嘉之助蒸溜所「熟成焼酎」の元祖がウイスキー造りに挑む!
鹿児島県日置市。雄大な東シナ海に面し、矢筈岳(やはずだけ)や諸正岳(もろまさだけ)を背負う風光明媚な地に、2017年11月、新たなスタイルのウイスキー蒸溜所が誕生しました。
その名は『嘉之助蒸溜所』。1883年創業の老舗の焼酎メーカーで、熟成焼酎の先駆けとなった『メローコヅル』を生み出した小正醸造株式会社が、その経験と知識を生かして満を持して設立したウイスキー蒸溜所です。60年以上にもわたる本格焼酎の樽貯蔵・熟成の経験を、同じくオーク樽を用いるウイスキー造りで発揮。クラフトウイスキー蒸溜所としては、世界的にも珍しい3基の蒸溜器を備え、独自の価値と味を創り出しています。
なぜ焼酎で名をはせた老舗が、ウイスキー造りを始めたのでしょうか? そしてなぜ、この日置の地に拠点を構えて、業界でも珍しいスタイルのクラフトウイスキー蒸溜所を築いたのでしょうか?
その想いとポリシーを余すところなくうかがってみました。
嘉之助蒸溜所135年以上もの焼酎造りの経験を、ウイスキー造りに生かす。
焼酎はウイスキーやブランデー・ジンなどと同じ「蒸溜酒」のカテゴリーに属します。小正醸造株式会社は、1883年の創業以来、代表銘柄である『小鶴』を中心に鹿児島の地に根ざした焼酎造りを行ってきました。そして2代目に就任した小正嘉之助氏が、「庶民の酒として親しまれてきた焼酎の価値を上げたい」と一念発起。そして迎えた1957年 、かつてなかった樽熟成焼酎『メローコヅル』を発売したのです。以来、日本国内だけでなく海外にまで販路を広げ、約30ヵ国に輸出してきました。
そしてウイスキーの魅力が幅広く浸透し、日本でも愛好者が増えてきた昨今。「これまで培ってきた本格焼酎の技術を、同じ蒸溜酒であるウイスキーに生かしたい」と思い立ち、更なるステージへ進出したのです。
「60年以上積み重ねてきた本格焼酎の樽熟成の技術で、世界中の人々を魅了したい」――その想いのもとに、本格焼酎における発酵や蒸溜・熟成やブレンド等のノウハウを、ウイスキー造りに応用。老舗の焼酎メーカーならではのウイスキー造りに取り組み始めました。
嘉之助蒸溜所3基の蒸溜器が織り成すバラエティ豊かなウイスキー。
『嘉之助蒸溜所』のウイスキーのコンセプトは、「Mellow Land, Mellow Whisky」。「ジャパニーズウイスキーを更に豊かに、まろやかに」というポリシーのもとに、眼前に広がる東シナ海と吹上浜(ふきあげはま)の雄大な風景を望みながら、精魂込めてウイスキーを製造しています。500年以上もの歴史を誇る鹿児島の本格焼酎の技術を基盤に、鹿児島でしか成せない、小正醸造株式会社独自のウイスキー造りに挑んでいます。
その証拠に、『嘉之助蒸溜所』はクラフトウイスキー蒸溜所としては大変珍しい個性を持っています。小規模蒸溜所には通常2基しかないポットスチル(蒸溜器)を、3基設置しているのです。
通常、ウイスキーは2度の蒸溜を行いますが、2度目の蒸溜の際に、ネックの形状や上部のラインアームの角度が異なるポットスチルを用いることで、原酒の香りや味わいをより豊かに変化させることができるのです。
3基のポットスチルから生み出される、バラエティ豊かな酒質。『嘉之助蒸溜所』ならではの魅力です。
嘉之助蒸溜所『ランドスケーププロダクツ』の監修によるハイセンスな建築も必見!
『嘉之助蒸溜所』の個性は、それだけではありません。
蒸溜所でありながら広く人々を受け入れ、見学だけでなく、実際にウイスキーをテイスティングできる『THE MELLOW BAR』も併設。更にオリジナルアイテムを取り揃えたショップも併設しており、ウイスキーを取り巻く文化まで発信しています。
そんな『嘉之助蒸溜所』のデザインを監修したのは、『ランドスケーププロダクツ』代表の中原慎一郎氏。中原氏と小正醸造株式会社代表の小正芳嗣氏は、以前から親しくしていた関係だそうです。小正氏がウイスキーの製造に進出しようと決めた際に、中原氏の経験と実績を見込んで依頼しました。
ともにスコットランドのウイスキー蒸溜所を巡り、意見を出し合ったという優美かつ機能的なデザイン。
吹上浜をイメージさせるベージュを基調にした温かな木調は、ぬくもりと落ち着きを醸し出しています。更にデザイン性のみならず、開放感と居心地の良さも実現。「訪れる人々にメローな気持ちになって頂きたい」という両氏の願いのもとに、爽やかな趣を漂わせています。
嘉之助蒸溜所ウイスキー造りをもっと身近に感じてほしい。
『嘉之助蒸溜所』は、クラフトウイスキー蒸溜所としては大変珍しい3基の蒸溜器をはじめ、糖化槽や発酵槽などの製造設備を、見学者が間近で見られるように設計されています。これは「小正醸造株式会社が培ってきた技術で、『嘉之助蒸溜所』が発展させていくウイスキー造りを、五感で感じ取って頂きたい」という想いによるものだそうです。
そして見学ツアーの最後には、東シナ海を一望できる『THE MELLOW BAR』で、熟成中のウイスキーのテイスティングと風景を楽しめます。こうした一連の体験を通じて、蒸溜所の成り立ちと、独自のウイスキー造りに込められた想いをぜひ感じ取ってみたいものです。
嘉之助蒸溜所待望の3年熟成「嘉之助ウイスキー」は2021年春頃にリリース予定!
こうして丁寧かつ愛情豊かに育まれている「嘉之助ウイスキー」は、2021年春頃にお披露目を予定しています。それまでは、鹿児島産大麦モルトで仕込んだ地産地消のウイスキー、『嘉之助蒸溜所』独自の醸造に挑んでいくそうです。
鹿児島の地で生まれた「嘉之助ウイスキー」を、世界の人々に愛されるブランドに――ウイスキー愛好家たちの新たな喜びや癒しになることを願って、決して急ぐことなく、日々堅実にウイスキー造りと向き合っています。
住所:鹿児島県日置市日吉町神之川845 3 MAP
電話:099-201-7700
営業時間:10:00~1700
休日:毎週月曜・火曜・年末年始
臨時休業あり(※月曜・火曜が祝日の場合は営業)
※見学は要予約(4日前まで/サイトのお申し込みフォームより)
※ガーデン部分、ショップは予約不要・入場無料
嘉之助蒸溜所 HP:https://kanosuke.com/
写真提供:小正醸造株式会社 嘉之助蒸溜所