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21oz黒鎧 ウエストバッグ
ウエストバッグを黒鎧バージョンでアレンジ!
- 基本サイズは【IHE-18】と同様。21oz黒鎧生地にて製作しました
- ダイヤステッチを排し、代わりにアウトポケットをつけました。
- 外側のポケットは高速のチケットや携帯など、サッと出し入れしたいもの用に、敢えてファスナー無し仕様にしました
- 内側ポケットも同様にファスナー無しの仕様
- ベルト調整部分は左右でダブルリング仕様。どちら側でも長さを調節できます
- ショルダーベルトのおさえのループ、真鍮リングの留めパーツ、ファスナーのパイピングは牛革パーツを使用
- 外ポケットとショルダーの繋ぎ部分はYKK社製真鍮リベットにて補強しております
- レザーよりも手軽にご利用頂けます
- バッグ本体 綿:100%
- 一部留め具パーツ 牛革
素材
味の手帖 取締役編集顧問・マッキー牧元氏が体験した饗宴。二つが一つに繋がった夜。[DINING OUT KUNISAKI with LEXUS/大分県国東市]
大分県国東市神聖なる文殊仙寺の境内で。それは始まった。
清涼な山奥の空気に包まれる。岩山に漂う、神聖な霊気に抱かれる。夜が静かに地表から木の幹に忍び寄り、最後に空が暮れていく。
ここは開山1300年を迎える、大分県国東半島、六郷満山随一の古刹霊地、文殊仙寺の境内である。山下の参道口から300の石段を登りきった山寺の一角に、キッチンと、客席が運び込まれた。
夕刻から40名の宴席が始まろうとしている。今回の「DINING OUT KUNISAKI with LEXUS」の料理を担当するのは、東京南麻布「茶禅華」の料理長、川田智也氏である。
四川料理をベースにしながら、食材の持ち味を淀みなく引き出して表現する、日本でも屈指の料理人だけに、大分の豊かな食材をいかに駆使するのか、期待が募る。
同時に、少し懸念もあった。中国料理は、“火の料理”と呼ばれるように、加熱によって食材の滋味を最大限に引き出し提供する。いわば“熱さ”が命の料理でもある。それをコントロールするのが困難な野外、そして40人のお客さんに同時に提供するという課題を、川田シェフがいかに克服するのかという点である。
闇が足元からゆっくりとせり上がって来る中、宴は始まった。
大分県国東市牡蠣とドジョウが味覚を目覚めさせる。
一皿目は、味が濃く、食感がたくましいことで評判となっている国東オイスターの料理が出された。牡蠣を地元西の関と上海老酒のそれぞれ30年古酒にくぐらせ、汁と古酒のジュレをかけた皿である。
牡蠣の養分が古酒と抱き合い、艶を増す。味わいに、食事場所である山の冷気と遠く離れた海の冷水が溶け合うような感覚があって、ゆっくりと舌や喉、胃袋の細胞を開き、食欲を目覚めさせる。
二皿目は、酔っ払いドジョウである。大分で養殖しているドジョウを、紹興酒に浸けて酔わし、おこげをつけて揚げたものだという。「カリッ」。歯を立てれば、おこげの衣が弾け、ふわりとしたドジョウの身に歯が包まれる。その時、にゅるりと皮のぬめりが広がった。カリッ。ふわり。にゅるり。鮎など他の淡水魚にはない、食感の多様な魅力を見事に生かしている。さらに噛んでいくと、紹興酒が染み込んだ肝のうま味が広がり、思わずニヤリとさせられる。紹興酒とおこげという、同じ米同士の相性も実にいい。
大分県国東市驚くほど清らかな野菜とスープ。
続いて、せいろがテーブルに運ばれ、そこに熱い岩茶を注ぐと、濛々たる湯気が立ち上った。せいろの中には、熱した岩とともに、野菜や椎茸と牡蠣が収められ、岩茶の香りをまといながら蒸しあがっている。
岩山に囲まれた聖域にちなんで、国東の岩と福建省の岩茶を使った料理だという。先ほど冷製の牡蠣とは異なり、熱せられた牡蠣が、旨味と香りを膨らます。野菜や椎茸を食べれば、驚くほど清らかさがある。雑味がない、純粋な味わいが、茶の香りを帯びながら、舌の上で花開く。
四皿目は、ワンタン入り、烏骨鶏のスープが運ばれた。「はあ」。一口飲んで、充足のため息が漏れる。烏骨鶏のすべてが溶け込んだ汁が、ゆるゆると口の中を滑り、体に染み渡っていく。滋養への感謝が、湧き上がる。川田シェフのスペシャリテの一つにキジのスープがあるが、その名品を彷彿とさせる逸品である。
大分県国東市国東と中国の共通項「峨眉山」の名を冠したスペアリブ。
五皿目は、「峨眉山排骨」と名付けられた、四川風スペアリブの香り炒めが登場した。国東に峨眉山があると聞いた時、シェフは愕然としたという。四川にも峨眉山という名山があり、自身も訪ねたことがあるからである。またこの地に流れる神仏習合の精神は、シェフが、中国料理の技法で日本の食材を生かすことを目指しテーマとして掲げる、「和魂漢才」とも通じている。
