「日本最初期のリゾート地」に敬意をはらった建築界の巨匠によって、文人たちが通い、思索した天空のリゾートが再生![六甲山サイレンスリゾート/兵庫県神戸市]

阪神間モダニズム(明治~昭和初期にかけて六甲山麓を舞台に花開いた芸術文化)を代表する歴史的建築物・旧「六甲山ホテル」が、イタリアを代表する建築家ミケーレ・デ・ルッキ氏の手によってリニューアル。2025年までに宿泊棟、オードトリウム、チャーチなどを含めた複合施設として完成する予定。

六甲山サイレンスリゾート「昭和のモダニズム」を体感できる、現代に蘇った神戸の新名所。

六甲山。神戸市を見守るかのようにそびえるこの風光明媚な山は、明治時代より、神戸に居留する外国人たちによってリクリエーションの場として開発されてきました。
瀟洒な山荘が建ち並び、日本で最初のゴルフクラブ「神戸ゴルフ倶楽部」が拓かれるなど、リゾート地の先駆けとして発展。そして昭和に入った1934年には、九州の雲仙・霧島と共に日本初の国立公園「瀬戸内海国立公園」に指定されました。

そんな由緒正しいリゾート地に、1929年、名門「宝塚ホテル」の分館として創られたのが旧「六甲山ホテル」。2007年に国の“近代化産業遺産”に認定されたその貴重な建築は、令和の現代になって、イタリア建築界の巨匠ミケーレ・デ・ルッキ氏の手によって『六甲山サイレンスリゾート』として蘇りました。

約2年間に及ぶ修復工事の末に、開館当時の美しさのままに再生!(旧館2階のレセプションエリア)

四季折々の樹々や花々、鳥や動物たちが息づく表情豊かな六甲山の自然に溶け込む。

六甲山サイレンスリゾート緑の中に佇む、歴史ある文化遺産。

六甲山のリゾート地としての歴史を汲んで、「昭和のモダニズム」を現代に蘇らせた『六甲山サイレンスリゾート』。しかし、その実現は簡単なものではありませんでした。

この素体となった旧「六甲山ホテル」の近くにヴィラを所有していた八光カーグループの代表取締役・池田淳八氏夫妻は、閉ざされて久しい建物の前を通る度に、朽ちていく歴史的な建築を目にして日々悲しい思いを抱いていました。

1959年に創業し、アルファ ロメオ、フィアット、アバルト、マセラティ(イタリア車)とジャガー、ランドローバー、アストンマーティン、マクラーレン(イギリス車)といったそうそうたる高級欧州車の正規ディーラーとして知られる八光カーグループの代表として、神戸のシンボルとも言える六甲山と、そこを舞台に花開いた“阪神間モダニズム”の文化や歴史が失われつつある光景は、実に耐えがたいものだったといいます。

そこで、この類まれなる文化遺産を開業当時の姿に蘇らせて、次の時代に継承していくことを決意。そのため旧「六甲山ホテル」をかつての所有者より譲り受けました。こうして歴史への敬意でもあり、公共の福祉でもある壮大なプロジェクトが動き始めたのです。

そして旧「六甲山ホテル」の建築を往時のままに再生すべく、様々な有名建築家に相談したものの、「解体して新設する方が経済的です」という意見が大半。しかし、そんな中でミケーレ・デ・ルッキ氏が、唯一「素晴らしい文化遺産なのでぜひ修復して次の世代に遺しましょう」との回答を寄せてくれました。こうしてデ・ルッキ氏に設計と監修を依頼することとなり、旧「六甲山ホテル」の再生が始まったのです。

ミケーレ・デ・ルッキ氏の近影。1980年代に世界中にムーブメントを巻き起こしたデザイン集団「メンフィス」の主要メンバーで、新たなデザインの潮流を生み出した。

六甲山サイレンスリゾート化学素材から自然素材に回帰した世界的建築家が、日本の木造建築を見事に再生。

デ・ルッキ氏は、デザイン界に登場した当初はカラフルなプラスティック材のプロダクトを中心としたコレクションを発表し、ポストモダンの代表的な作家として一世を風靡していました。
しかし時代が彼らに追いつく前に、将来の社会情勢や環境保護を鑑みて、プラスティックを破棄することを明言。現在は「木を使わせたら世界一」との呼び声も高い、「環境を保護して共存する建築家」として、世界中から高い評価を受けています。

