@adidasfun
温故知新の花作りで、九州一のアルストロメリアを。[大窪農園/大分県竹田市]
大窪農園色とりどりの花が咲き乱れる、九州一の花き産地。
鮮やかな色彩に、花弁の斑点模様。南アメリカ地方原産の“エキゾチック”と称される花、「アルストロメリア」。カラーバリエーションが豊富で花もちも良いため、花束やフラワーアレンジメント、冠婚葬祭など様々な用途で用いられる人気の花です。
国立公園を有する高原地帯の竹田市久住町は、花き栽培が盛んな産地。中でもアルストロメリアは九州一の出荷量を誇っています。新規就農者の減少が問題になっている中、若手の農家や女性の就農者も増え、盛り上がりを見せる久住の花き農家。市内の市場の1割を担う大窪慎二氏のハウスを訪ねてきました。
大窪農園牛飼いからアルストロメリア中心の花き農家へ。
テッポウユリやリンドウなどの花き栽培が盛んだった久住町で、アルストロメリアの生産が始まったのは約20年前のこと。栽培のしやすさに目をつけた大窪氏は、もともと畜産と米、椎茸栽培を営む農家でした。
大窪氏は農業大学卒業後、実家の手伝いで牛飼いをしていました。結婚してからは花が好きだった奥さんの影響もあり、球根ユリやブルーファンタジアの栽培をスタート。牛に花、椎茸と家族一丸となって多角的な農業をしていこうと考えていた頃、狂牛病の流行によって牛の価格が急激に下落し、深刻な打撃を受けました。そこから大窪氏は花の栽培に注力。一度植えたら4年間繰り返し収穫できるアルストロメリアに着目したのです。
大窪農園4年間咲き続ける花が久住の名品に。
一つの球根から年間100本の花が取れ、4年間植え替え不要。さらに1年中収穫できるアルストロメリアは、手が掛からないということもあり、次第に久住の花き農家へと広がりました。
「野菜よりも病気は少なく、連作障害もない。もちろん土作りや花自体の管理、消毒、病気対策などはせんといけんけど、割と手がかからんのよ。しかも朝と夜の寒暖差があると色ノリも良くなるし、高冷地にある久住での栽培は合っちょったんや」。
しかしバラやユリのようにメジャーな花ではなかったため、農家全員が花き部会に加入し、共販。年に数回の市場訪問や新品種のPRなど販促活動にも力を入れ、ブランドの向上を地域全体で目指しました。
冬時期には2ヶ月も持つという花持ちの良さと、数百もあるという品種の多さ、カラーバリエーションの豊かさなどが市場で話題となり、現在は冠婚葬祭やフラワーアレンジメントに多く用いられるようになったのです。
大窪農園花の名を全国へ轟かせるために。
久住町では現在14軒の農家がアルストロメリアを生産し、町全体で約200万本を収穫。そのうち約22万本は大窪氏が育てた花です。市場の1割を担う大窪氏の元には、土作りの方法や、扱う品種についてなど、様々な相談を受けることもあると言います。
「やっぱり情報交換はしていかんと。一人だけ良くても、アルストロメリアのブランド価値は高くならん。だからノウハウは共有してるんよ」。
市場を盛り上げていくためには農家が一丸となり、助け合うことが必要だと大窪氏は考えています。県内でもアルストロメリアの産地は他にあったと言いますが、どこも衰退。しかし周囲のサポート体制があることや、市場価値が次第に上昇してきていることなどから久住町では若手の新規就農者や、実家の花き農家を継ぐ若者も増えてきました。大窪氏のハウスで働いていた女性も「自分でやったみたい」と一昨年独り立ちをしたと言います。
「若い人がどんどん増えてきて、その人たちは市場で高値が付く段咲きのアルストロメリアを植えてみたり、いろんな品種に挑戦してみたり、冒険心のある人が多い。だから面白いよね」。
熟練の農家が安定して収穫ができるノウハウを伝え、若者からは冒険心やチャレンジ精神を得る。地方で始まった温故知新の花作りが、盛り上がりを見せています。
住所:大分県竹田市久住町有氏1609番地 MAP
電話:090-9726-7725