山懐に抱かれた奥日田のサーキット場で、一夜限りの非日常体験を。[AUTOPOLIS×Snow Peak Glamping/大分県日田市]

お酒を片手に焚き火を囲み、吸い込まれそうな星空を仰ぎ見るゲストたち。

オートポリス × スノーピーク グランビングオートポリスの新たな挑戦。ファン待望のキャンプフィールドが誕生!

腹の底まで響くような音と共に、視界の端から端へと一瞬で走り抜けていくスーパーバイク。10月の晴れ渡った空の下、この白熱のレースを間近で体感するため大勢のファンが会場へと詰めかけました。

ここ「オートポリス」は阿蘇の玄関口、奥日田の最奥に位置する山々に囲まれた広大なサーキット場です。九州唯一のインターナショナルレーシングコースで、3万人もの観客を動員するビッグレースからママチャリレースや四輪・二輪走行会などの参加型イベントまで、モータースポーツファンのみならず多くの地元の人々から愛されてきました。そんなオートポリスが今秋、新たなチャレンジに乗り出したのです。

そのチャンレンジとは、敷地内にキャンプフィールドを開設すること。サーキットが位置する奥日田エリアは宿泊施設に限りがあるため、連日観戦したいファンが泊まる場所を確保しづらいというのが悩みの種でした。そこで、場内でのキャンプ泊が可能になれば、観客は興奮冷めやらぬまま翌日のレースも楽しめるようになります。

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自然との一体感に浸れる、森に抱かれたサーキット。

この日行われていたのは2019 MFJ全日本ロードレース選手権シリーズ。轟音が響き渡るホームストレートは迫力満点。

今回より開設された場内キャンプフィールドに宿泊、ベストポジションを確保して特等席で寛ぐ家族連れの姿も。

オートポリス × スノーピーク グランビングスノーピークとのコラボレーションで実現、贅を尽くしたグランピング。

そしてキャンプフィールドのオープンに合わせて、ある特別なイベントが開催されることになったのです。それが、“サーキットでキャンプする非日常体験”をテーマにしたオートポリスグランピング。360°のパノラマでレースが楽しめるインフィールドに5棟のテントを設営し、10名のゲストを招待。“グラマラス×キャンピング”の言葉どおり、ひと晩限りという贅沢な環境で、ここでしか味わえない“空間と食”を提供するというイベントです。

今回オートポリスがタッグを組んだのは、奥日田にキャンプ場と実店舗を構えるアウトドアブランドのスノーピーク。ゲストたちの宿泊エリアからダイニングスペース、キッチンまですべての設営を手掛けました。まるでホテルの一室のように広々としたテント内には、タオルや歯ブラシ、モバイルバッテリーなどのアメニティが揃っているのはもちろんのこと、冷蔵庫代わりのクーラーボックスに石油ストーブまでも。10月とはいえ、夜の奥日田はダウンジャケットが必要なほどの寒さです。しかしストーブをつけてふかふかのベッドに潜り込めば、朝まで心地よく暖か。

さらに暖を取りたい時には、テント内に用意してある湯浴み着で“サーキットの中の露天風呂”へ。こちらはなんと“出張する温泉”で、天ヶ瀬温泉の湯をそのまま運んできています。普段は足湯としてオートポリスのイベントやスポーツ大会のゴール後などに登場するとのことですが、今回は全身で浸かれる特別仕様。体の芯から温まりながら辺りを見回せば、夜半のレースコースと山並みの壮大なコントラストが眼前に広がります。

