記憶を手繰り寄せながら頂を目指す。八丈富士の夕日を眺め、僕はもう一度、再訪を誓った。[東京”真”宝島・八丈島/東京都]

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東京"真"宝島

初めて訪れた時は、大学生・中野裕之。そして今、約40年ぶりに映像作家・中野裕之として八丈島へ向かう。

「大学生の頃、何の予定も決めずに空港へ向かい、良さそうな便に飛び乗って旅をしたことがありました。その行き先が八丈島だったんです。あれから約40年、今こうして八丈島を撮影できるなんて、ご縁を感じます」。

八丈島は、大きく5つのエリアに分かれている。大賀郷、三根、樫立、中之郷、末吉がそれだ。「登龍峠」は三根に位置しており、客船が着く底土港のある三根地区に位置している。
「“登龍峠”には展望台があり、ここから望む“八丈富士”と“八丈小島”が本当に綺麗で。夕日が双方の間にゆっくりと落ちていく景色をじっと見ながら、再訪を心の中で誓いました」。
下方から望むと龍が登ってくるように見えることから「登龍峠」と名付けられたここは、八丈島を代表する景色であり、新東京百景にも選ばれる名所。太平洋を朱色に染めてゆく時間は、沈みきるその瞬間まで美しい。

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太平洋に浮かぶひょうたん型の八丈島。「八丈富士」と「八丈小島」の間に沈みゆく夕日は、この島を代表する絶景のひとつ。

東京"真"宝島羽田から約1時間で別世界へ。八丈ブルーの中、ウミガメとランデブー。

日本屈指の透明度を誇る八丈島の海は、「八丈ブルー」と形容されるほど、美しい。そこをウミガメが悠々と泳ぐ。

「八丈島は、“カメの島”。そう呼ばれるほど、ウミガメとの遭遇率が高いです。サンゴも美しく、ふわふわとしたソフトコーラルも気持ち良さそうに揺らいでいました。海水浴場も多いですし、ダイビングやシュノーケルなどのガイドサービスも充実しています。ここに訪れたら、ぜひ海のアクティビティを体験することをお勧めします!」。

場所にもよるが、例え海中でなくとも、堤防からや浅瀬など、運が良ければウミガメと出合えるのが八丈島。この島が育んできた自然は、生き物も島民のひとり、もとい一匹。皆が心地良く共存し、暮らしているのだ。

冬場でも水温が20度以上はあるという八丈島。90%以上の確率でウミガメを見ることができる世界でも稀な島。

「ナズマド」はダイバーにも人気のスポット。水中にはソフトコーラルを始め、様々なサンゴも生息する。

ダイビングやシュノーケリングで美しい魚の観察が楽しめるのも八丈島の海ならでは。写真は、ツバメウオ。

澄み切ったクリアな海は、まさに「八丈ブルー」と呼ぶにふさわしい高い透明度を誇る。

東京"真"宝島刻々と表情を変える「雲」に心惹かれた。島の記憶が何度も「雲」の余韻を甦らせる。

「雲が湧き出す山、色彩豊かな海。」
これは、今回の映像に起用されているタイトルである。後者は上記の「八丈ブルー」を指すも、前者は独特の視点だ。

「八丈島はとにかく雲の表情が豊かだと思いました。見上げる雲はもちろん、目下の雲から手の届きそうな雲など、どんどん島から雲が湧き出てくるようでした。特に印象的だったのは、“八丈富士”の火口。縁に溜まった雲の中にふわっと入り込むと、1m先も見えない。時折、雲が割れた隙間から見せる景色もせいぜい5秒ほど。雲の世界に包まれ、雲の匂いを感じ、無音の境地の中、音も立てないほどの優しい風が頬を撫で……。あの雲の匂いは忘れられません」。
その匂いとはどんな匂いなのか?

「うーん、何て言ったら伝わるかなぁ……。難しい……。ほんの少しだけ、うっすらと焦げたような感じというか……。どうだろう……。違うかなぁ……」。
記憶を手繰り寄せ、その匂いを言い当てる言葉を探そうとするも、なかなか難しいようだ。だが、中野監督の中だけには確かなその匂いが残っている。
「八丈富士」は標高854.3m。登り続ける先には大きな火口が広がり、その縁を囲むように草原の道が続く。まるで絶景を歩くようなそこは、別名「天空の道」と呼ぶ人も少なくない。
見上げればどこにでもある雲は、見る場所や見る視点によって、特別な存在へと変化するのだ。

11島の有人の島の中で最も高い「八丈富士」。火口付近には雲がたまる。

「登龍峠展望台」から見る「八丈富士」。青い空と白い雲、そのコントラストが美しい。

「八丈富士」の中腹に位置する「ふれあい牧場」では、牛を間近で見ることができる。

重厚感のある雲。夕焼けが当たることにより、立体感が一層際立つ。

まるで光の射す方へ飛び立つ鳥のような形の雲がドラマチックな空を描く。

夕焼けの風景。縦に伸びる雲、横に伸びる雲、薄い雲、厚い雲、歪な雲……。様々な形の雲が空を彩る。

東京"真"宝島温泉巡りに植物観察、登山に海に、絶景まで。観光資源が豊かな島、それが八丈島。

「末吉にある“みはらしの湯”は、その名の通り太平洋が見晴らせて、気持ち良いですよ! それ以外にも中之郷にある“裏見ヶ滝温泉”もぜひお勧めしたいです。とにかく八丈島は観光資源が豊富だと思います。海水浴場もたくさんありますし、“八丈富士”のお鉢巡りや“ふれあい牧場”でアイスクリーム(GW・夏休み期間のみ提供)、“三原山”の登山、展望台や灯台からの景色、“八丈植物園”や“ヘゴの森”の散策など、色々楽しめます。週末にさっと行けるし、東京から一番近いリゾートだと思います」。

深く鮮やかな緑のシダ植物などが、美しい世界を形成する。島内には水と緑が絶妙に共存している場所も多い。

標高約700m。10万年以上も前に誕生したと言われる「三原山」。川や滝が多く、見晴らしも良い。

その名の通り、滝を裏から見ることができる「裏見ヶ滝」。近くには混浴温泉(水着着用でタオル持参)も。

八丈島のトレッキングスポットとして代表的な「硫黄沼」。水の中に硫黄が溶け込み、天気によって様々な色合いに変化する。

東京"真"宝島グッと心を掴まれる映像のクライマックスは、圧巻のタイムラプス。

島の豊かな表情が演出された映像美はもちろんだが、後半部分のタイムラプスの連続には、圧倒される。
「タイムラプスは、大体15分撮って1秒の動画になります。太陽、月、星、雲……。八丈島は空の表情が豊かなので、その動きと躍動感を出すような編集をしました」。
今回の尺でいうと、1スポットで約8時間、定点撮影をしている計算になる。空から、陸から、海から。様々な目線で見る八丈島を、是非体験していただきたい。

空気が澄んでいるため、スターウォッチングも楽しめる八丈島。映像のタイムラプスでは、星の動きが楽しめる。

ゆっくりと動く雲も刻々と形を変える雲も、瞬時にそれらが変化する。そのスピード感のある演出は、タイムラプスならでは。


(supported by 東京宝島)