」で話題沸騰の埼玉県行田市で開催される『第12回・忍町(おしまち)アートギャラリー』に作品3点を展示しています。 展示場所の中島邸では、アーティストで行田市議会議員の野本さんの等身大の影の作品「MAN-PRINT -SHOHEI NOMOTO-」を展示

移住者ならではの視点や発想で、ここをもっと魅力的な街に。[TSUGI/福井県鯖江市]

鯖江市に移住し、事務所を構えた『TSUGI(ツギ)』の新山氏。

福井県鯖江市

眼鏡をはじめ、越前漆器や繊維などの産地として名高い福井県鯖江市。その中心部から約10kmの東部に位置する河和田地区を拠点に活動するのが、デザインディレクターの新山直広氏が率いるクリエイティヴカンパニー『TSUGI(ツギ)』です。後編では、河和田地区の魅力や、新山氏がこの地へ移住した理由、『TSUGI(ツギ)』の軌跡と今後のビジョンなどについてお話をうかがいました。(前編はコチラ

鯖江市で唯一、中山間地の指定を受けている河和田地区。

福井県鯖江市伝統を受け継ぎながら、変化し続けるものづくりの街。

鯖江市は福井県内で最も小さな市。しかし、約1500年の歴史を持つ越前漆器をはじめ、繊維などものづくりの街として栄え、近年は国内唯一の眼鏡づくりの産地としても全国に知られています。そんな鯖江市の一角にある河和田地区は、三方を山に囲まれた中山間地。約4,200人が暮らすこの小さな集落です。

この地には、かつて全国の半数を占めたと言われるほど多くの漆掻き職人が居住。彼らは漆の樹液を求めて行脚する中、各地で得たさまざまな文化や最先端の情報も持ち帰りました。それらを巧みに取り入れることで、河和田は独自の文化を醸成してきたと言われています。
「そういった歴史からか、河和田地区を含め鯖江市は、比較的チャレンジへの抵抗が少ない街だと感じます。いつの時代でも、世の中の流れや生活様式の変化に合わせたものづくりを工夫して、アップデートすることで残り続けてきた街なんですよね。編集力だとか粘り強さだとかはこの街の誇りであり、今度もっと伸ばしていくべきところだと感じています」と新山氏。

例えば、伝統的な漆器の分野においては、美術品ではなく日用品として需要の高い、安くて軽くて丈夫な器づくりにシフト。OEM産地としてシェアを拡大してきました。ところが、近年は伝統産業全体が衰退し、今までのやり方では通用しなくなりつつある……。すると、今後は新たな一手として、漆器の技術を応用した木製雑貨ブランドも誕生するなど、少しずつ新たな動きが起こり始めています。

また、ものづくりにおいてだけではなく、最近は街づくり全体で新しい取り組みに積極的。経済誌『Forbes Japan』(2017年6月号)が選ぶ『日本のイノベ―ティブシティ』では、全国4位にランクインしています。のどかな風景が広がる一方、昔から根付く精神に基づき、現在進行形で変わり続けようとする動きが、ここ数年で特に活発化しているのです。

豊かな自然と共生し、今も多くの職人が暮らします。

変化を恐れず、移住者の受け入れにも積極的。

福井県鯖江市大学時代の多彩な経験を通して切り拓かれた未来とは。

新山氏は、大阪府吹田市生まれ。鯖江市とは真逆の、新興住宅地で育ちました。高校卒業後は京都精華大学へ進学し、建築を専攻。「純粋な建物の建築だけではなく、プロダクトデザインから、まちづくりや都市計画、ファッションデザインまで、とにかく色々学びました。様々な考え方に触れアイデアの幅を広げられたことが、今につながっています」と新山氏は振り返ります。

そして大学4年生となった2008年、所属するゼミの片木孝治准教授が主催する『河和田アートキャンプ』に参加したことが、新山氏の転機になります。『河和田アートキャンプ』とは、夏休みの1ヵ月間、県内外から集まった大学生たちが河和田地区に住み込みで行うプロジェクト。職人をはじめとした地元住民と交流しながら、豊かな地域資源である地場産業や自然環境を有効活用したアート的事業を展開します。

