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その男の手にかかれば、おいしくならない肉はない。[サカエヤ/滋賀県草津市]
サカエヤ決して便利ではない場所なのに、世界中から人が訪れる肉屋。
滋賀県草津市に、イタリアやアメリカなどからも美食家がわざわざ足を運ぶレストランがあります。それが、「セジール」。母体は肉の精肉屋「サカエヤ」です。セジールの話をする前に、まずサカエヤについて知っていただきましょう。
滋賀県で肉とくれば近江牛、のセオリーに反し、サカエヤでは近江牛を前面に打ち出していません。扱うのは、北海道のほぼ野生と言える牛肉や、三重の農業高校で育てられた豚肉など、何のブランド名もつけられていない肉ばかり。しかしどれも、店主の新保吉伸氏が、動物の命とそれを育てる生産者への尊厳を込め、世に送り出した唯一無二の銘柄です。
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サカエヤ何をしても続かない性格だから、これだけは本気でやろうと思った。
もともと父親が精肉店を営んでいましたが、新保氏が1987年に創業した「サカエヤ」はその跡を継いだわけではありません。父の背中を見て育った新保氏は「この仕事は絶対にやりたくなかった。朝は僕が起きればもういないし、寝る頃にはまだ帰ってきていない。何より肉の匂いが嫌いでした」と振り返ります。それが、高校卒業後に父と同じ仕事に就くに至ったのは、自分が起こした車の事故が原因。弁償するお金を払うため、父親の弟子が開いた店を手伝うことになった、というやや後ろ向きなきっかけでした。
それが今や業界では知らない人がいない、『肉の巨匠』と呼ばれる存在に。「僕は度がすぎるほどの不器用やったんです。途中から他の仕事なんてできないとわかっていたので、この仕事で一生懸命やろう、と観念したんです」と控えめに語りますが、新保氏の心にあったのは「人と同じことをやっていたら埋もれてしまう」という危機感。近江牛は400年の歴史があり、地元では100年や200年続いている肉屋も珍しくない世界。新参者が太刀打ちできるわけもなく、味での差別化も難しい。「極論ですが、少し特別な牛肉を作ったところで、目をつぶって食べれば和牛などどれも一緒。おいしいかおいしくないか、それだけです」。
サカエヤ「面倒な頼まれごと」から生まれた幻のポーク。
しばらく柱となる肉を見出せずに模索する中で、新保氏は知人からある相談をされます。それは、三重県にある愛農高校という農業高校に通う親からの、「自分の息子が学校で育てている豚肉がとにかくおいしいから一度食べて欲しい」という依頼。愛農高校は日本の私立では唯一、有機農法で農業を教える全寮制の高校でしたが、少子化や農業離れから入学者が定員割れをしている状況でした。
サカエヤ「こんなにおいしい豚肉は食べたことがない」と誰もを言わしめた。
そうは聞いても豚肉には興味もなく二の足を踏んでいた新保氏ですが、「あまりにも熱心だから送ってもらって食べたところ、驚くほどのおいしさだったと言います。同校では「神・人・土を愛する」というキリスト教の基本精神のもと、50名ほどの生徒が「養豚」「酪農」など6部門に分かれ、化学肥料や農薬を用いない自然農法で野菜や乳牛、鶏などを育てています。ビジネスではなく授業の一環として、一頭一頭に愛情をかけ命に感謝し、年間わずか100頭ほどの豚を出荷しています。
その豚肉に惚れ込んだ新保氏は、なんとかこの豚肉のおいしさを多くの人に伝えたいと考えました。「豚肉がきっかけで1人でも興味を持ってこの学校に入ってくれれば」。そうして知り合いの料理人に試食してもらうと、誰もが「こんなにおいしい豚肉は食べたことがない」と称賛し、またたく間にメディアで話題に。新保氏が「愛農ナチュラルポーク」と名付けた豚肉は、今では使いたいという料理人が順番待ちをするほどで、たまにインターネット上で一般販売を行うと1頭分がたった5分で売り切れるそうです。もちろん愛農高校の知名度も上がり、入学希望者も増加。「少しは役に立ったのかなあ」と新保氏は手応えを語ります。
サカエヤ全て、ひたむきな生産者の「SOS」に応えていった結果。