「今まで国東のことはあまり知りませんでした。でも今回のお話をいただいて、神仏習合といい、峨眉山といい、導かれた気がしました」。そうシェフは語る。
峨眉山を模して山の形に盛り付けられた料理の姿に、今回のプロジェクトへの敬意がにじみ出ている。唐辛子、山椒、ネギ、ニンニク、生姜、香菜、クミン。辛く、様々な香りが強烈に弾ける味わいの中で、豚の脂がすうっと溶けていき、甘く香る。この料理でこそ、桜王豚の脂の魅力がいきている。
大分県国東市鬼フグと冠地鶏の滋味が心に染み入る。
口直しの意味も含めたトマトの八角煮に続いて出されたのは、地元で“鬼”と呼ばれる、三島フグであった。
「地元の市場で、様々な魚を物色している時、この魚と目があったのです。
1匹20円ほどと値段は安い。しかし、この魚と目があった瞬間に、味わったこともない、ガンシャオユイという四川の料理を思いつきました。そして実際あげてみると、角が立って修成鬼会のお面のような姿になる。不思議な食材との出会いでした」。
やはり川田シェフは、導かれていたのかもしれない。四川では川魚を使って作られるというガンシャオユイは、高温の油で揚げた魚を、再び蒸し、ひき肉やたけのこなどを炒め合わせた辛いソースをかけた料理である。硬い骨も多く、食べにくく、姿も醜いことから雑魚に甘んじているのかもしれない、三島フグだが、中国料理の技法によって、堂々たる宴席料理に昇華している。「どうだ、なかなかやるだろ」。三島フグが鼻を高め、自慢し、高笑いをしている。
羅漢果のお茶が続いて出され、そのほの甘い香りが、三島フグ料理の余韻を優しく、ゆっくりと終わらせてくれる。そして最後の主菜は、冠地鶏を使い、四つの料理に仕立てた皿であった。
カボスの釜に詰めた、胸肉とクラゲ。すっぽんとフカヒレを詰めた、手羽先の揚げ物。ローストした、味付け鳥もも肉。そして鶏スープ麺の四種類である。よく運動させているのだろう。冠地鶏は味が濃く、脂が少ない。その特性を、それぞれの料理で生かしきっている。フカヒレやすっぽんなどのコラーゲンの旨味とも合い、スープは滋養が深い。
大分県国東市野外における完璧な加熱の再現。中国料理の本領。
そしてなにより驚いたのは、火入れの完璧さである。手羽先、鳥もも肉ともに、熱々で、行き過ぎず、足りなさすぎずという最適の過熱に保たれている。考えれば、三島フグ、ドジョウ、スペアリブなども、理想の加熱で提供された。
「40人のお客様に、どういう風にして、最適な温度管理でだすことができるか。それがいちばんの課題でした。普段店でやっている状況とは違います。冷涼な外気にさらされながら調理し、運ぶのにも時間がかかる。すべてを計算に入れて仕上げる努力をしました。最後の方は、照明はあるものの、手元も見えません。香りを嗅ごうにも飛散するので、火傷するほど鼻を近づけ、耳をすまして料理をしました。いかに料理にとって視覚が大事かを学び、また自分の未熟さも痛感しました」。そう川田シェフはおっしゃる。だが過熱や温度管理は、お客さんの口元に運ぶまで、店と寸分変わらぬほど最適に管理されていた。
それは、川田シェフの技量もあろう。そしてもう一つ言えるのは、彼が初めてであったという大分の食材の力ではないだろうか。
大分県国東市澄んだ滋味が響き渡る大分の食材。
鳥も豚も、三島フグもドジョウも、野菜やキノコも、どの食材を食べても、清らかな味がするのである。おそらくそう両子山から短い距離で海に流れ込む、この地形が、ピュアでたくましい食材を生み出したのだろう。
その食材たちに触れ、純粋無垢な味わいが、川田シェフを突き動かし、これら料理の完成度を高めたのだろう。
国東の恵みと川田シェフの新たな才。神仏習合と和魂漢才の出会い。川田シェフによって昇華させられた命が我々客にもたらした鳴動。遠く離れ、普段は交わらず、一見異質と思われる二つの事象が、一つになる。
人も生物も、土地も神も繋がっている。DINING OUTとは、当たり前のようでいながら、日常では気がつかない真実を知らしめてくれる場所なのだ。
1955年東京出身。立教大学卒。 株式会社味の手帖 取締役編集顧問、タベアルキスト。 立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スィーツから居酒屋まで、日々飲み食べ歩き、雑誌寄稿、ラジオ、テレビ出演など行う。現在、「味の手帖」「ビッグコミックオリジナル」「東京カレンダー」「食楽」他、連載7誌。料理評論 人物インタビュー 紀行記事などの他、料理開発なども行う。去年より、256の食材を日めくりとして綴った「味のカレンダー」を発売。著書に「東京 食のお作法」文芸春秋刊ほか。