当日は遠く有明海や雲仙までが視界に。雄大な自然の中にあるサーキットとキャンプフィールドならではの温泉体験となった。

レースプログラム終了後の夕暮れ時。この日の出来事を語らいながら静かな時間が流れていく。

宿泊用テント内。夜の高原には昼のアクティブさとは対照的な落ち着いた空間が用意されていた。

夜の帳が下り、暗くなっていくキャンプ場に明かりが灯る。

オートポリス × スノーピーク グランビング出張料理人が織りなす食の魔法。

ゲストが1泊2日の間で口にする夜朝昼の3食。そのすべてのプロデュースを手掛けたのが、料理家であり食空間演出家でもある大塚瞳さんです。出張料理人として全国各地へ赴き、数日限りの食空間を演出するイベントプロデュースを10年以上続けてきたとのこと。今回もこの日のためだけに考案したオリジナルメニューを振る舞ってくれました。夜はスペイン、朝は台湾、昼はインド料理と、キャンプ場で作ったとは思えないほどバリエーション豊かな美食の数々にゲストたちも舌鼓。「同じことは二度とできないからこそ、みんなの記憶に残るような料理を作って思い出を共有できたら嬉しい」と語る大塚さん。その想いが端々にまで行き渡った、まさに一期一会の体験でした。

夕食後は、水郷・日田の酒蔵を中心にセレクトした銘柄を揃えたバーエリアへ。ビールはもちろんのこと、日本酒、焼酎、スパークリングなどから好みのお酒を手に、揺らめく焚き火を囲むベンチへと向かう人も。冴え渡る夜空と満天の星、圧倒的な自然に囲まれ美酒に酔うひとときは、しばし現実を忘れさせてくれます。

チェックインからチェックアウトまで、心尽くしのもてなしで10名を非日常の世界へといざなったグランピング。サーキットの臨場感と奥日田の大自然を肌で感じることができ、その上ラグジュアリーな気分も味わえるかつてない体験は、ゲストの心に深く刻まれたことでしょう。

最初の食事であるディナーの仕込みを行う大塚瞳さん。設備が整ったキッチンスペースは、スノーピークが設営した。

全9皿のコースを堪能するゲストたち。一品一品に込めた想いや、どんな食材を使ったかを語る大塚さん。

鴨と栗のパエリア。料理が引き立つ器で、と有田焼のプレートを多数持参。

『酒蔵バル』と銘打ったバーエリアでグラスを傾けながら夜は更けていく。

井上酒造、老松酒造、薫長酒造の酒蔵をはじめ、いいちこ日田蒸溜所、地域に工場を構えるサッポロビールまで。すべては自然と水の恵み。

住所:大分県日田市上津江町上野田1112-8 MAP
電話:0973-55-1111
AUTOPOLIS HP:https://autopolis.jp/ap/

一瞬で消えゆくものだから…多角的なアプローチで“食の記憶”を心に刻む。[AUTOPOLIS×Snow Peak Glamping /大分県日田市]

大塚 瞳さんと、井上圭一氏(右)を始め、スノーピークのメンバーたち。会場には事前に皆で1日通して泊まり、当日ゲストが快適に過ごせる空間作りを目指し、綿密に打ち合わせを重ねた。

オートポリス × スノーピーク グランビング至上の食体験を実現するため、一瞬一瞬に情熱を注ぐ。

「一度限り、二度と同じことはしないというのが好きです。あの日、あの時、あの場所で、あの人と、って。振り返った時に立体的に思い出せるような要素を、料理そのものだけではなく、過ごした空間全体に散りばめられたらと。その記憶のなかに料理のことも出てきたら嬉しいですね。」

そう語るのは、料理家・食空間演出家である大塚 瞳さん。世界中を旅しては様々な食文化に触れ、大学時代から料理を学んできました。自身の店は持たず、出張料理人として気に入った土地で期間限定の食空間をプロデュースするスタイルを10年以上続けてきたと言います。
今回の舞台は、サーキット場のインフィールド。スノーピーク社のハイスペックな特設キッチンで、この日のためだけに考えたメニューを作り上げていきます。

大分県日田市にある「オートポリス」。熊本県との県境にあり、阿蘇の大自然に囲まれたこのサーキットで、アウトドアブランド・スノーピークとのコラボレーションにより1日限定のグランピングイベントが開催されました。招待されたゲストは10名、1泊2日の間で口にする夜・朝・昼の3食を大塚さんがすべてプロデュースしたのです。

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グランピングサイトからは、迫力満点のレースが360°どちらを向いても楽しめる。

