「新しいのに完成度が高い酒」──『Florilege』川手寛康シェフが見た『加温熟成解脱酒』と、その魅力を引き出す料理の開発。[加温熟成解脱酒・Florilege/東京都港区]

緻密な計算と大胆な発想が同居することで、フランス料理でありながら他に類を見ない料理を生む川手シェフ。

フロリレージュ3名のトップシェフが挑んだペアリングメニュー開発の第三弾。

『加温熟成解脱酒』──その聞き慣れぬ名前の日本酒は、古酒の深い香りとフレッシュな味わいを併せ持つ奇跡の酒。『秋田酒類製造株式会社』の独自技術により生み出されるこの日本酒は、日本に先駆けて展開されたパリで、そして満を持して登場した日本各地で活躍する多くの料理人をも魅了してきました。

そして今回、さらに『加温熟成解脱酒』の魅力を引き出すべく、3名のトップシェフが立ち上がりました。一人目は中華料理からのアプローチで酒の香りに寄り添った大阪『AUBE』の東浩司シェフ。二人目は九州の力強い食材を使ったフレンチで酒のポテンシャルを引き出した『La Maison de la Nature Goh』の福山剛シェフ。そして最後の一人となる今回は、日本の食材や食文化をフランス料理の技法を通して伝える東京・青山の名店『Florilege』川手寛康シェフです。

古酒と新酒の魅力を併せ持つ『加温熟成解脱酒』は、いわば時間という概念を飛び越えた存在。そこにジャンルの枠を飛び越えて料理の広がりと奥行きを表現する川手シェフの料理がどう寄り添うのか。期待の尽きない未知のマリアージュ、その詳細をお知らせします。

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『加温熟成解脱酒』は、酒に造詣が深い川手シェフをして「新しい酒」と言わしめた。

フロリレージュ『加温熟成解脱酒』を口にした川手シェフの印象。

「これまでにない、おもしろいラインの酒」
川手シェフは『加温熟成解脱酒』の第一印象をそう語りました。
「新しい酒なのに、完成度が高い。シェリーに似た部分はありますが、やはり少し違います。糖度も保ち、ボリューム感もあり、しかもすっきりしていますから」
酒そのものの質に手放しの称賛を寄せる川手シェフですが、「正直にいうと、クオリティを感じると同時に、“参ったな”とも思いました」と振り返ります。それは存在感があるがゆえの、コースの中での立ち位置について。
「糖度があるから、前半で行くと流れが切れてしまいます。ボリューム感ある味わいは、前半の軽い料理よりもメインの方が合う。しかしフレンチのメインにはやはりワインが必要。どこで出すか、という点だけは少し迷いました」

しかしもちろん、迷ったのは“少し”のこと。やがて照準を定めると、そこからはアイデアがあふれます。メインでないなら、合わせるのは魚。しかしただの白身では弱い。マグロでもない。ならばカツオかサーモン?香りを入り口にマリアージュを狙うならば、スモークが良い。フレンチにはスモークサーモンという基本がある……。トップシェフの脳内には、瞬間的にさまざまな選択肢が浮かびました。そしてスモークサーモンを軸にした料理の道筋が見えてきたのです。

滑らかなテクスチャと美しい琥珀色は古酒そのもの。

フロリレージュ

食材と生産者への敬意が、唯一無二の味を生む。

料理の完成像に迫る前に、川手シェフの背景を紐解いてみましょう。

「アジアのベストレストラン50」「ミシュランガイド東京」でも高い評価を得る『Florilege』は2009年、川手シェフ31歳の頃にオープンしました。東京の名店を経て渡仏し、帰国後は『Quintessence』のスーシェフを務めた川手シェフの独立店だけに、当初から期待値の高い店でした。

川手シェフの目指す場所は、学んできた料理の再構築だけでは終わりませんでした。日本の食材だけを使い、日本という地で、川手シェフにしか作り得ないフランス料理を作る。その答えも終わりもない道を歩み始めたのです。

その根源にあるのは、食材と生産者の敬意。「生産者の思いを伝えること」を命題にした料理は、古典的フランス料理とは一線を画すフリーダムなスタイル。それでも身につけた古典の技術と知識が土台を支え、まごうことなきフランス料理の枠に着地しているのです。
『Florilege』が“予約の取れない店”“東京を代表する名店”となるのに、そう時間はかかりませんでした。