この時に初めて河和田を訪れた新山氏は、大きなカルチャーショックを受けたと言います。「いわゆるニュータウンで生まれ育ったので、田舎ならではのコミュニティに身を置くのが面白かったですね。活動拠点の古民家に地元の小学生たちも集まってきて一緒に寝泊まりしたり、夜になると職人たちと一緒にお酒を飲んだり。職人は怖い人という自分の中の偏見もすっかりなくなりました」と新山氏。

また、当時は建築家を目指していたものの、新山氏曰く「全国の有名な建築物を見に行くと、閑散としている場所も多くて。どんなに素晴らしい建築でも、活用されないと意味が無いなと感じました。と同時に、リーマンショックの煽りで不景気真っ只中の今、建築家として社会に出て新しい建物を作ったところで、果たして意味があるのだろうかと。正直迷っていました」。

そんな中『河和田アートキャンプ』に参加し、新しい場を作るのではなく、そこにあるものを使って、新たな価値を創造していくというものづくりを経験。そこで考えが変化し、新しく建物を生み出すことよりも、今ある地域のものをどう活用していくかを考える、コミュニティデザインに興味が移りました。

その後、ゼミの准教授が新しく鯖江市で地域デザインの会社を立ち上げることに。一緒にやらないかと誘われた新山氏はその話を受け、大学卒業と同時に鯖江市へと移住することになったのです。

『河和田アートキャンプ』の活動拠点となる古民家。

毎年、京阪神を中心に約60名の大学生が参加。

学生たちは、地域住民と共に様々な活動を行います。

若い感性で、様々なアート作品が生まれています。

福井県鯖江市移住者第一号として暮らし始めた鯖江市で待ち受けていたもの。

大学を卒業した2009年の春、ゼミの准教授が設立した『株式会社応用芸術研究所』に就職し、立ち上げメンバーとしてひとりで鯖江市へと移住した新山氏。「鯖江市は今でこそ移住者の多い街になりましたが、当時は誰もいなくて。築120年の古民家での一人暮らしは想像以上に孤独で辛く、1ヵ月で心が折れました(笑)。でも、早く地域に馴染むために壮年会に入れてもらって。街の神事の手伝いなど、地域活動に積極的に参加する中で、次第に溶け込んでいきました」と新山氏は話します。

当時の新山氏の主な仕事は、漆器産業の市場調査。職人の工房や問屋を回って産地の現状を、県外の百貨店やセレクトショップを回って市場動向を調査しました。「職人たちは熱意と誇りを持ってものづくりをしているものの、やはり年々業績は悪化し、後継者もいないなど、ネガティブな話ばかりが目立ちましたね。それに、実際漆器の売り場を見に行っても、全然取り扱われていなくて。この現状をなんとかしたい!と強く思いました」と新山氏。そこで思案した結果、正しく魅力的な伝え方、見せ方で職人の声を代弁すると共に、最終的にきちんと商品を売ることまで考えられる、産地特化型のデザイナーになることを決意したのです。

それからは、仕事が終わった後に独学でデザインの勉強を続けた新山氏。2年が経過し、本格的にデザイナーとして転職を考え始めた頃、行政のデザイン業務を担当する嘱託職員にならないかと声がかかります。当時はちょうど、鯖江市を眼鏡の街として盛り上げていこう!と市が動き出したタイミング。市長の「行政は最大のサービス業であり、今までデザイナーがいなかったのはおかしい。行政こそデザインが必要だ」という考えの下、新山氏に白羽の矢が刺さり、市役所の商工観光課で、デザイナーとして働くことになったのです。

壮年会のメンバーとなり、次第に溶け込んでいきました。

河和田地区の夏祭りの実行委員も務めています。

移住者を含めた強固なコミュニティも河和田地区の魅力。

福井県鯖江市若手移住者たちのユニットとして始まった『TSUGI(ツギ)』の躍進。

市役所では、眼鏡職人のPRサイトや、イベントのチラシ制作などを行っていた新山氏。そんな折、河和田地区にも徐々に移住者が増加。新山氏と同じく大阪府出身、京都精華大学の在学中に『河和田アートキャンプ』に参加し、この街の魅力に惚れた後輩たちが、後を追うようにやって来たのです。それぞれ、木工職人や眼鏡職人に弟子入り。ものづくりに携わる同世代が増えてきました。

