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2020年、佐賀で開催するはずだった「アジアのベストレストラン50」の行方。[ASIA’S 50 BEST RESTAURANT]
アジアのベストレストラン50
3月24日、「アジアのベストレストラン50」の2020年のランキングが発表されました。「レストラン界のアカデミー賞」ともいわれる「世界のベストレストラン50」のリージョナルエディションとしてスタートし、今年で7年目を迎える同アワードは、その授賞式もまた国際的な食の祭典として華やかさを極め、世界中の注目を集めてきました。日本初、佐賀県武雄で開催予定だった本年度のセレモニーは、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、やむなく中止に。結果発表のみが行われることになっていましたが、急遽、オンラインストリームによるバーチャル・イベントが行われました。
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アジアのベストレストラン50日本から12軒がランクイン。アジアに示したガストロノミー大国の威信。
栄えある1位に輝いたのは、フランス人シェフ、ジュリアン・ロイヤー氏が率いるシンガポールの『オデット』。昨年に続き、2年連続2度目の1位で、その実力を示す形となりました。1位の『オデット』同様に注目を集めたのが、9ランクアップで2位に躍り出た香港『ザ・チェアマン』。『ザ・チェアマン』は41位にランクインした『ウルトラバイオレット』を制し、「中国のベストレストラン賞」も受賞しました。
日本のレストランのランクインは、12軒と去年と同数で、2020年の国別最多数を記録。アジアにおけるガストロノミー大国の地位を国内外に示しました。今年こそは1位との呼び声が高かった外苑前『傳』は、2019年と同じ第3位でしたが、「日本のベストレストラン」のタイトルを3年連続で獲得する栄誉に輝きました。ほか7位に外苑前の『フロリレージュ』、9位に青山『NARISAWA』がランクインしています。
日本勢の中でとりわけ脚光を浴びたのは、昨年から4ランクアップの10位でベスト10入りを果たした大阪『ラ・シーム』。オーナーシェフの髙田裕介氏は、同業者であるシェフたちの投票で選ばれる「シェフズ・チョイス賞」も獲得。ローカルガストロノミーといえば、産地との距離やロケーションで勝負する店が多い中、大阪という国内第2の都市から、東京とは異なる食文化の発信に努めてきた髙田シェフ。シェフたちの間で「ランキング以上の名誉」といわれる同賞を授賞し、「大阪」発『ラ・シーム』の名を各国のシェフやフーディーに強く印象付ける結果となりました。
また広尾『ode』(35位)、飯田橋『イヌア』(49位)、2店の初のランクインも特筆すべき点です。ともに開業から3年以内のニューカマー。とりわけ「世界のベストレストラン50」で4度、1位を獲得したコペンハーゲン『noma』のDNAを受け継ぐ『イヌア』は、来年以降の躍進にも注目です。
部門賞カテゴリーでは、髙田シェフ以外にもふたりの日本人シェフが栄冠に輝いています。2019年に新設された「アメリカン・エキスプレス・アイコン賞」に選出されたのは、日本料理界のレジェンド、京都『菊乃井』の村田吉弘氏。そして「アジアのベストパティシエ賞」を、恵比寿『エテ』の庄司夏子シェフが授賞しました。30歳の若さで、日本人女性シェフとしては初という快挙です。
「女性でも、小さな店でも、チャンスがあるということが示せたとしたら、それが一番うれしい」と、話す庄司シェフ。フルーツケーキをシグニチャーとしながら、レストランでもシェフとして腕を振るスタイルは世界でもユニークで、今後は、ランクインにも期待がかかります。
アジアのベストレストラン50アワードの歴史に残る異例の開催、ガストロノミー界の未来の土台づくりの年に。
「世界のベストレストラン」の日本評議会チェアマンを務める中村孝則氏は、異例の形で行われた発表を振り返り「例年にない熾烈さを極め、ランキングは大きくシャッフルされた印象。日本の2店を含め7店がニューエントリーしたのも驚きです」と、話します。
さらにランキングの結果以上に、現在のような状況下で「オンラインストリームによるバーチャル・イベントとして発表したことに意義があった」とも。
「アジアのベストレストラン50は、もはや単なるランキングではない。“競う”こと以上に“分かち合う”賞であることを改めて確認しました。世界中に同時配信することで、オンラインで各国のシェフがつながり、栄誉を讃え合い、喜びを分かち合った。回を重ねるごとに、シェフ同士が連帯を深めていることを、特別な開催スタイルで行ったことで改めて実感できました」。
世界中のレストランが、かつてないほど過酷な試練にさらされている、その状況についても、次のように話します。
「ここ数年のレストランシーンは、世界中で予約困難ともいえるレストランが続出し、日本国内においてはそれが顕著に表れていたと思います。しかし、その“夢”が一気に打ち砕かれる事態が今、起こっています。収束後に待つのは“予約が取れない”はブランドにならない、“本物の時代”。今日ここにランクインされたレストランのシェフたちは、そのことに気付き、動き始めているはずです」。
レストラン業界に向けた厳しくも的確なエールともとれる言葉で、2020年の講評を締めくくりました。