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フリーキックが行なわれたのち、ゴールキーパーが触れるか、クロスバー・ゴールポストに当たるか、ボールがピッチ外へ出るまで、他のプレーヤーはボールに触ることができない。 #フットサル #サッカー #ユニフォーム

たとえクレイジーだといわれても、津軽にしかない木工製品を。[TSUGARU Le Bon Marché・木村木品製作所/青森県弘前市]

代表の木村氏(中央)を囲む工房の製作チーム。それぞれの職人が、得意分野を生かしながら働く。

木村木品製作所その木工品は、千年という名の街で生まれる。

弘前市郊外に「千年」という街があります。「千年」と書いて読み方は「ちとせ」。とても美しいこの名前は、江戸時代、霊峰岩木山を見渡せるこの地をお茶や花火を楽しむ一大行楽地にしようと、津軽藩の藩主によって名づけられたそうです。そんな風流ないわれを持った地に、小さな木工製品の工房『木村木品製作所』はあります。

事務所にずらりと用意されたサンプルは、木のぬくもりを感じるものばかり。木目の美しさと木肌のきめ細かさが際立ち、思わず触れたくなるような仕上がりです。現在代表を務める木村崇之氏は、木工屋の4代目。実は木村氏の代から、『木村木品製作所』の名前は飛躍的に知名度を上げました。そのきっかけとなったのが、津軽の名産品・りんごの木を使ったシリーズ。箸や器、バターベラなど食卓で活躍するアイテムから、ソープディスペンサーといったバス用品、アクセサリーやインテリア小物まで、ラインナップは実に多彩です。

通常、木工品の工房では、加工用の木材を仕入れて手を加えることがほとんど。しかし驚いたことに、ここで使われているりんごの木は、農園から伐採して製材にし、長い時間をかけて乾燥させるという工程を、全て自分たちで行っているというのです。「後からヒビが入ったり虫が出てきたりして、使えるのは全体の半分程度」と木村氏。りんごのイメージが強い津軽ですが、木村氏が手がけるまで、りんごの木を使った木工品はほとんどありませんでした。更にいえば、『木村木品製作所』の商品が知られるようになった今でも、追随する商品はごくわずか。その理由は、そもそもりんごの木が加工に適さないからなのだと木村氏。

▶詳しくは、TSUGARU Le Bon Marché/100年先の地域を創造するために。多彩で奥深い「つながる津軽」発掘プロジェクト!

工房の近くにある「千年」駅。「昔はりんご畑と田んぼばかりの場所でした」と木村氏。現在周辺は住宅街に。

看板もよく見ると木製。曾祖父が始めた会社が現在の「木村木品製作所」となったのは、木村氏の父の代から。

ほとんどの作業を職人が行う。「機械制御でやると思われがちですが、人の感覚で削っているんです」と木村氏。

木村木品製作所苦労の末、銘木として生まれ変わったりんごの木。

りんごは硬いことで知られるバラ科の植物。特に収穫しやすいよう剪定して背丈を低くする津軽のりんごは、幹が曲がりくねってこぶも多く、通常の製材機械ではすぐに刃がだめになるほど加工が難しいのだとか。「りんごの名産地は海外にもありますが、りんごの木を木材にしている所は世界的にも聞いたことがない」と木村氏。が、その一方で、役目を終えたりんごの木が毎年大量に廃棄されるという現状がありました。

りんごは地域の宝もの。実だけでなく、木本体も活用したい……。知人の畑から廃棄用のりんごの木を譲り受けたことがきっかけで、商品開発を始めた木村氏。「周りの同業者からは、クレイジーだといわれるようなこと。自分たちでも、やってみて初めてその大変さがわかりました」と語ります。ところが、試作品がメディアで紹介されると大きな反響が。展示会での評判も上々で、しだいに応援してくれる人が増えていきました。りんごの木工品が、りんごの木という新たな津軽の地域資源に光を当てたのです。

「思った以上の反応も嬉しかったのですが、作っている私たちも、りんごの木は海外の銘木にも負けない素材だと実感できたんです。ほら、深みのある色合いと質感が、本当に綺麗でしょう?」と木村氏。改めて感じたその魅力を生かし、満を持してリリースされたアクセサリーブランドに、木村氏は「CHITOSE」という名をつけました。ここ千年の地で1000年続くブランドになるように、そして津軽のりんご文化が、これからも長く久しく続くようにという願いを込めて。

