子供達の学び舎を保存継承したホテルで、ノスタルジックな旅を。[The Hotel Seiryu Kyoto Kiyomizu/京都府京都市]

昭和8年に現在の地に移転新築された小学校は、装飾や内装デザインにおいて唯一無二の特徴をもつ建築として当時評価された。©️Forward Stroke inc.

ザ・ホテル青龍 京都清水昭和初期築の歴史的小学校がハイグレードなホテルに。

2020年3月22日、京都・清水の地に、新たな歴史を紡ぐホテル「The Hotel Seiryu Kyoto Kiyomizu」が誕生しました。その名は、この土地で古来より東山の護り神として信じられてきた「青龍」に由来。客室数48室、レストラン、プライベートバス、フィットネスジムなどを有するラグジュアリーな空間。築80年以上の元清水小学校をコンバージョン(用途変換)しました。

客室から京都を一望。山腹の傾斜地に位置する建物は、低い建物の多い東山地区でシンボル的な存在。©️Forward Stroke inc.

ザ・ホテル青龍 京都清水京都の小学校は、地域自治の拠点や伝統的コミュニティの中心施設だった。

はじめに、京都における小学校の歴史の話から。京都は小学校発祥の地であり、他の地域とは成り立ちが違います。明治になってから、京都には住民自治組織の「番組」をもとに64校の「番組小学校」が作られました。これはのちに国が整備した小学校制度に先駆けたものですが、大きな特徴は、地元の住民が資金や意見を出し合って建てられたということ。そのため各校の佇まいやデザインも異なり、それぞれの地域の財政力や思想、教育への想いなどが個性として表れていました。

異なる階層の3棟をコの字型に配置し中央の大階段でつなぐ棟配置など、傾斜地の特性を巧みに生かした印象的な建物。©️Forward Stroke inc.

ザ・ホテル青龍 京都清水西洋建築の意匠を凝らし、京都を一望する場所に建てられた清水小学校。

元清水小学校は、明治2年に開校した「下京第27番組小学校」が前身。この学校も、未来の京都の輝かしい街づくりを目指した清水地域の住民の寄付により創設されたものです。東大路通から清水寺に向う清水坂の途中、京都の町並みが一望できる高台にあり、この地に移転新築されたのは昭和8年のこと。京都市営繕課設計の鉄筋コンクリート造り3階建てで、アーチ型の窓や軒下の腕木装飾といった特徴ある外観、スパニッシュ瓦葺き屋根やスクラッチタイルなど、細やかな意匠が凝らされています。

ロビーは2つのレセプションデスクとコンシェルジュデスクにより、宿泊客とスタッフが「つながる」空間を演出。©️Forward Stroke inc.

ザ・ホテル青龍 京都清水閉校後も、その貴重な建物の歴史と価値を繋ぐためプロジェクトが始動。

残念ながら小学校統合により2011年に閉校しましたが、この貴重な建築と多くの生徒・市民に親しまれてきた歴史を次世代に繋ぐべく、開発計画が進められてきました。そして2016年からNTT都市開発による計画が進められ、ホテルとしてだけでなく、地域の集会やイベントに利用できるよう、さらには避難所として活用できるような場を作るプロジェクトが始動。ホテルでありながら、かつての清水小学校のように、人々の学びや地域のコミュニティ創出に貢献できる場を目指しました。

ジュニアスイート。校舎のクラシカルな建築を引き立てるため、敢えてデザインをシンプルにまとめた。

ザ・ホテル青龍 京都清水クリエイティブチームにより、時空を超えた心地よさを体験をできるホテルに。

今回完成したホテルの内装含む総合デザインを監修したのは、乃村工藝社のクリエイティブディレクター小坂竜氏。約90年の歴史を持ち、廃校になった清水小学校のホテルへのコンバージョンプロジェクトを担ったことについて、小坂氏は次のように話しています。

「歴史的な趣を持つ西洋建築とその内部空間に最大限の敬意を払い、そこに新しい機能としての建築と内部空間を附加するデザインを行い、懐かしさと新しさの融合を試みました。建築、ランドスケープ、インテリア、グラフィック、ユニフォーム、アートワーク、FFEと細部に至るまでクリエイターとの協業を行い、全く新しいここだけの空間を創出しました」。