ところが活気づく反面、皆が持っていたのが、地場産業が低迷する中で、10年後も自分たちが携わる産業は残っているのかという不安。同時に、この地に暮らす若者として、今から未来に向けてできることがあるのではないかという思いでした。そこで、「10年後、産地の担い手となれるように」と、2013年6月に『TSUGI(ツギ)』を設立。皆本業を持ちながら、ユニットとして活動を始めました。

1年目のテーマは、拠点作りと仲間作り。まずは錦古里漆器店に提供してもらった1階スペースを4カ月かけてセルフビルドで改装し、現事務所となる『TSUGI Lab.』を構えました。この空間で、ワークショップやトークイベントを開催。すると、福井県中から、新山氏らと志を同じくする若者たちが集まったと言います。

土台が出来て2年目は、1年目に出会った作家のプロダクトを各地の展示会やマーケットへ出品したり、コラボレーションイベントを開催したりと、福井県のものづくりを伝え広める活動を展開。特に、2014年6月に福井新聞と協同で開催した『FUKUI FOOD CARAVAN』は、『TSUGI(ツギ)』の方向性やスタイルを確立するきっかけになりました。福井の食を再発見するというテーマの下、企画・演出から空間構成まで総合的にプロデュース。参加者は漆器の器や木彫りのスプーン作りを体験した後、使われていなかった温室を利用したレストラン空間で伝承料理を味わえるという催しでした。

こうした、地元に根付きつつ型にはまらない、斬新なアプローチは大好評。参加者の多くが福井県民だったものの、会場には地元の魅力を再発見できたという驚きと感動の声が響きました。その反応を見て、「地域の資源を見出し、独自の表現や魅力的な伝え方を考え、実行していくことこそ、自分たちのやるべきことだと確信が持てました」と新山氏。そして3年目となる2015年に、新山氏は市役所を退職。『TSUGI(ツギ)』を法人化して本格的に活動し始め、現在に至ります。

設立と共に場所作りも開始。4ヶ月かけてセルフビルド。

『FUKUI FOOD CARAVAN』の実行メンバー。

空き温室をレストランに見立てて活用しました。

器作りを体験し、伝統食材を使った料理を堪能。

福井県鯖江市受け入れることと発信することを強化し、さらに魅力的な街へ。

新山氏の活躍もあって、現在鯖江市河和田地区への移住者は70人程に増加。移住第一世代が農業に携わる人だとすると、第二世代は職人やデザイナー。そして今、第三世代として、農家でも職人でもない、いずれにも属さない人が増えていると言います。「今までとは違う目的で移住する人が増えるということは、街の武器が増えるということ。ものづくりを軸にしながら、こうした“じゃない人”をどう増やすかが、今後の課題だと思います」と新山氏は語ります。

また、新山氏には「『RENEW』の拡張版として、県外からの訪問者を通年で受け入れられる土壌、例えば宿のような施設を作りたい」という思いも。並行して、「『SAVA!STORE(サヴァ!ストア)』の拡張版として、ショップ兼観光案内所のような場所も作りたい」と話します。

魅力溢れる創造的な産地づくりを目指して。未来を見据えた『TSUGI(ツギ)』の挑戦は、まだまだ続きます。

Data
TSUGI

住所:〒916-1222 福井県鯖江市河和田町19-8 MAP
電話: 0778-65-0048
営業時間:9:00〜18:00
定休日:土曜・日曜
http://tsugilab.com/

1985年大阪府生まれ。京都精華大学デザイン学科建築分野卒業後、2009年に福井県鯖江市へ移住。株式会社応用芸術研究所にて越前漆器の産業調査を担当した後、鯖江市役所に入庁。デザイナーとして地場産業の広報・販促物の制作を担当しながら、在職中の2013年に『TSUGI』を設立。2015年に法人化し、以降は代表兼デザインディレクターとして、地域や地場産業のブランディング、コンサルティングなどを幅広く手がける。

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