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豚も鶏も人間も、自然体が一番。みんなをストレスフリーにする魔法の牧場。[TSUGARU Le Bon Marché・長谷川自然牧場/青森県西津軽郡鰺ヶ沢町]
津軽ボンマルシェ・長谷川自然牧場名物は豚? それとも牧場主夫婦? 全国的な知名度を誇る津軽の牧場。
青森県西部、日本海に面した鯵ヶ沢町。特産のイカの生干しが海風にそよぐ「イカのカーテン」を横目に内陸へ10分ほど車を走らせると、とある牧場が現れます。以前紹介した弘前市の食材店『ひろさきマーケット』や県内の百貨店の食品売場をはじめ、弘前市のフランス料理の名店『レストラン山崎』、『帝国ホテル』や『ザ・リッツ・カールトン』といった全国の高級ホテル、都内の有名レストランにいたるまで、多くの店から名指しで取引を求められるその牧場こそ『長谷川自然牧場』。そしてここを一躍有名にしたのが、「自然熟成豚」と名づけられた豚肉です。「自然熟成豚」の一番の特徴は、なんといっても脂の美味しさ。ひと口食べると、豚肉とは思えないほど細かいサシがふわりとほどけ、口の中に上品な甘さが広がります。一流シェフをも魅了するその品質はどのように生まれるのでしょうか。
牧場を訪れた私たちをまず歓迎してくれたのは、敷地内を自由に走り回る鶏たち(警戒心ゼロ!)とまだおぼつかない足取りでこちらに向かってくる子犬、子犬を見守る母犬。その近くを悠々と猫が通り過ぎます。たくさんの動物が思い思いに過ごしている様子にほっこりしていると、飛び切りの笑顔で登場したのが牧場主である長谷川光司氏と洋子さんの夫妻。「よぐ来たね~!」という歓迎のあいさつ後、すぐに始まる弾丸世間話に、こちらもついつい取材を忘れてお喋りしてしまいます。そう、「自然熟成豚」と並ぶこの牧場の名物がこの長谷川夫妻。相手の心の扉を開くのが天才的にうまい、津軽のとっちゃ(お父さん)とかっちゃ(お母さん)です。
ふたりに案内してもらい豚舎へ行くと、豚たちが一斉に集まってきます。洋子さんにブヒブヒと話しかける豚もいれば、取材班ににっこり(?)ほほえみかける豚も。それぞれの豚にちゃんと個性を感じるのは、豚たちがのびのびと育てられているからに他なりません。
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津軽ボンマルシェ・長谷川自然牧場美味しさの秘密は、土地の恵みから生まれる独自の飼料。
「自然熟成豚」の美味しさの理由はたくさんあります。まずは通常半年ほどで出荷されるところ、10ヵ月育てるという飼育期間の長さ。そして独自に作る発酵飼料です。牧場の片隅に積まれたジャガイモやニンジン、リンゴにスイカといった農作物は、日々近隣の農業協同組合や加工場、生産者から届くもの。規格外のものや廃棄される部位を受け入れ、豚の餌にします。更にユニークなのは、パンやうどん、弁当など、様々な理由で廃棄される色々な食べものを引き取り、農作物と混ぜて餌に利用していること。
発酵飼料を作るのはなかなかの手間。まずは集められた材料を腐葉土やもみ殻、米ぬかなどと混合し、微生物に分解させて発酵を促しますが、ここで重要なのが「鯵ヶ沢の海水」と光司氏。ミネラル分の補填のため、様々な場所の海水を混ぜて実験を行った結果たどりついたのが、世界遺産・白神山地からの水が流れ込む、鯵ヶ沢・赤石地区の海水だったそう。光司氏曰く「他の場所の水じゃうまくいかねんだ」。地場の生産物に加え、豊富なミネラル分が証明された白神山地の水と赤石の海水があってこそ生まれる『長谷川自然牧場』の発酵飼料は、津軽の土地がもたらす恵みの一部ともいえるでしょう。こうしてできたほかほかの発酵飼料は豚の大好物。彼らの腸内環境が良好なため、たい肥の臭いが少ないのもこの牧場の特徴です。たい肥は餌の調達に協力してくれる地域の生産者に還元。地域の中での循環型農業を目指し、それを実現していることに驚きます。
今でこそ独自の先進的な取り組みで知られ、各地から同業者が視察に訪れる『長谷川自然牧場』ですが、そうなるまでには並々ならぬ苦労があったといいます。それは夫妻の明るい笑顔からは想像もつかないような歴史でした。
津軽ボンマルシェ・長谷川自然牧場35年間、ふたり一緒に手探りで追い求めた理想の農業の形とは。