「CHITOSE」のりんごをモチーフにしたアクセサリー。一部に金粉を施し、ユニークでモダンなフォルムに。

伐採、剪定されたりんごの木が並ぶ乾燥室。ヒビや節などを除くと、使えるのは約5割という歩留まりの悪さ。

使い込まれた工具があちこちに。ちなみに、りんご用の製材機械は自作したそう。りんごの木が硬すぎて市販品は使えないのだとか。

木村木品製作所弘前の四季を彩る木々が、日常のかたわらにある楽しみ。

広々としたりんご畑の他に、弘前を代表するもうひとつの景色といえば、それは全国有数の名所として知られる弘前公園の桜でしょう。そう、『木村木品製作所』は、この桜を使ったアイテムでも人気を博しているのです。きっかけは、りんごのシリーズで知られるようになった後、弘前の資源を再利用する企画の一環として、市から剪定木を譲り受けたこと。それまで産業廃棄物として捨てられていた剪定木は、今、『木村木品製作所』を通して様々な姿に形を変え、人々の日常に溶け込んでいます。

弘前公園にある約2,600本もの桜の木が剪定されるのは、毎年2月。限られた時期に限られた量しか手に入らない素材ゆえ、現在は生産量を確保しづらいのが悩みだとか。「でもやっぱり、他の桜の木ではだめ。弘前公園のあの桜だから作る意味があるんです」と木村氏。

弘前公園の桜は、覆い被さるように広がる見事な枝ぶりや花数の多さで知られますが、そこには津軽のりんごの剪定技術が応用されていることをご存知でしょうか。そして木村氏の曾祖父が木工製品を作り始めたのは、青森ヒバを使ってりんご農家の作業用のはしごを作ったことがきっかけだとか。りんご、桜、青森ヒバ……。木村氏の話を聞いていると、津軽を取り巻く木々が不思議とつながり、縁となって、『木村木品製作所』を支えているような気がしてきます。

弘前公園の桜を使った名刺入れは、木村氏自身も愛用。中にバネが仕込まれ、スムーズに名刺を取り出せる仕掛け。

青森ヒバで作った赤ちゃん用ラトル。一番奥が完成品。中にビーズを入れて木を貼り合わせ、手で削って仕上げる。

りんごと青森ヒバを組み合わせた「Ringoスツール」。曾祖父が手掛けたはしごへのオマージュを込めた。

木製の子ども用玩具や遊具でも知られる存在。弘前駅前にある商業施設内のキッズスペースも手がけた。

木村木品製作所世界に届く「青森のものづくり」を目指して。

国内外の大規模な展示会で商品を発表するなど、順調にも思える『木村木品製作所』のキャリア。しかし、木村氏が代表を引き継いだ頃は、今とは事情が違いました。当時は店舗用の建具や什器(じゅうき)など、受注生産の大型品の製造がほとんど。直接お客さんの手に届く木の小物を作りたいという木村氏の思いは、反発を受けることもあったそうです。「でも、間違っていなかった、やっぱりやって良かった。今はそう思えます」と、木村氏は笑顔で話します。

お客さんのリアルな感想が届く喜びは、スタッフの仕事の原動力に。メディアに紹介されたことで、コンセプトに共感して仕事の依頼をしてくれる人が現れ、販路も広がりました。りんごの木の加工に挑戦したことで技術力が上がっただけでなく、細かな作業を要する小物作りは、若手が経験を積めるため育成の土台にもなりました。小物や大型什器だけでなく、受注生産も自社生産もできる今の『木村木品製作所』は、ひとつにまとまったチームの強さを感じさせます。

現在力を入れているのが、青森ヒバに始まり、りんご、桜とつながってきた工房の原点・県産材を使った可動式プロダクトの企画です。ライフスタイルに合わせて好きな場所に動かせ、棚にも机にも間仕切りにもなる自由度の高いプロダクトだそうです。そんな新しいチャレンジについて語る時、木村氏の目は一段と輝きを増しました。「こんな小さな木工屋が、たくさんの人に知ってもらえるようになったのはありがたいこと。これからは世界に知られるブランドになっていきたい」と木村氏。青森の木々が世界各地で活躍する光景が、彼にはもう見えているのかもしれません。


(supported by 東日本旅客鉄道株式会社

大学で空間デザインを学び、東京で施工デザインの仕事もしていた木村氏。大きな組織に属するより家業を継ぐことを選んだのは、ものづくりを愛する職人気質から。

住所:青森県弘前市千年4-3-17 MAP 
木村木品製作所 HP:http://www.kimumoku.jp/