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獲る、売る、場をつくる。自慢の海の恵みをそれぞれの形で発信する。[福井県高浜町]
福井県高浜町独特の地形と海流が、自慢の海の幸を育む。
日本は四方を海に囲まれているため、「うちの魚はうまい」、「うちの魚が一番だ」と、あちらこちらで魚自慢の声を耳にします。しかし、北陸の魚介類のおいしさは別格。特に、福井県の南西、若狭湾で獲れる魚は関西圏を中心に一目置かれています。 若狭湾は日本海側ではめずらしい大規模なリアス式海岸の上、海底から立ち上がる天然礁により複雑な潮の流れが発生します。この潮の流れにより、良質なプランクトンが繁殖。そのプランクトンをエサにする魚介類が集まってくるのです。
さらに、暖流の対馬海流と寒流のリマン海流がぶつかる複雑な海流により、豊かな漁場をつくり出しています。 若狭湾に面した海辺のまち、高浜町。地元の人たちは、「ここの魚を食べたら、よそでは食べられない」と口々に言います。高浜人たちが誇る自慢の海の幸を探しに、いざ港へ、海へ。(前編はコチラ)
福井県高浜町ひと口食べれば、その新鮮さに驚く。漁師たちの魚への熱い思い。
朝7時、定置網漁を終えた漁船が和田漁港に戻ってきました。和田漁港は高浜町の東部にある港で、国際環境認証のひとつ「BLUE FLAG(ブルーフラッグ)」を取得した若狭和田ビーチと同じ地区にあります。 船には20人ほどの海の男たち。若手もいれば、ベテラン組も。船が港に着くや否や持ち場につき、慣れた手つきで水揚げされた魚の選別を始めます。ここからは時間との勝負。魚が新鮮なうちに、種類や大きさ別に手早く分ける必要があります。
網には、あじ、いわし、とびうお、鯛、さごし、剣先いかなど、夏の高浜を代表する魚がかかっていました。 船はほぼ毎日、4時半ごろ出航します。よほどの荒天でない限り、休むことなく海へ出るそう。高浜をはじめとする福井の漁業の特徴は、漁港から漁場までの距離が近いこと。早朝出航し、遅くても昼までには帰航。沖合で何日も操業することがないため、水揚げした魚は他の地域に比べて活きが良いまま持ち帰ることができる。そして、新鮮なまま、いち早く出荷できるのです。
福井県高浜町朝獲れ魚を夕方に食べる、海のまちならではの贅沢。
一般的な市場では、水揚げされた魚は中央卸売市場などに集められてから流通します。高浜でも6〜7割は関西圏に出荷しますが、地元の市場で競りにかけられるものも多いそう。「朝獲れた魚は、午後には店先に並ぶよ」と、漁業組合の人は何でもないことのように言いますが、通常の流通から考えれば極めて稀なこと。高浜の人たちが誇る魚のおいしさの理由が、ここにありました。
和田漁港がある和田地区には、1軒だけ魚屋があります。「昔は地区に2軒、他に行商の魚屋もいたけど、今はうちだけ」と話すのは、店主の福井啓道氏。昭和18年に創業した魚屋『ふく井』の2代目です。 昔は、魚をよそからも仕入れてたくさんの種類を扱っていたそうですが、今は地元の市場で競り落とす地物の魚のみ。お客は高浜の魚介のおいしさをとことん知っている、近所の馴染みの顔ばかり。味に厳しい、高浜の人たちを納得させる目利きが必要です。「1人でも買いに来てくれる人がいる限り、続けたいね」と、福井氏は話してくれました。
福井県高浜町海の目の前に店を構え、高浜の海の素晴らしさを伝える。
「今日は地物のサザエと若狭ぐじが入っていますよ」と、運ばれてきた海の幸。高浜ならではの食の体験ができる場所があると聞き、伺ったのはカフェ&バー『FAMILIAR(ファミリア)』。パスタやカレー、タコライスなど洋食メニューを提供するお店ですが、この時期のお楽しみは、海を見ながら楽しめるバーベキューです。
バーベキューの食材といえば牛肉や豚肉、にんじんや玉ねぎなどの野菜が真っ先に浮かぶと思いますが、高浜のバーベキューといえば海の幸が主役。まずは、自慢のサザエをつぼ焼きに。炭火の上に殻ごと乗せて、しばらく見守ります。ブクブクと汁が出てきたところに醤油を垂らすと、何ともいえない香ばしい香り。思わず、唾を飲み込みます。
「さあ、どうぞ」ということで、迷わずがぶり。日本海側のサザエはぷっくり肉厚とは聞いていましたが、これほどまでに食べ応えがあるとは! 養殖とは違って臭みがまったくなく、新鮮だから肝までしっかり食べられる。程よい苦みに、ビールを飲む手が止まりません。
店主の今井俊吾氏は高浜町出身で、一度は高浜を離れたものの4年前にUターン。きっかけはサーフィンを始めて、日本各地や海外の海に出かける中で地元高浜の海の素晴らしさに気がついたことだといいます。「水質、ロケーション、波、すべてにおいて最高です。若狭和田の海の素晴らしさを多くの人に知ってもらいたい。店はそのための場なんです」と、今井氏は力強く話します。
店を通して、食を通して、海の素晴らしさを伝える今井氏の挑戦はまだまだ続きます。昼も夜もたくさんの客でにぎわう店内からは、その思いが十分に伝わってきました。