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「情の時代」に直面している問題を「情」により打ち破ることを目指し、現代社会の課題に挑む。[あいちトリエンナーレ2019/愛知県名古屋市・豊田市]
あいちトリエンナーレ2019今、この時代にこそ問いかけるべき課題を多様なアート群で表現。
現代アートと社会問題。それは切っても切り離せない関係にあります。なぜなら時代の課題をアーティストならではの視点で切り取り、そこに浮かび上がってきたイメージを具現化することこそが、現代アートの本質であり、また、目標でもあるからです。
そんな現代アートの本領発揮ともいえる芸術祭が、2019年の夏、愛知県で盛大に催されます。
それは『あいちトリエンナーレ2019』。
3年に1度行われる国内最大規模の国際芸術祭で、今回のテーマは「情の時代」。メイン会場の名古屋市に加え、毎回変わる開催都市に、世界有数の工業都市・豊田市を選定。インダストリアルな要素も加味し、美術館・文化施設・まちなか・商店街などを舞台に75日間の祭典を繰り広げます。
現代美術の展示はもちろん、映像プログラムや舞台芸術、そして今回初となる音楽プログラムも実施。更にゲストの鑑賞体験をより豊かにするために、ラーニングプログラムも充実させました。加えてアート・プレイグラウンド(各会場にテーマを設けて来場者の創造性や主体性に着目したプログラムを行う)も実施する他、これまでに、アーティストを県内の小学校へ派遣してのワークショップなども行われました。
年代・性別・立場を超えて、あらゆる人々がシームレスにアートを楽しめる場――そんな理想を実現するために、随所に革新的な試みがなされています。
【関連記事】あいちトリエンナーレ2019/アート界と芸術祭の在り方に一石を投じる、未来への変革を目指す。
青木美紅 Aoki Miku《1996》 2019
Photo: Tetsuya Matsushita
津田道子 Tsuda Michiko《あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。》 2016、「オープン・スペース 2016 メディア・コンシャス」NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]、東京
あいちトリエンナーレ2019テーマは「情の時代」。ジャーナリストの芸術監督が現代社会の病理に着目。
現在、世界は共通の悩みを抱えています。その源泉にあるのは、先行きが見えず、「我々はいわれなき危険に晒されているのではないか?」という曖昧模糊(あいまいもこ)とした不安です。「わからない」ことは人々に不安をもたらし、本来はグレーであるものにまで明確な答えや対立軸を求めるようになってしまいます。
そんな「情」報化社会ならではの病理は、反面、人本来の「情」である「なさけ」や「思いやり」によって解決できます。このような理想をテーマにかかげ、様々な対立軸の中庸(ちゅうよう)を探りながら「アート」本来の領域を取り戻していく――それが『あいちトリエンナーレ2019』のテーマに込められた思いだそうです。
「アート」の語源はラテン語の「アルス」や、ギリシア語の「テクネー」だといわれています。これらは「古典に基づいた教養や作法を駆使する技芸」一般を指すそうですが、このような先人たちの指針に倣い、我々現代人も「情」によって「情」を飼いならす「技」を身につけなければならないのではないか? それこそが本来の「アート」の目的ではないのか? といった啓発が、この国内最大規模の芸術祭には込められています。
舞台は国内屈指の「技」によって日本のモノづくりをリードする、都市であり、また地方でもある「あいち」。ここで繰り広げられる本物の「アート」の祭典は、きっとあなたの意識に変革をもたらすでしょう。
越後正志 Echigo Masashi《火のないところに煙は立たず》 2013
Photo: Keisuke Yunoki
Courtesy of the artist
アイシェ・エルクメン Ayşe Erkmen《On Water》 2017
Photo: Roman Mensing/Münster
和田唯奈(しんかぞく)《Empty and Poke》 2018
Photo: Hideto Nagatsuka
あいちトリエンナーレ2019理想は高くとも親しみやすく。町と日常を彩るエンターテイメント。