そんな「肉の魔術師」のもとへは、救済を求める畜肉の話が舞い込んできます。「愛農ポークは肉自体がおいしかったからまだ良かったものの、次に来たのは、本当にどうしようもない牛でした」。なんと、愛農高校の養豚部部長の母親が北海道で牛を育てており、今度はその牛肉を何とかして欲しいと頼まれたのです。牛は、北海道様似郡にある駒谷牧場で西川奈緒子氏がたった一人で育てているアンガス牛。山林で通年放牧、自然交配のほぼ野生牛で、脂身はほとんどなし。「和牛ならともかく外国牛……これは無理」と断ろうとしたものの、当時はまだ年間出荷が2〜3頭だったため、ポケットマネー程度で何とかできるかもしれないと考え、腰を上げました。
柵で囲って脂を蓄えさせる和牛と違い、放牧なので赤身が強く筋肉質、人間でいうとアスリート体型の駒谷牧場の牛。さらに水分量が非常に多く、焼くと半分が肉汁となって流れ出てしまう問題児でした。そこで、水分を抜くため熟成させることに。サカエヤでは温度と湿度を変えた4台の冷蔵庫を使い分けることによって、肉の様子を見ながら保存状態を徹底管理しています。「肉の住まいを変えてあげるんです」。新保氏のいう「熟成」とは一定の温度を保つ冷蔵庫で肉を「寝かせる」ことで、肉が持っている酵素によってたんぱく質が分解されアミノ酸へ変化する、生物学的でいうところの「自己消化」です。かれこれ5年ほどかけ、ようやくこの牛をドライエイジングによって水分調整し、香りと旨みのある肉質にすることに成功しました。究極の野生赤身肉、ジビエのようなビーフという意味で「ジビーフ」と名づけ、日本で数少ない有機JAS認定を取得。当然、脂っ気がまったくない赤身肉のため肉質は硬めですが、「それも含めて求められているのです。柔らかい肉が良い肉だという時代は終焉です」と新保氏は口調を強めます。
サカエヤチーズで有名でも、肉牛としては正当に評価されなかった。
次も厄介な牛が来ました。チーズで有名な岡山の吉田牧場で、健康な状態にもかかわらず子牛を産むことができなくなり、ペットフード用など加工用に安く売られる牛たちです。同牧場の吉田原野氏は「肉質が悪いわけではなく、乳肉兼用種なので適切に扱ってもらえればおいしいはず」と、新保氏に託しました。これも簡単な案件ではありませんでしたが、前回のジビーフを経験したおかげで、どう“手当て”すれば良いかを約3年かけて導くことができました。今では料理人が興味を持って使ってくれるようになったものの、「すべての部位がキレイに売れるわけじゃない」と新保氏は明かします。「バラやスネなど使いにくい部位は必ず余る。余れば自分で食べればいいだけのこと。僕は数字を追いかけるような仕事はしたくないので、いまのスタンスが性に合っているのかなと思っています」。
サカエヤうちは小さい肉屋だから、諦めています。
新保氏は、生産者から肉を「買う」のではなく「預かる」と表現します。生産者、料理人、食べる人。自分はその間を繋ぐ役割であると考えています。したがって、生産者から預かった肉を自分がどうにかしておいしい肉にし、料理人に引き継ぐ。どんなに手間がかかっても“手当て”をします。だから、取引先はマックスで40件ほど。「僕と若いスタッフ3人でやってますからこれが限界です」。新保氏が求めるのは利益より「面白いかどうか」。これがたくさんの従業員やその家族を抱えている大手肉屋なら経営が立ち行きません。「儲ける、というのはもう自分も従業員も諦めています。まずは自分たちが誇れるようなことやりたいなって。それだけですね」。
そうしてレストラン「セジール」を作ったのも、決して利益を求めたからではなく「実験室」が欲しかったからでした。それが、世界から食通が目指す一軒になってしまった理由は、後編でお伝えします。
2019年7月刊行の著書『どんな肉でも旨くする サカエヤ新保吉伸の全仕事』(世界文化社)好評発売中。https://www.sekaibunka.com/
住所:滋賀県草津市追分南5-11-13 MAP
電話:077-563-7829
営業時間:10:00〜18:00
休日:水曜・最終火曜
http://www.omigyu.co.jp/
(写真提供:サカエヤ、世界文化社)