2019AW 撥水メルトンウールPコート

街着でもバイクでも使えるアイアンスペックのPコート!

  • 撥水加工を施したメルトンウールの新作Pコート
  • 袖口には防風性の高い厚手のリブを装備し、ライディング時に風が入らないアイアンスペックです
  • 腰ポケットの袋地には肌触りを重視し、コーデュロイ素材を使っています
  • ボタンはスタンダードなアンカーボタンを採用
  • シンプルなデザインの為ライディングにもタウンユースにも使えるPコートに仕上がっています
  • 商品により多少の誤差が生じる場合がございます。

素材

  • 表地 ウール:90% , ナイロン:10%
  • 裏地 ポリエステル:100%

「普通じゃない」を「売り」にする。津軽の“陸の孤島”で生まれる絶品野菜とは。[TSUGARU Le Bon Marché・サニタスガーデン/青森県黒石市]

黒石市のハウス前に立つ山田氏。さらさらのパウダースノーが舞う津軽らしい風景は、見惚れるほど美しい。

津軽ボンマルシェ・サニタスガーデン「何これ!?」と声が出るほど甘いじゃがいも。育ての親は、津軽の豪雪。

その日、取材に向かった私たちは猛吹雪の中にいました。場所は八甲田山南麓、沖揚平(おきあげだいら)。日本屈指の豪雪地・酸ヶ湯の目と鼻の先にあるこの場所で、人生初のホワイトアウトにおののきながら必死の思いで撮影したのは、こんもりとした雪の山でした。雪山の正体は、じゃがいもを保管する雪室。それもただのじゃがいもではありません。通常の倍程度、10度前後の糖度を誇る甘いじゃがいもが、この雪室の中で大切に貯蔵されているのです。

雪室を所有するのは、このエリアで農業を営む企業『サニタスガーデン』。「外がどんなに寒くても、室の中は常に温かいんですよ」と話すのは、代表の山田広治氏です。味見用に素揚げしたじゃがいもを試食し、一同びっくり。その甘さたるや、思わず「これ本当にじゃがいもですか?」と聞いてしまうほど。「リピーターの購入が多いです。皆さん、やっぱり味を気に入ってくださって」と山田氏。

じゃがいもがこれほどまでに甘くなるのは、雪室内部の温度が常に0℃前後に保たれているからだそうです。氷温下で凍るのを避けるため、じゃがいも自らデンプンを糖に変えるのだとか。まさに豪雪地だからこそ生み出される美味。先ほど取材陣が洗礼を受けた津軽の冬の厳しさが、一方では、こんな贈りものをもたらしてくれるのです。

▶詳しくは、TSUGARU Le Bon Marché/100年先の地域を創造するために。多彩で奥深い「つながる津軽」発掘プロジェクト!

訪れたのは2月。前日までの快晴が一転、山から吹き下ろす「山背」の吹雪に見舞われた。映画「八甲田山」を思い出し、背筋が凍ったのはここだけの話。

山田氏(右)とスタッフの山﨑氏(左)。2人の右横にある雪室はすっかり埋没。懸命の作業もむなしく、この日は中に入るのを断念。

秋に収穫し雪室で熟成させた後、例年2月頃から出荷を開始する雪室じゃがいも。現在作っているのは、左からさやあかね、メークイン、はるか、キタアカリの4種。

津軽ボンマルシェ・サニタスガーデン冬は何もできない。そんな暮らしを卒業したら、苦労の先には楽しさが。

我々取材チームが『サニタスガーデン』の存在を知ったのは、弘前市のショップ「フレッシュファームFORET」でした。ちょうど納品に来ていたスタッフの山﨑健氏の持つ豆もやしに興味を引かれたのです。首都圏では見たことがない、ひょろっと細長い独特の形状のこれも、聞けば、寒い時期しか栽培できないものだそうです。名湯・温湯(ぬるゆ)温泉がある地元・黒石市の温水を使った栽培方法で、栽培が難しく「幻の豆」ともいわれた黒千石という大豆を使用。シャキシャキとした歯触りの「噛むもやし」です。

雪室じゃがいもも黒千石の豆もやしも、冬季限定の野菜。しかし、もともと山田氏が栽培に取り組んでいたのは、レタスなどの葉物の夏野菜でした。神奈川県で生まれ、関東で農業に従事していた山田氏が青森に移住したのは2005年のこと。「当時、畑が雪に埋もれる冬場は完全にオフでした。でも今後の地域の農業を考えた時、通年で収入を得て人を雇用するには、冬も出荷できるものを始めるべきだと思ったんです」と山田氏。

きっかけは、農業仲間が自家消費用として雪に埋めていたじゃがいもの美味しさ。普通の農業では太刀打ちできない津軽の気候のデメリットを、メリット=売りに転換する――そんな方法に「これだ!」と活路を見出した山田氏。しかし、初めてのじゃがいも栽培は失敗の連続だったそうです。「無農薬栽培に挑戦して全滅させたり、雪室に入れる前に腐らせてしまったり……これがもう、本当に色々ありました。でもハウスで葉野菜を栽培するより、ここならではのもの、面白いものを作る方がやっぱり楽しい。テンションが上がるんですよ(笑)」と、もの静かな印象の山田氏が話した時、熱い挑戦者としての一面がちらりと垣間見えた気がしました。