夫婦は以前、葉タバコ農家でした。しかし度重なる農薬散布により光司氏が農薬中毒に。農薬を使わずに、安心して人に食べてもらえるものを作りたい。そう考えた時思い浮かんだのが、小さい頃に食べた豚や鶏の美味しさだったといいます。「昔はどこの農家も家畜を飼って、ホルモン剤や抗生物質なんて使わず余った野菜や人間の食べ残しを与えて、ゆっくり育ててたでしょ。とにかく昔のやり方で、そう思ってまずは鶏、それから豚も飼い始めたの。でも当初は食品残さで育てるなんて前例がないから大変で。仕事が終わった夕方から各地へ残飯集めに行って深夜さ帰って、また早朝から仕事。なんでこんなことしてるんだろ? って泣いた(笑)」と洋子さん。
「残飯豚」。そう呼ばれたこともあった豚肉の美味しさにまず気付いたのは、料理人たちでした。レストランから直接注文が入るとしだいに周囲の評価が変わり、国内有数の食品加工メーカーから契約の依頼が舞い込んだことで売り上げが安定するように。葉タバコから畜産に転向して、実に20年近く後のことでした。
農薬中毒の実体験から、自然農法に大きく影響されたという長谷川夫妻。現在も一貫して薬品を使わない飼育方法を実践しています。しかし人間の食べものの残さには食品添加物が使用されているのも事実。ふたりも一時期それに悩んだそうです。「人の食べものをあげても“自然”と言えるのか。んだばって、ここに運ばなかったらパンも弁当もゴミになるべ」と洋子さん。結局、添加物の入った食品も一部使い続けることを選びますが、その代わり進化したのが、微生物の力を利用した発酵飼料作りの技術と飼料の質でした。現在は畜産を始めて35年目。地域と連携した循環型農業が確立していったこの年月は、ふたりが取捨選択をしながら仕事に向き合ってきた日々でもあります。「色々したばって、好きな人と一生懸命やってたら、なんもできんだな、夫婦ってすごいなって」。洋子さんはそういって、ニコニコとのろけました。
津軽ボンマルシェ・長谷川自然牧場多くの人の拠り所になる、そんな牧場を作りたい。
取材時、印象に残った話がありました。もともと洋子さんは動物が苦手。畜産を始める際には光司氏とひと悶着あったとか。しかし、初めて豚の出産に立ち会った時のこと、「生まれたての子豚がめんこくてめんこくて」、それ以降豚に夢中になってしまった洋子さん。今では毎日豚とのスキンシップを欠かさないそうです。そして現在、長く畜産という命の現場に関わってきた彼女が力を入れるのは食育です。「命とは何かを教えたい。今って学校で“殺す”とか“殺される”とか言っちゃダメって聞いて、危機感を覚えて。豚は食べられるために生まれて殺される。食べる人が無関心なことほど、豚にも生産者にも悲しいことはないよ」と洋子さん。
洋子さんが農場内に体験施設を作ろうと言い始めた時も、通信で食育免許の勉強をし始めた時も、60歳を過ぎてからグリーンツーリズムの資格を取得するといい出したときも、光司氏は最初「なんもそんなこと」と止めたのだとか。しかし妻が好きな岩木山を望む立派な体験施設を作り、インバウンドの受け入れを見越して英語を特訓中なのは、何を隠そう光司氏。「なんだかんだで一緒に好きなことやってるんだ」と洋子さんは笑います。
14年前から洋子さんが自主的に始めた農業体験の受け入れは、今では地元の小中学校から直接依頼がくるように。現在は地元・鯵ヶ沢の高校の生徒たちと地域資源を活用した商品開発に取り組み、それを何よりも楽しんでいます。「いつかこの街から出て行く子たちに、地元の魅力を持っていってほしい。都会でダメになっても、地元の良さを知っていたら逃げ場ができるから」と話します。そして洋子さんはこう続けました。「夢はたくさんの人がここで動物を見たり散歩したり、野菜やハーブを摘んだり、お茶したりしてくこと」。
一見、普通のとっちゃとかっちゃに見えるふたりは、津軽が誇るスーパー夫婦。肉や卵の美味しさ、そして牧場の幸せな空気感を体験すれば、きっとあなたにもその理由がわかるはずです。
(supported by 東日本旅客鉄道株式会社)
住所:青森県西津軽郡鰺ヶ沢町大字北浮田30 MAP
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