2015年に移転した『Florilege』は、厨房をぐるりとカウンター席が囲むスタイル。“川手劇場“と呼ばれたこの形も、「この形が生産者さんの思いを伝えるのに一番だと思った」といいます。
現在、川手シェフが追求するサスティナビリティも、食材と生産者への敬意のあらわれ。今も川手シェフは、日本各地の食材を見つけ出し、自身の持てる技術を注ぎ込み、唯一無二の料理を生み出しています。

厨房を取り囲むカウンターがまるで劇場のような印象を与える『Florilege』。現在改装の予定もある。

「アジアのベストレストラン50」の栄誉は4年連続。おいしさだけではなく、ホスピタリティなども優れていることの証。

面倒見の良い兄貴肌でさまざまな若手料理人にも慕われている。

フロリレージュ香り、味、余韻。すべてにはまる酒と料理のマリアージュ。

さて、そんな川手シェフが『加温熟成解脱酒』✕スモークサーモンという図式で生み出した料理。その軌跡をたどってみましょう。

「料理で最初に入ってくるのは香りです。味を感じる以前にまずこの酒の香りが伝わると、ゲストは熟成感がある酒だと捉えます。だからキレイなままのサーモンではなく、マリネして燻製をかけました。味のバランスを取る意識ではなく、酒と料理が互いを認め合うイメージです」
歯切れが良い川手シェフの言葉は、料理の道筋を端的に伝えます。
「味わい自体は甘みもあるので、脂の乗った一般的なサーモンでは合いません。そこでマスとの掛け合わせで生まれた西米良のサーモンを選びました。このサーモンは脂がしつこくなく、スッと消えます。そしてアフターのトーンが『加温熟成解脱酒』と似ているんです」

緻密な計算は続きます。
「しかし『加温熟成解脱酒』の味のトーンはしっかりしているので、料理の味自体を軽くしようとは思いませんでした」と、スモークサーモンと柿、生姜のスライスのなかにはサーモンやハラミ、エシャロット、アサツキ、ピータンのタルタルを潜ませます。下には燻製にしたジャガイモのピューレ、上にはイクラとキャビア。複雑な構成要素が、器に張られたキノコの出汁のどっしりとした土っぽさに支えられます。
そして『加温熟成解脱酒』と合わせれば、入り口の香り、味わい、そして余韻まで、すべてにピタリとはまるのです。そのマリアージュはまさに圧巻。川手シェフの技と同時に『加温熟成解脱酒』のさまざまな魅力を一度に感じられる組み合わせです。

この料理と『加温熟成解脱酒』は、1月中旬までのペアリングコースで提供されます。『Florilege』の予約が取れた幸運な方は、ぜひこの背景を念頭に、この見事なマリアージュをお楽しみください。

香りとアフターの2点に着目し、組み立てられた料理。西米良サーモンは、川手シェフが古くから信頼を寄せる食材。

多彩な食材を使用しながら、明確な味の芯がある料理。香り、味、余韻と時間差で変わる『加温熟成解脱酒』の魅力と調和する。

「まずは熟成香と燻香という香りのマリアージュを楽しんでほしい」と川手シェフ。

住所:〒150-0001  東京都渋谷区神宮前2-5-4 SEIZAN外苑B1 MAP
電話:03‐6440‐0878

1978年東京生まれ。料理一族の家庭に育つ。高校卒業後、名立たる名店で修行を積み、2006 年に渡仏。モンペリエの「ジャルダン デ サンス」で修業。2007年帰国後、「カンテサンス」にてスーシェフとして活躍する。2009年に独立し、南青山にて「フロリレージュ」をオープン。どんな食材も無駄なく使うことで、料理からサスティナビリティーのメッセージを発信している。ASIA’S 50 BEST RESTAURANT 2016では、今「一番の注目店」である「One to Watch Award」を受賞。 続く2017年には14位、2018年には3位、2019年には5位にランクインし、日本を代表するレストランとして存在感を発揮している。


(supported by  秋田酒類製造株式会社)