100年以上も続く段々畑で、現代的な知見も導入して、高品質の西宇和みかんを育てる。[TERROIR OF NISHIUWA・真穴共選/愛媛県八幡浜市]
テロワールオブ西宇和・真穴共選恵まれた環境で育つ、西宇和みかん。
温州みかんの名産地、愛媛県西宇和では今、「西宇和みかん」のブランディングを押し進めるプロジェクトが始まっています。
その一環として、目黒『kabi.』ではペストリーシェフ・中村樹里子氏が「西宇和みかん」のデザートコースを期間限定で提供します。
▶「Kiriko Nakamura による西宇和みかんのデザートコース」詳細・予約はこちら
今回はデザートコースの主役である「西宇和みかん」にどんな魅力があるのか?どのように育てられているのか。生産の現場をリポートします。
「西宇和みかん」は、3つの太陽が育むと言われます。
太陽から降り注ぐ日照量の多さは、土地を訪れれば、すぐに実感することですが、海からの照り返しもまた、眩しいほど。これが2つ目の太陽で、3つ目は急な斜面を活用した段々畑にあります。生産者や場所によっては畑の段々を、石垣で組み上げて作るケースもあり、この白い石が反射して3つ目の太陽となるのです。
西宇和にある共選のひとつ、八幡浜市・真穴を訪ねました。
共選とは、共同選果部会の略称。その地区の生産者たちで組織され、収穫した温州みかんの選別と出荷を行う選果場も共同で運営しています。
▶詳細は、TERROIR OF NISHIUWA/特徴的な地形が育む、伝統の西宇和みかんで進む、新たな価値観の創造。へ。
テロワールオブ西宇和・真穴共選西宇和で最も歴史ある温州みかんの名産地。
真穴は、佐田岬半島の付け根に位置する生産地。西側に、すぐ宇和海が迫り、急な斜面とのコントラストはまさに、絶景。
穏やかに凪いで煌めく海の美しさに、思わず見惚れてしまいます。
「そう、あれが佐田岬半島。ずっと向こうに九州が見えるけど、大分ですね」
下から上へ、畑が続く斜面の中腹に、柔らかい笑顔で語る宮本定(さだむ)氏の姿がありました。真穴共選で生産委員長を務めています。
「真穴の生産者は今、174人。全体で、270haほどのみかん畑があります」
真穴に、温州みかんの苗木が移植されたのは明治33年のこと。西宇和で最も古い生産地のひとつです。明治40年以降、栽培は本格化し、一大産地に成長。昭和39年には、その年に農林水産大臣賞を受賞した産物の中から選ばれる天皇杯も、みかんの産地として初めて受賞しています。
海が近く、潮風によって運ばれた豊富なミネラルが斜面全体に届けられる。それが真穴の地形的な特徴。柑橘類の栽培に適した古生層の土壌で、西宇和のほかの地域と同様、急な斜面が続いているため、水はけが良いのも大きなメリットです。現在、年間でおよそ8,000から9,000トンの温州みかんを生産しています。
テロワールオブ西宇和・真穴共選みかん栽培に向いた土地に感謝する。
宮本さんも祖父の代から温州みかんを育てる生産者。海抜10mの低地から標高300mぐらいの高さまで、縦一列に「2haとちょっと」の畑を持っています。
「この辺りは下から上まで畑を持つ人が多いですよ。なぜなら、花は下から順に咲くから(笑)」
収穫は11月中旬から、わずか45日間で一気に行われますが、低地から順に花が咲き、実を結ぶことで、下から効率良く収穫することができる。昼夜の寒暖差が少ない気候も、美味しい温州みかんに必要不可欠な環境と言います。
「だから、とろけるように柔らかく、食べてスッと消える、質の良い“じょうのう”ができるんです。寒暖差が少ないのは、穏やかで温かい海が近くにあるから」
宮本さんはそう言って、自然に感謝するように、また海を見つめました。
テロワールオブ西宇和・真穴共選新しい技術や知見も積極的に導入。
恵まれた自然があり、段々畑など、先人たちが築き上げた知恵と工夫も活かして、大切に育てられる「西宇和みかん」ですが、ただ伝統を継承しているだけではありません。
例えば、真穴でも、まだ一部と言いますが、「10年ほど前から導入が始まった」マルチドリップ方式の栽培があります。
マルチとは、みかんの木の下に敷設するシートのこと。降雨による余計な水分を除外して、水はけを、もっと良くするために導入されたものですが、シートは白く、陽光を反射して、木の下の方になる実を照らす効果も生みました。これを、4番目の太陽と指摘する生産者もいるほど。
ドリップとは簡単に言えば、液肥を満遍なく木々に与えるための仕組み。「みかんの点滴」と宮本さんは笑いますが、これにより、みかんの木が土にしっかりと根を張るようになったそう。
「根ができれば、アミノ酸など、微量だけど必要な栄養素がしっかり取り込めて、葉がたくさんできる。たくさんの葉があれば、余計な水分を十分に吐き出すことができ、みかんの味が凝縮する」
だから、あまり葉の剪定はしないそう。
受け継いだ技術に加えて、現代的な機器や知見も活用して、美味しい「西宇和みかん」を育てているのです。真穴共選では、出荷の前に行われる選果でも、光センサー選果機を採用。傷や腐敗を瞬時に検知するだけでなく、糖度や酸度も的確に測定しているとのこと。
高く評価される西宇和みかんを、今後もクオリティを維持しながら安定的に供給すべく、生産者の挑戦はずっと続いているのです。
テロワールオブ西宇和・真穴共選常に「最高」を志す、強い気持ち。
「ずっと、みかんを育てて、出荷していますが、今年は最高だって思った年なんてありませんよ。毎年、課題は見つかる」
柔和な笑顔から一転、引き締まった面持ちで語り始めた宮本さん。
「とにかく、美味しいものを一生懸命、作る。それだけです」
「西宇和みかん」は、宮本さんのような生産者が真面目に、誇りを持って取り組んでいるから、今年も美味しく育つのです。
そんな、甘味、酸味、苦味、食感と『西宇和みかん』の魅力を最大限に楽しめるコースを11月29日(木)より、『Kabi』にて期間限定で提供致します。是非、西宇和の土地を五感で感じられるコースをこの機会にご賞味ください。
▶「Kiriko Nakamura による西宇和みかんのデザートコース」詳細・予約はこちら
(supported by JAにしうわ)
住所:愛媛県八幡浜市真網代丙572-1 MAP
電話:0894-29-7014
真穴共選 HP:http://www.marumamikan.com/