美しい自然と人間が交錯し、交響してきた瀬戸内の島々に活力を取り戻す。[瀬戸内国際芸術祭2019/瀬戸内海]

春・夏・秋の3シーズンにわたって開かれる瀬戸内×現代アートの祭典(リン・シュンロン(林舜龍)「国境を越えて・海」/Photo:Yasushi Ichikawa)。

瀬戸内国際芸術祭2019瀬戸内の文化と魅力を映して、世界へ魅せる。

さんさんと降りそそぐ陽光。それを穏やかに照り返す凪いだ海。“内海”と呼ぶにはあまりに広大な水面に浮かぶ島々と、そのひとつひとつに息づく独自の文化――そんな珠玉の宝石箱のような瀬戸内で、今年も3年に一度の芸術祭が開かれます。

『瀬戸内国際芸術祭2019』。それぞれが特別な個性を放つ瀬戸内の島々と、それらを繋ぐ港などを舞台に、国内外から多数のアーティストが参加。色とりどりの現代アートが島々の歴史や文化を映し出しつつ、それらの再生と継承を謳います。

ただ外からアートを持ち込むのではなく、瀬戸内という地域と、そこで育まれた文化や歴史と協奏。さらにそこに住まう人々とも響きあい、瀬戸内の魅力を魅せてくれます。

個性豊かな現代アートに惹かれて、世代や地域を超えた人々が集う。すべてが協奏して地域の再生につなげる(瀬戸内国際芸術祭2016の様子/Photo:Shintaro Miyawaki)。

テーマは「海の復権」。人が訪れる“観光”を、島の人々の“感幸“にする(ジャウメ・プレンサ「男木島の魂」/Photo:Osamu Nakamura)。

瀬戸内国際芸術祭2019無数の歴史がきらめく瀬戸内の復権を。

『瀬戸内国際芸術祭』の一貫したテーマは、「海の復権」です。美しい自然と人々が共存してきた瀬戸内の島々に活力を取り戻し、瀬戸内が地球上のすべての地域の「希望の海」となる――それが目指す目標だそうです。

そのために欠かせないのが、訪れる人々の“観光”が島の人々の“感幸“となること。それを象徴するコンセプトが、「アート・建築」「民俗」「生活」「交流」「世界の叡智」「未来」「縁を作る」の7つです。いずれも瀬戸内の島々と人々が育んできた遺産を、未来に繋げることを目的としています。

豊島の唐櫃岡に設けられた半屋外のレストランで、島の女性達と丸ノ内ホテルのシェフが協働(安部良氏「島キッチン」/Photo:Osamu Nakamura)。

直島に暮らす人々や、島を訪れた人々の憩いの場とすべく約130本の桜を植樹。一時の“展示”に留まらず、未来への遺産となる(安藤忠雄氏「桜の迷宮」/直島・ベネッセハウス周辺/Photo:Yasushi Ichikawa)。

瀬戸内国際芸術祭2019季節と共に移りゆく、めくるめくアート。 

『瀬戸内国際芸術祭2019』は、大きく3つの会期に分かれています。
特定の会期にしか鑑賞できないアートや、特定の季節にしか行われないイベントもあるので、是非すべての会期に訪れてみたいものです。

まずは「ふれあう春」。4月26日(金)~5月26日(日)の31日間で、命が目覚めて華やぎはじめる春に、瀬戸内とそこを訪れる人々の交流がスタートします。

そんな始まりの季節にふさわしい展示が、女木島を舞台とした“「島の中の小さなお店」プロジェクト”。総勢8名のアーティスト達が、地元の旅館を活用したお店を開き、カフェ・ヘアサロン・的屋・卓球場など、様々な形でゲストを迎えます。

実際に利用したり体験したりできる、参加型のアート。あなたも瀬戸内の一員となって、その風土や空気に触れてみてはいかがでしょうか?

また、上記のアートは全シーズンを通じて展示されますが、春にしか見られない作品もあります。
まずは沙弥島を舞台とする“ピボット”。マデライン・フリン氏とティム・ハンフリー氏の共作で、会話ができるAI搭載のシーソーで遊びながら、与島地区5島の昔話が聞けます。

さらに、金氏徹平氏による“S.F(Smoke and Fog)”。高松の屋島と、そこから望む瀬戸内の風景に着想を得た、大型看板型の写真作品等によるインスタレーションを展示します。

使われていない倉庫を活用した、シアター仕立ての絵画と映像によるインスタレーション(依田洋一朗氏「ISLAND THEATRE MEGI『女木島名画座』」/Photo:Yasushi Ichikawa)。

瀬戸内国際芸術祭2019新たな作品が続々と登場。どの期間も見逃せない。

次の「あつまる夏」は、7月19日(金)~8月25日(日)までが会期。陽光きらめく瀬戸内の魅力が、ひときわ高まる38日間です。

ここで初めて登場するのが、高松港の北浜地区に展示される“北浜の小さな香川ギャラリー 空間デザイン”。建築家の家成俊勝氏と赤代武志氏による『ドットアーキテクツ』の作品で、「瀬戸内の地域資源」に焦点を当てています。伝統文化の香川漆芸や、高松市特産の銘石・庵治石(あじいし)などを用いたアートで、瀬戸内の地域資源の魅力を現代アートによって掘り起こします。

