完熟の『ル レクチエ』を使ったデザートがついに完成。藤木千夏シェフが出した答えとは? [ル レクチエ/新潟県新潟市]

2019年11月、惜しまれながら幕を下ろした名店『Umi』。最後のコースのデザートには『ル レクチエ』のパフェが選ばれた。

ル レクチエ想定をすべて覆す、完熟『ル レクチエ』の芳醇な香り。

2019年11月、『ル レクチエ』の産地である新潟を訪れ、『ヤマヨ果樹園』にてジュースやペーストを試食した藤木シェフは言っていました。「温めてみたらどうだろう? 果実を焼いてみたら? スープにしたら? いろいろと浮かんできます」その上質な甘みが、藤木シェフにさまざまなアイデアを届けたのでしょう。

そして数週間後、追熟が終わった食べ頃の『ル レクチエ』が段ボール箱に詰められて藤木シェフの元に届きました。その箱を開けた瞬間に広がる芳醇な香り! 「食べ頃の『ル レクチエ』は、こんなに素晴らしい匂いなんだ!」その香りは、またたく間に藤木シェフの心を捉えます。そして想定していた構想はすべて消え去りました。「あれこれせずに、この感動をそのまま伝えたい」そうして藤木シェフのメニューは、ほぼ迷うこともなく完成しました。

【関連記事】ル レクチエ/桃のような口溶けと上品な甘み。高級西洋なし『ル レクチエ』の魅力を、料理で表現するために。

『ル レクチエ』の産地・新潟を訪ねた藤木シェフは、その栽培や追熟の技術に熱心に耳を傾けた。

ル レクチエ果実そのものをダイレクトに味わう究極のデザート・パフェ。

『ル レクチエ』が届く前、藤木シェフは厨房でメニューを考案していました。シェフの目の前にあるのは、『ル レクチエ』ではない、一般に流通している洋梨。甘みはとても繊細。香りも柔らかく上質。そんな魅力を活かすため、藤木シェフは洋梨を温かいスープに仕立て、香り豊かなバジルのアイスを添えました。それはその段階で考えうる最上の洋梨の表現。メニューは早くも確定したかに思われました。

そして届いた『ル レクチエ』。まず生で試食した藤木シェフは衝撃を受けます。「繊細なのに味が濃い。果実はみっちり詰まっていて、でも滑らか。そして鼻に届く素晴らしい香り」それがはじめて『ル レクチエ』を味わった藤木シェフの第一印象。そして藤木シェフは考えます。「この素材に足し算は必要ない。このおいしさをそのまま伝えよう」と。そしてメニューを変更し、『ル レクチエ』をダイレクトに伝えるメニューに舵を切りました。そのメニューはシンプルに果実そのものを味わう「パフェ」でした。

喫茶店やファミリーレストランでもおなじみのパフェ。「この『ル レクチエ』と今の私でしかできないパフェを生み出したい」と考えた藤木シェフは、「香り」を全体の主軸に据えました。そう、段ボール箱を開けた瞬間、一気にシェフを虜にしたあの香りです。

これから追熟作業に入る、収穫直後の「ル レクチエ」。

まずは『ル レクチエ』の試食。「上品な甘み、滑らかな食感など、すべてが想像していた以上」という。

ル レクチエ重層的な香りが渾然一体となり、『ル レクチエ』の魅力を引き立てる。

まず決定した組み合わせは、バジルオイルでした。バジルの先端の葉の香りをグレープシードオイルに移した爽やかなオイルです。次に、バジルの茎の部分の香りを移したブランマンジェ。滑らかな食感とバジルの香りが、こちらも『ル レクチエ』に寄り添います。柚子の果汁で作ったジュレは、香りとともに酸味の広がりを演出しました。仕上げには柚子の皮とタイムを少々。一方、合わせる『ル レクチエ』は、生のまま、そのままの果実です。食感を楽しんでももらうため、あえてゴロゴロのサイズにカットしました。