とはいえ、『あいちトリエンナーレ2019』は決して難解でも親しみにくいイベントでもありません。それは主催の愛知県が提唱する、『あいちトリエンナーレ』を「“ここ”で開催する意義」を紐解くとわかります。
その第一は、「世界の文化芸術の発展に貢献」するため。上質かつ国際的にも通用する作品群の展示を大前提としながら、「文化芸術の日常生活への浸透」を目指しています。更に地元の人々やアートに興味のない人々にもなじみやすく、アーティスト自らのガイド等によって、より作品の世界にディープに浸ることもできます。
加えて、「地域の魅力の向上」を目指し、「あいち」にもともと備わっている魅力を深く掘り下げるという使命も。そのため旅やイベント好きの人々もライトに楽しめる、気さくでポジティブな「お祭り」となっています。
ジェームズ・ブライドル James Bridle
《ドローン・シャドー002》2012、イスタンブール(トルコ)
高山 明 (Port B) Takayama Akira (Port B)
『ワーグナー・プロジェクト ―「ニュルンベルクのマイスタージンガー」―』2017、KAAT神奈川芸術劇場、神奈川
あいちトリエンナーレ2019参加型のプログラムでより現代アートに親しむ!
また、世代や条件を問わないバリアフリーなプログラムによって、アートやアーティストたちと気軽に触れ合うことができます。例えばキュレーターらの解説を聞きながら楽しめる「ベビーカーツアー(要事前申込・抽選)」。愛知芸術文化センター・名古屋市美術館・豊田市美術館の各展示で申し込むことができ、生後18ヵ月までのお子様とともにアートを鑑賞できます。
次に紹介するのは、古着を材料として芸術監督やアート・プレイグラウンドの参加者たちのための「ユニフォーム」を作るイベント。更に「対話型アート鑑賞」ができるツアーや、アーティスト自身が作品の見所を紹介してくれる『アーティスト「と」みるツアー』などなど、鑑賞体験をより深められるプログラムが目白押しです。
Courtesy of ANOMALY
© Courtesy Galerie Lelong, Paris & Bandjoun Station, Cameroon
あいちトリエンナーレ2019アート界特有の問題も改善。
更に『あいちトリエンナーレ2019』は、アート界がはらむ諸問題にも着目しています。いわゆる「ガラスの天井(能力や実績に関わらず、性別やマイノリティ等の本人に因(よ)らない要素によって、組織や業界内での評価や昇進が妨げられること)」のせいで男女比がいびつになっていた参加アーティストの内訳を、ほぼ半々にしました。加えてアーティストの制作費用を支援する体制をつくり、クラウドファンディング方式で一般からの支援も公募。著名なアーティストや中堅アーティストが中心だった従来の芸術祭とは、一線を画す芸術祭となっています。
こちらの続きでは、それらの変革を成し遂げた芸術監督の津田大介氏にインタビュー。よりディープに『あいちトリエンナーレ2019』が目指す境地に迫ります。
鷲尾友公 Washio Tomoyuki《seven years one day》 2014、「粟津潔、マクリヒロゲル 1 美術が野を走る:粟津潔とパフォーマンス」金沢21世紀美術館、石川
Photo: Atsushi Nakamichi / Nacása & Partners
Courtesy of 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa
「ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて」水戸芸術館現代美術ギャラリー、茨城
Photo: Niko
袁廣鳴(ユェン・グァンミン)Yuan Goang-Ming《日常の演習》 2018、「明日の楽園-袁廣鳴個展」TKG+、台北(台湾)
Courtesy of the artist
開催期間: 2019年8月1日(木)~10月14日(月・祝) [75日間]
会場:愛知芸術文化センター
名古屋市美術館
名古屋市内のまちなか(四間道・円頓寺)
豊田市(豊田市美術館及び豊田市駅周辺)
あいちトリエンナーレ2019 HP : http://aichitriennale.jp/
写真提供:あいちトリエンナーレ実行委員会
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