最後の会期は「ひろがる秋」。9月28日(土)~11月4日(月)の38日間にかけて、有終の美を飾ります。
この時のみ見られる作品は、大島を舞台とするクリスティアン・バスティアンス氏の“大切な貨物”。映像インスタレーションとライブ・パフォーマンスによって、かつて大島に強制移住させられたハンセン病患者達の物語を再生し、人間の尊厳を問いかけます。複雑で重層的な視覚効果によって、社会構造を露わにする氏の作風が、目をそらしてはならない歴史を浮かび上がらせます。

このように、瀬戸内の様々な側面をアートによってクローズアップ。見て、触れて、参加するごとに、あなたの中に様々なものを残すでしょう。

約200年前に築かれたとされる、小豆島特有の“猪鹿垣”を再築。前回2016年からの展示で、今回は新たにピラミッド型の石積みを構築する(齋藤正人氏「猪鹿垣の島」/Photo:Yasushi Ichikawa)。

瀬戸内国際芸術祭2019多種多様な文化と風土を、アートによって浮かび上がらせる。

『瀬戸内国際芸術祭』の魅力は、瀬戸内の美しい風景とそこに配されたアートを鑑賞しながら、独自の文化や歴史に触れられることです。個性あふれるアート達が映し出すのは、そこで生きてきた人々と、その暮らしから紡ぎだされた有形無形のもの。風土も成り立ちも異なる島々を巡るたびに、瀬戸内という土地の魅力が心身に染み渡っていきます。

また、瀬戸内に住まう人々との交流も醍醐味。著名なアーティストや、特定の作品を目当てに訪れた人も、「島の人達と話せたのが一番楽しかった!」という声を残して帰っていくことが多いそうです。
まさに自ら参加して、瀬戸内という土地の一員になれるイベント。お遍路さん文化の“お接待”が根付いている瀬戸内で、温かなホスピタリティに送迎される体験も、単なるアート鑑賞以上の満足感を与えてくれます。

これも瀬戸内の“資源”の一側面。空き缶やペットボトルなどのゴミや、家庭の不要品を集めてつくったチヌ(クロダイ)のオブジェ(淀川テクニック「宇野のチヌ」/Photo:Osamu Nakamura)。

瀬戸内国際芸術祭2019お勧めは、お得に効率良く巡る「作品鑑賞パスポート」。

そんな魅力たっぷりの『瀬戸内国際芸術祭』ですが、瀬戸内とそこに浮かぶ島々という、広大なロケーションを舞台にしたイベントなだけに、多くの作品を効率良く見て回るのは、少々難しくもあります。
そんな困難を解決するために、お得な『作品鑑賞パスポート』や『オフィシャルツアー』も用意されています。是非うまく活用して、3年に一度のアートの祭典を存分に楽しみましょう!

まず『作品鑑賞パスポート』は、すべての会期で有効な『3シーズンパスポート』と、特定の会期のみ有効な『1シーズンパスポート』の2種類があります(一部対象外の作品や施設もあり/別途料金が必要)。

次に『オフィシャルツアー』は、2019年の新規作品を中心に鑑賞しながら、チャーター船で島々を巡れるガイド付きのツアーです。効率的にアートを巡りアートの鑑賞ポイントや、島々の魅力も知ることができる、お得なツアーです。

旅するように楽しめる、大規模かつ地域性にあふれた芸術祭。上記を活用して、存分にその魅力を味わいましょう!

ここを訪れてこそ知ることができる魅力(妹島和世氏+西沢立衛氏 /SANAA「海の駅『なおしま』」)。

瀬戸内国際芸術祭2019「島のおじいさん、おばあさんの笑顔を見たい」

豊かで穏やかな海に囲まれた、広大な瀬戸内。そこに浮かぶ島々を『瀬戸内国際芸術祭』を鑑賞しながら巡ることで、農・工・商が共栄していた原初の人びとの営みを知り、この先も地球上にそれらが続いていくことを知ることができます。

「海の復権」というテーマに沿って人々を呼び込み、そこに住まう人々を元気にしていくイベント。ゲストがとりどりのアートに感激するほどに、島に住むおじいさん、おばあさん達も自らの故郷に誇りを感じて元気になっていきます。

瀬戸内の島々と人々が生み出したものを、アートという形で万華鏡のように映し出す芸術祭――そこで讃えられる魅力が、今後も新たな人々を惹きつけていきます。

瀬戸内×アートの協奏で、世界から人々を呼び込む(瀬戸内海風景/Photo:Osamu Nakamura)。

開催期間:ふれあう春:4月26日(金)~5月26日(日)、あつまる夏:7月19日(金)~8月25日(日)、ひろがる秋:9月28日(土)~11月4日(月)
開催場所:瀬戸内海(直島・豊島・女木島・男木島・小豆島・大島・犬島・沙弥島(春)・本島(秋)・高見島(秋)・粟島(秋)・伊吹島(秋)・高松港周辺・宇野港周辺)
瀬戸内国際芸術祭2019 HP:https://setouchi-artfest.jp