この地にまつわる”桜”、”山鳩”、”清水”と名付けたプライベートバス全3室を用意。1室6,000円(90分)で4名まで利用可能。

ザ・ホテル青龍 京都清水館内の「レストラン ライブラリー ザ・ホテル青龍」で京の旬の食を。

和×洋・モダン×アンティークなど違った要素を掛け合わせたデザインにより、この地の特徴を活かした、ここにしかない建物に。かつて講堂だった建物は、天井の高さを活かした開放的な44席のレストランrestaurant library the hotel seiryu(レストラン ライブラリー ザ・ホテル青龍)に生まれ変わりました。多くの書籍に囲まれたインテリアはかつての学校であった頃を彷彿とさせます。“養生ブレックファスト”がテーマの「京の朝食」は、選べるメインディッシュに本日のスープ、サラダ、お粥など日替わりのブッフェが味わえる贅沢な朝御飯。宿泊者以外も入店できるほか、多目的スペースとしてさまざまな用途に利用することも可能です。

レストランは高さのある本棚に多数の書物が並び、アカデミックな空間に。©️Forward Stroke inc.

ザ・ホテル青龍 京都清水デュカス・パリ監修の「ブノワ 京都」もオープン。

注目すべきは、別棟に「ブノワ」京都一号店が登場したこと。アラン・デュカスが設立したミシュラン星付きレストラン監修の「ブノワ」は、100年以上世界中の食通に愛され続けるビストロ。京都では、ブノワならではの定番料理に加え、京都の季節やテロワールを感じるビストロ料理を展開。ランチタイムは、旬の食材を取り入れたメニューをプリフィクススタイルで提供し、ディナータイムは、ワインとともに楽しめる前菜、メインディッシュ、デザートなどをアラカルトで味わえます。エグゼクティブシェフには、ミシュラン星付きレストランで経験を積んだフランス人シェフ、アントニー・バークル氏を迎えました。

「ブノワ  京都」も、宿泊者以外の利用が可能。店内68席ほか、テラス20席を設ける。

メインの一例は、「本日の魚のグルノブロワーズほうれん草のソテー」や、「京都牛のロッシーニ」など。

ザ・ホテル青龍 京都清水京都を代表する名店がプロデュースしたルーフトップバー&レストランも。

また、屋上には京都を代表する「K6」のバーテンダー西田稔氏がプロデュースに参画したバー「K36」も。オーセンティックな空間のメインバー「K36 The Bar」(屋内)と、京都の街並みを一望できるルーフトップバー&レストラン「K36 Rooftop」(屋上)の2つのエリアで、希少なウイスキーやワインを用意。さらに、本格的なフードメニューも提供しているので、幅広い使い方ができそうです。

ルーフトップバーやゲストラウンジからは「八坂の塔」を間近に望むことができる。

ザ・ホテル青龍 京都清水過去と現在が交差する空間で、アートや知と出会う。

かつて小学生が走り回っていた廊下や階段は敢えてそのまま残したという小坂氏。子供たちが学んでいた教室の扉を開けると、コンテンポラリーな全くの別世界が広がります。また、部屋やエントランス、レストランなどホテル内各所にはアート作品を展示。その多くが京都にゆかりのある作家の作品です。滞在中には、多彩なアートとの出会いも楽しめます。

人々が街の発展を願い、子供の未来を紡ぐ場所であった小学校跡が、次のバトンを受け取って世界と地域を繋ぐ場所へ。これまでになかったスタイルの、古くて新しいラグジュアリーな空間で、歴史を旅する上質な一夜を過ごしてみてはいかがでしょう。

クラシカルな廊下を歩けば、幼き頃の記憶が呼び起こされる。

住所:京都府京都市東山区清水二丁目204-2 MAP
電話:075-532-1111
料金:スタンダードキング1泊朝食付き ¥64,687~¥131,100
アクセス:
[タクシー] 京都駅より約20分
[市営バス] 京都駅より約15分「清水道」バス停下車 徒歩約5分、「五条坂」バス停下車 徒歩約10分
[京阪電車] 「清水五条」駅下車 徒歩約20分
https://www.seiryukiyomizu.com/
(写真提供:NTT都市開発株式会社)