東京"真"宝島OVERVIEW
周囲約8kmというとても小さな島ながら、海からも空からも必ず目に入る利島の唯一無二の存在感。それは、島そのものが美しい山だからではないでしょうか。宮塚山のなだらかな裾野は海へと広がり、洋上にぽっかりと浮かぶその愛らしい姿かたちがとても印象的です。東京都心から南に約140kmの位置にあり、その名を「としま」と呼びます。伊豆諸島最大にして最も都心に近い大島の南に位置し、伊豆諸島の中では2番目に近い島でありながら、その厳しい自然環境ゆえ、簡単にたどり着くことが困難な島でもあります。
中央に位置する宮塚山のなだらかな姿かたちからは想像もつかないほど、島の周辺は激しい波に削られた断崖絶壁に囲まれ、穏やかな湾も砂浜もなく、着岸が難しい桟橋があるのみ。特に波が荒れやすい冬の海では船の就航率はさらに悪くなり、欠航することもしばしば。島に降り立つと、平らな土地が一切なく、急な坂しかないことにすぐに気がつくでしょう。利島の人々は、御神体そのものである宮塚山のふもとに暮らしている、という表現のほうがしっくりきます。集落は比較的なだらかな島の北側に密集しており、いたるところから大海原をのぞむことができます。
そんな厳しい自然環境の中で暮らす島民の数は約320人ほど。ですが、近年は島暮らしを希望するI ターン者が徐々に増え、現在では島民の約半数を移住者が占めているのだといいます。まだまだ利島の存在を知る人は少なく、降り立つ観光客は決して多くはありませんが、この島で暮らしたいと希望する人々が増えているという事実は、利島という小さな島にある大いなる魅力に惹きつけられている証左でもあるでしょう。
利島を利島たらしめるもの。それは島の約8割を埋め尽くすという、約20万本ものヤブツバキの存在です。最盛期を迎える冬には、島じゅうを赤く染める椿の花が咲き誇り、どこを歩いても可憐な椿の花が目に入ってきます。利島では古くは江戸時代から椿とともに暮らし、椿油を生産してきました。日本で一、二を争う生産量を誇り、有機で栽培された良質なものとして、高く評価されています。さらに、冬にはイセエビ漁がさかんになり、軒先で椿の実を干す光景も利島ならではの風景です。ほかにも、宮塚山にはスダジイなどの巨樹が数多く残っており、初夏には世界最大ともいわれるサクユリの白く美しい大輪の花を目にすることができるでしょう。
険しい断崖絶壁に囲まれた島だからこそ、美しい自然とのどかな暮らしが守られてきました。暮らしの中にある厳しくも豊かな自然と、そこから得られる恵みとともに暮らしてきた利島の人々は “足るを知る”からこそ、来るものたちをやさしく、あたたかく迎えてくれるのです。
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