19時スタートのディナーのため、早くから仕込みを行う。一見するとアウトドアとは思えないほど充実した設備。

「料理はそれに見合う器に盛られてこそ」と、その両方を大切にしている大塚さん。

ディナーの幕開けを飾るのは、「李荘窯業所」に特注したサーキットの頭文字“C”をモチーフにした有田焼。

オートポリス × スノーピーク グランビング唯一無二の器で、料理そのものをより深く印象付ける。

「“山の上のサーキット”という記憶を引き立ててくれるアイテムが欲しい。その想いから、特別な器を用意しました。」
普段から窯元との付き合いが多い大塚さん。彼女が今回製作をお願いしたのが、現代の有田焼を代表する「李荘窯業所」の四代目、寺内信二さんでした。出来上がったのは、なんとサーキットをイメージしたという、アルファベットの“C”の形をした陶器。斬新なデザインに無駄のない流麗なフォルムで、表面に薄っすらとサーキットの傾斜がついています。大塚さん自らが実際にドライバーの横に座り、サーキットでの走行を体感して閃いたことをすぐに寺内さんに相談。そのイメージを、寺内さんが見事に具現化してくれたのです。

“El banquete cielo estrellado”、スペイン語で“星空の晩餐会”と題された夕食のコンセプトは、この器から生まれたのだと言います。一体どんな料理を合わせたら素敵だろう? そう考えた時に思い浮かんだのが、スノーピークの新商品である「雪峰苑 たこ焼きプレート」。たこ焼きだけでなく、これでアヒージョを作って、“C”のプレートに盛り付けたら素敵ではないか。ならばスペイン料理にしよう! せっかくならたこ焼きもスペイン風に仕立てて…と、そこからは連想ゲームの如く次々とアイデアが湧いてきたそう。

アウトドアだから、グランピングだからといった外枠からではなく、食材や器、調理器具からインスピレーションを広げていく。即席の調理場、しかも屋外という制約のなかでも、大塚さんがクリエイティビティを発揮して伸び伸びと料理できたのは、スノーピークによる盤石のサポートがあったからだと感謝を滲ませました。
「自分の家みたいなキッチンを作ってもらいました。作業台も、ピッタリ背丈に合ったものを瞬時に測って組み立ててくれて…思うように作れたのは皆さまのおかげです。」

クロスの配色からカトラリーまで、行き届いたテーブルセッティング。

大塚さんのアシスタントと共に、スノーピークのスタッフも一丸となって調理や配膳を担当。

スノーピークから今年新発売された「雪峰苑 たこ焼きプレート」。すっぽんの出汁のたこ焼きと、白茄子のカポナータとグリーンオリーブのたこ焼きの2種類を用意。自家製マヨネーズとともに。同調理器具を用いて、鮑と帆立、零余子(むかご)と大分の椎茸をアヒージョに。

ダッチオーブンを使って魚の出汁で炊き上げたパエリアに、炭火で焼き上げた秋刀魚をのせて。

オートポリス × スノーピーク グランビング全国を訪ね歩き、巡り合った食材のみを使用。

器はもちろん、大塚さんの食材に対する熱意は並大抵のものではありません。使うのはすべて、自分の足で訪ねた生産者の旬のもの。1食の料理には数多くの生産者が関わっているそうです。野菜から肉や魚、調味料まで、これまで全国各地を巡った数は数千軒に及ぶと言います。

食事の際、手元に置かれたカードにはメニュー名ではなく、「和牛」「鴨」「真菰筍」「栗」などの食材名が書かれていました。
「文字で見る品書きは、私自身なかなか覚えていられないもの。一期一会だし、今日何を食べたかということではなく、また来年この季節になった時に、旬の食材が何だったかを思い出せる方がいい。ご自身で、また違う料理になって楽しめるように。私も生産者のことを食材で記憶していて、時が来たら連絡をするから。」
ここにもゲストの“食の記憶”へのアプローチと、巡り合った生産者への想いが感じられました。