途中まで入れていた生姜のクランブルは、滑らかな食感の邪魔をしてしまうため、外しました。パフェにつきもののアイスも、今回は無しにしました。あくまでも主役は『ル レクチエ』。そしてテーマは「香り」です。

グラスに盛られた複数の層。スプーンで下から掬って、一度にすべての要素を味わいます。『ル レクチエ』、バジル、柚子、タイム。香りは複雑なようでいて、「清涼感」という共通項があるため違和感なく調和します。『ル レクチエ』の絹のような食感は、ブランマンジェとともに頬ばっても一緒に滑らかに溶けていきます。全体を包む優しい甘みと、柚子のほのかな酸味、そして鼻から抜けていく香り。パフェの語源は、フランス語で「完全な」を意味する「parfait(パルフェ)」。そのまま食べても最高の『ル レクチエ』を、そのまま以上においしく味わう、完全なデザートの完成です。

追熱後の『ル レクチエ』。桃やマンゴーのようなきめ細かいテクスチャが自慢。

さまざまな香りの要素が絡み合い、『ル レクチエ』の持ち味を引き立てる。

多彩な要素が同居するだけに、全体のバランスが肝。盛り付けも含め、まさに“完璧な”パフェが誕生した。

ブランマンジェ、ジュレ、そして『ル レクチエ』の果実。それぞれの食感のバランスも絶妙。

ル レクチエ名店のフィナーレと新店の幕開けを飾る『ル レクチエ』のパフェ。

藤木千夏シェフは2020年、故郷である福岡に新店を開店予定。その準備のため、藤木シェフの店であった恵比寿『Umi』は、2019年11月で幕を下ろしました。その最後の10日間、『Umi』のコースのデザートには、このパフェが登場しました。数々の食通を唸らせてきた名店のフィナーレを、『ル レクチエ』のパフェが飾ったのです。

そして朗報がひとつ。2019年12月中旬(予定)までは、藤木シェフが監修するニューオープンのカフェ『À L'AUBE』にて「季節のパフェ」としてこのパフェが味わえます。

11月末に開店した『À L'AUBE』はインテリアショップ『Francfranc』が手掛ける新たなライフスタイルブランド。藤木シェフはこの店のカフェの料理全般を監修したほか、今後福岡に拠点を移した後も、季節メニューの監修などを続ける予定。「現在の自分にできることを、すべて出し切っています」というカフェだけに、『Umi』と変わらない、素材感が際立つ料理が楽しめることでしょう。

このパフェについても「『Umi』との違いはポーションだけ。コースのデザートと違い、カフェでは一品で満足できるサイズ感になっています」と藤木シェフ。そんな藤木シェフの思いが籠もった『ル レクチエ』の「季節のパフェ」は『À L'AUBE』にて12月中旬までの限定販売。ただし売り切れ次第終了となるためお早めに!

『À L'AUBE』では厨房の技術指導も藤木シェフの仕事。スタッフたちに持てる技術と知識を伝える。

『À L'AUBE』では、12月中旬まで限定の「季節のパフェ」として、やや大きめのポーションで提供。

『Francfranc』が手がけるカフェだけに、スタイリッシュに統一された『À L'AUBE』の店内。使用される食器などは店内で購入できる。

住所:〒108-0071 東京都港区白金台4-19-20 Barbizon白金台ビル MAP
電話:03-6456-2927
https://a-laube.com/

1984年生まれ、福岡県柳川市出身。高校卒業後に料理専門学校に入学し、在学中から『ホテル オークラ』に勤務、卒業後は同ホテルに就職し、5年間研鑽を積む。24歳で渡仏し、ビストロや星付きレストランで修業、帰国後に銀座『ロオジエ』などを経て、2014年に再びフランスへ渡り、パリの『Retaurant Sola』でスーシェフを務める。2017年に帰国後、恵比寿『Umi』のシェフやカフェの監修などを務める。


(supported by 新潟県)