そんなデ・ルッキ氏の作風と見事に合致した『六甲山サイレンスリゾート』 は、「六甲山の自然との共存」をテーマにしています。そして、その中心となる旧「六甲山ホテル」の建築は、“近代化産業遺産”に認定された風格のままに、美しいステンドグラスや重厚な梁、格調高いメイン階段などを修復・保存し、開業当時の姿を蘇らせました。

「阪神間モダニズム」の空気を肌で感じられる、往時のままの空間。エントランスには旧「六甲山ホテル」の歴史を紹介するヒストリー・ギャラリーを備えている。

“近代建築の三大巨匠”の1人として知られるフランク・ロイド・ライト氏や、阪神に多くの近代商業建築を遺した渡辺節氏が大正後期~昭和初期にかけて設計した。

修復作業の様子。伝統建材と新建材を知り尽くしたデ・ルッキ氏によって、見事に再生した。

六甲山サイレンスリゾート六甲山の自然と共存する、魅惑的な建築。

こうして誕生した『六甲山サイレンスリゾート』で愉しめるのは、「文化遺産の中で遊ぶ」という贅沢この上ない体験です。
旧「六甲山ホテル」の2階には、開業当時のステンドグラスを天井に仰ぎ見られるカフェテリアがあり、パティシエが毎日焼き上げるスイーツやフレッシュ・パスタなどの小洒落た軽食、そしてイギリスと縁が深い神戸ならではのティーセレクションや、本格的なアフタヌーン・ティーなどが楽しめます。

さらに旧館と通りを挟んだ向かい側、神戸港を見おろしながら大阪湾や淡路島までも一望できる絶景スポットには、ゴージャスなグリルレストランを創設。神戸港に水揚げされた新鮮な瀬戸内海の幸や、但馬牛、淡路鶏などのご当地グルメをふんだんに味わえます。

カフェテリアの内観。ステンドグラス越しに降りそそぐ自然光に癒される。

本場・英国式のアフターヌーン・ティーは神戸ならではのお愉しみ。

グリルレストランの鉄板焼きコーナーでは、選び抜かれた食材と調理方法に合わせたワイン、シャンパンなどのドリンクリストを用意。

3段式の広大なテラス席からの眺望。阪神の街並みと歴史を俯瞰するひととき。

六甲山サイレンスリゾート六甲山の歴史を繋ぎながら、新時代のリゾートを目指す。

旧「六甲山ホテル」を基軸として蘇り、六甲山の自然に溶け込むラグジュアリー・リゾートとして再生した『六甲山サイレンスリゾート』。しかし、その歩みはまだ始まったばかりです。今後も雄大な円環を紡ぐように、様々な施設が続々とオープンする予定です。

まずは2020年中に、より六甲山の自然に親しめる森に佇むカフェテリアを新設。そして2021年には、輪のように連なる宿泊棟「サイレンス・リング」を築いて、その中心に周囲の森さながらの樹々を内包する予定です。

さらにオードトリウム(コンサートや劇を鑑賞できる観覧席)や、結婚式を行なえるチャーチなど、文化と芸術を育む複合施設を展開。2025年にすべての完成を目指して、鋭意建築を進めています。

豊かな六甲山の自然を舞台に、それらと調和しながら広がっていく新時代のリゾート。
神戸市内から車で約30分の地に、自然に溶け込む文化遺産と、真のイタリア建築デザイン、そして最上の眺望と美食を堪能できる至福のひとときが待っています。

森の中のカフェテリア。環境に配慮された、持続可能な歴史遺産を目指す。

「サイレンス・リング」の完成イメージ。客室は神戸港を望むオーシャンビューと、六甲山の自然に癒されるマウントビューから選べる。

六甲山の景色や音を体感できるプレイルーム。ファミリーで訪れるゲストにも安心。

夜は“1000万ドルの夜景”が広がるパノラマビューと、ダイナミックな六甲山の自然との共演は、訪れる人々を非日常のひとときにいざなってくれる。

住所: 兵庫県神戸市灘区六甲山町南六甲1034 MAP
電話: 078-891-0650
https://rokkosansilence-resort.com/
(写真提供:八光自動車工業株式会社)