ディナーのメニュー。表にはスペイン語で“星空の晩餐会”を意味する“El banquete cielo estrellado”の文字。

サラダにトッピングしたのは、サントモール・ド・トゥーレーヌという山羊のチーズ。

淡路の玉葱をスライスし焼いたコカ。生ハムと唐津の黒無花果をトッピング。

真菰筍のフリットミスト、自然薯の素揚げ、ビーツのコンフィチュール添え。

旬の栗が芳しい、鴨と栗のパエリア。徳島の酢橘を絞っていただく。

魚出汁と、長野のまいたけで炊き上げたパエリアには炭火焼の秋刀魚。宮崎の平兵衛酢とともに。

締めには濃厚ながらもさっぱりとした後味の佐賀牛のテールスープ。

デザートはスパイスパウンドケーキ。岡山のシャインマスカットコンポートをあわせて。

オートポリス × スノーピーク グランビング饗宴から一夜明け。胃に染み渡る、爽やかな朝餉。

山海のアヒージョとスペイン風たこ焼きを皮切りに、デザートまで全9種の美食と美酒に酔いしれた晩餐会。一夜明けて、朝食の席に用意されていたカードには“一日之計在於晨”の文字が。日本語の意味は“新しい一日の始まりに”、そしてまさにその言葉どおり、滋味あふれる台湾式の朝食がゲストの目覚めとともに供されました。

“早餐”は中国語で“朝食”の意味。

鉄観音茶葉と中国のスパイスで漬けた茶卵。

丸鷄に胡麻油やきび砂糖を擦り込み、1時間じっくり焼き上げる。

茶卵、丸鷄、鶏皮ナムル。台湾ご飯のお供として、鶏づくしで。

オートポリス × スノーピーク グランビング夜・朝・昼の3食を10人で共にしたという、かけがえのない思い出。

「旅先の宿泊って大体夜と翌朝の2食でしょう? それが、一人の人の1日、夜にはじまり、翌朝、そして昼。その3回の食事を作るということは初めての経験で、今回の醍醐味の1つでした。」と語る大塚さん。お昼時、チェックアウト後のゲストに最後に振る舞ったのは、なんとインド料理。スペイン、台湾、インドと大胆に毛色を変え、“アウトドアの食事”という概念を軽々と飛び越えてみせました。

「どんなに綿密に準備して頭の中で描いても、本番はいつも想像以上に美しい。今日、偶然にも一緒になった人達が1つの食卓を囲む。幕があけた途端に終わってしまう一瞬の出来事。見たかったのはこの景色だったなと。寂しいですが、ゲストやスタッフを含め24人で共有した今日という日を、私はいつまでも覚えていると思います。」

瞳を輝かせながら語る彼女の表情は、しかし寂しさよりも充足感に満ち満ちていました。次はどこで何をやるのか? の問いには「さあ、言葉も通じないような国にでも行ってみましょうか。」と飄々とした答え。突如現れては幻のように消えゆく食空間を創り出した大塚さん。その姿はまるで砂上を征くキャラバンのよう。でも、“食の記憶”は、彼女の料理を食した人々のなかで永遠に生き続けていくのです。

ランチのメニュー裏にはカレーの具材名がずらりと並ぶ。

友人であるミュージシャン、小宮山雄飛さんが渋谷で手掛けるレモンライス専門店『Lemon Rice TOKYO』直伝のレシピで作ったレモンライス。

ヨーグルトをたっぷり加え、見た目よりマイルドな味付けの足赤海老と丸オクラのカレー(右)と、ジャガイモとカリフラワーのカレー。

『奥日田獣肉店』の草野貴弘さん。地元で捕った猪をグリルで炒め、スナック感覚で食べられるサイズに切り分けて手渡してくれた。

住所:大分県日田市上津江町上野田1112-8 MAP
電話:0973-55-1111
AUTOPOLIS HP:https://autopolis.jp/ap/

1981年福岡生まれ。出張料理人として、気に入った土地に数日限りの食空間を演出するイベントプロデュースを10数年間行い、器と食材をつなぐ役割を果たしている。またケータリングをはじめ、店舗、旅館、県特産品のメニュー開発プロデュースなども行う。
http://www.hitomi-otsuka.com/