栽培を始めて苦節6年、ようやく今年生産が安定したという黒千石の豆もやし。土と温水の両方を使う独自の方法で、自慢の味が完成した。

すくすく成長中の黒千石の豆もやし。栄養豊富で旨みが強いのが特徴だ。シャキシャキした独特の食感は、津軽弁で「しない」と表現されるそう。

現在、豆もやしの栽培を担当する山﨑氏。豆を発芽させてから出荷までは8日ほど。温水の熱気がこもるハウスの中での作業が続く。

雪室がある沖揚平から豆もやしの栽培場所までは、車で15分ほど。もともと育苗用だったハウスを再利用した施設だ。

津軽ボンマルシェ・サニタスガーデン農業に対する考え方を大きく変えた、フィリピンとアフリカでの出来事。

山田氏の人生の転機は、意外なことにフィリピンとアフリカでの出来事にありました。フィリピンを訪れたのは、国際政治を学んでいた大学時代。海外実習で現地の畑作業を手伝った時の鮮烈な記憶が、山田氏の農業の原点です。「水牛を引いて耕すような原始的な農業でしたが、そのなんともいえない心地よさが衝撃的で。いつか自分も農業を、と心に決めました。それと同時に、先進国の豊かさは途上国の貧困の上にあることを目の当たりにしました。日本へ輸出する木をあちこちで伐採していましたが、利益の恩恵を受けるのはごく一部の人。幸せの陰には、誰かの犠牲がある。だから今でも、『みんなが幸せになれる野菜作り』をテーマにしています」と山田氏。

アフリカへ向かったのは、青年海外協力隊の隊員として。大学卒業後に農業大学へ再入学して日本各地で研修を受け、既に知識も実績も得てからのことでした。が、ボツワナの大規模農場の運営に携わる中で、山田氏は壁にぶつかります。山田氏曰く「こちらは日本の優れた技術を伝えようと行くわけです。でも日本とは風土が違うからうまくいかない。それに日本では技術のことが中心で、販売のことまで勉強していませんでした。しかし、売ることまで考えて、初めて農業になるのだと知ったんです」。

帰国後に山田氏が入社したのは、日本各地の野菜の販売と生産者の就農支援を行う群馬県の企業でした。「独立だけでなく、様々な地域での就農を応援してくれる会社です。今の日本の農業は、産地間の競争になりがち。でもこれからは、各地の気候や風土を生かしつつ共存しながら野菜を売るべきだ、という考え方に共感したんです」と山田氏。ここでノウハウを学んだレタス栽培を実践できる場として、冷涼な津軽へ向かうこととなるのです。

すくすくと白菜が育つ、夏の沖揚平の光景。現在はほかにレタスやキャベツをを栽培、大手外食チェーンなどにも野菜を卸す。

雪室に入れるじゃがいもの収穫は10月頃からスタート。雪が降り始める前に行う、大仕事のひとつだ。

津軽ボンマルシェ・サニタスガーデン津軽の暮らしはアフリカより大変? 今だから言える地域への「恩返し」。

立っていられないほどの風と寒さ。実際に沖揚平の地吹雪の中に立つと、この地で暮らしてきた人々の執念を感じます。「山を開拓した先達たちは、大変な苦労をしたそう。昔は冬になると遭難しないよう互いの身体を紐でつなぎ、平地の集落まで買い物に行ったと聞きました。“陸の孤島”といわれた場所なんです」と山田氏。群馬の企業から独立し、津軽へやって来た山田氏を迎えたのは、そんな壮絶な暮らしを生き抜いてきた地元のプライドでした。

見ず知らずの若者から突然、農業用の土地を貸してくれと頼まれた沖揚平の人々からすれば、訝(いぶか)しむのも当然かもしれません。「今なら気持ちがよくわかる。でも当時は何も知らなくて……地元の方との距離を縮めるのは、正直、アフリカの土地になじむよりも大変でした(笑)」と話す山田氏も、この地に就農して丸15年。「雪室じゃがいもと豆もやしをこの地の特産品にすることで、皆さんに恩返しができたら」と語る山田氏もまた、今や沖揚平を愛してやまない地元民のひとりです。

厳しい自然をかけがえのない地域の宝ものに変えた『サニタスガーデン』の野菜作り。風土に根ざしながら、みんなが幸せになる農業を目指してきた山田氏の夢は、この地で結実したように見えます。「ここならではのもの、面白いものを作る方が楽しい」と言って笑った山田氏のことですから、もしかしたら、もう次の段階に進みつつあるのかもしれません。新たな津軽の名産品の登場を、楽しみに待つとしましょう。

 

(supported by 東日本旅客鉄道株式会社

雪をかき分けながら、豆もやしの栽培用ハウスへ向かう。日が落ちると一気にしんと冷え込む、津軽の冬の景色。

住所:青森県黒石市大川原蛭貝沢201 MAP
電話:0172-54-8116
サニタスガーデン HP:https://www.sanitas.jp/